【mitemite】過去創作物を投下するスレ【見て見て】
私はパソコンの画面を見ながら首をかしげた。
「甘い……?」
なんで男の人と女の子がちゅーすると甘いんだろ?
女の子は甘いの好きだから? 好きな人とちゅーすると、甘い……とか?
……なんでなんだろう?
「おーい、お前炭酸駄目だったからリンゴジュースで……って何見てんだっ!?」
「え? なんか小説みたいなの載ってたサイト……見ちゃダメだったの?」
「え、あ、お、あ、うー、あー……その、だな、お前にはまだ早いんだ、これは」
タクちゃんは何故か慌てている。
……勝手にパソコン見られて、イヤだったのかな?
「ごめん、タクちゃん。勝手に見ちゃって」
「あー……べ、別に謝るこたないぞ。ただなあ、もうちょっと大きくなってから
じゃないと、そこ見たら怒られちゃうんだ。だから、もう見ちゃ駄目だぞ?
約束できるか、瑞乃?」
「タクちゃんは怒らないの?」
「あ、ああ……最初に言ってなかった俺も悪いしな。それに、別に変なものを
見たわけじゃないだろ?」
「うん」
私は首を縦に振った。
「ならいいんだ。……約束、できるか?」
「……約束する、わたし」
「よし、いい子だ」
タクちゃんは、悪い事をした私の頭を撫でてくれた。
もう悪い事をしないと約束したからかな? 何だか嬉しい。
「で、リンゴジュースでよかったか?」
「うん。リンゴジュース好き」
私はリンゴジュースの入ったコップを貰い、一口飲んだ。
甘くておいしい。
……私がリンゴジュースが好きだから、甘いのかな?
「ねえ、タクちゃん」
「なんだ?」
「好きな物だから甘いって感じるのかな?」
「ん? リンゴジュースのことか? ああ、多分そうなんじゃないか?」
「好きな人でも甘いの?」
「ブボォォォァ!?」
タクちゃんは、何故か飲んでいたコーラを噴き出してしまった。
……なんでだろ。
「……瑞乃、お前、変なもの、見てないんだよな?」
「うん、見てないよ」
「じゃあ、何を見たんだ?」
「男の人が女の人とちゅーしたら、周りの人が甘い甘いって……」
「……」
何故かタクちゃんは頭を抱えて身もだえしている。
……変なの。
「……あのー、ですね、瑞乃さん? 男の人と女の子がちゅーしてるのは、
十分『変な事』じゃないかなー?とか思うんですけどー?」
「別に、ちゅーくらい変でも何でもないよ。昨日も絵里ちゃんとしたよ?」
「どこに?」
「ほっぺに」
「………………」
……タクちゃんは安心したような、がっかりしたような、複雑な顔で
また頭を抱えてる。
……やっぱり変なの。
「けど、絵里ちゃんにちゅーしても、甘くなかったの。やっぱり男の人と
しないと駄目なのかな? 好きな人としないと駄目なのかな?」
「……さあ、それは何とも」
「……タクちゃんとしたら、甘いかな?」
「いぃぃっ!?」
何故かタクちゃんは飛びあがるように驚いて……あ、また頭抱えてる。
「タクちゃん、男の人だし。私、タクちゃんの事好きだよ?」
「ほっぺだと駄目かもしれないから、口でした方がいいのかな?
どう思う、タクちゃん?」
「……あのなぁ、瑞乃大人をからかうのもいい加減にしなさい」
あれ? タクちゃん、何か怒ってる?
「そういう事は、ちゃんとホントに好きになった人と、ちゃんとした場所で
しなさい。好奇心だけでしたら色々と後悔するぞ?」
「タクちゃん、後悔したの?」
「後悔するどころか、今までそういう事した事ありませんが何かっ!?」
……あ、怒ってる。私、何か悪い事言っちゃったかな……。
「じゃあ、私としよ?」
「だから」
「タクちゃんだからしたいんだし」
「うっ」
「タクちゃんじゃないと、こんな事言わない。他の男の人となんて、絶対イヤ」
「………………」
「それでも、駄目?」
「……真面目なくせに、一度興味を持った物に対する執着だけは
強いんだからなぁ……ホント、なんでこんな風に育っちゃったんだか」
タクちゃんは頭を抱えながら何か呟いている。
駄目なのかな? ……あ、そうか、私がタクちゃんの事好きでも……。
「ごめん、タクちゃん。私、自分の事だけ考えてた。私がタクちゃんの事好きでも、
タクちゃんが私の事好きかどうかわかんないもんね」
「……」
「……タクちゃんは、私の事、好き? 嫌い?」
「………………」
タクちゃんは、そう尋ねた私の事を、黙ったままずっと見てる。
半分呆れたような、半分嬉しいような、不思議な顔で。
「……瑞乃」
「……何?」
「後悔、するなよ?」
……!
「うん!」
タクちゃんは、私の事好きなんだ!
良かった! 嬉しい!
「じゃあ、こっち来て」
私は手招きされるまま、タクちゃんの膝の上にちょこんと座った。
「ちょっと顔上向けて……ホントに、いいんだな?」
「うん……タクちゃんとなら、いいよ」
「……じゃあ、いくぞ」
私は目を閉じた。
少しずつ、タクちゃんの顔が近づいてくるのが何となくわかる。
段々、段々、近づいてくる。
ちゅっ
そして……温かい何かが、私の唇に、触れた。
「………………」
「………………」
十秒くらいかな? もっとかな? 温もりが、私の唇に宿り続ける。
そして、離れていった。
目を開けると、顔を真っ赤にして私を見てるタクちゃんがいた。
「……甘かった?」
「……よくわかんない」
よくわからないけど、私は何だかドキドキしていた。
「わかんないから……もっと、して欲しいな……」
あ、タクちゃんがまた頭抱えてうずくまっちゃった……。
――次の日。
「というわけで……キス、しちゃった」
「えー、いいなぁー、瑞乃ちゃん。私まだなのにぃ」
「甘いかどうかはよくわからなかったけど……凄くドキドキして、
何だか気持ちよかった、かも」
「うぅ……羨ましいなぁ」
仲良しの絵里ちゃんに、昨日タクちゃんとした事を報告すると、
絵里ちゃんは凄く羨ましがっていた。
そういえば、絵里ちゃんにも素敵なおにいさんがいるんだっけ。
「絵里ちゃんも、きっとできるよ、おにいさんと」
「……まあ、かいしょーなしだからねぇ、カッちゃん……で? で? その先は?」
「先?」
「そうよ、もっとエロエロなことがあるでしょ!?」
「……よくわかんない」
「なによぉ、せっかくキスしてもらえたのに、続きは無し?」
「じゃあ、教えて?」
「教えてあげてもいいけど……せっかくだし、おにいさんに教えて
もらえったほうがいいんじゃないかな?」
「……そうか。そうだよね」
その日、タクちゃんに『○○○ってどうやるの?』って聞いたら凄く怒られた。
もう少し大きくなってから、と言われたから、早く大きくならなくちゃ。
-終わり-