612 :
代理:2009/10/26(月) 02:16:06 ID:2Yu4rS7Y
「……っと、そろそろ戻らないと、正午までの合流に間に合わなくなってしまいますね」
「天文台に世界の端、二つをじっくり調べるとなると、やっぱり結構な時間がかかっちゃうんだよ」
「このあたりは整備された道もないですし……山道は大変ですね。下山の際に迷わなければいいんですが」
「楽しいハイキングとはいかなかったね。っていうか……そろそろ、限界、かもなんだよ」
「限界? あ、あの……インデックスさん? なんだかぷるぷる震えてますけど……大丈夫ですか?」
「山を登るっていうのは結構な体力を消費するわけで、それ相応のカロリーはあらかじめ摂取しておかなきゃで……」
「あー……ほ、ほら! きっと須藤さんたちがなにか調達してきてくれますよ。だから、ここはもうしばらく辛抱して――」
「おなかすいたぁ――――っ! おひるごは――――ん!」
◇ ◇ ◇
【お昼ごはん】
山登りと考察の後にはおなかが空くということ。
家に帰る頃にはお昼ごはん。
はてさて、今日のメニューは……?
【B-1/北西部・『黒い壁』と『消失したエリア』の傍/一日目・昼】
【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:空腹
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、試召戦争のルール覚え書き@バカとテストと召喚獣、
不明支給品0〜2個、缶詰多数@現地調達
[思考・状況]
0:おーなーかーすーいーたー!
1:神社に戻る。
2:神社にて『天体観測班』を編成。午後6時を目安に天文台へと向かい、星の観測。
3:神社にて『D-3調査班』を編成。D-3エリア、特に警察署の辺りを調査する。
4:とうまの右手ならあの『黒い壁』を消せるかも? とうまってば私を放ってどこにいるのかな?
[備考]
『消失したエリア』を作り出している術者、もしくは装置は、この会場内にいると考えています。
【テレサ・テスタロッサ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:S&W M500 残弾数5/5
[道具]:予備弾15、デイパック、支給品一式、不明支給品0〜1個
[思考・状況]
0:い、いい子だからもうしばらく我慢してください! あ〜っ、噛み付かないで〜!
1:神社に戻る。
2:神社にて『天体観測班』を編成。午後6時を目安に天文台へと向かい、星の観測。
3:神社にて『D-3調査班』を編成。D-3エリア、特に警察署の辺りを調査する。
4:メリッサ・マオの仇は討つ。直接の殺害者と主催者(?)、その双方にそれ相応の報いを受けさせる。
[備考]
『消失したエリア』を作り出している術者、もしくは装置は、この会場内にいると考えています。
613 :
代理:2009/10/26(月) 02:17:06 ID:2Yu4rS7Y
代理の代理終了しました
そして投下乙ですー
濃い……滅茶苦茶濃い……w
この二人の会話はこっちの頭が混乱しそうになるほど濃すぎる……w
それにしても随分考察進んだなーさすが頭脳&知識チート組……w
実に濃厚な話でしたw
GJです
投下GJ! なんという会話の嵐wwwwww
いらんかったんや! 地の文なんていらへんかったんや!
いやぁ、考察が進む進む。そして弾む弾む。
でもまだまだ収穫という収穫には至らずといったところか……。
うむ、互いの得意分野が活かされるのは実に素晴らしいことですね。
おかげでインデックスに一瞬橙子さん乗り移ったけどなwwwwwwww
なんという薀蓄全一!
投下、代理投下、代理の代理、いずれも乙です。
喋り倒すなぁ、こいつらwww 互いにない知識を補い合ってる2人がなかなか。
壁際では「ひょっとして戻ってこれなくなるんじゃ!?」とヒヤヒヤしたぞ……w どっちもドジっ子だから……w
しかし着実に考察とそのための調査準備を進めている2人。順調だなぁ。
GJ。しかし、神社に帰っても食事はあるんだろうか……??w
投下乙です
この二人は、なんとまあwww
考察魔というべきか考察が進む進むwww
でも目立つた収穫はまだか。順調だけど一抹の不安があるな
マーダーが来たらゆっくり考察も出来なくなるからな
両者の間にあららぎさんと羽川のお馴染みのやりとりが見えたが、本当にこの二人によく合うよなあ、このセリフ
しかしかなり進んだなあ。目立った収穫はないにしろ、考察がなあ。
とにかく乙でした
乙です。
主催者は戦闘能力も高いだろうからいいけど、狐さんは見つかったらどうするつもりなんだろう・・・。
なんか手段作っておかないとフルボッコにされるぞw
予約していたパートを投下します。
親愛なるアリソン
これを"ヴィルヘルム・シュルツとしての最後の手紙"とする。
放送は聴いたよ。まさかこの様な結果になるとは思ってもみなかった。
君と別れるのはどちらかが"仕事上で何かが起きたときだけ"だと相場が決まっていると、そんな事を漠然と考えていたから。
けれど君は遂に命を散らした。君の金の髪が、蒼い瞳が、艶やかな唇が、活き活きとした表情を奏でることはもう無い。
死んだ人間は生き返ったりなどしないのだから。放送の内容が真実なら、そういうことなのだろう。
後悔の念は勿論ある。すぐに君を探しに行けば、あの"王"相手に現を抜かさなければ、と様々な"もしも"を想像する。
僕もやはり人間だ。トラヴァスであろうがヴィルヘルムであろうが、感情を持つ人間なんだ。
けれど、それでも、今はただの"少佐"としていさせて欲しい。
大局を見据えるが故に感情を殺す、汚れ仕事に染まりきった"トラヴァス"としてここにいさせて欲しい。
救うべきものを救いたいから、だから今は鉄面皮という名の仮面を被る。
君の弔いを後回しにしてしまうことを許して欲しい。
目の前の目標を達成させるまで、君の事を思い出す機会が減るであろう事を許して欲しい。
不器用な男だと蔑んでくれて構わない。それこそが"私"で、"僕"なのだから。
代わりに僕は、リリアを……娘を、必ずや"しわくちゃのお婆さんへと成り果てさせてみせる"から。
それでは僕は"仕事"に戻る。君と再会し、大いに語り合うのは"六銭を支払った後で"。
だから今は、"さようなら"ではなく、
"また、後日"。
ヴィルヘルム・シュルツ
◇ ◇ ◇
優秀な"狩人"に対し、運命の女神は気まぐれを起こしたらしい。
結局"狩り"を開始したフリアグネは、トラヴァスと共に誰に会うことも無いまま放送を聴くこととなった。
戦力外でしかなかったあの"木偶"は随分と沢山の人間と出会ったというのに、何が悪かったのだろうか。場所か、運か。
百貨店から北へ進み、飛行場近くに。そこから暫く周りを歩くものの、前述の通り運か場所が悪いが故に出会いは皆無。
気にせず更に捜索範囲を増やせばとも思ったが、「闇雲に動き過ぎるのは、かえって何かと隙を生みやすい」とは"少佐"の弁。
そうして結果、彼らは再び百貨店近くへと戻っていたのだった。随分と時間を無駄にしてしまったと思う。
だがおかげで放送を聞き逃す機会が生まれなかったという点は不幸中の幸いというべきだろう。
「……気になることは多いが、まずは十の名から振り返るべきかな。少佐、復唱を」
さて、ではそのじっくりと聴く事が出来た例の"放送"に関して。
低い建物の屋根に立つ人外の王と大地に立つ出来の良い少佐の会話は、王の問いから開始される。
「はい。長門有希、榎本、黒桐幹也、甲賀弦之介、筑摩小四郎、吉田一美、高須竜児、アリソン・ウィッティングトン・シュルツ」
「それらは私と違い、名簿に名を連ねられた者達だね」
「ええ。更に加えてメリッサ・マオと北村祐作の"名簿にて名を語られなかった秘められし"二名。以上十名が死亡した者です」
トラヴァスは容易く全てを答えて見せた。一字一句、その全てがフリアグネの脳に刻まれている名と一致している。
なるほど、"これくらいはメモを取らずとも"というわけか。銃の腕だけではない、頭の方も合格といったところだろう。
フリアグネは簡潔に評価を付け終えると、話題は続いて放送の内容へと入り込んでいく。
「そうか。やはり私にとって有益な死は発生しなかったようだね。そして同時に懸念すべき者もいない」
「プラスマイナスゼロ、といったところでしょうか。この椅子取りゲームが開始されて初の放送です。仕方の無い部分もあるかと」
「うふふ、全くだよ……それで、君はどうだい?」
「どう、とは?」
「君にとって懸念すべき情報はあったかい?」
「"いえ、特に何も"」
「……本当に?」
「はい」
「…………それなら良かった」
「存外と慎重ですね……まだまだ私は信用に値せぬ存在であると?」
「"この椅子取りゲームが開始されて初の邂逅です。仕方の無い部分もあるかと"……と、ね」
「……なるほど。"全くだよ"」
このトラヴァスが嘘を言っていないのであれば、あの狐面の行った"今回の死者の発表"は無価値であると言えよう。
フレイムヘイズが死んでくれたわけでもなければ、同属の王が亡くなったわけでもない。
そして"少佐の言葉を信じるならば"、彼の仕事に差支えが発生するような内容でも無かったというわけである。
一応念を押してみたは良いが、険悪な雰囲気になるのも好かないのでこれ以上の深追いは中止。
故に今回のこの放送、その"前半"に関する会話はすぐに終わった。
しかし問題は、いや、本題はここからだ。
「少佐も聴いたかい? あの男の言うこの世界の仕組みを」
「にわかには信じがたいですが、死者の名を呼ぶのを"前編"とすれば、この"後編"も"後編"で実に聞き逃せないものとなりましたね」
「ああ。実に面白い事を言う。けれど詩的じゃあない、言うなればそう……"戯言"」
「復唱の必要は?」
「構わないよ。頭には叩き込んである……さて、どう思う?」
フリアグネの問い。それに対しトラヴァスは少し考える素振りを見せ、だがそれでも沈黙の時間を"一寸"程度に抑えて答えた。
「世界が同一ではない、という発言には驚きました。我々が違う物語の役者であるとは、突飛と思うばかりです」
やはり、そうか。
「ああ、しかし私は信じるよ。私も"元の物語では似たようなもの"なのだから」
「と言いますと」
「譜面どおりに受け取ってくれて構わないよ。ただ、あの"戯言の男"の話に納得がいくか否ならば、私の答えは前者だ」
トラヴァスにはまだ知らせてはいなかったが、"紅世"自体が人間にとっては別の物語である。
その物語にて"王"として君臨する本人としては、戯言の男が我々に放った言葉も納得がいくのは当然の話。
問題があるとすれば、どうやって違う物語を統合したのかということ。
そして、
「"淡水魚と海水魚"……この話は実に面倒なものだ。封絶や燐子の製造も上手く機能しないというのは御免蒙りたかった。
この忌まわしい結果からして、私は当然割を食う"異端"であるというわけなのだけれど……しかしそれでもまだ希望はある」
「はい。"海水魚ばかりになれば水槽の中の塩分濃度は高まり成分は海のものに近づく。また逆も然り"。この一言は重要かと」
「そうだね少佐。これはつまり"異端を殺し続ければ異端の者の力は更に弱まる"という警告に他ならないが、同時に……」
「"フリアグネ様の如き異端の者で埋め尽くせば解決する"可能性も出たということですね」
「そうだね。そうなれば喜ばしいのだけれど」
最後に放たれた"おさかなのおはなし"は、非常に興味深かった。
塩分濃度はこの世界の物語を構成する駒の質によって変化するらしいのだ。
現在の水質では、異端である自分は割を食っているらしい。誰とも出会わなかったのもそこに起因するようだ。
だがそれでも絶望にはまだ早い。今考えるべきは、逆にこのゲームが激化した果てに条件を満たす事が出来た場合。それは、つまり。
「っと、さて……ひとまず会話は終えよう。何かあれば後程聞こうじゃないか」
「どうしました?」
突然のフリアグネの提案。それに対しトラヴァスは疑問を浮かべる。
"また何かの気紛れなのだろうか"といったところか。表情は硬いままではあるが、そのようなものだろう。
しかしそれを答えることを放棄するように、フリアグネは跳んだ。屋根から屋根へ、まさしく忍の如く!
それを確認したトラヴァスがフリアグネを追う為に走り出したのは一瞬遅い。
その為、互いの距離は見る見る内に離れていく。
「うふふ……やっと、狩れる!」
故に、"紅世の王"のこの呟きは"少佐"には届かない。
しかしあの"少佐"ならば"王"の行動など筒抜けだろう。
そんなある種の信頼とも呼べなくも無いモノを抱き、フリアグネの出撃は始まる!
◇ ◇ ◇
何者かが近づいている事を感知し、女は背に仕込んでいたナイフを抜いた。
女は和服にジャケットといういでたちで、狐の形をした面を被っている。
面は"人類最悪"と名乗ったあの男と瓜二つであり、衣服さえ似せればもしや、といった具合である。
名は両儀式。素顔は凛とした美人だ。
式は悲しみの淵で立ち止まり続ける事を一旦やめ、南下している最中だった。
当然世界の端で無に飲み込まれるのは是としないので、少し西向きに歩くのを意識しながらである。
そうしてそうこうしている内に、自身に迫り来る危機に気付いた、というわけだ。
このまま南下すれば百貨店に到着するはずなのは把握しており、そこから"何者かが潜んでいる可能性"は考えていた。
だがまさかこうしてすぐに出会う事になろうとは。
自分を貫く様に注がれる殺気からして、狙いは式一人だ。
そして近い。恐らく気付かれる事を前提として潜んでいるはず。
ならば敵にも長期戦という発想が無いのだろうと思える。
丁度良い。こうなったら八つ当たりだ。
ビバ、エネミー。
だが、そんな考えとは裏腹に式は獰猛な笑みを浮かべるようなことはしなかった。
それは黒桐幹也に関する様々な感情と敵とあいまみえる喜びの板挟みにされている事が大きかった。
死者は蘇ることは無いのだ。今更八つ当たりして何になる、という想いが先行する。
と思いきや、今のこの悲しみを敵対心に変えて誰かにぶつけてしまいたいとも思う。
だがそれでは自分の心を埋める事など出来やしない、と悟ってしまってもいる。
式は複雑な、或いは分裂した存在だ。
空虚な心を持ち、確かな力を持ち、死を視る異能を持つ、生物学上は女性の人間。
二つあった心の一つを失い、故に酷く喉が渇いたかのように、人の命に触れることを渇望する。
そんな不安定な彼女は、数少ない信頼する人物を亡くした事で更に支えを失いかけていた。
果たして一体自分はどうすれば良いかわからない。だが、それでも敵が目の前にいるのならば――――
「――――!」
突如。
突如、殺気の主が背後から迫って来たことに気付いた式は、姿勢を低く取ると転がるように前方に移動した。
受身を取って背後へと体ごと振り返れる。見れば自分の元いた位置――その地面には大きな一本の線が引かれていた。
横薙ぎ一閃。避けなければ、恐らく式の体は容易く両断されていただろう。
何故ならその襲撃者――目の前に立つ白いスーツを纏った男――が持つ剣は、明らかに常軌を逸していたからである。
あまりにも巨大であり、見た目からして両手で持っても普通ならば苦労するであろう。
西洋剣のシルエットは上質な材を使用しているのか美しい。そしてよく切れそうだ。
しかし、そんな雄雄しい得物は――――柄の短さからして"片手で持つ事しか許さない"異常なモノであった。
フェンシングに使うようなものならまだしも、これはおかしい。そしてその様な面妖な剣を使用出来る相手は更におかしい。
異形と異形が組み合わされれば、常識を逸脱した化学物質がこんなにも容易く完成するのだ。と今更ながら理解する。
「流石に避けられるか。いやはや、実に疾いね……何かかじっているのかな?」
しかし彼が何者なのか、そんな事はどうでもいい。
こちらを殺そうとかかっているのならば、正当防衛を行使するまでなのである。
その相手がどういった存在なのか。それを知ったところで何になるのか。
そういうのは蒼崎橙子に任せておけば良い、と心底そう思う。
「その仮面の奥……少々気になるけれど、外してはくれないのかな?」
果たして一体自分はどうすれば良いかわからない。だが、それでも敵が目の前にいるのならば――――今はただ、闘う。
黒桐幹也のいない世界へ抱く違和感は、未だ拭い去れないけれど。
「無視かい? ……やれやれ」
◇ ◇ ◇
流石に速い。あの王め、やってくれる。
突然のフリアグネの行動に辟易しながら、トラヴァスはあの気ままな"王"を追っていた。
ここに来てあの表情、そして会話を途切れさせてまで起こした突然の跳躍。
確実にあれは、狩りを開始する合図だ。
油断していたわけではない。しかしフリアグネよりも先に第三者を発見出来なかったのはこちらの不手際。
こちらも屋根に上ったほうがよかったか。いやしかし。
敵は何者だろうか。少年か少女か青年か妙齢の女性か、中年か老人か。
だがフリアグネならどの人間に対しても容赦はしないだろう。少し話せば解る、あの王はそんな男だ。
先程の"放送"に対してのリアクションからも見るに、弱い相手ならば尚更なのではないだろうか。
どうか被害者が"持ちこたえられる類の人間である"事を祈る。
フルートは構えた。フリアグネの向かった場所に関しても、方角からして大方の目星は着いている。
少しばかり道が入り組んでいるのは厳しいが、そう遠い距離でもあるまい。
さて、どの程度妨害出来るか。
◇ ◇ ◇
殺気だけで人を殺せそうな勢いだ。フリアグネは目の前の和服女をそう評価した。
燃えている。少佐とは別種の雰囲気を持ち合わせている。
目の前にいる邪魔者に対してのこの激しさは、あの"討滅の道具"達とある種通じる部分があるだろう。
しかし、それもどうも安定していない様だ。
何かが揺れて、何かがぶれて、波がある。急いているのか焦れているのか。いや、違う。
恐らく、心を揺らす何かが起こったのだろう。理由としては、あの放送の内容辺りが適当か。
人間は弱い。何か事が起こり、自身に降りかかればそれだけで力を自在に震えなくなるものだ。
フレイムヘイズですらそうだったのだ。
なるほど、これは勿体無い。通常はもう少し有能な人間だったのだろうに。実に惜しい。
だがしかし、これはこれでまた違った趣があるというもの。
それに怒りの如き何かに任せた大振りな攻撃が目立つのは、未だ殺気が消え逝かないという事実を反映させているということ。
否、それどころかますます強まっているようだ。"燐子"や並の"徒"では飲まれる程度にまで、というところか。
例えるならば"crescendo"の記号。"f"は"ff"となり、後は"fff"を待つのみだ。
人間の癖に、ここまで練り上げたか。もし君が万全の状態なら、少々怖かったかもしれないね。
気に入った。面白い。そろそろ行こう。
様子見程度に刃物を避け続けるのはここまで。
フリアグネの手に納まった巨大な宝具が、容赦なく動いた。
◇ ◇ ◇
ただただ避け続けるだけであった目の前の優男が、突如としてこちらを斬り付けてきた。
受け止めるだけで手首の骨が持っていかれそうなあの大剣が振るわれたのは、これで二度目となる。
一度は見た。しかしそれでも脅威は脅威。
避けたは良いものの、ここからどうするべきか――と、考える暇も与えてくれはしない!
理由は単純。優男が勇敢にも何歩も進みながら、返す刃で三度目の横薙ぎを発動させたからだ。
長いリーチでの牽制と強大な力で敵をねじ伏せる見事な二段構えだ。
ずるい。こんなもの、もう人間業でも何でもないじゃあないか。何かのファンタジーの住人かよお前、と式は心中で吐き捨てる。
現実的に考えてみるなら魔術で身体強化を施しているという可能性が大いに高いし、式もそれはわかってはいるのだが。
もしくは度々出会った者達の様に"人間じゃない"か"人間をやめた"か。
と、そんな事を考えている間を相手は隙と見たか、今度はそのリーチが今まで以上に活かされる突きを放ってきた。
まるで大剣を片手で振るったとは思えぬほどの速度! 一気に距離を詰めるその刃が首ごと命を刈り取ろうと接近する。
式はここですぐさま跳躍。しかしそれで終わることは無い。彼女はそのまま幅広の刀身へと飛び乗ったのである!
こちらもこちらでまたこれも忍の如き妙技。気配を消すなどといったものとは違う方向性の、その極限。
そしてそのまま剣を床代わりに跳躍し一気に距離を詰めようと式は画策、実行に移そうと両脚に力を込めた。
が――――それは未遂に終わった。
突如足元に浮かんだのは真紅の紋様。血にも酷似した禍々しいそれが広がると同時に、式の体に異変が起こったのだ。
紅の光が発せられた瞬間、"全く刀身に触れていない首筋に切り傷が浮かび上がった"。
いや、それだけでは終わらない。異変を感じて飛び降りようと式が動いている間にも、衣服を飛び越えて胸や右腕にまで傷が及ぶ。
一つ一つが繋がっているわけではない。それに小さい。しかしこのままでは自分の体に緋色の流星群が描かれてしまう。
式はその白くしなやかな肢体に幾つかの傷をつけながら、仕方なく横に跳んだ。
そしてそのまま着地。設置した脚にまたも力を加え、側面からの奇襲に転じる。
だが今度はあの紋様を浮かべたままの大剣が斜線上に突き立てられてしまった。
まるで巨大な盾へと変化したそれに対し、勢いのままナイフを突き立ててしまう式。
このまま力押しが出来るわけがない。行き場が無くなった力は霧散し、式は立ち止まってしまう。
それは最早相手にとっては好機そのもの。その僅かな間に式の体には傷は容赦なく刻まれていく。
急いで剣からナイフと体を離すがもう遅い。既に背中に傷が増えてしまっている。
わけが解らない。何がどうなって、どうなった?
「必要ならば解説しよう」
そんな疑問を見透かしたかの様に優男は口を開いた。甘ったるく、奇妙な韻を踏むように話し始める。
「宝具"ブルートザオガー"。それがこの剣の名だ。ブルートザオガーとは"Blutsauger"、つまり"血を吸う者"。
即ちこの名が意味するのは"吸血鬼"。随分と洒落た名が付けられたものだ……ああ、独語はご存知ではないかな?」
「オレが知るか」
「おっと、随分と可愛らしい声で喋るのだね。マリアンヌ程ではないけれど……で、その仮面はいつ外してくれるのかな?」
「……」
「うふふ、また逆戻りかい? まぁいいだろう」
そんなことは式にとってどうでもいいものであった。
カラクリを説明してくれるのだろうと思って耳を傾けたのだ。ならば会話の内容は望ましいものでなくては困るというもの。
「さて、本題に移ろうじゃないか。このブルートザオガー、面白いことに"触れたものに傷を与える"という力を持っていてね。
更にその傷の程度は込める"存在の力"に比例する。交響楽団の指揮者の様に、こちらで好きに強弱をつけられるというわけさ。
今、まるで紙で指を切った時のような傷が体のいくつかの箇所に浮かんでいるだろう? それらは無事に君へと力が届いた証だ」
そうか。忌まわしい緋色の線、その正体はあれの力か。思い切り触れていた所為だったか。
数々の"特殊"な者と出会う機会が多かった式が、こうしてそんな話を受け入れることにそう時間はかからなかった。
しかし問題なのは一つ。そんな逸品を聞いたことも無いということである。
存在の力といった言葉も、全く聞き覚えが無い。あの蒼崎橙子辺りが喋っていてもおかしくはないというのに。
この世界の端に集められたお前達にとっての”元の世界”というのは必ずしも同一ではない。
それぞれが別の世界。つまりは別々の物語でそれぞれの役を演じていた登場人物であったというわけだ。
唐突に思い出したのは、放送で"人類最悪"が口にした言葉――――正解に近いのは、これか。
ブルドーザーだかブレイブルーだか知らないが、あの剣が"別々の物語"のどこかにあるというのならば話は早い。
更に言うならこの優男も"式の物語"から外れた存在である可能性もあるわけだが、橙子の知り合いである可能性も残念だがあるので割合。
しかし今回ばかりは人の話を聞いておいてよかったと思う。黒桐の件が無ければ、あの男の戯言など――――
(黒桐……)
やはり、頭を掠めるのは彼の顔だ。結局こうして殺し合いに発展した状況ですら、脳にこびり付いてしまって離れない。
何もかも忘れてしまえれば良いのに。ああ駄目だ、集中出来ない。目の前のあいつを倒すのもなんだか気だるい。自分に腹が立つ。
何故死んだ。何故居ない。何故逝った。何故往った。
脳内でぐるぐると回るのは、"もう一人の自分"が姿を消したあの日にも似た焦燥感。そして心の空白の認識。
最早人生の一部だったのだ。どう足掻いてもそうだったのだ。それを今何故唐突に奪われなくてはならない?
何故こんな思いをしなくてはならないのか――――
「うふふ、これはまた付け入り易い隙があったものだ」
思考を停止させるには十分過ぎるほどの衝撃が、式の右手を襲った。
◇ ◇ ◇
そろそろ良いだろう。決着もついた。"進言"という名の戯言を始めるにも丁度良い。
駆けつけて暫く様子を見てみれば、存外あっさりとフリアグネの戦闘は終局を迎えた。
決着の要因は彼の持つ例の大剣。相手の右腕のナイフ、その柄から先を見事に粉砕した一撃によって幕は下ろされたのだ。
得物を失った少女の体に小さな傷以外の損傷は無い。右腕にも特に異常はない様子だった。脱力気味だったのが助かったのだろうか。
今はフリアグネの左手がその首を掴んでいる状態だ。しかしそれでも殺気は消えない。
とりあえずはこちらも協力しておくしかあるまい。
トラヴァスは物陰からやっと姿を現し、あの"フリアグネの被害者"に対し"フルート"を構えた。
それを見たフリアグネは「ご苦労様」と労うが、とりあえずそれは無視しておく。
恐らくは様子見に徹していたことはばれているのだろう。しかし何も言われないならばそれはそれで良しだ。薮蛇は勘弁したい。
「少佐」
突然フリアグネに声をかけられる。これは何を言い出すか予測出来そうには無い。
仕方なく次の言葉を待つ。
「彼女は、良い眼をしていると思わないかい?」
フリアグネの手が、妙な形の服を着ている相手の狐面にかかった。
過剰な力を入れることもせず、彼はそのままするりと優しく外す。
そんな彼の表情は何か楽しげだ。面を外された相手は、対照的に憮然としていたが。
「この私に、この"紅世の王"に対して、彼女は望みを捨てずに挑みかかった。その勇気は賞賛に値するよ。
けれどそれ以上に……うふふ、この私にここまで"敵意"を失わずにいられるこの精神力……素直に言おう。感動した」
狐の面の向こうでは、ギラギラとした光を写した両眼があった。
そしてこれがこちらを見たとき、何故かトラヴァスはフリアグネの言葉に納得出来てしまった。
厳密には"良い眼"か"悪い眼"かは知ったことではないのだが、それでもあの"王"が喜ぶには値するだろう。
そう、これは、この眼はまるで、
「まるで、全てを殺し切る魔眼の様だ……」
フリアグネの滑らかな声が、トラヴァスの抱いたものと同じ感想を放った。
◇ ◇ ◇
ここでフリアグネ達三名の織り成す物語の舞台は、近くにあったモダンな雰囲気を漂わせるバーへと移る。
理由は、トラヴァスとの合流後にフリアグネがかけた以下の号令である。
ご覧、このおぞましき水晶の輝きを。こんなものを私に向けていたんだよ、彼女は。
この"私"に、この紅世の王に対し、同属でもフレイムヘイズもないただの人間がね。
素晴らしいとは思わないかい? 君の時と同じだ。再び私は猛々しい種と出会えた。
いやはや、これは面白い。取って喰うつもりだったが非常に惜しい。
…………だからここは一つ、戯れをしようじゃないか。親睦を深める意味でも、ね。
フリアグネの企みは単純なものであった。
それは"和服"の――フリアグネは両儀式の名を知らないので、今はこう呼称する――スカウト。
正しく"少佐"の時と同じ、"ただの人間という括りから逸脱した存在"であろう和服を気に入ったのだ。
勿論こちらの提案に従わないようであれば、すぐに躊躇い無く殺すが。
しかし、ここで少し問題が発生した。
戦闘終了直後、和服の突き刺すような殺気は霧散。何故だか消えてしまったのだ。
目の前の邪魔者全てを刈り取らんとするが如きあの凶暴性。それが今、微塵も無い。
狐の面は既に回収してあり、この手の中。故に和服の顔はよく見える。
明らかに、闘争の中で感じられた"あれ"が微塵もなくなっていた。
何故なのだろうか。
補足すると、それは彼の推測通りの事態が発生したからである。
"和服"両儀式の支えとなっていた黒桐幹也が、自分の及び知らぬ場所で死ぬ。
放送によって生み出されたのは精神の均衡の崩れ。悲観的な思考。そして敗北。
ごくごく単純な言葉で表現するならば、彼女はもう"何もかもがどうでも良かった"のだ。
勿論この事実を、フリアグネは把握していないのだが。
ともかく、それでも和服に対する興味の強さは変わってはいない。
脆弱なフレイムヘイズを上回るのではないかという予感。それが今は勝っている。
少佐とはまた違う方向性へと突き抜けるこの和服の真髄、見てみたい。出来れば、臣下とした上で。
フリアグネはカウンター奥へと引っ込んでいくと、まずは近くにあった放送器具に手を伸ばした。
それらしいボタンを何度か押してみるといとも簡単に稼動。スピーカーから緩やかなスムーズジャズが流れ始める。
BGMとしては問題はないだろうと判断してそれ以上弄る事はせず、次は多段棚から酒を適当に数瓶持ち出した。
蜂蜜をアルコール発酵させた"タッジ"に、トウモロコシ等が原料であるビールに似た飲料"テラ"、蒸留酒"アラキ"など。
チョイスが独特だが全く気にせずグラスも人数分用意。少佐と和服が立っている場所、その近くのテーブルに置いてやる。
これで準備は完了。後はこれを振舞ってやれば場の雰囲気は微かでも暖まるはずだ。
と、思っていたが。
「私は遠慮しておきましょう。知っての通り銃器を扱う身……酔いは怖いですから」
「――――オレも却下」
即、断られてしまった。案を断固として受け入れないという意思が透けて見えるくらいだ。
苦笑しながら「残念」と呟くと、再びカウンター奥へ。
そうしてそのまま所定の位置に酒を戻そうとして、"これも何かの縁"とデイパックに放り込んだ。
"紅世"には存在しないものを好くのは"徒"の本能。それにもしかしたら何かに使う可能性もある。
ただの気まぐれと言えば、それまでなのだが。
さて、どうするか。
あの真面目な少佐はともかくとして、和服の方は未だに言う事をきかないのか、と感心した。
ここに来るまでに、戦意も殺気も消えうせていた相手だ。梃入れをしなければもう燃え上がらないかもしれないと覚悟していた。
これでもう少しやる気を見せてくれれば完璧なのだが。敵意のみでは何も生まれはしない。ただただ非生産的な時間を過ごすままだ。
後一歩及ばないといったところだ。やはり、駄目か? ここで殺すか? いや、もう少し様子を見よう。
「確かに朝から酒というのもみっともない話ではあるね。ではこちらではどうかな?」
カウンターから戻ったフリアグネは酒絡みの思考を捨てて、店内の"別のゾーン"へと二人の視線を導いた。
フリアグネの掌が指し示したのは、店内にどっしりと居座るビリヤードのセットだった。
ハスラーはいない。あるのはポケットテーブルにビリヤードボール、キューやチョークやメカニカルブリッジ等。
"椅子取りゲームの参加者以外の人間は存在しない場所である様子なのに、何の問題もなくプレイが出来そう"だ。
「ルールは"ナインボール"にしよう。私もたまには息抜きくらいはしたい……付き合ってくれるね?」
大人気なくも、少し殺気を込めてしまった。
すると少佐は何かを察したような目でこちらを見ると、せっせとゲームの用意を始めた。
手玉一つにカラーボール九つをテーブルに並べ、先程フリアグネがグラスでそうしたようにキューを人数分用意してくれた。
そうしてこちらに近づき、囁きかける。
「あの子を我々の傘下に、という企みなのはわかりましたが……敢えてのビリヤードというのは?」
「別に酒でも良かったのだけれど、あの"和服"の心を探りたいと思ってね……」
「なるほど、何かをきっかけに少しずつアプローチをかけようと……?」
「ああ。人間というものは必ずその心理が行動に現れるからね。そこを狙い、探り、推理する」
「ああ、ようやく話が繋がりました。しかし相手がこちらに乗り気でなくてはなりません……今は厳しいのでは?」
「そうだね。だから今回は脅してでも舞台に立たせよう。そして少しずつ和服の心中を探る」
「心に隙間があり、それを利用出来るならば利用したいと」
「そういう事さ。やはり少佐は賢い」
「では相手がこちらに隙を見せなかったり、または使い物にならないと判断した場合は?」
「殺すよ」
「そうですか……ふむ」
「そういうことだ。ではそろそろ始めようじゃないか。とは言え和服は乗り気ではないようだし、ここは……」
「私が説得しましょう」
「大丈夫かい? 取って喰われてしまわないようにね」
「ご安心を。ところで、質問なのですが……」
「おや、どういった内容かな?」
「……"ワフク"とはどういう意味ですか? あの子を表している事は解るのですが」
「…………ん? 和服は和服だよ?」
そんな内緒話を経て、トラヴァスは和服へと向かっていった。それを確認してカラーボールを並べ始めるフリアグネ。
あの様子では暫くかかりそうか、とつまらなそうにため息をついてしまった。
が、その予想は大外れ。直後に和服がこちらにあっさりと近づいてきた。しかも驚くことに、その足取りは何故かしっかりとしている。
少佐から奪い取ったのか、キューも持っている。突然あの出会ったばかりの頃の"やる気"を髣髴とさせる何かを感じさせてくれた。
些か奇妙だが、乗り気になってくれたのであれば嬉しい話である。一体何があったのか。ナインボールと言った途端これとは。
と、ここですぐに少佐も戻ってきた。和服のここまでの変化だ、何を言ったのかは当然気になるので耳打ちをする。
「見事だよ少佐。一体何を言ったんだい?」
「いえ……私は別に何も。こちらが不思議なくらいです。密やかに催眠術でもかけていたのですか?」
「まさか。そんな悪趣味に興じたりはしないよ……」
「では彼女に裏があると考えても?」
「さてね。だがとにかくチャンスだ。折角の面白い人間なのだから……がっかりさせてくれないで欲しいな、和服」
「同意です。私も"簡単に死なれたくないと思っています"から」
「おい、始めないのか?」
王と少佐若干二名の内緒話を途切れさせるように、和服の声が響いた。
◇ ◇ ◇
相容れなければあっさりと殺そうとするこの野蛮な王には少し冷や冷やさせられた。
故にトラヴァスはあの"ワフク"――王に従い、こう表現する――が乗り気になってくれた事に心底感謝した。
だが同時にそれは、今度はあのワフクの心をどう動かすかに気を配らねばならなくなったという事だ。
自分が見た最初のワフクはダウナーの化身とも言える状態だったので、恐らくは自分と同じく放送絡みの何かがあったのだと予想出来た。
しかし今は違う。何故だか笑みまで浮かべている。元気を取り戻した、という言葉の範疇ではない。
やけになったか? それともビリヤードに何か深い縁があるのか。それとも強烈な負けず嫌いか。
何がなんだか解らないので判断に迷うが、とりあえずは臣下として"王"に従い、ビリヤードを楽しむとする。
「公式な試合でもないし、ブレイクはやりたい人間に任せるとしよう。順も最後で良い」
「オレは良い。眼鏡に譲る」
「……では不肖ながら」
任されたので、二名の視線に晒されながらトラヴァスはブレイクショットを放った。
放たれた手玉が"一番"ボールと衝突し、その力が全体へと伝わっていく。
手玉は衝撃によって急速に停止。それを尻目に残り九つのボールは好き放題にテーブル上を暴れまわった。
だがそれもそこまで。ボールは各ポケットに吸い込まれないままやがて停止。
結果は一番がコーナーポケットの近くまで移動してくれただけ。これではトラヴァスへのメリットは無に等しい。
本来はここでいくつか落としておけば美しく、また有利なのだが。
「いやはや不甲斐無い。申し訳ありません」
「いいや、構わないさ。だがこうなると次は……」
「オレだな」
ワフクが構えた。散り散りになったカラーボール、その一番目をしっかりと見据えている。
さて、こういう場合にはまずは一つ一つを綺麗に落としていくのが賢明だ。
恐らくはコーナーポケットに一番を華麗にイン。そのまま二番へと手を伸ばす計画だろう。普通はそうする。
集中するワフク。その姿をトラヴァスは見つめるものの、心の内まではまだ悟れそうに無い。彼女の得体の知れぬ高揚が邪魔をしている。
それはフリアグネも同じようで、両名のワフクと手玉への視線は通常のハスラー達のそれとは全く違っていた。
当然だ。重要なのはこのゲームの結果ではないのだから。
「ん?」
と、ここまでトラヴァスは気付いた。
このワフク、コーナーポケットを狙ってなどいない。その隣にあるクッションに対し一番をぶつけるつもりだ。
何を考えているのか。他のボールにぶつけることで間接的に数を減らそうという算段か?
いや、違う。"そうだが違う"。トラヴァスが視線をずらせば、答えはすぐに判明した。
そう、このまま跳ね返った場合、その斜線上にあるのは!
小気味良い音が鳴る。