【俺は】GANTZの西君のお話【宇宙人だ】

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401創る名無しに見る名無し
402創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:02:43 ID:dHlmuYan
がいこつ星人
模型星人

特徴
つよい、こわい
口癖
バーーカ、ちょーだい
好きなもの
にんげん

宮城「は?人体模型とガイコツ?」

祐樹「理科室かッ!」

宮城「あッはッは…ッてつまんねェ…」宮城はいきなり笑いを止め真顔で言う

祐樹「ッせェなァ」祐樹は少し拗ねる

和哉「………」和哉は映ってる星人をただ見つめる

雄介「なんだよこれ…こんなの倒せるのかよ…」雄介は映ってる星人を見ながら言った

宮城「倒すしかねーんだ、やらなきゃやられる…」

安田「な、なンだよッ!!!こンなのがでてくるのかッ!?」安田は混乱しながら言う

ジャキッ
玉木「うし、久々だから腕がなるわ」玉木はやる気満々だ

新しい参加者は戸惑いながらもスーツをはく

ジジジジジジ…

安田「おわッ!なんだ!?」

和哉「安心しろ、転送だ、着いたらその場から動くなよ!」

安田「わ、わかッた!」

岩永「はいッ!」

洋子「怖いッゆりー私達大丈夫かな?」

ゆり「大丈夫…落ち着いて?」

玉木「安田ァ!そンくらいでぎゃあぎゃあ騒ぐンじゃねえよw」

安田「ああ!?うるせえッ!」

ジジジジジジ…

玉木「じゃ、先行ッてんぜ」

ジジジジジジ…

ジジジジジジ…………
403創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:08:58 ID:dHlmuYan
祐樹「ここは…」
転送が終わった、真っ暗で何も見えない、室内のようだ
宮城「Xガンにレントゲンのように見えるスコープがあるだろ?」
祐樹「あ、ホントだ、ここは教室か?」祐樹はXガンに付いてるスコープを覗いて言う
宮城「みたいだな、とりあえず電気付けるわ」

パチッ
宮城が教室の明かりのスイッチを押した、部屋は明るくなる
宮城「ずいぶんぼろいな…廃校舎かなンかか?」
祐樹「てか…他の奴らがいなくね?」宮城と祐樹以外の他のメンバーが見当たらない
宮城「いねえな…今回のミッションは初期配置がバラバラみてえだ」
祐樹「みンなが心配だ…新しいメンバーばかりだし…」
宮城「だな…そこらへん探してみッか」
宮城と祐樹は廊下に出た

祐樹「真っ暗だ…」
辺りは真っ暗で、何も見えない
洋子「きゃあああああああッ!!!」
真っ暗闇の中から新メンバー、岩永洋子の叫ぶ声がした
宮城、祐樹「ッ!?」

宮城「祐樹ッ!行くぞッ!」
祐樹「ああッ!!」
ダッ!!!

……………………
タッタッタッタッタッタッ…
随分走った、しかしどこかにたどり着く様子がない
宮城「なンだ…この廊下やけに長いな…」
祐樹の反応はしない
宮城「あ?祐樹ッ!?……いねェ…」

―――――――――

祐樹「ハアッハアッ…」祐樹が足を止めると扉があった
祐樹「ここか……あれ、宮城?」
宮城の反応がない
祐樹「はあッ!?一緒に走ッてたよな…どーなッてンだよ…」

祐樹は愚痴りながら教室の扉を開けた
ガラガラガラッ…
祐樹「洋子ちゃんッ!」
洋子は腰が抜けて地べたに座り込んでいた
洋子「あッ…ゆ、祐樹くんッ…」
祐樹「一人か?」
洋子「う、うん…ねェ…アレ…」
404創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:12:45 ID:dHlmuYan
洋子が指差す方向を見ると、教室のド真ん中で血だらけの二足で立ち、赤ちゃんの人形の様な物を抱いているウサギがいた
祐樹「なンだあれ…」

祐樹はXガンを構えた
カチャッ…
祐樹「………ッ」
狙いを定め、ガンを発射した
ギョーン

数秒後、ウサギの向こう側の壁が爆発した
祐樹「は!?ちゃンと狙ッたのに…」
どうやらウサギは実態がないみたいだった
するとウサギは抱いていた赤ちゃんの人形を床に置いた
するとウサギはスウッと消えていなくなった

ゾクゾクッ…
祐樹は肩に物凄い悪寒を感じた
祐樹「まずいッ…くるッ…!」
床に置かれた赤ちゃんの人形からいきなり雄叫びが放たれた

オオオオオオオッ…!!!

祐樹「……ッ!?」祐樹は最大限に警戒していたのだが気付くと赤ちゃんの人形は祐樹の足元にいる
不気味な顔で人形は笑った
その瞬間、人形の目から針が飛び出した
ブシュシュッッ…!!!
祐樹「グァァァァッ!!!!」飛び出した針は祐樹の太ももに突き刺さる

祐樹「クソッ…ざけンなよッ!!!」祐樹はガンツソードを取り出し、床ごと人形に突き刺した

グサッ!!!

祐樹「チッキショッ…」人形は動かなくなった、どうやら倒したみたいだ
祐樹の太ももからは血が流れる、激しい痛みが襲う
祐樹「クソッ…ハアハアッ…洋子ちゃん、針…抜いてくれねェか?」
洋子「う、うんッ!」
洋子は落ち着きを取り戻した様だったが、祐樹の怪我に少し戸惑う
突き刺さった2本の針は結構太くて長かった、針を抜くのは激痛を伴いそうだ
洋子「抜くよ…」
祐樹「ああ…頼むッ…」
ズブズブッ…
祐樹「ぐあッあああああッ!!!」
カランカランッ…
洋子「大丈夫?」
祐樹「あ、ああ…平気だ…」
(チクショウ…まともに走れねェかもしンねェ…)
405創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 06:58:22 ID:bUgOxVyA
ジジジジジジ………

「着いたか…みンないるか?」和哉が周りに言う
「いますよッ」「いますッ…」「います…」その場にいる全員が返事をする
和哉「今回はバラバラか…」和哉は少ないメンバーを確認し言った
「ここは…男子トイレ?」由美が辺りを見回しながら言う
雄介「狭いな…」
4人が転送されたのは明かりは付いているが狭い、個室トイレが4室、小便用が6つ着いてる男子トイレだった
「ここは…どッかの学校か?」和哉は警戒しながら辺りを見渡す
雄介「やけに古いですね…」
和哉はレーダーを確認するが、レーダーが使えない
「どうなッてンだ、レーダーが使えない…」和哉は何度もボタンを押すがレーダーは反応しない
すると突如、個室トイレの中から奇妙な音が飛ぶ
ガチガチガチガチッ!!!
「キャッ!!!」
「なンだッ!?なンかいるッ!気をつけろッ…!」和哉は音のした大便の個室にXガンを向けて言った

シーーン…………
音は止んだが、メンバー達の間に不気味な空気が流れる
和哉は音がしたトイレのドアノブを握った
「開けるぞ…」
ガチャッ、キィィッ…
和哉はXガンを構えながらドアを開け、中を覗いた
「何もいない…」
和哉は警戒しながら、便器の中を覗く、すると便器の中から大きな腕が延び、和哉の足を掴んだ
「うわッなンだッ!?」和哉は慌ててその場から離れようとするが腕はがっしりと和哉の足を掴み離さない
大きな腕は和哉を便器の中に引きずり込もうとする
ズルズル…
「クソッ!」和哉の身体は少しずつ便器の方にひきづられる
和哉はとっさにガンツソードを取り出し、大きな腕を斬った

ブシュウッ!!!
ギャアアアアアアア!!!!!!
悲痛な叫び声が響き渡る、大きな腕は和哉の足を離し便器の中へと戻っていった
和哉「あッぶねェ…」
雄介「な、なンだいまのッ!」

ギョロッ!!!
すると便器の中から巨大な目玉がこちらを覗いた
由美「きゃあああああッ!!!」
「みンなッ!!!一旦逃げるぞッ!!!」
「は、はは、はいッ!!!」「きゃあああッ!!!」「いやああああ!!!」
和哉の合図とともに全員は一目散に逃げ出す
406創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 06:59:15 ID:bUgOxVyA
バンッ!
和哉「こッちだッ!!!」
4人は和哉の言う方向に走り出す
タッタッタッタッ!!!
ハアッハアッハアッハアッ…

雄介「うわッ!!!」
和哉「どうしたッ!!!」
雄介「ま、前ッ!なンかいるッ!!!」

ミシッ…ミシッ…
和哉「チッ…」
前からは身体中から変なミシミシ音を立てながらゆっくり歩いてくる人体模型がいた
「なッ、なにあれッ!ああいうのほんと無理なンだッてば!!!」由美は本気でビビりながら言った
「きゃあああッ助けてェェ!!!」ゆりはもはや混乱して騒いでいる
「落ち着けッ!そこの部屋に入れッ!!!」
すぐ横には扉があり、4人はそこに逃げ込む
バタンッ、カチャッ
和哉はすぐに扉を閉め、鍵をかけた、すると扉の向こうから声がする
「おーーい、ちょーだい」
ドンドンドンドンッ!!!
ドンドンドンドンッ!!!
人体模型の星人は扉を叩きながら何か言っている
「ちょーだい〜」
ドンドンドンドンッ!!!
ドンドンドンドンッ!!!
ドンドンドンドンッ!!!
ドンドンドンドンッ!!!
シーーン……
扉を叩く音が収まった
ゆり「なによアレ!?もう帰りたいよッ!!!お母さ〜ん!」
雄介「今の奴ッ!あの黒い玉に映ってた奴ですよね!?」
和哉「ああ…映ってたな…」
雄介「て事はあいつを倒さなきゃいけないンですよね!?」
和哉「そうだ…」
雄介「倒せるンですかッ!?」
和哉「わかンねェ…でもやるしかねえンだ…みンなで協力すれば…イケるはずだ、今までもそうやッて乗り越えてきたッ!!!」
その場でみんな沈黙し喋らなくなった
ゆりは泣いている
和哉「とりあえず…他のメンバーが心配だが、しばらくここで様子を見よう…」
407創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 07:20:42 ID:bUgOxVyA
ジジジジジジジジジジ…

「あ?真っ暗だな…」玉木は辺りを見渡す
「ど、どこだここッ!」安田はまだ挙動不審で騒ぐ
「ちょッと黙れッ、みンないッか?」玉木は冷静にそう言う
岩永「はい、います」
カチッ
玉木は部屋の明かりを付けた
玉木「ンだよここ…理科室か?」
部屋は薄暗く、理科室独特の雰囲気をかもしだしている、ピチョンと水滴の垂れる様な音も聞こえる
理科室には玉木、安田、岩永さん、市橋の4人がいた
玉木「なンだよ…バラバラかよッ」「だ、大丈夫なンですか!?」岩永はいきなりの展開に必死で玉木に問い掛ける
「あ?大丈夫ッつーか…星人いるかもだから注意しろよ」玉木は岩永の言葉に適当に返事する
岩永「…はいッ!」
「ま、おめェら頑張れよッ!」
スゥッ……
玉木は一人でステルスに入り、理科室から姿を消す

「ええッ!?玉木さんッ!!!」
「置いてくなよてめェッ!」
しかし玉木の声はもうしない
「勝手な野郎だなァ、あの部屋にいる時からあいつは気にくわねェ」安田は自分勝手な玉木の行動に愚痴をこぼす
バンッッ!
安田は椅子を蹴飛ばした

カサカサカサ
「…ん?何か変な音しません?」岩永は微かに聞こえた音に反応する
安田「そうか?」
すると明るい理科室に何か巨大な黒い物が動いていた
岩永「うわッ!!!!!!」
そこには長い触角、黒くて体長1mもあるゴキブリだった

カサカサカサカサカサカサ
ゴキブリは物凄いスピードで理科室内を動き回る
すると理科準備室から次々と巨大化した昆虫が飛び出してくる
安田「ム、ムカデッ!!!」
岩永「わああああああ!!!」
安田「チキショウッ!!!」

ギョーンギョーーン
安田は驚きながらも冷静さを保ち、虫にXガンを撃つ

ババンッッ!!!
ピギャァァァァアア!!!
虫は奇声をあげる
「岩永のオッサン!!!銃で撃てェ!!!」
「ハッ、ハイッ!!!」岩永もすかさずXガンを撃った
ギョーーンギョーーン
バババンッ!!!
ギョーーンギョーーン

「ハアハアハアハアッ…俺らでも結構やれるなッ!」
「やればできますねッ!」
「よくやッたなァ、俺らの勝ちだッ!ガッハッハ」安田と岩永は昆虫の怪物をなんとか全滅させた
408創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 07:22:32 ID:bUgOxVyA
「そういえば…市橋さんがいませんね…」
「あの野郎、逃げやがッたな、みッともない野郎だ」
「それにしてもなンで虫があンなに…」
「理科準備室からだな…入ッてみるか…」
二人は虫が沢山出てきた理科準備室に恐る恐る入る
「なンだよこりゃ……」
理科準備室には大きな繭があった、体長3mはある
二人はア然として繭を見ていた
すると繭にヒビが入り、中から巨大な黒い蝶が姿を現す
「羽化まで待つほどお人よしじゃないぜ…」そう言い、安田が銃を構えようとした瞬間だった
岩永「か、体が動きませんッ!」
安田「なにィ!?ッてクソッ!俺もだッ!」
巨大な黒い蝶はよく見ると顔だけ人間に似た様な姿をしていた、とてつもなく不気味な姿をしている
安田達の周りにはキラキラした粉が舞っていた

安田「…クッ!この粉が動けない原因かッ!?」

星人「ふふふふふふふふふ」
蝶の星人は不気味な笑いを浮かべると岩永の体に止まる
そして、口から長い管を出し、岩永の首に刺した
岩永「うわああァァァァッ!!!やめてくれェェ!!!」

じゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅる
安田「あ……あああッ……」
岩永の体は見る見る痩せ細っていった
409創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 07:23:37 ID:bUgOxVyA
バリボリバリボリ!!!
星人は血を吸いきって痩せた岩永の体をそのままバリボリと喰い散らかした
星人「ふふふふふふふふふ」
岩永は死んだ、そして次は安田に近付いてくる星人
安田「や、やめてくれェェェ!!!」

タッタッタッ…ザンッ!!!
ブシュゥゥゥゥゥッ!!!
突如、星人の胴体から血が吹き出る、星人はそのまま床に落ちた

バチバチバチバチッ!!!

突如、何もない場所から音がし、ガンツソードを持った祐樹が姿を現した
「大丈夫かッ?」
「た、助かッた…!!!」
「あンた…一人か?」祐樹は安田に問い掛ける
「玉木とか言う奴と岩永のオッサンと市橋がいたンだが…玉木の野郎と市橋は勝手にどッかいッちまうし、岩永のオッサンはこの星人に喰われちまッた…」
「……えッ?」すると洋子は涙を流しながら安田に詰めかかる

「お父さんはッ!?ねェッ!!!死ンだッてなによッ!?」
「………」
洋子は何も言わずに下を向いている安田を見て、全てがわかった様だった
泣きながら祐樹に抱き着く
「お父さんッ!お父さァァァんッ!!!」
祐樹は号泣する洋子を何も言わずにそっと抱きしめる
「俺が…もう少し早く助けにきていれば…」
思う存分泣き喚いた洋子は少し落ち着きを取り戻した
「グスッ…」
「洋子ちゃん、辛いのはわかるけど、今は星人を倒さなきゃなンねェ…わかるな?」
「制限時間があるンでしょ?」
祐樹「ああ」
「わかッた…」
「祐樹、おめェ…怪我してるじゃねェか…」安田は祐樹の足を見て心配して言う
「ああ、これか…応急処置したし少し休ンだからもう大丈夫だ」
「そうか…助けてくれてありがとなッ」
「礼なンかいいッて…それより他のメンバーともなンとか合流しねェと…みンな無事でいてくれッ…」
410創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 10:40:04 ID:uaT3DQ3b
セリフにカタカナがあるのは何か意味あるの?見にくいんだけど
411創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 17:37:55 ID:VJrr/2Ci
まだかルタボウ
412創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 22:24:27 ID:0BMdtAN5
絶対規制解除されてるはずなのに一言も書きにこないとかないわ
まだ待ってる俺も俺だが
413創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 03:44:56 ID:eRGQaAFJ
代役買ってる人ありがとね
414創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 20:13:42 ID:Ij4mgiKB
ルタボウは最悪の裏切り者
415創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 11:38:55 ID:SzjdAQ/y
間違えてる人もいるけど「ルタボウ」じゃなくて「ルダボウ」だよ
416創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 23:16:11 ID:H0CJPtsS
続けないなら続けないでいいから
やめる、その一言がほしい
もう待つことに疲れた
417創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 22:06:11 ID:AoA1+2PY
かえってこいルダボウ!!!!
418ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:01:35 ID:YCyxZ5Rq
みなさん、大変お待たせしてすいませんでした。
みなさんに言わなくてはならない事を言う前に
まず最新話を投下します。
419ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:02:52 ID:YCyxZ5Rq
0021 不発

黒い玉に表示された奇天烈な画像と文章。
初めて部屋に来た者たちはそれぞれの反応を見せた。
ある者は戸惑い、ある者は怒り狂った。
「ざけてンのか、おい!!!!これ、動かしてンの誰だ!殺すぞ!!!!」
ホッケーマスクはライフルを振り回しながら答えを求めた。
だが、それに対して、誰も答えないので、ホッケーマスクの苛立ちは更に募った様だった。
黒い玉はまるで目の前の人間たちをあざ笑うかの様に新しい画像を表示した。
「あ………画像、変わッたぞ」と南が言う。


フッ


てめえ等は今からこの方もヤッつけに行ってくだちい

すちーる星人
好きなもの パンダ
嫌いなもの 青空あきお
口ぐせ ふにょふにょふにょ


「ンだよ、今回、星人2匹居ンのか?」
「前にもこんなトキあッたよな」
「………ふぁいやー星人とすちーる星人………どッかで聞いた事ねェ?」
「ねェよ」
420ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:04:50 ID:YCyxZ5Rq
「おい、てめェ等!シカトすンじゃねェ!!!!」

ホッケーマスクが南たちの会話を遮った。

「一体、何がどーなッてんのか、説明しやがれッ!!!!」
「……何がどーなッてんだ?」と、南が隣に居る茨木に言った。
「オレも知らね、ぶぶッ」
「何がどーなッてンんの?」今度は河内に。
「………さァね」
「だッてよ」
「てめェ等、マジ死にてェらしいな」ホッケーマスクはライフルを南の頭に向けて構えた。
「頭ぶち抜かれたくねェなら、洗いざらい喋れッ!!!!」
「だから言ッたッしょ〜。知らねェものは知らねェのッ!」

ホッケーマスクは引き金を引いた。
だが、何も起こらなかった。ただ、カチカチと音が鳴るだけだった。

「…あ!?なンだ、これ!?」
「どーかした?撃たねェの?」と、南は爆笑するのを堪えながら言った。
「クソッ!!!!クソッ!!!!クソッ!!!!クソッ!!!」

ホッケーマスクは何度も引き金を引いたが、ライフルからは何も発射されない。
南はホッケーマスクの慌しい動作が可笑しくて仕方が無いのか、とうとう笑いが零れた。

「ハッハッハッ、こいつ、おもしれー!」
「てンめ…………ッて、おい、そこのお前!!!!!」

ホッケーマスクはコンビニの若い店員が黒い玉の陰に隠れて、携帯電話を弄くっているのを
目敏く見つけて、ライフルを構えた。
421ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:05:58 ID:YCyxZ5Rq
「何、勝手に電話しよーとしてんだ、クソがッ!!!!」
「あッ、あッ、いや、でもッ」
「あッあッじゃねェッ、警察呼ぼーッてんだろッ!!!!」
「でもでもでもッ、あッ、はッ、これッ、電話ッ、通じませんッ!!!!!」
「そんなん言い訳になると思ッてんのかよッ!!!!てめェッ、マジでッ、てッうおッ!?」


黒い玉の両端がスライドされた。
この前と全く同じだった。
この黒い玉の部屋で行われる事は殆ど前回と同じ。
前回と違う事は、当たり前だが、前回の時には居なかったメンバーが居るという事。
そして、その新しいメンバーの分のスーツケースが用意されているという事だった。

西は、ホッケーマスクと他の人間のやりとりを他所に、その事を頭の中に留めていた。
点数を稼ぎたいという目的はあるが、それとはまた別に黒い玉の正体も知りたかった。
誰が何の意図を持って黒い玉を作り、そして死んだ人間を収集して、こんな事をさせているのか。
これまで誰もそれを突き止めていないならば、自分が最初に突き止めればいい。
西には、自分にはそれが出来るという根拠の無い自信があった。
他のメンバーが黒い玉に踊らされている中、自分はそうではないという思いがあった。
その自信が何処から湧いてくるのか、西本人にも定かではなかった。
中学生特有の一般社会を斜めに構えて見てしまう生意気な思考回路のゆえか。


「ねー、ねー、西くん!西くん!」


玄関の方から、ホステスのアカネの自分を呼ぶ声がした。
422ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:07:45 ID:YCyxZ5Rq
「西くんッ!!ちょッとッ!!聞いてる!?」
「あァ?ンだよ………ンでオレ?」西は呆れた様に言った。
「今、あの玉、開いたでしょ!あたしの分のスーツ、取ッてきてよ!」
「ンなン、自分で取ればいいだろ」
「あたし、今、メイク中なんだよッ!!!いいから取ッてこいッつーの!!!!」
「おまえの事情なんか知らねーし」
「クソッ、ンだよッ、使えねェガキだな!」

「わぁあああぁぁぁあああッ」と、部屋の方で悲鳴があがった。
視線を部屋に移す。コンビニの店員が大騒ぎしていた。
彼の頭が徐々に消え始めているのが、彼自身認識できたからだった。
他の新参者もそれを呆然と見やっていた。

「………移動始まッたぜ」
「マジかよッ、クッソッ、やべッ!!!!」とホステスのアカネは舌打ちした。
「なンだ、おい……どーなッてんだ、これ!!!!」

ホッケーマスクも何が何だか分からない様だった。
コンビニの店員が消えていく様に呆気に取られていた。


ジジジジジジジジジジジッ


「あーッ、もーッ、ダメだッ、間に合わないじゃんッ!!」

アカネは化粧を中断し、部屋の方に駆け込んだ。
西の横を通る時、顔を見たが、左側の眉しか描けていなかった。
423ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:09:23 ID:YCyxZ5Rq
アカネが黒い玉に近寄るところで自分の頭が消え始めるのが分かった。

「お………次はオレか……」


ジジジジジジジジジジジジッ


視界が部屋から別の場所に変わった。
目に映ったのは、電車の駅構内らしかった。

「何処だ……ここ……」

駅構内を見回す。『多摩川駅』という表示が目に入った。
東急東横線の『多摩川駅』らしい事が分かった。


ジジジジジジジジッ


他のメンバーの移動も始まった様だった。
先を越されまいと西は星人を探す事にした。
他のメンバー、特に和泉に点数を取られたくない。

(よし………やるか………)


ガシャコッ


西は銃を手にした。

(この前の様にはいかねェぞ……さァ、来やがれ!)


0023に続く


第2回ミッション(ふぁいやー星人・すちーる星人編)
ステージ:東急東横線多摩川駅〜新丸子駅間

参加メンバー
●常連(6名)
和泉、河内、南、茨木、西、アカネ
●初参加’(7名)
亀田興毅、山村茂(大学教授)、内田(大学生)
中年女性(コンビニの客)、若い男性(コンビニの店員)、ホッケーマスク(コンビニ強盗)、渡辺
計13名
424ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 01:11:28 ID:YCyxZ5Rq
先ずは今日までお待たせしてしまった事をお詫び致します。
本当に本当に申し訳ありませんでした。
信じてもらえるかどうか分かりませんが、僕は逃げるつもりはありませんでした。
勤務先の会社で色んな事が重なって、僕自身心身ともにボロボロだったんです。
その色んな事をここで書いても仕方が無いので省略してしまいますが、
その色んな事の積み重ねから、僕は鬱に近い状態になってたんです。
自分で鬱って言えるなら鬱じゃないかもしれませんけど、
それに近い位にしんどくなってたという事です。
それが間の悪い事に、ここの小説を書いている時だったのですが、
そういう事情があったにせよ、みなさんをお待たせしてしまった事に変わりは無いです。
みなさんのお怒りはごもっともですし、僕はそれをちゃんと受け止めます。
その償いとしては、この小説を続けて、出来るだけ出来るだけ面白いストーリーを提供する以外にないと考えます。


みなさんに今日までお待たせさせてしまって本当にすいませんでした!
そして、僕の代わりにお話を書いてくれた人たちにもお礼とお詫びを申し上げます。

それと>>424で「0023に続く」と書いてしまいましたが、
正しくは「0022に続く」でした。すいません。
425創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:12:09 ID:cC6JaDig
待ってたぜ!
426ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 10:33:38 ID:qNhsDf6/
こんにちは。
早速ですけども最新話(0022)を投下します。
427ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 10:34:22 ID:qNhsDf6/
0022 うっち〜


一方、黒い玉の部屋にいる新参者はただ呆然と立ち尽くしていた。
ホッケーマスクにド突かれて床で転げ回っている亀田を除いて。
そこに顔半分だけしかメイクしていない金髪の女が駆け込んできた。

「クッソ………マジかよ………もうこんだけしか残ッてねーじゃん!」

と、意味の分からない言葉を吐きながら、黒い玉の両端からスライドされた棚に駆け寄る。
そして、幼稚園児が書いたと思しき落書きがついている白いケースを手に取る。

「……あれ、これ、違ェや……」と言い、そのケースを放り投げる。

そのケースには平仮名で文字が記されていた。『しっくすせんす…』と読めた。
何を意味するのか、分からなかった。
内田は山村の方を見やるが、山村も何が何だか分からない様子だった。
コンビニの若い男性店員にしても、中年女性にしても同様だと悟った。
そして、先ほど、ホッケーマスクにライフルを突き付けられた女性は部屋の隅で縮こまっていた。

「………あの……」

内田が声を掛けると、女性はビクッと肩を動かした。

「…………だいじょうぶですか?」

女性は内田を得体の知らないものを見る目で見上げてきた。
いきなりコンビニ強盗にライフルを向けられればそれも仕方が無いだろう。
女性の名前も分からないが、この様子ではそれも聞き出すのは難しい。
428ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 10:35:24 ID:qNhsDf6/
内田は女性から今度は金髪の女に視線を移す。
金髪の女は白いケースを幾つか放り投げて、やっと目当てのケースに辿り着いたらしかった。

「あー、あッたあッた!!!!」

そう言って、『ほすてす』と書かれたケースを手に取る。
彼女なら何かを知っているのかもしれない。内田はそう直感した。
少なくとも、金髪の女は今の状態に恐れを感じていない。
この事態の何かを知っているからに他ならない。

「あ、あの……」

内田が声を掛けようとしたが、そこでホッケーマスクが咆えた。

「てめェ、コラ、ちょッと待て!!!!」
「あ?」金髪の女は険しい目つきをホッケーマスクに向けた。
「何なんだ、おめェらは!!今、どーなッてんだ、説明しろ!!!」
「おまえこそ何だよ!!ヒトにモノ訊く時は口の利き方考えな、このボケ!!」
「てめ………死にてェのか、この………あ!?」


ジジジジジジジジジジジジッ


ホッケーマスクはそこで異変に気づいた。
自分の頭が消え始めている事が分かったのだろう。

「うわッ、ンだよ、これッ!!!!」
「あ〜あ、スーツなしだよ、知〜らねッと♪」

金髪の女は半ば嬉しそうに、ホッケーマスクが消えていく様を見て言った。

「あッと、こンなことしてる場合じゃないや」

金髪の女はそそくさと玄関の方に歩いて行った。内田は後を追った。
429ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 10:38:07 ID:qNhsDf6/
金髪の女は何を思ったのか、服を脱ぎ始めた。
少し躊躇ったが、内田は声を掛けた。

「あ………あの……」
「ん?あんた、誰だッけ?」
「……あ、あたし………」
「あれ、前回、あんた居たッけ?」
「………前回?」
「んッと……ここ来たの初めてなんだよね」
「ああ…………はい……あの……」
「んじゃあさ、あの黒い玉……そこにあんたの分のケースあるから」
「……あたしの分?ケース?何のことですか?」

金髪の女はボリボリと頭を掻いた。

「説明すンのメンドくせェから、とにかくケース取ッてきなよ」
「あの………ここ、何処………ですか?」
「さァ………東京のどッかでしょ…東京タワー見えるし」
「…………何であたしたち、ここに?」
「あたしだッて知らないよ、そンなこと!」

そう言うと、金髪の女はケースを開いた。
そこには、妙な黒いスーツがしまってあった。

「マジ、これ着なきゃなんねーのかよ……ダッセーなァ」

そういえば、居なくなったメンバーの中に黒いスーツを着ていた人間が数名居た。
あのスーツを着て、何処に行くというのだろうか。
金髪の女は、自分のスーツケースを取って来いと言った。
何故、この初めて来た場所に自分のスーツケースがあるのだろう。
内田はそう思いながら、部屋に戻って、黒い玉の棚を見やる。
自分の分のケースなんてあるわけがない。そう思いながら視線を動かす。

……あった。フルネームではなく、何故かニックネームが書かれたケース。
『うっち〜』と幼い子供がクレヨンで書いた様な文字が目に映った。

「……なンなの、これ……」
430ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 10:40:32 ID:qNhsDf6/
「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

中年女性が悲鳴を上げた。振り返ると、彼女の頭が徐々に消え始めていく。

「………なに、これ……どこ、ここ!!?」
「……どーなッてんの…これ、一体何が……」

スーツを着て、何かをしにいく。
金髪の女がさっきホッケーマスクに放った言葉を思い出す。


(あ〜あ、スーツなしだよ、知〜らねッと♪)


スーツが無いと危険なんだろうか。
そのスーツはケースの中に入っている様だが。
黒い玉に表示された文章の中に気掛かりになるものはあった。


(てめェ等は今からこの方をやッつけに行ッてくだちい)


……やッつけに行く?ホントに?これ、映画じゃないの?


内田の中で何かがカチッと鳴った様な気がした。
目の前にとてつもない危険が迫った事を知らせる音。
この直感を信じるべきなのだろうかと迷う。
だが、決断を下す前に体が動いた。ケースを取って玄関に向かう。
金髪の女は既に消えていた。
信じられない事ばかりが続く。だからこそ信じなければならない事がある。
多分、金髪の女が言っていた事を信じなければ………。
その先のことは敢えて考えまいとした。
431ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 10:42:20 ID:qNhsDf6/
「えーと………このケースを………あッ!あッ!?あれッ!!?」

目の前のケースが消えた。いや、正確には消えたのではなかった。
先程までは黒い玉のマンションの玄関に居たのに、今は何処かの電車の駅構内に居た。


ジジジジジジジジジジッ


「……な、なに、これ…………!?」

下を見やると、まだ自分の身体全てがその場所に出現していなかった。
しかし、徐々に徐々に身体が描かれていく。
一体、どういう技術を持てばこんな事が出来るのだろう。

「………ここ……何処なんだろう……」

そう思う間もなく、電車が到着した。

『多摩川駅、多摩川駅、ご乗車ありがとうございます』
「………多摩川?東京?」

一瞬にして、黒い玉の部屋から多摩川駅に移動してきたという事か。
誰が何の目的でこんな事をしているのか、内田には見当も付かなかった。


0023に続く
432創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 11:10:38 ID:BKd0krD+
最高!ルダボウは神!!
433ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/22(月) 20:28:18 ID:sTWtgED/
続き(0023)は日曜に投下する予定です。
第2回ミッション、頑張って面白くします。

>>432
ありがとうございます。
でも、僕は普通の人間なんで、神じゃないです。
434創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 00:42:59 ID:J/tyuJjp
いやっほう待ってた甲斐があった
そちらの事情を知らずにいろいろ言ってすまんかったね
半年ぐらいなら待てるから完走頑張ってね
435創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 14:47:55 ID:UwxE45En
おかえりルダボウ
あまり無理はするなよ
436創る名無しに見る名無し:2010/03/28(日) 11:08:12 ID:KjumgEgQ
(・∀・)わくわく   無理はするなよ。 何日でも待つ
437ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 15:51:35 ID:lBCDszIS
0023 大接近


西は多摩川駅のホームを見回した。星人らしき姿は見られない。
残業を終えて疲れた顔をしているサラリーマン、いつまでも駄弁っている女子高生、
これから痴態を繰り広げようと意気込んでいる頭の悪そうなカップル等等。
ホームには今日という一日を過ごしてきた人間の顔が行き交っている。

このまま立ち止まっていては見つからないだろうと思い、改札口に繋がる階段に向かう。
最中、手にしているレーダーを見やったが、星人の位置を捉える事は出来ない。


(どーなッてやがんだよ…………何処だ?何処に居やがんだ?)


前回のジーンズ星人の時の事を頭に思い浮かべる。
ジーンズ星人は、人間の中に溶け込み、その正体を隠していた。
今回も同じであるのかもしれないと踏んだ西は目の前の人間たちを睨む。
星人と即断できるものは何も目に映らない。変わらない駅のホームの光景。

ある疑問が西の頭を過ぎる。
星人は黒い玉の部屋から送られた人間たちをどうやって見つけているのか。
黒いスーツを着ていればそれは明らかだが、スーツを着ない者も居る。
仮にスーツを着ない者しか送られてこなかった場合、星人は見つけられるのか。
答えはイエス。前回、スーツを着ていなかった時点で、星人に発見されたからだ。

では、どうやって星人は黒い玉の部屋の人間を発見しているのか。
臭いをかぎ分けるのか、音を聴きつけるのか、目で探すのか。


(……音……か……)


前回、危うくエリアの外に出そうになった時に、頭の中から音がした。
頭の中に埋め込まれている爆弾が果たしてただ爆発するだけのものでしかないのか。
否。何か目には直接見えないものを発信しているのだとしたら。
それが何なのかは定かではないが、星人はそれをキャッチしているとすれば話は簡単だ。
星人が敵意を持つ様な電気信号であれば、星人がいきなり攻撃してくる説明もつく。
全くの推論でしかないが、的外れであるとは思わなかった。

つまり、今こうして立っているのは非常にまずいという事だ。
ただ、突っ立っているだけだが、頭の中から信号が発信されている。
星人にむざむざ自分の位置を晒している。それ、狙ってくれといわんばかりに。
しかも自分には何処から星人が襲撃してくるのかを正確に知る術はない。
今、手にしているレーダーも、大雑把にしか星人の位置を捉えられないときている。
遅かれ早かれ星人は必ず自分の目の前に姿を現すだろう。
だが、星人の方から来るのか、自分の方が星人の方へ行くのか。
それだけでも、随分と違ってくる。星人に発見されるつもりはない。

小型の機械を操作する。
438ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 15:52:40 ID:lBCDszIS
バチバチバチバチバチッ



火花と共に、自分の全身が周囲に溶け込んでいく。
星人は頭の中の何かから発信されている信号をキャッチする。
だが、正確な位置が判るとも思えなかった。これだけの人がいる。
星人が自分を探す時間に隙が生まれる。そこを突く。

和泉。もう星人と出くわしただろうか。
何度、あの部屋に呼ばれているのか判らないが、和泉は相当の経験を積んでいる。
和泉の薄気味悪い笑みが頭に浮かぶ。和泉の上から目線がどうも気に入らなかった。
おまえの上に立つのはオレだ。
それを証明するには、和泉よりも点を稼ぐ事だ。

銃をぎゅっと握り締める。何か音がする。
駅のホームの中で、決して聞こえる筈の無い音。



(ンだ……この音………?)



パカラッ  パカラッ  パカラッ  パカラッ



直感で星人が来たと思った。
銃を構えた。音が次第に大きくなっていく。



(来い……来い………オレが……おまえをやる!!!!!)



パカラッ  パカラッ  パカラッ  パカラッ


音が止まった。
439ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 15:54:41 ID:lBCDszIS
ジジジジジジジジジジジッ



「………あァ?なんや、ここ?」

亀田は呆けた顔で周囲を見やる。
さっきまで、可笑しな黒い玉の部屋に居た筈だ。
どういう事か、今は電車の駅のホームに居る。

「……どーなッとんねん、やッぱテレビか、これ?」

激しい痛みを感じた。まだ鼻がズキズキする。
ホッケーマスクにド突かれた痛みは消えていない。
テレビ番組の企画だとしたら、もう少し手加減する筈だ。
オレがプロボクサーだからといって、そこまでする必要ながあるのか。

「……………鼻血が止まらんわ………クッソッ………あのボケ、覚えとれよ」

止血するものが無いか、ポケットを探る。
何も無かった。よく考えると、ここに連れてこられたのは試合終了直後だった。
近くに駅員が居たので、歩み寄る。

「オッサン、すまんけど、ティッシュ持ッてへんか?このとーり、鼻血がダラダラやねん」

しかし、駅員は答えなかった。亀田の方をちらりとも見ない。

「コラ、オッサン!オレを誰だと思ッとるんじゃ!!!!」

全く反応なし。どうなっているのか、サッパリ判らなかった。
殴りたかったが、思考が上手く働かなかった。
鼻血のせいで、呼吸が上手くいかないせいだろうか。
何とかして止めたかった。駅員を殴るのはその後でもいい。

「今日はほんまついてへんわ……」

そう呟きながら、歩く。誰も亀田には目もくれない。
まるで見えてないかの様だった。
見えていない。自分は死んだのだろうか。
440ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 15:56:15 ID:lBCDszIS
そう考えて、ゾクッとした。
ランダエダ側のセコンドの誰かに頭をかち割られたのは覚えている。
正直、自分は死んだと思った。
その次の瞬間には黒い玉の部屋に居たのだ。


(オレ……マジで死んだんか?)


可笑しな事ばかりが続く。しかし、これが死後の世界だとすれば…。
直ぐに亀田はくだらない考えを打ち消そうと首を振る。


(アホらし………オレが死ぬわけないやん……まだ童貞やし)


亀田には目標があった。芸能人の女とセックスする事。
プロボクサーを目指したのも、それがひとつの理由だった。
出来れば、新垣結衣としたかった。


(へへ……ガッキーとヤるまでは絶対死なへんで……死んでたまるかい……)


鼻血で喉が詰まりそうになった。堪らずに吐いた。


(あ〜……誰かマジティッシュ持ッてへんのかい!!!!!)


そこでトイレに行く事を思いついた。
この際、トイレットペーパーでも構わない。
そう思った矢先に、見知った女が目に入る。
確かあの黒い玉の部屋に居た女だった。
女は戸惑い気味に白いケースを手に、周囲を見回している。
白いケースには、幼稚園児が書いた様な文字で『うっち〜』とあった。
441ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 15:57:49 ID:lBCDszIS
パカラッ………


音が止まった。
西は手にしているレーダーを見た。
1体……いや、2体の星人が直ぐ近くに居る。
視線を左右に素早く動かす。
右端に妙なものを捉えた。
ゆっくりと顔をそっちに向ける。

「……ンだ、あれ……?」

思わず声に出た。


ヒヒヒィーン!!!!


やってきたのは、馬だった。そして、その馬に侍が跨っている。
侍の顔は、黒い玉の画面に映ったものと同じだった。ふぁいやー星人。
黒々とした髪、歌舞伎役者かと見紛う様な白い顔。目と唇の周りは赤く染まっている。
ふぁいやー星人は馬から降りて、何かを探していた。
西は直ぐに自分を探しているのだと思った。
矢張り、星人も大雑把な位置しか捉えられないのだろう。
まさか、直ぐ目の前にいるとは思うまい。
ふぁいやー星人は腰に刀を据えている。だが、まだ刀そのものは鞘に収まったままだ。


(使わせる前に………奇襲してやるぜ)


ゆっくりと足を動かす。
同時に銃身の長いXの銃を胸元に寄せる。
気のせいか、心臓の鼓動が少し速くなったと思った。
星人はまだ気づかない。
西は星人の直ぐ後ろで立ち止まった。
442ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 15:58:54 ID:lBCDszIS
星人は背後に自分が居る事とは思いも寄らないのか、
間抜けにも敵に背中を向けたままだった。
西は笑うのを堪えた。
銃を構える。侍を先に撃つか、馬を先に撃つか。
少し考える。銃口を侍に向ける。
馬は知能が低そうだし、侍が先にやられても、馬がどうにかするとは考え難い。
逆に侍は人間と同等の知能があるのかもしれなかった。
馬が撃たれた瞬間、西の位置を見極めるかもしれない。
先に撃つのは侍だ。この決断に迷いは無かった。
照準を侍に合わせる。まだ気づいている様子はない。
視界の端に、何かが映った。
星人に銃口を向けたまま、そちらを見る。
和泉が階段をあがってくるのが分かった。


(クソ………和泉の野郎だ……)


西は舌打ちしたくなったが、止めた。
和泉に掛かれば、星人はあっさりと倒されるだろう。
その前に、自分がこの侍の星人を仕留めてやる。馬もだ。
和泉はまだ侍にも馬にも気づいていない。
レーダーを見ながら、星人を探している。
西は決心した。撃つ。星人を撃つ。仕留める。


キュィィィィィィィィン


(やれる………やれるぞ………オレが仕留める!!!!)


引き金に指をかける。
グッと力を込めた。


0024につづく
443ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/03/28(日) 16:02:21 ID:lBCDszIS
最新話(0023)を投下しました。
次回は次の土曜か日曜の予定です。

>>434 >>435 >>436
どうもありがとうございます!
お待たせしてしまった事は謝っても謝り切れませんが、
少しでもみなさんに面白いと思ってもらえる様に頑張ります。
444創る名無しに見る名無し:2010/03/28(日) 19:05:16 ID:AFJwk7NZ
読んでてワクワクした
やっぱりルダボウはすごいな
445創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 14:44:04 ID:hD9ATXwZ
このまま西が失敗して、和泉が仕留めるって展回かな?
しかしおもしれーなー
446創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 17:39:04 ID:jqxixjQW
比べたら悪いけど、公式の小説よりもよっぽど
こっちのほうが面白くて好きだな
447ルダボウ:2010/04/03(土) 20:00:18 ID:4YwIgL7N
すいません。
最新話投下しようと思ったら、アクセス規制されて書けません。
せっかく再開したのに申し訳ないです。
早めに規制解除されるのを望んでいますが、それが長引く様であれば、
別の方法で発表できないか考えてみます。
感想レスしてくれた方々、どうもありがとうございます。
448創る名無しに見る名無し:2010/04/06(火) 00:21:23 ID:e8IGWkKN
嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
449創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 20:30:36 ID:WRipnVBk
ルダボウ待ってるぜ
450創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 20:08:11 ID:KV+mSer3
オイオイ…

追いついたと思ったら…
451ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:52:56 ID:K3+F9ePx
テストです。
452ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:54:06 ID:K3+F9ePx
0024 不動の策


グッと力を込めた。


(いける!!いける!!今だッ!!)


探していた星人を先に仕留められたら、和泉はどう思うだろう。
その時の和泉の反応が楽しみだった。それしか頭に無かった。
だから、馬の姿をした星人の奇妙な動作に気付くのが数秒遅れた。


クンッ  クンッ  クンッ  クンッ


馬は長い首を垂らして、地面を丁寧に嗅ぎ回っていた。
馬の鼻は西が侍の星人に接近した軌跡をなぞっている。
心臓の鼓動が急激に速まっていく。


(………ンだッ、コイツッ、なにやッてン…………まさか…)


馬が西の現在位置から3歩ほど離れたところで動きを止めた。
軽く唸り声をあげる。

「ヒヒヒヒッ!!!」

馬の声に、西はビクッと肩を震わせた。声は出さなかった。
だが、無意識のうちに、馬から離れようと後退した。


カンッ


何かが足に当たる。
何時からそこにあるのか気付かなかった。
見やると、コーラの空き缶。
僅か。ほんの僅かな音。
だが、侍の星人はこれを聞き逃さなかった。
侍は勢い良く振り向く。
同時に既に鞘から刀を引き抜いていた。
453ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:55:29 ID:K3+F9ePx
「曲者ッ!!!!!!!!!」

西は、風を切る音を聞いた。
直ぐ目の前で何かが横切る。見えない。
何かが横切ると同時に、身体に衝撃が伝わる。
思わず、銃を手放す。
予想だにしなかった事態に足がつんのめる。
そのまま、尻餅をつく。
視界に黒いものが映る。
黒いものは、宙を舞い、床に落ちた。


バチバチバチバチッ

ガラッ ガラッ ガガッ


重量感のある音をたてて、黒いものはその場に落ち着く。
西が持っていた銃身の長いXの銃の「銃口」だった。

「え……あ……あ!?」

その瞬間を西は捉える事が出来ていなかった。
だから、手にしているXの銃の銃身がぶった切られている事が信じられなかった。
落ちた銃口は、西から離れたので、透明化は解除されていた。
銃口だけでなく、手にしていた銃そのものまでも手放していた。
侍は、自分が切断したものを睨み付ける。
「ヒヒヒッ!!!」馬が軽く声を出す。
侍は馬を見やり、唇に人差し指を立てる。静かにしろ。
敵が自分を狙っていた事は当然分かっている筈だ。
どうにかして姿を消している事も、無論察している。
侍は自分の周囲に神経を集中させている。
このまま、じっとしていては必ずバレる。
だが、今動いても、僅かな音を立てるかもしれない。
矢張り、バレる。どちらにしても。
454ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:56:26 ID:K3+F9ePx
(………ちッきしょ…………もう一丁……銃があれば……)


今さら悔やんでいても始まらなかったが、
悔やまずにはいられなかった。
思い出してみると、和泉たちは銃やら刀やらと色々持っていた。
自分もそうすべきだったのだ。西は唇を噛んだ。
目の前の侍の次の行動を予測しなければならない。
予測し、自分がさらにその上を行かなくてはならない。
どうにしかして、侍の裏をかけないものだろうか。


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ


心臓の鼓動音がまるでマシンガンに思える。
音を立てずに動くしかないのか。
それとも、このまま動かずに耐えるべきなのか。
侍が諦めるのを待つしかない。
敵は透明のまま、この場を去ったと思わせるしかない。
その瞬間が、侍を攻撃できる最大のチャンスだ。
しかし、しくじれば、それは侍からの反撃を受ける事を意味する。
今はじっとしているしかない。
そう思った矢先、ひゅっと風を切る音がした。

「はァッ!!!!!!」

侍の怒号。同時に刀が振り落とされる。
その先は西が侍を狙っていた時の立ち位置だった。
銃が落ちた場所から、大体の予測をつけて、攻撃したのだろう。
だが、手ごたえはない。
侍は手を休めない。再び風を切る。

「えィやぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」


ビュッ!!!!!
455ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:57:23 ID:K3+F9ePx
今度は、一撃目よりも1歩右にずれた位置だった。
また手ごたえなし。風を切る音。また1歩ずれた位置。
風を切る。手ごたえなし。風を切る。手ごたえなし。
西の現在位置に徐々に距離をつめる。

「はッ!!!!はッ!!!!!はッ!!!!!はッ!!!!」

風を切る音。西の2歩手前だった。
次の次、恐らく自分に命中する。
スーツは耐えられるか。分からない。
ジーンズ星人のボスにやられた女の姿がよぎる。
ボロ雑巾の様な無残な死に様。


(やばいやばいやばいやばいやばい!!!!!!)


もうじっとしているのは危ない。
動くしかなかった。気付かれるかもしれない。
それでも動かなければ、侍の攻撃を受ける。
それが早いか遅いかの違いかもしれない。
だが、何とかするしかなかった。
動け。身体に命じる。震えている。動けない。
妙に下半身が温かかった。
視線を下に動かす。股間の辺りが濡れていた。
汗ではなかった。失禁していた。


バチバチバチバチッ
456ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:58:45 ID:K3+F9ePx
星人の目が動いた。
思わず漏らした小便。床を流れる。自分の位置から飛び出る。
透明化している自分から漏れれば、それは星人に見える。位置がバレる。
星人の目が何かを認めた。バレた。


(もう駄目だ………動け!!動け!!動くしかねェ!!!!)


腰を上げようとした。星人の方が速かった。


シュッ!!!!!!!!!


真っ先で風を切る音。
手首に衝撃、火花が散る。


バチバチバチバチバチバチッ


思わず後方に吹っ飛んだ。
切られた!!!!!
そう思ったが、痛みはなかった。
切られたのは、手にしていた小型の機械だった。
機械をやられたので、透明化が解除されたのだ。


(あッぶ……ねェェェッ…………!!!!!!!)


だが、ほんの少しだけツキがあっただけだ。
星人から逃れた訳ではなかった。
星人は、姿を見せた西を睨み付ける。
457ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 19:59:50 ID:K3+F9ePx
「ヒヒヒヒッ!!!」

馬の鳴き声。笑っている様に聞こえた。
小便を漏らして逃げ回る西を嘲っているかの様だ。


(やべえ、やべえ………なんとかしねェと……!!!!)


和泉が傍にいるのを思い出した。
視線を階段の方に移す。和泉は居なかった。
動転しそうになる。何で和泉は居ない?


ダッ!!!!


跳躍する音。西も侍もそれを耳にした。
侍は素早く自分の背後に刀を振った。
風を切る音。衝撃音。何かが刀に当たる。


バッキィィィィィィン!!!!!!!!!


金属音。何かが壊れた。


バチバチバチバチバチバチッ


火花が散る。
黒い玉の部屋にあった剣の切っ先。
そして、それを手にしている和泉。
和泉は透明化して、侍に迫っていた。
だが、失敗した。侍を狙って振り下ろした剣は折れた。
侍の方が強かった。西はそう思った。
458ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 20:01:27 ID:K3+F9ePx
だが、和泉は笑みを崩さなかった。
侍の顔が強張った。


ズッ


侍の腹には剣が突き刺さっていた。
その剣は折れていなかった。
和泉は両手にそれぞれ剣を持っていたのだ。
「二刀流だ」
和泉は冷たく、且つ強く言い放った。
和泉の背後に南と茨木の顔。
たった今、追いついた様子だった。
「あ〜あ、和泉サンに先越されちッたよ」
「くッそッ、ラッキーな野郎だ、ぶふッ」
「おめーは重たいからな、デブが」
「そろそろてめェ、それやめろ!!!」
和泉は侍の腹から剣を引き抜く。
侍はその場にしゃがみこむ。
窮地に落ちた鼠。だが、その顔には余裕があった。
和泉は止めを刺そうと剣を構える。
侍は笑みを浮かべたまま、和泉を見上げる。
「ものどもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!」
侍の雄叫びとも思える声が響く。
和泉は手を止める。南も茨木も口争いをやめる。
「ものどもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!
 出あえッ出あえッ出あえ出あえッ出あえッ
 出あえェェぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええッ!!!!」

バカラッ  バカラッ  バカラッ  バカラッ
バラッ   バカラッ  バカラッ  バカラッ

馬の蹄の音。激しい音。複数の音。接近している。
和泉が舌打ちする。その視線は目の前の侍ではなく、侍の後ろに向けられた。
「………援軍か」


0025につづく
459ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/20(火) 20:10:40 ID:K3+F9ePx
規制解除された様なので、
火曜ですが>>452>>458まで投下しました。
最新話は今週末にしようと思います。
規制が無い限りは投下する様にします。
460創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 22:10:31 ID:9PxmXZD5
おもしろいwwしかしルダボウはガンツの設定イジくるの好きだな。
Yガンのレーザーアンカーをスーツの力で破ったり、Xガンをソードで切ったり…
原作をあんまり気にしない所もこの小説の面白いところだよな。
461ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 14:44:59 ID:hOGWiF1k
0025 信じる者と信じない者


亀田は鼻を押さえながら、部屋で見知った女性の様子を少し離れて見ていた。
『うっち〜』と書いてある白いケースを持っている女性は戸惑いを隠せないでいた。


そら、そーやろ。オレと同じや。
こんなトコつれてこられて……
しッかし、よく見ると、ええ女やなァ……。


女性は駅ホームの階段を見上げた。
その途中には奇妙な黒いスーツを着ている金髪の女がいた。
『うっち〜』の女性は金髪の女に歩み寄り、何かを訊いていた。
何を話しているのか、興味が湧き、近くまで寄ってみる。
「だいじょーぶだッて」と、金髪の女の声。
「でも、ヒトがこんなに………」
「なんでか知んないけど、見えてないから………」
「……見えてない……ンですか?」
「だッて、ほら……誰もあたし見てないじゃん」
会話の内容からは意味がいまいちよく分からなかった。
『うっち〜』の女性が何かを心配していて、金髪の女がその不安を消している。
金髪の女の言う通り、駅ホームの人間たちは誰も金髪の女の恰好を見向きもしない。
そして、有名人である自分にも誰も声も掛けてこないし、目もくれない。
全く姿が見えてないからとしか、説明がつかなかった。


どーゆーことやねん………やッぱ、オレ……死んだンか…。
だとしたら、今のこの状況、なんやねん………ここが天国かいな…。


これからこの多摩川駅に停車する電車に乗って天国にでも行くというのだろうか。
チープなSF映画に出てくる設定みたいで、馬鹿馬鹿しくなってきた。
「だからさ……そこらへんで着替えなよ」
金髪の女の一言に、亀田の中で少し期待感が出て来る。
若しかすると、『うっち〜』の女性の生着替えが見れるかもしれない。


天国か……ほんまに天国かもしれへんなァ〜……
だッたら、思う存分、楽しませてもらおーやんけ………くくッ!!
462ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 14:46:10 ID:hOGWiF1k
『うっち〜』はしばらくその場で考え込んでいたが、
どうにもならないと悟ったのか、着替える適当な場所を探し出した。
亀田は自分が見つめている事がバレない様に隠れた。
『うっち〜』は人目を気にしながら、衣服を脱ぎ始めた。


おお………おッおおおおッ!!!!!!
なんやねん、マジかァァァァア!
あのネーちゃん、全部脱ぎよ………あ?


直ぐ隣に気配がしたので、視線をやると、そこにも見知った顔があった。
自分と同じく部屋にいた20代のコンビニの店員の男だった。
「自分、なにしとんねん」
「……あ、あんたこそ、なに覗いてんスか」
「だッ、だッ、だまらんかい!!
 オレは覗いてたワケちゃうわ!あのネーちゃんが勝手にやな…」
「さッきからずーッと見てたんでしょう」
「じ、じ、じぶんこそ見てたんとちゃうんか、コラ!」
痛いところを突かれたのか、コンビニの店員は目線を逸らした。
「オ……オレは……ただ観察………してたんス」
「観察と覗きは一緒や」
「い、一緒じゃないッスよ!オレは参考にと思ッて……」
「参考ッて何の参考やねん、
 頭に焼き付けてウチ帰ッてチンポしこるんやろ、どーせ」
コンビニの店員はそれ以上言い返してこなかったので、
視線を『うっち〜』に戻す。
AVでしか見た事のない女性の乳房が視界に飛び込んできた。
463ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 14:47:46 ID:hOGWiF1k
「ほッはーッ!あかんわ!もうギンギンやッ!」
「ハァ?」とコンビニの店員の呆れた声。

亀田は、まだ上半身しかスーツを着ていない『うっち〜』の直ぐ傍まで近付いた。
流石の『うっち〜』も背後に気配を感じて振り向いた。
亀田を見て、ぎょっとする。

「ネーちゃん、そんなにしたいんか?」
「……は?な、なんですか!?」
「ンなら、ここでしよーや、なァ!」と、亀田は己の下半身を晒し出す。
「や………やめ………」
「カンベンしてやぁ、今更!
 オレのチンチン、こんなんなってもーたやんか!」

そう言って、『うっち〜』の尻を掴む。
『うっち〜』は必死にもがくが、亀田の方が強かった。
一物を彼女の尻に押し付けようとしたところに、誰かが亀田の肩を叩いた。

「あぁ?なんやねん?今、ええとこなんや、ジャマすんなや」

すると、肩に掛かる力がいきなり急激に強くなった。
痛みが走り、思わずその場に膝をついた。

「痛ててててててててッ!!!!!!!」
「なにしてんだ、このハゲ」

振り向くと、肩を掴んでいたのは、スーツを着た金髪の女だった。

「痛いわ、ちょッ、やめてーな!」

金髪の女は有無を言わさず、亀田を突き飛ばした。

「痛ッてッ………き、今日何回目やねん、これ」
464ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 14:50:48 ID:hOGWiF1k
「あ……あの…ありがとう……」
『うっち〜』は金髪の女(ホステス)に言った。
「別にいいッて、とッとと着替えちゃいな」

ホステスは、もう亀田の事には興味もないのか、目もくれなかった。
「……ん、あんたら、なにやッてんの?」
と、部屋で見知った中年女性や中年男性(山村)を見て、ホステスは言った。
二人は電車が来るのを待っている様子だった。
「まさか帰る気?」
「当たり前でしょ!こんなバカバカしい事に付き合ってられないわよ」
「……まァね、そりゃそうだよね……でも」
「あんた、いい歳してそんなカッコして恥ずかしくないの?
 大人になりなさいよ、大人に」
「ンなンどーでもいいじゃん!とにかくさ、今帰るのはやめといたら」
「なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないのよ」
「あ………電車来た」


『2番線に電車がまいります。白線の内側でお待ち下さい』とアナウンス。
その少し後に、電車の来る音がする。


「帰れる………やッと」と、中年男性(山村)はほっと息をついていた。
「いや、帰れねーッて!電車乗ッちゃダメだから!」
「何でダメなわけ?あんたにそんな事言う権利あんの!?」
中年女性は食って掛かった。
「権利もクソもねェよ、ババァ!電車乗るなッつッたら、乗るなよ!」
「バッ………な…ンて失礼な子」
「ホント、帰れるンスか、これ?」
20代のコンビニの店員が言った。
465ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 14:53:30 ID:hOGWiF1k
「あ〜、もうウゼェ!あ、ちょ、あんた、そこ、ゴリラ!」
ホステスは、レーダーを見やりながら星人を探している河内を見つけた。
「なんとかしてやッてよ、こいつら」
河内は視線を金髪の女によこした。
だが、顔はレーダーに向けたままだ。
「信じねェヤツはほッとけよ」
そう言って、河内はレーダーに視線を戻す。

ホステスは舌打ちした。「ッたく、どいつもこいつも…」
だが、ひとりだけ電車に乗ろうとせずにうずくまっている者がいた。
それは今回部屋に初めて来た女性だった。
部屋に来てから、ずっと何かに怯えている女性。
だが、中年女性、中年男性(山村)、コンビニの店員はすっかり帰る気でいる。

もしこのまま電車に乗ってしまったら、エリアの外に出てしまう。
直接見てはいないが、前回のジーンズ星人の時に出会ったボブカットの女に、
エリアの外に出ると死んでしまうという事を教わっていた。

ホステスは別に連中を助ける義理などないと思っているが、
ボブカットの女に色々教わっている事を考えると、このまま放っておくのもどうかと思った。
だが、そうこうしているうちに遂に電車が到着してしまった。

どうやって説得しようかと迷っているホステスの視界に何かが入った。
「あれ……あいつ………」
ホームの中央部に設置されている椅子に座っている男。
男は何処かで見た風貌だった。何処だったかと思い出す。
黒い玉の画面に出た『すちーる星人』の顔。
「あッ、あッ、あれッ、星人!」
ホステスは仰天するが、中年女性たちはそれを無視して、
電車に乗り込んだ。
「うッわッ、くッそッ、マジかよ!」
ホステスは片手に持っていた小型のXの銃を握った。
だが、どうやって、操作するのか、まだよく分からなかったので戸惑った。
「こッ、これッ、どうやん………あッ!?」
「ふにょふにょふにょふにょふにょッ」
不気味な声を出しながら、すちーる星人は椅子から飛び上がった。
「うッわァッ!!!!」
466ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 14:54:54 ID:hOGWiF1k
出あえッ出あえッ出あえッ出あえーーーーーーーーーーッ!!!!!


侍姿のふぁいやー星人の一声で仲間がやってきた。
同じく侍の恰好をした星人は5体、そして5体がそれぞれ馬に乗っている。計10体。

「うわァ、メンドくせーな、こいつら全部相手すんのかよ…」

南はうんざりした顔で言った。

「まァいッか、和泉サンもいるし……オレら3人なら余裕だろ」
「ふん……あンなンオレひとりでもいけるぜ、ぶふッ」
「ッて言いながら、なに後ずさッてんだよ、デブ!」
「おまえら、うるせーよ」

和泉はそう言い放ちながら、剣を構える。
向かい合う和泉とふぁいやー星人たち。
どちらかが先に動くかを、互いに沈黙の中で探り合う。
一番最初に出現した馬のふぁいやー星人が「ヒヒンッ」と鳴く。
それが合図となった。10体のふぁいやー星人たちが一斉に動いた。

「おおおおおおおおおおおおおッ」
「うッわッ、一気にきやがったッ!!!!」と南。
「おい……和泉にやられたのが逃げるぞ」

和泉の攻撃で腹をやられたふぁいやー星人が膝をついたまま逃げようとしていた。

「ンだよ、メンドいなー、とどめ刺すか……」
「はァッ!!!!」

Xガンを構える南の背後から、10体の星人のうちの1体が攻撃を仕掛けてきた。

「おわッ!!!!」

南が振り向くと同時に、星人の刀が振り下ろされた。


0026につづく
467ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/04/25(日) 15:02:47 ID:hOGWiF1k
遅れましたが>>461>>466まで
最新話(0025)を投下しました。


>>460
どうもありがとうございます。
特別、原作の設定をいじくってるつもりはないんですけど、
確かに思い返してみると、YガンとXガンの件については
原作に直接そういう描写がないので目立ってますね。
自分も書く前に「これ大丈夫かな」と思って原作を読み返して、
大阪編で天狗がレーザーアンカーを切ってたりするし、
ぬらりひょんが京の銃を破壊してたりするしで、
「決して破壊できないものではない」と思ったんでやってみたんですけど。
基本的に原作の雰囲気とか設定は壊さないようにしてます。
でも、変なとこもあるかもしれません、すいません。
468創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 03:07:13 ID:eUVYUCBk
おんもしれー
469創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 20:00:09 ID:ny7rbVvA
奥の絵で脳内再生できるのがすげーわ
470創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 22:19:46 ID:E0JBQ3/o
・∀・ さてさて明日は日曜日 GWでもルダボウは書いてくれるのか!?真相は明日!
471ルダボウ:2010/05/02(日) 16:42:51 ID:+7Dipilv
代行レスより

お待たせして大変すいません。また規制されてしまっています。
政治関連とかホモとかコピペ荒らしが多いみたいなんですが、
わずか1週間足らずで規制されて、こっちもまいってます。

この板以外で発表する方法を考えたんですが、
イチからサイト作るとか出来そうもないんで、
Yahooの掲示板とかブログとかその辺を使ってやろうかと思うんですが、
いかがでしょうか。
(Yahooよく使ってるんでそれしか知らなくて申し訳ないですが)

大雑把に以降のミッションの展開は考えてますけど、
読みたいって思ってくれる人がいれば僕もやりたいです。
472創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 20:26:04 ID:3OkFeA5g
ルダボウが書いてくれるんなら2ちゃんじゃなくても見る
473創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 22:02:19 ID:RsXHronJ
ふぐぅぅ…
474創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:54:17 ID:BX6hXyBB
ルダボウ今度書く所は2chか?YHooか?続きが気になってしょうがないんだけど…
475ルダボウ:2010/05/13(木) 20:53:56 ID:gBX66x2s
代行レスより

お待たせしてホントすいません。
まだ規制は解除されない様ですので、
本格的に別に書く場所を作る予定です。
多分、Yahooになるかと思います。
こんな小説を読んでくれる人の為にも
なるべく面白いものを見せたいと思います。
476創る名無しに見る名無し:2010/05/14(金) 23:26:20 ID:kiqicqu6
こんな小説なんて…なんて謙虚な奴だルダボウ…
477創る名無しに見る名無し:2010/05/15(土) 17:51:58 ID:K2bn5ujr
うおーーー!!
久々にみたらルダボウ復活してるし!!!

yahooでもなんでもいいから早くみたいですよ!!
478ルダボウ:2010/05/15(土) 18:44:29 ID:rUgtLNCH
代行レスより

みなさん、お待たせしました。
Yahooの掲示板で続きを書きます。
↓からいってみてください。

ttp://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1000004&tid=a3ga3aa3na3ta3za1bfa3ma3ia3na3ua3sa1a1c0bea4afa4sa4na4aaoc&sid=1000004&mid=1&type=date&first=1
479創る名無しに見る名無し:2010/05/15(土) 22:17:19 ID:8J0lOF+s
イヤッホーィwwww!!ていうかこのスレの文章が落ちるのもなんかやだから保守する?
480ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:35:04 ID:hJFmf9Tw
Yahooの方に最新話投下した直後に、規制解除されてた事が分かりました。
なんか随分と間が悪い。

>>479さん仰った様にこのスレをこのままにするのも何なんで、
Yahooの方はまた規制された時のための保険に同時に使用したいと思います。

とりあえず、こちらにまず「0026」いれます。
481ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:36:45 ID:hJFmf9Tw
0026 サムライ・ドライブ


ガッキィィン!!!!


「あッぶね……」と、南は呟いた。
寸でのところで、星人の刀を、自身が手にしているソードで何とか防いだ。
今回の相手は少しでも気を抜いたら不味いかもしれないと察した。
だが、和泉の一撃を食らって瀕死のふぁいやー星人は依然動いている。

「デブ!そいつ、殺れ!」
「ふざけんな、こんな弱えヤツ、自分でやれ、ぶふッ」
「ガタガタうるせェッ!囲まれてんだぞッ!!早く殺れッ!!」
「ちッ」

渋々、茨木は瀕死のふぁいやー星人に向けてXの銃を構える。


ヒュッ!!!!


いきなりそこに何かが飛んできた。
思わず、茨木は後ろにジャンプした。
飛んできたのは、矢だった。

「……ンだよ、くッそッ、流鏑馬(やぶさめ)かッ!?」

援軍のうちの一体の侍が、馬に乗ったまま、茨木に目掛けて矢を発射したのだ。
すかさず、2射目の矢をセットし始めたので、茨木はその場から移動した。
482ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:37:58 ID:hJFmf9Tw
南は、自分に攻撃を仕掛けてくる星人に向かい合ったまま、視線を動かす。
侍5人、そしてその5人がそれぞれ馬に乗っている。
10人の星人がいる、それプラス和泉に腹をやられたのが1人、そいつが乗っていた馬。
合計12体の星人を倒さなくてはならない。
和泉にやられたのは問題はない、が油断は出来ない。
援軍の侍のうち、矢を射る侍は茨木を狙ったヤツだけの様だ。その他のヤツは矢を持っていない。
1人は茨木を、3人は和泉を、そして残り1人を自分が相手している。
馬は匂いを嗅ぐ以外に特別自分から攻撃してはこない。
注意を払うべきは侍だけと見ていいだろう。勿論、馬は後で始末するが。
南は、向かい合う侍を見やる。そして、自分が手にしているソードに可笑しなものがあるのに気付いた。

「な……んだ、これ……ヒビか?ヒビが入ッてやがる!」

ほんのわずかだが、侍の刀の一撃でソードにヒビが入った。
南の注意がそれたのを侍は逃さなかった。
遠慮なく、侍の刀が風を切った。

「うォッ!!!!」

反射的に、手が動いた。


ガッキィィィィィン!!!!!!


両手に強烈な衝撃が走る。だが、切られてはいない。
またも侍の刀は、ソードで防げたのだ。

「くッそッ、てめェ、来るなら来るッて言えよ!!!!」

侍に、そんな事が通じるとは思えなかったが、思わず口走った。
そして、また可笑しな事に気付く。ソードのヒビがさっきよりひどくなった。

「………こいつ……同じトコ狙いやがッた………あの速さで……」
483ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:38:46 ID:hJFmf9Tw
ヒュンッ!!!!


またも侍の刀が来た。ソードで受ける。
衝撃が走る。手がジーンと痺れそうだった。
ソードには1箇所しかヒビが入っていない。
が、そのヒビもどんどん大きくなっている。

「クソ………なんなんだよ、このヤロー……手練れじゃねーか!」
「ほッ!!!!」

風を切る音。刀が来た。ソードを構える。
金属音と共に、南の視界からソードの切っ先が消えた。


カランカランカラーンッ


ソードの先が床を転がっていく。

「はッはッはッはッ」

侍の耳障りな笑い声。
南は、信じられないという顔をした。

「……ウッソだろ、コイツ……!
 こんなヤツ、今まで居なかったぜ………!」

侍は嬉しそうに刀を構える。
もう南には防御できないと決めているのか、隙があった。
南はソードを握る手を捻った。


ドシュッ!!!!!


ソードが伸びて、侍の腹部を貫いた。

「がァァァァァァッ!!!!?」
「でも、剣が伸びるとは思わなかッたろ」
484ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:39:56 ID:hJFmf9Tw
和泉は両手にそれぞれソードを構える。
片方は折れているが、機能的にはまだ使える。
侍2人は馬に乗ったまま、和泉に向かって来た。
「おおおおおおおおッ!!!!」
雄叫びと共に、侍2人の刀が空を切った。
和泉は両手に持つソードをクロスさせる形で構える。


ガッキィィィィンッ!!!!


ソードは、侍の攻撃を防御した。
「………ち……ヒビが………」



和泉、南、茨木が侍たちを相手にしているのを他所に、
西は切り離された小型レーダーを手にして、距離をとった。

(……よし……レーダーは使える……接合部がやられただけか………)

油断はしたが、まだ点数を稼ぐチャンスはある。
侍の星人たちはあれが全部ではないだろう。
それに、まだ『すちーる星人』を見ていない。
恐らく、今目の前にいる侍たちは和泉たちが倒してしまうだろう。
だからこそ、発見されていない『すちーる星人』を一刻も見つけ出さなくてはならない。
レーダーを操作すると、直ぐ近くに1体の星人がいる。
視線をその方角にやると、明らかに星人と思しき者がいた。
侍の仲間らしいが、着物の色が微妙に赤っぽい。
何故だか分からないが、刀は持っていなかった。

(んだ、こいつ、こいつなら楽勝じゃん)

どうやって攻撃しようかと考えた。
持っていたXの銃は侍に切られてしまった。
和泉たちが持っている様なソードは持ってきていない。
何か手ごろな武器はないか、視線を床にやる。

(お………あの刀!)

西のXの銃を切った侍が落とした刀があった。
それを手にとる。自分でも使えそうだった。

(よし……あいつは刀持ッてねーし………今度はいけるだろ)

西が歩み寄る。赤い侍は気付いた。
だが、逃げようとはせずに、逆に西に近寄ってくる。

(おいおい、なんだよ、こいつ!)

「はい、それでは問題です」
「……ハァ?」
485ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:41:08 ID:hJFmf9Tw
「ふにょふにょふにょふにょふにょ!」

ホステスは、すちーる星人の不気味な跳躍に思わずしゃがみこんだ。
すちーる星人はホステスをまたいで、その直ぐ後ろに着地した。
ホステスはXの銃を手にしたまま、振り向く。

「ふにょふにょふにょふにょ」

黒い帽子、黒いマント、ぎょろりとした大きな目。
すちーる星人の風貌に、ぎょっとした。

「なにコイツ、キモッ!!」
「ふにょふにょふにょふにょふにょ」
「ちッくしょうッ、この銃、どうやッたら弾が出んだよッ!!」
「ふにょッ」
「きゃあッ!!!」

またもすちーる星人は跳躍して、ホステスに接近してきた。
ホステスはさっと避けた。体はすちーる星人から離れようと必死だった。
無意識のうちに、停車したばかりの電車の中に飛び込んでいた。


『2番線、ドアが閉まります、ご注意下さい』


機械的なアナウンスと共にベルが鳴る。

「ふにょふにょふにょふにょふにょッ」

ホステスを追って、すちーる星人も電車に乗り込んだ。
ドアが閉まった。
「………あ、やべ……」ホステスは呟いた。
「なによ、あんたも結局乗るんじゃないの」
中年女性が呆れた顔で言った。
それを無視して、小型のレーダーを見やる。
まだ助かるチャンスはありそうだった。
今回のミッションのエリア内には、多摩川駅の次の新丸子駅もちゃんと入っている。
新丸子駅で停車した時に降りれば問題は無い。
そう考えたホステスの耳に、アナウンスが飛び込む。


『ご乗車ありがとうございます。この電車は、東急東横線、横浜行き、快速電車です』


「……は?なに?快速!?」

ホステスは耳を疑った。快速電車は新丸子駅には停車しない。
つまり、このままだと、電車はエリア内から出てしまうという事だ。
しかも、目の前にはすちーる星人もいる。
頭を抱えたくなった。


0027につづく
486ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 18:59:31 ID:hJFmf9Tw
0027 電車でGO


ホステスはどうすればこの場を脱出できるか、視線を周囲に動かした。
ドアの直ぐ横にある文字が目に飛び込んできた。

「そうだッ………非常時の停止ボタンとか………そういうのあッたよな!電車ッて!」

ホステスの仕事を始めて人気が出てから、電車は全く使わなくなっていた。
だが、電車に非常時に乗客が使用する機能がついている事くらいは記憶にある。
それを探そうとしたところへ、すちーる星人は動き出した。

「ふにょふにょふにょふにょ」
「ッそッ、ンだよ、おまえ!」

すちーる星人は、自身が身に纏っているマントを両手で大きく広げた。
何処かで見た事があるポーズだと思ったが、それが何処だったかは直ぐには思い出せなかった。
確か同じキャバクラに勤めているホステスから薦められた映画の中に出てくる化け物。
あまりに長過ぎる映画だったので、途中で観るのを止めてしまったのだが。
他愛の無い事を考えているところへ、すちーる星人が前進してきた。
少しでも距離を置こうと、後退するが、乗客のひとりにぶつかって動きが止まってしまう。

「ッそッ、ジャマだッて!!!!」
「ふにょふにょふにょ」
「……ハ?」

ホステスは目を疑った。
ぶつかった乗客が、すちーる星人と同じ鳴き声を発したからだ。
振り向くと、乗客はすちーる星人と同じ顔をしていた。
サラリーマン風のスーツを着てはいるが、すちーる星人の仲間だった。
よく周囲を見やると、座席に座っているOLや中高生、お年寄りもすちーる星人だった。

「ウソッ、ウソッ、
 うわッ、うわッ、うわッ!!なに、これッ!!!!」
「ちょ、ちょッと、なんなの、この人たち!?」

中年女性たちは、ようやく異変を察した様だった。
だが、もう後の祭りである。
快速電車はエリアの外に向かって、突っ走り始めた。
しかも、乗客は全員すちーる星人ときている。

「ちッくしょうッ!!星人だらけじゃん!!」
487ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 19:00:52 ID:hJFmf9Tw
ガタンッ ガタンッ ガタンッ ガタンッ


「あ……あッれッ、みんな、何処?」

黒いスーツに着替え終えた『うっち〜』は、ホステスやその他の面々の顔を捜した。
が、発車し始めた快速電車の中に、ホステスたちの顔を見た。

「あ………あら、あらら?みんな、帰ッ……ちゃッた?」

呆然と電車が去っていくのを見ていた彼女の横から、スーツを来たスポーツガリが顔を出した。

「ちッ、何で動いてるのかと思ッたら、電車に乗ッてンのかよ……」

レーダーと電車を交互に見ながら、スポーツガリの男は舌打ちした。
何が何だか分からなかったが、ホステスたちは帰った訳ではなさそうだった。

「あ……の………他の人たち、電車に乗ッちゃったン……ですけど」
「なに?」スポーツガリは眉を顰めた。「まずいな………エリアから出ちまうぜ」
「エリア……エリアッて何ですか?」
「………いや……何でもねェ………忘れろ…」
「忘れろッて……電車にはあたしの先生も……居るんですよ!」
「………これ」と、スポーツガリは小型のレーダーらしき機械の表示画面を見せてきた。
「ここ、分かるか、ここだ」

スポーツガリが指し示したのは、一定の場所を囲む四角の線だった。

「………これ、なんですか、これ……ッて、ここの事?」
「……そうだ、こッから出たら………死ぬ…」
「死ぬ………ウソ…」
「まァ、信じないならいい……電車に乗ッた奴等は放ッとけ……」
「ま、まッ、まッ、待ッて!!それが本当なら、なんとかしないと!!」
「どうする気だ?追い掛けンのか?」
「みんな、エリアの事知らないんですよ!なんとかしてあげて!」
「俺がそんな事する義理ねェ、俺は俺で点数を稼がなきゃならないんだよ」
「電車の中には……先生も……あの女の人も乗ッてる!
 あの女の人、同じスーツ着てたわ、あの人の仲間なんでしょう!?」
488ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 19:01:58 ID:hJFmf9Tw
「仲間……ね……仲間……くだらん」スポーツガリは溜め息をついた。

『うっち〜』は、歯噛みしながら、電車が去っていった方角を見やった。
そして、フェンスの向こう側、駅の入り口近くにバイクが駐車してあるのが見えた。
自分の足だけではとてもじゃないが追いつきそうもない。
でも、あれなら、もしかしたら、と『うっち〜』は思った。
躊躇っている時間などない。モタモタしていたら、その間に電車はエリアの外に出てしまう。
『うっち〜』は線路を直接降りた。

「本気か、おまえ、やめとけ」
「助けてくれないなら、放っといてください」
「……バカが………おまえもエリアの外に出ちまうかもしれねーぞ」
「……それでも……あたしは行きます」

『うっち〜』はバイクにまたがった。

「えッと………キーなしなんだよね……どうしよ……」

勢いにのってみたのはいいもの、キーなしでバイクを動かした事などなかった。
映画ではよく器用にバイクを動かしてるのを観たが、実際になど出来そうもない。

「こうやんだよ」と、横からスポーツガリの手が伸びる。

器用にバイクをいじくって、エンジンをかけてしまった。
スポーツガリは別のバイクをいじくって、それに跨った。

「ち……これなら部屋からバイク持ってくりゃ良かったぜ」

『うっち〜』はスポーツガリの心境の変化に戸惑っていた。
そんな事などお構いナシにスポーツガリは振り向いて言った。「行くぞ、時間ないぜ」

「……あの……なンで……」
「俺は点数を稼ぐ、おまえは奴等を助ける、何かおかしいのか?」
「………いえ……ない…です」
489ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 19:03:16 ID:hJFmf9Tw
ホステスは未だに使い方がよく分からない銃を不恰好に構えながら、
傍にいるコンビニの若い男に向かって言った。

「ちょッ、あんた!この電車止めてッ!!」
「え、オレッスか!?」
「てめェ以外に誰がいンだよ、童貞!早く電車止めろッつの!」
「ンなムチャクチャな……」
「この状況だッてムチャクチャなんだよ、止めろッつッたら止めろよ!」

ホステスがコンビニの店員に視線をやった瞬間、
サラリーマン風の星人がホステスに飛び掛ってきた。

「ふにょふにょふにょふにょ」
「うッわァァァァァッ!!!」


カチッカチッカチッカチッ


Xの銃の引き金を引くが、弾は出ない。
「うわ、うわ、うわわ」と、コンビニの店員は逃げ腰になった。
大学教授の山村や中年女性も、それに倣って、ホステスと星人の取っ組み合いから距離をとろうと動いた。


カチッカチッカチッカチッ


「やッめッろッ、このッ……変態ッ!!!!」


ギョーンッ


奇妙な音と共に、Xの銃口が光った。
パニックのあまり、上トリガーと下トリガーを同時に引いたのだ。
少し間が開いた。強烈な破裂音。


ババンッ!!!!
490ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 19:04:20 ID:hJFmf9Tw
「ぎぇぇぇぇぇぇえぇぇぇッ!!!!!!」

すちーる星人の右腕が派手に吹き飛んだ。
撃ったホステス自身も、その威力に目が点になった。

「すッげッ、これ、すッげ!!!」

撃たれた星人に銃を構えて、ホステスは叫んだ。

「こいつッ、こいつ撃つぞッ、近寄ッたら撃つぞッ!!!!」
「ふにょふにょふにょふにょふにょ」

ホステスを囲う他のすちーる星人は訳の分からない言葉を吐きながら、なおも寄ってくる。

「てめェら、日本語喋れねーのかよッ!!
 こッち来たら撃つッつッてんだ、ボケッ!!!!」

とても言葉が通じているとは思えなかった。
星人たちはホステスにじりじりと接近してくる。それも前後左右とだ。

「ざッけんな、なんなんだよ、おまえら!!」

完全に膠着状態だった。
そんなホステスの耳に、バイクの爆音が飛び込んできた。

「あれ……あれ?」

外を見やると、見知った顔がバイクに乗っていた。
491ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 19:06:57 ID:hJFmf9Tw
「……ちッ、みんな、同じ車両かよ」スポーツガリ(河内)は舌打ちした。
「どッ、どッ、どうするんですか、これからァァァァッ!!!!」

河内の直ぐ後ろからついてきている『うっち〜』が叫んだ。

「……考えはあンだけどな……ん?」
「な、なんですかッ?」
「おい、後ろ見ろッ!!」

言われて、『うっち〜』は後ろを振り向く。
何かがついてきていた。目を凝らすと、馬だった。

「え……あれ、なんですか、何で馬!?」
「馬だけじゃねーな、なんか乗ってる、サムライか、あれ」


パカラッ パカラッ パカラッ パカラッ


物凄いスピードで馬が『うっち〜』と河内の方に近付いてきていた。
馬には、侍が跨っていて、その手には刀があった。

「おまえ、あいつ何とかしろ!」と、河内。
「え?え!?えェ!?あたし!?!」
「オレはやることあんだよ!その間、あいつ、止めてろッ!!」
「そ、そンなァ!!!!!」

『うっち〜』は悲壮な表情をしたが、反論しても無駄だった。
振り向くと、更に更に馬はスピードを出していた。


0028につづく
492ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/16(日) 19:11:22 ID:hJFmf9Tw
>>480でも書きましたが、
Yahoo作って投下した後に規制解除されていたので、
Yahooはまた規制された時のための保険として同時使用します。


最新話投下しましたのでお知らせします。

0026
>>481-485

0027
>>486-491
493創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 18:52:23 ID:RJkRL/Go
河内とか南とかジーンズ星人とかの
名前ってルタボウが考えたの?
それとも前から公式設定として存在してたの?
GANTZ MINUS 見て普通に名前出てたんで
びっくりしたんだけど。
494ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/21(金) 20:18:15 ID:yjGRVYVq
>>493
河内、南、茨木、ジーンズ星人といったキャラクター名は
ガンツマニュアルの中で紹介されてました。
だから、公式設定です。
GANTZ MINUSの作者サンも多分同じ様に資料として
ガンツマニュアルを見たんだと思いますよ。
和泉や西が出てくるんだったら、やっぱり
和泉が解放された時にいた3人とか新宿でのジーンズ星人戦とか
必然的に出す事になるでしょうし。
僕もGANTZ MINUS買いましたが、まだちゃんと読んでないんです。
どんな内容なのかドキドキ。
495創る名無しに見る名無し:2010/05/22(土) 12:00:02 ID:Noa3Y5+S
>>494
ありがとう
続き頑張ってね。
496創る名無しに見る名無し:2010/05/22(土) 14:04:20 ID:u3mks/N+
>>494
正直お前の小説のほうが面白いからwwwwww
497創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:48:26 ID:a/06Yt6I
昨日小説読み終わったけど、、、

完全にこっちのの方が面白い
498創る名無しに見る名無し:2010/05/26(水) 16:06:57 ID:IDG1r7zz
MINUSよりこっちのが好きだ…
続き楽しみにしてます
499創る名無しに見る名無し:2010/05/29(土) 21:32:04 ID:CjwVJalK
楽しみだぜルダボウ
500ルダボウ ◆XEyWMmr6sc :2010/05/30(日) 16:28:27 ID:aakP+rs4
0028 ウルトラクイズ


西は、一瞬、きょとんとしてしまった。向かい合う1体の侍の星人の言っている事がおかしかったのだ。
星人はそんな西を意に介さず、勝手に話を続ける。

「4択問題です」
「………なン…だ、こいつ、なに………言ッて……」
「今から歌を歌います。
 いんとぅ〜ざ♪ふぁいあっ♪あいむふぉぉぉぉぉぉぉぉりんっ♪
 いんとぅざふぁいやっ♪あいむふぉぉぉぉりぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ♪」


(………なんなんだ、こいつ、隙だらけだ……)


西は、侍の星人が落とした刀を構えた。
それでも、相対する侍は微動だにせず歌を続けた。
待てよ。西はそこで動きを止めた。
若しかすると、敢えて接近させる様に誘っているのかもしれない。
だとすれば、このまま近付くのは阿呆のする事だ。
この離れた距離を保ったまま、攻撃出来ないだろうか。
西は握り締めた刀を見やった。