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時空想士アリス ◆4EgbEhHCBs :2010/06/08(火) 22:54:10 ID:pUtk70B1
どもども。アリス第二話ただいまより投下します。随分長くなりました…w
時空想士アリス 第二話『ジャンヌ、リングに稲妻走らせる!』
地球を覆った電磁の網は、いつしか消えてなくなり、世界は…新たな姿を見せる。
アリス・ブロウニングがキッカーケ星人を全滅させたあの日。奴らの作ったという爆弾を
誤って起動させちゃったアリス。大爆発というレベルじゃねーぞと、みるみるうちに
爆風は地球上に広がった。地球終了と言う感じなぐらいに。
しかし、地球はもとより、間近で爆発を受けたアリスにも傷一つつかずに、爆発は収束していった。
だが、代わりに…アリスたちのいた世界は、並行世界がいくつも融合したカオスなせ界へと
変わっていたのだ!ただ、意外なまでに大きな混乱は起こらず、他の世界の組織である、
地球統一政府と地球防衛軍が協力し合い、混乱を防ぎ、治安維持に当たっていた。
「……ということらしいですわ」
説明は地の文に任せて、アリスはソファーの上で寝転びながら、ジャンヌに伝えた。
「ということって…ねえ、アリスちゃん。これってものすごくヤバいことをアリスちゃんは
してしまったんじゃ…?そもそももっと段階を追って説明すべきなんじゃ…」
「もうジャンヌったら。いいじゃないですの。世界がどうなろうと、わたくしとあなたの間の
愛には何にも変わることはないのですから」
「あ、愛って……」
「とにかく、ほら、ここで一緒に眠りましょう?」
アリスの強引な誘いに、ジャンヌは結局断れず、一夜を供に…性的な意味ではない。
「それでは、今回のお話の始まりですわぁ〜」
とにかく、なんやかんやで世界が大きく変化しているなか、地球の外から
招かれざるお客様が現れていた。
彼らの母艦内の中心にある大きな大きなルーム。よくある地球の様子を
簡単に見ることが出来る巨大モニターと、それをよく見ることが出来る玉座っぽいの。
その玉座に座っているウェーブのかかった金髪ロングヘアーの赤い瞳の女を中心に
その両隣には活発そうな顔をした緑色のショートヘアの髪をした女、
そして大人しそうな紺色の同じくショートヘアの髪をした女が立っている。
「ついに地球に到着したのね…長かったこと」
「オハミル様、何故このような辺境の星にやってきたんです?遠くて侵略価値も無さそうですが…」
と、紺色髪の女が中央の金髪女の名を呼びながら聞こうとする。
「そんなの決まっていましてよ。地球の文化って素晴らしいけど、地球人如きには
もったいないでしょう?私たちで独り占めして差し上げますのよ!分かったかしら、ヒユロカさん?」
「は、はぁ……」
前回のキッカーケ星人と同じく、やはり理由としてはくだらないのであった。
「イチリユさん、進路を地球のアメリカという国に向けなさい」
「はぁい、了解!でもアメリカに何があるんです?」
イチリユと呼ばれた活発な緑髪の少女が聞くと、オハミルは手を顎に当てる。
「おーほっほっほ!!私たち、自慢の生物兵器……それのテストにちょうどいい場所を
見つけましてね……今から殴りこみをしますのよ」
彼女たちの乗った母艦はアメリカ・サンフランシスコへと向かって大気圏突入を始めた。
さてさて、そんなことを知るよしもないアリスたち。ある日、ジャンヌがアリスの屋敷へと
やってきた。その表情はやけににこやかだ。
「こんにちは、アリスちゃん!」
「あら、いらっしゃいジャンヌ。あなたから来るなんて珍しいですわね?」
「えへへ。あのね、アリスちゃん。今度、これ見に来てほしいんだけど…」
と、アリスにジャンヌは一枚のチケットを手渡す。
「こ、これは…!」
「そう、あたしの試合のチケットだよ。先輩とタッグ組むことになったの!」
ジャンヌが渡したチケット、それは自分のレスリングの観戦券。
「久々に試合ですのね。だけど…大丈夫ですの?」
「大丈夫って何が?」
「何がって…あなた今までの試合でもいつも泣かされてるじゃないですの」
ジャンヌ・シャルパンティエ。プロレスをやってるくせに本人の性格は至って
気が弱く、暴れることは好まない。なんでプロレス選手になったのかが不思議なのである。
───試合前日。愛しの彼女が心配なアリスはジャンヌの所属しているプロレス団体の
練習を見に行くことに。
ジムの中に入ると、先輩の指導を受けながら、練習をしているジャンヌの姿が。
「こんにちはですわ」
「おう、アリスのお譲ちゃん。元気してるか?」
呼びかけるとジャンヌを指導していた先輩であるダイアナが返事をする。
「ええ、おかげさまで。ダイアナさん、ジャンヌはどうなんですの?」
とにかくアリスはジャンヌが心配でしょうがない。こんなことを聞いたのも
心配なのはもちろん、ジャンヌはデビュー戦からほとんど黒星続きで、
専らアイドルレスラー状態だからだ。
あまりにいいヤラれっぷりに逆にファンはついているが。
「いや、あいつは素質はあるんだよ。技の飲み込みも早いし、腕力も強い。ただ……」
「ふえぇぇ〜〜〜〜んっ!!!」
と、視線を移した直後にジャンヌは突然、泣き出した。
「ジャンヌ、どうしたんですの!?」
「痛いよぉぉ〜〜っ!!」
サンドバックを殴った際に変な打ち方をしたのか、手をブラブラさせて痛みから逃れようとしていた。
「……根性が足りない上に、優しすぎるんだよなぁ」
「ひぐぅ…ごめんなさい……ダイアナさん、ジャンヌちゃん…」
涙を拳で拭いながら上目使いで二人を見つめる。
「ああ!ジャンヌッ!大丈夫大丈夫…この可愛ささえあれば、あなたは私にとっては最強よ!!」
泣いてるジャンヌに寄り添うと頭をなでながら彼女を抱きしめるアリス。
速攻で別の世界に行ったアリスをダイアナは、そっと別の方へと動かすと、ジャンヌの
頭を撫で始める。
「ひっく、えぐぅ……ダイアナさん、あたしどうしたら強くなれるのかな…?」
「ジャンヌ、リングには神様がいるんだ。その神様に強くなりたい…!って願いながら
練習をしてごらん。そうすれば強い漢女にもなれる、頑張れジャンヌ」
「……う、うん!ありがとうダイアナさん!」
慰めになっているのかどうか怪しいが、ジャンヌは何故か納得して、泣き止むと再び練習を再開した。
ちなみにアリスは未だに別世界にワープしたままである。
その夜。ジャンヌは夕食代わりに、帰り道の途中にあった牛丼屋『すきなんや』で
大好きな牛丼を食べることにした。
「牛丼♪牛丼♪おじさん、牛丼の大盛りをください!」
「あいよ!」
ジャンヌの注文に元気よく返事をした店のおじさんは、すぐに大盛り牛丼を用意する。
「ジャンヌちゃん、明日は試合なんだって?頑張ってな!」
「うん、そうなんだ。ありがとうおじさん!」
牛丼を受け取ると、すぐに食べ始める。五分と経たずに、あっという間に完食したジャンヌ。
その口の周りには米粒が二、三粒ついたままである。
「ふう〜おいしかった!ご馳走様、おじさん!えーと…380円だっけ」
「ああ、今日はおじさんの驕りでいいよ!明日の試合で頑張って勝ってくれよ!」
「ええ、いいの?……ありがとう、また食べに来るよ」
気前のいいおっさんに、ジャンヌは申し訳なさを感じさせずに敢えて元気に
お礼をして店から出て行った。
「うん、みんな応援してくれてるんだもん。明日の試合は絶対泣かないように頑張ろう!」
帰り道で明日に向けて気合を入れなおすジャンヌ。と、その時であった。
突然、目の前に黄金に輝く光が現れ、ジャンヌの目を眩ませる。
「きゃあっ!!な、なに…なんなの!?」
怯えて、今さっきの誓いをすぐに忘れたかのように涙目になるジャンヌ。
ただ、光は優しげに、温かみのある声で彼女に話しかけてきた。
「怖がらせてすまない、少女よ」
「ふえぇぇ……あ、あなた誰なんですかぁ?」
「私は、そうリングの神様…!」
「ええ!?もしかしてダイアナさんの言ってた神様ってあなたなんですかぁ?」
涙目だったジャンヌは、一気に尊敬の眼差しへと変わり、神様を見つめだす。
「そう、私こそリングの神様である。君のヘタレながらもプロレスに掛ける思いと
牛丼が好きなところに心打たれた。だから私は、君に強くなれるおまじないを
掛けてあげようと思ってね」
多少、馬鹿にしたニュアンスがありながらも、神様は光を纏った手をジャンヌに
向かって伸ばし始める。そしてその腕が彼女の頭の上まで来ると、黄金の光は
そのままジャンヌに向かって流れ始めた。
「あ、あのう……これは?」
「強くなるための力を授けているのだ。これで屁のツッパリはいらなくなる!」
言葉の意味はわからないがすごい自信で語る神様の腕から光の流出が止まると腕を引っ込めた。
「これでよし。よいか、少女よ。強くなるために立ち向かう勇気を持てよ。そして牛丼を
食べることを忘れるな。私のオススメは大盛りよりも1、5盛り丼だ。それでは、さらばだ!」
聞いてもいないのにオススメを紹介した神様は、そのまま背景に溶け込むように消え去った。
「バイバイ、神様……それにしても強くなったのかなぁ?」
消えてく光に手を振って見送ると、すぐさま両手を見つめ首を傾げた。
「いや!自信を持たなきゃ!明日試合なんだし、速く帰って今日は寝なきゃ!」
パンパンと両頬を叩くと、早々に家路へと急ぐのであった。
―――翌日
ついに迎えた試合当日。ジャンヌは体調こそ万全だが、やはり試合の時間が近づくに連れ
緊張が高まり、深呼吸をして落ち着こうとしていた。
「ジャンヌ、大丈夫だ。お前はちゃんと成長している、今回の相手なら勝てる!」
リンコス姿に着替えたダイアナがジャンヌの頭を撫でた。
「う、うん。あたし頑張るよダイアナさん!」
会場の客席はすでに埋め尽くされており、その中にはアリスも特等席でリングを見つめている。
そして、ようやく試合開始の時間となり、リング中央に司会の男が上がった。
「レディースエ〜ンドジェントルメーン!!ただいまより、60分三本勝負のタッグマッチを行います!
赤コォーナァァーッ!!ダイアナ・モーガン&ジャンヌ・シャルパンティエ!!」
司会の紹介と同時に入場してくるダイアナ、そしてジャンヌ。彼女のリングコスチュームは
ヒラヒラのついた桃色の可愛らしい水着である。その姿に会場は熱気に包まれ、歓声が飛び交う。
「きゃああーーー!!ジャンヌ〜!!頑張ってぇぇぇ!!!」
アリスも周りに負けないほどの大声でジャンヌに歓声を浴びせた。それに気づいてか
ジャンヌもアリスの方に向かって軽く手を振る。
「続きまして…青コォーナァァァーッ!!ソフィア・アンマリー&エレナ・ヒューイット!!」
ジャンヌたちの対戦相手がテーマ曲に合わせて入場してくる……そう思われて、会場も
また新たな歓声を響き渡らせようとしている。
と、思われたその時、突然会場の照明が消え失せ、周りは騒然となる。
「ん?こんなことは聞いてないぞ…おーい、どうしたんだ?」
司会が暗闇の中から声を発し、どうしたのか確認しようとする。
だが、その答えが出る前に、照明は再び輝きを取り戻した。
「なんだ、ただの故障か何かだったのか……うわぁっ!?」
光が灯され、再び仕事に戻ろうとする司会の目に飛び込んできたのは…
ジャンヌたちの対戦相手であるソフィアとエレナが血塗れでリングに倒れている光景であった。
それを会場中が確認すると、一瞬にして悲鳴が巻き起こる。
同時に、本来彼女たちが入ってくる方の花道から甲高い笑い声を上げながら
三人の女が入場してくる。
「地球の格闘技選手の実力とはこの程度なのかしら?期待外れですわね」
「なんなんだあんたら?殴りこみでも掛けにきたのかい?」
会場がどよめく中、ダイアナはあくまで冷静に片割れの金髪の女に向かって切り出した。
「あら、違いますわ。私、プロレスなどには興味はございませんもの」
「じゃ、じゃあなんでこんな酷いことを!」
いつもなら泣き出しそうな状況でもジャンヌは勇気を出して聞き出す。
「地球の文化を根こそぎ奪うか、私流に塗り替える…それが私の目的ですわ。
私たちは別の銀河系からやってきたイーロエ・クジツマ・オトラース。
そう、この国風にIKOとでも略してくださいな。私は女王であるオハミル」
「あたしはイチリユだ」
「私はヒユロカと申します。地球の皆さんには申し訳ありませんがただいまより、
このプロレスも私たち流に変えさせていただきます」
そう言うと紺色髪の少女は指をパチンと鳴らした。
すると煙を纏いながら、ブルドックのような顔をし、体型はゴリラのように
たくましい女が現れた!ただ、女と判断する材料は見た目の通り少ない。
一応、ここでは女性と明言しておこう。彼女はリングに上がり、血塗れ二人組みを場外へ投げ捨てる。
「ブルコング!あの向こう側の二人組みを倒してしまいなさい!」
「へっ!少しは楽しませてくれよ?さっき血祭りに挙げたのは1分持たなかったからよ」
ブルコングと呼ばれた怪人女はダイアナとジャンヌの方へと向く。
「さっきから聞いてりゃ勝手なことばかり言いやがって!ここはあたしらプロレスラーが
戦い、お客さんを楽しませる場所。エイリアンだかなんだか知らないが、すぐに土下座させてやる!」
ダイアナは勇ましく、ブルコングに向かってファイティングポーズを取る。
一方のジャンヌはと言うと…。
「ジャンヌ、ビビるな。向こうの好き勝手させていいのか?」
「うう…ダイアナさん……あんな恐い人と戦うなんてあたしには無理だよぉ……」
相も変わらずヘタレな発言をして、ダイアナの影に隠れるようにして震えている。
そんなジャンヌを尻目に、ため息を吐くダイアナ。
「仕方ない……行くよ、ゴリラ女!あたしがあんたの相手をしてやる!」
ダイアナは素早く回し蹴りを放ち、ブルコングのわき腹を狙う!
ヒットから間もなく、逆水平チョップを連続で当てていく。だが、相手は退屈そうに欠伸をかいた。
「ふぁぁ……つまんないねぇ、もっとすごい攻撃を見せてくれよ」
「くっ、なめるなぁ!!」
挑発に血を上らせ、ダイアナはハイキックを放ち、続いてドロップキックを浴びせていく!
打撃と飛び技なら、団体内でも右に出るものはいないダイアナの猛攻が続く。
並みのレスラーならもう立ち上がれないほどの……だが、ブルコングは相変わらず
余裕奈表情のままであり、ダイアナの息が切れ始める。
「く……なんだ、こいつは…!?」
「もう終わりかい?それじゃあ、今度はこっちの番だな」
「ぐはぁ!?」
ダイアナを掴むとニーリフトを叩き込み、続いて彼女を高く抱え上げ、ジャンヌに
向かって投げ飛ばした!
「きゃああっ!!だ、ダイアナさん!!」
「じゃ、ジャンヌ……ひ、ぐあ……」
一瞬にしてゴリラ女の攻撃でダイアナはダウンしてしまった。ジャンヌも、ダイアナの
身体をぶつけられた衝撃が全身に走る。
「さて、今度はお前だな、可愛いお嬢ちゃん」
「あ…あ……!」
「ジャンヌ!!変……身っ!!」
腰が抜けて、どうしようもないジャンヌのピンチを見ていられなくなったアリスは
リング上に飛び上がりながらバトルスーツ姿に変身した!
「アリスちゃん!」
「な、なんですのあなた!」
オハミルが思わず声を上げる。
「わたくしはアリス・ブロウニング。よくもわたくしの可愛いジャンヌに手を挙げましたわね。
IKOだかなんだか知りませんけど、あなた方はわたくしが始末しますわ!」
「ふん、来るなら来な!どうなっても知らないぜ」
ディメンジョンメーザーを取り出し、レーザーソードにすると、果敢に斬りかかって行く。
だが、アリスの放つ斬撃をブルコングは意外なまでに軽やかに回避してしまう。
「プロレスは反則なんえようあることらしいと聞いたからな、武器でもなんでも
結構だけどよ……これじゃ武器があってもなくてもかわらないぜ!!」
「なにっ!?ああああ!!」
ブルコングが延髄蹴りを繰り出し、アリスに直撃!その衝撃でディメンジョンメーザーが
吹き飛ばされてしまう。
「いいですわよブルコング!潰してしまいなさい!」
「はい、オハミル様。それじゃあ遊びは終わりだぁぁ!!」
「ぐっ……うあああぁぁぁぁっ!!!」
隙を逃さず、ブルコングはアリスを抱くようにして掴むと、そのまま凄まじい腕力を
利用し、押し潰そうとする。いわゆるベアハッグだ!これには堪らずアリスも悲鳴を上げた。
「アリスちゃん!!……リングの神様!あたしに力を授けるって言ったよね!?だったら今ください!」
苦しむアリスを見て、ジャンヌは心から強く願う。その時だった…!
突然、ジャンヌの周りから光が放たれそれは彼女を包み込んでいく。
その光は一瞬、周りに衝撃を走らせ掴み挙げられてたアリスを解放させる。
「じゃ、ジャンヌ…?」
光に飲まれていくジャンヌの姿を、アリスは不思議そうに見つめていた。
「ここはいったい…」
周りを見渡すジャンヌの頭に声が響き渡ってくる。いわゆるテレパシーという奴だ。
『ジャンヌよ……今こそ、お前に与えた私の力を発動する時だ!』
「ふぇ!?この声は…神様?でも、どうやって?」
『強くなりたい、誰かを助けたい、そうもっと心に強く念じろ』
「は、はい!」
目を瞑り、先ほどまで以上に強く念じ始める。すると、ジャンヌ自身から、新たに光が
解き放たれていく!水着のようなリンコスは消し飛び、一度、その抜群のスタイルの
裸体を披露すると、すぐに纏われた光が新たなコスチュームを形成していく。
首辺りから股までくっきりとボディラインを見せつけるようにレオタードが纏われる。
色は寒色系の青。背中は開いており、さらにリストバンドとプロレスシューズが
装着された。アイドルレスラーな格好から、本格派女子レスラーの姿へと変身を遂げたのだ!
「こ、これが、あたし……?」
「うむ、見事な変身だったぞ、ジャンヌよ!」
「あ、ありがとう神様……って、あぁぁ〜〜!!」
ジャンヌは突然悲鳴を上げた。というのも、神様が鼻血を垂らしていたからだ。顔よく見えないけど。
「こ、このエッチ!スケベ!!変態!!!」
「うっ…ぎゃあああぁぁ!!」
思わずジャンヌは神様を殴り飛ばしてしまった。少し間を置いてハッとなった
ジャンヌは申し訳無さそうな表情になる。
「あ…ご、ごめんなさい神様。やりすぎちゃった…」
「い、いや、いい……私の見込みは間違いではなかったようだ。さあ行け!ジャンヌ!
君の友達や先輩、お客さんを助けにいくのだ!」
「はい!!」
光は消え失せ、変身したジャンヌは会場へと瞬時に戻った。
「ジャンヌ!!どうしたんですの、その格好は?」
「リングの神様があたしにくれたの……アリスちゃん、あたしも頑張って戦うよ!」
「ふん、生意気な!あたしの力を受けきれるものか!」
ジャンヌは勇ましく立ち向かおうとする……かと思われた。
しかし、ブルコングに威嚇された瞬間、すぐに顔面蒼白になってしまう。
「ひぃぃっ!?いやぁぁ〜〜〜!!恐いよぉぉぉぉぉぉ!!!」
変身してもなんのその、ビビり症が治るわけじゃなかった。すぐに後ろを向いて
逃げ出そうとしてしまう。
「こ、こらジャンヌ!逃げないで戦わないと!」
倒れていたダイアナが叱咤するが、滝のように涙を流しながら逃げ惑うジャンヌには聞こえない。
「へっ!所詮は弱虫か!潰れちまいな!!」
ブルコングはラリアットをジャンヌに向かって放つ。角度といいスピードといいジャンヌが
逃れられるものではない。完璧に決まってしまったと誰もが思った…。
「な、なに!?」
「うぇぇ〜〜ん!!こっちこないでくださぁぁぁ〜〜〜〜いっ!!!!」
ラリアットしてきた腕をジャンヌは無意識のうちに掴み投げ飛ばした。
周りが呆然とするなか、続いてジャンヌはやはり泣きながら相手を掴み、抱え挙げた。
見た目の可愛さからは想像も出来ないほどの怪力でブルコングは軽々と持ち上げられる。
「あっちいってぇぇぇぇーーーーーっ!!!」
勢いをつけてパワーボムを繰り出し、ブルコングをマットに向かって強烈に叩きつけた。
さらによろよろと立ち上がろうとするブルコングの膝の上に足をかけ、回し蹴りを放つ。
いわゆるシャイニングウィザードだ。
「うわぁぁぁん!!」
「ぐ……がはっ!」
堪らず、ブルコングはリングにうつ伏せでダウンした。
「ジャンヌ!すごいじゃないですのあなた!」
「あ、あれ……アリスちゃん?…ふぇ!こ、これどうしたの!?」
「どうしたのって、あなたがやったんじゃないですの」
「あ、あたしが……?無我夢中で何が何だかわからないよ」
だが、まだ戦いは終わらない。ブルコングはしつこく再び立ち上がる。
「くっそ……こんなガキに倒されてたまるかってんだ!」
「いやぁぁ!!まだ来るのぉっ!?」
突撃してくるブルコングに、顔を背けるジャンヌ。
「ジャンヌ!!フランケンシュタイナーだ!!」
「…!?は、はい!!」
体当たりが決まるかと思われた瞬間、ジャンヌは背後からのダイアナの指示を受け
飛び上がり、足でブルコングの頭を挟み込む!そしてそのまま反り返りながら
勢いを利用してブルコングを投げ飛ばした!
「ぐあああぁぁっ!!」
マットに叩きつけられ今度こそ完全にダウンするブルコング。
すると、その身体が発光しだし、醜い顔や肌がドロドロに溶けた姿へと変わっていく。
「まさか、ブルコングをここまで叩きのめすとは驚きですわ…でしたが、真の姿を
現した彼女には勝てませんわよ!」
なおも、ジャンヌたちに襲い掛かる元ブルコングのモンスター。
その光景にジャンヌはおろか、会場中が悲鳴を上げる。
「ふぇぇ…!もうやだよぉ……!」
なおも襲い掛かる相手に、嫌気が差して、泣き言を言い出すジャンヌ。
しかし、そんな彼女の頭にまたリングの神様の声が響き出す。
『ジャンヌよ!私の与えた力はそんなものではない!真の力を発揮するのだ!』
「い、いったい、何があるの?」
『よいか……これを使え!!』
「ええ?これを使うの?」
「何をゴチャゴチャ言ってますの!ブルコング!やってしまいなさい!!」
ブツブツ呟いているジャンヌに向かって怪物が腕を振り上げ突撃してくる。
「もう!!今度こそ冥土に行ってくださぁぁい!!!!」
叫ぶジャンヌの腕に光を纏って現れたそれは―――超巨大ハンマーである。
1000万tとか書いてあり、それを勢いをつけ振り降ろした!
「グギャ!!!」
短くも痛々しい悲鳴を上げ、ハンマーの下敷きとなったブルコングは今度こそ倒され
―――ミンチより酷くなった。あまりに凄惨な光景に会場中も、IKOも、ダイアナも、
アリスも、そして殺った本人であるジャンヌも絶句していた。
「ぷ、プロレスじゃ…ない」
ダイアナがぼそりと呟いた。しばしの沈黙が流れた後、ようやく我に帰ったIKOのオハミルは
悔しそうにハンカチを噛みだす。
「きぃぃぃぃ!!よくも私たち自慢のブルコングを!!お、覚えてなさぁぁぁぁいっ!!」
「ああ!オハミル様待ってください!!」
「そ、それでは地球の皆様、今後ともよろしくお願いします」
オハミルが走って会場から逃げていくと、その後をイチリユが追い、ヒユロカは
会場中に一言挨拶してから去っていった。
会場中が今の連中はいったい…といった雰囲気に包まれていた。
だがその直後、一斉に大歓声が沸き起こり、ジャンヌはダイアナに頭を撫でられた。
「すごかったじゃないか、ジャンヌ!」
「あ、ありがとうダイアナさん!あたし、リングの神様からこの力をもらったの!」
「昨日の話してやったあれか……まさか本当にいるとは…冗談だったのに」
「あれ?ダイアナさん、なんか言った?」
「い、いやぁ、なんでもない」
ボソっと呟くダイアナだが、すぐに咳払いをして再びジャンヌの方を向く。
「でもな、ジャンヌ。今回はエイリアンが相手だったからともかく、実際の試合の時は
変身は無しだぞ、明らかにズルだからな」
「はぁい!ベビーフェイスだもん!そんなことはしないよ!」
ジャンヌの言葉を聞き、うんうんと頷くダイアナ。
「ジャンヌッ!本当に良い戦いでしたわ!あなたの変身記念に今日はわたくしの屋敷で
パーティーをしましょう!」
「そ、そんなぁ、悪いよアリスちゃん」
「いいからいいから。すぐに手配しますわ。ダイアナさんもいかがです?」
「おっ、あたしもいいのかい?それじゃ、ジャンヌ、せっかくだからお言葉に甘えないか」
「う〜ん…じゃ、じゃあ、アリスちゃんご馳走になるね!」
「はぁーい!ああもう、なんて可愛い笑顔…!」
存分にジャンヌの笑顔に惚れ惚れすると、アリスは携帯を取り出しすぐに屋敷に連絡をした。
正式な試合はしてないのに、会場中はとにかく盛り上がっていたその一方で……。
花道に倒れていたソフィアとエレナがそのまま、口を開いた。
「エレナ、生きている?」
「ええ、なんとかね……」
「完全に忘れ去られているわね、私たち……誰も救急車も何も呼んでないみたいだし」
「くっ……次こそ、あたしらが、せっかくだから赤い血の雨降らせてみせるわよ…」
二人が乾いた笑いをすると、同時にまたバタリと寝た。とりあえず、台詞がないまま退場より
マシだと、少しでも気持ちを妥協させてから。
解説コーナー
「はぁい、解説お姉さんです。今回は冒頭でいきなりいろんな世界が融合しちゃったわ。
でもそんなことが起きても特に誰もあまり気にしていないみたいね。と、言うより
その辺の描写が面倒なだけなのかも…ううん、なんでもないわ!
でもスパ○ボZとかディ○イドとかナ○カプの影響は間違いなく受けているわね。
さてさて、キャラクターはジャンヌ・シャルパンティエちゃんね。彼女の国籍はフランス。
名前はジャンヌ・ダルクにあやかって付けられたんだけど、本人は気弱でビビりでヘタレという
どうしようもない有り様よ。それなのに格闘技好きでプロレスやってるんだから不思議よね。
戦うときはやはりプロレス技全般が格闘スタイル。パワー技、投げ技、関節技、飛び技と
だいたいの技は使えるみたい。あと、どこから10000万tハンマーを呼び出して相手を
叩き潰すことも出来る…ってプロレスじゃないわね、これ」
次回予告
「ジャンヌ・シャルパンティエですぅ!あわわ…あのブルコングさん、ミンチより
酷いことになっちゃいました……まあ、そんなことよりも、あたし、最近誰かの
視線を強く感じるんです。でも、アリスちゃんじゃないみたいなの。そもそもアリスちゃんなら
あたしを見るなりハグしてくるし…。
次回『鈴音、メリケン修行の旅!』って、鈴音誰ですかぁ!?」
260 :
時空想士アリス ◆4EgbEhHCBs :2010/06/08(火) 23:08:04 ID:pUtk70B1
投下完了!ところどころ名前が前作になっているのは気にしないでくださいw
最終回どころかまだ第二話なのに、結構長くなりました。
呼んでいただければ幸いです
>>242 どうもです。今までとは違うタイプの主人公になればと思いますw
>>244 よくよく思えば今まではコミカル要素が少なかったのでたまにはということでw
今日もチャット行ってみますね。
>>241です
乙でした
リングの神様(CV神谷明)www
262 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/09(水) 23:52:49 ID:veVQT0TA
投下乙です。こんなに気弱なヒロインはなかなかいないw
まなみ作者のSSの中で一番面白い
キャラ立ってる
>>263 ある意味、酷い言い方だなw
まあ、今後の展開に期待
265 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 05:43:09 ID:SL4t0Q/o
保守
266 :
◆4EgbEhHCBs :2010/07/06(火) 23:57:20 ID:gQQQ7T89
一ヶ月ぶりです、ようやく第三話出来たので投下します
時空想士アリス 第三話『鈴音、修行しにやってくる!』
太陽が昇り始め、朝日が差し込んでいるこの時間。サンフランシスコ国際空港に一機の
ジャンボジェットが入港してきた。しばらくして、ジェットに乗っていた乗務客がそれぞれの
ペースで降りてくる。その中には輝く黄金のような色つきをしている長い髪を流し
大正時代の女学生のような和服を着飾った少女の姿が。その左手にはズタ袋が握られている。
彼女は空港の窓からサンフランシスコの街並みを眺めだした。
「へぇ……初めて来たけど、いい街(とこ)じゃないの……ここにはどんなうち好みの女がいるかなぁ」
ボソりと呟くと、彼女は空港ロビーへと向かって歩き出した。
その頃、サンフランシスコのずぅっと地下の方。人知れず基地らしきものが作られていた。
その中には前回、IKOと名乗った三人の姿がある。
「あーあ、前回は失敗しちゃいましたね、オハミルさまぁ」
体育会系脳筋娘のイチリユが言う。そのことを聞くとオハミルはみるみるうちに
顔を真っ赤にしていく。
「きぃーっ!!あのアリスとジャンヌとかいう娘っ子が邪魔するからですわ!
ヒユロカさん!何か、地球でぶっ壊すのにいい文化はありまして?」
「ええと……ちょっと待ってください」
頭脳派且つ、IKOの苦労人ヒユロカが何やら目の前のモニターに向かって
打ち込み始める。しばらくすると、モニターにデータが無数に表示されるが
宇宙人の言語なので地球人には理解できないので説明は省く。
「このアメリカではベースボールというスポーツが大変盛んだそうです」
「なるほど…じゃあ、そのベースボールを私色に染め上げて、ヒーヒー言わせるのも
面白そうですわね。それで、そのベースボールが行われているところは?」
「近くならここですね」
モニターに表示された赤い点を指差すヒユロカ。それを見るとニヤリと笑みを浮かべたオハミル。
「じゃあ、すぐさま、レッツゴーですわよ!二人とも!」
オーホッホッホ!という高笑いが起き、イチリユもオー!と乗り気である。
「はあ…」
そしてため息をつくヒユロカは少し痩せてた。
ところかわって、アリスたちが通うサンフランシスコスマッシュハイスクール。
ジャンヌはなにやらため息を吐いていた。
「どうしたんですのジャンヌ?元気がありませんわよ」
「あ…アリスちゃん。あのね、最近…あたし、誰かに見られているような気がして…」
「視線を感じるの?」
こくりと頷くジャンヌ。つまりはこうだ。ある日、学校帰りに日本茶庭園を見物しに行った
帰りから、どこからか視線を感じるようになったそうなのだ。
「でも、視線のする方に振り向いてみると、パッと視線を感じなくなるの。
あたしの気のせいなのかなぁ…?」
すると、話を聞いていたアリスはバン!と机を叩いた。
「…ジャンヌ、それはいわゆるスカウターって奴ですわ!!」
「ストーカーだよ、アリスちゃん」
「どっちでもよろしくてよ!とにかくそのスリーパーだかゴールキーパーだかが
あなたを狙っているのよ!…ああ、わたくしの可愛いジャンヌになんと卑劣な行いを!
許せませんわ!安心して、わたくしがあなたを守ってあげますわ!」
「ああ……もうサッカーになってるし、どんどん話が進んでいる…」
ジャンヌは彼女の思い込みの激しさにはついていけんと、ガックリと項垂れた。
さて、そんなわけでその日の帰りから、アリスはジャンヌに財閥から護衛のSPをつけた。
ただのSPではない。元グリーンベレーに、赤パンツのロシアの大男、手足が伸びるインド人など
多種多様な人材を彼女の護衛のためだけにつけたのだ。護衛が勤まるかどうかはわからないが。
「もう安心してよろしくってよ、ジャンヌ。あなたを付け狙うスマイリー菊○など、
この護衛の中ではもう諦めるでしょう」
「だからストーカーだって……そ、それにぃ、こんなに護衛さん呼ばなくても大丈夫だよぉ」
「いーや、ダメですわ!だって、ジャンヌを守るのはこのアリス・ブロウニングの使命!
ジャンヌ……あなたを危険な目に遭わせたくないの」
ジャンヌの顎に手をやり、そのまま触れ合いそうな位置まで顔を近づける。
だが、当のジャンヌは恥ずかしがって顔を背けていた。
そんな彼女に護衛をつけてから数日後。このところは視線も感じなくなっており
ストーカーも諦めがついたのかと思われていた。
学校の帰り道にハンバーガーを食べながら帰宅するアリスとジャンヌ、そして護衛軍団。
「…う?」
「どうしたのジャンヌ?」
何やら顔をしかめるジャンヌ。彼女は両手を前に添えて恥ずかしそうにアリスに耳打ちする。
それを聞いたアリスも頷くと、ジャンヌは公園の方へと駆け出して行った。
「護衛の皆さん、入り口前まではついていきなさい」
アリスの指示に従い、護衛軍団もジャンヌの後を追う。
───そんなわけで帰り道にある公園のトイレにやってきたのだ!
ジャンヌが用を済まして、トイレから出てくると目の前のベンチに一人の小柄な少女が座っていた。
「うほっ!可愛い女の子……ハッ」
ジャンヌは思わずその少女の容姿の感想を言った。黄金のように輝くロングヘアーと
軽くつり目、そして日本人なのだろう、着ているものはいわゆる和服だ。
ジャンヌがそう思っていると突然、少女はジャンヌの見ている目の前で和服を軽くはだけさせる。
「やらないか」
そういえばこの公園のトイレは百合娘が集まることで有名だった…ということは別にない。
だが、狐のような視線を浴びたジャンヌは誘われるままホイホイと……
「って、させるかぁぁぁ!!ですわ!!」
危うくPINKちゃんねる逝きな展開になる前にアリスがその場に乱入してきた、危ない危ない…。
「ちっ、もう邪魔が入っちまった」
「ジャンヌを付け狙っていたのはあなたですわね!!許しませんことよ!!って、ええ!?」
アリスは驚いた。それというのもジャンヌをさらおうとしていた少女の頭に狐の耳、
そしてお尻には、その尻尾が生えていたからだ。
「あ、あなた一体何者…もしかしてコスプレ?」
ジャンヌがすっ呆けるが、狐の少女は軽く首を振る。
「うちは妖狐。ちょっと人間とは違うんだ。それよりも付け狙ってなんかないよ。
じっと観察してただけさ」
「くぅ、同じことですわ!護衛の皆さんは何をやっているのかしら…!?」
きょろきょろと辺りを見回すと、トイレの横に護衛の皆さんは山積み状態で倒れていた。
「うちが相手じゃ分が悪かったかもね。それじゃ、ジャンヌはもらっていくぜ!」
「ああっ!アリスちゃぁ〜ん!!」
「ジャンヌ!!」
少女は目にも留まらぬ速さでジャンヌをその場から連れ去ってしまった。
―――AT&Tパーク。本日ここではプロ野球チームのサンフランシスコ・ジャイアンツと
ロサンゼルス・ドジャースの試合が行われようとしていた。
狐のような少女に連れ去られたジャンヌは彼女と一緒にこの球場にやってきていた。
「いいのかい、ホイホイついてきちまって……」
「いや、あのーホイホイ連れて来られたんですけど…」
と、ここでジャンヌはようやく少女に質問をすることに。
「あの、妖狐なのはわかったけどあなたいったい誰なの?」
「うち?うちの名前は彩狐鈴音」
「鈴音ちゃん、か……どうしてこんなことを…」
「決まっているじゃん、うちはジャンヌみたいな可愛い女の子が好きだからよ」
その言葉を聞き、ジャンヌはため息を吐いた。やっぱり、この娘もアリスと同じタイプであると。
「さて、それじゃあデートしようぜ、ジャンヌ」
「デ、デートって……どこへ?」
「目の前の球場だよ。うちは野球が大好きだから、ジャンヌと一緒にみたいのさ」
そう言うと鈴音と名乗った少女は彼女の腕を引っ張り、球場へと無理やり連れて行くのであった。
───サンフランシスコ・ジャイアンツとロサンゼルス・ドジャースの試合が始まった。
1回、2回じはお互いの投手陣の好投もあり0対0のまま。
「やっぱ本場は迫力が違うなぁ〜!うちもこんなプレイをしたいぜ」
「鈴音ちゃんって野球やってるの?」」
ジャンヌの問いに、頷く鈴音。
「うち、日本の京都にいた頃に、幼馴染たちと一緒に野球やってたんよ。
うちはピッチャーだったんだぜ」
「へぇ〜鈴音ちゃんすごいんだね。あたしは…んっ?」
話を膨らまそうとしていくと、突然の地響きが球場を包みこんでいく。
「な、なんだいったい?」
突然のことに、観客はおろか、試合をしている選手たちも困惑する。
そして地響きが終わったかと思うと、次の瞬間!ドカーン!!とでも表現すべき
音を響かせながら、マウンドのすぐ隣から何かが土を掘り起こしながら現れた!
「うわああ!!くっ、なんだ!?」
思わず飛び退いた投手の目の前には両腕にドリルがついた巨大ロボットの姿が。
あまりにも唐突な展開に、その場にいるもの全てが呆然としていた。
するとロボットの頭部がパカッと開く。
「けーほけほ、オエ!もう、煙いですわねぇ!」
「ヒユロカぁ、もっといいロボット作れよぉ」
「予算がないから無理ですぅ〜!」
と、そこから漫才をしながら三人の女の姿が現れた。
「あー!あの人たち、この前あたしの試合の時に現れた…」
「知ってるのかジャンヌ!?」
「うん、あたしがこの前プロレスしてたら突然出てきて…」
そう、IKOの面子が煙に包まれながら現れたのだ。なんとも間抜けな登場である。
「君たち!いったい何の真似だ!!」
投手が彼女たちに向かって怒りを向ける。他の観客たちもそうだ。
大事な試合を、楽しく見ていた試合をこのような形で台無しにされてはたまったものではない。
「そんなの決まっていますでしょ。野球をIKO流に染めてあげましてよ!」
オハミルのその言葉に会場中が怒気に溢れていく。
「ふざけるなー!宇宙人に俺たちの野球をどうこうされてたまるかってんだ!」
「そうだそうだ!!」
その怒気の中で特に激しいのが
「なめてんじゃねー!!野球をお前らなんかにいいようにされてたまるかってんだ!!」
鈴音である。観客席から立ち上がり、片足を前に大きく踏み出しながら吼えている。
その吼えっぷりに鈴音の頭には再び狐耳が、そして尻尾が生えていた。
IKOの方は乗ってきたロボットが再び起動し始めている。
「まったく地球人はキャンキャンやかましいですわね。イチリユさん、あの投手に
向かって使ってみてくださいな」
「はいはい了解!パワフル熱血官僚仏契〜あかつきするめ砲!!」
とことん長い名前の武器名を叫ぶやロボットの腕のドリルが変形!
筒状のレーザー砲へと変わり、投手が驚く暇もなく閃光が走った!!
「ぐっ!?うあああああ!!」
それを浴びた投手の身体がみるみるうちに巨大化していく。
目つきが鋭くなり、その肉体も人間のそれから文字通り鋼のボディに変わる。
煙が消えるとそこにいたのは、元の人としての姿がない投手の姿。
見た目はまるで鋼のロボットのようである。ウィーンウィーンという音を立てそうな
動きをしながら、手に持ったボールが観客席に向かってものすごい勢いで投げ飛ばされる!
ドカーン!と爆発音が響き、一斉に会場中は大混乱に陥った。
「あはは!やりましたわ!人を別の怪物に変える生命変換の技術…見事に成功ですわ!
アイアンピッチャー!あなたの野球でもっと楽しませてあげなさい!!」
声も出さずにこくりと頷くと、今度はグラウンドにいた周りの選手も、敵味方関係なく
次々とボールを炸裂させ吹っ飛ばしていく。
「た、大変なことに〜!鈴音ちゃん、今は逃げ…!?」
鈴音に逃げるように促そうとするジャンヌだったが
「あうあ……ぐふ」
先ほどの爆発で飛んできた破片で頭を打った鈴音は目を回して気絶していた。なんともベタな。
「ああ〜鈴音ちゃぁん!しょうがない…ちょっと怖いけど…」
ジャンヌが目を瞑るとその身体から光が走り、一瞬にしてプロレスラーモードに
変身を完了させた!すぐに、グラウンドに降り立ち、アイアンピッチャーに向かう。
「IKOさん!これ以上、ここで暴れるのはやめてください!やるならテレビゲームの
なかでだけにしてほしいです!」
「むっ、この前、私たちを邪魔したジャンヌとかいう乳だけ立派なガキんちょガール!」
「ち、乳のことなんかどうでもいいです!早く帰ってください!」
胸を押さえ、恥ずかしがるジャンヌの隙を逃さない怪物投手は瞳をギラリと光らせ
物凄い豪速球を投げ飛ばしてきた!寸でのとこで回避するがボールが直撃したところは
大きくめり込んでいた。
「ひやっ!?も、もう、大人しくしてぇ!!」
素早く、ジャンヌが飛び掛ろうとするが、彼女の動きを読んでいたかのように、敵は
ボールをしまうとバットを取り出した!
「ふえ!?」
グワァラゴワガキーン!!という打撃音が響いたかと思うとジャンヌは一瞬でバックスクリーンまで
かっ飛ばされてしまっていた。
「あうぅ……めちゃくちゃ痛い…ひぐぅ……」
情けなく涙を流しながらその場に倒れこむジャンヌ。その様子を見てオハミルは
愉快痛快とばかりに笑い飛ばしている。
「オーホホホホ!素晴らしいですわ、アイアンピッチャー!」
彼女が自慢の怪物を褒め称えるのを他所に、球場に走りこんでくる人影が。
「ジャンヌ!!」
それはようやくジャンヌの居場所を突き止めてきたアリスの姿である。
彼女は辺りの惨状、中央にいるIKOとアイアンピッチャー、そしてぐったりしているジャンヌの
姿を見て、この場で起きていたことすべてを一瞬で理解した。
「ぐぬぬぬ…よくもわたくしの可愛いジャンヌを酷い目に…!許しませんわ!!」
ワンピース型のバトルスーツを一瞬で装着するとグラウンドに降り立つ。
「IKO!これ以上、ここで暴れるのはやめてバッティングセンターにでもいきなさい!」
「あら、今度はアリスとかいうお嬢様だったかしら?よくも私たちの邪魔をするつもりですわね」
アリスがディメンジョンメーザーを取り出すと、銃形態に変化させてアイアンピッチャーに
照準を合わせ、銃口を向ける。
「あなたの身体でジャンヌを傷物にした罪を償ってもらいますわ!!」
誤解されそうな表現をしながら、引き金を引くと、ビーム光弾がアイアンピッチャーに
向かって発射され、すごい勢いで飛んでいく。
だが、モンスターの方はというと、慌てず騒がず、バットを光弾に向けて振るう。
「な、なんですって!?」
光弾はピッチャー返しの状態でアリスに向かって跳ね返され、反応が遅れた
アリスに直撃、爆風が辺りを包み込んだ。
「ぐはああ!?くっ、なんて奴ですの……」
アリスも返り討ちにあい、その蛮行を止めるものは誰もいない状況に。
と、その時。観客席で気絶していた鈴音がようやくゆっくりと目覚め始めた。
「う〜ん……いったい何が…あっ!?」
見るとジャンヌはバックスクリーンで倒れてるわ、アリスもぶっ倒れてるわ、
怪物がグラウンドを荒らしまわって辺りは大パニックだわで寝てる間に随分と状況が
変わっていた。
「ジャンヌもアリスも倒した今、我々を止められるものはいませんわ!」
「ちょっと待った!!」
勝利を確信したオハミルであるが、そうはさせねぇと鈴音がグラウンドに飛び移る。
「やいやい!よくも可愛いジャンヌとついでにあのお嬢を酷い目にあわせたな!
うちが相手してやる!」
「ふん、なんですのあなた?あなたみたいなのがこのアイアンピッチャーを倒せまして?」
その言葉を鈴音は鼻で笑う。
「うちならそのアイアンピッチャーだって討ち取ってみせるぜ。
漢女なら漢女なら…やってみせらぁぁ!!」
大事なことなので二回言ったかと思うと、鈴音の着ていた和服がはじけ飛び、一瞬全裸を
見せ付けると、すぐに新たな衣装が纏われる。和服は和服でも今度は巫女服だ。
さらに引っ込んでいた狐耳と尻尾が再び生え出した。そしてその手には一本の棒が握られている。
その光景にIKOは吃驚仰天!
「ななな…!オハミル様ぁ、また変なのが現れましたよ!」
「ついてないですわね、私たちも……くそ」
ヒユロカが焦り、オハミルも怒りを露にする。出番がまるでないイチリユは昼寝している。
「やい、怪物野郎!うちと野球勝負せぇ!あんたの球をうちが打ったら勝ち。
もし空振りか、打ち損じならあんたの勝ちや!ええな」
勝手に勝負のルールを決めちゃう鈴音だが、アイアンピッチャーは結構素直に無言で頷いた。
「ふん!大リーグ選手を怪物化したアイアンピッチャーに、あなたみたいなロリっとした
娘が勝てるわけありませんわ!やっちゃいなさい!!」
鈴音は持っている棒を垂直に立ててから構える。
アイアンピッチャー、振りかぶって投げた!ものすごい豪速球だ!!
だが鈴音、慌てず騒がず、余計な力を込めずにスイングする!
ボールは見事にバットへと当たる。だが、それは高く打ちあがったピッチャーフライだ。
「おほほ!所詮、そこまでですわ!」
「それはどうかな?」
「なにっ!?」
なんと打球が頂点まで飛び上がった瞬間、ボールが光を纏いながらいくつも分裂しながら
アイアンピッチャーに向かって降り注いでいくではないか。
「これぞ、必殺!しし座流星群打法!!」
無数に分裂した球をアイアンピッチャーは捕球できず、見事ヒットとなった。
「さあ立てアイアンピッチャー!今度はあんたが打者、うちが投手だ!!」
鈴音がお札を取り出すと、それはボールへと変化する。
怪物投手も立ち上がり、バットを構えた。
左手で握ったボールを横手投げ、いわゆるサイドスローで投球する!
「これがうちの必殺魔球…狐火ボールだぁっ!!」
ボールはぐいぐいと伸び、炎を纏いながら振られたバットに直撃した。
その凄まじくスピンが掛かったボールにアイアンピッチャーは押されていき…
ボールの勢いそのままに吹っ飛ばされてフェンスへと激突した!
「ああ!アイアンピッチャー!!」
もくもくと土煙が立ち込める。それが消え去ると、そこにはアイアンピッチャーの
姿はなく、元の大リーグ投手の姿へと戻り気絶していた。
「どうだ!うちの必殺技の味は!?」
「くっ、これで勝った気にならないでほしいですわ!ヒユロカさん、イチリユさん、
帰りますわよ!」
オハミルは昼寝していたイチリユをポカリと殴り起こすと、乗ってきた不良品ロボットで
逃げ帰っていった。鈴音はすぐにジャンヌのいるバックスクリーンへと走る。
その足の速さも狐だけあって、常人よりずっと速い。
「大丈夫か、ジャンヌ?」
「あ、ありがとう。鈴音ちゃん、すごいね、野球で戦うなんて」
「え?野球じゃないよ、あれは棒術と退魔の力なんだぜ」
「…え、だって打法とか魔球とか言ってたし…」
「ちゃうちゃう!うちの戦う力はそれじゃないって。野球はあくまでスポーツです!」
あくまで自分の戦闘スタイルを棒術と退魔の力と言い張る鈴音であった。
どこからどうみても野球なのに…。
さて、いずれも変身解除をしてグラウンドの外へと出ている。
さすがにこんな有り様では試合の続きなんてとても出来ないので今日は無効試合だそうだ。
「ジャンヌ、今日はありがとな、デート楽しかったぜ」
「う、うん、どういたしまして」
「で、デートぉ!?化け狐如きが、わたくしのジャンヌとデートですって!?」
「化け狐じゃねぇ!妖狐だ妖狐!!」
「許せませんわ!ジャンヌはわたくしのものでしてよ!」
「ふん!お前が許そうが許すまいが、ジャンヌが気に入ればうちのもんだもんね!」
いがみ合う二人に、ジャンヌはおろおろとして何も出来ない。というより、もう二人のもの
確定ということに対して反論することすら出来ない。
「けっ!今日は疲れたからもういいぜ。じゃ、うちは普段はジャパンタウンにいるから
ジャンヌ、いつでも遊びに来ていいんだぜ」
「いかなくていいですわジャンヌ!こんな化け狐のいるところに行ったら
化かされて身包み剥がされますわよ!」
「それじゃ泥棒じゃねぇか!うちはジャンヌと遊びたいだけで…」
いがみ合いは尚も収まることを知らず、ジャンヌもおろおろしたまま、
結局、最後はため息をついて苦笑いを浮かべるしかなかったとさ。
解説コーナー
「はぁい、解説お姉さんです!今日登場した彩狐鈴音ちゃんは人間の父と妖狐の母の間に
生まれた半妖半人の存在。まあ妖狐でいいと思うよ。彼女は日本の京都出身、巫女の修行の
ためにアメリカにやってきたんだって。彼女の戦闘スタイルは本人曰く棒術と
巫女の退魔の力らしいけど、どっからどう見ても野球です、本当にありがとうございました。
それというのも京都にいたころに幼馴染の女の子たちと京都サクラドリームズの
エースピッチャーとして野球やってたからなのよね。ちなみにドリームズの選手は
みんな身体のどこかにボール型のアザがあるそうよ。鈴音ちゃんは左の二の腕だそう。
つまり妖狐とロリと棒術と巫女と野球を組み合わせたまったく新しい変身ヒロインというわけ。
いわゆる属性過多ね。こういうキャラって受けないから鈴音ちゃんの未来は不安でいっぱいね。
それじゃ、また次回もよろしく!」
次回予告
「よっ、彩狐鈴音だ。なんか上で物凄く失礼なことを言われた気がするけどまあいいや。
うちがメリケンに来たのも巫女修行と魔球開発のため。でもジャンヌと遊ぶのも楽しいよなぁ。
だと言うのに、アリスの野郎、付き合いは自分の方が長いからって独占しようとしやがる。
こういうのは一緒にいた時間より、密度なんだよ!そんな時、ジャンヌが拉致られちまった!
待ってろジャンヌ!うちがアリスより先に助け出してやるぜ!
次回『ジャンヌ囚われの身!アリスと鈴音仲良く喧嘩三昧!』うちはあんな奴嫌いじゃ!」
276 :
時空想士アリス ◆4EgbEhHCBs :2010/07/07(水) 00:11:34 ID:sWu7CfEL
やっと投下出来ました。遅れまくって申し訳ないです。
今回はついに、正真正銘の人外を出してしまった…w
野球少女はいつか出したかったとは思ってましたけど。
まあとにかく、今年は女子プロ野球も復活したし女子野球は頑張って欲しいですw
投下お疲れ様
妖狐で野球少女とはまた斬新な…w
279 :
ダメ人間:2010/07/22(木) 01:05:18 ID:zeRfmcEU
投稿用の原稿が一次落ちしたので、とりあえず晒してみます。
タイトル「天使ノ学園」
変身ヒロイン養成所(ファンタジー世界の女子校)で主人公達が繰り広げる冒険活劇
ってな話です。
tp://www9.ocn.ne.jp/~hotman/syoko_rennsai/tensi2-e/tensi2-004.html
HTML形式にする際にちょこちょこ手を入れなきゃいけない理由でまだ2話ぶんしか出していませんが
随時更新しますんで。
280 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/22(木) 23:57:16 ID:XJQpOhvE
ageた方が少しは注目度も上がるもんよ
281 :
ダメ人間:2010/07/23(金) 18:45:13 ID:u4FXFsN/
とりあえず全7話、更新完了。
単行本一冊分の長さはあるんで読むのはかなりしんどいと思いますが、まあそれでも感想など頂けると嬉しいです。
>>280 お手数掛けます。
282 :
時空想士アリス ◆4EgbEhHCBs :2010/07/25(日) 19:55:51 ID:XODtitmS
時空想士アリス第四話投下します!
時空想士アリス 第四話『ジャンヌ囚われの身!アリスと鈴音仲良く喧嘩三昧!』
エキサイティン・ヒロインタイム!今回の時空想士アリスはここ、IKO秘密基地から始めよう。
前回、野球文化を潰そうとしたIKOだったが、突如現れた鈴音の活躍により失敗に終わった。
それが気に入らないIKOの女王オハミルはぎりぎり歯軋りをしながら、モニターに
映し出したアリス、ジャンヌ、鈴音の写真を見つめている。
「ぐぬぬぬぬぬ……こんな小娘たちの力で私たちの活動が邪魔されるなんて…気に入らない!
気に入りませんわ!!ムキーッ!!」
そう叫ぶとマウスで三人の写真に落書きを始める。本当はペンタブが使いたいところだが
実家に忘れてしまったらしい。
「まあまあオハミル様。あんなホエホエした連中、なんとかなりますよ!」
ケロッとして笑っているのは肉体派イチリユ。しかしそんな彼女の言葉が逆鱗に触れたのか
オハミルはイチリユの頬を掴むと勢いよく引っ張り始めた。
「前回、ずぅぅぅぅっと昼寝していたサボタージュ娘が何を言いますの!!」
「ふ・あ・あ!!いふぁい!いふぁいでふ、オファフィヒュひゃまぁ〜!」
散々に伸ばしまくり、彼女の頬が真っ赤に染まると、ようやくオハミルはイチリユを解放した。
「まったく…余裕ぶっこいている暇がありましたら、小娘どもを倒す手段でも考えなさいな」
「いてて……もうひどいですよオハミル様ぁ…あ、でもそれでしたら!」
イチリユは画面上のオハミルによって頭に花が咲き髭を描かれていたジャンヌの写真を
拡大する。見にくいので落書きは早々に消した。
「このジャンヌをやっちゃいましょう。こいつを人質にして他の二人もまとめてぶっ倒すんです!
残りの二人は仲悪いって話だし仲間割れで自滅して、最後にプロレス娘も処刑!
ね、完璧でしょ?」
イレギュラー要素をまったく考えていないイチリユの発想だが、それをオハミルは
何故か感激した目線を彼女に向けた。
「素晴らしい…素晴らしいですわイチリユ!あなたやれば出来るじゃないですの!」
「えへへ〜褒めてもグッタリマンのシールしか出ませんよ」
と、作戦立案だけで馬鹿騒ぎしている二人を後ろの方で見つめているヒユロカはため息を吐いた。
「面倒なことは全部、後で私に回ってくるんだもの…嫌になっちゃう」
項垂れるヒユロカ。だが、結局付き合う辺り、相当なお人よしである。
サンフランシスコはすっかり夕日差し込む時間となっている。
ハイスクールからアリスとジャンヌが、アリスが引っ付く形で一緒に下校している。
「ねぇ、ジャンヌ。今日もわたくしの家に遊びに来ませんこと?」
「え?別にいいけど…」
「はい、決定ですわね!セバスチャン!!」
両手をパンパンと叩くと、すぐ近くのマンホールが開き、そこからアリスの執事が現れた。
「はっ。お呼びでございましょうかアリスお嬢様」
「すぐにリムジンを。おいしいお菓子も用意しておきなさい」
「かしこまりました!」
セバスチャンが天高く飛び上がったかと思うと、次の瞬間には二人の目の前にリムジンが
到着していた。
「さあ、乗ってジャンヌ」
「う、うん……相変わらず人間業じゃないね…」
リムジンは二人が乗り込むと早々にアリスの屋敷へと向かって走り出していった。
その走り出す車を後ろから見つめる人影ここに。
「むむむ…!アリスの奴、またジャンヌを無理やり連れて行きやがったな…見てろよぉ…」
何がむむむだ。リムジンを見つめていた化け狐の鈴音は前回の自分の行動も当に忘れ
リムジンに悟られないように後を追って走り出した。
「ささ、着きましてよ、ジャンヌ」
「うん。ねえ、アリスちゃん。たまには誰か他の人も呼んで遊ばない?」
「嫌ですわ。ジャンヌはわたくしのものですのよ。それに、ジャンヌはわたくしだけでは
不満なのかしら?」
ずいっと顔を寄せるアリスに、よよよと後ずさる。
「そ、そういうわけじゃないけど、みんあでワイワイ賑やかに遊ぶのもいいんじゃないかなぁ?」
「それでしたらまた今度、皆さんを誘ってカラオケでもしましょう。今日は!わたくしと
二人で遊びましょう。ね?」
ジャンヌの両手を握るアリス。と、その時。ズササーッ!という音を立てながら
二人の前に滑り込んでくる人影が。
「ちょっと待ったぁ!おいアリス!ジャンヌが好きならジャンヌの言い分を聞いてやるもんだぜ!」
「あっ、鈴音ちゃん!」
突然現れた鈴音の姿に、アリスは明らかに不満げな表情を見せる。
「むっ、出ましたわね化け狐の鈴音!」
「化け狐じゃねぇ!妖狐だ妖狐!!」
「どっちも一緒でしょうが!」
鈴音は太くモフモフした尻尾と狐耳を立たせている。彼女の感情に合わせて
無意識のうちに立っているのだろう。
「一緒じゃねぇよ!こちとら一応、神様だぞ!」
「ふん、こんなゴッドなんて敬う価値無しですわ」
「んだとーっ!?」
「ま、まあ落ち着いてよ、二人とも!」
まさに犬猿の仲なアリスと鈴音の喧嘩をジャンヌは間に入って止めようとする。
「鈴音ちゃん、今日はどうしてここに?」
「ふふん、よく聞いてくれたな。もちろん、ジャンヌ、お前と遊ぼうと思って。
そしたら、アリスが理不尽なわがままほざいてるからな。ジャンヌの願いを聞いて
うちも仲間に入れろや」
「ジャンヌの願いなら何でも聞いてあげたいとこですけど、鈴音、あなたのような
化け狐とは一緒に遊べませんわ」
なおも拒否するアリス。鈴音は尻尾を左右にぶんぶんと振り回しながら彼女を睨みつける。
「けっ、いいとこのお嬢様が差別たぁ、器が小さいなぁ!」
「な、なんですって!?」
「この傲慢稚気お嬢!!」
こう言われてはアリスも一気に顔を赤くする。
「ふん!日本人女性は慎みがあると聞きましたが…あなたなんて野蛮で全然そうじゃありませんわね」
「あにぃ!?てめぇだって慎みも何もねーだろ、アホンダラ!!」
「なんて言い草なのかしら!狐は稲荷寿司でも貪っていればいいんですわ!!」
「ちょ、ちょっと二人とも……」
エスカレートする二人の言い争いに、ジャンヌは止めようにもオロオロしてばかりで
全然止められる気配はない。
「小さな島国生まれが!!」
「大国だからって調子乗ってると足元すくわれんぞ?」
ついにはお互いの出身国の言い争いである。アリスは狐耳を、鈴音は銀髪を掴み。
お互いに引っ張り合いまでし始めた。だが、その時であった。二人は後頭部を
掴まれた感覚を受けたかと思うと不意に身体が浮いた。
「二人とも…いい加減にしなさぁぁぁい!!」
「ぎゃふっ!?」
「ぶへっ!?」
ついにキレたジャンヌが二人の顔面を激突させて強制的に喧嘩を終わらせた。
「もう!仲良く出来ない二人なんてあたし嫌いだよ!!」
目に涙を浮かべたまま、ジャンヌはその場から走り去ってしまった。
しばし呆然としていたアリスと鈴音であったが、すぐさまお互い、睨み合うと
「ほら!あなたが野蛮だからジャンヌが怒ってしまったんでしょう!」
「お前がいつまでも自分中心で考えてるからだ!」
ジャンヌの気持ちも知らずに、再び喧嘩再開である。
さて、怒って帰ったジャンヌは行く宛もなく、ただフラフラとサンフランシスコの街を歩いていた。
「アリスちゃんも鈴音ちゃんも…馬鹿なんだからぁ。どうして仲良く出来ないのかな…」
愚痴りながら、しばらく先へ進んでいると、ふと、目の前に黄色い看板の
こじんまりとした牛丼屋がジャンヌの前に現れた。
「あれぇ?こんなところに牛丼屋なんてあったかなぁ?でも…」
ちょうどよい具合に、ジャンヌのお腹の虫が鳴く。目の前に好物があるなら、行かざる得ないと
ジャンヌはささっと、店へと入っていった。
店の中にはお客さんはジャンヌ以外には居らず、カウンターの向こう側に短い緑髪の
女性店員がいるだけである。
「いらっしゃいませ!さあさどうぞ、お好きなお席に」
「あっ、どうも……えーと、牛丼のテラ盛りをひとつください」
「はぁい、テラ盛り一丁!」
しばらくして、こぼれんばかりに牛肉が盛られたテラ盛り牛丼が運ばれてきた。
タレの匂いが食欲を誘い、肉の香りを引き立たせる。ホカホカとしたご飯の湯気も
牛肉の隙間から漂ってくる。
「とてもおいしそう!いただきます!」
ジャンヌが牛丼を食べようと箸に手を掛けると、突然、座っていた椅子がガシャンガシャンと
変形を始め、アリスの足と胴体に金属製ベルトが自動で巻かれ、身動きを取れなくさせる。
「うわわ!?な、何!?」
「ふふん!まんまとハマったなジャンヌちゃん!」
店にただ一人いた店員が制服を脱ぎ捨てると、そこにいたのは
「IKO!?……のなんでしたっけ?」
「イチリユだ!台詞が少ないからって一応、敵だぞ!ちゃんと覚えとけ!」
「…文句は上の人に言ってください…。じゃあ改めまして…IKOのイチリユちゃん!?」
「ちゃん付けかよ!まあいいや。ははは!牛丼大好きなお前のことだから、牛丼屋を経営していれば
いつか、こうして罠に自ら掛かりに来ると思っていたぜ!」
大笑いして勝ち誇るイチリユ。
「後はお前を人質にしてアリスと鈴音を倒すだけ!ふふん、あたしってば完璧な作戦ね!」
「くぅ〜なんてひどいことを考えるの!」
「そりゃああたしらが悪役だからに決まってるだろ。それよりも、その牛丼冷めないうちに食えよ」
そう、ジャンヌの両手だけは何故か拘束されていなかった。ジャンヌも牛丼を
食べるよう促されると、箸を再び手に取り、食べ始める。
「あ、そうだね……うん、おいしいね、これ」
「そうか。喜んでもらえてあたしも嬉しい」
───それから1時間後。アリスの屋敷ではいまだにアリスと鈴音は喧嘩をしていた。
「この化け狐ぇ〜…ロリババア!!」
「うちはまだ17歳だ!!…ふん、長い目で見たらうちは老けないけど、お前はこれから
ガンガン老けるんだぜ!金持ってるからっていい気になるなよ!」
「なんですってぇ!?…でも、でしたらあなたなんてジャンヌと一緒にいても
いつかは孤独死を迎えますわよ!」
お互いのことを取り上げていき、いつまで経っても終わる気配を見せない…。
と、突然、ズシンズシンと地響きが響き渡り、大きな影が二人を包み込み始めた。
「な、なんだ?」
「…な、なんですの!?突然、エレファントが!!」
そう、何の脈略もなく、二人の目の前に象さんが現れたのだ。
「うちはキリンさんの方がもっと好きなんだけどな」
「ん?なんですの?」
象さんは長いお鼻に巻きつけた一通の手紙をアリスに渡す。彼女が受け取ると、すぐに
後ろに振り返り、何処かへと帰っていった。
「なんでしたの、いったい……」
「それよりも、手紙なんて書いてあるんだよ?」
鈴音が聞くと、アリスは手紙を広げ、読み始める。手紙には……
───傲慢お嬢のアリス・ブロウニングと野球拳化け狐の彩狐鈴音へ。
食いしん坊万歳のジャンヌ・シャルパンティエはIKOが預かりました。ざまーみろー!
返してほしければ3ゲットロボ工場跡地に来てね!お土産も持ってきてくれれば
喜びます。じゃあの
PS.ヤホオクでプレミアな値段だったものが近所の古本屋で500円で売ってた時の嬉しさは異常
手紙を読みきると、アリスは怒りに身を焦がし、身体を震わせる。
鈴音はあまりにもどうでもいい自分たちの内情を書かれてることに脱力していた。
「ゆ、許せませんわ!わたくしのジャンヌを人質にするなんて!!」
「許せないのはうちも同じだが……なんなんだあのオトボケ集団は。あと拳は余計だ」
「こうしてはいられませんわ!すぐに行きますわよ」
「いいですとも!でも、ジャンヌを先に救い出すのはうちだ!」
「あっ、抜け駆けは許しませんわよ!!」
結局、協力し合う場面でも、反目しあう二人であった…。
そんなわけでジャンヌが捕らえられているという3ゲットロボ工場跡地へ来たのだ。
ここはどんなスレのレス番3でも必ず取れるといわれた3ゲットロボがいくつも作られていた。
しかし、実際はポンコツだらけで、今ではこの工場も潰れてしまい、企業も縮小中である。
「ここがあのIKOのハウスね!ジャンヌ、待っていなさい!」
「よぉし、開けノック!!」
鈴音はバットとボールを取り出すと、ボールをまっすぐに打ち、工場の扉に直撃させる。
ボールがぶつかった箇所から電磁波が扉全体に走り、ガシャーンガシャーンと音を立てて開かれた。
すると工場の薄暗い場所というイメージに反して、煌びやかな光が二人の目の前に飛び込んでくる。
そしてファンファーレが鳴り響き、いくつものクラッカーが自動で割れる。
「なんだよ、こりゃあ…?」
鈴音が呆れ返っていると、工場内のド真ん中に足と胴体はしっかり固定されているも、
手だけは自由で牛丼を食べているジャンヌの姿が!
「あ、アリスちゃん!鈴音ちゃん!」
「ジャンヌ!なんで牛丼食べてるんですの!?」
「だってIKOの人がくれるって言うから……食べ物を粗末にしたら悪いじゃない」
「まったく、敵に捕まっているっていうのに呑気だなぁ…」
敵地だというのに脱力した二人。すると、奥からコツコツと、足音が聞こえてくる。
部屋の奥からIKOのイチリユとヒユロカがその姿を現したのだ!
「やっと来たな、アリスに鈴音!」
「お前はヒユロカ……で、え〜と…」
「…ん〜誰でしたかしら?」
まじまじとイチリユを見つめるアリスと鈴音の言葉にズコーとずっこける。
「イチリユだ!前回、昼寝してただけでここまで忘れられるとは思わなかったよ!」
緑髪を逆立たせる勢いで真っ赤になりながら怒りを露にするイチリユ。
「だって、IKOってなんだか適当な感じで印象に残りづらくて…」
「ええい、言うな!それよりも!これを見な!」
ガシャーンガシャーンとロボットな起動音を立てながら、イチリユが出てきた通路から
大量のロボット軍団が現れた。腹部に『肉』と書かれていることぐらいしか原型がない。
「まったく、こんなもののために大事な予算を使っちゃうなんて…経理の私の苦労も考えてほしいわ」
愚痴りため息を吐くヒユロカだが、イチリユの方は聞こえないフリをしている。
「ジャンヌを助け出したければ、このロボ軍団を全滅させてみろ、OK?」
「OK!ズドンと倒してやるぜ!漢女なら…やってみせるぜ巫女天昇!!」
素早く、戦闘スタイルの巫女装束姿へと変身、同時に感情に関係なく狐耳と尻尾が生える。
そして鈴音は真っ先に敵の1体を棒で突き撃破する!
「むっ、抜け駆けは許さないといったはずですわ!変……身ッ!!!」
アリスも拳を握り、ギリリリという溜めを行い、ポーズを取るとワンピース型の
戦闘コスチューム姿に変身する。鈴音に負けじとばかりにディメンジョンメーザーで
ぶった斬っていく。
ふと、鈴音の背後にロボが素早く回りこみ、そのアームを振り上げる。
「しまった!後ろを取られた!?」
そしてその腕が鈴音に向かって振り下ろされる……かと思いきや、ロボはビビビと
スパークを起こしながらその場に倒れた。
「アリス、お前……」
「勘違いなさらないで。近くにいたから倒しただけですわ」
「ちっ、こっちだって助けてなんて言ってねーよ」
相変わらず素直に、お互いを認めることが出来ない二人。
しかし、アリスが倒したと思ったロボは再度立ち上がり、標的を彼女にして捉える。
「狐火ボール!!」
お札をボールに変えると、それを投げ飛ばしアリスを襲おうとした奴もまとめて
次々にロボ軍団を撃破していく鈴音。
「おいおい、お嬢様?止めはしっかり刺しておけよ。あんた死ぬとこだったぜ」
「この程度ならどうということはないですわ!そっちこそ尻尾が燃えないように
気をつけることですわね!」
「人が心配してやってんのに、そういうこと言うか!」
「なんですの?」
「やる気か?」
戦闘中にも関わらず、言い争いを始めるアリスと鈴音。
「も、もう……どうして仲良くしないかなぁ〜」
その様子を見てジャンヌは深くため息を吐く。そんなジャンヌのことも気に留めず
二人の言い争いは止まらない。それに割って入ってのは以外にもイチリユとヒユロカだ。
「お、おい!仲間同士喧嘩はやめろよ!」
「そ、そうです。私やイチリユみたいに、ハグして仲良くして戦ってください!
喧嘩のシーンばかり見せ付けられても子供は寄ってきませんよ!」
そう言うと、顔をアリスたちの方に向けながら、抱き合ってみせるイチリユとヒユロカ。
「だからなんだっていうんだよ…」
「わたくしたちはそう簡単に仲良くできるタイプじゃないんですの!!」
だが、それを見せ付けられても、特に心境の変化は起きない二人は、それぞれの
武器に力を注入する。
「ディメンジョンザンバー!!」
「狐火ホームラン!!」
アリスはレーザー剣を最大出力にし、鈴音は棒に炎を纏わせてバットの要領で勢いよく振るう!
それぞれの一撃はイチリユとヒユロカ、残っていたロボット軍団とまとめて場外へ吹き飛ばした!
「な、なんでこうなるんですかぁ〜〜〜〜!!!」
「お、覚えてろよ〜〜〜〜!!月並みな台詞だなぁ〜……!」
空高く吹き飛ばされ、そのままイチリユとヒユロカは星になった。
仲悪い割には結構なコンビネーションである。
敵をあっさり片付けたアリスと鈴音は牛丼17杯目のジャンヌを拘束していた器具を
取り外して彼女を助け出した。あんなに食べてたのに腹はまるで出ていない。
「ありがとうアリスちゃん、鈴音ちゃん」
「ふふ、すべてわたくしのおかげですわよ、ジャンヌ」
「けっ、うちがいなかったら、今頃お前はジャンヌの牛丼の何杯目かになってたぜ」
「口の減らない化け狐が!!」
「それはこっちの台詞だ!!」
なおも睨み合う二人。火花が凄まじい勢いでバチバチと鳴っている。
「ねえ…なんで仲良く出来ないの?」
「だって……」
「それは……」
「「ジャンヌを取られたくないから!!」」
同時にそう叫ぶと、再び火花バチバチが始まった。その様子を見て、ジャンヌは
無言で二人の頭を掴んで、再びデコをぶつけ合わせた。
「ぎゃふ!?」
「うえっ!?」
短い悲鳴を上げると、二人はジャンヌの顔を見る。
「あたし、二人が仲良く出来ないなら一緒にいたくない!こんなんじゃ楽しくないもん!」
普段は大人しく自己主張も少ないジャンヌが、大声ではっきりと言う様に
アリスと鈴音はキョトンとなっている。
「だから……喧嘩ばっかしてないで少しはお互い、仲良くしようよ、ね?」
二人は黙り込み、しばらくすると鈴音はチラッとアリスの方を向く。
「ちっ…確かにジャンヌの言うとおりかもな。少しはうちの扱いもよくせぇよ」
そっと片手を差し出す鈴音。それを見て、アリスも渋々と言う感じに手を出す。
「ふん、ジャンヌに嫌われたくないですから、あなたとも特別に仲良くしてあげますわ」
軽く握手する二人を見て、ジャンヌは苦笑いを浮かべた。
「もう…素直じゃないんだから。うふふ」
そして二人の握った手を強く上から自身の手を被せるジャンヌであった。
───その頃。スクラップになった元3ゲットロボ軍団に囲まれた状況でいる
イチリユとヒユロカ。吹き飛ばされてどこかの森の中にいるようであった。
「まったく悪役のあたしらが友情の大切さを教えてやろうと身体張ったらごらんの有様だよ」
「二人ともツンデレなんですかね…ん?」
ふと、ヒユロカが見た先にあったロボの目が光っている。
「あれだけまだ動力が生きているのかしら…?きゃっ!」
ヒユロカがロボの様子を見ようとすると、突然ロボはボロボロのまま起動し始める。
そしてその口から、いや口は動かないけど、誰かの声が聞こえてくる。
「あーあー。マイクのテスト中。イチリユ、ヒユロカ?聞こえまして?」
「オハミル様!?」
「出番が今回少なかったから出てきたんですか?」
イチリユが余計な一言をいうが、そのことは気にも留めず。
「ええ、少しでも出ておこうと思いましてね。それよりも、お二人とも、どうやら
作戦は失敗したみたいですわね?」
「も、申し訳ございませんオハミル様。奴ら、思いのほか手強くて…」
「言い訳はよろしいですわ!イチリユも、無駄使いして…」
「ご、ごめんなさい。でもお金を使わないとIKOの文化潰しや支配なんて出来ませんよ」
「あーあー聞こえませんわー!」
ヒユロカやイチリユが弁明するも、まるで聞く耳持たないオハミル。
「あなた方は基本からやり直すべきですわ。だから……」
スクラップになったと思った他のロボたちも立ち上がり、二人のほうへ向く。
「まず足腰を鍛えなおしてもらいますわ!速く走って逃げないと爆発に巻き込まれますわよ」
そう言い残すと通信が途切れ、ロボ軍団は時限爆弾の音をはっきり聞こえるように放つ。
そして、二人に向かってものすごい加速で走り出した!
「ええーっ!?ま、マジですかオハミル様ぁ!?」
「こ、こんな仕掛けを作るぐらいなら手伝ってくれても…いやぁーっ!!」
ドタドタと、土煙を起こしながら二人も猛スピードで逃げていく。
最初のうちは結構、突き放していたが……所詮、生き物。疲れが見え始めた途端、
どんどんスピードダウンしてしまう。
「も、もうダメだぁ…」
「ロ、ロボたちがこっちに…!ひぃぃ!!」
イチリユとヒユロカの悲鳴が木霊すると同時に、大爆発が生じ、二人のいた森から
きのこ雲が巻き起こる。別にドクロの形で涙を流してたりはしないが、とにかく二人は
あっという間に黒焦げになってしまった。
「う、うう……この職場、辞めたい…」
「あ、あははは………だ、ダメだこりゃ……」
二人がつぶやくと、ポテっという感じにその場で気絶した。なんとも幸の薄い…。
解説コーナー
「はぁい、解説お姉さんです!今回は、時空想士アリスの世界観についてのお話です。
第一話の最後にキッカーケ星人の作った爆弾が大爆発を起こしたんだけど、この爆発が
厄介なもので、地球上を包み込むどころか、時空を捻じ曲げて、いくつもの違う世界が
混ざり合ってしまったの。アメリカはアリスちゃんたちが元々いた世界が最も色濃いけど
他の国々や地方はまた違った世界が色濃いらしいわ。その辺りはまた次回以降に説明するわね。
それにしても、そんな世界を作ってしまった原因の一人なのにアリスちゃんは本当に呑気なこと!
それじゃ、次回もまた見てね!」
次回予告
「天下無敵のお嬢様!それがわたくしアリス・ブロウニングですわ。世界が混ざっても
わたくしのやることなんてジャンヌと戯れたいということだけ。でも、最近は怪物騒ぎも
あって全然穏やかじゃありませんわね。そんな時、ここサンフランシスコに一人の女が
現れたのですけど…なんですの?主役を取る気で活躍しないでほしいですわ!
次回は『まなみ見参!炎の女侍再び』元主役がでしゃばらないで頂きたいですわ!」
293 :
時空想士アリス ◆4EgbEhHCBs :2010/07/25(日) 20:11:41 ID:XODtitmS
というわけで投下完了でしたよっと。
アメリカに日本風な牛丼屋があるのかどうかは知りません。
次回からはウルトラ兄弟です
投下乙です。
まさに、オールスター勢ぞろいな予感ですw
295 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/26(月) 16:49:24 ID:pUgMHUkg
食わせてる牛丼は普通の牛丼なのか…w罠とかでもなんでもない
しかし、いつもよりキャラ立ちしてる感じだな
>>283 投下お疲れ様
ときどき戦乙女メルナが現れています(笑)
そのうち本編に出てくるのかな
パロネタに本気出してるなw
298 :
創る名無しに見る名無し:
ここももっと盛り上がってほしいよ