1 :
創る名無しに見る名無し:
じゃあ最初のお題は「カレーライス」で
新スレ立て乙
常駐するさー
じゃあ早速いくつかお題を置いておきますね
「学び舎」「時雨」「心変わり」「七五調」
人がいたら皆で一つのお題とかやるかー
4 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/10(木) 21:22:24 ID:NhG0158g
お題「心変わり」
吉田氏は自身の特殊な性癖に悩んでいた。彼は幼い少女しか愛せなかったのだ。
ある日、彼は奇抜な発明で知られる世界的な権威、加藤博士の噂を耳にする。博士なら自分の悩
みを解決できるかもしれない。そう思った彼は、さっそく博士の研究所へ向かった。
「ふむ、つまり君はその性癖を治してほしいのかね? ならば私より医者かカウンセラーのところ
へ行くべきだと思うのだが」
説明を聞いた博士は困惑気味にそう言ったが、吉田氏はその問いにかぶりをふった。
「いいえ。私はロリコンであることが嫌なわけじゃないんです。ただ、今の社会では私の欲求が満
たされないのが辛いのです」
「というと?」
「私のような四十代のおっさんが未成年に手を出せば犯罪ですし、第一彼女達に相手にしてもらえ
ません。そこで、私が幼女達と同じ年代に見えればいいと考えたのです。そんなことを実現する発
明は可能でしょうか?」
吉田氏の悲痛な訴えを聞いた加藤博士は、しばし躊躇してから告げた。
「そういうことができる装置は、実は既にあります。しかし……」
それを聞いた吉田氏は躍り上がるように喜んで博士の手を握った。
「ぜひ、それを使わせてください!」
「しかし、装置は試作品ですから、一度使ってしまうと効果は消せません。心変わりしても元には
もどせませんよ? それでも良ければこのスイッチを押してください」
「心変わりなんてしませんとも! ああ、まるで夢のようだ!」
そう言って吉田氏はスイッチを押した。
その瞬間、全世界の幼女は四十代にまで老け込んだ。
吉田氏カワイソスw
6 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/17(木) 11:51:09 ID:C16/6Ih3
エンゼル松井
根本的に解決してないw
吉田氏ガンバレw
とあるお菓子メーカーでのこと――
「最近、マンネリだとは思わんか?」
企画部長のその一言が、俺の冬休みをかき消す事になるなど、その時
の俺には知る由もなかった。
「……何がですか?」
「金と銀だけでは、プレミア性が維持できんとは思わんか?」
「ああ、アレの事ですか」
アレはわが社のヒット商品だ。マスコットキャラの造形が受けた事も
あるだろうが、それ以上にアレをヒットさせたのは、金の天使と銀の天使
の存在に他ならない。
「ですが、アレはアレですでに安定しているわけですし、新規開拓は新商品
で行った方がいいのではないかと……」
「その考え方が甘いといつも言っとるだろう!」
……今日はじめて言われたのだが。まあ、抗弁しても仕方が無い。倍に
なって返ってくるだけだ。
「安寧の中にある事で、人は堕落する。菓子もまたしかり!」
……菓子としかりがかけてあるような気配もしたが、スルーしておこう。
「では、何か企画でも?」
「ああ、その通り。これを見ろ」
企画部長は、手に持っていたスポーツ新聞を俺に差し出した。
「……なになに? 棚橋、プロ野球に挑戦……か?」
「それではない! ここだ!」
「……松井、LAエンゼルスと正式契約……これが、な、に……まさか!?」
「そうだ! 金銀に続いて、今度は赤! エンゼルス松井を金銀に加える!」
………………俺は開いた口がふさがらなかった。
「メジャー球団とのタイアップ広告だ! これはプレミア性がグーンとアップ
するに違いない! どうだこの企画は!」
まさか、エンゼル松井とか言われてるのをそのまんま実現しようとする
馬鹿がこの世にいたとは……しかも、それが自分の上司だったなんて……。
「……あの、予算とか、そういうのは?」
メジャー球団との交渉が必要になる企画だ。当然、相応の予算が必要に
なるだろうし、それについてはある程度の試算は出ているのだろう。でなければ
企画として交渉畑の俺に部長が持ちかけてくるはずが無い。
「これだけだ」
「………………」
俺はまたしても絶句した。とてもではないが、メジャー球団との交渉に
足りる額ではない。というか、アメリカに渡航して帰ってくる事を考えれば、
一週間もアメリカに居られない、その程度の額だ。
「まあ、足りない分は君が努力と根性で補ってくれ」
「………………」
三度の絶句を了承と勘違いしたのか、部長は笑いながら部屋を出て行った。
おい、待てよ。
まさか、これ、俺が一人でやるのか!?
三日後――
俺は成田空港にいた。あの後、予算増額とサポートの人間をつけてくれる
ように会社に掛け合ったが、答えは残酷なものだった。
「まあ、ぶっちゃけうまく行くとは思ってないし、あの部長が納得したらそれでいいよ」
……おい、ちょっと待て。どういう事だ? 俺はつまり、あの部長が強行し、
会社がしぶしぶギリギリの額を出し、その結果としてここにいるわけか?
やりもしないのではあの部長が納得しないだろう、とかそういう理由で?
……それでも、俺に拒否権はなかった。哀しいかな、この前住宅ローン
減税にかこつけて、持ち家を買ってしまったばかりだ。今首になるわけにも、
辞表を叩きつけてやめるわけにもいかない。
だが……成田に来て、広く大きい空を見ていると、なんだか俺の心には
闘志のようなものが沸き上がってきていた。
……やってやる。誰も期待していない(除く部長)なら、逆にやってやる!
俺は闘志を胸に秘め、空へと飛び立った――
一年後――
果たして、彼の尽力により、第三の天使「エンゼル松井」は誕生するに至った。
が。
その造形の不細工さ、販促グッズのデザイン失敗、その他諸々の理由から、
半年でその姿を消す事になったという。
彼がその時どう思い、どのような言葉を残したか――それは、誰も知らない――
終わり
※ このSSは、言うまでもなくフィクションです。実在の製菓会社とは一切関係ありません。
ここまで投下です。
お題「エンゼル松井」頂戴しました。
11 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/20(日) 15:41:59 ID:pjYZQ9zm
エンゼルwwwww
でも、たまにこういう馬鹿なことを本当にやる企業があったりするから困るw
12 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/11(月) 20:30:32 ID:T6lPhpmQ
誰か見てたらお題創作しようぜ
お題「肉球」
14 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/11(月) 20:47:44 ID:T6lPhpmQ
人いたw
まだ廃墟じゃなかったかw
15 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/11(月) 23:04:13 ID:T6lPhpmQ
その村には、一人のめくらが住んでいた。あまり人と交際を持ちたがらぬ男で、村のはずれの小
さな小屋で寝起きする彼がどんな暮らしをしているのか、村の衆は誰も知らなかった。
ある日のこと、庄屋の娘が、ふとしたことで一緒に遊んでいた子供達とはぐれた。あちらこちら
と仲間を探し回るうちに、娘はめくらの家の前に立っているのに気づいた。めくらは得体の知れぬ
奴だから、関わり合いになってはいかん。親から常々そう言い聞かされていた娘は、なんだか恐ろ
しくなって、すぐにでもその場を立ち去ろうとした。その時である。
「もし、そこにどなたかいらっしゃるのでは?」
しわがれた、卑屈な声だ。娘はハッとして振り返った。
立っていたのは、痩せた、鼻の尖った男だ。若くも見えるし、還暦を過ぎた老人にも見える。両
の目は閉じられたままで、その手には節くれだった木の枝のようなものが握られていた。おそらく
杖なのだろう。
めくらだ。聡明な娘はすぐに察した。
「私に何か?」
「おや、小さな娘さんじゃあないですか。なに、ここにはめったに人が来ないもんですから、何事
かと思っただけです。ひょっとして道に迷ったのでは?」
その通りである。最初は仲間とはぐれただけだったのだが、歩き回るうちに迷ってしまって、こ
んな見知らぬ所にやってきてしまったのである。
「そうですか。ならば私が送っていって差し上げましょう」
話を聞いためくらはそう言った。めくらは不気味な男ではあったが、娘は彼のどこかに信頼でき
るものを感じていた。娘は申し出を受け入れた。
16 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/11(月) 23:04:46 ID:T6lPhpmQ
家に帰る道すがら、娘はめくらと色々な話をした。大変楽しい会話だったはずだが、娘はそれら
の話のほとんどを忘れてしまった。後々まで覚えていたのは、猫の話だけである。
「肉球?」
「そう、猫の足の裏には肉球というのがありましてね、これが大層気持ちよい触り心地なのです」
娘は、猫の足の裏を見てみようなどと考えてみたこともなかったし、無論それの触り心地などは
知らなかった。
「そんなにいいものなの。私も触ってみたい」
「すぐにでも、と仰るなら、私によく懐いてる猫がおりましてね、呼べばどこへでも飛んできます
よ」
名前を呼んだだけで、どこへでも現れるというのは妙な話だったが、早く肉球に触りたくてたま
らない娘は、そんなことにはまるで気づかなかった。
「ただ、その猫は変わった奴でしてね、人に自分の姿を見られるのを嫌うんです。目を開けた人間
の前には決して出てきません。だから私にしか懐かないんですが」
だから目を閉じろ、とめくらは言う。娘は言われるがままに目を瞑った。
「それからもう一つ。こちらから手を差し出してやれば、向こうから肉球を触らせてくれますが、
奴の体の肉球以外の部分には決して触れてはいけません。なぜか、すごく嫌がりますからね。途中
で目を開けるのもいけませんよ」
随分と注文が多いと思ったが、話はそこまでだったようで、めくらは大声で、ナントカという猫
の名前を呼んだ。
17 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/11(月) 23:05:19 ID:T6lPhpmQ
しばらくじっとしていると、近くに何かが寄ってくる気配が感じられる。
「奴が来ましたよ。ささ、娘さん、お手をお出しください。」
娘がそろそろと手を前に出すと、やがて何か柔らかい物が指先に触れた。恐る恐るそれを撫でて
みると、プニプニとした感触が大変よろしい。娘はしばらく夢中でそれを撫で回していた。
猫がニャアと可愛らしい鳴き声をあげたところで娘はふと思った。めくらはああ言っていたけれ
ども、この猫とて猫である。背中を撫でてやれば喜ぶのではないか。自分ばかりが気持ちのよい思
いをするのも心苦しい。そうだ、背中を撫でてやろう。娘は背中があるはずのあたりに手を伸ばした。
ザクッという音がした、と後に娘は語っている。おそらく、実際にはそんな音はしていないだろ
う。ただ、手のひらに突如として痛みが走った時、彼女の精神が音を感知したに過ぎまい。
とにかく、猫の背中には決してあるはずのない鋭い何かが彼女の手のひらに刺さり、血が流れて
いるのを娘は感じた。驚いた彼女は、めくらに言い含められたもう一つの禁のこともすっかり忘れ
て、慌てて目を開いた。
娘がそこで何を見たのか、正確なところは知る由もない。強すぎる精神への衝撃が、この時の彼
女の記憶の大部分を奪ってしまったのだ。ただ、それが猫でなかったのは確かだろう。娘は、自分
を見据える二つの光る目だけを覚えていた。
娘は悲鳴をあげて、その何者とも知れぬ獣から逃げ出した。獣は娘に向かって吠えてくるが、も
はや先程の可愛らしい猫の鳴き声ではなく、甲高い、底冷えのする声だったという。後ろでめくらが何事か叫んでいたが、もう娘の耳には入らなかった。
泣きながら家に帰ってきた娘は、熱病にかかって寝込んでしまった。一月ばかりうなされ続けて
ようやく熱が引いたが、娘の目はもう物を見ることができなくなっていた。
病が治っても、娘は何も語りたがらなかったが、庄屋は根気よく事の顛末を聞き出した。娘は嘘
をつくような子ではない。それに、あの胡散臭い、不気味なめくらであれば、物の怪の類と通じて
いても不思議はない。
その夜、村の若い衆は大挙してめくらの家に押し寄せた。そして、めくらをなぶり殺しにした後、
小屋に火を放った。
件の獣も随分探し回ったが、結局その行方は誰も知らない。
おお、何か少し昔のお話って感じで、雰囲気が独特だね。
語り口がちょっと文語的(?)で、面白かった。
色々想像をかきたてられるな。
19 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/20(水) 00:23:04 ID:P5G/+JYU
新お題カモン!
新という文字を見て一番に思い浮かんだもので。
つ「お新香」
21 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/20(水) 21:55:06 ID:P5G/+JYU
吉野家で晩飯を食べていた。その日は、野暮用を片付けているうちに随分遅い時間になってしま
い、ひどく腹が減っていたが、注文したのは、いつも通りの並盛りだった。金がなかったのだ。
私が牛丼を掻き込んでいると、U字テーブルの向かい側に、一人の男が座った。四十過ぎの背広
の男だ。
私は時たま、こういったことを察してしまうのだが、彼は尋常な者ではない。只ならぬ人間の持
つ只ならぬ気配というのは、隠そうと思って隠せるものではない。彼は、確かに異様な空気を纏っ
ていた。
店員が来て注文をとる。彼は一言、「お新香」と言うと、それきり黙ってしまった。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
そう、店員が尋ねても、僅かに頷くばかりである。
もはや明白である。彼は只の客ではない。彼が何の目的で、吉野家H駅前店にやってきて、そし
て、お新香を注文するのか。私にはわからない。私は傍観者であることしかできない。だが、その
吉野家の他の誰がわからなくとも、私にはわかっていた。彼は私の日常を終わらせる人間だ。
店員がお新香を運んでくる。彼は身じろぎもしない。いつまでも、机上のお新香を見つめている
ばかりである。
彼は食べないのだろうか。ならば、何故お新香を注文したのだろうか。様々な疑問が私の頭を駆
け巡った。そうして、最後に私はある決心をした。
「お新香、食べないんですか?」
私は彼に尋ねた。彼は一瞬、訝しげに目を細めてから、ぼそりと言った。
「食いたいなら、お前が食ってもいい」
彼は、私の方にお新香の皿を差し出すと、会計を済ませて出て行ってしまった。
お新香はうまかった。
幾日か経って、またあの吉野家に行った。だが、そこにもう吉野家はなかった。店は閉められて
いて、今度は散髪屋か何かになるらしい。
私は辺りを見渡してみて、近くにあった松屋に行くことにした。
謎が謎を呼ぶw
23 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/21(木) 20:49:19 ID:uSq2yB1O
お題↓
24 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/22(金) 20:48:44 ID:IYLcvbGx
唇
妖怪「たらこ唇」
電子網に生息すると言われる妖怪。
姿かたちは鵺のように不明なところが多いが鵺と違うのはたらこ唇だと言う点だ。
時にはアメンホテプの姿だったりと時には公家の姿をしていたりと・・・
時々、騒動を起こしたりする。
幾多の霊能者が調伏しようにも実態が掴めず退治できないままであった。
特徴としては殆ど他人の物であるという点と極めて本体が隠匿されている点である。
嘗ては自らの領地を持っていたがあまりにも調伏しようとする輩が多かったため
領地を他人に任せてどこかへと隠れてしまった。
調伏すれば世が良くなるという霊能者も居るが却って悪鬼悪霊がほかへ散らばってしまうと言う
意見も出ている。
見方によっては良い妖怪と言われる事も在る。
26 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/24(日) 20:31:01 ID:jf0OiDz/
おいwww
27 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/24(日) 21:01:10 ID:oAge+NoN
これはwww
一行目で一発連想して、続き読んだらその通りで激しく吹いたwww
彼女は樹の前でたたずんでいた。
風が彼女の袴の袖を撫でると、同調するかのように頭の上で結んだ長い黒髪がゆらゆら揺れる。
腰に差す一本の刀。それは彼女の美しい姿にとても似合っているようでもあり、まったく似合っていないようでもある。
「花がお好きなんですか?」
僕は恐る恐る話しかけてみた。
「この花は私の名前の由来なんだ。」
交わした言葉はそれだけだった。
それからどうしたのかまったく覚えていない。
いつの間にか僕は去ってゆく彼女の後姿を眺めていた。
ただ鮮明に残っているのは、この桃の花と同じ色をした、綺麗な彼女の唇。
30 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/24(日) 22:23:54 ID:oAge+NoN
無限桃花たん北!!!!!!!!!!!
俺の嫁!!!!!!!!!!!!!!
桃花……投下乙!w
ふくつしぃ・・・
しかし、雑はたまにこういうことがおこるから侮れないな
34 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/01(月) 18:02:15 ID:UEdTsJJi
そろそろ新しいお題を↓
35 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/01(月) 23:48:22 ID:7m9d3sk7
円周率
36 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 01:10:36 ID:IFU+P2Lu
人は、年齢を重ねるに応じて、相応の考え方をする。これは自然の摂理であるから、ものの考え
方というのがいかに自由に見えようとも、その本質は不如意である。時間は、常に新しい世界を与
え、そして古い物語を奪い去っていくのだ。誰の人生にもそういったことは起こり続けている。無
論、私にも。
中学に上がったばかりの頃だ。私は数学の授業を受けていた。何もかもが新しい概念ばかりで、
かつて知っていた算数とはまるで違う。目の前に巨大な壁があって、異質な何かを要求していた。
論理的思考というのは考える主体に束縛されぬ普遍的大系であると、一般にはそう考えられてい
る。だが、これを試みるのが現実の人である限り、思索の中には必ず年齢の呪縛がたち現れる。そ
の時も、天啓は突然降りてきた。
「円周率はπとする」という一文が目に飛びこんだ。π、すなわちパイである。確かに、私は以
前より少しだけ年をとって、中学生らしい考えをするようになっていた。当然、私は――多くの男
子中学生がそうであるように――「パイ」という読みから、おっぱいを連想したのである。ここで
言うおっぱいとは、勿論女性の胸部の膨らみを指す。この連想は私を興奮させた。いや、私の魂を
動揺させた。
私は恍惚としておっぱいを夢想し続けた。幼女のおっぱい、ロリのおっぱい、やせっぱちなお姉
さんのおっぱい……。僅かな膨らみと強い張り……。どうやら私は貧乳好きだったようである。も
はや授業どころではなかった。
以前はおっぱいにこれほど心を奪われることはなかった。とすれば、私の中で何か重大な変化が
起こっていたのは確実なのだが、当時の私には、それに気がつく余裕はなかった。無論、おっぱい
に夢中だったためである。
好きだったアイドルの服を脱がし、おっぱいを鑑賞する妄想の最中に、友人に声をかけられた。
いささか不機嫌になりながらも、意識を現実へと引き戻す。授業はいつの間にか終わっていた。
席を立ちながら、私は深い充足を感じていた。それがどこから来るものか、その時はわからなか
った。だが、今ならわかる。確かな成長が、そこにはあったのだ。
数学はわからなかった。
パイ乙
40 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 21:06:25 ID:IFU+P2Lu
もう一個お題プリーズ
じゃあおっぱいで
おっぱいwww
初期のGでもそんなお題あったなあ
バインバインや おっぱいバンド
44 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 22:00:41 ID:IFU+P2Lu
おっぱい
おっぱいを触ると、僕は幸せになる
柔らかい肉に、尖った乳首
巨乳もいいけど、やっぱり貧乳がいいよ
浮き出た肋骨も、僕を見つめている
僕が「貧乳」って言うと、彼女は怒っちゃうのさ
でも、今僕は悲しい
おっぱいを揉ませてくれる娘がいないから
か、悲しいッ……! 悲しすぎるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!
46 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 23:22:05 ID:HZQdbdpX
次「そんな大きなものぶら下げても重いだけじゃない」
三「はっきり言いなよお姉ちゃん、貧乳で悔しいですって」
長「こらこら、ふたりとも何もめてるの?」
次「姉ちゃん! こいつがあたしの胸のこと……」
長「そう……ねえ三ちゃん、ただ大きいだけじゃだめなのよ
私みたいに体のバランスがとれたちょうどいい大きさのおっぱいが求められてるのよ」
三「ええーそんなことないよー、だってクラスの男君が」
次「二人とも、 殴 っ て い い で す か ? 」
おっぱい
47 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 23:28:49 ID:IFU+P2Lu
次女は貰っていきます
お題「最初は誰かのつまらない冗談だった」
彼が彼女と会うのは初めてだった。
しかし彼女の名前は知っていた。
顔も声も知っていた。
その美しい歌声を知らない人がいるとは考えられなかった。
彼女はそれほどの有名人だった。
あるいはアイドルと言い換えても良いと思われた。
「本当に僕の詩で良いんですか?」
「はい!先生の詩を歌わせて下さい」
♪ハッピー クッキー 八代亜紀ー
最初は誰かのつまらない冗談だった。
ふふ
お題:12月26日
52 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/06(土) 22:44:18 ID:FIWZ1tTq
>>51 小雪の降る朝、ようやく家に帰り着いた男は、暖炉のそばのテーブルに帽子を投げやると、
深い溜息とともに愛用の古ぼけた揺り椅子に身を投げ出した。
喉がカラカラだった。
床に雑然と散らばった小物の山から、半分空いた酒瓶をまさぐり出し素早くあおる。
体内を落ちるその温もりが、重圧と責任から開放された安堵と、
指の先まで行き渡った鉛のような疲労とをひどく思い出させた。
俺も歳かもしれない。
酒瓶を見下ろしながら、男はそう思った。
瓶には、白髪のヒゲに覆われた老いた自分の顔が映っている。
大きな置時計の音だけが飽くことなくいつまでも響いた。
甘美な眠気が、遠い雷鳴のようにゆっくりと意識を侵そうとしているのが分かった。
それでも、その眠気を振り払い、男はもう一度立ち上がる。
窓の外の雪はもう止んでいた。
深く雪に覆われた大地と空は、極夜で薄く紫色に染まっている。
見る者によっては幻想的な風景なのかもしれない。
木立のそばの小屋に、男が乗りっぱなしにした橇がそのままそこにあった。
トナカイたちを橇から放してやらにゃならん。奴らも疲れただろう。
気を取り直した男は、もう一度酒をあおると、力強い足取りで再び外へと出て行った。
おお、そうきたか
彼もぼっちだったのか
はげまされたお
渋カッコイイ!
しかし、配達中は「HOHOHOー!」と
陽気でなくてはならないのが
彼の疲労をますますつのらせるんだろうね
58 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 21:50:40 ID:cYsFw5PS
俺の人生は逆転することはもうないだろう。最後の最後まで人生を賭けるのは
大事だが、どうにもならないことがある。
こんな大それたところで身投げをして助かるはずはない。
計画通りだ。ぐるぐる渦を巻きながら渦潮にもまれながら、最後に考えるのは
「そうか、時計回りだったか・・・」それくらいだ。
人生はビデオテープなどではないのだから・・・
時間は逆に回らない・・・
時計も逆に回らない・・・
ましてここは鳴るとの渦潮だ!
そんなことを夢想しながら洗濯機をながめていたD作は、不意に逆回転
もみ洗いボタンを押した。
「い〜つの日にかあなたがくれた♪野の花がノートに♪」
「私の記憶の中では♪笑い顔は遠い昔♪」
「飛んで飛んで飛んで♪まわってまわって♪」フンフン♪
D作は新婚で実はご機嫌だった。
何してんだD作ww
SS自体も逆転してるといえるのかw
60 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 18:39:22 ID:bsFd6aEx
お題「街灯」で一つ宜しくお願いします。
61 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 21:46:21 ID:cr8rvzT8
その街灯は、いつも人々を見ていた
長い時を経てなお、人々を照らし、見守ってきた
ある時は塾帰りの少女を ある時は酔っぱらった親父を
またある時は、この街灯のしたで一つの恋の花が開いたりもした
夕闇に染まる街に、ジジジ…という鈍い音をたてて、今日も街灯は人々の世界を照らす
タールの塗られた鉄(くろがね)には、様々な人の思いが込められているだろう
ほのかに明滅する電灯は、様々な人を見てきただろう
いつか彼らがこの街から旅だっても、街灯はずっと、その場所で、思い出をため込んだまま彼らの帰りを待っている
62 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 23:22:31 ID:bsFd6aEx
goodですね。状況の描写が手馴れてる。
落ちも、街灯に染み付いたさびしいような感じがでてていい。
御題:規制解除
この私が最後に規制されたのは一体何時の事だったのだろうか、
あの時五歳だった息子はすでに成人し披露宴を三日後に控えている。
あの時貰ってきたばかりの子猫はすでに死に、今ではその娘が私のひざの上で眠っている。
だが私の規制は未だに解除されて無い、
一体何が悪かったのであろうか、あの言葉はそんなに世界に害悪を与えるものなのだろうか、
まさかあの言葉のみで一つのスレを埋め尽くしたのが悪かったのか、
それとも五秒間に三十のスレに同じ書き込みをしたことが悪かったのだろうか、
だが私は諦めない、今まさに私の規制が解除されていることを信じてenterキーを押そう。
さあ皆で祈ろうじゃないか、私の「おっぱい」への愛が世界を救うことを信じて。
次回作にご期待ください!
ってコラwww
まあ、根本的原因は、言葉よりも行為にあると思うがw
66 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 12:14:39 ID:tPVwNlM0
おっぱい大海嘯か……
67 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 19:10:08 ID:cB7VV9Dd
よっしゃ!
今から24時間耐久お題創作やるぜ!
誰かお題プリーズ!
じゃあ
描いちゃったりするの人
どういうお題だよw
まあ、解釈次第でどうとでもできそうだがw
70 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 19:24:57 ID:cB7VV9Dd
ちょwwwww
把握www
うむ
72 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 20:43:53 ID:cB7VV9Dd
絵師のためのスレが欲しい――男はそう漏らしていた。三日前のことである。そして今日、霧深い山中で、死体となって
発見された。
「遺体が見つかったのはK山の中腹らしいな」
「はい。大変険しい山道で、地元の人間も殆ど踏み入らない場所だそうです。たまたま登山者が見
つけなければ、発見は数年後になっていたかもしれません」
俺の問いに答える若い警官は、随分真面目そうな奴だった。田舎勤めのお巡りなんてのは、汚い
仕事とは無縁でやっていけるんだろう。まったく、結構なことだ。
「そうか。そいつは運が良かったな。年代物の白骨死体なんてのは身元を割り出すだけでも手間だ。
そんな面倒な仕事はやりたかないだろう?」
「市民のために必要ならば、本官はどのような職務であれ全力を尽くす所存であります」
「そうか。そいつは立派な心掛けだ」
警官の目に、わずかに責めるような色が混じる。嫌われちまったかもしれない。
それにしても、厄介な事件になりそうだ。ガイシャは人柄も善良で、誰かの恨みを買うようなこ
とは考えがたい。金銭トラブルもなし。遺体の側に放置されていたバッグの中の現金、および身に
つけていた金目の物も手付かず。となると、動機の線を洗うにあたって、自然、「例の件」が重要
になってくる。
「絵師交流スレか……」
やはり、スレが立つのを快く思わない者の犯行だろうか。いや、しかし……。
73 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 20:44:58 ID:cB7VV9Dd
「警部殿」
若造の声で俺は我に返った。
「現場を見に行きたいとのことですが、本当に行かれるんですか? 先程も申しました通り、大変
危険な場所ですが」
「あまり舐めないでもらいたいもんだ。俺とて普段から体は鍛えている。それに学生時代には山登
りもやっていた。やはり、現場を見んことには始まらない」
「そうですか。では、地元でマタギをしているご老人に道案内を頼んでおいたので、昼食の後、彼
と一緒に登ってください」
「わかった」
若造と二人肩を並べて署を出た。辺りは薄暗い。
「暗いな」
そう俺が言うと、何が面白いのか、奴は真面目くさったしかめっ面を緩めた。
「日蝕ですよ。なかなか見られるものではありません。間もなく太陽がすっかり隠れるはずです。
安心してください。昼過ぎには終わりますから、登山には支障ありません」
それには応えずに、俺は天を見上げた。月が作り出す大きすぎる影は、この事件の前に横たわる
不吉な未来を予感させた。
74 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 20:45:58 ID:cB7VV9Dd
反省はしていない
さあ、次のお題カモン!
猫がいちゃったりする山
76 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:22:03 ID:cB7VV9Dd
嵐の夜、三人の猟師が山小屋にいた。その日はいつになく猟がはかどったので、天気が悪くなっ
ていくのも気付かぬ程、夢中になって獲物を追いかけ回すうちに村へ帰れなくなってしまったので
ある。小屋の外では、雷鳴と突風とが、轟々たるうねりをあげている。
「大猟だ! 実に気分がいい!」
「何呑気なこと言ってやがる。この大嵐の中、こんなボロ小屋にいたんじゃあ、俺達は運が悪けり
ゃ夜を越せんぞ」
「おら達が調子にのったから、山の神様がお怒りになったんでねえか……?」
「おめえ達は全く湿気てるな。こういう時は、余計なことは考えねえで、素直に祝っとくもんだ。
さあ、呑め、呑め」
二人は気が進まなかったが、不安を紛らわすのと、他にすることがないのとで、勧められるまま
に杯を呷った。酔いが回る頃には興も乗ってきて、結局、酒盛りは夜更けまで続いた。
夜半、宴もたけなわといった頃、一人がポツリと呟いた。
「そういえば、この山に祠なんてあったかい?」
「何を戯けたことを言ってんだ。山に入るようになって随分経つが、わしはそんなもん見たことな
いぞ」
「それがな、今日、俺が見たんだよ。獲物を追っているうちにいつもは行かない場所に出たんだが、
そこに、何かが祭られている古い小さな祠があったんだ」
「ほう、知らなかったな。長くいてもわからないことはあるもんだ。……おい、お前どうしたんだ?
さっきから黙り込んで」
見れば、もう一人の男は顔を青くして、ガタガタと震えている。もう一度、おい、と声をかけら
れて、ようやく口を開いた。
「……祟りだ」
「またか。その話はもういい。嵐だって、だいぶ収まってきたじゃないか」
まるで呆れたといった風である。事実、風は弱まっていた。
77 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:22:38 ID:cB7VV9Dd
「まあ、いいじゃないか。俺達の話と関係があるんだろう? 他にすることもない。聞いてやろう
じゃないか」
「……村の衆は今まで一度も山神様の祠を作ったことはねえ。だから、祠はねえはずなんだ。でも、
なぜか誰かが祠を見つけたってことが何度かある。……決まって、祟りが起きる前のことだ」
僅かな沈黙の後、小馬鹿にしたような声があげれた。
「ふん! 馬鹿馬鹿しい! 今時そんな迷信を信じてんのはおめえくらいなもんだろうよ」
「まあ、そう言うなよ。信心深いのは結構なことじゃないか。それに、その伝説なら、こいつの言
ってる部分は知らなかったが、俺も他に知っている部分がある」
「まったく……どいつもこいつも。……聞かせてみろ」
「山神様ってのは猫の化身だ。だから、その眷属も蒼い猫らしい。そして、その青い猫に手を出さ
ない限りは、何があろうと人を祟ったりはしねえそうだ。俺達は猫なんて撃たねえだろ? だから、
お前も安心しろよ、な?」
「あ、ああ。今日は獲物もたくさんとれたし、ひょっとするとおら達に御利益を下さる吉兆だった
のかもしれねえ」
「納得してくれたなら何よりだ。ん? 今度はお前か。どうした?」
先程まで威勢の良かった男が、代わってむっつりと黙り込んでいる。そうして、ゆっくりと立ち
上がると、獲物が置いてある方へと向かっていく。
「青い猫、そう言ったな」
「ああ、そうだが?」
「それはこういう奴か?」
そう言って、男が抱え上げたのは、まさに、見事な群青色の毛並みを持った猫であった。
「ひいっ!」
「お、お前、どうして……」
「ここらじゃ見ねえ珍しい毛色だったから、高く売れると思ったんだ……」
沈黙が場を覆った。風は、また強さを増して、小屋の薄い壁を打ちつけている。なおも皆口をつ
ぐんでいると、戸の向こう側で、ガタン、と大きな物音がした。どうやら、それは風が起こした音
ではないようだった。
78 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:23:43 ID:cB7VV9Dd
結構、時間かかったな
じゃんじゃんお題くれ
温泉ねこ
80 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:31:18 ID:cB7VV9Dd
また猫かwww
把握
81 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:47:47 ID:ErtOm+AW
82 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 00:24:00 ID:/NQsiA/V
男「あの、ここに置いてある小便小僧は何なんですか?」
女将「当旅館ではお風呂上がりのお客様に、牛乳を無料で楽しんでいただいております」
男「……えっと、それがこの小便小僧とどう関係が?」
女将「小便小僧から牛乳が出ます」
男「えっ、ちんこから出た牛乳を飲むの?」
女将「そのような心情に配慮して、牛乳は尻から出るようになっております」
男「どっちにせよアレだ……」
女将「牛乳にご不満でしたら、甘い物はどうでしょう? お尻から生クリームを出す猫ひろしもご用意しております」
猫ひろし「ニャー!」
男「ねえよ」
猫ひろし「猫ひろし! 猫ひろし!」
男「帰れ」
女将「さらに、なんと、お尻からヨーグルトをだす水銀燈まで!」
男「もういいよ」
83 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 00:25:01 ID:/NQsiA/V
お題クレクレ
ェェェェェエエエエエエエエェェェェェェ
盛大に吹いたww
つ無線LAN娘
85 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 01:31:19 ID:/NQsiA/V
新ジャンル「無線LAN娘」
女「なんか今日は電波が来ないよ」
男「その発言が既に電波だがな」
女「なんか、こうアンテナがキャッチしないっていうか」
男「キャッチしなくていいです」
女「ジャミングかな?」
男「その発想はなかった」
86 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 01:33:07 ID:/NQsiA/V
これは地味に難しかった
早朝とか昼間はお題くれる人いなくなるかもしれないから、できれば今まとめて何個かお題くれ
いいながらきちんとこなしてやがるぜ……
つiTunes
つ消しゴム
つ“つ”
猫駅長
89 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 06:35:03 ID:/NQsiA/V
しまった!
早くも普通に寝ちまってた!
24時間は後日改めてリベンジすることにしよう
おつかれー!!!
猫の人気に嫉妬
92 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 17:00:49 ID:UTok6vV4
>87-89
(勝手に)残りのお題は俺に任せろバリバリ
ということでとりあえず「消しゴム」「猫駅長」投下。
「 消しゴム 」
過去を消せる消しゴムがあったら……
順風満帆、我が人生に一片の悔いなし。な人以外、誰でも一度は
考えたことがあるだろう。
男もその内の1人だった。
平凡な高校、大学を出て就職難という洗礼を浴びながら何とか
平凡な会社へ就職。容姿人並、収入人並の絵に描いたような平凡な男。
そんな平凡な男だから消したい過去と言っても平凡だ。
人に知られてしまった恥ずかしい過去。勘違いで告白して気まずくなって
しまった異性友達。大チョンボといっていい仕事での失敗。
横領と言うには大袈裟だが何となく買うのがめんどくさくて幾度か持ち帰った
会社のトイレットペーパー、などなど。ほんの些細なことばかりで凶悪な
犯罪を犯した過去があるわけでもない。
しかしそんな些細なことでも心に貯まりに貯まってくれば消し去りたく
なるのは人の常。綺麗サッパリ忘れてしまいたいと男は願う。
「 そんなおまえに過去を消せる消しゴムを与えよう 」
こんなとき現われるのは悪魔と相場が決まっている。
男の前に絵に描いたような平凡な悪魔Lv2が現われた。
「 えっ…? ホントっすか…? 」
突然現われた悪魔にいぶしがりながらも、心すでにここに有らず。
男はその消しゴムを貰う気まんまんになっていた。
「 本当だ。その代わり、おまえの寿命を1時間ほど頂こう 」
「 えっ! たった1時間でいいんスか…? 」
「 わはは、本当だ。早めにレベルアップしないといけないという私の立場上、
今回に限り大出血サービスで過去を消せる消しゴムを提供させていただきます 」
「 ははーっ。ありがとうございます悪魔様! 」
寿命1時間と言う破格の値段で手に入れた過去を消せる消しゴムで、男は
親切丁寧に記された消しゴムの取扱説明書を片手にせっせと恥ずかしい過去を
消しはじめた。
翌日。男は消しゴムの効果を確認すべく、男の大チョンボで迷惑をかけいまだに
ギクシャクしている上司に話し掛けた。
上司は何事も無かったかのように普通に仕事話、世間話を始めた。
――うおっ、なかった事になってる! 待て待て待て、単に機嫌がいいだけかもしれない。
続けざまに男は女子社員に話し掛けた。これまた男の大チョンボのおかげで
上司からとばっちりを喰らった、男がいまだ顔が上がらない相手だ。
女子社員は普通に笑顔で会話を進めた。
――うおーっ、憎々しげな顔をしない! こいつはホンモノだ!!!
男は過去を消せる消しゴムの効果を実感する。
そして夜毎恥ずかしい過去を思い出してはせっせと過去を消す作業に没頭した。
消しゴムが半分になった頃だった。男に疑問が持ち上がる。
――よそ様がかかえる俺の恥ずかしい過去は確かに消え去った。けど、
俺がいつまでも恥ずかしい過去を引きずって悶々としてたら結局
同じことじゃないのか…? もしかして欠陥品…?
こんなとき再び悪魔が現われるのは決まりきったこと。
男の前にまたもや絵に描いたような平凡な悪魔Lv2が現われた。
男との交渉が成立しレベルが上がったと思いきや、経験値が満たなかったのか
悪魔はLv2のままだった。
「 わはは。アフターフォローも完璧な悪魔の登場だ。
なにやら当製品にご不満を感じているようなのでお伺いしました 」
「 おおっ、悪魔様! その節はありがとうございます。
まぁ不満というほどでもないですけどちょっと確認したくて…… 」
人のよさそうな悪魔に男は素直に思ったことを口にする。
「 たしかに他人が憶えている俺の恥ずかしい過去は消え去ったようです。
だけど俺がいつまでもその過去に拘ってるようじゃ意味無いですよね?
俺自身に残る恥ずかしい過去を消すことは出来ないんですか? 」
男の質問に悪魔Lv2は困ったように頭をぽりぽり掻いた。
「 それは消しゴムと言う構造上無理なのだ 」
「 へ…? どういうことですか? 」
悪魔的な代物に構造もへったくれもないのではと男は心の中で思う。
「 過去を消す消しゴムに限らず、一般的な消しゴムは必ず消しカスが出る。
おまえが消した恥ずかしい過去も実際には消え去ったわけではない。
過去を消す消しゴムの消しカスに変化しただけだ。
真っ白な紙に書いた鉛筆書きを消しゴムで消しても僅かな書き痕と消しカスは残る。
それと同じこと。おまえの記憶から消し去ることは出来ぬのだ 」
悪魔Lv2は申し訳なさそうに答える。
「 そうですか。まぁ寿命1時間だし仕事の失敗もなかったことに出来たからいいか 」
親身になって説明する悪魔Lv2の姿に心打たれ、男はあっさりとその返事を受け入れる。
「 申し訳ない。正直に言えば過去を消せる消しゴム完全版も有るには有る。
が、それは寿命20年分に値する高価で危険なものだ。罪をひた隠しにている凶悪犯に
なら私も進んで勧めるが、おまえに勧められるものではない 」
「 20年すか……。使った瞬間死んじゃうかもって奴ですね 」
「 そういうことだ 」
「 わかりました。またなんかあった場合よろしくお願いします 」
「 わはは。あまり悪魔に関わらないほうがいいと思うが困った時は願うがよい。
それではまたのご利用をお待ちしてます。さらば 」
男はクレームもつけることなく納得する。悪魔Lv2のアフターフォローはバッチリだった。
別れの言葉も程々に悪魔Lv2は闇の中に消えた。
「 人間とは不思議なものだ…… 」
妖しくぬめる黒い翼を大きく羽ばたかせながら悪魔Lv2は考えていた。
「 恥ずかしい過去もゆくゆくは良き思い出となる。それをみすみす消し去ることもなかろうに 」
そしていましがたの男のことを思い出しクスリと笑う。
「 消しゴムの効能は半年。その後、消しカスに詰まった記憶は徐々に蘇る。
しかしその頃にはあの男の仕事の失敗も良き思い出になっているはず……。
やれやれ。こんな甘い考えだから私はいつまでもレベルが上がらないのだろう。
あの男からは寿命1ヶ月くらい貰ったほうがよかったのかもしれない 」
とは思うものの、それは悪魔Lv2の本心ではない。
「 悪魔のような人間がいるのなら、天使のような悪魔がいてもかまうまい 」
それが悪魔Lv2の持論だ。
悪魔Lv2のレベルアップ。どうやらそれはまだまだ先のようだ。
おわり
95 :
「 猫駅長 」:2010/03/06(土) 17:06:36 ID:UTok6vV4
「 猫駅長 」
「 あ、猫駅長だ 」
「 あはは、いつのまにか猫駅員までいる 」
高校卒業と同時に地元を離れた二人の女。
十年ぶりに再会した女達は青春を懐かしむべく思い出巡りのドライブに出ていた。
「 みけ、しろ、クロ、ぶち、とら、たま… よりどりみどりだね 」
「 平和なもんだ 」
高校通学に女達が毎日利用した田舎町の小さな駅舎。
うららかな春の日差しに誘われてか十数匹の猫が寄り添っている。
穏やかな光にまどろむ猫、ひたすら毛繕いにいそしむ猫、
ちょっかいをだしてはごろごろと地べたを転げまわるが相手にされない猫、
うなじや背中を舐められてうっとりと目を細める猫……
女達が話すように平和でのどかな世界がそこにはあった。
「 ……さびしいよね 」
「 ……しょうがないよ 」
それっきり女達は口をつぐみ車をだす。
過疎化の進む沿線。利用者の減少。
だいぶ前からささやかれていた噂話は隠しようのない事実となって一年前、
「廃線」という形で終末を迎えた。
地元を離れ都会で暮らしていることに少なからず負い目を感じている女達。
しかしそのことを咎める資格を持ったものは誰一人としていない。
しょっぱいドライブになることは女達も分っていたことだ。
古き良き時代の雰囲気を損ねることなく丹念な仕事で閉鎖された
田舎町の小さな駅舎。もうその場所に人が集まることはない。
それでも猫たちは集う。いつの日か再び電車が走ることを信じているかのように――
おわり
96 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 17:09:07 ID:UTok6vV4
今日はここまで。遅筆だから残りは明日。
つーかiTunesはいいとして「つ」ってw
一晩考えてみるが無理かもしれん。
いい話の後に物悲しい話とは、やりおるな
良い悪魔大好きです
98 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:39:14 ID:Ui3pUYA+
最後まで悪魔を疑っていた俺は人間不信
猫ってどこか哀愁があるよなあ
ねこねこすきすき
悪魔、いいやつじゃんw
「 iTunes 」
予約特典はポスターと厚手のビニールで作られたその店特性のレコード袋。
中学生にとっては大金の3千円を握り締めレコード店へ向かう。
慎重に保護袋から取り出し、レコードクリーナーを滑らす。
回転軸でラベル面を傷付けないようターンテーブルを覗き込むかの如く真上から
レコードの軸穴と回転軸を合わせる。セレクターは33回転。
針を上げたと同時に、レコードを乗せたターンテーブルは回り出す――
中学生の娘にiPodを買い与えることになり、男は自身の中学時代のことを
思い出していた。
気がつけば、もう四半世紀も前のこと。
その間、媒体はレコードからCDに代わり、レコード店も徐々にCDショップと
名乗るようになった。そして楽曲が情報としてインターネット上でダウンロード
販売されるようになったのも昨日今日の話ではない。
もう自分には新しい音楽は必要ないのかもしれない。
寂しそうな笑顔を浮かべ男は想う。
極めて高い利便性と合理性。しかしそこには初めてレコード針を落とすときのような
ときめきはない。
たまたま聴いて気に入った1曲の為だけになけなしの金をはたいて買ったLPレコード。
中古レコード店での衝動的なジャケット買い。
男の若かりき頃の思い出は、男の実家の物置で陽の目を見ることなく静かに眠っている。
「 レコード音源パソコンに取り込めるレコードプレーヤーあるから買ったら?
安いのもあるし暇つぶしにもなるんじゃない? 」
「 !? 」
今はそんなものまであるのか……。妻のひと言に男は驚き、そしてときめく。
妻の言葉に甘え、早速男は新しいレコードプレーヤーを買い求め実家に眠っている
数多くのLPレコードを引っ張り出した。
娘に買い与えるはずのiPodはなぜか勢い余って親子3人がそれぞれ1台ずつ
持つことになった。極めて高い利便性に男が魅入られたのは言うまでもない。
よくよく考えれば妻の策略だったのかもしれない。でも今となっては
どうでもいいことだった。
とりあえずは自前のレコード音源を転送しているだけ。しかし男が楽曲の
ダウンロードに手を出すのも時間の問題だろう。
こうしてまた1人、林檎信者が増えていくのであった。
おわり
101 :
「 つ 」:2010/03/07(日) 22:18:08 ID:fUTgPXiv
「 つ 」
∧∧
/⌒ヽ)。
i三 U 。
〜三 | 。
(/~∪
三三
三三
三三
∧∧
/⌒ヽ)
i三 つ◇ハンカチーフ
〜三 |
(/~∪
三三
三三
三三
102 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 22:20:52 ID:fUTgPXiv
行ったっきりの話&コピペですまん。
つはもう記号にしか見えないw
なぜに東京事変?と思ったら林檎違いだったw
いい家族だ
>つ
某三重県にだな…
ようこそ三重へつっつつっつ♪
こうですか!わかりません!?
105 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 00:25:29 ID:GPPzGhYv
林檎信者って言うから、一瞬、椎名林檎のことかと思ったw
おつっつつっつ
今はそんなのもあるのか。昔の一曲が今は1/10か。大変な時代になったもんだ
お題
「世界と彼女と恐竜と」
「ねぇ、大きな卵でしょう?」
実に大きな卵だった、鶏の卵ほではない、バスケットボールどころでもない、
一抱え程もある、実に美味しそうな大きな卵だった
「貴方と私の子供なのよ?」
彼女は何を言っているんだろう?
そう思った僕は彼女に問いかける
「えっと、その卵どこで見つけたの?」
「まぁ!、私と貴方が愛の営みをした後にふと窓の外を見てみたらこの子が落ちていたんじゃありませんか?」
愛の営みと言っても照れながらついばむようなキスを二、三回しただけなのだけど
「きっとコウノトリさんが届けてくださったのよ?」
……いやそれはない
「アナタ? この子の名前はなんにしましょうか?」
「男の子なら『としあき』で女の子なら……」
そう彼女言い終わるのとほぼ同時に彼女の家のチャイムが鳴った
「んもう、こんなときに一体誰かしら?」
そういってトカゲのような顔をした彼女が開けたドアの前には、黒服を着たトカゲのような顔をした男が二人立っていた
「なんなの? いったい……」
「探しましたよ! お嬢様!」
「く、黒田と池上ッ!? どうしてここに!?」
「さぁ、お嬢様今日こそは帰ってきていただきますよ?」
そう言うと慌てる彼女を黒田と呼ばれたトカゲのような男は強引に部屋の外へと連れ出そうとする
その光景をトカゲのような顔をした僕は何もせずにただ呆然と見ていた
暫く後、トカゲのような彼女は黒服のトカゲのような男たちに部屋の外に連れて行かれ、部屋にはトカゲのような僕と卵が残された
部屋に残されたトカゲの生んだような大きな卵は実に美味しそうで
部屋に残された僕はまるで大きなトカゲのようで
世界にはもうトカゲ以外の存在が何もいないかのようで
僕は、僕はその卵を、僕はその大きな卵を、僕はその大きくて美味しそうな卵を
僕はその大きくて美味しそうな卵を、割って、溶いて、肉とたまねぎと三つ葉とカツオからとった出汁の上にかけて一緒に煮て
そして出来た親子丼を帰ってきた池上に食べさせた、とても池上が美味しかった
109 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 20:20:16 ID:6f8F6dJ1
なんか不思議な感じがするな。
よくわからんw
110 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 20:22:36 ID:vO44pnZ4
最後カオス過ぎるww
111 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 22:41:26 ID:Cj6yKrk/
池上に何があったwww
俺にも何かお題クレクレ
ソフビ人形
「 縮尺は…… 1/50くらいか? 」
「 だいたいそんなところです。 」
とある美術工芸専門学校。
絵画講師であり校内の作品展示スペースの管理者でもある男は、造形を専攻している
女学生が持ち込み組み立て作業中の自主制作展示物を興味深く眺めていた。
「 ガンダムチックと言うか、右手からライトセイバー出そうだな 」
「 ひどいなー。まぁ確かに無表情というかのっぺらぼうですけど。
ていうか、ガンダムだったらビームサーベルですよ 」
冗談のつもりが記憶違いなり、男は苦笑い浮かべる。
だが女にも嫌悪を匂わせる仕草や表情はない。むしろ作品を公開するという
興奮からか、弾むような笑顔と語り口である。
口ではふざけているが作品を見つめる男の目は真剣だった。
7つの棘が彼方を指す王冠。独立宣言書を左手に、右手でトーチを天高く掲げたポーズ。
まるで垂れ幕を纏ったような衣装。
塗りのない段ボールと接着剤だけという条件の中で表現されたディティールは、造形とは
畑違いの男にも手間隙かけた仕事と納得させる出来栄えである。
――工作レベルのものじゃなければいいが。
自由の女神像を中心としたジオラマ風段ボールアートと書かれた使用申請書を
見たとき、少なからず男は不安を覚えた。
就職までの腰掛けにもならないと言われる学校である。実際その揶揄通り「学生」という
身分証明が欲しかっただけと見受けられる者も多い。男がそう思うのも無理のないことであろう。
しかしジオラマが完成する前に、その不安が杞憂であったことを男は思い知る。
女の作った自由の女神は台座部分が半分を占めているが、2メートル近い高さと全身クラフトカラー
1色という異質さが、見る者を威圧するような独自の存在感を漂わせていた。
「 だいぶ時間かかったんじゃないのか? 」
「 片手間ですけど、なんだかんだで3ヶ月くらいですかね 」
台座と女神像の結合部分を整えながら女は答える。
ジオラマとして完成させるべく、女はスペース内の隅に寄せていた残りの部分を次々と
女神像の周りに置き始めた。有名なマークをあしらった平屋建てのコンビニ店舗。
大型バスと昔ながらの信号機。ゾウ。キリン。
自由の女神像に比べあまりにも小さいそれらは、紙相撲の力士のように平面をかたどった
だけのシンプルなものだった。
それでも男はうまいもんだなと感心する。けして手抜きやお粗末なものではなく、全てが秀逸な
飛び出す絵本のように、ポップで優しさ溢れる世界観で統一されている。
そして女は場所を見定めながら、自由の女神像のすぐそばに空を見上げるようなポーズを
とった段ボール作品を置いた。
「 これで完成です 」
「 ……恐竜? 」
一目で恐竜だと理解されたのか嬉しかったのか、女は笑みを浮かべる。
置かれた2体の段ボール恐竜もシンプルな作りでいかつさはまったく感じられず、児童向けの
ペーパークラフトとして売り出してもいいのではと思えるほど完成度は高かった。
そしてその立ち姿は男の記憶にシルエットとして明確に残っている。
膝を落とし、親指と人差し指を広げ恐竜の高さを確認する。
――15センチと10センチ…… 恐竜ってこんなに小さかったか……?
男が幼少の頃、恐竜は巨大さを表す代名詞のひとつだった。しかし段ボール恐竜の背丈は
自由の女神の足元にも及んでいない。
――15センチの恐竜、全高約7.5メートル。映画のロゴでも有名なティラノザウルス。
10センチの恐竜、全高約5メートル。ゴジラのような背びれを持った恐竜……
いや、ゴジラがこの恐竜の背びれを真似たはず。有名な草食の恐竜…… 名前…は……?
「 大きめに作ったつもりですけど、恐竜って思いのほか小さいんですよね。
ちょっとがっかりでした。代案で昭和ゴジラも考えたんですけど、時間が掛かりそう
なのでやめちゃいました 」
「 ……昭和ゴジラ? 」
恐竜の大きさを気にしているように映ったのか、女は恐竜の名前を思い出そうと
悩んでいる男の邪魔するかのように語りだす。
「 ええ、シリーズ初期のゴジラで身長50メーター設定の奴です。
自由の女神は手を伸ばした状態で46メーターなんでゴジラ楽勝なんですよね。
でも台座の高さが47メーターあるんで、隣に置けば自由の女神にケンカを売るゴジラ!
みたいな感じでカッコいい絵になるかなって思ったんです。けど、時間かかるし段ボールで
作ったらメカゴジラにしか見えない可能性もあるので諦めました。
いずれにしてもゴジラ並みの恐竜はいなかったみたいですけどね 」
「 ……確か最大でも全長30メーターくらいだったな 」
「 謎ですけど、きちんと確認されてるのではそのくらいみたいですね 」
女に相槌をうちながらも、男は頭の中で記憶の糸を辿りよせる。
しかし獲物を逃した釣り糸のように、手ごたえはどこにもなかった。
「 じゃあこれでお願いします 」
展示品の据付を終えた女はそう言って去ろうとする。
どうでもいいことではある。しかし男はもどかしさを誤魔化せなかった。
「 あっ、ちょっと待った 」
――この恐竜、名前なんだった?
「 ……これ、作品タイトルは? 」
「 あー、忘れてた。適当でいいですか? 」
「 ふざけたタイトルでなければ適当でいい 」
「 そうですか。じゃあ明日まで考えておきます 」
「 ああ、よろしく。お疲れさん 」
背にした女を呼び止め、そう尋ねようとした。だが、つまらない自尊心が邪魔をする。
展示スペースに無機質な段ボール群と呆けた男だけが残される。もうそこに女の姿はない。
「 ど忘れにも程がある 」
自分に言い聞かせるように呟き、苦笑いしながら頭を掻く。あたりに女がいないことを確認し、
男はあらためて背びれのついた恐竜の前にしゃがみこんだ。
小さな頃、恐竜図鑑を見ていたぐらいで全ての種を記憶するほど恐竜好きでもない。
別にたいしたことではない。そう思うも、名前を思い出せない歯痒さに男は苛立ちを覚える。
○○ザウルス、○○ドン、○○プス……。
頭の中で、思い浮かぶ限り恐竜の名前らしきものを挙げてみる。しかし、いくら考えても
シルエットと合致する言葉は見つからない。
男に芽生えたもどかしさは、ほんの少しの抵抗後、諦めに代わる。
そして知らず知らずのうちにため息が漏れた。
しゃがみこんだ男も段ボール恐竜と同じように、自由の女神を見上げた。
不意に、自分と名の忘れられた恐竜が重なり合うような感覚に見舞われる。
そしてまたひとつ、ため息をつく。
「 もう主役にはなれないか…… 」
名を忘れてしまったことを誤魔化すように、段ボール恐竜に話し掛け、力なく笑う。
仰いだ先の自由の女神像は、確固たる意思を解き放つように力強く彼方を見つめている。
男はそれを羨むかのように、ただぼんやりと見つめることしか出来なかった。
「 どっちが恐竜か分らないな 」
2体の段ボール恐竜に目を戻す。
絶滅した恐竜と自由の女神。比較すること自体ナンセンスなのは男も判っている。
しかし差のありすぎる大きさに、幼少の頃抱いていた「恐竜=巨大」という単純な図式の
ロマンが打ち砕かれたような気がして、男は寂しさを隠せなかった。
そして自分自身も恐竜と同じように世界から忘れ去られるような気がして、切なさを
隠せなかった。
手にした風船を宙に放したときのような、ささやかな喪失感につつまれる。
その中で男は想う。年をとったんだなと――
翌日。
男のもとに作品タイトルを知らせに、女が訪れる。
「 これでいいのか? 」
「 ええ、お願いします 」
――ふざけてなければ適当でいいと言ったが正直なところ微妙だな。
女から渡されたメモ用紙に目を落とし、男は作り笑顔を浮かべていた。
そして思うことを率直に口にする。
「 まぁ、あのジオラマにはあってるけど、狙いすぎというか、ちょっとあざとくないか? 」
「 あはははは、言われると思いました。まぁ、若気の至りということで。映画から入ったくち
ですけど一応小説も読んでますから突っ込まれても大丈夫ですよ。よく分らなかったけど 」
「 了解。じゃあそれでパネル仕込むか 」
「 よろしくお願いします 」
女は終始笑顔をたやさず、男のもとから去った。
「 やれやれ 」
男も苦笑いをたやさず、パソコンの前に向かう。
女の提示したタイトルに心から賛同することは出来ないが、強く否定する気もない。
――感覚の違い。
心の中で呟き、いつものように男は自分を誤魔化す。
四捨五入でかろうじて50代におさまっている男にとって、それは魔法のように便利な言葉だった。
ワープロソフトを立ち上げ、若手職員に組んでもらったテンプレートを呼び出す。
薄い色のついた化粧紙をプリンターにセットしてインクが乾くのを待つ。
それを小洒落た銀縁のフォトフレームに入れて、タイトルパネルは完成。誰にでもできる仕事である。
しかし15年前、男がまだ新米講師と呼ばれていた頃は違っていた。
学生が持ち込んだ作品を展示品として妥当かどうかを見極めるのが展示スペース管理者の仕事だった。
意欲作、迷走作、目立ちたいだけの不埒な作。男のもとに作品を持ち込む学生は後を絶たなかった。
作品に唸ることも、展示を却下された学生とぶつかることもあった。それが喜びでもあった。
しかし時を経た今、自主制作の展示物を持ち込む気骨ある学生は数えるぐらいしかいない。
いつしか、気がつけば自分の息子と同年代の学生を指導するようになった。
そして、ことを円滑に進めるための冗談や軽口が上手くなり、多少のことなら、ため息ひとつ吐き出せば
それで事足りるようになった。
ずっと絵を描き続ける。
名のある美術大学を出た男の選んだ生き様だった。美術に関わる仕事をする傍ら、寝る暇
惜しんで自作品の創作に励みつづけた。
努力が身を結び、権威ある美術展に一般公募作として入選する。そしてそれを幾度も繰り返す
うちに実績となり、美術講師という職を得た。
不満はない。どちらかと言えば恵まれているほうだろう。
しかし「絵のための仕事」なのか「仕事のための絵」なのか、いつしか男は分らなくなっていた――
出来上がったタイトルパネルを手に男は自由の女神像の前にいる。
一夜明けた今日になっても、背びれのついた恐竜の名前は思い出せていない。
簡単に分ることだったが、人に聞くのは恥ずかしく、調べるのは負けたような気がして出来なかった。
そして、そのうちに思い出すだろうと昨日覚えた哀愁とともに一晩の眠りで水に流した。
「 よかったな。ジオラマじゃ脇役だけどタイトルじゃ主役だ 」
手にしたパネルと見比べながら、男は無邪気な子犬に話し掛けるように足元の段ボール恐竜に
向かい呟いた。
そのあと、場所を見定めて透明のアクリルがついた画鋲を壁に2本刺し、タイトルの入った
パネルをさげた。そして作品の邪魔になっていないか、調和が取れているか遠目に何度も確認する。
パネルの場所に納得した男はジオラマの前にしゃがみこみ、再び背びれのついた
段ボール恐竜を相手にした。
確かに自由の女神が主役だった。それに比べれば2体の恐竜は脇役にさえなれていない。
しかし主役を除けば、ジオラマの中での恐竜は他のものを圧倒する大きさだった。
「 恐竜もまだまだ捨てたものじゃないな 」
そう語りかけ、背びれのついた段ボール恐竜をつつこうとする。
瞬間、指が止まった。
「 ……。」
そして言葉を繰り返す。
「 ……捨てた? 」
呟いたその刹那、頭の中で途切れていた記憶の糸が結ばれた。
ふんッ。
思わず、鼻息が出る。
自ら吐いた言葉の一端から唐突に思い出された恐竜の名に、嬉しくもあり可笑しくもあり、
男はそれを誤魔化すように自分の頭を平手でぽんぽんと叩いた。
――滑稽だな。一人相撲だ。
嫌でも表情が崩れる。
自力で名前を呼び戻したのはよかったが、情けない思い出し方に、男は自嘲気味な笑みを浮かべずに
いられなかった。
「 悪かったな。やっと思い出した 」
背びれのついた恐竜を手にとりそう呟く。
そして元の位置に戻し、男は力強く立ち上がる。
「 まったくふざけたタイトルつけやがって 」
女の作ったジオラマを眺めタイトルパネルを見る。
――上手いもんだ。力作だな。
暫く意識から外れていた自由の女神を見て、男は素直にそう思う。
そして学生とやりあっていた昔日の感覚が蘇る。
がむしゃらだった。新米講師として舐められまいとする意地とプライドがあった。
切磋琢磨を繰り返し、学生以上に創作に励み、結果を出しては幼き同志と喜びをかわした。
あの日のことを男が忘れるはずはなかった。
胸が熱くなる。
ふつふつと湧き上がる想いに、少しだけためらいが生まれる。
しかし、よどみなき視線を放つ自由の女神を前に男は意を固めた。
「 ああ、上等だ。踊ってやるさ 」
若さという炎に焦がされた男の魂に火が灯る。
久しく忘れていた情熱という言葉の意味を噛み締めるには時間が掛かるだろう。
しかし問題は無い。男はそれを取り戻す自信も実績も充分に持ち合わせていた。
スラックスのベルトを締めなおし、ジャケットの襟元を正す。
自由の女神像を睨めつけ、すぐに、ふざけて悪かったとでも言いたげに、ははっと笑う。
「 ……まいったな。天命どころか50過ぎても惑ってばかりだ 」
そう口にして、男は展示スペースを後にする。
しかし踏み出したその歩みに、何一つ迷いはなかった――
誰もいない展示スペース。
創られた世界の中で、ティラノザウルスとステゴザウルスは、静かに彼女を見上げている。
『 段ボール恐竜は自由の女神の夢を見るのか? 』
壁にさげられたパネルには、そうタイトルが刻まれていた。
おわり
他スレで貰ったお題で他スレに投下したものがあるんだがここに挙げていいかな?
駄目ならお題くれ
お題「そんなの出すもんか」
「風船ガムの限界を知りたい」
同じ部屋で別々の事をしていた兄弟の、ゲームをしていた兄が突然そんなことを言い出した。
「負けるたびに変なこと言うのやめてくれないかな」
漫画を読んでいた弟が興味の無い風に言う。
「いや、これは割と真面目な疑問なんだよ、例えば風船ガムが膨らむ回数の限界について、何回
膨らんだらもう膨らまなくなるのか、そういうことは是非知っておきたいと思わないか?」
兄はゲームの電源を消し、コントローラーを置いてから弟の方へ向き直り熱弁を始めた。
「ほかにもさ、風船ガムの味が無くなる限界も知りたいんだよ、あのガムって普通のガムより伸び
やすくなってるじゃん、ってことは普通のガムより柔らかいってことだろ?だったら、より味がしみ込
んでるってことじゃないのか?普通のガムが10分で味が無くなるとすれば、風船ガムは20分かかる
んじゃないか?」
弟は漫画を読むのをやめないが、風船ガムに対する兄の熱弁は止まらない。
「それに、普通のガムより柔らかいってことは、噛んでるうちに無くなっちゃうんじゃないかとも思うん
だよ、何回噛んだら無くなるか、無くなる瞬間を口の中で認識できるか、そんなことも知りたいな」
そこでやっと弟は開いていた漫画にしおりを挟み、閉じて兄の方を向いたが、その顔にはやはり興
味をうかがうことはできない。
「知りたいなら試してみればいいさ、丁度風船ガムがカバンの中にあるから取ってきてやるよ」
鬱陶しい兄の演説を聞きたくないがために、弟はわざわざ自分の部屋まで行ってガムを取ってきた。
「すまないな、お前がこんなにも兄思いだとは思わなかったよ」
それを受け取り噛み始める兄、静かになった室内で弟は漫画を読むことを再開する。
読み終わった漫画を本棚に並べて、ふと兄の方を見る。すると、未だにガムを噛んでいた。
「どう?さっきの疑問のどれか一つにでも答えは出た?」
弟が訪ねてみると、兄は少し疲れたような顔で弟の方を向き答えた。
「それがさ、何度も何度も膨らませるうちに舌が痛くなってきたから、最初の疑問は断念したんだよ、
それでさ、注意深く味わっているうちに、まだ味が残っているかもって思ってしまって、いつ味が消えた
かもわからなかったんだ、で、何万回噛んでも、この風船ガムはまだ消えそうにもないんだよ」
それを聞いて弟は少し考えて言った。
「じゃあ最初の二つは答えが出てるじゃん、一つ目は舌が疲れるまで、二つ目は味が残ってるかもっ
て思い始めてから、味が完全に無くなったのが分かるまでの間」
それを聞いて、不服そうながらも兄は納得したようであった。
「だったら、最後の疑問はいつ解決するのかな、俺はもう顎が疲れて、これ以上噛むのは辛いんだよ」
弟はまた少し考えて、台所へ行きあるものを持ってきて言った。
「だったら、これ一緒に食えよ、そしたら答えも出るさ」
弟が持ってきた物を食べると、口の中のガムがすぐに無くなってしまった。
「確かに無くなったけどさ…、これチョコ食べただけじゃん、答えは出てないぞ?」
やはり不服そうに言う兄に対し、弟は言い放つ。
「だからさ、風船ガムが無くなる時は、口の中にチョコが入ってきたとき、これが答えさ」
「それは屁理屈じゃないのか?」
「屁理屈であっても、解決しそうにない問題に対する答えを出すためなら仕方ないさ」
そう言って、やはり不服そうな兄を残し、弟は自分の部屋へ戻る。
やれやれ、少しは俺を見習って、目先の問題を自分で解決してほしいものだ、そう思いながら、自分の
部屋へと戻っていく。
お題が溜まってるぽいので即興で消化する
「ソフビ人形」
俺は子供の頃ソフビ人形を三十体程所有していた。
しかし二十半ばの今になって改めて考えてみると、
三十体以上あった人形が、全て影も形も無く消失しているのだ。
本当に気が付かない内に消えてしまった、しかも一体残らず綺麗さっぱりと。
まさか物語のように自分で動いて歩き去ったのだろうか。
仮面ライダーセットの二十体以上の仮面ライダー達やおもちゃ屋で買ったゴジラ等、
押入れのほこりを被ったおもちゃ箱の中から毎夜毎夜一体ずつ、
俺に気が付かれないようにこっそりと。
これはある種の恐怖だ、恐らく彼らは人間の目の届かない場所で密かな王国を作っているに違いない。
俺以外の所から逃げ足してきた、他のソフビ人形達と共に。
貴方が昔持っていたソフビ人形達は本当に一体の欠けも無く揃っていますか。
もし一体でも欠けていたら……
貴方のソフビ人形は気が付かない内に貴方の元から逃げ去ってしまうかもしれません。
子供の頃のおもちゃって、知らないうちにどっかにいってたりするよね
俺の管理が悪いだけか?
お題「そんなの出すもんか」
そんなの出すもんか
完
お題「プリン」
127 :
◆91wbDksrrE :2010/05/03(月) 22:26:35 ID:mX0ffldt
きっと、期待されているものは違うだろう。
だが、私にはこれしか無い。これしか出来ないのだ。
「……出来ました」
カスタードタイプの、見た目はごくごく普通のプリン。
だが、それにかけた手間は、数週間に及び、その費用は、ちょっとした車なら買えるまでに達した。
それが、私が作った物だった。今できる精一杯を、力の限り徹底して、そして出来上がったのが、
これだ。このプリンだ。
だが……それ程までに精魂込めたというのに、私は、このプリンには……これっぽっちも自信が
持てなかった。
「……なんだね、これは?」
この仕事を始めて、もう何年になるだろうか。長年の経験から、私はお客が求める物が何なのか
というのを、かなり正確に読み取る事ができるようになった。そして、その読み取った要望に合わせて
甘さ、固さ、カラメルの量、種類、その他諸々を調節し、出してきた。
だが、この男は……この男が求めている物が……私にはわからない!
この何年かで、こんな事は始めてだ。プリンについてなら、それを求める人間についてなら、私は
どんな人間が相手だろうと、自信を持ってあたれていた。なのに……この男は……。
「……プリンですが」
搾り出すように、私は彼に告げた。当たり前の事を。見ればわかる事を。
「私が……これを欲しているように、見えるかね?」
……見えない。彼が欲しているのは、プリンではない。だが、プリンなのだ。自分の感覚、長年の
経験に基づいた技能が、わけのわからない矛盾した答えを私に告げる。
プリンではないプリン。それは一体なんなのだ? そんなものが、この世にあるのか?
迷いに迷った挙句、私は自分自身に可能な限りの技術をつぎ込み、これ以上無い程にバランス
がとれ、誰が食べても美味しいと言えるであろうプリンを作った。
だが、やはり、それではないのだ。それは彼が求めている物ではないのだ。
何故なら、それはプリンだから。プリンでしか、ないから。
「ふっ……やはり無駄足だったか。当代一の洋菓子職人、プリン……プティング最も得手とする女。
それでもやはり、駄目なのだな……」
「……あなたは」
私は、自らの無力を痛感しながら、プリンに手をつけもせずに立ち上がり、背を向けた男を呼び止めた。
「あなたは……一体、何を探しているのですか?」
プリンではないプリン。
それは一体、何の事なのだ?
「……言葉にした所で、滑稽でしかない。ただの笑い話にしかならない」
「それでも構いません。私は……このままでは、終われない」
プリンではないが、プリンなのだ。プリンではなくともプリンである以上、その矛盾さえ解消する事が
できれば、私に……作れないプリンというものが無い私に、作れないはずが無い!
「知性あるプリン(インテリジェンス・プティング)」
男の言葉に、私は硬直した。
「知性を持ち、自ら会話をし、そしてそれでもプリンであるという、そういう物を私は探しているのだよ」
……。
………………これは……この男は……。
踏み込んではいけない領域の話を、している。
「知性があるが故に、プリンではない。だが、それでも紛れも無く、どうしようもなく、これ以上無い程に、
それはプリンなのだ。疑いようもなく、ね」
「そんな物が……そんな者が、ある、と?」
「さあ?」
男は、肩をすくめた。
そして、そのまま振り返る事なく、店をあとにした。
「………………」
立ち尽くす私など、そもそも存在していなかったかのように。
「……分を、知れという事、なのでしょうね」
プリンではないプリンは、プリンではないが故に作る事はできない。そう割り切るしか……諦める
しか、私にはできそうもなかった。
だが、男のその言葉を、そんなプリンならざるプリンの存在を、私はまったく疑おうとは思わなかった。
それ故に、私は諦める事にしたのだ。プリンならざるプリンの存在を。その創造を。
その選択が、自分の身を救う事につながったなどという事は、この時点の私には知る由もなかった。
ただ、感じた悪い予感に小さく身震いをして、彼が私をそう扱ったように、私も彼をそもそも存在して
いなかったかのように扱う事にして――そして、私は日常へと回帰した。回帰――できたのだ。
おわり
128 :
◆91wbDksrrE :2010/05/03(月) 22:27:34 ID:mX0ffldt
ここまで投下です。
お探しのプリンでしたら島京で見かk……おっと、こんな時間に誰だろう
お題「えんぴつ」
鉛筆の見た世界が増殖し蔓延した消しカスが溶けるような暑さの中、僕は眼を覚まし、また寝た。
この娘たちはわしが育てる
肌寒い空気が鳴りを潜め、暖かい風が凪いで周囲の人々を暖める。
風はそのままに、まだ花開かない桜の蕾をふんわりと包みその開花を促している。
まだ5分咲きだろう蕾がちらほらと見える桜の木。その桜は小さな小川の側に生えていて、
橋の中央から川の先を眺めてみるとまるで花びらが門を作っているかのよう。
側の歩道には花見であろう歩きながら眺めている人々や、団子や饅頭を食べながらベンチで談話している人もいる。
そんな中、大事そうに未開封の一升瓶と、和紙に包まれた何かを抱えながら小走りになっているとある青年がいた。
「ふっ! ふっ! あぁ……! 姐さん、もってきましたよ! 」
「おぉ、丁度いい頃に戻ってきたじゃないかい。いい子だ」
走っていた足を緩める先、一人の女性がベンチに腰掛けている。
青年は一息も入れる間もなく持って来た和紙に包まれた何かを手渡し、一升瓶をベンチに置く。
その女性は中に着ている服は普通の服である。白のブラウスに下はジーンズ。どこにでもいそうな服装。
だが、上に着ている服が少々人目に付く服装で、膝下まである丈長の明るい黄色に赤色の花びらが彩られた羽織。
しかも彼女自身が美人なだけあって、好意的に目を引く事は必至であろう。
実際、主に道行く男性からは何度も振り返られている。
「ほら、ぼーっと突っ立ってんじゃないよ。こっちに座りなよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
傍で立ちっぱなしになっていた青年を一升瓶を挟んで横に座りあう。
ただ、言葉に何か不満でもあるのか。女性はその眉間に軽く皺を寄せる。
が、それも長くは続かなく。諦めたように次の言葉を促すだけとなってしまった。
「さて、まずは乾杯と洒落込もうじゃないか。こんな綺麗な花に素面のままでいるのはよくない。よくないよ」
「いや、姐さんはただ酒をはやく飲み……いえ、なんでもないです。ハイ」
女性はさっそくとばかりに和紙の中から取り出したお猪口を当然のように男性に差し出す。
男性も勝手知ったるもの、こちらもごく普通にいつのまにか開封されていた一升瓶で酌をする。
「よしよし、いい子だ。ほら御返杯っと」
「ありがとうございます。姐さん」
二人の杯に並々と酒が満ちた頃。一凪ぎの風が彼らを吹きすさぶ。
まだ満開にもなっていないのに散ってしまったいくつかの花びらが、偶然にも二人の間へと落ちて行き……
「お、姐さん。桜酒ですか。風流ですねぇ」
「そうさね。きっとここの桜も私の風流を知っているってことだよ」
「それはそれは……俺の方にも落ちてきませんかねぇ」
「あんたにどこの桜がそんなの出すもんか」
至極マジメに言いつくろった言葉に。一人は満面の笑みと、一人は少々苦味のある笑みを移しあった後。
『乾杯』
どちらともなく言葉をつむぎだしたのであった。
ここまで
規制解除記念投下。
135 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/30(日) 16:57:13 ID:GOl9w/qP
綺麗なお姉さんと風流に酒宴とはなんと羨ましい
すごい。
ムチャぶりに近いお題を、見事に美しいSSに消化&昇華してる
こんなのを書けるようになりたいなぁ……
お題「ひらがなでつづるにっき」
7がつ24にち どようび
きょうからなつやすみがはじまりました。
なにをしてあそぼうかいまからとてもたのしみです。
7がつ26にち げつようび
きょうはおにいちゃんとほんやさんにまんがをかいにいきました。
おにいちゃんがつれていってくれるほんやさんは、
おおきくてうすくてはだかのおんなのひとのえのほんしかおいてないほんやさんです。
おにいちゃんはいつもそこでたくさんほんをかいます、
ぼくもおにいちゃんからなんこかもらったけどなんだかはずかしいのでつくえのおくにかくしてあります。
7がつ29にち もくようび
きょうはきょうすけくんたちと、ちかくのもりにむしをとりにいきました。
そのときにきょうすけくんが、じんじゃのおくにあったかがみをこわしてしまいました。
きょうすけくんはぼくに「だれにもいわなければばれないよ」といったけれどすこししんぱいです。
8がつ1にち にちようび
きょうはきょうすけくんとわかなちゃんとふみひこくんでぷーるにあそびにいきました。
ぼくたちがあそんでいるとふとったおねえさんに「おかしをあげるからこっちにおいで」といわれたけど、
せんせいが「しらないひとにはついていってはいけません」といっていたのでぼくはいきませんでした。
だけど、ふみひこくんがついていってしましました。
ゆうがたになってもかえってこなかったのでぼくたちはふみひこくんをおいてさきにかえりました。
8がつ6にち きんようび
きょうはおにいちゃんとおまつりにいきました。
おんなのひとをつれたおとこのひととすれちがうたびにおにいちゃんは
「りあじゅうはしね」といっていました。ひとにしねなんていうのはいけないとおもいます。
8がつ11にち すいようび
きょうはきょうすけくんのうちにあそびにいきました。
きょうすけくんとわんだーすわんであそんでいると、とつぜんおしいれのなかからおおきなうしのおばけがでてきました。
きょうすけくんはおばけをみてもあわてないで「またきたのか、こりないやつだ。こい、らいこう」というと
なんときょうすけくんのまえによろいをきたおさむらいさんがでてきました。ぼくがおどろいていると、
きょうすけくんたちはたたかいながらそらをとんでまどからでていってしまいました。しょうがないのでぼくはいえにかえりました。
8がつ14にち にちようび
きょうはおにいちゃんがせんそうにさんかするためにでかけていきました。
おにいちゃんは「おれがいくせんそうはらいばるがいっぱいだ、おれはだれよりもはやくせんりひんをてにいれなきゃいけないんだ」といっていました。
せんそうってたいへんなんだなとおもいました。
聖王歴五千七百八十五年 竜王月第三ウンディーネ曜日
俺はこの日記を書いている今この瞬間もある組織に命を狙われ続けている。
この場所が組織の人間に割れるのも恐らく時間の問題だ。
だから俺はこの日記にある種の暗号を使い、俺が掴んだ組織の秘密を混ぜながら書いている。
暗号を解くことが出来れば組織の壊滅させる事に繋がる大きな武器になるはずだ。
この日記を見つけた人間が組織の人間で無い事を祈る。
アレクサンドル・フォン・ガルバディス
8がつ19にち もくようび
きのうのにっきはおにいちゃんがいたずらでかきました。
きょうはわかなちゃんのいえにあそびにいきました。
わかなちゃんとふたりでばーちゃるぼーいであそんでいると、わかなちゃんのかっているねこがとつぜんはなしはじめました。
ねこのはなしをきいたわかなちゃんは、ひかりながらはだかになってふくをきるとねこといっしょにまどからそとにとんでいってしまいました。
しょうがないのでぼくはいえにかえりました。
8がつ24にち かようび
きょうははなびたいかいがありました。
はなびをみていると、そのはんたいがわできょうすけくんとわかなちゃんがそらをとびながらけんかをしていました。
ぼくはふたりのけんかをとめようとしましたが、ぼくはとべないのでとめにいけませんでした。
すこしするとわかなちゃんがおっきなびーむをきょうすけくんにうって、それにあたったきょうすけくんはかわのなかにおちていきました。
わかなちゃんにはこれからもやさしくしようとおもいました。
8がつ27にち きんようび
きょうはへんなおじさんにあいました。
「ぼうやのあたまをよくしてあげよう」とおじさんがいうのでぼくが「おねがいします」というと、
おじさんはぼくのあたまをなでてくれました。
「今日の夜になったら一分間だけ頭が凄く良くなるよ」
そう中年男性は俺に言ったがまだ効果は無い、一体どういうことなのだろうか。
「だけど、頭が良くなっている間はその事が分からないんだ」
確かこんなことも言っていたと思う。実際そんな事があるとした薄ら恐ろしく感じる。
そもそも、物理的に人間の思考能力をじょうしょうさせることはできないとぼくはおもいました。
8がつ31にち かようび
きょうでなつやすみがおわります。
しゅくだいをぜんぜんやっていないことにいまきがつきました。
にっきはいつもかいていたのでだいじょうぶです。
何かカオスを感じるが、おもしれーじゃねえかw
142 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 21:26:34 ID:TW6WlO/6
色々とカオスだなw
いろんな意味で凄まじい日記だwww
ふみひこくんのその後がとても心配になるが
きょうすけくんとわかなちゃんが居ればたぶんきっとまったく問題ないだろう事に気付いたw
144 :
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/06/01(火) 01:26:02 ID:8juLIuN1
わくわく数倍の面白さだったw
いろいろと脚色が入ってるのか、
見たままなのか。時折入る漢字の文もいいw
小さな時から、私は時々日記を綴っている。
何も知らなかった頃。純粋で、私の周囲の事も、そして私自身の事も判らなかった頃から書いている日記だ。
何の荘重もされていない古びた日記には私の大切な思いが詰まっている。
何度も押し付けたせいで勝手にその部分だけ開いてしまうページ。
黒いシャープペンシルで書かれた中に一際眼を引く赤い文字の配列。
大切な、とても大切な貴方への思い。
「お嬢様、時間が押しております」
「ああ」
自慢じゃないが、私の家は大変に裕福である。
そんじょそこらの裕福ではない。我が国随一と言っても過言では無いレベルだ。
私専属の執事は言わずもがな、コーディネーター、使用人、ドライバー。果ては飼っているペットにまでお付きの人が付くレベル。
半面、それのせいか不便な事もある。例えば友達が限定されるとか行動範囲が常軌を逸しているとかマナーに凄く厳しいとか。
まぁそんなもの。
そして、その一環がこれから行く舞踏会。まぁ所謂社交界ってヤツだ。
父上、母上のお知り合いの人の子供や、孫との顔合わせ。他にもVIP扱いな人たちへのお披露目等等。
嫌になる事間違いなしだが、それでも行かなければならないのがこの家に生まれた私の宿命。そこは割り切っている。
それでも少しため息が出る。嫌な事は嫌なのである。
ホントはこんな事すっぽかして、どこかに車で遠出したい。
花を愛で、香りを楽しみ。景色をこの眼に焼き付けるほうが幾倍も楽しいだろう!
「……」
「わかっている。そんな眼で私を見るな」
それをさせないのが私の執事。
私の同世代かつ幼馴染の青年である。
最近はとみに見目麗しくなった。
服装はもちろんの事、前までは使っていなかった香水。整髪料に化粧まで!
まぁ私と侍従長が仕込んだ事だがな。
とにかく。この執事は幼馴染という事もあって、私の気配に鋭い。
特に逃げ出そうとする時。
普段は優しげな瞳を振りまくその目が一転し、厳しい冷たい眼光を振り翳すのはこの私ですら気後れしてしまうものだ。
承知いたしました。という言葉と頭を下げる動作と共に。険のある瞳と声質が抜けていく。
代わりにいつも通りの柔らかな双睡が現れて、私はふと昔を思い出した。
まだ私たちが一緒に遊んでいた時間。
私は無邪気にこれを連れまわしていて、彼は文句も言う事もなくどんな時でも遊んでくれていた。
ある日、ちゃっかり勉強の時間をサボって外に出て。彼と遊んでいた。
そして。私はこう言ったのだ。
「私は決めたわよ。貴方をお婿さんにしてあげる!
光栄に思いなさいよ。他の誰でもない私が!貴方の者になってあげる!」
勉強の内容は『結婚式のマナー』
その中に出てくるお姫様のようなお嫁さんを見て、私はつい遊び半分で彼に宣言した。
「お嬢様。私は従者でございます。何時も貴女の身を案じ、守り、傅きましょう。
既に私はお嬢様の物でございます。
お嬢様を、お慕いしています」
その目だった。
ワタシを初めて虜にした。あの時の目。
私が知らない間に貴方は大人になっていて。既に私の友達ではなく。従者になっていた。
それでも、それでも。
貴方は知らないでしょう。
貴方がどんなに我が心を癒してくれていたか。
父や、母からの重責に囚われていた心を解してくれたその言葉と。
周囲の要求に応えていき、無理を重ねていた体を労わってくれたその心と。
未来への不安から押し潰されそうなワタシを、何日も何日も言葉を吐露する事を嫌がらずに聞いてくれた。その姿と瞳。
どんなにかワタシを救ってくれただろうか。
ひらがなでつづられた日記帳。
拙く、幼い黒い文字の中で。たった一言貴方への思いを込めて。
特別にしたかったが為に名前を書いた。
赤い、赤い色えんぴつで。
貴方の名前「……
「さま……お嬢様!」
「……あっ?」
執事の言葉でふっと現実に戻る。
つい先日読んでしまったからだろうか。
少々昔を懐かしみすぎた私を、彼が体に触れていいものかどうか戸惑いながら私の肩をゆすっていた。
「具合が悪いのですか?旦那様に今回は止めるように進言しましょうか?」
心配そうに、私を呼ぶ彼は何時もより少し声が震えている。
きっと真実私を心配しているのだろう。
ならば。私のすることは戸惑っている事ではない。
「いや、いらないよ。準備は体も心も万端さ。
さぁいくよ!今日も『私』を演じに行こうじゃないか!」
クローゼットのドレスを適当に引っつかみ。
後ろでなにやらごちゃごちゃ言ってる彼を置いてけぼりに、
私は颯爽と歩き出す。
たとえこの恋が貴方に届いていなくとも、
恋に破れようとも、
後悔はだけはしない。
恋をした女が強いのは昔からなんだからさっ!
以上ここまで
ここまで代理投下
一途に昔から書いているという意味で、ひらがなで書いた日記ですか。
さりげなく話に混ぜ込まれていますね。
150 :
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/06/06(日) 02:52:23 ID:B7eFCt3l
お題「上手くかけない魔法陣」
魔法は唱えられた。
魔法は驀進した。
魔法は傷痍した。
魔法は焼き払った。
都市を焼き払った。
地方都市を焼き払った。
甚大な火球が焼き払った。
完全に焼き払った。
全てを凡てをスベカラク焼き尽くした。
ちっぽけな矜持を飴色のどろどろに変換した。
30万と100万と数え切れない御霊が消費された。
勝利した愚者が描いた終結の弾痕が平和の魔法陣として語られた。
勝利した愚者の栄華の中心を、他の神が抉った。
天を貫く屹立が、ぽろぽろ、ぽろぽろと零れ落ちた。
新たな魔法陣が宣言した。
聖戦の勝鬨を宣言した。
かつて勝者だった愚者はPRIDEをふわふわの土煙に変換された。
報復の魔法陣が描かれた。
上手くかけない魔方陣は描かれた。
上手くかけない理由を省みられぬまま。
上手くかけない魔法陣が描かれた。
上手くかけない前提のまま。
152 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 22:34:49 ID:0Q/wLm2M
詩の投下とは珍しいな
153 :
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/06/08(火) 03:54:18 ID:hn5sc54n
お題がやっぱり難しいのでどういう話になるかな、と思ってましたが
詩での創作とは・・・斬新でした!
イスに腰掛けて盲目の少女が書き物をしている。
目が見えない者用に拵えられた特別の紙は、筆跡を深い溝として残し、後でなぞって読めるようになっている。
羽ペンを瓶に戻し、盲目の少女が言った。
「執事よ、私は目が見えない」
執事は穏やかに返事をする。
「ええ、存じ上げております御嬢様」
盲目の少女は溜め息をついて、事故を悔やむ言葉を零す。
乗馬なんて習わなければ良かった。
振り落とした上に顔を踏んづけて行くなんて、最低の馬だ。
モウマクと言うものはもう生えてこないのかな。
「残念ながら、御嬢様の目を直す術は御座いません」
執事はさも残念な様子で言った。
盲目の少女は、ちゃんと真実を教えてくれる、この誠実な執事が好きだった。
きっと治るはずよ、と願う母。
私が治してみせましょう、と嘯く医者。
信仰が貴女を闇から救います、と宣う牧師。
事故から一言もしゃべっていない、父。
慰めと同情と蔑みが辛かった。
盲目の少女は、ドレスの裾を払って立ち上がった。
「散歩に行きたいわ。執事よ、手を引いて」
「かしこまりました。御嬢様」
盲目の少女が小さな手を差し出すと、執事の大きな手がそれを優しく受けた。
「庭に、綺麗なツツジが咲いております。嗅ぎに行きましょう。蜜を吸わせて差し上げます」
「へえ。見えなくても、楽しめそうね」
盲目の少女は、嬉嬉として微笑んだ。
少女が書き物をしていた紙には、小さな魔法が込められていた。
ハートの下に傘を書き、盲目の少女の名前と、執事の名前が書いてある。
見えなくなって日の浅い少女の描線はたどたどしいが──確かに魔力が宿っていそうだった。
相合い傘を魔法陣に見立ててるわけですか。
盲目になれば今まで以上に執事の助けがいるでしょうし
上手くかけずにただたどしくかかれている分、想いも強くなっていそうです
157 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 22:44:24 ID:qCJGlCPJ
この画風、結構好きだわ
新しいお題は「廃車」
俺にもなんかお題くれ
好きか!ありがとう
じゃあお題は『神社』
長年連れ添って来た相棒。
神主にとって、目の前にある車はそう呼ぶに相応しい存在だった。
初めて一緒に風を切り走った時、神主はまだ神に仕える身では無かった。
ましてや、物に心が宿るなどとは微塵も思っていなかった。
だが、神主は少しずつ変わって行った。
人と人とが長い年月をかけて友情を育んでいくように、
ゆっくりと、ゆっくりと愛車との絆を深めていったのだ。
水平線から上る朝日を見た時も、地平線に沈む夕日を見た時も。
神職を志した若き日も、そして、神主となった今までもずっと一緒に過ごしてきた。
「……」
神主は、無言でその車体を優しく撫でた。
エンジンはかからないし、いたる所に小さな傷跡もありお世辞にも綺麗とはいえない。
けれど、それでも神主にとってその車は相棒なのだ。
しかし、とうとう別れの時がやってきた。
大きなトラックに牽引され、相棒がゆっくりと遠ざかっていく。
神主は、その様子を無言で見守っていた。
神主にとって、その車は長年連れ添って来た相棒だった。
今は物に心が宿るというのも信じているし、
愛車にも心が宿っていると信じて疑わなかった。
だからこそ、自らが神主を務める神社での供養はしなかった。
信じる神に背く事になるが、相棒との別れにはもっと相応しい言葉があるとわかっていたから。
神主は最後に――
「アーメン」
――と、フェラーリ社製の真っ赤な相棒に聞こえるように言った。
おわり
160 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 03:12:59 ID:uS9B9eIO
日が長くなっているとはいえ、少し遅くまで出歩きすぎたかもしれない。
もう、お日様は西の山の端にかかっていた。日中の暑さも和らぎ、
風もだいぶ冷たくなってきた。夜は近い。
家に帰るには、高台にある神社の敷地を抜けるのが近道だ。
境内へと続く石段を登りながら、私は町を見下ろした。青々と茂る木々の葉が、
夕日に照らされて赤く染まっている。もちろん、下の家々も同じ事だ。
急がなければならない。登りはともかく、下りの道は半分獣道のような物だ。
暗くなってしまっては足下がおぼつかなくなる。それに夜道は物騒だ。
少しだけ駆け足になって、階段を上がった。
鳥居をくぐる頃には、もうすぐ完全に日が落ちきってしまいそうだった。
吹く風が木の葉をざわつかせるのにも、なんだか不安になって、
足早にその場を立ち去ろうとした。
ちょうど手水舎の脇辺りを通り抜けようとしたときである。背筋に寒い物が走った。
正体は分からないが、漠とした恐怖が私を襲っていた。唐突に、名状しがたい不安に
とらわれたのである。辺りを見渡しても、先ほどとどこも変わっていない。
ただ、風がぴたりと止んでいた。
拝殿の方で、鈴の音がガラガラと鳴った。むろん、そこはおろか、参道には人っ子一人いない。
動悸が激しくなってくる。せせらぎの音が、やけに近く感じる。私は、ついに耐えきれなくなって
走り出した。
鎮守の森を抜けて、麓に着くまで夢中で走った。町がずいぶん遠く感じた。
人里に入ってようやく一息つく事ができた私は、そこでやっとその事を思い出した。
神社の近くに川はない。
町にはもうすっかり、夜の帳が落ちていた。
>>160 なんだか読んでて自然っつーか緑臭がかなりした
田舎の神社近くでの話ってのが、人里って単語でダメ押しで意識させられた
そういう所の森とか自然の音って、日が落ちると妙に怖いよなー
なんだろう、そういう諸々を含めて、ホラーなんだけど懐かしい感じがしたよ
162 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 03:20:10 ID:uS9B9eIO
>>159 物を大切にする事と、ある程度以上の執着を持って物とつきあうのは微妙に違うよな
物を人みたいに扱うのは、優しい人じゃないとできない
新刊がフェラーリ向かってアーメン言ってるのは、端から見れば相当シュールかもしれないけどなw
>>163 やべええええ! 超秘密基地にしたいんだけどwwww
田舎とかって、なんでこんな所にあるのんって場所に車があったりするよね
んで、中に小動物的な奴らが住んでたり
この廃車になったバスの中には確実に何かが潜んでる
165 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 03:51:29 ID:uS9B9eIO
大自然とぶっ壊れた車って妙にマッチするよな
こういう風に淡い色で描かれるとすげえ綺麗になる
ていうか、良くこんな短時間で色まで塗ったなw
>>159 すごくシンミリきてたのに最後…チクショウw
愛情伝わってくるし、そうした理由もうなずけるのに笑えてしまうじゃないか。
>>160 「緑臭」に納得。
夕日の色とか音とか匂いとか凄く想像かきたてられる。
この空気好きだなー。怖いけど。
国道と名はついていても、この××号線は、とてもじゃないが整備が行き届いているとはいえない道だった
山間部を走る車線は一本しかなく、カーブのきつい崖のそばを通りかかる時にすら、ガードレール一本しか、落下から守ってくれるものがない
そのガードレールにも、ところどころへこんだような跡が付いていることから、この道がいかに危険に満ちたものか、分かろうというものだった
ある夕方、そんな国道を、おっかなびっくり走っていく白い車があった
その運転席には、頼りなさそうな記者が一人、不安げな顔でハンドルを握っている
とっくに夕日は沈み、山は薄紫の闇に支配されつつある
臆病な彼にとって、その闇を切り裂いてくれる愛車のヘッドライトだけが、唯一味方してくれているような物だった
彼は、とある不思議系雑誌のライターである
心霊現象や、超常現象について、記事を書く
例えその内容がでっちあげだとしても、買ってくれる読者はいた
そんな彼らを楽しませるためにも、記者は一生懸命、ネタになりそうな話や写真を集めて、西へ東へ走り回っている
そんな中、記者は、忘れられた村に、おどろおどろしい被写体があるという話を聞く
例え恐ろしい現象がなかったとしても、その見た目のインパクトだけでも、読者を納得させることのできる被写体
行かないという選択肢はなかった
この国道の先にある、廃村の神社のご神体、パクパク様とやらを写真に収めてくるのが、今日の仕事である
本来ならば、もう仕事を終えて帰途についているような時間である
しかし今日に限って愛車の調子が悪く、途中で何度も修理のために時間を割かれた
これは、本当に何か、嫌な事があるのではないか……
記者は、恐ろしい予感に身震いした
そしてそれは的中することとなるのである
突如として車のヘッドライトが消えた
エンジンの回転も遅くなり、やがて停止する
車内は真っ暗な闇に包まれた
ガラス窓越しにも、蝙蝠の声や、葉の擦れる音が聞こえてくる
記者は息を飲んだ
フロントガラスに、青白い手が張り付いている
……!
一年後
その車は草に埋もれていた所を隣村の村人によって発見された
真っ白だった車体は雨でオレンジ色に錆びつき、タイヤが一つなくなっている
フロントガラスとヘッドライトも割れて、ガラスが飛び散ったままにされていた
車の持ち主は、とうとう発見されずじまいだった
ただ、車内に残されていたカメラ、その写真は現像されたが、村人は不可解なものが映っている事に気づく
「こりゃぁ、パクパク様だべ……」
夏の午後 不思議系雑誌の編集部 ある変人記者と美人デスクの会話
記者「今度の記事はこれでいこうと思う!」
デスク「……記事の中とはいえ、よくもまぁ、自分をポンポンと殺せますね」
記者「いいってことよ、全国3000人のオカルティストが俺の記事を待ってくれているんだ!」
デスク「そうですか(せいぜい30人いればいいほうでしょ)」
記者「ん?何か言ったか?」
デスク「いえ それにしても、今回の写真も、よく出来ていますね」
記者「まぁな、最近のパソコンはすげぇよ 透過処理だってお茶の子さいさいだ」
記者とデスクの間にある写真は、今にも記者に襲いかからんとする伝パクパク様像が映っている
168 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 09:48:47 ID:o/xP8H+B
そんなにしょっちゅう記者が死んでたら、いくらなんでも不自然だろw
あの手の雑誌は読者投稿欄とか面白いよなw
>>168 ああ、めちゃくちゃ面白いと思うwww
中学の頃、某古代大陸雑誌にハマってたんだぜ
本気かどうかわからんが、自称悟りを開いた人の体験談とか、なかなかぞっとさせられた
>>156 同じ人だったのか
全く気付かなかったよw
東北地方の某県に鎮座する寂れた神社の片隅に、赤錆た白のカローラ2が一台放置されていた。
そのカローラ2の後部座席には、口が壊れた新しいボストンバッグが転がっている。
壊れた口から覗ける中身は一見すると空だ。
しかし、実はバッグの底が二重になっていて薄い雑誌を一冊程度なら隠しておくことが出来るようになっている。
そして実際にそのスペースに一束の書類が隠されていた。
『解離的世界構築計画 第三十六次中間報告書』
表紙にはそう表記されている。
その中に記されているモノは、子供がイタズラで書くミミズがのたくったような奇妙で何故か一貫性のある文字と、
それと同じように子供がイタズラで書いたような奇妙な絵。
そしてそれらを解説するように専門用語が暗号のように並ぶ日本語の文章。
『世界からセフィブテトした早熟なガルオウド達は速やかにオプテヂゼィし、
それらをポンデヨームする事によってモリニルースホ化する事で
硬化フォンダラゼムモとなり得る事は上記の古代モルモル人の神話が示した事実だが、
フォンダラゼムモをオプテヂゼィと全く逆のポンデヨーム理論に基づいた純ポンデムールを使用し、
ファルッファルミニホウ化させることで今までの硬化フォンダラゼムモよりもさらに高純度のピルノバドロモ的な
カダルノボバヨヌを得ることがが可能になったのだ。
そしてそのカダルノボバヨヌを代償に上の図の魔方陣を使用することで、
ガルオウドをさらに高存在化させ―ー』
風が吹いた。鉄の匂いのする風が。
一見赤錆びたこの白のカローラ2だが、意外とペンキは剥げていない。
車体に浮いた赤錆以外は新品同様で、もしかしたら人の顔が映るかもしれない。
ガラスも割れているどころか、少し赤錆がかかってる場所以外はまるで磨き上げたばかりのようだ。
そして車内もボストンバッグの中身だろうモノと赤茶色のペンキがぶちまけられている事以外は実に綺麗に掃除されており、
ハンドル脇の走行距離のメーターも十二万kmを指している事から、
側に散らばっている以前の持ち主がいかにこのカローラ2を大切にしていたかが本当によくわかる。
満腹になったカラスが一羽、千切れた中指を嘴に銜えて、北に飛んでいった。
172 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 06:06:50 ID:w5EYNu7M
長編の冒頭みたいな感じだな
なんか不気味な空気
それにしても、お前ら赤い車好きだなw
173 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 14:31:39 ID:ytoIYLcJ
お題「天野嘉孝のやさいのようせい」
元ネタ希望
>>171 カダルノボバヨヌって人間のことかな
暗号だからわからないけど、たぶん魔法を使おうとして失敗したんだね。
お題「天野嘉孝」
雑居ビルの一階に異彩を放つ異形の専門学校が寄生している。
それは何か。
オタのすくつである。
つまりは代アニの地方分校の小説創作コースの教室にて、だ。
休み時間でもオタク同士が盛り上がるのはやはりオタクな趣味であって。
皆が眺めているのは『ばいばい、アース』上下巻の表紙。
天地明察売行好評記念に座談のネタとしてSF好きのソウゲンちゃん(早川文庫より創現SFを好むためこう呼ばれる)が持って来た本だ。
文庫に付されたキムヒョンテの如何にもラノベ世代向けの絵でない、
天野さんの妙にエッジ感あふれる絵が目に痛いような原色で主張していた。
「天野嘉孝ってさぁ、コレほんとに上手いか」
俺が言うと座談に興じていた仲良しグループの瞳がこっち向いて、
何ほざいてんのこの愚者は愚かすぎねぇマジお前の居場所EREHWON(エレフォーン)なんだけど?
と言わんばかりの冷凍ビームじみた視線に突き刺された。
「なぁ、ちょっとこっち来んかタナカ氏」
「なんだよ、殴るなよ」
「そないなことせんちゅーねん。はよこいや」
俺(=タナカ氏)はラブコメに呼ばれてケツを預けていた机から立ち上がった。
ちなみにラブコメがラブコメと呼ばれているのは、
入学当初の新歓迎会で飲み過ぎたあげくに「わいわ、わいはラブコメみたいな恋がしたいんや!」
と咽び泣きながら叫んだことによる。
俺が座談の輪の外を回ってラブコメに近付くと、奴は厳かに言った。
「お前は天野嘉孝の素晴らしさがまっったくわかっとらん。アレやろ、天野さんの近作とかも分かれへんやろ自分」
「近作?」
「かー、やっぱわかっとらんやんけ。罰ゲームや」
とラブコメが言った直後俺の尻に圧倒的な衝撃が加わり、
ズンッと言うような効果音を付けるべき鈍痛が尻から脳天まで突き抜けアッー!
膝から崩れた俺が背後を確認すると、赤い屹立をそそり立たせた──
というか赤い人参を浣腸の姿勢で保持したままニヤリほくそ笑むテッちゃんが居た。
テッちゃんは鉄オタな訳ではなく生粋のガノタであり、
元歯科技工師の技術を駆使してフィギアに精巧な金属パーツを用いるからでテッちゃんなのである。
つーかケツが超イテェ。
「タナカ氏。天野さんの近作は“やさいのようせい”だよ。ふひ。だから人参。ふひひひ」
テッちゃんは講釈を垂れイラッと来る無意味な笑みを浮かべた。
ソウゲンが何やら痙攣して居るが多分笑っているらしい。
ちびまる子ちゃんでたとえると野口さんキャラなためソウゲンの痙攣に誰も触れない。
つーかケツがイテェ。
「もういいからギャザやろうぜ」
「わたし、マンガ読みたい」
痛がる俺に早くも興味を失ったギャザ郎と百合リン。
まぁこの二人は名が体を表しているので割愛してカップルであることのみを言質しておく。
ケツが治まった。
「ほら、タナカ氏!叫ばんかい!ンギモッヂイ゙イ゙ー゙、と!」
「ふひ、ふひひひひ」
世界は今日も(俺の菊門を除いて)平和一徹だった。
ぐああ、オチが思い浮かばなかった
天野嘉孝がテーマって難しいよコレ
179 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/15(火) 10:33:02 ID:VNfyYHCm
確かに苦戦した後が出てるなw
じゃ、次のお題
「ピカチュウ」
「いいな、真奈美は細くて。あたしなんかぶよぶよだしさ、彼氏もできないし」
「そんなことないって」
暇な生徒数人がぽつぽつ残っている、夕方の図書室。私の親友である石川真奈美は嫌味のない笑顔で答える。優しくて、長身の美人で、誰からも好かれる子。私は欠点のない彼女のことが大好き。大好きなはず、だ。なのに。
私には彼女のようにはなれないのだから、性格くらい仏様のようであろう、と思ったりもした。妬みも怒りも何も感じない、天使のような女の子に。少女漫画のヒロインってみんなそういう子ばかりだし、私にも王子様がくるかもしれない、なんて。
だけど結局自分を騙すのは何よりも疲れるのだ。いざ蓋を開けてみれば、私はコンプレックスまみれだった。丸い顔も、低い鼻も、太い足も。私は私に嘘をついている。
私は次に自分を責めてみる。お前は真奈美が羨ましい、真奈美にあるものが私にないのが悔しい。そうなんだろう。
「あーあ。やんなちゃったな」
真奈美は今日は彼氏と帰るというので、私は一人で図書室に残ってレポートの続きをやることにした。少数の生徒も皆帰ったようで、学校の下の道路を通る車の音だけが聞こえる。窓から見える夕焼けが綺麗だった。
進むものも進まず、ボーッとエンピツを持って外を見ていると、後ろからガタッという物音。
「…あ、ごめん」
"生物と科学"コーナーの後ろから顔を出したのはクラスメイトの鷹田くんだった。
「き、聞いてた?」
人がいるとは思っていなかったので、声が上ずる。
「何を?」
「ひとりごと。やんなっちゃったなって」
「…いや。でも今、自分で言ったよね」
「あ」
私は思わず笑顔になる。鷹田くんも、慣れない筋肉を動かすように顔をくしゃっとして微笑んだ。
「重そうな本持ってるね。ここ座れば?」
彼がめったに見せない笑顔を見せたのが嬉しくて、私は隣の椅子を指差した。おとなしく着席する鷹田くん。
鷹田くんは教室でいつも本を読んでいる無口な黒髪の男子である。整った顔立ちをしているのに下、ばかり向いているので、もったいないな、と思っていた。
もちろん一言二言しか言葉を交わしたことはない。もちろん、隣同士に座っていても会話は続かない。
重い空気に顔が熱くなってきたので、私はレポートを書くことに集中しようかと考え始めた。
「ピカチュウの可愛さってさ」
その時、沈黙を破って、恥ずかしそうに鷹田くんが言葉を発した。
「脂肪でできてるんだ」
「え?」
「だから、ピカチュウの可愛さは脂肪でできてるんだ」
拗ねたように、また言葉を繰り返す。
「ガリガリだったら、可愛くないだろ」
「…うん」
「生物は、丸っこいものを可愛いと思う」
「なるほど」
私はよく分からないまま相槌を打っていた。
「それに、石川さんて、俺小学校の頃から一緒なんだけど、デカ女っていじめられて、いつも泣いてた。でも今すごく強くなったんだよ」
「そうなんだ。…初めて知った」
真奈美にもそんなところがあったんだ。と答えようとしたとき、私はやっと気付いた。鷹田くんはさっきの私と真奈美の会話を聞いていて、私を励まそうとしてるんだ。
不器用な励まし方だなあ…。彼らしいやり方に可笑しくなってきて、悩んでいたことがどうでもよくなってくる。
「ありがとう、元気出たよ」
「いや…」
「これくれたらもっと元気になる」
私は鷹田くんのファイルに貼ってあるピカチュウのシールを指差した。貼って剥がせるタイプの。
「え、別にいいけど。弟のだけど」
鷹田くんがシールを剥がして私の携帯に貼ってくれる。
帰ったら、久しぶりにゲームボーイでもやろうかな。ポケットモンスターエメラルド。
正直、キュンときた
ありがとう
そ、そう言えばエメラルドはアドバンスなんだからねっ!!
183 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/16(水) 07:13:45 ID:ve8y+w+H
地味に鷹田君もかわいいなw
それは確かに「ピカチュウ」だった。
この絵をみれば誰もがこの絵の中の存在を「ピカチュウ」だと認めるだろう。
ただ、ここに描かれているのは皆が一般的に想像する愛らしい電気ねずみのピカチュウでは無かった、
何故ならば「天野喜孝が再デザインしたピカチュウ」なのだから。
最大の違いは、黄色の毛皮の下に薄い筋肉を纏った人型に変化している事だろう。
特徴的な少しばかりの憂いを感じさせる細い切れ長の目。何かを心に決めたかのように小さく引き結んだ口。
その存在を確実に主張している黒い鼻。そして外す事は適わない赤みを帯びた頬。
細く長く変化した耳の先は背の中ほどまで伸び、その先は艶やかな黒毛に変わり少し丸まり背中に軽く触れていた、
その近くに以前と同様、茶色い線が二本走っている。
八本に増えた尾にはそれぞれ違う種類の美しい装飾品で飾られ、
各尻尾の中ほどから稲妻を模しているかのように複雑に分かれ広がり、このピカチュウに幻想的な雰囲気を与えていた。
小さく可愛らしかった足は姿を変え、細くしなやかながら力強さを感じさせるモノへと変化を遂げている。
変化を遂げた足と同様にその腕もしなやかに美しく変化していた。
ただし足とは違い、魔物としての凶暴さを証明するかのように、腕の半分ほどの長さを持った鋭い紅い爪を有している。
その両腕には魔術的な何かを感じさせる不思議な形状の銀細工の輪がはめられており、
今までとは違う確実な力がこのピカチュウに宿っている事を証明していた。
これが「天野喜孝が再デザインしたピカチュウ」だった。
このピカチュウに元来のピカチュウが持つ愛らしさは残っていなかった、
だが確実に綺麗だった、力強かった、そして美しかった。
任天堂の社長はこの「天野喜孝が再デザインしたピカチュウ」に感動した。
そして全ての作品に登場するピカチュウをこのピカチュウに差し替える事を宣言した。
アニメもゲームもグッツも何もかも全てのピカチュウが社長の一声によってこのピカチュウに差し替えられた。
世界中の子供達が泣いた。
その年の任天堂の決算は珍しく赤字になったという。
任天堂社員、目を覚ませwww
でも超見てぇww
187 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/17(木) 22:37:27 ID:rdBNuYDz
決算を左右する恐るべき経済効果
>>188 なんてことをしてくれたんだ!
それっぽいwwww
191 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 09:26:39 ID:RjdIy86q
これはひどいwww
>>188 おお、絵なんて書いてもらったの初めてだ
ありがとうございます!
>>188 無駄に豪華すぎるwww
これが3Dで…ごくり
194 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 09:59:32 ID:XoV5YBqf
お題「グインサーガの主人公 グイン」
195 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 20:34:28 ID:37vUQMbd
グインサーガ読んだ事ないから他のお題ちょうだい
お題「建設会社諜報部」
197 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 21:31:14 ID:37vUQMbd
スパイ「ついにライバル社の機密文書を入手しました」
上司「ほう」
スパイ「次の入札の提示額が書かれています」
上司「国道××号建設工事のか?」
スパイ「はい! これで我が社の受注は確実ですね!」
上司「そうだな。よくやった」
スパイ「ありがとうございます!」
上司「ただ、この書類を有効活用するには一つだけ難点がある」
スパイ「というと?」
上司「入札は昨日既に終わっている」
198 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 21:32:10 ID:37vUQMbd
スパイ「A社の工事に使われる特殊技術を調べてきました」
上司「ほう」
スパイ「A社は業界屈指の短い工期で有名です。
これを応用すれば我が社も経費削減が期待できます」
上司「ふむ、それで、どんな技術だったんだ?」
スパイ「はい、壁に埋め込む鉄骨の量を減らしたり、
柱の本数を規定量より少なくする事によって、作業量を減らしているようです!」
上司「うん、そうか。たいした技術だな」
199 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 21:32:51 ID:37vUQMbd
スパイ「B社上層部の犯罪行為を突き止めました!」
上司「ほう」
スパイ「この書類が粉飾決算の動かぬ証拠です!」
ペラッ
上司「君にしては珍しく、とても有益な情報だよ」
スパイ「ありがとうございます!」
上司「今書類を確認するから、そこでテレビでも見ながらくつろいでいてくれ」
スパイ「はい!」
アナウンサー「先ほど、警察がB社取締役の家宅捜索を開始しました。
容疑は粉飾決算で、証拠も出ており――」
200 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 21:33:32 ID:37vUQMbd
ここまで投下
201 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 21:33:42 ID:ovO6Ofsc
手抜き工事www
社会問題じゃねーかw
ちょっぴり間抜けな産業スパイだなwww
お題[ファイナルファンタジー2のミンウ」
204 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/20(日) 14:17:24 ID:EoQFD52R
FF2やった事ないから、別n(ry
お題:ミルクティー
206 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/20(日) 23:24:29 ID:EoQFD52R
先日、スーパーに買い物に行った帰りの事だ。俺は夜道を急いでいた。
そこは幹線道路から外れた細い路地で、昼間でも薄暗い。ましてや闇夜となれば、
微かに漏れてくるネオンの光を除けば、まるで明かりがない。一寸先は闇である。
そんな場所でも家に帰る近道だから、いつも通っていた。
野暮用で帰りが遅くなっていた俺は、幾分早足で歩いていた。
そのためであろうか。俺は「それ」に気づかなかった。
ふと、足先に柔らかい感触が当たる。おやと思う間に、
「声」が聞こえてきた。
「痛えよぅ。蹴らねえでくれよぅ」
腹立たしいまでに惨めな、媚びた声音だった。だがそんな事よりも俺は
その声が発せられた事自体に驚いていた。なぜなら、その声は明らかに
先ほど俺が蹴ったものから聞こえていたが、それはどう見ても人間ではなく――
「あぁ。そうだよ。俺は犬だ。犬が喋っちゃ不思議かい?」
こちらに振り返ったそいつに、ゆっくりと月の光が差してゆき――
「ひ、人の顔っ!?」
月明かりに照らされて浮かび上がった姿は奇怪なものだった。
黒毛の大型犬の体に、疲労感を浮かべた中年男性の顔。こいつはヤバい奴だ。
きっとただでは帰れない。そんな確信に近い直覚があった。
そして、犬がゆっくりとこちらに一歩踏み出そうとしたその時!
「破ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
夜気を切り裂く力強い咆哮が! 寺生まれで霊感の強いTさんだ。
しかし、すんでの所で犬はTさんがはなった光弾をかわす。
「人面犬か。さすがの実力だな。しかしこれならどうだ! 破ぁっ!」
Tさんの手からは次々と光弾が発射されていくが、なかなか命中しない。
俺が呆然として戦いを見守っていると、例の犬が一瞬、こちらを睨んできた。
先ほどとはうって変わって、恐ろしい眼光である。そして直後、俺の手にあった
買い物袋が、ものすごいスピードでTさんの方に飛んでいった。
「破っ!」
それに気づいたTさんが間髪入れずに気を放つ。それは狙い違わず買い物袋に
命中し、四散させた。
「やれやれ、手こずらせてくれたな。だがこれで終わりだ。破あああぁっ!」
Tさんがひときわ気合いを入れてはなった光弾は、ついに人面犬に直撃し、
奴は霧のように消えていった。
「まったく、さっき買い物袋を破ったときに、牛乳をかぶっちまったぜ。
これが本当のミルクTだな」
Tさんはそれだけ言い残すと、牛乳をタオルで拭きながら帰って行った。
寺生まれってすごい。改めてそう思った。
Tさんwww
Tさんww流石だwwww
初めて御題SS投下させてもらおうと書き始めたら
ちと長くなり・・予想外の展開になり始めて、自分に嫌気がさした・・・。
210 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 09:13:52 ID:WA54UDkX
長いってどれくらい?
211 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 11:27:22 ID:2pcAlw9O
>>210 10前後に分割できるかどうか、って状況。
212 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 11:33:06 ID:WA54UDkX
10レスくらいならここに投下しちゃっても全然構わないだろ
213 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 14:16:46 ID:2pcAlw9O
そかな?
じゃ、がんばって完結させて投下する!
お題くれ
215 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 22:29:32 ID:J+1Fl++G
馬券
お題「栗本薫」
217 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 18:55:16 ID:DGzSf/fo
お前グインサーガ好きだなw
どんだけそれ関係のお題にしたいんだよw
天野喜孝とかやさいのようせいってのもあったけど、
「お題」ってより、リクエスト?
219 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 19:27:54 ID:DGzSf/fo
お、今日は割と人いるな
お題創作しようぜ
お題は
>>215か
>>216で、他のお題がいいって言う人には俺が出すぜ
それじゃ何かおくれ
221 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 19:34:39 ID:DGzSf/fo
コーヒー牛乳
むずかしいなあ。
「社長、まだいらっしゃったのですか?」
忘れ物を取りに来た事務屋の部下が何をするでもなく小さな工場の構内を歩き回っていた男に声をかけた。社長
と呼ばれた男は中小企業の社長らしく作業服を着ていた。
「ああ、ちょっと興奮していてね。明日はコーヒー牛乳の初出荷だろう」
そう言うと、社長は部下の方に歩み寄った。
「ちょっと話してもいいかな?」
「かまいませんよ」
まだ若い女性である部下は門限が気になったが、どんな話をするのか聞きたかった。バイオ系ベンチャーで躍進
中のこの会社において、今度のコーヒー牛乳の出荷額は小さい方だった。なんでも、牛一頭からとれる牛乳を使
うとかで単価が高く売れにくいので反対する人も多かったという。基本的に強引なことはしない社長がこの計画を推し進めたのはなぜかが気になったのだ。
「君はコーヒー牛乳を飲んだことがあるかい?」
「はい、何度も」
どうしてこんな質問をするのだろう?と部下はいぶかしく思った。
「ちがうな。日本では『コーヒー牛乳』は売っていないよ」
「どういうことです?」
「詳しい規格はあるが、ぶち明けた話をすると、『牛乳』と名乗っていいのは100%生乳から作ったものだけな
んだ。君の年齢だと、『コーヒー牛乳』を見たことはないだろうね。
それだけ昔に無くなってしまったのさ」
社長は、息をつくと続きを始めた。
「あの日、『コーヒー牛乳』は『コーヒー』になってしまった。僕は悲しかったんだ。みんながそれになれてゆ
く中で僕はどうしたら『コーヒー牛乳』を作ることが出来るかずっと考えてきた。ねえ、我が社の主力商品はな
んだい?」
「GM家畜ですよね」
「そう、僕は正攻法を目指した。牛乳が100%生乳が原料でなくてはならないのなら、『コーヒー牛乳』を出す
牛を作ればいい。その結果が今、厩舎にいる牛なんだ。これまでいろいろな牛や豚や羊を生み出してきた。売り
物になったやつ、売り物にならなかったやつ、いろいろいたが、全部この牛を生み出すためにやったことだ。
低脂肪乳を出す牛を作り出すことが出来たときにはもう一歩だと思ったのだけど、それから時間がかかったんだ。
フルーツ牛乳を出す牛、これは今のコーヒー牛の母親だが、彼女が生まれてからは結構早かった。特定の食べた
ものを乳に抽出されるような機序を組み込むのが一番難しかった」
「どうしてフルーツ牛乳を売り出さなかったのですか?」
「『コーヒー牛乳』じゃないから」
社長があまりにもポン、と応えたので部下は笑い出してしまった。つられて社長も笑い始めた。
社長は、笑いを止めると、部下を何年も使っている軽トラで家に送り届けた。
「コーヒー牛乳」は会社の命取りになった。一部の好事家が買っただけでほとんど売れなかった。しかも、敵
対する大企業がGM反対派や宗教活動家を動かして「コーヒー牛」へのネガティブキャンペーンを行い、不買運
動を起こした。低脂肪乳もいまさら対象にされてしまい、食品事業からの撤退を余儀なくされた。それだけでな
く、株価下落に乗じて、株式のかなりの部分が買われてしまった。
その結果、社長は代表取締役を解任されてしまった。
「生まれたらしいですよ〜」
そう言って、厩舎の掃除をしていた元社長に声をかけたのは、あの日の部下だった。生まれたのはコーヒー牛の
二代目だ。実のところ、一匹目は死産だったので、社長だった男は心配だった。元社長が出産現場に行くと、昔
からの知り合いの獣医が、女の子だ、と教えてくれた。
社長は、「コーヒー牛乳」は失敗して、自分が追い出されるだろうことがわかっていた。それでも、やりたくて仕方
がなかった。それが夢だったから。
やめる準備を終えてから彼は夢に、「コーヒー牛乳」を復活させたのだった。今では、彼は実家の酪農家で、
彼を慕う元社員達と共に苦しいながらも彼が生み出したが「売り物」にはならなかった動物たちと共に暮らしていた。
うわ、ざつだな。
いくつか誤字もあるし。
225 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 21:06:38 ID:DGzSf/fo
コーヒー牛乳を出す牛とか、目的と手段が逆転してる気がするw
ていうかフルーツ牛乳牛の扱いwww
226 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 21:07:45 ID:DGzSf/fo
遠藤が行方をくらましたのは、今から半年ほど前の事になる。
といっても、何日も彼の姿が見えないというのは別段珍しい事でもなく、
あの時も、一月も経ってからようやく周囲のもの達も慌て始めたといった風だった。
彼は、世間で言うところの不良という奴で、十二の頃から学校に行くのを
やめてしまった。それからは、博打やらかっぱらいやら、訳の分からない怪しげな
仕事やらで糊口をしのいできたようだ。当然、親元からは勘当同然の扱いで
援助などなかったというし、他の大人達も彼を出来の悪いガキだとしか思っていない。
彼自身もまた、誰からも庇護を受けずに、孤独に生きていく事を好んでいたようだった。
あるいは、そういう風にしか生きられなかったのか。
私自身は、社会の中で全うに生活していく事を第一としている。
学校も、小学校、中学、高校と、サボった事もない。大学に上がってからは
幾分怠けたが、落第だけはしないように、いつも気を遣っていた。
だから、アウトローを以て認ずる遠藤と十年来の友人であった事は、
今でも不思議に思う事がある。
一年も前になるだろうか、遠藤と昔の話をした。彼が数ヶ月ぶりにふらりと
私の家を訪れた折の事である。俺たちは酒を飲んでいた。第三のビールとかいう、
ビールだかそうでないのかよく分からない代物だったと思う。それが不味いだの、
飲めたもんじゃないだのと文句を言い合っていたときに、ふとあいつが切り出してきた。
「お前は、こんなクソみてえな安酒でも、律儀に残さず飲むな」
「ああ、もったいないからね」
彼はちょっとだけ黙ると、すぐ後を続けた。
「ガキの頃も、俺が学校なんかサボっちまおうって言っても、お前は聞かなかった。
そんなに学校が好きだったか?」
「いや。ただ、叱られたくなかったからね」
「俺からすりゃあ、気に入らない事をやらされ続ける方がよっぽど嫌だがな。
不味い酒も飲みたくない」
そう言うと、どこから見つけてきたのか、正真正銘のビールを飲み始めた。
やれやれ、残りの第三のビールは全部私が飲んでしまうようだな。そう思った。
227 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 21:08:26 ID:DGzSf/fo
「あの後も、お前にはずいぶんと色々悪い事を教えられた」
「お前は何一つ覚えなかったけどな」
彼は、クックッとおかしそうに笑った。
「要はだ、悪い事をするにも天性の思い切りの良さが必要なんだ。
それがお前には全くない。まあ、逆に俺には、世間様に顔向けできるような、
まっとうな生活ができるだけのこらえ性がないがな」
「今日はずいぶん饒舌だな。珍しく懐具合がいいとかか?」
それを聞くと、何がおかしいのか今度は大笑いし始めた。
「残念、スッカラカンだ。給料全部突っ込んだ馬で負けちまってね。
またしばらく、寝床と飯を世話になるぜ」
「またか。勝手にしろ」
あっけらかんとした態度に、怒る気もそがれてしまった。それから数週間
馬鹿騒ぎをした後、彼はまた突然どこかへ行ってしまった。それが彼と会った
最後の時になった。
彼が去った後、部屋の掃除をしていた私は、一枚の馬券を見つけた。
落としたのか、わざと置いていったのか、出して眺めていたのを
そのまま忘れていったのか。いずれにせよ、外れ馬券なんてしょうもないものを
置いていきやがって。そう毒づきたかった。
ふと、馬券の上へと目を下ろす。それは単勝で、「クラトウテイオー」という馬の
ものだった。万年最下位のおちこぼれ駄馬だ。そんなのに貴重な金突っ込むなんて、
本当に馬鹿な奴だな。そんな事を思いながら、馬券をクシャクシャに丸めて、
ゴミ箱へ放り投げた。
228 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 21:08:59 ID:DGzSf/fo
ここまで投下
やりとりがおもしろかった。
お題:パロディー
お題「宇宙人」
232 :
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/06/26(土) 15:48:11 ID:qohbji2S
[パロディー&宇宙人]
昔々、ビッグバンで宇宙ができました。
縦横無尽に広がりだした宇宙の中心点にはビッグバン直後から巨大な巨大な恒星があります。
恒星は宇宙空間の隅々まで光を飛ばしました。実はこのころの宇宙空間内は大気で満たされており、光を乱反射させたため宇宙空間は闇の黒色ではなく、光の白い色をしていました。
しかし、宇宙は光よりも速いスピードで広がり続けるので、光の当たらない部分はもちろん闇で黒色でした。
ある時のことです。黒い宇宙の最果てに、三体の宇宙人が現れました。
彼らは別宇宙でのビッグバンによって生まれたとても高位な存在で、無の空間を乗り超えてこの宇宙へとやってきました。
「おい、この宇宙に生命はいると思うか」
「いないだろう。この宇宙はできてからまだ1チクタクぐらいしか経っていないようだ。
もっとも、我々のようにビッグバンと同時に生まれた生命がいる可能性が無いこともないが」
「もしいたとしたら・・・」そこで言葉を切って、三体目が宙返りをしました。「こんな姿か?」
さっきのタコのような姿の宇宙人ではなく、イカのような姿に三体目は化けました。
「おお、いいねえ」一体目が称賛の言葉を口にしました。
「我々のそっくりさんというわけだな」二体目も楽しそうにしています。
三体目は得意げになりました。
「ふふ、ふふ、はっはっはっ」一際大きな声を出して笑いました。
声は宇宙中に響き渡りました。この時、声とともにイカスミも宇宙中に広がり渡りました。
他宇宙から来た宇宙人のイカスミは、宇宙の大気と混ざって、触れることも光を跳ね返すこともない性質の暗黒物質に変えてしまいました。
宇宙の中心にある巨大な巨大な恒星も、暗黒物質に変えられてしまったので宇宙は完全に真っ暗になりました。
それから数百チクタクが経過しました。地球では、学者さんたちが今日も宇宙の謎について語り合っています。
おしまい
ダークマターってタコ型宇宙人の置き土産だったのかw
234 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/26(土) 21:37:58 ID:1mQD+zv/
宇宙人は他の宇宙でもやっぱりタコ型なんだなw
>>226 こういうの好きだ
遠藤と、クラトウテイオーの因縁が仄めかされてたらもっと味わい深くなってたかも
>>232 『征地球論』のパロディ?
>>236さん
はい。念のためググってよかったです。
タイトルは覚えてなかったんですが、「チクタク」という時間単位はこの作品の宇宙人の会話から取りました。
たしか、3チクタクで100年でしたっけ?
232でのチクタクは征地球論のチクタクと同じ長さを示すものではありませんが、
>この宇宙はできてからまだ1チクタクぐらいしか経っていないようだ。
ここの1チクタクは数を小さくするか、単位をかえるかしてもよかったかなとは思います。
>>232 やだかわいい
自分は元ネタを知らなかったんだが、すごくほっこりした
高位な存在がこんなにユーモラスでいいのだろうか?
239 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/27(日) 23:11:29 ID:Gxa5Ooma
お題クレクレ
>>238さん
感想ありがとうございます
高位な存在と言うと落ち着き払っていたり、機械的で理に適った行動しかとらないようなイメージですよね。
でも、この宇宙人たちは宴会のようなノリで話し合うので人間チックになりましたww
お題:お代
[お代]
朝、バイクの音で目を覚めたので玄関のドアまで行くと、郵便受けに封筒があった。
差出人の名に心当たりはなかったが、たしかに自分宛てなので開けてみる。
「お代をちょうだい」
墨汁で縦長の習字用紙にその八文字が書かれていた。
お代とはいったいなんだ?
考えてみれば先月の電気『代』の徴収がまだ来ていない。
銀行の口座引き落としに換えたんだったな。口座に残金があるか確かめておこう。
しかし、それだと印刷された文章が送られてくるか、直接言いに来る気がする・・・
これは手書きだ。となれば代金の請求などではないだろう。
お代・・・
「おしろ」という名前の先祖が江戸時代あたりにいたかもしれない。
けどそれだと「ちょうだい」と意味が繋がらないな。
お代・・・
漢字間違いだったりして。「衣」を書き忘れてるのかも。
「お袋をちょうだい」か。『母を訪ねて三千里』の主人公のセリフとかだろうか?
いやそんなセリフはないだろうな。もしあってもきっと無関係だろうし。
あ、いつのまにやら昼になってる。お腹がすいた。
昼食の準備をさっさと済ませてご飯にしよう。
考えるのには糖分が消費されるとか聞いたな。
今日のお昼はご飯を何回お代わりできるかな。
243 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 01:01:37 ID:7r69PCO0
結局何のお代わりだったんだw
一行目は>目を覚めた になっていますが>目が覚めた ということにして下さいorz
>>243さん
それは秘密ですw
245 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 01:24:06 ID:7r69PCO0
確か、上野かどこかだったと思う。奇妙な店があった。
戦争で町が焼けてしまって、そこら中にバラック小屋がひしめき合い、
誰も彼もが日銭を稼ぐのに夢中だった頃の事だ。
私がそこに行ったのは仕事帰りだった。その日は闇市で首尾良く商品を売りさばき、
珍しく懐が温かかった。それで、たまたま目に入った飯屋で、ちょっと腹ごしらえを
しようとしたのである。
暖簾をくぐったとき、わずかに後悔した。一見して異様な空気だったのだ。
大鍋で得体の知れない物がごった煮にされていて、それが振る舞われている。
それはいい。怪しげな食い物など、当時は珍しくも何ともなかった。
おかしかったのは店そのものだ。
もう夜も近いというのに明かりもつけずにいた店内は薄暗く、奥の方の、
一層光の届かないよく見えないところに、店主はいた。こけた頬に、
ギョロリと浮き出た眼下が印象的だった。頭はほとんど禿げていたと思う。
それが、一言も口をきかず、愛想のかけらもない無愛想な顔で、ただ黙々と
どんぶりに食い物をよそい続けた。私は彼が唖ではないかと本気で疑った。
この店だけが外の活気から取り残されたようだった。
客層も普通ではない。かたわや浮浪児、果てはどう見ても乞食にしか見えない者も
大勢いる。そこにいる連中がみんな代金を払う能力があるとはとても思えなかった。
奇妙な店内を見回していると、店主が黙って私の前にどんぶりを置いた。
なんの生き物か分からない肉や、毒々しい紫色の草なんかが入っていたと思う。
出所の分からないものを食う事は何とも思わない。ただ、この店のものだけは、
食うのを少しだけ躊躇した。
それでも、当時の私はどうしようもないほど腹を減らしていた。
食えるときに食っておかないなどという事は、およそ考えられなかった。
おそるおそる口にしたあの店の飯は、意外にもうまかった。
それが空腹による錯覚であったかは、今となっては分からない。
「親父、お勘定」
全部平らげた俺は、店主に向かって声をかけた。けれども、彼は
依然黙ったままで何も答えない。
246 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 01:25:57 ID:7r69PCO0
「いいんだよ兄ちゃん、このまま帰りな」
隣の席にいためくらが、下卑た笑いとともに話しかけてきた。
「いいって事はないだろう。まだ金を払ってないぜ」
「いいのさ。お代はツケだよ。好きなときに気が向いたら払えばいいし、
払わなくてもいい。あの親父、客がお代を払わなくても文句を言わねえんだ。
ひどいときには、払おうって客がいても今みたいに無視しちまう」
「それじゃ商売にならんだろう」
「でも、この店はなぜか続いてる。みんな不思議がってるぜ。
あの食材もどこから持ってきてるんだか、分かったもんじゃねえしな」
「妙な店もあったもんだ」
「まったくだ。ここには毎日タダ飯を食いに行き倒れやら何やらが集まってくるよ。
まあ、俺もその口だがね」
めくらの言っていた事がどこまで本当だったかは分からない。ただ、あの店の異様な
淀みは、そういうおかしな事もあるかもしれないと思わせるに十分だった。
現に私は金を払わずに店を出たが、それを咎められる事はなかった。
伊達や酔狂で散財して生きていけるような時代ではない。あの親父がどうやって
生活していたのか、想像もつかない。第一、彼は人に施しが出来るほどの金持ちには
全く見えなかった。
近頃、年をとってから殊にあの店の事が気にかかるようになってきた。
それで、あの奇妙な店と親父の行方を人に聞いて回ったりもした。
しかし、長い年月を隔てた後となっては、無論、何も分からなかった。
店主がいい人なだけに材料の調達ルートが気になる。
24分でこれを書き上げたんだろうか。そこに驚き。
スウィーニートッドじみた何かを感じるぜw
「お題をちょうだい」
250 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 19:00:24 ID:NRIqQkbH
お題「バットマン」
銀行強盗は余りにも鈍い衝撃音に振り返ったその先に頭が陥没した仲間が倒れゆく瞬間を捉えた。
その傍らには凹んだ金属バットを持った男が不敵に且つ不適な不謹慎な笑みを浮かべているのだった。
スキーマスクを被った銀行強盗は床に伏せさせていた客や従業員があげた悲鳴よりも大きな声で叫ぶ。
「お、お前何モンなんだよ!?」
「はぁ?こいつを見りゃわかんだろーがハゲ──正義の味方バットマンだ、よっ!!」
バットマン、と名乗った狂人は首から後ろに振り向いて後を追う様に体をぐるりと回し、
待合席として設置してあった椅子をフルスイングでノックした。
椅子は刺す様な勢いで吹き飛んで、背後から狙っていた銀行強盗の仲間を巻き込んでカウンターの裏まで跳んで行った。
「ヒャッハァァ!!ホぉームランっっ!!」
バットマンは、すっ、と笑みを消し、バットを最後の一人の銀行強盗に指した。
「予告ホームラン行っとこうか」
「ふ、ふざけんなぁぁぁぁあ!!!!」
銀行強盗は拳銃の引き金を引き絞り──
乾いた音と快音が同時に響いた。
「バットは球(弾)を打つもんだぜ?」
バットマンは振り切った体制でそう吐き、右耳に大きなピアス穴が開いた銀行強盗へ微笑んだ。
「……か、勘弁してください」
「ダぁメ」
凡打が銀行強盗の命を奪った。
人間ノックwww
ハードなのに噴いたw
254 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 23:07:34 ID:7r69PCO0
> 「バットは球(弾)を打つもんだぜ?」
無駄に格好つけんなwwwww
つうか、バット違いだw
草生えた感想を付けてもらえると非常に安心するw
ありがとうみなさま
256 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/29(火) 21:51:31 ID:gXwZbfc1
お題カモン!
お題「Ordinary(普通)」
「Out of ordinary BEAT hitter come(異常な強打者現る)!か、ふふ。いいねぇ」
バットマンはニューズウィークのネット配信を携帯で読み、バットの柄をニギニギ。
この記事は先日、バットマンが地球に飛来した10km大のバリンジャー級隕石をピッチャ
ーがえし宜しく打ち返した瞬間を報じた記事である。その記事には写真が付してあり、赤
く燃え滾る赤燈色の天蓋と化した隕石が大気との摩擦で超高圧の衝撃波を激甚の破壊と共
に撒き散らすなか、ゴマ粒ほどの点がそれに向かって何かを振っている瞬間を捉えたもの
だ。もちろんそれはバットマンである。
人類を隕石の衝突と氷河期の危機から救った英雄はナサから表彰されジャクサに表彰さ
れノーベル英雄賞を受賞しさっきの報道写真はピュリッツァーを取り国民栄誉賞を受賞し
た。その後も人類が与えられる栄誉の凡そ概ね大概ほとんどを全部頂戴した。
バットマンはPCを閉じてバットを見つめる。
だが、バットマンがバットを眺める目線は、何故だか溜め息と同居である。
「野球、してぇなぁ」
バットマンは野球が出来ない。バットマンの、“万物をバットで打ち返す”能力は、と
ある代償を強いる諸刃の剣なのであった。
とある代償。それは、“球界では絶対に芽が出ない”という苛酷過ぎる代償なのであっ
た。
強過ぎるから出場禁止、というわけではなく、野球という競技の時だけ打ち返す能力や
それを裏打ちする異常な膂力等が完全に弱体化するのである。
投げれば脱臼。
打てば骨折。
走って捻挫。
彼に野球をする方法はないのだった。
この特異な体質は、彼が高三の頃に落下した隕石の影響である。
隕石は多数の死者と共に、人類に奇妙な贈り物をした。人はその日を、“チェンジリン
グデイ”と呼ぶ。
高三の頃。
彼は将来有望なバッターだった。
だけどその姿は他のどんな球児たちとも違わず、ただただ打ち込む熱意の塊だった。
スカウトを夢見た。
大学野球も夢見た。
普通に社会人になって、実業団チームに入るのもいい。
全部夢が潰えたら、子供野球のコーチでもいい。
野球が出来ればそれでいい。
隕石が落ちた。
野球に関係した夢だけが、全部台無しになった。
バットマンはだから、時々呟いてしまう。
「野球、楽しかったなぁ」
あの頃の、もう二度と戻れない日を想って。
「野球、してぇな」
バットは球を打つものだろう?
バットマンは先日誰かに自分が吐いた言葉を思い出した。
せっかくなんでアゲ
チェンジリングの奴だったんかいw
しかし悲しい能力。こりゃやさぐれるw
バットマアアアアン!!! って感じの読後感でした
せつないなぁ ものすごく切ない でも笑えるwww
ある意味ダークヒーローならではの宿命ですね
テニスとかなら、彼も才能を発揮出来たりするのでしょうか?
ちょっと板違いの話になりますが、今年の吹奏楽コンクールで、4曲ある課題曲候補のうち一つが、
オーディナリーマーチっていう題名なんです つまり「普通のマーチ」ってこと
でも、この曲を吹きこなそうと思っても、他の3曲より、ちょっと難しいんですよね
普通が一番難しい、みたいな
お題を見ながら、そんなことを思い出したりしていました
もしよかったら、こんなお題はいかがでしょう
「ぼくがかんがえたさいきょうの○○」
>>258 うわぁ、まさかの展開w
面白かったですよ。
お題「ファイナルファンタジーのゲーム」
「ぼくがかんがえたさいきょうの○○」
もう何年も前のことだ。
野球の神に見放された男=バットマンは、卒業式の日だと言うのにカビと汗の匂いが充
満した野球部の部室に居た。遠くで、クラスメイトの氏名が読み上げられる。バットマン
は聞こえて居ないかのように、部室の、どこかのバス停から拝借してきたみたいな青いプ
ラスチックのベンチに腰掛けて、野球用品を磨き続ける。
革のグローブ。誰かのスパイク。薄汚れた白球。
立ち上がって、部屋の隅々も掃除する。ベンチを磨き、ロッカーを磨く。
ロッカーには、皆で撮った集合写真が貼ってあった。もちろんそこには汗まみれで汚い
笑顔をした、バットマンの姿も写っている。
その笑顔は、泥だらけで汗まみれなのに、どうしようもなく輝いていた。
しばらくそれを眺め、バットマンは自分が泣いて居ることに気がついた。
バットマンは上を向き、学ランの袖を目に押し当てた。
どうしようもなかった。
みっともない嗚咽を、自分ではどうしても止められなかった。
「よう田中。やっぱり此所だったか」
突如掛けられた声に、バットマンは背中を向けた。ちなみに田中とはバットマンの名だ。
バットマンは目を袖でぐしぐしとこすり、声の方に向き直った。
国語教師で野球部顧問で監督のブッチャー先生だった。何故ブッチャーかと言うと、ど
う見てもブッチャーだからブッチャーなのだった。
「田中。野球はもう諦めろ。お前にはもう、むいてないんだよ。野球は」
「……フザケンな。俺が野球辞めたら、何が残るんだよ」
「野球馬鹿が野球辞めたら残るのはきっとただの馬鹿だろうな」
「へっ。言ってくれるぜ……」
赤い目で睨むバットマンを、ブッチャー監督は優しげな目で見つめ返す。
「田中。夢ってどんなものだと思う」
「……俺の夢だけに限って言えば、野球の形をしてた」
「ふん、本当に野球馬鹿だな、田中。だがな、夢ってのは、いつの間にかあるものじゃな
くて、誰かに決めてもらうものじゃなくて、まして叶えるものでもたった一つしかないも
のでもないんだ。じゃあそれを踏まえて、夢ってどんな物だと思う」
「……」
「分からないか?夢はな、自分で“みる”ものなんだよ。お前に、野球と言う夢は閉ざさ
れたかもしれない。だが、それはお前の終わりじゃないんだ。お前はまだまだ、その野球
っていう素晴らしい夢の、何倍も素晴らしいかも知れない夢をみる可能性を何十年分も持
ってるんだ。わかるか、田中」
「……わかんねー」
「今はそれでいい。だけど、いつかは探せ。お前が見たい夢を。お前が、お前のために」
ブッチャー監督は言いたいだけ言ったのか、満足げにバットマンの背中をぶっ叩いた。
「いてー!」
「さあ田中、卒業式だぞ、晴れ舞台だ。ちゃんとバッターボックスに立て」
「……わーったよ。クソ」
「待て、最後に一つ」
「なんだよ」
「地上においてあなたの使命が終わったかを知るテストをしてみよう。もしもあなたがま
だ生きているのであれば、それはまだ終わっていない。byリチャード・バック」
「似合わねーよ。ブッチャー」
「うるさいぞ。さあ、田中、早く体育館に向かえ」
バットマンは、自分の能力なんかより、ブッチャーの言葉の方がよほど最強の能力なん
じゃないかと思った。
アゲ忘れた…
さいきょうの“能力”にしたのかー
その男性は71歳だ。
出世コースを歩み、そのための努力に多くの時間を割いてきた。
それに加えて世代の違いもあり、テレビゲームをプレイしたことなんてなかった。
だがそんな彼もゲームに無関心というわけではなかったのかもしれない。
自分から知ろうとしなくても、その作品名ぐらいは聞いたことがある。
プレーヤーが戦って世界を救う。主人公を見てそんな感じのステレオタイプなストーリーを予想した。
美男子の剣士が目立っているが、そちらには大して関心がいかずタイトルのみが記憶に残る。
“最後”と“幻想”の英単語だ。
タイトル末尾の数字も英語で振ってある。たぶん今後も続編が出続けるはずだ。
製作者が一作品目を作った時に、売り上げが低いとシリーズにはしない予定
だったことから“最後”の単語が入っているそうだが、もちろん彼はそんなことを知らない。
彼はこれから再出発する自分にぴったりな言葉だと思った。
それから何日か後のことだ。彼は都内のホテルで仲間と記者会見をしていた。
ちょっと前まで政権を執っていた党を抜けてリスタートを切ったのだ。
自分達の新党をマスコミがは構成メンバーが皆高齢であると報じている。
「ファイナルファンタジーだよ。」冗談交じりに彼はつぶやいた。
老害にならないことを願いますね
>>268さん
「ファイナルファンタジーだよ。」
これを聞いて選挙の応援する気にはなりませんねwww
お題をください
お題「まさかの10円」
271 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/05(月) 23:30:30 ID:SRW4EfZa
電話
sageたのに、はやっ!
では貰いますね
[電話]
ジリリリリリリン
電話が鳴った。これから漫画を読もうと思ってたのに。
カチャ
<はい 清水です>
コールド宅配便の者です。
マエダ ジュン様は御在宅でしょうか
<うちは清水ですが>
あっ すいません かけ間違えました
ガチャ
ジリリリリリリン
電話が鳴った。いまぼぉーっとしてたところなのに。
カチャ
<はい清水です>
アオキですけどトモヒト君いますか?
<うちの家族にトモヒトはいませんけど>
あれー?スガワラさんであってますよね?
<うちは清水ですよ?>
ごめんなさい
プーッ プーッ
ガチャ
ジリリリリリリン
電話が鳴った。ちょうどカップラーメンが3分たったとこなのに・・・
カチャ
<はーい清水です>
・・・ぇ・・・ぁ・・・・
<もしもし?清水ですが??>
・・・ぁ・・・・・・・ぁ・・・
<聞こえません 大きな声で> スッ ベリベリ
・・・・・・・・ぁ・・
<(ズルズル ゴクッ)・・もう、麺が伸びたのあなたのせいですよっ!>
・・・・ガチャッ!
ズルズル ゴクッ
ジリリリリリリン
電話が鳴った。どうせ間違い電話だ。でも一応でとかないと。
カチャ
<はい☆ 清水でぇ〜す♪>
・・・・・・俺だけど、そのテンションはなんだ?
<あ・・・//// >
まあいいや・・・ 会う約束のことだけど、急にバイトが入っちゃったんだ。もう1週間待ってくれ。
<そんな! 今日はずっと電話のそばで呼ばれるの待ってたんだよ?間違い電話が多くて大変だったのに!>
ごめん ほんと、ごめん。許してくれない?
<うん許さない でも来週は約束守ってね///>
来週こそ絶対だ それじゃあまたな
<じゃあまた来週>
ガチャ
274 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/06(火) 18:54:33 ID:0wEQL2GX
お題「やさいのようせい 原作 天野嘉孝」
俺は今、実家に向かって道を歩いている。
数日前に親父が死んだ。
親父は俗に言う中小企業の社長というやつだったが、特に浪費もせず質実剛健が服を着て歩いているような男だった。
親父自身が管理していた通帳の中身も十数億単位になっており、偶にしか飲まない酒を飲むと俺達にその事をよく自慢していた。
親父が死んだことで親父のその貯金と資産をお袋と俺を含めた三人の兄弟、合計四人で分ける事になる。
親父が特に遺言を残していなければ、だが。
単純にお袋が半分もらい、残りを三等分するとしても確実に億単位の金が俺の懐に入ってくる。
……想像するだけで、頬が緩む。
そんな事を考えていると、いつの間にか実家に着いた。
実家といっても、豪邸ではなく五十坪程度の一軒家だが。
「……あの、ちょっと困ります」
「ですからね、私も払って貰わないと困るんですよ。ええ、モリタニさんが」
玄関前でお袋と頭をはげ散らかした男が少し険悪な雰囲気で話しをしていた。
「私にモリタニさんと言われましても……、それより一体何の請求書なんですか? それが判らないのでしたらお支払いできません」
「……でも10円ですよ?」
「10円でもです」
「困ったなぁ、折角北海道から飛行機でやって来たのに」
「飛行機で来たんですか!? 10円の為に!?」
「ええ飛行機で来ました、10円の為に。だから払ってもらえないと困るんですよ、払って下さいよ〜10円ですよ、10円」
「ですから、何の請求書か判らない以上1円たりともお支払い出来ません帰ってください!」
「そんなぁ、払って貰わないと私がモリタニさん怒られるんですよ〜、お願いしますよ〜、10円ですよ〜?」
お袋と男の話が終わりそうに無いので俺が間に入ることにした。
「まあまあ、二人とも。落ち着いて」
「ああ、お帰りなさい純」
「突然出てきて何ですかあなた、タイ人みたいな顔して……もしかしてナパ・キャットワンチャイさんですか?」
「違います、とりあえず10円は俺が払いますからあなたは帰って下さい」
「それじゃあ駄目なんですよ、あなたこの家の人じゃないでしょう? この家の人から10円を貰ってくる様に言われたんですよ、モリタ」
「そんな馬鹿な事があるかッ!!!!!」
突然、実家の中から弟の泰三らしき怒鳴り声が聞こえた。
「何でどこの誰かもわからない『シゲル』なんで野郎に親父の遺産が全部持っていかれなきゃなんねーんだよッ!!!!!」
その声と内容に驚いた俺と母親は急いで家の中に入った。……何故か男もついてきたがこの際どうだっていい。
駆けつけたリビングでは泰三がもう一人の弟である賢に押さえつけられており、
泰造に襲い掛かられそうになったのか馴染みの弁護士の何原が腰を抜かして床に座り込んでいた。
「何をしているんだ泰三、落ち着けよ」
「兄貴ッ! 落ち着いていられるかよ!? 知らない男に親父の財産を全部持っていかれるんだぜ!?」
「とりあえず落ち着けよ泰三、何原さんだって親父の書いた紙を読んでいるだけなんだぞ」
「……わかったよ、賢、離してくれ」
それを聞いた賢は泰三から手を離した。
「ったく、泰三兄貴は何時も頭に血が上るのが早いから困るんだ」
「うるせーな、仕方ねーだろう出るもんはでるんだからよ」
そう言いながら泰三は乱れたスーツの襟を直す。
騒動が落ち着き、気を取り戻したのか弁護士の何原が床から立ち上がりこう言った。
「さて、ご家族の皆様がお揃いになられたようなので遺言状を最初から読み直させていただきます」
ゴホンと軽く一つ咳をしてから何原は遺言状を読み上げ始めた。
『皆には今まで隠していたが俺にはもう一人息子がいる、名前はシゲルだ』
「ああ、私と同じ名前ですねぇ〜」
何故か今まで居座っていた10円男がそんな声を上げた。
「ちょっと黙っていてください」
お袋がそう彼を制した、それより出て行ってもらったらどうだ? だが、そんなことより先が気になる。
『シゲルは俺が智子と知り合う前、北海道に住んでいた頃出会った飲み屋の女との間に出来た子供だ』
「はあ、偶然ですね私も北海道出身なんですよ」
10円男はまたそんな事を言う。
「だから黙っていて下さい」
何原は続ける。
『その女は俺に隠してその子供を育て続けていたが、つい最近無くなった事をとある伝で知った』
「そうなんですか、私の母親もこの前亡くなったんですよ」
10円男は……、まさか。
お袋もその事に気がついたのか男を驚いた顔で見ながら黙っている。
『年齢は純より六つ上の41歳だ、俺はシゲルに何も父親らしいことをすることが出来なかった、だから遺産の全てをシゲルに渡そうと思う』
「ほ〜、偶然って凄いですね私も41歳ですよ」
……もしかして本当に。
家族全員が10円男と何原の読み上げる遺言状の内容に集中していた。
『シゲルの住所は既に何原に伝えてあるが、一応の身体的特徴も残しておこうと思う、シゲルには首筋に星型の黒子がある』
「へ〜、そんな珍しい黒子なんてあるんですね〜、初めて知りましたよ〜」
俺達は無言で10円男に近寄り「首筋を見せてください」と一言だけ言った。
俺達が真剣な表情でそんな事をいうので10円男もようやく事の重大さに気がついたようだ。
「……マジで?」
全員が無言で頷き返す。
男は少しためらうと黙って首筋を見せた。
皆が男の首筋を覗き込む。
……ハート型の黒子があった。
「……違う」
それを聞いた男は呆れたような顔をして皆を見回してこう言った。
「あれだけ期待させておいて、こんなことになるんなんて何て連中だ、だから都会モンは嫌いなんだ。
ああ、それから10円は明日貰いに来ますから。
さてとビールでも引っ掛けてくるかぁ〜」
そういうと10円男は帰っていった。
「なあ、お袋」
「何? 純」
「最近、白くなったよな」
「……うるさい」
277 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/06(火) 23:41:17 ID:SxwuT/Db
創発では不条理物の投下って珍しいな
ところで、ぼくのかんがえた(ryってどこで使われてるの?
笑う犬のコントじゃねーかwww
つーかお母さん、オセロの中嶋だったのなwww
最後でわかったw
10円のために飛行機でくるとは気前がいいのかせこいのか不思議な金銭感覚ですねw
280 :
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/07/07(水) 18:48:10 ID:uSm4TAwT
お題を募ります
「七夕」
良いお題ですね
283 :
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/07/08(木) 00:30:39 ID:tlMRHd0T
[七夕]
一年で願いごとをする日は三回来る。
誕生日、クリスマス、そして七夕の三回だ。
だけど七夕だけケーキを用意する風習がないのはなぜだろう。
そのことを疑問に思った男の子がいた。
だから短冊にこう書いた。
「七夕にもケーキが食べたいです。」
それから数十年が経った後、彼は大人になって結婚をした。
そしてまた7月7日の夜が来た。
あの頃と変わらず七夕を祝ってケーキを食べる人は少数派のようだ。
だけど、彼の家では七夕には決まってケーキを食べてお祝いするのだ。
「ゆうた、10歳の誕生日おめでとう」
数十年前の願いは、息子のおかげで毎年叶う。
284 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/08(木) 00:46:37 ID:RLEw9AY/
ケーキ食わせるために息子を用意してやるとは、天の川も豪気だなw
>>283 かわいいなww
ほのぼのして素敵 いい父ちゃんになったんだろうね
ゆうべは、大三角見えたし、ベガとアルタイルも無事に会えたみたい
そう言えば何もお願いしなかったなー
夜空に化物語を思い出した
感想ありがとうございました^^
・・・こちらの昨晩の天気はあいにく曇りでしたw
288 :
七夕の話:2010/07/09(金) 14:45:17 ID:e9X/Erxz
夜空に星々が綺羅めいている。
「彦星と織り姫は、実在するのじゃぞ?」
キッコがクズハに、そんな事を教えた。
時間の流れに打ち勝って、長年語り継がれた物語は、その物語自体が、一種の付喪神になるのだという。
彦星も織り姫も、七月七日のこの日だけ、実在するのだという。
天の川には、一年に一度だけ、橋が架かる。
彦星と織り姫の、ほんの少しの逢瀬のためだけに、星々が道を譲る。
相思に恋慕を交わす男女が、互いに彼岸を目指して、歩む。
夏の陽炎を編み上げたような、不確かで、不明瞭な、願いの足場を。
魔素と言うものは人の“思い”によって力を成す。
だから、人が星空に、短冊に願いを託すこの日、莫大な量の魔素が、空にたゆたう。
魔素は空に浮かんで、宇宙(そら)まで達して、幾億の星々に語りかける。
「二人に、ちょっとだけ、時間をあげてくれませんか」と。
星々は語らない。
けれども、彼らはそんなに意固地じゃない。
魔素はゆっくりと星々を動かし、二人の男女の、逢瀬の橋を紡ぐ。
夏の陽炎を編み上げたような、不確かで、不明瞭な願いの足場を。
織り姫は、橋の下が透けた、不明瞭な願いの足場に、足を竦ませる。
遠く下の方に、青い地球も見えている。
織り姫が、まいってしまって顔を上げると、もう、橋の半ばまで歩いて来て居た彦星が、優しくほほ笑んでいる。
大丈夫。
怖くないよ。
彦星の励ましに答えて、織り姫は歩みだす。
踏み締めると、橋の下の景色が、打たれ水面のように、ゆらゆらと揺らいだ。
不確かな橋が、やはり怖い。
織り姫は駆けた。
橋の中心で、彦星に抱き留められる。
願いは叶った。
一年にたった一度きりの、短い、とても短い、再会。
夜が開けるまで、二人は語らい、橋の下に広がる天の川を見下ろし、星の流れに戯れる。
やがて、地球が回り、七月七日の夜が、くるくると行ってしまう。
橋は、両岸から、砂の城が波にさらわれるように、さらさらと融けて行く。
またね。
またあおうね。
二人は緩やかに抱き締めあって、橋が消えるのを見ている。
橋が消えると、抱き合ったまま、天の川に吸い込まれた。
じゃぶん。
瞬間、二人は青い燐光となって、散り散りになってしまう。
「……哀しい御話ですね」
「いや、物語は自らの変わらぬ姿に誇りを持っておる。
変わらぬさまが、変わりゆく人の世に残り続ける事を、誰より喜んでおる。
物語の付喪神だから、もちろん悲哀や悲恋を描くものもあるが、人々に感じ入られる事を、何より喜んでおるのじゃ」
「へぇ、そうなのですか」
「それと、付喪神を現出させる魔素は、人間の願いや思いによって集まる。
だから、『彦星と織り姫が幸せになれるといいなー』みたいな可愛らしいことを妄想しておる人間の思いも含まれておる。
その思いや願いが織り姫と彦星の物語を紡ぎ、余った分は実際に願いや思いの実現に当てられるのじゃ」
「七夕ってすごいんですね」
「特に縁結びに力を発揮するらしいの」
「へぇ」
「クズハ、ちゃんと祈って置くのじゃぞ」
「……何をですか?」
「んー?なんだろうな。ははは」
狐につままれた思いを抱く狐っ娘であった。
ああっ
誤爆すいません!
290 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/09(金) 18:49:37 ID:39aoyObp
ある意味こっちでも大丈夫だなw
そういえば、七夕なんてもう何年もまともに祝ってないな
むしろこっちでよかったんじゃない?ww
七夕済んだんで別のお題を!
『梅雨』
七夕の次が梅雨とはw
季節的には逆行になりますねww
アゲ忘れ
つか梅雨って時期でもないか
お題かえましょ
『夏の弊害』
>>295 大丈夫ですよー
まだ[梅雨]書いてなかったですし。
「なあ知ってるか?かゆさを伝えるための神経はないんだぜ」
「へー。 じゃあ脳はどうやってかゆみを認識してるの?」
「痛覚神経と温覚神経っていう2つの神経が一か所で、同時に反応するとかゆさとして認識される。
つまり、ごくわずかな痛さとごくわずかな発熱でかゆみは生まれるわけだ」
「ふ〜ん。かゆさを感じるための神経があってもよさそうなのにね。」
「そして時としてかゆみはしばらく継続される」
「だからさっきから足を中心にぼりぼりしてるんだね。」
「かゆい所を掻くのは、ごくわずかな痛みを別の痛みで上書きするための手段だ」
「ハイハイ。で、なんで足に赤色の斑点ができてるわけ?」
「さあ?わからん。起きたらできてた」
「蚊かな。いや、ダニのせいかもしれないし、単なるあせもかもしれないね。」
「それはわからないが、いずれにしても原因は同じところに行き着く」「なにが原因なのさ。」
「この季節だ。全部この暑さと夏の弊害だ」
へー、だから冷やすと治まるのかー
なんか納得
300 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/22(木) 02:06:51 ID:x9FTh1l8
お題「300」
「全長300mの阿弥陀如来立像、か」
十年間もの長い月日を経て、ついに完成した世界に類を見ないこの巨大な仏像を俺は改めて見上げた。
平成四十八年、終わりが見えもしない長い長い平成大不況は、人の心を蝕み、そして狂わせた。
「人の手で人が救われないのなら、人の初心に戻り神と仏に救って貰えばいい」
当時の首相新川由良はそう宣言し、この大仏の開発計画を発表した。
総工費は実に十兆円、国家予算の十分の一。
国の威信を掛けた国家プロジェクトだった。
日本の全ての仏師、芸術家、宮大工、学者、土建屋、左官、果てはフィギュアの原型士まで、ありとあらゆる人材がかき集めらた。
国の為に、国民の為に、そして世界の為に、この大仏は人々の願いを背負い造成が開始された。
プ○ジェクトX〜挑戦者たち〜
ぷろぜぇくとぇっくす
かぜのなかのす〜ばる〜
すなのなかのぎ〜んが〜
みんなどこへいいた〜
みおく〜られることもなく〜
工事中に死者が出た。
だが誰一人として止まろうとしなかった。
誰もが必死だった。
この暗闇から抜け出たい。
日のあたる明るい世界で生きていたい。
そう願い動き続けた。
皆の心が一つになったその瞬間だった。
仏の首が落ちた。
その首に潰され47人の人間が死亡した。
だが彼らの手は止まらなかった、止められなかった。
もうこれしか救われる道は無い。
この仏像が完成したら我々は救われる、そう思っていた。
そして今日、ついにこの仏像は完成した。
それまでに死んだ人間は丁度、百人。
この仏像はこの仏像に救われると信じて死んでいった百人の人間の魂がこもった仏像だった。
死んだ彼らは確実に救われた。
だが残った我々は何一つとして救われなかった。
仏像が我々にもたらしたものは救世でも悟りでも無かった。
二兆円分の外壁と五兆円分の内装と三兆円分の血と汗と涙、只それだけだった。
何も、残らなかった。
「俺はこれからどうなるんですか」
俺は仏に尋ねたが、仏様は顔面にアルカイックスマイルを張り付かせたまま何処か遠くを見ながら穏やかに笑っているだけだった。
途中のナレーションがあの番組っぽく自然に読めてしまうww