新漫画バトルロワイアル 第5巻

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1創る名無しに見る名無し
ここは、漫画作品のキャラクターたちによるバトルロワイアルパロディ(パロロワ)の
リレーSS企画スレです。
この企画は性質上、版権キャラの残酷描写や死亡描写が登場する可能性があります。
苦手な人は注意してください。


前スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1245674870/


したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12531/


まとめwiki
http://www42.atwiki.jp/newmangabr/
2創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 20:36:32 ID:afcv9v60
★参加者名簿(決定)★


6/6【スパイラル 〜推理の絆〜】
○鳴海歩/○結崎ひよの/○竹内理緒/○浅月香介/○高町亮子/○カノン・ヒルベルト
6/6【トライガン・マキシマム】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/●ニコラス・D・ウルフウッド/○ミリオンズ・ナイブズ/
○レガート・ブルーサマーズ/○ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク/○リヴィオ・ザ・ダブルファング
5/6【ハヤテのごとく!】
●綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/●愛沢咲夜/●鷺ノ宮伊澄/○西沢歩/○桂雪路
6/6【鋼の錬金術師】
○エドワード・エルリック/●アルフォンス・エルリック/●ロイ・マスタング/○ゾルフ・J・キンブリー/○グリード(リン・ヤオ)/○ウィンリィ・ロックベル
5/5【うしおととら】
○蒼月潮/○とら(長飛丸)/○ひょう/○秋葉流/●紅煉
5/5【未来日記】
○天野雪輝/○我妻由乃/○雨流みねね/○秋瀬或/●平坂黄泉
5/5【銀魂】
○坂田銀時/●志村新八/○柳生九兵衛/○沖田総悟/○志村妙
5/5【封神演義】
●太公望/○聞仲/○妲己/○胡喜媚/○趙公明
3/4【ひだまりスケッチ】
○ゆの/○宮子/○沙英/●ヒロ
4/4【魔王 JUVENILE REMIX】
○安藤(兄)/○安藤潤也/●蝉/○スズメバチ
4/4【ベルセルク】
○ガッツ/○グリフィス/○パック/○ゾッド
4/4【ONE PIECE】
●モンキー・D・ルフィ/○Mr.2 ボン・クレー/●サンジ/○ニコ・ロビン
4/4【金剛番長】
○金剛晄(金剛番長)/○秋山優(卑怯番長)/○白雪宮拳(剛力番長)/●マシン番長
3/3【うえきの法則】
○植木耕助/○森あい/○鈴子・ジェラード
2/2【ブラック・ジャック】
○ブラック・ジャック/○ドクター・キリコ
1/1【ゴルゴ13】
○ゴルゴ13


55/70
3創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 20:37:46 ID:afcv9v60
★ロワのルール★


 OPなどで特に指定がされない限りは、ロワの基本ルールは下記になります。
 OPや本編SSで別ルールが描写された場合はそちらが優先されます。



【基本ルール】


最後の一人になるまで殺し合いをする。最後まで生き残った一人が勝者となり、元の世界に帰ることができる。
参加者間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、参加者は会場内にランダムで配置される。



【首輪について】


参加者には首輪が嵌められる。首輪は以下の条件で爆発し、首輪が爆発したプレイヤーは例外なく死亡する。
首輪をむりやり外そうとした場合
ロワ会場の外に出た場合
侵入禁止エリアに入った場合
24時間死者が出ない状態が続いた場合は、全員の首輪が爆発



【放送について】


6時間おき(0:00、6:00、12:00、18:00)に放送が行われる。
放送の内容は、死亡者の報告と侵入禁止エリアの発表など。



【所持品について】


参加者が所持していた武器や装備などはすべて没収される(義手など体と一体化しているものは没収されない)
かわりに、支給品の入ったデイパックが支給される。
デイパックは何故か、どんなに大きな物でも入るし、どんなに重い物を入れても大丈夫だったりする。
デイパックに入っている支給品の内容は「会場の地図」「コンパス」「参加者名簿」「筆記用具」
「水と食料」「ランタン」「時計」「ランダム支給品1〜2個」


※「参加者名簿」は、途中で文字が浮き出る方式
※「水と食料」は最低1食分は支給されている。具体的な量は書き手の裁量に任せます
4創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 20:38:51 ID:afcv9v60
★書き手のルール★


【予約について】

予約はしたらばにある予約専用スレにて受け付けます。
トリップをつけて、予約したいキャラクター名を書き込んでください。
予約期限は3日(72時間)です。期限内に申請があった場合のみ、3日間延長することができます。
これ以上の延長は理由に関わらず一切認めません。
また、書き手枠に関しては、延長はできず予約期限は3日のみとなります(詳細は下記の書き手枠ルール参照)

予約に関するルールは、書き手からの要望があった場合、議論のうえで変更することを可能とします。



【キャラクターの死亡について】

SS内でキャラが死亡した場合、【(キャラ名)@(作品名) 死亡】と表記してください。
また、どんな理由があろうとも、死亡したキャラの復活は禁止します。


【キャラクターの能力制限について】

ロワ内では、バランスブレイカーとなるキャラの能力は制限されます。
 ※詳細は現在議論中です


【支給品制限について】

ロワ内では、バランスブレイカーとなる支給品は制限されます。
 ※詳細は現在議論中です
5創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 20:39:46 ID:afcv9v60
【状態表のテンプレ】

SSの最後につける状態表は下記の形式とします。

【(エリア)/(場所や施設の名前)/(日数と時間帯)】
 【(キャラ名)@(作品名)】
 [状態]:
 [服装]:(身に着けている防具や服類、特に書く必要がない場合はなくても可)
 [装備]:(手に持っている武器など)
 [道具]:(デイパックの中身)
 [思考]
  1:
  2:
  3:
 [備考]
  ※(状態や思考以外の事項)

【時間帯の表記について】

状態表に書く時間帯は、下記の表から当てはめてください。

 深夜:0〜2時 / 黎明:2〜4時 / 早朝:4〜6時 / 朝:6〜8時 / 午前:8〜10時 / 昼:10〜12時
 日中:12〜14時 / 午後:14〜16時 / 夕方:16〜18時 / 夜:18〜20時 / 夜中:20〜22時 / 真夜中:22〜24時
6 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/11(金) 20:55:31 ID:AJDVwdya
>>1スレ立て乙です

こちらのリアルの時間が飛び飛びだったのでゲリラみたいになりましたが代理スレに投下しました。
矛盾点が無いでしようか?
ユッキーと由乃の行動も表示されたし大丈夫ですよね?
7創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 21:12:08 ID:afcv9v60
宮ちゃんマイペース杉ワロタ
とりあえず周囲は安全だが……

>地平線から太陽が姿を現し始め、朝日の光が窓から射し始める。

多分どう頑張っても地平線は見えないと思いますぜ旦那w
地図の方角とかは明示されてないけど、上が北なら山の稜線から日が昇るはずです。
8 ◆JvezCBil8U :2009/09/11(金) 21:15:19 ID:vGHcgJet
と、スレ立て、お疲れ様です。それとありがとうございます。
それと延長をアリと仰ってくださった方々に感謝。

>>◆8dU0BT3JbM氏
拝謁させていただきました。
こーすけは本当苦労性だなあとw
それにしてもここで着替えフラグとは……ラブコメ展開が期待できそうですw

で、小さい事なんですが、自分は由乃に“近場に人の気配はしない”と言わせてしまってるんですよね。
時間帯からして同じ校舎にいる可能性が高い状況なのに。
こっちの時間帯は放送直前まで持っていっているので、この後すぐに香介たちが出て行けば矛盾は出ないんですが、それでも余計に一話かかる事になりますし。
修正箇所はこちらの方が少ないかと思いますので、仮投下スレに後ほど由乃たちの居場所を小学校に変えたものを投下しようと思います。
9創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 21:28:22 ID:afcv9v60
いや、ちょい待った。
その場所は中・高等学校。
多分校舎は二つに分かれてる訳で。
由乃たちが高校校舎、浅月たちが中学校校舎にいるなら別に問題ないかと。

何よりそっちの方がきっと楽しい。
10創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 21:30:34 ID:afcv9v60
↑由乃たちが中学校校舎、浅月たちが高校校舎の間違いでした。
11 ◆JvezCBil8U :2009/09/11(金) 21:37:42 ID:vGHcgJet
成程、由乃の台詞を“少なくともこの校舎内には他に誰もいない”といった類に変えればそれはできそうですね。
香介たちは高校を目指していた事も明言されていますし、中学校舎に変更し直す事にします。
12 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/11(金) 21:49:33 ID:AJDVwdya

>多分どう頑張っても地平線は見えないと思いますぜ旦那w
>地図の方角とかは明示されてないけど、上が北なら山の稜線から日が昇るはずです。

確かにそうですね。申し訳ないです。修正します。

>>◆JvezCBil8U氏
ああ、すみません。修正させるようですみません。
でも中・高等学校だから確かに校舎は二つに分かれてるね。
これならほとんど矛盾が起こらないですね。
助かりました。

とりあえず明日まで時間を取って大きな矛盾点とかありませんでしたら訂正して本スレ投下します。

13 ◆JvezCBil8U :2009/09/11(金) 21:59:09 ID:vGHcgJet
元々量が少ない分修正箇所も微々たる物なので、修正版の仮投下を終えました。
確認お願いします。

……しかし、遭遇したときミズシロ・ヤイバの名前が出たらどう反応するんだろうかw
14 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/11(金) 22:06:47 ID:AJDVwdya
修正版を拝見しました。
何度も読みましたが問題ないと思います。

しかし由乃凄すぎw
15 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:45:29 ID:QMyfaq6y
それでは修正版を投下させて貰います。
16 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:46:12 ID:QMyfaq6y

生い茂った暗い夜の森の中を一組の男女が歩く。
枯れ葉や枯れ枝を踏みしめる音が暗闇の中で意外なほど響いた。
しかし二人ともそれには気に掛けずに先に進む。
そして森の中で、男女の二人組が会話しながら歩いていた。

「そしたらヒロさんったら凄い剣幕で怒るんだよ。こっちから見たらちょっと大人げないと思うのよ」
「おい、さすがの俺もひとんちの体重計に細工とかどうかと思うぞ」
「でもヒロさんは気にしすぎなんだよ。ほら、女は少し太ってた方が抱き心地がいいって言うし」
「いや、そんなこと男の俺に言ってどうするんだよ……」

適当に相槌を打ちつつ、浅月は内心、嘆いていた。
宮子を担ぎながら起こさないように歩く手間が省けたまではよかったがここまでお喋りだとは思わなかった。
念の為に彼女の知り合いが参加してる可能性もあったのでそれを聞こうと水を向けたまではよかったが
そこからマシンガンのように喋る喋る。
やまぶき高校の美術科に所属してること、ゆのっちと言う渾名のゆのという少女のこと、沙英やヒロという先輩のこと。
高校の担任の先生のこと、彼女らが住んでるアパートの大家さんのこと。
ただ容姿や性格など重要な点だけを言ってくれるならともかく普段の付き合いから些細なことまで延々と喋る喋る。

(あー何で俺、こんな時にここまで女のお喋りに付き合ってるんだ?)

さすがにこの広い森で他の参加者に、ばったり出会う可能性は低いだろうが0という訳ではない。
正直、怒鳴りつけてでも止めさそうかと何度も思わなくもなかった。
だが下手に刺激して怯えさせたり落ち込ませるのも得策ではない。
それに、何時また何かのはずみで恐怖で錯乱するかわからない。
この状況で一般人でしかない彼女がまたパニックになって暴れられたら厄介なことこの上ない。
それなら大声でなければ好きに喋らせてそちらに気を反らせてた方がまだマシだ。

そう割り切ってはいた。いたのだが……。

ハタから見れば女の子と二人切りなこの環境も、宮子のマシンガントークに付き合わされる浅月とってはこの上なくキツイ。
17 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:48:22 ID:QMyfaq6y

(そりゃあ、亮子や理緒に何度も振り回されたけどよ、あいつらもここまで姦しくはなかったはずだ……多分)

――まったく、鳴海さんといいあなたといい、本当に女性の扱いが不慣れなんですねぇ。

(だからなんでお前が出てくるんだチクショウッ!)
脳内で思い浮かぶおさげの少女の茶化しに律儀に脳内で叫び返す。
どうして俺の周りには癖のある女ばっかり集まるんだ?
まあ、担いで歩くよりはだいぶマシだけどよ。

「しかしお前、意外と体力あるな。こんな森の中じゃ男だって歩くのに一苦労するだろうによ」
「へへん、こんな風に夜の森の中を歩くのひっさびさ♪」
「久々?」
「ちっさい頃に夜の山で山菜取りとかよくしたからね♪」
「……なあ、それって泥棒って言わねえか?」

こいつ、どんだけ野生児なんだよ?
それともこいつの田舎じゃ当たり前なのか?
まあ、おかげで遅れずに済みそうで助かるけどな。
この分なら、夜明け前には高校にたどり着けそうだ。

だが高校にたどり着いたと言ってそこで亮子に会えるとは限らない。
あくまでもそこなら会える可能性が高いというだけ。
或いは他の参加者に出会うかもしれない。それが殺し合いを否定してるのか殺し合いに乗ってるのかはともかくとして。
自分一人なら素手でも戦える自信があるし銃器も手に入れた。これなら大抵の相手なら身を守る自信がある。
だが今は宮子という一般人を抱えてる。本来なら人が一人や二人死のうが何とも思わないが守ると約束した手前もある。
浅月にはそれを反故にして彼女を見捨てる選択肢もあるがそれをしたいとは思わなかった。
人を殺すのには躊躇は無かったが彼女を見捨てるのは彼の僅かばかりのプライドが許さなかった

(それに万が一、後で亮子や九兵衛にばれたら最悪だからな)
18 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:49:42 ID:QMyfaq6y


◆ ◆ ◆


「ところでさ、あさっちの言う知り合いって友達のこと?」
「はあ?あさっちって誰のことだよ?まさか俺のことじゃないだろうな?」
「あさっちはあさっちだよ。はい、今日から浅月くんはあさっちに決定!」
「……はぁ」

……マジで疲れる。
ぶっちゃけこんな風に女と喋るなんて俺のキャラじゃねえぞ。
それに人殺しの俺が一般人とお喋りなんてよ。

だけど。
いつの間にか浅月は胸の内が暖かくなっていたことに気づいた。
変なテンションでも、ぶっちゃけうざくても、相手がただの一般人でも何故か安心出来た。
いや、ただの一般人だからこそ安心出来たのかもしれない。足手まといになる可能性は今のところあるが
裏切られる可能性は低い。

(しかし普通、この状況で初対面の相手にここまで打ち解けられるか?まあ変に警戒されるよりマシだけどよ)

出会いは最悪でその後もごたごたしたが最初に出会ったのが宮子だったのは悪くなかったかもしれない。
これで亮子と鳴海歩、更に上手く物事が進んで理緒と合流して首輪を外す手掛かりが手に入ることが出来たのなら……

「あさっち〜 お〜い 聞いてるのか〜?」
「あ? ああ、俺の知り合いか」
「あさっちの知り合いもここにいると思ってるの?」
「ああ、声しか確認出来なかったがよ、確かにあれは亮子だった。間違いねえ」
「ふうん、亮子さんって言うんだ。ねえ、あさっち……やっぱり心配だよね?」

さっきのテンションと違って恐る恐ると尋ねてくる。
19 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:51:38 ID:QMyfaq6y

「大丈夫だって、あいつは殺したって死なねえよ。女のくせに気が強くてよ。学校じゃ熊殺しだのなんだの言われてるし」
「へえ、すごいんだね。ところで名前からして女性なんだけど恋人?」
「ぶっ! おま、何言いやがるんだよ! あんな凶暴な女、恋人の訳ない!」
「あは、あさっちって女の子より弱いんだ」
「な、俺だってオオアリクイと戦って倒したことがあるんだぞ!」
「え、オオアリクイと? すごいすごい! その話、詳しく聴かせて〜」
「へ? あ、ああ、別にかまわないけどな……」
(それにしても、この話に喰い付いてきたのはこいつが初めてじゃないのか?)

口では心配してない風だが本当は亮子のことが心配で不安だった。
だがここで同行者へいたずらに不安を煽るようなことを言っても何の得もない。
今は早い段階で合流できると信じて足を速めるしかない。そう割り切るしかなかった。

だから、とりあえず西を目指すことにした。
大きな道や海岸線などに突き当たりさえすれば、大体の場所は分かるだろう。

木立ちの合間を縫うように二人は歩いた。
未だ太陽の光射さぬ森の中、漫才のような会話をしつつも確実に西に向かっていた。
浅月は内心では殺戮者の襲撃を気にしていたが幸いなことにそれらと出会うことはなかった。
時々、短い休憩を挟みながら歩くこと数時間、ようやく二人は深い暗闇の森を抜けた。
やっと森を抜けることが出来たので二人ともほっと一息つくことが出来た。
さすがの浅月も長時間の歩きにうんざりしてたので顔を緩ませた。
だが宮子に油断するなと釘を刺すまでは忘れなかった。
見晴らしが良くなった分、危険人物に見つかる可能性が高くなるからだ。
宮子もそれが理解出来たのか口数を減らし周りに注意を向けつつ学校を目指す。
もっともそれでもライフルのようなもので狙撃されたらひとたまりも無いがそこまで気にしていたら何もできない。
だから浅月はその時はその時と割り切って危険を承知しつつも先を急いだ。
20 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:53:42 ID:QMyfaq6y

やがて大きな道にぶつかった。
地図や遠くに映る市街地から照らし合わせて学校の北に出たのだと把握する。
そこから道にそって学校へと向かう。
そしてとうとう目標だった高校が見えてきた。


「やっとたどり着いたね。でも夜の学校って怖くない?幽霊とか出そうだし……」
「幽霊ねえ……」

(おいおい、この状況で幽霊とかなに呑気なこと言ってるんだよ?まあ、確かに不気味だけどな)

問題は幽霊よりもここにいるかもしれない参加者と遭遇すること。この殺し合いに否定的な人間ならそれでいいがもし
ゲームに乗ってたらやっかいなことこの上ない。こっちはただの女の子を抱えてる。この状況で戦闘に
雪崩れ込むのは避けたい。

(こいつと一緒の方が信頼されやすいかもしれないが、ひとまずこいつをどこかに隠してから俺一人で
 探索した方がいいかもな。さて、何処がいいか……)
(ここでぼおっと立ってるのも危険だよな。一度、校内に入ってから何処か隠れる場所を見つけるか)

校内に入ってすぐの廊下の壁に学校の案内板があった。
各教室、職員室、校長室、音楽室、美術室、保管室、宿直室、体育館、工具室、プール、etc…
これで大体の場所はわかった。浅月はそれを頭に入れると……

「おお、美術室がある♪」
「お前なぁ、こんな時に何を、こら、一人で行くな」
「いやあ、つい体が勝手に動いちゃって」
「たく、勝手に……そうだな、美術室でもいいか。行くぞ」
「え、いいの?」
「ああ、俺はこれから一人で探索してくる。お前はそこで隠れてろ」
「え、でもあさっち一人だと危ないよ。もし殺し合いに乗った人に会ったらどうするの?」
「だから俺一人で行くのさ。こういうのは戦うにしても逃げるにしても俺一人の方が動きやすいし、
 それに探し物があるからな」
「探し物って何なの?」
「まあ、ちょっとな。とにかく行くぞ」
「あ、ちょっと待ってよ!」

階段を上り薄暗い廊下を歩くこと少し。用心しつつ歩く浅月。
そしてその後ろを恐る恐るついていく宮子。

21 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:56:52 ID:QMyfaq6y

窓から差し込む月明と僅かな非常灯の明かりを頼りに美術室へ向かう。
そして目的の部屋に辿り着きドアに手を伸ばし力を込める。
カギはかかってなかった。ゆっくりとドアを開ける。
壁には有名な画家の肖像画や長細い鏡、絵のモデル用の石像やキャンバスの山、筆に絵の具にクレパス、デッサン用の鉛筆や木炭
缶スプレー塗料に彫刻刀や粘土など。特に学校の美術室に普通にあるのもばかりで不審な物はなかった。
宮子は興味深そうに室内を見渡す。浅月も見渡したがやはり変わった物とかは特になかった。

「よし、それじゃあ、俺は学校内を調べてくるからお前はここに隠れてろよ」
「ねえ、あさっち、本当に一人で行くの?」
「ああ、その方が動きやすいからな。それとお前のデイパックと俺のデイパックを交換してくれ」
「え、何で交換するの?」
「俺のデイパックが支給品のせいで空きが少ないからな。必要になりそうな物も確保してくるから空きが
 大きいそっちと変えてくれ」
「なるほど。じゃあ、いいよ」
22 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 15:58:17 ID:QMyfaq6y

実は空きにかかわらずデイパックより大きな物体を大量に収納することは可能だったが二人とも支給された品が
普通にデイパックに収納出来るサイズの物ばかりだったので二人はデイパックの異常性に気がつかなかった。
こうしてデイパックを交換する二人。無論、浅月のデイパックに入れた拳銃は宮子のデイパックに入れ直す。
それなら中の荷物を交換すればいいだけの話だがそれはしたくなかった。

(こいつならこんなフィギュアやこんなひらひらな服を俺が持ってるのをからかうだろうからな)

「いいか、俺が帰って来るまでここで待ってるんだぞ。下手にうろついて逸れたりしたらシャレにならないしな」
「わかった。気をつけてね、あさっち」
「ああ、それじゃあ行ってくる」

美術室から出てドアを閉めて宮子の視界から外れるとデイパックから拳銃を取り出す。
さて、せっかく学校に来たんだ。他の参加者を探すだけでなく必要な物資を確保しておいた方がいいだろう。
まずは理科室
理緒なら理科室にある薬品で爆薬の一つや二つぐらい作れるだろう。
浅月本人は爆弾を作ったことは無いが理緒といた時に火薬作成にはどんな薬品が必要なのかある程度は知っている。
理緒と合流した時の為に確保しておいた方がいい。
無論そう上手く行くかどうかわからないが確保してて損はないだろう。
次に保健室
医療品を確保しておくのも得策だろう。

(とりあえず必要な物を確保できるだけ確保しておいた方がいいな。何時必要になるかわからないし。
 まず、ここから近い方から先に行くか)

東の山の稜線から太陽が姿を現し始め、朝日の光が窓から射し始める。
ほんの少し、そちらに興味を向ける。

(そういえばこんな風に朝日を見るなんて久しぶりだな)
しばし朝日を眺めいたがやがて浅月は目を閉じ、深呼吸する。
そして目を開くともう朝日には目を向けず目標の物資のある部屋を目指した。
生きて自分や亮子や他のみんなと共にこのゲームから脱出する為に。
23 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 16:00:07 ID:QMyfaq6y



◆ ◆ ◆


あさっちが行っちゃった…
やっぱり一緒に行った方がよかったかな?
でも足手まといになるのは嫌だし…
…あさっち、さっきはあんなこと言ってたけど亮子さんのことが心配なんだよね…
だって心配そうな顔してたし、それにやっぱりゆのっち達もここにいるのかなぁ…
…暗いことばっかり考えてちゃ駄目だ…
そうだ、ヒロさんと沙英さんとゆのっち、それにあさっちや亮子さんとも一緒に落書きすることを考えよう。
道具とかいっぱいあるし。
うん、少しぐらい貰ったっていいよね。


よし、これだけあれば色々出来るな。
それにしてもこれってけっこう物が入るんだ。
あれ?何だろうこれ?
なにか布みたいな……うわ、なんだこの服は。
あはは、あさっちたらこんな服、持ってたんだ。
…どうしよう、この服かわいいな…
…着てみたいな…

いいよね、着ちゃっても。
あさっちも居ないし着替えるなら今のうち……
24 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 16:01:30 ID:QMyfaq6y

【G-2/中・高等学校、高校校舎廊下/1日目 早朝】
【浅月香介@スパイラル〜推理の絆〜】
【状態】健康、
【装備】 レガートの拳銃@トライガン・マキシマム
【所持品】支給品一式、不明支給品1(武器ではありません)
【思考】
基本:亮子を守る。歩と亮子以外に知り合いがいるなら合流したい。
1:必要な物資を確保しつつ他の参加者を探す
2:ひとまず殺し合いには乗らないが、殺人に容赦はない
3:亮子が死んだら―――
4:殺し合いには清隆が関与している……?
※参戦時期はカノン死亡後
※宮子から「ひだまりスケッチ」関係の情報を得ました。
 参加者ではゆの、沙英、ヒロについて詳しく聞いています。
※中・高等学校、高校校舎の大体の見取り図を把握しました


【G-2/中・高等学校、高校校舎美術室/1日目 早朝】
【宮子@ひだまりスケッチ】
【状態】健康、精神的疲労(小)
【装備】なし
【所持品】支給品一式、ハヤテの女装服@ハヤテのごとく!、メイドリーナのフィギュア@魔王 
     JUVENILE REMIX、 筆と絵の具一式多数、クレパス一式多数、スケッチブック多数
     デッサン用の鉛筆や木炭多数、缶スプレー塗料数種類多数、彫刻刀一式多数、粘土多数
 キャンバス多数
【思考】
基本: 殺し合いには乗らない
1:この服(ハヤテの女装服@ハヤテのごとく!)を着てみる
2:ゆのっち達いるかなぁ…
3:みんなで落書きしたいなぁ…
※殺し合いについて理解しました。
※浅月から亮子について詳しく聞いています。
 鳴滝歩や他の知り合いまで知ってるかどうかは次の書き手に任せます。
※デイパックの性質に気づいたかどうかは次の書き手に任せます。
25 ◆8dU0BT3JbM :2009/09/12(土) 16:04:44 ID:QMyfaq6y
投下終了です。
題名は『学校へ行こう』です。

未熟な作品ですがよろしくお願いします。
26創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 17:44:25 ID:xvEU7VF+
投下乙です
なんとか目的地にたどり着けたか〜
一般人二人の明日はどっちだ
27創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 18:19:03 ID:h6h1a7Of
投下乙
宮子は今のところ落ち着いているが放送後は…
28創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 21:18:41 ID:HxbyCFOH
細かいこと言うようで悪いが浅月は堅気じゃないからな
宮子も気になるがすぐ近くにあの女が居るのが怖いなw
29創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 23:43:36 ID:xvEU7VF+
おお、気になってたキャラの予約キタ
あと、動きが必要なのはどのあたりだろう
30創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 00:07:05 ID:+6HcBSJg
キャラだけでなくあの書き手さんも久々だw
お帰りなさいw
31創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 00:36:30 ID:+6HcBSJg
おかま・おなべ組が鈴子の居る教会に向かってる
金剛組がデパートに向かってる
グリフィス・ゆの組が旅館に向かってる
3つとも黎明で止まってるが放送を跨いでも別にかまわない範囲
後はロリコンビは放送後に動く予定に変更が無いならそのまま放送かな?
書き手さんの領域だから実は放送前を書いてましたとかあるかも
32 ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:08:29 ID:bXQ0H/QH
鳴海歩、安藤、ゴルゴ13、秋瀬或、リヴィオの投下を始めます。
懲りずに長い文ではありますが、お付き合いいただければこれ幸い。

もしさるさんに引っかかった場合は仮投下スレにいったん残りを投下するので、代理投下していただければありがたく。
規制が早めに解ければ自分でやりたいとは思うのですが……。
33創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:09:19 ID:39cYo7h+
おお、丁度立ち会えた
支援
34銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:09:45 ID:bXQ0H/QH
夜明け前の森。緊迫した空気さえ切り裂くように、鋭く男の声が突き刺さる。
周りは静寂、加えて静謐。
舞台は相対する二人の為にのみ仕立て上げられ、怯えて竦む傍らの一人は脇役へと成り下がる。


「錬金術を使えるか?」


求められる回答はイエスかノー。
シンプルな二択ながら、意図が明確でないという相反する要素を持つ問い。
鳴海歩はそこに“錬金術を『使う』とはどういう意味か”という切り口を見つけ出していた。

屈強な、おそらくは荒事の専門家であろう男。しかし一方的な殺戮を目的としているわけではない。
彼がどういう意図でこの様な言葉を発したのか。

男が早々に自分たちとの接触を打ち切ったのは、最初の一手で望むだけの情報が得られないと判断したからだろう。
つまり“錬金術”が何を意味するかはさておき、この状況を打開するに関係のある単語であるのは間違いない。
何らかのカマかけ、あるいは符丁だとしても、だ。

では、“錬金術”とは何か?
――自分が知る意味での“錬金術”が状況の打開に関係ありそうもない以上、全くの別物と考えるべきだ。
そしてまた、使えるかどうかを問うということは、使えない人間もいる――つまりは特殊な技能と捉えて差し支えあるまい。

「待てよ」

男が何故この様な問いをしたのか。考えられる理由は2通りだ。

ひとつ、男は“錬金術”に精通しているとき。
この場合、男は同じ知識を持つ自分の同類を捜索している。

ふたつ、男は“錬金術”について詳しい知識を有さないとき。
この場合、“錬金術”が状況の打開に使えると考え、より詳しい知識を持つ人間を捜索している。

「おっさん、首輪を外したいんだろ? 当てがないわけじゃないぜ」

おそらく正解は、後者。
男はつい今しがた、
『……知らないようだな。それならいい』
と洩らしている。
“知らない”ならば用がないということは、即ち目的は知識であり、人材ではないと解釈できる。
また、この状況で仲間を探しているならば、少なくとも敵対の意思のない自分たちにはその仲間に向けて言伝でも預けるだろう。

「そのために街で情報収集するつもりだったんだろ? だったら俺たちの話も聞いておいた方がいい。
 例えば……俺たちでもその気になればあんたを殺す方法があるって話なんかをな」

故にこれは好機だ。
“錬金術”が状況の打開の一手となるのであれば、知識を得ておくに越した事はない。
また、男と協調関係を築いておけば、その分だけ今後の敵と成り得る相手が減る。

「それに俺たちは携帯電話も持ってる。こいつの重要性はあんたなら説明するまでもなく分かるだろ。
 ま、先を急ぐっていうなら無理に引き止める気はないけどな」

だからこそ鳴海歩はカードを切り、男を交渉の卓に着かせた。着かせてみせた。
携帯電話という、情報端末を提示する事によって。

「……用件を聞こうか……」

35 ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:11:06 ID:bXQ0H/QH
静かに響く男の声に、誰にも気付かれる事なく鳴海歩は僅かに口端を吊り上げた。


「……そうだな、まずはあんたの一番欲しいだろう情報について教えてやる。
 代わりにあんたの知る“錬金術”についてと、その情報のソースとなった人物について知りたい。
 この会場にそいつはいるんだろ、どうだ?」

曖昧に濁しつつも意味は明確な、此方からの条件提示。
錬金術とは何か、そして、その知識をもたらした人物は誰か。
また、自分がそれらを会話情報から推測したという能力のアピールに対し、この男はどう反応するのか。
そうした相手を見極める複数の意図を込めた疑問は、まずは充分に作用した。

「お前の言う俺の一番欲しい情報とは何だ? 明確にしろ。さもなくばこれ以上の話は無意味だ」

――成程。ビジネスライク、かつ慎重に慎重を期す人間だ。
ならば今後はそれに即した対応を機軸に駒を進めていく。

「……こういう、」

頷き、鳴海歩はトントン、と己の首輪を突く。

「首輪とかを解除できる工作技術と、爆発物の製造及び処理のエキスパートのプロファイル、及び所在について……だ。
 ま、プロファイルについては俺の知り合いだから信頼してもらっていいけど、所在については伝聞情報だから確度は低いな。
 聞いておくだけ損はないと思うが、返答は?」

「……錬金術の情報については良いだろう。だが、ソースを明かすつもりはない」

ここで手を打つか? と鳴海歩は自問。
否、と自答。
聞きたい情報は確かに得られるが、竹内理緒という自分に近しい存在の知見をそうほいほいと広めるのは自分にとっても彼女にとっても立場を危うくする。
向こうが情報ソースを明かさないのと同じく、不確定要素は出来る限り減らしておきたい。
おそらく向こうも情報ソースの人間と何らかの交流があり、その際に何らかの取引があったか、あるいは恩義を受けたと見える。

「それじゃあこっちが損だな。知り合いについて情報を売るんだから、それなりの対価が欲しいところだ」

奇しくも“錬金術”と同じ等価交換の原則が今この場に働いている。
男は僅かに沈黙し、取引材料になりそうな情報を切った。

「この遊戯の会場における奇妙な現象の存在を教えよう。
 おそらく、まだ気付いているものは少数なはずだ」

ほんの数秒、鳴海歩は考える。
男にしてはあいまいな物言いが気になる。つまり、それだけ漠然とした情報だということだ。
だが、僅かなやり取りから透けて見えるこの男の性格から言えば全く無益な情報だとは考え難い。
それなりに意味があるものだ、と見て取って然るべきだろう。

「OK。じゃあ、こっちから先に情報を提供させてもらおうか――」

36創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:12:32 ID:39cYo7h+
支援
37銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:12:36 ID:bXQ0H/QH
**********


ずっと、劣等感を感じている。
この感情はなんだろう――と、自分で思う。

事あるごとに、考えろと自分に言い聞かせてきた。
たぶん、他の人よりも物事を考えてきてはいると、そう思っていた。

だけど、今の俺は何なんだろう?
一瞬でも弟のようにも感じたこいつに何もかもを上回られている、全くの役立たず。

俺が考えるよりもなお速く、俺が考えつくよりもなお深く。
そして、何一つ怯むことなく、俺が恐怖した男と堂々と対峙し続けている。

今、俺はこの少年に全てを、自分の命すら預けて傍観に徹している。

恐慌状態に陥って、心の中で殺さないで、とまで懇願した自分が――――

ただ、惨めだった。


**********

竹内理緒のプロファイルと競技場にいたという伝聞情報を教え、代わりに錬金術と言語の謎についてを聞く。
互いに自分たち自身についての名前や情報も、当たり障りのない部分だけ伝え合った。
その結果、奇妙な異世界についての知見と自分たちが近しい世界の出身だという情報を得る。
代わりに先方も、ブレード・チルドレンと自分を取り巻く大まかな状況を知った事になる。
本来なら異世界など眉唾物と疑ってかかるべきだが、殺し合いが始まってからの数々の不思議現象や
言語の謎、そして目の前の男の性格を考えると真として捉えておくのが妥当か。

人間関係については竹内理緒以外のカードは今のところ、まだ切ってはいない。
向こうも同じく、異世界の人間の個人情報についてはやはり開示するつもりはなさそうだ。

……だが、頃合だ。
向こうも鳴海歩という人間を理解できただろう。
自分がこの東郷という人間が信頼(信用でなく、信頼)に値すると判断できており、
またこちらにその身柄を明かした以上はそれなりに信頼を勝ち得たと思って間違いあるまい。
偽名や虚言を弄されている可能性もあるが、今のところその可能性は低い。
東郷は元々単独行動をするつもりであったのだし、またビジネスライクな性格上、嘘をついて信頼を失うリスクは重々承知しているはず。
殺し屋、という物騒な職業を明かす必要性だってないのだ。

だから、切り込むのは今。
ぴっ、と指を立てて言い放つ。

「あんたがこの殺し合いでどう立ち回るのか、当ててみせようか」

全くの唐突に放たれた言葉に、東郷はこちらを見入るように顔筋の動きを停止させる。
不意を突き、こちらのペースを保ったまま本題に入る。
それが効果を発揮したかどうかはともかく、核心に至るまで話を繋げることは成功したようだ。

「報復だ、あのふざけた“神”の手下どもと本人へのな」

38銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:14:07 ID:bXQ0H/QH
このゲームをぶち壊し、“神”どもを叩きのめすためにはどうすればいいのか。
どういう形を最終的に選択するにせよ、志を同じくする仲間を集めなくてはならない。
そして、この東郷という男との繋がりを断つのはあまりに勿体無い。

冷静な判断力と個人情報を黙秘する性格、そしておそらく相当に高いだろう実力。
特に、信頼できるというその性格が非常に有り難い。
こう言ってしまうのは失礼かもしれないが、安藤は信用はできても信頼するにはいささか危ういのだ。

鳴海歩が何故、安藤を仲間に引き入れたか。
その理由は至ってシンプル、彼の語ったとおり少しでも多くの人間の協力を得たかったからだ。
安藤は能天気でもなく、また、物事をしっかり捉えて対応することもできる。
後ろから撃たれる心配がなく、また自分の考えを持っている人間は大抵の局面で足手纏いにはならない。
また、彼の言葉は歩の思いも寄らない視点からのものもあり、確かに助けになっている。

……だが、その一方で安藤は脆く、甘い一面がある。
例えば、“腹話術”について自分に話してしまった事がそれだ。
おそらく異常な状況下で混乱していたことも原因なのだろうが、切り札を初対面の人間にペラペラ喋るのはあまりに良くない。
そうそう人を信じてしまうのはあまりに不安だ。
それも仕方ないのは分かっている、自分とは違って安藤は『持たざるもの』ではないのだろうから。

――鳴海歩はこうした自分の思考について、安藤に謝罪したい気持ちが確かにある。
だが、それが自分の強みだと分かっているが故に決してそれを口にはしない。
仲間すらを含めて何もかもを疑い、あらゆる可能性を想定するのは自分のようなものしかできないのだから。

それが、鳴海歩の意志。
たとえ誰かに裏切られ、また自分から誰かを手放す事があったとしても、絶望の中で笑ってみせる。

だからこそ、一つ手を打ちたいのだ。
少しでも多くの戦力を味方につけるよう、不慮の事態で別行動をしても安心できるよう。
安藤の弱いところをカバーできる協力者を得て、彼らを組ませたい、と。

東郷の言動と性格、そして殺戮の意志を持っていない事とヒットマンとしての沽券や行動理念。
それらを統合して類推すれば、彼の目的は明らかだ。

「回りくどい言い方はよせ。俺に何を依頼したいんだ?」

鳴海歩は用意していた言葉を放つ。
ヒットマンであるならば単純にボディーガードを依頼しても簡単に頷いてはくれまい。
だが、この言い方ならばどうだろう。

「この、安藤の殺害を試みる何者かが存在する場合、そいつの戦闘手段を始末してくれ」

安藤が、呆けた声を上げた。

「え?」

始末するのはあくまで戦闘手段のみ。
歩は、たとえ間接的にでも誰かを殺す選択肢は選ばない。
驚きを浮かべる安藤を吟味するように見つめ、東郷はその理由を問うた。

「理由を聞かせてもらおうか」

39銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:15:36 ID:bXQ0H/QH
「さっき、あんたを殺せる手段があるって言ったろ?
 そいつを握ってるのがこいつだ、切り札は失いたくないんだよ」

「お、おい鳴海……」

ニヤリと笑みを浮かべる歩は、安藤に僅かに眼を向ける。
唐突に話の中心に引っ張り出された安藤はただただうろたえるのみだ。
無理もない、どうしてかいつの間にか自分が護衛される対象となっていて、
更に目の前の男を殺せるとまで持ち上げられているのだから。

「どんな手段だ?」

凍りつくような東郷の目線。
安藤は動けず、歩を見やる。

「東郷、俺には分からないように、安藤に何かメッセージを渡してくれるか?
 ……そして安藤、腹話術を俺にかけてくれ。
 東郷にかけたら信頼は瓦解するからな」


**********


考えろ、考えろ、考えろ。

どうして鳴海はこんな事をさせる?
この男を仲間に引き入れる為、それは分かる。
……だが、それだけなんだろうか?
本当にこのやばい男は信頼できるのか?
そして、どうしてこんな取引だってこなせるのに、鳴海は俺なんかに声をかけたんだ?
こいつなら俺なんかに頼らなくてももっと上手く立ち回れるだろうに。

鳴海はあまりに堂々としすぎていて、嫌な考えが鎌首をもたげてくる。
……もしかしてこいつは、最初からあのムルムルやシンコウヒョウの仲間なんじゃないだろうか。
自分が本当は安全だと分かっていて、俺達を騙しているんじゃないだろうか。
そもそも、腹話術についてをこんな奴に喋ってしまってもいいのか?
根拠はあるのか、鳴海。

……まさか、な。
自ら腹話術にかかろうとするのは、流石に自殺行為だ。
例えば、俺がずっと声を上げ続けるよう命じたとしたら、やがて呼吸困難で窒息に陥る。
俺を信じてくれているから、鳴海は体を張ってそんな罠に自ら飛び込むようなことをするんだ。

……信じていいんだよな、鳴海。


ゆっくりと静かに、口元へと手を持っていく。


40創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:15:46 ID:39cYo7h+
どきどき
41銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:17:15 ID:bXQ0H/QH
**********


ふう、と小さくため息をつく。
腹話術について話すのは、正直悪手ではある。
だが、全てを話さなければこの男は依頼を受けないだろうし、錬金術についてのソースを明かさないこの男ならばまず口にはしないだろう。
安藤には申し訳ないことをしてばかりだ。自分は秘密をいくつも抱えすぎている。
正直信頼を幾ばくか失っただろう。
だが、リスクにおいてもリターンにおいても、払ったコストの見返りは期待できるはずだ。

「疑わないんだな、あんた」

「……超能力の類は知らないわけではない。
 そして、お前がそんなつまらないブラフを行うとも思えん」

……声を放っている間は意識が完全にトび、何を喋ったかも覚えていない。
これがどれほど恐ろしいことか、ヒットマンには嫌というほど分かるだろう。
安藤は大したことのない能力だと言っていたが、その真価に気付いていないのかもしれない。

「そうだな。まあ、今のはかなり強力なカードだと思うんだが……どうだ?
 俺たちに同行するのに報酬として足りるか?」

「断る。俺の利点が少なすぎる」

端的な東郷の拒否に、しかし歩は気楽な表情を崩さない。
それだけでは到底足りないのは分かりきっている。
自分の様な力のない人間ならともかく、東郷にとって修羅場慣れしていない安藤は枷にしかならないだろう。
腹話術を加味してようやく交渉の体裁が整うといったところだ。
だが、それで充分だ。
利点が少ないから断る、という事は、利点が充分あるならば引き受ける、という事だ。
リスクに見合う対価さえあればこの男は自分たちにつく。
歩が護衛対象を安藤だけに限定したのはその為だ。
守る人間が少なければ少ないほどリスクは減り、支払う対価もそれに伴って小さくなる。
自分の身は自分で守ればいい。

「……となると、報酬次第ってことだろ?
 金銭、って訳にはいかないからな、いくつか条件を提示するから、
 それがあんたにとって金銭の交換条件に値するか教えてくれ」
 
ニッ、と不敵な笑みを浮かべ、鳴海歩は言の葉を連ねていく。


**********


この殺人遊戯を破壊する為には、3つのことについて考える必要がある、と鳴海歩は考えている。
推理小説と同じだ。

Who done it. フーダニット :この殺し合いは誰によって開かれているのか。
How done it. ハウダニット :この殺し合いはどんなルールや技術を用いて運営されているのか。
Why done it. ホワイダニット:この殺し合いはいかなる動機で行われているのか。

フーダニット、即ち“神”については心当たりがないでもない、といった程度でしかなく交渉には使えない。
従って、ハウダニットとそれを通じて分かるホワイダニットを提示することで、東郷を味方につける。

42銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:18:45 ID:bXQ0H/QH
ハウダニットについては、
・首輪はいかなる構造で組まれており、どんな人間なら解除できるか。
・この会場はどこに位置していて、どうすれば脱出できるのか。
・殺し合いのルールはどうして存在するのか。
といった項目についてが考えられる。

まず首輪についてではあるが、これは心当たりとなる竹内理緒は既にカードとして切ってしまっている。
錬金術についての知識を東郷に尋ねたとおり、自分たちが聞きたいくらいなのだ。
会場についても、神社に目星をつけたことくらいしかまだカードはない。
否、カードと呼ぶ事すら躊躇われる憶測でしかない。
故に、ルールについての考察がメインとなる。
この殺し合いは、果たしてどのようなルールに基づいているのか。


――この殺戮遊戯は、殺し合いという状況だけが目的である。

鳴海歩はそう結論する。
誰か一人が選ばれること、即ち結果そのものに大した意味はない。
殺し合いという過程そのものが、“神”の求めるものなのである。

24時間ルールが、その最大の根拠だ。
24時間死亡者が出なければ、全員の首輪が爆発する。
何らかの目的の為、誰か一人だけを選別したいのに相打ちなどで最終的に全滅するという可能性は、最も好ましくない終わり方のはずだ。
だが、それを避けようとしないばかりかむしろ“神”自らがその可能性を増大させてしまっている。

つまり、誰か一人が生き残ろうが何人も生き残ろうが、あるいは全滅しようが別に構わないのだ。

この、全滅すら構わないということから考えられる意思は2パターン。
ひとつはこの催しが何度も繰り返す事が可能であり、一人だけを選抜するのは何も今回でなくとも構わない場合。
もうひとつは、この催しには過程そのものに意味合いがある場合。

どちらが正解かは、断定は出来ない。
けれど、鳴海歩は後者だと推測した。

理由は、『その他のルールや現状からは一人だけを選別する意図が感じられない』からだ。
もし前者が真実ならば、最終的には一人だけを選抜する事が目的だ。
これだけ大掛かりな事をやらかすにはどう考えてもそれ相応のコストが必要だろう。
ならば、たとえ何度でも繰り返せる能力があっても、出来る限り少ない回数で終わらせるに越した事はないはずだ。
なのに終わらせる意志を感じないならば、必然、選別が目的ではないのだろう。

……たとえば、だ。
一人だけを選抜するならば、例えば優勝商品として褒美があればよりやりやすいのではないか。
優勝することのメリットを見せ付ければ、仲間を出し抜き一人勝ち残ろうとする輩が当然出るはずだ。
だが、ムルムルもシンコウヒョウも、
『我等二人を除く、この中の人間が最後の一人になればそこでゲーム終了』
と告げただけ。
『必要なのは……これから殺しあってもらうと言う現実を認識してもらう事だけじゃ』
と、殺し合いをしろとしか言っていないのだ。
誰か一人だけが最後まで生き残るのは、エンディングを迎える為のルートの一つでしかないのではないだろうか。
43銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:20:16 ID:bXQ0H/QH
他にも、だ。
誰か一人だけに勝ち抜かせるのを目的としているならば、辻褄が合わない事がいくつもある。

――シンコウヒョウと、その知り合いのやり取り。
シンコウヒョウと知り合いということは、彼と似たような超常能力の持ち主である可能性が高いだろう。
要するに、あのような能力者が参加者にもいると仮定しても問題ない。
つまり、歩自身のような万人並みの身体能力しか持たず、特殊な能力も持ち合わせない人間が戦闘で適うはずはない類の存在が闊歩しているのだ。
なのにわざわざ制限などというものを設け、実力者が一方的な殺戮を行うのを止める措置を作り出している。
目的にもよるが、単純に誰か一人を選ぶだけならそんな事をする必要はない。
やはり、『殺し合いという状況そのもの』が目的だとすればしっくり来る。

最初の放送まで名簿が読めないのも、殺し合いを促進する為ではないか。
名簿が確認できないとは、偽名を使い放題という事。
偽名がはびこれば当然疑心暗鬼も増大する。
また、知り合いがいるかも分らない状況ならば、軽はずみで殺人をしてしまっても罪悪感が減る事だろう。
そしてある程度状況が進んだ後名簿を開示されれば、もう後戻りが出来ないという寸法だ。

ついでに、そもそもが自分達のような凡人並みの実力しか持たない存在を殺し合いに組み込む事すら不可思議だ。
そうした人員の選考基準に意味があるとすれば、まず一つは知り合い同士、というのが有り得るだろう。
知り合い同士で結託し協力体制を作ることで、弱者でも強者に勝てる可能性を高める。
また、因縁がそこに存在するならば火種を撒き散らす事にもなる。
これもまた、参加者同士が戦い合う環境を作り出している。


……そしてここにもう一つ、意味を見出す事ができる。
だが、全くの妄想に近しいものだ。
不用意に他人に語れる事ではなく、東郷との交渉材料には使わない。
それは、『この殺し合いは、超常能力を持たない人間たちに何らかの意味を見出したものである』という事。
誰か一人を選ぶのに本来役に立たないはずの人員が紛れ込んでいるならば、むしろそれにこそ意味がある、という逆説的な暴論である。
更に暴論を展開すれば、他の常人たちは全てたった一人の為のカモフラージュであり、踏み台である、という最悪の可能性も存在する。
あまりに醜く、シンプルな可能性。
だが、それをやりかねない人間をたった一人、鳴海歩は知っているのだ。


――思考を、切り替える。

暴論に暴論を重ね、その果てに無理やり思い浮かべたある人物の異常性など、
今日ここで初めて出会った人物に説明しても理解されまい。
今必要なのは、取引するに足る情報だ。
“神”の目的が殺し合いという状況そのものである、というのはその為の前提に過ぎない。

そして、それを用いて演繹できる有益な情報として、まず一つ。
首輪の解除可能性について。

鳴海歩は、首輪が解除できる可能性はかなり高いと推測する。

前述の『殺し合いは過程にこそ意味があり、結果は大して重要ではない』という仮説が正しいならば、それは自明だ。
首輪は殺し合いを促進するギミックの一つでしかない。
生死が大して意味がないのであれば、実は存外手間取らず解除できる可能性もある。
何故ならば、殺し合いに伸るか反るか、最初のスタンス決定に寄与さえすれば充分だからだ。
44創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:21:05 ID:39cYo7h+
支援
45銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:21:45 ID:bXQ0H/QH
ブレード・チルドレンの例を持ち出すと分りやすい。
一度殺人に手を染めれば、後戻りは非常に難しいのだ。
そして、自責の念と良心の呵責、周囲への疑心暗鬼に満たされた人間はたとえ首輪が解除できると分かっても――、
いや、だからこそ殺人をやめないだろう。自分が殺してきたものの為に。

竹内理緒、そして“錬金術”の存在も、首輪の解除可能性を裏付ける。
“錬金術”を習得した人物に関しては参加しているかは不明確だが、まず参加していると見ていいだろう。
東郷が“錬金術”をいかなる人物から知り得たのか正確なところは分らないが、その人物は“錬金術”を使えないはずだ。
そうでなければ東郷があのような聞き方をするはずはない。
そして、“錬金術”の関係者だけここに招いて、“錬金術師”本人を招かない理由は見当たらない。
むしろ首輪の解除すら想定し、敢えてこの殺し合いに組み込んだ可能性すら有り得る。

『我等二人を除く、この中の人間が最後の一人になればそこでゲーム終了。その過程においては何の反則も無い』
ムルムルの発言だが、ゲーム終了に関する一文はあくまでエンディングにたどり着く方法(の一つ)に過ぎない。
それよりも、
『その過程においては何の反則も無い』
に着目すべきだ。
これは暗に、一見ルールに抵触するように見える事態すら許可される事を示しているのではないか。
それこそムルムルやシンコウヒョウ、“神”への反逆すら見越しているかのようである。
そしておそらく、この推測だけは間違っていない。
反逆行為そのものや首輪の解除は、最初から仕組まれている事だと思って行動すべきだ。

だからこそ、首輪が解除できる可能性も高い。

相手の意図は不明確だ。
首輪を解除できる事にどんなメリットがあるのか、まだ判断は出来ない。
だが、その可能性が高い事だけはかなり高い確率で保障できるだろう。


**********

「仮定に仮定の上塗りだな」

「だけど、ちゃんと筋は通っている――だろ?」

“神”の目的が殺し合いという状況であることと、首輪を解除できる可能性についての考察。
この2つについてと、そう考えるに至った経緯の説明を経て、東郷との応答へと繋げる。
東郷は眉をピクリとも動かさないまま、ただ淡々と論の欠点を突く。

「所詮は“神”の目的が
 “殺し合う状況そのものという『過程』であり、誰か一人が選抜される『結果』ではない”
 場合にのみ適用できる考えだ。
 実際、選抜という『結果』に目的があった場合はどうするつもりだ?」
46創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:23:04 ID:39cYo7h+
支援
47銀の意志T ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:23:20 ID:bXQ0H/QH
……だが、それは大した問題にはならない。
推測は容易に覆しうるが、事実に基づく解釈は現状、否定しようがない。

「それでも解除できる可能性はフィフティフィフティより下にはならないさ。
 竹内理緒や“錬金術”の存在、そしてムルムルの発言は首輪の解除に繋がるのは確かなんだ。
 加えて言えば、ムルムルは
 『外そうとしたり強い衝撃を与えても爆発するから気をつけるようにしたほうがいいのう』
 と口にしていた。
 わざわざこんな事を言う必要があると思うか?
 ただでさえ危険なブツだ、下手に手を加えるのは誰だって思い止まる。
 なのにわざわざ危険ですよとアピールするのは、それこそ逆に“解除できますよ”と言ってるようなもんだと思うけどな」

自分たちには首輪の解除が必要なのは結局、変わらない。
それにある程度確からしい保証を与えられるだけでも充分価値はあるのだ。

「…………。お前の考えには具体性がない。
 これからどうするつもりだ? それを示せるなら依頼を引き受けよう」


この言葉は、金銭の代わりに、情報を報酬として扱う事を納得させたという事である。
さあ、最後の一押しだ。

そう意気込んだ、次の瞬間。


ブルルルル、と、胸の内側でモーター音が静かに広がった。
紛れもなく、マナーモードにしていた携帯電話の着信通知。



**********
48創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:24:26 ID:39cYo7h+
ここに繋がるのか
49銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:24:54 ID:bXQ0H/QH
**********


「もしもし……」

『はい』

「待ってたぜ。秋瀬或――だろ?」

東郷に中断の旨を伝え、彼と距離をとった後に歩が電話に向かって放った第一声がそれだった。
“この”携帯電話は1stとやら、天野雪輝という人物のものだ。
だからこの番号を知っているのは、彼本人かその知人。
それも電話帳に登録されているくらい近しい間柄の人間だろう。
例えばユノと名乗った、あの女性のように。

好機。故にハッタリを仕掛ける。
電話を掛けてきた人間は声色からしておそらく男性。それも若年だ。
殺し合いの前に集められた空間で確認したシルエットから考えれば、天野雪輝はそれに該当する。
だが、それは否定される。声質があのときの1stとはまた違うものだったからだ。
ならば、可能性として残されるのは天野雪輝の男友達、といったあたりか。

電話してきた理由はいくつか考えられる。
そのいずれもが、未来日記の有用性と危険性、そして天野雪輝本人に関するものばかりだ。
無差別日記に課せられた制限、雪輝の手に渡らねば未来を知ることは出来ないという現実を、相手は知らないだろう。
だから、これが見知らぬ他人の手にあることを知った場合、彼が考えるだろうパターンは2通り。

まず、歩の近くに天野雪輝がいると想定した場合。
この時、未来日記は現在の持ち主である歩自身の未来も含めて予知をするはず。
故に、これから起こるやり取りも全てこちらが把握している事になる、と相手は考える。
更に雪輝が電話に出ない事から、こちらが雪輝と信頼関係にあるか、あるいは雪輝を力づくで従えているかを想定するだろう。
この場合、相手は下手に出てこちらを刺激しないよう立ち回るはずだ。
通話を始めてしばらくはこちら側が有利に立ち回れるだろう。
……だが、雪輝本人が実際にここにはいない以上、いずれボロが出る。
更に、通話相手から日記の情報を聞き出そうとしても、雪輝本人から未来日記の情報を聞き出さない事に違和感をもたれる可能性が高い。
結果的に、相手に不信を与えるだけだ。それは好ましくないし、情報も十全に得られまい。

そして、歩の近くに雪輝はいないと想定した場合。
天野雪輝を中心とした予知である以上、未来のやり取りが歩たちには分からないだろう、と考える。
そうなれば後は駆け引きになるが、やはり自分達が未来日記について知見が少ない事が痛い。
必ず彼は、無差別日記を取り返そうとするだろう。それこそ誤情報やブラフを使って。
厄介な事に、自分たちにはその真偽を見極める術は雪輝から真実を聞くくらいしかないのだ。
場合によっては対価無しで無差別日記を引き渡す流れになりかねない。

つまり、どちらにせよここで相手にペースを握られてはならない、という事。
その為に、思考を入れる間もなくブラフをかけるのだ。
天野雪輝本人でなくその知り合いならば、電話相手が雪輝かどうかを確かめるだろう。
最初のもしもし、で向こうはそれは確認できたはず。
だから相手の応答の直後、間髪入れず登録された人間の中から該当する名前を選んで呼びかけてみればいい。
ここで優位を得ておけば、情報を引き出しやすくなる。

50創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:25:54 ID:39cYo7h+
支援
51銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:26:57 ID:bXQ0H/QH
相手が秋瀬或である可能性は五割以下だが、実際問題それが正解かどうかは合っているに越した事はない、程度のものだ。
要は、こちらが有能な人間であることを知らしめられればいい。
無差別日記がこちらの手にあることが一安心であると評価されれば、無闇に手に入れようとはしないだろうからだ。
信用はされずとも、信頼を得る事ができればいいのである。

……まあ、善良な一般人なら上の全てが杞憂であるのだろうが、備えあれば憂いなし。
いずれの場合であろうと、この相手からは得られるものを得ておかねばなるまい。


――未来日記。

“神”の傀儡の一人、ムルムルに繋がる蜘蛛の糸であり、また重要人物と目される天野雪輝の『大切なもの』でもある。
何より、未来の情報を得られるという最高のアドバンテージをもたらすアイテムだ。

東郷との交渉の最後の一押しにとって、これ以上の札はあるまい。


そして、もう一つ。
このアイテムの重要性を押し上げる要素がある。

『――デウスはもういない。
 そして新しい神が新しくゲームを開いただけじゃ。
 人数は大幅に増えてしまったがな。やる事は今までと大して変わらんよ』

このムルムルの言葉があまりに重要な意味を持つのだ。
フーダニットを考える際の、今のところの最大の手がかりとなる。
そして、この言葉の直前に1st、おそらく雪輝が言った台詞、

『どうなってるんだよこれは? 日記は? デウスは!?』

これらについて、文脈を読み解いてみよう。

デウス、とは言うまでもなくラテン語で神を表す言葉だ。
ギリシア神話の最高神ゼウスの語源であり、
また日本のキリシタン間ではキリスト教の神を表す単語として定着している。
要するに、最高神や一神教の神を表す言葉として解釈するのが自然な言葉である。

そして、ムルムルの言葉の“新しい神”について。
前後の文脈から考えて、古い神デウスがいなくなり、新しい神が現れた、と読み取るのが自然だ。
同時に、新しい神が“新しいゲームを開いた”という事は、『前のゲームも存在した』という事も分かる。

……ムルムルに“やる事は今までと大して変わらない”と言われている事から、
おそらく1st、天野雪輝は、『前のゲームの参加者』なのだ。
それは相当に血生臭いもの――殺し合いであったのだろう。
しかも、『未来日記を利用した』殺し合いだ。
1stという呼び方は、おそらく『前のゲームの参加者』の1stだと推測できる。
未来日記が複数ある可能性を考慮すると、参加者全員にそれぞれ未来日記が配布されている可能性が高い。

つまり、未来日記は『前のゲーム』において、重要な位置を占めるギミックだったのだ。
52創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:28:02 ID:39cYo7h+
支援
53銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:28:55 ID:bXQ0H/QH
そして、“やる事は今までと大して変わらない”という言葉からは、もう一つの推論が導ける。
それは、
【『新しいゲーム』は、『前のゲーム』の“見立て”ではないか】
という事だ。
見立てとはあるものから別の事物の要素を感じ取り、言い表す事を言う。
分かりやすいのはいわゆる見立て殺人だろう。
推理小説などに良くある、童謡や民話、伝説、碑文などの文面に沿って行われる殺人である。
見立て殺人は殺人の順番を錯覚させたり、過度の装飾で証拠を埋もれさせる、といった目的で行われるのだが、割愛。
そして見立ては、一種の様式美でもある。
仮に『新しいゲーム』が『前のゲーム』の見立てだった場合、『新しいゲーム』で一人だけを選別する意図が感じられないのは説明がつく。
『前のゲーム』では生き残れるのが一人だったから、『新しいゲーム』でも生き残れるのは一人、となるのはおかしい事ではない。

だからこそ、『前のゲーム』を知ることは、『新しいゲーム』を打開するに当たって非常に重要なものとなる。
『前のゲーム』のルールと、未来日記がどう活用されており、どのような限界があるのか。
それを、電話の相手から引き出さねばならないのだ。
『前のゲーム』の見立てであるならば、『新しいゲーム』でも同じノウハウが生かせるのだから。


しばしの沈黙。

そして、相手の返答が返ってくる。


『……大した勘の良さですね、歩さん』


**********


鳴海が、傍目から分かるほどに一瞬だけ眼を見開いた。
どうしたのかと踏み出そうとする前に、鳴海はさも平然とした表情を取り戻して流暢に言葉を繋いでいる。
多分、動揺したことは電話相手に全く悟られてないだろう。

ああ、こいつでもこんな表情をするんだという安堵と嘲り、すぐに立ち直った事への尊敬と嫉妬。
黒い感情を抱いてしまった事に気付いて、どんどんと自己嫌悪が増してくる。

さっきから、俺はおかしい。


**********

「なに、それほどでもないさ」

冷静に考えれば偶然の可能性が高い。
自分の名前はあの時火澄がポツリと洩らしている。
今の状況下、ブラフとして名前を出すなら誰でも思いつく選択肢になってしまっているだろう。
ブレード・チルドレンの関係者以外には、だが。

そして、このことから浮上する可能性がもう1つ。
最初は天野雪輝、あるいは無差別日記に関する事項がこの電話の目的であると想定したが、
相手が何らかの手段で鳴海歩の情報を握っており、自分との交渉が目的であった場合も考えねばなるまい。
自分がこれまで本名を名乗った相手は安藤と東郷のみということから伝聞情報は除外していい。
故に、他の情報ソースとして、支給品あるいは『“神”陣営から直接情報を得ている』場合を想定。
54創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:30:19 ID:39cYo7h+
支援
55銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:30:55 ID:bXQ0H/QH
この場合、最も警戒しなければならないのは最後のパターン。
つまり、電話相手が“神”がこの殺し合いにわざわざ参加させた手駒だという場合だ。
殺し合いという状況そのものが目的ならば、場を撹乱させる内通者を紛れ込ませている可能性は極めて高い。

……そして、内通者を通じて“神”陣営が自分にコンタクトを取ってくる可能性は0ではないのだ。
一番最初の時、“あの”火澄を集衆監視の目の前で殺したのだから。
その意味は、あまりに重い。

殺し合いの参加者の選抜基準に意味があるのなら、わざわざ火澄を見せしめに選んだ事にだって相応の意味があるに違いない。
あれは明らかに、火澄が鳴海歩以外に殺される事の意味を知るものへのメッセージだ。
アサコ、と呼ばれた女性の場合は、単に彼女最初に反抗的な態度を取ったから見せしめにされたに過ぎない。
だが、火澄の場合は全く違う。
『ムルムルがトウモロコシを放り投げる事で見せしめを指定している』のだ。
ムルムル本人は火澄に対し運がない、という様な事を言っていたが、確かに彼は運がなかった。

おそらく火澄は、見せしめにされる為だけにここに招かれたのだから。

あの時のムルムルの歪んだ笑みは、見せしめにされる火澄が運命を語った事を皮肉っていたのだろう。
考えれば考えるほど――嫌な予感が頭を掠めて仕方ない。


いずれにせよ、だ。
名前には名前で切り返す辺り、どの場合でも相手の判断力と決断力は相当だ。
とはいえ相手が沈黙したところを見ると、やはり秋瀬或かその関係者の可能性が極めて高いだろう。
あるいは電話相手の背後から僅かに聞こえた男の声が或本人で、電話相手は別人なのか。
僅かでも話の内容を聞き取れたならある程度の確証の元に行動できるのだが、それを愚痴っても仕方ない。
今のところ、秋瀬或らしき人物には対話の意思がある。
仲間がいる事から考えて、殺し合いに乗っていたとしても対応次第で敵対は避けられる相手と判断。

そして、秋瀬或の声は続く。

『どうやらあなたはその携帯の機能に気付いているようですが……それをいったいどうする気か、単刀直入に聞かせていただいてもよろしいですか?』

……やはり目的は天野雪輝と無差別日記の可能性が濃厚。
“神”陣営の人間というのは杞憂だと思って差し支えあるまい。断定は早計だろうが。

やはり相手の情報が足りないな、と心の中で毒づく。

(あいつがいれば少しは楽なんだろうけどな……)

そんな事を思い、苦い顔をした。
確かに彼女が今隣りにいたならば、相手の事細かなプロファイルを炙り出してみせるだろう。
悔しい事に、頼りになるのは間違いない。
たとえ彼女の正体が自分の推理通りだったとしても、自分にずっと手を貸していてくれたのは事実なのだ。
それも、自分が危難を乗り越える事を信じて、時間稼ぎの為にリストカットさえしてしまうほどに。

(……あいつが巻き込まれてる可能性も相当高いか。
 まあ、巻き込まれてなくても自分から首突っ込んでくるような奴だしな……)

心配か、と聞かれたら全力で横に首を振る。
だが、巻き込まれていない方がいいかと聞かれたら、きっと否定できないだろう。
たとえ、彼女がどれだけ頼りになったとしても。
56創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:32:45 ID:39cYo7h+
ここでひよりが出るのか
57銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:33:07 ID:bXQ0H/QH
……とはいえ、今目の前にいない人間を頼りにしても仕方がない。思考を戻す。
僅かな会話からでも充分に分かる相手の性格は、大胆不敵にして冷静沈着。
論理的な思考と場のコントロールに長けた自信家だ。
厄介な相手だと判断。

「……兄貴のことを考えてる所に、兄貴に性格の似たヤツを相手取る、か。
 やれやれだ」

ぼそりと電話から口を離して、本当に小さく呟く。

「まず初めに言っておこう。俺たちはこのゲームに乗る気はない。
 とりあえずはこの首輪を外すつもりだ」

まずはこちらの立場を表明する事で、相手が切って入ってきたのをそらし受け流す。
相手にペースを掴ませない。
今のところ、相手が殺し合いに乗っているという証拠はない。
その意味で協調できる可能性が高い相手であり、無闇な敵対をしたくはない。
向こうも同じだろう。
だが、相手はいささか我が強い。
全面的な信頼が出来ない以上、こちらも切るカードを慎重に選び、利用されるだけの捨て駒にならないよう立ち回る必要がある。
……いや、むしろ相手を上回る気概で望む。
自分も随分、強気になったものだと鳴海歩は思う。
妙な連中に毒されすぎでもしたのか、いつも信じてくれる人間を得たからか。

切ったカードは、言論の自由。
“その過程においては何の反則も無い”
ムルムルの言葉通りなら、首輪を外すことすらも“神”の想定内なのだ。
ならば、どんな発言をしようと粛清されることはないし、言論や表現に検閲が入る事だってまずありえない。
たとえそれが首輪を外すといった内容であったり、あるいは連中に反抗するものであったとしても。

ああ、気分が良くない。
全てが誰かの掌の上で踊っているだけに過ぎないこの感覚を、鳴海歩は嫌になる程刻み付けられている。

『……僕らもですよ』

或の言葉はとりあえずの不戦条約に等しい。
完全に信用が出来ない口約束だが、ないよりはずっとマシだ。
そして、僕“ら”と仲間の存在を認めるのはその証拠の提示だろう。

「鳴海、大丈夫か……? さっきから表情が難しいけど、俺が代わろうか?」

無言で背後に片手を突き出し、気にするなと意思表示。

言える訳がない。
ある男へのコンプレックスなど、ぶち撒けられる筈がない。

だが、見立てという様式美の可能性といい“神”というあからさまな呼び名といい、
一人の男の姿を思い浮かべずにはいられないのだ。
自分のスタート地点が教会だったのも、誰かの意思の介在としか思えない。

ミズシロ・火澄は、運命の構図を全く無視する形で死んだ。
それも、おそらくは全て“神”の意図に則って。
……だが、それは本当に構図を無視していたのだろうか?
58創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:34:05 ID:39cYo7h+
支援
59銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:35:13 ID:bXQ0H/QH
あの男にも、火澄は殺せないはずだった。しかしそれが本当である保障はない。
自分が推理する限り、あの男の最終目的は自分にあの男自身を殺させることだ。
……構図上自分が火澄とあの男を殺し得るのなら、あの男が殺せるのもミズシロ・ヤイバだけとは限らないのではないだろうか。
そう、あの男が火澄を殺せないと断定することは出来ないのだ。

ぐっ、と唇を噛み締め、余計な注意を払わないことにする。
電話の相手は想像以上に厄介で、気が抜けない。
今はそちらに注力すべきだ。

「そこでこの携帯を手土産に『天野雪輝』と協力関係になりたいと思っている。
 だが、俺たちは彼の事を知らない。
 だから教えてくれないか? 彼がどういう人間なのか」

言論の自由を保証した代価として要求したのは、天野雪輝の人となり及び彼にまつわる周囲の環境。
即ち、それには未来日記についても含まれる。
当然ながら現状ではまず一から十まで教えられる事はないだろう。
しかし、この相手ならここで教えないという選択肢が悪手である事も知っているはずだ。
何故ならこちらは協力の意思を見せているだけ。しかも、無差別日記の所有すら認めているのだ。
何一つ教えないというのならこちらからの信頼を失うし、結果的におそらく友人であろう雪輝の不利にもなりかねないのだから。

無論、この秋瀬或が天野雪輝の敵となる事を選んだ可能性もある。
無差別日記は放置しておくにはあまりに危険だ、雪輝を始末しない保証はない。
……しかし、友人という立場ならやはり無差別日記を利用する方向性の方が有り得そうではある。

まあ、どう転ぼうとこの質問である程度は相手の立ち位置が見極められる。

『雪輝君からは、まだ連絡がないんですか?』

勿論、ない。
もしこれまでに連絡があったのなら、彼から得た情報を用いたブラフや駆け引きができる。
それをしないという事からの当然の疑問だろう。
……雪輝から連絡を受けた上で敢えて連絡がないふりをし、情報の確度が高められればよかったのだが。
次それをするとしたら雪輝相手にカマをかける事になるが、これまで連絡がなかった経緯から彼は電話のない場所にいると考えられる。
あるいは、この殺し合いの会場に無差別日記が存在する事すら知らないか、電話する事にすら思い至らなかったか。
とにかく、先刻のユノという少女の存在を考えれば、雪輝相手に下手な事をすると余計な敵を増やす事になりかねない。

「ああ、だがユノって子とは連絡を取った。彼女が天野雪輝と合流したら再び連絡を取る手はずになっている」
『ユノ! ――ガサイユノですか、電話番号は確認しましたか? ……ええ、ええ。
 ……なるほど、彼女に間違いないですね』

他の知り合い、例えば雪輝に聞きただせば分かる事。
ここで他人に偽名を使う意味はない。ならば、ガサイユノはまず本名だ。
たとえ同じユノという名前の参加者がいたとしても間違う事はあるまい。

『雪輝君は……とても臆病ですが、運命と戦う気概を持っている少年ですよ。
 僕も彼とは早く合流したいと思っています。
 ……が、』

……上手い言い方だ、と内心呟く。
臆病、という性格を教える事でこちらと相手の接触をスムーズに行えるよう取り計らい、
気概を持っている、と付け加える事で雪輝の魅力――言わば商品価値を演出している。
そのくせ、具体的な事は何一つ教えていない。

そして、次に繋ぐ言葉だ。
おそらく、それが相手の本当の一手だろう。
60創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:37:01 ID:39cYo7h+
探偵は気難しいなw
支援
61銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 13:37:23 ID:bXQ0H/QH
『……この殺し合いが始まった当初、惜しい事に亡くなられた少年がいましたよね。
 周りの方々の言葉によれば、火澄さん、と仰いましたか。
 あなたが本当にアユムさんであるのなら、彼の話した『あなた以外には殺されない』という事がどういうことか、教えて下さいませんか?
 それを話してくださったなら、僕はあなたの欲しい情報を必要なだけお話しましょう』

「…………!」

そうきたか、と歩は引きつった笑いを浮かべる。
これは踏み絵だ。
こちらが信頼できる相手かどうか、個人を特定するという的確に弱点を射抜く一撃。
先刻、歩と名指しされた時に敢えて否定せず平然と振舞ったのを逆に利用してきた。
自分が歩でないと否定すればその時点でこちらの弱みとなるし、自分が歩だと肯定するのなら黙っていては情報が得られない。
そして、火澄についてしっかりと説明する事ができるのは自分を含む僅かな人間だけ。
この相手なら適当な嘘をついても必ず僅かな綻びから嘘だと見抜き、指摘するに違いない。
しらばっくれるのはそれ以上に悪手。千日手になるだけだ。

今この電話をしているのが歩でないならばそれを認めて、相手の独壇場となるに任せるか。
歩であるならば火澄の情報について話し、イーブンに持ち込むか。
どちらの場合でも選べる選択肢はひとつしかなく、後者である可能性は参加者数に比べ非常に低い。
そもそも、歩という人間が参加しているかすら現段階では不明なはずだ。
見事な一手、としか言いようがない。
もし自分が歩を騙る別人だったら、情報という情報を搾り取られ、下手すれば無差別日記を手放す羽目にすらなっていたかもしれない。

先刻の厄介という評価を取り下げる。
この相手は厄介どころじゃない。
手強い、と呼ぶのが相応だろう。
敵対しているわけではないのが救いだ。

しかも、その対価として得られるのは最低限の情報だけ。
欲しい情報を必要なだけ、とは一見十分な情報を提供してくれるように思えるが、その実聞かれたこと以外は一切話しませんよということだ。
こちらの思惑外の情報をおまけでつけてくれる事は、この秋瀬或はしないだろう。
収穫があったとすれば、やはり先刻の名前の特定はカマかけであり、支給品や“神”から得た情報ではないということくらいだ。

そして、火澄の事は東郷や安藤にも話していない事である。
“神”について確証のない今話すべき事ではないと判断したが故に、ブレード・チルドレンにまつわる一連の事こそ話しても個人単位での詳しい事は話していないのだ。
東郷にあの聖堂でのことを指摘される可能性もあったが、火澄も含んだ個人の情報はこれから依頼への『報酬』として語るつもりだった。
これを或相手にこちらから切る事が出来なかったのは中々に痛い。

だが、相手にも一つだけ誤算があるだろう。
62創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 13:38:06 ID:39cYo7h+
支援
63銀の意志U ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:02:38 ID:bXQ0H/QH
それは、自分が本当に鳴海歩だという真実だ。

「了解だ。少し長くなるし、到底信じられないかもしれないが、いいか?」

切れるカードを失ったとはいえ、これは相手から十全の信頼を得る機会でもある。
鳴海歩だからこそ、言える言葉。

相手に語るのはブレード・チルドレンの概要と、ヤイバと清隆の所業。
そして自分と火澄の対応関係について。
これならば個人の持つスキルなどを洩らす事はなく、情報流出によるリスクは非常に低い。

話しても痛くない情報を話す事で信頼を勝ち取れるのだから、利用しない手はない。

『え? え、ええ……。
 あなたが歩さんだと確信できれば、それでいい訳ですからね』

淀みない返答に、秋瀬或は戸惑いを隠しきれていない。
いくらこの相手でも、こちらが本当に歩だったとは想定外だったのだろう。
情報の信頼性を高める為、わざわざフルネームで名乗り直す事にする。

「そういや、自己紹介がまだだったな。鳴海歩だ。
 ……いくつかの名前を使い分けてるから、あのユノって子にはミズシロ・ヤイバと名乗ったけどな」

ユノが或に追求しても余計な疑惑を得ないよう予防線を張り、そして改めてミズシロ・ヤイバに端を発する呪われた血脈と神の兄弟の構図について語り始める。


**********
64銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:05:01 ID:bXQ0H/QH
**********


『…………』

「嘘だとでも思うか?」

話を終えても反応がない相手に、軽い口調で話しかける。
とはいえ、その心配はあまりしていない。

『……いえ、こんな嘘をつくのはリスクが高すぎますからね、あなたがそうするとは思えない。
 それに、作り話にしては適度にあやふやで適度に的を射ています。
 これでもう少し設定を作り込みすぎていたり、あるいは破綻していたりしたら遠慮なく突かせてもらっていたんですが』
「それは怖いな。まあ、とっさの創作にしては中々上出来だと思わないか?」
『意地の悪い事を。
 僕があなたを歩さんだと指摘してからの僅かな間に作ったにしては真実味がありすぎますよ。
 ……やれやれ、どうやらあなたを歩さんだと認めざるを得ないようです』

呆れたような口調の相手は予定が外れて心外だとでも言いたげだ。
よほどこちらに対して優位に立ちたかったと見える。
仮定はどうあれ、相手に十分すぎるほどの信頼を与える事は出来ただろう。

『しかし、火澄氏の殺害には示威的なものを感じますね。
 “神”があなた達にとって火澄氏の死がどういう意味合いを持つのか知らなかったとは考えがたい』
「……やはり、あんたもそう思うか」

語調を切り替え、秋瀬或は歩から聞いた話についての素朴な疑問を口にする。
戯れ合いは終わりという事だろう。
歩もまた、自身と同じ結論に或が思い至った事に頷きを返す。

『当然です。しかし、僕にはその意味を推し量るだけの情報が足りない。
 どうです? 全てを語ってしまっては?』
「さあな」

もっと情報をくれという或に対し、素っ気無く返す。
どうやらまだ秘匿している情報があるのはバレているらしい。
自分たちがクローンである可能性や、それを通じて見える兄の目的などについては一切を黙秘している。
当然、個々のブレード・チルドレンの名前や人物評もだ。
ただ、殺し合いに乗っているか否かは別として、或なりに“神”について考えようとしているのは事実のようである。
とは言え、これ以上は流石に迂闊に話すわけには行かない。

と、クスクスと小さな笑いを見せて或はそれ以上追求しない。
最初から期待はしていなかったらしい。

『警戒する事はありませんよ、僕も引き際というものは知っています。
 それに、この情報は秘匿すべき類のものだ。
 とくにあなたを希望と信じている、つまり火澄氏の存在すら知らないブレード・チルドレンに聞かせたならば、彼らの暴走を招きかねません。
 そして、彼らが殺し合いに参加している可能性は非常に高い。
 どこから耳に入るともしれない以上、僕は誰にもこれを語るつもりはありませんし、聞きだすつもりもありませんよ』
「話が分かるな、助かるよ」
『いえ、ただのリスクマネジメントです。
 ……持っている情報から考えても、僕よりあなたの方がこの殺し合いの動機面に関して迫る事には適任そうですね。
 どちらかといえば論理――ロジックの分野ですから、そちらに関してはお任せします。
 僕は危険人物や首輪などについての、具体的な証拠のある目前の脅威の方が得意ですし』
65銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:07:09 ID:bXQ0H/QH
意外な反応だった。てっきり自分で踏み込んでいくかと思ったが。
いや、所詮は口約束だ。おそらく今は、彼にとって直接的に利のある事をより優先させているだけだ。
秋瀬或ならば、言葉面ではこう言っていても彼なりのやり方で“神”について踏み込んでいくだろう。
……場合によっては、彼にもう少し詳しい事を話してもいいかもしれない。
ただ、今がその時でないことは確かだ。

『……そろそろこちらも改めて自己紹介させていただきましょうか。
 秋瀬或。そうですね、世界一の探偵を目指す前途有望な若者、と名乗っておきましょう。
 さて、早速ですがひとつ頼みがあります』

やはり食えない相手だ、と歩は苦笑する。
向こうがこちらを信じた事を示す意思表示として、堂々と頼み事をしてくるとは。
損して得取れを忠実に実行している。
おそらくその頼み事は、今度はこちらに向こうを信じさせる手段でありつつ、なおかつ向こうに多大なメリットがあるものだろう。

「まだ天野雪輝と未来日記のことについて聞いてないんだけどな。
 こっちが鳴海歩である事を示したら、話してくれる約束じゃなかったか?」

先約の確認をして、こちらのペースに乗せられないか試みる。
効果は期待していない。
あくまで単純に先方に唯々諾々と従いはしないという牽制だ。

『もちろんお話します。
 こちらの頼みというのは、まさしくその天野雪輝君と未来日記の話題の核心に関わる事なんですよ』

やはり思ったとおりの展開だ。
王道というのはいつも回避しづらく、そして存外重い。
多分、こちらが聞いてもいない情報まで教える代わりに、頼みを聞かせようとする算段だろう。

「……分かった、聞かせてもらおうか」
『――感謝します。
 頼みというのは他でもない、ガサイユノから彼女の未来日記――“雪輝日記”を手に入れてもらいたいのですよ』

“雪輝日記”――? と、口の中で反芻する。
今の言葉だけでも重要な情報が2つも手に入った。
一つは、ガサイユノも未来日記を持っていると言う事。
もう一つは、
 
「……やっぱり、未来日記ってのは複数あったのか」
『ええ、未来日記所有者は全部で12人。正確には11人+2人1組、ですね。
 その内、ガサイユノは未来日記所有者2ndです。
 彼女の持つ未来日記、“雪輝日記”の能力は無差別日記に比べれば遥かに弱い、と言っても過言ではありません。
 ですが、』

他の所有者について語るつもりはもちろんないのだろう。
しかし、未来日記の数が分かったのは収穫だ。
12〜13個。加えて+αがいくつか。
それだけの数の未来予知の出来る道具が、この会場内にばら撒かれている可能性がある。
相手の言動の内容を分析しつつ、言葉を区切った向こうの言葉の続きを促す。
66銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:09:24 ID:bXQ0H/QH
「どうした? 秋瀬」
『歩さん、あなたは無差別日記の弱点をご存知ですか?』

唐突な問い。
それに対し、コンマ秒単位で答えを見つけ、口に出す。

「――そういう事か」
『ええ、そういう事、です』

雪輝自身の未来は予知できないと言う説明書き。
それは明らかな弱点であり、わざわざこの場でそれを持ち出すという事から導かれるのは実にシンプル。

「……“雪輝日記”、と銘打つだけあって、天野雪輝の予知に特化しているんだな?」

弱点をカバーできる能力についての説明でしか有り得ない。

『ご明察。彼女と話した事があるなら、どんな性格の持ち主かはおおよそ気付いているかと思います』
「……そうだな、言い方は悪いがストーカー気質、って感じだったな」

苦笑して同意する。
殺し合いも辞さず、雪輝のためならばなんでもする、といった印象だった。

『……気質、は付かないんですよね、異常なことに。
 まあ、雪輝君への想いだけは本物ですし、彼もそれを受け入れてしまいましたので元と付けるべきかもしれませんが』

絶句。

「あー……、なんだ。それは確かに警戒すべきだな」
『……言葉になにか実感が篭っていますね。女性関係で苦労しておいでで?』

おそらく天野雪輝は相当に苦労性だろう。
タイプこそ違えど、似たようなのに付き纏われている事から非常に彼に共感できる。
そして同時にそういう女の厄介さも身に染みて理解できるのだ。
とりあえず、地味に人間関係を聞き出そうとする或はしたたかだと判断しつつ、無視する事にする。

『雪輝日記は無差別日記と組み合わせる事で周囲の完全予知を実現します。
 ……そして、あなたからお聞きした限りガサイさんは最初から雪輝日記を手にしている。
 雪輝君の動向は完全に把握されていると思っていいでしょう。
 そう遠くないうちに、雪輝君とガサイさんは合流する事に違いありません』

ここまで聞いて、思い当たった事が一つ。
やはり或は無差別日記に使用制限がかかっている事までは気付いていない。
あるいは気付いていない振りをし、敢えてこちらにどんな使用制限がかかっているかを言わせようとしているのだろう。

「悪い、一つ黙っていた事があるんだが。実はこの無差別日記は制限がかけられてるんだ。
 一度雪輝が所有しないと効果を発揮できないらしい」

仕方ない、その思惑に乗る。
とりあえずは制限については話しておく事にした。
誰に対しても不利益にしかならない情報なら、共通認識として持っておくべきだからだ。
67銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:12:01 ID:bXQ0H/QH
『成程、合点がいきました。
 ある程度の雪輝君の安全は確保できたと思っていたんですが、雪輝日記にも似たような制限がかけられていたならガサイさんの探索効率は著しく落ちる。
 最初から雪輝日記が使用可能なら、彼女と雪輝君にとってアドバンテージが大きすぎますからね。
 ……いい事をお聞きしました。これは僕の方でも何らかの対策を考えねばならないようです。
 あ、お礼代わりにもう一つ未来日記についてお教えしましょう。
 未来日記は所有者の主観情報を反映します。
 従って前提となる主観が誤情報を与えられていた場合、事実と相違する予知がなされるようです』
 
おそらく、未だに雪輝がユノまたは自分と合流していない理由を把握したかったのだろう。
少なくとも一つ分かった事がある。
秋瀬或は意外と律儀だ。信頼度を少しだけ上げる。
しかし、予断は許さない。警戒を緩めることなく疑問を呈す。

「……感謝する。ガサイユノの持つ未来日記については分かったが、一つ聞いていいか?」
『ああ、分かっています。それも今から説明しますから』

先んじられた。
事あるごとに機先を制そうとするのは、秋瀬或にとっては当然のことなのだろう。
この流れで聞こうとしたのは、彼が無差別日記と雪輝日記を交換させたがる理由そのものだ。
何一つ言葉にしていないのに、秋瀬或は的確に端的に説明をしてみせる。

『彼女に対する抑止力が欲しいんですよ』

「抑止力……?」

思わず聞き返した歩に、或は語調を改めてきた。

『……これは、あなたを信頼しているからこそ話す事です。
 僕以外に絶対に他言はしないで下さい。あなたのお仲間も含めてです』

頷く。
これは、相手にとっての切り札だ。
これを聞いたらおそらく自分はこの相手の要求を受け入れねばならないだろう。
だが、その価値はある。
これまでの応答は、良くも悪くも秋瀬或は情報の価値を知っている人間だと理解するに十分だ。
心して、頷いた。

「ああ」

沈黙。
その僅かな間隙の意味するものは何か。
よもや躊躇いという事もあるまいが、それだけ口にしづらい内容なのか。


『……未来日記の破壊は、本来の所有者の死を意味します』


耳に届いた内容は、まさかとは思っていたが流石に実際に耳にすると重みが違う。

68銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:14:25 ID:bXQ0H/QH
「…………成程な。……確かにそれは、十分すぎる理由になる」

この事から分かる事がもう一つ。
秋瀬或は、それだけガサイユノを危険視していると言う事だ。
だが、彼女はそこまでの脅威なのだろうか。

『未来日記……未来の記述を傷つける事は、自分の未来を傷つけるのと同義。
 あなたが今握っているそれは雪輝君の命そのものであり、ガサイさんに関しても同様です。
 あなたが雪輝日記のオーナーとなるなら少しは彼女も自制するでしょう。
 無論、無差別日記と雪輝日記がひとところにあるのは危険だというのも理由のひとつですが』

……嘘は言っていない。だが、全部を話したわけではないとも感じている。
自分だって同じ事をしている以上、それを指摘するつもりはないが。

「俺の事をそこまで信じてしまっていいのか?
 例えば今この場で無差別日記を破壊するかもしれないぞ?」
『そんな無意味な事をあなたはしませんよ。メリットが全くないですしね。
 いい加減、自分を疑えと言わんばかりの言い方はよした方がいいと思いますよ?』

お節介に苦笑する。

「……やれやれ」

とりあえずは、納得のポーズを示す事にした。
今はそれで妥協する――、落とし所としては適当だろう。
真実を全て追究する必要がないのはお互い同意の上だ。

「手段はどうする? 悪いが力づくなんてのは俺には無理だからな」

戦闘能力がこちらにない事を示し、具体案を提示させる。
当然、向こうも織り込み済みだろう。

『無差別日記との交換の形が一番無難でしょう。
 彼女の行動原理は雪輝君を至上としている。実際、彼の為なら平気で命を投げ出した事もあります。
 それに、雪輝君は未来日記を用いた戦闘を一番多くこなしている所有者です。
 日記の使用のエキスパートと言っても過言ではない。間違いなくあなたより有効に活用できるでしょう。
 確かにあなた達が無差別日記を持ち続けるメリットもありますが、それ以上に彼に無差別日記を渡した上で協力関係を築いた方が得るものが大きいはずです』

……言動に綻びがある。命を平気で投げ出すなら、他者による日記の保持は完全な抑止力には成り得ない。
同一人物から発せられた、取ってつけた理由と性格の差異――どちらがより正しいかと言えば後者だろう。
まあ、案そのものはこちらにとっても利点が確かに存在しているので黙っている事にする。
おそらく、少々の矛盾ならこちらは飲み込むと分かっていて相手も論を展開しているはずだ。

『それと、僕とあなたの繋がりは極秘裏に……。
 特に、ガサイさんに対しては気取られないよう気をつけて下さい。
 当然、あなたが未来日記のルールについて詳細を知っている事は伏せた方がいいでしょう。
 偽名ももう使わず、正直に鳴海歩と名乗った方がリスクは減ります』

……そんな黙秘は発覚したときに恨みを買う事に繋がらないか。
一から十まで相手の提案を鵜呑みにするわけにはいかない。逐一検討していく。
69創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 14:16:22 ID:zW0zGDBI
しえん
70銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:16:55 ID:bXQ0H/QH
「あんたが彼女に電話して直接交渉するって手はどうだ?
 あんたを仲立ちに取引できれば、むしろ余計な誤解を生まずに交換できそうなもんだが」

『それは僕も最初考えたのですが、難しいですね。
 もし僕が彼女に電話したならばいやに敏い彼女のこと、必ずこう考えます。
 “あの秋瀬或が自分の携帯電話に電話する前に、雪輝の携帯電話に電話しないはずがない”とね。
 既に彼女があなたと連絡を取ってしまっている以上、僕たちの繋がりが見えてくるのは自明。
 即ちあなたが先刻よりも未来日記について知っている事まで彼女に悟られてしまいます』

確かに、ちょっとでも頭が回れば誰でも思いつくことだ。

『最大の問題は、あなたの手に無差別日記――雪輝君の命が握られてしまっている事ですね。
 そしておそらく、彼女はあなたが未来日記の破壊=死亡というルールを知らないからこそあなたとの一時協調に乗ったんです。
 だから、ここで僕があなたに未来日記についての情報を与えたと彼女が知ったらどうなるか、全く読めないんですよ。
 僕が恨まれるだけならまだいい。ですが、あなた達まで相当危険な橋を渡る事になるでしょう。
 少なくとも良い方向にはならないのは確かです。
 そして同時に、日記破壊=死亡のルールを把握したあなたに雪輝日記を渡す事も彼女の選択肢から消失します。
 あなたがガサイさんと無差別日記と雪輝日記を交換できるのは、日記破壊のルールを知らない事が前提なんです』

歩は口を挟まない。
ガサイユノとは少し話しただけの彼には、彼女の行動傾向について言えることは何もない。
秋瀬或の話しぶりから、まさしく爆弾のような存在だと窺い知るので精一杯だ。
どこまで本当かはともかく、一度きりの会話から得たプロファイリングにおいては否定する要素は何もない。

『――歩さん。
 いずれ彼女たちから合流の知らせがあった際、あなたから僕のこの番号に連絡して取引場所を教えていただければ幸いです。
 ……僕達は有事に備えてすぐ近くに潜むつもりですので、できれば今僕たちのいる北西エリアから向かえる距離で取引して欲しいですね。
 彼女の暴走を抑えるには雪輝君がどうにかするか、彼女以上の暴力で押さえ込むかしかありませんから。
 幸い、僕には非常に心強い仲間がいます。彼ならばガサイさんを止める事も可能でしょう』

或は取引現場に近づきたがっているとの言質を取った。その意味を考える。

ガサイユノを警戒しているから、取引における暴走を未然に防ぐ?
……それは確かだろう。しかし、この言動が心から自分を心配してのものとは考えづらい。
ただ、自分を騙まし討ちする可能性は、おそらくないとは思う。
それならば無差別日記と雪輝日記の交換の場を設けるよう薦めるなどという回りくどい方法を取る必要はない。
そして、完全な抑止力とならない以上ガサイユノの命である雪輝日記を自分が握る事にも大した意味はないだろう。

ならば答えは一つ。
雪輝日記の直接的な効果こそを、秋瀬或は警戒している。
懸念しているのはおそらく、ガサイユノの雪輝への裏切りの可能性だ。
その一方で、警戒しているガサイユノを殺すという選択肢を匂わせてはいない。
これはおそらく、雪輝からの感情を考慮したものか。
取引現場に近づきたがるのは、その辺りの微調整を場合によっては行う為だろう。
……大きな収穫だ。
少なくとも、秋瀬或は雪輝の敵に回りたがってはいない。
ならば、彼の動向が大きくスタンスを左右するはずだ。

71創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 14:18:32 ID:39cYo7h+
しえん
72銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:19:20 ID:bXQ0H/QH
「……そんなに彼女は好戦的で狡猾なのか?
 確かに危うい感じはしたが、雪輝を裏切りそうにはなかったけどな」

だとするともう一人の雪輝に近しい人物、ガサイユノについてのより詳細な情報を聞き出さねばなるまい。
雪輝を愛しているのに裏切りの可能性があるとはどういうことか、カマをかける。


無言。

おそらく、不意打ちだったのだろう。
少しだけ引き攣った声で、秋瀬或が続ける。

『……僕の言動からそこに気付くとは、本当あなたには驚かされます。
 裏切る可能性は……0ではない、といったところです。
 彼女は、自分の記憶を自分の意志で改竄できるんですよ。
 都合の悪い事を、なかった事にできるんです。彼女の中ではね。
 つまり、雪輝君が彼女を拒絶すれば……、後は言うまでもないですね』

「……精神的に相当キてるやつだな」

……そこまでヤバい相手だったとは、流石に想定外だった。
そんな女を受け入れている雪輝にも相応の警戒が必要かもしれない。
その心配を見越しているのだろう、秋瀬或は雪輝のフォローに入る。

『ついでに雪輝君の性格についても、もう少しだけ詳しくお教えしましょう。
 彼は確かに臆病ですが、決断力には欠けてもいざと言うときの行動力はガサイさんに勝るとも劣りません。
 彼もまた必要ならば殺人すら辞さない性格と言えます。
 とはいえ、基本的に彼は常識人です。あまり倫理観に触れる事は望まないでしょう。
 殺人を犯すのは、あくまで必要だと判断したときだけ、です。
 直接的にガサイさんを制御できる唯一の人間という事もあり、彼に的を絞って交渉するのが無難だと思います。
 よほどの事がないと生存を第一に考える人ですから、まずこの殺し合いに乗ってはいないと思いますよ』

雪輝の心配をするなら当然の配慮だ。
しかし、おそらく色眼鏡が入っているとはいえ、作り事とは思い難い。
雪輝がガサイユノに比べ話の通じる人間なのは確かだろう。

『先ほども言いましたが、一応、ガサイさんの愛情だけは本物です。
 それだけが彼女を一つの人格として繋ぎとめているといっても過言ではありません。
 もうお分かりでしょうが、僕は雪輝君の味方として立ち回っているんですよ。
 その意味で彼女は頼りがいのある仲間であり、それ以上の具体的な脅威でもあるわけです。
 下手に殺したくはありませんが、こちらを噛む危険性だけは出来る限り少なくしておきたい。
 これから相対する事になるであろうあなたに警告しておきます。
 彼女には躊躇いというものが存在しません。その癖、判断力や直感は異常に冴えています。
 しかも雪輝日記がある以上尚更危険です。
 予知対象は雪輝君限定とは言え、雪輝君がその場に居合わせるならまず彼女を助けるよう動くでしょう。
 つまり、状況は常に彼女に追い風が吹く形で流動する事になります。
 ですから僕でも次の展開が読めない。
 歩さん、たとえあなたに仲間がいたとしても彼女相手では油断は出来ないんです。
 いや、むしろ仲間がいたならば立ち合わせない方がいいかもしれません。
 こうして僕と対等以上に立ち回れるあなたならともかく、他の方は彼女を刺激しかねない。
 危険な状況になった時、あなたの命も守れるよう尽力します。
 ……僕が取引現場付近で待機する事を許可していただけますか?』
73銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:21:45 ID:bXQ0H/QH
今ともにいる2人を考える。
安藤は信用できる。
……しかし、話の通りのガサイユノ相手では間違いなく場慣れしていない彼を危険に晒す事になる。
東郷はどうか。
彼の性格を考えれば、危険と見なしたら容赦はしないだろう。
先刻の自己紹介で自分の事を臆病だと言っていたが、それはつまり危険の芽を優先して潰す事でもある。
ガサイユノは真っ先に排除対象となるに違いない。
彼はキレ者ではあるが、融通の利かない人間だ。柔軟な立ち回りは期待できない。
生存という優先順位に勝るものはないはずだ。

それらの事から、とある決断を歩はする。

その上で、秋瀬或の提案を検討した。
結論は一つしかない。

「……分かった。その申し出を受ける事にする」

この秋瀬或が信頼を寄せるほどに、相当の実力を持つ仲間がいるのだろう。
そしてまた、約束を破るとも思い難い。

『……ありがとうございます。
 本当は、何事もなく日記の交換を終えられるのが一番なんですけどね。
 その方が僕としても雪輝君と合流しやすいですし』

婉曲的に雪輝を心配していると言う事を仄めかす。
なるほど、合流を目的としているなら自分との繋がりは確かにないほうがいい。
どうやら雪輝に関して心配しているというところだけはかなり信用してよさそうだ。
つまり、一連の提案に関しても嘘の可能性は限りなく低いだろう。
ならば、取引に際して詰めておかねばならない穴も存在する。

「俺が雪輝日記の存在を知った経緯はどう説明するんだ?
 あんたの人物評通りなら、ガサイユノは間違いなくそこを不審に思うぞ」
『ガサイさんも日記所有者であろうというのはムルムルと雪輝君の言動、
 そして無差別日記の存在とガサイさんが己の携帯電話を持っていることから十分推測できる事ですよ。
 カマをかけた事にしておけば不自然ではありません。
 雪輝日記と明言しなくとも、ガサイさんの未来日記と引き換えと言えばまず問題ないでしょう。
 無差別日記はその存在だけで相手にプレッシャーを与え得るアイテムです、無償で手渡すと言うのはむしろ怪しまれる原因になるかと』
「こっちは未来日記という事は推測できても雪輝しか予知できない日記だとは知らない事になるはずだからな。
 ……向こうにとっても利点の方が大きく感じられるわけか」
『……ええ。とにかく、僕との会話は存在しなかったというフリを徹底してください。
 そして、僕との会話で得た情報を最大限に活かせるよう、立ち回ってください。
 あなたならそれが出来るでしょう』

皮肉気に笑う。

「随分と買われたもんだな」
『当然です。この僅かな時間の会話であなたは僕を何度も出し抜いた。
 それだけで賞賛に値する事ですよ。
 いや、尊敬と言ってもいいかもしれませんね』
「それじゃあ、尊敬ついでにもう一つだけ聞いていいか?
 ちょっと有事の際に必要になるかもしれない事なんだが」
74銀の意志V ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 14:24:34 ID:bXQ0H/QH
未来日記所有者と交戦することになった際に、備えておきたい事。
慎重に慎重を期して損はない。

『…………。どうぞ。
 ただ、質問次第ではこれ以上の情報は差し上げられないかもしれませんが、それでもいいですか?』
「ああ、駄目元で聞くだけだ。
 俺も認めるよ、あんたは賢い。賢すぎるくらいにな。
 だから未だに――、あんたという個人そのものは要警戒だと思ってる。
 情報の確度は別としてな」

……鳴海歩は最後の最後まで、疑う姿勢を崩さない。
そう、だからこそ。

『く、くくくくくくく……!
 よく本人の前でそんな事が言えるものです!
 いや、あなたは本当にもっと自信を持つべきだと思いますよ』

……だからこそ、秋瀬或からすら信頼を勝ち取ったのかもしれない。
敵でもなく、単純な味方でもなく。
敢えて言葉にするならば、敵の敵、という関係だからこそ築ける信頼を。

「褒め言葉と受け取っておくよ。それで、だ。聞きたい事は簡単な事なんだ。
 未来日記に示される未来ってのは、覆す事が出来ないのか?
 例えば死が明示された場合、確定した未来しか示されないのならどんなに足掻いても死ぬ事から逃げられない。
 それじゃあ、ゲームの要素がない。なのに“前のゲーム”とやらでは殺し合っていた。
 その辺りの説明が欲しいんだ」
『“前のゲーム”、と来ましたか。ムルムルの言葉からの推測ですか?』 
「ああ。……これは俺の予想でしかないから話半分に聞いてくれ。
 新しいゲームは前のゲームの見立てになっているんじゃないかと俺は考えてる。
 だったら、前のゲームについての情報を少しでも知っておきたい」

前のゲームと新しいゲームについて、見立てである可能性を言及する。
これは、色々情報をくれた相手への置き土産のようなものだ。
もしかしたら、秋瀬或も見立ての可能性から何かを思いつくかもしれない。

『おそらくは、あなたの推測通りですよ。
 未来日記に示される未来は、記述と異なる行為をした時点で書き換わります。
 未来は可変性です。絶対の運命だって、奇跡を引き寄せたなら覆せるんですよ』


――その言葉が歩にとってどれだけの意味合いを持っていたのか。
多分、僅かなりとも推し量れる人間は多くない。
ただ、歩はこう告げた。

「……ありがとう」

或は気付いていないだろう。
運命は覆せる、という事が保障されるその意義に。

75創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 14:26:47 ID:39cYo7h+
支援
76代理:2009/09/13(日) 14:34:07 ID:39cYo7h+
『それでは僕も最後にもう一つだけ。
 今から言うURLにその携帯電話やPCなどの端末からアクセスしてみてください。
 きっとあなたの手助けになるかと。ちなみに、この携帯電話はとある施設で調達しました。
 ……それでは、取引場所に関する連絡を期待していますよ』

置き土産への返礼だろうか。
英字の列を並べ置いた後――、秋瀬或はぷつりと電話を切った。

「自信を持て――、か」

つー、つー、と電子音を呟き続ける携帯電話を耳から遠ざけ、鳴海歩は一人ごちる。


「そいつは無理な相談だ。だって、俺の強さは奪われてきたものの強さなんだからな」


**********


「さて、しばしのお別れだな。お互い無事に再開するまで頑張ろうじゃないか」

風が吹き、少年の髪を揺らした。
すきとおったその瞳はどこまでも真っ直ぐに、ただただ高みを見据えている。

「本当に、大丈夫なのか……? 殆ど丸腰だし、一人なんだぞ」

すぐ傍で安藤は、名残惜しそうに心配そうに、立ち竦んでいた。

「……さあな。何度も言うが、まあ、何とかなるだろ。
 それに、俺が死んでも俺の論理が生き残ればそれは俺の勝利だ。
 必要なのはそれを固める為の手段だ。だったら俺に躊躇いはない。
 じゃあな、弟と再会できるのを祈ってるよ」

片手を挙げて僅かに振り、歩は静かに踵を返す。


――これが、歩の決断だった。

歩がガサイユノ達との取引を終えるまでの、しばしの別行動。
自分が彼らとの交渉役を負う代わりに、彼らには街を探索してもらう。
携帯電話の複数確保も含めて、だ。

或から聞いたURLの行き着く先は、探偵日記という名のblogだった。
おそらく管理人は或本人だろう。
文章からして知り合いには隠すつもりがないようだし、いくつか有益な情報も得られた。

そしてインターネットが機能している事を知った歩は、ネット接続と会話のできる携帯電話の有用性も理解する。
或は携帯電話を“調達”したとわざわざ言っていた。
それはつまり、この会場内でも携帯電話の確保はできるという事だ。
ならば、情報戦を見越して携帯電話を一定数保持していた方が今後は有利に立ち回れる。
仲間が増えるなら重要性は更に増す。連絡手段として一人一台は持っておいた方がいい。
77代理:2009/09/13(日) 14:36:36 ID:39cYo7h+
元々東郷はこれから街へ向かうところだった。
ならば、彼と、彼に同行させるつもりの安藤に携帯電話や他の有益な道具の確保を早い内に行わせるべきだ。
リソースは有限なのだ、誰かに独占される前に手に入れておかねば後々の行動に著しい制限がかかる。

神社の探索などは一人でも出来るだろう。
ならば自分が神社に向かい、その後は竹内理緒の足取りを追う事などを目的に動けばいい。
或たちのいるという北西に向かうのも一つの手だ。
とりあえず、安藤は雪輝の携帯電話の番号を記録している。
最初の一台を入手次第連絡を入れてもらえれば、電波が届く限り近況報告は容易なはずだ。
合流も難しくなくなる。
一応、第三回放送の頃に神社に集合、といういざという時の約束事もしておいたが。

こうした、携帯電話を用いた連絡網の構想と、未来日記というアイテムに関する基本的なルール及び所有者の情報。
そして、仮に参加しているならば協力できるかもしれない知人たちの個人情報。
これらの情報を全て用いた交渉で、東郷はようやく安藤への同行へ首を振ってくれた。
これで、安藤の安全はある程度保障される事だろう。

後は、それぞれの役割を果たすだけ。


「……鳴海!」

――背後から、呼びかけられる。

「ん……?」

振り返ってみれば、ぱしりと掌の中に何かが納まった。
確認してみれば、小さな筒状の道具が存在を誇示している。

「これ! お前が持っていってくれ!」

それは武器でも情報でもない、自分たちに支給された支給品。
しかし、いざという時には確かに役に立ってくれるだろう。

――チェシャキャット。

小型キルリアン振動機――いわばバリアーのような物だ。
攻撃力は期待できない、専守防衛の道具。
それでも何もないよりは、持っていた方がずっといい。

「安藤?」
「いや……、お前だけ丸腰ってのは、納得できなくて……」

何故か下を向く安藤に、歩は呆れたような溜息をつく。
きっと何か深い理由があった訳ではないのだろう。
ただ、この別れが永劫のそれになる可能性に思い至って、純粋な心配として身を守る道具を渡したかっただけかもしれない。

「分かった。預かっておくよ」

だからこそ、笑みを浮かべて敢えて歩はそれを受け取った。
自分が丸腰に近いのは確かなのだから。
78代理:2009/09/13(日) 14:38:25 ID:39cYo7h+
「気をつけろよ、鳴海……」

……あるいは安藤は、後ろ暗い思いから逃げるように、そうすれば罪悪感を減らせるとでも言うように。
少しでも彼の力になる事で自己嫌悪から解放され、安堵したかったのかもしれない。
しかし、それは歩には知る由もない。

「そうだな、これはお節介なんだが」

それを悟っているのかいないのか、歩は話題を唐突に切り替える。
“彼女”はブレード・チルドレンの直接の関係者ではないが故に、東郷にも語ってはいない内容だ。

「おさげ髪で胡散臭くてやたらに行動力のある、企業秘密が口癖の見た目幼い変な女と出会ったらの話だけどな。
 まあ、頼りになりすぎるくらい鬱陶しいやつだから、一緒に行動して損はないだろ。
 ……あいつの事だから変装でもしているかもしれないけどな」

台詞とは裏腹のその表情に、自分の弟が恋人と共にいるときの顔を連想する。
穏やかな日々を思い出すと、久方ぶりに安藤は少し明るい気分になった。
その話題に乗って、面白がるような口調で聞きただす。

「へぇ、随分信じてるんだな。もしかして鳴海の彼女か?」
「……安藤、冗談はよしてくれ。
 実際あいつみたいなのが好みだったなら、俺自身余計な苦労を背負い込む事はなかったんだどな」

返事は期待したものとは違い、心底疲れたといった態度がアリアリと。
それでも歩の言葉には確かに信頼が篭っており、安藤はそれを照れ隠しと解釈した。
歩本人にとっては、それは真実有難くなかったかもしれないが。

「じゃあ。――またな」
「ああ。潤也に会ったら、助けてやってくれ」

そして、それきり言葉もなく二人は背を向ける。
きっとこの会話の続きをできるのだと、それを信ずるが故にもはや躊躇いはない。
後ろを向くことなく、数十メートル。
それだけの歩みを経てぽつりと呟く。

「……名前、聞き忘れたな。鳴海の彼女の」

鳴海にしてはらしくない失敗だなと僅かに苦笑を得る最中、安藤の背中に無骨な言葉が静かに届く。
 
「用は終わりか? 行くぞ」
「分かった」 

最初に向かう先は近場の旅館。
その次は未定だが、北か南かの2択ではある。
北に向かえば教会。神社と同じく神にまつわる建物である為、改めて探索してみる価値はあるだろう。
教会を出るきっかけとなった爆発は東郷が原因だったが故に、むしろ安心して行動できる。
南に向かえば街だ。デパートなどもあり、携帯電話などのリソース確保にはもってこいといえる。
ただし、その分危険は大きいだろう。


そして二人の姿は朝の霧に霞み、消えていく。


……安藤の心の中に、黒々とした汚泥を静かに落としこみながら。
79代理:2009/09/13(日) 14:39:48 ID:39cYo7h+
【G-8/旅館付近/1日目/早朝】

【ゴルゴ13@ゴルゴ13】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:ブラックジャックのメス(10/10)@ブラックジャック、ジャスタウェイ(4/5)@銀魂
[道具]:支給品一式、賢者の石@鋼の錬金術師、不明支給品×1(武器ではない)
[思考]
基本:安藤(兄)に敵対する人物を無力化しつつ、主催者に報復する。
 1:携帯電話やノートパソコン、情報他を市街地などで調達する。
 2:第一目標として旅館に向かう。その後に北上して教会に向かうか、南下して市街地に向かうかは状況次第。
 3:首輪を外すため、錬金術師や竹内理緒に接触する。
 4:襲撃者や邪魔者以外は殺すつもりは無い。
 5:第三回放送頃に神社で歩と合流。
[備考]
※ウィンリィ、ルフィと情報交換をしました。
 彼らの仲間や世界の情報について一部把握しました。
※奇妙な能力を持つ人間について実在すると認識しました。
※鳴海歩から、ブレード・チルドレンと鳴海清隆、鳴海歩、ミズシロ・ヤイバ、ミズシロ・火澄、
 並びにハンター、セイバー、ウォッチャーらを取り巻く構図について聞きました。
 結崎ひよのについては含まれません。
 歩の参戦タイミングで生存している人間に関しての個人情報やスキルについても含まれます。
 ただし、鳴海歩自身のクローン仮説や清隆の狙いなど、歩にとっても不確定な情報については黙秘されています。
※安藤の交友関係について知識を得ました。また、腹話術について正確な能力を把握しました。
※ガサイユノ、天野雪輝、秋瀬或のプロファイルを確認しました。
※未来日記について、11人+1組の所有者同士で殺し合いが行われた事、
 未来日記が主観情報を反映する事、
 未来日記に示される未来が可変性である事を知りました。
※探偵日記のアドレスと、記された情報を得ました。
※【鳴海歩の考察】の、1、3、4について聞いています。
  詳細は鳴海歩の状態表を参照。
80代理:2009/09/13(日) 14:40:49 ID:39cYo7h+
【安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:疲労(小)
[服装]:猫田東高校の制服(カッターシャツの上にベスト着用)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、バラバラの実@ONE PIECE
[思考]
基本:脱出の糸口を探す。主催者と戦うかはまだ保留。
 1:とりあえず、東郷と同行。
 2:携帯電話の調達のため、市街地などに向かう。第一目標は旅館。
 3:軽度の無力感。
 4:首輪を外す手段を探す。できれば竹内理緒と合流したい
 5:殺し合いに乗っていない仲間を集める。
 6:殺し合いには乗りたくない。とにかく生き残りたい。
 7:潤也が巻き込まれていないか心配。
 8:第三回放送頃に神社で歩と合流。
[備考]
※第12話にて、蝉との戦いで気絶した直後からの参戦です。
※東郷に苦手意識と怯えを抱いています。
※鳴海歩へ劣等感と軽度の不信感を抱いています。
※鳴海歩から、ブレード・チルドレンと鳴海清隆、鳴海歩、ミズシロ・ヤイバ、ミズシロ・火澄、
 並びにハンター、セイバー、ウォッチャーらを取り巻く構図について聞きました。
 歩の参戦タイミングで生存している人間に関しての個人情報やスキルについても含まれます。
 結崎ひよのについて、性格概要と外見だけ知識を得ています。名前は知りません。
 また、鳴海歩自身のクローン仮説や清隆の狙いなど、歩にとっても不確定な情報については黙秘されています。
※会場内での言語疎通の謎についての知識を得ました。
※錬金術や鋼の錬金術師及びONE PIECEの世界についての概要を聞きましたが、情報源となった人物については情報を得られていません。
※ガサイユノの声とプロファイル、天野雪輝、秋瀬或のプロファイルを確認しました。ユノを警戒しています。
※未来日記について、11人+1組の所有者同士で殺し合いが行われた事、
 未来日記が主観情報を反映する事、
 未来日記に示される未来が可変性である事を知りました。
※探偵日記のアドレスと、記された情報を得ました。
※【鳴海歩の考察】の、1、3、4について聞いています。
  詳細は鳴海歩の状態表を参照。


**********
81代理:2009/09/13(日) 14:42:34 ID:39cYo7h+
**********


「――そろそろ、十分離れたか」

未だ薄暗い森の中、鳴海歩は一人立ち止まる。
辺りを見渡し、誰もいないことを確認。
そして、そっと自分の懐に手を入れた。


これまで自分と安藤はずっと同行をしてきた。
それは自分の安全の為というのも確かにある。
目や耳は一つよりも二つ、二つよりも四つあった方が警戒にはちょうどいい。
だが、それ以上の狙いとして安藤の保護というのがあった。
初対面の人間の前で迂闊に自分の能力を喋ってしまう、場馴れの少なさ。
放っておいたり、一人で行動させたりするわけには到底行かなかったのだ。

――しかし、東郷という同行者が現れてくれたおかげで、一先ずそれを解決する事はできた。
だから、ようやくある程度安心して冒険できる。
そもそもが携帯電話という連絡手段が『2つ』ある以上、出来る限り情報を得る為にはどう考えても分散して行動した方が効率がいい。
警戒に関してこそメリットがあるとはいえ、二人ともほぼ丸腰である以上は固まって行動してもひとまとめに殺される可能性が高いのだ。


さて、秋瀬或との駆け引きを思い出そう。
その思考の中で、何故歩は先刻、
『12〜13個。加えて+αがいくつか。
 それだけの数の未来予知の出来る道具が、この会場内にばら撒かれている可能性がある』
と断言できたのだろうか?

答えは単純だ。
鳴海歩は、携帯電話を二つ持っている。

この殺し合いが始まったとき、安藤は直接に教会に転送されたわけではなかった。
……つまり、だ。
安藤が協会を訪れる前、最初から教会にいた歩には時間があったのだ。
至急品を確認し、考察する時間が。

しかしこの事を安藤は知らない。歩が知らせていない。
安藤は、『歩の支給品が無差別日記一つだ』と思っているのだ。
ルール上それは不自然なことではない。

歩のもう一つの支給品。
それは全てを疑う歩の切り札であり、だからこそ現時点で最も信用している安藤にすらそれを伏せている。

「本当に悪いな、安藤。だけど俺は……お前の信用を失う事だって選べるんだ。
 何一つ無くなっても立っている。そんなやせ我慢が、俺の武器なんだから」

……安藤が携帯電話を入手して連絡を入れた後に、歩はこの携帯電話の存在を教えるつもりだ。
いずれ譲渡する事になるであろう無差別日記の代わりの、純粋な連絡手段として。
未来日記などではない、そこらで調達したただの携帯電話と偽って。

『コピー日記』

無差別日記の能力を全てコピーしたが故に、今もまだ沈黙を守り続けているその携帯電話の存在を。
82代理:2009/09/13(日) 14:44:09 ID:39cYo7h+
“コピー日記”を手に取り、再度その能力を確認する。

『日記所有者8thの未来日記、“増殖日記”の効果で未来日記と化したレンタルblogにアクセスできる携帯電話。
 本来の孫所有者は難波太郎。任意の未来日記の内容を現在進行形でコピーできる。  
 ただし、コピーできるのは現在自分が所持している未来日記のみという制限がかかっている。
 一度コピーした未来日記は、別の未来日記に上書きされるまで機能を保持する。
 新しく未来日記をコピーした場合、それ以前に記された内容は全て失われる。
 もちろん通常の携帯電話としても使用可能』

――現在、歩は既に無差別日記のコピーを行っている。
安藤との邂逅前に試したときにblogにアクセスしたら、当然のことながら何も記されていないblogが示されるのみだった。
つまり、いずれにせよ雪輝の手に無差別日記が渡らなければ何一つ効果を発揮しないということだ。
そして今、先刻より深い森の中に入り込んだら今度はアクセスすら出来なくなった。
おそらくは電波が届かなくなったからか。
秋瀬或からの連絡が、あまり森の深い所に入り込む前に繋がったのは僥倖だったろう。
説明にある通りblogこそが未来日記の本体であり、ここにあるのはアクセス権があるだけの携帯電話なのだ。
“増殖日記”が何を指すかは現時点では不明。ただし、blogに干渉できる電脳関係の何か、とは理解できる。

「……出来る限り電波の届く街や道の近くにいたいところだが、そうすると森とか地下に隠れるのは難しくなる、か。
 全くよく出来てるな」

やれやれ、と毒づき、駆け足で今いる森の中を離脱。
山頂に近づく一直線のルート上、いきなり開けた道に面する。
――不意に携帯電話に表示されたアンテナの数が増えた。

「推測通り、道の近くでは使えるみたいだな。
 ……かといって馬鹿正直に道を歩くなんてのはもっての他か。
 罠でも仕掛けてあれば飛び込んでくださいって言ってるようなもんだ」

地図に記された山道から遠すぎず、近すぎず。
そんな距離を保って、歩はようやく座り込む。

直接道からは見えないその場所で、鳴海歩は次なる一手をコトリと打つ。

「悪いがアイデアを盗用させてもらうぞ? 秋瀬或。
 俺はプライドなんて物をかなぐり捨てるのに抵抗はないからな」

呟き、歩は手に持つ携帯電話を操作する。
そしてその手で、“探偵日記”でも“コピー日記”でもない、新たなる電脳世界を立ち上げる。


銀の意志は、揺らがない。

ただただ空の軌跡を追い続け、追い越すために。


【F-6北東/森(山道付近)/1日目/早朝】
83創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 14:45:24 ID:y92zndr4
84創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 14:47:02 ID:y92zndr4
85代理:2009/09/13(日) 15:02:11 ID:39cYo7h+
【鳴海歩@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]:疲労(小)
[服装]:月臣学園の制服
[装備]:小型キルリアン振動機“チェシャキャット”(バッテリー残量100%)@うしおととら
[道具]:支給品一式、無差別日記@未来日記、コピー日記@未来日記
[思考]
基本:主催者と戦い、殺し合いを止める。
 1:天野雪輝とガサイユノからの連絡を待ち、無差別日記と雪輝日記の交換に赴く。
 2:ガサイユノから連絡が入ったら、或に連絡。取り引き場所付近に潜伏してもらう。
 3:神社を目指し、主催に関する情報などを探索。その後北上し竹内理緒を追ってみる。
 4:島内ネットを用いた情報戦に関して、もしいるなら信頼できる相手(結崎ひよの)と接触したい。
 5:首輪を外す手段を探す。
 6:殺し合いに乗っていない仲間を集める。
 7:安藤と東郷が携帯電話を入手したら、密な情報交換を心がける。場合によっては合流。
 8:第三回放送の頃に神社で安藤たちと合流。
[備考]
 ※第66話終了後からの参戦です。自分が清隆のクローンであるという仮説に至っています。
  また時系列上、結崎ひよのが清隆の最後の一手である可能性にも思い至っています。
 ※オープニングで、理緒がここにいることには気付いていますが、カノンが生きていることには気付いていません。
 ※主催者側に鳴海清隆がいる疑念を深めました。
 ※ガサイユノの声とプロファイル、天野雪輝のプロファイルを確認しました。ユノを警戒しています。
 ※会場内での言語疎通の謎についての知識を得ました。
 ※錬金術や鋼の錬金術師及びONE PIECEの世界についての概要を聞きましたが、情報源となった人物については情報を得られていません。
 ※安藤の交友関係について知識を得ました。また、腹話術について正確な能力を把握しました。
 ※秋瀬或からの情報や作戦は信頼性が高いと考えていますが、或本人を自分の味方ではあっても仲間ではないと考えています。
  言動から雪輝の味方である事は推測しています。
 ※雪輝日記についての大体の知識を得ました。
 ※未来日記について、11人+1組の所有者同士で殺し合いが行われた事、未来日記が主観情報を反映する事、
  未来日記の破壊が死に繋がる事、未来日記に示される未来が可変性である事を知りました。
 ※探偵日記のアドレスと記された情報を得ました。管理人は或であると確信しています。

【鳴海歩の考察】
1:24時間ルールや参加者への制限の存在、ムルムルの言動、優勝への言及がないことなどから、
  誰か一人が勝ち残ることに意味はなく、殺し合いという状況そのものが目的であると推理。
2:実力者と常人が混合して参加している事から、常人こそがゲームにおいて
  鍵となる可能性があると思考。(ただし、現状では妄想程度だと判断)
3:ムルムルの言動や竹内理緒の存在などから首輪の解除や主催者への反逆は可能であり、言論も自由だが、
  そうした行動も最初から殺し合いに組み込まれていると推理。
4:『新しいゲーム』は『前のゲーム』に見立てて行われていると推測。
  『前のゲーム』とは、未来日記を用いた殺し合いである。
5:内通者が存在する可能性を想定。
6:火澄が見せしめにされたのは、火澄がヤイバの弟である事を知る人間へのメッセージと推測。

【未来日記の交換方法についての或の提案】
 無差別日記と雪輝日記の交換を要求する。その際、雪輝日記の存在は状況証拠から推測した事にする。
 歩と或の繋がりは極秘にし、或から得た情報については知らない振りを徹底する。
 偽名も使用しないようにし、有事の際に備えて或とその仲間を取引場所付近に潜伏させる。


※携帯電話用の電波は島の全域をカバーしているわけではなく、町やランドマーク周辺のみが範囲となっています。
86代理:2009/09/13(日) 15:03:50 ID:39cYo7h+
【小型キルリアン振動機“チェシャキャット”@うしおととら】
 HAMMR機関の開発した、対妖怪用小型結界発生装置。
 うしおととらにおける結界は物理的強度も有するが、それ以上に霊的存在への効果が高い。
 効果範囲こそ直径3メートル強程度だが、その強度は白面の者を後退させる決め手になるほどのもの。
 本来はPCから遠隔制御する事で使用できる装置だが、今ロワでは専用の簡易リモコン一つで起動できるようになっている。
 ただしバッテリー切れには注意。連続使用した場合、効果は長くとも数十分程度だろう。

【コピー日記@未来日記】
 日記所有者8thの未来日記、“増殖日記”の効果で未来日記と化したレンタルblogにアクセスできる携帯電話。
 本来の孫所有者は難波太郎。任意の未来日記の内容を現在進行形でコピーできる。  
 ただし、コピーできるのは現在自分が所持している未来日記のみという制限がかかっている。
 一度コピーした未来日記は、別の未来日記に上書きされるまで機能を保持する。
 新しく未来日記をコピーした場合、それ以前に記された内容は全て失われる。
 もちろん通常の携帯電話としても使用可能。


**********


かたかたかたかた、かたかたかたかた。

蛍光灯の真白い光の下、打鍵の音が慎ましやかに響く。
ぼんやりとディスプレイが照らし出すのは少年の顔。
眦の中にいくつものウィンドウを映して、ただただ成すべきことを為してゆく。

「……ふむ、どうやら中々目ざとい方がいたようですね」

少年――、秋瀬或は己の開いたblogに目を通し、一人呟く。
既に何件かコメントが寄せられていた。
ファックスを探偵日記の喧伝に使ったのは無事功を奏しているようだ。

寄せられたコメントの多くは、当然のことながら情報の開示を要求するもの。
つまりはコメントの公開だ。
或という蛇口を介すことなく情報を毟り取ろうとしているのだろう。
あるいは、コメント欄という対話の場に縋りつきでもしたいのか。

「――当然、こういう反応も予想通り、と。
 ですが、僕は自らの優位を手放すほど楽観的じゃないんですよ」

或は、確かに殺し合いに乗っているわけではない。
だがそれはあくまで現時点に限っての話だ。
集まった情報次第ではスタンス変更も十分に視野に入れている。
だからこそ、明確な意思の元にコメントの公開を拒絶する。

もちろん積極的に殺し合いを肯定するつもりは毛頭ない。
問題が生じなければこのまま“神”に対抗する手段を探し、人的被害を防ぐ事に尽力するつもりだ。
その為にも一方的に情報を得て選別し、発信する事が必要なのである。
つまり、情報のコントロールだ。
情報を制することで間接的にこの殺し合いに介入し、被害の拡大を止めて脱出路を模索する。
下手にコメントの公開を許してしまえば、必ず誤情報に惑わされる存在が生じる。
特に、悪意を以って偽の情報を流す輩がいる可能性を考えると尚更だ。

或としては、どう転ぼうとも自分が確実な情報ソースとして信頼される事が必要なのだ。
87代理:2009/09/13(日) 15:05:55 ID:39cYo7h+
そういう確度の高い情報のみをblogに公開するつもりであり、それ以上の情報が欲しいならば
個人的に連絡を取ってほしいという旨を新たに“探偵日記”の一ページに書き込んでいく。
連絡先にはblogを作成する際に必要だったメールアドレスを使えば問題ないだろう。

ちなみに“探偵日記”を公開しているのは島内ネットワークであり、インターネットには接続できない。
また、blogを作成したサービスは、自分にも見覚えのある代物だった。
未来日記所有者8th、上下かまどの有する“増殖日記”にも用いられているレンタルblogサービスだ。

今のところ、この“探偵日記”は警察署のPCをサーバーとして利用している為に未来日記として働く事はない。
だが、あえてこのサービスがblog作成用に登録されていたのは、何か意味があるかもしれない。
たとえば、上下かまどが“神”の手の物に取り込まれている、とか。

まあ、ひとまずはblogの更新を優先する事にする。
雪輝日記がおそらく機能していない以上、雪輝を探す手段として手を広げなければならない。
その為の文面を書き込もうとして――、気付く。

「……?」

コメントが一つ、新たに加わった。
見れば、URLとともに、ついさっき電話越しにやりあった相手を思わせる口調の一文が並んでいる。

『あんたのやり口を参考にさせてもらった。こいつをリンクに登録しておいてくれ』

――慎重に、そのハイパーリンクをクリックする。
よもやブラクラやウィルスという事もあるまいが、念のため作業に使っていたPCとは別のPCでアクセス。

表示されたページを眺めて、秋瀬或は笑みを浮かべた。
けっして明るい性質の物ではない笑みを。

「ふふ、ふふふ……。やってくれますね……、歩さん」

まさか、こういう手で自分を介さない情報公開の場を設け、こちらの戦略を潰してくるとは。
……これでは、blogはもはやただ情報の提供を受けて発信するだけの窓口としてしか機能しない。
それはそれで十分に意味があるものだが、当初の想定よりも大分重要性は低下しているだろう。

「いいでしょう、あなたの思惑に乗って差し上げます。
 ……あなたならいずれ、僕に頼らなくても“これ”を広める方法を思いつくでしょうしね。
 だとするなら、むしろここであなたに貸しを作っておく方がいい」


先刻のやり取りを思い出す。
鳴海歩は、実に見事な相手だったと言えるだろう。
日記所有者を含めてすら、頭脳と言う点で彼に及ぶものはそういまい。
敢えて挙げるなら我妻由乃だが、冷静さと言う点で彼には数段劣る。
その分彼女は何をやらかすか全く計算できないところが恐ろしくあるのだが。

……だが、自分が負けたわけではない。
勝敗はまだイーブンだ。
88代理:2009/09/13(日) 15:07:48 ID:39cYo7h+
――例えば。
歩は未来日記に関しては、根本的なルールをいくつか知っただけだ。
未来日記の所有者や能力についての情報もないし、DEAD ENDについての知識もない。

何より、“前のゲーム”の目的についての知識すら鳴海歩は知らない。
未来日記に関する一連の事象に関して、自分は彼より遥かに多い情報を握っている。

確かに、自分が由乃の裏切りを警戒していることに気付かれたのは想定外だった。
しかしまだ、我妻由乃が偽者である事についての情報を握っているのは自分だけなのだ。
あの雪輝を直接動かしうる情報を握っている事は、自分の最大のアドバンテージと言えるだろう。

「……ですがね、歩さん。
 僕はあなたに全面的に協力するつもりはありませんよ?
 ただ、あなたの作ったアイデア宣伝の場を紹介するだけです。
 まあ、そのアイデアを実行する人の心当たりが、あなたには無きにしも非ずなようですが……」

その人物がここにいる事を確信している訳ではないのだろう。
つまり、このアイデアはまだ実行に移されていない。
その段階から観察していけば、自分にとっても多くの情報が得られるだろう。
たとえば、彼と自分に同時にタレ込みがあれば、それを示し合わせる事で確度を高められる。
自分と歩の繋がりを内密にするからこそできることだ。

――と、その時。

「或、いくつか使えそうな物を調達してきたんで渡しとくぞ。
 最低限の護身にはなるだろうしな」

ガチャリとドアノブが回り、リヴィオが姿を現す。
手持ちぶたさだと言って、彼は周囲の哨戒を行っていたのだ。
そのついでに使えそうな物を見繕ってきたのだろう。

「助かります。……ふむ、こんな物まで残ってたんですか。
 これは確かに色々と使えそうですね、特に護身には事欠かない」
「ああ、流石にあのオカマの武器は物騒すぎるんでな。もう少し融通の利く武器を選んで持ってきた。
 ――しかし、ここは警察なんだろ? それにしちゃあ備えてある武器が貧弱すぎる気もするが……」
「いえ、十分すぎるほどですよ。それに本来は治安が良かった証拠です」

立ち上がってリヴィオのほうへと向かう或。
彼の持ってきた品物を物色し、その中の一つを手に取る。
目をすがめ、はあ、と嘆息する。

「……ニューナンブですか。成程、やはりここは日本国内のどこかであるようですね。
 まあ、建物の建築様式や使用している文字からしてそうだとは思っていましたが……」
「こいつの名前か? ニッポン……てのはお前さんの生まれたとこだったよな、俺たちはそこにいるのか」

くるくるとリボルバーを弄び、すぐに抜ける位置に収める。
リヴィオの問いに頷いて説明。

「この銃は僕の出身国の官公品なんですよ。お上謹製だけあって、外国にはあまり出回っていないんです。
 性能面でもまあ、そこまで需要がある銃じゃありません。
 ついでに言えばこの銃は生産終了しているので、この島は最新型が配備されていない僻地と見ていいでしょう」
「うーん……。俺はその、ニホン語ってのを喋ってるつもりはないんだがなあ。
 このポスターの文字とかも普通に読めるし」
89創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 15:09:13 ID:y92zndr4
90代理:2009/09/13(日) 15:09:54 ID:39cYo7h+
リヴィオの目線の先にはにっこり笑みを浮かべる○ーポくんのポスターが張られている。
日に焼けて色褪せたピー○くんは、正直全く役割を果たしているようには思えない。
……それだけのどかな島だったのだろうか、ここは。

「ただ、いずれも状況証拠に過ぎません。
 現状、日本によく似ているだけの平行世界だと言っても信じてしまえそうなくらいですからね」

肩をすくめ、それから再度席に着く。
PCに向かって更新作業の続きを行うのだ。

「どうした或、不機嫌なんだか楽しいんだかよく分からない顔だな」
「いえ、どちらでも正解ですよ。
 ……まさかここまでキレる方がいたとはね。世界は、広い。
 ですが――、」

不敵な笑みを浮かべ、秋瀬或は淡々と告げた。
あたかもそれが確定した未来であるかのように。

「僕の探偵としてのプライドにかけて、鳴海歩さん、あなたより先んじて突き止めてみせますよ。
 このゲームの真実に関してをね」


【C-02/警察署/1日目/早朝】

【秋瀬或@未来日記】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60(5/5)@現実×2、警棒@現実×2
[道具]:支給品一式、各種医療品、 天野雪輝と我妻由乃の思い出の写真、不明支給品×1(確認済み。説明書が付属するような類のアイテムではない)、
    携帯電話、A3サイズの偽杜綱モンタージュポスター×10、手錠@現実×2、.38スペシャル弾@現実×20
[思考]
基本:生存を優先。『神』について情報収集及び思索。(脱出か優勝狙いかは情報次第)
 1:雪輝たちから連絡が来たら歩に自分にも連絡してもらい、日記取引場所に潜伏。
   雪輝以外の日記所有者と接触、合流するかどうかは状況次第。
 2:我妻由乃対策をしたい。
 3:探偵として、この殺し合いについて考える。
 4:雪輝と連絡がつかなければ従来の方針通りリヴィオに同行しつつ、放送ごとに警察署へ向かう。
 5:偽杜綱を警戒。モンタージュポスターを目に付く場所に張って置く。
 6:蒼月潮、とら、リヴィオの知人といった名前を聞いた面々に留意。
 7:探偵日記を用いて雪輝達の情報を得る。
[備考]
 ※参戦時期は9thと共に雪輝の元に向かう直前。
 ※病院のロビーの掲示板に、『――放送の度、僕は4thの所へ向かう。秋瀬 或』というメモが張られています。
 ※リヴィオの関係者、蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。
 ※警察署内にいたため、高町亮子の声は聞き逃しました。
 ※鳴海歩について、敵愾心とある程度の信頼を寄せています。
 ※鳴海歩から、ブレード・チルドレンと鳴海清隆、鳴海歩、ミズシロ・ヤイバ、ミズシロ・火澄、
  並びにハンター、セイバー、ウォッチャーらを取り巻く構図について聞きました。
  ただし、個人情報やスキルについては黙秘されています。
 ※螺旋楽譜に記された情報を得ました。管理人は歩であると確信しています。
 ※鳴海歩との接触を秘匿するつもりです。
 ※【鳴海歩の考察】の、3、4、6について聞いています。
  詳細は鳴海歩の状態表を参照。
91代理:2009/09/13(日) 15:10:34 ID:39cYo7h+
【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60(5/5)@現実×2、警棒@現実×2、エレンディラの杭打機(29/30)@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式、手錠@現実×2、.38スペシャル弾@現実×20、詳細不明調達品(警察署)×1〜3
[思考]
基本:ウルフウッドの様に、誰かを護る。生き延びてナイヴズによるノーマンズランド滅亡を防ぐ。
 1:或と共に、知人の捜索及び合流。
 2:誰かを守る。
 3:偽杜綱を警戒。
 4:ロストテクノロジーに興味
[備考]
 ※参戦時期は原作11巻終了時直後です。
 ※現状ではヴァッシュやウルフウッド等の知人を認知していません。
 ※或の関係者、蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。
 ※警察署内にいたため、高町亮子の声は聞き逃しました。


※島内では接続できるのはローカルネットワークのみです。
 また、上下かまどのblogサービスと同様のサービスが提供されています。


【ニューナンブM60(5/5)@現実】
 警視庁や公安、海上保安庁御用達の日本国製リボルバー。
 S&W M36をベースとして開発しており、装弾数を6発から5発に減らす事で軽量化を図るという設計思想を受け継いでいる。
 シングルアクションとダブルアクションどちらも備えてはいるが、ダブルアクションの性能は良くないらしい。
 威力や命中精度はさておき、使用した時の安定感は日本人にとってはちょうどよく調整されている。
 グリップが大きすぎる、という話もあるが……。

【.38スペシャル弾@現実】
 S&W M36やニューナンブM60に使用できる弾薬。

【手錠@現実】
 手首と手首を連結させ、ある程度の自由を拘束する道具。
 官公品には鋼鉄製のものアルミ合金製のものがあるが、これは前者。
 もちろん鍵とセット。特殊な性癖を持つ人にも大人気。

【警棒@現実】
 アルミ合金製で伸縮可能。
 人を殴る為の道具だけあって扱いやすい。
92代理:2009/09/13(日) 15:12:19 ID:39cYo7h+
**********


探偵日記 管理人名:HN:coin_toss

一日目 早朝

こんばんわ。いや、もうおはようございますかな?
とりあえず第二回目の更新となる今回だけど、残念な事に僕の方に目ぼしい収穫はない。
もうすぐ放送と言うこともあって迂闊に動けないしね、生存報告代わりの更新だ。
強いて言えば、この島がどこに位置しているかの手がかりを少し手に入れたことくらいか。

この島の建築様式や生活物資の特徴、使われてる文字の体系から考えて、僕はこの島を日本のどこかでないかと考えている。
日本を知らない人は、知っている人に出会ったら教えてもらえばいいだろう。
住みやすいし治安もいいから、一度は本土を訪れてみて欲しい。
刃傷沙汰を起こす事だけは勘弁して欲しいけどね。

それと、どうやら耳の早い人たちがいたようなのでコメントを抜粋して紹介しよう。
原文そのまま、改変が加わっていない事をコメントを送ってくれた諸君は確認して欲しい。

ああ、ちなみにコメントの抜粋は、このコメントは公開しないでほしい、と言うような内容が含まれていれば一切しないつもりだ。
情報ソースはしっかり守るよ。
抜粋したコメントは公開設定に変えているので、ソースが欲しい人は前の記事を参照して欲しい。


『管理人さんへ。
 面倒なのでコメント欄公開しません?
 情報は共有した方がいいと思いますよ☆』

『俺はフェアな取引を望む
 まずは全てのコメントを公開しろ』

……確かに、君たちの言い分も一理ある。
だけど、出来る限り僕はこのblogを“確度の高い情報”の発信場所として位置づけたいと考えているんだ。
君たちのように情報の扱い方が上手い人ばかりじゃない以上、ここは安心して記述を信じられる場所でありたい。
そして、安心して情報を託せる場所でもありたいんだ。
可能ならば裏を取ってから――それが出来なくとも十分信頼できると判断したらここに記すつもりだ。
画像や音声、動画も場合によっては組み込んでね。
だから、確度の低い情報であっても欲しいならば、出来れば僕に直接メールを送って欲しい。
個人的な依頼も受け付けているからね。
もちろん、情報ソースとなってタレ込んでくれる場合でも大歓迎だ。
ただしその場合は目に見える形のソースをこのblogで提示できないから、皆に知っておいて欲しい情報はコメント欄に書き込むべきだろうね。


そうそう、君たちに耳寄りな情報を。
この会場では、探せば結構物資を補給できるようだよ。
現に僕も携帯電話を調達できた。ネットにアクセスするには手に入れておいたほうがいいと思う。
……これで、少しは信用してもらえたかな?
93代理:2009/09/13(日) 15:13:13 ID:39cYo7h+
『あんたのやり口を参考にさせてもらった。
 こいつをリンクに登録しておいてくれ』

……ふむ、確かに僕以外にも情報発信の場はあったほうがいいかもしれないね。
一方的に与えられる情報を危険視するのは上の二人に限らないだろうし。
僕は僕で信頼性の高い情報を発信し続けるつもりだけど、この新たなblogの管理人さんの記事も役に立つかもしれない。
という訳で、リンクに“螺旋楽譜”を登録させてもらったよ。
こんな状況下だからこの人の情報を信頼しろと言えないのが残念だけど、もし情報発信の気概が本物なら頑張って欲しい。


P.S.
君たちはここに招かれた際、シルエットの一人があのムルムルと話していた内容を覚えているかい?
そう、1stと呼ばれていた彼ないし彼女だ。声からして男性だとは思うけどね。
そしてシンコウヒョウと呼ばれた男と対峙した男性も、だ。
僕は彼らがこの状況に関して何らかの手がかりを握っているのではないかと考えている。
だから、彼らについて情報を持っている人は僕に連絡を入れて欲しい。
このゲームに関する重要な手がかりが手に入れば、随時ここで公開していくつもりだ。
代わりに、君たちが欲しい情報があれば優先的に、更に場合によっては独占的にそれを伝える事を確約しよう。


Link:
螺旋楽譜


**********


螺旋楽譜 管理人名:HN:水濁

一日目 早朝


まず最初に言っておくと、このblogは不定期更新だ。
先の“探偵日記”の主みたいにまめに更新していくつもりはない。
もしかしたらこれっきり更新しない可能性もあるわけだが、まあ、沈黙してるからって死んでるとは限らないって事だ。

ついでに言うならここのコメントは全部公開する設定だ、意見があるなら勝手に書き込んでくれて構わないぞ。
代わりに返信するかどうかも期待しないでくれ。

さて、前置きを無駄に喋っても仕方ないしな、伝えるべき事だけ伝えておく事にするよ。

単刀直入に言えば、この殺し合いは首輪を外したり、“神”に反逆する可能性すらも組み込まれて運営されている節がある。
だから、あんたらもこの首輪をどうにかしたり、脱出する為の方策をひたすらに考え続けてくれ。
表面上起こっている事に流されるな。そして、それを実行に移せ。
俺みたいなのでもいいから人手が欲しいんだったら、連絡を入れろ。
ただし役に立つ保証は無いんだけどな、まあ駄目元で頼ってみろとだけ言っておくよ。
94代理:2009/09/13(日) 15:14:37 ID:39cYo7h+
保証、と言えばどうしてそんな事が言えるのかっていう保証を求められそうだな。
まあ、確かに確実な保証は無い。
だが少なくとも、あんた達がこれを目にしているって事は、反抗的な言動すらも検閲されてないって事だ。
そして、あの最初の場所でムルムルってやつが言っていた、
『我等二人を除く、この中の人間が最後の一人になればそこでゲーム終了。その過程においては何の反則も無い』
という台詞。
『その過程においては何の反則も無い』
これは暗に、首輪を外したりするような、一見すぐにでも粛清されかねない行動すらも許可される、とも取れるだろ?

あとは、そうだな。
具体的に首輪を外せそうな技術とその持ち主が、この会場には何人か存在している。
たとえばそれが工作技術だったり爆発物知識だったり、錬金術なんて物だったりな。
あんた達の中にも心当たりがある奴がいるはずだ。
あたかも、首輪を外してください、と言わんばかりにな。

その上で、あの時言われたルールを検討してみてくれ。
それぞれのルールがどういう意図の下設定されているのか。
なぜルールにあって然るべきルールが存在していないのか。
そして、どうしてわざわざ言う必要のないことまで連中は口にしたのか、を。
そうすれば、この殺し合いが何を目的としているのか、輪郭が見えてくるはずだ。

……自分でも分かるが、不確かな推測だな。
だが、それでもこの文章を見て多少なりとも希望を持った奴がいるかもしれない。
そういう奴に言っておく。

甘えは捨てろ。
この程度の事は、最初っから仕組まれてる茶番に過ぎない。
全ての情報、全ての虚実、全ての状況は、そう推測できるように敢えて配置されているだけだろう。

与えられた情報で辿り着ける真実なんて、更なる真実を覆う殻に過ぎないんだ。
そしてその殻は、マトリョーシカのように何重もの入れ子になっている。
確かに、首輪の解除や反逆は可能かもしれない。
脱出すらも可能かもしれない。
だが、それだけだ。
単純にここから脱出できたからといって、これまで以上の絶望がその先に待ち構えている可能性は限りなく黒に近い。

結局、俺に言えるのはこれだけだ。
俺たちは全員、運命に絡め捕られた操り人形に過ぎない。

情報を握った事に慢心して、絶対者にでもなったつもりにはなるな。
自分の思った通りに事が推移したからといって、支配者にでもなったつもりにもなるな。

それらが全て、誰かの手で踊らされているだけである事を心に刻め。
そういう事すら可能にしかねない人間を、俺は知っている。

俺の言葉を全て信じるな。
そして存分に考えろ。
自分を救えるのは、自分だけなんだからな。
95創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 15:16:58 ID:y92zndr4
 
96創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 15:22:28 ID:y92zndr4
あbc
97 ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 15:25:11 ID:bXQ0H/QH
テスト。
98銀の意志W ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 15:26:55 ID:bXQ0H/QH
……ああ、最後にこれは宣伝を兼ねた私信みたいなものなんだが。
もしあんたがここにいるなら、掲示板を作って管理人に納まってくれ。
俺がやるよりもあんたの方が適任だろうしな。
あんたなら十分それを生かせるだろ。
心当たりがあるなら行動に移してくれ、連絡をくれたらここにリンクを張る。


Link:
探偵日記


**********


……さて、唐突な話題ではあるが、一つの事について考えてみよう。

秋瀬或の天野雪輝評には一つ間違いがある。
それは、“よほどの事がないと生存を第一に考える人ですから、まずこの殺し合いに乗ってはいないと思いますよ”と言う一文に関してだ。
成程、確かに『今ここに呼ばれた雪輝』ならば、その言葉の通りだろう。
だが、『今ここに呼ばれた秋瀬或』もまた、知らないのだ。
父母の死により何かのネジの外れてしまった天野雪輝のことを、この秋瀬或は知らない。
変貌を遂げた彼と出会う直前の時間軸から、彼は呼び寄せられているのだから。

例えば、だが。
もし何かの因果によって天野雪輝が父母の死をその耳に吹き込まれたなら。
あるいは、未来に起こる父母の死を知ってしまったなら。
……あるいは。
今度こそ信じ通すと決めた誰かを、目の前で失ったなら。

その時、雪輝はおそらく鳴海歩や秋瀬或を含むこの会場にいる全ての人間にとって、最悪の伏兵となるだろう。
その全知の力を持ってありとあらゆる相手を迷いも躊躇いも容赦もなく陥れ、地獄に引きずり込むに違いない。
新たなる神とやらを蹴落とし、自分がその高みに成り代わる事を目的として。

99銀の意志W ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 15:28:25 ID:bXQ0H/QH
なに? 対策がある、と?
鳴海歩が切り札としてコピー日記を隠し持っているではないか、と?

いやいや、そんな都合のいい話があるはずないだろう?

たとえ鳴海歩が無差別日記を写し取り、“覗き見る”道具を手にしていても、実はそれは全く以って頼りにならないゴミクズだ。
未来日記とは、元々はただの日記の延長機能でしかない。
つまり、手動で偽りの内容へといくらでも書き換える事が出来る。
残るのは本来の所有者だけが一方的に未来の情報を得て、覗き見る出歯亀が哀れにも誤情報に踊らされる惨めな様だけ。
日記本来の所有者でない鳴海歩は、それを知らない。
しかもコピー日記は、その本体である“増殖日記”を破壊されても機能を止める。
彼が切り札と確信する道具は、奈落の上に張った薄氷でしかないのだ。


警告する。
天野雪輝に、無差別日記を渡してはならない。


――しかし、この警告は誰一人にとて届く事はない。
事態は確実に雪輝の手に無差別日記が戻る流れに乗っている。

果たして雪輝の変貌は殺し合いの中で起こるのか。
それが鳴海歩と天野雪輝の邂逅の直後に起こるのか、殺し合いの終焉を目前としたその時に起こるのか。
あるいは、全ては杞憂に過ぎないのか。


未来を語るはずの日記は、今もまだ沈黙を続けている。


100創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 15:32:04 ID:y92zndr4
a
101創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 15:34:06 ID:y92zndr4
ababaac
102 ◆JvezCBil8U :2009/09/13(日) 15:34:40 ID:bXQ0H/QH
と、これで投下終了。

まずは代理投下してくださったID:39cYo7h+氏に心の底から感謝を。本当にありがとうございました。
そして支援してくださった方々にも感謝。
VとWの区切りは>>80>>81の間ですね。

投下の最中に気付いたのですが、このスレでの>>76で『ローカルネット』が『インターネット』になってたりしているので、他にもちょくちょくミスしてる可能性があります。
他にも矛盾点とか違和感があれば遠慮なく指摘してくだされば幸いです。

……しかし、実質2つの舌戦があったとはいえ流石に長すぎましたね。
これで最初はユッキー達を絡ませて、さらに或視点での駆け引きも入れようとしていたかと思うと我ながらなんて無謀な事を……w
103創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 16:07:39 ID:39cYo7h+
書きこめそうなら感想を
い〜や! 困難は最初から予想されていたけどいい意味で何度も裏切られたよ!
鳴滝がどうゴルゴと交渉するのかなと思ってたがとりあえずは協力体制は作れたかな
安藤(兄)はやっぱりその方向に行くかなと思ってたけどそれすら鳴滝の思考範囲内か
そして或との舌戦とその後の鳴滝の行動は凄すぎw
探偵キャラでひねくれ者同士の熱くて冷たい対決を見たよ
それと知らない間に由乃包囲網が出来てて由乃涙目と思いきや……ユッキー、確かに可能性はあるわw
最後に鳴滝も或も足を踏み外す可能性があるのを示唆したのが先を不安にさせるな
書き手さんの帰還最初の作品から凄かったです! GJ!
104創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 19:41:29 ID:r/gOGNDH
な、ながい…jane開いたら新着72でぶったまげたよw
あとでゆっくりと読ませてもらいます…
投下乙!

>>103
鳴滝って蒸気探偵かよ!
105創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 19:58:02 ID:Xhwnkdls
読んでたらいつの間にやら日が暮れた 乙
こいつら一応中高生だろ?なんちゅー駆け引きだw
そしてやはりユッキーユノは爆弾だな
106創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 21:33:53 ID:/5J2WmoA
投下乙!
やっと読み終えた……
ゴルゴと駆け引き出来る高校生とそんな学生と互角に渡り合える中学生とかどんだけよw
それに付き合わされた安藤(兄)は道化か? 
でも覚醒したらすごいんだけどどう転ぶかわからん
そしてどんどん情報戦が繰り広げられるな。ユノ包囲網が築かれてると思いきやユッキーは原作のこと考えればこいつも危険人物だよな…

ところで以前、安藤(兄)の名簿での表示はどうするかで問題になったがゆのはどうなるの?
彼女はゆのだけでいいの? 原作では苗字は出てないけど
107創る名無しに見る名無し:2009/09/13(日) 22:43:21 ID:r/gOGNDH
ふう、読み終わった〜
見事な心理戦でした。
複雑なフラグが判り易い構成で描写されていて、長い割にすんなりと読めた感じ。
>>102
この時点ではインターネットかローカルネットか判断ついてないんだからいいんじゃないでしょうか。

あと日記の交換は難しく考えすぎじゃないですかね〜
携帯電話渡すと不便だからこっちにあんたの持ってた携帯くれよくらいの交渉でいいんじゃないかな
>>106
へ?と思ったけど、ゆのっちの方か。
まぁそんなら他のメンツもそうだし、あんまりメタな視線で見なくてもいいんじゃないかな
108 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:09:08 ID:HPQX8x1H
ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークの投下を始めます。
109逃げる事叶わぬ果て無き迷い路 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:10:16 ID:HPQX8x1H
ここはきっと闇の底だ。





水平線の下に太陽の気配が感じられる時間帯。
郊外にある閑静な住宅街。正確には閑静だったであろう住宅街。
その一角、ごく一般的な民家の居間にミッドバレイ・ザ・ホーンフリークは佇んでいた。

***************

「チッ、どうなっている……」

苛々が募る。
一戸建ての家が整然と立ち並ぶ奇妙な街並。道は完璧に舗装され、砂による侵食は見られない。
ノーマンズランドの何処を探してもこんな街は見つからないだろう。
だが俺の苛立ちの原因は街の様子ではない。

どんな街にも当然あって然るべき物、武器が何処にも無いのだ。
大きな誤算だ。
街に行けば銃の一丁や二丁くらい簡単に手に入るだろうと踏んでいたのだが、その期待は完全に空振りに終わった。
それどころか武器として使えそうなもの自体がほとんど見当たらない。
辛うじてキッチンに包丁やナイフが置いてある程度だ。これではどうしようもない。
雷泥・ザ・ブレードならともかく、俺は刃物の扱いは専門外だ。

「まさかここの住人はどいつもこいつも武器無しで身を守れる化け物揃い、というわけではないだろうが……。
 武器はヤツらが予め全て回収した、ということか?」

だとしたらなんという面倒なコトを。嫌がらせのつもりか、それとも余興を盛り上げるためのささやかな仕掛けのつもりか。
どちらにせよヤツらは俺の無様な姿を見て哂っているに違いない。想像するとますます苛立ちが強くなる。

とはいえ現実に無いものは無いのだから仕方がない。
大したものは持っていないと『聴いて』判っていたから無視したが、どうせなら博物館で殺した連中から奪えるものは奪っておくべきだったか。
とにかく、多少の危険を冒してでも有用な武器を手に入れねばならない。
手持ちの武器と弾薬で以降の戦いを乗り切ることは不可能なのだから。

ではどうする?
簡単だ。誰かを襲って武器を奪う。これしかない。
出来れば獲物が単独で動いているうちに叩きたい。
武器が心許無い今、獲物に徒党を組まれると面倒だからだ。何しろ纏めて殲滅する手段が無いのだから。
そしておそらく時間が経てば経つほど生き残った者たちはより大きな集団を作っていくはずだ。
俺とは違い、互いに協力してこの場を脱出しようとする者が殆どだろうから。
例えそれが無駄な抵抗であったとしても……。

しかし、それは当然だ。
突然殺し合えと言われて唯々諾々と従う方がどうかしている。
どうかしているのだ。

解っていても、俺は方針を変えるつもりは無い。いや、変えられない。
ナイブズ専属の音楽家となったあのときから、運命と戦う道は失われたのだ。



あの希望に満ちた少年。
あの泰然とした青年。
そしてあの運命を打ち破らんと語った少女。
110逃げる事叶わぬ果て無き迷い路 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:12:26 ID:HPQX8x1H
それぞれ、並の人間とは一線を画す者たちだった。
だが結局皆死んだ。俺が殺した。
何も変わらず。いつものように。
人間など所詮この程度のものだ。
それは『魔人』たる俺達も例外ではない。
本物の、規格外の怪物を前に奇跡など起こり得ない。
暴威は突然運命を絡め取る。

気に入らない。
初めはただ音が好きだった。ただそれだけだった。
殺し屋をやっていたのも単に殺しの才能があったからというだけだ。
珍しい生き方というわけでもない。殺しの腕を除けばごく普通のノーマンズランドの住人だろう。
それなのに、気が付けばこうなっていた。
本当に、気に入らない。

気に入らないといえばこの場所もだ。
異質。異常。そう表現するしかない。
街に辿り着くまでに右手に見えた、黒い、ただ黒い、気が遠くなるほど大量の水の塊。
その表層が絶え間無くうねり、砕ける不愉快な音が耳を叩く。
風が吹く度に幾千幾万もの植物が気が狂ったように擦れ合う。
そのくせ吹き荒ぶ砂の音も砂蟲の蠢く声すらも聴こえない。
何より耐えられないのは、湿り気を帯びた塩っぽい風。空気。
乾きが。
乾きが足りない。



何もかもがミッドバレイ・ザ・ホーンフリークの神経を削り取っていく。



何故こうなった? 一体何を間違えた?
俺はただ生き残るために現実を見据えて行動してきたはずだというのに。
化け物を倒すには化け物、これが唯一現実的な道だったはずだというのに。
それがどうだ。
結果は化け物の片割れ――ヴァッシュを暴走させかけ、チャペルもビーストも仕留め損ね、逃走にも失敗。
そして今、この馬鹿げた殺し合いに放り込まれてもがいている。
完全な失敗。最悪のさらに下だ。
だが。
それならば一体どうすれば良かったというのか。
あの時はあれがベストだった。その判断に間違いはない。

――――本当に?

本当は。
本当は、リアリストを気取って愚鈍な諦観と幼稚な逃避を正当化していただけではなかったか?
暗闇から脱け出すために、がむしゃらに足掻く者こそが本物のリアリストだったのではないか?
俺のやってきたことは、これからやろうとしていることは、単なる問題の先送りに過ぎないのではないか?
全てを捨てて逃げ出そうとして、それでどうなった?
俯かず、上を向けば……光はそこにあったのでは?
111逃げる事叶わぬ果て無き迷い路 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:14:02 ID:HPQX8x1H
『立ち向かうことは、無駄なんかじゃありませんよ。少なくとも私はそう思います』

黙れ。
唐突に、子供染みた不可解な衝動がこみ上げてきた。
目の前のソファを力任せに蹴り飛ばす。
ソファは近くにあったテレビに衝突し、派手な音を立てて諸共床に転がった。

「……もう遅い。既に、幕は上がったんだ」

今更、死んだ人間の言葉に心を揺さぶられるなど――。

それにだ。
もし仮に、このクソ溜めのような運命を打ち破れる者がいたとしても、それは俺ではあるまい。
俺は……やはりただの人殺しだ。
そんな男に最も重要な役が与えられるはずがない。

今更に、ソファを蹴った足が痛み出す。

もういい。もうどうでもいい。考えるのは止めだ。
一切合財何もかも速やかに終わらせよう。
奴らが、あの化け物共が、何を企んでいようと知ったことか。
望み通りアンコールには応えてやるさ。

その後のことなど――。



突然、穏やかなピアノの調べが何処からともなく流れ始めた。
何だ、と呟き、耳を澄ませる。
だが俺の超聴覚をもってしても音源を特定することは出来ない。
すぐ耳元で鳴っているようにも遥か遠くから流れてくるようにも聞こえる。
時刻を確認すると六時一分前。そういえば六時間毎に放送を行うと言っていたがこれがそうか。
白紙だった名簿を取り出すと、仕掛けは解らないがうっすらと文字が浮かんできている。

六時。
やはり何処から聞こえるのか判らない女の声で、放送とやらが始まった。

***************

放送を行っている女の声は明らかに初めに見た二人のものとは異なる。
奴らの仲間か。
女はすぐに本題に入らず、何か意味深なことを口走っている。

ぐずぐずと煩い女だ。
前置きなどどうでもいい。必要なことだけ簡潔に伝えればいいだろうに。
あの道化やガキと比べるとまるで人間のようだ。
112逃げる事叶わぬ果て無き迷い路 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:15:02 ID:HPQX8x1H
やがて女の短い独演会は終わり、名簿を確認しろ、と告げられた。

女に言われるまでもなく、くっきりと文字が浮き上がった名簿を改めて眺める。
これから殺す相手の名前などどうでもいいのだが、気になることはあったからだ。

「やはり、俺だけではなかったか……」

嫌な予感というものは良く当たる。
名簿には俺が死んだはずのあの場にいた面々の名が並んでいた。
ニコラス・D・ウルフウッド、レガート・ブルーサマーズ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
察するにあの場で纏めて拉致されたのだろう。少々、いやかなり面倒なことになりそうだ。
何故かホッパード・ザ・ガントレットとザジ・ザ・ビーストの名前が無いが――いや、ビーストに関しては本体ではないのだからむしろ当然か――

「な」

そんな疑問は一つの名を発見した瞬間にアルタイルの彼方まで吹っ飛んだ。

「な、に――――」

声が擦れる。全くの予想外。後頭部をハンマーで殴られたかのような衝撃。
いや、俺たちを纏めて捕らえた連中だ。可能性はあった。ただ無意識に考えないようにしていただけだ。

脚が震える。鳩尾の辺りが締め付けられる。頭の中がみるみる融けた重金属で満たされていく。
どん、と、背中が壁にぶつかり、傍に掛かっていた安物の絵が傾いだ。
放送は未だ続き、名簿は徐々に朱に染まっていく。だが最早脳はそれを認識していない。

その名前。
ミリオンズ・ナイブズ。





ここは確かに闇の底だ。
113逃げる事叶わぬ果て無き迷い路 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:15:59 ID:HPQX8x1H
【B-5東部/民家/1日目 朝(放送中)】

【ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
[状態]:右足打撲
[服装]:
[装備]:イガラッパ@ONE PIECE(残弾60%)、エンフィールドNO.2(2/6)@現実
[道具]:支給品一式 真紅のベヘリット@ベルセルク、鳴海歩のピアノ曲の楽譜@スパイラル〜推理の絆〜、銀時の木刀@銀魂
[思考]
基本:ゲームには乗るし、無駄な抵抗はしない。しかし、人の身で運命を覆すようなヤツと出会ったら…?
0:ナイブズに対する強烈な恐怖。
1:積極的に参加者を襲って情報と武器(特に銃器)を得る。
2:強者と思しき相手には出来るだけ関わらない。特に人外の存在に軽い恐怖と嫌悪。
3:愛用のサックスが欲しい。
[備考]
※ 死亡前後からの参戦。
※ ハヤテと情報交換し、ハヤテの世界や人間関係についての知識を得ています。
※ ひよのと太公望の情報交換を盗み聞きました。
   ひよのと歩について以外のスパイラル世界の知識を多少得ています。
   殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
※ 呼吸音や心音などから、綾崎ハヤテ、太公望、名称不明の少女(結崎ひよの)の死亡を確認しています。
114 ◆L62I.UGyuw :2009/09/14(月) 01:18:24 ID:HPQX8x1H
以上です。
放送中で切るのは危険球気味な気がしないでもありませんが多分大丈夫?ですかね。
115創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 13:39:36 ID:At6TNoG3
乙です
ああ、やっぱりそうなると思ってたがショック受けてるなw
これはミッドバレイ的にはオワタだろうな
116創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 17:19:12 ID:EJOvWsCw

そりゃ砂漠の惑星から現代日本の環境に放り出されたらストレスも溜まるわなw
しかし放送してる女は誰なんだろ?
117創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 17:55:46 ID:CXVoeyw8
投下乙
前の登場話では姿の見えぬヒットマンだったミッドバレイの事情がわかる話でしたね。
放送中で中断は別に繋ぎにくいとかいうわけでもないだろうし、問題ないと思います。
>>116
前の時も思ったけど、仮放送案に目を通してない人が多いのかな?
仮投下スレに投下されてる仮放送案を使ったものですよ
118創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 18:49:28 ID:EJOvWsCw
>>117
さんくす
119創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 19:27:25 ID:/CNDQang
投下乙です
原作でも感じたけど、このミッドバレイ視点の閉塞感がたまらん
GUNG-HOの中でも人間らしいキャラだからなぁ

ところで読み返してて気づいたんですが誤字っぽいもの
>>92
×こんばんわ
○こんばんは

あと放送案>>356
×組する
○与する
ではないかと
120創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 03:36:54 ID:/bRWgiBU
ミッドバレイかわいそす
ガンホー面々は確かに人間であり規格外の人外であったが
結局はナイブズの前では。
逃れられると思っていたが結局は暗闇の底か
これから牙を突き立てるのかどうなのか気になるとこ
121創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 11:28:58 ID:QdDJewMK
糞なげー長文でオナってんじゃねーよ螺旋厨
1レスにまとめろ
しかも誤字ばかりでざまあwww
122創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 19:59:48 ID:7d380dSQ
黎明組まとめ

沖田総悟、安藤潤也、金剛晄・・・デパートへ移動中
グリフィス、ゆの・・・旅館へ移動中
竹内理緒、胡喜媚・・・待機
西沢歩・・・森の中を彷徨い中
柳生九兵衛、Mr.2ボンクレー・・・教会へ移動中
レガート・ブルーサマーズ・・・方針不明
鈴子・ジェラード・・・待機?
ドクター・キリコ・・・診療所へ移動中

さて……頭を振り絞っても無難な繋ぎしか思いつかないわけだがどうしたものか
123創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 20:39:08 ID:F1ccQ2ru
俺は二組ほど案があるけど、片方はもうちょっと寝かせてからのほうがおいしくなりそうだから
一組だけにしとくよ
つーかまぁ無理して繋がなくてもいいんじゃね?
124創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 20:58:36 ID:7d380dSQ
もうちょっと寝かせるとおいしくなるパートってアレだろうか
何か同じこと考えてる気がするw

とりあえず俺も一組書きつつ様子見るか
125創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 21:17:29 ID:F1ccQ2ru
いや、それはないと思うけど……
しかしびっくりするほど同じ事考えてる事もあるんだよなぁ。
構成上断念した展開が続きの話でそっくりそのまま使われてて、あれ!?ってなったり。

いや、でもこの展開は考えてないはずだ!
126創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 21:35:56 ID:Wo//8Jqw
まずい、俺も狙ってる組があるから重なるかもな

ところで放送が跨ってもかまわない?
127創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 21:40:38 ID:F1ccQ2ru
どうぞどうぞ
128創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 21:48:03 ID:7d380dSQ
いいと思うけど放送を縛る展開はマズい
特に死亡者とか禁止エリアとかをはっきり聞いちゃうのは禁じ手
現に放送跨いでる3作も聞き逃し、錯乱、放送中と断片的な情報しか手に入らない状態で切られてる

まぁ基本的に自信が無いならやらんほうが無難ではある
129創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 23:17:16 ID:y6VTcDXL
>>121
まとめよろw
130創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 23:36:58 ID:Wo//8Jqw
>>128
とりあえず骨組まで書いて無理が出るなら放送直前に変更するよ
やっぱりここに正式に放送投下は黎明組が全部終わるまで待つの?
131創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 23:53:41 ID:F1ccQ2ru
マーダーが全部動いちゃえば確定させてもいいんじゃね
132創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 23:59:09 ID:SKu25ICK
残り数組で衝突しそうにない状況なら多分大丈夫
133創る名無しに見る名無し:2009/09/16(水) 06:57:41 ID:mEO+/edM
お、予約来てる

ところで、てこいれぷりんせす!の状態表だけどH-3じゃなくてG-2だよね?
勝手に直しちゃまずいだろうから報告だけ
134 ◆JvezCBil8U :2009/09/16(水) 08:11:01 ID:Q2DeQMtn
なんかもう、重ね重ね申し訳ないです。
誤字脱字ばかりでまとまりなくてすみません。

>>119
こんばんわとこんばんは、について調べたら、昔は『わ』でも構わなかったけれど今は『は』で統一しているらしいですね。
或なら後者っぽいかなと思うので、そちらに直した方がいいでしょうね。
放送案については全くもってその通りで……。

>>133
お恥ずかしい、一度舞台を小学校に変えたときの修正ミスですね。

お二人とも、報告してくださってありがとうございました。
135創る名無しに見る名無し:2009/09/17(木) 01:52:59 ID:zk5euVm+
しかし今更だが或も情報次第ではゲームに乗るのか某バーローとは違うな
放送聞いたら乗りそうな人も数人居るし
136創る名無しに見る名無し:2009/09/17(木) 13:55:12 ID:QHiTQs/e
由乃+雪輝VS潤也+安藤を見てみたい
相手に異常な愛を捧げるヤンデレ×決意をした元ヘタレ
このロワの状況じゃ無理だろうけど
137創る名無しに見る名無し:2009/09/17(木) 17:39:28 ID:61FPNKpg
現時点では由乃+雪輝コンビは不利っぽいけどな
由乃が危険人物だという情報が漏れだしたし雪輝も相対的に印象を悪くするだろう
無差別日記はまだ手元には戻ってないし
ただ由乃は半端な能力者より強くて凶暴だけどなw

い、一応この二人は対主催だぞ。たぶん。
138創る名無しに見る名無し:2009/09/17(木) 21:42:06 ID:Dxpu3KU7
生き残り最優先という意味では状況次第ではマーダーの役割も果たすと思うけど…
時期的にはまだユッキーにリミッターかかってるから積極さはないけど、元ゲーム参加者からして
みればあんまり抵抗はないんじゃないかな
139創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 00:59:54 ID:/pTY/zbg
予約破棄か
残念だが時間が出来たらまた来てね
140創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 03:13:35 ID:FB38HkqV
ああ、予約破棄か……
あのパート密かに俺も書いてたんだけど異様に書きにくいんだよな
というか掛け合いの難易度が高い
10KB程書いた辺りで筆が完全に止まった
俺の腕では厳しい
141創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 09:45:58 ID:Y/gNeTwj
俺は鳴海周辺が書きにくい。つか無理。
頭脳派だから駆け引きがすごすぎて……
142創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 11:53:10 ID:axTupEnR
金剛パートはそれぞれ全くジャンルの違う漫画の面子だからな。
正直言うと、どれか一つでも作風が好みじゃなかったらそこで筆が止まる。自分もあの作品が好きになれないから書けん……。

鳴海パートはそういう噛み合わせの悪さがないからむしろ書きやすいと思うな、
特に無差別日記関連の取引の流れは前の書き手さんがガイドライン作中で立ててくれたから、それをベースにすればいいわけだし。
143創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 15:21:56 ID:m7DK0EsU
書きにくいパートやキャラは他の人に任せるしかないのかも
でもそれでは情けないので無い知恵振り絞って書くけど詰まらない繋ぎになっちゃう時もあるんだよな
書いて欲しいパートは書いて欲しい
俺も出来るだけ頑張るけど
144創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 18:30:10 ID:1Ro6rGJP
掛け合いが上手くいかないなら、逆転の発想で上手くいかない掛け合いをやればいいじゃない
必死に金剛と普通の高校生らしいコミュニケーションを取ろうとする潤也
ひたすらマイペースの金剛
冷笑する沖田って感じで
145創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 21:48:07 ID:XU3UvX5Q
>必死に金剛と普通の高校生らしいコミュニケーションを取ろうとする潤也
ありえん
146創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 22:37:03 ID:1Ro6rGJP
ん?そうか?
147創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 22:42:29 ID:1UGhuM7K
今週号で階段のとこで死んでた巨人は何者?金剛類の成体?
148創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 22:43:28 ID:1Ro6rGJP
親父だろ?
149創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 23:16:27 ID:1UGhuM7K
あれ親父だったのか・・・
先週くらいに出てきた時って執事みたいなジジイと同じくらいのサイズじゃなかったっけ?
150創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 23:31:02 ID:1Ro6rGJP
伸び縮みするんだよ
151創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 23:55:55 ID:jw7I9GpB
身長なんかその場のノリで変化して当然だろ
152創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 01:06:37 ID:5Kvy92RA
登場時は巨人並の大きさだったのに、後にそれは「威圧感で大きく感じただけだ」って言って普通の大きさになるのもよくある話
153 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 01:46:47 ID:xmCF26vd
仮投下スレに投下しました
矛盾点や欠点がありましたら教えてください
154創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 10:27:38 ID:B0EOwV0R
仮投下乙
ちょっとしたひっかかりだけ言うと

サンジたちとは入れ違いくらいの差じゃないですかね?
何時間もの時間差があったとは思えませんが…

あと貝宝じゃなくて宝貝

グリフィスの独白での一人称はオレのほうがらしいかと

感想は本投下時に
155創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 11:13:51 ID:Ng4H9qhG
仮投下乙

ちょっと気になる点。
天井ぶっ壊れてる風呂についてゆのは何とも思わなかったんだろうか。
旅館調べて穴に気付かんってことはないだろうし。
別に矛盾ってわけじゃないので展開上の問題にはならないだろうけど一応。

>>154
サンジたちとは1〜2時間くらいの差だろうね。


以下業務(?)連絡。
wikiのおまけにエリア情報を追加してみた。
新規書き手の手助けとなると嬉しい。
いろいろ抜けがあるだろうから補完してくれるとありがたい。
156創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 11:23:49 ID:PHzytCly
細かい人多いな
157創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 11:35:20 ID:Ng4H9qhG
いや仮投下ということは決定的な矛盾じゃなくても指摘した方がいいのかと思って
158創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 11:41:01 ID:PHzytCly
>154のこと。五字ぐらいほっとけと
159創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 12:36:55 ID:kg0jQRuL
誤字だって気づいたなら言った方がいいだろ
3秒で直せるもんなんだから別に手間がかかるわけでもないし
160創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 14:58:59 ID:ZzbV6ok7
社会の窓空いてますよ〜と指摘されるのは恥ずかしいだろうけど、気付かずずっとあけっぱなしで
いるよりはいいと思う
161創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 15:44:52 ID:yxqXnVqC
わずか一行の短文で誤字をかます>>158の才能に嫉妬
162 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 20:00:54 ID:90/ESg9z
指摘ありがとうございました。
指摘された場所とそれ以外に訂正箇所を調べて訂正してから投下します
163 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:09:43 ID:90/ESg9z
修正して一部変更しました。
修正案をこれから投下します。
164 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:10:45 ID:90/ESg9z

グリフィスとゆのの二人は当初の目的である旅館を目指し、道に沿いながら北上しつつあった。
あれから、しばらくゆのが落ち着くまで時間がかかったが何とか落ち着きを取り戻していた。


「ぐす……すみません、グリフィスさん。あの牛のおばけを見たら怖くなって……ぐす」
「仕方がない。あんなモノが突然現れれば大の大人でも震え上がる。寧ろ、君は立派だ。あんな出来事があってもこうして毅然としてる」
「い、いえ! 全然立派じゃありません! あんなでっかい牛のおばけに一歩も引かなかったグリフィスさんの方がずっと立派です!!」
「私は何もしていない。ただ向こうが勝手に何処かに行ってくれたおかげだ」

グリフィスはゆのの手放しの称賛を止めさせようとする。

「で、でも、グリフィスさんが居なかったらどうなってたか……本当に凄かったです!」

だがそれでもゆのは称賛するのを止めず、心底尊敬したような眼差しを向ける。
巨大な魔物と睨み合って一歩も引かなかったグリフィスを見て感銘を受けたと言うべきか。
彼女自身が美化してる部分も多分にあっただろがゆのの心を掴んだのは確かだった。
グリフィスは彼女の称賛の言葉に困ったように苦笑を浮かべる。

「それよりゆの、少し聞きたいことがあるのだが?」
「はいっ、何ですか、グリフィスさん?」
「君がさっき言ってた日本のことについて聞きたい」
「え? は、はい。いいですよ」
165 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:12:01 ID:90/ESg9z


◇       ◇       ◇


グリフィスさん、外国人だから日本のとこが知りたいのかな。
でも日本語がこんなに上手なのにどうして……
あ、日本人から日本のことを直接聞きたいからだよね。
そうだよね。私も英語がペラペラなら一度外人さんにお話したいと思うし。
こんな時だけどこんな風に男の人とお喋りするなんて初めてだな……
もしかしたら生まれて初めてかもしれない……

確かにゆのが男性と、しかもこのように年上の男性と二人きりで会話する機会は彼女にとって初めてだった。
最初の出会いは恐怖に囚われて彼に殺されると思いこみ、酷いことを言ってしまった。
それなのに、そんな酷いことを言った自分に君を守ると言ってくれた。
こんな殺し合いの渦中に放り込まれて、一人ぼっちで震えてた自分を。
もし彼がいなかったら今頃、自分はどうなってたか。
先程も突然、巨大な牛の魔物が現れた時も自分はショックで何も出来なかった。
人は急に思い掛けないことが起きると震えることすら出来ないのだと初めて知った。
でも彼は、グリフィスは違った。
魔物と対峙し剣を突き付ける姿は本当に物語の英雄のようだった。


つり橋効果と言うべきだろうか。もし今のゆのの様子を冷静に見てる者が居ればそう断定したかもしれない。
もっとも、そうなってしまったのもある意味仕方のないことかもしれない。
グリフィスのまるで神がその手で自ら創造したような整った容姿、人を魅了する穏やかで爽やかな口調、
気高い意思を秘めた眼差し、そして本人からまるで滲み出るかのようなカリスマ。
彼女の平凡な、そしてそれほど長くない彼女の人生の中で関わったことのある他人の中で
突然彼女の目の前に現われた彼はそのどれとも違った。
それにゆのは人を憎んだり疑ったりする負の部分が限りなく小さい。
どちらかといえばお人よしな善人を絵に書いたような少女である。
実際に今もグリフィスがゆのを守るのも彼女を利用する為だとは欠片も思いもしていなかった。
166 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:14:22 ID:90/ESg9z


◇       ◇       ◇


「うう……すみません、グリフィスさん。私、そこまで詳しくなくて……」

グリフィスにゆのの普段の生活とはどんなものなのかを聞かれ、最初はゆのも喜んで普段の生活を語ったのだがグリフィスの質問が

『その学校で普段学んでる学問の内容は?』
『皆が皆、この携帯という物を持っているのか?』
『ゆののご両親の御身分は?』

など質問の内容のレベルが上がり始めてから雲行きが怪しくなりさらに

『民主主義? それはどういったモノなのだ?』
『日本にも王族がいるがどうやって政治もしてないのに君臨しているのだ?』

質問が日本の一女子高校生の範疇を超え出すし、ただの少女のゆのにとっては難しい質問になると
ちゃんと答えることができずあたふたするしかなかった。
内容の中には幾ら何でも現代人なら知ってるような内容も含まれていたがゆのがグリフィスを外国人と思いこんでいた為
『日本はこんな国なんだと誤解してるのかな?』『日本にも○○や△△とかあるのに』と思うくらいで特に不審とは思わなかった。

「いや、ゆののおかげで日本のことを色々と知ることが出来た。礼を言うよ」
「いえいえ! 私がもっと詳しく知ってたらちゃんと説明出来たんです! ああ、沙英さんかヒロさんか居てくれたら……」
「ゆの、その二人は君と同じ日本人だね。………その言いにくいことだが………君の知り合いも………」

その言葉を聞いた途端、それまで和気あいあいとグリフィスとお喋りしてたゆのが青ざめた表情で俯いた。

「………グリフィスさん、私、私、………」
「わかってる、ゆの。わかっているよ………だが今は旅館へ向かおう。そして他の参加者を探して合流しよう。
 今できることはそれだけだ………」
「………はい」


………宮ちゃん、沙英さん、ヒロさん………みんな大丈夫だよね………
167 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:15:38 ID:90/ESg9z

こうして二人が歩くことしばし、目的地である旅館に着いた。
やっと着いた。ゆのはほっとした顔をして旅館内へと向かい……その肩をグリフィスに掴まれ止められた。

「どうしたんですか、グリフィスさ……」
「静かに。人が居た形跡がある。私の後ろに下がっているんだ」

グリフィスの低く鋭い声を聞き、ゆのが顔を緊張で引きつらせる。
剣を何時でも抜けるようにしながらグリフィスは旅館内に踏み込む。
ゆのも恐怖でびくびくしながらそれに続いた。


結論から言えば旅館内には誰も居なかった。
館の床には靴が激しく擦れた様な跡、壁に何かがぶつかった様な傷跡があり何か騒動が起こったことを想像させた。
台所には二人分の料理、だが手がまったく付けられていない。
おそらく食事をしようとした。だが手をつける前にここを出て行かざるえなかった。
第三者の襲撃を受けて逃走したのだろうか。だが旅館には大きな血痕や死体らしきものは無かった。
料理は冷めてはいたがまだ冷め切ってはいない。
旅館を出てから1〜2時間経ったという所だろう。

「どうして出て行ったんでしょうね……」

ゆのは力無くそう呟く。
死体やゲームに乗った参加者に出会わなくてほっとした反面、
他の参加者、特にひだまり荘の面々と合流出来るのではという期待が外れてがっかりしたようだ。
168 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:17:08 ID:90/ESg9z

「ゆの、この様子ではここに居た人間は帰ってこないだろう。だがここに別の参加者が来るかもしれない。
 私が外で見張るから君は体を洗って来るといい」

そんなゆのにグリフィスは当初に目的を行うよう促す。

「え、でもいいんですか? もし、その……」

実は二階を調べた時に二階の床、温泉の天井に穴が空いてたのを発見した為、入って体を洗いたいのだが気おくれしていた。

まあ、そんなことが無くてもこの状況で風呂に入れるほどゆのに度胸があったかは疑問だが。

「安心したまえ。君を置いて行くような真似はしない。少しは私を信用して欲しいな」
「い、いえ! グリフィスさんを信用しないなんてそんなことしません!」

だがグリフィスに優しく諭されれば反対出来る訳もなく。

「そう言って貰えると嬉しいな。ではまずは君の代わりの服になる物を探そう」
「は、はい!」

結局、グリフィスの言い分が通ることとなった。


***


あの大きな牛のおばけはなんだったんだろう……
それに私達を拉致して殺し合えと命令したあの女の子とピエロの人は何者なんだろう……
確かに気がついたらあそこにいてそしたら今度は森の中にいつの間にかいて……
まさか宇宙人? 宇宙人なの?
宇宙人が地球で地球人を拉致して変な金属を埋めこんだりモルモットにしたりするって聞いたことある……
だから私やグリフィスさんを拉致したの!?
で、でもテレビや本で見た宇宙人とは姿形が全然違ってたし……
それにあの牛のおばけも宇宙人なの?
あれ? あれれ?
169 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:19:31 ID:90/ESg9z

それに宮ちゃん、沙英さん、ヒロさんもここに連れてこられてるの?
宮ちゃんも沙英さんもヒロさんも私よりしっかりしてて、でも私と同じただの高校生で……
……大丈夫だよね?……私なんかが大丈夫だからみんなもきっと大丈夫だよね?

うん、きっとそうだよ。殺し合えと言われて殺し合うなんて出来っこない。
みんなできっと無事にひだまり荘に帰れる。そして、またみんなで学校に行って絵を描いて遊んで……
絶対、何とかなるよ。うん。


着替えの探索は着替えになる浴衣はすぐに見つかったのだがやはり下着までは無かった。
ただ銭湯の入り口付近に無料コインランドリーがあったので洗濯と乾燥は思ったより早く済みそうだった。
ゆのが入浴する段取りが出来るとグリフィスは『では私は外で待っていよう。ここに来る参加者がいないとも限らない』と
言って外で見張ってくれることになった。


グリフィスさんって本当に頼りになる人だなぁ……
強くて、かっこよくて、何でも出来て……
グリフィスさんに比べたら私なんか……
ううん! そんなことない! 私にだって何か出来ることはあるはず……
でも、私に何が出来るんだろう……
グリフィスさんの足手まといになってばっかり……

とりあえずお風呂から上がってから考えよう。


脱衣所で服を脱ぐと汚れた衣服を洗濯機に放り込み、石けんとタオルを持って大浴場へのドアを開ける。
170 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:20:52 ID:90/ESg9z

「うわぁ、すごい……絵に描いたような温泉だ(はぁと」

少なくともこの時だけはゲームのことを忘れることが出来た。
そして入ろうと大浴場に一歩足を踏み入れ……ファ○リーピュアに足をとられてコケた。

つるん〜 
「え?」

ゆのは足を滑らし、後ろにひっくり返り……

びったーん。

転倒、半回転してしたたかに後頭部を打ちつける。
しかも、頭から思いっきり、漫画のような擬音語付きで。


「きゅう……」


【G-8/旅館内 大浴場『ムルムル温泉』/1日目 早朝】

【ゆの@ひだまりスケッチ】
[状態]:朦朧、後頭部に大きなたんこぶ
[服装]:全裸
[装備]:タオルと石けん
[道具]:支給品一式 未確認支給品0〜1、PDA型首輪探知機
[思考・備考] 温泉に入って奇麗になった後、自分に何が出来るか考える
1:きゅう……
2:宮子、沙英、ヒロに会いたい
3:グリフィスさんに守ってもらう。
4:でも守られるだけじゃ嫌。私に出来ることって何かな?
5:まさか私達を拉致したのは宇宙人?


※首輪探知機を携帯電話だと思ってます。
※PDAの機能、バッテリーの持ち時間などは後続の作者さんにお任せします
※脱衣所に彼女のデイパックと浴衣があります。彼女の服は洗濯機の中で洗濯中です

※G-8旅館一階の大浴場の床が、ファ○リーピュアで大変滑りやすくなっています。
171 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:22:22 ID:90/ESg9z


×       ×       ×


グリフィスはゆのと別れた後、これからのことを思案することにした。

ここに最低二人の誰かは居た。だがもうここを出て行っている。
ここで誰かと出会えるのではと思っていたがあくまでも不確定だったのでそれほど失望はしてはいない。
可能なら合流したかったのは事実だ。しかし当ても無く探索するのは時間の浪費でしかない。
そろそろ夜が明ける。出来れば第一放送までの期間までにどこかの大集団に潜り込むか他の参加者を加えて戦力を充実させたかったが
今まで出会ったのはあの少女と不死のゾッドだけ。
放送が始まれば名簿に参加者が浮かび上がり死亡者と禁止エリアが放送される。

そうなれば自らの仲間や知人を保護しようとやっきになる者、殺された者の敵を討とうと血道をあげる者、
親しい者を殺されて混乱し絶望する者、参加者が減ったことでゲームに乗る決意をする者、
例え、これまでに上手く参加者を纏めることが出来た集団がいたとしても綻びが生まれる。
ゾットのような化け物もいる。その中で生き残るにはその分裂し、混乱しそうな他の参加者らを利用し、あるいは欺き、それらをまとめること。
そして出来るならその集団を指揮するのは自分であるのが望ましい。

グリフィスにはそれが困難であっても不可能だとは思わなかった。
自分には、それらを従えさせられるという自信が、確信があった。
172 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 22:24:15 ID:90/ESg9z

それにしてもあの少女、最初はただの娘だと思っていた。いや、実際にはただの娘なのだろう。
だが彼女が語った日本という国、その国での彼女の普段の生活や未知のテクノロジーは彼の知識や想像を遥かに超える。
自分が知らない世界、この世のものとは思えない世界の住人、信じがたいがそういう存在が実在し参加者としてここに
居ることを前提にして行動した方がいいだろう。
そしてもっとそれらの情報を集める必要がある。
更にそんな存在を召還した神と名乗る存在。あのゾッドすらこのゲームの参加者として引っぱり込めるほどの力量だ。
連中はただ神を気取るだけの愚昧な輩では無いのか? 見世物の為にこのようなことをしたのだろうか?
正直、興味を掻き立てられると同時に戦慄を覚える。伊達に神を名乗ってるわけではないと言うところか。
上手く首輪を外すことが出来たとしてもこの島から脱出しようとするなら主催者は必ず立ちはだかるだろう。

(侮れないということだろうな……だが奴らが本当に全知全能の神だと言うのならオレがそれを試してやろう。
 オレやガッツをこのようなことの駒にしてくれた礼をしなくてはな)

グリフィスは心中でそう呟く。
例え相手が巨大であろうとも、本当に神であろうとも鷹は羽ばたくのを止めない。
何故なら彼が望むのは神に頭を垂れることでは無く「夢」に向かって羽ばたくことなのだから。


さて、放送までまだ時間がある。
そして放送と同時に名簿に名前が表示される。
ガッツ以外の鷹の団メンバーやゆのの知り合いの日本人の存在を確認する必要がある。
メンバーの再集結や『ゆのの名前』を利用して他の日本人との交渉などやるべきことが幾らでもあるからだ。
そして死亡者にそれらが何人含まれるのかも知らなければ。
本来なら参加者を確認してから行動しても遅くないだろうが足手まといな彼女と一緒で行動するより単独行動の方が何かと都合がいい。
だから彼女に風呂に入るように勧めたのだ。これまであの娘と共に居るのはあくまでもその方が脱出するのに有利だったからだ。
幸いあの娘の心を掴みつつある。もう少しあの娘の信頼を獲得してから単独行動をしたかったが仕方ない。

ゆのが脱衣所へ姿を消すのを確認するとグリフィスは旅館の入り口に出るとデイパックからある物を取り出す。
それは一対の石貨みたいな輪、宝貝人間であるナタクが使っていた風火輪という宝貝。
グリフィスがこれまでこれを使用しなかったのは彼の世界の常識から見れば魔法の道具にしか見えなかった為、そんな物が本当に存在
するとは信じられなかった。
だがゆのとの会話や携帯電話のような道具を見てこれが『そういうものがあっても、おかしくはない』と思えるようになった。
説明書には使用すれば疲労すると書いてある。どのぐらい疲労するか不明だがこれを使えば短時間で遠くへ移動することが可能だろう。
時間を掛ければ掛けるほど状況は悪くなる。危険ではあるがここで勝負を賭ける必要がある。
173 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 23:03:05 ID:90/ESg9z

グリフィスは説明書にある手順どおりに風火輪をセットする。
左右の足の下の風火輪が地面から浮きあがる。そしてグリフィスが前に進めと念じたとおり彼の体を上空へと飛ばす。
一瞬、驚きの表情を浮かべたがすぐに平常を取り戻すと南へ向けて飛行する。

ゆのから用途を聞いた設備、西の工場か研究所に興味があったが専門知識まで持ち合わせてない自分が行ってもどれだけ
有益なのかわからない。

北は市街地から離れるうえに『ガッツが教会へ向かうなどありえないな』という思いがあったので南へと決めたのだ。

風火輪でかなりの速度を出しながらグリフィスは南へと向かう。
その先にあるのは破滅か? それとも……


*****


さて、グリフィスはゆのと同行して利用するよりも単独行動を選んだわけだがそれなら何故ゾットと出会って恐慌に陥った
時点でゆのを放置しなかったのか?

彼女から情報を聞き出したかったから?

それもあるだろう。

だがそれだけではない。グリフィスはある手を打ってから彼女と別れたのだ。
グリフィスは彼女が脱衣所に姿を消したのを確認してから目に付く場所にあるメモを置いてから去っている。
174 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 23:06:03 ID:90/ESg9z

そのメモの内容は

『唐突で申し訳ない、これから他の参加者や君の親友を保護する為に探索へ向かう。
 危険なので君はここへ隠れて私の帰りを待ってて欲しい。
 もしここが危険だと感じたら北の教会へ向かってくれ。
 可能なら出来るだけ早く君とまた合流出来ることを祈ってる。
 念の為に読み終えたらこのメモは君が持っていて欲しい。私達が再会出来ることを信じて。
 
 追伸 
 支給品には一日分の食料しかなかった。私達や合流出来た参加者の為に料理を作ってくれていたらありがたい。
 君や君の親友と共に食事を迎えられたらいいと思ってる』


メモにはゆのの親友を含めた他の参加者を保護することと再会したいことを望む言葉が書かれている。
少なくともこのメモには嘘は書かれていない。
だが何故一緒に行かないのか、何時帰って来るのかまでは書かれていない。
これから放送があり、その放送に彼女の親友の名前があった場合、また彼女が恐慌に囚われる可能性があったのにだ。

グリフィスにとってこの時点でいちいちケアしなければならない足手まといなど要らない。
もし彼女が殺し合いに乗ってない参加者と出会えるのならそれでよし。
上手く行けば彼女の口とメモから『彼女を保護し、他の参加者も保護しようとする参加者』の宣伝が出来る。
だが殺し合いに乗った参加者と出会い、殺されるのなら彼女の運命もそれまで。
メモにはグリフィスの名前や行き先までは書かれていないからメモを奪われて読まれてもそれほど痛くはない。
175 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 23:08:33 ID:90/ESg9z

無論、ゆのが置き去りにされたのを恨み、グリフィスの悪評をばら撒く可能性もあるにはあった。
だが短期間とはいえゆのの人柄を観察してみればその可能性は低いと見ている。

最初は彼女を利用して他の参加者を引き込む気だった。
だが一緒にいて彼女を守る手間よりも危険に巻き込みたくないから隠して別れたという言い訳の方がグリフィスにとって労力が少ないし
相手を言いくるめる自信は幾らでもある。
それに相手がゆのの存在を疑っても彼女とその親友の詳しい情報を知ってるので納得させる自信もある。
だからグリフィスは敢えてこの手段を選んだ。

しかしこの判断はグリフィスの勇み足だったかもしれない。
グリフィスが探索に赴くことを口頭でゆのに伝えようとすれば泣き喚いてそれを止めようとして説得するのに余計な時間を喰うと考え
置き去りに近い方法を取った。

しかしゆののひだまり荘の先輩達や親友への想いの強さは計算に含まれていたのだろうか?

もしグリフィスが親友の探索を前面に押し出して説得すれば怯えつつも頷いていたのではないだろうか?

ゆのを置き去りにすることで無駄な時間を省けたと考えるグリフィス。

だがこの行動がこのゲームにどう影響するか誰も知らない。
176 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 23:11:03 ID:90/ESg9z


【H-8北部/上空/1日目 早朝】

【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:健康
[装備]:居合番長の刀@金剛番長、風火輪@封神演義
[道具]:支給品一式
[思考] 南の施設を回り、他の参加者を探しまとめる
1:ガッツと合流
2:殺し合いに乗っていない者を見つけ、情報の交換、首輪を外す手段を見つける
3:役に立ちそうな他の参加者と合流、そしてまとめる。ゆのとの再合流は状況次第
4:未知の存在やテクノロジーに興味
5:ゾッドは何を考えている?
[備考]
※登場時期は8巻の旅立ちの日。
 ガッツが鷹の団離脱を宣言する直前です。
※ゆのと情報交換をしました。
 ゆのの仲間の情報やその世界の情報について一部把握しました。
※自分の世界とは異なる存在が実在すると認識しました。


※脱衣所の目の付く場所に彼のメモがあります。
※グリフィスは旅館の南へ向かいましたが
 どの施設へ(デパート、図書館、診療所)向かうか次の書き手へ任せます。

【風火輪@封神演義】
宝貝人間であるナタクが最初に持っていた宝貝
一対の石貨みたいな輪。両足で踏みしめて使用し高速で空中移動することが出来る。
177 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/19(土) 23:13:36 ID:90/ESg9z
以上です。
予想外に長くなってしまった。
タイトルは『鷹は雛鳥を置き去り飛び立つ』です
178創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 00:09:46 ID:zY+Pjvf2
投下乙です
置き去りは一見酷いかもだけど、連れ歩くのも危険だし一人用の移動アイテムあるなら
そっちのが人探しは効率いいよなぁ
旅館までちょっと移動するだけで4時間以上使っちゃったわけだし

でも旅館周辺は危険人物も多いし、どうなるか……
179創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 08:30:10 ID:EBo4PUCW
潤也とゴルゴが向かってるのがどう作用するかだなー。

ところで、放送後に作品投票とかはアリなのかな。
180創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 10:27:14 ID:Oj48bTEx
投下乙です
ゆのはこれを知ったらどうなるんだ? そして安藤兄はともかくゴルゴとご対面は怖がりそうw
グリフィスも銀時組や酔いどれ組と会うならいいけど図書館行ったら終わるなw

放送後に作品投票でもいいと思うけど

181創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 15:34:04 ID:zY+Pjvf2
他にも図書館組が放送後北上するし、スズメバチが意識取り戻したら旅館に戻るかもしれんし
ナギも旅館で休もうとするかもしれん
今一番危険地帯かも

逆にデパートで対主催集結もありそうな感じだな
182創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 19:03:00 ID:0jKzQqaf
投下乙です。
誰か転ぶだろうと思ってはいたけど、ゆのっちでしたかw

ひだまり勢はヒロさん以外皆良い保護者に恵まれたと思っていましたが、そこは天下の鷹さん。
甘くはなかったですね。同じ放置でも銀さん、浅月、グリフィスとそれぞれ違うのも面白いところ。
不確定要素の多いデパート周辺にグリフィスが飛び込むと、いろいろと面白くなりそうです。
183創る名無しに見る名無し:2009/09/21(月) 21:27:30 ID:3Fg1h9ab
しかし連休だから予約が多く来ると思ったけどほとんど来ないな……
184創る名無しに見る名無し:2009/09/21(月) 22:05:08 ID:G3aaMF0w
夏休みも少なかったよね
185創る名無しに見る名無し:2009/09/21(月) 22:43:17 ID:6B78dEgP
もう合間を埋めるのも限界です……
放送後はいつから解禁なん?
放送前にこいつだけは殺しておきたいってパートがないなら、もう放送して放送後にステージ進めてもいいんじぇね?

金剛組とか移動距離長いんだからいきなりデパートまでたどり着いてもええんちゃう?
186創る名無しに見る名無し:2009/09/21(月) 23:05:42 ID:3Fg1h9ab
他の書き手の人の意見も聞きたいな
そろそろスレの勢いとかもあるから解禁でもいいんじゃないの?
とりあえず意見が来るまで待とうよ
187創る名無しに見る名無し:2009/09/22(火) 01:37:59 ID:MJ978KGI
他は何とでもなるが、九兵衛とMr.2はさっさと教会に辿り付くか方針変更して貰わないと面倒な気がする
188 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/22(火) 17:15:46 ID:kq53twnX
その二人で予約してみた
投下まで時間あるからその間に他の人の意見とか聞きたい
189創る名無しに見る名無し:2009/09/22(火) 17:21:49 ID:JMeTnqXL
ぎゃくにどんな意見を欲しているのか聞きたい
190創る名無しに見る名無し:2009/09/22(火) 18:19:07 ID:wAPK77HW
一端時間軸から取り残されるとあとで大変なんだよな
誰とも絡めなくなるから誰かと絡んだ話が作れなくなるし
191創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 00:20:21 ID:KseEc+Vo
難しいね
他は何とかなるって人もいるけど全部埋めないと放送まで行けないかもな
192創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 00:45:41 ID:ZFN8mIF0
とりあえずレガートを書き始めてみたけど、どうなることやら……
もう書いてんだよ〜!!って人がもしいたら早めに予約取ってくれ
目処がたったら予約するし
193創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 22:50:28 ID:Vp/MK6ZF
旅先から失礼。
ロリータコンビのプロットは完成してるけど、とりあえず本文は家に帰ってからになりそうですかねぇ。
194創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 23:07:03 ID:M/XMyjKt
了解しました
焦らずに書いてね
待ってます
195 ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:09:17 ID:cidcKHYt
予約してませんが今から投下します。
196×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:10:25 ID:cidcKHYt
ぴちょん。

水滴が白い肌を叩いた。

「う……」

細い指がぴくりと動く。
水蒸気で飽和した空気。蒸し暑い空間の片隅に仰向けに転がる裸の少女。
滲む汗と凝結した水滴が凹凸の小さい身体を滑り降りる。
微かに響く呼吸音。

再び天井から落ちた水滴が、少女の臍の隣で弾けた。
少女――ゆのが冷たい刺激に瞼を開く。

「う〜……頭痛い……って、ココどこだっけ〜?
 ……え? 私、裸? な、何で? え? えぇ?」

混乱。頭がズキズキと痛む。
すぐ横にサウナの扉。正面に大きな浴槽がいくつか。壁際にシャワー。
どうやらここは風呂場――らしい。
記憶の糸を手繰る。確か――

「あ……そうだった。お風呂に入ろうとしたら滑って転んで……」

思いっきり頭を打った。頭が痛いのはそのせいだろう。
そっと後頭部を触ると大きなコブが出来ていた。

タイル張りの床を撫でる。ぬるぬると滑る。
ハーブの香りのする、水よりも粘性の大きい液体が指に付着した。
指を擦り合わせると微かに泡立つ。

「……これ、洗剤?」

どうやら誰かが液体洗剤を床に大量に撒いたらしい。
入口付近だけでなく浴槽の方まで洗剤で濡れている。
滑って当然だ。転んだ原因はこれだろう。
慎重に立ち上がって体を捻る。お尻やふくらはぎが洗剤で濡れているのが見えた。
重力に従って液体がゆっくりと髪から背中を伝い落ちる感触。
気持ちのいいものではない。

「うわぁ〜……ぬるぬるする…………って――あれ? 何か忘れてるようなー……」

後頭部をさすりながらゆのは眉根を寄せる。
そもそも何故こんな異常事態の中で暢気に風呂に入ろうなどと思ったのかといえば、

「あぁ!? グリフィスさん待たせたまんまだったー!!」

そう、気絶している間も今もグリフィスは外でゆのを待っているはずだ。
早く用を済ませて上がらなければ迷惑がかかる。
焦った拍子に体の重心がふらつき、

「わ、わっ……おっと、っと」

またバランスを崩して転びそうになったが、今度は壁に手を突いて堪える。
いくらなんでもこのままでは危ない。
床を洗い流す道具――ホースか何かがないかと辺りを見回してみるが、目に付くところには無い。

「……あ、そうだ」
197×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:12:06 ID:cidcKHYt
『誰か、いるんですか?』



え?
あ、あれ? おかしくない?
脱衣場の前ではグリフィスさんが待っててくれてるんだよね?
男の人の入口もすぐ近くにあるから、お風呂に入ろうとしたらグリフィスさんが気付くはずだし。
そうしたら、グリフィスさんはきっと私のことを話してくれるはずだから――。
それなのに、まるで――

「誰か、いるんですか?」

女湯に誰かがいることが不可解だと言わんばかりの声。
やっぱり――何かおかしい。変だ。

「……あの、いるならいるって返事してもらえますか?」

少し声のトーンが下がった。返事をして、いいんだろうか。
何か、間違えたら、取り返しの付かないことになりそうな気がする。
むくむくと疑心と恐怖の種が育っていく。
少しの、ゆのにとっては永遠に等しい時間が流れて、その間に鏡の向こうからは聞き取れないくらいの小声が。

「えーと、その……今から、そっちに行きますよ?」

咄嗟に脱衣籠の中のデイパックを掴んで逃げ出した。
計算ではない。ただ恐怖から逃れんがための本能的な行動だ。
大浴場の中に入って入口のガラス戸を閉める。
少しでも、一歩でも――迫る脅威から離れたい。
その一心でタイルの上を走り出す。しかし、

「きゃっ!」

再び洗剤に足を取られて、ゆのは今度は前のめりに転んだ。
小振りの胸がタイルに叩き付けられる。洗剤が撥ねた。
その拍子にデイパックからころころとバレーボール大の白い珠が転がり出る。

(う……そうだ、あれを使えば――)

ここは水の宝庫。それなら――。
現状で縋れるものはこれしかない。
藁をも掴む勢いで四つん這いのまま珠を目指して進む。あと四歩。
身体中が液体洗剤に塗れてしまったが、気にする余裕など無い。

あと三歩――。

心音が五月蝿い。浴槽に注ぐお湯の音が単調に響く。
はやく。

あと二歩――。
198×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:15:05 ID:cidcKHYt
間違えました……

>>196>>197の間に以下が入ります。

---
駄目で元々。あれを試してみよう。
もしあの説明が本当なら、簡単に床を洗えるはず。
そう考えて爪先立ちで脱衣場に戻り、脱衣籠に近付いた、そのとき、

「誰か、いるんですか?」

訝しげな声。グリフィスのものではない。
大鏡の向こう側、男湯側の脱衣場から聞こえてくる。
どうやら誰か知らない人がいるらしい。
声を返そうとして――気付いた。



---
199×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:16:54 ID:cidcKHYt
胸の先端から滴り落ちる洗剤の音がやけに大きく耳を打つ。うまく息が出来ない。苦しい。
はやく、はやくはやく。

あと一歩――。

ガラリと、ガラス戸が開く音。心臓が跳ね上がる。
あと、あとちょっと。

――――掴んだ!

必死で念じながら――振り向く。
二人の男――ゆのより少し年上に見える少年と、やくざ顔負けの威圧感を持つ男が、入口の近くからゆのを睨んでいた。
少年の方はともかく、強面の男に捕まったらただで済むとは思えない。ゆのの顔が恐怖に歪む。
よく観察すると彼らの視線はゆのの頭上に注がれているのだが、彼女にはそのことに気付く余裕は無かった。

(お願い――――)

ありったけの拒絶の意思をぶつける。

「来ないで――――――――――――――!!!!」

刹那。意思は質量を得る。
数十トンの水の塊がゆのの頭上から放たれ、二人の男の姿を呑み込み、脱衣場を蹂躙し尽くした。


***************


――――――――――え?

――――――――――あ。

やっちゃった。

あんな、めちゃくちゃになって、いきてるひとなんていない。

いるわけない。

わたしは。

ひとを。

ころしちゃったんだ。

わたしは。

わたしは、ひとごろしだ。





混元珠――持って念じることで水を操れる宝貝――と説明書きがあった。
はっきり言えばゆのは説明を信じてなどいなかったのだが――混元珠は説明通りの力と想像以上の威力を秘めていた。
ゆのは華奢な脚を投げ出し、呆けた瞳で自らの引き起こした惨状を眺めている。
胸や腹に纏わり付いた液体洗剤がゆっくりと流れ落ち、お尻の下に溜まり始めていた。
200×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:17:54 ID:cidcKHYt
殺す気は無かった。それは確かだ。彼女は徹頭徹尾防衛本能に従って行動しただけ。ただそれだけだ。
だが『殺す気は無かった』などという言い訳が、自分自身の心に通用するはずがない。
虚しさにも哀しさにも寂しさにも苦しさにも似た、名も無い原始的な感情が胸の内で渾沌の渦を巻く。
糸が切れたように全身が弛緩した。
不思議と涙は零れなかった。
舌が、喉の奥がヒリヒリと乾く。唾液が上手く飲み込めない。
鉛が流し込まれたかのように手足が重い。
胃が浮いているような空虚な感覚。
膀胱の中身が今度こそ全部零れ出て、洗剤と混じり合いながらタイルの溝を流れていく。

十秒か、一分か、それとも十分か。
彼女の主観では十分に長く、客観的にはほんの少しの時間、ゆのは混元珠を抱えてただ俯いていた。
細かく震える全身。脇の下から冷たい汗がじんわりと滲む。
破壊された脱衣場からガシャンと何かが崩れる音が響いた。
びくりとゆのの小さな肩が震える。

突然、ここにいてはいけない、とゆのは思った。そう思った理由は彼女自身も把握出来てはいない。
思考のプロセスを経ずに意識の表層に浮かび上がったそれは、むしろ生理現象に近い衝動だった。

今の騒ぎでまた危険な人物が寄ってくることを恐れたのか。
現場から離れようという殺人犯共通の心理なのか。
今の姿をグリフィスに見られたくない、という欲求なのか。
それら全てが混ざったものなのか。
それとも全然関係無い理由からか。

ともかく、ゆのは動き始めた。大腿部に力が入り、膝立ちに。
両側の鼠蹊部に溜まった洗剤が流れ、中央で合流して膝の間の水溜りに滴る。
彼女はその合流点付近を手で無造作に拭いながら、マリオネットのような所作で立ち上がった。

そしてふらふらと。
入口に背を向けて、歩く。
時折転びそうになりながらも、破壊の痕から、罪から、逃れようとするように。
突き当たった壁を混元珠の力で破壊し、外へ。

壁の向こうは庭だった。いつの間にか朝の陽射しが背の低い木々を照らしている。
澄んだ水を湛えた池には、蓮の花が咲き乱れていた。
ああ綺麗だなと場違いな感想を抱いて、ゆのは草の上に下りた。朝露が足を濡らす。
外はとても静かで、肌を撫でる風は爽やかで。
みんなとここに来たらきっと楽しいだろうなと思って。
そうして池の水を操って旅館の塀を砕くと、そのまま彼女は街へと消えていった。

201×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:19:04 ID:cidcKHYt
***************


「…………」

ゆのが大浴場から出て行ってから数分。
滅茶苦茶に破壊された入口の近くでサウナの扉が軋んだ音を立てて開かれ、ゴルゴ13が中から現れた。
辺りをもう一度確認してから、サウナの中に向かって出ろと声をかける。
中から安藤が出てきて額や首筋にじわりと浮かんだ汗を拭った。
深い溜息。

「……っ。ただの女の子に見えたのに、あんな……」

ガラス戸を開けた瞬間に視界に飛び込んできた、四つん這いの裸の女の子。
その頭上に物理法則を無視してみるみる集まる浴槽の湯。
女の子がこちらを振り返って。
そしてアクセル全開のダンプのような勢いで迫る水塊を思い出して、安藤は身震いする。
ゴルゴが咄嗟の判断でサウナの中に安藤ごと飛び込まなかったら、彼は今頃挽肉になっていただろう。
実際、水塊の直撃を受けた脱衣場は棚も籠も全て奥で無残な瓦礫と化している。

「姿形で相手の実力を判断するものではない、ということだ。
 あの女は水を操る超能力者らしいな。水場で戦うべきではない」

誘い込まれた――ということだろうか。
自分の得意なフィールドで、相手を確認した瞬間、意表を突く形で最大威力の攻撃を放つ。
どう考えても好戦的で頭の切れる危険な相手だ。
ただ、その割には攻撃の瞬間の叫びは妙だったが――。

「あ。そ、そうだ。今すぐ追いかけてあの子を止めないと。
 あんなのを野放しにしておいたら――」
「……止めておけ。街中なら何処だろうと水道がある。奴が水を操れるのなら、勝ちの目は薄い」
「で、でも――」
「積極的に戦う理由も無い。行くぞ……」

ゴルゴは有無を言わさぬ口調で会話を打ち切った。
実際、今回のような不意打ちでなくとも、腹話術の射程外から攻撃されたらなす術はない。
旅館を探して見つけた武器といえば台所に放置されていた包丁くらいのものだ。
包丁一本で暴走する大型車に立ち向かうのは――勇猛を通り越して無謀といえるだろう。
今少女を追いかけたところで無駄死にとなる可能性は高い。
安藤もそのことは分かっているのでそれ以上の反論はしなかった。

「はあ……あんなのがそこら中にうろついてるのかな?」
「……そう考えたほうがいいだろう……」

事も無げに言い、ゴルゴは破壊された脱衣場へ。

無力。この場で、こんなちっぽけな自分が出来ることなんてあるんだろうか?
ふと、鳴海歩の自信に満ちた――少なくとも安藤にはそう見えた――皮肉気な笑みを思い出す。

「鳴海……お前も、死ぬなよ? 本当に……」
202×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:19:54 ID:cidcKHYt
【G-8/旅館/1日目/早朝(放送直前)】

【ゴルゴ13@ゴルゴ13】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:ブラックジャックのメス(10/10)@ブラックジャック、ジャスタウェイ(4/5)@銀魂
[道具]:支給品一式、賢者の石@鋼の錬金術師、包丁、不明支給品×1(武器ではない)
[思考]
基本:安藤(兄)に敵対する人物を無力化しつつ、主催者に報復する。
 1:携帯電話やノートパソコン、情報他を市街地などで調達する。
 2:首輪を外すため、錬金術師や竹内理緒に接触する。
 3:襲撃者や邪魔者以外は殺すつもりは無い。
 4:第三回放送頃に神社で歩と合流。
[備考]
※ウィンリィ、ルフィと情報交換をしました。
 彼らの仲間や世界の情報について一部把握しました。
※鳴海歩から、スパイラルの世界や人物について彼が確証を持つ情報をかなり細かく聞きました。
 結崎ひよのについては含まれません。
※安藤の交友関係について知識を得ました。また、腹話術について正確な能力を把握しました。
※ガサイユノ、天野雪輝、秋瀬或のプロファイルを確認しました。
※未来日記の世界と道具「未来日記」の特徴についての情報を聞きました。
※探偵日記のアドレスと、記された情報を得ました。
※【鳴海歩の考察】の、1、3、4について聞いています。
  詳細は鳴海歩の状態表を参照。
※ゆのを危険人物として認識しました。

【安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:疲労(小)
[服装]:猫田東高校の制服(カッターシャツの上にベスト着用)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、包丁、バラバラの実@ONE PIECE
[思考]
基本:脱出の糸口を探す。主催者と戦うかはまだ保留。
 1:とりあえず、東郷と同行。
 2:携帯電話の調達のため、市街地などに向かう。
 3:軽度の無力感。
 4:首輪を外す手段を探す。できれば竹内理緒と合流したい
 5:殺し合いに乗っていない仲間を集める。
 6:潤也が巻き込まれていないか心配。
 7:第三回放送頃に神社で歩と合流。
[備考]
※第12話にて、蝉との戦いで気絶した直後からの参戦です。
※東郷に苦手意識と怯えを抱いています。
※鳴海歩へ劣等感と軽度の不信感を抱いています。
※鳴海歩から、スパイラルの世界や人物について彼が確証を持つ情報をかなり細かく聞きました。
 結崎ひよのについて、性格概要と外見だけ知識を得ています。名前は知りません。
※会場内での言語疎通の謎についての知識を得ました。
※錬金術や鋼の錬金術師及びONE PIECEの世界についての概要を聞きましたが、情報源となった人物については情報を得られていません。
※ガサイユノの声とプロファイル、天野雪輝、秋瀬或のプロファイルを確認しました。ユノを警戒しています。
※未来日記の世界と道具「未来日記」の特徴についての情報を聞きました。
※探偵日記のアドレスと、記された情報を得ました。
※【鳴海歩の考察】の、1、3、4について聞いています。
  詳細は鳴海歩の状態表を参照。
※ゆのを危険人物として認識しました。

203×☆☆☆ ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:20:42 ID:cidcKHYt
***************


――みんな。

――みんな。

――どこにいるの?

――帰りたい。

――帰りたいよ。

――ひだまり荘に。

――宮ちゃん、沙英さん、ヒロさん。

――みんな。

――そうだよ。

――帰ろう。

――帰るんだ。

――絶対に、みんなのいるひだまり荘に――



そのとき、静かなピアノの旋律が流れ始めた。
彼女の、ささやかな望みは、既に、




【G-8/旅館付近/1日目 早朝(放送直前)】

【ゆの@ひだまりスケッチ】
[状態]:疲労(小)、後頭部に大きなたんこぶ、洗剤塗れ
[服装]:全裸
[装備]:混元珠
[道具]:支給品一式、PDA型首輪探知機
[思考]
基本:???
1:みんなのいるひだまり荘に帰る。
2:旅館から離れる。
[備考]
※首輪探知機を携帯電話だと思ってます。
※PDAの機能、バッテリーの持ち時間などは後続の作者さんにお任せします
※二人の男(ゴルゴ13と安藤(兄))を殺したと思っています。

※G-8旅館一階の脱衣場が全壊、大浴場の壁とその近くの塀に穴が開きました。
※グリフィスのメモは破壊されました。

【混元珠@封神演義】
付近の水を自在に操ることが出来る球形の宝貝。
本来はもう一つの混元珠と空間的に繋がっているが、本ロワではその機能は封印されている。
水辺では万能の武器と化すが、水が無ければただのボールである。
204 ◆L62I.UGyuw :2009/09/24(木) 02:23:10 ID:cidcKHYt
以上です。

停滞中パートでなくて申し訳ないですが。
205創る名無しに見る名無し:2009/09/24(木) 17:39:13 ID:AXDDvwcE
おお、GJ
火薬庫の子羊かと思ったら、彼女自身も火種の一つになったか
放送後の旅館近辺は地獄だぜ〜

混元珠とは面白い。
悪魔の実能力者には特効ですね。
上手く所持品を使えるようになれば生き残りの目は高そうだがさてはて……

しかし、L62I.UGyuwさんはお色気パートに必ず絡んでくるなw
このえっちめ!

膀胱からっぽという事で、ゆのっち登場以来のおもらし記録も次で途絶えそうですな
206創る名無しに見る名無し:2009/09/24(木) 18:11:01 ID:h5FRzje4
投下乙

まぁゆのっちは放送後に動揺してるところをゴルゴ達に拾われるんだろうな〜と思っていたら
甘   か   っ   た
さりげなく脱衣所のメモまで消して誤解解消フラグも潰してるというw
混元珠は封神の世界ならともかく普通の世界のキャラには脅威だよなぁ
一発で火薬系武器を全封印できるし

タイトルはまさかひだまりの面々かこれ

あとエロい
エロい単語一つも使ってないのにエロい
207創る名無しに見る名無し:2009/09/24(木) 18:38:43 ID:H+RHpcuY
投下乙です
ああ、まさかこうなるとは思わなかったわ。
拾われるにしても後で別れるにしてももっと穏便な展開になると思ってたが予想外
しかも混元珠とはぶっそうな物、持ってるな
さらにメモも消えたから誤解解消フラグも潰れてるw

タイトルは最初はなんだと思ったが確かにひだまりの面々だわ

そしてエロいw
208創る名無しに見る名無し:2009/09/24(木) 21:46:53 ID:6Af9c+It
どこがエロいんだ?
想像力逞しすぎw
209創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 04:20:01 ID:XER2/KP+
>>208
状態表だけでも、洗剤まみれの全裸で多少疲れた様子……ほらエロいじゃないか!w
210創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 09:22:24 ID:ZMddDsAm
そもそも状態表は「洗剤塗れ」だけだけど下半身はそれどころじゃないよなこれw
いろいろ垂れ流しで映像化するとヤバい
211創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 14:48:37 ID:J2+L1qwM
タイトルはひだまり三期のタイトルだろ
「ひだまりスケッチ×☆☆☆(ほしみっつ)」
212創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 15:42:56 ID:vdP1Dlls
ひよのとかナギ、剛力番長も凄い恰好だったよーなw
亮子もズブ濡れだし……
213創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 16:49:37 ID:h18YEcNn
ロワで服を入手するとかけっこう手間かかりそうだな
ありそうな場所から入手出来ればいいけど
214創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 17:34:44 ID:xyY37zzF
若い娘の着るようなものにこだわらなければ市街地ならいくらでも手に入りそうだけど
215創る名無しに見る名無し:2009/09/26(土) 20:57:47 ID:KnwMe9T8
そういや洗剤原液なんて粘膜とかに付いたらヤバいんじゃねーか?

と思って軽い気持ちでググったら蓮コラ以上のグロ画像が出てきやがった畜生
216創る名無しに見る名無し:2009/09/26(土) 21:23:48 ID:/rSet0Yu
台所用洗剤だろ?
そんなにヤバかったら逆にあれだろ
イギリスなんかは洗剤で皿洗った後、水で流さないらしいし。
217創る名無しに見る名無し:2009/09/26(土) 22:20:21 ID:mrwuIRuy
経皮毒性のある物質の皮膚への吸収率には違いがあります。

これは体の部分によって皮膚の厚みが異なるためです

例えば外部との接触の多い部分、かかとや手のひらのような場所では皮膚(角質層)が厚くなっています。当然ながら皮膚が厚くなるほど、経皮毒性物質も吸収されにくくなり、逆に皮膚の部分が薄くなればなるほど、経皮毒の影響を受けやすくなります。

腕の部分を1とした場合の各部分の数値は下記の通りですので参考にしてみてください。( )内がその数値です。

 足のうら(0.14)
 足くび(0.42)
 手のひら(0.83)
 背中(1.7)
 頭皮(3.5)
 わきの下(3.6)
 くび(6.0)
 ほお(13.0)
 性器(42.0)


経皮毒(けいひどく)とは、その名の通り、皮膚を通して(経皮)、体の中に毒が入ってくることをいいます。

わりと最近でてきた言葉ですので、ご存知ない方も多いかもしれませんが、テレビでも特集が組まれるくらい話題になっています。

私たちが日常使っているシャンプーや洗剤などの日用品には体に悪影響を及ぼす有害な化学物質が含まれています。
218創る名無しに見る名無し:2009/09/26(土) 22:38:36 ID:QTsgkyV0
なあに、かえって免疫力がつく
219創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 01:23:36 ID:/hBGWl43
そういやスパロワで冥王が洗剤で殺してたね
220創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 01:33:22 ID:B0i4TXXD
なんかみんなでよってたかってゆのっちを殺そうとしてるようだw
221創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 01:49:16 ID:hESj1QJN
一話目→森の中に放り出されて迷子、グリフィスに遭遇して失禁
二話目→(メタ的な意味で)危険アイテム首輪探知機入手、ゾッドに遭遇して失禁
三話目→旅館に到着するも、グリフィスに置いて行かれた上に風呂場ですっ転んで全裸で気絶
四話目→誤解、誤殺未遂、失禁、全裸+洗剤と尿塗れのまま街へ。歩く死亡フラグゴルゴに危険人物認定

ひでぇwww
しかもこの上放送でさらに追い打ち確定という
222創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 01:54:50 ID:x495eoja
あれ、街に行く描写あったっけ?
行き先不明じゃなかったっけ
223創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 01:57:54 ID:x495eoja
ああ、外が既に街なのか
街っつーと、どうもデパート近辺をイメージしてしまう
224創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 02:52:31 ID:il+tYzbh
まて、その表現だと今にもゴルゴ死にそうだw
225 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:02:50 ID:FlCGUcJb
出来ましたので投下します
226 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:03:57 ID:FlCGUcJb

夜の大通りを二人組の『男女』が北上を続けていた。
先程まで二人とも情報交換しつつも他愛のない雑談を続けていたが次第に二人とも話題が無くなると
それまでの騒がしさが嘘のように静まり黙々と足を進めていた。

「ねえ、九ちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

だが唐突にその沈黙を破り、ボンちゃんことMr.2ボン・クレーが連れに話しかける。

「奇遇だな。実は私も聞きたいことがある」

九ちゃんこと柳生九兵衛もまたボン・クレーに話しかける。

「あ〜ら、じゃあ九ちゃんから言ってみてよう」
「いや、ボンちゃんから言ってくれないか」

お互い、相手が先を言うよう促す。

「も〜う、えんりょうすることないわよ。九ちゃんから言ってみなさいよう」
「いや、ボンちゃんから先に言ってくれ」

二人とも先を相手に譲ろうとする。自分の口から『それ』を言うのを躊躇うかのように。

「多分、あちしと九ちゃんの言おうとしてることはおんなじだと思うんだけど……」
「おそらく、私もそうだと思う……」

だが二人ともそれでは話が進みそうにないので歩み寄る。

「じゃあ……あちしから言うけど……九ちゃん、仲間のこととか考えてたでしょ?」
「……ああ……ボンちゃんも同じか」
227 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:06:16 ID:FlCGUcJb


      ◇       ◇       ◇


ボン・クレーは立ち止まると九兵衛に向き直る。

「あちしの子分は殺したって死なない連中ばっかりなんだから心配する必要なんてないわね……なんて、そう思っていても
 どうしても心配しちゃうのよね……」

明るく振る舞ってはいたがボン・クレーも不安が無い訳ではない。一瞬、神妙な顔をする。

「で〜も、あちしのかわいい子分たちはみんなしぶといからそう簡単にくたばらないわよう!」

そう言うと笑顔を作りクルクルと体を回転させる。

「で、九ちゃんのお友達はどうなのよう?」
「ここに誰が呼ばれているかわからない。だが私も同じだ。確かに彼らは強い。それでも不安になる」

自分が思い浮かべる彼らは少なくとも自分の身は自分で守れる、だが刀を奪われ、たった一人で
放り出されればもしやと思ってしまう。
考えないようにしてても嫌な想像が脳裏をかすめる。こうしてる間にも彼らが自分の知らない場所で危険な目に遭ってるのでは
と考えると……
228 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:08:13 ID:FlCGUcJb

「あ〜もう、そんな顔してちゃダメよ、九ちゃん。心配するな、な〜んて言わないわよ。でもね、そんな辛気臭い顔していたら幸運は逃げていくわよ」
「ボンちゃん……」

そう優しく彼女に囁くボンちゃん。

「いい! こういう時は例え嵐になろうが海王類が現れようが……或いは殺される瞬間でもカラ元気で笑ってるものなのよう!」

ボン・クレーも海賊のはしくれだ。海賊王ゴールド・ロジャーの最後ぐらいは知っている。
さすがに自分を海賊王と重ねるような不遜なことはしない。そのぐらい身は弁えてる。

ただこの友人を元気づけたい一心でそう言ったのだろう。

「な〜んて、そんなことが誰にでも出来るんだったら誰も苦労なんてしないんだろうけどさ」
「いや、確かに難しいことではあるだろう。だが彼らはそういう気概の持ち主だった。私に心配されるほど弱くはなかった」

そうだ、あの時、私と戦っていた新八君は追い詰められても諦めはしなかった。
確かにこの首輪を外す方法やここから脱出する方法の手がかりすら掴めていない。
しかし、だからといって何もしないで諦めてしまっては昔の私と何も変わらないではないか。
先のことは分からない。だが彼のようにぎりぎりまで足掻いてみようとは思う。

「先を急ごう、ボンちゃん。生きて再会する。必ず」

その顔に浮かぶ決意の色を見て声を出さずににやりと笑う。

(……いい顔になってきたわねえぇ)

どうやら風向きは悪くはないみたいだ。
無論、最初の放送でお互いの知人が呼ばれる可能性はあるだろう。
だがこんな碌でもない世界でも新しい友人に出会えることが出来た。
そう思えばこの世界も悪くはない。
229 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:10:18 ID:FlCGUcJb

「さ〜てと、九ちゃんも元気になったことだし、ここは一曲……」
「ま、待て。まだ教会まで距離がある。出来れば放送までに着きたい。今は先を急ごう」
「ちっ、仕方ないわねえ。まあ、あちしも早くかわいい子分に会いたいし、少し急ごうかしらぁ」

そして二人は移動を再開させた。
当初、このまま森を北東へ斜めに突っきることを主張した九兵衛だったがボン・クレーはそれに反対した。
この地図が正しければ湖のほぼ真東の位置に教会が存在する。下手に森を移動して迷子になるよりは大通りで湖近くまで移動して、
湖からコンパスで確認しながら真東へ移動した方がいいから一度湖まで行ってしまおうと言うのだ。

「こういう時は急がば回れって言うじゃない。そりゃあ斜めに移動したら早いかもしれないけど、これでもし迷ったら最悪よう」

地図やコンパスがあっても迷子になる可能性があるのなら目印になりそうな場所、湖をスタート地点にして真東に移動すればいい。
多少、大回りになるがこれなら迷う可能性も少なくなるだろう。

「なるほど、ずいぶん手慣れているな、ボンちゃん」
「まあね、これでも海ぞ、じゃなくて船の船長をしてるんだからこれぐらい当たり前よう」

カナヅチなのは聞いたがボンちゃんが船の船長だとは初耳だ。
だがそれなら地図や海路を見てどのルートが最良なのか判断するのに長けているのだろう。
九兵衛は自分よりこういうことに慣れていそうな彼の意見に賛同することにした。


  ◇     ◇     ◇


「何なのかしらね、アレ? 明らかに怪しいすぎるわよう」
「どうした、ボンちゃん?」

湖へとたどり着いた二人は湖の東側へと迂回していた最中、湖の方を見つめてボン・クレーがそう呟く。

「ほら、あれをご覧なさいな。湖の上、それも湖の中央だけが霧で覆われてるわよう。しかも不自然なぐらいに濃い霧でね」

その指摘に九兵衛は湖の方へ目を向ける。確かに月明かりでもハッキリと分かる位に湖に霧が立ち込めていた。

「確かに霧で覆われてるが湖の上に霧が出るのは珍しくないのではないのか?」
「それでもあ〜んな中央だけピンポイントに濃い霧が懸かるなんて不自然よ。普通、もっと湖全体に漂ってるものじゃない?」

確かに言われてみれば不自然だ。それに霧が出るにしてもこの暖かさで霧が発生するのだろうか?
230 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:14:03 ID:FlCGUcJb
「では、あの霧は人為的だと?」
「そうとしか考えられないわね。ただ、何でそんなことするのか理由はさっぱりだわね。何か見られたくないものでもあるのかしら?」

霧を発生させて視界を遮らせる。
さまざまな物を操る能力者が存在する世界に身を置くボン・クレーにとって霧を操って何かを隠すという考えはごく自然なことであった。

「しかし誰がこの様なことを? 他の参加者か或いは……」
「あの小生意気そうな小娘とピエロに決めってるわよう。ふふん いいわねえ、なんかどんどん風向きが良くなってな〜い?」
「しかしこの霧の中を探索するとなるとさすがに小舟が必要になってくるな。泳いでも行けなくもないが?」

泳ぐという言葉を聞いてボン・クレーの顔色が青くなる。

「そ、それだけは勘弁よ、九ちゃん! あちし、泳ぐのだけは駄目なのよ!」
「ああ、確かカナヅチって言ってたな」
「ええ、あちしは水とかそういうのは駄目なのよ! それにけっこう広いし、じっくり探索するとなると小舟があった方がいいと思うわよう」
「しかし……小舟となると何処で調達する? ここから市街地まで距離がある上にすぐ見つからないぞ?」
231 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:16:38 ID:FlCGUcJb

浅月と神社での合流のことも考えると時間的余裕が欲しい。
北西の市街地へ目的変更すること自体はいいが小舟を見つけてここまで戻るとなるとかなりの時間を喰いそうだ。
いや、小舟と同時にそれを載せる大型車を調達することが出来れば時間短縮は可能だ。しかし車の入手となると……
と思考が堂々廻りに陥りかける二人に突然、闇夜を切り裂く程の爆音が辺りに鳴り響いたのはその少し後のことだった。

「な、なんだ!」
「ち、ちょ! なによいきなり! びっくりしたじゃないのよう! なんなのよ、もう!」

突然の爆音に驚きの言葉をもらす。
爆音はすぐに収まったが動揺が収まるまでしばらくかかった。

「なんだったのよ……誰かが爆弾でも使ったとでもいうのう?」
「わからない……でも、あの方向に人がいるのは、確かだと、思う」
「ならここでうだうだするより行った方がいいかもね。危険だけども今ので人が集まるかもしれないわね」
「……よし、行こう!」

一瞬の躊躇の後、今の爆音がした方向へ向かうと決断する。
嫌な予感がする。誰かが戦ったのだろうか? だとすれば死傷者が出たかもしれない。
確かに危険人物も寄って来る危険性もあったが危険を恐れていても始まらない。
それに万が一、そこに妙ちゃんや新八君が居たとしたら……

「行こう、ボンちゃん」
「ちょっと、少しは待ちなさいよ!」

そう言いつつ自身も駆け足で現場へと向かう。九兵衛一人にさせるのは危険だ。
九兵衛は得体の知れない焦燥感に突き動かされるままに走る。
232 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:18:45 ID:FlCGUcJb

【D-7/湖付近/1日目 早朝】
【柳生九兵衛@銀魂】
【状態】健康
【装備】 シルフェのフード@ベルセルク
【所持品】支給品一式 改造トゲバット@金剛番長 シルフェの剣@ベルセルク
【思考】
基本:殺し合いにはのらない。大切な人の志まで含めて護る。
0:あの爆音は何だ?
1:爆音のした方向へと向かう。
2:最初の放送後、神社で浅月と合流。
3:新八や他にも知り合いがいるなら合流したい。
4:卑怯な手を使う者は許さない
5:妙ちゃんもこの会場に……?
6:あの霧はいったい?


※参戦時期は柳生編以降。
※西沢歩、麦わら海賊団(アラバスタまで)、BWオフィサーエージェントの顔と名前を知りました。


【Mr.2ボンクレー@ONE PIECE】
[状態]: 健康
[服装]: アラバスタ編の服 森あいの眼鏡@うえきの法則
[装備]:
[道具]: 支給品一式 スズメバチの靴@魔王JUVENILE REMIX コインケース@トライガン・マキシマム
[思考]
基本:友達や部下を見捨てるようなマネはしない。脱出する。
0: ちょっと待っててねい、可愛い子分たち!
1: ひとまず放送まで九ちゃんの人探しを手伝う
2: 巻き込まれているかもしれない子分たちや麦ちゃんを捜す。
3: 殺し合いなんてどうでも良いけど自分の邪魔する奴や友達を襲う奴は許さない
4: 霧の向こう側が気になる


[備考]
※アラバスタ脱出直後からの参戦
※グランドラインのどこかの島に連れて来られたと思っており、脱出しようと考えています
※マネマネの実の能力の制限
 メモリーが消去されています。現状変身できるのは消されていない
 麦わら一味(アラバスタ編まで)+BWのオフィサーエージェントと、
 直接顔を触れた人物→西沢歩、柳生九兵衛
 その他の制限はまだ不明。


※湖の中央部のみ、濃い霧が漂っています。
233 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 15:20:05 ID:FlCGUcJb
投下終了です
題名は『犬も歩けば棒に当たる? なんで棒?』です
234創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 15:35:31 ID:yBM3l+6w

このコンビは好きだ
235創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 16:35:05 ID:x495eoja
投下乙
この近辺で爆音ってなんだったっけ
工場?

「早朝」は月とかもう沈んでね?
日は昇っていなくてもうすぼんやりとしているものだぞ
森の中だから暗いのはいいんだけど
236創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 17:04:03 ID:qkhdz0MI
投下乙
この二人は工場へ向かうのか
鈴子の孤立っぷりに拍車がw

あと九兵衛の一人称は「僕」です

>>235
言っておくが月は夜昇って朝沈むものじゃないぞ
237創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 17:07:05 ID:RScT3NxO
またワンピースのキャラ生き残ったか…
贔屓もいい加減にしろよ
238 ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 17:59:08 ID:bKnwR/3c
予約はしてないのですが、鈴子を仮投下しました。
何か意見があればお願いします。
239 ◆Eoa5auxOGU :2009/09/27(日) 19:13:13 ID:FlCGUcJb
仮投下乙です
自分は問題ないと思いますがスケートか
原作の能力者とは微妙に使い方が違いますが使用者が違いますしいいと思います

>>235
工場から周囲一マス程度に響き渡りましたって書いてあったのでD-7も含まれると解釈しました
月の件はまだ沈みきってないということで
240創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 19:49:12 ID:hESj1QJN
仮投下乙です。

ちょっと質問ですが、
>スパスパの実は指・肘・膝・足・腕等、四肢の至る所を刃物に変える事が出来た。
とのことですが、全身を刃物化するのは無理ということでしょうか?
241 ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 20:25:10 ID:bKnwR/3c
>>240
いや、出来ないと言う事は無いでしょうが、原作で四肢以外を刃物に変えた描写が無いのでこんな形になったのですが
そうですね……

>スパスパの実は指・肘・膝・足・腕等、四肢の至る所を刃物に変える事が出来た。



スパスパの実の力で指・肘・膝・足・腕等、四肢の至る所を、刃物の刃の部分に変える事が出来た。
ただ、胴体や頭は刃物にするイメージが出来ず、かろうじて鼻先と舌位にしか刃を作り出せなかった。
だが、刃物とは刃にあらず。
刃物には刃があれば当然刀身もある、全身刃物人間になると言う事は刃の部分とは別に、鉄の硬度を持つ刀身の部分にも変えられると言う事だ。
だが鈴子がその事に気が付いているかは不明だ。

に修正しようと思います。
242創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 20:58:48 ID:RScT3NxO
そんな面倒なもん出すなよ
これだからワンピ厨は
243 ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 21:57:25 ID:gODot9dG
投下します。
244信じたい人誰ですか? ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:02:33 ID:gODot9dG
「……やはり一度市街地に向かうしかないですわね」

捻挫した左足首を氷水で冷やすという、応急処置をとりながら鈴子は呟いた。
捻挫を治療する道具を求め教会内を探したが、運悪く救急箱の類を見つける事が出来なかった。
その代り手ぬぐいを十枚ほど確保できた、もし佐野と合流したなら彼に渡しておこう。
医療品を見つけられなかったので、仕方が無く所で見つけた鍋に水を張って氷を入れ、その中に左足首を突っ込んで冷やす事にした。

しばらくこのまま動けそうにないので、鈴子はとりあえずこれからの事について考えてみる。

(まずロベルトを生還させるのが最優先ですわね)

この殺し合いが自分達の戦いであろうがなかろうが、ロベルトが参加させられていたならば、彼だけは生還させなくてはいけない。
その為にロベルトや十団の団員と合流して、自分達の戦力をまとめる必要がある。
それと同時に、能力を使用する時に使う道具も十分な量を、出来るだけ早く確保しておきたい。


植木に団員を倒されていき、ロベルト十団も残り六人。
その内の一人、明神の『口笛をレーザーに変える能力』の様に、特に道具を必要としない団員を除いて、私が必要とするビーズの様に確保しておいた方が良い道具は……
佐野―『手ぬぐいを鉄に変える能力』―手ぬぐい
ベッキー―『BB弾を隕石に変える能力』―BB弾とそれを撃ち出す為の銃
鬼―『竹みつを大ばさみに変える能力』―竹みつ
マルコ―『トマトをマグマに変える能力』―トマト……って、六人中明神を除く全員が道具が必要じゃないですか!?


神様を決める戦いに参加している中学生は、基本的に多種多様な才能を持った少年少女である。
まあ、大人顔負けの武術家や暗殺者、兵士や天界人等いたりするが、基本的に参加者は普通の中学生である。
よって、最初に支給されたアイテムによっては、自分に武器がなく相手が強力な武器を支給されていたならば、能力者としてはかなり格下の相手だったとしても、あっさりと殺される可能性が出てくる。
245信じたい人誰ですか? ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:03:32 ID:gODot9dG
ロベルトには神器があるので特に道具はいらないから心配ない。
参謀指令のカルパッチョについては能力自体が不明だ。
だが佐野の手ぬぐいの様に比較的手に民家などで入れ易い物ならともかく、ビーズやトマトははっきり言って微妙だし、竹みつやBB弾はかなり厳しいだろう。
最悪十団は、全員が合流する前に半壊する恐れが強くなってきた。
いや、いくら佐野の手ぬぐいが手に入れ易くても、スタート地点が森の中だったりしたら話が違ってくるかもしれない、ならば状況なお悪くなる。


これは一度デパートに立ち寄り、必要な道具を手に入れておかなければなりませんわね。でも…


だがそれには一つ問題点があった。
デパートの近くに飛ばされた能力者が、自分に必要な道具を確保した上で、自分の様に道具を求めに来た参加者を狙って待ち伏せしているという可能性だ。
いくら他の十団の団員も向かっている可能性があるとはいえ、わざわざ虎穴に入る様な真似をするべきだろうか?
北の市街地に向かう手もあるが、この地図からでは何処にそう言った手の物が売っている店があるか分からない。
下手に当てもなく彷徨うよりは、素直にデパートに向かった方が良いだろう。


そうね、デパートで道具を確保出来るかどうかが、今回の戦いの最初の分かれ目。
この先の展開を有利に進める為にも必要な事ですわ。
どの道この足では、6時までにデパートに辿りつくは些か厳しいですし。それなら放送後の行動方針の決定に差し支えがありませんわ。
結局の所、後の事を考えればビーズの確保に一度は向かわなくてはなりませんものね。


鈴子にとって最悪なのは、この殺し合いにロベルトが参加しておらず、尚且つ前の戦いと全くの無関係である事である。
鈴子はあくまで自分勝手な他人が信頼出来ないのであり、他人がどうなろうと構わないという非情な人間ではない、むしろ仲間に対する憧憬は十団の中で一番強い。
故に、脱出不可能で他の人間を全員殺していく事には、どうしても抵抗があるのだ。
24時間死者無しの相討ちは、自分の手に負えないロベルトの脅威になるかもしれない能力者を葬る為と、無関係な人間を巻き込む事に対して自分の心を納得させる理由があるからいいが。
246信じたい人誰ですか? ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:04:58 ID:gODot9dG
だが脱出を目指すなら目指すで、不安な部分が鈴子にはある。
脱出するには首輪の解除は必須事項だ、その為に爆発物に詳しい人物や装置を解体出来る技術者の協力が必要不可欠になる。


ですが十団の団員以外の人間に信用がおけますでしょうか?


自分の事ばかりしか考えない人間を、一体どれほど信用していいのか。
彼らは十団の様な仲間では無い、自分が不利になれば容易に相手を見捨て裏切るに決まっている。
そんな人物を頼りにしても、こちらの寝首をかかれるだけではないのだろうか?
でもそれはある意味仕方のない事、誰だって命は惜しいのだ。
生きる為なら裏切りの一つや二つ位、平気で行いかねない。

でも自分達は違う。
自分たちロベルト十団は一致団結し、命がけでロベルトを優勝または共に脱出を成功させ……

命? 命がけで…?

ふと、鈴子は自分が何かとんでもない思い違いをしているのに気が付いてしまった。

まず前の戦いでは相手を必ずしも殺す必要はなかった。
気絶させてしまえば、それでリタイアなのだから。
だがこの殺し合いはそうではない。
この場からの脱出が不可能な場合、自分が生き残る為には最後の一人になるまで他の人間を皆殺しにしなくていけない。
そう、例えそれがロベルトであったとしてもだ。

そもそも十団は、能力を使うと寿命が一年削られるロベルトの為に、自分達を含めロベルト以外の能力者を排除する事が主な仕事だ。
その代価として、一人勝ち残ったロベルトが空白の才を用いて世界を無にし、団員がそれぞれ理想の地位を与えられるというものだ。

一見何も問題がなさそうなこのシステム、実は幾つも問題があったのだ。
ただ、前の戦いでは無視できるものであって、この殺し合いでは無視できなくなってしまっただけ。

247信じたい人誰ですか? ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:05:43 ID:gODot9dG
まず一つ目、最後に残るのはロベルトである必要が無いと言う事。
空白の才―これを手にする権利が誰にあるのかそれを最初に決めておかなければ、お互いに相手を出し抜こうとして纏まった行動はとれないだろう。
幸いロベルトには、誰もが最強の能力者として認められるだけの実力があった。
故に空白の際の権利も、十団の頂点に立つ事もだれも異論が無かった。
だが逆に十団の頂点がロベルトである必然性がないのも確かであった。

二つ目、それは十団として働いた報償はその団員自身が生きていなければ、貰う事の出来ないと言うごく当たり前の物。
まあ、十団には入れ替え制と言う物があるから、ロベルト以外の能力者を全滅させるまで勝ち残っていなくてはいけないが。

さてここで一番の問題なのが、残りの十団の団員がどれ程ロベルトに忠誠を誓っているかである。
具体的に言えば、自分の命を差し出してでもロベルトを優勝させる気があるかと言う事だ。


私には自分の命を差し出してでも、ロベルトを優勝させる覚悟があります。でも、他の団員の方は……


そう、他の団員は自分がロベルトに敵わないと知り、それでも自分の欲望を叶えたいと十団に集った自分勝手な人間達。
実際の所は本人に聞いてみないと分からないのだが、今の鈴子の思考は団員がそうであると決めつけてしまっている。
そう、自分の命惜しさにロベルトを裏切るのではないかと。


なんて事ですの……、この殺し合いで心から信頼できる仲間はロベルトしかいないじゃないですか。


単純な戦闘でロベルトが負けるとは微塵も思えない、だがロベルトにも弱点はある。
能力の限定条件だ、後ロベルトの寿命は何年残っているだろうか?
50年それとも10年? どちらにしても残りの寿命が無くなればロベルトは死ぬ、例えどれだけ健康で無傷であろうと死ぬ。
そのリスクを回避する為に十団は存在しているのだから。
しかしロベルトに武器が支給されていない状態で、何人もの能力者に襲われたら?
団員に裏切られ、罠にはまり無駄に能力を使わせられたら?
直接倒される事は無くても、能力の使い過ぎによる死はあるのではないか。

248信じたい人誰ですか? ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:06:26 ID:gODot9dG
これはあまりのんびりと行動している時ではないですわ。
とりあえずロベルトが参加していると仮定し、合流したら彼の代わりに戦える状態で無いととても拙いですわ。
ならば……


鈴子はディパックからスパスパの実を取り出す。
応急処置を施したとは言え捻挫した左足はまだ痛む、敵に襲われれば逃げ切るのは難しいだろう。
加えて、いざ敵に遭遇してからこの実が本物かどうか試すのは危険すぎる。
もし偽物だったら、相手に対して致命的なスキを見せる事になるし、使い方が分からなくては碌に戦う事も出来ない。
ならば今この場で効果のほどを確認し、基本的な使い方だけでも覚えておいた方が良いだろう。
そう思い、鈴子はスパスパの実を食べる事にした。

「……うっ!」

一口食べて思わず吐き出しそうになる鈴子。
毒がある訳ではない、悪魔の実は共通して不味いのだ、もの凄く。
吐き出したいのを堪えつつ、鈴子は悪魔の実を完食した。


あれから少しして、スパスパの実の基本的な使い方を覚えた鈴子は、E-9の道路をすべる様に移動している。
いや、実際に滑ってはいるのだ。
スパスパの実の力で指・肘・膝・足・腕等、四肢の至る所を、刃物の刃の部分に変える事が出来た。
ただ、胴体や頭は刃物にするイメージが出来ず、かろうじて鼻先と舌位にしか刃を作り出せなかった。
だが、刃物とは刃にあらず。
刃物には刃があれば当然刀身もある、全身刃物人間になると言う事は刃の部分とは別に、鉄の硬度を持つ刀身の部分にも変えられると言う事だ。
だが鈴子がその事に気が付いているかは不明だ。
能力の関係上、基本的に接近戦を苦手とする鈴子にとっては中々良い能力と言えた。
今はその能力を利用し、左足の足の裏を刃物に変えスケートの様に地面を滑って移動している。
これならば、歩くよりかは左足に負担がかからず、移動速度も上昇して一石二鳥であった。

249信じたい人誰ですか? ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:07:46 ID:gODot9dG
待っていて下さいねロベルト、直に合流して貴方の敵は私が蹴散らします。
ですから無駄に命を減らさないでください、例え私の想いが片思いだとしても、私はすっとあなたと一緒にいたいのですから……


鈴子はただ只管に、想い人であるロベルトの為に行動する。
だが、この殺し合いにロベルトが参加してないと知れば、彼女はどうするのだろうか?
それはまだ分からない……

【E-9/道路/1日目 早朝】

【鈴子・ジェラード@うえきの法則】
[状態]:疲労(小)、左足首捻挫 、スパスパの実の能力、カナズチ化
[服装]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、妖精の鱗粉@ベルセルク 、手ぬぐい×10
[思考]
基本:このゲームが自分達の戦いの延長ならロベルトを優勝させる、そうでないならロベルト及び十団の団員と合流して脱出(最悪ロベルトは脱出させる)
1:ロベルト以外の人間(十団も含む)は信用できない。
2:このゲームが自分達の戦いの延長にあるかを確かめる。
3:ビーズやその他十団の道具を確保する為に、デパートに向かう。
4:情報を集め今後どうするかを考える。特に他の参加者への接触は慎重に行う。
5:(この場にいるなら)ロベルト及び佐野等の十団の団員と合流。
6:(この場にいるなら)植木、ヒデヨシ他の能力者を倒す。特に植木は確実にこの場で倒しておきたい。
7:ロベルトがこの場にいない場合、倒せない能力者がいるなら誰も死ななかった時の全員死亡を狙う。
[備考]
※第50話ロベルトへの報告後、植木の所に向かう途中からの参戦です。その為、森とは面識がありません。
※このゲームが自分達の戦いとは関係ない可能性を考えています。名簿にロベルトや十団の団員及び自分の知る未だ失格になっていない能力者の名前が1つでも無ければ関係ないと判断するつもりです。
※能力者以外を能力で傷付けても才が減らない可能性を考えています。実際に才が減るかどうかは次の書き手に任せます。
※気絶させても能力を失わない可能性を考えています。気絶したらどうなるかは次の書き手に任せます。
250 ◆Nfn0xgOvQ2 :2009/09/27(日) 22:10:57 ID:gODot9dG
投下終了です。

意見や質問があればお願いします。

ははっ、ほんっと久々に投下できたや、さて次はいつ投下できるかなぁorz
251創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 22:18:43 ID:FlCGUcJb
投下乙です
だからロベルト第一は分かるけどここには居ないってw
ごちゃごちゃ考えてると死ぬぞw
そして乗らないのはいいが24時間ルール狙いは珍しいな
でもそれはロワを舐めてるぞw
252創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 22:23:33 ID:hESj1QJN
投下乙です。

あぁ「全身刃物化」の意味を微妙に誤解してるということか。

しかし初回からここまで見事な空回りっぷりだw
253創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 23:47:43 ID:x495eoja
投下乙
なんの情報も得られていないとはいえ、徹底して現実に即してねーなw
しかも火薬庫に飛びこむのか……
254創る名無しに見る名無し:2009/09/28(月) 00:44:59 ID:GxZgQb1+
徹底して現実に即してないとは

・協力する、利用するにしても他の参加者とかかわろうとしない
・相手の都合を考慮せず自分の不信感だけを肥大させてる
・殺し合えと強制されてるのに未だに前のゲームを引きずってる
・ロベルト(居ないけど)を盲信してる
・客観的に見てるようで見えてない
・一人で優勝させるとか脱出させるとかもうアホかと
・誰も死ななかった時の全員死亡を狙うとか無理だろJK
255創る名無しに見る名無し:2009/09/28(月) 01:53:47 ID:TAKx2gSz
投下乙です。

ボン九コンビはいいなぁ…一番真っ当に少年漫画してるよ、性別あやふやだけどw
工場は目立った危険こそ今はありませんが、いろいろと残ってるからなぁ…楽しみです。

そして一貫して空回る鈴子さん。ある意味清々しいw
>客観的に見てるようで見えてない
これが全てな気がしますねぇ…ファーストコンタクトが今後を決めそうです。


1つ質問なんですが、今停滞中のとあるパートに手をつけてるんですけど、どーしても自己リレーな部分が出来てしまって…
放送前にそれは早い、って人もいるかと思ったんで、意見をうかがいたいです。
いかがでしょう?
256創る名無しに見る名無し:2009/09/28(月) 06:49:20 ID:ljTwFDTz
書いてる、もしくは書く気がある人がいなければいいんじゃね
どこですか?
257創る名無しに見る名無し:2009/09/28(月) 19:03:06 ID:lbohCS5E
一部が自己リレー程度ならOK
全部が自己リレーでも1ヵ月ぐらい放置されてたら自己リレーもOK
258創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 02:38:35 ID:RN+STpqK
あとレガート書いてる人がいるっぽいけど、そこが終わったらもう放送行っていいんじゃ?
正直残った面子だけでまだ何か起こしたり方針転換出来そうなのは精々金剛組くらいしかいない
いや支給品で自爆とかは出来るけど

んで金剛組含め全員誰にも会わず何も起きずに放送までいっても特に不思議は無い状況
正直、ここでただ時間消費させるだけの繋ぎを書くより次行きたいんだがどうだろ?
259創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 05:19:14 ID:Un/z8e2/
確かにレガートとロリコンがかかれたら、三人組とキリコは飛ばしても大丈夫だと思う。
自分も早く放送に行きたいな。
260代理:2009/09/29(火) 20:44:37 ID:JTSImsC2
代理投下します
261代理:2009/09/29(火) 20:45:40 ID:JTSImsC2
 
「……あった――――」

あたしは“それ”を手に取り、ごくり、とつばを飲み込む。
……さすがに、これは殺し合いに乗った参加者の罠とは思いにくい。
この場所に拉致されてから、もうすぐ6時間。
それだけの間あたしたちはここにいて、誰の姿も確認してない。
つまりは、この競技場に何かを仕込むのは誰にも出来ない。

これがここにある、という事は、考えられる可能性は2つ。
あのblogの主が今のところ殺し合いに乗っていない人物であるか、あるいはこのゲームの運営に関わっている人物であるか、だ。
殺し合いに乗っただけのいち参加者が、このアイテムがこんなにも簡単に入手できる事を広める理由はないように思える。
確かにこれを上手く使えば一時的な撹乱はできるだろうけど、それでも最終的なリスクを考えると……自分の喉を絞めかねないはず。

見つけた物品、つまり『携帯電話』を握り締めて、思索に入る。
もちろん警戒は解かない。解けない、といった方が正しいかな。
……自分の中での不安がどんどん膨らんでくるのが身に染みる。
特にあの――喜媚ちゃん、の得体の知れなさについて。

息を吸う。思考を整調化するために。

落ち着け。
少なくともあの子は最初にあたし達を殺すことが出来たろうに、それをしていない。
あたしを殺すメリットも現状思いつかない。
……妲己とスープーという人たち、少なくともその二人を見つけるまでは、向こうにとっても協力しない手はない。
ない、ない、ない。
ないを3つ重ねて、無理やり心の奥底に不安を仕舞い込む。

それに、さっき聞いた話では喜媚ちゃんはあのシンコウヒョウ(申公豹と書くらしい)の知り合いだという。
あからさまに怪しい情報だけど、だからこそ信用できるとは言えないかな。
こういうのは黙っていたら後々絶対にこじれるしね。
それをあたしに教えたという事は、後ろめたいことはない、と言いたいのかも知れない。
……何も考えてない可能性も大きいけど。

競技場は無音が耳に痛いくらいだけど、むしろこの方が音も響いて危険を察知しやすい。
カノン君ほどではないにせよ、あたしだってブレード・チルドレンとして修羅場はくぐってきてる。
喜媚ちゃんみたいに空でも飛んでこない限りは足音の接近は察知できる。
そして、喜媚ちゃんにしてもあの騒がしさだから、猫を被ってるのでもない限りまず接近に気付けるはず。
大丈夫、ここはまだ安全圏。
当の喜媚ちゃんもあたしがblogを閲覧しているあいだ、後ろから覗いてると思ったら散歩と称してどこかへ行ってしまった。
この近くに姉様たちがいないか探しっ☆――なんて言ってたから、それ程遠出はしていないとは思う。
単独行動させるのは色々な意味で不安だけど、あの子があたしと敵対するつもりがないならばとりあえず静観しよう。
今はこの電脳空間を利用して情報を得るのが先だし、機嫌を損ねるのはマズい。
それに酷な言い方だけど、もしそれが原因で死んでしまっても彼女自身の責任だ。

けど。
最初の我妻由乃との駆け引き以後は全く以って静かなものだ。
それはあたしの読みどおりにここに誰も注目していないからだろう。
運良く、平穏にありついているだけなんだ、あたしたちは。
262代理:2009/09/29(火) 20:47:13 ID:JTSImsC2

……多分、とっくにこの島のどこかは戦場になっている。
照明や空調といった競技場の設備を運用する部屋や事務室――そこで発見したFAXに記された要注意人物が、きっとその証。
備え付けのPCが生きていたのはとても助かった。
そのおかげでここにいながらにして、あたしはいくつかの情報を手に入れられている。

ただ、ほんの少しだけ先陣を切るのには出遅れたみたいだけど。
この手のサイトというのはたいてい古参のサイトほど集客率が大きいから、その意味ではあたしには最初からアドバンテージがない状態といえる。
アイデアを思いついたこの管理人は、その意味で確かにキレ者だ。

この人たちが信用に値するかどうかは別問題として、まずはこの情報が真という前提に立って行動してみよう。
偽だと決め付けて書かれた内容を無視するのはどう考えても得策じゃない。
たとえ撹乱する為の偽情報だとしても、そうするからには必ず裏の意図があるはずなんだ。

あたしとしては、何もせずじっとしているよりこの機会と道具を積極的に生かしていきたい。
特に、参加者全員の名前を把握できない今だからこそ出来る行動があるはずだ。

「……とはいえ、具体的にどう動こうかな」

……あたしの方針上、下手にたくさんの情報を公開して不特定多数にここを特定されるのは避けたい。
場合によっては放送後にここに篭城するのもいい一手になるだろうし。
だからこの二人(自演していなければ、だけど)のように、blogを開設して自ら情報を発信するというのは今のところナシだ。

だから、何か動くとしたらblogになにかコメントを書き込むか、メールでこの人たちに直接連絡を取るか。
つまりこの管理人さんを経由して皆になにかを伝えるか、管理人さんと個人的に連絡を取るか、となる。

要はどっちにしろ、管理人さんたちがどんな人か、が鍵になる。

“探偵日記”と“螺旋楽譜”。
二つのblogを閲覧して得られた情報を吟味してみよう。

まず、探偵日記。
ここの管理人は――、実利的な情報が主みたい。
参加者全員に広めておくべき情報を取捨選択し、送り届ける。
そしてその為に、状況を打開する為の情報を募る。
なるほど、確かに言っている事は理に適っているし、実際役立ちそうな情報が散見できるね。

撹乱情報である可能性は0じゃないけど、それでも要注意人物とか携帯電話とかの物資補給とか、
そういう持っておいて損はない、っていう情報をいくつもくれている。
妖怪の存在を示唆してるあたり、喜媚ちゃんの存在を知っているあたしには当面の状況証拠として十分だ。
そしてそれらの根拠となるソースの提示の確約もしている以上は、とりあえず載っている情報だけは信じてもいいと思う。

けど、人格的な問題には不安が残るかな。
コメント公開の要求をした人たちのコメントを抜粋して、その上で堂々と自分は情報を掌握するのをやめませんよと言っている。
これはこれである種の信頼をできるのは確かだけど、腹の内は読みにくい。
要警戒……だね。

けれど、それでも欲しい情報を優先的、または独占的に提供してくれる、という言葉はあまりに魅力的だ。
だって、絶対にいるはずなのだ。
あたしみたいに相手の思惑に乗っていると承知したその上で、この管理人に接触してみようという人間が。
そうした人々から情報を得られる立場にこの人はいる。
だとしたら。

……踏み込みすぎるのは危険だけど、見返りも大きい。
263代理:2009/09/29(火) 20:49:13 ID:JTSImsC2

まずはジャブを仕掛けてみるのが吉、かな。

とりあえず、こういうコメントをblogの記事に送ってみよう。
1stや申公豹といった人物の情報を求めているのなら、確実に食いついてくる。


『私は申公豹と面識のある、妲己という女性を探している。
 このコメントを公開した上で、妲己の情報を集めてくれるよう依頼したい。
 今後更新した記事で有力な情報を得た旨を示したら直接連絡を入れる』


……これなら、文体や内容からあたしが特定される事はない……はず。
ついでに、喜媚ちゃんの尋ね人探しにもなって一石二鳥だ。
運が良ければ妲己さん本人がこの探偵日記の管理人に連絡を取るかもしれない。

ぴ、ぴぴ、と携帯電話を操作して、送信。
ふう、と思ったよりも大きく溜息が出てきた。
PCを使わなかったのはIPとかで場所を特定される可能性があるからだけど、少し神経質になりすぎかもしれない。

ただ、あたしが神経質になる理由は十分すぎるほど、ある。
その理由とはもう一つのblog――“螺旋楽譜”の存在だ。

たった1Pの記事をくまなく目を通しただけで、ディスプレイの向こうにはある一人の男の子の姿が浮かんでくる。

「……弟さん、だよね? どう考えても」

徹底して自分を信じるなと告げて、それでも論理に基づいた推測を並べていく。
放任主義なまでに自分の事は自分で面倒を見ろといっておきながら、どうしてか他人を見捨てることもしない。

あたしの知っている“希望”の姿とこのblogの管理人の言動は、確かに重なっている。

「でも――」

でも、と繰り返す。
重なりはするんだけど、

「本当にこれは、あの弟さんなの?」

――微妙な違和感が、完全な一致を許していない。

画面の向こうに見える弟さんらしき人の態度は、確かに自信に満ちているわけじゃない。
奪われ続け、下を向き続けた過去を抱いている姿はよく覚えがある。
だけど。……だけど。
弟さんの持つ未熟さというか、甘えのようなものが感じられないんだ。
気のせいかもしれないけど、あたしが知るよりも多くの戦場を踏み越えたかの様な――、
そして、何か絶対に失わない支えのようなものを手に入れたかのような。
そんな印象を、あたしは感じた。

だから、信じ切れない。
この管理人は、本当に弟さんなんだろうか、と。
264代理:2009/09/29(火) 20:51:04 ID:JTSImsC2

……もちろん赤の他人がたまたま弟さんのような文章を書いた可能性もある。
だけど、この内容を鑑みると、その可能性は高くはない、と言える。

「……この首輪解除の下り。あからさまにあたしを意識しているよね。
 他のメッセージもブレード・チルドレンを鼓舞するような事ばっかり。
 そして何より――、」

静かに呟く。

「……弟さん。あなたがこんな事を頼む相手なんて、あの人しかいませんよね?」

――結崎ひよの。
彼女に向けて、掲示板を作り管理しろ、という内容の、分かる人にはすぐ分かるメッセージだ。
同時に、弟さんやひよのさんを知る人たちへの身元保証も兼ねている。

なるほど、確かにひよのさんなら情報戦では無敵といってもいいだろう。
あの人は底の知れないところがあるし、尋ね人や危険人物の所在を書き込んだりできる掲示板があれば鬼に金棒なのは確か。
スペックで言えば弟さんがこういうことを頼んでもおかしくはない。

そう、スペックだけで言うなら、なんだ。

「弟さんは、ひよのさんをむしろ遠ざけたり無関係を装ったりする方向で動いてたはず。
 ……なのに、これは一体どういうことなんだろう」

分からない。仮にこのblogの管理人が本当に弟さんだとして、ひよのさんをここまで頼りにできる理由が分からない。
まるで、あたしの知らないところで弟さんとひよのさんに何かあったかのようだ。
だけどそれは多分ありえない。
弟さんはまどかさんに心を向け続けているし、あのひよのさんへのぞんざいな扱いがたった数日で変わるとも考えにくい。

結局はあたしが文章から勝手に感じ取った事でしかないから、確かな保証はないけれど。
……それでも、自分の記憶と文章のイメージの食い違いを敢えて気のせい以外の理由に求めるのなら。

導かれるのは、何者かが弟さんを騙っている可能性。
blogで管理人=弟さんであると明言してるわけじゃないから、騙っている、というより装っている、の方が正しいかも。

そして、もし誰かが弟さんを装っているとするならば、その誰かというのはかなり絞る事ができる。

まず真っ先に思い浮かぶのは、当然清隆様。あの方なら弟さんを装うのは児戯にも等しいはず。
……でも、間違いなくこれは違う。
だって、清隆様なら違和感を感じさせる事なんてなく弟さんを演じきるはずだ。
それに、何というか……この文章は、清隆様らしくない。
こんなに自分を信じるなと繰り返すのは、たとえ弟さんを演じていても清隆様ならやらないだろう。

だから考えられるのはそれ以外の人。
かつ、あたしと弟さんの対決の中身を知る事ができるくらい近くにいる人だ。
そうでなければ、首輪解除に関する文であたしの存在を匂わせる事なんてできない。
そして多分、その人は首輪が装着者に合わせて大きさが変わる特異な物であることを知らない。
だから、工作技術で解除できるかも、などと書いているのだ。
あるいは、知っていて敢えてそれを書いていないか。
265代理:2009/09/29(火) 20:52:39 ID:JTSImsC2

とにかく、それに当てはまりそうな人は数えるほどだ。
ピックアップすると、5人ほどが思い浮かぶ。

こーすけ君、亮子ちゃん、アイズ君、カノン君、……ひよのさん。
多分、弟さん本人以外だとすれば、この5人の誰か。
ただ、こーすけ君と亮子ちゃんはこんな回りくどい手を使うとは考えにくいから、候補は実質三人。

……ただ、アイズ君も可能性は低いかな。
アイズ君はある意味一番弟さんに入れ込んでる。
だからこそ、“希望”である弟さんを装う事があたしたちにはどんな意味を持つかってのもよく知ってるはず。

そうなると、カノン君かひよのさんの二人が黒に近いグレーだ。
この二人なら理由も十分つけられる。
カノン君なら、ブレード・チルドレンをおびき出す為。
流石にこの状況下なら協力し合える余地は残ってるとは思うけど、それでもカノン君の信念はそう簡単に揺らがないはず。
ひよのさんなら、弟さんを装う事でブレード・チルドレンと協力体制を作る事と、弟さんの囮となって彼の動きやすい環境を作り上げる事。
そして、単純に弟さんへの呼びかけ、アピールの為、というので説明可能だ。

……もちろん、あたし達の事を一方的に知っている第三者である可能性も否定できないけど。
果たして画面の向こうにいるのは弟さん本人なのか、カノン君か、ひよのさんか。
可能性は低いけどアイズ君やこーすけ君、亮子ちゃんか。

ただ確かなのは、あたし達の関係者である可能性は、そうでない可能性より遥かに高い、という事。

「……よし!」

だったら、ここで勝負してみよう。
攻めなきゃ、何も得られない。

メール画面を立ち上げて、文字を一つずつ確かに打っていく。
探偵日記の管理人に送ったようなblogへのコメント形式じゃない。
メールによる直接連絡だ。


『このメールを確認したら、折を見て電話で直接連絡してください。
 電話番号は次の通りです。
    ×××-××××-××××  竹内理緒』


――竹内理緒の名前を出して、電話越しとはいえ直接話す段取りを整える。

これが、受け身な今のあたし唯一の攻め手。

この携帯電話はどうせ拾った物だから、電話番号を曝しても痛くも痒くもない。
それに竹内理緒という名前も、どうせ放送が終われば皆に知られる事になる。
だったらむしろ、名簿で確認できるようになる前に自分から竹内理緒を名乗る事で、適当な偽名ではない事をアピールしてしまったほうがいい。

わざわざあたしを暗喩する文章をblogに載せたくらいだから、あたし達からの連絡を待っているはず。
声を聞いて話し合えるならそれに越した事はないし、あたしとしても知り合いとは早めに連絡を取っておきたい。
電話の向こうが誰だったとしても、かなりの収穫が期待できると思う。
266代理:2009/09/29(火) 20:54:19 ID:JTSImsC2

……もうすぐ、放送。
どう転ぶ事になるかは分からないけれど、とにかく今は迂闊に動かず返事を待とう。

願わくば。
願わくば、希望が潰えることなく続きますように。


【B-5/競技場/一日目 早朝(放送直前)】

【竹内理緒@スパイラル 〜推理の絆〜】
[状態]:健康 精神的に多少の疲弊
[服装]:月臣学園女子制服
[装備]:ベレッタM92F(15/15)@ゴルゴ13、携帯電話(競技場で調達)
[道具]:デイパック、基本支給品、ベレッタM92Fのマガジン(9mmパラベラム弾)x3
[思考]
基本方針:生存を第一に考え、仲間との合流を果たす。
1:第一放送までは生存優先で現状待機。殺し合いを行う意志は無し。
  名簿の確認後、スタンスの決定を再度行う。
2:異能力に恐怖。
3:喜媚をとりあえず信用すると判断。しかし、どこか信じ切れていない。
4:申公豹の名前を餌に、“探偵日記”を通じて妲己を捜索。
5:“螺旋楽譜”の管理人が電話連絡してくるのを待ち、直接会話してみる。
[備考]
※原作7巻36話「闇よ落ちるなかれ」、対カノン戦開始直後。
※首輪の特異性を知りました。
※早朝時点での探偵日記と螺旋楽譜の内容を確認しました。
※螺旋楽譜の管理人は、鳴海歩、結崎ひよの、カノン・ヒルベルトの誰かが有力と考えています。
 ただし、鳴海歩だと仮定した場合、言動の違和感とそこから来る不信感を抱えています。


***************


「ロリッ☆ 姉様や貴人ちゃん、スープーちゃんは何処っ☆」

ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪ とファンシーな音程の鼻歌が静謐な大気を割っていく。
歌い手の名前は、喜媚。
朝の赤い日の中を踊るように足を踏み踏み、ホップステップターンにジャンプ。
くるんと一回転して、着地。
舗装されてない道土に二つの穴が開く。

「ついでにたいこーぼーも探しっ☆ スープーちゃんは太公望と一緒かもっ☆」

良くも悪くもどんな状況でもマイペースを崩さない彼女は、ある意味この状況に全く似つかわしくない存在かもしれない。
天衣無縫、天真爛漫、縦横無尽。
妲己の陣営の中でも特異な存在の彼女にとって敵味方の区別はあまり意味がなく、
運命の相手の主が太公望というのは彼女の縛られざる気質を最も表している事柄だろう。
それ故に彼女は己の考えで気ままに出歩く事を許される。彼女自身が許す。
ことに、競技場を出てからずっと“こんな変化”をしたままであるなら尚更だ。

「理緒ちゃん、ずっと篭りっきりで心配っ☆ 
 喜媚がこんな変な格好しても、眉毛の間に皺つくったままなのっ☆」
267代理:2009/09/29(火) 20:55:59 ID:JTSImsC2

難しい顔をし続けたままの理緒を笑わせてあげたくて、見つけた面白いものに変化してみたものの。
それでも、理緒はほんの少し笑っただけでまた顎に手をついて考え込んでしまったのだ。
そんな顔を見ているとこっちまで不安になってしまう。
ならやる事は一つ。喜媚は思い付きを口にする。

「だったら、喜媚は理緒ちゃんの友達と弟さんも見つけりっ☆」

――そんな事を、野太い男の声で呟くのだ。

まだ出会ったばかりではあるけれど、新しい遊び相手の為にできる事を。
理緒からはどんな人が友達にいるのかは聞いていないけれど、弟さんと呟いているのは聞こえていた。
理緒ちゃんの弟さんはどれだけちっちゃい子なんだろうと頷いて、心配するのも当然だよねと握りこぶしを作る。
だから、自分が理緒の弟を見つけた上で、新たに仲良くなれる友達を増やせばいい。

「? 何かが流れてくるっ☆」

そして、運命は奇妙な縁を呼び寄せる。
西に向かった喜媚の前には、ご都合主義にも程がある邂逅がもたらされた。
それはつい先刻の理緒と由乃の遭遇のごとく、まるで、誰かに仕組まれた出来事であるかのように。

「喜媚、もう知らない女の子を発見しっ☆ あの子に理緒ちゃんの友達になってもーらいっ☆」

その少女――高町亮子の方に、喜媚は迷いも躊躇いもなく駆け寄っていく。

偶然見つけたFAXに記されるモンタージュ、そこに描かれた“秋葉流”の格好を写し取ったままで。

理緒の仲間である高町亮子。彼女が再度見えるのは、巡り巡って喜媚が変化するに至った“秋葉流”。

果たして、この出会いの向こう側には何がもたらされるのだろうか。


喜媚の耳には、流れ始めた放送の音すら届いていない。


【B-4/河口付近/一日目 早朝(放送直前)】

【胡喜媚@封神演義】
[状態]:健康、秋葉流に変化
[服装]:顔は秋葉流だが、服装は不明(変化していない状態では原作終盤の水色のケープ)
[装備]:如意羽衣@封神演義
[道具]:デイパック、基本支給品
[思考]
基本方針:???
1:妲己姉様やスープーちゃん達、ついでにたいこーぼーを探しに行きっ☆
2:皆と遊びっ☆
3:元気の無い理緒ちゃんが心配なの☆ 弟さんや友達を探しっ☆
4:あの女の子(高町亮子)を理緒ちゃんの友達にするっ☆
[備考]
※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。
※首輪の特異性については気づいてません。
※或のFAXの内容を見ました。
※如意羽衣の素粒子や風など物や人物以外(首輪として拘束出来ないもの)への変化の制限に関しては不明です。
※『弟さん』を理緒自身の弟だと思っています。
※放送の導入部を聞き逃していますが、どこまで聞き逃しているかは後続の方にお任せします。
268代理:2009/09/29(火) 21:07:19 ID:JTSImsC2

: ◆JvezCBil8U:2009/09/29(火) 19:01:52 ID:MH65b4W.0
以上、投下終了。
流の顔でロリータ台詞というのは書いてる自分でも怖気が……w

代理投下終了です
タイトルは『繰り世界のエトランジェ』です

理緒も情報戦に加わったか。これで妲己の情報が広まった訳だが
そして理緒は参戦時期が違うからこう考えるのか。対決して更に拗れるのか、それとも……
それと喜媚は何してるの! 秋葉流の姿で亮子発見てどんだけw
俺も野郎の声でロリ口調は怖いと思いますw
269創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 21:15:34 ID:JTSImsC2
>>259
ロリコン組は来たけどレガードは本当に今、書いてる人いるならいいけど大丈夫?
三人組は一度中断した人はいるけど今も書いてるのかな?
キリコは放送後でもいいかもしれないけど西沢歩はどうする?
あのまま彷徨うのか地図見て他に行こうとするのか決めないと
270創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 21:45:09 ID:ndCIjvSa
ちょびちょび書いております……
自分締め切りとかないとブースト入らない性質なので……

でも別に全時間ごとに全キャラの動向追う必要なくね?
間の描写がなければ、数時間後にまったく別の地域に出現させることだって出来るんだし
ちょっとここにもうひとひねり欲しいな〜って時とかに使えそう。
271創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 21:48:37 ID:ndCIjvSa
投下乙、やっぱりロリ一号は疑いぶかいな〜
ロリ二号なにやってんの〜!
272創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 22:18:29 ID:R4pu5mn/
投下乙
真面目な考察回と思いきや最後でw何やってんだコキビwww
273創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 22:22:09 ID:JTSImsC2
>>270
自分も全キャラを追う必要は無いとは思うけど偶に反対意見とか来る時もあるし
レガートが来て反対が無いのなら放送もいいかも
274創る名無しに見る名無し:2009/09/29(火) 22:38:08 ID:ndCIjvSa
逆に近辺でイベント起こしたい時は、今まで何やってたのwって感じになるけど
まぁそこは説得力ある動機を見せるしかないかな
275創る名無しに見る名無し:2009/09/30(水) 19:53:26 ID:CW5ke0pU
wikiに作品収録しようと思ったんですが、『犬も歩けば棒に当たる? なんで棒?』について、
九兵衛の一人称が間違っているという指摘(>>236)に対して回答がないようです

wiki上で修正されるつもりでしたらこのまま収録しますが、どうしますか?
276創る名無しに見る名無し:2009/09/30(水) 20:43:09 ID:ydGhAERl
緊張して敬語になってるだけかもしれんし、たかが一人称ぐらいでグチグチいいすぎ
277創る名無しに見る名無し:2009/09/30(水) 20:59:06 ID:Atc4+lZl
いや小説だし絵面がない分キャラは大事
まして返事がないと下手にいじれないだろ
278創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 14:57:21 ID:0NnoAwGL
一人称違うって結構大きな間違いだと思うけど
279創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 19:01:49 ID:r4WT0CEi
朕もそう思うぜ
280創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 19:24:38 ID:r4WT0CEi
ゴルゴが僕っ子になっても違和感ないんだなあああああああ

放送終わったら、僕っ子ゴルゴ書いちゃうぞおおおおおおおおおお
281創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 21:10:18 ID:2uOyuId+
キリコ以外りのメンツに予約来たー!!

これ投下されて、一週間経ってもキリコの予約来なかったらもう放送でいいよな?
282創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 21:21:25 ID:7LaKUxz5
ハム沢さん忘れ去られすぎワロタ

個人的にはキリコは少し放置しておいて欲しいので、このまま放送突入に賛成
283創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 22:10:03 ID:oqcKJRGh
ハム沢さんはキリコと絡んでもおかしくはないけど、どっちみちナイブズを放っておく展開にはならないだろうからなあ。
研究所に向かう事になるのまでは確実だろうし、それなら放送後にその後の展開と合わせて書いちゃってもいいだろうね。
まあ、その後の展開、がどうなるかは見ものだけどw
284創る名無しに見る名無し:2009/10/02(金) 13:55:16 ID:1MOhabJ4
キリコは放置をしても放送に突入できる状況だし、構わないだろな。
位置的にも、寧ろ放送後の展開が相当美味しくなりそうだし。
285 ◆Eoa5auxOGU :2009/10/02(金) 16:15:29 ID:Ju53AVhH
>>275
しばらく繋げられない時期にそんな問題があったのか
お手数掛けてすみません。
修正しますがwikiは苦手なんだよな……やってみるけどね
286 ◆L62I.UGyuw :2009/10/02(金) 19:24:25 ID:CTQTIIbs
>>285
収録しました
基本的に、左上の編集>このページを編集からプレビュー利用しつつ弄れば問題ないです
間違えても履歴が残ってるのですぐ元に戻せます
私も基本的な機能以外は知りませんw
287創る名無しに見る名無し:2009/10/02(金) 19:26:12 ID:CTQTIIbs
ハハハミスった
288創る名無しに見る名無し:2009/10/02(金) 20:13:53 ID:X9g6HMB7
ワハハ、コヤツめw
wiki編乙
289 ◆Eoa5auxOGU :2009/10/02(金) 20:26:36 ID:Ju53AVhH
>>286
あ、これで行けたのか
教えてくれてありがとうございます
勘違いしてた
とりあえず『僕』に直しました
290創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 01:40:45 ID:OQSOVXkV
そろそろ放送の目途が立ちそうだけど放送後に注目してるキャラとか居る?
291創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 02:07:41 ID:iBQkPf61
やっぱボン九ボンコンビだな
あいつらは何かやってくれそうな予感がする
292創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 02:27:41 ID:HwrBe+/M
火薬庫の中心キンブリー組
周り中獲物だらけだぜ
293創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 02:32:12 ID:gncODuaW
ガッツ・ブラックジャック・お妙が恐いな。
新八死亡とグリフィス参加の発覚は、あらゆる意味でダメージが大きすぎる。
しかも病院周りには、色々と危険人物大勢……
294創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 09:55:55 ID:P6cf2/m4
ひよのかなー、歩のブログ見てアクション起こすのは間違いないだろうけど、どう接触しようとするかが気になる。
あとはユッキーの安眠の為に由乃の犠牲になりそうなこーすけか……w
295創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 10:07:35 ID:OLSCxXTV
>>293
おお……眼鏡忘れてたわ……
296創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 12:30:09 ID:iy0rls7e
>>294
こーすけは女運が悪すぎw
ロワに来て九ちゃんには投げられ、宮ちゃんには騒がれ、由乃の犠牲になる予定だからなw

俺は潮、聞仲コンビと銀時、沙英コンビかな
酔いどれ組も気になるが
297創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 19:17:09 ID:hgrUbPcE
スパライウル
298創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 04:19:15 ID:JFqPssHG
>>293
ブラックジャックは、放送後に一番災難に合うだろうなぁ……
お妙は新八死亡で狼狽えるだろうし、ガッツはグリフィスの事で荒れそう。
そして、すぐ近くにはマスタング大佐死亡を知るエドとリン……大佐の首輪を持ってるというのが、吉と出るか凶と出るかマジで分からない。
病院の中も、戦闘で結構破損してそうと……何なんだこの包囲網。
299創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 17:37:21 ID:/78joPEv
【スパイラル 〜推理の絆〜】 0/100 究極の駄作、ゴミ
【トライガン・マキシマム】 23/100 普通ゴミ
【ハヤテのごとく!】 77/100 良作
【鋼の錬金術師】 46/100 普通
【うしおととら】 90/100 傑作
【未来日記】 33/100 駄作
【銀魂】 72/100 良作
【封神演義】 88/100 傑作
【ひだまりスケッチ】 50/100 普通
【魔王 JUVENILE REMIX】 27/100 普通ゴミ
【ベルセルク】 36/100 駄作
【ONE PIECE】 95/100 神
【金剛番長】 71/100 良作
【うえきの法則】 33/100 駄作
【ブラック・ジャック】 100/100 究極の神
【ゴルゴ13】 70/100 良作
300 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:27:25 ID:zyL/zrtg
レガート投下します
301ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:28:47 ID:zyL/zrtg
常軌を逸脱した白い浮遊物に気を取られたのも一瞬。
彼はすぐさま標的に鋼の牙を突きたてる。
だが、4秒間で50発ものライフル弾を撃ち尽くす一斉射撃を受けて、その白き巨体は無傷。
悠々と空を泳ぎ、空の闇へと消えてゆく敵を彼はただ見送るしかなかった。



なんという失態だ。
袋小路に追い詰めたと、勝手に思い込んでいた獲物に秘められた未知の能力。
僕はまたもそれを見誤り、まんまと醜態を晒してしまったという訳だ。

二度。
この地に呼ばれてからの立て続けの失態。
もし、標的があの男で、ナイブズ様がこれを見ていたなら。
自決する事すら許されまい。
もはや、侮りも油断もない。
この地に呼ばれた参加者の中には、確かに自分の知らぬ異能を持つ物がいるのだ。

レガートは星の光に僅かに照らされる浮遊体を見届けると、踵を返し走りだす。
逃走する敵を追跡するために。


     ◇     ◇     ◇


病院を駆ける。
ところどころ新たに作り直され、破壊された建物は一直線に駆け抜ける事すらままならない。
途中、処置室に寄り包帯や薬品を引っ掴む。
骨まで飛び出た左拳の痛みは脳内物質の分泌で抑える事が出来る。
元より動かぬ全身を繰る糸により、動かす事も可能。
だが、化膿して腐れ落ちるような事があれば困る。

対人戦で圧倒的な能力を誇る彼の「能力」
それがなくとも、彼にはヴァッシュ・ザ・スタンピードを屠る自信があった。
例え、自分の能力が封じられたこの島で彼と出会おうとも、負ける事はない。
だがそれは自己の機能が100%発揮出来ればだ。
左腕が使えない、などという事になれば勝率は著しく下がってしまうだろう。

包帯を口に咥え、手早く消毒液をぶっ掛ける。
文字通り、骨まで染みるアルコールに顔色一つ変えず処置を施すレガートの耳が
機械の作動する音を捉える。

動き出したのは処置室の片隅にあるFAX。
その機械の機能は知らないが、察するにロストテクノロジーの一種だろう。

吐き出された一枚の手配書めいた紙を、レガートは手に取る。
そこに書かれた情報は、このゲームに乗った男の顔写真と、所持する武器についての情報。
恐らくは同じ参加者からのタレこみだろう。
それを頭に片隅に入れると、紙切れを丸めて投げ捨てる。

どうでもいい。

殺し合いを止めようとする者も、殺し合いに乗る者も。
この地に集った悉くは粛清される運命だ。
留意すべきはその能力のみ。


骨を無理やり肉で覆い、動きが阻害されぬ程度に包帯を巻きつけると、レガートは病院を飛び出す。
もはやレガートの目を持ってしても、姿の見えぬ浮遊物。
だが、既に向かった方角は見届けた。
302ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:29:45 ID:zyL/zrtg

島の中央にそびえる野山。
よほど大量のプラントでもあるのだろうか。
嘘のように木々が生い茂る山麓に、あの浮遊物は消えた。

レガートは近くにある民家の屋根へと跳躍する。
市街地を最速で踏破する為に。


     ◇     ◇     ◇


また、森を抜けたか。

前方に広がる森の切れ間。
いつのまにか、空はうっすらと白みがかっている。
あの三人を探し、レガートは森の中をしらみつぶしに歩いていた。

視界を妨げる大量の木々。
川を流れる奔放な水の轟音。
蟲の鳴き声。
大木の枝から飛び立とうとする野鳥の羽ばたき。
草木の、動物の、蟲の発する噎せかえるような生命の匂い。
それら全てが、彼の知覚を妨害する。

吐き気がする。

乾ききった砂漠とは、あまりにも違う濃密な空間。
そして「糸」が使えぬというハンデが、捜索という分野でも足を引っ張る。
あの三人どころか、この二時間、他の参加者を見かける事すらなかった。
成果なし。
これではナイブズ様の前に顔を出す事も出来ない。
このような無能ぶりで、いったい何の役に立てるというのか。

抑えきれぬ苛立ちを感じながら、ひとまず森を抜けたレガートは朝の光に目を細める。
先ほどよりは密度を減らした木立ちの中。
その先に見えるのはいくつかの人影。

間違いなく、あの三人だ。
向かい合うのは、同じ参加者のグループか?

ぐったりとした様子の少女を抱きかかえる一人の男。
そしてその男に縋りつくような視線を向ける、槍を持つ少年。
地に倒れ伏した青年。

何やら口論している様子だが……ん? あの男は先ほどの……
なるほどね。懲りない連中だ。
また殺し合いに乗った人間を止めようとしているわけか。
その信念がどこまで貫けるか、見てみたくもあるが……
今度は逃げる暇など与えない。
口を聞く暇も与えずに、まとめて殺してあげるよ。

薄笑いを浮かべながら、レガートはゆっくりと歩き出す。
だが、それは遅すぎた。
物語は彼を置き去りにしたまま開幕する。
いや、それはとっくに始まっていたのだ。今は既に第二幕。

舞台に遅刻した出演者に出番などなく……レガート・ブルーサマーズはこれよりただの傍観者へとなり下がる。
そう、秋葉流を主演とした、殺戮劇の傍観者へと。
303ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:30:42 ID:zyL/zrtg

     ◇     ◇     ◇


レガートの足が止まる。
その感覚は、彼にはあまり馴染みのないものだった。
強いて言うなら、それは殺気。
だが、街のゴロツキ程度の放つそれでは、レガートを止めるには至らない。

ならば、その殺気を放つ者とはいかなるものか。

ミリオンズ・ナイブズ?
ヴァッシュ・ザ・スタンピード?

否。
畏怖を超え、恍惚感すら覚えるあの力には程遠い。

ザ・クリムゾンネイル?
ザ・パニッシャー?

ともに規格外の獲物を持ち、人類を超えた戦闘力を誇る闘神たち。
近い。
彼らに匹敵する脅威を感じる。

真っ先に思い浮かぶのは、彼と格闘戦を演じたあの三つ目の男。
あの男は確かに強かった。
だが殺気も、闘気も、覇気すらも感じさせず、逃げを選んだあの男がさほどの脅威だろうか?

わずかな疑念にレガートはひとまず「観」を決め込み、大木にもたれかかる。
その視線の先で状況は変移する。

手配書の男が投げ飛ばした少女諸共に殴り飛ばされる三つ目の男。

唸りを上げる黒鞭。次々と粉砕される岩壁。

戦いの趨勢は一瞬で決まった。
レガート・ブルーサマーズを相手に渡り合ったあの三人を、あの男は苦も無く捻る。
その原動力こそ……

「なるほど、あれは確かに厄介そうだ」

先ほど読んだ紙に書かれた武器の情報が、リアルな情報によって更新される。
ただちに鞭の動きを脳内でシミュレート。

アレを自分ならどう凌ぐ?
手持ちの武器はFN P90ただ一丁。残弾100。
もう一つの支給品は、戦闘にはとても使えそうにない。
この火力ではあの鞭と相殺など不可能だろう。

ならばかわすしかあるまい。

だが、そこからどうする?
鞭をかわしながらの銃撃?
駄目だな。
鞭で弾かれる。

「技」を使うか?
制限によって決定打にならない上に、糸が一本しかない現状では自分も動けなくなる。
第三者による奇襲でも受けたらひとたまりもあるまい。
よほどのイレギュラーでもない限り、使うべきではない。
304ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:31:46 ID:zyL/zrtg
接近し、肉弾戦に持ちこむ?
相手の能力も知らないまま、無謀を犯す愚を先ほど反省したばかりではないか。
侮るな。レガート・ブルーサマーズ。
もはや失態は許されない。


レガートの思考の合間にも舞台の進行は止まらない。
体勢を立て直した三人は、無謀にもあの男に再び挑もうとする。


無駄だな、とレガートはひとりごちる。
先ほどの一瞬の攻防を見ただけで、あの三人との交戦経験もあるレガートにはわかる。
撤退ならば一人くらいは生き残るだろう。
だが、このまま継戦するというのならあの三人に待つのは破滅だけだ。
相手の攻撃を凌ぐだけならまだしも、倒す事など不可能だ。

そもそも、相手を殺すつもりもないのにどうやって制圧するのだ?
そんなバカげた真似が出来るのは、その気になれば全てをひれ伏させる事の出来る圧倒的な実力者だけだ。
あのヴァッシュ・ザ・スタンピードのような。

案の定、少女の吶喊から僅か数秒でその芽を摘まれる。
あの巨大な浮遊物が突然出てきた時と、それを僅かな間で叩き壊した鞭の威力には少し驚いたが
全てはレガートの予想通り。

つまらないね。
自分を僅かな間とはいえ楽しませてくれた玩具は、新顔の横槍で壊されてしまった。
今から乱入して、成果をかっさらうか?
否、自分の目的を見失うな。
全てはナイブズ様に自分の忠誠を認めてもらいたいが故の行動。
殺しを愉しむためではないし、ましてや主催者たちの言葉に踊らされているわけでもない。
そんなハイエナのような真似をして何になる。

幸い、新顔に負傷はない。
全てが終わった後、奴を殺せば収支は合うだろう。


     ◇     ◇     ◇


レガートが、手配書の男以外に見切りをつけた時、舞台は新たな展開を迎える。
死んだと思っていた青年が、立ち上がると夢遊病患者のようにフラフラと槍の少年の元へと歩き出す。
そして何事かをささやくと戦闘の渦の中に飛び込む。
男の手首が揺れる。
ただ、それだけの動作でただちに襲い来る打鞭の嵐。
だが、当たらない。
それは鞭が生み出す風に乗っているかのような動きだった。
まるで羽が生えたような……

しかし奇跡は長くは続かない。
やはり限界だったのだろう。
動きを止めてしまった青年の命は潰える。
そして手配書の男の手から、なぜか鞭が離れた。

これを好機とみて攻撃を再開する二人の男たち。
まだ動けたとは驚きだが、やはり奴らは何もわかっていない。
せっかくの逃走の好機を無駄にするとは。

槍の少年が動けない異常を見ていないのか?

少女とはいえ、人体を軽々と投げ飛ばし、あまつさえその投げ飛ばした人体に追いついた身体能力は?
305ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:32:29 ID:zyL/zrtg
……ここに決着はついた。
理屈は判らなかったが、男の異能は二人を圧倒する。
立っているのは男一人。
地べたに這いずるのは一つの肉塊と、死にかけの少女。
三人の拘束された男たちと、武器を失い倒れた少女。
これ以上ないほど判りやすい勝利の光景だった。

あの三人組への失望はあったが、六人もの参加者たちを戦果とした手配書の男。
その鮮やかな手並みに、レガートは拍手でも送りたい気分だった。

この時までは。


     ◇     ◇     ◇



「ァアひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! ひゃひゃ!
ひゃぁぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!
ひゃァはははははははははははははははははははははは、
ははは は  はは    は は    はは は
  は  は  は はは    は  はは   
はは  は     は     は   は
 は     は    は  は   は  は
は  は は  は は    は   は   は
  は    は    は    は   は
は    は       は はは      は
 は   は  はは は      はは  は
        は   は は        は
は  は   は  は    は  は  は  
  は  は     は は   は  はは  
ははは は は は は  は      は は 
は   は      は はは はは   は は
 は  は   はは      は  は  は
は  は   は   は   は  はは は は
 は  は      は   は  は  は 
は     は   は  は  は     は 
は   は   は   は は  は は    
 は  は   は はは   は   は  は
は  は は  は   は  は   は  はは
 は    は    は  は は はは   
は  は はは  は   は  は  は  はは
  は   は   は  は  はは は   
は  はは  は は   は  は  はは はは」



ここまで聞こえてくる、男の哄笑。
手配書の男は、ここに至って狂ったように三つ目の男を殴りつけていた。

「……何をしている。なぜ、武器を拾って止めをささない。」


戦いの中、いかに遊びを入れようとも。
ひとたび殺意を持って相手を屈服させたのであれば速やかにその命を絶つべきだ。
獲物を前に舌舐めずりなど、三流もいいところ。
それでは、あの砂の惑星では通じない。
306ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:33:32 ID:zyL/zrtg
そら、見た事か。
起き上がった女が、貴様の武器を持って逃げたぞ。
男もそれにすぐに気付き、獲物を放り捨てて追いかける。
だが、すぐに奪い返せばいいものを、またも遊んでいるのか女にぴったり並走したまま手を出さない。


二人は密林に入り、レガートはそれを追いかける。
負け犬にはもはや興味はない。
今はあの男が、ナイブズ様への忠誠の糧として相応しいか否かを見極めねばならない。


     ◇     ◇     ◇


男が、少女を川に放り込むのを見届けると、レガートはゆっくりと踵を返す。

戦いの狂騒は過ぎ去り、気怠げな男の眼はもはや何も映していない。
知っている。
世界に何の価値も感じない者の瞳を。
自分にも、何の価値も見出せない者の瞳を。

あの三つ目の男を殺さなかったのも道理だろう。
奴には人の命を奪う理由すらなかったのだから。

今、仕掛ければ容易に殺せるだろうがレガートはもはやあの男に興味はなかった。

確かに強い。
だが、それだけだ。
あの男には何もない。
戦うべき理由も、守るべき信念も、自分の命への執着も、誰かへの忠誠も。
それではつまらない。
戦う意味がない。
自分と戦うのであれば、自分の強さに見合う事はもちろん、この忠誠心と張り合えるだけの強い信念を持っていなければならない。
そうでなければ……この忠誠、認めていただけるわけがない。


ナイブズ様がどこかでご覧になっている。
レガートは空を見上げる
暁天の空にはプラント融合体となられた、あのお方の姿は見えない。
だが、気配は感じる。
期せずして廻って来たこのチャンス。
全てが終わる前に、自分を見ていただければ望外の幸い。
どこかにいないものか。
この忠誠に値するほどの獲物が。



レガートは先ほどの戦場に戻る。
破壊と殺戮の爪痕を色濃く残す現場に遺されていたのは二つの死体。
生者の姿は、もはやどこにもない。
戻ってくるだろうあの男をよほど恐れたのか、武装を回収する事もせずに逃げ出したようだ。

パニッシャー。
ミカエルの眼が誇る最強の兵装。
その一丁が、無造作に転がっていた。

レガートはそれを手に取ると、大きく振り回す。

「軽い……」
307ナイブズ様がみてる ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:34:32 ID:zyL/zrtg

予想はついていた。
本来、この武器はあのような少女に扱えるものではない。
姿だけ似せた偽物なのだろう。
だが、それでもこの地では貴重な武器には違いあるまい。
レガートは同じく落ちていたデイパックの中身を確認しようとし……
そこで放送が始まる。

そしてレガートは知った。
主と共にその宿敵もまた、この地に呼ばれている事を。


「やはり、君しかいないようだね、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 僕のこの忠誠に見合うだけの相手は……」



【D-03/森/1日目 早朝・放送中】

【レガート・ブルーサマーズ@トライガン・マキシマム】
[状態]:疲労(小)全身にダメージ(小)、左拳骨折(応急処置済み)、異能の者たちへの興味と失望
[服装]:
[装備]:金属糸×1 FN P90(50/50) パニッシャー(機関銃 100% ロケットランチャー 1/1)(外装剥離) @トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式×2、FN P90の予備弾倉×1 不明支給品1(武器ではないようです)
拡声器、各種医療品 機関銃弾倉×2 ロケットランチャー予備弾×1
[思考]
基本:ナイブズの敵を皆殺しにし、ナイブズに自分の忠誠の強さを知ってもらう。
1:ヴァッシュ・ザ・スタンピードを探して殺す。
2:ナイブズを探し、合流する
3:あるのなら自分の金属糸を探す
4:未知の異能を警戒
5:名簿にある名前への僅かな疑念
[備考]
※11巻2話頃からの参戦です
※金属糸は没収対象外のもので、レガートの身体を動かすために使用されています。これが外れると、身動き一つできなくなります
※最初から装備していた金属糸の、相手へ使用する際の最大射程は、後続の書き手さんにお任せします
※自分の技能の制限内容に気付きました
308 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 19:35:34 ID:zyL/zrtg
短いですが、以上です
309創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 20:02:16 ID:qPDb2Fca
投下乙

レガートのんびり見物してんなw
んでまた森の中が危険地帯か

以下修正が必要な点
>>306の最終段落以降が以前の描写と矛盾
放送が始まった時点でリンとエドはパニッシャーの近くにいるはず
だから放送開始前にレガートが戻ってくるのはマズい
310 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 20:36:15 ID:zyL/zrtg
そこは、リンがレガートの気配を感じ、エドを抱えて慌てて逃げたという解釈で書いたんですが
放送開始直前ってどんくらいの感覚なんですかねぇ。
5分くらいはあるのかな?
それともほんとにあとわずかっていう感じ?
後者なら放送中に戻ってきた風に修正しますが、ちょっと〆方がな〜
出来れば僅かな時間内に交差したという感じで了解していただきたい。
311 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 20:38:07 ID:zyL/zrtg
あ、そういう風にしたいならエドとリンの予約も取って、そう言う風に動かさなきゃ駄目なのかな
スポット出演で。
312創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 20:42:59 ID:qPDb2Fca
>>310
ミッドバレイの話では一分くらいってとこか>放送開始直前

まぁ一分あれば余裕か?
よくわからん
313創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 21:05:08 ID:G5VqgEmu
投下乙です

あの惨劇の傍にいたのか。確かに悠長だなw
なんか興味と失望のブレが大きいな。流の強さに興味は抱いたが彼の心理深層を垣間見てヤル気が失せたのか
とりあえず相手をえり好みし出しただけ危険度がわずかに下がったか?

そこまで書くのかなと感じますがエドとリンは気配を感じて移動したでいいような気もします
次の書き手に任せたら?
314 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 21:07:33 ID:zyL/zrtg
でも、ここでのやり取り見てないでwikiだけ読んで次書いたら誤解するかもしれないので
はっきり逃げた事は明言しておいたほうがいいかも
315創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 21:22:24 ID:G5VqgEmu
やっぱりはっきり逃げたと明言した方がいいかも
316創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 21:22:37 ID:qPDb2Fca
あ、もう一つ
状態表に
5:名簿にある名前への僅かな疑念
ってあるけど、本文でそれっぽい描写がないような

リンたちはまぁ状況的に逃げの一手しかありえないからいいかな?
317 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 21:24:55 ID:zyL/zrtg
やっぱり少し修正が必要ですね。
wikiのほうに収録する際に修正しておきますので後でご確認ください。
318 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 22:23:14 ID:zyL/zrtg
あれ、放送中だと朝なのかな
ここは前例に倣っておくか
319 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/04(日) 22:30:08 ID:zyL/zrtg
wiki編しました
ご確認下さい
320創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 22:46:31 ID:G5VqgEmu
問題ないと思います
321創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 23:47:34 ID:G5VqgEmu
これで3人組+剛力番長の話が来てしばらく予約が来なかったら放送?
322創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:07:09 ID:N8WrhZby
放送案は、仮1,1で誰も反対なしなんだよね?
あれをそのまま投下してもらえばいいのかな
323創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:11:41 ID:ciwkutm1
それでいいでしょ
時期は来週末辺りかな?
予約解禁のタイミングとか人気投票とかどうする?
324 ◆JvezCBil8U :2009/10/05(月) 00:15:02 ID:Lj7N0G+e
とりあえず、予約されている作品が投下されて1日様子を見、修正要望などがなかったらこちらに投下させていただきます。
放送後の予約解禁は、放送投下から更に24時間空けてから最初の日付変更と同時……で問題ないですかね。
他の書き手さんがたの意見も欲しいところです。

>>323
来週末、というのは流石に時間を取りすぎな気もしなくもなく。
放送後の予約開始の告知期間みたいなものを設けるのは異論はないのですが。
325創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:19:42 ID:N8WrhZby
自分は書きたいとこ3パートくらいあるから来週末くらいだといい感じにどこ書こうか決められると
思うんだけど、とっとと決めとけよwとか言われると痛いなw
予約合戦とかにならなきゃいいんだけど
326創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:21:15 ID:4Vko9CUv
来週末でいいんじゃない?
長い気もするがすぐに決められる問題でもないし
327 ◆L62I.UGyuw :2009/10/05(月) 00:29:05 ID:0H5REcPZ
私はいつでも構いませんよ。
放送前のパートは書いてませんので。

ところで一本投下後に予約出来るようになるのは投下から24時間以上経ってからでしたっけ?
328創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:30:21 ID:WCPo2cz1
来週末というと17日辺り?
ちと遅いなー、今週末か次の日曜でいいんじゃ。
告知は23日で十分でしょ。投票はその後でいいだろうし
329創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:31:12 ID:4Vko9CUv
他のロワではそこら辺は曖昧だった<24時間以上経ってから
330創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:33:22 ID:N8WrhZby
あ、来週末って17のことか
今週末でいいですよ
331創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 00:57:40 ID:4Vko9CUv
もう今週末でいいんじゃない?
それと特に決まってないのなら24時間後でなくても予約OKでいいかもしれない
332 ◆lDtTkFh3nc :2009/10/05(月) 22:11:54 ID:NLHln30P
お待たせしました。
三人組+剛力番長投下します。
333創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:12:31 ID:N8WrhZby
お、期待
334 ◆lDtTkFh3nc :2009/10/05(月) 22:12:46 ID:NLHln30P
相性って、あると思う。

それは弱い奴でも強い相手を倒せるってシロモノじゃない。
強い弱いの価値そのものを逆転させる、絶対的で強力なもの。
そう、じゃんけんと同じだ。その相性を考えて活かすのが、弱い人間が生きる為の『力』。
だから彼らは考える。


    ◇     ◇     ◇

最初は、グー

    ◇     ◇     ◇


金剛晄はかたい。
握りこんだ拳のように硬い意志と信念を持つ。
スジの通らぬ話は許せない。そんな性格だから仲間も増えた。
しかしそれは正の側面。
人の性格には長所と短所が、大抵は表裏で存在する。

夜道をゆっくりと歩く三人組の中でも、金剛は特に目立っていた。
その巨体、奇抜な髪型…暗闇でもはっきりと『個人』を認識できる。
普通の体格である他二人と並んでいるとそれがよくわかった。
彼らは今、土方(沖田)の知り合いがいると思われるデパートへと向かっている。
外敵からの襲撃に警戒しつつ、内部にも気を配りながら。
といっても楽しげなおしゃべりがあるわけではない。

「おりゃ、きりきり歩けィ」
「…くそ、引っ張んなよ!」
「おい、土方…」

もう何度目か。
沖田の潤也の扱いに、金剛が注意をいれる。

「…冗談でさァ、金剛の旦那」
「そうは見えん。冗談だとしても、性質が悪いぞ」

とても反省しているようには見えない態度で返す沖田。
首輪でつながれた少年、安藤潤也は聞けば金剛と同じ高校生。
そんな少年をいかに危険とは言え首輪に繋いで犬のように扱う等、金剛には許せなかった。
335創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:13:03 ID:H5X9wTLz
リアルタイム投下とな
336創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:13:18 ID:GoUxq7D7
支援
337創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:18:05 ID:N8WrhZby
支援
338創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:23:07 ID:GoUxq7D7
どうした?
339創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:24:40 ID:GoUxq7D7

「へいへい、と。それよりも…あれ、何でしょうかね?」
「む…」

特に気にした様子も無く、沖田は話題を逸らす。
促された先には、またしても学校のような建物があった。
おそらくこちらは地図に載っていた小学校だろう。校庭に遊具がならび、花壇まであった。

「出番だぜィ、潤也くぅん?」
「…わかってる。あそこに人は……『いる』」

潤也の能力。十分の一を一にする力。
『目の前の小学校に人がいる』『いない』の二択なら、確実に当てることが出来る。
さらに彼が『当てる』事が出来るのはそれだけではなかった。

「次に会う相手は『女』、殺し合いにはのって『いる』」

その言葉と同時に、彼らを包む空気が一気に変わっていった。
高まらせた緊張感を維持しつつ、三人は夜の学校へと踏み込む。
止める、捉える、見極める。バラバラな目的を胸に秘めて。



潤也の能力で小学校への侵入者は2階にいることがわかった。
校舎は三階建てでごく普通の小学校。二階にはいくつかの教室が並んでいた。
ここまでくれば能力等に頼るまでもない。人の気配のする教室へと三人が忍び寄る。

…いや、間違っていた。
「忍び」寄っていたのは二人まで。その潤也と沖田の制止を振り切り、あとの一人、
金剛はずかずかと教室の入り口まで突き進み、全力で扉を開いた。

「!!!」

驚きの表情で固まり、明らかに動揺する金剛。その姿を見て、何事かと二人も駆け寄る。
彼らの視界に飛び込んできたのは、今しがた着替えを終えたばかりであろう体操着姿の少女だった。
340代理:2009/10/05(月) 22:25:46 ID:GoUxq7D7

    ◇     ◇     ◇

またまた、グー

    ◇     ◇     ◇


金剛達が踏み込んだ教室には、少女がいた。
沖田と潤也がまず驚いたのはその服装。おそらくは現地調達したと思われる、上下の組み合わせ。
上は白の体操服。しかしここは小学校だ。そのサイズはかなり小さい。
少女もかなり小柄ではあったが小学生という感じでもない。少しきつそうであった。

そして下。
今や絶滅種となった紺色のブルマ。もはや語るまい。
これをわざわざ用意したとするならば、この殺し合いの主催者は何を考えているのだろう。
そう思わざるをえないある意味極上の一品だった。

それを着込んだ当人は三人の侵入者に対応しきれず、口をぽかんと開き立ちつくしていた。
幸い着替えの真っ最中という状態ではなかったが、驚かすには充分なタイミングだろう。

「あ、あの…」
「知り合いですかィ、旦那?」

何かを言いかけた少女を遮るように問いかけたのは、沖田だった。
金剛の表情から察するに図星だろう。唐突な質問だが根拠はあった。彼の動揺具合だ。
短い付き合いだが、この男はわかりやすいので性格は多少把握できた。
彼は煩悩の類とは縁遠いタイプだ。
例え遭遇した相手が水着のお姉さん軍団であろうと彼はこれほどまでに動揺することはないだろう。

そんな彼を動揺させる要素があるとすれば何か?
考えられるのは、相手が知り合いであるという可能性。
潤也の能力で次の遭遇相手が殺し合いに『のっている』ことが明示されている。
特殊なケースを除いて、誰もが今だけは知り合いと遭遇したくないと心から思うだろう。
中学校にいた時点で既に地図上に示された施設に自分達の関係者はいないことを確認していた。
しかしあの後に相手が小学校にたどり着いた可能性や、うっかり金剛が挙げ忘れていた知り合いの可能性も充分にある。
それらを考慮して尋ねてみたが、当たっていたようだった。

なんにせよ、ただでさえ複雑なこの状況での仲間との再会は、より微妙な形で起きてしまった。

「……あぁ、俺の仲間だ。剛力番長、お前も巻き込まれていたか」

未だ複雑な表情を浮かべたまま、金剛が一歩踏み出す。
しかし、剛力番長と呼ばれた少女から返ってきた言葉は予想外のものだった。
341代理:2009/10/05(月) 22:27:06 ID:GoUxq7D7

「……あの、一体どなたですか?私には貴方のような知り合いはいないのですが……?」
「な、何!?」

そんなバカな、といった表情を浮かべる金剛。
沖田はなんだか面白そうなものを見つけた、といった顔つき。
潤也は潤也で、微妙な表情を浮かべている。

「何を言っている!?俺たちは共に暗契五連槍と戦っただろう!いや、それ以前にお前と俺は一度拳をまみえたはずだ!」
「そんなことを言われましても…暗契五連槍ってなんのことですの?
 そういえば先ほどの方も私をご存知のようでしたけど…あ、もしかして、貝裏鬼のお知り合いか何かでしょうか?」

かみ合わぬ会話。
傍から見れば男女の痴情のもつれのようにも思えるだろうか。
実際にその類だろうと判断し、ニヤニヤと笑っている男もいる。
だが実は、このいさかいはそんな単純な構造ではない。

当人達は知る由もないが、彼らは呼び出された時間が違うのだ。
剛力番長は金剛番長と出会う前から呼び出されており、金剛番長は彼女と共闘した後から来ている。
そのズレが二人の会話をおかしくしているのだ。

「一体どうした!?卑怯は?念仏は?居合いのことは?忘れちまったのか?」
「!! 忘れてなどいません!!私は何一つ忘れていません!!」
「ならなぜだ!!」

ムキになって否定する剛力番長と、思わず大声をあげる金剛。

「忘れてなどいませんが…あなたのことは知りません!!私の記憶は確かです!!
 嘘をついているのは…あなたでしょう!!」
「ちょ、ちょっと待ちなって」

ドンドンヒートアップする二人の会話に、とうとう沖田が横槍を入れた。

「なんだかよくわかんないけど、これだけは言わせてもらうぜ」

そういって息を吐くと、沖田は笑みを浮かべる。
なんとも意地汚そうな、笑みを。

「昔の女にいつまでもこだわるのは男らしくないですぜ」
「……」
342代理:2009/10/05(月) 22:28:34 ID:GoUxq7D7

沈黙。
いつもなら誰かしらのツッコミがとんでくるところだが、今はない。
ツッコミ不在の居心地悪さを、彼は実感していた。

「土方」
「わかってますよ。ったく…面白味のない連中だぜィ。
 とにかく旦那、今はそれより確認すべきことがあるんじゃねーですかィ?」

促されて金剛は、複雑そうな表情のままあらためて剛力番長に向き合う。

「……そうだな、その前に確認したい。剛力番長…お前はこの殺し合いに、のったのか?」

駆け引きも何もない、直球の問いかけ。
その瞳に迷いはなく、その言葉に淀みはない。
威圧するような態度でもなく、だが答えねばならない様な気にさせられる。
言葉を無理にあてるなら、威風。そんな聞き方だった。

「……えぇ、そのとおりですわ」

伏し目がちに返される言葉に、金剛の拳がギュウと握りこまれる。

「…なぜだ!!なぜこんなスジの通らねぇ殺しあいに…」

ジャラ

金剛の叫びとも言える問いかけは、奇妙な鎖の音によって中断される。

「えっ…!?」
ゴッ!

剛力番長の背後に回り込んだ沖田が、木刀の柄を彼女の首筋に叩きこんだ。
そのままうつ伏せに倒れこむ剛力番長。鎖の音は彼が握っていた首輪のものだった。

「土方!!何をする!!」
「旦那ァ、さすがに言わせてもらいますぜ。この女は殺し合いにのっていると自分で言ったんだ。
 潤也くんの能力を完全に信頼したわけじゃないが、さすがに言い訳はきかない」
「だが、なにか事情があるのかも知れねぇ」

睨みつけるように、金剛が言葉を続ける。

「事情もわからず相手をぶちのめすのは、あまりスジが通っているとは言えないぜ」
「その事情とやらを聞くのは、こいつをふんじばってからでも遅くはねぇ、違いますかィ?」

沖田は先ほどまでと違い、かなり真剣な表情となっていた。
彼にしてみればこれでも譲歩したほうである。いつもの彼ならこんな生温いやり方ではすまない。

まず、一撃で気絶はさせないだろう。間違えたフリをしながら4〜5発は相手を殴る。
適度に間隔をあけ、相手が何か言い返そうとするタイミングを見計らって叩き込む。
相手が本物の土方であれば4〜5発では済まず、顔面にも叩き込むに違いない。
それでも平然と「間違えた」などと言いながら。

一発で気絶させてやっただけマシでしょう、沖田がそう言おうとした時だった。
343代理:2009/10/05(月) 22:30:04 ID:GoUxq7D7

「その必要はありませんわ」

首の裏をさすりつつ、剛力番長は立ち上がった。
ゆっくりと振り返る少女の視界に、しかし沖田は映らない。
その時にはもう既に、彼は敵の背後に回りこんでいた。

ガッ

二発目も躊躇無く叩き込んだ…はずだった。
しかし今度は倒れることなく、逆に振り返り際に裏拳を繰り出してくる。

「やっ!」
「チッ」

相手の反撃をかわし、ひとまず距離を置く。
さすがに二発目がなんの効果も見せなかったことには驚きを隠せない沖田。
彼女が常人よりはるかに頑丈な体質であることを知っている金剛は、多少落ち着いている。

「止せ!落ち着け剛力番長!」
「そちらから手を出しておいて何を!」

今度は金剛のほうに振り返る剛力番長。
その隙を突こうとした沖田を、金剛が制す。

「お前も止せ!土方!」
「旦那、そうはいかないぜ。俺はこれでも警察の人間なんでね。
 これから人殺そうって奴をほっとくなんざ、職務怠慢で減給ものでさァ」

本人は減給なんてなんのその、といった生き方をしていることを棚に上げ、一応は正論を述べる。

「け、警察!?あなたがですか??なんだか納得いきませんわ…」

場違いな驚きを示している剛力番長は放っておき、二人は会話を続ける。

「それは俺も同じだ!こんな場面で人殺しなど、認めてたまるか!!」
「ならいいじゃねーですか」
「だが、ぶちのめすにしても、反省させるにしても、相手の理由は聞いておく!」
「だから、なんでですかって…」
「スジが通ってねぇからだ!!!!!!!!!!!!」

大絶叫。
沖田はもちろん、おもわず潤也も体が固まり、耳をふさぐ。
それを納得とでもとったのか。金剛は剛力番長への質問を再開した。
彼女は彼女で、金剛の迫力に気圧されしたのか、おとなしくなっている。

「さぁ、説明してもらうぞ、剛力番長。一体なぜこんな馬鹿げた殺し合いにのっているんだ」
「……いいでしょう。私の正義をお聞かせして、理解していただければそれに超したことはありません」

まさにやれやれ、といった具合で、沖田もひとまず木刀をおろす。
だがその目はまだ、油断無く真剣さを残していた。
344代理:2009/10/05(月) 22:31:23 ID:GoUxq7D7

    ◇     ◇     ◇

いかりやチョーすけ、頭はパー

    ◇     ◇     ◇


「アンタ、全然ダメだよ」

剛力番長の告白を聞いて真っ先に口を開いたのは、意外にも潤也だった。

少女の告白―――

全てを壊し、全てを蘇らせる。
錬金術師を名乗ったその男の計画の実現が、彼女の正義。

沖田や、金剛にもなんとなくわかっていた。その男は嘘をついているか、隠し事をしている。
だがその少女の語りには希望というか、なにかすがる様な気持ちを感じさせた。
金剛は警戒心から、沖田は自分に被害がこないように指摘する方法を考えて、言葉を選んでいた。
だがそんな事はおかまいなしとでも言うように、潤也は言葉を放つ。

「ソイツの言ってる事はデタラメだよ。少なくともいくつかはさ」
「なっ…!失礼な!キンブリーさんは…」
「じゃあなぜ俺たちは生きてる?」

潤也の発言に、剛力番長はビクッと体を震わせた。

「俺や土方はともかく…金剛ははっきりと、殺し合いにはのらないって宣言してる。
 さっきの叫び声なんて、気づかなかったなんて言えないぞ。なのに化物に変えられる様子は無い」

さらに潤也は続ける。

「大体、人形を作れたからって人間も蘇らせることが出来るなんて思えないだろ」
「それはっ!先ほども言いましたが、キンブリーさんが言うには賢者の石とかいう…」
「実物、見たのかよ?」
「え?」

不安そうな顔で、言葉に詰まる剛力番長。
少しうつむき気味に話す潤也の表情は、前髪に隠れてうかがえない。

「その賢者の石ってのが実在するか、アンタは確かめてない。たとえ本当に存在するとして、
 それがソイツの言うような力を持ったシロモノかはわからない」

苛立ちを我慢できず、潤也は足をタンタンと地面に打ちつける。
リズムは一定だが、とても心地よいものとは言えなかった。

「そもそも、どれだけアンタが殺してまわろうとも、そのキンブリーってヤツが死んだら意味がないだろ?」
「なっ!」
「結局アンタは、何一つ自分で選んじゃいないんだ。
 ただ自分の失敗を誤魔化したくて、都合よく現れたその男に思考を預けた。
 そいつのいいようにつかわれても、楽だからってそっちを選んだんだ。
 ……それは死んだも同然の、生き方だ」

少しずつ声のトーンが下がっていく。
言いたい放題言われ、剛力番長のほうも黙ってはいられない。
必死で考えを巡らし、あまり得意ではない舌戦を挑もうと試みる。
345代理:2009/10/05(月) 22:33:03 ID:GoUxq7D7

「そんなことはありません!私はキンブリーさんの作戦が一番だと思ったんです。
 お話した時間は短かったですけれど、貴方たちと違ってとても紳士で素敵な方でした。
 私は、あの人の言うことなら信じられます!」

「考えろ!!!!」

突如出された大声。
先ほどの金剛の叫びとは違った迫力を秘めた一言だった。
その場にいた3人が、思わず身を強張らせる。

「考えろ、考えろ、考えろ!!!自分の頭で!!!誰かに任せるんじゃなくて!!!
 何も考えないで任せるのは信じてるとは言わない。流されてるってことだ。
 考えろよ!!それをしないで自分のことを正義だの何だの言って暴力を振るうのは……
 俺は、絶対に……許さない」

顔をあげた潤也の目は、修羅場慣れした三人にも恐ろしさを感じさせるものだった。

自分で言っていて、イライラしてくる。潤也は強烈な自己嫌悪に襲われていた。
自分は先ほどまで、この殺し合いからさっさと離脱する方法を考えていた。
兄貴の仇がここにいれば探し出す。いないなら他の全員を殺してでも脱出すると。
だが、それは自分で考えた方法だろうか?

『御主等にはこれから最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう』

無意識にこの言葉に流されていなかったか?
それが、本当にベストな選択か?

自分は土方にあっさりと捕まった。
その土方すらこの金剛に対して警戒感のような、ある種実力を認めているような、そんな態度をとっている。
遠慮や敬意などはほとんど感じられないが、潤也に対する舐めきった態度とは大違いだった。
そしてその金剛と一緒に戦ったという目の前の少女。土方の攻撃にも怯まず反撃してみせた。

こんな連中を、どうやって殺すというのだ。

一人ひとり罠にはめる?
この狭い会場で、既に警戒心を抱かれているのに?
この状況じゃ、罠にはめた一対一だって勝てるかは五分以下だ。
潰しあいをさせる?
バカバカしい。結局は最後の一人をこの手で殺さねばならない。
たとえ疲弊しきっていようとも、そこまで生き延びた実力者をあっさりと殺せるものか。
長い時間をかけて、不意打ちが出来るくらい絶対的な信頼関係を築けていればそれも可能かもしれない。
だが、そんな時間をかけている暇は無い。
それに万一にも失敗は許されない。精神論で『何とかする』なんて言えない。

俺は、一刻も早く、絶対に、兄貴の仇を討たなきゃいけないんだから。

考えろ、考えろ、考えろ。

自分の頭で、誰かの言葉に流されるのではなく……
一番『速く』、『確実』に脱出できる方法を……
346代理:2009/10/05(月) 22:34:04 ID:GoUxq7D7

安藤潤也は金剛とは別の方向で一直線な男だ。
自分の決めたことはしっかりと信じるし、流されない。
金剛が濁流を遡る魚なら、潤也は根を張って決して倒れない木、という感じだ。

何一つ離さぬよう、撃ち抜く事に特化した拳。
あらゆる方向に広げられた、全てを掴む可能性のある掌。

潤也は後者。手段にこだわらないからこそ、迷わない。
一度定めた目標の為ならば、あらゆるものを賭けてでも邁進していくことが出来る。
柔軟であるが故の強靭さ。それはさながら風にそよぐ柳のように。
剛力番長の告白を聞き、彼はあらためてその思考の強靭さを発揮しつつあった。

「………!」

ではもう一方の少女に浮かぶのはなにか?
怒りではない。混乱と恐怖の混ざったような顔をしている剛力番長。
今彼女の頭の中にはグルグルと様々な感情が駆け回っているのだろう。
いかにも折り合いがつかないといった感じで、表情が見るに耐えないものへ変わっていく。
思わず声をかけようとでも思ったのか、金剛が一歩前へ踏み出た、その時だった。

「私は、自分が正義だと思ったことを信じて実行してまいりました」

剛力番長は語りだす。顔を伏せているので表情はわからないが、口調は落ち着いていた。
金剛も沖田も、彼女がパニックを起こし暴れだすのではと思っていたので少し安心する。

「私は私です。ここに来てからも何も変わってはおりませんわ。
 ですから、考えるまでもありません。いえ、充分に考えられているんです」

だが、吐き出されたのは決して落ち着いた回答とは言えないもの。
今までしてきた事が正義であるなら、これからすることも正義である。
そんな理不尽な理屈ともとれる発言だった。

「私の正義の実行を妨げようというのでしたら……
 可哀想ですが、力ずくでも納得して頂きます!!」

強く握りこまれた拳が突き出される。
気づいた時には、金剛の体が宙に浮いていた。
347創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 22:38:02 ID:N8WrhZby
ん?もうさるさん?
348代理2:2009/10/05(月) 22:40:22 ID:N8WrhZby
438 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:22:45 ID:9Jfx9i7w0

沖田は刹那の中で気がつく。
自分の立っている位置。潤也の立っている位置。その関係性。
金剛の肉体。不可解なほど強い剛力番長とやらの腕力。
このままだと金剛が自分と潤也の間を通って吹っ飛んでいく。
おそらく窓を突き破って校庭へ飛び出すだろう。
不思議と金剛の心配はしなかった。彼ならこの程度なんとも無い。そんな無根拠な確信があった。
だが、自分と潤也の間には鎖が張られていた。一端は自分の手に。もう一端は潤也の首に。
二人の適度な距離が、ある程度の高さを保たせてその鎖を張らせている。
ここで自分が何もしなければどうなるか。それを考えた時、刹那の中で沖田は鎖を手放していた。

目の前を金剛の巨体が吹っ飛んでいく。
それを追う様に、体操着姿の少女が駆け抜ける。
そしてその二つの向こう側に見えるのは、ただの『ヤバイ』少年か、それとも。

沖田は、出会った時のように潤也と対峙する。今の潤也は丸腰だが、彼を拘束するものはない。
鎖を持つ手は離してしまった。
だが、離さなければ鎖は金剛の体で引っ張られ、潤也は首に重大な損傷を負っただろう。

「チッ」

沖田は苛立つ。なぜ自分は手を離したのか。
彼の中に根付く、とある男の性格か。あるいは姉への想いが彼を優しくしたのか。それは本人にもわからない。
確実なのは、それが今の状況を作り出してしまったということ。
鎖で繋がれた狼と、自由な犬。どちらが恐ろしいのだろう。
潤也が口を開いた。

「これで、対等だ」
「あァ?」

沖田が、少し不機嫌そうに返す。

「これで俺とアンタは対等だ」
「寝てるのかィ?寝言が聞こえるぜ。これのどこが対等だって?」

沖田の手元には潤也から取り上げた銃と支給品の木刀がある。
一方潤也の手元にある武器と呼べそうなものは首からぶら下がる鎖と首輪くらいだ。
普通に考えれば、とても対等とは言えない状況。
校庭から轟音が聞こえる。金剛達が派手にやっているらしい。
なんとなくわかっていたが、やはり彼はかなり強いのだろう。

「俺は鎖で繋がれてない。アンタは、もう一度俺を捕まえなきゃいけない」
「それがどうした」
「アンタにとって道具同然だった俺が、今は敵になってる。だから、対等だ」

確かに、先ほどまでと比べれば状況は幾分潤也優位に動いている。
だが身体能力の違いは先の戦闘ではっきりしているし、沖田は潤也の精神を乱す術もわかっている。
沖田は余裕の態度を崩さない。それがこの状況で必要な事をよく知っていた。

「やっぱり寝てるらしいや。今叩き起こしてやるぜ」

木刀を握りこむ。
先ほど剛力番長にしたのと同じように、背後に回りこんで一撃。これで終わりだ。
ヤツはあの女のように頑丈ではない。咄嗟に対応できるような反射神経も、経験もない。
楽なものだ。そうわかっていても、少しも気を緩めないのは経験からか、無意識に相手の危険性を感じ取ったか。
349代理2:2009/10/05(月) 22:41:05 ID:N8WrhZby
439 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:23:16 ID:9Jfx9i7w0

「アンタの挑発は効いた」

突然喋りだす潤也。
心理戦にでも持ち込むつもりかと、一瞬警戒する。
そんなものに付き合う理由は無い。だが、このまま力でねじ伏せても同じことを繰り返しそうな気がする。
一度完膚無きまでに精神から叩きのめし、従順な犬にでもなってもらうか。
相手の心を乱すキーワードは既に掴んでいる。
なにより相手の精神を責める事に関して、沖田は自信があった。

「俺にとって、兄貴は引き合いに出されたら冷静じゃいられない存在だ。詩織もそうだけど…」
「あぁ、彼女だったか?そいつももしかしたらここにいるかもしれないぜィ」

兄の話題を自分から出してきたので、あえて別の方面から責める。
だが、潤也は無視して自分の話を続ける。

「ずっと考えてた。なんであんなにムカついたのかって。
 きっと、アンタの言い方が凄く巧かったからだ。俺の嫌なところばっかり突いてきた」
「彼女が泣いてるぜ。自分をほっといて彼氏が人殺ししようとしてるなんて知ったらな。
 それとも……もう生きてないかもな?」

沖田も無視して、責める。
非情。我ながらひどい事を言っていると思うが、罪悪感は無い。
今大事なのは気遣いではないのだから。沖田は冷静に、潤也の精神を乱そうとする。

「いつだったか見たテレビで言ってた。人の悪口を言うとき一番巧く言えるのは……
 同じ悪口を言われた事がある人だって」

ピク
沖田が少し反応する。
すぐにそれを隠し、次の言葉をつなげようとした、一瞬の躊躇。
それが潤也に連続の発言を許してしまう。

「それとは違うかもしれないけど…似たようなことなんじゃないかと思った。
 アンタ……家族が、それもたった一人の家族が……」

ドクン
ヤロウ…と心の中でだけ沖田は呟く。
潤也の表情は見えない。うざったい前髪だと、妙な怒りが湧き上がる。
次に出てくるであろう相手の言葉。これは勝負どころだ。
取り乱してはいけない。絶対に。
俺は……真撰組の隊長なんだから。


「その家族が、死んでたりしないか?それも、ごく最近……」
350代理2:2009/10/05(月) 22:41:55 ID:N8WrhZby
440 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:24:01 ID:9Jfx9i7w0


体中を、怒りが駆け巡る。
無神経な物言い。自分の触れられたくないところに触れてくる図々しさ。
今まで圧倒的にこちらが優位であっただけに、より腹立たしい。

だが、沖田は冷静だった。
握りこんだ木刀を振り回すこともせず。銃を乱射することもなく。
姉にとって自慢の弟は、そんなことをする奴じゃない。
だから、つとめて冷静にこの場を取り繕う。

「『死んでねーよ』。適当なこと言うもんじゃないぜィ」
「それ、『嘘』だ」

『十分の一=一』

潤也の発言を聞いて沖田の頭の中に浮かんだのはその言葉。
途端に彼の体中を巡っていた血が、頭へ昇っていく。
怒りが、集まる。

「てめェ…」
「兄貴か、姉貴…それともそれ以外かはわかんないけど…今の言葉は『嘘』だ」

潤也の質問は、最近家族が死んだかどうか。
そして彼が当てられたのは相手の言葉が『真実』か『否』か。

沖田の失敗は1つ。嘘をついてしまったこと。
しらばっくれれば、はぐらかせば、あるいは黙っていればよかった。
「なんのことだ?」「さて、どっちでしょうかね」「答える必要はない」
そんな言い方をすれば問題は無かった。それを判別する力は潤也には無い。
だが、嘘か真かなら二択。何が嘘かはわからないが、単純な質問と答えならそれも特定できる。
特に、今回のように前フリをしておけばなおさらだ。

なぜ、自分は答えてしまったのか。なぜ、嘘をついてしまったのか。
あるいは真実を述べて、堂々としていれば良かったのかもしれない。
それがどうした、俺は乗り越えたんだ、と。
だが、冷静であろうとしすぎた事、それでありながらも姉の事を指摘されたことで気が昂ぶってしまった事。
相反する二つの感情を整理できるほど、今の彼は完成していなかった。
そしてそれを補ってくれる大切な『友人』も、今はここにいない。

現状はなにも変わっていない。ただ、相手に心を見透かされた。それだけ。
だが、人の心のデリケートな部分というのは、それだけでひどく脆くなる。
相手の罠にまんまと引っかかり、醜態をさらした。
その事実がただ、沖田には腹立たしい。握りこんだ木刀が、『戦え』と命じているように思えた。
沖田は走り出していた。
351代理2:2009/10/05(月) 22:42:36 ID:N8WrhZby
441 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:24:34 ID:9Jfx9i7w0

    ◇     ◇     ◇

正義は、勝つ

    ◇     ◇     ◇

少しだけ前、窓から落ちた金剛とそれを追った剛力番長。
両者なにごともないかのように地面に両の足で着地。
剛力番長はまっすぐ金剛に突っ込んでいく。

「やぁぁぁぁぁ!!!」
「打舞流叛魔(ダブルハンマー)――――――!!!!」

それを迎え撃つのは、鉄の如き高度となった金剛番長の両拳。
必殺の一撃を叩き込まれ、剛力番長は真逆の方向へと吹っ飛ぶ。
本校舎の横にある別棟にぶつかり、止まる。

「お前の事情はわかった」

相手が気を失っていないことを確信しているのか、すぐに話しかける金剛。

「だがな、剛力番長。俺もお前の言ってる事がスジが通っているとは思えねぇ。
 お前にとって辛いこともたくさんあったのかもしれないが、知ったことか。
 それが他人を傷つけていい理由にはならん。悪いが…ぶちのめしてでもお前を止めるぞ」

剛力番長の告白を聞き、潤也の怒りを聞き、出した結論がそれだった。
おかしなこと、わからないことはいろいろとある。
だが、今通さなければならないスジは、彼女を止めることだ。そう思った。

「私は…止めるつもりはありません。私やキンブリーさんに失礼なことを言ったあの人も含め、皆さんを倒します。
 でも、まずは貴方です!!私の記憶を勝手に偽ろうとする貴方を、私は倒すんです!!」

そういって別校舎から姿を現した剛力番長は、巨大な剣を携えていた。剣というよりもはや鉄塊か。
それを片手で持ち上げているのだから、やはりアイツは剛力番長だと、金剛は思った。
反対の手に持っている何かに、少女が呟く。

「今から目の前の男を倒します。彼は私に偽りの記憶を語るなど、非道な男です。
 正義の鉄槌をくだし、絶対にこの手で倒してみせますわ!」

それを鞄にしまい、今度は両手で剣を構える。

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

またしても力任せな突進。だが今回は剣を伴っての突進だ。
さすがにまともに受けるわけにはいかない。金剛は周囲を見渡すと、手ごろな『それ』を引っこ抜く。
352代理2:2009/10/05(月) 22:43:17 ID:N8WrhZby
442 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:25:39 ID:9Jfx9i7w0
「ぬぅぅぅぅぅん!!!」

『それ』……ジャングルジムを片手で振り回し、突進を受け止める。
さすがの剛力番長も、すこし驚いた表情を見せた。

「くっ」
「こうしてお前と戦うのは二度目か…お前はあの時、力の正しい使い方を知ったはずだ!」
「!! ですから、嘘は、お止めな、さい!!」

距離をとって剣を一度ひき、上段の構えへ。そこから力任せに振り下ろそうという作戦。
剣の重量と少女の力。単純だが、これには遊具などではとても耐えられない。

「キンブリーさん優勝の為…礎になっていただきます!」

しかし構えを変えた一瞬の隙に、金剛番長は既に行動を始めていた。

「知った…」

ジャングルジムを放り投げ、再び鉄と化した拳を握る。
相手が剣を振り下ろすより速く。
そう、単純に速く、力強く、拳を突き出した。

「ことかァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

本気を出した打舞流叛魔が、叩きこまれる。
353代理2:2009/10/05(月) 22:43:58 ID:N8WrhZby
443 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:26:30 ID:9Jfx9i7w0

再び教室内。
沖田が動くより一瞬だけ速く、潤也は動いていた。
それでも身体能力の差は歴然。すぐに追いつかれるだろう事は潤也にもわかった。
だから少し遠い廊下への出口ではなく、先ほど金剛が吹き飛んでいった先、割れた窓のほうに向け全力で走る。
一切の躊躇も無く、潤也は飛び降りた。残っていたガラスで少し傷を負う。
ここは2階。下は確か花壇だった。体を丸め、頭だけ守りながら落ちていき、土の上で受身を取る。

「〜〜〜〜〜〜!!!」

全身が痛んだが、耐えられる、なんの問題も無い。
体育の授業は楽しかったから、少し真面目に受けててよかった。そんな事を思った。
だが、すぐに体を転がしてその場から離れる。
予想通り、自分の落ちた花壇の上に、銃弾が降り注ぐ。後を追う様にして沖田が降り立った。
銃と木刀を握りしめ、先ほどまでとは違う意味で嫌な目をしていた。

もう逃げ場は無い。戦っても勝ち目は無い。
コイツは口八丁で煙にまける相手ではないし、騙したりもできない。
自分の能力では相手を逆上させることは出来ても、出し抜いたり、無力化したりは出来ない。
潤也がパーなら、相手はチョキ。どう頑張っても勝ち目は無いのだ。
だから…

「短い鬼ごっこだったぜィ」
「あぁ、もう逃げないよ。俺は目的の為に、戦う」

だから頭を使うんだ。

グーを、味方につけて。

「…どういう事だ、土方」

立ち上がる潤也の背後に、一人の男が姿を見せた。
人呼んで、金剛番長。
スジの通らぬ話が許せない、強くて硬い男だった。

「……チッ」
「答えろ」
「どーもこーも…見たまんまですぜ?」

見たまんま。
それは沖田が丸腰の相手に銃を乱射していることか。
それとも潤也が土と血に塗れて立っていることのほうか。
354代理2:2009/10/05(月) 22:44:45 ID:N8WrhZby
444 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:27:10 ID:9Jfx9i7w0

あるいは素直に事情を説明していれば、金剛とてバカではない。
喧嘩両成敗とでも言って、なんとか場を収めただろう。
だが、沖田にはそれが出来なかった。今の自分は、人生で一番見られたくない一瞬であると思う。
ひねくれた性格が悪い方へと働いてしまう。強がるように、本音をひた隠す。
そんな態度をとってしまうことまで潤也にはお見通しであったのだろうか。

悔しいが、おそらくそうだろう。ヤツの狙いはこれだ。
自分と金剛の間に亀裂を生じさせること。だが、わかっていても態度というものは中々変えられない。

「旦那、そいつはマジでヤバイ。俺は確信したぜ」
「例えそうだとしても、丸腰の相手に武器使って殺そうとするなんぞ…」
「スジが通らねぇ、ですかィ」

金剛の目は真剣だった。
事情を説明しなければ、共に行動することは適わないだろう。
だが、何を言っても言い訳がましくなるのは目に見えていた。
潤也は一言も発しない。沖田を貶めようとする言葉も、救おうとする言葉も。
あるいはそれは、審判を待っているようだった。
金剛によって、自分と相手の罪を量ってもらっているかのように。
やがて、沖田が口を開く。

「お互い納得できないなら仕方がねぇ…悪いが、別行動させてもらいますぜィ」

クルリと背を向けて、沖田は歩き出す。入ってきた正門ではなく、別の場所にあった門に向かった。

「土方!」
「旦那ァ、忠告しとくぜ。あんまし甘いことばっか言ってると、バカを見るぜ。
 どうしてもそれを貫くんなら…ひねくれた仲間を2人くらい、見つけるんだな」
「……気をつけろよ」
「『警察』にそんなこと言うのは、お門違いですぜィ」

そう言い残して沖田はその場を去った。
355代理2:2009/10/05(月) 22:45:27 ID:N8WrhZby
445 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:27:45 ID:9Jfx9i7w0
「……」

潤也は、黙っていた。
審判は下された。ただしそれは、正義や悪を比べるものではなかった。
潤也が考えに考えた末に選んだ道は、脱出。
ただしそれは確実で、最速の脱出。

殺し合いに勝ち残るのは難しい。
だが全員で仲良く脱出するのも難しい。
難しいということは、時間がかかるという事だ。失敗の可能性があるという事だ。
だからそんな手段はとっていられない。自分のこのちっぽけな力でも出来る、最大限のことはなにか。
それは強い参加者を何人も味方につけ、自分の能力で導くこと。
無駄を省いた、最速確実の道へ。

沖田の力も役立つものではあった。しかし、彼はこちらを疑いすぎている。
最初の出会いの際にもう少し落ち着いて対処が出来ればまた違ったのだが…
とにかく、これ以上ヤツと一緒に行動していると、思ったように動けない。
しかも本当にいざとなったら、おそらく彼は自分を見捨てられる人間だ。
だから排除する必要があった。
都合よく自分を拘束していた鎖がはずれ、生まれたチャンス。それを最大限に活かし、成し遂げた。
ヤツの性格からして、この状況で言い訳がましく事情を説明するなど、耐えられないはずだとふんでいた。
それがあたった。

だが、今唯一の味方となった金剛もバカではない。自分に対して疑念を抱いているだろう。それでもいい。
それでも彼は潤也を守る。スジとやらを通す為に。それがわかったから選んだ道だ。
兄貴の仇の情報を得る目的も含めて仲間はもっともっと欲しい。
金は無いけど、この状況で必要なのは多分金じゃない。
金じゃない『何か』がきっと仲間を増やす。その『何か』を考えるんだ。

俺は兄貴の仇を討つ。潤也の考える基本的なことはなにも変わっていない。
ただ、『今』一番適した方法が『のる』ではなく、『逆らう』だと判断しただけだ。
その為なら、善意だろうが悪意だろうが利用してやる。
生き延びたい奴ら、帰りたい奴ら、勝ち残りたい奴ら、そして、主催者。
みんな利用して…脱出する。仇を討つ。
そう考え抜いて、決めた。
356代理:2009/10/05(月) 22:54:27 ID:GoUxq7D7

「おい、潤也」

金剛が潤也に向き直り、声をかける。
なんとなく察してはいるのだろうが、金剛は事情を聞きたかった。はっきりしないのは好きではない性分。
だが、そこで彼の視界に入ってきた潤也の表情は、驚愕。

「金剛後ろーーー!!!」

振り向けば、大剣を構えた少女の姿。

「正義は、勝ぁぁぁぁぁつ!!ですわーーーーー!!」


    ◇     ◇     ◇

とは、限らない

    ◇     ◇     ◇


金剛は本気の打舞流叛魔を叩きこんだ時点で、相手を無力化したと思っていた。
以前戦った時はそうであったし、なにより確かめる暇もなく仲間の諍いが起きた。
らしくない油断ではあったが、仕方のないことだったのかもしれない。

とにかく、剛力番長はまだ倒れてはいなかった。
それはホムンクルス化の影響か、金剛への制限が原因か。
再び立ち上がるまでには少し時間がかかったものの、彼女はその身を起こし戦闘を再開した。
今度こそ、正義の鉄槌を下す…その一心で、振りかぶった剣を叩き込んだ。

「ぬおぉ!」

間一髪、潤也の指摘で振り向くと、握りこんだ拳で剣を受け止める。
剣自体はそれほど切れ味のあるものではないようで、切断されることはなかった。
だがその重量と力、無事ではすまない。
357代理2:2009/10/05(月) 23:00:33 ID:N8WrhZby
447 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:29:16 ID:9Jfx9i7w0

「ぐぅぅ!」
「く、まだまだぁぁ!!!」

痺れる両拳を酷使し、金剛は剛力番長の追撃をかわす。
これではしばらく打舞流叛魔は使えない。しかも近くには潤也がいる。
彼を安全なところに逃がさねばならない。
金剛は潤也を脇に抱え、ひとまず逃走を図る。

「ま、待ちなさい!!」

すぐさま相手も追いかけてくる。ところが……

「あ、あらー!?」

打舞流叛魔のダメージか、それとも単純に躓いたか、少女はこの大事な場面でよろめく。
わずかに崩したバランスは、力はあっても小さな体格に不釣合いな剣によって大きな影響を生んだ。

どってーん

古いギャグのような音をたて、少女は思い切り転倒した。


相手が一人コントをしている間に、金剛はとりあえず体育館へと駆け込んでいた。
どこか潤也が隠れられそうな場所は無いか探す。1つの扉が目についた。

「とりあえずあそこに隠れていろ」
「え、ちょ、金剛、あれは…」

そういって金剛がずんずんと扉に近づき、ドアを開く。
そこへ一歩踏み込んだ、その時だった。

「もう逃がしませんわ!!!」

体育館の扉を開き、体操着の少女が入ってきたのは。
よく似合っている上に校庭以上に違和感のない場所にいると、普通のことのように見える。
転んだ際に打ったのか、鼻が赤くなっていた。
しかし、彼女は目を見張る。男達が確かにここに逃げ込んだのは見えた。
だが、ここには誰もいない。自分が入ってきた以外の扉は二つ。
1つは体育倉庫だろうか。そしてもう1つ。こちらが開いていた。

「非常口……またしても外へ…?どこまで逃げるおつもりかしら!」
358代理2:2009/10/05(月) 23:01:14 ID:N8WrhZby
448 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:29:52 ID:9Jfx9i7w0

そういってその扉に駆け寄ろうとするも、そこでスピーカーから音楽が流れ始める。
ハッ、と気がつき、思わず館内の時計に目をやると、時間は午前六時。

そう、最初の放送が始まる時間だった。
どうするか迷うものの、先ほどの男の言葉が頭をよぎる。

『そのキンブリーってヤツが死んだら意味がないだろ?』

まさか、彼が死んでいるとは思わないが……それでも、ここで放送を聞き逃すのはマズイ。
そう自分に言い聞かせるように、少女は立ち止まった。鞄から『日記』を取り出す。

「……これから、放送が始まります。先ほどの男達は取り逃がしてしまいましたが…
 大丈夫、全てうまくいきますわ…」


【H-3小学校/体育館/1日目 早朝(放送直前)】

【白雪宮拳(剛力番長)@金剛番長】
[状態]:疲労(中) ダメージ(中) ホムンクルス 『最強の眼』
[服装]:キツめの体操服、紺のブルマ
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]:支給品一式、アルフォンスの残骸×6  ボイスレコーダー@現実
[思考・備考]
0:全員を救うため、キンブリーを優勝させる、という正義を実行する
1:放送を聞く
2:先ほどの男達を追跡する?
3:キンブリー以外は殺す。
4:強者を優先して殺す。
5:ヒロ(名前は知らない)に対して罪悪感
6:蘇らせた人間の中で悪がいたら、責任を持って倒す
7:ボイスレコーダー(正義日記)に自分の行動を記録
[備考]
※キンブリーがここから脱出すれば全員を蘇生できるとかろうじて信じています。
※錬金術について知識を得ました。
※身体能力の低下に気がついています。
※主催者に逆らえばバケモノに姿を変えられるという情報に、疑問を抱きつつあります
※参戦時期は金剛番長と出会う直前です。
※アルフォンスが参加者だったことに気づいていません。
※妲己がみねねの敵だと信じています(妲己の名前は知りません)。
 二人の会話も聞こえておらず、みねねは妲己に従ったと思っています。
※賢者の石の注入により、記憶が微妙に「自分の物でない」ような感覚になっています。
 正義の実行にアイデンティティを見出し、無視を決め込むつもりですが、果たして出来るかはわかりません。
※ボイスレコーダーには、剛力番長と出会うまでのマシン番長の行動記録と、
 剛力番長の島に来てからの日記が記録されています。
359代理2:2009/10/05(月) 23:02:19 ID:N8WrhZby
   ◇     ◇     ◇

潤也は金剛に、その扉は非常口だと伝えようとしていた。
ところが…いざくぐってみれば、たどり着いたのは外ではなく、どこかの室内。
それもかなり広い場所のようだった。何かの店なのか、いろいろなものが並んでいる。

「む、随分と広いな。まぁ隠れるには丁度いい。ここで待って…」
「ちょ、ちょっと待てよ金剛。ここどう見ても学校じゃないって」

金剛の脇から下ろされ、周囲をあらためて確認しながら潤也は告げる。
おかしい。非常口に飛び込んだはずが、なぜ室内、それもまったくつくりの違う建物に繋がるのか。
考えろ、そう思った時、彼の考察を邪魔するかのように音楽が流れ出す。

「これは…まさか、やつらの言っていた放送か?」
「……音楽なんか使って、いい気なもんだな」

暗い室内に、メロディだけが響き渡る。

【I-7デパート/1日目 早朝(放送直前)】

【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
【状態】疲労(中)、右手首骨折(応急処置済み)、たんこぶ一つ、体の数箇所に軽い切り傷
【装備】首輪@銀魂(片方の首輪をはめている)
【所持品】
【思考】
基本:兄の仇を討つ。そのためには手段も選ばない。
1:兄の仇がこの場にいれば、あらゆる方法を使って殺す。いなければ、確実で最速なやり方でここから脱出する。
2:ひとまず脱出の為に、金剛を始めとした殺し合いにのっていない参加者を集め、協力してもらう
3:その集団を、能力を活かして確実最速な脱出方法へ導く
4:土方に対する激しい怒り?
5:兄貴……


※参戦時期は少なくとも7巻以降(蝉と対面以降)。
※沖田の名前を土方と理解しました。
※能力は制限されている可能性がありますが、まだ気付いていません(少なくとも3分の1は1に出来ます)
※キンブリーを危険人物として認識しました。



【金剛晄(金剛番長)@金剛番長】
[状態]:疲労(中) 両拳に軽い痺れ(数分で回復します)
[服装]:学ラン
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、確認済み支給品×2(武器である事は確認済み)
[思考]
基本:殺し合い?知ったことか!!
 1:ゲームを潰す
 2:施設をまわり、情報を集める。
 3:このゲームの主催者たちにスジを通させる
 4:陽菜子や他の番長たちはいるのか……?
 5:仲間たちにもスジは通させる
 6:剛力番長の様子がおかしいことが気にかかる
 7:土方のことも気がかり
[備考]
※自分の力が制限されていることを知りました。
※主催の用意した武器を使うつもりはありません
※キンブリーを警戒対象として認識しました。

※H3小学校体育館の非常口と、デパートのどこかがワープで繋がっています。
360代理2:2009/10/05(月) 23:03:02 ID:N8WrhZby
450 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:30:54 ID:9Jfx9i7w0

    ◇     ◇     ◇

まぁ、丁度良かったのかもしれねぇや。
夜道を一人歩きながら、沖田は少し冷静さを取り戻した頭で考える。
潤也の策略にのってしまい、結局彼らから離れざる得なくなった。
これは正直痛いし、悔しい。

あの場で金剛に事情を説明すれば事態は収まったかもしれない。
だが、そうすれば自分の姉の話や、それによって激情してしまった事を伝えねばならなかった。それは我慢ならない。

安藤潤也は危険だ。だが、その危険さは即効性のものではない。
あぁいうタイプが厄介になるのは状況が混乱してからだ。
むしろ今危ないのはさっきのガキみたいな、深く考えずすぐ暴れまわっちまうタイプの方。
金剛の旦那もバカではない。いざとなればヤツをなんとかするだろう。
無理に自分がついている必要もない。

言い訳半分、本気半分という感じで考えていた。
そういえばあのガキはどうなっただろう。
旦那の知り合いらしいが、ちゃんとぶっ飛ばせたのか。
まぁ問題ないだろう。あぁいう男は、身内だからこそ遠慮なく拳をふるえる。
そいつの間違いを正してやる為にも。
数時間前に殴られた頬をなで、うっすらと、今日で一番素直な笑みを浮かべる。

勢い飛び出てしまったが、自分はやるべきことを、否、やりたいことをやるだけだ。
今の目的地は警察署。彼自身に警察としての自覚はほとんどないも同然だ。
しかしそこには武器があるだろうし、いるのなら真撰組の他の隊士も集まる可能性がある。
武器と仲間。このふざけたゲームを壊すのにどちらも必要なもの。
と同時に、今しがた失ってしまったものでもあるのだが。
また当面の危険であるゲームにのって暴れる連中に対処するのにも有効なものだ。

デパートにいるという万屋の旦那のことも気になった。
しかしデパートには金剛達が向かうはず。これも彼らを放って置く理由の一つだった。
あの旦那なら、危ういあの二人もなんとか運転してくれそうな気がする。
そんな期待があったのかもしれない。

(まぁ、あんまり気にしすぎても仕方ねぇや。
 でもな、礼はいつかきっちりするぜ、潤也くぅん?)

やっとらしさを取り戻し、沖田が笑う。
だがその笑顔もまだ、少しぎこちない気がした。


【H-2/大通り/1日目 早朝(放送直前)】

【沖田総悟@銀魂】
【状態】疲労(中)、わずかな悲しみと苛立ち
【装備】木刀正宗@ハヤテのごとく! 
【所持品】支給品一式×2 イングラムM10(10/19)@現実 未確認支給品0〜1(確認済み、武器はない)
【思考】
基本:さっさと江戸に帰る。無駄な殺しはしないが、殺し合いに乗る者は―――
1:警察署に向かい、武器と仲間を探す。特にこの場にいるなら近藤や銀時達知り合いと合流したい。土方?知らねえよ
2:金剛と潤也が気がかり
3:……姉上、俺は――


※沖田ミツバ死亡直後から参戦
※今の所まだ金剛達との世界観の相違には気がついていないようです
※キンブリーを危険人物として認識
361代理2:2009/10/05(月) 23:04:17 ID:N8WrhZby
451 名前: ◆lDtTkFh3nc[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 22:34:50 ID:9Jfx9i7w0
以上、タイトルは「夜明けだョ!全員集合」
タイトルに偽り有。体操服?趣味です。

長いのに投下をミスってすみません。
代理してくださってる方、ありがとうございます。

とのことです。
以上で代理投下2完了です。
>>359が60行を超えた為、少し空白の行間を削りました
362創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 23:08:11 ID:N8WrhZby
てっきり金剛と剛力のガチ勝負が目玉かと思いきや、それに負けないくらい潤也が輝いてるぜ!
こういう心理描写はlDtTkFh3nc氏が一番上手いなと思う。
そして沖田が相変わらずどこかキレイだw
剛力も金剛たちを追ってデパートに来るのかな
363代理:2009/10/05(月) 23:21:33 ID:GoUxq7D7
代理2さん投下乙です

俺もこの組み合わせだと金剛と剛力のガチ勝負が目玉と思ってました
しかしlDtTkFh3nc氏はいい意味で裏切ってくれた!
確かに沖田があの状況で説明とかしないよな
そして潤也は危ういけどかっこよかった。でも名簿見たらどうなるか気になる
ワープしてデパートに来たがこれって剛力も追って来たらデパートは大乱戦だw
ちなみにきつめの体操服とブルマは吹いたw
364創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 01:19:10 ID:4yG9Rz68
投下乙です

潤也と沖田の対決が深いな。沖田は去ることになったが因縁が生まれたか。
銀時とは再開せずか。そして潤也は怖い意味で覚醒し出したな。
剛力はブルマかよw 狙ってましたねw
そして逃げた二人はデパートにワープか。
365創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 15:14:25 ID:+3H2z+Je
これで今週末に放送後の予約受け付けかな?
日曜の0:00でどう?
366創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 15:50:31 ID:ptB+aoSo
明後日くらいでもいいけどね
実際残り2パート書いてる人がいる気がしない
367創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 16:24:34 ID:+3H2z+Je
でも残りのパート書いてる人は居なくても放送後はどこを書こうかと悩んでる人がいるみたいだし
考える時間は必要だと思うけど?
368創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 16:39:49 ID:Z1k4Ezqg
解禁時間としては日曜よりも、木曜か金曜のほうが望ましいかな
週末に書く時間が出来るし。
369創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 16:47:16 ID:ZTl164iw
>>367
別に放送投下したからって即予約しなきゃならんわけじゃなし

俺も基本週末に書くので木曜か金曜がいいかな
370創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 16:52:02 ID:+3H2z+Je
それでは木曜か金曜のどちらかで予約解禁で
371創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 17:08:39 ID:Z1k4Ezqg
綺麗に予約がバラけるといいけどねぇ
被らない事を祈ってるよ
372創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 22:59:21 ID:yA/ydlLV
時間は0:00きっかりか?
373創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 23:10:20 ID:Z1k4Ezqg
23:00とかのが判りやすいかも
金曜00:00とかだと金曜になった瞬間の事か、金曜が終わる瞬間か迷う。
遅くなると寝落ちする可能性もあるし
374創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 23:42:11 ID:yA/ydlLV
では木曜の23:00か金曜の23:00?
375創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 17:11:55 ID:kH7Yo1Uu
明日解禁なら今日放送投下かな
明後日なら明日投下

◆JvezCBil8Uさんの都合のいい方でお願いします
376創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 17:32:27 ID:kH7Yo1Uu
あ、それと◆lDtTkFh3ncさん
「夜明けだョ!全員集合」をwikiに収録しようとしたところ、若干容量オーバーしました
分割位置の指定をお願いします
377創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 18:31:41 ID:ZX4/Da5+
台風で明日休校になった
とりあえず書き始めておくか……
早めに書き終われば、他にも書けるパート残ってるかもしれないし
378 ◆JvezCBil8U :2009/10/07(水) 18:44:50 ID:EhxdNDL1
えーと、私としては投下はすぐにでもできるので木曜23時でも金曜23時でもどちらでも構わないです。
とりあえず何かご意見が新しく出ないようなら今晩投下して明日予約解禁でいいかな、と。

で、放送で告げる名前に関してなのですが、少々最終確認らしきものを。
基本的には名簿はグリードも含めて議論スレの>>158で◆L62I.UGyuw氏が作成したものでいいと思うのですが、
安藤兄以外にひだまり勢もフルネームで呼んでいる扱いで大丈夫でしょうか?
とりあえず今回の放送ではグリードとヒロがここに引っかかっていますので。

問題がないようでしたら、あらためて後ほど投下します。
379 ◆Eoa5auxOGU :2009/10/07(水) 18:54:45 ID:ig8MSTgR
自分は問題無しです
380創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 19:04:19 ID:NDLK/Mfh
>>378
偽名しか明らかになってない連中もいますし、識別できればどちらでもいいかと
安藤兄弟みたいにあからさまに不自然なのはいませんし
381 ◆JvezCBil8U :2009/10/07(水) 21:59:18 ID:EhxdNDL1
ふむ、とりあえずは大丈夫ですかね。
それでは放送を投下します。
382第一回放送 土屋キリエの憂鬱 ◆JvezCBil8U :2009/10/07(水) 22:00:35 ID:EhxdNDL1
朝の日差しは眩しく、雲間から漏れるレンブラント光が目を射抜く。
暖かさを感じさせながらも鋭く地表を貫くその光がもたらすのは釣りやハイキングにもってこいのいい天気。
今日は、洗濯物がさぞやよく乾くだろう。

風、というものは、海と陸それぞれの上に漂う空気の密度差――即ち温度差によって生じる。
昼は陸がより熱されるが故に海から潮の香りを届けられ、夜は海が熱を保つ故に陸から木々の匂いを渡す。
互いに行きかう二つの風は、昼と夜の境目にその役目を交代するのだ。
人はそれを凪と呼ぶ。
風が沈黙し、心乱す何事も起こるはずのない安息地。

今の時間は、まさしく朝凪。
たとえどれ程憎みあう間柄とて、振りかざした武器を下ろす事が約束される時。
……然して。
さわやかな朝を台無しにするかのような、重苦しい雰囲気の女の声が響き渡る。
マイク特有の雑音とともに、放送は皆に等しく現実を突きつける。

この時間はまさしく凪でしかなく、この終わりとともに誰彼かまわず暴風に身を曝すことになるのだと。

――正確には、放送に入る際にリストの"孤独の中の神の祝福"という曲が前置きとして流れてはいた。
しかし大抵、人の記憶とは後から耳にしたものの方が強く強く残り、偉大なる先人の記憶はすぐに薄れ行く。
そこに意味を見出すものを覗くならば、殆どの子羊たちにはお茶にごしにすらなりはすまい。


『……第一回の放送を始めるわ。
 新たなる神にいいように踊らされていて気に食わないでしょうけど、我慢して聞いて頂戴。
 運命の螺旋に屈するのも立ち向かうのも、あなた達それぞれの意思ひとつ。
 掴めるものは、私たちのような存在だって利用しなさい』

話者の女は、そこで一旦言葉を区切る。
何かを誰かに伝えたがるかのように、今の言葉を吟味させるように。

『まず、配られていた白紙の名簿を見なさい。参加者全員の名前が読み取れるはずよ。
 知っている人の名前が少ない事を祈るわ。
 ……そして、そこから更に名前は削れるの。悲しんでも進み続ける覚悟はできている?
 今回の死亡者は、……以下の通り。

 愛沢咲夜
 綾崎ハヤテ
 アルフォンス・エルリック
 グリード
 紅煉
 鷺ノ宮伊澄
 サンジ
 志村新八
 蝉
 太公望
 ニコラス・D・ウルフウッド
 平坂黄泉
 ヒロ(※1)
 マシン番長
 モンキー・D・ルフィ
 ロイ・マスタング
383第一回放送 土屋キリエの憂鬱 ◆JvezCBil8U :2009/10/07(水) 22:01:54 ID:EhxdNDL1
 眼を背けず、現実を直視して。
 そしてその先も見据えなさい、自分と近しい人たちが生き残る為にどうすればいいのか。
 進入禁止エリアを指定するわ。
 指定した時刻になるまで猶予があるから、そのエリア近辺にいる人は時間に注意して離脱しなさい。
 どういう意図でそこが封鎖されるのか、それも一つの手がかりよ。

 7:30よりI-6。
 9:00よりF-7。
 10:30よりB-4。 

 以上よ』

放送席にいた女性は、それだけ告げると再度沈黙した。
――だが、まだ放送のスイッチ入れられたまま。
まるで何かを試し、様子を伺っているかのように。

すう、はあ、と、何度も呼吸を繰り返す音だけが増幅され、皆に届けられる。

静寂は続く。
一分だろうか、二分だろうか。
それとも、もっとずっと多くの時間だろうか。

いずれにせよ、10分はかかっていないだろう。
そして唐突に、怒鳴りつけるような声が島中へ轟いていく。


『……ッ! こんな事言っても、連中に組してる私の言うことは信じられないかもしれない。
 でも、聞きなさい! そして生き延びるために考えなさい!
 死ぬな! みんな、生き残れ!
 真実を告げるわよ、この殺し合いは、このゲームは、新たなる神なんて名乗るヤツの――、」


たぁん、という軽いくせにやけによく響く音が、マイクを通じて届く。


そして、それきりだった。
ぶつり、という耳障りなノイズを残して、急に放送が途切れて終わる。


後には木の葉を散らして風が吹き渡るばかり。
凪は、終わりを告げたのだ。



********************



銀の髪を持つ少年が、放送室に立っていた。
肩を壁に預けて、放送席に座った女性に向かい静かに言葉を紡いでいる。

抑揚の少ない台詞の中、女性は少年の方すら向かず、静寂を守っていた。
ただじっと、座り続けていた。


「……どうしてこんなつまらない反逆を試みたのか、俺は知らないし、知るつもりもない。
 ただ、これだけは言える。
 もはや、動き出したドミノの牌を止める術はない。
 結局、俺たちは二重螺旋の運命に縛られた駒でしかなく――、お前の行動も、全て予定調和だったようだ」
384第一回放送 土屋キリエの憂鬱 ◆JvezCBil8U :2009/10/07(水) 22:03:10 ID:EhxdNDL1
「語るのー、詩人じゃのー」

全くの、不意。
ついさっきまでそこにいなかったはずの、在り得ない存在の声。
しかしそれすら驚くに値しない。
思った通りとばかりに背後からの声に少年が振り向くと、年端も行かない童女がニヤニヤとトウモロコシを加えてコチラを眺めていた。

「どういう心変わりなんじゃろうな、お前さんは連中の中ではこういう立場とは一番縁遠いと思っとったのにの。
 今更我らに身を委ねた、というのもしっくりこないぞ?」

「…………」

「ま、別にええの。お前さんが語った通り、新しい“神”にとっちゃ全て予定通りなんじゃろうしな。
 我々がルールを決め、あの道化師どもが遊戯盤を用意し、そしてお前たちは――、」

「ムルムル」

分かっているとばかりにムルムル――ソロモン72柱の悪魔が公爵の名を持つ童女を睨みつけ、少年、アイズ・ラザフォードは踵を返す。
嘲笑うその目つきから逃れるようにちらりと背後を見れば、そこには彼が兄と呼んだ少年、死んだはずの少年がモニターに映し出されている。

「……運命はもはや、生と死すら弄ぶのか」

言葉には何の感情もこめられていなくて、だからこそアイズがどんな気持ちを抱いているのかはあまりに分厚いカーテンの向こう側に隠されたままだ。

「お前が生きてここにいるのは――、」

その呟きと同時に、放送席に座っていた女性がずるりと崩れ落ちる。
彼女の頭蓋の真ん中には、ちょうど真ん丸な穴が前から後ろまで貫通していた。

アイズは手に持った拳銃を収めるべきところに収め、言いかけていた言葉を飲み込み別の台詞を形作る。

「さようならだ、ツチヤキリエ」



じくじくと人の運命を飲み込んで、血の池は静かに広がりつつあった。



【土屋キリエ@スパイラル〜推理の絆〜 死亡】


※1:実際にはフルネームが呼び上げられています。
385 ◆JvezCBil8U :2009/10/07(水) 22:04:25 ID:EhxdNDL1
以上、投下終了。

……さて、放送開けたらどんな展開が待ち受けているのやらw
386 ◆yuVy4gPLQo :2009/10/07(水) 22:43:58 ID:WHtkFR++
投下乙です

放送に合わせて「Paradise Lost」の放送部分を微調整しました
放送後楽しみですね
387創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 23:03:33 ID:QVM/lA/M
投下乙
またひと波乱あるだろうなー
388創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 23:06:25 ID:NDLK/Mfh
投下乙
ひと波乱じゃ済まんw
389 ◆Eoa5auxOGU :2009/10/07(水) 23:55:52 ID:ig8MSTgR
投下乙です

しかしキリエは原作でもここでも貧乏くじ引いてるな。黒幕の悪意でしょうか?
放送後は名簿も読めるようになるから波乱の連続だろうな
390創る名無しに見る名無し:2009/10/07(水) 23:59:14 ID:yUpORfhL
わざわざ宣伝するなカス
391創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 00:08:49 ID:Bc1Vebm/
あー、宣伝はしないほうがいいぜ
あそこ荒らしがゴロゴロいるから
もう既に一匹来てるし
392創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 00:09:45 ID:3RFj39sN
だなぁ
あそこで話題が上がる度にヒヤヒヤする
速攻話題変えてる
393 ◆lDtTkFh3nc :2009/10/08(木) 00:21:02 ID:MnimnLJd
放送投下乙です。
キリエちゃん不憫や…ただ、実はものすごく立派な事してますよ、彼女。
『神』相手にはそれすら予定調和のようですが…果たして後に繋がるか。
うーん、いろいろ怖いなぁw

>376
ありがとうございます。
一応>350と>351の間で区切っていただけるとありがたいです。
お手数おかけします。
394 ◆JvezCBil8U :2009/10/08(木) 00:42:11 ID:gTM3ke8Y
すみません、>>119氏にご指摘していただいたところを修正し忘れてますね……。
wiki上では修正しておきます。
395創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 22:39:48 ID:uT9GvuTr
あ、木曜か金曜か正確に決めてないのに残り30分だぞ
396創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 22:45:59 ID:uT9GvuTr
ごめん、>>375見たら今日だった
397 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:01:50 ID:R32lOYhT
エドワード・エルリック、リン・ヤオを投下します
398反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:03:14 ID:R32lOYhT
「おい」

薄暗い森に鋼の錬金術師、エドワード・エルリックの声が吸い込まれる。

「……」

一方、シンの皇子、リン・ヤオは無言。時折、落ち葉を踏みしめる音が聞こえる。

「おいって」
「……」

なおも無言。
木々を揺らす風の音。舞い上がる木の葉。湿った土の匂いが二人を包む。

「おい! もう起きてるってんだよ。降ろせって!」

しびれを切らしたエドが声を張り上げた。
リンは耳のすぐ後ろからの大声に顔を顰め、

「あーうるさイ。怪我人は大人しく黙ってロ! つーか起きて第一声がそれカ!?
 せっかく助けてやったってのニ! 俺だってムサい男なんか背負いたくないヨ!」

一息で反論。
背負われていたエドが口を閉じ、妙な沈黙が生まれる。

「……」

「……」

「……お前も巻き込まれてたんだな」
「……まあナ」
「……とりあえず降ろせよ」
「断ル」
「い・い・か・ら、降ろせっつーの」
「ぐェ!? 絞まル絞まル」

左腕でリンにチョークをかけるエド。弾みでエドの体重を支える手が緩んだ。
その隙に、エドは身を捩って尻から地面に落ちる。
尻に付いた土を払いつつ、立ち上がろうと脚に力を込めるが、

「よっ……と。うぉ!?」

あえなく膝から崩れ落ちてしまった。
気絶するほどの錬金術の連続使用による身体への影響は大きかったらしい。

「だから言ったのニ。まあいいカ。これだけ離れればヤツらも簡単には追ってこれないだロ」

縒れた襟首を整えながら、リンもその場に腰を下ろした。
額に薄く汗が浮いている。

「ヤツら? そもそもここは何処だよ? 俺が倒れてる間に何があったんだ?」

矢継ぎ早に質問するエド。
リンは鬱陶しいと言いたげに手をひらひらと振るう仕草を見せる。
399反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:04:06 ID:R32lOYhT
「一遍に訊くナ。色々あったんだヨ。
 ホントは病院に行こうと思ってたんだけど、この状態で目立つ場所に出るのはマズいと思ってナ。
 人気の無いとこまで逃げてきたんダ」
「あー……そりゃ正解だぜ。病院には白コートのヤベーのがいてな……。今ハチ合わせしたら多分殺られる」

エドは疲れた様子で言葉を吐く。が、すぐに真面目な顔でリンに向き直った。

「で、リン……放送ってやつはもう終わったのか?」
「……あア」

若干の間。
リンの目から心なしか力が失われる。

「侵入禁止エリアには印を付けておいタ。確認しロ」

手だけを動かして、持っていたエドの荷物から地図を取り出す。
そのぎこちない行動を訝しむエド。
風は凪ぎ、森が静寂に包まれる。

「……名簿は?」

抑えた声で訊く。
無言で、リンがデイパックに手を入れた。そこで一瞬躊躇うような仕草を見せ、

「………………これダ。……放送で呼ばれた名は赤くなる仕掛けらしイ」

しかし結局名簿を手渡した。
エドは名簿に目を通し始め――すぐにその視線が一点に縫い止められる。

「……オイ、冗談――だろ?」

あってはならない出来事。
あるはずのない出来事。
世界が、音を立てて崩れ去る。

アルフォンス・エルリック。
エドワード・エルリックの唯一無二の弟。
その名が、名簿の上の方で死の色に染まっていた。

「……っざっ――――けんな!!」

脇に生えた樹に右腕の機械鎧を激情のまま叩き付ける。
ギリリと奥歯を噛み締める音。ややあって、落ちてきた葉がエドとリンの頭や肩に徐々に積もっていく。
エドは顔を伏せたまま動かない。
狭い空はいつの間にか青く染まり、小さな雲が浮かんでいるのが見える。
リンは何も言わず、ただ静かに座っていた。

森に一時の静寂が戻った。



木々の隙間から射し込む陽の光が剥き出しの土に斑模様を描く。
斑の中に、影が二つ。
なあ、とエドが沈黙を破った。表情は窺えない。
なんダ、と何でもない調子で返すリン。

「グリードは、死んだのか?」
400反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:05:36 ID:R32lOYhT
平坦な声。

「死んダ。『俺は閻魔をブッ殺して地獄の王になって待っててやる。お前は神をブッ殺してこの世の王になれ』だそうダ。
 ……最期まで強欲なヤツだったヨ」
「……」

再び沈黙。
だが今度はすぐにリンが口を開いた。

「十八人死んダ」
「そうだな」
「ホムンクルスの不死性すらこのゲームに都合良くコントロールされてル」
「みたいだな」
「俺達を集めた連中は、人間でもホムンクルスでもない――本物の化け物ダ」
「かもな」
「ヤツらに逆らってもまず勝ち目は無いだろウ」
「だろうな」
「助かりたいなら諦めてゲームの勝者になった方がいイ」
「おそらくな」

「…………なア……エド、お前は――これからどうすル?」

「……」

三度の沈黙。
そして、

「……も……」

ボソリと。エドの口が動いた。
全身が、微かに震えている。
そして、ゆっくりと、伏せていた顔が上がり、



「どうもこうもあるかァ――――――――――――!!!!!!!!」



吼えた。



ビシリ、と。鋼の指を見えぬ敵に突きつける。



「勝ち目? 知るかッ!! ゲーム? そんなもんクソッくらえだッ!!!!
 おい!! どうせ聞いてんだろ!! バカピエロにチビジャリ!!!!
 テメーら地獄の底まで追い回してでもフン捕まえてやるからな!!!!
 そんでもって顔の形変わるまでボッコボコのギッタギタにしてやる!!!!
 悪党らしく部屋の隅で腰抜かして泣きながら土下座する準備でもしてやがれ!!!!
 許さねーけどな!!!!!!!!」



焔の点いた目。
401反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:06:29 ID:R32lOYhT
それを見て、口の端を吊り上げ、まるでグリードのように獰猛な笑みを浮かべるリン。
エドはリンに向き直り、その目を真っ直ぐに見据えて、

「共闘といこうぜ、リン。何があったか詳しく教えろ」
「いいだろウ。俺も聞きたいことが山ほどあル」


***************


この場に関するエドとリンの認識に大きな差異は無かった。
すなわち、異なる世界――違う国などではなく――から多くの人や人でないもの達が集められているらしい、という点だ。
ゲームの主催者の目的は不明だが、国土練成陣のような大掛かりな儀式か何かではないか、という推測も一致した。
ただし細かい部分ではお互い知らなかったことや勘違いもあった。

「それじゃ、逃げた二人はエドの仲間だったのカ」

例えばリンは聞仲やうしおを襲撃者と思い込んでいた。
もとを糺せば、この勘違いこそがエドとリンが二人きりという今の状況を作ってしまったといえる。

「仲間っつーか成り行きの道連れっつーか……。変な奴らだったけど、でも信用していいと思うぜ。
 タカマチも逃げ切れたみたいだし、どうにかして合流したいんだけどな……」

逸れたときの集合場所くらい決めておくべきだったかとエドは後悔する。
狭い島とはいえ、闇雲に探し回っても都合良くまた会えるとは限らない。彼らの行き先の心当たりも無い。
それなら優先すべきは――。
顎に手を当てて暫し考えをめぐらせ、

「あいつらには悪いけど、まずウィンリィを探す。あいつまで死なせちまったら、それこそアルに合わせる顔がねぇよ。
 ……それでいいか?」
「分かっタ。幸い俺の仲間は名簿に無いしナ。でも何処にいるか見当付いてるのカ?」
「研究所か工場に行く。あいつが首輪を外す気ならまず真っ先に目指すだろ。
 それに俺も工具が欲しいしな」

小声でそんなに簡単に外せるわけないけどな、とも付け加える。

「じゃあ行くぜ。高みの見物決め込んでるドサンピン共に天誅食らわせてやらぁ」

今度はしかと立ち上がり、力強く宣言。

「よシ。だけどその前ニ」
「その前に?」

リンの腹の虫が盛大に鳴いた。

「腹減っタ。朝メシ食ってから出発しないカ?」

402反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:07:22 ID:R32lOYhT
***************


リンの緊張感の無い提案にずっこけたエドだったが、考えてみれば飲まず食わずで行動するのは出来れば避けたいことは確かだ。
空腹は判断力を損ねる。それに、ここは少しでも体力を回復しておきたい。

「エドが……モグ……寝てるときに……ムグ……ちょっと……ング……食ったんだけど、その、余計……モグ……腹が減ってナ」
「分かったから食いながらしゃべんなバカ。つーか当たり前みてーに人のメシ食うんじゃねーよ」
「非常事態だったんだからいいじゃないカ」

悪びれる様子もなく言い放つ。
先程の放送中のこと。リンはとりあえず体に力が入るように握り飯を口に放り込み、そのままここまで逃げてきたのだ。
正体不明の気配の近くで暢気に食事を続けるほどリンは間抜けではない。

「ところでずっと気になってたんだけどサ。ソレは何なんダ?」

さっさと先に食べ終えたリンがエドのデイパックから覗く物体に興味を示した。
手に付いた米粒を舐め取りながらエドが答える。

「さあ? タカマチは『前衛的なデザインのカドマツ』だとか何とか言ってたけど。
 別にいらねーし、欲しけりゃやるよ」

それはいわゆる門松――なのだが、竹の先端に星の飾りが付いていたり両脇にベルが飛び出していたりとファンシーだ。
間違っても殺し合いの場に似合うアイテムではない。

「いや、いらなイ。それよりコレやるヨ。そのカドマツってのは武器にはならないだロ」

リンは持っていたナイフを投げ渡す。

「ここだと錬金術が使いにくいんだロ? それなら武器は持ってた方がいイ。
 なるべく錬金術は使わずにそいつで戦エ」

それを無言で受け取り、手の中で弄ぶエド。

「そうだな……じゃあありがたく貰っとくぜ」

そして握り飯の最後の一口を頬張った。
それを飲み込んでから――ふとリンを眺めて不思議そうな顔をする。

「そういや――奴ら、グリードが死んだってのはどうやって判断したんだ?
 監視してるにしたって、お前は生きて歩いてるんだから見た目じゃ判らねぇだろ」

リン達は名簿に『グリード(リン・ヤオ)』と記載されているのだが、そのうち『グリード』の部分だけが赤くなっていた。
これはグリードのような存在をムルムルたちが感知出来ることを示唆しているのだが、

「そんなもの、『気』を探れば一発だヨ。
 ホムンクルスは中に沢山の気があるからナ。普通の人間や獣なんかとは全然違ウ」

リンは当たり前のことのように答えた。
水を飲んでいたエドはそれを聞いて、納得したようなそうでないような微妙な表情になる。

「『気』ねえ……。じゃあ奴らにもお前みたいな能力があるってことか? いやそれとも――」
403反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:08:59 ID:R32lOYhT



――ん?

今こいつ何か重要なことを言わなかったか?

気を探る。ホムンクルス。沢山の気。人間。獣。

――獣?

――あ。

――そうだ。これだ。

ここは何もかも異常だけども、最大の異常はこれだ。

異常過ぎて逆に気付かなかった――。



「そろそろ行くカ。……エド、どうしたんダ?」

出発しようと立ち上がり、そこでリンはエドの異変に気付いた。
エドも既に食事を終えているのだが、何故かその場から動こうとしない。
そして妙に険しい顔で周りに視線を走らせている。

「なあ、ちょっと聞きたいんだけどよ」

真剣な口調で切り出すエド。

「……何ダ?」

リンも釣られて声を低める。

「お前に背負われてたときから違和感があったんだけどさ。
 その……ちょっと周りの気を探ってみてくれないか?
 何かいるか? いや……何もいないんじゃないか?」
「ああ、何ダ。心配しなくても今は誰もいないヨ。
 ここに来てからどうも調子が悪いけド、そのくらいは分かル」

誰かが接近する気配でも感じたのか。エドの言葉をそう解釈して、リンは軽く返した。
しかし、

「違う」
「なニ?」

エドは真顔で否定の言葉を発した。
困惑するリン。

「『誰も』じゃなくて『何も』だ」
「それはどういウ――」

言いかけて、リンの顔が強張った。元々細い目がさらに糸のように細まる。
404反撃の狼煙 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:09:42 ID:R32lOYhT
「やっぱり、『何も』いないんだな?」

確認の声。何処までも寒々しく静まり返った森は、ただそれを吸い込んで打ち消す。

「――おイ。どういうことダ? ここは山の中だゾ? あり得ないだロ? 何で――」

あり得ないなんてことはあり得ない。そう嘯いたのは誰だったか。

「一頭の獣も、一羽の鳥も……一匹の虫すらいないんダ?!」


【E-3/1日目 朝】

【リン・ヤオ@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:降魔杵@封神演義
[道具]:なし
[思考]
基本:エドと共にこの殺し合いを叩き潰す。
1:工場か研究所へ行く。
2:咲夜、ひいてはグリードの仇を討つ。
3:グリードの部下(咲夜)を狙った由乃と雪輝を無力化したい。
[備考]
※原作22巻以降からの参戦です。
※雪輝から未来日記ほか、デウスやムルムルに関する情報を得ました。
※異世界の存在を認識しました。
※リンの気配探知にはある程度の距離制限があり、どの気が誰かなのかを明確に判別は出来ません。
※エドと情報交換をしました。
※会場に動物がいないことに気付きました。

【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ
[服装]:
[装備]:機械鎧、バロンのナイフ@うえきの法則
[道具]:支給品一式(ニ食消費)、かどまツリー@ひだまりスケッチ
[思考]
基本:リンと共にこの殺し合いを叩き潰す。
1:工場か研究所へ行く。
2:ウィンリィの保護を優先する。
3:首輪を外すためにも工具が欲しい。
4:出来れば亮子と聞仲たちと合流したい。
[備考]
※原作22巻以降からの参戦です。
※首輪に錬金術を使うことができないことに気付きました
※亮子と聞仲の世界や人間関係の情報を得ました。
※レガートと秋葉流に強い警戒心を抱いています。
※リンと情報交換をしました。
※会場に動物がいないことに気付きました。

【かどまツリー@ひだまりスケッチ】
ひだまり荘の前に飾ってあった、クリスマスツリーと門松の合体事故で発生しそうな物体。名称は適当。
一応凶器として使えないこともない。
405 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:11:33 ID:R32lOYhT
以上です。

ここまでの87話に野生の動物は一度も登場していない……ハズ、多分。
406創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 23:16:15 ID:3RFj39sN
スマン。ナイブズ様がみてるで出した……
今後の展望に問題があるようなら修正してもいい程度の物ですが…どうしましょう
407創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 23:17:53 ID:MnimnLJd
投下乙です!

エド…増田さんにも触れてやりなよw
まぁアルに先に気がつくでしょうから、そっちにもっていかれますよねぇ…
野生の生物がいない…思えばそうですね。これは中々面白い伏線になるかも?

しかし速いw
放送一発目お見事でした。
408 ◆L62I.UGyuw :2009/10/08(木) 23:23:03 ID:R32lOYhT
出てたwしまった……。
こちらとしてはラスト周辺を無かったことにして伏線を消すことは出来ます。
どこかで見落としてる可能性は考えてましたので。
409創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 23:28:14 ID:3RFj39sN
まぁ、確か水族館にもお魚がいましたしね
そっちのほうがつじつまが合うかも
410創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 23:32:39 ID:3RFj39sN
しかし早い……
しかもさっそく次が
おのれ、またえっちなパートを書くつもりだな……

投下乙!
411創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 23:42:20 ID:uT9GvuTr
もう投下か 
投下乙です

確かに増田さんはスルーかw
アル死亡で落ち込むか切れるかのどちらかだと思ってたが後者か
二人の雰囲気が出ててよかったですが伏線はどうなるんだろうか
412 ◆L62I.UGyuw :2009/10/09(金) 01:23:19 ID:EgSgJlu2
遅くなりましたが>>403以降の差し替え版を仮投下スレに投下しました。
確認お願いします。

増田さんは触れるとどうやってもアルのついでみたいになってしまうという……。
413創る名無しに見る名無し:2009/10/09(金) 01:29:39 ID:buSr5HUp
地図に金氏絵里あ追加するの?
414創る名無しに見る名無し:2009/10/09(金) 13:09:49 ID:aCcgkOa4
何かと思ったら禁止エリアかww
415創る名無しに見る名無し:2009/10/09(金) 14:32:14 ID:/HxeOfSp
追加してみた
416創る名無しに見る名無し:2009/10/09(金) 14:35:11 ID:wZLRKY8s
神すぎて吹いたww
417 ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 18:57:58 ID:ViqLwf6+
明日は投下ラッシュですかね?
ということで一足先にドクター・キリコ、三千院ナギを投下します。
418ブラック・ジャックによろしく ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 18:58:54 ID:ViqLwf6+
朝日に照らされた川沿いの道を、幽鬼の如き足取りで進む異様な風体の少女が一人。
少女は自分の身体のサイズより明らかに大きい上着を羽織り、その下には何も身に着けていない。
きめ細かな肌には、よく見ると無数の小さい傷が付いており、乾いた血が褐色の紋様を描いている。
そしてその少女――ナギが何より異常なのは、彼女の親友である黒髪の少女の生首を胸に抱えているという点だ。
彼女は全身を寒さに震わせながら、抱えた首に虚ろな眼を向けて語りかけている。

「……なあ、伊澄…………私は……どうしたら……いいんだ?」

首は応えない。ナギも返答を期待しているわけではない。彼女は彼女自身に問い掛けているに過ぎない。
現在の彼女の思考はただ一事に収束している。即ち、どうしたらこのゲームの勝者になれるか、ということだ。
いくら天才児とはいえ、この問題は引きこもりがちな子供に過ぎないナギにとってはとてつもない難題だった。
だがそれでも解答を導こうと、彼女の脳はフル回転している。

そうだ。クールだ。クールになれ三千院ナギ。
幸い手元にはスタンガンがある。姿を消す能力もある。非力な私でも奇襲をかければ勝機はきっとあるさ。
慌てず、見付けた相手を一人ずつ確実に殺していけばいいじゃないか。
そうすれば、もっと強い武器が拾えるかもしれないし。
これはゲームだ、と言ってたよな? ゲームなら、誰にでも勝つチャンスはあるだろ。
私なら出来る。いや、やらなきゃダメなんだ。

無論、無茶苦茶である。
それがほとんど不可能なほど困難な道であることは明白だ。
例えばナギが出会った怪物、ゾッドを倒すことを考えただけでもその絶望が理解できる。
かの怪物はスタンガンの電撃など蚊に刺された程度にしか感じないだろうし、サンジが言ったように姿を消した程度で誤魔化されるはずもない。
そして気紛れに振るう一撃がナギにとっては致命打となるだろう。
それに仮にゾッドを殺せるような強力な武器が手に入ったとして、そんなものを何の訓練も受けていない彼女が使いこなせるとは到底思えない。
それでも、彼女はもうその戦術に一縷の望みを託すしかなかった。
何しろ――頼れる人々は全て死んでしまったのだから。
彼らと再び逢うためには、彼女自身が頑張るしかないのだから。



そして、それは突然――具体的には彼女が橋に差し掛かったときにやってきた。

「え――、あれ?」

唐突に、橋が垂直に立ち上がった。ナギの主観ではそう感じられた。
勿論そんなことが起こるはずはない。実際には、彼女がアスファルトに向かって倒れ込んだだけだ。
幸いというべきか、伊澄の首がクッションとなったため怪我をすることはなかった。
慌てて立ち上がろうとするが、かじかんだ手足の筋肉は脳からの指令をまともに受け付けない。
それでも必死で脚を動かして膝を地に擦りながら右腿を腹の脇まで引き付け――そこまでだった。

「なん……で……」

全身に沁み込んでくる硬く冷たいアスファルトの感触。
極度の興奮状態だったために自覚していなかったのだが、実は彼女の身体はとっくの昔に限界を超えていたのだ。

腕から離れた伊澄の首がごろりと転がった。朦朧とする意識の中で何とか手を伸ばす。届かない。
さらさらと川の流れる音が無情にただ響いている。

(う……私は……こんな、ところで……)

――死ぬのか――。
そんな不吉な言葉が脳裏を掠めたのを最後に、ナギの意識は闇へと沈んでいった。

419ブラック・ジャックによろしく ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 19:00:04 ID:ViqLwf6+
***************


目覚めたとき、初めに目に入ったものは見知らぬ天井と蛍光灯だった。

「……?」

頭を左に傾ける。白い壁と窓。
窓に下がったブラインドの隙間からは陽が薄く射し込んでいる。
橋の上で倒れたはずの彼女は、どういうわけか硬いベッドの上に寝ていた。
体に掛かっているのは清潔な白いシーツ。部屋には消毒液の匂いが漂い、足の方には薬品棚が見える。

「ここ、は……?」
「起きたかね」

声を聞き付けたのか、凶相の男が部屋に入ってきた。左眼の眼帯とこけた頬が相まって酷薄そうな印象を受ける。
ナギは反射的に起き上がり、シーツで体を護るようにベッドの上で身を動かした。

「お前は、だ、誰、なのだ?」

眼帯の男を睨みながら訊く。
男はドクター・キリコと名乗り、ベッドから少し離れたデスクの椅子を引き寄せて座った。

「まあ、医者の端くれさ。体の傷は勝手に治療させてもらったよ。
 診療用のベッドでは寝心地が悪いだろうが、我慢してくれ。それしか無かったんでな」

ナギは自らの体に掛かったシーツを軽く捲る。男の言葉の通り、体中に包帯が巻かれていた。
痛みはほとんど感じない。なるほど、医者を自称するだけの腕はあるようだ。

「倒れた理由は疲労と軽度の低体温症だ。その傷も含めて、命に関わるようなものじゃないから安心しな。
 それと、軽い脱水がみられる。これをゆっくり飲むといい」

キリコはナギに透明な液体が入ったコップを手渡す。彼女はしかし、険しい顔でコップを見つめたまま動かなかった。

「経口補水液――ま、単なる飲みやすい水さ。変なものじゃあない」

ナギの警戒心を見て取ったキリコは補足を入れた。
探るようにコップとキリコの顔に交互に視線を走らせるナギ。
ややあって、決心したようにコップを持ち上げ、液体を少し口に含む。
喉が上下した。
人心地付いた表情。

「その……ありが……っ……」

礼を言おうとしたように見えたが、何故か躊躇うように語尾が消えた。何かを拒絶するように、再び表情が翳る。
少し間を置いて、ナギは再びコップに口を付けた。

彼女が飲み終わるのを待って、キリコが訊いた。

「それで嬢ちゃん、一体何があったんだね?」
「……」

回答は沈黙。長い髪が俯いた顔を隠す。
デスクの上の時計がコチコチと時を刻む。

「話したくないならいいさ。……ところで、嬢ちゃんはブラック・ジャックという男に遭わなかったかね?
 顔に大きな継ぎはぎがある男なんだがね」
420ブラック・ジャックによろしく ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 19:00:45 ID:ViqLwf6+
明らかな拷問の痕のことや彼女の近くに落ちていた首のことは敢えて追及せず、キリコは質問を変えた。
ナギは少し考える仕草を見せた後、小さく頭を振る。

「いえ、知りません……」
「ふうん、そうかい――おっと、そろそろか。すぐに戻るから待っていな」

キリコはそう言い残すと診療室のさらに奥へと消えていった。
その背中を、ナギは昏い眼で見つめている。


***************


結局のところ、彼は純粋で、優し過ぎたのだろう。



キリコの失敗は二つある。
一つはナイフの入ったデイパックを放置して診療室を出てしまったこと。
そしてもう一つは、

「ふん……まさか、あんなガキが、ね」

ナギがとっくに『乗っている』ことに気付かなかったことだ。

彼がもっと疑り深い性格だったなら、ナギの態度で察することが出来たかもしれない。
詳しく観察した首輪が、想像以上に厄介な代物だったことに悩まされていなければ何かに気付いたかもしれない。
そもそも、彼がナギを拾わなければ――。

しかし、何を言ったところでもう全ては後の祭りだ。

「ふ、ふ。殺した人間に感謝され、生かした人間に殺される、か。これも因果かね」

キリコの顔は蒼く、腹部には大きな赤黒い染みが出来ていた。染みは今もじくじくと面積を広げている。
その中心は数十秒前にナイフが突き立った箇所だ。
デスクにもたれ掛かり、苦しげな息を吐く。

「チ、せめて止めくらい刺してから逃げて欲しいもんだぜ。
 ……ま、ガキにはちと酷か」

診療室に戻って来てナギの姿が見当たらないことに気付いた瞬間、腹に赤熱した鉄棒を捻じ込まれたような衝撃。
奥の部屋から持ってきた黒いハンドケースを取り落とし――そしてナギがいきなり目の前に現れて、デイパックを全て引っ掴み逃げていった。
何が起こったのかを把握したのは、逃げるナギの、物を蹴倒す音が聞こえなくなってからだ。

完璧な奇襲だった。刺されるその瞬間まで危機に気付くことすらなかった。
何しろナギは文字通り『姿を消して』いて、しかも裸だったために衣擦れの音すらしなかったのだから。

散らばったハンドケースの中身――ガラス製の注射器に目を遣りながら、キリコは考える。
内臓を――おそらく肝臓に加えて胃も損傷している。あと十五分程度で意識を失い、三十分と保たずに失血死するだろう。
呆れるほど冷静に、医者としての知識と経験からキリコは自分の状態をそう診断した。
苦虫を噛み潰したような顔でひとりごちる。
421ブラック・ジャックによろしく ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 19:01:34 ID:ViqLwf6+
「ああ、死ぬのは、いやだな。いやだが――まあ仕方ない。
 それにしても――」

まさか、おれ自身がおれの最後の患者になるとはな。
そう自嘲気味に呟き、ケースに一本だけ残っていた注射器を取り出して針を接続、先端を腕に当てる。
中身はナギの治療と平行して調合していた安楽死用の毒薬だ。
慣れた手つきで自らの静脈に針を打ち込み、



――命をなんだと思ってやがるんだ!!



手が止まった。



うん。
そうだ。やっこさんなら、そう宣うんだろうよ。
たとえ絶対に助からないと解っていても、最後の瞬間まで可能性を投げ出したりはしないだろうさ。
だがな、フフフ、おれはおれだ。今更まっとうな道に戻るには、おれの業は深すぎるのよ。



指に力を込め、静脈に慎重に薬剤を注入する。
これで残りの命は数分。

あとは――最後の仕事を片付けるだけだ。

キリコは微かに震える手で、床に散らばった全ての注射器を集めた。
そしてその骨ばった手で粉々に握り潰す。掌が細かく傷付いて、血と薬液が混じり合い滴った。
痛みはもう、あまり感じない。

「これは、おまえさんには必要ないだろうさ。あばよ、ブラック・ジャック先生。
 おまえさんは、せいぜいみっともなく――あがいてくれよ」

ゆっくりと、目を瞑る。

壊した注射器の本数が一本足りなかったことに気付かなかったのは、彼にとって幸いだったのかどうか。

天地の感覚が失せていく。時を刻む秒針の音だけがやけに大きく耳に響く。
その規則正しいリズムを心地好く感じながら、ドクター・キリコは一際長く深い息を吐いた。

それきり優しい死神は動かない。


【ドクター・キリコ@ブラック・ジャック 死亡】

422ブラック・ジャックによろしく ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 19:02:49 ID:ViqLwf6+
【I-9/診療所付近/1日目 昼】

【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]:疲労(中)、全身(特に胸周辺)に多数の刺傷(治療済み)
[服装]:全身に包帯
[装備]:蝉のナイフ@魔王 JUVENILE REMIX
[道具]:支給品一式×3、ノートパソコン@現実、旅館のパンフレット、サンジの上着、各種医療品、安楽死用の毒薬(注射器)、
特製スタンガン@スパイラル 〜推理の絆〜、トルコ葉のトレンド@ゴルゴ13(4/5本)、不明支給品0〜1
[思考]
基本:なんとかして最後の一人になり、神にみんなが生きている世界に帰して貰う
1:参加者を皆殺しにする。手段は問わない。
2:武器の入手を優先する。
[備考]
※サンジからワンピース世界についてかなり詳しく聞きました。
※ブラックジャックの容姿の特徴を聞きました。
※拷問などの影響で精神が非常に不安定になっています。
※スズメバチに対して激しい恐怖を抱いています。
※注射器の中身についての説明は受けてません。

※伊澄の頭をキリコがどうしたかは不明です。

【蝉のナイフ@魔王 JUVENILE REMIX】
蝉が愛用しているサバイバルナイフ。
423 ◆L62I.UGyuw :2009/10/10(土) 19:03:50 ID:ViqLwf6+
以上、投下終了です。
424創る名無しに見る名無し:2009/10/10(土) 19:22:31 ID:52DXQ3Ja
投下乙
ナギはいよいよマーダー決定か。てかk1かよw
キリコの死に様もクールだぜ
425創る名無しに見る名無し:2009/10/10(土) 19:44:08 ID:9UQ7uwyz
乙!
ナギ、ついにマーダーになってしまったか……
しかも安楽死用の薬を持ち出した上に、まだ名簿を見ていない……
あまりにも怖すぎる。
そしてキリコ、最期まで信念を貫き通したか……
退場は残念だが、自分自身を安楽死させる辺りは実にキリコらしい死に様だった。
426創る名無しに見る名無し:2009/10/10(土) 19:50:37 ID:C0HW8zH+
キリコはF-5からI-9まで誰にも会わないで移動したってことか
黎明から昼だから時間は十分だけどね
427創る名無しに見る名無し:2009/10/10(土) 20:25:09 ID:5xhFqfmZ
投下乙です
ナギはとうとうやってもたか
そしてキリコは……残念だが自分の信念を貫いたか
あがいて欲しかったがこれは仕方ないか

ちなみに確かに誰にも会わずに移動したのか
時間掛けて迂回してたら可能か
428創る名無しに見る名無し:2009/10/10(土) 21:50:24 ID:AmGUzH6o
投下乙
誰にも会わないってのは不自然じゃないだろ。
もうたった50人くらいしかいないんだから同じエリアにいるからって必ず出会うほうがご都合だ。

しかし、昼か。
第二回放送後なのかな?
とするとブラックジャックにも生存ロックがかかるけど、どうなんだろ
429創る名無しに見る名無し:2009/10/10(土) 21:53:39 ID:AmGUzH6o
あ、昼って12時前か。
なら放送前だな、スマン
430創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 00:28:12 ID:qqnkPyyl
投下乙です。

キリコ…
しかし、「らしい」最期だったなぁと思います。
最後に思い出したブラックジャックの言葉が印象的でした。
彼がまいた種が育つ事を今は祈りたいですね。
そしてナギに救いがあることも。
431 ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:25:31 ID:AcMLCVcR
こんな時間ですが酔いどれトリオ、投下します。
432TOUGH BOY ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:26:56 ID:AcMLCVcR
くたびれて赤茶けた油のこびり付いた鳩時計が、それでもなお仕事を果たす。
ぱっぽー、ぱっぽー、ぱっぽー、ぱっぽー、ぱっぽー、ぱっぽー、ぱっぽー。
告げられる七度の鳴き声は時の声であり鬨の声。

朝。
生きとし生けるものの動き出す折を告げるのが彼女の役目。

けれど、だけど。
けなげに頑張る小さな人形の努力は、誰に見止められることもない。
たった一人、その場に居合わせただけの男の耳に留まり――、
そして7時が訪れたという事実だけを記憶に残し、それ以外の余計な情報は全て捨てられ、忘れ去られた。

かちかち、かちかち。
秒針の刻む音だけが、茶や緑の酒瓶の並ぶ室内に響き続けている。

……いや、刻む音『だけ』ではない。
ようく耳を澄ませてみよう。きっと、幽かなノイズが届くはずだ。

『……ッ! こ……事言っ……ザ、ザザ、連中に与してる……うことは信じられ――――、い。
 でも、聞き、ザザ、い! そして生き延びる――ザ、に考えなさい!
 ――ぬな! みんな、生き残……ザ、ザ。
 真実を告げ――よ、この殺し合いは、このゲームは、ザザ、神なんて名乗る――の――、』

たぁん、と、つまらない音がして、それきりだった。

ぽちりと黒いプラスチックのボタンを押せば、それきり部屋は沈黙に満ちる。
座敷の方であられもない格好で横たわる双子の女性のいびきが届いてくるだけ。

居酒屋のカウンターに座っていた男は、店内のBGM用にでも使われていたのであろうラジカセの蓋を開ける。
所々に埃が詰まっていたり、ネジが錆付いていたりでろくにメンテもされていない機械。
その中から取り出したるはおそらく何度も繰り返し聞かれたであろう演歌のテープ。
……しかし、その中に収められた磁気情報にもはや歌声は残されていない。
今はただ、後半部分にその残滓が残るのみ。
仕方無しに男が眠りに堕ちる前、密かに、抜け目なく、ラジカセの録音ボタンを押していたからだ。

何一つ言わず、男――まだ少年といってもいい年頃だ――は立ち上がり、手に持っていたテープをデイパックに放り込む。
代わりとばかりに覆面を取り出して、その素顔を隠すかのように巻きつけた。

そして何一つ言葉を洩らすことなく、振り返ることもなく、その場を立ち去り行く。
少年の握る鞄は、彼の後ろに眠る女性達の傍らに転がったそれと見かけ上の差異はない。
鞄そのものにもし差異があるとするならば――、

少年の鞄の口はしっかと閉じられており、女性達の鞄の口は大あくびをしているかのように開かれていた。
そんなくらいだ。

ああ、実に卑怯な手。
酒に呑まれる事を逆手にとって、丸腰の女性二人を酔い潰すなんて。
その上で、身包みを剥ぐなんて。

だけど、用心深い少年が鞄の口を開けたまま――なぁんて初歩的なミスを犯すかといえば、それは非常に考えづらい。
だからこれはきっと、少年なりの最後の慈悲であり、甘さなのだろう。
わざわざ使えそうなものだけ見繕って、それ以外には手をつけなかった、などということも含めてだ。
433TOUGH BOY ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:28:27 ID:AcMLCVcR
時間が惜しい。
彼女らの目覚めを待っても大した情報は得られまい。酒盛りの中でも十分それは判断できた。
こうして使えそうなものを頂戴した以上、ここに留まっている意味もない。

少年は手と手にそれぞれ別々の紙を持って、ぎぃ、と硝子張りの扉を開く。
片方は名簿、片方は人相書き。

自分の知る人物の名前を一通り覚え見て、ぴくりと僅かに片眉を動かす。
いるはずのない『人物』の名を見つけ、不審に思ったのだ。
……いや、それを言うなら思い続けている、の方が正しい。
『彼』の名は放送で呼ばれてしまっており、既にこの会場すらにももういないのだろう。
だが、『彼』は、自分達がここに呼ばれる前、とうにその命を砕き散らしたはずだ。

――けどまあ、『彼』の命は特別だ。
“修理”されたのだとしたら、この場にいる可能性は0ではない。
だとしても、あそこまで壊れた『彼』を再起動させるとは、やはり“神”とやらは油断ならないだろう。
放送の女性も、おそらく反乱を試みて消されたのだから。

だが、彼女は様々なことを残してくれた。
たとえば、“神”に付け入る隙は0ではなく、故に完全な存在ではない。
彼女の造反を予想できず、我々に様々な情報を与えてしまったのだから。

しかしそれよりもまずは目の前の脅威に対処せねば。
人相書きの方に目を通し、嘆息。

携帯電話かパソコンが欲しいな、と呟いて、朝日の下に少年はいざ進む。
少々頭が痛むけど、別に気にするほどでもない。

放送の女性は言っていた、禁止エリアに指定された場所の意味を考えろ、と。

禁止エリアの存在意義とは、おそらく地域を分断し、参加者の遭遇率を上げること。
あるいは、出会っては不都合な人間どうしを接触させないようにすること。
つまり、いずれにせよ禁止エリアの近辺にはかなりの確率で人がいることだろう。
たとえば海の真っ只中に禁止エリアを指定しても、なんら参加者に影響はないのだから。

また同時に――、
単に遭遇させる為でなく、殺し合いをさせる為に。
危険人物がその付近にいる可能性が高い事も示唆しているのだ。

さて、どう動くべきか。
……とりあえずここから最も近い禁止エリア付近に着目すれば、すぐ隣にデパートが。
ここが戦乱の中心となる可能性はかなり高い。

様子を見に行ってみるか、とプランを練る。
あくまで遠見に徹するだけであり、何が起こるかを隠れて見届ける。
その結果、誰がどうなろうと構いはしまい。
安全第一、自分が巻き込まれないようにせねば。


さあ、騙し騙され、傷つき傷つけられの始まりだ。
正々堂々、卑怯に生き延びよう。

434TOUGH BOY ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:29:55 ID:AcMLCVcR
【I-8/街道/1日目 朝】

【秋山優(卑怯番長)@金剛番長】
【状態】:僅かに二日酔い
【装備】:衝撃貝(インパクトダイアル)@ONE PIECE
【道具】:支給品一式、激辛せんべい@銀魂、不明支給品×2(卑怯番長が使えると判断したもの)
     カセットテープ(前半に第一回放送、後半に演歌が収録)、或謹製の人相書き
【思考】
基本:どのような状態でも、自分のスタンスを変えない。
0:デパート方面に向かい、そこで何かが起こるなら安全な場所から見届ける。
1:携帯電話かパソコンを手に入れて、人相書きに書かれたURLにアクセスしたい。
2:金剛晄(金剛番長)と合流する。
3:できれば自分の武器も回収したい……?(不明支給品が卑怯番長の武器の可能性があります)
4:とりあえず、今は脱出することを考える。
5:もし、金剛番長が死んだ場合は……。
【備考】
※登場時期は、マシン番長が倒される〜23区計画が凍結されるまでの間のどれかです。
※金剛番長がいることに気づきました。
※桂雪路ととらを双子の姉妹だと思っています。
※放送をカセットテープに録音した事により、その内容を把握できています。
 また、放送の女性の造反は“神”の予定外の事だったと考えています。

***************


しばし後。太陽も黄色くなり始めるころ。
残された場所には、相も変わらず般若湯に浸かるに勤しむ影二つ。

「ちっくしょー! あんにゃろ何かパクってったろ絶対!
 あー、見た目は悪くないからって油断した私が馬鹿だったの!?
 って誰が馬鹿よ! なんでんな事言われにゃならんのよぉ、この私が!」

「いででででででで! おい髪の毛引っ張んなっての!
 ったく、別にいいじゃねーかよ、どーせ大したモンが入ってた訳でもねえだろが」

ぐいぐいと酒瓶を手放さず、いつまでもいつまでも出来上がり続ける女同士の絡み合い。
一歩間違えば背面に百合の花でも咲き乱れそうな光景だが、生憎と此度は其方に向かう事はなく。
怪鳥のような奇声をあげて、女の一人が意味もなく地団太踏んで飛び跳ねる。

「まだ中も見てなかったんだからそんなん分かるわけないっしょ!?
 くそ、自棄だ。どーせだし、この店の酒飲みつくすまでグダってやるわー!
 ……って、あれ?」

30年モノの古酒を手にクダを巻いて倒れこんでみれば、デイパックに手が当たる。
すっからかんと思った空間に偶然にも手を突っ込む形になってみれば、そこに当たる感触が一つ。
引っ張り出してみるとほら、丸っこい機械にレンズが三つついたようなシロモノが。

「なんじゃこりゃ?」

いぶかしんでぺたぺたと触っていると、いきなりカッ、とレンズから光が放たれる。

「うわっ!」

435TOUGH BOY ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:31:39 ID:AcMLCVcR
――と。
思わず洩らした声と同期して、なんだかやけに聞き覚えのある怒声が響く。

『うわっ!』

はて、と思って考え込むと、やっぱり思い当たるのは自分の声。
目の前の機械がそれを増幅したように見える。

「……もしかしてカラオケかなんか?」

『……もしかしてカラオケかなんか?』

おお、と少し目を見開いてぽんと手を打つと、その音も増幅されている。

「おお、すっげえ“まいく”じゃねえか!
 ぐひひ、おもしれえ。と、なると……こうしたらどうよ?」

「おー、何だかわかんないけどやれやれー、やっちまえー!」

横から割り込んできた女性が、いきなり機械の前に取りついた、かと思うと。

『あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

あ、の一音をひたすらに垂れ流しながら、元の自分の姿へと。
すると当然のごとく、体の変化に合わせて徐々に音の高さが変わっていく。
姿がすっかり変わり終わるころ、ようやくあ゛、と吐き出すのを停止し――、

『ぎゃははははははははははっ!』

と、ただひたすらに爆笑するバケモノの姿がそこにはあった。

「すっげー、あははははははははは!
 よーし、そこどけぇ! 次は私の番だー! カラオケー!
 って、曲がねーよ!」

酔っているからか、見慣れてしまったからか。
全くそれに臆することなく女性はバケモノを蹴り飛ばし、開いた場所に座り込む。
バケモノがそれを気にすることなく笑い転げている傍らで、バシバシと機械を叩いてのセルフツッコミ。

「お、ラジカセあんじゃん、こいつでいいか。
 テープ、テープ……。あんだよ、演歌ばっかりかよ」

と、何故かカウンターの上に放り出されていたラジカセを目ざとく見つけて手に取る。
そのまま店の奥の棚に並べられたテープを物色するも、中々気に入ったラインナップが見つからない。

「んー……、こっちはアニソンかよ。薫の奴が喜びそーなラインナップだなー。
 ま、しゃーないか。私が歌えるのはー、っと……」

ようやく一本のカセットを手に取り、インサート。
コンマ秒の早業で手首をスライドさせ、三角マークのボタンをプッシュ。

「でへへ、うぅ一番っ! 桂雪路、そんじゃ、いきまぁーすっ!」

「ぎゃぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっっ!」
436TOUGH BOY ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:33:12 ID:AcMLCVcR
疾走感のある音楽が流れ始めると同時、喉の奥を振り絞って、雪路は思いっきり歌い始める。


『Welcome to this crazy time、このイカれた時代へようこそ……!』


彼女達は、気付いていない。
自分達の姿を模した巨大な人影が、この窓のすぐ傍に創られていることに。
間抜けな一連のやり取りを、歌声とともに今もなお周囲に世界に知らしめ続けている事に。


時はまさに世紀末、澱んだ街角で僕らは出会った。


【J-8/居酒屋/1日目 午前】

【桂雪路@ハヤテのごとく!】
【状態】:酩酊
【装備】:なし
【道具】:支給品一式、趙公明の映像宝貝@封神演義、大量の酒(現地調達)
【思考】
基本:酒を飲む。まだまだ飲む。
1:たっぽい! たっぽい! たっぽい! たっぽい!
2:あんにゃろ(卑怯番長)、次出くわしたらブッチめてやる。
【備考】
※殺し合いを本気にしてません。酒に酔ったせいだと思っています。
※映像宝貝をカラオケの装置のようなものだと思っています。

【とら@うしおととら】
【状態】:酩酊、雪路に変身中
【装備】:不明支給品×1(卑怯番長に使えないと判断されたもの)
【道具】:支給品一式、
【思考】
基本:自由気ままに楽しむ。
1:とりあえず飽きるまで雪路に付いていく。
2:からおけ(映像宝貝)で楽しむ。


※雪路ととらの巨大立体映像+音声が非常に広範囲に渡って確認できます。
 山などの遮蔽物がない限り、立体映像は目視する事が可能です。

【趙公明の映像宝貝@封神演義】
趙公明が1000年かけて作った、山をも越えるサイズの立体映像を映し出す宝貝。
拡声器のように音声を周囲に響かせる働きも持ち合わせるが、それ以上にはた迷惑な代物と言えよう。
今ロワでは一般人でも扱えるようになっており、その分映像の大きさは小さめ。
――とは言っても、そんじょそこらのビルなんかよりも遥かにでかいサイズなので目立つ事この上ないのは変わりない。
437 ◆JvezCBil8U :2009/10/11(日) 02:34:15 ID:AcMLCVcR
以上、投下終了。選曲は自分の趣味ですw
438創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 02:44:14 ID:qqnkPyyl
投下乙です。

このぉ〜卑怯者め!
いや、これは褒め言葉でしたねw原作同様さすがの抜け目なさ。

酔いどれコンビはトラブルの星の元に生まれてるんでしょうかねw
放送後は少しはシリアスになるかと思ってたんですが、見事予想を裏切られましたw
439創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 02:46:21 ID:0eJB3nL6
投下乙
汚いなさすが卑怯番長きたない
この時間に向かうということはデパートでの争いに間に合うかな

そしてよいどれコンビはまだ飲むのか!
しかし映像宝貝とは波乱必至……
マーダーコンビは再び南下してくるのだろうか
440創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 02:50:31 ID:MbEYdjv4
投下乙です。

色々言うべきところはあると思うけど、
雪路wwwwwwwwwwなんつー曲歌ってんだwww
そんで思考1:タッポイタッポイってww
本当に雪路は楽しい奴だwww
441創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 02:51:38 ID:AR6qwjCp
タフボーイwwww イカれた時代へようこそwwwww
くっそ、最後に腹筋持っていかれたw
北斗つながりでSILENT SURVIVOR歌え。全然サイレントじゃないがな

投下乙!
442創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 03:43:57 ID:t6J8zs+j
酔いどれた時はどうなるのと思ったら
さすが卑怯番長!女子供も容赦ねえ
酔いどれコンビはこのロワの清涼剤になりそうだ
443 ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 09:47:37 ID:L2xgGGqt
西沢歩、カノン・ヒルベルト投下します
444マリオネットラプソディー ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 09:49:09 ID:L2xgGGqt

誰が言った言葉であろうか

『運命』は変えられない

本当に?

それとも――――



◇ ◇ ◇



「誰もいないよぉ……しかもここはどこなのかな」

研究所のロビーにいたとこまでは覚えてるんだけど……なんか気がついたら森の中だし。
平坂さんとブランドンさんを探そうと思って研究所に戻ろうかなって考えたけど。

「迷っちゃった……」

だって、自分がどこにいるかすらわかんないんだよ?
そんなので研究所に戻ろうなんてできるわけないじゃん。
それに、平坂さんやブランドンさんに会うどころか、人とすら会わないし。

(はぁ〜。ハヤテ君、ここにいるのかなぁ)

私の……その……大好きな人。片思いなんだけどね。

(会いたいな、ハヤテ君。一人は……嫌だよ)

ハヤテ君がこんなのに巻き込まれて欲しくない私。
ハヤテ君がこの場にいてほしいって願う私。
さっきも思ったけど矛盾している。ほんと、自分勝手だ。普通なら巻き込まれてないのを願うはずなのに。
445マリオネットラプソディー ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 09:49:58 ID:L2xgGGqt

(それに、もしもハヤテ君が死んだら、私は……)

考えたくも無い未来が頭に浮かぶ。血を流して倒れているハヤテ君。
光を映していない虚ろな目。冷たくなった体。もう、笑ってくれることの無い顔。
いやだ……そんなのいやだ!だめだ、こんなこと頭から無くさなきゃ。
そんな風に考えていた時、

(……何?この音楽?)

突然耳に入ってきた音楽。聞いたことは……うーん。
なんかどっかで聞いたような、聞かなかったような……

(でもなんか……悲しい曲だね……)

だからといって明るい音楽がいいってわけじゃないけど。
でもこんな悲しい曲を聞かせられたらただでさえ落ち込んでいる気持ちがさらに落ち込んじゃうじゃん。
そして放送が始まった。



◇ ◇ ◇



放送は若い女の人がしてるみたい。
運命がどうとか言ってたけど私には立ち向かうことなんてできない。
普通の高校生にそんなの無理なんだよ。
そういえば、放送で名簿が見れるって言ってたね。

…………いた。

綾崎ハヤテ

三千院ナギ

やっぱりいるんだハヤテ君、ナギちゃん。
446マリオネットラプソディー ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 09:50:42 ID:L2xgGGqt
ハヤテ君はどうしてるんだろう。
ハヤテ君ならきっとこの名簿を読んでナギちゃんを探すんだろうなぁ。
出来れば私のことも探してくれるとうれしいんだけど。
ナギちゃんは怖がってるんだろう。
気が強そうに見えるけど実際怖がりだし。
家族のみんなやヒナさん、ワタル君が巻き込まれてなくてよかったとかじっくり考えたいことはあるけど、そんなことを考えさせないかの如く放送が流れる。


『……そして、そこから更に名前は削れるの。悲しんでも進み続ける覚悟はできている?
 今回の死亡者は、……以下の通り。

 愛沢咲夜
 綾崎ハヤテ――――

その瞬間、私の頭は停止した。
今も続く放送も全く聞こえない。

…………え?………………う…………そ……

嘘だ……嘘だ!
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

ハヤテ君が……ハヤテ君が死ぬはず無い!

いや……!

「嗚呼嗚呼あああああああああああああああああ!」

私は何かを振り切るかの如く走り出した。
頭の中では冷静な自分がいて。
ハヤテ君が死んだことも理解していて。
でも信じたくない自分もいて。
447マリオネットラプソディー ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 09:51:24 ID:L2xgGGqt

走る。
走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
走る!

こんな辛い現実から逃げたくて。

ハヤテ君が死んだこと。

いつ死ぬかわからない恐怖。

一人という孤独。

もう何もかも嫌になって。

生きることすら―――



◇ ◇ ◇



走って。走って。疲れて走るのをやめて。
歩いて。歩いて。そうして歩いた先には。

「……ロボット?……」

人の形をした壊れたナニカ。
それが私の目の前に転がっていた。
そのすぐそばに

「……外人さんかな……」

人が倒れていた。腰に銃を差している。
448創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 10:15:10 ID:qqnkPyyl
 
449代理マリオネットラプソディー ◇28/Oz5n03M:2009/10/11(日) 11:21:49 ID:qqnkPyyl
そして何でか知らないけど気絶している。
ふと、腰に差している銃を見てみる。

銃――人を×す凶器――――

ああ。私気付いちゃった。

これがあれば――――

そう。私が思ったのは。

「すいません、少しこれ、借ります」

外人さんの腰に差している銃を抜き取って。
私は銃口を頭に向ける。

自殺。

これで頭を撃ち抜けば終わる。

いつ死ぬかわからない恐怖が。

一人という孤独が。

そして。

「ハヤテ君に会える……!」

うん、逃げだってことはわかってる。
でもね。もういやなんだ。
痛いのも。怖いのも。
だから。
ごめんなさい。

ヒナさん。おとうさん。おかあさん。一樹。……ハヤテ君。
450創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 11:27:14 ID:GdaVKl4F
 
451代理マリオネットラプソディー ◇28/Oz5n03M:2009/10/11(日) 11:28:29 ID:qqnkPyyl
「もう疲れちゃったんだ、何もかも」



◇ ◇ ◇



『運命』は皮肉にも彼女を生かす。

西沢歩は知らない。

この銃は麻酔銃で命を刈り取るものではないことを。

そして翼ある銃はいまだに目覚めない。

この先、どうなるのか。

この哀れな少女の行く末は――


【H-5/山道入り口/1日目 朝】

【西沢歩@ハヤテのごとく】
[状態]:肉体疲労(大)、自暴自棄、睡眠中
[服装]:制服
[装備]:五光石@封神演義 
[道具]:支給品一式(一食分消費)、大量の森あいの眼鏡@うえきの法則、研究所の研究棟のカードキー
[思考]
基本:???
0:???

[備考]:
※参戦時期は明確には決めていませんがハヤテに告白はしています。
※理緒手製麻酔銃@スパイラル〜推理の絆〜が歩の手に握られています。

【カノン・ヒルベルト@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]:気絶、潜在的混乱(大)、疲労(中)、全身にかすり傷
[装備]:麻酔弾×16、パールの盾@ワンピース
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:ブレード・チルドレンは殺すが、それ以外の人は決して殺さない?
0:――?
1:マシン番長の残骸から使えそうなパーツと、デイパックを回収したい。
2:歩を捜す為に、神社に向かう。(山道は使わない)
3:ブレード・チルドレンが参加しているなら殺す?
4:本当に死んだ人間が生き返るなんてあるのか―――?
[備考]
※剛力番長から死者蘇生の話を聞きました。内容自体には半信半疑です。
※思考の切り替えで戦闘に関係ない情報を意識外に置いている為混乱は収まっていますが、きっかけがあれば膨れ上がります。
※みねねのトラップフィールドの存在を把握しました。(竹内理緒によるものと推測、根拠はなし)
 戦術を考慮する際に利用する可能性があります。
452代理マリオネットラプソディー ◇28/Oz5n03M:2009/10/11(日) 11:31:59 ID:qqnkPyyl
457 : ◆28/Oz5n03M:2009/10/11(日) 09:59:14 ID:hGX11kGk0
投下終了です。
途中からさるった……
すいませんが代理投下してくださると助かります。


453創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 11:36:06 ID:qqnkPyyl
投下乙です。
西沢さんはついているのかいないのか…
個人的には生きててなによりだけど、なんとも不安定な二人が同じ場所で寝てるなぁw

しかしハヤテの死は意外と影響がでかいですねw
454創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 11:49:26 ID:0eJB3nL6
いくら麻酔銃でも至近距離で頭に打ち込めばさすがにヤバいと思うけど……
スパイラル6巻によると4gの鉛弾を150m/秒で打ち出す改造エアガンはコンクリの壁に
穴あけるほどの威力で
スパイラル7巻での説明だと理緒の麻酔銃は170m/秒で注射器弾を打ち出す機構と説明されている。
少なくとも近接距離から撃てば肉に食い込む程度の威力はあるよ。
455 ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 12:33:20 ID:iLKS1Ljm
携帯から失礼
>>454
それなら確かに頭はまずいですね。
では該当部分の頭をお腹に変更します。
Wiki編集の時にでも直しておきます。
456創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 12:35:07 ID:0eJB3nL6
了解です、投下乙でした
457創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 12:44:09 ID:GdaVKl4F
ニューナンブで220m/秒くらいだから
ヘタしたら針どころか注射器弾とやらが腹に食い込むぞ
458創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 14:10:43 ID:7TSdzP6L
胸なら脂肪もあるし肋骨折れるくらいで済むんじゃないかな
459 ◆28/Oz5n03M :2009/10/11(日) 16:17:47 ID:iLKS1Ljm
確かにいくら服の上からでも無傷ではすみませんね。
では、状態表を
【西沢歩@ハヤテのごとく】
[状態]:肉体疲労(大)、肋骨一本骨折、自暴自棄、睡眠中
[服装]:制服
[装備]:五光石@封神演義 
[道具]:支給品一式(一食分消費)、大量の森あいの眼鏡@うえきの法則、研究所の研究棟のカードキー
[思考]
基本:???
0:???
[備考]:
※参戦時期は明確には決めていませんがハヤテに告白はしています。
※理緒手製麻酔銃@スパイラル〜推理の絆〜が歩の手に握られています。

と変えさせていただきます。
度重なる修正申しわけありません。
460創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 21:47:50 ID:F4d/LK47
再度の訂正乙です
しかし二人とも起きたらどうなるんだろうか……
461創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 22:05:39 ID:9FCRZVPB
相手はカノンだし、殺されることはないと思うが……
しかし精神的に不安定だから怖いな。
462創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 22:10:55 ID:k5xHRGy3
いや。肋骨骨折が何気に不吉だ
463創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 23:06:58 ID:2Q2nEaN1
>>462
ああ、弱めの爆薬で胸部をわざと損傷するってそういう……
464創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 23:10:38 ID:9FCRZVPB
>>462
……そう言われて気がついた。
……ハム逃げてええええええええ!
465創る名無しに見る名無し:2009/10/11(日) 23:40:07 ID:5ocO39lM
乙です。
コレはやばいぞ西沢さん……
カノンの性格を考えれば、単に倒れているだけならまだいい。
だけど肋骨が一本折れてるのはやばい……!!
カノン相手にこれは不吉すぎる。
466創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 01:02:18 ID:QFQFxDXq
これって頭だとまずいって言った人の影響?
>>454はそこまで考えて発言したのか!
467創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 01:16:34 ID:gPySf0xG
ナチュラルに肋骨折る方向に誘導した>>458も怖い
468創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 17:36:19 ID:T+FeYcUC
ところで作品投票ってどうしよ?
今のしたらばだとIDの関係で書き手は投票しづらいだろうし、新たにしたらば借りてきた方がいいかな。
捨てアドで出来るならいいんだけど。
469創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 17:46:07 ID:x9qHCUzb
したらばは捨てアドでも出来るよ。でも、そこまでしてやりたいか?
470創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 17:56:02 ID:gPySf0xG
書き手のモチベアップと新規の人の取っ掛かりになるかな
471創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 18:30:04 ID:T+FeYcUC
モチベアップは確かにあるねー。
あと、これまでを読み返すいい機会になる。そこからアイデア貰えることもあるし。
472創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 21:03:46 ID:QZmT8rdm
そんなに人はいるのかな
新規にしたらばとか借りて全部で5〜6票とかだったら虚しすぎるぞ
473創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 22:03:25 ID:JcJtyXnY
したらばのID仕様って変更できないのか?
474創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 22:09:17 ID:x9qHCUzb
管理人ならできる。しかし、言うほど自由度はない
475創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 22:30:06 ID:pHeM0SBX
wikiのトップページ閲覧数が一日200前後
正味の閲覧人数はその10〜30%程度らしいので、少なめに見積もっても20人以上は常に見てるはず
投票してくれる人が何人いるかは分からんけど

投票数5,6票程度しか見込めないならここでやるって手もある
476創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 22:35:05 ID:x9qHCUzb
>>471
そゆりゆうなら賛成
477創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 23:33:51 ID:QZmT8rdm
したらばの仕様はあのままでいいんじゃないか?
今のところ上手くいってるわけだし


んで、作品投票ってなにをどうするの?
478創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 23:55:35 ID:yiC+5X4E
放送前の作品限定の人気投票かな
479創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 00:20:34 ID:TeN0xvw4
んじゃ殺伐フレンズに一票
我妻由乃の初登場話にして、彼女のヤバい雰囲気が遺憾なく発揮されている。
もう一人の見た目に反して危険な少女、竹内理緒と天然ロリータ少女喜媚との取り合わせが見事
素の由乃に対してあんな受け答えが出来るのは彼女くらいだろうな
480創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 00:23:51 ID:fRA2USql
票数考えると一人1票じゃ寂しいから、自分の知ってる限り大抵のロワでは1〜3位まで決めて5,3,1ポイントずつ振り分けてる感じ。
あとは投票期間も決めてからの方がいいと思う。
明日の日付変更から3日くらいでいいんじゃないかな。
481創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 00:31:34 ID:TeN0xvw4
じゃあ一位殺伐フレンズ
二位銀の意志T〜W
論理の展開が見事。
難しい交渉を見事に纏めてくれたのはさすがの一言。
三位
Men&Girl〜ピカレスク〜
Men&Woman&Boy&Girl〜英雄譚〜
今後の展開に期待が持てる一作
植木の性格を逆手に取ったキンブリーの話術が見事。
482創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 00:37:50 ID:Qtiu1JRW
ここでやるのか?
483創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 00:41:32 ID:TeN0xvw4
いいんじゃね?
むちゃくちゃ票が来たらスマンけど、第一回だし敷居は低い方がいいと思う
484創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 00:46:34 ID:fRA2USql
まあそうだね、今回はここでいいか。
多重の可能性もあるといえばあるけど不正するメリットもそんなにないし、良心を信じるのも大切な事だしね。
締め切りは……17日の23時でどうだろ。

さて、最初から読み返してこよう。入れたい作品が多い分3つに絞るのも一苦労だw
485創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 02:30:43 ID:+5IgUcrf
3人くらいで3日連続投票するだろうから10票くらいか

486 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:48:24 ID:rjVRlkXh
鳴海歩分を投下します
487盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:49:19 ID:rjVRlkXh
 孤独の中の神の祝福。
 音楽家フランツ・リストの手によって作曲された、全10曲からなる「詩的で宗教的な調べ」の第3番である。
 生前のリストは、いかな楽曲であろうとも、初見で弾きこなせるほどの力量で知られており、
 故に「ピアノの魔術師」と呼ばれ、未だ彼を超えるピアニストはいないとさえ言われているそうだ。
 そして彼の作曲したこの曲は、世界的に有名なイギリス人少年ピアニストにして、
 人類史上に残る大天才ヤイバの遺伝子を分けたブレード・チルドレンであるアイズ・ラザフォードが、
 幼少期に好んで弾いていた曲であるという事実を知る者は、少ない。
 そしてその1人である鳴海歩少年の兄は、在りし日のリストと同じ天才的なピアニストであり、
 悪魔の才知を持ったヤイバを討ち滅ぼした神――鳴海清隆であった。
 孤独の中の神の祝福。
 求めよ、さらば与えられん。
 人は苦境に立たされた時、神へと祈りを捧げ救いを求める。
 そして然るべき慈悲を与えられた時、人は神へと感謝を述べる。
 ならば自身が神として生まれた者は、一体何に救いを求めればいいのか。
 神が与える者でなく奪う者であったなら、一体何に祈りを捧げればいいのか。
 祈るだけではいられない。
 救われるだけではいられない。
 自分を救うのは自分自身。
 不確かな神にすがるのではなく、自ら暗闇を進む者だけが。
 誰にも決して奪えない、佳いものを手に入れることができるのだ――。



「土屋キリエが殺られたか……」
 誰にというわけでもなく、ぽつりと俺は呟いた。
 ブレード・チルドレンを観察・研究する、ウォッチャーなる派閥の構成員・土屋キリエ。
 そのブレード・チルドレンでもなければ、ましてや神や悪魔の血族なんてものでもない、
 言ってしまえばノーマルな人間に過ぎないあの女が、よもや俺よりも早く死んでしまうとは思いもしなかった。
 ある意味俺を取り巻く面子の中では最も主戦場から遠く、故に最も安全な位置にいるのがアイツだと思っていたんだが……
 ……ともあれ、土屋キリエがどういう経緯でこの殺し合いに関わっていたのか……俺にそれを知る術はまだない。
 今はそれを推測するよりも、彼女が言い残した通り、名簿を確認することを優先すべきだろう。

 ……それにしても……
 「死ぬな」「みんな、生き残れ」……か。
 あれもあれで、意外と動物には優しかったり、意外と可愛げがあったりしたんだが……正直、今回が一番意外だったかもしれない。
 もう少しドライな奴だと思ってたんだがな。
 何でも運命に委ねちまったようでいて、アイツも意外と、俺達寄りの人間だったのかもしれないな……

 ……と、違う違う。
 名簿を最優先で調べるって決めたばかりなのに、いきなり横路に逸れてどうするんだ。
 改めて背中のデイパックを下ろし、中から白紙だった名簿を取り出す。
 すると土屋キリエが言っていた通り、白一色だったはずの紙切れには、見事に参加者の名前がびっしりと浮かび上がっていた。
 そんなに驚く気になれないのは、電撃やワープといったもっととんでもないものを見せられたからか?
 あんな漫画みたいなものを見てしまった後では、正直これくらいで驚けという方が無茶だ。
 そういうわけで、平常心を保ったまま、ひとまず知り合いの名前を探していく。
 名前の記載は五十音順。一番最初に目についた名前は、ブレード・チルドレンの浅月香介。
 竹内理緒がいるとは聞いてたが、まさか浅月までいたとはな……
 細かいことには頭が回るが、大局的には大雑把な奴だ。
 放送の時点ではまだ死んでないらしいが……頼むから死んでくれるなよ。
 未来日記所持者の天野雪輝や協力者安藤、それから錬金術師なる人間らしいエドワード・エルリックを通過し、
 次に目に留まった名前は我妻由乃……なるほど、ガサイユノってのはこう書くのか。何となく“らしい”字面という印象を受けた。
 そしてそのままカ行を読み進めていき――
488盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:50:12 ID:rjVRlkXh

 ………………………
 ………………………
 ………………………

「……おい……これは何の冗談だ……?」
 結論から言おう。
 我妻由乃や安藤といった、ここで初めて会ったばかりの人間と、
 それから最初に死んだミズシロ火澄を除けば、俺の知る名前は合計5つ。
 だが、その全てがまだ生きていることを喜ぶ余裕は、その時の俺には全くなかった。
 5人の内訳は、1人が普通の人間で、残りがブレード・チルドレン。
 1人の人間は結崎ひよの……今の今まで名前を忘れてて、たった今ようやく思い出せた、例のおさげ髪の女だ。
 残るブレード・チルドレンは、浅月香介、高町亮子、竹内理緒。
 そして――

「どうして……カノン・ヒルベルトが、ここにいる……!?」

 いるはずがなかったんだ。
 他のブレード・チルドレン3人のような偶然は、こいつには起こらないはずだったんだ。
 だって……だって、そうだろう?

 アイツはこのゲームが始まる数時間前に――火澄に殺されてたんだぞ!?

 動揺を口にすることはしなかった。だが俺の思考は確実にパニックに陥っていた。
 これは一体どういうことなんだ!?
 何も書かれてない名簿に文字が浮かび上がることは許そう。
 まるで超能力のように電流を操ったことも許そう。
 この際俺達全員を会場へ移動させたワープだって許そう。
 だがこれだけは確実におかしい!
 どうしてこの目で死亡を確認した人間が、平然とこの殺し合いに参加させられてるんだ!?
 死者が蘇るなんてこと――それこそありえるはずがない――!

 ………………
 ………………
 ……いや、待て。こういう時こそ落ち着くんだ。
 思考を止めるな――推理しろ。
 額に浮かんだ汗を拭い、つとめて冷静さを取り戻そうとした。
 答えを求める行為自体は悪手じゃない。問題はそこに焦りや混乱が介在することだ。
 頭を冷やして考えなければ、大事なことを見落としちまう。
 知識労働を行う上での、最大の敵は己の激情――こんな理不尽な状況でも、取り乱しちゃならないんだ。
 ふぅっ、と1つ息をつく。幾分か気が楽になった気がした。
489盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:51:19 ID:rjVRlkXh

 さて、起きてしまったことはこの際仕方ないと認め、それを頭ごなしに否定するでなく、
 それが現実に起こった事象であると肯定した上で推理する。
 同姓同名の別人であるという可能性は、残念ながら薄い。十中八九、こいつは俺の知るカノン・ヒルベルトと考えていいだろう。
 わざわざそうするメリットがないからだ。
 この殺し合いをショーとして考えるなら、死んだはずの人間との再会の方が、考えすぎの取り越し苦労の方が観客受けはいい。
 そこでこのカノン・ヒルベルトを、本当に生き返った本人と仮定――普通に推理する上ではとんでもない暴論だが。
 しかしこいつを認めるとなると、暴論は暴論なりに、とんでもなく証明が難しくなる。
 一度死んだ命が蘇るというのは、この世の理というやつに反することなんだ。
 これまで身に起こった超常現象や、デューク東郷を通じて聞いた錬金術も、基本的にはある程度常識で説明できることばかり。
 たとえば放電現象は、巨大な発電装置を利用すれば事足りる。
 突然文字の浮かんだ名簿は、時間差でインクが滲むような仕掛けを用意すればいい。
 ワープに関しても極端な話、そう感じられるよう、催眠術による暗示をかければ誤魔化せる。
 物の形を変える錬金術も、質量保存の法則を律儀に守っているのだそうだ。
 こういう科学で代用可能な現象なら、正直現状が現状なだけに、信じてやっていいと思っている。
 そういう世界もある、の一言で片付くからだ。
 未知のエネルギーを撃ち合ったり、誤魔化しの利かない状況ですら瞬間移動をやってのける世界よりはリアルに近い。
 もっともこの思考自体、ただ単に物理法則を逸脱した異世界の事例を知らないから、という前提があってのものなんだが。
 そして死者蘇生にという現象は、明らかにそちら側の世界に相当する。
 こればかりは、置き換えが不可能と言わざるをえない。
 それこそ死者との対面および対話だけなら、催眠によって知覚する虚像でもいいわけだが、生憎とここは殺し合いの場だ。
 幻は人に殺されないし、幻は人を殺せない。
 不死身のくせに完全に無力、なんて奴を、殺し合いに参加させる理由なんてどこにもない。
 なら、どうやって死んだ命を作り直す?
 どうやって無から有を引きずり出す……?

 ………………
 ………………

 ……待てよ……
 もしもその認識の時点で間違いだったとしたら?
 本当に俺が聞かされたのは、現実的な話ばかりか?
 何かが引っ掛かる。
 何かを忘れている気がする。
 思い出せ。何か見落としはなかったか。
 これまでに仕入れた情報のどこかに、1つでも仲間外れはなかったか……?
 ………、!
「人体の常識を無視した、バラバラの実……!」
 そうだ、それだ。
 完全なファンタジーが存在しないのではなく。
 完全なファンタジーは存在していたんだ。
 それもほぼこの殺し合いが始まった瞬間に、そいつは俺達の手に握られていたんだ。
 そもそもバラバラの実というのは、今は安藤が持っている、悪魔の実という物の1つなんだそうだ。
 食べた人間は泳げなくなる代わりに、身体の各部を自在に分割することのできる、文字通りのバラバラ人間になる。
 改めて真剣に考えてみると、この実は他のファクターに比べあまりに異質だ。
 もしも本当に身体がバラバラになったなら、患部からの大量出血で失血死するか、もしくはショック死してしまう。
 泳げなくなるというのも怪しい。
 人間の体積はちゃんと水に浮くようにできているのだから、個人の水泳技術にかかわらず、
 万人をカナヅチにするためには、その体積をいじらなければならない。
490盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:52:33 ID:rjVRlkXh
 その時点で人体は人体でなくなる。
 錬金術流に表現するなら、人間を別の動物に錬成し直すということだ。
 当然、ヒトゲノムから別の生き物は作れない。
 悪魔の実の質量がそのまま身体に還元されたとしても、圧倒的に質量が足りない。
 つまり悪魔の実のメカニズムは、科学では説明のつかないファンタジーということだ。
 それを許容するということは、その実のある世界だけでなく、他にも似たような世界があってもおかしくないってことだ。
 人が未知のエネルギーを撃ち合う世界があっても。
 人が瞬間移動をする世界があっても。
「人を生き返らせる術がどこかの世界にあっても……」
 不自然じゃない、ってことか。
 ……何てこった。
 頭を抱えたくなった。
 面倒事はよくあることと思ってたが、まさか今回は、ここまで荒唐無稽な事態になっていたなんてな。
 トンデモ展開には慣れっこなつもりだったが……頭を抱えるどころか、頭痛さえも覚えそうな心地だった。

 カノン・ヒルベルト復活への誤解については、俺の落ち度としか言いようがない。
 死人が生き返るなんて非常識を認めたくなかったから、常識で代替できる事象を荒探しし、
 あたかもそれが絶対の法則性であるようにこじつけて誤魔化し、非常識を封じ込めようとした。
 犯罪捜査や謎解きにおいて、絶対に犯してはならない悪手の1つだ。
 そもそもおかしいというのなら、今手元にある未来日記だっておかしいんだ。
 仮にその正体が、超高度な行動予測用プログラムだったとしても。
 機械の位置から見えもしない人間の現状を把握し、そこから行動を予測することなど、現代科学にはありえない。
 何度も言うが、もうこうなった以上、「そういう世界もあるんだから仕方ない」と言うほかないらしい。
 そうして健全な現代人から見れば、暴論に暴論を重ね更に暴論を上塗りしたような理屈の下に、
 俺はカノン・ヒルベルトの件に一区切りをつける。
 思考停止? ほっとけ。
 リアルの世界からファンタジーの世界へ飛ばされる心地というのは、世の中の少年漫画で描かれたそれよりも相当キツいらしいんだ。
 そうしてようやく落ち着いたところで、俺はさっきの放送についての考察を、本格的に開始する。
 掴めるものは自分達のような存在だろうと利用しろ――土屋キリエはそう言っていた。
 ならお言葉に甘えて、この一連の流れから利用できそうな情報を探させてもらうようにしよう。
 さっきの放送を大まかに纏めると、大体こんな形になる。

 ・ピアノの曲が流れる。曲は「孤独の中の神の祝福」。
 ・参加者名簿の解禁を宣言した(恐らくこのタイミングに、名簿に文字が浮かび上がったと思われる)。
 ・死者の名前が読み上げられた。
 ・禁止エリアが読み上げられた。
 ・しばらく間を空けた後、この殺し合いの核心を語ろうとする。そしてその瞬間に、何者かに殺害された。

 それにしても……「孤独の中の神の祝福」か。
 ラザフォードがよく弾いていた曲で、俺もカノン・ヒルベルトとの戦いの時に、学園の音楽室で弾いた。
 恐らくあの女もまた、ムルムル達によって無理やり協力を強いられた、孤立無援の状態だったんだろう。
 唯一この曲目との違いがあるとするなら、神が祝福をもたらす者じゃなく、孤独をもたらす敵だったということか。
 なら、アイツは一体何を思って、あの曲を流したんだろうな……
491盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:53:39 ID:rjVRlkXh

 ……また話が逸れた。本題に戻ろう。
 まずこれらの発言から、一体何が得られるかということだが……実は一番最初に目につくのは、放送での発言内容じゃない。
 “放送で発言を行った土屋キリエの存在そのもの”が、第一のヒントになりうるんだ。
 このゲームの主催者について、もう一度振り返ってみよう。
 ムルムルは未来日記のゲームの主催者であり、シンコウヒョウは雷を操る超人だ。
 そして一方の土屋キリエはどうだろう。
 頭もよければ器量もいい、28歳のおねえさん――それがアイツの自称した、自らの人となりだそうだ。
 少しばかり頭がよくて、少しばかり器量がいい。
 だが、それだけだ。
 彼女は俺達のような無力な一般人であって、超人的な特殊能力を持っているわけでもない。
 奴らから見れば何の取り柄もない……いや、いっそ自分達とは別の、下等種族として見なしてもいい存在に過ぎない。
 その程度でしかない土屋キリエを、わざわざ別世界の壁を超えてまで、自分の下で働かせようとするだろうか?
 答えはノーだ。
 本来なら土屋キリエなんかよりも、もっと無茶苦茶な世界から実力者を招いた方が自然なはずだ。
 それこそ奴ら主催者の中に、土屋キリエ――いや、ウォッチャーに対して特別な思い入れのある奴でもいない限り。
 そう。
 これが土屋キリエ自身から導き出せる、放送に隠された最初のヒント。

 兄貴がこの殺し合いに関わっている。
 彼女の存在が、その可能性をより濃厚にする。

 兄貴――鳴海清隆は天才だ。
 それもただの天才じゃない。
 誰よりも強く、誰よりも高い。兄貴が一度望んだならば、手に入らない物なんて何もない。
 鳴海清隆という男は、史上最強の大天才だ。
 人類の歴史をさかのぼっても、唯一ミズシロ・ヤイバが並び立てるぐらいだろう。
 それくらいの頭脳と器と豪運の持ち主なら、奴らの参謀役くらいには選ばれるかもしれないし、
 他に土屋キリエの顔見知りで、そのレベルに到達しているであろう人間を俺は知らない。
 だからこの仮説は、少なくとも仮説程度にはなりうる。
 土屋キリエは兄貴の手足として、兄貴が俺達の世界から連れてこられた人間だった――と。

 他に放送の内容から、すぐに割り出せることと言ったら、向こうが反逆の可能性を見越していることの裏付けくらいか……
 いずれにせよ、今はまだかけた時間が足りないな。もう少し吟味するか、次の放送を待ってみるか。
 とりあえずは、名簿の方に注意を向けることにしよう。
 手に持っていた名簿を見直し、そしてそこで思い出して、禁止エリアの位置と時間をメモする。
 この殺し合いに参加させられた知り合いは、結崎ひよのと4人のブレード・チルドレンの計5人。
 これら5人の知り合いのうち、まずは浅月香介、竹内理緒、高町亮子の3人を味方として考える。
 中でも竹内理緒は特に、俺や清隆を信頼してくれている。信じられすぎて、少し重いが……多分、裏切ることはないだろう。
 次点は高町亮子。こいつには竹内理緒のような、強固な信仰心はない。
 それでもこいつには他のブレード・チルドレンにはない、強い正義感がある。
 殺すくらいなら殺されることを選ぶ、なんて大真面目に言うくらいだ……俺がゲームに乗らない限りは、協力してくれるだろうな。
 そして残るは浅月香介。
 こいつには信仰心も正義感もない。大事なのは神でも御大層な倫理でもなく、仲間達の安全そのものだ。
 だから、そうしなければ他のブレード・チルドレンが危ないと判断した時には、迷わず殺し合いに乗るだろう。
 とはいえアイツは俺が退院する時、一応応援はしてくれた。
 何も決定的なことが起こらない限りは、殺し合いに乗るよりも、こっち側につくことを優先してくれるだろう。
 それに……あまり賢い考え方じゃないが……浅月には高町亮子って首輪がついてる。
 アイツもあれで完全に尻に敷かれてるからな……高町亮子の望まないことは、なるだけ避けようとするだろうな。
 いや、“あれで”というより……見たまんま……か?
 ……どっちにしろ、気持ちは分からないでもないな。同情するよ。
492盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:54:27 ID:rjVRlkXh

 残る結崎ひよのとカノン・ヒルベルトについては、少々複雑なことになってくる。
 たとえば結崎ひよのの場合、兄貴が殺し合いに関与していなければ、今まで通り俺の味方として振る舞ってくれる。
 だが兄貴が関わっていた場合は話が別だ。
 俺が兄貴だったなら、鳴海歩を叩きのめす最後の切り札として、間違いなく結崎ひよのを使ってくる。
 アイツは俺を成長させ、最後の最後に裏切るために用意されたキャラクターと見て、大方間違いないだろう。
 いくら何でも考えすぎかもしれないが、それをやってのけるのが鳴海清隆だ。
 想定しうる最悪の事態――いや、普通は想定しえないほどの事態を想定しなきゃ、命がいくつあっても足りない。
 ……ともかくも、そういう事情があるわけだから、
 このゲームが兄貴の企みの一部だとするなら、結崎ひよのを完全に信用することはできないだろう。
 最後の最後、兄貴と俺が対峙した瞬間に敵に回るか……少なくとも、雲隠れくらいはするだろうな。
 それまでは戦力にはなるが、最後の戦いの頭数には入れないようにしておこう。
 ……もっとも、これも兄貴がアイツに自分の関与を伝えていた場合の話だ。
 兄貴はここにいるはいるが、結崎ひよのには何も知らせず、そのまま泳がせる、なんて可能性もありうる。
 というより、遊び好きの兄貴のことだ。この線が一番濃厚かもしれないな。
 いずれにせよ、アイツの動向は兄貴の出方次第、か……

 そしてカノン・ヒルベルト。
 恐らく一番厄介なのはアイツだ。
 もちろん、アイツの潔さは十分理解してる。アイツは俺に負けた以上、大人しく俺の行く末を見届ける道を選ぶだろう。
 だから普通に考えるなら、俺の意志に反すること――殺し合いに乗ることはしない。
 そしてそれ以前の主義として、アイツは無差別に人を殺すことをよしとしない。
 普通に済む場合の話、だが。
 それこそが、最大の問題だ。
 アイツは殺戮者としてのスイッチの入りかけた、非常に危険な状態にある。
 少しでも心を揺るがす何かが起これば、間違いなくアイツを虐殺の悪魔へと変える、時限爆弾のスイッチだ。
 そして俺達の常識を超えた超人達のはびこるこの戦場は、いくら最強のブレード・チルドレンといえども危ない。
 というより、そういう厄介な連中と、既に接触してしまった可能性もある。
 ここに兄貴がいるならば、まず間違いなくそういう位置を奴のスタート地点に選ぶだろう。
 自分を殺させるべく、俺の怒りを煽るための最適なカノン・ヒルベルトの使い方――それはアイツを狂わせて、かつての仲間達を殺させることだ。
 一度は避けた最悪の結末を突きつけられ、恐らくはその果てに俺の手でアイツを殺すことになるのだから、最悪も最悪に効くだろう。
 いずれにせよ、カノン・ヒルベルトとの合流を急がなければならない。
 アイツが最悪の事態に陥り、見境なく人を殺す悪魔に成り果てる前に、だ。

 ……ん?
 そういえば……カノン・ヒルベルトという名前に、何か引っ掛かるような……
 ………
 ………
「……しまった」
 額に右手を当てて漏らした。
 ふぅ、と1つため息をついた。
 そういえばカノン・ヒルベルトの名前は、我妻由乃との通話の時に、偽名の1つとして拝借した名前じゃないか。
 これはまずい。
 このままじゃアイツは俺ではなく、本物のカノン・ヒルベルトを俺だと見なしてしまう。
 そんな状態で両者が顔を合わせようものなら、話は全く噛み合わない。人違いと悟るまでに時間もかからないだろう。
 そしてそれがばれようものなら、俺はとんでもない嘘つき野郎と見なされ、一気に信用を失うわけだ。
 となるとなおさら、カノン・ヒルベルトとの合流を急がなきゃならない。我妻由乃と顔を合わせてしまう前にだ。
 いや、未来日記があるのだから、あの女と直接連絡を取る方が早いが……それはまだ待った方がいいかもしれない。
 自分の発言をすぐに覆すのもまた、相手の信用を削ぎ落としてしまう悪手だ。
 だからまだ自白するのは早い。
 自分から名乗るくらいなら、名簿のカノン・ヒルベルトというのがお前のことなのかと、
 相手が確認を取ってくるのに答えるという形の方がいいだろう。
 とはいえいつまでも連絡を待っていては、先にカノン・ヒルベルトと鉢合わせるかもしれない……
 ……よし、1時間だ。
 向こう1時間待って、その間に連絡がなかったら、大人しく白状することにしよう。
493盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:56:10 ID:rjVRlkXh

 ところで、こうして考察を進めていくうちに、1つ気になったことがある。
 これは万国共通のまっとうな論理の下に感じた違和感と言うよりは、俺達の世界だからこそ感じる違和感だ。
 改めて名簿を見直してみる。記された名前を確認してみる。
 結崎ひよの。
 浅月香介。
 竹内理緒。
 高町亮子。
 カノン・ヒルベルト。
 ミズシロ火澄。
 そして放送を行った土屋キリエ。
 どいつもこいつも、俺がブレード・チルドレンの問題を通じて関わった連中ばかりだ。
 それぞれ運命の構図上で各々の役割を持ち、俺と接触してきた連中の大多数が、このゲームに集められている。
 気味が悪いほどの徹底ぶりだ。
 だが同時にもう1つ、気味が悪いと思う点がある。
 集まりすぎているために感じる気味悪さとは真逆の、ある1点だけが欠けているために感じる気味悪さ。
 これだけの知り合いがここにいるのに。
 これだけ偏屈に集めたのに。

「どうして、ラザフォードだけがここにいない……?」

 何故奴だけが、この殺し合いの場にいないのか。
 アイズ・ラザフォード――俺を取り巻く5人のブレード・チルドレンの、最後の1人。
 カノン・ヒルベルトが最強のブレード・チルドレンなら、アイツは最高のブレード・チルドレンだ。
 他を圧倒する知恵と風格を持ち合わせ、誰よりも深く真実に踏み入った男。
 構図的に見て、恐らく最も重要な位置にいるだろうブレード・チルドレン。
 これだけの駒が揃えられている中で、何故そのラザフォードだけが、殺し合いに呼ばれていないのか?
 それこそ本来なら、呼ばれるべきブレード・チルドレンの最後の1人は、死んだカノン・ヒルベルトじゃなくアイツだっただろうに。
 兄貴が殺し合いに関わっているのなら、普通はまず間違いなく呼び寄せているだろう。
 仮に関わっていなかったとしても、ただ偶然ハブられた……とは考えがたい。むしろ“ただ偶然入っていた”の方がそれらしい。
 こいつのことも、一見するとただの考えすぎにも思えるだろう。
 だが俺達からすれば、むしろこう考える方が自然なんだ。
 俺達を縛る運命の構図は、誰が意図したわけでもなく、そうして気味悪いほどに整然とされてきていたんだ。
 言っちまえば、これが俺達の世界における悪魔の実や錬金術――よそには当てはまらない独自の慣習、なんだろうな。
 ともかく、結崎ひよのや火澄に他のブレード・チルドレン、おまけに土屋キリエまで呼ばれているような環境だ。
 ラザフォードだけが仲間外れというのは美しくないし、実際、八割方このゲームに関わっていると見て間違いない。
 その場合土屋キリエのように、主催者サイドにいると考えるのが妥当だ。
 ただの人間の彼女よりは、血統書つきサラブレッドのブレード・チルドレンの方が、奴らに選ばれる可能性も僅かに高くなるだろうしな。
 俺の義理のねーさん――鳴海まどかさんがいないのも気になるが、可能性が高いのはラザフォードだ。
 ねーさんの実働員としての役割は、カノン・ヒルベルトとの戦いで終わってるし、
 兄貴もみすみす自分の妻を死にに行かせることはしないだろう。
 兄貴がいなかった場合でも、ムルムル達がわざわざねーさんを呼ぶ理由が余計になくなるからな。
 問題はラザフォードほど見苦しく、仲間を守るためにもがき足掻いている奴が、
 何故浅月達が巻き込まれているのを、黙って静観しているか、だが……今はまだ分からないな。
 真相に迫れるのは、少なくとも、アイツの存在のウラが取れてからだろう。
494盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:57:06 ID:rjVRlkXh

 今現在で推測できることは、大体これくらいか。
 俺達の中からまだ死者は火澄以外に出ていない……できればこのまま、全員生還させてやりたい。
 ブレード・チルドレン達も……もちろん、結崎ひよのも。
 ……なぁ、兄貴。
 アイツが俺を踊らせるだけの駒だと知ったら、俺が怒るとでも思ったか?
 そりゃあ確かに、認めたくないし口に出したくもないが、俺はアイツを確かに信頼しちまった。
 技術者としても、精神的な寄り辺としても、少なからずアイツにすがっちまってるのは確かだろうさ。
 アイツぐらいなら信じられる。心のどこかで、俺はずっとそう思ってきたに違いない。
 だから、兄貴がひとたび手を振れば、アイツが俺の前から消えちまうような、そんな幻に過ぎなかったのは正直悲しい。
 ……だが、それがどうした。
 俺の強さは持たざる強さだ。
 それが誰からも強さと見なされるのは、誰から見ても不幸で、推測される未来すらも無残な奴が、実際に笑って示した時だけだ。
 俺はアイツのいる日常に、細やかなりにも希望を感じちまっている。
 だからアイツがいるだけで、端からは結構幸せに見えちまう。
 それじゃあ説得力がない。

 ……分かるよな、兄貴。
 突き詰めれば、アンタが手を回そうと回さなかろうと、そんなことは最初からどうでもよかったんだ。

 俺はアイツがいたからこそ、ここまで戦ってくることができた。
 だからこそ、兄貴を倒したその先を戦うために。

 どちらにしろ俺は、いつかはアイツを手離さなくちゃならなかったんだよ――。
495盤上の駒 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 08:57:55 ID:rjVRlkXh


【F-6北西/森/1日目/朝】
【鳴海歩@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]:疲労(小)
[服装]:月臣学園の制服
[装備]:小型キルリアン振動機“チェシャキャット”(バッテリー残量100%)@うしおととら
[道具]:支給品一式、無差別日記@未来日記、コピー日記@未来日記
[思考]
基本:主催者と戦い、殺し合いを止める。
 1:天野雪輝と我妻由乃からの連絡を待ち、無差別日記と雪輝日記の交換に赴く。
 2:我妻由乃から連絡が入ったら、本物のカノン・ヒルベルトがこの殺し合いに参加していることを告げる。
   もしも1時間連絡がなかったら、自分から連絡する。
 3:また、我妻由乃から連絡が入ったら、或に連絡。取り引き場所付近に潜伏してもらう。
 4:神社を目指し、主催に関する情報などを探索。その後北上し竹内理緒を追ってみる。
 5:島内ネットを用いた情報戦に関して、結崎ひよのと接触したい。
 6:首輪を外す手段を探す。
 7:殺し合いに乗っていない仲間を集める。
 8:安藤と東郷が携帯電話を入手したら、密な情報交換を心がける。場合によっては合流。
 9:第三回放送の頃に神社で安藤たちと合流。
 10:自分の元の世界での知り合いとの合流。ただし、カノン・ヒルベルトの動向には警戒。
[備考]
 ※第66話終了後からの参戦です。自分が清隆のクローンであるという仮説に至っています。
  また時系列上、結崎ひよのが清隆の最後の一手である可能性にも思い至っています。
 ※主催者側に鳴海清隆がいる疑念を深めました。
  また、主催者側にアイズ・ラザフォードがいる可能性に気付きました。
 ※我妻由乃の声とプロファイル、天野雪輝のプロファイルを確認しました。由乃を警戒しています。
 ※会場内での言語疎通の謎についての知識を得ました。
 ※錬金術や鋼の錬金術師及びONE PIECEの世界についての概要を聞きましたが、情報源となった人物については情報を得られていません。
 ※安藤の交友関係について知識を得ました。また、腹話術について正確な能力を把握しました。
 ※秋瀬或からの情報や作戦は信頼性が高いと考えていますが、或本人を自分の味方ではあっても仲間ではないと考えています。
  言動から雪輝の味方である事は推測しています。
 ※雪輝日記についての大体の知識を得ました。
 ※未来日記について、11人+1組の所有者同士で殺し合いが行われた事、未来日記が主観情報を反映する事、
  未来日記の破壊が死に繋がる事、未来日記に示される未来が可変性である事を知りました。
 ※探偵日記のアドレスと記された情報を得ました。管理人は或であると確信しています。
 ※結崎ひよのの名前を思い出しました。

【鳴海歩の考察】
1:24時間ルールや参加者への制限の存在、ムルムルの言動、優勝への言及がないことなどから、
  誰か一人が勝ち残ることに意味はなく、殺し合いという状況そのものが目的であると推理。
2:実力者と常人が混合して参加している事から、常人こそがゲームにおいて
  鍵となる可能性があると思考。(ただし、現状では妄想程度だと判断)
3:ムルムルの言動や竹内理緒の存在などから首輪の解除や主催者への反逆は可能であり、言論も自由だが、
  そうした行動も最初から殺し合いに組み込まれていると推理。
4:『新しいゲーム』は『前のゲーム』に見立てて行われていると推測。
  『前のゲーム』とは、未来日記を用いた殺し合いである。
5:内通者が存在する可能性を想定。
6:火澄が見せしめにされたのは、火澄がヤイバの弟である事を知る人間へのメッセージと推測。
7:ムルムル達がわざわざキリエを仲間に引き入れる必然性が薄い。
  清隆がゲームに関与していて、キリエは清隆が連れてきた人員だと考える方が妥当だと推測。(故に清隆がゲームに関与している可能性が高まる)
  また、構図的に見て、ラザフォードが何らかの形でゲームに関与している可能性が高いと推測。
496 ◆9L.gxDzakI :2009/10/13(火) 09:00:20 ID:rjVRlkXh
投下終了。
いないといまいちしっくりこないからラザフォードがいるに違いない、なんて馬鹿げた推測は、スパイラル世界のキャラでないとできないでしょうね
497創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 09:54:55 ID:+5WzdCY/
投下乙です!
キリエちゃん、あんた自身は貧乏籤引いたけどその意志はちゃんと生きてるよ……。
やっぱりカノンの存在とファンタジーに直面したか。この辺りにどう立ち向かっていくかも見もの。
そしてまあ、やっぱりあの面子の中にアイズがいないならこうなるよなあとw
ブレチルたちがこのことに気付いたらそうとうヤバいトリガーになりそうだ。

しかしやっぱり強いな、ここまできた歩は。『結崎ひよの』ではなく『アイツ』を信じるというのがらしいです。だからこそ距離を置こうとするのも。
今後やる事は【理緒のメール確認と接触】【神社の探索】【由乃との接触】の3つかな?
最後の一つはあのコンビが動かないとどうにもならないし、次辺りでそろそろ神社に着かないと流石に速度が遅すぎるか……。
498 ◆L62I.UGyuw :2009/10/13(火) 10:46:46 ID:axjZJSKL
投下乙です。
なんというか流石の考察魔w
ラザフォードの存在まで見抜くなw
しかし由乃との接触までの余裕は吉と出るか凶と出るか。

では予約してませんでしたが秋葉流を投下します。
499そして運命は斯くの如く扉を叩く ◆L62I.UGyuw :2009/10/13(火) 10:47:49 ID:axjZJSKL
――――あァ――風が、強えなァ――。


***************


放送は、これで終わりか。
あの曲は確か――リストの『孤独の中の神の祝福』だったな。
どうもなァ、いちいち鼻につくんだよ。『神』のヤツは演出過剰だぜ。下らねェ。

まあいい。こっからどうするかね。
ふん、今は周りに誰もいねえな。見えるものといやァ川と木と岩だけだ。
さっきまでは趣味の悪い覗きもいたようだけどよ――まぁどうでもいいか。
オレを止めるでもなく傍観してたってこたぁ『セイギノミカタ』ってわけじゃねぇだろう。
漁夫の利狙いの小物ってとこか? だったらわざわざ追い掛けて潰すのも面倒臭え。

そんなことより――これだ。名簿だ。

あァ、最高だ。たまらねえ。
あいつが、あの妖が、あのバケモノが、とらがいるじゃねぇか。
さっきは演出過剰だっつったが、訂正だ。演出の項目は花マルを付けてやるぜ。

うしおのやつァ後回しだ。聞仲も――今は無視だ。

とらと戦うなら万全でないと駄目さ。
でねえとオレは追い詰められたら全力を出す前にきっと、調子が悪かった、なんて言い訳して逃げちまう。
それじゃいけねえ。
とらは図らずも見付けた『本気を出してもいい相手』だ。この先二度あるかは分からねえ。
だから、あいつとは力も技も策も何もかもを出し尽くしてぶつかり合いたいのよ。
へへへへ、そのためにゃ労力は惜しまねぇぞ。

とりあえずは、そうだな、武器が必要だ。禁鞭は強ェが燃費が悪すぎる。
もう少し手頃な得物が欲しいとこだ。出来れば法力をよく通すやつがいいな。

するってえとまずは……神社に行くか? うまくいきゃ、法具の一つくらい置いてあるかもな。
宗派どころか宗教が違うが……何、大した問題じゃねえ。オレは何でも出来ちまうんだからよ。

地図は、と。
ここは…………E-4か。
神社までは川伝いに二キロくらいだな。

さァ、こんな川っぺりに突っ立っててもしょうがねえ。そろそろ行くとするかね。


***************


それにしてもただ歩くだけってなァ、暇だね。景色も木ばっかりで見飽きたしよ。
でもずいぶんでっけえ岩が増えてきたなァ。歩きにくいったらないぜ……ん?
滝、か。滝っつっても岩壁の所々から水が滲み出してるだけだけどな。
ふん、ここが川の大元だな。ってこたあ神社はもうちょっと上か。



にしても、あんときの放送は何だったんだ? 最後に妙なこと口走りやがって。
ありゃ間違いなく殺されたよなあ。『神』の配下も一枚岩じゃねえってことか?
いや、まあ当然か。オレだって一応白面の配下ってことになってるんだしな。
別にそれは構いやしねえさ。
500そして運命は斯くの如く扉を叩く ◆L62I.UGyuw :2009/10/13(火) 10:49:41 ID:axjZJSKL
問題は――あれを聴いて希望を持った連中が一致団結しちまうんじゃねえかってことだ。
そいつはいただけねえ。とらと戦うのが難しくなっちまう。
それに、そうしたらうしおも――きっと皆の期待を背負って奮起するんだろうさ。あいつはそういうやつだからなァ。
そんで性懲りもなく、

「なァ……流兄ちゃん。流兄ちゃんが力を合わせてくれればきっとここから出られるよ!
 そうすれば、オレたちが殺し合う理由なんて無くなるだろ? だから、頼むよ! 協力してくれよ!」

なァんて頼んで来るのさ。
あの――あの真っ直ぐな眼で、な。
へへっ、笑っちまうぜ。

なら……オレはどうする?

はは、簡単だ。

徹底的に妨害してやる。
希望を片っ端から叩き潰してやる。
とらをぶっ殺して死骸をうしおの目の前に晒してやる。
あの甘ちゃんに圧倒的で絶対的な現実を見せ付けてやる。

そうすれば――そうすれば今度こそ、うしおもオレを見限ってくれるさ。



ん、ああ、見えてきたな。
ふうん。山のド真ん中にしちゃあ、ご立派な神社じゃねえか。でっけえ鳥居と狛犬だなァ。
じゃあ失礼しますぜ……っと。
石畳もよく掃除されてやがる。見たとこ誰もいねえのにな。
拝殿は……右にあるあれか。これもでけえな。



お? ありゃ誰だ? 木が邪魔でよく見えねえが……誰か登って来るみてえだな。
ありゃあ……オレの知ってるヤツじゃねえな。ずいぶん生っちろいガキだ。
ん? 何だ、おいおい、まだオレに気付いてもいねえのかよ。ありゃ素人だな。
考え事しながら暢気に歩きやがって。自殺志願者か? せめてもう少し隠れて歩けよ。
まァコソコソ隠れたところでオレからは逃げられねえけどよ。
殺すのは一瞬だが、さてどうするかね――。

501そして運命は斯くの如く扉を叩く ◆L62I.UGyuw :2009/10/13(火) 10:50:44 ID:axjZJSKL
【F-5/神社/1日目 朝】

【秋葉流@うしおととら】
[状態]:疲労(中)、法力消費(中)
[装備]:禁鞭@封神演義
[道具]:支給品一式、仙桃エキス(10/12)@封神演義
[思考]
基本:満足する戦いのできる相手と殺し合う。潮に自分の汚い姿を見せ付ける。
0:何だ? あのガキ……。
1:他人を裏切りながら厄介そうな相手の排除。手間取ったならすぐに逃走。
2:厄介そうでないお人好しには、うしおとその仲間の悪評を流して戦わない。
3:高坂王子、リヴィオを警戒。
4:聞仲に強い共感。
5:体力が回復するまではどこかの集団に紛れ込むのもいいかもしれない。
6:万全の状態でとらと戦いたい。
7:扱いやすい武器が欲しい。
[備考]
※参戦時期は原作29巻、とらと再戦する直前です。
※或の名乗った「高坂王子」が偽名だと気付いたかは不明です。
※或の関係者、リヴィオの関係者についての情報をある程度知りました。
502 ◆L62I.UGyuw :2009/10/13(火) 10:52:52 ID:axjZJSKL
以上、投下終了です。

ちなみに歩が明後日の方向に向かったら没の予定でした。
503創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 10:55:19 ID:ADqbHWQ5
投下乙です
歩早くもS級危険人物と接触ですかw
504創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 14:05:51 ID:D87msBzQ
投下乙です

考察系はやっぱり歩が凄いな。カノンの存在に上手く折り合い付けたりアイズ不在に違和感覚えたり着目点がいい
由乃との交渉はどうなるか見ものだ
そして歩のひよのへの思い方は強いなあ

うわ、神社の方へ向かったか。そして歩とご対面だw
そういえば神社の三人は神社を探索してないな。ずいぶん大きいけど何が見つかるやら

505創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 16:13:48 ID:+5WzdCY/
投下乙です、なんだか歩の周りには厄介なのばっかり寄ってくるなあw
或のおかげで歩は流の情報を握ってるはずだから、そのアドバンテージをいかに生かすかが鍵になりそう。
流石に刺激するようなことはしないだろうけど、果てさてどう立ち回るのか。
506 ◆9L.gxDzakI :2009/10/14(水) 10:21:20 ID:TnC/yhx/
ちょっと質問。
このロワ会場のインターネットって、たとえば2chとかニコニコとかWikipediaとか、
そういった外界のホームページを利用することはできるんですかね?
507創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 10:50:28 ID:uYh3E4eV
まず会場の詳細も外界との関係も不明
「外界が存在するのか」レベルで不明
だからこそそんな質問をするような安易な感覚で外界と接触させるのはやめた方がいい
破綻させずに話を収束させるアテがあるなら別だが
508 ◆9L.gxDzakI :2009/10/14(水) 10:53:47 ID:TnC/yhx/
了解。では、そっちの方は使わない方向で。
どうもありがとうございました。
509創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 10:56:40 ID:MnA/ymuV
ローカルネットだからそういう外部サイトには接続できない……はず。
ただ、主催側が予め用意したサイトには接続できるかと。
或や歩がレンタルblogサービスを使ってますし、歩がひよのに掲示板サイトを開設するよう頼んでいるんで、blog作成機能とレンタル掲示板はあるようで。
まあ掲示板に関してはひよのにタグ打ちさせて1から作らせるのを考えていた可能性も0じゃないですがw
そういう意味じゃどんなサイトが用意されてて、それらが利用できてもおかしくないです。
510 ◆9L.gxDzakI :2009/10/14(水) 16:20:31 ID:TnC/yhx/
それでは出来上がりましたので、結崎ひよの分を投下します。
「ははぁ、キリエさんが殺られてしまいましたか……」
 博物館の従業員室に、1人の少女の声が響き渡る。
 結崎ひよの。
 私立月臣学園高等部二年生。同学園新聞部部長。
 それが彼女の演じているキャラクターだ。
 そして学園を抜け出した学生もどきはというと、相も変わらず博物館に留まり、パソコンの置かれたデスクに腰掛けていた。
 人を探すという方針を取っておきながら、恐らく今はもう無人であろうこの場所で、放送の時間を迎えていたのだ。
「お悔やみ申し上げます」
 両手を胸元へと運び、ぱんと合わせて礼をする。
 巻きついたカーテンの端からは、二房の果実の生み出す谷間――それを作るくらいのサイズはある――が覗いていた。
 死者への悼みを口にした割には、随分と平然とした声音だ。
 そしてその声色通りに、早々と葬式ムードを打ち切り、デイパックから名簿を取り出す。
「鳴海さん、浅月さん、高町さん、竹内さんにカノンさん……そして既に亡くなられた、火澄さんとキリエさん。
 何人か足りませんが、概ねいつものメンバーが集まっていますね」
 やはりこれも鳴海清隆の企みだろうか。
 そう感じさせるには十分すぎる顔ぶれだ。
 この神の名の下に繰り広げられているというゲームには、自分達を取り巻くほぼ全ての駒が勢揃いしている。
 各地からバラバラにかき集めた割には、異常なまでのコンプリート率。
 もっとも、アイズ・ラザフォードや鳴海まどかなど、一部足りない顔がいるのは、少々清隆らしくないとも思えたが。
 そしてカノン・ヒルベルトの蘇生にも、特にひよのは驚かなかった。
「私の身で実証されてしまいましたし」 
 ぎゅ、と我が身を抱きしめる。
 この身は一度死んだ身だ。
 恐らくは例の白スーツの男によるものであろう奇襲を受け、結崎ひよのは一度死亡した。
 しかしあらかじめ持ち合わせていた支給品によって、こうして見事に蘇ったのだ。
 信じられない話だということも、そうそう信じてはいけない話だということも分かっている。
 だが実例を体感してしまったからには、認めざるを得ないだろう。
 故にカノンの復活にしても、同じようなものだと判断する。
「……と、そうでした。そろそろ頃合ですね」
 と、そこで我に返ったように呟くと、細くなめらかな指先を、慣れた手つきでF5キーへと運んだ。
 ディスプレイに映っていたのは、例の「探偵日記」なるブログだ。
 この博物館にずっと引きこもり続けたのは、このウェブサイトに書き込んだコメントの返事を待つためである。
 市街地に移動した後で、適当な家屋から見ればいいだろうと思うかもしれないが、生憎とこの場所は相当な郊外。
 再びネットを見られるような環境に移動するには、何マス分も移動しなければならないのだ。
 その辺りを考えると、やはり移動する前に返事を見た方が、今後の対策も立てやすいだろう。
 古いパソコンの作業が完了。
 表示中のウェブサイトを、最新の状態へと更新。
 携帯電話からも更新できるブログ形式を選んだのだから、向こうのアクションも早いはずだ。
 その読み通り、「探偵日記」には、新たな1ページが開かれていた。
 2番目となる記事を読み始める。
 日本人にとっては冗長でしかない、日本の観光案内を読み飛ばす。
 たっぷり13行の前置きを終えて、ようやく自分の書き込みが確認できた。
 先方の発言通り、内容に手は加えられていない。
「……やはり、駄目ですか」
 もっとも、だからと言って収穫が得られたというわけでもなかった。
 コメント欄を公開してくれ、という言い分は、あっさりと蹴られてしまったのだ。
 自分とほぼ同時期にコメントを書いた者がもう1人いるようだが、その人も似たように落胆しているのだろう。
 いわく、このブログは“確度の高い情報”の発信場所として位置づけたいとのこと。
 いわく、確度の低い情報でも教えてほしいというのなら、メールで問い合わせてほしいとのこと。
 上手いこと言い回しの考え込まれた、もっともらしい言い分だ。
 頭の悪い人間なら、これでも仕方ないと言って妥協するだろう。
「でもこれ、検閲の可能性の否定にはなってないんですよね……」
 だが、ひよのレベルの人間ともなると話は別だ。
 寄せられた情報をそのまま見たいという要求に、先方はその個人にのみメールで送ると言った。
 一見すると信用してよさそうにも見えるが、メール送信とコメント欄公開はイコールではない。
 むしろ、ブログ更新とのイコールと捉えて大差ない。
 いくら媒体を変えたと言えど、そこに何らかの改訂が加わる可能性は、相変わらず否定できないのだ。
 原文が見えないので真贋の判断がつけられない、という点も、実は何ら変わっていない。
 これではやはり信用は難しいか。
 ふぅ、とため息をつく。
 情報戦の有用性が分かるほどの人間にしては、信用を得ることへの執着が薄い気もしたが、ぼやいていても仕方がない。
 一応まだ記事が続いているので、画面をスクロールしていく。
 と。
 そこで。
「……螺旋、楽譜……?」
 1つの別サイトへと行き当たった。
 何でも、3番目にコメントをした何者かが、同じくブログを開設したのだという。
 二番煎じをしたところで、メリットは薄いと思うのだが。
 だがこの螺旋楽譜というサイト名、どうにも引っかかる。
 どことなく、自分の知る誰かを喚起させるキーワードの羅列。
 その奇妙なサイトのURLをクリックするのに、さほど時間はかからなかった。
 「螺旋楽譜」。
 展開される新天地。
 管理人のハンドルネームは――水濁。
 火、ではなく、水。
 澄、ではなく、濁。
 悪魔の弟・ミズシロ火澄の名を構成する漢字二文字を、それぞれ対になる字に置き換えた言葉遊び。
 そして、何より。
「……!」
 その文体そのものが、ひよのの両目を見開かせる。
 それは見間違えようもない、自分の知る1人の少年の言葉。
 限りなく神に近いが故に。
 幾度となく神に負け絶望し。
 されど神とは違うが故に。
 唯一神を超える可能性を持ち。
 そして全てを勝ち得る資質を持ちながら。
 誰よりも孤独に戦い続ける男。
 私立月臣学園在籍の一年生。
 かつて天使の指先と呼ばれたピアニスト。
 名探偵・鳴海清隆の弟。
「ようやく動いたようですね――鳴海さん」
 鳴海歩。
 その名を小さく呟いた瞬間。
 ふっ、と。
 穏やかな笑みが、彼女の顔に浮かんでいた。


 鳴海歩という男は、今や誰よりも神に近い男へと成長した、類稀なる才知の持ち主である。
 しかしその輝かしい能力の割に、その発言は信じられないほどに謙虚かつ後ろ向きだ。
 それもそのはずだろう。
 彼は何も信じられない暗闇の中、最初から何も信じず戦うという道を選んだ。
 与えられた情報の全てを疑い、差し伸べられた手全てを勘ぐり。
 されど絶望すらも信じず、独り運命へと抗うことを選んだ少年。
 この水濁という人物の記したブログの文章は、間違いなくその歩によって書かれたそれだ。
 たとえひよのでないとしても、浅月達ブレード・チルドレンでも、一目で彼だと分かるだろう。
 なるほど、coin_tossがコメント欄の開示を拒んだのは、このブログが設立されたからか、と納得する。
 歩の運営する「螺旋楽譜」は、彼の「探偵日記」と異なり、常時コメント欄がオープンになっている。
 自分のブログで満足できないのなら、歩のブログに行け、というわけだ。
 後ろ向きな発言で固められた、使ってほしいのかほしくないのかよく分からないブログの文章を読みながら、ひよのはそう判断する。
 自分を信じるなとまで言い切った、情報発信する気があるのかと言わんばかりの内容。
 ぶっきらぼうな文体で書かれた、愛想も何もない言葉の羅列。
 なのに、何故だろう。
 一文字ずつ読み進めていくたびに、少しずつ胸が暖かくなっていくのは。
 彼の言葉を追うたびに、こんなにも頼もしい気持ちになっていくのは。
「きっと、愛、ですね」
 鳴海歩。
 兄・清隆の命令によって、最後に彼を打ち負かすために、ずっと騙してきた相手。
 されどいつしか本心から、彼になら運命を変えられるかもしれないと、強く慕うようになった相手。
 特別な戦闘力なんてなくても。死者を蘇らせることなんてできなくても。
 世界中の誰よりも頼もしく思える、たった1人の“鳴海さん”。
「っと」
 と、その時。
 ようやく記事を読み切った後に、何やら追伸のような文章が加えられている。
 この追伸を読んだ者のうち、心当たりのある者に、掲示板を作ってほしい、と要求したものだ。
 人に物を頼む態度とは思えない、誠意も温かみもないぞんざいな口ぶり。
「……やれやれ。やっぱりしょうがない人ですね、鳴海さんは」
 肩を竦めて苦笑こそすれど。
 されど彼女の表情には、怒りの色は浮かばなかった。
 いつだって、こんな感じだからだ。
 鳴海歩はいつだって、こんな風に物事を頼む。
 そしてそんな風だからこそ、鳴海さんは鳴海さんらしいのだ。
 この“あんた”というのが自分であることも、ひよのには一目で分かっている。
 自分をあんたと呼んで頼み事をする人など、歩を置いて他にはいない。
 そして歩が弱味を見せようとする相手も、姉か自分を置いて他にはいないのだ。
「本当、大変な人に恋してしまったものです」
 言いながらもひよのの手先はマウスを操り、目の前のパソコンを操作する。
 どんなに強がってみせていても、彼は自分がいないと駄目なのだ。
 どんなに憎まれ口を叩いても、結局彼は自分を頼ってくるのだ。
 そしてその願いに応えたとしても、その先に輝かしい未来はない。
 持たざる強さを振りかざす歩に、結崎ひよのという依り辺は邪魔になる。
 不死の秘法を手土産にしても、彼は受け入れようとしてくれないだろう。
 全てに決着をつけた時が、きっと別れの時になるだろう。
 残された彼の短い生涯を、共に延ばしていくことはできない。
 来たるべき彼の最期の日まで、傍に居続けることは願えない。
「それでも……見返りを求めないのが、愛ですから」
 だが、それだけだ。
 ただ一緒にいられないだけ。見返りが得られないだけだ。
 彼を大切に想うこの心に、決して嘘は存在しない。
 たとえ作られた偽りの協力関係でも、この信頼だけは本物だから。
 それが確かなものならば、ただそれさえあれば十分だから。
 ブラウザのボタンをクリックし、表示されたのはホームのページ。
 元の世界では見覚えのないデザインだ。恐らくはこのゲームのために用意された、会場内オリジナルのものだろう。
 レンタルサーバーにメール機能と、死者や禁止エリアの情報。天気予報なんてものもあった。
 しかし情報サイトでありながら、検索エンジンと思しきものがない。
 これは恐らく、検索するほど多くのサイトがない、ということなのだろう。
 外界から隔絶されたこの島では、インターネットも外界とは別物ということか。
 ともあれ今は、その辺りを気にしている暇はない。
 まずはメールアドレスを取得。
 続いてサーバーをレンタルするための手順を開始。
 これと決めたデザインを指定し、一瞬前に用意したメールアドレスを設定。そしてローカルルールを書き込んでいく。
 最後に添えたハイパーリンクは、歩とcoin_tossの2つのブログと、これまたレンタルした画像アップローダー。
「管理人名は……お姉さんの名前をお借りしちゃいましょう」
 せめてもの歩へのお返しだ、と言わんばかりに。
 悪戯っぽい笑みを浮かべて、自らのハンドルネームを入力。
 この六文字のアルファベットの名前を見れば、さしもの彼もぎょっとするに違いない。
 そんなささやかな嗜虐心と共に、設定完了の意志を示すボタンをクリック。
 そして完成したサイトに、必要だと思うスレッドを立て。
「これで完了、っと」
 かくして、運営体制は整った。


みんなのしたら場 管理人名:Madoka


 当掲示板は、水濁さんの運営されているブログ「螺旋楽譜」の公式応援サイトです☆
 この殺し合いをみんなで生き残るために、情報交換を行う場として、最大限に有効活用してくださいね〜。
 管理人はあちこち飛び回る予定なので、あまり頻繁に顔を出すことはできないかもしれませんが、
 この掲示板が皆様が生き延びる上で、その一助となってくれたなら幸いです。
 もちろん、ここに書き込まれることの全てが真実とは限らないので、情報は自己責任でしっかり吟味するようにしてくださいm(_ _)m

 なお、素早く要望に応えられる自信がないので、スレ立ては自由とさせていただきます。
 かといってあまり必要のないスレを立てちゃうと、必殺Madokaパンチが飛んじゃいますよ☆

 Link
 螺旋楽譜(水濁さんの運営されているブログです)
 探偵日記(coin_tossさんの運営されているブログです)
 画像アップローダー(画像を掲載したい場合は、こちらをご利用ください)


1:【厨スペック】支給品情報まとめスレ【官能小説】 / 2:殺人ゲーム参加中の俺が名有り施設を巡ってみた / 3:気のいい兄ちゃんに
協力求めたら肺をブチ抜かれたんだけど / 4:【探し物は】尋ね人・待ち合わせ総合スレ【何ですか】 / 5:【けんぜんなたたかい】お色
気担当にハァハァするスレ【zipでくれ】 / 6:雑談スレだけど何か話題ある? / 7:本当に暇すぎたので管理人が更新報告してみた

掲示板の使い方 / 新着をメールで受信 / 過去ログ倉庫 / スレッド一覧 / リロード
ちょっとミスったので、些細な差ですが書き直し



みんなのしたら場 管理人名:Madoka


 当掲示板は、水濁さんの運営されているブログ「螺旋楽譜」の公式応援サイトです☆
 この殺し合いをみんなで生き残るために、情報交換を行う場として、最大限に有効活用してくださいね〜。
 管理人はあちこち飛び回る予定なので、あまり頻繁に顔を出すことはできないかもしれませんが、
 この掲示板が皆様が生き延びる上で、その一助となってくれたなら幸いです。
 もちろん、ここに書き込まれることの全てが真実とは限らないので、情報は自己責任でしっかり吟味するようにしてくださいm(_ _)m

 なお、素早く要望に応えられる自信がないので、スレ立ては自由とさせていただきます。
 かといってあまり必要のないスレを立てちゃうと、必殺Madokaパンチが飛んじゃいますよ☆

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1:【厨スペック】支給品情報まとめスレ【官能小説】 / 2:殺人ゲーム参加中の俺が名有り施設を巡ってみた / 3:気のいい兄ちゃんに
協力求めたら肺をブチ抜かれたんだけど / 4:【生きている人】尋ね人・待ち合わせ総合スレ【いますか】 / 5:【けんぜんなたたかい】お色
気担当にハァハァするスレ【zipでくれ】 / 6:雑談スレだけど何か話題ある? / 7:本当に暇すぎたので管理人が更新報告してみた


1:【厨スペック】支給品情報まとめスレ【官能小説】(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 ここは皆さんに支給された支給品の情報を書き込むスレです。
 書き込みからお求めのあの品やこの品を探したり、欲しい物を問い合わせたりする時に使用してください♪

2:殺人ゲーム参加中の俺が名有り施設を巡ってみた(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 マップ上に名前を記された、特殊な施設に関する情報を書き込むスレです。
 何か気が付いたことがありましたら、じゃんじゃん書き込んじゃってくださいね〜

3:気のいい兄ちゃんに協力求めたら肺をブチ抜かれたんだけど(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 殺し合いのゲームに巻き込まれたのなら、危険な人に襲われたり、裏切られたりすることも多々あります。
 ここはそんな危険人物に関することを書き込み、注意を促すためのスレです。
 もちろん、扱う話題が話題なので、書き込まれたこと全てを鵜呑みにせず、
 詳しいことを質問するなどして、特に慎重に真偽を判断するようにしてくださいね。

4:【生きている人】尋ね人・待ち合わせ総合スレ【いますか】(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 スレタイ通り、人探しや待ち合わせの呼びかけをするためのスレです。
 どこで敵の目が光っているか分からないので、利用する際にはくれぐれも気をつけて!

5:【けんぜんなたたかい】お色気担当にハァハァするスレ【zipでくれ】(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 読んで字のごとく、お色気スレです。
 殺し合いの中で味わったちょっとエッチな体験や、女性陣のあられもない服装について語りましょう。
 生き残るためには全く必要ないかもしれませんが、たまには生き抜きも必要ですよね?☆

6:雑談スレだけど何か話題ある?(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 わざわざスレ立てするまでの話じゃないけれど、該当するスレがどこにもない!
 そんな話題を扱うためのフリートークの場です。

7:本当に暇すぎたので管理人が更新報告してみた(Res:1)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYAruO
 管理人である私Madokaが、更新報告を行うためのスレです。
 何か当サイトについて要望がありましたら、それもこちらにどうぞ。


[00000001]


「いやぁ〜、適度なサブカル感と遊び心に満ちた、我ながら惚れ惚れする出来栄えですねぇ」
 うっとりとした表情で、自画自賛の言葉を口にする。
 やや悪ノリが過ぎたような気もするが、こんな殺伐とした状況だからこそ、柔らかい精神を保つことが大事なのだと自己解決。
 必要なコンテンツは、これで大体揃ったはずだ。
 新規スレッドの作成も許可してある。他に必要なものがあるなら、必要と思った人が立ててくれるだろう。
 かくしてこの島のまっさらなネット環境に、静かに、だが着実に、巨大なコミュニティが形成されつつあった。
 そう、謎の美少女結崎ひよのは、さながら西部時代の開拓者のごとく、広大な電脳世界を切り拓いていったのである。
 ……というのは、やや言いすぎかもしれないが。
「ちょっと注意の促し方が足りなかったかもしれませんが、みんな鳴海さんのブログを先に見るわけですし、大丈夫でしょう」
 不安がないとは言えない。
 元々この掲示板の目的は、ブログを運営するほど情報戦に明るくない人間でも、気軽に自らの情報を発信できるような場を作ることだ。
 ということは、情報を扱うことに不慣れな人間も、ここを利用することになる。
 くどいくらいに釘を刺さなければ、迂闊に情報を公開し、結果殺人者に身元がばれてしまうかもしれない。
 更には殺人者による虚偽の情報を鵜呑みにし、騙され利用され踊らされてしまうかもしれない。
 だが、それでも大丈夫だろうと思う。
 そもそもこのサイトを訪れる人間は、皆必ず例の「螺旋楽譜」を先に見ているはずなのだ。
 あれほどしつこく疑いを持てと言っているのだから、こちらで書き込みを行う時も、慎重になってくれるに違いない。
「さて、後は鳴海さんへのご報告ですね」
 かち、と。
 自分の掲示板のリンクから、歩のブログへと再アクセス。
 記事が増えていないので、コメントを書き込む先は最初の記事だ。
 投稿フォームへとカーソルを持っていき、かたかたと簡潔なメッセージを打ち込んでいく。
 最後に掲示板のURLをペーストして、投稿ボタンを押そうとして――
「………」
 ふと、その手を止めた。
 一瞬の沈黙。
 かたかたとタイピング音が鳴り響いていた部屋に、再び静けさが戻ってくる。
 何を考えているのか。
 何を想っているのか。
 ややあって、ふっと浮かぶ柔和な笑み。
 誰かを利用するあくどい笑顔でも、誰かを騙す作り笑いでもなく。
「どうか希望を」
 慈しむような。
 背中を押すような。
 呟きと共に浮かんだ笑みは、それだけは確かに真実と呼べるものであった。
 最後に短い一文を追加すると、改めて投稿のボタンを押した。
519創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 16:38:22 ID:/qk74WEa
sien


>1:
>管理人さんへ。
>掲示板の件、了解しました。ご覧の通り、早速立ち上げてきましたよ!
>メールもレンタルサーバーを利用したので、インターネットが繋がっていれば、どこの端末からでも受付可能です。
>そちらも更新頑張ってくださいね。

>Link:みんなのしたら場

>私はいつでも、管理人さんを信じてますよ☆


【B-8/博物館/1日目 朝】

【結崎ひよの@スパイラル 〜推理の絆〜】
[状態]:健康、絶好調
[服装]:カーテン一枚、髪紐の喪失によりストレートのロングヘア
[装備]:
[道具]:支給品一式×3、手作りの人物表、若の成長記録@銀魂、綾崎ハヤテの携帯電話(動作不良)@ハヤテのごとく!
    ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×2@トライガン・マキシマム、太極符印@封神演義、秋葉流のモンタージュ入りファックス
[思考]
基本:『結崎ひよの』として、鳴海歩を信頼しサポートする。蘇生に関する情報を得る。
0:まともな服を調達する。
1:鳴海歩と合流したい。
2:まずは市街地へと向かう。
3:あらゆる情報を得る為に多くの人と会う。出来れば危険人物とは関わらない。
4:安全な保障があるならば妲己ほか封神計画関係者に接触。
5:三千院ナギに注意。ヴァッシュ・ザ・スタンピードと柳生九兵衛に留意。
6:襲撃者は先ほど出会った男(ミッドバレイ)ではないか?
7:機が熟したらもう一度博物館に戻ってくる。
8:復活の玉ほか、クローン体の治療の可能性について調査。
9:太公望達の冥福を祈る。
10:探偵日記を利用する。
[備考]
※清隆にピアスを渡してから、歩に真実を語るまでのどこかから参戦。
※手作りの人物表には、今のところミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク、太公望の外見、会話から読み取れた簡単な性格が記されています。
※太公望と情報交換をしました。
 殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
 ハヤテが太公望に話した情報も又聞きしています。
※超常現象の存在を認めました。封神計画が今ロワに関係しているのではないかと推測しています。
※太公望の考察を知りました。
※ 太極符印@封神演義にはミッドバレイの攻撃パターン(エンフィールドとイガラッパ)が記録されており、これらを自動迎撃します。
 また、太公望が何らかの条件により発動するプログラムを組み込みました。詳細は不明です。
 結崎ひよのには太極符印@封神演義を任意で使用することはできません。
※探偵日記と螺旋楽譜に書かれた情報を得ました。
※フィールド内のインターネットは、外界から隔絶されたローカルネットワークであると思っています。

[全体の備考]
※各パソコンのインターネットブラウザのホームページには、フィールド内限定のオリジナルの情報サイトが登録されています。
 正確なコンテンツの内容は後続の書き手さんにお任せしますが、
 少なくとも、レンタルサーバー、レンタルメールアドレス、レンタル画像アップローダー、
 最新の放送で発表された死者の一覧、禁止エリアの一覧、天気予報が利用可能です。
 また、検索エンジンは用意されていません。
投下は以上です。

重ねてお願いしますが、修正した方では「掲示板の使い方 / 新着をメールで受信 / 過去ログ倉庫 / スレッド一覧 / リロード」の一行が消えていますが、
コピペミスですので、まとめWiki収録の際には追加をお願いします。
それから、したらば掲示板のIDが10文字ではなく9文字だったのを失念していたので、
作中でのひよののIDを、「vIpdeYArE」に修正お願いします。
523創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 18:33:18 ID:s5yZD9VI
風呂敷広げすぎじゃね?
524創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 18:37:20 ID:wkRiV2dD
くたばれ
525創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 19:10:37 ID:NhRp2zD0
投下乙です

あはははは、ひよのらしいおちゃらけたスレタイばっかりですね。しかもけんぜんなたたかいとはwww
でも歩に対する真剣な想いは・・・・いい女だな
風呂敷広げすぎとか言う人いるけど悪くはないと思う
後続の書き手さんはどう受け取るか不明だけど
526創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 19:43:02 ID:R/uKzA6Y

2ch型掲示板かw悪用されるリスクはかなり高い気もするが・・・
527創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 20:04:35 ID:4IEYawoR
[全体の備考]について質問

これまでネットに触れた連中がデフォルトのホームページの機能を完全に度外視して行動してます。
私にはちょっとフォローが厳しい、というか無理なんですが、問題ありませんか?
528創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 20:09:38 ID:IWWDyJ6R
さすがにそこまで用意周到に用意されてると神の掌の上すぎる……かな
529創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 20:25:48 ID:YAky1/ed
投下をしてくれた書き手に荒らしと同じような口調で煽ってどうするんだよ
あと私には無理とか自分の立場を使う場合、トリをつけて発言するべきだと思う
530創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 20:41:47 ID:MnA/ymuV
投下乙です! なんというか、ひよのらしいなあとw
歩の話の時にも思ったけど、やっぱりこの二人の関係っていうのは確かな絆があって好ましいですねえ。
さて、これがどう希望と絶望に繋がってくるか楽しみです。
パロロワ恒例のネタがスレタイに仕込まれていてニヤリ。

>>527
メールに関しては或や歩、理緒が触れてますし、死者や禁止エリアについてはこれまで閲覧できなかったわけで、問題ないかと。
サーバーは歩が掲示板を解説するよう頼んでますし。
天気も見る必要がなかったから、というので説明できると思うので、敢えて気にするならアップローダーくらいかなあ。
これまで出てきたHPはレンタルblogだけですし、その大元となるサイトが存在してないとかえって不自然と思います。
現実でもしたらばはライブドア運営ですが、そこでblogの公開やメアドの取得もできますし。
『blogという情報発信の場では直接必要ないから』で大方説明できるんじゃないかと。
大抵の人は或の送ったFAXのURLをブラウザに直接入力してるはずですしね。

そろそろwikiに新規にローカルネット情報のページを作ったほうがいいかもしれませんね。
メニューから飛べるようにして。

あと、ついでに投票も。読み返してこのロワはやっぱり情報戦が面白いので、それを生かしていきたいですねぇ。

1位:銀の意志T〜W◆JvezCBil8U
ゴルゴと、そして或と。キレ者二人相手の交渉という難関を整理して、なおかつ熱い頭脳戦を書ききった作品。
安藤関係で不穏なフラグを立てつつ、次に繋げたのも見事。

2位:夜明けだョ!全員集合(前後編)◆lDtTkFh3nc
キャラの個性を存分に生かした名作。心理描写の上手さも加わって、バトルものでは一押し。
二転三転する展開の妙も面白く、構成力の高さをうかがい知れる。

3位:指し手二人◆UjRqenNurc
このロワの特徴となりつつあるネットを最初に書いた作品として一票。
その画期的なアイデアもさることながら、銀の意志に繋がる駆け引きに脱帽。
531創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 20:56:58 ID:4IEYawoR
>>530
混乱してきたんですが。
・或は情報サイトの存在に気付いていない
・「インターネットブラウザのホームページ」とブラウザ起動時の初期ページは違う
・歩がblog開設に使ったサーバーは「増殖日記」とは別物(設置場所不明)
ということですか?
532創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 22:34:45 ID:nLyeQW0A
個人的解釈ですが、
>>530
・或は情報サイト(というかポータルサイトですかね?)を知っていて、その中のblog機能で探偵日記を立ち上げている。
 これまでこのことに触れなかったのは、他の機能はその時点では特に必要なかったから。
・ブラウザ起動時の初期ページはそのポータルサイトに統一されている。
・増殖日記のblogサーバーとポータルサイトのblogサーバーの関係は不明。同じかもしれないし、違うかもしれない。
で現状いいんじゃないかと。
あんまり隅ガチガチに詰めすぎてもなんですし。
まあ、今回のお話の作者さんのご意見もお聞きしたいですし、トリを出さないあくまでいち読み手としての意見ですが……。
533創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 22:35:56 ID:nLyeQW0A
あれ、こんなに短時間でIDが変わってる?
>>532>>530は同一人物です。混乱しないよう一応。
534 ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:00:20 ID:IWWDyJ6R
時間なので高町亮子、竹内理緒、胡喜媚、志村妙、ブラックジャック、ガッツ投下します
535運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:01:34 ID:IWWDyJ6R
銃声を残して、放送は終わった。
競技場は再び、物音ひとつない静寂な空間に戻る。
たぶん、放送してたヒト、殺されちゃったんだ……

「主催側も、一枚岩じゃないって事か……」

それならつけいる隙もあるかもしれない。
あたしは広げていた名簿と地図をデイパックに戻すと、今の放送について考える。

思っていた以上に死者が多く出た。
16人……始まってからたったの6時間で16人もの死者が出たのだ。
名簿によると、参加者は総勢70名。
そのうち2割以上がこれだけの時間で死ぬなんて、尋常じゃない。
もちろん、主催者の発表をそのまま鵜呑みにはできないけれど……

それだけ、この首輪が恐ろしいって事なんだ……

当然だ。
これがある限り、あたしたちの命はあの主催者たちにいつ消されてもおかしくない。
あの弟さんを知っていた男の子のように。

死の恐怖から逃れるには、主催の言うとおり最後の一人になるしかない。
だから誰が殺し合いに乗っていてもおかしくはないんだ。
その事実こそが参加者たちに疑心暗鬼を生み、更に殺し合いを加速させるだろう。

殺されるかもしれない恐怖というものは、相手を殺す動機を簡単に与えてくれる。
どんなに怖い人でも、殺してしまえばもう怖くないからだ。
あたしが敵に回りそうだった、元ハンター・今里先生を殺した時みたいに。
そして、喜媚ちゃんを手に掛けそうになった時のように。
でもそれは、あたしたちブレード・チルドレンにとって自分の中の血に負けるということ。



ブレード・チルドレン計画。
ミズシロ・ヤイバの精子を使った人工受精により造られた子供たち。
80人造られた子供たちは、その全てが人並み外れた才覚の持ち主。
それは遺伝学上あり得ない遺伝。
旧来の人類より優れた新たなる種とすら言える、神の血の為せる技。

これからの人類社会を担う優れた人間を作り出そうというこの計画は当時、神の計画と
呼ばれたそうだ。
でもそれは悪魔の計画だった。
あたしたちの血は、社会に適応出来る年齢――成人になると目覚めると予言されている。
その年齢に達したブレード・チルドレンは、血の命ずる本能を上手くオブラードに包みながら
古き人間種を駆逐するようになると言うのだ。

新たな種が旧き種を駆逐するこの計画は、しかし鳴海清隆という一人の男性によって防がれる。
もはや新たなるブレード・チルドレンは生み出されず、残ったあたしたちにも保護という名の監視の目が付いた。
これは執行猶予期間だ。
あたしたちが人類を滅ぼす猛毒だと証明されてしまえば、逆に人類はあたしたちを生かしてはおかないだろう。
滅ぼされる前に滅ぼす。
種としての、当然の防衛本能だ。

だからあたしたちは証明しなければならない。
あたしたちが、血の宿命なんかに負けない事を。

あたしたちは信じなければならない。
あたしたちにも、希望の光が残されている事を。
536運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:02:20 ID:IWWDyJ6R

「だから、恐怖に負けてちゃ駄目なんだ……
 こっちから攻めていかなきゃ、運命には立ち向かえない」

――運命の螺旋に屈するのも立ち向かうのも、あなた達それぞれの意思ひとつ。

放送の女性の言葉が、妙に頭に残る。
まるで自分たちの事を言われているようだった。
この殺し合いに参加させられたブレチルは多い。
こーすけ君、亮子ちゃん、カノン君、そしてあたし。
そしてブレチルではないけれど、盤面の重要な駒にしてあたしたちの希望の弟さん。
部外者ながら弟さんといつも一緒に居る結崎ひよのさん。
そして……

「あの男の子……何があっても歩以外には殺されないって言ってた……
 やっぱりそういう事なのかな……」

ミズシロ・ヤイバに対して清隆様が存在するように。
鳴海歩に対応する駒もまた存在していたのかも知れない。

盤面にぽつりと存在していた清隆様に匹敵するかもしれない駒。
何事も定められていない、その存在はあたしたちを救うかもしれないと思っていた。
でも、もしそれに対応する駒があるのだとしたらどこまでいっても盤面に乱れなどなく。
運命は定められた通りにしかならないのかもしれない。

「仮定に仮定を重ねてもしょうがないか……
 歩って名前二人いたし……もしかしたらそっちの関係者なのかもしれないし」

ともかく、これだけの人数が死んでいるというのに自分の知り合いが誰も死ななかったというのはラッキーだった。
カノン君には注意しなきゃだけど、亮子ちゃんや弟さんは殺し合いには乗っていないはずだ。
こーすけ君はバカだから乗っているかもしれないけど、その時はあたしが止めればいい。
彼らと合流して協力体制を取れば、きっと今より格段に状況はよくなるはず。

blogの管理人からの連絡はまだこない。
出来れば急いで欲しいところだ。
10:30を持ってB-4が封鎖されるのは痛い。
ここが封鎖されると島の北西にある市街地への出入りがかなり制限されることになる。
もし「彼」もしくは「彼女」が、市街地にいるなら時間が経つほど合流は難しくなるかもしれない。
南の市街地付近で指定されている禁止エリアでもそれは言える。

 7:30よりI-6。
 9:00よりF-7。
 10:30よりB-4。

この配置を見れば、誰でも市街地を取り囲むように禁止エリアが指定されていくものだと思うだろう。
次の放送でE-1あたりが指定されれば北の市街地はほとんど封殺。
出る事も、入る事も難しくなる。

だから今、市街地で籠城を決め込んでいた人は禁止エリアに取り囲まれる前に脱出を。
市街地に用のある人は、禁止エリアに囲まれて入れなくなる前に用を済ませようと考えるはず。
そしてそれこそが主催者たちの狙い。
狭い範囲に限定された移動経路で、そんな焦りを抱えた人たちが出会えばどうなるか……
考えるまでもないよね。

喜媚ちゃんみたいに飛べるなら話は別だけど、いくらなんでもそんな参加者ばかりじゃないと思う。
それならこんな交通の要衝ばかりを禁止エリアにするはずがない。

幸いあたしたちは喜媚ちゃんの能力で飛んで移動することだって出来るんだから、もし市街地に
入らざるを得ない状況になっても橋以外の場所から侵入する事が可能。
今は焦らず連絡を待つべきなのだ。
537運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:03:04 ID:IWWDyJ6R
だからあたしのこれからの方針はこれまでと同じ、「待ち」だ。
……さっき攻めなきゃ駄目って言っておきながらそれはどうなんだって思うけど、それも一つの
戦術として有りだと思う。


それにあたしは禁止エリアがどういうことになるのか、一度見ておきたい。
禁止エリアに入ると首輪が作動すると言う。
それはたぶん、首輪に付けられたセンサーが禁止エリアに指定された区画に張り巡らされる
「何か」に反応して作動するんだろう。
あの沢山の参加者の中からたった一人の首輪を遠隔爆破したように。
それはたぶん極めて指向性の強い、例えれば電波のような波長だと思う。
もし、その波長を解析する事が出来れば首輪の解体しなくても対策が可能だ。
波長の妨害をしたり、首輪の回りに波長を反射するような物で覆ってしまえばいいのだ。

もちろん問題はある。
マップ上ではB-4は判り易く格子で区切られているが、実際にはどこからがB-4だなんて標識はない。
うかつには近づけない以上、波長を受信するアンテナを予め禁止エリア予定地に立てておく必要がある。
今回は到底間に合わないだろうから、本当に見るだけだ。
測定器具も自作する必要がある。
アンテナと解析用のソフト……コンピューターはここにあるものを使えばいいとして、最低限
これらは自前の物を用意しなければならないだろう。
そして最大の問題はその波長が、あたしの知る科学知識にない場合だ。
あの宝貝のように、あたしの知らない法則に基づいたものであったらお手上げだ。

「でも……首輪の解体よりは目があるはず……だよね」

あたしは一人うなずくと、これからの方針を纏める。
1.“螺旋楽譜”の管理人からの連絡を待つ
2.禁止エリアの観察
3.測定器具の用意

少し考えて4を付け足す。
4.未知の知識を持つ人材の確保

とりあえずの候補としては、喜媚ちゃんの信頼する妲己という女性だろうが、
籠城を選んだ以上、これは“探偵日記”の管理人に任せるほかはないかもしれない。
あるいはこの計画自体を“探偵日記”の管理人に伝え、協力を仰ぐべきなのかもしれないが……
今はまだ、成功するかどうかもわからないあやふやな計画だ。
せめて禁止エリアを実際に見てみるまではやめておこう。


考えを纏め終えると、あたしは椅子の背もたれに寄りかかる。
……そういえば喜媚ちゃん、遅いな……
まだあの子を信じたわけじゃない。
あの得体の知れない力があたしを不安にさせる。
でもそれはブレチルを不安視するハンターたちと同じ考えだ。
まだ何もしていないのに、ただ力を持っているから怖いだなんて……

うん、いきなり信頼は出来ないけど、信頼するための努力はしよう。
あたしも勇気を持たなくちゃ。
あの時、首輪が爆発する直前まで微笑んでいた弟さんのように。



あたしは喜媚ちゃんを探す為に競技場を出る。
……あんな事が起こるだなんて思っていなかったんだ。
遠くから聞こえる女の子の泣き声。
その方角に向かって走り出した、この時はまだ。
538創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:04:01 ID:ED7GwbXi
支援
539運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:04:12 ID:IWWDyJ6R
       ◇       ◇       ◇


ボタリ、ボタリ
ずぶ濡れの身体から水滴が落ちる。
意識はさっきから覚醒したり、途切れたりを繰り返している。
寝起きはいい方なんだけど、どうにもだるくて目蓋が開かない。
どうしてこんなにだるいんだろ。
どうしてあたしはずぶ濡れなんだっけ?

ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪
ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪

ああ、さっきからうるさいなぁ。
あたしゃ疲れてるんだ。静かにしてくれ……

悪徳ロリータ
ロリッ☆ロリッ☆

耳元で、気色の悪い歌を延々と繰り返される。
何がロリだ。
男ってのはそんなにロリ好きなのか?
そりゃあたしはおっきくて可愛げがないかもしれないけど……

「う、うぅ……」

あまりの気色悪さに一言だけ文句を言ってやろうと、あたしは重たい目蓋をこじ開ける。
ぼんやりする視界に映るのは、誰かの背中。
どうやらあたしは、誰かに背負われているらしい。
いったい、誰が……
あたしは顔を持ち上げる。

すると男はこちらを振り返り、ニィィ……と顔を笑みの形に歪ませて

「あ、お姉ちゃん、目を覚ましっ☆」

あたしに、話しかけてきた。

「う、うわああああああああっ!?」

くっつきそうなほどの至近距離に、あの男の顔があった。
さっきまで、戦っていた相手。
人間の命を、あたしの目の前で刈り取った男。

あたしが武器を奪って、奪い返されて、川の中に叩き込まれて……
それから後の事はよく思い出せない。
驚きと混乱の中、あたしは男の背中を両手で叩き、身体を離す。

――どうなってんの!?
……わからない

――どうして!?
……わからない

――どうする!?
1 ハンサムな高町亮子は突如として反撃のアイディアを思いつく
2 仲間が来て助けてくれる
3 助からない。現実は非情である

「あ……」
540運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:05:07 ID:IWWDyJ6R
頭の中はぐちゃぐちゃだ。冴えたアイディアなんて、閃きそうもない。
エド、聞仲。この地で知り合った同行者たち。
あいつらが無事かどうかもわからない。
では、残された答えは一つしかない。

諦めよう。
あたしは頑張った。
頑張って、これならしょうがない。

「ああ……」

疲労は甚大。
身体はまるで鉛で出来ているように重い。
意識も朦朧としている。
武器も、道具もなにもない。
相手は4人がかりでも叶わなかった化け物。
どうしようもないじゃないか。
呪われた血を持つあたしが、誰も殺さずにここまでこれたんだ。
もう、楽になろう。

「あああああああああああっ!!」

朦朧とする脳幹を叩き起こすように雄たけびを上げる。
胡乱だった眼差しに力が戻る。
萎えた身体に気合が入った。

嫌だ、諦めるなんて嫌だ。
そんなのは高町亮子じゃない。
最後まで負けたくない。
運命にも。
自分にも。


ドロップキック。
軽く助走をつけて放ったあたしの十八番は、意外とたやすく男に決まった。
吹っ飛ぶ男。

「……て、あれ?」

吹っ飛ばされて、ゴロンゴロンと回転。
目を回して延びていたのは、あの男ではなく……
理緒くらいの小さな女の子だった。

「……あれ?」

きょろきょろと、あたりを見回す。
あの男はどこにもいない。
いるのはあたしと、あたしの攻撃で倒れた女の子だけ。

「えーと、……見間違えた?」

あたしは、慌てて女の子を抱き起こす。

「ね、ねぇ、大丈夫?」

背中にでっかい羽根のオブジェ。
あたしには絶対似合わなそうな、ひらひらの服。
なんでこんな子を、あの男と間違えたんだろう。
女の子は目を開けると、その瞳がうるうると潤みだす。
あ、ヤバい。
541運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:05:50 ID:IWWDyJ6R

「ひ、ひどい! 喜媚、何にもしてないのに〜〜〜!!」

ロリィィィィィ☆と妙な泣き声を上げながら号泣する女の子。
滝のような涙が途切れることなく溢れだす。

「ご、ごめんね〜、あたし寝ぼけちゃってたみたいで〜」

女の子の頭を撫でながら、あたしは困り果てていた。
本気で体調が悪い。
熱っぽい。
それなのに寒気がする。
あ〜、マジヤバい。
目の前を羽根が舞っているような、おとめちっくな幻まで見えてきた……

「……びちゃーん!! 喜媚ちゃーん!!」

お、誰かきた。
この声は……理緒?

「おーい! 理緒ーー!!」

こっちにやってくる、ちっこい人影。
特徴的なツインテールが揺れる。
ああ、理緒、あんたもここに連れてこられたのか。

泣いていた女の子は、理緒が来るとピタリと泣きやんで理緒に抱きつく。
やれやれ、助かったよ。
でも、この状況はちょっと誤解されるかも。

「理緒。この子、あんたの連れだったのかい? 
 あたしのはやとちりで、けっとばしちゃったんだ。悪かった。ごめんよ。
 ……でも、あんたにとっちゃ不運だったろうけど、いてくれて助かったよー。
 ほら、この首輪。あんたなら解除できるだろ?」

「……あなた、誰ですか?」

は?
理緒は、まるで敵でも見るような冷たい眼差しであたしを見る。

「何言ってんだい!? ふざけてるの? 亮子だよ、高町亮子!」

「あなたが……亮子ちゃん?」

「そーだよ、見りゃわかるだろ!?」

あたしは本気で憤慨する。
いつも変な所でおふざけモードに入る子だけど、ちょっとそれはないんじゃないの?
そりゃ、あたしも悪かったと思ってるけど……

「……あたしの知ってる亮子ちゃんはもっと背が高くて、かっこいいよ
 あなた、あたしよりちっちゃいじゃない」

はぁ? 何ふざけてるの?
あたしが理緒よりちっちゃいだって!?
そんなことあるわけが……
542運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:06:33 ID:IWWDyJ6R
あたしは背筋を伸ばして理緒を見据える。
……あれ。
いやいやいや、ちょっと待って。
なんで視線の高さが一緒なの?

手を見る。
ぶかぶかな袖が、水で濡れて張り付いている。

下を見る。
制服のスカートが、今にもずり落ちそう。

恐る恐る、胸に手をあててみる。
ささやかながらも確かに存在していたふくらみが、今はぺたんこだ。

「な、な、な、なんじゃこりゃーーーーーー!!!!」

――今まで育ててくれた、お父さん、お母さん、ごめんなさい。
あたし、高町亮子は……ろりぺたな子供に、戻ってしまいました……




――もし、この場に亮子の同行者、聞仲がいればこの現象を説明する事が出来ただろう。
妲己三姉妹の次女、胡喜媚。
妖怪仙人である彼女の正体は、雉鶏精という未来過去へと時間を自由に行き来出来る極めて珍しい
鳥の妖怪なのだ。
言い伝えではその羽根に触れたものは時間的な退行を起こすという。

しかし、齢70を超える太公望を一瞬で胎児にまで戻したその力も、この場では制限されていたようだ。
下手をすれば知らぬ間に死んでいたであろうその能力を受けて、この程度で済んだのは幸運だったとも
言えるだろう。


だが果たして彼女が元の姿に戻る事が出来るのか否か。
それは聞仲の知識を持ってしてもわからない。





       ◇       ◇       ◇
543運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:08:25 ID:IWWDyJ6R
後ろ手にベレッタを構え、あたしは高町亮子を名乗る女の子を注意深く見つめる。

着ている服は、ぶかぶかのサイズ違いながらも月臣学園の女子制服。
ずぶ濡れなのは、川にでも落ちたのか。
あたしの名前や、爆薬に詳しい事を知っていた事。
口調やリアクションなども確かに亮子ちゃんを思わせる。

でも、なんで子供になってるの?
亮子ちゃんまで知らない間に魔法少女にでもなっちゃったの?
あたしは、高町亮子しか知り得ないであろう質問をいくつかしてみる。
結論は……

「確かに亮子ちゃんみたい、だね……なんでそんな格好になってるの?」

「そんなの、あたしのほうが聞きたいよ……」

二人して、大きな溜息。
ちょいちょいと、服を引っ張られる。

「この子、理緒ちゃんのお友だちっ?☆」

さっきまでべそをかいていた喜媚ちゃんが、にぱっと笑いながら問いかけてくる。

「ええ、どうやらそうみたいです……
 この子があたしの友達の高町亮子ちゃんです。仲良くしてあげてね、喜媚ちゃん」

「子供扱いすんなよ……。えっと、さっきは悪かった……ね。
 高町亮子。よろ……しく」

「うんっ☆ 理緒ちゃんのお友だちなら、喜媚ともお友だちっ☆ 仲良くしっ☆」

だが二人が握手しかけた所で、亮子ちゃんの姿勢が崩れる。
危うく喜媚ちゃんが抱きとめてくれたが、亮子ちゃんの様子がおかしい。

息が荒い。額を触ってみると酷い熱だった。

「亮子ちゃん?」

返事はない。
……亮子ちゃんは意識を失っていた。
病気……かな?破壊専門のあたしの知識じゃ判断出来ないけど……
水に濡れて風邪をひいちゃったとか?
それなら寝かせておけば治ると思うけど、こんな場所で治るまで悠長に寝かせてなんていられるわけがない。
それにもし、子供返り病とかそんな変な病気だったらどうすればいいの?

「亮子ちゃん、しっかりして! 亮子ちゃん!」

「喜媚、こんな時どうすればいいのか知ってりっ☆
 亮子ちゃんをお医者さんに見せに行きっ☆」

お医者さん……そんな人が、この場に居合わせているかどうか。
協力してくれるかどうかはわからない。
でも亮子ちゃんを、このままにはしておけない。

そう、せめて病院に行って、医学書と薬でも手に入れば……
危険かもしれなかったが、亮子ちゃんを見捨てられるはずがない。
そんなことしたらこーすけ君に殺されちゃうよ。

「喜媚ちゃん、病院に行こう。亮子ちゃんにお薬を飲ませてあげなきゃ。
 亮子ちゃんを乗せられるような姿に変身してくれる?」
544創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:08:28 ID:nLyeQW0A
支援します。
545運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc :2009/10/14(水) 23:09:14 ID:IWWDyJ6R
「はーいっ☆、ロリロリロリったロリロリリン☆
 スープーちゃんになーりっ☆」

ぴろぱろぴろぱろ どろろんっ☆

煙の中から現れたのは、なんともファンシーな空飛ぶカバ。
これが噂のスープーちゃんですか……

「理緒ちゃんも喜媚に乗りっ☆
 喜媚、スープーちゃんみたいに病院までひとっ飛びしっ☆」

「あんまり目立たないようにお願いしますね……」


       ◇       ◇       ◇
546創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:10:08 ID:nLyeQW0A
支援。
547創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:11:59 ID:nLyeQW0A

548創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:14:57 ID:NhRp2zD0
嫌な予感しかしない
支援
549創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:21:58 ID:nLyeQW0A

550代理:2009/10/14(水) 23:32:52 ID:NhRp2zD0

変身した喜媚ちゃんは速かった。
翼もないというのに、その身体は風を切り宙を舞う。
あたしたちは、あっというまに市街地に入ると病院を目指して突き進む。
あまり高く飛ぶと発見されてしまうかもしれなかったので、高度は5M程度に抑え
民家の隙間を縫うように飛んでいた。

ここに来て、初めて見る競技場以外の世界。
夜のうちにどれだけの戦いが起きたのだろう。
街のあちこちに残された戦いの爪痕が、戦いの激しさを物語る。

やはり、あそこにいたのは正解だった。
受動的ではあったが、何の脅威もなくこの夜を過ごせた事がどれだけ幸運な事だったか。
亮子ちゃんは、どんな夜を超えてきたんだろう。
あの亮子ちゃんがこんなに消耗して、こんな姿になって。

「絶対、守るから」

あたしは亮子ちゃんの湿った髪の毛を撫でる。
そう、あたしたちは同じ血を分けた姉妹。
運命を共にするもの。
こんなところで死なせないよ。
絶対、みんな揃って未来を掴むんだ。

ビルを、商店街を、民家を飛び越える。
そして遠くに見えるのは病院の赤十字。
でもそのとき、あたしの視界の端に黒い影が映った。


振り向く。
あたしたちを追走するように、屋根の上を走る黒い影。
その手にあるのは冗談じみた大きな剣。
喜媚ちゃんは、ソレに気付く様子もなく楽しげに飛んでいる。

「喜媚ちゃん、避けてぇ〜〜〜〜!!!」

失礼を承知で、スープーちゃんに変身した彼女の角を握りしめ、飛行機を操縦するように
大きく捻りこむ。
急速旋回。
だが、そうはさせじとばかりに黒い影も宙を駆ける。
振り下ろされる大剣。

間に合えっ!

「ガッツ!!」

誰かの叫び声。
剣の勢いが緩む。
これならっ!

避け……きれたっ!

でも、その代償は地面との熱いキス。
目前に迫る大地、あたしは意識のない亮子ちゃんを庇うように抱きしめる。
無茶な回避の結果、すっかり体勢を崩し切ったあたしたちは地面に叩きつけ

ボヨン

られなかった。
551代理:2009/10/14(水) 23:34:24 ID:NhRp2zD0
一瞬早く、地面に投げつけられたクッションが、あたしたちを救ってくれたのだ。
それは子供が使うような、ビニール製のプール。
十分に空気の入ったそれがあたしたちの身体を柔らかく受け止める。

「あなたたち、怪我はなかった? ごめんなさいね。あの人、あの放送で少し気が立っているみたいなの」
「いえ、大丈夫です……このプールはあなたが?」
「ええ、支給品の中にあったから、咄嗟にね。間に合ってよかったわ」

声をかけてきたのは優しそうな着物の女性。
さっきの黒い影……黒い鎧の男の人は、同じく黒いコートを着た男の人と激しく言い争っている。
使徒がどうとか、グリフィスがどうとか言ってるけど、どうやらすぐ襲われる事はなさそうだ。
あたしは現状確認に努めることにする。

まず喜媚ちゃんに、人前で変身をしないよう耳打ちしようとしたが、それは遅かった。
彼女は既に元のロリータな姿に戻り、プールをトランポリンのように使って遊んでいた。

着物の女性は少し驚いているようだったが、おびえる様子は特にない。
彼女もまた、こういう不可思議な体験になれているのだろうか。
どこか憂いを秘めた笑顔で、遊ぶ喜媚ちゃんを眺めている。

男の人たちが戻ってくる。
どうやら話し合いは終わった様子。

鎧の人が凄い眼で喜媚ちゃんを睨んでいるけど、喜媚ちゃんは素知らぬ様子だ。
思わず笑いがこみ上げるが我慢。
コートの人があたしに話しかけてきた。

「突然すまなかったな。
 私はブラック・ジャックという。あの男はガッツ、彼女は志村妙さんだ。」

向こうの自己紹介に対し、話を受け入れるという意思を示すように軽く頷いておく。
とりあえず、先方の話を聞いてみよう。

「突然襲いかかった非礼は詫びるが、我々も先ほど空を飛ぶ化け物の襲撃で仲間を一人失ったところでね。
 彼も気が立っていたのだ。
 君たちのような少女が乗っていることは知らなかったしな」

そこで言葉を切ると、ブラック・ジャックさんは喜媚ちゃんをちらりと見る。

「もっとも、彼女の能力を見るに、君らも普通の人間かどうか私にはうかがい知れんが……」

やっぱり、あれは見逃しては貰えなかったか。
どうしよう、この状況で戦闘になるのは回避したい。
さっきの男の剣は凄かった。
この間合いで次は避けられないだろう。

「だが、君たちに特殊な力があるとしても、それだけの事で殺し合いに乗っているとは私は思わない。
 もし殺し合いに乗っているのであれば、そのように動けない仲間をかばったりはしないだろう。
 だから、君たちが殺し合いに乗っていないのであれば、この手を握り返して欲しい。
 私たちは仲間を欲している。
 このふざけた殺し合いを企画した、あの主催に反旗を翻す仲間をな」

あたしに向かってさし出される右手。
……これは同盟の申し出と受け取っていいのかな?
どうしよう。
確かに突然襲われはしたけど、この人の制止の声と、あの女性の助け船に救われたのは事実だ。
ガッツと呼ばれた男の人もどうやらブラック・ジャックさんたちの制止を押し切ってまで戦う気は
ないみたいだし、信用してもいいかもしれない。
552創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:35:40 ID:nLyeQW0A
あ、仮投下スレに来てたのか。支援。
553代理:2009/10/14(水) 23:37:19 ID:NhRp2zD0
もちろん、この一連の流れが彼らの仕組んだ狂言ということも考えられる。
簡単に気を許す事は出来ないが、すぐに襲ってこないなら仲間に入って様子を伺うのも得策だろう。
何しろこちらには自力で動けない病人がいるのだから。
あたしが握り返した手は清隆様みたいに大きくて、温かかった。

「ところでそちらの女の子は大丈夫かね?
 よければ、少し診せてくれ。これでも医者のはしくれでね」



       ◇       ◇       ◇


ブラック・ジャック先生の指示で亮子ちゃんの濡れた服を脱がして、近所の家から持ってきた毛布で包む。
先生の診断は軽度の低体温症と細菌性肺炎との事だった。
とりあえずの応急処置を済ませると、再び喜媚ちゃんがスープーちゃんに変身して亮子ちゃんを乗せてくれる。

「……首の太さの変化に応じて、首輪も大きさを変えているな。
 継ぎ目がない事といい、私たちの知る金属物質とは違うようだ」

「たぶん、いったん輪を広げて頭を通して首に掛けたんでしょうね。
 その制御用の信号が判れば、首輪も外せるんでしょうが……」

先生たちが仲間の犠牲の上、手に入れたという首輪を見せて貰いあたしも自分の知る情報を提供する。
先生は病院でこれをX線にかけたり、聴診器で調べてみるという。
いいアイディアだと思う。
解体が出来ない以上、信管を抜くなどの手段は取れないと思うが内部の様子を
調べておくのは無駄ではないだろう。

「でも一体どんな素材で出来てるんでしょうね……」

誰に問うでもなく発せられたあたしの独り言に、意外な人物が解をくれる。

「そんなの、宝貝合金に決まってりっ☆」

スープーちゃんに変化した喜媚ちゃんが、当然のように答えたのだ。

「!?
 宝貝合金って、この首輪もあの宝貝っていうものの一種なんですか!?
 じゃあ、喜媚ちゃんはこれをなんとか出来るの?」

思いもかけぬところから判明した首輪の情報に色めき立つ面々。
喜媚ちゃんに7つの視線が集中する。
だが、そんな視線をものともしない満面の笑み。
元の姿であれば可愛らしかったであろうそれも、珍獣の顔ではただただ間抜けなだけで……

「喜媚、わかんないっ☆」

この瞬間、皆が一斉に心中で「駄目な子……」と呟いた。


       ◇       ◇       ◇
554代理:2009/10/14(水) 23:39:05 ID:NhRp2zD0
辿り着いた病院もまた、酷い有り様だった。
赤十字。
非戦闘区域として有名な聖域も、このゲームの中にあってはたった数時間でこのありさま。
だが見回りの結果、とりあえずここには誰もいない事がわかりあたしたちは一時の安息を得る。

だがここで一つの別れがあった。
ガッツさんがここでの別れを宣言したのだ。

「やはり行くのか、ガッツ……」

「ま、元々病院までって約束だったしな。後は勝手にやりな。
 俺は俺で好きにやらせてもらうぜ」

「復讐か……」

「……」

「復讐を否定はせんよ。そうしなければ、前に進めないという事もある。
 だが、それ以外の方法でも過去は精算出来る。
 おまえさんの目の前には、常に別の道もあるということだけは忘れずにいてくれ」

「……」

黒い医師の言葉をどう受け止めたのか。
黒い剣士は外套を翻し、あたしたちの元を去る。

だけど、すれ違いざまに彼が呟いた一言は、

「おい、あの化け物女とは早いとこ別れといたほうがいいぜ。
 人間と、化け物じゃ所詮生きる世界が違うんだからな」

あたしの心に呪いじみた楔を打ち込んだのだった……



       ◇       ◇       ◇


仲間たちと別れ、黒い剣士は一人仇敵を探す。
名簿を見た瞬間、ガッツの心を満たした感情。
それは歓喜。
状況を正しく把握してみれば、これはチャンス以外の何物でもなかった。
忌々しくも鷹の団を名乗る新たなるグリフィスの軍団も、この地ではゾッドを始め数人いるかどうか。
そして主催の言葉を信じるのであれば、強者の力には制限がかかっているという。
更には守らなければならない女もこの地にはおらず、後顧の憂いもない。

これ以上は考えられないほどの好条件。
この機を見過ごす手はなかった。

病院に残してきたつかの間の仲間たちの事を、最後に少しだけ思う。
どこか自分と同じ匂いがした黒い医師。
連れを亡くしても毅然としていた女。
そして新たに仲間となった三人の少女たち。
らしくもなく忠告などとは、少しだけ仲間というものに慣れすぎたか。
だがここから先にそんな甘さは必要ない。
結局のところ、極限の場では自分の事は自分でやってもらうしかないのだ。
力が足りなければ、望みを果たす事も出来ずに死ぬしかない。
それがガッツの経験から得られた人生観であった。
555創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:40:03 ID:nLyeQW0A

556代理:2009/10/14(水) 23:41:10 ID:NhRp2zD0

まぁ、せいぜい上手くやるんだな。
あばよ。

病院に残してきた仲間に手を振ると、黒い剣士は街角に消えていった。


【E-2/道路/1日目 朝】

【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:健康
[装備]:キリバチ@ワンピース
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1個(未確認)
[思考]
基本:グリフィスに鉄塊をぶち込む
0:グリフィスを殺す
1:グリフィスの部下の使徒どもも殺す
[備考]
※原作32巻、ゾッドと共にガニシュカを撃退した後からの参戦です。
※左手の義手に仕込まれた火砲と矢、身に着けていた狂戦士の甲冑は没収されています。
※紅煉を使徒ではないかと思っています。
※妙と、簡単な情報交換をしました。


       ◇       ◇       ◇
557創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:41:19 ID:nLyeQW0A

558創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:42:49 ID:nLyeQW0A

559代理:2009/10/14(水) 23:43:27 ID:NhRp2zD0
ガッツさんを見送った後、病院の一室で亮子ちゃんの治療を施すと、あたしとブラック・ジャック先生、妙さんは首輪の解析を試みるべくレントゲン室へと赴く。

ナース役を買って出た喜媚ちゃんだけを亮子ちゃんの傍に残していくのは少し不安だったが、この期に及んで
喜媚ちゃんを疑うのは、あたしの臆病な心の発露でしかないだろう。
状況的に考えて、喜媚ちゃんが亮子ちゃんを手に掛ける必要性など微塵もないのだ。
むしろ爆発物を扱う現場に連れて来て、彼女の持ち前の無遠慮さでデリケートな作業を邪魔される可能性のほうが
ずっと高かった。

宝貝合金についてのノウハウも聞き出したかったが、本当に知らないみたいで彼女にとっては身近な金属であるという事だけしかわからなかった。
彼女の姉である妲己さんと接触出来たら、この事もわかるのだろうか?


そういうわけでしばらく三人であーでもない、こーでもないと首輪をいじってみたのだが……
医療機材による測定は全滅。
あとはブラック・ジャック先生の聴診器での調査を残すのみとなったが、その前に腹ごしらえをすることを
先生が提案する。

なにせ、根のいる作業だから作業中に腹の虫がならないように……
とのことだった。
確かにここに来てから何も食べておらず、もしおなかが鳴ったりすると非常に恥ずかしい。

というわけで支給された食糧を取りだすが出てきた物は三者三様。
あたしの支給された食糧はすぐに食べられるサンドイッチ
妙さんのはおむすび。
だが、ブラック・ジャック先生の食糧だけは、なぜかレトルトのボン・カレーだった。

ボン・カレーはどう食べてもうまいのだと言いながら、温めもせずに食べようとする先生を
妙さんが止め、温めに厨房に行く。

その隙にあたしは少しデリケートな問題をブラック・ジャック先生に相談することにした。
亮子ちゃんの身体の問題である。

「ふむ、若返りの奇病……か」

「はい……そんな事が本当にあるんでしょうか……」

「ない……とは言い切れん、私は何十年も老化しなかったクランケを知っている。
 もっとも、失っていた意識を取り戻した瞬間、それまで止まっていた老化現象が一気に襲ってきて亡くなられたが」

「じゃあ、亮子ちゃんも意識を取り戻せば元に戻る可能性が……」

「どうかな、私が診た所、意識を失ったのは肺炎と疲労が原因だ。
 若返り現象との間に因果関係はないように思えるが……
 まぁ、気長に見てみようじゃないか。
 命にかかわる奇病というほどのものでもあるまい」

「はぁ……まぁそれもそうかもしれませんが……」

先生はどうやら頭の柔らかいお医者のようで、あたしの荒唐無稽な相談を笑いもせずに聞いてくれた。
でも老化しない病気だなんて、そんな症例も世の中にはあったんだ。
あたしをあんまり心配させないためのジョークかもしれないけど。

「……でも、妙さん遅いですね。あたし、少し見てきましょうか?」

レトルトカレーを温めるにしては、少し遅い。
ちょっと神経質になっているのかもしれないけど、こんな場所ではふとしたことで不安の種が育つものだ。
椅子から腰を浮かすあたしを、先生は止める。

「いや、もう少し、一人にしておいてあげよう。
 ……さっきの放送で、彼女の弟さんの名が呼ばれているのだ」
560代理:2009/10/14(水) 23:44:14 ID:NhRp2zD0
      ◇       ◇       ◇

コトコトと、沸き立つ鍋の音だけが厨房を支配する。
湯せんすればいいだけのレトルトカレーを直接火にかけているため、あたりにはカレーの香りが漂っていた。
ゆらめくガスの炎を、椅子に座った妙が呆と見つめている。

一人になれば思いっきり泣けるかと思ったが、長年培ったこの鉄仮面は存外に剥がれないものだ。
ほろりと、申し訳程度に流れる一粒の涙が精いっぱいだった。

「新ちゃん……」

放送で呼ばれた、たった一人の家族。
増田さんの名前も同じ放送で呼ばれた為、信憑性は高いだろう。

侍が不要とされる時代。
それでも侍を志し、真の侍と見込んだ銀さんの元で真の侍道を模索していた自慢の弟。
どんな苦労を買ってでも一人前の侍にしてあげたかった。

その彼が、こんな場所で自分より先に死んだ。
じゃあ、自分はこれからどうすればいい?
復讐?
婿を取り、道場を再興する?

だが、何をどうしたところでこの空白はもはや埋まる事はないだろう。
それが死というものがもたらす永別。
あの優しい弟は……新八は、もういないのだ。

「あなたは……あなたの思う道を貫けましたか……?」

虚空に呟いた声は誰に聞かれることもなく立ち消えた。


       ◇       ◇       ◇


それからしばらくして、妙さんがカレー皿を持って戻ってきた。
その表情は笑顔だが、目の周りが少し赤い。
……同情はしない。
この環境では、いつだれが同じ境遇に置かれるかわからないのだ。

「ほう、スープカレーにしてくれたのか。妙さんは料理が上手いんだな。
 ピノコの奴もこれくらいできるようになってくれればいいんだが……」

――もし、妙の知り合いがこの料理を見たら驚愕するだろう。
いつもの彼女であれば、作る料理全てはブラック・マターと呼ばれる暗黒物質と化すのだが
何の奇跡か、机に置かれた皿からは食欲をそそる香りが漂っている。

「まぁ、先生ったら、お上手なんですから。厨房にあったお野菜も入れてみたんですよ。
 ピノコさんって先生の恋人さん? もしかしたら奥様かしら?」

「とんでもない、まぁ娘みたいなものかな。こまっしゃくれた娘だが、いないと妙にさびしくてね……
 天涯孤独の私だが、それでも支えてくれるような人間はどこかにいるものさ」

「先生……」

「そんな人たちのためにも、私たちはこんなところで死ぬわけにはいかんのだ。
 この首輪を我々に残してくれた、あの勇敢な青年に報いるためにもな……
 さぁ、飯を食ったら首輪の解析を続けよう。」

「……はいっ!」
561創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:44:20 ID:nLyeQW0A

562代理:2009/10/14(水) 23:45:27 ID:NhRp2zD0

ブラック・ジャック先生の不器用な励ましに、少しだけ妙さんの顔に生気が戻る。
妙さんにもまだいるのだろう。
支えになってくれるような誰かが。

やっぱりお医者さんって凄いな。
心身共に傷付いた人を救う事の出来る癒し手たる職業。
あたしも、あたしに出来る事でそんなお仕事が出来たなら……


ドッ! ガシャッッアアアアアアッ!!


それまでの平穏をぶち壊すような、金属のひしゃげる轟音。
音の出所は、レントゲン室の重い金属扉。
その扉が、まるで事故にあった自動車のようにひしゃげていた。

それをしたのは一目瞭然。
扉の前に立つ男が握るもの。
それは剣というにはあまりにも大きすぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに鉄塊だった。

隻眼の黒い剣士。
さきほど別れたガッツさんがそこにいた。


       ◇       ◇       ◇

声をかける暇もなかった。
竜巻のように振るわれたガッツさんの大剣が、扉の一番近くにいた妙さんの頭に撃ち込まれる。

爆ぜた。

仲間を、弟を失いながらも、尚強くあろうとした女性の綺麗なかんばせが西瓜のように砕かれる。
ピンク色の綺麗な何かが、カレー皿の中にポチャポチャと落ちる。

わぁ、おいしそう。

場違いな感想が頭を埋め尽くす。
でも半生を危機とともに生きてきたあたしの身体は、脳が命じなくても適切な行動をしてくれた。

機械の隙間に身を隠し、ベレッタを抜く。
だが、撃つところがない。
異常に巨大な大剣は、盾のように身体を隠す。

「ガッツ!」

それでも牽制するように先生はナイフをガッツさんに投げつける。
キィンと、金属同士が弾きあう音。
翻る黒い外套。
横薙ぎに振るわれる鉄の塊。
室内に破壊の騒音が響きわたる。
バラバラに打ち砕かれる医療機械。
あぶり出されるあたしたち。

騒音をかき消すように狂戦士が叫ぶ。

「LOOOoooッッッ!! ッliイイイイイ!!!!」
563創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:45:45 ID:nLyeQW0A

564代理:2009/10/14(水) 23:46:45 ID:NhRp2zD0

振り回す。
ブラック・ジャック先生を刀身で貫いたまま。
室内にあった機材を力任せに鉄の塊が叩き壊す。

部品が飛び散る。
それと引き換えのように、むき出しの機械の破片に肉の破片がコーティングされる。
室内は、一瞬にして地獄絵図。
酷すぎる。
狂気のような光景と、悪臭で思わず吐きそうになるのをあたしは必死にこらえる。


身体のあちこちを削り取られた先生は、まだ息があった。
ぴくぴくと痙攣する肉体が最後に机に置かれていた首輪に叩きつけられる。

目と耳を塞ぐ。
爆発。

時計の長針がわずか一回りする間の出来ごと。
あたしが眼を開けると、そこにはもう誰もいなかった……


       ◇       ◇       ◇
あたしは廊下を走る。
なぜ、あたしを見逃したのかわからないが、亮子ちゃんや喜媚ちゃんをも彼が見逃すかはわからない。

ボテっと転ぶ。
演技ではない。

まるで悪夢の中を走っているかのように、身体が上手く動かないのだ。


這うように、病室の前までたどり着く。

祈るように扉を開けると、そこには平穏があった。
薬が効いたのか、健やかな寝息を立てる亮子ちゃん。
そして、その布団にもたれかかるように眠る喜媚ちゃん。



その光景に、なぜか涙腺が緩んであたしは泣いていた。
565創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:46:59 ID:nLyeQW0A
うええ急展開……、支援。
566運命の螺旋乗り越えて(後編) ◆UjRqenNurc :2009/10/15(木) 00:05:41 ID:c+v97v5p
【ブラック・ジャック@ブラック・ジャック 死亡】
【志村妙@銀魂 死亡】

【D-2/病院/一日目 午前】

【竹内理緒@スパイラル 〜推理の絆〜】
[状態]:健康 精神的にかなりの疲弊
[服装]:月臣学園女子制服
[装備]:ベレッタM92F(15/15)@ゴルゴ13、携帯電話(競技場で調達)
[道具]:デイパック、基本支給品、ベレッタM92Fのマガジン(9mmパラベラム弾)x3
[思考]
基本方針:生存を第一に考え、仲間との合流を果たす。
1:ガッツに対し恐怖
2:異能力に恐怖。
3:恐怖に負けず喜媚を信じてみる。
4:申公豹の名前を餌に、“探偵日記”を通じて妲己を捜索。
5:“螺旋楽譜”の管理人が電話連絡してくるのを待ち、直接会話してみる。
[備考]
※原作7巻36話「闇よ落ちるなかれ」、対カノン戦開始直後。
※首輪の特異性を知りました。
※早朝時点での探偵日記と螺旋楽譜の内容を確認しました。
※螺旋楽譜の管理人は、鳴海歩、結崎ひよの、カノン・ヒルベルトの誰かが有力と考えています。
 ただし、鳴海歩だと仮定した場合、言動の違和感とそこから来る不信感を抱えています。

【胡喜媚@封神演義】
[状態]:健康、いねむり
[服装]:疲労(中)
[装備]:如意羽衣@封神演義
[道具]:デイパック、基本支給品
[思考]
基本方針:???
1:妲己姉様やスープーちゃん達、ついでにたいこーぼーを探しに行きっ☆
2:理緒ちゃんと亮子ちゃんは喜媚が守りっ☆
[備考]
※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。
※首輪の特異性については気づいてません。
※或のFAXの内容を見ました。
※如意羽衣の素粒子や風など物や人物以外(首輪として拘束出来ないもの)への変化の制限に関しては不明です。
※『弟さん』を理緒自身の弟だと思っています。
※第一回放送をまったく聞いていませんでした。
※原型の力が制限されているようです
567運命の螺旋乗り越えて(後編) ◆UjRqenNurc :2009/10/15(木) 00:06:24 ID:c+v97v5p
【高町亮子@スパイラル 〜推理の絆〜】
[状態]:疲労(特大)、打撲&背中に打ち身(処置済み)、肺炎(処置済み)、睡眠中、若返り
[服装]:裸
[装備]:毛布
[道具]:月臣学園女子制服 (乾かし中)
[思考]
基本:この殺し合いを止め、主催者達をぶっ飛ばす。
0:…………。
1:なんで子供に……
2:理緒や喜媚と協力してこの殺し合いを止める
3:ヒズミ(=火澄)って誰だ? 鳴海の弟とカノンは、あたし達に何を隠しているんだ?
4:できれば香介は巻き込まれていないといいんだけど……
5:あのおさげの娘(結崎ひよの)なら、パソコンから情報を引き出せるかも。
6:そういや、傷が治ってる……?
7:勝手に身体が動いた?
8:エドの力に興味。
9:エドや流、うしお、知らない女の子(咲夜)は助かったのだろうか。
10:流の行動に疑問。
[備考]
※第57話から第64話の間のどこかからの参戦です。身体の傷は完治しています。
※火澄のことは、ブレード・チルドレンの1人だと思っています。
 また、火澄が死んだ時の状況から、歩とカノンが参加していることに気付いています。
※秋瀬 或の残したメモを見つけました。4thとは秋瀬とその関係者にしか分からない暗号と推測しています。
※聞仲とエドの世界や人間関係の情報を得ました。半信半疑ですが、どちらかと言えば信じる方向性です。
※竹内理緒より若干小さくなっています。中1くらい? 元に戻るかどうかは後続の書き手さんに任せます。


※ブラック・ジャックと妙の荷物がレントゲンルームに放置されています。

【ビニールプール@ひだまりスケッチ】
宮子の持っていたビニールプール。
お風呂にも使える?
568運命の螺旋乗り越えて(後編) ◆UjRqenNurc :2009/10/15(木) 00:08:24 ID:c+v97v5p
以上です。

ちゃんと舞台裏も書かないと不味いでしょうか?
問題あるようなら話を削るか、足すかします。
ご意見お待ちしております。


代理投下ありがとうございました
569創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:15:02 ID:v2cRvIRy
ちょwww何事wwwww

きっちり読めば舞台裏は読める……と見せかけて本物のガッツという展開もアリか。
これは続き書きてえw

個人的にはこれで問題は無いです。
570創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:17:37 ID:F7e4OL1G
投下お疲れ様です。

最初の一連の流れに笑い、亮子の若返りに意表を突かれ、BJ達とのやりとりや考察に感心し、最後の最後に驚きの一言。
盛り沢山の展開、楽しませていただきました。
ただ、リレーであるだけにやっぱりどうしてこうなったのかの説明が少々不親切かなと。
最後の展開は非常に面白かっただけに、削るよりも説明をつけて欲しいかな、と思います。
571創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:18:37 ID:FiXxadts
投下乙
どうしてこうなった
572代理:2009/10/15(木) 00:24:14 ID:b+51HaLv
投下乙です

最初の波乱の亮子と喜媚との邂逅やガッツが切りそうになったのはひやひやしたがまだ予想範囲内だった
妙さんが落ち込みつつもそれを見せない強さやブラック・ジャックの前向きさと理緒の想い
このまま前向きに終わると思ったら……なん……だと……
これは先が気になる。舞台裏とかいったい何故なんだ?

俺も問題ないです。
ところでこれは新スレかな?
573創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:30:09 ID:tX+9Y8na
ヒント:いねむり

だよな?
574創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 00:41:16 ID:v2cRvIRy
>>573
素直に解釈すればそれ

どうでもいいですが、
>[服装]:疲労(中)
↑おいw
575 ◆UjRqenNurc :2009/10/15(木) 00:49:11 ID:c+v97v5p
おんや
>>564
×時計の長針
○時計の秒針

[状態]:疲労(中)、いねむり
[服装]:ナース服

こうか。
今のところ
問題なし:2
書き足し:1
かな
これ舞台裏まで書いちゃうと非常に重要なところまで一人でつっこんじゃいそうなんだよなぁ
誰かにバトンしたいところ。
576創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 01:02:38 ID:b+51HaLv
書き手同士で茶で話し合うのもありだと思う
577創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 01:06:44 ID:qrQZxGiW
把握作品が少ないからか過程が良く分からない……
どの作品の何巻読むといいのかだけ教えてほしい
578創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 01:26:52 ID:v2cRvIRy
ロワ内だけで必要な情報は出揃ってる。

次スレ立てられないので誰か頼む。
579創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 03:00:55 ID:0qlkqrak
立ててきたよ

新漫画バトルロワイアル 第6巻
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1255542773/
580創る名無しに見る名無し:2009/10/16(金) 01:00:14 ID:4CyhrPJX
こっちは埋めるか
581創る名無しに見る名無し:2009/10/16(金) 15:07:16 ID:hV1TtSQZ
そうだね、埋めようか
582創る名無しに見る名無し:2009/10/16(金) 15:57:23 ID:7fJiLich
ksk                                   
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                                             
                                             
                                     
                                             
                                                
                             
583創る名無しに見る名無し
次スレです

新漫画バトルロワイアル 第6巻
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1255542773/

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\                           / ̄ ̄
 お  届  オ   'l                          . |  そ
 い  .く  .レ   .'|     ヽ,,.;, ...ii;;..,,.ヽ|ヽ|∨ノl∧ ,, ,,,/;     |  .れ
 て  .と  の    .|   ;;; ;,.,. ヾヾ||:::i;;ヽiyリlll;;ii.;ヽli;,,/;;/ハ /;,   .|  な
 お  こ  剣    ヽ_,,ヽlllゞ"l;,,,ll〆ヾl;lll"::: ii;i;;i::/ハ:llハ;ii;;/ハ    .|  ら
 き  ろ  が   _ミミヽllミ"';;;''lll i;;,ミ》lll l l>;;ゝl;,,ii,,ll;iii.ヽl/;;;;,/l /l/\  _
 て  に     .ヽーヽllミミミミii;;; i;;;巛l lヽ∨lllllll/ハll;iii;ハ:ii; ヾl/ii;i|||li  //
 .ぇ       >=ll"ll;;,,,l,,ソミミll》》iiii::ii:llll/"l/l lll;;,ヽハヾlll":::ヽl//llllレ'';"
____  / .-;;ヽミllll;;ミミミll《<ミiiiii iii l;ヽii:::::iiii:::lllllllllll::i ii/ii::iii iiii lllll彡i/
     \l  ._,,:ll;,,;;,ミiiミミlll;;; ヽlllll>》ll》llll::lll"i iii"lllハ,;iii;;;iii;iii,,i,ii;;iii"lll;;iレ;
         \ii\;;;,,,,,ヾヽllll; "### ;;iii;;ll; ヾ;;;;; ; ii lllll i lll/ノl 'ii/l;ii/ノ"/
         ∠lllミミllミ"ヽi;;..;.ヽlヽlllll;, ;;llllll ii 'illl;.;lll ;llll i lll ノl;;ノ /l/i..ノr/''"
         <;;;...ゝlミミミ,,;;;lll;;;...ミlllillillillゝ:ヾll;;lヽliili ll.,.ilill; ;ll ;lllll";;ii"//;iノ7
         巛ミ;;ヾllミミミiiミミミ;:"''"'''"/ll/iiiiiiiiヽll::iiヽiiiレ"llll'';;llll::ノii彡ミ
         」ミミミ巛ミiii;;;;::,::    //i////;::;::i/iiiii:ii:::::lllll;;;iii::ヽ"'ミ彡
         丶ミ,;、ミミミミミミiiiミ>   / ||/ ./ii///iiハ,ヽii|ヽiiYiiii|,ヽゞ ヘ
         <ミ|'トヽ:::,,,ミミi:i:i;     |レ l/l |//|  | |iil liil i .iiii  l|iYヽ
ヽ         .>.Kニヽヽミiiiミ      i|  ll リl .l : | ll/ |リ  |i| . |ll
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