スタンド出てくるオリ小説書きたいんだけど……

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1創る名無しに見る名無し
見たい人、協力してくれる人っている?
原作キャラは全く出ないから注意。
2創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 18:32:15 ID:QOujPnet
協力って何さ!
31:2009/11/16(月) 18:41:39 ID:2UZ/040F
出てくるスタンド・キャラクターの設定考えて欲しい。
味方勢は埋まってるので敵方で。
41:2009/11/16(月) 21:41:15 ID:2UZ/040F
試しに一つGO!
舞台は高校です。



「ねぇ……いつも思うんだけど、危なくないの?」
「大丈夫だよ。俺ぁここがお気に入りなんだ」
日差しの下、僕は膝を抱えて屋上に座っていた。
くいと首を動かすと、階段からさらに上に登っている人影が目に入る。
「怪我しても、誰も同情してくれないよね〜」
「うっせぇ、落ちねぇからいいんだ」
彼はにやりと笑って、僕の台詞を受け流す。
僕は呆れて、それでも穏やかにそれを見ていた。

今、下の体育館では全校集会が始まっている。
夏休み明けの始業式だ。
……しかし、僕らは「体調不良で」それを「辞退」した。

我ながら大胆だよな、と思う。
そんな事をしたのは人生で始めてだ。
「うはっ、久しぶりの景色ぃ!」
彼がいきなり叫ぶ。
僕はゆっくりと首を向けた。
「僕はもう飽きてるくらいなんだけど……
 集会サボると、見える景色が変わるの?」
「てめぇ一言多いんだよ」
僕は目を細めながら、ゆっくりと立ち上がった。

また「日常」が始まる。
この、平凡で当たり前な日常が。
51:2009/11/16(月) 22:16:16 ID:2UZ/040F
今日はもう寝るんでまた明日。
アイデアあったら頼んます〜
6創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 22:29:16 ID:XOcdk0b4
スタンドが出てこない件
7創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 22:35:38 ID:QOujPnet
マジで導入部だからじゃね?
8創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 02:19:54 ID:VATkRcK8
1 ドライブシーンを書く
2 給油させる

かん・・・ぺき!
9創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 08:56:44 ID:VCQiXzZr
そうか!
野球場の応援席を出せばいいのか!
10創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 09:23:26 ID:CN38phSJ
もうちょっと文章力があったら面白くなるかもね
111:2009/11/17(火) 16:36:20 ID:fgSmieTp
>>6-7
そーですね。
でもかなり導入部が長い罠。

>>8
アンタそれガソリンスタンドwwww

>>9
アンタそr(ry

>>10
うぐっはぁぁぁ(吐血
ぶ、文章に関してもアドバイス頂ければ……
121:2009/11/17(火) 16:41:05 ID:fgSmieTp
せこせこカキカキ。
もうちょいスタンド出るまでかかりそうです……



僕の名前は小畑 双務(コバタケ ソウム)という。
屋上の彼は二丈 城田(ニジョウ ジョウタ)。
彼に出会ったのは今年の春、休みが終わった頃だ。
「もうあれから半年かぁ……」
「長ぇか?」
「いや、あっという間だったなぁ、って」
鼻を掻きながら、屋上に向かって声を放る。
……もう半年か、僕がいじめられなくなってから。

高校2年、つまり去年まで、僕はクラスの中では絶好の標的だった。
理由も知らないまま迫害を受け、何度もへこたれかけたのを覚えている。
登校、不登校を繰り返して、僕はいくつかの事を学んだ。

「一つは、『強い奴には逆らうな』」
「今も実行中だな」
「二つは、『助けは必ず来る』」
「……よせよ、俺は助けたわけじゃねぇ」
ごろりと城田が寝返りを打った、と思う。ここからでは見えないが。
……よせよ
その言葉には照れ笑いが含まれていて、僕はにやりとする。
「君は謙虚だ。もっと真面目なら学級委員にもなれるのにね」
「集会サボってなきゃ、お前は次の総理大臣だよ」
二人で笑った。
そろそろ、集会も終わる時間だろう。

また「日常」が始まる。
この、平凡で平和な日常が。
13創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 16:42:29 ID:J32mA7Is
死体を見つけに線路の上を歩いていくあれか
141:2009/11/17(火) 19:05:16 ID:fgSmieTp
>>13
元ネタ知らなくて死にたい
次でスタンド初出の予定。



「よぉ〜っす、初めましてェ!
 俺ぁ三代 元也(ミシロ モトヤ)って言いますゥ」
「ちょ、ちょっと三代君、もっとシャンとして……」
「あぁ? 面倒くせぇんスよ。硬っ苦しいのは嫌いなんですよォ」
……平凡なスタートは、実は意外に難しい。
ざわざわと、クラスに動揺が走るのを感じる。
そう、夏休み明けとは、つまり転校生のシーズンだ。
(なんか濃いのが来たぞ……)
(先生にタメ口? なんか嘘っぽいな)
(ヤンキーとか古ッ!)
机に腰掛けているだけでも、辺りから囁き声が聞こえる。
ほとんど賛成だ。
「まぁアレっすけど、こっからよろしく頼んますゥ」
「み、三代君……!」
「先生ェ、俺の席どこっスか」
噛み合ない会話に、僕の前の男子が吹き出した。
それを皮切りにクラスに笑いが走る。
その中で、三代君はゆっくりとクラスを見渡していた。
(城田君と気が合いそうだな……)
僕はにやりとしながら後ろを振り向く。
城田君は、興味が無さそうに机の上で寝ていた。
お仲間だよ、と頭の中で呟く。

首を戻す時に、転校生と目が合った。
15創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 20:30:56 ID:VCQiXzZr
スタンドの名前に法則とかある?
例えば色が入っている、
海外のアーティスト
等。
161:2009/11/17(火) 20:58:20 ID:fgSmieTp
>>15
俺のネーミングセンスが皆無なので、語呂が良ければ良かろうなのです。
主人公勢のスタンド名は決めてありますが……順次公開します。



この状況に、僕は冷や汗を流す。
「小畑、つったな」
屋上、昼休み。
僕は壁を背に三代君と向き合っていた。
彼の拳が、目の前にある。
「な、何でこんな事するんだ!?」
「あぁ〜……? 手前ぇ、挨拶の時に目ぇ逸らしただろうが」
そうだ、と回想する。
朝、目が合ったとき、僕は反射的に彼から目を逸らした。
三代の目には覇気があったからだ。
まるで犯人を捜す探偵のような威圧感に、気圧されたからだ。
「怪しい、怪しすぎるぜてめぇ……!」
「な、何が怪しいんだよ」
三代の拳が目の前でチラつく。
苛立ちを吐き出すかのように、彼は大きく首を振る。
「そいつは言えねぇよ! だがな……てめぇは怪しすぎる」
「う!?」
拳が引かれた。
でも、その瞬間僕の喉に力が加わる。
まるで、両手で締め上げるような……
「うぐぁ……!!」
「ほれェ! さっさと正体出さねぇと、てめぇ死ぬぜ!」
「あ……ぅ……」
何が何だか分からない……
これが平凡な日常だって?
とんでもないよ。
僕は必死で腕をばたつかせた。
それでも、首にまとわりつく力は消えない。
このまま、死ぬ……?
そう思ったとき、屋上の入り口に人影が見えた。
尋常でない気配に、三代が振り向く。

『助けは必ず来る』
……よせよ

今度は言い逃れできないだろ?
僕は遠のく意識の中で、城田君に声を掛けた。
171:2009/11/17(火) 23:13:08 ID:fgSmieTp
今日はコレで最後です。
この時間帯でも眠いってどういうことなの……



鈍い音がして、三代の頬が凹む。
城田の渾身の一撃は、軽々と彼を吹き飛ばした。
「双務ッ!!」
「じょ……城田君……」
城田が双務に駆け寄る。
息が通るようになった双務は、咳き込みながら呼吸を繰り返した。
「今お前何された!? 呼吸……」
「も、もう大丈夫、だよ
 それよりも三代君が……」
「うぐっはァ……痛ってぇぞ……おい、てめぇ仲間か?」
フェンスに叩き付けられた三代が、呻きながらそう言った。
城田がそちらを見る。
その眼にこもっているのは、強い感情。
「そうだ……俺はこいつの仲間、ってことになる」
「じゃあよ! てめぇも! 『敵』ってことだッ!」
瞬間、城田の頬がいびつに歪む。
直後、鋭い音ともに彼が大きく吹っ飛んだ。
「城田君!!」
「……ッ!?」
「オラァ! さっさと出せよ『スタンド』をよォォォォ!!」
殴られたせいか、三代は興奮して立ち上がった。
壁にぶつかった城田は、頬をさすりながらそれを捉える。
「城田君! 信じられないと思うけど、彼はエスパーだ!
 よく分からないけど、離れていても物に触れる!!」
「エスパー……だと?」
三代が大股で城田に近づく。
双務は足にむかって突進したが、再び『見えない何か』の蹴りを喰らった。
既に城田と三代の距離は、1mほどしか無い。

エスパー、ってのは違うな。
城田は立ち上がりながら、そう思う。
その眼は、三代のすぐ横で同じように向かってくる『人影』を睨んでいた。
18創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 00:16:20 ID:2WN+lKSW
スタンドが出てくる時点でオリ小説じゃないよねって突っ込みはなし?
19創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 00:42:37 ID:2WN+lKSW
>……もう半年か、僕がいじめられなくなってから。
>高校2年、つまり去年まで、僕はクラスの中では絶好の標的だった。
時系列が分かりづらい

>また「日常」が始まる。
>この、平凡で平和な日常が。
繰り返すことで強調したかったんだろうけど、もうチョイためたほうが良かったかも
(日常が崩れる展開だったら無理だけどさ)

>エスパー、ってのは違うな。
>城田は立ち上がりながら、そう思う。
双務視点で話が進んでたのに、急に城田視点に切り替わっている

気になったのはこれくらい。まあまだスタンドも出てないから何とも言えん、期待しとく
201:2009/11/18(水) 15:44:27 ID:+0eRxL05
>>18
ないn……ある!!
題名変えた方が良さそうですね……


>>19
うおぁぁアドバイスありがとうございます!

>時系列
コレは「三年までいじめられてたけど、学期の始めのクラス替え? で城田に助けてもらった」
ってことですね。どっかで補足入れます。

>溜めた方が
テーマが「僕らの奇妙な日常」なので、少々厳しいですね。

>視点が急に変わる
すいません、そこは地の文を双務視点で書いてたのがミスです。
既に書き上げた文章でもそこが穴に……しばらく生温い眼で見守って頂けると……
211:2009/11/18(水) 15:49:34 ID:+0eRxL05
スタンドの描写が限りなく少ない現状。
ついでに名前の予想が簡単すぎる実情。



その人影は、異質だった。
茶色い肌をしている長身の……男で、強靭な筋肉が見える。
なにより、頭にかぶっていたのは王冠だった。
半ば古くさい、汚れた王冠。
「……そりゃあ……何だ?」
小さく呟いた瞬間、三代の顔が固まった。
それと同時に、人影が大きく腕を振るう。
腹にパンチが入った。
「うぐぁッ!」
「城田君!!」
「てめぇ……やっぱり見えてやがるなッ!?」
三代が声を張り上げる。
……見える?
ちらりと小畑を見ると、蹴られた腹を押さえている。
あいつはさっき「エスパーだ」と言った。
小畑には見えていない……
フェンスに手をついて立ち上がる。
三代が再び叫んだ。
「立つんじゃねぇよ! おい、てめぇら何が目的だ?
 『宗教』なんか広めて何しようとしてんだコラァァァ!!」
「……『宗教』だと?」
再びパンチが体に食い込む。
バランスを崩して倒れ込んだ。
「聞き返すんじゃねぇ!
 お前らが変な『宗教』を広めようとしてんのはもう知ってんだよォォ!」
「……『宗教』」
ぼそり、城田が言った。
腹を押さえて、立ち上がる。
感覚を確かめるように、ゆっくりと両手を振った。
「悪いが、俺には何の事かさっぱり分からない。
 お前の言ってる事は……すこぶるズレてんだよ」
「てめぇ、まだとぼけるつもり……ッ!」
「いい加減にしろ」

ざわ

一瞬の空気の変化に、三代が一歩引いた。
「……あぁ?」
「お前の相手は、俺達じゃあない。
 まったく見当違いの人間をボコしてんだぜ……お前は」
城田が人差し指を三代に向ける。
風が、屋上に吹いた。
22創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 16:57:26 ID:ZNiS1ZTa
>>1
自分も同じような原案を思い浮かべているため、良ければこの場で投下させてもらってもよろしいでしょうか?
同じくスタンドが出てくるオリキャラ二次創作なのですが…
231:2009/11/18(水) 18:26:14 ID:+0eRxL05
>>22
どうぞどうぞ。ただ、書き手の方はHNか>>○○で特定できるようにして頂ければ。
……俺の1っていいんですかね?



空気がゆっくりと揺れる。
ざわざわと、屋上を包み込むように。

その時双務は、城田が怒っているのを感じていた。
それは城田自身が殴られたからではなく、双務が……
自分が理不尽な理由で殴られた事による怒り。
仲間を襲った暴力に対する……憤怒だと感じていた。

「おい……てめぇ何やってんだ……!?」
「お前は無関係の人間を巻き込んだんだ。
 覚悟は……あるんだろ?」
「し……質問を質問で返すんじゃねぇ!
 今スグ止めやがれッ!!」
三代が叫ぶと同時に人影、スタンドが大きく拳を振りかざした。
「城田君!」


「……あ?」
「オイ、こんなので俺を沈める気だったのか?」
振り下ろされた拳、それは城田の体に触れはしなかった。
城田の体から発散させられる、影・オーラ・覇気……
「お前さっき、『スタンド』とか言ってたな。
 ……『そばに立つもの』……か」
「てめぇ……ッ!」
三代が体を強張らせる。
ようやく立ち上がった双務は、その光景を半ば呆然と見ていた。
24創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 18:50:59 ID:575pxdlJ
そうして、寝室の電気スタンドの灯りを消して、床についた。
251:2009/11/18(水) 23:31:35 ID:+0eRxL05
>>24
かかったな、それは私のスタンドだ!
今日はコレで終わりです。眠い中で書くのはアホのやる事だぜッ!←アホ



城田の傍に、人が立っていた。
緑色の肌に、外国の部族を思わせる服と、羽飾り。
明らかに普通の人間では無かった。
やはりと言うべきか、双務の瞳には何も映っていない。
しかし、戦闘中の二人の視線は、間違いなく互いの『スタンド』に向けられていた。
「てめぇが……スタンド使いッ!!」
「スタンド使い……?
 俺やお前だけが使えるんじゃないのか」
その質問は、三代の叫びにかき消された。
茶色の人影が、激しく城田に殴り掛かる……!
「もう容赦はしねぇッ! ここで潰すぜェェ!!」
繰り出されるラッシュ。
城田は腕でそれをガードしたが、3発目で腕が歪み、次の一撃で体勢を崩した。
「うッ……!」
「どうやら、てめぇのスタンドは俺の奴より弱いみてぇだな!!
 ブッ潰れろォォォォォ!!!」
頭に向けて、三代のスタンドが両手を振り下ろす……
そして、

城田のスタンドの、緑色の腕が三代の顔にめり込んだ。
「ぶぐぉッ……!?」
「……弱いってのは聞き捨てならねぇ。
 俺はお前に、『覚悟』で、負けるか?」
2発目、三代の頬を衝撃が襲う。
骨を砕くほどのパワーは、城田のスタンドには無い。
だが自分の、三代のスタンドよりも数段速い……!!
「てッ……てめぇ……」
「こいつが俺の『覚悟』だ。
 仲間を殴ったお前への、逆襲って形のな!!」
スタンドが、猛烈な速さで三代を連打する。
風が屋上を吹き荒れ、
周囲を巻き込み、
果てしなく吹き飛ばす……!!

「ウラウラウラウラウラウラウラウラウラ
 ウラァァァァァァァ!!!!!」
26創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 00:20:30 ID:feNcBHb0
おっつー

>なにより、頭にかぶっていたのは王冠だった。
なによりの用法間違ってね?
>城田のスタンドの、緑色の腕が三代の顔にめり込んだ。
「の」は同じ文章中で3回以上繰り返すべきじゃあない。推敲してる?

あとは、>>21以降「……」を多用しすぎかな。やりすぎるとうっとおしいだけ

文章力に関して俺はあんまり人のこと言えん。
ひとまず↓のリンクに目を通すのを推奨
ttp://www23.atwiki.jp/wanabee/pages/62.html
あとこれは小説と全く関係ないが、メール欄にsageって入れたほうがいいぜ
27創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 00:30:07 ID:8s+MWBKb
俺は>>1じゃないけど、別にageたっていいじゃん
むしろageないと環境によってはスレが伸びてるのに気づかない人が出るかもしれんぜ?
28創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 02:30:00 ID:+t/FMSEB
むしろ作品投下した時にはageるべき。
291:2009/11/19(木) 16:49:54 ID:sRLg1uVW
>>26
リンクの方読ませて頂きました……が、覚える事が多すぎで脳天がバルs(ry
自分にはキャラ・風景の描写が特に足りないと思うので、そこから意識して書きたいと思います。

>城田のスタンドの、緑色の腕が三代の顔にめり込んだ
強調の意味もあったんですが、改めて見るとクドい……
通じれば「緑色の腕が、三代の顔にめり込んだ」だけでもよさそうですね。

>……多用
これはマンガを想像して書いてるからですかね。
次から自重できるように頑張ります。


>>27->>28
助言ありがとうございます。
作品投下、もしくは返信の後に投下しようと思ったらageさせて頂きます。
301:2009/11/19(木) 17:16:11 ID:sRLg1uVW
視点・場面変更がどうしても上手くできない……
空白を多めに取れれば分かりやすいんですが、それはタブーだと母ちゃんが言ってた。



突風が自分の頬を叩くのを、双務は感じた。
それは確かに自分を安心させ、なおかつ冷静にさせる。
だからこそか、自分の体が軽くなり、ほとんど無意識に走り出していても、双務は不思議に思わなかった。

城田と三代の闘いを、双務は眼に捉えたわけではない。
だが、尋常でない威圧感と、独りでに傷ついていく二人の顔……
双務は直感で感じた。二人の間にそびえ立つ人影と、そこから繰り出される打撃を。
不意に、三代の顔が歪む。
弾けるように仰け反り、一切の動きが止まる。
その一瞬で双務は、城田が勝利した事を悟った。

既に体の支障は消えていた。
体を震わせて吹き飛ぶ三代を、全力で追う。
「双務!?」
「ぼさっとしちゃダメだ!」
城田の叫びを背に、半ば倒れるように手を伸ばす。
瞬間、腹に衝撃があり、右手に強い力が加わった。
城田の駆け寄ってくる音を聞きながら、目を瞑り、開ける。
視界の先には、三階分下の校庭と、自分の手に掴まっている三代が映った。
311:2009/11/19(木) 19:45:55 ID:sRLg1uVW
しばらく書き込めない時ってどうすればいいんですかね。
ちょっと週末に予定が立て込んでいるんですが……



この学校は仕事が遅いので有名だ。
古くなったので夏休みに設置する、と言っていた屋上のフェンスは、まだ取り付けられていない。
「うぁ……」
「しっかり掴んで!」
小さくなった地面が見える。高い。
言葉とは裏腹に、手からは汗が噴き出した。
滑らないように神経を集中させた瞬間、背後から城田が手を伸ばしてきた。
「城田君」
「……お前が、それで良いならな」
ふっと微笑んで、城田は思い切り腕を引き上げる。
軽々と三代が持ち上がったのを見て、これもスタンドの力か、とちらりと思った。
「気をつけて!」
放り投げられるように、三代が屋上に倒れ込む。
双務は一瞬だけ、城田の傍に人影が見えた気がしたが、何も言わなかった。
それよりも先に、三代に近寄る。
「あの大丈夫……じゃないよね……
 僕にはよく見えなかったけど、喧嘩してたんでしょ?」
「…………」
三代は何も言わなかった。
ゆっくりと城田が、双務に並ぶ。
「加減はしてやったんだ、喋れないほどじゃないだろ」
双務は肩をすくめた。
三代の右頬には大きな痣が残っており、鼻血も出ている。
腕を庇っているのを見ると、どこか痛めたのかもしれない。
加減したようにも、喋れるようにも見えないが、それでも三代は口を開いた。
「……どうしてだ」
「あ?」
「俺はお前ら二人に喧嘩を売った。特にチビ」
双務の身長は、高校生としては非常に小さかった。
「てめぇを、俺は殺そうとしたんだぜ。
 なのにどうして……どうして敵を助けるんだ?」
その問いに、城田も双務に眼を向ける。
双務は照れ臭そうに鼻を掻いた。
「……だって僕、高所恐怖症だし」
「は?」
「だからさ……君が落ちていく、って思ったら、心の底から嫌だと思ったんだよね。
 もし君も高所恐怖症だったら、こんな死に方、絶対嫌だろうな、って」
双務は言い切ると、今度は頭を掻いた。
半ば呆然として、三代は城田に目を向ける。
城田は、こんなヤツだよ、と口だけで言った。

数秒して、予鈴が鳴る。
32創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 19:53:13 ID:8s+MWBKb
落ちないから放っておけばおk
331:2009/11/19(木) 22:59:36 ID:sRLg1uVW
>>32
お、ありがとうございます。
日曜は留守にしますので。

今日はコレで終わりです。突然双務視点ですが……



五時間目、三代君は必死に隠していたけど、先生に顔の傷を見つけられて大騒ぎされた。
彼は「階段で転んだ」と言い訳して、なんとか事なきを得ていた。
帰る直前、いつもより早い帰りに浮き足立つクラスの中で、城田君だけが静かに外を見ていた。
声を掛ける事ができずに、僕はおどおどと荷物をまとめていた。
放課後、三代君は僕らの前で土下座して謝った。
誰もいない校庭の陰で、はっきり「すまん」と言った。

「お前にあんな風に言われてよォ、俺ぁ目が覚めたぜ。
 あんなやり方は……間違ってたな」
「そうでもないんじゃないか? 全員ボコってればいつか本物に辿り着く」
「じょ、城田君不吉な事言わないでよ……」
帰り道で、三代君は『宗教』について語ってくれた。
前の学校でゆっくりと広まっていったソレは、かつての友達を変えてしまった、らしい。
そして、一大組織となった彼らと、三代君は闘っていたという。
「なんか変な思想でよ、勧められた時はマジ切れしたな
 でもそっから面倒事が始まって……気付いたら半分ノイローゼだ」
「それ本当の話?」
「眉唾ものだな」
「……ま、信じられねぇ気持ちも分かるぜ」
ただな、と三代君が僕らに向き直る。
その目の迫力に、僕は気圧された。
「アレは、そこら辺のやわっちぃ奴とは違う。
 もっとでっけぇ……恐ろしいモンの姿だ……」
声のトーンが変わった事に、僕はさらに怖じ気づく。
だが、三代君はすぐにのほほんとした表情に変わった。
「ま、ここにも広まるかってーと、ちょっと微妙な所だがな。
 来なけりゃ来ないで、全然ラッキーだしよォ」
「……そうだな」
僕がそわそわする横で、城田君はゆっくりと頷いた。
そんな簡単な話でない事は、彼も分かっているはずだが……
だが、その台詞は僕をそれなりに安心させた。
「そうだよ」と、僕も相づちを打つ。
「仮にここへやって来たって、今度は大丈夫だからね!」
「……その自信はどこから来るんだ?」
「まったくだぜ」

分かれるとき、三代君が思い出したように口を開いた。
「そういやよォ、お前の名字は『ニジョウ』だろ?」
城田君が頷く。
「そうか……『ニジョウ』と『ジョウタ』……あ、お前のあだ名思いついたぞ!」
「唐突だな」
「俺流のあいさつみてぇなもんだよ。えっとな……
 『ジョジョ』ってのはどうだ」

何故かその言葉を聞いて、僕はこれから再び日常が始まる事を、うっすらと感じた。
だが、それはきっと今までのものとは全然違う……『奇妙な日常』になる、そうも思った。
34創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 00:44:19 ID:fKJ0Aimi
三代「フフフフフ 名まえがほしいな 「二丈」じゃあ今いち呼びにくいッ! この三代が名付け親(ゴットファーザー)になってやるッ!
   そうだな……『ニジョウ』と『ジョウタ』をかけ合わせた意味を持つ 『ジョジョ』というのはどうかな!」
城田「唐突だな」

冗談はともかく乙

>「俺はお前ら二人に喧嘩を売った。特にチビ」
>「てめぇを、俺は殺そうとしたんだぜ。
> なのにどうして……どうして敵を助けるんだ?」
細かいが、てめぇ『ら』では?

>双務の身長は、高校生としては非常に小さかった。
唐突。また、表現に比喩など分かりやすい表現が欲しかった

>>33全体
地の文がほぼ「〜た」で終わっている。

>五時間目、三代君は必死に隠していたけど、先生に顔の傷を見つけられて大騒ぎされた。
>彼は「階段で転んだ」と言い訳して、なんとか事なきを得ていた。
>帰る直前、いつもより早い帰りに浮き足立つクラスの中で、城田君だけが静かに外を見ていた。
>声を掛ける事ができずに、僕はおどおどと荷物をまとめていた。
>放課後、三代君は僕らの前で土下座して謝った。
>誰もいない校庭の陰で、はっきり「すまん」と言った。

3回以上繰り返すとくどい(「の」の多用みたいに意図があるなら構わないけど……)
また、文体のせいで双務の一人称にしては説明口調気味。淡々としているというか。
三代を助けた理由からして双務本人が淡白な性格とも思えない。

>そんな簡単な話でない事は、彼も分かっているはずだが……
>だが、その台詞は僕をそれなりに安心させた。

「だが」の繰り返しが気になる。
一人称文体だから「〜彼にも分かっているはずだけど……」「でも、〜」と、口語を用いてもいいのでは?


とまあ散々言っちゃったけど、導入部で城田と三代の性格がある程度つかめたって点ではよかったと思います。


このような拙い批評で役に立てるなら幸いですが、「自分はこういう意図でこうしたんだ」と思ったなら堂々と主張してくれて構いません。
351:2009/11/20(金) 16:43:36 ID:VFsBOqbw
>>34
いえいえ、俺の周りには文章について批評してくれる人がいないので、本当にありがたいです。
導入……先は長いってことですね、わかります。

>てめぇ? てめぇら?
らですね。凡ミス乙。

>身長の描写
そう……ですね、唐突でした。
比喩はどっかで入れたいと思いますが……四部の広瀬康一君を想像して頂ければ間違いないです。

>「〜た」フィニッシュ
これは時間の流れを簡潔にして、あっという間に過ぎ去った、という事を表現したつもりでした。
淡白っていう風に取られちゃったのは失敗ですね……

>「だが」
それは完全にミスです。口語文大好き!

そういえばスタンド紹介って文中に限った方が良いですかね?
それともマンガみたいにページの合間(別個記事)でもやった方が……?
361:2009/11/20(金) 17:24:41 ID:VFsBOqbw
こっから本編開始、ってとこですかね。
タイトルとかもつけるべきだったり?



「なんだよジョジョ、お前『能力』知らねぇのか」
「……なぁ、そのあだ名は確定なのか?」
「いいじゃん。じょじょ、ジョジョ、言いやすいし」
一時間目の始まる前の、ざわざわとした喧噪の中。
僕らは机に腰掛けている城田君と話している。
『僕ら』というのは、当然僕と三代君だ。
昨日の喧嘩が嘘みたいに、彼は僕らと親しく接してくれる。
未だに顔の傷が痛々しいが、それでも明るいのは流石だと思っていた。
「……で、能力って何?」
「ん、俺らのスタンドにはよォ、特別な『能力』ってモンがあるんだ」
「空でも飛べるのか?」
けっこうな真顔で城田君が聞いた。
「物によるな」
「え、マジか」
「物によるってどういう事?」
そこで三代君が手を上げた。
僕には見えないが、恐らくスタンドとやらも、同じ動きをしているに違いない。
「スタンドの能力は、一人一つだ」
「ん……」
台詞を聞いて、城田君がしわを寄せた。
僕も疑問に思ったが、口に出す前に三代君が先に喋る。
「今お前ら、なんで俺が知ってんだ? って思ったな」
「まぁ……」
「右に同じだ」
「こいつはちょいと俺主観だが……ほとんど正解だと思う。
 昨日俺ぁよ、前の学校で色々揉めてた、って言ったろ?」
頷く。同時に視界に入った時計は、次の授業まで二分を示していた。
「てめぇがスタンド使い、とも言ったな」
「……鋭いじゃねぇか」
城田君の言葉に、三代君が唇を歪める。
「そうだ。前の学校では、俺の敵はスタンド使いだった。
 そいつらは魔法みたいな力を持っててよォ……一人で闘うには無理があった」
そこで三代君は言葉を切った。
僕は喉を鳴らして、唾を飲み込む。

続きが来ると思ったら、チャイムが鳴った。
37創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 17:53:14 ID:W4NC8nq8
>>13スタンドバイミー?

>>1がもしジョジョ好きならジョジョ好きにだけ分かるような小ネタを入れてみたらどうだろう?
小説の題材として流し読みした程度で、別にジョジョが好きな訳ではないのかもしれないけど
381:2009/11/20(金) 19:50:36 ID:VFsBOqbw
>>37
ここに来て元ネタ判明あざっす! 死なずに済みそうでs(ry
ジョジョは大好きですが、財布の関係上あまり読んでない……
四部を飛ばし飛ばしでほぼ全部、五部を最初と最後だけ、六部を序盤〜中盤まで、ですね。
読んだこと無いネタも某新聞さんで見かけるので、機会があったら忍ばせたいと思います。



「準備はいいか?」
「……ん、いいぞ」
昼休みの屋上。僕らは昼食もそこそこに、ここへやって来た。
目的は、城田君の『能力を見定める』ためだ。

最初の休み時間の後、僕らには移動教室が続き、じっくりと三代君の過去を聞く機会は無かった。
本人としても興は削がれてしまったらしく、合間に聞いても
「あぁ……アレはだ、そいつらが全員一つの能力しか使わなかった、って話だ」
としか言わなかった。
城田君はもとからあまり関心が無さそうだったし、僕一人でさらに質問を続けるのはやめた。
結果的に僕らの関心は、城田君が一体どんな能力を持っているのか、という事に注がれる。

「って言ってもよォ、ほとんど分かっちゃいるけどな」
「やっぱり、昨日の『アレ』かな?」
「ん、そーだろ」
「おい、ちょっと静かにしててくれ……今なら飛べる気がする」
僕らが笑うなか、城田君は真剣な表情でポーズを取っている。
三代君が考えた方法は、「とにかく色々やってみろ」というアバウト極まりないものだった。
それでも本人は空を飛ぶ気満々で、傍にいる僕たちの笑いを誘う。
彼自身も分かっているかと思っていたが……意外に本人は感じないのかもしれない。
そんなことを思っていると、不意に三代君が喋りだした。
同時に城田君は、特撮ヒーローみたいなポーズをしたあと、大きな身振りで飛び跳ねる。
「おい、あれ放っといたらいつか落ちるんじゃねぇの?
 ……しかしよォ、あいつが俺より強いとは、正直思わなかったぜ……」
「あぁ〜分かる、城田君は見かけ全然強そうに見えないもんね」
彼の言葉に、僕も同意して頷いた。
僕の目の前で踊っている彼は、身長が高く痩せているように見える以外、大きな特徴は無い。
だが半年前、大柄の生徒を、片手で殴り飛ばした彼の姿はまだ覚えている。
僕がいじめられていた最中の事だ、忘れようとしても忘れられない。
「あいつ、ひょっとして昔はかなり……」
「…………」
その言葉に、僕は返答できずに首をすくめる。
城田君はちょうど、両手を広げてジャンプする所だった。
391:2009/11/20(金) 23:46:18 ID:VFsBOqbw
ラピュタ見てたらこんな時間に……もう寝ます。



城田君の能力、僕らは『風を吹かせる』能力だと踏んでいた。
喧嘩の時に巻き起こった風……
あれは自然のものではなく、確かな意志を持っているように感じた。
「じゃあ飛べないな」
「飛べないね」
城田君は汗を拭いつつ、落胆したように声を絞り出した。
既に予鈴が鳴り、僕らは屋上から立ち去ろうとしている所だ。
「なんだよお前ら、分かってたなら言ってくれよな……」
「いやぁ、僕は分かってるもんだとばっかり」
「俺ぁ純粋に楽しかったけどな」
城田君が、三代君をどついた。

教室に帰る途中、教えてくれてたら試してたのに、と城田君は愚痴っていた。
それを聞きながら、廊下を歩く。
曲がり角を通ったとき、紙の束を抱えた男の人とすれ違った。
40創る名無しに見る名無し:2009/11/21(土) 10:00:11 ID:lacB/bjE
乙一のも読んでない俺がいうのもなんだが、スタンドの文章表現って結構難しそうって思うんだ。
頑張ってくれ、続きも楽しみにしてるぜ!
411:2009/11/21(土) 16:59:32 ID:nHqBlOyE
>>40
うわぁぁぁ応援ありがとうございます!
乙一さんの小説は……書店のどこに売っているのか分からない……orz

最初に、原作は無視する、とか言っちゃったせいで能力の発現方法が苦しい……
「弓と矢」使うのもどうかなぁ……



……お久しぶりですね。
出てもよかったのですか? 会議中だったのでは……
「あんな無意味な会議に出る必要は無い。
 それよりも、君の報告の方に興味があるんだ」
あぁぁ、『西戸高校』での『発現者』ですね?
既にこちらの紙にまとめてあります。
「ン、前のに比べるとかなり少ないが」
そうですね。小規模校ですし、やはり少子化の影響もあるでしょう。
「面倒な時代になったものだ。
 いち、に……たったの二人か?」
はい。
全校生徒に『素質』の有無を確認しましたが、それが限界です。
「そうか……ンンン、この二名のスタンドには利用価値がありそうだな。
 連絡先を教えてくれ」
え、あなたが直々にお会いになるのですか?
「あぁ、私自身の力を見せつけた方が早い」
それは…………それは。
しかし、ご注意下さい。もし断られた時は面倒です。
「その時は始末するさ。これまでと同じように、な。
 逃がしはしない」
……あなたのことだ、失敗はしないでしょう。
「誰に向かって物を聞いている?」

しかし、ここの学校では『広まって』いないのですね。
「私の正体がバレる可能性があるからな。
 それに、ここの生徒に魅力は感じない。
 成績は県下でドベだ……運動バカに、私は手を差し伸べない」
その通り、クズどもに希望はありません。
あなたに救われる私達は幸せです!
「……そろそろ会議も終わる頃だ。君は戻れ」
42創る名無しに見る名無し:2009/11/21(土) 17:46:03 ID:IAiWf7M/
『原作キャラ』は出てこなくてもその他の設定、『弓と矢』や『スピードワゴン(SPW)財団』とかは出してもいいのでは?
43創る名無しに見る名無し:2009/11/21(土) 18:15:43 ID:2zTf5ORT
無視するってのは「原作の話」であって「原作の設定」はその限りじゃないんじゃない?
スタンドの基本ルールだって原作準拠なんだろうし、そう解釈してたけど
44創る名無しに見る名無し:2009/11/21(土) 20:35:21 ID:/FG0rbqK
スタンド 吉野家

暗示は 早い 安い 旨い 飯ウマ状態!

(安さの)破壊力・・B

(注文を取ってからのスピード)・・B

射程距離・・町ひとつのくらいの地域ならカバー

(腹持ちの)持続性・・C

(お釣りを間違わない)精密動作性・・C

成長性・・C

能力―――
 生物を無差別にスタンドへとおびき寄せ食欲を満たすスタンド
 貨幣を媒介にする事により能力を増大させる事が可能
 また「宣言」をすることにより個別に能力を増大させる事も可能
451:2009/11/21(土) 23:47:08 ID:nHqBlOyE
>>42->>43
そう言ってもらえるとは……ありがたい。
どこかで『弓と矢』は出そうと思います。色々考え直さんと……

>>44
その発想に嫉妬。
むしろテンプレの高性能さに泣いた。

今日はこれで最後。明日から一日ちょっと留守にします。



「あ、三代君まだプリント出してないよ!」
その台詞が教室で出たのは、放課後の事だった。
教室の先生が、帰ろうとする僕たちに近寄ってくる。
何かと思ったら、三代君に用があるらしい。
「昨日言ったでしょ、前の学校の成績表持って来てって」
「え……あ!
 そ、そういえば、そんな事も言ってたかなァ〜……って」
「アレは今日までだよ。今持ってないの?」
彼は『残念』と言うように両手を上げる。
後ろの茶色の人影も、同じように両手を上げているのだろうか、想像したらちょっと笑えた。


成績表って何に使うんだろうね、とか話しているうちに、三代君が戻って来た。
既に放課後、三代君は一度家に帰った後、再び学校にやって来ていた。
僕と、城田君をお供に。
「何故に」
「だってよォ、もうそろそろ日が短ぇじゃん?
 ここらへん、まだよく知らねェの」
僕は訝しげに、というよりニヤリとして彼の事を見る。
それに気付いて、三代君は眉を潜めた。
「おい……」
「んん、いいんじゃない?
 一人だと、迷子になって、幽霊に追っかけられるかもしれないし」
三代君がどついてくるのを避ける。
城田君は、あくびの途中で苦笑いした。

僕らが三代君を待っていたのは、校舎の入り口だ。
下駄箱近くの壁の時計は5時過ぎを示していたが、既に日は大きく傾いている。
「なんていうかさ、夕暮れ時って、緊張しないか?」
「……分かるかも」
城田君の言葉に影響されて、僕は自然とあたりに目を配る。
そのせいかどうか、校門に向かう途中、僕は駐車場の隅に、挙動不審な人影を見つけた。
46創る名無しに見る名無し:2009/11/22(日) 01:23:09 ID:ipd4O1ez
…ちなみに、

これから女性キャラは出て来ますか?
47創る名無しに見る名無し:2009/11/22(日) 22:06:45 ID:HuDNMB2H
>>1
せっかく一部分でも読んだんだから、4部と5部は全部読んでみては?
創作のための準備としてでも。
もったいない。
もしかしたら、オリジナル設定のつもりで考えたスタンド能力が、本編で既出かもしれないし



スタンド;『ヴァーチャル・インサニティ』

能力;相手に、こちらのイメージした通りの白昼夢(概ね悪夢)を見させる
物理的な干渉力は持たないが、夢によって対象を心理的に攻撃できる

↑というような中二設定を考えた時がありました
でもこれ、『Getbackers −奪還屋−』って別のマンガで、
主人公の一人が使う『邪眼』という能力まんまだった。

完全オリジナルな設定を作るのは難しいね
48創る名無しに見る名無し:2009/11/22(日) 22:10:08 ID:ZHqEigur
それ以前にまんまデス13じゃね?
49創る名無しに見る名無し:2009/11/23(月) 15:42:35 ID:5GzAuRX0
面白そうなことやっとるね。
敵方の設定というから、こんなの↓はどう?

----------------------------------------------------
スタンド名:ダイレクト・メール

形状:携帯電話型。実体化しているので、スタンド能力者でなくとも
    見ることも触ることもできる。

破壊力:E (これで殴ったら逆に壊れるぞ)

スピード:E (JCはAくらいあるかもしれない)

射程:A (怖いのは圏外だけだ)

持続性:A (メールの指示を終えるまで有効)

精密動作性:A (相手は完璧にメールの指示に従う)

成長性:D (一年も経つと型落ちだよ!)

能力:メールに指示を書いて特定の相手に送る。
    このスタンドから送られたEメールを読んだ相手を、その指示に従わせる。
    相手は自発的にメールの指示を実行しようとする。その理由を問われた場合、
    色々理屈をつけて説明しようとするが、最終的には論理的な説明は出来ない。

ただし、この能力に以下の制限がある
制限:1.自分に怪我をさせたり等、直接命に関わるような内容のメールを送っても
      効果はない(無意識のうちに抵抗してしまうらしい)。
    2.メールの文章が長くても効果はない(長いと途中で飽きられるらしい)。
    3.同じ相手にメールを送った場合、前回出したメールの指示を終えていないと
      新しく出したメールは無効
    4.スタンドパワーが弱いせいか、一度に一人に対してしかこのメールを送れない。

スタンド使いは、高校が舞台というんで性悪女生徒とか、権力志向の生徒会長とかが
向いているかもしれない。

こういう妄想は大好きだ(´∀`)
まあ、使える設定があったらつまんで使ってくださいな。
それじゃ創作がんばってねー
501:2009/11/23(月) 15:46:16 ID:jxQIqBT+
>>46
出てきます……が、かなり数は少なめ……
味方勢には一人だけです。今のとこ。

>>47
使えるスタンドktkr! とか思ったらそうですか……
最近は古本屋に行ける機会を探っております。立ち読みでなんとかしたい今日この頃。

>>48
オリスタ作るの難しいですね……
今回の章で、主人公組の能力解説したいと思いますが、既出だったら突っ込んでくださると。
511:2009/11/23(月) 15:49:24 ID:jxQIqBT+
>>49
うおおおぉぉあこれ使える!!
アイデアありがとうございます。この先使うかもしれないです。
本体探しとかで頭脳戦に持っていけそう……?
521:2009/11/23(月) 17:04:24 ID:jxQIqBT+
いよいよ敵キャラと融解です。
タイトルは『暗闇の中から』とか? これから暗くなりますので。



目を凝らして見ると、人影は男子生徒だった。
僕らの学ランとは違う、ちょっと大きめのブレザー姿……明らかに他の学校の生徒だ。
同じく視界に捉えたらしい、三代君が首を傾げる。
「おい……こんな時間にいるなんて、あれァどこの学校の生徒だ?」
「ブレザーは近くに一つ、西戸高校だけだな」
城田君が立ち止まって答える。
他校生の黒っぽいブレザーは、夕日を受けてオレンジを映していた。
改めて見ると、その背は小さい。
人の事は言えないが、中学生でも通用しそうな身長だ。その影が、駐車場で蠢いている……
「放火か?」
「え」
「いや、それともイタズラか。
 向こうに校門は無ぇから、コソコソ入ってこなきゃならん理由があるんだろ」
城田君の言葉を聞いて、三代君が駆け出した。
「三代君!?」
「もしそうなら放っておけねぇ、ぶん殴って吐かせる!」
「……まだ確定しちゃいねぇんだが」
後を追って、城田君が足を踏み出す。
僕もそれに続いた。

追いつくと同時、意外にも人影はあっさり捕まった。
三代君が背後から首を掴むと、他校生は体を震わせて叫び声を上げる。
慌てて城田君と止めに入ったが、彼は咳き込んで崩れ落ちた。
「う、ぁ……だ、誰……?」
「オゥ、俺ぁここの学校の生徒なんだが、てめぇがチラリと目に入ってなァ……」
「三代君、いきなり暴力振るっちゃダメだよ!」
「うっせぇ、どうみても怪しいだろうが」
三代君は、目線を生徒に向けたまま吐き捨てた。
それと同時に、スタンドを使ったのか、他校生の体が大きく揺さぶられた。
「おいてめぇ、名前は!?」
「うぐあ……け、刑大 茂直(ケイダイ モジキ)……」
城田君に目を向けると、知らない、というように首を振った。
「ここで何やってた」
「書、類を出さな、きゃいけなくて」
城田君が顔をしかめる。
直後、三代君の上げていた腕が地面に墜落し、刑大の呼吸音が大きくなった。
「おい、何しやがる城田!」
「そいつの言葉に嘘は無さそうだ。
 無実なんだから、放してやれ」
その表情は落ち着いていたが、語調は強かった。
渋々、という感じで三代君が一歩下がり、かわりに城田君が近寄った。
「おい、いきなり攻撃して悪かった」
「…………」
刑大は、ぽかんとしたまま城田君を見た。
彼は一般人なのだから、当然スタンドは見えないはずだ。
自分がどうやって攻撃されたのか、まだピンと来ていないのかもしれない。
「ただ言わせてもらうが、お前の行動はかなり怪しい。
 こっちに用が無いなら、勘違いされるようなことはするな」
城田君はそう言うと、校舎の方を指した。
刑大も目を向ける。そのとき、僕はちらりと、濁っている目だ、と思った。
「……すいませんでした」
滑舌悪く彼は言い、俯きながら歩き始める。
刑大は僕らの方を二度と見ようとせず、後ろ姿を見ながら三代君が舌打ちした。
53創る名無しに見る名無し:2009/11/23(月) 20:10:38 ID:s8oa6FJq
スタンド名
『ドジッ娘メイド』

破壊力 B
スピード C
射程距離 C
持続力 C
精密操作性 E
成長性 C

メイド服を着たちょっとロリっぽい女の子。
(JoJo作品的に顔はアニメキャラの無表情なお面?)

特殊能力
『ドジッ娘お手伝い』
対象となった者の五感を微妙に狂わせ、行おうとする行動を必ず失敗させる。

(何も無い所で転んでしまう。
持っている物を落としてしまう。
目標を間違えてしまう)


使用者
引きこもりの女オタ。
城田や三代に好意を抱き、役に立ちたい、と色々『お手伝い』してくれるが、本人も不器用。
541:2009/11/23(月) 22:39:38 ID:jxQIqBT+
>>53
女性ktkr! とか思ったら濃すぎワロタwwwww
逆ギレさせたりして敵に回すと恐ろしいですね。
仲間としては……あ〜……うん、チェンジで。

今日はこれで寝ます。あ、そういえば明日はお休みだったり。ヒャッホォォォォ!!
……ちなみに、本編の初パロディに関しては多めに見て頂きければ幸いです。



あの学生……『どう見ても怪しい』だ、『勘違いさせるな』ってよォ〜……
『怪しい』ってのは分かる。スゲーよく分かる。
あんな暗がりの中でコソコソしてたからな。
……だが『勘違いさせるな』って部分はどういう事だああ〜っ!?
そんなのお前らが勝手に決めつけてきたんだろうがよーッ!!
ナメやがってこの言葉ァ超イラつくぜぇ〜ッ!
それじゃあ偶然迷っちまった中学生とかも不審者じゃあねーか!
シメられるんならシメてみやがれってんだ! チクショーッ。
どういう事だ! どういう事だよッ!
クソッ! 勘違いってどういう事だッ! ナメやがって、クソッ! クソッ
…………
話の時間まで、まだ時間があるしなァ〜……
決めた! あいつらは全員! 俺の『シャドーマン』の餌食だ!!


「城田君?」
校門の所で、僕は城田君の視線に気付いた。
刑大の入っていった校門の方を凝視し、歩みを止めている。
「どうしたジョジョ?」
「……先帰っててくれ」
「え」
早いスタート、彼は大きく足を踏み出すと、後者に向かって駆け出した。
「ちょ……どうしたの!?」
「なんかあんのか!」
僕らの叫び声を無視して、城田君は入り口を通っていく。
ちょっと唖然として、僕は三代君と一緒に城田君の後を追うことにした。
551:2009/11/24(火) 11:49:01 ID:lNgLir9o
ダレモイナイ……更新スルナラ今ノウチ……



窓から、夕日が沈むのが見えた。
二階の階段、城田はゆっくりと足を上げる。
視線は周りをしきりに探っており、息づかいも小さい。
まるで潜入、それとも尾行。
……先生に会ったらどやされるな。
内心で、ちらりと思う。
これでは自分も刑大と何ら変わらない。事件を目撃しても、説得力は皆無だ。
しかし、だからこそ。
階段を登りきったとき、自分の背後で物音がした。

「グバァッ……!」
「殺気、漲りすぎだぞ」
呻き声とともに、刑大が崩れ落ちる。
城田は振り抜いた腕を引きつつ、後ろに一歩下がった。
同時に確信する。
刑大の頬にめり込んていた自分の拳、それに触れるか触れないかのところに『影』があった。
人の形をしていて、ぐずぐずと脆そうに見えるその姿は、金属のように鈍く縁取られていた。
「『スタンド使い』」
「なんでお……お前が……」
「答える義理はねぇよ」
刑大の問いに、吐き捨てるように城田が言う。
最初に遭遇したとき、刑大は三代と接触した。
あの際、城田は確かに、刑大が三代のスタンドを捉えたように感じた。
揺さぶりから解放されてからのぽかんとした表情も、混乱ではなく驚愕……
自分と同じ力を、他人が持っている事に落胆したように見えた。
「今度は俺も手加減しない。言え、何をしようとしていた?」
「うぉぉあ!」
緑色の腕が、刑大の首を掴む。
ぎりぎりと締められる中で、刑大はスタンドに込めているのであろう、右手の力を抜いた。
背後で、スタンドの崩れたのを感じる。だが、刑大の口は歪んだまま、声を発しない。
「ぅ……え」
「……強情だな」
死んでは困る、と城田は一旦手を離した。
激しく咳き込みながら、刑大が背後へ倒れ込み、階段の縁に掴まる。
その瞬間城田は、刑大が懐に手を入れるのを見た。
561:2009/11/24(火) 20:55:38 ID:lNgLir9o
こっから視点がくるくる変わります。
冒頭で「同時刻:双務」とか言った方がいいですかね?



下駄箱に入ったとき、既に城田君の姿はなかった。
嫌な予感を拭うように、僕は頭を掻く。
「……速ぇな」
「あんなに急いで、何かあったのかな」
とは言っても、城田君はかなり面倒くさがりだ。
気になる事意外には、限りなく消極的……
「つまり、何かあるのは間違いない」
「ちッ、あの坊主、やっぱりシメときゃよかったのによォ〜」
ぼやくように三代君が言う。それでも、口調は真剣に聞こえる。
それと同時、僕らの背後から声が飛んできた。

「こら、もう下校時間……三代君と双務君?」
「……先生ェ、ビビらせないでくださいっスよ!」
「突然すぎですよ」
後ろに立っていたのは、クラス担任の先生だった。
手にカバンを持っているのを見ると、今から帰る所なのだろう。
三代君が構えを解くのを見て、僕も体に込めた力を抜いた。
「お帰りですか?」
「うん。見回りも終わったしね。……っていうか、君たちは何やってるんだい」
「あ、え、えっと〜……」
「忘れ物取りに来てたんスよ」
三代君が、さらりと嘘を言った。
嘘だね、と言われるかと思ったけど、先生は渋い顔をしただけだ。
既に歩き始めようとしている。
「そうなの? まぁ……どうしてもなら仕方ないけど……早く帰るんだよ」
「ウッス! さいなら!」
三代君はにこにこと手を振る。
けれど、よく見ればその目は笑っていない。
気掛かりなように、先生は何度か僕らを振り返ったけど、そのまま校門を出た。

「職員室の方には、城田達はいねぇな」
考える素振りをしたまま、三代君が口を開く。
「先生が彼の事を言わなかったから?」
「そうだな……ん、よしッ!」
そう言うと、彼はその場で大きく飛び跳ねた。
ほとんどノーモーションだったのにも関わらず、彼の半開きの襟元は、かなり頭上で揺れた。
「い、いきなりどうしたの!?」
「っとォ、悪ィ。こいつは俺流の気合いの入れ方なんだよ。
 ……城田が俺らを連れてこなかったのは、多分危険だと思ったからだ」
え、と聞き返す。三代君は、ゆっくりと東側の階段に向かう。
「ひょっとすると、だが、スタンド使いが絡んでるかもしれねぇ」
「で、でもあの生徒は……」
「気付いてたぜ、あいつは」
僕は口を半開きにしたまま、その場に固まった。
「お前は帰った方がいいかもしれねぇぞ」
「……いや、一人で帰るのもちょっと」
仕方なく、僕は職員室側、西側の階段へと早足で向かう。
僕にできるのは探索まで、なら二手に分かれた方が効率が良い。
「僕はこっちに行くよ!」
「あぁ。……なぁ双務」
手すりに触れた所で、三代君が何か言った。
聞こえなくて僕は振り向いたけど、彼は既に階段を登り始めていた。

二階に着く頃、残っていた夕日は完全に消え、校舎を闇が満たした。
571:2009/11/24(火) 22:44:37 ID:X4H1+Erc
オリジナルスタンドのwikiってあったんですね……orz
しかもオリスタ多すぎて見切れないし。既出怖い。
今日はこれで終わりにします。



迂闊だった。自分のツメの甘さに、城田は愕然とする。
視線を落とすと、自分の右足に空いた『穴』が目に入った。
ぎり、と歯を食いしばり、階段の手すりに手を置く。
既に登っていった刑大を追って、城田は足を階段に進めた。

崩れ落ちると同時、とっさの一瞬で刑大が取り出した物を、城田は目で捉えきれなかった。
それでも奪おうと手を伸ばした瞬間、その物体は光を発し、自分の右足に風穴が空く。
ボゴォ、とでも言うかのように、瞬間的に空いた数p台の小さな穴。
しかしももの部分を襲った一瞬の小さな痛みは、自分の体勢を崩すのには十分だった。
驚愕の呻き声とともに、城田は膝を折る。
それと同時、刑大は下品な笑いを浮かべて、這いずるように階段を上がっていく。
城田はスタンドを繰り出した。手を伸ばさせ、刑大を捕らえようと試みる……
だが、その手は復活した鈍い『影』に阻まれた。
ぎょっとして動きを止めた瞬間、幻影のように刑大と、影のスタンドは視界から消えていた。

攻撃方法を見切れなかったのは、大きな痛手だった。
『穴』がスタンドによる物なのか、それとも取り出した『何か』に物なのか判断がつかない。
これが能力……城田は、相手の強さを肌で感じていた。
肉体や精神の強さではなく、スタンドの強さ。それは始めて触れる物で、予備知識は無い。
(君のはさ、風を巻き起こす能力じゃない?)
目を閉じ、自分の手持ちカードを確認する。
自分の肉体・スタンド・恐らく、風を巻き起こす能力……
敵とのハンデはかなり大きいように思える。だが、城田はそれほど悲観してはいなかった。
あの生徒は粘着性を持っていたが、あまり考えて行動するタイプには見えない。
必ず追いつめられる。
そう呟いて目を開くと、目の前に広がる三年廊下に、ゆらゆらと蠢く人影が映った。
ぎょっとして身構える。その人影は、間違いなく刑大のスタンドだった。
58創る名無しに見る名無し:2009/11/24(火) 23:25:21 ID:Zw8ezjsy
>>55
>背後で、スタンドの崩れたのを感じる。
スタンド「が」崩れたのを感じる?

>>56
>気になる事意外には、限りなく消極的……
意外→以外

>>57
>『穴』がスタンドによる物なのか、それとも取り出した『何か』に物なのか判断がつかない。
取り出した『何か』に「よる」物なのか判断がつかない?

気になった誤字脱字の指摘。
文章に関してちょっと気になったのは、「瞬間」って表現を使いすぎかな、と
近くに「一瞬」があったりするから尚更そう感じちゃうのかもしれないけど
「刹那」「束の間」とか別の表現使ってみるのもいいかも。類語辞書マジオススメ
59創る名無しに見る名無し:2009/11/25(水) 04:01:13 ID:0/mMjwPc
>>57
公式スタンド能力とならともかく、オリジナルスタンド能力とのかぶりは、仕方ないのでは?
自分が見たサイトでも
『殴った相手に○○の効果を与える』
という能力ばかりが並んでいましたし。
601:2009/11/25(水) 15:45:53 ID:PdEGTS/D
>>58
凡ミスの指摘あざっす!
全ておっしゃる通りです。カスだろ俺……

>類語
その指摘はなかった。今まで。
語彙が貧相なのはともかく、その状況でも飽きさせないような工夫ができるようになりたいです。


>>59
そう言って頂けるとこちらとしても非常にありがたいです。
アイデア絞ってると、どうしても近距離パワー型に偏りがちなんですよね……
奇抜なのも頑張って考えたいと思います。燃え尽きろ俺の脳味噌!!
611:2009/11/25(水) 16:54:17 ID:PdEGTS/D
ジョジョ見てて最高にハイになるのはやっぱりラッシュですかね。
「ウラウラウラ……」以外に思いつかないんですけども。



夜の校舎というのは、変に静かで不気味で、さらに広く感じた。
この学校も例外でなく、むしろいつもと光景が違う分、余計に恐怖が胸を抉る。
なにより、もし曲がり角でバッタリ刑大に会ってしまったら……
と思うと、自然一歩が狭まっていった。
仕方がない事だ、と思いながらも、自分の小心っぷりには涙が出る。
「二人は無事かなぁ……」
理科室前。僕は窓から覗く月を見ながら、小さく呟く。

この学校の校舎は、東側と西側、さらにそれぞれが二分されている。
東側の方は学年ごとのフロアになっており、一年から三年のクラスが並んでいる形だ。
ちなみに、一階には一年が、二階には二年が、というように、学年と階は対応している。
そして現在僕のいる西側校舎には、特別教室が集中して設置してある。
理科室や音楽室などの移動教室の他、職員室や図書館もこちらだ。
……余談になるが、体育館に行く通路と屋上への階段も西校舎にある。
先程まで、僕は特別教室を一つずつ回っていった。
当然、先生が見回りをした後だ。僕は、全ての教室が閉まっているのを確認した。

この理科室は三階にある教室で、最後に見に来た所になる。
見かけよりも頑丈な扉は、若干150pの僕にとって、かなり厚い壁に思えた。
言い換えれば、あまり背丈の変わらない刑大にとっても、この扉は硬い。
当然スタンドを使えば何とかなるかもしれないが、それでも面倒事は極力避けるだろう。
中に入って機材を手に入れる事はできない。
サシの勝負で、城田君達が敗北する姿は想像できなかった。
「……と、言うことはだ」
西校舎には刑大はおらず、城田君もいない。
敵にとって有利になる物も無く、その他不審者の影も無い。
そこまで見たのだ、偵察としての僕の仕事は終わったと言えるだろう。
ゆっくりと溜め息を吐き、体の強張りを解く。
後は二人に合流するだけだが、二人の所には恐らく刑大がいる。
勝負がついたなら問題は無いが、自分が行った所で足手まといになるだけだ。
ここは学校の外に出て、待機しているのが良いだろう。
……別に怖いからとか、小便チビリそうだからとかそんなんじゃない。
決してない。

だが、一息付いて体を翻した瞬間、先程自分の登って来た階段から、鈍い音が響いた。
かつん、かつんと、靴が地面を蹴る音。
僕は、一瞬ぽかんとした後、震え出した足を引く。
そのまま、反対側の階段へと体を動かした。
……屋上へ続く階段。
僕には、階段を上って来る人間が、城田君達でない確信があった。
何故だ? 自問を振り払うように息を殺す。
答える余裕は、既に無かった。
62創る名無しに見る名無し:2009/11/25(水) 22:01:50 ID:Gg+dA4Tb
最初から読んでみた。

視点や場所、時間の切り替えが唐突でわかりにくいところがあるね。
いっそ、双務視点で固定して語ったほうがわかりやすいと思った。

あと、動作の描写は多いけど情景の描写が少ないからか、場面が
イメージしづらいところがあった。


などと気になるところもあったけど、キャラの性格はわかりやすいし、
なによりしっかり内容がジョジョしてるから面白かったよ!

まあ表現の幅とか文章の作法とかを気にしだすと、手が止まっちゃうかも
しれないから、妄想の赴くままに突っ走るのがいいよー。
631:2009/11/25(水) 22:17:08 ID:PdEGTS/D
ちょっと早いですけど、今日はこれで終わりです。
進み遅っせぇ……orz



三代が城田に鉢合わせたのは、三年廊下に出た時だった。
「お」
「な……!?」
城田はぱっと見て分かるほど焦っていた。
視線は慌ただしげに周囲に散っており、背後のスタンドは、肩を怒らせてステップを踏んでいる。
「ど、どうしたジョジョ」
「……何故逃げなかった、というのはもう意味が無いな」
城田は軽く溜め息を吐く。だが、視線は三代に向かない。
「刑大はスタンド使いだ」
「ん! やっぱりか」
「しかも、厄介な能力持ちだ」
何ッ、と三代が叫んだとたん、城田の姿勢が崩れた。
驚愕する間もなく、城田が右肩を押さえる。
「ジョッ……!」
「落ち着け、出血しただけだ」
城田は小さく息を吐き、地面に手をついた。同時に、三代も横にしゃがむ。
「何が起きてんだァ!?」
「……背後」
ちらりと三代が視線を送る。
三年五組の半ば開け放たれたドア、その先のベランダ。
そこから、刑大が走り去るのが見えた。
「ッ……野郎ォ!!」
「待て三代」
いきり立ち、スタンドを引き出した三代を、城田が押さえた。
学ランの右肩は、血のせいか既に変色している。
よく見ると右肩だけでなく、右足、左脇腹にも同様の変化が見られた。
「お前……」
「奴の能力がまだ判明しない。一人で追うな」
その声は、微塵も震えていなかった。三代は唾を飲み込み、その場に固まる。
「大方の見当は付いた。だが、まだ二点ほど不確定だ」
「二点?」
城田は続きを言おうとした。だが、不意にその場から飛び退くと、スタンドを現した。
「う!?」
「動くな!」
高速のストレートが、右頬を掠る。背後で、鈍い音がした。

ぐずぐずに崩れた影は、緑色の拳を避けるように再び形を取る。
ゆっくりと震えるその影は、夜の闇を映したように虚ろだった。
641:2009/11/25(水) 22:19:11 ID:PdEGTS/D
>>62
うわあぁぁぁあいいいい!!!
アドバイス・応援ありがとうございます!!
文章に関しては精進したいと思いますが、妄想の方も気張っていきたいと思いますッ!
651:2009/11/26(木) 17:36:15 ID:/GizRxuv
なんというgdgdっぷり。
そういえば三代の能力言ってませんでした。



「あいつの能力は、恐らく『スタンドを影に取り憑かせる能力』だ」
三年フロアを駆けながら、城田が三代に向かって喋る。
早口だったが、滑舌は良かった。
「言わなくても分かる!」
「ならいいんだ」
ひょいと、城田が後ろを振り向く。数m離れた所に、影が同じようにして走っていた。
進行方向は全員同じ、体育館へと続く通路。
「今のこいつは、スタンド云々以前に『俺の影』だ。
 だから、破壊しても元通りだし消えないし……」
「本体が離れても付いてくるってわけだな!?」
そうだ、と城田は頷く。

先程ベランダから立ち去った刑大だが、スタンドに襲われた際、三代がその姿を捉えた。
この学校の校舎は、東と西に分かれていて、西側には特別教室が集中している。
刑大は西側に向かう通路を走っていく所であり、途中何度もこちらを振り向いて見ていた。

「誘ってるのか?」
「ほぼ、間違いなく」
この切り離された『影』は、攻撃能力を持たないらしく、消えはしないが、向こうも殴れない。
しかし、刑大が何らかの攻撃を仕掛ける際に、この『憑いている』状態は非常に重要なはずだ。
恐らく、攻撃方法に関しても、このスタンドが鍵を握っている。
「西側から窓越しに攻撃してこられたら、勝ち目は無いぞ」
「だから走ってるんだろうが。あのガキァぶっ殺す!!」
三代が体を震わせて怒鳴る。直後、城田が呻き声を上げた。
「え!?」
「な……ッ!」
城田が腹を押さえて、その場に崩れ落ちる。いつの間にか、後ろを走っていた影の姿が無い。
「攻撃!?」
三代は瞬時に、周囲の窓に目を走らせた。
だが、刑大の姿はちらりとも見えない。
苛立った三代は、その場を強く蹴り上げた。
「クソッ! どうなってやが……」
「把握、だ」
鬱憤を吐き出したその時、城田がぼそりと呟いた。
え、と聞き返す三代を尻目に、ゆっくりと窓の外を指差す。
「ジョジョ?」
「アレ見ろ」
窓の外には月があった。
もうこんな時間か、と三代は目を丸くした。
「……どこを見てるんだ?」
「え」
「月じゃない。傍の木を見ろ」
言われたとおりに目をやる。
中間通路の窓からは、中庭の大きな夏椿が見えた。
月を向こうにして、ざわざわと忙しなく揺れている。
葉っぱの間から、月明かりが漏れていた。
「……なぁ、三代」
突然城田が口を開く。
既に立ち上がっており、口調には熱がこもっている。
「ん」
「お前のスタンドの『能力』、教えてくれ」
661:2009/11/26(木) 19:21:11 ID:/GizRxuv
>>65
あ、これ失敗した……orz
すいません、本文上から7行目『進行方向は全員同じ、体育館へと続く通路。』の部分について。
ここは誤爆で、正確には 体育館→中間通路 です。
……ちなみに、ネタバレするとラスボスは体育k(ry
あながち誤爆ではないかも。でもそんな重要ではないかも。
671:2009/11/26(木) 23:05:44 ID:/GizRxuv
双務、ちょっと待ってろ双務。あ、三代のスタンド名出ました。異論は受け付けるッ!
今日ラスト。最近少数更新で申し訳ないですorz


体育館は、完全な沈黙だった。
鈍い音ともに開いた入り口は、まるで城田達が入る事を喜んでいるようにすんなり開いた。
「……誰もいなかったりしてよォ」
「確率としてはかなり低い。ここなら、向こうから仕掛けてこなければ安全だからな。
 奴が確実に俺達を仕留めるつもりなら、ここに立て籠るのを無視しない」
体育館のカーテンは、完全に閉め切られていた。
照明も落ちており、ドアの先から差す光で辛うじて互いの顔が見える程度だ。
「本当は、入り口で待ち伏せてて、逃げようとした所を……ってのはねェのか?」
「それなら、当分は安全だ」
そう言いながら、城田が入り口を閉める。当然、光に触れないように、だ。
その間、三代は辺りを観察する。今の所、不審な物は見えなかった。
ステージの幕は上がっており、バスケゴールも上がっている。
隠れる場所は無い、と思えた。
「おい、見落とすな」
「あ?」
城田がちらりと上を見る。それと同時に、そそくさと歩き始める。
「……いたのか」
「いる」
刹那、三代の顔が光で照らされた。
眩しさに目を細めた瞬間、城田が駆け出す。
「待て城田!」
三代は、光から顔を背け、二階へと目を向ける。
そこに刑大がいた。備え付けのスポットライトに手を掛けこちらを見ている。
そのライトは、恐らく最小まで絞られていた。さらに、刑大が板のようなもので光を小さくする。
三代に当たる光が、『点』になった。
「野郎ォ……」
「お前は後だ、先にそっちの野郎を片付けるからな〜……」
刑大は顔を歪めて叫ぶと、一度光を落として、スポットライトを城田に向ける。
走り出してから、二秒と経っていない。
城田は、まだ三代の近くにいた。
「お前はこれで脳髄パーンだ! 派手にブチまけて死ねェェェェ!!」
高らかに叫ぶと、刑大はスイッチを入れた。
見えなかったが、入れたはずだ。

三代のスタンドは、王冠をかぶっている。
それも、よく映画なんかで見るような黄金に輝く豪華な物ではなかった。
灰なのかほこりなのか……とにかく古ぼけていて、気品は欠片も感じられない。
その王冠に茶色の肌が相まって、そのスタンドはどうしても薄汚れて見えた。
……しかし、それでも三代は、自分の『影』を気に入っている。
体を取り巻く茶色い肌も、彼としては夏の日焼けのように見えて、不快ではなかった。
さらに、薄汚れた王冠は、真面目が苦手な彼にとって、最高の指針と呼んでも間違いではない。
立派ではないが、それでもしっかり形に残っている勲章……
それが、三代の道しるべであり、目指している生き方だった。

「『ブラウン・クラウン』!!」
68創る名無しに見る名無し:2009/11/26(木) 23:12:22 ID:XNF0+JUg
作者がネタバレしても白けるだけだぞ…
69創る名無しに見る名無し:2009/11/26(木) 23:18:18 ID:XNF0+JUg
>>68>>66のことな。割り込みスマン
701:2009/11/27(金) 17:16:20 ID:rGuWHGlq
>>68->>69
俺としては、>>66は訂正以外全てネタのつもりでした。
そういう風に取られてしまったのは、完全にこちらの失敗です。すいませんでした。


     ∧_∧
     ( ゚ω゚ ) スタンド解説は任せろー
 バリバリC□l丶l丶
     /  (   ) やめて!
     (ノ ̄と、 i
        しーJ



「『ブラウン・クラウン!!』」
三代は叫んだ。そして、手に持っていた物を投げた。
瞬間、スタンドが『それ』を殴りつける。
水……それも黒インクを混ぜたもの。
それが入ったペットボトルが、高い音を出して破裂した。
位置は、城田の右横。ライトと、城田の間。
「……俺ぁよ、カッコイイ勝ち方、とかに興味はねぇんだよ。
 どんなやり方でも、生きてりゃいいし、相手をぶっ飛ばせればさらに良し、だ。
 だからよォ……俺は自分のスタンドを、誇りを持って呼ぶんだぜ」
誰へともなく言った言葉、だが三代は僅かに、城田が笑ったように感じた。
それと同時に、ライトの線が黒い水に照射される。

(中間通路を走っている時の、俺に対するダメージは、刑大の意図した物じゃない。
 奴のスタンドの攻撃は、一定の条件下でのみ発動する物だと思う)
数分前の城田の台詞。理科室を調べている最中のことだ。
(あのとき、俺の『影』に光が射した。ぱあっと、じゃない。
 葉っぱの間から、細かい光が、だ。おかしいだろ?
 光の当たる機会は、何度もあったのに、何故あの時だけ喰らったんだ?)
そして城田は、理科室に置いてあったマジックをへし折る。
色は、黒。
(奴のスタンドは、取り憑いている影が消えた時、その影の本体の同じ場所にダメージを与える。
 だが、一定範囲以上の光量では、効果は出ない)
そして、真っ黒の内容液を、三代の差し出したペットボトルへ入れる。
(刑大がピンポイントで狙って来るのは、間違いなく頭だ)

黒は、光を通さない。スポットライトの光は、水の壁に阻まれた。
光の延長には城田の『影』の頭がある。
……だが、確認している間にも、水の壁は落下していく。
「もちろん、これで終わりじゃねぇんだぜ?」
暗闇の中で、ブラウン・クラウンが拳を振りかぶる。
そのとき三代は、ライトの線が動揺するように震えたのを眼に捉えた。
にやりとして、パンチを繰り出す。
狙いは、水。今まさに崩れ落ちようとしている、黒い壁。

茶色の拳が水に触れた瞬間、城田も右手を突っ込んだ。
711:2009/11/27(金) 23:18:02 ID:rGuWHGlq
やべ、今日はちょっと書けないです。
また明日……ノシ
72創る名無しに見る名無し:2009/11/27(金) 23:55:06 ID:1lKD3PVd
うおーい
731:2009/11/28(土) 21:41:04 ID:LbySCPq5
お待たせしましたorz
あ、三代の能力はまだ不完全です。既出だ! と思われた方、もうしばらくお待ちアレ。
……それまで続くといいんですが……(汗



刑大が叫ぶのが聞こえた。
「なッ……なんでだ! なんで奴はまだ……無事なんだッ!?」
無視して、城田の方を見る。右手を突っ込んでいたのは、正確には城田のスタンドだった。
真っ黒な水の中で、緑色の拳が揺れる。
「俺のスタンド能力はよォ、正直、使い道が分からなかったんだわ。
 今日が初めてだぜ? こいつを、計画的に使うのは」
三代が呟いた。
瞬間、水が落下を止める。
「俺のブラウン・クラウンの能力は、『液体を固体にする』力……
 今、ジョジョの右拳にあるのは、真っ黒な氷の枷だ」
既に数秒が経った。だが、水が地面に落ちた音、それが無いまま、城田は再び走り始める。
「うおぉぉぉ止まれッ! 止まれッてんだよォォォォ!!」
ライトの光が、慌てたように揺れた。光の先は依然城田の頭を狙っている。
しかし、城田は右手を頭の横で固定していた。光は、そこから先には進めない。
「行けッ、ジョジョ!!」
三代が叫ぶ。城田はその声に加速し、ステージの横、舞台袖への入り口に辿り着いた。
ちらりと、二階の方を見る。いまや刑大は、大袈裟な身振りでライトを滅茶苦茶に動かしていた。
その姿に、中指を立ててみせる。そして三代は、城田の後に続いて扉に入った。
舞台袖には、二階への階段がある。

「とんでもねぇクソガキだったな、あいつは」
「でも、俺達が絡んだからケンカした、ってわけでも無さそうだ。
 まぁ……後でゆっくり聞けばいい」
階段を上りきり、城田が扉を開ける。刑大は、まだ反対側の二階で、ライトにしがみついていた。
意味の無い叫びを上げながら、再び城田にライトを向ける。
城田は、緩慢な動作で、しかし完全に光を右手で遮った。
「うァ……!」
「今からそこに行く。
 自分にできる限り、覚悟しておけ」
741:2009/11/29(日) 00:30:56 ID:ioOk04s4
今日はこれが最後です。
最近どんどん夜行性になっている……大丈夫か俺。



「な、舐めるんじゃねぇよ!」
刑大が叫んだ。同時に、城田の影がねじ曲がる。
「お」
「そいつは遠隔操作型のスタンドだ……
 あんまり離れすぎると攻撃はできねぇが、この距離ならもうお前を殴れるッ!」
素早い動き、城田の影が伸びたかと思うと、人型になって拳を振りかざした。
「突き落としてやる! 喰ら……」
「遅ぇよ」
溜め息をつくかのように、城田が左の手のひらを返す。
裏拳だった。影の顔面がめり込んだかと思うと、向こうの刑大が動きを止める。
「ぶぐァ!?」
「……改めて見ると、やっぱりお前のスタンドは速いぞ」
「だがパワー不足だ。屋上でやったときも、お前結構平気そうだったしな」
城田が、拳を闇から引き抜く。音さえしなかったが、影は触れた所からぐずぐずと崩れた。
「ついでだが……これで俺の能力も確定だな」
「ん、どうだ?」
「やっぱり開けてくれ」
三代はそれを聞くと、自分の背後にある窓に手を掛ける。
同時に、城田は影のパンチをガードした。
「ゥググググ……!! 手前ぇは殺す、絶対に殺す!」
影が、不気味に振動する。
向こうで、刑大が立ち上がるのが見えた。鼻を押さえており、恐らく鼻血を出している。
城田は、呆れたように口を開いた。
「あ〜……じゃ、これが最後のチャンスだ。
 今、『すいませんでした』って土下座して謝ったら、半殺しで許してやる。どうだ?」
言い終わらないうちに、影が城田のスタンドの腕を掴んだ。
強い力に、城田が手すりに寄りかかる。
「馬鹿が。俺のことを見下して、さらに鼻血まで出させた手前ェらは、ここで全員殺す!」
「……鼻血、か」
城田の背後で、窓が開いた。三代の髪が、風を受けて横に広がる。
瞬間、腕を掴んでいる影の体に、亀裂が入った。
「うェ……?」
「俺は体中穴ぼこだらけなんだがな。
 お前と俺、どっちが大変だ?」
三代がにやりと笑って口を開く。
「あいつだな。これから、体中ズタズタだから」



一旦切り。次回繋げて一つにします。
751:2009/11/29(日) 11:14:18 ID:ioOk04s4
続。
六部のウェザー見て思ったんですが、「天気を操る」能力ってなんか凄そうだけど地味ですよね。
あ、でもカエル降ってくるしな……結局使い方次第ですかね。



三代は気付いていた。
城田は、口調の裏でかなり怒っている。前に自分が、屋上で負けたときと同じ理由で。
(仲間を殴ったお前への)
恐らく刑大は、城田を倒した後に三代や双務にも攻撃する。
城田にとって、自分の体に穴が空くことは、その事実の前ではどうでも良い事なのだろう。

「俺のスタンドの能力は、『風を巻き起こす』能力……じゃあない。
 さっき体育館に入る時、入り口を閉めただろ?
 刑大が窓を開けていなければ、体育館は密閉だ。風はない」
城田が早口で話す。その間にも、鈍く光る影にじわじわと傷が入っていく。
「俺はさっきから何度も、風を起こそうとしてみたんだよ。
 だが……できなかった」
「空気の流れが無いからな」
三代の言葉が終わると同時、影がぶるぶると震え、大きく広がった。
「お前何をするだァー!! 攻撃するんじゃねェェェェ!」
刑大の叫びに同調して、大きな波になった影が、城田へと崩れ落ちる。
城田は、焦るどころか人差し指を振ってみせた。
「風ってのは空気の流れだ。俺は、そいつを操作できるんじゃないか、と思ったんだよ。
 さしずめ俺のは……『風を操る』能力、だな」
その瞬間、三代は捉えた。
城田と、スタンドを中心に巻き起こる風……その流れの始まりは、開け放たれた窓からだった。
「俺のスタンドは『ストレンジ・サイクロン』。
 世界を走り去る、奇妙な竜巻だ」
緑色の拳に、風が巻き付く。
触れた物を切り裂く空気は、つまりカマイタチ。
「そこへ行くまでもなかったな。覚悟は……できてるか?」

「ウラウラウラウラウラウラウラウラウラ
 ウラァァァァァァァ!!!!!」
76創る名無しに見る名無し:2009/11/29(日) 12:50:16 ID:mCzen6Wa
読点が多いのが気になる…
使いすぎると逆に強調したい部分が目立たなくなると思います
77創る名無しに見る名無し:2009/11/29(日) 13:00:59 ID:6RhPZzBI
>「天気を操る」能力ってなんか凄そうだけど地味
6部を全部読んでいるなら(読んでないんだろうけど)そんなことは絶対に言えない
781:2009/11/29(日) 15:42:27 ID:ioOk04s4
>>76
おぉ……っふ。
そのご指摘は前にも頂きました。要努力ですね、わかりますorz

>>うぇざー
マジですか!? と、レス見て急遽友人に問い合わせました。
六部読破してる人でしたが……カタツムリ? オゾンをどうちゃら?
額をこすりつけて土下座しました。ごめんよウェザー……
791:2009/11/29(日) 18:37:08 ID:ioOk04s4
予防注射したらなんかテンションだだ下がり……
なんか異様に眠いんで、今日はこれで終わりかも?



パンチの数だけ、影に切り傷が入る。
それも、ノコギリのような不揃いな物ではなく、カッターのような一閃。
叫びは無い。だが、向こう側で刑大が崩れ落ちるのが見えた。
緑色に染まった、右拳の氷が砕ける。
目の前の影が、針に刺さった風船のごとく、弱々しく倒れて闇に溶ける。
それと同時に、城田が髪をゆっくりと掻き上げた。
スタンドは、まるで友人のように、その肩に腕を回す。
「決着……だ」
三代はその姿を見て、苦笑いしながら拍手した。

開いた窓から、風が吹き込んでくる。
城田が右手を振ると、体育館のカーテンが音を立てて開いた。
差し込んで来た月明かりの中で、三代が感心する。
「ほェ〜もうそんなに使えるのか」
「ま、イメージの問題だしな」
城田が、右手を擦りながら呟く。
さっきまで凍り付いていた右手は、やはり冷たかったらしい。
「ナイス作戦だったぜ」
「ああ。あとはホッカイロがあれば完璧だったな」
二人はにやりとして、拳をぶつけ合う。
それから階段の扉を閉め、刑大の所へ歩き始めた。

「そういえば、双務は校門で待っているのか?
 ここの窓からは見当たらないんだが」
「ん、そういや別行動だったな。
 あいつは偵察する、とか言ってたから、まだ校舎にいるかもしれねぇぞ」
「……何だと?」
801:2009/11/29(日) 18:58:22 ID:ioOk04s4
決着ついたんで刑大についての脚注。

○刑大 茂直(ケイダイ モジキ)
 『西戸(サイト)高校』二年生。
 生意気で、裏表のある性格。
 スタンドには、城田達と会う二日前に覚醒。能力を把握したのはその翌日。
 頭の回転は悪くないが、興奮すると思ったことをすぐ口に出す。
 かなりのサディスト・グロテスク愛好者で、じわじわとなぶり殺しが好み。

○シャドーマン:パワーB/スピードA/射程距離C/精密動作性B/持続力A/成長性D
 影に『取り憑く』ことができる遠隔操作型。
 通常の射程はタイプに準拠。だが一度取り憑けば、敵が本体から離れても追い続ける。
 50m以上離れると、スタンド自体の攻撃能力は無くなる。
 取り憑き時、光が当てられて影が消えた瞬間、本体にダメージを与える。
 ダメージは、消えた影に対応した部位の貫通・消滅。
 ただし、光で消えた範囲が5p半径の円を超えると、能力は発動しない。
81創る名無しに見る名無し:2009/11/30(月) 01:10:06 ID:qfCXOOYj
>>78
30キロ先までのハイウェイを集中豪雨で遮断したんだぞウェザーは
821:2009/11/30(月) 17:14:53 ID:VoIkTXUI
>>81
既に近距離パワーでも遠隔操作・能力でもないレベル……
うぇざーどこまでいくんだうぇざー。

今日ちょっと予定が立て込んでいるので、これで終わりになるかも。
ちなみに、>>61の後、>>79の十分くらい前の場面です。



屋上は、昼間に比べて圧倒的に冷えていた。
扉を開けた瞬間、ざわざわと鳴る木々の音が耳を掠める。
僕はゆっくりと扉を閉め、そのまま強く押さえた。
ちらりと傍を見ると、掃除用のモップがある。
ついでに、つっかえ棒として横に立てた。
数秒して、足音が迫って来る。
それが真っ直ぐに屋上を目指しているのを感じて、僕は手に力を込めた。
音は徐々に大きくなり、扉の前で止まった。
(……あれ?)
少ししても、ドアに力が加わる気配はない。
立ち去ったはずは無いが、突如として沈黙が訪れた。
(気付かれた?)
僕は冷や汗を拭い、足下を確認する。暗がりの中で、履き古した自分の靴が見えた。
「やあ」
唐突に、声がした。
顔を勢いよく上げ、目の前のドアを見る。顔の筋肉が、強張っていくのを感じた。
刑大の声ではない。
彼の声をじっくり聞いたわけではないが、この声は違う。
ヘリウムのような……事件の関係者がテレビで出たときなどによく聞く、甲高い奇妙な声。
「君は時間にとても律儀なんだね。
 予定の時間の30分も前に来ているなんて」
ドアの向こうから、その声は喋る。口調は軽やかだが、語尾は沈殿するように響かない。
僕にとって、目の前のドアは、既に『壁』ではなくなっていた。
今自分の中では、目の前のドアさえも、謎の侵入者の一部に感じている。
冷や汗を、再び拭った。
「おいおい、静かだけど緊張しているのかい?
 僕は、君と直に話がしたいんだけどなぁ」
「ぅぁッ……!」
その台詞が終わると同時、始めてドアに力が加わった。
気を抜いていたため声が漏れたが、モップのおかげでドアは開かなかった。
「ンンン、ドアを閉めているのか。
 警戒しているんだね」
口調が変わる。気味の悪い猫撫で声が、ねっとりとドアの隙間から漏れてきた。
「その警戒心、これから私達の『仲間』になる上では、とても重要だ……
 これは、スタンドによるものかな?」
甲高い声が、ぶつりと言う。
僕はその瞬間、冷や汗ではなく脂汗を拭った。三度目だった。
831:2009/12/01(火) 19:36:35 ID:KNJzHjQU
最近どうにも時間が取れない+これから激化の兆し。
これ一ヶ月以上お休みしたらどうなるんですかね……(汗

告知はできる限りしますが、これから予告無しでその日の更新を終了する可能性があります。
23時を過ぎても更新が無ければ、翌日に持ち越しだと思ってください。



「名前を聞かせてくれ」
少しの沈黙の後、ドアの向こうの声が言う。
僕の心臓が、大きく跳ねた。
「け、刑大」
「フルネームだ。いや、これは確認だからね。
 万が一、人違いなんてしていたら私は大間抜けだ」
甲高い声が、小さく笑った。ぞっと、鳥肌が立つ。
僕は数十分前を回想した。刑大の名乗った名前……
「刑大茂直」
かすれた声で返答する。一呼吸だけ、沈黙が辺りを満たした。
そして、轟音とともにドアが大きく凹んだ。
「うわぁッ!」
「お前は誰だ?」
バレた。
何故、と考える暇はない。僕は大股でドアから遠ざかった。
「ひぃッ!」
「いや……お前は私の待ち人ではない。
 誰か、という質問は、既に意味が無いな」
無機質な声が重みを帯び、一言ごとにドアの凹みが増える。
この攻撃はスタンド能力だと、僕は直感で気付いた。
「私は一つだけ、彼と約束していた。
 『私がフルネームを尋ねたら、自分のスタンドの名前を答えてくれ』と。
 合言葉はそれで十分……そもそも、偽物に出会うなど、考えられないことだった」
直後、耳障りな音を立てて、ドアの一部が突き破れた。
そこから覗いた腕に、僕は戦慄する。
ガラスのような透明な腕の中に、どす黒い筋肉のような物が見えた。
間違いなく、人ではない。ドアの向こうにいるのは人かもしれないが、ただの人ではない。
「うわぁぁぁああああ!!」
「君を、私は始末しなければならない……
 これは非常に残念なことだよ。この学校で、死人を出してしまうんだからね」
僕はその声を後ろに、屋上の縁まで駆け出す。
勿論考えがあった訳ではなく、単純に扉から遠ざかりたかっただけだ。
「……さて、名も無き侵入者よ。
 お前は本来、私のスタンドで消し炭になる所だが、今日はとても『イイ物』があるんだよ」
その声には、僅かに笑いが混じっていた。
不安に駆られた僕は、一瞬だけ、ちらりと後ろを振り向いた。
屋上にはまだフェンスが無く、ブレーキをかけると同時に。

自分の胸に、『矢』が刺さっていた。
痛みを感じるより早く、体がぐにゃりと歪む。
「う……ぁ?」
「『選ばれなかった人間』の致死率は100%、だ。
 仮に選ばれたとしても……ン、いやそれでも終わりだな」
自分の視線が、ゆっくりと夜空へ向いた。
ドアの開く音が、倒れ込む僕を追いかけてくる。
「最後に教授してあげよう。
 『慣性の法則』と言ってだね、物体にブレーキをかけても、すぐに止まれる訳ではないのだよ」
バランスを崩した体が、足場を踏み外す。
三階分下の校庭へ、僕は呆然としたまま墜落した。
84創る名無しに見る名無し:2009/12/01(火) 22:44:00 ID:1vC4PkQ3
台詞がそれらしくなっててイイヨー。

この板は放っておいても落ちないんじゃないかな。
5ヶ月くらい放置のスレでも残ってるし。

更新の速度は作者に一任だから、
リアル都合がよくなったら再開すればいいさ。
851:2009/12/01(火) 23:13:59 ID:KNJzHjQU
>>84
う、ありがとうございます……
自分から立てといて私用でポイ、というのは極力避ける方針で。
ちまちま頑張ります!

今日はレスで去らせて頂き。
明日はちょっとだけ時間があるかも?
861:2009/12/02(水) 16:12:56 ID:zY+cJbHC
城田達(>>79続)に戻った所で、そろそろこの章も終わりです。
『ジョジョに奇妙な序章』→(『暗闇の中から』→『屋上の人影』→『一筋の糸』今ここ)
刑大がボロボロってことで、彼の台詞は非常に読みにくいかも……



双務の不在を聞いた瞬間、城田の顔が強張った。
早足に変わり、三代がそれに続く。
「双務は一人でいるのか?」
「あぁ。刑大は倒したし、問題は無ぇだろ」
「……いや、そうは言い切れない」
既に二人は反対側、刑大の倒れている所まで来ていた。
城田の手が、血まみれの刑大の首を掴む。
スタンドは現れていないが、それでも力はこもっていた。
「う……げぁ……」
「なぁジョジョ、これァやりすぎじゃねぇか?
 もの凄い血ィ出てるぞ」
「急所は外してある。二、三ヶ月入院する程度だ。
 ……おい、おい!」
城田が大声で呼びかける。
大きく体を揺さぶると、朦朧としながらも刑大は眼を開けた。
直後、体を震わせ叫び声を上げる。
「うぎッ……や、やめろぉぉぉ!」
「何もしねぇよ」
刑大がばたつかせた腕を、城田がスタンドで押さえる。
「ひぃぃぃ!!」
「てめぇ刑大茂直、とか言ってたよなァ?
 言えよ、お前がここで何をしようとしたか」
半狂乱で騒ぐ刑大に対して、三代が鋭く言い放つ。
数秒して、疲弊か出血多量か、刑大はぐったりとして項垂れた。
「ひ……ひぃあ」
「質問に答えたら、救急車を呼んでやる」
弱ってきたのを見計らい、城田が懐から携帯を取り出す。
刑大の顔に、諦めが浮かんだ。
「ぼ、僕は知らない。な、何でここに呼ばれたか、何のも、目的があるのか」
「てめぇまだシラを切るつもりかァ!?」
三代の声を、城田が止める。
「詳しく話せ」
「うぁ……す、スタンドを使えるようにな、なったのは一昨日、だ。
 今日がっこ、学校に変な男が現れて、ここへ来るよ……ように言った」
「『使えるようになった?』」
城田が三代の方を見る。
三代は、眉にしわを寄せていた。
過去のこと、恐らく前の学校のことを回想している。
「俺ァ……俺には覚えがあるぜ、その台詞ッ!」
「変な男ってのはどんな奴だ?」
「長身で、数えき、きれない傷跡があっ、た。
 声は……よ、く覚えてない」
刑大の体は、がくがくと痙攣する。
一瞬城田が携帯を握りしめたが、ボタンは押さなかった。
「僕はこ、この学校に来るようにい……言われただけだ。
 お前ら何や、やってるか分かってん、のか? 傷害罪だぞ、犯罪だぞ!!」
「そんなことはどうでもいい」
城田の声のトーンが落ちる。
三代はやれやれ、という表情で、刑大に向かって声を発した。
「ま、それに関しては別にいいんだよォ。
 ……持ってるモン出してみろ。さっきからずっと握ってる、その右手の中身もな」
871:2009/12/02(水) 23:35:05 ID:zY+cJbHC
FNS歌謡祭見てたらこんな時間に……
今日はこれでラストです。



刑大が握りしめていた物は、縮小された名簿だった。
カーテンを振り回している三代も、首を伸ばして覗き込む。
びっしりと名前が連ねてある中で、二カ所だけにマーカーでチェックがあった。
「お前の名前と、もう一人だ」
「ひめなりしたむの?」
「姫成 下牟乃(ヒメナリ カムノ)って名前だよ……」
呼吸も荒く、刑大が指摘する。既に体はぴくりとも動かさない。
城田は顔をしかめた。

刑大の惨状に、城田は救急車を呼ぼうとしていたが、三代はそれを止めていた。
「死人が出るぞ」
「手加減したんだろ? だったら、証拠隠滅してからでも遅くはねェ」
三代はそう言うと、カーテンを強引に引っ張って、刑大の周りの血を拭き取り始めた。
カーテンの裏地は赤で、暗闇にいるうちは血が付いても分からない。
「流石に血液照合とかされたら逃げられねぇしな」
「……俺は」
不服そうに城田が呟く。
「俺は『覚悟』した。逃げるのは性に合わない」
ぼそりと言って、刑大の名簿に再び視線を落とした。
三代は肩をすくめると、黙々と作業を再開する。

「お前がチェックされてるってことは……この姫成って奴もスタンド使いか?」
「知らない。僕が声を掛けられた時、そいつは風邪で早退してたから」
咳き込みながら刑大が言う。城田は一瞬考えるように眼を閉じると、立ち上がった。
「連絡するぞ、三代」
「ん……え、ちょっと待て城田!」
三代の言葉を無視して、城田が携帯を掛ける。
連絡先は、近所の総合病院。
「もしもし……あ、晴点高校ですけど」
881:2009/12/03(木) 22:24:16 ID:Wk/DV1y1
今日はこれ一本。
あ、次章で>>49さんのスタンドを登場させようと思います。
少々いじくらせて頂くことになりそうですが……大丈夫か(汗


電話口の向こうの声は、半信半疑ながらもしっかりと担当へ話を通してくれた。
病院に連絡を付けた後、城田たちは刑大を背負って下駄箱までやって来ていた。
三代の不機嫌そうな顔を横に、城田が背中に向かって話す。
「いいか? 俺はやりすぎたとは思わない。
 お前は俺に、そして仲間に手を出そうとしたんだからな」
「…………」
「だから、俺は恨まれても言い訳しないし逃げたりしない。
 こいよ、色んなやり方で。それこそ、裁判だ何だと持ちかけてくれて構わない」
「ジョジョ、お前結構甘いのな」
「これが俺の流儀だ」
つまり、『覚悟』か。三代は声を出さずに呟くと、頭をがしがしと掻く。
ストレンジ・サイクロンにおぶわれている刑大は、眠っているかのように静かだった。

「あとは双務だな」
靴を履き替えた所で、城田が言う。
未だ緊張の糸は消えておらず、三代はどもった。
「で、でもよォ、こいつは俺らでブチのめしたし、もう安全じゃねェか?
 その怪しいヤツが来てたとしても、俺らは会わなかったし……」
そう言うと、三代は自分たちが刑大を追う際に、特別教室を調べていたことを持ち出した。
刑大を背負い直しながら、城田はゆっくりと首を振る。
「俺達はあくまでも、通りがかりにちらりと見ただけだ。
 それに、見てない所だって多い。そうだな……図書館や一・二年生のフロアとか」
「……屋上」
か細い声に、二人が振り向く。
刑大が、小さく口を開いていた。
「待ち合わせの場所は……屋上だった」
「本当か?」
城田が顔を空に向ける。入り口の右側、そこの二階から屋上の縁が見えた。
「誰も見えねぇな」
「角度が悪いのもある。ちょっと待て……」
刑大を落とさないよう、そっとストレンジ・サイクロンが右手を振る。
直後、辺りに突風が吹いた。
「うおッ!」
三代がよろけ、近くの木々が大きく揺れた。
城田の眼は屋上の方へ注がれていたが、不意に大きく開くと、体を震わせる。
「ん」
三代は、城田の瞳に映った『それ』を捉えた。
本来なら、存在するはずが無い……二階あたりの壁で、宙に吊るされている人影。
突風に煽られて一瞬だけ入り口側からでも見えた。すぐひっこんだが、三代も気付く。
「他人じゃあ……ない、よな」
「こんな時間に誰がいる?」
城田は、ゆっくり刑大をその場に下ろした。
遠くで鳴った救急車のサイレンに、刑大が瞬きをする。
「悪いが、ここに置いていくぞ。
 病院には、下駄箱の前に倒れてる人がいる、と言ってあるから大丈夫だろ」
刑大が、力無く頷く。疲弊のためか、流石に嫌みを言う余裕は無さそうだった。
「おいジョジョ!」
「分かってる」
声を掛けた直後、三代は最後に刑大を見た。
体から血を流しているのにも関わらず、刑大の眼はぶれていない。
なんとなく、最初に見たときよりも印象は良かった。外見ではなく、気持ちの。

救急車のサイレンを背後に、城田達は走り出す。
刑大はそれを、半ばぼんやりとして見つめていた。
背後で、かつん、という足音がするまで。
891:2009/12/04(金) 20:10:16 ID:86tMorHC
ちょっとこちらから要望を。

次の章では計3体の新スタンドを登場させようと思ってます。
そのうち一体は自分作、一体は投稿スタンドで決定してるんですが……
もう一体、自作で候補はあるものの、ちょっとインパクト不足?

なので、オリスタ考えてくれる人にお題。

○本体は『探す人』です。夫婦の愛の形とか、小さくて可愛い愛玩動物とか。
そしてかなりの貧乏・暇人。サバイバル能力高いです。
○なにやら調査のときに城田達と接触しそう。舞台は『高校』です。

あとは自由。この条件で「あぁなるほど」なスタンドを考えて頂けないか、ということです。
需要があれば自作候補も晒しますが……ネタバレになるかもなんで慎重にやります。
901:2009/12/04(金) 23:40:58 ID:86tMorHC
マンガだと簡単?な表現が小説だと非常に難しい……
筆力が足りてない、ってアドバイスはもうお腹いっぱいですからッ(汗



校舎の影を曲がった瞬間、視界に双務が映った。
ブリッジをするような、ありえない体型で壁に張り付いている。
いや、張り付いているのではなく、吊るされているのだろう。
その光景は、宇宙ステーションから送られてくる、無重力状態の光景に似ていた。
「双務ッ」
三代が叫びながら駆け出す。
偶然かどうか、三代が真下に来ると同時、無重力が消えたかのように双務が落ちて来た。
「う!?」
「スタンドを出せ三代!」
城田の声を聞いて、三代がブラウン・クラウンを現す。
双務が吊るされていたのは、低く見ても二階より若干上。
助けるとしても、お互い無事では済まない。三代の声に、決死の色が浮かんだ。
「か、風で援護してくれ城田ァァァ!」
「今は風が無い、能力は使えないんだ!」
追いついた城田もスタンドを出した。
二人で、落ちてくる衝撃に体を強張らせる。
「うおぁぁぁあああ!!」

「……あ?」
接触は、無かった。
呆然としながら、三代が瞬きする。
「浮いてるぞ」
「浮いてるな」
双務は、二人の僅か10p程度の所で宙に止まっていた。
未だ気を失っているらしく、体勢はブリッジのままだ。
「お……おい双務、双務!」
「ううぅぅぅ」
唸るような声を出して、双務がもぞもぞと体を動かす。
その瞬間、今度こそ糸が切れたように落ちて来た。
「おぉぉぉッ!」
「ひぇあッ!」
地面すれすれ、城田が出した腕が、双務を支えた。
勿論スタンドは出していたが、とっさの事で二人とも尻餅をつく。
「……え!?」
「あぁん?」
「痛ぇ……」
城田がよろめきながら立ち上がると、双務も頭を抱えながら起き上がった。
視線は定まっておらず、足取りもおぼつかない。
「……え、えっと、おはよう?」
「ん、あ、よォ?」
三代が混乱したように瞬きを繰り返す。
双務はきょとんとしたまま、首を振った。
「な、何が起こったかよく分からないんだけど……」
「お前は宙に浮いてて、落ちて来たんだ」
城田が、半ば気が抜けたように声を放る。
遠くのサイレンの音が、少しずつ大きくなって来た。
91創る名無しに見る名無し:2009/12/05(土) 00:13:34 ID:ndnyL6v3
>本体は『探す人』です。夫婦の愛の形とか、小さくて可愛い愛玩動物とか。
ハーヴェストしか思いつきません本当に(ry
指定したものを引き寄せるとか?

>「今は風が無い、能力は使えないんだ!」
息で風を起こして勢いを増すことはできないの? 能力自覚したばっかで、そこまで器用なことは現状できないだけ?
それとも自然現象の風しか操れない?
921:2009/12/05(土) 23:06:14 ID:HKGvPQme
>>91
引き寄せる能力! その発想は無かった。ハーヴェストは明らかに死亡フラグですけどwww

>「風が無いから使えない」
あくまでもストレンジ・サイクロンは操るだけなんで、弱い風は弱いままです。
ただし、一定の『流れ』があれば寄せ集めて強くできる、ってわけですね。
となると自然の風が吹いていないとそれほど強化は図れない……ってことで。



その後三人は、救急車の音に追われるように学校を後にした。
帰り道、城田達は双務の話を聞いてみたものの、所々が曖昧ではっきりしなかった。
「新手のスタンド使い、か」
「屋上から落ちたのは分かるんだけど……どんな人だったかは覚えてない」
双務の言葉に城田が腕を組む。
三代は頭を抱え、考える素振りをしていた。
「宙に浮いてたのはどういう事だ?」
「あ、そのこと! 僕も知りたかったんだよね」
「つまり分かんねェと」
不意に、三代が双務の前にスタンドを現した。
ぎょっとする城田を他所に、双務はそのまま歩いていって、茶色の体にぶつかった。
「痛ッ!」
「スタンドは見えてねェ……な」
双務に合わせて、三代が立ち止まる。
城田も同様に歩みを緩め、眉を潜めた。
「何をしてる?」
「ちょっと思ったんだ。『宙に浮かぶ状況』ってのは『ありえない事』だろォ?
 俺らの間で『ありえない事』を実現させられそうなのは……スタンドじゃねぇか」
「僕にもスタンドが!?」
「今確認した。多分違ェな」
三代の言葉に、双務が項垂れる。
それと同時、城田は訝しげな表情で三代を見た。
「……確かにスタンドを使えばあの状況は再現できるな。
 だが、普通はそこで『不審者のスタンド能力だな』って言う所じゃないか?
 双務に能力が無いのは、もう知ってるだろ」
城田の言葉を受けて、三代はゆっくりと瞬きをした。
そして、双務の方へ向き直る。
「双務、お前やたら胸さすってるな」
「え」
「ん?」
三代の言葉に、城田も視線を移す。
双務は、右の胸に手を置いて固まっていた。
本人も驚いた素振りで、それをどかす。
「な、何回もしてた?」
「おぉ。まるで、怪我したみてぇにだ」
三代の言葉に、城田が反応する。
「覚えがあるのか、この行動に」
「……まあな」
三代が、深く息を吐いた。
931:2009/12/06(日) 00:02:03 ID:ZGFUisWC
今日はもう書けないです……
また明日……orz

941:2009/12/06(日) 16:42:48 ID:ZGFUisWC
思ったんですが、軽やかに章を変えるタイミングが分からない<(^o^)>
場面転換のテクニックを誰か教えててててててて



「前の学校でな、宗教とかに引っ掛かった奴の何人かがよォ、そんな事してたんだ」
「え……僕は違うよ!」
分かってるよ、と三代が首を振る。
同時に、城田が口を開いた。
「ひょっとして、そいつらは……」
「おォ。全員スタンド使いだ」
双務が、ぎょっとして固まった。
「そいつらは最初からスタンド使いだった訳じゃねェ、と思う。
 何かあったんだろ、宗教とやらで」
「スタンド使いってのは、そんなにホイホイなれるものか?」
城田の問いかけに、三代が眉を下げる。
「前にシメたスタンド使いの一人がよォ、『変な言葉』を出したことがあった。
 ソレの正体は分からなかったが、そいつは数日後……車に轢かれて死んだ」
辺りの闇が、急に密度を増した。
沈黙の中で、双務が息を荒げる。
「そ……それって」
「偶然かもしれねぇ。
 でも、俺はその事件の直後、別の生徒を病院送りにして停学喰らった。
 その時ブチのめした生徒は、俺を殺しに来てたからな」
三代の口調に、悲嘆は無い。だが、響きは重かった。
「闘ってる途中で、何度か轢かれた奴の事を持ち出してきたしよォ。
 停学をきっかけに引っ越したんだが、それで正解だったかもしれん」
「こ、ろ」
双務は、自分の右胸に再び手を触れた。今度は、心臓を握りしめるように強かった。
「待て、その『変な言葉』ってのは何だ?
 漏らした奴を……殺さなきゃならないほど、重要な事なのか?」
城田の声で、三代が二人に向き直る。
その眼光は、鋭かった。
「そいつを知るってことは、お前らも『秘密』を知る、ってことだ。
 もし、なんかの拍子に俺がお前らの事を漏らせば……」
突如として、双務が駆け出した。
息づかいは先程よりもさらに荒く、三代の横を慌てて走り抜ける。
「双務ッ」
「ぼ、僕は先に帰るから……二人も早く帰ってよ!」
一瞬だけ、双務は二人の方を振り向いた。
その表情には、暗がりでも分かるほどの恐怖が刻まれていた。

「……ま、それが利口だよなァ。
 下手に面倒事に首を突っ込む必要はねェからな」
曲がり角の向こうに消えた双務を見て、三代が寂しげに笑った。
城田は、それには答えずに顔をしかめる。
「さてと、残ったって事は、お前は聞きたいんだな?」
「……あぁ。ここまで来たら引き下がれない」
三代が、体を震わせて深呼吸する。
「あいつらの、例の宗教に入ってる奴らの間にはよォ、一つの合言葉があるらしいんだよ。
 そいつは『クリス・クロス』。
 正体は不明だが、何やら……ヤバいもんらしい」
二人の間を、冷たい風が通り抜けて行く。
無言で歩き出した三代に、城田も続いた。
次の曲がり角で、二人は分かれる。
95創る名無しに見る名無し:2009/12/06(日) 18:16:42 ID:XvPgbfTu
>>89
お題の『探す人』というのは、本人に何かを探す動機があれば、スタンド能力はパワー型でも構わないのかな?それとも何かを探すのに役立つスタンド能力がある方がいいのかな?
961:2009/12/06(日) 23:34:02 ID:ZGFUisWC
>>95
三人目の職業・動機は既に決まっておるのでした。
考えて頂きたいのはスタンドですね。性能やタイプに制限はございません。

短いけど今日はこれで終わりです。次回から次のお話?
……ってか、最近夜遅くでも更新できてますね。けっこうヨロヨロですけども!



こちら平煩(へいぼん)町救急班。
連絡のあった場所に到着しました。
……ですが……

(おい、警察への連絡は!?)
(既にしてあります)
(身元の確認を急げ!!)

……連絡のあった場所で、火に包まれている人を一人発見。
消火時には既に絶命しており、心肺蘇生も効果はありませんでした。
また……え? あ、不審な人影は見当たりません。
また、遺体には多数の切り傷が見られましたが、それらは死亡には関係無さそうです。
致命傷と言いますか、死因は全身火傷によるショック死と見られました。
はい……はい。
それと、遺体の周りには油などの可燃性の液体、マッチの燃えカスなども見られませんでした。
警察の方も来たみたいですし、そちらの方へ行きます……はい。
それでは。

(火勢はそれほど無かったようだ、服が肌に焦げ付いている)
(これはブレザーですか?)
(……西戸高校の生徒かもしれない)
971:2009/12/07(月) 16:56:41 ID:L1kIDXIW
今日は書けないかもなんで、一つだけ聞きたいことを。

本日、考えたスタンドを友人に伝えた所、「それはバオーに出てる」との指摘を頂きました。
バ……バオー来訪者……だと……!?

慌てて詳細を尋ねましたが、さしもの友人もマンガは持ってませんでした。
ん、じゃあどうやって読んだんd(ry

バオーってスタンド出るんですかね。
そして被ってしまった俺のスタンドの運命やいかに。
98創る名無しに見る名無し:2009/12/07(月) 16:58:29 ID:2KEg4+XV
>>97
バオーは簡単に言うと変身ヒーローものだよ
スタンドは出ないけど原子を振動させて物質を沸騰させる能力者がいるよ
99創る名無しに見る名無し:2009/12/07(月) 19:37:09 ID:Ofty9dBV
>>97
『心をすべらせる』事で
スケッチブックにドアの暗証番号や競馬の結果を予知して書き出せる能力。
1001:2009/12/08(火) 23:19:08 ID:yArUo3wk
>>98-99
情報ありがとうございます!
そうですね……スタンドじゃないから被っても良し、とか?
それは許せんッ! って方は打開策と一緒にご一報下さい。

こっから第二章『遭遇、それは敵?』に突入です。ネーミングセンス酷すぎるwwwwww
今日はこれのみ。あ、更新速度は依然遅いと思われます。



僕は、無機質な着信音で目覚めた。
もぞもぞと、布団の中で数秒悶える。
その後で、まだ冷えている空気を突き破るように、腕を伸ばした。
緩慢な動作で、ボタンを押す。
「はぃ……」
「俺だ」
その声で、僕は一瞬にして覚醒した。
ごしごしと目を擦り、ベッドから落ちかける。
「じょ、城田君」
「おい大丈夫か? 声震えてるぞ」
僕はその台詞で、昨日の夜の事を回想した。
ぎゅっと、携帯を握る力が強くなる。

昨日、二人の話から逃げるように家に帰ってから、僕はずっと落ち着かなかった。
残っている宿題を片付け、夕食を食べ、風呂に入って、寝る。
当たり前の動作にさえも、僕は神経質になっていた。
口封じで殺される……
僕は昨日の、ぼんやりとして曖昧な、屋上の記憶に震えていた。
そこで何があったのか、僕は知っている。
だが、思い出せない。思い出せないようになっているのか、それとも
僕自身が、思い出すのを拒絶しているのか。

そんな中、城田君からの電話は正直嬉しかった。
スタンド能力の存在もあるかもしれないが、その声を聞くだけでも安堵感が感じられた。
鼻をすすり、小さく咳払いをする。
「えっと……昨日は帰っちゃってごめんね」
「ん、三代が褒めてたぞ。利口だって」
城田君の皮肉に、苦笑で返す。
彼が変わらない態度で接してくれるのは、ありがたくもあり重荷でもあった。
「……勝手に、後悔するなよ」
「え」
「深入りしない奴は、長生きするんだ。
 マジで言うが、お前の選択は正しかったよ」
電話口の向こうで、熱が発散させられる。
彼の真剣な言葉に、僕は照れて頭を掻いた。

「さて、本題なんだが……」
僕がお礼を行った後、城田君の口調が切り替わる。
のんびりと、しかし真っ直ぐな声が飛んできた。
「お前、今日時間あるか?」
据え置きのデジタル時計に目をやる。
今日は土曜日、時刻は8時を過ぎていた。
1011:2009/12/09(水) 23:04:00 ID:RIKXFsdo
マスターよ あぁマスターよ マスターよ
眠いんだマスター 眠いんだマスターったら

今日はこれ一本。短いですけどご勘弁を……



平煩町駅前の交差点を渡り、肌寒い風に僕は鼻をすする。
瞬きした視界には、軽快そうな私服の城田君が映った。
その隣には、前の学校のものだろう、ジャージを着た三代君が立っている。
向こうも気付いたらしく、こちらに手を振って来た。
「遅かった?」
「いや全然。それに、誘ったのは俺だしな」
「俺も正直被害者だぜェ……」
三代君が、わざとらしく口を開いてみせる。
本当に眠かったようで、そのまま欠伸した。
僕はその姿を見て、昨日の事を思い出す。
「三代君、昨日は先帰っちゃってごめん」
「いやいいよ。俺の方も軽率だったしな。
 ……っていうか深く考えんなよ! 俺ァ喋ったりしねェからよォ」
笑いながら、三代君が僕の背中を軽く叩く。
僕はまだもやもやしていたけど、それでも気が楽になって一緒に笑った。

「でも、いきなりだね城田君。本当は勉強してなきゃいけない時間だよ」
「お前こんな時間に勉強するのか?」
目を丸くした三代君に、僕は首を振ってみせる。
「もう受験生だよ、僕たち」
「勉強の事は置いといてくれ。
 ま……確かに俺一人でも事は足りたんだがな」
苦笑いして城田君が呟く。前半はともかくとして、終わりの方を聞くと三代君が眉をしかめた。
「オイ、俺らをさそわなくても良かったんじゃねェか」
「そこが今回の穴だ。
 俺一人だと、少しばかり面倒なんだよ」
城田君の言葉に、今度は僕も表情を硬くした。
彼一人で片付かない事とは……今の所一つしか思いつかない。
僕は頭を掻きながら、駅へと向き直る城田君に声をかける。
「ねぇ、どこに行くつもりなの?」
「西戸高校」
やっぱり、とその場で頷く僕らを置いて、城田君は駅のホームへと歩いて行った。
「あ、お前ら金あるか?」
彼の言葉に、僕は三代君と顔を見合わせ、後に続く。
ポケットの小銭が寂しげに音を立てた。
1021:2009/12/10(木) 20:09:02 ID:oeTTHUMO
小説で何が歯痒いって、やっぱり擬音が使えない事ですかね。特にジョジョだと。
脳内補完してもらえるような文を目指します……



西戸町までは、平煩町から電車で3分程度。
あんまりにも近いせいか、僕は今まで行った事が無かった。
「西戸高校までどれ位?」
「駅から歩いて10分要るかどうか、らしい。
 交通の便はすこぶる良いな……通っている奴らが羨ましいよ」
「お前ェは、家から歩いて10分だろうが」
電車の中。既に乗り込んでいた僕らは、陽気に会話を交わしていた。
不安は未だに胸中にあるが、それを振り払うように言葉を放る。
「本当に居るのかな、その人」
「居てくれないと困る。というか、ほぼ間違いなく居る」
城田君が、僕の質問にきっぱりと答える。
三代君が訝しげに口を歪めた。
「何やら確信があるみてェだが……これで居なかったらホントに怒るぜ」
「その時は、焼きソバ奢ってやるよ」
「お、言ったな?」
にやりとして笑った三代君を置いて、城田君は窓から遠くを睨む。
言葉とは裏腹に、彼は神経を研ぎ澄ましていた。
僕はその姿に若干怯み、同時に彼の隣の人へと視線を逸らす。
よれよれのコートを着ているその男は、丁度立ち上がる所だった。

西戸駅からは、大きなアドバルーンが見えた。
手作りと見えるその歪な球体には、『西戸高校』と文字があった。
「おぉぉ」
「おぉぉ」
「おぉぉ」
感嘆の声が、僕らの間で漏れる。
三代君が笑って、城田君を小突いた。
「そう言う事かよジョジョ!」
「確かに、女子はこういうイベント絶対出そうだね」
僕は、辺りを満たす喧噪の中に、少し異端な興奮があるのに気付く。
思えば、行きの電車にもけっこうな数の学生が乗っていた。
「文化祭かぁ……」
「おいジョジョ、早く行こうぜ!」
三代君の声に、僕らも続く。
城田君は満更でもない様子で、「やれやれだ」と呟いた。
103創る名無しに見る名無し:2009/12/10(木) 20:12:56 ID:GhRklap0
擬音を使ってはいけないだなんて誰が決めたんだ!
使えばいいんだよ!別に!
1041:2009/12/10(木) 23:27:53 ID:oeTTHUMO
すいません、今日はサヨナラします。

>>103
使いたいんですが、俺が書くと意味不明な文章になると思われます……orz
漫画書ければなぁ、と強く思いますね。切実にッ!
105創る名無しに見る名無し:2009/12/11(金) 00:50:51 ID:fAQyi2Lj
>>102
擬音を使えないとか、あまり小説読んでないだろw
その割にここまで話書けている事は大きく評価する。
ジョジョは文体で表現するには、ちょっと難しいからね。
小説だと擬音は多用してはならないんだけど、ジョジョだとそうも言ってられないしねw

例:ジョジョ一部より、DIOとエリナのキスシーン

ズキュュュュュュュュュン!!

DIOとエリナの唇が触れ合っているのを見て、身体中に雷が突き抜けていくような感情が走り抜けた。
「さすがディオ!
おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」
DIOを慕っているポコ達は、ジョジョの目の前でエリナとキスを続けているDIOを見て感極まっている。
106創る名無しに見る名無し:2009/12/11(金) 02:57:30 ID:Y/ZSA9ae
お題とは違うが………


スタンド
『デスノート』(笑)

本体
黒い表紙のノート。

能力
このノートに殺したい相手の名前を書くと、書いた者の身体から死神型スタンドが現れ、名前を書かれた者を殺しに行く。

使用者から死神型の遠隔自動操作型スタンドを強制的に引き出すアイテムです。

死神スタンドは黒いマントを身に纏い、大鎌を持った姿で現れる。
攻撃手段は手にした大鎌による切り付けのみ。
遠隔自動創作型スタンドなので作戦や計略は使えない。
目標に向け真っすぐ向かっていく。
またダメージを受けても使用者には一切影響はない。


スタンド能力を持たない者が使用すると、強烈な脱力感と共に死神型スタンドが引き出される。
持続時間は3分簡。

スタンド能力者が使用すると、自分のスタンドが死神の格好をして引き出される。
持続時間は30分間。
死神スタンドを引き出されている間、自分のスタンドを出す事はできない。
また死神スタンドをコントロールする事もできない。


使用者が死亡、もしくはノートが破壊されたとしても、目標を殺す、あるいは持続時間が過ぎるまで、死神スタンドが消える事はない。

破壊力 C
スピード C
射程距離 B
持続力 D〜E
 (使用者により異なる)
精密操作性 E
成長性 E
107創る名無しに見る名無し:2009/12/11(金) 16:28:46 ID:kZdvQCPO
>>105
擬音を使ってはいけないわけじゃあないが、使いすぎると文章が陳腐になるのは事実
>>1が「ジョジョ」を書きたいのか「スタンドを扱うオリ小説」を書きたいのかで変わってくるだろうけど

何にせよ、プロじゃないんだしそう深く考えることないとおもうよ
1081:2009/12/11(金) 19:39:57 ID:FSQM/DMg
>>105
う、お褒めの言葉ありがとうございます。
本は、最後に読んだのが重力ピエロですかね。擬音の出てくる小説はしばらくご無沙汰……

>>106
プーさん蹴るなぁぁぁぁ!!
名前変えれば全然使えそうです。本体は天才の風紀委員で決定wwww

>>107
そう言って頂けるとありがたいです。
自分としては「スタンドを扱うオリ小説:原作分多め!」って感じですね。
擬音はしばらく封印したいと思います……orz
109創る名無しに見る名無し:2009/12/11(金) 23:25:44 ID:Y/ZSA9ae
エコーズのように音を使うスタンドを出してみるとか。
1101:2009/12/11(金) 23:48:28 ID:FSQM/DMg
ごめんよパトラッシュ……僕はもう、どうしようもなく眠いんだ……
明日、明日更新します( ;ω;)<申し訳ない

>>109
エコーズ一家は素晴らしいスタンドだと思います。
五部の始めのAct3が忘れられないです。

>音
異常に大きくしたり、音自体にパワーを与えるとか?
ワンピースに、頭のシンバル叩いて物斬ったりする人居ましたよね。

あ、前に出したお題の〆切近いです。
そろそろ本編に出てくるので……どんな人でしょうね。
111創る名無しに見る名無し:2009/12/12(土) 03:06:24 ID:UrpgKF+B
スタンド「バブリス・パンク」

形状
人差し指くらいの長さをしたストロー

能力
「音」を閉じ込めた空気中に浮く泡を作り出す。
泡が割れれば閉じ込めた「音」が鳴る。

破壊力 D
スピード E
射程距離 B(20m)
持続力 B
精密機動性 E
成長性 C

寝る前に思いついたスタンド
1121:2009/12/12(土) 15:09:46 ID:8cTqCtJf
>>111
む、伝令役ですかね。
伸びシロがもっちゃりある感じ……

オリスタに関してはあと数回で〆切ります。候補↓
○物体を引き寄せるスタンド 『ファニー・アトラクション』>>91
○物体の数十秒前の動きを把握、もう一度させる事ができるスタンド 『デロリアン』>>自作
アイデア以外にも、これに賛成!ってコメントは頂きます。



文化祭は盛況だった。
入り口で貰ったパンフレットを広げ、三代君が手を叩く。
「カレーがあるじゃねぇか!」
「おい、何でここに来たのか分かってるんだろうな」
「君こそ、分かってるよね?」
城田君が鋭く言うが、彼自身も懐に手を入れていた。
小銭の音が聞こえて来たのを、僕が咎める。
「へぇ……流石私立だ、面白そうなのがあるぞ」
「あ、メイド喫茶がある!」
「冥土喫茶?」
三代君が、大真面目な顔でスタンドを出した。
僕と城田君は、それを無視して歩き始める。

城田君の本来の目的は、『チェックされたもう一人』に会う事らしい。
姫成 下牟乃……
3年2組に名を置く彼女は、刑大と同じくスタンド使いかもしれない。
「あくまでも可能性だ」
「ほぼ確定だろうがなァ」
ホットドックを頬張りながら、城田君が喋る。
お茶のペットボトルを開けながら、三代君が口を挟んだ。
「刑大の待ち人は誰だか分からん。
 だが双務、お前の昨日の状況を見るに、危険人物なのは間違い無さそうだ」
「あぁ……ブリッジだね」
僕はそれを聞いて、不安感を再び思い起こす。
昨日の霧がかった記憶が、じわじわと胸中に満ちていくのを感じた。
「警戒をしておいて損は無い。
 もう一人から正体も分かるかもしれないし、味方にできればなお良いしな。
 最低……事前の注意くらいはするべきだろ」
「宗教、か」
今度は三代君が皺を寄せた。
飲み残しのペットボトルを、強く握る。
「やっぱり、こっちにも広がっちまうのな……」
「こっち?」
僕は疑問符を出す。
そういえば、三代君がどこから来たのかを、僕らは知らない。
「君の前の学校って」
「……ま、いつか話すときが来るだろ」
三代君は小さく首を振って、ホットドックに喰らい付く。
いつの間に、と思ったら、城田君が三代君にチョップした。

「…………」
「なァ、ここに入るのかよ……」
目の前にあるのは、3年2組が担当のスペースだ。
看板には、丸みを帯びた大きい字が書かれている。
「メイド喫茶って、漢字でどう書くんだ?」
「冥土喫茶じゃない?」


備考:リアルで行った事のある方、どういう店なのか情報くださいorz
1131:2009/12/12(土) 23:31:29 ID:8cTqCtJf
短いですけど今日ラスト。
なんかジョジョっぽくない話になってきた気がしませす。
あ、急な視点転換にご注意を。ブレーキっっっ!!



辺りの嬌声と歓声、やたらと熱気のあるスペース。
西戸高校の教室は、僕らの教室よりも狭くて、人口密度はかなりのものだ。
この空間の空気は、脂っこい気がする。
「こういう所に来るのは初めてだな」
「ぼ、暴動でも起きそうだよ……」
僕らは三人で、ピンク色のテーブルに着いていた。
三代君は明らかに不快そうな顔をしているし、僕だって肩身が狭い。
当の城田君は楽しそうに振る舞っているが、目は笑っていなかった。僕は溜め息を吐く。
「本当にここに居るのかな?」
「いなかったらよォ……焼きそば二個奢れよな、てめぇ」
三代君がぶすっと言った時、オーダーの人が現れた。


ねぇ……やっぱり私、こんな格好やだよ……
「何言ってるの? こんなに似合ってるのに!」
で、でも
「ねぇヒメ、もっと自信持ちなよ。引っ込み思案のままじゃ、友達だってできないよ?」
 ね、大丈夫だから」
でも……でも……
(ねぇちょっと、姫成さんいる? なんか名指しでオーダーしてきた人がいるんだけど)
え!?
「お、よかったねヒメ。きっと他校の生徒が、ヒメに会いたがってるんだよ」
ほ、他の学校に知ってる人なんて……
「ねぇマリ、どんな人が指名してきたの? イケメン? チャラ男?」
(あ〜それがさぁ)
「……二組?」
1141:2009/12/13(日) 18:47:25 ID:B/7H9kH6
双務視点にチェンジ。今日はこれと、後一個できれば?

容姿の描写がどうにもできないですorz
主人公ズとかすっぽかしてるし。でもまぁ、顔無しとかあるあr……ねェよォォォォ!!



僕の後ろで悲鳴が上がったのは、オーダーしてから数分も立たないうちだった。
三代君がその場で立ち上がり、城田君がゆっくりと首を回す。
クラス中の客が、似たような事をした。僕も、それに釣られて背後を見る。
「や、やめてください……」
視界に映ったのは、ふりふりの服を着たウェイトレスと、にやけ顔で手を振る男だった。
男……というより男子生徒。だらしなく開けたブレザーから、曲がったネクタイが零れていた。
顔は整っているのに、品の無い笑みに不快を感じる。
ウェイトレスは背中しか見えないが、そわそわして落ち着きが無かった。
「何があったの?」
「あのバカが触った」
「……何を」
「尻」
抑揚の無い城田君の台詞に、三代君が咳払いする。
二人は、僕と向かい合うようにして座っていた。
彼らの位置なら、何があったか見えただろう。
顔をしかめる僕の後ろで、ハキハキとした男の声が聞こえてきた。
「なんだよその言い方? 緊張してたから、リラックスさせてあげたのに」
「い、いりません」
「あぁ、それともまだ足りないのかな?」
もう一度振り向いてみると、男は後ずさりするウェイトレスに手を伸ばしていた。
ダンスに誘うかのような形で、決して品は悪くない。
でも、雰囲気は最悪だった。吐瀉物にも引けを取らない、下心の臭いがした。
「ゲス野郎が」
「あ、ちょっと三代君……」
周りの怪訝そうな視線を無視して、男はウェイトレスの腕を掴む。
再び悲鳴が出ると同時、三代君がスタンドを出して椅子から離れた。
「やだ……ッ!」
「なぁ、住所教えてくれよ。メールアドレスでも」

鼻を伸ばした男子生徒の言葉は、最後まで続かなかった。
「あ?」
「え」
クラス中の空気が、その場で凍り付いた。
男子生徒の顔面が歪に凹み、右足のバランスを崩す。
そのまま大きく回転すると、後頭部から背後に倒れた。
ウェイトレスが息を呑む。
彼女の背後から、コートを羽織った男がパンチを繰り出していた。
1151:2009/12/13(日) 23:02:54 ID:B/7H9kH6
なんとかもう一個書けました。明日は更新できるか分からんですたい。
次回でオリスタは締め切ります。



三代君ではなかった。
彼も既にウェイトレスに近寄っていたが、彼ではなかった。
「……ひぁ」
「うっせぇガキは、何処にでも居るもんだな」
掌を振りながら、よれよれのコートを着た男が喋る。
きりっと締まった横顔が、僕の席からでも見えた。
倒れた学生に視線を移す。気絶しているようで、ぴくりとも動かない。
「ごめんな、驚かせて」
「え、あ、ありがとうございます」
コート男の声は、低くてもよく響いた。
混乱している様子で、ウェイトレスがお辞儀をする。
それと同時、倒れている学生に三代君が近寄った。
「三代君……」
「ちょっと待て」
僕は続こうとして、城田君に止められる。
既に、彼の表情は硬く研ぎ澄まされていた。
じっと見ていると、ウェイトレスが慌ててカウンターの奥へと駆けて行く。
ざわざわと鳴り出した拍手の中で、城田君に耳打ちした。
「どうしたの?」
「……ちらりと、見えた」
城田君が辺りに目を配る。
客の拍手に大袈裟な礼をしてみせた男は、そそくさと自分の荷物へ手を伸ばしていた。
「三代」
「おゥ」
倒れている男を抱え上げながら、三代君が言った。
学生は意外に体格が良かったが、彼は軽々と持ち上げて椅子に座らせる。
恐らくスタンドを出していると、僕でも予想はついた。ついでに、事の次第も。
「ひょっとして」
「あの男も、スタンド使いだ」
小さく城田君が答えると同時、コートの男が店の出口に消えた。
歩き始めた三代君も、その背中を追いかけてドアを抜ける。
「……双務、追ってくれないか」
「え」
「俺はちょっと、別件で用事がある」
彼はゆったりと座ったまま、大真面目な顔で僕に呟く。
冗談でしょ、という事もできず、僕も慌てて席を立った。

クラスを出る時、ちらりと城田君が目の端に映った。
彼は、先程の席に一人で座っている。
と、そこに向かって歩み寄ってくる一人のウェイトレスも捉えられた。
……あれが姫成下牟乃?
そういえば、僕らが名指しで指名したのを忘れていた。
116創る名無しに見る名無し:2009/12/14(月) 01:45:18 ID:5GENrram
スタンド
『ブルドックノーズ』(仮)

姿:直立したブルドック(犬)

能力:
◎犬の10倍の嗅覚を持つ。
◎縄張り
マーキング(オシッコ……ではアレなので、触って犬の手形スタンプを付ける)して囲んだ15m×15mの範囲内の全ての臭いをかぎ分ける。
(例え視界が利かない状態でも、何処に何があるか、動く物体の位置や速度も臭いで感じ取れるようになる)。
◎追跡
マーキングした対象の臭いを何処までも追うことが出来る(対象が洗い流したり消臭剤を付けたりしても)。

弱点
1:香りや臭いを使った攻撃には影響を受けやすい。
2:作品に出す場合、能力の使用者に対し、
『臭いフェチのヘンタイさん』
といったイメージを植え付けてしまうる可能性がある。


破壊力 C
スピード C
射程距離 B
持続力 B
精密操作性 B
成長性 C


『探す人』=捜索=警察犬=臭いを嗅ぐ犬=鼻が大きい犬=ブルドック
というイメージで。
特殊な戦闘能力はありません。
117創る名無しに見る名無し:2009/12/14(月) 16:32:27 ID:S98UHO1W
SIRENの視界ジャックみたいなのって
ジョジョに出てたっけ
1181:2009/12/14(月) 22:35:47 ID:U8XYpDz+
申し訳ありませんが今日は無いのです。

>>117
視界ジャック……戦略的に使えればよさげな臭いが。
結局俺次第か(汗


件の友人ですが、バオー持ってました。ついでに荒木先生短編集も。
借りて読ませてもらいましたよ〜

>>来訪者!!
バオーってコレ……え、終わりこれ?
っていうか忘れられてますけど、寄生体って成虫になったら宿主殺すんですよね。
育郎さん、復活しても油断するな育郎さん!
あ、変身モノってのは納得です。ばおー良い奴じゃんばおー。

>>アイリン
『君のメイクに☆レボリューション!!』

ゴージャス☆ が真っ先に出てきた俺は死んだ方がいい。
119:2009/12/14(月) 23:22:40 ID:U8XYpDz+
レス忘れてたんで、別端末から失礼します。

>>116
犬ktkr!
臭いだったら、他の場面の方が適当?
戦闘要員も必要ですしね。
番外で使うかも。
1201:2009/12/15(火) 21:31:41 ID:GZoKfltk
今日は多分これ一本です。
そろそろ余裕も無くなってきました……休みじゃないと複数更新は難しいかも。

三人目のスタンドは『ファニー・アトラクション』で行きます。
ちょっと手を加えると思われ。



教室を出た所から、まだ茶色のコートは見えた。
その後ろでこそこそする人影に、駆け足で追いつく。
横に並ぶと、三代君が横目で見てきた。
「ん、おめぇは同行するのか」
「城田君が行けって」
人混みの中、コートの男は歩調を緩めた。
それに合わせて、僕らもスピードを落とす。
「ねぇ、あの人本当にスタンド使い?」
「間違いねぇ。アホガキを殴った時に、ちらりと見えたからよォ。
 ……紫色の拳が、な」
中学生らしい団体を横に抜け、三代君が言った。
彼に続きながら、僕は男をじっと見る。

そのコート姿は特徴的だった。
随分と着古したらしく、後ろから見るだけでも生地の変色が目に止まる。
パーマのかかった髪は、男の雰囲気に呑まれて汚く見えた。
形容し難い、暗い感じを出している人間……僕はどことなく、文化祭とはミスマッチな気がした。
外見ではない。その、背負っている『モノ』が。

「曲がったぞ」
僕の目が、男が角を曲がるのを捉える。
ただ、三代君が再びスピードを上げるのと同時、僕はその場に立ち止まった。
「お、どうした双務?」
「……どうするの、本当にスタンド使いだったら。闘うの?」
僕の台詞に、三代君はその場で止まる。
ゆっくりと、僕を見据えてきた。
「『宗教』の、関係者ならな」
僕はその時、かなり情けない顔をしたんだと思う。
三代君が、寂しげに溜め息を吐いた。
「お前は、戻っといた方がいいぞ」
「う……」
彼の言葉は、本心から僕を心配しているようだった。
鈍く沈殿した気持ちが、僕の胸中を満たす。
立ち尽くす僕を置いて、三代君はゆっくりと歩き始めた。
121創る名無しに見る名無し:2009/12/15(火) 23:53:46 ID:kTXNxby7
1さんは全員にレス返してていい人だなあ
妄想と思ってください

スタンド
『パワーオブアート』(仮)

姿:太陽の塔から手が生えた感じ

能力:
◎触ったものを芸術にする(家をエッシャー風にして出られないとか、床を穴だらけとか)

弱点
1:強度は変わらない
2:生き物には使えない


破壊力 E
スピード C
射程距離 C
持続力 B
精密操作性 C
成長性 C
122創る名無しに見る名無し:2009/12/16(水) 21:31:52 ID:+ePGGyXo
>三人目のスタンドは『ファニー・アトラクション』
採用していただけてうれしい限り
1231:2009/12/16(水) 22:29:51 ID:Kv7ROHvM
ちょっと今日も書けないです。
最近更新少なめで申し訳ありません……失踪しないように努力しますッ!

>>121
お褒めの言葉ありがとうございます。
見てくれる人にも重ねてお礼を。
>スタンド
美術の能力皆無の俺には厳しいですね……
エッシャーは好きだから、迷路を作り出す能力、とか?

>>122
あ、アイデアどうもありがとうございました!
期待はそれなりでお待ち下さい(汗


今まで出たスタンドは一応全て控えてあるし、なんとか続けば全部出したいと思います。
一応吉野家だって出s(ry
1241:2009/12/17(木) 22:07:53 ID:F0jC7vDP
城田の視点で今日はこれ一個かなどうかな。多分一個です。

外伝とかが思いつくと、正規ルート無視してそっち書きたくなる悪い癖があります。
書き溜めしておける時間が欲しぃぃぃ



緊張した面持ちで、ウェイトレスがコーヒーをテーブルに置く。
自己紹介では何度も噛んでいたが、それでも目的の人物である事は把握できた。
ゆっくりと瞬きをして、顔を見据える。
「え、えっと……この、あっ違う……当店では」
「あんたが、姫成下牟乃」
逸らされたままだった少女の視線が、初めて城田と交差する。
不安げに瞬きする瞳には、城田の背後の『影』が映っていた。

整っている、と城田は思った。
顔だけではなく、体も雰囲気もそうだ。歪な所が見当たらない。
敢えて言うなら、服装こそがミスマッチだった。
可愛らしさを強調するらしい、フリルのあしらわれた服。
彼女の発する空気は、服に錆び付いていた。桃色を塗りつぶすような、淀んだ色。
城田はその色に、刑大と同じような鈍い光を感じていた。

「あのぉ……」
姫成が、か細い声で呟いた。
その声には明らかに恐怖が含まれている。絡まれた後、そうなるのは必然とも言えた。
「不安なのは分かる。悪いが、向かい合って腰掛けてくれ」
「あ、そ、それはそうです」
「ん」
慌てて姫成が動き出す。
周りを見ると、ウェイトレスと向かい合うようにして全ての客が座っていた。
なにやら異常な熱気に、城田は溜め息を吐く。
「世も末だな」
「え、あ、はいっ」
姫成は、小さく言いながら腰を下ろした。
その声は意外と響き、隣の客がちらりとこちらを見る。彼女はいい声を持っていた。
「……まず落ち着いてくれないか」
「す! す、すいません」
城田の言葉に、姫成は体を強張らせて反応した。
同時にしゅんと項垂れて、肩にかかっていた髪が垂れる。
「絡まれたのは、災難だったな」
城田が、カップに手をかけて言った。
固まった顔のまま、姫成が思い出したように口を開く。
「あの、コーヒーは私が飲ませてあげ……じゃなくて、差し上げるんですけど」
「勘弁してくれ」
城田は苦い顔で一蹴すると、コーヒーを一口啜った。
そのまま目を向けると、姫成の顔が徐々に緩んで行くのが見て取れた。
「あなた、何でここへ来たんですか?」
「『来た』じゃなくて『いらした』と言った方がいい。
 ……あんたに会いにきたんだよ」
ぽかんとしてから、姫成の顔が赤くなる。
同時に隣の客が、これから死に行く人間でも見るような目つきで、城田を見た。
1251:2009/12/18(金) 20:20:45 ID:N7jhTUAH
コーヒーはブラックで飲める……けど後で胃を痛めます。
それって飲めてないんですかそうですか。


コーヒーが空いた。
まだ城田は落ち着いた様子で座っている。逆に、少女には怯えが戻ってきていた。
「悪い、ビビらせて」
「えぅ……そ、そんな」
姫成はその言葉に、再び歪んだ顔を伏せる。言葉はやはり固く、額には汗が滲んでいた。

城田は、自分の知る事を全て話していた。
姫成が何者かに目を付けられている事、既に自分と仲間は掌握された人間と対峙している事。
多少の脚色は否めないが、城田は限りなく真実に近い事を述べた。
そして最後に、この先の選択次第では姫成も……敵であると言った。

彼女の狼狽は、明らかに締めの言葉が原因だった。
今や姫成の視線は、城田に向いていない。
一心に、背後に揺れる存在を貫いていた。
「……す……」
固く握っているらしい自分の手に、姫成は声を落とす。
「スタンド使い」
少女の顔が上がる。肩まで垂れ下がっている髪の間から、城田はその目を真っ直ぐに見た。
1261:2009/12/19(土) 00:10:55 ID:xfDN1S/P
パソコンに突っ伏して寝てました……orz
これから本寝します……orz orz orz
1271:2009/12/19(土) 23:49:48 ID:xfDN1S/P
時間のないお休みなんてお休みじゃないやいッ!
今は一個で終わりです。短いうえにへちょいです……



タイマーが突然鳴り出した。
ぎょっとして、城田が視線を移す。
柔らかい電子音を発するそれは、テーブルの端で時間切れを伝えていた。
「終わりみたいだな」
「えっ……」
溜め息を吐いて、城田が椅子を下げる。が、立ち上がる前に姫成が動いた。
「待って、待ってください!」
「ん」
「こ、これでお話は終わりですか?」
意外と大きな声。隣の客が、またしてもこちらを見てきた。
半立ちで口を開いている姫成は、それに気付いて赤面する。
「終わりだよ」
「あ、いや、でも」
納得いかない様子で、姫成が視線を落とす。
「私……スタンド使い、じゃないと思います」
「いや、気付いていないだけだ」
先程から、城田はずっとスタンドを出していた。
彼は姫成の視線が度々泳ぐのを捉えており、それが不安げに人影を映すのにも気付いている。
だが城田としては、まだ『現れていない』以上情報を与えすぎるのは避けたかった。
「分からない事が多すぎます。まだお話してください!」
「言いたい事はもう無い。それに、追加料金も持ち合わせてない」
城田は頭を掻きながら、レジへと体を捻る。
背後から、小さな呻きが聞こえる。

「ヒメ!」
その時だった。背後からの甲高い声に、首を向ける。
姫成の背後から、別のウェイトレスが近寄ってきていた。
1281:2009/12/20(日) 18:46:33 ID:2sfDyHM7
城田サイドは佳境までもうしばらくなんで、先に三代サイドを進めます。
時系列的には >>127と同時刻・>>120の直後 で。



男が入って行ったのは、絵を展示している教室だった。
看板には3−4とあるが、常用教室ではないらしく、絵を除けば殺風景な場所に見える。
入り口から三代は、教室の隅で風景画を見ている男を捉えた。
「…………」
背後に、双務が居ない事を確認する。
表情は変えないで、三代はゆっくりと教室内に足を踏み入れた。
……今居る人間は、自分を除いて3人。
女子生徒が二人、入り口の横で喋っていた。
大声に顔をしかめながら、三代は隅へと歩き出す。
男は、意外と長身だった。ポケットに両手を入れ、絵を見ている。
その視線は真っ直ぐだったが、その先には一番上に貼られている絵があった。
185はある。三代は、男が自分よりも長身であることに気付いた。
既にコートのすぐ後ろ、彼は素知らぬ顔で横に並ぶ。
「お前か」
「!」
直後、鈍く落ち着いた声。
その台詞は、すぐ隣から発せられた物だった。
三代は勢いよく首を捻る。
「ずっと追けてきてたろ。なんだ? さっきのガキの仲間か?」
「ッ……」
質問には答えず、三代は男を凝視する。
コートは彼に目もくれず、風景画に手を伸ばしていた。触るのは禁止と、入り口にあった筈だが。
「言っとくが、報復に意味は無いぞ。
 延々続いて面倒なだけだ」
男はそう言って、風景画に右掌を触れる。
三代がその腕を強く掴むと、男は瞬きをしてこちらを見た。
「違ェよ、仲間じゃねぇ!」
「じゃあ何だ、弟子入り志願か」
呆れたような物言いに、三代の眉が歪む。
瞬間、コートの首筋を掠めるように、パンチが向こうへ抜けた。
三代は、腕を掴む手に力を入れる。
「てめぇに、聞きてェ事があるんだよ」
「……ほぉぉ」
初めて、男に動揺の色が見えた。
なぜなら男は、自分を掠めた茶色の腕を捉えているからだ。
ブラウン・クラウン……先程のパンチは、スタンドの物だった。
「スタンド使い、か」
「その台詞を聞けるとはな」
三代が、嫌悪感を向き出しにして言葉を放つ。
その台詞で断定した。男が、宗教の関係者だと。
「騒ぐな、いくつか質問するからよォ」
低い声で、三代は左手を伸ばす。同時に、パンチをした右手を、男の首に回す。
「……そうか。それは俺もだ」
コートが、笑みを浮かべた。
1291:2009/12/20(日) 23:31:35 ID:2sfDyHM7
一日に二回更新しようとした結果がコレだよ!
最近劣化が目立ちます。それでも進めないと終わらないんです……(泣

今日はラスト。明日はお休みするかも。



その頃、同室の女子高生達は、三代達の背後に来ていた。
正確には風景画の横、色鉛筆で書かれたイラストのある場所。
男に向かって喋りかける三代にとっては、死角と言える位置だった。

「……そうか。それは俺もだ」
三代はすぐに、男の挙動に反応する事ができなかった。
掴んでいない方の腕で、三代の事を指し示す動き。
一連の流れは唐突であり、なにより攻撃でなかったため、三代の対処にはラグがあった。
「手前ェ何してやがる!」
茶色の影が、右手を素早く振った。首筋近くから放たれたそれは、本来強烈なラリアットになる。
……はずだが、双方に衝撃は無かった。
「悪いが、押されっぱなしは性に合わないんだよ」
紫色の体が、男から発散される。
ようやく、と言った様子で、三代が口を曲げた。
「スタンドッ!!」
「『ファニー・アトラクション』。俺の相棒だ」
右手の強襲を防いだ、男のスタンド。
人の姿をした紫の影には、体中にレンズが見受けられた。
虫眼鏡、眼鏡……他にもあるようだが、三代は名称を知らない。
がっしりとした体格は、男と並ぶと絵になった。
「……イカすじゃねェか」
「ほう、死語を久しぶりに聞いた」
三代はこめかみに力を入れた。怒った訳ではない。
男のスタンドは、強かった。
気を抜くと振り払われそうなパワーがあり、それを誘発する気迫がある。
男の涼しい顔を睨みながら、三代は足下に力を込めた。
130創る名無しに見る名無し:2009/12/21(月) 15:15:43 ID:dVnoNjTm
t
131創る名無しに見る名無し:2009/12/21(月) 15:17:53 ID:dVnoNjTm
服に錆び付いていた
コーヒーが空いた なんか違和感を感じる
1321:2009/12/21(月) 22:15:15 ID:zu5aLwsR
やっぱり今日はダメでした( ´ω`)<お前にはがっかりだよ


>>131
テンションが高い時に文書くと、比喩やら表現が暴走しがちです……
本人は勝手に悦に入ってたりするんで、変な所はガリガリ突っ込んで頂けるとありがたいです。

>服に錆び付いていた
ミスマッチと同義です。錆び付くってオイ。

>コーヒーが空いた
これは「コーヒーが空になった」? 『空いた』って風穴かよ。


今現在 小川一水さんの「時砂の王」 って小説を読んでます。二回目。
擬音の使い方が上手い方です……そして構成が神ぃぃぃぃ
133創る名無しに見る名無し:2009/12/22(火) 19:46:19 ID:z7q+Pm1i
スタンド名「ロングロングディスタンス」
略してLLD。

能力:スタンドの触れたものを長くしたり短く出来る。

弱点:能力の発揮出来る距離は精々15m内。
気体や液体には使用出来ない。

破壊力 E〜A
スピード D
射程距離 C
持続力 A
精密動作 D
成長性 E

使用例
貴様はキリンさんとゾウさんのどちらが好きなんだぁぁぁん?
俺はキリンさんが好きだ、けどゾウさんの方がもっと好きだ…
キリンさんが好きならお前の首を長くしてやるぜッ!
ゾウさんが好きならお前の鼻をピノッキオみたいに長く伸ばしてやるッ!

俺は足長おじさんのように紳士じゃねェから、今すぐ答える事だな…

134創る名無しに見る名無し:2009/12/22(火) 19:55:42 ID:z7q+Pm1i
>>133
書き忘れ。
射程距離が15mで、スタンド能力による縮尺は0.01m〜25mが許容範囲。

見た目は考えてないので、人型でも何でもいいよ。
1351:2009/12/22(火) 22:34:45 ID:GSM28VH5
今日もダメだったよお兄さん <(^o^)> そんな心情だよ 大変だよ
明日時間あるんで二個やります。このどM!(自虐

これからも無更新日が増えるかもです……申し訳ありませんorz
1361:2009/12/22(火) 23:49:18 ID:GSM28VH5
うびゃぁぁぁあああやること終わって寝るよ俺ぇぇぇぇえええ

>>133-134
使用例クソ吹いたwwwww
そのせいでネタ的な使い方しか思いつきません。本当に(ry
長くすると脆くなったり、短くすると固くなったりしそうですね。要考察。
1371:2009/12/23(水) 16:43:45 ID:6ylaDsr/
まず一個目。眠い……寝すぎて眠い……
コートさんのスタンド能力には、ちょっと修正入ると思います。



「なかなか強いな」
「うっせェ……そのスカした面に一発ぶち込んでやる……!」
「おい、後ろで女子高生が見てるぞ」
男に言われるまでもなく、三代は背後の話し声を聞いている。
それが自分たちについての事だとは、三代にも察しがついた。
今普通の人間には、三代が男の右腕を握っているだけにしか見えない。
それでも、鬼気迫る表情で詰め寄っていたら、明らかにおかしい事に誰でも気がつく。
人が新たに入って来た気配はないが、最初の女子高生達がこちらを見ているらしかった。
「……それがどうした!」
「分からないか? お前の『前』には俺がいて、『後ろ』には彼女達がいるんだ」
男が、再び生身を動かす。
三代はそれを捉えてはいたが、スタンド・本体ともに反応する余裕が無かった。
「おぁッ!?」
「俺が『中心』だったんだよ。お前は、全力をもって『並ばない』ようにするべきだった」
コートは、指し示していた人差し指を、小さく曲げた。

背中への衝撃は、甲高い悲鳴の出だしとともに、三代を襲った。
ぐらりと崩れる上体を、息を吐く音が追いかけて来る。
悲鳴の続きらしく、ハァという呻きが最後に聞こえた。
「ぐぁ……!?」
かかとが宙に浮く。ぶつかってきた『モノ』は、スピードを落とさないまま三代の体を押しやる。
速いとか痛いとかは感じない。ただ、重いッ!
「うおぁぁぁああ!!」
「2mからの『落下』だ、着地には細心の注意を払え」
男が淡々と呟くが、三代にはそれを聞く余裕さえ無い。
彼はコートを眼前に、木張りの床へ崩れ落ちる。
女子高生二人の下敷きになって、右腕から鈍い音がした。
1381:2009/12/23(水) 22:39:44 ID:6ylaDsr/
二個目書きました。薄い目で見てください。ぼやけるくらいで。
今日はコレで打ち止めです。

前に一回『スタンドが一般浸透していて、彼ら専用の学校がある』世界とか考えたりしてました。
が、友人から「それはもうある」と言われて断念。……今となっては書かなくてよかったです。



激痛が脳裏に弾けた。
スローモーションになる周囲の景色に反して、右腕の痛みは加速する。
左手で庇おうとして、ようやく三代は身動きできない事に気付いた。
「うああぁぁぁぐ……ッおぉぉおお」
「腕を壊したのか?」
心配そうな台詞とは裏腹に、見下ろしてくるコートは無表情のままだった。
その顔の隣で、川の絵が揺れる。それに合わせて、背中から呻き声が聞こえた。
「こいつらはッ!」
『え、えぇ?』
『何!? 何が……』
驚愕の声を無視して、三代はスタンドを自分の傍に寄せる。
そのまま、乗っている二人を蹴らせた。
『ブッ!』
『ぎぇッ!』
顔面に入った衝撃に、呻き声を上げて二人が吹っ飛ぶ。
重圧から逃れた三代は、できる限りのスピードでその場から背後に跳んだ。
コート男はその場に立ったまま、紫色の影にもたれ掛かっていた。
「酷い事をするな」
「こいつらもグルか?」
「腕が痛いのは分かるが、人や物に当たるのはよくないぞ」
「質問に答えろ!」
左手で、窓を強く叩いた。
重い打撃音に、外から人が覗いてきたが、状況を把握すると足早に去って行った。
「……違う。赤の他人、だ」
「じゃあ能力か」
「お前、見た目より鋭いな」
息も荒く、三代は言葉を放る。
右腕は折れていないようだ。しかし、自由に動かせるような余裕は無い。
背中を壁に付ける。ザラッと、展示してある画用紙がジャージに擦れた。
「くそッ……」
「形勢逆転、だ」
コートの男が、ゆっくりと三代に近づく。
三代はスタンドを出したが、影もまた同じように右腕を押さえていた。
「俺も、お前にいくつか聞きたい事がある。
 すんなり答えてくれれば、これ以上の危害は加えない」
「平然と嘘を言いやがるな」
吐き捨てるように三代が言った。
男の眼は冷静だったが、紫色の影からは、怒りとも憎しみともつかない熱気が漂っている。
これで、何も傷つけず帰してくれる筈が無い。
……ふと、三代は感じる。こいつの感情は、何に対しての物だ?
俺に対して、怒りや憎しみを感じる筈が無いのに?
「それもそう、だ。人が来る可能性もある。
 悪いが、気絶させて後から尋問するとしよう」
男は、まったく申し訳無さそうに言うと、スタンドの拳を振りかざした。
反射的に閉じかけた眼を、三代はぐっと堪える。
ブラウン・クラウンは、あえて右腕を前に構えて、防御の姿勢を取った。

直後、教室に骨の軋む音が響く。
1391:2009/12/24(木) 22:24:45 ID:8+KUjysl
すいません、今日は無理めです……
時間が欲すぃぃぃぃ


スタンド考えてて、一番アレなのは名前だと思う今日この頃。
語呂だけじゃダメって最近気付きました。
洋楽も聴きたいけど、買いに行く機会が無いんですよね……あ、でもPS3欲しい。
今度行くから覚悟しとけよTSUTAYA!!
1401:2009/12/25(金) 23:19:21 ID:B6mf7g+9
『時砂の王』終わり。
プロの人はやっぱり凄いなぁ……としか思えなかった自分はダメ人間。

今日は単発です。次から城田サイドに戻ります。



ぐらりと、コートが大きく揺れた。
紫色の拳は目の前で横に逸れ、男が驚愕の表情で固まる。
三代の眼は、男に向かって体当たりをしている、双務を捉えていた。
「なッ……!」
「双務」
思わず声が出た。それと同時、男はバランスを崩して床に手をつく。
「三代君!!」
伸びてきた手を、反射的に掴む。急に動かしたせいで、腕がぎしりと呻いた。
火照った指が触れた瞬間、双務は床を蹴る。
半ば引きずる形、体格差をものともせず、双務は三代を連れて逃げ出した。
混乱したまま三代が見ると、コートは突然の介入に反応できずにいた。
数回瞬きをした後、男は眼光鋭く立ち上がる。
「どいてください!」
いつの間にか、野次馬が増えていた。
クラスの入り口には4人ほどの客がおり、双務はその中へ強引に突っ込んだ。
状況を察した彼らは、すぐに道を作る。息も絶え絶えで、二人は廊下へと飛び出した。
背後から、誰とも分からない熱気が追いかけてくる。
背筋を撫でる悪寒に、三代は声を上げた。
「そこに入るぞ!」
一つ目の曲がり角。二階への階段の傍に、資料室と刻印のある扉があった。
双務は何も言わずに、三代の手を引いてそこに駆け込む。
141創る名無しに見る名無し:2009/12/26(土) 07:05:29 ID:o8wwX6HE
>>136
ジョジョなんて、元からネタなんだから。
1421:2009/12/26(土) 20:46:12 ID:HDpE1QHb
>>141
いや本当に、ラスボスバトルも平然とネタになりますよね。
カッコ悪いけど私、この吉良が好きです。

単発。>>140と同時刻、>>127の後で。



背後のレジから、溜め息が聞こえてきた。
立ち上がっていた隣の客は、うんざりしたように城田に視線を送ってくる。
城田は、スタンドを隠してその場に止まった。
「ヒメ!」
そのウェイトレスは、近寄るなり姫成の肩を掴んだ。
心配そうな表情はしている……が、城田はその瞳に妙な感覚を覚えた。
「み、ミキ」
「どうしたの? また乱暴されたの?」
「…………」
「ねぇ、コイツが何かしたの!?」
苛立った様子で、ミキと呼ばれたウェイトレスが城田を睨む。
彼女は、きつい目をしていた。
睨んでいるからだけではないだろう。その視線には、刺々しい威圧が含まれている。
ミキ、は決して崩れている顔ではない。が、その眼と強い口調に、城田は反感を覚えた。
「勝手な事を言うなよ。俺は『お話』していただけだ」
「本当?」
訝しげな目をして、少女が眉を上げる。
胸元のプレートに、『椎名 美樹(しいな☆みき)』と書いてあるのに気付いた。
「どうなのヒメ、本当に何もされてない?」
「ほ、ほんと」
か細い声で姫成が言う。椎名はもう一度城田を見てから、姫成へ顔を移した。
「私……その、お話に夢中になっちゃって」
姫成が、取り繕うように言葉を重ねる。
同時に城田は、後ろからひそひそと囁き声を聞いた。女子同士、恐らく店員が喋っている。
(……またミキかぁ)
(ね。やっぱり姫成さんは……)
少なくとも、褒めている訳ではなさそうだ。顔をしかめて首を振る。
「平気ならいいけど、さっきもあんな事されてたし、心配したんだから!」
「ご、ごめんミキ」
弁解を聞き終えたところで、椎名が泣き真似をしてみせた。
客が見とれるくらいの愛嬌はあったが、姫成の表情はまだ固い。
「休もうヒメ。変なの相手にして疲れたでしょ?」
「え」
「ほら、二人も相手したし。ヒメはよくやったよ」
疲労を滲ませた舌打ちが近くで聞こえた。店としては、二人というのは少なすぎるらしい。
姫成はそれに顔を強張らせた。すがるようにこちらを見る。
……話は終わったらしく、別に椎名の方から謝罪がある訳でもなさそうだ……
何も言わずに、城田は体を捻る。レジへと歩き出した時、背後から小さく了承の言葉が聞こえた。

「ちょ、ちょっとミキ!」
会計が終わった時、焦ったような声がクラスに響いた。
何事かと振り向いた城田は、ウェイトレス姿のまま、廊下へと出ていく二人の生徒を捉えた。
1431:2009/12/27(日) 21:16:08 ID:R7klotSY
これから、特に何も言わなかったときは単発更新だと思ってください。
まったりやります。消えないようにだけ注意して……



見間違いかと思った。出口に駆けて行くのは、間違いなく椎名と姫成。
城田は確かに今、椎名が自分を見たように感じた。
それもチラリ、とではない。挑戦的に、誘っている印象を受けるように……
不機嫌そうに値段を告げるレジを後ろに、ポケットから手を抜く。
自分の自意識過剰か? それとも、ただレジの方を見ただけか?
二人が扉を抜けた。城田は乱雑に小銭を放ると、足下の地面を強く踏みしめる。

自答の答えは既に出ていた。
昨日の刑大が脳裏に蘇る。彼の、無関心そうに挨拶をする顔と、狂気に叫んでいる顔。
……もしかして、彼女にも?
その可能性は薄い、はずだ。名簿にチェックされていたのは二人だけ、椎名は無かったのだから。
そこまで考えた所で、城田は唇を強く噛んだ。
足取りが急に重くなり、目の前を歩いている二人がじわりと揺らぐ。
彼女達を追けて、城田は廊下を歩いていた。
既に二度、角を曲がっている。間取りは把握していないが、喫茶店からは十分離れたはずだ。
城田から5mほど離れて歩きながら、姫成は不安そうに辺りを見渡している。
椎名はさっきから一度も振り向いていない。ただ、姫成の手を引いて早足で歩き続けている。
店の制服姿の二人は、よく目立った。浮き立つ学校はそれも受け入れ、格好を咎める人も居ない。
明るい声が飛び交う校舎、文化祭は盛況だ。
…………
昨日、生徒が殺されかけたのに?
辺りを見渡す。見えるのは笑顔や期待顔ばかり……渋面も見えたが、ゲームに負けただけらしい。
城田は思い出した、昨夜刑大へ見舞ったパンチとかまいたちを。
表面を切り裂いただけとはいえ、普通の人間が見れば刃物の痕にしか見えない傷だ。
それこそ、残虐な殺人鬼がじわじわと殺すようなやり方で……
ざわと、胸が騒ぐ。刑大はどうなった? あの後、奴はちゃんと治療されたのか?
そこまで考えた所で、またしても前を行く二人が角を曲がった。
城田は乱暴に疑問をねじ伏せ、歩調を早めて廊下を歩く。
1441:2009/12/28(月) 20:48:56 ID:OM2ySUaU
すいません、今日はちょっと更新無理そうです……

今二章書いてて強く思うんですが、漫画を想像して構成立てると異常に長くなっちゃうんですよね。
実際にできるかはさておき、もっとガリガリ進んだ方が良いんでしょうか?
1451:2009/12/29(火) 21:21:38 ID:AgjgFVvj
続き〜
半ば無理矢理につき劣化注意です。



角を曲がると、音楽室の前だった。
ここが校舎の端らしい……一階への階段が脇にあり、扉が行き止まりだ。

西戸高校の特別教室棟は二階、常用教室棟は三階まであった。

城田はスピードを落とさない。
姫成らの姿は捉えられたが、すぐに階段の方へと消えたからだ。
……目的地はどこだ?
『休憩』というのが出鱈目なら、椎名の動機が分からない。
城田は首を傾げながら後を追う。だが、階段に差しかかるより前に声が聞こえてきた。
「ミキ」
「!」
曲がり角の手前、震えるような微かな声。
音楽室への扉を前に、城田は壁に手をついて止まった。彼の位置から、人影は見えない。
目の前の教室では寸劇でもしているらしく、台詞を聞き取るのは難しかった。
「……どうしたの、ヒメ」
「ねぇ、何処行こうとしてるの? もうお店からは離れちゃったし……
 そ、それに、その、あの」
姫成と思われる声は、ふわふわとして落ち着きがない。
不安というよりも……焦り?
背後から、生徒と思われる男子が横を通った。
「トイレ行きたいんでしょ?」
「う」
音楽室に入りかけていた生徒が、目を細めて階段の方を見た。
止まろうか躊躇したようだったが、城田と視線がぶつかって、訝しげな表情のまま扉を閉めた。
「そ、そうだけど」
「じゃあ丁度良いね。そこ、トイレあるじゃない」
「う、え」
人影と同じく、城田の方からトイレは見えなかった。
だが、姫成のものらしい呻き声から察するに、清潔とは言えない所らしい。
「下とかにもあるよ、トイレ。ここはちょっと……寒いよぉ」
「え〜待っててあげるから、ちょっと行ってきなよ」
姫成の言葉は、徐々に早口になる。切迫しているらしく、椎名の押しに少しずつ語尾が弱る。
不自然だ。
城田は背後にスタンドを現した。
先程までの通路を見るに、階段の傍には必ずトイレがあるらしかった。
それならば、下の階まで行ってくるのはそう面倒な話ではない。
が、椎名の強い勧め方は強制に近かった。これは、恐らく
「じゃ、じゃあ行ってくる……」
「うん。気をつけてね」
皮肉としか取れないような言葉で、椎名が言う。
情けない声とともに、タイルを踏む足音が聞こえてきた。

今、音楽室前の廊下には城田と椎名しかいない。
ここの廊下はもともと過疎らしく、人が訪れる気配も無い。
今の状況は、一対一……
壁から聞こえる足音が止まる。それと同時、曲がり角から靴の音。
城田は静かに一歩退き、スタンドの拳を構えた。
146創る名無しに見る名無し:2009/12/30(水) 15:08:00 ID:u7Ad6Ls/
いまさらだけど

>>138
>『スタンドが一般浸透していて、彼ら専用の学校がある』世界
そげぶ?
1471:2009/12/30(水) 21:14:08 ID:+9X2OnWH
>>146
ググったらそうでした。
原作は読んだこと無いですけど……ラノベは手ぇ出すのに勇気がいりますorz

今回は視点変更あり+繋ぎに困って改行を多用してます。要反省。



人間が最も油断するのは、トイレへ駆け込んだ時だと思う。
少なくとも、私はそうだった。ひやりとした空間、陶器の滑らかな曲線に、四方の壁。
当然、入った時には安堵感が胸を満たす。切迫しているなら尚のこと。
(あれ、思っていたより綺麗だわ)
なんて考えながら、私はドアの鍵をかける。
隣で、息を止めて待ち伏せる存在に、気付かないまま。

結論から言うと、予想は外れていた。
城田は気の抜けた表情で、男子トイレの壁に寄りかかる。
椎名の足音は自分へ向かず、階段を下った。それも誘うようではなく、駆け足で。
快活な響きに、戦意は感じられなかった。また、逃げるような慌ただしさも。
……これじゃあ、俺はストーカーだな……
城田は頭を掻き、溜め息を吐いた。手をついたタイルの壁が、指に吸い付く。
椎名はやはり、スタンド使いではないのだろう。
自分が勝手に焦っていただけ。彼女は単純に、お気に入りの友達を連れ回していただけだ。
……友達?
そこで城田は瞬きした。
ちょっと待て、友人を残して椎名はどこへ行った?
ついさっき彼女は、姫成に『待っててあげるから』と言ったのに……

そこで、ふと頭に蘇ってくる光景があった。喫茶店での、椎名の瞳。
あの時城田は、彼女の眼光の奥に奇妙な感覚を覚えた。
あやふやな光……それが、ここに来て急に形を取り始める。
彼女の表情は、そしてあの感情は

城田はもう一度、ゆっくり瞬きをした。
そして同時に、背中から飛んできた悲鳴を聞いた。
1481:2009/12/30(水) 21:57:11 ID:+9X2OnWH
>>147
分かりにくいんですが、最初の改行からはずっと城田の視点です。
二行にするべきだった……orz orz
1491:2009/12/31(木) 20:28:33 ID:6X8lxuio
2009年ラスト。ちょっとネタ・文章詰まり気味……!?
あ、『ダイレクト・メール』はちょっと修正します。メールだけだと勝負にできませんでしたorz

スタートから一ヶ月、低空飛行ですがなんとか続いてます。
応援・アドバイス本当にありがとうございました。
できればこれからもお付き合いくださいッ!



隣から、悲鳴。
城田は男子トイレを飛び出した。
西戸高校のトイレは、入り口がTの形をしている。
女子トイレ側が目に入った時、城田は背筋を撫でる悪寒を感じ取った。
耳を澄ませば、音楽室の歌が聞こえる。まだ人が来る気配は無い。
地面を蹴る。城田はスタンドを現しながら、女子トイレへ入った。


「そろそろ、『始まる』頃ね」
一階への階段を降りながら、私は誰へともなく呟く。
既に服は、別のトイレで着替えていた。すれ違う人の目線も、もう自分へ向くことは無い。
「……ふ」
笑みが漏れた。制服のスカートを握りしめる。
ふ、あ
「クッ」
私は早足で階段を降りきった。笑いが、込み上げてくる……
「くはぁ!」
ケータイを取り出した。息が切れていた。
メール画面を開く。一階のフロアはホール、○×クイズの客が、訝しげに私を見る。
「ねぇ君、大丈」
「大丈夫です」
送信した。私が返事とともに顔を上げると、男性は表情を硬くして、そそくさと去って行った。
……今私は、どんな顔をしている?
「ステキな顔じゃあないわね、絶対」
右手で、ポケットの中のペンを探る。
棒状のものに触れた瞬間、首筋に柔らかい感触が現れた。
「『ダイレクト・メール』」
手のひら大のテディベアが、肩から宙に浮く。
私は最後に息を漏らすと、階段傍の壁に向かって手を振った。
ぬいぐるみがペンを構える。
今私の取り出したペンを。
150創る名無しに見る名無し:2009/12/31(木) 20:57:22 ID:URlzRIQQ
>>1氏!

あんたサイコーだ!この企画、乗った!
俺はこの縁を信じるぜ!夢見がちの少女が「赤い糸」を信じるように!
もし良かったらメールしてくれ!知恵をあんたのために使わせてくれ!

挨拶代わりに敵スタンド投下

スタンド名「バッドラック・ガイ(BLG)」

スタンド像は無し

能力:射程距離内の自分を除く全ての生物の運を、少しだけ下げる。

弱点:本体は完全に無防備。

破壊力 E
スピード ‐
射程距離 A
持続力 A
精密動作 -
成長性 C

本体名「杉浦裕作」

「ほんのちょっとだ。運を下げるのはほんのちょっとで良い。
たくさん下げると人間ってやつは腐っちまう」
「普通にできた事がなぜか上手く出来ねえ。こいつは溜まるんだ。
ストレスって奴がよ」
「ストレスが溜まりゃあよ、「れーせー」になるのが難しくなるんだぜ。
人間って奴は。れーせーになれてない奴の裏をかくのは、難し事じゃあ
ねーな」
151150:2009/12/31(木) 21:26:13 ID:URlzRIQQ
済まない、こっちの方のアドレスにメールをしてくれ。

ついでにもう一つ投下

スタンド名「エクスターミネーター」

スタンド像は、小さな箱。開くとぎっしりと矢が詰まっている。

能力:任意の対象(複数可)に箱をセットする。この箱は対象がどれだけ素早く
   逃げても離れる事無く付いてくる。
   本体の設定した「タブー」を破ると、セットされた箱が開いて、矢を
   放ち攻撃する。矢は尽きない。
   
弱点:本体は完全に無防備。

破壊力 B
スピード ‐
射程距離 スタンドをセットした対象に対しては∞
持続力 A
精密動作 E
成長性 D

本体名「小楠信也」
    
「ゲームをしようぜ。断っても良いが、無関係の人間が何人死ぬかなあ?」
「俺が設定したタブーは三つ。当てられたら、スタンドを解除してやるよ」
「人殺しは好きじゃねえが、命がけってのはおもしれ〜よなあ〜。」
152創る名無しに見る名無し:2010/01/01(金) 21:50:26 ID:qAzAPQC7
>「俺が設定したタブーは三つ。当てられたら、スタンドを解除してやるよ」

一つ目が確定的に明らかだな
1531:2010/01/01(金) 22:06:43 ID:EPfDKfz/
>>150-151さん
うおぉぉ協力ありがとうございます!
メールは……ソフトが現在ポンコツですので……orz

>バッドラック・ガイ
もう少し強くても大丈夫かも? 近寄るほどどんどん不幸に、とか。
>>53のスタンドと相性がよさげです。

>エクスターミーネーター
<(^o^)>頭脳戦だってェェェ
全ては俺次第ですねわかります。


>>152
何……だと……!? え、『タブーを探らない』とかですか(汗
個人的には『本体を見つけてはいけない』とかハマりそうかなぁ。
154創る名無しに見る名無し:2010/01/01(金) 22:13:10 ID:qAzAPQC7
>『タブーを探らない』
>『本体を見つけてはいけない』

確かにこれらできたら強すぎるw
『息をしてはならない』とかのタブーが無理じゃないときついなw

っていうか言っていいのかな? 使う予定あったらまずい気がする
1551:2010/01/01(金) 23:18:53 ID:EPfDKfz/
今日はコレで終わり。
睡眠時間が二桁突破しました。寝すぎると早死するらしいですね(笑

>>154
呼吸制限したら……や、無理ですね。無理。
使用例に関しては何とかします。べ、別に言われちゃったとかそんなんじゃあないんだからねッ!



手洗いの鏡が目に入った瞬間、女子トイレの中に呻き声が響いた。
嫌悪感が体を駆け巡る。城田は、スタンドを引き出してタイルを強く踏んだ。
三つの個室、手前から二つが閉じている。
一番手前を軽く、拳で叩いた。返事ではないだろうが、ドンという衝撃が扉を震わせる。
(敵か? 姫成か?)
舌打ちをしながら、城田は視線を上に逸らした。同時に、驚愕で固まった。
女子が、手前の個室から中央へと身を乗り出していた。
大きな丸々とした……節操無く捲れているスカートからすると、恐らくこの学校の女生徒。
太った体が、個室の上に空いた空間から、危なっかしげに揺れている。
どうやら姫成がいるのは真ん中で、そこを凝視していた。
覗き、らしい。
が、城田は警戒を解かなかった。彼女から発散される空気は、尋常のものではありえない。
「キャァァアアアア!!」
「おい!」
姫成の叫び声に、城田は拳を振りかぶる。
が、扉に叩き付ける直前、上で揺れていた身体がバランスを崩した。
巨体が、頭を下に、人の上へ、落ちる。
城田は窓に目をやった。風は無い、窓を開かなければ能力は使えない。
だが、遠い。一番奥の個室までは、手を伸ばしても届かない。
「ひッ……」
「姫成ッッ!!」
叫び声とともに、轟音が反響した。
1561:2010/01/02(土) 23:03:14 ID:Ilm6zfOz
ラジオドラマとかって面白そうですけど、脚本は難しいです……
状況・容姿が描けないと話にならない現状。先は長いッ! 果てが無くッッ!



轟音?
城田は一瞬思考した。これは……人がぶつかる音ではない。
液体のうねる音。
トイレの逆流か?
それとも、あの太った奴が嘔吐でもしたのか?
違う。これは、そんな生易しい奔流ではない。
そして二度目の衝撃、ドアが苦しげに呻いた。
「これはッ!?」
城田は直感で危機を察した。三度目の振動の直前、スタンドを眼前に扉から横へ退く。
ドアが吹き飛んだ。
ごおと風を斬って……先程まで城田の居た所を掠めて、肥えた体がドアごと壁に叩き付けられる。
それと同時に、城田は見た。個室の壁が消えた空間に、水が立っているのを。
比喩ではない。一瞬だが、確かに水が吹き飛んだ扉の代わりに、空中で固まっていた。
「姫成」
城田の声に反応するように、そびえていた水は地面に落ちる。
惚けたような声が個室から聞こえてきて、城田は足を踏み出した。
157150:2010/01/03(日) 19:38:06 ID:TUqMoZqg
また投下。

スタンド名「WEAK!WEAK!」

スタンド像 顔が天秤の形を模した人型。

能力:近距離パワー型。殴った相手の力が、一定時間毎に落ちていく。

弱点:能力が落ちるのに時間がかかる。

破壊力 A
スピード A
射程距離 E
持続力 C
精密動作 D
成長性 D

本体名「熊谷千歳」

「このパワー・・・落とすのには5分は必要ね・・・」
「分かるかしら?もう貴方はレンガ一枚持ち上げる事も出来ない・・・」
「つまり!私に勝つ事は!絶対に有り得ない!」
158150:2010/01/03(日) 19:53:16 ID:TUqMoZqg
もういっちょ投下。

スタンド名「アイアン&クレイ」

スタンド像 右半身は金属質、左半身は泥に包まれたような人型。

能力:スタンドが右手で触れたものは金属のように硬く
   左手で触れたものは飴細工のように柔らかくなる。
   硬い物を柔らかくして敵の攻撃を防いだり、柔らかい物を
   硬くして攻撃をすることができる。
   
弱点:特に無し。

破壊力 A
スピード A
射程距離 E
持続力 C
精密動作 B
成長性 C

本体名「須貝修司」

「右手で触ったものは、鉄みてーにカチカチに」
「左手で触ったものは、つきたての餅みてーにブヨブヨに」
「それが俺の能力!芸術的に始末してやるぜ!」
159150:2010/01/03(日) 20:02:28 ID:TUqMoZqg
>>1

活字だからか俺の読解力の無さか、今一状況が把握しにくい。

少しし過ぎなくらい、状況の説明は入れた方が良いと思いますよ。

特にスタンド能力なんかの場合、ジョジョは漫画であっても
見ていて「ん?」って思う場合もあるので、分かりやすい説明を
心がけると吉だと思います。
1601:2010/01/03(日) 20:57:33 ID:DQRv/BgH
>>157-159
情景描写は本当に未熟です……!
その光景を表現する語句が出てこない時もあります。もっと語彙を増やさないとなぁ……

>WEAK!!
女性でこの能力はガチで怖い。
タッグ戦必須? 二対一(敵一人)か二対二が大前提になりそうです。

>アイアン&クレイ
こ、この能力は味方側に欲しかった! 便利ぃ〜
それと、個人的には本体がグッド。芸術的に始末……>>121と勝負させてみたいかも。
161150:2010/01/03(日) 21:47:46 ID:TUqMoZqg
>>1

本体の名前から設定から、全部1氏の好きなようにして構いませんよ。
もちろん味方キャラにしてもらってもね。
味方キャラになれば、活躍の場も増えて俺も嬉しいしw

やっぱり描写力や語彙をアップさせるには、小説を読みまくるしかないかな
と思いますけどね。
後は、どれだけ頭の中で映像化できるかだと思う。

例えば、スタンド像や人物像。
これがまだ、読み手に伝わってないんじゃないかな。

感情移入するのに大事なのは、情景や人物像を読み手がイメージできるか
どうかだから、力入れてほしいです。

せっかく面白い企画なんだし、頑張ってね!
162150:2010/01/03(日) 23:04:23 ID:TUqMoZqg
あんまりたくさん投下しても困るかな。
そろそろ打ち止めにしようかと言う事で、コンビ系敵キャラ投下。

スタンド名「コピーキャット(仮)」

スタンド像 無し

能力:実際に目で見たものを複製できる。
   生物は意思があるが、本体の命令通りに動く。
   銃などの武器は、弾は実物の装填状況に依存する。

破壊力 −
スピード −
射程距離 −
持続力 A
精密動作 −
成長性 E

本体名「福徳宗太郎」

「ビビるなよ、俺たちに勝てる奴はいねえ。お前がビビらなきゃあな」
「ちょいと秋葉原に行ってくるぜ。武器の補充によ。」
「モノが溢れてる国ってのはよ〜、武器も溢れてるって事だぜ」
163150:2010/01/03(日) 23:15:49 ID:TUqMoZqg
相方投下。

スタンド名「ストレィジ・スペース」

スタンド像 無し

能力:自分の体内(衣服のポケットなどにも)に、物を収納できる。
   限界は本体にも分からないが、車やバイク等なら難なく可能。
   物体の大きさや重量は、取り出す速度には影響しない。

破壊力 -
スピード -
射程距離 -
持続力 A
精密動作 -
成長性 C

本体名「御八代薫」

「お、俺なんかに出来るのかな・・・」
「そ、宗一郎が言ったとおりだ・・・!俺たちは無敵だ!」
「ち、近寄るなよ!俺には爆弾が入ってるかも知れないんだぜ!」
1641:2010/01/04(月) 00:13:24 ID:GtJ0+n/x
>>161
うおぁぁあああ応援ありがとうございます!
イメージに関してはしばらくご迷惑をかけるかと……生暖かい目で見て頂けたら幸いです。

>コピーキャット
秋葉原で武器の収拾とはwwww
鋼の錬金術師みたいに「素」が必要になればちょうどいい具合かも。

>ストレィジ・スペース
本体が実に良いキャラ。仲間にしたい。
こちらもちょっと制約? 初回の不意打ちが成功率100%だし。

今日は無しですorz
返信より先に書くべきだった……バカス
1651:2010/01/04(月) 13:59:28 ID:GtJ0+n/x
お休みはまだ続いていたッ!!
昨日の分投下。あ〜……でも二個めは分かんないです。



姫成は、水浸しの個室で座り込んでいた。閉まっている洋式便器に、すがるようにして。
目の焦点は合っておらず、城田を捉えると口を僅かに開閉した。
「ぅ、ぁ」
「これは……」
千切れたドアの金具に触れつつ、城田はもう一度背後を見る。
気絶したらしい肥満体が、へし折れたドアと一緒にタイルに伸びていた。
全身びしょ濡れで、ちぢれた髪が額に張り付いている。
「……私が?」
疑問形で姫成が言葉を発した。
城田は答えず、今度は個室の内壁に付いている水滴に触れた。
じわりと滲んで、指に付く。恐らくは、何の変哲も無いただの水だ。
「私が?」
二度目、掠れ声で姫成が言った。城田が視線を向けると、彼女は体を震わせた。
「そうだろうな」
「何で」
「スタンドだろ」
姫成の顔から、さっと血の気が引いた。
色が薄くなった唇が、かたかたと音を立てる。
「わた……私」
「何があった?」
城田は足を踏み出す。
同時に、彼は姫成自身に水滴が付いていないことに気付いた。
そして、彼女のへたり込んでいるタイルに、水の跡が無いことにも。
姫成の傍に、城田がしゃがんだ。
「何があったか教えてくれ」
「……は、はい」
瞬きを繰り返しながら、姫成は顔を伏せて話し始める。
女子トイレにいるのを怒られるか? と思ったが、彼女にはそれに触れる余裕も無さそうだった。
すっかり動転しており、不安感を吐き出したくて堪らないように見えた。
「あ、あの子、が」
「覗いていた、だろ。気付かなかったのか?」
「気、配、が」
そこで姫成が口を押さえた。恐怖なのか安堵なのか、瞳を潤ませて嗚咽を漏らした。
「お、おい」
「あの子自、分のく、口と鼻を押さえ、てて……息してないみたいでッ……!」
彼女はぎゅっと、城田の学ランを強く握った。
「とられちゃ、った……うあぁぁぁぁ」
「お、お前泣くなよ! 人が来ちまう……」
城田は慌てて立ち上がろうとしたが、姫成が強く服を引っ張った拍子、水たまりに尻餅をついた。
1661:2010/01/04(月) 22:59:09 ID:GtJ0+n/x
ごめんなさい、今日明日と更新できないかもですorz
ちょっとXデーが近づきつつ。連絡は入れられると思いますけど……
1671:2010/01/05(火) 19:00:21 ID:yPXjqUSX
やっぱり今日は更新無理めです。
明日は多分大丈……ぶ!
168創る名無しに見る名無し:2010/01/06(水) 13:11:19 ID:G9ZOBZhx
テスト
169創る名無しに見る名無し:2010/01/06(水) 15:47:51 ID:/YA/SfOg
スタンド名 「グーグル」

スタンド像 パソコン

能力:名前を打ち込んだものの弱点から能力まですべてわかる

弱点:さすがグーグル! 弱点分かっても攻撃力ゼロッ そこにシビれる! あこがれるゥ!

「グーグルの情報量は世界一ィィィ!」
「何だおまえはァァァ、とりあえずググれカス」
1701:2010/01/06(水) 23:18:46 ID:rd61oVKr
>>169
グーグル先生ェェッッッ!!
ヘブンズドアー的な臭いがします、とマジレスしてみたり。

とりあえず峠をオーバー。かなりタイアードなのにライティングしたアフターがディスだよ!!
多分ネクストから視点チェンジです。



結局、姫成が落ち着くまでに数分を要した。
ズボンを濡らしたあとは、城田も不機嫌ながら動く事は無く、傍に座っていた。
彼女は半ば抱きつくような形で泣いており、学ランを掴む手も固い。
……泣き虫と言うより、幼い……
城田はそんな印象を受けた。大人びた雰囲気や外見とは裏腹に、姫成の精神は不安定に感じた。
ちらりと、後ろの女子を見る。
既に目覚めかけているらしく、戻ってきた息遣いの中に呻き声が混じっていた。
ストレンジ・サイクロンを近寄らせて、軽く首を締める。
ぶ、という鈍い声を聞きながら、城田は回想した。
(息してないみたいで)
(とられちゃった)
「とられちゃった……」
消えそうな声を発したのは姫成だった。
城田はスタンドを傍に戻す。締めていた太い首が、ぺたんとタイルに落ちた。
「とられたって、何を」
「写真」
撮られた、か。一人合点して、城田は瞬きする。
「私がその……と、トイレしてたら」
姫成が力無く、天井の方を指差した。
つまり、用を足している所を写真に撮られた、という
「事か」
「うん。あ、いや、はい」
姫成は顔を赤くして頷いた。冷静になって羞恥心を取り戻したらしかった。
「で、でも何であなたがここに?」
「……叫び声が聞こえたんで、襲われでもしたかと、な。
 つったら、写真を撮られただけ」
「だけって言わないで!」
ふう、と溜め息を吐くと、憤慨したように姫成が口を尖らせる。
城田の事は完全に味方と認識したらしく、警戒心は薄れていた。
「もう私、お嫁に行けないよぉ……」
「……やれやれだ。お前、大袈裟だな」
城田は背後の女子高生に目を向ける。カメラらしきものは持っていない。視線を辺りに配る。
「ん、アレ見ろ」
「え」
首を伸ばし、二人で個室から覗く。
水浸しで転がっている携帯電話が、水道のそばに見えた。
「あ……壊れてるの……?」
「お前がやったんだぞ。消火器みたいな放水喰らって、電子機器が持つわけない」
仮に防水していたとしても、衝撃に関しては無関係だ。
恐らくもう、あの携帯は使い物にならない。
城田は首を回すと、姫成を見た。
そこで、彼女の表情が凍り付いているのに気付く。
「おい、どうした?」
「ライト」
姫成はそろそろと指を指した。その先に目を走らせる。
「あ?」
「小さく光ってる」
目を凝らすと、ブルーの点が僅かに見えた。
携帯電話の二つに折れる部分、そこのライトの一つが、弱々しげに点灯していた。
「友達が同じ機種を持ってるの。あの光は、メールを送信した時の……」
ライトが消えた。隣の姫成は、再び学ランを強く握ってきた。
1711:2010/01/07(木) 23:28:33 ID:6yGqI38K
城田達はちょっと放置して、置いてけぼりだった双務達にシフト。
時系列的には>>140のあと、>>143の頃です。
……あれからもう30レス、ここまでgdgdになるとは正直予想外でした(汗



資料室は寒かった。
通常教室の四分の一程度な部屋内に、文化祭の道具らしきものが乱雑している。
壁に備えられた棚からは、紙で作られた花がはみ出していた。
もっとも、飛び込んだ拍子に肩でぶちまけてしまったが。
「ドア!」
入るや否や、双務が叫ぶ。三代はそれに反応し、左手でドアを押さえる。
数秒すると、強く地面を蹴る音が聞こえてきた。
「ッ!」
「…………」
息を潜める。だが、心配とは裏腹に、足音は立ち止まる事無く階段へと向かって行った。
さらに数秒。賑やかな話し声が、ドアの向こうを通過した。
逃げ切った。
言葉も無く、三代がしゃがみ込む。双務もそれを見て、深く溜め息を吐いた。
「よかった」
その台詞を聞いて三代は、改めて双務を見た。
結局、付いて来ていたのか……
ぐっと、拳に力を入れる。感謝と言うよりも、胸中を満たしたのは小さな怒りだった。
「いやぁ、怖い人だったね。三代君、右手庇ってるけど大丈」
「なんで来た」
「夫……え」
きょとんとした双務に向かって、つかつかと歩み寄る。
あの男は、こいつも攻撃するだろうか。ひょっとして、拷問まがいの事さえも?
「助けに来るにも、随分今更だな。迷った挙句、しょうがないから追ってきたのか?」
「そ、それは」
「んで、目に入ったから助けたのか? ヤバそうだから助けたのか?
 俺ぁ帰れっつったぞ、覚悟がねェなら」
双務は、板張りの看板にもたれ掛かるように座っていた。
すぐ傍まで近寄ってきた三代を、目を丸くして見つめている。
ビクビクしやがって。
足下の紙箱を蹴ると、紙吹雪が舞った。衝撃音に、双務が体を強張らせる。
「お前も目ェ付けられたぞ、多分。あいつの眼は本物だったし」
「…………」
「闘う気がねェのに、首突っ込んでんじゃねぇ」
三代は語調を荒げる。助けてくれた奴に随分と言うじゃねぇか、と内心で舌打ちした。
と、そこで気付いた。
双務と眼が合っている。初めての時とは違って、彼は顔を逸らしていない。
「君は、ちょっと勘違いしてるよ」
「あ?」
双務は、呆れたように首を振る。
三代の怒りを知ってか知らずか、その口ぶりは穏やかだった。
「確かに僕は弱虫だし、君の言うような『闘う覚悟』なんて持ってないさ。
 ただ……廊下で僕が何考えたか、分かる?」
一瞬、資料室に沈黙があった。
三代が訝しげに眉を潜めたのを見て、双務は口を開く。
172150:2010/01/08(金) 22:03:20 ID:6N5FLTyM
打ち止めと言いつつもスタンド投下

スタンド名「マッド・ファンガス」

スタンド像:キノコを随所にあしらった亜人型。

能力:胞子をばらまき、触れた生物から成長し、キノコになる。
   宿主から生命力を奪い成長し、成長しきると胞子を吐き出す。
   吐き出された胞子も同様に、生物に取り付いて成長する。
   キノコが成長しきる=宿主の死となり、胞子をばらまき終えると
   キノコはしぼんで力尽きる。
   要はチョコラータ先生のキノコ版?

弱点:本体も胞子に触れると宿主にされる。
   キノコは乾燥に弱く、成長が遅くなる。最悪の場合、枯れてしまう。

破壊力 B
スピード D
射程距離 胞子は風に吹かれて飛べる距離だけ飛ぶ
持続力 A
精密動作 E
成長性 C

本体名「越智雅己」

「うっかり風下に立つと、俺までキノコにやられちまう。風向きはしっかり
頭に入れないとな」
「一度胞子に触れたなら!てめーが骨と皮になるまで!キノコは成長する!」
「嫌いな食べ物?キノコに決まってんだろーが」
173150:2010/01/08(金) 22:13:49 ID:6N5FLTyM
1氏、ここで小説をアップするより、簡単なHPを作ってアップした方が
良いんじゃないかな。

ここだと読み辛い。時系列がこんがらがるから、じっくり読みたいと言う
のがあるかな。
一々戻って時系列を追うのは、この形式だととても面倒だな。
HPだったら、別に一個掲示板を作ればスタンド募集や意見交換もそこで
できるから、小説を読む事に集中できるしね。
一個一個アップするのも良いけど、まとめて読みたいと言う感じかな。

HP作成くらいなら簡単にできるから、考えてみておくれ。
174創る名無しに見る名無し:2010/01/08(金) 22:28:15 ID:BaGXH5dg
ここでやるから見る人もいる。
1751:2010/01/09(土) 00:02:59 ID:WAbPJcqh
今日は無理でしたorz 連絡遅れてごめんなさい……


>>172
なんておどろおどろしいスタンド……乾燥したキノコは大嫌い!
本体も射程ってのが難しい感じです。山登りでもさせてみるかぁ。

>>173
ホームページはですねぇ、時間がない・技術が無い・自信が無いのそろい踏みになってます。
や、時系列に関しては本当に難しいです。直したいとは思うんですが、まだ技術が伴っておらず。
しばらくはここで、このままで続けたいと思います。申し訳ない……

>>174
ウオシャァァァ! 返信どうもありがとうございますゥゥゥ!!
見てくれる人がいるなら俺は頑張れます。多分。
176150:2010/01/09(土) 10:35:11 ID:O43lhvGM
>>174

それに関しては否定しない。つか、その通りだと思うんだけど、俺みたいに
まとめてじっくり読みたい派も少なくないんじゃなかろーか。

>>1

今は作成ツールも充実していて、短時間で簡単に作れるんだけどね。
まあ、作者の意向に従うとしようかね。頑張っておくれ。
177150:2010/01/09(土) 11:46:35 ID:O43lhvGM
回復系スタンドはいたっけ?

スタンド名「ダッフィー」

スタンド像:子ブタ型

能力:何でも食べるスタンド。
   「傷口」を食べて傷を消したり、「死」を食べて生き永らえさせる事も
   できる。
   但し、完全に死んでいる場合は食べられない。
   つまり「迫り来る死」は食べられるが、「厳密な意味での死」は食べられない。
   他に「重さ」を食べて軽くしたり「軽さ」を食べて重くしたりもできる。
   強力な胃酸を吐いて攻撃する事も可能。
   満腹になるとフンをする。このフンはただただ臭い。

破壊力 A
スピード C
射程距離 C
持続力 A
精密動作 C
成長性 C

本体名「茜遥」

「可愛いでしょ?ダッフィー。この子の名前よ」
「この子は何でも食べるわ。貴方の「命」もね」
「いやーーー!バスの中でフンはやめてーーー!」
1781:2010/01/09(土) 22:13:32 ID:WAbPJcqh
>>176
ホームページは一段落したら挑戦してみたいと思います……
それまで続くといいn(ry

>>177
回復ktkr! 独特の効果ですね。よく考えないと難しいかも?
治療役は間違いなく必要にはなるんですが、加減が難しいんですよね……

双務の回想からスタートです。合流する前の。



その選択に、僕は数分をかけた。
迷惑そうな瞳が、立ち尽くす僕へと向けられる。
だが、それさえも気にならないほど、僕は深く考えていた。
日常を飛び越えられるかどうか、自分の心に訊いていた。


「助けが遅れたのは、確かに迷ったからだよ」
双務はそう言うと、膝に手をついて立ち上がった。
三代の腰辺りに首がある。が、その視線は今なお合っている。
「あのとき僕は、二つ選択肢を考えたのさ。
 城田君の所に戻るか、君に付いて行くか」
双務は小さく伸びをする。緩慢ながら、その動作には力が込められていた。
「僕は最初、喫茶店に戻ろうと思った。城田君なら、君の事を助けられる。
 そして……僕が闘う事も無い。おっかない事は、やる気のある人達だけでどうぞ……ってね」
「そうすれば良いだろォが」
双務の口調は自虐的だった。それに対する三代の言葉が、冷えきった部屋に響く。
「……たださ、僕はそこで思ったんだよ。
 ここが『分かれ目』なんだろうなぁ、ってさ」
双務は、自分の手に眼を落とした。釣られて、三代の視線も泳ぐ。
「ここで君たちから逃げたら、僕は闘いにずっと干渉しない。というか、できないんだ。
 君らが闘いで傷ついても、かける言葉が無いからね」
双務が顔を上げた。三代はそのとき、彼の眼の中に光を見た。
「僕は君たちの仲間だ。一緒に闘う事は……スタンド使いじゃないし、難しいかもしれない。
 でも、傍にいるよ。できる限りの力で、君らを助ける」
台詞が切れた。三代は沈黙の中で、拳を握った。
1791:2010/01/10(日) 23:41:42 ID:OHbIcMtJ
件のウェザー回をブックオフで買ってきました!
収穫→四部:二冊 六部:一冊 (全部コンビニ総集編) なんか重厚版の在庫が……orz
サブリミナルの真偽はともかく、もの凄くビビりました。マイマイカブリはトラウマ。

今回は勢いで書きました。乱文が多少……多少散らかっておりますッ!! 要校正回:暫定一位。



光が見えた。
さっき見た瞳光を、三代は脳内で再生する。鈍く、鋭く、輝く。
前にも見たことのあるモノだ。
前の学校でも、見たモノだ。
三代の心臓に、冷えきった血液が流れ込む。
凍り付いた表情の裏で、少年は数週間ほど前のことを思い出していた。
鈍い衝撃と、乾いた叫び声が鼓膜に刺さる。
そして、ぎょろりと眼を見張ったかつての友の顔が、網膜に現れた。

「三代君」
「あ……あァ」
耳に飛び込んできた声で、三代は我に返った。瞬きを繰り返し、再び双務の眼を覗き込む。
光は消えていた。自分のことを見る瞳に、もはや爛々とした輝きは無い。
訝しげに眉を上げるが、内心ほっとする。
「腕の痛みは大丈夫? ちょっと見せてよ」
心配そうに双務が言った。そういえば、と三代はおもむろに右手を差し出す。
その瞬間、双務の目が大きく見開かれた。
「え」
「どうした……」
視線を追って、三代は息を止めた。
ブラウン・クラウンが出ていた。自分の、生身の腕を支えるように、添えられた腕。
その茶色の体を、双務が捉えている。
「双務」
返事は無い。三代はそこで気付いた。再び、双務の眼に光が戻っていることに。
……あぁ、そうか。
三代は、目を細めて合点した。双務がスタンドに触れるのを、半ばぼんやりと見る。
あの光は、『覚悟』をしたからか。
再び視界を、かつて見た顔が占める。追いつめられた表情、その瞳には光。
(俺には、お前を殺す『覚悟』がある!!)
人影が変わる。体育館に立つ城田の姿。
(俺は『覚悟』した)
そして、幻影は消えた。目の前の人間に、三代は話しかける。
「お前は」
言葉を聞いて、双務がスタンドから手を離した。
「何の覚悟を」
三度目、二人の視線が合った。
「僕は」
双務は一歩引いて、パンチのように右手を突き出す。
「『ここにいる覚悟』を」
その台詞に、三代もゆっくりと右手を突き出す。
資料室の中、二人の拳が触れた。
1801:2010/01/11(月) 18:42:51 ID:YHGTOfAC
すいません、今日は更新無理そうです……
ついでに最近雲行きが怪しく。長期停止も有り得るかもです。

そういえば>>22さんみたいに「自分も書きたい!」って人もいたり?
どうせ書けないなら参加型で何かした方が良いかもですね。
1811:2010/01/12(火) 22:33:59 ID:+YsSUpmm
しばらく忘れられてたコートさんの視界をジャック。
今の達成率→城田サイド:60%/三代・双務サイド:70% ……の推測ッ!
いい加減募集スタンドも消化し始めないとダメなんで、二章も早く見切りを付けたいです(涙



敵側に仲間がいる可能性を忘れていたのは、致命的なミスだった。
自然と速くなる足に、周りの人間からの視線がぶつかる。そんなに急いでどうした、と。
余計なお世話だ。男は誰へともなく舌打ちする。すれ違った女子高生が、露骨に嫌悪を浮かべた。
既に数分は走っている。が、目的の姿は一向に見当たらない。
角を曲がるとき、肩をぶつけた。幼さの残る怒鳴り声に、振り返りざまに睨んでみせる。
「何か言ったか?」
「てめ……あ、くぉ……」
不良らしい生徒は、それきり口を開かなかった。そそくさと、早足で男から離れる。
一瞬前の威勢は既になく、周りの白い目から逃げるように背を向けていた。
……奴は、最後まで闘おうとしていたな。
ぎり、と奥歯を噛んだ。逃した苛立ちが込み上げてきて、男は再び前を向く。
そこで、捉えた。
ジャージ姿の少年が、視聴覚室の扉にもたれ掛かるようにして、こちらを見ていた。
間違いなく、先程のスタンド使い。
反射的に紫色の腕を引き出した。スタンドが隣に並んだと同時に、向こうも気付く。
一瞬、奇妙な感覚が脳裏に流れた。
ようやくだ、という喜びと、虚像に手を伸ばしているような焦燥感。
それが、僅かだが自分の胸中に吹き込んできた。とは言っても、すぐに掻き消えてしまったが。
足を踏み出すと同時、ゆっくりと目を擦る。手をどけても、少年はまだ視界にある。
そして次の一歩で、彼が視聴覚室のドアを開けた。
押し戸だった。
ぬるり、と少年は滑らかに教室へと飲み込まれる。
消えるな……!
誘っているのは目に見えていた。が、男はそれを承知した上で床を蹴る。
駆け出し際に紫の腕が、傍で飲んでいた男のペットボトルを奪った。
半分ほど減っている、コーラだった。
1821:2010/01/13(水) 21:22:50 ID:qk43ly4q
今日は更新無理そうです……
二章が終わらなぁぁぁぁいいぃいいい

ついでに予定の方も厳しくなってきました。
そのうち休日だけ更新、とかになりそうですorz
1831:2010/01/14(木) 23:09:04 ID:DjMPaeyb
とりあえず書ける時に書きまっす。

結局のとこ綺麗な比喩が使えれば、それで人物像も風景画もできるんですよね。
一に勉強、二に練習、三四が無くて、五目飯ッッ!!



視聴覚室は無人。もとより立ち入り禁止の部屋らしく、カーテンがぴったりと閉まっていた。
男は首を捻る。開けたドアから差す光が、部屋の輪郭を映し出していた。
映画館、か。
男は一人頷いた。部屋には固定式の、それこそ映画館で座るような、机と椅子がある。
だとすれば、スクリーンは黒板か。ドアから漏れる一閃が、扉の向かいにある黒板を照らす。
入り口の所から、ジャージの姿は見えない。が、黒板の前には教卓があった。
背後を気にしながら、男は扉を閉めた。間の抜けた鍵の音とともに、光が消える。
……さて。
沈黙と暗黒が同時に訪れた。カーテンは厚く閉じられており、視聴覚室は一気に深淵を増す。
男はスタンドを現して歩き始めた。足取りは危なげない。目的の場所は既に見定めている。
知らずのうちに呼吸が小さくなっていた。すぅ、という息を吸う音が、妙に耳を擦った。
歩数にして17歩、教卓の前に立つ。そこで振り返ってみたが、気配は感じられなかった。
やはり、ここか?
男は、紫色の掌で教卓の前側面部分に触れた。小さく揺すると、がたがたと不安げに鳴る。
固定はされていない。
男は数歩下がった。そして、突き出した右手を返す。
そのとたん、教卓が傾いた。まるで、崖の傍に立った者が、後ろから押されたかのように。
ばたんと倒れた教卓は、そのままずるずると男に向かって引き寄せられる。
手を下げた。移動は止まる。
男はポケットに手を入れた。どんな時でも、携帯のペンライト程度は持っている。
そして、それを取り出すと同時に点けた。広がった円状の光は、教卓の向こうを照らす。
人影を捉えて、男は床を蹴った。ゴムに近い、擦れるような感触があった。
1841:2010/01/15(金) 23:22:28 ID:aqypsblb
あぁ……ここまでが本当に長かった……
でもまだ城田が残ってるし、そもそもバトルg(ry



隠れていたのは、ジャージではなかった。
かっちりとしたカッターシャツを着た少年……これは、先程ジャージを助けに現れた奴だ。
男はちらりと、殴るべきか迷った。既に振り上げた腕が右側で風を斬っている。
コンマ数秒の思考の後、男は紫色の拳を少年へと打ち付けた。
「ぐぇッ!」
「悪いな」
全く悪びれた様子もなく、黒板に叩き付けられた少年に向かって言う。
そして、言い終わらないうちに裏拳を背後に繰り出した。


「……!!」
三代は、呻きに近い溜め息を吐いた。間髪入れず、防がれたスタンドの腕を引っ込める。
攻撃を受け止めたコート男の左腕が、空中でゆったりと揺れた。ペンライトの光に、目を細める。
「奇襲失敗、だ」
「み、三代君」
「悪ィ双務、ミスった!」
三代は教室の真ん中で、男に向かって拳を構えた。
視線の先には、倒れた教卓の前で立つコートの姿がある。
ライトがこちらに向いているため、双務は暗闇に溶けていた。
「てめェ……よく分かったじゃねェか」
「いやなに、殺気の消し方はなかなかのモノだったぞ」
男は涼しい顔で言った。だが、その言葉は不自然に早口だ。
「寸前まで分からなかった。もし、あのガキを殴ってなかったら気付かなかったな」
三代の表情が、静かに怒りで揺れた。男はわざとらしく肩をすくめる。
「よくそんなデカい鏡があったな。自前か?」
「……資料室からな、ちょっと拝借させてもらった」
「あぁ、あそこに隠れてたのか。道理で見つからない訳だ」
コートが皺を作り、曲がった指が三代の背後を指す。
見るまでもなく、そこには大きな鏡があるのだ。二枚の、縁の無い物が。
「上手いトリックだ。部屋の角で、その二枚を壁にして隠れる。
 ここの壁紙は殺風景だからな。鏡に映った像も、正直見分けがつかなかった」
それを聞いて、忌々しげに三代は舌打ちをする。ペンライトが何度か、自分の背後を照らした。
「エンキンホウ、ってのを利用するんだと。俺ァよく分からねェけどな」
「種を知らずに手品をするとは」
男が呆れたように苦笑した。目は笑ってなさそうだ、と三代は暗闇に目を凝らしてみる。
と、そこで部屋の空気が変わった。



一旦切ります。
あ、鏡のトリックは『魔少年ビーティー』から頂きました。
多分俺の文章じゃワケ分からないので、どうしても気になる方は漫画の方お願いしますorz
1851:2010/01/15(金) 23:25:03 ID:aqypsblb
続き……はっ、これって二回更新? 快挙ッ(違



「……やっぱり、だ」
「あ?」
男が小さく漏らした。その背後で、双務が立ち上がった気配を三代は感じた。
そろそろと、横に移動している。黒板横、電灯のスイッチを入れるつもりだ。
「お前は、強い。それも、体とか能力がじゃあない。心が、だ」
男の声が、漆黒の空間に溶ける。三代は、先程負傷した右腕が、疼き始めているのに気付いた。
「嬉しいぞ。お前なら、繋がる。お前から、『根っこ』まで繋がる」
「おい、お前何言って」
「名を」
電気がついた。三代は白んだ視界に、素早く瞬きをする。
既に、男はスタンドを完全に引き出していた。紫色の体に付いたレンズが、光の中で輝く。
「お前らの名前を聞かせてくれないか?」
「な、何で」
今の台詞は双務だ。恐らく男のスタンドを捉えている。声が震えていた。
「俺の流儀だ。敵だとしても、名前くらいは知っておきたい」
その台詞と同時に、威圧。
男の向こうで、双務が膝を曲げた。座り込みそうになっていたが、寸前で堪えている。
三代は右手を庇いながらも、強く立っていた。その眼は、コートから離れない。
「……俺ァ、三代 元也だ」
「こ、小畑 双務」
「そうか」
男が目を細めた。びりびりと、部屋が震える。
「俺は『武氏木 豊信(ムシキ トヨノブ)』、だ。
 名乗ってくれてありがとうよ。こっからは……本気で相手してやる」
1861:2010/01/16(土) 21:30:20 ID:lGR+Wyhc
峠突入 大☆成☆功 \(^o^)/ 俺、ここ越えたらマッハで小説書くんだ……

レスへの返信はできそうですが、小説の更新はまだちょっと分かんないです。
休みは書けそうですけど、今日がダメなんで安定はしないと思います。

とりあえず明日また連絡か、できたら更新しますので……本当にごめんなさいorz
1871:2010/01/17(日) 22:55:06 ID:6mNXFfGe
やっぱり今日もダメそうです( ;ω;)<申し訳ない

今後は不定期更新になると思われますので、たま〜に覗きにきて頂ければ……
まとまった時間が取れるようになったらまた連絡します。

それではまた今度ノシ 
188創る名無しに見る名無し:2010/01/21(木) 22:44:48 ID:+3PuPuJB
まってるさ
1891:2010/01/22(金) 21:48:40 ID:KOYQaxVO
>>188
そう言ってくれると続きあげちゃうッ! 今ここで書いたヤツうッ!!
なんとか書ける時に一個。週末にはそれなりに時間がありそうです。
……ただし劣化注意。書いてる頃は集中力↓↓↓

スピードのある戦闘シーンは今後も重要な課題です。もっと余裕のある時に書けよ……orz



行動を起こしたのは三代だった。
その場で大きく跳ねたかと思うと、そのまま男に向かってドロップキックを放つ。
「リィア!」
突き出された脚を、武氏木は体を捻って避けた。カウンター、固く組まれた拳が振り下ろされる。
「ん」
声を漏らしたのは武氏木だった。三代は上体を下に向けたまま、床へと落下する。
そのまま両手をついて、逆立ちからの回し蹴りを見舞った。
「リィィ」武氏木の拳は、寸前まで三代の頭があった所を掠める。
「アァァッ!!」それに合わせ、無防備な胴を目掛けて、三代の脚が再び空を斬った。
黒板の方で、双務が歓声を上げる。高速のキックは、既に武氏木を捉えていた。
「決まったッ!」
「……と思うか?」
瞬間、武氏木は拳の鎚を解き、自分の膝に向けて肘鉄を繰り出す。
二つの関節は鈍い音を立てて、三代のキックを挟み込んだ。
「ぉああああ!?」
「スタンドの併用か……生身だったら骨ぐらい折れても良さそうだが」
その言葉に抑揚は無い。直後、砂利を咀嚼するような音が視聴覚室に響いた。
苦痛に顔を歪ませ、三代が体をよじる。不安定な姿勢での逆立ち、しかも右手は痛めているのだ。
武氏木は無表情のまま、執拗に三代の脚へ力を加える。
「このままへし折ってやる」
「やめろぉぉ!」
叫び声が視聴覚室に響いた。と、同時に衝突音。
1901:2010/01/24(日) 22:38:05 ID:jmCT1bm3
なんか前よりも書くのに神経使ってる気がします。
しかもこの出来……orz また週末まで去りませう。



「二度目は流石に喰らわんさ」
「双務」
三代は、腹にキックを喰らって仰け反る双務を捉えていた。
「やめろ」という叫びは彼の物だ。三代を助けるため、武氏木に向かってタックルをしていた。
が、武氏木は慌てる様子も見せず、脚を押さえたまま、スタンドでキックを見舞ったのだ。
双務の眼に、紫色の体皮が映っている。
「うあッ……」
「双務!」
痰の絡んだような粘りのある呻き、双務は顔を歪めて背後に倒れた。
冷ややかな目は、未だに三代を見ている。武氏木は、視線を逸らしていなかった。
「随分と適当な闘い方だな。俺の見当違いか?」
三代は床に手をついた、海老反りの状態で舌打ちをした。自分の脚を掴んでいる男を一瞥する。
今のパンチは正確だった。奴は見てもいないのに、双務の体を真っ直ぐ貫いたのだから。
これが本気、ねェ。
三代は僅かに視線を逸らした。男の無表情から、数センチ横。
不意に、武氏木の眼が大きく開く。
「お、目線で気付くのか」
「何を」
武氏木が質問する間も無く、三代は渾身の力で左手を伸ばす。地面を跳ねのける。
腹筋をするように、三代の上体が持ち上がった。重心が崩れ、押さえていた武氏木の肘が揺れる。
そして高速、顔を狙った右手のストレート。
「うッ!」
「オォッッ!!」
武氏木はとっさに首を曲げた。頬を、茶色の拳が掠める。


上出来だと、僕は思った。
殴られた腹が痛んだが、興奮のせいか立ち上がるのに影響は無い。
今のタックルは、半ば止められるのを覚悟でしたものだ。というか、止められて当然でもあった。
ただ、普通に『投げる』だけよりかは、よっぽどよかった。
僕の視界に、組み合っている男と三代君が映る。既に三代君はパンチを放っている。
今度こそ捉えた。
男が避ける。が、直後に破裂音。
茶色いスタンドの拳が、武氏木の首元にあるペットボトルを貫いていた。
今、僕の投げたお茶のペットボトルを。
1911:2010/01/30(土) 11:15:50 ID:b/7ANmXs
ただいますくめろんはにゅういんするともらえる
別に入院した訳じゃないです。



「凍れッッ!」
三代君が叫んだ瞬間、武氏木は目を剥いて背後に跳んだ。
押さえていた手が離れ、茶色の体が体勢を立て直す。
「これは……」
「油断したな?」
三代君はにやりと笑った。右腕を押さえているが、既に立ち上がっている。
「氷」
武氏木が、自分の首に手をやった。まるでマフラー……奴の首に、氷が張り付いている。


資料室での作戦会議のとき、僕は三代君の能力と、特性を知った。
一つ、液体に触れるとそれを個体にする。凍らせると言ってもいい。
二つ、個体になると物体の温度は下がる。実験してないので多分だが、水なら一気に0度だ。
そして三つ、凍らせる瞬間だけ液体は動かせる。
本当に、ただの一瞬だけだ。能力を見せるとき、彼は飲みかけのペットボトルを粉砕してみせた。
蛇のようにうねって、水が茶色の腕に固まる。
あれ、と僕は思った。床に水の落ちる音がしたのに、彼の傍に水跡は無い。
というか、見たのだ。一度地面まで墜落した水が、巻き戻しのように彼の腕まで浮かんだのを。


三つ目は非常に強力な点だ。多少狙いがアバウトでも、強引に目的を果たすことが出来る。
今なんかがそうだ。弾けた水は放射状に飛び散ったのだが、それを三代君が集めた。
そして、武氏木の首筋に固めた。正確には、肩と繋がるように、だ。
「どんな気分だ、枷をされてよォ」
「…………」
三代君の台詞に、若干の余裕が戻った。反対に、武氏木の表情に影が差す。
「肩と首を繋いだ。これでてめぇは首が振れねェ」
「……視線を逸らす必要は無い」
「分かってる! さっきのキックを見りゃあな。
 もちろん、それだけじゃねぇよ」
僕のことを、三代君が見た。小さく頷く。
「呼吸、苦しいですよね?」
武氏木が、ゆっくりと僕を見た。
「君が……この作戦を考えたのか」
「凍らせるとき、出来るだけキツく締めてって言ったんです。
 一瞬だから、窒息するほどは締められないけど」
僕と武氏木の目が合った。睨まれたが、今度は僕も怯まない。
「肺活量では圧倒的なハンデだ。パンチだって、もう強く踏ん張ることはできない」
「鬼の首でも……獲ったつもりか?」
「俺達が獲ったのは、てめぇの首だ」
三代君が言った。スタンドを現し、背を向けている武氏木に近寄る。
「さくっとぶちのめすからよォ、洗いざらい話してもらうぜ。
 てめぇの知ってることと、何で俺らに攻撃したかをな」
彼は、既にコートのすぐ後ろだ。左手を振りかぶる。
不意に武氏木が、両手を横に広げた。
192創る名無しに見る名無し:2010/01/30(土) 14:11:41 ID:zzt5YY6m
das
1931:2010/01/30(土) 23:06:54 ID:b/7ANmXs
>>192
? 略語? 誤爆?


秦基博さん、って歌手知ってますか?
俺は大ファンなんですが、知り合いの誰も知らない事に最近気付きました。
ライブだってしてるのに……行ったことないけど。

今日はもう寝ます。
明日は一個……多分書きます。
194創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 18:05:34 ID:VuZSRh99

三代は前の学校で宗教と闘ったという過去がありますが、城田、双務には巻き込まれただけで能力者達と積極的に闘う理由が薄いと思います。
そろそろ、城田、三代、双務の闘う理由をはっきりさせといた方がいいと思います。
1951:2010/01/31(日) 21:37:50 ID:11u2AhMN
>>194
現在、三代は宗教に触れたくないようです。今は武氏木が探してきた?ので問いつめたいだけで。
今後も主人公組は、命の危機に防衛するだけかと思います。転機が訪れなければ。

今週はこれで終わりです。週末が遠ぃ



がくん、と体が揺れた。
僕だけじゃあない。三代君も同じように体勢を崩した。
「おぁッ!?」
「うわぁ!」
足が床から離れた。ぎょっとする間もなく、上体が引っ張られる。
……引っ張られる?
「『ファニー・アトラクション』ッッ!!」
武氏木の叫びに同調するように、僕の体が前につんのめる。
視界からは外れてしまったが、三代君も恐らく同じ状況だろう。
上体が、床と平行になった。僕は慌てて、ポケットの中を探る。
「う、うわぁ、ぁああ!!」
「た、倒れるッ!」


違うな、武氏木は思った。今三代は、『倒れる』ではなく、『落ちる』と形容するべきだ。
手をばたつかせる双務を見ながら、武氏木はぼんやりと考える。
冷静になれ。
興奮で頭が回らないなど、何時ぶりだったろうか。先程から、内心でずっと警告があった。
それがようやく形になったのは、首の冷たい締め付けのせいかもしれない。
落ち着いてみれば、どうと言う事は無かった。自分の能力に、武氏木は自信があった。
「またペットボトルか?」
「あ……」
奇妙な瞬間だった。目の前で黄色いペットボトルを取り出した双務は、腹這いで宙に浮いている。
訳が分からない様子で、双務が瞬きした。武氏木は哀れみを浮かべて、その顔に蹴りを入れる。
背後で、三代の叫びがした。自分の腰の辺りからだ。
「悪いな」
「げぅ……」
悪びれた様子も無く、武氏木は脚に力を込める。
双務の頬に入ったブーツは、奥歯を抉るように空を斬った。
「双務ゥゥッッ!!」
武氏木は、上げていた右手を降ろした。そのまま、背後に回して防御の姿勢をとる。

一瞬後、空中にいると思われる三代の攻撃が、武氏木の腕を襲った。
……が、そのとき武氏木は目を丸くして双務を見ていた。
少年は吹き飛んでいる。確かに、攻撃は深く入った。
それなのに、男は唇を舐める。今の一撃に、自信が無かった。
1961:2010/02/06(土) 19:06:20 ID:ADBUrLbc
最近どうにもだるいです。というか、週をまたぐと意欲が……



武氏木は軽やかに回った。防御の構えを維持したまま、三代の方へ顔を向ける。
それと同時に、男はコートの中から、数分前に手に入れたペットボトルを取り出した。
「武氏木ィィィ!」
三代が、不安定な姿勢から二回目のパンチを放つ。
武氏木はフッ、と息を吸うと、姿勢を低くしてそれを避けた。そのまま、三代の懐まで飛び込む。
「うッ!?」
「熱くなるなよ。これじゃあさっきと逆だ」
紫色の掌が触れると、三代は体を震わせた。急ブレーキをかけられたように、前のめりになる。
驚愕に歪む顔に向かって、武氏木はペットボトルの液体ををぶちまけた。
「うおぁ!」
「ん、ちょっと少ないか?」
能力は消えた。床に倒れ込んだ三代は、反射的に顔を拭う。この臭いはコーラ……?
だが、瞬きをした瞬間、眼に痛みが来た。炭酸の、泡の弾ける音が涙腺に響く。
「ぐォ……」
「炭酸水も、一応酸性の液体だからな。失明とまでは行かないが」
その台詞を聞いて、三代は体を丸めた。来ると思われる攻撃に、瞬間的に反応したのだ。
しかし衝撃は無い。代わりに、ブーツの足音が聞こえた。この方向は
「その状態では、防衛出来ないだろ?」
「待て武氏木! 双務はもう」
「確認するだけだ」
三代は、声の方向に向かってパンチを放った。だが、当たった感触は無い。
嘲るような武氏木の声が聞こえた。眼を強く擦る。瞼の裏に、火花が弾けた気がした。
「そいつを殺すのか!?」
「まさか……まさか、だ」
三代は強く眼を見張る。小刻みに痛みが襲う、茶色に淀んだ視界。
そこに、背中を見せて横たわる双務が見えた。そして、もうすぐ傍まで来ている武氏木も。
「双務!」
三代が叫んだ。すると、双務の物と思われる声が、双務の方から漏れてきた。
「あ」
「……ちッ」
武氏木は、脚を振った。


僕の体は、どうやら浮いているらしかった。覚醒してから数秒、ようやく気付く。
眼下に、唖然として目を見張る武氏木が見えた。三代君も見えたが、なにやら様子がおかしい。
「三代君」
声を発した時、背中に妙な感触があった。首を向けると、自分の体から紐が出ている。
白い紐だ。それが、天井の突起部分に引っ掛かって、僕を持ち上げている。
細い線は、生き物のようにうねった。僕の体は少しずつ床に近づく。
ただ、武氏木からは若干距離のある所に降りた。
「……え〜と」
「なんなんだ?」
武氏木が声を漏らした。
「お前らは、一体なんなんだ?」
僕の方が聞きたかった。
1971:2010/02/07(日) 21:33:20 ID:GVxY7jMl
今週終わり。もうなんか終わらない気がしてきた二章。
あ、双務のスタンドはストーンフリーと区別します。とりあえず人型にはならないです。



双務の行動はなかなか速かった。
混乱はしていたが、それをねじ伏せる判断力。半ば反射的な行動と言ってもいい。
右手の人差し指で、武氏木の事を指す。瞬間、指先から糸が吹き出た。

スタンドなんだろうか、その糸は純白だった。双務はゆっくりと頭を回転させる。
首筋の、シャツの襟が揺れた。右の肩甲骨の当たりに、自分の重さの感触が残っている。
先程自分を吊り下げていたのは、糸の寄り集まった紐だ。
新聞紙を縛るような細紐。だが、そのたった一本で双務は宙に浮いていた。
双務は、そっと自分の頬に手を触れてみる。
膜が剥がれるように、網状になった糸の感触があった。これでキックを防御したらしい。
息を吸った。そのまま止める。

「うッ!」
武氏木は仰け反った。網状になった白い紐が、自分の体に被さった。
瞬きする。開けた視界に、細かな網と、それを掴んでいる双務が見えた。
「これは……!?」
ファニー・アトラクションが、乱暴に拳を振り回す。だが、紐に千切れる気配は無い。
向こうで双務が網を束ねている。表情は苦しそうだが、この強度なら破れはしないだろう。
いや、なによりも速さだ! 武氏木は呻き声を漏らした。
虚を突かれたとは言え、糸が編まれるのに反応さえ出来なかったのだ。焦りが脳髄にへばりつく。
「三代君!」
双務が叫んだ。目を押さえたまま、三代が反応する。同時に武氏木が顔を強張らせた。
「その目についてるのは、コーラだ! 君の能力でどうとでもなる!」
「させは、しない」
武氏木が体を捻る。尋常でない力に、双務が網を持ったまま体勢を崩した。
「う、くそ……ッ!」
「問題は、無い。糸で俺は倒せないし、こっちのガキは」
這っている三代の傍に、武氏木が立つ。
武氏木の顔には糸がめり込んでおり、掠れた呼吸を止められていない。充血した目で三代を見る。
「これで、終わる」
「三代く……ッ!?」
紫の腕が、網を強引に引っ張った。双務は手を離したが、指先から大きく引きずられる。
双務の手が離れた事で、網はある程度自由になった。パンチが出来る程度には。
「勝者はこの俺だ! 依然変わりなくッッ!!」
硬く握られた拳が、三代の頭に振り降ろされた。



一旦切ります。
1981:2010/02/07(日) 22:53:10 ID:GVxY7jMl
三代は、今の事態にそれほど驚いてはいなかった。
むしろ必然ではないか? そうとさえ思っていた。
再び、脳裏にかつての友人の顔が映る。今度は敵対する前の物だ。
おどけた笑い顔が、瞼の裏で揺れる。


「お前の負けだよ」
三代は言った。時間にして一瞬、動きを止めた武氏木に、言った。
立ち上がるのに、一秒もかからない。ブラウン・クラウンが拳を強く握る。
武氏木は、血みどろの右手を庇っていた。

武氏木が攻撃を仕掛けた時、三代は目に付着したコーラに触れていた。
彼の能力の利点は、触れた液体を丸々操作できる事だ。
目から垂れた一滴、それに触れれば、目の中のコーラまで引っ張り出せる。
コーラが無ければ痛みは無い。あとは、攻撃に備えるだけだ。

三代の右眉に、鋭利な刃が張り付いていた。茶色の、氷。
「それは……」
「コーラだ。引っ張り出して、固めた」
氷刃は血で濡れている。打撃に合わせて顔を上げることで、三代は刃を拳に突き刺した。
武氏木の右掌は、もうほとんど動いていない。
「御愁傷様、ってェとこだな。尺も使いすぎたし、いい加減潰すぜ」
「ぐッ……!」
三代の台詞は、既に確かな力を持っている。
男は一歩引いた。そして、足下に張られた糸に体勢を崩した。
「お」
「御愁傷様です」
地面から足が離れた武氏木に、双務が言った。
倒れかかる後頭部を、もう一本の張っていた糸で捕らえる。
「三代君!」
そのまま、プロレスのロープアクションのように、武氏木を前に弾いた。
三代に向けて。
「おぁッ……」
「よォ」
茶色の拳は空を斬る。
男に比べれば数段静かな、少年の怒りを乗せて。

「リアリアリアリアリアリアリアリアリア
 リアァァァァァァァ!!!!!」



多少強引ですが、今日は〆。お疲れさまでした。
199創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 15:19:08 ID:rPdZjwZ7
リアリアラッシュwww
2001:2010/02/11(木) 20:47:12 ID:Vm/tntpV
>>199
ラッシュってあれどこまで掛け声に使えるんですかね。
俺のボキャだと苦悶すぎて……ッ!

せっかくのお休み、ちょっとでも書いてみるテスト。次回から城田に戻ります。



武氏木は崩れた。大きく空を舞い、双務の頭上を越える。
出血はそれ程でもなさそうだ。が、体勢は酷い。三代の攻撃は関節を捉えていた。
「ぶぐぁ……ッ!!」
「フィニッシュ、だぜ」
コートを羽織った肢体が墜落した。三代が大きく伸びをする。
ブラウン・クラウンは彼の隣で、武氏木に向かって中指を立てていた。
こういうの昨日も見たなぁ、と、双務は苦笑する。

傍に行くと、武氏木はボロボロながら体を震わせた。
「ぐ……ォ」
「げ、まだ起きてる」
双務が言葉を漏らすと、武氏木が睨んできた。背筋に震えが来る。
その瞳は、おおよそ重傷の人間が備えるようなモノではなかった。
狂気の含まれた強い目線、思わず双務は後ずさりした。
「なァ」
その時、三代が口を開いた。その口調はのんびりとしていて、双務は彼の顔を見る。
三代の表情に、怒りは既にない。殴ったことで気が済んだのだろうか。首を傾げた。
「お前勘違いしてねェか?」
「え」
「……!!」
双務は声を漏らした。武氏木は三代に視線を移し、じっと睨み合う。
「なんか変だって思ってたんだ。お前、迷ってたよな。
 それも殴ることへの躊躇じゃなくてよ」
そこまで言ったとき、三代が動きを止めた。もぞもぞと懐を探り、携帯電話を取り出す。
震えていた。双務が目をやると、三代は口で「城田」と言った。
三代は、双務に電話を渡す。

「武氏木っつったよな。てめぇは、テストやってて焦るガキみてェだった。
 多分だが、俺らのこと、宗教の奴だと思ったろ」
「な」
「で、お前が途中から思ったとおり、だ。俺らは違うんだよ。後でしっかり話してやる」
「三代君」
「……あっちを終わらせてからな」
2011:2010/02/13(土) 22:16:37 ID:ImSm6LrV
バックバック。>>170のあと、三代たちの時間を追いかけていきます。
が、練り直してみたらマズいかもです。こ、構成がはまらない……ッ!?



美樹と友達になったのは、中学の時だった。
引っ込み思案の私に、彼女から声をかけてくれたのだ。
私が不登校にならなかったのは、美樹がいたから、と言っても過言ではない。
強くて、ばっさり物が言える美樹を、私はいつも追いかけてきた。


城田は、トイレから出るなり辺りに気を配った。音楽室からは未だに歌が聞こえ、廊下は無人だ。
後ろから姫成が続いてきた。ちらと目をやると、忙しなく視線を揺らしている。
「言っとくが、もうどうにもならないぞ」
「そんなこと言わないで!」
携帯のランプが消えてから、一分と経っていなかった。が、既に姫成の顔に余裕はない。
再び焦りが浮かんでいた。その影が思いの外深く、城田は眉を潜める。
「バラまかれる……わたっ、私の写真が」
「おい」
「笑われるわ! みんなが……脅してくる」
姫成は、突然爪を噛み始めた。追い詰められた様子で、声を漏らす。
音楽室から拍手が聞こえてきた。
舌打ちして、城田は姫成の肩を抱く。そのまま、傍の階段に歩を進めた。
動転した彼女を、この場に置いていくのはマズい。直感で、城田はそう思った。
「姫成」
返事は無い。背後の拍手が弱まるように、城田たちは階下へ消えていく。

城田は、姫成の言った「息をしてないような」という台詞を気にかけていた。
自分を覗いていた女子に対する言葉だ。が、城田はそれを比喩とは取れないでいた。
現場に立ち会わせたとき、自分もそう感じたからだ。
最初城田は、姫成が個室で暴行を受けていると思った。だから、頭上の巨体に気づけなかった。
それだけか? 改めて考察する。あの太った女子は、仮に50メートル離れても目に止まるだろう。
なのに、城田は気づけなかった。あの女子からは、気配という気配が消えていたのだ。

「獣は、狩りをするとき息を止める。
 気配を消すのに、呼吸は邪魔なんだ。音もあるし、風の流れだって変わる」
城田たちは、二階に到達していた。まだ震えている姫成に、城田は話しかける。
「あの女だって隠れる必要があった。覗きってのは、一大イベントだからな。
 ……まぁ、それは分かる。ただ、あの女はちょっと違ったんだよ。
 分かるか? あの女は、『自分が落ちていくとき』も息をしていないようだった」
相変わらず姫成は反応しない。城田は、すれ違った学生に会釈する。
その視線は物珍しげだった。姫成に服の替えを聞くと、店にあるらしい。
「じゃあ、降りてきたら回り道だったな」
「……どうして」
「ん」
ようやく、姫成が自分から口を開いた。
二階にはフリースペースが広がっている。喧噪の中で、姫成の声はじわりと滲んだ。
「どうして私が……虐められるの?」
「相手は誰でもよかったのかもしれない」
「そんなことって無いわ!」
城田の相槌に、姫成が呻いた。彼女の眼が、回想するように丸くなる。
吸い込まれるような瞳だった。虚無へと落ちていくような、深い黒。
思わず、城田は立ち止まった。隣の少女の電池が、急に切れたような錯覚を受けたのだ。
それと同時に、姫成が口を開く。
「美樹」
202創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 13:54:08 ID:LVdkAHpG
>>1
乙。
続きすげー楽しみにしてるから。
2031:2010/02/14(日) 22:15:40 ID:N7jhTUAH
>>202
うびゃあぁぁああ! ありがとうございますぅぅぅ!!

今週ラスト。なんとか続けていきたいと思います……



姫成が、突然腕から抜けた。
「うおッ!?」
「美樹に会わなきゃ」
駆け出す直前、姫成が小さく呟いた。直後、一気に廊下を駆ける。
「待て姫成!」
思わず叫んだ。周りの白い目など気にしていられない。
姫成は速かった。ものの数秒で人混みに消える。城田は、姫成の背の低さに気づいた。
「ひ……」
恐らくもう届かない。出かけた言葉を飲み込む。半開きの口に、通りかかる少女が顔をしかめた。
マズい。城田は一瞬思考する。
姫成には既に警告した、敵に関してもこちらの誤解だった……ならば、姫成にもう用はない?
それだ! 城田は瞬きした。本当に、椎名は敵じゃないのか?

改めて回想する。姫成はトイレで覗きにあった。あそこは、椎名が強く勧めた場所だ。
椎名はいなくなった。
あのデブは、自分の身に危険が迫っても呼吸を止めていた。
普通の人間なら、反射的に息は漏れる。
よく考えれば、人が集中的に集まる文化祭で、あんな行為をするのもおかしいことだ。
早計かもしれないが……あの女子高生は、何かしらの『力』に囚われていた可能性が高い。
それも、恐らく椎名によって。ひょっとすると、スタンドによって。

城田が背後の視線に気づくまで、それ程はかからなかった。
ちらりと眼をやる。一階への階段、その中間スペースに、少女がいた。
「椎名、美樹」
今度は、完全に誘っていた。制服に着替えていた椎名は、挑戦的に眉を上げてみせる。
そして不敵な笑みとともに、一階に消えた。
城田は、姫成の走っていった廊下を一瞥する。既に、あのフリフリの服は欠片も見えない。
もう追いかけるのは厳しい。城田は、スタンドを現して階段に近寄った。


<ここで階段は終わり>


二段下ると、椎名のいた中間地点に着いた。おや、と眉を上げる。
随分短い階段だな……そのまま、床に向かって足を踏み出す。
体が浮いた。上体が空中で前のめりになる。
踏み出した右足は、床に陥没した。呆気に取られる間もなく、もう一方の足も段から浮いた。
2041:2010/02/20(土) 22:46:04 ID:jqYUb33T
ダイレクト・メールは一部改造してます。>>59さんすいませんorz
どんな風に変えたかは……けっこうバレバレですかね。



子供の頃からテディベアが好きだった。
あのふっくらとした手触りや、少しずつ違う各々の顔。
そして、何も言わずに遊んでくれるところが可愛らしいと思う。
小学校も高学年くらいまで、私の親友は彼らだけだった。


「ストレンジ・サイクロンッッ!!」
城田が叫んだのは、落ち始めるとほぼ同時だった。
階段の窓は開いている。階下のフロアにも、解放されている窓が見える。
外の木々が、風に揺れている。
轟音がした。洪水で水が溢れるように、うねる風が校舎内に吹き荒れる。
『うわぁッ!?』『きゃぁぁあ!』
叫び声を追い越し、異常な勢いで突風が通過した。風は獣のように階段を上る。
「おぁッ!」
城田の横腹に、衝撃があった。風が体を大きく揺さぶる。
墜落しかけた体は、がくんと失速し、横の壁に叩きつけられた。
中間の床から1メートルほど、城田の体はそこで勢いを失う。
「ッ!」
うめき声が漏れ、城田は地面に落ちた。とっさに体勢を立て直し、床に立つ。
「今のは……」
思わず咳き込んだ。横腹からじわりと、呼吸の度に痛みが響く。
今のは、何だ。
視線を辺りに向けた。ちらりと椎名が見えた気がしたが、忙しげに動く人の波が邪魔になる。
心配そうな顔が、上階から降りてくるのも見えた。腰に手を当て、ゆっくりと立つ。
目を閉じた。背後の壁に背中を預け、息を落ち着かせる。
階段を踏み外した。二段目で終わりだと思った。
なんだそれは。
目を開き、慎重に一歩を踏み出す。今のは間違いなく椎名の攻撃だが、何をされたか分からない。
だが、階段を降りなければ椎名を追えないのだ。
結局城田は、罠のなかった階段を、2分かけて降りた。二階のフロアに降り、再び辺りを見渡す。


<ここは西戸高校の校庭>


足下の砂がじゃりと音を立てる。城田は、秋の冷風に肌を震わせた。
暖房が効き過ぎて熱い、と漏らしていた隣の学生は、それを見て首を傾げる。
2051:2010/02/20(土) 22:55:47 ID:jqYUb33T
>>204
最初の引用の数字、>>59じゃなくて>>49でした。バカスorz orz
2061:2010/02/21(日) 22:52:01 ID:aLNhJjYb
今週ラスト。一回データ消えちゃって俺の寿命がストレスでマッハ



「おィ、何があった城田」
「罠にはまった」
「あ?」
「いや、俺は大丈夫だ。それより、人捜しを頼まれてくれ」
「……あ〜、行けるのは俺だけだ」
「問題ない。特徴言うぞ」


椎名は城田を撒いた後、喫茶店まで戻ってきていた。
ちょうど昼の時間帯、文化祭では飲食店ごとに、時間差で食事休憩が与えられていた。
メイド喫茶は今だ。スライド式のドアには、『休憩中』の札がある。
生徒のほとんどは、この時間に他の店へ遊びに行く筈だ。扉の向こうに人の気配はない。
いや、一人だけ、いるとは思うが。
「ただいま」
店に入ると、予想通り姫成がいた。
椎名の台詞に、窓の外に向けていた視線をこちらに動かす。
その眼は疲労で滲んでいた。椎名は無表情のまま、内心で笑みを浮かべる。
「美樹」
「もう、どこ行ってたの! 探したんだから……」
ゆっくりと近づくと、見る見るうちに姫成は目に涙を溜める。
程なく駆け寄ってきて、椎名に抱きついてきた。
「うあぁぁ美樹ぃぃぃ!」
「……何かあったの?」
酷い質問だな。椎名は自分で毒づく。そして、酷いと言えばこの娘も。
先ほどから理屈の合わないことばかり言っているのに、何一つ疑問に思っていない。
ただ、理解者の出現に安堵しているだけだ。
依存されているのを感じ、椎名はぞくぞくと背筋を震わせた。
これは愉悦か。それとも、嫌悪か。
「えッ、あの、のぞ……覗かれて」
「トイレしてるのを?」
こくりと、少女が顎を引く。そのまま椎名に体を預けた。
いつものパターンだ。いつもなら、私が慰めてあげるのだ。
いつもなら、ね。椎名は姫成の肩に手をやり、ゆっくりと引き離した。
「え、み……美樹?」
姫成と目が合う。そのとたん、彼女の表情が強張った。笑いが漏れたか、椎名はそこで気づいた。
「どうしたの」
「これ、何だと思う」

その時椎名に、ふと過去の情景が蘇った。
最初に、テディベアに囲まれ眠りに落ちる自分。
椎名は虚ろな目で、テディベアの目を強く握った。ビー玉の黒い目が、強くつぶされる。
次に、姫成と会話をしている所だ。椎名の申し出に、口を曲げる姫成が映る。
言うとおりにならない『人形』なんていらない。脳内で、椎名は反芻した。

愕然とする姫成を前にして、椎名は会心の笑みを浮かべた。
卑猥な写真が、目の前のケータイの画面で揺れる。
姫成は、止まりかけた涙を、再び潤ませた。
2071:2010/02/28(日) 00:28:44 ID:IhLaGqq1
ここらへんはテンション下がる下がる。強引でもさっさと終わらせたいです。



姫成の呻き声は、椎名の口から漏れた笑い声に消された。
既に、彼女の目には怯えが戻ってきている。椎名はその頬に、携帯を押しつけた。
無言だった。二人は数秒、そのままの体勢で固まっていた。
凍り付いたような空間。何も言えず、泣きもせずにいる姫成に、椎名は笑みを歪めた。
「泣きなさいよ」携帯を握る手を強める。
「問い詰めなさいよ!」鋭く叫ぶと、姫成は体を震わせ、椎名のことを両手で押した。
力はない。「ほら、できない」椎名は嘲るような表情で、一歩引いた。
「何で美樹が」
「あんた、最近生意気じゃない。私の言うこと聞かないし」
「だ、だってそれは」
「私はあんたのことを何時だって思ってきた! 傍にいたし、話も聞いた……
 私の言うことに、全部あんたがホイホイ従ったからよ!」
思わず口調が強くなった。姫成は泣きそうな顔で、耳を塞いでうずくまる。
弱いなぁ。優越感がぞくぞくと背筋に走る。なんだ、私、全然強いじゃない。
姫成は、教室の床に膝を抱えるようにしてしゃがみ込んだ。頭が、すぐ足下にある。
「そ……そんなこと言わないで……」
弱々しい声を無視する。右足を、ゆっくりと上げる。


「随分と酷い友人だ」
教室に男の声が響いた。
ぎょっとして、椎名は背後を見る。開きっぱなしの教室のドアから、人が入ってきた。
「なッ!?」
「あ〜……最悪だ。体は痛いし、こんなもん見ることになるとはな」
二丈、城田。彼は腹を押さえていた。右手からは出血しており、よく見ると頬に切り傷がある。
城田は頭を掻きながら、教室の真ん中辺りで止まった。
窓際にいる椎名と姫成を見据えてくる。うずくまっていた姫成が、そっと顔を上げた。
「……え」
「どうして」
瞬間椎名は、反射的に携帯を後ろに隠す。気のせいか、後ろからの風が弱くなった気がした。
「どうやって私の能力を!?」
「自分から言ってくれて助かる」
城田は右手を振った。そのまま額にかかった髪に触れる。黒い線の向こうに、赤い皮膚が見えた。
「俺はさっき、どういう訳か室内で遭難した」
「……!」
「校庭だと思って走ってたら、階段から転げ落ちたよ。今日二回目だ」
椎名は、城田の横に並ぶ人影を捉えていた。自分も右手を震わせるが、テディベアは出てこない。
「怪我しなかったの?」
「二度目はデブが下敷きになってくれた。用途を間違えなければ、肥満体でも奉仕はできる。
 ……で、そこに至ってようやく、『こいつは催眠じゃないか』と思ったわけだ」
気付けば、さっきまで部屋に満ちていた、恐怖の感情が消えている。
姫成が顔を上げていた。そのことに気付き、椎名は舌打ちをする。
「でも、気づけるはずない」
「それだ! お前の能力は、恐らくかなり強い。催眠にかかってるって、分からないからな。
 本当にこれであってる、と思い込むわけだ」
城田はにやりとして言う。その表情に、椎名は滲み出てくる達成感を感じ取った。
「ま、攻略はした。お前、アクションゲームって言えばダンジョン攻略だろ?」


最初に、耳を塞いで歩いてみた。椎名を見つけたんで殴ってみたら、廊下の鏡だった。
次は鼻だ。すれ違う人の目線も痛かったが、曲がり角だと思って壁に突進した。
しょうがないんで、最後に目を閉じてみた。壁伝いに歩いて、なんとか一フロアを横断した。
これが正解。お前の能力は、『相手に何かを見せて、催眠にかける』能力だ。
2081:2010/02/28(日) 22:16:10 ID:IhLaGqq1
今週ラスト。来週はちょっと更新できるか微妙なとこです……



「目を閉じてここまできたの? っていうか、なんで私たちの場所が!?」
「お、それも重要だったな。ここにお前らがいるかどうかも、俺には分からなかったんだから」
城田は、姫成たちのの背後を指さした。
「仲間だ」
「!!」
椎名が振り向く。窓の向こう……特別教室棟の廊下から、ジャージの学生が、こちらを見ていた。
「喫茶店で一緒にいた奴」
「なかなか良い記憶力だ。あいつに、『喫茶店の制服着た女子』を探すよう言った」
椎名は振り向きざまに城田を睨んだ。意に介す様子もなく、城田はふっと笑う。
「それと、場所の目星だが……ここらには飲食店が並んでるからな。
 俺のスタンドは、『風を操る』んだよ」
臭い、か! 椎名は愕然とするより、自分の抜け具合に腹が立った。
この男を舐めすぎていた。能力者だと分かった時点で、煙に巻くべきだった。
そして部屋の入り口にも『書いておく』べきだった。城田は笑みを止め、一歩を踏み出してくる。
「話してもらうぞ。なんで俺を攻撃したのか、なんでそいつに固執するのか」
「……後のは、関係ないでしょ」
「別件で用があるんだよ……おい、何のマネだ」
城田が足を止め、姫成がひっと悲鳴を上げる。椎名が突然、携帯を顔の前に掲げたのだ。
「さっき言ってた写真?」
「来たら、これをネットに投稿するわ」
姫成が息を呑み、城田は呆れた様子で瞬きした。
なんて間の抜けた脅迫だろうか。椎名は自分でも、追い詰められていることを痛感する。
「俺にそれを言うか?」
「あら、その『影』で壊しに来ればいいじゃない。あなたにリスクはないわけだし。
 ただ……この子がしばらく、ネタにされるだけだわ。色々、ね」
「だ、だめ」
椎名の後ろで呻く姫成の姿は、哀れを通り越して滑稽だった。
すがるように椎名に手を伸ばしており、完全なパニックで泣くこともできないようだった。
流石に無視できないのか、城田は頭に手をやり、溜息をつく。
「お前、性格悪いな」
「ふふ、代わりに質問に答えてあげる……あなたは、邪魔だったの。この子を壊すのに」
「壊す?」
「この子にストレスぶち込んで、ガタガタになったところに私が参上。
 幸せそうにホッとしたところへ、とどめ」
「な、何でそんなこと」
「…………」
姫成の質問には答えない。城田はわざとらしく首を傾げる。
「俺には女の考えなんて分からん……が、ストレス、か。
 あれだろ? 喫茶店で絡んできた男も、お前の差し金だろ?」
城田の台詞に、椎名も姫成も固まった。
「え」
「どうして」
「あいつも、騒ぎすぎた」
城田は、そこで苦々しげに言葉を切る。まるで窓の向こうで、何か不都合が起きたように。
「あ〜……ま、いい。いいか? あの時、喫茶店のほとんどの客があいつを見ていた。
 後から問題になるのは確実だろ。なのに、あいつは止めなかった」
そこで、椎名と城田の目線が合った。強い眼力に、椎名は僅かに怯む。
「お前が何をしようと、俺としては正直どうでもいいんだ。
 だが、他人を巻き込むのは感心しない。自分一人でやる覚悟もないのに、騒ぎなんか起こすな」

何様だろうか、この男は。沈黙が教室に満ち、数秒が経つ。
椎名は萎んでいた怒りを、再び燃え上がらせていた。何故、こんな風に言われなければならない?
気付くと、視界の端にテディベアが見えた。城田の向こう、開けられたドアの傍だ。
さっき出そうと試みたが、あれは失敗していなかったらしい。
睨んでくる城田の背後で、小さなクマが忙しげに動きだした。
209創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 11:12:16 ID:BkNyveQG
スタンド名「イマクニ」

スタンド像:人型、全身黒で顔は白

能力:生物にガチャガチャのカプセルをぶつけることで、大きさを問わず中に閉じ込められる。
   入れる時と出す時は対象の名前を口に出して言う必要がある。(固有名詞があれば固有名詞でなければならない)
   簡単な洗脳効果もあり、動物や憔悴した人間であれば出して操ることが可能。

破壊力 E
スピード E
射程距離 B
持続力 A
精密動作 A
成長性 C
2101:2010/03/05(金) 22:53:19 ID:jkUWMYnq
>>209
ポケwwwwwモンwwwwww言えるwwwwwかなwwwwwwwww
闘う前に本体が職質されてしまう……ッ!

ちょっと時間の関係で本編の方は放置します。代わりに、なんか書きたくなった日常話を。
サイドストーリーですので、時系列は気にしないでくださると嬉しいです。
っていうかこんなことしてる暇も本当はないとかないとかないとかぉぉぉぉぉ



美人が困ってると、最初に話しかけたのは三代君だ。
だが、相手の第一声、「二丈城田って」で、開始早々不機嫌になってしまった。
「この学校の人ですよね。知ってますか?」
「あぁ、あぁ。知ってるよ。よォ〜く知ってる。今面談中だから、もうちょっとで出てくるだろ」
制服……ここらの高校の制服ではないが、それを着た少女は、ぺこりと頭を下げて礼を言った。
へェ、と返す三代君の横で、僕は苦笑いして会釈した。

城田君はモテた。羨ましい。
積極的に会話しようとする女子はいないが、それでもこっそり人気があった。ズルい。
ついでにそれはうちの学校内の話で、他の学校からはたまに女子が来たりもした。妬ましい。
「多分、あのシュッとした鼻とか顎からよぉ……アレが出てんだ。ファロモン」
「フェロモンね。まぁボサボサ髪も様になってるし、美形なのは間違いないけど」
「あいつの欠点は、イケメンな所だ」
僕らは校門で城田君を待っていた。少女もいるが、ちょっと距離を置かれている。
「警戒されてるな……俺ァ確かにイケメンじゃねぇが、そこまでビビらせる面か?」
「君が一睨みすれば、どんな不良だって気絶するよ」
言ってはなんだが、彼の顔はなかなかにドスが効いていた。
ぐっと伸びる眉が強い目力と合わさって……ゴツい。し、深い。し、渋い。
「うるせぇぞフツメンが」
「……それけっこう傷つくんだけどさ。無個性ってことじゃん」
「何言ってんだ? お前は背ェ低いだろうが。軽くキーホルダーチックだ」
「無機物ってことじゃん」
エンジンがかかり、僕らは自虐ネタでしばらく戯れた。なんて悲しい放課後だろうか……
そんな二人の男をよそに、少女はじっと待っていた。陽は傾きつつあり、頬が黄金色に光る。
ネタも尽きた頃、僕らは半ば不可抗力気味に、視線をそちらへと向けた。
「……やっぱり、かわいいよね」
「あぁ……かわいいな」
少女の背は普通ぐらいだったが、その鋭敏な顎には大人のオーラが漂っている。
滑らかな鼻からは、どういう訳か良い臭いがする予感があった。
「結んでない髪ってのも、なかなか良いよね」
「あぁ……サラサラって言うより、フワフワだろうな」
「しかも、なんか見覚えない?」
「あぁ……なんかある気がする。実は結構近くに住んでるのかもな」

さて、賢明な人ならもうお気付きだろうが、彼女は城田君を視界に捉えた瞬間
「お兄ちゃん!」
と言った。
僕らは揃って唖然とし、迷惑そうに顔をしかめた城田君を恨んだ。


ちょっと続く?
2111:2010/03/06(土) 13:55:27 ID:w3XM5jWt
息抜きと称して文字を書く。見事な作戦だと感心するがどこもおかしくはないな。



結局、僕らは四人で揃って帰路につくことになった。
僕はともかく、さっきから右隣の三代君が怖い。左隣には城田君と、妹さんがいるんだけど……
ちなみに城田君の妹は、二丈 理彩(ニジョウ リサ)と言った。
私立中学に通っているらしく、道理で制服に見覚えがなかったわけだ。
しばらくして、流石に耐えきれなくなったのか、城田君が口を開いた。
「……おい、睨むのを止めてくれないか」
「いや、それはできねェな。俺は今、格差社会について考えてるところだからよォ」
「三代さんって、頭が良いんですね」
皮肉ではないようだったが、その台詞は、三代君にクリーンヒットしたらしかった。
三代君は理彩さんに視線を移した。少女は身震いした。
「す、すいません」
「……ま、いいけどよォ。で、なんでお前さんは城田に会いに来たんだ?」
溜息をつきがてら、三代君が聞いた。理彩さんはそれに反応し、ちらと兄の方を見た。
「なんか最近、ストーカーされてるみたいなんです」

実際に話をしてみると、少女はとても愛想がよかった。
屈託なく笑い、ころころと表情が変わる。気味の悪さを熱く語る姿は、どこか微笑ましい。
兄とは正反対で、感情が強く出る……というより、感情で動いている風だった。
「っていう感じなんです! 足音もしないし、まるで幽霊みたいなんですよ。ね、お兄ちゃん」
「今初めて聞いた」
「あ、そうだっけ。でも、最近近づいてきてる気がして……心細いんです。一人で帰るの」
「心当たりとかはないの?」
「はい。私は女子校ですし、あんまり男の人とは喋ったことないですし……」
「まぁ、一番かわいそうなのはストーカー自身だろうがなァ」
しゅんとする少女に、三代君が快活に言って見せた。その後で、城田君の方を見る。
どうやら、話を聞いているうちに、彼の怒りはどこかへ行ってしまったらしい。
今となっては楽しげだ。不謹慎だなぁ、と、僕は苦笑いする。
「な、お兄さんよォ」
「……どういう意味だ?」
「あ、話は変わるけどよォ、俺探偵ごっことか好きなんだぜ。主に取り押さえんのが」
彼は、やる気を漲らせてスタンドを現した。
「とっつかまえてやろうぜ、そいつ。っていうか、そうするつもりだろ?」
「何で俺が」
「だって落ち着いてるしよォ。内心ブチギレてんだろ? 気持ちは察するぜお兄ちゃん」
「誰がお兄ちゃんだ。いや、これはそうじゃなくて……」
「あれ?」
不意に、理彩さんが声を上げた。ちょっと普通じゃない声に、僕らは思わず足を止めた。
「どうした」
「その人、あれ? いつの間に? っていうかどちら様?」
少女は首を傾げて、三代君の方を見ていた。というか、彼のスタンドを。
「……おい、城田」
「そういうことだ」
「どういうことだよ」
2121:2010/03/06(土) 19:30:43 ID:w3XM5jWt
>>116さんの『ブルドックノーズ』使用です。能力も出てないし、また出すと思います。



城田君は、家の前で僕らに話をした。妹さんは既に中へ入っている。
「あいつもスタンド使い、だ」
「う……やっぱりそうなんだ」
「あいつを追っかけ回してるのは、あいつ自身のスタンドなんだよ」
「なんだそれ」
「こういうことだ」

数日前、妹さん自身が気付くよりも早く、城田君はその存在に気付いていた。
毎晩夜遅く、家に近寄ってくるその気配……敵かと思ったら、そうではなかった。
それは犬だった。小さく丸まって、少女の部屋を見上げていた、らしい。
最初は普通に野良犬かと思ったが、よく見ると塀に体がめり込んでいた、とか。
「一つ聞きたいんだけどさ、理彩さんのスタンドだって、どうやって確かめたの?」
「……顔面を蹴った」
「は」
「思わず足が出たんだ。そしたら次の日、あいつが凄い鼻血を出して起きてきた」
じとっと、僕は三代君と一緒に城田君を見た。軽蔑の視線に、城田君は怯んだ。
「おい、その目は止めてくれ」
「サイテー」
「シスコンも大概にしろよなァ、兄貴。そのうち人殺しになっちまうぞ」
「お……俺はシスコンじゃないから大丈夫なはずだ」
「今の台詞を、俺ァ忘れないぜ」
さて、思いきり蹴られた犬は、その後も懲りずに出没したらしい。
危害を加えることもできず、今日に至って妹さんが気付いた、ということだ。
どんな犬なのか聞くと、城田君は「ふてぶてしい顔」と言った。
「肉はあるんだが……足とかはガリガリだった。ん、顔はたるんでたし、斑があったな」
「それブルドックじゃない?」
「あ〜俺ァダックスフントが好きだぜ」
「犬種はよく分からん」
城田君はがしがしと頭を掻いた。ちらと、家の方を見る。
「で、お前はどうするつもりなんだ?」
「……あいつは、自分がスタンド使いだと、気付いていない。
 知らない方が良いじゃないか? こんな力は」
城田君は、ストレンジ・サイクロンの右手を街灯にかざした。気付くと、日が沈んでいた。
「こんな力、ねェ」
「『能力者だ』と言う必要は感じない。あいつも……巻き込まれるかもしれないしな」
「なァ、別に俺らから仕掛ける必要はないんだぜ?」
三代君が口を挟んだ。僕は開けた口を閉める。多分同じ用件だろう。
「当然、向こうから絡んでくることはあるだろォが……そん時は俺らも一緒だからな。
 守ってやっからよォ、兄弟共々」
城田君は、ふっと笑って僕らを見た。
「ありがとうよ。まぁでも、あいつは首を突っ込みたがるからな。
 俺が叩きのめしといた、とでも言うさ。スタンドは精神的なもんだし、それで収まるかもだ」
「……ま、それで駄目なら呼んでくれよ。なんかアイデア出すからよォ」
「うん。僕もそうさ」
僕らは笑って拳をぶつけ合った。辺りには良い臭いが満ちつつある。
腹を鳴らして、僕と三代君は帰路についた。城田君は手を振って、家へと戻っていった。


次で一段落。多分今日中にかと。
2131:2010/03/06(土) 23:44:32 ID:w3XM5jWt
今日、というか今週ラスト。あ〜とりあえず満足。さて、本編はどうしてくれようか。
あ、>>121さんの『パワーオブアート』使用。これは……これでラストかも(汗)



家に帰ると、玄関がねじれていた。
城田は溜息をつき、靴を脱いで上がる。思った通り、すぐさま父親が顔を覗かせた。
彼の父親は、絵描きだった。CGと水彩……両方やっているらしいが、城田はあまり興味がない。
キッチン、と思われる場所から顔を出した父親は、眩しいほどの笑顔で口を開いた。
「よ、お帰り!」
「ただいま……またこれかよ」
「ふふふ、今回は自信作だぞ。これはかの有名な」
「そういうのを聞きたがるのは、俺じゃなくて、美術学校の妹だ」
「もう聞いたー!」
風呂場の方から妹の声が聞こえる。いや、風呂場がどこかさえ、城田は確信が持てなかった。
無精髭を揺らして、父親が感想を求めてきたが、無視する。大きな目が、今はかなり鬱陶しい。
「なぁ父さん、大概にしてくれないと、家の中で遭難することになるんだが」
「大丈夫だ! 俺の判断ですぐ解除できるし」
「ふぃ〜お話終わったんだね、お兄ちゃん」
理彩が、湯気を立てて左手の扉から出てきた。扉……今は額縁に入った絵にしか見えないが。
「おい、シャツだけで歩き回るなよ」
「だって暑いし。いやぁ、今日のは気合い入ってんね。お父さん」
「くくく、そうだろそうだろ。今の『気分』は、エッシャーだからな。テンション上がるぞ」
「勝手に上がっててくれ……ちょっと荷物置いてくる」
そういうと、城田は二階へ上がることにした。右手に……かろうじて上れそうな階段があった。
熱く語り始めた二人の芸術家を置いて、城田はそちらへ歩を進める。


「あ!」
「うわぁ! ど、どうしたのお父さん」
「やばい、あいつ上に行っちまったみたいだぞ……階段は今、回廊の騙し絵になってんのに」
「げ、あの高さ無視してグルグル廻るやつ?」
「しかも、一旦入ったら出られないようになってる」
「なんでそんな無駄なことを……」
「いやぁ、完成度を極めたくて。さって、どうするかなぁ」
「え、解除してあげなよ!」
「そしたら消えちまうだろうが、このパワー溢れるアートが!」
「……あ〜……まぁね、今日のはかなり良作だと思うよ」
「だろ? うしじゃあ、もうちょい見てから解除すっかぁ」


2時間後、すっかり憔悴した様子で城田は一階に下りてきた。
大盛りのご飯を持って申し訳なさそうに頭を下げた家族を置いて、彼は玄関から外に出る。
そのまま、垣根にもたれ掛かって寝た。腹が鳴ったが、そのまま寝た。


父親のスタンド:パワーオブアート(本人命名)
能力:触れた物を、自分が迷いを持たずに『美しい』と思える物に変化させる。
   物質だけでなく、空間にまで作用する。
形状:不明
補足;生まれ持ってのスタンドらしく、昔から使っていたため、理彩や城田に抵抗はない。
   城田はこれのせいで美術から遠のいたが、妹の方は強い興味を持ったらしい。
   理彩は『スタンド』の概念を知らないため、この現象は父親固有の物だと思っている。
214創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 18:11:43 ID:dwiAbZ9T
スタンド使ってくれてありがとう!
がんばってください!
2151:2010/03/11(木) 18:18:00 ID:kP0NQMnY
>>214
パワーオブアート原案の人ですか? 応援ありがとうございます!



別れってのはどんな奴にだってあるもんさ。
仰々しい挨拶やら、その後のパーティやら、そういうのがあるうちはまだいい。
仲間と楽しく 悲しくなんかねェんだよォ〜 なんて言い合ったりしてな。
……だが、忘れちゃいけねぇのは、全部終わって連れに手を振ったときよ。
急に、世界は静かになっちまうんだ。あれ、これで終わりかよ、なんて思ったりもする。
そこで止まるんじゃねぇぞ。
しっかり噛んで飲み込め。そんで、ゆっくり消化すればいい。ゆっくりな。


とりあえず一息……またしばらくはペースアップできそうです。
明日から! できるだけ早く二章終わらせたいッ!!
2161:2010/03/12(金) 23:51:32 ID:e+BptMOo
>>208の続きッ!



『おう、城田か? 見つけたんで連絡……大丈夫か』
「ハァ……くそ、手をやっちまった……ハァ、いや、多分大丈夫だ」
『大丈夫じゃねェだろ! 敵か? あのどっちかが』
「それはいい……痛……いいから、ちょっと来てくれないか」
『あァ!?』
「ちょっとした作戦だ。お前の能力が使えるかもしれない」

椎名の唇がめくれ上がったのを見て、城田は思わず拳を構えた。
視線をやると、まだ姫成の表情は固い。それを確認し、椎名は口を開く。
「いきなりどうした」
「……せっかくだし、教えてあげようと思って。ヒメと、私の関係」
訝しげに城田が見てくる。姫成の視線も感じるが、表情は変えない。
同時に椎名は、上へと動きかける視線を、ぐっと堪えた。
今、彼女のスタンドは城田の真上にいる。文字を書いている。
「私とヒメが会ったのは、小学生の頃よ。私って、実はお金持ちでね」
「ちょ、ちょっと待てよ。悪いが、そこまで遡らなくてもいい。
 あ、っていうか、結局お前らは友人ってことでいいのか?」
「そんな言葉で括らないで」
城田の台詞に、椎名はぴしゃりと言った。無視して、そのまま話を続ける。
「私の両親は二人とも医者なの。忙しくってね、あんまり会うこともできなくてね。
 でも、学校は退屈だったわ……なんか敬遠されてたし」
椎名はちらと、数年前のことを思い出した。下心から近寄る人間は、小学生ともなると少ない。
そして、自分の傲慢さは理解しているつもりだった。孤独の原因も、しっかり分かっていた。
「それで、5年生くらいまではずっと一人よ。友達だっていなかった」
「……で、姫成に会ったのか?」
「ヒメは引っ越してきたの」
「わ、私も一人だった」
弁解がましい口調で、姫成が言った。
城田はへぇと相槌を打ったが、椎名は冷たく一瞥をくれた。
「そう、ね。あんたも一人だったわ。当然よ。静かで、弱虫で、社交力もなくて」
「引っ越ししたてはそんなもんだろ」
「……知らないわ」
椎名は、城田が俯きがちに溜息を吐くのに合わせて、上を向いた。
文章はできている。
にやりとして、椎名は一歩後ずさった。
2171:2010/03/14(日) 22:45:50 ID:L3lNVA1I
追跡パートのざっくり具合に今更後悔……と、言った上でのばっさり。



「よし、これでいいだろ」
「本当にそんなんでいいのかァ? ちょっと頼りない気もするがよォ……」
「あ、そう思うなら一ついいか」
「ん」
「さっき聞いた話に、でっかい鏡が出てきたじゃないか」


「言っておくけど、いきなり友達になった訳じゃないわ。
 その頃には私にも取り巻きができ始めててね。姫成のことは、知ってただけよ」
「ヒメ、だろ」城田は面倒くさそうに突っ込んだが、語尾が奇妙に上がった。
何かいいことでもあったかのようだが……椎名は無視した。
「……もういいの。まぁそれで、最終的に『友人』ってなったのは、中学から。
 一人ぽつんと座っててね。私、自分を重ねたの」
「え」
姫成の驚いたような声が、間に入った。ちらと見ると、本当に驚愕の表情をしていた。
「何?」
「そ……そんなことない。わ、私より、美樹の方がずっと強かったでしょ」
椎名はそこで、目に一杯の力を込め、姫成を睨んだ。
「当然。あの頃の私は……どうかしてたわ。あんたを、同列に考えてたんだし」
威圧は効かなかった。姫成は、もう知ってるよ、と言わんばかりのぽかんとした表情をした。
椎名はぎり、と歯ぎしりをして、城田を見る。
この男が少女を楽にしているのか。椎名は、自分のポケットに視線を落としている少年を見た。
直後彼から、取って付けたような台詞が飛んでくる。
「……そいつ、ビビらなくなってるな」
「そう、ね」
城田はゆったりとした余裕を携えていた。しかし、眼や『影』から発散される力は強い。
頼りがいのある力だ。そして、守ってくれそうな力だ。
椎名の内心に、黒い感情が流れ込む。
「あなたのせい」
「あ?」
「……もう限界よ。我慢のね」

椎名が自分から視線を外したのに、城田は素早く反応した。
拳を構え、上目遣いに天井を見る。
叫ぼうとした椎名は、出鼻をくじかれたようにそこで固まった。
……が、直後その表情は笑みに変わる。
椎名が声を漏らすのと同時、黒い塊が城田の目に入ってきた。

「……城田さん?」
沈黙が数秒続いた後、口を開いたのは姫成だった。
城田は、天井に拳を突き出して止まっている。ぴくりともしない。
「私の勝ちだわ」
「美樹」
椎名の台詞に、姫成は愕然としながら視線を合わせた。
友人は笑っている。心底からの恐怖を、姫成は感じた。
「何をしたの!?」


<自分は記憶喪失だ>
2181:2010/03/17(水) 22:44:39 ID:T04HRV8A
コレ書いてる間にも、刻一刻とアフロ他がシ骸に近づいていく……
あ、ところで今回のクリスタルって美味しそ(ry



完璧な記憶喪失とは、つまり『全て』忘れることである。
人はいくつもの記憶……動きや、蓄積された知識で成り立っている。
それらを全て忘れると言うことは、すなわち胎児まで戻ることと同義である。
「まぁ胎内にいても記憶能力はあるし、そういう意味では本当に死人みたいなもんね」
「何……言ってるの……?」
口に手を当てて、姫成は目の前の少女を見つめた。
姫成自身は、まだ椎名の能力を把握しているわけではない。
が、あまりにも淡々とした椎名の台詞に、姫成は鳥肌を立てていた。
彼女は死人、と言った。
再び、城田に視線が向く。屈強な青年は、未だに凍り付いている。隣でくすくす笑いが聞こえた。
「いい気味」
姫成は、無意識のうちに地面を蹴った。

唖然として、椎名が姫成を見ている。姫成は震えながらも、城田の右隣に並んで立った。
心臓が壊れそうに痛い……姫成は強く唇を噛み、もう一歩城田に近づいた。
「それ、何のつもり?」
「な、なんでこ、この人に、ここまです、る必要があったの」
姫成はかろうじて言った。ようやくか。自分自身でも、脳みそが回転し始めたのを感じる。
見れば椎名は、口が半開きになっていた。目を丸くし、伸ばしかけた腕が空に揺れている。
ぎゅっと、姫成は右手を握った。もう掴めるところにあった、城田の袖が潰れた。
「どうしてここまでするの!?」
「そ、それは、あんたを壊すためで」
「『それだけ』で、この人をこんなにするの?」
「! 『それだけ』なんて言わないでよ!!」
椎名の余裕は、呆気なく崩れていた。先程までの笑みは消え、哀れなほどの焦りが露呈している。
姫成は落ち着いてきていた。城田が崩れたことで、逆に思考は研ぎ澄まされたのだ。
未だに呼吸は苦しい。だが、姫成は正面から椎名を見つめる。
「どうしてッ……!? あの男は死んだのよ! 頼れる人間はもういないのに!」
「し、死んでないよ」
「死んだと同じよ! ほら、もうあんたを守ってくれる奴はいないのよ!?」
椎名はパニックになっていた。わなわなと震え、姫成を指さしてくる。語気はかなり強い。
が、姫成は怯まなかった。言い返すことさえできなかったが、不思議と精神は安定していた。
右手に力を込める。
「ヒメ、そいつから離れてよッッ!」
椎名の怒声が飛んできた。思わずのけぞる。目の前に、足音が迫ってくる。


緑色の拳が、いつの間にか空気を切り裂いていた。
2191:2010/03/19(金) 23:36:15 ID:kjo54v6F
イタチェ……バトル物の召還獣(もどき)とかいいですよね。
あ、それと明日からちょっと砂丘見に行ってきます。梨が食べたいー



一瞬、何が起きたのか分からなかった。
風が教室に吹き荒れる。乱暴にうねる空気の渦は、姫成の目の前で小さく形を取った。
獣……? 右耳の横から伸びる緑拳は、造形がはっきりするにつれて開いていく。
「カマ『イタチ』って、こんな感じか」
姫成の眼前とは、つまり近寄ってきた椎名の突き出してきた腕の前でもある。
緑の腕が後ろへ戻された。同時、朧にゆらめく風の獣は、牙をむいて動き出す。
走りがけに掠めていったのは、椎名のケータイだった。
「うあッ!」
椎名は叫び声を上げた。反応する余裕は無い。
思わず、空を走る獣に腕を突き出した。が、触れる直前、掌に一閃が入る。
切り傷。椎名は呻き、そのまま手を引っ込めた。
「あ、手を出すなと言いそびれた」
「二丈さん!」
イタチは旋回し、城田の差し出した手にケータイを落とした。
姫成は涙声で城田の腕を掴んだ。バランスを崩した椎名は、ふらふらと一歩引いていく。
「な……なんでッ!?」
イタチは四散した。
二丈城田は、今や笑顔で姫成の前に立っていた。その立ち方は強く、揺るぎない。
教室内で視線が交錯する。椎名がさらに一歩下がると、ずっと開いていた窓に背が触れた。
「ダイレクト・メールは完璧だったはずよッ!」
「へぇ、お前のスタンドはそんな名前なのか」
城田は笑みを止めない。自分のポケットに手を入れたと思うと、小さな鏡を取り出した。
「完璧なんて物、この世には存在しないさ」


「催眠術師!?」
「そうだ。今回の敵……あ〜、まぁ敵か。そいつは強力な催眠を使えるらしい」
「ちょ、ちょっと待てよ。どうすんだ? そんな奴、どうやって勝つんだよ!?」
「……催眠にかけるには、『視覚』が必要らしいんだ。
 ってことはだ、考えてみろ。目に、何かを、見せて、暗示をかけるんだ」
「は、はァ」


「もとよりお前が犯人だろうって目星はついてた。
 ぶっちゃけ例の写真も持ってて、そいつを使ってくるかも、とまでは考えついてたんだよ」
城田の台詞に、椎名は愕然として膝を折った。座り込みはしなかったが、中腰で止まる。
「俺には圧倒的に手札がなかった。だから、写真に関しては半分諦めてたんだ。
 『条件が全てクリア』してなかったら、俺はもう帰って寝てた」
「条件?」
姫成は、そこでようやく城田から離れた。手を放し、そろそろと城田の顔を見上げる。


「催眠にかけるパターンで、有望そうなのは『記号』と『文字』だ。
 記号じゃあ複雑に命令できないだろうから……ん、これなら大丈夫だろ」
「ハァハ、そうかい、走って、取ってき、た、かいがあったぜェッ!
 ハァ、そんでェ? 文字見たら催眠かかって、それはどうやって防ぐんだ!?」
「おい一旦休め。……この『鏡』があれば、攻略できるかも、だ。
 それにしても、よくお前こんなデカい鏡があったな」
「ゲホ、ちょっとよ、使ってたんだよォッ!」
220創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 15:51:09 ID:gbb0CgQH
タイホから判決に至るまで留置場、拘置所生活を
描くバラエティー小説

小説家になろう連載中 
 第7話 魔女4 更新しました
タイ○ホ日記で検索してください
 
新作 200文字小説 70文字小説 20文字小説
 同時 連載中




221創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 16:36:22 ID:Y56W9gOI
このスレまだやってんのか・・・
JOJOヲタなので最初の方だけ見てたけど、何というか読みづらいよね>文章

あとスタンドが出てくるオリ小説って
ようするに昨今氾濫してる普通のラノベバトルものと同じなので、
もう少し「スタンド」であることの有用性を生かした方がいいと思うよ
(すでに読んでない身でダメ出しも失礼だけど)

まあ、でも継続は力なりか
一種のトランス状態にも見えるがw
2221:2010/03/25(木) 21:33:25 ID:+q2ZWF6L
>>221
うぼがぁぁぁぁぁぁ(吐血 読みづらいって文体とか行間なんでしょうか?
あ、アドバイス頂けるのはとても助かります。独自の有用性はまだ上手く掴めてないですが……
とにかくどうあれ続けていきたい心持ち。トランスに関しては否定できないwww



「まず俺は、仲間に鏡を持たせて待機させた。ジャージがいただろ?」
城田は窓の外を指さした。椎名も釣られてそちらを見る。
ジャージの学生が、いつの間にか姿見を持っているのが目に留まった。
椎名は息を呑んだ。反対側の棟までは数十メートルある。
が、それでも、黒い粒は見えた。天井を映した鏡には、字が映っている。
「……ここからだと、流石に読めはしないが」
「さっきはあんな鏡」
「持ってなかった、な」
椎名はそこで視線を戻した。城田の表情は、苦々しげな物に変わっている。
あ、とそこで気付く。その顔は、さっきも見た。
「脇に隠しておくように言ってたんだが……途中で教員に見つかったみたいでな。
 あいつ、スタンド使って気絶させちまって」
城田はそこまで言って、再び表情を変えた。嬉々とした、やはり先程も見ている顔だ。
「まぁ、お前が行動起こす前にケリついたからよかったよ。
 それで俺は鏡を見て、『射程距離がある』能力だな、と目星を付けた」
一息つく。ふと城田が姫成を見ると、口をぱくぱくとしていた。
にやりと青年は笑い、服のポケットから小さな鏡を取り出す。
「さぁ次だ。これ……ポケットに入れてた鏡なんだが。
 お前、罠を仕掛けた時に笑ったろ」
「!」
「ポーカーフェイスは大事だよな。俺はこいつを通して、文字を見た。
 そして、どうやら『鏡越しだと反応しない』能力だと気付いたのさ」
椎名は愕然として城田を見た。彼女がスタンドに目覚めたのは僅か二日前……
実を言えば、昨日一日は自分の『能力』を把握するのに使っていた。
幾つかの場面を想定して、何度も実験をした。数時間をかけて、自分の力を知った。
それを、それをこの男は
「何で? 何でそこまで分かるの!?」
「……さぁな。よぉ〜く考えたからじゃないか」
椎名は半ば無意識に手を振った。
涙目に、自分の前で再び動き出したテディベアが映る。

「二丈さん」
「顔は向けるな。お前は多分『視える』から」
「どうしてよッッ!!」
椎名が絶叫した。城田は姫成を後ろへと隠し、それを聞く。
「今……書いたわよ? よく分からないけど、宙にあるじゃない!」
テディベアは所在なげに、城田と椎名の間で浮いていた。
その横には『落ちていく』と文字がある。
「新しいやり方だが……おい、そんなのでも暗示にかかるのか?」
「かかるわよ! あなたは落ちるの、どこまでも!!」
「無駄だよ、美樹」
姫成の声が響く。椎名は震える手で自分の髪を掴み、城田の背後を見つめた。
「彼の前髪。よく見て」

城田は、右手の人差し指で自分の額……それにかかる前髪を指した。
数秒の沈黙がある。そして、椎名は放心した様子で床へと崩れ落ちる。
日が傾いてきた。城田の前髪の間を埋めている、氷でできたレンズが黄金に光る。
窓の向こうで三代がガッツポーズした。
2231:2010/03/29(月) 22:26:40 ID:piRQ2xWn
エピローグ、ようやくこの章、エピローグ……orz
しかもあと何回か続きます。アホかwww



城田が仕掛けたレンズは、見た物が反転する物だった。
椎名からケータイを奪うためには、暗示にかかったふりをして、隙を作らせる必要がある。
文字を確認するためには、『鏡越しなら反応しない』確証と、『手頃なレンズか鏡』が要る。
前者はともかく、ポケットに入れてあった鏡では文字の把握はできなかった。
多少の危険はあったが、それでも氷のレンズによって、ようやく城田の策は完遂された。

「反転だけなら文字は読める。ただ、記憶喪失、って暗示は上手かったよ。
 もし鏡越しでも通用してたら……な。やっぱり俺も詰めが甘かった」
「う……ぁ」
日差しが教室の中まで入ってくる。ぺたりと座り込んだまま、椎名は声を震わせた。
「ただまぁ、これにてケータイ奪還完了だ」
「二丈さん」
ちらと見ると、姫成は唇を結んでいた。
混乱と安堵の入り交じった表情。ふっと笑って、城田は頭を掻く。
「ここまで手伝ってやるのは、本当に希なんだがな……自分の妹にだって無い」
「じゃあ何で」
「いや、宗教が絡んでるかと思っただけだ。最初に言ったろ?」
姫成の表情が強張る。城田はそれに溜息をつき、ケータイを渡した。
「それについては後で良い。あいつも潔白みたいだしな。
 いいから、ほれ」
「あ……」
「何か言いたいことあるんだろ? さっきからずっと、口パクパクさせて」
城田が言い終わらないうちに、姫成は教室を横切って椎名に近寄った。
既に茫然自失の椎名に、行動を起こす気力は無さそうだ……
「城田」
背後で三代の声がした。踵を返して、城田は教室を抜ける。
「置いといていいのか?」
「あぁ。多分……ん、大丈夫だろ」
静かに扉が閉まった。
2241:2010/04/09(金) 21:22:47 ID:NFzmqoCA
レクイエムかと思ったら違ってた。
アクセス規制……orz 流石にもう忘れられてるかな。



部屋を横断して姫成は窓へ近寄る。まだ微かに風が吹いてくる窓際で、椎名は泣いていた。
彼女は床に崩れたまま、悔しそうな顔を隠すこともしていない。
……いや、この表情は悔恨なのか?
「美樹」
名前を呼ぶ。
椎名は顔を上げず、しゃくり上げながら地面に突っ伏した。
姫成もしゃがみ込む。肩に手をやると、椎名はびくんと震えた。
「う……ぅ」
「美樹」
もう一度名前を口にする。椎名は弱々しげに手を伸ばし、姫成の腰に回した。
「……私のこと……嫌いになったんじゃあないの……?」
「嫌いになったよ」
回された手に、力が込められるのが分かる。姫成は静かにその腕を握った。
「でも、これで終わりにしたくないの。
 全部話してよ……美樹の気持ちなんて、私は全然知らなかった……」


「孤独だったのは、多分両方だ」
三代と城田は、早足で廊下を歩いていた。
昼飯時も終わり、そろそろ活気も落ち着き始めている。
人は相変わらず多いが、城田の傷を咎めてくる者はなかった。
「……両方、ねェ」
「あの二人がカフェから逃げ出したとき、お前はいなかったよな?」
おゥ、と相槌を打ちがてら、三代は先を歩く。行き先は資料室だ。
「あの時、外へ出て行く二人の姿は大勢に見られていた。
 店員が把握していないはずはない……のに、誰も探しに来なかった」
「この人だぜ? そうは見つからなくねェか?」
「あんな派手な格好だぞ。椎名は途中で着替えてたが、それでも罠作りに徘徊してたらしいしな。
 他のクラスの連中と連絡取り合えば、追いつくのは難しくない。
 人手が余ってるとも思えないし、あの時点で椎名もハブられたんだろ」
「つんけんした方、な」
曲がり角を曲がる。飲食店が閉まっているのを見つけて、三代が残念そうに舌を鳴らした。
「おい、カレーが終わってるじゃねぇかよ」
「帰りにどこか寄ればいい。で、最初の部分だ。
 椎名は姫成に裏切られたり、自分から離れていくのが怖かったんだと思う」
「で、あんなことしてたのか? 変態じゃねェか」
「それで言うなら、姫成も十分変態だ」
中学生の団体を横に避け、城田は想像する。
姫成の精神は幼い。彼女は裏切りを察知できないし、それに耐えることも難しい。
だが、強い愛情を持っていた。
それはよくヒヨコで例えられる……刷り込みに近いのかもしれない。
恐らく姫成は、椎名を切り捨てることができないだろう。
再び手を取り、傍にいることを切望するだろう。
そして、椎名は救われる。
「姫成の行動はあまり感心しない。が、それで椎名は嬉しがるんじゃないか?
 離れていく不安とか、裏切られる恐怖とか、そういうのは信頼が埋めてくれる」
三代がふっと笑った。感じる物があるのか、その笑みは複雑そうだった。
「信頼は人を救う、か。……てめェは遠距離恋愛とか上手そうだ」
「したことはない」
「有ってたまるかよ」
そこで三代は再び角を曲がった。
後について進むと、廊下の向こうに双務が見えた。
225創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 22:52:42 ID:vjYjYc8h
覚えてるぜ!
226創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 19:25:10 ID:ZqcjRWnO
誰が忘れるかよ!テメーみたいなキャラをよおぉ!
2271:2010/04/12(月) 21:41:23 ID:8bijKyei
>>225−226
うおあぁぁぁぁ!! 俺は! あなた方に! 敬意を表するッッッ!!


アク禁はともかく、今後やっぱりペースは遅くなりそうです。
たま〜に見に来て頂ければ。レクイエムにはできる限り抗いたいと思います;;
2281:2010/04/18(日) 18:01:03 ID:uo+xchdS
こんにちわーとりあえずできる時に更新しますー

その男は……特殊には見えなかった。
身体は大きいが特異な髪型をしているわけでもなく、顔も普通の中年、と言っていい。
ボロボロのコートは似合っていて、不審者とも言い難い外見だった。
眼、以外は。そこに宿るは尋常でない『執念』。その光は……あまりに鋭利。
城田は視聴覚室で対峙した。既に、土曜は3時を回っていた。

「武氏木 豊信、か」
「……私立探偵をしている。今日ここにいるのは別件だが」
武氏木はもぞもぞと身体をよじった。双務が怖々と、束ねている紐を握る。
視聴覚室の教卓の前。武氏木は双務に縛られて床に座っていた。
そこに向かい合うようにして、城田と三代も座っている。双務は武氏木の横で立っていた。
「べ、別件って」
「私用だ。お前たちはその途中にいた、から仕掛けた」
「話したよな、城田」
「あぁ。ちらりとだが」
城田はじっと武氏木を見た。彼は話したいことがあるらしい、と三代が言っていた。
「その目的ってのは何なんだ?」
「人捜しだ」
双務は前の二人に目配せしてきた。心配そうな目は、交互に城田と三代を見る。
「俺たちは敵じゃないからよォ、詳しく聞かせてくれねェか?」
「証拠は」
「……俺たちが敵なら、嗅ぎ回ってくる奴を生かしてはおかない。
 多分『あんたの探してる奴ら』よりは、こいつは優しいはずだ」
「殺したっていいんだけどよォ」
「やめてよね三代君……」
双務が溜息を吐き、数秒の間がある。そのあとで、武氏木が口を開く。
「昨日の夜、焼死体が病院に担ぎ込まれた」

それはどう見ても死体だった。無残に焼けただれた顔に、もはや生前の面影はない。
背丈は随分小さかったが……隣を通った人間は『西戸高校』の『刑大茂直』だと言っていた。
とにかくそいつが、病院の廊下を担架で横切っていった。

「嘘だ」
「……これは同業の奴が目撃した話だ。奴は病院関係を主にしているんでな。
 お前は何か知っている風だが」
武氏木が話を切ると、城田は間髪入れずに否定した。
その口ぶりは必死と言ってもよく……三代ははっとする、表情には焦燥が見えた。
「お前たちも関係者か」
「俺がやった」
「! お、おい」
「昨日攻撃された。俺は奴を切り刻んだ」
「じょ……ッ!」
三代と双務は息を呑んだ。首をひねり武氏木を見る。
男は、相変わらず落ち着いていた。その目はじっと城田を見ているが、動揺している様子はない。
対する城田は右手で頭を押さえていた。混乱しているらしく、視線は空を走っている。
「……『切り刻んだ』か。奴は『焼け死んでいた』んだ。勘違いするな」
「しかし」
「話を戻す」

同業者は少しして、雰囲気がおかしいことに気付いた。
白衣を纏った医者が忙しげに行き来し、手術が始まるらしい会話も聞いた。
奴は思った。もう死んでるのに、何故手術をする?
手術が始まる。奴は場所を変え、手術室の見える位置へ移動した。
そして……数分としないうちから、医者たちが部屋から出てきたのを見た。
奴は目を見張る。彼らの手術着は汚れておらず、その挙動は総じて奇妙だったという。
さて、患者はどうした。

「次の日、『刑大茂直』のデータはどこにもなかった」
2291:2010/04/24(土) 20:28:27 ID:ffvKomap
続き



書類の抹消は比較的容易である。
神経質でなければ、シュレッダーとゴミ箱で十分だ。
映像に関しても、パソコンに保存されたデータなら、むしろ紙より簡単に消すことができる。
その他音声・物品等々も同様。多少の手間はあれど、不可能なことではない。
……それでは、記憶はどうだ?

座り込んでいる四人は沈黙していた。
縛られたままの武氏木は目を閉じており、同じように黙って俯いている。
据え置きの時計の音がする。カチカチという音が、外からの声に混ざっている。
双務は喉を鳴らした。それに伴うように、城田は言葉を漏らす。
「……あんたは」
城田は額に手を当てていた。隣の三代は、その肌を垂れる汗を捉えている。
「刑大茂直、が、失踪したと言いたいのか?」
「消滅、だ」
台詞を聞いた瞬間、再び彼の喉は上下し、音の代わりに咳を鳴らした。
視聴覚室に咳が響く。武氏木は目を開き、じっと見つめていた城田の瞳を覗き込んだ。
「『データが消えた』というのは、『全てのデータ』が消えた、ということだ。
 カルテ、名簿、監視カメラ、パソコンのファイル……」
「そして記憶」
最後の一言は三代のものだ。ざわ、と鳥肌を立てて、双務は仰け反った。
「どこに証拠がある」
「証拠など無い」
城田の掠れ声に、武氏木はさらりと言う。
「ただ、明日向こうの総合病院で聞いてみるといい。
 【刑大茂直という名前の患者をあなたは知りませんか?】
 答えは全てNOだ」
「しかし」
「そして」
城田の台詞を制して、武氏木は指を立てた。
さっきから、彼の口調は軽やかで、そして、重い。
「彼の家は母子家庭だ。母親がパートで働いていた」
「いた?」
「行方不明になった」
チャイムが鳴った。
蛍の光、文化祭の終わり。
「俺は刑大茂直の失踪を『事件』だと感じた。そして、彼の家を訪ねた」
木琴の音がする。チャイムから流れる曲は、哀愁を湛えて学校に満ちる。
「早朝だったが、人はいなかった。鍵は閉まっておらず……
 食卓には冷え切った食事があった」
外から声がする。文化祭の終わりを惜しむ、甲高い声。
「俺はヒントに基づいて答えを探しに来た」
「答えとは」
城田が声を漏らした。武氏木は城田を見る。彼は真っ直ぐに自分を見ていた。
「答えとは何だ」
「『根っこ』」
三代が身体を揺らした。双務は震えながら顔を上げ、口を開いた武氏木を見る。

「『クリス・クロス』」

放送は止んだ。一転して、辺りには静寂が満ちた。
2301:2010/05/01(土) 14:52:09 ID:ni5VkudQ
せっかくなんでスタンドについての脚注。

○武氏木 豊信(ムシキ トヨノブ)
刑大の死亡に関連して、西戸高校にやってきた私立探偵。
面倒くさがり+自堕落なので、普段はニート状態。本屋でしょっちゅう立ち読みをしている。
ただし無能ではなく、非常に質素ではあるが生活できる程度の収入は毎月必ずある。
メリハリが効いた性格で、本気になった時の行動力・執念は常識を逸している。
『宗教』について探りを入れているらしいが……果たして何の目的があるのか。

>>91氏から引用
○ファニー・アトラクション:パワーA/スピードC/射程距離C/精密動作性B/持続力B/成長性B
紫色の肌をした人型近距離パワー型。体中に虫眼鏡かそれに近い物(レンズ類)が付いている。
触れたものに足跡らしき『印』を残し、それを引き寄せる事ができる。
半径10mから能力は反応し、徐々に加速しながらスタンドに引きつけられる。
本体の判断で発動・解除は可能。人間が引きつけられると、ほとんどの場合宙に浮くようだ。
ところで、『落ちる』という形容とは?
2311:2010/05/01(土) 16:32:26 ID:ni5VkudQ
もういっちょ。本編はGW中に進めたいですが……(汗

○椎名 美樹(シイナ ミキ)
姫成のクラスメート、中学からの付き合い。傲慢な性格で、独占欲は人並み外れている。
裕福な家庭に生まれており、幼少の頃から他人と馴染むことができなかった。
高校からは改善の兆しがあったが……上辺だけの友情に、本人が一番敏感に気付いていたようだ。
それ故に、不安定な性格である姫成を、『壊す』ことで束縛しようとしていた。
このように、精神面は非常に華奢。反省の色も見え、今後は性格に改善が見られるだろう。

>>49氏から引用
○ダイレクト・メール:パワー なし/スピード なし/射程距離C/精密動作性A/持続力A/成長性C
小さなクマのぬいぐるみ型、遠隔操作特殊タイプ。(クマは非常に地味。色は茶、目鼻は黒)
携帯など文字を書くもの(鉛筆なども可)に取り憑き、それで作った文章に暗示力を持たせる。
暗示力は非常に強く、ターゲットが最中に『催眠にかかっている』と気付くことはない。
字は直接視界に入れば効果があり、スタンド能力で補正してあるため、薄い字でもくっきり見える。
書き文字は一度暗示が達成させられると消え、同時に複数にはかからない。
実はペン等が無くても字が残せるが、その字はスタンド使いにしか識別できない。効力も落ちる。
近接戦闘力は皆無そうだが……ちなみに、『催眠』とは『命令』である。
2321:2010/05/02(日) 21:02:49 ID:E4GKzLbM
西戸高校編終わったァァァァァ!!!!
お付き合いくださった方、マジでありがとうございました;;
今後もまっつぁりやってきたいと思います……



西戸高校の文化祭は終わった。
校門。城田は三代、双務とともに武氏木と別れた。
ぞろぞろと流れていく人波の中で、彼のコートはしばらく揺れる。
城田たちは、門に寄り掛かりながら、それをぼんやり見ている。

武氏木の目的は、『宗教』についてどこまでも深く知ることだった。
どこまでも深く……全て、を。
「理由は聞かねェ」
彼を解放する時、三代は小さく言った。
「あんたの執念はガチだったろうが。俺らには」
双務の紐が消える。崩れかかる武氏木を支えながら、三代は言葉を続けた。
「介入する『覚悟』がねェ」

「今日ここに来たのは、姫成に警告するためだ」
錆び付いた校門に背中を預け、城田は空を仰いでいた。
双務と三代は横に立っている。既に人は大方消えており、学校の生徒が時折傍を通る程度だ。
「昨日の奴を覚えてるだろ? あいつは『誰か』に声をかけられて学校に来た。
 そして、介入しようとした俺たちに攻撃を仕掛けてきた」
城田は瞼を閉じる。双務は俯き、三代は首を捻って隣を見る。
「姫成にも可能性があった。だから俺は、ちゃちな親切心でもって、彼女に接触したってわけだ」
「お前は正しい」
「冗談よせよ……俺は何も想定しなかった。闘いに巻き込まれるとか、お前らを巻き込むとか」
「つまり、覚悟がなかった」
「そうだ。正確には、今も覚悟はない」
双務の台詞に、城田は目を開けた。口も開くが、三代がそれを遮る。
「だから、これ以上関わるのはやめだ、だろ?」
「お決まりだよな」
三代は目を細めた。笑ったわけではなく、眉毛の上に皺ができる。
「俺ァ賛成するぜ。あいつらは……不気味、だ」
「僕も」
溜息のような呼吸がある。三人は目を合わせ、とぼとぼと帰路につく。


背後からの声に気付いたのは、三代だった。
ちらと振り返れば、校舎から駆けてくる影がある。二つ。
女子だった。美人だった。
「おい城田!」
「……これで終わり、と言った矢先なんだが」
城田は既に視線を向けていた。台詞に釣られて、先を歩いていた双務も気付く。
「あれ、僕らに用があるのかな」
「どうする? 彼女たちとの縁はきっと……」
「決まってるだろうがよォ」
三代はケータイを取り出した。城田が目を向けると、赤外線通信の画面。
「……やれやれだ」

夕日は沈み、喧噪は遙か遠くに。繋がりは増え、闇は更に濃く。
肌寒い風に吹かれて、少年と少女はケータイをかざし合った。
TO BE CONTINUE→
2331:2010/05/03(月) 17:20:53 ID:WppxrVjU
ちょっとお話


次ちょっとサイドストーリー挟みます。さくっと書ける(予定の)奴。
それでスタンドの消化もしたいんですが……

登場候補↓
>>172 マッド・ファンガス(山登りでも行くかー
>>53 >>150 ドジッ娘メイド&バッドラック・ガイ(ギギギ……悔しいのう……くやs(ry

のどっちかです。こっちがいい!とか、むしろこんなのとかどう?って方はどうぞ〜

本編進めるのはサイド何本か挟んでからにします。
ただし、サイドの方でスタンド紹介とかはします。新しい人とかの。

GW中にもう一個書けるかな……ちょっと微妙。
234創る名無しに見る名無し:2010/05/05(水) 08:38:22 ID:5WiyGTOB
きのこ!きのこ!
2351:2010/05/09(日) 20:23:03 ID:xaK2E7/0
最近時間がないんです……orz
他にやることが詰まってるんで、ちょっと間が開く、かも。

>>234
次はキノコでいきます。気長にお待ちください。
236創る名無しに見る名無し:2010/05/30(日) 23:20:33 ID:0/NrKHIM
>>1
以前、話に出てたと思うけど……

乙一の『the Book』は読んで損はないと思う
>>1の目指すものは、それと似ているような気がする
書店に無かったら(まず無いと思うww)注文、もしくはamazonかな

がんばってね!
2371:2010/05/30(日) 23:35:09 ID:EMfQ7jbU
生存報告!生存報告!

>>236
うおぉぉアドバイスありがとうございます。
如何せん更新する余裕も無いのできついですが、機会があったら狙ってみますので。


ネタは纏まりつつあるんですが時間が無い;;妄想だけしてると
佳境のバトルとか
密かに楽しみにしてるシーンとか
そういうところばっかり考えちゃうんですよね……早くそこまで逝きたいです。しばらく無理か。

とりあえずサブパートは近々さっくりやります。近々!(強調
2381:2010/06/05(土) 21:00:19 ID:W6VzXM/k
一週間=近々とか聞いたことないんで抜けますね^^; 書き方とか忘れたアッー!
サブパートです。時系列的には文化祭の翌日なんですが……無理あるなぁ。
あと地名は完全に悪ふざけです。悲惨なあだ名……(汗



「姫成達と遊びに行こうぜェ!」
その申し出は、日曜も早く城田のケータイにやってきた。
意気揚々な三代の声に、城田はげんなりとして応じる。
「あのな……俺らは昨日、必死こいてスタンド使いと勝負してたんだぞ。
 気持ちも分からなくはないが、いくらなんでも急すぎだ」
「そうか?双務はオッケーしたけどよォ……あ、それにそっちは闘ってねェだろ」
「テメーは俺を怒らせた……!」
絆創膏を貼った右手をさすりながら、城田は低い声で言う。
三代は意に介した様子もなく、どこへ行こうか聞いてきた。どうあれ行く心持ちらしい。

邪険にするのも哀れになり、渋々といった具合で、城田はケータイに話しかける。
すると少しして、
「どこか行くの〜?」
前から理彩の声。
彼が下げていた目を向けると、妹はご飯を咀嚼していた。
「悪い三代、ちょっと待ってくれ。
 ……ちょっとな。ってかお前、それは制服か?今日は日曜だぞ」
「うん、学校のジャージなの。私立ってすごいよねぇ、日曜日に遠足だって」
二人は食卓について朝食を食べていた。こぢんまりとしたキッチンである。
その向かいに座って、城田は無表情のままその姿をじっと見ていた。
電話の向こうで三代が何か言っているが、無視。
「ジャージって事は、ひょっとして『ブサ山』か?」
「そーだよ。あ、出る前にお父さん起こしていかなきゃ」
理彩は汁を啜った。城田は依然として……どことなく目つきを悪くして、彼女を見ていた。

『ブサ山』とは、『男曽(ダンソ)町』にある『低面(ヒクヅラ)山』のことである。
平煩町からは、電車で20分もあれば行ける所だ。
山ではあるが標高が低いうえ傾斜は緩く、また整備が比較的行き届いているため人気は高い。
休みの日ともなれば、家族連れがハイキングなどザラである。……つまり人が多いのだ。

城田は『あの山での犯罪率は意外に多い』という噂を聞いていた。
ごちそうさま、と手を合わせる妹から目を離し、城田は受話口を寄せる。
「おい」
「あ!ようやくかてめェ!人を待たせんじゃ」
「山に行こうぜ」
「……は?」
2391:2010/06/13(日) 23:04:24 ID:6yDEe4Uw
今週は駄目でしたー!(血涙
やっぱりサブだろうが何だろうが、書く以上は時間が無いとなぁ。遅筆乙orz

そろそろホムペ作ってまとめたくもあるんですが……いつになるやら……
240創る名無しに見る名無し:2010/06/16(水) 03:23:26 ID:1c2g4ySl
がんば
2411:2010/06/29(火) 15:45:48 ID:v5DYG1+8
合間に更新。アク禁でした……この板って特別多いんですかね。
>>240
ありがとうございます!がんばるぅあぁぁ

姫成ェ……姫成は犠牲になったのだ……作者の貧困な知識の犠牲にな……
見苦しいのは仕様です; 誰か服関係のボキャブラリーください;;



『之円(ノマル)芸術大学付属中学』、それが二丈理沙の通う私立中学であった。
その名の通り芸大の付属校。任意ではあるが、エスカレーター式に進学することもできる。
60年以上の歴史を持つ実力校であり、実技の重点が高い入試・歴史的な分野に至る講義……
ついでに生徒のレベルが高いことでも有名である。女子校。
アクセス:平煩町駅から20分の直通バス

「……で?」
「今日が遠足なんだと」
「もう知ってるクソ情報ありがとよ。違ェェェェ!」
三代が怒号を発したのは、双務・城田と平煩町駅で合流してからだった。
ホーム前のロータリー。バス停のベンチに腰掛けて、三人は『作戦会議』をしていた。
火花を散らす二人に挟まれ、呆れ顔で双務が口を挟む。
「前も思ったんだけどさ、君って本当に家族思い、だよね」
「そうでもないさ」
「今のは皮肉だけど」
「だァァァ城田よォ!俺ァ姫成を誘った、って言ったはずだぜ!?
 女子連れて遊び行くってのに、山って選択はあんましじゃねェのかァー!」
三代は顔を震わせて、城田の眼前にケータイを突き出した。
開かれているメールの画面には、『山いいですね。行かせて頂きます』の文字。
「山は良いらしいぞ」
「あァ?あ、マジだ。そうだった。
 ……違ェ!山なのは百歩譲っていいことにしてやる!そうじゃなくてよォ、問題は動機だぜ」
その部分には双務も頷いた。しかめ面で、城田が不満そうに眉を下げる。
「もしもってこともあるだろ。俺はお前らも一緒だったら心強い、って思っただけだ」
「結局そっちがメインじゃねェか。いいか?もう一回言うぞ、俺は姫成をオトしたいんだ!」
「それ初めて聞いた」
「え、あ、ま、間違えた」
「……幻滅だな」
「うるせぇぞシスコンが!」
……やたらと脱線が多いなぁ……
双務は内心でそう思ったが、口に出すより先に城田が声を上げる。
「あ、姫成が来たみたいだぞ」
「! マジか」
城田は三代の背後を指さした。
三代を筆頭に、三人の視線が、向かいの横断歩道へ向かう。

今日、城田は緑色の長ズボンに薄手の青パーカーを着ていた。
双務は白の長袖シャツに灰色のズボン、三代は黒のだぼっとしたズボンにモザイク柄のシャツだ。
誰もおかしくはない。一般的、なセンスは持ち合わせている。
……故に、彼女の姿は一際目立った。まず三代が動きを止め、双務、城田と目線が逸れた。
歪なハートのあしらわれた、紫地のジーンズ?
ピンクを基調とした、ラメが光る長袖シャツ
「あ、あのっ、おはよ、ございます……」
姫成は彼らの目の前に来ると、肩をすぼめてお辞儀をした。
三人は仏頂面のまま、ラメで照り返された日光に目を瞑った。
242創る名無しに見る名無し:2010/06/29(火) 21:10:27 ID:/f5BpkHm
まとめホムペを作る時には「スタンド」以外の名前を考えて、本当のオリジナルっぽくすればいいような。
例えば、(ロボットに搭乗して操縦する)のはマジンガーZのオリジナル。
だが、ガンダムやダグラムやバイファム等は「マジンガーのパクリ」とは呼ばれない。

ジョジョでは(超能力を視覚的に分かり易く表現するため)に「スタンド」が考案されたそうだが
これは昔からある(魔法で召喚獣を使役して戦う)のとも似ているわけで。

2ch上で、アイデアを募集するのに「スタンド」と言うと理解されやすかったが
新しい名前を考えてみてもほしい。
243創る名無しに見る名無し:2010/06/30(水) 23:43:02 ID:Pv0AZVVf
>>1は、あくまで「スタンド」でやりたいんじゃないの
ジョジョの二次創作だけど本編キャラは絡まない、ってことでしょ
2441:2010/07/04(日) 21:05:04 ID:a41zDe8T
>>242−243
この小説はあくまで「ジョジョ」の二次創作としてやっていきたいですね。
オリジナルに持って行くと、あっという間に破綻するのがバレバレで……(汗
まとめはまだまだ先になりそうですが、その時にはまた色々お尋ねするかもです。

ジョジョでヤンデレと言ったら四部の由花子さんですが……外見だけで言うと
姫成→一番最初の猫被ってる由花子さん  椎名→ちょっと彫り深い杉本 鈴美
のイメージです。あくまでイメージです。



『えぇ、そうね。確かにあの子はファッションセンス無いわ』
「あ、あんまりだぜ……あんな格好じゃ色々と萎えちまう。
 なんでお前は来れねェんだ!?」
『あのね、昨日どういう事になってたか、聞いてないの?』
「姫成はあんまり気にしてねェようだったが」
『私が気にするの。まぁ、下心丸出しの男となんか出掛けたくないけど』
「う」
『……それと、一つ言っとくわ』
「あァ?」
『姫成に手を出したら、殺すから』


電話は切れたらしい。
渋面でケータイを凝視する三代の横で、双務はやれやれと肩をすくめる。
「今時、サルだってあんな言い方はしないと思うよ」
「悪かったなサル以下でよォォ」
その場には二人だけだった。少し開けた所で、彼らの傍には『3合目』と立て札がある。
低面山、既に登っていた。
「城田君と姫成さんがいなくなった途端に電話かけだして。紳士的なんだか違うんだか……」
「お前ェ、流石にあいつらの前ではマズいだろ。そういう事はクールにこなすんだぜ」
「今の童貞フラグ」

城田達が思っていたより、之円中のスケジュールは立て込んでいるようだった。
到着するや、教員を先頭にどんどん登り始め、城田達が呆気に取られている間に見失った。
すると、今度は城田がもりもりスピードを上げ、一人だけでそれに付いて行ってしまった。

「いやぁ、ゆるゆる歩いてると、やっぱり山だよねここ。勾配がけっこうキツくって」
「俺らはともかく、走って行ったら、後からドバッと苦しくなるんだぜェー」
そして、残された三人は追いつくことを放棄。せっかくなので普通に歩いていくことにした。
しかし数分ほど歩いたところで姫成が尿意を訴え、勇敢にも草むらの中へ突貫したのだ。
よって、彼らは三合目で止まっていた。
「もう9月だし、そろそろ紅葉狩りの季節だよね。今日はまだアレだけど、それでも十分……」
「あー俺ァ景色とかどうでもいいんだけどよォ、野郎しか隣にいないのが気にくわねェ」
「しかもチビで悪かったね」
「あーくそ、覗きに行きてェよー!」
三代は叫んだ。直後彼の脇腹に、かなり力のこもったエルボーが入った。


お前はオカンか、男だったら見に行きたいと思わないのか
三代がそんなことを言い出した頃、姫成が草むらをかき分けて戻ってきた。
ところが、その後ろに、見知った顔が。
2451:2010/07/11(日) 23:33:13 ID:Wc6PSB+p
時間が無い!休みもないのダブルパンチ!
ヒャア!もう我慢できねぇ!おやすみ!

また来週……来週なのかどうなのか……
2461:2010/07/20(火) 22:58:34 ID:qA1uocAc
なんでセーブポイントに敵が沸いてきてんの?馬鹿なの?死ぬの?←最近の心境

遅ればせまして生存報告とお詫び。時間が取れそうで取れない毎日です。
今後も更新の間は空くと思われ……失踪気をつけます;;
2471
ただいまついでにちょっとでも進めてみるテスト。だが劣化&本当にちょっとだけ。
書かないと書けなくなってくるんですよね……怖ぇ



心なしか風が弱まった気がした。
三代は空を仰いでぼんやり思う。お前ェ、無駄足だったな。
ちらと横にいる双務を見る。彼は肩をすくめて見せた。
「……でもよかったですよね。向こうに簡易トイレあって」
「え? さ、さっきは知らないで来てたの? 駅の地図に書いてあったのに」
「え」
双務と三代の前で、少女が愕然と言葉を切る。
二丈 理彩。彼女は今、姫成と顔を見合わせて失笑していた。

「まさかトイレ行ってる間に出発してるとは思わなかったです……
 お兄ちゃんは先行っちゃったんですよね?」
「あァ。もう気付いた頃だろうし、引き返してくるんじゃねェか」
三代の台詞に、理彩は腕を組んだ。わざとらしく溜息を吐いて見せた。
彼らはまだ移動していない。依然三合目の立て札の周りに座って、くつろいでいた。
「そそっかしいですよねぇ」
「理彩さん程じゃないかも」
双務が言った。理彩は顔を赤くして、双務から顔を背ける。



切り。短くてごめんなさいです;;