RPGキャラバトルロワイアル6

このエントリーをはてなブックマークに追加
1創る名無しに見る名無し
このスレはRPGゲーム(SRPGゲーム)の登場キャラクターでバトルロワイヤルをやろうという企画スレです。
作品の投下と感想、雑談はこちらのスレで行ってください。


RPGロワしたらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11746/
RPGロワまとめWiki
ttp://www32.atwiki.jp/rpgrowa/pages/11.html
前スレ
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1246382270/

テンプレは>>2以降に
2創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 02:39:24 ID:xBsVicpd
参加者リスト

4/7【LIVE A LIVE】 
○高原日勝/○アキラ(田所晃)/○無法松/●サンダウン/●レイ・クウゴ/○ストレイボウ/●オディ・オブライト
5/7【ファイナルファンタジーVI】 
●ティナ・ブランフォード/●エドガー・ロニ・フィガロ/○マッシュ・レネ・フィガロ/○シャドウ/○セッツァー・ギャッビアーニ/○ゴゴ/○ケフカ・パラッツォ
5/7【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】 
○主人公(勇者)/●アリーナ/○ミネア/●トルネコ/○ピサロ/○ロザリー/○シンシア
5/7【WILD ARMS 2nd IGNITION】 
○アシュレー・ウィンチェスター/●リルカ・エレニアック/○ブラッド・エヴァンス/●カノン/○マリアベル・アーミティッジ/○アナスタシア・ルン・ヴァレリア/○トカ
3/6【幻想水滸伝II】 
●2主人公/○ジョウイ・アトレイド/●ビクトール/○ビッキー/●ナナミ/○ルカ・ブライト
4/5【ファイアーエムブレム 烈火の剣】 
○リン(リンディス)/○ヘクトル/●フロリーナ/○ジャファル/○ニノ
2/5【アークザラッドU】 
●エルク/●リーザ/●シュウ/○トッシュ/○ちょこ
3/5【クロノ・トリガー】 
○クロノ/●ルッカ/○カエル/●エイラ/○魔王
1/5【サモンナイト3】
●アティ(女主人公)/●アリーゼ/●アズリア・レヴィノス/●ビジュ/○イスラ・レヴィノス

【残り32名】
3創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 02:40:22 ID:xBsVicpd
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAPのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に2エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0087.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24
4創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 02:41:01 ID:xBsVicpd
【予約に関してのルール】
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います。
・予約は必須です。予約せずに投下できるとしても、必ず予約スレで予約をしてから投下してください。
・予約期間は五日です。
 さらに、三話以上投下した書き手の方は、三日間の延長を申請することができます。
 ただし、延長するときは必ずトリップをつけて、予約スレか本スレか避難所スレに延長すると一言書き込んでください。 ・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)。
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【議論の時の心得】
・議論はしたらばの議論スレでして下さい。
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。

【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全て議論スレで行う。本スレでは絶対に議論しないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は、修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「議論スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「議論スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論自体が行われなかった場合において自主的に修正するかどうかは、書き手の判断に委ねられます。
 ただし、このような修正を行う際には議論スレに一報することを強く推奨します。
5創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 02:41:57 ID:xBsVicpd
【書き手の注意点】
・トリップ必須。 騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので必ず付けてください。
・無理して体を壊さない。
・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
・完結に向けて決してあきらめない

書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。

書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。

書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
 携帯からPCに変えるだけでも違います。
6創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 02:42:40 ID:xBsVicpd
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
7創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 02:44:02 ID:xBsVicpd
【身体能力】
・原則としてキャラの身体能力に制限はかからない。
 →例外としてティナのトランス、アシュレーのアクセス、デスピサロはある程度弱体化
【技・魔法】
・MPの定義が作品によって違うため、MPという概念を廃止。
 →魔法などのMPを消費する行動を取ると疲れる(体力的・精神的に)
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる人物。(敵味方の区別なし)
・回復魔法は効力が大きく減少。
・以下の特殊能力は効果が弱くなり、消耗が大きくなる。
 →アキラの読心能力、ルーラやラナルータやテレポート(アキラ、ビッキー)などの移動系魔法、エルクのインビシブル
・蘇生魔法、即死魔法は禁止
【支給品】
・FEの魔導書や杖は「魔法が使えるものにしか使えず、魔力消費して本来ならばそのキャラが使えない魔法を使えるようになるアイテム」とする
・FEの武器は明確な使用制限なし。他作品の剣も折れるときは折れる。
・シルバード(タイムマシン)、ブルコギドン、マリアベルのゴーレム(巨大ロボ)などは支給禁止。
・また、ヒューイ(ペガサス)、プーカのような自立行動可能なものは支給禁止
・スローナイフ、ボムなどのグッズは有限(残り弾数を表記必須)
【専用武器について】
・アシュレー、ブラッドのARMは誰にでも使える(本来の使い手との差は『経験』)
・碧の賢帝(シャルトス)と果てしなき蒼(ウィスタリアス)、アガートラームは適格者のみ使用可能(非適格者にとっては『ただの剣』?)
・天空装備、アルマーズ、グランドリオンなどは全員が使用可能
8代理:2010/01/09(土) 03:30:06 ID:xBsVicpd

(俺は北へ向かう。少女たちよ生き延びてくれ……)
 ストレイボウは逡巡の末、座礁船と歩みを進めることにした。
 自分自身が変わる事を選択したのだ。
 それは、少女たちを切り捨てる結果になるのかもしれない。
 ロザリーが、仲間だと言ってくれたことを思い出す。
 仲間なら信じることも大切だと彼女の言葉に甘えて、自分自身を騙し込んだ。

(これで、いいんだよな……)
 いつかの光景。
 憎しみに震えたオルステッドが、国中の人間を殺して回っている。
 戦いに行く彼の背中を押してくれた村人も、彼に好意を抱いていた女も、最後まで彼を信じた少年も……憎悪の刃に倒れていった。
 自分のせいで親友が狂い、大切な人々が死んでいくその光景を特等席で見物させられていたのだ。
 そう簡単に忘れられるものじゃない。
 変わろうと誓った今だって、目を瞑れば嫌でも思い出す。

 もし、次の放送であの少女たちの死が告げられたら……そのとき彼は耐えられるのだろうか。
 彼女たちを見捨てた自分を許せるのだろうか。

(もう、あのときのような悲劇は……)
 ストレイボウは未だ、死者に縛られ続けていた。
 いつかの悲劇を引きずっていた。
 彼が本当に変われるとしたら、その死者の繰り糸を断ち切ったときなのだろう。
 
 そしてそれは彼の目の前の少年も同じことだ。
 彼もまた、自身の掲げた『理想』の為に散った人々に縛られているのだから。
9代理:2010/01/09(土) 03:30:58 ID:xBsVicpd


【G-8 森林 一日目 日中】
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:ブライオン、勇者バッジ、記憶石@アークザラッドU、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:カエルの説得。
2:戦力を増強しつつ、ジョウイと共に北の座礁船へ。
3:ニノたちが心配。
4:勇者バッジとブライオンが“重い”。
5:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない。
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)
※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます
※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません


【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝U】
[状態]:輝く盾の紋章が宿ったことで傷と疲労は完治
[装備]:キラーピアス@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
[道具]:回転のこぎり@ファイナルファンタジーVI、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:生き延びる。
2:ストレイボウと共に座礁船に行く。
3:利用できそうな仲間を集める。
4:仲間になってもらえずとも、あるいは、利用できそうにない相手からでも、情報は得たい。
5:僕の本当の願いは……。
[備考]:
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているときです。
※ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています
※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。
 それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。
 紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾
10代理:2010/01/09(土) 03:39:35 ID:xBsVicpd
161 名前: ◆Rd1trDrhhU 投稿日: 2010/01/08(金) 04:28:35 ID:CJy6ZtDA0
規制されてたので、仮投下スレに投下しました。
どなたか代理投下をお願いします。

久しぶりの投下なので、違和感などあったら言ってください。

----------------ここまで代理--------------------------------------

投下乙です
相変わらず心理描写がえげつないw 細かい心の動きまで描き出してて凄いな
ジョウイはマーダー継続か。色々と変化はあったみたいだけど、どうなるんだろう……
ストレイボウはあいかわらずヘタレ(?)対主催だけど、何やら怪しい雰囲気
自分は違和感は感じませんでしたよー
11創る名無しに見る名無し:2010/01/10(日) 09:34:50 ID:/x+4WWSR
投下乙!

冷房の空回りっぷりが失笑を誘うw
しかし面白いほどボロボロになってますなぁ。彼は今後、男を上げることが出来るのだろうか。
ジョウイも目的を再認識という感じで、一応迷いは封じられたのか? これからはより堅実に活動していきそうだ。
そういえばこの二人って、今更ながら似た者同士だよな。どっちも親友と最悪のよろしくない別れ方してるし。
12創る名無しに見る名無し:2010/01/15(金) 14:21:51 ID:3LZubnJw
『夜空』を読み返していてふと思った。
このロワ兄弟姉妹(義理なども含む)持ちな参加者多くね?w
リオウ、ナナミ、ルカ様、魔王、リルカ、フロリーナ、ヘクトル、ニノ、イスラ、アズリア、
アキラ、エドガー、マッシュ、ミネア……14人も!
13創る名無しに見る名無し:2010/01/15(金) 16:11:50 ID:IVh043k5
そんな大発見みたいに言われても…
兄弟がいるのなんて別に珍しいことでもないし…
それとジョウイも弟いたよ確か
14創る名無しに見る名無し:2010/01/15(金) 17:56:22 ID:zOYOpaTR
義理も有りならトッシュにも弟がいるな。
ヤーさんだし。
15創る名無しに見る名無し:2010/01/15(金) 23:56:20 ID:s+btHqC0
兄弟が参加してるならともかく、兄弟持ちなんて普通だからなぁ…
同じゲーム系のSRPGロワの方が兄弟関係が重要な部分が多い。
16創る名無しに見る名無し:2010/01/16(土) 18:18:48 ID:wDO70Xl1
ちゃんと人いるんだなー
久しぶりの雑談に安心した
けど確かに兄弟持ちは普通でも出場者割合的には多い方……なのか?
それがネタで話が作られることを祈ろう
17迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:19:15 ID:FLNmtPcn
お待たせしました、投下します
18創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:21:57 ID:iJxhiv1j
支援
19迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:22:00 ID:FLNmtPcn
   【見知らぬ、天井】

数刻ぶりに光を取り戻した目が最初に捉えたのは見知らぬ天井だった。
豪奢なシャンデリアが吊るされているのでもなければ、遥か天にまで伸びゆくわけでもない平坦な天井だ。
天井だけではない。
横たわっているベッドも、備えられた調度品も、炎を灯された暖炉も。
全てが全て決して豪奢ではなく、されど万人に安らぎを感じさせられるよう手間隙かけて選び抜かれたものだった。
その宿主の心遣いは確かに多くの人の身体だけではなく心も癒してきたであろう。
だがそれも壊れた心相手には分が悪かった。

「なんなんですか、この部屋は? これじゃあつまんないでしょ」

混沌をこそ好む道化師を腹立たせることはできても満たすには程遠い。
しかも本人は知らないことだが、ここは彼とも因縁深きサンダウン一行が一時滞在していた宿屋である。
我知らずの内にそのことを感じ取っているのか、不機嫌そうに鼻を鳴らし、手を伸ばす。
素っ気ない部屋を自分好みのごちゃごちゃした瓦礫の山に変えようとしての行動だ。
壁を殴るなんて野蛮なことをするのでもなければ、武器で壊すという面倒な方法でもない。
行使しようとするのは魔法。
ケフカが誇る森羅万象を従える力だ。
周囲を散らかすには過ぎたる冒風の力を炸裂させようと魔力を集わせようとする。
その為の集中がふと途切れた。

「……あ?」

目に何か見慣れないものが入った。
白い白い、棒みたいな何かだった。

「…………」

なんのことは無い。
それはケフカ自身の腕だった。
お世辞にも丁寧にとはいえないが一生懸命に巻かれたのだろう白い包帯に包まれた腕だった。

「私はどうしてこんなものを巻いているのです?」

巻いた覚えの無い包帯に首を傾げる。
そもそもケフカは彼の覚えている範囲で包帯どころか医療器具の世話になったことがない。
そんなことをしなくても魔法の力でちょちょいのちょいと治せたからだ。
今回も自分の手で傷を治そうと破壊に向けかけていた魔力を練り直す。
いささか乱暴な術式の変更だが、それよりもどうしてかすぐさまこの包帯を引き剥がしたくて堪らない。

「ケアルガ! ケアルガ! ちくっしょう、ちくしょお、何故こうも回復が遅いんだよ!」

速る心で高位回復魔法を紡ぐも一向に痛みが引く気配がしない。
まさに焼け石に水だった。
治癒力の落ちた回復魔法では、ぎりぎり現世に留まれているだけの命を救いきるには至らない。
苛立が加速する中、様々な疑問までも心中を過ぎり出す。
そもそもどうしてこんな見ず知らずのところで寝ていたのか。
回復魔法の威力が激減しているのは何故か。
包帯は誰が巻いたのか。
そうだ、何か非常に屈辱的な目にあったはずなのだ。
今感じている苛立を遥かに上回るだけの何かが。
20創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:22:39 ID:6WwGc+qg
21創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:23:04 ID:KFQ9ohDK
22創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:23:30 ID:iJxhiv1j
       
23迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:23:37 ID:FLNmtPcn

死の淵から生還したてで一時的な混乱に陥っているケフカは少しずつ記憶の糸を辿っていく。

殺し合いに参加させられ、女を速攻で殺し――

少しずつ、少しずつ、思い出して行く。

お人好しを上手く騙し、支給品におおはしゃぎして、そういえばこの包帯も支給品の中にあったような――

その記憶遡行の旅が

「あ、もう起きてたんですね」

その声に、その姿に

「ちょっと待ってって、今すぐ――」

一瞬で終りを告げた。



   【闇の中の白い花】

「お前、は……」

思考の海に潜っていたケフカを現実へと引き戻したのは女だった。
白を基調に青で彩られた法衣に身を包む一人の少女だった。
長い黒髪に包まれたおっとりとしたようなどこか抜けた表情を浮かべている。
開け放された扉の先で背を向けたままこちらに顔だけ振り向いて笑顔を浮かべるその小娘をケフカが忘れるはずも無かった。
記憶が一気に弾け、ケフカは全てを思い出す。
この女だ。
この女のせいで順調だった彼の道程は狂い散々な目にあって遂には死にかねない傷を負った。
けれども同時にケフカを救ったのもまたこの女なのだ。

それが、どうした。
感謝しろとでもいうのかよ!?
はっはっは、アリエナ〜〜イ!
誰も助けてくれなんて頼んでないじゃあないですか。
ぼくちんを助けたのはこいつの自己満足。
出汁に使われ恥をかかされた俺様可哀想。

――だから、死ね

小娘が背を向けているのをいいことに屈辱をはらさんと力を引き出す。
相手が魔力に強いことは先刻少女をいびっていた時に気付いている。
一眠りしたとはいえケフカの魔力自体も大半は使い切ったままだ。
故に狙うは魔法に頼らない物理攻撃。
姿こそ貧弱な道化師だがケフカは肉弾戦が苦手なわけではない。
シュウが見抜いたように彼は人の身を捨てた魔人なのだから。
人の常識は一切通用しない。
ざわり。
ケフカの背中が蠢き、人外たる証が顕現しようとする。
女が何か作業をしてからこちらにUターンしてくるが、遅い。
ケフカから生じた異形による串刺しの刑は逃れようが無い。
そうならなかったのはケフカがすんでのところで攻撃を中止したからだ。
意図してのことではない。
24創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:24:02 ID:6WwGc+qg
25創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:24:23 ID:XcbNlIcF
26創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:24:43 ID:X/MBefPV
27創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:24:55 ID:KFQ9ohDK
28迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:25:01 ID:FLNmtPcn
「きゃあああっ!?」

ケフカが伸ばしつつあったそれが届くより先に女が転んだため、出鼻をくじかれてしまったせいだ。
呆然とするケフカ。
それはもう見事な転びようだった。
ズッコーン! という擬音語が実に似合う様だった。
何も無いところでどうやればこのようなコケっぷりを披露できるというのか。
ある種ケフカよりもこの少女はよっぽど道化じみていた。
そしてピエロがなすコミカルな失敗は時に人から毒気を抜く。

「ヒッヒッヒッ、バカですね〜」

ベッドの上で半身を起こしたケフカが少女を馬鹿にする。
ううう、と少女は痛そうに蹲る。
無理も無い、思いっきり顔面から床にダイブしてしまったのだ。
良い気味だ。
いささか不恰好だが額を地につけ両手を前に差し出し平伏している様はケフカに対して土下座しているようにも見えなくはない。
ケフカの中で僅かに溜飲が下がった。

「ん? なんなんですか、それは?」

機嫌をよくしたからであろう、ケフカは一旦背の異変を納め興味を別のものへと移す。
高低差がありよく見えないが、少女の前に突き出された両手は何かドンブリ状のもので塞がれていた。
というよりもドンブリそのものだった。

「良かった―、こぼしちゃわないで」
「は?」

うんしょっと。
気合を入れて少女が立ち上がる。
その手には白い湯気を立てる白い料理の入った白い茶碗。
受身を取り我が身を守ることよりも優先して零さないよう天へと掲げたその料理の名はお粥。
消化が良く、体も温まるので弱った人間にも優しい一品である。
なら、その弱った人間とは?
ケフカをおいて他にいない。

屈辱だった。
命乞いや治療に加え、自身が散々一方的にいたぶった相手に弱者扱いされるのはたまらなく不愉快だった。
この女はどこまでケフカに恥の上塗りをさせる気なのかと。

「はい、どうぞ」

差し出された食器を素直に受け取れるわけが無かった。
軽く腕を振り少女の手を払う。

「あ……」

それだけで少女が自分を省みず届けようとした料理は地に落ちた。

「あ〜あ、落としちゃった、落としちゃった〜」

ざまあみろ。
お前はただの転び損だったんだよ。
せいぜい落ち込んだ顔でも見せてぼくちんを楽しませろ。
再び暗い愉悦に身を委ねかけるケフカ。
だというのに。
29創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:25:21 ID:6WwGc+qg
30創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:25:40 ID:X/MBefPV
31創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:26:01 ID:KFQ9ohDK
32迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:26:06 ID:FLNmtPcn

「あ、熱かった? 待ってて、すぐに替え持ってくるから」

少女はなんてこと無いように無理して笑ってすぐさま言葉通り替えのお粥を持って来たのだ。
これにはケフカも面食らった。
なんなんだ、こいつは。
少女と出会ってから何度も心のなかで口にしていたその言葉。
徐々に意味を変えつつあったその問いはどうやら口から漏れ出ていたらしい。

「ごめんなさい、そういえば忘れてたね。わたしは、ビッキー。よろしくね?」

そんな答えとしては間違ってはいないが、ケフカを納得させるには程遠い返事をする。
顔には変わらず笑が浮かんだままだった。
やっぱりワケがわかんない。
ケフカはイライラしたものを抱えながら再びその手を払った。
何度も何度も手を払った。
その度に女は甲斐甲斐しく代わりを運んでくるのだからそうするしか無かった。
早く諦めろ、とっとと諦めろ。
貴様何やっているのです? いい加減にするんだじょー!
拳をぶつけ、罵詈雑言を投げかけ、碗をわる。
不毛なループが両の手で数え切れなくなり、せっかく血を洗い落とした少女の服が埃にまみれ出した頃、ようやく片方が折れた。

折れたのはケフカであった。

仕方のない話だった。
包帯でいくら傷を塞ぎ滅菌しようとも、失われた活力はそのままだ。
回復魔法をどれだけ重ねがけしようとも流してしまった血が戻ってくるわけではない。
どころか病み上がりの魔法の行使はケフカの内から更にエネルギーを奪ってしまっていた。
つまるところ早急なエネルギー補給は必須であり、お腹も十二分に空いていたのである。

「いっぱい食べて、ぐっすり寝て、元気になってね」

粥は、お世辞にも上手に調理されたものではなかった。
弱火で煮なければならないのに強火でやってしまっていたようだし、かき混ぜすぎたのか味も薄い。
それでも悲しいかな、身体は正直でケフカは何度も何度もがっついた。
その姿を女に見せるのが癪に触り、ほれ、食わせろと命令してみればあーんさせられかけた。
自分で言っておきながら気味が悪くなり、ケフカはまた暴力を振るって何を逃れた。
ああ、むしゃくしゃする。
気を紛らわせようと毒でも盛ってるんじゃねえだろなぁ?
厭味ったらしく聞いてみればそんなことはしませんよとやんわりと返された。
ケフカならそうする。それ以前に自分の命を脅かしたものを助けようなんて思いもしまい。
本当にこの女は訳がわからない。
無駄なのに。いくら偽善で取り繕うが、いずれは悪意に綻ぶ。
この世の全ては壊れゆく宿命にあるのだから。

「貴方が何をしようと何もいいことはありませんよ? 破滅の足音が止むことなんて永遠にアリエナーーイ!」

ひとまず空腹が収まると共に、ケフカは床に零された分を掃除しだしたビッキーに吐き捨てた。
少女の心を抉ろうとしての言葉でもあると同時に、それは彼にとって何よりの真理だった。

「そんなの、嫌になるくらい知ってるよ」

予想していた偽善者にありがちな畳み掛けるような口答えは来なかった。
ビッキーは普段のちゃらんぽらんさがなりを潜めたかのように悲しそうに笑っていた。


33創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:26:20 ID:XcbNlIcF
34創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:26:53 ID:X/MBefPV
35迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:27:04 ID:FLNmtPcn
   【孤独/小毒】

それはどこか疲れきった老人にも似た笑だった。
それはドジで鈍くとも明るい少女がするには相応しくない笑い方だった。
誰が理解できよう、その言葉に込められた重みを。
誰が知ろう、少女が十六年という人生に見合わない歴史を体験してきたことを。

ビッキーのテレポートは稀に本人の意思に反して時すらも超える。
ある時は過去に。ある時は遥か未来に。
瞬きの紋章の本来の用途も相まって少女は文字通り時空を旅してきたのだ。
いや、それを旅などという綺麗な言葉で現していいのだろうか?
一度跳んでしまえば、かっていた場所とは時も距離も離れた地。
無論知り合いがいるはずもなく、どころか既にこの世にすらいないということも多々あった。
無理も無い。
普通の人間は100年の時すらも生き抜くことはできない。
真の紋章の保持者のような例外もいるが……その中でさえ彼女が知らない間に死した少年もいれば、近い将来敵対する運命にある少年もいる。
ならばビッキーの有り様は旅をしているのではなく歴史の中をさ迷っているのだと言った方が正しいのではないか。
なのにそんな出会っては別れを繰り返してきた少女にただ一つ付き纏い続けるものがあった。
戦争だ。
ビッキー曰く、呼ばれたとのことだが、彼女が跳ぶ先跳ぶ先はいつも戦乱に溢れていた。
それは呼ばれたのでも何でもなく、あらゆる場所、あらゆる時代に争いがあっただけなのでは。

――イヤなこと全部忘れたいなら、誰も知らない、遠い遠いところに連れて行ってあげてもいいよ?

彼女にすれば一年にも満たない前、歴史的に見れば150年以上昔に口にした言葉。
或いはそれはビッキー自身の願望であり、彼女が戦乱が治まった後、何度も何度も『偶然』に魔法を暴発させていた所以なのかもしれない。
戦いが終わった国。平和になった世界。
誰も彼もが笑いあってるその中で。
ビッキーは、悲しんでいた。
また死んだ。
敵とか、味方とか。善とか、悪とか関係なしにいっぱいいっぱいまた死んだ。
昨日まで笑い合っていた人も、怒声を挙げて襲いかかってきた人も、みんなみんな物言わぬ躯となった。
中にはビッキーの魔法により命を落とした人間だっていた。
忘れられるはずが無かった。
人殺しの上に成り立つ世界に少女の居場所は無かった。

門の紋章戦争ではそのことが嫌で武器を置いた。
変わらなかった。人は死に続けるばかりだった。その時によくしてくれた人の従者が死んだことに後悔してまた武器を手にとった。
やっぱり変わらなかった。今度はナナミを助けられなかった。

果てには憎しみの魔王が開催する殺し合いへと放り込まれ、ナナミとの二度目の別離を迎えてしまった。

もう嫌だった。
これ以上誰かが死ぬのも、それを防ぐためにと誰かを殺すのもいやだった。
時と空間を駆けて溜まりに溜まったその想いに

――な、らば……つ、らぬ……け

その言葉が芯を与えてくれた。
流されるのでなく貫けと。
諦めるのでなくがむしゃらでも進み続けろと。

だから少女は嫌になるくらい知っているからって争いを肯定したりなんかしない。
嫌になるくらい知っているから嫌だって口にする。

「もうやめて。破壊なんてあなたもみんなも悲しいだけで無意味だよ」

その意思は毒だった。
殺し合いという大前提に投じられた一滴の毒だった。
36創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:27:51 ID:XcbNlIcF
37創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:28:14 ID:6WwGc+qg
 
38創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:28:30 ID:X/MBefPV
39創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:29:42 ID:XcbNlIcF
40創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:29:49 ID:6WwGc+qg
 
41創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:29:50 ID:X/MBefPV
42迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:30:10 ID:FLNmtPcn
「……無意味?」

その言葉は毒だった。
ケフカの根底を否定しかねない程の。
何故ならこのケフカという人格は魔導実験により心を『壊された』ことで生まれたのだから。
破壊なくして彼は存在しえなかった。
破壊なくしてこの世に生を受けえなかった。
壊れた心を破壊することで埋めようとしているのではない。
破壊こそがケフカ・パラッツォそのものなのだ。
それを否定することなど、ケフカに許せるはずが無い。

「ハハハ、意味のある破壊などつまらーん! 意味もなく壊すから楽しいんだよ。
 ……滅ぶとわかっていてなぜつくる。死ぬとわかっていて、なぜ生きようとする。
 死ねばすべて無になってしまうのに……。
 破壊こそ、破壊こそ、ぼくちんの生きる輝き! 
 ハカイ、ハカイ、ハカイ、ゼ〜ンブハカイだ〜!」

手を伸ばせば届く距離にいたビッキーの首を両の手で締め上げる。

道化師は白い花が嫌いだった。
どれだけ白く綺麗に咲き誇ろうとも、花はいつか枯れ醜い腐敗した色を晒す。
それが花の真の姿であり、ケフカの感性に沿うモノでもあった。
人間も同じだ。
口では綺麗事をいくらでも吐けるが、命の危機に瀕すればころりと主義主張を変え本性を出す。
死にたくないと守るべき者さえ犠牲にして生き残らんとするもの。
死から逃れんと過剰防衛にはしり、新たな死を生み出すもの。
死に怯え、恐怖に震え、我を失い取り乱し醜態を晒すもの。
死をもたらすものを憎悪し、暴言をわめき散らし、暗く顔を歪めるもの。
あのレオでさえケフカにだまし討ちの末命を奪われた時、無念さに混じって彼への憎悪が伺える死に顔だった。

この女も同じだ。きっときっと同じなんだ。同じであるべきだ!

それはもはや確信ではなく自己脅迫にも似た願望だった。
叶うことの無い祈りだった。
ビッキーは、笑っていた。
首を締められながら、笑っていた。

信じられなかった。
信じたくなかった。
知らない、ケフカに殺されかけた人間で彼に微笑みかけた人間など!
だったらこれは微笑んでいるのではない。
あざ笑っているんだ、そうに違いない!

「何が……オカシイっ!!」

ビッキーの命を握っているのはケフカだった。
追い詰められているのもまたケフカだった。

――信じてますから

何をだ。
ケフカは聞き返せなかった。
既に答えを彼は知っていたからだ。
43創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:30:47 ID:X/MBefPV
44創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:31:10 ID:XcbNlIcF
45迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:31:11 ID:FLNmtPcn

――その代わり、私で最後にしてね

少女に背負われている時に交わした約束とも言えない一方通行な願い。
それをこの少女は勝手に信じていた。
ケフカが自分で最後にしてくれると本気で信じていた。
花なんかで髪を飾っているから頭の中までお花畑になっちゃったんじゃないの?
ケフカは心の底から疑った。
馬鹿げている。くだらない。イカれている。

――それに……

最後の方は言葉にならずに虚空へと消えた。
笑を浮かべたままの少女の意識ともども霧散した。



   【はぐれし者の小唄】

宿を後にしたケフカは懐からサモナイト石を取り出す。
程なく召喚されるのは幽霊のようにも風船のようにもとれる召喚獣タケシー。
タケシーは召喚師がいつになく冴えない顔をしているのを見て、嫌な予感に囚われる。
以前の主にも度々八つ当たりの道具として敵もいないのに呼び出されて暴行を加えられたこともあった。
その最中で鍛え上げられた彼の嫌な事態への勘は不幸にも当たってしまった。
道化師は召喚が成功したことを確認すると手にしたままだったサモナイト石を握りつぶしたのだ。
たちまちタケシーが悲鳴を上げる。
混乱、悲壮、絶望。
種々様々な表情が見て取れる。
それもそうだろう。
サモナイト石とはいわば召喚術における契約書だ。
破壊されてしまえば召喚獣は召喚師に従わなくてもよくなる。
これが元の世界にいる時点でなら万々歳だが、呼び出された状態でなら大きなデメリットもある。
元の世界に戻すこと、という条件も解約されてしまうのだ。
つまり今回の場合、タケシーのこの個体ははぐれ召喚獣として一生を殺人遊戯の舞台で過ごして行かなければならなくなったのである。
このままではタケシーを待つ運命は、モンスターと勘違いされてアシュレーのような正義漢に討滅されるか、
殺し合いが終り人一人いなくなった島で一匹寂しく余生を迎えるかのどちらかだった。

あんまりではないか。
46創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:31:37 ID:6WwGc+qg
 
47迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:32:11 ID:FLNmtPcn
「ゲレッ、ゲレ……ッ、ゲレエェェ〜ン!!」

何故、どうして。
雷を落としながら涙するタケシー。

「あーあー、きっこええっまっせ〜ん。悔しかったら人間の言葉をしゃべってくだサーイ」

ケフカは一向に取り合おうとしないで死にかけていたとは思えない動きでヒラヒラと雷をかわす。

「とはいえまあこれから役に立ってもらうのですし、特別に教えて差し上げましょう!」

くるくると身体の上下を反転させ、足を天に、頭を地に着け道化師はにかっと笑う。
役に立ってもらうという言葉に契約は切れているはずだと怪訝な表情を浮かべるタケシー。
その意味をすぐに彼は理解することとなる。

「簡単なことですよ。……貴方がもう用済みだからです!」

瞬間、ケフカの背中が爆ぜ、タケシーはこれまでに無い危機感とその危機感すらも超越する疑問に襲われていた。
なんだ、なんなんだよ、こいつは!?
奇しくもそれはケフカがビッキーに抱いたのと同じ問い。
しかしタケシーが困惑を得たのはケフカの内面に対してでなく変貌したその姿にだった。

ビッキーの命を奪おうとしていたその凶器。

――翼が、生えていたのだ

いや、それだけではタケシーがここまで驚くことは無かっただろう。
これでも霊的な存在が住まう世界出身なのだ。
天使や悪魔のような羽を持つ人型の生き物は見慣れている。
否、見慣れているからこそ一層現実を受けいられなかった。
ケフカの背から雄大に広がりゆく翼は天使と悪魔、その双方のものを兼ね備えていたのだから。
信じられなくて何度見直しても変わらない。
計6枚のうち上中二対は純白に輝く天使の羽、下一対は蝙蝠のような漆黒の悪魔の翼だった。

なんなんだ……

天使でもあり悪魔でもある。
天使でもなければ悪魔でもない。
霊界幅広しといえどタケシーはそんな存在を見たことも聞いたことも無かった。

なんなんだ、何なんだよ、コイツは!?

爪のように伸び来る破壊の翼に視界が覆われた闇の世界で。
タケシーは死の間際まで叫び続けた。

こんなの、こんなの、オイラは知らな



「神様だよ」



【タケシー@サモンナイト3 死亡】



48迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:33:25 ID:FLNmtPcn
半日が過ぎた今、この島に参加者以外は居ない事に皆気付いていることだろう。
タケシーを使ってのかく乱はもはや効力を発揮しづらくなる。
そもそも現状の満タンに程遠い魔力ではタケシーの召喚用に回せる余裕は無い。
大魔導士のケフカをもってすれば低級な召喚獣を呼ぶ分の魔力でより多くのことをなせる。

そこで花園に向かう最中、サモナイト石を調べていた時に思いついたことを試してみることにしたのだ。

タケシーは霊界サプレスの住人である。
支給品の説明書曰く、かの世界の住人達は実体を持たないマナからなる精神体だという。
ならばいかな低級召喚獣でも対幻獣の要領で吸収すれば魔力を回復できるのではないか?
丸ごと魔力で編まれた存在だと言うのならエーテルスーパーとは言わずともエーテルターボ位の役に立つのでは。
にっくきティナ達にナルシェで魔力回復アイテムを盗まれたことを思い出してしまい、歯ぎしりしながらもやってみればほれこの通り。
マナの結晶体であるサモナイト石から還元した分もプラスすれば想定以上に魔力は取り戻せた。
そしてそれ以上にタケシーが死に際に浮かべた恐怖に染まった顔や、きいきいと荒げ続けられたその悲鳴はケフカの心に安寧を与えてくれた。

「なあ〜〜んだ。やっぱりあの女がおかしかっただけじゃないかぁ」

思い出すのも嫌だとばかりにケフカは首を振る。
おかしな女だったが収穫もあった。
聞き逃してしまった禁止エリアの情報は、ビッキーがチェックしていた地図から写すことができたのは大きい。
ケチの付いた包帯は置いてきたが、代わりに少女の荷物から新たな支給品も手に入れられた。
名簿はよく分からない水で濡れてぐちゃぐちゃだった為、誰が死んだのかは読めなかったが構わない。
どうせ皆殺しにするのだから。

ただ、あの女だけは最後だ。

ケフカはビッキーを殺さなかった。
情にほだされたわけでも、助けられたことに恩を感じていたからでもなかった。
ここで殺してしまってはビッキーに満足感を与えるだけだと思ったからだ。
冗談じゃない。
意味のない破壊だからこそ楽しいのだ。
誰がそいつにとってだけとはいえ意味のある死など与えてやるものか。

「お望みどおりお前は最後に殺してやるよ。せいぜい俺様を助けたせいで出る新たな死者に苦しみやがれ」

意識を失ったまま宿で突っ伏しているであろう女の方へとあっかんべーと舌を出す。
これから先死者の数は加速度的に増えるだろう。
何故ならケフカが本気を出すからだ。
これまでのようなまだるっこしいやり方なんか止めだヤメだ。
三闘神の力さえ使えばケフカが負けるはずはないのだ。
どうも調子が悪いからと今までは抑え込んでいたらこの様だ。
何よりも気分が悪い。
召喚獣一匹程度では足りない、足りない、壊し足りナーイ!

「命……。夢……。希望……。
 どこから来て どこへ行く?
 そんなものは……この私が破壊する!!」

フォッフォッフォフォッフォッフォフォォフォ。
意味をなさない声をあげ、ケフカは独り笑い出す。

悪意に染まれど、どこか悲しい笑い声だった。
49創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:33:48 ID:6WwGc+qg
 
50創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:33:52 ID:X/MBefPV
51迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:34:33 ID:FLNmtPcn
【I-9 西 一日目 日中】
【ケフカ・パラッツォ@ファイナルファンタジーY】
[状態]:ダメージ(中)、魔力残量(中)、全身に少なくとも表面上は塞がっている銃創痕(上から包帯)、
    三闘神開放、強い苛立
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1〜3個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:全参加者を抹殺し優勝。最終的にはオディオも殺す。
1:三闘神の力で参加者を蹂躙する。
2:ビッキーは最後に殺す。
3:アシュレー・ウィンチェスターの悪評をばらまく?
※参戦時期は世界崩壊後〜本編終了後。具体的な参戦時期はその都度設定して下さい。
 三闘神の力を開放しましたが、制限の為全ては出せないかもしれません。
※サモナイト石を用いた召喚術の仕組みのいくらかを理解しました。
※回復魔法の制限に気付きました。
※第二回放送で呼ばれた死者(サンダウン、シュウ除く)が誰か知りません


【I-9 宿屋 一日目 日中】
【ビッキー@幻想水滸伝2】
[状態]:疲労(大)、気絶、肩の出血は包帯で止血済み
[装備]:花の頭飾り
[道具]:基本支給品一式、包帯@現実
[思考]
基本:もう、誰も死んで欲しくない。
1:???(自分は死んじゃったんだと思っています)
[備考]
※参戦時期はハイランド城攻略後の宴会直前
※ルッカと情報交換をしました。




   【Paradise Lost】

ケフカは少女の笑顔を自己満足だと取り違えたからこそ、彼女を殺せなかった。
では、届けられなかった最後の言葉。

――それに、あなたにも悲しんで欲しくないから。

もしもこの言葉が空気を震わせ、道化師の心も震わせていたのなら。
そんなわけあるかと道化師が反論していたのなら。
少女はきっとこう答えていたであろう。
ううん、きっと悲しんでくれた、と。


――だって、あなた、私の怪我を心配してくれたもの


たとえ一時の気の迷いでも。
本心からのものでなかったにせよ。
ビッキーの背に負われてる時に口にした言葉は、彼の内から出たものだった。
他人の怪我を気にするなんて破壊の道化師の心の中にはありえないはずの感情だった。

ああ、だからその言葉を口にしてしまった時点で

心無い天使はもう楽園へは戻れない。
52創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:34:37 ID:6WwGc+qg
 
53創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:35:18 ID:6WwGc+qg
 
54迷い子  ◆iDqvc5TpTI :2010/01/17(日) 21:35:25 ID:FLNmtPcn
投下終了。
多大な支援ありがとうございます
55創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:36:36 ID:6WwGc+qg
 
56創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 21:55:23 ID:6WwGc+qg
投下乙!

ビッキー可愛いよビッキー
ケフカこえーよケフカ
タケシ―・・・タケシィィィィィィィ!まさか食われるとは・・・
57創る名無しに見る名無し:2010/01/18(月) 18:50:57 ID:wQUcZ6/o
投下乙

とうとうケフカが本気になったか。マーダーピエロは絵になるな。
ビッキーはイイ子!もうこれ以上ないってぐらいイイ子!
タケシー乙ww
58創る名無しに見る名無し:2010/01/19(火) 06:16:03 ID:Vu1hFR04
投下乙!
転ぶビッキーとかおかゆにがっつくケフカに和んでたら一気に突き落とされたw
ロワの癒し担当が死ななかったのは安心したけど、ついに三闘神開放か
支給品も奪われて気絶中、のビッキーは大丈夫なんだろうか…

【Paradise Lost】のやりとりがあったらどうなってたんだろう
ビッキーの思いも精神イカれたケフカも救われて欲しくはあるけど、
反論できなくなったケフカがブチ切れて殺害かな、やっぱり
59創る名無しに見る名無し:2010/01/26(火) 19:19:39 ID:h+zExAKF
ほしゅ
60創る名無しに見る名無し:2010/02/04(木) 19:10:17 ID:Q2OvoHjB
保守ぶれいざー
61創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 17:28:46 ID:n3kESMsV
保守ついでに、他ロワの真似して各書き手の好きな作品を語るのはいかが?
言いだしっぺの自分は投下数上位五名より選出。

◆iDqvc5TpTI氏 「三人でいたい」
超人揃いのこのロワで必死に戦ったナナミの最期。
最期のゴゴとナナミのやり取りには全身が痺れた。

◆6XQgLQ9rNg氏 「『勇者』の意味、『英雄』の真実」
本ロワ原作陣に共通するだろう『英雄』を巧みに活かした話。
誰もが対主催の要だろうと思っていたはずの勇者を揺るがせるとは、脱帽。

◆Rd1trDrhhU氏 「シュウ、『嵐』に託す/サンダウン、『花』を見守る」
現時点で本ロワ最大のバトル。
二転三転する戦局と、全てのキャラが輝くクライマックスは見事。

◆KGveiz2cqBEn氏 「どこを向いても奴がいる」
この結末は予想してなかった。
初登場以来忘れていた勝負師セッツァーの恐ろしさを再確認した一話。

◆SERENA/7ps氏 「有限世界の少女たち/昭和の男とエルフの願い」
人間ってのはどういう生き物なのか。
異種族による考察が面白い。この説得力もキャラを完璧に再現できているからこそ。
62創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 19:07:33 ID:99rpT84E
面白そうだ! ちょっとまとめ見てくるぜ!
63創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 05:00:21 ID:kXffCPSP
おお、これは面白いな
俺もやろうw
64創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:54:33 ID:kl8sMHMr
よし、できた。
今回はあえてかぶらないチョイスだけど後続の人は気にせずに

◆iDqvc5TpTI氏 「ボボンガ」
ロワの一つの見所である放送への反応。
時に沈んだ仲間に活を入れたり、すれ違いから殴り合うってのは見たことがあった。
けれども死者への弔いと大切だった人達のことを知ってもらいたいからと拳で語り合うのは初めて見た。
ばかだなあと思うと同時に、こういう考え方もあるんだなとなんかあったかくなっていた。

◆6XQgLQ9rNg氏 「トゥルー・ホープ 」
これ以上に無いカノン死亡話。
またルカ様の迫力を魅せつつも、うまいことマザーイメージでトラウマをついたことに脱帽。
よく考えればルカだけじゃなくてカノンも母の存在に人生左右されまくったんだよなあ。
最後のカノンをアキラが水葬するシーンがすごい絵になっていた。

◆Rd1trDrhhU氏 「エドガー、『夜明け』を待つ」
シャドウがとにかくかっこいい。
それまでと一転してエドガーに対して感情を爆発させるシーンからの一連の流れに燃えた。
ケジメに殴り合い、敵同士協力して別の敵を撃退と少年誌的展開にもわくわくした。

◆KGveiz2cqBEn氏 「Body Language」
言わずと知れた脳筋コンビ誕生話。
この話があったからこそ後の脳筋トリオも誕生したのだろう。
ロワ登場話で主義主張のぶつけ合いでもなく試合として戦う奴らなんざそうはいない

◆SERENA/7ps氏 「ノーブルデザイア」
サービスシーン。
サービスシーンであるには違いない。
現にちょこもアナスタシアもすごい楽しそうである。
でもだからこそ序文と締めが切ない。
65創る名無しに見る名無し:2010/02/17(水) 20:17:13 ID:HWnfCvaA
予約ktkr
今度こそミネアさんオワタか…?
66 ◆KGveiz2cqBEn :2010/02/19(金) 19:47:27 ID:6HN3CHcE
test
67 ◆KGveiz2cqBEn :2010/02/19(金) 20:41:08 ID:6HN3CHcE
投下します。
「あらあら、ずいぶん派手にやってきたのね?」
シンシアの元に戻ってきたジャファルの姿は凄惨なものだった。
衣服を裂かれ脇腹や腕からは血を流し、口元には血を拭った後が色濃く残る。
その姿を見てシンシアは笑みを浮かべながら見下すように見つめた。
その瞬間、シンシアの首元には短剣が突きつけられていた。
「そんなに焦らなくても今回復するわよ……」
突きつけられた短剣に少し驚きながらも、シンシアは落ち着いて否定のリアクションを取る。
シンシアは短剣が引かれたのを確認してから、ジャファルを白い光で包み込む。
やがて光は天空へと弾け、ジャファルの傷を塞いでいった。
「ねえ、お願いがあるんだけど」
回復の光が包み込む途中でシンシアはジャファルへ一つの提案を持ちかける。
「こういう風に私が後方支援と回復、貴方が肉弾戦闘という形を取ればまだまだ生き残れると思うの。
 でもね、私の魔力はもう殆ど残ってない。あったとしてもモシャス2〜3回分ね。
 でも……せっかくなら限界まで私を利用してみない?」
ジャファルの眉が少しだけ動く。シンシアはその反応を見ながらも話を続ける。
「魔力を回復するものがあればそれを譲って欲しいの。
 勿論タダでとは言わないわ。私の持っているこの相手の動きを止める短剣と交換よ。悪い条件じゃないと思うけど?」
デイパックからナイフを取り出し、ジャファルへと突きつけるシンシア。
ジャファルのシンシアに向ける表情は険しいまま動かない。
「ま、魔力の切れた私を不必要とするのならばそれでも構わないけど。
 後方支援できる回復役を今切るべきか少し考えてくれるとありがたいわね」

自身の魔力が底を突きつつあるのを自覚していたシンシアは、一つの賭けに出た。
今、ジャファルに首を掻っ切られずにいるのは自分に利用価値があるからだ。
自分自身、今の自分の役割を理解している。
事実、先ほどの戦闘ではシンシアの能力が無ければどういう結末を迎えていたかも分からない。
傷ついたジャファルを癒しているのも他ならぬシンシアである。
「今」のシンシア、つまりエドガーの力を借りているシンシアはジャファルにとって利用価値のある人間なのだ。

では、「エドガーの姿を失った上魔力の無いシンシア」ではどうだろうか?
先ほどジャファルの傷を癒したような呪文を持っているわけでもない。
軍人の女を細切れにした呪文のように強力な攻撃が使えるわけでもない。
この殺し合いを生き抜いていく上で何か有用なものなど、本来の彼女には何も無い。

つまり魔力の切れた彼女など、ジャファルにとっては抹殺対象でしかないのだ。

しかし、それらは魔力が無ければの話である。
魔力を何かしらの形で供給できれば話が変わってくる。
ひとまず魔力があれば、この姿が切れる放送前にジャファルをもう一度回復してやることぐらいは出来る。
呪文を使うことの出来る「皮」など後で探せば良いのだ。

ジャファルにとって今のシンシアは「使える」はず。だったら、その道具の寿命を延ばしてくれてもいいだ。
ジャファルが魔力を供給する何かを持っていればシンシアの勝ち。
魔力を供給する何かを持っていない、または不要な「ゴミ」だと思われていればシンシアの負け。

このまま黙っていても死ぬぐらいなら、少しだけ足掻いて見ようと思ったのだ。
69創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:45:35 ID:7o7bPaIm
 



不意に投げ出される一本の剣。
ジャファルの方をゆっくりと見つめるシンシア。
「……これは?」
「……短剣と交換じゃないのか?」
「これは何なのかと聞いてるのよ」
シンシアの目には魔力を供給する物体には到底見えない一本の剣。
「肉を斬らず魂を斬る魔剣。そこから魂の力、つまり魔力を奪う剣らしい。
 それと短剣を交換だ、後はお前自身で何とかしろ」
魂から魔力を吸い取る剣、俄かには信じがたい話だが乗るしかない。
シンシアは短剣をジャファルの目の前へと投げつけ、ゆっくりと剣を拾う。
もしコレが罠だったらという万が一の可能性を頭に置き、ジャファルへの警戒は怠らない。
拾い上げた剣は本当に魔力が供給できるのかどうかすらも怪しい何の変哲もない剣だった。
シンシアは心に浮かんだ疑問を素直にジャファルへとぶつける。
「本当に魔力が吸えるかどうか確かめさせてくれない?
 魔力を貴方が使うことも無いでしょうし、この姿が持つ間なら回復もしてあげられるわよ?
 肉体を斬らずに魂だけを斬る剣なら損傷も無く済ませられるはず……よね?」
しばらく沈黙が続く。場の空気がシンシアに重く、重く圧し掛かる。
何時自分の首が飛ぶか分からない、そんな気迫とも戦いながら。
「…………さっさとしろ」

ジャファルも賭けに出た。
もし剣の「肉を斬らない」が嘘であったとしても、シンシアが剣を振るったところで自分にとって致命傷になる確率は少ない。
それに斬撃で吸い取った魔力で回復してもらえるのならば、今から切り傷の一つが増えたところで問題はない。
剣から魔力を得ることが出来る、それをシンシアが確信すれば自分にとっても都合が良いのだから。

シンシアはゆっくりと剣を握りなおし、お世辞にも綺麗とはいえない横一文字を描いた。
業物でなくとも刃物であればジャファルの体を何かしら傷つけるはずだ。
しかし、シンシアの振るった剣はジャファルを傷つけることは無かった。

最後まで振りぬかれた剣は真っ直ぐジャファルを突き抜けたからだ。
服にも、肉にも、骨にも引っ掛かることなく。切り裂かれているはずの場所は何も異変は無かったのだ。
振りぬき終わった後、ジャファルの体を優しい光が包み込む。
「……魂だけを斬るって言うのは本当みたいね」
シンシアの手から呪文が出る、つまりジャファルから魔力を奪った証拠。
思わず口元を歪むが、ジャファルに見られないうちに戻しておく。

相手を傷つけるには至らないが魔力を奪うことが出来る剣。
その剣を手にし、シンシアは自分の命を繋ぐ術を見つけた。
自身が生き残る為の道は開けた。

「ねえジャファル、私に提案があるんだけど……」
魔力が供給できることを確認できたところで、再びシンシアがジャファルへと提案する。
「モシャスがそろそろ切れてしまうから次の変身相手を探さないといけないの。
 そこでいい考えがあるんだけど……でも、まずは放送をしっかり聴きましょう? 禁止エリアで死んでしまうのは勘弁願いたいわ」
71創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:47:01 ID:7o7bPaIm
 
72創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:48:06 ID:SCvimVh6
73創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:49:23 ID:SCvimVh6



――――53の屍の上に立ち、見事勝者になって己の望みを私に言うがいいッ!

魔王が死者を告げる。

「フロリーナ」

その名前を聞いたとき、雷が当たったような感覚に襲われた。
この場に何人いるのか分からない知り合いの名前。
叶うことならこの地では聞きたくはなかった名前。
名前が呼ばれたと言うことはどういうことか?
改めて考えてもう一度突きつけられる現実。
彼女はもうこの世にはいない、それが揺ぎ無い真実。
「……今は、前を向かなきゃ」
己の頬を叩き、軽くその場でジャンプをする。
「やることがある、その間は立ち止まっていられないわ」
今は一刻一刻が惜しい、悲しむことは後でも出来る。
座り込んで涙を流している時間などあるはずも無い。
ただでさえ危険な状況のミネアと倒れこんでいるアキラを置いて出てきているのだ。
何かある前に薬の類を見つけて戻らなければいけない。



サヨウナラ。マタ、イツカ。

彼女の中のフロリーナと少しだけ別れを告げ、再び走り出した。



民家を当たる。薬は無い。
違う民家を当たる。薬は無い。
また違う民家を当たる。薬は無い。

「何か、何か役に立つものは無いの?!」

それもそのはずだ、異世界の村の民家に常備してある薬など彼女にとって薬として見える事は無かった。
そもそも、家庭に常備してある傷薬と言ってもちょっとした切り傷や擦り傷に対応する程度の物である。
右腕をびっしり覆う火傷用の薬草、ましてや秘薬など近未来の住人の家にある訳も無かった。
ましてや彼女の世界における傷薬などあるはずも無い。

数件の民家を当たった所で諦めてミネアの待つチビッコハウスへ戻ろうとしたときだった。
民家を出た先で一人の女性が彷徨っているのを見たのだ。
一つの希望と最大限の警戒心を抱きながらリンは迷うことなく女性へと話しかけた。
75創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:50:36 ID:7o7bPaIm
 
76創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:50:49 ID:SCvimVh6
「あの、すみません!」
リンの声に反応した桃色の髪の女性がゆっくりと振向く。
「何かしら?」
襲い掛かってこないことを確認してからリンは次の言葉を紡ぐ。
「急に話し掛けてごめんなさい、でも一刻を争ってるんです。
 もし、傷を癒す薬か魔術書か何かを持っているなら譲っていただけませんか?!」
リンの言葉を聞き、顎を手で押さえて少し考え込む女性。
「残念だけど、そういう物は持ってないわね」
返ってきた答えはリンの予想通りだった。
仮に持っていたとしても、そう簡単に譲って貰える訳が無い。
分かっていたはずなのだがリンは落胆の表情が隠せなかった。
「でも、一つだけ方法があるの」
神の救いのようなその言葉に、リンは女性が思わず一歩引いてしまうほど物凄い勢いで顔を上げる。
「……貴方の仲間に回復の呪文の心得のある人はいるかしら?
 私には人の姿、能力を模倣できる呪文があるからそういう人がいるなら回復する手立ては……あるわね」
「ミネア、ミネアなら回復の魔術が使えます。
 私が傷ついていたときに……魔術で治してくれましたから」
狂気に包まれた男に腹を刺され、津波に飲まれた時の事を思い出す。
遠のいていく意識の中、確かにミネアは自分に回復の魔術をかけてくれたのだ。
あの時ミネアが助けてくれなかったら……それを考えただけでも背筋に寒気が走る。
「なら決まりね、手伝ってあげるわ。でも、回復できる人がいるのにそれを頼むと言うことは……」
再び、女性は顎に手を添えて考え始める。
「そのミネアっていう人が危ない、と言うことね?」
女性のその言葉に頷くリン。女性は自分の中で合点が行ったのか何回か頷く。
「本当にありがとうございます……えっと」
「シンシアよ、宜しくね」
「私はリンです、宜しくお願いします!」
互いに軽く自己紹介を済ませた後、リンは安堵からか大きな溜息をついて座り込んでしまった。
その姿を見てシンシアは微笑み、リンへと握手を求める。
リンは要求に答え、シンシアと堅い握手を交わす。
「さ、急ぎましょう。時間が無いんでしょう?」



リンは気づいていない。
先ほど浮かべた笑みはリンに対する「嘲り」の笑みだなんて。
シンシアの術中に嵌っていることなど気がつくわけも無い。
78創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:51:49 ID:7o7bPaIm
 



走り始めてからしばらくすると、ミネアの待つチビッコハウスが視界に映った。
疲弊しきっているミネアが自身に回復魔法を使うだけではあの火傷は治らない。
でも、シンシアなら。ミネアの傷をある程度マシなところまで治してくれるかもしれない。
やっと見えた希望の光。ほんの少しでもいい、今のリンには見えるだけで十分なのだ。
「ちょっと待って、リン」
シンシアが突然、走るリンを引き止めた。
「さっき言い忘れたけど、この辺りで人を探すって事で私の仲間と別れたの。
 この辺りにいるって言ってたはずなんだけど……おかしいわね」
左に曲がって真っ直ぐ行けばチビッコハウスだというのに、右に曲がるシンシア。
不審に思いながらもリンはシンシアについて行くことにした。
「いないみたい……ですね」
シンシアに追いついてから辺りをもう一度見渡してみるも、人影は愚か人の気配すら見当たらない。
「まあ、いいわ。後で探しましょう」
シンシアのその言葉を聞いたとき、背中に猛烈な寒気が走った。
素早く振向くと、漆黒の影が彼女の眼前まで迫っていたのだ。
首を狙ってくる漆黒の影に対し、剣で応対する時間は無い。
体を捻って致命傷を避けるのが精一杯だったが、左目を持っていかれてしまった。
そして、漆黒の影は再び昼間の闇に消えていった。
「なっ、大丈夫?!」
リンが左目から大量の血を流している光景を見て、シンシアは思わず声をかける。
「大丈夫……ちょっと目をやられただけです。
 それより、まだ襲ってきた奴は近くにいると思う。
 ここは私がひきつけておくから、先にチビッコハウスに行っててほしいの」
リンの願いを短い頷きで受け入れ、即座に駆け出すシンシア。
シンシアがチビッコハウスへと向かって行くのを確認したリンは、ゆっくりと左目から手を離しマーニ・カティを構える。



精神――――



彼女が思うに襲撃者の正体はアサシンである。
即座に何人かの名前が彼女の頭に浮かぶ。
しかしその直後にラガルトの名前は消えていた。きっと彼はこんな場で動くとすれば人を殺して回るような行動を取るとは思えない。
次に浮かんだのはマシュー。レイラを蘇らせるために彼ならもしかすると殺し合いに乗ってしまうかもしれない。
だが彼なら多少なりの迷いが生じるはずだ。彼がそこまで冷酷になれるとも考えにくい。
それに……お世辞にも彼にここまでの戦闘能力があるとも思えない。

……となれば知り合いだとすれば、考えられるのは一人だけ。
ジャファル。
彼ならニノの為に迷わず殺し合いに乗るだろう。
全てを切り捨てる覚悟が彼には最初から出来ているのだから。
先ほどの攻撃もジャファルならば納得が行く。

出来ることなら、知り合いではない誰か別の人間であればいいのだが。

こんな真昼間だというのに襲撃者は一体どこに隠れているのか?
それを探り当てるために全神経を使い、迫り来る影へと意識を向ける。
しかしこんな村中の道のどこに身を潜めると言うのだろうか?
リンはそれだけが気になって仕方が無かった。



――――統一
80創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:52:39 ID:Xjc/p6Cn
81創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:52:53 ID:SCvimVh6
82創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:53:14 ID:7o7bPaIm
 



今すぐにでも笑い転げたいほど、全てが上手く行っていた。
誰かをジャファルの元へと誘導し、そこで自分が後ろから襲い掛かり相手の隙を生んだところで姿と命を奪うつもりだった。
しかし、「回復を使える人間」がいるという思わぬ情報を手に入れたことで計画がいい方向へと狂った。
ジャファルには後で説明するとして、今は手に入れた情報通り「回復を使える人間」の姿を借りに行くことにしたのだ。
彼のことだ、きっと自分が隙を生み出さなくても生き残ることが出来るだろう。
姿を手に入れてから後方支援に回っても、きっと遅くは無いだろう。

ああ、可笑しい。
やはり今すぐに笑い転げたいぐらいだ。
お腹を抱えて大声を出しながら、笑い転げたい。

でも、今はその時ではない。
気を引き締め、チビッコハウスの中へと入っていく。
メインディッシュが、そこで待っているのだから。



「……そう、か」
ミネアにとっても、放送の中に聞きたくない名前が入っていた。
魔を討つと言って飛び出していったカノン、津波ではぐれて以来会っていないルッカ。
二人とも死んでしまった、受け止めなければいけない。
分かっているはずなのに、受け止められない自分がどこかにいる。

死者を告げる放送が終わってからもう一度目の前のタロットを見る。
腐った死体の正位置。
「案ずるより産むが易し……か」
タロットの意味する言葉を、もう一度呟く。
じっと何かを待つだけではなく、自分から何かリアクションを起こしていくべきなのだろうか?
誰かの死を悔やむ暇があったら、前へ進めと言うことなのだろうか?
腐った死体、ある意味この地で死んでいった仲間たちを指しているのかもしれない。
何かを成し遂げようとしながらも、無念のうちに命を落としたであろう仲間たちを。

不意に、笑みが零れる。
「……考えてても仕方が無いって、さっき言ったところなのにね」
今は考えていても仕方が無い、もう一度確かめるように自分に言い聞かせる。
一人で悩んでいても、何かが変わることはない。
リンが戻り、男の人が起きてから何かを考えても遅くは無いのだから。

「とにかく、リンさんが戻ってくるまで待とうかしらね」



死者を告げる放送が流れてからしばらく後のことだった。
なにやら騒がしい物音が聞こえてきたのだ。
火傷の酷くない方の腕を使い、ゆっくりと椅子から立ち上がって音源へと向かう。
そこには一人の少年を抱きかかえた女性が立っていた。
「あなたがミネアね?! 私はシンシア、貴方のことはリンから聞いてるわ。怪我人がいるの、助けてくれない?!」
どうやら目の前の女性はリンのことを知っているらしい。だとすれば自分の名前を知っているのも合点が行く。
飛び出していったリンと会ったのだろうが、彼女の傍にリンはいない。
「リンさんは……?」
「あなたの火傷を治すための薬をもう少し探すらしいわよ、もう少しすれば帰ってくると思うわ」
その言葉を聞いて感謝の気持ちと申し訳なさが心の中に溢れる。
自分の傷を治すために彼女は奔走してくれているのだ。
「とりあえず、彼を治療してくれないかしら?」
そういってシンシアは自分の目の前に少年の体を置いた。
少年の体に目立った外傷は見えない。どこに怪我をしているのだろうか?
しゃがみ込んで少年の体へと手を伸ばし、怪我の正体を調べようとする。
少年に触れたとき、手から伝わってきたのは人肌の温度ではなかった。
既に息絶えているのだろうか? と思い全身をくまなく触ったのだが怪我らしきものは無い。
軽くホイミをかけて見るが、何の反応も示してくれない。
……やはり既に死んでいるのではないだろうか?
その事を不審に思い、シンシアを見上げたとき。

自分の喉からは槍が生え。目には笑っている自分が映っていた。

ミネアが人形に気を取られている時間は、シンシアにとって十分過ぎた。
素早く携えていた槍を構え、モシャスを唱える。
そして、ミネアが丁度良くこちらを向いたときに喉を目掛けて槍を突き刺す。
喉を狙ったのは大声を出して助けを呼ばれないためだ。もしリンに悟られては面倒なことになる。
槍を押し込んでミネアを押し倒した後に腹部を思い切り踏みつける。
声の出せないミネアが苦悶の表情を浮かべながら血塊を吐き出す。
このまま何度も踏みつけてやりたいのだが、もう一つの目的を達成しなくてはならない。
腹部を踏みつけたまま、ジャファルから譲ってもらった魔剣を取り出す。
一回斬りつけるごとに、ミネアの魔力が自分へと流れ込んでくるのが分かる。
魔力を十分に得たところでそろそろとどめを刺してやろうかと思い、ミネアから槍を抜こうと思ったときだった。

ミネアは――――――
85創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:55:22 ID:SCvimVh6



喉に槍が生えているのをはっきりと自覚したとき、ミネアの視界から「自分」は消え去っていた。
その代わりに自分の視界に写っているのは自分の姉、マーニャの姿だった。



「……貴方が選んだ道は正しかったのかしらね?」

……分からない、ただ自分は皆と帰りたかった。

「人殺しの道に進んでも、あの魔王に願いを叶えて貰えばそれは出来るわよ?」

魔王や……嘗てのピサロさんのように人を殺すつもりは無かった。
それに、そんなことは意味が無いこと位分かっている。
……ピサロさんのようになりたくなかった、とも言うべきなのかしら。

「貴方は一人でも多くの人間を救おうとした」

クリフトさんの時のように、何も出来ないわけじゃない。
誰かが死ぬのを見るぐらいならこの手で助けてあげたい。
もう、ルッカさんやカノンさんやアリーナさんやトルネコさんのように自分の手の届かないところで人が死ぬのも見たくなかった。

「でも、その結果貴方は命を落とすことになった」

……この場に招かれた全員を救うのは確かに無理な話だったのかもしれない。
全員が最後まで生き残れる保証だって無かった。

「貴方はそれで……納得できるの?」

私は構わない、やれるだけのことはやったつもり。

「……はぁ、分かったわよ。貴方がこういうときは梃子でも動かないのは私が一番良く知ってる」

ふふ、さすが姉さんね。
私の考えなんて全部最初から分かっていたのに、そんな質問を持ちかけるなんて意地が悪いわ。

「じゃ、行ってきなさい。アリーナやクリフト、トルネコさんによろしく言っといてね」

ええ、分かったわ。



リンさん。
私は助けてもらったのに勝手に死んでしまいます、ごめんなさい。
貴方は強いです。それも、貴方が思っているよりもずっと。
これから、いろんな困難が待ち受けているかもしれません。
でも、復讐に意味が無いことを分かっている貴方ならきっと魔王を打ち砕けます。
だって貴方には、貴方を愛する人がたくさん居るんですから。もちろん、私もその一人です。
どんなに辛くても、どんなに挫けそうになっても。
貴方を思う人たちは、貴方と共にあります。辛くなったら思い出してください。
……こんなことを言っていても、私が死んでしまうことで辛い思いをさせてしまうのが何よりも心残りです。

短い間でしたけど、貴方といた時間は良い時間でした。

ありがとう。

そして、さようなら。

名前は知りませんが、私を助けてくれた男の人へ。
本当に、本当にありがとうございます。
貴方が居なければ私は目覚めることは無かったと思います。
でも、折角倒れるほど力を使って私を助けてくれたのに、私は今から冥界へと行かなければなりません。
本当に、本当にごめんなさい。
貴方が起きてからしっかりと目を見て、私の言葉で感謝の気持ちを伝えたかったのですがそれも叶いませんね。
聞こえないとは思いますが、もう一度言います。私を助けてくれて本当にありがとうございます。

厚かましいかもしれませんが、ひとつお願いがあります。
リンさんの傍に居て、リンさんを支えてくれないでしょうか?
人一人で出来ることは限られています。あの魔王を倒すなら尚更です。
リンさんが挫けそうで、今にも諦めそうなとき。傍でがっしりと支えてあげてください。

最後になりましたが、私の最後の贈り物を私の意志と共に受け取ってください。
押し付けるようですみません。



喉が潰れていようと、意識の集中が出来るなら呪文は唱えられる。
声に意味は無い、精神を研ぎ澄ます過程で口に出す音に過ぎない。
魔力があって、精神の集中を乱すマホトーンが掛かっていなければ呪文は唱えられる。
魔力が吸い取られていく感覚を感じ取ったとき、私に迷いは無かった。



じゃあ、受け取ってください。
88創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:56:39 ID:Xjc/p6Cn
89創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:56:50 ID:SCvimVh6
90創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:56:52 ID:7o7bPaIm
 















…………メガザル。














92創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:57:40 ID:Xjc/p6Cn
覚醒。
アキラの目の覚まし方はその言葉がもっともふさわしかった。
起きたと同時に、何か暖かいものが体を包み込んでいるかのような感覚を掴む。
その感覚の正体を掴み取るよりも先に、辺りの違和感に気がついてしまう。
そこは自分が良く知る場所であるチビッコハウスと瓜二つだったのだから。
そして、起きたときからあるもう一つの違和感。
限界まで迫っていたはずの自身の疲労が嘘のように消え去っているのだ。
テレポートの後倒れこむように眠り込んだだけでここまで回復するとは思えない。
だとすれば……自身を回復してくれた第三者がいるということだ。
ミネア、リンディスの二人はあり得ない。
リンディスが回復する何かを使えるとすれば、自分に治療を頼む訳が無い。
ミネアはあの大怪我だ、他人に回復魔法を使っている余裕があるなら自身に向けているだろう。
仮に魔力が有り余っていたとしてもここまで全快させるには相当の魔力が必要だ。
じゃあ一体誰が回復してくれたと言うのだろうか?
自分の周りを見渡しても人影は見当たらない。
ベッドから抜け出し、部屋から突き動かされるように飛び出る。
ドアを開け、部屋を飛び出た先で自分が見た物は。

血溜まりの中で倒れるミネアと、その上に立つ剣を持ったミネア。

何が起こったのか分からない。
あまりにも信じがたい光景が目に飛び込んできた所為で脳の処理が全然追いつかない。
ミネアの上に立つミネアがこちらに気がつくと同時に玄関の方へと駆け出して行ったのだ。
「畜生! 待ちやがれ!!」
気がつけば自身も走り出していた。何があったのかはわからない。
でも、分かったことがたった一つだけある。



ミネアは、死んでいる。
それだけは、分かる。


隠れ蓑を翻し、隙を突いて襲い掛かり、即座に壁に寄りかかり隠れ蓑に身を包む。
ジャファルはその行動をワンセットとし、数セット分の攻撃を仕掛けたがリンを殺すことが出来ない。
リンが片目を失いながらもジャファルの攻撃に応対できるのは、全神経を使い風の流れを読んでいるからだ。
それでも距離感をつかめないため攻撃を弾くのが精一杯なのだが、致命的な一撃を受けること無く済んでいる。
このまま攻撃を繰り返しても先に集中力を切らしたほうが負け、リンの精神力の強さはジャファルは十分承知している。
本来ならシンシアが隙を生み出し、その隙に自分が一撃を入れることで全てが終わるはずだった。
狂った予定に対し怒りの表情を隠しながら、ここにはいないシンシアに対し心の中で舌打ちをした。

リンもまた焦っていた。
攻撃に応対するのがやっとの状況だ。
少しでも気を抜けば首を刈り取られるのが目に見えている。
自分に攻撃を仕掛けた後にどこに隠れているのかさえ分かれば動きようもあるのだが、刈り取られた左目がそれを許さない。
どこにいるのかをつかめない所為でこの場から動くことも出来ない。
相手のいない方向に逃げられればいいのだが、音速にも近い攻撃を繰り出す相手がそう易々と逃がしてくれるはずも無い。
下手に逃げ出せば相手に隙を見せるだけ、自分の命を自分で刈り取るようなものだ。
彼女もまた、心の中で舌打ちをする。

アキラはただひたすらに走る。
ミネアを止める為に追いつこうと、回復したばかりの体力をフルに使って走っている。
だが、追いつくどころか見る見るうちに離されていく。
ミネアが履いている靴、ミラクルシューズによる効力なのだがアキラにわかるはずも無い。
拡声器を使ってリンディスに危機を伝えることができればどんなにいいか。
こんなことならばリンディスに拡声器を渡さず自分が持っておけばよかったと内心で舌打ちをする。

三者の舌打ちが偶然にも重なったとき、一つの声が鳴り響く。



「リン! 助けに来たわよ!!」



その声に真っ先にリンが振向く。
「ミネア、来ちゃダメ!」と叫ぼうと思ったときに一瞬だけ精神が乱れた。
ジャファルは勿論その一瞬の隙を見逃さない。
リンが声帯を震わせ、声という音を出そうと思ったその時既に、背後からは一本の短剣が突き刺さっていた。
声は込み上げる血塊に遮られ、音として飛び出すことは叶わなかった。
背後からの痛覚を感知し、再び振向いた時には襲撃者の影は無かった。
再びミネアの方へと振り返り、こちらへ来ないようにジャスチャーをしようと思った時。

ミネアは、魔法を唱えていた。
95創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:59:06 ID:SCvimVh6
96創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 20:59:13 ID:Xjc/p6Cn
「リンディィィィィィィス!!! そいつはミネアじゃねえェェェェェェェェェ!!!」
時、既に遅し。
遠く離れたアキラが叫んだその瞬間、リンディスを瞬時に包み込む竜巻。
ボロ雑巾のように空へと舞い上がるリンディスの姿をアキラはただ見つめることしか出来なかった。
そしてリンディスは偶然にもアキラの目の前に、糸の切れた操り人形のように落ちてきた。
服はズタボロに引き裂かれ、体の彼方此方から血を流し、背中には大きな穴が出来ていた。
リンディスを抱きかかえたとき、ミネアがこちらの方へと振向く。
竜巻はミネアの仕業としても、刺し傷は明らかに第三者によるもの。
つまり、ここで戦うとすれば怪我人を抱えたままミネアと正体不明の一人と戦わなければならない。
はっきり言って肉弾戦の勝ち目はゼロに等しい。
このまま立ち向かっても自分が犬死するのは見えている。
そうこうしているうちにもミネアはこちらへと迫ってくる。
「……死んでたまるか」
アキラは小さく呟く。
「帰るところがあんだよ」
自分は、こんなところではまだ死ねない。
「死んで、たまるかァァァァ!!」
こんなところで死ぬぐらいなら、わずかな希望に全てを賭ける。
死にたくない、その一心でアキラは動く。
禁止エリアに飛ばされるかもしれないというリスクを背負い込みながらも。
迫り来る恐怖から遠く離れられるかどうかも分からないが。
ほんの少しでもいい、生き残れるという可能性があるのならば。
それに、賭けるだけだ。



ミネア……否、シンシアたちがアキラの方へと足を進めようとした時。
大きな血溜まりを残し、アキラ達の姿は消えていた。


「おい、シンシア」
ジャファルの低い声がシンシアの耳へと入る。
それと同時にシンシアの首筋にナイフが突きつけられていた。
「作戦と違うぞ、どういうことだ」
その声色は重く、そしてどこか怒りを込めた声だった。
ジャファルの反応を見ていながら、シンシアは微笑む。
そしてシンシアはジャファルの傷跡へと手を伸ばし、回復呪文を唱える。
「貴方の望みどおり、回復と後方支援の出来る姿を真っ先に確保しに行っていただけ。
 彼女の相手がそこまで大変だったの? そんな訳無いでしょう?
 回復は今示して見せたし、後方支援だってやって見せたわ。
 攻撃すら出来ない木偶の坊に変身したわけでもないのに何か不満があるの?」
嘲るように言い放つシンシアを見て、短剣を首筋から外すジャファル。
シンシアの浮かべる笑顔がより一層濃いものとなる。
「成る程な、良く分かった」
その直後、ジャファルはシンシアの腹部を目掛けて拳を繰り出す。
一欠けらも警戒していなかったシンシアの柔らかな腹部は音速の拳に応対するだけの力を持っていなかった。
何が起こったのかわからないシンシアの目が見開かれ、それと同時に猛スピードで胃液が口の中を満たす。
「お前が信用に足らん奴だという事がな」
その言葉と同時にシンシアは蹲り、胃液を地面へとぶちまける。
口の中が胃酸独特の酸っぱい感覚で満たされ、不快感が広がる。
胃液を吐き終わった後は腹部の激痛が彼女を襲う。
自身の嘔吐の上に覆いかぶさるように倒れ込んで痛みに悶える。
「行くぞ」
その姿を見ておきながら、ジャファルはその場から立ち去ろうとする。
その背中を睨み付け、痛みをこらえながらシンシアは起き上がる。

二人の間に信頼関係はない。
元より裏切るつもりでいるのだから当然だ。
ジャファルがシンシアの行動に激怒したのは信頼を崩されたからではない。
「次やれば殺す」という警告といった方が近い。
殺さなかったのは勿論、まだまだ利用価値があったから。
二人の間に信頼関係はない。
あるのはただ一つの単純な理由。
「使えるだけ使って、殺す」

それだけだ。

99創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 21:00:04 ID:Xjc/p6Cn
【A-6 村 チビッコハウス寝室 一日目 日中】
【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、傷跡の痛み。
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドU、かくれみの@LIVEALIVE
[道具]:不明支給品0〜1、アルマーズ@FE烈火の剣 基本支給品一式*2
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:シンシアと手を組み(前線担当)、参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
2:いずれシンシアも殺す。
3:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※名簿確認済み。
※ニノ支援A時点から参戦

【シンシア@ドラゴンクエストIV】
[状態]:モシャスにより外見と身体能力がミネアと同じ、多量の返り血
    肩口に浅い切り傷。 魔力消費(小)、腹部にダメージ。
[装備]:ミラクルシューズ@FFIV、ソウルセイバー@FFIV
[道具]:基本支給品一式*3、ドッペル君@クロノトリガー、デーモンスピア@DQ4、昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVE
[思考]
基本:ユーリル(DQ4勇者)、もしくは自身の優勝を目指す。
1:ユーリル(DQ4勇者)を探し、守る。
2:ジャファルと手を組み(支援、固定砲台、後始末担当)、ユーリル(DQ4勇者)を殺しうる力を持つもの優先に殺す
3:利用価値がなくなった場合、できるだけ消耗なくジャファルを殺す。
4:ユーリル(DQ4勇者)と残り二人になった場合、自殺。
[備考]
※名簿を確認していませんが、ユーリル(DQ4勇者)をOPで確認しています
※参戦時期は五章で主人公をかばい死亡した直後
※モシャスの効果時間は四時間程度、どの程度離れた相手を対象に出来るかは不明。





「おい、リンディス!」

テレポートでどこかへと飛び立つ道中、アキラはリンディスの精神へと話しかける。

「聞こえるか?! おい! リンディス!!」

弱弱しい脈と、艶っぽい吐息だけが彼女の命を証明してくれる。

「返事しろよ! おい! おい!!」

今のアキラには、ただ話しかけることしか出来ない。

「チクショウ……ふざけんな……ふざけんなよ!」

その独り言も、今は届かない。





【?-? 一日目 日中】
【リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:気絶、左目失明?、心臓付近に背後からの刺し傷、全身に裂傷
[装備]:マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、拡声器(現実)
[道具]:毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストW 導かれし者たち、フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドU、
     デスイリュージョン@アークザラッドU、天使ロティエル@サモンナイト3
[思考]
基本:打倒オディオ
1:???????
[備考]
※終章後参戦
※ワレス(ロワ未参加) 支援A

【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:テレポートによる精神力消費
[装備]:激怒の腕輪@クロノ・トリガー
[道具]:清酒・龍殺し@サモンナイト3の空き瓶、基本支給品一式×3
[思考]
基本:オディオを倒して殺し合いを止める。
1:リンディスを助ける
2:高原日勝、サンダウン・キッド、無法松との合流。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[備考]
※参戦時期は最終編(心のダンジョン攻略済み、魔王山に挑む前、オディオとの面識は無し)からです
※テレポートの使用も最後の手段として考えています
※超能力の制限に気付きました。
※ストレイボウの顔を見知っています
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。



※テレポートのワープ先はお任せします。



チビッコハウスの中。

机の上に残されたタロットカードの一枚が少しだけ光る。

そのカードは――――――――



【ミネア@ドラゴンクエストW 導かれし者たち 死亡】
【残り31人】
※チビッコハウス内に残された銀のタロットのうち一枚が僅かに輝いています。
 何のカードかは不明です。
103 ◆KGveiz2cqBEn :2010/02/19(金) 21:04:11 ID:6HN3CHcE
以上で投下終了です、さる回避支援のほうありがとうございました。
104創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 22:46:53 ID:mvWqS29S
さすがシンシア・ジャファルのコンビギスギス感が伝わってくる。
そして、ミネア…とうとうメガザルを使ってしまったか。
だが、対象者がアキラだし、思ったより熱い展開になったのも事実。
しかし、リンが瀕死かぁ、アキラ救われネェ・・・
105創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 20:12:13 ID:tkMFJMVS
最後にジャファルがシンシア殴ったのは迫力あってよかったなあ
マーダーコンビの正しいあり方
とうかおつー
106創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 08:55:24 ID:4yhUQ8G6
ジャファル&シンシア無双だな。対主催がマーダー側に勝てる気がまるでしないのは気のせいか?。
そういや、今首輪関連や主催者の情報、脱出の手掛かりはどこまで判明していた?
107創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 16:35:17 ID:LwaM40dQ
そこら辺の考察はほとんどされてないな
脱出の手掛かりだけは原作でオディオ倒したら自動的に元の世界に戻れる仕様だったからあまり本格的にやる必要はないと思う
少なくとも、参加者にちゃんと脱出の手掛かり探してますよーという最低限の描写するだけでいいかなと思っている。
首輪に関しては考察させる人物の目星はついてるから、これから少しずつ考察のターンかな。
主催者の情報については今はなんとも浮かばんから他の人に頼んでみたい。
取っ掛かりさえ作ってくれればこっちも何とかできるかもしれないし。


で、話は変わるがwikiで今回のミネアさん死亡話を収録したんだが、ミネアさんの殺害者と死因は悩んだ末に
シンシア(刺殺)とミネア(メガザルによる自害)の二人にしてみたんだがどうだろう?
意見あったら変えるからよろしく
108創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:12:13 ID:1GFZ4pAx
直接の死因はメガザルだろ
109創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:20:51 ID:LwaM40dQ
分った修正しとく
110創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 04:08:36 ID:uhFSCYvI
 
111 ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:12:40 ID:4x5FZtdP
では投下します
112創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 04:13:05 ID:uhFSCYvI
 
113銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:13:44 ID:4x5FZtdP
腰をかけるのに丁度いい高さと大きさの岩がある。
密集していた木の密度もまばらになり、森を抜けたことを知った男は、そんな休憩におあつらえ向きの岩を見つけて座っていた。
濡れた衣服も日光の力で大分乾き、時間もそろそろ正午に差し掛かるといったところなので、男はゆっくりとオディオの声を待つ。
銀色に輝く長髪をなびかせ、右手には彼の人生に欠かせないアイテムであろうサイコロが三つ。
頬に走った傷は男の端正な顔つきを損なうことなく、むしろ修羅場を潜り抜けた男の勲章のような印象さえ与える。

右手に仕事道具、
左手に友との思い出、
背後には彼の夢の礎となった屍、
前方には人生最大のギャンブルと、それに勝った暁に約束される夢を取り戻した日々。
それが、今座っているセッツァー=ギャッビアーニという男だ。

セッツァーには、ここにいる大半の人が感じているであろう焦りや不安といったものがない。
むしろ、その佇まいや雰囲気には、これから午後のティータイムを楽しむかのような余裕さえ感じられる。
頬が緩まない程度には表情を保っているが、隠しきれずに時折表情を綻ばせる。
さらに、オディオの声を今か今かと待ち続けている節すらある。
それもそのはず、今までセッツァーは順風満帆の過程を歩んできているのだから。
戦力の消耗なく易々と二人を殺し、厄介な元仲間を排除すべく情報も散布してきた。
津波に攫われるというアクシデントさえあったものの、ここまでは歩いてきたことによる疲労しかない。
殺し合いの開始時点とほぼ同じ健康状態だ。
どんなに強い人物も、戦って戦って消耗した末に死ぬということもある。
それを考えれば、ベストコンディションに近いという今のセッツァーの体調は他者に対して有利に働く。

「時間だ……一度しか言わぬから聞くといい」

オディオの声が聞こえてくると、待っていましたと言わんばかりにセッツァーはすかさず名簿と地図を出してメモの用意をする。
夢に生きる男、セッツァーは何も世界一強い男を目指している訳ではない。
彼が戦わなくても人は死んでいくし、最後まで残るためにはできるだけ体力の消耗も避けたい。
つまり、彼が戦わなくてもどれだけの人が死んだか分かる死者の名前の宣告は非常にありがたいものだ。
禁止エリアのチェックも終わり、次は待ちかねていた死者の名前が告げられる。

デイパックの中からチンチロリンのドンブリを取り出す。
右手の中で転がしていたサイコロを三つ、ドンブリの中に投げる。
陶器とサイコロのぶつかりあう音が聞こえる。
チンチロリンとは、ドンブリまたは茶碗の中にサイコロを三つ転がし、出た目で勝負するギャンブルだ。
たった三つのサイコロに己が運命託し、競う世界。
114銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:14:24 ID:4x5FZtdP
 カノン 二二三。
 フロリーナ 六六一。

サイコロを振るのに特に意味はない。
ただ、ギャンブラーとしての習性が無意識にそうさせているだけだ。
名簿で該当する名前を見つけては、セッツァーは黙々とその名前に斜線を入れると同時にサイコロを振る。

「エドガー・ロニ・フィガロ」

その名前を聞いた瞬間、セッツァーはニヤリと、口の端に笑みを刻んだ。
サイコロの目が示した数を見て、セッツァーはそれ以降サイコロを振るのを止める。
それはエドガーの現状をピタリと言い当てたかのような目だった。



◆     ◆     ◆



オディオの声が聞こえなくなってからも、セッツァーはしばらくその場に座り込んでいた。
エドガー・ロニ・フィガロというかつての仲間のことを考えているのだ。
誰が殺したかは知らないが、ありがたいことだ。
そう思わずにはいられない。
あの男は本当に厄介だったからだ。
エドガーは一国の王とは思えないほどの気さくな人柄と、王に必要とされる資質を見事に兼ね備えていた。
国民にとても人気があったらしいが、セッツァーも納得できるものがある。
無類の女好きではあるが、ああ見えて弟想いの一面もあるのだ。
そして、忌々しいこの首輪を何とかできてしましそうなほどの知識を有している。
ただ強いだけの輩とは違って、エドガーにはセッツァーの夢の邪魔になりそうな技能を数々持っていたのだ。
思えば、個性の強い仲間たちの中でも、エドガーはいつも中心にいて皆を纏め上げていた。
王としての判断力と決断力、豊富な知識、気兼ねなく付き合える人柄、いざという時の行動力、戦闘力、集団を統率する能力。
敵に回せば、これほど厄介な人物もそうそういまい。
王というだけあって、謀略や偽計にも強い。
旧知の仲というのを利用して、後ろから刺すというのが難しいように思えた。

そのエドガーが死んだ。
顔も知らぬ他の10人の死よりも、エドガーたった一人の死が果報であった。
マッシュあたりは泣いているだろうが、セッツァーにとっては歓迎すべき事態だ。
115銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:15:05 ID:4x5FZtdP
「こんなことが無ければ、アンタとはいい友人になれたかもしれないが……」

出た目は、一二三のヒフミ。 倍払い。
チンチロでは一番出してはいけない目だ。

「これがアンタの出した目さ」

エドガーは殺し合いというギャンブルの中で、命という賭け金を失ってしまったのだ。
敗者は顧みられることなく打ち捨てられる。
それがギャンブルの世界の掟だ。

「あの酒を全部飲んでしまったのは惜しかったな」

老酒という初めて飲んだ酒は珍しさもあってか、腐っていたセッツァーの胃にも染み渡っていた。
ついつい全部飲んでしまったが、今はその無計画さを少しだけ反省する。
こんなことなら、全部飲んでしまわずにとっておくべきだった。
エドガーの死に乾杯、といきたいところだったが無い酒は飲めないので仕方ない。

「さようならだ、エドガー」

死者の国にいるであろうエドガーに向けて、右手でグラスの形を作って乾杯の仕種だけをする。

「嫌いじゃあ、なかったよ……」

誰よりも高い場所で、誰よりも風を感じるために、セッツァー=ギャッビアーニは夢を追いかけ続ける。



◆     ◆     ◆



ただ、ひたすらに。
ただ、がむしゃらに。
銀の髪をした男は捜し求める。

疲れというものを無視して、木々を掻き分け、どこまでも愚直に。
北へ東へ西へ南へ、ありとあらゆる方向に動く。
それは最早彷徨うと言った方が正しいかもしれない。
額から流れ出る汗で、美しい銀髪が額にへばり付く。
塗られていた気品のある香油はすでに汗で流れ落ちてしまった。
最早息を整えることもできずに、口は激しい呼吸を繰り返す。
男は決して、動き続ければこうなるということも知らぬほど頭が悪いのではない。
このままでは、誰かに襲われた際、十分な迎撃ができぬ可能性もある。
体中だって、さっきから立ち止まって休憩することを要求している。
それでも、男は立ち止まらない。
ロザリーという、世界で一番美しい4つの文字を胸の中で唱えながら、男――デスピサロは進む。
勇者の仲間である女から、ロザリーが生きているという言葉を聞いて、こうしてピサロは休憩すら惜しんで動き回っている。
116銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:15:44 ID:4x5FZtdP
その言葉を肯定することはできなかった。
かと言って、否定する材料もない。
今にして思えば、名簿を消し飛ばした自分の短慮がいけなかった。
結果として、今のピサロの状況が出来上がったのだ。
念のために、聞こえてくるオディオの言葉に耳を傾けたが、そこにもロザリーの名は聞こえない。
こうして走り回っている間にも、あの言葉が口からのでまかせではないかという疑問も抱く。
ひょっとしたら今の走り回るピサロの醜態をどこかで見て、笑い転げてるのかもしれない。
もしもその時は、八つ裂きにしても飽き足りない。
ようやく会えた人間には、名簿を燃やされてしまいコケにされてしまった。
人間が持っていたデイパックを念のために探したが、やはり見つからず、怒りのままに燃やした。
用途不明の道具だけは乱暴に回収して、こうしてまた走り回っているのだ。
世界を地獄の業火で焼き払っても収まらぬほどの怒りが溢れ出そうになる。
何もかもが今のピサロを嘲笑っているかのようだった
しかし、それでも歩みを止めることはできない。
万が一、億が一、兆が一、それがあれば、ピサロは千載一遇の機会を得たことになるからだ。
もう一度ロザリーをこの手に抱けるのならば、もう一度ロザリーの笑顔が見られるのなら、何だってする。

思い出す。
始めは、物珍しい動物を見るかのような気持ちだった。
森の中で人間に虐待されていたエルフを見つけ、保護をした。
襲っていた人間は見るからに盗賊風の格好。
てっきりピサロはそのエルフの娘に礼を言われるかと思いきや、何も殺さなくても……、と言われたのだ。
その言葉にピサロは気分を害するどころか、面白いことを言うものだと、このエルフの娘に興味を抱いた。
地上で世話になっているロザリーヒルという村の名前にちなんで、名前のないエルフにロザリーと名づけた。
魔族とも人間とも違う種族であるエルフは森の中で生き、他の種族に姿を見せることは滅多に無い。
そう、始めは好奇心だったのだ。

しかし、出会いを重ね、逢瀬を繰り返すうちに、ピサロもロザリーも互いを想うようになっていた。
人間に対する評価だけは一致しなかったものの、二人の仲良くなる速度はあっという間だった。
そして、これからという時にピサロは人間を滅ぼすため、ロザリーの元を離れ、悲劇は起きたのだ。
どうしてロザリーに対する警備をもっと万全にしておかなかったのか悔やまれる。
だが、こんな殺し合いの場でもだ。
ロザリーに会えるのなら、感謝せねばならない。
腕の中でどんどん冷たくなっていくロザリーをもう一度見ないようにするため、ピサロは走り続ける。

そんな時だ、銀の交差が起こったのは。



117銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:16:26 ID:4x5FZtdP
◆     ◆     ◆



ようやく腰を上げ、移動を開始しようとしていた銀髪の男セッツァーの前に、同じく銀髪のピサロが出会った。
襲ってこないようなので、挨拶をしようかと思っていたセッツァーよりも先に、疲労を隠し切れない声で要求する。

「また人間か、まぁいい。 名簿を寄越せ」

いきなり有無を言わさぬ要求だ。
しかし、口調は命令形だが、肩で息をしているせいか威厳に欠ける。
セッツァーは武器を構えていた武器を下ろし、とりあえず友好的に対話を試みてみることにした。

「おいおい、いきなりだな。 それよりも――」
「早く渡せといっている。 渡す気がないのならば、貴様の素っ首を叩き落としてから奪ってもいいのだぞ?」

取り付く島も無いとはこのことだ。
ピサロはセッツァーの名前にも素性にも興味はなく、ただ名簿を渡すことを要求している。
交渉が決裂した時のために、ピサロは手に武器を握っている。
セッツァーも、ピサロの力ずくという言葉が嘘ではないことを物腰から察し、考える。

油断なく構えられたピサロの刀は妖しく輝いている。
汗だくなのが残念だが、文句なしに美丈夫と言える整った顔立ち。
隙らしい隙はなく、少なくとも戦闘に関しては素人ではないどころか、かなりのものでありそうだ。
見るからに疲労の極致といったところだが、一撃の下に屠るといったことは難易度が高そうだ。
体力を温存しておきたいセッツァーにとって、戦うのはできるだけ避けたい。
もちろん、やれると思ったら躊躇なくやるが。

名簿は確かに読んでるし、必要ないと言える。
知っている仲間の名前もすでに暗記済みだ。
トルネコから奪った分のものもあるし、一個渡したところでセッツァーには何のデメリットも無い。
ピサロに襲われることを考えると、渡した方がいいだろう。
だが、ただ渡すだけでは面白くない。

「渡してもいいが、条件がある」
「何だと?」
「名簿はここにある。 代わりにそっちも何かくれないか?」

セッツァーが手にしたのは、ピサロも見覚えのある名簿。
確かに、ピサロが深夜に消し飛ばしたものだ。
ピサロが駆け寄ってセッツァーの手から奪い取りそうになる。
が、その前にセッツァーは先手を取る。
ファイアの魔法を唱えて、名簿が燃えない程度に距離を離して、今度はセッツァーが要求する。
118創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 04:16:54 ID:uhFSCYvI
 
119銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:17:07 ID:4x5FZtdP
「悪いが、こっちもボランティアや慈善活動家じゃないんでね。 タダで物をやる趣味はないぜ」

最初に出鼻を挫かれた分、今度はセッツァーがイニシアチブを取ろうとする。
トッシュやヘクトル、ブラッドに対して武器を提供したり、回復魔法を唱えてやったのは、セッツァーなりに利益があったからだ。
例えばヘクトルには見知らぬ人を回復してくれるいい奴だと思っただろうし、トッシュも武器を提供したことで、セッツァーに対して警戒を解いただろう。
さらに、エドガーやケフカのことを嘘の情報を込めて伝えるという目的もあったし、ああいった人物にはできるだけ親切に接していた方がいい。
だが、今回のピサロの場合はどうであろうか?

名前を名乗ることすらせず、要求が受け入れられなければ襲うとまで言っているのだ。
これで無償で名簿を渡したとして、この男はセッツァーに感謝するであろうか?
答えは間違いなく否。
名簿を渡せと言っていることは人探しをしているのに間違いないだろうが、名簿を確認した後、ピサロは迷いなくここから去るであろう。
殺すつもりなら、最初から襲ってくるからだ。
そうなれば、もうピサロはセッツァーのことなど思い出さないだろう。
ピサロの記憶の中でセッツァーという男は認識されず、路傍の石のような扱いになってしまう。
それではメリットも何もない。
第一、セッツァーはまだピサロの名前すら聞いてないのだ。
なら、そのような人物とは友好関係を結ぶのは考えないようにする。
今までのように信用を得ることをせず、単純な物々交換を持ちかける。
もちろん、できるだけふんだくるつもりでだ。

「よかろう、その方が早い。 人間ごときに借りを作るのは意に沿わないからな」

一方、ピサロも要求を突きつけてからセッツァーが名簿を取り出すまで、今すぐにでも力ずくで奪い取りたくなるのを必死に抑えていた。
先ほどの炎を操る少年のように、破れかぶれになって名簿を燃やされては困る。
その経験があったからこそ、ピサロはなんとか自制をしていた。
ロザリーの存在を確認するため、逸る気持ちを抑えつける。
そうして、セッツァーが名簿に火をつけそうになった時は驚いたが、取引ならむしろ望むところだ。
人間のような生き物に借りを作ることなど屈辱だし、無償の善意で何かしてくれる人物よりは対価を要求してくれる方がありがたい。
それでロザリーの存在が確定すれば、今すぐにでも捜索を再開するし、いなければ腹いせに目の前の男を血祭りに上げるだけだ。
デイパックをセッツァーの方に放り投げる。

「水でも食料でも、好きなだけ持って行くがいい」

両手に持ったヨシユキとヴァイオレイターだけはそのまま所持し、その他の道具が全て入ったデイパックを渡す。
セッツァーも些か驚く。
ピサロの譲れないギリギリの線を見極め、法外な相場で渡そうとしていたところを、アッサリと全部渡されてしまったのだ。
しかし、セッツァーもめざとくピサロの手に持たれたヴァイオレイターに目をつける。
120銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:17:51 ID:4x5FZtdP
「そっちの短い方の獲物は……」
「……欲しいのか?」

その瞬間、ピサロの声が一段低く響いた。
空気が一瞬凍ったかのようだった。
次にもう一度同じことを言えば殺すというピサロの無言の脅迫。
ピサロもロザリーを見つけた場合、守るべき武器が必要だからだ。
これとヨシユキだけは渡せない、何があろうとも。
セッツァーの目に、ピサロの決意と殺意が伝わる。
気圧されそうになるほどの、圧倒的な殺意だ。
セッツァーも一瞬、鳥肌が立つのを抑えられなかった。
前傾姿勢、すなわち戦闘態勢を取り、もう一度ピサロが言う。

「欲しいのかと、聞いている」
「……冗談だ、止めとくよ」

首を振って、セッツァーは否定する。
今から勝負して勝てないとは思わないが、負けないと断言できる自信もないからだ。
この男には何か強く執着するものがある。
それを知っててこれだけ無様な姿で名簿を、ひいては名簿に載っている人の名前を探しているのだろう。
そして、それを全力で守るために、何でもするつもりなのだ。
勝てないと分ってても、例えば子を守る母のように必死に、執念で敵に喰らいつく。
そしてそういうタイプとは、得てしてしぶとい。
ピサロの強さもある程度読めるセッツァーにとって、あまり手合わせを願いたくない組み合わせだ。
思考の読み合いを放棄して、ただひたすら前に出てくるトッシュと同じように、こういうタイプと戦うのはデメリットの方が大きい。

だが、それ故につける隙はある。
それさえ分れば、セッツァーもやるべきことはよく自ずと理解できる。

投げられたデイパックを掴み、セッツァーは中身を探ってみる。
そして、支給品らしきものを二つもらうことにした。
一つはピサロの元からの支給品。
もう一つはオディ・オブライトという人物の支給品だったものが、複数の人物の手を介して現在はピサロの手に渡ったものだ。
二つともピサロには必要ないものだったらしく、交渉は成立した。
さすがに地図やコンパスをもらう必要はない。
水や食料は消耗品として必要不可欠なものだし、もらっても不自然ではない。
しかし、人探しに必要不可欠であろうコンパスや地図をもらうと、ピサロの逆鱗に触れる可能性がある。

「さて、こんなもんでいいか……」

名簿という無料で手に入ったもので、これだけふんだくったのだ。
セッツァーは惜しげもなく名簿を手放し、ピサロに放り投げる。
待ちかねていたかのように、ピサロが無造作に投げ捨てられた名簿に駆け寄る。
しかし、セッツァーのやるべきことはまだあった。
いずれこの男と戦わねばならない時が来た場合に備え、探りを入れるのだ。
ピサロが落ちていた名簿に手をかけたその瞬間、セッツァーが口を開く。
121銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:19:00 ID:4x5FZtdP
「女か?」

多分に嘲りを含んだ問いをピサロに投げかける。
人類の半分は女だ。
帰納的に、人探しをしているとはすなわち、探し人は半分の確率で女である。
それが決して見当外れの推測ではないことを、セッツァーは半ば確信していた。
セッツァーの読みは当たる。
その声を聞いた瞬間、所詮貴様も下卑た輩ということかと、ギロリとピサロはセッツァーを睨み付ける。

「下種めが……!」
「おいおい、それじゃ当たってるって言ってるようなもんだぜ?」

ついに、セッツァーはピサロの隙を見つける。
執着の対象が女なら、その女をどうにかしてやればいいのだ。
人質に取るもよし、意図的に遠ざけて決してピサロと探している女が会えないようにすれば、疲労も省みず探し続けるピサロはいつかきっとガス欠を起こす。

睨み付けた後、もどかしく名簿に視線を走らせていたピサロはある一点を見つけた途端、弾かれたように飛び出す。

端からここに誰も存在しなかったのような全力疾走に、女の名前などできる限り情報を絞り取っておきたかったセッツァーは肩を竦める。
追いかけることもなく、おお速い速いとセッツァーは余裕の笑みでピサロを見送った。

結局セッツァーはピサロの名も、ピサロの捜している女の名前も知ることはできなかった。
だがそれはそこまで問題ではない。
参加者は減ってきているし、あれだけの見目麗しい男だ。
特徴的な耳の形も相まって、聞き込みをする際にも困らないだろう。
セッツァーも今回何か損をした訳ではない。
依然、彼の目の前にさしあたっての障害はないのだ。
手に入れたアイテムの内の一つ、メンバーカードを眺める。
セッツァー持っているシルバーカードと形は同じで、使われている材質が違うだけだ。
シルバーカードはその名の通り銀だが、金色に光っているからにはこちらは金か。
見た目が気に入ったので、セッツァーはそれを懐に忍ばせておく。

最後にもう一度サイコロを振った。
出た目は一が三つのピンゾロ。最高の目だ。
それはピサロの運勢を示したものなのか、セッツァーの運勢を示したものなのか、それはセッツァー本人のみが知る。
122銀の交差  ◆SERENA/7ps :2010/02/25(木) 04:19:57 ID:4x5FZtdP



【C-6 森林 一日目 日中】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。激怒
    疲労(大)人間に対する憎悪、自身に対する苛立ち
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:基本支給品一式、データタブレット@WILD ARMS 2nd IGNITION
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:ロザリーの捜索。(すべてにおいて優先)
2:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿を確認しました。ロザリーが生きていると知りました。
※参戦時期は5章最終決戦直後
※休憩も取らずひたすらロザリーを探しているため、このままでは近いうちにダウンします。

【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:健康(酔いは覚めました)
[装備]:つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シルバーカード@FE 烈火の剣、メンバーカード@FE 烈火の剣
    シロウのチンチロリンセット@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)、オディ・オブライトの不明支給品1個(確認済。ピサロには必要なかったもの)
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:扱いなれたナイフ類やカードが出来れば欲しい
2:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレーと情報交換をしました。
123創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 04:20:36 ID:uhFSCYvI
 
124代理 :2010/02/25(木) 04:24:21 ID:uhFSCYvI
171 名前: ◆SERENA/7ps 投稿日: 2010/02/25(木) 04:22:58 ID:LHdkhVEc0
最後にさるった……

投下終了しました。
支援ありがとうございます。
では矛盾等ありましたら指摘願います。
125創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 20:01:07 ID:XIzUH4vN
投下乙!
セッツァーのギャンブル勘冴えてるなー
悲しきランニングマンピサロはぶっ倒れる前にロザリーに会う事が出来るのだろうか……?
でもこのペースだとぶっ倒れるよね、間違いなく。
126創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 00:38:26 ID:IwyUo57k
むしろぶっ倒れれば、ロザリーの配信が見れる可能性上がって得じゃね?
127創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 04:38:14 ID:TAleS4VH
◆KGveiz2cqBEnさん投下乙! ミネア……。
開始当初から言われていたメガザルだけど、演出がとてつもなく綺麗。
>>91を見た瞬間に鳥肌がたった。
アキラが足掻くんだけど報われなさすぎw しかもリンまでやばいんじゃないのかコレ。
マーダーコンビは相変わらず不穏な空気。成果はあげてるはずなんだけどねえw
この二人は序盤で死亡するもんだとずっと思ってたw
ミネアの外見がどう影響するのか見もの、GJ!!!

◆SERENA/7psさん投下乙!
チートマーダー相手に交渉をする銀髪の勝負師……お前まさかアk(ry
ピサロがついにロザリーの存在を知ったか。意外と近くにいるんだよなあw
もし出会えたらもしかしたら対主催転向も、ないわけではない! ……よね?
セツギは個人的には一番怖いマーダーだな。このロワ意外と脳筋多いからさw
重要そうなフラグが散りばめられた話。今後何度も読むことになりそう、GJ!!!
128ですろり〜イノチ〜  ◆yp/iQjr9M2 :2010/02/28(日) 03:46:37 ID:ALHcxBmb
お待たせしました、投下します
少し長めなので支援をよければお願いします
129ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:48:39 ID:ALHcxBmb
命の価値は平等なんかじゃない。

旅をする中、何度もそんな言葉を耳にした。
清く正しくなければならない勇者としては唾棄すべき理論だ。
しかしユーリルは口では違うと反論しつつも、心の底から否とは言い切れなかった。
彼自身が何よりも尊い命として生かされた存在だからだ。
命の価値が真に平等であるのなら、あの日あの時故郷の皆は勇者を守って死ぬ必要はなかった。
必要なんてなかったんだ。

ユーリルはそのことを認めたくなかった。
血はつながっていなくとも優しく暖かく育んでくれた父と母。
魔族の襲撃に怯えながらも恐怖を表に出すことなくよき隣人として接してくれた村の人達。
好きだった、もしかしたら初恋だったのかもしれない幼なじみ。
そんな本当に大切だった故郷の皆の死を意味のないものだとは思いたくなかった。

けれど、今になって考え直す。
やっぱり命の価値は平等だったのだ。

平等に――無価値だったのだ。

気付くのが遅すぎた。
馬鹿みたいだ。
命の価値も知らず、知ろうともせず、闇雲に守ってきたなんて。

ああ、そうだ。
そうだとも。
“イノチ”には、価値なんて無い。
それそのものには、何の価値も無い。
よく言うじゃないか。
大事なのは生まれじゃない、何をしてどう生きるかだ、って。
その通りなんだ。
何かを“する”、そこに価値がある。
何が“できる”か、そこにこそ意味がある。
それは……イノチの価値じゃない。

――チカラの価値だ

生きていると“働ける”ことがあるから生きていた方がいい。
その程度。
分かりやすく言えばその人じゃなくても同じ作業をしてくれる代わりがいれば困らない。
例えばそう、世界を救うのが勇者とされた人間じゃなくても構わないように。
その代わりは命あるものでなくとも構わない。
マシンでもゴーレムでも、命令を聞いてくれて能力のある存在なら何でもいいのだ。
……誰でもいいのだ。
130ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:50:43 ID:ALHcxBmb

「殺す」

それはあの聖女だって同じこと。
彼女が死んだところで代わりなんていくらでもいるだろう。
だったら殺しちゃいけない理由なんて無い。
勇者でなくなった身に人殺しを咎められる謂れはない。
人間は物。本来、何の価値も無いただの物体。
それを斬り殺すのも、草木を刈るのも本質的には何も変わらない。
命とはその程度のもの。

「――見つけた」

ただ一つ、違うところがあるとすれば。

「消えてくれ、アナスタシア・ルン・ヴァレリアっ!!」

そこに感情が絡むか絡まないか。
それだけのことだった。


                                ▼



――INTERLUDE 最強証明――

赤が、世界を侵食していく。
街も港も海さえも赤く染まりゆく。
煌めく赤。燃え上がる赤。豪炎の赤。
赤い世界を引き連れているのは黒髪の男だった。
凝り固まった憎悪と憤怒を人型に押し込めたどす黒い男だった。

「面白いな、おれ以外にも“これ”ができる奴がいたとは」

刀身についた血を払うようにルカ・ブライトが火の粉をまき散らせる。
ユーリルを捨て置いた彼とユーリルを探していたマッシュ達3人が遭遇するのは必然だった。
初撃とはいえルカに手を抜くなどという発想はない。
必殺の念をもって紋章剣を発動させ三人丸ごと葬る気で薙ぎ払った。
その意に反して煉獄の剣は誰一人飲み込むこと叶わず宙を赤く染めたのみ。
魔剣の襲撃を食い止めた技の名前は“ひらいしん”。
本来雷を逸らすはずの道具の名を冠した技が炎さえも逸らしたのだ。

「……っ!」

それを為したクロノの表情に安堵はない。
打ち払ったはずの炎がクロノ達を取り囲むように燃えている。
即ち相殺せんと放った極光の刃は炎の魔剣を殺し切れなかったということ。

「気をつけて、マッシュ、日勝。こいつ、かなり強い」

クロノの魔力は戦士にしては十分実戦で使える程には強い。
身につけて日は浅いとはいえ普段から連携技としては使い慣れている。
しかも二人の仲間との特訓で物にしていたのに。
これ程容易く押し負ける等よっぽどの相手でなければありえない。
冷や汗を流しつつも魔力供給量を倍化させより一層剣を輝かせる。
131ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:52:17 ID:ALHcxBmb
「ふん、クズでもその程度は分かるか。とはいえ分かったところでどうしようもあるまい。
 貴様ら三人が束になったところで、このおれに勝てはしない!!」

ルカも再び天より炎の龍を招来させる。
孤を描きルカへと宿る紅蓮の龍の数は二。
一匹でもサンダガソードを上回る魔力からなる炎は確かに脅威だ。
けれどかってラヴォスを倒す旅をした時がそうであったように、今のクロノにも頼り甲斐のある仲間がいる。

「へっ、言ってくれるぜ。勝てないかどうかはやってみねえとわかんねえだろ」
「だがその前に一つ質問に答えてもらおうか―。てめえ、まさかユーリルにも手を出しちゃいねえだろな?」

クロノの左右を固める二人。
日勝が臆すことなく不敵な笑みを浮かべ、マッシュが最も気がかりだった問いを放つ。
実はユーリルは街を出てすぐアナスタシアと出会った背塔螺旋に最寄の小屋へと転移していた。
そのことを知らないクロノ達からすれば、ユーリルらしき足跡を追って行った先にルカがいたのだ、心配しないはずがない。

「ユーリル? 知らんな、そんな奴は。……む? なんだ、あのゴミのことか。
 そうかそうか、貴様達はあのゴミの仲間か! はははははははははははは!!!
 聞いたことがあるぞ。ゴミは豚の餌になると!!
 なるほどクズはクズなりに豚どもを呼び寄せる役に立ったというわけか!!」
「……ゴミなんかじゃない。人間は、人間はゴミなんかじゃない! ユーリルは俺たちの仲間だ!」

生み出した熱風に黒髪とマントを翻らせ狂皇子は嘲笑う。
仲間を侮辱された怒りをぶつけてくるクロノにも歪んだ笑を濃くし吐き捨てた。

「何を憤る必要がある? 強い者は全てを奪い、弱い者は死ぬ。それが、この世の仕組みだ」
「そうやってお前はユーリルの命も奪ったっつうのかよっ!」
「勘違いするな。あんなクズ、殺す価値すらない」

安堵する三人、しかし続くルカの切り出しに再び緊張せざるをえなかった。

「俺がこの地で殺してきたのは……」

思わせぶりに一拍の間をおくルカ。

「ティナ・ブランフォード、都市同盟の女、メガネの女、機械仕掛けの女、それだけだ」
「「!?」」

男から語られた大切な仲間の名前にマッシュが僅かに動揺し、幼なじみを思わせる少女の死にクロノも息を飲む。
刹那とはいえ明らかな隙だ。
元よりそれを狙って情報をくれてやったルカが逃すはずがなかった。

「揺らいだな、馬鹿めがっ!!」

身に宿した炎を吹かしが踏み込む。
マッシュもクロノも歴戦の戦士だ。
本来ならすぐさま気を持ち直し回避へと移れただろう。
だがルカを前には許されない。
たかが一瞬とはいえ、息を吸うように人を殺してきた狂皇子には二人を始末するには十分過ぎる。
半瞬、ルカの刺突と狂笑は既にクロノの眼前。
返す刃でマッシュを貫けばそれで終りだ。
132ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:53:57 ID:ALHcxBmb

「させるかよ!」

そうはさせじと横合いから伸びた腕が剣を掴む。
炎を宿した刃だ、熱くないはずはない。
しかしそれを為した男は焼け爛れた手を気にすることなく、より力を込め素手で剣を握り締める。
あろうことかそのまま握り砕かんとしているのだ。
流石のルカも武器を失うわけにはいかず、バックステップを踏み後退。
その下がった分だけ意趣返しとばかりに炎を纏った男が前に出る。
日勝だ。
マッシュから学んだ鳳凰の舞を応用し、咄嗟にクロノを庇ったのだ。

「貴様!!!小ざかしいまねを!!」

自分の猿真似とも思える技で邪魔をした日勝をルカが忌々しげに睨みつける。
神をも射殺さんとする狂皇子の瞳に日勝もまた怒りで返した。

「強くなろうとする事、そいつは決して悪いこっちゃねえ。
 力があるからこそ、高みを目指すからこそ得られるものもいっぱいあるのは知っている……」

日勝は思い出す。
最強を目指して戦いに明け暮れた日々を。
思い出と共に刻んだ強敵たちの拳の数々を。
彼らは強かった。
皆が皆一歩間違えれば負けていたのは日勝の方だったと素直に認められるレベルの好敵手だった。

日勝は視線をおのが右拳へと落とす。
マッシュ直伝の闘志の炎で護られていたはずの拳は肉が焼け落ち白い骨さえ浮かんでいた。
燃え尽きなかった方が奇跡。
それ程の火力をルカの炎は誇っていたのだ。
間違いなく強者。
今まで戦ったことのある誰よりも強い相手だ。
だけど。

「けど、けどなあ!テメエは断じて最強なんかじゃねえ!」

単に強いことは最強であることに直結しない。
拳を合わせても湧き上がる熱さがないのだ。
楽しくて、楽しくて、互いに笑いあいながらボロボロになるまで戦って認め合った好敵手達とは違う。
これはオディ・オブライトと同質のものだ。
かの殺戮者を軽く上回る殺意と憎悪で凝り固まった禍々しき刃だ。
日勝には認められない。
こんなものが強さだと現代最強の漢は断じて認めるわけにはいかない!

「教えてやる、俺が、俺の目指す真の強さをっ!」

啖呵を切った日勝の拳を光が包み込む。
習得したばかりのオーラの力ではない。
もっと別の魔法の力。万物を癒す優しい力。

「俺の、俺たちのだろ、日勝」

マッシュがケアルガを施しつつウインクを投げてよこす。
クロノも無言で大きく頷く。
日勝は最強の仲間達に笑顔で応えた。

「そうだな、俺が俺たちが「「「てめえをブッつぶす!!」」」

異口同音の声がゴングとなり、激戦の幕が切って落とされた。
133ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:56:02 ID:ALHcxBmb


                                ▼


「ちょこ達これから教会に行くの! ひとのこいじをじゃまする奴は……なんだっけ?」

ユーリルの襲撃からちょこがアナスタシアを庇う形で始まった戦闘はあまりにも一方的に進んでいた。
当たらない、効かない、超えられない。
一合ごとに幸せを犠牲にしてまで手にいれたユーリルのチカラが否定されていく。
どれだけ拳を振ろうとも少女の身体を貫くこと叶わず。
どのような魔法を放とうともより強力な魔法に押し返される。
明かに本気を出していない相手に文字通り遊ばれていた。

(冗談じゃない)

水流に打ち消されたメラも。
巨岩の槍の前にあっけなく潰されたギラも。
異形の柱からの光爆の数分の一程度の威力しか出せなかったイオラも。
どれもこれもユーリルが寝る間も惜しんで習得した呪文だった。
恐怖を押さえ込んでモンスターと何度も戦ってその果てにやっと得た力の数々だ。
それが大した時も生きていないような幼い子どもに何てことなく足蹴にされるのが堪らなく悔しい。
許せるはずが無かった。認められるはずが無かった。
こんな、こんな、苦しいことも悲しいことも知らないとばかりに無邪気な笑みを浮かべる存在を!

(死ね)

大振りの拳が空を切る。

(死ね、死ね)

分身したちょこの蹴りがユーリルを地に這わす。

(死ね、死ね、死ね)

追撃の不死鳥をマホステで何とか凌ぐも、守ってばかりでは勝てるわけがない。

(死ね、死ね、死ね、死ね)

そしてユーリルに縋れる手は最早一つのみ。

(速く死んでくれ!)

ギガデイン。
勇者のみに使えると信じていたユーリルが一人で撃つことのできる最強の呪文。
勇者の特権性が失われようと、その力までもが減衰したわけではない。
万魔に振り下ろされる破邪の鉄槌は健在なはずだ。
けれどユーリルは一向に召雷呪文を唱えようとはしなかった。
勇者が生贄に等しいと気付かされた今、生贄の証である呪文を進んで使う気にはなれなかったのだ。
それに恐怖もある。
もしその最後の拠り所となる威力さえ否定されたら?
勇者のみに使えるという特権性を否定されてしまった雷呪文が、その力さえ否定されたとしたら?

「ああああああああああああああああああああああっ!」

破れかぶれに拳を叩き込む。
ひょいっと少女に避けられるががむしゃらに打ち続ける。
一撃、二撃、三撃、四撃。
134ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:56:57 ID:ALHcxBmb

「わーいのー! イーガおじさんみたいなのー」

一発足りとも当たらず、どころか強化した慣れぬ腕力に振り回されたユーリルは大地の起伏に足を取らてしまう。
無様に転がりゆく中、少女に合わせて揺れるデイパックの覗いた口から、確かに見えた。
特徴的な刀身を持つ一振りの剣が。
天空人の血を引く者の接近に伴い光り輝き使えと訴えてくる愛剣の姿が。

(僕は、何を迷ってたんだ……?)

旅の中何度も何度も命を救ってくれた剣の輝きに感じたのはかってのような心強さではなかった。
勇者の為の剣が勇者を辞めた人間の心を推し量ることなく変わらず尻尾を振り続けている。
その程度にしか思えなかった。

振り返るのは数時間前の光景。
勇者でもない人間が雷を操る悪夢の絵図。

雷は特別な勇者の証なんかじゃない。
ただのチカラだ。
ならば何を躊躇う必要がある。
利用すればいいのだ、雷も、剣も。

ユーリルの濁った目に光が宿る。
暗い、暗い炎が燃える。

「来たれ、覇者の雷」

詠唱に従い天を黒き雷雲が覆い隠す。
ほれ見たことか。
ユーリルは十八番を温存していた愚を嘲笑う。
勇者を辞めた筈の彼に未だにデイン系の魔法は応えてくれる。
それこそがこの魔法が勇者の証なんかじゃないという証拠だ。
いや、もしかしたらもしかすれば。
ユーリルは考え直し、濁った瞳でちょこを写す。
可愛らしい少女だった。
だがそれが、こんな存在が。
ただの人間の少女であるはずがない。
ユーリルは知っている。
彼女を表すに相応しい強さと恐ろしさ、底知れなさを持つ存在を。
聖なる雷が勇者を辞めた者に力を貸してまで滅ぼそうとしてもおかしくない巨悪を。

(魔王だ……)

家族を、村の人々を、幼馴染を、幸福を、人生を。
全てをユーリルから奪った存在。
それでいて尚、“勇者”であったが故に恨みを晴らせず終った怨敵。
ユーリルの大切な人たちを生き返えらせることもできた世界樹の花で一人幸せを取り戻した男。

ふつふつとそれまで封じ込めてきた憎悪が湧き上がる。
アナスタシアへの憎しみに誘発されるように地獄の釜は蓋を開け、かつてと今の憎しみを混ぜ合わせる。
135ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:57:59 ID:ALHcxBmb
(こいつは、魔王だ……)

ユーリルの目にちょこはもう人間として写っていなかった。
彼に見えているのは進化の秘法で醜くグロテスクに変化したデスピサロそのものだった。

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ! 魔王!!」

びくりと、少女の身体が一瞬硬直する。
これまで掴むことの無かった好機にユーリルは詠唱を中断し手を伸ばす。
少女にではない。
最強バンデージによる筋力増強効果があろうとも少女を打ちぬくには足りなすぎる。
せめてアリーナなりの格闘技術がユーリルにあれば話は別だが、無いものねだりだ。
ユーリルが使うのはそこにあるもの。
少女の持つデイパックの中身にこそ用が有る。

「まさか!」

ちょこに戦いを任せ、離れた場所に避難していたアナスタシア声をあげる。
彼女にはユーリルの行動に心当たりがあった。
互いの支給品を検分して入れ替えたときまず最初に彼女が我が物としたのは絶望の大鎌。
殺し合いを勝ち抜くにおいて武器が最も重要なのは言うまでも無い。
ただ何も有用な武器は絶望の鎌だけだったわけではなかった。
むしろもう片方の武器の方が紛いなりにも剣を得物とした事のある少女には扱いやすかっただろう。
しかしアナスタシアは使い慣れた刀剣類よりも癖のある大鎌を選んだ。
気に入らなかったのだ。
鍔に刻まれた“英雄”に通じる文句が。
だがもしも、もしもアナスタシアが嫌った言葉が指し示していたのが“勇者”のことだったなら。

「ちょこちゃん、デイパックを守って!」

アナスタシアの絶叫が空しく響く。
ちょこは普段の快活さが嘘のように唖然とした顔のまま微動だにしない。
あっけなく奪われるデイパック。
ユーリルは手馴れた感触の剣を抜き放ちちょこへと突き立てる。
それまでいかなる攻撃も寄せ付けなかった少女の肌をあっけなく異形の刃が貫いていく。
苦悶の声を上げるちょこ。
少女の頑強さに苦しめられ続けた勇者はその悲痛な声さえも無視し中断していた呪文を完成させる。

「ギガデイン!」

空を引き裂く音と共に稲妻の竜が寸分違わず剣へと降臨。
雷龍がうねり狂いちょこを体内から灼き尽くす。
変則型ギガソードといったところか。
幼き身体が白銀の光に蝕まれ痙攣する。
突き刺したままの剣を通してユーリルにも振動が伝わってくる。
その振動はしばらく続き、そして止んだ。

「はは……」

ユーリルの口から乾いた笑みが零れた。
最初は小さく、次第に大きく。

「はははははははは、あははははははははははははは!」

彼は、嗤っていた。
抑圧していた感情を解き放ち魔族を打ち破った暗き愉悦に酔っていた。
次はお前だ。
ユーリルは剣をアナスタシアの方へと向ける。
刃を伝った少女の血はアナスタシアが目を背けた柄に刻まれた語句をくっきりと浮かび上がらせていた。
136ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 03:59:28 ID:ALHcxBmb

MI TI BI KA RE SI MO NO――導かれし者

“生贄”である“英雄”と“勇者”を虚飾するその語句を。





導かれし者などではない。
アナスタシア・ルン・ヴァレリアはただの人間だった。
一人の夢見る少女だった。
年頃の女の子がそうであるように白馬の王子様にだって憧れていた。
いつか自分の前に素敵な人が現れる。
ピンチな時に颯爽と駆けつけてくれる。
そんな取り留めのないことを夢見ていた。
分かっていた。
下級とはいえ貴族だ。
王子様が物語りの中の存在みたいに素晴らしいものなんかじゃないことくらい百も承知だ。

(でも夢くらい見たっていいじゃない)

そんな風に思ってしまうから馬鹿を見る。
アナスタシアは天空の剣を手にして近づいてくるユーリルを一瞥すると溜息を吐いた。

「やっぱり王子様なんていないのね」

今更なことだった。
王子様がいるのならあの焔の七日間に助けにきてくれていたはずだ。
しかし実際は王子様どころか親友の不死の少女以外誰も来てはくれなかった。
よってアナスタシアも『勇者』に大した期待はしていなかったはずなのだが。
本当にそうならば落胆することなんてない。
どうやら心の何処かでは自分の生きた時代の人間ではない彼ならば、あの時助けてくれたのではという希望を持っていたみたいだ。

「それが蓋を開けてみれば最悪の結果とは皮肉よね」
「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね。お前がいなければ、僕は勇者でいられたのに!」

自暴自棄になって殺し合いに乗って人を殺して欲しいとは思っていたが、そのターゲットが自分とは。
ぴくりとも動かないちょこを尻目にアナスタシアは苦笑する。
考えてみれば十分可能性としてありうる展開だったのだ。
自棄の果てに心の拠り所を奪ったアナスタシアを殺しにこようとすることなんて。

「そう……。あなたは未来を奪われた私と違って今を失い続けてきたのね」

アナスタシアにはユーリルが泣き喚いている子どもに見えた。
あるいはこれが少年の本当の姿なのかもしれない。
彼は勇者という称号に誇りを抱いていると思っていたが、本当はそう思い込んでいなければ耐えられなかっただけだったのでは。
勇者だから怖くない、勇者だからモンスターとも戦える、勇者だから、勇者だから、勇者だから……。
そうやって彼は実質七日間しか戦っていない自分よりも遥かに長い時間を勇者であることに捧げ続けたのだろう。
英雄になることを望み名前も生身の身体も捨て、抱いていた願いさえも忘れてしまっていたどこかの誰かのように。

「私を殺したところであなたに未来は無いわ。
 一度操り糸を断ち切られた人形はどれだけ蜘蛛の糸に縋ろうとももう元には戻れない。
 ねえ、考えているの? この後どうするのかって」
「うるさい、黙れ、お前を、お前を殺しさえすれば僕は……っ!」
「救われないわ。それじゃあなたは一生。あの子の様に“英雄”の確執から解き放たれでもしない限り」
137創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 03:59:38 ID:X9gA/7n9
138創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:00:19 ID:X9gA/7n9
139ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:00:32 ID:ALHcxBmb

土台無理な話だ。
どれだけ勇者を辞めたと言おうとも、アナスタシアを殺そうとしている理由こそ未だに彼が勇者に拘っている側面でもあるのだから。
ユーリルは救われない。アナスタシアの時間軸のカノンのように救われはしない。

「そんなあなたに私の未来を渡す気なんて更々ないわ」

勇者を辞めたユーリルに問うべきことはない。
絶望の鎌へと闇を集わせる。
ちょこが破られた時の保険として持していた鎌は味方の死を喰らい力とする魔王の武具。
ユーリルも鎌の持つ禍々しい力を本能的に察したのだろう。
御託は終りだと鎌が暗黒の力を纏いきるより先に止めを刺すつもりで剣を突き出す。
アナスタシアも殺されるよりも先に殺すとリーチを頼りに鎌を振り抜いた。
相手を殺す。
絶対に生き残る。
真逆の一念にして同一の結果しか導き用の無い斬撃が交差する。

だから誰も死ぬことなく終わったのは別の結果を望んだ子どもがいたからこそ。
右手に勇者の剣を食い込ませ、左手を盾に魔王の鎌を受け止めていながら、

「そんなことしちゃ、メッー! お兄さんもお姉さんもメッなの!」

少女は大きく口を開いて一声を発した。

絶望の鎌を覆わんとしていた影はいつしか霧散していた。



                                ▼


――INTERLUDE 夢喰い――

少女が一鬼当千ならば狂皇子はまさしく一騎当千だった。
自身の三倍もの人数を相手にし、持ちこたえるどころか明かに押していた。
クロノ達が弱いわけではない。
むしろたった3人であのルカ・ブライトと真っ向勝負を成立させる人間がいると知ればどこぞの軍師辺りは目を剥くだろう。
ルカ・ブライトとはそれ程までの怪物なのだ。
矢で全身を射抜かれようとも18人の精鋭を相手に一歩も引かなかった化物なのだ。

横切り、縦切り、刺突。
クロノが一太刀入れんとする間にもルカは魔速の剣で攻めこんでくる。
俊敏にして怒濤、苛烈にして鋭利。
男の激情そのままに押し寄せてくる斬撃の渦を防ぎ切る手立てはない。
こちらから打って出ても無駄だ。
その動きは天の魔法を使いこなすクロノよりよほど稲妻じみていた。
まさに津波だ。
押し寄せては半端な攻撃を飲み込み、いかな防御も押し砕く、万物を蹂躙する憎悪の波だ。

「クロノはやらせねえ! オーラキャノン!」
「無駄だ、豚共があ!!」

防戦一方に追い込まれたクロノの援護に放たれた気弾も驚くべき反応速度で切り払われる。
それでも並の戦いならひとまず勢いを止められた時点でマッシュはひとまず目的を達していただろう。
だが恐るべき事にルカはオーラキャノンを薙ぎ払った動作のままに今度は日勝へと斬りつける。
140創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:01:25 ID:X9gA/7n9
141ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:01:39 ID:ALHcxBmb

「うおっ!?」

オーラキャノンを受け止めた隙にと狙っていたものの出端をくじかれる形になってしまう。
慌てて前に出しかけていた拳を止め、後方に跳ぶ。
刹那、すれすれのところを凶刃が空を切る。
仕掛けようとしていたのが対刃技の山猿拳だったのが幸いだった。
他のどの技でもこうすぐには回避動作に切り替えられなかった。
日勝は今は亡き本来の技の担い手に心の底から感謝する。

「なんせおかげでこいつをぶっとばせるんだからな!」

いつしか日勝の前には魔力で編まれた門がそびえ建っていた。
ルカの注意が日勝へと移った内に残り二人が魔法の力で生成しておいたのだ。
其は雷、其は冷気。
二つの属性が鬩ぎ合うことで生まれた新たな理。
開け、冥府の扉よ!

「日勝!」「高原!」

おうよ!と日勝は応えて地面を爆ぜさせる。
大量の砂塵が舞う中、魔力塊へと跳び込みつつ、前方宙返りを加える。
勢いのままに振り上げた片足が狙うは狂皇子の頭部。
冥府のエネルギーを纏い憎悪の獣を地獄に送り返さんと叩きつける。

サンダガ+ブリザガ+あびせげり=……

それは本来有り得なかったファイナル《最後》の後を継ぐ技。
故にクロノは奇跡的な巡り合わせにより得た仲間達との絆の技をこう名付けた。

ネクスト《繋がりゆくもの》――

「ネクストキィィィィィィックゥゥゥゥゥ!!」

死者を地獄へ蹴り返さんと一条の破魔の矢と化した日勝が燃える空を飛ぶ。

「馬鹿どもめがぁ!!! 無駄だということがまだ分からんか!!」

ルカも我が身を炎の破城槌と変え迎え撃つがその言葉はそっくり返されることとなる。
三人でそれぞれ攻撃するのと三人で力を合わせた一撃を放つのとでは威力に歴然とした差が生じるのだ!

「貫けええええええ!!」
「ガッ……ウオオオォォォッッッ!!」

矛にして盾、盾にして矛。
日勝の全身を包むエネルギーフィールドは炎などものともしなかった。
冷気と雷による対消滅はルカから炎の鎧を剥ぎ取っていく。
守る術を失ったルカへと突き刺さる蹴りは最早矢を超えた銃弾の一撃だった。
圧倒的なスピードとエネルギーに弾かれ、巻き上げられ、ルカは街の外へと吹き飛ばされる。
クロノ達三人も勝利の余韻に浸ることなくそれを追う。
ルカがこの程度で倒しきれたとは到底思えなかったからだ。
果たして狂皇子は頭部から血を流しながらも、折れた木々を押しのけ、突き刺さる枝々を焼き尽くして立ち上がった。

「蛆虫どもがぁぁ、おれの剣はまだ折れてはいないぞ!!」
「だと思ったよ」

一寸の陰りも無い殺気を前にしても追いついたマッシュは余裕の表情だった。
想定済みの事態になら対処のしようはいくらでもある。
幾度目かの炎を呼び寄せようとするルカに対しマッシュはクロノへとアイコンタクトを送る。
142創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:02:10 ID:X9gA/7n9
143創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:02:50 ID:X9gA/7n9
144ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:03:26 ID:ALHcxBmb

「クイック」

すると目を焼くほどに赤かった紅蓮の炎が灰色に染まり虚空へと縛り付けられた。
炎だけではない。
クロノを除くありとあらゆるものが人も無機物も現象も問わず色を失い停止していた。
話には聞いていたがまさか本当に人一人の手でタイムフリーズを起こす方法があるとは。
驚嘆しつつも凍った時の中、炎の柱となったルカを見据える。
第一回放送後の手合わせの中我が物にしたこの魔法は強力な分消費魔力も大きい。
クロノがマッシュに代わり唱えたのも大呪文を唱えるだけの魔力残量があるかないかによるものだった。
ならばこそ応えなければならない。
覚えたてのクロノを信じ、恰好のチャンスを託してくれた二人の仲間達へと。
クロノ最強の剣技、みだれぎりをもって!

「疾っ!」

クロノは仰け反るように大上段に剣を構え、まるで駒のように回転を開始。
勢いを止めることなく――いや、勢いを倍化させて一歩を踏み出す。
風のようになどと形容するのもおこがましい。その様――剣の竜巻だ!
四刃一合。
超速旋回するクロノがルカの護りを切り刻んでいく。
一刃、二刃、三刃――
停止していた炎が、身を守っていた鎧が歩むのを止めた時ごと砕け散る。
これでもうクロノの剣を妨げる壁はない。
死刃――文字通り最後の一撃をルカの首へと伸ばし

「っ!?」

クロノは信じられないものを見た。
自分以外の全てが停止した時間の中。
ぎょろりとルカ・ブライトの瞳が動いたのだ。
瞳につられるように口が歪み半月の形に裂け、そのまま――

驚愕に動きを鈍らせたサンダーブレードを噛み砕いた。

「……そんな、タイムフリーズが」
「おいおい嘘だろ!? 時を止めたんだぜ!?」
「っつうかお前ら何やったんだ?」

鋼が砕ける音に合わせて、世界が色を取り戻す。
あのケフカを破るのにも一役買った必殺必勝の呪文が破られた事態にマッシュは目を見張った。
一人日勝だけが訳が分からないという顔をしているが、

「時間は全てを解決してくれるそうだな……くだらん」

ルカからすれば時間停止を破ったことなど誇るべくことでも何でも無かった。

「このおれの身体の隅々、皮膚の下にまで渦巻く憎悪が時間ごときでどうにかできると思ったか?」

時間など魂にまでこびりついた憎しみの前には意味をなさない。
時がどれだけ経とうとも、時計の針が動くことが無くなろうとも。
永久不朽の憎しみには関係の無い話だ。
つまらなげに吐き捨てると用を足さなくなった鎧の残骸から拳大の石を拾い上げる。

「もういい、死ね」

右手を高く掲げる狂皇子。
同時に濡れた身で扱うわけにはいかなかった魔道書を取り出し左手で開く。

「ハイランド国王ルカ・ブライトが命じる……。王の書よ、その力をおれに捧げろ!!」
145創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:03:48 ID:X9gA/7n9
146創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:04:53 ID:X9gA/7n9
147ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:05:01 ID:ALHcxBmb

奇しくも究極召喚の媒体となるその書がルカに膨大な魔力を補充。
満たされた力はルカを経由し右手のサモナイト石に流れ込む。
捩れる空間、開くゲート。
空にぽっかりと空いた黒い穴から漏れ出る人知を超えた存在感にクロノが、マッシュが、日勝が無意識に息を呑む。
ただ一人ルカだけが受け入れるように両手を広げ高らかにその名を告げた。

「出よ、聖 鎧 竜 ス ヴ ェ ル グ !!!!!!!!!!!!」

聖鎧竜スヴェルグ、再臨。

                                ▼


「死ねぇぇぇぇぇぇぇ! 魔王!!」

瞼の裏に焼き付いたのは憎悪に染まった少年の姿。
思い出の中の大好きな人と重なってちょこの脳裏から離れなかった。

(父さま……)

剣士ラルゴ。
モンスターに家族を奪われ復讐を誓った男。
剣士でありながら愛する者を守れなかった己の運命を呪い、憎しみのままに力を欲しった男。
魔剣に心を奪われ、モンスターを見付けては復讐の為に殺し続ける存在となり、遂には魔王セゼクを倒した男。
父の亡骸に泣きつく少女に死んだ娘を思い出し、魔剣の魔力から解放され、その魔族の娘から力と記憶を奪い別の名前を与えた男。

もう語るまでも無いであろう。
男が付けた名前は。死んだ娘の名前は。幼き魔人の名前は。

“ちょこ”

――父さま? 私達の父上は魔王セゼクただ一人よ

虚空より聞こえたその言葉に偽りはない。
血縁関係で言うのならちょこの父は間違いなくセゼクであり、声の主にとっては屈辱的だがセゼク本人もちょこを娘と呼んだ。
けれどもそんなこと少女には関係なかった。
少女には難しいことは分からない。
それでも胸を張って言える。

(違うもん。ちょこの父さまは、ちょこの大好きな父さまは、ラルゴって名前だもん)

もう二度と会えない今でもその想いは変わらない。
ちょこにとっての父はラルゴでこれからもずっと大好きなのだ。
そんなちょこに、

(おにーさんはきっと父様と似てるの)

ユーリルを放っておけるはずがなかった。
少女は覚えている。
大切な娘だと言ってくれたあの日、自分に出会うまでの過去を語ってくれた時の父の声を、表情を、込められた感情を。
泣きそうな顔だった。張り裂けそうな声だった。悔やんでも悔やみきれない後悔が滲み出ていた。
最後はちょこを人間として育てたせいで辛い思いをさせてしまったと涙ながらに謝ってばかりだった。
それはいつもいつも優しく微笑んでいてくれた父が初めて見せた曇り顔で。
まだまだ子どものちょこにはその複雑な感情の全てを推し量りうるはずもなく。
少女はただただ悲しい顔を見ていたくなくて。
あるべき輪廻へと還ろうとする父の魂に何度も何度もハンバーグのお代わりをせがんだ。
こうすれば父が困り笑いをしつつもお代わりを作ってくれると少女は知っていたから。
父さま行かないでと心の中で叫びつつ、必死に何度も何度もわがままを言って引きとめようとした。
148創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:05:53 ID:X9gA/7n9
149ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:06:18 ID:ALHcxBmb

駄目だった。

父は少女に大切な言葉と幾つもの謝罪を残して天へと還った。
少女は最後の最後で父に困らせることしか言えなかった。
ありがとうも、さよならも、大好きも言えなかった。
それはとても寂しいことなのだと、少女は目を覚ました時に知って。
少女はいっぱい後悔した。
悔やんで、泣いて、泣きつかれて、眠くなって。
その時決めたのだ。
今度夢で父に会えたら、あの時言えなかったことを全部全部伝えようと。
そうすればあんな寂しそうな笑顔よりももっともっと明るい笑顔を父は浮かべられるだろうと。

(ちょこ、もうあんな悲しそうな顔、見たくない。させたくない)

アナスタシアを襲ったユーリルの表情は魔王セゼクと対した時のラルゴそのものだった。
ならばその結末さえも同じ道を辿ってしまうかも知れない。
そんなのちょこは嫌だった。

(悲しみや憎しみのままに力を解放したらダメだって、父さまが言ってたこと、おにーさんにも伝えるの)

幼い胸に決意の炎を燃やし目を開け、立ち上がろうとする。
少女の意思に応えるように泳いだ後、髪の毛に巻いてもらったリボンがうっすらと光を発する。
身も心も現世へ戻とうとする少女を引き止めるようにまたしても声がした。

――あなたがそれを言うの? 感情のままにイノチを弄んだあなたが?

かって少女は知らなかった。
なまじ力があった為にイノチの価値に気付けなかった。
感情のままに開放したチカラで奪ったイノチを偽りの肉体に縛り付け、自らの慰めとした。
あまつさえそのイノチを弄ぶ行為をなしたことを忘れ、一人平穏な世界で生き続けた。
でも今は違う。
閉じた円環から一歩を踏み出し、世界を救う旅の中幾多もの想いに触れた今なら。
最愛の父との離別を経験し、辛い記憶と無くした過去を受け入れる覚悟を決めた今なら。
分かる。
イノチの価値が。
それは、想い。
その人に生きていて欲しい。
その人じゃなければダメ。
チカラの価値や世界のルールでは語れない何か。
貧弱で曖昧だけど確かに胸の奥にあるもの。

(誰だって言っていいの。言っちゃだめなんかじゃないの)

――っ、父上……

他の誰でもない。
ちょこの父への愛は、ちょこが口にするから意味がある。
ただ生きていて欲しいと想うから、ただ生きていて嬉しいと想えるから、イノチには価値がある。
そしてちょこが生きていて欲しいと想う命に――

きっときっと限りなんてない。

ちょこは何百年もずっと一人で生きてきた。
成長する事も、新しい物を生み出す事も出来ないただの記憶の集合体の中に身を置いていた。
深い、深い地の底で、アーク達に出会うまでずっとずっと少女の世界にイノチは一つだけだった。
150創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:07:27 ID:X9gA/7n9
151ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:07:35 ID:ALHcxBmb

だから今は。
時の止まった森から一歩踏み出し多くのイノチを感じられた今なら。

ただ、誰かがどこかで生きている。
ちょこはそれだけで嬉しいのだ。
だって生きていてくれるならいつでも会いにいけるから。
どれだけ時間をかけようとも繋がることはできるから。
少女にとって全てのイノチに価値がある。

ラルゴの行いは実を結んだ。
魔人の少女はチカラの限界の先にある“何か”を、人間のココロを育んでいた。

(ちょこ行ってくる)

引き止める声はしなかった。
今度こそちょこは立ち上がる。
父に似た少年を救うために。
誰も死なせないために。

だってちょこは問答無用でいい子なのだから。





「おにーさんもおねーさんもそんなことしちゃ、メッー! とにかくメッなの!」

ユーリルは困惑していた。
倒したはずの魔王が蘇えったことにでも、少女が大怪我も気にせず場違いな口調で話しかけてきたことにでもない。
よくよく考えてみればギガソードもどきとはいえ一撃で倒れるようでは魔王とは呼べない。
驚いたのはもっと別のことにだ。
一瞬、ほんの一瞬だが、少女の背に翼が見えたのだ。

「天……空人?」

何を馬鹿な、魔王にそんなものがあるはずがない。
目をつむり、開く。
ユーリルを見上げる少女に翼なんてなかった。

「父さまは教えてくれた。悲しみや憎しみのままに力を解放したらダメだって」

ユーリルが戸惑い剣を振ることも忘れ目を開け閉めしているうちに、ちょこは言葉を紡ぎ出す。
決して多くはない語彙で精一杯伝えたいことを口にする。
憎しみに囚われてはダメだと。

「父さまは苦しんでた。チカラにおぼれ、人としてのココロを失い、さつりくのかいかんによってた過去に!」

復讐は人のココロを救ってはくれないのだと。
152ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:08:19 ID:ALHcxBmb

「ちょこ見たくないの。もうあんな苦しそうな人、見たくないの」

大切な思い出と幼いココロを丸ごとユーリルへとぶつけてきた。
ちょこがやっているのはお世辞にも説得と呼べたものではなかった。
本人には分かっているつもりだがちょこの訴えにはあまりにも言葉が足りていない。
脈絡も無く、説明もなく、理論も無い。不親切極まりないものだった。
それにちょこは意図していないが少女の訴えは問題のすり替えだった。
そもそもちょこはアナスタシアとユーリルの会話を寝ていたため聞き逃している。
故にユーリルが何を悩み、何に苦しんでいるのか少女は知らない。
ちょこに分かっているのはユーリルが憎しみのままに、感情のままにチカラに溺れてしまっているということ。
父のようにココロを失い、自分のように独りになってしまいそうだということ。
だからちょこの訴える声は的外れもいいとこで、“勇者”を救うものなんかじゃない。
“勇者”が“生贄”だったことへの憎しみを払うものでもない。
人間の身勝手さに対する反論ですらない。

けれどもユーリルは少女の声を無視することはできなかった。
家族を奪った魔王への憎しみを思い出させた少女。
その少女が家族のことを語るのが許せなかった。

憎しみという“人間らしさ”を取り戻してしまった少年のココロに。
“勇者”であることを辞めて開放した抑えようのない数多の感情に。
理論も何もなく心をぶつけてくる少女を振り払うことはできなかったのだ。

「黙れっ、黙れ魔王!」
「やっ! このままじゃおにーさん一人になっちゃうもん」
「一人? ああそうさ。僕はお前に奪われた。故郷も、村のみんなも、父さんも、母さんもシンシアも!」
「そう、私は奪った。体の中からどんどん力があふれてきて、悲しくて、どうしようもなく悲しくて。
 不安や怒りや憎しみがうずまいて、どんどん、どんどん大きくなって、そして、私は力を解放した」

もう二人ともぐちゃぐちゃだった。
憎しみという“人間らしさ”を取り戻してしまった少年は抑えようのない数多の感情に振り回されていた。
図らずとも自らが過去に行った所業と被る罪をきせられてしまった少女は違うと答えることができず俯いてしまった。

「お前が悲しかったなんて言うな! 悲しかったのは僕だ。
 不安も怒りも憎しみも悲しみも抱いていたのは僕だ!」

ユーリルはそんな少女に更に畳み掛ける。
何故家族を殺した魔王が憎いのか?
それはユーリルが家族の死を悲しいと思ったからだ。
憎しみから悲しみの感情を引き出し、ユーリルは取り戻す。

「悲しかったのは悲しかったもん。独りになって寂しかった……」
「僕だって寂しかった。一人になって寂しかった! 
 この魔王め! お前のような存在が家族のことを語るな!」

項垂れる少女に対しユーリルは更に食らいつく。
どうして家族の死を悲しいと思ったのか?
寂しかったからだ。大好きな人がいなくなってしまって寂しかったからだ。
悲しみかに続き寂しさの感情へとユーリルはシフトする。
153創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:09:26 ID:X9gA/7n9
154ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:09:45 ID:ALHcxBmb

そうだ、ユーリルは寂しかった。
大好きな人達がいてくれた暖かい日々。
もう二度と戻ってくることのない過去が堪らなく愛しい。
彼らはユーリルの名前を知っていた。
彼らはユーリルに戦いを押し付けなかった。
彼らはユーリルと嬉しいことも悲しいことも共有してくれた。
彼らはユーリル一個人を見てくれた。勇者像の幻想なんて――

(本当に? 本当にそうなのか? そもそも村のみんなは僕が“勇者”だと分かっていた。
 知っていて匿っていた。だったらあの日々だって幻想なんじゃないのか?
 僕の知らないところで勝手な期待をかけていたんじゃないか?)

一度浮き上がった疑念はどんどん大きくなっていく。
勇者としてでない、ユーリルとしての綺麗な思い出まで自らの手で黒く染め上げそうになってしまう。
その寸前でちょこの懸命な叫びがユーリルへと届いた。

「魔王の娘だからって関係ないもん! ちょこ、ちょこ、父さまのこと大好きだもん!」

関係ない。
そうだ、関係ないのだ。
村の住人が全員死んだ今本当のことは分からない。
だけどユーリルにははっきりと分かっていることはある。

「僕だって、僕だってみんなが大好きだった!」

いなくなって寂しいと思うのはその人達のことが好きだったから。
そして好きというオモイは事実や真実に関係なく自分独りがそう思えるなら成立するのだ。
そのユーリルのオモイを肯定するかのように少女は続ける。

「父さまも言ってくれた! わたしと暮らした日々はとても楽しかったって。
 まるで本当に娘が帰って来たようだったって」

皆が自分を守って死んだのはずっと世界を救う勇者を守る為だと思ってた。
本当にそうなのか。
本当にそれだけなのか。
父は、母は何よりも親として息子を守ろうしたんじゃないか?
幼なじみはユーリルを好きだったからこそ庇ってくれたんじゃないか?
村のおじさんやおばさんはユーリルに死んで欲しくなくて戦ってくれたのでは?

ならばその死は、そのイノチは、平和に捧げられた生贄なんていう無価値なものなんかじゃない。
ユーリルに生きていて欲しいと願った全ての人々のオモイの価値だ。

ユーリルは村のみんなのイノチの価値を受け入れた。
村での十七年間を汚すことなくありのまま受け入れ、大切だったことに気付かされた。

「ちょこを大切な娘だって、笑っていってくれたもん!
 ちょこも父さまと一緒の時、すごく、すごく、楽しかった!」

だからこそ、支離滅裂な手順を踏み、ようやく辿り着いた少女の最も伝えたかったこと。
人のココロを救ってくれるのは復讐なんかじゃない、もっと別のものなのだと伝える為のその言葉に、

「僕だって父さんや母さんが帰ってきてくれたら。
 そうじゃなくともあの忘れえぬ日々に似た毎日が過ごせるのなら楽しいに決まってる」

ユーリルは言い返すことなんてできなかった。
ちょこはユーリルに想いが届いたことに大輪の笑顔を浮かべ、
155創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:10:44 ID:X9gA/7n9
156創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:19:54 ID:GKfDyBch
157創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:22:43 ID:GKfDyBch
158ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:22:52 ID:MrpOfPBz
「だったら、おにーさん! ちょこと、友達になろ」

いつかの日、深い地の底で出会った精霊の勇者にそうしたように、ちょこは天空の勇者へと手を伸ばし、

「トモ……ダチ?」

同時に、ユーリルが見ようとしなかった聞こうとしなかった数刻前の出来事へと触れてしまった。

『ユーリル。日勝が教えてくれたんだ。野球って言うんだ』

ありありと過去の情景が心のなかに再生される。

『日勝は仲間との絆を深める為にやりたがってる。……日勝のことだからもっと単純にみんなでやれたら面白いからかもしれない』

マッシュ達が港の調査から戻ってきてからの一幕。

『それでいいいと思う。面白そうだから、楽しいから。その想いはきっと大事だと思う』

日勝達が出払っていた時同様、クロノはずっと笑顔でユーリルに話しかけていてくれた。

『……そしてそれは俺も同じだ。ユーリル。俺はお前と魔王を倒す仲間としてでだけでなく』

どころか心ここにあらずとなっていたユーリルに手を差し伸べてくれて、そして。そして。

『友達に、なりたいんだ。だから落ち着いたらでいい。一緒に遊ぼう』

ユーリルと友達になりたいと言ってくれた。
ユーリルが“勇者”だと知りながらも友達として相対し遊びに誘ってくれる人間なんていなかった。

(いなかったんだ……なのに)

ユーリルはクロノの手を掴めなかった。
“勇者”になって以来欲していたのだろう懐かしい情景への扉を自ら閉ざしてしまった。
159創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:23:09 ID:X9gA/7n9
160創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:23:29 ID:GKfDyBch
161ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:23:47 ID:MrpOfPBz
「あ、あああ……」
「おにーさん、大丈夫? どうしたの、どこか痛いの?」

最悪とは重なるもの。
クロノの手を掴めなかった罪悪感か、少女の手から逃れるように後ずさってしまったたユーリルは見た。
そのタイミングに合わせたようにユーリルはクロノ達を置いてきた港町の方角に巨大な竜が降り立つのを。
スヴェルグだ。
クロノ達が戦っていたE-2エリアとユーリル達が戦っていたH-2エリアは間に何を挟むこともなく直線上に位置するのだ。
マスタードラゴンを優に超える大きさを誇る上に光り輝くスヴェルグは嫌でも目に入った。
あんなものユーリルはクロノ達から存在を聞いていはいない。
それが意味することは即ち――

「あああああ、ああああああ、ああああああああ」

故郷が滅びる様を思い出したばかりのユーリルに楽観的観測なんて不可能だった。
クロノ達が巨龍に襲われている。
得られたかもしれない懐かしい日々が脅かされている。
大事な人が、友達が、また死ぬ。

「うわあああああああああああああああああああああああ!」

その恐怖に負けユーリルは跳んだ。
クロノ達の無事な姿を見て安心したいがためにルーラで港町へと再転移した。
あるいはそれは剣を突きつけてしまった少女からの逃亡でもあったのだろう。
ユーリルが“勇者”でも“抜け殻”でもなく人間だった日々。
彼は憎悪に駆られようとも人を殺したいなんて思ったことは一度もなかったのだから。






アナスタシアはため息を吐いた。
事態は何一つ解決していない。
ユーリルからアナスタシアへの憎悪は一切消え去ってはいないだろう。
ちょこがやったのはユーリルの憎悪を解消したのではなく、幸せになる方法を教えただけだ。
彼が見失っていた幸せを突きつけただけだ。
ユーリルが“勇者”として生きている時に振り返ろうとしなかった幸せ。
“勇者”を辞めてからも虚無感や憎悪が先行し思い出すことも忘れていた幸せ。
その幸せの名は――“日常”。
アシュレー・ウィンチェスターがそれ以上にイノチを賭けるものがないと断言したもの。
アナスタシア・ルン・ヴァレリアが数百年前に無くしてしまったもの。
“勇者”になる前はユーリルも当たり前のように甘受していた、失って初めて気付く大切なもの。
162創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:23:53 ID:X9gA/7n9
163創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:25:16 ID:X9gA/7n9
164創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:25:44 ID:GKfDyBch
165ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:26:09 ID:MrpOfPBz
アナスタシアはユーリルとクロノ達との関係を知らない。
だからどうして急にユーリルがルーラを使ったのかは分からない。

(封じていた感情をいっきに複数個も呼び起こされて錯乱したのかな)

ただ一つ確かなことは。
アナスタシアにとってもユーリルにとっても問題を先延ばしにしただけだということ。
ユーリルが再び“日常”に身を染める道を選ぶならやはりアナスタシアを殺した上で平和に暮らすというのが一番早い。
あれだけの憎しみを抱いたまま日々を穏やかに暮らすことなど不可能だからだ。
厄介なことにちょこがした父の話でも、父は復讐を完遂してしまっている。
その上失ったものの大切さを知った反動で余計に“生贄”にされたことへの憎悪の炎に油が注がれた可能性すらある。

けれど、アナスタシアが今この時を生き延びれたのは間違いなくちょこのおかげだった。
一人になるのが怖いという弱さを抱えつつも、誰も一人にしたくないという強さを併せ持っている幼き少女のおかげだった。
アナスタシアは賢者の石でちょこを治療しつつ、これまで何度かしてきた問いを口にする。

「ねえ、ちょこちゃん。あるところに世界を救う代わりに消えてしまった少女がいるの。ちょこちゃんはこの話を聞いてどう思う?」
「んっとねー、ちょこ、お弁当持ってそのおねーさんのところに遊びに行くの。それで一緒にハンバーグ食べるの」

予想もしていなかった答えにアナスタシアは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
そんなアナスタシアをよそに疲れきっていたのだろう、ちょこは癒しの光に包まれながら目を閉じ眠りについていた。
可愛らしい寝息を立て身を委ねてくるイノチの温かさを腕の中で感じつつふと呟く。
口元を嬉しげに緩めながら。

「そっか。王子様はいなかったけど、善い魔法使いはいたんだね……」


その日、剣の聖女は。
ほんの少しだけ救われた。
166創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:26:52 ID:X9gA/7n9
167創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:27:41 ID:GKfDyBch
168ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:28:04 ID:MrpOfPBz


【H-2平野 一日目 午後】
【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー、賢者の石@ドラゴンクエストW
[道具]:不明支給品0〜1個(負けない、生き残るのに適したもの)、基本支給品一式
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
1:イスラから聞いた教会に行く。
2:施設を見て回る。
3:また現れるかもしれないユーリルは……。
[備考]
※参戦時期はED後です。
※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーやマリアベルも参加してるのではないかと疑っています。

【ちょこ@アークザラッドU】
[状態]:腹部貫通(賢者の石+自動治癒で表面上傷は塞がっている)、全身火傷(中/賢者の石+自動治癒)
[装備]:黄色いリボン@アークザラッド2
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式
[思考]
基本:おねーさんといっしょなの! おねーさんを守るの!
1:おにーさん、助けてあげたいの
2:『しんこんりょこー』の途中なのー! 色々なところに行きたいの!
3:なんか夢を見た気がするのー
[備考]
※参戦時期は不明(少なくとも覚醒イベント途中までは進行済み)。
※殺し合いのルールを理解していません。名簿は見ないままアナスタシアに燃やされました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。
※放送でリーザ達の名前を聞きましたが、何の事だか分かっていません。覚えているかどうかも不明。
※意識が落ちている時にアクラの声を聞きましたが、ただの夢かも知れません。
 オディオがちょこの記憶の封印に何かしたからかもしれません。アクラがこの地にいるからかもしれません。
 お任せします。後々の都合に合わせてください。
169創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:28:45 ID:X9gA/7n9
170ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:28:52 ID:MrpOfPBz



                                ▼



――INTERLUDE ファイナル幻想水滸伝――

極彩色の牢獄と黄金色の結界がせめぎ合っていた。
片や収縮し捕らえた獲物を圧殺しようとする球状の断罪の無限牢。
片やドーム状に展開し押し寄せる牢獄を内側から跳ね除けんとするシャイニング。
共に強大な光の力の発露は、しかし、徐々に、徐々に、無限牢がシャイニングを押込め始めている。
大天使七体が合一したスヴェルグとたった一人の人間にしか過ぎないクロノとでは魔力の保有量に差があり過ぎるのだ。

「……このままじゃ」

両手を天に掲げたままクロノは苦しげに呟く。
クイック、シャイニングと人が使える魔導の極地を連発した彼は見るからに疲労していた。
このままでは長く持たない。
押しつぶされるのは時間の問題だった。

「諦めるな、クロノ! お前の強さはそんなものなのか? 違うだろ!お前は力だけじゃねえ、ハートもつええはずだ!」
「日勝……」
「そうだぜ、クロノ。そこの馬鹿の言うとおりだ」

マッシュが自分達を守るべく光を放出しているクロノよりも前に出る。
そこは無限牢とシャイニングの境界線。
シャイニングが覆う守護領域と無限牢が支配する攻性領域の狭間。

「実はさ、俺も王様なんだ。だったらよ誰かの後ろなんかにいられるかってんだ」

ルカ・ブライトは国王だと名乗った。
そうかい、そいつはついていなかったな。
マッシュは見ず知らずのハイランド国民に同情した。
彼は知っている、誰よりも王として兄として立派だった男を。
きっとあの兄はこの夜明けも訪れない世界でも誰かを導かんとしていたはずだ。
マッシュは口元に強い、強い笑を浮かべる。
ならその弟で、紛いなりにも現フィガロ国王である自分がこのまま仲間達の危機を手を拱いて見ているわけにはいかない。
マッシュは一歩を踏み出した。
途端幾重にも編まれたマナの重圧がマッシュから体力を奪い取る。
重い。身体が思うように動かせない。

その上無限牢は文字通り無限を思わせる広大な牢獄だった。
何者の逃亡も許さないと何重にも空間を圧縮して生み出されているのだ。
外への距離は果てしなく遠い。
171ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:29:44 ID:MrpOfPBz
それでもマッシュは前進を止めない。
今にも全てを引き裂こうとする闘気の嵐を身に纏い、マナの干渉を強引に遮断して突き進んだ。
歩みはいつしか疾走となり、闘気はいつしか猛虎を模していた。
巨大な虎が無限牢を踏破する。
爆裂するオーラの光は無限に続くはずの紫電の牢獄を遍く照らし染め上げる。
それほどまでに、閃光と呼ぶにはあまりにも荒々しく凄まじい。
音の壁を遥かに超えたスピードがマッシュに纏わせたソニックブーム。
それと闘気が混じり合い爆発を起こし無限牢を軋ませる。
マッシュが模しているのは虎だ。
天を支配する竜に並び立つ陸の王者だ!
聖鎧竜に抗えぬはずはない!

「俺は死なねえ! 死なせねえ! たとえ無限の檻に閉ざされようと、俺の力でこじあける!」

マッシュは手を伸ばす。
ただただ明日を掴むために前へ前へと。
無骨な腕だった。
力になると決めた兄一人守れない腕だった。
それでも兄を助けようと磨き続けた力は決して無駄なんかじゃなかった。
己の全てはこのためにあった。
誰かを救うため、守るために。

(見えた……)

超速の空間を走り続けたその果てに、遂に無限の終りへとマッシュは到達する。
限界を突破して開放し続けていたオーラは既に虎の形を失わんとしていた。
爪は砕け、四肢は吹き飛んでいた。
だがまだ牙はここにある。

「タイガァアアアブレイクッ!」

背を預けられる友もいる!

「……虎咆精気法」

虎は群れるはしないというがそんなのは知ったことか!

「今だああああああ! やれ、日勝!」
「心山拳奥義……」

マッシュが作った闘気の道を身体能力を極限まで活性化した日勝が突き進む。
明鏡止水。
力だけでなく心も最強を目指す男はあらゆる負の念を捨て去り遂にその境地へと至る。
心のなかに広がる水鏡に映るはただ一つのビジョン。
強い肉体とそれ以上に強い心により可能となる心山拳の最終奥義。
最後の継承者ごと失われたはずの拳が、今ここに蘇る!
172創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:30:07 ID:GKfDyBch
173ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:30:36 ID:MrpOfPBz

「旋牙連山拳ッ…!!」

マッシュに日勝とも劣らない闘気を噴出させた日勝がタイガーブレイクの蹴撃が入れた罅に拳を抉り込む。
咆哮、乱打はさらにスピードを上げ回転数を上げていく。
殴り、広げた穴を今度は蹴り飛ばす。
連なる山をも揺るがす連撃の嵐をあらゆる方向から一点に浴びせていく。
人知を超えた速度は終いには日勝を四人に分身させる。
見守るマッシュには分かる。
あれは残像などという生易しいものではない。
殴るという一念を何重にも重ねた闘気は現実に干渉するだけの質量を得ているのだ。

「フィイイニイイッシュ!」

東西南北四神招魂。
縦横無尽に交差した四人の日勝の拳が無限牢を一片の欠片も残さず打ち砕いた。
これで残る障害は迫り来る両巨腕のみ。
無限牢を破られたことで最大出力で直接握り潰しにかかってくるスヴェルグ。
マッシュと日勝はお互いににやりと笑を交わしそれぞれ満身創痍の身で左右の腕へと跳びかかった。
やることはこれまでと何も変わらない。
ただ倒れるまで殴り続けるのみ!

「「夢幻闘舞!!」」

それが格闘家の生き方なのだ。
ならば剣士は?
巨龍と打ち合い、強固な鎧に覆われたその体躯を前に拳が潰れ、足が折れてまで抗い続ける味方になんとする?
簡単だ。
剣を振り上げ下ろすのだ。
自身の数百倍の大きさの竜をも斬殺できるような、鎧ごと断ち切れるような巨大な剣を!

「幻獣、召喚……」

ルカがそうしたようにクロノも魔石を掲げありったけの魔力を込める。
違うのは召喚獣を従わせているルカと違いクロノはマッシュから幻獣とは心を通わせる仲間だと教えられたこと。
使役するのではなく絆を力に共に戦う仲間を今ここに。

「来てくれ、ギルガメッシュ!」

果たして聖鎧竜に匹敵するだけの巨人がどこからか姿を表す。
同時、降り注ぐは三本の剣。
うち一本を伝説の剣豪は抜き放つ。
かの剣こそ剣の中の剣、聖剣エクスカリバー。
スヴェルグが誇る聖鎧といえども同ランクの聖剣の前には無力。
両腕で白刃取りしようにも、食いついて離れない二人の格闘家に動きを封じられていた。

「「「いっけええええええええええええええ!」」」

振り下ろされる幻想の刃。
ハイロゥを輝かせスヴェルグは兜で受け止めようとするも拮抗は一瞬。
エクスカリバーは止まることなく聖鎧竜を縦一文字に両断する。
その友の偉業を祝福するように遥か空から翼を生やし鬣を靡かせる緑の鬼が飛来する。
最終幻想。
ギルガメッシュと親友エンキドウからなる強力無比の最強コンボ。
クロノ達三人の結束に相応しい召喚術の締めを飾るべく聖鎧竜の骸の奥にいるであろうルカに鎌鼬を見舞う。
大地を引き裂く真空の刃。
巻き起こされた粉塵が止み、巨大な傷跡を刻んだ大地の姿が浮かび上がってきた時
174創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:31:18 ID:X9gA/7n9
175創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:31:53 ID:GKfDyBch
176ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:32:15 ID:MrpOfPBz

――そこにルカ・ブライトはいなかった。

「……え?」

呆然としたクロノの眼前に口元を血に染めた狂笑の華が咲く。
ルカは自分をあの手この手で敗北寸前へと追い込んだ相手を過小評価してはいなかった。
聖鎧竜に攻撃を指示しながらも、より確実に葬るために自身も突撃を敢行していたのだ。
正気の沙汰とは思えない。
クロノ達がスヴェルグを打ち破れなければ間違いなく自らもかの強大な竜の攻撃の余波に巻き込まれていた。

構わなかった。
ルカ・ブライトには絶対の自信があった。
クイックを打ち破った時のように彼は心の奥底から信じていた。

――このおれの憎悪がたかだか聖鎧竜如きに討ち滅ぼせるものかっ!!!!!!

マッシュが他の二人をかばおうと両手を広げ立ち塞がるが無駄だ。
皆殺しの剣の前にはいかな盾も用をなさない。

「ルカナン」

一閃。
紙と化した肉の盾ごと魔炎の剣が全てを薙ぎ払う。



六つの肉塊が地へと落ちた。


▽                                ▼
177ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:33:26 ID:MrpOfPBz


「はっ、はっ、はっ、は……!」

ユーリルは全速力で走っていた。
ルーラで文字通り跳んで戻った港町は焼け落ち廃墟と化していた。
あの竜のことといいただならぬ何かが起きたことは間違いない。
そしてユーリルにはその何かに心当たりがあった。
あの男だ。
見ているだけで本能的な恐怖を駆り立てられるような、獰猛極まりないあの男だ。
あの男がクロノ達と……っ!
それは気付いてしかかる展開だった。
ユーリルが見逃されたのはたまたまの話。
斬る価値もないと狂皇子に見限られるほどユーリルが空っぽだったからだ。
でもクロノ達は違う。
自分にはない何かをもっていて“勇者”という称号に縋るまでもなく自らの意思で世界を救う程の強さを持つ彼らなら。
あの男が見逃すはずはない。

(マッシュ、日勝、クロノッ! 無事で、無事でいてくれ!)

何をいまさら。
ユーリルの中で“勇者”が嗤う。
“勇者”なら仲間に危機を教えていた。
“勇者”なら皆殺しの剣の特徴も伝えていた。
そうはせずクロノ達を危機に陥れたのはユーリルが“勇者”を辞めたからじゃないか。


巨大な竜が見えた方向へと焦りにかられて逃げるように走る。
やがて拓けた平野でユーリルを待っていたのは二つの死体と一人の死にゆく人間だった。

「クロノ!」

ユーリルの声が聞こえたのだろう。
両手を前へと突き出し、のろのろと上半身を起こそうとしていたクロノは、安堵したかのような表情を浮かべユーリルを見た。
ユーリルは急ぎ駆け寄る。
近づくに従いユーリルの顔はみるみる険しくなる。
クロノにはあるべきはずのものがなかった。
身体の下半分が焼き切られていた。
これではザオラルもベホマも意味をなさない。
今のユーリルにクロノを救う術はない。
だというのに。
当の本人、クロノは笑っていた。
身体を抱き起こしたユーリルの腕の中で、笑のまま、爪は砕け、草と泥に汚れた両手を差し出してきた。
拳の先に揺れるのはクロノ同様ボロボロのデイパック。
クロノは何も言わない。
けれど、初めて会った時と同じように、ユーリルはクロノの目から彼の意思を読み取れた。
178ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:34:32 ID:MrpOfPBz

「僕に、クロノ達三人が?」

ユーリルはクロノが掴んでいるデイパックを受け取ることを躊躇した。
これまでユーリルが人々から託されてきたものはどれもこれも少年の重りになるものだったからだ。
勇者の称号。魔王討伐の重責。全人類分の悲哀や恐怖や辛苦。自己犠牲の精神。
その事実がクロノの手を取ろうとしたユーリルの動きを遅くした。
なまじクロノ達三人がオディオを倒さんと意気込んでいたことを知っていたが故にためらってしまった。
そして、ユーリルが迷っているうちにクロノの命は燃え尽きた。

「……あ」

笑顔を浮かべたまま、クロノの瞳が力を失う。
ユーリルへと差し出していた腕も地に落ちる。
抱えられていたデイパックも転がって、ユーリルの前に中身を吐き出した。
最後にクロノが残してくれたものを。

それは魔王を倒すための剣じゃなかった。
見知らぬ誰かを守るための盾でもなかった。
傷ついても進むための鎧とも違った。

たい焼きとバナナクレープだった。
ただユーリルに笑って欲しいだけの、元気を出して欲しいだけの、
美味しいと喜んでもらいたいがだけの、甘い、甘いお菓子だった。



ユーリルは泣いた。
勇者になったあの日以来初めて声を出して延々と泣き続けた。
初めての友達がくれたお菓子はちっとも甘くなんてなかった。
179ですろり〜イノチ〜  ◇iDqvc5TpTI:2010/02/28(日) 04:35:22 ID:MrpOfPBz


【E-2平野 一日目 午後】
【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、精神疲労(極)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LIVEALIVE、天使の羽@FFVI、天空の剣(開放)@DQW、湿った鯛焼き@LIVEALIVE
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンは一つ)
[思考]
基本:???
1:???

[備考]:
※自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところです。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。


【E-2荒野とE-3森林の境界 一日目 午後】
【ルカ・ブライト@幻想水滸伝U】
[状態]上半身鎧全壊、精神的疲労(大)、ダメージ大(頭部出血を始め全身に重い打撲・斬傷、口内に深い切り傷)
[装備]皆殺しの剣@DQIV、魔石ギルガメッシュ@FFVI、王の書@サモンナイト3
[道具]工具セット@現実、基本支給品一式×6、カギなわ@LIVE A LIVE、死神のカード@FFVI
   魔封じの杖(4/5)@DQW、モップ@クロノ・トリガー、スーパーファミコンのアダプタ@現実、
   ミラクルショット@クロノトリガー、トルネコの首輪
[思考]基本:ゲームに乗る。殺しを楽しむ。
1:会った奴は無差別に殺す。ただし、同じ世界から来た残る2人及び、名を知らないアキラ、続いてトッシュ優先。
[備考]死んだ後からの参戦です 。
※皆殺しの剣の殺意をはね除けています。


※聖鎧竜スヴェルグ及びギルガメッシュ、エンキドウという巨大召喚獣が激突したため、
 E-2エリア全域は荒野やら断層やらでひどいことになっています。
 当然両者の激突はかなり遠くからも目視可能だったと思われます。
※D-1港町は全焼しました。
※聖鎧竜スヴェルグ@サモンナイト3、サンダーブレード@FFYは破壊されました。
 表裏一体のコイン@FF6はマッシュの遺体の右手が握り締めています。バナナクレープ×1@LIVEALIVEは消費されました。
180創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:43:05 ID:Ewca1P+2
 
181ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:44:56 ID:ALHcxBmb
 
182創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:45:24 ID:MrpOfPBz
支援
183ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:45:51 ID:ALHcxBmb


                                ▼


――INTERLUDE QED――

時はほんの少しだけ遡る。
それは三人の死体から目星い支給品を回収したルカがE-3エリアへと去った後の物語。
生者のいなくなったはずの地で、しかし何かが音を立てていた。
人だった。胴より下を失った一人の少年だった。
少年――クロノは地を這っていた。
残った両腕を無くした足の代わりにし、大地を掴み、押しのけ、少しずつ、少しずつ進んでいた。
その姿を人々が見ればどう思うだろうか?
痛ましいと嘆くか。はたまた無様だと見下すか。
この場におけるただ一人の観客の感想はそのどちらでもなかった。
両手の腕力だけで身体を起こし、木々にもたれかたった青年――日勝にとっては地を這うクロノの姿はどこまでも輝いて見えた。

「お前も、そう思うだろ、マッシュ……」

咳き込み血を吐き出しながらも日勝は傍らに転がるマッシュへと話しかける。
返事はない。
当然だ、マッシュは日勝とクロノに残る命を注ぎ込み一足早くこの世を去ったのだから。

スパイラル・ソウル。

日勝がルカと戦うまでにマッシュからラーニングできなかった二つの技の一つ。
タイガーブレイク、スパイラルソウル共々命に関わる技だったため手合わせでは見こと叶わなかったのだ。
そのマッシュの二つの取っておきをこんな形とはいえ体感できたことを格闘家として日勝は素直に喜んだ。

「マッシュ、やっぱお前はすごい格闘家だったんだな」

傷はちっとも癒えてはいない。
魂を代償にしての蘇生絶技といえど上下に分断された身体を繋ぎ合わせるような力はない。
所詮は一時凌ぎ。
効果が発揮されるまで随分とタイムラグがあったとはいえこうして息を吹き返せただけでも十分に奇跡だ。
きっとマッシュは結果がどうなるかなんて考えもしなかったのだろう。
ただクロノや日勝に生きていて欲しい。
それだけを思い死にゆく中、命の炎を極限まで燃やし日勝達に分け与えたのだ。
あくまでも日勝の想像にしか過ぎないけれど、恐らく間違ってはいない。
184ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:47:30 ID:ALHcxBmb

「あんがとよ、マッシュ」

聞こえていないことは分かっていても口にしたい言葉を口にしていけないはずはない。
強く右拳を握り締め、最後の最後まで自分の大切なものを守り通した男に礼を言う。

「お前のおかげで俺は最強になれる」

チカラではルカに負けてしまったけれど日勝が目指していた最強とはチカラだけの強さじゃない。
チカラと共に求めていたのはココロの強さ。
死にたくないという本能、チカラでも最強になりたかったという未練、生きていたいという欲望を超えられる強さ。
抱いたオモイを成し遂げるために一番大切なイノチさえ受け渡すことのできる強さ。
その強さを日勝は今手にしていた。

「俺の分も持ってけ、クロノ」

このままではいつ燃え尽きるかもしれないクロノのイノチの灯火。
クロノ一人分では到底そこに辿り着くまでに餅はしまい。
だけどそこに日勝の分を加えたら。
日勝が覚えたばかりのスパイラルソウルをもう一度クロノに使えば。
クロノは思わず前進を止めかけた。
これからなそうとしているのはあくまでもクロノ個人のオモイによるものだ。
なんとしても成し遂げたかったが、友の最後の時間を奪う気にはなれなかった。

「止まるな、クロノ。俺も、多分死んじまったマッシュもお前と想いは同じだぜ。
 勝手に置いていっちまうユーリルに、悲しみだけを置いていきたくねえ」

振り向いたクロノと日勝の目と目があう。
二人の瞳はここにはいない一人の姿を写していた。

「だから、行ってこい。あいつのハートに光を当てれんのは俺じゃなくてお前なんだ」

日勝は知っている。
クロノがユーリルにすぐ渡せるようにと二つ持っていたデイパックのうち一つに皆で食べたお菓子を分けて入れていたことを。
狂皇子に奪われないよう、一度死ぬ前に咄嗟に森の方にそれを投げ込んでいたことを。
クロノはユーリルのことをそこまで思っているのだ。
なら自分が行くよりもクロノが行ってくれた方がユーリルは喜んでくれる。
そう力強く断言した日勝だったが、本人の口から否定されてしまった。

「……日勝、マッシュが言ったこと忘れている。俺達で、だ」
185ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:49:02 ID:ALHcxBmb
クロノは笑っていた。
大量の血を失い青白くなった顔に太陽も押し負けるような熱く明るい笑みを浮かべていた。
死にゆく時に笑える人間は強いという話は、どうやら本当だったようだ。
そんなことを思いつつ日勝もまた笑って答えた。

「はは、悪い。すぐ前のことなのに忘れちまうなんて、馬鹿だな、俺」
「……どうやら俺もそうみたいだ」
「そっか。じゃあマッシュの奴も仲間に入れてやらねえとな! 
 行こうぜ、馬鹿三人でよ! ユーリルに会いに!」

日勝がクロノへと手を伸ばす。
クロノも日勝へと手を伸ばした。
二人の両手の間には数メートルの距離が横たわっていたけれど。
その時確かに二人は強く拳を交し合った。

――スパイラル・ソウル

マッシュから貰ったイノチと自分のイノチ。
二つのイノチがクロノへと注がれていく光の中、日勝は思う。
技のネーミングセンスではマッシュの極めていたダンカン流が最強だったかもしれないと。
日勝はこれまで多くのものを受け継いできた。
ナムキャットの足技、グレート・エイジャの飛び技、ハンの関節技、ジャッキーの力、
モーガンのパワー、森部生士の奥義、レイ・クウゴの心山拳、マッシュ・フィガロの魂。
イノチもまたそうなのだろう。
人から人へ、オモイと共に受け継がれていくのだ。

(スパイラルソウル……連なり進む命って訳であってんのか? へへ、いい技名じゃねえか)

それを最後に日勝は光に溶ける。
186創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 04:49:15 ID:MrpOfPBz
しえんえん
187ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:50:23 ID:ALHcxBmb












――かくしてイノチは受け継がれた














【クロノ@クロノ・トリガー 死亡】
【高原日勝@LIVE A LIVE 死亡】
【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI 死亡】



――かくしてイノチは受け継がれた














【クロノ@クロノ・トリガー 死亡】
【高原日勝@LIVE A LIVE 死亡】
【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI 死亡】
188ですろり〜イノチ〜  ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 04:51:25 ID:ALHcxBmb
えー、最後に盛大なミスをやらかしてしまってすみません。
以上で投下を終了します。
早朝間近ながらも多くの支援及び代理投下、ありがとうございました。
意見、感想あれば喜んでお受けします
189創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 05:00:13 ID:V04fLvCm
うああああああああ
まさかたい焼きとバナナクレープなんつうアイテムで泣かされるとは思わんかった…
脳筋トリオは散り様まで熱さと温かさに満ち溢れてるぜこん畜生
素晴らしい作品でした、ありがとう
190創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 07:22:15 ID:j0Ib7NzC
え、ミスなのかこれ
演出だと思って震えたぜ
壮絶な戦いの結末
投下乙でした
191創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 11:34:42 ID:jmyEsPw4
とととと投下乙!
ま、まさかまさかまさか馬鹿どもが全滅するとは思わなかった…。
なんだよこいつら格好良すぎじゃねぇか畜生。
クロノがユーリルにお菓子を渡す下りからスパイラル・ソウルの流れが美しくて哀しすぎる。
そのユーリルだが、ちょことの会話は立ち直るきっかけにも、更に深みへはまるきっかけにも見えるな。
ターニングポイントにさしかかった気がするぜ。
最後に。
ルカ様やばいマジでやばい。強力な対主催がどんどん減ってるが、この人止められるのだろうか……
192創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 16:47:56 ID:ZA2wrzay
投下乙!
殺しに来たのにユーリルを案じるちょこ達が良い!
そして脳筋達……これを一人で相手できるルカってじゃあ何者よ?
でもダメージは受けてないわけがないし……さて、どうなるやら。
感情をとめられなくなったユーリルはどうなるんだろう……。

最後にもう一度、投下乙!
193創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 17:10:11 ID:+9C2MawT

だがちょっとルカが強すぎじゃね?
時間停止とか精神で解除するのはどうかと思う
194 ◆iDqvc5TpTI :2010/02/28(日) 17:20:32 ID:ALHcxBmb
時間停止については無粋なので本文では触れませんでしたがむしろ制限対象として扱いました
クイックとソウルオブの組み合わせとか外道ですし、周囲の時間を停止してというのは首輪解除にも扱えそうですし。
十分制限されているラナルータクラスかと
195創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 18:06:23 ID:awqdKXQJ
納得。
悪用すれば無双ってレベルじゃねーぞ、だしねw
196創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 18:28:23 ID:+9C2MawT
>>194
なるほど
それならたしかに制限対象だよな…
197創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 19:58:22 ID:rUjU+0og
投下乙!
すっげえ! いや、マジで!
知力25組は一番好きなチームだったけど、ここまでやられちゃ清々しいぜ
しかし上の人も行っているが、よもやおやつアイテムをここに持ってくるとは……
そんでスパイラルソウル! 知力25大好きなんだよなぁ
ああ、ルカ様ぱねえなあ。ユーリルはどうなるんだああああ
マジでよかった! 感想がうまく纏まってないけど、そんくらい面白かったんだって!
198創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 23:42:22 ID:MrpOfPBz
投下乙! ……って、嘘おおおおおおおおおお! こいつらが死ぬとは……。
いやー、最期まで熱い奴らだった。最期に負けはしたけど馬鹿野郎らしい気持ちのいい戦いっぷりだったよ。
命の連鎖は壮絶で切なくも、全く悲壮感がない。こいつらに相応しい清清しさ。
そしてルカ。ここまでやってもキャラが全く崩壊しないとか最高のマーダーだなw
ラストの賭けなんてこいつにしかできない狂いっぷり。あっぱれすぎるw
ちょこ達に関しては、もっと意外な展開。
今までアナスタシアばかり掘り下げられてたから、ちょこが自分の意思をここまでぶつけるとは思わなかった。
またその言葉が重いんだよなあ。
もうキャラへの愛が篭ってて、本当に面白かった。あーSS書きたい! こういうのを名作っていうんだ、GJ!!!!!
199創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 23:57:45 ID:n2VDLRFB
ルカ一気に殺害数増やしたな
200創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 01:18:03 ID:kCCGhOMU
正直自分も読んで感動した分、水を差すのも悪いとわかってるけど気になったから一言。
王の書の効果は装備者の「最大」MPを増加させるだけであって、MPそのものは回復できない筈では?
子供用プールに張ってある水を大型プールに移すようなものだから、入っている水は増えない=現MPも増えない。
仮に王の書でMP回復ができることをOKにした場合、王の書の力を失わせるなり
何らかの対処をとらなきゃ絶対にバランス崩壊する。
まあこれに似た展開の後にルカポジが死ぬSSも見たことあるし、それ以外でもどうにでもできそうだから
ルカ無双にはならないだろうけどね。

それにしても、ここ最近で有力対主催が一気に減ったな。
先にどうにかできそうとか言っといて言うのもなんだけど、
こりゃマーダー駆逐して脱出してもオディオで詰みそうだな。
201創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 03:01:33 ID:dMi+xwKq
大丈夫
オディオなら4人いれば倒せるから
202 ◆iDqvc5TpTI :2010/03/01(月) 03:39:48 ID:K1sR5cEF
指摘感謝します
MP+100の効果が現れ、その分魔力が増強されるものだとふみ当SSのようにしました
わたしは+100は一度きりと考えていたのですが言われてみれば着け外しをすれば無限にMPが回復可能になってしまいます
よって王の書については削除。
ルカの消耗を増やす形で修正します。
203 ◆iDqvc5TpTI :2010/03/01(月) 03:55:50 ID:K1sR5cEF
右手を高く掲げる狂皇子。
同時に濡れた身で扱うわけにはいかなかった魔道書を取り出し左手で開く。

「ハイランド国王ルカ・ブライトが命じる……。王の書よ、その力をおれに捧げろ!!」

奇しくも究極召喚の媒体となるその書がルカに膨大な魔力を補充。
満たされた力はルカを経由し右手のサモナイト石に流れ込む。
捩れる空間、開くゲート。
空にぽっかりと空いた黒い穴から漏れ出る人知を超えた存在感にクロノが、マッシュが、日勝が無意識に息を呑む。
ただ一人ルカだけが受け入れるように両手を広げ高らかにその名を告げた。

「出よ、聖 鎧 竜 ス ヴ ェ ル グ !!!!!!!!!!!!」



右手を高く掲げる狂皇子。
握られた紫のサモナイト石から竜の吐息が漏れ出る。

「ハイランド国王ルカ・ブライトが命じる……」

捩れる空間、開くゲート。
空にぽっかりと空いた黒い穴から漏れ出る人知を超えた存在感にクロノが、マッシュが、日勝が無意識に息を呑む。
ただ一人ルカだけが受け入れるように両手を広げ高らかにその名を告げた。

「出よ、聖 鎧 竜 ス ヴ ェ ル グ !!!!!!!!!!!!」


精神的疲労(大)→精神的疲労(極)
204創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 00:50:32 ID:7a5ArNpp
クロノ勢これで全員マーダーか
205創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:06:18 ID:pjxXabUd
そろそろマーダーと対主催の比率が半々になりそうな件
だがそれがいい
206創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:31:33 ID:YhCNrLu6
マーダーは多くても困らないことはないからね
対主催サイドはちと厳しくなるかもしれないけど
207創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 04:44:59 ID:iwywN4TE
それこそマーダー対決なんかマーダー多ないとできんしな
208創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 04:46:07 ID:iwywN4TE
209創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 20:30:11 ID:wks4O6bj
まだ大丈夫だと思うよ
ただ続きが書き難いかもな
210創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 22:25:40 ID:3p1qrhxA
マーダー同士の戦いってそんなにないから
むしろこのロワで熱くやってほしいわー

対主催が全滅しても
残ったマーダーチームで脱出→対主催戦ってのもいいし
そのまま優勝エンドでもいいし悪くはない
211創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 22:37:23 ID:E9Ol47YB
マーダーのチートっぷりとド派手な魔法バトルは、このロワが一番だと個人的には思ってる
212創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:13:01 ID:XAttpVIV
関係ないが最近これくらいの投下ペースが一番じゃねーかなって思ってきた
213創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 14:45:44 ID:Z1DPgrG1
それにしても死者スレの過疎っぷりといったらないな。
最近大量に死者が出てるから盛り上がってもよさそうなもんだが。
214創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 15:31:11 ID:0oT6Tcg5
死者スレを好む住人層と好まない層があるからな
ここは後者ってだけだろ
無理矢理盛り上げる必要なんてない
215創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 15:35:51 ID:/ey/Mifd
wikiのページのいくつかがスパムで荒らされてたから復元しといた
みんなも気をつけといてくれ
216創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 18:41:22 ID:beLcwKKe
死者スレ使ってしまうと、死者が救われてしまうからね。
本編での悲劇が薄れてしまうから、雰囲気を壊してしまう。
217創る名無しに見る名無し:2010/03/10(水) 13:54:00 ID:gzlwSde9
まあ救われるのが嫌なら見なきゃいい。救われてはいけない理由なんてないと思うしな。
そのための死者スレっていう隔離場所なんだし。
俺は死者スレ好きだから盛り上がって欲しいけど、生憎全作品把握してるわけじゃないし、
面白いネタも思いつかないからもやもやすることしかできない。
218創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 11:22:34 ID:jh+gIhGb
最近現在位置表が更新されなくて困ってたから更新してみた
こういうの初めてなもんだから、以前までやってた人と比べて出来がショボいけど当面はこれで我慢してくれ
あのキャラの位置が違うぞバカヤロ―とか間違いあったら指摘よろ
219創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 20:00:18 ID:ZTqTHW9M
悪戦苦闘の後が見られ時間帯による色変更もなされていない
だが…
GJだ。キャラの位置が分かるだけでもおおいに書き手諸氏は助かるだろうし、
何よりめんどそうなことを進んでやってくれる人がいたのはすごく嬉しい
ありがとう
220創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 09:37:51 ID:4cXt3shg
>>218
GJ!見てみるとだいぶ減ったなぁ…と感慨深くなる

ふと思ったんだが、DQ4の代わりにDQ6のメンバーが参加してたら、
ケフカとかルカとかビジュに理性の種食わせてきれいな(ryにできたんだろうか
221創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 10:52:54 ID:aFrJvJoW
>>220
精神崩壊してるケフカならともかく、ねじ曲がっててもそれが性格として
形成されてる二人には効果が無いんじゃね?
222創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 16:44:31 ID:ScAFAyWF
>>218です
誰でも更新できる地図を導入したいんだがどうだろう?

こういう感じになる
ttp://sandbox.media-luna.net/rpgmap/index.cgi?page=Map

正直見辛いとは思うが、誰でも更新できる利便性を考慮してこっちを使った方が便利だとは思う


あと、今のところ俺がキャラの位置とスタンス含めて編集したんだが、対主催マーダー死者の三色しか使ってない。
アナスタシアとちょこなんかはマーダーとも言いにくいので、編集したい方は自由に変えてくれ
それから、地図に載ってない施設は地図の表示から消して付箋で編集可能にした。
フィガロ城なんかはこれからも移動すると思うので。
他にもこういう付箋あったらいいんじゃないか?トカ意見あったらお願いします。
223創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 19:12:37 ID:Ogor6fJw
>>222
私としては構わないかと
移動式のフィガロ城を文字通り動かせるというのも便利だと思いますし、
誰でも編集しやすい地図はWIKIという形式にもあっているかと
224創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 14:51:06 ID:GARyUv9D
ありがとうございます。wikiに入れておきました
一応まだ古いほうの地図も見やすさを考慮して残してます
こちらの方は私のほうで一定話ごとに更新していきたいと思います
225創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 09:05:02 ID:3ViVNuIb
>>220
理性の種の説明「これを飲むとどんな時でも理性を保てるようになる」
理性(goo辞書)「感情におぼれずに、筋道を立てて物事を考え判断する能力」らしいから、
飲んでもガレキの塔で「何故生きようとする?」とか言う時の人格に固定されるだけじゃね?
ケフカが冷静にステルスマーダー出来るようになったら逆に怖くね?

むしろ自分はアシュレーに食べさせてやりたい
226創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 09:12:47 ID:c/3HQ6GH
>>225
いついかなる時でも冷静にツッコミを入れることができるようになるんですね、わかります
227僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:38:46 ID:xuoqdk6m
>>225
ちょっと書いてみたくもなったw

それでは投下します
228僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:39:53 ID:xuoqdk6m
死にたい。
その叫びは僕という人間を形造る基盤だった。
病魔の呪いに苦しめられた一度目の生の中。
罪を背負った二度目の生でも。
ずっと、ずっと、それだけを願って生きてきた。
死にたい、死のう、死ぬべきだ。
けれど同時に死にたいという気持ちが僕を生かした。
死ぬために生きる。
おかしな話だが死ぬという目的があったからこそ僕は生きてこれたのだ。
ただ存在しているだけで大好きな人達を苦しめる辛さにも耐えることができた。
もう少しだから。
もう少しで僕は死ねるから。
待ってて姉さん。そしたら姉さんを縛るものなんか無くなるよ?
そう思い続けることで辛うじて僕は僕が生きていることを許してこれた。

ああ――
だったら、これは報いなのかな?
剣の聖女の言葉が空っぽな心にリフレインする。
僕がやっていることは自身がしなくちゃならなかった戦いを他人に押し付けているだけだと。
ははは、君の言うとおりだったってことかい?
僕が放棄した分の二度の生が二人の命で埋め合された。
そういうこと?

……巫山戯るな。
巫山戯るなよ!
だったら僕の命はどこに行けばいい?
あの二人に死を背負わせてしまったというのなら僕の死はどこにある?
僕は、僕はどうすればいい。
何の為に生きればいい?
答えることのできなかったブラッドからの問い掛けが再度浮上する。
そうだ、僕は答えることができなかった。
答えなかったんじゃない。
できなかったんだ。

姉さんが死んだ。
先生も死んだ。
考えたくもなかったその可能性が実現しても尚僕は――

殺し合いの勝者となることで二人を生き返らそうという気にはなれなかった。
オディオが信用できなかったのだといえばそうでもない。
少なくとも人を蘇生させられるだけの力があることは僕自身が証明している。
かといってそんなことをしても二人が悲しむからだとか、
誰かを生き返らせるために誰かを殺すのは間違っているだとか綺麗事を言うつもりもない。
他の誰が犠牲になろうが、この手が血に染まろうが二人には生きていて欲しかった。
けれど!
生きていて欲しいと生き返らせたいは同列なんかじゃない!
229創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:40:01 ID:4iPHa/Kj
 
230創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:40:20 ID:FvvDQ1yK
 
231僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:40:35 ID:xuoqdk6m

……だってそうだろ?
大切な人が死んだ。だから生き返らす。
そんな、そんな単純に考えていいものなのか?
命とはそんなにも軽いものなのか?
違う。
違うだろ!
生は、死は、他人の都合で容易に左右されていいものなんかじゃない!

『それをあなたが言うの、イスラくん。自ら命を絶とうとしていたあなたが』

だまれ、ダマレ、黙れよっ、アナスタシア・ルン・ヴァレリア!
君に何が分かる?
生まれた時から病魔にさいなまれ続けた苦しみが!
毎日のように死の発作に襲われ、けれど死ねない辛さが!
蘇らされたんだ、いつもいつもいつも!
絶息寸前で僕は!
よりによって僕を死に追いつめた病魔の手によって!
生きることも死ぬことも奪われていたんだよ!
自ら命を絶とうとしても、結果は同じことだったさ。
毒を飲もうが、心の臓を抉ろうが、炎に飛び込もうが、僕は!
痛いだけ、苦しいだけで死ねなかったんだ!
死ねなかったんだ……。

そうさ、僕は知っている。
本人の意志を介することなく誰かの手で生死を左右されることがどれだけ悲しみに満ちているのかを。
だから選べない。
どんなに願っていようとも、どれだけ姉さんたちに生きていて欲しいと想おうとも。
死んだ彼女たちを僕の勝手で生き返らせるという行為だけは。

『勝手? そうね、自分が嫌だから大切な人達が生き返る術を踏みにじる。
 周りの人の事も考えず自分のことだけを優先し続けてきたあなたにはお似合いの言葉ね』

ああ、なんとでも言えばいいさ。
全くもってその通りなのだから。
それに今の君も僕と大して変わらないよ。
なんせ自分以外の全てを殺そうとしているんだからさあ、生きていたいが為だけに!
どの面下げて僕に説教垂れているんだよ、僕の心から出て行け、アナスタシア!

「待て、今アナスタシアといったな。どういうことだ?」

と、どうやら声に出してしまっていたらしい。
ブラッドが厳しい表情で尋ねてくる。
なんとも凡ミスをしてしまったようだがちょうどいっか。

「実は彼女には会っていてね。君たちに出会う前だったけど方角は……」
232創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:41:17 ID:4iPHa/Kj
 
233創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:41:24 ID:FvvDQ1yK
 
234僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:41:27 ID:xuoqdk6m

アナスタシアと出会った場所はI-5エリア。
つまるところは今いるI-7エリアやその先の爆発が起きた地点とは逆方向だ。
僕が意味ありげに指し示した左手に釣られて後ろを向いたブラッドの顔は苦々しげに歪んでいることだろう。
アナスタシアは気になるがこのまま爆発主を放っておくわけにはいかないってとこかな?
悪いことをしてしまったと思わなくもないが結果的には好都合だ。
ブラッドが向き直る前にと右手で握っていた剣を自分の胸元に突きつける。
姉さんたちの為に何もしてあげられることがないのなら生きている意味なんかない。
姉さん達を殺した相手への復讐や志を継いでのオディオの打倒も考えたが、成就するまでの時間を生きていたいとも思わなかった。
……生きていたいと思ったことなんて今まで一度もなかったけどね。

あはははは

柄に、力を込める。
ずぷりずぷりと剣が沈みゆく。
皮を裂き、肉を斬る感触。
待ちに待った瞬間はすぐそこに。
一回目と同様、望んだ最後とは程遠いけど。
一回目と違って自分の意志で死ねるだけまし、かあ。

なわけないか。

だってもたらされた結果は最悪で、下手人はオルドレイク以上に大嫌いな自分で、その上

「てめえ、今何しようとしていた?」

ほら、こうやってお節介な人に止められてしまったのだから。





間一髪だった。
あと少し、あと少し刃を掴むのが遅れていればこいつの命はお陀仏だった。
運良く生き残ることなどまず有り得なかっただろう。
それくらいこいつの動作は迷いの無いものだった。
そして刃はまだ死んでいない。
今も俺の右手と鬩ぎ合いながら進もうとしている。

「離せ、離せよ! 何をしようとしているかだって? 分かるだろ、死のうとしてんだよっ!」

分かるわけがない。
分かってたまるか。
ぶん殴りたい衝動に駆られるも必死に押しとどめる。
下手に殴り飛ばして距離をとろうものならこいつが何をしでかすか分かんねえからだ。
ああ、くそ。
また一つ分かんねえもんが増えやがった!
235創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:42:11 ID:FvvDQ1yK
 
236僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:42:14 ID:xuoqdk6m

「……放送で姉の名前が呼ばれたからか?」
「!? そうだよ、分かっているのなら死なせてくれよ!
 姉さんが死んだ、アティ先生も死んだ。
 もう僕に生きる意味なんてないんだよオォッ!」
「……」

無言で取り押さえに来たブラッドに羽交い締めにされながらイスラん野郎は涙を浮かべていた。
能面のような笑顔を貼り付け、子どものように喚き散らしながら泣くまいとしていた。
その気持が理解できないわけがない。
おまえんとこみたいにひどい話じゃねえけど俺も兄貴を手の届かないところで失った。
けれど、だからこそ腹が立つ。

「分かってねえのはてめえの方だろ!
 死にたくなるくらい姉を好きだったんなら知っているはずだろが!
 てめえの姉がんなこと望んでねえってことくらい!」

兄上は死ぬ間際まで俺なんかのことを心配してくれていた。
昔っから頼んでもいねえのにいつも俺のこと気にかけてくれていた。
兄弟ってえのはそういうもんだ。
てめえの姉もぜってえお前のことを想って死んだはずだ。
それを、その想いを、こいつは無駄にしようとしている!

「そんなこと、そんなことあるもんか!
 僕は姉さんを裏切り続けた! 最後まで泣かせてしまった!
 そんな、そんな弟のことなんて嫌いになっていたに決まって……ガッ!?」

我慢の限界だった。
俺はイスラの剣を投げ捨てるとそのまま利き腕で顔面をぶん殴っていた。

「今のはそのアズリアって奴とアティって奴の分だ……」

裂傷だらけの腕に衝撃が響く。
だがこの程度、こいつの姉や両親が受けた心の傷に比べたらこんなもの屁でもねえ。

「自分の弟をうとましいって思う兄や姉なんざいるかよ。
 イスラ、お前は愛されていたんだ、姉上にな」
「……っ」
「他にもいるんじゃないのか、お前を愛してくれている奴が。両親とか友人とかさ。
 わかってるのに見えないふりを続けると大事な物を見失う。
 俺の最高の友からの受け売りだ。この言葉、軽く受流したら承知しねえからな?」

言うだけ言った俺は剣をブラッドに渡して背を向ける。

「俺は外すぜ。
 どうもこいつは虫がすかねぇ。
 ちょっと見回りでもしてくる」
「そうか。ここは任せろ。……すぐ南の方に海がある、そこを見てきてくれ」

海?
そんなとこに行ったって見回りには……ちえっ、そういうことか。
全部お見通しかよ。
いいさ、その好意に甘えさせてもらうぜ。

「あんがとな」

ひらひらと血まみれの手を後ろに振りながら進路を取る。
南へ、南へ、南へ、進む、進む、進む……。
237創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:42:13 ID:4iPHa/Kj
 
238創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:43:02 ID:4iPHa/Kj
 
239創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:43:03 ID:FvvDQ1yK
 
240僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:43:31 ID:xuoqdk6m





「イスラ、ヘクトルの言葉を聞いてもまだ死にたいのか?」
「……当たり前だろ」
「そうか」

俺は力を緩め拘束を解く。
あっさりと離したことを疑問に感じたのだろう、イスラは問いかけてきた。

「……へー、おじさんは僕を止めようとしないの?」
「俺は『おじさん』なんて名前でもなければそんなに貫禄があるわけでもない」
「ああ、ごめんごめん、ブラッドお・じ・さ・ん」
「憎まれ口を叩くくらいの元気は出たか」
「どっかの誰かのおかげさまでね」
「そうか、その調子でお前は死ぬことも語れるか?」
「……」

それが答えだ。
イスラが叫ぶ死には重みがあった。
会って以来たたえたままだった作り物めいた笑の軽さとは比べ物にならない重みがあった。
弾みや衝動で自殺しようとした人間が浮かべるには不似合いな覚悟がその瞳にはありありと浮かんでいた。
恐らくはずっと前から。
イスラ・レヴィノスは確固たる意志で死に場所を求めていたのだ。

「だろうな。俺は戦場でお前のような目をした男たちを何人も見てきた。
 彼らにとって死とは自らの生を完結させる最も重く尊いものだった。お前にとっての死もそうだ。違うか?」
「違わないよ。死ねる日を糧として僕はこれまで生きてきた。
 死への誓いが僕を逆境から這い上がらせた……」

死を誇りに昇華して自我を保っていた、ということか。
悪いな、ヘクトル。
俺はこいつから誇りを奪うことはできない。

――それが逃避ではなく選択の果てだったのなら、な

「そうか、ならその上で言わせてもらう。
 前提を間違えるな。人は何かの為に生きるのではない。生きている人間が何かを成すッ」
「何、を……」
「俺は世界の平和を、人々を守るために戦って来た。
 お前の言葉を借りるならそれが俺の生きる意味だった。
 その意味も世界に平和が訪れたことで俺は失った」

戦うことしかできないと思っていた。
この先進んでもちと硝煙のにおいの中でしか生きられないと決めつけていた。
戦いの中でしか生きる価値のない俺のような奴の居場所などそんなに多くはないと、
英雄《俺》が必要のない世界を平和というならそのほうがいいとさえ考えていた。

「だがな、戦う事なく生きてみたからこそ知ったものもある」

それは空の青さ。
それは陽光の温かさ。
それは鳥たちの奏でる歌。
それは人々と交わす他愛もない言葉。
それはかってアシュレーをして他に命を賭けられるものを知らないと言わしめたもの。
スレイハイム開放戦線以来取り戻そうとしていたそれの大きさを俺は訪れた平和の中でようやく思い出せた。
241創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:44:03 ID:4iPHa/Kj
 
242創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:44:36 ID:FvvDQ1yK
 
243創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:45:19 ID:FvvDQ1yK
 
244僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:46:01 ID:xuoqdk6m
「日常の大切さだ」

何のことは無い。
俺の心は首に枷を嵌められた後もずっと逃げていたのだ。
いつの間にか忘れてしまった戦う以外の生き方をもう一度歩むことから。
全く、俺はブラッド・エヴァンスであることにそれ程こだわっているつもりはなかったのだがな。
あいつの代わりに英雄として生きる。
過去に決めたその誓いを貫こうと固執して現在を見ようとしていなかった。

わかってるのに見えないふりを続けると大事な物を見失う、か。
お前の言うとおりだ、ヘクトル。
それでも人は時に見ないふりを続けてしまう。
今を見ることで自分の行為などつまらないことだと分かってしまいたくないからだ。
だがな。
人にはその弱さに耐えた上で全てを受け入れる勇気があること示してくれた女がいた。
俺達の信頼に何を為したかでそこに新たに誕生したモノで応えてくれた女がいた。
カノン。
過去に縛られ、手段を目的と取り違え、本当に欲しかったものを見失っていた女。
もうこの世には居ない、しかし繋いだ絆は永遠に消えることのない仲間。
彼女が長い長い旅の果てに見つけた答えを標として俺はイスラへと託す。

「ありのまま全てを受け入れてやれ、イスラ。
 生きてここにいるということを。そしてそのお前が抱く感情を余すことなくだ。……あいつのようにな」

ヘクトルが去っていった方へと首を向ける。
あいつはまだ戻ってきていない。
が、代わりとばかりに迫ってくるものがあった。
大きな大きな一人の男のありったけの感情を載せた叫び声だった。





ざくざくと歩くのに合わせて砂がこすれる音がする。
目の前に広がるのは海。
ちょうどいい位にブラッド達から離れた位置にある浜辺を俺は今歩いている。

――ざくざく、ざくざく

歩いている、歩いている、歩けてる。
……俺は止まれなかった。
イスラのように大切な人の死に立ち止まってしまうことができなかった。
245創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:46:29 ID:FvvDQ1yK
 
246創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:46:59 ID:4iPHa/Kj
 
247僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:47:18 ID:xuoqdk6m
ちくしょう……。
今回もか、今回もかよ。
一度目と二度目は両親を亡くしちまった幼い頃。
三度目は兄上が病死していたことを知ったあの日。
そして四度目。
さっき、アイツの名をあのくそったれの魔王によって呼ばれた時。
俺は、俺は――泣けなかった。
アイツの為に涙を流してやることができなかった。
立ち止まってやることすらできなかった。

失っちまった悲しみが
思い出の中の笑顔が
奪われた憎しみが
耳に残る小声が
尽きぬ怒りが
不変の愛が

全部が全部、俺を前へ前と押し進めやがる!

――ざっざっざっざっざ

悔やんでも仕方がない。
死んだ奴の分も背負って前へと進まなければならない。
かってオズインやハーケンにかけた言葉がそのまま俺の中でリフレインする。

綺麗事として吐いたわけじゃない。
紛うことなく本音だった。

けど、けどよお。
今くらい泣いてもいいんじゃないのか、俺?

――ざっざっざざざざざ

そういやあいつは随分と泣き虫だったっよな。
あーゆーめんどくさい女は好みじゃねーはずだったんだが俺が惹かれたのはそこだったのかもしんねえ。
そうかそうか、そういうことか。
自分のことながら謎だったんだよな。
あんなおどおどしてまどろっこしくてけど一生懸命でなんか言いたそうに俺の周りをうろついていて声をかけたら逃げ出して
そんなところがほっとけなくて近くで戦え庇ってやるっつったらすげえ顔を真赤にして俺も悪い気はしないで
ネルガルを倒したあとなんざついつい抱きかかえちまってペガサスがねえ分かすげえ軽くてああヒューイつったか
あのバカ羽馬にも謝らねえといけねえな後はあの夢の中の俺の娘とおぼしき女の子にもか

すまねえ、わり、ごめんな。
守れなくて、あいつのことを、お前のことを、俺は、俺は、俺はあッ!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
248創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:48:33 ID:FvvDQ1yK
 
249僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:48:36 ID:xuoqdk6m

何が何だか解らなくなってきた。
泣いているのか笑っているのか怒っているのか悲しんでいるのか。
分かんねえ。ただただあいつのことが溢れてきやがる。
あいつを殺した奴やオディオへの怒りなんざ全て流れ込んでくるあいつの奔流に押し流されて行く。
悲しいはずなのに――あいつの笑顔を思い出すとついつい笑っちまう
悔しいはずなのに――あいつの頑張りを思い出すと俺も負けてられねえと気合が入る
憎いはずなのに――あいつを怖がらせちまうかと思うと憎悪に身を任せられない
ごった煮だった、ちっとも感情の整理がついてくれねえ!

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおむぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー ッッッ!!」

吐き出していいもんなんざねえ。
この想いは全て俺が、あいつを愛してあいつに好かれた俺一人が背負ってかなけりゃならないものだ。
他の誰にも渡してやるつもりもない。
けどよ、だけどさ。
その名前を、結局あいつだとかお前だとかばっか言ってあまり呼んでやれなかった名前を俺は呼ばずにはいられなかった。

「フロリィィィイイイイイナアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!」

涙はやっぱ出てくれなかった。
声だけが溢れて溢れて堪らなかった。

――ざざざざざざざざざ





250創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:49:36 ID:FvvDQ1yK
 
251僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:50:03 ID:xuoqdk6m
死にたい。
その叫びは僕という人間を形造る基盤だった。
病魔の呪いに苦しめられた一度目の生の中。
罪を背負った二度目の生でも。
ずっと、ずっと、それだけを願って生きてきた。
死にたい、死のう、死ぬべきだ。
それは今も変わらない。
この願望は、アティ先生や姉さんの言葉でならともかく会って間もない人間の言葉で動かされるほど軽くはない。
でも

言葉にもなっていないそいつの咆哮は不思議と僕の心に響いた。
退くことを知らない獅子のように猛き声。
それでいて子どもが泣いているように悲しい声。

「あ……っ、うあ、ァぁ……っ」

止してくれ。
聞かせないでくれ。
もっともっと静かに泣いてくれ。
こんな、こんな喪失へのありのままの感情をぶつけてくる声を聞いていたら僕までつられてしまいそうじゃないか。
張っていた意地が馬鹿らしく感じちゃうじゃないか。

だというのに声は止まない。
耳を塞ごうにも魂を直接揺さぶる感情の前には無意味。
共鳴するみたいに湧き上がる内側からの声なんてそれこそ、死ななきゃどうしようもない!

「く……っ、う、あああァぁっ!」

どうしようもないのに!
剣を握るべき右腕は、引き金を引くべき左手は、

「ねえ、さん……。アティ先生……」

僕の目から溢れ出すそいつを抑えるのに精一杯だった。
死にたい。死ねば声なんか聞こえない。死ねばこんな想いをしないで済む。
けれど、けれども、僕は、今!

「う、う、ごめんなさい、あああ、ごめんなさい、あぁっう、ごめんなさい!」

それよりも泣きたかった。
傷つけてばっかりだった人達に謝りたかった。
今更だと思いつつも、その想いが余計に僕を悔いさせた。

「ああああああああああああああああああああああああああああああァぁっ!」

失った時に初めて気づくものがある。
陳腐だけど真理だった。
僕は姉さんのことが好きだった。
僕はアティ先生のようになりたかった。
僕は、二人に、愛されていた。
僕は、僕は、僕は!
252創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:50:19 ID:4iPHa/Kj
 
253創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:50:27 ID:1OCTLzpW
b
254僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:51:21 ID:xuoqdk6m
ありがとうを言えなかった

「ああああああああああああああああああああああああああああああァぁっッッ!」

何年ぶりだろうか。
僕は声を出して泣いた。
姉さん達の死を悲しいと思うことを僕に許した。
まだ当分この涙は収まりそうになかった。


【I-7 東 一日目 日中】
【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:全身に火傷(多少マシに)、疲労(小)
[装備]:ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:不明支給品1〜2個、基本支給品一式
[思考]
基本:オディオを倒すという目的のために人々がまとまるよう、『勇気』を引き出す為の導として戦い抜く。
1:東へ向かった後西にとって返しアナスタシアを救う。
2:仲間を集める。
3:自分の仲間とヘクトルの仲間を探す。
4:魔王を倒す。ちょこ(名前は知らない)は警戒。
[備考] ※参戦時期はクリア後。


【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康、疲労(小)、涙で顔グシャグシャ
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0〜1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@アークザラッドU
     鯛焼きセット(鯛焼き*2、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、
[思考]
基本:死にたい……けど?
1:二人の死を悲しむ
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。
※イスラたちが見たのはケフカによるアルテマの光です。


【J-7 東 一日目 日中】
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)、疲労(小)、浜辺を叫びながら全力疾走中
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドU
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、
     基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオを絶対ぶっ倒す!
0:今は、悲しまねぇ
1:東へ向かう。
2:仲間を集める。
3:リン達やブラッドの仲間、セッツァーの仲間を探す。つるっぱげも倒す
4:セッツァーをひとまず信用。
5:アナスタシアとちょこ(名前は知らない)、エドガー、シャドウを警戒。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。
※セッツァーとイスラと情報交換をしました。一部嘘が混じっています。
 ティナ、エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。
※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。
255創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:51:23 ID:FvvDQ1yK
 
256創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 16:52:13 ID:4iPHa/Kj
 
257僕は泣く  ◆iDqvc5TpTI :2010/03/25(木) 16:52:19 ID:xuoqdk6m
以上で投下を終了します
支援ありがとうございました
258創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 17:19:26 ID:1FKWfAxO
泣いた
259創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 17:41:19 ID:FvvDQ1yK
投下乙です
イスラは踏みとどまったか……まぁよかったな
ヘクトルはフロリーナが死んでダメージ受けてこれでリンまで瀕死なこと知ったらどうなるのかね
260創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 23:52:43 ID:gX/wT3PN
投下乙。

今回は泣いた。泣かずにおられんかった。
261創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 01:03:47 ID:VeA3tBxg
まあそうだよねー。
生きている人間の都合だけで、
ホイホイ死人を安易に蘇らせて良いはずが無いんだよなー。


切ないな。ともかく投下乙です。
262創る名無しに見る名無し:2010/03/28(日) 11:53:57 ID:hoM3M8m/
6X氏の予約きたあああああ!
これで勝つる、何かに!w
263創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 00:29:12 ID:yslMX6Ww
予約来てるけど不吉な
だがそれがいいw
264創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 13:23:59 ID:EF1Ib0Xz
したらば何やってんだよw
265創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 13:29:58 ID:6PQksEFJ
乗っ取られてるwwww
266創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 13:39:30 ID:dB4Hx9h2
これはトカの優勝EDフラグと見て間違いないですねッ!
267 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:37:20 ID:WGUMjO+L
これより投下いたします。
268妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:41:08 ID:WGUMjO+L
 楽園はすぐそこにあった。
 手を伸ばせば簡単に届くくらい近くに、いつしか、されど確かに存在していた。
 
 楽園は道化師を拒絶しない。
 彼が如何なる狂人で、彼が如何なる罪人で、彼が如何なる咎人であっても。
 破壊に享楽を覚え、殺人行為に哄笑を上げ、命を否定する魔人であっても。
 
 楽園は必ず、道化師を受け入れる。
 貫くと、決めたから。
 
 そんな楽園に、道化師は手を触れた。
 確かにその手は、指先は、楽園へと届いていた。
 だというのに。
 もはや彼が、楽園に足を踏み入れることはない。
 道化師が手を触れた瞬間に、楽園は失われた。
 
 そうなるのは必然だっただろう。
 道化師は安穏で温和な楽園など求めていなかった。
 壊れてしまった心に彼が描くのは、意味など存在しない破壊のみ。
 捻じれ屈折した瓦礫を乱雑に積み上げたような精神に突き動かされて破壊を繰り返す。
 故に。
 楽園に触れた手が、その楽園を握りつぶさない道理など、存在しない。
 
 失われたものが戻る道理などない。
 二度と戻らぬ楽園を置き去りにして、道化師は行く。
 
 未だ潰えぬ楽園の残滓を、完膚なきまでに叩き潰すために。
 甘く温く優しい楽園に、深い深い破壊の爪跡を刻み込むために。
 
 ――そのための標的は、すぐそこにいる。
 
 ◆◆
 
 東へ駆ける大きな背中を追うように、ブラッド・エヴァンスは走っていた。
 前を行くヘクトルは、立ち止まる様子など見せはしない。
 進まずにはいられないように。
 足を止めてなどいられないように。
 猛進とも呼べるその姿を見失わないよう注意しつつ、ブラッドはちらりと後ろを振り返る。
 そこには、沈んだ表情をしながらもイスラ・レヴィノスが付いてきていた。
 充血した瞳には涙の気配が残っていて、悲しみが色濃く残留しているのが分かる。
「……なんだよ?」
 ブラッドの視線に気付いたイスラが、悪態を付くように吐き捨てる。
「いや、何でもないさ」
 不機嫌そうに鼻を鳴らすと、ブラッドから視線を外す。
「……とりあえず、付いて行ってやるさ。あんたらの言うことに納得したわけじゃないけど」
 バツが悪そうなのは、泣きじゃくったことを恥じているからだろうか。
 その様子は微笑ましくもある。だが、とブラッドは思う。
 イスラが抱き続けていた、死をベースにした誇りは潰えてはいないだろう。
 その是非を、ブラッドは問うつもりはない。
 もしも自らの意志で、その命と引き換えに何かを為すことができるならば、イスラの生は尊ぶべきものになるはずだ。
 そんな死に場所に出会えるのは、きっと幸福なのだろう。
 いかんな、とブラッドは胸中で苦笑する。
 死に場所を幸福だと考えてしまうのは、心身共に戦場に浸かっている証だった。
 だが、しかし。

 そんな身であるからこそ、見えるものも、ある。
 陽が昇り、何処までも広がる青空の、ほんの片隅。

 そこから落下してくる火球を察知できたのは、戦場に慣れ切っていたからだろう。
269妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:44:03 ID:WGUMjO+L
「何か落ちてくるぞッ! 散れッ!!」

 叫ぶと同時、ブラッドは横っ飛びに転がった。
 飛び退り、視界の端でヘクトルとイスラの様子を確認する。
 流石の反射神経と言うべきか、あるいは、ブラッドが声を出すよりも早く気付いていたのか、二人ともほぼ同じタイミングで散開を行っていた。
 その直後、不意打ちにしては規模の大きすぎる一撃が重火器を思わせる爆音を立てる。
 たちまち平原に炎が広がり、雑草の焼ける臭いが鼻腔に突き刺さった。
 不愉快な熱気が大気に交じり、皮膚を撫でていく。
 体勢を即座に立て直し臨戦態勢を取り、瞬時に広がった焼け野原の先、揺らめく炎の向こうに視線を向けた。

 そこには、全身が紫じみた色をした、『人のような何か』が佇んでいた。
 その毒々しい体色は十二分に目立つが、それ以上に目を引くものがそいつにはある。
 それは、背から伸びる三対の翼だ。
 人間離れをしたその容姿は神々しさと禍々しさを併せ持っていて、神のようでも悪魔のようでもある。
 だが、ブラッドはそいつを、救いを齎す神であるとは思えなかった。
 奇襲を仕掛けてきたから、というわけではない。
 そいつが、ねばつくような不快な悪意を剥き出しにして、ブラッドたちを睥睨していたからだ。
 仮に神だとしても、その姿は死神や破壊神というのに相応しい印象だった。
 
 魔力を源としていた火炎が、焦げ臭さを残して収束していく。
 心なしか寒気がするように思えるのは、引いていく熱のせいだとブラッドは思い直す。

「……何者だ」
 そいつと距離を置いてヘクトルが問う。その声は鋭く、彼の表情を見ずとも敵意が伝わってきた。
 ブラッドは黙したままドラゴンクローを握りこむ。掌に滲む汗で滑ってしまわないよう、強く強く。
 横目でイスラを確認する。彼もまた、剣を構え臨戦態勢に入っている。
 どうやら黙って殺されるつもりはないらしく、少なからず安堵を覚えた。
 そんなブラッドらを小馬鹿にするようにして、そいつはニヤニヤと嘲笑を浮かべた。 
「聞きたい? 聞きたい? 教えナーイ!
 だって必要ないでしょ? お前たちはここで、死ぬんだから」
 そのふざけた返答に、ブラッドは思わず目を見開いた。ドラゴンクローを握り締める手から力が抜けそうになる。
 怒りよりも先に驚きを覚えながらも、ブラッドはすぐに冷静さを取り戻す。
 だが、ヘクトルはそうではなかった。
「てめぇ……」
 風に煽られた炎のように激昂し、そいつへと詰め寄ろうと足を踏み出す。
「いきなり攻撃してきた上にその態度、痛い目に遭っても文句は言わねぇよなッ!!」
 フロリーナが死亡し気が立っていた彼は、普段よりも冷静さを失していた。
 だから、すぐに気付けない。

「おやおや、顔が真っ赤ですよ? 優しい優しいぼくちんが冷やしてあげましょう」
 男が突き出すその手に氷塊が作られていることに、だ。
「よせヘクトル! 下がれッ!」
 ヘクトルを止めるべく叫び駆け出すが、散開していたせいで距離がある。
 地面を全力で蹴り飛ばしても、すぐには届かない。
 ブラッドの声に気付いたらしくヘクトルが突進を止めようとするが、一度生まれた勢いはすぐには殺せない。
 みるみるうちに氷塊は肥大化する。
 ヘクトルやブラッドといった巨漢を超えるほどの大きさにまで即座に至るそれを、その男はふざけた笑みを浮かべたまま、投擲した。
 陽光を受けて表面を煌かせ低い唸りを上げ、氷塊がヘクトルへ飛来する。
 それは質量からは想像もつかないほどに、速かった。
 回避は間に合わない。
 そう判断したらしく、ヘクトルはゼブラアックスを振りかぶった。
 
「おおおぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」

 気迫に満ちた絶叫が、ビリビリと空気を震わせる。
 そしてヘクトルは思い切り、眼前にまで迫った氷塊へと、分厚い刃を叩きつけた。
270妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:47:09 ID:WGUMjO+L
 がぎん、と。
 重く鈍い音が響き渡り、ヘクトルの掌から血液が流れ出る。
 粘ついたその液体は地面に吸い込まれ、焦土と化した土を赤黒く染める。
 その傷は、今の攻撃で負ったものでは、ない。
 ヘクトルは全力で、斧を振りぬいた。
 巨大な氷塊が、ガラスの砕けるような断末魔を上げ、一瞬で砕け散る。
 
 絶句するブラッドを一瞥することなく、ヘクトルはゼブラアックスを肩に担った。
 
「正直、わけわかんねぇんだよ……ッ!」

 氷塊が砕け散る甲高い音を従えて零れた声は、思いの外静かで、悲痛で、酷く脆いように、聞こえた。
 
「あいつが――フロリーナが逝っちまって、なんかもう、ぐちゃぐちゃで、何も考えれねぇ。
 自分の感情が抑えられねぇし、どうしたらいいかも分からねぇ。
 だけど、だけどよ、これは、これだけは分かるぜ……」
 
 ヘクトルは担っていたゼブラアックスを、勢いよく前へと突き出した。
 瞬間、ブラッドは息を呑んだ。
 ヘクトルの背から、戦意や闘志といった概念が顕現し、噴出したような錯覚を感じたからだ。
 
「お前のような奴を! 遊びみてぇな気持ちで命を奪う奴をッ!
 絶対に許せねぇって気持ちは、確かに分かるこの俺の感情だッ!!」
 
 叫ぶヘクトルに、ブラッドは微かに頬を緩ませた。
 戦場で勝利を掴み取るための必要事項は少なくない。
 圧倒的な戦闘力や兵力、巧みな策や戦術、最新鋭の兵器や武装、鍛え上げられた戦士に、優秀な指揮官。
 そして強大な敵を前にしても負けないと信じられる強靭な意識。
 その意識の源となるのは、士気だ。
 士気が高い部隊は、強い。
 希望を抱き勝利を望み誇りを胸に戦う戦士は、時として、あらゆる必要事項をも凌駕する力を発揮する。
 そんな士気を引き出せる人物が、今、目の前にいる。
 ブラッドは確信する。

 ヘクトルはまさに、陣頭に立つに相応しい男だ。
 
 ブラッドはドラゴンクローを強く強く握り込んだ。
 戦意が昂揚する。闘志が湧き上がる。
 負ける気はしない。敗北する気などない。
 心持ちはヘクトルと同じだ。
 ブラッドも、眼前の男を許せない。
 こいつは嗤うために楽しぬために悦ぶために人を殺すだろう。
 コキュートス、ジュデッカに近い性質を持った男だ。
 死を呼び悲しみを生む魔人を、放っておけるはずがない。
 
 ――リルカ、カノン。お前たちも戦ったんだろう? ならば俺も、お前たちに恥じぬ戦いをするまでだッ!

 それこそが、命を散らした仲間にしてやれる、たった一つの弔いだ。
 
 ◆◆

 オスティア侯ヘクトルいう人物は、イスラ・レヴィノスから遠くかけ離れたところにいる人物であると認識していた。
 イスラはヘクトルのように直情的には振舞えない。素直に正直に生きることなんて出来はしない。
 初めて会ったときのような――今目の前にあるような広く大きな背中をイスラが見せられるなんてありえない。
 いくら相手がビジュとはいえ、イスラは、笑って人を殺しているのだ。
 死への渇望が、生への憎しみが、自身への嫌悪が、その全ての根源となる病魔が、イスラを酷く捻じ曲げた。
 だからこそイスラは、ヘクトルに共感を抱くはずがない。
 手が届かないほどに離れたところにいる存在を理解することなどできやしない。
 だというのに、そう思っていたはずなのに。
271創る名無しに見る名無し:2010/04/02(金) 23:47:17 ID:wpRv8yQe
 
272妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:50:10 ID:WGUMjO+L

 つい先ほど、イスラは確かに泣いたのだ。

 ブラッドという出会って間もない人間のすぐ側で、大声を上げて、無様なほどに泣きじゃくった。
 それは、ヘクトルのストレートで飾らない、直球の感情に触れたからに他ならない。
 ヘクトルの存在というのは、ひたすらに大きかった。
 故に、遠い遠い距離の向こうにいても、よく見える。
 その存在を、真っ直ぐすぎる心を、嫌でも分かってしまうくらいに、よく見えるのだ。
 
 絶対に理解できないと思っていた感情が自分の中にあるのは、不思議な感覚だった。
 ただ、悪い気はしない。
 悪い気はしなくとも、その感情を素直に受け入れられるほど、イスラはまだ真っ直ぐではない。
 協力するとは言えない。力になるとは言わない。
 ただ仏頂面のまま、剣を構え直す。切っ先が向くのは、翼を生やした奇妙な男。
 そのニヤケ面を見ていると、ヘクトルの気持ちが更に分かる気がしてくる。
 
 ――ああ、確かに許せない。許せないな。

 こんなふざけた奴が、大好きな姉や大切な先生を殺したんだとしたら。
 こんなふざけた奴の行動を、好き勝手にさせてしまったとしたら。
 絶対に、許せなくなる。

 このままこいつを放っておけば、この敵だけでなく、自分自身を許せるはずがない。
 だから、イスラは闘いを選ぶ。
 死に場所を求めるためではなく、意味のない生に幕を下ろすためではなく。
 何かを為すためではなく、命を刻み込むわけではなく。
 
 ただ、許せないという感情に身を任せるだけだ。
 あふれ出す感情に従い、大声で泣きじゃくったときと、同じように。
 
 ◆◆
 
 可笑しい、可笑しい、可笑し過ぎる。
 可笑し過ぎて笑いが止まらず、ケフカは大声で哄笑を上げた。
 その様子を見て、声を聞いて、真っ先に突っ込んできたのはヘクトルだった。
「そうやって笑っていられるのも、今のうちだッ!!」
 猛進してくるヘクトルに、ブラッドとイスラの二人が続く。
 動きは速く、ケフカまでの距離など瞬時に詰められてしまうだろう。
 だが、ケフカは動じない。
「カス以下の以下が。誰が許して欲しいなどと言った?」
 呟いて、内に渦巻く魔力を汲み上げる。
 思わず、恍惚とした溜息が漏れた。 
 満たされている、満ち足りている、留めておけぬほどに溢れている。
 三闘神の力は圧倒的で、貪欲なケフカをも満足させるほどに苛烈で激しかった。
 気分が昂揚し意識が興奮する。脈打つ力を全身で感じ取れる。
 最初からこうしておけばよかったと、改めて思う。
 これだけの力を行使して破壊の限りを尽くせれば、どれほどユカイなことだろう。
 そして同時に、あの女――ビッキーを置いてきたことを後悔する。
 この追随を許さない力で蹂躙と破壊と殺戮が繰り広げられる様を見せ付けてやればよかった。
 右手を振るえば炎が生まれる。左手を掲げれば氷が生まれる。羽ばたけば雷が生まれる。
 連続魔を凌駕するほどの速度で繰り出される魔力の奔流が、三方から突っ込んでくる男たちへと押し寄せる。
 炎は長髪の大男――ブラッド・エヴァンスへ。
 雷は斧を携えた男――ヘクトルへ。
 氷は身軽そうな優男――イスラ・レヴィノスへ。
 魔力によって編まれた攻撃は、しかし、彼らに傷を負わせるには至らない。
 散開し、ステップを踏み、魔力の嵐を抜けてくる。
 ふん、とケフカは鼻を鳴らす。
 どうやらただの雑魚ではないらしい。
273妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:52:57 ID:WGUMjO+L
 尚も距離を詰めてくる彼らを迎撃するように、ケフカは両の手を前に出した。
 魔力に満ちた光の柱がケフカの前に顕現する。
 その柱はケフカから敵へと、地を舐めて真っ直ぐに疾駆を始めた。
 ハイパードライブ。
 轟音を立てて光の柱が駆け抜けた跡には、足跡の如き穴が穿たれていく。
 そして、炸裂する。
 半球状に爆風が広がり、敵の進路を阻む。
 ヘクトルとブラッドが足を止め地を踏みつけ、防御姿勢を取った。
 爆風に飛ばされまいと、二人の巨漢が踏ん張りを見せる。
 ハイパードライブはもともと広範囲の術ではなく、複数の敵をまとめて叩き潰すには至らない。
 爆風は、歴戦を潜り抜けてきた二人を、吹き飛ばせはしなかった。
 そして、防御姿勢を取る彼らを盾にして、もう一人が突っ込んでくる。
 イスラ・レヴィノス。
 ケフカの側へ辿り着いた彼が、魔界の剣を横薙ぎに振るう。
 素早くシャープな一撃を、ケフカは翼を前に伸ばして受け止めた。

「アティを――アズリア・レヴィノスを殺したのは、お前なのかッ!?」

 翼の向こうで、イスラが叫ぶ。
 その瞳に浮かぶ激情を、ケフカは嘲笑う。
 答えてやる気などさらさらないと伝えるように、空いている両の手を竦めて見せる。
 
「そんなの知らないね。いちいち誰を殺したかなんて、覚えてるわけないダロ?」
「ふざ、けるなぁッ!」
 翼に受ける圧力が強まるが、それでも軽い。
 細身のイスラから繰り出される斬撃は、重力を乗せた縦斬りではない。
 三闘神の力を解放する前ならまだしも、今のケフカに通用するような一撃ではない。
 その身ごと翼で弾き飛ばしてやろうとしたとき、ケフカの横面に、ドラゴンクローが食い込んだ。
 強烈な圧力で、強引に爪が頬へと捻じ込まれる。
 鋭く硬い先端が歯茎を抉り、口の中に金属の質感が割り込んでくる。
 舌の上に鉄の味がする歯が、転がった。
 思わずよろめくが、血液と唾液と歯を吐き捨て、ケフカは反撃の拳を叩きつけるべく腕を振り上げる。
 しかしその腕は、重い一撃によって砕かれた。
 イスラの攻撃とは正反対の、たっぷりの重力を味方につけた縦方向への斬撃。
 重量のある斧によって繰り出された一撃は、決してスマートではない。
 皮膚と血管と筋肉と骨を纏めて叩き潰すような、強引で無理矢理な一撃が、ケフカの片腕を破壊する。
 シュウとサンダウンに負わされた傷が未だ多く深い身には、単純な攻撃さえよく通る。
 頬と腕の全神経が痛烈な電気信号を脳に送り込んできた。その膨大な痛覚はケフカの意識を一瞬だけ奪い取る。
 翼から力が緩み、イスラの横斬りが胸を引き裂いた。
 気を失っていたのは、本当に刹那の時間。
 その感知できないほどの時間に増えていた傷が、ケフカの感情に火を灯す。
 何故こうも囲まれて、無様に一方的に攻撃されている?
 この程度ではないのだ。
 三闘神の力が、遂に手にした神の力が、これほどまでに脆弱なはずがない。
「調子に乗るんじゃ、ない……ッ!」
 ケフカ・パラッツォの顔に、もはやニヤけた笑みはない。
 呟きの果てに、蒼い極光が炸裂を開始する。
 ほぼ無詠唱で放たれた究極の攻撃魔法、アルテマ。
 草原を消し飛ばし、サンダウン・キッドの生命を大幅に削り取ったときのように、余裕がある状態から繰り出されたものではない。
 今のケフカが三闘神の力を得ているとはいえ、魔力練成を行わずに放ったアルテマは、それほど強烈な破壊力を伴ってはいなかった。
 それでも。
 纏わり付く鬱陶しいカス以下のモノどもを吹き飛ばすには、充分だった。
274創る名無しに見る名無し:2010/04/02(金) 23:55:38 ID:Jq892mOU
275妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:56:05 ID:WGUMjO+L
 ◆◆
 
 どこか遠くで、何かが響いたような気がした。
 とても怖くて、とても冷酷で、それでいて少しだけ、哀しい音のように思えた。
 聞くのが辛くて、でも、耳を塞いではいけないように感じられて、ビッキーの意識はゆっくりと覚醒する。
「……あれ?」
 ぼんやりとした目を擦り、起き上がる。
 そこはなんとなく見覚えのある宿屋であり、宿屋にいるのにベッドではなく床で寝ていたことに思い至る。
「……あれれ?」
 ビッキーは可愛らしく小首を傾げ、周囲をキョロキョロと見回す。
 広い宿には誰の姿もなく、ビッキーが抱く疑問に答える者はいない。
 両手で柔らかな両頬を抓り、引っ張ってみる。
 むにっ、と少しだけ伸ばしてみると、確かな痛みが痛覚を刺激する。
 それだけではなく、腕を動かしたことにより肩がじくりと痛んだ。
 肩にあるのは、道化師によって刻まれた傷跡だ。
 それが確かにそこにある。
 その事実が、ビッキーに確信を抱かせた。
「わたし、生きてる……」
 どうしてと尋ねても、答える者はいない。
 心細さと寂しさと不安と、それらを超える心配が、胸の中で渦巻いた。
 あの人は、何処へ行ったのだろう。
 あの人は、どうしてしまったのだろう。
 まだ怪我は治っていないのに、大丈夫だろうか。
 よろよろと、立ち上がる。
 疲れは残っているけど、思いの外辛くはなかった。
 宿中の部屋を、見て回る。
 それでも自分以外の姿は見つけられなくて、ビッキーは外へ出た。
 眩い太陽の光が、城下町に降り注いでいる。
 静かで、穏やかで、一見すると平和な光景。
 だけどここには、何もない。
 希望に溢れた喧騒が、喜びに彩られた足音が、平和に満ちた笑顔が、何もない。
 ただ静かなだけの世界は、ビッキーにどうしようもない孤独感を実感させる。
 あの人を、早く捜さなきゃ。
 そう思った直後、彼女の気持ちに応じるように。
 立ち並ぶ家屋の遥か彼方、西の方角で、蒼の極光が爆ぜた。
 
 ビッキーの肌が、一瞬にして粟立った。
 その輝きが何なのか、ビッキーは知っている。
 その輝きが意味するところを、ビッキーは知っている。
 そこに、いるのだ。
 そこで、戦っているのだ。

 ――あの人が、戦っている。
 
 行かなきゃ、とビッキーは思う。
 きっとあの人は、『誰か』を殺そうとしているだろう。
 きっと『誰か』は、あの人を殺そうとしているだろう。
 そこにあるのは、平和や安らぎや優しさとはかけ離れた、悲しみと苦しみと痛みだけ。
 ビッキーの望むものはそこにはなく、目を背けたくなるような凄惨さだけがあると分かっている。
 だけど、ビッキーは思う。
 賢しい考えも身勝手な打算もなく、ただ、思う。
276妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:57:59 ID:WGUMjO+L
 
 ――行かなきゃ。
 
 その意志に曇りも惑いも躊躇いもない。
 これ以上、命が消えていくのは嫌だから。
 これ以上、消えない悲しみが広がるのは嫌だから。
 そして何より、決めたのだ。
 
 ――な、らば……つ、らぬ……け。
 
 耳に残ったサンダウン・キッドの声に、ビッキーは大きく頷く。
 瞬きの紋章が輝き始める。
 揺るぎない輝きを、放ち始める――。
 
 ◆◆
 
 破壊の魔力光が、収束する。
 ドーム状の輝きの跡に、三つの人影がある。
 ヘクトルは、ゼブラアックスを地に付き立てて。
 イスラ・レヴィノスは、魔界の剣を杖代わりにして。
 ブラッド・エヴァンスは、その拳を地面に叩きつけて。
 それぞれ自身の身体を確かに支え、倒れてはいなかった。
 一斉に、顔を上げる。
 視線が向く先は、破壊の中心。
 そこに、ケフカ・パラッツォは佇んでいる。
 右頬と口元から血を流し潰れた左腕をだらりと垂らして、神の力を手にした狂気の道化師――否、魔人は立っていた。
 傷を負っても、倒れ伏した者は誰一人としていない。
 血反吐を吐いても、膝を付いた者は誰一人としていない。
 それはつまり、抗う意志は折れず闘争心は途絶えていないということであり、破壊の願望は潰えず殺戮の心は消えていないということでもある。

 故に。
 闘いは、終わらない。
 ケフカの右腕が、振りかぶられる。
 槍投げのようなモーションを通じて放たれたのは、極太の炎の矢が三本。
 三本の矢はくねくねと歪な軌跡を描いて、三人に一本ずつ飛んでいく。
 極端に遅い魔法攻撃に眉を顰め、ヘクトルは矢を回避した。
 消耗した身であっても余裕で避けられるほどの一撃。
 そんな温い攻撃で、終わるはずがない。
 そうは分かっていても、こちらがケフカへと攻撃を叩き込むには愚直に接近するしかないのだ。
 だからヘクトルは、再度地を蹴ろうとして。

 嫌な予感が、背筋を這い上がった。
 それは、最前線で武器を振るい、数多の兵に囲まれる乱戦を生き延びてきた経験に裏づけされた、信憑性の在る直感だった。
 ヘクトルは、自身の直感が裏切らないことを知っている。
 直感は、背後の危機を訴えていた。
 だから、従って横に跳んだ。
 その直後、のろのろとした炎の矢が、ヘクトルの真横を通過する。
 炎の矢は、留まらない。
 回避されたと矢自身が理解しているように、再度舳先をヘクトルへ向けて飛来する。
 矢は、執念深く追ってくるらしい。
 しかし変わらず、弾速は遅い。

 ――だったら、振り切ればいい。
 
 今度こそヘクトルは、迷わずに地を蹴った。
 その眼前に、再度氷塊が迫り来る。
 何度も斧で叩き割っていては、刃がもたない。
277妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/02(金) 23:59:14 ID:WGUMjO+L
 ヘクトルは舌打ちを漏らし、直進軌道を強引に捻じ曲げて氷塊と擦れ違う。
 氷塊と炎の矢が衝突すればしめたもの。
 だが氷塊は、ヘクトルの真横で停止し、そして。
 
「そらそらそら――ッ!」

 ケフカの声と共に、ばらばらと弾け跳んだ。
 氷塊は細かく小さな氷の群れとなり一拍の間を置いて、真横からヘクトルを貫きにくる。
 それでも、構わない。
 ヘクトルは足に力を込め、疾走の速度を上げた。
 静止してからの氷弾など、炎の矢と同様に振り切れる。
 鎧の重さを感じさせない速度で、ヘクトルは駆け抜ける。
 その背後を、炎の矢とは段違いの速度で、氷の群れが通り過ぎる気配がした。
 いける。
 流れる血液で滑り落ちないように、ゼブラアックスの柄を握り込む。
 あと一足で斧の射程圏といったところまで踏み込んだとき、
 
「甘いんだよ」

 ケフカが呟いて、翼を微かにはためかせる。
 その手にあるのは、ハイパードライブの輝きだ。
 反射的に振り返る。
 氷の礫は、避けられてもなお、ヘクトルへ牙を剥いていた。
 炎の矢のような緩慢な動作ではなく、急激に方向を変え、氷は群れを成してヘクトルへ突っ込もうとしている。
 突っ込めばハイパードライブの直撃は免れない。
 下がれば炎の矢が突き刺さる。
 氷と逆方向に跳んでも、回避は間に合いそうにない。
 
「んな、くそぉ――ッ!!」
 判断は一瞬。
 ヘクトルは、ゼブラアックスをぶん回し自ら氷の群れに突っ込んだ。
 礫のいくつかが、分厚い刃とヘクトルの巨体に弾き飛ばされて勢いを失い、消失する。
 仇を取るかのように残りの礫が飛来する。
 だが、一発一発の威力は低い。
 礫をやり過ごしたヘクトルがケフカを叩き潰そうとするが、そこには魔人の姿はなく。
 代わりというように、誘導する炎の矢が三本残されていた。
 
 ◆◆
 
 追いすがる炎の矢を振り切りつつ、イスラは周囲の様子を見渡す。
 ヘクトルとブラッドは、氷塊から派生する氷の散弾と追加の炎の矢によって、その動きを抑え込まれていた。
 対し、イスラに付けられたのは一本の炎の矢のみ。
 囲まれないよう小さな魔法で足止めをし、一人一人仕留めるつもりのようだ。
 そして今、イスラは誘われている。
 厄介な相手を真っ先に潰そうと判断されたというよりも、単純に数の減らしやすさを考慮した結果、イスラが狙われたのだろう。
 確かにあの二人に比べれば、イスラの攻撃は軽い。
 サモナイト石も紅の暴君<キルスレス>もない今、戦闘力が高いとは決して言えないのは自覚している。
 それでも、イスラに出来ることはある。
 たとえば、この中で最も身軽で小回りが利くのはイスラだ。
 ドーリーショットを用いれば、射程こそ短いが遠距離攻撃だってできる。
 できることを、最大限の範囲でやってやる。
 そうすれば、自分が死んだとしても、あとはきっと。
 
 ――あいつらが、やってくれるさ。
278妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:02:20 ID:WGUMjO+L
 無意識のうちに浮かんだその考えに、イスラは気付かない。
 気付かないまま、左手に握ったドーリーショットの引鉄を引いた。
 吐き出された散弾は、その一部がケフカを掠めるだけに終わる。
 狙ったわけではないのだ、当たらなくていい。
 牽制の銃弾をばら撒いて接近し、魔界の剣で薙ぎ払う。
 それをケフカはバックステップで回避し、イスラを指差すように右手を突き出した。
 指先に、蒼い光が灯る。
 ふよふよと蛍のようにイスラへと漂ってくるその光は、先ほどの極光とよく似ていた。
 危険を覚え、イスラもまた下がる。
 収束された光が、イスラの眼前で爆ぜて地面を抉り取る。
 人一人が収まるほどの穴を作り出して光は消えるが、その向こうから今度は光の柱が突進してきた。
 バックステップでは追いつかれる。
 だからイスラは横に跳ぶ。
 真横を駆け抜けた魔力の柱が背後で爆発する音を耳にして、イスラは恐怖にも似た戦慄を感じずにいられない。
 ヘクトルとブラッドの二人を足止めするほどの魔法を無詠唱で連射が可能など、並大抵の芸当ではない。
 まさに、化物。こいつなら、Sランクの召喚獣の連発さえ可能かもしれない。
 だとしても、イスラは突貫する。
 何を馬鹿みたいに突撃を繰り返しているのだろうと思っても、その動きは止まらない。
 湧き上がる衝動のように、止められなかった。
 引鉄を、二度引く。
 微妙に照準をずらして放った銃撃をケフカが回避した瞬間を狙い、イスラは魔界の剣を突き込んだ。
 回避の挙動中に迫る突きを、ケフカは上昇して避ける。
 またも距離が開いてしまう。そこを狙って、ケフカはまたも魔法を放ってくる。
 キリがない、応酬。
 相手の魔力が尽きるか、こちらの体力が尽きるか。
 危ういバランスの上に成り立つ攻防だ。
 必要なのは、それを切り崩す一手。
 何かないかと考えかけた、そのとき。
 
「お前も、味わいやがれッ!!」

 ヘクトルの声と共に硬質な打撃音が鳴り、ケフカの背後へと飛んでいく何かが見えた。
 陽光を照り返しながら飛んで行くそれは、ケフカ自身が生み出して武器としていた氷塊だ。
 ちらりとヘクトルを一瞥すると、彼は斧を振りかぶった姿勢で得意げにしていた。 
 今度はどうやら、氷塊が弾ける前に打ち返したらしい。
 その型破りさに、イスラは苦笑を禁じえなかった。 
 氷塊はケフカの側で静止し、小さな礫の群れに変化する。
 次の瞬間、ヘクトルやブラッドに襲い掛かっていたように、それらはケフカへと殺到した。
 不愉快そうに顔を歪めるケフカの身に、無数の傷跡が刻まれる。
 そして。
 その礫を隠れ蓑にして、もう一つの巨体が、ケフカの背後で拳を握り締めていた。

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――ッ!」

 気迫に満ちた雄たけびを上げ、氷の群れが食い込んだ背へ拳が直撃する、その間際で。

「――舐めるな」

 ケフカの背から延びる三対の翼が鋭く尖り、急激にその長さが飛び出すかのように伸びた。
 そしてその翼を、勢いよく後ろへ突き立てる。
 拳が当たる直前だ。
 防御も回避も可能なはずもなく、破壊の翼はブラッドに直撃する。
 ブラッド・エヴァンスは、鈍い音を立てて、真っ直ぐに吹き飛ばされた。
279妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:04:10 ID:WGUMjO+L
 ◆◆
 
 予想だにしなかった翼による攻撃は、ブラッドの巨体をも一気に吹き飛ばすほどに強力だった。
 完全にカウンターを受けたブラッドは、額と右腕から血液を撒き散らしながら宙を飛ぶ。
 それでもなんとか受身を取るべく身を捻り、辛うじて着地する。
 そして、ブラッドは目を見張る。
 ファルガイアを思わせる荒野が、そこには広がっていた。
 とはいえ、ファルガイアのように広大な荒野ではない。
 果てを見れば荒野よりも遥かに広い草原があり、その先でヘクトルとイスラが戦いを続けている。
 草原の中に穿たれた、円状の不自然な荒野。
 ブラッドが驚愕した理由は、故郷の星に似た大地がそこにあったからでは、ない。
 
 出血しているにも関わらず、気持ちが逸る。
 深呼吸をして逸りを抑え、捨て置かれたように転がる『それ』に近づいていく。
『それ』は大柄なブラッドの身をも優に超えるほどに巨大だった。
『それ』は機械や銃といった知識のない者が見れば、訳の分からない鉄塊にしか見えないだろう。
『それ』は機械や銃といった知識を持つ者が見れば、人の手で扱える武器には見えないだろう。
 武骨な金属で作られながら、洗練された武器の形状をした『それ』に、ブラッドは触れる。
 傷を負った右腕に鞭打って、『それ』を掴み取り担ぎ上げた。
 常人ならば持ち上げようなどと考えもしないであろうほどに、それは重い。
 その重量をブラッドはよく知っている。懐かしささえ感じられる。
 ブラッドが知らないことと言えば。
『それ』を手にした者たちもまた、ブラッドと同じ志を秘めた者であり、ケフカと戦った男たちであるという事実だ。

『それ』はまさに、状況を引っくり返せるだけの一手。
 元艦載式磁力線砲――リニアレールキャノン。
 
 最大級の重量と質量と扱いにくさを併せ持ち、そして。
 超ド級の破壊力を誇るへヴィアーム。
 誰もが使える武器ではない。むしろ、扱える人間など片手で数えるくらいだろう。
 そもそもそれは、個人で運用するような兵器ではないのだ。
 しかしながら。
 ブラッド・エヴァンスは、片手の指でカウントされるべき人間だ。
 即座に状態をチェックする。
 多少汚れてはいるが破損は見られない。
 肝心の弾は――入っている。
 弾数も命中もチューンされていないようだが構わない。

 一発撃てれば、充分だ。
 
 額から血液が垂れ落ちてくる。
 右腕の傷が熱を帯びている。
 極光を浴びた全身が痛みを訴える。
 紙一重で魔法を回避し続けたせいで、疲労だって少なくない。
 
 それでも、ブラッドは揺るがない。
 決して消えない挫けぬ意志と戦う意志と抗う意志が、揺るぐなどという選択肢を選ばない。
 その身に宿る果てなく湧き上がる意志が、ブラッドに力を与える。
 コンディション・グリーン。 

 だから。
 
 ――外す道理など、何処にもない。
280創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 00:08:45 ID:RVcvQp4p
281妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:09:24 ID:pO8osOVr
「ヘクトルッ! イスラッ!」
 ブラッドは叫ぶ。
 届かせる気概で叫んでいるのだ。ヘクトルはもちろん、イスラだって掴んでくれる。
 掴んでくれないような男なら、こうまでして共に戦うはずがない。
 たとえ彼が、死を誇りとして立っていたとしても。
 今ケフカと対峙する彼の姿は、自ら命を絶とうとしたときとは違うように思えた。
 だから、叫ぶ。
「奴から離れろッ! 今、すぐにだッ!」
 叫ぶことの最大の問題は、敵にも声が届いてしまうことだ。
 それでもブラッドは、叫び声を上げる。

「俺と奴を結び貫く直線上に、一歩たりとも踏み入れるなッ!!」

 ブラッドは信頼していた。
 無数の強敵を打ち倒してきたへヴィアームと、それを使いこなせる自分の実力を。
 確かな経験に裏付けられたその自信は、過信ではなく敵だけを狙い打てると断言していた。
 
 ――オディオよ、見ているんだろう?
 
 ブラッドは思い描く。
 人の身では抱えきれないほどの憎悪を溢れさせる魔王の姿を。
 オディオの目的や真意など分からない。
 ただその様子から窺えるのは、人間を浅ましく愚かな存在であると断じているであろうということだ。
 屑にも等しい人間を恐怖と餌で煽り殺し合わせ、その醜さを知らしめようとしたのかもしれない。
 だが、たとえそんな状況下にあっても。
 大切な仲間が、家族が、恋人が命を失っても。
 手を取り合い同じ志を抱き、肩を並べて戦えるのだ。
 人が愚かさを捨てられると信じられるほど、ブラッドは若くない。
 それでも、だとしても。
 人間が自らの意志で立ち上がり自らの力で戦える生物であると、知っている。
 
 ――この光を、その目に灼き付けておけ。
 
 この一撃はケフカだけに向けるものではない。
 この一撃はブラッドだけの力ではない。
 これは。
 この力は。
 人に絶望した魔王に対し、人の強さを見せ付けるための、一撃だ。
 
 ヘクトルが引くのが見える。
 イスラが退くのが見える。
 ケフカが驚愕に目を見開くのが、見える。
 殺戮を振り撒く狂気の魔人と――何処かで見ているであろう魔王オディオに向けて言ってやる。
 
「この攻撃は抗いの証!
 揺らがず霞まずくず折れぬ、確固たる意志の体現だッ!」
 
 そう、その意志がある限り。
 
「俺は――俺たちは、死なないッ! 戦う意志が絶えない限りッ!!」

 バチバチと音を立てて瞬く間にエネルギーが満ちていく。
 通常の射撃を遥かに上回る力が暴走の域まで登り詰める。
 
 ブーストアタック。
 へヴィアームの限界を超えた射撃を必中の精度で放つ、ブラッドの全力のチカラ。
 そのチカラを、余すことなく解き放つように。
 ブラッドは迷わずに、重い引鉄を引いた。
282創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 00:12:57 ID:RVcvQp4p
283妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:13:37 ID:pO8osOVr
 
 ◆◆
 
 自己嫌悪せずにはいられなかった。
 あの人のところへすぐに向かわなきゃと強く念じてテレポートしたというのに、ビッキーが行き着いたのは戦場から離れた場所だった。
 それほど遠いわけではない。
 だが、こんな時に微妙な場所に飛んでしまう自分のドジさが、嫌になる。
 息を切らし身を汗ばませ、ビッキーは駆ける。
 駆けながら、思う。
 戦場に乱入できなかったのは、自分にある弱さのせいなのだろうか、と。
 誰かが傷つくのを恐れる弱さが、互いに傷つけ合う場所への転移を妨げたのかもしれない。
 そんな弱さを抱き締めているから、たいせつな人たちは死んでしまったのかもしれない。
 だとしたらやっぱり自分が、嫌になって、泣きそうになってしまう。
 それでも、ビッキーは足を止めない。
 涙で視界が滲んでも、呼吸が詰まって胸が苦しくても。
 
 ――貫くんだ。ぜったいに、ぜったい。
 
 もうすぐで、戦場に届く。
 弱いからできることがないなんて思わない。
 弱いから何もしないのなんてぜったいにイヤだ。
 変わらない決意を抱いて、ビッキーはひたすらに足を速め、祈るように願う。
 
 ――だからお願い、間に合って。
 
 耳をつんざく轟音を引き連れて鋭く眩い一条の光が迸ったのは、その直後だった。
 力強く眩いその光は地面を揺るがせるほどの速度で、戦場を駆け抜け消えていく。
 跡には何も残さないというような光が見えたのは、一瞬。
 
 その僅かな一瞬で、ビッキーの胸に、猛烈な不安が込み上げてきた。
 あんな光を受けて、無事でいられる命などあるはずがない。
 
 あれを撃ったのは、誰だろう。
 あれを撃たれたのは、誰だろう。
 分からない。
 理解するのが、怖い。

 ただ、明らかなのは。
 いつの間にか戦場に、静けさが満ちているということだった。
 
 震えて立ち止まりそうになる足を叱咤してビッキーは行く。
 
 早鐘を打つ心臓の音に、不吉さを覚えながら。

 ◆◆
 
 ヘクトルは、呆然とするしかできなかった。
 高名な魔道士や桁外れの魔力を誇る賢者によって放たれた魔法の槍にしか見えない光を、ブラッドが携えた巨大な何かが放ったからだ。
「おいおい……なんつー隠し玉を持ってやがんだ」
「俺がかつて使っていた武器ではあるが、隠してたわけじゃない。ただの拾い物だ」
 歩いてくるブラッドが担ぐのは、光の槍を生み出した武器だ。
 見たことのない変わった武器だったが、その威力は神将器にも匹敵するかもしれないとヘクトルは思う。
「そんな物騒なもんが落ちてたのかよ……。でもまぁ、おかげでなんとか――」
「よく見ろ。まだ、なんとかなんてなってない」
 ヘクトルの言葉を遮ったのは、イスラの声。
 まさかと思いケフカのいた場所へと目を向けて。
 ヘクトルは言葉と息を、呑んだ。
284妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:16:31 ID:pO8osOVr
 
 その場所には。
 身のほとんどを焼け焦げさせ、全身から煙を昇らせ、肩で息をして。
 大きく項垂れて幽鬼のようになりながらも。
 確かに二本の足で立っている、ケフカ・パラッツォの姿があった。
 
「なんてしぶとい野郎だ……」
 呟き、ゼブラアックスを構え直す。
 敵は虫の息だ。戦う力が残っているかどうか疑わしい。
 だからこそ、今なら叩ける。
 こいつは強力で膨大な魔力を行使し、殺戮に悦びを覚える魔人だ。
 情けをかけてこのまま捨て置けば、何らかの手段で復活して更なる被害を出す可能性だってある。
 そうなってからでは、遅い。
 倒せるべきときに、確実に倒しておかなければならない。
 そうしなければ。
 フロリーナのような被害者と、自分のような感情を抱える人が増えることになる。
 それは、阻止しなければならない。
 あんな想いを、広げさせてはいけないのだ。
 一歩一歩、ケフカへと近づいていく。
 ケフカに迎撃の様子は見られない。
 こちらに気付いていないのか、いたとしても反応ができないのか。
 どちらにせよ、油断は禁物だ。
 一気に決めるため、ヘクトルは斧を振り上げて、
 
「ダメ、ダメッ! お願い、やめて――ッ!!」

 必死さと焦燥と懇願が入り混じった、聞き覚えのない少女の声が、聞こえた。
 声に入り混じる感情はとても強く真っ直ぐで飾り気がなく、純粋だった。
 それ故によく響きよく届きよく伝わる。
 誰に向けられた叫びなのかは分からない。
 だけど、ヘクトルはその声を受け取ってしまった。
 一瞬、ほんの一瞬だけ、斧を振り下ろすのを躊躇ってしまう。
 
 ――その一瞬の隙に、ケフカが、バネ仕掛けの玩具のように、顔を跳ね上げた。
 
 血液を垂らすその口が、微かに僅かに確かに動く。
 紡がれるのは低く昏く、そして力の宿る、言葉だった。




 


「――カオスを超えて終末が近づく……」








 たったそれだけの声が、紡がれた直後。
 一瞬で空気が張り詰め、そして、世界が血の色に染まる。
 地獄の底に繋ぎ止められた悪魔の唸り声のような地響きを引き連れて。
 ハカイが、その場に吹き荒れた。
285妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:22:09 ID:pO8osOVr
 ◆◆
 
 それは炎でもなく氷でもなく雷でもなく、風でも光でも炸裂でも隕石でもなかった。
 音などしない。眩くもない。熱くもないし冷たくもない。
 そういったあらゆる要因によって生み出される結果ではなく、破壊という概念そのものがその場で暴れまわる。
 ミッシング。
 純然たる破壊が、大気を振動させ地面を食い潰す。
 草を消し飛ばし土を削る破壊に、明確な対象など存在しない。
 終末を呼ぶ破壊の奔流は、地割れによく似た轟音を立ててケフカを除く全てを否定し尽くすように暴走する。
 そこに意味などない。
 破壊という概念そのものが、破壊という行為に意味など抱きはしないのだ。
 やがて、破壊は収束する。
 一分にも満たない僅かな時間で、その概念は草原を一瞬にして荒れ果てさせた。
 
 またも生まれた荒野に佇むのはたった一人の、ボロボロの姿をした道化師のみ。
 度重なる魔法の連続とミッシングのような大技の使用による消耗と、リニアレールキャノンの直撃を始めとしたダメージによって、ケフカは三闘神の力を維持できなくなっていた。
 
 元の姿に戻ったというのに、傷だらけだというのに、ケフカは満足そうに周囲を見渡した。
 そして、見つける。
 うつ伏せに倒れ伏す黒髪の少女を、だ。
 
 終末の力が荒れ狂う直前に声が聞こえた気がしたが、幻聴ではなかったらしい。
 テレポートを使ってここに来たのだろう。
 紛れもない破壊に巻き込まれたのだ、死んでいてもおかしくはない。
 それでも、ケフカは思う。
 生きていてくれたら、と。

 ――生きていてくれたら、もっと傷つけてやれるのに。
 
 今にも倒れそうなふらつく足取りで、ケフカはビッキーへと歩み寄る。
 すると、ケフカの願いが届いたように、ビッキーがゆっくりと顔を上げた。
 ケフカは、ほとんど化粧の崩れてしまった顔に、歪んだ笑みを浮かび上げる。

「……三人だ」

 掠れそうな声で、ケフカは語る。
 ビッキーが、ぴくりと肩を震わせた。
 
「感謝しているぞ小娘。お前のおかげで、俺様は三人も殺せたんだ」

 ケフカは、嗤う。
 立っているのがやっとなほどの怪我を負っているのに、愉快そうに目を細め哄笑する。
 
「まだ終わらんぞ。これからもっと、もっと、もっと壊してやる。
 命も、夢も、希望も。
 全てをこの手で、壊し尽くしてやる」
 
 恍惚として告げられる宣言に、ビッキーは、ゆっくりと首を振る。
 ただひたすらに、哀しげな顔をして、口を動かす。
 
「……ダメ。ダメ、だよ、そんなの……」

 ビッキーは地面に手を付いて身を起こし、起き上がる。
 そのまま立ち上がろうとするが、足腰に力が入らないのか、無様に尻餅をつくだけだった。
 座り込んだまま顔だけを上げて、真っ直ぐな視線をケフカに向けてくる。
 
「お願い、だから、これで、最後にして……?」

 その代わりというように、ビッキーは両の手を自らの胸に当ててから、差し出すように手を伸ばす。
286妖星乱舞 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:25:47 ID:pO8osOVr
「わたしの命を、あげるから。だから、ね?」

 ビッキーは、微笑さえ浮かべていた。
 その健気さに溢れたビッキーの姿を目の当たりにして、ケフカは笑いを止めずにはいられなかった。
 心を打たれたわけではない。
 愛おしさを覚えたわけではない。
 満足な気分を害されたとしか、感じられなかった。
 まだか。
 まだ言うのか、この小娘は。
 やはり頭がオカシイ。狂っている。普通じゃない。どうかしている。
 本当に――なんなんだ、この女は。
 何故こうまでもこいつは、こいつは――。
 
「私を、こうまでも苛々させるんだッ!」

 衝動に任せ、ケフカはビッキーを蹴り飛ばした。
 華奢な体躯が、荒野に倒れる。
 再び起き上がろうとする彼女を押さえ込むように、ケフカは、その胸を思い切り踏みつけた。
 足の下で、ビッキーがけほりと咽る。
 それでも彼女はケフカを見て、哀しそうに微笑んでいた。
 噛み締められた奥歯が、ぎりりと音を立てる。
 苛々する、苛々する、苛々する。
 この苛立ちを消すには、こいつを殺すことが一番だ。
 最後まで生かしておいて、嘆き悲しみ後悔させてやりたかった。
 自分のせいで数え切れない死が訪れたのだと思い知らせてやりたかった。
 
 だが、やはり。
 ここで殺しておくべきなのかもしれない。
 そうしないと、止まらない苛立ちで、気が狂ってしまいそうだった。
 足裏に、力を込める。
 柔らかな感触の中に、靴が沈んでいく。
 
 それでも、ビッキーは抵抗しない。
 まるで自身の願いが必ず叶うと信じているかのように。

「死ね、死ね、死ね……ッ」

 気が付けばケフカは目を血走らせ、呪詛のようにそう呟いていた。
 呟かずにはいられないほど、ケフカはビッキーに固執し、その精神は袋小路に陥っていた。
 
 だから、ケフカは思い至らなかった。
 ビッキー以外の三人も生きているという可能性に、だ。
 
「――死ぬのは、お前だ」

 背後から聞こえた声を認識すると同時に。
 ケフカの胸を、激痛が貫いた。
 
「な、に……?」

 呆然として、思わず見下ろす。
 胸元から、禍々しい刀身の剣が、生えていた。
 火薬が破裂する乾いた音が、背中で響いた。
 背中に押し当てられた銃から吐き出された弾丸が、ケフカの皮膚を食い破り肉に食い込んでくる。
 敵の息遣いを真後ろに感じる。
 だが、ブラッドを迎撃した破壊の翼は、今は生えていない。
 振り返る。
 肩越しに見えたのは、傷だらけになった線の細い男が、突き刺さった剣を引き抜き、更に発砲する瞬間だった。
287壊れた心に貫く想い ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:29:10 ID:pO8osOVr
「ぐ、そぉ……」

 喚き声は、銃声にあっさりとかき消されて。
 ケフカは、ビッキーに折り重なるように倒れこんだ。
 
 ◆◆
 
 怖い音が何度か響いたとき、わたしの上に、ピエロの姿をしたあの人が倒れてきた。
 せっかく治療したのに、一生懸命包帯を巻いたのに、あの人の身体はまたボロボロになっていた。
 どうしてみんな、戦いをするんだろう。
 どうしてみんな、傷つけ合って奪い合って殺しあうんだろう。
 わからない。
 わたしには、わからない。
 みんなで楽しく笑って、仲良くごちそうを食べるのが、幸せに決まっているのに。
 怪我をすれば痛いし、宝物がなくなったら悲しいし、大切な人がいなくなったら寂しい。
 そんなの、みんな知ってるに決まってるのに。
 わからないことだらけなのは、わたしの頭が悪いからだろうか。
 でも、それでいいや。
 この気持ちをなくすくらいなら、頭が悪いままでいい。
 わたしに覆いかぶさったあの人の向こうに、知らない男の人が立っている。
 綺麗な顔をしたその人は、あの人へと剣を向けている。
 やめて。
 もうやめてよ、こんなこと。
 お願いだから、傷つけあわないで。
 あれ? あれ? あれ?
 おかしいな。
 そう言おうとしたのに、言いたいのに。
 なんでかな。
 
 声、出ないや。
 
 男の人は、今にもあの人を殺そうとしているみたいだった。
 体は痛くて動かないし声も出ない。なんだか、目も霞んできた気がする。
 このままだと、あの人が死んじゃう。
 そんなのは、ダメ。
 ぜったいに、ダメ。
 誰かが傷つくのも死ぬのも、見たくない。
 できることをやるんだ。
 貫くんだ。
 
 お願い、瞬きの紋章。
 わたしの傷を心配してくれた人を、何処か遠くへ連れていって。
 優しくて、穏やかで、綺麗な場所へ。
 
 それさえ叶えてくれるなら、わたしはどうなったって構わない。
 だって自分の気持ちに真っ直ぐに、正直にいられたんだ。
 後悔なんて、するわけがない。
 
 ああ、でも。
 
 みんなで、一緒に。

 ごちそう、食べたかったな――。
 
【ビッキー@幻想水滸伝2 死亡】
288壊れた心に貫く想い ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:31:56 ID:pO8osOVr
 ◆◆
 
 あと一息だったのに、止めを刺し損ねた。
 その事実にイスラは舌打ちを漏らし、魔界の剣を下げる。
 突然現れた闖入者である少女は、もはや物言わぬ亡骸と化していた。
 何らかの方法で、彼女があの道化師を救ったのかもしれない。
 だとしたら、この女はあいつの仲間か。
 考えかけて、イスラは首を振る。
 どうでもいい。
 この女はもう、死んだのだ。
 放送直後に、自分でつけた傷が疼いた。
 イスラは少女の遺体から目を逸らす。
 じっと見ていると、死に招き入れられた彼女に、羨みを覚えそうだったから。
 
 だからイスラは、まだ生きている者へと視線を向ける。
 そこに何かを、求めるように。
 
 ヘクトルも、ブラッドも。
 ズタボロになりながらも、生きている。
 全身に破壊の爪跡を刻まれていても、彼らは両足で立ち上がっていた。
 
「で、君らはとどめを僕に任せて、ずっと寝てたってわけかい?」
 軽口のように言ったのは、未だ癒えぬ死への渇望を覆い隠すためだった。
「すまない。少し、意識が落ちていたのでな」
 ブラッドの返答に、イスラは肩を竦める。
 とりあえず、勝ちはした。
 この手には貫いた感触が残っているし、散弾を数発、確かにぶち込んだ。
 だとしても、死を確認していない以上、完全な勝利を収めたとは言えそうになかった。
 あいつは倒しておかなければ危険な敵だ。
 だから、次に会ったら確実に仕留めなければならない。
 自然と考えていた自分に気付き、イスラは思う。
 
 ――もう、守りたい人は何処にも存在しないのに。どうしてそんなことを考えているんだろう。
 
 分からない。
 分からないから、イスラの視線はヘクトルに向く。
 自分とかけ離れたところに立つ彼を見れば、その答えが見つかるような気がした。
 
 その視線の先で、ヘクトルがぼそりと口を開く。
「なぁ、ブラッド……」
 ヘクトルは、ぼんやりとした様子でブラッドを見つめていた。
 彼らしからぬ様子は、ダメージのためだけではなさそうだった。
「さっきの奴の格好、見たか?」
「……ああ。あんな奇抜な格好をした奴なんてそうそういないだろう。
 お前がセッツァー・ギャッビアーニから聞いた奴の特徴と一致する。
 妙な、話だ」
 
 イスラは、目が痛くなるような原色の衣装に身を包んだ道化師を思い出す。
 そいつは、イスラがマッシュから聞いていた一人の人物の外見と一致する。
 紫色の肌に翼を生やしていたときは気付かなかったが、恐らく間違いないだろう。
 そいつの情報を――そいつの危険さを、ヘクトルたちもセッツァーを介して掴んでいるはずだ。
 一体何が妙なのか、イスラには分からなかった。
 それを問おうとしたとき。
 
「まさか、まさかあいつが――ケフカ・パラッツォだったのか……?」

 まるで、現実だと信じていた御伽噺が架空の世界の物語であると教えられた子どものような顔をして、ヘクトルが呟いた。
289壊れた心に貫く想い ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:35:20 ID:pO8osOVr
【I-8 南西 一日目 午後】
【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:全身に火傷(多少マシに)、疲労(大)、額と右腕から出血、アルテマ、ミッシングによるダメージ。
[装備]:ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:リニアレールキャノン(BLT0/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION
不明支給品1〜2個、基本支給品一式、
[思考]
基本:オディオを倒すという目的のために人々がまとまるよう、『勇気』を引き出す為の導として戦い抜く。
1:ビッキーの亡骸を埋葬する。
2:西にとって返しアナスタシアを救いたい。
3:自分の仲間とヘクトルの仲間をはじめとして、仲間を集める。
4:セッツァーの情報に疑問。検証したい。
5:再度遭遇したらケフカを倒す。魔王を倒す。ちょこ(名前は知らない)は警戒。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。


【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:アルテマ、ミッシングによるダメージ、疲労(大)
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0〜1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み)
    ドーリーショット@アークザラッドU
    鯛焼きセット(鯛焼き*2、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:ブラッドとヘクトルに、何が妙なのか聞き出す。
2:ケフカと再度遭遇したら確実に仕留める。
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。

【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)、疲労(大)、アルテマ、ミッシングによるダメージ
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドU
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、
     基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオを絶対ぶっ倒す!
1:ケフカと思われる男がセッツァーの情報と異なっていたことへの戸惑い。
2:リン達やブラッドの仲間、セッツァーの仲間をはじめとして、仲間を集める。
3:つるっぱげを倒す。ケフカに再度遭遇したら話を聞きたい。
4:セッツァーを信用したいが……。
5:アナスタシアとちょこ(名前は知らない)を警戒。シャドウを警戒?
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。
※セッツァーとイスラと情報交換をしました。一部嘘が混じっています。
 ティナ、エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思っているが、少し疑問。
※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。
※I-8の荒野がI-7の東半分まで広がりました。
290 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/03(土) 00:52:32 ID:ve2Bf0ya
規制されたので携帯から。
続きは仮投下スレに投下しました。
どなたか代理投下していただけると助かります。
291創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 01:14:34 ID:EpqLK2jP
292代理投下  壊れた心に貫く想い ◇6XQgLQ9rNg:2010/04/03(土) 01:16:10 ID:EpqLK2jP
 ◆◆
 
 そこは、色とりどりの花々で満ちていた。
 数え切れないほどの種類の花が、それぞれの美しさを競い合うようにして咲き誇っている。
 一本一本の花から、殺し合いの場には似つかわしくない生命の息吹が感じられる。
 そんな花々に囲まれて、傷だらけの道化師が大の字になって倒れていた。

 彼――ケフカ・パラッツォは気付いていなかった。
 ビッキーが生きていたのだから、他の三人が生きていてもおかしくはないという事実に。
 気付かなかった理由。
 それもまた、ケフカは気付かない。

「ちくしょう……ちくしょう、ちくしょう、ちく、しょう……」
 忌々しげな声が、花園に溶けていく。
 ケフカが苛立っている理由は、少なくない。
 たとえば、ミッシングを受けたのに男が生き延びていたこと。
 たとえば、大きすぎるダメージを受けて体が言うことを聞かないこと。
 たとえば。

 ――またもあの女に、救われてしまったこと。
 
 殺してやりたいほどに憎らしい。傷つけてやりたいほどに恨めしい。
 その想いは、ビッキーが手を伸ばすたびに、ただひたすらに深く大きくなっていく。
 ココロを壊してやりたかった。
 ハカイの愉快さを見せ付けてやりたかった。
 ビッキーだけは必ず最後まで生かしておいて、絶望を刻み込んでやりたかった。
 その欲望は、止め処なく膨れ上がっていて、ケフカはいつしか、ビッキーを生かしたままハカイすることに固執してしまっていた。
 故に、彼女の声が響いた瞬間、ケフカは無意識レベルで望んでしまったのだ。
 
 ビッキーを殺したくない、と。
 
 結果、破壊の顕現は通常よりも手加減され、その場にいる命を一つたりとも奪えなくなっていたのだ。
 
 透き通った青空が、何処までも広がっている。
 無数の花が、そよ風に身を躍らせている。
 それは、紛れもなく綺麗で優しい光景だった。
 しかしそれは、ケフカの大嫌いな光景でもある。
 
 壊したくて壊したくて壊したくて、堪らない。
 そうすればこの忌々しい苛立ちも、少しは晴れるだろう。
 痛む全身に命令し、右手を掲げた。
 炎を生み出し、今度こそ焼き払ってやる。
 そう思っても、願っても。
 掌に炎は、生まれない。
 無尽蔵に思われた魔力は、三人の戦士との戦いを経て枯渇してしまっていた。
 これではもう、回復魔法も使えない。
 先ほどの充足感が嘘のように、感じられるのは虚無感だけだった。
293代理投下  壊れた心に貫く想い ◇6XQgLQ9rNg:2010/04/03(土) 01:18:01 ID:EpqLK2jP
「ふん……」
 やはり、そうか。
 カタチあるものはいつか壊れる。
 イノチなんてものはいつか潰える。
 ユメは忘れてしまうものだしキボウは絶望への前触れに過ぎない。
 それはこの世界にすべからく存在する、絶対不変の掟。

 ならば結局、あの満たされた気持ちも、圧倒的な神の力でさえも。

 永遠に続くものであるはずが、なかったのだ。
 
「つまらん……」

 強い風に吹かれ、花弁がふわりと舞い上がる。
 その花弁は宙をたゆたい、道化師の顔にそっと着地する。
 
 なのに。
 ケフカ・パラッツォが、それを振り払うことは、なかった。
 
【ケフカ・パラッツォ@FINAL FANTASY Y 死亡】
【残り26人】

※E-9花園にケフカの遺体および、ランダム支給品1〜3個、基本支給品一式があります。
294代理投下  壊れた心に貫く想い ◇6XQgLQ9rNg:2010/04/03(土) 01:20:09 ID:EpqLK2jP
以上、投下終了です。支援してくださった方、ありがとうございました。
そしてタイトル変える場所を間違えたorz
本スレ>>285からタイトルが変わるということでお願いします…

----------------------------------
代理投下終了です
295創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 01:43:19 ID:EpqLK2jP
そして読了
改めて投下乙です!
氏の描写はなんだろ、原作再現をしつつすごい立体的で上手いと再認識
ディシディアチックなケフカVS三人の戦闘がありありと目に浮かんできました
ミッシングの描写は凄まじいの一言
意味のない破壊というケフカそのものを体現したといっていい魔法でした
そのケフカの敗因がビッキーに固執したことで破壊に意味を付加しちまったとこというのがもう……
ケフカの最後は原作、ディシディア以上に何だかケフカらしかったと思う
ビッキーの最後のセリフや、ヘクトルに感じるものがあったイスラ、ブラッドのリニアと他にも見所盛りだくさんで面白かったです
GJ!
296創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 02:59:09 ID:RVcvQp4p
戦闘シーンがみんな凄くて本当勝敗が読めなかった
ビッキーはいいこだったなあ……
これで最期にしてっていうのは守られた
死ぬのはダメというのは守られなかった
なんかもう……なんともいえんな……
297創る名無しに見る名無し:2010/04/04(日) 23:02:16 ID:WfmW/DMW
投下乙!
これは凄い。圧巻ってやつですよ!
最後まで誰が死ぬのか、どういう結末に持っていくのか予想がつかなかった。
ミッシングのときには男三人のうち誰かは(つーかブラッドが)確実に死んだと思ったが、この結果は予想外。
ビッキーは本当に健気だった。惨殺されなくてよかったw
死にはしたものの、彼女の優しさが無駄じゃなかったってのも素晴らしい演出。
そして戦わせながらヘクトルとイスラの気持ちにも整理をつけているのは流石。
個人的にはリニアレールキャノンを撃つときのブラッドが痺れた。
こんな話が書きたいなあとしみじみ思いました、GJ!!!!!
298創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 06:24:58 ID:xsw7ifld
やった! 規制解除された!
ついでに予約に期待!
299創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 09:50:26 ID:FLQJLZVJ
何と言う大量予約…
これは期待するしかあるまい
300創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 18:30:00 ID:AtblFhlt
規制解除きたああああああああああああああああああああああ
先に感想を!
負けました、いやもうマジで。
原作でアレだけ弱い弱い言われていたケフカがここまで輝けるとは……
ラスボスの貫禄、風格、何をとってもかっこよかったです。
そしてリニアレールキャノン! サンダシュウンの意志がブラッドへも受け継がれたかのような展開!
そしてラストのビッキーは涙なしには語れません……
最後になってしまいましたが投下乙です!

そして大人数予約……何が起こるのか全く予想できないぜ……
一ついえることは死人が出ないということは……?
301創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 00:47:52 ID:OysvDLmt
test
302 ◆SERENA/7ps :2010/04/10(土) 22:40:42 ID:UaNAMLfi
お疲れまです、現在最終推敲中です
もう少しで投下できます。
ただし、危険な内容なので仮投下スレに落としますので、支援は不要です
もう少しお待ちくださいませ
303 ◆SERENA/7ps :2010/04/10(土) 23:23:39 ID:UaNAMLfi
お待たせしました。
それでは仮投下スレに投下します
304 ◆SERENA/7ps :2010/04/11(日) 00:10:02 ID:PS75iT1X
投下終了しました。
分割点はタイトルの変わってるとこから願います。

それで、仮投下にした理由はピサロとカエル魔王の扱いについてです。
本文にほとんど絡んでないまま登場させた是非について問いたいと思います。
カエルと魔王に関しては、一応放送後の予約解禁されたにも関わらず予約されなかったこと。
また、知り合いも死んでないため放送に対する反応というだけの話も難しいと思われたからです。
ピサロはフラグ的に欠かせないという理由です

そして、終了した時間を放送直前にしたこと。
これは明らかな生存ロックではないかという疑問もあるかと思います。
では、忌憚なき意見をお願いします
305創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 00:11:55 ID:sqHGr5mE
仮投下乙。
いろいろカオスな状況になりそうだけど
すっごく面白そうでこのままでもいいと俺は思う
306創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 00:19:37 ID:V+j/yInt
仮投下乙です。
感想は本投下の際に言うとして、意見のほうに。

>カエル魔王、ピサロ
特に問題は無いと思われます。
このまま戦闘に突入させるのがよろしいのではないでしょうか?

>生存ロック
放送直後に死亡、ということでもいいですし他のパートが絡んでくると思えないので大丈夫だと思います。
307 ◆SERENA/7ps :2010/04/11(日) 00:55:01 ID:Cqm+/4i3
あ、すみません
他にもあるかもしれませんがミスを一つ発見しました
ピサロの状態表の

【C-6 森林 一日目 日中】

は間違って入れてしまいました。
消してください
308創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 10:23:20 ID:1qLiTq56
仮投下乙。感想は本投下後に。
懸念されている点ですが、特に問題ないように思います。
停滞していたパートなので進めておいてOKかと。
309創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 12:23:01 ID:OY56nX1R
ヘクトル達ワープアイテム今更出して無理やり集めて萎えた
リレーの意味ない
310創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 12:46:28 ID:/a+DiB0A
うん、確かに強引に集めた感じだな
参加者の大半を無理矢理一カ所に集めたように思える…
絡めないキャラが取り残されそう
311創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 12:51:37 ID:n8DhGlvj
>>306に完全同意。
問題ないと思います。
312創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 17:58:07 ID:pGamHEQ9
めちゃくちゃ面白かった……
面白かったのに三転リーダをつけてしまうのは、読んだ人なら分かるはずw
>>306に同意で!
313創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 20:33:39 ID:gbFvNZjQ
打ち切りの決まった漫画のラスト3話目みたいな急展開だが
まあ、これはこれで面白い
314 ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:46:40 ID:6Qq/uypQ
お疲れ様です。
不満の声はあるものの明確な反対意見がないこと、またありがたいことに多数の支持をいただきましたので投下します。
時間と容量が厳しいので、できる限り支援をお願いしたく思います。
315創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:47:30 ID:Rxxev0aO
 
316Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:48:12 ID:6Qq/uypQ
例えて言うなら、それは舵の利かない帆船のようだった。
舵を壊し、憎しみという風に吹かれるまま漂うユーリル号という船。
勇者という積荷を下ろして、ユーリルは身軽になれたはず。
だが、現実はなんと非情なことか。
どこにも行けず、どこにも行くかも分らず。
もう前にも後ろにも進めなくなってしまった。
今のユーリルには、羅針盤も海図も双眼鏡もない。
自分がどこに行けばいいのか、自分がどこにいるのか、自分の周りを見通せる余裕もない。
魔王という鬼ヶ島を目指すこともできなくなった。

ほんの少し前には、こんなこと考えられなかった。
勇者だったら、やらねばならないことが今も沢山あったはず。
勇者だったら、あの鎧に身を包んだ黒髪の男を放っておくはずがない。
勇者だったら、友達を見殺しにしてしまうこともなかったのだ。
勇者だったら、きっと今頃こんなところでこんなこともしていない。

なのに。
なのに、今のユーリルは勇者でも何でもない。
しかし、しかしだ。
もう、ユーリルは勇者として生きた時間が長すぎた。
いらないからと捨てたくせに、いつの間にか勇者という肩書きはユーリルという人間の根幹をなすものになってしまっていたのだ。
友達を失い、家族を失い、勇者という拠り所であり生きる力でもあるものも失った今のユーリルは外殻を残し、中身は空っぽの存在。
そんな隙間風の吹くユーリルの心に、憎しみという感情が吹き荒れるのは当然だった。

「ああああああああああああああ!!!!」
勇者は生贄なんだというアナスタシアの言葉に、怒り狂う。

「うわああああああああああああ!!!!」
友達を失ってしまった悲しみがユーリルの心を苛む。

「あああぁっぁぁあ、あうっあああ!!!」
そして、それらの感情がごちゃ混ぜになって泣く。

「アナスタシアアアアアアアアアア!!!」
そして、全ての元凶であるアナスタシアに対する憎しみ。

感情の暴風だった。
怒り、悲しみ、憎しみ、絶望。
それらの感情がユーリルの中で荒れ狂い、どんどん大きくなり、ユーリル自身にも制御がつかない。
それら全てを受け止めるには、勇者でなくなったユーリルという少年の心の容量では足りない。
渦巻き、うねりを上げ、身体の中に押しとどめておくことができない。
胸が張り裂けそうだった。
だから、ユーリルは叫ぶ。
喉が枯れ果てんばかりの嗚咽と絶叫を地面にに叩きつける。
膝を折り、両手も地面につけ、あらん限りの声をあげた。
クロノの亡骸が傍に転がったまま、埋葬することもしない。
いや、今のユーリルにはそんな選択肢さえ浮かんでいない。
ただ泣き、ただ叫ぶだけ。
感情のタガが外れた今、ユーリルは立ち上がることもできず、止めどなく流れる涙を拭うこともできない。
しかし、叫んでも叫んでも、気が晴れたり落ち着いたりすることはなかった。
ユーリルの心は決して満たされない。
317Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:48:56 ID:6Qq/uypQ
太陽はいつもと変わらぬ光を投げかけてくるだけ。
風はユーリルを嘲笑するようにただ背中を撫でていくだけ。
大地は叩きつけられるユーリルの拳に反発を返してくるだけ。
友達のくれたお菓子は、ちっとも甘くない。
仲間との楽しかったはずの思い出は、色を褪せて消えていく。
空っぽの男には、世界でさえ優しくしてくれない。
その事実が、なお一層ユーリルを打ちのめした。



どれくらい経っただろうか、ユーリル自身はもはや覚えていない。
ただ、一生分の涙を流すのにかかる時間だけは経っていたと分かる。
それでも、涙というのは体中の水分を絞りつくしても足りないほどに流れるのだ。
そのうち。
泣いたまま、ユーリルは立ち上がる。
泣いたまま、ユーリルは歩き出す。
泣いたまま、ユーリルはどこかへ行く。

友達を殺してしまった罪から逃げるため。
クロノの最期の笑みを嫌でも思い出してしまうから。
恨み言一つ言わずに死んでいったクロノの優しさが、逆に痛かったから。

流れ、流れて。
足の動くままどこかへ。
どこへ行くのかなど、ユーリル本人が一番知りたかった。



◆     ◆     ◆



「つまり、今はどっちの方が正しいかは保留するってこと?」
「そういうことだ」

疑問の種が芽吹き、するすると成長していく。
絶大な魔力を操り、あと一歩のところで逃してしまった男。
道化師のごとき面妖な格好をしたかの男が、本当にケフカ・パラッツォだったのか。

エドガー、ティナ、ケフカの人間像が全然違う。
マッシュとセッツァーが語ったこれら三人の人間像は真逆のものだった。
既知の情報であるため、確認しなかった情報が実は偽りに満ちていたことに、初めて三人は気づく。
ブラッドもイスラもヘクトルもどういうことなのか理解する。
マッシュかセッツァーに嘘をつかれたか?
しかし、ブラッドはあくまで慎重な判断を下した。
318創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:49:09 ID:Rxxev0aO
 
319Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:49:55 ID:6Qq/uypQ
「根拠は?」
「例えば、エドガーという男が本当に世界を征服しようとしていたとする。 だが、肉親には甘い男なのかもしれない。
 そう考えると、マッシュがエドガーは安全だと言っていたのも納得できる」
「ケフカは? これは疑いようのないことだと思うけど?」
「まず第一に、ケフカとマッシュの関係が良好でない場合だ。 ケフカは普段優しいが、マッシュとだけは反りが合わない、などな。
 第二に、あれはそもそもケフカではなかった可能性もある。 あんな格好をした輩が何人もいるとは考えにくいがな。
 第三に、本来はまともな人間だったがこの異常な状況で精神を狂わせ、殺戮に悦楽を感じるようになったか、だ」
「それ、だいぶ苦しい根拠だと思うんだけどね……」
「あの道化師、暫定ケフカを庇おうとしていた少女は決して悪い女には見えなくてな……」
「単なるお人よしって可能性もあるよ? 騙されていただけとか」
「それも、俺の悪い女に見えなかったというのも全部推測だ。 そしてあの道化師がケフカだったかも状況証拠のみ。
 結論を出すには早い。 ただ、次にマッシュとセッツァーに会うときは警戒した方がいい。 そういうことだ」

イスラの質問に対し、次々とブラッドは答えていく。
ブラッドの答えには腑に落ちない点や苦しい点も多々あるが、帝国の諜報部に所属していたイスラも情報の真偽の確認が大事であるのは知っている。
実を虚と見せかけ、虚を実に見せる。
そうやって敵を欺き、また得られた情報の正誤を迅速に確認するのが諜報部の仕事の一つ。
何よりやってはいけないのが、間違った情報を真実だと鵜呑みにすることなのだ。
間違った情報ほど、もっともらしく見えるもの。
ここはイスラも折れて、マッシュとセッツァーのどっちが正しくてどっちが間違っている、といった極論ではなくブラッドの保留案に同意する。

「俺はなぁ……セッツァーが嘘を言っているとは思いたくないんだが……」

会話に加わっていなかったヘクトルが、セッツァーのことを思い出しながら呟く。
ブラッドたちの言っていたことを聞いてなかった訳ではないが、どうしてもセッツァーを疑いきることはできない。
怪我を負っていたブラッドを回復してくれた恩もある。
ブラッドが回復しなかったら、ブラッドはあのまま死んでリニアレールキャノンの一撃もなく、今頃ヘクトルはイスラと仲良くお陀仏になっていたかもしれない。
何より、正攻法を望むヘクトルはこんな大事な時に、陰でコソコソやるようなやり方は嫌いだ。
みんなで手を取り合って生きていかなければならない状況で、一人だけ甘い汁を吸おうという奴は大嫌いだ。
心情的に、どうしてもヘクトルはセッツァーを信じたい。
信じられるかどうかではなく、信じたいというのが本音だ。
エリウッドやリンとの旅の間、そういう疑惑や疑いといった言葉とは無縁だったからか、ヘクトルは人を疑うということをあまりしたくない。

「これは誰が一番強いかを決める戦いではない。 誰が最後まで生き残るかという戦いだ。 俺が生き残ってれば、誰かを殺してくれると考えたのかもしれないぞ」
「わーってるよ」

だがブラッドの言うこともまた一理ある。
ヘクトルも、次にマッシュかセッツァーに会ったときはそのことをキッチリ問い詰めるということを決めて、この場は納得した。

「では、この話はこれで終わりだ」 

ブラッドの声で、少しでも疲労と怪我を回復するため荒野に座り込んでいた三人の男たちが立ち上がる。
三人とも怪我も疲労も決して浅くはない。
だが、まだ立っていることはできる。
歩くことも、拳を握ることも、誰かのために戦うこともできる。
戦う意志だって少しも翳りを見せない。
それは死にたがっているイスラはともかく、ヘクトルとブラッドにとっては喜ばしいことだ。
おそらく、昼過ぎに見た光を作り出したのは、先刻戦った道化師によるものだと断定したブラッドたちは、次はアナスタシアを追うために西進することにした。
だが、その前にやることがある。
320創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:50:02 ID:Rxxev0aO
 
321Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:50:42 ID:6Qq/uypQ
「念のために、この辺り一帯の探索もする」

いまだ戦闘の傷も癒えぬまま、三人の男たちは身体を半ば引きずりながらビッキーの埋葬とそれぞれ周囲の探索をした。
リニアレールキャノンのような強力な装備が、都合良く地面に落ちてるはずがない。
これは間違いなく死んだ誰かの支給品だと踏んだブラッドは、周囲の探索をイスラとヘクトルにも命じたのだ。
するとどうだ、数々の物品が見つかるではないか。
ナイフやマフラーや指輪……間違いなく誰かの支給品だと言える装備の数々が。
自分らが先立って目撃した光の跡が、この荒野なのは容易に想像がつく。
ということは、死者が出てもおかしくない。
さらに武器がその荒野に転がっていたのだ。
これで探索しない方がおかしい。
結果、支給品の数々が見つかった訳だ。
さらに、二人の男性の死体も。
見つけた銃はガンマン風の男に握りしめられており、明らかに死ぬ寸前まで戦っていたことを物語っている。
硬直した手から銃を抜き取るのに、イスラはかなりの力を必要とした。

「サンダウン・キッドなのかな……?」

高原の言っていた外見と一致する。
彼の仲間も、こうしてまた一人脱落していった訳だ。
戦って死んでいったであろう男に、イスラは羨望と嫉妬の念を抑えることができない。
何かを為そうとして死んでいった男に、イスラは自分もこうありたいと願う。
ヘクトルたちに出会って、多少心境の変化はあったとて、未だにイスラの死にたいという願望は消えない。
ただ、自殺して無為に死んで逝くより、何かを為して死にたいと思うようになっただけだ。

「おい! アンタッ!」

ビクリと、イスラの背中が跳ねた。
誰だろう、この声は。
聞きおぼえのない声が、背中の、それもすぐ真後ろから聞こえた。
あり得ないと、イスラは思う。
何故なら、今イスラのいる場所は荒野のど真ん中であり、今しがたまで、ここにはイスラたち三人しかいなかったこと。
さらに、新たな誰かが今ここに来たのなら、イスラはこうも易々と背後を取られたということになる。
もしも敵なら、ヤバい。
危機感を覚えたイスラはすぐさま腰にかかった剣に手をかけ、いつでも抜けるよう構えながら振り向いた。
するとそこにいたのは見た目にも重傷と判る異国風の装束に身を包んだ少女と、それを抱えるように立つこれまた見たこともないような奇抜な衣装の男。
女は気絶しているのであろう。
手と足に力が入っておらずダラリと投げ出されているのを、男が抱えているような体勢だ。
だが、それでイスラは警戒を緩めたりはしない。
後ずさりながら、剣を抜いて構え、誰何の声を上げる。

「誰だい?」
「待てよ、俺はやる気はねぇんだ! それよりもこの女が……リンディスが!」
「リンディス!? リンのことか!」

イスラの背後に来たヘクトルが大きな声を上げる。
どうやらヘクトルの知り合いらしい。
それでようやくイスラも若干剣を握っていた手の力を緩める。
ヘクトルはリンが男の手に抱えられた女がリンであることを確認すると、一目散に男に駆け寄る。
男から奪い取るようにリンを抱きかかえると、頬を軽く叩いてリンの意識を呼び起こそうとする。
322創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:51:04 ID:Rxxev0aO
 
323Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:51:23 ID:6Qq/uypQ
「おい、リン! 聞こえるかリン!」

頬を叩きながら、ヘクトルはリンの身体を見る。
酷い怪我だった。
全身が刃物のようなもので切り刻まれ、背中にも大きな刺し傷が空いている。
衣服はもうボロボロで、赤い血が衣服にジワリと染み込んでいる。
一番の怪我は、左目から垂れ流している血だ。
しかし、閉じられた瞼に傷はついてないように見えるし、瞼を切っただけでこの出血量はあり得ない。
となると、もう考えられることは一つしかない。
リンは目をやられたのだ。
しかも、この出血量から考えて相当深い傷。
おそらく……失明していることをヘクトルも肌で感じ取る。
誰がこんなことをと怒りがヘクトルに沸いてくるが、それよりもリンの声を聞くことが大切だ。
根気よくヘクトルはリンの意識を呼び覚まそうとする。

「……ぅ……ぁ……」

聞こえた。
確かにリンの声が今、聞こえた。
呻き声に近いが、リンが声を上げたのは確かだ。
逸る気持ちを抑え、ヘクトルはまた根気強くリンの意識を呼び覚まそうとする。

「おい、リン! 俺だ、ヘクトルだ! 聞こえるか!?」
「ぁ……ヘク……トル?」
「ああそうだ、俺だ! 一体何があった!? 誰にやられた!?」
「やられたって……私は……死んでない、わよ……」
「細かい間違いはどうでもいいだろうが! 誰に襲われたんだ!?」

ようやく、リンは残された右目を開け、ヘクトルと視線が合う。
そして、力なく笑みを浮かべる。
知り合いに会えたことに対する安堵の笑みだ。
そして、また気を失う。
気を失う直前にリンが発した言葉は、ヘクトルに何があったかを伝えるのに十分な内容だった。

「ジャファ……ル……」



◆     ◆     ◆



胸に当てていた手を、ロザリーは下ろす。
深く息をつき、問題なくメッセージが届いたことを確信した。
伝えたいことは伝えた。
ロザリーの言いたいことの全てを伝えきった。
あとはこれを聞いた人が、心正しき者であることを願うだけだ。
324創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:51:45 ID:Rxxev0aO
 
325Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:52:13 ID:6Qq/uypQ
「終わった……の……?」

ニノの問いかけに、ロザリーは満足そうに肯定の意を示す。
ニノは素直に喜び、マリアベルはロザリーの肩に手を置き、労いの言葉をかける。

「うむ、よくやったぞロザリー。 と言うても、わらわにはちゃんと伝わったかは判らぬがな」

もしも失敗してたら、何もない空間に向かって何かを言うだけというすごく間の抜けた光景になるだろう。
三人とも、それはあえて考えないようにする。
少し魔力を消費したことによりロザリーは立ちくらみを覚えるが、ゲートホルダーを使ったときのあの感覚とは比較にならないほど楽だ。
充実感のある疲労、とも言うべきだろうか。
むろん今すぐに成果があがる行動ではないので、成功したとは一概には言えぬが、少なくとも自分にできることをやったという満足感はある。
そう考えると疲労もなんのその、次にやるべきことを速やかに実行に移す。
すぐに移動を開始して、次の逗留場所を探さねばならないのだ。

時刻は逢魔ヶ刻。
西の空に落ちていく太陽が茜色の光を放っている。
カラスがカァカァと鳴くはずのこの時間、飛ぶ鳥は一羽もいない。
少しずつ明度を落としていくその光は、いずれ輝きを失ってしまう。

今は黄昏。
そして、また、夜が来る。
暗い暗い、常しえの闇にも似た夜が。
もう少し時間が経てば、これより先はノーブルレッドの領域、夜だ。

だが、マリアベルの気分はあまり浮かれはしていなかった。
西の空にはしっかりと晴れ渡る空と茜色に染まる夕日があるのに、頭上の空はどんよりとしたものがあるからだ。
分厚い雲が垂れ込み、どっしりと重い空。
今や、空は曇天。
しかも、これは雨雲に間違いない。
雲が明滅する頻度も多くなってる。
灰色の雲からはゴロゴロと、遠雷が鳴っている。
それは誰かの叫びのように、あるいは、誰かの怒りのように。
気温がグングン下降していくのが三人にも分かる。
日が落ちているだけことだけが原因ではない。
これは、間違いなく気圧が低くなっているのも関係している。
吹きつける風に厳しさが増してくる。
ニノが、少しだけ身震いした。
ザワザワと、せわしなく木々が鳴り響く。
空気が湿り気を帯びてくる。
今にも泣き出しそうな空模様は、まもなく雨が降りそうなことを如実に表している。
いやな天気だなと、マリアベルは思わずにはいられない。

「どうやら、ここはオディオの言っておった雨の降る場所のようじゃの」

空を見上げながら、マリアベルが言う。
垂れ込める雨雲を見ると、気分が沈みそうだ。
太陽が隠されるからといって、雨の持つ陰鬱さが好きな訳でもない。

天候を操るという力が本当にオディオにあるのは、驚くべきことではない。
ロザリーの世界には、そういった呪文が実在するらしいからだ。
それならオディオが使えてもおかしくはない。
高位の呪文になると、なんと一瞬にして昼夜を逆転させることができるとか。
それを聞いたとき、マリアベルは喉から手が出るほどに、その呪文を会得したいと思ったくらいだ。
326創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:52:29 ID:Rxxev0aO
 
327創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:52:53 ID:0XV70MNm
支援1
328Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:53:10 ID:6Qq/uypQ
「早くどこかで雨宿りする場所を見つけないといけませんね」

ロザリーも雨の降る可能性を考慮してだろうか、自然と足の動くスピードが速くなっている。
濡れ鼠になって、風邪をひいたりするのはどうしても避けたい。
落ち葉で足を滑らせ、ささくれ立った木が皮膚に薄い傷を走らせ、地面から突き出た木の根に転びそうになる。
どこか分からない森の中を、助け合いながらとりあえず進んでいく三人。
どこにいるかも分からない不安感が鎌首をもたげて襲う。
それでも、歩みを止めることはない。

見知らぬ世界。
頭上に重くのしかかるのは暗い雨雲。
そしてここは誰かの命を奪うのが目的の殺人劇、バトルロワイアル。
そう、ここは魔王の支配する異界。
そんな異界の中、寄りそう三種の種族。
人間と、エルフと、ノーブルレッド。
人と人が同属でいがみ合う中、手を取り合うこの異なる種族の少女たち。
それは果たして、何を意味するのか――。

「おお、開けた場所に出たぞ。 さすがわらわよ、抜群の方向感覚じゃな」
「あれ……湖?」
「海だったら対岸が見えるはずもないじゃろう。 それにあの橋を見てみぃ」

ニノに対して、マリアベルが指を指して方角を示す。
その方向には、湖の東から西までを結ぶ一つの橋があった。
それに、うっすらと対岸も見える。
これ以上ない分かりやすいランドマークだ。
どうやら、C-7の神殿近くにいるらしい。
それさえ分かれば、あとは誰か襲撃者がいないことを祈りつつ、あそこを雨宿りの場所にするだけだ。
急いでいた歩みの速度を緩めて、湖の外周部分に沿って歩きながら橋を目指す。
透き通るほどの透明感のある湖の水。
残り少ない西日によって、それは見事な黄金の光を反射していた。
しかし、風によって湖面が激しく揺れているのが少しばかりもったいない。

「そろそろ、いいかもしれぬな……」

自分に言い聞かせるようにマリアベルが呟く。
その声はロザリーとニノの耳には入らない。
宿探しの目星もつき、あとはあそこに歩いていくだけ。
当面は暇だ。
ならばこそ――今がその話をする状況なのかもしれない。
隠すことは二人との間に壁を作ることだ。
そして、二人は惜しみない信頼を寄せてくれている。
それならば、マリアベルもそれに応えるべきなのだろう。
329創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:53:18 ID:Rxxev0aO
 
330創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:53:52 ID:0XV70MNm
支援2
331Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:53:58 ID:6Qq/uypQ
「神殿に着くまで、少し昔話をしてやろうか……」

それは、とてもとても長くて悲しい、英雄と呼ばれた一人の少女のお話。



◆     ◆     ◆



「すまねぇ……俺のせいでリンディスが……」
「いや、お前のせいじゃねえ……お前はよくやってくれた」

頭を下げるアキラに対して、ヘクトルは気にするなと返す。
何とか、一命は取り留めた。
決死の看病とアキラのヒールタッチのおかげだ。
今は容態が落ち着いたリンをおいて、三人の治療を同じくヒールタッチでしていた。

「俺は……奴を倒しに行く」

右手を誓いのように固く握り締め、ヘクトルが言う。
しかし、現実的な問題として、どうしようもない距離が壁となって立ちはだかる。

「どうやって行く?」

椅子に座ったブラッドが冷静に言う。
聞くところによると、アキラのテレポートはあくまで緊急回避用であり、思った場所に行けるほど精度はよくない。
ここに来たのも偶然だ。
テレポートを使わないとなると、かなりの距離を踏破しなければならない。
時間がかかればかかるほど、ジャファルともう一人……他人の姿を模す特技を持った奴は遠ざかっていく。

「歩いてでも行くに決まってるだろ!」
「歩いていく必要は無い」

そう言うとブラッドに対して、ヘクトルは疑問の眼差しを向ける。
しかし、ブラッドはリンのベッドのそばに立っているアキラに視線を向けた。

「アキラ、お前のいた村の地理は覚えてるか?」
「ん? あぁ、覚えてるよ。 忘れるはずがねぇ……」

何故かそこにあったのは、幼い頃から過ごしてきた懐かしきチビッコハウス。
ミネアに扮した奴を追っていたときに見た町並みだって、決して忘れやしない。
あれは子供の頃から毎日のように歩き、慣れ親しんだ町。
そう、あれこそはアキラの住んでいた日暮里の町だ。
小さい頃に鬼ごっこやかくれんぼを何度もして、路地裏の地理まで把握している。
何故そんなものがこんなとこにあるのかは分からない。

「だったら、テレポートジェムで行ける」

その言葉に、ブラッドは満足してあるものを差し出す。
琥珀色に輝く結晶体のような物がブラッドの手に握られている。
一度行った町などの施設に、瞬時に飛んでいけるファルガイア製のアイテム。
これがあれば時間と距離の壁は易々と打破できる。
332創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:54:00 ID:Rxxev0aO
 
333Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:54:40 ID:6Qq/uypQ
「どうしてそんな便利なもの今まで使わなかったんだい、ブラッドおじさん?」

イスラの当然の疑問にブラッドが事情を説明する。
元々ブラッドもこれを利用する気はあったのだ。
だが、深夜に出会った魔王のせいで河に飛び込む羽目になり、その後はヘクトルも知っているとおり町に寄る機会に恵まれなかっただけだ。
しかし、さすがにそんな便利なアイテム、しかも一つしかない貴重品を使わせるのはヘクトルも躊躇われた。

「いや、そこまでしてもらう義理はねえよ。 俺は一人で行く」
「いいから使え」
「いや、いいって! 第一、お前はこれでアナスタシアの行きそうな所に跳べるじゃねえか!」
「いや、アナスタシアに接触してからもう半日近く経っている……追跡は難しい。 これを使う意義はまだそこまで時間が経ってない人間を追うのにある」

アナスタシアの捕捉を諦めた訳ではない。
西に行くといっても、それだけの情報でそれ以上は追跡が難しいだけのこと。
目の前にやるべきことがあるのだから、アナスタシアの説得だけを優先させる訳にもいかないのだ。

「僕は、ヘクトルについていくよ。 アナスタシアに会うなんてこっちから願い下げだからね」

壁際にもたれ掛っていたイスラも、テレポートジェムを使うのに賛成する。
ヘクトル一人でやるつもりだったのに、いつの間にか多くの仲間に恵まれている。
そのことに、ヘクトルは感謝した。

「行くぜ……行ってくるぜ、リン」
「待って……私も行く……」
「無理するな。 俺に任せてお前は寝てろ」
「ううん……ミネアは大やけどを負っても頑張っていたんだもの……私だって」

自分だけが寝ているわけにはいかない。
無理を言って、ヘクトルについていく。
そのことに納得したヘクトルは、ベッドから起き上がろうとするリンを軽々と肩にかついだ。

「ちょっ、何するのよヘクトル!」
「俺がおぶってやらあ。 女一人なんて気にもならねえ軽さだ」
「バカっ! 恥ずかしいわよ!」
「うっせえ! だったら置いてくぞ? 怪我人は大人しく休んでろよ」
「ヘクトル……」
「俺は強いんだよ。 お前一人くらいなんてどうってこたあねえ。 それによ……フロリーナが死んで、お前にも死なれたら目覚めが悪いだろうが」
「……うん、分かった」
「おし、じゃあ行くぞ」

肩に担ぐという方法だけはなんとかして欲しいものだ。
しかし、それ以外となるとお姫様だっことかしか浮かばないし、肩車など持っての外だ。
結局、リンはそれで納得することにした。
ガチャガチャと鎧の音が聞こえる。
昔は、それがうるさくて喧嘩もしたことあってけど、今となっては懐かしい思い出だった。
外に出ると、先に出ていたアキラたち三人は各自身体を揉み解し、あるいはストレッチなどの準備に余念がない。
屈伸運動をしているブラッドに、ヘクトルは近寄りながら声をかけた。
334創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:54:41 ID:Rxxev0aO
 
335創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:54:44 ID:0XV70MNm
支援3
336Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:55:28 ID:6Qq/uypQ
「どうだ? 身体の調子は?」
「悪くないな」

全身についた傷を見ながら、ブラッドが答える。
リンを担いでいることには、特に何か言う気はないらしい。
アキラにとりあえず開いている傷の治療だけはしてもらっているから、これ以上は無理しなければ体調が悪化することはない。
といっても、開いた傷を元通りに治したりするものではないが。
暗示に近いもので、傷の痛みを感じないようにさせたり、人間の持つ自己治癒能力を無意識に活発化させるだけだ。
ブラッドの回答にとりあえず満足し、次にヘクトルはイスラとアキラも見やる。
こちらの二人も問題は特にないようで、準備運動を終わらせて後は移動を待つばかりになっている。
物珍しそうにテレポートジェムを見るアキラに対し、ブラッドが使用方法を教えた。

「それを持って、行きたい場所を念ずる。 それだけでいい。 
 行き先のイメージが難しいなら、行き先の町並みを思い浮かべながらでも、町の名を声に出しながらでもいい。 とにかくイメージが大切だ」
「なるほど、それなら朝飯前だぜ」

アキラは数々の超能力の使い手だ。
イメージを組み上げるのはお手の物。
ましてや、行き先は数々の思い出があるあの街。
アキラにとって、不安要素などあろうはずもない。
だが、自信ありのアキラに対して、ブラッドはある懸念を抱いていた。

「そんじゃ行くぜ。 お前らしっかり固まってろよ」

テレポートジェムを使う直前、アキラはミネアのことを考える。
短い付き合いだった。
自己紹介さえ満足にしてない、仲間と言えるかどうかも怪しかった間柄。
アイシャだってそうだ。
時間にすれば一時間にも満たないであろう時を、一緒に戦っただけ。
でも、それでいい。
人と人が繋がる理由はそれだけでいい。
目の前にある荒波を共に越えようと助け合う者たちは、それだけでもう仲間なのだ。
託された想いと絆という襷は、とても重い。
でも、決してそれを捨てたりはしようと思わなかった。
この荷物を背負って、ずっと歩き続けるつもりだ。

サンダウン・キッドの亡骸はリンを城下町に運ぶ前に確認した。
生まれた時代も着ている服も何もかも、統一性の欠片もない7人の奇妙なパーティー。
そんな中で、彼は最も寡黙な男だった。
だが、アキラは知っている。
彼の心の奥に秘められた熱き血潮と魂を。
彼の心を覗いたことのあるアキラは、サンダウン・キッドという男が自らを語らなくても、彼の性質を理解していた。
ああ、分かる、分かるとも。
きっと、サンダウン・キッドは何かを守ろうとしていたのだろう。
きっと、サンダウン・キッドは何かを守ろうとして戦っていたのだろう。
そして、魔王オディオを倒そうとしていたのだろうということが。
なら、それを俺が受け継いでやる。
337創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:55:42 ID:Rxxev0aO
 
338創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:55:45 ID:0XV70MNm
支援4
339Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:56:10 ID:6Qq/uypQ
こうして、またアキラの心の中に背負うべきものが一つ増えた。
人と人の思いを一つ、また一つと繋いでいけば、安易な方法に頼らなくても人はきっと一つになれる。
争いも苦しみもない未来をきっと掴み取れる。

「行くぜ!」

頭上にテレポートジェムを掲げ、アキラは行き先を思い浮かべる。
琥珀色のテレポートジェムが砕け、そこからいくつもの光の粒子が生まれると、5人の体を包み込む。
初めての経験に、ヘクトルとイスラは不思議な物を見るように、自分の体を包み込む光の粒子を見ていた。
イスラが自分の手を見ると、光の粒子に包まれた手は徐々に消えていく。
ヘクトルが自分の足を見ると、もう完全に消えて見えなくなっていた。
しかし、痛みなどは感じない。

「不思議な感覚だね……」

胸元まで来たテレポートジェムの光を見ながら、イスラが言う。
今この瞬間、消えている足は一足先に行き先に行っているのだろうか?
単純な疑問が浮かんでくる。
もうそろそろ、顔まで光に包まれてしまう。
まぁ、そんなことどうでもいいかと開き直って、このまま身を任せることにしたイスラ。
だが、琥珀色の光の色をしていた粒子が、一瞬だけ赤い光に変わる。
ブラッドが異変を察知して声を上げた。

「失敗だ! どこに飛ばされるか分からないから身構えていろッ!」

これがブラッドが唯一懸念していた材料だった。
テレポートジェムによる移動というのは、時折失敗することがある。
リルカなどは特にこのアイテムと相性が悪いらしく、よく全然違う場所に飛んでいたものだ。
だから、慣れない者がテレポートジェムやオーブを使う場合、迷子にならないよう熟練者についてもらったり、予備のジェムをたくさん持つのが常識なのだ。
今回はブラッドというテレポートジェムに慣れた人がいても、予備のジェムはない。
アキラがテレポートを使えるといっても、ファルガイア製のテレポートアイテムとは相性が抜群という訳にはいかなかった。
そう、四輪駆動の自動車が操縦できるからと言って、二輪車の扱いが同じ要領でできることがないように、
メラが使えるからと言って、ファイアの魔法をすぐに使えたりはしないのと同じ理屈だ。

「おい! じゃあ何処行く――」

ヘクトルが何かを言おうとするが、光はヘクトルの頭頂部まで包み、何も言えなくなる。
次いで、浮遊感を感じて、ものすごいスピードでどこかへ行ってるのだけが感覚として分かる。
一度発動を開始したテレポートジェムは、例え失敗しようと止まることは無かった。
340創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:56:30 ID:Rxxev0aO
 
341創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:56:33 ID:0XV70MNm
支援5
342Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:57:37 ID:6Qq/uypQ



◆     ◆     ◆



どうやら、勇者と英雄とは切っても切れない関係にあるらしい。
勇者も英雄も、ほぼ同じ意味を持つ言葉。
ならば、こうしてユーリルとアナスタシアが三度目の邂逅を果たすのは、もはや運命なのかもしれない。
アナスタシアのあるところユーリル在り。
ちょこの行こうとしていた教会にしばらく留まり遊んでいたら、ようやく涙も枯れ果て、幽鬼の様に彷徨うユーリルが来た。
アナスタシアとしても、こうまで縁のあるユーリルからはもう逃げるなり死んでもらうなりしたい。
だが、ちょこがユーリルに感情移入してしまった様子なのだ。
ほんの少し前のように、向かってくるユーリルをあしらいつつ、ちょこが友達になろうと喋る構図が再現されていた。

「ねっ、おにーさん。 おにーさん何て名前なの? ちょこはねー、ちょこって言うの!」
「うううう、うあっあああああああああああ!」

話が一向に進まない。
ちょこが友好的な対話を試みても、ユーリルはうめき声をあげるながら拳を振るうだけ。
そういった余裕綽々の態度がユーリルの癇に障るのだろうが、ちょこは気づいてない。
ちょこもまた、ユーリルからユーリル自身の存在意義を奪うことになっていることに。

「ねぇ、あなたどうするの? 私を殺して、どうするの? その先に何があるの? 何が――」
「うわあああああああああ! あっうっあああああああ!」

アナスタシアの声を遮るように、再びユーリルの絶叫が響く。
絶叫が響いた分だけ、ユーリルの攻撃も苛烈さを増していく。
しかし、それさえもちょこにとっては通じない。

酷く哀れだと、アナスタシアは思った。
反論できないことこそが、アナスタシアの言うことを認めていることにも気づいてない。
ユーリルは獣のような声を上げ、アナスタシアの言葉を遮ることしかできない。
言葉を発するという機能さえ失っているように見える。
いや、もうこれは獣のような、というより幼児退行現象にも似ていた。
正論を語り諭す母親に対して、泣き喚くことでしか反抗の意を示せないような子供。
自分が勇者であると自覚して、勇者として生きる以前のユーリル本人の人格が今の状態なのか。
そんなこと、もちろんアナスタシアの勝手な推測だ。
でも、それが正しい推測だとしたら、こんなにも小さい頃から彼は勇者という使命を背負い続けてきたのか。

どうすることも、ユーリルにはできないのだろう。
これから先、どうなるのかはユーリルにも分からないのだろう。
空っぽの心を満たすために、とりあえず直前までやっていたことに身を任せる。
とりあえずアナスタシアがいるから、殺そうとする。
それが終われば、今度こそユーリルの心に何も残らないはずなのにだ。
失意のどん底にある男が、とりあえず酒を呑んで気を紛らわせ、何かに八つ当たりするようなもの。
アナスタシアが絶望の鎌を振り上げ、ユーリルの方へ向かう。
343創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:57:44 ID:Rxxev0aO
 
344創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:57:46 ID:0XV70MNm
支援6
345Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:58:19 ID:6Qq/uypQ
「なら……こんなこと私が言うのもなんだけど……引導を渡してあげるのが私の役目なのね」

これは自分で蒔いた種だ。
ならば、刈り取るのも自分の責任であり役目なのだろう。
もうちょこがユーリルを殺すことはないだろうから。
もう三度目の出会い。
もう三回もこんなくだらないやり取りを繰り返してきた。
次は無い。
ジリジリとアナスタシアはちょことユーリルの方に向かい、機を窺う。
この絶望の鎌で、文字通り彼に死の絶望を与える。
ひょっとしたら、彼にはもう死は救いになっているかもしれないが。
さっきのように、ちょこに邪魔はさせない。
残念ながら、ちょこの言葉ではユーリルを救うことも殺すこともできないのだ。

大きく、息を吸う。
アナスタシアは、戦った経験があの焔の災厄の期間しかない。
素人に毛が生えたくらいの戦闘経験しかないのだ。
だが、ちょこに任せるだけではできないこともある。
そして、今こそがそのリスクを背負うべき時なのだろう。
『英雄』が『勇者』を、『勇者』が『英雄』を殺そうとする。
なんともおかしな話だと、アナスタシアは思った。

「ちょこちゃん!」
「なに〜?」

今このときだけ、アナスタシアとユーリルの心は通じ合った。
アナスタシアがちょこの名前を呼び、ちょこはそれに対して振り返る。
そこを、ユーリルは見逃さない。
最強バンテージによって極限まで筋力を高められたボディブローがちょこの体に突き刺さる。

「うわぁっ!」

ちょこが大きく吹っ飛ぶ。
普通の人間なら、肉体を貫通してもおかしくないほどの威力の拳でも、ちょこはちょっと痛い程度だ。
だが、それでいい。
始めから殺そうとは思っていない。
ちょこが吹き飛び、重力の法則により着地して、そこから恐るべき脚力でユーリルとアナスタシアの前に戻ってくる前の間。
そこに、決着をつけるだけのわずかな時間があればいい。

ユーリルとアナスタシアの間に障害物が無くなる。
ユーリルがまっすぐにアナスタシアを目指して疾駆する。
アナスタシアは思い出す、あのロードブレイザーと戦ったときのことを。
あの時のように、絶大な力を振るうことはできないけど。
あの時の経験はきっと、無駄にはなっていない。
恐れず相手に切りかかる勇気、相手の攻撃を避ける技術を思い出す。
大丈夫、私はやれる、幸せを掴み取ってみせる。
アナスタシアもまた、相手の命を刈り取らんと、絶望の鎌を持って走る。
勝負は一瞬。
それ以上はちょこの邪魔が入る。
346創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:58:27 ID:Rxxev0aO
 
347創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:58:30 ID:0XV70MNm
支援7
348Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 15:59:43 ID:6Qq/uypQ
残り10メートル。
ちょこがアナスタシアとユーリルのやろうとすることに気づく。
火の鳥を二人の間に放とうとするが、今撃てばもう二人とも巻き込んでしまう。

残り5メートル。
「ハアアアアアアアアアアアッ!」
数百年ぶりに出す、アナスタシアの裂帛の気合を伴った咆哮。
思い切り、鎌を振りかぶる。
「うあああああああああああッ!」
怨敵アナスタシアを殺すために、絶叫を上げるユーリル。
今こそ天空の剣を抜き放ち、大きく振りかぶる。



しかし、その瞬間。



二人の間に一粒の光の粒子が生まれた。



一粒だったはずの光の粒子はいつの間にか大量に溢れ出し、人の足の形成する。
足から足首へ、足首から膝へ、膝から大腿部へ、次々と人間の形を成していく。
そこまでくれば、ファルガイア出身のアナスタシアには何が起こってるのか理解できる。

「誰か……テレポートしてるのッ!?」

光の中から足は8本生まれ、四人の者が転移してることが分かる。
アナスタシアもユーリルも、突然のことに足を止める。
振りかぶり、今にも下ろされんとしていた武器の勢いを必死で止める。
ユーリルは未経験の事態に、本能が停止を命じたから。
アナスタシアは、誰か一人でも傷つけたら残り三人ないし四人全員を敵に回してしまうから。

「な、何だ!?」

五人の内の誰かが叫ぶ。
どうやら四人ではなく五人のようだ。
残り一人は抱えられてて、地に足がついてなかったらしい。

ようやくちょこが着地して、地を蹴る。
ちょこも、危機感を覚え全速力で向かった。
しかし、ちょこがたどり着くには、刹那ほどの時間が足りなかった。
349創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:59:49 ID:Rxxev0aO
 
350創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:59:51 ID:0XV70MNm
支援8
351Fate or Desitiny or Fortune? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:00:25 ID:6Qq/uypQ
アナスタシアとユーリル、そして突如現れた5人を含めた計7人。
その7人を含む周囲の空間が揺らいだかと思うと、手品のように消え去ってしまった。
誰もいない地面に着地して、ちょこは誰もいない空間に向かって喋る。。

「おにーさん?」
誰もいない。

「おねーさん?」
誰もいない。

「どこー?」
誰もいない。

「かくれんぼ? ちょこ鬼になったの?」
誰もいない。

「ちょこ……ひとりなの?」
これがかくれんぼでないと、理解する。

「おねーさん、おにーさん……どこ?」
残酷な世界に、彼女の叫びは誰にも届かない。


【F-1教会付近 一日目 夕方】

【ちょこ@アークザラッドU】
[状態]:腹部貫通(賢者の石+自動治癒で表面上傷は塞がっている)、全身火傷(中/賢者の石+自動治癒)
[装備]:黄色いリボン@アークザラッド2
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式
[思考]
基本:おねーさんといっしょなの! おねーさんを守るの!
0:おにーさんとおねーさんどこ?
1:おにーさん、助けてあげたいの
2:『しんこんりょこー』の途中なのー! 色々なところに行きたいの!
3:なんか夢を見た気がするのー
[備考]
※参戦時期は不明(少なくとも覚醒イベント途中までは進行済み)。
※殺し合いのルールを理解していません。名簿は見ないままアナスタシアに燃やされました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。
※放送でリーザ達の名前を聞きましたが、何の事だか分かっていません。覚えているかどうかも不明。
※意識が落ちている時にアクラの声を聞きましたが、ただの夢かも知れません。
 オディオがちょこの記憶の封印に何かしたからかもしれません。アクラがこの地にいるからかもしれません。
 お任せします。後々の都合に合わせてください。
352創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:00:33 ID:Rxxev0aO
 
353創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:00:35 ID:0XV70MNm
支援9
354Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:01:17 ID:6Qq/uypQ
マリアベルが語りを終える。
先導するマリアベルが話してきた内容は、とても重いものだった。
ロザリーは、今日一日で何度となく驚いてきた。
ここに来て、ロザリーは自分の常識の数々をひっくり返される。
雷呪文を扱えるのは勇者だけと言う常識、魔王を打ち砕くのは勇者という常識。
それらは常識でも何でもなく、単なる先入観や偏見でしかなった。
しかし、それを認めたくない自分がいるのも確かだ。
昨日までの常識は間違っていたんですよ、と言われてはい分かりましたと言えるほど、度量が広い存在などそうはいない。
だが、どれだけ反論を考えても、マリアベルの言葉に対する有効な論は見当たらなかった。
だったら、ロザリーが勇者様と呼んでいたユーリルもまた、勇者を求める世界によって捧げられた生贄なのだろうか?
そう考えてしまう。
勇者の旅には、ほんの少しだけ同行した思い出がある。
勇者とその仲間の間には笑顔が耐えることはなく、戦闘の際にも強い信頼と絆が見て取れた。
でも、だからと言って問題ないと言えるのだろうか?
終わりよければ全てよしという結果論で語れる問題ではないのだ。
もしもこの先遠い未来、世界を再び暗雲が覆っても、勇者がなりたくもないのに勇者になっても、綺麗な思い出さえ作れば問題ないのだろうか。
ロザリーは、俯きながらそのことをずっと考えていた。

ニノは女だ。
だから、あまり関係ない話だと思っていた。
英雄譚に目を輝かせるのは男の子であって、自分には興味のない話だと思っていた。
しかし、本当にそうなのだろうか。
英雄とは絵本に描かれるような遠い存在ではなく、もっと身近なものではないのだろうか。
アナスタシアという、生きたいという思いが強かったが為に英雄になってしまった女の子と、ニノに何か違いはあるのだろうか。
下級貴族ではあったが、アナスタシアがアガートラームに選ばれたのは生まれた血筋が原因ではない。
ニノとは何の変わりも無い、今日を楽しく過ごして、明日起きて何をするか楽しみにして寝る普通の女の子だ。
英雄になりたくなくてもなってしまったマリアベルの友達、英雄になろうとしていた人たち、英雄の名を背負った人たち。
そんな『英雄』に向き合っていったアシュレーやマリアベルの冒険は、ニノの想像を絶していた。

「すまぬな……そなたらを困らせるつもりはないのじゃ」

ただ、そうやって逝った友達がいたことと、『英雄』という言葉を勘違いして欲しくなかっただけだ。
『英雄』とは決して綺麗な響きだけを持つ言葉ではないこと、『英雄』を特別視してほしくないということを伝えたかった。

「すごいよ……」

ニノがそう、口に出した。

「あたしには、そんな答え一生かかっても出せないよ……」
「何故じゃ?」
「だって、あたし馬鹿だもん……」

ニノには学がない。
政治も分からぬ。
読み書きだってつい最近覚えたばかりだ。
だから、今マリアベルが語っていった人たちのように、『英雄』に対する答えを見つけることは到底できないと思った。
ファルガイアを救うのはたった一人の『英雄』などではなく、ファルガイアに生きる全ての生物の生きたいという想い。
だから、『英雄』なんかいらないと言ったアシュレー=ウィンチェスター。
『英雄』とは何かを為そうとする人の心に等しく存在するもの。
そして、『英雄』とは勇気を引き出すための意志の体現だと言ったブラッド=エヴァンス。
どれもとても重く、一朝一夕では見つからない答え。
みんな必死に考えて考えて、答えが見つからない現実に何度も苦悩して、その果てにやっと導き出した回答なのだろう。
そんなもの、落ちこぼれの自分には逆立ちしたって答えが見つかるはずがないと、ニノは思っていた。
だが、先を歩くマリアベルは少しムッとした様子で言い返した。
355創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:01:28 ID:Rxxev0aO
 
356創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:01:29 ID:0XV70MNm
支援10
357Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:01:58 ID:6Qq/uypQ
「ニノよ、無知であることを自覚するのはよい。 じゃが無知であることを免罪符にしようとするな。
 わらわは学ぼうとする無知は嫌いではないが、学ぶ気のない無知は好かぬ」

無知であることを免罪符にして答えを求めることを放棄すること、それこそが無知の極致だ。
アシュレーたちはみんな、『英雄』とは何かという問いに対して、それぞれの答えを見つけ出した。
そう、『英雄』に決まった答えなどない。
数学のように確たる答えもない、禅問答のようなものだ。

「お主が誰かを守る強さが欲しいのなら常に強くあろうとし、どうすれば誰かを守れることができるかを常に考えるのじゃ」

それは『英雄』に対してだけの問題ではない。
マリアベルの『人間とは何か?』というノーブルレッド永遠の命題と同じようなものだ。
決まった答えも返しの定型句もないような問題に直面した時でも、常に答えを探すことを忘れてはならない。

求める限り、答えは逃げていく。
求めない限り、答えは得られない。

ならば、答えを追い続けて、いつの日か掴み取るのだ。
己の無知を知り、なお答えを求める者。
それはもはや無知ではない。
ニノはしばらく内容を理解できなかったが、自分の頭の中で噛み砕いて、マリアベルの言葉を理解していく。

「うん、分かった。 じゃああたし、まず何をすればいいの?」

マリアベルはその答えに満足しつつ、答えを返す。

「まずは、進むこと。 それが一番じゃな」

『英雄』に対する答えを見つけるのも、仲間の死を悲しむのも、オディオに怒るのも、全ては進まないと始まらない。
だから、今は神殿で雨宿りをすることを始める。

「案ずるなニノ、ロザリーよ。 もう夜は近い。 繰り返される夜は全て我がノーブルレッドのものじゃ。
 誰が居ようと来ようと負けはせぬわ」

振り返り、自信満々に言うマリアベル。
先の見えない不安に対する、マリアベルなりの励ましだ。
マリアベルの言われた言葉をしっかり理解し、もう『英雄』に対して向き合うニノ。
対するロザリーは、生きてきた年月がニノより長い分、常識という壁が少し分厚い。
マリアベルの言葉に間違いは無いと思うが、すぐに考えを切り替えることはできなかった。
常識というのはいつもは役立つが、それが脅かされると途端に厚い壁となって立ちふさがる。
ニノの純粋さが、少しだけロザリーは羨ましかった。

湖の外周部分に沿って歩き、ようやく橋の付近まで来た。
後は橋を渡るだけだ。
誰もが半分安心しかかっていたその時――
358創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:02:13 ID:Rxxev0aO
 
359創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:02:16 ID:0XV70MNm
支援11
360Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:03:01 ID:6Qq/uypQ
「助けて!!」

という声が聞こえてくる。
空模様は一層厳しさを増す。
雷が、そう遠くない場所に落ちた。



◆     ◆     ◆



行動方針は、村とその周辺を行ったり来たりで参加者を狩る。
探し人とのすれ違いを防ぐと同時に、知らない場所で戦うより多少土地勘のある場所で戦えるようになるからだ。
今は、再び村を離れて多少遠くまで出てきた。
生憎の空模様だというのに、先を行くジャファルはそんなことをまったく気にしてない。
当然かとシンシアは思う。
暗殺者にとっては、夜の闇は身を隠す絶好の隠れ蓑になる。
雨は足音や殺気も消してくれるから、夜の雨と暗殺者とは鬼に金棒の組み合わせ。
そこにジャファルが行くのはごく自然なことなのだろう。
シンシアも反対はしない。
言わば、これはジャファルのご機嫌取りのようなものだ。
さっき独断専行をした借りを帳消しにするという意味で、シンシアはジャファルの行く先に文句を言わずついていく。

いつか来る決別の時まで、お互いがお互いを利用しつくす。
そして、いつしかシンシアとジャファルは行動を共にする限り、必ずや戦わねばならない日が来る。
といっても、実力では圧倒的にジャファルが上だ。
ただの山育ちの娘と、一流の暗殺者のジャファル。
借り物の身体も決して弱くはないが、ジャファルとシンシアの間には埋めようのない戦闘経験の差があった。

しかし、シンシアも負けられはしない。
シンシアはシンシアにしかできないことをして、ジャファルの首を取ればいい。
例えば、シンシアは回復魔法を持っているのに対して、ジャファルは持ってない。
これは大きなアドバンテージだ。
言わば、戦闘で負傷した際のジャファルの生殺与奪の権利はシンシアのものだ。
まだまだ使えそうな怪我なら治してやり、もう使えそうになくなったら切り捨てればいい。
勇者の命を、こんな暗殺者に殺させてはならない。
361創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:03:15 ID:Rxxev0aO
 
362創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:03:17 ID:0XV70MNm
支援12
363Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:03:44 ID:6Qq/uypQ
勇者とは、決して絶やしてはならぬ灯火のようなもの。
世界に光をもたらすものが、こんなところで命を落としてはならないのだ。
その火を灯すために必要な負債や代償は、余すところなくシンシアが支払う。

シンシアは影。
光を際立たせる影。
綺麗事ばかりでは生きていけない世界で、正しき勇者に代わって悪を為す存在。
これは一人しか生き残れないバトルロワイアル。
未熟な勇者の卵のユーリルに、今はまだオディオのような巨悪は討つ力はない。
そう、シンシアの知るユーリルはまだまだ勇者としてヒヨッコ。
今は、シンシアがユーリルを守らねばならないのだ。

いずれ来る過酷な運命に旅立つユーリルのそばに、シンシアはいることはできない。
シンシアはせいぜいモシャスのような、多少珍しい呪文が唱えることができるくらい。
力不足なのだ。
だから、小さい頃からせめて、ユーリルには帰ってくる場所がここにあるんだと教えてあげるように務めた。
激しい戦いの連続で心が折れても、村で暮らした楽しい想い出が立ち上がる力となるように。
といっても、それは村の比較的年寄りの連中が言っていたことだ。
未来の勇者様の力になれるようとか、勇者だから大切に相手しろとか。
そんなの馬鹿らしいとシンシアは思う。
そんな年寄りに対して、いつもシンシアは言ってきた。

ユーリルはユーリルなの。
勇者様って名前じゃないわ、と。

そう言うと、大人たちはいつも苦笑していたのを思い出す。
ユーリルが勇者じゃなくても、シンシアはユーリルと仲良く暮らした。
なんて言ったって、同年代の子供がいないのだ。
仲良くならない方が難しい。
山奥の村では、みんなが家族なのだ。

家族。
それは絆。

家族。
決して裏切らない。

家族
血が繋がっていなくてもなれる。

人が少ないからこそ助け合い、血が繋がってなくても家族以上に絆が深かった。
楽しい想い出もたくさん作った。
虫を捕まえて、小川で水遊びをして、森の中でかくれんぼをした。
魔物の動きが活発になる前は、朝早くから夜遅くまで山の中を走り回った。
お城のある城下町なんかと違って、山奥の田舎村には何もない。
でも、何も無いけど、何も無いからこそ、いつも平和で村の笑顔が耐えることはなかった。

ユーリルはいつも口数が少なかった。
言葉少なく、そのことに不安を持つ大人もいた。
でも、誰よりもユーリルと長く暮らしたシンシアは知っている。
その数少ない言葉の端々から垣間見えたユーリルの優しさを。
きっと、ユーリルは勇者なんかより、もっといい職業があるんじゃないかなと思う。
ユーリルが勇者じゃなくて、このまま何も変わらないまま一生暮らせたらいいなと、何度考えたことか。
それに、きっと、恋してた。
でも、それを打ち明けるより前に魔物の軍団がついに村の居場所を突き止め、仮初めの平和は幕を閉じた。
シンシアの役目は決まっていた。
モシャスを唱え、勇者の身代わりとなること。
ユーリルの隠れた場所が見つからないことを祈りつつ、シンシアの命は絶たれた。
364創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:04:05 ID:Rxxev0aO
 
365創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:04:07 ID:0XV70MNm
支援13
366Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:04:26 ID:6Qq/uypQ
でも、何故かシンシアは二度目の生を与えられた。
それだけなら戸惑っていただろう。
何故よりにもよって私の命が?と。
しかし、ここにはあのユーリルの名前もあった。
ならば、シンシアのやることは決まっている。
今度もこの命を後の世の平和のため、ユーリルという家族であり世界の光でもある幼馴染を守るのだ。

そう、思っていた。
そう、思っていたのに。
そう、思って己の手を血に染めたのに。

新たな三人の目標を捕捉した時、ジャファルはついにシンシアに牙を剥く。
シンシアよりも先に三人のターゲットを見つけていたジャファルは、その内の一人を見たとき、ついに見つけたと確信した。
波紋一つ立たない水面のようだったジャファルの心が波打った。
何時も無表情、何時でも無感情のジャファルが唯一心乱れる存在、それがニノ。

決まった。
ニノを見つけた以上、ジャファルにシンシアのような女と手を組む理由はない。
あらかじめ決めていた作戦に従わず、抜け駆けした気質からもシンシアの危険性が伺える。
何より、どちらかが探し人を見つけるまでが手を組む期間だった。
ジャファルには運が味方し、シンシアにはしなかったのだろう。
振り向くと同時に、ジャファルはシンシアの心臓に刃を突き立てんとする。
シンシアの目には、前を歩くジャファルが音もなくフッと掻き消え、次の瞬間にはシンシアの腹にアサシンダガーが刺さっていたようにしか見えない。
心臓を避けたのは、シンシアもジャファルのことを逐一警戒していたため。
借り物の体の内臓が破壊されるのを、シンシアは名状しがたい激痛とともに感じた。
あわててジャファルを突き飛ばし、なんとか距離は離す。
ここに来て、シンシアもジャファルが同盟関係を解消して、襲ってきたのだと理解する。
突然ジャファルが心変わりしたか、あるいは見つけた三人の中に探し人がいたか、どっちも考えられる。
激しくシンシアは吐血する。
口元に手を当てても、なお零れるほどの出血だった。

来るべき時がついに来た。
そして、先手をとられてしまった。
回復呪文の効果が薄いここでは、一瞬の油断が致命傷になる。
シンシアはジャファルの追撃をかわす様にバギマの呪文を唱えると、見つけた三人の元へ地を蹴った。
単独でのジャファルの撃破は無理だ。
ならば、あの三人に助けを求めるしかない。

死ねない。
こんなところで死んでたまるか。
勇者を守るという責務があるのだ。
しかし、敵はあまりにもシンシアと実力差がありすぎる。
ミラクルシューズの恩恵はあるが、ジャファルがいつ背中に迫ってくるか分からない恐怖で、シンシアはみっともないくらいの大声で叫んだ。

「助けて!!」



◆     ◆     ◆
367創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:05:08 ID:Rxxev0aO
 
368創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:05:10 ID:0XV70MNm
支援14
369Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:05:10 ID:6Qq/uypQ



「ミネアさん!」

必死の形相で走ってくる女の顔に、ロザリーは見覚えがあった。
勇者の仲間の占い師の名前を呼ぶ。
その体からはおびただしいほどの血が見える。
マリアベルとニノが戦闘態勢に入る。
マリアベルが前に立ち、ニノは後ろへ。
誰かに襲われていることを三人とも感じ取る。
ミネアは後ろを向き、バギ系最高位の呪文を背後に放っていた。

「バギクロス!」

ロザリーのヴォルテックとは比較にならないほどの出力。
上空の雲に届くほどの竜巻を形成すると、竜巻はその行く先にあるすべてを切り刻み、吹き飛ばす。
木も草も砂も、削り取られ上空に舞う。
巨木がいくつか湖に落ち、水しぶきと大きな音を立てた。
しかし、敵は倒せてないようで、ミネアは再びこちらに走り寄ってくる。
マリアベルを先頭にして、三人がミネアのところへ駆ける。
その中で、ニノが一瞬だけその姿を見た。
木から木へと飛び移るその姿、気配を消して新たな遮蔽物へ身を隠すそのわずかな瞬間を、ニノは捉えた。
翻る闇のような黒衣、風になびく赤い髪、そして氷のように冷たい刃……それはニノの愛しき人、ジャファル。
ニノは襲っている相手が誰なのか認識した。
ニノが声を出す前に、再びジャファルは姿を消す。
ようやくジャファルを見つけたことに対するうれしさか、それともジャファルの今やってることに対する悲しさからか、ニノは泣きそうになった。
次に姿を現した時は、マリアベルたち三人全員がジャファルの姿を目撃した。
バギクロスをなんなく避けたジャファルはすでにシンシアに肉薄しており、右手に握られたアサシンダガ―をシンシアの背中に突き立てようとするところ。

「止めてーーーーーーーーーーーーっ!!」

悲痛な叫びをニノが漏らす。
ジャファルの顔がわずかに歪む。
だが、それで『黒い牙』最高の暗殺者に与えられる称号、『四牙』を持つ男が止まったりはしなかった。
ミネアの背中に、ジャファルはアサシンダガ―を刺した。
ミネアが、力なくその場に倒れた。



そして、同時に。



アナスタシアとユーリルの争いの場に乱入してしまい、緊急回避にテレポートを使ったアキラたちがジャファルとニノたちの間に飛んできた。



◆     ◆     ◆
370創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:05:50 ID:Rxxev0aO
 
371創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:05:53 ID:0XV70MNm
支援15
372Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:05:52 ID:6Qq/uypQ



アキラのテレポートは、特に水のある場所に引き寄せられることが多い。
それはチビッコハウスのトイレだったり、お風呂場だったり……いつかに迷い込んだ不思議な迷宮も水路があった。
ならば神殿の泉……しかもアキラがアイシャを水葬したここに飛んでくるのは、極自然なことなのかもしれない。
飛んできたのはブラッド、ヘクトル、リン、イスラ、アキラ。
そして、アキラのテレポートに巻き込まれるようについてきた、ユーリルとアナスタシアの計7人。

「何が起こった……」
状況が分らないのはヘクトルとイスラとユーリルとアナスタシアとリン。

「アナスタシア・ルン・ヴァレリア……!?」
状況をいち早く理解しようとしているのはブラッド。

「ここは……アイシャの……ッ?」
そして、どこに飛んだかを把握したアキラ。

「ブラッド……お主一体どこから降ってき――アナスタシア……なのか……?」
突然の仲間とその集団の出現に驚き、そして数百年ぶりに友達に再会したマリアベル。

「勇者様!」
そして、ユーリルとの出会いに驚くロザリー。

誰もが驚き戸惑う中、ジャファルだけが己の目的を行動に移していた。
ミネア――本当はシンシアだが――にかろうじて息があるものの、もはやジャファルの目的にシンシアの殺害という項目はなくなった。
優先すべき事柄はただ一つ、ニノの保護。
ジャファルにも何が起きたのかは分らない。
突然7人もの人間が出現して、驚かないはずがない。
だが、分らなければ分らないでよかった。
それよりもニノの安否の確保が大事なのだから。
ニノ以外の人間など、ジャファルの興味は欠片もない。
あの7人の中に、ニノに対して敵意を向ける輩がいないとは限らない。
そして、7人も戸惑いの為動きを止めている。
ならば、好機は今しかない。
ミネアの身体から引き抜いたアサシンダガ―の血を拭うこともせず懐にしまい、ニノの元へ駆けだす。
それはニノとの間にいた7人、そしてニノの前にいたロザリーとマリアベルの障害物をすり抜け、あっという間に到着した。
ニノを肩に担ぎ、ジャファルは全速力でその場を離脱する。

「ニノッ!?」
「ジャファルっ! てめえ!」

追いかけようとするマリアベルより早く、リンを下ろしたヘクトルが駆け出しジャファルの後を追う。
リンも、拙い足取りでヘクトルの後ろに追走してた。
残されたブラッドが、同じく追いかけようとしていたマリアベルを制する。

「待て、マリアベル。 ヘクトルとリンはあの二人の知り合いだ。 任せてやれ」
「し、しかしのう……」
373創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:06:35 ID:Rxxev0aO
 
374Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:06:35 ID:6Qq/uypQ
ニノが心配だ。
拉致されたということはニノに使い道があるということ。
そしてニノが言っていたジャファルの特徴とも一致する。
ニノの言葉が確かなら、ニノが殺される心配はまずないはずだが。

「それよりも、こちらの収集をつける方が先だ」
「ううう、ううううぅうううぅうう!」

獣のような呻き声を上げ、天空の剣を振り上げるユーリルを羽交い絞めにすることでなんとか抑え込んでいるブラッド。
そのユーリルの目には、アナスタシアしか映っていない。
確かにこの敵意を宿した男をなんとか抑え、何故ブラッドたちがこうして来たのか説明してもらわなければならない。
それに、アナスタシアのことが気になる。

「アナスタシア……」

あの時、今よりもう少しマリアベルが若かった当時、最後の別れをしたときと同じ格好をしているアナスタシア。
夢でも幻でもなかった。
同姓同名の人物ではと、何度も考え直したアナスタシアの姿がそこにあった。
この数百年、別れてから今までマリアベルが何をしていたか聞いてもらいたかったし、マリアベルも聞かせて欲しかった。
胸が熱くなるのをマリアベルは感じる。
何を言おうか、何から言おうか。
いくつもの気持ちが重なりあって、すぐに言葉を紡ぐことはできない。
しかし、何故かアナスタシアは見つめるマリアベルから、そっと視線をそらした。

「アナスタシア……!」

アナスタシアに会いたくなかったのに、イスラはまた出会ってしまった。
会いたくないが故に、会いそうにないヘクトルに同行したのに、何故また出会ってしまうのか。
アナスタシアは、イスラなど眼中にないようであった。
ブラッドが抑えている錯乱気味の男を見るばかりで、目もくれない。
そのことが、少しだけイスラを苛立たせた。

「勇者様……」

呆然と、ロザリーは呟く。
重装甲の鎧を纏った男がニノを追うとのことだから、ロザリーもこちらにとどまった。
うめき声を上げながら、ブラッドの腕の中から抜け出そうとする勇者ユーリル。
かつてロザリーが見た、勇者の誇りに満ちたあの面影がどこにも見当たらない。
涙と鼻水と、あらゆる体液でグチャグチャになったユーリルの顔は泣いている子供のようだった。
それに、どうしてだろうか。
今のユーリルにはかつてのピサロに通じるものがある。
あの顔は、憎しみに囚われているように見える。
アナスタシアと、マリアベルが呼んだ女に対して、一心不乱にユーリルは剣を振る。
その人に何かされたのだろうか?
しかし、何かされたとしても、何がユーリルをここまで駆り立てるのだろう。
そのことが、ロザリーは気になった。

「何なんだよ……これはッ!」

ミネアの姿を取った襲撃者が死にそうなのを、アキラは見た。
恨みつらみはある。
しかし、死にそうな姿を見ると、何とも言えない気分になる。

「ふざけるんじゃねぇよ……こんな死に方……お前だって望んじゃいなかっただろうがッ!」

仇を取れなかったことに対する悔しさと、そもそもの元凶であるオディオへの怒りと、犬死にした女へのなんとも言えない感情。
それらがない交ぜになってアキラを襲っていた。
375創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:06:39 ID:0XV70MNm
支援16
376創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:07:16 ID:Rxxev0aO
 
377創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:07:21 ID:0XV70MNm
支援17
378Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:08:00 ID:6Qq/uypQ
「ユー……リル?」

ハッと、ユーリルの動きが止まる。
ユーリルに聞き覚えのある声が耳に届いたから。
蚊の泣くようなか細い声だが、ユーリルは確かに聞いた。
声のする方向を向くと、さっきまでミネアの姿をしていたものが、いつの間にか別の人間の体に変わっている。
それはユーリルが勇者となるきっかけを作った襲撃事件で、勇者の身代わりとなった女の子。
それは幼い頃から山の中を駆け回り、大切な時間を過ごした幼なじみ。
シンシア。

「シンシアぁ!」

勇者になる前のユーリルを知っている、唯一の人間。
その人が、今瀕死の状態でうつ伏せに倒れていた。
アナスタシアのことも忘れ、ユーリルはシンシアに触れようとブラッドの腕の中で暴れた。

「離せ、離してくれ! シンシアが、シンシアが……シンシアがっ!」

先ほどまでとは打って変わって理性的な響きを持つ声に、知り合いらしいと推測したブラッドは手を離してしまった。
知人の今わの際の言葉を聞く権利を蹂躙するほど、ブラッドは薄情ではない。
ユーリルは急ぎシンシアに近寄って体を起こし、べホマの呪文をかけるが、完全に手遅れなことを悟る。

「シンシア! シンシア! しっかり!」

どうして今までシンシアを放っておいたのか、ユーリルは自責の念に駆られる。
昔と違って、今ならユーリルにはシンシアを守れる強さがあったのに。
今度は、自分が守る番だったのに。
またもユーリルは間に合わなかった。
シンシアはユーリルの昔を知っている唯一の人物だ。
そう、シンシアは山で過ごした家族なのだ。
勇者でない自分を暖かく迎え入れてくれるはずなのだ。

家族。
それは絆。

家族。
決して裏切らない。

家族
血が繋がっていなくてもなれる。

その、家族の命が今また失われようとしている。
ユーリルは、力いっぱいシンシアを抱きしめ、今にも消えかかっている命を繋ぎ止めようとしていた。
379創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:08:30 ID:Rxxev0aO
 
380創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:08:32 ID:0XV70MNm
支援18
381Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:08:42 ID:6Qq/uypQ
「ユーリル……」

最後の力を振り絞り、ユーリルの手を掴む。
それは、シンシアの知っている頃より、少し逞しくて太い気がした。
ようやく会えた。
泣きはらしているユーリルの優しさを、シンシアは嬉しいと思った。
そう、ユーリルはこんなにも優しい子なのだ。
この光を守るために、シンシアは手を汚した。
世界の希望を守るために、神様の教えに背く大罪を犯した。

もうすぐ、シンシアは神の下へ召される。
きっとシンシアは天国にはいけず、地獄の業火で何百年何千年と焼かれるだろう。
途方もなく痛いんだろう。
今感じている痛みの万倍の苦しさがそこにあるんだろう。
だけど、それでも構わなかった。
ただ、ユーリルの笑顔があれば、それだけで笑えて逝けた。
それだけで、地獄の責め苦に耐えられる気がした。
だから、最期に――

「笑って……ユーリル」

そう言った。

悲しいときに、笑えと突然言われてもユーリルは困る。

シンシアだけが、ユーリルの反応がおかしくて笑みを浮かべた。

「頑張って……」

もう、声を出す力もなくなってきた。
瞼が、すごく重い。
だから、これが最期の言葉。

「皆を救って……。 あなたは……勇者なんだから……」

ユーリルという光に賭けて、シンシアは手を汚した。
ユーリルの笑顔が見られるなら、どんな罰でも受ける気だった。

なのに。

たどり着いた先に、光はなかった。
あるのは、黒よりも黒い闇だった。

シンシアが最期に見たのは、どす黒い表情をしたユーリルの表情。
そして、シンシアの顔に振り下ろされるユーリルの拳とグロテスクな音。
382創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:09:16 ID:Rxxev0aO
 
383創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:09:20 ID:0XV70MNm
支援19
384Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:09:25 ID:6Qq/uypQ





ぐちゃり。





―――――え?

【シンシア@ドラゴンクエストW 導かれし者たち 死亡】
【残り25人】




雨が。
最初の一粒がユーリルの頬に落ちた。
385創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:09:58 ID:Rxxev0aO
 
386創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:10:02 ID:0XV70MNm
支援20
387Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:10:15 ID:6Qq/uypQ
「ジャファル! 放して! あたしを放してよ!」

荷物を背負ったジャファルは、いつもの俊敏さが見られない。
しかも、背負った荷物は暴れるものだから尚更だ。
安全だと思われる距離まで離れて、ジャファルはニノを下ろした。
ジャファルが自分の言うことを聞いてくれたのかと安心したニノは、元の場所に戻ろうとする。
しかし、ジャファルはニノの腹に当身を喰らわせて意識を奪い取った。
不意の一撃に、ニノは予測も反応もできないまま気絶した。
そのまま倒れそうになるニノを、ジャファルはまた担ぐ。
これでいい。
ニノには悪いが、これで運びやすくなった。
ニノには、安全なところで目を覚ましてもらうことにする。
その際、ニノからどんな文句や弾劾の言葉が出ようと、ジャファルは甘んじて受け入れよう。

そう思ったとき、ジャファルは何者かの体当たりを受けていた。
重量のある一撃を受けて吹き飛ばされるが、ジャファルは空中で綺麗に体を一回転させると、足から地に着地する。
懐からダガーを抜き出す。
そこにいたのは、かつてわずかな時間だけを過ごした人物――ヘクトル。

「オスティア候弟……」
「もう候弟じゃねえ。 オスティア候だ」

鋭い瞳で睨み付けるヘクトル。
再会して懐かしさのあまり談笑、とはいかない。
お互い、完全に相手を敵と認識している。
さらに、先刻ジャファルが仕留めそこなったリンが気絶したニノの体を起こしていた。

「おいジャファル。 お前、リンを襲ったか?」
「……」

肯定も否定もしない。
無表情で、ジャファルはいつヘクトルに攻撃するか探る。
ヘクトルは、それを肯定と受け取った。
ゼブラアックスを構えたヘクトルは、隙を見せないように畳み掛けた。

「ニノのためだな? こんなことやってんのは……」
「……そうだ」

これだ。
黙して語らずを地で行く男が、唯一饒舌になるのがニノ関連の時だった。
ヘクトルはゼブラアックスを思い切り地面に叩きつけ、怒りを露わにする。
あまりの勢いに、地面が少し揺れたのをリンは感じた。

「ニノは……こんなことして喜ぶ奴じゃねえだろうがっ!!」
「……」

ヘクトルの怒りを、無表情で受け流すジャファル。
そんなこと、ジャファルは百も承知だ。
ニノがそんなことを嫌っているのは、誰よりもジャファルが知っている。
だが、それがどうしたというのだ。
388創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:10:40 ID:Rxxev0aO
 
389創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:10:44 ID:0XV70MNm
支援21
390Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:10:58 ID:6Qq/uypQ
「覚えてるかジャファル……? エリウッドの信頼を裏切るなって言ったこと」

かつて、ネルガルの殺人道具に過ぎなかった時からニノを守るという使命を得たとき。
ジャファルはヘクトルから釘を差された。
レイラを初めとした、ヘクトルの多くの仲間をジャファルは殺している。
それが許されたのは、当時のジャファルはネルガルの意のままに動く道具でしかなかったこと。
ニノのために、改心すると誓ったからだ。
だから、エリウッドはジャファルを許せと、ヘクトルに言った。
ヘクトルも、ジャファルにレイラを殺された恨みがあるのに、とりあえず許した。
そう、ジャファルを許したのは、ジャファルがニノのために改心すると誓ったからだ。

「てめえは……てめえを許したエリウッドと、レイラを殺された俺とマシューの、そして……何よりニノの信頼を裏切った!!」

叩きつけられる言葉に、ジャファルの表情が少し揺らいだ。

「あの女の人……ジャファルの仲間じゃなかったの!?」
「必要なくなったから殺した。 それだけだ」

リンはシンシアが襲われる瞬間を目撃したわけではない。
ただ、仲間だったはずの血まみれの女を見捨てたことに対して、リンは怒った。
ジャファルは、それに対してもまるで興味がないように言い捨てた。
これ以上の問答は無用だと判断したジャファルは、影縫いも取り出し二つの短刀を構え、ヘクトルにあることを言う。

「俺は……フロリーナを殺した」

実際は違うが、事実とそう変わりはない。
シンシアがフロリーナを殺す瞬間を眉ひとつ動かさずに見ていた。
ニノの友達であり、リンの親友であり、ヘクトルの恋人であるを死を告げる。
リンの襲撃に加えて、フロリーナの殺害を認められたことに対して、ヘクトルは烈火のごとく怒った。
リンも、信じられないと絶句した。
それでいい。
言葉は無用だ。
これから先、かわすのは刃だけでいい。

「来い、オスティア候。 俺はお前を殺す理由がある。 お前は俺を殺す理由がある。 必要なのはそれだけだ」

平和。
自由。
正しさ。
そんなもの、ジャファルはいらなかった。
ニノだけが、ジャファルの望む全てだった。
あの真っ直ぐで純真なニノの眼差しが閉じられることだけは、なんとしても避けたかった。
ジャファルに幸せというものが与えられるのなら、ニノにすべてを与えよう。
ニノの隣でニノに幸せを与える存在、それはジャファルでなくてもいい。
ニノを大切にしてくれるのなら、それは誰でもいいのだ。

ジャファルは、光を掴んだはずだった。
だが、その光を、ジャファルは手放した。
ジャファルはもう一度闇になり、ニノという光を守る。
ヘクトルが走り出すのと、ジャファルが姿を消して闇に紛れたのは、同時のことだった。




雨が。
四人の髪を濡らしていた。
391創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:11:23 ID:Rxxev0aO
 
392創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:11:26 ID:0XV70MNm
支援22
393Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:12:42 ID:6Qq/uypQ
【C-7西側の橋より少し西 一日目 夕方】
【リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:左目失明、心臓付近に背後からの刺し傷、全身に裂傷、疲労(大)
[装備]:マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、拡声器(現実)
[道具]:毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストW 導かれし者たち、フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドU、
     デスイリュージョン@アークザラッドU、天使ロティエル@サモンナイト3
[思考]
基本:打倒オディオ
1:ニノを起こす。
2:殺人を止める、静止できない場合は斬る事も辞さない。
3:白い女性(アティ)が気になる。もう一度会い、話をしたい。
[備考]
※終章後参戦
※ワレス(ロワ未参加) 支援A



【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:疲労(中)、気絶
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣、
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:気絶。
2:仲間との合流。
3:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
4:フォルブレイズの理を読み進めたい。
5:ジャファルを止めたい。
6:マリアベルたちのところに戻りたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※メラを習得しています。
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバーは確定しています。他は不明ですが、ヒール、ハイヒールはありません。



【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)、疲労(中)、アルテマ、ミッシングによるダメージ
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドU
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、
     基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオを絶対ぶっ倒す!
1:ジャファルを倒す。
2:リン達やブラッドの仲間、セッツァーの仲間をはじめとして、仲間を集める。
3:つるっぱげを倒す。ケフカに再度遭遇したら話を聞きたい。
4:セッツァーを信用したいが……。
5:アナスタシアとちょこ(名前は知らない)、シャドウ、マッシュ、セッツァーを警戒。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。
394創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:12:49 ID:Rxxev0aO
 
395創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:12:51 ID:0XV70MNm
支援23
396Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:13:23 ID:6Qq/uypQ
【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、傷跡の痛み。
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドU、かくれみの@LIVEALIVE
[道具]:不明支給品0〜1、アルマーズ@FE烈火の剣 基本支給品一式*2
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:ヘクトルを殺してニノを確保する。
2:参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
3:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦




◆     ◆     ◆



雨が。
その場にいる者の熱を冷ましていく。
だが、ユーリルの心だけは、どれだけ雨にぬれても冷えることはない。

家族…………?
何だよそれ……。

家族……?
シンシアと僕は家族じゃなかったのか?

家族。
なのに、最期にかわした会話が、あんなもの……?

家族。
それは絆。

家族。
決して裏切らない。

家族
血が繋がっていなくてもなれる。

家族。
そうだったはずじゃないか。
397創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:13:45 ID:Rxxev0aO
 
398創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:13:47 ID:0XV70MNm
支援24
399Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:14:05 ID:6Qq/uypQ
家族。
でも……。

家族……!
家族って何だよ。

家族!!!!!
家族なら、もっと他にかわす言葉があったはずなのに!!

今こそユーリルは悟った。
僕たちは家族でも何でもなかった。
僕が大人に成長するまでの間育てるから、見返りとして世界を救えと。
そういう契約関係でしかなかったのだ。
僕一人が騙されて、勝手に幸せになっていただけ。
もうそうとしか考えられなかった。
ちょこの言葉を思い出す。
いいね君は……大切な家族がいて。
でも僕には……家族すらいなかったんだ!
家族の仮面を被った、滑稽な喜劇だったんだ!!

役者はたくさん。
村のみんなたち。

観客はひとり。
僕ひとり。

そんな茶番を茶番だと気付かずに、ユーリルはずっと過ごしてきた。
知らなければ、どれほど幸せだっただろう。
仮初めとはいえ、ユーリルは確かに幸せを感じていたのだから。
知らないでいれば、勇者の誇りを胸に抱いて生きていけたのに。
勇者でいられれば、シンシアの二度目の死でも耐えられた。
その言葉を受け継いで、立派な勇者として魔王オディオを倒そうと誓えた。

勇者でいられれば、今頃友達を死なせることもなかった。
あの憎悪にまみれた男に、クロノたちと揃って四人仲良く討ち死にしたかもしれない。
それでもよかった。
勇者しての責務を果たそうとして、途中で死んだ方が今の何万倍もマシだった。
でも、勇者の本質を生贄だと教えられた今、ユーリルには何もなかった。
あるのは勇者になる前の、ささやかな思い出だけ。
そう思っていた。
しかし、それさえ偽りに満ちたものであった。
勇者であることを知らずに無意識に生きてきただけで、ユーリルは生まれてからずっと勇者だったのだ。
それを捨ててしまった今、ここにいる空っぽの人間を形容するのに、ゴミという言葉以外に当てはまるものはない。
勇者になんかなりたくなかった。
平和に、ずっと平和に生きていたかった。
それなのに、シンシアの最期の言葉は、勇者であれという無意識の強制だった。

「あ、あ、あああああぁぁぁぁぁ……」

再び獣のような声がユーリルから漏れ始める。
もうユーリルの目には、シンシアが幼なじみの顔には見えなかった。
勇者であれ、勇者になれという呪詛にも似た言葉を繰り返す魔物に見えてきた。
楽しかった思い出を守るために、ユーリルはこのシンシアを否定する。
400創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:14:26 ID:Rxxev0aO
 
401創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:14:28 ID:0XV70MNm
支援25
402Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:14:47 ID:6Qq/uypQ
拳を叩きつけられた衝撃で頭蓋骨は割れ、眼球がスポンと飛び出る。
飛び出た眼球は、視神経という糸と繋がったまま、地面に落ちる。
それを見て、ユーリル以外の全員が後ずさった。

「ひッ!」」

特に、眼球と目が合ってしまったアナスタシアは吐き気を催す。
ボキリと、ユーリルはシンシアの首を捻じ切る。
陥没したシンシアの顔の、口があったと思われる場所から赤い泡がゴポリと漏れた。
そのまま胴体と別たれたシンシアの首を、ユーリルは思い切り近くに投げる。
時速200km/sを超えたスピードで木にぶつかったそれは、トマトのようにパーンと弾けた。
脳漿や色々な液体が潰れたトマトから流れる。
それが元は人の首だったと言われて、誰が信じられようか。
誰もが、動けなかった。
シンシアをシンシア『だったモノ』にユーリルはしていく。
ここにいたのはシンシアであることを否定するかのように。

「ウああああああああァァァああああAああaああ!!」

雨が。
激しさを増してきた。

腹部を素手で引き裂くと、みっしり詰まった臓器が飛び出る。
胃を鷲掴みにして握りつぶすと、中から酸味のある刺激臭がする。
長い大腸を引きずり出し、細かくちぎっては投げ、細かくちぎっては投げた。
拳を叩きつけるたびにぐちゃり、ぐちゃりと、音に水っぽさが増した。

拳を。
振り上げては下ろす、振り上げては下ろす。
ただ、その繰り返し。
拳を叩きつけ、こねて、臓器を掻き出す。

雨が、シンシアの体内にも降り注ぐ。
ユーリルの顔と衣服は、もはや返り血でビチャビチャだった。
だが、そんなものを気にする余裕さえないほど、今のユーリルは狂気に染まっていた。
雨がユーリルの血を流しても流しても、新たな血液が付着した。

肝臓。
心臓、肺。
膵臓、腎臓、小腸。
胆嚢副腎脾臓頚椎鎖骨肩甲骨。
胸骨肋骨大腿骨指骨尺骨脛骨。
403創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:15:08 ID:Rxxev0aO
 
404創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:15:10 ID:0XV70MNm
支援26
405Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:15:30 ID:6Qq/uypQ
全てを粉々に砕く。
全てを握りつぶす。

シンシアの全てをユーリルは否定する。
それでも飽き足らないのか、立ち上がってシンシア『だったモノ』を踏みつける。

「うわああああああああああああああああ!!」

ぶちゅり、ぶちゅり。
人間らしい原型がもうどこにもない。
それでも、ユーリルは足りない。
シンシアの肉片が平らになって踏む場所がなくなっても、足りない。

「ウッ……」

口元を押さえ、ロザリーは思う。
こんなの、人の死に方じゃない。
人の尊厳を完全に無視してる。
それに、何よりあの心優しい勇者ユーリルがこんなことをするとは信じられなかった。
しかも、末期の会話を聞く限り、知り合いのようだった。
何故そんなことが知り合いに対してできるのか、不思議でならない。
最期に、シンシアというミネアの姿を取っていた女性が言っていたことを思い出す。
勇者たれ、と。
その言葉を聞いた時、ユーリルの拳が彼女の顔面を破壊した。

もしかして、ロザリーはとんでもない思い違いをしていたのではないだろうか。
マリアベルの先刻語った英雄に関する話を嫌でも思い出す。
アナスタシアは、『英雄』になどなりたくなかったのだ、と。
勇者ユーリルは仲間と楽しい想い出を作っていたように見える。
けれど、それは導かれし者たちにとっては楽しい思い出であっても、ユーリル本人は楽しくないと感じていたら?
彼もまた時代と世界に選ばれてしまった勇者で、本当は勇者になりたくのかったのだとしたら?
本当のことはユーリルしか分からない。
それはロザリーの勝手な想像。
でも、これ以上死者を冒涜するのは見捨てておけなかった。

「お、お止めください勇者様! あなたはこんな方が出来る方では――」

肩を掴んで、ユーリルの凶行を止めようとする。
しかし、ユーリルはロザリーの体を突き飛ばし、吹き飛んだロザリーは後頭部を強かに木に打ち、意識を失った。
倒れたロザリーの体を抱き起こし、意識がないことを確認すると、マリアベルは事情を知っていそうなブラッドに詰問口調で聞いた。

「……どういうことじゃブラッド?」
「俺にも分からない。 ただ、貴女なら知っているのではないか?」

ブラッドもユーリルに出会ってから経った時間は、マリアベルと数秒ほどしか時間が違わない。
名前さえ知らない。
だから、ユーリルと一緒にいたであろう人に聞く。
ブラッドは、その人物の方向に振り返る。
406創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:15:50 ID:Rxxev0aO
 
407創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:15:54 ID:0XV70MNm
支援27
408Famille? ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:16:12 ID:6Qq/uypQ
「<剣の聖女>、アナスタシア・ルン・ヴァレリア」

イスラもマリアベルも、ブラッドもアキラも、アナスタシアの説明を求める目で見た。
だが、アナスタシアは目をそらし、責任逃れをした。

「わ、私は……知らないわ……」

いけないことだったのか。
そんなに『英雄』とは生贄だと言ったことが悪いのか。
責めるような目で見るみんなの視線が、アナスタシアは痛かった。
ちょこもいない今のアナスタシアは、素人に毛が生えた程度の力しかない。
そのことも、アナスタシアの答を鈍らせる原因となっていた。
今ユーリルと、その他の人と戦うことになったら?
死が、近づいてくるのをアナスタシアは感じ取る。
そこで、ユーリルの足がピタリと止まり、憤怒の形相でアナスタシアを睨み付けた。

知らないだと?
誰のせいでこうなった?
どうしてこうなったと思っているんだ?
全ての原因はシンシアではなく、お前にあるのではないか?
勇者は生贄だと知ったせいで、誰がこんなに苦しんだと思っている?

そうだ、倒すべきはシンシアだったモノではない。
この<剣の聖女>、アナスタシア・ルン・ヴァレリアではないか。
アナスタシア憎しの感情が、ユーリルの中で膨れ上がる。
そして、それが頂点に達したとき、ユーリルは天の怒りを呼んだ。

「アナスタシアあああああああああああああああああああああああ!!」

ユーリルの声に応えるように、大きな雷が落ちた。
しかし、それは正義の雷でも、覇者の雷でも、勇気の雷でも、勇者の雷でもなかった。


雷は、黒い燐光を帯びていた。


ユーリルの憎しみに染まったかのような黒い雷が、ところ構わず落ちて破壊を撒き散らす。

「殺して、殺してやる! アナスタシア・ルン・ヴァレリアああああああああああ!」

何故、何故なのだろうか。
マリアベルはアガートラームを見つけたとき、これを然るべき人物に渡すつもりだった。
しかし、今のアナスタシアにはその気があまりしない。
アナスタシアが今までに見せたことの無い表情をしていたから。
普通の少女として生きたいと願っていた少女に、暗いものを感じたから。
けれど、アナスタシアが守る対象なのは変わりない。
マリアベルがロザリーを誰かに任せるか、どこか安全なとこへ運ぼうとしたとき、さらなる事態が起こる。
409創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:16:39 ID:Rxxev0aO
 
410創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:16:41 ID:0XV70MNm
支援28
411Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:16:54 ID:6Qq/uypQ
「ロザリー!」

かの声は、魔族の若き王ピサロ。
ロザリーがいると分かって一心不乱に探し、疲労の果てに倒れ、そして起きたのがつい先ほどだ。
そこから再び捜索をすると、多数の人が集まっているところを発見。
近寄ってみれば、そこには愛しきロザリーの姿もある。
しかし、何やらロザリーは目を閉じられている。
しかも、衣服には血の跡と人間の姿。
それだけで、ピサロは何が起きたかを理解した。

「下等な人間風情が……ロザリーに何をしたァーーー!」

疾風のごとく駆ける。
怒りのあまり、ピサロには気づかない。
ロザリーの衣服の血が乾ききっていることにも。
雨雲で曇り、薄暗くなった空間ではそれも判別しづらい。

新手の登場に、イスラは舌打ちをしてピサロの進行方向に立ちはだかる。
どうも<剣の聖女>といると、ロクな目にあわないらしい。
やはりイスラはアナスタシアになど会いたくはなかった。
イスラにとって、アナスタシアは疫病神のようだった。
さらに、新手が現れる。

「カエル!?」
「魔王だと!?」

異形の騎士と、オディオとは違うもう一人の魔王も現れる。

「行けるか、カエル?」
「言われずとも、な……」

北に進路を取っていた彼らが、黒い雷に惹かれたかのように姿を見せた。

「一体何人来るんだよッ!?」

アキラが迎撃の態勢を取りながら叫ぶ。

<剣の聖女>、アナスタシア・ルン・ヴァレリア。
堕ちた勇者、ユーリル。
魔族の王、ピサロ。
ガルディアを守る騎士、カエル。
オディオとは違う、もう一人の魔王。
ノーブルレッド、マリアベル。
スレイハイム解放戦線の『英雄』ブラッド・エヴァンス。
死にたがりの道化、イスラ。
怒りによって勇気を得し者、アキラ。
気絶したエルフ、ロザリー。
412創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:17:22 ID:Rxxev0aO
 
413創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:17:24 ID:0XV70MNm
支援29
414Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:17:36 ID:6Qq/uypQ
そして離れたところにオスティア候、ヘクトル。
キアラン候の孫娘にして、ロルカ族のリン。
黒い牙の暗殺者、ジャファル。
ロザリーと同じく、気絶した非力な少女、ニノ。

実に14人もの人間が集まっている。
シンシアも含めれば15人。
残り人数の半分近い人間がここに集まっているのだ。

ユーリル、ピサロ、カエルと魔王。
三方向から襲い掛かる敵に対して、逃走はもはや不可能にも思えた。
どちらかに逃げようとすれば、背後をつかれる。
ならば、もう一つ残された方法をブラッドが提案する。

「アキラッ! テレポートはいけるか!?」
「分かんねぇ! いつでもいけるようにはするけどよ、ヘクトルたちが離れすぎてる! あいつら置いて行けねぇよッ!」

それもそうだ。
辛うじてここにいる人員をテレポートで離脱させても、ヘクトルたちがいる。
戻ってきたヘクトルたちが残された魔王たちの餌食にならないとは限らない。
ならば――

「戦うしかないということかッ!」

拳を、固く握り締める。
アナスタシアの護衛をしつつ、襲ってくる四人と戦う。
こちらもブラッドを含めてマリアベル、アキラ、イスラがいるが、戦闘力が互角かは分からない。
一人が倒れれば、残された人員もあっという間に死んでいくだろう。
マリアベルも戦闘の覚悟をした。

「正念場じゃぞッ!」

雨が。
本降りになって泥を跳ねさせる。

煙る雨の中、いくつもの戦いが、いくつもの想いを抱えて始まる。

「時間だ……」

その中で魔王オディオの声だけがよく響いた。
オディオの事前の予告どおり、激しい雨が戦場を濡らす。

降りだした雨は誰かの涙。
鳴りだした雷は誰かの怒り。

今。

残り半数以上を巻き込んだ戦いの幕は。

壮絶な雨模様の中、火蓋を切って落とされた。
415創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:18:08 ID:0XV70MNm
支援30
416Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:18:18 ID:6Qq/uypQ
【C-7橋の近く 一日目 夕方(放送直前)】
【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー、賢者の石@ドラゴンクエストW
[道具]:不明支給品0〜1個(負けない、生き残るのに適したもの)、基本支給品一式
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
1:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
2:施設を見て回る。
3:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[備考]
※参戦時期はED後です。
※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。




【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、精神疲労(極)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LIVEALIVE、天使の羽@FFVI、天空の剣(開放)@DQW、湿った鯛焼き@LIVEALIVE
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンは一つ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
1:アナスタシアを殺す。 邪魔する人も殺す。
[備考]:
※自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところです。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。



【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。激怒
    疲労(大)人間に対する憎悪、自身に対する苛立ち
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:基本支給品一式、データタブレット@WILD ARMS 2nd IGNITION
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:目の前にいる人間を殺す。
2:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿を確認しました。ロザリーの存在を知りました。
※参戦時期は5章最終決戦直後
※ロザリーが死んだと思ってます。
※一度気絶して起きたので、多少は回復してます。
417創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:18:43 ID:Rxxev0aO
 
418創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:19:49 ID:0XV70MNm
支援31
419創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:19:51 ID:Rxxev0aO
 
420Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:20:01 ID:6Qq/uypQ
【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:テレポートによる精神力消費。
[装備]:激怒の腕輪@クロノ・トリガー
[道具]:清酒・龍殺し@サモンナイト3の空き瓶、基本支給品一式×3
[思考]
基本:オディオを倒して殺し合いを止める。
1:とりあえず状況に対処。 テレポートの使用も考慮。
2:高原日勝、無法松との合流。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[備考]
※参戦時期は最終編(心のダンジョン攻略済み、魔王山に挑む前、オディオとの面識は無し)からです
※テレポートの使用も最後の手段として考えています
※超能力の制限に気付きました。
※ストレイボウの顔を見知っています
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。



【ロザリー@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:疲労(中)衣服に穴と血の跡アリ、気分が悪い (若干持ち直した) 、気絶
[装備]:クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WA2
[道具]:双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める。
0:気絶
1:ピサロ様を捜す。
2:ユーリル、ミネアたちとの合流
3:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
4:あれは、一体……

[備考]
※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
※一度死んでいる為、本来なら感じ取れない筈の『何処か』を感知しました。
※ロザリーの声がどの辺りまで響くのかは不明。
 また、イムル村のように特定の地点でないと聞こえない可能性もあります。
※ロザリーが何を伝えたかは後続の書き手氏に任せます
421創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:20:35 ID:Rxxev0aO
 
422創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:20:38 ID:0XV70MNm
支援32
423Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:21:31 ID:6Qq/uypQ
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:マリアベルの着ぐるみ(ところどころに穴アリ)@WA2
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LAL、アガートラーム@WA2
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
0:眼の前の状況に対処。
1:付近の探索を行い、情報を集める。
2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。
3:この殺し合いについての情報を得る。
4:首輪の解除。
5:この機械を調べたい。
6:アカ&アオも探したい。
7:アキラは信頼できる。 ピサロ、カエルを警戒。
8:アガートラームが本物だった場合、然るべき人物に渡す。 アナスタシアに渡したいが……?
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。
※レッドパワーはすべて習得しています。
※ゲートの行き先の法則は不明です。 完全ランダムか、ループ型なのかも不明。
 原作の通り、四人以上の人間がゲートを通ろうとすると、歪みが発生します。
 時の最果ての変わりに、ロザリーの感じた何処かへ飛ばされるかもしれません。
 また、ゲートは何度か使いましたが、現状では問題はありません。
※『何処か』は心のダンジョンを想定しています。 現在までの死者の思念がその場所の存在しています。
(ルクレチアの民がどうなっているかは後続の書き手氏にお任せします)



【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:全身に火傷(多少マシに)、疲労(中)、額と右腕から出血、アルテマ、ミッシングによるダメージ。
[装備]:ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:リニアレールキャノン(BLT0/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION
不明支給品1〜2個、基本支給品一式、
[思考]
基本:オディオを倒すという目的のために人々がまとまるよう、『勇気』を引き出す為の導として戦い抜く。
1:眼の前の状況に対処する。
2:自分の仲間とヘクトルの仲間をはじめとして、仲間を集める。
3:セッツァーとマッシュの情報に疑問。以後セッツァーとマッシュは警戒。
4:再度遭遇したらケフカを倒す。魔王を倒す。ちょこ(名前は知らない)は警戒。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
※いかりのリング@FFY、パワーマフラー@クロノトリガー、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE 
 以上のアイテムは回収され、ブラッドたちに分配されました。
 細かい配分はお任せします。
424創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:21:37 ID:Rxxev0aO
 
425創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:21:39 ID:0XV70MNm
支援33
426Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:22:13 ID:6Qq/uypQ
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:アルテマ、ミッシングによるダメージ、疲労(中)
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0〜1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み)
    ドーリーショット@アークザラッドU
    鯛焼きセット(鯛焼き*2、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:眼の前の状況に対処。
2:ケフカと再度遭遇したら確実に仕留める。
3:次にセッツァーとマッシュに出会ったときは警戒。
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。



【カエル@クロノ・トリガー】
[状態]:左上腕脱臼&『覚悟の証』である刺傷。 ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:にじ@クロノトリガー
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:ガルディア王国の消滅を回避するため、優勝を狙う。
1:眼の前の戦闘に参加。出来る限り殺す。
2:魔王と共に全参加者の殺害。特に仲間優先。最後に魔王と決着をつける
3:できればストレイボウには彼の友を救って欲しい。
[備考]:
※参戦時期はクロノ復活直後(グランドリオン未解放)。



【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:魔鍵ランドルフ@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノトリガー
[道具]:不明支給品0〜1個、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝して、姉に会う。
1:眼の前の戦闘に参加。出来る限り殺す
2:カエルと組んで全参加者の殺害。最後にカエルと決着をつける
[備考]
※参戦時期はクリア後です。ラヴォスに吸収された魔力をヘルガイザーやバリアチェンジが使える位には回復しています。
※ブラックホールがオディオに封じられていること、その理由の時のたまご理論を知りました。
※遺跡の下が危険だということに気付きました。
427創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:22:23 ID:Rxxev0aO
 
428創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:22:26 ID:0XV70MNm
支援34
429Throwing into the banquet  ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:22:56 ID:6Qq/uypQ
※ミラクルシューズ@FFIV、ソウルセイバー@FFIV がシンシアの死体付近に、
※基本支給品一式*3、ドッペル君@クロノトリガー、デーモンスピア@DQ4、昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVEがシンシアの持っていたデイパックに入ってます。
 デイパックはシンシアの死体付近にあります
430創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:23:08 ID:Rxxev0aO
 
431創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 16:23:11 ID:0XV70MNm
支援35
432 ◆SERENA/7ps :2010/04/12(月) 16:27:54 ID:6Qq/uypQ
最後ものすごく短くなったorz

投下終了しました。
数々の支援ありがとうございます。
シュウとサンダウンの武器を回収はさせましたが、状態表に入れるのを忘れていましたので
分配を次の方に任せるということにしました。

タイトル分割は
>>354から、
そして二番目の分割点を
>>387からでお願いします
そこでタイトル変わってるのでたぶん分るかと思います
433創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 19:12:07 ID:/EW/Zxti
投下乙です

これは、ユーリルのこれまでのロワでの悪い意味での積み重ねの結果なんだろうな……
色々言いたいこともあったが全部吹っ飛んだ……
434創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 22:29:51 ID:MEYe0jrl
投下乙です

これは……家族という言葉が最悪の方向に働いたな
なんていうか、色々と報われねぇw
それ以外にも一堂に会したFE勢、大乱戦の始まりなどwktkせざるを得ない終わりかた
期待で俺の心がヤバい
435創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 23:01:59 ID:ftSWlVJN
投下乙

ユーリル堕天乙ww
436創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 23:06:48 ID:X8GGVXlq
投下乙

シンシアの最期が素敵すぎるだろう、これは……
ううむ、こう持ってくるとは
いや、いずれこうなるとは思ったけどここまでやられるとは
実に実に実によかった……
ユーリルは『憎しみ、あるいは――』に突き動かされてるなあ
それにしてもちょこが怖い
437創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 00:29:55 ID:16l4UFMx
大人数での投下乙です!
う〜ん、参加者の集め方が強引な気もするけど…
ロワ名物のロワ内ロワ開幕にはテンションが上がる終わり方だった!

シンシア…最終的にはユーリルに殺されるとは思ってたけど
こういうグロ展開になるとは思わなかった
だけどなぜかかわいそうだとは思わない。ふしぎ!
438創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 02:25:55 ID:K/NHDELV
集め方はたしかに強引だな。
だが、面白いは正義だ。
この話は続きを見たくなる、あるいは書きたくなる面白さがあるから通ったんだろう。


そして新たな予約が来てるぜ。
最近の自ロワは順調で何よりだ。
439創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 21:56:04 ID:rJs+6g4y
予約が3件……!
なんか勢いづいてるな、嬉しいことだ。
440 ◆jtfCe9.SeY :2010/04/16(金) 01:52:54 ID:O8MWtYYD
お待たせしました。シャドウ投下します
441戦友へ ◆jtfCe9.SeY :2010/04/16(金) 01:55:23 ID:O8MWtYYD

焼けはてた平野で。

断層が広がる大地で。

紅く染まる空の下で。



――――マッシュ・レネ・フィガロは死んでいた。


満足そうな顔で。
手には大切なコインを握って。
仲間らしい男達と共に。
身体が真っ二つになりながらも。


――――その優しい瞳を佇むシャドウに向けていた。


マッシュの瞳をシャドウはただ見つめていただけ。
仲間だった男が斃されていたのを見る事しかなかった。
思う事はあるが、それを口にする事など絶対にしない。

当然だ。
シャドウは仲間を切り捨てて、生き延びる事を選択したのだから。
友の誓いを裏切らない為にも、まだ生きなければならないのだから。
己が生の渇望に応え、降りかかる死を拒絶した。

今、マッシュを見つけられたのもほんの偶然でしかない。
焼け果てた大地が気になり、向かったまで。
そして、辿り着いた先にマッシュの死体があった。
ただ、それだけの事。

故に感傷を持つ事などしない。しなくていい。
全てを黒衣に隠して、進まなければいけないのだから。

暗殺者はもう一度、死んだ友を見据え、頷き。


全ては、生き残る為に、戦うのみ。


だからこそ、振り向かない。



そして、影へと消えた。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


442戦友へ ◆jtfCe9.SeY :2010/04/16(金) 01:56:04 ID:O8MWtYYD










焼けはてた平野で。

断層が広がる大地で。

紅く染まる空の下で。



――――マッシュ・レネ・フィガロは変わらずに死んでいた。


満足そうな顔で。
手には大切なコインを握って。
仲間らしい男達と共に。
身体が真っ二つになりながらも。


――――その優しい瞳を佇むシャドウに変わらずに向けていた。



気がつけば、またこの地に足を運んでいた。
思う事は、心に封じ込めていたはずなのに。
この場所を再び尋ねていた。

マッシュから一度離れ、向かった先の港町は荒廃していた。
火が街を蹂躙した後に溢れ、煙が空高く昇っていた。
原型を保っている家など殆どなく、人の気配すらない。
探索する価値すら無い。
シャドウはそう判断し、暫しの休憩をした後、港町を離れた。

次は人の居そうな場所に。
そう考えていたはずなのだが、此処に着ていた。



443戦友へ ◆jtfCe9.SeY :2010/04/16(金) 01:57:27 ID:O8MWtYYD
眠ったように動かないマッシュをシャドウは見据えて。
シャドウは港町で得た、唯一の収穫を取り出す。
右手に甘い洋酒、左手には三つのグラスを持っていた。

グラスを二つ、焼け焦げた大地に置く。
一つは目の前で死んでいるマッシュに。
もう一つは先に逝った、マッシュの大切な兄へ。

シャドウは天を仰ぎ、そして空いたグラスに酒を注ぐ。
琥珀色の液体がグラスに満たされていく。
全てのグラスに注ぎ終えると、またマッシュの顔を見つめる。

一口、グラスに満たされた酒を飲む。
甘ったるいモノが口に広がっていく。
シャドウはこの類の酒は好まない。
出来る事ならば、飲まないとさえ思っている。

だが、この酒をマッシュは愛していた。
パブで共に飲んだ時は、いつも彼はこの酒を選んでいた。
それは偶然にも、彼の兄と一緒で。
全く正反対の兄弟だったが、偶然にも酒の好みだけは一緒だった。
あの兄弟は、この酒を向こうで飲んでいるのだろうか。
語り足りなかったモノを同じ酒を飲んで、語っているのだろうか。

そんな事はシャドウが知る由もない。
だが、そう思わずには居られなかった。

マッシュは、兄の死をどう受け入れたのだろうか。
マッシュは、この殺し合いの中でどう生きたのだろうか。

シャドウは、その答えを自然に理解できた。
何故ならば、彼の表情は死んでいるのに、とてもやすらかに見えたから。

故に、もう、充分であった。

共に世界中を旅をした。
もしかしたら、仲間の中で最も一緒に旅をしたかもしれない。

共に倒すべき敵と戦った。
もしかしたら、最も背中を預けた仲間かもしれない。



だが、それは、もう過ぎ去った事で。


今は、もう終わった事だった。


故に、最後に彼が好んだ酒を贈り。



暗殺者はもう一度、死んだ友を見据え、頷き。


シャドウは再び、歩きだす。


444戦友へ ◆jtfCe9.SeY :2010/04/16(金) 01:58:35 ID:O8MWtYYD
全ては、生き残る為に、戦うのみ。


だからこそ、もう、振り向かない。



「さらばだ、戦友よ」



最後に、友に別れを告げ。




そして、影へと消えた。





【E−2 中央 一日目 夕方】
【シャドウ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身に斬り傷、軽い火傷。
[装備]:アサッシンズ@サモンナイト3、竜騎士の靴@FINAL FANTASY6
[道具]:蒼流凶星@幻想水滸伝U、基本支給品一式*2 洋酒、グラス
[思考]
基本:戦友(エドガー)に誓ったように、殺し合いに乗って優勝する。
1:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
2:知り合いに対して……?
[備考]:
※名簿確認済み。

※マッシュの遺体の前に洋酒の入ったグラスが二つおいてあります。
445戦友へ ◆jtfCe9.SeY :2010/04/16(金) 02:01:14 ID:O8MWtYYD
投下終了しました。
延長申請してましたが、そもそも自分はその権利が無いことを失念していましたorz
その確認を怠ってしまい申し訳ありません。
何かありましたら、指摘をお願いします
446創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 09:17:55 ID:u5yhHb43
おー……シャドウかっけえ
447創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 20:15:05 ID:kT67SBp3
投下乙
シャドウ……
448創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 20:21:08 ID:8nRZemnS
シャドウェ……
449創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 20:22:34 ID:S4+T4dl7
そういやシャドウを最初にプレイヤー操作できるのマッシュ編だったっけなあ
彼のテーマが聴こえてくる作品だったわ、乙
450創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 02:44:19 ID:6h8scFS0
うおおおお! 投下続きで絶好調じゃねぇかー!

まず◆SERENA/7psさん、遅くなったけど投下乙!
ついに、ついにユーリルが一線を越えた……。しかも相手はシンシアって……ド外道展開w
シンシアは最初からずっとユーリルのために全てを捧げていたのに、この終わり方は悲惨すぎる。
最期の描写がグロいのなんのw これが勇者を書き手みんなでいじめた結果かw
つーかアナスタシア自身もまさかここまでの事態になるとは思わなかっただろうに。でもお前責任逃れしてんじゃねぇよw
そしてそして、FE勢が一堂に会した! これは続きが楽しみすぎる。ニノはやく起きろw
ヘクトルも最近になって活躍の芽が出てきたから、ここで一花咲かせられるか見もの。
マリアベルの言葉のとおり、まさにここが正念場。このロワの行く末を左右する重要な局面。見事でした、GJ!!!!

◆jtfCe9.SeYさん投下乙!
シャドウさん渋い! マッシュが仲間を弔ったときとはまた違って、しっとりとした熱さを感じる。
洋酒を捧げるとか、無口な大人な立場のシャドウらしくて粋な演出だなあ。
仲間思いの無差別マーダーってのもおかしな話だけど、それがまた魅力的なキャラに仕上がってる。
もうこのロワは、FFキャラを始めとして原作キャラ同士の絆の深さが凄まじいw
流石に世界を救った仲間達だけある。この話でその重さを十分に思い知らされた、GJ!!!
451創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 00:20:20 ID:RVfHvXVl
投下乙
何とも哀愁漂う話だな……。
シャドウが渋くて良いわ。
452創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:17:40 ID:glM1N04b
誤字を発見したので報告
◆6XQgLQ9rNg氏の『機械仕掛けの城での舞踏』で

>とってつけたような価額という単語に、しかしやはり、トカは確実に反応し、ぴたりと立ち止まった。

ここ、価額ではなく科学だと思われます
自分の作品の誤字は勝手に修正してるけど、さすがに他人の作品を勝手に修正するのは気が引けるので報告
リアル事情で修正が困難ならこちらの方でしておきますのでご一報ください
453 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/18(日) 09:10:19 ID:gzib5aeJ
>>452
指摘感謝!
修正しておきます。
454 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/18(日) 09:16:44 ID:gzib5aeJ
連投すみません。
@wikiの規制に巻き込まれたようで編集できないorz
お手数ですが代理で修正をお願いいたします。
455創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 12:33:49 ID:glM1N04b
>>454
修正しておきました
456 ◆6XQgLQ9rNg :2010/04/18(日) 22:01:40 ID:gzib5aeJ
>>455
ありがとうございましたー
457創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 00:40:17 ID:Xmt5MiQk
しかし前から思ってたがオディオはどういう基準でこの参加者の人選したのかな?
英雄や勇者、それらの関係者だと言うのは分かるが面白そうな奴は他にもいたのになw
458創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 00:48:28 ID:gLNsvnhq
むしろなぜトカを呼んだのか問い詰めたいw
マリアベルみたいな英雄関係者はともかく、あいつに絶望を味わわせてなんの意味があるんだw
459創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 01:04:01 ID:YVcJXTy9
オディオ「英雄とその関係者を選出したら変なトカゲが一匹紛れ込んでいた。面倒だからそのまま参加者にした。反省はしていない」
460創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 18:09:15 ID:etVu6TPW
ああいう、いかにも本当の絶望を知らなそうな奴を
絶望の淵に叩きこむのがいいんじゃまいか
461創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 19:33:17 ID:+iPAfckf
しかしトカがシリアスやったり絶望したり死ぬシーンが全く想像できないな…
462創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 19:41:24 ID:4XQRB+uI
幻水関係者は人数が多いから悩むな…
いや、この参戦メンバーが厭な訳ではない
むしろいいと思うけど敢えて加えるなら誰がいい?
463創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 21:18:52 ID:dgXGJOSQ
>>462
今のメンバーはバランス良いからなあ
足りない属性を補うとしたらシュウぐらいしか思いつかない
464創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 21:49:54 ID:JcPtHr/T
>>462
シュウかレオンあたりを出したかったな。
あとピリカ。
貴重な一般人だし、ジョウイに与える影響大きそう。
465創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 16:50:21 ID:F3QgCyqu
>>462
電撃妖怪オババ
あと数票で当選だったのになあ…
466創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 19:41:23 ID:FCm9k0vG
シエラ様は当時把握してたら票入れたんだがなあ…
467創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 22:01:28 ID:KG9AgwA8
シエラ様入れるなら相方も入れたいがあれは外伝になっちゃうし
468 ◆Rd1trDrhhU :2010/04/20(火) 23:28:57 ID:cPsBExJL
不安な点がいくつかあったので仮投下しました。
ゴゴとセッツァーの設定について、やりすぎじゃないかどうか。
アシュレーの考察は無理がないか。
以上二点について、あと他にも何かあればご意見をお願いいたします。
469創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 00:47:43 ID:U7Crxg6A
投下乙です。感想は本投下の際に
特に問題はないように感じました
470創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 01:39:32 ID:ebnVGS2L
仮投下お疲れ様です
ゴゴセツ本編後日譚は特に問題ないかと
何か技が増えたとかでもないですしw

ただ誤字脱字を一つ

523

そのな事を伝えるために、遠路はるばるこのダンジョンを攻略してきたのか……。

そんな、では?
471 ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:10:17 ID:T7YZV5ZE
大丈夫そうなので、投下します。
ご意見、誤字のご指摘ありがとうございました。
472トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:12:08 ID:T7YZV5ZE
 あるモンスターの胃袋の先。
 暗い暗い洞窟の最奥。
 俺は立ちすくんでいた。マントルのように胸中を巡る衝動を押し殺しながら。
 ただひたすらに、眼前に広がる暗闇を真似し続けた。

「……」
 真っ黒な孤独の中で、俺は外界の明るさに思いをはせる。
 仲間たちとともに救った世界は、色に満ちあふれていた。
 ケフカによって半壊させられた後ですらも、その力強い彩りは失われることはなかった。
 あの旅路の中で、俺は何回の物真似をしただろうか。
 すべてが出来事が懐かしく、すべての人間が恋しかった。
 可能ならばもう一度、あの世界へ旅立ちたい。そして、色鮮やかな人間と言う生き物を、もっと。
 そんな思いを押し殺しながら、俺はひとり寂しく闇を模倣する。

「……何の用だ?」
 漆黒の暗闇より這い出てきた銀色に話しかける。
 ロックやエドガーならともかく、まさかこの男が俺を訪ねてくるとは思いもしなかった。
 驚きのあまり、そっけない態度を取ってしまった己をこっそりと戒める。

 洞窟内のモンスターを一人でなぎ倒してきたのだろう、男は酷い格好をしていた。
 高そうな服は汚れに汚れ、敵を貫き続けた槍もボロボロである。
 とはいえ、奴自身はかすり傷一つ負ってはいない。さすがは世界を救いし仲間の一人だ。

「俺の物真似をしないか?」
 まるで友人を海にでも誘うかのような軽い口調。
 そんな事を伝えるために、遠路はるばるこのダンジョンを攻略してきたのか……。
 俺は、この男の真意をはかりかねていた。

「お前は、今なにをしているんだ?」
 相手の意図を探るつもりの一言。
 だが、それを言い放った後で俺は気づいた。
 エドガーたちが初めてここを訪れたときにも、俺はこんな台詞を吐いたはずだ。
 ボロボロの格好で、しかも傷だらけになってここまでたどり着いた四人。
 彼らに、俺は今したものと全く同じ質問をした。
 その時の、あの得体の知れないモノを観察するような彼らの視線を俺は忘れない。

「俺は今、世界を飛び回っている」
 そう返答した奴の笑顔を見て、俺は悟った。
 あぁ、俺はこのギャンブラーの術中に嵌ってしまっていたのだ。
 少しばかりの悔しさと急速に膨らむ高揚感を押し殺して、俺は続けた。かつてのように。

「そうか。世界を飛び回っているのか。
 では、俺も世界を飛び回るというものまねをしてみるとしよう」
 それを聞いて男は大声で笑う。「ちょうどクルーを募集していたんだ」と。
 負けを認めた俺も一緒になって笑う。彼のモノマネをするふりをして。

 俺は、ファルコン号の副船長となった。
 それは、俺がこの殺し合いに参加する半年も前の出来事。


◆     ◆     ◆

 
 頭上に広がるのは、先刻の戦いの傷跡。
 アシュレー・ウィンチェスターが、鋼鉄の天井にこさえた大穴である。
 そこから通じる大空を物憂げに見上げるのは、一人のものまね師。
 物真似狂の彼にしては珍しいことだが、誰の真似をするでもなく『彼のままで』ぼぅっと天を眺めていた。
 スクリーンに映し出された映像を鑑賞するかのように。
473トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:14:29 ID:T7YZV5ZE

「なんだよ、ここにいたのか」
 彼の背中を見つけた赤毛の侍が語りかけた。
 その乱暴な語り口は、傷だらけの城が生み出す退廃的な雰囲気すらも台無しにしてしまう。
 暗殺者との戦いで主戦場となったこの部屋には未だに微かな熱気が残っていて、それを頬に感じたトッシュの目が一瞬だけギラついた。

「…………」
 ゴゴはなにも答えなければ、振り向きもしない。
 トッシュはそんな彼のすぐ後ろに立ち、同じように馬鹿でかい穴を覗き込んで、その先にあるのが何の変哲もない水色の空である事を確認した。
 こうしているとまるで自分たちが大きな壷の中に住んでいて、その入り口から外の世界を覗き見ているかのような感覚にとらわれる。
 頭を掻きながら無遠慮に大きく欠伸をすると、ゴゴの返事を待つことなく言葉を続けた。

「ナイトブレイザー……だったか。大したモンだよなァ」
「…………」
 沈黙を守るゴゴへと一歩的に語りかけながら、降り注ぐ太陽光に目を細めるトッシュ。
 巨大な円形を目の当たりにし、バニシングバスターとやらの出力の凄まじさを改めて実感する。


 シャドウとの戦いの後、砂漠のフィガロ城に残されたのはトッシュとゴゴ、アシュレー、そしてトカ。

 マトモな会話が期待できない爬虫類を除いた三名が行ったのは、情報交換……とは名ばかりの尋問。
 アシュレーの体に流れる禍々しい気、そしてその邪の力が彼の身に起こした変化について、トッシュが全力の殺気を持ってして追求したのだ。
 アシュレーの辿々しい説明を黙って聞き終えた侍。意外にも、彼はすんなりとその絵空事のような話を信用してしまった。
 彼曰く「なんだか知らねえが、とにかくよし」。
 思考放棄も甚だしいトッシュの反応に、アシュレーは思わず拍子抜けしてしまったようだ。



「だがなァ、ありゃあヤバいぜ。てめぇの身を滅ぼす力だ」

「…………」

 トッシュの声のトーンが一段階低くなる。

 彼は、変身したアシュレーが現前に現れた瞬間のことを思い返していた。

 青年の中で蠢く、赤黒く禍々しい気。暗黒の支配者にも匹敵するほどの邪悪な力だった。
 そして、その闇を必死にを押さえ込む蒼く透き通った気。
おそらくあれが、『果てしなき蒼』に眠る力だ。
 この二色が織り成した奇跡が、あの凄まじい強さを誇る蒼炎のナイトブレイザー。
 だがしかし、アシュレーが見せたあの変身は、蒼い力が邪悪な真紅をなんとか押さえ込んでいたからこそ可能な芸当である。
 そして、その蒼い力は常に紅い力を押さえ込んでいるが故に、徐々に磨り減ってきている。
 アクセスによってロードブレイザーの力を解放すれば、当然その磨耗は加速してしまう。それは気を読むことが出来るトッシュ自身がその目で確認した事実だ。
 そう遠くないうちに、紅き魔神は蒼き牢をブチ破るだろう。
 炎の災厄が解き放たれればどうなるか。それはトッシュにも分からないことだが、アシュレーが無事ですまないことだけは予想に難くなかった。

「俺の見立てではあと一度……いや、その一回でも長引けば危ないかもしれねぇな」
「…………」
 恐ろしき未来をなんとも呑気な口調で宣告する。
 それは、自分にはどうしようもないという諦めによるもの。
 アクセスの多用が出来ない事実は、アシュレー自身が一番よく分かっているだろうから。
 次に戦闘になったときは彼の負担を少しでも減らしてやろうと、トッシュはそれだけを心に誓い、この話題を打ち切ることにした。

「…………」
「…………」
 それからしばらく、二人は雲を見上げていた。
 あれはスライムみたいだな、あれはなかなか旨そうだと、真ん丸い空を流れてゆく白い塊を観察していた。
 何をするわけでもなく、ただ穏やかな時間をかみ締めるように。
474トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:16:31 ID:T7YZV5ZE

「…………なぁ、ゴゴ」
「………………なんだ」
 沈黙に絶えかねたのか、トッシュが口火を切る。
 彼らしくもないことだが、どうやら言葉を紡ぐのに苦心しているみたいであった。
 相変わらず両者の視線のその焦点は、遥か上空で結ばれている。

「セッツァーは……やっぱり殺し合いに乗ってたのか?」
 ゴゴの静かさにつられたかのように、そして空に漂う雲を真似るように、トッシュの口調は穏やかだ。

 トッシュによる尋問の後、ついに本当の情報交換が行われた。
 そこで挙がったのは、トッシュとアシュレーが出会った、ある人物の名前。
 アシュレーの物真似をしたゴゴは、安堵交じりの声でそのセッツァーという名前を復唱した。
 だが、その男が彼らに伝えた人物情報を聞いた瞬間、ゴゴの様子は豹変する。
 本当にアイツはそう言ったのか? と何度も二人に確認し、それが紛れもないセッツァーの言葉であると知ると、次第に彼の口数は少なくなっていった。

「仲間内でリーダーだったエドガーは『悪の暴君』。同じく仲間のティナは殺人鬼。
 んで、一番危ねぇはずのケフカが『頼りになる正義の味方』ねぇ……」
 トッシュが眉間の皺を増やしながらセッツァーの偽報を思い返す。
 ゴゴの話では、エドガーは個性の強い仲間たちの纏めるリーダー格、言わばアークのような役割であったらしい。
 そしてティナは自らを犠牲にしてでも誰かを助けようとする心優しい少女だ。トッシュは無法松を命がけで救ったその少女に、リーザのような印象を抱いた。
 最後にケフカ。人を殺すことを屁とも思わない、吐き気を覚えるほどの悪鬼。
 世界を崩壊に導いた残虐性はアンデルに近いものがあるが、その狂人っぷりは他の誰かを以ってして例えることは不可能だろう。
 どいつもこいつもセッツァーの情報とはまるで違う人物だ。
 シャドウとマッシュも結果的に彼らの人となりだけは正しく伝えているものの、かつての仲間のことを謳った内容とはとても思えない。
 つまり、意図的に誤解を招くための罠。
 あのギャンブラーの情報は、そうとしか考えられなかった。

「…………これで『間違いでした』はまかり通らねぇよなァ……」
 直後、円形の空に大きいリンゴのような形をした雲が登場し、トッシュは小さく驚きの声を洩らした。
 できれば回復果物であればいいなぁ……とくだらないことを脳味噌のド真ん中で考えていた。

「…………世界を救った後だ……」
 突如発せられたのは、トッシュの物真似をしたゴゴの声。
 侍はリンゴ雲の形のよさに感心しながら「おぅ」と空返事を返す。

「俺はセッツァーの船に乗り込んで、ヤツとふたりで世界を飛び回っていた」
 何をするってわけじゃない。
 各地を飛び回り、困ってる人は救って、困ってない人は飛行船に招き賭け事に興じた。
 ただの放浪の旅。
 でもゴゴはそれでよかった。

「半年の短けぇ間だったが、俺は幸せだった……」
 トッシュの仲間にグルガという男がいる。
 彼は、世界で一番歌が下手糞だった。
 シャンテという一流の歌手の講習を受けても、それは一向に改善せず、エルクは彼の歌を「オーガロードのいびき」などと評していた。
 ならば、今のゴゴの声は「ゴーストの囁き」だ。
 弱々しいソレは、トッシュに語りかけるのではなく自分で思い出に浸るための言葉。

「いろんな場所へ行き、いろんな人間の物真似が出来んだぜ。こんな幸せなことはねぇ……」
「……そうかい」
 トッシュはそんなゴゴを羨ましく感じていた。
 世界を飛び回っていた事ではなく、見事に世界を救った事をだ。
 青空のリンゴはもう天井に出来た穴からは見えない場所に流れてしまっていて、トッシュは少しだけそれを残念だと感じながら唾液を嚥下した。

「セッツァーは……仲間を貶めてまで願いを叶えようとする男じゃねぇ」
 そう言ったゴゴの声が寂しそうなのは、けっして消えたリンゴ雲を惜しんだせいではないだろう。
 悲しさを次第に増しながら、言葉は続く。
475トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:18:38 ID:T7YZV5ZE

「だから俺には、なぜアイツがそんな嘘を言ったのか……」
「知るか」
 ピシャリと。
 叫ぶでもないトッシュの穏やかな一言は、見事な太刀筋でゴゴの予想を一刀両断した。
 この男には刀の神でも宿っているのかと、物真似師は彼の言葉の切れ味に驚く。
 正確には、彼に宿っているのは刀の精霊なのだが、大した違いはないだろう。

「……はぁ?」
「考えたって分かるわけねぇだろ、ンなもん。
 …………俺もお前も、そこんところはからっきしなんだからよ」
 そう言ってトッシュは鼻息交じりで小さく笑った。
 ゴゴはそんな彼の顔を訝しげに見やる。

「だったら会いに行くしかねぇだろ。探して、会って、直接問いただしてやろうぜ。
 んでよ、セッツァーの答えが気に食わなきゃ、ブン殴ってやりゃあいいんだよ」
 侍のまさかの返答にあっけに取られるゴゴ。
 だが、その通り。彼の言うとおりだ。
 考えたって答えは出るはずもない。
 セッツァーは超一流のギャンブラーなのだ。その心のうちなど自分に計り知れるわけもないのだから。

「…………お、お前に言われなくても分かってんだよ、ンなこたぁよッ!」
 侍の物真似をしながら強がって見せる。
 トッシュとは、こういう男であった。
 現在進行形で物真似をしているにも関わらず、ゴゴはそのことを忘れてしまっていた。

「じゃあ……行こうぜ……」
 ゴゴに背を向け、ツカツカと歩き出すトッシュ。
 その姿を見て、ゴゴは思い出した。
 ついさっき、この城でこの男とこんなやりとりがあった。

「けじめを付けに、よ」
 あのときと同じように力強い声で、トッシュの声が響く。
 それを受けてゴゴは、あのときと同じように、ゆっくりと頷いた。


◆     ◆     ◆


「……どういうことだ?」
 胡坐をかきながら、アシュレーが一人ごちた。
 柔らかなカーペットに腰を下ろすと、途端に疲労が手足を襲う。
 仕方ない。イレギュラーなアクセスを無理に行ったのだから。

「どうして我輩はこんなにもカッコいいのか…………ですと?」
「違うんだ」
 表情一つ変えないで否定するアシュレー。
 あまりにあっさりとした態度に、トカが地団駄を踏んで怒りを露わにする。

「あんだとッ! この我輩のフレッシュマンゴーの如し魅力を差し置いてまで科学することなど……あるはずがないトカッ!」
「実はこの地図なんだが……」
 さすがアシュレー。狂トカゲの扱いには慣れたものである。
 冷静に至急品の地図を広げると、地図のある箇所を指し示す。

「……ツレねぇな、唯一無二の我が相棒よ」
「うん、俺はお前の相棒じゃない。
 実は、この部分から先には地下水路が続いていて、さらにその奥には古びた城が建っていたんだ」
 ツツツ……と川を表す青色のラインの上をアシュレーの指が滑る。
 神殿を出発した人差し指が、森を抜け、傾斜を逆流して、山頂付近のある部分で止まる。
 そこで川は途切れていた。ここが、山の内部に広がる地下水路への入り口となる。
476トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:20:19 ID:T7YZV5ZE

「そんなことより……問題なのは、何で地下の施設が一切地図に書かれていないのかだ」
「だからそれは、サイエンス・素敵・パラダイスを独り占めするため…………」
「オディオが殺し合いを促進させたいなら、こんなことはする必要がないはず。
 ここに引きこもってしまえば、他の参加者に見つかる可能性はグッと低くなるよな……それはオディオも望まないはず…………」
 もはや、トカとの意思疎通は放棄した。
 ただ地図と睨めっこしながら、ひとりで持論を展開していく。

 実は、アシュレーがたった今口にした疑念と全く同じものを、セッツァー・ギャッビアーニも浮かべ、考察していた。
 彼がトッシュと別れてからアシュレーと出会う間の話である。
 その時に彼が出した結論は、『気まぐれ』。
 オディオは深く考えずに、適当にそのような施設と地図を作った。それがセッツァーの行き着いた答えであった。

「しかし、本当にサイエンス・素敵・パラダイスが広がっているとは、胸がうれしはずかし超新星爆発」
「……あぁ、スマンありゃウソだった。あそこは普通の廃墟ダンジョンらしいぞ」
 高鳴るトカの胸に、極寒の冷水を浴びせる。
 これでおとなしくなってくれれば、という期待をこめた残酷な鉄槌である。

 ゴゴから聞いた話では、このフィガロ城は元々彼のいた世界のものだ。
 参加者のひとりであるエドガー・ロニ・フィガロの持ち物であったらしい。
 そしてあの古代の城も同じくゴゴの世界にあった建物で、フィガロ城の地下から通じる洞窟の最奥に存在していた。

「なんですとッ! それを知ってて我輩を弄んだトカ?!
 この悪魔! 誰か〜、この人チカンよ、彼の双腕はワイセツアームズよ〜ッ!」
「…………はぁ……」
 ついつい話しかけてしまったことを海よりも深く反省した。
 もう限界が近い。このトカゲがいては、進むはずの思考も全然進まない。
 業を煮やしたアシュレーは、一人で考えにふけるために、地図を脇に抱えて部屋を出て行こうとする。

「はら〜〜〜〜ッ! ちょっと待つトカッ! 一人にしないでッ!
 いつかデリシャスな高級カブトムシをフルコースでご馳走するからよぉ〜〜〜ッ!」
 去り逝く青年の右足にすがりつく悲劇の緑色。
 邪魔だ邪魔だと、それを遠慮なしに蹴りまくるアシュレー。
 おぉ、血も涙もない。外道ここに極まる。

「放すんだッ! もうアンタの時代は終わったんだッ!」
「そんなッ! 我輩とは遊ぶだったのねッ! 酷いッ! お腹の子リザードちゃんはどうなるのッ!
 どこまででも、和式便器の中まででも、我輩は憑いて行きますぞ〜〜〜ッ!」
「あぁクソ! いい加減に…………」
 あまりにしつこいスペース爬虫類に、堪忍袋の緒が切れ掛かる。
 拳を振りかぶって、無理やりにでも振り払おうとした。どうせ死にはしないだろう。
 だが結局、その拳がトカに振り下ろされることはなかった。

「…………ちょっと、待てよ…………『ついてくる』……だって?」
 アシュレーの呼吸と動きが同時に止まる。
 数秒後、雷に撃たれたかのように、その両目が見開かれた。

「……まさかッ!」
 大声と共に振り返る。
 勢い余って、すがり付いていたトカゲを蹴っ飛ばしてしまう。

「はら〜〜〜〜ッ!」
 吹き飛んだ宇宙人には目もくれず、早足で部屋の中央に進むと地図を広げた。
 座り込んで地図を眺めると、思い浮かんだ可能性を整理する。
477トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:22:27 ID:T7YZV5ZE

(オディオが欲しかったのは、『移動する城』だけなんじゃないか?
 あの『古代の城』は、このフィガロ城に偶然ついてきただけ…………)
 つまり、こういうことだ。
 この殺し合いの主催者が、会場に必要としたのは……地中を走る城。
 それだけがあれば、よかったのである。
 しかしオディオは、この城と『その通り道』をまとめてこの島に持ってきた。
 その周りの一帯の大地と一緒に。
 その結果、『古代の城』と『地下の洞窟』が土地に紛れて一緒について来てしまった。

(だとしたら……オディオはあの城の存在を知らなかったんじゃないのか?)
 そう考えれば、地図に地下施設が書かれていないことの辻褄は合う。
 しかし、これはあくまで可能性。その仮定が正解かどうかは分からない。
 しかも、たとえその通りだったとしても……オディオが参加者の動向をモニタリングしていれば、既に地下施設の存在には気づいているだろう。
 だが、ここから導き出される可能性はそれだけじゃない。

(もし、他の世界から集められた施設が、フィガロ城以外にもあるならば……同じように……)
 もしかしたら、他の施設もフィガロ城と同じように参加者のいた世界から持ってきたものである可能性がある。
 それならば、古代の城と同じようにそれらの施設に『ついてきた』モノがあるかもしれない。
 この島がいろんな世界のツギハギで構成されているのならば……オディオの知らないものがこの会場に紛れ込んでいるかも…………。
 
 ……………………。

 …………。

「なにぃッ! ついに無限に広がる星の海に飛び立つ方法を考えたとは恐怖至極ぅッ!
 しかし我輩には分かっているぞッ! そう、みんなスキスキ科学の子ッ!
 さぁ声高に叫ぶのだッ! ブ〜ル〜コ〜……」
「……呼んでも来ないぞ」
 いつの間にか復活したトカがアシュレーを現実に連れ戻す。
 無意識にツッコミをいれることに成功した自分を、少しだけ嬉しく思ってしまった。

(流石に、考えすぎか……)
 飛躍しすぎた思考を制して、大きなため息をつく。
 全ては憶測なのだ。
 地下施設のことをオディオが知らない?
 フィガロ城の以外に、他の世界から持ってこられた施設がある?
 そこにオディオの意図しない何かが紛れている?。
 全ては証拠すらない、推測の産物だ。
 それらはどうせ可能性の低い話だと、考察を中断して頭を休めることにした。

「ならばーーーやはり我輩にはプリティー科学アイドル、魔導アーマーちゃんしかない!
 さぁ悩める化学の子供達に愛の手をーーーーッ!」
「やめるんだーーーッ!」
 いざ、走り出さんとするトカ。
 そんな彼を必死に食い止めるアシュレー。
 二人が押し合いへし合いを繰り返す。

「その手を放してッ! 我輩なら魔導アーマーちゃんとひとつになるトカッ!」
「馬鹿なことはやめろッ! 偉大なる科学の子であるアンタには輝かしい未来が…………ってあれ?」
 アシュレーは独特な世界観に完全に馴染んでいた。
 リザード星人一味としてやっていけるほどに。
 だから気がつかなかった。
 …………自分たちに注がれていた、冷たい視線に。

「「な、仲いいんだな…………お前ら……」」
 トッシュとゴゴのユニゾンを聞きながら立ち尽くす。
 彼らの声には、完全なる同情の念が込められていた。
478トカ、『楽園』を望む ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:23:31 ID:T7YZV5ZE

「あ、ありがとう…………」
 言い訳など出来るはずもなく、半笑いで答えを返すしかない。
 隣を流し目で除くと、そこには満足そうに胸を張るトカゲ野郎がいた。
 なんだか、すごく死にたくなった。


【G−3 フィガロ城 一日目 午後】

【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:トッシュの物真似中
[装備]:花の首飾り、ティナの魔石、壊れた誓いの剣@サモンナイト3
[道具]:基本支給品一式 、点名牙双@幻想水滸伝U
    ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式)
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:今後の方針を相談する
2:セッツァーに会い、問い詰める
3:ビッキーたちは何故帰ってこないんだ?
4:トカの物まねをし足りない
5:人や物を探索したい。
[備考]
※参戦時期は本編クリア後
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。


【トッシュ@アークザラッドU】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ほそみの剣@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:不明支給品0〜1個(確認済)、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止め、オディオを倒す。
1:今後の方針を相談
2: セッツァーを探す
3:必ずしも一緒に行動する必要はないがちょことは一度会いたい。
4:ルカを倒す。
5:第三回放送の頃に、A-07座礁船まで戻る?
6:基本的に女子供とは戦わない。
[備考]:
※参戦時期はパレンシアタワー最上階でのモンジとの一騎打ちの最中。
※紋次斬りは未完成です。
※ナナミとシュウが知り合いだと思ってます。
※セッツァーの嘘に気がつきました。
479創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 20:24:44 ID:T7YZV5ZE


【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)、右肩から左腰にかけての刀傷
[装備]:果てしなき蒼@サモンナイト3、ディフェンダー@アーク・ザ・ラッドU
[道具]:天罰の杖@DQ4、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、基本支給品一式×2、
    焼け焦げたリルカの首輪、レインボーパラソル@WA2
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:今後の方針を相談する
2:ブラッドなど、仲間や他参加者の捜索
3:アリーナを殺した者を倒す
4:セッツァー、ケフカ、シャドウには警戒
5:アクセスは多用できない
※参戦時期は本編終了後です。
※島に怪獣がいると思っています。
※セッツァーの嘘に気がつきました。
※蒼炎のナイトブレイザーに変身可能になりました。
 白を基調に蒼で彩られたナイトブレイザーです。
 アシュレーは適格者でない為、ウィスタリアス型のウィスタリアスセイバーが使用できること以外、能力に変化はありません。
 ただし魔剣にロードブレイザーを分割封印したことと、魔剣内のアティの意思により、現段階ではアシュレーの負担は減り、ロードブレイザーからの一方的な強制干渉も不可能になりました。
 アティの意思は、徐々に磨り減っています。アクセスを行うとその消耗は加速します。


【トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:エアガン@クロノトリガー 、魔導アーマー(大破。一応少しずつ回復中?)@ファイナルファンタジーY
[道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(4つ空)
    天命牙双(右)@幻想水滸伝U、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーY、
    閃光の戦槍@サモンナイト3、基本支給品一式×2
[思考]
基本:リザード星へ帰る。
1:野蛮な赤毛男(トッシュ)を含む参加者と協力し、故郷へ帰る手段を探す。
2:もしも参加者の力では故郷に帰れないなら皆殺しにし、魔王の手で故郷に帰してもらう。
[備考]:
※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。
※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。
※魔導アーマーのバイオブラスター、コンフューザー、デジュネーター、魔導ミサイルは使用するのに高い魔力が必要です。
480 ◆Rd1trDrhhU :2010/04/21(水) 20:26:10 ID:T7YZV5ZE
以上、投下終了です。
481創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 21:07:03 ID:R0G2hdGg
投下乙です

ゴゴにとっては辛いな…
そしてトッシュとはいいコンビになりつつあるな
アシュレーとトカはwww
482創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 21:38:22 ID:kBUQ4ENt
こんな愉快な考察話見たことねえw さすがトカの真の相方。
嘘を知られたセッツァーの命運はいつまで続くのか……

あと誤字報告
>>475
至急品→支給品
483創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 03:35:13 ID:ape2CXcW
投下乙!
セッツァーの参戦時期的に冒頭の思い出を抱くゴゴが切ない
そして全開アシュトカw
「放すんだッ! もうアンタの時代は終わったんだッ!」
らへんのノリノリ(?)なアシュレーに吹いたw
考察も面白いなー
484創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 06:42:18 ID:9y+bo8vj
投下乙です
>>426の冒頭が数行少ないのは推敲によるものですか?
485創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 06:43:14 ID:9y+bo8vj
リンクミス失礼
×>>426
>>476
486 ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:09:51 ID:k26kdGcw
投下乙です。
やはりトカはアシュレーといてこそですねw
四人集まってる対主催を次にどうやって動かすかが鍵ですね。

では続けて自分も投下いきたいと思います。
短いので支援はいらないかと思います
487原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:13:07 ID:k26kdGcw
思えば、あの日から遠いところへ来てしまった。
そう思うのは、もう何度目になるだろう。

木や草が繁茂した森の中。
進んでも進んでも、景色にほとんど変わりない。
北上するジョウイとストレイボウは、コンパスだけを頼りに進んでいた。

ジョウイは、歩きながら試行錯誤していた。
即ち、如何にしてこの戦いを勝ち抜くかを。
また、如何にしてルカ・ブライトのような強者を倒すかを。

前回、ルカ・ブライトを倒した方法はリオウ率いる都市同盟の軍に夜襲をさせて、大量の矢を浴びかけさせて傷を負わせた。
さらに、都市同盟の選りすぐりの精鋭で波状攻撃をしかけ、遠くからまた矢を浴びせる。
それを幾度か繰り返してようやくルカ・ブライトは倒せたのだ。

壮絶だった。
体に矢が何本刺さっても体も心も屈せず、最期まで戦い続けたルカ・ブライトの姿は。
超人的な戦闘能力で都市同盟の精鋭を何度も退け、死の間際でさえも悪を貫いたことを誇ったその生き方は。
天が味方すれば、世界を平定できたかもしれないとジョウイは思う。
実際、シードやクルガンには嫌われていたものの、ルカの持つ戦闘能力と指揮能力の高さは本物で、ハイランドでは人気があった。
虐殺を働くのはあくまでも他国の人間に対してであって、狂皇子と呼ばれたルカも、国内では英雄に等しい扱いだったのだ。

そんな圧倒的なまでの力を持つルカを、今度はどうやって倒すか。
それこそがジョウイの目下の悩みだった。
ルカに勝るとも劣らない魔王に、聞いたところではケフカという存在も居るらしい。
どれも一騎当千の猛者ばかり。
そして、ジョウイにそれら全員を倒せる力はない。
輝く盾の紋章も黒き刃の紋章もこの手の中にあるとはいえ、ジョウイは己の力を過信してはいない。

罠にかけるのは無理だ。
そもそも罠用のアイテムも支給されてないし、ルカがそう簡単に罠の場所まで誘導されるとは思えない。
ルカ・ブライトは猪突猛進の猪武者ではなく、戦争の天才だ。
下手な罠を仕掛けても、雰囲気で察知されるだろう。
レオン・シルバーバーグのような天才軍師でもいれば、少しは話が違ってくるのだが。

毒を飲ませるのも無理だ。
そもそも、ルカがこの状況の中で、ジョウイに気を許したりはしない。
妹の夫だからといって、特別扱いするような人間ではないのだ。
ルカは妹だからといって、サラ・ブライトを殺すのを躊躇したりはしない。
まだ手にかけてないだけで、もしも本格的に己の道の障害になるのなら、ルカは間違いなく妹でさえも殺す。
それに、毒もそもそもない。

ならば、かつてルカを殺したときのように、人海戦術で押すか。
しかし、残り人数も30人を切りそうなところまでになっている。
この残り30人で、ルカを除く全てが正義の心を持つような人間ばかりではない。
どれくらいの人間が、ジョウイに味方してくれるのか分からないのだ。
下手をしたら、もう残り半分くらいしか、ジョウイに味方をしてくれる人はいないのかもしれない。
さらに、ジョウイの仲間と言えるのは、今のところストレイボウ一人なのだ。
十分な数の手駒すらいない。
やはり、当初の予定通り強者同士による同士討ちしか方法がなるのか。
488原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:13:49 ID:k26kdGcw
無い無い尽くしだ。
あまりにも絶望的で、笑いそうにすらなる。
それでも、ジョウイが立っていられるのは、理想の礎になった数々の命を思えばこそだった。
逃げられない、逃げ出して許されるはずがない。。
背負った命の数が多すぎて、放り出すことは許されない。
棘つきの鎖で、全身を縛られたかのような感覚。
理想という名の鎖で縛られた雁字搦めの存在。
それが、今のジョウイだった。



◆     ◆     ◆



思えば、あの日から遠いところへ来てしまった。
そう思うのは、もう何度目になるだろう。

視界が歪む。
まるで、自分自身の体じゃないみたいに思える。
グルグルと、視界が回ってストレイボウを苦しめる。
自分が真っ直ぐ歩けているかも自信がない。

森を抜けるのはまだか。
早く抜けてくれ。
早く、待ち合わせ場所の船に行かせてくれ。
早く誰かに会わせてくれ。
ずっと、ずっと、ストレイボウは頭の中で繰り返す。
それしか知らないかのように、ただずっと。

先を行くジョウイは、ただ黙々と進む。
ストレイボウのことなど、気にかけてないかのように。
でも、ストレイボウはそれでよかった。
話しかけられたとしても、何と返せばいいか分からないから。
面白い話題も、気の利いたジョークも言えないから、こんな自分と話したってジョウイは楽しくも何ともないだろうから。

だから、ずっとストレイボウは考える。
草をかき分ける音と、時折踏む小枝が折れる音を聞きながら。
これまでに死んでいった人たちのことを。
今まさに死にそうになっている人たちのことを。
不安で脅えているかもしれない人たちのことを。
会ってもいない人たちのことまで、心配してしまう。

気が逸って仕方がない。
当面の目標はあるものの、それまではただ移動。
しかし、移動中とは言え、誰にも会えないことが苦しい。
無為を過ごしている気さえしてくる。
北上するまでのわずかな間すら、ストレイボウは惜しかった。

あの日から、ずっと後悔していた。
確かに当初はオルステッドが苦しみ、憎しみの火に焼かれるのを楽しみながら見ていた。
ストレイボウの心は、あの時確かに満たされていたのだ。
ざまあみろ、と。
俺の苦しみを少しでも味わえばいいと、思ってすらいた。
489原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:14:51 ID:k26kdGcw
心が痛かった。
友が絶望に苦しんだ挙句、魔王と成り果ててルクレチアの民を虐殺するのが。
苦しめるのなら俺だけにしてくれと、声にならぬ声で何度も叫んだ。
誰もいなくなったルクレチアを、絶望しながら眺めることしか出来なかった。
その時、初めてストレイボウは知った。
自分のせいで他人が傷つけられる苦しみは、自分のせいで自分が傷つくのよりも遥かに痛いのだと。

魔王オディオはそのことを死っていたんだろう。
だから、ストレイボウは特等席でルクレチアの滅ぶ様を見せられた。
自分が嫉妬に狂ったせいで、他人が死んでいく。
それは、どんな拷問よりもストレイボウの心を痛めつけた。

そして、今ここでも同じことが繰り返されていく。
自分が友を裏切ったせいで、無関係の人が死んでいく。
今すぐにでも、走り出してどこかへ行きたい衝動に駆られた。
罪を償わないといけないと自分を追い詰める。
しかし、未だ目立った成果は挙げられないのだ。
ストレイボウの中で、贖罪の念だけが募っていく。

一度こうと決めたら、後には退けない性格だ。
オルステッドに勝つべく切磋琢磨し、何時でもストレイボウは自分を磨き続けてきた。
今は、オルステッドに勝つという目標が贖罪に変わっただけで、それに向かってひたすら進んでいくのに変わりはない。
言い換えれば、一度やると決めたら、それ以外のことは目に入らなくなりやすいのだ。
気分転換や、休息して辺りを見回すということを、ストレイボウは知らない。

一度こうと決めたら退けないのはジョウイも同じ。
だが、ジョウイとストレイボウは似ているようで、少しだけ境遇が違った。
それは隣にいて、支えてくれる存在。
言わば、ピリカやサラなど、信頼してくれて、傷ついた心を癒やしてくれる存在、理解してくれる人がストレイボウにはいない。
誰かに思いの丈をぶつけて発散させることも、擦り減っていくストレイボウの心を癒やしてくれる人もいない。
だから、ジョウイと違って、ストレイボウは自分の中でどんどん自分を追い込んでいく。

誰かを助けないといけない。
誰かを守って戦わないといけない。
カエルを止めないといけない。
ロザリーたちにまた会わなければならない。
そしていつか、誰かに裁かれないといけない。

それだけを常に考え続ける。
それ以外の行動は無駄だと思うほどに。
食事や休憩や睡眠は怠惰の証。
休憩や睡眠をとることさえ罪なのだと、今のストレイボウは思ってしまっている。
自らの身体を痛めつけることが、贖罪に繋がることなのだと信じているかのように。

早く。

誰か。

会いたい。

償わせて欲しい。

そうしないといけないという、贖罪の意識だけが先行していく。
490原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:15:38 ID:k26kdGcw
もしも、ブライオンで自らの喉を突けば許されると言われたら。
目の前に鍋一杯に煮えたぎった油があって、それを頭から被れば許されると言われたら。
針の山を素足で歩くことが、贖罪になるのだと言われたら。
すまないと思っているのなら、どうして今すぐにでも自殺して誠意を見せないんだと言われたら。
ストレイボウは、躊躇うことなくそれを実行に移すだろう。

ルッカという、ストレイボウとジョウイが埋葬した少女のことを思い出す。
きっと、あの少女は真実を知っていたら、ストレイボウを恨んでいたに違いない。
前途ある未来の道を閉ざされた揚句、殺したのはかつての仲間のカエルと魔王だというのだ。
カエルはストレイボウも知っている通り、元は忠義に溢れた騎士だった。
それが、何らかの事情で変節を遂げてしまい、今やかつての仲間ですら手にかけるようになった。
そうなってしまったのはオディオのせいだろう。
仲間同士であろうと殺し合わせる、残虐非道な催しをオディオが考案したせいで、こうなった。
だが、それは単なる事実の一端でしかない。
元をただせば、嫉妬に狂ったストレイボウのせいでもあるのだ。
結局のところ、カエルとルッカの仲を引き裂いたのはストレイボウになるのだ。

罪の意識が大きくなりすぎて、ストレイボウの身体にも負荷を与えていた。
まるで孫悟空の頭の輪で、ギリギリと締め付けられるような感覚。
ストレイボウの頭を外から痛めつける。
まるで脳の中に、少しずつ大きくなる石が存在しているかのような重みを感じる。
ストレイボウの頭を内側からも痛めつける。
二つの痛みが、頭皮と頭蓋骨を板ばさみにして痛めつける。

変わりたい、変わるはずだと決めていたのに。
今も、こうしてストレイボウは歩き続けるだけ。
贖罪という名の鎖で縛られた雁字搦めの存在。
それが、今のストレイボウだった。

彼らは進む。
決して消えることのない十字架を背負い続けて。
十字架には『義務』と『贖罪』という名前が、彫られている。
491原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:16:24 ID:k26kdGcw
【E-8 一日目 午後】
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康、疲労(中)、贖罪の意識が大きすぎて心身に負担
[装備]:なし
[道具]:ブライオン、勇者バッジ、記憶石@アークザラッドU、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:カエルの説得。
2:戦力を増強しつつ、ジョウイと共に北の座礁船へ。
3:ニノたちが心配。
4:勇者バッジとブライオンが“重い”。
5:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない。
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)
※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます
※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません



【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝U】
[状態]:輝く盾の紋章が宿ったことで傷と疲労は完治
[装備]:キラーピアス@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
[道具]:回転のこぎり@ファイナルファンタジーVI、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:生き延びる。
2:ストレイボウと共に座礁船に行く。
3:利用できそうな仲間を集める。
4:仲間になってもらえずとも、あるいは、利用できそうにない相手からでも、情報は得たい。
5:僕の本当の願いは……。
[備考]:
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているときです。
※ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています
※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。
 それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。
 紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾
492 ◆SERENA/7ps :2010/04/22(木) 17:17:22 ID:k26kdGcw
短いですが投下終了しました。
誤字トカありましたら指摘願います。
493創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 19:13:27 ID:GseKC2gM
投下乙
ストレイボウの苦悩がひしひし伝わってくるよ
オルステッドもしめたもんだね、って思ってしまったw
494創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 19:49:24 ID:1GeIyQaj
投下乙です
苦悩感がひしひしと伝わってくるな…
カエルも戦闘直前でどうなるか判らんし…
495創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 03:32:05 ID:IVBXyiEW
投下乙!
うわああああああ
引くに引けない二人の描写がひしひしと
ジョウイもだけどそれ以上にストレイボウ参ってるなあ
罪悪感ある分ぐさぐさきてやがる
496創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 03:38:06 ID:0QnlXyAz
投下乙!
ジョウイもレイボウも追い込まれてるなあ……。
まだジョウイの方は、冷静に戦局分析が出来てる分だけマシっぽいね。
レイボウの空回りっぷりは凄いw 原作もそれで失敗したようなもんだ……。
でも、今作中にある通り全ては元をたどればレイボウが発端だから仕方ないのかな。
この二人のギクシャクっぷりがたまらんw なんとなく似てるんだけどねぇ……。GJ!!!
497創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 11:06:09 ID:xOKGud7d
さて、急かすつもりないけどこれで放送まで残りは

ジョウイ、レイボウ組
ゴゴ、トッシュ、アシュレー、トカ組
ルカ・ブライト
セッツァーは午後と夕方の二回

かな
498創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 12:16:39 ID:FJoIuFrO
ゴゴ、トッシュ、アシュレー、トカ組はすでに予約が入ってるぜ
それと、wikiの参加者名簿(死者表示)のページを作った人はGJだ
高級カブトムシのフルコースを食べる権利をあげよう
499創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 12:28:46 ID:QLwKDPpj
>>497
松もだな。
全員を日中まで進める必要はないと思うから、もうすぐ放送いけるっぽいね。

そしてついに100話突破か、順調順調。
500創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 20:26:18 ID:IVBXyiEW
無論、予約は大歓迎だがなw
ところで放送書きたい人っているのかな?
501創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 04:46:10 ID:JbERIAyc
そういえば百話まで行ったら投票やるとかいう話もなかったけ?
502創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 20:54:35 ID:dozjHn9s
そうなのか?
第三回放送行ったら投票したいねとかいう話はいつだったか見た気もするが
どっちにしてもそろそろ投票をやる時期だということか
503創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 22:10:10 ID:yhQiooMJ
投票か。面白そうだな。
すごく迷いそうw
504創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 00:44:13 ID:4+W1f5UU
第一回放送まででも面白い話はいっぱいだもんね、ここw
505創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 10:59:49 ID:ND1MVGDr
投票って投下された全話でやるの?それとも放送ごとで?
506創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 11:30:02 ID:4+W1f5UU
普通は放送ごとですね
507創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 17:38:52 ID:5uh7+G1b
次の放送後(前?)に「第一回放送までの投票」をやって、その次の放送で「第二回(ry」って感じでちょうど良いかな。
部門は作品、死者、台詞部門かな。
508創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 04:51:57 ID:JueHS4ly
死者は一回と二回まとめてでいいんじゃね?
参加者全人数合わせてもうちは少ない方だし
509創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 21:00:33 ID:s1xIzPPN
で、何時やる?
510創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 02:25:02 ID:4fWhWnhQ
次の放送話が投下された週の土曜か日曜くらいでいいんじゃないか?
フィガロ城。
トカの襲撃から始まった一連の戦いの舞台になったその城は今また喧騒に包まれていた。
剣と剣が鬩ぎあう音でもなく。
拳と拳がぶつかり合う音でもなく。
魔法と魔法が激突する音でもない。
生活観溢れる日常の音に包まれていた。

トンテンカン、トンテンカン。
リズミカルな音を響かせ、トンカチが振るわれている。
作業主の名はトッシュ。
常日頃握っている剣を金槌に持ち替えて彼が行っている作業は天井の修復だ。
4人でこれからどうするかを相談した結果、彼らはフィガロ城に残ることを決定したのである。
それは主にゴゴの以下の主張が取り入れられたが故だった。
もしかすればどこかにテレポートしてしまったであろうビッキーが戻ってくるかもしれない。
真相を問いただしたいセッツァーの元へと赴くにはフィガロ城の地下潜行機能を使うのが一番時間の短縮になる。
トカはともかくアシュレーやトッシュに少女を見捨てるなどという選択肢は無い。
セッツァーに関しては4人中3人が当事者だ。
トッシュには無法松との約束もあったが、どの道今からでは間に合わない。
できるだけタイムロスを減らして行くにしろ、やはり城の潜行能力に頼るのが最良手だ。
調べたところによるとフィガロ城はA-6村にある壽商会というところの地下階層へと乗りつけることも可能らしい。
アシュレーがセッツァーと出会ったD-7にもわりかし近い位置取りで文句はなかった。
故に誰もゴゴの意見に反対することなく会議は滞りなく終了。
第三回放送までビッキー達を待った後、何事もなければフィガロ城でA-6村へと向かい、
座礁船まで歩いて行き松達と合流してセッツァーや仲間を探すことに決まった。
そこからは支給品の整理や交換の後、各自フィガロ城においてできることをなし始めた。
トッシュの場合は潜行の妨げになりかねない天井の大穴の修理だ。
この男、剣以外はからっきしダメかと思われがちだが、何気に手際がいい。
指名手配されていた為に拠点としていた大型飛行船を自らの手で修理しないといけなかった経験が役に立っているのである。
城の構造を熟知していたゴゴと、こんな時に備えてか蓄えられていた多くの資材があったのも穴を塞ぐ大きな助けとなっていた。

「ふう。とりあえずはこんなもんかあ?」

いささか見栄えは悪いがとりあえず地下に潜るくらいには問題ないまでに修復された天井を見上げ、トッシュは満足げに息を吐く。
そのタイミングを見計らってか横合いから飲み物の入った竹筒が差し出された。

「大したものだな」

隣でまじまじと天井を見つめるのは、もはや見慣れてしまったへんてこりんな姿をした物真似師、ゴゴ。
よせやい、と少し照れくさそうに笑いながらトッシュは水筒へと口をつける。

「酒じゃねえのかよ」
「安心しろ、そういうかと思って酒の方も調達しておいた」

どこか喜色を含んだ声でゴゴが左手に抱えていた幾多もの酒瓶を掲げる。
分かってるじゃねえかとトッシュも合わせて笑みを浮べた。

「んで、まさか酒集めばかりしていたわけじゃねえだろ。そっちの方の調子はどうなんでい?」
「順調「よくぞ聞いてくれたトカ! 皆さんお待ちかね、今、禁断の静寂を破って魔導アーマーが蘇るッ!」
「いや、俺はあんま待ってねえから。っつうかおい、おまけよりも先に報告しねえとならねえ大事なこと頼んでいただろ!?」
「はてなんのことやら。カルシウムが圧倒的に足りない赤毛男はほっといてさあさみなさんご一緒にッ!
 せーの、まーどーうーアーマーッ!!」
「まーどーうーアーマーッ!!」
「って、ゴゴ、なにちゃっかり乗せられてんだ、てめ!」
「俺はゴゴ、物真似師だ」
「選べよ、物真似の対象くれえ! ああ、なんだかアシュレーの野郎の苦労ちが分かってきた気がすっぜ……」
頭を抱えるトッシュをよそに延々とテンションを上げ続けるトカとゴゴ。
果たして世界はこのままトカ空間に飲み込まれてしまうのか!?
否、断じて否!
混沌とした世界に颯爽と現れる救世主、その名もアシュレー・ウィンチェスター!

「出し渋ったままでいても出番なく終ってしまうんじゃないかな。ほら、無視される可能性も大いにあるブルコギドン的に」
「「はううっ!?」」

痛いところを突かれて蹲るトカともう一人。
そんな彼らを華麗にスルーしてアシュレーはトッシュと互いに憂いに満ちた瞳を交わし合った。

『その、なんだ。さっきは誤解して悪かった。大変なんだな、あんたも』
『あっはっは……。慣れてるから。うん、慣れたくなんかなかったけれどさ……』

一瞬で伝わるシンパシー。
がくりと肩を落とした二人とは逆に早くも立ち直ったトカとゴゴが共同作業の成果を前面へと押し出す。
それはトッシュも痛い目に合わされた魔導アーマーに違いなかったが、外見は恐竜じみた姿から翼竜じみた姿へと改装されていた。
そしてその感想は間違ってはいない。
飛ぶのだ、新しい魔導アーマーは!
改良点は主に次の三つ。
まずはトカに適正がないバイオブラスター、デジョネーター、コンフューザー、魔導ミサイルの4つは思い切ってオミット。
排除することで得たスペースに蒸気エンジンを参考に作られた新型エンジンを装着。
おじゃんにされた下半身は分解・再構築され脚部としてでなくバランサーとして作り直し、完成!

「「見よ、これぞ我輩と魔導アーマーの人と機械の垣根を越えた友情が産み出した奇跡の超兵器ッ!
 我輩の設計した飛翔エンジン『やみくも』を搭載した生まれ変わりし魔導アーマーッ!
 名を『スカイアーマー』ッ!」」
「と、飛ぶのかそれが? っつうかエンジン名がとてつもなく不安なのは俺の気のせいか?」
「すごい! さっそく実験を兼ねて本番に臨もうッ!」
「いやアシュレー、どっかへ飛んでいってもらいたいのは山々だが首輪の解体が先だろ!?」

そう、それこそがこの城に残るにあたってトッシュ達が最もやっておくべき作業。
元の世界から持ってこられたままの状態だからか、はたまた地下潜行中に故障が起きた時へのオディオからの配慮のつもりか。
専門的な工具や数多の資材が放置されていたのだ。
これを首輪の解析に活かさない手はない。
幸いというには御幣があるが、トッシュ達の手元には三つの主を失った首輪があった。
一つは言うまでもなくリルカ・エレニアックの形見。
残る二つはリオウとアティに嵌められていたもの。
二人の遺体を埋葬するにあたってトッシュが首輪を外すことを進言したのだ。
そんなくだらねえものを嵌められたままじゃおちおちあの世にもいけねえだろ、と。
これにはアシュレー達も深く頷き、埋葬前に首輪を外すこととなった。
もちろん死者の首を切断してなどという方法ではなく、首輪のほうをばらばらにして、だ。
死体にとはいえ装着されたままの首輪を解体すれば爆発してしまうのではという懸念もあったが、杞憂に終った。
主の死と共に機能が停止していたのかすんなりと外すことに成功したのである。
最も、解体作業を行ったトカが『ん、どこか間違えたトカか?』『はら〜〜〜〜〜ッ!?』などと常にあたふたしていたため、
トッシュ達は心休まる時がなかったのであるが。
それはそれとして今回の解析作業に使われたのはその後者の方、リオウとアティの首輪だった。
焼け焦げた後さえあるものの、殆ど原型を留めている絶好のサンプルであるリルカの首輪を消費するのは時期早々だと判断したからだ。

「そのことなんだがこれを見てくれないか?」

目の前になんだか変てこなものがごちゃごちゃしたものがいっぱい置かれる。
学のないトッシュも流石にそれらが首輪を解体しきったものだということくらいは理解したがそれ以上には分からない。

「覚えのあるものがあれば教えて欲しい」
513創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:12:06 ID:/uHZsSt6
 
514創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:13:08 ID:yi77qtBZ
 
そう言われても無理なものは無理だ。
ただでさえ悪い目つきをより悪くしてまでガン見するが知っている部品なんてこれっぽっちもない。
お手上げだった。

「わりい。力になれそうにねえ」
「これだから浅学な赤髪はダメなんだトカ」
「そういうならお前はさぞ役に立ったんだろなあ!」
「「……」」
「って、おい、ゴゴ、アシュレー、なんだその目は? ま、まさか」
「「残念ながら首輪の解体とその先で一番役に立ったのはそこの何かだ」」
「なっにいいい!?」

トッシュが驚くのも無理はないがトカはこれでもIQ1300の超天才なのだ。
性格にはとんでもなく問題はあるが彼を仲間にしようとしたリオウの判断は間違ってはいなかった。
それが今こうして実を結び首輪を外すことへの大きな一歩を刻みだしたのだから。

「これを見よッ!」

ぱんぱかぱ〜んという効果音が似合う動作でトカが七色に光る石をガラクタ群から拾い上げトッシュへと渡してくる。
見ろと言われてもただの綺麗な石ころだな程度の感想しか持てない彼に対して、後を継ぎアシュレーが説明を始めた。

「これは感応石っていう僕達の世界で使われていた通信用の道具なんだ。
 人の思念を増幅し、固有のパルスに変換する性質を持っていて遠くまで音声や映像を飛ばすことができるんだ」
「ああ、思い起こすはかの魔法のテロリストオデッサの決起の日。
 壇上に立ったヴィンちゃんが世界中に宣戦布告した時のこと。
 呼ばれてなかったからただの捏造ではありますが」
「……つくづく利用されるだけだったんだな」

ぼそりとアシュレーの物真似をしてトカに突っ込みを入れるゴゴ。
その言葉にショックを受けよよよと泣き崩れるトカをスルーしつつトッシュは問いかける。

「通信機? んなもんがどうして首輪ん中に入ってんだ?」
「考えられるのは殺し合いを観賞するためと監視する為だ。
 感応石が自動的に僕達の声や映像をオディオへと送っているんだと思う。一種の生放送だ」

それはオディオにとっても最優先事項だろう。
開幕を告げた時の口ぶりや放送の内容からしてもオディオは殺し合いの結果だけでなく過程をも気にかけている。
またオディオに抗おうとしている人間を監視する意味合いもあるはずだ。
実際首輪を外そうとしている人間もここにいる。

「なるほどな。っておいおい、それじゃあまずいんじゃねえか!?
 思念を増幅するってえことは俺たちの考えがオディオに筒抜けってことじゃねえか!」
「それについては大丈夫だと思う。
 感応石にある心と心を繋げる力。
 それは文字通り心を繋げる――つまりは双方向通信なんだ。
 今僕達はオディオの心を感じられない。ということはオディオの方も僕たちの心の中までは読めていない」
「おお、そいつは朗報だぜ!」
「けどその心を繋げたり意思を増幅したりする機能は監視以外にも利用されているみたいなんだ」

しかも三つも。
そう重く告げてアシュレーはまず右人差し指を立てた。

「一つ目。多分だけど言語の翻訳にも感応石が一躍買っている」
「言語だあ?」
「僕とトッシュ、ゴゴはそれぞれ別世界の人間だ。にも関わらず何の不都合もなくこうして言葉を交わせている。
 ドラゴン次元の住人だったロンバルディアとも会話が可能だった前例はあるけれど、
 彼の場合は僕達の世界でかなりの時間を過ごしていた。
 その間に言葉を覚えていても不思議じゃない。
 でも、僕達は違う。今日始めて会ったばかりなんだ」
「なるほどな。それなのに言葉が通じてるっるうことは……」
516創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:14:03 ID:yi77qtBZ
  
「感応石の意思を伝える力のおかげだと思う」

言葉そのものでなくその言葉を発しているアシュレー達の意思を互いの首輪の感応石が送受信しているからだとすれば説明がつく。
このことに指摘したのは感応石を知っていたアシュレーでもトカでもなくゴゴだった。
物真似師として常に相手の一挙一動すら見逃すことなく観察していた彼は、
相手の口の動きと聞こえてくる言葉の間に不適合があることにかなり早くから気付けていたのだ。

「口の動きか。言われてみれば確かに違和感があるな。よく分かった。続けてくれ」

トッシュの反応に頷き、アシュレーは右中指を立てて話を続ける。

「二つ目。これは推測だけどオディオが死者を把握できているのも感応石のおかげかもしれない」
「人の思念が完全に途切れるのは死んだ時だけっつうことか?」
「そういうことさ。感応石が思念を増幅している時に出すパルスは石と持ち主それぞれで波長が少し違うんだ。
 その反応を機械化何かでモニターしていてそれがキャッチできなくなった時、
 オディオはその石の持ち主に死亡判定を出しているんだと思う」

音声だけなら、映像だけなら。
なんらかの手段で死を偽装できるかもしれない。
だが思念に関しては話は別だ。
おいそれとごまかせるものではないし、それこそ死にでもしない限り途絶えるものでもない。
オディオもそこに目をつけて生死の確認をしているのでは?
死した後に意志のある亡霊達に身体を乗っとられたアティという例もあったが、感応石は死者の念は受け付けない。
もしもそんな力があるのなら、今頃感応石が全国的に普及しているファルガイアは死者たちの声に溢れかえっていることだろう。
しかしながら現実にはそんな話、噂でさえ聞いたことがなかった。
感応石が生者と死者の念を取り間違えることがない証拠である。

「オディオにとっては好都合この上ないってことさ」

そこで一度アシュレーは言葉を切り、右薬指を立てて再び口を開く。

「僕達にとっては最も重要である三つ目に移ろう」
「爆弾のことだな」
「「「……」」」
「何だよ、また押し黙りやがって」
「トッシュ、一つ思い出して欲しい。さっき見せたばらばらにした首輪のことだ」
「言ったと思うが知っているものなんざ一つもねえぜ」
「そう、無いんだ。あるべきはずのものが。僕達誰もが知っていて、かつ、首輪の中に無ければならないものがッ!」
「めんどくせえ言い回しは無しだぜ。分かりやすく言ってくれ」



「爆弾が、無いんだ」



「……は?」

何を言っているんだ、こいつは?
爆弾が、無い?
トッシュを混乱が襲うも思い返してみれば言われた通りだ。
先ほどトッシュが見たパーツの中にはそれらしきものは一つもなかった。
剣にのみ生きてきたトッシュだが相棒であったシュウが爆発物のエキスパートであったこともありそれなりに馴染みはある。
攻撃が届かない敵に向かって腹立ち紛れに究極の爆弾を投げつけたことだってあった位だ。
だからこそそれらしきものを目にしたのなら、種類までは分からなくとも爆発物だと見抜くくらいはできたはずだ。
だというのに解体された首輪の部品の中にはトッシュに覚えのあるものは一つも無かった。
爆弾さえなかった。
518創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:14:23 ID:/uHZsSt6
 
519創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:14:57 ID:yi77qtBZ
   
「どういう、ことだ?」

唖然とした表情でトッシュが呟く。
まさか首輪の中に爆弾があるというのはオディオのはったりだったのか?
それはない。
オディオにそんなはったりをかます理由はなく、現に始まりの場で二人の人間が首輪の爆発で命を落としている。
何かがあるはずだ。
爆弾ではない。けれど爆弾と同様の何かが。
必死で頭を悩ませるトッシュにアシュレーも同意する。

「僕達も一度そこで行き詰った。爆弾から逃れようにもそれ自体が見つからないならどうしようもない。
 必死で色々な可能性を追求した。かって僕が戦った爆弾型モンスターのようなパターンまで疑ったくらいだ。
 けれどそのどれもこれもが納得のできる答えを導き出せなかった」
「そこで頼りになるのがこの頭脳。我輩は言いました。二度あることは三度あるどころか四度ある。
 ここまで全部感応石に関係していたところを見るにもう全部感応石のせいにしてもよくね、科学的に? と」
「謝れ! てめえ科学に謝れ!」

思わずツッコミを入れてしまったトッシュの肩をゴゴが優しく叩く。

「トッシュ、それにアシュレーはこう返した」

「「すごいぞ、意外と間違っていないかもしれないッ!」」

「それでいいのか、科学!?」
「気持ちは分かるが落ち着いて今度はこれを見てくれ」

アシュレーが何かを握っていた左手を開いた瞬間、淡い光が漏れ出す。
その色は、碧。
トッシュの記憶にも新しいある亡霊が振るっていた刃の色。

「まさか、そいつは……」
「碧の賢帝(シャルトス)の破片だ。これがぎっしりと首輪の中に詰められていた」
「んな馬鹿な。あの魔剣はてめえが叩き斬ったんじゃなかったのか?」
「シャルトスを打ち直して創られたウィスタリアスがシャルトスと同時に存在していた以上、
 一本しかないはずの剣が十本二十本ある可能性も否定できないんだ」
「まじかよ。つくづくでたらめだな、あの魔王は」
「それにありえないはずのものならもう一つある」

アシュレーの言葉に合わせゴゴがごちゃごちゃした物体をアピールせんと掲げ上げる。
一見すると動物の骨のように見えなくもないが、その割には機械的な箇所も見受けられた。
これまで同様トッシュにはその変てこなものを言い表す言葉がない。

「なんだこりゃ?」
「さっきからそのセリフばっかりであるな」
「うっせえ!」

トカの物真似で茶々を入れるゴゴに唾を撒き散らすトッシュ。
アシュレーはその様子に僅かに笑みを浮べるも、すぐに消してトッシュに答えを教えることにした。

「僕がかって塵も残さず吹き飛ばしたはずのあるドラゴンの化石なんだ」
「ドラゴン?」
「ドラゴンって言うのは……」
「待て待て待て! 俺の世界にもドラゴンはいる。それよりもどうしてここでドラゴンが出てくるんだ?
 魔剣はともかくドラゴンは今までの流れと関係ねえんじゃねえか?」
「そうでもないんだ。僕達の世界ではドラゴンの化石はロストテクノロジーの産物で武器や機械の材料になるんだ。
 それも使うものを選ばないとはいえ精神感応が必要な強力な物の材料にッ!
 そして話を戻すけどあの魔剣はアティから譲り受けた知識からするに意思の強さでその力を増すらしいんだッ!」
「精神感応……? 意志で力を増す魔剣? そうか、それなら話が繋がる!」
521創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:15:34 ID:/uHZsSt6
 
トッシュの中でパズルのピースが噛みあう様に理解が浸透していく。
感応石、魔剣、そしてドラゴンの化石。
全てに共通するのがそれが人の意思に影響を受けるという特徴。
思念を増幅する石、心次第で力を増す剣、精神感応兵器。
それらを統合するにオディオが作ったこの首輪は首輪型の精神感応性兵器なのだ。
爆弾が仕込まれていたのではなく、首輪それ自体が強力無慈悲の爆発を生じさせるARMだったのだ。
部品に使われている魔剣の凄まじさならトッシュも体感したとおりだ。
天変地異さえも用意に起しかねない圧倒的な魔力のうねり。
あれが肌に密着した状態からぶつけられようものなら魔法が苦手なトッシュでなくとも一溜まりもない。
あまり想像したくない事態を思い浮かべてしまい、トッシュは苦い顔になる。
が、そこで一つの疑問に突き当たった。

「待てよ? 確かにあの剣の力は下手な精霊の力を上回るほどに凄かったが例えば同じ剣の力なら相殺できるんじゃねえか!」

アシュレーからナイトブレイザーに関して聞いた時、補足として語られた魔剣の話を思い出す。
シャルトスとウィスタリアスの他にもう一本キルスレスという魔剣があるらしい。
アシュレーも実際に見たというその剣の力があれば、或いは危険が伴う為軽々しくは使えないがアシュレーがアクセスしさえすれば。
首輪の爆発にも耐え切り、オディオの掌から逃れられるのでは?
鬼の首を取ったかのように嬉々として語るトッシュだったが、当の本人であるアシュレーは首を横に振るばかりだった。

「ただのドラゴンの化石なら僕もその方法を試みたかもしれない。
 けれどトカの分析によると120%の確率でこの化石は超兵器グラウスヴァインの物だったんだッ!」
「ヴィンちゃんに頼まれてグラウスヴァイン召喚魔法陣のデータを検分したことのある我輩ですぞ?
 100%では足りないレベルで間違いないトカあるトカ!
 はて、そういえばあれがヴィンちゃんからあった最後の指令だったような?」
「トカゲ、てめえが仲間外れにされてた過去なんざどうでもいい!
 それでその核兵器ってのはそんなにやべえものなのか?」
「やばいなんてものじゃない。星一つ吹き飛ばしかねない威力の爆弾だッ!」
「けっ、首輪爆弾の材料にするにはこれ以上ない素材っつうことかよ」

オディオは魔力爆発に耐えられそうな一部参加者への対策に首輪の火薬代わりを二重に用意していたのだ。
トカの行ったシミュレートによると爆発のプロセスはこんなところだ。
初めに感応石を通じ参加者のルール違反を知ったオディオが自らの感応石で爆破の思念を送る。
その思念に共感した首輪側の感応石が瞬時に首輪主のありとあらゆる思念を凡百かまわず最大限まで増幅。
発生した膨大なそれでいて統率されていない意思エネルギーにより魔剣とARMが共に暴走起動を起こす。
そして魔剣とARMが自らの発するエネルギーを制御できなくなる臨界点を一気に突破して。

暴発

圧倒的なまでの魔力と核の洗礼を受け、哀れ魔王のルールを破った人間は死に至る。
耐えるなどおこがましい。
逃れることなどできはしない。
科学と魔法、その二つの頂点に位置する暴力に同時に晒されるのだから。
「そんなにすげえものならホールで二人の人間が殺された時に俺達を巻き込むくれえの爆発が起きたんじゃねえのか?」
「首輪にはいくつかブラックボックスがあったんだ。
 その中にバイツァダストのように爆発の余波を次元転移させる機構があるんだと思う」
「どうせなら爆発を丸ごと転移させて欲しいもんだぜ」

忌々しげに毒づいた後トッシュは髪をわしわしとかきむしる。
首輪のほぼ全容が見えたのは大きな前進だったが、その内容は想像以上に凶悪なものだった。
監視・盗聴完備な上に強力無比、オディオは指先一つ動かさずに爆発できる。
その悪夢じみた完璧さにトッシュは舌を打つ。

「私の意思次第で自在に爆発する首輪だたあよく言ったもんだぜ。
 どうすんだ? 俺達の行動は全て監視されてんだろ。
 あいつが思った途端に爆発するんじゃ防ぎようがねえじゃねえか」
「あきらめなければ何とかなるトカーッ!」
「あったりめえよ! 誰が諦めてやるかってんだ!
 いざとなりゃあオディオが思うよりも先に斬るまでよ!」

半ば本気で言ったことだったがそれに応える声が脳裏に響いた。

『そうだ、諦めるのは速い』

男のような女のような声。
老人のようでいて若者らしくも思えるおかしな響きな声。
相反する矛盾を内包したその奇妙な声の持ち主はトッシュの目の前にいた。

「ゴゴ、何か言ったか?」
「気のせいだ」『何もないように振舞え。俺は今お前の心に直接話しかけている』

ゴゴはちらりとトッシュの右手を見る。
釣られて己が右手に視線を落とせば握ったままだった感応石がうっすらと輝いていた。

『オディオの方も僕たちの心の中までは読めていない』

ついさっき聞いたアシュレーの言葉がゴゴの物真似によって再生される。
そこまで言われてトッシュもゴゴの思惑をようやく感じ取りにやりと笑った。
そうだ、感応石の本来の用法、心を繋ぐその力を以て心の声で会話すればオディオといえど盗聴することはできまい。

『『なら、それを利用しない手はねえよなあ!』』

監視自体はされたままな為、首輪解除自体はすぐにはできないが、オディオに聞かれたくない相談をするには十分だった。

『よく思いついたな、こんな方法』
『オディオが感応石を使っているのならこちらも感応石を利用すればいい。簡単なモノマネだ』

どこか誇らしげに言った後ゴゴはアシュレーへと感応石を投げ渡す。
完全に解体した首輪が二つしかない以上、取得することのできた感応石の数もまた二つだ。
意思伝達できるのは自然と一対一の二人に限られてくる。

『確実とは言えないけれど首輪を無効化できる方法がいくつかある』

既にゴゴとトカには伝えたであろうことをアシュレーはトッシュにも伝える。
524創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:16:32 ID:/uHZsSt6
 
525創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:17:03 ID:yi77qtBZ
   
『聞かせてくれ』
『まずはARMSと魔剣にそれぞれ対処する方法だ。
 僕の元の世界の仲間であるマリアベルならARMの構造には詳しいから核の方は無効化することも不可能じゃない。
 魔剣だってアティから譲り受けた知識やキルスレスの入手、持ち主だというイスラって人が助けてくれればトッシュの言ったように相殺できる』

『次に首輪の中核である感応石にアプローチする方法だ。
 僕達の世界には念話を専門にした術者であるテレパスメイジという職業が合ったんだ。
 もしもそれに類似する能力を持つ思念術に長けた誰かを仲間にできれば感応石による監視や首輪の起爆をどうにかできるかもしれない』

『これら二つはここにいる僕達にはできない方法だ。
 特にテレパスメイジの方はいるかどうかも分からない希望的観測に過ぎない』
『松達が集めてくれている面子の中にいりゃあいいんだがな』
『だから本命はこれから言う三つ目だ』

アシュレーはデイパックから地図を取り出し、トッシュ達三人に見えるように広く広げる。
トッシュ達四人が見てきたエリアや施設の情報を事細かに記載した地図。
そのうちの追記されていないまだ見ぬ地や深く調べることの無かった海底や遺跡を順々に指差していく。

『どんなに純度のいい感応石でもこんな小さな物じゃ通信範囲はたかが知れているんだ。
 心を結んだ者同士ならともかく単純な通信機器として使うならこの島一帯すらカバーできない。
 その欠点を補う為にはあるはずなんだ。
 オディオ側の感応石と首輪の感応石の中継点になる巨大な感応石を設置したテレパスタワーのような施設が。
 或いはその代わりになる何かがこの島のどこかに、僕達が知らない場所にある』

ならばすべきことはただ一つ。

『僕たちは何としてでもその施設を見つけ出して破壊するッ!』

皆を守らんとするアシュレーの宣言に

『おうっ!』

トッシュは力強く頷いた。


【G−3 フィガロ城 一日目 夕方】
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:疲労(小)
[装備]:花の首飾り、ティナの魔石、壊れた誓いの剣@サモンナイト3
[道具]:基本支給品一式 、点名牙双@幻想水滸伝U、解体された首輪(感応石)、閃光の戦槍@サモンナイト3
    ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式)
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:放送まで城で待機。ビッキーを待つ。その後フィロ城でA-6村に行き、座礁船へ
2:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
3:セッツァーに会い、問い詰める
4:人や物を探索したい。
[備考]
※参戦時期は本編クリア後
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。
527創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:17:21 ID:/uHZsSt6
 
528創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:17:49 ID:yi77qtBZ
                    
【トッシュ@アークザラッドU】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ほそみの剣@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:不明支給品0〜1個(確認済)、天罰の杖@DQ4、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止め、オディオを斬る。
1:放送まで城で待機。その後フィロ城でA-6村に行き、座礁船へ
2:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
3:セッツァーを探しルカを倒す
4:必ずしも一緒に行動する必要はないがちょことは一度会いたい。
5:基本的に女子供とは戦わない。
[備考]:
※参戦時期はパレンシアタワー最上階でのモンジとの一騎打ちの最中。
※紋次斬りは未完成です。

【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)、右肩から左腰にかけての刀傷
[装備]:果てしなき蒼@サモンナイト3、ディフェンダー@アーク・ザ・ラッドU 、解体された首輪(感応石)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、
    焼け焦げたリルカの首輪、レインボーパラソル@WA2、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーY
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:放送まで城で待機。ビッキーを待つ。その後フィロ城でA-6村に行き、座礁船へ
2:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
3:ブラッドなど、仲間や他参加者の捜索
4:セッツァー、ケフカ、シャドウ、アリーナを殺した者(ケフカ)には警戒
5:アクセスは多用できない
※参戦時期は本編終了後です。
※蒼炎のナイトブレイザーに変身可能になりました。
 白を基調に蒼で彩られたナイトブレイザーです。
 アシュレーは適格者でない為、ウィスタリアス型のウィスタリアスセイバーが使用できること以外、能力に変化はありません。
 ただし魔剣にロードブレイザーを分割封印したことと、魔剣内のアティの意思により、
 現段階ではアシュレーの負担は減り、ロードブレイザーからの一方的な強制干渉も不可能になりました。
 アティの意思は、徐々に磨り減っています。アクセスを行うとその消耗は加速します。

【トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:エアガン@クロノトリガー 、スカイアーマー@ファイナルファンタジーY
[道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(4つ空)
    天命牙双(右)@幻想水滸伝U、基本支給品一式×2
[思考]
基本:リザード星へ帰る。
1:野蛮な赤毛男(トッシュ)を含む参加者と協力し、故郷へ帰る手段を探す。
2:もしも参加者の力では故郷に帰れないなら皆殺しにし、魔王の手で故郷に帰してもらう。
[備考]:
※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。
※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。
※魔導アーマーはスカイアーマーに改修されました。が、トカ製な為妙なアレンジが施されていたり、いきなり調子が悪くなったりするかもしれません。
530創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:19:05 ID:yi77qtBZ
    
531創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 20:19:11 ID:/uHZsSt6
 
541 名前: ◆iDqvc5TpTI[sage] 投稿日:2010/04/30(金) 19:59:33 ID:WPH7HQ/I0 [11/11]
投下終了
どなたか代理投下お願いします
また今回は読んでの通り首輪についての話です
こちらの力量不足のせいで分かりにくいところや、何か気になるところがあるかもしれません
指摘や思うところがあれば是非是非おっしゃってください。では

----------
以上で、代理投下を終了します。
一箇所だけ行数制限に引っかかったので、仮投下スレのものとは区切りを
変えている(台詞を一行、あとのレスに回してます)部分がありますが、ご容赦を。
そしてiD氏、執筆お疲れ様でした。面白い発想と、キャラの旨味がよく伝わる、素敵な考察話でした。
533創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 21:06:08 ID:zTgvdHg5
投下乙!
これは素晴らしい考察話。対主催にとって大きな一歩だな。
首輪対策の可能性を複数考えられた点がすごいぜ。
重要な話なのにあまり小難しく感じられないのはトカとアシュレーのおかげだな。
二人の漫才に驚くほど違和感がないw
534創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 22:46:01 ID:e1FZ6jKB
投下乙
これはいい考察話だ。確かに大きな一歩だ
少なくとも矛盾は無いと思います
そして二人の漫才もいいわw
535創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 11:05:15 ID:qku6mwuS
投下乙
首輪考察話乙です。
筋が通ってて、かつギャグも仕込む
とってもよかった!
536創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 16:52:39 ID:SsfJQL/+
投下乙!
ついに首輪の考察きたか。進んでることが実感できてなんか感慨深い。
感応石と魔剣によって作られた首輪かー、考え付きもしなかったぜ。
解除にも色んなアプローチがあって面白いな。説得力も十分だ。
そしてまさかのスカイアーマーとは!
トカの手によるあたり一抹の不安が禁じえないが、機動力大幅アップだな。
科学の崇高さを実感できたお話だったトカ。
GJでした。

さて、ではこちらも投下していきます。
537飛行夢 ◆6XQgLQ9rNg :2010/05/01(土) 16:56:42 ID:SsfJQL/+
 空気が圧倒的な強さで流れていく。 
 ただの風というにはあまりにも激烈で苛烈で猛烈な流れを、全身で感じ取る。
 轟音にも等しい大気の鳴き声が鼓膜を震わせ心を躍らせてくれる。
 強風や突風にも似たその流れは、俺の髪とコートの裾をはためかせていた。

 流れの中心に、俺はいる。
 風が吹きすさんでいるわけではない。
 俺自身が、相棒とも呼べる飛空艇――ブラックジャックを駆り、疾風をも凌駕する速度を生み出し大気の壁をぶち破っているのだ。
 ただひたすらに加速する。遮るものは何もなく、衝突の懸念など皆無だった。 
 何故ならここは、眩く輝く太陽に最も近い場所なのだから。
 雲を突っ切り陽光を浴びて突っ走る。
 息苦しささえ感じるのは、異常とも呼べる速度で、異常とも呼べる高度を突っ走っているからだろう。
 なのに、こみ上げる笑みを抑えられない。昂ぶる気分を止められない。 
 これまで、あらゆるギャンブルに身を投じてきた。
 死をも覚悟するほどの敗北を喫するときもあった。
 この世のものとは思えない勝利の美酒に酔うこともあった。
 強烈なスリルと興奮を与えてくれた、無数の賭け。
 その全てが霞んでしまうほどの高揚が、体中で暴れまわっている。
 ともすれば、舵を握る手が汗で滑りそうになってしまう。

 最高の気分だった。
 見下ろせば、世界が目まぐるしく移り変わっていく。
 広大な平原から真っ青な海へ。茫漠たる砂漠から雪を頂く山脈へ。 
 見上げれば、果てない青空がある。
 目も覚めるような蒼穹は、俺を迎え入れてくれるように広がっている。 
 ここは、翼を持たない人類にとって憧れの場所だ。
 高みにいる実感と速度が生み出す爽快感と極限の場所がもたらすスリルが織り交ざり、心を震わせる。
 それでも。翼を得たとしても。
 天駆ける船を手にしても。
 俺は、更に望む。

 何処までも遠く。何処までも速く。何処までも高く。
 何故なら、それは。
 
 かけがえのない友と、美酒を片手に願ったことなのだから。
 
 ああそうだ、だからこそ。
 諦めてなど、やるものか。
 
 決意を改める俺の耳に、風を切り裂く音と大気を破る音が突き刺さる。
 五月蝿いとさえ感じられる音だが、決して不愉快ではない音の奥底に、俺は、なんとなくの違和感を覚えた。
 思わず俺は眉をひそめ、違和を探り取るように意識を聴覚に傾ける。
 意図的に耳を澄ませた直後、それは、はっきりと響き渡った。
538飛行夢 ◆6XQgLQ9rNg :2010/05/01(土) 17:00:41 ID:SsfJQL/+
 ――私の声が、届いていますか?
 
 それは、鈴の音のように美しい声だった。
 
 ――届いているのなら、お願いです。どうか、耳を傾けてください。
 
 それは、昼下がりの陽だまりのように優しい声だった。
 一度聞こえてしまえば、その他のあらゆる音は遠ざかっていく。
 鼓膜を震わせていた大気の悲鳴はなりを潜め、たった一つの声だけが届いてくる。
  
 ふと、正面に気配を感じる。
 舵の向こう側、ブラックジャックの舳先に、いつの間にか一人の女が佇んでいた。
 優しげな顔をしたその女は祈るように両手を組み、澄んだ瞳を向けてくる。
 豊かな桃色の髪の合間から、細く尖った耳が覗いていた。
 きめ細かい白い肌と華奢な身は、儚げな印象を感じさせる。
 間違いなく、いい女だった。
 
 ――私の名は、ロザリー。魔王オディオによって、殺し合いをさせられている者の一人です。
 
 ロザリーの声には、憂いの色が多分に含まれている。その様子は、彼女の魅力を引き立てていた。
 彼女は、訥々と語り始める。 
 
 ――それでも、私は魔王の思惑に乗るつもりはありません。何があろうとも、傷つけ殺し合うなどと、あってはならないのです。
 ――私はかつて、この身に死を刻まれました。そのときの痛みと苦しみは、忘れられません。
 ――ですが、身に付けられた痛みよりも、迫りくる死の恐怖よりも辛い苦痛を、私は知っています。
 
 一度言葉を切り目を伏せた。
 涙を堪えるような仕草に見えたのは、気のせいではないだろう。 
 
 ――何より辛かったのは、私の死をきっかけに、私の大切な方が、悲しみと憎しみに囚われてしまったことです。
 ――愛しいその方は私を殺めた人物だけでなく、人間という種族を滅ぼそうとしてしまいました。
 ――その方を陥れようとした悪意によって企てられた、謀略であったことに気づかずに。 
 ――勇者様とそのお仲間のおかげで、私は再び生を受け、あの方を止めることができました。
 ――そんな経験を経て、私は、改めて実感したのです。
 
 ロザリーが深く息を吸い、組んだ両手に力を込める様子が、伝わってきた。
 
 ――命を奪う行為は悲しみを生み憎しみを育ててしまいます。悲しみと憎しみはまた別の悲しみと憎しみへと続いてしまいます。
 ――大切な人が亡くなり、悲しみに暮れている方もいらっしゃるでしょう。仇を討とうと、憎しみを抱いている方も少なくはないかもしれません。
 ――どうか、その大切な人のことを思い出してください。その人が、貴方のそんな姿を望んでいるはずがありません。

 毅然として続ける。
 自分の思いの丈を、包み隠さず告げるように。
 願いを、祈りを、果て無き世界中に届けようとするように。

 ――殺し合いに乗ってしまった方々、少しだけでも考えてみてください。
 ――大切な人の死によって生まれる悲しみを、痛みを、苦しみを。
 
 ロザリーは、瞳に想いを込め声に願いを乗せていく。
 その強さとひたむきさが、風音の消えた世界を埋め尽くしていく。
 まるで、ロザリーの意識が世界と溶け合い、染み渡ったかのように。

 ――憎しみを抱き刃を向けるのは止めにしましょう。憎しみは目を曇らせ、刃は取り合うべきを切り落とします。
 ――互いに傷つけ合い殺し合うのは止めにしましょう。私たちは、必ず手を取り合えるはずです。
 ――私は今、生きています。それは、たくさんの強く優しい方々に出会い、手を取り合えた証です。
  
539飛行夢 ◆6XQgLQ9rNg :2010/05/01(土) 17:03:16 ID:SsfJQL/+
 ――オディオに屈さず、未来のために手を取り合える強さを、私は信じています。
 ――憎しみに流されず、悲しみ囚われず、互いに理解する心を。
 ――人間も、エルフも、魔族も、ノーブルレッドも。誰もが、抱いているのですから。
  
 ――願わくば、私の声が多くの方々に。
 ――ピサロ様に、届きますように。
 
 その言葉を最後に、ロザリーの姿は忽然と消え去った。
 美しい姿と声がなくなれば、戻ってくるのは風を切る感覚と流れていく世界だった。
 俺は、戻ってきていた。
 ロザリーが構築した世界から、自身の夢の中へと。
 世界は音を立てて、どんどん流れていく。突っ走る相棒はひたすらに大気を破っていく。
 消え去ったものを置き去りにして、俺は、前へ前へと進み続ける。
 その様は、停滞を許さない不可逆存在によく似ていた。
 そう。
 投げられた賽は、もう戻せはしない。
 それこそが俺の住まう世界であり、その先にこそ夢がある。

 間違っちゃいないよ、ロザリー。アンタの理屈はとても綺麗な正論だ。
 俺の肌には合いそうにないくらいに、綺麗過ぎる。 
 もう命をベットしたんだ。だから、降りることは許されない。
 一度乗った勝負から降りるなんざ、勝負師の風上にもおけないんだよ。
 第一、途中で降りるなんてふざけた行為こそ、逝った奴らへの冒涜に他ならないだろ。
 それにな。
 俺の夢は、中途半端に降りられる覚悟で叶えられるようなちゃちなものじゃねぇんだ。
 謀略? 策略? 結構じゃないか。夢を掴み取るためなら、何だってやってやる。
 アンタにはきっと、理解できないだろうな。だが、分かってくれとは言わないぜ。 
 あらゆる価値観も命も踏み台にして、俺自身の手で夢をもぎ取ってやるんだからな。
 
 そうするだけの意味と価値が、あるんだよ。 
 
 ◆◆
 
 遠雷の音が、セッツァー・ギャッビアーニの意識を引き上げる。
 セッツァーは森の中、一本の樹木に背を預け草叢に身を隠し、堂々と眠っていた。
 疲労や怪我によって意識を失ったわけではなく、自らの意思で、睡眠を取っていた。
 捨て鉢になったわけでも、命を捨てたかったわけでもない。
 むしろ、その逆だ。
 睡眠不足による戦闘力、思考力、判断力の低下は死に直結する。
 それを避けるための休息だった。
 無謀としか考えられない豪胆な決断をしたのは、銀髪の男と別れた後、戯れに振ったダイス目が最高の目だったからだ。
 あの瞬間、ツキが来ているとセッツァーは確信した。
 とはいえ、勝負事に焦りは禁物だ。
 運気が向いているからと勝負を焦ってしまった結果、あっさりと負けることは少なくない。
 がつがつとした男は幸運の女神の好みではないと、経験を以って知っていた。
 まだ戦いは長くなる。
 こんなところで幸運の女神にそっぽを向かれないためにも、セッツァーは大事を取った。
 結果として、誰にも襲われることなく休むことができた。
 こうして無事でいられるのは、やはりツキが回ってきている証拠だとセッツァーは確信する。 
 
540飛行夢 ◆6XQgLQ9rNg :2010/05/01(土) 17:07:17 ID:SsfJQL/+
 立ち上がり、体をほぐすように首を回す。
 瞼の裏には桃色の髪をした女の姿が、耳の奥には祈るような声が残っていた。
 はっきりと鮮明覚えていられるのは、あれがきっとただの夢ではなかったからだ。
 ロザリー、それにピサロ。
 どちらの名も名簿に記されていた。
 オディオの名前が出たことや、最後の言葉から察するに、あれは何らかの手段で不特定多数に向けられたメッセージだろう。
 ロザリーは、自分の居場所を晒さなかった。
 その事実は彼女が迂闊で軽率な女ではない証であり、同時に、その身を囮にした罠である可能性を低くするものだった。
 あの澄んだ眼差しと、淀みない声を思い起こす。
 演説めいたあの言葉は、間違いなく彼女の想いなのだろう。
 その言葉に、セッツァーは甘さを感じていた。
 たとえば、ケフカがあの言葉を聞いたら鳥肌を立てて不愉快な奇声を上げるに決まっている。
 そもそも、彼女の言うことが分かるような人間ならば、最初から殺人など犯しはしないのだ。
 事実セッツァー自身も、彼女の言に従い殺人を止めるつもりなど毛頭ない。
 
 だが、だとしても。
 セッツァーは彼女を笑わない。
 ロザリーの言葉は、紛れもない彼女の強い願い――すなわち、夢だったから。
 夢に是非などない。
 たとえ甘く相容れない夢であっても、彼女がそれを叶えようと必死になるのならば、それを笑い飛ばす理由などあるはずがない。
 何処までも、足掻いてみせろ。
 その白く細い身を汚すことも厭わず、決死の覚悟で手を伸ばせ。
 この俺と、命を賭けて夢を奪い合おうじゃないか。 

 ――俺の夢に介入してきたんだ、それくらいの覚悟は当然あるんだろう?
 
 もしもその覚悟もなく、理想を垂れ流すだけだというならば。
 夢は決して天には届かず朽ち果て、見向きもされないものになるだけだ。 
 
 徐々に日は落ち始め世界は夜へと近づき、雷が東で嘶いている。
 東の空には暗雲が立ち込めており、湿った匂いが微かに立ち込めている。 
 先の放送でオディオが告げていた雨が、すぐ側で降り注いでいるのだろう。
 避けるか、向かうか。
 その判断を委ねるように。
 孤高のギャンブラーは、三つのダイスを宙へと投じる。
 木々の合間から差し込む黄昏色をした斜光が、舞い上がる正六面体を照らし上げていた。
 
 セッツァーは知らない。
 先ほど名簿を探していた男こそがピサロであり、ロザリーこそが彼の想い人であるということを。
 その二人が黒雲の下で雨に打たれ、惨劇の演者となっていることを。
 そして、すぐ近くで。
 セッツァーを信じようとしている男――オスティア侯ヘクトルが、怒りと悲しみと憎しみを胸に、かつての仲間と刃を交えようとしていることを。
 
 
【C-6 一日目 夕方(放送直前)】
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:絶好調
[装備]:つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シルバーカード@FE 烈火の剣、メンバーカード@FE 烈火の剣
    シロウのチンチロリンセット@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)、オディ・オブライトの不明支給品1個(確認済。ピサロには必要なかったもの)
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:扱いなれたナイフ類やカードが出来れば欲しい
2:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレーと情報交換をしました。
541 ◆6XQgLQ9rNg :2010/05/01(土) 17:09:14 ID:SsfJQL/+
以上、投下終了です。
指摘などありましたらご遠慮なく何でもお願いしますー。
542創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 02:19:28 ID:+jI4RnTj
投下乙です

まぁそうか。ここのロワは覚悟完了してるキャラが多いからね……
残念ながらロザリーの言葉に耳を傾けてくれるマーダーはいないんだな
しかしセッツァーまで乱戦に行ったらカオスなことになりそうだなぁw
543創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 09:15:08 ID:AdlK8IaM
投下乙です

確かに覚悟完了してる人多いな…
そして彼の夢への渇望がよく出てるわ…
サイコロの目次第で行くかどうか…
544創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 11:53:06 ID:eKFDGjIQ
おぉ! 投下続きで絶好調じゃないか。

まず、◆iDqvc5TpTIさん投下乙!
ついに首輪の謎にメスが……トカ思ったら、かなり大胆に踏み込んでる。
しかしこれは面白い発想ですし矛盾もない。原作設定の混ぜ合わせは、やはり貴方の得意技w
トカ先生がまさかの大活躍w これでも一応天才なんだよなあ……逆に、天才だからあんなになったのかもw
アシュレーとのコンビも鉄板で、意外とトカ先生は万能キャラ?
そして何気に乱戦会場に向かう一行。これは大変なことになりそう、GJ!!!

そして◆6XQgLQ9rNgさん投下乙!
セッツァーかっこいいな……原作よりも数割増しで。
普通に外で寝るとか、流石ギャンブラーw 強心臓にも程があるぞw
しかもここでロザリーのメッセージが上手いこと効いてきた。
乱戦に行くなら、その戦闘力以上に怖い存在になりそうな予感。
夢に対する真っ直ぐな思いもひしひし感じて、凄くコイツを応援したくなった、GJ!!!
545創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 14:56:01 ID:+jI4RnTj
おっと忘れてた。
そろそろ放送話書く人と禁止エリアの募集でもしとかないか?
ルカの投下を急かすつもりはないが、GW期間で休みが何日か残ってるうちに予約解禁した方が執筆時間も増えるだろうし
546創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 23:03:09 ID:D8bJ8lsW
禁止エリアの希望は特にないので書く人にお任せで。
547 ◆.CzKQna1OU :2010/05/03(月) 15:31:29 ID:vrWsuAsH
test
548 ◆vc.AYw0kE6 :2010/05/03(月) 15:32:25 ID:vrWsuAsH
あ、すいません上のは自分です。
それでは投下します
549 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:33:21 ID:vrWsuAsH
あれ? こっちかな?
550 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:35:06 ID:vrWsuAsH
何度もすいませんでした。
では投下します
551 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:35:53 ID:vrWsuAsH
正義や悪、それらは概念に過ぎない。
それらは、語る者の立場や信念によって、コロコロ定義を変えるあやふやなものだ。
自らを正義と自称する者と戦う敵もまた、我こそが正義であると主張することだって珍しくはない。
だが、もしも悪が具現化し、人の形を取ったのなら、ルカ・ブライトという人間が出来上がるのだろう。
他ならぬルカが、自らが邪悪であると自称し、そう在ることを望んだのだから。

ルカ・ブライトは生まれつきの悪ではない。
根っからの善人とは言わないが、最低限の良識は備えていた。
だが幼き日の出来事により、後天的に悪に目覚めたのだ。
それは父親を侮蔑するようになった切っ掛けであり、弱いものは強いものに蹂躙されるだけだという真理に気づいた出来事。

優しかった母の心と体が汚されていく。
半裸の男たちに囲まれて、母は耐え難いほどの辱めを受けていく。
皮膚にはぬめりのある何かが纏わりつき、見ているだけに過ぎなかったルカも原始的な嫌悪感を呼び起こされる。
母の悲痛な叫び声を、ルカは涙ながらに聞いていた。
母の体が揺さぶられる光景は、いつまでも続くかと思われた。
親衛隊にようやく救出されたときも、ルカは助かったなどと安堵はしなかった。
瞼を閉じればすぐに、その時の光景が鮮明に蘇ったからだ。
そして、そんな母の危機に対して、父が何をしていたかも聞いて、ルカの価値観は一変した。
幼き頃のルカ・ブライトに影響を与えるには、それは十分すぎる出来事だった。

この世界は何もかもがくだらない。
醜いブタが蔓延り、大地を汚している。
自分の妻を見捨てるような男がのうのうと国の頂点に居座り、しかもそれを咎める者はいない。
矛盾に満ちた世界で、矛盾を抱えて生きる人間が、ルカの目には酷く醜く見えた。
人の欲という垢で汚れた世界を浄化するには、人の血で洗い流すしか方法がない。
血液が灼熱のマグマのごとき熱さを持ち、ルカの殺意を刺激する。
細胞の一つ一つに刻み込まれた憎悪が、ルカに命ずる。

殺せ。
殺して薄汚い魂を浄化しろと。
薄汚れた人間の血で、大地を清めるのだと。
そして、ルカはその声に従って幾千もの人間を殺した。
いつしか、都市同盟の人間を殺すのが、ルカは何よりも好きになった。
殺した数だけ、ルカの疼きが消えていくような気がしたから。
流された血が大地に染み込んでいくのを見ると、胸がすくような気持ちになった。
誰よりも邪悪に、人を殺すのが生きがいだった。
これこそが、ルカ・ブライトの生きる道だと確信できた。
ありとあらゆる手段で都市同盟の人間を血祭りにあげた。
552創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:35:56 ID:tN/6d9Vb
 
553創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:36:37 ID:tN/6d9Vb
 
554 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:36:57 ID:vrWsuAsH
大軍で無人の荒野を行くがごとく進軍するのも。
寡兵で大軍を蹴散らすのも。
敵の囲みを破って突破するのも。
敵を包囲して逃げ場もなくしてやるのも。
張り巡らされた小賢しい罠を切り抜けるのも。
詐術を用いて敵を罠に陥れるのも。
正面から敵軍とぶつかるのも。
背後から敵を急襲するのも。
夜襲をかけるのもかけられるのも。
逃げ惑う敵軍を追撃するのも。
ただ通りがかっただけの村を襲うのも。
火を放ち、全てを焼き尽くすのも。

全て好きだった。
それで都市同盟の人間が殺せるのなら、喜んでそうした。

必死に逃げている敵を背後から串刺しにするのも。
涙ながらに命乞いする腰抜けの心臓を一突きにするのも。
捕虜を一列に並べて、一人ずつルカ自ら斬り殺していくのも。
友の仇を討とうと、真っ直ぐに切りかかってくる敵を殺すのも。
敵将を討って、名を上げようとする命知らずを返り討ちにするのも。
狂皇子ルカ・ブライトを目の前にして、戦意を喪失した兵士を斬るのも。
死ぬ間際に家族の名を口にして、無念とともに倒れる敵に止めをさすのも。
信じる神の名前を口にし、神の奇跡を期待する愚か者に現実を教えてやるのも。
半狂乱になって、絶叫をあげながら武器を振り回す敵を一思いに楽にしてやるのも。
数人で囲んだくらいで得意げになった敵の集団をちぎっては投げ、ちぎっては投げるのも。
これは夢なんだと自分に言い聞かせ、現実逃避する腑抜けを一生覚めない夢につかせてやるのも。
最後の最後まで、自分の死が近づいてることを理解できずに、呆けた表情をする敵の首を刎ねるのも。

堪らなく好きだった。
それらの人間は全て哄笑と共に切り伏せてやった。
暴力という、悪にのみ振るうことを許された力で、善人を気取るブタを殺すのが爽快だった。
そうやって、大量に都市同盟の人間を殺した日の夜は、決まってよく眠れたものだ。

そして、それ以上に、戦場で敵を殺すよりも、無力な民間人を殺すのが格別に楽しかった。
無力な人間は強い人間に搾取され、奪われていくことしか出来ない。
弱肉強食という普遍的な真理だ。
そういった自論を持つルカにとって、弱者の代表格である非戦闘員を殺すのは何よりの楽しみ。
戦場で百万の軍勢を指揮して、思うままに戦うよりも夢中になれることだった。
555創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:37:20 ID:tN/6d9Vb
 
556 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:37:43 ID:vrWsuAsH
誰か助けてと喚き散らす子供を抹殺するのが。
醜いブタの手によって作られた住居に火をつけるのが。
命乞いの口上をひとしきり聞いた後で、命を奪うのが。
土下座して命乞いしようとする女を、何か喋る前に無慈悲に殺すのが。
親とはぐれて泣き叫ぶ子供を、脳天から股間にかけて一刀両断にするのが。
逃げることを諦め、偉そうにルカに説教を垂れる老人の口を剣で塞ぐのが。
鬼や悪魔と罵る言葉を聞いて、その通りだ、俺は鬼や悪魔だと返してやるのが。
我が子だけは守ろうと子供を抱きかかえる親に対して、子供から先に葬り去るのが。
子供を身ごもっているから助けてくれと、懇願する身重の女の腹を割いてやるのが。
避難用の隠し部屋を見つけ、そこに立て篭もっていた女子供が絶望する顔を見るのが。
武具や農具を手に取り、住民を守ろうとする数少ない男を、ブタのように惨殺するのが。
何故、この村や町が襲われるのか分からないといった顔をして逃げ惑う女子供を殺すのが。

とてつもなく快感だった。
剣と鎧が返り血に染まろうとも、決して止まることはない。
命ある限り、都市同盟の人間を蹂躙し、皆殺しにし、根絶やしにする。
ルカの凶行を止められるものなどない。
殺すべきブタは何千も何万もいるのだ。
手にした剣が血を欲することを止めることはなく、ルカ自身も止まるつもりはなかった。
他者の命を含めた一切合財の運命を決めるのが、強者に許された特権だ。
強くなることを諦めた時点で、あるいは強くなれる才能がなかった時点で、その者が辿る運命は決まっていたのだ。
ルカ・ブライトはそんな当たり前のことを身をもって教えただけのこと。

ルカ・ブライトは己の悪逆非道さを全面的に肯定する。
貴様こそが悪の権化だと言われたら、だったらどうしたのだと返すくらいには、自分の悪意を自覚できている。
正義を自称する者がルカ・ブライトの悪を裁こうというのなら、何時でもルカは受けて立つだろう。
しかし、そんな公序良俗や平和の尊さを謳う輩はすべからくルカ・ブライトに倒されてきた。
ルカ・ブライトはそんな者共にこう言うのだ。
弱いくせに口だけは達者なブタだ。
自らの主張を貫き通すことすらできぬほど弱い者が、綺麗事をぬかすことほど虫唾の走るものはないと。
強きものこそが全てを決める権利を有するというルカにとって、弱いことは持たざる者、奪われる側の象徴だ。

ルカ・ブライトが殺人を止める時。
それは、ルカ・ブライトが死んだときしか有り得ない。
ルカ・ブライトの人生は殺戮の人生であるが故だ。



◆     ◆     ◆



重たい瞼を開ける。
その目に入ったのは、茜色に染まる木漏れ日だった。
鷹のような鋭い目つきをした男の名前はルカ・ブライト。
首を一度だけ振り、自分がどうしてこうしているかを思い出す。
覚えているのは、新たに三人の男を殺して、疲労も限界だったから手近な木にもたれかかって寝ていたこと。
同じ時間の違う場所で、セッツァーという男がしていたことを、このルカもしていたのだ。
ルカはセッツァーのように酔狂でしたのではなく、純粋に疲労が蓄積していたから。
近くに休憩できる施設等もなかったから、やむなくこうしたのだ。
もっとも、ルカが無様に寝込みを襲われる様なことは決してない。
外敵に対する警戒心はそれこそ狼の嗅覚のように敏感だ。
557創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:38:01 ID:tN/6d9Vb
 
558 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:38:28 ID:vrWsuAsH
頭に疼痛を感じながら思い出したのは、血と悲鳴に染まった大地。
蜘蛛の子を散らすように逃げだす都市同盟の軍勢たち。
それを蹂躙し、制圧していくのは狂皇子ルカ・ブライトと白狼軍。
人命を奪いつくす愉悦を感じながら、ルカは戦場で破壊の限りを尽くしていた。
そう、ルカは浅い眠りの中で、夢を見ていた。
夢の中でも人を殺すのが楽しく、ルカは満足しながらその夢を楽しんでいたはず。
そんな夢に邪魔者が出たのだ。

――私の声が、届いていますか?

その声が聞こえた途端、ルカの見ていた光景は時間ごと凍りついたかのように動きを止めた。
桃色の髪をした女がルカの夢に割り込んできたのだ。

「ふん……」

夢の邪魔をされたことでイラつきの声が出る。
その後、女が何を言っていたかはあまり覚えていない。
覚えているのは女がロザリーという名前であること。
殺し合いはいけませんから止めましょうという趣旨の呼びかけをしたこと。
聞く価値すらないような戯言を、ただ繰り返していたことだけだ。
そんなありきたりな言葉で、ルカを含めた誰かを止めようなどとは浅ましい。
弱き者の言葉など、考慮にすら値しない。

睡眠を邪魔された結果、疲労は消えてないのに目だけは覚めてしまった。
こうなれば、ルカはもう人を殺すべく行動するだけだ。
睡眠以外の全ての時間を、ルカは殺戮に奉げているといっても過言ではないのだから。
皆殺しの剣を杖代わりにして立ち上がると、ルカは片手で皆殺しの剣を軽く振ってみる。
呪われた剣は禍々しい妖気を放ち、ルカに血と臓物と苦痛を要求する。
だが、ルカは強靭な精神力で剣の強制力を物ともせず、軽い素振りを繰り返す。
少なくとも、少しは体力は回復している。
剣を持つ手からは、戦闘直後の気だるさは消えていた。
今度は両手で剣を構え、右足を前に出し大きく真上に振りかぶり、全力で振り下ろす。

前方に振り下ろされる剣を、ルカは地面に接するギリギリの所でピタリと止める。
その剣先は少しもぶれてはいない。
ルカの恐るべき膂力で止められたからだ。
それにルカは満足し、剣を手に持ったまま歩き始める。

「剣に余計な声などいらぬ。 ただ斬れればいい」

ルカは皆殺しの剣から発せられる殺意を、余計なものとしか思ってない。
剣が要求しなくても、ルカは血を望んでいるからだ。
歩きながら、ルカはロザリーと名乗った女のことを考える。
睡眠を邪魔した報いを受けさせたかったが、生憎居る場所は言わなかった。
襲撃される可能性を少しは考えているのかと、考える。
559創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:38:56 ID:tN/6d9Vb
 
560 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 15:39:10 ID:vrWsuAsH
「ブタにはブタなりの小賢しい知恵があるらしいな……」

思えば、儚げなくせにどこか芯のある強さを秘めているのは、ジルに似ているところがあるかもしれない。
ロザリーの言うことにはほとんど聞く価値がなかったが、一つだけルカにとっても意義のある情報があった。

――オディオに屈さず、未来のために手を取り合える強さを、私は信じています。
――憎しみに流されず、悲しみ囚われず、互いに理解する心を。
――人間も、エルフも、魔族も、ノーブルレッドも。誰もが、抱いているのですから。

エルフとノーブルレッド。
これだけならば、ルカには何のことか分からなかった。
しかし、人間と魔族と一緒に挙げられているのだから、種族名だということだけは分かる。

「世界は広いらしいな……」

人間もウイングボードもコボルトもたくさん殺してきたが、世界には未だ見ぬ種族がいるらしい。
エルフとノーブルレッド。
その種族を斬ったときの感触を、ルカは知りたくなった。
血の色は赤いのか、それともそれ以外の色なのか。
肉を切った感触は硬いのか柔らかいのか。
ウイングボードの翼のように、人にはない器官を備えているのか。
あるいは、コボルトのようにそもそも人間とは似てない種族なのか。
想像するだけで胸が躍る。
体中が未だ見ぬ種族を殺害せよと疼く。

「ふはははははははははははは!! 感謝するぞメスブタ! 貴様は俺に斬る新たな楽しみを教えた!」 

ルカは殺しを止めない。
千人殺そうとも二千人殺そうとも満たされることのなかった渇きが、6人殺したくらいで満足するはずがない。
ここにいる53人全員をルカが殺したとしても、ルカは満たされることはないだろう。
彼の歩く道の先にあるのは、無数の屍が転がる戦場のみ。
それは、他ならぬルカ自身がよく知っている。


【F-2 中央 一日目 夕方】
【ルカ・ブライト@幻想水滸伝U】
[状態]上半身鎧全壊、精神的疲労(大)、ダメージ大(頭部出血を始め全身に重い打撲・斬傷、口内に深い切り傷)
[装備]皆殺しの剣@DQIV、魔石ギルガメッシュ@FFVI
[道具]工具セット@現実、基本支給品一式×6、カギなわ@LIVE A LIVE、死神のカード@FFVI
   魔封じの杖(4/5)@DQW、モップ@クロノ・トリガー、スーパーファミコンのアダプタ@現実、
   ミラクルショット@クロノトリガー、トルネコの首輪 、武器以外の不明支給品×1
[思考]基本:ゲームに乗る。殺しを楽しむ。
1:会った奴は無差別に殺す。ただし、同じ世界から来た残る2人及び、名を知らないアキラ、続いてトッシュ優先。
[備考]死んだ後からの参戦です 。
※皆殺しの剣の殺意をはね除けています。
561創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:39:48 ID:tN/6d9Vb
 
562創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 15:42:46 ID:tN/6d9Vb
 
563◇SERENA/7ps 氏代理:2010/05/03(月) 15:47:48 ID:tN/6d9Vb
192 名前: ◆SERENA/7ps 投稿日: 2010/05/03(月) 15:44:48 ID:R2sMHlYQ0
最後にさるった……

投下終了しました。
タイトルはred tintでお願いします

-----
執筆・投下お疲れ様でした。
読みやすい文章を重ねて、きっちりルカを描写していくくだりがたまらない……。
ロザリーの夢も、ある種の希望に解釈しやがったなぁw
悲劇性はあるかもしれないが、それがどうしたとばかりに悪をやってるところが自分は好きだ。
綺麗な掘り下げGJです!
564創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 17:31:39 ID:tegrDerp
>563
激しくおつです!!

エルフって幻水の世界にもいるけど、ルカが知っているかはどうなんだろ?
565 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 17:45:26 ID:vrWsuAsH
そういえば2にもスタリオンがいましたね……
これはエルフの存在を知ってないとおかしいですね。
エルフやノーブルレッドを切りたい、ではなくノーブルレッドを斬ってみたいに変更します
指摘してくださってありがとうございます
566 ◆SERENA/7ps :2010/05/03(月) 17:52:48 ID:vrWsuAsH
仮投下スレに>>560からエルフを削ったものを投下しました。
お手数ですが、wikiに収録する際はそちらの方を使用してください。
567創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 20:14:54 ID:Y0Lr4Qub
投下乙

ルカ様、相変わらずの壮健ぶりに嬉しくなってまいりますw
ロザリーの訴えを鼻で笑うとは思っていたけど、歓喜に繋げるとはやられたww
もうどこまでいくのか目が離せないよ!
568創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 20:22:30 ID:ouDAqm7o
投下乙です

ああ、本当にルカらしいわw
俺も綺麗な掘り下げGJです!
そしてこれは声の方に行くだろうな…
569創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 07:15:27 ID:mdWe7hRN
投下乙!
ルカ様悪すぎるw でも、これで原作通りだから困る。
夢の中でも殺戮してるるのは、さすが狂皇。
ロザリーの声も意味ないどころか逆効果とは……。それほど体力を回復してないのが救いか。
街に行くかは分からんけど、コイツまで行くなら大変なことになりそうだな、GJ!!!

>したらばの雑談スレ
自分も今夜解禁で賛成です。
570創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 08:04:13 ID:zsSo6AeP
>>564
うろ覚えだけど、幻水世界のエルフってそんなマイナーな存在だったっけ?
普通にみんな知ってるもんじゃなかったか?
571創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 09:46:34 ID:Pzci2m7Y
wikiの編集報告を。
◆iD氏の『ですろり〜イノチ〜(前編)』における、
>「出よ、聖 鎧 竜 ス ヴ ェ ル グ !!!!!!!!!!!!」
の直後にコピペミスと思われる表記を見つけましたので、以下の文章を本文から削除してます。

>精神的疲労(大)→精神的疲労(極)

たぶん、修正版を投下したときのもの……かな?
ルカ様の状態表のほうは修正版に準じていたので、直して大丈夫かと判断しました。
572創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 13:54:35 ID:mX6BtytM
よし放送の予約も入った
(勢いが)圧倒的じゃないか我がRPGロワは!
573創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 16:07:15 ID:5RhuHzGU
574創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 16:09:19 ID:5RhuHzGU
お、規制解除か
ところで放送予約来たんでシンプルながらも第一回人気投票用の文章考えてみた
投票スレ立てていいだろうか?
時期は今日から11日の23時59分でOK?
一週間ちょいだな
575創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 16:31:59 ID:mX6BtytM
頼んだ
それとそろそろ新スレも必要になってくるな
576創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 16:52:56 ID:5RhuHzGU
ちょうど放送後に建て替えかな?
あ、人気投票スレ立ててみました
投票例はちょい遊んだけどね
577創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 17:02:37 ID:mX6BtytM

さっそく投票してきたぜ!
578創る名無しに見る名無し:2010/05/06(木) 19:58:56 ID:VHk9iDm3
投票あんまり盛り上がってないね…(´・ω・`)
579創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 09:38:11 ID:MU7rgNa3
放送話の仮投下乙です
自分も禁止エリアはこれでいいと思います
予約解禁はどっちかっていうと明日がいいかな



それと地図の現在位置表を更新してみました。
現在仮投下されてる放送話の禁止エリア候補をすでに入れてますので、
今回の仮投下がそのまま通った場合はこうなるよ、という参考にでもしてもらえれば幸いです。
もちろん新たな禁止エリア候補が挙がって採用された場合はすぐに修正します
580創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 21:00:14 ID:t5FlYvfP
地図更新乙です
581第三回定時放送  ◇xFiaj.i0ME氏代理:2010/05/07(金) 22:27:51 ID:9wSY5U8b

「……時間だ。
 手を止めろ、などと言う意思も理由も無い。 せいぜい聞き逃さぬように注意することだ。

 禁止エリアは
 19:00からC-5 と I-6
 21:00からE-1 と H-2
 23:00からD-10 と G-7

 そして、
 高原日勝
 マッシュ・レネ・フィガロ
 ケフカ・パラッツォ
 ミネア
 シンシア
 ビッキー
 クロノ

 以上の7名が、新たに死者の列に加わった。
 速度が落ちた、などと無粋な事をいう必要は無いな。 何しろこれで死者は半数を超えたのだから。
 もう半数とするか、まだ半数と取るか、いずれにせよ半分を過ぎた。 残された者たちはせいぜい奮起するがいい」





事ここに至って、余計な事柄を述べる必要は無い。
遠くから響くのみの言葉など無くとも、今彼らを包む世界は雄弁に主張を続けている。
短く、事実のみを告げた。
……だが、それだけか?


「らしくもない……」

玉座の端を握る手の力が、僅かに強い。
僅かに感じるのは苛立ちか、それとも怒りか。
582第三回定時放送  ◇xFiaj.i0ME氏代理:2010/05/07(金) 22:29:53 ID:9wSY5U8b
――私の声が、届いていますか?
――届いているのなら、お願いです。どうか、耳を傾けてください。
――私の名は、ロザリー。魔王オディオによって、殺し合いをさせられている者の一人です。
――それでも、私は魔王の思惑に乗るつもりはありません。何があろうとも、傷つけ殺し合うなどと、あってはならないのです。
――私はかつて、この身に死を刻まれました。そのときの痛みと苦しみは、忘れられません。
――ですが、身に付けられた痛みよりも、迫りくる死の恐怖よりも辛い苦痛を、私は知っています
――何より辛かったのは、私の死をきっかけに、私の大切な方が、悲しみと憎しみに囚われてしまったことです。
――愛しいその方は私を殺めた人物だけでなく、人間という種族を滅ぼそうとしてしまいました。
――その方を陥れようとした悪意によって企てられた、謀略であったことに気づかずに。 
――勇者様とそのお仲間のおかげで、私は再び生を受け、あの方を止めることができました。
――そんな経験を経て、私は、改めて実感したのです。
――何より辛かったのは、私の死をきっかけに、私の大切な方が、悲しみと憎しみに囚われてしまったことです。
――愛しいその方は私を殺めた人物だけでなく、人間という種族を滅ぼそうとしてしまいました。
――その方を陥れようとした悪意によって企てられた、謀略であったことに気づかずに。 
――勇者様とそのお仲間のおかげで、私は再び生を受け、あの方を止めることができました。
――そんな経験を経て、私は、改めて実感したのです。
――命を奪う行為は悲しみを生み憎しみを育ててしまいます。悲しみと憎しみはまた別の悲しみと憎しみへと続いてしまいます。
――大切な人が亡くなり、悲しみに暮れている方もいらっしゃるでしょう。仇を討とうと、憎しみを抱いている方も少なくはないかもしれません。
――どうか、その大切な人のことを思い出してください。その人が、貴方のそんな姿を望んでいるはずがありません。
――殺し合いに乗ってしまった方々、少しだけでも考えてみてください。
――大切な人の死によって生まれる悲しみを、痛みを、苦しみを。
――憎しみを抱き刃を向けるのは止めにしましょう。憎しみは目を曇らせ、刃は取り合うべきを切り落とします。
――互いに傷つけ合い殺し合うのは止めにしましょう。私たちは、必ず手を取り合えるはずです。
――私は今、生きています。それは、たくさんの強く優しい方々に出会い、手を取り合えた証です。
――オディオに屈さず、未来のために手を取り合える強さを、私は信じています。
――憎しみに流されず、悲しみ囚われず、互いに理解する心を。
――人間も、エルフも、魔族も、ノーブルレッドも。誰もが、抱いているのですから。
――願わくば、私の声が多くの方々に。
――ピサロ様に、届きますように。


……否定する気は無い。
手を取り合う強さも、互いを理解しようとする心も。 それそのものは強く、美しい感情であったのは事実なのだから。
背中合わせに戦う友が、呼びかけに応えてくれたかつての英雄が、最後まで己を信じてくれた仲間が、そして何よりも、己を待ち続けている人が。
旅立ちの時も、戦いの日々にも、新たな仲間を得た時も、失意に囚われた時も、道が見えず闇雲に彷徨う時でも、一人になった後でさえ、力を与えてくれた。
583第三回定時放送  ◇xFiaj.i0ME氏代理:2010/05/07(金) 22:31:26 ID:9wSY5U8b
エルフの姫御。 強く、聡明な女性よ。
貴女は勘違いをしている。
貴女の声は決して届く事はない。 
いや、届く相手はいる、聞き届けるものも居るだろう。 
それでも、その声は本当に届けたいものには、届く事はない。
貴女の声は、そもそも貴女の言葉など必要としていないものにしか届かない。
かつて手を取り合った、勇者という存在にすら届かない。 もはや必要としていないのだから。

哀れみはしない。
貴女は強い人だ。
かつて最後まで私の事を信じてくれた仲間のように。
その道を、信じ続けて死ねる者もいるのだから。

そして、だからこそ貴女には、今の貴女では決して理解することは出来ない。

貴女は何も知らない。
貴女は何も失っていない。 ただ失わせただけだ。
己の全てを賭して守りたい物を失ったその先、そこに何があるのか……貴女は何一つ知ってなどいないのだ。
それを知らぬ貴女の言葉は、その先にたどり着いたものには決して届きはしない。
貴女は、その真実を知らないのだ。

「……いや」

或いはそれが…それも、真実なのか。
理解にすら至らない場所。
生物としての根本的な差異。
貴女達には、貴女には、それが真実だったのか?

なあ、……シア……
貴女達は、我々とは根本的に違っていたのか?
いくら考えても、わからない。

私は、決して届かない、……届かなかった言葉を、こうして考え続けることしか出来ないのか?
584創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 22:33:26 ID:9wSY5U8b
代理投下終了。
585創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 23:06:43 ID:ICGG8KQU
586創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 23:45:38 ID:MU7rgNa3
代理投下乙です。解禁はもうすぐですね
予約がたくさん入ることを期待
587創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 23:57:18 ID:MU7rgNa3
        /´〉,、     | ̄|rヘ
  l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/   ∧      /~7 /)
   二コ ,|     r三'_」    r--、 (/   /二~|/_/∠/
  /__」           _,,,ニコ〈  〈〉 / ̄ 」    /^ヽ、 /〉
  '´               (__,,,-ー''    ~~ ̄  ャー-、フ /´く//>
                                `ー-、__,|     ''
588創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 00:00:26 ID:ICGG8KQU
明日か
解禁楽しみだ
589創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 00:31:08 ID:bMYHIvd7
代理投下乙

ロザリーの宣言がアリシアと重なって…いつもの調子ではなくしんみりモードのオディオ
ただアリシアも冷房に同情する前はオディスタットのことを…彼女は彼への愛を囁いたその口で彼を罵ったんだよな…
オディオもロザリーもどうなるやら…

ちなみにアリシアとロザリーを一緒にされたくないと思ったりしてw
590創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 02:23:11 ID:ZlNuFdEm
オディオからすれば理解出来ないものの象徴の一つが女なんだろな
仲間が男所帯だったのもあるし
投下乙です
ここのマーダー覚悟完了しまくってるからなあ
そりゃ届けたい人には届かないぜ
しかしピサロにはどうなるか
591創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 09:30:44 ID:BXOj2UAv
放送投下&代理投下乙
オディオも感傷的になってるな。
いまだアリシアを振り切れていないあたりが、結局は魔王といえど人間に変わりはないんだろうね。
人間を忌み嫌いながらも、人間くささを捨てきれない様子が見て取れる放送だった。

ひとつ指摘というか疑問なのですが。
>>582のロザリーのメッセージで、

>――何より辛かったのは、私の死をきっかけに、私の大切な方が、悲しみと憎しみに囚われてしまったことです。
から
>――そんな経験を経て、私は、改めて実感したのです。

までが重複しているのですが、意図的なものでしょうか?
592創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 20:45:52 ID:ZlNuFdEm
今晩予約解禁ですので狙っている方はお忘れにならぬようご注意を
593創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 00:04:27 ID:QldyMlQr
あそこをあの人か
出るのは鬼か蛇か
594創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:43:54 ID:RkDzQQc+
一つしかなかったのは残念だが…あそこを書くのか…
さすがに死人が出る…いや、死人も出るが物凄い遺根が生まれそう…
595創る名無しに見る名無し:2010/05/11(火) 19:24:32 ID:G06uov+z
そういえば投票今日までだな。
まだの方は是非参加をッ!
596創る名無しに見る名無し:2010/05/11(火) 20:04:56 ID:5RSVgL9+
 
597創る名無しに見る名無し:2010/05/11(火) 20:28:34 ID:5RSVgL9+
さて、そろそろ容量がとのことなので規制がないうちに立てておきました
投下は次スレで、かな?
以下新スレURL
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1273576134/
598創る名無しに見る名無し
そろそろか?