乙でござる
「
>>1乙。お前なかなか目端が利くな、鹿馬ロ入るか?」
「GJだよ
>>1くん!御褒美にこの“生キャラメル(?)”をあげるよ!」
「やめろよサン……
>>1、それ多分ジンギスカンキャラメルだからな。コーヒー置いとくぞ」
「
>>1さん手際良いっス!怪我したらこの保健委員を呼んで欲しいっス!手厚く看護するっス!」
「中身を見たい生き物がいたら持って来ると良いっス。僕がヤってあげるっス……うふふ」
「白倉先生、保健委員とキャラ被ってますよ」
「……ぼそぼそ(跳月先生こそキャラ立ってなくて埋没してまスよ)」
「
>>1おつ。おい塚本、お前《馬鹿ロリータ》とかいうチーム作って小学生襲ったらしいな。指導室来い」
「塚本……君はハルウララだと思っていたのに。少年院でも達者でな。僕は祈ってるよ、別名祈り虫だけに」
「お前も馬鹿ロリータの一味だって聞いたぞ鎌田。指導室来い」
「ナ、ナンダッテー>Ω ΩΩ」
「
>>1おっつー。私がハルカ特製肉じゃが作ったげる」
「……お前マジでおかんみたいだぞ」
「うっさい爬虫類、タバコ食べさせるぞ☆」
「持つべきものは友ニャ。そして乙するべきは
>>1なのニャ」
「おお、さすがクロにゃ、シャコージレイをわきまえてるニャ」
「あの、えっと……
>>1さん、乙かれさま、ニャ」
「ニャー!コレッタ、おまえ天然ぶりっこするなニャ!」
「ひゃっほーー!!雪ゆきユキ!え?
>>1?僕は雪で頭がもうなんかもうひゃっほーー!」
「コラ犬太!待て!ステイにゃ!」
「うおー!何処だ冬将軍!!寒いだろーが!!」
「確かに寒いなー。それに探しても全然冬将軍て居ないなー。ちょっとベンチで休むかー」
「そうだな!もう何か月も探してるから、焦ってもすぐには見つからないのかもしれない!」
「へー、そんなに探してるのかー、大変だなー。とりあえず
>>1乙しとくかー」
「雪ゆきユキ〜〜!あれ、こんな所に雪だるま?……うわ!でっかいカマキリが死んでる?!」
「こら犬太!虫の死骸食べるんじゃないニャ!」
「ぐえっ、食べてないってばっ、り、リード緩めてっ、ぐえっ」
「よ…葉狐ちゃーん…」
「もたもたしてると置いてくでー。こっちや、こっち。」
「ちょ、ちょっと待ってってば、ふぅ」
「しっかりしいや、香苗姐ちゃんは体力ないなァ。
なんやまだ
>>1乙もやっとらんやないの。ほんなら私が済ませてまおか」
「あんまり年上からかっちゃダメよ。レイギっていうのがあるでしょ」
「そうよ、店長さんなんだから敬意払わなくちゃ」
「はーい、メイドのお姉ちゃん。」
「「私はメイドじゃないの。ウェイトレスなのよ」」
「ふーん、どっちかわかんないや」
「はぁ、はぁ(こ、こいつ………!)」
「それじゃ私たちも
>>1乙やっておきますかー うふふ」
「(あぁ!息あげてる間にタイミング逃した!)」
即死ってどうなるんだ?
10行けば
即死
回避もふもふもふもふ!!!!!
だよ
1乙ニャ
>>1乙
ああ〜ついに何も書かんままスレが変わってしまった…
あるあるw
筆の早い人が羨ましいね
┏ ━ゝヽ''━.,,ハ,_,ハ,.━.从〆A!゚━━┓。
╋┓“〓┃ < ゝ\',冫。’ .;゙ ・ω・ミ/^l ..∠ _ ,'´ゝ.┃. ●┃┃ ┃
┃┃_.━┛ヤ━━━━ ,-‐-y'"゙"''゙゙"´ | ..━━━━━━━━━ ━┛ ・ ・
∇ ┠─へ ヽ、,;' # ・ ω ・ ミ 冫そ _'´; ┨'゚,。
.。冫▽ ,゚'< ミ∩===[==]=l==つ;; 乙 / ≧ ▽
。 ┃ ◇> ミ ; 、'’ │ て く
┠─ム┼. ';, ミ ゙》凵レ─┨ ミo'’`
。、゚`。、 i/ ;;, ,;⊃ o。了、'' × o
○ ┃ `、,~ "∪"゙''''''''''"゙ .ヽ◇ ノ 。o┃
┗〆━┷ Z,' /┷━'o/ヾ。┷+\━┛,゛;
話 は 聞 か せ て も ら っ た !
>>1 に は 山 ほ ど 説 教 が あ る !
┏ ━ゝヽ''━.,,ハ,_,ハ,.━.从〆A!゚━━┓。
╋┓“〓┃ < ゝ\',冫。’ .;゙ ミ/^l _∠ _ ,'´ゝ.┃. ●┃┃ ┃
┃┃_.━┛ヤ━━━━ ,-‐-y'"゙"''゙゙"´ | ..━━━━━━━━━ ━┛ ・ ・
∇ ┠─へ ヽ、,;' ;ミ 冫そ _'´; ┨'゚,。
.。冫▽ ,゚'< ⊂ミ===========;; 乙 / ≧ ▽
。 ┃ ◇> ミ ; 、'’ │ て く
┠─ム┼. ';, ミ ゙》凵レ─┨ ミo'’`
。、゚`。、 i/ ;;, ;;;, o。了、'' × o
○ ┃ `、,~ ""゙∪''''''''''"゙ .ヽ◇ ノ 。o┃
┗〆━┷ Z,' /┷━'o/ヾ。┷+\━┛,゛;
ス マ ン 乗 り 込 む 場 所 間 違 っ た
>>14-15 ちょwwwwせめて割ったガラスぐらい片付けてから出ていけよwwww
ええい!!窓から帰らんで転がりながら玄関から出ていかぬか!!
ハ,_,ハ,
;゙ ;ω;;,,/^l
,-‐-y'"゙"''゙゙"´ |
ヽ、,;' ; ω ; ミ 私の割ったガラスだ……
ミ====[==]=l==ミ 払わせていただきます……
ミ ヽУ ̄ ̄/;;
';,. /請求/ ミ
;;,,  ̄ ̄ ,;;゙
∪"゙'''"゙∪
19 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/17(月) 22:03:02 ID:ESoI7Pn8
>> 14-15で激しく笑ったw 2ch初書き込みがコレとは・・・とほほ。
くびわつきとセレン嬢、こんなとこで何やってんのw
唯「ふさふさ時間!」
ごめん言ってみたかっただけ…
リオ「放課後けづくろい!」
モエ「え?」
リオ「ごめん言ってみたかっただけ…」
モエ「なんて?もう一度言ってみてよ」
リオ(わーん!恥ずかしくて言えるもんか!)
,. -─ '' "⌒'' ー- 、 __,,. -──- 、.
./ ,r' ´  ̄ ̄ `'' ‐-r--、 r=ニフ´  ̄ ̄ ~`` ‐、 \
/ ,r--‐''‐ 、.._,,二フ-、 ,.ツ‐゙ー-‐ ''、'ー--''-_、
/ , ミ´ ,.イ ヽ__ ; サ 彡ノ´二 -‐ヽ._
{ i >{ L シー 'ー ''´ ̄}
ト、 ミ. モ 〈/ } ジ ,.イ
ヽ、___ヽ、 ./ カパッ  ̄レ' _, ‐'
" `,二ヽ! r''二  ̄
` ‐- 、..__,. -‐─┴─' ゙─‐'--''─- 、..__
‖‖
‖‖
,,_.,
,:´゙ ヾ;;
ミ,;:. ッ ポトッ
゙ ゙"'''"゙ "
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
もそもそ
,、ッ.ィ,
,:'゙ ';
(( ミ,;:. ,ッ )))
゙"'''''"゙
もふっ
ハ,_,ハ
,:' ・ ・ ';
ミ,;:. ,ッ ノノ
゙"'''''"゙
ハ,_,ハ ポィン
,: ・ω・ ';
ミ,;:. ,ッ
゙"'''''"゙
ヽ ili /
- -
スタッ
ハ,_,ハ,
n' ・ω・,n,
ミ,;:. ,ッ
`'u゛-u'
そろそろAAは他所への移動を
しかし過疎ってんな
お盆だからな
時季も時季なんだが、この板で過疎なんて気にしちゃ生きていけんのだ!
ネコ族のみんなは夜会に行っているんだよ、きっと。
全員集まるのなんて猫の日猫時間ぐらいでしょ
きっと夏バテだよ
おーい 誰かいませんかー
………
……
…
ぬこぽ
ニャッ!
wikiのキャラ紹介を更新しようとして、自分の国語力のなさに絶望した。
あらためて過去作品を読み返すと、作者のクオリティの高さにほんと驚かされる。
ちょっとオキシドールで脱色されてくるノシ
俺もやろうとして過去作や絵を見直してたらいのりんのリア充っぷりに泣いた
ザッキーとも違って序盤からフルスロットルでリア充だよ
ザッキーって最初は変人だったよn
いや気のせいだな
ザッキーさんも変人かもしれないが、上には上もいるケモ学。
でも、そこがイイ!
なにこれすげえクオリティ高えw
ザッキーとルルでキュンとなった
白先生セクシー!
三十路の魅力にめろめろですわ。
このシリーズ、もっと見てみたい。
シロ先生ったらオキシドールが代名詞にw
最初はコレッタの単なるバーターだったのになぁ
そういやいのりん巻き込んでファンタのCMやってたなww
>>40 GJ!!違和感なくはまっててみんな素敵だ。
一番下のコマで思ったんだが、そういやここだけ学園ものらしい
相関図が書けるんだなw まあ教師と部外者だがw
さて、自分もキャラ紹介の更新、やってみようとしたんだ。
これ思ったよりほんと大変だな。一気にやろうとすると心が折れそうだ。
ってわけで一応書いてみた分だけ上げてみる。これ違くね?ってのがあったら
指摘してくれ。まずはとりあえず登場回数の割に紹介がなかった人たちを。
浅川・シュルヒャー・トランジット
写真家にして旅人の猫人の男性。カギ尻尾とげっ歯類に齧られて千切れた右耳が特徴。
司書の織田と顔なじみで、世界中を巡って手に入れた本を図書室に寄贈している。
妹を亡くした過去が持ち、その関係で人物写真を撮りたがらない。
偶然出会った杉本ミナに一目惚れして告白し、玉砕。しかし諦めていないポジティブな男。
杉本ミナ
父親と共にバイク屋で働く猫人の女性。サン・スーシと大学の同級生で、バイク関連の係わりもある。
基本的には明るくさっぱりとした大人のお姉さんだが、少女らしい一面も持つ。
サンに密かに想いを寄せているが、サン本人は全く気付いていないようだ。
ルル
20歳の人間の女性。旧名ルル・セトクレセア。
元、財閥のお嬢様だが、両親の遺産に群がる親戚に嫌気がさして家出し、帆崎の元に居候する。
数か月の同棲生活の末、遂にゴールインし、現在は帆崎ルルとなっている。
強気な性格で、家事全般をそつなくこなすしっかりもの。
因幡リオ
兎人の女子生徒。非常に真面目で、陰では真面目のまー子と呼ばれる風紀委員長。
だが実はかなり濃い部類に入る隠れオタである。『若頭は12才(幼女)』シリーズの大ファン。
モエやハルカのような今時の普通の女子高生に憧れている。何故か怪我をすることが多く、保健委員によく絡まれている。
星野りんご
兎人の女子生徒。学生バンド「ルーズビート」のドラム担当。
実家がレストランを経営しており、料理が得意。基本的に弱気な性格だが、食べ物を粗末にする場面を目撃すると
理性の糸が切れ、目に映るものが全て食材に変換される、非常に危険な「料理の鉄人モード」へと豹変する。
永遠花(ハルカ)
猫人の女子生徒。モエと親友で、よく行動を共にする。
また猛とはただの幼馴染とも恋人ともとれる微妙な関係である。
しっかりものでリーダー気質をもっており、基本的にいい加減な猛をいつも気にかけている。
アップローダーが不調なんかな。
画像が見れない…。
49 :
46:2009/08/23(日) 02:15:15 ID:Thn3V53o
うわすまーん!本気で間違えて覚えてたw
セトクレアセアね。おKおK。セトクレアセア…セトクレアセア…
人物紹介こんなのでよければ順次書いてってみる。さすがに名簿全員とまではいかんけども。
wikiの弄り方はどうもよくわからん。
こんなの認めるかぁ!とか、こいつは俺が書く!ってのがあったら早めに言ってね、書き溜めはしてないので。
近所の花屋にリアルでセトクレアセアなる観葉植物があって吹いたwww
くそっ写メってくればよかったッ!
あーもう、この子達ホントかわいいなぁ
そういえばザッキーは初期はロリコンだったな
ゆっくりがんばるもふ! 応援せざるをえないもふ!
つらいとき頑張れる陸上部の掛け声↓
いちモフ! にモフ! さんモフ! よんもふ! ごモフ! もふモフ! しばいぬ! こいぬ!
いちフモ! にフモ! さんフモ! よんフモ! ごフモ! ふもフモ! さもえど! こいぬ!
もふもふうるせぇもふwwwwwwww
…あ…れ?
>>51 ああああかわいいいい
ロリコンの気持ちがよくわかる
おや、シロ先生の様子が
シロ「女の子って見ていると不思議な気持ちになるよな。何故か顔がニヤけてしまう」
リオ「あの三匹可愛いですもんね」
シロ「ああ、この感覚を言い表す言葉が思い浮かばん。記号論の限界を感じるっ」
リオ(“萌え”もしくは“蕩れ”だろうけど、あえて黙っておこう)
ふふふ、やはり敵でしたかここの連中は!
おっ 久しぶり
これ結構疲れる…今までなかった教師追加。
田中 太郎
校長。猫人の男性。あまりにも平凡な姓名なので「タナカ」とか「タロー」とか呼ばれるのが嫌いで、
小さいころから『肩書きの有る偉い人になろう』と思っていたので、今は「校長先生」と呼ばれて満足。
学園祭の存在を忘れ去る等、抜けた部分があるが、曲者揃いの佳望学園教師陣をまとめる手腕はもっと評価されるべき。
生徒や教師の問題行動を目撃してしょっちゅう噴いている。
八木 権乃介(やぎけんのすけ)
教頭。山羊人の男性。しっかりもので、校長に八木ちゃんと呼ばれ頼られる、良きサポート役。
校長室で校長とよく将棋を指しており、勝率は高いようだ。
車を買い替えてから角が邪魔でまともに運転できないことに気付く等、天然な部分もある。
大稲荷 丹(おおいなりまこと)
狐人の男性。公民を担当。春から佳望学園に勤務となった。
黒い服装に好物がフレッシュトマトジュースで、生徒からはドラキュラ伯爵と呼ばれている
口癖はザマス。全然似ていないかわいい弟がいる
水島 源二郎(みずしまげんじろう)
アザラシ人の男性。美術担当で、寒中限定水泳部顧問。とは言え夏も泳ぐ。
所謂ガチムチ体型のセクハラオヤジ。年中海パンを着用している。
何かと問題になりそうな人物ではあるが、熱血で生徒からの信頼は熱い。
百武(ひゃくたけ)そら
狸人の女性。地学担当で天文部顧問。
泊瀬谷と同じ年齢で小柄、目が細い。物腰が柔らかくマイペースな女性。
昼に弱く、星の出る夜は元気いっぱいになる。因みに初恋の人はアルタイル。
真田 勉(さなだつとむ)
犬人の男性。定年間際の用務員のおじさん。
生徒達からは信愛の気持ちを込めて「ベンじい」と呼ばれる。何事に対しても落ち着いた人物。
惣一に、とある義理によって、飛行機同好会室の設備配線や機械工学を率先して教えた恩人。
これで教師は全員足りたよね…?
あんど、足すべきかなって思った説明追加。
白(シロ)
猫人の女性。保健医を担当。
年齢は30代で、オバサンと言った者にはオキシドールの漂白攻撃が待っている。
小さな女の子が好きで直接態度に出すことは少ないが、度々保健室に逃げ込んでくる
コレッタ他、初等部の女の子達が可愛くて仕方ない。
ある意味似ている因幡リオとライバルじみた関係がある。
サン・スーシ
犬人の男性。身長が小学生並みに低く、学校一声が大きい。科目は数学を担当。
子供っぽい所があり、よく悪戯や悪巧みを思いつく。バイクを愛車にしており、バイク屋のミナによく世話になっている。
教師としての能力は高く、学業成績も運動神経も非常に良い。また絵が上手くPC関係にも詳しい。
サン・スーシはドイツの学生時代からの渾名であり、現在の性格もそこで生まれたものである。
ただし詳しい過去を語ることはなく、それを知る人は少ない。来日後、入り直した大学でミナと知り合った。
フリードリヒ・ローゼンタール
ドイツ名門家出身、サン・スーシの本名にして、彼の幼少期の性格。サンとは対称的に内向的であり、大人びている。
普段は見せないが、何かをきっかけにこちらの性格が顔を出すことがある(二重人格ではない)。
英美王に対して何か思うところがあるようだ。
英 美王(はなぶさ みお)
犬人の女性、年齢は42歳で独身。科目は英語を担当。
キツそうな人と見られがちだが、基本的には穏やかで芯が強い。女性にしては、低く良く透る声が出る。
因みにあのサン・スーシが苦手とする人物でもある。また彼の過去を知る数少ない人物の一人でもある。
泊瀬谷(はせや)スズナ
猫人の女性。科目は国語を担当。
新人故、色々失敗したり、生徒に翻弄されている事が多い。
高等部のヒカルを非常に気にかけている。
ハルキという大学生の弟がいる。
帆崎 尚武(ほざき しょうぶ)
猫人の男性、年齢は30歳。科目は古文、他にも生活指導も担当している。
しかし、生徒と遊ぶ事が多く、生徒指導しているかどうか疑わしい。
人間の女性ルルと数か月の同棲生活の末、遂に結婚した。
サン先生についてはちょっとした出来心で…
次は生徒かー多いな畜生ー。だ…誰か…
書いててふと思ったんだが、そら先生ってちっちゃいマーシャみたいだなw
いろいろと気が合いそう。細目ふたりで星見上げてるの想像すると和む。
追い討ちかけるようでごめんw
wikiの元からの紹介の有無関係無しに、今のスレでの紹介で出なかった残り?の
教師も名前いれてみた(愛称じゃなくて名前のみ)
猪田(いのだ)
牛沢 花子(うしざわ はなこ)
跳月 十五(はづき じゅうご)
ヨハン・アーネット
白倉 寛司(しろくら かんじ)
佐藤 光代(さとう みつよ)
山野(やまの)・マリヤ・ミハイロビッチ
織田 理恵(おりた りえ)
獅子宮 怜子(ししみや れいこ)
……紹介文は思いつかんかった、ははは…orz
乙です
生徒とかはある程度作者さんにも手伝ってもらった方がいいんでは?
長文に起こせなくて悩んでる人もこういう形式だったら書きやすいような気がする。
70 :
64:2009/08/24(月) 22:02:38 ID:reclmR6K
>>67 いやとりあえず追記、変更点がある感じの人を独断と偏見でだな。
自分は名簿の上から埋めてってみるつもり。全員はキリがないからある程度描写と名前のある人限定、親兄弟はまとめるつもり。
まあ自分のことは気にせず、書ける人は自由に書いてくれると助かるかな。
改めて思ったが名簿の人GJ! 整理がスムーズに行くわ。
「食らえ!『の』の字・そば殻枕弾幕!」
「そんな攻撃は痛くもないわあ!ぐっ…」
純白の枕の弾道を顔面で受け止め、断末魔を上げるイヌが一人。その横では戦友の仇を討たんと、援護射撃の狙いを定めるネコ。
戦いの場はとある旅館の一室。夜も更けて、草木の眠りを目覚めさせんと、彼らは枕を投げ続ける。
敵陣目掛けて狙いを定める彼の研ぎ澄まされた瞳の底では、冷たい炎を燃やしながら、名誉の討ち死にを覚悟していた。
「カーッカッカ!お前らこわっぱの枕ごときで、この猪田を討ち取ろうとはかたわら痛いわ!」
隙を突いて猪田の横っ面に枕がめり込む。高い位置からの射撃は、想像以上の破壊力を持ち合わせていた。
ぐらりとメガネをずらしながら、柔らかい布団の大地に膝付く猪田を帆崎の肩に乗ったサン・スーシが尻尾を振りながら見下ろしていた。
「いのりん、お前の負けだー!!」
そう。帆崎から枕が投げられると見せかけて、陰からひょいと帆崎の肩に飛び乗ったサン・スーシがさらに帆崎の腕より高い位置から
枕を投げつける。重力が味方した枕は加速度を増し、巨体の猪田を打ち倒すには十分の威力を持っていた。
肩車されたサン・スーシと、帆崎が勝利の雄叫びを上げる頃、猪田は一人で布団の上を泳いでいた。
ぴょんと猪田の背中に飛び降りたサン・スーシ。「ぎゃ」と声を上げると、猪田はむくりと立ち上がり、
メガネをかけ直して布団の上にあぐらをかいた。戦いの激しさを物語るように、蛍光灯のひもが揺れていた。
「ふう。さすがにこの歳になると、ちょっと動いただけで足にきますな」
「同じく。いてて、足がつりそうだよ」
帆崎も同じく布団の上にふくらはぎをかばいながら座り込み、ルルからのメールの返信をしている。
そして、一人サン・スーシは、枕を抱きながら子犬のように部屋を右から左に転がっていた。
「よーし、10分休戦だ!でも、あんまり騒ぐと『お怒り美王ちゃん』が来るからなあ」
その日の午前、昼ドラごっこで騒がせたお陰で、お怒り美王ちゃんのスイッチをオンにしてしまったことを思い出す。
いつものことと思いながらも、アマテラス女神さまの逆鱗にはなるべく触れたくない。と言うより、触れちゃいけない。
「『あなたたち、オトナの自覚はあるのですか?教師が深夜に暴れまわるとは』ってね」
「サン先生!似てる!」
林間学校も夜を向かえ、生徒たちを寝かせた男子教員たちは日中『昼ドラ』ごっこで、英美王から絞られたことを思い出していた。
この部屋で戦いが出来るのは、女性教員がお風呂を楽しんでいる時間だけ。だが、ここで終えるのは心残り。
このまま、つつがなく林間学校を終えたいもの、折角の思い出作りも大事だと、彼らの意見は一致していたのだ。
「…それがですね、あるんですよ。決戦の地に相応しいバトルフィールドが」
帆崎の一言で、全員の尻尾が止まる。
密かに想う人を打ち明けるかのように、ひそひそと帆崎は二人に耳打ちをする。
「下見の時に見つけたんですがね、本館の海辺に近い奥まった所にお誂えの部屋があるんですよ。
しかも、今回の林間学校では使われてない部屋ですので、女性教師陣には見つからないって言う寸法ですよ」
「でかした!ザッキー!天下の分け目・関ケ原はそこだ!行くぞ!」
サン・スーシは猪田に枕を叩きつけながら外に声が漏れないように叫んだのだった。
猪田はもう少し休ませてくれと頭を下げながら水筒を取り出して、奥さま特製の減肥茶を口にした。
とき同じして、所は男子生徒の間。こちらも同じく尻尾が振り切れんばかりの枕投げ戦が繰り広げられていたあとだった。
さすがに迫力重視の教員同士の枕投げにはかなわないが、あらびきながら男子生徒の戦いも負けず劣らず白熱したものと見える。
夏の夜や 兵どもの 夢のあと。
と、誰かが詠ったかどうかは知らないが、卓は布団で大の字になり、鎌田は簀巻きにされて、香取は丸くなり、利里はいつもと変わらず。
そして、ヒカルは部屋の隅で張り切りすぎたのか、息を切らしてうつ伏せになって転がっていた。
「よーし、10分休戦だ!でも、あんまり騒ぐと、いのりんが見回りに来るからな」
いちばん元気な利里が水筒の飲み物を口にしながら、これからの戦いへと兜の緒を締め直す。
「美味いから」と、飲み物を香取に勧めたが、丁重にお断りをされた。相変わらず、ヒカルはごろんと布団に包まっていた。
「……」
「犬上は休むのかい?」
「うん…」
バッグから取り出した文庫本を片手にすっくとヒカルは立ち上がり、クラスメイトの声を聞きながら部屋を後にした。
もしかして、ちょっと悪いことしているのかな、深夜徘徊なんて良くないよな、と尻尾を引かれる思いで真夜中の旅館の廊下を歩く。
みしっ、みしっと音を立てる床に気を使いながら、のんびりと一人で本を読める部屋への階段を登っていった。
いくら肉球があっても、年代ものの廊下にはかなわない。音を立てずにゆっくり歩く。その行き先とは、
今回の林間学校では使われていない二階の一室。そんな場所がある、と泊瀬谷から聞いていたヒカルだった。
屋敷の奥まった海に近い薄暗い、遠くから波の声がやさしく響く、誰も来ることのない和室があるのだという。
(本をゆっくり読むには、ここがいちばん)
ここなら生徒も教師も来るはずがない、とヒカルはふすまに手を掛けるが何者かが既に部屋にいる気配を察知した。
もしや、教師の誰かが?いや、この部屋の存在自体知られてないから、誰かが来ることはない筈なのに…。
ヒカルは自分の尻尾が自然と隠れていることに気付かない。
恐る恐るふすまを開けて、薄暗い部屋を覗くと一人のうさぎが座り込んでいた。ヒカルの気配は未だ察知しておらず、
うさぎの手元は仄かに光を発している。壁のスイッチでヒカルが部屋の灯を点けると、うさぎのメガネは光に反射した。
「因幡?」
「なによ!」
声にならない声で返事を返したのは、真面目のまー子の風紀委員長・因幡リオ。
素早く携帯を隠しリオは体を丸める。彼女は、子どもの悪事が明らかになったときの慌て方と同じだ。
リオの長い耳からは、イヤホンが伸びて携帯に繋がっているのが見える。リオのメガネがずり落ちているのは、心を乱している証拠。
「見た?」
「何?」
「言っておくけど、あんたも同罪だよ。こんな時間に徘徊するなんてね」
風紀指導のように声を上げるリオをよそに、ヒカルは部屋に入る。ふすまを閉めるとリオの背後に周った。
「因幡さ、何やってるの」
「…お、音楽を聴いてるんだよ!ほら!みんなの邪魔にならないように、離れた部屋でこっそり聴いてるんだからさ!
イヤホンの音漏れって意外と邪魔になるし、耳の良いイヌっ子なんかビンカンだからね、みんなのために気を使ってるの!
別にやましいことがあって、わざわざこんなところに来たんじゃないんだからね!もう、犬上のバカ!バカ!」
何時になく饒舌なリオを訝しく思いながら、ヒカルは彼女と背中を合わせながら体育座りをした。
一方、リオはリオで音量を下げて携帯の画面をヒカルに見られないようにかばいながら背中を丸める。
ハーフパンツに飾り気のないTシャツ姿のリオは、背後のヒカルを気にしながら『若頭』シリーズのスピンオフ、
『次期頭首は虚弱男子』を小さな画面で鑑賞していた。リオは、どうしてもリアルタイムで鑑賞したいというファン心理に素直である。
(もう!犬上のおかげでアイツの虚弱なところを見逃しちゃったじゃん。DVDが出たら、ゆっくり堪能してやる…)
携帯の液晶画面に、色鮮やかな絵が踊る。ワンセグのおかげで、このような場所でも深夜アニメを鑑賞できるなんて、
リオが初めてテレビを理解したころから考えれば、夢のようなお話ではないか。そんな恩恵を授かりながら画面に食入る。
ヒカルは静かに人気推理小説『片耳ジョン』を捲り出す。しばらく自分だけの空間に入り込むリオに、ぼそりとヒカルは話しかけた。
「あのさ、因幡。知ってる?ここさあ、出るんだって」
「何が?」
「…化けネコ」
―――じりじりと日差しが照りつける葉月のある日のこと。暦は『林間学校がもうすぐ来るぜ』と知らせていた。
「ヒカルくん!あの旅館、出るんだってね?」
浮き足立った泊瀬谷は、怖がらせようとしているのかどうかはともかく、目を輝かせながら図書室帰りのヒカルを捕まえて、
子供同士が話すように笑いながら声をかけた。夏休みの学園はもちろん人は少ない。しかし、暇をつぶそうと開放された図書室に、
活字に飢えた生徒たちが集うのは毎年のこと。もちろん、ヒカルもその一人だった。片手に『片耳ジョン』を手にしている。
「…何がですか」
「あのね、子ネコの化けネコがね…」
ヒカルは本を手に、落ち着きを見せながらピクンと尻尾を跳ね上げるが、対称的に泊瀬谷は
自分の周りに花咲かせていた。気苦労の多いオトナから夢見る乙女になってもいいんじゃない?と、ちょっと言い訳。
その横を両手に紙の束を抱えた風紀委員長・因幡リオが通りかかる。
ヒカルが重そうだからと代わりに持ってあげようとすると、リオはやんわりと断った。
「先生、林間学校のしおりが刷り上りました」
「ありがとね。因幡さん、こんな雑用頼んでごめんね」
「いいんです。先生が喜んでいただければ!」
ヒカルは何か裏でもあるんじゃないかとリオのメガネの底を訝しく思ったが、そこはスルーしよう。
重い紙の束を抱えて、去ってゆくリオの後姿を見ながら泊瀬谷は続けた。
「聞いた話なんだけどね。あの旅館は…夜になると、子ネコが化けて出るんだよねー」
「うそ…」
「ふふふ。旅館の隅っこのある部屋ではね、もー!ヒカルくん、怖いね!」
ぽんぽんっとヒカルの背中を嬉しそうに叩く泊瀬谷。一人ではしゃぐ泊瀬谷の姿はヒカルより年下に見えた。
―――そうなのだ。泊瀬谷の噂話をヒカルは気にしていたのだ。学園で泊瀬谷から聞いたその噂話をリオにこと細かく話した。
もちろんリオも通りがかりの際、長い耳でちょろっと聞いているので大体のことは分かっている。
そのせいか、非常に冷静な答えがヒカルに帰ってきた。いつもの委員長の顔をして、淡々と語るリオの声は大人びている。
「泊瀬谷先生の言うことなんか嘘っぱちだよ。だって、泊瀬谷先生ってウソつくキャラじゃないじゃない。
なのに、ニコニコしながらそういうことを言い出すなんて、『ウソついてますよ。イエーイ』って言ってるのと同じだよ。
稀代の悪童サン・スーシならともかく、何か思惑があってそんな見破り易いウソをついたんだよ。犬上は純粋だね」
「……」
「…だからさ、仕返ししない?」
携帯を折りたたみながら、リオが後ろを振り返ると尻尾を揺らすヒカルの姿があった。
同じくヒカルも本を閉じる。
「わたしたちで作ってみようよ?その『化けネコ』」
リオの唐突な提案に、ヒカルはページを捲る手を止めた。
相変わらず、背中合わせで会話する二人。それでも夜空は回り続け、刻々と儚い夜を削り取る。
そう、うさぎがにんじんをかじるように、貴重な夜は細くなる。今夜がまた来るとすれば、それは本の中のお話か、
物書きの妄想意外にしかありえない。リオは「犬上が化けネコを見た!」って言えば、泊瀬谷なんぞコロッと騙されると言う。
自由気ままに妄想を膨らませろ。物語は夜に生まれるというではないか。今夜はきっと何かが起こる。
口火を切ったのはリオであった。
「その子は真っ白なんだ。夜中でも見つけてもらえるように。さびしがり屋さんだからさ。
そして、お人形さんのように長ーいみどりの黒髪が伸びてるんだよね、きっと」
「そうかあ。こんなお旅館に取り付いてるんだから、きっと和服が似合うんだろうな」
「…犬上、話しが分かるじゃん。働き者で、ちょっとケーキとか紅茶とかに憧れてるから、エプロン着けてるんだよ。
ほら、メイドさんみたいなフリフリがついたかわいいヤツ!和服にエプロンって、ちょっと萌…ほら、かわいいじゃん?」
「それに、ネコだから家に付くのが好きなんだろう。それでもって、人見知り」
「そうそう!大人ぶったヤツらにはけっして姿を見せないんだよ」
居もしないし、これからも存在しないキャラクターを膨らませながら、リオとヒカルは背中越しに話を弾ませる。
今まで見せなかったように、今後一切ヒカルはこんな話をクラスメイトとすることなんかないんだろう。
リオだってそう思っているに違いない。だからこそ、二人は星の巡りを忘れ続ける。
夜空の白鳥も呆れて飛び去ってしまうんじゃないか、と言うぐらいに。
「犬上って、面白いじゃん」
「……」
「誉めてるのに。少しは喜べ!」
再びリオは携帯を開き、ワンセグの灯を付けた。深夜アニメはとっくに終わっている。
その代わりに、画面ではサルの大物お笑い芸人が体を張って海に飛び込む、という深夜独特のくだらない番組が流れていた。
「すごい…、この番組。ホントに21世紀?」
ヒカルはリオの肩越しに、リオのワンセグ画面を覗き込む。
リオの無造作ショートの香りが、ヒカルの鼻腔をくすぐる。
ほのかにリオの息遣いがヒカルには感じ取ることが出来た。
「…因幡さ、シャンプー変えた?」
「う、うん。よく分かったね」
「学校のときと、違う香りがした」
眉は吊り上げるが、この日一日誰も気付いてくれなかったことだけにリオは少しだけ嬉しくなった。
例え、相手が人嫌いのヒカルだったことでも。自分が『女の子』だと言うことを気付かせてくれるのは、悪い気はしない。
だが、ヒカルは同い年位の女の子にはなびかない。犬上ヒカルとは、そんな子。
続きか! 支援
「犬上ってさ、好きな子とかいるの?…ほら!犬上って、あんまりそういうこと話さないからさ!…言っておくけど、
これは女の子としての興味だからさ、わたしが犬上のことに興味があるんじゃないんだからね!勘違いすんなよ」
空には満月が浮かんでいた。月夜の光はケモノを狂わせる、そんなインチキなんか言い始めたヤツは誰だ。
少なくともこの部屋の二人は、五感を通じて感じていたのだろう。それでも、ヒカルは口を開くことはなかった。
「で、因幡は好きな男子っているの?」
「…うっ」
三次元なんか興味はございません、二次元の…なんて、言えるわけが無い。いくら無口なヒカルに言っても、
リオのクラスでの立ち位置を大いに揺るがす、世紀の大発言になることは彼女自身が知っている。
が、何も言い返さないことは、ヒカルにどう取られるのか分からないと思い、何か一言返すリオ。すると、その声と同時に。
「何?今の音」
下の階から大きな音がする。誰もいないはずの部屋から音がする。柱に響くような、畳が揺れるような重い音。
ぱたりと再び携帯を閉じるリオは、メガネを指でつんと直しながら声を低くした。
「まったく、林間学校だからって…子どもなの?ガキなの?」
「…違うと思う」
「バカー?そんなこと言ってるんじゃないの!」
真下の部屋もヒカルとリオがいる部屋と同じく、誰も使っていないはずだった。なのに、誰かがその部屋を使って
闇夜の静けさを突き破ろうとしている。それに構わず、ヒカルは文庫本を再び開いた。
リオは音の出場所の畳の下を睨みながら、風紀委員として覚醒し始めた。
「どこかの班が暴れてるね…。どうやってここを見つけたんだろう!ちょっと注意してくる!」
「……」
「こんなところで暴れられたら、わたしの地位が危ういの!」
部屋を飛び出したリオは真下の部屋に駆けつける。風紀委員の血が騒ぐ。
残されたヒカルは畳にイヌミミを当てて、真下の部屋の状況を聞き分ける、が…聞き覚えのある声が届き尻尾を丸める。
利里?鎌田?いや…、そんなヤツらではない。彼らよりも年上で、地位も名誉も財産もある三人の『元』男の子。
通り過ぎた足音が再び下から聞こえ、畳を通じてふすまが開く音が聞こえる。リオの怒声がヒカルの部屋まで届く。
「うるさいわね!!どうして風紀を乱してわたしを困らせようとするの!?大人しく出来ないなら…あ」
力なくリオの声がしぼむところまではっきりとヒカルは耳にした。
「…疲れるなあ」
ヒカルはしばらく横になった。
一晩空けて、新鮮な潮風薫るあたらしい朝。旅館の中庭には教師陣がぽつぽつと散らばり、思い思いに朝の光を浴びていた。
中でも猪田、帆崎、サン・スーシの三名は爽やかな日差しを眩しく感じていたことだろう。
「先生たち、よく眠れましたか」
「え、ええ…英先生。昨夜はぐっすり眠れましたよ」
晴れた青空が彼らの腫れた眼に染みる。夜中、いい大人が暴れまくるとすれば、翌日に己の身ふりかかるものが想像がつくではないか。
男性教員三人組が恐れているのは、昨晩行われた戦いが英先生の耳に入ることと、筋肉痛が時空を超えて襲ってくることだ。
そんな中、いち早く起きだした生徒がいた。彼は白い尻尾を眠たげに揺らしながら中庭にやって来る。その名はヒカル。
毛並みを見るとそんなに色つややかではなく、それを見た泊瀬谷はちょっと心配になった。
「おはようございます」
「おお、ヒカルくん。起床にはまだまだ時間があるのに?」
猪田の問いに頷き、まだまだ眠い目を擦っていた。
ヒカルが自分の部屋に帰ったとき、深夜の枕投げバトルロワイヤル・第二ラウンドはとっくに終結しており、
班のみなは布団の配列を無視してぐっすりと眠りについていたのだ。寝場所を失ったヒカルは部屋の隅に体育座りをして
うつらうつらと日差しが再びここに戻ってくるときを待っていたとのだと申す。
しかし、そんなことをヒカルは一言も教師陣にはしゃべらない。「よく眠れました」と、清々しい朝のようなうそをつく。
『元』男の子の三人は、疲れた身体を少しでも休めようと旅館の縁側で腰を下ろした。
「ヒカルくん、ほら!もしかして…会っちゃったのかな?へへへ」
泊瀬谷の子どものような企みの結末をヒカルに打ち明けるときが来た。泊瀬谷の足音が言わずとも物申す。
ヒカルを中庭の隅にある生垣に連れて、洗い立ての髪の毛の香りをふわりと散らしながら耳打ちする。
「ヒカルくん、実はね…化けネコなんて…」
「ぼく、見ました」
泊瀬谷の眼が天の太陽よりも丸くなった。
「真っ白で、和服を着てましてね、白いエプロンの長ーいみどりの黒髪の…」
淡々と語るヒカルの口調はうそのことさえも、本物にしてしまうのか。泊瀬谷は尻尾を逆立ててヒカルの話を聞いていた。
昨晩、リオと一緒に作り上げた嘘っぱちの『化けネコ』。
泊瀬谷の期待を裏切って、居もしない化けネコに泊瀬谷はすんなり化かされてしまう。
「そ、そうね!先生も、聞いていたんだよ…ね?」
支援
ぽつぽつと生徒たちが中庭に集まり出した。この日初めのスケジュール・ラジオ体操の時間である。
猪田が眠そうな顔をして「昨晩は良く眠れましたか?」とあいさつをする。あたらしい朝が始まる。
テンションだけは人一倍高いAMラジオから、体操の曲が流れ出すといっせいに生徒たちは体を動かす。
長い尻尾の種族は、音楽に合わせて尻尾が揺れていた。体操の途中、リオが隣のヒカルに話しかける。
「ねえ、うまくいった?昨晩のこと!」
「……」
「ねえ!」
リオは何度も何度も繰り返す。ヒカルは腕を体操のリズムに合わせて振り切る。それでもリオは繰り返す…。
しかし、余りにもしつこいリオに呆れたのか、面倒くさそうにヒカルが呟いた言葉は、
「言ってない」。
ヒカルの予期せぬ返答にリオは大きく跳ねながら眉を吊り上げる。もちろん、ヒカルの言葉は嘘っぱちの中の大嘘だ。
昨夜の時間を返せ、あんなに乗り気だったのに何故だ。と、ヒカルからコロッと騙されたのはリオだった。
「体操終わったら、泊瀬谷先生を騙しに行くね!いい?」
朝の体操を終えた生徒たちがぞろぞろと旅館に戻るなか、リオに引きずられながらヒカルは再び泊瀬谷のもとに来た。
深刻そうな顔つきの演技をしながら、リオはヒカルの肩を叩いて昨夜のウソ話を泊瀬谷に聞かせようとした。
泊瀬谷の側には英先生が長いスカートを朝の風にのせて揺らしていた。そこに興味津々と輪に入り込んだのは、
ご存知年中夏休み男・サン・スーシ。彼の尻尾は陽気に振り切れていた、このときまでは…。
「先生、聞いてください。わたし、見たんです。昨晩、お手洗いに行こうと思って廊下を歩いていたら…」
ところが、リオの話しを聞いて慌てふためくヤツがいる。挙動不審な眼の動きをして、リオのシャツの裾を引っ張るヤツがいる。
リオの話を勝手に勘違いしているヤツがいる。そして、英先生の目前で正座する自分の姿を思い浮かべているヤツがいる。
風紀を乱すものを許さない真面目のまー子のリオが、英先生をひっ捕まえて話すことだ。
話が進むに連れてリオのシャツはヤツの手で伸びきっている。遠くでこそこそと逃げ出しているのは、帆崎、猪田。
(サン先生、早く楽になれ!)
(今なら英先生に土下座しても遅くないぞ!)
口パクながら、リオのシャツを未だ掴んでいるサン先生に向かって両者は自首を勧める。
「遠くから誰もいない部屋なのに、音がして『夜中なのに、誰か遊んでるのかなあ』って思ってですね」
泊瀬谷の尻尾が膨れ上がり、サン・スーシは目を泳がせる。
「そこでわたしがその部屋のふすまを開けたら…」
額の汗腺が最高潮を迎えるサン・スーシだった。
おしまい。
支
支援の方、ありがとう!
夏が終わっちゃうよー!ツクツクボウシが鳴いてるよー!
キャラ紹介の方、サンクスです!
投下おしまいです。
何やってんだ教師www
これは珍しい組み合わせ。ヒカル浮気してんなw
リオもなかなかかわいいとこあるじゃん
>>82 ををっ!? ヒカルにリオが急接近!?
……と思ったらヒカルは相変わらずなようで、安心したと言うか何と言うか。
そう言えば、この夏は結局、海に行く事無かったなぁ……
それと、自分で出したキャラで人様に面倒はかけさせられねぇぜ!
と、いう事で自分で出しておきながら今まで人物紹介を書いてなかった人達の紹介をば
虎宮山 鈴華
白虎人の女子生徒。女子プロレス部の部長。
身長2m以上のある意味恵まれた体格と格闘センスにより、中等部の頃から女子プロレス部の部長を勤める実力者。
しかし、横暴かつ自己中心的な所もあって、とても部員達から慕われているとは言えないのが難点。
女子プロレス部を勝手に(鈴華的に言えば)退部した双子の妹の鈴鹿とは未だに仲が悪く、たまに喧嘩している所が見られる。
虎宮山 鈴鹿
白虎人の女子生徒。飛行機同好会所属。鈴華の双子の妹。
髪型以外は姉の鈴華とほぼ同じ見た目ではあるが、横暴な姉を反面教師にして育った為、非常に理知的で礼儀正しい。
しかし、感極まると誰彼構わずに抱き付き、フルパワーでベアハッグしてしまうと言う非常に困った癖を持つのが難点。
悩みは大きすぎる体格の所為でお洒落が楽しめない事。実は白先生並にコーヒーを淹れるのが上手い。
狐利山 香苗
狐人の女性。スィーツショップ『連峰』の店長兼パティシエ。
海外でパティシエ修行してきたその腕から作り出されるスイーツは絶品で、それを求めに遠い所から訪れる客も多い。
かつて伝説的なフードファイターによって非業の死を遂げた父を持ち、その為、大食いに対して凄まじい執念を燃やす。
しかし、その執念の結晶である『連峰』名物スイーツマウンテンDXを朱美にものの三十分足らずで完食され、
以来、朱美(と、その母親)を激しくライバル視している。
金森 未井
羊人の女性。スィーツショップ『連峰』のウェイトレス。メイド服を着ているが決してメイドではない。
おっとりとした口調と落ちついた物腰から、のんびりとした性格に思われがちではあるが、
実際はしっかり者であり、時折、店長の香苗や同僚の真央に対して鋭い突っ込みを入れる事もある。
角につけたリボンがチャームポイント。
美弥家 真央
猫人の女性。スィーツショップ『連峰』のウェイトレス。だから間違ってメイドさんと呼ばない様に。
彼女は自分の事をしっかり者と思っているが、実際はかなりのドジッ子気質で、よく何も無い所で転ぶ姿が見られる。
両親は共に遠い外国に出張中の為、妹の加奈とは二人暮しで、常日頃から姉としてしっかりとしなければと想っている。
だが、その実際は自身のドジッ子気質の所為で想いが空回りする事も多く、妹の加奈から呆れられることもしばしば。
美弥家 加奈
猫人の女子生徒。真央の妹。
某狩猟ゲームの大ファンで、所属している狩猟同好会をモンハン部と(勝手に)呼び、
更にはゲーム中に出てくる武器や防具、アイテムなどを自作する程に熱中している。
しかし、時折ゲームと現実がごっちゃになるらしく、利里の事をリオレ●スと呼んで狩猟しかけた事もある。
尚、母親代わりの姉の加奈には何かと頭が上がらない。
三島 琉璃
猫人の女子生徒。同級生の加奈とは幼馴染の仲で、良く行動を共にしている姿が見られる。
性格は気紛れなネコ気質であるが少し臆病な所があり、その為、突発的な事態に対しては思わず逃亡する癖がある。
お気楽三人組のアキラとは意外に仲が良く、時折、弁当の中身を交換し合う事もある。
御堂 謙太郎
小説家の狼人の男性。PNは池上 祐一。代表作は推理小説『片耳のジョン』シリーズ。ダンディ。
物静かな上に感情も余り表に出さない為、大人しい印象に見られがちだが、怒らせるとかなり恐い。
卓とは義理の父親の関係で、何かとやんちゃな血の繋がらない息子の様子を暖かく見守っている。
ただ時折、卓か過去に起こした事件を面白おかしく書いて作品に載せる事もあり、卓を困らせている。
尚、かなりの不精者らしく、その事で妻の利枝から度々注意されている姿を見られる。
御堂 利枝
黒豹人の女性。元は小説家である謙太郎の編集担当であり、現在は謙太郎の妻。
黒豹特有の精悍な見た目とは裏腹に、性格はかなりおしとやかで、かつ、かなりそそっかしい。
義理の息子である卓の事を深く愛しているのだが、たまにそれが暴走する事もあり、卓を困らせている。
かつて学生時代に英先生とクラスメイトだった事もあるようだ。
兎宮 かなめ
兎人の女子生徒。狩猟同好会所属の物静かな少女。
非常に存在感が薄く、彼女から接触されない限り誰も彼女の存在に気付かないリアルステルスを搭載している。
密かに利里へ想いを寄せており、利里へ危害を加えようとする者に対しては容赦なく麻酔弾でスナイプする。
髪に付けたレースのリボンがチャームポイント。……ただ、それに気付く者が居れば、の話だが。
竜崎 奈緒
蜥蜴人の女子生徒。利里の妹。
兄と同じく某狩猟ゲームの飛竜に似ているが、こちらはそう対して周囲から恐れられてはいない。
非常に兄想いな性格であり、その為、兄の利里の為ならば自分の身を省みずに助けに行く事もある。
だが、それ以外の時は歳相応に臆病で、上級生に泣かされる事もしばしば。
(当然、彼女を泣かせた上級生は後で兄によって酷い目に遭うのだが……)
キャラ紹介と新作作品と、スレがにぎわってうれしいのぅうれしいのぅ
訂正
×尚、母親代わりの姉の加奈には何かと頭が上がらない。
○尚、母親代わりの姉の真央には何かと頭が上がらない。
久しぶりに人物紹介を書いたらこのザマさorz
それと、ちょっと追記。
名簿の御堂 利枝だけど、呼び方は みどう としえ なので、出来れば訂正をお願いします。
>>82 うおお、作中でタイトル使って頂けるとは有難や。リオーッ結婚してくれーッ!
人物紹介のかたも、丁寧に有難うございます!書いて頂いた分以外は、txtに
まとめてみました(wikiに載せて頂いた文章に付け足ししただけなのですがw)
これで足りてるかな?他に、自由に付け足しして下さっても嬉しいです。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=367
89 :
64:2009/08/25(火) 01:07:36 ID:S4D52Rle
>>69 もしかして真ん中のソレもコーヒーかwありがちだけど不味そうだよなw
右のふたりはやっぱり気が合いそう
>>84 え!? 利枝さんて英先生のクラスメイトだったのか! なるほど、英先生の過去を切り崩す足掛かりができた。
製作者本人による緻密な紹介、助かります。
>>88 こちらも緻密で助かります、すげー助かります!
ぶっちゃけひとり孤独なリレーを覚悟してたところ。仲間はいるもんだなぁと感動したわ。
あと数人。いないなら自分が書くけど、製作者本人が緻密な紹介書けば知名度上がるかも?かも?
あとは変更、追加点をちょこっと修正するかな。
背中合わせってのが萌えすなぁ
匂いの描写ってなんかイイ
ちっくしょー
林間学校なんておいしいシチュエーションなのにもう夏終わっちゃうなぁ
いのりんと英先生あたりこの時期は忙しそうだな
残暑見舞いのはがきが確実に山積みされてる
そして二人とも真面目だから徹夜して全てのはがきに相手によって別々の一文入れたりしてそうだ
>>91 おいしいイベントなら季節過ぎたって創作すれば良いじゃない!
その合間をぬって家族サービスも。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=370.jpg いのりんは最初のSSに乗っかって描き始めましたが、お気に入りなので子供達を描
いたと言うご縁で名前共々考えてみました。確か子供の名前は出てたけど夫婦は出
てませんでしたよね?
※ちなみに、じん物紹介ではなく皆さまへのネタふり的な感じになってますです。
猪田一直 いのだ・かずなお (40)
妻 佳乃 いのだ・よしの (25)(旧姓 吉野)
娘 志穂 いのだ・しほ ( 5)
息子 悠 いのだ・ゆう ( 4)
教師生活10年目に入学してきた吉野佳乃に一目惚れされ、猛烈アタックをかけら
れるものの『子供のおふざけ』と考えてあしらって過ごす。 が、卒業式に来た両
親(と生徒達)の前で佳乃が「私はこれからこのひとと結婚する」宣言。学校中が
パニックになる。長い話し合いの末「二十歳までは結婚は保留、その間にお付き合
いはして良し、それから考える」と言うことに。 佳乃は看護専門学校に通うもの
の一年して妊娠が発覚、結局所謂出来ちゃった婚となる。この事でずいぶんと佳乃
の両親に責められるが、一直の生来の性格の良さが出産を機に認められて今は和解。
本にんは気にしてないものの、佳乃が学業を途中で諦めた事は、未だに一直の負い
目になり頭が上がらない一因でもある。
学生当時、相談を受けていた英は佳乃をたしなめつつ言外に煽っていたふしが有り、
佳乃は今でも何かと相談事をしに学園へ英を訪ねている。 また、この事で今でも
一直は英に冷やかされている。歳が近い割に一直が英に対して敬語なのはこの辺り
に理由が?
ちなみに、一直の実家は八百屋を営んでいて、今は姉夫婦が継いでいる。
姉 猪田直美 いのだ・なおみ (41)
義兄 アントーニオ (39)(伊)
商店街の慰安旅行でローマに行ったときに何故か懐いたアントーニオがそのまま付
いてきてしまい、気がついたらいつの間にか婿入り。栗色巻毛碧眼の優男で御近所
の奥様方はめろめろ。ただし本にんは女房一筋で未だにべた惚れ、ラブラブである。
こんなんでどうでしょうか?
元の「15歳年下の女房」の設定のためにずいぶんザッキーやサンと歳が離れてし
まいましたが、ノリの良さで付きあえてますね。 サンスーシは大卒後こちらの大
学で教員免許の勉強をしつつ論文を書いて博士号を取り現在28歳位って感じでし
ょうか?
その他にも
牛沢花子 うしざわ・はなこ (28)
マッチョ巨乳の彼女だが、名前が示す通り花や可愛いものが好きな乙女である。ロ
リータファッションを生徒に隠れて着てたりするが、流石にサイズが合わないので
英に直してもらったり作ってもらったりしている。 ちなみに、好きな「可愛い」
物は今風ではなく70年代少女漫画的な物だったりするところがまあ年齢相当か。
※なんとなく、英先生はいろんな人の秘密やらを握ってる感じだなぁ(笑)
跳月十五 はづき・じゅうご (33)
モータ、およびモータで動く物が大好き。小さい頃からモータの入ってる物は片っ
端から餌食になっていた。そのためにモータの基本要素である磁石への偏愛も著し
いが、実際はクランクマニアだったりする。 ブルースカイのモータその物を設計
組み立てたのが跳月で、実は見る人が見ればあのモータは宝の山である。
山野(やまの)・マリヤ・ミハイロビッチ (35)
ロシア大使館の駐在武官である父が“何故か”全国の山を登りに行っているのにつ
いていくうちにトレッキングに目覚め、この国の自然に愛着を持つようになる。そ
の為、両親の帰国時にこの国に残ることを決め、大学卒業後教師となる。 28歳
の時に結婚、30の時に出産育児で一年間休職している。
真田勉 さなだ・つとむ (62)
定年再雇用ってことで(笑) 永くけも学に居たためにかなりの設備に彼の手が入
っている。特に旧校舎の配電配管などはほとんど初期の物が無いぐらいの改造がな
されているために、なかなか代わりのひとが雇えないという理由も有ったりする。
事件の設定読みながら心臓止まったような顔のいのりんが思い浮かんだw
あっさり書かれてはいるが
>吉野佳乃に一目惚れされ
佳乃さんパねえwww
英先生いろいろ噛んでるなーw
>>95 確かブルースカイのモーターは、惣一がジャンク屋でオイルまみれになりながら見つけ出した物と書いてあった様な……
ジャンク屋でオイルまみれになりながら惣一が探したモーターを
はづきちが組み立てたのかもしれないと
>>98 ああっ、そうか、読み落としてました。
跳月が『ばらして巻直して魔改造神の手チューンを施した』ってことで…
>>100 いや、慌てて書いてみたけど、これは元SS作者の方に非常に失礼ですね。申し訳な
いです。95での跳月十五の項の内、ブルースカイのモータに関しての最後の2行は
取り下げと言う事でお願いします。 真に失礼しました。
102 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 00:16:22 ID:T0GkJyx1
もんだいない▼・w・▼
>>101 いのりんや他にも今まで設定付け足してた他作者のキャラもいるし、
まぁそんな事言い出したらキリがないのも事実かとw
まぁ、設定談義に深く突っ込むのはやめにしようや
ネタフリだと前置きしてくださってるわけだし
くそぉ、絵が見れない
データベースに接続できないってどういうことだってばよ
106 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 04:11:35 ID:ar+RATYI
これはのろいなのですきょっきょっきょ
ひでえw
おお、復活したようだな
いのりんの服装が似合いすぎてる
オルタロダ復帰したのか!
いのりんかわええなあwていうかここのガッコは先生達にやたら萌えて困る
いのりん嫁が良いキャラしている
マーシャの子と志穂ちゃんが同い年だと気づいた
>>111 悠は早生まれ。なので、志穂とマーシャの息子(あれ?名前まだ無かったっけ?)
が同い年だけど三にん揃って年中組、ってのを年表書きながら考えてました。
で、実は微妙なミスをやらかしてまして… 志穂は満5歳なので“この年”には七
五三を祝いません。 数え年であわせるために生まれを前倒しにすると、今度は卒
業前に両親に色々有ったことになっちゃいます(笑 今でも卒業してその年の9月
には結婚してないとまずくなってます…)。
と言うことで、あれは悠の七五三祝いだったけど(数えで5歳)、志穂もおめかし
させてもらった、と言う感じでしょうか。
ちなみに、マーシャ結婚、翌年いのりん結婚、翌年佳乃&マーシャ出産、マーシャ
は4月から一年産休って流れかな?
子供の歳が同じで職場も同じでと来たら家族ぐるみの付き合いしてそうだなかなり
佳望学園付属幼稚園アボカド組いのだゆう
のデンパを受信した
115 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/28(金) 16:41:31 ID:yxU2BsZP
釣りじゃないだとっ!
>>115 アキラ「今からでも沢山買いこんで準備室の冷蔵庫に蓄えておこうぜ!」
タスク「それ多分、絶対バレるよね…」
ナガレ「多分というより絶対」
はづきち「この部屋はお菓子貯蔵庫じゃないはずなんだけどなー…」
年下の扱いには慣れている顔だ
お姉ちゃんの風格出てるな
外見は父親似だけど中身は母親似だな
選挙行ってきたら巨大な犬に出会った
吠えられて泣きそうになった
何十メートルあったの?
きっと「よく行ってきた!感動した!もふもふして良いぞ!」と
吠えたんだよw
あまがみ同好会のブルドックみたいっていうか土佐犬みたいっていうか、
人相(犬相?)が悪くてデカい犬だったからマジで怖かった
土佐犬獣人って居たらライオン獣人とかとも肉弾戦で張り合えそう
>>125 若本則夫みたいにブルァァァァ!!とか叫びながら突進してきそうだ
ひろしーーーー
>>122 放し飼いのドーベルマンに二十分に渡って追い掛け回された俺よりまだマシだ
挙句に転んで追い付かれてしまって、食われる!と思ったらベロベロと顔を舐め回された。
人懐っこいわんこだったのね……
なんだーーーうらやましいぞーーー
じまんかーーー???じまんなのかーーーーー(興奮しすぎのため省略されました)
「先生、席替えしたいです」
「どうしたザマスか?」
「前の人がデカ過ぎて黒板が見えないんです」
猛「(-~_~-)」
空子「(´・ω・`) 」
丈「Σ(´゜□゜) 」
なんだこのエロイ肢体は
おっぱい!おっぱい!
>>134 あ、あれ? あの時の恐怖体験ってこんなにエロかったっけ?
ま、まあ、あの時のドーベルマンも雌だったけどさ……この、心の奥にキュンと来る物は何だ……!?
今日は動物によく会う日だ。
台所にネズミが現れた。
1年生のネズミっ娘にからかわれるコレッタを思い浮かべてしまった俺はもうだめだ。
海外のケモノ絵いっぱいある所って無いよな
そういう質問は角煮でね
え?
そういやリスはいてもネズミはまだいないんだっけ
「ドーベルマン、でかっ!」
なんなんだよぉ、何で追いかけてくるんだよ!
僕は既に20分以上も走り続けて息も上がり朦朧としてきた頭で、もう何度目になろうかという問い
を繰り返した。日曜の昼下がり、別段何ということもない街角を友達の家に向かって歩いていた僕が、
角を曲がったその先にそれは突然現れた黒く大きな生き物。短くて光沢の有る艶やかな毛に覆われた
その姿は無駄な脂肪などいっさい無い精悍なもので、その見つめる瞳は全てを見透かすような漆黒の
光を放つ。それが犬だと、ドーベルマンだと認識するまでの僅かな間で僕は唯その美しさに吸い付け
られていた。
座っていてもそいつの顔は僕の顔の高さと同じぐらい。立ち上がったらどんだけでかいんだろう。
じっとこちらを見つめていたそいつは、ゆっくりと腰を上げると僕の方に歩き始めた。僕はその時に
なって初めて、そいつの首輪は何処にも繋がれていないことに気付き、恐怖を感じる。 “犬から逃
げるときは背中を見せてはいけない”なんて知識は、本能的な恐怖の前には無意味だった、だって怖
いんだもの。 瞬間的に駆け出した僕の耳には、奴が駆け始めた事を知らせる、爪がアスファルトを
掻く乾いた音が届く。
それからは無我夢中だった。住宅地の中、角を曲がる、塀を越える、開いてる門をくぐり、知らない
家の庭を駆け抜け生け垣を飛び越え、それでも後ろからの爪の音と、フッフッと規則的に繰り返すさ
ほど乱れてもいない息の声は消えることも遠ざかる事もなかった。どこかに隠れようなんてのは考え
もしなかった。だって相手は犬だよ?
それにしても今日は静かだなぁ、と、酸素の足りない頭で思う。さっきからこれだけ駆け回ってるの
に誰も助けに来てくれないし警察を呼んでもくれない。そう言えば国道を横切ったけどちょうど車も
来てなくって、はねられなくってラッキー。
犬は階段を下りるのが苦手だってのをそう言えば何処かで読んだことを思い出す。そう言えば逃げ回
ってずいぶん丘の上の方に駆けてきたなぁ。この先に行けば小さな神社が有って、そこには参道の長
い階段が有ってその先は商店街だ。流石にそこまで行けば誰か助けてくれるだろう。
裏手から社の横を駆け抜ける。玉砂利に足を取られそうになりながらよろけるように鳥居をくぐった
先は急で長い階段の下り。後ろからの砂利を蹴散らす音を聞きながら階段を駆け降りようとした僕は、
いくら元気な小学生でもこれだけ走れば足が悲鳴を上げだすってことに気付いてなかった。 わっ!
と思った瞬間、気持ちと身体だけが空中へ飛びだして足はついてきてなかった。 あぁ、このまま落
ちるんだ、痛いだろうなぁ、などと暢気に考えながら僕は意識を失った。その直前、逆さまになった
視界に飛び込んでくる黒い光を見ながら。
吸い付くような何かで頬を擦られる感覚で暗い意識の底から僅かに浮き上がる。熱い空気が耳から目
の周りに規則的に吹きつけられるのにあわせて聞こえてくる聞き覚えの有る声の主に思い至った途端、
スイッチが入ったように僕は目が覚めた。目の前にはさっきの黒く大きなドーベルマンの鼻が突きつ
けられ、長い舌で僕の頬を舐めていた。恐ろしい口から逃れるかのように目を泳がせ、僕を押さえつ
けるように覆いかぶさった大きな身体を眺めると…
「お!おっぱい?!」
と言うことで、先の体験談とそれを元に描いた自分の画を肴に勝手にアリガチ異世界ファンタジーへ
のイントロダクションまでを妄想してみましたです。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=381.jpg
145 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/31(月) 22:03:46 ID:jR6Xhk0T BE:11776526-PLT(15000)
犬って、我が子以外にも、他の動物や人間の幼子を子守りする犬も居るよねぇ。
小学生の幼い匂いに惹かれたのだろうか?
守ってあげたい属性持ち犬との出会いはウラヤマシス。
犬に追いかけられるより猫に追いかけられたい
あいつら逃げ過ぎサワレナイ
如何してこうなった、なんだってこんな事に、と言うかここは何処?
余りにも短い間に色んな事が起こり過ぎで、オーバーフローを起こした僕の脳味噌は混乱に満たされていた。
たしか、さっきまで黒く大きなドーベルマンに追い掛け回されて、必死に逃げているうちに神社の階段から転げ落ちた。
……ここまでは憶えている。しかし問題は其処から先だ。
目が覚めたら、僕は見知らぬ場所に居た。
……確か、僕は神社の階段から転げ落ちた筈だ。
ならば目を覚ましたら。其処に見えるのは神社の階段の途中か、その先にある商店街の光景の筈である。
けど、僕の目の前に広がるのは、以前に見た海外の世界遺産を特集するTV番組でしか見られないような
古びた大理石の石床に装飾の施された凄まじく大きな石柱が何本も並ぶ、まるで神殿の中を思わせる光景が広がっていた。
「大丈夫? ずっと目を覚まさない物だから少し心配したわよ?」
しかも、僕を散々追い掛け回していたドーベルマンに頬を舐められていて、
そしてそのドーベルマンにはおっぱいがあって、しかも僕達人間の様に二本足で立って人の言葉を喋っていた。
何この急展開。こんなの最近のジャ○プのマンガでもやらないような展開だぞ?
無論、僕は即座に今の状況が夢だと決めつけ、頬を思いっきり抓ってみたりもした。
しかし、僕の願いも虚しく、頬の痛みと共に今の状況が夢でない事を再確認しただけであり、
おまけにドーベルマンの人に不思議そうに首を傾げられてしまった。うう、まるで僕がバカみたいじゃないか……。
そんな独り後悔する僕の様子に、ドーベルマンの人が服を着ながら困った様に言う。
「う〜ん、ちょっと混乱しちゃっている様ね……」
「仕方ないじゃない。いきなり説明も無しにこんな所に連れて来られたら誰だって混乱するわ」
声は僕の後ろから聞こえた。思わず振りかえり、声の主を確かめてみる。
しかし、その姿を認める事が出来ず、僕は思わず首を傾げた。
「ちょっと、何処見てるのよ! ここよここ!」
下から響く怒声に近い声に、僕が視線を下へ落としてみれば、
其処にはすっごく小さな……なんと言うか、キツネ?の女の子(服装から見て)が尻尾を立てて憤慨している所だった。
その背中には、彼女の小さな身体には酷く不釣合いなトゲ付きのごついハンマー。
なんだ? ドーベルマンの人だけでもビックリしていると言うのに、今度は別の意味で凄いのが出てきたぞ?
次から次に振りかかる状況の変化に脳の処理が追いつかず、僕は唯、目を白黒させるしか出来ない。
そんな僕の様子を、キツネの子は思いっきり不信感丸出しの眼差しで眺めながら、ドーベルマンの人へ文句有り気に言う。
「……ねえ、本当にこんな奴が神託にあった『世界の救い人』なの? アタシ、一瞬だけ神を信じられなくなったわ」
「そんな事は言わないの、コリーヌ。彼はこれでも神託に書かれていた『世界の救い人」で間違いないのよ?」
「ふぅん……こんなハダカザルがねぇ?」
窘められながらも、彼女は思いっきり怪しい者を見る目つきで僕の方へ鼻を突き出し、スンスンと匂いを嗅ぐ。
そんな彼女を見て、ドーベルマンの人はすこし困った様に僕の方へ苦笑してみせた。
どうやら、このドーベルマンの人にとって彼女――コリーヌは少し扱いかねる存在らしい。
と言うか、『世界の救い人』って何? ひょっとして僕の事を言ってる訳?
「おう、姐さん。こいつが『世界の救い人』かい?」
「ええ、そうよ。ブルータス」
うわ。また何か出てきた……今度はすっごくごっついまんまブルドッグの人だ。
その背中の大きな剣と片目のアイパッチ、そして大きく響く低い声が彼のごつさを更に強調している。はっきり言って恐い。
彼――ブルータスは硬直する僕をまじまじと眺め、2度3度匂いを嗅ぐと、僕の頭をぽんぽんと軽く叩きながら言う。
「何だ、大仰な神託な割に『世界の救い人』ってのは随分と可愛らしいもんだな?
俺はもう少し凄い物が出てくるかと期待してたんだけどな」
言って、ブルータスは見た目どおり豪快にガハハと笑う。
そしてコリーヌもそれに賛同する様に、うっすい胸の前に腕組しながらうんうんと頷いて
「全く同感ね。こんな頼りなさそうな奴じゃあ世界を救うどころか、捨てイヌ一人すら……」
「こら、幾らなんでも目の前でそんな事言ったら駄目よ!」
しかし、途中まで言った所でドーベルマンの人に怒られ、コリーヌはシュンと耳を伏せ。ブルータスは頭の後を掻いた。
その様子を僕が呆然と眺めていると、ドーベルマンの人が僕に目線を合わせるように僕の前にしゃがみ込み、
「ごめんなさいね。彼らはあんな事言ってるけど、本当は良い人達なの。だから悪く思わないで頂戴ね?」
と、申し訳なさ気に耳を伏せて謝って見せる。僕は「良いよ…」と、返すしか出来なかった。
……そう言えば今、気が付いた事だけど、僕はドーベルマンの人が恐いと感じなくなっていた。
なんと言うか、彼女の物腰からにじみ出る僕に対する優しさが、最初に感じていた恐さを消してしまったのだろう。
と、それより、先ずはここは何処で、そして僕は何で連れてこられたかを聞かなくちゃ!
「あの、えっと……」
「あ、そう言えば自己紹介がまだだったわね?
私の名前はベルマン・ピンシェル。これでも王宮の騎士団の団長をやってるの。
で、この戦鎚を背負った小さなのはコリーヌ・フォルクツァイケル。こう見えて私の騎士団の副長よ。
そして、この大剣を背負った大きなのはブルータス・ガウンドール。私の騎士団では斬り込み隊長をやってるわ」
「……宜しくね。不本意だけど」
「宜しくな、人間のボウズ!」
しかし、僕が疑問を言い出す前に自己紹介を始められ、僕は「はあ…宜しく」と返すしか出来なかった。
それでも僕が諦めずに言おうと顔を上げるが、どうやらベルマンさんも僕が聞きたい事が分かっていたらしく、
再び僕と目線を合わせるようにしゃがみ込み、優しげに微笑みながら言う
「君が聞きたいのはこの場所が何処で、何で自分がここに連れてこられたか?って事でしょ?」
「は、はい」
「それじゃあ、君をここまで連れてきた責任もあるからね。私がしっかりと分かる様に説明してあげるわ。
先ず最初に、君が来たこの世界は、君の住んでいた世界とは異なるケモールと呼ばれている世界。
そして、今居るこの場所は、そのケモールの真中にある、異界への扉の神殿。分かるわね?」
僕の住んでいた世界と異なる世界? そして異界の扉の神殿? ますますファンタジーっぽい言葉が出てきた。
まあ、イヌが衣服を着て二本足で立って喋っている時点でファンタジーだけどさぁ……。
「そして、君が何故ここに連れてこられたかというと、
さっきコリーヌやブルータスが君の事を『世界の救い人』とか言ってたでしょ?」
「はい、そうですね……」
「掻い摘んで説明すると、今からちょっと前に、近々この世界が大変な事になる、と神託…まあ、神様からのお告げが来てね。
それを回避するには、異世界に居ると言う『世界の救い人』を私たちの世界のある場所まで連れて行くだけしかないのよ。
そして、その神託によると、その異世界に居る『世界の救い人』と言うのが……」
「僕の事だった…と?」
「その通り、話がわかるじゃない」
自分自身を指差して言う僕に、ベルマンさんは嬉しそうに短い尻尾を振って言う。
「それで、『世界の救い人』たる君を迎え入れる役目に、我がピンシェル騎士団が抜擢されたんだけど……」
言って、後で五目並べ?をやっている二人の方をちらりと一瞥して、
「コリーヌはあの小さい体であの性格だから、途中で君の捜索を投げ出す可能性があるし
そしてブルータスはブルータスであの厳つい顔だから、君に会う前にひと悶着起こす可能性があったからね。
それで、私が君を迎えに行く事になったんだけど……」
其処まで言った所でベルマンさんは少し恥ずかしそうに笑い、
「まさか異世界での自分の姿が、本来の獣の姿、獣の知性になってしまうなんて夢にも思ってなくてね。
その所為で、私は『君を迎えに行く』という目的を果たす事だけしか考えられなくなっちゃって、
その結果、君には怖い思いをさせちゃったのよ……あの時は本当にごめんなさいね?」
と、僕に向けて頭を下げるベルマンさん。
なるほど……そう言う理由だったのか。と素直に納得する僕の人柄は『世界の救い人』たる所以なのだろうか?
と、其処で五目並べに勝利と言う形で決着を付けたコリーヌがベルマンさんの話に頷いて言う。
「本当、あれは団長にしては珍しい失敗だったわね?」
「まあ、おかげで姐さんのあられもない姿が拝め―――いってぇ!?」
コリーヌの話に相槌を打とうとした所で、ブルータスが唐突に悲鳴を上げた。
見れば、彼の尻尾が笑顔のベルマンさんに思いっきり握り締められている所であった
「ブルータス? そう言う事は心に思っても決して口に出さないのが生き残る秘訣よ?」
「は、はい……分かりました。すいやせん、姐さん」
どうやら、この様子を見る限り、ブルータスは場を盛り上げる(和ませる?)ムードメーカーなのだろう。多分。
と、そうだ。もう一つ気になってた事があるけど……。
「あの……ベルマンさん、一つ良いですか?」
「あら、何かしら?」
「その…『世界の救い人』の役目を果たせば、僕は元の世界に戻れるんでしょうか?」
そう、僕が帰ってこなければ父さんも母さんも心配するし、
それに学校の友達や先生だって心配する筈だ。そして、僕が一番気になるあの子も……。
それはともかく、幾らこの世界の為とはいえ、僕にだって事情があるのだ。早く帰れるならばそれに越した事は無い。
「大丈夫よ、心配しないで頂戴。役目を果たせばちゃんと君を元の世界へ戻してあげるわよ。私が保証するわ」
「なら良いんですけど……それで、僕がやるべき役目って……」
「それも大丈夫よ。君がやるべき事は唯、目的の場所に行くだけの事だから。そう難しい事じゃないわよ」
ああ、よかったぁ……てっきり、何処かのRPGの様に魔王とかと戦わなくちゃならないのかと思ってたよ……
そうやって僕が安心した矢先、ベルマンさんは僕の安心をぶち壊す事を言ってのけた。
「それに、目的の場所まではここから歩きで半年ほどの距離だから、そう心配するほどの事じゃないわ」
「……え゛? あの、今、なんと……?」
思わず聞き帰す僕に、ベルマンさんは酷く不思議そうに首を傾げながら
「だから、そう心配するほどの事じゃないわって……?」
「いや、そうじゃなくて、その前に言った事……」
「……その前? 大した事無いでしょ? 歩きで半年くらいの距離って」
実に事も無げにベルマンさんが告げた事実を前に、僕は気が遠くなる物を感じた。
は、半年……? って事は、この場所から行って帰って来るまで最低でも1年は覚悟しなくちゃならないの……?
「ちょ、君、いきなり倒れて如何したの!? 私、何か悪い事言っちゃった?」
「団長。どうせこいつは安心して緊張の糸でも切れたんでしょう?」
「やぁれやれ、しょっぱなからこの調子じゃ先行きが不安だなぁ」
僕が倒れた事に酷く慌てるベルマンさんと、的外れな事を言うコリーヌ
そして、それを前に何処か呆れた様に漏らすブルータスの声を聞きながら、
僕は薄れゆく意識の中、心の何処かで悟っていた。
父さん、母さん。そして学校の皆。どうやら僕は、長い旅に出る事になりそうです。と……。
――――――――――――――――――続く……?――――――――――――――――――
勝手に
>>144を続けてありがちな物語の始まりの話を書いてみるでゴザルの巻
でも、続かない
ケモとファンタジーは相性いいよね
続きprz
心がむず痒い
もふもふしてばかりいるからノミが……
噴いたww
首こわいよw
悔しかったら干支に入ってみなさいよーwwww
コレッタ「ねぇ、うし、とら、う……《ねぇ》ってネコの《ね》じゃないのかにゃ?」
鼠ちゃん「ちっちっちっ、ネズミのネだっち。コレッタってオツム弱いっち」
コレッタ「弱くないにゃ……ただ、ちょっと知らなかっただけにゃ」
鼠ちゃん「負け惜しみっち?ちっちっちっー♪」
コレッタ「ちがうにゃ!」
シロ「うーん」
リオ「どうしたんですかシロ先生(独身)」
シロ「お前今なにか語尾に言わなかったか」
リオ「やだな、何も言ってませんよ。オキシドールを置いてください。何見てたんですか」
シロ「コレッタと鼠ちゃんを見ていたんだ。何か間違いがあっては困るから」
リオ「間違いって……いったい何ですか?(百合的な意味?)」
シロ「猫と鼠だからな、食物連鎖的な何かが心配で」
リオ「……心配しすぎじゃないですか」
シロ「いや、本能はいつ牙を剥くか分からないから恐ろしいんだ(現に私も爪が疼いて仕方ない)」
リオ「え、何ですか。シロ先生、語末が聞き取れませんでした」
シロ「保健委員よ、彼女を教室までお送りしてさしあげろ」
保健委員「はいっス!」
リオ「うわ、ちょ、語末に何て言ったんですか?せんせぇー、シロせんせぇー」
がらがらがらぴしゃん(保健室の扉が締まる音
思えば漂白きかない人多くね?みんな結構白いよね
>>160 ザッキーがwかわいいwww
猫らしいなザッキー
そういやあのゴロゴロ音、発声器官とは別のとこで出しててホイミ的な効果があるらしい
無難に脂肪と言い切れる子はおらぬのか
夏に毛皮モサモサの巨大猫と寝たらさぞ寝苦しかろうw
何これ萌えたんだけど。ザッキーに萌えを感じたのは初めてだw
猫って人間より体温高いから人間はひんやりしたものだと思ってるんだろうな
とげちん!
内臓脂肪がレッドゾーンです
いのりんが検査を受けるって事はまた食事制限のシーズンかな
シーズンといえば、運動会や学園祭の季節ですね。
今年の校長は学園祭忘れてないかな
あぁーしまった!
9/2が獣人スレ一周年記念日だったんだ。忘れてたー!
ちなみにケモ学第一号のコレッタが投下されたのは9/12なんだよね
>>170 という事は9/12がケモ学の創立記念日になりそうだな。
どっかのテロとニアピンでちょい縁起悪いなw
じゃあ間をとって9月2日で良いんじゃね!?
9/2が創立記念日で9/12はコレッタの誕生日とか
パネポンの妖精さんを思い出したのは俺だけでいい
それだ! 妙に懐かしい気分になったのは!
魔法少女といえば変身シーンですね!
きらめく不思議空間な背景の中で普段着から魔法服へ脱i・・・
すまん消毒されてくる
新シリーズの予感
>>179 魔法獣少女と獣魔法使いと使い魔候補が通う獣魔法学園と申すか
「きょうから私があなたのパートナーにゃん」
使い魔いいな
ちっちゃい二足歩行キャラはかわいい
なんか全シリーズの変身ポーズとかとれそうだな、リオは
…リオって素材はいいのに性格その他で損してるよな
あぁ白先生もそうk
残念美人のすくつはここですか?
そういや、考えてみれば獅子宮先生も残念美人と言えるk
だが、そこがイイ
怖ぇえってwwwww
130°程後ろ向きそうだから怖い
130°くらいだったら普通の人でもできない?
宴会芸でエクソシストとか出来そうだ
体は前向いて板書してるのに首は後ろ向いてて生徒を見張ってるのか
内職も早弁もゲームも出来ないな
フクロウって聴覚視で距離も測れるんじゃなかったっけ
携帯、私語等で音を出したら即・測位&捕捉
そういう特殊能力を自然に持たせられるから獣人てファンタジーと相性いいんだな
まあ学園物もありっちゃありだがw
しかも羽根が特殊構造で、風切音がほとんど生じないし。
並外れた性能を持つ視覚・聴覚で“獲物”を正確に捕捉すると、
無音で滑空して急速に接近、強大な足爪で一撃で破砕...
もとい、教育的指導を喰らわせる。
ある意味、見つかってから怒鳴られて追い回されるより
よほど怖いな。
>>199 秋冬は利里と鎌田が常時死亡フラグってことだな…
利里汁飲んで頑張るんだ
それもまた死亡フラグ!?
今ケモ学ではアーマードコア流行ってんのかな
ACfAのオンではケモい人見かけなかったぞ。
HIIBのHTV軌道投入成功のおしらせ
今日はゆっくり寝られそうだ
院試オワタ\(^o^)/
夏休み中に終わらせればいいかと考えていたが、よく考えたら世間では夏休みは8月までだった!
全然間に合ってない!
とりあえず投下。
「うっひょぉー!」
叫び声とともに水しぶきがあがり、夏の空にきらきら水玉が光った。
プールサイドに手をつきながら、アキラはプールから這いずり上がる。
ぶるぶると全身を震わせて水滴を跳ね飛ばしながら、
「やっぱりスライダーは最高だぜぇー!」
アキラはタスク、ナガレのいつもの三人組で夏休み最後の日曜日に屋外プールへ来ていた。
毛皮が水分を含み多少歩きづらくなるが、冷たい水の感触は炎天下の元ではたまらないものだ。
数学の課題だとか、美術のデッサンの宿題だとかがあったように思うが、アキラは今は考えないことにした。
「アキラー、よくあんな怖いの滑れるね……。あれここのプールで一番長いやつだよ」
タスクがつぶやく。
「おうともよ!男は黙ってスライダーだろ!ほれ、次はタスクもナガレも行くぞ!」
アキラがタスクとナガレをぐいぐい押しやるが、二人はあまり乗り気ではない様子だった。
「いやだよ、あんな怖いの滑れないよ。あんなのに乗ったら僕、水死体だよ!」
「俺も面倒だ。毛皮がなかなか乾かんしな」
そう言ってなかなか進もうとしない。
このやり取りをしている間にも、時間はどんどん過ぎていく。
このままでは埒が明かないようであった。
「んだよー、お前らそれでも雄か!もういい、俺一人で行く!」
そう言ってスライダーの行列へと駆け出した時だった。
208 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 04:29:44 ID:iXP7QQQj
「ねえ、そこのアナタ」
声が聞こえた。妙に艶っぽい、抑揚を抑えた声だった。
アキラがそちらを向くと、目に焼き付くような真っ赤なビキニを着た、銀髪の狐人の女性がビーチチェアに寝そべっていた。
「え、俺ですか?」
「そうよ、そこのワンちゃんのアナタ。頼みがあるんだけど……」
「な、何でしょうか?」
狐人は背に手を伸ばし、ビキニの紐をするすると外す。
「私の背中に、オイルを塗ってくれない?」
紐とビキニの端がはらりとチェアに垂れる。
現れるのはしなやかな金色の獣毛。呼吸に合わせて艶かしく胎動する。
狐人は凄艶な笑みを浮かべており、それでいっそう妖しい魔力を放っているように感じられた。
アキラはごくり、と自分の喉が鳴るのを聞いた。
「これは……『おとなのおんな』……!」
「ア、アキラ?なんかこの人すごい怪しい感じがするよ……。やめておこうよ……」
とタスクがアキラの尾を掴んで制しようとするも、
「こいつは夏休み最後の神様からのプレゼントに違いねぇ!男は当たって砕けろだ!」
アキラの耳には入っていなかった。猛ダッシュで狐人の下へ駆け抜ける。
「おねーさん、俺アキラです!よろしくお願いしまぁぁぁぁす!」
タスクとナガレはやれやれ、といった様子でアキラへついていく。
思わず引き受けてしまったものの、アキラにとって女性の裸体に触れるのにはかなり戸惑いがあった。
科学教師である跳月に手伝わされて高価な実験器具を持ち運んだときよりも細心の注意を払って、狐人の獣毛にオイルを塗っていく。
「お、おねーさん、こんなもんでよろしいでしょうか!?」
「おねーさん、って呼ばれるのも嬉しいけど、私にはね、悠里、って素敵な名前があるのよ?」
「ででででは悠里さん!塗り加減はこんなもんでいいでしょうか!?」
オイルのぬめりと獣毛の滑らかさが、アキラの言動をしどろもどろにする。
アキラ自身、自分で何を言っているのか分からないほど混乱していた。
「うん、ちょうど好い加減だわ。それよりもアキラ君、この後時間空いてる?」
「こ、この後ですか!?いいったい何を……」
「ふふ……お姉さんがもっといいことを教えてあげるわ」
「い、いいことですか!?うおっ鼻血が!」
アキラの理性の糸はもう張り裂けんばかりになり、とうとう鼻からはつうと鼻血が垂れてきた。
血が悠里の毛皮を染めないようにと必死に鼻を押さえながら上を向く。その様子を見ながら、悠里はくすくすと笑っていた。
「そう、おとなのいいこt……っ!」
悠里の言葉が途中で途切れる。たん、と音がしたのでアキラがそちらをみやると、ビーチボールが跳ねて転がっていくところだった。
どうやら何者かが悠里の頭めがけてビーチボールを放ったようだ。
210 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 04:32:21 ID:iXP7QQQj
「おい悠里、お前、何また年下を誘惑してんだ!」
言葉とともに水着にパレオを纏った人の女性と、桃色のスカートビキニを身につけた兎人の女性が悠里たちのほうへと歩いてくる。
ビーチボールの投手は人の女性の方のようだ。
「なによっ、翔子。せっかく人が楽しんでいたところを!」
「なによ、じゃない!いつまでそんな年下をからかって楽しむなんてアクシュミなことやってんだ!」
「失礼ね!年下だけじゃないわよ!たとえ年上でもウブなところがあれば私は誘惑して見せるわ!」
「そういう問題じゃねぇから!」
翔子と悠里のやり取りを尻目に、兎人のりんごは、呆気に取られているタスクとナガレの元へと歩いていった。
「タスクくん久しぶりー」
「あれ、星野さん。一体どうしたんですか」
「うーん、翔子ちゃんと悠里ちゃんと一緒にここに来たんだけどね、悠里ちゃんがあの調子だから……」
「あの調子?」
「うん、悠里ちゃんなんか『そういうこと』に免疫がない男の人をからかうのが好きみたいで……。
タスクくんの友達に迷惑かけちゃったね。ごめんね……」
りんごが目を潤ませてうつむく。タスクも慌てて制止する。
「いえいえ、アイツもいっつも調子乗ってるから悪いんですよ」
「ううん、こっちこそ私たちが見張っておかなきゃいけなかったのに……」
「星野さんたちは悪くないですよ!僕らもアキラの暴走を止めなくちゃいけなかったのに」
「違うよ、タスクくん。私たちこそ……」
一方翔子と悠里の争いはまだ続いていた。
「とにかく、人様には迷惑かけるんじゃない!」
「迷惑なんてかけてないわよ!これはギブアンドテイクの関係よ!」
「なにがギブアンドテイクだ!ただ自分のいい様に捻じ曲げてるだけじゃねーか!」
争いが激しくなるにつれて、悠里の乳房はたゆんたゆんと揺れ動く。ビキニの紐を外したままなので、いまにもポロリしてしまいそうである。今のアキラには刺激が強すぎた。
「あ、俺もう限界……」
アキラの鼻から鮮血が噴出した。
口論の続く悠里と翔子、鼻血を流し倒れるアキラ、ひたすら謝り続けるタスクとりんご。
「……早く帰りてぇ……」
彼らを見てナガレは一人呟いた。
おわり
久々、というか10ヶ月ぶりの投稿ってどういうことなの……。
考えてみたら、獣人のどこにサンオイルを塗る必要があるんだろうか。
オイルで体毛を寝かして太陽光で熱することでストパーのような効果が現れ、
全身が美しくしなやかなサラサラヘアー(?)になるとか。
えろす、えろすよnicegj
3匹はマジで中学生だなー
疑いようのない真性の中学生だ
ゆやよんな悠里さんに惑わされたい。
いや…りんごたんも…うう!
水泳用ゴムキャップが痛そう
りんごたんの…ふくよかな乳に…挟まれたい……!
>>216 んなもん気にしてる方が負けだ
抜け毛対策のゴムキャップなんか焼け石に水だろw
話をMOONLIGHTでぶった斬って俺が通りますよ……
今回はとある物書きとその友人?の話を投下します。
あいっかわらず長いので、支援をしていただけたら有難いです。
「……詰まった」
ある日曜の昼下がり、仕事部屋である書斎で尻尾をだらりと下げた私は困った様にポツリと漏らした。
目の前の机の上には真っ白な原稿用紙。年季の入った愛用の万年筆も今は所在無さ気に机の上に転がっている。
創作活動を行う者であれば、必ず一回は訪れる意欲・モチベーションが湧かなくなる状態。その名はスランプ。
私、御堂 謙太郎はかれこれ三日前から、このスランプと言う名の悪魔に苦しめられていた。
「こまったな…」
『片耳のジョン』の新作の構想を練り始めた所までは良かった。
しかし、ある所まで行った所で行き詰まってしまい、それによってモチベーションが急落してしまった。
むろんの事、私はそれを解消すべく書斎の本でも読んだり、窓の外の景色を見るなど気分転換を図るもなしのつぶて。
結局、書き進めるべき筆はぴたりと止まり、そのまま三日も無駄な時間を過ごしてしまった。
いかん…これではいかん。このままでは次の作品を楽しみにしてくれている読者に大変な迷惑がかかってしまう。
もし、こんな事で発売が延期にでもなってしまったら、あの白いイヌの少年もさぞ尻尾を垂らして落胆してしまう事だろう。
私は編集部や印刷所には幾ら迷惑をかけても構わないが、作品を愛してくれる読者だけは大事にしたいと思っているのだ。
……と、こんな事が万が一、私の元担当である妻、利枝に知られでもしたら大変な事だ。余計な事は考えないに限る。
「どうした物か…」
気が付けばつい口からぽろぽろと漏れ出てしまう愚痴を塞ぐべく、
私は愛用のパイプをパイプポーチから取りだし、パイプの中へ刻んだ煙草の葉を丁寧に詰める。
そして詰めた煙草の表面全体を焦がす様にオイルライターで点火しつつ、パイプを咥えてぷかぷかと小刻みにニ、三服。
炭化しながら膨張し、盛り上がってきた煙草の葉をダンパー(煙草の葉を均す為の器具)で軽く均等に押さえて準備完了。
後は、マウスピースを噛み潰さぬ様に軽く牙で保持して、煙草の片燃えに注意しつつ心行くまで煙草の味を楽しむだけ。
このパイプ煙草は口に咥えて火を付けるだけの紙巻煙草に比べて、
準備から吸い終わった後の処理までの手順が非常に厄介かつ面倒ではあるが、
その面倒さこそが、煙草を吸う、と言う行為を実感させるのだと私は勝手に思っている。
それに、何より見た目が格好良いではないか。
それは兎も角、今はこのスランプに陥った状況を如何するか、煙草を味わいつつ考えるとしよう。
何時もならば、ここは毛皮も尻尾も無い血の繋がらぬ息子の行動観察と行きたい所だった。
息子は肉親である今は亡き親友の若い頃に似て結構やんちゃで、見ていて決して飽きさせない魅力がある。
私がモチベーション不足に陥った時は、何時もこの血の繋がらない息子の魅力に助けられたと言っても良いくらいだ。
だがしかし、私は昨日しがた、その息子本人から『俺の事を本に書かないでくれ!』と厳重注意を受けたばかり。
よって、息子の行動観察と言う案は没。モチベーション回復には結構効果的なのだが……至極残念である。
ならば、別のモチベーション回復法を探さねばならない訳だが……。
――と、そうだ! 何時もは卓が出掛けて居ない時に使っているあの方法を使うとするとしよう。
あの方法は息子の行動観察に比べ、少々金が掛かってしまうのが難点だが、今は背に腹は換えられない。
「行くか」
思い立った私はパイプの中の煙草が全部灰になる最後まで吸い切ると、
キチンと手入れした上でパイプポーチへと戻して鞄へ放りこみ、その鞄を手に書斎を出るのであった。
「あら? あなた、お出かけ?」
階段から居間を通る私に声を掛けるは、上機嫌に立てた黒い尻尾をゆらゆらと揺らす我が妻――利枝。
恐らく、妻は庭で取り入れた洗濯物を運んでいる最中なのだろう、その両手に衣服が詰まった籠を抱えていた。
取りあえず、私は妻の問い掛けに答える代わりに軽く尻尾を振って見せる。妻は笑顔一つ浮かべ、
「あなたの事だから多分、執筆作業が行き詰まったから何時もの場所へ、って所ね?」
「む、むぅ…」
流石は我が妻、私のやろうとしている事をズバリと言い当ててくれる。思わずマズルから漏れる感嘆の呻き。
私は人から良く考えが読めないと言われる、しかし妻は長年連れ添ってきたからだろうか、私の考えを簡単に言い当てる。
それも、私は何も態度に示していないにも関わらずだ。これぞ女のカン、と言う物なのだろうか?
これでは浮気なんとてもじゃないが出来やしない。……もっとも、する気も無いが。
「まあ、そう言う事をするのも良いけど。あなた、くれぐれも原稿を”落とさない”様にね?」
「……ぐ、心掛けておく」
去り際の妻から笑顔で釘を刺されてしまった。それも五寸釘サイズの釘をぶすりと。重さを増す我が尻尾。
ぬう……これでは何が何としてもモチベを回復せざるえないではないか……!
流石は私の妻、かつては作家の首を真綿で締める鬼担当として、同業者から悪鬼羅刹の如く恐れられてきただけはある。
普段、妻は何処までも優しい聖母の様なケモノなのだが、こと仕事の事となると一転、聖母の顔から般若の顔へと代わる。
特に、原稿の締めきりが間に合わない時となると、妻はそれこそ地獄の鬼すらも尻尾巻いて逃げ出す程の修羅となる。
……因みに、妻の言う『原稿を落とす』というのは、作家の原稿が締め切り日に間に合わない事を指す。
もし、これで締め切りに間に合わなかったら……その事を想像するだけで尻尾を股の間に引っ込めてしまいそうだ。
「あれ? 親父、どっか行くの?」
妻の尻尾を見送った後、少しげんなりとした物を感じつつ数歩歩いた所で。
居間のソファで寝転がってゲームをしている血の繋がらぬ息子――卓がこちらに気付き、声を掛ける。
むろんの事、私は妻の時と同様に、何も応えない代わりに尻尾を軽く揺らして見せる。
しかし、それだけでも卓にとっては充分な返答だったらしく、ゲームをしていた手を止めて意外そうな表情で問う。
「へぇ、出不精の親父が出かけるなんて珍しいな、どんな風の吹きまわしなんだ?」
息子よ……それはお前が自分の事を本に書くなと私へ注意したからだ。
だが、その言葉は声に出さず胸の内に止めて置き。只、何も言わず静かに息子の目を見詰めるだけにしておく。
私は余計な事を言って事を荒立てるのが嫌いなのだ。そう、良く言うであろう、口は災いの元と。
「……よ、良く分からないけど、俺、何か親父の気を悪くするような事言ったか?」
如何も見詰める私の目に不穏な物を感じたのか、困った様に苦笑いを浮べる息子。
しかし、私は何の一言も返す事も、そして尻尾を動かす事も無く、只じっと息子の目を見詰めるだけにしておく。
当然、そんな私の反応に息子は更に困惑するのは必至で、
「お、おい、親父…本当に何かあるなら言ってくれよ! 何も言わないってのが一番気になるじゃないか!」
しかし、私は必死に問いかける息子へぷいとそっぽを向いて、そのまま何も言わず、すたすたと玄関へと向かう事にする。
さぁ、我が息子よ、これから答えの無い問題で散々悩むといい。これは私の楽しみを取り上げた罰だ。
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ………
頭を抱える息子を置いて意気揚揚と玄関を出た私は、
イヌ系種族用のゴーグルタイプのヘルメットをかぶり、愛車に跨って目的地に向けてひた走る。
愛車の名のベスパ(スズメバチ)の名の由来ともなった、2ストロークエンジンの甲高い排気音が耳に障るが、
何分、このバイクは友人から譲り受けたウン10年前の中古――いや、骨董品だから仕方が無い。
一応、そろそろこんな排ガス規制云々以前の品にとっとと見切りを付けて、新しいバイクに買い換えようとは思っているが、
元来から出不精な私に、その機会が訪れるのは今暫くは無さそうである。
「秋、か……」
走る道の先、空一杯に広がる鰯雲をみて、私はようやく今が秋だと言う事に気が付いた。
私は余程の事がない限り出掛ける事が無い上、一旦執筆作業に没頭すると時間の流れと言うものをすっかり忘れてしまう。
確か、以前に私が出かけたのは桜が花開く季節だった気がする。…あれから五ヶ月以上も出掛けていなかったのか、私は。
ううむ、次から原稿が出来た時はバイク便任せにせず、自らの足で出版社へ持っていくべきか?
―――いや、多分、無理だな。その時の私も面倒臭がってまたバイク便任せにする筈だ。
「……ついた」
そんな愚にも付かぬ事を考えつつ、息子よりも付き合いの長い中古バイクで走る事小1時間、
私が到着した場所は、中央大通りからやや外れた通りに面するビルとビルの間に挟まる様にして佇む一軒の喫茶店。
軒先に吊り下げられた木製の看板には、やや掠れたペンキの文字で『喫茶・フレンド』と書かれてあった。
その店横の駐輪場の柱へ愛車をチェーンで繋ぎ、私は脱いだヘルメットを片手に尻尾を揺らしていざ鎌倉。
「いらっしゃい…――と、おや、御堂の旦那さんじゃないか。こりゃ随分と久しぶりだねぇ」
カランコロンとベルを鳴らしつつドアを開けるや、カウンターで皿を磨いていたオヤジさんがこちらに気付き声を掛ける。
私はオヤジさんに向けて、ああ、とだけ応え、そのまま『フレンド』での何時ものお気に入りの場所へと足を向ける。
目指す場所は、店内で一番奥まった場所にある大通りに面した窓際、大通りを行くケモノや車を一望できる喫煙席である。
「ふむ」
良かった、どうやら先客はいない様だ。これで心置きなくモチベ回復が図れそうである。そう思うと心なしか尻尾も軽い。
ここは場所が良いのか、偶に私と同じ目的?の客が占有している時があり、下手すれば数時間は席が空く事が無い。
もし、そうなっていれば、私は耳を伏せて涙を飲んで、一つ隣の禁煙席に座らなければならなかった。
そう、私の様な愛煙者にとって、煙草を味わえない時間と言うのは苦痛に他ならないのだ。
223 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 21:11:32 ID:iXP7QQQj
しえーん
……閑話休題。
今はタバコが吸える吸えない云々の事より、肝心要のモチベ回復が先である。
息子の行動観察に続く私のモチベ回復法、それはズバリ、この喫茶店の窓から見える通りを行く人々の観察である。
意外に理解されない事ではあるが、通り行く人々を観察するとその人、そのケモノそれぞれの人生が見えてくる。
あの毛並みをヨレヨレにして疲れた様に歩くクマのサラリーマンは、仕事や家庭で相当苦労しているのだろう、とか
あの尻尾を立てて軽やかにスキップするネコの少年は、これから彼女との待ち合わせ場所に向かっているのだろう、とか
道行く人々の様子から、その人が如何言うケモノで、そしてその人がこれから何をするのかを想像するのが楽しいのだ。
私が作家を志している大学生の頃は、何時もこの喫茶店でこうやってモチベ回復を図っていた事を思い出す。
それに、今行き詰まっている事を解消するにも、この人々の行動観察は実に都合が良い。
と言うのも、私の物語作りは中核となる登場人物の構想から始まると言っても過言ではない。
先ずは人物設定を作り、その次にその人物――彼らが登場する舞台を作り、その中で彼らが動く大まかな流れを作る。
そして、その後は彼らの事情や細かな舞台設定、犯人が行うトリックにその他諸々の肉付けをしていって、
最後に誤字や矛盾が無いか如何かを何度か読み返す事でしっかりと推敲し、問題が無ければ完成、となる。
しかし、それが最初の人物作りの時点で上手く行かないとなると……後は考えなくても分かるだろう。
今の私を悩ませているスランプのそもそもの原因こそ、この登場人物の構想の行き詰まりにあった。
何分、今まで22作も書き続けていた為か、自分の中にあるキャラ作りにおけるパターンもマンネリ気味になりつつある。
この前なんか、名前だけが違うだけでほぼ同一の人物を出しそうになった事もあった……無論、寸での所で書き直したが。
そんなマンネリ気味な人物作りのパターンを打破する為にも、この人々の行動観察は必要不可欠なのだ。
しかし、息子の行動観察に比べると……いや、今は出来無い事を望んだって仕方が無い。
「……」
それにしても、何時もながら思うがこの喫茶店は雰囲気が良い。
鼻に感じるは、忙しなく時間が流れる外界から切り離された、独特のゆったりとした空気。
そして、何時来ても変わらぬ、そう、まるで流れ行く時代の川から三日月湖の如くぽつんと取り残された店内の光景。
あの古い型の留守番電話は確か、私が作家デビューした頃にオヤジさんの奥さんが購入した物。まだあったとは…。
気配りの効くオヤジさんのエアコンの操作で空調も程よく効いて、残暑の厳しい盛りでも舌を出す事無く快適に過ごせる。
偶に、余り素行の宜しくなさそうな学生達も訪れる事があるが、それもこの雰囲気のスパイスと思えばさして気にならない。
まあ、なんだかんだと言いながらも、私はこの店が気に入っている事は間違い無いだろう。
さて、くだらない話はさて置いて、これから楽しい時間だ。そう考えると自然と尻尾を振ってしまう。
はてさて、これから如何言う人物が私の前を通り掛かり、如何言うケモノ模様を見せてくれる事やら、非常に楽しみである。
「……マスター、コーヒーのブラック」
「あいよ、御堂の旦那さん」
そして、心の中でこれからの事に想いを馳せつつ
早速、通り掛ったオヤジさんへ注文を行うと、私はパイプ煙草を吸う準備を始めるのであった。
それから時間も過ぎて、時計の針がLの字を示す頃、
5杯目のコーヒーをお代わりした私は、数分程前に頼んだホットケーキの到着を待ちつつ順調にモチベ回復を進めていた。
この店の窓から見える通りは狭さの割りに人通りがそれなりにあるので、人々を観察するのに事欠く事は無い。
今も、私の目の前には多くの人が通る。クマの親子連れ、杖をついた人間の老人、携帯片手の虎の女子高生、
そして暇そうに周囲を見回す何処か見覚えのある白いイヌの初老男性…――目が合った。
「……拙い」
私が痛恨の呟きを漏らすとほぼ同時、
白いイヌの初老男性――”奴”は嬉しそうに尻尾を振ると、早速、店の入り口へと向かったらしく、私の視界から姿を消す。
多分、今の私の尻尾はだらりと垂れ下がっている事だろう。もう今直ぐにも会計をすませてこの店を後にしたくなった。
だが、今更逃げ出そうとしたとしても、恐らくは会計しているうちに店に入ってきた”奴”と出くわす可能性は高い。
よって、私に出来る事は唯一つ――これから起きる事を受け入れる。それだけだった。
「……」
取りあえず、せめて気を落ち着かせようと、私は咥えていたパイプを置いて、コーヒーを一口啜る。
しかし、何時もならば香り高く美味しい筈のコーヒーは、この時は泥水のような味にしか感じなかった。
「やや! こんな所でコーヒーを飲んでいる方は池上先生!」
そして、私にとって永遠にも等しい十秒が経った所で、
何処か軽薄さの混じった聞き覚えのあるわざとらしいくらいの大声が、ぺたりと伏せている私の耳を容赦無く震わせる。
思わず、私をペンネームで呼ぶな! と”奴”へ吠え掛かりたくなったが、ここは静かな喫茶店の店内。我慢するしか他が無い。
せめて他人のフリをしようと窓の外を見ている私の努力も虚しく、”奴”の匂いと足音がずかずかとこちらへ迫ってくる。
「いやー、まさかこんな所で池上先生に出会えるなんて、本当に奇遇だなぁ!」
「……」
そして、私のテーブルの向かい側へ無遠慮に座った”奴”が、ばたばたと尻尾を振りながら嬉しそうに言った。
それに対し、私はと言うと、折角回復し掛けたモチべがスカイダイビングの如く奈落の底へ急降下して行くのを感じていた。
嗚呼、私のやる気が、モチベーションが、”奴”の所為で塵と消えて行く……。
―ーここで、私、御堂 謙太郎と”奴”との関係を説明するとしよう。
……本当は”奴”の事を説明なんぞしたくは無いが。分からない人もいるから今回は特別だ。
”奴”の名は犬上 裕。”奴”は詩集作家とジャンルこそ異なっているが、私と同じ出版社に所属する作家をやっている。
そして、”奴”は私の大学生時代の同期であり、それと同時に”奴”は私の事を親友といって憚らない。
無論、私にとっては”奴”は親友ではなく腐れ縁でしかないのだが……。
大学生の頃、私は元来から一匹狼な気質だった為か、一人で行動する事を好み、常に一人でいる事を望んだ。
そんな私と行動を共にした他の同期達は決まって『狼らしくない』『協調性が無い』と文句を言い、
挙句に幼馴染の親友からは『お前は相変わらずだな』と苦笑されたが、私はさして気にしなかった。
そうして数ヶ月も経つ頃には同期達も私の性質を理解したらしく、敢えて私へ関わろうとする者は次第に少なくなって行った。
だがしかし、”奴”――犬上 裕だけは違った。
”奴”は私の何処に興味を持ったのか、私の行く先々に尻尾を振りながら付いて周り、私の心の平穏を乱し続けた。
当然、一人でいる事を望む私は幾度となく”奴”を拒絶するのだが、
幾ら無視されようとも、幾ら邪険に扱われようとも、時には尻に蹴りを加えられようとも、
”奴”は微塵も気にする事なく、それ所か私の事を親友とまで言い出す始末。本当に手におえない奴だった。
それでも私には希望はあった。そう、大学さえ卒業出来れば”奴”との縁は自然と切れる筈! と当時の私は考えていた。
しかし無情にも、運命は私の味方とはならず、それ所か私へ反旗を翻した。
大学を卒業後、作家デビューを果した私を待ち受けていたもの、
それは同じく作家デビューを果し、尻尾を大回転させて私へ挨拶する”奴”の姿だった。
この時ほど私は、運命の女神とやらが現実に存在するのなら、その喉元へ食付いてやろうかと考えた事はなかっただろう。
以来、この腐れ縁はカーボンナノチューブの如きしぶとさで頑丈に切れる事無く、何時までも繋がり続けている。
……無論、私の意思を蔑ろにして。
しえん
「ホットケーキセットをお待ちのお客様、お待たせしました〜」
どうやら物思いに耽っている内に、頼んでいたホットケーキが出来あがったようだ。
やれやれ、”奴”さえ来なければもう少し落ちついて食べれていたのだろうが……。
「おお、池上先生も中々気が効きますな? わたし、ちょうど甘い物を食べたい所だったんですよ」
イヌのウェイトレスがホットケーキを置くなり、”奴”は其処へ間髪いれずフォークを伸ばす。
――って、ちょっと待て、それはお前の為に注文した物ではないぞ!? それにペンネームで呼ぶな!!
「をや? 如何したのだい? 池g…ゴホン、謙太郎君」
「……」
やっと気付いたか、と言わんばかりにばかりに、私はホットケーキの一枚を切り分けている”奴”を睨む。
しかし、”奴”は私の睨みを変に解釈したらしく、ホットケーキを食べつつパタパタと手を振って抜かす。
「あーあー、気にしなくても良いよ。残す事無く全部食べてあげるから」
そう言う意味じゃない!! 人の物を勝手に食うなと良いたいんだ!!
――っと、落ちつけ、落ちつけ、御堂 謙太郎。怒るな、怒るな、御堂 謙太郎。
私はこんなくだらない事で直ぐに毛を逆立てて牙をむくようなケモノじゃあない筈だ。冷静になれ、私!
そうだ、ホットケーキくらい”奴”に食われたとしてももう一度注文すれば済む事じゃないか。
そう思った私は早速、ホットケーキをもう一セット頼む事にする。
「ホットケーキ一つ」
「あ……それが本当に申し訳ありませんが、お客さま。
ホットケーキは先ほどので材料を切らしてしまって、マスターが買いに行っている所でして……。
その為、ご注文から出来あがるまで只今から約30分ほど掛かりますが……それでも宜しいでしょうか?」
「……いや、もう良い」
しかし、犬のウェイトレスから申し訳無さ気に帰ってきた答えは、私を落胆に追い込むには充分過ぎる物であった。
なんでこう言う時に限って材料が切れるのだろうか? どうやら、今日の私は幸運の女神から見放されている様である。
いや、たまたま出掛けた喫茶店で会いたくない”奴”と出くわした時点で、私の運は地の底に落ちてしまったのだろう。
なんだか無性に腹立たしくなってきたので、”奴”がホットケーキの最後の一枚に手をつける前に皿ごと奪取しておく。
「あれ?、君も本当は食いたかったのかい? いや、済まんね」
済まんねって……そもそもこのホットケーキは私が頼んでいた物だぞ? それを取り返すのは当然の事だ。
と、”奴”へ突っ込むのも虚しいので、私は何も言わずホットケーキを切り分けて口にするだけにしておく。
だがしかし、”奴”は何する訳でもなく、ただニコニコ顔でホットケーキを黙々と食べる私の様子を眺めていたりする。
”奴”は私の仏頂面何ぞ眺めて何が面白いのだろうか? 時折、”奴”の精神構造が分からなくなる事がある。
そんな私の考えを知ってか知らずか、”奴”はニコニコ顔のままで言う、
「そう言えば、君がホットケーキを食べている姿を見て思い出したけど、
この前……と言ってももう何ヶ月か前の話だけど、わたしの息子が君に世話になったそうじゃないか」
「……?」
……なんだその脈絡の無い話の振り方は。
いや、それ以前に、私の家にお前の息子が遊びに来た事とホットケーキに何の関連があるのだ?
そんな私の疑念が尻尾に見えていたらしく、”奴”は付け加える様に
「いや、息子から聞いた話だと、君の家でホットケーキをたらふくご馳走になったらしくてね。
それで、君がホットケーキを食べているのを見て、ふとそれを思い出した次第でね」
なんだ、そう言う事か。だったらそうだと早く言って欲しい物だ。これだからこいつと話していると疲れる。
確かに妻の利枝は客に手作りのケーキを振舞うのだがその量が半端ではない。とにかく多過ぎるのだ。
聞いた話では、妻がケーキ作りを習った先生はあるスィーツショップの店主だとか言っていたが…まさか、その先生の影響か?
そう、私が物思いにふけっているとはつゆ知らず、”奴”は少し声を潜めて問いかけてくる。
「所で健太郎君、その時……息子は君に失礼な事とかしなかったかね?
息子はああ見えて結構気難しい所があってね、ひょっとしたら君に何か失礼な事を言ってなかったか心配なんだよ」
「…………」
”奴”の息子――以前、卓が私の大ファンの子だと言って連れてきた犬の少年。確か、名はヒカルといったか。
彼は文学に対して何処までも純粋で、本と言う存在の全てを愛していた私の若い頃を彷彿とさせる少年だった。
その彼の白い毛並みと犬上、という姓で、何となく尻尾にピンと来ていたが、本当に”奴”の息子だったのだな。
なんというか……如何してこんな”奴”の遺伝子からあんな良い子が出来たのか正直、遺伝子の不思議を感じてしまう。
そう考えると自然と漏れ出る溜息、すると”奴”はそれを不穏な物と受け取ったのか血相を変えて
「え? ちょ……まさか、本当にヒカルが君へ何かしたって言うのかい……?」
「……違う」
「へ? 違う? でも、なら何故溜息を?」
「…………」
”奴”の疑問に私は何も答えず、ただ、思いっきり憐憫を込めた眼差しを送ってやる。
暫くの間、”奴”は私の眼差しの意味を考えていたようだが、どうやら考えるのを止めたらしく、
「まあ良いか」と漏らした後、何事も無かったかの様に話題を別の物へ切り替えてきた。
「そう言えば、息子の話で思い出したけど、2ヶ月ほど前にエッセイ本を出してね、これが結構売れてるんだよ。
特にわたしと同じ年代の男性の間で好評らしくてね、何でも聞く所によると、妻帯者の苦労話に共感を覚える、とかね」
「……そうか」
ああ、そう言えば、確かそんな本を妻が持って帰ってきていたな……?
だが、どうせこいつの事だから、くだらない事しか書いていないだろうと思ってまだ読んではいなかったが。
後で暇が出来たら1、2ページほど目を通してみるとしよう。
「まあそれで、その好評に付きって所でエッセイの2作目を書く事になったんだけどねぇ……。
それが途中まで書いたのは良いんだけど、ちょっとした事で行き詰まっちゃってね。いやぁ困った困った」
「…………」
……そうは言うが、私の目には全然困っている様に見えないのは気の所為だろうか?
同じく執筆に行き詰まっている私にしてみれば、この状況で尻尾を振れるこいつの能天気さが少しだけ羨ましく感じる。
「ま、そう言う訳で、家でぼさぁっとしているのもなんだし、
何かエッセイに書ける良いネタが無いかと、そこら辺をぶらぶらと歩いてたんだけどね。
まさかこの場所で君に会えるとは夢にも思って無かったよ。いやぁ、偶然と言うのも恐ろしいもんだねぇ」
ああ、その事に関しては私も同感だ。
まさか会いたくも無い”奴”と殆ど同じ考え同じ事情同じ理由で、ここで出くわす事になるとは夢にも思って無かったよ。
つくづく偶然とやらが恨めしく感じる。本当に偶然の女神がいたなら、その喉を思いっきり食い破りたい気分だよ。
「そうだ! これから書くわたしのエッセイの2作目に君も出してやろう。どうだ、嬉しいだろ!」
「…………」
「んんぅ〜? なんだか嬉しくなさそうだね? そうか、分かったぞ! 出演料が欲しかったんだね。
まあ、君も金を稼がなくては奥さんに怒られるからね。よぉし、ここは大盤振る舞いとして100円あげよう!
どうだ、嬉しいだろう? 謙太郎君」
さっきから私は何も言っていないのに、こいつは勝手に話を進め始めている……ここは昔と殆ど変わってはいないな。
そう言えば私が大学生の頃も、この場所で”奴”とこう言う”噛み合わない”やり取りをやっていたのを思い出す。
大学生の私が黙ってメロンソーダを啜っている向かいの席で、同じく大学生の”奴”が勝手に話を進めて勝手に決定する。
それがあの頃の大学の帰りの喫茶『フレンド』にて、毎日の様に繰り広げられた光景だった。
ああ、なんだか思い出していると急にメロンソーダが飲みたくなったな……。
「百円はいらない」
「……へ?」
「代わりにメロンソーダ」
「ま、まあ、それで君が良いって言うなら私が注文しておくけど……おねーさーん、メロンソーダ一つ!」
私の急な心変わりに”奴”は少しだけ戸惑ったのだろう。注文する”奴”の尻尾が少しだけ逆立っていた。
材料切れだったホットケーキと違って、メロンソーダは材料が有り余っているらしく、
”奴”の注文から程無くして、私の目の前のテーブルによく冷えた『出演料』が鎮座した。
早速、ストローを啜るとメロンの香りと共に口腔へ冷たさと爽やかな刺激が広がる、相変わらずここのメロンソーダは美味い。
無論、これも既製品なのは分かっているのだが、ここの雰囲気が一味プラスさせているのだろう。
「君のことだから、てっきり断ってくる物だと思ってたんだけどね……意外だなぁ」
「…………」
黙って『出演料』をストローで啜る私へ、”奴”は酷く意外そうに漏らす。
しかし私は何も言う事無く、ちらりと”奴”を一瞥してフンと鼻を鳴らすだけ。”奴”への返答はこれで充分。
端から見れば冷たい様にも見えるが、これも大学生の頃の私と”奴”の間ではおきまりのやり取りだ。
むしろ、大学生の頃の方が冷たくあしらっていたと言えるだろう。
「父さん…こんな所で何やってるのさ」
ぼんやりと過去を振り返っていた所で、何処か呆れを入り混じらせた声が私と”奴”の耳を揺らす。
ゆっくりと声の方向に視線を向けると、其処には”奴”と同じ白い毛並み、同じふさふさの尻尾を持つイヌの少年の姿。
それに気付いた”奴”はわざとらしいくらいに大げさに驚くリアクションを取って
「おぉ、我が息子よ! 何故こんな所に?」
「それを聞きたいのはぼくの方だよ。何で父さんが池が…ゲホン、卓君のお父さんと一緒に居るのさ」
”奴”へジト目を向けて問う彼は”奴”の息子の犬上 ヒカルだった。
恐らくこの『フレンド』の二件隣にある『尻尾堂』で本を買っていたのだろう、
彼は店の名前が印刷された紙袋を大事そうに脇に抱えていた。
しかし、こう目の前にしてみると、姿形はともかくとして性格は”奴”と殆ど正反対だと感じてしまう。
ひょっとすると、彼は”奴”を反面教師にして育ったのかもしれないな?
「いやぁ、実は言うと彼は私の大学時代の親友でね。
次のエッセイ本に書くネタを探していたら、たまたまこの場所で彼と会ってね。
せっかく懐かしい場所であったならばと思って、彼とこうやって旧交を深めている所だったんだよ」
「……父さん、それは本当?」
「本当だって。…私は大学の頃からの親友だよな。なぁ、謙太郎君?」
「…………」
こらこら、確かにお前とは大学の頃は同期だったが、私は今でもお前の事は親友とは思っていないのだぞ?
唯一、私が親友と認めている人物は後にも先にも卓の実の父親である彼一人だけだ。こいつには其処を分かって欲しい。
ついでにいえば、息子のヒカルから疑いの眼差しを向けられているのに気付いてもらいたい物だ。
「全く、父さんはもう……ごめんなさい、卓君のお父さん」
「謙太郎で良い」
「え…? あ、なら謙太郎さん。その、ぼくの父がご迷惑をかけませんでしたか?」
私の指摘にヒカルは一瞬戸惑ったものの、直ぐに言い直して私へ心配げに問いかける。
その様子に私が、彼は本当に良い子だな。と感心した所で、空気の読めない”奴”が横から口を挟んできた、
「迷惑かけるとはご挨拶だね、ヒカル。私は彼と……」
「父さんは黙ってて」
「(´・ω・`)」
しかし、言い切る間も無く息子に一喝されて、”奴”は親に叱られた子イヌの様に耳と尻尾をしょぼくれさせる。
その父子のやり取りを眺め、私はメロンソーダをひと啜り。氷が溶けたのだろうか、ソーダの味が少し薄まっていた。
「とにかく、その、ぼくの父が謙太郎さんに迷惑掛けたなら父に代わってぼくが謝ります、だから……」
「構わん」
「……へ? それって?」
おずおずと謝り始めた所での私の一言に、一瞬だけきょとんとした表情を浮かべるヒカル。
確かに”奴”はかなりうざったらしい事に代わりは無いが、しかし、息子には罪は無い。
しかし、ヒカルが次のリアクションに移る前に、またも空気の読めない”奴”がヒカルの背をぽんと叩いて、
「おぉ、よかったじゃないか、ヒカル。謙太郎君は許すと言ってくれているぞ」
「ああ、良かったぁ…って、許してもらうのは父さんの方でしょ!」
「あれ? そうだったけな?」
”奴”の言葉に一瞬、安堵しかけて即座にツッコミを入れるヒカル。後頭掻きながらおどけた調子で笑う”奴”。
なんだかんだ言いながらも、二人とも同じように尻尾を緩やかに振っているその姿は紛れも無い父子の姿であった。
しえん
232 :
代理:2009/09/11(金) 21:39:03 ID:dnBVceBE
……をや? この父子の様子を見ていたら何だか急に創作意欲が……。
ふぅむ、そう言えば今まで書いてきた作品に出てきた登場人物には無かったな、”このタイプ”の人物は。
ひょっとすると、今までマンネリの渦中にあった『片耳のジョン』に新風を巻き起こすかもしれん。
そう考えると急に気分が乗ってきた。何となく尻尾も軽く感じる。これは少しばかり礼をせねばなるまい。
「チョコパフェ二つ」
「あれ? 珍しいね、君がそんなのを注文するなんて」
「ちょ、父さん!」
「…………」
私の突然の注文の意向を掴めなかったのか、
”奴”は息子の制止も構わず珍しい物を見るように目を丸めて首を傾げて見せる。
しかし私は何も答える事も反応する事も無く、静かに注文された品が出来あがるまで待つ事にする。
そして、それから程無くして、イヌのウェイトレスの営業スマイルと共に運ばれてきたパフェを父子へ差し出して言う。
「出演料だ、食え」
『……??』
いよいよ私の意向が理解出来なくなったのか、父子共々テーブルに置かれたパフェを前に目を白黒させていた。
”奴”には私から奢って来る事が余程信じられなかったのだろう、パフェに鼻を近づけてスンスンと匂いを嗅いでいたりする。
”奴”がこうなってしまうのも無理も無い、何せ大学生の頃から今まで、私から”奴”へ奢った事なんてそれこそ皆無だったのだ。
それがいきなり私がパフェを奢ってくるとなれば、流石の”奴”でも少しは考えたり疑ったりしてしまうであろう。
「ん、ん〜と、何だかよく分からないけどパフェ頂くよ? 本当に良いんだね?」
「え、えっと…あの、その、謙太郎さん、パフェ頂きます……?」
「ああ、構わん」
頭一杯に疑問符を浮かべた父子に私は一言だけ答えると、
食事の代金をメロンソーダの分だけ抜いてテーブルへ置き、さっさと尻尾を揺らして席を後にする。
もう少しこの父子の観察を続けていたい所ではあったが、こうやっている間にも創作意欲は湯水の如く湧き出し続けている。
もうとにかく時間が惜しい、早く家に帰って執筆作業に移りたい。嗚呼、白い原稿用紙が私を待っている。
「……変な謙太郎君」
立ち去る間際、きょとんとした顔をしている”奴”が漏らした言葉が妙に耳に残った。
233 :
代理:2009/09/11(金) 21:40:10 ID:dnBVceBE
その後、逸る気持ちを抑えながら家に帰宅した私は早速自室に篭り、執筆作業を再開。
今までの鬱屈が嘘だったかの様に溢れ出す創作意欲は留まる事を知らず、瞬く間に原稿用紙は文章で埋め尽くされてゆく。
時間を忘れ、毛繕いを忘れ、風呂に入る事も忘れ、食事する事すらも忘れ、私はただ、ひたすらに執筆に没頭し続けた。
そして、それから三日後、いいかげん心配し始めた卓が自室のドアをたたき始めた頃。
私の前には、『片耳のジョン』最新作の原稿が完成した状態で鎮座していた。
ただ、その頃の私はと言うと、空腹と疲労の波状攻撃によって完全に気を失っていたのだが。
この本の試し刷りが出来あがった時、犬上父子は知る事になるだろう。……あの時、私の言った『出演料』の意味を。
そして、それと同時に私は卓から『こう言うのも無しだ!』と厳重注意される事にもなるだろう。
何せ、シリーズ23作目となる作品のタイトルは、ずばり『探偵と白イヌの父子』なのだから。
さて、これを見た時、”奴”はどう言う表情を浮かべる事か。それが楽しみで仕方が無い。
”奴”も私をエッセイのネタに使うと言っていたのだ、だからこう言う意向返しをしてやっても良いだろう。
そう、”奴”は親友ではなくとも、一応は友達ではあるのだから。
―――――――――――――――――――――了―――――――――――――――――――――
234 :
代理:2009/09/11(金) 21:47:39 ID:iXP7QQQj
乙!
だが月光はW鳥で引き撃ち迎撃させていただくっ
色々考えてるのに本当に最低限しか喋んないな親父w
利枝さんは流石と言ったところか。
>>236ちょw早ww
本当だwwwww早杉wwwwww
>>219 考えてること>>>>>台詞だな親父
活字じゃないと話になんないなこれw
>>239 若々しい熟年夫婦って感じがいいねいいね
旦那さんのことを先生って呼ぶ関係は好きだな
ルルもそうだね
ケモ学一周年と聞きまして。
「体育、いやニャ…」
ランドセルを背負ったコレッタは、呟きながら朝の学園の廊下を歩いていた。
少し毛並みを膨らませなければ、夏服はちょっとつらくなる秋の日。
廊下を吹きぬける風は、コレッタの髪とスカートを揺らす。
コレッタは体育が苦手。白い毛並みが汚れるというのも一つの理由、そして。
「また、クロやミケにからかわれるニャね」
揺れる尻尾の真上には、ボールを取り損ねたコレッタが幼馴染みのクロ、ミケから絶賛の拍手を受けるシーンが浮かんでいた。
この間はかけっこでビリになるし、逆上がりも苦手。コレッタは体育の時間は昼寝でもしたいな、と考えていた。
教室からは「おはよう」の声が飛び交い、鳥類のケモノたちが羽ばたく音さえ聞こえてくる。
だが、コレッタはそんな声を聞いても、ゆううつな心持ちを晴らすことは出来ない。
ぎゅっと両手で担いだランドセルの肩紐を握り締めても、何も変わらなかった。
「1時間目からいきなりなのは、いやだニャ」
外には爽やかな空、校庭には風薫る木々、教室前にはポツンとコレッタ。
コレッタがガラリと教室の扉を開けると、いきなり彼女の頭上に重みを感じた。
黄金色の髪の毛がばさりと視界を塞ぐと同時に、教室から他の教室からとは違う笑い声が聞こえた。
目の前に、ころんとコットンの手提げバッグが転がる。
「あははは!こんなに簡単に引っ掛かるとは思わなかったニャ!!」
「だ、だれニャ!こんないたずら仕掛けたのは!」
扉に手提げバッグをはさんであって、開ければコレッタの真上にストン。そんな昭和のトラップにまんまとコレッタは引っ掛かる。
目の前の手提げバッグを拾い上げながら、コレッタはクラスメイトの笑い声が上がる教室を見渡した。
よくよく見ると、拾い上げたカバンから飛び出した体操服とブルマに犯人の名前が書かれているではないか。
『1組・佐村井』
「やっぱり、クロの仕業ニャね」
クロと呼ばれた黒い子ネコは、背中を向けて椅子に座ったまま肩を揺らしていた。
彼女の対面に立つのは同じくクラスメイトのミケこと三斑恵。ミケはコレッタを指差しながら笑いを抑えるのが必死である。
「だって、こんなに使い古されたいたずらに引っ掛かるなんて、コレッタも相当の注意不足だニャ」
「ちょっと、考えごとをしてたからニャよ」
いたずらの小道具をミケに投げつけ、コレッタはぷいとすねてみた。
手提げバッグはミケの反射的なネコパンチであえなくかわされる。
「ミケ!甘ーいいちごの香りがするわたしの体操服を粗末に扱うんじゃないニャ!」
ごめんなちゃいと転がる手提げバッグをミケは追い駆ける。
ランドセルを自分の机の上に置いたコレッタは、ゆらゆらと尻尾を相変わらず揺らしていた。
ゆーら、ゆーら…カチカチ、カチカチ。
吹奏楽部の朝練のため、学園内の渡り廊下でヨハンの指導の下、ウサギの星野りんごは打楽器に向かってスティックを振り続けていた。
自慢したいのか、ヨハンは己の髪をといている。足元の動きは、りんごの手の動きと同じリズム。
真面目にゆらゆらと揺れるメトロノーム。その音にあわせて、パーカッションの練習を続ける。
「素敵だね、きみのスティック捌きは。そうそう、打楽器はリズムが大切なんだ。
早すぎても遅すぎてもいけない。まるで、きみらの恋のようにね。大切なことだよ!」
「は、はい」
「星野くんのような子が教え子で、ぼくもしあわせ者だなあ。それにしても星野くんよ、
ぼくと音楽の神・アポロン、二人の心をほしいままにするなんてきみってヤツは!」
いちごのように甘ーい言葉で褒めちぎる。しかし、ウサギはそのいちごは食べてはならない。
食べるときっと、はら痛を起すに違いない。できればむしりとってやりたい、でも放っておくのがいちばんだと聞く。
幼い頃から握り続けたスティックは、もはやりんごの体の一部だ。りんごがランドセルを担いでいた頃は、上手くいかないときに
スティックをよくかじっていた。流石に高等部になるとそんなことはしない。このスティックも何代目なのだろうか、
と感慨深く頷く余裕もなく、りんごは秋の定期演奏会に向けて腕を磨き続けていた。ヨハンの言葉を尻目に。
「美しいね、そのパーカッションを聴いていると、まるで命の鼓動を聴いているようだね!命は美しい!まるで…」
「先生、あの…メトロノームの音が聞こえません…」
涼しげな風が吹いているというのに、真夏以上の暑苦しさを感じるのは何故だ。しかし、答えを知ると余計に暑苦しくなる。
相変わらずなヨハンとは正反対であるそよ風のような言葉が、りんごの背後からしてきた。
「あの、お尋ねします。学校の方ですね…」
ふと、りんごが振り向く間、メトロノームの音だけが残る。同じくヨハンも髪をとく手を止める。
白い毛並みを持ち、ふんわりとした金色の長い髪を持ったネコの女性がふたりの視界に入る。清楚な出で立ちに心奪われる。
一瞬、秋が春へと変わったのかと思うほど。りんごはスティックをあわせて膝の上に置いた。
今まで聞いた事のない深みのある声で返事を返すのはヨハンだ。
背中に氷のような温度を感じたりんごは、ぎゅっとスティックを握り締めた。
「お困りでしょうか?佳望学園のことなら何なりと、このヨハンめに申し付けて下さい」
「キャラが変わった!」
「オホン…。星野くん、きみの長い耳でもう一度よくメトロノームの音を聞いてみたまえ。
先ほどのスティック捌き、微妙にリズムがずれてはないか?それではきみはそのまま練習を続けたまえ」
「は、はい(何を目指しているんだろう、この人)」
ヨハンはりんごを練習に集中させると、そっと髪と毛並みをなびかせ、ネコの女性の横に添い立った。
荷物はわたくしが持ちましょう、とヨハンは手を差し伸べるが断られる。そもそも、彼女は何故ここに来たのか。
そんな根本的なことを聞くのを忘れて、ヨハンはどうしようもない世間話でネコの女性とのわずかなひとときを楽しむ。
「ところで、お嬢さんのご趣味は…?」
「ええっと、料理全般ですね」
恥じらいながら、ネコの女性は頬を染める。『相手の趣味から話題を切り出して、親しくなっちゃうぞ作戦』を実行するヨハン、
「わたくしも、少し料理を齧ってまして」と、出任せで話を合わせると、ヨハンの言葉でネコの女性はたやすく心を許し、料理の話を弾ませる。
「この間、筑前煮を作ったんですよ。でも、なかなか上手くいかなくて…。どうすればいいんでしょうね?」
「本来、レンコンは穴が開いてなかったものが多かったそうですよ。しかし、寒冷地で栽培されたものは、穴の開いたものばかりだそうです。
『表面積を広くすることで栄養を多く吸収させる』ために、厳しい土地にあった品種を栽培してたんですね。
それが室町時代末期、味は格段に穴の開いていないものより美味だと分かり、全国的に穴の開いたものが広まりました。
レンコンを上手く煮るには、穴の大きいものを選ぶと良いでしょう。これは、家庭科の先生のお話です」
(どうしてこの人は、こういうウソがすらすらと思い浮かぶんだろう。しかも、穴は小さい方がいいのに)
と、実家がレストランであるりんごは、真面目に練習を続けながら呟いていた。
「へえ!ありがとうございます。それにしても、穴の開いてないレンコンなんてあったんですね」
ネコの女性の屈託のない言葉に、りんごはあきれて思わずスティックを落とした。
遠くに立つ時計台をちらと見たネコの女性は、何かを思い出し申し訳なさそうに尋ねた。
「そうそう。あの…、初等部の校舎はどちらでしょうか?」
ヨハンの尻尾はくるりと縮こまる。幾多の経験からなす本能的な勘。
「は、はい?ええ、っとですね?ご、ご父兄の方で?」
「コレッタの母です」
まもなく、1時間目の授業が始まる。
りんごは楽器を片付け、ヨハンとネコの女性に一礼し、高等部の教室へ駆けた。
学園のいたるところで、生徒たちはざわざわと自分の席へと着席し、それぞれ教師が来るのを待つ。
授業のないヨハンは、コレッタの母を初等部の校舎まで案内すると言って、共に渡り廊下を去った。
一方、コレッタのクラスでは、生徒たちが1時間目の授業の支度をそれぞれ始める。コレッタ以外は。
みんなが制服から体操服に着替える最中、コレッタの慌てふためく声が教室に響き渡る。
「ニャい!ニャい!どこにもないニャ!!」
「今頃気付いたのかニャ?コレッタたん?」
机に掛かったランドセルをひっくり返す。あたりまえだが、探し物は返事をしない。
側ではクロとミケがコレッタの尻尾にちょっかいを出しながら笑っていた。
左から三人の胸元についているものは、『佐村井』『三斑』のゼッケンに、一人だけ赤いリボン。
「…おうちに体操服、忘れてきたニャ」
教室の入り口では、クロとミケがまさにコレッタを置いて体育館に行かんとしている。
未だ制服姿のコレッタは、空っぽのランドセルを両手で握り締めて、静かになりつつある教室に取り残された。
ところが、コレッタ。ニコリと笑いながら両足でぴょんと飛び上がり、イスの上に立って小さな拳を振り上げる。
「ということで、きょうは体育をお休みするニャ!保健室に行ってくるニャ」
「コレッタ!ずるっこだニャ!!」
体操服に身を包んだクロがコレッタに向かって駆ける。それをかわそうと、制服姿のコレッタがイスからジャンプ!
蛍光灯に照らされて、コレッタの髪が美しい弧を描く。スカートがふわりと舞い上がる。
ネコのジャンプにメダルがあれば、コレッタのジャンプは間違いなく金メダル。
一部始終を見ていたミケの脇を走り去るコレッタは、教室を飛び出し保健室の方へと駆けていった。
「あー!おなか痛い、痛いニャ!」
「うそつくニャ!おなかが痛い子がそんなジャンプができるもんか!」
「白センセのところへいくニャよー!あー!痛い痛い」
「コレッタ。わたしがどうかしたのか?」
先ほどまでの元気は何処へ行ったのか、コレッタは廊下で鉢合わせした白先生を見て固まる。
それに気付いてか、クロとミケも同時に白先生の方を向く。
コレッタが驚く理由は白先生だけではない。何故なら、白先生の隣にはコレッタそっくりのネコの女性がいるから無理もない。
「おかあさん!どうしてここにいるニャか?」
「コレッタ、忘れ物よ」
両手にコレッタの手提げバッグを持った、コレッタの母がにこりと微笑み、口をつぐんでこくりと頷く娘を見て、一安心していた。
「体操服、忘れてきたでしょ?授業に間に合ってよかったね。コレッタ」
「う、うん…ニャ」
「さっきまで『おなかが痛い』とか叫んでたのは、どうした?」
白先生の挟んだ言葉にコレッタの目が丸くなる。しまったニャ、と思っても覆水盆に帰らず。
向こうに見えるクロとミケのひそひそ話は聞こえない。
「あ!そうだ!お、おなかが…痛い…ニャ」
「あらあら!コレッタかわいそうに…。大丈夫?」
「そうだ?コレッタ…どうした?」
向こうに見えるクロとミケは大きく『違うニャよ!』とジェスチャーを送るっているのに、
それを無視するように、わざとらしくお腹を押さえるコレッタであった。
「おお、お探ししましたよ!こんな所にいらしてたんですね!コレッタくんのお母さま。
急に姿をくらますなんて、わたくしの前から太陽の光が消えてしまったのかと思いましたよ!」
体調が悪いときに、会いたくないヤツの声が聞こえてきた。激しい尻尾の動きは見ているだけで物悲しい。
無論、声の主はヨハン。
(わたしが折角まいてやったのに。勘だけはいいヤツだな…)
コレッタの母に道案内をするヨハンを目撃した白先生は、自分から道案内を買って出る振りをして、
無理矢理、魔の手を振り払ったのだ。しかし、悪い意味で不屈の精神を持つヨハンの嗅覚は、白先生の想像を超える。
コレッタの母に駆けて近づくヨハンにつける薬は無いものなのかと、白先生は頭を悩ませた。
「コレッタくんも、お父上も、こんな美人のお母さまの手料理を食べられるなんてしあわせ者だね!
わたくしめも、ぜひぜひお母さま特製の筑前煮を頂きたい!」
ちらと、ヨハンの目を見たコレッタは、ぼそりとこぼす。
「今度は、頭が痛いニャ」
おしまい。
>>219 御堂氏、渋いなあ。文章がカッコよくて素敵だ。
御堂氏は理数系って感じ?なんとなく…。
ヒカル父をこんなに動かしていただいて、嬉しいっス。
>>239 ケモノ×バイクってやっぱ、いいですよなあ。
お後がよろしいようで、投下はおしまいです。
コレッタ母がついに!
初等部は萌えるのう萌えるのう。
小学生がコロコロと駆け回る様が思い浮かぶ、GJ
>>236>>239 相変わらず絵師さんは良い仕事してくれますな。
実は言うとSSを投下した後、絵師さんがどんな挿絵?を書いてくれるか楽しみだったり。
>>247 相変わらずコレッタたちヌコ小学生には癒されますな。
というか、思わずナデナデしたくなる。
それにしても、子持ちだろうが何だろうが構わず手を出すヨハンの節操なさにワロタww
しかも女性を口説くためにさらりと嘘つくなよw
>>247 コレッタの動きが目に浮かぶようだ。ずっとニヤニヤしてた
ああもう微笑ましいなあ畜生
>>250 すげえ、まんま大きくなったコレッタだ
ヨハン光りすぎw
コレッタの母ちゃんメッチャ可愛いw
丁寧な絵を描くなあ
沢山絵が見れて今日はいい日だった
うほっ、なんともネコっぽい躍動感。
つーかおじきチキンやのぅ。
あのはづきちは確かに印象的だったw
神の遊びクソワロタwwwwwww
>>254 動き良いなぁ
>>255 だめだこのおじき早くなんとかしないと…
コレッタって体育苦手だけど運動音痴なわけじゃないんだな
さすが猫
この世界の新体操とか異常にレベル高そうだ
>>254 なんと良い動き
後ろから見たらすごいことになってんなこれw
>>255 おぉ、そら先生だ
ふさっとしててかわいいなそら先生
盛り上がっている所に再度 俺、参上! と、通りますよ……。
今回もある物書きを主役?にした話を投下します。
ちょっと長いので、暇な方は支援していただけたら有り難いと思います。
では、次レスより投下
彼がそれに気付いたのは、日課であり稼業でもある執筆作業の手を止めて小用に出た時の事。
トイレを出て、ふと目に止まったのはリビングのテーブルの上に置かれた、人間の頭ほどの大きさの布製の袋。
気になって中を開けてみると、中には高校生の物と思しき体操服が入っていた。
その持ち主を確めようと体操服の上着を取り出し、スンと匂いをひと嗅ぎ。
「……卓のか」
鼻腔に感じた汗の僅かな残り香から、
体操服の持ち主はつい数時間ほど前の朝、慌しく学校へと向かった息子の物だと分かった。
その際、体操服の胸に学年と共に持ち主の名前がマジックで大きく書かれているのを今更見つけたのはご愛嬌である。
……そう言えば、朝、息子はハンストを起こした目覚まし時計の所為で寝坊し、かなり慌てて登校の準備をしていた。
恐らく、その際に息子はこの体操服を持っていくのを忘れてしまったのだろう。
どうやら、妻のそそっかしい所は息子にも受け継がれている様だ、と彼は思った。
「……行くか」
本来の彼ならば、ここは大切な物を忘れた息子の責任、と知らない振りをしていた所だが、
この日は珍しく、彼は偶には困っている息子を助けてやろうと考え、ゆらりと尻尾を振って直ぐに行動へと移す事にした。
『――年A組の御堂 卓君。至急、職員室まで来てください。もう一度繰り返します……』
「ありゃ?……呼び出し? ちぇっ、後1歩でミラルーツが討伐できる良い所だってのに……」
スピーカーの周りをキンキンと響かせて聞えてきたのは、凛とした声をした放送委員による呼び出し。
昼休み、何時もの屋上で携帯ゲームを楽しんでいた呼び出された当人である卓は舌打ち一つ漏らすと、
画面の中で瀕死になっている純白の邪龍へ向けて、討伐が先延ばしになって残念とばかりの眼差しを送りつつ、
携帯ゲーム機をスリープモードへと切り替えてポケットへと押し込み、足早に昇降口へと向かった。
「しっかし、今直ぐに職員室に来いって……一体何の用なんだ?」
職員室へと向う道すがら、卓は当然の疑問を口に漏らす。
ひょっして、以前にやったアレがいのりん辺りにバレてしまったのだろうか?
いや、ひょっとすると、口には言えないあの事がバレてしまったのかもしれない。
いやいや、まさかとは思うが、あの秘密が……!。
ひとたび頭の中で悪い想像がゴロゴロと転がり出すと、
まるで雪達磨の様に悪い想像の上に悪い想像が折り重なって、精神的な余裕をずんずんと押し潰していく。
ああ、クソ。人間というのは如何も悪い想像ばかりしてしまう生き物らしい。つくづく人間で居るのが嫌になる。
コレがヨハン辺りの能天気なイヌであれば、もっと前向きで楽しい想像が出来るかも知れないのに。
そう考えている所為か、自然と行きたくないなぁと言う心の足枷が嵌り、卓の歩みを自然と重くする。
『御堂 卓君、今直ぐ、直ちに職員室まで来てください! もう一度繰り返します…』
しかし、幾ら足が重くなろうとも、職務を全うしようとする放送委員はスピーカー越しに卓を急かしてくる。
ハイハイ、分かってるからそんなにキンキンと大きな声で呼ばないでくれよ、他の生徒の迷惑だ。
只でさえ校内全域への呼び出しで耳が痛いんだからさ。もう少し声のトーンを低めてくれ。
しかし、そんな卓の願いも虚しく、保険委員並に空気の読めない放送委員は三度目の放送で更に声のトーンをあげた。
『…年A組の御堂 卓君! 直ちに早く職員室に来てください!』
「…ひょっとすると、あの甲高い声の質から見て、放送委員の人は保険委員の親戚辺りか?」
と、一旦静かになったスピーカーに向けて卓は独り言をポツリ。
間違い無い、あの空気の読めなさは保険委員と同じだ。声がやたらと大きいのも同じじゃないか。
などと勝手な想像している内に、卓は職員室の前へと到着した。
「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか、だな……」
未だに頭の中をドロドロと渦巻く悪い想像の所為か、
何時もならば何て事の無い職員室への入り口の引き戸でさえも、まるでダンジョンの入り口の様な威圧感を感じさせる。
しかし、ダンジョンに入る場合ならば、例え鬼や蛇が出たとしても逃げれば済む話。
けど、今の状況は逃げる事を許してくれるとは思えない。
「この場合、鬼よりも恐い英先生が尻尾を怒りに打ち震わせて待っているかもな……おお恐っ」
卓は小等部の頃から佳望学園の悪ガキとして有名だった事もあって、英先生の恐さは身に染みて分かっていた。
もし彼女の怒りを買ったら最後、それこそ足腰が立たなくなるまで説教を食らうのを覚悟しなければならない。
それは経験者だからこそ分かる恐さ。これが真面目のまー子の委員長では、その恐さの一欠けらも分からない事だろう。
最悪、いのりんとのダブルパンチを食らう事も予測に入れておくべきだろうか? 毛皮の無い背筋に流れる冷たい汗。
しかし、だからと言って何時までも職員室の前で禅問答をやっている訳にも行かず、
卓は唾を思いっきり飲みこんで意を決すると、静かに職員室の引き戸をゆっくりと開いた。
そんな卓の懸念とは余所にして、
冷房が程よく効いた職員室は昼休み特有の、気だるくゆったりとした空気に包まれていた。
職員室にいる教師の殆どは既に食事を終わらせた後らしく、満腹後に現れる睡魔が容赦無く教師達を眠りへと誘う。
頬杖をついた獅子宮先生はくぁ、と眠たげに欠伸一つ。帆崎先生に至っては既にうつらうつらと舟を漕いでいたりする。
そんな職員室の片隅の喫煙スペースのソファで、イヌの子の様に尻尾をばたばたと振っているのはサン・スーシ。
どうやら、睡魔は他の教師を眠りに誘えはしても、彼に対してだけは力が及ばなかったらしい。
「へぇ、卓君のお父さんって小説家をやってるんだー」
「…ああ」
サン先生の向かいのソファでゆらり、と尻尾を揺らすのは、先っぽの無い片耳が特徴の灰色の毛並みの狼の男性。
彼は口に咥えたパイプから煙をプカリと吹かしつつ、はしゃぐサン先生の質問に静かかつ言葉少なに答える。
サン先生とは余りにも対照的な彼、御堂 謙太郎は血の繋がらない息子が忘れて行った体操服を届けるべく、
愛車の旧式ベスパに跨って佳望学園まで来たのだが、来て早々運が悪いというか何と言うか、
彼が息子を探し始める間も無く、大きな耳で逸早くベスパのエンジン音を聞きつけたサン先生に捕まってしまったのだ。
「で、どんな小説を書いているの? ビビーとか、ズババーンなSF物?」
「…推理小説」
「へー、推理小説かぁー……ねえ、ひょっとしてさ、御堂さんって『片耳のジョン』の作者だとか?」
「……」
余りにもピンポイントなサン先生の質問に、謙太郎はほんの一瞬、それも僅かに獣耳をピクリと動かして黙りこくる。
普通のケモノならば見過ごしてしまうだろう彼の些細な変化、しかし、それを見逃さないサン先生は流石と言うか。
何故、サン先生はこんな事を聞いたかと言うと、実の所、以前に漫画本でも借りようかと図書室に行った際、
ふと、目を向けた図書室の隅に居たのは、卓とヒカルという普段では絶対に見られない取り合わせの二人。
そんな彼らがこそこそと何かを話しているのが気になって、サン先生がこっそりと聞き耳を立ててみたら、
卓が自分の父親が『片耳のジョン』の作者である事を匂わせる話をしている所だった。
――無論、こんな美味しいネタを聞き逃すサン先生ではない。
何時か卓の父、謙太郎と会う機会があれば、この事を聞いてみようと目論んでいたのである。
そしてその機会は余りにも早く訪れた訳で。聞いてみれば思ってた通りの反応が返って来た。
サン先生は心の中で『計画通り』と悪戯っ子の笑みを浮かべた。
「って事は…まさかとは思うけど、君が池上 祐一先生かな? かな?」
「……」
更に駄目押しとばかりの質問をぶつけるサン先生。
けど、謙太郎はゆっくりと視線を逸らし、パイプの灰を灰皿へ落としつつ沈黙を返すだけ。
しかし、その反応だけでも、サン先生の予想を確信へと至らせるには充分過ぎた。
まるで獲物をロックオンしたかの様に、キラリと光るサン先生の眼鏡。
「うわっ、って事は凄い有名人じゃないか。ぼくも読んでるよ『片耳のジョン』!
ねえねえ、次に書く奴は如何言う風な内容にするつもりなの? ジョンのモデルってやっぱり自分?
ジョンに想いを寄せているお姉さんの念願って何時か叶うの? ねえねえ(ry」
謙太郎がしまったと自分の迂闊さに気付いた時には、既に遅かりし倉之助、
彼が有名人だと確信したサン先生が目をランランと輝かせ、その上尻尾を大回転させて、
それこそミニガンかアヴェンジャーもかくやの質問の高密度弾幕を謙太郎へ浴びせ掛ける。
対する謙太郎は尻尾をくるりと股の間に隠し、サン先生の質問の砲撃を沈黙の盾で耐え凌ぐしか出来ない。
彼にとって、サン先生のような騒がしい上に興味本位で動くケモノはもっとも苦手な相手だった。
幾ら此方が沈黙を守り通そうとも、相手はそれに構う事無く無遠慮に質問の槍を突き刺してくる。
それこそ彼に対する興味が尽きるまで。恐らく十分もしないうちに音を上げるのは謙太郎の方であろう。
しかも彼はなまじ口下手な物だから、上手く話を切り上げてサン先生から逃げるなんて到底出来る筈も無く、
今の謙太郎に出来る事といえば、早くこの時間が過ぎ去ってくれと心の内で願うしか他が無かった。
「サン先生、それに親父……こんな所でなにやってんだよ?」
「!?」
掛かった声に耳と尻尾をピンと立てた謙太郎が振り向き見れば、
其処に立っていたのは、今しがた職員室に到着したであろう息子の卓の姿。
この時ばかりは、謙太郎の目には卓の背中に後光が差して見えた事であろう。
その逆に、サン先生は卓の姿を見るやピクニック前日の雨雲を見るような目で至極残念そうに、
「ちぇー、思ったより早く来ちゃったかー。来るまでもう少し時間が掛かるかと思ったのになぁ」
「……? 俺を呼んだのはサン先生か?」
「まあ、そうなんだけどね。
お父さんは卓君に何かの用事があるのかなーって思って、ぼくが放送部へ放送する様に頼んだんだ。
…と言っても、お父さんから詳しい事はまだ聞いてないけどね?」
余りのあっけらかんとしたサン先生の答えに、思わず呆れてヲイヲイと呟く卓。
それを余所に謙太郎はと言うと、無表情ながらも尻尾だけはソファがボフボフと音を立てる位に動いていた。
彼の尻尾の動きに気付いたかどうか、卓は怪訝な表情を浮べて謙太郎へ問い掛ける。
「じゃあ親父、俺へ何の用でわざわざ学校まで…―――っておい、何すんだよ親父!?」
「……」
卓の質問に答える事無く、謙太郎は無表情のままやおら席を立つと、卓の手を掴みぐいぐいと引っ張り始める。
義父の突然の行動の意図が掴めず、困惑する卓は謙太郎に引っ張られる形で二人共々職員室の外へ姿を消した。
そんな形であれよあれよと言うまに喫煙スペースに独り取り残されたサン先生は、暫しキョトンとした後、
はとある事に気付いて尻尾をピンと跳ね上げて、声を上げる。
「ああっ!! サイン貰う前に逃げられたぁっ!?」
喫煙スペースで独り喚いているサン先生が、帆崎先生の不興と獅子宮先生の怒りを買ったその頃。
息子のお陰で上手い事逃げ遂せた謙太郎は二度三度、目と耳と鼻で周囲を確認し、小さく安堵の息を漏らす。
良かった、あの小さな質問機関砲教師は追い掛けてきていない様だ。これで一安心、やれやれだ。
彼の安心した気持ちを表してか尻尾もゆらりと動く。
「親父…出不精なアンタが学校まで来るなんて、一体如何言う風の吹き回しだ?
つか、訳も言わずにいきなり俺を連れ出すなんて何がしたいんだよ?」
「ん……」
訳の分からぬまま廊下に連れ出された卓が、不機嫌な表情を浮べるのもごもっともな事である。
何せ昼休みを満喫している最中にいきなり職員室へ呼び出され、
それで職員室に到着するや、何の用かも聞けぬままに謙太郎に連れ出されたのだ。
学生にとって、昼休みと言うのは空腹を満たすと同時に残暑が厳しい教室の中での授業で荒み切った心を癒す潤いの時間。
それをくだらない用事で邪魔されたとあっては、卓が不機嫌になってしまうのも無理も無い。
無論、謙太郎は直ぐにその呼び出した理由を説明しようと、体操服の入った袋を探し始めたその矢先。
誰かの上げた「あっ」と言う素っ頓狂な声が二人の鼓膜を叩いた。
「其処に居るのはいけg…ケホン、謙太郎さんと卓君?」
一瞬、謙太郎の事をペンネームで呼びそうになり、咳払いで誤魔化した声の主は犬上 ヒカル。
その両手にかなり重たそうに抱えていたのは、恐らく何かの教材の入ってると思しきダンボール箱。
ヒカルは思わぬ所で憧れの人に会った事で興奮したのか、白い尻尾をブルンブルンと回転させていた。
「おう、ヒカルじゃないか……所でなんだそのダンボール箱?」
「ああ。これ? ちょっとね……」
卓に指差されたダンボール箱に、ヒカルは尻尾揺らして少しだけ照れ笑い。
この時、卓は何となく、彼がこのダンボール箱を持っている理由がつかめてきた。
そしてその想像通り、ヒカルがわざわざ重いダンボール箱を持つに至ったその理由の人がやってきた。
「ヒカルくん、いきなり立ち止まってどうしたの?」
ヒカルと同じく両手にダンボール箱を重たそうに抱えてやってきたのは泊瀬谷先生。
大方、重そうな荷物に尻尾をくねらせている泊瀬谷先生をたまたま見かけたヒカルは、
泊瀬谷先生に良い所を見せようと、その荷物の半分を持つとか言い出したのだろう。
そんなヒカルの頑張りを卓は微笑ましく感じた。おいおい、少し足がふらついているぜ、ヒカル。無理するなよ?
そう思っていると泊瀬谷先生も御堂親子に気付いたらしく、ダンボール箱の横からひょこっと顔を覗かせて
「あら? 御堂くんにえっと……」
言いかけた所で面識の無い狼人の男性が居る事に気付いた泊瀬谷先生は、思わず匂いで確認しようと鼻を寄せる。
だが、彼女の鼻腔に感じるのは胸に抱えたダンボール箱の乾いた匂い。
そういやわたしはダンボールを抱えたままだったんだと、泊瀬谷先生は少し自分を恥かしく思い、尻尾をくねらせた。
しかし、幸いにして卓は泊瀬谷先生の様子には気付かなかったらしく、
「ああ、この人は俺の親父の謙太郎。…って、たしか、先生は今まで親父と顔を合わせた事無かったろ?
この親父、三者面談の時も家庭訪問の時も執筆が忙しいって理由で部屋に篭りっきりだったからさ…。
基本的に恥かしがり屋なんだよ、このケモノ」
「そうだったの……」
何処か謙太郎に対する呆れの混じった卓の紹介に、
泊瀬谷先生は何処か納得といった感じに返した後、直ぐ様表情を営業スマイルへ切りかえると、
煙の立たないパイプを咥え直す謙太郎へ挨拶する。
「えっと、担任の泊瀬谷です。はじめまして、御堂君のお父さん」
「…………」
しかし、挨拶されたと言うのに、謙太郎はどう言う訳かぷいと泊瀬谷先生からそっぽを向いてしまった。
その態度に泊瀬谷先生は一瞬、嫌われたのかと思ったのだが、直ぐに彼が恥かしがり屋だと卓が言ってた事を思い出し、
どうもこの人は初めて会った息子の担任教師を前に緊張しているんだ、と心の内で納得した。
実際の所、その通りなのだからある意味分かりやすいと言うか何と言うか。
「あ、あの…先生……」
「どうしたの? ヒカルくん?」
唐突にヒカルに話しかけられ、泊瀬谷先生は足をふらつかせながらも彼の方へ振り向く。
「ちょ、ちょっと指が…痺れてきた……」
見れば、ダンボール箱を抱えるヒカルの手がプルプルと震えている。
どうやら泊瀬谷先生が御堂父子と話している間中、ヒカルはずっと重力との孤独な戦いを続けていたようだ。
この戦いは文系の彼には相当堪えたらしく、良く見れば白い尻尾も手に合わせてプルプルと震えていたりする。
それに気付いて、いけない、と狼狽した泊瀬谷先生は急げとばかりにヒカルへ言う。
「ひ、ヒカル君。職員室まであともう少しだから頑張って!」
「う、うん…もう少しだけ、頑張ってみる…卓君と謙太郎さん、それじゃ」
泊瀬谷先生と共にヨタヨタとその場を去っていくヒカルの尻尾を、
卓は頑張れよと心の中でエールを送りつつ見送り。謙太郎はやっと去っていったかと溜息を漏らしつつ見送る。
……実の所、謙太郎が2番目に苦手とする物は、泊瀬谷先生の様な年下の女性だったりするのを、卓は知らない。
「で、本当の所は如何なんだよ?」
「……何が?」
泊瀬谷先生とヒカルの二人が去っていった後。
ぼんやりと佇む謙太郎の横の卓が、謙太郎へジト目を向けながら問い掛ける。
しかし、質問の意味が掴めなかった謙太郎は不思議そうに首を傾げた。
むろんの事、そんな謙太郎に対し、卓はわざとらしいくらいの大きな溜息を付いて
「いや、『何が?』じゃなくて、親父は何をしに学校に来たんだって事だよ」
「ああ」
卓の呆れ混じりな再度の問い掛けによって、
ようやく自分が今、やるべき事を思い出した謙太郎は直ぐ様、卓へ体操服を渡すべく尻尾を揺らしながら探し始め――
「……しまった」
ここで謙太郎は初めて、自分が持って来るべき体操服を持っていない事に気が付いた。
そう言えば、ベスパから降りた直後に遭遇したあの小さな質問機関砲教師に気を取られてしまい
そのままベスパのハンドルに体操服の袋を掛けたまま置いてきてしまったような気がする。
唐突に風が止んだ旗の様にぱたと動きを止める謙太郎の尻尾。その変化に卓は気付き、怪訝な表情を浮べて問い掛ける。
「親父、如何したんだよ? いきなり尻尾なんか垂らしちゃって……」
「……バイクに置いて来た」
「は? …何をだよ?」
「お前の忘れ物」
「をひ……」
余りの謙太郎のドジっぷりに、思わず額に手を当ててうめく卓。
どうやら、謙太郎もまた、妻の利枝に似てそそっかしい所があるようで……。
そう、精神的な痛みを頭に感じつつ、卓は大きく溜息を漏らす。
「んじゃ、昼休み終わる前にとっとと取りに行くぞ……ったく」
「うむ」
若干の呆れ混じりに言って歩き出す卓に、
謙太郎は親の後を追う子イヌの様に、尻尾を揺らしながら歩き出すのだった。
――――――――――――――――――続く――――――――――――――――――
以上、後編に続きます。
この親父、実は言うと卓の通っている学園に殆ど来た事がありません。
親父かわいいよ親父
/ _/ /
←/¬ =@ / \_へ
/ ↑ \/ `ヽ- │ \
丿 ヽ \_....─.┘__ ヽ
/ 了 丿 \」
/ / \_ノ丿 \
丿 / / −´ ヽ
│ / / /´`\ . ./ヘゝ
│ / / │/¬ ).ヽ /∧.│
丶 / │ ヽ丿丿│ ‖/ノ
∨ │ `` ` .
ヽ │ − \
ヽ ヽ ( . ` │. ゚ 丿
_」 ヽ 丶 `ヽ \`─−.___/
⌒\丿 │ `\_\ `ヽ. /
\ /─┘ │ヽ>_丿.
/ ヽ │─−.
│ `ヽ− ヽ \
┐ 丿 \ ヽ
一本指打鍵w
BELLのパソコンw
いばらの王で使ってるPCもBELLだったな
なぜかOS9。
>>271 おやじ、いいキャラだな。後編もよろしく。
ちょっと池上センセの本、買ってくる。
ああっ、癖になりそうな視線
りんごたそだけベクトルが違う気がするw
白衣のはづきちに制服姿のりんごたんにいいんちょ。ちくょう、萌えてたまらん。
どっちもいいのう。賢そうでどこか…っていうっ子にはうさぎーずはよく似合う。
あ!あと、かなめたんにささやま先輩もよろしくね。
>>264-270の続きを投下しに俺が通りますよ……
次レスより投下、これもちょっと長いので支援頂ければ有り難いです。
「ったく、珍しく親父が学校に来たかと思ったら、こう言う事になるなんてな……」
「…………」
生徒たちの大半が昼食を終え、のんびりと昼休みを過ごす頃。
ぶつくさと文句を漏らす卓と、その後でただ黙りこくるだけの謙太郎が到着したのは学園の駐輪場。
ずらりと並ぶ自転車に紛れてバイクが何台か止められているが、この学園はバイク通学を禁止していないので問題は無い。
その駐輪場の奥まった一角にある来客用の駐輪場、其処が卓と謙太郎が目指す場所であった。
しかし、目指すその場所へ向う親子二人の前を、ちんまい影が尻尾を揺らして立ち塞がった。
「もう、いきなり何も言わずに逃げるなんて酷いじゃないか!」
それは、先ほど謙太郎を質問攻めにするも、卓の登場により敢無く逃げられたサン先生だった。
しかし、如何言う訳だが彼の姿は先ほど見た時と違って、眼鏡がずれて毛皮と衣服が所々よれよれになっていた。
恐らく、卓と謙太郎が去った後に、彼は獅子宮先生辺りから酷い目に遭わされたと見て間違い無いだろう。
再び現れた質問機関砲教師を前に、尻尾を丸めた謙太郎はさっと卓の後に隠れた。
卓は自分の後に隠れている父親を若干訝しげに一瞥した後、サン先生へ向き直って疑問を投げかける。
「サン先生、いったい如何したんです? 親父に何か用なんですか?」
「うん、もう用はありありだよ! だからお父さんを少し貸してくれないかな?」
「そうは言われても……」
困った様に言って、卓は自分の後ろで耳を伏せて尻尾を丸めている義父を一瞥する。
謙太郎は何も言わず、代わりに追い詰められた子犬のような訴え掛ける眼差しを卓へ向けた。
「なんだか親父、サン先生とは話したくないみたいだぜ?」
「卓君、そんな事言われても困るよ。せめてサインくらい貰わないと何の為に池上先生に会ったのかわかんないだし」
「あのなぁ……」
まるで子供のようなわがままを言うサン先生を前に、卓は呆れ果てるしか他が無い。
とりあえず、卓は後頭をぼりぼりと掻きながらサン先生を窘める事にした。
「サン先生、そんな我侭言ってたらまた英先生にどやされるぜ?」
「大丈夫だよ! 英先生がこんな所に居る筈無いじゃないか」
「でも、噂すれば曹操の影ありってザッキーが言ってるようにさ、気が付けば後にいる…とも……」
と、其処で急にすぼんで行く卓の言葉、見れば表情を引きつらせている卓の目線はサン先生の後方へ向けられている。
その卓の変化に、サン先生はまさか本当に?、と思いつつバネ人形の様な動きでにがばっと後ろへ振り返る。
しかし、振り向いた視線の先に広がっていたのは、何時もと変わらぬ駐輪場の光景だった。
しえん
「もう、驚かせないでよ、卓君……本当に英先生が居るかと思ったじゃな―――」
卓の行動がその場しのぎの嘘だと思ったサン先生は安堵の息を漏らした後、再び御堂父子の方へと向き直り、
「私が居て如何したんですか? サン先生」
「 」
その横に何時の間にか佇んでいた英先生を目にして、彼は全身の毛皮を逆立てて硬直した。
どうやら、卓はサン先生の後方の駐輪場内の鏡を見て、自分の後ろから来る英先生の接近を知った様だった。
無論、普通ならばサン先生も気付く筈なのだろうが、この時ばかりは謙太郎に気を取られていた為、気付ける筈も無かった。
「サン先生、話が聞こえていましたよ? 何やら御堂君の保護者にご迷惑を掛けているようで」
「い、いや、ぼくは別に迷惑とか掛けるとかそう言うつもりじゃなかったんだよ! ね、ねえ、卓君のお父さん?」
「……」
にっこりと微笑みながら詰め寄る英先生を前に、激しく狼狽したサン先生はどもりながらも謙太郎へ同意を求める。
しかし、当然と言えば当然の事ではあるが、卓の後に隠れている謙太郎はぷいとそっぽを向くだけでしかなかった。
無論の事、その謙太郎の様子に自分の予測を確信に至らせた英先生は飽くまで穏やかな声で
「どうやら、これからサン先生には生活指導室でじっくりと話を聞かなければなりませんね?」
「え、ちょ!? まだサインも貰えてないのにぃぃぃぃ………」
英先生に襟首を掴まれ、ずりずりと引きずられて行くサン先生。彼の喚き声は校舎の中へ消えるまで聞こえた。
多分、これからサン先生は生活指導室で、英先生の愛のこもった説教をみっちりと受ける事になるのだろう。
おまけにこの日は五、六時限目に数学の授業がない物だから、担当の授業があると言う理由で逃げる事も出来ない。
自業自得とは言え、サン先生も少し可哀想だな、などと思いつつ卓は謙太郎へ向き直る。
「で、バイクは何処に止めたんだよ? 親父」
「こっち」
謙太郎の指し示す方向には確かに、卓にとって見慣れた独特の形状のバイクが自転車の群れに紛れる様にして佇んでいた。
そのシンプルなデザインのバーハンドルにぶら下げられた袋は、恐らく謙太郎の言う卓の忘れ物と見て間違いないだろう。
と、卓が動き出す間も無く、ベスパの傍へ駆け寄った謙太郎がハンドルの袋を取り、卓へ差し出す。
「忘れ物の体操服」
謙太郎は少なからず想像していた。忘れ物を届けに来てくれた父親に感謝する息子の姿を。
その想像に対する期待を表してか、無意識のうちに振られる彼の尻尾。
「……へ? 体操…服?」
しかし、そんな謙太郎の想像は息子の上げた怪訝な声によってあっさりと打ち砕かれた。
自分の想像とは違う結果に思わず唖然とする謙太郎。半開きになったマズルからぽれっ、と落ちるパイプ。
対する卓は何処か呆れた様に謙太郎へ問う。
「えっと……多分、親父は六時限目の体育に使うだろうと思って、これを持ってきたんだろ?」
「……」
何も言わずこくりと頷く謙太郎。卓は「やっぱり」と呟いて溜息混じりに謙太郎へ告げる。
「親父、せっかく持って来てもらって悪いんだけど……今日は体操服、要らないぜ?」
「……!?」
驚愕の事実を知らされ、ピンと跳ねる謙太郎の尻尾。卓は更に説明を続ける。
「何でいらないかというと、今日の体育は保健体育に差し替えになったんだよ。
それも、なんだかまた流行り出したインフルエンザの予防と対策の講習をする為、とか言う変な理由でな。
でさ、その事は朝、学校に行く間際に説明したと思うけど……まさか親父、その時、話を聞いてなかった?」
「…………」
謙太郎は何も言えなかった。
確か、朝、慌てて学校に行く間際の卓が、何かを手にした利枝と何やら話していた事は憶えている。
しかし、その時、謙太郎は『片耳のジョン』のスピンオフ作品『迷探偵マリィ』の構想の真っ最中だった為、
会話の内容まではきちんと憶えてはいなかった。つまりは話を聞いていないのと同意であった。
そんな謙太郎の失意を表してか、だらりと垂れ下がる彼の尻尾。卓は唯、苦笑いを浮かべるしか他が無い。
そのまま十数秒ほど気まずい空気が場を支配した後、先に動きを見せたのは謙太郎だった。
「帰る」
「そ、そうか……悪かったな、親父。つまらない事で面倒掛けちまって」
「…………」
謙太郎は気まずそうに謝る卓へ一瞥だけすると、
無言で落ちてたパイプを拾い、頭にヘルメットを被るとベスパと柱を繋いでいたチェーンを外す。
そしてベスパのエンジンを始動させるべく、尻尾を揺らしながらスタンドを掛けたベスパの右側に立ち、右手でアクセルを握り。
シートを抱え込むように左手でチョークノブを引き、右足でスターターレバーを数回踏み込む。
しかし、本来ならばけたましいエンジン音を立てる筈のベスパは、ガススンと音を立てただけでウンともスンとも言わない。
「……?」
首を傾げながらも彼はスターターを幾度も蹴るが、フェンダーライトのベスパは黙りこくったまま、動く気配が無い。
まさかガス欠ではと思って燃料タンクの蓋を開けて見るが、燃料タンクにはガソリンがまだ少し残っている。
なのに、何やってもベスパは駄々をこねたまま動く様子が無い、成す術の無くなった謙太郎の尻尾は力無く垂れ下がった。
無論の事、再び尻尾を垂らした謙太郎の様子に卓は気づき、何事かと彼へ問う。
「如何した? 親父。バイクが故障したのか?」
「うん」
「……をひ」
卓は精神的に痛む頭の中、泊瀬谷先生の声で、二度ある事は三度ある、と言う慣用句が聞こえた気がした。
とりあえず頭の頭痛を振り払う様にかぶりを振った後、卓は気を取りなおして言う。
「だ、だったら近くのバイク屋で修理してもらえば……」
「財布、持って来てない」
「…………」
謙太郎の一言に、卓は遂に言葉を失った。
それと同時に、昼休みの終了を告げるチャイムが虚しく鳴り響いたのだった。
※ ※ ※
昼休みを終えた生徒達が教室へいそいそと戻り始め、
無常にも『授業があるから』と卓に置いてけぼりにされた謙太郎が独り、動かないバイクの傍らで途方に暮れているその頃。
荷台の側面に『バイク販売、買取、修理は杉本オートで』と書かれた軽トラが学園の正門前へ止まる。
その開いた窓から作業着姿の白ネコの女性が顔を出し、尻尾をくねらせつつぼやきを漏らす。
「ふぅ、全くサンったら人の都合も考えもしないでさ」
彼女の名は杉本 ミナ。サン先生のかつての大学時代の同期であり、そして今も親交のあるネコ族の女性である。
この学園に彼女が訪れたのは他でもなく、サン先生から駄々をこねたラビットを今すぐ直して欲しいと電話口で頼まれたから。
無論のこと、その時はお食事中だった彼女は、『別に放課後にでも良いんじゃないの?』とサン先生へ提言したのだが、
『放課後まで待ってたら見たいTVアニメに間に合わないじゃないか』と言う、何とも子供じみた理由で却下されてしまった。
そして結局、彼女はサン先生に急かされるまま、お食事を早々に切り上げて学園に訪れる事となった。
「確か、アイツは駐輪場で待っているはずなのよね……」
言いながら、ミナは軽トラの窓から少し身を乗り出し、今か今かと待っているであろう小さなイヌの教師の姿を探す。
しかし当のサン先生はというと、今頃は生活指導室で英先生の愛のこもった説教を受けている真っ最中。居る訳が無い。
けど、そんな事になっているなんてミナが知る筈も無く。彼女は暫くの間、周囲を見回して溜息一つ。
「もう、サンの奴、人を呼ぶだけ呼んで待ち合わせの場所に居ないなんて、私をバカにしてるのかな?」
その場に居ないサン先生へ届かぬ愚痴を漏らし、軽トラの窓の桟に頬杖をついて見せる。
こうなったら一度帰って、また放課後になった時に行けば良いかな? などとミナが思い始めたその矢先。
視界に入ってきたある物を目に、彼女の瞳孔が大きく開き、視線が大きく引き付けられた。
「……」
それは悲壮感も露に動かぬバイクを押して行く、先っぽの無い片耳が特徴的なしょぼくれた狼のオヤジの姿。
そう、卓に置いてけぼりを食ってしばし途方に暮れた後、やむを得ずにバイクを押して帰る事にした謙太郎だった。
――しかし、ミナの気を引いたのは謙太郎ではなく、謙太郎の押しているバイクの方。
「あれって……」
間違い無い。無駄な装飾の無いシンプルなバーハンドル、砲弾型のフェンダーライト、そして流線型が美しいモノコックボディ。
それは第二次大戦が終わった直後にイタリアで生まれた大衆用スクーターの初期モデル。その姿はまさに走る芸術品。
その持ち主と思われる狼の初老男性がわざわざ押して行っていると言う事は、恐らく何らかのトラブルがあったに違いない。
そう思ったミナは溜まらず軽トラから降り立ち、とぼとぼとバイクを押している謙太郎を追い掛ける。
「其処のオジさん、ちょっと待って!」
「……?」
突然、後から声を掛けられた謙太郎は思わずピクンと耳を立てて足を止め、後へ振り返る。
それと同時に追いついたミナが、ネコ族特有の機敏な動きで謙太郎の前へくるりと回り込んだ。
その動きにあわせて揺れる尻尾、ふわりと漂うのはミナの使っているシャンプーの香り。
「やっぱり……これ…復刻版じゃない、正真正銘のベスパのヴィンテージモデル。凄い、ここで見られるなんて……」
「……??」
まじまじとベスパを眺めながら、ミナは憧れのアイドルを前にした少年の様に上機嫌に尻尾を立ててうっとりと呟く。
対する謙太郎はただ困惑するしか出来ない。まあ、苦手な年下の女性が相手である以上、そうなるのも無理も無いのだが。
と、暫く尻尾を揺らしながらベスパをうっとりと眺めていたミナが不意に顔を上げ、
「あの…オジさん。このバイク、動かないのですか?」
「う、うむ」
「だったらわたし、近くでバイク屋をやっている杉本 ミナって言うんですけど、
ちょうど仕事でここに来た所ですので…何だったらついでにこのバイクを直してあげますけど……どうします?」
「…………」
突然のミナの提案に対して、謙太郎は喜ぶどころか何も答えず黙りこくったまま。
謙太郎の反応に妙な物を感じたミナは、少し首と尻尾を傾げながら問う。
「えっと、どうしたの…ですか? わたし、何か悪い事言っちゃった…のでしょうか?」
「……」
少しの沈黙の後、謙太郎のマズルからポロりと漏れ出た言葉は「……金、無い」の一言だった。
思わず引きつるミナの表情。尻尾垂らしてうつむく謙太郎。場を満たす気まずい空気。
そんな空気を振り払おうと、ミナは両手をばたばたと大げさに振って、
「だ、大丈夫ですよ、オジさん。今回はついでという事でサービスしてあげますから。ね?」
「……むぅ」
「それに、もし大掛かりな修理が必要だったとしても、お金は後でも良いですから気にしないでいいですって。うん」
「……」
ミナの説得に再度、考えこむように顔を俯かせて沈黙する謙太郎。
謙太郎の尻尾はだらりと垂れたまま微動だにしない物だから、彼が今、何を考えているのかミナには読めず、不安だった。
そして謙太郎にしてみれば、2番目に苦手な年下女性の世話になるのは嫌だったのだが、
生来からの面倒臭がりでもある彼にとって、動かないバイクを延々と押して帰るのはもっと嫌だった。
そうやって暫くの間、二人の間を微妙な空気が流れた後、謙太郎は尻尾を揺らしながらゆっくりと頭を頷かせた。
如何やら、謙太郎はミナの提案を飲む事を決めた様だ。
「それじゃあ失礼して……」
「……」
謙太郎の許可を得た所で、早速ミナは軽トラから持ち出した工具箱片手にベスパの傍へ周り、
ベスパのデザインに見蕩れつつも手際良くカバーの止め具を外し、エンジンカバーを取り外して内部の点検を始める。
程よく手入れされているのか、60年以上も前の物にも関わらずエンジン周りは丁寧に整備され、新車の様に輝いていた。
しかし、それにも関わらず動かないなんて如何して? と思わずミナは首を傾げる。
「えっと、オジさん……」
「謙太郎で」
「そ、それじゃあ謙太郎さん。一応聞いておきますけど、最後にこのバイクを点検したのは何時でしょうか?」
「……分からない」
「へ? で、でも、それにしてはエンジンは綺麗ですけど……?」
「何時も妻に任せてる」
「な、なるほど……」
謙太郎の一言で妙に納得できたミナは、「奥さんってかなり几帳面な方なんですね」と苦笑いを浮かべた後、
直ぐに表情をバイク屋の店員の物に戻し、別に動かない原因がないかを探ってみる事にした。
このバイクは今や走っている事すら奇跡に近い一品、それが故障して動かないなんて本当に見ていられない。
バイク屋の娘の沽券に賭けて、このバイクが動かない原因を探り出し、直して見せる! とミナは心の中で意気込む。
そんなミナの後ろ姿を不安げに見守る謙太郎。時折くねるミナの白い尻尾が妙に不安を掻き立てる。
ひょっとしたら、大掛かりな修理が必要じゃないのか?と言う、根拠のない心配が謙太郎の脳裏を過る。
「…プラグは問題ないのよね、スターターを動かせばちゃんと火も飛ぶし……。
それにまだガスも残ってる……なのに動かないとなると……」
そこまでぶつぶつと独り言をもらした所で、ミナはベスパの座席の股下の辺りのある部分へ視線を向ける。
其処である物を目にした彼女は、何処かげんなりとした様子で尻尾を垂らし「ああ、やっぱり」と漏らした。
そして、苦笑いを浮かべながら謙太郎の方へ振り返り、
「あの…謙太郎さん? その、リザーブタンクって…知ってますか?」
「……??」
思わずピクリと耳を動かす謙太郎。彼にとってミナの言った言葉は初耳だった。
彼は長年このバイクに乗り続けていたものの、修理や点検は殆どバイク屋、あるいは妻に任せていた為、
バイクの構造や部品その他諸々に関してあまり詳しくなかった。つまりは謙太郎はバイクに関して素人同然だった。
そんな首を傾げる謙太郎の様子に、ミナは自分の予感が当っていた事に心の中で溜息を漏らす。
「取り合えず、論ずるよりは産むが易しって事で……はい、エンジンを掛けて見て下さい」
エンジンカバーを取り付けた後、彼女は言いながら座席の股下部分の”それ”を操作し、謙太郎へバイクを動かす様に言う。
謙太郎は首を傾げながらも、さっきと同じようにスタンドを掛けたベスパの右側に立ち、右手でアクセルを握り。
シートを抱え込むように左手でチョークノブを引き、右足でスターターレバーを数回踏み込む。
ぶぉぉんっ!!
「……!?」
すると如何だろうか、さっきはウンともスンとも言わなかったベスパが一発で元気なエンジン音を上げた。
当然、それに驚いた謙太郎は、尻尾を振りながらまるで魔法使いを見るような眼差しをミナへ送るのだが、
ミナは何処か呆れた様に苦笑いを浮かべながら謙太郎へ説明する。
「えっと、先ほど言いましたリザーブタンクって言うのは、まあ、ガソリンタンクの予備的なスペースな物でして、
燃料の取りこみ口を上下に二つ設ける事で、燃料を一気に使い切らない様にする、いわゆる保険みたいな物なんです。
それで…さっき操作したのは、そのリザーブタンクのフューエルコック、言わば燃料の取りこみ口を切り替える装置なんです。
で、さっきまで燃料があるのに動かなかったのは……それを切り替えてなかったのが原因です。はい」
「…………」
なんと、バイクが動かない原因は故障ではなくただの確認ミスだった!
余りのばつの悪さに、謙太郎は再び尻尾をだらりと垂らしてしまう、いや、それ所か耳まで伏せてしまった。
無論、彼のその様子に気まずい物を感じたミナは、慌ててフォローに入る。
「で、でも、動かない原因が故障じゃなくて良かったじゃないですか? 謙太郎さん。
これがもし厄介な故障だったら直すのにも時間も掛かりますし、お金だってそれなりに掛かりますよ? ねぇ?」
「……むぅ」
「それを考えれば単純な原因で良かった良かった、ですよ?」
「……」
フォローが通じたのか、謙太郎の尻尾がゆっくりと左右に振られ始める。
どうやら、何とか彼は機嫌を良くしてくれた様ね? とミナは心の内で安堵の溜息を漏らした。
そして、ようやく顔を上げた謙太郎は何時もと変わらぬ無表情で礼を言う
「有難う」
「あ、いえ、別に礼は良いんですよ。当然の事をしたまでですので。
代わりに、これからまた何かあったときは杉本オートに来ていただければ……」
「そうか、世話になった」
謙遜するついでにさりげなく店の宣伝をしている辺り、ミナはある意味では強かと言えた。
そうして、謙太郎が動くようになったバイクに跨ろうとしたその矢先、
「やー、ゴメンゴメン、ミナ! お待たせー!」
「!?」
――謙太郎の耳を震わすやたらと大きく響く声、振り向き見れば其処には三度登場、質問機関砲教師、サン・スーシ!
どうやら六時限目には英先生の担当する英語の授業があったらしく、そのお陰で説教から解放されてきたのだろう。
それでも、約数十分の正座は相当に堪えたらしく、まだ足に痺れの残っているサン先生の歩みは少々ふらついていた。
当然、ミナは約束の時間に遅れてやってきたサン先生に詰め寄り、不機嫌に尻尾をくねらせて文句を言う。
「……もう、サンったら遅いじゃない! 今まで何やってたのよ」
「あ! 池上先生! まだ帰ってなかったんだ。良かったぁ、ミナが引き止めててくれたんだね?」
「ちょっと! サン、わたしの話を――……って、池上先生?」
しかし、硬直している謙太郎をミナの肩越しに見つけたサン先生は、ミナの文句をさらりとスルーしてぶんぶんと尻尾を振る。
おまけにサン先生は謙太郎の事をペンネームで呼ぶ物だから、ミナは耳をピンと立てて不思議そうな顔。
「そうだよ、ミナ! 彼こそあの推理小説『片耳のジョン』シリーズの作者の池上 祐一先生だよ!」
「えっ! うっそ!? この人があの?」
妙に自慢げなサン先生の説明に、ミナは不機嫌な表情を吹き飛ばし、耳と尻尾をピンと立てて大きく驚く。
実を言えばミナもまた、父親の持っている『片耳のジョン』を良く読んでいたので、池上 祐一の名を良く知っていた。
「…………」
その最中、謙太郎は何時もの無表情ではあったのだが、その心中ではかなりの焦りを感じていた。
それも無理もない、只でさえ2番目に苦手な年下の女性が居る状況に、更に最も苦手な質問機関砲教師まで加わったのだ。
当然、謙太郎はすぐさまその場から逃げ出すべく、バイクに跨ろうと……
「っ!?」
―――する前に誰かに尻尾をぐいっ、と掴まれ、その刺激で謙太郎は思わず身体を仰け反らせてしまった!
慌てて振り返り見れば、其処には良い笑顔を浮かべたサン先生の姿。その手は謙太郎の尻尾をしっかりと掴んでいた。
そして、耳を伏せている謙太郎へ、サン先生は尻尾を大回転させて笑顔を崩さずに言う。
「今度こそ逃げちゃ駄目だよ? 池上先生?」
「…………」
恐らく、この時の自分はこれまでにない落胆に満ちた表情を浮かべている事を、謙太郎は自覚していた。
もし、今の自分の表情にタイトルを付けるとすれば、『絶望する男』と題を付けている事だろう。
そう、謙太郎はサン先生とミナの羨望の眼差しを一身に受けながら、自分の状況を悲しく悟ったのであった……。
* * *
結局、それから謙太郎は二人から散々質問攻めにされた挙句、サインを書かされる事となった。
(しかもその時はちょうど下校時刻に重なった為、突発的なサイン会に並ぶ列は最終的に30mを超えていたという)
その後、満足した二人からようやく解放された謙太郎はほうほうの体で家に帰宅する事が出来た物の、
先に帰宅していた卓の報告によって、この事は妻の利枝に知る所となり、
それから2時間に渡る説教の末、謙太郎は『自分の乗るバイクの構造はきちんと熟知しておく事』と言う教訓を得たのだった。
「いや、教訓にするのはそれかよ、親父……」
その時に卓が漏らしたぼやきは、誰の耳にも届く事は無かったのだった……。
――――――――――――――――――――終われ――――――――――――――――――――
以上です。
支援してくれた方、本当に有難うございます!
それにしても、SSを書いていると頭の中でサン先生が勝手に動きまくるから困るw
>>279 ちょww一体如何言う事すればこの三人にこんな冷たい眼差しで見られる事に?ww
つか、りんごが一番恐いってw
しかしリオのスカート丈は短いのぅ
委員長なのに風紀紊乱甚しいぜ
いいぞもっとやれ
>>301 サン先生の「見た目は子ども、中身も子ども」っぷりがいいのう。
>>302 まったくけしからんですな。
いいぞもっ(ry
人気作家でダンディーなナイスミドルなのにいろいろ残念すぎるぜ親父w
利枝さんは本当いい妻だ
べスパに2Tかよw
犬上父子に続きサン先生も片耳のジョン出演フラグがたちましたか、これはw
それよりも謎のスピンオフ作品についてkw……おや、こんな夜更けに来客とはだれd
あと前の話
>さて、これを見た時、”奴”はどう言う表情を浮かべる事か。それが楽しみで仕方が無い。
ヒカルあたりは「自分がモデルのキャラがあこがれの本に!!」とか言って、2、3ヶ月は
頭惚けたままになってそうだな、父の方は別の意味で惚けちゃってるがw
>>305 イタリアンブランドで統一されてた利枝さんカッコヨス
出来るオンナはそんな事まで出来ちゃうのですね
ミナとバイク談義させたら、そこらの男顔負けのトークが炸裂しそう
尻尾がじゃまだ。きみたちの尻尾がじゃまなんだ。
「…通れないじゃないの」
右手にコミックにラノベにアニメ雑誌、左手に学生カバン、そして気持ちを表すように長い耳をへし折らすのは風紀委員長・ウサギの因幡リオ。
学校帰りに寄った、『本を売るなら…』でお馴染みの古本屋。明るい店舗には、同じく学校帰りの生徒らや
仕事をさぼったサラリーマンが、ずらりと本棚の前に立ち並ぶ。立ち読み自由が謳い文句のこの店では、ごくごくありふれた光景。
宝のありかを探す冒険者か、はたまた暇をつぶすだけの自由人か、彼らは勝手気ままに立ち読みを続けていた。
しかし、じゃまなんだ。きみたちの尻尾がじゃまなんだ。
「こんなお宝本、100円コーナーにおいて置くなんてここの店も正直者ね」
誰もがキャラは知っておるけど、本屋さんには置いていない有名漫画家の絶版単行本を手にしたリオは、ホクホクと顔をほころばす。
ちょっとかすれて古いだけでこの値段に設定された本だが、リオの目からは10倍の値段に見えるのだ。
どこかの骨董品が得意な店に売られなくて良かったね、と本を優しく励ましながら手にとって、
ついでに何ヶ月か前に買い損ねたアニメ雑誌、そして一度読んでみたかった数年前のラノベと共に購入することにした。
だが、じゃまなんだ。きみたちの尻尾がじゃまなんだ。
ここからレジが見えるのに、彼らのじゃまをするのは悪いから、ちょっと通り抜けるのはやめておこ。
真面目のまー子は、注意したいという『風紀委員長』としての因幡と、自分の趣味を目立たせたくない小市民としてのリオとで葛藤する。
少年コミックの棚の前、固まりとなって並んでいる子どもたちは、夢中になって尻尾を振って本に釘付けだ。
イヌの少年たちはぶんぶぶんぶと尻尾を揺らし、ネコの少年はピンと跳ね上げる。二人いっしょに一冊を読んでいた子イヌは、
マンガのギャグがつぼに入ったのか、同時に激しく動くご機嫌な尻尾。そいつらは、リオの行く手を悲しくも阻む。
同じ佳望学園の生徒もいくらかいる店内、可及的速やかにお会計を済ませてこの場を立ち去りたい。
目立ちたくない。目立ったら負け。丸い尻尾を引っ張られるなら、穴で大人しくしている方が利口。
「まったく、風紀ってものを考えなさいね。ガキどもが」
と、言ったつもりで学生カバンを強く握る。リオは、一言も注意できない自分になんだか腹が立ってきた。
仕方なく回り道でレジに向かって列に並んだときのこと。男性の声と共に、彼らの尻尾は大人しくなる。
「きみたち、尻尾で通れないよ」
どこかで、聞いた声。
冷静さと理知的なスマートさをかねそろえた、よく通った声質。オトナの声だ。
「す、すいません」
子どもの扱いは上手いはず。それは、子どもたちの反応が全てを物語る。
レジの順番が来たリオの頭に、知っているうちの誰かの顔がふわりと思い浮かぶ。
「ポイントカードは、お持ちですか」
「……」
「あのお客さま…」
慌てて出した全て裏返しにした本や雑誌を目の前に、レジ担当者は少し困った顔をしていた。
尻尾を引っ込めた子どもたちの列をすり抜け、レジの方に向かってくるのは、リオと同じ種族のウサギの男性。
垂れた耳は聞き逃すものなく、白く光るメガネは森羅万象、宇宙をも見通す。というのは言い過ぎかもしれない。
「はづきちだ」
佳望学園化学教師・跳月十五、33歳。独身。
白衣を着ていない跳月を見るのは、いくらか違和感はある。だが、そこにいるのは跳月に間違いない。
彼は小難しそうな雑誌に、地味な装丁の単行本、そして不釣合いなコミック文庫を持ってリオのいるレジに向かってきた。
リオの「どうでもいいから早くビニール袋に本を入れて!」と言う願いが通じたのか、跳月に気付かれる前に、
店員の「ありがとうございました」の声を聞くことが出来た。気付いているけど、跳月に気付かない振りをして、そそくさとリオは店から出る。
きょうの戦利品をカバンに詰め込んで。
しかし悲しいかな、店外にもリオの足を止めるヤツがいた。
やってくるとは聞いていなかったのに、用意なしでのいきなりな遭遇は非常に困る。
「傘持って来てないし!」
灰色の天を仰ぎ見るリオのメガネのレンズには、小さな雨粒が突き刺さる。
仕方がないので学生カバンを頭に、近くの電停まで駆けることにした。リオの靴とソックスは、水溜りで跳ねた雨水で濡れる。
しかし、長く走ることが苦手なウサギのリオ。息を切らしてか、近くの店の軒下に逃げ込むことしか出来なくなっていた。
肩で息をしながら、両手でカバンを抱きかかえる。さっきの跳月の目線よりも冷たい雨はごめん被りたい。
リオの息は余計に熱く、メガネが仄かに白く曇る。変えたばかりのシャンプーが強く香るのを感じながら。
「因幡、どうした?」
さっきと同じ声がする。さっきと違う暖かさがする。
傘を片手に雨を楽しむように通りがかるのは、先ほど子どもたちを注意したヤツだ。
「入っていくか?」
「はい…。跳月先生」
肩で息をしているリオは跳月と肩を並べて、灰色に塗りつぶされかけた街を歩く。跳月のズボンの裾は、少し濡れていた。
傘からはみ出した尻尾を雨で濡らすイヌがいる。今しがたのリオのように、軒先で丸くなるリスがいる。
「きょうって、雨の確率10パーセントでしたよね。先生」
「降水確率は、今までの気象データを元に同じパターンの雲行きで降るか降らないかの確率なんだ。
10分の1、つまり10パーセントだから90パーセント降らないとは限らない。それに…」
「それに?」
「泊瀬谷先生が顔を拭いていた」
黙ってリオは大きく頷く。
電車通りに抜き出ると、架線から火花を散らしながら市電がゆっくり走っていた。市電に乗って自宅に帰ろうかと思っていたリオだが、
雨脚も手伝って働き者の市電は、あいにく満員御礼。乗る気を無くしたリオは、徒歩で自宅に帰る覚悟を決めた。
「やだな、混んだ電車は。雨宿りして、マオに傘を持ってこさせようかな」
「うーん。どこで待つつもりかい?」
「あ、あそこのレストランです!」
市電が通り過ぎると、古い建物が二人の視界に入る。古い看板が誇らしげに掲げられたレストラン。その名は『ほしの軒』。
跳月のおごりを約束に、その店で一旦雨宿りすることに。リオの髪からは、ほのかに甘い雨の香りがする。
「いらっしゃいま…せ。あれ、リオに跳月先生?」
「変な目で見ないでくれ。ぼくは一人のウサギの先輩としてやってることだよ」
少し笑った跳月の声と、リオの紅くなった頬と、扉のチャイムが重なり合う。
エプロンを腰に巻いた料理人姿の同じくウサギの星野りんごが、くるりとカウンター越しに突然の来客を迎えた。
木の暖かさに包まれた店内は、雨ということでお客は彼らのみ。ちょっとした貸切な状態なので、りんごとしては大歓迎。
軽くでいいので、適当な料理を…と、跳月はお冷を持ってきたりんごにオーダーすると、すぐさま厨房に向かって叫び、
オーダーをシェフであるりんごの父親に伝える。奥の厨房で父親が鶏卵を割って、すぐさま料理を始めていた。
一息つくと、跳月はリオに小さくこぼす。
「尻尾の長い種族は、彼らで大変だよね」
「し…尻尾?…どうしたんですか」
かくかくしかじかと本屋での一部始終を話す跳月、その表情は少し外で振り続ける雨のように寂しげであった。
リオは知っていることだけに、このことを知らないことにしている自分がいやらしく思えてきた。
跳月は「ぼくとしたことが」と、そのことを恥じて後悔しているように見える。リオはお冷を口にして、黙っておくことをごまかす。
「ぼくの姪っ子と同じぐらいの子どもを見ると、どうしても気になるんだ」
「姪御さんがいるんですか」
「うん、最近生意気になってしょうがないんだよ」
「へえ。わたしはその頃、学校の風紀委員に入りたてだったなあ」
自分も初等部高学年の頃、初めて委員会に参加したときに他の子たちが活発に意見しているのに、
自分ひとり何もいえなかったことを思い出していた。誰もが通る痛い時期。誰もが同じように痛々しい。
跳月は高等部からの化学教科の教師なので、そんな時期を通るリオの初等部を知らない。
「ぼくの理詰めでも言うことを聞かない。ヤツを黙らせるには、コレがいちばんさ」
跳月のカバンから取り出したのは、先ほどの本屋の袋。リオは、跳月が手にしているコミック文庫に目を奪われた。
「なかなかヤツには評判だよ」
「跳月先生、やりますね」
そのコミック文庫は、同じ店でリオが100円で買った絶版単行本の新装文庫版であった。
「ウチの姪っ子と同じ年頃の因幡が振りまく風紀委員ぶり、見てみたかったなあ。ははは」
「そんな!わたし…。もしかして、その頃から今みたいに『きつい子』って思ってるんですか?跳月先生の口からなんてことを!
わたしは、小さいときは大人しかったんですから!今と一緒にしないでくださいね!跳月先生!!」
リオは生徒を注意するときと同じ目で、そして顔を紅くして跳月に迫った。揺れる髪からは相変わらず甘い香りが。
一方、白々しくお冷を手に取る跳月は、オトナの対応テンプレ通り、あえて返事をしなかった。
コツンと濡れた靴で向かい合わせの跳月を蹴る、という妄想を勝手にリオはしていた。
厨房からはバターの香ばしい香りと共に、何かが美味しそうに焼ける音が聞こえてくる。
「…でも、その姪御さんもいつかは彼氏を連れてくるんですよ。同じウサギか、尻尾の長いイヌか…」
「そうだな。ぼくは、ウサギの子としか付き合ったことないからなあ」
「興味あるなあ、跳月先生の彼女さんのお話!!初耳だ!」
「え…。そうだっけ」
リオの声で冷静さを失った跳月の目は、今まで誰にもみせたことのないものだった。実験に失敗した博士でもこんな顔はしない。
やがて、厨房からバターが焼ける音は消えて、代わりに料理をお盆で運んでくるりんごの足音が聞こえてきた。
「跳月先生、わたしも初耳です」
運ばれた焼きたてのフレンチトーストと同じように、跳月の顔からは湯気が立っていた。
おしまい。
イラストとは別物になりました。
さて、帰省するかな。投下はおしまいです。
リオのシャンプー嗅ぎてえ!
そしてはづきちの彼女に興味しんしんw
わたしはタヌキになりたい
このさき、おおはらのしーえむきんし
ふおぉ、キュンキュンするうぅ
もうリオがかわいくて困る
はづきちは大人だねえ
ロリっ子風な外見の先輩に罵られる・・・・
なんか自分の中で新しい門が開かれた気がした
お、卓がいる。めずっこい
鎌田の想像すると本当ウザいなw
割と重要だから縛っとくわけにもいかんしなぁ
322 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/20(日) 19:24:10 ID:jbq1hTwB
新ジャンル、裸割烹着
はせやんヒカルをブッちぎってリオはづきちが結ばれる!
ねーな。
鎌田の触覚はラジオペンチで剪定しましょう。
避難所で困ってる人がいるの
誰か助けてあげて><
こういうことについては携帯は無力で困る
325 :
代理投稿:2009/09/20(日) 22:35:06 ID:5J4FFCvI
あー時期外したー。筆遅い自分が嫌になる。
危うくポケモンの誘惑に負けて永遠に未完になるとこだったぞこの野郎。
完全に時期遅れですが林間学校ネタです。今回も勝手に書くあの子とあいつのお話。
『月夜の浜辺で〜二日目の夜〜』
林間学校二日目の深夜。
前日の枕投げバトルロワイヤルの疲れもあり、男子生徒たちは全員が寝静まっていた。
部屋は静まり返っている、とは言い難い大いびきが響いているのだが、それで目を覚ます者はいない。
二日目の夜は、このまま平和に朝を迎えるものと思われた。
「ぐふぅ!!」
そんな平和は突如として乱される。声を上げた彼は、哀れな被害者だった。
腹部への強烈な衝撃によって、少年は深い眠りから急激に覚醒させられてしまった。
ぼやける視界で腹に乗った異物を確認する。それはずっしりと重く、ゴツゴツと硬い質感の円錐形。
円錐の根本をたどると、大音量のいびきを立てる友人の背中に繋がっていた。
「お前………」
彼らの太く長く、そして重い尻尾は危険だ。
だからリザードマンの二人には、寝返りをうっても周囲に被害が及ばない位置まで離れてもらったはずなのだが。
その一人、竜崎利里の素晴らしい寝像により、彼は見事遠くで眠る親友、御堂卓の隣までたどり着いたのだった。
腹に乗るのが血の繋がらない可愛い妹とかならまだしも、
硬い尻尾のボディーブローで叩き起こされるなんて最悪の目覚めにも程がある。
こいつも叩き起こしてやろうかと卓は起き上ったが、すぐに上げた手を下ろした。
付き合いの長い彼は知っていた。利里が夜の眠りに入ったが最後、生半可なことでは決して起きない。
耳元で大声を出しても起きないし、叩けばこっちの手が痛いだけだ。時間と日光に反応して起きるのだ。
とは言え、叩き起こす手段はあるにはあるのだが…
やめておこう。利里に悪気はないのだから。
布団から立ち上がった。すっかり目が冴えてしまって、すぐには眠れそうにない。
携帯の時計は深夜1時30分を示していた。教師が見回りに来るのは確か2時半頃だったか。
危機回避に定評のある来栖による信頼できる情報だ。
襖を少し開いて周囲を警戒する。夜行性の猫先生たちやそら先生に注意。
廊下に人影がないことを確認して、部屋を抜け出そうとした、そのとき。
ボスン!
背後の音に慌てて振り向くと、利里が今まで卓の寝ていた布団を占拠、隣に寝ていた来栖に尻尾アタックを放っていた。
尻尾は来栖の頭があった位置。だが幸いにも来栖の頭はその下方、尻尾は角をかすめて空の枕に落ちていた。
さすが危機回避に定評のある男。あいつなら平気だろう。たぶん。
利里の相手は来栖に任せて、そろりと部屋から抜け出した。
寝静まった真夜中の旅館。窓からの月明かりがぼんやりと足元を照らす、海岸に面した廊下を歩く。
静寂の中で、自分の足音と遠くの波音だけが聞こえてくる。
バサッ
ふと、別の音に気付く。波音に混じり小さく断続的に聞こえてくる音。
外を覗くと、月明かりに照らされて海岸の上空を舞う影を見つけた。
それが何かはすぐに判断できた。馴染み深い羽音。独特のシルエット。風に舞うポニーテール。
海岸へと降下していく影、あれは朱美だ。
あいつ、こんな夜中に何してるんだ。
深夜徘徊、それも旅館の外に出ているとなれば、見つかったら注意だけじゃすまないぞ。反省文書かされるぞ。
今は1時40分、2時半には部屋に戻っていないとまずいんだぞ。わかってるのかあいつ?
少し考えた後で、音を立てぬように窓を開けた。周囲に特に注意を払って、窓枠を乗り越える。
冷たい地面に足が触れる。幸い地面は整備されていて、海岸まで人間の素足でも問題ない。
もう一度注意深く周囲を見回してから、朱美が降りたであろう方向へ歩いて行った。
月が明るいこともあり、朱美の姿は案外すぐに見つかった。
砂浜の外れに生えた一本松。横に長く伸びた枝に、海岸を向いて逆さまにぶら下がっている。
ふと芽生えた悪戯心。足音を忍ばせてある程度まで近づき、その背中に声をぶつけた。
「そこの非行少女!」
ビクッ、と、その背中が大きく揺らぐ。恐る、恐る、声の元へ顔を向ける。
その主を確認して、朱美はホッと息を吐いた。
「なーんだ、ビックリしたー。こんな夜中に何してんのよ」
「そりゃこっちのセリフだ」
やれやれと肩を竦めて、朱美の隣へと歩いていく。
松の根本に寄り掛かると、同じ顔の高さになった。
「お前が飛んでるのが見えたからな」
「やだー、こんな夜中にあたしに会いに来るなんて卓君ってばダイタンなんだからー」
「注意!しに来たんだよ! 深夜徘徊。見つかったら反省文書かされるぞ」
「それは卓君だって同じじゃん。いーけないんだー非行少年ー」
「ばれなきゃ平気だ。お前は飛んでる分目立つんだよ」
「ダーイジョブだってー」
ふぅ、と息を吐いて、改めて話題を振った。
「で?お前はなんでこんな時間にこんなとこにいるんだ?」
「ん……ちょっとね」
「ちょっとじゃわからん」
「えっと…ねぇ…」
朱美は言いにくそうにツンツンと指先を付き合わせる。
「まぁ言いたくないなら…」
「お父さんのこと…思い出してたんだ」
「………」
しまった、と、密かに思った。顔には出さなかったが。
朱美の父親。朱美と同じ蝙蝠人だった。詳しい事情は知らないが、朱美がまだ小学生の頃に…
「…ごめん」
「何で謝るのよ」
「野暮なこと聞いた。ごめん」
「あたしが勝手に言ったんだから卓君が気にすることないわよ」
トーンが下がる卓とは対称的に、あっけらかんとした様子で、それにね、と朱美が続ける。
「あたしもちゃんと思い出したのはほんの30分前なの」
「え…どういうことだ?」
「この海岸」
朱美が海岸を広く眺める。つられて顔を向ける。
「昨日着いたときから、前にも来たことあるなって感じてたんだけど思い出せなくてさ。
ずっともやもやしてて、ついさっき思い出したの」
朱美が簡単に過去を語る。
あたしが卓君と利里君に会うよりももっと小さいころ。
親戚の子たちはもう自由に飛びまわってるのに、自分はまだ上手に飛べなくて。
お母さんはまだ小さいんだから無理しちゃダメって言うんだけど、悔しくて。
見かねたお父さんが夜に内緒で特訓してくれたんだ。
「自分の力だけで海まで飛んで来れたときは嬉しかったなぁ」
「それがこの海岸?」
「そういうこと」
今夜みたいに月の明るい夜で、並んでぶら下がってた。
何を話したかまでは忘れちゃった。でもね…
「ナデナデしてくれた手のことはよく覚えてるんだ」
「そっか…」
朱美は眼を閉じた。
肌に感じる潮風。静かな波の音が、幼い日の感覚を呼び起こす。
頭に触れる手の感触。その温かさ、確かな優しさが伝わってくる。
「よく頑張ったな、朱美」
うん。ありがとう、お父さん…
「………」
「よっ」
「…何してんのよ」
「いやこんな感じかなって」
眼を開けた朱美が隣に見たのは、父ではなく、卓だった。
朱美の隣で逆さまにぶら下がった卓。
明らかに無理に手を伸ばしている卓の姿を見て、朱美から自然と笑みが零れた。
「ふふっ。お父さんはそんなにちっちゃくないよ」
「無茶ゆーな。そんな足で掴まるなんて芸当できるか」
手を引いてその置き場所を思案した結果、頭の後ろで組むことにした。
「まあその、あれだ。お父さんの替わりにはなれないけど…。
俺も、利里も、クラスの皆も先生たちもいる。ずっといるから…さ…
朱美は寂しい顔…しないでくれよ」
気恥しくなり、そっぽを向きながら言う。我ながらくさい台詞だ。
朱美は少し驚いた顔を見せた後、クスリと笑って言う。
「なーに言ってんの、今更寂しいことなんかいないわよ。
もう五年以上も前の話よ。ちょっぴり昔を思い出してただけ」
「…そうか?」
不安に振り向くと、ニッコリと笑う朱美。
「でも卓君の気持ちは嬉しかったよ。ありがとう!」
「お、おう」
朱美が見せた満面の笑顔で、不意に高まってしまった鼓動を抑えるのに、卓は十数秒の時間を要したのだった。
卓と朱美はふたり、松の枝にぶら下がって海を見ている。
卓の声がその静寂を割った。
「こんな風に海を見るのって…そういえば初めてだ」
「あぁ、そっか。あたしは違和感ないけど、人間は普通逆さまになったりしないもんね。どんな感じ?」
「不思議な感じだよ。海と空が逆転してる」
「まさしく星の海、って感じかな?」
「ああ、そうだな。まあ今夜は月が明るいから星はあんまり見えないけどね」
体の下に広がる夜空を遠く眺める。
「この海を自由に泳ぎ回れたら気持ちいいだろうな」
「そう?」
「空を自由に飛べる翼。誰だって一度は憧れるさ」
「そうなんだ…。あ、じゃあさ、一緒に飛ぼうよ! そういえば夜に飛んだことってなかったじゃない」
これは良い考えと顔を輝かせる朱美。まるで花が開いたような。
「はは、気持ちはありがたいけどそれは遠慮しとくよ」
「どうして? 卓君が望むならいつでも……あっ」
開いた花が、突然萎んでしまった。
「そっか…ごめん。無神経だった」
「へ…? 何で謝るんだ?」
言葉の意味が掴めない。低いトーンで朱美は続ける。
「冬の…火事の時さ…卓君が怪我したのはあたしのせいだもん…。
あれ以来一緒に飛んでなかったけど…恐いよね。信じられないよね、やっぱり……」
「………」
そうか。朱美はそんなことを…。
普段の行動を見れば、天真爛漫を絵にかいたような性格をしている朱美。
だが見えにくいその本質はずっと繊細で傷つきやすい、年頃の女の子なんだ。
やれやれ、難しいお嬢さんだ。まあ、そこがいいところでもあるんだけどな。
ふっと頬を緩めて、朱美の頭に手を置いた。
「ハッ。なーに言ってんだか」
えっ…と顔を向ける朱美をポンポンと叩いて続ける。
「恐くなんかないさ。俺は朱美のことを信用してる。絶対にな」
「でも」
「おら!過ぎたことをいつまでもぐちぐち言わない」
額を指でコツンと突いて反論を止めさせた。
「もう気にすんな。そんな顔お前らしくないぞ」
「う…うん」
額をさすりながら一応の納得を見せる朱美に、自分の考えを話す。
「ただな…お前は鳥じゃないんだ。運んだ後は相当疲れてるのも知ってる」
「…? うん」
朱美の目をじっと見ながら言う。飾ることは何もない、自分の本心だ。
「もう無理はしてほしくないんだよ。朱美が、大切だから」
「…そっ…なっ…」
「朱美?」
わたわたと落ち着きなく翼をぱたつかせる朱美。何してんだ?と訊ねようとした矢先。
「何言ってんのよもー!!」
スパーン!
「ぶっ!」
振った翼の勢いをそのままに、思いきり後頭部を叩かれた。
突然の衝撃で揺れる体をなんとか止めながら、頭を押さえて反論する。
「ちょっ何すん」
「いい!卓君!」
目の前にビシッと指を突きつけられて、つい言葉が止まってしまう。
「大きなお世話よ。あたしはね、卓君に心配されるようなお子様じゃないの」
「そうは言ってもさ」
「あたしが! 卓君と一緒に飛びたいの!」
「なっ…」
そこまで言いきって、朱美はぷいと向こうを向く。
「もう…女の子に何言わせるのよ」
「 」
言葉を失った。
後ろを向いた朱美はどんな顔をしているのだろうか。
不機嫌にぷくっと頬を膨らませている? いや、違うだろうな。
たぶん、今の自分と同じような顔をしているんだろう。
朱美がぽつりと、静寂を破る。
「…何とか言いなさいよ」
「…くっ…」
「ハハハハハハ!!」
自然と笑いが零れた。
今までの自分が、自分たちのことが可笑しくて。
「な、何よ!」
怒ったような、驚いたような顔で朱美が振り返る。
「あーまったく馬鹿だよな。俺も、お前もさ」
「何よ!失礼しちゃうわね」
「お互い無駄に気ぃ遣いすぎてた。だろ?」
「う…まあ…そうね」
「わかったよ。一緒に飛ぼう、朱美」
「う…うん!」
元気いっぱいに頷く朱美を見て、久しぶりに満ち足りた気分になった。
「ま、今日は場所が場所だからそれはまた今度な。よっ」
と、足をかけていた枝を掴んで体を反転させる。
世界の向きが正常に戻り、海に背が向く。そして足は正しく…地面を…
「うお…っと、っと、うわっ!」
地面に落ちる衝撃と同時に、襲いくる強烈な立ちくらみ。
目を回したように後ろへ数歩たたらを踏み、ずしゃ、と砂浜に尻もちをついてしまった。
「っつー…」
「だ、大丈夫っ!?」
いつの間にか地上に下りていた朱美が背中を支え起こしてくれた。
「あー…いや、大丈夫。ちょっとふらついた」
「え?え?でも!?」
「平気平気」
心配そうに見つめる朱美にひらひらと手を振って無事を訴える。
海へ向きを変え、足を伸ばして楽な体勢をとった。
「あー…すげー頭に血が上った」
「え……あ、ああ! そういうことね!」
朱美はどこか大げさに納得して、心底ほっとした様子で隣に座り込む。
なんだこれ? まず考えられるありがちな理由を言っただけなんだが…
「しっかしお前はよくずっとあんな逆さまでいられるよな。頭に血ぃ上ったりしないのか?」
「あのねえ、あたし達蝙蝠はあれが普通なの。家ではあれで眠ってるのよ」
「へ!? マジでか!?」
「あたしにとっては頭に血が上るってことがありえないのよ」
「へぇー」
あぁ、そうか、朱美の場合頭に血が上るって発想がそもそもないわけか。道理で心配するわけだ。
一人納得して、正しい向きを取り戻した空と海を眺めながら言う。
「俺はやっぱりこっちの方がいいや。空は上に、海は下にあったほうがいい」
「そっか…」
少しの間があって、朱美が呟く。
「…うん。あたしもこっちの方がいいな」
「そうなのか?」
「うん。だってさ…」
ぽふ、っと。
肩に感じる重み。少し頬に触れる、短い毛の感触。
「こうやってできるじゃない」
囁くような朱美の声が、今までよりもずっと近くから届く。
「…そっか」
ほんの小さい声で、言葉を返した。それでも十分に届く距離だから。
風に揺れる前髪が視界を踊る。わずかに感じる花の香り。
触れた肩からじんわりと伝わる体温と、静かな息使い。
このまま、時間が止まればいいのに。
「ふふっ、卓君。ちょっとドキドキしてるね」
「変なことゆーな。お前も似たようなもんだろ」
「えへへ…」
「………」
「朱美」「卓君」
ふたつの声が重なった。完全に同時だった。
「…お先にどうぞ」
「今度は卓君から言ってよ」
「う。あぁ」
小さく深呼吸をした。
「なあ…朱美…」
「うん」
「あの…さ……」
支援
『予定の時間です。予定の時間です。予定の…』
ポケットから響く、無機質な機械音声。
体を離して目を丸くする朱美。少し操作して、空気の読めない音声を止める。
「……もうじき部屋に教師が見回りに来るんだよ」
携帯の時刻は2時20分を示していた。
「…え、それまずいじゃ」
「うん、帰らないとまずいんだよ」
「今何時なの?」
「2時20分。2時半頃に来るって話」
「うわ、本当にもう帰らないと」
焦る朱美を見て、小さく溜息をついた。
「よし朱美、お前は今すぐ飛んで帰れ。俺は歩いていく」
「ええっ!? 卓君置いてくの!?」
「歩いても十分間に合うから」
それになぁ、と、あまり考えたくはない可能性を続ける。
「万一、一緒にいて見つかった場合! …問題が余計こじれる。わかるだろ?」
「そっ!? そう…かもしんないけどぉ…」
恥ずかしそうな顔で、何てこと言うんだと文句を言われた。
仕方ないだろ。言ってるこっちだって恥ずかしいんだから。
「じゃな朱美、また明日。グッドラック」
「うん、卓君も見つからないですぐ帰ってね」
別れを告げて飛び去る朱美を見送った後で、頭を抱えて深い深い溜息をついた。
…携帯を本気で海に投げ捨てたいと思ったのは生まれて初めてだ。
俺の馬鹿。一時間前の俺ホント馬鹿。何でアラームなんかかけてんだよ俺。
アラームは余計だろ馬鹿。セルフで邪魔してどーすんだよ俺。
いつまでもこうしていても仕方ない。
ふぅ、と息を吐いて、旅館へ歩き出した。
歩きながら、口の中で呟く。
まあ実際帰らないとまずいわけだし。アラームなきゃ時間に気付かなかったわけだし。
おかげで俺も朱美も無事なわけだし。そうだよ助かったんだよ俺。ありがとう一時間前の俺。
ありがとう携帯のアラーム。おかげで反省文書かなくてすん
ガシッ
むんずと、何者かに頭を掴まれた。大きくはないが力強い手。
「やあ、奇遇じゃないか卓少年」
快活ながらも、内に迫力のこもる声。
ギリギリと頭に食い込む爪。ギギギと背後へ首が回る。
不機嫌に揺れる尻尾。黒の眼帯。白い咥えタバコが闇に映える。
「あ、あの、これはそのですね…」
「よりにもよって私が見回りの日に深夜徘徊とはいい度胸してるじゃないか。なあ、卓少年?」
英教師とはまた違う、このケモノには見つかりたくなかった教師。獅子宮怜子の姿がそこにあった。
「…おかげで一本無駄にした」
「は?」
「ほら、さっさと歩く」
「痛ーててて…」
「黙って歩く」
頭を掴まれたまま、寝室まで連行された。今夜のところは部屋に返される。
明日はたっぷり説教と反省文が待っているぞと楽しげに言われ、心の底からげんなりした。
明日の運命を呪いながら歩いて、やがて部屋にたどり着く。
部屋へポンと投げるように、やっと掴まれた頭が解放された。
「今夜はさっさと寝ろ。トイレも無しだ、いいな」
「ええっ!」
「最後に一つ!」
振り向いた額に、ぷに、と意外と柔らかい肉球が押し付けられる。
「もっと積極的にいけ。青春は待っちゃくれないぞ」
謎の一言を残して、獅子宮教師は廊下の暗闇に消えていった。
教師の消えた廊下を眺め、額をさすりながら言葉の意味を考える。程なくして気付く。
無駄にした一本。待ってくれない青春。
あ…あの不良教師…
「……見てやがったな」
既に誰もいない暗闇に向かって卓は呟いた。
部屋の様子は変わらず平和なものだった。
利里は元卓の布団をすっかり自分のものにしていた。尻尾は隣の来栖の腹部へ。
それを来栖は体をくの字に曲げて見事回避していた。さすが危機回避に(ry
ここまで戻ってはこないだろうと踏んで、卓は元利里の布団に入り眠りについた。
翌日、長々と説教を受け反省文を書かされ課題は3倍にされ、と、散々な一日であったことは言うまでもない。
そもそもの原因である朱美がお咎めなしだったのは少々納得いかないが、本当に申し訳なさそうに眼で謝ってくる朱美を見て、
朱美だけでも助かったならまあいいや、と思うことにした。
余談だが、翌朝は利里と来栖の苦しげな唸り声で卓は目を覚ました。
布団の乱れっぷりから察するにあれからもいくつかの攻防が行われていた模様。
最終的には来栖の角が利里の尻尾を動かないようにホールドして決着がついていた。
さすが(ry
っていうかホントに寝てたのかこいつら…
<おわり>
朱美父についてはごめん。存在がさっぱり見えなかったのでつい…
何らかの理由でいないってことで、病気か怪我か離婚か失踪か詳しい事情は自分も知らん。
もし書く人がいるなら扱いは任せるって感じでどうにか。
っしゃあぁポケモンやるぜ!
341 :
代理:2009/09/20(日) 23:04:25 ID:5J4FFCvI
>>314 やっぱ猫さんたちは湿気に敏感で顔くしくしやってたりするのか
緊張するとすごい勢いで毛づくろいしたくなっちゃうわけだな
はせやんかわいいなあ
ニヤニヤが止まらない
甘酸っぱくてほんわかした感じが あぁぁぁイイナーーーーー
そしてオチに吹いたw
おっと
代理乙です
何この一眼レフ的なボケ
ただの接写だろう
>>346-347 ご賢察通り。 データは
Pentax K7D TAMRON SP90/2.5(55B) 開放 1/40 ISO=200 AWB PLフィルタ
素体の方は関節が足りない様でお座りが出来ないです。
あーもうどっからどう見ても成立してるよなーこいつら
チクショー卓氏ね
ああ、以前のPONTAXですね
まだらのひものw
本当に毎回芸が細かくてそれを見つけるのが楽しいです
>>352 試し刷りを貰った卓が、ヒカルへ見せる前に少し読んでみた。
「親父、いったい如何しちまったんだ? こんなにはっちゃけた作品を出すなんて……。
いや、まあ、面白い事は面白いんだけど、間違い無く本編を知ってる人間の一部から大ブーイング食らうだろ、これ……」
今までとは全く違う作風に、卓はただただ困惑。
当然、卓はこの本をヒカルへ見せるかどうか三時間ほど悩む事になるのだった。
……しかし、この時の卓はまだ知らなかった。
この『迷探偵マリィ』が、予想以上の人気を獲得した事で後にコミカライズ化され、
更にはアニメ化されて長期シリーズとなる事になるとは。
……この時、誰もが予想すらしていなかった。
>>354 アパッチと戦うなら「戦闘のマシン」の方が良かったかと一晩寝たら思いましたです。
ドイルじゃなく乱歩になっちゃいますけど、和製探偵物なら正解だったかな?
>>355 ううむ、やはり従来ファンには不評ですか。メディアミックスすると売れますか(笑)
さて、
以前から鎌田のフォルムに自分の中で整合性が取れず、虫人一般が描けなかったのですが、
試しにこんなふうに描いてみました。第一脚には指が有ります。第二脚は服の中です(退
化してる?)。ズボンの後は大開口部になってます。本来隠すべき腹やら○○等は剥きだ
しになってることになってますが、その辺は考えません。 眉毛も有ります(笑)
こんなんで大丈夫でしょうか? 特に原作の方。互換性がとれなくなりそうなのですが…
ttp://loda.jp/mitemite/?id=444.jpg ついでにカマロもカタカナだった「ロ」に漢字を当ててみました。蟷螂(とうろう)から。
おぉ、これはすごいな
よくもまあこう制服着てる上で虫らしく描けるもんだ
358 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 17:20:49 ID:59uuSJqT
このすれに札幌の人はいますか
「鹿馬螂」を書道家のナガレのとーちゃん辺りに筆でバシィっと書いてもらえれば
またカッコよくいきそうだなーw
3人の中身はともかくとしてな!
今までやったことなかったが、このスレ最初にあった紹介文まとめてwiki更新してみた。
状況変わったひとは独断と偏見で更新した。学外関係者ページ作ってぶちこんだ。あんな感じで問題ないよね。
あー…やってみたら想像以上の手間だったー
いつもwiki更新してくれてる人、心の底から尊敬します。
いつもありがとうございます。
wiki更新お疲れ様です。一点だけ事後報告となりますが、
竜崎 奈緒の紹介文が初等部ではなく中等部の方にあったので
リンクを数点加えた上で初等部の方へ置き直して修正しました。
「じゅーご!遅いぞ!」
「徹夜明けなんだから、勘弁してくれよ」
よく通る声が、跳月の垂れた耳をつんざく。忠犬すかりょん像見守る街の駅前にて、待ち合わせをしていた化学教師・跳月十五は、
きれいに伸ばされたズボンの裾に少し小さなキックを受けながら、きょうのデート相手をやんわりとたしなめた。
市電のりばのホームには溢れんばかりのヒト、人、ケモノ。長い休みの日とあって、子どもの姿も心なしか多い。
忙しそうに、そして慣れた動きで市電職員は、ホームのお客たちをてきぱきとさばく。
「間もなく、1番のりばに十字街経由、古浜海岸行きの電車が参ります。尻尾をホームからはみ出さないようにお気をつけてお待ちください」
市電職員が拡声器を使って、市電を待つ人々に注意を促す声を聞きながら、跳月は相手の手を引っ張ってのりばに向かう。
二人がのりばに付く頃、ゆっくりと市電はお客の前に現れた。ブレーキの軋む音が駅前に響く。
「じゅーご、聞いてくれる?あのね…」
「未雪、行くぞ」
未雪も跳月と同じくロップイヤーのウサギである。少し冷え出した長月の午後、履きなれないブーツで音を立てながら、
跳月と一緒に市電に乗り込む。跳月が乗車ICカードを端末にかざすと、未雪は少し羨ましそうな顔をしていた。
子どもが車内ではしゃいでいる。靴のまま座席に上ろうとする子ネコを母親が引っ叩く。
先頭の窓から景色を見ようと、ネズミの子たちが走り出す。未雪は指の爪をかじりながらぼやく。
「全く、みんなガキなんだから。ねえ!じゅーご」
「…ははは」
隣に座る跳月の腕を引っ張りながら未雪は、スカートを気にしながら脚をバタバタとさせる。
そのうち、扉は閉まり、市電はゆっくりと大通り目指して動き出した。
「あのね、聞いてくれる?この間さあ、どーしても食べたいシュークリームを見つけちゃったんだよね。ネットで見つけたんだけど、
それがさあ、すんごく美味しそうなの。お友だちに話したら、まだ食べたことがないんだってさ。
西2丁目のお店にあるって言うから、今から行こうよ!十字街降りてすぐだし。みんなより先に食べて自慢したいし!」
黙って頷きながら跳月が聞いている間に、市電はのそのそ次の電停に到着する。電停から噂の洋菓子店は目と鼻の先。
音を立てて市電の扉が開くと、秋の涼しい風が車内におじゃましてきた。
「ねえ、ところでさ。男子がさ、まるでガキなんだよね」
「お前は、ころころ話題が変わるな」
「休み時間は尻尾とか耳とかかみ付き合ってじゃれあうし、給食の取り合いするし…。精神年齢が止まってるんじゃないの?
何だか思い出しただけでにんじん、かじりたくなってきた!!全く、元男の子代表として何か反論してみなさいよね!
じゅーごセンセ!納得できたら幾らでもぱんつの中を見せてあげる!納得しないと思うけど!ね」
「お前だって、この間まで穴掘りの真似事で取り込んだ洗濯物をぐしゃぐしゃってして、ねえさんから怒られてただろ」
市電は、とっくに西2丁目の洋菓子店を通り過ぎていた。悲しいかな、未雪はそれに気付かない。
それでも、流れゆく秋の滝のように未雪は跳月に話を続けた。
「ところでさあ、じゅーごは彼女さんと上手くいってるの?」
「……」
「わたしの目に狂いがなきゃ、あんないい人いやしないよ?それでダメなら女運が悪いって」
(最近の小学生は、ませてるなあ…。芹沢みたいだ)
万物創生の頃より、女の子は相手が年上、年下に関わらず色恋沙汰にお節介したがる。そして、相手のご様子次第で自分で安心したり、
不安になったりしているのだ。そんなことは跳月には分かりきっているが、小学生の姪っ子にはそういう理屈は通らない。
人恋しくなる暖かい話に、跳月の目は冷ややかになる。実兄の娘だからか、その目は隣の席の姪っ子と似ていた。
「高校教員、真面目で誠実、生徒たちに人気あり!茉莉子も幸せ者だね!」
「人の恋人、呼び捨てするなよ」
姪っ子とのデートは心身ともに力を使う。
「十字街ー、十字街です。天秤町方面はお乗換えです」
車内が慌しくなる。大きながま口を肩からぶら下げた車掌が、素早い手つきでお客の両替をしている。
やがて、市電は街いちばんの繁華街で歩みを止めつつ、お客を乗せたり降ろしたりと働き出す。
流れる人々の中には、跳月の勤める佳望学園の生徒がいた。制服を脱いだ私服姿の子は、
街歩きを楽しんでいた。
ところが、その子は学園での自分と、きょうの自分は違うように演じなければならない。
(うっ、はづきちが乗ってるよ…。どーか、はづきちが気付きませんように)
手には、人さまに見せるにはちょいと○○な自費出版マンガ(同人誌とも呼ぶ)とアニメDVDがいくつも入った
『キャロット・ブックス』と書かれた紙袋に、それを隠すようにお気にのおとなしめなバッグ。
長い耳に繋いだイヤホンは、(ネット動画で)流行りのアニソンを詰め込んだi-pod。
こそこそと、人の波にわざと溺れながらウサギの因幡リオは、跳月と姪っ子に背を向けて立った。
30分かけて髪を元気な外跳ねにしてみた。ちょっと、服も誰にも負けないくらいおしゃれにしてみた。
メガネも外してコンタクトにしてみた。持ってるバッグもいつもより品がいい。あとは、ウサギの神に
「わたくし因幡がここに居ることを知っているヤツに気付かれませんように」と、お願いするだけだった。
しかし、ウサギの神も空気を読んだのか顔見知りと同乗するという、第三者からすれば最高の舞台を用意してしまったのだ。
ここではづきちに気付かれたら、あとが大変厄介なことになる。頼むからそっとして下さい。
はづきちのことだから、細かく聞くんだろうな。水素レベルの細かさを持つ男だからな、油断できない。
今度はわたしがフレンチトースト奢ります。でも、何も恩義無しにそんなことしたら、みんなみんな怪しむんだろうな。
帰りの会で「あのー、因幡さんはー、跳月先生のことが好きなんです!いけないと思います!」って、糾弾されるんだ。
いやいやいやいや!誰がはづきちなんか好きなもんか。フラグなんかへし折る為にあるもの。誰かが勝手に立てたフラグは、
満面の笑みで蹴り倒してしまえ。はづきちのバーカ、バーカ。恋人と姪っ子と二人同時に振られてしまえ。
ぐるぐると脳内をかき回しながらひくひくと鼻を動かして、市電の向かう湊通りのアウトレットモールまで耐え忍ぶ。
「そう言えばさ、ぼくの教え子でね…未雪にそっくりな子がいるんだよね」
「わたしに!?」
未雪と呼ばれた少女は、ぶんと跳月の方に顔を向ける。長い耳が着物の袖のように舞い上がる。
一方、人ごみの向こうでは、リオはその一言を聞き逃さなかった。聴いているアニソンの音量を落とす。
「風紀委員長をやってる高等部の子なんだけどさ…」
「きっと、美人で人気者で頼り甲斐があって、それからやさしくて…。どんな子か会ってみたいなあ」
未雪の妄想とは裏腹に、地味なメガネっ娘で初等部のコレッタからバカにされてばかりで、終いには「きつい子」と呼ばれてしまったリオは、
いつも流す汗とは違う汗を流していた。楽しみになるはずの本の重みが、だんだん苦痛になってきた。
一目見てみたい跳月の姪っ子もいるらしいが、ここで振り拭くなんて進んで自分のブログURLを2ちゃんに晒すようなものだ。
(買い物済んで、ウチに帰ったら『迷探偵マリィ』のパロ同人、読むんだ…。きっと、近いうちにこの作品アニメ化するぞ…)
それだけを心のよりどころにして、リオは履き慣れないパンプスのつま先で古い木造の床を叩いた。
同じように未雪がブーツの踵で床を叩くと、跳月は思い出したかのように自分のバッグから紙袋に入った一冊の本を取り出した。
未雪が紙袋を受け取り、中身を覗き込むと彼女は全身の羽毛を逆立てて感情を表した。
「『迷探偵マリィ』じゃん!これ、すんごい読みたかったんだよねー!ありがとう!じゅーごさま!愛してる!!」
この本を買うときはちょっと恥ずかしかったな、ということを思い出しながら跳月は中吊り広告を見つめていた。
揺れる広告には「ロングインタビュー『この人と話したい!』:作家・池上祐一」と、週刊誌の宣伝文句が踊っていた。
「じゅーご、さっすがー!これで茉莉子より1ポイントわたしの方が抜きん出たね!」
「人の恋人、呼び捨てするなよ…」
(茉莉子って言うんだ…)
恋人がいることは聞いていた。でも、学校の他のヤツより名前を知ることが出来て、リオは少し得意気になった。
「湊通りー、湊通りです」
アナウンスののち、市電は潮風薫るアウトレットの最寄り電停に到着した。
わらわらと、乗客が降りてくる。子どもの声が賑やかに、その中には跳月と未雪の姿があった。
「ついたー!いっぱい買ってもらうぞー!」
「……」
ICカードで改札を済ませた二人は、人の波に乗りながら買い物を楽しもうとしていた。
二人とは離れて下車したリオは、とにかく『キャロット・ブックス』の紙袋は置いておかないと、とコインロッカーを探す。
「同じところに来るとは…、チクショー。無駄遣いしてやるう!」
グチのような、弱音に似た言葉は吐き捨てるリオの足元は疲れていた。パンプスは余計に歩きにくい。
コンタクトなので非常に目が乾く。買い物を早く済ませて、居間のソファーで一刻も早く伸びてしまいたい。
のんきに吹く潮風にさらされて、リオはアウトレットモールに消えて行った。
―――休みが明けて。昼休み、リオは誰もいない化学準備室でだれていた。
日に当たることもなく、冷蔵庫にはナイショのお菓子が隠されているということで、委員会特権で度々おじゃますることが多い。
「はづきちメインのギャルゲがあったら、どんどん嫌われものにしてやるー」
にやにやしながらリオは、この部屋の主『はづきち』こと跳月十五の冷ややかな目を思い浮かべては、消して、
恋人の話題になって、クールなはづきちが慌てる場面を想像しながら跳月愛用の椅子に腰掛けていた。もちろん無許可。
「茉莉子もはづきちのことを後生大事にしてやるんだぞ」
市電の中で聞きかじった跳月の恋人の名を口にする。「茉莉子が、茉莉子が…」と呪文のように唱える。
会ったこともない教師の想い人にエールを送ると、おもむろに紙袋の中から一冊の薄っぺらい本を取り出した。この部屋なら大丈夫。
ごくりと固唾を呑んで、インクの香りがまだ強い本の表紙を捲る。作者が頑張って入手したであろう上質な紙のさわり心地。
この瞬間がたまらない。外からの幾ばくか弱くなった日の光を受けながら、紙の上に踊る少女の主人公探偵が浮かび上がる。
気が付くと夏が跡形もなく消えていた。チューベットの残りも僅か。季節も秋が深くなるから、食べるなら今のうち。
が、今のリオは食い気よりも勝るものがあるという。その証拠にリオの呟きを聞くがいい。
「マリィかわいいよマリィ。ルーぺでぶん殴られたいお…」
昼休みのリオはちょっと違う。もっとも、真夜中のリオは(深夜アニメやネット動画を見るため)もっと違う。
ファンの脳内補正はすばらしい。リオの手にしたアンオフィシャル・オリジナル・アンソロジー(同人誌とも呼ぶ)は、
作者の池上祐一がおよそ書くことはないであろう展開が、少ないページの中で繰り広げられていた。
キャラへの可能性をファンの力で広げてゆくことは、作品への愛以上のものに近い。リオはその情熱に感銘していた。
はらりと捲ったページからは、ファンなら一度は妄想したであろう○○なマリィの仕草。思わず、リオのメガネが白く曇る。
「むっはーーー!!」
両手で本を握り締め、ふとももを締めてイスの上で背を丸めるリオは、マリィの世界に引きずられ、
跳月が扉を開けて入ってくることに全く気付きことはなかった。冷たい目線がリオの後頭部に突き刺さるが、ぬかに釘。
「因幡、何してるんだ」
リオの長い耳がぴくんと動く。跳月愛用の椅子が軋む。同人をかばいながらくるりと振り向く。
しかし、ここに来てから跳月の恋人とマリィのことばかり考えていたので、つい跳月の顔を見るなり。
「ま、ま、ま、茉莉子??」
「誰が茉莉子だ」
おしまい。
クールなはづきち、大好きだ。
投下、おしまいです。
リオのヲタ臭さがリアルすぎてすごく笑ってしまったwww
むっはーww
リオがオタかわいいw
∩ ∩
|| ||
(*゚∀゚)=3ムッハー!
>>356 鎌田いい感じですね
どうみても悪役怪人ぽいのが良いw
しかし腹の部分が邪魔でライダースーツ着れないのではなかろか
細けぇこたぁいいんだよ!
数学の授業中だった。
みょーんみょーん。
みょーんみょーん。
「…………」
卓は耐えていた。
この、みょーんみょーん、の原因ははっきりしている。彼の背後に席を構える寒がり鎌
田の触角が、鎌田が机に向かってうつむくとみょんみょんしなって、卓の後ろ頭にチクチ
クこつこつ当たるのだ。
触角と呼ばれるくらいだから、鎌田自身もなにかに当たっているのに気付いて居るはず
だが、集中して物書きしていたりするとどうでも良くなるらしい。
注意してもよいが、この触角がチクチク刺さるということは、鎌田がちゃんとノートを
取っている事を表わす。ノートの端っこに飛行機の落書きをしていた卓には、なんとなく
後ろめたい気持ちから注意をするのが憚られた。
結局卓はこちらで取りうる対処として頭を横に逸らしたり、イスから尻をずらして体勢
を変えたりして耐え続けた。
みょんみょん。
みょーんみょーん。
みょーんみょんみょーんみょんみょーん。
頭を逸らせど体勢を変えど、鎌田の触角は追うように卓の頭を小突く。
「……………ちっ」
思わず舌打ち。
よく考えれば、虫の触角は無意識に行く先の障害物を察知したりするためのものだから、
避けども避けども障害物としての卓を探知するために探って来るのだ。卓はイライラしな
がら小さな追いかけっこを静かに続けた。
卓がもぞもぞしながら前を向くと、教壇のサン先生と目が合った。
「御堂、さっきから何もぞもぞしてんのさ?僕の授業より楽しい事してるの?」
「えっ、あ、いや、その」
「違うなら授業聞いてたよねー?僕背が低いでしょ、だから教壇から教えるの大変なんだ
ー。板書するにも踏み台移動しなきゃなんないしー。そこで、僕の授業なんか上の空で理
解できちゃう御堂くん。この問題解いてくれるっかなー。ヒントはラプラス変換!はい、
黒板でやってみよー!」
「ら、ラプラス……?」
さっきまで微分をやっていたのになぜ突然ポケモ○?!
卓は黒板前で30秒ほど棒立ちisデンジャラス。生徒全員がシーンと静まり返っている。
サン先生は意地悪そうにニヤニヤ。何か書かないと終わりが見えない無間地獄が続くよう
に思えたので、卓は仕方無くネッシーみたいな生物を描いた。
「こ、こんな奴……でしたよ、ね?」
「あは!さすがだね御堂!ユーモアがあるよ!」
「あ、これ正解なんですか?」
サン先生の目がジトッと細められる。
「違うに決まってんじゃん。もう席戻って良いよ、授業聞いてね」
「……さーせん」
しょんぼり戻った席では、鎌田のみょんみょんが卓をイライラさせる方向で元気づけた。
「うーん、なんか違うんだよな……」
卓がみょんみょんに耐えていると、ノートを書いているはずの鎌田が何か呟き始めた。
そして触角ではなく、鎌田のイガイガした手が卓の肩を後ろから叩いた。
「ちょっと聞きたいんだけど、御堂って漢字得意?」
「いや、得意じゃねぇな」
「とうろう拳の“ろう”が知りたいんだけど」
「わかんねー……携帯で調べりゃわかるだろうけど俺さっき叱られたし」
「あ、そうだったね。携帯で調べてみるわ、ありがと」
みょんみょんに携帯のカチカチが加わる。
みょんみょんカチカチみょんカチカチ。
卓は思った。
数学の時間に、漢字の練習?
サン先生が踏み台を移動し板書をしているスキに、後ろの鎌田のノートを覗く。
ノートには鎌田が仲間で組んでる悪グループの名の“カマロ”と、それに付けた当て字
の案がびっしり書かれていた。鹿馬呂、鎌ロ、鎌髏、カマ路……。
そして今、“鹿馬螂”が大きく追記された。
こいつは俺がみょんみょんを我慢してる間じゅうこんな下らない落書きヲ……!!?
「おっと、先生こっち向くぞ。前見て、前」
「あ、ああ……」
卓は鎌田に促されて前を向いた。
みょんみょん。
みょーんみょーん。
みょーんみょんみょーんみょんみょーん。
ブチッ。卓の脳内に、自らの堪忍袋が裂破した音が響いた。
「うぅるああああ!!!気が散るんだよおおお!!!!!触角がよおおおお!!!!」
「うわ!どうしたんだよ御堂!」
「お前の触角がぁぁぁあ!」
後に鎌卓の乱(かまたくのらん)として語り継がれる授業中断に到る大喧嘩となったとかな
らなかったとか。
終
卓ほんとダメだなwポケモンて
ラブプラスに見えた死のう
鎌卓の乱についてkwsk
「竹林」ってw
はづきちのクールな目線に彼女も釘付けですな。
リオかわええ
はづきちの服装がおっさんくさいw
鳥獣人はどうやって飛ぶんだろう
腕バタバタすんのかな
>>383 ケモノ学校シリーズなら腕(羽)でバタバタ。
他の作品はどうだろうねえ。
現実では鳩胸に見られる超筋肉と徹底した軽量化で飛行を実現してる鳥さんたち
ケモ学世界だと普通に人運んでたり、割とファンタジー補正が強かったりする
あ、もしかして皆さん揃って良いおっぱいなのは鳩胸分入ってたりすんのかなw
ハルカ「秋空がきれいね。こんな空を飛べる鳥類のみんなが羨ましいね」
リオ「宮元さんや飛澤さんに頼めば、わたし達も…」
宮元・飛澤「逃げろ!因幡が来るぞ!!」
リオ「なんで?わたしも空を…」
>>386 ぱ、ぱんつじゃないから恥ずかしく(ry
>>386 惣一「なんで俺達に頼まないんだろ……せっかく飛行機があるってのに」
鈴鹿「ひょっとすると、我々飛行機同好会の事なんて目に入っていないのでは…?」
空子「……ありえるわね、それ」
惣一「畜生、所詮飛行機は鳥の模倣品扱いかよ! せっかく複座にしているのに!(涙」
はづきち「鳥って空中で方向変える時に左右の羽ばたき回数を変えずに胴の姿勢を変えて
曲がるそうですね。左右で羽ばたきを変えると乱気流が発生して制動が難しくなるとか。
誰か鳥人類の生徒に試して貰おうかな、非対称羽ばたき飛行」
白倉「自然選択まじパネェって感じっスね。鳥は学生の頃よく解剖したなぁ。海岸とかで
死んでる奴を集めて嚥下物の調査のために胃を取り出すんスよ。BB弾くらいの樹脂製ペ
レットが山程出て来て、何でこんなモン食うのかなって。釣針が胃を破いちゃって腹腔全
体が膿だらけの奴はキモかったスね。新鮮だったから膿が錆みたいな匂いなんですよ。ち
ょっと腐ってるくらいのほうが臭いは落ち着くんで、そのまましばらくほっといたら蠅だ
らけになったりして。ははは」
はづきち「……ほんと、解剖好きだよね」
白倉「あったり前じゃないスか。今もチャンスがあればどんどん解剖したいでスよ。ほら、
竜崎って結構恐竜っぽい特徴があるでしょ、あいつ解剖したいんでスよね。あいつの骨格
はきっと鳥に似てる。鳥と爬虫類の起源を決定する手掛かりになりそうじゃないっスか」
はづきち「わざわざ解剖しなくても、恐竜と違って現に生きてるんだから塩基配列の変異
で推定できるでしょうが」
白倉「それじゃ解剖できない!解剖がメインなんでスよ!?」
はづきち「メインかよ」
恐いよ白倉先生www
白倉センセは絶対に就職先間違えてるw
つか、そのうちどっかの大ナントカとか言う秘密結社から
転職のお誘いが来そうで怖いわw
>非対象羽ばたき飛行
伊織「人が片手だけで泳ぐみたいなモノだぞ。」
風子「一種の曲芸飛行ね。」
烏丸「素人にはお勧め出来ませんわぁ。」
飛澤「でも急旋回の切っ掛けに使ったりするわ。」
宮本「大空部ではテクニックとして使っているぞ、相手のマークを振り切るフェイントアクションだ。」
こんな電波を受信しました、久々の飛行お姉さま's大集合
ブスカシ部のお姉さま達だと普通に使いこなしている予感。
そういや鳥人数人いるけど全員見事に女なんだな
と思ったらペンギンの比取君忘れてた
腕=羽になってるのと普通に腕があって羽が背中に生えてるのだったらどっちがいいんだろ
特に飛ぶときカッコいいのはどっち?
なんだこのゆるキャラはw
というか「獣人」という枠の中で人比率が多いか獣比率が多いかじゃね?
>>396 腕=羽もハーピーみたいでかっこいいと思うよ
ていうかかわいい絵ですねぇ
>>399 ブズカシ部活動中?大空部のほうかな?
猛禽かっけー
しかし何故か後ろのインコ?が印象強いですw
>>399 あらゆる動物を正確に観察されていて毎度ほれぼれしますなぁ
アンキロサウルスっ娘だねえ
利里が溺愛する訳だ。妹がこんなに可愛いのであれば、
けど、尻尾のトゲトゲが凶器なのは兄も妹も同じかw
妹は毒もあるしバックフリップ決められるしな
あれ?サマーソルトじゃなかったっけか
Xゲーム好きだから勝手にバックフリップって呼んでんの
プロレス技じゃないよ
409 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/01(木) 07:45:23 ID:hOXBRAhS
なんでだろう…… 尻尾斬りたくてしょうがない
411 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 00:57:00 ID:K+hUG4TL BE:23551283-PLT(15000)
人間なら手肌が荒れる炊事家事。
獣人な人達なら、手指の毛並みが悪くなったりしてるんでしょうかねぇ?
っていうか毛が抜けてだんごに混ざったりするんじゃなかろうかw
そこはファンタジー補正で
毛も美味しいんですね
>>410 ちょww翔子、こっそりつまみ食いなんてしたら料理の鉄人モードがww
>>412 それは薄手のビニール手袋を着用するなりして対策をするだろう。…多分。
翔子なんてキャラ居たっけ
しかしかわいいな
翔子おねいさんもそうだが香苗さん忘れ去られすぎです
だったら紹介文書いてあげようぜ
俺wikiに載せるから
もう載ってるからちゃんと確認しようぜ
名簿にしかいないぜ
思いっきり学外関係者の欄に紹介されとるがな
翔子の話じゃなかったのか
もふもふ
>>425 あのネタとか、タスクの流星撮影に写り込むとか、モエ絡みのネタが実は気になってしょ
うがないです。 これが恋かしら(笑)?
やっとルーズビートメンバーを色付きでちゃんと描けました。というか、ルーズビートが
先日リマスターが話題になった世界的に有名な英国楽団が元ネタだと11ヶ月かかってや
っと気付きました。
>>426 >モエ絡みのネタが実は気になってしょうがないです。これが恋かしら(笑)?
タスクが嫉妬しますぞい。
張本丈は、ハミルトン・ジョー・フランクですね。
>>428 出勤するお姉ちゃんと一緒に通学といった所か、本当に姉妹って良いなぁ。
にしても、加奈は普段から狩猟スタイルかw
>>427 申し訳ない、丈はジョージ・ハリスン+αなのです……。
ひと段落着いて文に起こそうとしてたら、なんかキャラが破綻してきた。
丈は手裏剣投げまくる忍者野郎になっちゃうし、透は村上春樹の主人公みたいなキャラになりつつあるし。
やれやれ。僕はしゃs(ry
>>430 何となく『「星野りんご」と「リンゴ・スター」とが似てるなー』とぼんやり思っ
ていたものの、土曜の夜にその他のことに気付くまで全くシナプシスが不活性でし
た。 一応全部判ったつもりですけど、香取両親も何のもじりかしら? 地口好き
としては見逃してはいけないネタでした(笑)
>>429 流石にガントレットだけ(笑) でもバスとかでは利里以上に邪魔だろうなぁ。
で、細部については適当なので元ゲーム好きの方には申し訳ないです。
あと、キジトラとサバトラが頭の中でごっちゃになってました。サビトラってのは
どんな色なんだっけ?
キジとサバは模様の入り方ではないかな?
もふりてえええええ!!!
なんというねこめ〜わく
436 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 18:31:07 ID:9jC/OJtT
↑?
竹本泉ちゃんの漫画
ねこめ〜わく可愛くて面白いよね。連載スピードだけが悲しいけどw
ねこめ〜わくの6巻って、もう出てましたっけ?
「ある日突然全ての人間が地球から旅立っていき、後に残されたのは直立歩行するように
なった猫達。彼らは帰って来たときに人間の文明が絶えて荒廃してしまわないように、人
間たちの風俗習慣を正確にトレースし日々を暮している。何時帰るかも、帰ってくるかも
知れない人間たちを待ちながら…」
って、背景の設定だけだと泣きたくなるぐらい切ないのにねぇ(笑)
と言う事で、ここのところ猫しか描いてないですが、更に。 シロ先生、遂にボーナス一括
で買ってしまいました。 こんなの買うとまた婚期遅れ(ry
ttp://loda.jp/mitemite/?id=482.jpg ※描いてるうちにちょっと胸増量になってしまったかも…
5月に出ておりますよお嬢様
すさまじい長期連載でございますなぁ
わりかしリアルな描写なので
猫がそのままお洋服を召しているかのような印象でしたな
閑話休題
しろ先生かわゆいですねー
一人の時間を充実させるために大枚をはたくあたりがなんとも残念美人で貰い手が無さそうで……
ん?オキシドールの香りが
と、因幡が申しております。
「ふう、こんな物かな」
「終わったか」
とある昼下がり、機械の箱へ最後のケーブルを繋ぎ、俺と親父はようやく一息付いた。
我が家に到着したオークションで落札したPCの、しち面倒臭いセッティングをようやく終わらせた後の事である。
生来からの面倒臭がりである親父にとって、この作業は相当に疲れる物だったのだろう、
親父は作業が終わった事に尻尾を振るのも忘れ、今はただ尻尾を垂らしてぐったりとしている。
ああ、やっぱりPCのセッティングと言うのは面倒なもんだ。
こうなったのも全て、俺のPCを使っていた親父がうっかりPCへコーヒーをこぼしたのが悪いんだ。
しかし、一体何を如何すればコーヒーをパソコンの本体へ直接ぶちまけて、更に炎上するような事態に陥るんだ?
それに至った事情を聞いても、親父は耳を伏せるだけで何も答えてくれないし……。
――まあ、今は過ぎた事をとやかく言ったって何も始まらないか。
一応、データのバックアップをUSBメモリに何時も残しているお陰で、データ上は対した被害もなかった訳だし。
それにPCを壊した親父が新しいPCの代金を全面負担した上に、セッティングも手伝わせたんだからここは良いとしよう。
「……あれ? そう言えば義母さんは?」
「……」
ふと、俺は途中までセッティングを手伝っていた義母さんが居ない事に気付き、親父と一緒にその姿を探す。
今は外が雨だから、洗濯物を取りに行ったという訳でもないし。かといって夕飯の支度にしては早すぎる。
しかし、トイレに行ったにしても、義母さんはトイレに行く際は必ず一言言ってから行くからそれもあり得ない。
無論、買い物しに行ったにしても、あの義母さんが何の一言も無くセッティングを放り出して行くなんてそれこそあり得ない話だ。
……ならば、義母さんは一体何処に行ったのだろうか?
「……」
「んお? 親父、如何したんだよ?」
義母さんの行方について独り考えていた所で、つんつん、と親父に背中をつつかれ、俺は何気に振り返る。
親父は俺の問いに答える代わりに、ある方向を静かに指差した。
「……なるほど、そりゃ探しても見つからん訳だ」
「…………」
呆れ混じりに漏らす俺の視線の先には、
PCの入っていた大きなダンボール箱の中で子ネコの様に身体を丸め、気持ちよさそうに寝息を立てる義母さんの姿。
恐らく、義母さんはダンボール箱を見ている内に、ネコ科のケモノが持つ、狭い所を好む本能に逆らえなくなったんだろうな。
何となく、義母さんの気持ちも分かるような気がする。あのダンボール箱、確かに俺も入ってみたいと思ってしまった位だし。
「取り合えず、義母さんが起きるまで、このままそっとしておくか…?」
「……」
俺の案に同意したのか、こくりと頷く親父。
そして、俺と親父は足音を立てぬ様に、そっと部屋を後にする。
後に残されたのは、ダンボール箱の中ですぴょすぴょと幸せそうな顔で眠る義母さんの姿。
……尚、義母さんはダンボールの中が余程心地よかったのか、夕飯の直前まで目覚める事が無く。
結局、この日の夕飯は店屋物を取る事になったのは、もはや言うまでも無いだろう。
―――――――――――――――――――終われ―――――――――――――――――――
1レスのみだけど以上です。
>>439を見ている内に急にネタがわいたので書いてみた。
豹もネコ科、狭い所に入りたいのでしょう。
早いw
猛獣でも丸まってるとカワイイなー
モエちゃんの彼はアイリッシュウルフハウンドかボルゾイぐらいしか勤まらなそうだw
ちょっと待て。モエのサンドバックの座は俺が貰うぜ。
452 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/08(木) 22:22:52 ID:EulqAZQl BE:7850742-PLT(15000)
体毛のふさふさ感がいいなぁ。
次の日…そこには何者かによって
ひどい仕打ちを受けた、いしろうとみちざの姿が!
454 :
444その後:2009/10/09(金) 17:46:36 ID:MS87/vhW
「そういや親父、保証書は…あれ?」
さっきまでそこにいたはずの親父の姿がない。大した用事ではないのだが、何か気になって俺は腰を上げた。
靴はあるから外に出たわけではない。家中を探してみたのだが、親父の姿は見えない。
他に探してないのはさっきまでいた段ボールの部屋だけだが…
ドアを少し開けると、そこに親父はいた。こちらには気付いていない。
何をしているかといえば、見ている。椅子に前のめりに座って、段ボールの中をじっと見つめている。それだけ。
おい親父、と声をかけようとして……やめた。
親父は基本的にいつも同じような仏頂面。しかし微妙な機微はある。…あと尻尾もあるし。
俺とて付き合いは長いのだ。義母さん程ではないが、ある程度の感情は掴める。で、今の親父。
こんなに幸せそうな親父を見たのは久し振りだ。
見つめる段ボールの中身を、心の底から愛しく思っている、そんな様子だった。
音を立てないように、俺はドアを閉めた。
義母さんはそそっかしい部分もあるが、どこまでも優しく、しっかりもので美人。
普通はとっつきにくいだろう親父のサポートを完璧にこなしている。親父は幸せ者だ。
一方で、親父。生み出す小説は確かに素晴らしく、多くのファンを魅了するのもわかる。
だが、一緒に暮らしている親父は不精者で、コミュニケーション能力はほぼ皆無。
半分引きこもりのような生活をしながら、家事もろくにこなせない。
言ってしまえば、割と駄目な大人の部類に入るんじゃないだろうか。
でも。それでも。
義母さんもまた、幸せなんだと思う。あの親父に、こんなにも大切に思われているんだから。
親父の不器用な愛情を、義母さんは敏感に感じとっているんだろう。
俺もいつか結婚して、家族を持つんだろう。
そのときは、あの両親のように。いつまでもあんな風にありたいと、俺は思うのだ。
一瞬、誰かの顔が浮かんで…俺は苦笑した。
クシュッ
段ボールで眠る妻の、小さなくしゃみ。
健太郎は慌てて立ち上がる。何かないか、おろおろと周囲を見回す。
ここにはないと判断しドアを開けると、目の前の廊下に畳んだ毛布が置いてあった。
起こさないよう慎重に、ふわりと毛布をかける。静かに寝息を立てる妻を見て、健太郎はホッと息を吐いた。
しかし何故あんなところに毛布が?
健太郎はひとり、無言で首を傾げるのだった。
>>444を勝手にリレーしてみた。
>>446の義母さんがかわいくて、こんな場面もあったんじゃないかなぁと思って。
反省はしていない。
御堂夫妻にはなんで仔がいないのかなぁと私は思うのです。
>>455 親父の不器用な愛にほんわかした。
良いなぁ、こんな夫婦。
因みに、御堂夫婦に仔が居ない訳では無く、ただ単に話に出していないだけです。
その話は機会があればまた。
この卓は訓練された卓
結構血の離れたケモノ同士だと仔ができるのは割と低確率なんだと思ってた
でも一歩先に進化してる人間は別で、普通に仔ができる
だから本能的な要素から同種、近種カップルが多かったり人間がハーレム状態になりやすかったり…
そんな脳内設定
あなたが泉に落としたのは訓練された卓ですか?それとも怠けている卓ですか?
いいえ、どちらでもない普通の卓です
逃げる奴は普通の卓だ!! 逃げない奴はよく訓練された卓だ!!
>>461 あなたは正直な人だ
〜何事も無かったように戻る女神〜
最近女神を装ったサギが流行っています
湖や池に貴重品等を投げ込まないでください
しまった461じゃなくて460だった
ちょっと神殺しの剣(チェーンソー)持ってくる
>>464 懐ゲーネタだとザッキーが黙っていなさそうだw
こころないてんし
女神「あなたが泉に落としたのはきれいなモエですか?」
タスク「いいえ!もっとブスです!!」
女神「あなたは正直者です。きれいなモエを差し上げましょう」
…なんだろ。なんか感動しちゃったぞ。
結局姉ちゃんが好きなタスクかわいいな。
イイキョウダイダナー( ;∀;)
タスクライオンみたい
へい・獣人(じゅうど)
誰がうまいことを言えと
ああもう、これから寝ようと思ってるのにビートルズ聴きたくなっちゃったじゃないかw
絵師様に色々描いて頂いて、なんだか本当に申し訳ないです。
自分はかなり遅筆なんで、妄想してもそれを形にするのに時間がかかってしまうですよ。
それ以前にキャラ崩壊がやばいのなんの……。
もう知らん!突っ走る!どうにでもなれ!^q^
477 :
1/8:2009/10/13(火) 00:47:37 ID:Ko0+ugED
それは、まさしく「箱」だった。
ワゴンの上には、一辺が50センチはあろうかという立方体が乗っていた。
表面はチョコレートでコーティングされているのか真っ黒で、店内の明かりを鈍く反射している。
「お待たせ致しました。こちらが連峰特製『パンドラ』でございます」
猫のウェイトレスは苦労してそれをテーブルへ載せると、そそくさとカウンターへと戻っていった。
日曜日であるためか、店内はそこそこの人で賑わっている。
「これが……噂の新作のパンドラ……。すごい威圧感だわ……」
テーブル席に座っている朱美が呟く。
今まで幾度も連峰のスイーツマウンテンシリーズを攻略してきた朱美だったが、さすがにこのケーキには圧倒されたようだ。
「さすがにこれを一人で食べるのは、俺にゃあ無理だな」
そう言うのは朱美の隣に腰掛けている卓、ではなく、張本丈であった。
当の卓はというと、二人の後方、店の隅の席からこっそりとその様子を睨んでいた。
隣には利里も一緒だ。
「卓ー。なんでこんなこそこそと観察してるんだ?直接なにやってるか聞けばいいだろー?」
「シッ、静かにしろ!それじゃああんまり意味がないんだ」
卓が利里を制した。
注文を聞きにきたウェイトレスに、慌てた勢いで頼んでしまった連峰特製ブレンドのコーヒーはすでにぬるくなっている。
478 :
2/8:2009/10/13(火) 00:48:24 ID:Ko0+ugED
「よーし、じゃ利里、俺があいつを引き付けるから罠を頼む」
「分かったぞー。失敗になるから死なないでくれよなー」
話は数日前に遡る。
夏季休暇が終わってから一ヶ月経ち、そろそろ衣替えか、と人々が感じる頃合。
卓と利里は数学の宿題のことも忘れ、御堂家でテレビゲームで遊んでいた。
いつもならばもう一人、蝙蝠の少女もいる筈なのだが、ここには見えず。
二人とも夢中になってコントローラを操作しながら、その少女について語る。
「それにしても朱美、最近付き合い悪いよな。一緒に遊ぼうっつっても『ごめん、用事があるから』って……」
「あー、朱美なー。この間男の人と一緒にケーキ屋に入るとこを見たぞー」
「おっと、喰らうところだった。ふーん、男の人とケーキ屋ねぇ。
……うん?男と、ケーキ屋……だと!?そ、それは本当か!?」
思わず声を荒げる卓。
画面内では油断した卓のキャラクタが敵の攻撃をもろに喰らっていた。
「おぉー。なんか同い年くらいで、背が高くて、ルパンさんせーの次元みたいに目元が隠れた狼の男だったぞ」
「なん……だと……?ま、まさか……そんな……」
「おーい、卓死んじゃったじゃないかー。最初からやり直しだぞー」
利里の言葉に卓は放心状態となる。
手はふるふると震え、コントローラーが零れ落ちる。
ゲームの音楽と利里の声が、卓の鼓膜に虚ろに響いた。
のんびりどうぞ
480 :
3/8:2009/10/13(火) 00:49:09 ID:Ko0+ugED
「しかし何故朱美が張本と一緒にいるんだ……?」
場面は戻って、連峰店内。
丈が、今まさに、パンドラにケーキナイフを入刀しようというところだった。
小柄な朱美の横に立ったためか、ただでさえ大きな丈の体が、さらに巨大化したような錯覚を感じさせた。
卓はその光景に、なぜか違和感を覚えた。
その朱美と丈がここにいる理由と、違和感の正体とを模索する。
「何故って、そりゃあデートとかじゃ」
「なななな何言ってるんだ!!そんなことがあるわけ」
慌てて利里の言葉を止めたところで、あたりが暗くなったのに卓は気づいた。
何事かと思い見上げると、すぐそこには丈が立っていた。
「おめーら……何処の回し者だ?こそこそあとをつけるなんざいい度胸してるじゃねーか」
2メートル近い背丈は、目の前に置かれると圧倒的な威圧感を放っていた。
蛇に睨まれた蛙、とまではいかないものの、修学旅行へ行った中学生が生まれて初めて奈良の東大寺の大仏を見たときに生じる、それに似たものを卓は肌で感じた。
「いや、これは、そのですね……」
「おー、なんだか卓がな、朱美の動向を探るっていって後をつけて」
「利里!余計なこと言うな!」
「探るってことはやっぱりおめーらスパイじゃねーか!」
「卓君!それに利里君も!二人してどうしたの」
丈を追って着たのか、朱美が駆けつけて騒ぎに加わる。
481 :
4/8:2009/10/13(火) 00:49:56 ID:Ko0+ugED
「なんだ、飛澤。知り合いか」
「なんで卓君も利里君もここにいるの?」
「あ、朱美……。これは、あれだ。連峰の新作を……」
「何言ってるんだー、卓。最近の朱美が何やってるかわかんないから調べに来たんだろー」
「利里ォ!お前、何ばらしてんだ!」
卓が叫ぶが、時すでに遅しと言ったところ。
狼狽える卓をよそに、真相を知った朱美は顔を赤らめ、説明する。
「な、なんだ卓くん……。そんなことだったの……。これにはちゃんと理由があるのよ」
「「理由?」」
「それについては、俺から説明しよう」
話を聞いていた丈が、やれやれといった感じでカードケースを取り出す。
「飛沢の知り合いとは知らず、なんか迷惑かけちまったみたいだな。
とりあえず、自己紹介と行こう。私はこういう者でございます」
畏まった様子で懐からケースを手に取り名刺を2枚取りだし、それぞれ卓と利里に手渡した。
卓が怪しげに目を通すと、「佳望甘味連合諜報 佳望忍術同好会会長 張本丈」と記されていた。
忍術同好会というのも非常に気になったが、とりあえずは甘味連合について聞くことにした。
「甘味連盟ってのは、一体なんなんだ……」
その言葉を耳にして、丈の瞳が一瞬きらりと光り、朱美の顔には翳りが生じたように見えた。
482 :
5/8:2009/10/13(火) 00:50:42 ID:Ko0+ugED
「よくぞ聞いてくれました!ハイ、飛澤。なんだかんだ」
「ちょ、ちょっと待って張本君。本当にアレ、やるの?」
「やるの。こういうのにはキメ台詞がつき物なんだから」
「でも高校生にまでなってそれは……」
「結成した時、決めただろ?やるの!」
丈に押し迫られ、やがて朱美は意を決したように、叫んだ。
「な……なんだかんだと聞かれたら……」
「答えてあげるが世の情け!」丈が続く。
突然の出来事に呆気にとられる卓と利里のよこで、なおも駆け引きは続く。
「甘味の破壊を……防ぐため」顔を赤らめながら朱美。
「お菓子の平和を守るため!」ケーキナイフを掲げながら丈。
「あ、愛と真実の味を貫く……」言葉を詰まらせながら朱美。
「スイーツ&クリーミィな高校生!」椅子に足を掛けながら丈。
「あ……朱美……!」恥ずかしそうに。
「丈!」ポーズをとりながら。
「……佳望を駆ける甘味連合の二人には」朱美。
「ホワイトロール、白いお菓子が待ってるぜ!」丈。
「なーんて、にゃ!」百武。
483 :
6/8:2009/10/13(火) 00:51:28 ID:Ko0+ugED
「うおーすごいなー、なんかアニメみたいだぞー」
「……あれ、百武先生いたんですか」
活劇に感心する利里の横で、卓は意外な人物の登場に目を丸めた。
「私は最初からいましたよ?テーブルの向こう側でしたけれども」
そういいながら百武は鼻先でケーキの先を示した。
そこで卓は違和感の正体に気づいた。
テーブル席を利用するとき、二人の場合通常ならば隣同士ではなく、向かい合って座る。
あのとき朱美と丈が隣合っていたのは、向かいに百武がいた為だったのだ。
当の本人は大柄な丈とケーキとで、丁度卓たちの席からは見えなかったようだ。
「で、なぜ百武先生と、なんだっけ。スイーツ団だっけ?」
「「甘味連合!」」丈と百武が訂正する。
「ああ、そうそう、甘味連合が何で連峰にいるんだ?」
「そりゃあ簡単な話だ。新聞部が秋の特別企画で佳望周辺のグルメマップを作成することになった。
んで、甘い物好きの百武先生と俺のところに依頼が来て、量が多いからついでに飛沢も誘ったというわけ」
「わけです」
卓の問いに、丈がすらすらと答え、百武が賛同する。
「張本君のお菓子好きはすごいのよ。
ここら辺のお店のメニュー全部制覇していて、屋台の出没する時刻なんかもデータに取っているみたい」
「新聞部から他の生徒にばれないように、というお触れを頂いたので秘密裏に行動していたんですよ?」
朱美の補足が入り、得意げに鼻を鳴らす丈。百武が不満そうに頬を膨らます。
484 :
7/8:2009/10/13(火) 00:52:24 ID:Ko0+ugED
「なんだ……そういうことだったのか……。俺はてっきり……っと!」
そこまで言って、卓はあわてて口を噤む。
「てっきり、なに?」
「なんなんですかー?てっきり?」
「?」
丈と百武の追求が入る。二人とも意地の悪い笑みを浮かべている。飛沢は質問の意図を掴めず、困惑気味。
「ほれほれ、てっきりなんなんだ?」
「なんなんだー?」
「や、やめてくれ!本当になんでもないから!」
「そんなことより、ケーキの中身はどうなってるんだ?早く見てみたいぞ」
利里の言葉で3人とも当初の目的を思い出した。
連峰新商品、パンドラのリサーチ。
常連はおろか、店員にさえその材料は知られていないという。
「せっかくなんだし、みんなでどんなケーキか食べてみますか」
「賛成です!」
百武の意見に4人は頷く。
丈はパンドラ専用のケーキナイフを手に取り、その黒く輝く立方体に刃を入れた。
「ふーん、そんなことがあったんだ」
香取家にて、ピックを肉球のついた手の内で転がす丈に向かい、ギターの弦を張りながら透。
「ていうかさ、丈。まだ決めゼリフ言うの、やめてないんだ」
「おうとも。あったほうが断然カッコいいからな」
「それはないと思うけどな……」
あきれながら透は、ギターのよけいな弦をニッパーで切り取る。
はらりと落ちた弦を拾うと、何かを期待するような丈が目に入った。
目が隠れていても、顔に書いてある。
「……なに、その顔」
「聞きたくないのか?『パンドラ』の中身」
「別に。そんなの聞いても聞かなくても生活には大して支障ないしね」
「なんだよ、つまらん奴だな。もっと興味持ってくれよー」
「昔からそうだったじゃん、僕は」
文句を言う丈を後目に、透はギターのチューニングを始めた。
ピアノとギターと五線譜が並ぶ部屋に、か細くCコードが響く。
連峰特製、パンドラ。中身は依然謎のままである。
おわり
なんで猫人じゃないんだよwwwwww
もうどうにでもなれだよ!
Wiki用の紹介文を一応載せときます。
現実主義者ってどういうことか分からなくなってきた。
礼野翔子
非常に男勝り。学内では佳望のコマンドーとして恐れられている。
下に妹が二人いる。パパンはどこかの高校で教師をやっている。
ママンは少し前に病死している。
張本丈
でっかい。前髪が長くて目元が隠れている。
朝お菓子、昼スイーツ、夜甘味の超甘党で忍者同好会と呼ばれる謎の組織に所属。
中二の弟と、初等部に妹がいる。
香取透
軽音楽部副部長のメガネボーイ。香取楽器店の一人息子。
現実主義的な面を持っている。
部活で他のバンドのサポートをやっているけど、メインはあくまでルーズ・ビート。
星野りんご
Wikiどおり。星野家は代々料理家の家系で、叔父がフランス料理を営んでいたり、いとこがパティシエ修行中だったりする。
小野悠里
おっぱい。
家は寺。弟が一人。
元ネタは小野リサ+阿久悠。
何やってんすかそら先生www
なるほど丈はこうなったかー。すげー濃いなw
パンドラっていいセンスだ。中身気になる。最後に何か出てくるのかな?
>>488猫人じゃないってのはそら先生のことだろう
そら先生は狸って設定だよね…?
ああ、そういうこと……。
小柄+お菓子好き+茶目っ気がある先生、という条件があったでそらせんせにしました。
サン先生か迷ったんですが、サン先生はいろいろ出番多いし、
「なーんて、にゃ!」と言ったら癪に障りそうなかんじがしたもので……。
校長可愛いよ校長
サン先生とそら先生のおひなさまコンビとか妄想したら…
いかん、萌えてしまうやないか。
しかし、丈はあの身の丈だと、忍の者には遠いな。
そら先生顔怖いww
利里が意外につぶらな瞳でちょっとかわゆく感じたのは俺だけ?w
>>487 wiki載っけたよー。適当に文追加したり変更したけどあれで平気かな?
>>493 かわいい教師達だよなーまったく
>>496 予想外なシリアスw
どうしてこうなったw
そういえばwikiの登場人物の欄で気づいたんだけど、確かリオの弟って
佳望学園じゃなく、別の学校に通ってるんじゃなかったっけ。
SSでそう読んだ記憶があったようななかったような?
浪人生の狼・・・というものが頭をよぎった
丈「えっ」
なにそれこわい
>>501 あらかわいい
つい尻尾が振れちゃう英先生かわいい
愛娘ってフリーアプリ遊んでたら芹沢タスクって名前見かけたでござる
>>507 ああ、アプリゲットの……って
/' ! ━━┓┃┃
-‐'―ニ二二二二ニ>ヽ、 ┃ ━━━━━━━━
ァ /,,ィ=-;;,,, , ,,_ ト-、 ) ┃ ┃┃┃
' Y ー==j 〈,,二,゙ ! ) 。 ┛
ゝ. {、 - ,. ヾ "^ } } ゚ 。
) ,. ‘-,,' ≦ 三
ゞ, ∧ヾ ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚
'=-/ ヽ゚ 。≧ 三 ==-
/ |ヽ \-ァ, ≧=- 。
! \ イレ,、 >三 。゚ ・ ゚
| >≦`Vヾ ヾ ≧
〉 ,く 。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。 ・
最近ちょっと過疎り気味?……って訳でもないか
冬向けの話をせっせか書いてるぜ
もふればいいと思うよ。
ケモノと惨事のネコなんかを一緒にすんじゃねえよ
今、“なんか”……つったか?
シロ先生にサモンナイトのアティ先生のコスプレさせたい
バカお前そこはババァ繋がりでミモザさんの格好だろ!
ケモ面猫?w
かわいいのぅ
──職員室にて──
教頭「皆さん聞いてください。学祭で先生方にも出し物に強制参加して貰うことが決まりました」
ザッキー「へぇ、いいんじゃないすか。学祭って参加したほうが楽しいですよね」
教頭「ところが、多分楽しくないかと。生徒会発案の、先生方にさらし者になっていただく企画ですので」
いのりん「さらし者?」
教頭「ええ。先生方に女装や男装、仮装なんかしてステージに上がって貰って、生徒達が人気投票をする。まぁ、生徒らの憂さ晴らし企画ですね」
ハナコ「衣装は持参ですか?」
教頭「いえ、生徒が用意します」
ハナコ「あ、そうですか……(残念)」
教頭「今言いましたように、衣装は生徒が用意しますので、日頃から恨みを買っているような方は覚悟しておいてください」
英「ですって。聞いていましたか?サン先生」
サン「え、なんで名指し?」
シロ「そういえば変な飴食わせられたなー、誰かに」
獅子宮「私は黒歴史を暴露された。誰かサンに」
稲荷「あのタイヤキ辛かったザマス。誰から貰ったのでしたっけ」
サン「なっ!四面楚歌?!しかし衣装は生徒が用意するんだからね!いくら君達に恨まれてようとも、今回の事に影響は」
教頭「先生方もお手伝いしてあげてください」
サン「ちょ、教頭先生ひどい!この状況で教師の影響力を増大させないでっ!」
飛行機かなんかですか?
鳥かっけー
雨のの中お疲れさまでした
航空ショー でググってみた...
ら、毎週いろんなショーが各地であるんですね。
どのイベントですか?
昨晩アップしようと思ったらロダが落ちていて朝に上げました。
>>522-524 18日に青森県三沢に有る航空自衛隊/米空軍の基地際に行ってきたのでした。今回
は空自の「ブルーインパルス」と米空軍の「サンダーバーズ」の共演ということで
なかなか盛況でした。 天候は予想に反して良好、バーズの演技の時には雲も抜け
て大変楽しゅうございました。
ただ、ブルーは演技途中でエンジンに鳥を吸い込んだそうで…鳥さんカワイソス…
蛇足ですが、バーズ使用機は「ファイティングファルコン」、ブルーは「ドルフィ
ン」が愛称です(F-16は実際はバイパーと呼ばれてるそうですが)。
スレチな内容、御容赦。
バードストライクカワイソス
卓「…のど渇いた」
丈「な? いいだろこれ」
朱美「あ、ホントだ、おいしー♪」
百武「でしょー」
卓「三人で何してんですか」
百武「あら、御堂君」
朱美「あ、卓君、これね」
丈「新発売のコーラだ。お前も飲むか?」
卓「それは助かる」
百武(いいこと考えちゃった♪)コソコソ
丈「ん、あれ?あと何本かあったはずなんだが……悪い、ねえや」
卓「ええぇ…」
朱美「あ、じゃあこれ飲みなよ」
百武(計画通り…!!)
卓「おぉ、ありがと」
卓(ってあれ、これ間接キ…)
朱美「どーしたの卓君?」
百武「どうしたの御堂君?」(・∀・)ニヤニヤ
卓「あ、いや…い、いただきます」
卓「ぐふっ」
百武「みんなで飲もう」
朱美「とってもおいしい♪」
丈「新感覚和風コーラ」
三人「ペプシあずき!」
ttp://www.pepsi.co.jp/products/azuki.html サン「…し…新…発売…」
卓「…あぁ…サン先生も…」
おわり
ペプシ小豆は本当に美味しいからこまる
何故かヨハン楽しそうw
ヨハンが嫌だw意外とガタイよくてやだーwww
英先生格好良いな
はせやんかあいいよはせやん
ヨハン少しは恥らえwww
絶対に
「あ〜れ〜お代官様〜」
「よいではないかよいではないか〜」
って帯ほどいて遊ぶw
>>534 何という執事&メイド喫茶
この執事になら結婚を申し込める自信がある(あれ?)
3人も似合いすぎ、特にサン先生の着物がヤバいw
お嬢様とセバスチャン思い出した。
>お嬢様とセバスチャン思い出した。
もちろん逆で
描いていて、サン先生は何着せても喜びそうなので、拘束衣位しか嫌がらせにな
るもの無いなぁと思いましたですよ。 なので振り袖(笑)
>>537 セバスチャンって名の執事だと、私は「ハイジ」のと「黒い」のと「戦う!」の
としか思い浮かばなかったですが、まだ居るのですか。 執事にはセバスチャン
って付けなければならない決まりでも有るのだろうか…?式守家みたいなもの?
何となく執事というのを認識したのは「エーベルバッハ家のすだれ頭」だった。
>>539 執事と聞いて「パーフェクトだ!ウォルター」しか
思い浮かばない俺はアレな子
でも自分のイメージ的に英先生はこっちw
サン先生と英先生の無敵振りに脱帽。
巫女巫女ザッキーの放置っぷりに涙。久しぶりにSS投下してするよ。
秋の話を一話書き上げたけど、規制で書き込めない!避難所もダメとは悲しー。なのでtxtでろだにうpしました。
ウチのプロバイダでは規制が長引きそうとの噂。しばらくは、これで投下するかもです…。よろしゅう。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=521.txt
ぬあぁぁキュンキュンするうあぁぁ!
生徒よりよっぽど乙女だぜはせやん
しかし神社まであるって佳望学園すげーなw
おネェ系の狐先生も出て来ると思ったが出て来なかったw
光の速さでフェラされるとどうなるの?
>>541 はせやん俺だーーー結婚してくれーーーー!!!
こいつぁひでぇwwwこんなに似合わん組合せ初めて見たwww
花子先生かわいいね
獅子宮せんせは女の子らしい服着せられるんだろーなと思ってたw
朱美「全員の服を仕立てるの、大変だったわ」
ガラ悪すぎwww
>>541 そら先生いい感じに定着したなあ
たくさんのキャラの使いこなしに脱帽
>>546 予想はしてたが…実際見ると想像以上にこれはひどいw
てす
そら先生は天体観測に出かけてますよ。
そら先生案で天文部の天体観測合宿とかありそうだ
天文部はヒツジの茜に、タスクもだったかな。
>>555 他にもきっと夜行性な方達とかも居そうなヨカン
557 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/30(金) 18:58:33 ID:toLJMzMS
ケモちんでも、モザイクとか修正かけないと豚箱行きですか?
獣八禁本を販売したいんだけど…
ここで聞かないでください
おためし●のおかげで何とか書き込めるようになった俺が通りますよ……
今回は別の人が書いた話を補完するような話を投下します。
相っ変わらずクソが付くほど長いので支援をお願い致します。
「……くそ、眠れない」
深夜、街の彼方此方で聞こえていたTrick or treatの声もすっかり影を潜めた夜遅く。、
ある事情で起きざる得なかった俺は、ベッドの上で何処か遠くへ飛んでいってしまった睡魔に対する愚痴を漏らした。
眠ろうとベッドに入って部屋の明かりを消しても、眠気が来るどころか逆に頭が冴えて眠れる気がしない。
無論の事、早く眠れる様にホットミルクを飲んでみたり羊を数えてみたりもしたが、なしのつぶてで効果が無い。
結局、眠れないばかりかイライラだけが募るだけとなってしまった。
……こうなったのも全て、何時の間にか部屋に侵入していた一匹の蚊が悪いんだ!
眠ろうとベッドに入った矢先、俺の耳元に聞こえるのはプイ〜ンと耳障りな羽音。
蚊を退治しようと明かりを点けたら点けたで、羽音の主は何処かへ姿を消して見つからずじまい。
諦めてベッドに入ったら入ったで、またも耳元にプイ〜ンと聞こえてくる蚊の羽音。
ええ、もう本気でぶち切れましたよ。これほど腹が立ったのは鎌田の触角の時以来だ。
無論の事、わざわざ玄関に置いてある殺虫剤を持ってきて、部屋中に殺虫剤乱舞かましましたよ。
もう部屋が殺虫剤のエアロゾルで霞んで見えるくらいに濃密かつ徹底的に撒きまくりましたよ。
余りにも殺虫剤撒きすぎた所為で、少し具合が悪くなったのは内緒と言う事にしてくれ。
で、数分後、殺虫剤によって力尽きている蚊の姿をベッドの上で見付けた時は、
ザマぁみろ、人の安眠を邪魔するからこうなるんだ! と、俺が大人気無く喜んだのも無理も無いだろう。
……まあ、それで興奮した所為で、睡魔さんも仕事放棄してしまったんだろうな……。
ああ、このまま朝になるまで眠れない夜を過ごす事になるのか……参ったなぁ……。
ま、幸いといっちゃあなんだが、明日が休みなのが救いと言えば救いか。
しかし、だからと言ってこのまま眠らずにぼんやりと過ごすのもなんだし、
本を読むなりモンハンするなりして時間を潰すかな?
そう、頭の中でぼんやりと考えつつ、俺は窓へと視線を向ける。
窓の外に見えるは、濃紺一色の空にぽっかりと浮かぶまん丸の満月。
「……ああ、そうか。今日は中秋の名月だったっけ?」
ぽつりと呟く俺の言葉に応える者は無く、代わりに窓の向こうの満月が優しい光を湛えている。
そのおかげか、何時も見慣れている部屋の窓が一枚の名画にも見える。
……そうだ、こんな夜こそ、ちょっと散歩に出かけてみようかな?
こんな月が綺麗な夜に散歩に出ないなんて、ちょっと損をした気分になるじゃないか。
それに、こう言う満月が輝く夜ならば、ひょっとすれば何時も見慣れた景色も違う様に見えてくるかもしれない。
運が良ければネコの夜会に遭遇できるかもしれない、そうなればネコ達の様子でも眺めて夜を明かすのも悪くないな。
まあ、万が一、其処で帆崎先生や泊瀬谷先生に会ったとしても、「月が綺麗だったから」と言えば誤魔化せるか?
「良し、思い立ったら吉日と言うことで、早速行くかな」
早速とばかりに軽く身なりを整えた俺は、そろりと自室を後にした。
そして、家の玄関に到着した俺は、恐らく寝ていであろう義母さんや親父を起こさぬように気を使って靴を履き、
音を立てぬ様に静かに土間へ踏み出す。
「……?」
その際、俺は少しだけ妙な違和感を感じたのだが、
明かりが殆ど無い玄関を見まわしてもその原因を掴める筈も無く。
結局、俺は違和感の原因が何なのか分からないまま、音を立てぬ様に玄関を後にするのだった。
すっかり寝静まった深夜の住宅街。頬に当たる涼やかな秋の夜風が何処か心地良い。
聞こえるのは俺自身の足音と、一時の生を謳歌する虫達の鳴き声だけ。
俺以外に道行く者の姿は無く、まるでこの夜の街の支配者になったかのような錯覚さえ感じさせる。
「…流石は名月って言われるだけあるな」
ぽつりと漏らす俺の見上げた先、満月の金色の明かりが街並みを優しく照らす。
その光景は、絵本の様な何処か現実味の無い幻想的な景色。
何時も見慣れた桜並木も、何時も見慣れたあの家も、この時だけは別の姿を俺へ見せてくれる。
やっぱり、散歩に出かけて良かったな。あのまま家でモンハンで時間を潰していたら、こんな景色は見られなかっただろう。
良し、これだったらもう少しだけ足を伸ばしてもよさそうだ。ひょっとしたら面白い物も見られるかもな。
そう思った俺は、先の中央大通りの方へと足を運ぶ。
桜並木の道を下った先、何時もならば市電やら車がひっきりなしに通る大通り。
だが、真夜中である今は市電も車庫へと引き篭もり、車も思い出した様に通るだけで何処かうら寂しい。
普段、通学に通り慣れている道ではあるが、真夜中の人気が無い時に通るのは流石に初めてである。
街を照らす明かりと言えば、ぽつんぽつんと道に立つ街灯のか細い光と、空に煌煌と輝く満月と星々の光だけ。
普段は夜中でもネオンの激しいパチンコ屋も、若い女性達で賑わうあのブティックも、今は闇の中で静寂を保っている。
当然、歩道には俺以外に他の人の姿は殆ど無く、俺の足音だけがこつこつとアスファルトの上に響き渡る。
しかし一応は大通りである以上、こんな夜中でも通りかかる人も居る事には居る。
たとえばジョギングをしている人。
上下のジャージ姿のイヌの女性は多分、ダイエットの真っ最中なのだろう。
タンクトップにスパッツ姿の豹の男性は、身体を鍛えている所なのだろうか?
仲睦まじく並んで歩くネコの老夫婦は、夫婦共々健康に気を使っているのだろう。
そして、家路に付く人々。
ふらふらと危なっかしく歩くヨレヨレのスーツ姿のネコの男性は、宴会の帰りなのだろう。
何処か疲れた様子のスーツ姿のウシの男性は、激務が終わったその帰りなのだろう。ご苦労さん。
上機嫌に尻尾を振って歩くキツネの女性は、帰った後の一杯でも心待ちにしているのだろうか?
そうやって通りかかる人をつぶさに観察していると、
その一人一人の人生(ケモノ生?)が見えてくるのが面白い。
なんだか、人間観察を趣味としている親父の気持ちも何となく分かるような気がする。
……そう言えば、こんな夜道を歩いてて思い出した事だが
あれは確か、俺が幼稚園の頃だったか。親父と義母さんが本当の両親ではないと俺が初めて知った時。
余りにも受け入れ難い事実に強いショックを受けて、俺は義母さんの手を振りきって泣きながら家を飛び出したんだよな……。
あの時は、親父と義母さんが今まで本当の事を黙ってた事に、酷く裏切られた気がして、そしてとてつもなく悲しくなって、
もう訳も分からないまま走り回って、気が付いたら俺は今のような夜道を充ても無くさまよい歩いていたんだよな。
その頃になると、流石に子供でも冷静に戻る訳で、早くも家に帰りたい気持ちが募り始めていた。
何せ、子供の俺にとって人通りの無い夜の街の光景は何処までも恐ろしく見えて、酷く不安を感じさせた。
その上、人間の裸足にとってごつごつしたアスファルトの道は、立っているだけでも酷く苦痛で、
俺が親父や義母さんと違う、裸足では外を歩けない種族である事を深く痛感させられていた。
けど、だからと言って衝動的に飛び出してしまった以上、今更家に引き返す訳にも行かず、
俺は辿りついた藪の森公園のベンチで独り、泣き腫らした両目もそのままに途方に暮れるしか出来なかった。
……そんな時だったか、何処からか俺を呼ぶ声が聞こえ始めたのは。
それは、他人の子である筈の俺を必死に探す、義母さん達御堂家の家族全員。
普段は家から出掛ける事が殆ど無い親父でさえも、大きく声を張り上げて俺へ呼びかけていた。
良く見れば、余程慌てて家を出たのだろうか、義母さんは俺と同じく裸足だった。
……何で、何で種族すら違う貰い子である筈の俺を、義母さん達はこうも必死に探すのだろうか?
多分、義母さん達は本気で俺の事を心配していたのだろう。しかし、その時の俺にはそれが分からなかった。
だが、その代わりに、俺は義母さん達にとてつもなく悪い事をしているという事は分かった。
遂に居た堪れなくなった俺が義母さんの前に姿を見せると、義母さんは真っ先に俺へ駆け寄り、優しく抱き寄せた。
義母さんは怒らなかった。だが、代わりに俺を強く抱き締めわんわんと泣いた。そして俺も泣いた。
親父は何も言わず尻尾を揺らしながら、義母さんの胸の内で泣きじゃくる俺の背中を優しく撫でていた。
義姉さんは呆れていながらも、何処か安心した様子で俺達の様子を眺めていた。
……この時、俺はようやく気付いた。
家族ってのは血の繋がりや戸籍とかじゃなくて、愛で成り立ってる物だと言う事に。
そして、その日の夜は家族四人で一緒に並んで寝たのは、言うまでも無いだろう。
そう言えば、俺が高校に入った頃に上京していった義姉さんは元気にしているのだろうか?
まあ、あの義姉の事だ。俺が心配するまでも無く、都会で元気ハツラツに尻尾を立てながら過ごしている事だろう。
――ふと、鼻腔に潮の香りを感じ、俺は物思いに耽るのを止めて周囲を見まわす。
「……っと、何時の間にか潮騒通りまで来たのか?」
俺の見た先、道沿いの防風林の向こうに広がるのは、月明かりを波で照り返す夜の海であった。
どうやら、俺は物思いに耽っているうちに、古浜海岸とは反対に位置する美浦海岸沿いの潮騒通りまで来ていた様だ。
……やれやれ、どうも俺は親父に似て、考え事をしていると周囲が見えなくなってしまうようで。
ポケットに仕舞っている携帯を取り出して見ると、携帯の時計は今が深夜の一時を周る事を知らせていた。
俺は少しだけ考えた後、どうせ海まで来たなら夜の海岸を歩いて見ようと思った。
周囲を優しく照らす月とその周りで瞬く星々の下、人気の無い浜辺を行くのはさぞムード満点であろう。
そんなごく他愛の無い、しかし、それでも充分な理由だった。
「しっかし、本当に人がいねーな?」
浜辺へと入った俺は、さくさくと砂浜を踏み鳴らしながら周囲を見まわして独りごちる。
こんな夜、一人くらいは夜釣りをしている人が居るかと思っていたが、どうやらこの日の美浦海岸は俺の貸切の様である。
ああ、ここまで来るんだったら釣り道具でも持ってくるべきだったかな? なんか少し損した気分だ。
「……」
俺は何言う事無く、人気の全く無い深夜の浜辺を歩く。
そう言えば、ここは何処かで見た場所だなと思ったら、この海岸、夏の林間学校で訪れた場所じゃないか。
道理で、林間学校のしおりに書かれてた行き先に見覚えがあった訳だ、思いっきり身近な場所じゃ見覚えあるのも当然だ。
おまけに行きのバスは利里とのゲームに夢中になってて、帰りのバスは睡眠不足と疲労で寝てたもんだから、
この場所に来ている事なんて全然気付きもしなかった。
にしても、まさか歩きで行ける場所にあるとはなぁ、意外や意外と言った所か……。
「……ああ、そういや朱美と約束してたんだっけ? 夜に一緒に飛ぼうって」
ふと、俺はあの林間学校二日目の夜を思い出し、その時の思い出に浸る。
あの時は良い所まで行って置きながら、自分のうっかりミスで全てフイにしてしまったんだよな……。
おまけに帰りに獅子宮先生に捕まってしまうわ、しかも俺と朱美の様子を見られてたわで散々だったよな。
まあ、なんだかんだ言って、獅子宮先生も俺と朱美の事を黙っていてくれてたようだし、
今となっては良い思い出なのだが……。
そう、俺は独り、思い出を振り返りながら、
月明かりの下、浜辺に転がっていた流木を椅子代わりにして座り、打ち寄せる波をぼんやりと眺めていた。
ーーその時。
「そこの非行少年!」
「――っ!?」
不意に掛かった声に驚いた俺は思わず、がばっ、と立ち上がって辺りを見まわす。
しかし、海岸の何処を見まわしてみても、俺へ声を掛けてきたと思しき人影は見えない。
じゃあ、一体誰が? と首を傾げたその矢先、ばさっばさっ、という断続的な羽音と共に強い風が吹きつけてきた。
――って、これはまさか?
「朱美!?」
「やっほ、卓君」
そう、それは噂すれば曹操の影ありというべきか、
俺の視線の先、煌煌と輝く月をバックに、朱美が両の翼を羽ばたかせて降り立つ所であった。
そんな絵になる光景を前に、俺は一瞬だけ見蕩れてしまった。
そんな俺の横へ砂浜に降り立った朱美は歩み寄り
「ねぇ、卓君。こんな所でこんな時間に何してるのよ?」
「いや、それは俺のセリフだって。朱美こそ何でここに?」
「ん? あたしはちょっと目が冴えちゃって眠れなくてね、何だったらと思って空の散歩してた所」
両の翼を腰の後に組んであっけらかんと言う朱美に、俺はふうと溜息を漏らし、
「なんだ……って事は俺と殆ど同じって事かよ。
実は言うと、俺もちょっとした事で眠れなくなっちまってな。
かといって家で一晩中ゲームしてるのも難だし、だったらと散歩する事にした訳。ちょうど月も綺麗だった事だしな」
「へぇ、すっごく奇遇じゃないのよ卓君。あたしも月が綺麗だったから空の散歩をする事にしたのよ?
それで思い出の海岸まできたら、その浜辺で卓君が座ってるんだから。なんだかお姉さん、運命感じちゃうな―?」
「お姉さんって……いや、まあ良いけどさ」
と、俺が呆れていた所で、朱美が俺の方へ向き直り、
「ねえ、所で卓君。あの日の約束は覚えているよね?」
「ん?…ああ」
憶えているも何も、ついさっきまでその事を思い出していたばかりである。
つーか、この時この状況で思い出さない奴が居るのなら、それは相当な朴念仁かお馬鹿さん位であろう。
って、ここで今気付いたが、今、それを行うには一つだけ問題があるのだが……。
「でも、約束を果たすにしても俺、アレを持ってきちゃいないぞ?」
「……アレ? ――って、ああ! 肩パットの事?」
「そうそう、その肩パットも無いのに、如何するんだよ?」
そうである、俺は軽く散歩するつもりだったから、当然、肩パットなんぞ持ってきていないのだ。
朱美が俺をぶら下げて飛ぶ際、先ず件の肩パットを俺の両肩に装着した後、
俺の両肩へ乗った朱美が足の爪を食い込ませる様に肩パットを足の指で掴む事で、ようやく安定した飛行が可能となる。
その為、肩パットが無ければ朱美との飛行は実質上、不可能といっても良い。
しかし、だからと言ってわざわざ家へ取りに戻るにしても、今や草木も眠る丑三つ時である。
寝ている親父や義母さんを起こさずに肩パットを取って戻ってくるなんて、先ず無理と言っても良いだろう。
ケモノの耳は意外に敏感なのだ。ドアの開け閉め程度ならまだしも、ガサゴソと家捜しなんぞしていたら確実に気付かれる。
そうなれば、こう言う事に関して厳しい義母さんの事、厳しい追及の上、夜が明けるまで説教される事間違いなしである。
これじゃ流石の朱美も諦めざる得ないだろうな……。
「だーいじょうびっ! 心配無用よ卓君!」
「え? 大丈夫って……」
しかし、俺の予想に反して、妙に自信満々に耳をピンと立てて元気良くサムズアップしてみせる朱美。
その自信満々ぶりに俺が疑問を投げかける間も無く、朱美は腰のポケットをまさぐり
「私、こー言う事もあろうかとっ! 肩パットを持ってきているのでしたー♪」
気をきかせたベンじいみたいなセリフを言いながら取り出したのは、なんと俺が使っているのと同じタイプの肩パット!
をいをい、随分と準備が良いじゃないか……?
「何時かこう言う事もあるだろうな―と思って、お出かけする時は何時もポケットに忍ばせてたのよ。
あたしの準備の良さに感謝しなさい! 卓君」
「へぇへぇ、感謝感激雨アラレでございますお嬢さまぁ」
両翼を腰に当ててえっへんと胸を張る朱美に、俺はわざとらしいくらいに腰を低くして感謝の言葉を述べる。
そんな俺の様子が余程可笑しかったのか、朱美はクスリと笑みを漏らし、
「卓君、それは幾らなんでもわざと過ぎるんじゃない?」
「うわ、ひっでぇな! 『あたしに感謝する時は何時もこうしなさい』って言ったの何処のどいつだよ?」
「あれ? あたし、そんなこと何時言ったっけなー?」
「言ったよ。中等部二年一学期の始業式の時、遅刻しそうだった俺を飛んで輸送してくれた後にな」
「おお、そう言えばそうだったわね? 卓君、良く憶えているじゃない。お姉さん感心しちゃうなー、ナデナデしてあげる」
「あのなぁ……」
へらへらと笑いながら俺の頭を撫でる朱美へ、ちょっとだけジト目を向けた後、
俺はふぅ、と息を吐いて、改めて本来の話題へと戻す。
「まあ、それは良いとして、飛ぶなら飛ぶで早くしないと夜が明けちまうぞ?」
「あ! 言われてみればそうだったわね。なら卓君、早く準備終わらせちゃって」
「へぃへぃ」
朱美に急かされるまま、俺は朱美から肩パットを受け取り、それを手早く肩へ装着する。
そして、肩パットが身体にしっかりと固定されている事を確認した後、俺はその場にしゃがみ込んで準備完了。
……しかし、待てど暮らせど何時もの重みが肩に掛かることが無い。如何したんだ?
「……朱美?」
「あ、ちょっと待って、足の砂を落としてるから」
心配になって朱美の方を見ると、先ほど俺が座っていた流木を椅子代わりにして足に付いた砂を落としている所だった。
多分、朱美は自分の足に付いた砂が俺の肩に掛からない様に配慮していたのだろう。
こう言う細かな気遣いが出来る辺り、朱美は女の子らしいというか何と言うか……。
「おまたせ!…っと」
そう考えていた所で、砂を落とし終わった朱美が肩に飛び乗ったらしく、ずしりと肩へ重みが掛かる。
その際、砂浜の柔らかさの所為で俺の体勢が僅かに崩れたのに気付いたらしく、上から朱美の心配げな声が掛かる。
「卓君、あたし…重くないかな?」
「いや、全っ然大丈夫だ」
これはやせ我慢でも何でも無く、本当に朱美の体重が軽いのだ。
意外に良く知られていない事ではあるが、空を飛ぶ鳥人や朱美の様な蝙蝠人の体重は平均して軽めなのである。
と言うのも、彼らの身体は空を飛ぶ為、骨が中空構造になっているなど徹底した軽量化が図られており、
俺よりも幾分大きめな鷲人の宮元先輩でさえも、本人の自己申告によるとその体重は僅か40kg程度しかないのである。
そして、この肩に感じる重みからすると、朱美はおよそ30kg前後しかないと思っても良いだろう。
「ねえ、卓君。今、何か変な事考えなかった?」
「へ? 変な事って何が? それより早く行かないのか?」
「……むう、まあ良いけどさ」
俺の返答が気に入らなかったのか、少しだけむくれたような朱美の言葉の後、
彼女は羽ばたき始めたらしく、ばさっばさっと言う音と共に俺を中心として強い風が吹き始める。
風で吹き飛ぶ砂塵が目に入って痛い、涙が出る。でも、ここは朱美との約束の為、今しばらくは我慢だ!
次第に軽くなって行く朱美の体重。俺はタイミングを見計らいつつ、足に力を込める。
「行くぞ、朱美」
「うん」
そして、肩に掛かる体重が皆無になった所で、俺は足に込めていた力をジャンプする形で一気に解き放つ。
ふわり、と身体が重力の頚木から解き放たれる独特の感覚を感じて下を見れば。
先ほどまで俺達がいた砂浜がゆっくりと離れて行くのが見えた。
「良し、離陸成功! それじゃ行くわよ」
掛け声と共に、俺をぶら下げた朱美は夜空へと羽ばたく。
さぁ、いざ行かん! 月明かりの下のナイトフライトへ!
朱美の力強い羽ばたきの音が響く中、俺の見下ろす視界は濃紺と月の光が織り成す世界へと移り変わって行く。
視界を前方へ移せば、月明かりを照り返す海原の一大パノラマが広がっている。なんとも良い景色だ。
やっぱ、今夜は散歩に出かけて正解だったかも。こんな絶景を見られたのだから。
「やっぱり夜空に飛ぶのも気持ち良いわねー。ほらほら、卓君、お月様が綺麗よ」
上昇気流に翼を乗せた事で余裕が出来たのか、足の下の俺へ話し掛ける朱美。
その声は羽ばたく翼の様に軽く、何処までも上がっていきそうな調子だった。
俺は空に浮かぶ月を見上げながら、ふと気付いた事を朱美へ言う。
「そういや…こうやって一緒に飛ぶの、あれから久しぶりだよな」
「え? あ、ああ、そうね……」
しかし、朱美から帰ってきたのは妙に歯切れの悪い返事。
そして、数秒ほどの沈黙の後、朱美が声のトーンを数段落として言う。
「ねえ、卓君……やっぱり…恐くないかな?」
「へ?……恐くないって? ――あ……」
ここで俺は、ようやく自分が迂闊な事を言ってしまった事に気が付いた。
そうだ、朱美はまだ気にしていてたんだ。あの日の事を……。
「卓君はあの夜、恐くなんかないさって言ってくれたけど。やっぱり、本当は飛ぶの…恐いよね?
だってあたし…今でも夢に見るもん、あの冬の火事の…あの時の事を……」
だんだんと下がって行く朱美の声のトーン。
恐らく、今の朱美の顔はこれまでに無い位に暗い物となっているだろう。
ああ! 俺は馬鹿も馬鹿の大馬鹿だ! 心の傷を穿り返して如何するんだ。こうなる事が分かっていながら何故あんな事を!
ええぃ! こうなれば朱美には悪いが、少々荒療治と行くしかあるまい。
「だから卓君…本当、恐かったら無理しなくても良いの、降りたいなら直ぐに言って――」
「ほーら、ぶーらぶら♪」
「――って、ちょ!? 卓君?! いきなりなにをしてるのよ!?」
いきなり両足を前後にぶらぶらとさせ始めた俺に、
朱美は悲しげな表情をすっ飛ばして酷く驚き、悲鳴に近い声を上げる。
そこで俺はぶらぶらとさせていた足を止め、朱美の方へ笑顔を向けて言う、
「本当に飛ぶのが恐かったら、こんな馬鹿な真似はしね―だろ? 普通」
「…………」
翼を羽ばたかせながらも、きょとんとした表情を浮かべる朱美。うん、ちょっと可愛い。
そしてきっちり数秒の間を置いて、朱美は怒りに耳をわなわなと震わせて叫ぶ、
「な、何を考えてるのよ!? 卓君! それで本当に落ちてたら如何してた訳? 下手したら怪我じゃ済まないのよ!!」
俺の頭へ振りかかる朱美の酷くごもっともな怒声。
その怒声の度合いから見て、朱美は本気で驚き、そして心配したのだろう。
「ねえ、卓君! 何とか言ったらどうなの! こんな事して――」
「……悪ぃ。俺には、朱美が暗い顔しているのが如何しても我慢できなくてな……」
「……卓君」
その言葉でようやく俺の意図を察したのか、朱美の声が急に落ち着きを取り戻す。
俺は朱美の顔をじっと見上げ、自分の考えと想いを伝える。
「何度も言うけど、俺はもう飛ぶ事は恐くはない。なんたって、朱美の事を信じているからな。
だから、朱美は何時までもあの時の事を気にしないでさ、その…何時もの明るい顔を見せてくれよ、な?」
うん、我ながら何と気恥ずかしいセリフだ。くさいにも程がある。
しかもこんなセリフがすらすらと出てくるようじゃ俺、ヨハン先生の事を馬鹿に出来ないかも。
「……」
朱美は何も言わないで翼を羽ばたかせている。
しかしその代わり、落ちつき無く視線をキョトキョトと巡らせていた。
その上、良く見れば羽ばたいている彼女の翼膜が、月明かりの下でも分かるくらいに真っ赤に紅潮している。
……ええっと、これは何だか、すっごく嫌な予感が……。
「もう! いきなり何を言ってるのよ―!!」
「って、うおぉっ!? ちょwwwwやめっ!?」
予感的中! 恥ずかしさを紛らわそうとしたのか、朱美が足をぶんぶんと揺らし始めた!
当然、その朱美の足にぶら下がっている俺は滅茶苦茶に振りまわされる事に!
「卓君ったら! 何が『朱美の事を信じてるからな』なのよ! 聞いてるこっちが恥ずかしいじゃないのよ! もうっ!!」
「うわっ! うわわわっ!? 恥ずかしい事言った俺が悪かった! だ、だから足揺らすの止めぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
そして、月明かりの下の浜辺にて。
恥ずかしがる朱美に揺さぶられる俺の悲鳴が、何処までも響いたのだった。
……教訓、飛行中のくさいセリフは危険ですので止めましょう。
「……ったく、本気で落ちるかと思った……」
「ごめんごめん。…でも、ヨハン先生みたいな事を言う卓君も悪いのよ?」
暫く経って、ナイトフライトを終えて地上に降り立った俺は、
打ち寄せる波の音をBGMに、先ほどの流木に朱美と腰掛けて二人語らっていた。
「だからってなぁ、海のど真ん中で人ぶら下げた足を振りまわす奴が何処に居る?」
「あはは、だからごめんって言ったじゃない。それに危ない事した卓君だって同罪よ?
あの時は本当に卓君が落ちちゃうかと思ってドキドキものだったもん」
「はは…それはごめん」
まあ、確かに朱美の心の傷を何とかする為とはいえ、あれはちょっとばかし危なかったか……。
下手すりゃ朱美諸共海に落っこちてたかもしれないのだ。よくよく考えりゃ俺は馬鹿な事をしたもんだ。
まあしかし、結果的に朱美に笑顔が戻ってきてくれたから、ここは一先ず結果オーライとしておこう。
……無論、あんな馬鹿な真似はもう二度としないと猛省しておくのも忘れずに。
そして、そのまま数分ほど、俺と朱美はお互いに何も語らう事無く、月光輝く夜空を見上げる。
聞こえる音とすれば海から聞こえる優しい波の音と、穏やかに吹く風が揺らす防風林の葉刷れの音だけ。
最初にその沈黙を破ったのは、朱美だった。
「……それにしても、本当に良かった」
「良かったって?」
朱美はオウム返しに問う俺を一瞥し、クスリと笑うと、
「それはね。卓君とまた飛べたって事」
「俺と?」
「……本当ね、あたし、あれからずっと不安だったの。
ひょっとしたらあの事件の所為で、卓君、空を飛ぶのが恐くなってるんじゃないかって」
「……」
そうか……朱美はずっと気にしていたんだ。
あの冬の火事の日、人助けの為とは言え無理を承知で飛んだ所為で、自分のみならず俺まで怪我をさせてしまった事。
それが心の棘となって、朱美が本来持つ繊細な心へずっと刺さり続けていたんだ。
そう、幾ら時間が流れても、それは消える事無くずっと……
「卓君ってさ、本当、昔っからやせ我慢する所があるからさ。
口では恐くないと言ってても…本当はすっごく恐がってるんじゃないかな? って思ってたのよ。
そう、夏の林間学校の二日目の夜の時も、卓君…なんだかんだ言って結局飛ばなかったし、尚更ね?」
ここで俺は一つの疑問に行き当たり、それを朱美へ突っ込む。
「おいおい、林間学校の時って言うけど、昼の自由時間の時に一度飛んだじゃないか。それはどうなるんだよ?」
「その時は、卓君を怖がらせない様にだいぶ低い高度を維持するよう、ずっと気を使ってたのよ?」
言われてみれば、確かにあの林間学校の自由時間、朱美は高く飛ぼうと思えばもっと高く飛べていた筈なのに、
俺をぶら下げて飛んだ時は最後まで高度数メートルを維持し続け、それ以上の高度へは決して行こうとはしなかった。
多分、あれは朱美にしてみれば、俺の空に飛ぶ事へのリハビリのような物だと考えていたのだろう。
……いや、だったらそうと早く言えと思うのだが、
今更それを突っ込んでも無意味だとも思うので、ここは黙っておくとしよう。
「でも、今回、卓君と飛んだ事でやっと確信できた。卓君はもう、本当に大丈夫だって事がね?
だから、本当に良かったって言ったのよ、分かった?」
言って、朱美が俺へ向けた笑顔は本当に安心しきった、何処までも優しい笑顔。
そう、朱美の心にずっと刺さっていた棘が、長い時間をかけて今、ようやく抜け落ちたのだ。
俺はふっと頬を緩め、朱美へ言う。
「あのな、朱美。空を飛んでた時さ、俺、お前になんて言ったか憶えているか?」
「……え?」
聞き返す朱美の目をじっと見て、俺は優しく言い聞かせる様に続ける。
「俺、朱美の事を信じているからって言ったろ? そう、林間学校の時だって同じ様な事を言ったじゃないか。
それに冬のあの時も、俺は言った筈だ、一緒にいれば何でも出来る。一緒にいれば俺達は無敵だって。
だからな、その、朱美も……俺の事を本当に信じてくれよ。お願いだから……」
しかし、途中まで言った所で急に気恥ずかしくなった俺は、
最後まで朱美の顔を見ている事が出来ず、頬が熱くなるのを感じながらそっぽを向いてしまった。
嗚呼、俺とした事が何と情けない。自分の言った臭いセリフに恥ずかしくなるとは……。
と、俺が頭の中で情けない気分を感じた所で、朱美はクスリと優しく笑い、
「うん、分かったわ。…卓君があたしを信じてくれる様に。あたしも、これから卓君を信じてあげる」
「朱美…」
「よくよく考えてみればあたし。卓君の事を信用していないような物だったもんね?
卓君は大丈夫だって言ってるのに、あたし、自分で確かめてみるまで独りで勝手に不安がってたもの。
信用されていないと卓君に思われても、仕方ないわよね……」
言って、朱美はばつの悪そうに翼の鉤爪で耳元を掻きながら続ける。
「だから…そのお詫びと言っても難だけど。これからは誰が何と言おうとも、卓君の事を信じてあげるわ。
その…何と言うか、卓君に嫌われたくないからね」
最後の所で気恥ずかしくなったらしく、朱美はぷいとそっぽを向く。
恐らく、彼女の翼膜は今までにない位に真っ赤に紅潮している事だろう。
俺はそっぽを向いている朱美に向け、優しく声を掛ける。
「だったら、俺も何と言われようとも、朱美の事は信じてやる。絶対にだ」
「……本当に?」
朱美が不安げな眼差しを湛えながらゆっくりと振り向く。
無論、俺の答えは一つしかない。
「ああ、本当さ。朱美」
「卓君…」
俺と朱美の視線が重なる。
そのままお互いに何も言わず、ただ、双方の目を見詰め合う。
浜辺に打ち寄せる波の音よりも、互いの鼓動の方が大きく聞こえる。
「…朱美」
「…卓君」
そして、ゆっくり、ゆっくりと、俺と朱美の距離が縮まって……
「あれ? そこに居るのは……?」
「「―――!!??」」
――唐突に後から掛かった声に、驚いた俺と朱美は慌てて飛びのく様に双方から距離を取った。
そして、無粋な声の主の方へ視線を向ければ、そこに居たのは見慣れた姿であった。
「「ザッキー!?!?」」
「なんだ、御堂に飛澤か? お前ら、こんな時間にこんな場所で何やってるんだ?」
そう、俺と朱美が通う佳望学園の生活指導兼古文教師、ザッキーこと帆崎先生だった!
無論の事、思いがけぬ教師の登場に、俺は慌てふためきつつも必死に弁明する。
「いやそのあのえっと、俺は眠れなかったから夜の散歩してただけでして、はい!」
「そ、そうそう、あたしもなんだか眠れなくて空の散歩しててね。
そしたら、この海岸でたまたま卓君の姿を見たから、奇遇だねってちょっと話をしてただけなのよ、うん!」
俺と同じく慌てふためきつつも、翼膜の先をばたばたと振って俺の話に合わせる朱美。
そんな俺達へザッキーは変な物でも見るような怪訝な眼差しを向けた後、溜息一つ漏らして
「学生がこんな真夜中に出歩いちゃイカン……と本来だったら叱っておく所だが、
今夜はネコの夜会もある事だし、お前らはネコじゃないけど今回だけは特別に見逃してやる」
「えっ、本当!? 感謝するわ、ザッキー!」
喜ぶ朱美へ「だが、次は無いからな?」と人差し指の爪を向けるザッキーを横目に、俺は心の内で安堵の息を漏らした。
これで義母さんの説教を食らわずにすむ。義母さんは怒ると英先生並に恐いからなぁ……ああ、良かった良かった。
――って、実際の所は全然良く無いんだが、せっかくのチャンスをフイにされたんだし。恨むぞザッキー。
つか、よくよく考えてみれば何でザッキーがこんな所に居るんだ? ネコの夜会にしては場所が違うし……。
と、俺が疑問を口にする前に、恐らく同じ疑問を感じた朱美がザッキーへ問う。
「所でさ、ネコの夜会があるにしても、何でザッキーがこんな所に居るのよ?」
「ああ、それは今夜は中秋の名月だろ? だから今回のネコの夜会は、月が良く見えるこの場所でやろうって事になってな」
「へぇ、そうなんだ」
「なるほど、だからか……」
言われて周囲を良く見れば、遠くの方でネコと思しき影がちらほらと見えた。
恐らく、彼らは今回のネコの夜会の参加者達なのだろう。当然、ネコであるザッキーが参加してても何らおかしくはない。
それに、月が綺麗な今夜くらいは、せめて見晴らしの良い場所でやりたくなるのも心情といった所だろう。
「っと、それよりもだ、お前ら。明日が休みと言っても、今は時間が時間だから早く家に帰った方が良いぞ。
せっかくの休日を、眠い目を擦って過ごしたくないだろ? まあ、俺はネコだから別に良いんだが」
「いや、少し良くないような気が……」
「あはは、流石にネコでも寝不足にはなるでしょ?」
「あー、そうなんだよなー。夜会に出席した翌日はもう眠たくて眠たくて、いっつもルルに叩き起こされる事に……。
って、そんな話している場合じゃなくて、もう兎に角お前らは帰った帰った、ネコじゃないのに夜会に参加して如何するんだ」
気苦労の絶えない妻帯者から教師の顔に戻ったザッキーに帰るように促され、朱美は「ザッキーのケチー」とぶー垂れる。
その際、ふと周囲を見まわした俺はある事に気付いたのだが、それを口にする前に少し残念そうな朱美が言う。
「ちぇ、もう少しお月見を楽しみたかったのになぁ……。
ま、ちょっと良い運動したお陰で眠たくなったのも確かだし、夜更かしで毛並みが荒れない内にあたしも帰ろうかな?」
「そっか…もうこんな時間だしな。それじゃ朱美、また来週な」
「うん、卓君も早く家に帰るのよ? それじゃ卓君、それにザッキーもまた来週ね!」
そして、朱美は俺とザッキーに見送られながら満月の沈み掛けた夜空へと飛び立っていった。
その姿が景色の向こうへ消えて行くのを最後まで見届けた後、俺は心の中で夜空よりも深い溜息を漏らした。
……あ〜あ、せっかくのチャンスがまたも良い所で水の泡ですか。しかもよりによってリア充のザッキーの所為でだよ。
くそう、この前もそしてこの前もみんな良い所で横槍が入って台無しになってるじゃないか。どんだけ運が無いんだよ、俺は。
はぁ、この調子だと、これからまたチャンスが来ても、何かの邪魔が入っておじゃんになりそうな予感がするなぁ……。
そう、俺は心の中で愚痴を漏らしつつ、ぼんやりと夜空を眺めているザッキーの方を忌々しげに見やる。
「……?」
それに気付いたザッキーは俺の視線の意図が掴めなかったのか、不思議そうに首を傾げた。
どうやら、邪魔した事に本気で気付いてないでやんの、このリア充。
……ハァ、なんだか怒ってるのも馬鹿らしくなってきた、とっとと帰って寝るか……。
いや、その前に一つだけ気になった事があったんだっけ?
「ほら、御堂も早く帰った帰った」
「はいはい…っと、その前に一つだけ聞いて良いですか?」
「ん? なんだ?」
何気にこちらへ耳を向けるザッキーへ、俺は気になったことを言う。
「ネコの夜会って言ってましたけど、良く見たらネコじゃない人も居るような……」
「おお、それか?」
そうである。俺が聞いた話では本来、ネコの夜会に参加しているのはネコ人のみだという話である。
しかし今、俺が見渡した限りでは、この海岸にはチーターやライオン等の姿が見られるのである。
はて、これは一体……?
「実は言うと最近、自分も『夜会』に参加したいって言う虎やヤマネコ等のネコ科の人からの申し出が多くなってな。
それで、今までは『夜会』に参加できるのはネコだけ、って言うのが暗黙のルールだったんだけど
今回からはネコ科の人も参加OKって事になったんだよ」
「なるほど、そう言う訳か……って」
ザッキーの説明に納得のセリフを漏らしたと同時に、俺の心の中で鎌首をもたげるトテモイヤナヨカン。
散歩に出かける直前に玄関で感じた小さな違和感。ネコ科の人も参加できるようになった『夜会』。
そして最後に、あの時と同じパターンの状況の流れ。
この三つの繋がりから、これから起こり得るであろう展開は一つしか思い浮かばない。
「え、えっと、あの……ネコ科って事は、ヒョウの人も含まれる訳じゃ……」
「おお、そりゃ当然だろ? で、それが如何したんだ、御堂」
やっぱりか! これは拙い、拙過ぎる!
そうなると早くこの場から離れなくては……そう、このトテモイヤナヨカンが現実にならない内に!
「ああ、いえ、何でもありません、帆崎先生。俺も早く帰って寝ないと――――」
と、妙な敬語を使いつつザッキーへパタパタと手を振って、そのまま踵を返そうとしたその矢先。
「卓ちゃん」
ぽんと俺の肩に置かれる肉球の付いた誰かの手。そして、直ぐ後から掛けられる優しげな、それでいて凄みのある声。
背筋に嫌な汗を感じつつ、俺は壊れかけのロボットの様に首をギギギと軋ませて、後へ振りかえる。
「もうこんな夜遅くなのに、何でこんな所に居るのかなぁ?」
夜の闇に溶け込みそうな、全身を包む漆黒の毛皮。
そんな周囲の黒の中で映える月光の様な金色の双眸が優しく、そして鋭く俺を見据える。
「え、いや、その、それは……」
「あのね、お母さんは何時も言ってるでしょ? 夜更かしは行けないって。
でも、それをなんで何で守れないのかなぁ? ねぇ、卓ちゃん?」
そう、そこに居たのは義母さんだった。
外見こそ、義母さんはにっこりと優しげな笑顔を浮かべてはいるが、
不機嫌に揺れる尻尾から見て、今、義母さんが怒っているのは間違いないだろう。
ここでようやく、俺は出かける直前に玄関で感じた違和感の正体に気付いた。
そう、あの時は無かったのだ。普段ならば玄関の土間に置かれている筈の義母さんの靴が。
無いのも当然だ、義母さんが『夜会』へ出かけていたのであれば。
「おお、御堂君のお母さんでしたか。貴方も『夜会』に?」
「ええ、帆崎先生。昼頃にご近所さんから今夜は月が綺麗ですからどうですか、と誘われまして……。
けど、ちょっと用事を思い出しましたので、先生には悪いですけどもう私は帰る事にします」
「はぁ。そうですか…それは残念だ」
ザッキーと歓談しつつも、義母さんの手は俺を逃がすまいと、その爪を俺の肩へ食い込ませている。
もう肌寒い季節にも関わらず、毛皮の無い額からだらだらと流れ出る脂汗。
しかし、俺はそれを拭き取る事も出来ず、ただただ硬直するしか他がない。
「それでは帆崎先生、私達はここでお先に失礼します。ほら卓ちゃん、行くわよ」
「いでででっ!? ちょ、義母さん! 爪が食いこんで、痛てててっ!」
言って、義母さんが俺の手をがっしりと掴み、すたすたと歩き出す。
義母さんは相当怒っているらしく、掴んでいる手の爪が俺の手の皮膚に食い込んで痛い!
しかし、だからと言ってその手を振り払える筈も無く、俺は情けない悲鳴を浜辺に残し、義母さんに連行されるのであった。
ややあって。『夜会』の会場である美浦海岸を離れ、中央通りへ続く潮騒通り。
深夜の為か、車通りの殆ど無いその道を、俺は義母さんに手を引かれつつ我が家への帰路に就いていた。
足取り軽やかに鼻歌を漏らす義母さんに対し、俺は足取り重くがっくりと頭を項垂れていた。
もし、俺の腰に尻尾が生えていたならば、その尻尾はだらりと重く垂れ下がっていたに違いない。
それも当然である、これから俺を待っているのは義母さんによる厳しく長い説教なのだ。
この時ほど俺は、悪戯がバレて英先生に連行されるサン先生の気持ちを理解出来た事は無かったことだろう。
そんな暗澹とした気分を俺が感じていた所で、不意に義母さんが鼻歌を止めて、夜空を見上げつつ漏らす。
「それにしても、お母さん、昔を思い出しちゃったわ」
「……?」
はて、昔を思い出す、とは……?
思わず首を傾げる俺に気付いたのか、義母さんは俺へ説明する様に続ける。
「そう……アレは確か、二十年前の事だったかしら。
その頃の私はある小説家の編集担当をやっていてね、毎日多忙な日々を送っていたの。
そんなある日のこと、私が担当していた小説家から『重要な話がある』と呼び出されたのよ。
指定された時間と場所は、今日の様に月が綺麗な真夜中の、人気の無い静かな海岸。
私は何の話なのかも知らされず、独り不安に駆られながらその約束の場所へ足を運んだの」
空を見上げつつ義母さんは語る。まるで思い出の一つ一つを噛み締めるように。
「私が到着した時、彼は浜辺で独り、夜空に浮かぶ月を見上げて静かに佇んでいたわ。
私は早速、彼へ『重要な話』が何なのかを尋ねてみたの。だけど、彼は妙に口篭もるばかりで話そうとしない。
それを前に私は不安を感じたわ、ひょっとしたら彼は小説家を辞めるとか言うんじゃないか。だから話し難いのだろうかって。
そして、私も彼もお互いに何も言わないまま、永遠とも思える程の時間が過ぎた後だったわ」
思わず「それで?」と聞く俺に、義母さんはクスリと笑うと、
「彼、いきなり背筋と尻尾をピンと立てると、恥ずかしそうに私へこう言ったの。「結婚…してくれ」って。
そう、彼の言う重要な話というのは、実は私へのプロポーズだったのよ」
「―――って、義母さんの言う『彼』って、まさか親父の事!?」
「うん、大当たりよ♪ 卓ちゃん」
し、信じられない……あの口下手かつ超奥手なあの親父からプロポーズするなんて……。
「あの時は本当にびっくりしたわぁ、私。今まであの人、私に対してそんな素振りを全然見せなかったのだから。
そりゃ、私もあの人に対して少しだけ気があったけど、好意の欠片も見せない彼の態度を前に、少しだけ諦めかけてたのよ。
けど、そんな矢先の告白よ? もうその時の私ったら、驚きの余り呆然と立ち尽くすしか出来なかったのよ。
しかもあの人もあの人で、告白した事で緊張の糸が切れたのか、私の返事を待つ事無くその場でぶっ倒れるし。
もうその時はグダグダのグズグズ、しかもその翌日に私がOKって告白の返事を返したら、あの人、また気絶したのよ?
もう、今思い出しても可笑しくて可笑しくて堪らないわ」
そう、昨日あった事の様に楽しそうに、時にははにかみつつ語る義母さんの表情は、まさに恋する乙女その物。
結婚からもう二十年以上の時が経つと言うのに、義母さんの恋の炎は未だに消えずに燃え続けている。
そして、対する親父もまた、二十年の時が過ぎても義母さんの事を愛しく想い続けている。何と羨ましい事か。
何時か、そう、何時の日か俺も、今日のこの夜の事を振り返り、誰かへ話す日が来るのだろうか?
今はまだ、それは分からない。だが、何時か必ず訪れる事を信じるとしよう。
そして、話をしている内に気が付けば、俺と義母さんが歩いて居たのは我が家近くの桜並木。
何かに夢中になっていると時間が早く流れる物だな、と頭の中でぼんやりと思っていた所で、
夜空を眺めていた義母さんが、はと何か思い出したかのように言う。
「あ、言っておくけど卓ちゃん、この話を私がしたって事、あの人には黙ってて頂戴ね?
実は言うとこの話、あの人から「話さないで欲しい」と堅く口止めされてるから」
確かに、親父が「話さないで欲しい」と言う気持ちも分からないでもない。
自分からプロポーズしておいて緊張でぶっ倒れました、だなんて誰だって振れ回られたくはない。
……となるとここで少し希望が出てきた訳で……。
「ああ、分かった…けど、その代わり、今回の説教は短めに……」
「卓ちゃん。それとこれとは話は別よ? 卓ちゃんには説教したい事が山ほどあるんだからね?」
「……はは、そうですか……」
が、その僅かな希望さえも義母さんに笑顔で潰され、がっくりと項垂れた所で。
俺はふと、ある事に思い当たった。そう、何で義母さんはいきなり俺にこんな話をし始めたのだろうか、と。
しかし、その事を俺が問おうとするよりも早く、義母さんが俺へ漏らす。
「それにしても、本当に残念だったわね、卓ちゃん」
「へ? ……残念って……」
言い出した事の意が掴めず、思わず聞き返す俺。
しかし、義母さんは俺の話を聞いていないのか、励ますような調子で続ける。
「もう告白まで後一歩という所で、先生に邪魔されちゃうなんて、本当に惜しかったわ。
けど、卓ちゃんはまだ若いんだし、機会を望めば何度だって機会は訪れるわよ、だから挫けずに頑張りなさい
お母さんは卓ちゃんのこと、応援しているわ。ファイト!」
…………。
「……え゛?」
何それ? いきなり何を言い出してるんですか? 応援って如何言う事ですか?
そんな調子で軽く混乱状態に陥った後、ようやく正気を取り戻した俺は、震える声で義母さんへ問いかける。
「え、エーっと、あの、まさかとは思いますけど……義母さん、何時から、見ていたんですか?」
「え? 何時からって? んーっと……朱美ちゃんが卓ちゃんへ「そこの非行少年!」って声を掛けた辺りからかしら?
――って、卓ちゃん、いきなり如何したの? がっくりと膝を付いちゃったりして…」
「い、いや、何でも無い、気にしないで」
ど、道理で……義母さんは「昔を思い出しちゃったわ」とか言う訳だ。
殆ど最初っから見ていたんだよ、この義母(ひと)は……。流石は黒豹、気配を消すのに長けてらっしゃる。
――って、ちょっと待て、義母さんが見ていたって事は他の『夜会』の参加者達も見てたりとか……?
「いや、まさかな……?」
様々な予測が俺の脳裏を過るが、しかし当然、それを確かめる術がある筈も無く。
例え義母さんの説教が早く終わったとしても、今夜中は眠れなくなりそうだと、
俺はこれからの事を悲しくも予感するのであった。
尚、これは本当に余談ではあるのだが、俺と義母さんが家に帰った時、
何らかの事情で目を覚ました親父が独り置いて行かれたと思ったらしく、
静まり返った居間で、一人寂しそうに尻尾と頭を項垂れていたのだった。
えっと、親父……ゴメン。
―――――――――――――――――――――了――――――――――――――――――――――――
以上です。
△ △
これから暫くの間は卓はネコ達から(・∀・)ニヤニヤと見られる事でしょう。
それと、これは避難所から。
185 :名無しさん@避難中:2009/10/31(土) 20:56:14 ID:ZYm388Lc0
うあー、季節ネタに遅れたっぽいのに、更に規制に巻き込まれて仕舞いました。とほほ。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=528.jpg 本スレでのネタも描きたいものが有るんですが、一体何時になったら…
あああぁぁー!てめーもリア充だろーがちくしょー卓もげろ!義姉までいるとかどういうことだクソッ!
もう見てらんないよこいつらニヤニヤする。そして今回はザッキーかぁ…空気読めと言うべきかGJと言うべきか…w
そしてナイス補完。他作者様との関連付けお見事でした。
あー!もう!朱美たんかわいいなぁ!
甘酸っぺーよ、お前ら!
サン先生はハロウィン似合うなぁ
580 :
代理:2009/11/01(日) 17:13:36 ID:6suUNU9Q
元作者が書いてもやっぱりこうなったw
もはやこうなるのが様式美だなこのふたりは
そんなふたりの目撃者たち
・サン先生 ・モエ ・リオ ・獅子宮先生
・ザッキー ・利枝さん ・その他猫多数
もはや公認だろこれw
581 :
代理:2009/11/01(日) 22:15:40 ID:Gc7CcMdW
代理での投稿有り難うございました。 何か今調べたら規制解除されてました。
ということで、セルフ転載。
さて、また期間限定お菓子ネタです(笑) 売り上げ上がったら少し試供品くれないものか(笑)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=530.jpg てりやきチキン味はあまり好きな味ではないものの、描かれてるキリンの女子高生はなかな
かでした(笑)
ただ、キリンに上の前歯はなかったんじゃなかったかな?
ちょうど手元にあったよコレw
成る程気付かなかった、このキリンさんは女子高生なんだな。よく見てるなぁ
これからの季節首がめっさ寒そうだ
モエはかわゆいのう
規制解除キターーーッ!!!
587 :
代理:2009/11/04(水) 23:49:39 ID:1HX+VrgD
>>576 GッッJ!!
よくぞ補完してくれた!
自分のうっかりミスで矛盾が出たことずっと気になってたんだアレとてもとてもニヤニヤしました
>>582 さすが女子高生目のつけどころが違う
余談だけど、氏の絵柄だと毛が結構モフモフしててあったかそうだよね
wikiのケモ学シリーズの絵、漫画が更新されてなくてショボーン(´・ω・`)
今見に行ったら更新されてたぜ
更新した人GJ
SS以外更新されてなくね?
591 :
代理:2009/11/08(日) 01:37:10 ID:m2N8DUOD
朱美かっこいいぜ朱美!
おっぱい大きいぜ朱美!
うわ凄いなコレ気合入ってるなぁ
月を背にするとかっけぇー…
594 :
代理:2009/11/08(日) 23:55:20 ID:m2N8DUOD
#規制解除されたかな?
>>594 転載有り難うございます。
夜シリーズは割と描いて面白いですねぇ(笑)
┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"
あら綺麗な目
卓ってたまに妙にかっこよくなるよなw
学祭実行委員を結成してみんなで学祭のために奔走するとか、
学祭の野外ステージに尾踊を呼ぶとか、
ウルフハウンドくんとボルゾイくんを動かしてみたいとか、
いろいろ妄想は膨らむけど忙しくて書いてられない
さそいうけはのーさんきゅーです。
もしいつか書こうと思ってるなら、時間あるときにじっくり
書けばいいじゃない。
誤解だっつのう!
こりゃ誰か気が向いたら書いてくれないかなーっていうネタ振り
今月は時間取るの無理だから、ネタ的に時期逸しちゃうんよ
この世の終わりみたいな顔してるな親父www
爆 乳 www
まったく、氏はおっぱいが好きですね!けしからん!
これはエロいwwwお尻のもこもこが白いあたりがやたらセクシーw
そして規制解除おめ!
うおおおぉーナイスおっぱい!
一気にキャライメージが深まった
やっぱイラストの影響はでかいな
着る毛布で我慢しとけ
実に本能のままに生きてるなザッキーw
生き生きしててなによりだ
白衣ズいいなぁ
きょぬーアラサーにルチャパンダにロップうさってもうなんかもう卑怯ですよ
リオ「みんなー、白先生のほけん教室始まるよ〜」
白 「なんだ?急に。保健室で遊ぶんじゃない!」
リオ「アタイみたいな名医目指してがんばっていってね!!」
白 「因幡、なんでわたしの白衣を勝手に着てるんだ」
リオ「ジャブジャブ オキシドール
輝く星のように
栄光 医学部 なんとかして入ろう
バチスタ 医龍 BJ目指して GO!GO!」
白 「別にわたしは医学部出身でもないし、目指してもないぞ」
リオ「ちょっ、ちがっ、ババアじゃないもん!
ババアって言うほうがババアなのよ!
なによ うるさいわね このババア!」
キリキリ…(オキシドールの瓶を開ける音)
リオ「四年通ってた 大学をでて
はじめに一人 振られました
勇気を出して デートに誘って
半時間後に 逃げられました
友達たちは とっくに結婚して
結局先生今 何才だ
答えは 答えは はたち はたち
何故なら 何故ならそれは
佳望学園に ババアいない」
白 「因幡、ちょっと来い。心身ともに白く塗りつぶしてやる」
リオ「山 落ち 意味など無いわ
とうが立てばいいのよ
キャリアがあれば な ん で も
@ A 三十路!!
ババアババア!
ババアババア!!
もうババアでいいわよ!知らない!
…って、ちょ、白せんせー」
ttp://www.youtube.com/watch?v=nt5RuhhIUFs
無茶しやがって…(ry
アルコールの瓶でもひっくり返して匂いにあてられたか・・・?
あるいは高熱出して保健室に運ばれた後に文字通りタミフルったのか・・・w
pixivでも「ケモ学」てのがあってビックリしたw
てっきりこのスレのシリーズかと思ったらまったく違ってた。
pixivも、もふもふした画がたくさんあってたのしいな。
さて、SSを投下しますなり。
犬上ヒカルは手にしている本を慣れた手つきで捲っていた。今年で何冊の本を読んだのだろうかと、ふと指を止める。
今年の頭から数えて思い出してみるが、数なんかどうでもいいことだと数えることを止める。
窓からは秋もおわりだというのに、日差しが明るくうららかな午後を演出し、本が積み重なった机に影を落とす。
椅子はぎしぎしと、さもヒカルの手にしている本を羨ましそうに歯ぎしりを立てて嫉妬して、
少しくすんだ壁際の本棚は、見ているだけで知識欲を満たしてしまうほどの迫力だった。
白い毛並みのイヌのヒカルは、静かに尻尾を揺らし安楽の時を過ごしていたのだった。
ヒカルの横では、ウサギの風紀委員長・因幡リオがカバー付きの文庫を両手に握り、鼻息荒くしている。
(あ。次、挿絵のページだ。思いっきり絵師の神っぷりが見れないのは、残念なのねー)
本を少し狭めながらページを捲ると、リオの背筋に電気が走る、耳が立つ。僅かに開いた隙間から、リオのお気に入りのキャラが
顔を赤らめながら恥ずかしげに立っているイラストが見える。2次元の彼女の目は透き通っていた。
(むっはーー!!もう!若頭ったらー!そんな姿、見せないでよー!)
早くチャットでの会話についていきたい、と言うファン心理からここで一気に最新刊を読んでしまおうとページを捲る。
しかし、今はリオに話しかけてくる挿絵の少女に心奪われてしまい、1ページも捲ることが出来なかった。
扉のほうから軋む音が聞こえてくる。昼休みのひとときにお邪魔する誰かが、この部屋に入ってきた。
部屋の入り口の扉が開くと同時にリオは文庫を閉じ、ヒカルは音の主の方を振り向けだけ。
「きみたち、ぼくの部屋でなにしてるんだい?」
落ち着き払いながら、静かに冷たい目で見つめるロップイヤーのウサギの男性。彼こそこの部屋の主。
少しくたびれたカーディガンに、純白の白衣。メガネは曇り一つ無い。彼の名は跳月十五・化学教師。
「お、お帰りなさいませ!!はづきち!」
「跳月先生……」
化学準備室は、もはや生徒の溜まり場になってしまったと言っても過言ではなかろう。
冷蔵庫の生徒が勝手に持ち込んだチューベットが、夏を過ぎても未だ詰め込まれていることからそれが物語っている。
無造作に置かれた跳月が製作したメカや、ほこりを被ったジャンク品もきっと生徒たちを歓迎していることだろう。
跳月も生徒と話ができると言うことでまんざらでもないのであった。
「因幡はともかく、犬上までぼくの部屋にいるとはな」
「……」
余計なことを喋るんじゃないと、リオは文庫をしっかり握り締めながらヒカルを見つめていた。
ヒカルはうなずくだけで、何も言葉を口にしない。そのことで余計にリオは心配になった。
「ほら!はづきちの部屋って本がたくさんあるから、犬上も喜ぶだろうなって……、ね!ヒカルきゅうん、嬉しいね」
「……」
舌ったらずなリオの口調は、ヒカルと跳月の目の前を真っ暗にした。
跳月は呆れながら、手にしているコンビニの袋を机に置く。袋の中のペットボトルが横になって転がり落ちた。
中身の烏龍茶が波打って揺れながら、ペットボトルを不自然に転がす。慣れた手つきで跳月は、割り箸の入った袋を破る。
コンビニ弁当の蓋を外すと機械的に温められた湯気が立ち、割り箸を割ろうと口でくわえる跳月の姿をリオが見逃すはずが無い。
「なんとコンビニ弁当だ!茉莉子さんっていう彼女さんがいながら、お昼をこれで済ませようなんて恐るべし三十路!」
「誰が三十路だ。それにあいつだって、仕事持ちだから忙しいんだよ」
同じウサギの茉莉子と言う名の恋人。その名を聞いて頬を赤らめる跳月は、おもむろに弁当箱のふたを開いた。
一見、貧相に見えるこの弁当も、跳月にとっては豪華なランチ。梅干がめり込んだ白米が銀(しろがね)のように眩しい。
一緒にレンジで温まったたくあんも、跳月にとっては食べ慣れたもの。気にせず、前歯でポリポリと音を立てる。
リオに見つめながらの昼食は、何とか彼女を黙らせたい跳月にとって心苦しいものだ。長い耳が痛い。
「坂の下のコンビニで売ってる鮭弁当は、どこの名匠の料理よりも美味いんだっ」
「そっかあ。さすがに三十路を何年も続けると、舌も肥えてくるって訳ですね」
「因幡、ちょっと待ってろ。白先生呼んでくる」
食べかけのコンビニ弁当を置いて立ち上がる跳月をリオは、必死に白衣を引っ張って止めた。
それと同時に、跳月は「三十路と呼ばれてどの位経つんだろう」と言葉にせず静かに数えた。
跳月が立ち上がった弾みで、机の本の山が崩れ一冊の本がヒカルの前に飛び込む。
「跳月先生、この本」
リオを助けるつもりではないが、ヒカルは机の上に乱雑に積みあがった本の中から、一冊の古い本を見つけた。
しげしげと本を見つめるヒカルの尻尾は、はじめは緩やかに揺れていたものの、表紙を見つめるに連れて動きが早くなる。
「この本って……」
「ああ、なんとなく古本屋で買い漁った本の一つなんだけど、気に入った?」
「は、はい!なかなか手に入らない池上先生の初期作品なんですよ」
いつもより口数の多くなったヒカルを目の当たりにした二人のウサギは、いつもは見せない少年らしいところを見た気になった。
ヒカルの尻尾が椅子に当たるたびに、カタカタとその脚は音を立てていることを少年は気にしない。
跳月はその尻尾を見て一旦箸を置き、ヒカルに優しく彼の心を揺さぶる粋な計らいを差し伸べる。
「だったら、犬上にあげるよ。読んで欲しい人に持ってもらうことが、本のいちばん大事なことだからね」
「で、でも池上先生の初期作品は、なかなか手に……」
難を逃れたリオはお礼代わりと言っちゃナンだが、ポンとヒカルの肩を叩いて後押しする。
「はづきちが言ってるんだから、頂いときなさいよ」
ヒカルは跳月に深々とお辞儀をすると、丁寧に古い本を抱えた。跳月自作の振り子時計が休み時間の終わりを告げる。
5分前行動よ!と、リオはヒカルを現の世界に呼び戻した。間もなく午後の授業が始まる。
生徒たちの帰った化学準備室は、跳月のもの。学問が本分の生徒は、素直に席に着きなさい。
本来の静けさを取り戻し、午後の授業の無い跳月は今までヒカルが座っていた椅子に座る。
カレンダーをちらりと一瞥すると、跳月は長く垂れた耳を掻き揚げ、指を折って数を数え始めた。
「24日かあ。今年も来るんだよなあ」
跳月のつぶやきは耳の長いリオは聞き逃さない。何故なら、リオは未だ化学準備室の前に立ち、扉越しに跳月の声を聞いていたのだから。
何も秘密を握ろうとしているのではない。文庫本と一緒に持って来ていた同人本の入った紙袋を置いて行ってしまったのだからだ。
問い詰められると面倒だ。跳月が机を離れた隙に取り戻そうと、時機をうかがっているのだが、そうそうそんな機会はやって来ない。
(はづきちに見つかりませんように。一応カモフラージュしてるけど、中をみられたら末代までの恥!)
と、落ち着きの無い素振りをしているのだが、「24日」という言葉だけは、どうもリオには引っ掛かるのだった。
やがてチャイムは非情にも鳴り始め、それに気付かないリオは通りがかった獅子宮先生に耳を捕まれながら、教室に強制送還させるのだった。
放課後にリオは、それとなく「はづきち」「24日」というキーワードで探りを入れることにした。
先生たちなら何か知っているかもしれない。もしや、新聞部の烏丸だったら情報を掴んでいるかもしれないが、
逆に自分が狙われるかもしれないので迂闊に近づくことは、音楽教師・ヨハン先生に自分からデートを申し込むようなもので
残念ながらそれは遠慮したい。隙を見て化学準備室から取り返した同人本の入った紙袋とちょっとの勇気を手に職員室に向かう。
職員室の入り口で帆崎に聞いてみる。跳月と歳も近いので何か知っているかもしれない、と淡い期待を抱いたが。
「そうだなあ、なんだっけな。おお、そうだ。それはそうと、因幡。勝手に化学準備室に出入り……」
何でもありません、と短い尻尾を巻いてその場を去る。続いて、窓辺に鯛焼き片手にたたずむ泊瀬谷に聞いてみた。
きっと泊瀬谷先生なら、優しく教えてくれるんじゃないかと期待したリオだったが。
「そう言えばその日、鯛焼き屋さんで新作がでるんだってね!さすが因幡さん、情報が早いね」
鯛焼きに恋焦がれる泊瀬谷に聞いたのが失敗だった。泊瀬谷から鯛焼き一つ頂き、サン先生を探すが職員室には見当たらない。
ただ、サン先生の大きな声とタヌキの百武そら先生の声が校庭から響いてくる。
「いる!」
「いない!」
「いるんだよ!」
「いないの!!」
はじめは初等部の生徒が騒いでいるのかとリオは耳をたらしていたのだが、それが自分の教師たちだと知ると頭を抱えた。
事態は理解できないが、サン先生は何かが「いる」と叫び、そら先生は真っ向して反対している。
リオはサン先生に質問をすることをあきらめて、職員室に残る教師に尋ねようとする、が。
やめておこう、と本能の勘がリオを引き止める。足早に職員室から抜け出そうとするのもの、残り一人が長い脚でリオの先回りをする。
「おや?生徒の疑問を解決するのはぼくら教師の役目だったね!迷子の子ウサギくん!」
「何でもないです!何でもないんです!」
「ぼくは学園という名の船の船長(キャプテン)だよ。疑問の海原に投げ出された乗組員を見捨てることなんか出来ないんだからね!」
そそくさと職員室から抜け出したものの、廊下で長い脚と髪を持つ音楽教師に腕を掴まれるリオ。
職業意識を盾に、リオにまとわりつくのは音楽教師のヨハンだった。長い髪を自慢げに描き分けながら、ヨハンは胸元の手帳を取り出した。
「えっと、その日は跳月先生の誕生日だね」
目を丸くするリオは、静かにうなずく。確かに、自分の誕生日が近づくと誰だって気になるだろう。
このときばかりはヨハンが後光の差す仏に見えたとか、見えなかったとか。これは言い過ぎだろうか。
「そうなんですね。ありがとうございました」
「リリーちゃんの誕生日と同じだから覚えてたのさ。そうそう!ぼくもリリーちゃんに何か贈り物をしなきゃね!
因幡くんも想い人からの贈り物を期待しなきゃいけないよ!何故なら男の子は女の子の喜ぶ顔が糧だからね!逆も然りっ」
一人嬉しそうなヨハンは、笑いながら表に出て行ってしまった。
2次元だけが想い人のリオはぐっと自分の手を握り締め、決意を胸にメガネを光らせる。
翌日の昼休みもリオとヒカルは主のいない化学準備室で書に親しんでいた。
もはや、ここまでくると生徒のためのくつろぎの部屋とも言えそうだが、そんなセリフは跳月が許しはしないだろう。
それどことか、前日よりも生徒の数がやや多い。ベランダに描きかけのスケッチブックを残しているのは、中等部のリス男子・丸谷大。
デッサン用の3Bの鉛筆の先は、大の歯でかじられている。吸い込まれそうな街並みが白い紙に広がっていた。
いや、生徒ではないヤツもいるではないか。
「面白そうな本だよね…」
と、本棚を見上げるのはサン先生。冷蔵庫をチューベットまみれにした張本人なのだが反省の色は淡い。
サン先生は高いところの本が取りたいのか、飛び跳ねているのだが所詮無理なこと。マジックハンドを使っても無駄骨だった。
うつらうつらとカーテンに包まって舟を漕いでいるそら先生が、サン先生を「チビ」と寝言で攻撃。だが、サン先生はどこ吹く風か。
横目で見かねたヒカルは、サン先生のために背伸びをして本棚から一冊の本を取ってあげた。
「ありがとうっ。このご恩は忘れない!」
「……言いすぎです」
ヒカルの白い頬の毛並みが恥ずかしげに染まった。
そして、なんでもない時間は過ぎ、くつろぎの時間が終わろうとする頃。
静かにカバーのついた文庫本を置いたリオは、いつもより真面目な口調でヒカルとサン先生に言葉を投げかける。
「あのー。サン先生、百武先生、犬上」
サン先生は振り向き、そら先生はカーテンから抜け出し、ヒカルは尻尾を止める。
「跳月先生に何かお礼をしませんか?」
「……ん?」
「いつもさ、この部屋で自由にさせてくれるんだから、わたしらで何かお礼の贈り物をするんですよ」
いつもはやかましいサン先生も、このときばかりは黙ってリオの話に耳を傾けた。
いつもは大人しいヒカルも、このときばかりは大きく尻尾を揺らしてリオの話に耳を傾けた。
「実は、今度の24日は跳月先生の誕生日なんです。それに、わたしたちのことをずっと忘れないで下さい的な贈り物を……」
「リオー!ぼくは猛烈に感激している!ぼくはその話に乗るよ、ね。ヒカルくん」
「ぼくも、本をプレゼントして頂いたから何かしたいなって……」
ヒカルは静かに頷き、ここにおいて『劇的に跳月十五の誕生日を勝手に祝い隊』が結成されたのだった。
その途端、扉が開き一人のリスの声が響き渡る。丸谷大、佳望学園中等部の男子。
「サンせんせー!甘栗買ってきましたあ!」
化学準備室は、栗の焦げる甘い匂いが満ちていた。
雑然とした机のお誕生日席にはリオ、机を挟むようにヒカルに大、サン先生にそら先生が座る。
リオは委員会のときのように差し棒を叩きながら会議を取り仕切る。
「で、どんなものをプレゼントすれば、はづきちは喜ぶんでしょうか?」
「実用的なものはきっと彼女さんが贈るんじゃないの?前は『マフラー貰った』って言ってたし」
サン先生は的確にリオの悩みに答える。だが、リオの頭は一層悩ますばかりだった。
当の跳月が帰ってくる時間が迫る。時計の音だけが、三人を包み込む……と思いきや、好みが割れる音が続いて聞こえる。
丸谷が器用に前歯を使って甘栗を剥いていたのだ。一つ剥き終わると、また一つと目の前に小さなおわんを作り続ける。
「丸谷は全部剥いてから食べる派なの?」と、リオは一つ剥かれた甘栗を失敬。
今まで黙っていたヒカルがおもむろに口を開く。
「逆に実用的じゃないもの……ですよね。例えば、印象的な何か」
ヒカルの目は大人しい目をしながらも、真剣に何かを考えているように見えた。
丸谷は無心に甘栗を食べているようで、壁にそら先生が勝手に張った星図を眺めていた。
そら先生は丸谷の目線を追う。
「星?」
「そう言えば、そら先生がこの間言っていたヤツ……」
反射的な答えは、サン先生を動かした。ここから一気に会議は進み、あっという間に全会一致の採決が行われた。
御覧なさい、一気にその話に夢中になってしまったヒカルの激しい尻尾の動きを。
その流れをここで書きたいのだが、リオから固く止められたので、今は書き表すことが出来ないのというのは非常に申し訳無い。
間もなく、24日が近づく。
夜中に職員室でサン先生が自分のデスクでネットに繋いで調べ物をしていた。
通りがかった残業を終えた泊瀬谷先生は、ニコニコ顔でサン先生の肩を叩いた。
「いいことをしなきゃね。いいこと」
イタズラ大王の名をほしいままにするサン・スーシ。このときの目は、イタズラを思いついたとき以上に輝いていた。
外では、星がサン先生に負けるものかとそれ以上に輝いていたのだった。
月の明かりは美しい。
―――誕生日前夜の跳月は一人だった。自宅のマンションのドアを開けても祝福しくれるやつなんぞ、これっぽっちもない。
しわしわのコンビニ袋を揺らしてスリッパに履き替えながら、愛しのリビングに足を引きずる。
自宅についての恒例儀式、PCを立ち上げ、着信メールチェックを始めると最愛の茉莉子からのふみが早速届いていた。
『わたしは今、北の街にいます。ここは意外に夜が短くて驚いています。
この間の名月の宵に会えなくて残念です。でも、お互いお仕事だから仕方ありませんよね。次の満月の夜には会えそうです。
十五さんのご多幸を祈りつつ、またゆっくり会える日を待っています。そして、十五さんのお誕生日おめでとうね』
「茉莉子……。ごめん」
跳月のマウスを握る手は弱くなる。×のボタンでウィンドウを画面から消すと、ペットボトルのふたを開ける。
秋のお月見はウサギにとってはお祭りの日。もちろん、皆さんもそれはご存知だろう。
ウサギの人々はこの日を重んじてきた。ウサギは太陽から陽の力を与えられ、月からの陰の力を授かる。
陽の力は強く地上を跳ねる力、陰の力は冷静に知を司る力。二つの星の力に感謝するのがお月見なのだ。
しかし、自分の仕事が忙しいとかまけて、ないがしろにしてしまった跳月は自分を恥じる。
ましてや、自分の想い人とのこととなれば一層、三十路の独身ライフが無期延期になると想像するのは容易だろう。
「きょうも月がきれいだな」
悔いるように跳月はベランダから見える美しい月を眺めて、陰の力を受けてため息をつく。
軽くコンビニ弁当の夕飯を済ますと、跳月はお気に入りの本を開いてベッドに転がる。
これからはぼくの時間。誰にも邪魔されないぞ。すでに寝巻きに着替えた彼の姿から伺える。
この世に生まれてありがとう、と父、母を思い浮かべ愛用するベッドになだれ込む。
時は一日の終わりを告げようと、短い針が精一杯の力で上り詰める。跳月はそれを気にしない。
一枚一枚、愛読する本のページを捲る。本の中の人物たちは、跳月を現から逃そうとうそっぱちを演じる。
「……」
静かな夜。静かな街。静かな部屋。
気がつくと、時計の針はとうに12時を過ぎていた。
ページを捲る手は止まり、いつの間にか跳月は三十路にまた一つ年を刻んでいた。
夢の世界にお邪魔しながら。
―――「いってらっしゃい、十五さん」
「ああ、茉莉子。きょうは早く帰る」
茉莉子に見送られながら、跳月は勤め先の学園へと向かう。広い大地にぽつんと建つ小さな家。二人のウサギがのんびり暮らすにはお誂え。
空は宇宙の色を延々と塗りつぶされて、星がちらほらとちりばめられていた。足元は大小の石ころが転がる。
何も無いあたりを見渡しながら、学園を目指すと後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。
「はづきち!おはようございます!」
「跳月せんせー!」
リオと同じウサギっ娘の星野りんごが跳ねながら跳月に向かってやって来る。
りんごの持つ風呂敷をリオは指差しながら、心弾む声で跳月に飛び込んだ。
「昨日ですね、りんごちゃんの家で餅つきをしたんですよ。たくさん作ったから、お昼休みに食べましょう!
杵と臼で突いたお餅だから、すんごく美味しいんですよ。ね、りんごちゃん!おぜんざいがいいかなあ」
学園に近づくにつれ、人々が多くなる。が、ウサギ、ウサギ、ウサギ……。
何処を見渡しても、跳月と同じウサギしかいない。
跳月が夜空を見上げると、青く大きな星が輝く。海の色が美しく、白い雲と緑の大地が目に染みる。
月に住む人はその星を「地球」と呼ぶらしい。
―――その晩のこと。PCで動画サイトに興じるリオに一通のメールが飛び込んだ。
ヘッドホンからアニメのキャラソンを溢れ出させながら、携帯電話に映されたメールの文面を詠むと、白い歯を見せて微笑んだ。
(さすが、サン先生!)
果物を切ったから居間に降りてきなさい、と誘いに来た弟がその姿を見てげんなりするのを無視して、
リオは「計画通り!」と椅子の上で体育座りをしてガッツポーズ。弟がこっそりヘッドホンのプラグを抜こうとしている。
同じ頃、化学準備室と同じように本を捲っていたヒカルにも、星を望遠鏡で眺めていたそら先生にも、
油彩を溶かすオイルを床に零して慌てていた丸谷にも、サン先生から同じメールが届いていた。
―――佳望学園化学教師・跳月十五が生まれて三十ウン年目の日、その日は特別についていなかった。
お気に入りの磁石で遊んでいたら、うっかりクオーツ時計に近づけてしまい狂わせてしまった。
授業で板書をしていたら、立て続けにまだまだ長いチョークを折ってしまった。
お昼休みに坂の下のコンビニに行ってみたが、お目当てだった鮭弁当が売り切れていた。
沈んだ気持ちで帰り道にグラウンドを歩いていると、カブトムシの甲山が走らせていたミニ四駆に轢かれてしまった。
「やれやれ」
きょうびマンガでも口にしないぼやきを口にさせてしまうほど、跳月の頭と耳はうな垂れていた。
コンビニの袋におにぎりとペットボトルだけを詰めて、化学準備室の扉を開けると満月のように明るい声が跳月を囲んだ。
「跳月せんせーい!お誕生日おめでとうございます!!」
祝福のクラッカー、喜びの歓声、そして見慣れた化学準備室もきれいな飾り付けで跳月を迎え入れる。
同僚のサン・スーシに百武そら。教え子の因幡リオ、犬上ヒカル、丸谷大が机を囲んでいた。
机の上には、泊瀬谷から教わった『新作鯛焼き』がずらりと大皿に並び、真ん中に小さなショートケーキに三本のろうそく。
「ははは。よくぼくの誕生日だと……」
「不肖、サン・スーシは何でも知っています!ではロウソクを吹き消していただきましょう!」
恐る恐るマッチでロウソクに火をつけると同時に、リオは室内の明かりを消し、そら先生はカーテンを閉める。
部屋の四分の一は占める機器のパイロットランプや、真空管やニキシー管の数字の明かりだけが浮かび上がる。
暗闇のため良く見えないが、ここにいる者たちの顔は機械の明かりより明るいのだろう。
コンビニの袋を揺らしながら、跳月が力いっぱいロウソクの火を吹き消す。
「わー!おめでとう!」
「はづきち!おめでとー!」
再び歓声が上がると、部屋は明かりを取り戻し跳月の頬を赤らめる顔が見えた。
「さて、ぼくらからの先生へのプレゼントはこれですっ」
サン先生は紙袋から大きな封筒を取り出し、跳月に渡した。
おもむろに封筒を開けると、一枚の書面が顔を出す。英文が踊り、見慣れた星が大きく描かれた立派な書類。
「えっと……、『ムーンオーナーズシップカード』に…」
「お分かりですよね?」
「月の土地の権利書、だよね」
確かに『ムーンオーナーズシップカード』には、『Jugo Haduki』の名前が刻まれている。
月で餅を突くウサギが月の土地を持っていても、何の不思議は無いはずだ。跳月なら月の土地の一坪ぐらいは、
持っていてもいいんじゃないか……、とサン先生とそら先生の提案でリオとヒカル、そして丸谷は賛同した。
サン先生は口にしなかったが、月の土地は意外と安い。サッカーコート程の面積である1エーカーあたり3000円ちょっとと言う。
このためにヒカルは本をしばらく図書館で読むことにし、リオは新刊ラノベの初版本を我慢し、
丸谷はデッサン用の鉛筆を小さくなるまで使い倒すことにしたのだ。
「ぼくもついに土地のオーナーかあ。小さな家でも建てようかな」
跳月は照れるのを隠すのに必死になることは、三十ウン年生きてきて初めてだった。
そういえばいつの間にか丸谷の姿が見当たらないよ、とリオは鼻をひくひくと動かす。
さっきまでこの部屋にいたのだが、リスだけに動きは素早いようである。
が、噂をすれば影、当の丸谷が頭を掻きながら化学準備室に戻って来た。
「どうしたの?丸谷」
「あのー。ぼくからのプレゼントなんですが、先生の肖像画を描いてみたんです」
リオは鼻をひくひくと動かす。ヒカルは再び尻尾を振りはじめる。しかし、どうも丸谷の様子がおかしい。表に置いてあると言うので、
一同は化学準備室を出てみると丸谷の身の丈よりも大きな肖像画が化学準備室の入り口に立て掛けられていた。
丁寧に描き込まれた跳月の画は、油彩ながら柔らかい毛並みがよく表現されている。
「すごいね!」
「少し男前過ぎるところがいいね」
丸谷が今まで描いた中では、かなりの力作だというのだが、浮かない顔をして仕方が無い。
「実は、キャンバスのサイズが大きすぎて、この部屋の入り口を潜らないんです」
その日跳月が仕事を終えるまで、化学準備室の入り口に跳月の肖像画が堂々と飾られることとなった。
おしまい。
白衣は意外と着ると暑い……らしいッス。
投下は終わりなりー。
はづきちは生徒に愛されてるなー
この間しらくらせんせは部屋に入り辛かったろうw
みんな気付いてないんじゃなかろうか
作者じゃないけどアゲちゃう
リオが段々とすごく濃いキャラになっていって面白いなあw
素敵な誕生日だ。
>>630 「しろくら」だったはず
633 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/22(日) 01:59:00 ID:wn6RDoeH
うわーいいなー
素敵なこと考えるなぁ
はづきちもこれは嬉しいだろうね
リオとヒカルはまるで性格違うのにちゃっかり良いコンビになってるのが面白い
大がまた出てくれて嬉しい
氏はいろんなキャラ使うのが巧いよね
いいな 色合いが暖かいな
くっ
本さえなければ彼女(?)の写真がみえるのにっ、のにっ
かなめ「ハブられた……私も兎なのに、ハブられた……」
利里「なんか、さっきから教室の隅からドロドロとした物を感じるぞ……」
卓「へ? 教室の隅って……誰もいないじゃないか?」
萌に萌々!
キレててもカワイイ!
まぁ見た目だけなんだろうけどな、はっはっは。
ん?なんか狼の遠吠えが……狩りでも始めるのかな。
はづきち「フレミングの法則を教えてるとですね」
しろくら「ん?なんすか?」
はづきち「ローレンツ力も教えたくなりますよね」
しろくら「はぁ」
はづきち「と言うか、せめて電磁気まで知っておいてほしいですよ。
相対性理論の前に電磁気学!アインシュタインよりマクスウェル!
アメリゴベスプッチよりコロンブスの方が有名なのになんでアインシュタインとマクスウェルはこんなに差が開いてんの?!
磁石冷遇され過ぎでしょう?!スチームパンクアトミックパンクサイバーパンク……マグネットパンクの時代いつ来るの?!
マグニートで終わりなんですか?!ていうかあれもサイコパンクだしっ」
しろくら「跳月先生、落ち着いて」
はづきち「はぁはぁ……すいません、取り乱しました」
しろくら「なんだか、僕と跳月先生が準備室に隔離されてるわけが分かった気がするっス」
なるほど隔離なのかw
ナイススパッツ!
「スパッツの下にパンツはいてない(かも知れない)女子」なんてキャラの話を最近見たので
スパッツと聞くとやましい想像が・・・
ちょっとオキシドール漂白受けてくる
ははは、スパッツなんて我々の業界ではご褒美ですよ……
ん?後ろから唸り声が(ry
しろ「スパッツか」
りお「スパッツがどうかしたんですか」
しろ「ほら、スパッツ穿いてるヤマネコっぽい娘、いるだろ」
りお「ああ、いますね」
しろ「どう思う」
りお「どう思うって……あ、もしかして“蕩れ”ですか?」
しろ「ううん、違う。何だ、“とれ”って?」
りお「忘れてください」
しろ「? まあいいか……で、スパッツの事だけど、高校生が穿くのはアリだと思うか?」
りお「私はアリだと思いますよ、ファッションの個性なんて十人十色ですし」
しろ「うーん」
りお「何か問題でも?」
しろ「スパッツってさ、もっとこう……小学生とかに似合うと思うんだ」
りお「そうですか(また始まったよこの人のロリっ気)」
ババァ結婚してくれ!
652 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/30(月) 00:57:23 ID:a/pVbvJ0 BE:29439465-PLT(15000)
クヴィレットがこのスレに!可愛い!
ああ、すげー恐縮してたあの仔なwかわいい
>>651>>654 どっちもすごく可愛い!
あのシェパードの名前クヴィレットっていうのか初めて知った
あんな瞳で見つめてもらいたいぜ
ピースもクヌートも、どちらも飼育員による人工保育なんだっけ?
人とコミュニケーション出来そうな位懐いてて可愛いよな
>>654 個人的には動物が服着て二足歩行してる程度のが一番好みだったり
657 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/03(木) 18:31:28 ID:z+sM/O4e BE:11776234-PLT(15000)
>>654 可愛い!愛らしい!
…現実はデカイし怪力で飼えないんだよなぁ。
ブリーダーランクがムツゴロウレベルにならないと無理だろうとも
660 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/06(日) 04:28:33 ID:KIU67H/C BE:62803788-PLT(15000)
迫力のある中にも表情に幼さが。
きゃわゆいです!
最近ちょっと過疎ー?(´・ω・`)
って創発板で言うのもアレなんだろうけどw
きっと皆コミケの原稿を
リオは買う側なのか売る側なのか
リオなら両方こなしてくれる…!
リオ以外に行きそうな奴いないんだな
コスプレ関連ならライダーがヒーローコスで現れるかも
リオが鎌田を上手い具合に言い包めてコスプレ参戦とな
サン先生「よーし、センセイも頑張っちゃうぞ」
あの低身長は人混みで大変なことになるんじゃ…
大変どころか事故になるぞw
アッー!安価ミス
>>669 オキシドールに漬かってきます・・・orz
今年のクリスマスも来栖マスツリーが飾られるのだろうか
しろりお「「クリスマスなんて都市伝説だろ!」ですよ!」
コレッタ「……」
りお「何度もクリスマス中止にしただけ、説得力ありましたよ」
しろ「くっ…。泊瀬谷さんっ、今夜はマタタビ酒で飲み明かすぞ!」
りお「大人って、奴は…。コレッタ!さあ、連峰でケーキ食べまくるよ!」
コレッタ「嫌ニャ!」
>>675 最近ちょっと、こういう小ネタでキャラ崩壊してるのが多い気がする
オチが思いつかずただキャラ設定だけが妄想されていく……!
設定まみれで破綻しなかったのはスターウォーズくらいだ…ッ!
#特にイベントに参加する予定はないものの、レイトンとでかいDS買ったらあらゆるも
のが手に付かなくなって、こりゃいかんと封印したら風邪引きましたですよ。
と言うことで、相変わらず流れを無視で只今クリスマスカード用に練習中の虎。これは
一寸色気出過ぎたので配れないな、と(笑)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=699.jpg 資料にと本屋を廻ってたらめっけた「BABIES」と言う獣の子っこの写真集。たまらんです。
ヨコハマ買い出し紀行風というか…酔ってるような感じだねー
買い出し紀行みたいな世界観にもケモノさんたちはピッタリ。
白先生が籠ベッドで寝ているうちに蓋をしたい
その後起きて慌てる白先生をサン先生と一緒に体育座りで観察したい
せーのっ ババァ萌え!
白先生を閉じこめた篭ベッドの蓋をちょっとあけて覗き見したい。
その後怒髪天を突く英先生のお説教をサン先生と一緒に体育座りで受けたい
久しぶりに投下だよっ。
「おれはオオカミらしく、一人で弾き語りをする!」
愛機のギターを肩に掛け、巨体をネコのように背を丸めてゆっくりと教室から出て行く一人のオオカミ男子。
オオカミらしい鋭い瞳の光りの割に、ヒツジのような柔らかい動作なのは気にしない。教室の扉を潜るには少し背が高すぎる。
頭をすぼめてのそのそと教室を出るさまは、クラスメイトたちにはもはや見慣れたものであった。
彼の名は、張本丈。佳望学園高等部、趣味はギター演奏と甘味の店探し。
午前中の授業を終えて、生徒たちもひと段落。自由な時間を過ごすのも、またこれも自由だ。
窓からそそぐ穏やかな太陽の光りを背にして、二羽のウサギが張本丈についてのどうでもいい会話をしていた。
「りんごちゃん、張本っていつもああなの?『一人がいい』だなんて」
「さあ?どうだろう。そう言えばこの間、ネットの動画で『神業のギターソロ』を見たって言ってたから、きっと影響されてるのかも?」
「ふーん。やっぱり男子はガキだ!男子って精神年齢は中学で頭打ちなんだから!ウチの愚弟と同じだよっ」
長い耳を掻きながらウサギの因幡リオは、クラスメイトの星野りんごから張本の近状を掻い摘む。
お年頃の男子とは、彼らの身長が伸びるときと同じようでもある。
ぐんぐんと外の世界に伸びていくと同時に、ちょっとの痛みが付いてくる。膝が痛い、くるぶしが痛い。そして心も痛い。
痛いことだけが目立ち、通り抜けるだけの人から指差されて嘲笑の的になる。それでも、彼らは空へと伸び続ける。
オトナになれば分かるけど、オトナじゃないから分からない。だからと言って子ども扱いだとへそを曲げるぞ。
そんな扱うことが難しいお年頃、高校男子なら誰しもが己の身に感じていないか。
「i-pod?さすが吹奏楽部のエースだっ。りんごちゃん、何聴いているの?」
「うん。今度、定期演奏会でやる曲のリズムを覚えてるの」
長い耳から伸びた白いコードに繋がったイヤホンからは、微かにテンポを刻むだけの単調な音が聞こえていた。
窓越しに張本を指差している因幡もまた、オトナから見れば笑いもの。風紀委員長と言う肩書きもなんのその。
「張本ってば、あんなところにいるよ。へへ」
「リオったら!」
教室の窓の外には、張本が渡り廊下でギターを一人で弾き語りをしていた。指を諌める風も冷たいというのに、一人で弦を鳴らす。
気分転換にリズムを刻むだけの音から、お気に入りのガールズバンドへとりんごは曲を変えたが、音量調整が間に合わない。
南無三、指が間に合わない。音が漏れたことは許して欲しい。
「りんごちゃん、午後の授業はいきなり化学だよお。この間の抜き打ちはズタボロだったしへこむよお。
はづきちのバーカバーカ、恋人とクリスマス前にケンカしろ。授業があるんだったら、現国がいいなあ、はせやん優しいし……」
「はいはい」
急に大きくなったi-podの音に気をとられて、リオの愚痴をまともに聞いていなかったりんごは、適当に聞いている振りをした。
そんな寒さと陽だまりだけが支配する、師走の押し迫った学園のひととき。
一人って、自由。
一人って、孤独。
一人って、……。
ギターを相棒にした張本丈は、自慢の指捌きを誰それに見せようと考えることもせず、ひたすら演奏していた。
自分の世界に入りたいがために、目をつぶってギターを鳴らすのは、もはや彼にとって慣れたこと。
おれはオオカミだ。一人でいることは、オオカミだったら平気なはず。『一匹狼』って言葉はウソつかない。
彼を支えていたのは、たった三文字の言葉のみ。たかが三文字、されど三文字。遠吠えにも似た歌声が中庭に響く。
(たまには、こうして一人きりになるのもいいな)
おれを癒してくれるのは、上品なチーズケーキとアコースティックな弦の音。
ウチに帰れば中二の弟と、初等部の妹が待ち構えている。それに一家の長であるオヤジも夜には帰ってくるだろう。
長男のつらい所は、弟と妹の世話だ。妹とは大分年が離れているからかケンカは滅多にすることは無いが、いちばんのやっかいは弟だ。
この間、冷蔵庫に備蓄していたおれのナタデココを勝手に食べやがった。はっきりと『丈』とマジックで書いていたのに、
残り一つを食べやがった。挙句の果てに「食い物のことで争うとは、罰当たり者!」と揃ってオヤジにどやされる始末。
そうだ。オヤジこそがいちばんの難敵でありラスボスだろう。群れで生きるケモノの宿命なのか、それとも最後の継承者か。
戦前のオヤジをそのまま21世紀に持ち越したような、威風堂々、典型的絶対主義のオヤジに反発するようにおれはギターを手に取ったのだ。
おれはどこの家でもオヤジはそうなんだと思っていたが、このようなオヤジはオオカミの家だけだと知ったのは、初等部の半ばの頃。
張本の回想に重なり、彼がギターを勤めるバンド「ルーズビート」のオリジナル曲『Day After』を奏でる。淡くも切ない失恋の詩。
「……聴いてくれてありがとう!」
閉じた目を開けないまま、誰にも聞こえないように俯いて呟いた張本の言葉は、誰に対してなのか。
聴いてくれたやつなんているもんか。口では明るく、心では後ろ向きの張本は、弦と共にした己の指を労わりながら、手を膝に下ろす。
たった一人の演奏会。体育館いっぱいにしたいとか言わないから、一人でもいい。おれの歌を聴いてくれ。
でもおれのギターなんか所詮は素人の腕だから、と折れそうな心を支えていたときのこと。どこかから手を打つ音がする。
「犬上?」
「……」
まぶたを開けると白い毛並みのイヌの少年、犬上ヒカルが手を叩きながら花壇に腰掛けていた。傍らに文庫本が転がっている。
本を持っていたはずのヒカルの手は、白い毛並みのぞく胸元の位置で張本だけにと喝采を送る。
何のことは無い。ヒカルは昼休みの間、静かな外で本を読んでいた。張本が演奏をはじめた途端、張本の前にやって来た。
心打つものがあったのか、ヒカルはいつしか本を捲る手を止めて、張本の奏でる音色に全てをを許していたのだった。
しかし、ヒカルは口数が少ないうえに不器用だ。ところが、イヌの少年らしく素直な所を張本は目の当たりにする。
「犬上さあ、よせよ。尻尾ぐらい止めろよ」
「……」
止められるものなら、とっくに止めてるよ。と言いたげに、ヒカルは膝を抱えて座っていた。
前に垂れた髪の毛が張本の顔色の邪魔をする。もっとも、毛並みで隠された顔のことだ。
「張本さ。続けてよ」
「……」
「よせよ。尻尾ぐらい止めたら?」
同じイヌ科のケモノのことだ。尻尾との付き合いは分かっちゃいる、だけどコイツはなかなか言うことを聞かない。
そんなときは、楽器に打ち込め。音を楽しめ。風に歌を任せて、いたずらになびかせればいい。
再び張本は弦を指先で押さえると、2曲目としてアップテンポの曲をヒカルのために演奏を始めた。
たった一人で演奏することなんぞ滅多に無いからな。ましてや、客前なんぞ。と張本がAメロを歌い終えるとき、
背後からリズムに合わせるように軽快な太鼓の音がしてくる。耳にするだけで心弾む、駆け足のような軽快な音。
曲がサビに掛かる頃には、張本の耳にどこかで聴いたような、音捌きだと感じ始めた。気が緩んだのかトチるが、気にしない。
横目で張本が音の方に振り向くと、さっきまで教室にいた星野りんごが、わざわざ音楽室から持ってきた
コンガを前に張本の曲に合わせて鳴らしているではないか。ウサギの手の平は優しい音を鳴らす。
そう。りんごは、張本たちとバンド「ルーズビート」のドラムとして参加しているし、吹奏楽部でもその腕は発揮されている。
軽快な音の打楽器を張本のために合わせて、りんごはヒカルと張本のために飛び入り参加してきたのだ。
まるで腕の良い料理人が包丁を裁くように、りんごもコンガの上で手をさばく。空を筒抜ける音が渡り廊下に響く。
「……星野」
「二人で演奏(やる)って、いつもと違ってなんだかいいよね。張本くん」
りんごのように頬を赤らめたりんごは、少し恥ずかしそうだった。
あまり音楽については詳しくないヒカルなのだが、思わぬ飛び入り参加のセッションに心震わせ尻尾を振った。
「張本、尻尾が」
「い、犬上っ。お、おれはな、一匹狼なんだから……。それにお前だって」
「へえ。一匹狼でも尻尾はキチンと振るんだあ」
「うるさいっ。星野」
尻尾は口ほどにものを言う。そんな言葉を張本に今聞かせても、嘘っぱちだと付き返されるだろう。
照れ隠しなのか、言葉で返すより音で返す方が早いと張本は、ピックを振り上げて3曲目のスタンバイ。
りんごも合わせてコンガの上に手を置いていたのは、言うまでも無いことだろう。
「星野。この間、ヨハンが授業で弾いてた曲をやるぞっ」
ヨハンが選んだその曲とは、白い雲と澄み切った空が似合う明るい応援ソング。
聴いているだけで、悲しいこと辛いことを笑い飛ばして『思い出』に変えてしまうような、青空のような曲。
「大空部を応援する為に、ぼくが全身全霊を込めて鍵盤に魂を込めるよ!」とヨハンは後姿のまま言ったと言う。
空を自由に舞う、鳥類たちが結成した大空部。この曲は、彼らにぴったりの曲だとヨハンは言う。
ヒカルと共に手を打ちたい。りんごと共に身体を動かしたい。そして張本と共に歌詞を楽しみたい……。
誰もがその場に居れば、きっとそう思うだろう。いつしかヒカルとりんごも張本の歌声に合わせていたのだから。
彼らの曲がサビに差し掛かった頃、軽快なリズムが彼らに続いてきた。あらびきな演奏ながら、リズムについていこうとしている。
無論、技術なんか今はいい。音を無二の友人として迎え入れようじゃないか。その友人とはいったい誰だ。
(因幡?真面目のまー子が?)
どこからか持ってきたのか、りんごとさっきまで張本の噂話をしていた因幡リオが、タンバリンを鳴らしながら、
にこにこ顔でりんごの側で身体を揺らしているのであった。因幡がこんな顔をするのは、ネットで話題のアニメを見終えたとき以来。
クラスメイトのモエやハルカと学校の帰り道にカラオケに行っても、歌える曲が少なく盛り上げ係に徹していたリオ。
そのときの賜物かどうかは知らないが、タンバリンの響きはただの素人のものでは無く光るものが垣間見える。
ウサギのダンスに合わせて、リオのスカートが揺れる。上履きも仲間はずれにされたくなかったのか、一緒にリズムを刻んでいる。
曲後半、りんごのソロパート。よく言えば一人舞台、それでも楽しみながらりんごはコンガの力を信じていた。
ヒカルも張本もリオも……、自分の持ち場を続けながらりんごのコンガさばきに目が奪われる。
ポン、ポン、ポコン、ポン……。
ポン、ポン、ポコン、ポン……。
ポン、ポン、ポコン、ポン……。
りんごのソロが終わると、一堂翼広げて青空を飛ぶが如く、最高潮のサビ部分の歌声を合わせていた。
外の空気が気持ちいい。それぞれ手を繋いで、まだまだ冷たい空を毛並みで感じようじゃないか。
こんな澄み切った青空、大空部の面々に独り占めするなんてもったいないと思わないか。
白い雲も味方をしたいのか、手は貸さないがのんびり彼らを眺めていた。そして、張本の独奏で曲は終わった。
……余韻が渡り廊下を包み込む。誰もが息を飲んでいる。
そして、沈黙の後に待っていたのは、彼らの歓喜。
ヒカルは、照れくさそうに張本、りんご、リオの三人に『いちファン』としての言葉を送った。不器用ながら純粋な言葉。
「楽しかった……」
「張本くんさ!もっときみは評価されるべきだよ!才能ってヤツは無駄遣いするためのものだからねっ!」
リオなりの張本への言葉。不器用ながら、伝えたい言葉を放り投げたリオは、張本の目をまともに見られなかった。
「因幡さ。それ、誉めてるの?」
「う、うるさいなっ。犬上!わたしは、張本の才能を買ってるんだよっ!犬上なんか……」
手持ちのタンバリンでヒカルの尻尾を攻撃するたびに、転がるような音色が一緒に響く。
ヒカルはヒカルでくすりと笑い、側で聞いていたりんごは「リオって、言葉に詰まるとすぐそれだ」と頭を掻いている。
師走の風は張本だけに目線が集まることが気に食わないのか、リオのスカートをいたずらに捲った。
ニーソックスから覗くリオの毛並みが眩しい。
「おれ、オオカミなんだぞ?群れることなんか……」
「『大好き』なんでしょ?りんごちゃんも犬上もそう思うっしょ?寂しいとウサギは……もう!どこにもいっちゃらめぇぇ!」
(こういうセリフは、いったいどこで覚えてくるのだろう)
文庫本を拾い上げポケットに入れたヒカルは、柔らかい頬の毛並みを張本の胸にぶつけているリオを見て無言の吹き出しを作った。
ふと、張本とリオ、それにりんごの三人を見て浮かぶ一つの企み。ヒカルの唐突な言葉に、三人は声を揃える。
「みんな上手いね。三人でユニット組んだら?」
視線は全てヒカルに注がれていた。
ご冗談を!と、と言うようにも、なるほど!と、言うようにも取れる答えを三人は返す。
「もうすぐ吹奏楽部の演奏会があるしね」
「わ、わたしは音楽の才能なんかないんだからねっ!芸能の神・バッカスから見放された女だよっ」
本気なのか謙遜なのかは分からないが、リオはやんわりとリオ流にヒカルの提案を遠慮した。
が、ギターをケースにしまいながら張本は、リオの音楽センスの輝きを感じ取っていたことを打ち明けた。
「いやいや。おれの耳に狂いがなければ、因幡はけっこう筋がいいと思うよ」
「む、むっはーーーー?!」
わたくし因幡リオは、いらない子なんかじゃありません。「ボカロの作品で鍛えられました!」と自信満々に答えることなんか出来ないけれど、
今まで神曲をうpして頂いた職人さんに、ありがとう!と言いたいっ。人から評価されることで、少しリオは自信を付けたのだった。
「張本のお墨付きじゃないの。いい経験になったね、リオ」
「そうね!思い出だ!記憶だ!メモリーなのね!犬上に張本っ!わかるよねっ」
青い空がいつもよりも青く見える。昼休み終了前5分の鐘の音さえもきょうは清々しい。
だが、リオは風紀委員長。本分を忘れているわけじゃない。
「はいはい!お休みはここまでっ」
メガネを光らせて、授業の体勢に戻った真面目のまー子は、タンバリンを振りながら三人と共に教室に戻る。
自分から号令をかけておいてなんだが、リオはこのあとの科目のことを思い出すと、すこしブルーとなってしまう。
「あーあ。いよいよ、次は化学の授業かあ。はづきちの小テスト、容赦ないし」
はづきちだって、好きで小テストはしていない。ただ、化学のこととなると、止まらないだけだ。
りんごのためにコンガを運んであげているヒカルが、リオのか細い声に尻尾を向ける。
「お昼休みあとの授業は確か、現国だったような……」
「とんだ記憶違いだった!!」
そう言いながら、リオはスカートを揺らす。
おしまい。
気付けば師走!なのに九州はぬくい!
投下はおしまいでごんす!
リオが濃くなっていくwww
ボカロ…… 初音ミケ……?
ありかも…
GJ!
リオはニコ厨かw
696 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/15(火) 04:34:21 ID:AzG+qEde
いろんなキャラに同時にスポット当てた作品書けるっていいね、素晴らしいね
世間は寒いけどあったかい気分になった
あれ?確か丈ってベ
ース…
だけど、痛い時期ならギターに手を出してもおかしくないと
思えば普通だww
そういえばはづきちの担当は化学じゃなくて科
料理力学?
学じゃなくて理科でした
狼♂と兎♀のカップルって危なげでどこかグッとくるものがある
702 :
Fist:2009/12/16(水) 22:38:57 ID:V++LySPz
丈、現実には狼は群れるものだぞー。
…とか言いつつ「一匹狼」に憧れる気持ちも分かる気がする自分が居たり…。
もしも丈が根っからの一匹狼である謙太郎に会ったらどう言う反応見せる事やらw
一匹狼ってよりあんまり感情を面に出さないだけみたいな
それに比べて群れているカマロときたらァー!!
鎌田ってよく考えたら獣ですらないなw
しかし人気不滅の鎌田。嫉妬せざるを得ない…ッ
708 :
Fist:2009/12/18(金) 17:14:50 ID:qL82/2ya
その人気の隣で、今時期からかわれるのが一人いたり…
く、くるすます…
>>708 そういえば名前欄の「Fist」とはなんぞw
雪やこんこん♪
あられやこんこん♪
降っても降ってもまだ降りやまぬ♪
ヒカルは喜び尾部振りまくり♪
鎌田は凍死の五秒前♪
712 :
Fist:2009/12/19(土) 07:56:50 ID:iZl4n76L
そういや鎌田は昆虫用ホットドリンクを飲まないのかな?
冬は毎回震えてるし…。
>>710
書き込む時によく使用するハンドルネームです。特に意味はありません。
…使わないほうが良いでしょうか?
なるほどHNでしたか。名前いれたまま書き込む人が居なかったから
不思議だっただけなので、お気にせずw
鎌田がホットドリンク飲んで死にかけたSSあったようななかったような…
何スレ目のSSだっけ
714 :
Fist:2009/12/19(土) 10:23:28 ID:iZl4n76L
>>713 了解しました。
たしか…2スレ目だったと思います。
あのー、そろそろsageてもらえませんか
716 :
Fist:2009/12/19(土) 20:22:53 ID:iZl4n76L
…迷惑かけてすみません、忘れてました…。
落ちます。
とりあえず投下するのぜ!
キャラが違ってても俺は知らん!
718 :
1/5:2009/12/20(日) 04:18:04 ID:QHUUc+pz
お昼時、芋羊羹のビニールをくしゃくしゃに丸めながら、張本丈は吐く息が白く濁っていることに気がついた。
口を窄めて息を吐くと、勢いよく真っ直ぐに吹き出し、さながら幼い頃にテレビの中で暴れていた怪獣の出すそれと似ているな、と思
う。
「今朝ニュース見てたんだけどよ、どっか北の方で猛吹雪ンなってたぜ?それくらいの寒さ」
初等部の思い出に浸る丈の後ろで、チーターの水前寺清志郎が呟く。少々不満の混じっているような声だった。
購買のそばメシパンを頬張りながらも、尾をゆらゆらとせわしなく揺らしているところからも、その心境が見て取れる。
仲間内ではゼンと呼ばれている彼は、陸上部のエースである為か、筋肉質でありながらもスマートな体形である。
外見だけなら女性受けがいいのだろうが、性格に少々問題があり、寄り付く女性は少ない。
「まあ、そろそろこっちでも雪が降ってもおかしくはないな。
しかしガキの頃は雪が降る度に尻尾振って駆け回ってたのに、最近じゃそんな光景もなかなか見かけねぇ」
遠い目をしながら、丈が呟く。
小さい頃は嫌がる透を無理矢理炬燵から引っ張り出して、よくいつもの4人でカマクラを作って遊んだものだ。
カマクラの中ですする、りんごのぜんざいは格別な味だった。
「そうそう、俺たちが子供の頃は、冬と言えば初雪とクリスマス、そしてお年玉を今か今かと待ち望む季節だったってぇのに、近頃の
ガキと来たら……じゃなくて、違う!俺が言いたいのは!」
「……言いたいのは?」
丈ののんびりとした口調に対し、ゼンが痺れを切らした。
「何故、こんな、寒い日に!わざわざ屋上で昼メシを食わねばならんのだ、ということだ!それもオス二匹ぼっちで」
叫び声は寒空に虚しく響く。
屋上には丈とゼンの二人以外誰もいなかった。中等部の男子生徒も、大空部の部員もいない。
何時もならば透も昼食を共にしているのだが、冬の寒さの続くような日には外へ出たがらなかった。
今頃は教室でぬくぬくとツナサンドでも食べているに違いない。透は寒さにはめっぽう弱いのだ。
719 :
2/5:2009/12/20(日) 04:18:53 ID:QHUUc+pz
それでも丈が屋上へ出たのは、やはり街を見渡せるこの場所が好きだったからだった。
せわしなく動き続ける街を見つめていると、自分も街の一部なのだ、と感じる事ができて、好きだった。
何故ゼンまで付いてきたのかは分からないが。
「何故!教室という!優しい温もりあふれる桃源郷ではなく!わざわざ惨たらしい!寒さ肌刺す!無間地獄に出向く!」
ゼンがオペラの歌い手の如く吼える。
いや、一声一声出す度に大きく動くその素振りはミュージカルのようだ、と言った方が適切かもしれない。
「無間地獄ってのは八熱地獄の最下層の地獄だ。
この場合マカハドマ地獄の方が正しいな。寒いから、八寒地獄の」
丈が独り言のように呟く。
「変なトコに突っ込むなよ!
俺は、わざわざ屋上まで来てこんな寒い中ごはんを食べることはないよねぇ、ということを言っているんだ!」
「まぁ馬鹿と何とかは高いところが好きというしな。
いや、馬と鹿じゃなくて狼とチーターだから、えぇと、何だ?」
「あ゛あ゛ぁ゛ぁ!駄目だ、まるで話にならねぇ!もう帰る!」
ただ寒いまま埒が明かない状況に、ゼンは匙を投げた。
721 :
3/5:2009/12/20(日) 04:19:39 ID:QHUUc+pz
ゴミの入った袋を掴みながら180度回ったとき、ゼンは妙なものを目にした。
階段室の壁が、不自然に膨らんでいるのだ。高さにして150センチほど。
その辺りだけ不自然に色が白くなっており、明らかに頭部にマズルのある、犬科の獣人のシルエットをしていた。
つまるところ、誰かがそこに隠れている、ということだ。
ゼンはそろそろと静かに後ずさりして、丈に耳打ちする。
「おい、丈……。いつの間にかあいつ、また来てるぜ……。」
「気づいてるよ。俺たちが来る前から居たみたいだな。多分昼休みのチャイムが鳴ってから速攻でここに来たんだろ」
ゼンは腕時計を見る。現在時刻午後12時43分。昼休みは、12時丁度からだ。
「つーことは、40分もこの寒い中、じっとしてたのか!?信じらんねぇ……」
二人の会話が聞こえるのか、壁のシルエットはもぞもぞと落ち着きをなくして動き始めた。
ここで飛び出して行きたいところだが、飛び出していったらいったで、少々気まずい雰囲気になるのではないかと懸念しているようだった
。
「お、おい……。なんか、構ってあげないとかわいそうじゃね?」
「じゃあお前が何とかしろよ、ゼン」
「な……何で俺が!?もともとお前が蒔いた種だろうが!自分の問題を他人に押しつけるんじゃない!」
「言い出しっぺの法則」
「なんだと!?」
数分間続いた問答の末、折れたのは丈の方だった。
やれやれと仕方無しに、面倒そうに、投げやりな棒読みで壁の膨らみに語りかける。
「お前のやっていることは全てするっとまるっとお見通しだ。
もうすぐ授業始まるからとっとと出てきなさい」
722 :
4/5:2009/12/20(日) 04:20:28 ID:QHUUc+pz
その言葉を聞いて待ってましたと言わんばかりに、膨らみは動き出した。
勢い良く空へと舞い上がり、2回転してから華麗に着地する。
灰色の布の下から現れたのは、小柄な、茶色の毛並の柴犬人の少女。それが膨らみの正体だった。
「アタシの隠れ身の術を見破るとは流石ね、丈先輩!この伊賀野ちとせの眼鏡にかなっただけあるわ!」
伊賀野ちとせ、佳望学園2年B組、出席番号3番。忍者同好会所属。
ミニスカートにブレザーというところは同年代の少女と同じなのだが、忍者を意識しているのか、口元を覆うマフラーが明らかに異質であ
った。
長い間この寒い、外の空気に触れたためか、震えているのが遠目にも見て取れる。
かじかんだ手で腰元の鞄からクナイを抜き出し、丈に宣戦布告する。
「さあ、丈先輩!今日こそアタシと勝負よ!……ん?」
しかしクナイの先には目標の丈の姿はない。
当の本人とゼンは、すでに階段室へと向かって歩いているところだった。
「なあゼン、次の授業なんだっけ」
「たしか地学だったと思うぜ。そら先生」
「あー、そら先生か。少しくらい寝ても大丈夫かな」
「お前それでこの間地学赤点とってたじゃねーか」
ちとせの存在など無かったかのように、二人は去っていく。
723 :
5/5:2009/12/20(日) 04:21:43 ID:QHUUc+pz
受け流されたちとせは肩をワナワナと震わせる。
「ぐぐぐ……アタシを無視するとはイイ度胸ね、先輩……。これでも……」
咄嗟にクナイを構え、
「食らいなさい!」
投げた。クナイは風を切って、真っ直ぐに丈へと突進する。
丈の顔に当たるか否か、というところでクナイは180度方向を変え逆行した。
丈がすれすれでクナイを食い止め、ちとせに投げ返したのだ。一瞬のことだった。
ちとせがそのことに気づく前に、彼女の額にクナイが刺さった。スコン、と軽快な音が辺りに響く。
「無念……」
腹の底から声を絞り出し、ちとせは倒れた。
潔く散る姿に丈は、忍者ではあるが、サムライ精神を見た。ゼンがあわてて駆け寄る。
「あわわわわささささ刺さっとる!刺さっとるよ!やべぇよ、早く保健室!」
「めんどくせぇことしやがって……」
「投げ返したのはお前だろう!そもそもクナイ止めるだけでよかっただろうが!」
丈とゼンの声を耳にしながら、そういえば昼ご飯の大好物のサーモンサンドを食べていないなぁと思い出し、ちとせは意識を失った。
幸いちとせは軽傷ですんだものの、丈の放課後はクナイを振り回すちとせ、それを追う海賊姿の保険委員の少女、それととやかく口うる
さい風紀委員のウサギの少女とで騒がしいものになったのだが、それはまた別の話。
おわり
これだけなのに2ヶ月もかかっちゃうとか、どういうことなの……。
保守してくださった方有難うございます。
クリスマスまでになんか短いの書きたい……。
投下乙!!
アップローダーにも絵の投下来てたな…
なんかところどころ改行おかしい……。
すみません、見苦しいですがご了承ください。
忍者同好会危ねえwどうして認められてんだこんなのw
柴犬っ娘かわいいね
獅子宮鎌田利里猛、加えて丈
ちゃっかり戦闘要因が多いな佳望学園
まあ意味無いけどな!
>>727 虎宮山(姉)「き、貴様ぁっ! この女子プロレス部部長である私を戦闘要員ではないと言うのか!」
虎宮山(妹)「姉さん、落ち付いてください! 別に彼(
>>727)は私達を名指しで戦力外だとは言ってないじゃないですか!」
虎宮山(姉)「離せ、そして黙れ鈴鹿! お前は悔しくないのか! 我ら姉妹が戦力として見られて無い事に!」
虎宮山(妹)「いえ、私は飛行機同好会ですから。戦闘要員と見られなくとも何も」
虎宮山(姉)「鈴鹿……どうやらお前とは一度、しっかりと話し合う必要があるようだな?(ビキビキ」
虎宮山(妹)「ええ、私も前々から姉さんとは一度じっくりと話し合うべきだと考えていた所です」
虎宮山(姉)「ふん、そもそも私はお前と顔を会わせた時からこうするつもりだったのだ。覚悟しろ、鈴鹿!!」
虎宮山(妹)「覚悟するのは姉さんの方です!」
ドガシャーンバキバキメシャネエサン、ソノワザハツウヨウシマセンヨ!ドガゴンガシャンエエィ、ウデヲアゲタナスズカ!ドガラバキグシャフギャーオレハムカンケイー
空子「ねえ、ソウイチ? 止めなくて良いの?」
惣一「どうせ結局は決着つかずで終わるんだ、止めるだけ無駄だよ。それに下手に止めようとしたら撒き込まれる」
空子「えっと、それで良いのかしら……?」
結局、それから数時間後、二人の姉妹喧嘩は惣一の予想通り、決着付く事無く双方が疲労困憊となった事で痛み分けに終わった。
何気なくTRICKのセリフ混ざっとる
リアルステルスこと兎宮かなめたんが、真の忍びの者。
731 :
Fist:2009/12/20(日) 18:19:59 ID:YQGwHln4
かなめ = 姿見えぬ狙撃手 + 恋する乙女
茶色い毛並みの兎の娘はなんて名前だっけ
ささやま先輩だっけか?間違ってたらすまん
合法ロリの娘か
初音ミケのアイテムはちくわなのか
ちくわしか持ってねえ!
ちく・・わ・・・?
739 :
Fist:2009/12/23(水) 12:10:37 ID:S8KBYUna
ミッケ ミッケ にしてあげる ♪
>>735 …それにしても絵上手いっすねー。憧れます。
>>739 ノリノリの所悪いけどsage忘れてるよー? メール欄にsageだからなー
741 :
Fist:2009/12/23(水) 15:49:10 ID:S8KBYUna
>>740 あ、すみません。
…これであっているでしょうか?
742 :
Fist:2009/12/23(水) 15:51:59 ID:S8KBYUna
>>740 あ、すみません。
…これでいいでしょうか?
それ以前に初心者丸出しのコテは何
文字通りの初心者なんだろ
745 :
Fist:2009/12/23(水) 16:57:49 ID:S8KBYUna
迷惑かけます。すいません。
>>743 HNのことは
>>712に書いてるから少し上くらい読もうぜ。
俺は感想なら別にageても良いと思うけどな。住人の多い板じゃないし
スレが上がって読む人とか書き手の目にもとまれば嬉しいし。
age推薦!ってのはどこの板でも少ないから、ちょっと敏感なだけだと思った
んだが俺だけか
あ、別に感想以外はageるなよって意味じゃないんで…
ああもう猫の毛もふもふしてこよう
>>718を読んだら、こんな妄想が沸々と沸いてしまった。
張本丈の靴箱に、手裏剣が刺さっていた。
それだけではなく、淡くも甘い香りの封筒が手裏剣で張本の靴箱に止められていた。
「……ったく」
猫背を気にしながらオオカミの張本は、手裏剣を抜くと封筒の中身を取り出してその場で読み出した。
手裏剣の刃で便箋の端が破れて、はらりと張本の足元に落ちたことも知らずに。
―――佳望学園・初等部の教室では、女子たちに囲まれてぽっぽと身体を熱くしているヤツがいた。
彼の身体はごっついが、極めて従順な性格であり、またすぐに紅くなるという表情に出やすい性格だった。
女子からの人気はいちばんで、しかも男子からの嫉妬を焼くことは一切無い、完璧超人なヤツであった。
「ふー。休み時間はこうしてるのがいちばんニャ」
教室の『人気者の彼』にかじかんだ手を当てて、束の間の5分休みのパラダイス。
ネコのコレッタの白い毛並みは、ほのかに紅く光を反射していたのだった。
「コレッタはずるっこだ!そこがいちばん暖かいのに」
ショートの髪を掻き揚げながら、同じくネコのクロがふとももに吹き抜ける隙間風を気にしていた。
男子が開けっ放しにした、教室の扉から入り込む風がクロを直撃しているのだ。
じりじりとコレッタに近寄り、クロの小さなネコパンチがコレッタの尻尾にヒット。驚いて動いた隙に、
クロはコレッタの陣地を奪い取ることに成功したのだった。
「こずえちゃんもストーブに当らない?」
「う、うん。消しゴムがけが終わったら」
机でせっせとB4サイズの紙に向かっている、オオカミの少女は手を払いながら消しゴムのカスをまとめる。
「できたできた」と満足げに白い紙を両手で持ち上げて、足をピーンと延ばしていうるちに5分休み終了のチャイム。
ストーブに当れなかったことを少し後悔するものの、上手く自分の絵が出来上がったことにほっとしていたのだ。
それにしても、手がかじかむけれど、我慢しながら紙の隅っこに、いっちょ前な自筆のサインを入れる。
「は、り、も、と、こ、ず、えっ。っと」
ただの白い紙から、きれいな美術品に変えてしまう魔法に取り付かれた少女は、自分が魔法をかけた紙を
机に仕舞いこむと、淡くも甘い香りの封筒をこっそり取り出し、七色の色ペンで宛名を素早く書き始めた。
『大せんぱいへ』
「よしっ」とそれぞれの手を握り締める。お昼休みに張本梢は、揺れる尻尾を押さえきれずに廊下を駆けていた。
手には淡くも甘い香りの封筒。そして、胸にはちょっとの勇気が一握り。
短く整えられた髪の毛を揺らし、上履きの音を鳴らす。行き先は、中等部・男子の下駄箱。
「えっと、ま、ま、ま……」
駅員の指差し確認よろしく男子の下駄箱の名札を探し続けると、お目当ての名前を発見する。
名前を見ただけで、ちょっとときめく乙女心は一体何を考えているのか。
あまりの照れくささゆえ、梢はその名前を直視することが出来なかった。
「ま、丸谷……大、せんぱい」
丸谷大とは、中等部のリスの男子。得意科目は美術で、何度か学園の絵画展に出品されたことがあるのだ。
文化祭で展示されていた丸谷の作品を梢が鑑賞していたときのこと。その丸谷から話しかけられたのがきっかけだ。
「ぼくの絵をよく見てるね」とだけ話しかけられたのに、「自信作が展示されてちょっと恥ずかしいな」と照れていただけなのに。
そして、自己紹介した後に丸谷から「きみの書道の展示もいいね。大人みたいなきれいな字だね」と、ちょっと誉められただけなのに。
どれだけ美化されているのか分からないが、丸谷のことがちらほらと、梢の中で駆け巡るようになってしまったのだ。
その日以降、梢は丸谷の姿を見かけるたびに、恋に恋する乙女の恋煩いを重くする。
「大せんぱい、彼女とか居るのかな」
美術を愛する梢にとっては、丸谷は憧れの存在になってもおかしくない。蓋を開けて目にした靴は、お年頃の男子のものとしては
結構小さなサイズで。もっともリスの丸谷にとっては、標準サイズであったのでそういうことは彼自身気にしていない。
目をつぶって封筒をぽんと投げ入れる。ちょっとの勇気が梢の後押しをする。
(うわー!入れちゃった!入れちゃったのよ!)
一瞬の出来事を恥ずかしげに、きょういちばんのクライマックスを終えた梢は、そそくさと中等部・男子の下駄箱から去っていった。
封筒が靴に跳ね返されて靴箱に入らず、風に乗って落っこちてしまったことも知らずに。
「決戦は明日の昼休みよ!がんばれわたし」
―――「きょうこそは、アタシと勝負して決着をつけるんだ!」
玄関には、自慢のマフラーで口元を覆うという独特な巻き方をして、ミニスカートを揺らすイヌの女生徒が一人たたずんでいた。
彼女の右手には、クナイ。左手には、図書室で借りたばかりである、昔の忍者マンガの原作本。
そして、彼女の名は伊賀野ちとせ。ご存知忍者同好会のヒロインでもあり、若きエース。
お昼の休み時間、ちとせは図書室をうろついていた。
日頃から忍びの者の鍛錬として、足音を立てずに移動するという試練を自らに課して、本棚の影から本棚の影へと身を移す。
上履きとソックスを脱いでイヌ独特の肉球が音を消す反面、爪がじゅうたんに引っ掛かる。
これも鍛錬のうちだと自分に言い聞かせていると、案の定爪を引っ掛けて転んでしまった。目の前の足に捕まる。
「きゃ…(きゃあああ!)」
大声は禁物の図書室で、声を出さずに悲鳴を上げたのは、ウサギの風紀委員長・因幡リオであった。
メガネを光らせているリオは、二次元文化の興隆を学習するために、昭和のマンガの棚で物色していたのだ。
最新作もチェックしているものの、やはり文化の始まりを深く知ることで、アニメで使われるネタの起源を知る『温故知新』だ、と
どこかから寄贈された少し厚さが大きくなった本を手に取ると、太い足になにかが掴む感覚が……。
「ちょ、ちょっと!ここは図書室よ?みんなの憩いの場よ?伊賀野さん、静かに出来ないの?」
と、小声で風紀委員長モードに入るリオは、裏返しにした鮮やかなアニメ絵のラノベを隠すのに必死だった。
跪き、謝罪の意を表すちとせは、一刻も早くここから『ドロン』したかったのだ。
と、忘年会で上機嫌な酔っ払いみたいなことを言っている場合ではない。ここに居るのは課長サンではなく委員長。
「ちょっと、同好会の資料を探し……いや、隠密でここに来たんです!」
「そ、そうなの。同好会も予算のやりくりが大変なんじゃない?」
正式な部ではないため、学校からの予算が限られている忍者同好会。
委員会活動で、予算分配のハードボイルドさを知っているリオは、せめて励みにと、ちとせに一冊の忍者マンガを薦めてあげた。
「ああ!これは、『だいじょうぶ!』のセリフの原作本じゃない!こんなところにあったんだ」
「だいじょうぶい?」
そのマンガの存在はネットの知識で知っている。動画サイトでアニメも見ている。でも、原作は読んだことは無い。
平坦な単色の知識が、鮮やかな身のある経験に変わる。勧められるがままに、ちとせはその本を借りていった。
そして、やっとのことで図書室から抜け出したちとせは、借りるはずでなかった本を手にして同好会の先輩・張本丈の姿を探す。
教室、屋上、中庭。どこにも居ない!さすが先輩、天を突く程の身の丈があるというのに煙のように姿を消すとは。
見つからなければ、見つからないほど気が焦る。イヌ族の男子を見れば、全て張本に見えてくる。
そして、玄関を走りぬけようとしたときのこと。一枚の封筒が土間に落ちていることに気付いた。敵の密書か。
いや、違う。それは、淡くも甘い香りの封筒。ちとせが拾い上げると宛名が目に入る。
「うぬぬぬ!何ですって?『丈せんぱいへ』ですって!!!」
その封筒は、さっき初等部の張本梢が丸谷大の靴箱に入れ損ねたものだ。
もちろん、本当は『大せんぱいへ』だ。しかし、子どもっぽい字に重なって、かじかんだ手で書いたものなので、
見ようによっては『大』が『丈』に見える。しかも、気が焦っているちとせには尚更のこと。
丈先輩とは、アタシと勝負するのよ!他のヤツには手を出させない!ましてや、丈先輩を独り占めしようだなんて!
でも、丈先輩って背が高くて、ちょっとクールで、優しくて、楽器も弾けるし、イケメンだし……。
こういう淡い恋文を送られても、何の不思議は無いわよね。きっと、先輩のクラスじゃ女子に囲まれてるんだろうな。
多少、ちとせフィルタが張本を写す鏡に掛かっていることは、この際置いておいて。
ちとせはどこにぶつけていいのか分からない、張本への思いを自分の手裏剣に託すことにした。
手にしている封筒に手裏剣を突き刺すと、慣れたスナップで張本の靴箱向けて投げつけた。
手裏剣が突き刺さる音は、ちとせには自分の淡い想いに開いた、小さな風穴の音のように聞こえた。
「丈先輩のバーカ」
踵を返すとミニスカートが浮かぶ。休み時間の残りが少なくなるのを気にしながら、ちとせはその場を風のように去った頃、
当の張本丈は、図書室の別の棚でひっそりと自分が所属するバンド『ルーズビート』で使
う楽譜を物色していたのだった。
放課後。特に用事の無い張本は、そそくさと玄関に向かっていた。
そして、目にしたものは、淡くも甘い香りの封筒が手裏剣で自分の下駄箱に止められている姿だった。
「ちとせのヤツの仕業かよ」
手裏剣ということは、きっと忍者同好会の者の仕事だろう。こんなことするヤツ、他にいるもんか。
そして、張本を執拗に追い回すヤツと言えば、おのずとちとせのマフラーと顔が浮かんだのだった。
手裏剣が深く刺さり封筒が取れない。封筒を引っ張ると、何とか取れた。少し便箋が破れた音がしたけれど張本は気付かない。
封筒の中の便箋を開く。手裏剣の刃で破れた便箋の端っこが切れて、はらりと張本の足元に落ちた。
自慢の前髪を掻き揚げ、張本は文面をチラ見。
『あなたの大きなしっぽ。あなたの神々しい瞳。あなたの芸術的な腕裁き。あなたの湖のような広い心。
わたしは、あなたのことをいつも遠くから見ていました。楽器を奏でるような美しい姿に心奪われました。
もし、宜しければ、明日のお昼休み『校舎うらの銀杏』の側に来て頂けませんでしょうか。わたしは、せんぱいのこと……』
のところで切れていた。
「あいかわらず、へったくそだな。ちとせは」
張本は、その封筒をカバンに仕舞い込むと、面倒くさそうに靴を履いて家路に着いた。
―――夜。張本家。
どうやら張本の妹の様子がおかしい。
張本と年が離れているので、お互い干渉などはしないが、どうも妹の梢が落ち着かない。
鏡の前で何度も自分の姿を映しては、あれやこれやと自分でダメ出しをしているのである。
「梢、なんか隠しごとでもしたのか?親父に知られたら知らんぞ」
「わたしは知んないよ。丈兄ちゃんだって、なんだかいつもと違うよ」
確かに、あんな甘い手紙を受け取れば、お年頃の男子は誰だって落ち着かない。
しかも、相手は同好会の後輩だ。いつもは「勝負」だの「アタシを無視するとはいい度胸」だの言っているが、
やはりお年頃の女の子だった。と、張本は何度もその文面を繰り返して読んでいた。見慣れた文字とは気付かずに。
甘い手紙の文面を忘れる為に、ベースを鳴らしながら吹っ切ることにした。
ベースの音がうるさいと、梢が張本の部屋に入ってくる。そして、ついでなのか「丈兄ちゃん、借りてたから返しとくね」と一言。
どうやら梢は、張本の机から国語辞典を勝手に持っていっていたらしい。張本は(梢の書いた)便箋を引き出しに仕舞う。
「勝手に持ってくなよ。ったく」
「あ!丈兄ちゃん、その隠した紙見せて!!」
「見せない!」
余計なことはしないで欲しい。ベースを片付けながら、「そう言えば、きょうは現国の宿題が課されていたっけ」と思い出す。
「いかんいかん。おれは学生だぞ」
現国の宿題をしようと張本は、辞書をはらりとページを捲った。張本には気付かれなかったが、
『銀杏』という見出しに鉛筆で印が付けられていた。その頃、梢はネットでおまじないの検索をしているのであった。
―――翌日の昼休みの時間になると、校舎裏の銀杏の側に初等部のオオカミの少女がたたずんでいた。
校舎裏なので人影はなく、彼女と一緒に居たのは冷たい冬の風だけ。
「大せんぱい、あの手紙読んでくれたかな」
お昼ごはんを食べた後、コレッタやクロの誘いもすっ飛ばしてここに来たんだ。
だから、きっと大せんぱいも来てくれるはず。と、オトナから見ればすこし痛々しい思いを手にして、
少女は来るはずの無い先輩を待ち続ける。銀杏の木もいつものように、無口であった。
「なんで梢があんなところに居るんだ」
高等部のオオカミの男子は、のそのそと校舎裏の銀杏の木に近づこうとするが、思いも寄らぬ先客で足がためらっている。
校舎の影から伺うが、どう見ても毎日会っているオオカミの少女が約束の場所に居るではないか。
きのう、手紙を読みました。きょう、この時間、ここに来てくださいと女の子の字で書かれていました。
さあ、あなたなら如何しますか。そりゃ、健全な男子諸君なら来るに決まっているでしょう。ただ、身内が近くに居たら別ですが。
そんな稀有な例、どうしてこんなときに起こるんだ。オオカミの男子は、少女が立ち去るのを待っていたが、
なかなかお望み通りの行動を取ってくれないのは、家の中だけではなかったのだ。何故なら彼女は妹だから。
ホント、余計なことはしないで欲しい。と、張本はうんざりと頭を垂れる。
張本の身体は遠くからでも目立つくらい大きい。無論、この場所でも例外ではなかった。
ひっそりと妹の動向を探っていたのにも関わらず、あっさりと妹から見つけられてしまった。
「おい!そこの不審者」
足元の小石を拾うと、張本の尻尾に向かって梢は投げつける。的は大きいが当てるのは難しい。
小石はねえよ。と、張本は梢の元に近づいて憤慨した。
「梢は何してるんだよ」
「丈兄ちゃんだって!!」
(子どもだからって舐められないように、大人っぽく、辞書で漢字を調べながら書いたんだ。大せんぱいのハートはわたしが独り占めよ)
しかし、封筒に宛名を書き忘れていたのは誤算だった。ここまで完璧に書いたもの、子どもっぽい字が尻尾を見せた。
うまく隠れたつもりのオオカミは、リスをまだかまだかと待ちぼうけ。だけど尻尾が見えている。
それでも彼女は気付かない。それでも彼女は待ち続け、ウサギが見つけてお慰み。
―――その頃、化学準備室前の廊下にて。
リオは廊下で不審な動きをするちとせを発見して、ぴょんと飛びついてきた。
「ちとせちゃん!きのう借りた本、面白かった?」
「あ、ああ。うん」
肯定だか否定だか分からない言葉で返すものだから、勝手にリオは自分のいいように取ってしまう。
「でしょ!でしょ!最近はやりの作品もいいんだけど、やっぱりこの国のマンガ文化を語るには、やっぱりわたしたちが生まれる前の
礎となった作品もしっかり読まなきゃ、って思うんだよねえ!ちとせちゃんもこれを読破したら、『若頭』を……」
しかし、リオが「最近はやり」と言っている時点でちとせは、忍者の如く姿を眩ませていた。
その代わりかどうかは別として、やって来たのは、リスの丸谷大であった。大きな尻尾が揺れている。
手にはスケッチブックとコンテ。暖かい化学準備室でデッサンでもしようかとやって来たのだ。
一人で鼻息荒くするリオを無視して準備室に入ると、置いていかないでとリオが続く。
やっぱり暖かい、ここは学園のオアシスだ。この部屋の主・跳月も居ないしイスも拝借できるぞと、リオはどっかと座り込む。
丸谷は丸イスに腰掛けると、せっせとリオのデッサンを始めた。それに気付いたのか、わざとリオはイスから離れ、窓から外を眺める。
「ちょ、ちょっと!折角描いてるのに!!」
「あんたに描かれてたまるもんかっ。悔しかったら、あの銀杏の木に登って描きやがれ。丸谷のバーカ。
あれ、張本じゃん。あんなところで何してるんだろうね。あ。あのロリっ娘、かわいい。白先生に目を付けられないようにね!」
リオが寄りかかる窓枠には、校舎裏の銀杏の木が、ときと共に変わる空を背景に風景画のように描かれていた。
丸谷がリオと並んで窓から外を覗こうと近づくと、リオは窓枠で身体を支えながら、両方の脚をそろえて丸谷を蹴飛ばした。
リオに見つめられながら銀杏の木の下では、張本丈と張本梢が仲良く並んでいた。
校舎の影から、身を潜めて二人を覗いているのは、言うまでもなくちとせであった。
「せんぱい、来てくれないのかなぁ」
「人騒がせな後輩だなぁ」
お互い、現れるはずも無い待ち人を昼休みが終わるまで待ち続けていた。
おしまい。
気付いたら今年残るも1週間!それにしても、急に寒くなりやがって……。
投下はおしまい。
756 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/24(木) 16:34:23 ID:MtIPR9mj
おぉ、この勘違いは巧いな
梢が小学生らしく純粋でかわいい
梢って初登場だっけ?
おお、いのりんの腹がまた凹んできておる
そういう季節がやってきたのか
梢たそカワユス
忍者犬カッコヨス
シロサンタ……あんたは結婚しなさいw
言われてみればライダーのみ肉食!
見るからに草食系男子なのになw
ヒーロー好きでオタクっぽいが、事実、強いってのも意外
性格と能力が噛み合わない、そんな所も好きだぜ鎌田
そういや体重100kgのカマキリはマンモスも倒すとか誰かが言ってたなw
規制中とか
う、馬にも春が?!
なん、だと・・・
>>756 イラスト中に説明が描かれているところを見ると、創発・避難所の両方で規制されちゃった説が濃厚
うpろだのコメントに書き込んでみるね
うpろだのコメントの付け方がよくわかんない…
ろだにアップすると、その絵のコメントの横に 0 Res って表示がある。
そこをクリックすると「新しいコメント入力」てのが開くから
それじゃないのか?
試した事無いからどうなるかわからんが……
避難所のレス代行スレに別の代行サービスのお知らせができてたから
多分今後はそっちを利用できるんじゃないかな?
おおおすげー初等部中等部大集合だ
みんなかわいいいい
顔がにやけてくるぜ
776 :
Fist:2009/12/27(日) 23:52:29 ID:W7rMrK0j
仲良しの後ろに…。
あの子を止めるのは苦労するだろうな(笑
そいつの尻尾には毒があああ!
とか叫んでそうw
さあ冬コミの開戦だ…!俺は行ってないからリオの姿は確認できないけどな!
来年は寅年か
猫年が無いのはこのスレ的に残念だわー
海外では猫年あるよ。
山羊年とか豚年もあった気がする
闇夜を切り裂く騎士のように、鋼鉄の馬に乗り街を駆ける。一筋のライトの光は誇り高き剣のよう。
巨大なるエンジンの爆音は彼の溢れんばかりの血気のように。漆黒の夜に走る愛車は、いつもより機嫌がいいようだ。
「この街も久しぶりだよな」
ヘルメット越しに聞こえる街の寝息が懐かしく、この街に生まれたことに感謝する一人のさすらいネコ。
彼の名は『浅川・シャルヒャー・トランジット』。カギ尾のネコは、闇夜の紳士となる。
誰もが眠る街を一人走りぬける爽快感。星空を支配した気分がするのか、浅川のスロットルを回す手は幾ばくか調子が良い。
「夜はネコのもの」だとかつて誰かが言っていた。あながちそれは間違っていないのだと、浅川は通り抜ける風で感じる。
昼間は愛用の一眼レフ片手に、街を写し、木を写し、雲を写し。写真家の命を燃やし続けていた。
夜は相棒をV-MAXに変えて、リッター級のエンジンの荒馬を乗りこなすように回して風を切る。
浅川はいつも思う。写真は何もかも覚えているけど、忘れることはできない頑固者だと。
「そういえば、どの位経つのかな……。あれから」
小さい頃から見慣れた交差点。幼い頃は昼間の姿しか見たことが無いが、大人になってたびたび夜の顔を見ることになる。
しかし、どんな顔を見せようが、浅川には昼間の顔しか覚えていない。信号が青く灯り、愛車V-MAXを夜の街に滑らせるが、
ふと思い出したように、いきなりブレーキランプを灯しながら道路わきに相棒を止める。
「この先だったよな……。近寄るのは、やめておこう」
ハザードを光らせて、車体を傾けながらUターンをする態勢に入るがその前に一息。騎士にも休息は必要。ヘルメットのシールドを上げる。
袈裟掛けしていたカバンから、ペットボトルを取り出して蓋を開けると、飛び出したコーラが浅川の顔に直撃した。
「お茶と間違えた……」
そう言えば、あのときから何年経ったのだろう。
忘れることも、忘れぬことも出来ないときのこと。
『お兄ちゃん、フィルム買ってきてあげる』
浅川の街は、嫌に物覚えが良い。
―――次の日の朝。街はいつの間にか明るく広がり、人々がざわわと動き出す。
いつものように変わりなく、これからも変わりなく、ただ一日を刻んでゆくのみ。
雪が降るほどじゃないけど、冷たい空気が登校してゆく佳望学園の生徒たちの脚をこわばらせる。
それに負けじと女生徒たちの明るい声が、街の寒さを吹き飛ばす。いくら毛並みに覆われているとは言え、寒いものは寒い。
「リオ、ハルカー。おっはよう!トラまん食べた?」
短いスカートで脚を寒さにさらしながら、イヌのモエが同級生らにコンビニの新作まんじゅうの話題をする。
トラの顔をしたかわいらしいまんじゅうは、女生徒たちの間でも話題を呼ぶコンビニの人気者なのだ。
ネコのハルカはセミロングの髪を揺らしながら、朝に似合う爽やかな笑顔で答えた。
「まだなんだよね。今度買ってみようかな。リオは?」
「ううん。ま、まだだよ。そう、あれ、あれはおいしそうだよね!」
ウサギのリオは『トラまん』の存在自体を知らなかったのだが「ここで知らないっていう答えはねえよ」と、
知ったかぶりのスマイル0円を二人にご提供。みんなの風紀委員長はみんなの共有財産なのだから。
ネコのハルカは、モエからのどをさすられて、ごろごろごろとのどを鳴らしながら髪飾りのリボンを揺らし、
通学の道に女子高生らしい甘い香りを振りまいていた。リオも負けじとショートの髪を描き上げるが、悲しいかな誰もなびかない。
「ハルカって、お母さんの香りがする。くんくん」
「やだなあ、それ。モエったら」
今朝もハルカは、味噌汁を作ってきた。お日様が昇る前からねぎを刻み、出汁をとり、自分のお弁当を用意してきたのだ。
モエの頭には、ハルカの割烹姿が浮かんでいるのだろう。リオも「あなた、ご飯よ」とハルカが言っているのだろう、と罪の無い妄想。
朝食の香りとネコは、とても似合う。
学園へ続く坂の下のコンビニが彼女らの視界に入ると、思い出したかのようにモエがトラまん談義を再燃させた。
「この前、南6条のコンビニでトラまん買ったらさあ、店員がむかつくんだよっ。だって、トラの顔をむぎゅうっだよ」
「モエもタスクくんの顔をむぎゅうってしてるでしょ?」
「ハルカっ!言ったね!むぎゅうしてやる!」
さらにモエはハルカののどを人差し指で撫で続けると、ハルカはモエの肩に頭をぶつけてきた。
いたずらにリオはハルカの尻尾を掴もうとすると、尻尾だけが生きているかのごとく、すっとそっぽに向けた。
それでもハルカは笑顔を絶やさない、みんなのオカン。……ってハルカが聞いたら怒るだろうか。
休み知らずである坂の下のコンビニは、ご褒美を差し上げたいくらい働き者だ。
佳望学園に通うものなら、誰もがお世話になっている小さなコンビニは、今朝も生徒たちで満員御礼。
そこに寄り道する生徒もいれば、真っ直ぐ学校へ向かう者も居る。ネコの帆崎先生がチョコまんを頬張りながら、
コンビニ前に立っていた。メガネを光らせたリオは、風紀委員長モード半分、羨ましい半分、帆崎に難くせを付け出した。
「ざ、ザッキー?あなたって人は!生活指導の誇りを忘れたのですか!」
「まあまあ、そうかっかするなよ、因幡。ルルが風邪引いてさ」
すきっ腹の帆崎は背中を丸めながら、残りのチョコまんを口にした。生涯の相方の体調を案じながら、ここで腹ごしらえ。
せめて『生活指導』の腕章を外しているときぐらいは、大目に見てくれよ。と帆崎は真面目のまー子をなだめる。
「ルルさん風邪なんですね。スライスした大根をハチミツに浸した蜜をお湯でとかして飲むと、のどにとってもいいんですよ」
「さすが『オカン』だ!ハルカは『オカン』だ!ヤ○ー知恵袋っ!」
モエの誉めているのかどうか分からない言葉に、ハルカはちょっぴり笑っていた。
「クロ!待つニャ!クロったら、朝から張り切るんじゃないニャ!!」
「やだね。コレッタののーろまっ。もひとつおまけに、のーろまっ!!」
遠くから小さな風が走りぬける。初等部のクロ、ミケ、コレッタの子ネコたちがランドセルを揺らしながら、学園へと向かう生徒たちの間を縫う。
生徒の尻尾を踏んづけそうになりながら、コレッタは自慢の髪をなびかせて駆け抜ける。
「コレッタ!危ないよ」
風に揺れるスカートを押さえながら、リオは子ネコたちに注意を促すと、その声に反応したコレッタは道の途中で立ち止まる。
不思議そうな顔をしながらちょこんと立つ姿に、リオは思わず頭を抱える一方、朝から眼福眼福と顔をにやけさせていた。
「コレッタ!後ろ、後ろっ!」
大きな影が近づいた。乗用車が往来を走ってくる。四本の脚の乗り物は、道に立ち尽くすコレッタに近づきクラクションを鳴らす。
イノシシのように一直線に、ゾウのようにコレッタには大きく、そして飢えしケモノのように心は持たず乗用車は少女に近づく。
運転手も気付いて精一杯の力で乗り物を止めようとしているが、間に合うかどうか。南無三、少女との距離はもはや目の前。
「……!?」
アスファルトが軋む音。コンビニから飛び出す生徒たち。何があったか分からないコレッタ。
そして、コレッタに近づく一人のネコの少女。その名はハルカ。
ハルカはカバンを放り投げると、リボンを揺らしてコレッタの方へ駆けつけた。短距離走はお手の物。
脚で地面を蹴り乗用車と短期決戦を挑む。ハルカにははっきりとコレッタに迫り来る車の姿が目に焼きついていた。
「コレッタちゃん!!わたしに捕まって!」
「ニャ?」
コレッタの両脇を抱え上げ、今まで感じたことの無い恐怖と背中合わせになりながら、両脚で天に向かって飛び上がる。
朝の空気はハルカとコレッタの味方をしてくれるだろうか。ひんやりと背中が心なしか薄ら寒い。
弾みで片方のローファーが空を舞う。スカートがはためく。髪からは女子高生らしい甘い香り。
「ハルカーーーーーーーっ」
ハルカの名前がコレッタに届いていたときには、ネコの少女はしりもちを付いて地面に横たわっていた。
両脇を抱えられていたコレッタは、地面に伏す前にするりと抜けて恩人に集まるリオとモエの姿を見ながら立ち尽くす。
「ハルカ?ハルカぁぁぁ!!うわーん」
泣き声にも似たモエの悲鳴。リオは1を数える間もなく、ハルカの側に駆けて行った。
「ニャ……。うわーーん」
「コレッタ……。怪我は無いかにゃ?」
「クロのバカー。あーん!おかあさーん」
『おかあさん』と呼ばれたハルカの腕に捕まり、泣きじゃくるコレッタにハンカチを渡そうとクロとミケがやってきた。
慌てて飛び出した乗用車の運転手も、ひたすら謝る。怪我がなくて幸いだと、帆崎も胸を撫で下ろす。
地面にへたり込んだハルカに脱げたローファーを履かせながら、モエはいまだ止まぬ胸の鼓動を抑えていた。
「……ふぉ?」
足首をくるりと回す。
「……はぅ?」
紺のハイソをたくし上げる。
「……ひぃ?」
尻尾の感触を確かめる。
「ハルカ、どうしたの」
「……生きてる!わたし生きてる!!生きてるんだあ!!いえーい!やっほー」
ハルカのカバンを持っていたリオは、彼女の言葉にいささか首をかしげながら、少しくすりと笑った。
モエは彼女ののどをさすると、ごろごろとさっきと同じようにのどを鳴らしていた。
「ここ地面だよね?立ってるんだよね?生きてるんだよね?うわーい、神さまに感謝感激!」
「ヘンなの。いつものハルカと別人みたい。それはそうと、ザッキー!チョコまん奢ってよ!」
「奢るかよ」
一日が始まる。
―――無事にコレッタが学園に着き、その日の正午ちょっと前のこと。佳望中町の杉本オートには、浅川の姿があった。
一応『決めた』格好で浅川は、乱雑にパーツが詰まれた店先の土間で、気分を表してかカギ尾をへたり込ませていた。
「ミナさんは、ちょっと出かけていまして」
事務を務めるネコの時計川ミミは、どこに出ても恥ずかしく無い丁寧なオトナのお辞儀で浅川の苦労をねぎらった。
魂を半分はみ出しながら浅川は、「そうですか」と答えるしかない。浅川の目的は、浅川の顔に出ている。
「ところで……いつごろ戻られますかね」
「さあ、わかりませんね。『佳望学園に行きます』と申しておりましたが」
「それだっ!」
二つ返事で浅川は、店を飛び出す。愛車に跨る。行き先ももちろん佳望学園。
ヘルメットを被ると、エンジンを掛けて爆音を響き渡せていた。相棒の声は、浅川の代弁か。
「待ってろよお!杉本さぁーん!」
排気ガスとエンジン音を残して、浅川は杉本オートから走り去る。残されたミミは、残りの伝票整理のことで頭が一杯だった。
さあ、これからは電卓と帳簿との格闘だ。わたしはきまぐれネコだから、やる気のあるときにやっちゃうぞ。
―――ときは少し戻り。
佳望学園・高等部の教室では、朝のコレッタとハルカの件で持ちきりだった。
一応ことがあったらいけないと、二人は保健室に寄って白先生に診てもらったのだが、心配ないとのことだった。
大事を取って、1時間目は保健室で過ごしていると、授業の終わりと同時にモエとリオが、涙を浮かべてやって来た。
「無事でよかったあ……。ね、モエ」
「わたし超心配したんだから!」
マグカップのコーヒーを味わいながら、自慢のリボンを揺らして彼女は笑っていた。
ふうふうと、コーヒーを冷まそうと口を尖らす。
「へへーん。地に足が付くって楽しいっ」
「へんニャの。おかしいニャ」
同じく熱いものは苦手なのか、隣でコレッタは尻尾をゆらゆらと揺らしながら、コーヒーを冷ましていた。
確かに佳望学園の高等部は、いつもと比べて少しおかしかった。
さあ、間違え探しです。どこが違っているでしょう。分かれば100万差し上げます。
でも佳望学園の生徒なら、簡単に100万ぶん取れるだろう。
「ハルカったら、いつもよりハイテンション系?」
「ハルカさあ。いつものオカン振りはどうしたの?ちょ、ちょっと!スカートが捲れてるって!ぱんつだから、恥ずかし……」
ハルカと呼ばれた少女は、にこにこと短いスカートをはためかせながら教室を駆け巡る。
制服を初めて着た新入生のように廊下の大鏡の前でポーズを取ってみせたり、そしてクラスメイトに抱きついていた。
確かにおかしい。ハルカはそんな子じゃない、ってことは、クラスメイトは重々承知。
みんなのオカンのしっかりハルカはどこに行った。これじゃ、はかない女子高生を謳歌する、フツーの女の子。
「フツーの女子高生って、楽しい!あはははは!!」
モエは教室に振りまかれた彼女の髪の香りをくんくんとかいで楽しんでいた。甘い香りは、きょうのハルカと違って変わらない。
―――お昼休み。各々学食に行く者、購買部に行く者、机を合わせてお弁当を広げる者。
「これはウチのかわいい弟が作ってきた、愛弟弁当なのだ」
「タスクくんすごいね」
教室の片隅でモエは、色とりどりのお弁当箱を友人二人に自慢する。どうやらモエは、弟のタスクと
お弁当の作りっこをしてきたらしい。お弁当の中身はそれぞれナイショ。蓋を開けてからのお楽しみ。
「タスクくんって、お姉ちゃん大好きだもんね。ウチのマオもタスクくんを見習って欲しいなあ」
モエの隣の席でサンドウィッチを包んだラップを広げながら、リオは脚をバタつかせていた。
さて、モエが弁当箱の蓋を開けると、真っ白な白米が敷き詰められた上に、見ているだけでつばきが溢れる梅干が真ん中に乗っているだけ。
モエの頭上には白い湯気がゆらゆらと揺れていた。
モエの向かいの席では、白い湯気がゆらゆらと魔法瓶の口から昇っているお弁当。
おかずの筑前煮と焼き鮭切り身が、モエのご飯とよく似合う。しかし、そのおかずを初めて見るような顔をして……。
「ハルカの特製味噌汁だあ!いつもありがとう!」
「モエには、あげないよ!」
「ふふーんだ。リオも欲しいくせに!」
ナイスなボケと突っ込みという、才能の無駄遣いをするモエとリオ。そして、お弁当の持ち主はと言うと。
「へえ!お味噌汁だなんて、わたし……久っさし振りだなあ!」
リオは目を丸くして、隣のネコ少女を覗き込む。だって、だって?
「ハルカ。いつもお味噌汁って持ってきてない?」
「そうなの?そうなんだ。お母さんの味噌汁……飲みたいな。うん……」
「わー!ハルカ!!暗くならないで!!」
カタンと魔法瓶が机の上に立つ音が、彼女の心を余計に暗くする。
リオは彼女の目の前で手を振りながら、味噌汁の湯気でメガネを曇らせて叫んだ。
「ハルカー!返って来いー!ここにおいで!!」
―――「んー?まだ来てないよ?」
「ガビーン!!不肖・浅川っ、張り切りすぎました!」
新作の『じゃがりこ』てりやきチキンを片手に職員室の入り口でサン先生は、大げさに仰け反る浅川を出迎えていた。
ぼりぼりと音を立てて、サン先生はまた一つ『じゃがりこ』を口に運ぶと同時に尻尾を大きく振っていた。
はるばるここにやって来たのに、杉本さんが居ない!浅川がここにやって来た理由が一つ潰えた。
サン先生の前で跪いた浅川は、魂が抜けた人形のように呟いていた。
「先生、杉本さんとデートがしたいです……」
「試合終了だから、あきらめな」
「ザッキー!なんてことを!」
毛を逆立てるサン先生の背後に腕組みして立つ帆崎の言葉は「お菓子をくれないと、イタズラしちゃうぞ」とやって来た子どもたちに、
「やれるもんならイタズラしてみろ。クソガキ」と言うことと同じぐらい、浅川には残酷に聞こえたことだろう。
浅川の口から白い固まりが抜け出していたのをサン先生は目撃したかどうかは分からないが、もはや浅川はどうクリックしても再起不能。
どうしてそんな血も涙も無いことを言ったのか、じゃがりこをかじりながらサン先生は帆崎に問い詰める。
「こうでもしないと、コイツ吹っ切れないだろうしな。昔からコイツはそうだったんだよ」
「ふーん。ザッキーから噂に聞いた通りの人だったね。浅川くんは」
二人の間に軽トラックのエンジン音が割り込む。この学園に似つかわしく無い車の音。
突如、浅川のネコミミが動く。カギ尾が跳ねる。そして、再起動。
「このエンジンの音は……!すぎもとさぁーーーん!」
「こ、こらー!廊下を走るんじゃないっ!浅川!」
こめかみに青筋こしらえた帆崎は、生活指導担当のスイッチをONに切り替えて、廊下一杯に怒声を上げた。
―――とき同じくして、こめかみに青筋こしらえたリオは、風紀委員のスイッチをONに切り替えて、廊下一杯に怒声を上げた。
ランチの時間を終えた学園の昼休み。静かな図書室前の廊下の出来事だった。
「こ、こらー!美弥家さん!廊下で剣を振り回すんじゃないっ!」
「ああ!ぼくの封龍剣が」
キジトラネコの美弥家加奈は、昼休みに一人でモンハンごっこをしている所をリオに見つかり、愛用の装備品を取り上げられてしまった。
美弥家加奈は、とあるゲームに夢中になりすぎたあまり、実際にゲームを体感しようと装備品をこしらえ上げて、
リザードマンの高等部生徒・利里をリオレウスと見誤り追い回してしまった経験がある。
巨大な剣を振り回す、と言うより巨大な剣に振り回される加奈であった。
場所が図書室の前の廊下と言うこともあり、リオは借りたラノベを隠しながら「ジャッジメントですのっ」と大鉈を振る。
真面目のまー子は「風紀以前の問題だ!」と、巨大なスイカバーを加奈からひったくるとその後の所在に少し困ってしまった。
こんな巨大な物どうするんだ。注意した建前「ごめんね。返してあげる」なんて言えるもんか。
「おやおや。因幡さんも美弥家さんも仲良しさんね」
図書室の扉が開くと、ふわりとリボンで結んだ髪を揺らして司書の織田理恵がやって来た。
文学少女をオトナにしたような織田は、人差し指を口元に当てながら長いスカートを揺らす。
二人の話をゆっくり聞くと、隣のお姉さんの顔で「帆崎先生に見つかったら大変ね」と笑って加奈の封龍剣を預かった。
「ご、ごめんなさいにゃ」
「放課後こっそり取りにいらっしゃい」
天使のような織田の慈悲に感謝しながら、加奈とリオは深々と織田にお辞儀する。
やってくるにはまだ早い春風吹かす司書は、本を愛する少女のような笑顔を見せた。
―――その頃、学園の中庭では浅川が、思春期を迎えた少年のようなにやけ顔をしていた。
「杉本さん!」
「おや、いつぞやの写真家さん?」
軽トラックからひょい尻尾を上げて降り立った、白いネコの女性・杉本ミナ。
短い金色の髪は彼女の突き抜けるような明るさにも似ていた。赤いダウンベストが寒空に眩しい。
学園の土はミナのブーツの音を響かせながら、彼女の来校を歓迎していたのだろう。
この街で開業しているバイク屋の娘であるミナは、以前に浅川の愛車であるV-MAXを診ていた。
そして、心奪われた浅川はミナに自分の思いのたけを伝えて見事玉砕していたのだが、ここで朽ち果てるような浅川ではない。
「あの、あの、あの……。杉本さん」
「浅川くんだっけ?相棒は元気かな?」
「そりゃもう!夜を昼にするぐらい駆け回っていますよ」
まるで宮殿に戻るお姫さまを迎えるかのごとく、執事・浅川はミナに片膝を付いていた。
「きょう来たのはね、サンに用事があったんだけど」
「この浅川めが、エスコートしますよ!」
二人が校舎への入り口に向かうと、奥から季節外れな夏の太陽のような声が聞こえてきた。
足音が言葉にしなくても、声の主の気持ちを語っている。
「わーい!学校の中庭だあ。やっほー」
「ハルカってば!」
リオが駆けながら「廊下を走っちゃいけません!」と、ネコの少女の尻尾を追う。
その後ろに続いて、台車のキャスターの音がついて来る。おまけに少年のような声もしているが、よくよく見ると生徒ではない。
「も、もう!サン先生も廊下で台車に乗っちゃいけません!!」
あたふたと下駄箱でローファーに履き替えながら、リオは数学教師を叱責していると、隣のネコの少女が迷っているのを見つけた。
まるで自分の名前を忘れたよう。「何かがおかしい」とリオは、彼女の靴の入っている場所を指差してやる。
「わたし、『ハルカ』っていうんだよね。えっとお……あったあった!」
「????」
「いや、何でもないの。気にしないで……ね。わーい、高校生らしいなっ。この靴」
ポンと土間に二人のローファーを置くと、揃って中庭に駆け出した。
玄関からの大きな音に、二人は振り向く。玄関の段に気付かず、サン先生が台車に乗ったまま突っ込んでコケたのだ。
しりもちをついたサン先生は、照れ笑いをするしかなかった。
中庭では、浅川とミナが立ち話をしていた。リオに気付いた浅川は、いつものように軽く話しかける。
「おや、きみたちは高等部の生徒だよね」
「は、はい。あなたは」
「おお!良くぞ聞いてくれたっ。本と美しき風景の為なら地の果てまで追い駆けて、自然をこよなく愛する
さすらいネコの写真家・浅川・シャルヒャー・トランジット!これからもごひいきにっ」
ミナは浅川のどこで入れ知恵されたのか分からない自己紹介に、あっけに取られるリオを見て笑っていた。
そして、リオは自分の腕に捕まっている同級生が、浅川の目を見つめていることに気付いた。
「ハルカ。知ってる人?」
「……」
甘い女の子の香りがリオの鼻腔に届く。
後からやって来たサン先生が、ミナの顔を見るなり彼女のブーツを軽く蹴ったが、お返しにミナから頭を叩かれた。
「もしかして、サン先生の彼女さん?だったら、だったら……ちょ」
「だったらいいのにね」
ミナは悔しがるサン先生の手を軽くあしらいながら、遠い空を見上げて答えた。
「おや。杉本さんですか?」
サン先生がビクっと固まる。やましいことは何も無い、だけどこの声で背筋が凍るのはパブロフの犬状態だからか。
言うまでも無い。英語教師・英美王女史が校舎の玄関からやって来たのだ。
「お久しぶりですね。英先生」
「きょうは何かご用事ですか?」
微笑みながら英先生は、ミナの来校を歓迎していたが、ここに車を止められると少し困るので、ミナに軽トラを移動するように申し立てた。
軽トラに飛び乗り、エンジンを掛けて排ガスをふかす。少し前に車を走しらせる。
「きゃあああ!!お兄ちゃん!!怖い!!」
「お兄ちゃんって誰?ハルカ?」
ネコの少女は、エンジンの音と軽トラが向かって走ってくるのを見て、悲鳴を上げて膝を付いた。
住処を奪われ、ダンボールの箱の中でうずくまる捨てネコのように彼女は、小さくなっていた。
「ご、ごめんね!!」
「だ、大丈夫です!は、ふぁあ……」
ミナは軽トラから飛び降りて、うずくまる少女を介抱していたが、浅川にはどうしても引っ掛かるところがあった。
確か、自分の目を見ながら「お兄ちゃん!」と叫んでいたこと。試しに指でカメラのフレームを作って覗いてみると、
思惑通り『ハルカ』と呼ばれたネコの少女が、気丈にもスカートを摘んでポーズを取っていた。
「やっぱりお兄ちゃんだ!やっほー!すんごい久しぶりだよね!モモ、お兄ちゃんがこの街に帰ってくるって、
天上界の偉い人から聞いたからやって来たんだよっ。誉めて誉めて!!ね、お兄ちゃん」
「そうか……。モモなのか?」
「そうだよっ」
ハルカなのだかモモなのだか、解いた毛糸のように頭を絡ませていたリオは、足で大きく地面を蹴った。
モモと名乗った『ハルカ』は、浅川の胸に飛び込むとくんくんと匂いをかいでいた。
「うん、間違いない。暗室の匂いがするもん」
「……モモだよな。そのセリフいっつも言っていた」
「きょうは『ハルカちゃん』をお借りして、地上界での遣り残しをしにやって来ました」
浅川と『モモ』と名乗る『ハルカ』のお邪魔をしちゃいけないと、サン先生とミナは仲良くケンカしながら校舎に消えて行った。
リオは『モモ』と言う人物に興味を持った、と言うより持たざるをえなかった。
とにかく『お兄ちゃん』だの『ハルカをお借りしました』だの、リオの理解を超えているのだから無理は無い。
「あの、浅川さん。この子、ハルカって言うんですけど」
「うん」
空の雲が幾つか流れた頃、休み時間終了5分前のチャイムが鳴る。
そろそろ教室に戻りなさいと英先生に促されて、リオと『モモ』と呼ばれたハルカは玄関に向かう。
「お兄ちゃん、また後でね!折角帰って来たんだから、おもてなししなさいよねー」
「ああ……。って、杉本さんがいないっ!」
中庭に残された浅川は、長い足を伸ばしてミナの姿を探していた。
クラスに戻る廊下の途中、リオが余り口にしたことが無い言葉をつらつらとはき出す。
「ハルカが『モモ』だの『天上界』だのって……」
並んで歩くモモは、リオの顔を覗き込むと身の上を話し始めた。
表情は明るいが、けっして明るい話ではないことをモモの胸に抱いきながら。
「実は、小さい頃なんですが、わたしは死んでしまっているんです。生きていれば、ちょうどハルカちゃんぐらいかな。
そう。街で車の事故に遭ってしまってね。だから、車の音を聞いたりすると……。うん。ごめんなさい。
天上界の許しを得て、地上界に戻ろうと思ったら、『同じ種族』で『同じ年頃・性別』の子が必要って神さまから言われてね、
いろいろ調べた結果、白羽の矢が当ったのが、そうなんです。ハルカちゃんだったわけなんです」
「そうなんだ。なんだかアニメみたいなお話だよね」
「そう思うでしょうね。ちゃんとした現実なんですよ?リオちゃん、わかります?神さまって時々おかしなイタズラをするってことを。
でも、わたしもこの佳望学園に通ってみたかったし、この制服も着てみたかったからお誂えですよね?」
今、リオと話している子は、この地上には居ない。なかなか理解できることではないが、リオは理解しているつもりだった。
何故なら、現実に起こっている出来事なのだから。いくら物事が1か0か、白か黒か、あるか無いかで決められていても、
それを上回る答えがこの世に存在すると言うこと。理屈とは、人々が勝手に決めた決まりごとだってことを。モモの瞳が全てを語る。
「遣り残したことをやったらハルカちゃんに返すって、神さまと約束してるから……」
「その遣り残したことって?」
「どうしても読んでみたい本の続きがあるんです」
二人の足音が止まり、静けさが廊下に広がる。
わたしだって、力になることがあれば、なんでもするつもりだよ。リオはぐっと手を握る。
「超ムカつく!タスクの教室に抗議に行ったんだけど、タスクったら逃げやがって!!」
手抜き日の丸弁当の件で収まりの付かないモエが、二人の背中をポンと叩いた。
つづく。
規制が来なければ、今年中に後半は投下します。
さて、寝ようかな。
投下終了。
わう
セトリは昨日と同じまんまかな。
俺も心だけでもライブ参加して、志村に会いたい。
ごばくすみませんでした……。
事故でコレッタと中身が入れ替わったのかと思ったw
続きにwktk
232 名前:名無しさん@避難中[] 投稿日:2009/12/30(水) 10:34:57 ID:FojC840gO
また規制…
代理投下お願いします
おおすげーキャラ多いな
日常風景が目に浮かぶようで確かに総決算ぽい
これは続きに期待せざるをえない
続きを投下します。
午後の授業が始まるが、モモから一切の事情を聞いたリオは、心中複雑で授業どころではなかった。
内容が内容だけに、あまりクラスメイトに言い散らすことは、避けておいた方が良いと押し殺すように考えた。
シャープペンシルの芯を長く出しては、戻し、長く出しては、戻しの繰り返し。さて、新記録更新か。
落ち着かない気持ちを察してくれたのか、シャープペンシルの芯は結構頑張って伸びてくれる。
「行列はね……。ほら、こうやって」
丸イスの上にサン先生が乗り、板書をしているのだがどう見ても危なっかしい。こっそりサン先生の後ろに回って、
膝カックンでもしてやろうか。という悪しき考えがリオの頭に浮かんでは消えてゆく。
毛並みをチョークの粉まみれにしながら、サン先生は『行列』を書き続けていた。黒板の音だけが響く。
モモはと言うと、無論授業のことは分かっていないので、目を輝かせながら単にサン先生の仕事っぷりを鑑賞していた。
リオが再びシャープペンシルの芯を伸ばし始めると、目の前でいきなり芯がぽっきりと折れた。
アニメキャラの落書きだらけなノートの上には、小指程度に小さくなったチョークの固まり。
教壇の机にサン先生が仁王立ちして、リオに向かって大きな三角定規でご指名していた。
「じゃあ、この計算式の解を因幡さん、10数える間に答えてもらおうか!」
「え、えっと……すいません。わかりません」
「だろうね!だって、まだ何も出題して無いもん」
クラス中の笑い声がリオに突き刺さり、胸を通り過ぎて行った。メガネの向こう側は、暗い。
悔しくて悔しくて、自分の耳を垂れさせる。頑張っているのに、自分を笑うヤツなんて、みんな……。
唯一の救いは、モモも同じように笑っていたこと。この子だけは、笑っても許してあげるから。
―――放課後。
ざわざわと帰り支度をする者もいれば、うだうだと居残る者もいる。そして、モモは椅子に座ってその光景を楽しんで見ていた。
「わー。これが『高校生』の放課後なんだね!」
モモが目を輝かせていると、現役女子高生のリオはモモの前に現れる。モモのためなら、クラスメイトのためなら、と思ったリオ。
モモの座っている席、つまりハルカの席の前に立ち両手を机に付けて、バンと音を鳴らす。
教科書をトンと揃えながら、カバンにしまっていたモモなのだが、これから遣り残したことをしなければならない。
いつまでもハルカの身体を借りているわけにもいかないからだ。神さまとの約束は絶対。小声でリオはモモに耳打ちする。
「確か、本の続きが読みたいって言ってたよね。ここの図書室だったら、たいていの本はあるはずだよ」
「すごいね。早速行こうよ!リオちゃん」
しかし、リオはこれから風紀委員としての仕事が控えており、モモと一緒に図書館に行くことが出来なかった。
言っておくが、ここの図書室は半端無い。もしものことがあったらと、リオは付き添い役が欲しかったのだ。
その事情を耳にすると、モモはかねてから決めていたように、一人の少年を案内役に選んだ。自然と伸びたモモの指は不思議だった。
「あの子だったらいいと思うんだ」
「あいつ?」
数学の時間に飛んできたチョークの固まりをリオは、モモが選んだ案内人の方へと投げつけた。
机で一人して本を読んでいる白いイヌの少年にぶつかり、少年は振り向く。尻尾の動きが大人しくなる。
彼は本にしおりを挟んで閉じると、何も表情を感じない顔でリオとモモの元へやって来た。
「犬上。頼みがある」
何か言いたげだが、特に口にすることなく黙って頷くだけのイヌの少年に対して堰を切ったかのように、
リオは腕組みしながら情熱にも似た願い事を畳み掛けた。冷たいようでもあり、温もりも感じ取られる。
「ホントはわたしがモ…ハルカと一緒に図書室に行きたいんだけどねっ。探したい本があるんだって!
でも、ほら、わたしって多忙な女でしょ?だから犬上にお願いして……。図書委員より犬上の方がなんだか……ね!
べ、別にわたしは犬上のことをどう思っているとかじゃないんだから!龍ヶ谷に頼もうと思ったんだけど、
アイツ寒いのに屋上で呑気に……おっと。ここからはジャッジメントもジャッジしないのですの!」
「何を言っているのか、さっぱり分からない」
「とにかく、ハルカのお手伝いね!このクラスで本に詳しいのは、あんたぐらいなんだから!いい?」
ハルカといつも一緒にいるリザードマンの龍ヶ谷は、ちょっと強面でちょっと厳つくて、ヒカルとは正反対な男子生徒。
しばしば屋上で先生に見つからないように、こっそりと煙草……、おっと。ここからはジャッジメントもジャッジしないのですの!
図書館までの廊下は、お昼休みより少し寒くなっていた。
モモはヒカルの後に続いて、上履きを鳴らす。ヒカルはどうして自分が『ハルカ』の案内をしているのかが、今は分からなかった。
後ろではなうた交じりの呑気な歌が、ヒカルのイヌミミを振るわせる。
「犬上ヒカルくんだよね?」
「……」
いまさらというような顔をして、ヒカルはモモを図書館へと案内していた。
ヒカルの目にはどう見ても『ハルカ』にしか見えないので、今は『モモ』という子に変わっていることは分からない。
「お兄ちゃんが言ってたんだから、ヒカルくんのことは知ってるよ。お兄ちゃんのお世話になった方の……」
モモはリオに話したことと同じように、身体を『ハルカ』から借りていることをヒカルに打ち明けた。
そして、『お兄ちゃん』という人物がヒカルの父にお世話になっていたと言うこと。その人物に妹がいて小さな頃事故で…。
それを含めて、ヒカルは今までの曇り空が吹き飛んだ気がした。ヒカルの記憶の糸が開放される。
「きみの言っている『お兄ちゃん』って、浅川さんだよね。カギ尾のネコの」
「そのとーり!ぽちぱちぱち!」
女子高生の甘い香りを振りまきながら、ヒカルの肩にモモは寄り添った。
―――職員室では、生活指導の帆崎を始めとした『(仮)放課後遅くまで残っちゃだめよ隊』が結成されていた。
といっても、正規の隊員は風紀委員長のリオだけ。お仕事ですから!と輝かし風紀委員の証である腕章をはめる。
「年末年始は気の緩む頃だから、しっかり生活指導をするように!」
「はっ。因幡リオ、この命に代えてもっ」
「別にそこまでしなくてもいい」
帆崎の号令の元、彼らは校内の巡回を始めた。
もちろん、リオは気が気でないことがある。犬上がきちんとモモを図書室まで案内して、目当ての本を探し出しているかどうかだ。
犬上だったら、口数も少ないし誰かとつるむことは無いから、モモのことを任せることが出来るだろう。
仕事がなければわたしが付いていったのに。いや、わたしが付いていっても犬上は来るんだ。モモからの頼みだから。でも、何だか悔しい。
それに、龍ヶ谷が付いていっても恐らくボディガードにしかなら無いかもしれない。顔面凶器にモモがひっくり返ってしまうかもしれない。
あまりにも考えごとをしていたため、立ち止まって注意をしていた帆崎の背中にリオは、うっかり追突していた。
「あの、先生。わたし屋上の巡回に言ってきます!」
「……おれも行こうか?」
帆崎が来ることを何かを恐れるように拒み、すっ跳ぶようにリオは屋上への階段を駆け上る。
扉を開けると、冷たい空気が流れ込みリオのスカートをふわりといたずらする。ニーソックスだけじゃ、やっぱり寒い。
「うん。いた!やだあ、またやってる」
手持ちの携帯電話を操作すると、屋上でたたずむ巨体を写メで激写する。写り具合を確認して、どこぞかへメールを送信し、
大きな音を立てないように扉を閉めて「異常はありませんでした!」と、何食わぬ顔で帆崎の元に返っていった。
―――ハルカのカバンの携帯電話が震え始める。
「わ!ケータイだ!高校生っぽいなあ。ふんふんふん」
地上の記憶は事故に遭うまでの頃で止まっているモモにとっては、携帯電話でさえ遥か遠くの未来の道具に見える。
取り出したものの、どう扱えばいいのか分からずパカパカと開いたり閉じたりしていると、代わりにヒカルが携帯電話を受け取った。
「メールだよ。因幡からみたい」
「メール?お手紙なの?」
「……電話の。見れば分かるよ」
件名:ただいま校内を巡回中
本文:龍ヶ谷猛は、今屋上でタバ……ゲフンゲフン。ここからはジャッジメントも知らないのですの!
あと、犬上に伝言。変な気起したら龍ヶ谷に言いつけるからな。
「龍ヶ谷って人は、ハルカちゃんの……だよね?どんな人だろう!へへへ」
どうやら龍ヶ谷の写メが添付されているようなのだが、敢えてヒカルはモモに見せることはしなかった。
歩きなれた廊下の風景。そう、二人は図書室前に来ているのだった。
「すごーい!さすが佳望学園ね!!いいなあ、ヒカルくんは毎日こんな図書室に通えるんでしょ?」
大空を泳ぐ鳥のように、モモは両手を広げて暖かい本の園に飛び込んでいった。
扉を開けると広い部屋に蔵書の山、活字をこよなく愛する者にとっては、なんとも幸せに満ちた空間なのだろう。
何日かかったって、何年かかったって、ここにある本全てを読みつくしたい。ここに通う者なら誰しも考えたことであろう野望。
だけど、それはかなわぬはかない夢。はかないから誰しも夢を見る。それを忘れるために本の世界に飛び込む。
知らず知らずのうちに、ヒカルの尻尾はいつも図書室に来たときのように激しく揺れていたのだった。
カウンターでは、中等部女子・ネコの美弥家加奈が図書委員たちに詰め寄っていた。
「あの。今、織田さんは席を外していて……その『しょうりゅうけん』ですか?それがどこにあるのか、わかんないんです」
「封龍剣だにゃ!あれがないと狩りに出れないにゃね?ぼくの大事な封龍剣を返せ!」
「だから…織田さんが」
「このわからず屋(にゃ)さん!」
ヒカルとモモはすったもんだの騒ぎに巻き込まれないように、こっそりと奥の本棚へと入っていった。
本の迷宮は、二人を歓迎してくれるのだろうか。探し物を見つけられないまま涙を飲む者もいるとかいないとか。
「で、なんていう本を探してるの?」
「池上祐一先生の……」
ヒカルはモモの手を引っ張り、見慣れた本棚の隙間を急ぐ。その名前ならいつもの場所だ。
だけど、人気作家だから貸し出し中かもしれない。不安が当らなければいいが、と弱気になる。
池上祐一の著書『片耳ジョン』の名台詞がヒカルのイヌミミに蘇り、そしてひとかけらの勇気となる。
『この世の答えはイエスかノーだけだ。迷ったとき、きみが若ければイエスを選ぶがいい。ノーを選ぶときは人生を知り尽くしたときだ』
目指すは、913番の書籍番号の本。五十音順に並んだ蔵書を一冊一冊確認する。『い』の頭文字の作家は、意外と多かった。
「い、い、五十嵐、池尾……。い、い、い」
「……池上…。あった!あった!すごいよ!わたしがいなくなってからこんなに出てたんだ」
モモが読んでいない本は、運良く貸し出されてはいなかった。街で遭ったあの出来事からはや数年。
池上祐一が書き連ねた言の葉が、地上にいるはずの無い子の手に渡る奇跡。事実は小説よりも奇なりとは、よく言ったものだ。
ヒカルはモモが読んでいないという本を脚立に乗って取ってやると、モモは嬉しそうに本を抱きかかえて日のあたる机に向かった。
ここまで目を輝かせて本を抱きしめてくれるなんて、作者が見れば喜んでくれるだろう。
しかし、クールで有名なオオカミ・池上祐一のこと。ヒカルは以前に会った印象からはそのような池上を想像が出来なかった。
「池上先生!また会えたね!大好きだー」
モモの無邪気な歓声がヒカルの耳元に届いたような気がした。
全て読み終わるにはどの位かかるだろうか。そんなことは気にするな、でもハルカの身体はきっちり戻さなければならぬ。
夢中でモモは本を捲っていた。ヒカルは窓から杉本ミナの軽トラが走り去る所を見ていた。
外の光はいつの間にか夕暮れに変わった頃。冬の黄昏どきは、一年を通じて最も美しいという。
だが、モモは夕焼け空よりも本に心奪われ、最後の一冊に読み耽っていた。
カウンターでは、戻ってきた織田に図書委員たちが封龍剣のありかを尋ねていた。
「犬上。無事に役割を果たした?」
『風紀委員』の腕章をはめたリオが、外を眺めているヒカルの尻尾を蹴る。
返事が無いのはいい返事。ヒカルは黙って頷いているだけだった。
「でも、龍ヶ谷が来るんじゃない?モモはまだ読んでる途中だし」
「忘れてた!」
ここで龍ヶ谷がやって来たら話がややこしくなる。
一方、カウンターでは織田が加奈の身の丈ほどある剣を返していた。
「やったあ!ぼくの封龍剣が返ってきたにゃ!」
「そうか!情報によると屋上に一匹の龍がいるらしいぞ。美弥家加奈よ、行かなくていいのか?ハンターの誇りにかけて」
すかさず、リオは加奈のネコミミに耳打ちをする。ゆさぶりは一人のハンターを奮い立たせるには十分過ぎる。
「よっしゃあ!狩りに行って来るにゃあ!」
加奈は大きな剣を携えて、図書室を後にした。しばらくは龍ヶ谷を追い駆けていることであろう。
「あの、因幡さん。もうすぐ閉館の時間なんですけど」
遠慮がちにリオのカーディガンの裾を引っ張るのは、ペンギンの図書委員・比取。
図書室の奥では、モモが本を読んでいる。後もう少しで、池上祐一の本を読みつくすことができるのに。
リオとヒカルは、きょうほど時計の働きを恨むことはなかった。気が付くと、自分たちと図書委員。そして、モモと織田だけ。
「あの、まだ本を読んでいる子がいるから、ちょっと待ってくれない?」
「因幡さん。きっちりしないといけない委員をやってるんでしょ?」
比取の言葉がざっくりとリオの大人しい胸に突き刺さる。図書委員たちは帰宅準備を始めているので、
そろそろおいとましなければならないのは、重々承知のこと。モモが地上にいる間と言うタイムリミットがあるので、
貸し出しをすることは出来ない。その事情が分からない図書委員たちは、リオのカーディガンを引っ張ることしか出来なかった。
このままでは『のびのび』のカーディガンを着た『のびのび風紀委員長』になってしまう。開館時間を『のびのび』にして欲しいが、
カーディガンを『のびのび』にされてしまうのは、いっぱしの女子高生として一生のお願いをしてでも止めて欲しい。
そうしているうちに、とうとう時計は図書室の閉館時間を差してしまったが、逆にリオはぐっと握りこぶしを作る。
「確か、閉館時間は過ぎたんだよね。そうだよね!比取くんよ、答えなさい!」
「は、はい。そうです」
「その言葉が聞きたかった!」
リオは腕を腰に当てて、雁首揃えた図書委員たちに叫ぶ。それはまるで猛々しい勇者の如く。
「みなさん!閉館時間後は、風紀委員がこの図書室の権限を掌握するっ!全責任はわたしが取る!」
「……いいんですか?因幡さん」
「後は知らん!風紀委員の長(おさ)、因幡リオが許すんだからねっ!」
腕章が誇らしく蛍光灯の光に照らされる。織田もにっこりと笑ってリオの考えに同意して、奥の本棚へ消えて行った。
しばらくは、静かに本を楽しむことができるから、ゆっくり心行くまで池上祐一の世界を楽しんでくれ。
「ねえ、犬上。モモは誰の本読んでるの?」
文芸雑誌を捲りながらヒカルは、カウンターに腰掛けているリオのさりげない質問に答えた。
「池上祐一の本」
「へえ!わたしも大好きなんだよっ!『迷探偵マリィ』のシリーズとか何度も読み返しているし!」
「ぼくも、そのシリーズは好きだよ。『片耳ジョン』もだよ」
「わ、わたしだって『片耳ジョン』は大好物だよ!あ、でも……マリィのドジっぷりも、尻尾もふもふしてあげたいくらいいいよね。
凍てつく池に落ちちゃったところは、わたしも暖めてあげたかったのね!でも、それで風邪引いて、風邪薬をメイドから貰ったとき、
『そう言えば、旦那さまは普段漢方薬を使っていたんですよね?漢方って大抵食前に飲むんですけど、
あなたの目撃情報では食後に飲んでいたってなってるんですよ?』の一言で、真犯人のメイドを捕まえちゃったマリィ、ホント求婚しちゃうよ!
マリィは犬上よりわたしの嫁にお誂えなんだからね!ぜったい譲れないんだから!犬上、聞いてる?」
「何を言ってるのか、さっぱりわからない」
口では「わかない」といっているヒカルだが、「因幡は池上祐一のファン」ということだけは何とか理解した。
モモの動向が気になり、ふとヒカルは立ち上がりモモの席に近づいた。リオは、マリィの決めポーズを真似している。
「風紀委員がここを守っている間は、誰にもモモの邪魔をさせない!マリィ!見ててよねっ。わたしの雄姿を」
「おい、因幡。風紀委員長自ら下校時間を過ぎてもだらだら居残りするなんて、一体何を考えているんだ」
帆崎の声が図書室の扉と共にやって来た。リオの帰りが余りにも遅い為、校内中を探していた結果のことだった。
リオは帆崎に襟首を掴まれて引きずられながら、悲鳴にも似た声を上げている。
「あの先生!あの子は、ここの子じゃなくって」
「どう見ても、ウチの制服だろ。ウソつくのもいい加減にしろよ」
「もー!分かってよ!犬上ーっ助けて!ミスはなかったはずだっ!わたしの判断は正しかったはずだぞ!」
「風紀委員長は神じゃないぞ。図書室の権限を自由にしようなんて、おこがましいと思わないかね」
帆崎の言葉が外科手術のメスのようにリオに突き刺さる。この患者は手遅れかもしれない。
「面白かったあ!この子の命が助かって良かったぁ!!」
一冊の本を読み終えた炭酸水を飲んだ後のような爽快感。本を愛する者ならば、誰もが体験したことであろう。
最後の一冊を閉じ、目を閉じて余韻を楽しむモモは伸びをしていた。外はもはや木の影さえ見えないほど暗く沈んでいる。
図書委員もとっくに帰宅してしまい、残るはヒカルにモモに、そして織田だけだった。
遣り残したことは終わりました。そして最後に残ったのは、無言でやって来るさよならだけ。
お忘れ物はございませんか、今一度お確かめください。もしかして、二度と来ることの無い列車かもしれません。
「ヒカルくん。わたしね……」
「……」
「お兄ちゃん、どこ行ったんだろうね」
いつかは読破したかった本。その本の残りページが少なくなると、必ずやって来る登場人物との別れ。
次に会うのはいつだろう。二度と会わないかもしれない。読み尽くすことが出来る喜びと、読み終えてしまう寂しさ。
本を愛する者ならば、誰もが体験したことであろう。
遅い時間まで図書室を開けてくれた織田に感謝すると、ヒカルとモモは自分の教室に戻って行った。
「わたしね。大きくなる前に死んじゃったから、こういう……何だろう。男の子と一緒に歩いたことが無いんだ」
「……」
「だから、ねえ。わたしのことをぎゅって」
頬を赤らめたヒカル。モモの腕がヒカルの腕に絡みつく。髪の毛からは女の子の甘い香り。
廊下は誰もいやしない。遥か長く物音さえ許さない、たった二人だけの校舎。ヒカルはそっと顔をそらした。
「こ、こらああ!!不純な男女交際はよくないと思います!」
嫉妬にも似た金切り声で、風紀委員長・リオの声が下校時間を過ぎた廊下を響かせる。
モモが心行くまで本を楽しんだことをリオは知ると、寂しさにも似た感情がふつふつと浮かんできた。
「犬上じゃなかったら、龍ヶ谷に言いつけるところだったからね!」
「それに下校時間過ぎてるんだから、お前らとっとと帰れよ」
生活指導の帆崎の疲れた声が、リオに続いて響いていた。
ヒカルたちの教室まで帆崎が付いてくると、一日を50時間で過ごしたような顔をして、彼らに愚痴にも似た言葉をこぼした。
「さて、ここにも下校時間を守れないヤツがいてな。因幡、注意してやれよ」
教室の扉を開くと、一人のネコの男性が机に腰掛けて本を読んでいた。彼の尻尾はカギ尾だった。
「お兄ちゃん?」
「事情はコイツから聞いた。因幡の言っていた意味が何となく分かった。すまん。あれだろ、お前さんもそろそろ帰るんだろ?」
モモはそろそろ地上界から、さよならしなければならない。そういう約束でここにきているのだから。
神さまとの約束は、絶対にして尊大。モモは浅川の胸に軽く頭をぶつけながら、尻尾を立てる。
「お兄ちゃん、帰る前に言いたいことがあるんだ。あの、杉本さんって人。お兄ちゃんさ……」
「すぎもとさん?」
「『この世の答えはイエスかノーだけだ。迷ったとき、きみが若ければイエスを選ぶがいい。ノーを選ぶときは人生を知り尽くしたときだ』だよ」
「ナマ言うなよ。大人をからかうんじゃない」
浅川からのどを擦られているモモを見ながら、ヒカルとリオは、少し笑っていた。
「ぶーぶーぶー!!ひゃっほー!」
廊下から甲高い声が、台車の車輪がきしむ音と混じって響く。
台車の上には、ご存知サン先生。
風紀委員を覚醒させたリオは、ちょっと昔のドラマのワンシーンのように台車の前に立ちはだかかる。
「ちょ、ちょっと!サン先生!!廊下を走っちゃいけないって!!」
「走ってるのは、ぼくじゃないよ!台車が走ってるんだ!」
インチキな屁理屈で返すサン先生と、リオとの距離は徐々に縮まる。
3メートル前、リオの耳が回る。
2メートル前、サン先生のメガネが光る。
1メートル前、モモが廊下に飛び出す。
「リオちゃん!危ない!!」
「……!?」
廊下が軋む音。駆けつけるヒカル。何が起こっているのか分からないリオ。
そして、リオに近づく一人のネコの少女。その名はモモ。
リボンを揺らしてヒカルを抜いて、リオの方へと駆けつけた。短距離走はお手の物。脚で廊下を蹴り台車と短期決戦を挑む。
「リオちゃん!!わたしに捕まって!」
「モモ?」
リオの両脇を抱え上げ、今まで感じたことの無い恐怖と背中合わせになりながら、両脚で天井に向かって飛び上がる。
夕暮れの空気はモモとリオの味方をしてくれるだろうか。ひんやりと背中が心なしか薄ら寒い。
弾みで片方の上靴が空を舞う。スカートがはためく。髪からは女子高生らしい甘い香り。
そうだ。朝起きた出来事が、再びここにやって来た。
「モモーーーーーーーっ」
ネコの少女の名前がリオに届いていたときには、彼女はしりもちを付いて廊下に横たわっていた。
「あれ?コレッタ……。コレッタは?帆崎先生!風邪には、大根のハチミツ……」
記憶が途切れ、再び記憶が戻ると無意識的に記憶が途切れた瞬間の行動を取ることがあるらしい。
ハルカはここにありもしない自分のローファーを探していた。
―――その晩、浅川は帆崎と共に学園の校門前にいた。
「シャルヒャー、まだ一人身なんだろ。そろそろ落ち着けよな。お袋さんも……」
「おれの相棒は、コイツだけだ!それに、モモもいるからな!」
自慢の重量級のバイクに跨ると、学園では浮いた存在の爆音を上げた。スロットルを回す手が心地よい。
夜風に背中を丸めた帆崎は、一刻も早く自宅に戻りたかった。そんな帆崎の思いとは裏腹に、浅川は遠い目でこぼす。
「でもさ、家庭の味って……いいよな?」
「お前、ウチに来る気?」
青ざめた帆崎は浅川が自宅に来ることを拒んだ。もちろん、相方のルルが風邪をひいているからだ。
しかし、そんな事情を知らない浅川は、呑気に笑いながらヘルメットを被る。
「ははは。お熱いこった。おれは街を撮影しに行くから達者で。また来年でも会おうな、素晴らしき友よ」
「二度と来んな」
誤解されたまま帆崎を置いて、浅川は夜の騎士へと戻っていった。
―――その晩、サン先生はリオとハルカとヒカルと共に学園からの坂を下っていた。
愛車・ラビットを押しながらサン先生は、廊下での出来事のことを話している。
「帆崎先生から頼まれたときは、ちょっと驚いたよ。でも、事情を聞いたらさあ、ぼくも一肌脱ぎたくなってね」
「せ、先生!だからと言って危ないから廊下で暴走しないで下さいね!」
リオは子どものような数学教師を注意すると、大人のように髪を掻き揚げていた。
坂の下のコンビニでトラまんを奢ってあげるからと、サン先生はリオをなだめる。
彼らの後ろからエンジンの音が聞こえてくる。ライトの光が背後から照らされる。鋼鉄の黒馬に跨り、通り過ぎるのは他でもない浅川だった。
浅川は何も言わずに背中で「また来ちゃうからねー」と軽い口調で再会を誓っているのが分かった。
押していた自転車を止めてヒカルは呟く。
「また来るかな……」
「来るよ、多分」
尻尾を振ってサン先生は、池上祐一の新刊情報をプリントアウトした紙を眺めながら答えた。
妹の街は、嫌に物覚えが良い。
おしまい。
良いお年を。
投下終了ッス。
807 :
Fist:2009/12/30(水) 21:17:02 ID:eQcTKX+Y
お疲れ様です。
佳望の生徒大集合って感じでしたね!
浅川の妹さんも池上先生のファンでしたか…。自分も一度読んでみたくなりますな(笑
そして…何故か龍ヶ谷のその後が気になってシカタナイ。
GJ!
とりあえずリオはレールガン読んでるっぽいw
良い長編だった
09年最後にいいものが見れたよ
>805
×シャルヒャー
○シュルヒャー
でしたー……。推敲の詰めが甘かったッス。
みんなあけおめ!
>>811 絵師サンもあけおめ!
虎とティーガ−戦車にかけるとは良いセンスw
813 :
代理:2010/01/01(金) 00:44:53 ID:utFhp5a8
あけおめ虎子かわいいい!
つーかはいてないw
絵師さん皆さん今年もよろしくお願いします。
今年も創発板と獣人スレの発展を祈って、乾杯!
814 :
Fist:2010/01/01(金) 01:45:56 ID:+f+i9QyB
あけおめッス。
感想だけの初心者すが今年もよろしくお願いします。
…今年もいいもの見れますように。
あけおめ!
リオ「あけおめ!ことよろ!」
ヒカル「あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
リオ「犬上!長ったらしいよ!長いのはわたしの耳だけで十分なんだからね!」
ヒカル(え……??)
改めて、あけおめ。
塚本「あめ!よろ!」
鎌田「飴よろ……?飴なんか持ってないよ」
塚本「ライダー!飴じゃなくて”あけおめ、ことよろ”の略だって気づけよ!」
来栖「そんな略し方で気づくかよ」
うん、あけおめっことよろっ!
818 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/01(金) 12:49:16 ID:QOkaPaMd
同じくあけおめ?
今年から参加させていただきます。なにとぞよろしくおねがいします。(はっ!長ったらしいとしかられるかも!)
sageてね
トラもふもふしたいわー
書き込む時はageとsageを覚えようぜ。メール欄にsageと半角で入れれば良いんだぜ。
小学生みたいな書き方は、梳いても梳いてもキリがない毛のような
ストレス感を与えるから注意しようぜ。
822 :
Fist:2010/01/02(土) 18:39:58 ID:9Uz1n0HD
…こうして見ると、
前にsageの意が分からないままに書き込んでいた自分がハズイな(苦笑
今更ながら、あの時諭してくれた人 Thank you
その調子で名前欄も外せばいいと思う
まぁ名前欄は気にしないにしても、チラシの裏的な発言は限度を覚えてくれw
虎タソに寄り掛かられる戦車になりたい
コレッタ「早くネコ年が来ますように」
今年正月のの初詣の光景。願いが叶うといいね。
827 :
Fist:2010/01/04(月) 08:28:22 ID:EuZ4k7qX
見方を変えれば、今年はネコ科の年。
届いた年賀状眺めてると、トラを完全にネコとして扱ってる
デザインが結構多いんだよね
ちなみにベトナム・チベット等では来年は兎年ではなく、猫年
しかし兎年が無いのはそれはそれで困る
そして翌日獅子宮はんに再度注意されるのかなー
こいつら…正月早々イチャコライチャコラしやがってええええぇぇ!
ザッキーもげろおおぉぉ
そういえば御堂夫妻に仔がいるみたいな発言昔あった気がするけど、今更それはまずいかなー。(><)
いやー、 あれからずいぶんと時間がかかってるから、もしかしていないのか!とがっかりしてた。でもやっぱり御堂夫妻には仔がいると俺は信じているぞー
リア充のザッキーなんか火傷してしまえっ!
カワユス・・・これはまさか!
>>832 いつも注意してるのは保健室の三十路超えの独身ババァ……ん?こんな
夜中に誰か来t(ry
ババアはもっと評価されるべき!
>>839 おぉミミさんじゃないかかわいいよミミさん。
>>844 初投下GJ コレッタは相変わらずカワユイ
けど、気になった事が一つだけ。
朱美の一人称は『わたし』ではなく『あたし』だからなー
GJ!!
コレッタたんはホンマにキュートやで!
ババアがロリに耽溺するのも無理ないぜ。
うおおぉコレッタかわいいい!喉なでなでしてえええ!
朱美は良いお姉さんだねえ。もっと好きになったわ。
新年初SS乙でした。今年も期待してます。
848 :
Fist:2010/01/09(土) 13:23:01 ID:M6JSQdcn
初投下乙っス。
コレッタは行動の端々からかわいさがただよいますな。
…っと、リオ!ヒカル君に何やらせるつもりだ?
Wiki編集者の一人です。全く更新できてなくて申し訳ないです……。
>>844のSSですが、
>>845の方が言っているとおり、朱美の第一人称変えた方がよろしいでしょうか。
勝手に加筆するわけにはいきませんもので……。
避難所
>>243 了解しました!ありがとうございます。
wiki編集いつも有り難うございます。
一点だけ、「初等部大集合」となっているものですが、「妹大集合」とでもしていただけ
るとありがたいです。
判り難くて申し訳有りませんです。
>>851 了解です、変更しました!
名簿の編集をすっかり忘れていて、新キャラ記載したかどうか分からない状態になってしまった……。
あの子が登録されていない!とかそんなんあったら報告か編集お願いします。
また時間を見つけて話題ごとに絵と文をリンクさせねば。
wikiヘンシュー人さん超乙!
いつも快適に見させてもらってます
人物紹介の編集なんかはやったりするけど、リンク付けって難いなアレ
全作品把握してなきゃダメだし、編集労力もかかる。
超尊敬してます。いつもありがとう。
ところで1000行かず容量埋まりそうなのって初めてだな。
文章作品割合が多くなったと取っておこうか。
…過疎って雑談が減った?気のせいだろHAHAHA
自分も昔、wikiを見つけて、はまってしまいスレに参加した身。wikiが編集されるのはこのうえなくありがたいです。編集ありがとうございます! 今更だけど俺もHNつけてみた。
あんまり言いたくないんだが…
コテハンが雑談してると一見さんが入りにくい空気になるからやめて欲しい
うぜぇと思うなら黙ってNGにすりゃいいだろうが
すんません。考えが至りませんでした。
暫くスランプ気味だった俺が通りますよ……
遅れたけど皆さんあけおめ。
ちと遅れたけど、今回はある人の去年の12月中旬から大晦日までの日記(前編)を投下します。
ちょっぴりだけ長いけどスレ容量には足りる筈!
では次レスより投下開始。
2009 12/15(火) 天候:晴
去年から使い続けていた日記帳が一杯になったので。
今日の下校中に、大通りの中宮文具店で新しい日記帳を購入した。
これからこの日記帳には何が記されて行くか、楽しみでたまらない。
さようなら、古い日記帳。
そして初めまして、新しい日記帳。
2009 12/16(水) 天候:晴のち曇
何時もならば私と顔を合わせるなり憎まれ口を叩く姉さんが、今日は妙に上機嫌だった。
何も姉さんの話では、なんと自分のファンがここ最近、急増したのだと言う。
はて? 横暴かつ自己中心的で、とても誰かに慕われるとは思えない性格の姉さんにファンが増えるとは……。
これは一体如何言う事だろうか? 槍どころか流星雨でも降り出すのだろうか?
如何言うことか少し気になったので、更に姉さんから詳しい話を聞いてみると、
ファンはこぞって姉の写真を取りたがり、中には姉さんの肉球形を取る人もいるとの事。
……え、ええっと、それはまさか……いや、深くは考えない様にしよう。
追記:その十日後、私の懸念は最悪の形で的中する事となる。
2009 12/17(木) 天候:晴時々曇
今日は週一の飛行機同好会の活動日。今回は以前から設計していたブルースカイ]Wの製作を始めるとの事。
私は自分の体格と力を生かし、大きな部品の組み立てを手伝う事にする。
そろそろ冬将軍が近づいているのか、部室の中にも関わらず毛皮寒く感じる。空子先輩も寒そうに羽毛を膨らませていた。
毛皮のある私や空子先輩でさえも寒く感じるのだから、毛皮のない人間である風間部長はさぞ寒かろう。
ああ、出来ることならば寒さに震える部長を私の体で……何を考えているのだ、私は。
と、私が一人自己嫌悪していた所で、
風間部長が「そろそろアレの出番か」と言って、おもむろに作業室隣にある休憩室の和室に引っ込んでいった。
当然、私も空子先輩もその後に続こうとするが、即座に風間先輩から「暫く待ってろ」と止められてしまった
訳の分からぬまま空子先輩と雑談する事、約十数分後、「入って良いぞ」との風間部長の言葉。
中に入った私と空子先輩を待っていた物、それは冬の風物詩と言える暖房具、炬燵!
風間部長が言うには、この炬燵は今の作業小屋が祖父の道場であった時から使われていた物で、
使うのはもう少し先にする予定だったのだが、寒さに震える私達の様子を見かねて、今日から使い始める事にしたらしい。
何と優しい心遣い、思わず感動の余り部長へ抱きつきそうになったが、なんとか自制する事に成功。危ない危ない。
早速、私と空子先輩は部長の言葉に甘え、炬燵に入る事にした。
外の寒さが厳しかった分、炬燵の暖かさがより身体へ染み入る気がする。無意識にぐるぐると鳴る喉の音。
そんなネコ科の動物の本能なのだろうか、温かい場所に身体を落ち付けている内に私はついうとうとと……
目が覚めると、時刻は夜の七時を周る所だった。
……部長、役に立てなくてごめんなさい。
2009 12/18(金) 天候:曇
今日の昼休み、空子先輩と番場さんの二人と話をする。
話題は自分の体格に合ったお洒落な服が見つからない事について。
やはり空子先輩も番場さんも、恵まれ過ぎる体格を持つ私と同じ悩みを抱えている様である。
特にブラジャーに関しては、自分の体格に合う物となると大体が高価で、学生の身分ではとても手が出ないとの事。
番場さんが言うには、自分に合うサイズのブラジャーが無いので代わりにサラシを巻いているのだと言う。
……私もサラシ、試してみようかな?
2009 12/19(土) 天候:曇のち晴
昨日、番場先輩が話していた事を早速試そうと、
今日、私はサラシに使えそうな適当な布を探すべく、隣町の洋品店へと赴く事にした。
……実際の所、わざわざ隣町に行かなくとも私の家の近くにも洋品店はある事にはあるのだが、
以前、其処でクラスメイトの飛澤さんに出くわした苦い経験があり、隣町の洋品店を使う事にした次第である。
しかし、私は飛澤さんの行動範囲を甘く見ていた。
……そう、店内でまた出くわしてしまったのだ、彼女と。
おまけにその時の私の手にはサラシに最良と見繕った布が、何と最悪なタイミング。
更には、飛澤さんはその鋭い観察眼で、私が洋品店にいた理由を一発で見抜いてしまった!
(ひょっとすると昨日、番場さんと話をしていたのを見ていた可能性も?)
結局、前の時と同じく、私は飛澤さんに身体測定の形で弄ばれる事となった。
……この後、どんなデザインの服が送られてくるのかと考えると、正直怖い。
2009 12/20(日) 天候:快晴
今日は朝から天気が良いので、軽く20キロほどジョギングした後で自己トレーニングに励む事にした。
女子プロレスを辞めた今はもう鍛錬する必要は無いのだが、何時また姉に勝負を挑まれるのか分からないのだ。
だからこそ、今でも鍛錬は欠かせない。
しかし、女子プロレス部を辞めてしまった以上、女子プロレス部の機材を借りる事は当然出来ないので。
今、トレーニングする場所はもっぱら河川敷傍の飛行機同好会部室兼作業小屋裏手の空き地である。
ここにはタックルや打ちこみの練習に良さそうな、樹齢約数百年はあろうかと言う太く大きな樫の木が生えているのだ。
私くらいの大柄な身体となると、通常のトレーニング機材や普通の体格の相手では役不足になる事も多い。
しかし、ここの樫の木は私がいくらタックルや打撃技を決めても、その力強い幹でどっしりと受けとめてくれる。
何とも頼もしいスパーリングパートナーである。
そうやって何時もの通り打ちこみの練習していた所で、私は誰かの視線を感じた。
何気に視線の方へ目をやると、築堤上の遊歩道からこちらを見下ろす同級生の瀬戸はやみ…だったか?
私の白虎と同じくらい希少なイリオモテヤマネコ族なので、彼女の事は良く憶えている。
しかし、彼女は私のトレーニングなんぞ見て何が面白いのだろうか?
その理由を尋ねようと声を掛けようとしたのだが、そうする前に彼女は踵を返し、さっさと立ち去っていってしまった。
随分と熱心に見ていた様だが、一体なんなのだろうか?
2009 12/21(月) 天候:雨
今日は昨日と打って変わって朝から空が泣き出す天気。
その所為か、毛皮を持つ私でさえも外の空気が毛皮寒く感じる。これからもっと寒くなるのだろうか?
そんな登校中、道に転がる変な物に気付いた。何だろうかと近づいてみると、それは同級生の鎌田君だった。
話を聞くと、どうやら降雨による予想以上の気温低下によって身体が動かなくなったらしい。昆虫の人は難儀な身体である。
無論、私は鎌田君を放っておく訳にも行かず、寒さに身体を震わす彼を背負って学園の保健室へ。
ちょうど良いタイミングと言うべきか、保健室ではストーブが室内を小春日和に変えていた。
「またか」とぼやく白先生へ蒲田君を預け、後はもう大丈夫だと判断した私は何時もの教室へ。
しかし、其処で待っていたのはニヤニヤ顔でこちらを見る塚本君と、呆れ顔で塚本君を見る来栖君の姿。
どうやら、鎌田君を背負って学園へ向う私の姿を見て、塚本君が変な勘違いをしている様だった。
……結局、この誤解が晴れるのは放課後の事だった。
2009 12/22(火) 天候:曇時々晴
授業が終わり、これから帰りに洋品店でも物色しようかと考えつつ正門へ向っていた矢先、
唐突に響いた、ズドォン、と言う大きな爆裂音が私の耳を震わせた。
一体何事か! と音のした方へ掛けつけてみると、其処は雑多な同好会が並ぶ通称、エリア16.
(何故エリア16と呼ばれているかと言うと、部屋が16ある事の他に、色物との語路合せでイ(1)ロ(6)と読んでいるそうだ)
その中ほどに位置する狩猟同好会の部室の窓から黒煙が立ち上っていた。恐らくここが爆発の出元なのだろう。
爆発の威力はかなりの物だったらしく、狩猟同好会の部室だけではなく隣の忍者同好会の部室にまで被害が出ていた。
そして、その爆風によって部屋の窓から吹き飛ばされたのか、近くの地面に中等部の美弥家 加奈が突っ伏していた。
見た所、衣服(いや、鎧と言うべきか?)や毛皮が所々コゲてはいるが、思ったよりも怪我は軽そうである。
その傍で加奈と同じくコゲた状態で呆然と佇む、中等部のネコの少女(名は三島 瑠璃と言っていた)に事情を聞いてみると
何も、冬にも関わらず部室に出現した黒い悪魔Gを美弥家さんが退治しようとした所、
うっかり部室においてあった大タル爆弾を叩いて起爆させてしまったそうだ。
……待て、そもそも大タル爆弾ってなんだ?
というか叩いて爆発するような危険な物を作ってるのか、狩猟同好会は。
しかし、恐らく巻き添えを食っただけの被害者である彼女にそんな追求が出来る筈も無く、
この時の私はただ、苦笑いを浮かべて頷くしか出来なかった。
と、そうしている間に、何処からか騒ぎを聞きつけた保険委員(本名不明)が「爆発事故発生ッスか!?」と騒がしく登場。
「猫タクでキャンプ送りは嫌ニャっ!」と意味不明な事を喚く美弥家さんを問答無用でリアカーに乗せて、
とっとと保健室へ緊急搬送していった。相変わらずこう言う事となると彼(いや、彼女か?)は手早い。
その際、三島さんが「あーあ、これで1乙にゃ」とか漏らしていたが、
生憎、その言葉が如何言う意味を指しているのかは、私には理解できなかった。
追記:この事件が後々になって飛行機同好会に影響を及ぼすとは……。
2009 12/23(水)(祝日) 天候:快晴
雲一つ無い青空広がる今日、私はあるイベントに参加する為、少しおめかしして姉さんと共に出掛ける事になった。
行き先は中央大通りに面する市内で一番大きい公園、佳望中央ふれあい公園。
其処で行われるイベントこそ、私たち虎族にとって12年に一度行われる祭、牛(丑)から虎(寅)への干支引継ぎ記念祭である。
私達が来た理由こそ、そのイベントのメインとなる引継ぎ式の干支引き継ぎ役として、何と私達姉妹が選ばれたのだ!
選ばれた理由としては、虎族の中でも希少な白虎であり、しかも双子である事が一番の理由だそうだ。
前回に行われた干支引継ぎ式典は、私と姉さんがまだ幼稚園に入るか入らないか位の頃、
親の肉球を握り締めながら、前年の干支の人から干支の引継ぎをする壇上の引き継ぎ役の女性を羨ましく思ったものだ。
それから時は経って十二年、まさか私と姉さんがその栄光ある大役を任されるとは……。
世の中、本当に何があるか分からない物である。
そんな大役を与えられて期待に胸躍らせる私に対し、
姉さんはと言うと何時もの態度は何処へやら。尻尾を垂らし耳を伏せてガチガチに緊張している様子だった。
心配になって声を掛けてみると、何時も強気な姉さんにしては珍しく、「鈴鹿……私だけ帰って良いか?」と弱気な発言。
そう言えば、姉さんは自分で考えて行動する分にはまだ問題はないのだが、
周囲から大役を任されると、途端に弱気になってしまう弱点があったな。
全く、変な意味で世話を焼かせる姉さんである。
帰りたがる姉さんをなんとか宥めつつ、もよりの電停から歩く事数分、ようやく公園のイベント会場に到着。
其処で私たちを待っていたのは、なんと数千人近い同族の群、群、群!
予想以上の人数に思わず絶句する私。姉さんの方へ目をやれば、姉さんは既に泣きそうな顔をしていた。
そして私立ちの到着を待っていたかの様に盛大(?)な和楽器の演奏と共に始まる、干支の引継ぎ式典。
アナウンスの誘導に、今年の干支の引き継ぎ役だった牛(丑)の牛沢先生が壇上に上がり、続けて私と姉も壇上へ向う。
直ぐさま私と姉さんへ注がれる様々な感情を入り混じらせた視線、視線、視線! その凄まじさに逆立つ私の毛皮。
姉さんの方へ目をやれば、耳はぺったりと折り畳まれ、目には涙が浮かび、尻尾は完全に股の間に隠れていた。
このままでは今にも逃げ出しそうなので、私は「後で「連峰」のケーキを奢りますから、今は我慢してください」と必死に宥める。
その必死の努力がなんとか通じてくれたのか、姉さんは唾をごくりと飲むと、ギクシャクとした動きながらも一緒に来てくれた。
緊張に堪えられず逃げようとする姉さん、その尻尾をさり気に握って姉さんを止める私、その様子を前に苦笑する牛沢先生。
そんな多少のひと悶着を起こしつつも、私と姉さんはなんとか今年の大役を勤め上げる事が出来た。
その後、立ち寄った「連峰」にて、同じ白虎である学友の立花さんと話をする。
彼女は私や姉さんと同じ白虎であるものの、今年この佳望市へ越して来た為、残念ながら引き継ぎ役に選ばれなかった。
それもあって彼女は今年の引き継ぎ役に選ばれた私達姉妹の事を大変羨ましがっていた。
「次こそは立花さんの番ですよ」と謙遜する私に対し、
姉さんはケーキをぱく付きながら「これくらい出来て当然の事だ」と胸を張ってのたまう。
……姉さん、式典の時は怯えた子猫の様に毛皮を逆立てて身体を震わせてた人は誰ですか?
私が居なければ式典どころじゃなかった人は誰ですか? 式典が終わった後、誰よりも安心していたのは誰ですか?
余りの恩義知らずな姉さんに少しだけ腹が立ったので、後で姉さんへ伝えるつもりだった事は黙っておく事にした。
そう、来年末の虎(寅)から兎(卯)への干支引継ぎ式にも、私達は参加しなければならないと言う事を……。
姉さん、後で文句を言っても、私は知りませんよ?
2009 12/24(木) 天候:晴のち曇
今日はクリスマスイヴ。イブではなくイヴである。
今までは23日頃までには終業式を終えて、家でのんびりしていたものだが、
今年はインフルエンザが猛威を振るった影響により、終業式が28日に延期となった為、この日も登校日である。
教室の生徒たちの話題はクリスマスムード一色、話を聞いている私も自然と期待に尻尾を立ててしまう。
そんな中、サン先生は余程クリスマスに期待しているのか、授業中にも関わらず尻尾を振りながらクリスマスの話題を話す。
この様子だと、サン先生は英先生に自重を求められるまで、クリスマスへの期待に胸を躍らせていそうだ。
それに反し、げっそりとした表情を浮かべているのは来栖君。彼は「クリスマスか、やだなぁ……」とぼやいていた。
確か、来栖君は去年のクリスマスに来栖マスツリーにされた挙句、トナカイ役にもされてたのだな。
まあ、そんな事されたら、誰でもクリスマスが嫌になるのも無理からぬ話だ。
しかし、そんな来栖君の予想に反し
今年のツリーにされたのは、交換留学で佳望学園にやってきたフィンランド出身のトナカイ、ルドルフ君。
おまけに彼は「日本のクリスマス、楽しそうデス」と言って、自らツリー役に名乗りをあげたとの事。世の中は広い。
相手が嫌がらない物だから、サン先生はノリノリでルドルフ君に飾り付けをしていた。
その様子を前に、来栖君が少し寂しそうな目をしていたのは、私の気の所為だろうか?
追記:当然の事ながらその後、サン先生はクリスマスプレゼントではなく英先生の説教を貰う事となった。
更に追記:この日は飛行機同好会の活動日にも関わらず、部活が行われなかった。
その理由は、この翌日に知る事となる。
2009 12/25(金) 天候:曇のち雪
今日は朝から毛皮寒い一日、天気予報では今夜はホワイトクリスマスになるとの事。
北方に祖先を持つアムール虎である私や姉さんにとって、これくらいの寒さは大して気にならないのだが、
他のケモノや人間にとって、この日の寒さはさぞ堪える事だろう。特に爬虫類や昆虫の人は辛かったかもしれない。
そんな事は兎も角、今年の何時もの通りの授業は今日で最後。そう思うとなんだか感慨深い。
と、今年最後だからなのか、今日は少し奇妙な事と嬉しい出来事があった。。
奇妙な事と言うのも、何時もはオカンと呼ばれる位に、面倒見の良く落ち付いた性格の永遠花さんが少しおかしかったのだ。
まるで今日び高校生になったばかりの新入生の様に、スカートがめくれてパンツが見えるのも構う事無くはしゃぎまわり、
寒さで動きの鈍い利里君の尻尾にじゃれ付いてみたり、サン先生を抱き締めてみたり、授業中も落ち着きがなかったり。
挙句、クラスメイトの私とはもう初対面ではない付き合いであるにも関わらず、
彼女はまるで初めて出会ったかの様に、「うわ、大きい!」と私の体格に驚いていたのだ。
……そう言えば、永遠花さんが私に話しかけた時、彼女と小さなネコの女の子がカブって見えたような……?
しかし、放課後を過ぎた頃には彼女は何時もの『オカンの永遠花』に戻っていた為、
それが何だったのかは最後まで分からずじまいだった。
そして嬉しい出来事と言うのは、放課後の事。
急に携帯のメールで部長から呼び出され、首を傾げながら飛行機同好会部室兼作業小屋に入ると、
先に部室に来ていた風間部長と空子先輩が妙によそよそしい感じで私を見ていた。
何だろうか?と頭に疑問符を浮かべつつ風間部長に声を掛けると、
風間部長は「これから何されても、俺が良いと言うまで目をつぶってろ」と私に妙な命令を下した。
頭一杯に疑問符を浮かべながらも私が部長の言葉に従って目をつぶっていると、尻尾に奇妙な感触を感じた。
其処で「良いぜ」と部長に言われ、目を開けて尻尾を見ると、取り付けられていたのは夢にまで見た尻尾アクセ!
何と、お洒落がしたいと言う私の悩みを知った風間部長が、私の為にクリスマスプレゼントを用意してくれていたのだ!
道理で昨日は部活を行わなかった筈だ。風間部長は空子先輩と一緒に探しに出ていたのだ、私へのクリスマスプレゼントを。
「鈴鹿さんの尻尾サイズに合う物を見つけるのに結構苦労しちまって、結局一日遅れになったけどな」と、苦笑する風間部長。
ああ、なんと言う風間部長の優しさ、何だか熱い物が胸に込み上げて……。
気が付いた時には、私はベアハッグで風間部長を締め落としてしまった所だった。
その後、必死に謝る私へ笑って許してくれていたけど。風間部長、空子先輩、本当にごめんなさい。そして本当にありがとう。
お二人から頂いたこのクリスマスプレゼント、ずっと大事にします。
―――――――――後編、大晦日編へ続く―――――――――――――
>>865 ×そして私立ちの到着を→ ○そして私達の到着を
869 :
Fist:2010/01/11(月) 13:38:25 ID:7af0/mpb
>>863 × ぼやく白先生へ蒲田君を預け、
○ぼやく白先生へ鎌田君を預け、
朱美の二の腕、地味に太ましいw
ちょっと怖い?w
白虎姉妹最高!!
梅
512kbまでだっけか、残り17くらいかな。梅梅。
梅っ!
>>859 おお良いイラスト
朱美頼りになるなぁ。コレッタかわゆい
>>860 干支引継ぎ式典見てみたいな
鈴鹿姉さん割とダメだw
お嬢マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
お嬢様!まだイラッシャラナイノデスカ〜? 遅刻しちゃだめだよぅ
梅ェッ
880 :
代理:2010/01/12(火) 16:35:04 ID:l30hQ2cT
茶夢ちゃん頭脳派www
一瞬だけ縦読みかと思って右の方を「もち一こ」と読んでしまったw
ルール厳格化は良くないよねー
お嬢様がかわゆいw君はそれでいいんだよお嬢様www
直接呼ぶのはあんまりよくないな
絵氏さんも無理しなくてもいいと思うんだぜ
最大って約500KBだよね?確か
最大は512までだぜ
502じゃなk
でも実際は500kbで書き込めなくなるんだぜ
というわけであと5kb
オプーナが梅にきてくれたようです。
|┃三 / ̄\
|┃ | |
|┃ \_/
ガラッ. |┃ |
|┃ ノ// ./ ̄ ̄ ̄ \
|┃三 / ::\:::/:::: \
|┃ / <●>::::::<●> \
|┃ | (__人__) |
|┃三 \ ` ⌒´ /
|┃三 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
, r ' " \ \:ヽ..、 v-─- コ:::::::\ヽ:ヽ,
, r '" _ __ _,..\-ァ \...、_/_\;:::::::::::::::_;;:::::::::::::::::::::ヽ、_
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/ 人 /`ー--- 、 .::::::::::::::::::::::::> ノ::://::::::::l ─ `ー" ─- |:/:::::::::::::::::::::::ヾ"
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