「何かお手伝いできることは?」
「特にないでありますな」
「何かやるべき事があるのでしたら、その間に見張りくらいなら出来ますが」
「"見張りを誰が見張るのか"、が問題であります」
誰が見張る、と来たか。初対面の人間に放つには厳しすぎる発言であった。
単に人付き合いに関して不器用なだけだろうか。いや、まさか。
敢えてこちらを刺激することで反応を見ようとしている可能性もある。
明らかに思考が泥沼に入りかけていると思わざるを得ないが、どうしたものか。
……ああ、じゃあもう"あれ"を訊いてしまえば良いか。
キノは、口を開く。
「その拒絶の理由……さては"あの火の鳥の様なもの"と、関係がありますか?」
「……」
相変わらずの無言。だが無言は無言でも"一寸考えていた"ような無言。
「…………"火の鳥"、でありますか?」
その後に『万条の仕手』は同じ言葉を復唱してきた。とぼけているのだろうか。
「ご存知、ないのですか? あなた程の方があれに気付かないとはどうにも思えませんけど」
「いえ、そういう事ではないのであります」
「そうでしょうね。今思えば神社から飛んでいったようですし」
「……よく観察していたであります」
知っていたようだ。では果たしてあの火の鳥の様なものの正体は何であるのか。
それはこの目の前の『万条の仕手』がどういった状況に置かれているかを推理する鍵であると、キノはそう見ていた。
もしも鳥もどきが彼女の味方であったならば、貴重な戦力を分散させてしまった為にこうして警戒を強めているという可能性が出てくる。
逆にあれが彼女の敵だったとしたら、あれを追い出した後であるが故に警戒態勢に入っているのかもしれない。
何かから逃げているようにも見えたあの火の鳥もどき。その正体を尋ねる事は、目の前の彼女の現状を把握するための一手となり得るはずだ。
「更に思い返せば派手な戦闘音なども見受けられませんでしたね……あなたの仲間、と考えるのが妥当ですよね?」
「そう……あれは我々の仲間であります。この"生き残りをかけた物語"で意を同じとする同胞、でありますな。
しかしながら意は同じであれど過程までもが全く同じである必要は皆無。故に今は別行動を取ったのであります」
「なるほど……"それで、人手が足りないと"」
「それに関してはご心配ないであります」
そしてその予測は、実際に当たった。おそらくこれに関しては真実なのだろう。
あの火の鳥が敵である場合、あれが味方だったと嘘をつくメリットは決して見当たらない。
逆にあの火の鳥が味方である場合、敵だと嘘をついた所で「ではあの敵を倒してきます」と言われたらそこまでだ。
故にこの『万条の仕手』の発言は真実であると考えるのが妥当。深読みする必要は無いだろう。
しかしながらそうなると、駄目押しで放ったもう一つの質問には否定されたことが解せない。
仲間がいなくなったものの人手には問題ない。強がりか、事実か、どちらだろうか。
都合があるので歓迎出来ない。
仲間が別行動を取った。
やるべき事が残っている。
この三つの情報から、人手に関しての供述は黒であると考えられるものの、未だ推測の域を出ないことは事実。
実際にどれくらいの人数が残っているのかがわからない以上、敵の陣地への単独潜入は非常に厳しい。
"人数を減らして最後に残る"という目的を抱いていることも知られたくはないし、やはり改めて考えれば下手な動きは出来そうに無い。
よし、もうここまでだ。これ以上食い下がっても得るものは無いであろう。
"厳しい言葉を浴びせられても話しかけてくる物好き"だとか、そんなポジティブな印象を持ってくれる相手でもなさそうである。
目の前の『万条の仕手』の性格が完全に掴めたわけではないが、そうする他はないと思う。ここいらでちょっと読むべきだ、空気を。
そう考え、ハンドルに手をかけた。
◇ ◇ ◇
「では、歓迎されてはいないようですし……帰ります」
ため息混じりに、キノと名乗った少年はあっさりと引き下がった。
もう少し食い下がってくると思っていたヴィルヘルミナにとっては意外といえば意外であった。
「そうでありますか。今回は、申し訳ないであります」
結局ヴィルヘルミナはキノを信頼する事は出来なかった。
彼がただの強い人間で、本当にこちらの助けになってくれるというならばありがたかった。
だがしかし今は睡眠中の人間を二人収容中かつ、更に手術も開始しなければならない状況。
"一般人"に分類される人間ならばともかく、強い人間というものはこの状況ではいかんしがたい。
御し難い、とでも言うべきか。今は"万一"が起きないように、こうするしかなかったのが現状だった。
悟られぬようにしたが、巧くいっただろうか。不安を覚えないわけではない。
だがまあいい。今回は仕方の無かったことである。180度ターンして去ろうとしている彼の背中を、今は見送るだけだ。
「いえ、気にしなくても結構ですよ」という返答を放つと同時に乗り物を起動させるキノ。
排気ガスを出しながら振動を始めるそれが静かに離れ始めた。
「ではお互いお気をつけて。縁があればまた……今度はお手伝いが出来ると良いですね」
最後にこんな台詞を残して。
「…………」
「…………」
一寸の間。
「…………会話終了?」
「で、ありますな」
キノの姿が遂に見えなくなり、気配の察知も出来なくなったところでティアマトーがようやく口を開いた。
彼女は結局キノとの会話全てをヴィルヘルミナ・カルメルに委ねていた。
ただでさえピリピリした空気の中、自分が突如発言をしてはその理由の説明も面倒千万であると判断したが故にである。
「少々喋り過ぎたであります……しかしながらあの"火の鳥"に答えぬままでは何を思われるかもわからず……。
"火の鳥"にしてもどこまで把握して尋ねているのかが判らない以上、例えば"たまたま目撃した"などとも偽り難かったであります。
それでも相手が短絡的な性格かつ、我々に敵意を抱く人物ではなかったのが救いでありますな。運が良かったのであります……が」
「油断厳禁」
「そう、まさしくその通りであります。結局のところあの少年の考えを見透かすには至らず、結果としては先延ばしに近きもの。
次に出会うときはこちらにも若干の余裕が生まれた頃であることを全力で祈り、また叶えられる様努力する他はないであります」
「同意」
なかなかに辛い選択であった。
もしもあの少年が本当に"神社で手伝いをしてくれる"と確信できる人間だったなら、と考えるとあまりにも惜しい。
仮に神社の人員を自分一人か、または複数のフレイムヘイズで構成していれば、多少のリスクを背負ってでも受け入れただろう。
相手が自分に害為す存在であろうともフレイムヘイズの力を以って全力で迎え撃つだけであるし、そもそも無害ならば万々歳だ。
どちらに転ぼうとも、慢心さえしなければ悪い方向にはいかないしいかせない。そう考えられる。
しかし今回は別だ。自分以外に存在しているのは一般人がほとんどである。しかも手術までも敢行しなければならない。
睡眠中の二名の事も護らねばならない状況で、もしも黒か白かわからない者が現れたら、対処しきる自信はさすがにない。
『常のフレイムヘイズならば、死を呼ぶには足りない武器だ。しかし、この場ではどうだろうか?』
フリアグネのこの言葉も気になる。実際確かめていない以上、懸念すべき情報であり続けているのが現状だ。
今のヴィルヘルミナを見て考え過ぎではないかと考える者もいるだろう。
が、重要な戦力である仲間を見送った身である。こうしてでも、残った仲間を護るのは当然の勤めだ。
「とりあえず……神社に戻るのはもう一度一回りしてからでありますな」
「妥当」
「それから、手術の開始であります……出鼻を挫いたようで、決心を鈍らせてしまっていなければいいのでありますが……」
「少々心配」
仁王立ちの体勢であったヴィルヘルミナ・カルメル。
堂々とした出で立ちはそのままに、彼女は久しく再び動く。
◇ ◇ ◇
下山中、キノは考える。
今回はあまりにもアウェー過ぎた所為で、些か不自由であったと。
今は別に旅をしているわけではない。下準備というか、きちんと斥候活動もしておくべきだったのだ。
いや、むしろそれを考えてはいたが運悪く相手に先手を取られてしまっていたというのが正しいか。
焦らずに対処が出来て良かったと思う。
さて。では対処ついでにどうするかというと、とりあえずそのまま火の鳥もどきを追う事にした。
何せそちらの方がやりやすい。相手の力量がどの程度なのかがわからないと言っても、先程の『万条の仕手』よりは遥かにマシだ。
何故なら神社という拠点から出て行ったという事は、わざわざ混沌とした場に飛び込んでいったということである。
つまり条件は同じ。火の鳥もどきが第二の拠点を作ったりしない限り、お互いにアウェーでの戦闘になるという事だ。
拠点を作られていた場合はまた再び困る事になるが……あんなに目立つ姿なのだ、こちらも準備や対策もしやすいというもの。
ああ、もしくは今度こそ何かしらの交渉を試みてもいいかもしれない。どちらにしろ、次は火の鳥狙いか。
「昔の師匠も、あんな感じだったのかな……」
と、そんなことを呟いたとき。キノの現在位置の遥か遠くで黒い煙が上がっているのが確認出来た。
既に随分と山も下っていたからだろう、樹木も随分と少なくなってきたのでどうにか視界に捉えられたのである。
目算では零崎人識と共に食事をした場所に近い。スクーターを停止させると、急いで地図などをデイパックから取り出し確認作業に入る。
建物の規模から見て、ホテルだと考えるのが妥当か。現在から東に戻ればすぐに辿り付けるだろう。
丁度火の鳥もどきが飛んでいったのも東。そして燃え盛る炎。何か怪しい臭いを感じる出来事だ。
とは言え飛んでいる姿を目撃してからそう時間は経ってないので、もしかすると無関係であるのかもしれない。
しかしそれでも構わない。間違っていようとも、どうせ火の鳥もどきの進路を考えれば東に行くしかないのだから。
「ひとまずは現地に到着するまでに色々と対策を練らないとね……それじゃあ行こうか」
キノは、再び街の真ん中へと向かい始める。
ついでに今度こそ寝床も確保しておかないと、と考えながら。
【C-2/神社/一日目・日中】
【ヴィルヘルミナ・カルメル@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、カップラーメン一箱(7/20)、缶切り@現地調達、調達物資@現地調達
[思考・状況]
基本:この事態を解決する。しばらくは神社を拠点として活動。
1:今一度手早く付近に侵入者の有無を確認。安全確保が出来次第神社に戻り、大河に義手を取り付ける手術を行う。
2:神社を防衛しつつ、警察署に向かった御坂美琴とキョンの帰りを待つ。人員が揃うようなら、上条当麻の捜索も検討。
3:六時を目処に、仮眠中のインデックスとテッサを起こす。問題ないようなら、天体観測に同行。
4:シャナ、島田美波の帰還を待つ。
【C-2/山中(もうすぐ平地付近)/一日目・日中】
【キノ@キノの旅 -the Beautiful World-】
[状態]:健康
[装備]:トルベロ ネオステッド2000x(12/12)@現実、九字兼定@空の境界、スクーター@現実
[道具]:デイパックx1、支給品一式x6人分(食料だけ5人分)、空のデイパックx4
エンフィールドNo2x(0/6)@現実、12ゲージ弾×70、暗殺用グッズ一式@キノの旅
礼園のナイフ8本@空の境界、非常手段(ゴルディアン・ノット)@灼眼のシャナ、少女趣味@戯言シリーズ
【思考・状況】
基本:生き残る為に最後の一人になる。
1:火の鳥を追跡する為、まずは煙が上がっている方角へ。
2:夜に備えて寝床を探しておく。
3:エルメスの奴、一応探してあげようかな?
[備考]
※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
8巻の『悪いことができない国』の充電器のことは、知っていたのを忘れたのか、気のせいだったのかは不明です。
※「師匠」を赤の他人と勘違いしている他、シズの事を覚えていません。
※零崎人識から遭遇した人間についてある程度話を聞きました。程度は後続の書き手におまかせです。
投下終了です。支援、ありがとうございます。
投下乙。
いやあ、緊張感ある対話だった……w いつどう暴発するかヒヤヒヤしたw
悩みつつも遠ざけるヴィルヘルミナの判断が慎重だ。ここは一旦引く選択したキノも慎重だ。
このロワでは単純な敵味方の2色で物事を捉えない奴らが多いが、まさか純正マーダーと純正対主催でもこういう展開になるとは
別にヴィルヘルミナも「完全にクロ」と判断してるわけでもないってのがまた。
読み応えあるお話でした。
投下乙です。
すごく丁寧で緊張感ある対峙でしたねぇ……二人の持つ、頭のよさとすご味が増した感じがします。
そして、再び放浪しそうなキノ……w 次は誰と当たるのかw
GJでしたw
投下乙です。
予約の仕方からこうなるかとは思っていましたが……一対一のタイマンだー!w
とはいえマイペースキノとリアリストヴィルさんではストレートに論争とはいかず、か
各々の視点から描かれる思考が丁寧でいいなぁw なんともいえない緊張感を保ってる
キノもこれ、場を和ませてくれるエルメスがいたらまた違ったんだろうなあと思わないでもないw
そしてキノはホテル方向にリターンかー……神社は平和な気配だけど、一転して東が修羅場化しそうw
投下乙ですー。
キノとヴィルヘルミナの緊迫した会話がいいなぁ。
キノとヴィルヘルミナらしさが出ている交渉じみた会話が素敵w
結果キノは神社にいかないかー……さて、その結果どうなるかなぁw
次がきになるw
GJです。
投下乙です
どうなるかハラハラしながら読んだけど、この緊迫感はいいわ
二人ともらしいといえば凄くらしいわ
いやあ、ここまで深く書けるなんて凄いわ GJ
そしてキノは神社には向かわずにホテル方面か…
投下を開始します。
【生き残った話――(遺棄の凝った話) 後編】
ひゅうと、真っ白な太陽に照らされた明るい青色の空を風が勢いよく切って疾ってゆく。
風は暖かい空気と冷たい空気が作る見えないガイドレールに沿って進み、唐突に急降下。灰色の街の中へと落ちた。
落ちて、円筒形の塔のような建物の屋上にぶつかると、まるで水のようにその中へとするすると流れ込んでゆく。
ぐるぐると螺旋を描き、その中を大きく一周、二周、三周……壁に沿って風は降りてゆき、
そして、進むうちに勢いを失いとうとうただの空気の中に溶けるという寸前に、風は――そこに辿りついた。
一陣の風が少年の少し長めの黒い髪を揺らす。
「――それで、結局どうなったわけさ?」
幼い少年の声が広々としたコンクリートの床と天井の間に反響し、細波のように広がってゆく。
しかしその声はそこに、つまりはこの立体駐車場のとあるフロアから外を眺めている少年から発せられたものではなかった。
少年は街の景色から目を離すと、彼に声をかけた”それ”へと視線を移す。
大型の、こんな街中の駐車場には似合いそうもないオートバイが少年の隣に止められていた。
力強さを感じさせるV字型のエンジンに、凛々しい銀色のオイルタンク。引き締まった細身のタイヤに無骨なキャリア。
一見、新しそうに見えて、しかしよく見れば随分と年季の入ったものだとわかる”新陳代謝”を繰り返したその姿。
見た目だけなら厳格な年寄りを連想させるそれは実際には少年の声で少年のように喋るエルメスという存在だった。
オートバイではなくモトラドというらしいが、その違いや喋る理由なんかを少年は知らない。
「今ここにこうやって生きている。……というのが結局のところの精一杯の結果だった」
少年――トレイズは、エルメスを一瞥するとまた視線を外へと戻した。
その先、遠く離れた所には彼が先ほどまで中にいたひとつの警察署が存在している。
幾重にも死線が重ねられていたそこを見ながら、何があったかを反芻してトレイズはひとりごちるように言う。
「”彼”が”彼女”を連れて来てくれていなかったら、俺はあそこで死んでいた」
それは紛れもない事実だった。
結局のところ、あの中でトレイズが自分の力で何かを切り抜けられたかというと、そんなことはひとつもなかったのだ。
運良く生きているのは”彼女”が自分を助けてくれたからで、その彼女をあそこまで連れて来てくれた彼のおかげにすぎない。
「ふぅん。……それじゃあ、”必要”なものは手に入らなかったわけなんだ?」
適当な相槌を打つと、モトラドのエルメスは少し悔しそうなトレイズの横顔を見ながらいじわるそうな声をかけた。
しかし、ひとつ瞬きをするとトレイズはそれは違うと答え、掌を胸に当てて言葉を続ける。
「まず……”俺”が”必要”なんだよ。ここでリリアを守る為にはね」
それが小さな戦場を辛うじて生きぬいた少年が得た、今回の”必要の話”だった。
武器だとか乗物だとか、食料だとかものすごい財宝とかではなく、少年が少女を助けるのに必要なのは自分の命。
人を無残に殺害してしまう者を見て、それが途轍もない者ばかりだと知り、トレイズは改めてその大前提を認識したのだ。
自分を助けることができなければ、他のだれかを助けようとすることもできないのだということを。
ひゅうと、がらんとしたフロアの中を冷たい風が通り抜け、再び少年の少し長めの黒い髪を揺らした。
「それじゃあ、さっさとこっから離れちゃおうよ。そんな”キノ”みたいな人がいるってんなら命がいくつあっても足りないよ」
もっとも、その人がモトラドを大切にしてくれるならこちらとしては歓迎だけどね。と付け加えエルメスはトレイズに移動を促した。
ここで目を覚ましてからというもの、止まっているばかりで満足に走ることすら叶っていないのだ。
走ることが”生きがい”のエルメスとしてはリリアとかいう少女の捜索にかこつけて、道路を目一杯に飛ばしたいところである。
「”キノ”って、君のご主人様だっていう?」
「そう。でもって、君が警察署の中で会ったっていうおっかない女の人みたいにエゲつなく欲張りで強いのさ。
会ったらトレイズも殺されるかもね。あ、でも……エルメスを保護していましたって言えば見逃してくれるかも?」
拳を顎に当ててトレイズはふぅむと唸り声を漏らす。
こんな陽気なバイクに乗っている人物だから、そんなに危ない人だなんて想像していなかったのだ。
「ちなみにどんな人なのか聞かせてもらえるかい? キノってだけじゃあ男か女かも――」
「――それなら簡単」
鏡を見ればいいよ。と、エルメスはトレイズに自分のハンドルミラーを覗くよう促した。
【D-3/立体駐車場/一日目・午後】
【トレイズ@リリアとトレイズ】
[状態]:お腹に打撲痕、腰に浅い切り傷
[装備]:コルトガバメント(8/7+1)@フルメタルパニック、コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱、鷹のメダル@リリアとトレイズ、
[道具]:デイパック、支給品一式、エルメス@キノの旅、銃型水鉄砲
[思考・状況]
基本::リリアを守る。彼女の為に行動する。
0:まずはここから離れよう。
1:リリアを探して移動する。
[備考]
マップ端の境界線より先は真っ黒ですが物が一部超えても、超えた部分は消滅しない。
人間も短時間ならマップ端を越えても影響は有りません(長時間では不明)。
以上二つの情報をトレイズは確認済。
【Accelerator――(光速戦闘) 前編】
「超能力が欲しい?
なんでそんなことを唐突に――って、あぁそのベッドの端っこでズタズタになっちゃってるコミックスのせいですね。
まぁ、理由そのものは聞かないし、聞いたところであなたがそれを回答できるとは思わないのだけど、
とりあえずはそんなことは不可能だと断じてしまいましょうか。
超能力なんてこの世には存在しません。そんな空想的な力はそれこそ空想の中でしか存在しえないものです。
断言しちゃうなんてって……、
あなた私が質問をぶつければ望みのままの解答が出てくる便利な辞書か何かだと勘違いしているのではないですか?
私も”こういうもの”が専門でないので、ある程度は人づてに聞いたものでしかなくなるのだけど、
極論すれば人の知識というのは全て何づてでしかなくなるのだけど、”超能力がない”というのはもう覆せない事実です。
ER3……なんてあなたが知ってるわけもないでしょうけど。
ともかくね、世界中の研究者がそれこそ血眼になって超能力が見たい、欲しい、証明したいって、色々な人間を解剖した。
そう。解剖。あなたの乱暴なそれとは全く別のレヴェルの細心の、神経一本まで分解するとある科学の人間解剖よ。
例えば未知の電化製品があったとするでしょう?
その場合、原理を知るに手っ取り早いのはそれを徹底的に分解して部品をひとつひとつ検証して仕組みと法則を発見すること。
至極簡単な理屈で話でしかあるそれを、超能力を求める研究者達は”自称超能力者”達を実験台に実践した。
けれどもね、出てきた結果は――それは彼らはただの人間でしかなかったというただの事実。ペテンの超能力も含めてね。
何が言いたいかって言うと、人間の中身なんてもうとっくの、それこそ私達が生まれる前の時代には解明されてたってこと。
人間が何かを知覚し得る感覚は私達が知っている五感の他にはなかったし、人間が随意であろうとそうでなかろうと
作動させられる”部品”は筋肉の範疇にしか存在しなかった。”超能力器官などというものは人間の中にはなかった”。
ちなみに、五感というのはこの場合は5つの感覚でなく全ての感覚という意味です。
無数にいる神様を八百万(やおよろず)のって言うのと同じことよ。
あなたからツっこまれるとは思わないけど、人間の感覚は分類すれば両手の指じゃ足りないぐらいあることは名言しとくわ。
あの子は超能力じみた技を使っているじゃないかですって?
今日は随分と食いつくのね……わからない話をすれば飽きるのかと思ったのだけど。
けど、あなたにしたって普通の人間じゃあできっこない芸当をしてみせるでしょう?
私達やこちら側の世界に踏み入れたものは、人間に人間の規格を越えさせる方法を知っているし、実践もしている。
車より早く走る人間もいるし、素手で鉄を捻じ曲げる怪力もありうるし、空を飛ぶように移動することすら不可能ではない。
けれども、人間の規格は超越していても、人間の存在から外れているものなんて存在はしない。
自分達が振るう、”規格外能力”が”超能力”じゃあないなんてこっち側にいれば誰でも知っていることでしょうに……。
じゃあ脳の中には未知の部分が残されているって?
フィクションの中じゃあ定番だし、あなたの持っている漫画にもそう書かれていたんでしょうけどお生憎様。
脳ミソの中だって、とっくに”解析済み”というのがここ最近の話よ。それも件のER3の功績らしいんだけどもね。
しかしこの前の魔法少女になりたいというのもそうだけど、あなたは意外と華々しいものを求めたりするのね。
ええ、そうね。この前はその魔法、魔術というものを完璧に断絶し否定してしまったわね。
その名を自分に冠したり、それそのものを使用してみせるって者も数多くいるけど、私の基準では全てそれは魔法と言えない。
決められた道具を用意し、場面を整え、作法に法り、現象を発現せしめる。それって手品とどう違うんですか?
そんなもの、そこから火が上がろうが、雷が落ちようが、神様を殺したって――私から見れば全部、ただの”策”です。
現実以外の何者でもない。
その気にさえなれば、どことなりから科学者と機材を調達してあなたの脳ミソに電極を刺し、血液以上の量の薬品を投与し、
何度も何度も血反吐を吐いてのた打ち回らせ、とても割りに合わない実験を幾度も繰り返し、人間を作りなおすことで、
あなたを電子レンジ要らずの人間くらいには”改造”できますけど、それはやっぱりあなたの言う超能力者ではないでしょう?
結局ね。辿りついてしまえばそこにあるのは幻想殺しだけ。後に残るのは経験則と、それを利用する為の策だけです。
さてと、それじゃあ私はまたメールを作る作業に戻りますから、これ以上時間をとらせないでくださいね。
それとその漫画を貸してくれた子には礼儀正しく謝っておくように。
一応は私の監督下にいるわけですから、私に責任の及ぶようなことは慎むよう……せめて、時折思い出すぐらいはしてください。
……えーと。お兄ちゃんへ。お兄ちゃんって超能力は信じますか? 私は友達から聞いたんですけど――……」
■
真夏の夜に街灯の下を歩けば聞こえてきそうな、羽虫の羽ばたくような音がそこに充満しつつあった。
いや、それはますますと強さを増し、今となっては壊れかけた冷蔵庫でも置いているのかとそんな音が満ちつつある。
一体どのようなことが起きているのかというと、それはそこを一見すればまさしく一目瞭然だった。
床を、壁を、天井らを舐めるように、大小様々の青白い電気の束がゆらゆらと蠢いている。
少しばかり科学の知識がある者が見たならば、”テスラコイル(共振変圧器)”みたいだと思ったろう。
だがしかし、そこにあるのは決して機械などではない。それもまた一目瞭然。そこにいるのは一人の少女であった。
超能力を信奉する20年先を行く学園都市。そこで開発に勤しむ230万の生徒の内、序列3位に立つ超能力者。
彼女を知る者は、御坂美琴を知る者はただ彼女のことをこうとだけ呼称する。つまりは――
――超電磁砲《レールガン》だと。
自分の前に立ちはだかる電撃使い《エレクトロマスター》たる存在を確認し、朝倉涼子は驚愕に目を見開いていた。
警察署の壁をぶち抜いた先程の一撃にしても、イオンの匂いから電流を用いたものだと判別してはいたが、
実際にただの人間からありえない量の電流が放出されているのを見させられると驚くほかはなかった。
「(……あぁ、でも本当は人間じゃないかもしれないって可能性もあるわよね)」
未確定事項は保留とし、朝倉は刀を構えながら電撃使いの少女――御坂美琴より距離を取るように足を動かす。
その手元ではしっかり握っているはずの刀がカタカタと音を鳴らして振動していた。
別に恐怖や何かで朝倉自身が震えているわけではない。美琴の作る電界が金属である日本刀に干渉しているのだ。
「(さてと、接近戦を挑むのは危険性を考慮すると控えたほうがいいかしら)」
朝倉は移動しながらフロアを一瞥し、バトルフィールドの設定条件を今一度確認する。
警察署の玄関ロビーからひとつ進んで建物の奥側に近いここは、いわゆるオフィスワークをする為の一角らしい。
元々は広々としていたであろう空間は衝立で区切られ、棚や事務机が所狭しと並べられて雑多な印象をかもし出していた。
今、朝倉が立っている場所はそれらを背にした廊下であり、右手には玄関。左手には階段という配置になっている。
そして、正面。まんじりとした視線で朝倉を追う美琴が陣取っているのは、ついさっきまでは休憩所だったスペースだ。
今は吹き飛ばされた壁の破片で灰色一色に上書きされており、その名残というと横倒しになった自販機くらいなものである。
「(浅上さんはどうかしら? ――と、また”駄目”になってる)」
柱の影に隠れるようにして……いや、実際に隠れてこちらを窺っている少女――浅上藤乃を見て朝倉は溜息をついた。
彼女には”歪曲”という非常に強力な能力があるが、しかし使用できるタイミングとそうでないタイミングが存在する。
理屈を飛ばして端的に言い表せれば、無痛症である彼女に痛みが戻ってきているか否かとそれだけに過ぎない。
そして、柱の影で小動物のように怯えている彼女は痛むのであれば押さえているはずのお腹を押さえてはいなかった。
とすると現在の彼女に痛みはなく、当然の帰結として”歪曲”も使用できない。戦力にもならないと他ならない。
「(今回は色々と問題が出てきそうな感じよね。また苦労が重なっちゃうわ)」
状況を確認すると朝倉は足を止め美琴と正対し、不敵な笑みを浮かべて相手からの攻撃を待ち受ける構えをとった。
相対する美琴は朝倉が足を止めたのを見て、どうやらやる覚悟が整ったのだと覚った。
「(私のこの力を見ても逃げ出さないってことは……やっぱり、只者じゃあないのよね)」
先にここから逃したキョン曰く、彼女の正体は”物凄く強くなんでもできる宇宙人”だ。胡散臭いにもほどがある。
もっともそんな言い方をすれば自分だって似たようなものだと思いつつ、美琴はその言葉をある程度は信用することにした。
さっさと物陰に隠れてしまった方に関してはよくわからないが、向かってこないならいいと今は捨て置く。
「――あんた、宇宙人なんだってね」
だったら多分、手加減はしなくてもいいはずだ。
殺さないというのはこれで難しいものだが、ついさっき一撃を食い止められたこともあるし、もうそれは考えなくてもいいだろうと、
額の先から10億ボルトの電撃の槍を宇宙人へと向けて、容赦なく――発射した。
発動の瞬間。身体に感じる圧が強くなり、高速現象を知覚しようと処理能力を上げていた朝倉の前で電撃が迸った。
自身の認識の中で、空気中を泳ぐようにゆっくりと近づいてくる電撃に対し、朝倉は持っていた刀を投げつける。
最初に行った毛虫の死骸を使った時のように、電流は何かに流してしまえばそのエネルギーの大半は消耗させられる。
ならば、電撃を放たれる度に適当な避雷針を用意すれば簡単に対処できるだろうと朝倉はそう考えたのだが、
「(――嘘っ!?)」
彼女の目の前で、美琴の放った電撃が”刀を避けて”ぐにゃりと曲がった。
自然界ではありえない軌道で避雷針を迂回した電撃の槍は驚愕する朝倉へと突進し、そして彼女はそれを避けられなかった。
「おっし!」
見事に電撃の槍が相手に突き刺さったのを確認して、美琴は小さなガッツポーズを取った。
彼女は電撃使いである訳だが、その名の通り電撃を発するだけでなく、電撃を”操作”することができるのだ。
一度は避雷針でガードされたのだが、だからこそ相手は次もそれで凌ぐであろうという美琴の予想は見事に当たり、
電撃もまた予想通りに命中した――かのように見えたのだが、
「――嘘っ!?」
電撃を受けたはずの朝倉は崩れ落ちることなく、それどころか”右手を突き出して”悠々とその場に立ち続けている。
どうやらその白煙をあげる右手で電撃を受け止めてしまったらしいと知り、美琴の心臓がドクリと嫌な音を立てた。
まさか、あれはあらゆる異能を打ち消してしまうあの幻想殺し《イマジンブレイカー》なのか?
「(そんな力を持ってるのが何人もいるわけないでしょうが……っ!)」
再び美琴は電撃の槍を放つ。深く集中し、確実に相手の身体を打ち貫くようにと。
だがしかし、またしても電撃は朝倉の右手に吸い寄せられ、そこで受け止められてしまった。
「(一体、どんな情報操作をすればこんな無茶苦茶な電撃が放てるのかしら?)」
美琴の放つ電撃を右手でキャッチしながら、朝倉は彼女の能力の出鱈目さに呆れ果てていた。
大電流を放出することもそうだが、何よりこうも意識的に電流を操作できることが常軌を逸している。
「(確率そのものを認識により意図した結果に収束させる? なんにしても人間の能力としては考えられない)」
そして、更に放たれてきた電撃を右手で受け止める。
この”右手”であるが、別に朝倉に幻想殺しが宿ったなどという訳では、勿論だがない。
彼女の取っている方法は至極単純なもので、右の掌の電気抵抗を極限にまで高めその部分を盾にしているのである。
的確にトラップできるのは彼女が制限なく操作し得る情報空間内に電流を誘導する仕掛けを施しているだけであり、
それにより飛んでくる電撃を右手で受け止め、焼き切れた瞬間に再構成することで攻撃をガードしているのだ。
「(……しかしこれじゃあジリ貧よね。彼女の能力がどれくらい持つのかわからないけど、なんだか押し負けそう)」
一見余裕に見えるが、朝倉としては厳しい状況だった。
右手の電撃殺しはスマートな方法に見えるが、実際はそこまで節約しないととても追いつかないというだけにすぎない。
もし彼女の能力が万端なのならば周辺空間を丸ごと操作すればいい話で、しかしそれは制限のある現在は不可能である。
情報統合思念体とコンタクトできない今、攻性情報の補給も不可能であり、スタミナ勝負は避けたいところだった。
「(状況を動かさないとね――)」
朝倉はまた一発の電撃を右手でいなすと、大きく背後へと跳躍し事務机が固まっている上へと着地した。
革靴の底がトンと軽い音を立てると同時にまるで花弁が開くかのように周辺の机の引き出しが全て飛び出す。
そして、花の中から種子が飛び出すかのようにありとあらゆる文房具が浮かび上がり、光の槍と変じて――射出された。
ステンレス鋏。物差し。シャープペンシル。クリップ。関数電卓。ペーパーカッター。ステープラー。テープ台。筆箱。消しゴム。
鉛筆。インクカートリッジ。ポストイット。マグネット。ネームペン。アルミ定規。ダブルクリップ。安全ピン。スティックのり。
マグネットシート。鉛筆立て。木工用ボンド。瞬間接着剤。修正液。カッターナイフ。コンパス。分度器。パンチャー。
千枚通し。ラジオペンチ。紙ヤスリ。鉛筆削り。etc.etc. ――あらゆる文房具が凶器となり、美琴へと殺到する。
「こんなものっ!」
反撃に驚きはしたものの、殺到した光の槍を全て自身からの放電で叩き落すと、美琴は心の中で安堵の息を漏らした。
多分あれは幻想殺しではないと、だんだんと感触で解ってきたのだ。相手が反撃に出たのもその材料になる。
そしてその反撃も別に対したことはなかった。
光の槍は電撃に叩き落とされると、どれもあっけなく元の文房具へと戻ってゆく。
「(物質操作系? テレキネシス……いや、変質がその正体。レベルは……3、4程度。うん、これなら問題無し)」
美琴は片手を振ると、床の上に散らばった文房具の中から金属製のものだけを磁力で手元に引き寄せた。
そして、磁力で連結した文房具の鎖をしならせると、蛇腹剣のように朝倉へと叩きつける。
超振動の唸りをあげる鎖剣は朝倉が立っていた机を易々と切り裂き、そこから更に文房具を足して逃げる朝倉を追いかける。
9つの机に、壁一面のロッカーを全滅させ、衝立と書類棚を5つずつを破壊して、数秒後。遂に鎖剣は朝倉を捉えた。
「(ほらやっぱり!)」
フロアの端にまで追い詰められた朝倉は、辛うじて切り裂かれるのを防ぎ、右手で鎖剣を掴んで押さえている。
あれが本当に幻想殺しならば、触れた時点で鎖剣は解けているはずなのだ。しかしそうはなっていない。
超振動による切断は防いでいるようだが――と、美琴はそこで不思議な感触に気づいた。
「(侵食――?)」
現在、鎖剣を互いに引っ張り合っているような状況だが、どうやら向こうの手元から物質の主導権が侵食されているらしい。
やはり相手の能力は物質変質系かと確信し、能力による綱引きをしながら美琴は次の一手をどう打つか思案し始めた。
「(ああ、もうどうにもならないじゃない……!)」
どうにか文房具の鎖越しに相手まで能力の手を届かそうと朝倉は力を込めたが、しかしそれが叶うことはなかった。
侵食されると覚った美琴があっさりと電磁力による鎖を解いてしまったからだ。
悔し紛れに文房具を飛ばしてみるも、叩き落されただけで、その後に残ったのはフロアの端と端という距離だけである。
「(遠距離じゃあ距離に制限のあるこっちには決め手がない。
とはいえ、近づこうにもあの電撃の雨は掻い潜れないし、近づいても電撃を防御しながらは戦えないし……)」
朝倉の額に焦りからくる汗が浮かび頬を伝った。
先の放送で長門有希を倒しうる存在がいると認識したはずだが、実感まではしていなかったようだと今更ながらに知る。
どうやら目の前の電撃使いを打倒することは自分では難しいらしい。
逃げに徹すればおそらく逃げ切れるだろうが、しかしそれではせっかく得た協力者を失うことになってしまう。
いや、師匠などは間違いなく敵に回るだろうから失うだけではすまない。
それは避けなくてはならない。でなければ孤立無援に陥ることになり、その結果、自身の命も目的も全て水泡と帰してしまう。
「(――――あら? 運が向いてきたかしら)」
朝倉は、柱の影から”お腹を押さえながら”出てきた浅上を見つけ、顔面に喜色を浮かべた。
彼女の顔はすでに殺人鬼のそれになっており、わざわざ情報解析するまでもなく能力が使える状態なのは明らかだ。
あの電撃使いに対し、距離と防御を無視する”歪曲”が加われば戦いの天秤は引っくり返ること間違いない。
額に浮かんだ汗を情報操作で揮発させると、朝倉は指向性を持たせ浅上にのみ届く声を発して彼女に話しかけた。
「(…………何を始めようっての? それとももう降参ってわけ?)」
当然、床の上に降りてひれ伏す格好をとった朝倉に対し、美琴はわけがわからないと攻撃を中断していた。
こちらに頭を下げ、両手をぴったりとついている様は土下座しているようにも見えるが、実際その通りなのだろうか?
果たして向こうがそんな相手なのかという疑問もあり、電撃で気絶させるのが手っ取り早いかと美琴が考えたその時、
自身に不可思議な力がかかり始めていることに気づいた。
「(――曲がる?)」
今までは気にもとめていなかったあの陰気そうな少女が柱の影から出ていると気づいたのはその瞬間だった。
サイコキネシスだろうか? いや、何にせよ攻撃を受けている。それも一瞬で終わるものだ。ならば逃げなくてはならない。
「(嘘っ!?)」
なのに足が動かなかった。まるで”床に張り付いてる”ようだと思ったところで美琴は全てを覚る。