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創る名無しに見る名無し:
つい先日生まれた20人目の子は、生まれながらにして全身エメラルドグリーンの鱗に覆われ、蝙蝠のような翼を持っていた。
さらに目は大きく迫り出した主眼二つの間に六つの複眼が並んでいる。さらに傍から長い触角が生えており、この子が感情を表すたびにフリフリと揺れる。
銀色の髪の毛の間には角が二本生えている。おそらく成長と共に長く伸びるのであろうが、今は産毛の中に埋もれて一見するだけでは分からない。
さらに胸には三対の脚が合計六本並んでおり、その先にはそれぞれ鋭くとがった鉤爪がギラリと光っている。
身長の1.5倍ほどもある長い尻尾の先には、これまた鋭く尖った毒針が生えており、時折溢れ出た毒液がピッっと飛び散るのが見える。
実はこの毒針のせいで産婆が一人死んだ。
この子を引っ張り出す際に思い切り尻尾の先端を掴んでしまった産婆は、その瞬間うげえっ、とまるで獣の吠えるような声をあげ、
瞬く間に全身が紫色にそまり、身体も気味悪く膨れ上がって、真っ黒な血を吐き出して死んでしまったのだ。
そんなわが子も今はベビーベッド(バスケットコートほどの広さ)の上ですやすや眠っている。
やはりわが子というのは可愛いものだ。思わずその頬にキスしたくなる衝動に駆られたがやめておいた。
同じようにキスをしようとした私の兄が、その瞬間に目の覚めたこの子にあっという間に食べられてしまったのだ。
まだきちんと生え揃わぬ牙に引き裂かれた兄の断末魔が、今も私の耳から離れない。
産科医によると、生まれて三ヶ月ほどでこの子は口から炎を吐くようになるという。
さらに1年を過ぎるころになると、背中の羽も充分に成長し空を飛べるようになるとのことだ。
空を飛べるようになったら、自分でその辺の人間を捉えて食べるという。なんとも逞しい話だ。