ルール
■重要項目
・死んだキャラを生き返らせるのは禁止
・原則的に主催者を動かすのは禁止
・いきなり自殺させる等、それまでのストーリーを無視した行動をとらせるのは禁止
・致命的な矛盾があるものはNG
■マップ
http://www36.atwiki.jp/srpgbr/?plugin=ref&serial=1で固定。
マップは8*8の64エリア。
■支給品
参加者の武器防具は没収。
共通の支給品
〔地図、食料(二日分)、飲料水(ペットボトル二本)、時計、方位磁石、参加者名簿〕
と、アイテムがランダムに二つ支給される。
【ランダムアイテム関連】
武器とアイテムが一つずつ支給される。 著しくバランスを崩すようなものは禁止。
各キャラの最初の作者が支給品の説明を書くのが望ましい。
・意志を持つ武器について
自発的な行動は喋ることしかできない。
自力での行動、攻撃は不可。
装備することによる所持者への能力付加は、特に制限されない。
・生物について
単体攻撃のみで、『制限』に反さなければ良い。
■制限
特殊能力は全般的に消耗が激しくなる。弱い魔法も連発は相当消耗。
蘇生・即死・時間移動・遠距離瞬間移動・地形が変化するほどの大規模魔法(天変地異)は不可。
状態異常系魔法や技は効果、成功率の低下。
【首輪関連】
ゲーム開始前からプレイヤーは首輪が装着されている。
外そうとすると爆発。会場から一定以上はなれても爆発する。
二四時間の間に死亡キャラがいない場合、全員の首輪が爆発する。
【召喚関連】
一度に一体しか出せない。
一度能力を使ったら消える。
一度出したらしばらくは召喚できない。
【回復関連】
浅い傷・打撲→傷は直せるが血は戻らないし痛みもそう消えない
深い傷・骨折→回復魔法が得意ならなんとか塞いだり接合したりできるが完治はしない
千切れる・複雑骨折→直せない
状態異常回復魔法は制限なし。
【ゾンビ生成】
生成には数時間必要な上、一度に作って操れるのは一体だけ。
作ったゾンビが消滅するまで次のゾンビを生成できない。
ゾンビは、頭を潰すか聖なる能力で浄化すれば倒せる。
■初期装備
服(普段着)のみ。小道具無し。
義手など身体と一体化している物は可。
ただし、内蔵武器・能力などは全て没収&使用禁止。
■放送
放送内容は死亡者、禁止エリアの発表。
放送は一日二回、6:00、18:00に行う。
【禁止エリア】
侵入すると首輪が爆発して死亡する。
定時放送で連絡し、三箇所を指定する。指定されたエリアは放送の一時間後に禁止エリアとなる。
■作品投下
一度ID有りトリップ有りの状態で投下を宣言。その後、宣言時のトリップを用い、必ずsageで投稿。
トリップのないもの、宣言のない作品は無効となる。
また、SSの最後に以下のテンプレを書くこと。
【エリア/現在地/何日目・時刻】
【○○○@○○○○○】
[状態]:
[装備]:
[道具]:
[思考]:
例
【E-2/城内/一日目・未明】
【ビラク@紋章の謎】
[状態]:左腕に切り傷(処置済み)頭部に軽い打撲、永久ヘイスト、バサークの杖による混乱
[装備]:エクスカリバー@FFT
[道具]:拡声器、支給品一式
[思考]1:うほっ!いいおとこ
2:殺 ら な い か?
【ギュスタヴ@FFT 死亡】
【残り50人】
時間表記
未明:0~2
黎明:2~4
早朝:4~6
朝:6~8
午前:8~10
昼:10~12
日中:12~14
午後:14~16
夕方:16~18
夜:18~20
夜中:20~22
深夜:22~24
ゲーム開始時刻は06:00
スレ立て終了。
では、◆j893VYBPfU氏の作品を代理投下いたします。
かつてヘイゼルと呼ばれた暗殺者は、
今はパッフェルと呼ばれる自由人は、
夕焼けにより朱に染まった平原を
駆ける、駈ける、翔ける。
ただ、ひたすらに―――。
その豊かな双胸を躍動的に弾ませ。
後ろで無造作に束ねた髪を揺らし。
時には地を蹴り、岩石を飛び越え。
周囲の草葉を散らし、砂埃を捲き上げつつ。
その駆け抜ける勢いは全く衰えることなく、
瞬く間に目的の森へと辿り付いたが。
そこで見たものは、夕日よりさらに紅く――。
むしろ禍々しいまでの紅蓮一色に染まった、
緑生い茂る森林である事を止めた光景であった。
「うっひゃあぁぁぁぁ…。」
パッフェルは、天空をも焦がさんとする
地獄の劫火とも言うべき光景に呆然と、
ただ茫然と立ちすくんでいた。
北側にネスティがいることをイスラ達から聞き、
先程から延々と駆けずり回ってはいるのだが…。
これまでに見つけたものは見知らぬ男の死体と、
不可解も極まる戦闘跡。今度は天空をも覆う黒煙。
もしやネスティに関わりの有る事かもしれぬと思い、
急ぎ駆けつけては見たのだが…。
「これは、ちょおっと通れそうにありませんねぇー。」
この凄絶な光景の感想にしては、実に緊張感に欠けた口調で、
パッフェルは困惑の笑顔を浮かべながら独り言を呟いてた。
今まさに森林を焼き尽くしている炎の渦はうねり、
その侵入者を拒まんと轟音をたて揺らめいている。
樹齢数十年はある巨大な木々は燃え盛る炎に屈し、
乾いた悲鳴を上げて次々とその地に横たわる。
生い茂る緑の草原は今や紅蓮を纏い、
小気味よい音を弾けさせていた。
全ては赤一色。炎、焔――。
そのかつて森林だった緑溢れる地域は、赤き灼熱地獄と化していた。
無論、その中に飛び込めばパッフェルとてすぐさま焼き尽くされるだろう。
そして炎を上手く避ける事が出来た場合でも。
上空には燃え盛る火炎を祝福するかのように、
死の黒煙がもうもうと舞い上がっている。
燃え盛る火炎と舞い上がる黒煙という双子の死神を避けて、
この森林を駆け抜けての捜索など到底不可能である。
黒煙に巻き込まれれば立ち所に意識を失い、
火炎に巻き込まれればその身を焦がすのだから。
その二つからなる死の腕は、パッフェルの健脚をも凌駕する。
つまり、あの中にもし誰かがいようとそれは手遅れなのであり、
危険を冒して踏み込もうとも、それは無駄死にするだけである。
――この身を焦がすのは、あの子への想いだけで充分ですからねー。
そういった考えが、パッフェルに森林への踏み込みを留まらせた。
この現場にいた何者かに生存の可能性があるとすれば、
火勢が致命的なものになる前にC-4の橋を駆け抜けるか、
あるいは西側のC-6の城に避難しているかしなければならない。
自らがどうしてもこのエリアを通りたいなら、
今はその火のおさまるのを待つしかないのだ。
「…仕方がありませんねー。じゃ、引き返しますかー。」
パッフェルは実にのんびりとした口調で呟く。
だが、その口調とは裏腹に、心が焦燥感も満ちている事は、
その噛み締めた下唇を見れば誰にでも気付くようなものであり、
そしてその独り言はむしろ自分に言い聞かせるものであった。
指を咥えてただ待つのも、無駄に危険を冒すのも、
性には合わない。何より時間と生命を浪費したくはない。
恩師に拾い出され、ようやく意味を得たこの生命。
今度は大事なあの子の為に、大切に使いたいのだから。
ならば今はネスティの生存の可能性を信じ、
近辺の捜索を再開するしか今出来る事はない。
あのヴォルマルフによる“放送”とやらを信じるのであれば、
逆を言えばネスティはまだ生存している事にもなるのだから。
その場合の、ネスティが取るであろう行動を考えてみる。
C-4の橋を駆け抜けていなければ、やはりC-6の城辺りに身を潜めているか、
火傷した身体を冷やしにC-5の海岸付近にいる可能性が高いだろう。
(それは非常に危険な行為だが、素人判断ではあり得る事である。)
西側のC-3の村の捜索は、その後に行えばいい。
ただし、その際はイスラの発言にあった近辺に潜む“襲撃者達”
に対する警戒も同時に行わなくてはならないのだが。
そして、これだけの火災が行われた以上、
“放火魔”もまたすぐ近くにいるのは間違いない。
その際に伴う余分な労力と危険性を想像し、
パッフェルは心底うんざりした顔で溜息を洩らした。
“放火魔”がネスティである可能性も一瞬考えたが、その考えは即座に否定する。
もし彼にそれだけの力を引き出せる支給品が宛がわれているとしても、
絵に描いたような、“常識人”の鑑のような、あの堅物青年の事である。
たとえ追い詰められようとも、彼が自然を蔑ろにするとは考えにくい。
それに彼がもし仮に自然を軽視している場合なら、
逆に最初の襲撃を受けた際にこのような力があれば
最初から使っている筈なのである。
だからこそ、どちらにせよ“放火魔”がネスティであることはありえない。
そして、この火災を引き起こした存在は、
厄介な事に“襲撃者達”とも違うのだろう。
理由はネスティが火災の犯人でない事と同じく。
第一、奇襲を仕掛けた側からすれば、もっと躊躇いはないはずである。
火災に巻き込まれる恐れがあるとしても、逃げ道などいくらでもあるのだから。
そうなれば、つまりは“第三の危険人物”がこの森近辺を徘徊していることになる。
そしてその人物は、これだけの破壊をもたらす事に一切の躊躇いなどないだろう。
「それに、こんなところで放火魔とバッタリだなんて、私はごめんですからねー。」
その気の抜けたような独り言とは裏腹に、
張り詰めた表情で警戒態勢を取りながら、
パッフェルは早々と踵を返した。
◇ ◇
パッフェルが海岸沿いにネスティを捜索してしばらくしてからの事。
「って、あれ?あんなところに…。」
行きがけの道筋と少し外れていた為気がつかなかったが、
火災発生場所から少し離れた海岸に、赤い衣装を着た少女の遺体が横たわっていた。
少女が既に死んでいるのは、遠目から見ても呼吸によって上下しない胸と、
なにより血塗れになっている衣装から見ても明らかである。
距離は遠く、そして少女の衣装も赤であるため、一見して分かり辛いが、
仕事柄視力や洞察力が鍛え抜かれたパッフェルにはすぐさま気付く類であった。
そして何よりそれは見たことのある、とても見覚えのあるものであったが故に。
「ベルフラウ…。」
だが、違う。
自分が“知っている”ベルフラウとは、明らかに違う。
いや、“知っていた”彼女とあまりにも酷似していたが故に。
そして、パッフェルはその死体を見て、一つの確信を得るに至る。
つまり、彼女はアズリアと同じく…。
「…うわあー。やっぱり、想像通りなのですねー。」
やはり、時間を超えてベルフラウもまた召喚されていたのだろう。
もしかすると、アメルやビジュさえもそうだったのかもしれない。
そして、その召喚された頃の彼女は無力な子供であったが故に、
凶漢に不意打ちを受けて殺害された。そう推測される。
支援1
彼女に抵抗した様子は、ほとんど見受けられなかった。
せめてその凶漢をその瞳に焼きつけようと眼を見開き、
抗議するような表情からも、それは充分に感じられた。
ベルフラウもまた、自分のように若返ったという可能性も考えたが、すぐに否定する。
自分の知る“現在の彼女”は強さが昔とは根本的に違い、それは自分を大きく凌駕する。
そのような存在がそう簡単に不意を付かれるとも、不覚を取るようにも思えないからだ。
ああー。頭がごちゃごちゃいたしますぅー。
この殺し合いの事。
首輪の解除方法の事。
ヴォルマルフ達の事。
源罪のディエルゴの事。
召喚された参加者達の事。
この孤島からの脱出の事。
考えるべき事は実に多過ぎ、それらは複雑に絡み合う。
いかな元暗殺者という凄まじい知的労働に従事していた
パッフェルであろうとも、脳の許容量には限度がある。
(標的に関する情報をかき集めて必要なものだけに編集し、
その居場所や行動を調べ上げた上で確実にその命を奪う。
その上で追跡者を振り切り、組織に帰還するまでが任務となる
暗殺者の仕事とは、その身体能力以上に知性をも必要とされる。
無思慮な殺人を行い、己の身はおろか組織さえも危険にさらす
“殺し屋”的な仕事は、“暗殺者”の最も軽蔑すべき所なのだ。)
だが。
だが、しかし。
それら全てを一旦は差し置いてでも。
最優先してなさねばならぬ事が、今出来てしまった。
これは、その現場…、もとい死体置場を見れば明白である。
そして、それは残念ながらネスティの捜索より優先すべきことであり、
恐らく自分にしか出来ない、あるいはあえてやろうとしない事である。
パッフェルは、その残された死体とその周囲を見渡して、
首を竦めて軽い溜息を吐く。
「でも、もうなんていうか見てられませんよねー。
というか、色々と痛々しすぎますですよー。」
――素人さんがその場の思いつきで仕掛けた、雑過ぎる罠っていうのはね?
彼女にしては珍しい、まだ見ぬ敵に対する憎悪と侮蔑を込めた視線で、
彼女はその現場を睨みつけていた。
たとえ目の前にいる“ベルフラウ”が、自分の知る者とは別人だったとしても。
たとえ彼女を殺した者にそうせざるをえぬ程の、深い事情があったのだとしても。
――死体を弄び、そしてそれを餌に新しい死者を作ろうとする
その底なしの悪意だけは、絶対に許せませんよね…。
死体のすぐ傍の砂浜には掘り起こした跡が僅かながらに残っており、
そして、この死体から南東の森にかけてはかすかに雫が零れ、
それが凝固した跡がいくつか点々と残っていた。
この砂浜で、ベルフラウの胸から鮮血が噴き出したにも関わらず。
それらの状況から推論出来る事と言えば。
――罠。
それも、ベルフラウの死体を餌にした。
ベルフラウの殺害犯は、彼女を首尾よく(?)殺した跡、
その死体を運搬してこの砂浜に置き、同時に罠を設置した。
それは、なにより現場が雄弁に語っていた。
おそらく彼女は暴漢に殺害されてから、
その凶器が心臓に突き刺さったままの状態で
この海岸にまで運ばれてきたのだろう。
“元栓”である凶器をすぐさま引き抜けば、
“蛇口”である心臓から鮮血は勢い良く噴き出すが故に。
血塗れの死体を運搬するほど、加害者は阿呆ではないだろうから。
そして砂浜の雫は、恐らくは貫通した凶器から僅かに滴ったもの。
そして罠の敷設が終わった後、凶器は引き抜かれたという事になる。
それは、周囲に血が撒き散らされた惨状から考えても明らかだ。
ベルフラウのその死体に殆ど抵抗した様子はなく、
それは不意討ちで倒された可能性が高い事を物語っている。
――現場に残された手掛かりから、犯人像を推測してみる。
戦闘能力は兎も角として、罠の設置や製作に関しては完全に素人。
少なくとも暗殺者や職業軍人、傭兵等の殺しを生業にはしていない。
その“仕事ぶり”が、あまりにも粗雑過ぎるからだ。
まずは死体の置き方が、余りにもあからさま過ぎる。
これ見よがしな場所に死体があっては、逆に警戒心しか生み出さないだろう。
自分が死体に罠を敷設する場合なら、隠した振りを装って上手く誘導を行い、
一見目立たぬ場所に死体と罠を仕掛けるだろう。
“死”が見せしめを伴わぬ限りは。
――あるいは、一つ相手にも注意すれば分かる程度に囮の罠を仕掛けて、
それを回避して油断した所に掛かる本命の罠を仕掛けるかですね。
支援2
元より、死体はなるべく発見を遅らせるよう隠すのが定石である。
意図的に発見させる有利より、発見された場合の不利がはるかに優るからだ。
死体が見つかれば騒ぎは大きくなり、周囲に警戒網を引かれる以上、
暗殺者ならば標的の始末やその後の逃走は困難を極めることになる。
出来れば、死体など永久に発見されない事が望ましい。
“標的が死んだ”という情報すら与えないのが理想である。
何より、死体という仕事上に発生する最大の痕跡は、
その死因、死体の発見された時間、死体の置かれた状況等から
暗殺者の技量、性格、性別年齢、そして居場所にいたるまでを何より雄弁に語る。
そして、そこから個人を特定できる程の情報を引き出される事すら有り得るのだ。
それは、標的の暗殺後の逃走すらその仕事内容に
含まれる暗殺者ならもはや常識の範疇に含まれる。
殺しの仕事を最も効率的に行い、そして無事生還する為には、
“死体隠し”はもはや初歩と言っていいほどの事柄である。
斥候や密偵を用いたり、奇襲やゲリラ戦を行う事もある職業軍人や傭兵にした所で、
それは同等である。それが合戦場でない限り、死体はなるべく隠すべきものなのだ。
死体を晒すのは、恥を晒すのにも等しい。死を生業とするなら、当然の心得だ。
そして、近くに海という“死体隠し”に最適な場所がありながら
あえてそれを使わず、これ見よがしに死体を放置するというのは、
その見せるという行為自体に特別な意図がある事になる。
そして“見せしめ”なら、可能な限り衝撃的な形でその死体を破壊して、
周囲にその存在を知らしめる事だろう。判別の為、顔だけは綺麗にして。
だが、今回は見せしめにしては、余りにも死体の様子は大人しい。
死体を見せるのが“見せしめ”でなければ、おそらくは“罠”。
容易く想像が出来る事である。
支給品袋等あからさま過ぎるものに罠を隠さなかった事だけは評価するが、
置かれた状況が不自然過ぎる事に気付かないのは、やはり愚かという他ない。
――罠というものは、その“地形”の死角ではなく、“心”の死角にこそ
仕掛けるべきものだって、以前は散々に教わりましたからねー。
あまり思い出したくもない過去をふと振り返り、パッフェルは苦笑いを浮かべる。
死体の作り方にしても、あまり褒められたものではない。
一息に心臓に刃物を突き立てるより、首の骨を折るなり
窒息させてしまう方が、死体はより綺麗なものとなる。
喉笛に釘等を突き入れて殺したまま、引き抜かず放置してもいい。
そこに考慮が至らない“死の専門家”はまず存在しない。
それなら遠方から見れば「生きているようにも見せかける」事すら可能だ。
さらに死に化粧でも施してやれば、しばらくはごまかしさえも効くだろう。
発見者が、自分のような殺しを生業としたことがなければ。
その黒い努力を怠るのは、仕手に思慮または経験が不足している事を意味する。
あるいは逆に意図的に死体に辱めを与え、
過剰に損壊してから首だけを切り離し、
団子のように木の棒に生首を突き刺し、
殊更に目立たせるといった手口もある。
「見せしめ」と思い込ませ、そこからさらに致命的な罠を仕掛けるのだ。
それに切断した手足や内臓等も追加すれば、効果はより劇的なものとなる。
通常の死体ならともかく、そんな吐き気を催すような光景を見れば、
その被害者の親友や恋人や、道徳的な人間なら例え罠を気付いた所で、
丁重に葬ろうとして近寄りたくもなろうものだ。
下衆なやり方だが、そういう手口も二流以下の嗜虐的暗殺者は使用する。
だがこの中途半端な手際から考えるに、今回はそれにも当てはまらない。
玄人ならではの、徹底的な悪意やこだわりが抜け落ちているからだ。
だが、わざわざ死体を遠方から手間暇掛けて担ぎ出している辺り、
狂気に満ちた邪悪な人物である事だけは間違いない。
さらに現場を観察した所、死体を現場まで引き摺った様子はまるでない。
それが意味する事は、殺人犯は数十キロの死体の運搬を苦としない程の、
強靭な体力の持ち主であると言う事。
正直、これが女子供に可能なものとはあまり考えにくい。
外見とかけ離れた腕力が出せるような存在なら、話しは別だろうが。
――つまり、ここから導き出される犯人像は――
それは死者の尊厳に微塵も価値を感じない異常者であり、殺人鬼。
長距離に及ぶ死体運搬を全く苦としない事からも、
成人男性かそれ並の体力の持ち主であるという事。
この島の狂気に飲まれたか、それとも最初から狂っていたのか?
あるいはその両方を兼ねているかも知れないが、
正常な知性や判断力を残しているとは言い難い。
それは手際の稚拙さからも充分にうかがえる。
そして、その見苦しい手際から殺人の専門家ではない以上、
ベルフラウは不意を付かれ殺されたものだと推測する。
そうなる以上、不意を突き、油断を誘う術にはそれなりに長けている事になる。
――体力だけが取り柄の、経験の浅い見習い暗殺者って所でしょうかね?
それならこの中途半端さは頷ける。この殺人犯が“赤き手袋”に所属していたら、
良くてゼロから再教育、下手をすれば素質無しとして処分される事は間違いない。
成人男性の素人がベルフラウの隙を突くのは難しい。
ならば、油断されやすい女子供が犯人となるわけだが、
その場合は体力的な問題で困難という問題が発生する。
――それとも、薬物やそれに近い支給品等の効果で、
身体能力が恐ろしいまでに上がっているとか?
これも、十分にあり得る事だ。
これなら身体的な抑圧が一時的に外れて常識外の筋力がひねり出せたり、
その引き換えに正常な判断能力が奪われて手際が雑になるのも納得はいく。
この条件なら、女子供でも長距離に渡る死体運搬は可能であろう。
そして、何より“やる気”だけは十分すぎる程にあるようだ。
――あるいは、その両方って事も考えられますけどね…。
パッフェルはこうしておおまかな犯人像を絞りこむと、改めて死体に対峙した。
支援3
◇ ◇
「……仕方ありません。先生が見つけちゃう前に、私で葬ってあげときましょっか。」
――危険は承知。だが、それでもやっぱり罠を探し出して解除を行い、彼女を丁重に葬る。
現場検証を行ってしばらくしてからの事。
それが、彼女の出した結論である。
有る程度賢しければ、この状況から罠を察する事は可能であろう。
この罠に引っ掛かるのは同じく素人であるか、
それともこの死体を深く知る存在のみである。
あとは「この先、罠注意」とでも書いた看板でも立てておけばよい。
そう。だが、あの先生ならば。
たとえ罠を承知していた所で、駆けよらずにはいられないだろう。
そして目の前の死体が、己の知る“ベルフラウ”と違うと知った所で
あえて野晒しの彼女を埋葬しに近づく事だろう。
パッフェルはいの一番に、この見え見えの罠に、それでもかかってしまう
あのお人好し過ぎる恩人の存在を想像せずには居られなかった。
――でも、まあ。それが先生のいい所でもあるんですけどねー。
近くに凄まじい力を持った存在がいるかも知れぬ中での、罠の解除。
当然、罠の解除中は精神はそちらに集中し、その姿は完全な無防備になる。
これが精神をどれだけ疲労させ、どれだけの重圧がかかる事か?
想像するだけで、背中に冷たい汗が流れる。
出来れば、放置しておきたい。
放置したい罠ではあるのだが。
――うっかりさんな先生の事考えれば、放っておけませんからねー。
そして、罠の設置などという玄人でも創意工夫に一苦労な行為をあえて行うということは――。
罠自体が支給品であり、素人でも簡単に設置できる類のものである。
そしてそれはきっと殺人の素人でも食指が動くほどの、魅力的な代物――。
おそらくは必殺を期したものである事だけは間違いない。
罠というのは本来はあくまでも絡め手の一つであり、それ単体で殺すのが目的でない。
それ単体で殺戮を起こすのは、皆無ではないが滅多にない。
なにより、道具の準備に時間が掛かり過ぎる上に、コストもかかる。
罠とはなるべく生かさず殺さず、その存在によって足手纏いや見せしめを生産し、
敵達の動きを鈍らせ、心理的重圧を敵の仲間にも与え続けるのが主目的でる。
常に暗殺後の敵の追跡から逃れる身だったものとしては、
死体隠しやその真逆の行為を知らない素人風情であれば、
まずそういった罠の本質にも考えが至らないだろう。
そして、安易な罠へと発想は流れ付く。
ならば、放置するには余りにも危険すぎる代物となるだろう。
そして厄介な事に、その罠の種類だけは想像も付かない代物なのだ。
――分かっているのにどうしても引かなきゃいけないババって、
やっぱり物凄く嫌なものですよねー。
パッフェルは目の前に存在する不可視の死神を想像し、身震いを起こした。
何しろ、正体がつかめない以上解除は不可能であり、
無暗に近づくのは自殺行為にほかならぬからだ。
もし罠があるとすれば掘り起こされている辺りなのだろうが、
埋設されているが故に正体は分かりようがない。
砂浜なら猛毒を持つ蛇蠍の類や毒を塗り込んだ
撒き菱でもばら撒いておく事も出来るだろうが、
この島には全く生命の気配がないだろうし、
何より猛毒を持つ存在は喩え支給されていても、
素人の手には余る存在である。
それを安易に使おうなどとは、素人は決して考えない。
素人は、必要以上に毒というものに慎重になるからだ。
それに限定される。しかも支給品である。
それはもはや見たことも聞いたこともない、
異世界の物質かもしれないのだ。
そもそも姿形すら知らないものを想像させられるという
あまりにも無理難題な苦行を脳に強要させることしばし。
パッフェルは一つの仮想に辿り着いた。
――んー。もしかすると、この爆弾の親戚筋のようなものでしょうかねー?
パッフェルは「スタングレネード」と書かれた支給品と、
その取扱い説明書を引き出し、そこに記されている内容を再確認していた。
「閃光手榴弾」
非殺傷性の手榴弾。使い捨てだ。
言葉に馴染みがなければ、お手製の爆発物とでも考えてもらえばいい。
上部のピンを引き抜いた上で安全レバーを離せば、数秒後に破裂する。
破裂地点を中心に凄まじい大音響と閃光を発生させ、
敵の視覚と聴覚を狂わせて昏倒させる効果を持つ。
同類の破片手榴弾や焼夷手榴弾と違い、破裂時の破片や火炎等で殺傷する事はなく、
生まれるエネルギーも比較的軽微であるため、これ単体で傷を負わせる事は難しい。
だが、己の身体能力や他の支給品との組み合わせ次第では大きく化ける事だろう。
道具は何事も活かし方次第だ。これを上手く活用して、戦局を優位に運ぶといい。
恐らくはヴォルマルフによる解説なのだろうが、
この文面を信じる限り考えられる事が幾つかある。
一つは、「破片手榴弾」や「焼夷手榴弾」のような「破裂時の破片や火炎で殺傷する」、
「お手製の爆発物」が、この閃光手榴弾を作った世界と同じ世界に存在するという事。
当然、その同類の爆弾が支給品として他の参加者にも配布され、
それが罠として使用されている可能性を考慮に入れた方がいい。
支援4
今回もおそらくそれに当たるのだろう。
そして次に考えられる事。その同類をトラップとして使用する事は可能か?
パッフェル自身が持つ閃光手榴弾と、構造はほぼ同じものだと考えられる。
上部のピンを抜いた上で、「レバーを離し」さえすれば数秒後には爆発する。
ここから考えられる事が一つ。
発想を逆に考えるならば、例え上部のピンを抜いた所で
「安全レバーを離さない限りは、決して破裂しない」という事になる。
その性質を逆手に取れば、こういう事も可能となる。
たとえば「破片・焼夷手榴弾のピンだけを引き抜き、死体を下敷きにする」。
そうすれば、死体を抱き起こした時に罠は発動し、
その死体ともども焼き尽くす事も可能であろう。
ただし、正常な判断能力や知性を失っていると推測される、
しかも素人がそこまでの行為が出来るかどうかは疑わしい。
あくまでも可能性の一つと考えるべきである。
ならば、近寄るだけで勝手に作動するような、
もっともっと簡単で、もっともっと単純なものかも知れない。
素人は考える努力を嫌う。その工夫を嫌う分、
その道具の扱い等も極めて単調なものとなる。
そして、極めて安易で目に見える効果や数字のみに目を奪われる性質がある。
それは暗殺稼業のみならず、他の世界にも共通して言える事だ。
ならば、単純であるが故に、解除は不可能なものと考えた方がいい。
素人の心を奪い、その為に死体を一つ製造する程のものであれば。
元より、解除するにもその類に関する知識が不足している。
――罠でよく使う、黒色火薬の樽を小さくして、威力をそのままにしたものでしょうか?
だったら、何か適当なものをぶつけて、無理矢理作動させちゃうしかありませんよねー。
もし野良犬か野良猫でもこの島にいれば、
代わりに死体に向かわせて罠を発動させる事は出来るのだが。
だが、今傍にないものを考えても、それは詮無き事だ。
罠の存在が一番考えられる地点としては、死体の真下。
死体の体内に罠を仕込むのは、素人には不可能だろう。
あるいは、そのすぐ傍の掘り起こしたような跡周辺。
それ以外に、罠を隠せそうな場所は存在しない。
そこに近づくか、あるいは触ってしまえば罠は発動するのだろう。
罠が正体不明の危険物である以上、危険を冒して近づきたくない。
だったら――。
――じゃあ、ちゃっちゃと片してしまいましょうか。
パッフェルはそう判断すると、
支給された時にその弦を除去した楽器を取り出す。
そして女の細腕でこれを投擲出来る、およそ限界の距離を取る。
自分が近づけないなら、代わりになる道具を近づけて、
あるいはぶつけてしまえばいい。
至極単純な話である。
まず確かめるべきは、一番可能性の高い堀り起こした跡。
パッフェルは大きく振り被り、死体傍にある掘り起こした跡に向けて、
叩きつけるようにそれを勢い良く投げつける。
そしてそれは見事な放物線を描き、砂の中にある“何か”に当たり
ゴツリと盛大な音を立て―――。
――――閃光。
暴風、衝撃波、そして撒き散らされる破片。
鼓膜を破るのではないと思われる程の大音響。
ベルフラウの死体のすぐ傍を中心に、
巨大な死の厄災が降り注ぐ。
だが、あらかじめそれを予期していたパッフェルは、
楽器を投擲するのとほぼ同時に地に伏せていた。
“振動感知式爆弾”という名の現代の死神は、
パッフェルの挑発を看過できずにその鎌を振り下ろし、
その背を舐めるように、撫でるようにしてその背を通過する。
―― 一発でビンゴ、でしたか。でもあまり嬉しいものではありませんね…。
やがて、土煙に覆われた視界が晴れ渡る。
視界を覆うほどの土砂の豪雨に交じって降り注ぐ、
赤黒い滑りと粘着性を帯びた何かの欠片。
それは、かつてベルフラウだったものの肉塊であった。
周囲に散らばる金の糸は、さしずめ彼女の髪。
脳髄、眼球、肋骨、胃腸、皮膚と筋繊維。残された僅かな血潮。
それらが不均一の大きさで、ぱらぱらと降り注ぐ。
その何処か滑稽な、そして猟奇的に過ぎる凄惨な光景は、
罠を見破ったパッフェルの手際を、なおも嘲笑しているようでもあった。
その推理は見事であり、こうして今賞賛の拍手を送ってやると。
そしてこの死体を無残に粉微塵にした原因は、他ならぬ貴様にあるのだと。
パッフェルはその事実から来る居た堪れなさに、歯噛みする。
だが、その降り注ぐものの中に。
一切の形を変えず。満月の下で鈍く輝き続けるものがあった。
『首輪』。
その死体を原型をとどめず破壊しつくした厄災の中心地にあっても、
爆発はおろか、一切の形さえ変えなかった、
この殺し合いの核であり、枷でもある、首輪。
それはまさにこの舞台を破壊する事の難しさをも物語るものであった。
支援5
だが、しかし。
それでもこのゲームを破壊する事を、諦める訳にはいかない。
生存を諦めてしまえば、全てが終わってしまうから。
それは自分だけでなく、恩人も、仲間も、そしてこの世界自体も。
だからこそ、決して諦めたりはしない。
首輪の内側には、ご丁寧にも「ベルフラウ・マルティーニ」
という銘が純金で刻まれていた。悪趣味も極まる趣向である。
だがその刻まれたその名の重みは、こう語りかけるようにも感じた。
――お気にせずとも結構ですわ。ヘイゼル。
――私の方こそ、ずっと貴方達の事を心配しておりましたの。
それに、この私がご入り用なのでしょう?
だったら、私を連れて行って下さらないこと?
この私も、まだまだ皆様のお役に立ちたいですから。
夥しい血糊と脂肪に塗れながら尚、全く色褪せぬその輝きは。
この夜空に輝くの満天の星よりも尚、力強く輝く“ベルフラウ”の名は。
死してなお、不屈の闘志を、不滅の炎の意志で以てこちらに訴えかける。
…って、こんな都合のいい解釈、ベルフラウも怒りますわよね?
でも、その貴方の首輪。決して、無駄にはしないですよ。
だから、安心して眠って下さいな。
パッフェルはその首輪を拾い上げ、静かに黙祷を捧げると
その現場からいち早く駆け去った。
“襲撃者達”が、今の大爆発に気付かぬはずがないからだ。
ならば、彼らに見つかる前に立ち去るに限る。
ネスティがやってくる可能性も一瞬考えたが、
当の追われる身であるネスティが人目に付く位置に
わざわざ顔を出すのは、まずありえないだろう。
そしてなにより、このような場でいつまでも感傷に浸る暇はない。
そのような事をしていれば、当のベルフラウにさえ叱られてしまうだろうから。
――本当は、死体をかき集めて埋葬くらいはして上げたかったのですが…。
――しばらくは、そのままで我慢してくださいね。
パッフェルは静かに駆ける。
そして、速やかに平原を立ち去る。
立ち止まりなど許されぬが故に。
己に生きる場所と意味を与えた、恩人の為に。
共に災難に立ち向かった、掛け替えのない仲間達の為に。
人を信じる心を思い出させてくれた、愛する人の為に。
私が心より愛する者達が住まう、この世界の存続の為に。
――そして、志半ばで死した者達の、無念を晴らす為に。
昔とは違う。今は、決して一人だけではない。
その胸には、様々な人達の思いを背負っているのだ。
だからこそ、立ち止まってはならない。ならないのだ。
それらの意志を抱いたパッフェルの俊足は、
まさに疾風の如きものであった。
【C-5/平原(海岸近く)/1日目・夜(臨時放送直前)】
【パッフェル@サモンナイト2】
[状態]:健康。身体的疲労(中度) 、罠解除の重圧による精神的疲労(重度)
[装備]:エレキギター弦x6、スタングレネードx5、
[道具]:血塗れのカレーキャンディ×1、支給品一式×2(食料を1食分消費)
ベルフラウの首輪、支給品入れはバスケット&デイパック
[思考]1:火災が沈静次第、ネスティの探索及び手がかりの調査を行う。
2:ひとまず城の書斎を調べて、休息の合間にこれまでの考察をメモに纏めたい。
3:アティ・マグナを探す(その他の仲間含め、接触は慎重に行う)
4:見知らぬ人間と遭遇時、基本的には馴れ合うことは無い
5:近辺にいるはずの“襲撃者達”と、第三の放火魔を警戒する。
[備考]:放送内容は全て把握。参加者名簿と地図にそれぞれ死者と禁止エリアの記入をしました。
参加者達は、それぞれ別々の世界・時間から集められていると確信しました。
水や食料などすぐに使わないものはデイパックに一括して移しています。
ベルフラウを殺害した犯人は“殺しの素人”であると、ある程度の憶測を立てています。
※ベルフラウの死体は爆発で四散しました。爆心地には血溜まりとその肉片が散らばってます。
振動感知式爆弾の爆音が響き渡りました。隣接したエリアにいれば聞こえる可能性があります。
以上で、パッフェルのSSの代理投下は完了。
続いてヴァイス、チキ、レンツェンハイマーのSSを投下します。
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ
――――――――走れ!!
奇行師、もとい貴公子である俺様は駆ける。
危険極まりないこの村から、駆けて全力で逃げる。
こらそこ、どう見ても奇行師です本当にありがとうございましたとか思ったそこの貴様、
俺がラゼリアに戻ったら極刑。
走り方がゴキブリのように見苦しい限りだと?
貴族の優雅さとか気品が見受けられないだと?
ましてや窮地にある女子供を助けようという、
「貴族の義務」を背負う気概はないのかだと?
それで一生良心の呵責に見舞われないかだと?
わっはっはっはっはっ。
そこの一平民に過ぎない貴様にはそう写るか。
だがこの天災軍略家であるこの俺様の深慮遠謀など知る術もあるまい?
「後味の良くないものを残す」とか、「人生に悔いを残さない」だとか…。
便所ネズミのクソにも匹敵する、その下らない物の考えの方が命取りよ!
このレンツェンハイマーにはそれらはない…。
あるのはシンプルな、たったひとつの目的だけだ…。
たった一つ!『この舞台から脱出して、ラゼリアに生還する』!
それだけよ…、それだけが目的よ!
誇りや……!義務なぞ………!どうでも良いのだァーーーーーーッ!!
迫り来る死への恐怖やらあのガキへの苛立ちによって気分は変な方向へと
「最高にハイって奴」になりながら、俺様は村の郊外へと走っていた。
いや、走り抜けようとしてた。
だが、その怒涛の走りを渾身の力で妨害するものがいる。
そう。あのガキである。あのガキは地に根でも張り付かせたように
地面を靴裏で抉りながらも俺様の動きを妨げていた。
このままでは、満足に走れそうにない。
本当はこんなガキいち早く切り離したいのだが、
秘策「コバンザメ作戦」を成功させる為には、
必要不可欠の存在だから流石に我慢するしかない。
満面に不満そうな表情を浮かべて俺を睨むガキ。
とりあえず、一旦停止してガキの言う事を聞いてやる。
「…あぁん?なんなんだガキ?」
「レンツェンここから逃げたらダメーッ!!
「…何がダメなんだ、ガキィ?」
俺様は首の辺りが熱くなる、形容し難いムズかゆさを抑えながら
眼の前のガキに凄味を利かせながら睨みつける。
って、よく考えたらぁあああああ!!
首が痒くなるって、このガキと同じじゃないかぁあああああ!!!
あせもじゃないッ!あせもじゃないから恥ずかしくないもんッ!!
そんなこの俺が感じた屈辱と葛藤を知らずに、
ガキは手前勝手にこの俺様に意見しやがった。
「ダメーッ!えらいひとが女の人見捨てたりしちゃダメーッ!」
「なんでさ?」
「…だって、マルスおにいちゃん達がそう言ってたもん。
えらい人には、その地位にともなう責任と、義務があるんだって。
だから、えらい人は困った人や弱い人がいれば助けなきゃいけないの。
えらい人ってのは、皆がそういう人じゃなきゃダメだって。
レンツェンも、マルスおにいちゃんと一緒でとってもえらい人なんでしょ?」
うん、言っている事がさっぱり理解出来ん。
というか、理解する必要性を全く見出せん。
偉い人っていうのには同意するが、それ以外はどうでもいい。
って、また俺様のことレンツェンって省略しやがった。
「…ところで、“せきにん”と“ぎむ”って何?」
「その人間が“しなければいけない事”と、“従うべきとされる事”だ。
なんだガキ。そんな事も知らずに俺様に偉そうな口を利くのか?」
そもそも、貴族というのは特権階級であり、支配する側の階級だ。
貴族は支配する権利は有しているが、支配する責任などないのだ。
支配する為の階級が、家畜や財産の様子を気にかけることはあっても、
それを自分の生命まで賭けて助けてやるだなどと、絶対にありえない。
なによりそのような事をする意味がない。
ガキにも分かりやすく言った方がいいな?
よし。いっちばん分かりやすく、平民の農夫にでも喩えてやろう。
そっちが分かりやすいだろ。よく聞け、糞ガキ。
お前ら平民にしたところで、家畜どもをどう扱っている?
確かにあれは上手く管理しているだろ。自分の為にな。
だからこそ色々と気を配りもするし、大事にも育てる。
だが、あれらは老いるまで育てても意味がないんだ。
むしろ金食い虫にしかならん。
第一、若いうちにバラさないと旨い肉が喰えんだろ?
あいつらは、喰われる為だけに生かされているんだ。
それは責任じゃない。都合が良いからそうするだけだ。
それは義務じゃない。自分の為だけにやっているんだ。
支援6
第一、骨折ってやらんと家畜は自分で生きられんだろ?
喰われるまで生かされる事に、むしろ感謝すべきだろ?
だったらガキ。泣き叫んで命乞いをする鶏や牛や豚を、
お前ら平民は必死に止めようとするか?…止めないだろ?
止めたら肉が食えなくなるし、育てた農夫も生活が出来ん。
俺にとっての領民とは、農夫にとっての家畜と同じだ。
だからお前の言う事など聞く耳持たん。
マルスおにいちゃんかリュナンにでも言え。
どうだガキ、これでわかったか?
それと一緒だ。義務や責任なんてものは、最初から存在しない。
それは自分が「良い事をやっている自分が気持ちがいい」って
感じてるからやってるだけの、ただの悪趣味って奴だ。
だったら、この俺様にそんな偉そうな口を聞くんじゃない。
わっはっはっはっはっ…。
うん。俺様偉い。我ながら改心の出来映えの喩え話だ。
わざわざ分かりやすく同じ平民レベルの生活の話しに落すとは、
中々に配慮も行き届いている。これでもう生意気な口も…。
そんな俺様の素晴らしい説得に、ガキは感じ入り反省する所か
顔を紅潮させてこの俺に大声で怒鳴り付けやがった。
「…レンツェンなんて大キライッ!しんじゃえ!」
そう言うや否や、チキは俺様に背を向け、走り出そうとする。
それを察した俺様、偉い。後ろから抱き付いてそれを抑え込む。
あー、念のためはっきり言っておくがそこで読んでるお前。
おれはこんなガキに欲情するような妙な趣味はないぞ。
俺の好みはもっと肉感的でかつ腰は細く、それでいて背の高い女だ。
俺はこのガキを担ぎあげて、早々にこの村からの脱出を試みる。
――だが。
ガブゥ!!
「くぁwせdrftgyふじこlp;!!」
さっきの顔色の悪そうな男よりもっと大きく支離滅裂な絶叫を挙げて、
俺様は転げ回り、のた打ち回った。二の腕には盛大な歯型の跡が付いている。
このガキが力一杯に噛み付きやがったからだ。
「いてえよぉおおおおお!!いてえよぉおおおおおおおお!!」
あまりの痛さに転げまわり、のたうち回る俺を尻目に、
あのガキは何かマジになった目で村の方角に目を向ける。
「いいもん!チキ一人であのお姉ちゃん達、全員助けにいくもん!!」
そういうや否や、村に向かって全力で疾走を始める。
それは瞬く間に村の外れへと辿り着き、
すぐにその立ち並ぶ家々の陰に隠れ見えなくなった。
………でも、もういない。
チキはもう…いない……。
残されたレンツェンはまた…独りぼっち……。
これは、不味い。
非常に、不味い。
このままでは、あのガキは危険人物達のどれかに
立ち所に見つかり、殺されてしまうではないか!
ガキの生命自体はどうでもいいが、そうなれば、
秘策「コバンザメ作戦」も台無しになってしまう。
そうなれば、俺様が一人であがいてもどうにもならん。
そうなれば、俺は死ぬ。
遠からず、絶対に死ぬ。
「逃がすか、ガキィイイイイ!!!」
ガキを追いかけて、俺様は村に戻った。
貴重な、かけがえのない命綱を探しに。
あのどう見ても尋常ではない雰囲気のものどもが潜む、
危険な村へと――。
◇ ◇
太股と足首の傷の縫合を、無事終える。
これ以上の失血は、不味い事になる。
意識が少しぼんやりとする。
少しだけ休息が必要だろう。
だが、血が抜けた分、幾分かの冷静さは取り戻せたようだ。
あの女は犯して犯して犯し抜いた後、最大の苦痛を与えて、そして殺す。
まあ順番が逆になってもいい。出来ればその悲鳴を長く聞きたいのだから、
出来れば前者となってくれるほうが俺は嬉しいのだが。
あるいはあの黒騎士だろうが、
あの偉そうなオッサンだろうが殺す。
生き残りは誰だろうが、必ず殺す。
だが、それはゆっくり時間をかけたあとでも良いだろう。
順当に考えるならあのオッサンが軍馬がある分優位だが、
黒騎士の方もどうも得体の知れないものを感じていた。
ランスロット・タルタロスのような、人間離れした不気味な何かを。
その勘が本物だとすれば、あのオッサンも無事ではすまないだろう。
そしてあの女とがぶつかり、最後に生き残った一人を始末すればいい。
俺は台所の料理を見てふと思い直し、
その調理に使われたと思われる包丁を手に取った。
手の込んだ手料理が作れるってことは、
調理用の器具もまたあるってことだ。
晩飯は一運動終えた後でもいいだろう。
だが、包丁は今刃物代わりとして必要だ。
それに、近くに見かけた民家に、たしか鋤や鍬程度ならあったはずだ。
それらと包丁を荒縄等で括りつければ、簡易槍にでもなるだろう。
耐久性は全く期待できないが、なぁに。一人殺れればそれで充分だ。
最終的に、全員死ねばあとはどうでもいい。
俺はそう考えて玄関のドアノブに手を掛けようとしたが――。
支援7
随分と騒がしい二つの声がこちらに近づいてくる。
これはあの女でも黒騎士でも偉そうなオッサンのものでもない。
だがこれは聞き覚えの…、ある声だ。そう、一度だけ聞いてある。
銀髪の男と、緑髪のガキの二人組だ。覚えているぞ。
俺はこのクソッタレな声どものお陰で注意をそらしてしまい、
その為にあの殺れるはずの女相手に無様を晒してしまった。
あの邪魔さえなければ、俺はあの女を始末出来たはずだった。
つまり、今のこの俺の怪我は、あいつらのせいだってことだ。
ま、肩慣らしにゃちょうどいいか。
この危機管理意識の欠片もない大声から察するに、
どう考えても間抜けの類だろう。
戦闘力など無いにに等しい。ならちょうどいい。
そうそうに始末して武器を奪っておくとするか。
――俺は威嚇するようにドアを全力で蹴破り、その屋外へと躍り出た。
◇ ◇
「待て、待つんだガキィイイイイイ!!」
俺は駆ける。駆ける駈ける翔ける賭ける掛ける書ける描ける架ける掻ける…。
って、違うだろぉがあああああああこの俺様を書いている奴よぉおおおおおおお!!!
『――諸君、これから第一回目の放送を始める』
立ちあがり、ガキを追いかける直前に、例のヴォルマルフという男の言う
放送とやらがあった。その声はどう聞いたって楽しんでやがる。
こういう時でも流石俺。優先順位は弁えている。
ガキは後からでも追いかけられるが、放送は今を逃せば二度と聞けない。
俺様は素早く参加者名簿を袋から取り出し、
城で失敬してきた筆記用具で死亡者の名前と
禁止エリアの三か所ににチェックを入れていく。
やがて作業が終わり、その内容を読み返していく。
って。あれ?アレアレアレレ?
死者の名前にチェックをまんべんなく入れていくが、
その十名の名前のうち、三つが…。
マルス
シーダ
ナバール
おい。おいおいおいおいおいおいおい。
ちょっと待てぇええええええええ?!!
秘策「コバンザメ作戦」、早くも破綻の兆しか?
もう残りはオグマおじちゃんしか残ってねえ?!
ガキ、もう見捨てちゃおうかな…。
いや、まだオグマおじちゃんがいる。
ふ。ふふふ。俺はこのオグマおじちゃんこそが頼れる男であると見た!
逆を言えば他のヘタレ三人衆どもと違って、
この男だけは立派に生き残っているのがその証拠だ!
ならばガキをどうあっても確保しなければならない。
そうだ。それが最も正しい選択肢なのだ。
第一、こんな夜道に一人で置き去りにされるっていうのは…。
ゲフンゲフン!!
お、おいそこのお、おっおおおお前。
か、勘違いなんか、し、しないでよねッ?!
べ、別にこんなこの殺し合いが起こってるまっただ中、
一人っきりになるのが怖いって訳じゃないんだからねッ?!
俺はどこかに向かって自己弁護の限りを尽くすと、
見えなくなったガキを探しに村の中を駆け抜けた。
「…ガキはいねえぇがあ?…ガキはいねぇえがあ?」
民家を一軒一軒捜索し、声を掛けてみるが…。
目的のガキはおろか、さっきの赤毛の女やメガネをかけた優男も見当たりはしない。
当然、遠くで戦っている物騒を絵にかいたような黒騎士と赤い騎兵は言うに及ばず。
でも、なんか物凄い金属の悲鳴がこっちまで聞こえてきてるような気がするんですけど…。
まあいい。聞こえないことにしよう。
やがて、橋が見えるほどの位置に来た所で。
探し回っていたガキが、とある民家の前で立ち止まっていた。
なにやらそこから漂うほのかな匂いに鼻をひくつかせている。
あ、涎だ。やはりガキはこれだからこそみっともない。
思いだしてみれば、俺様もこの半日は満足な休憩も食事も取ってなかった。
おそらく、ここで殺し合いをおっ始めている物騒な連中とは程遠い関係にある、
心優しい誰かがこの哀れな俺様の為に用意して下さったのだろう。
ユトナの加護に、こればかりは感謝感謝。
よし。あのガキをとりあえず食事でで釣り、
休憩を取ってからこの村を離脱するとするか。
ガキはなんとでも言いくるめればいい。
そう考えてガキに背後から声をかける。
出来る限り、優しい声色で。
「…おいガキ。赤毛の女とメガネの男は見つかったか?」
「ううん。見つからない。でも、チキ。お腹すいたぁ…。」
「じゃあ夕餉でも頂いてから、この後の事を考えるとするか。」
「…うー、でも女の人と男の人が…。」
「腹が減っては戦は出来んというだろう?それにどこかで隠れているかもしれん。
あいつらを探すのは、休憩を入れてからでも遅くはないんじゃないのか?」
「……うん、じゃあレンツェンの言う通りにする。チキ、昼ごはんもまだだったし。」
「よしよし。じゃあとりあえずは食事にしよう。」
支援8
ふふふ。舞踏会で数々の女性を魅惑してきたこの俺様のテクニックにかかれば、
年端もいかぬガキを虜にするなど造作もないことよ。
俺様はそういってガキの肩に手を回し、エスコートするように民家の目の前にまで近づいたが。
唐突なる破裂音。
玄関の扉が轟音を立て、蝶番さえも付いたままに
この俺様に向かって物凄い勢いで吹き飛んでくる。
俺様はちょうとガキを庇うような形になり、
その迫り来る扉を顔面で受け止める形となる。
そう、顔面で。
ごちん。
意識が少し途切れ、天国の能無し親父と口煩い母親が一瞬かいま見えた気がした。
あ、今ものすげえ嫌そうな顔して「こっち来んな」って手を振ってやがる。
うぜえぞてめえら。っていうか、意地でもそっちなんか逝ってやるものか。
両親への反発心で、俺はなんとか意識を取り戻す。
「…レンツェン。だいじょうぶ?」
大丈夫な訳ねぇだろうが、と大声を張り上げる直前。
眼の前には、どう見ても血に飢えた狼とか悪鬼の類にしか見えない、
顔色の悪い少年がいた。それは、先ほど赤毛の女を殺そうとした
者と人相と声もが一致している。…ヤバい。
赤毛の女や眼鏡の男が潜んでいるって事はだ。
こいつも潜んでいる可能性があるという事だ。
それを忘れてはならなかったのだ。
しかし。しかしだ。
この天才軍略家の目をもってしても見抜けぬとは!
このレンツェンハイマー、一生の不覚!
「…よお。ひさしぶりだな?いや、はじめましてって言うべきかな?」
そういって、少年は二コリとこちらに微笑みかける。
おお、何故か友好的な気配?これも俺様のカリスマ性のなせる業か?
「お前らの馬鹿騒ぎのお陰でな。こっちは足首に怪我背負っちまったんだ。
その怪我のお礼を、今ここでたっぷりとさせて貰いたいんだがね?」
…前言撤回。
顔だけはにこやかに。実に穏やかな口調で。
だがしかし、声色には殺気を溢れださせて。
ああ、だめだ。これはもはや敵対的だとか、害意があるとか、
そういう生半可なレベルをぶっちぎりで超越している。
この顔色が悪い少年は白い歯を剥き出しにして笑いかけるが、
あれはどうみたって、これから襲う獲物を物色する野獣の瞳だ。
シュラムの死神の刃物のような危険さとは違う野生の危険性を、
この少年は全身から醸し出してやがる。
やがて、その男は気が付いたかのように、俺の後ろにいるガキに…。
正確にはガキの背負っている鞄からはみ出した柄に見入っていた。
「…へえ。そこのガキ。相当良さそうな剣持ってるじゃねえか。
その柄、どう見たって普通の剣なんかじゃ有り得ねえだろ?
それを寄越しな。そうすりゃ見逃してやることも考えてやるぜ?」
チキは置かれている状況が理解できるのか、それとも理解できていないのか?
不機嫌そうな顔を目の前の少年に向けて浮かべていた。ああ、まずい。
あの身体はおろか頭にも栄養が足りなさそうなガキのことだ。
いわれたままに「ハイ、どうぞ♪」だなんて言ってあの剣を渡しかねない。
当然、あの男に剣を渡したからとって見逃すつもりは一切ないだろう。
そうなれば最後。俺はあのガキと一緒になます斬りにされるだけだ。
だったら、命懸けでこいつと戦う?それも、問題外だ。
シュラムの死神には劣るものの、一般兵士など軽く凌駕した殺気の持ち主。
まともにやりあえば、たとえ素手でも瞬殺されることはまず間違いない。
ではガキを置いて逃げるか?
このままではどうせガキと共に殺されてしまうのであれば。
そう判断し、せめて自分一人でも逃げられる場所を模索するが――。
「おれを あまくみるなよ!!」
とっくに みぬかれている!
しょうねんは そういって どうもうな えみをうかべる。
そして いつのまにか しへのきょうふのあまり のうないが
8びっとの せかいに なりかわって しまったらしい!
ぬたりと しろいはをみせながら けんを とりあげようと
かおいろのわるい しょうねんは ガキにちかづこうとする。
…きょうふに こしをぬかしながら このおれさまの めにうつったものは…!!
あのしょうねんが せにまとった しにがみだ!!
それはこのおれさまを とらえようと みみもとに つめたいといきを ふきかける
…こわくてきな じょせいのすがたを とりながら…。
ざんねん!
このおれさまの ぼうけんは これで おわってしまうのか?
【C-3/村:東端の民家/夜】
【ヴァイス@タクティクスオウガ】
[状態]:右の二の腕に裂傷、右足首に刺し傷、右腿に切り傷(全て処置済)、やや酷い貧血、
死神の甲冑による恐怖効果、および精気吸収による生気の欠如と活力及び耐久性の向上。
[装備]:死神の甲冑@TO、調理用の包丁、肉切り用のナイフ(3本)、漆黒の投げナイフ(4本セット:残り4本)
[道具]:支給品一式(もう一つのアイテムは不明)、栄養価の高い保存食(2食分)。麦酒ペットボトル2本分(移し変え済)
[思考]1:手始めにガキから剣を奪い、眼の前の二人を殺す。
2:殺せる場合は殺すが、無理はしない
3:アティたちに復讐
【レンツェンハイマー@ティアリングサーガ】
[状態]:疲労、空腹、やすらぐかほり、顔面に赤い腫れ、
恐怖、混乱のあまり思考が8ビット化(次の冒頭で必ず戻ります)
[装備]:ゴールドスタッフ@ディスガイア、エルメスの靴@FFT
[思考]1:眼の前の災難(ヴァイス)から取りあえず逃げ切りたい。
2:保身第一、(都合のいい)仲間を集める
3:手段を問わず、とにかく生還する
4:コバンザメ作戦、どうしよう…?
[備考]:ヴェガっぽいやつには絶対近寄らない(ヴェガっぽいのが既に死んでる事に気づいてません)。
放送内容でオイゲンが死んだ事に喜んではいたのですが、
今はそれどころではなく死神の甲冑の恐怖効果により打ち震えています。
首輪の感情増幅効果により混乱の度合がより一層酷くなっていますが、元よりそんな事には一切気付いておりません。
支援9
【チキ@ファイアーエムブレム紋章の謎】
[状態]:健康、空腹
[装備]:シャンタージュ@FFT
[道具]:やたらと重いにぎり(柄部分のみ確認、詳細不明)
[思考]1:レンツェンといっしょ (でも、ちょっときらいになった)
2:仲間をさがす
3:首輪かゆい
4:かえりたい
5:このおにいさん ものすごくイヤ
[備考]:放送は聞いてはいましたが、その意味をよく理解していません。
よって、マルス達が既に死んでいる事に気付いておりません。
----------
以上で代理投下を終了します。執筆お疲れ様でした。
同書き手氏の『臨時放送』につきましては、おそらく議論中であることと、
こちらの原作把握が甘いことから、今回の投下は見合わせました。
また、創作発表板は行数制限が緩くなっている(1レス60行)ので、
レス数を減らす=連投規制にかかりづらくするために、こちらの任意で
投下を分割し、また、改行を詰めさせていただいた箇所があります。
本来のフォーマットどおりに投下できなくて申し訳ありませんでした。
こちらが身動きとれない中での、新スレ立て&代理投下誠にありがとうございます。
このお礼は今後の作品で語りたいと思います。
というわけで、返礼として早速したらばに投下した作品をこちらにも投下します。
ああ、規制がないって素晴らしいな…。
――――時は遡る。
それは、あのヴォルマルフと呼ばれた騎士が
参加者全員を魔法によりこの“会場”転送させた――。
いや、より正確に言えば“私以外の全員を転送させた”後の事。
私はそれ以外の一切が存在しない暗黒の中、二人きりで対面していた。
奈落ともいえる空間の中で、ただ一つ黄金に光る存在。
それは人によっては希望の光にも見えることであろう。
ただ、それが仕組まれた演出であるのは疑いようがない。
距離は遠くもなければ、近くもない。およそ小幅で八歩。
無手のまま、一足で騎士の息の根を止めるにはやや遠い距離。
その絶妙な距離を保ったまま、黄金の騎士は友好とは程遠い、
肉食獣の笑顔を見せつけながらこちらに語りかけた。
「さて、“アルフォンス・レーエル君”。
貴様が会場に向かう前に、一つ頼みたい事がある。」
捨て去ったはずの過去の名での、嘲りを含む唐突な呼びかけ。
冷汗が首筋を伝う。
胸の動悸が早まる。
だが、それらは鋼の意思で抑圧する。
――この男、どこまでこの私の事を知っている?
私は出来る限り内面の動揺を抑えながら、黄金の騎士を睨みつける。
この呼びかけが、こちらの動揺を誘い籠絡するものであるのは明白だから。
その意図が見え透いた問いに、合わせてやる義理はない。
嘘はつかず、そして肯定もせず。極力当たり障りのない回答を選ぶ。
「間違えないで頂こうか。私の名は、“ランスロット・タルタロス”だ。」
「今の名前は、ではないのか?まあどちらでも構わんか。
しかし、いつまでも過ぎた想い出を引き摺る辺りで、
坊やとさえ呼んでしまっても構わないと思うだがね。」
「ここに呼び出される前はゲートを私用する野心があったようだが…。
なるほど、天界で初恋の少女でも探しに行くつもりだったのかね?
これは面白い。貴様は実に高尚な趣味を持つようだ。
…騎士としては面汚しもいい所なのだがな。」
黄金の騎士による嘲弄と侮蔑が、一層その度合いを増す。
意図的に過去と現在を都合よく編集し、こちらの激怒を誘う。
己の有する圧倒的な情報量の誇示。それは畏怖を抱かせる為のものである。
そしてその視線は、薄汚い子犬を見るように憐憫さえも含んでいた。
この実に小賢しいやり口。
こちらの平静を乱すのが目的であるのは明白である。
だが、こちらが不用意に実力行使に出れば、先ほどの大男の二の舞となる。
それを承知の上での、この暴挙なのだろう。
なおかつ相手はこちらを充分に知り、こちらは相手を何一つ知らない。
こちらは丸腰で、相手は生殺与奪の象徴である首輪の起動が可能である。
どちらが優位であるかは、もはや問うまでもない。
おそらく、それらからなる絶対の優位を背景に、
私に何か特別な命令を科すつもりなのだろう。
だが、私は彼に従うつもりはない。毛頭ない。
一たび奴に主導権を握らせれば最後。
こちらが死ぬまでいいように利用される事は、もはや目に見えている。
そして、会場に放り出されれば、このヴォルマルフの魔手から脱する機会も
おそらくは失われるであろう。
だが、今の状況は、ともすれば好機ともなりうる。
相手はこちらを勧誘する為にわざわざ隔離された空間に呼び出し、
己の絶対の優位を確信し、慢心し切っている。殺意は感じられない。
だが、奴の隙を見て首尾よく始末すれば、その混乱を利用して
この不明瞭な空間から逃げ出す事は可能だろう。
確かに今奴を殺せば、様々な不都合が発生するかもしれない。
だが、このまま手をこまねいてゲーム会場に送り出され、
名も知らぬ五十人を相手に殺し合いをさせられるよりは、
奴一人を暗殺して脱出の手段を模索する方が、生存の可能性は遥かに高い。
ならば、その機は今ここで手繰り寄せるのみ。
手を二本貫手の形に取る。
たとえ丸腰であろうとも、私は人を殺せる。
少年時代から、私は何度も武装した敵兵を殴殺したこともある。
いかなる状態からでも、
いかなる状況からでも。
私は人を殺せる。
殺し切れるのだ。
そして、相手はその傲慢によりそれを失念している。
ならば、その身を以て思い知らせれてやればいい。
摺り足で悟られぬよう、黄金の騎士との間合いを徐々に詰める。
――七歩…、六歩…。
あと一歩、欲しい。
だが、流石にこれ以上は勘付かれてしまうだろう。
今なら攻撃は可能だが、これでは即死させる事は難しい。
二本の指でその頭蓋から眼を抉り、
さらにそこから大脳を掻き回す。
だが、それには少々距離が足りない。
そして、眼窩への精密狙撃を可能とする隙も欲しい。
相手を即死させない以上は、私の攻撃は破滅への片道切符となる。
ならば、相手から最後の一歩と、その隙を引き出す必要性がある。
私はその黄金の騎士の一挙一動を見逃さぬよう、注意深く窺う。
「…過ぎた愚弄は、その生命を縮めるぞ。」
私は軽く憤慨し、その挑発に乗せられた振りをする。怒りで殺意を覆い隠す。
憤慨した事については本心だが、それで回りが見えなくなるほど愚かでもない。
どの道、あと数秒の後にはその生命で愚弄の代償を支払ってもらうのだ。
気にするほどのものでもない。
――だが、ヴォルマルフは様子を窺う私の顔を眺め、薄く笑った。
「――では、試してみるかね?」
その嘲りに満ちた顔は、唐突に興味と殺意を帯びて私の顔を眺めていた。
その片手はすでに剣の鞘を握り、いつでも抜ける形にあった。
その姿勢は自然体にして、見事なまでの脱力と弛緩。
黄金の騎士の迎撃体勢は、完璧なまでに整っている。
私が少しでも動けば、神速の抜き打ちにて斬り捨てられる事だろう。
首輪の起動などという、小道具などに頼る様子は一切ない。
つまり、この男の余裕は環境に酔い依存する愚かさからなどではなく、
己の腕にも絶対の自負を持つが故の慢心から来ているという事か。
これでは、油断など引き出しようがない。
そもそも、隙など最初からないのだから。
――見抜かれている。
私は心の中で舌打ちをする。
そして、その苛立ちを悟ったか、黄金の騎士はどす黒い笑みでそれに応える。
――お前は今置かれた現実が見えぬ程の愚者でもあるまい?
駒をこれ以上無為に潰すのは、私としては不本意なのだがね。
そのこちらへの嘲弄と殺意に満ちた黄金の騎士の表情は、
口には出さずともその意思を何よりも雄弁に語っていた。
おそらく、いざとなればこの男は私を殺害する事に躊躇はないだろう。
駒として素直に動くなら良し。そうでなければ――といった所か。
極めて不愉快だが、今は逆らってはならない。無駄死にするだけだ。
今はまだ、従うしかない。
今はまだ、なのだが。
ヴォルマルフと名乗る騎士は、私が暗殺を諦めた事を悟り穏やかに語りかける。
「では、とりあえずはタルタロス卿とでも呼んでおこうか。
私は先ほどの殺し合いを“ゲーム”と呼んだ。
そして、お前にはその“ゲーム”を盛り上げ、
あるいは全体を掻き回す“狂言回し”の役割を頼みたいのだ。
いわば、ゲームの“鬼札(ジョーカー)”とでも呼んでおこうか。」
ヴォルマルフの申し出は、ある意味想像通りのものであった。
ヴォルマルフは殺し合いという“ゲーム”を全参加者に強制した。
だが、それに素直に乗ってくれる愚者はそれなりにはいたが、
彼らが望む程の功績を上げる程の者がいるとは思えなかった。
だからこそ、このゲームを上手く扇動し、盛り上げる者が必要なのだろう。
主催者の命令に真っ先に従ってくれる者というのは、
血に飢えた狼か、あるいは極めつけの愚者か。
いずれにせよ、あまり長生きが出来る存在ではない。
生存を第一とするなら、取ってはならない行為だろう。
たとえこのゲームに乗るにしたところで、優勝できる勝算がない限りは
しばらくは参加者の情報を集め、様子見に徹するのが賢明と思われる。
あるいは労を少なくする為、敵同士を噛み合わせるなどの戦術も必要だ。
敵を知らずして、五十名を殺戮し尽くすのは無理があるのだから。
私自身が、ゲームに乗る場合はそうするつもりであるように。
残りの参加者は反発し、道徳的な理由あるいは利己的な理由から、
造反あるいは脱出方法の模索をしばらくは試みるだろう。
そうなればゲームは停滞し、あるいは破局を迎える。
ならば彼等を事前に扇動し、まとめて破滅に導きこうとする
道化(ジョーカー)の役割が必要なのだという事なのだろう。
その役割を、彼らはこの私に期待しているのだ。
「…私がそれに素直に応じるとでも思うか?」
私は思ったとおりの事を口にする。
私の殺意は、既に気付かれている。
ならば、今更変に媚入ったところで逆に警戒されかねない。
むしろ正直である方が、良い時と場合もあるのだ。
「…思わないな。むしろ隙有らば私の喉笛さえも食い千切らんとする、オウガの類ではないかね?」
だが、意外にもヴォルマルフは私の敵意に笑顔で答えた。
そうだ。それでいいと言わんばかりに。
私はヴォルマルフの人を喰ったような態度に、不快感を露わにする。
「そのオウガの類相手に、随分と戯れが過ぎるようだが?」
私はヴォルマルフに、今度こそ敵意を隠そうとする事無くそれをぶつける。
だが、ヴォルマルフはその双眸を見開き、狂喜にその顔を歪めて答えた。
それは凄絶なる、殺気に満ち溢れた笑顔であった。
――私もまた、同じくそのオウガの類だとすれば?
口に出さずとも、そのおぞましい笑顔は自負と狂気を雄弁に語っていた。
なるほど。あれは、只の人間に出せる貌ではない。
ただ殺戮と破壊を是とし、ただ阿鼻叫喚を愉悦とし、
ただ混沌を布教する事のみを己の意味する者の貌だ。
それ以外の事柄は心には無く、何一つ望みはしない。
理想や大義という高尚なもの等一切持ち合わせない。
それらを深く知りながら、無価値であると嘲弄する。
私とは似て非なる、相容れぬ暗闇の世界の住人。
悪意の化身者だけが持ち得る、純正の狂気。
私はその純粋だが無垢とは対極にある笑顔に、
ほんの僅かだが気圧された。
…気圧されてしまったのだ。
支援
遅かった…。orz
「……さて、わかりやすく貴様に言おう。
我々は“内通者”を、“扇動者”を求めている。
それも、容易には我々に媚を売らず、追従もせず。
なおかつ一切の干渉無しでも優勝の可能性を持つ程の逸材が望ましい。
それが貴様だ。他にも候補者は何人かいたのだがね。
やはり貴様が最適という結論に落ち着いたのだ。」
ヴォルマルフはそう言い放ち、満足げに頷く。
ヴォルマルフの条件を聞き、私は得心する。
「元よりそちらに喜んで魂を売るような小物では、
却って“内通者”など務まらぬということか。」
この“ゲーム”。積極的に乗る者も見受けられた。
ならば、主催側に媚を売る者どもも発生するだろう。
己をより、安全かつ優位な立場に置くために。
その手段はゲームのルールに対する提案かもしれないし、
直接の殺害数を以て主催に取引を持ちかけるかもしれない。
その下卑た“奉仕者”達は、大いにゲームを盛り上げる事だろう。
だが、主催側に奉仕者の取引に応じる義理はない。
彼らの取引に応じる振りをして得るものだけを得、
向こうの要求を無視してしまっても構わないのだ。
だが、積極的な“奉仕者”の存在がいなければ、
反主催側に余計な時間を与える事にも繋がる。
そしてそれは万が一であっても、反逆の機会を与え、
反主催側を団結させる時間を与える事にもなりかねない。
そうなれば、ゲームは遠からず破綻する。
ゲームを円滑に進めるなら、そういった積極的奉仕者達の存在は
貴重であり、進行側にとっては喜ばしい事に見えるかも知れない。
だが、逆に言えばそれは参加者側に足元を見られる事にも繋がる。
それは、主催側にとって決して面白い事態ではないだろう。
ヴォルマルフと言う男が懸念している事は、まさにそれなのだろう。
だが、最初からこちらに媚を売る側を主催側に取り込んでは扱い辛い上に、
その卑しい性根が理屈を超えた感覚的なもので反主催側に伝わる恐れもある。
なにより、己に利ありと見れば簡単に立場を鞍替えしてしまう事だろう。
それでは“内通者”としてあまり役には立たぬ。
だからこそ、状況次第ではどちらの立場も取り得る存在が欲しいのだろう。
その方が、反主催側への演技にも現実味を帯びる事になる。
なにしろ、出会っている時点では“嘘をついているわけでもない”のだから。
「……その程度は理解できるようだな。もっとも、そうでなければ困る。
そして、最終的には自らの意思で我々の意に沿って動きさえすればいい。」
「…随分と、自信があるようだな。」
私は軽蔑の視線を騎士の姿をした獣に送る。
だが、奴は実に涼しい顔でそれをいなし、動じる様子は一切ない。
「首輪以外にも置かれた状況を冷静に分析し、なおかつ理と利に聡い存在であれば、
必然的に私の勧誘を受け入れる事になる。」
黄金の騎士は何かの確信を込めた口調で、断定的に私に語る。
「私がすぐさま裏切り、今の会合を暴露する可能性は、考慮してはいないのか?」
私はこの男の自惚れた入り混じった発言に、心中で溜息を吐く。
そう。この会合の一件をいち早く暴露してしまえば、
私はそれを切っ掛けに反主催側の中核を担う事も可能だ。
なにより私は、このヴォルマルフという男を好いてはいない。
返答次第では、反主催側に立ってしまってもいいだろう。
この騎士の面汚し、元より信頼のおける存在ではないのだから。
だが、ヴォルマルフは「我が意を得たり」とばかりにほくそ笑む。
「むしろ、それこそ我らの望む所というものだ。
あちらの会場には貴様の過去の所業をよく知り、
なおかつ快く思わぬ存在が何人も存在している。
先手を打って暴露した所で、奴らの信頼まで得るのは不可能だ。
貴様の目的の為なら一切の手段を選ばぬ本性を熟知しているからな。
彼らは貴様と手を組む事を、貴様の存在自体を、決して許さぬ。
そして貴様を拒絶し、その暴露は信用に足らぬと吹聴するだろう。
暴露はむしろ、我々との繋がりのみを明かす事にしかならず、
信頼なき以上、結果は貴様の二心への警戒を増させるのみ。
…まあ、それはそれで一向に構わないのだがね。
結果として、貴様は我々に貢献せざるを得なくなるのだから。」
なるほど。最初から私の裏切りをあらかじめ予見して、
私の敵対者達を同時に参加させているという事か。
歯噛みする私を尻目に、ヴォルマルフの高説は続く。
「それに、我々との会合の一件を暴露すれば?
貴様以外に、我々との“個人面談”を受けた
“内通者”の可能性を疑う者さえ出るだろう。
疑惑の種は、さらに振り撒かれる事になる。
そう。どう転んでもこちらを利する結果となる。
…だが、何より己の生存を最優先するならば、だ。
しばらくの間は余計な疑いを掛けられぬよう、
どちらの道も選べるよう、沈黙を最善と判断するだろうがね。」
こちらが取り得る対処策としては、私を知る参加者全員の早急な口封じだが、
それもおそらくはすぐに捕まらぬよう、全員を散らして配置してあるだろう。
…実に、厄介な連中だ。
会合の一件は、此方が口を割らない限りは悟られる事はまずない。
脱出は不可能な場合をも考えれば、やはりここはしばらくは沈黙を選び、
ヴォルマルフに従うしかない。今のところは、だが。
「…わかった。ならば今は大人しく従うしかあるまい。
状況に合わせて、“ゲーム”を盛り上げる行動を取ればよいのか?」
――そういうことになる。
ヴォルマルフは満足げに頷くと、満足げに微笑んだ。
「…では、具体的にどのような行動が最も望まれる?
その方が、こちらとしても効率よく動けるのでね。」
ならばと考えて、私は彼らの望む方向性を問いておくことにした。
奴らがこの会場に集めた参加者達を殺し尽くす事はいつでも出来たのだ。
だが、奴らはあえてそれをせず、我々参加者同士での共食いを強制する。
そこに何か特別な理由があるのは必然である。
彼らにとっては“我々が死ぬ”という結果でなく、
“殺し合う過程”こそを重要としている。そこまでは理解できる。
…そこに、なにかがある筈なのだ。
ならば、その隠された意図を事前に知っておけば、
逆に「彼らの望まない行動」を他の参加者に取らせるよう扇動し、
彼らの鼻をへし折る事も可能かもしれない。
私は頃合いを見計らって彼らに加担するか、
あるいは彼らを阻止する事により、奴らに恩を高値で売り付ける事もできる。
彼らに従うにしても、逆らうにしても、主催の真の意図を知るのは重要である。
一旦は従う振りをして、敵側の情報を可能な限り引き出す。
当然の処置である。だが、その意図をとうに見抜いていたのか、
ヴォルマルフの返答は実にそっけないものであった。
「それは、貴様自身の頭で考える事だ。
こちらから命じられてからでしか行動できぬ人材を、
私は求めた覚えはないがね。ならば見込み違いというか。
貴様がそれなりの貢献を果たし、用いるに足る人間であると判断した時、
もう一度こちらから声をかけよう。話しはこれで終わりだ。」
支援1
53 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 22:09:16 ID:a8duU7Vf
奴は聞えよがしに溜息を吐き、軽蔑と嫌悪混じりの視線で私を見る。
その見え透いた挑発の中に、だが、僅かながらの敵意が見えた。
やはり、我々に殺し合わせる事に特別な意味があるという事だろう。
「…では、行きたまえ。これ以上の、無駄な会話は望む所ではない。
貴様が熟慮の末に、このゲームに大いに貢献する事を期待する。」
これ以上会話を引き延ばし、情報を引き出すことは不可能か。
ヴォルマルフはいらただしげにそういうと、指を軽く鳴らす。
唐突に、視界が暗転する。
空気の急激なる流れを、肌で感じる。
私がこの舞台に召喚された時と、全く同じように。
――急速な浮遊感。
黄金の騎士が、視界から掻き消える。
どこまでも長い暗黒の空間が流れる。
気が付くと、私はやはり同じ暗黒の空間の中にいた。
だが、先程の空間との明確な違いもある。
遠くに松明の灯りも見え、その周囲には岩盤が仄かに見える。
以前と同じ場所ではありえないだろう。
どうやら、“会場内”の洞窟か何かの中へと私は転移したようだ。
地図を確認する。場所は考えられるとすればG-3の坑道内。
今後の行動を考える。
このゲームに乗るにしろ、刃向うにしろ、情報は圧倒的に足りない。
どちらの道を取るにせよ、全参加者や主催に対する情報は必要である。
ただし、私を深く知る邪魔者や利用価値のない愚者は早々に間引くべきだろう。
こちらがヴォルマルフに命綱を握られたままでの反逆を取る場合、
足手纏いはこちらの命取りに繋がるのだ。動きは軽くしておくに限る。
そして、形の上でもこのゲームにある程度の“貢献”を示しておけば、
ヴォルマルフの油断を誘えるかもしれない。
己の生存の可能性を最大限にまで高める為に出来る行動は、
今の所はここまでと言った所か。
支援2
――そう。私はどんな事をしてでも、必ず生き延びねばならない。
ヴァレリアで一敗地にまみれたと言えど、
私にはローディスに生還する責務がある。
たとえその先にあるのが騎士団壊滅の責任を取らされての、
“処刑”という凄惨な結果だったとしても。
私の生還は、全てにおいて優先されるのだ。
ローディスの為に、私は生きて敗戦を報告しなければならぬ。
その為には、一々手段を選ぶゆとりはない。
たとえ無辜の人物を多数殺戮しようが、
この殺戮劇に乗った者と協力しようが、
私の生還が目的である以上、止むを得ぬ行為である。
それを非道とも鬼畜とも罵る者がいれば、好きにすればいい。
――だが、しかし。
元の世界に取り残されたバールゼフォン達にのみ敗戦の責任を負わせ、
己一人のみがのうのうと現実から遁走してはならない。
彼らはまだ、ローディスの為に役に立つ人材なのだから。
恥辱を負い、その責を負わされる生贄は、私一人で充分なのだから。
だからこそ、ヴォルマルフらの悪趣味な遊戯に付き合う暇などない。
だが、奴に従うしか生還の道はないなら、それもまた受け入れよう。
私は、そう決意する。
私は渡された支給品を確認しながら、他の参加者達の事を考える。
『あちらの会場には貴様の過去の所業をよく知り、
なおかつ快く思わぬ存在が何人も存在している。』
私はその発言を思い出し、参加者名簿を開いた。
その名は知らないものが大半ではあったが、
名簿の中でも特に目を引くものがあった。
「デニム」
「カチュア」
「ヴァイス」
「ランスロット・ハミルトン」
ゴリアテの英雄達とゼノビアの聖騎士が揃い踏み、ということか。
だが、一人はその過ぎた野心でとうにその身を滅ぼしたはず?
そして、ゼノビアの聖騎士殿はすでに廃人となり果てたはず?
疑問は募るが、それは後回しだ。
どの道、大したことが出来るはずがない。
それよりも、問題は残り二人である。
ハイム戦役の立役者と、ドルガルア王の血を引く王女か。
確かに、彼らとは共同戦線というわけにもいくまい。
今の彼らとは遺恨があり過ぎる。
彼らは故郷を焼き打ちにされ、仲間や親族を殺された恨みがある。
私とて騎士団を壊滅させられ、生命以外を全て失った怨みがある。
共闘は、今更不可能である。
何より私もそれを望まない。
私がどの道を歩むにしろ、確実に彼らは始末しなければならない。
私のやり方を知る者は、不審と猜疑をばら撒くに違いないのだから。
それに、彼らを殺害すれば、それはローディスの国益にもかなう事になる。
ヴァレリアの中心人物の生命を奪えば、かの地は再び大混乱に陥るだろう。
そうすれば、来るべきローディスのヴァレリア侵攻も極めて容易くなる。
なにより、煮え湯を飲まされた神竜騎士団に、一矢報いる事も出来るのだ。
どちらにせよ、彼らの殺害は必須であり、当然でもある。
己の為に。
死んだ部下達の為に。
そしてローディスの為に。
行動は決定した。あとはこちらの持つ情報を整理する。
あの男には、何かしらの因縁を持つ金髪の青年もいた。
刃向う場合は、彼を利用するのも一つの手ではあるだろう。
ただし、奴との僅かなやり取りの間には、知性が垣間見えた。
聡い存在は利用し辛い。
彼との接触には、充分に気を付けるべきだろうが。
そして、このゲームの主催者に関する情報だが。
ディエルゴという名に反応した赤毛の女性もいた。
そして、それは本来は既に倒されたはずの存在だとも、彼女は主張していた。
彼女の発言の真偽と、主催者の存在の有無は未だ不明である。
それについてはヴォルマルフが虚言を弄している可能性も、
主催者がディエルゴを自称している可能性もある。
ゲームに乗るか反るかの判断材料としては今のところは弱いが、
ディエルゴの事は頭の片隅には入れておいてもいいだろう。
このゲームについて、状況を判断できる材料はここまでである。
何より、分からぬ事が圧倒的に多すぎるのだ。
これ以上の憶測は宛てにならぬだろう。
的確な行動を取る為にも、今は情報収集に専念すべき時だ。
だが、それに時間をかけ過ぎれば、
私を深く知る者達の妨害工作にあい、
私にとって状況は悪くなる一方だろう。
彼らの口を早急に塞ぐ必要もあるのだ。
あまりぐずぐずとしていられないのだ。
それに何より。
――今は考える時ではない。動くべき時だ。
私は考えては巡る思考を一旦は脇に置くと、
坑道内の灯りの元へと、その第一歩を踏み出した。
支援3
【F-3/坑道/一日目・朝】
【ランスロット・タルタロス@タクティクスオウガ】
[備考]:ランスロット・タルタロスが“内通者”である事が判明しました。
ただし、タルタロス自身は“内通者”になるかどうかは保留状態であり、
状況次第でどちら側にも身を置けるように立ち回っています。
臨時放送直前に“それなりの功績(三名殺害)”を挙げたので、
ヴォルマルフ側、またはレイム側からの接触があるかもしれません。
代理投下有り難うごさいました。
あと余談ですが題名の元ネタです。
「そして輝きは続く」はサモンナイト2のアメルEDの曲から、
「ハイ・プレッシャー」はワイルドアームズ2から、
「Agitation」はタクティクスオウガの緊急事態時のBGMからそれぞれ来ています。
ところで、臨時放送は最終死亡者の時間を述べるのと述べないの、どっちがいいのだろ…。
個人的には絶対って訳じゃないし、述べない方が面白いと思うのだが…。
ただ待つだけでもあれなんで。
マグナ・ホームズ・ハミルトン・ルヴァイド・カトリの五名で予約します。
…さて、なぶるか。
正直、三作ぶっ続きで感想の一言すらないっていうのは初めての経験だな…。
来た頃とは大違いというか。他ロワなら確実にレスが付くのだろうが。
臨時放送、返事がないので修正前のものをこちらにも掲載しますね。
逢魔が時を過ぎ、その夜の帳が完全に下りてからの事。
本来はあり得ざる、臨時による“放送”が行われる事となった。
それは会場の悪意に飲まれた、狂気の参加者からの提案によって。
だがその“放送”の声の主は全参加者が知る
“ヴォルマルフ・ティンジェル”のものではなく。
参加者の殆どが預かり知らぬ存在のものであった。
――そう、殆どは。
その者の名は、悪鬼使い“キュラー”という。
キュラーは慇懃無礼の見本とも言うべき丁寧に過ぎる、
だがその奥に潜む侮蔑を隠そうともしないその口調で、
会場にいる全参加者に優しく、滑らかに語りかけた。
「――初めまして、皆様方。
私は悪鬼使いキュラーと申す者。以後、お見知り置きを。
此度はディエルゴ様の命により、ヴォルマルフ殿に成り代わり、
この時刻を以て一部ルール改定が行われる事をお伝えいたします。
いわゆる“臨時放送”と考えていただければ結構でしょう。」
その声は地底から聞こえるようでもあり、
あるいは天空より響き渡るようなものであり。
それは、たとえこの会場のどの場所にいようとも、
参加者を決して逃さぬ音の追跡のように思わせる。
やがて、少しの時間を空けてから、キュラーは全ての参加者に囁きかけた。
「――ヴォルマルフ殿が貴方がたを転送する直前に申し上げた最後のお言葉、
諸君らは覚えておられますかな?優勝の褒美より、後のお話しの事です。」
『以上だ。その他進行に必要となったルールは追って説明する』
「そう。その他進行に必要となったルールは、追って説明すると。
今回はこのゲーム最大の“貢献者”からの素晴らしい提案により、
一部ルール改定を行うことにいたしました。
その内容を、これよりお伝えいたします。よくお聞きください。」
――これより首輪による制限時間上限を、今から12時間ばかり短縮致します。
キュラーはそう言って含み笑いを浮かべながら、
リモコンのディスプレイに映し出された時刻を再設定し、そのスイッチを軽く押下する。
リモコンから響く軽快な送信音が、何かが起きた事を全ての参加者に明確に伝える。
生者を問わず。死者を問わず。身につけているかさえも問わず。
間髪入れずに全ての参加者の首輪から、耳障りな電子音が発生する。
そして、その首輪から無機質な合成音声が唱えられる。
『首輪爆破制限時間、及ビ上限時間ヲ、12時間短縮致シマシタ。』
「…電子音にて、皆様方も確認は取れましたかな?
この度のルール変更は、これのみという事です。」
「我々の放送は、十二時間毎に行われます。
そして、首輪の制限時間とその上限もまた、
最後の死者発生より十二時間毎と相成りました。
あえて申し上げませぬが、この変更によって発生する様々な事態を、
賢明な方々はお気づきになられるかと存じます。ご気を付け下さい。」
「ですが、ただルールを厳しくするばかりでは実に不公平というもの。
それ故に、同時に全ての参加者に対して“救済措置”も同時に用意いたしました。
今この時刻を以てして、【B-2】の塔、【E-2】の城、【H-7】の城、【C-6】の城。
この各城内、塔内に存在する全ての“武器庫”への扉を解放いたしました。」
――電子音はない。それらの扉は、すでにディエルゴが解除済であるが故に。
何も反応がない事が、不安を掻き立てる。時を置いて、キュラーが再び口を開く。
「御説明申し上げます。
これらの各城内、塔内の一室にある“武器庫”には、
この全参加者が当会場に召喚される前に持ち合わせていた
所持品の数々を分散して預からせて頂いております。
それらはどうぞご自由に、存分にご活用下さい。」
「ですが、それも無条件では早いもの勝ちとなり、ゲームとしては不平等ですね?
―――故に。武器庫から所持品をお持ちできる条件を、一つお付けいたました。
それは、その所持品の持ち主の首輪との交換というものです。よろしいですかな?」
「武器が収められている硝子の箱全てには、本来の持ち主の名が記載されております。
その名に対応する首輪を用意して、箱の台座にある窪地に嵌めて頂ければ結構です。
首輪そのものが箱の“鍵”の代わりになるとでも、お考え頂ければ宜しいかと。
無論、先着者に武器庫を破壊出来ぬよう、特別な処置を施しておりますので、
どうか安心してごゆるりとご利用ください。」
「“救済措置”についての説明は、これで以上となります。
これからは、この私めからの助言というものですかな?」
放送そのものは終わる。
だが、悪鬼使いキュラーの淀みなきその演説に、
ここに来て唐突に一つの感情が加わる。
――それは、歓喜。
この放送によってもたらされる未来を、想像せずにはいられないが故に。
そして、それは彼ら自身にとって極上のものとなり得るであろうから。
キュラーは、全ての参加者の背中を押すべく、さらに一つの誘惑を囁きかける。
誘惑に乗らずとも結構。内容から人を疑う余地さえ生まれれば、それで充分だから。
支援
「もし、貴方がたが徒党を組み、協力しておられるのならば?
このゲームに貢献するにせよ、我々に反抗するにせよ、
戦力は必要不可欠であり、また考える時も欲する事でしょう。
ですが、今回の放送によって、これらはさらに貴重な価値を得ました。
勿論、貴方がたの生命そのものも、ですが。」
「今回の放送によって、出来うることもまた増えました。
重い傷を負い、休息の時間を必要とされている場合に。
矢折れ盾尽き、新たな得物を必要としておられる時に。
そんなとき、例え足手纏いの方々であろうとも、
自らの生命を皆様方に差し出しさえすれば、貴重な時と品々をお与えになり、
残された仲間達に貢献する事が出来るにようになりました。
物語に聞く、『月の兎』にすら出来た献身。人にも出来ぬはずがありません。
それは正に人間らしい、麗しい自己犠牲の精神というものではありませんか?」
「ですが、仲間への貢献をあくまでも拒絶し、醜く浅ましく、
自己中心的に己の生存のみを希望するなら道は一つです。
たとえ力足らずとも、このゲームに乗るしかありません。
あるいは信頼した仲間の背中を刺し、欺きに徹するのも悪くないでしょう。
たとえ殺した者が役立たずでも、その死によってしばらくの保身は可能ですからね。」
「このゲームでは道具のみを奪われ、無視されてきた無力な貴方。
この改変でその生命にさえ特別の付加価値を得てしまった以上、
もはや見逃される事はなくなりました。今後はご気を付け下さい。」
「このゲームで武器を失い、生命の存続すらも危うくなった貴方。
仲間の献身さえあれば、その命を永らえる事も可能となります。
同行する皆様方の為、貴重な時と品を是非持ち得て下さい。」
「このゲームにあくまでも逆らう反逆者達。
このゲームに乗り、優勝を狙う貢献者達。
効率を重んじ、団体行動を取り続ける者達。
あくまで人を寄せ付けず、孤高を気取る者達。
全てが我々にとってなくてはならぬものであるが故に。
“救いの手”は、それら全員に向けて用意いたしました。
それが、この“武器庫”にてございます。」
「その“救いの手”を受け入れるか、あくまでも拒絶するかについては、
貴方達の自由意思に委ねましょう。これは強制ではありませんからね。
このゲームでは、なにより自由意思による選択こそが尊重されるのです。
貴方達のご健闘に期待しておりますよ…。」
悪鬼使いの軽快なる弁舌は終わり、辺りには再び静寂が訪れる。
だがしかし、その丁寧な口調とは裏腹に、
その内容は凄惨を極めるものであった。
犠牲を勧め、裏切りを勧め、私刑を勧め、様々な欲で釣り。
さらにはルールを逆手に取り、参加者達を疑わせ合う。
このゲームが円滑に進むよう、お膳立てを周到に整える。
ただし、その決定意志だけはあくまでも参加者に委ねる。
だが、そこに肝があるのだ。
強制という名の鞭は、少なければ少ないほど良い。
強制は確かに恐怖を生み、従わせる事は出来るが心服させる事は出来ない。
何より反発と憎悪を生む。
今回のルール変更は、そう言った意味ではギリギリの選択であった。
だからこそ、参加者の懐柔の為に飴もまた必要としていたのである。
そこに来てヴォルマルフが用意していた“武器庫”の開放許可を、
主であるディエルゴ様からキュラーは頂いたのである。
それは、まさに飴とするにはうってつけのものであった。
“飴と鞭”。人を支配する基本である。
ならばこそ、その武器庫はより有効な形で使わせてもらおう。
折角の道具、出し惜しみで持ち腐れては意味がないのだから。
キュラーはそう考えると、一人ほくそ笑んだ。
この放送で生存欲や物欲に取りつかれ、あるいは人を疑い始め、
精神の平静を乱しすものは続出するであろう。
このゲームの破壊を意図するものも
このゲームで優勝を意図するものも
彼らはは意図せずともこのゲームに、ディエルゴ様に大きく貢献する事になるだろう。
悪鬼使いはこの放送が齎す光景を想像すると一人悦に入りながら、声も無く嗤い出した。
【不明/1日目・夜(19時)】
【キュラー@サモンナイト2】
【備考】:B-2の塔、E-2の城、H-7の城、C-6の城の武器庫への扉が開放されました。
武器庫への扉は、支給品の鍵にてもう一度施錠する事も可能です。
臨時放送の修正案を掲載。
>>64 の同じパートに追加する形で。
それに伴い、少しだけ文章も変更してあります。
「ですが、ただルールを厳しくするばかりでは実に不公平というもの。」
(挿入パート始)
「それ故に、臨時放送直前に二名同時の死亡者が出た事をお伝えいたしましょう。
これは、言わばルール変更に伴い貴方がたに負担を強いることになるが故の、
我々主催側が行える最大の譲歩と誠意とでもお考えください。
アグリアス、フロン。…この二名ですね。
この放送により、逆説的に申し上げれば第二回放送から約一時間後までの、
貴方がたの生存は確定されたとも言えるでしょう。ご安心ください。
(挿入パート終)
「さらに、同時に全ての参加者に対して“救済措置”も同時に用意いたしました。」
但し、修正した場合の問題点は、キュラーが言っているように
「第二回放送から一時間後まで」首輪による爆破がないから、
全参加者に焦りを煽る事が難しくなってしまう点にある。
当然、人死にを拒む方としてはリミットぎりぎりまで待つだろうし、
そうなれば第三回放送までリミット短縮の効果はさほど得られなく
なってしまうって事。…さて、どっちがいいもんだか。
まあそれ以前に、人がほとんどいないから問うのがそもそも難しいなw
激しく乙、
タルタルがジョーカーイイヨイイヨーw
まあ、残ってる参加者で黒幕っぽいの
タルタルしかいないから妥当っちゃ妥当だが
投下乙!キュラーの放送が脳内で音声再生されました。そして関係ないけどビーニャは俺の嫁。
むー。やっぱりというか、臨時放送で意見がないな。
では、最終死亡者の通達は無しって、こっちで決めちゃっていいですかね?
レイムがヴォルマルフに話した内容でも「サービス程度」で義務ではない上に、
通達の有無の細かい裁量はキュラーに任せるってことですから。
前スレの、>662のこの辺りか。
「ええ。そうですね。具体的裁量は、貴方に全てお任せいたします。
第一回放送までの死亡時間通達の有無や、アドラメレクさんへの接触の有無も。 」
では、特に意見もないので臨時放送の本題の方、
修正前の方で通しちゃいますね。特に矛盾もないし。
しかし、本当に誰もいないなー。
したらばの仮投下お疲れ様です。
デニムがとりあえずは理性を取り戻した、のか?
しかし、いつ馬鹿山羊に肉体を完全に乗っ取られて
欲望の限りを尽くしてもおかしくない状態で、
大義を思い出す事でなんとか正気を保つ姿は、哀れを誘うな。
悲惨な末路が見えているだけに。
…ともあれ、乙です。
激しく乙。
ほのかなエ(ryがよかったw
とりあえずそのハサハのを俺によk(ry
既にレシィがいるのにハサハの名前が出るとは、何かの伏線?
>>77 スク水に関しては完全に内輪ネタが元なので、
意味は今の所は無いです、単なる趣m(ゲフンゲフン
問題が無いようでしたら、帰宅してから
タイトルつけて本投下します。
キャラクターが濃くなったのと、そうでないものの差が激しいな。
全般的にマーダーが濃く対主催が薄い傾向があるようだが。
それでは本投下します。
夕暮れの中を連れ添う二つの影。
今にも日は沈みきり、いずれは闇が辺りを覆う。
だが、闇が訪れた所でこの二つの影は気にも留めはしないだろう。
互いの瞳の奥は既に闇よりも深く深遠へと沈むことを望んでいるのだから。
一人は、抑えきれぬ情欲へと抗い、深く沈み往く。
一人は、全てのしがらみを捨て、己が愛する者に捧げんが為。
その感情はお互いがお互いの肉体を欲していると言う点では重なるが、
決して交わることの無い感情。
求めれば失われ、離れれば戻らない。
だから二人は口を噤み、ただ支えあうように歩を進める。
目的の地に辿り着けば、いずれ理由は失われ、本能だけが其処に残る。
その先に在るものに堕落と絶望を感じながら。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
僕は恐怖を抱く。
何に?
自分自身に。
僕の望みは今にも霞と化して、新たな目的に掏りかえられてしまうかもしれない。
姉さんは多分、その望みを喜んで受け入れる。
今の僕と姉さんはここに連れて来られる前とは別のモノに変わろうとしているのだから。
消え入りそうになる自分の目的をしっかりと心に縫いとめる。
『ヴァレリアの再興』
その為だけに僕は在り、その先に僕は必要無い。
だけど、姉さんは違う。
国の為にその先も輝き続けなければならない。
そうでなければ犠牲になった兵士達、踏み躙られてきた民の想い、
夢の為に消えていった仲間の全てを裏切る事になる。
僕達が此処で関係してしまえば、例え、生きて戻れた所で姉さんは
『“英雄”と呼ばれた義弟と寝た王女』
と他国から蔑まれ、民も離れる。
そして全てが振り出しに戻ってしまう。
握り締めた拳から痛みと共に血が滲み出していく。
「デニム…手から」
僕に寄り添うように支えられる姉さんがすぐに気づいて声を掛けてくる。
「大丈夫だよ、姉さん。 大した事じゃない、すぐに止まるよ」
拳を開き、軽く振る。
地面に数滴の血が墜ちていく。
「…そう。 それならいいの」
どこか沈んだ調子で姉さんは顔を伏せる。
「…ねぇ?」
僕に掴まる姉さんの腕に少しだけ力が篭る。
「何? 姉さん」
僕は前を見つめたまま視線は合わせない。
「私の事、避けてる?」
その瞬間、姉さんは僕の前に周り込み、僕の両肩を掴む。
「さっきからおかしいわよ、デニム!
私の方を見ようともしない!」
僕の身体を姉さんが揺さぶる。
「ち、違うんだ姉さん。 僕はただ…」
正面に捉えた姉さんの顔。
失血により白みを増した肌に不釣合いな赤い唇。
「僕は…」
艶やかに細い項、流れるような曲線を描く双丘。
「……」
僕は姉さんの両肩を押さえつけて、僕の元へと引き寄せる。
「デ、デニム?」
姉さんが驚いたかのように振舞っているが、違う。
自分の期待していたものが訪れる瞬間を待っているだけだ。
なら、与えてやればいい。
肉の悦びとやらを。
『――諸君、これから第一回目の放送を始める』
突発的に僕は姉さんの身体を離す。
偶然、いや、最初から定められていた『放送』というものが
僕の意識を引きずり戻す。
「何これ? これから聞こえるの?」
姉さんが首輪に手を掛けて、原理が分からずに困惑している。
姉さんの考えている通り、どうやらこの声は首輪から聞こえてくるようだ。
声は何の感情も表さずに淡々と事務的に要件だけを告げていく。
これよりの禁止区域に、それに今までの死亡者。
僕が持っている首輪の“元”所持者と先程の剣士、
それに姉さんが手に掛けた青年の3人の他に8人。
あの時の女性も助かりようが無かっただろうから呼ばれたのだろう。
あの人は僕に殺し合いを止めさせようと必死だったが、
死んだと考えても特に何の感慨も湧き上がらない。
あの時の一瞬の迷いも、最初から無かったかのように。
まるで僕の中から人の死というものに対しての認識が欠如し始めているかのようだ。
自分自身への困惑を深める僕を余所にして、
最後に声は優勝者に対しての褒美の可能性を示唆した。
死んだ者でも蘇らせられる。
そんな事は本当に可能なのか?
僕はそれを探求していた人物を2人知っている。
僕と同じくここにいる筈の屍術師ニバス、それに覇王ドルガルア。
だが、この2名が行き着いた果ては人の身を捨てる事でしか人は蘇らせられないと実証している。
他の集められた者がその事までを理解しているのか、までは僕には関係の無い事だけれど。
だから、これはあくまで保険程度に考えていた方がいいだろう。
僕がすべき事は僕の身命を賭して姉さんを生還させる事。
その為に他の者は全て抹殺する。
僕の手は抵抗も出来ない無辜の民を殺戮したあの夜に既に洗い流せない程に血に染まっている。
今更、あと38人殺した所で大差は無い。
むしろ残り“たったの”38人だ、どこまで楽しんでいられるだろうか?
どうやら放送は終わったらしい。
姉さんは放送が終わった事で僕の先程の態度を思い出したようで、
どこかもじもじとしながらこちらの様子をしきりに覗っている。
最初は姉さんが何故そのような態度を取っているのか理解できなかったが
頭が冷めてくるに連れて自分がしようとした事を僕は思い出し、
自分自身への嫌悪感から、その場に思わず吐いた。
「デニム!? ちょっと、あなた大丈夫なの?」
さっきから姉さんに心配ばかりかけている。
頭の中は詫びたい気持ちで渦巻いているが口をついて出た言葉は、
「大丈夫だから、少し放っておいてくれ!」
近寄る姉さんを押し退ける様にして僕の身体は先へと行こうとする。
頭も、身体も、心さえもまるでバラバラで自分が制御できない。
僕に押し退けられ、よろめく姉さんの姿は僕からの拒絶を感じた事で
今にも消え入りそうな程に弱弱しく感じられる。
それでも姉さんは健気に僕の後をついて来る。
時間にしてみれば、ほんの一瞬。
だが、僕にしてみれば永劫に感じられた静寂が訪れた。
ただ黙って、すぐ其処まで見えてきた城へと僕は歩を進める。
あそこにさえ着いてしまえば何かこの空気を変える切欠が生まれるかもしれない。
俯いている姉さんの表情を明るくできればいいのだけれど。
そんな些細な願いを何で容易く叶えさせようとはしてくれないのか?
僕らが先程までいた方角から突然の轟音が鳴り響く。
距離から考えてもそう遠くは離れていないのではないだろうか、
少なくとも僕達がいた場所から少し離れた程度の距離。
そこまで轟音の主は近づいている。
あの轟音が何を意味するのかは分からないが警戒をしておいた方がいいだろう。
あの城に着けば暫しの安寧を得られるかもしれないと淡い期待も抱いていたが
一瞬にして泡沫と消えた。
だが、他に身を隠す場所も無い以上、一旦あそこに隠れるのが無難か。
あの轟音には城を崩す程の威力は無いと信じるしかない。
興味無さそうにというより無気力に音の方角を眺めていた姉さんの手を取り、僕は駆け出す。
近づく脅威への対抗の為、纏まりを欠いていた僕の心が初めて纏まっているのに僕は気づいた。
今のうちに言っておかないと。
「…ごめん、姉さん」
ぼそりと、小さく呟いた程度の僕の言葉だが、
力無く僕に手を引かれていた姉さんの手に微かに熱が戻る。
「…大丈夫、気にしてないわ」
これだけの事なのに、何故これ程に眩しく僕は感じてしまうのだろうか。
微笑む姉さんの顔を心に焼き付ける。
これが僕を繋ぎとめてくれるかもしれないと感じて。
“何”から僕を繋ぎとめておきたいのか、それも分からないと言うのに。
何者かの気配は今の所は感じられない。
僕らは急いで城門を潜り、バルコニーに飛び込む。
ただでさえ貧血を起こしている姉さんには短い疾走でも堪えたのか
明らかに辛そうにしている。
「姉さん…肩を貸すよ」
僕の提案をそれでも姉さんは僕に迷惑をかけまいと最初は断ろうとしたが、
倒れてしまえば逆に迷惑をかけると気づいて力無く頷く。
不思議と今は姉さんに煽情を抱く事も無く、
僕は姉さんを支えて寝室らしい場所へ入る事が出来た。
多分、使用人用の比較的小さな部屋だが衣装ダンス等も一通り揃っている。
これなら僕の血で汚れた服も姉さんの破けた服も取りあえずは換えられるだろう。
「姉さん、僕は外にいるから今のうちに服だけでも換えといてくれないかな?
その姿は僕でもちょっと目のやり場に困るから」
本当の所はそれ自体には大した影響は受けてはいない。
どちらかといえば目の前にいる女性に対して情欲を抱いていたといっていいと思う。
今は落ち着いているがそれでも取り合えずあまり煽る様な格好はされていたくない。
中で何かごそごそと物音が聞こえ、それが静まった頃に中から姉さんの呼ぶ声が聞こえた。
中に入った僕が見たベッドに座る姉さんの姿は正直な所あまり代わり映えは見られない黒衣。
あまり女性の衣装に詳しくはないがマントドレスと言うものだろうか?
「黒は姉さんのこだわり?」
僕の質問に姉さんも困った顔をする。
「そういう訳じゃないのよ、あなたも其処の箪笥を見てみれば分かるわ」
言われるがままに箪笥を開いてみて、納得がいく。
どれも異国の文化で作られたと思う衣服が収まっている。
そのうちの一つを手にとって見るが如何見ても下着にしか思えない
薄い良く伸び縮みする生地のそれは中央の部分に「ハサハ」と誰かの名前が書かれている。
ふと、疑問が頭を過ぎる。
それは明らかに異国の字だ。
それを僕は当たり前のように読んでいたが、字体は今始めてみた。
「姉さん、ちょっとこれに書いてある文字が読める」
僕はそれを姉さんの方に放る。
「何これ、下着? えっと、ハサハって書いてあるわね…エッ?」
姉さんも僕と同じ疑問に当たったらしい。
此処に連れて来られてから、
落ち着いて考えてみれば見たこともない衣装の人物を数人確認している。
それらの人物の言葉も僕は何の疑問も持たずに聞き分けていたが
それは本当に僕と同じ言葉だっただろうか?
可能性があるとするなら…
「これも、あの時の男が持っている力の一部かもしれない…」
僕らに殺し合いを強要し、先程も首輪を介して僕達に放送を行ったあの男。
正確にはあの男に後ろにいる何者かの力か?
円滑に殺し合いを進めさせる為だけに僕達にこのような大掛かりな術を仕込むとは。
もしくは自身の力を誇示し、抵抗の無意味さを示しているのかも知れない。
どちらにせよ、この首輪が無かったとしても一筋縄ではいかない相手では無い事だけは確かだ。
僕は血で汚れた上着を脱ぎ捨て、箪笥の中の比較的に僕でも分かる服を羽織る。
その間にも体力の限界が近づいているのか、姉さんは今にもベッドに倒れ込みそうになっている。
それを僕に迷惑をかけまいと気力で支えているのであろう姉さんを僕は抱きしめる。
「………えっ?」
僕の唐突な行動に姉さんは準備も出来ぬままに動揺している。
「姉さんは僕が守るから、だから…ごめん。
青き海に意識薄れ、沈み行く闇 深き静寂に意識閉ざす・・・ 夢邪睡符」
完全に油断していた姉さんはあっさりと僕の腕の中でゆっくりと眠りに堕ちた。
僕は姉さんをベッドに寝かせ、静かに部屋を出る。
そう、此処へは誰も近づけさせはしない。
先程の轟音の主もあの火事ではいずれ引き返してくるに違いない。
その時に今の姉さんではあの時の二の舞になる可能性が高い。
あの時?
それはいつの話だ?
頭がズキリと痛む。
そういえば僕は姉さんに何の術を使ったんだ?
“そんなことは如何でもいい事だ”
心の何処かでそんな声が聞こえた気がする。
そうだ、今はそんなことは如何でもいい事だ。
今、僕がすべき事は姉さんを守る為に此処に来るであろう者を
狩らなくては。
【C-6/城(寝室)/夜(臨時放送前)】
【デニム=モウン@タクティクスオウガ】
[状態]:プロテス(セイブザクィーンの効果)、全身に打撲(軽症)
[装備]:セイブザクィーン@FFT 炎竜の剣@タクティクスオウガ、ゾディアックストーン・カプリコーン@FFT
[所持品]:支給品一式×2、壊れた槍、鋼の槍、シノンの首輪、スカルマスク@タクティクスオウガ
[思考]:1:轟音の主(バッフェル)を迎撃する
2:C-6の城(カチュア)に近づく者は誰であろうと殺害する
【カチュア@タクティクスオウガ】
[状態]:失血による貧血、睡眠。
[装備]:魔月の短剣@サモンナイト3
[道具]:支給品一式、ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ
[思考]:睡眠状態につき、思考停止中。
[備考]:二人とも衣服を換えています。
カチュアはアズリアの私服(イスラED参照)、
デニムは帝国軍軍服(サモンナイト3)に着替えています。
アドラメルクとの融合が人格に影響し始めています、
本人は気づいていませんが初級(ファイア程度)のFFTの魔法を行使し始めています。
タイトルのLegion(レギオン)とはwikiより、
マルコによる福音書第五章に登場する悪霊。
この悪霊に取りつかれた男は墓場に住み、
裸で歩き回って昼も夜も大声で叫びながら自分の体を石で切りつけ、
鎖や足かせも引きちぎるほどの力を持っていた。
その男から出た後、二千頭ほどの豚の群れに取りつき、
豚は突進して断崖から落ち、溺れ死んでしまった。
ぴったりだと思ったのでつけました。
一応、アズリアの私服の参照動画。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3398420 この服、何て言うの?w
帝国軍人のは陣羽織羽織った上にぴちっとした軍服着るから
スタイルいいとムチっとなるみたいですが。
そう言えば、自発的に行動する対主催グループが少ないなここは。
ラムザ組とイスラ組位か?
ルヴァイドとその他は、ほぼ対主催と見ていいと思う。
諸事情により、ホームズ、マグナ、ルヴァイド、ハミルトン、カトリの予約を破棄します。
むう…。
事情があるのなら仕方が無いです。
次ぎの機会を楽しみにしています。
あー、以前本スレには貼らなかったと思うので、
武器庫にある「可能性が高いと思われる」装備品および所持品を書いておきます。
攻略サイト調べながら書いているので、絶対と言う訳ではありません。
異議・異論は全て認めます。というか、ぶっちゃけ早くに出したもの勝ちですね。
アイク:ラグネル、アロンダイト、大盾の書
アグリアス:ティンカーリップ、※セイブザクイーン、クリスタル装備一式
アズリア:誓いの剣、帝国軽鎧百士式改、帝国勲章、サモナイト石(聖母プラーマ、シャインセイバー)
アティ:ウィスタリアス、学術教本、サモンナイト石詰め合わせ、サモナイト石(シャインセイバー)
アメル:不明
アルガス:ナイトキラー、ラウンドシールド、バルビューダ、チェインメイル、パワーリスト
アルマ:いやしの杖、バレッタ、魔術師の服、赤い靴
イスラ:キルスレス、カースシェル、ペンダント、サモナイト石(ブラックラック、ダークレギオン、ダークブリンガー、聖母プラーマ、パラダリオ)
ウィーグラフ:ダイヤソード、ダイヤ装備一式、ダイヤの腕輪
ヴァイス:ショートソード、レザーアーマー、タワーシールド、バトルブーツ
エトナ:ロンギヌス、テスタメント
オグマ:メリクルソード、光のオーブ
オリヴィア:バルダーメイス、水の法衣、アイスシールド、フェンリル、アイスレクイエム
オイゲン:不明
カーチス:ファイナルアーム、※プリニースーツ、携帯電話
カチュア:バルダーダガー、魔術師のローブ、ホーリー・クラウン、紅光の首飾り、ライトニングボウ、クリアランス、※ヒーリングプラス
カトリ:※ゾンビの杖、リングオブサリア
ガフガリオン:古代の剣 ゴールドシールド クロスヘルム ゴールドアーマー スモールマント
ゴードン:エトワール、アストロスーツ
サナキ:シムベリン、ギガウインド、ギガサンダー、特効薬、ルドルの宝珠
シーダ:銀の槍、レディソード
漆黒の騎士:※エタルド、※女神の祝福を受けた鎧、転移の粉、調合薬
シノン:バルフレチェ、シノンの弓、
ソノラ:トライパレード、投げナイフ、水夫のお守り
チキ:神竜石、魔竜石、飛竜石、氷竜石
中ボス:不明
ティーエ:プレリュード、聖剣レダ
デニム:青光の首飾り、ブリュンヒルト
ナバール:※キルソード、マスターソード、ソードキラー
ニバス:バルダーメイス、魔術師のローブ、知性の指輪、マジックエキス、アシッドクラウド、※ダークロア、パラダイム、ネクロマンシー
ネサラ:特効薬、コイン
ネスティ:双蛇の杖、希望のローブ、緑玉の腕輪、サモナイト石(ペズソー、機竜ゼルゼノン、フレイムナイト)、
ビジュ:ジョーカースロー、トランスシェル、ペンダント、サモナイト石(タケシー、※ダークレギオン、ブラックラック)
パッフェル:ホーリィナイフ、Wドライブ、希望のメイル
ハーディン:※グラディウス、※闇のオーブ
フロン:不明
ベルフラウ:ルシャナの髪留め、鬼無射の弓
ホームズ:聖剣サリア、ロングボウ、ヴァルス提督の鎧
マグナ:※絶対勇者剣、希望のメイル、希望の小箱、サモナイト石(エイビス)、サモナイト石詰め合わせ
マルス:※レイピア、封印の盾(但し、オーブ一切無しの未完成品)
ミカヤ:シャイニー、パージ、レクスオーラ
ムスタディオ:ロマンダ銃、ブラストガン、シーフの帽子、光のローブ、フェザーマント
ラハール:魔剣良綱、魔王のマント
ラムザ:ラグナロク、クリスタル装備一式、
タルタロス:アンビシオン、バルダー装備一式、転移石
ハミルトン:※ブリュンヒルト、バルダー装備一式、ヒーリング、転移石
リチャード:ドラゴンランス、軍馬
リュナン:聖剣リーヴェ、聖なる鎧、マインスター
ルヴァイド:ジェネレイター、聖甲冑
レシィ:猛き角笛、ベストハーベスト、金剛のツメ
レンツェンハイマー:ルクード
すいません。解説忘れていました。
※印は、すでに再配布された可能性が高いと思われるものです。
但し、並行世界から仕入れたものを支給している可能性もある為、
同じ専用武器が二本以上あってもおかしくありません。
>>94は、あくまでも参考に過ぎないので、
それが絶対というわけではないですから。
不明となっているキャラについては好きでいいと思います。
ただし、明らかにキャラから逸脱したような装備
(たとえば、カトリが斧を所持)はないでしょうから、
その辺りは書き手の良識にお任せいたします。
乙。こうして見ると首輪交換でも当たり外れがありますね。
ソノラなんてキャラも交換も冷遇されて本当に可哀想になってくる…。
あと、パッフェルさんには3薔薇ナイフもあってもいいんじゃないかと思います。
一応ヘイゼル時代に使っていた物ですし、追加効果も結構おいしい。
質問です。
ゲーム中のどの時点から召喚されたのか明記されてるキャラがいますが
明記されていないキャラについては書き手が勝手に決めていいのですか?
召喚時期によってマーダーフラグの立つキャラがいますがそれでもおk?
全然おkです。
召喚された時期について細かい所はwikiにもありますので、
そちらも参考にしてください。
>97
それまでの話に矛盾がでなくて、
まだ決定されていない限り召喚時期は自由に決めておkですよ
お返事ありがとうございます。
wikiも見ましたが、そのキャラには召喚された時期は
設定されていませんでした。
内面描写もなかったので、矛盾は出ないと思います。
とりあえずチキ、ヴァイス、レンツェン仮予約
予約キタ-!
ところで、アルフォンスのアポカリプスについて聞いておきたいが。
アポカリプスによって受けた負傷は一切回復しないって事でいいのかな?
まあ直撃すれば死ぬだろうが。
俺はアポカリプス喰らったら、体力低下(永久)で考えてた。
原作でもHPの上限永久低下以外の説明がないから
そこは最初に書いた書き手に任せてもいいかな?
よっぽどの矛盾がなければ問題は無いと思う。
チキ、ヴァイス、レンツェン予約します。
キャー!! 久しぶりに新しい書き手さんキターー!!
早速こんな提案をするのも気が引けるのですが…
チキの所持品「シャンタージュ」には回数無制限の再生・蘇生効果がありますが
これは死者復活を禁じたパロロワの基本ルールに反すると思います。
復活までに大幅な時間がかかるなどの制限を設けてもいいのですが
私としてはチキをジョーカーにしたいと考えています。
・原作のチキには「封印の盾が完成しなければ暴走して人間を襲う」という設定がある。
・この世界に持ち込まれた封印の盾は未完成品(主催の悪意、と解釈可能)
・シャンタージュのチート性能(主催の特別扱い、と解釈可能)
・チキは召喚時期不明、詳細な内面描写は無し(後付けジョーカーでも矛盾がおきない)
・暴走(マーダー化)までに時間がかかるので書き手全員で育成可能。
あと、竜石がなければマーダー化不可能→他の対主催キャラと絡む必要がある→
チキは誰にでも好かれるようなタイプの子供なのでマーダー化したときには
対主催キャラに対する精神的ダメージが期待できる、といった感じで
主催サイドとしても面白みのある人選かと思います。
ジョーカーは不要とのことなら、ジョーカー扱いはしません。
「原作では暴走までに時間がかかる設定では?」というツッコミに対しては
マルスの死亡を知るなど精神的ショックの積み重ねで早めていけるのではないかと。
なるほど。「シャンタージュ」については以前から議論にはなっていたな。
あくまでも「戦闘不能状態からの回復」だから、
死者の蘇生までは行えないと解釈しています。
当然、四肢の切断(勿論首も含む)には対応できない。
失血にも対応できないから繰り返してたらそれでもいずれ死ぬ。ということで。
それと香水は振りかけないと効果が無いくらいでもいいと考えていた。
(つまりはゲームと違い、使いまくるといずれは消耗してしまう)
あと、復活に時間がかかるとしてもよいとは思ってます。
この辺の細かい所は最初に書いた人が決めてもいいような…。
しかししかし、そんなおいし過ぎる考察は出来れば
周囲から目立たないしたらばでしてほしかったなw
ただ、その設定では別段内通してるわけではないので
“ジョーカー”扱いでなくともよいと思う。
その設定だけはそのまま使えますけどね。
チキ本人には全く自覚がないという事で。
>>107 アドバイスありがとうございます。そういえばそういう議論がありましたね。
そのログを読んだときは自分が書き手になるとは全く思っていなかったので
今の今まですっかり忘れておりました。申し訳ありません。
ジョーカーは「主催の用意したマーダー」と認識していたのですが
内通していない限りジョーカー扱いにはならないのでしょうか?
私もチキ本人には全く自覚がない、という形で考えていました。
>>108 場にそぐわないことを書き込んでしまい、申し訳ありません。
丁寧に誘導していただき、ありがとうございました。
今後はそちらに書き込みたいと思います。
ただ待ってるのもアレなので頑張らないと…
と言う訳で、アイク、ニバス、ソノラ、オグマ、アズリア、イスラ、
ついでのリチャード予約します。
…だいぶ時間動かさないといけないので(2~3時間くらい?)もし
それでは困ると言う方がいたら変更もするのでお願いします。
大量予約キタ―
他ロワで出てないアイクとオグマ逃げてー
ソノラは・・・、参戦時期微妙だからいいy(ry
むしろ大歓迎。
さあて自分も誰か動かさないと…。
予約から一週間経ったので経過報告です。
チキ、ヴァイス、レンツェンのSSの投下はもう少し待ってください。
三分の一くらい書き終えましたが、長いのでいくつかに区切るかもしれません。
最後まで描き切れるようがんばってくださいな
>>114 はい、ありがとうございます。
来週中に投下できるよう、がんばります。
ふと思ったんだが。
異世界の一部貴重な武器・防具も、リィンバウムの召喚術の触媒になる事があっていいのかな?
個人的にはそういう展開を見てみたい。
>>116 いいと思う。
ただ、普通の鉄の剣で最強クラスの召喚とかは拙いと思うけど。
>ただ、普通の鉄の剣で最強クラスの召喚とかは拙いと思うけど。
ごめん、読み間違えた。
この部分は忘れて…
まあ原作でもほんのごく一部の、しかも非売品のみだからね。
さすがに市販されている装備でそれはないわなw
ガラスのかぼちゃの異世界のアクセサリからだと、
パンプキンヘッドとかが召喚されて来そう…。
って、こう考えていったらサモンナイト石詰め合わせって
渡る人に渡れば結構当たりアイテムかも知れんな。
バトル中だと簡単に誓約出来てるけど、本来は名前とか設備が必要だけどな。
しかも召喚獣を誓約で縛れないと殺される可能性もあるし。
そこら辺はロワ仕様ってことでなんとかすればいいんじゃない?
ただし誓約には知識も魔力も必要だから、他作品のキャラが誓約する場合、
サモン世界の召喚知識持ちキャラ(マグナ、ネスティ、アティ、アズリア、イスラ)
から誓約の手順を教えてもらわないといけないようにするとか。
まあ誓約の暴走とかもあってもいいかもね。
誓約の儀式は難しくはないはずだから暴走とかありえないと思う
実際、フロンは誓約済みのもので暴走やらかしたわけだし。
制約には血識も魔力も必要だから、教えてもらっても
一朝一夕で身に付くかどうか…。
原作で海賊のジャキーニが習得できたぐらいだし、魔術関係に精通したキャラなら
結構簡単に身につくんじゃないかな?
まあ儀式ができたとしても、召喚された召喚獣を扱えるかは別問題だけど…。
ジャキーニは誓約済ました石を買っただけじゃなかったっけ
誓約後なら、誰にでも使えるという事になっているからね。
>>126 「金さえ積めば海賊だって召喚術を使えるんじゃい」みたいな発言があっただけで、
儀式を教わったのか誓約済みの石を買ったのか不明。
まあスキルに誓約の儀式がなかったし、石を買っただけかも。
でも高校生の誓約者や、派閥の授業をまともに受けていなかった超律者でさえ
誓約の儀式はできるし、やっぱそんなに難しくないと思う。
>>127 相応の魔力さえあれば大悪魔だって召喚できるしね。
ディスガイア組なんか余裕でSランク召喚とか使えそうな勢い。(チキなら獣Aぐらい?)
マグナは普通に誓約しなきゃ召喚できないけど
誓約者は誓約の儀式なしで召喚できる規格外キャラだからまた別
ラハールならSランク余裕そう
初代以外のディスガイアなら魔法系は低いかわりに、攻撃はほぼ最高レベルだったりする。>ラハール
しかし、そのラハールが近くヤヴァイことになりそうな…。
ラハールは体力や魔力という有り余る資本があっても、それを上手く効率的に使う術を知らなさそう。
Sクラス召喚術や、魔道書拾えば竜言語魔法まであっさり使えるだろうが、
浪費が激しい上に威力や精密度にもムラが多そう。
2つも予約があったのに音沙汰なしか…途中経過だけでも教えて欲しいな。
経過を報告せず申し訳ありません。
チキ、ヴァイス、レンツェンのSSですが
ようやく3分の2程度(現在25kb)まで進みました。
執筆していて楽しいですが、筆が遅くて申し訳ないです。
待っていていただいてありがとうございます。
無理せず描き切れるよう頑張ってくださいー
そういや以前カチュアとタルタロスが生き残りそうだと誰かが言っていたが、
実際本当にそうなりそうな予感…。
タルタロスは確実に生き残りそうだけど元の世界には戻れなくなりそうなイメージ。
久しぶりに各話まとめでもやってみようかな?
そうだねロシェ。頼むよ。>各話まとめ
カチュア→精神的に脆い。原作同様、デニム次第で
女王にも死者にもなりそうな印象。デニムの行動によっては
割と早く破滅するかもしれず、先が見えない。
タルタロス→肉体的にも精神的にも強く、頭がいい。
正直、殺される場面が想像できない。
トラウマをえぐって逆境を与えても確実に生き残りそうな印象。
>>132 遅レスですが…
進行状況は良く見積もって半分程です。
プロットを作っては破棄の状態ですが
今月末には投下できる状況にしたいと思っています。
予約しなきゃ良いんですよねorz
とちくるってとんでもないミスしてた。
名前欄は忘れて下さい
モロにトリップを書いてしまったので
これからはこちらを使用します。
前トリップは今後は使用しませんので宜しくお願いします。
まぁ、こんなトリ使う人はいないでしょうがw
大変遅くなってしまい、申し訳ございません。
したらばの臨時作品投下スレにチキ、ヴァイス、レンツェンのSSを投下いたしました。
自分ではよく見直したつもりですが矛盾点などあればご指摘ください。
引き続きチキ、レンツェンで予約します。
シャンタージュの効果は次回SSで少し弱くするつもりです。
問題はないと思います。
ヴァイスのイカレ具合極まれりって感じですが
起きなきゃ死ぬぞw
チキもいい感じで壊れてきてますね。
ありがとうございます。それでは投下させていただきます。
ミスなどが見つかった場合はしたらばやwikiに修正版を投下いたします。
またあの夢を思い出す。
まるで現実の出来事のように熱や匂いすら併せ持つあの悪夢を。
夢の中で彼女は野生の竜となり、人間の集落を襲っていた。
ある者は彼女の吐き出す霧の中でのた打ち回りながら絶命し、
またある者は巨大な鉤爪にその身を引き裂かれて命を落とす。
巨獣と化した彼女の前では老いも若きも男も女もみな一様に
捕食されるべき下等な生物に過ぎなかった。
人としての原形を彼らから奪うことなど、彼女にとっては文字通り“朝飯前”だった。
――嫌! こんなことしたくない!
そう思っているはずなのに、身体が言うことを聞いてくれない。
肉体と精神が完全に分離してしまったかのようだ。
彼女は拒絶の声を上げることはおろか目を閉じることすらできず、
自らの引き起こす惨劇を眺めていた。
そして自分の悲鳴で目を覚ます。夢から覚めても闇の中。自分以外には誰もいない。
物心ついたときからずっと彼女は暗い部屋に幽閉されていた。
眠ることだけを強いられ、悪夢と闇を行き来する。
それが彼女――すなわち神竜族の王女として生まれたチキの幼少期のすべてだった。
何故自分がこんな目に遭わねばならないのか、誰一人として納得のいく説明をしてくれない。
だからチキはこう考えた。
自分がこんなに怖くて寂しい思いをしなければならないのは、あの夢と関係があるのだろう。
あの夢は“本当のこと”だから、つまり自分はいつか野生の竜になって人間を襲ってしまうから、
どんなに泣いても頼んでもこの暗い部屋から出してもらえないのだろう――
そしてそれは真実だった。彼女は真相に気付いていた。
しかし誰にもそのことを話さなかった。
「もう眠りたくない、みんなと一緒に暮らしたい」と泣きじゃくる彼女に
優しい言葉をかけてくれた大好きなマルス王子にさえも。
そんな話をすれば、マルスは不安になるだろう。
人間を無差別に襲うようになるだなんて知られたら、嫌われてしまうかもしれない。
マルスおにいちゃんに嫌われたらまた独りに戻ってしまう。
そう思うと、自分の抱える不安や恐怖を正直に打ち明けることなどできなかった。
でも、別にそれでも構わなかった。マルスのそばにいるときは、あの夢を忘れることができた。
マルスに「大丈夫だよ」と言われただけで、未来の自分が書き換わる。
理屈ではない。この人が言うのだから本当にそうなのだろうと純粋に信じることができる。
チキにとってマルスとはそのような存在だった。
しかし今、チキの隣にマルスはいない。
この世界に召喚される直前まで、彼女はアカネイアパレスにいた。
傍らにはマルスがおり、「もう少しで<封印の盾>が完成するよ」と彼女に笑顔を向けたのだった。
<封印の盾>が完成すれば、これからもずっと一緒に暮らせるとマルスは言った。
<封印の盾>が完成すれば、あの夢とは違う未来が自分に訪れるのだとチキは理解した。
――マルスおにいちゃん、ありがとう!
そう言おうとした次の瞬間、チキは暗闇の中に立っていた。
彼女は絶望した。泣くことはおろか、声を出すことすらできなかった。
マルスたちと過ごした日々は全て夢で、自分は今もあの暗い部屋に幽閉されており、
外の世界に出ることは未来永劫叶わないのだと思った。
しかし部屋には人がいた。それも一人や二人ではない。
大勢の人間が暗がりにひしめいているのが分かった。
首の辺りに違和感を覚える。
軽く指で触れてみると、身に覚えのない首輪がそこにあった――
◇ ◆ ◇
「それを寄越しな。そうすりゃ見逃してやることも考えてやるぜ?」
言いながら、男はチキに向かってゆっくりと足を踏み出した。
腰元には複数の刃物が見える。様々な形状のナイフがベルトから下がり、あるいは差さっている。
その口元は笑っているが、野獣の牙を思わせる凶暴な輝きが暗い双眸に宿っている。
あのときの人だ、とすぐに気付いた。赤毛のお姉さんを襲っていた人だ。
彼の姿を初めて目にしたそのときから“悪い人”と認識してはいたものの、
こうして間近で顔をつき合わせてみると改めて油断のならない相手だと思う。
しかもこの男、言っていることもどこかおかしい。
チキは男の顔を見た。
遠目で見たときはレンツェンとさほど年の変わらない“お兄さん”のように思えたが、
やつれた頬と青白い肌、そしてこの世のすべてを憎悪するかのような険しい表情を見ていると、
彼が一体どれほどの歳月を生きたのかすら分からなくなる。
チキは脳内で男の言葉を反芻した。
――それを寄越しな。そうすりゃ見逃してやることも考えてやるぜ?
チキは首をかしげた。見逃す、とは一体どういうことだろう。
先ほど彼は「怪我のお礼をたっぷりとしたい」と言ってきたが、
怪我を負わされたことに対して感謝するというその発想が理解できない。
それ以前に、このお兄さんの表情は「ありがとう」と言おうとしている人のものとは何か違う気がするし、
自分やレンツェンの行動とこのお兄さんの足の怪我がどう関係しているのかすらも分からないのに、
寄越せだとか見逃すだとか言われても話がまったく見えてこない。
そもそも、感謝しているはずの相手に物を要求するというのは何なのだろう。
分からないことが多すぎる。
知らず知らずのうちに、チキは右腰に下げたガラスの小瓶に手を伸ばしていた。
この臭い液体が何なのかチキにはよく分からないが、
レンツェンに言わせると子供には理解できない良さを秘めたものとのこと。
良いものなら、この局面を打開するための役に立つだろうか。
でもあんな意地悪なことを言うレンツェンの主張する“良さ”なんて――
「俺を甘く見るなよ?」
凄絶な笑顔で男が凄んだ。
チキではなく、彼女を庇うような場所に立つレンツェンに対して。
レンツェンは崩れ落ちるようにへたり込む。
一体何をされたのだろう。
自分に背を向ける格好で震えているレンツェンの表情や
彼のこうむった被害の実態を確認することはできなかったが、
彼を見下ろす男の残忍な笑顔を一目見てチキは直感した。
男には、レンツェンの内心が手に取るように分かるのだ。
そしてチキには想像することもできないその詳細が、彼のいびつな心を満たしている。
その表情から察するに、この男は自分がとても強くて偉くて大きな存在になったかのような
錯覚に浸っているのだろう。
――ホントに強くて偉い人は、誰かをいじめたり困らせたりしちゃいけないのに。
このお兄さん、すごく嫌! レンツェンがかわいそう!
チキはレンツェンを助け起こすべく駆け寄ろうとした。
男の言っていることはよく分からない、でもこれだけは理解できる。
このお兄さんは、自分やレンツェンに決して優しくしてくれないだろう。
それどころか、意地悪なことばかりしようとするだろう。
彼は赤い髪のお姉さんをいじめていた人だ。そんな人とは仲良くできない。
「女の人をいじめるのは悪いことだよ。悪い人の言いなりになっちゃ駄目だよ」と
マルスおにいちゃんだって言うだろう。そう、マルスおにいちゃん。
さっきはあんなことを言ってたレンツェンも実際にマルスおにいちゃんと顔を合わせれば
きっとその正しさを分かってくれるだろう。
それにレンツェンはずっとチキと一緒にいてくれたのだ。面白いことを言って
チキを沢山笑わせてくれたんだから間違ったことを言ったくらいで嫌いになっちゃ駄目、
マルスおにいちゃんだってハーディンおじちゃんが変になっても嫌いになったりしなかったんだから
チキもレンツェンのことを嫌ったりしないでちゃんと助けてあげなきゃ――そう思い、
レンツェンに駆け寄ろうとした。
しかし男が先に動いた。
わずか半歩ばかり間合いを詰められただけだったが、
何をしでかすか分からない彼の異常な存在感にチキは思わず身をすくめた。
男はチキを見据えて嗤う。
己の勝利を確信しながら尚も貪欲に食らいつくような笑顔、
敗者に対する唾棄と憐憫を内包しながらそれら一切を食らい尽くそうとするかのような
その笑顔は、今しがたレンツェンに向けられたものとよく似ていた。
男の表情は、チキの胸をざわめかせる。
まるで昨日の出来事のようにあの夢が脳裏に映り、
チキは知らず知らずのうちに胸の前で両手を握り締めていた。
男が楽しげに眼を細める。チキは反発を覚えた。
どうしてこのお兄さんはチキが嫌な思いをしているときに嬉しそうな顔をするのだろう。
――チキはおもちゃじゃないのに。やっぱりこのお兄さん、すごく嫌!
チキは男をねめつけた。男は大げさに肩をすくめて見せる。
「ククッ、怖いねぇ。
慈悲深い俺は身の程知らずなおまえらのしでかしたことを
すべて水に流してやってもいいって考えてるってのに、その顔。
この俺の純粋な親切心を踏みにじりたくて仕方ねえってツラをしてやがるぜ。
なあガキ――」
「ガキじゃないもん! チキだもん!」
「は?」
チキの抗議に男は一瞬だけ真顔になり、ひどく間の抜けた表情を見せた。
無防備な顔をした彼はレンツェンとさほど年の変わらない若者に見える。
しかし次の瞬間には合点がいったようににやりと笑い、やがて元の悪辣な笑顔を取り戻した。
「ほう、おまえの田舎ではガキのことを“チキ”っていうのか。
聞いたこともねえなぁ、そんな方言は。
しかし人様を平然と踏みにじるようなクソガキが出来上がるくらいだ、
ロクでもねえ連中の吹き溜まりの言葉に違いねえ。
ハハッ、一体どんな扱いを受ければこんな歪み切ったクソガキになるんだろうなぁ?」
男は顎をそびやかし、蔑むような視線をチキに向けながら哄笑する。
チキは何も言わなかった。
言葉をあまり知らないチキにも目の前の男が自分や自分に優しくしてくれた人たちを
侮辱していることは理解できたが、不思議と腹立たしさを感じなかったのだ。
チキには男の言葉が自分ではない誰かに向けられているように思えた。
それが誰なのかは分からない。
ただ、人間であることを放棄したこの男の抱える人間的な絶望を垣間見たような気がして、
そこに安堵を覚えたのだった。憐れみにも似た、苦痛を伴う安堵ではあったが。
しかし実際に憐れみを表出させたのは男のほうだった。
男は出来の悪い妹を諭すように低い声で話し始める。
目には悪意を宿したまま、高価な砂糖菓子を味わっているかのような満ち足りた笑みを湛えて。
「図星で言葉も出ないか。
まあしかし、おまえを身の程知らずなクソガキに至らしめた肥溜めのクソどもを
あまり恨むモンじゃないぜ。
腐った連中に潰されて駄目になるような奴は最初からその程度だったってことさ」
そこまで言うと、男は一旦言葉を切った。
チキには彼の話が理解できない。
男はどうやらチキが“肥溜めのクソ”とやらに恨みを抱いていることを前提に話をしているようだが、
排泄物を恨むという発想自体がチキにとっては青天の霹靂だった。
無論、人間を排泄物に喩えるなど想像の埒外である。
変なの。チキは男の顔を眺めながら小首をかしげた。
男の笑顔が曖昧になり、僅かな苛立ちが去来する。
彼が再び口を開いたとき、その笑顔からは余裕が失せ、
餓えた獣を思わせる凶暴な悪意のみが残っていた。
「さて、そろそろその剣を貰い受けたいんだがね。
あんたは剣を扱えないんだろう?
無力なあんたの代わりにこの俺がその剣を有効活用してやろうってんだ、悪い話じゃないだろう」
今度はチキにも理解できた。難しい言葉は知らないが、彼の望みはよく分かる。
「お兄さんはチキの鞄に入ってる剣がほしいの?」
「意外と話の分かるガキだ。そうさ、俺はその剣がほしい。
その剣を寄越すならこの怪我のことは見逃してやらんでもないし――」
男は喉の奥で声もなく笑う。
その顔ににじみ出た獣じみた残虐性が鋭く深く研ぎ澄まされていく。
「――何ならこの俺がその剣を有効活用するさまを特等席で拝ませてやってもいいんだぜ?」
チキは確信した。やっぱりこのお兄さんは変だ。
言っていることと表情や声色がちぐはぐでとても嫌な感じがする。
ただ意地悪なだけじゃない、ただ悪い人ってだけじゃない、
このお兄さんはなにか重大な隠し事をしている。
そしてチキには想像することもできないようなとても恐ろしいことを企んでいる。
このお兄さんはきっと、あの悪夢のような惨劇を引き起こしても平気でいられるのだろう。
そう思うと、今現在の気分だけでなく自分の未来までもが
黒く塗りつぶされていくような絶望感に囚われる。
チキはマルスの言葉にしがみついた。
大好きなマルスおにいちゃんが「大丈夫だよ」と言ってくれたのだ、
だからもうあの夢に怯える必要はない。自分はあの夢と決別できる。
悪夢の世界に生きるこの男にだって負けることはないだろう。
チキはデイパックの肩ひもをしっかりと握り締め、毅然と男に言い放つ。
「ダメ! この剣はマルスおにいちゃんのだもん!
悪いことする人にはあげないもん!」
「そうか。なら、仕方ねえなァ」
仕方ない。その言葉とは裏腹に男の顔は笑っていた。
チキのその返答を心の底から待ち望んでいたかのように。
男がチキに飛び掛る。その背後で何かが揺れた。
宵闇の村の景象そのものに男の影が差したかのように、男の背後の空間に暗い影が伸びていた。
チキの心に恐れはなかった。少なくとも数秒前までは。
しかし今は体が動かない。黒い影の中に浮かび上がる美しい女の目を見た途端、
まるで金縛りにかかったように足が竦んでしまったのだった。
この世のものならざる人影が陽炎のように揺らめきながらチキに向かって手招きする。
女のようでありながら男のようにも見え、
子供のように見えたかと思うと次の瞬間には老人のような表情を見せ、
あらゆる姿に変化しながらいずれの存在にもなり得ない混沌の化身たる死神が
チキの身体に流れる神竜の血を凍りつかせた。
男の手元が鈍く光る。
襲撃者はチキの腹部に拳を叩き込みながらもう片方の手を左肩の向こうに伸ばした。
チキの呼吸が衝撃で止まり、焼けるような不快感が喉の奥に込み上げる。
腹部にちくりと痛みが走り、チキの肩の後ろにある何かを男の右腕が掴むのを感じた。
鞄から出ているあの柄だ。このままでは男に剣を奪われてしまう。
チキは右腰で揺れるガラスの小瓶に手を伸ばした。
しかしチキの指は冷たい瓶から滑り落ちた。
上半身に左向きの強い力がかかり、転倒しそうになったのだ。
しかし実際にバランスを崩していたのは襲撃者のほうだった。
男の左手がチキの腹部から離れ、石と金属のぶつかる音が足元で小さく鳴った。
その顔からは笑みが失せ、焦りと戸惑いが取って代わる。
一体何が起きたのだろう。
蒼白い顔で身体をよろめかせる男の姿はまるで死神に取り憑かれた重病人のようだった。
己を世界に繋ぎ止めようとするかのように、骨ばった指がチキのしなやかな二の腕を掴んだ。
短い爪が肌に食い込み、襲撃者の体重が小柄な体にのしかかる。
チキは悲鳴をあげながら左向きに転倒し、地面に横臥した彼女の上に男が覆い被さる格好となった。
視界に己の腹部が入る。
自身のまとうピンクのチュニックに大きなシミがついている。
色彩感覚を狂わせる夕闇の中にあっても、
それが自らの流した血であることを痛みによって理解する。
そして理解することによって痛みがいっそう存在感を増す。
永遠にも思える数秒の間、襲撃者はチキに全体重を預けていたが、
やがて荒い息をつきながらゆっくりと体を離した。
錯乱しつつあったチキの意識に男のかすれた声が割り込んでくる。
「クソッ、早いとこ終わらせねえとマズいな……」
襲撃者はチキの側頭部を右手で抑えつけながら脇腹の辺りに跨った。
傷口に直接触れられてなどいないはずなのに、
男の一挙手一投足が耐えがたい激痛を腹部にもたらす。
チキは苦痛に喘ぎながら「痛い、動かさないで」と懇願した。
しかし男はチキの訴えに耳を貸す気配など見せない。
地面についたその膝が立てるかすかな土埃にむせ返りそうになり、
伸縮する腹筋のもたらす激痛に呼吸が止まり、チキは耐え切れずに泣き出した。
どうしてこんなことになったのだろう。
両腕は自由に動かせるものの、男の体に遮られあの小瓶に手が届きそうにない。
一体どうすればいいのだろう。
さっきまであんなにチキを笑わせてくれたレンツェンはどこに行ってしまったのだろう。
「レンツェン……、レンツェン! レンツェンはどこに行ったの!?
助けて! 痛い……痛いよレンツェン……助けて……」
泣きじゃくるチキに男が問う。
「レンツェンってのは、あの派手な格好をした男のことか?」
チキは何も言わなかった。男の嘲笑が聞こえる。
「あの兄ちゃんならとっくに逃げたぜ。
つがいの鳥を狩るときは先に雌を殺るってのが基本だが、
おまえのようなガキごときに雌としての価値なんざねえってことだな。
それどころかあいつは心の中でおまえを邪魔者扱いしていたんじゃねえか?」
「チキ、意地悪な人とはお話ししたくない」
「だったら俺の前でガタガタ騒ぐんじゃねえ。
もうすぐ楽にしてやるからおまえを見捨てた奴のことなんざ忘れな」
視界の外にある男の表情を確認することはできないが、その声は意外なほど優しかった。
大人しくしているだけで苦痛を取り除いてもらえるのなら黙って従おうと思えるほどに。
しかし痛みが彼の本心を教える。
両肩を後ろに引っ張られるような感覚があり、チキははっと息を呑んだ。
チキの背負っているデイパックに強い力がかかっている。
男がデイパックを物色し、おそらくはその向きを変え、何かを力任せに取り出そうとしているのだ。
それが何なのかは見なくても分かる。
このお兄さんは、さっきからずっとチキの鞄に入っている剣を欲しがっていたのだから。
込み上げる絶望が、潰えたはずの闘志を復活させる。
この男はとても恐ろしいことを企んでいるのだ。
彼に剣を奪われたらマルスには二度と会えなくなるような気がした。
――そんなの嫌! マルスおにいちゃんと離れたくない!
チキは悲鳴をかみ殺しながら男の右足にしがみついた。
彼はさっきチキたちのせいで足に怪我を負ったと言っていた。
男の怪我がどの程度のものなのかは分からないが、
血が沢山出ているときは体を少し動かしただけでもたまらなく痛いということを
チキは今日身をもって知った。
このお兄さんは怪我を負わされて「ありがとう」と言いに来るくらいだから、
本当は痛くなどないのかも知れない。
でも、たっぷりと礼をしたいと言いながらちっとも感謝しているようには見えないから、
やっぱりとても痛いのかも知れない。
このお兄さんの考えていることはチキにはよく分からない。
ただ、お兄さんのズボンの右足には血が沢山ついているから、
怪我をしているという話は本当なのだろう。
このお兄さんから剣を守るためには痛みを与える必要があり、
痛みを与えるためには怪我を負った個所を責めればいい。
どこに怪我をしたのかは大体分かる。
お兄さんのズボンは少しだけ破れているから――
チキは右手を男の太股に這わせながら、
ベルトに差したナイフを奪うべくもう一方の手を伸ばそうとした。
しかし頭を押えつけられているせいで左手が腰まで届かない。
両腕を少し動かしただけで腹筋までもが伸縮し、激しい苦痛に苛まれる。
それでもマルスとの別れに比べれば肉体の痛みなどほんの些事に過ぎなかった。
剣を奪われればマルスにはもう会えないだろう。
チキにとってマルスを失うことは世界の終焉と同義だった。
自分の人生からマルスが去ればあとに残るのは闇と孤独、そして終わることのない悪夢のみ。
マルスは光、怪物になるはずだった少女に人としての命を与えた救い主。
腹部の傷がまるで異物のように熱を帯びて疼き、チキの心身を支配しようとするが、
チキはマルスの笑顔を思い出し彼のもとに戻ることのみを考えて苦痛を意識から締め出した。
右手が布地の裂け目を探り当てた。
潜り込ませた指を力任せに突き立てるが、襲撃者の体には何の変化も生じない。
傷口そのものを責めなければ意味がないのだ。
素肌に指を滑らせると、明らかに他とは違う個所があった。
見つけた、これで勝てる。チキは湿り気を帯びたそこに指を突き立てようとした。
しかし男が先に動いた。
彼はチキの頭を押さえつけていた右手を離すと、膝をついたまま腰を浮かせ、上半身を前に倒した。
ナイフを奪うべく伸ばした左手が木製の柄に触れる。チキは柄に手をかけながら、
男の足から滑り落ちそうになっていたもう一方の手の親指を傷口の辺りにねじ込んだ。
「クソッ、往生際の悪いクソガキが……」
男が毒づき、デイパックの肩ひもが深く食い込んだ。
このままではこの男に剣を奪われてしまう。マルスおにいちゃんに会えなくなる。
チキは男の傷口を叩き、引っかき、指を突き立て、力任せに抉った。
加害行為の代償だとでも言わんばかりに、胴を引き裂くような激痛が腹部を貫く。
自らの意に反して無様な悲鳴が漏れるが、それでもチキは指先に込めた力を緩めようとはしなかった。
頭上から罵声が降り注ぐ。
布越しに感じる男の筋肉の動きから、彼が体勢を大きく変えようとしていることに気付く。
チキは左手に掴んだ木製の柄を力任せに引き抜くと、
形状すらも確認できないその刃を男の足に叩きつけた。
しかし返ってくるのは岩を刺そうとしているかのような手応えのみ。
チキの細い腕では分厚い布地と鍛え上げられた筋肉を切り裂き、或いは貫くことなどできなかった。
背中を地面に縫い付けられるような感覚に襲われ、
チキの両手が襲撃者の太股から滑り落ちた。
それがデイパックを踏みつけられたためだと気付いたのは、
もう一方の足で腹を蹴り飛ばされてからのことだった。
激痛に貫かれ薄れゆく意識の中で何かが割れるような音を聞いた。
奇妙な清涼感を伴う液体が腹部を濡らし、
人工的な甘さと鋭さを有する濃密な匂いが鼻腔を突く。
あの小瓶が割れてしまった。小さな希望がこぼれ落ちてゆくのを感じる。
襲撃者は身を転がしながら体勢を立て直す。
その手に握られた長剣の柄には見覚えがあった。
チキの鞄に入っていたものだ。男に剣を奪われた。
長剣を地面に突き立て、それを支えにゆっくりと立ち上がる
襲撃者の姿にチキの心が冷えていく。
――マルスおにいちゃんごめんね……、チキはもう……。
このまま意識を失えば二度と目覚めることはないだろうと思った。
きっとあの夢すら届くことのない深い眠りに就くのだろう。
あの夢から逃れたい、あの夢とは違う未来がほしいと切に望んでいたが、
このような形での決別は不本意極まりなかった。でも、もう――
あまりにもひどい悪臭のせいだろうか。
チキの意識は消え失せるどころか冴え渡り研ぎ澄まされていく一方だった。
心なしか腹痛も和らいだように感じる。
全身にみなぎっていく活力を己の内にとどめておくことなどできず、チキはゆっくりと体を動かした。
慎重な動作は苦痛を警戒してのことだったが、思ったほどの痛みは感じない。
それどころか疲労が消え失せ身体が軽くなったようにすら思える。
チキは男から奪ったナイフを右手に持ち替え、しっかりと握り直した。
その刃は薄く、大好きなマルスおにいちゃんの手のひらほどの長さしかなかったが、
襲撃者を退けマルスの元に戻ることのできる可能性が未だ手の中にあるのだと思うと勇気が湧いた。
男の様子を窺うと、彼もまた手に入れたばかりの武器を両手で持って確認し、
片手で握り直していた。あんなに重いものを腕一本で扱うなんて。
相手との力の差を改めて実感し、岩のような存在感に圧倒されそうになる。
男は淡く輝く刀身をしげしげと眺めながら愉悦し、残忍な笑顔をチキに向けた。
「さて、切れ味のほどを試してみるとしようかね?」
言いながら、ゆっくりと歩を進める。
しかしその足が不意に止まり、男の顔から笑みが消えた。
「嫌な匂いだ。こいつ、ガキの分際で香水なんざ持ち歩いてやがったのか」
男は嫌悪もあらわに顔をしかめた。
半眼になった目にはもはや獣じみた貪欲さはなく、
拒絶にも似た憤怒が抜き身の刃物のような危うさをその視線に与えていた。
「ふざけやがって! おまえも心の中で俺のことを馬鹿にしていたんだろ!
そうに決まっているさ、そういうものを身に付けたがるような女はみんなそうだ、
淫売の分際でこの俺を見下してやがる! クソッ、ナメやがって!」
感情の赴くまま怒鳴り散らす男の姿にチキは呆然となった。
このお兄さんは一体何を怒っているのだろう。
彼の支離滅裂な言動は今に始まったことではないが、
この激昂ぶりはあまりにも常軌を逸していると言わざるを得ない。
男は長剣を逆手に持ち替え、もう一方の手も柄に添えると、
その切っ先をチキの右太股に叩きつけた。
骨の砕ける衝撃に声を出すこともできないチキを冷ややかに見下ろしながら、
肉を抉るように刀身をねじり、ゆっくりと引き抜いた。
湧き水のように溢れ出す鮮血が地面に黒い模様を描く。
「一太刀で殺してやろうと思っていたが、気が変わった。
おまえには俺と同じ傷をくれてやる」
◇ ◆ ◇
レンツェンハイマーは民家の外壁に背をもたせかけ、暗紫色の空を仰ぎ見た。
隙を見計らって民家の陰に逃げ込んだものの、
未だ足腰はまともに立たず、早鐘を打つ心臓は今にも口から飛び出しそうだ。
――ええい、うるさいぞ! この鼓動は一体どうしたことだ。
こんなに激しく脈打っていてはあの少年に聞こえてしまうではないか!
俺の心臓よ、止まれ、止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれ、止まらんか!
何故止まらん! 俺の命令が聞けぬのなら無理矢理にでも止めてくれるぞ!
……あ、いや、それはまずい。それではこの俺様が死んでしまう。
ああ、俺の頭は一体どうなってしまったのだ。
俺は天才軍略家レンツェンハイマー、リーヴェ王になるはずだった男なのだぞ!
レンツェンは両手で頭を抱え、視線をゆっくりと地面に落とした。
向こうからあの少年とチキの声が聞こえてくる。
会話の詳細は聞き取れないが、その声色からチキが泣いているのだと分かる。
彼女はしきりに痛みを訴え、半ば悲鳴混じりに「動かさないで」と懇願している。
恐らく、あの少年に強姦されているのだろう。
――あんなガキに欲情するのか。浅ましい。これだから育ちの悪い奴は嫌だ。
レンツェンは苛立ちを覚え、そんな自分に疑問を覚えた。
――どこの馬の骨とも知れないガキがならず者の少年に強姦されたからといって、
何故俺が腹を立ててやらねばならん?
そのような行為に及ぶ者は俺の配下の兵士にもいたし俺はずっと黙認してきたというのに、
今朝知り合ったばかりのガキを特別扱いしてやる必要性がどこにあるというのだ?
むしろこれは歓迎すべきことではないか。
少年の注意がガキに向いている隙に、俺は安全な場所まで逃……もとい撤退できる。
落ち着いて考えてみろ、あのガキが一体何の役に立った?
有能なボディガードを連れて来るどころか、
いらん騒ぎを起こして俺様の命を脅かしたではないか。
人間様に危害を加える家畜などただの害獣、殺されて当然だろう。
自分を取り戻すにしたがって、心拍も平常に戻っていく。
そろそろ動けるだろう。逃……もとい撤退の時間だ。
レンツェンは壁に立てかけていたゴールドスタッフを両手で持って地面に突き立てると、
杖に体重を預けながらゆっくりと立ち上がった。支えを外しても直立できることを確認してから、
杖をデイパックに収納し、音を立てぬよう慎重に歩を進める。
このまま民家の裏手に回り、村の外まで一気に走ろう。幸いこの靴は動きやすい。
あの少年に気付かれたとしても足に怪我を負っている彼に追いつかれることはないだろう。
そのときチキの悲鳴が聞こえた。
「レンツェン! レンツェンはどこに行ったの!? 助けて!」
レンツェンは思わず足を止めた。
首の辺りに違和感を覚え、首輪がそこにあることを自らの指で確認する。
自分の名を呼びながら助けを求める者の声など
レンツェンにとっては虫の鳴き声同然の取るに足りないノイズだった。
彼らはレンツェンに命乞いをする。レンツェンが権力者だから。ラゼリアの太守だから。
レンツェンは常に彼らの期待に背くよう最大限の配慮をもってその声に応えた。
彼らが求めるのはレンツェンハイマーという人間の慈悲ではない。
自分に都合の良い支配者、すなわち憎きリュナンのような人間だ。
だからレンツェンは彼らを裏切る。
リュナンを求める者など苦しめばいい、彼らの姿を見たリュナンもまた苦しめばいい。
リュナンになれない俺を認めない者などみな死んでしまえばいいと思っていた。
しかしあの少女は違った。彼女は太守の意味すら理解しておらず、
このレンツェンハイマーがリュナンのような人間ではないと思い知ったにも拘わらず、
レンツェンに救いを求めたのだ。
では、助けに戻るか? レンツェンは振り返り、かぶりを振った。
――馬鹿な。俺は一体何を迷っている?
一時の情に流されて無謀の挙に出るなど、
天才軍略家にあるまじき愚行の極みではないか。
あのようなガキなど見殺しにすればいい。
ガキは簡単に人を頼る、それだけの話だ。振り回されてやる義理などない。
息を殺し、足音を忍ばせ、レンツェンは民家の裏手に辿り着いた。
あとは駆け出すだけだ。
建物の向こう側からチキと少年の声が聞こえるが、何を言っているのかまでは聞き取れない。
レンツェンは地面を蹴ろうとして逡巡する。
チキの声が聞こえるということは、彼女がまだ生きているということだ。
今なら間に合うかも知れない。チキの言葉が脳裏によみがえる。
――えらい人には、その地位にともなう責任と、義務があるんだって。
だから、えらい人は困った人や弱い人がいれば助けなきゃいけないの。
不快だった。その内容もさることながら、
善人気分を味わいたい連中の悪趣味な戯言ごときを黙殺できず
合理的な行動を取れなくなった自分に対して苛立ちを覚える。
――俺は一体何をしているのだ?
赤の他人の悪趣味をわざわざ思い出して感情を揺さぶられてやるなど悪趣味の極みだ。
そのような娯楽はラゼリアに帰還して余暇ができてから気が済むまで満喫すればいい。
今は一秒すら無駄にはできない。余計なことを考えている暇があるならさっさと走れ――
「クソッ! このガキは化け物か!?」
少年の怒鳴り声が聞こえ、レンツェンは踏み出すはずだった足をまた止めた。
少年は焦り、戸惑っている。チキが反撃に出たのだろう。
戦うすべを持たないガキなど足手まといにしかならないと思っていたが、
あの少年にここまで言わせたとなれば話は別だ。
戦力になるなら手元に置いておきたいし、助けに戻る価値だってある。
引き返そうかと思い始めたとき、再びチキの悲鳴が聞こえた。
「触らないで! チキは物じゃないもん!
……放して! チキに触らないで!」
怒りと嫌悪に腕が震えた。
育ちの悪そうなならず者ごときに自分の持ち物を勝手に汚されるなど許しがたく、
極刑をもって臨まねばならないほどだった。しかし身体が動かない。
チキが危害を加えられているのなら自分一人であの少年と戦わねばならないし、
あの少年がチキに何をしているのかをこの目で確認する羽目になるだろう。
許せない。そう思っているはずなのにレンツェンはその場に立ち尽くす。
空は紫から黒になり、風が冷たくなってきた。
ふとレンツェンは異変に気付いた。チキの声が聞こえない。
少年が一人で何事かを話しているようだが、声色が普通ではなかった。
その具体的な内容を聞き取ることはできないが、彼の声は到底勝者のものとは思えない。
今なら勝てる。確実に勝てる。天才軍略家の勘がそう告げる。
――よし、出陣だ。あの見るからに育ちの悪そうな少年には、
この俺様の所有物に傷をつければどうなるのかを思い知らせてやらねばならん。
レンツェンは装飾過多な黄金の杖を取り出し、両手で握り直す。
この重みから察するに、純金製なのだろう。
大小様々な宝石を散りばめることで軽量化を図っているが、
それでも鉄の剣などとは比べ物にならないほどの重みがある。
この杖で相手の頭を殴りつければ命に関わるような怪我を負わせることも可能だろうが、
自分の腕力ではそのような使い方はできないだろう。
それに武器として用いた場合、耐久性に疑問が生じる。
相手に気付かれる前に、一撃で決めなければ。
逃……もとい撤退できるだけの隙さえ作り出せればそれで――
「助けて! マルスおにいちゃん助けて!」
空気を引き裂くチキの悲鳴がレンツェンの心を切り裂いた。
見捨てられた。杖が手から滑り落ち、レンツェンはその場にへたり込む。
チキが最後に頼ったのは自分ではなくマルスだった。
ラゼリアの民が自分ではなくリュナンを求め支持したように、チキもマルスを選ぶのだろう。
やはり子供など気紛れで身勝手、さっさと見捨てて逃げ出すべきだった。
あの時走り出してさえいれば、自分の中のチキはいつまでも
レンツェンを必要としてくれていたのに。
脳裏に映る記憶の中のチキが無垢な瞳でレンツェンに問う。
――レンツェンも、マルスおにいちゃんと一緒でとってもえらい人なんでしょ?
その言葉が弱音を粉砕し、死んだ心に命を与えた。
――マルスおにいちゃんと一緒で、か。
貴様はこんな俺でもマルスやリュナンのように生きられると信じてくれていたのだな。
ならば貴様に対してだけは俺もそうなってやろう。
レンツェンは きれいなレンツェンに しんかした!
のうないが 8ビットに なった!
チキから 5パーセントの しえんこうかを えた!
しぼうフラグ を てにいれた!
→ どうぐ
→ しぼうフラグ
→ すてる
しぼうフラグ「わたしをすてるなんて ゆるさない! ころしてやる!」
レンツェンは Bボタンで キャンセルした!
→ どうぐ
→ しぼうフラグ
→ つかう
しぼうフラグ「あなたのかのうせいを めざめさせてあげる!」
レンツェンは ハイプリンスに クラスチェンジした!
テンションが 5 あがった!
しえんこうかが 5 あがった!
ごうとう の スキルを おぼえた!
→ ターンしゅうりょう
◇ ◆ ◇
「クソッ! このガキは化け物か!?」
罵倒が彼女の根幹を抉り、激痛に耐えかねて自我を手放したチキの感情を呼び起こした。
――チキは化け物なんかじゃないもん!
怒りが自我を統合する。自我があの夢を統率する。
――チキは化け物なんかにならないもん!
マルスおにいちゃんが大丈夫って言ったもん!
脳裏に映る悪夢の予感に抗うことでチキは自分を取り戻した。
己の非道を棚に上げて彼女を化け物呼ばわりした恥知らずな男をねめつけると、
若いならず者は感嘆したように目を見開いた。
「こりゃすげえ。あんだけ痛い思いをしてまだそんな顔ができるのか」
男は長剣を地面に突き立て柄から手を放し身を屈めると、
熱を失った大地に横たわるチキの上半身を強引に起こした。
片方の手はチキの右腕を、もう片方の手は肩を掴んでいる。
痛い。チキは男の腕を振り払おうとしたが、相手の力が強すぎて思うように動けない。
「触らないで! チキは物じゃないもん!」
「こんな危ないモンを握られてちゃあ放すワケにはいかねえだろ?」
言葉とは裏腹に男は余裕の笑みを浮かべる。
チキの右手は男から奪ったナイフを今もしっかりと握っていた。
痛みに自我を手放してもナイフだけは放さなかったらしい。
しかしそこに希望はなかった。
よみがえるのは男を刺そうとしたときの絶望的な手応えのみ。
それでもチキの中には“この男に屈する”という選択肢はなかった。
「放して! チキに触らないで!」
チキは男に噛み付こうとした。
しかし腕と肩を固定されてしまってはどうすることもできない。
足をばたつかせて抗おうにも石のような男の膝が太股を押さえつけている。
男がチキの顔を覗き込む。卑屈な笑みを浮かべながら。貪欲な目で見据えながら。
「なあガキ。いや、チキちゃん。ちょいと聞きたいことがあるんだがねぇ。
チキちゃんの体はどうしてすぐに怪我が治るのか、その理由を教えてくれないか?
正直に話してくれればこれ以上手荒な真似はしねえ。本当さ、約束するぜ。
だからさ、なぁ、教えてくれよ。チキちゃんだってこれ以上痛い思いはしたくないだろう?」
怪我が治る? 一体何のことだろう。
チキは自分の身体を見下ろした。
素肌や衣服のいたるところが血で赤黒く染まっており、
怪我が癒えたようにはとても見えない。
しかし言われてみれば先程からほとんど痛みを感じていない。
重い怪我をしているときは、体をほんの少し動かしただけで
とても痛い思いをするはずなのに。
でも、どうして?
チキは男の顔を見た。男の表情がぱっと輝き、笑みがいっそう卑屈になった。
「さっきのことは謝るよ。俺はただ怪我の具合が悪くて怒っていただけなんだ。
大人げなかった、反省してる、本当さ。
俺はチキちゃんが羨ましかったんだ、
チキちゃんみたいになれればもう怒ったりなんかしねえ、
だから頼む、教えてくれよ、なぁ、どうすれば
魔法も使わずに怪我を治せるようになるんだい?
包丁で刺した傷も消えるんだ、この剣に理由があるってワケじゃねえだろう?
俺の怪我はちっとも塞がらねえし、
あの香水に秘密があるってワケでもなさそうだ。……だろ?」
男は眼を細め、にやりと笑って見せた。
彼が何故そんな風に笑うのかチキにはよく分からない。
男は軽くため息をついた。
へつらうような笑みはその顔から失せ、陰鬱な苦悩が影を落とす。
しかしその目に宿る貪欲な炎は亡者のように生を食らおうとする。
「なぁ、チキちゃん。俺は拷問なんてしたくねえ。ああいうのはシュミじゃねえんだ。
でもな、チキちゃんの態度如何では俺も不本意なことをしなきゃならねえ。
こう見えて俺は気が小せぇんだよ。子供に泣かれるなんざ耐えられねえ。
でも耐えなきゃ生きていけねえから悪ぶって現実と折り合いをつけてるだけなんだ。
頼むよ、チキちゃん。俺に酷いことをさせないでくれよ」
涙を浮かべてチキにすがりつく男の姿はまるで命乞いをする罪人のようだ。
チキは男に憐れみを覚えた。言葉の意味はよく分からないが、
彼が好き好んで非道な人間になったわけではないということだけは理解できた。
マルスおにいちゃんがいればこのお兄さんもこんな風にはならなかったのだろうか。
しかしいくら想像してみてもマルスおにいちゃんに意地悪なことを言って
困らせている場面しか浮かんでこない。
マルスおにいちゃんにもこのお兄さんは救えないのだろうか。
そう思うと胸が苦しくなり、あの夢が脳裏に現れた。そしてチキは幻視した。
獣と化した彼女が人々を殺戮すべく襲い掛かったあの村に立つこの男の姿、
戦うすべを持たぬ者のために剣を取る彼の勇姿を。
その面差しは精悍で眼には力強い信念が宿り、揺るぎない自信すら感じさせた。
しかし現実の彼は真逆だった。
今にも泣き出しそうな表情でチキにすがりついていたはずの男は
先程までの苦悩など最初から存在していなかったかのように猜疑と敵意に顔を歪め、
苛立たしげに舌打ちした。
「だんまりか。人が下手に出りゃあつけ上がりやがって。なめんじゃねえぞ、コラ!」
男は凄み、チキの身体を掴む両手に力を込めた。
痛い。チキは小さく悲鳴を漏らす。
男は口元を歪めながらチキの顔を眺めていたが、やがて喉の奥でククッと笑った。
「なあガキ。あっという間に傷口が塞がっちまうってことは、だ。
処女膜も再生するのかねぇ?」
男の言葉の意味することなどチキにはまったく分からない。
しかしその表情と声色から、おおっぴらに口にしてはならない話題なのだと
察することはできる。チキは何も言わなかった。
迂闊なことを口にすれば先程よりもさらに恐ろしい目に遭うような気がしたのだ。
その具体的な内容をまったく想像することができない点が
ことさら恐ろしく感じられてならず、チキには何も言えなかった。
男は残忍な、そして下卑た笑みを浮かべながら言う。
「その顔は俺の言葉を理解してねえな。どういう意味か教えてやってもいいんだぜ?」
怖かった。どうしてこのお兄さんはチキを見ながらこんな風に笑うのだろう。
相手はその理由を完全に把握しているにも拘わらず、自分はまったく理解していない。
その落差に恐怖する。
自分の心や人格に汚物を塗りつけられたかのような不快感に襲われ、
自分の身体に触れる相手の指が汚らわしく思えてならず、
チキは男の腕から逃れようと必死でもがいた。
「はっ、放して……、チキに触らないで! 気持ち悪い、やだ!」
しかしいくら力を込めても相手の身体はびくともしない。
心だけでなく体までもが汚濁していくような感覚に蝕まれる。
このままではたとえ生き延びたとしてもマルスおにいちゃんのそばには行けなくなるだろう。
それだけは嫌だ。絶対に嫌だ。チキはあらん限りの声で叫んだ。
「助けて! マルスおにいちゃん助けて!」
男がチキの右腕をひねり上げる。
チキは大声で抗議するが、次第に激しさを増す苦痛にやがて声も出なくなる。
目を硬く閉じて痛みに耐えるチキの耳に男の嘲笑が流れ込む。
「馬鹿だなぁ、冗談に決まってんだろ? ガキとヤる趣味なんざ俺にはねえよ。
しかし意味は分からなくても恐怖は感じるモノなんだなぁ、本能ってヤツなのかねぇ。
ま、そんなことはどうでもいいんだがな」
男の体がチキから離れた。
次の瞬間、チキは胸に衝撃を受けその背を地面に打ちつけた。
それが男に蹴り飛ばされたことによるものだと気付いたのは、
長剣を再び手に取った彼の姿を目にしてからのことだった。
「さあて、そろそろ俺の質問に答えて貰いたいんだがね」
襲い来る痛みを警戒し、チキの身体が強張った。
いくら驚異的な速度で傷が癒えるとはいえ、苦痛は確実に自我を蝕む。
逆らわなければ、戦わなければ、マルスおにいちゃんに会えなくなるだろう。
チキは自らの掌に未だ木製の柄があることを確認し、力を込めて握り直した。
マルスとの絆をその手に繋ぎ止めておこうとするかのように。
チキは身を起こし、男が右足に負った傷をナイフで再び抉ろうとした。
しかし体が動かない。男の背後に立ち昇る亡者に意識を奪われてしまったのだった。
映るはずのない場所に暗い影が伸びている。
黒いはずの影の中に白い顔が浮かび上がって見える。
美しい女の姿をとりながらその眼窩は深淵の闇、
白目があるはずの場所にすらも黒一色しか存在しない。
男は恐怖に凍りつくチキを見下ろし、その口元に酷薄な笑みを浮かべた。
怯える獲物をからかうように長剣で空を切りながら、まとわりつくような声で言う。
「しかし拷問ってどうやるんだ?
よく分からねえから適当に切り刻ませてもらうとするかね」
しかしその言葉が現実のものになることはなかった。
不意に鈍い音が聞こえ、チキの下半身に覆い被さるように男が大きく転倒した。
男がいたはずの場所には別の人影が立っていた。
月明かりを受けた銀の髪が闇に白く映えている。
現れたのは、色とりどりの宝石に彩られた金の棒を両手で握り締めたレンツェンハイマー。
杖だったはずのそれは折れて潰れ、随分と短くなっている。
レンツェンは肩で息をしながら怒りに満ちた表情で男の後ろ姿を見下ろしていた。
レンツェンがチキを助けてくれた。
でも怖いお兄さんが起き上がったら今度はレンツェンがやられちゃう。
チキもレンツェンを助けなきゃ。早くマルスおにいちゃんのところに帰らなきゃ。
悪いことする人はやっつけなきゃ。
チキからマルスおにいちゃんを取り上げようとする人なんて大っ嫌い。
チキのことを化け物なんて言う人は大っ嫌い。
チキはナイフを握り締めた右手にもう片方の手を添えた。
――マルスおにいちゃんをチキから取り上げようとする人なんて、しんじゃえ!
チキは男の目を突いた。調理用の薄い刃が男の眼球に深々と刺さる。
男は絶叫した。人間のものとは思えない獣じみた悲鳴を上げて壊れたようにのた打ち回る。
その姿にチキは衝撃を受けた。あの夢に現れる人々の姿によく似ていたからだ。
獣と化したチキに襲われ逃げ惑いながら殺されていく人々の姿によく似ていたからだ。
軍隊の一員として戦場に立つ身でありながら、チキ自身には人を殺した記憶がない。
戦場で敵兵と対峙するときチキは決まって竜になる。
竜と人間の脳は違う。
大きさも機能もものの見え方も感じ方も考え方もすべてがまるで違っている。
竜化していたときの記憶を人間の脳で完璧に再現することなど不可能だ。
いくら思い出そうとしても夢のように曖昧でいとも容易く己の空想に塗り替えられ、
何が真実なのか分からなくなる。
だから“人間として生きた10歳の少女チキ”には人を殺した記憶がない。
生身の少女のまま誰かに危害を加えたのはこれが初めてのことだった。
――わたし……やっぱり化け物なの……?
声も出せずに震えているチキの視界でレンツェンが男を足蹴にしている。
「ははは、この天才軍略家レンツェンハイマー様の知略のほどを思い知ったか!
貴様のような虫けらには地べたを這い回るさまが実によく似合う。
だがそう簡単には踏み潰してなどやらんぞ、
この俺様に相応しい高級ブランド製の靴が汚れてしまっては困るのでなぁ。
そんなことより貴様、この俺に何か言うべきことがあるのではないか?
虫けらに相応しい扱いを受けて感激のあまり声も出ないか?
ならばせめて礼の一言くらい述べてみてはどうだ?
……ああ失礼、虫けらごときに人間の言葉など話せるわけがなかったな。
それ以前に感謝や感激などという概念が虫けらに存在するはずもない。
貴様があまりにも人間の真似事をしたがるものだから俺も勘違いをしてしまった。
これからは虫けらに相応しい扱いを徹底してくれよう、はっはっは!」
やめてレンツェン! チキはそう叫ぼうとした。
しかし脳裏に言葉が溢れるばかりで身体に命令を下せない。
チキは血とそうでないものによって薄く汚れたナイフを
両手でしっかりと握り締めたままレンツェンの足を眺めている。
レンツェンがおかしくなっちゃった。悪いレンツェンになっちゃった。
どうして? わたしのせい?
チキがひどいことをしたからレンツェンまでおかしくなっちゃったの?
レンツェンは黒い頭を踏みつけながら男のデイパックに手をかける。
「虫けらには支給品などいらぬだろう、この俺様が貰ってやろう」
チキの視界にレンツェンの取り出した支給品が映る。
それを見たレンツェンは一体どんな顔をしたのだろう。頭上から声が降ってくる。
「ははははは、虫けらへの支給品は石か!
この小さな石で貴様を叩き潰せば良いのか?」
やめてレンツェン! 酷いこと言わないでその石を捨てて!
チキの鼓動が加速する。
チキはその石を知っていた。
それは竜石、チキをはじめとするマムクートが竜に変化する際に用いるものだった。
竜石にはいくつかの種類があるが、マムクートの長である神竜族の王女チキは
あらゆる竜石の力を自在に行使することができる。
しかしそんなチキであってもその石にだけは触れたことがなかった。
何故ならそれは世界の征服と人類の滅亡を目論んだ
地竜王メディウスのものだったからだった。
「クク……ハハハッ……」
青く透ける靴の下で不意に男が笑い出した。レンツェンが慌てて飛びすさる。
「な、何がおかしい! 貴様、気でも触れたか!」
男はレンツェンの言葉などまったく聞こえていないかのようにただひたすら笑い続ける。
「ちと長居しすぎたな。
チキ、逃げ……いやいやいやいや戦略的撤退を開始するぞ!」
すぐそばにいるはずのレンツェンの声が
どこか遠くの世界から聞こえてくるかのように思えた。
デイパックに軽い衝撃を感じ、身体がすっと地面から離れる。
レンツェンが竜石と折れた杖をチキのデイパックにねじ込み、
空になった両手で彼女を抱え上げたのだった。
背中にあったはずのデイパックが腹の上で揺れている。
膝の裏側と背中にレンツェンの熱を帯びた腕を感じる。
「まったく、貴様は手のかかるガキだ」
その声に以前のような刺々しさはなかったが、
今のチキの心には何の変化も生まれなかった。
◇ ◆ ◇
してもいないことで責められる。それがヴァイスの人生だった。
幼い頃から町で何か問題が起きると真っ先に彼とその父親が疑わた。
自分のことをヴァイス・ボゼッグという一人の人間ではなく“ジャンの息子”としてしか
見ようとしない人々のことを彼は決して好きにはなれなかった。
彼の心は頑なになった。
拒絶に満ちた眼で自分たちを睨みつける彼を見て人々は
「これだからあの男の息子は」と蔑んだ。
やがて何か不都合が起きると彼のせいにされるようになった。
どうせこんなことをするのはあの男の息子に決まっている、と言わんばかりの顔で。
それでも彼が自分の生まれ育った町を襲った暗黒騎士団の長を殺害すべく
剣を取ったのは幼馴染のデニムとカチュアがいたからだった。
もしパウエル姉弟がいなければ彼は戦うことすら放棄していただろう。
こんな腐り切った連中など暗黒騎士団に惨殺されてしまえばいいと思いながら。
しかし結局はパウエル姉弟も自分とは違う世界の住人だった。
自分のような歪んだ人間をあの二人が受け入れることはない。
それをバルマムッサで思い知った。
無抵抗の民間人を虐殺したとき、彼の中で何かが弾けた。
自分からは何もしようとせず不満ばかり述べる連中など死んで当然だ。
だから心の中で不満をくすぶらせていながらそれを行動に出さずにいた良心的な彼も死んだ。
堕ちることによって彼は覚醒した。
血に血を重ねながら自らの神経が研ぎ澄まされていくのを感じた。
生まれて初めて自分がいるべき場所に存在していることを実感した。
しかし結局そのような感覚は幻だったことを思い知った。
他人の罪を着せられての処刑。
してもいないことをしたことにされて存在を否定される。
幼い頃に放り込まれた見えない牢獄から彼は最後まで抜け出せなかった。
何故自分がこんな理不尽な思いをしなければならないのか
彼にはどうしても納得できなかった。
しかし今なら分かる。
あいつらは、俺が非道な極悪人であることを望んでいたのだ。
自らの正当性を証明し、世の不条理を体現する万能の悪を欲していたのだ。
だったら俺がソレになってやろうじゃねえか。
ただし、どんなことになっても文句は言うなよ?
この俺にそれを望んだおまえらが悪いんだぜ?
そこに思い至った途端、ヴァイスの口から笑いが漏れた。
――あいつらが望んだから?
……馬鹿だなぁ。
それじゃあまるで俺は他人に認めて貰いたくて仕方のないガキじゃねえか。
あいつらの望みなんざ俺には関係ねえ。気に入らねえから殺る。殺りたいから殺る。
そして俺は何もかもすべてが憎くて憎くて仕方がねえってだけの話さ!
ヴァイスは尚も笑い続ける。
降り注ぐ罵声が止まり、後頭部から重みが消えた。
「な、何がおかしい! 貴様、気でも触れたか!」
その声は震え、上ずっている。
先程まで勝ち誇ったように罵詈雑言を浴びせ掛けていたにも拘わらず。
背中に何かを叩きつけられ突き飛ばされたときは
あまりの剛力にそうとは気付かなかったが、
この声は俺がひと睨みしてやっただけで腰を抜かした貴族風の派手な男だな。
あの身の程知らずな罵倒の数々は
小心な臆病者が自らの弱さを隠すためにしていたことだったか。
そう思うと楽しくてならない。
自我が拡散し溶けていくような愉悦が腹の奥底から込み上げる。
虚飾の貴公子がチキを連れて逃亡し、その声が聞こえなくなってもなお
ヴァイスは狂ったように笑い続けた。
二人の気配が完全に消え失せた今も剣の柄は己の手の中にある。
剣の強奪に成功した。これで殺れる。俺は無敵だ。
剣の帯びる魔法的な冷たさを認識した途端に笑いの糸はぷつりと途切れ、
ヴァイスの意識は闇に落ちた。
……どれほどの時間が経過しただろう。
鼓膜だけでなく首周りの筋骨すらも振わせる声にヴァイスは意識を取り戻した。
クソガキに刺された左眼が痛む。
視力を奪われた目の奥が熱を帯びて疼き、重い頭痛を併発している。
死神の加護がなければどうなっていたか分からないが、
そんなことを気にかけるなど無意味だと思い直した。
顔面にかかる圧力を減らすべく重い四肢を動かして仰向けになり、
大地に身体を投げ出したまま不快な声色に脳を委ねる。
キュラーによる臨時放送を聴きながらヴァイスは脳裏で彼に答える。
――もうルールなんざどうでもいいぜ。
……制限時間の短縮? いちいち時間を気にしながら殺るなんざ面倒だな。
昼も夜も関係なくこの俺がいくらでも殺してやるぜ、オッサンは黙って見物してな。
……武器庫の解放? ハハッ、今更遅いぜ。
俺は最高の得物を自力でこの手に掴んでやった。
オッサンらの“救いの手”なんざアテにしねえ。
まあ、他の連中に揺さぶりをかけてくれたことには感謝してやってもいいがね。
右往左往する連中を片っ端から殺して回るのも一興だ。
ヴァイスはゆっくりと身を起こし、先程の民家に戻るべく歩き始めた。
数歩足を動かしたところで大地が崩れるような感覚に襲われ、
慌てて目の前の取っ手にしがみつこうとする。しかしうまく掴めない。
片目の視力を失っているため、距離感を把握できないのである。
――また眩暈か。不味いな。
さっきは丸腰の子供が相手だったから命拾いしたものの、
相手が凶器を持っていたらどうなっていたことか。
こんな身体でこれ以上動き回るのは危険だ。ひとまず休息を取らねばならない。
本心を言えば自分をこんな目に遭わせた連中を今すぐにでもブッ壊して回りたいが、
今から一眠りするという選択肢にもそれなりの利点はある。
何故なら、目覚めた頃には深夜を過ぎているはずだからだ。
人間誰しも睡魔には勝てない。
連中が深い眠りに入った頃に俺は活動を再開する。最高だ。
ヴァイスは民家に侵入し、扉を閉めて内鍵をかけた。
しかし彼の思考はそこで途絶えた。
眩暈を起こして昏倒し、怪我の処置も終えぬままその場で意識を失ったのだった。
【C-3/村:東端の民家/夜】
【ヴァイス@タクティクスオウガ】
[状態]:失神中(死神甲冑の効果により回復は比較的早いと思われます)
左眼に肉切り用のナイフによる突き傷(未処置/失明の危険)
背中に軽い打撲(死神の甲冑装備中はペナルティなし)
右腿に切り傷(縫合済みの傷から再び出血/未処置/軽症)
右の二の腕に裂傷、右足首に刺し傷(全て処置済)、やや酷い貧血、
死神の甲冑による恐怖効果、および精気吸収による生気の欠如と活力及び耐久性の向上。
[装備]:ブリュンヒルト@TO、死神の甲冑@TO、肉切り用のナイフ(2本)、漆黒の投げナイフ(4本セット:残り4本)
[道具]:支給品一式、栄養価の高い保存食(2食分)。麦酒ペットボトル2本分(移し変え済)
[思考]1:意識を失っているため思考不可。
[備考]:チキの驚異的な自己回復能力の原因を探る過程において
割れて砕けたシャンタージュの瓶から香水を数滴身につけました。
効果自体は得られませんが女物の香水の匂いを漂わせています。
※不明支給品(道具)は「地竜石@紋章の謎」でしたが
レンツェンに奪われチキの手に渡りました。
「肉切り用のナイフ」をチキに1本奪われました。
「調理用の包丁」を失いました(民家の前に放置中)
※チキの不明支給品「ブリュンヒルト@TO」を入手しました。
ブリュンヒルトには異界の扉を開く力がありますが、
本ロワのヴァイスはCルートにて処刑されたためそれを知りません。
【C-3/村/夜】
【レンツェンハイマー@ティアリングサーガ】
[状態]:疲労、空腹、やすらぐかほり、顔面に赤い腫れ
[装備]:ゴールドスタッフ@ディスガイア(破損。長さが3分の2に)、エルメスの靴@FFT
[思考]1:チキの手当てを急ぐ
2:保身第一、(都合のいい)仲間を集める
3:ただしチキを守るためなら戦う
4:手段を問わず、とにかく生還する
5:あの少年(ヴァイス)は極刑。
[備考]:ヴェガっぽいやつには絶対近寄らない(ヴェガっぽいのが既に死んでる事に気づいてません)。
第一回放送でオイゲンの死を知り、喜んでいます。
※基本的には保身第一ですが、チキの危機に際しては打算抜きで行動します。
本人は「チキに救われた。チキのお陰で真人間になれた」と思っておりますが
レンツェンの人間性に変化が生じたわけでもなければ過去を悔いたわけでもなく
実際は「チキのためなら積極的に残虐行為を行う人間」になっています。
むしろチキという免罪符を得たことによって本来の外道ぶりに磨きがかかっています。
※「ゴールドスタッフ@ディスガイア」が破損しました。
先端部分が失われ、長さが3分の2程度になりました。また残りの部分も変形しています。
【チキ@ファイアーエムブレム紋章の謎】
[状態]:精神的ショックによる自失(時間がたてば治ります)、失血による貧血、空腹
[装備]:シャンタージュ@FFT(一瓶すべて使用済み。瓶は破損、一部のみ所持)
[道具]:地竜石@紋章の謎、肉切り用のナイフ(1本)
[思考]1:マルスおにいちゃんに会いたい
2:マルスおにいちゃん助けて
3:地竜石なんて早く捨てて…
4:今度竜になったらもう二度と元に戻れない気がする
5:レンツェンがなんか変でやだな
[備考]:放送は聞いてはいましたが、その意味をよく理解していません。
よって、マルス達が既に死んでいる事に気付いておりません。
※シャンタージュを一瓶丸ごと浴びたため制限を解除された状態で効力を得ています。
自己再生能力が極限まで高まっているため傷はすぐに回復します。
ただし首輪の爆発など即死攻撃を防ぐことはできません。
また自己再生能力が効果を成さないような方法であれば即死攻撃以外でも死亡します。
※「やたらと重いにぎり」の正体は「ブリュンヒルト@TO」でした。
「ブリュンヒルト@TO」はヴァイスに奪われました。
ヴァイスの不明支給品「地竜石@紋章の謎」を入手しました。
ヴァイスの所持品「肉切り用のナイフ」を1本入手しました。
※チキの召喚時期が判明しました。「第二部20章『暗黒皇帝』開始後」です。
「封印の盾」が完成しなければいずれ野生の竜となり人間を無差別に襲うようになります。
完成には「封印の盾」本体のほかに「光のオーブ」「闇のオーブ」「命のオーブ」
「星のオーブ」「大地のオーブ」の5種類が必要になります。
「封印の盾」本体はマルスの装備品として武器庫に収容されているでしょう。
[フラグまとめ]
・C-3/村:東端の民家の前にチキの血のついた「調理用の包丁」(ヴァイス所持品)が落ちています。
・C-3/村:東端の民家の前にチキによる血痕があります。
・C-3/村:東端の民家の前に割れて砕けたシャンタージュの瓶(一部のみ)が落ちています。
・C-3/村:東端の民家の前に折れたゴールドスタッフの一部(先端3分の1程度)が落ちています。
激しく乙!!
きれいなレンツェンとしぼうフラグにワロタw
フラグもたくさんですごく良かったです
おおう。レンツェンついに覚醒?かw
しかし、8ビット世界がまたしてもやってきたかw
内容が少々冗長になってしまっているのが悔やまれるが、
それさえ除けば素晴らしいものでした。
特にヴァイスの屑っぷりと狂気には練り込まれたものが感じられます。
とにかくGJです。お疲れ様でした。
冗長になるのは本当に私の悪い癖ですね。
今後の執筆を通じて改善していきたいと思っています。
引き続き予約中のレンツェン&チキのSSですが
現在の進行状況は台詞部分95%、地の文40%くらいです。
こちらは短いので来週中に投下できると思います。
もう少々お待ちください。
ちょっと確認。
> ・いきなり自殺させる等、それまでのストーリーを無視した行動をとらせるのは禁止
これは「それまでのストーリーを無視した行動」がダメなのであって
それまでのストーリーや元作品での言動、他のロワ参加キャラへの影響を
きちんと踏まえていれば(そのキャラの行動に説得力があれば)
自殺自体は構わないんだよね?
>>167 いいんじゃない?DQFFロワでも、ローラ姫が巻き込み自殺したし、
そのローラが死亡したのを放送で知って、1勇者が生きる意味を無くして自殺したし。
ちゃんとした理由付けがあれば問題ないと思う。
ただし、自殺はあまり初心者にはお勧めできない。序盤以外は特に。
キャラクターを完全に把握している必要があるし、描写不足だと叩かれる。
まあ近くに聖石あったら発動するから、そっちに流れたほうが効率いいって事情もあるからね。
死はある意味救済だから、安易に与えたくはないんだよね。
「生きて苦しめ。」と言いたい。
>>168-170 答えていただいてありがとうございます。
自殺は取り扱い注意だけど完全NGではないということですね。
本当に自殺させるかどうかは書いてみなければ分かりません。
ただ展開によっては自殺を考えそうなキャラがいるので気になっていました。
それにキュラーが折角頑張ってあんな放送してるのに
少しくらい揺さぶられる人が出なきゃダメだろってことで。
対主催の中心は三つ。
ラムザ組は主催関連の情報が集中しているが、タルタロスやアルマ、味方にもラハールとマグナという不安要素も多い。
アティはネスティやカーチスといった首輪関連が集中しているが、戦力的に貧弱な上、未だマーダー二人が近くを徘徊している。
イスラ組は主催対策の考察メインとなっているが、その近くには…。
情報交換前に全滅すると危険な集団ばかりだなこれは。
その一方でマーダーの現在地も偏ってるな。
下手すると右下エリアでもマーダー同士の潰しあいが勃発しかねないし。
あそこは予備軍も複数いるからいいのかもしれないけど。
個人的には村の外にいる臭い人たちがどう化けるかが楽しみ。
予備と言うよりゾンビ軍じゃないか?
10月18日が、SRPGバトルロワイヤルの日か。
それまでに作品を一本は書き上げたいな…。
ラジオの情報ってどこに載ってるの?
>>177 ありがとうございます。ネットラジオということはmp3形式かな。
> 全部終わったらまとめてアップできそうなら録音ある分だけアップします。
ってあるけど、これはどこにアップされるの?
>>179 ありがとうございます。
ラジオ当日にSRPGスレが立つってことか。
そういやちょっと聞きたいのだが。
サモンナイト2の機械魔(ゲイル)って、呼吸や食事は必要なのかな?
サイボーグなのか、完全機械なのか、どちらで判断すればいいだろう?
>>181 本編でユエルが血と油の混じった臭いと言っているので、
サイボーグに近い存在だと思う。機械魔は一応ベースがサプレスの悪魔なので、呼吸や食事は必要ない。
というか兵器なのに呼吸や食事が必要とかだったら役立たずすぎる。
それと、基本的に自我は消されているので、主と認識している存在の命令にしか従わない筈。
(まあ例外としてアルミネの存在があるけど、あれは偶然に近い現象だと思う。)
なるほど。
機械魔の在り方としては兵士というよりは武器そのものに近いのか。
じゃあ動力はガソリン入れるとか、太陽光充電や原子力発電に近いのかな?
まあなんにせよ呼吸と食事が要らない辺りで矛盾なくネタは出来る。
おk、ありがと。
そろそろ首輪も解析に移れそうだ。
動力云々は原作でも描写がなかったから、そこらへんは好きに考えてもいいかもね。
多分マナ辺りがエネルギーになっていると思うけど。
なるほど。そういやサモンナイト3の某堕天使は、
精神的な喜びとかそういうのが糧になっているような口ぶりだった気がする。
ちょうど負の気の正反対に属する感情がそのままエネルギーになるみたいな。
しかし、こういう原作絡みの実のある会話するのも久しぶりだなー。
最近投下と感想ばっかりなんで、なんだか泣けてきた。
>>185 エロ天使曰く感情や魂の輝きがエネルギーとか美酒のようなものらしいからな。
SRPG系は設定周りが凝ってるものが多いから語り甲斐がある。
ところで、ここの住人は参加者の中で誰が一番好きなんだろう?
対主催、マーダーともに数人好きなのはいるなぁ。
好きの理由や本質がそれぞれ違ってたりするから、
一概にこれが一番とは流石に言えないが。
一番好きな料理は何かと聞かれているようなものだし。
>>187 そうか…まあ何か話題でもあればなあと思って振っただけだから、
別に無理強いはしないけどさ。
そういやこのロワ何気に2年以上経っているんだな。初めて見つけた日が懐かしい…。
ロワ内の言動だけで判断するならタルタロスだな。>一番好きなキャラ
出番も多いし独自の立ち位置を確立しているから印象に残るっていうのもある。
あと、何気にけなげでいい人だと思うw
部下になりたいな。足を引っ張りそうだけど。
>>189 そうか?
タルタロスは部下にいれば頼もしい事この上ないけど、
ロワ内の上司にしたくない人ワースト5にはランクインするな。
足引っ張れば冗談抜きに「ガン細胞」扱いで切除されかねんw
まあ何気にアライメントがロウで、本編でも部下思いではあるから、
実子さえ“ついで”でぶち殺すヴォルマルフの部下よりはマシだろうが。
キャラ的には大好きなんだけどね、タルタロス。
徹底的なリアリストなんだけど、そこで終わってないから。
マグナは勿論の事、アティとの相性も最悪っぽそうだが。
いや、サモンナイトの二人もマジで好きなんですよ?
タルタロスとの相性というか、ロワそのものとの相性最悪だと思う<サモンキャラ
基本主人公とそれを取り巻く仲間の大多数が脳内お花畑な3のキャラ達は、
他の作品のキャラからすれば、本編のイスラと同じく「気持ち悪い」と感じるだろうから。
好きな分、早死にしそうだったり他キャラに嫌われそうになったりするのが残念だ。
偽善やお花畑も、最期まで貫徹出来ればそれはそれで一つの魅力。
ある意味、悪を貫くよりもよほど難しい。
恐ろしい事に、サモンナイト主人公はそれをやってのける可能性がある。
ただし主人公補正がないからそれ以上に死に易いけどな。
あるキャラが別のキャラに作品内で嫌われるのは別にいいと思うけどな。
そこにドラマが生まれるわけだし。嫌われることでキャラが生きることもあるし。
殺し合いのさなかで敵味方問わずマンセーされてたら、そっちの方が気持ち悪いと思う。
「偽善やお花畑を最後まで貫ける人物の魅力」というのは突き詰めると
「自分や自分の信じる理想の限界を知ってもなお前進できる人物の魅力」
だと思うけど、現時点でそれをもっとも有している人物ってタルタロスだと思う。
だからタルタロスには「本ロワの主人公」としての「格」を感じるし、
最後まで生き残りそうなキャラだと思える。
>殺し合いのさなかで敵味方問わずマンセーされてたら、そっちの方が気持ち悪いと思う。
暁の女神ですねわかりますorz
でも最後の一文で、タルタルにメタ的な意味で死亡フラグが立ちかねん。
よし、レンツェン&チキSSが一通り完成した!
明日は文章の見直し、火曜昼間はネット接続不可なので
火曜夜~水曜朝にしたらばに仮投下できると思います。
過疎に甘えさせていただいて申し訳ありません。
>>194 > メタ的な意味で死亡フラグ
ああ、確かに…。
たとえ死ぬとしてもクライマックスを盛り上げてくれそうな気がします。
何にせよ、タルタロスが最後まで生き残るのは難しいと思う。(ジョーカー的な意味で)
ジョーカーが優勝ってのも主催側としても面白みがないだろうし、
後半まで生き残っても、アニロワの水銀灯のような末路を歩みそう。
あるいは土壇場で主催側を裏切るか、だね。合理的な分、その可能性は消してゼロではない。
ただしその場合、必ずマグナとの二者択一になるが…。
能力的・人間的に完成されたタルタロスと違い、マグナは未熟だがまだ成長の余地があるからなあ。
なんかR-0109 ◆eVB8arcatoさんがガン無視されているけど
これはロワ界隈の暗黙のルールみたいなものなのかな。
>>196 >>175-180のとおり、スレ住民はラジオを楽しみにしております。
当日はぜひラジオや実況スレのアドレスもお知らせください。
タルタロスはたとえ優勝しても主催とやり合ってすごい展開にしそうなイメージ。
対主催とジョーカーのダブルスパイ的役回りを最後までやり遂げそうというか。
ブースター(という名の枷)をあと2~3個つけても大丈夫そうな気がする。
ここでいう「大丈夫」っていうのは「そこまでしてやっと、
最有力優勝候補から中盤のボス的キャラに落ちる」っていう意味だけど。
201 :
199:2009/10/13(火) 19:42:16 ID:T6trKyjq
ごめん、自分の書いたレスを読み直したらなんか刺々しかったorz
上二行は掴みの冗談みたいなものです。申し訳ない。
したらばの臨時投下スレにレンツェン&チキSS「魔竜伝説」を投下いたしました。
問題なければ、明日こちらに本投下いたします。
・チキが自らを「神竜族の王女」と称する点については
たとえマルスやガトー達がチキにその事実をはっきり伝えていなかったとしても
ガーネフや無名兵士の発言を通じて知った可能性は充分ありえると考え、
「知っているもの」としました。
・服の色変更についてですが、緑髪のチキにはピンクが似合うのでそうしました。
設定上問題があるようでしたらボツでもかまいません。
・タイトルはFE紋章のBGM「神竜伝説」とTSのマップタイトル「魔竜クラニオン」からです。
投下お疲れ様でした。やたら濃密な空間ですな。
しかし、どんどんレンツェンが綺麗になっていくw
いいのかチキ、そんな奴について行って?
いいのかレンツェン、地竜石なんか渡したりして?
ともあれ、今後が不安で仕方ありません。
あと気にしている点ですが。
服の色に監視手で言えば、並行世界からそのまま持ってきた
可能性が高いので、原作そのままでいいと思います。
レイムがロリコンでいちいち色を変えたりしているなら話は別ですが。
神竜族の王女って事は、まずバヌトゥがチキに躾けてあるから
そちら方面では全く問題ないのではないかと。
あと、こちらも負けてられませんので。
ホームズ&マグナを臨時投下スレに仮投下します。
つなぎ的内容なので大きな変化はありませんが、
気になる点があれば是非おっしゃってください。
・タイトルはサモンナイト2のBGMから。
◆j893VYBPfUさんの不意打ち投下キターーーーーーーーー!!!!!!!
ホームズかっこいい、かっこ良すぎる。グッと来ました。感動しました。
そしてマグナの腑抜けぶりもまた胸に来ます。
SRPGの主人公はそのゲームの性質上、
リーダーとしての資質に優れ、カリスマ性のある人間になると思いますが
そういう人間同士が一緒に行動する場合、仲良くしているうちはいいけど
一旦そりが合わなくなると大変なことになるんだろうなぁと思います。
ホームズとマグナ、二人とも有能で個性の強い人間なだけに、
むしろ最後まで仲良くすることのほうが難しいのかも。
服の件は了解です。修正したものをこちらに投下します。
室内に陰影を添えるのは、ランタンの放つ淡い橙色の光のみ。
光が外に漏れぬよう、自分たちの存在を知らせぬよう、全ての雨戸は閉ざしたあとだ。
閉鎖的な闇を満たすのは、花と果実を凝縮した濃密な空気。
レンツェンハイマーはこの匂いを知っている。チキに支給された香水のものだ。
あの時は心安らぐ素晴らしい香りだと思ったが、密度が濃いと邪魔でしかない。
壁に背をもたせかけ、床に両足を投げ出したまま、レンツェンは軽く溜め息をつく。
部屋の隅に視線を転じると、無言で身体を拭く不機嫌そうなチキの姿があった。
この家屋に転がり込んだときは口を利くこともできないほど怯えていたチキだったが、
しばらくすると自分を取り戻し、レンツェンを避けるようにその手から逃れた。
今、チキの足元には、先程まで身につけていた衣類が無造作に散らばっている。
首輪以外の一切を脱ぎ捨てたチキの身体、その緩やかな曲線を、光と影が強調する。
性別などなきに等しいただの子供だと思っていたが、その認識はどうやら間違っていたようだ。
あと5年もすれば――そう思うと急に居心地が悪くなり、レンツェンは足を組み替えた。
――俺は保護者も同然だからな。こいつの体調を把握しておかねばならん。
やましい目的ではないのだ、裸を見たからといって責められる謂れはないだろう。
脳裏で言い訳を繰り返すが、それを受け止める者はいない。
チキはそんな彼の視線を別段意識する風もなく、素肌にこびりついた血を濡れタオルで拭き取っていた。
不思議なことに、その肌には傷はおろかアザのひとつも見当たらない。
血を落とし終えてもチキはレンツェンの顔など見ようともせず、そのままの格好で室内を歩き回る。
チキの足取りはしっかりしていた。不機嫌そうではあるものの、目には精彩が宿っている。
見知らぬ少年に乱暴され、命を奪われそうになったばかりだとは到底思えない。
先程の出来事は、夢だったのではないだろうか。そんな錯覚に囚われる。
殺し合いなど本当は行われておらず、チキの心身は誰にも傷つけられておらず、
しかしチキがこのレンツェンハイマーの心から積年の澱みを見事に取り除いてみせたことは本当で、
この地で英気を養い、ラゼリアに帰還した暁には、女らしく成長したチキを妻に迎える。
しかし、鋭利な刃物で切り裂かれ、血で赤黒く染まったピンクのチュニックが、
都合の良い空想に浸ろうとしたレンツェンを現実に連れ戻す。
無造作に脱ぎ捨てられ、あとは廃棄されるのみとなったチュニックは、間違いなくチキのものだ。
そこでまたレンツェンは現実を見失う。黒と橙色の世界では、色彩感覚がおかしくなる。
これは本当にピンクなのか? これは本当に血の色なのか?
これは本当にチキが着ていたあの服なのか? 自分の認識する現実に自信が持てない。
レンツェンは揺るぎのない現実を欲し、チキの姿を求めた。
チキはすぐに見つかった。
物珍しそうに室内を眺め回すその表情は、レンツェンの知っているチキのものだった。
しかし、陰影のみを素肌にまとったその姿は、昼間のチキとはまるで違って見えた。
何故、違うのか。何が彼女を変えたのか。彼女に何が起きたのか。
あの少年との間に一体何があったのか。或いは何もなかったのか。
何故、彼女は自分に何も話そうとしないのか。何故、自分は彼女に何も訊けないのか。
疑問は鈍い苛立ちとなり、レンツェンは思わず声を荒げた。
「貴様、そんな格好でうろつくな!」
チキは弾かれたようにこちらを見た。
慌てて両手で身体を覆うが、その動作はぎこちなく、恥ずかしいと感じること自体を恥じているようにも見える。
無垢な顔にさっと走った恐怖と拒絶を見て取ったレンツェンは、チキから微妙に視線を外し、声を落として言葉を続けた。
「……さっさと着替えを済ませろ。服ならそこに出しておいたぞ」
レンツェンは、居間に鎮座する簡素な長椅子を顎で示した。
その背には二枚の布地がかかっており、色彩を奪われた空間の中で一方は白に、もう一方は黒に見えた。
チキは怪訝そうな表情でそれらを手に取り、一枚ずつ両手で広げてゆく。
白は伸縮性のある上衣だった。胸元には「アリーゼ」と記された布地が縫いつけられている。
もう一方の黒は、ドロワーズよりもさらに小さく丈の短いショートパンツ。
この民家で見つけた書物によると、これらは女児用の運動着とのことだった。
しかしその事実を知らないチキは、不満げに唇を尖らせるのみ。
「これ、全然可愛くない」
「気に入らんなら自分で選べばいいだろう。服ならそこに入っている」
レンツェンは視線と顎で箪笥を示すと、チキの反応も確認せずに隣室へ向かった。
そこは変わった部屋だった。揺らめく炎に照らされたそこは非日常の極みだった。
狭い空間にテーブルと椅子、かまどを思わせる奇妙な設備がひしめいており、
片隅には観賞には堪えない植物の入った籠が幾つもある。
壁や戸棚には、木や鉄でできた大小様々なオブジェが幾つもぶら下がっている。
この部屋は一体何なのだろう。思案にふけるレンツェンの背後でチキの声が弾んだ。
「レンツェン見て! これ可愛いよ!」
レンツェンは振り向きもせず、「それどこではない」とにべもなく言った。
“レンツェンハイマー”よりも“レンツェン”の方が可愛いから愛称で呼ぶ、それがチキのセンスなのだ。
いちいち相手にしていては、どれほどの頭痛に見舞われるか分かったものではない。
そんなことより今はこの部屋だ。下々の連中の住処特有の施設といえば――
答えに辿り着こうとしているレンツェンの背に、暗く沈んだ声が触れた。
「チキ、せっかく可愛いのを見つけたのに……」
陰鬱なトーンに息を呑む。あれからまだ一時間も経っていないことを思い出す。
この家屋に転がり込んだときのチキの表情が脳裏に甦り、レンツェンの言葉から険が消えた。
「その服を着てこっちに来ればいくらでも見てやるぞ。俺はこの部屋を調べねばならんのでな」
言いながら、ランタンの光を戸棚に向ける。そこには食器が並んでいる。
もしやここは台所ではないか。下々の者が自らの手で食事を作り、それを食する場所。
知識としては知っているが、実際に足を踏み入れるのは初めてのことだった。
レンツェンは視覚と嗅覚を働かせ、空腹を満たしてくれるものを探した。
レンツェンにとって、食事とは常に“誰かが作ってくれているもの”だった。
しかし、ここには用意されていない。かといって先程の民家に戻るのは危険極まりない。
さて、どうするか――と思い始めたとき、袖を引っ張られる感覚があった。
「レンツェン、これどうやって着たらいいのか分からない……」
振り返ると、神妙な顔つきでこちらを見上げるチキがいた。
花びらを思わせるフリルが印象的な白っぽいブラウスを素肌に羽織り、
ブラウスとお揃いの生地で仕立てたドロワーズを穿いたチキは、
胸元で握り締めた小さな両手で黒みを帯びた大きなスカートを掴んでいた。
可愛い。レンツェンは思わず息を呑んだ。
フリルをまとったチキは、どこかの名門貴族の令嬢のように見えた。
よくよく観察してみるとチキの顔立ちは端正だし、
憂いをたたえた表情の中にも人間離れした独特の気品があるのが分かる。
死んだはずのオイゲンが脳内でむくりと起き上がり、したり顔でレンツェンに言った。
――チキ殿は実にお美しい方ですな。
これほどの女性を見たのはこのオイゲン齢60にして初めてでございます。
レンツェンハイマー殿ももう少し女性を知る努力をせねばなりませぬな。わっはっは!
ドカッ! バキッ! オイゲンは死んだ。リュナンの守り役(笑)
レンツェンはチキに向き合うと、片膝をついてブラウスのボタンを一つずつかけていった。
チキの全身から立ち昇る甘く濃密な香りに眩暈を起こしそうになる。
簡素なチュニックを着ているときには気付かなかったが、チキは間違いなく上玉の卵だ。
5年後、10年後には一体どれほどの美少女、或いは美女に成長しているのだろう。
この娘を自分のものにしたいと思った。今のうちから俺に対する好意を植え付けておけば――
しかしレンツェンの口から実際に漏れたのは刺のある言葉だった。
「まったく、貴様は服も一人で着れんのか」
「チキ、こんな丸いの見たことなかったんだもん……」
チキはボタンを指でいじりながら唇を尖らせる。
腹の奥底から笑いが込み上がってくるのを感じながらレンツェンは口を開いた。
「いちいち教わらなければ何もできんのか。ガキだな。
少し考えればこの穴に引っ掛ければ良いのだと気付くだろうに。
……ほら、後ろを向け」
チキは今にも泣き出しそうな顔でレンツェンを睨みつけ、頬を膨らませた。
「ガキじゃないから後ろなんて向かないもん!」
「ガキでなくともここには手が届かん。この俺様が手伝ってやろうというのだ、大人しく後ろを向け。
それとも貴様は俺の言っていることも理解できないようなガキなのか?」
チキは不服そうな顔をしていたが、やがて無言で視線を落とし、レンツェンの言葉に従った。
チキの選んだジャンパースカートは、丈の短いドレスのようにも見える。
その裾は白っぽいレースで縁取られ、その意匠はリーベリア大陸のどの国のものとも異なっていた。
後ろ身頃を留め終えたレンツェンはチキの体を反転させると、彼女の全身にさっと視線を走らせた。
うむ、よく似合っている。チキの魅力を引き出す喜びは、策を弄する楽しみに似ていた。
更なる完成度を目指すべく、チキの襟元のリボンを結び、四角いブローチで結び目を隠した。
チキはそんなレンツェンの手元を不思議そうな表情で眺めている。
レンツェンはチキの細い腕を一本ずつ取り、両手を使って白っぽい薄手の長手袋をはめさせた。
ガキの世話などこの世で二番目に嫌いだと思っていたはずなのに、不思議と悪い気はしなかった。
チキを椅子に座らせて小さな足に靴下を履かせていると、倒錯的な安堵を覚える。
しかし、レンツェンにとって、奉仕行為に喜びを見出すなど家畜の所業に過ぎず、
自分がそのような手合いに成り果てるなど想像するだけでもおぞましいことだった。
レンツェンは“本来の自分”に戻るべく口を開いた。
「それにしても貴様、臭いな」
レンツェンの言葉にチキはまた口を尖らせる。
「レンツェンの意地悪! 朝はいい匂いって言ってたのに……」
「馬鹿者。一度も風呂に入らずに一生を終えるような不衛生極まりない時代ならばともかく、
今の時代に香水を一瓶丸ごと一気に使い切る奴がいるか。香害にしかならんわ」
チキは真顔に戻り、透明感のある大きな眼にレンツェンを映しながら小首をかしげた。
「香害ってなあに?」
「香水の匂いがキツすぎて不特定多数の人間が迷惑するという意味だ。
それだけ派手に浴びてしまっては、毎日身体を洗ったところで一週間は匂いが取れんぞ。
つまり貴様の香害は当分続くということだな」
チキの無垢な瞳が翳る。俯いた顔は影に溶け込み、その表情はレンツェンには窺えない。
「チキ、好きでこんなになったんじゃないもん……」
その声はか細く震え、小さな両手はスカートをぎゅっと握り締めている。
――マズい。ヤバい。嫌なことを思い出させてしまったか!?
レンツェンは焦った。
良心などとっくに捨て去った彼であっても、チキに泣かれるのは気分が悪い。
むしろ、良心などとっくに捨て去ったと自認しているからこそ、
“良心の呵責”というものが己の中に存在することを理解できずに混乱する。
――早く何とかせねば。しかしどうすればチキは喜んでくれる?
レンツェンは辺りを見回した。
チキを励ますものが自分自身の中にあるなどとは端から信じていなかった。
立ち上がり、首をめぐらせると、無造作に転がるチキのデイパックが目に留まった。
ああそうだ、アレがあった。何の役にも立ちそうにないゴミ同然の石ころだが、子供は喜ぶかもしれない。
レンツェンは件の少年から巻き上げた石をデイパックから取り出すと、チキに差し出した。
「おい、これを見ろ。どうだ、変わった石だろう。何かの宝石の原石やもしれん、これを貴様にやろう」
チキは弾かれたように顔を上げた。
しかしその表情は、レンツェンの期待していたものとはまるで違う。
チキは怯えていた。大きな目をさらに見開き、魅入られたように黒ずんだ石を見詰めながら。
「嫌……この石は嫌……レンツェン、この石を捨てて……早く捨てて……」
チキの尋常でない反応がレンツェンの混乱した思考回路を冷やした。
戦場を前にしたときのように感覚が研ぎ澄まされ、狡猾にしたたかに冷酷になる。
レンツェンはチキの顎に指を添え、強引に上を向かせた。
「チキ、俺を見ろ。さっきの男にこの石で何かされたのか?」
「ううん、あのお兄さんは関係ない……。チキはこの石を知ってるの。ずっと前から知ってるの。
この石は悪い人が使ってたの。悪い竜になる石なの。だから捨てて……これは悪い石なの」
「つまりこの石には竜を支配し、暴走させる力があるということか」
「ううん、そうじゃない。チキが悪い竜になるの。チキはその石で悪い竜になるの」
もしここがラゼリアだったなら、子供の虚言と一笑に付しただろう。
貴族の生まれに相応しい教育を受けたレンツェンは、常識として知っている。
竜に変化することのできる少女がこの世に存在することを。
しかしそれは女神ユトナの血を引く四王家に生まれた女性の中の、さらにごく一部のみ。
しかも竜化には特殊な腕輪が必要となり、その能力が開花する期間も15歳の誕生日より数年間のみ。
10歳そこらの少女が石を使って竜になった例など歴史上存在せず、
お姫様に憧れる子供の空想と判断するのが“常識ある大人”の対応と言えた。
しかし、この一日でレンツェンの常識は何度も打ち砕かれた。
憎きリュナンごときに敗北し、命を奪われたかと思えば、
見知らぬ男に拉致されて、首輪なんぞで命を握られた挙げ句、
本来ならば剣闘士奴隷に下すような命令を与えられ、
下々の者が生活するみすぼらしい小屋でこうして腹をすかせている。
どれもこれも有り得ない。未来のリーヴェ王レンツェンハイマー様の身に起きてはならないことばかりだ。
それらに比べれば、目の前の幼い少女が竜化能力を有しているなど常識の範疇に思えた。
むしろ、15歳に満たないにも拘わらず、竜に変化できるとは、女神ユトナの奇跡の体現。
そんな少女との出会いは、未来のリーヴェ王レンツェンハイマー様にこそ相応しい。
レンツェンは女神の祝福が己に注がれていることを確認すべくチキに問う。
「貴様は竜に変身できるのか?」
「うん。でもチキ、竜になるのは嫌。今度竜になったらもう二度と元に戻れない気がする」
「暴走して無差別に人を襲うようになることを恐れているのだな」
チキは浅い眠りから覚めたかのような顔でレンツェンを見、ぱっと表情を輝かせた。
「レンツェンすごい! どうしてチキのことが分かったの?」
すごいと言われて悪い気はしない。チキの笑顔を見ると気持ちが安らぐ。
しかし何故、当たり前のことを言っただけでこの娘はこんなに嬉しそうな顔をするのだろう。
チキの力になれたという実感を得られず、レンツェンは素直に喜べなかった。
「それぐらい知っていて当然だ。俺はリーヴェの王になるはずだったのだからな」
レンツェンは期待した。「わー、すごい!」と無邪気にはしゃぐチキの姿を。
結局のところ、自分には地位や肩書きくらいしか人を惹きつけるものがない。
チキと真面目に向き合おうとすると、自分がいかに中身のない人間なのかを思い知る。
しかしそれをひけらかすことでチキが笑ってくれるのなら、自分の存在にも意味が生まれるような気がしたのだ。
だが、チキは不思議そうな表情を返すのみ。首をかしげ、レンツェンの目を覗き込みながら口を開く。
「あのねレンツェン、リーヴェってなあに?」
「俺が王位に就くはずだった国の名だ。貴様はリーヴェも知らんのか」
「うん、チキ聞いたことないよ」
「聖竜の暴走は知っていても国の名を知らぬとは、随分と知識に偏りがあるな。
貴様は一体どんな環境で育った? どこかに幽閉でもされていたのか?」
「ゆうへい……?」
レンツェンは軽く苛立った。説明しなければならないことが多すぎる。
これだからガキは面倒だ。しかしその一方で憐れみを覚える。
もし自分の推測が正しければ(そして恐らくそれは正しいのだろうが)、
チキは自分が何をされたのか、その意味を理解することなく、
“当たり前のこと”として己の境遇を受け止めているのだ。
「幽閉というのは、人目につかない場所に閉じ込めることだ。
貴様はどこかに閉じ込められていたのかと聞いているのだ」
レンツェンの言葉にチキは無防備な笑顔を見せた。
夜の森を独り彷徨う子供が民家の明かりを見つけたときのように。
「レンツェンすごい! またチキのこと分かった!」
今度はレンツェンも自然に笑った。
自分の推測の正しさをチキが認めてくれたのだ、これは素直に喜べる。
「当然だ。竜に変身できるということはどこかの国の王女なのだろう?」
「あのねレンツェン、国じゃないの。チキは神竜族の王女なの」
「神竜族、だと?」
「うん――」
チキの表情が翳った。レンツェンから視線を外し、申し訳なさそうに言葉を続ける。
「――竜の一族の中でいちばんえらいの。だからどんな竜にもなれるの」
「つまりは聖竜の巫女よりもさらにユトナの女神に近い存在ということか。
なるほど、年齢に関してはそれで説明がつく。その石は腕輪の原石といったところか。
しかし、貴様は何故そんな寂しそうな顔をしている?
竜族の長であることを誇ろうとしないのは何故だ?」
「だって……」
チキは再び視線を上げた。
「チキはいつか人間を襲うようになるんだよ?
だから閉じ込められてたの。暗い部屋の中で、チキはずっと独りだったの。
でもね、バヌトゥおじいちゃまがチキを外の世界に連れ出してくれたの。
悪い人に捕まったりもしたけど、マルスおにいちゃんが助けてくれた。
マルスおにいちゃんもシーダおねえちゃんもみんなチキに優しくしてくれたよ。
なのに、チキはいつかみんなを襲うようになるなんて――」
チキは椅子から立ち上がり、レンツェンの服を両手で掴んだ。
その勢いに気圧されて、レンツェンの指がチキから落ちる。
「そんなこと、自慢できるわけないもん!
あのねレンツェン、お願いがあるの。チキをマルスお兄ちゃんのところに連れて行って!
マルスお兄ちゃんがチキを助けてくれるの!
いつまでもずっとみんなと一緒にいられるようにしてくれるの!」
この娘は狂っているのではないか――そんな疑惑が脳裏をかすめた。
あの石で竜に変身できるという話も、神竜族の王女だという話もすべて
大好きな“マルスおにいちゃん”の死を受け入れることができず
狂気の世界に逃げ込んだ彼女の妄想なのではないかと思った。
しかし、恐怖政治によって民衆に地獄を味合わせたレンツェンには分かる。
彼女の表情は狂人のものではない。その言葉についても同様だ。
彼女はただ、マルスの死を理解していないだけなのだ。
恐らく、彼女にはヴォルマルフの言葉など理解できないのだろう。
幽閉生活とマルスによって人々の悪意から遠ざけられていた彼女は
それほどまでに無垢なのだろう。
胸の奥底からどす黒い衝動が込み上げる。
マルスの死とその意味をチキに教えてやりたい。
マルスという希望をチキから奪い取り、無垢な心を壊してやりたい。
そんな残虐性に心を委ね、口を開こうとしたが、レンツェンには何も言えなかった。
そんなことをしたところで、マルスへの思慕を見せ付けられるだけだ。
彼女がいかにマルスを愛し、どれほど必要としていたのかを見せ付けられ、
自分は決して“マルスおにいちゃん”にはなれないのだと思い知らされるだけだ。
リュナンのことが憎かった。自分は決してリュナンにはなれない。それが苦しくてならなかった。
しかしチキの発した何気ない一言がその苦痛を取り除いてくれた。
自分はチキの無垢な心に救われたのだ。それを壊すということは、元の地獄に戻るということ。
そんなことになるくらいなら、自分の意思でマルスの代わりを務める方がいい。
“マルスおにいちゃん”がするはずだったことをこのレンツェンハイマーが成し遂げれば
自分もきっとマルスのようなチキに慕われる人間になれるのだろう。
「マルスとやらは、どのような方法で貴様を救うつもりだったのだ?」
「マルスおにいちゃんは<封印の盾>を完成させてくれるの。
そしたらチキは人を襲わなくなるの。いつまでもみんなと一緒にいられるんだよ」
「その<封印の盾>とやらは、一体どこにあるのだ?」
「マルスおにいちゃんが持ってるの。マルスおにいちゃんが使ってる盾のことなの」
「話が見えんな。<封印の盾>はまだ完成していないのだろう?
にも拘わらず、マルスはそれを既に盾として使っている。一体どういうことだ?」
「あのね、<封印の盾>には穴がいっぱいあいてるの。
それでね、いろんな色のオーブをそこにはめ込んでいくの。
マルスおにいちゃんはオーブをいっぱい集めてくれたの。
あとは<闇のオーブ>をはめ込むだけなの。そしたら完成するんだよ!」
「その<闇のオーブ>とやらがどこにあるのか、貴様は知っているのか?」
「うん、知ってるよ! ハーディンおじちゃんが持ってるの!」
「……分かった。俺に任せるがいい」
レンツェンはキュラーの言葉を脳裏で反芻する。
先程の臨時放送で、キュラーと名乗る男はこう言っていた。
――これらの各城内、塔内の一室にある“武器庫”には、
この全参加者が当会場に召喚される前に持ち合わせていた
所持品の数々を分散して預からせて頂いております。
――武器庫から所持品をお持ちできる条件を、一つお付けいたました。
それは、その所持品の持ち主の首輪との交換というものです。
チキの話が正確なら、そしてキュラーの言葉が本当なら、
マルスの首輪と引き換えに<封印の盾>が手に入り、
ハーディンの首輪と引き換えに<闇のオーブ>が手に入る。
つまりマルスとハーディンの首輪があれば、チキの暴走は防げるのだ。
問題は、二人の顔を知らない自分にそれを成せるのかという点だが、
当初の計画どおり“オグマおじちゃん”と合流すれば解決するだろう。
マルスの死体などチキには見せられないし、首を切り落とす現場などもってのほかだ。
しかし“おじちゃん”と呼ばれる年齢のオグマならば、空気を読んでくれるはず。
一方のハーディンに関してだが、今朝、仲間の名を尋ねたときにチキは彼の名を挙げなかった。
ただ不仲なだけなのか、それとも敵対しているのか、具体的な関係は不明だが、
チキが嫌悪する相手ならば、竜化した彼女自身に始末させるという手もある。
レンツェンは件の石を再びチキに差し出した。
「この石は貴様が持つがいい。
先程の男のような手合いがいつ現れるか分からん、貴様にも身を守るすべは必要だ」
「でも、これは悪い人が使ってたんだよ? こんな石を使ったら、わたし……」
「その“悪い人”とやらが悪事を働いたのは、この石が原因だったのか?」
「ううん、そうじゃない。メディウスは人間が嫌いだったの。だから悪い人になったの」
「ならば、以前の所有者など関係ない。いいか、チキ――」
レンツェンはうつむくチキの頭に手を添え、上を向かせた。
「貴様は神竜族の王女なのだろう? 竜族の中でもっとも偉いのだろう?
“えらい人には、その地位にともなう責任と、義務がある”と
俺に説教したのは誰だ、貴様ではなかったのか?
この俺にああ言った以上は、貴様もその“責任と義務”とやらを果たしてみせろ。
それができないのならば、二度と俺にあんな口を利くな。いいな?」
「レンツェン……」
目を大きく見開いてレンツェンを見つめるチキの表情を目の当たりにし、
レンツェンは自分がいささか感情的になっていたことに気付いた。
俺は一体何を言っているのだろう。伝えたいのはそんなことじゃないのに。
レンツェンは軽く息を吸い、努めて穏やかに話し掛けた。
「チキ、貴様は魔竜クラニオンを知っているか?」
「魔竜……クラニオン……?」
「レダという国を一夜にして滅ぼした竜の名だ。
レダが滅んで何十年も経つが、クラニオンは今も野獣のように人間を襲い続けている。
クラニオンの住処は廃墟となったレダの古城、つまり自分の滅ぼした国の王城なのだが、
元は人間、しかもその国の王女だったのだから当然と言えば当然だな。
クラニオンはどうやら不死身らしく、何度殺されても甦り――」
「やめてレンツェン!」
チキの悲鳴がレンツェンの言葉を遮った。
「そんな話は嫌……それ以上聞きたくない……」
チキの声は震えていた。目を硬く閉ざし、両手で耳を覆っている。
レンツェンは軽く溜め息をつき、チキの冷えた指に自らの手を重ねた。
これ以上怯えさせないよう、ゆっくりと慎重に、耳をふさいだ手をはがしていく。
そして、舞踏会で口説き落とした美女に接するように優しく囁いた。
「チキ、俺の話を最後まで聞け。大切なのはここからだ。
今でこそ魔竜と蔑まれているクラニオンだが、元々はレダ王国の守護聖竜だった。
守護聖竜というのは、国やそこに生きる人々を守る聖なる竜という意味だ。
しかし人間の身勝手な心が守護聖竜を恐ろしい魔竜に変えた。
……チキ、本当のことを話そう。俺は本当は“えらい人”なんかじゃない」
「えっ……、でもレンツェンは太守なんでしょ?」
チキは不思議そうな顔でレンツェンを見上げた。
嘘つき、などと怒り出したりはしない。レンツェンは思わず苦笑した。
もっとも言いたくなかったことを打ち明けようとしているはずなのに、不思議と心は平静だった。
「いや、太守だという話は本当だ。王になるはずだったという話も、な。
しかし俺は民衆に憎まれ、実の親からも見放されていた。
俺のことを“えらい人”だなどと本気で思っている奴は一人もいなかった。
俺が死んだところで誰も困らん、むしろ喜ぶ奴ばかりだというのが本当のところだ。
しかし貴様はこんな俺に“えらい人”とはどうあるべきかを語ってみせた。
あの時は気付かなかったが、今なら分かる。俺を見下している奴にあんなことは言えん。
俺のような人間でもリュナンのように生きられると信じてくれたのはチキ、貴様だけだ。
それで充分だった。貴様の純粋さに救われた。だからこそ俺は貴様を助けたのだ。
その石にどのようないわくがあっても、この俺を変えることのできた貴様ならば
正しく使いこなせるだろう。だからチキ、自信を持て」
「レンツェン……」
チキは生まれて初めて出会った相手を見るような顔でレンツェンを見た。
潤んだ瞳から涙が溢れ出す前に、チキは満面の笑顔でレンツェンに抱きつく。
「レンツェン、ありがとう!」
「チキ、もう大丈夫だな?」
「うん。大丈夫」
「いざというときは、その石の力で竜に変身して戦えるな?」
「うん。レンツェンが一緒にいてくれたらチキ大丈夫だよ」
今すぐにでもチキを抱きしめたいと思った。
チキは女神ユトナの奇跡。あらゆる世界を覆す力。
彼女がいれば、“リュナンになれないレンツェンハイマー”と決別できるだろう。
彼女さえいれば、自分はどんなものにでもなれるだろう。
だから決して離すまいと思った。しかし体が動かない。
チキはいつか気付くだろう。レンツェンがマルスの死を隠していたことに。
レンツェンがマルスの死体を冒涜し、彼に成り代わろうとしていたことに。
チキを励ました言葉の奥には、聖竜を戦争の道具として扱い破滅を招いた
レダ王の野心に通じる醜悪なものが潜んでいたことに。
――チキは決して俺を許さないだろう。そして俺はマルスにはなれない。
諦めと苛立ちが薄い雲のように胸を覆い、レンツェンは溜め息混じりに呟いた。
「臭いぞガキ。そろそろ離れろ」
【C-3/村:いずこかの民家/夜】
【レンツェンハイマー@ティアリングサーガ】
[状態]:疲労、空腹、やすらぐかほり、顔面に赤い腫れ
[装備]:ゴールドスタッフ@ディスガイア(破損、長さが3分の2程度)、エルメスの靴@FFT
[道具]:支給品一式
[思考]0:チキを連れてラゼリアに帰還する。手段は問わない
1:マルスの首輪、封印の盾、ハーディンの首輪、闇のオーブの入手
2:封印の盾完成まで、マルスの死は可能な限りチキには伏せる
3:武器がほしい
4:オグマなど、(都合のいい)仲間を集める
5:あの少年(ヴァイス)は極刑
6:首輪回収のために包丁を拝借しておくか…
[備考]:ヴェガっぽいやつには絶対近寄らない(ヴェガっぽいのが既に死んでる事に気づいてません)。
【チキ@ファイアーエムブレム紋章の謎】
[状態]:失血による軽い貧血(シャンタージュの力により回復は早い)、空腹
[装備]:地竜石@紋章の謎、シャンタージュ@FFT(一瓶すべて使用済み。瓶は破損)
[道具]:支給品一式、肉切り用のナイフ(1本)
[思考]1:レンツェンといっしょ!!!
2:早くマルスおにいちゃんに会いたいな
3:あのお姉さん(アティ)たちは大丈夫かな…
4:みんなのとこに帰りたい…
5:レンツェンがいじわるなことしたらやだな
[備考]:放送は聞いてはいましたが、その意味をよく理解していません。
よって、マルス達が既に死んでいる事に気付いておりません。
:体を拭いたため、シャンタージュの効果が少し落ちました。
具体的な効果は次の書き手の方にお任せいたします。
:服を着替えました。「サモンナイト3」アリーゼの私服です。
以上です。
引き続き◆j893VYBPfU氏の「焦燥」を代理投下いたします。
支援
「警告。警告。まぐなハ禁止えりあニ進入シテオリマス。
参加者ハ三十秒以内二禁止えりあヨリ退避シテクダサイ。
カウントダウン開始。三十、二十九、二十八……。」
無機質な合成音による、致命的内容の警告が首輪より響き渡る。
だがそれにすら気付く事無く、呆けた様に走り続ける黒髪の学生がいる。
そしてその自殺行為を阻止しようと、後方から追い縋る金髪の青年がいる。
黒髪の学生はマグナと言う。
金髪の青年はホームズと言う。
燃え上がる強い意志をその瞳に宿すその金髪の青年は、
憑かれたように走り続ける濁った眼の青年の背中を
強引に鷲掴みにして、力任せに後方へと引き擦る。
だが青年は、特に抵抗する事もなく金髪の青年につき従う。
ずるずると。
のろのろと。
そこにはなんの抵抗も、意思さえもありはせず。
首輪からの死を告げるカウントダウンは、なおも続く。
死刑執行へ到る時間は、あとわずか。
よたよたと、その力に押されるように学生は付き従う。
そして、ようやく二人は窮地を脱する事に成功した。
「「六、五、四…。禁止えりあカラノ退避ヲ確認イタシマシタ。
かうんとハりせっとサレマスガ、今後ハゴ気ヲ付ケ下サイ。」」
機械による抑揚の無い気遣いを受けながら、
金髪の青年はようやく安堵の溜息を洩らした。
やがて、金髪の青年は、黒髪の愚者の襟首を掴む。
全身から冷汗を滝のように流し、喘息のように荒々しく呼吸を吐きながら。
だがしかし、その眼だけは一切の疲労を感じさせず。ただ怒りに燃えていた。
そして、容赦のない怒りの鉄拳。
マグナの頬に深くめり込む。
学生は、抵抗なく吹き飛ばされた。
「……なにするんだ。ホームズ。痛いじゃないか?」
「っざけんな!そりゃこっちの台詞だ!!
てめえ、今一体何やらかそうとしていたんだ!」
金髪の青年は怒声を張り上げ、
黒髪の学生の自殺行為を糾弾する。
「え?なにって…。」
「聞いてんだよ!てめえは何やらかそうとしたんだって!
さっさと答えねえか!!答えねえと俺の手で殺すぞ!!」
襟首を捻じり上げてマグナを宙吊りにし、
さらに拳を振り上げようとするホームズ。
しかし、それに「さっぱり訳が分からない」
といった風情の表情を、マグナは向ける。
その仕草は親に叱られた理由を全く理解できない、
無垢かつ無知な幼子のようですらあった。
――この男は大事なものを失った衝撃で、もはや完全に腑抜けていた。
やはり、あの時の威勢は空元気だったのか?
己の辛い現実から、目を背けようとする為の。
そして、ゆるやかに、この男は絶望に飲まれかけている。
それはこの覇気のない表情と、濁り切った暗い瞳を見れば、
自ずと理解できた。
ホームズはそんなマグナの様子を見、行動を決めかねていた。
いや。もしかすると、この男は危険など最初から承知で…。
まさかとは思うが、自分の死に場所を探しに同行しているのでは?
ホームズは考えられる、最悪の可能性を想像する。
この男が既に死神に取りつかれているなら、
もはやこちらがどう足掻いても無駄である。
――後追い自殺。
なぜその可能性をもっと早く想像出来なかったのかと、
ホームズは歯噛みする。
己一人では、この先マグナを止め続けるのは不可能だ。
「…何のつもりって?お前のダチの、リュナンを助けに一緒に探している所じゃないか。
それなのに、なんでお前に殴られる理由があるんだよ?それに“殺す”ってなんだよ?
…全然、訳わかんねえし、俺はまだ死ぬつもりはねえよ。」
――死ぬつもりはない、か。
ホームズは、この男の愚行の動機が、己の想像した
最悪の可能性ではなかった事に安堵の溜息を吐く。
そして、静かに目を瞑り、端正な顔を苦渋に歪ませて。
今度は先程以上の怒声を再び張り上げた。
それは、純粋なまでの怒りであった。
同行する仲間を思うが故の憤りであった。
憎しみはない。悪意もない。
それは仲間と認めるが故の怒りであった。
「お前はなあ!さっき禁止エリアに入り込んでたんだよ!!
俺が止めなきゃ、今頃はその首が吹き飛んでたんだよ!!
あの会場の大男のようにな!!少しは気をつけやがれ!!」
ホームズは襟首を掴んだまま、大声を張り上げる。
鼓膜が破れそうなほどの怒声。襟が引きちぎれんばかりの力をその腕に込めて、
マグナを前後へと激しく揺さぶる。マグナはただ、黙ってそれを受け入れた。
「………あ、そうだったのか?そいつは、気が付かなかった。
ありがとな、ホームズ。」
マグナはそれでようやく得心が言ったように、
どこか疲れたような表情で、曖昧に弱弱しく微笑みかける。
だがそれは、九死に一生を得たような、
危機的状態にあった事を自覚してのものではない。
忘れ物を拾って貰い感謝するような、そんな気安さに近かった。
……わかってない。わかってないのだ。
この男は、今こうしてかろうじて生き延びたという実感さえもない。
「……探そうとして、俺まで死んでりゃ世話ないよな。
まあ死んだら死んだで、アメルの所にいけるから、それでもいっか。
でもさ。なんでそんな危ない真似までして、俺を助けようとしたんだ?
それでお前まで死んじまったら、全然意味ないじゃないか?」
マグナはそう軽口を叩く。
実にのんびりとした、いつもの口調で。
だが、その瞳には普段持っている太陽の輝きはなく。
むしろそれは、下水のような排泄物の濁りに溢れていた。
「俺まで死んでりゃ」
「死んだら死んだで」
だが、その内容は、
だが、その言葉は。
友の生死を軽く見る言葉は。
己が仲間と認めた者が、自分の生命さえ軽く扱う言葉だけは。
ホームズの許容できる内容では、決してなかった。
再び、力任せの剛腕が唸る。
技術も何もない。純粋な殴打。
周囲に響き渡る、鋭い衝撃音。
殴られたマグナの首が、捩じ切れんばかりに横に曲がる。
襟首を掴み、宙吊りにして強引に立ちあがらせる。
殴打。
殴打。
殴打。
マグナは抵抗する事もなく、倒れる事も許されず。
ただされるがままに身を任していた。
「リュナンを死んだと決めつけるのは、俺が許さねえ!
そして自分の生命を粗末に扱う奴も、俺が許さねえ!」
ホームズの激昂が、ついに口火を切る。
「いいか。この際はっきり言ってやるぞ!
てめえの事なんざな、正直どうでもいいんだよ!
でもな。俺はお前の事をラムザに託されている!
俺はあいつとの約束は必ず守らなきゃならねえ!」
「たとえ生命を賭けたってな。それが“男の約束”って奴だ!
だからな、そこで腐ってるてめえでも助けてやったんだ!
……だがな、これ以上この俺に手間かけさせんじゃねえ!
マグナ。お前はな、正直俺にとっちゃ足手まといなんだよ!
だったらせめてこっちにゃ迷惑かけず、大人しく位しとけ!」
ホームズはそう言って、乱暴に地面に唾を吐く。
ホームズは、意地っ張りだった。
ホームズは、へそ曲がりだった。
ホームズは自分の為ではなく、彼なりに身近な女を失い、
絶望に飲まれかけている、この哀れな男を心から気遣っていた。
惚れた女を失う魂の慟哭は、己も魂が裂けるほど理解しているが故に。
そうでなければ、己の首輪まで爆発する危険を冒してまで、
彼を助けようとは決してしなかっただろう。
あるいはお情けで助けたとしても、その後は放置しただろう。
今のマグナの姿は、過去の自分の姿でもあるが故に。
それを見て見ぬ振りは、決して出来ないのだ。
――お前が俺の仲間なんだからだよ!――
――お前は過去の俺だからなんだよ!――
――だったら放っておけねえんだよ!――
ホームズは、ただマグナに、そう素直に述べさえすれば良かったのだ。
そうすれば、マグナも心を開き、彼の漢気をそのままに信じただろう。
だがしかし。ホームズはそれを素直に伝える事はできなかった。
生来の気位の高さと素直でない性格が、それを許さなかったが故に。
だが、ホームズが心にもない悪態を付いたが故に。
それをマグナは真に受け、悪い方向へと解釈した。
だが、それにホームズが気付く余地はなかった。
「…は、ははは。ま、そうだよなぁ。俺に利用価値なんてないしな。
でもこんなこと言うと、またアメルに叱られそうだ。…参ったな。」
「………喝は入ったな?なら、さっさと立て。このクズ野郎が。」
ホームズは侮蔑に語気を荒めて、顎をしゃくってマグナに起立を促す。
マグナがこちらを見る目が、みるみる冷淡なものになる。
だが、その視線でホームズは臆することなく、むしろ安堵した。
――そうだ。今は好きなだけこの俺を憎めばいい。
だが、それがそのままお前の生きる力になるだろう。
今の腐ったままよりは、よっぽどマシだろうからな。
――死神は、生きる気力を失ったものから、その魂を刈り取りに来るものだから。
「ああ。そうだな。でも、これでこれ以上東には行けないってわかったって訳だ。
…なら、どっちに行くんだ。ホームズ?」
――今度は、「わかんねぇ」なんて言うなよ?
若干の軽蔑と悪意が籠った視線で、マグナはホームズを見やる。
だが、ホームズは不敵に笑うと北を指差した。
「あっちだ。北に向かう。」
「…その理由はあるのか?」
マグナは疑わしそうな視線をホームズに向けるが、
ホームズは一切動じることはない。
「リュナンは今“追われている”って思い込んでいる。
だったら、少しでも早く身を隠したい。東にいないなら…。」
「見晴らしの良い街道を駆け抜けて南下する危険を冒すより、
北にある村を目指した方が地理的には近いし、
それまでに身を隠す場所はいくらでもある。だろ?」
マグナはホームズの先の言葉を取る。
意外にも、その言葉は正鵠を得ていた。
「…なんだ、意外にわかってるじゃないか。」
「ああ。さっき、お前の大嫌いなアルフォンスと、
丁度同じような事を会話していたからだよ。」
感心するホームズに、マグナは醒めた視線をぶつける。
殊更に“アルフォンス”という部分に力を込めて、マグナは語る。
ばつが悪くなり、目をそらすホームズ。
無論、こちらがアルフォンスに抱く敵意を承知の上での事だろう。
「…気付いてたのか?」
「そりゃ、あれだけ態度に出してりゃ、誰だって気付くさ。」
吐き捨てるように、マグナは冷たく語る。
先程のホームズの憤怒が沸点なら、
現在のマグナの冷淡さは凝固点。
二人の人間関係には、もはや明確な亀裂が走っていた。
その光景を興味深く眺める一匹にすら、二人は気付かない。
「ま、あの野郎の話題は後回しだ。それよりも…。」
「…ああ。じゃ、さっさと行こうか。俺も仲間を悪く言われるのは嫌だからな。」
気分を切り替えるべく会話を変えようとしたホームズに、
マグナは冷たくあしらい、会話自体を拒絶する。
気まずい雰囲気のまま、二人とそれを追いすがる一匹は北上を開始した。
お互いの胸に、深いわだかまりを残したままで。
【E-3/砂漠/1日目・夜(臨時放送直前)】
【ホームズ@TS】
[状態]:上半身に打撲(数箇所:軽度)、苛立ちと不安(重度)
[装備]:プリニー@魔界戦記ディスガイア
[道具]:支給品一式(ちょっと潰れている)、不明(未確認)
[思考]1:リュナンをとっ捕まえて正気に戻す
2:マグナの意見を元にC-3の村へと北上する。
3:あのおっさん(ヴォルマルフ)はぶっ飛ばす
4:カトリ、ネスティと合流したい
5:弓か剣が欲しい
6:マグナの奴が心配。腹も立つが、どうにか助けてやりたい。
【マグナ@サモンナイト2】
[状態]:健康 右頬に打撲(大きく腫れ上がり)、衣服に赤いワインが付着
ショックによる軽い放心状態、ホームズに対する疑念と不信感
[装備]:割れたワインボトル
[道具]:支給品一式(食料を1食分消費しています) 浄化の杖@TO
予備のワインボトル一つ・小麦粉の入った袋一つ・ビン数個(中身はジャムや薬)
[思考]1:これ以上の犠牲者は出さない
2:ホームズと共にリュナンの捜索
3:仲間を探す(ネスティと抜剣者達を優先したい)
4:皆とともにゲームを脱出したい
5:…そういや、召喚確かめてなかった。ま、いっか。
6:どうせ、俺は足手纏いさ…。
【プリニー@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:ボッコボコ(行動にはそれほど支障なし)
[装備]:なし
[道具]:リュックサックのみ(水と食料も支給されていません)
[思考]1:ちょ、この二人完全においらの事忘れてるッス。
2:…ま、空気の方が色々とやりやすいッスけどね。
3:あのおっさんから給料貰ってはいるけど黙ってるッス。
4:この主人マジで怖いッス。
5:でも、マグナの旦那とは面白い事になりそうッスね。
[備考]:ユンヌ@暁の女神 が肩に止まっています。
以上で代理投下は終了です。
ホームズ、カトリ、マグナ、ルヴァイド、ハミルトン、タルタロス、
ホームズの不明支給品を予約します。
自分の用意しているプロットは再会前の繋ぎ(ハミルトン側)と
合流後の話のみなので、マグナ&ルヴァイド組の再会シーンの
プロットや書きかけのSSをお持ちの方はぜひ投下してください。
また、タルタロスの登場はラスト部分になります。
深夜以降に村もしくはその付近で行動できる状態であれば、
自由に動かしていただいて構いません。
いや、不明支給品については、わざわざ予約っていう必要ないのでは?
あと、そこまでプロットばらすと待つ楽しみが少なくなるので、極力伏せたほうが…。
ともあれ、本投下&代理投下乙です。
そうですね。ネタバレには気をつけます。
不明支給品話は独立した繋ぎ系のSSにしようかな。
j893VYBPfUさんの話を読んでいるうちにちょっとしたネタが浮かんできた。
明日のラジオに間に合うかどうかは微妙ですが…。
ラムザ・ラハール・サナキ・アルガスで予約します。
予約が続くな
なんとか間に合ったか。
では、今からしたらばに仮投下します。
本投下前に意見等ございましたら是非言って下さい。
尊大な幼女に緊縛放置プレイされるアルガス…
うん、これは受難じゃないな。おめでとうアルガス。
今までよく我慢したね。やっといい思いができてよかったね。
それはともかく予約&投下乙です!!!
サナキのキャラがぐっと立ってて良かったです。
これはサナキならではの活躍の仕方だと思いました。
あと、ラムザのヴォルマルフ周辺に対する考察。
このロワは主催が強力で人数も多いので、
対主催エンドを目指すなら、主催サイドの人間関係を見抜いて
亀裂を生じさせるような展開が必須だと思いましたが、
そちらのルートへの具体的なパスがあるのが良かったです。
同時に微妙な誤解フラグもあるので、どう展開してもおいしそうですね。
あ、一点だけ。
サナキがアルガスを尋問する場面のしっこくに関する描写。
> かつてセフェランとともに、最大の信頼を置き。
> そしてセフェランとともに、を裏切った叛逆者。
この二行目は脱字だと思われます。
ゲェー!また消えてない。
実はまだ誤字脱字があるのは秘密です。
修正はwiki掲載時にします。
アルガスの状態表の備考欄でしょうか?>誤字脱字
それでは◆j893VYBPfU氏のSSを代理投下いたします。
「では、これまでに見聞きした事を全て答えてもらおうか。アルガスッ。」
「…何言ってんだ?お前なんかに利く口はもってねえよ。」
質問は繰り返される。
尋問は繰り返される。
詰問は繰り返される。
何度となく繰り返される。
この薄暗く湿り、淀んだ空気の中で。
玄関のロビーでアルガスを捕縛してからというもの。
僕達は手近にあったカーテン等を裂いて彼を拘束。
ラハールさんとサナキさんを休ませながら、
適当に見掛けた二階の使用人の個室まで彼を連行し、
尋問を行っていた。
出発前にアルガスから可能な限りの情報を得なければならない。
僕は躍起になっていた。
アルガスがこれまでに出会った参加者の情報。
アルガスがこれまでに為した所業と目的。
どんな些細な事でもいい。
これらを、全て正しく把握しておく必要がある。
アルガスは貴族主義者であり、差別主義者だ。
自らの為に貴族以外の存在を手にかけるのに、
躊躇いや良心の呵責など一切感じないだろう。
――かつて、ティータにそうしたように。
そして、奴は今際の際にもその考えを一切改めることはなく。
死後はその魂をルカヴィに売り渡し、
人間である事すら奴は放棄したのだ。
僕達への憎悪を糧に、己を見下した世界への復讐の為に。
――そんな人間が、この殺し合いの場において、危険人物でないはずがない。
目の前のアルガスが、もし本当に人間を辞める前のアルガスであったとしても。
放置しておけば、再びその歴史は繰り返されるのだ。
だからこそ、今アルガスを野放しにはしておけない。
そして、アルガスの持つ情報は大きな意味を持つ。
だが、押し問答は繰り返されるばかり。
アルガスは質問に答えるどころか挑発を行う有様で、
会話は一行に進歩する状況ではなかった。
ラハールさんがしきりに「めんどうだな。直接身体に聞けばいいだろ?」と、
あくびを噛み殺し、腕をバキバキ鳴らせながら物騒な事を僕に提案するが、
アルガスと同じような真似はしたくないと僕は拒否する。
だが、いつまでもこんな事を繰り返している場合ではない。
時間をかければかけるほど、ホームズさん達との距離は離れてしまう。
…そして、離反したアルフォンスの事もある。
今は、一分一秒の時さえも惜しい。
僕は、次第に苛立ちを募らせていた。
「…まだそんな事を言っているのかッ、アルガスッ!
お前は今置かれている立場を理解していないのかッ?」
自然と、その語気が荒くなっていく。
どう考えても、こちらの焦りを知っており、
その上でこちらを苛立たせているとしか思えない。
首筋が痒みと熱さを増し、どす黒い気分が増していく。
まるで、自分が自分でなくなるような。
――酷い不快感と、眼前の敵への破壊衝動。
「…馬鹿はお前だよ、ラムザ。
それに人に何か話しをさせたいなら、拘束を解くのが先だろうが。
お前は貴族の自覚どころか、礼儀すらも忘れちまったのかッ?
ハッ、卑しい妾風情からひり出された半分が家畜の身なら、
それも仕方ないってかッ?ああ、そりゃあすまなかったなぁ?」
アルガスは挑発的にそう述べると、げらげらと下品な声で笑い出す。
――僕の母を、ルグリアを侮辱するのかッ!!!!
――視界が朱に染まる。酷く、耳障りな音が聞こえる。
ああ、僕の歯が食いしばられる音か。
両掌を、堅く握りしめる。
その暴言、お前の身体でもって償わせてやってもいいんだぞ?
――だが、僕はアルガスへの敵意を、すんでの所で飲み込んだ。
いけないッ。そろそろ、自分でも自制が効かなくなりそうだ。
だが、アルガスの拘束を解いてやる理由もない。
そうするには、あまりにも危険が大きすぎるのだ。
この男の拘束を解いてやった所で、素直に会話をする事はあり得ないだろう。
隙を見て逃げ出すのは確実だ。
そんな虫のいい提案は無視する。
なにより、この男は間違いなく僕に対するに敵意…。
いや、殺意と言ってもいいほどの悪意を抱いている。
それはこれまでの言動の端々から漏れていた憎悪からも明らかだ。
一度アルガスは僕達に殺されたのだ。それも当然だろう。
そんな何度となく繰り返される状況にとうとう退屈したのか、
ラハールさんは延びをすると早々に一人で出かけてしまう。
――少し城内を散策してくる、ということらしい。
だが、一見暢気そうに答えたラハールさんの瞳が、
実は獲物を探す血に飢えた猟犬の目と化していた事に、
僕は気付いていた。
――今のラハールさんを一人で野放しにするのは危険だッ!
このままでは、まずい。
ラハールさんが何かしでかそうとしているのは明白だ。
アルガスは放置しておけないし、
かといってラハールさんを一人には出来ない。
なにか揉め事を起こそうという気は満々だ。
アルガスさえ口を聞けば…。
出て行こうとするラハールさんを見送る僕の葛藤に気づいたのか、
サナキさんがうんざりとした表情で口を開く。
「…ラムザ。おぬしとアルガスの間に何があったかは知らん。
だが、どうみても仲は険悪以外の何者でもないという事だけは理解できる。
ならば、おぬしがこれ以上なにを話そうと無駄ではないのかの?」
そんな事はわかっているッ――!
苛立ちの余り大声を上げそうになるのをすんでの所で堪える。
まずい、そろそろ自制が効かなくなりつつある。
そんな焦る僕に対して、サナキさんは微笑して提案を持ちかけた。
「だったら、ここは一つわたしに任せてはもらえんかの?
わたしに、一つ考えがある。」
「え――?!」
「それよりもラムザ、おぬしは“あの”ラハールを追わなくともよいのか?」
「しかし…。」
「まあ任せておけ。わたしとて人の役に立ちたいのじゃ。
それに、アルガスの事も大体は理解できたでの。
だが、それにはそなたが邪魔となる。
第一、そなたがいてはまとまる話しもまとまらんからの。
さあ、これ以上は時間の無駄じゃ。さっさと行かぬか。」
困惑する僕を迷惑そうに見据えた後、
サナキさんはひらひらと手を振って退出を促す。
これ以上、今話す事は何もないという事らしい。
――だが、本当にアルガスをサナキさんに任せて、大丈夫だろうか?
不安は大きい。だが、サナキさんを見る限り、それなりの根拠があるのだろう。
だが、サナキさんだって、一時はアルガスと行動を共にしていたらしいのだ。
それに僕とアルガスの関係を考えれば、確かに席を外した方が良いのは間違いない。
このままでは、アルガスより先に僕が暴走しかねない。
それにラハールさんが暴走した場合、彼を止められるのは僕だけだ。
その役割を、サナキさんに要求する事は出来ない。
僕は後ろ髪を引かれる思いでサナキさんに背を向け、ラハールさんを追いかける事した。
だが、僕が背を向ける直前、サナキさんの唇がこう動いていたのを、僕は見逃さなかった。
――本当はこういうやり方は、虫酸が走るほど嫌なんじゃがの。
◇ ◇ ◇
わたしはアルガスと二人きりで尋問を行う事にした。
アルガスという男の人間性は、これまでのラムザとのやり取りで
嫌というほどよく理解できていた。
――元老院末席の者や、没落貴族によく見られる瞳じゃの。
もはや溜息しか出ん。
自尊心ばかりが高く、それに実力が伴わぬが故に苦しみ、
空回りばかり続けている。故に己の生まれを唯一の拠り所としている。
卑屈さと高慢さが混じり合う、その性根下賤なもののみが持つ薄汚れた瞳。
その心にあるのは己を認めぬ者にある憎悪。
その心にあるのは己の身の程を認めぬ愚劣。
その心にあるのは己に刃向かう者への殺意。
――劣等感の塊、典型的な小人物。一言で称するなら、“下愚”。
そう結論した。
だが、その捩れた矮小な自尊心を上手くくすぐれば、操作する事は容易い。
込み上げる侮蔑を抑えると、わたしはアルガスに話しかけた。
「…アルガスといったな。おぬしも、口振りから察するに貴族のはしくれなんじゃろ?」
「何なんだ、ガキ?お前もラムザの仲間なんだから、何も話すことはねえよッ。」
不機嫌さを隠そうともせず、毒付く小人物。
その無知から来る不敬に不快さを感じるのではない。
そのアルガスという人間の傲慢さに、不快を感じる。
こめかみの辺りが引き攣るのを我慢しながら、
わたしはアルガスを冷たくあしらう。
「…じゃがな。わたしもただのガキではないぞ。
おぬしも生まれ卑しくなき者なら、わたしを見ても何も気付かんか?
もし、おぬしの目が節穴なら、わたしももう何も言う事はないがの。」
わたしはは悠然とアルガスに近づく。
アルガスは「さっぱり訳がわからない。」
といった風情の視線をこのわたしに向ける。
――まるでわからんのか、わたしの読みを超えて愚かじゃというのか?
頭が痛くなってきた。やはり利用価値すらないということかの?
わたしはアルガスとの会話を打ち切ろうとすら考え始めていた。
「――あん?お前がどうしたって言う……。」
アルガスはわたしの全身を舐めまわすように、不躾な視線を送る。
かつてのラグズ奴隷を品定めする、元老院議員と同様の穢れた瞳で。
悪態を突こうとしたアルガスの目が、唐突に驚愕に見開いた。
この男は、ようやく気づいたのだ。
誰よりも貴族主義者であるが故に。
誰よりも差別主義者であるが故に。
このわたしが、異世界の天上人であるという事に。
身を包む豪華な衣装。
精緻な刺繍が施され、金銀を贅沢に織り込んだそれは、
無論、平民の手に出せる代物ではない。
そして、それを私が正しく“着こなしている”という事。
それはたとえ平民が衣装を着飾ったとしても到底出せるものではない。
平民では着た服に埋没してしまうのが関の山だから。
生れ付いての王侯貴族でもない限りは、衣装との調和は取れない。
貴人特有の物腰、言動、仕草。
それだけは生まれ育ちが尊くなければ、決して出せるものではない。
これ、即ち王者の風格。
同じ貴族であるならば、気付かぬはずがない。
――たとえ、住まう世界が違おうとも。
わたしは表情を消してアルガスを見下ろす。
出来得る限り冷淡に、宣告するように身分を明かす。
「改めて、自己紹介しようぞ。
妾の名はサナキ・キルシュ・オルティナ。
第三十七代ベグニオン皇帝、と言えばよいかの?
…して、そなたの“姓”を聞こうぞ。…答えられるよな?」
貴族に“姓を聞く”。即ち、生まれを聞かれている事を理解し、
アルガスはばつが悪そうに目をそらしながら答えを返す。
「…アルガス・“サダルファス”だ。
祖父の代までは、故郷イヴァリースでも名門貴族の一員だったんだ。」
苦渋を隠そうともせず、何かに打ちひしがれたように。
アルガスはわたしから目をそらし、呟くによう答えた。
差別主義者であるが故に。
貴族主義者であるが故に。
アルガスは己以上の権威には弱い。
アルガスにとって、目の前の皇帝の権威を否定する事は、
即ち己自身の矜持をも否定する事に繋がる。
己自身で、縋り所とする身分を破壊する事に他ならないからだ。
――ま、想像通りの反応じゃの。つまらん。
じゃが、情報交換を終えるまでは我慢するかの。
わたしは心中で溜息を突きながら、政治家としての仮面を被る。
「わたしはな。このつまらぬ舞台からの脱出を所望している。
じゃがの。ここには我が臣下は一人とも…おらぬし、
いかな皇帝と言えど、わたし一人ではあまりにも無力じゃ。
じゃからの。少しでも助けになる力を求めておる。
それにはどんな些細な情報でも良い。
おぬしのこれまでに得た情報を得たいのじゃ。
無論、生還した際には、それに見合う謝礼は約束しようぞ。
…協力してくれるかの?」
困惑するアルガスに、わたしは公式で使い慣れた、演技の笑顔で語りかける。
臣下…。いや、正確には臣下だったもの。
唐突にそれを思い出し、心に込み上げた苦いものを抑え込む。
かつてセフェランとともに、最大の信頼を置き。
そしてセフェランとともに、を裏切った叛逆者。
偽りの英雄。禍々しき、黒き騎士。
世界に大乱を二度引き起こした、災いを招く者。
決して、この世にいてはならぬもの。
――そうじゃな。なにも名簿の“漆黒の騎士”が、
必ずしもゼルギウスであるという訳ではないのじゃ。
苦い思い出とともに故人の存在を、慌てて脳裏から打ち消す。
そんな私の苦悩をよそに、アルガスは薄笑いを浮かべる。
「…ああ、わかったぜ。だったら、まずは縄を解いてくれないか?」
――なるほどのぅ。わかりやすいゲスじゃ。
こちらの身を引いた物言いから、アルガスはこちらが媚びたと判断したのだろう。
その態度から、尊大なものが即座に窺えるようになった。
身分を抜きにしても、己が今置かれている立場が理解できていないのだ。
ならば、それを彼の頭でも分かるよう、教えるまでの事。
「…じゃがの。わたしは役立たずはいらぬのじゃ。
そして、こちらの言うことを全く聞かぬものもな。
こちらの言い分が先じゃ、と言いたいがやはり止めだ。
どうせさほどの価値もあるまい。わたしもラムザを追おう。
では、さらばじゃ。」
わたしはそういって聞えよがしに大きなため息を吐き、
踵を返すと、最後通告を出す。
この男には、飴よりも鞭が必須なようだ。
「そなたはこの一室で、他の誰かの助けを待っておればよい。
ま、見つかったところで助かるかどうかはわからぬがの。
…なにせ、この殺し合いに乗った者どももようけおるのじゃ。
縛られていれば、喜んでそなたを殺すのではないか?
ま、せいぜいわたしらよりお人好しに見つけてもらうことじゃな?
ならば助かるかもしれん。では、縁があったらまた会おうの?」
アルガスには一切視線を戻さず、そのまま大股で扉へと向かう。
――そして扉のノブに手をかけた時。
アルガスからの必死の呼び掛けにより、私は振り返る。
「――ん、どうしたのかの?何か話す気になったか?」
さて、上手くいったの。じゃが、ここからが本番じゃ。
わたしは時間をかけてゆっくりと振り返ると、
しぶしぶ口を開こうとするアルガスを待つ事にした。
【E-2/城内の二階・使用人部屋の一室/1日目・夜(臨時放送直前)】
【サナキ@FE暁の女神】
[状態]:
[装備]:リブローの杖@FE
[道具]:支給品一式×3、手編みのマフラー@サモンナイト3
[思考]1:ラムザ達と行動
2:帝国が心配
3:皆で脱出
4:アイクや姉上が心配
5:アルガスを説得して、情報を得る。ただし、信頼は一切していない。
6:アルガス使いものになりそうなら、戦力としても考慮。
[備考]:左腕の打撲痕は、ラムザの尋問中にリブローの杖で治療済です。
【アルガス@FFT】
[状態]:顔面と後頭部に殴打による痛み。カーテンで上半身を拘束中
ラムザに対する憎悪(重度)。サナキに対する劣等感と戸惑い。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]1:拘束の解除と逃亡を最優先。
2:戦力、アイテムを必ず確保する。
3:リュナンとレシィとあの男(ヴァイス)に復讐
4:ラムザとディリータを殺す
5:サナキが己の立身出世に役立つかどうかを見極める。
6:もし、皇帝と言えども利用価値がない場合は…。
[備考]:自分を殺した直接ラムザに再会して拘束された事と、
首輪による感情増幅効果により、ラムザに対する憎悪が増しています。
この事にはアルガス自身も気が付いていません。
僕はラハールさんを探しに、城内を駆け回り始めた。
あのラハールさんの事だ。考えている事は想像に難くない。
リュナンさんが未だ城内にいる(あるいは舞い戻った)可能性を考えて、
隠れそうな所を捜索して回り、喧嘩を売るつもりに違いない。
もし、それがアルフォンスでも結果は同じ事なのだろう。
もし、僕より先にラハールさんが彼を見つけた場合…。
僕は間違いなく二度とホームズさんに顔向け出来なくなる
事態が引き起こされるだろう。
――胃が、痛くなる。
僕は胃痛を堪えて、扉が未だ開いていない、扉が破壊されていない
(そう、破壊された扉があちこちにあるのだ)部屋を優先して、
リュナンさんを捜索する。
先程から城内のそこかしこから響き渡る破壊音から考えて、
ラハールさんが片っ端から城内の物品を破壊して回っているのは間違いない。
時々みかける粉砕された木の扉も、ラハールさんが破壊したものだろう。
――隠れているかもしれない、リュナンさんに威圧感を与えているのだ。
あるいは、尋問があまりにも長引いた苛立ちによる、八つ当たりかもしれない。
――ダメだ、ラハールさん…。はやくなんとかしないと…。
僕は駆け回る。城内の端から端まで。
だが、僕の心配をよそに、今度は地の底から延々と衝撃音のみが鳴り続けるようになる。
今まで聞こえていたような、調度品や扉が破壊されるような破壊音は、一切しない。
――それが意味する事は。
今、ラハールさんは地下にいるという事。
どうやら、ラハールさんがそこで“何か”を見つけたらしい。
だが、そこで足止めをされている。そういう事だ。
断続的に衝撃音が続くことから考えて、
危険が迫っているという事でもないらしい。
僕は地下へと続く階段を見つけ、そこを駆け降りる。
上方一定間隔ごとに点灯しているランプがあるので、
地上階ほどではないが十分な明るさはある。
――どうなっているんだ、一体…。
誰かが点灯して回っているとも思えない。
最初から付いていたと考えるべきなのだろうが…。
そしてその行き止まりに、ラハールさんがいた。
「…遅かったなラムザ?だが、丁度良かったぞ。」
「…ラハールさん?」
「他に城内でこそこそ逃げ回っているネズミがいないかどうか、
俺様が探し回ってやってたんだが、この扉の向こう以外は全て調査済みだ。」
ラハールさんは、そう言って顎で扉を指し示す。
――思ったとおりだ…。
それにそれ、探し回ったのじゃなく、荒らし回ったんじゃ…。
僕は口に出掛かった非難と疑問を抑える。
今、話しの腰を折ってもどうしようもない。
ラハールさんの言い分を聞くのが先だ。
「それでまあ、最後にだ。何故か鍵のかかっている扉を見つけたって事だ。
ここだけなんだ。城内で鍵のかかった扉なんて、何処にもなかったのにな?
…なあ、ラムザ。怪しいとは思わないか?」
そういってラハールさんは白い歯を剥き出しにしてニタリと笑う。
ラハールさんの目の前には、確かに鍵穴の付いた木製の扉があった。
扉には、綺麗な足跡が一つ付いている。
なるほど。ここに逃げ込んだ“何者か(リュナンさん?)”は、
城内で拾った鍵でも使って、扉の内側から施錠したのだと
ラハールさんは考えた訳か。
だが、少しだけ引っかかる…。
この足跡、ラハールさんのものより明らかに大きい…。
つまりは、ラハールさんより前に、この扉を蹴り開けようとして
果たせなかったものが存在したという事になる…。
「まあそんなものこのラハール様には関係ない、ということで色々試してみたんだが、
傷一つ付かん。剣でも魔法でも、だ。」
僕はラハールさんの傍若無人さにほとほと呆れながらも、
疑問を更に強くする。
――魔王ですら破壊出来ない、『木製の扉』?
それは明らかに物理法則だの、何だのを超越している。
木製の扉なら(むしろミスリル合金製の扉だって)、
ラハールさんなら苦もなく簡単に破壊してしまえるはずだ。
それは、これまでに荒らされた城内の様子を見ても明らか。
僕だって、時間さえかければ素手でも十分に破壊出来る。
ファイジャ等の高位魔法なら、それこそ塵一つ残さずに焼き尽くせる。
木製の扉を施錠しただけでは、時間稼ぎ以上の意味はない。
――ならば、考えられる事は一つ。
何か極めて強力な魔法的処理が施されているのだ。
――誰によって?
それは言うまでもない。このゲームの主催者達の手によって。
――そして、鍵を掛ける理由は?
勿論、近寄る参加者を招きたくないからだが。
ゲームの参加者の誰にも入られたくないなら、
鍵を掛けるよりいっそ埋めてしまえばいい。
その方が合理的だ。
――だが、施錠のみで済ませるということは?
それはこの先に立ちいるべき人間と、
そうでない人間を選別する為なのだろう。
つまりは、主催側が用意した、“特別な参加者”の為にある部屋。
これは、思わぬものを発見したのかもしれない…。
このゲームに“特別な参加者”、すなわち“内通者”がいて、
主催側との連絡用にでも、この通路が使われている?
…いや、そう考えるのは早計だろう。
第一、連絡ならもっと他に手段がある。
それなら伝書鳩だってなんだっていい。
――ならば、一体何なんだこの頑丈な扉と施錠の理由は?
僕が扉の前に立ち、顎に手を当てながら確かめている所で。
その疑問は唐突に解決される事になる。
――時は今、先程の放送より一時間後。
「――初めまして、皆様方。
私は悪鬼使いキュラーと申す者。以後、お見知り置きを。
此度はディエルゴ様の命により、ヴォルマルフ殿に成り代わり、
この時刻を以て一部ルール改定が行われる事をお伝えいたします。」
目の前の扉の施錠が、かちりと音を立て解錠されると同時に。
本来はあり得ざる、臨時放送を聞き届ける事となった。
◇ ◇ ◇
「その“救いの手”を受け入れるか、あくまでも拒絶するかについては、
貴方達の自由意思に委ねましょう。これは強制ではありませんからね。
このゲームでは、なにより自由意思による選択こそが尊重されるのです。
貴方達のご健闘に期待しておりますよ…。」
――悪鬼使いキュラーと名乗る、ヴォルマルフの代理による臨時放送は終わる。
だが、それはヴォルマルフのような事務的な口調ではなく、
キュラーの殊更な慇懃無礼さが感情を逆撫でする。
洗練された演説から察するに、キュラーも相当の曲者のようだ。
彼らは明らかに楽しんでいるのだ。
彼らは明らかに愛しているのだ。
――追い詰められた人間が殺し合う、醜さというものを。
不安は増す。この放送、キュラーが言うとおり、
いや、言っている内容以上の意味を明らかに含んでいる。
内容と狙いは、考えるまでもなく明らかだ。
だが、それ以外については…。
このゲーム最大の“貢献者”からの提案、か…。
裏切り者…。いや“内通者”がこの参加者達にいる?
これは頭に入れておいた方がいいだろう。
この武器庫も、もしかすれば“内通者”専用の施設なのかもしれない。
そして、神殿騎士団の幹部には、僕の知っている限り
“悪鬼使いキュラー”なるものは存在しなかった。
ならばマグナさんの言っていた、源罪のディエルゴ、
即ちレイム・メルギトスの腹心である可能性が高い。
しまった…。
マグナさんから、もう少し詳しく内容を聞いておけば…。
確かに、あまり時間を取れなかった事もある。
だが、今更後悔した所で仕方がない。
詳細は、またいずれ再会した時でも良いだろう。
それに、この臨時放送自体から気付いた事もある。
ヴォルマルフが自分の部下にやらせたのではなく、
ディエルゴの腹心がこの放送を行ったのであれば?
ヴォルマルフ側に、何か放送が出来ない事情が出来たと考えるべきだろう。
――だからこそ、キュラーが代理放送を行ったという事か。
そして、そこから考えられるある種の可能性――。
『ヴォルマルフとディエルゴの関係は、あまり良好ではない?』
キュラーの放送内容から察するに、彼の口から露骨に
ヴォルマルフを見下げる内容のものは無かった。
無論、彼が侮蔑や敵意を抑えている可能性もあるが、
彼らとまだ敵対関係にあるわけではないのだろう。
だが、単なる親切心でヴォルマルフに協力し、彼がそれを許したとも考え難い。
ヴォルマルフという男、異常なまでに傲慢な反面、極めて繊細な性質を併せ持つ。
神殿騎士団の暗躍においては、その頂点の地位にあるにも関わらず、
常に最前線で指揮を取っていた。実際、リオファネスにおいてもそうであった。
その雄姿には威厳があり、非常に頼もしく見えたと、彼の娘からも伝え聞いている。
だが、それが意味している事は一つ。
ヴォルマルフが出来る限り自分の手でやりたがる、ある種の独裁者であるということ。
何しろ、部下に任せておけばいい事まで、全て自分自身の手で行っているのだ。
それは己の腕への絶対の自負の反面、部下をさほど信頼はしていないという事を意味する。
そういう人物が、外部の協力者側からの提案があった所で、そう簡単に人に任せるとは思えない。
余程の事情がない限り、無理をおしてでも己で放送位の事はするだろう。
余程の事情がない限り。
そう。逆を言えば、つまり何かあったのだ。余程の事情というものが。
おそらくは、ヴォルマルフとディエルゴとの間に…。
ならば、この臨時放送はヴォルマルフを差し置いての放送である可能性が高い。
そうであれば、両者の関係は間違いなく悪化する事になる。
断定するにはまだ早計であるが、これは臨時放送から考えられる、
数少ない本当の意味での“希望”ともなりそうだ。
これは、皆に伝えておいた方がいいだろう。
放送の内容に囚われて、皆が狂い出す前に。
たとえこの推測が出鱈目であっても、
希望が持てる要素は一つでも広めた方がいい。
僕がそんな思索に囚われている間、
ラハールさんは腕を組み、不敵にも笑っていた。
…ラハールさん、こういう間だけは頼もしいのですが…。
反面、酷く不安にさせられる事がある。
「…聞いたか、ラムザ。キュラーとやらも、随分とせこい事を考える。
だが、これはネズミを追いたてるより面白い事になりそうだな?」
やっぱり、人を選ばず襲いかかるつもりだったんですね。
ラハールさん…。
僕の不安をよそに、ラハールさんは解錠された扉を開け、
ずんずんと先に早足で奥へと進んでいく。
やがて、『武器庫』と看板が書かれてある扉の前へとたどり着いた。
ここにも通路の両側にランタンが並んであるが、随分と眩しい。
外よりも遥かに明るいほどだ。
そして、それがここが特別である事を物語っていた。
武器庫の前の通路だけ左幅が広くなっており、
その端に当の『武器庫』が、その右側に三つほど木で出来た扉がある。
表札は特になく、どこにつながっているかは未だ分からない。
こちら側は、全て施錠されたままのようだ。
――まだ、この城には秘密があるという事か。
通路にはまだ先があり、遠目で見るとその正面にも扉があるが、
少しだけ空いているところを見ると、
同じく先ほど解錠されたものと思われる。
ラハールさんは他の扉には一切目もくれず、
『武器庫』へとなだれ込んだ。僕も、慌ててそれを追う。
◇ ◇ ◇
確かに、その部屋は武器庫ではあった。
だが、その部屋から与えられる印象は、武器庫というよりは、より荘厳な…。
例えるなら古き神殿か、国営の博物館に近い雰囲気に包まれていた。
床には隙間なく磨きこまれた大理石が敷き詰められてあり、
天井や壁面、そして柱は全て白で覆い尽くされていた。
部屋には13列の4行、つまりは見せしめのように殺された
超魔王バールを計算にいれて、合計五十二名分の武器と道具。
それらが硝子の箱にて収められ、等間隔にて台座付きで展示されていた。
その前には丸い窪地がついたプレートと
その持ち主と武器の説明書きがなされてある。
――ここに、本来の持ち主の首輪を収めよという事か。
この忌まわしい交換装置さえなければ、
本当に博物館と言っても通用する程に。
その武器庫は、ある種の威厳を持ち続けていた。
本来の持ち主を待ち続けるかのように。
あるいは、新たなる主人を探すかのように。
そして、ラハールさんはと言えば…。
やはりというか、手当たり次第に透明の硝子を
鞘の付いたフォイアルディアで殴りつけ、
あるいは火、風、氷等あらゆる魔法をぶつけて、
キュラーの放送など知った事かと言わんばかりに、
傍若無人に暴れ回っていた。
その有様は、神殿を土足で穢す、まさに異端者のよう。
ああ、そう言えば僕も異端者だったか。
――二人の異端者。
そう考えると、自然と笑みが零れる。
しかし、その辺りの知恵は主催側が一枚上手であり、
当然のごとく施設は一切の破壊を許さぬよう、
やはり扉と同様の特別な処理がなされていた。
透明の硝子は、実に涼しい様子で無事を訴えている。
ラハールさんの狼藉と努力を、全てあざ笑うかのように。
やがて破壊を諦めたのか、息を荒くて肩を落としたしたラハールさんが、
見るからに疲れた様子で、こちらに近づいてくる。
「ラムザ…。お前のその頭でどうにかならんのか?
さっぱり埒が明かん。」
僕は着ぐるみ越しに苦笑しながら、ラハールさんの懇願を聞き届ける事にする。
一つ一つの武器の台座を調べ回る。鍵穴があれば、解錠位は道具があれば可能かもしれない。
そこで鍵穴のある位置を念入りに探して回ったが、
そういったものは一つたりとも見当たらない。
――流石に、武器だけを上手く盗み出すのは不可能ですか…。
だが、考えてみればそれも当然。主催側が特別に用意したものだから。
こちらが抜け道を考える事については、当然想定内の事態なのだろう。
首輪の解除並の困難が予測されると考えたほうがいい。
しかし、意図せずだが武器庫の確認も出来た。
これ以上の長居は無用だろう。それに、サナキさんの事も心配だ。
そろそろ、二階の使用人部屋へと戻るべきだろうか?
――僕がそう考えだした頃。
ラハールさんは、実におぞましい、獰猛な笑みを浮かべていた。
それは見たもの全てを震え上がらせる、殺戮者の笑み。
その険呑な微笑みは、どこかにいる何者かに対して、
明確な嗜虐心と殺意を抱いている事を意味していた。
「ラムザ、さっきの放送の内容は覚えているな?」
「…ええ。」
「確か上に一匹ネズミを抑えていたよな?」
「アルガスが、どうかいたしましたか?」
不安を抑えきれず、僕はラハールさんに続きを促す。
アルガス。そう、確かに二階にはアルガスがいる。
今は、それをサナキさんが監視している訳だが――。
「あいつ、そういや元いた世界じゃ確かお前の敵だったんだよな?
それに放置しておくと危ないって、お前も認めている。じゃあな――。」
「いっその事、あいつの首輪を貰ってここで試しても構わないよな?
それで、制限時間も半日確保できるなら、だったら、言う事はなしだ。」
――抱いた不安は的中する。
ラハールさんは、アルガスを殺してその首輪を奪うつもりでいる。
それを、僕は許してしまっても良いものだろうか?
確かに、アルガスは危険人物である。
拘束を続けた所で何時逃げられるか分かったものではないし、
確かに殺害してしまった方が、後始末の心配もなくなる。
アルガスが僕を憎んでいるのは明らかだし、
僕もアルガスを憎んでいる。
そもそも、もとより元の世界では彼は死人なのだ。
殺害した所で、元の世界には何の影響すらない。
第一、一度殺害したもの相手をもう一度殺して、
良心の呵責に苦しむというのも妙な話だろう。
――そして、なにより。
彼を処刑する事で「十二時間」の確実な安心を得られるというのも大きい。
このままでは、サナキは自らを足手纏いと考え、不安に脅え出すかもしれない。
それに碌な武器がない以上、彼の首輪を奪い、装備を充実させたい事情もある。
だが、本当にアルガスをもう一度殺害してしまっても良いのだろうか?
それは、とりもなおさず――。
意図はどうあれ、ヴォルマルフ達のゲームに貢献するという事を意味する。
それはベオルブの姓を持つ者として、恥じぬ行為なのだろうか?
それは果たして、人間として正しい行為なのだろうか?
それに、利用価値無しと見れば平然と人間を処刑できる人物に、
果たして他の仲間達は付いてきてくれるのだろうか?
僕は、葛藤する。
一体、どうすれば――?
【E-2/城内の地下武器庫/1日目・夜(臨時放送後、夜中直前)】
【ラムザ@FFT】
[状態]: 健康、後頭部にたんこぶ(腫れはほとんど引いてます)、
アルガスへの嫌悪(中度)、人殺しに対する葛藤
[装備]: プリニースーツ@ディスガイア
[道具]: 支給品一式(食料1.5食分消費)、ゾディアックストーン・サーペンタリウス@FFT、
サモナイト石詰め合わせセット@サモンナイト3
[思考]1:ヴォルマルフ、ディエルゴの打倒
2:アルフォンス(タルタロス)よりも早くネスティと接触
3:白い帽子の女性(アティ)と接触しディエルゴについての情報を得る
4:ゲームに乗った相手に容赦はしない
5:ラハールの暴走を(今度こそ)抑える
6:アルガス、あいつをどうするべきか…。それにサナキさんも心配だな
7:アルマが…まさかね
[備考]:現在プリニースーツを身に付けているため外見からではラムザだとわかりません。
ジョブはシーフ、アビリティには現在、話術・格闘・潜伏をセットしています。
ジョブチェンジやアビリティの付け替えは十分ほど集中しなければなりません
自分の魔法に関することに空白のようなものを感じている。(主に白魔術)
一部の参加者が過去から参加している可能性がある事を疑っています。
その為、一時的にルカヴィ化した事のあるアルマに対して一抹の不安を感じています。
ラムザもまた過去を思い出すことにより、アルガスへの嫌悪感が増幅されていますが、
元々抱いていた感情がアルガスより小さったせいか、増幅効果は比較的微弱です。
【ラハール@ディスガイア】
[状態]: 健康、若干の苛立ち
[装備]: フォイアルディア@サモンナイト3(鞘つき)
[道具]: 支給品一式×3(食料0.5食分消費)、ロマンダ銃(残弾0)@FFT
潰れた合成肉ハンバーグ@TO ラミアの竪琴@FFT、不明道具(シーダのもの)
[思考]: 1:取りあえず新しい獲物と得物を探す
2:自分を虚仮にした主催者どもを叩き潰す
3:そのためなら手段は選ばない
4:何とかして首輪をはずしたい
5:とりあえず今の状態を打開するまではラムザに同行
6:アルガスといったな?…あの七三なら別にバラしてもかまわんだろ?
[共通備考]:ロビーにあったリュナンのバッグは、ラハールが捜索中に回収しました。
ただし、ネズミ(具体的にはリュナン)の捜索を再優先していたため、
その中身まではラハールも一切確認しておりません。
地下の施錠された通路と、その先にある地下武器庫の施錠が解錠されました。
地下武器庫の詳細については、No96.[[臨時放送・裏Ⅱ]]の備考を参照の事。
地下武器庫のさらに先にある施錠されていた通路は、F-3の坑道へとつながっています。
詳細はNo21.[[危険はいつも、すぐそばに]]の本文を参照の事。
前回のマグナがラハール達に話した内容ですが、時間が足りなかったため、
マグナが知っている内容全てが伝わっていない可能性があります。
(少なくとも、マグナ達がすでに倒したと考えているキュラー、ガレアノ、ビーニャの
三名に関しては一切触れてません。他に触れていない具体的内容については、
次の書き手様にお任せいたします。)
代理投下は以上で終了です。
馬鹿1号&2号がM男(しかも相手は幼女)になった件について。
ラジオの録音ファイルはまだアップされてないの?
>>138 さて会話がないから一つ振ってみるかな。
用意はいいかいビラク?
(No.62以降の各話まとめ)
渡る世間はマーダー天国(聖騎士談)
放置プレイの邪神像?
三十六計逃げるにしかず?
アティ先生、発狂&死亡フラグか?
かわいそうなレシィ
かわいそうなアルガス
マグナ空気嫁
裏目王ナバール
フロン、責任を取る
空気四天王、ついに再起動
馬鹿山羊は踊る
男は拳で語り合え!
ライオン丸の考察
おじいさんの悪だくみ
死肉漁りのヒットマン
マグナと殿下逃げてー!
(No77Limitationまで)
昔書いたもののサルベージ。あとはおいおい考えます。
No078からの各話まとめ。
おじいさん、忘れものに気づく。
三人の加齢臭にレシィ悶絶。
第一回放送
堕天使は祈る
発酵女、暴走
カラスは漁る
カラスは騙す
鬱アイク入りまーす
あのー、ここは全年齢対象板ですが…。
しっこくがふたり
アルマ、てめえの愛はヤンデレだ!
ライオン丸は語る
若作りおばさ…おやだれか来たようだ
無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!
ゴードン、ミカヤがレディになる頃にゃ…。
梟雄戦闘(英雄戦争)
こちらネスティ、性欲を持て余す
顔射された男たち
見え隠れする謎の人
マグナにげてマグナァァアアア!!!
仲が悪いよディエルゴさん
たーまーやー!かーぎーやー!
ざんねん!わたしのぼうけんは(ry
悪の騎士二人(魔道士二人)
気合いをいれるよキュラーさん
(No100臨時放送まで)
「おじいさんの悪だくみ」がツボすぎる。
お母さんが子供に読み聞かせる絵本のタイトルみたい。
でも内容はガフおじいさんのアレっていう。
> 若作りおばさ…おやだれか来たようだ
ミカヤが
>>260をタゲった模様。
そういやこのロワ三十路以上のおっさんおばさんが多いよな…。
フロンやエトナをおばさんとかおばあちゃんというには抵抗感があるけど、
パッフェルやミカヤをおばちゃんと呼ぶのに
まるで抵抗感を感じないのはなぜだろうか?
パッフェルさんは普段のしゃべり方とかが、妙に近所のおばさんっぽいからかな。
そーなんですよーの言い方とかちょっとそれっぽいし。
まあ本人が「心よりも先に、体ばかりが大人になって・・・」と言っていたように、
心中は年相応(肉体年齢)な発言が多いけどね。
なんでだろう。
ちょっと人生に疲れてそうだからかなあ。
原作のミカヤにいたっては、ふてぶてしさすら感じるし。
電車の座席が10cmしかあいてないのに当然のような顔で割り込んで座る
おばちゃん特有のふてぶてしさ。
むしろラハールは思春期真っただ中な典型的中二病だからな。
良くも悪くも。じじいとは到底いえない。
ゴードンは妻子もまだいないのにバリバリのオッサン。
カーチスは妻子がいたのにオッサンのイメージは薄い。
年は近いと思われるのだが…。
やっぱり、本人の喋り口調と本人の精神年齢かな…。
ゴードンとミカヤが空気なのは加齢臭が原因か。
ラジオツアーの録音ファイルが実況スレにうpされてたから聴いてみた。
DJが触手に食いつきすぎでワロタ。
で、ネサラの触手プレイはマダー?
中ボス・エトナで予約します。
すいません。
エトナ・中ボスの予約に漆黒の騎士を追加で。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) おおー wktk wktk
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
予約の件ですが、ルヴァイド組の合流前の繋ぎSSを
来週の水~金曜あたりには投下できそうです。
進捗状況は8割程度です。もう少々お待ちください。
>>270 漆黒の騎士まで登場するとは、どんな展開になるのか想像もつかない。
今から投下がとても楽しみです。
そういや、このロワで原作以外に書き手・読み手として参考にしている資料なんかはある?
本やホームページ、ビデオや別の作品なんかでもいい。
あるいはオススメの資料があればそれも聞きたい。
自分は新紀元社のTrue Fantasyシリーズをオススメするが。
私も新紀元社のTrue Fantasyシリーズは持ってます。
流石に全巻はそろえてないけど。確かにあれはいい。
殺人描写の参考になるような本を知りたい。
「完全自殺マニュアル」のような、死亡判定の参考になりそうな本。
殺人描写ではないけど、肉体的・精神的苦痛の与え方なら
さっきの新紀元者の「拷問の歴史」がお勧めかな?
◆6tU9OIbT/c 氏、どうなっているかな?
予約したまま、一か月以上音沙汰がないですが…。
少し心配ですね。
すいません。予約にガフガリオン、ウィーグラフ、レシィを追加します。
その代り、少し投下が伸びそうですが。
ついに顔射された男たちが全員動くのですね。楽しみです。
私も投下が少し伸びそうです。申し訳ありません。
あと予約にアルマを追加します。
ただ、時間を大幅に動かすので、未明あたりまでは
アルマを自由に動かしていただいて構いません。
相次ぐ追加ktkr!
アルマと女性キャラが同じSSで登場するだけで不安が止まらない…
楽しみ不安入り混じりながら待ってます。
竜石による竜化の持続時間はどういう扱いにするのがいいと思う?
チキやバヌトゥ見る限り数ターンで解除されるから、一時間位じゃないかな?
まあカトリが火竜石で無理矢理変身したら魔竜クラニオンの二の舞になる可能性があるが。
ありがとう。
つまり通常は一時間程度で解除。
暴走時は解除時間の指定はなし、戻れなくなる可能性がある(高い?)
という感じなのかな。カトリ+火竜石は暴走しそうだね。
予約のSS(繋ぎ数本+本編)ですが、もう少し遅くなります。
いつもいつも過疎に甘えさせていただいて申し訳ありません。
あと、ご報告が遅くなりましたが、本スレに投下されたSSのミスを
wiki収録後に修正いたしました。修正点は以下のとおりです。
私の「未来の記憶」のラストのヴァイスが逃げ込んだ民家の描写を修正。
◆j893VYBPfUさんの「焦燥」の状態表の時間を臨時放送前から臨時放送後に。
確認いたしました。
時間修正ありがとうございます。
こちらの投下はもう少し待ってください。
今、主催側に一番近い情報を持つのは誰になる?
マグナじゃないかな。
サモン3番外編の情報+FFTクリア時の情報を持っていて、
臨時放送でキュラーの声を聴いた時点で
レイムやガレアノやビーニャの関与を推測できるから。
このロワのマグナはウジ虫だな。
本編は自分の出生を知ってもそんなに悩んでなかったのに
いや、ホントに本編でそう見えたのか?
冒頭から一人になった時はいきなり鬱オーラ出してたが…。
まだウジ虫とか言っちゃダメ。
原作のマグナだってなにげにネガティブな奴だよ。
「ゴミのような目で見られていた」って台詞もあったし。
何気ない一言に自己評価の低さがにじみ出てたりする。
ああいう人間はスイッチを一つ押せば一気に鬱になって転落すると思う。
だからこのロワのマグナの描写はある意味原作どおりだと思う。
蒼の派閥にいた頃だって、ネスティ以外まともな学友もいなかったうえに、
実際同じ派閥の人間をナイフで刺そうとか考えていたこともあったからな。
意外に繊細というか、壊れやすさではアティ先生よりも上かもしれん。
原作のお花畑な台詞も、本心からそう信じているというよりも、
「こんなの本当は無理だけど、でも、そうなったらいいなぁ」
みたいなニュアンスを感じたりする。現実逃避的というか。
そこがマグナというキャラの面白味なんだと思うけど。
そういえばこのロワのアメルは原作開始前からの参戦だけど、
それを知ったらマグナは本格的にぶっ壊れるんじゃないか?
サモンナイト2で一番お花畑さんは、実はマグナではなくアメルだしな。
ただ、本編のアメルは非常に無力でネスティなどの辛辣な、だが現実を見据えた提案に対して何一つ代案を示せず、
綺麗事のみを語るだけのキャラで終わってしまった。ある意味、大の人間好きのレイムにすらも終始そこで一番嫌われたし。
まあその時の反省が3のレックス&エロてんてーに活かされて(?)いくのだが。
しかし、都月作品(サモンナイト2,3)と松野作品(TO,FFT)の食い合わせって、ある意味凄いよなあ…。
生き残って首輪を解除した後に主催者側の口から聞きそうだな。
アル魔から聞けるとは考えられないし
アメル=花畑教の教祖、マグナ=信者 って印象を受ける。
サモンは会話テキストにネガティブな視点を感じるのがびっくりした。
ネガティブな人が子供向けの話を書いたらこういう感じになるのかなと感じた。
叩きとか悪口とかじゃなくて、率直な感想というか。
そういうところが魅力なんだろうな、という意味も込めて。
マグナから感じる「こんなの本当は無理だけど、でも、そうなったらいいなぁ」
みたいな空気は、もしかすると都月氏の目線なのかなぁと思った。
テキストはほぼ同じなのにトリスは明るくて元気な子なんだよなぁ
マグナはなんか自堕落破滅的なのに
まさにマジック
サモンナイト自体都月が女主人公を持ち上げてるっぽい
マグナが自堕落破滅的って分かるわ。
何気ない一言からなんかすごいダメ人間臭がする。
あのちょっと困ったような笑顔との組み合わせのせいでもあるのかな。
憎めない感じで、嫌なダメ人間臭だとは思わなかったけど。
マグナもトリスも沈んだら護衛獣に励まされるから、近いうちに復活しそうだな。
そういえばマグナは今C-3の村に向かってて、
予約状況を見る限りではレシィもそっちに行くわけか。
危険村にまだ不安要素があるのだがな。
チキとアティが危ない
先祖の罪を知って鬱になったのを復活させたのも護衛獣だからな。
もうマグナの運命はレシィに託されたな。頑張れレシィ、悪臭に悩まされてる場合じゃないぞ。
>>303 今のロワには関係ないけど、モナティは励ましてないよな。
C-3村で酷い目に遭うレシィの姿が見えるのですが…
しかも加害者はマグナが知ったら対主催グループの人間関係に亀裂が入りそうな
人のような気がしたりしなかったりするのですががががが…
>>304 まああれは番外編だし、シナリオに多少やっつけ作業的なものがあるしね。
サモン本スレでもよく言われるけど、どの問題も誓約者さんに頼めば事足りるという…。
>>305 ヴァイスの憂さ晴らしにボコボコにされたネスがブチ切れて、無理矢理首輪にアクセス。
その後、偶然首輪を遠隔操作で爆発できるコードを発見し、マグナ以外の参加者を
殺そうとするアル魔を超える奉仕マーダーまで妄想した。
>>306 しっこくないしはアティかと考えたが…。
なるほど、ネイスと来たか。
しっこくはたとえ対主催化しても、対人関係上の問題で爆弾抱えるからなあ。
自分はアティ&チキ&レンツェンとマグナ&ホームズが対立する展開を想像したな。
しっこくとネスティがどう立ち回るのかみものって感じで。
ネスティはそういう殺害方法もできるわけか…
遠隔爆発できるようになったネスティとかマジ恐ろしいだろうな。
忘れられがちだけど、ネスティって前世(先祖)の時からヤンデレの素質あるし、
前世がそれっぽい行動とってるんだよな。アルス(マグナの前世)と仲が良くなった
アルミネに嫉妬して、まんまとそそのかして機械天使にしたりとかするし…。
もしそういう展開になったら、主催側にいるレイムは前世を知ってる分プギャー(^Д^)m9状態だろうな。
ヤンデレのガチホモかよ…。
ネスティがセネリオみたく見えるようになってきた…。
あ、ところでルヴァイドが壊滅させた村の人口はだいたい何人位かな?
旅行客を含めれば、百は下らないと思うが。
・数日待ちの行列ができている。
・最後尾のマグナたちを泊めてくれる家がある。
旅行客目当ての宿があるとしても、それなりの人数はいそうだね。
アメルが一人の治療に要する時間って、どれくらいなんだろう…
312 :
sage:2009/11/11(水) 19:50:21 ID:8BN/BBSa
焦土作戦を黒の旅団単独でほぼ遂行できたから、どう頑張っても数百にはいたらないかな?
ところで、レシィの魔眼は100%必ず敵に効く訳じゃないんだよね?
抵抗されてしまう場合もあるという事で良かったかな?
>>312 アグラ爺さんが一人で全員弔ったっていう話もあるし、
さすがにそこまで多くはないかもしれん。
メトラルの魔眼について攻略本を見たけど、特に成功率とかは記述がなかった。
まあ状態異常無効のアイテムとかロワ内でちらほら見るし、必ずじゃなくてもいいかと。
抵抗されるか、持続が短いってのもありだと思う。
まあそれでも伝説の審眼を使われたら防げないだろうけど。
なら基礎スペックが高いと効きが悪い事もありえると。審眼は別として。
まあ話しは変わるが。タルタロスの港町ゴリアテのゴリアテ虐殺、果たしてどちらが殺害数は上かな?
まあロスローリアンが精々総員二百人規模の騎士団の上に、ゴリアテの件は殲滅が目的でなかったから、殺害数はそう多くはないと思うが。
難しいな。
単純な人口ならアメルの村よりも港町ゴリアテのほうが多そうだけど。
ただ、アメルの村には旅行客も来ているしなぁ。
でも、なんとなく、イメージ的にはゴリアテのほうが多そうな気がするけど。
どうなんだろう。難しいな。
まず本編中での言動や経歴からして確実なのは
アルガス、ヴァイス、タルタロス、デニム、ハーディン、パッフェル、ルヴァイド、レンツェン。
イスラ、ガフガリオン、カーチス、漆黒の騎士、ビジュは可能性が極めて高いものの保留。
さて、彼らの共通点。何を指しているでしょう?
…しかし、死刑にされても仕方ない咎人が実に多いなこのロワ。
民間人の虐殺・殺害かな?
> 死刑にされても仕方ない咎人が実に多い
主催は経歴を調べてるはずだから、この点を分かった上で選んだんだろうね。
主催の意図と絡めることもできるけど、それをすると話が重くなりすぎる気もする。
うまくやれば面白いことになりそうだけど…
パッフェルさんは経歴がないような気がしないでもないな。
人生のやり直し(レベルドレイン?)受けたし
パッフェルさんに関しては、半ば黒歴史化した裏設定とかあって曖昧なんだよなぁ…。
外伝含めてかなりあるんだし、設定とか完全に補完できる資料集とか出せばいいのにと思う。
ま、流石にわかるよな。
民間人の殺害を直接指揮、ないし実行した人物が共通点だって。
まあ単なる殺人という意味なら、
出場者のほとんどのキャラクターにその経験があるし。
あのアティ先生だって、何気に両親の仇討ちによる
殺人経験がある位だからね。
てんてーはそんなことやってたっけ?
戦災孤児だけど復讐は考えてはなかったような…
>>321 残念ながら。
スカーレルとの夜会話で、実は既に殺人を犯していることを暴露している。
確認した。
まさか虫も殺さなさそうな人がそんな事してたとは…
共通ルートで暴露してたらゲームの評価そのもの変わってたかもな。
アティ先生が人を傷つけることに凄まじい拒絶反応を持つのは、
その時のトラウマによるものが大きいんじゃないかなとは思われる。
本編で人殺してないのが確定してるのは、
よりにもよってアル魔だったりする。
なんてこったw
殺人経験のない奴がロワで化けるのはよくあること。
ところで、随分前からのも合わせて2、3個ほど予約があったはずだけど、
書き手の方々はどうしてるんだろうか?大規模規制に巻き込まれたなら、
避難所に投下すれば良いはずだし・・・気になるなあ。
連絡なしで申し訳ない。
現在、追加予約分を執筆中。
村がどんどん大変な事になりそう…。
定期報告を入れず、申し訳ございません。
現在、一本目のハミルトンの繋ぎパートを書き直しています。
順調とは言えませんが、同時進行で他のパートを書いたりしています。
意外とマグナを書くのが楽しいことに気付いた…
サモンナイトの都月氏のブログでもあったが、
ネスティの先祖は界を渡ってリィンバウムに亡命してきた事実から
「界を渡る独自の技術を保有していた可能性大。」という話があった。
悪魔達がネスの血識を狙っていたのは、そこにも原因があるかもということだが。
主催側がどうやって異界の血識(誤字に非ず)を得ているかについては
概ね想像できるが、逆を言えばネスティにも界を渡る知識はおぼろげにも
残っているという可能性がある。その辺は適当に扱っていいのかな?
>>328 そうだね。その辺は書き手の判断で扱っていいと思う。
話に広がりも出来ると思うし。
ただ、作中でネスが界を渡る術について解説する描写がないからなあ・・・。
おいしい展開だけど、ややオリ設定化しそうなのがね。
異世界の存在を確信できる程度で、移動手段や技術まではわからない位が無難かな?
子孫ともなれば、幾らか異種交配も繰り返しているだろうから大分血も薄れているだろうし。
アティと会話があれば情報交換で大分考察が進むな。ただし、お互いに弟子と親友が死んでいるので精神的には色々と不味いが。
そうだね。>異世界の存在を確信できる程度
移動手段や技術に関しては、書き手次第でいい気もする。
説得力のある内容になるなら取り入れていいんじゃないかな。
多少オリ設定が入っても。
実はFE紋章と暁以外の作品は皆異世界の概念が必ずある。
ただし、実在しても天界や魔界だったりと人間の住む世界ではないのが多いのだが。
カーチスやゴードンなどの人類にとっては、異世界人は皆宇宙人なんだから、UMAだらけに見えるんだろうなあ…。
ちょっと待った。
たしかカルマエンドでネイスとアメルはマグナ置いて異世界や旅立ってなかったか?
>>334 2のカルマEDはラストバトル後にネスティとアメルがサプレスの魔界層でメルギトスを食い止めつつ
マグナ(トリス)を脱出させて、その後二人を助ける方法を探しにマグナ(トリス)が旅立つ内容の筈。
サモンのナンバリングは全部やったけど、カルマ系は一回も到達してないから、情報はネットと動画を
参考にしてるけどね。
それと、一応ネイスは偽名で、名乗ったアル魔にもばれてるし、ネスティで統一しようぜ。
そういや、偽名名乗った罰でアル魔からのおしおき確定してるからなw
ところで、ネスティは人に姓を聞かれた場合、どちらで名乗るのだろう?
姓名が持つ意味は、召喚師でなくとも重いからなー。
己の一族の過去と罪を背負うという意味でライルか?
それとも義父の心を受け継ぐという意味でバスクか?
ラムザだって、自分の背負うものから逃げた一時の間、
ベオルブの姓じゃなくて母方のルグリアの姓を名乗っていたし。
まあアルフォンスやゼルギウスほどじゃないにせよ、
やっぱり呼び名って人格そのものを表しますからね。
ネスティの事で一つだけ訂正させて。
異種交配どころか、近親交配繰り返した可能性があるじゃないか…。
血が薄い濃いなんてレベルじゃないぞこれ。
まあそりゃ歪むなという方に無理があるよなネス。
どの名前を名乗るか、は難しいな…考えれば考えるほど分からなくなる。
SS中に理由が書いてあれば、書き手任せってことでいいと思うけど。
その理由を考えるのがががががががががが…
近親交配ってkwsk
>>338 337じゃないけど、融機人っていうのは異界のウイルスに対する免疫が極端に弱い種族で、
異種族間での性交なんかでも命の危機になる可能性が高い。
ライルの一族は、メルギトスとの大戦時に故郷である機界ロレイラルから亡命してきた。
リィンバウムを侵略しようとした世界の住人である為周囲から冷たい目で見られていたが、
調律者一族が友好的に接してくれたためなんとか生きてこられた。
(ネスティが最初マグナにだけ心を開くのは、これが原因)
そしてメルギトスとの戦いの際、応援として来てくれた天使アルミネを改造したことで
多世界の重鎮に見放されるという原因を作り、大戦後に蒼の派閥の原型となる召喚師の集団に
保護(罪を償わせるために生殺しにする形)されることになる。
その後生き続けることを強要され、子孫を残すことになるのだが、自分達以外の融機人はいない。
…長くなったが、後はわかるな?
>>338 ttp://miyakoz.jugem.jp/ サモンナイトのライター都月氏のブログ。
ここの2008年10月の隠しページに、
アルディラに最後まで子供ができなかった理由の追加で、
ネスティの出生の事についても少し触れている。
その内容から近親交配された可能性が推測されるだけであって、
決して断定ではない。まあ、あそこまで死産が多けりゃね…。
ただし、これはあくまでも都月氏の脳内設定であって、
サモンナイトの公式設定ではないので悪しからず。
FEシリーズの加賀さん脳内設定と同じノリで、
あくまでも「可能性の高い参考資料」として。
あれ?あれれ?サモンナイトシリーズって、
ヒューマンドラマで基本お花畑、だったよな?
先生といい、なにか横道にそれると黒くないか?
>>339-340 ありがとう。ブログの設定を見てみたのですが、
普通の融機人が産まれる確率はきわめて低い、
人間を母体にしたほうが普通の融機人の産まれる確率がやや高い、
母体にかかるリスクが高すぎる、贖罪として子孫を作ることを強要。
つまり、使い捨てにできる母体が多数必要ということですよね。
近親交配だけでなく、死刑囚や犯罪者を出産用の母体として利用する、
というやり方が普通に行われたように思えるのですが。
ガチ犯罪者だけならともかく、冤罪、誘拐、人身売買、奴隷などの
言葉が浮かんでくるのですが。敵対派閥の関係者の再利用とか。
しかも都月氏のコメントを読む限りでは、その辺を考えた上で作ってるぽい。
これは真面目に黒いな。近親交配がマトモに思える。
サモン本編の会話テキストからもネガティブなものは感じるけど、
まさかここまでとは。別の意味でヒューマンドラマだよ。
あくまでも、「可能性として0じゃない」程度だから気をつけて。
あと、蒼の派閥はそこまで非人道的でもなければ
そこまで大それた事が出来るほどの権力もない。
国家と派閥との結び付きも弱いから、
母体用の犯罪者等を手配してもらったりも正直難しい。
隠ぺいするにも難しいだろうし、
第一、露見したら金の派閥にネガティブキャンペーン張られるだろうから
そこまでの非道を行うリスクは冒せない。そこまで面倒も見たくないだろうし。
ということで、近親が一番ありえそう。死産率も低く、だまってりゃばれないし。
あとネスティがそこまでの生まれで狂わなかったのも
人格者である養父の育て方による影響が大きいから、
蒼の派閥はそこまで非道でもない。
だからこそ、融機人の末裔が保護されているにも関わらず、
ネスティたった一人しか残らなかったのだとも考えられる。
ただし、無色の派閥がもしネスティ拾っていたなら、
そこまでの事を何の躊躇いもやりかねんのが怖いが…。
ですよね、良かった…
残虐系の設定に対する耐性はそれなりにあるつもりですが
流石に今回ばかりは自分の想像に吐き気を覚えたことを正直に告白します。
主人公サイドのメインキャラだからってこともあるのでしょうが。
「エロゲ化決定」とか茶化せるレベルじゃない…
>>342 いや、政治に関わらないとは建前で、結構色々介入してるらしいぞ?<蒼の派閥
それに非人道的じゃないと言っても、現総帥のエクスは比較的良い人格者だが、
大戦終結直後や派閥結成初期なんかは使い捨て母体を利用した交配もあったかもしれん。
まああくまで想像だし、これ以上はサモン本スレでやれと言われるだろうが。
それにしても、そんな一族の黒い記憶をずっと背負ってるネスをあそこまで
まともな人間に育てたラウル師範はすごいな。
サモンの世界観と蒼の派閥の善良なイメージを保ったまま
使い捨て母体の設定を組み込むなら、貧困層の救済名目で
高額報酬による志願者の募集、って感じになるのかな。
それでも売春の暗喩だし、充分重いけど。
ただ「異界のウイルスに対する免疫が極端に弱い」ってことだから
人間を母体にする場合は性交ではなく人工授精による交配だったのかも。
医学レベルは低いだろうけど、その辺は魔法でどうにかできそうだし。
マグナの存在が、ネスティの情操教育に一役買っていたということね。
セネリオとアイクの関係も、ある意味ネスティとマグナの環境と似ているが…。
傭兵団入隊後の養父代わりはあの神騎将ガウェインで、
人間関係はさほど悲惨でもなかったのに、なぜああなった?
成長しようという心が、セネリオには一切なかったからか?
マグナってネスティがダメなことを言ったときはきちんと否定してるね。
あと、心の中で誰かにツッコミを入れる場面なんかを見てると、
マグナも結構意地悪な目線を持ってるんだなって思う。
マグナとネスはああ見えて似たもの同士なところがあるのかも。
連れ合いが道を誤った時に忠告したり止めたりができるか否か、か。大きいな、それは。
なるほど。セネリオやミカヤ、漆黒にはそれが一切ないからな。
ああなったのはむしろ必然と言うことか。
ふと思ったんだが。
比較的このロワの主催側ってキャラクターが多い上に濃いが、首輪外せたところで正直全員倒せるのか?
血識が色々とヤバい事になってそうな上に、神殿騎士団が腹黒いし…。
それは気になってた。>首輪外せても全員倒せるのか?
主催側は質も数もそろってるから、
対主催エンドになるにしても一工夫必要だと思う。
主催サイドの内部分裂を狙った上で、もうひとつ策がいるというか。
暴走マーダーをけしかけるって手もいいと思うけど…
残った参加者にもよるけど、戦力的にはディスガイア勢が数人生き残っていれば
結構大丈夫なんじゃないかと…。
主催者達もバールの実力は買ってたみたいだし、戦闘能力としては
ディスガイア勢に劣るのではないだろうか?
それか、メイメイさんの手紙フラグを利用して、外部から加勢してもらうとか。
暴走マーダーっていっても一人や二人じゃルカヴィやディエルゴの支配能力に
太刀打ちできないんじゃね?
なんだ、意外と楽しそうだな対主催展開。
戦力から考えて絶望的ってのが却って燃えそう。
ディエルゴ関連での考えられる欠点としては、
施設のセキュリティ等で機械頼りな部分が多いってこと。
まあ碌でもないコンピューター・ウイルスとか作って
ばら撒けそうな人がいたら、施設は大混乱に陥るだろうな。
問題は、そんな人が参加者の中にいるかってことだが。
ディエルゴ(レイム)本人がウイルスみたいに機械遺跡を乗っ取ってたから、
そこらへんのガードは一番堅そうだけどな。
やっぱ原作通りネスティが道作って、誰かが聖なるエネルギーぶっばなすのが一番効果ありそう。
ディエルゴはクリプスの繋がりをまず何とかしないと。
クリプスとつながりがある限り体力ほぼ∞。
島の全生物の存在を支配してるから島全体と戦うことになり
ついでにクリプス独占するから抜剣覚醒もできなくなる。
そういえば民家の設備ってどうなってるの?
現代的な住宅もあるみたいだけど。
これから夜なのに灯りはどうするんだろうっていうのと
電源が必要な機械系の支給品があった場合に
現代的な住宅に電源があることにしてもいいのか
っていうのが気になった。
>>356 つまり、だ。今もし抜剣覚醒が使えるとしたら、
それはもちろんディエルゴの手引きということになり…。
うむ。碌な事になりそうにないな。
ネタになるから黙っておくが。
>>357 現在イスラ達がいる住宅街はかなり現代的な住宅であり、
朝の時点で照明器具があることが判明している。
それとB-2の城のスイッチ一つで照明がついている。
つまり、「どこかから」電力が供給されている。
逆を言えば、照明がすべてたいまつ便りの全ての城は
電力供給がなされている可能性が極めて低い。
(あったとしても限定的なものに限られる。)
不滅の炎の抜剣はともかく、果てしなき蒼はレイム関係なく抜剣可能じゃないのか?
あれは一応先生の心の力が源みたいで、他の魔剣とは独立してるみたいだし・・・。
逆を言えばだ。碧の賢帝は独立どころか…。
うむ。いい感じに絶望的になってきたな。
>>358 そっか、ありがとう。
照明関連の描写もしっかりちゃんとまとめてみたら
何かの伏線に使えるかもしれませんね。
頑張ってみます。
あまりお待たせすぎるのもあれなので。
前半のエトナ&中ボス、漆黒の騎士のパートだけを
したらばの仮投下スレにまず挙げておきます。
その中で矛盾する部分があったら教えてください。
…後半は、まあ、もう少し待ってねorz
本スレ投下は前編後編まとめて行うのでそのままおいといてください。
朝起きたら投下来てたーーーーーー!!!!!!!
ああああもう最高です、色々な意味で。
エトナ鬼畜で可愛いな。娘扱いされてムカつくのはよく分かるw
プリニー声ワロタ。スカトロマニア発言ワロタ。
「こいつも実は変態さんだとか言わないよね?」…言います。
マトモな感想が出てきたらまた書きます。
私も繋ぎだけでも投下できるように頑張らなきゃ…
仮投下乙です。
一人称あたしのエトナ視点のせいか、某ドラまたっぽい雰囲気を感じた。
確かに悪魔とか魔族って人間を侮って負けたりしてるからなぁ…
殿下や中ボスも能力大幅制限されてるし…実はエトナピンチ?
どっちも殺すのは惜しいけど、できれば動かしやすいエトナが生き残ってほしいなーと思う。
というか、暁キャラって基本的に動かしづらい(というかあまり動こうとしない)よな。
そういえばエトナは能力制限に気付いてないんだっけ。
エトナがピンチになった頃に駆けつけるであろう中ボスも危なそう。
しっこくは確かに動かしにくいけどいいキャラだし、もう少し頑張ってほしい。
でもエトナにももっと動いてほしいから、バトルは長引いてほしいな。
あまのじゃく気味のエトナを助けたら、却って気が狂いそうだな
ここまで怒ってたら、助けても助けなくてもキレ出す気がする。
中ボスの死亡が一番狂いそうだけど…
しっこくにはア茶とネス茶が後から来るのだっけ?
来ると思う。先生はしっこくを止めに行きたがるだろうし。
ただ、その前にネスが先生を見つけてどこかの民家で怪我の手当てをする、と。
先生は無理してでも行きたがるだろうけど、ネスが「君は馬鹿か」と言って…
村中に死臭が漂っているな。
何人生き残るんだ一体…。
でも、このまま行くと大規模バトルは深夜以降に勃発?
野外は基本的に照明は無しなのかな。
達人同士なら、月下のガチバトルとかもカッコいいけど。
深夜はイスラ組と、あとはアル魔がヤヴァイのか。
なんだかロワらしくなってきたなぁ…。
あとネサラが能力制限を受けるも同然なんだっけ。
鳥になれなくなって。
乱戦になったら戦闘馴れしてるキャラも危なくなったりしそう。
マトモな武器のないキャラもいるし。あと仲間を守ろうとして被弾とか。
>>373 鳥にはなれるけど、鳥目だから悲惨な事になる。
よほど明るい場所でもないと眼が見えないから、
安易に化身すると自殺行為になる。
朝まで生き残れるのは何人なんだろう…
早期決着になるのかな。
うーむ。希望や笑いを今後一つくらいは書いた方がいいかな。
これから、話しがどんどん重くなるだろうから。
つミ プリニー
それって希望なの?
ジョーカー疑惑があるみたいだけど。>プリニー
しかも声はしっこくと同じみたいだし。
プリニーとしっこくは、実は声優がまったく同じ人。いわゆる声優ネタですな。
ついでに言うと、フロンの元上司大天使ラミントンも声優は同じ。
そういや中ボスとウィーグラフはいつも漫才やっている印象が強いな…。
レンツェンとチキもそうだが。
漫才か…うん、確かに。>レンツェンとチキ
あと、個人的にはサナキはもう空気脱却扱いでいいと思う。
派手な動きはないけど、サナキならではの活躍をしてるし。
アルガス調教とか、インパクト強すぎ。
声優さんにはそんなに詳しくないけど、wikiで調べたら
地獄少女三期の「日暮れ坂」って話で声当ててた人
ってことでピンときた。
大変長らくお待たせいたしました。
これより、後半部分のガフガリオン、レシィ、
中ボス、ウィーグラフの投下を行います。
OKでしたら前半を加筆修正したものを添えて、
題名を変えて本スレに投下します。
言い忘れました。したらばに仮投下を完了。
今回のタイトル「想いこらえて」の元ネタはサモンナイト3の同名の曲名。
皆何かしらの思いを懸命にこらえているからですね。
まあサモンナイトファンに言わせれば、曲名レイプと言われるかも知れませんが。
私も何かしらの思いを懸命にこらえてます。嘘です。
投下乙です!!!!!
ガフじいさんカッコいいよたまらないよハァハァ!!!
そして、これでシャルトスがガフじいさんの手に渡ったわけか。
ガフじいさんがアティやしっこく関係に本格的に絡むとなると
すごく面白いことになりそうですね。
うまいこと考えるなぁ…惚れ惚れします。
では、これより前半部分のみ加筆修正したものを投下します。
『これにて第一回放送を終了する。さあ――殺し合いを再開せよ』
あー。っていうかぁ?
それはもう言われなくてもやったげるわよ。
だからさあ、陛下の剣ギッたじいさん共、
このあたしがぶっ殺してあげようとしてあげるんじゃない?
――ついでに、中ボスもまとめてだけどさ。
ったく、変な時に声掛けやがって。
鬱陶しいったらありゃしないわね。
ってーか。ヴォル何とかだっけ?
オッサン、テメーも死刑確定な?
…やっぱり、うざいわアンタ――。
ヴォル何とかのうざい放送が終わってからの事。
あたしは、ふと中ボスの先程の妄言を思い出す。
『それにエトナ。
私にしてみればラハールと同じようにあなたを娘のように思ってるんです。
どうして娘と本気で拳を交えることなんて出来ましょうか』
…はっきり言って、悪魔の吐く言葉とは到底思えねー。
しかも、そのくっさい台詞が演技でなくマジなんだから性質が悪りー。
そういう意味では、実にあのクリチェフスコイ様らしいっていうか…。
でも、繰り返し“娘”と言われて胸の奥がチクッとする。
あの女の顔が妙にチラついて頭の中のモヤモヤ。
それがさっきから、全然頭から消えてくれない。
それどころか――。
こっちのイラッとした空気読みやがらない中ボスは、
その顔に掛かった下水のような鼻の曲がる悪臭より、
もっともっとくっさくって、
もっともっと暑っ苦しい熱弁を振るう。
――そのおかげで、イライラはさらに加速する。
「…エトナ、よくお聞きなさい。
たとえ血の繋がりはなかろうとも。
貴女は私にとって大切な“娘”なのです。
何があろうとも“父親”として、貴女がたをお守りいたします。
それが、彼女も“母親”として、心より望むでしょう。
私達は、“家族”も同然なのですから。」
―――――オイ。今、なんつった?
―――――あいつが、あたしの母親だって?
―――――あの女が、心よりそれを望んでいるってぇ?
チクッと来たものが、急にズキッと来たものに変わる。
あたしの顔から一気に血の気が引き、総毛立つ。
胸が掻き毟られるように疼き、怖気とは違う寒気が身体中に走る。
知らぬ間に、あたしは唇を血が滲む程強く噛み締めていた。
体温は今間違いなく、二・三度は下がっただろう。
でも、なんなのよ“コレ”?
…すごく、すごく痛い。潰れそうに痛い。捻じれそうに痛い。
刺されたように痛くて、それでも身体にはなんともない。
そう、今の痛みは妄想だし、錯覚。それぐらいはわかる。
でも、この形容し難い、経験したことのない、
悶えそうな位のモノ凄い痛みって、一体ナニ?
―――イヤだ。聞きたくない。
あたしは俯き、放送の内容に意識を向け、
中ボスの妄言を脳内から締め出していた。
◇ ◇ ◇
熱血過ぎる臭い事真顔で言いだした中ボスの戯言は全部無視。
――無視ったら、無視ッ!!
筆記用具と参加者名簿・地図を取り出し、
黙々と死亡者名と禁止エリアに×を付けていった。
殿下やフロンちゃんの名は、呼ばれる事はなかった。
ま。たかが人間風情に、魔王様の息子や天使が倒されるとは思えないけどね…。
…べ、別に心配しているわけなんかじゃないのよ?
あたしは誰にでもなく、自分の心の中で弁護する。
でも、むしょーにイライラが増す。
さっきから、この胸の痛みって奴が全然収まらない。むしろ酷くなる一方。
中ボスの戯けた言葉が何度でもあたしの頭の中をリフレインする。
ああ、鬱陶しい。鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい
鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい
鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい
鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい――――――!!
…こんなの、全然あたしらしくなんかないッ!!
それもこれも中ボスが、あたしの事「娘」だって言い出したからだ。
そう。よりにもよって、あたしの事「娘」って。
×××でなくて、「娘」だって。
いつもみたいに、おちゃらけた口調での、
「ウィ、美しきマドモワゼル」とかなんかでもなくて。
真摯に、ただ真剣に。あたしの瞳を、正面から見据えて。
それが冗談でも何でもないことを、否応なく認識させやがる。
そして、なによりもあたしをイライラさせてしまっているのは――。
そんなくだらい中ボスの言葉一つに、一々動かされてしまっている、
あたし自身の訳分かんなさに対してなんだけどさ。
だって、相手はあの中ボスなのよ?
そりゃまあ、以前はクリチェフスコイ様だったけど…。
あー。なんか目が痒くなってきた。
って、ホントに胸糞が悪い。
おまけに吐きそう…。
あんまりにも気分が悪いから、あっちにいるオッサンども
ぶち殺してうさ晴らしでもしようかとも考えてはいたのだが、
目の前には、そんなあたしを邪魔するように、
中ボスが腕を組んで立ちふさがっている。
「あなたに乱暴狼藉の類は一切させませんよ」とばかりに。
まるで、娘の悪戯を監視する、父親のような生暖かい瞳を向けて。
子供のあたしの考える事など、全てお見通しと言わんばかりに!
…目障りな事、この上ないッ!
ああ、もう嫌だ。色んな意味で嫌だ。
イライラし過ぎてどうにもならない。
同じく放送の内容を纏めた中ボスが思考を終え、
先程よりさらに深刻そうな、真面目くさった顔で、あたしに話し掛けてくる。
だが、どうせその内容はあたしをさらに不愉快にさせるものに違いない。
この先の言葉は、絶対にあたしが聞いちゃいけないものだ。
この場に居続ければ、あたしがあたしでなくなってしまう。
――そんな、酷く嫌な予感がした。
嫌だ。絶対に知りたくない。中ボスの顔を見るのも嫌だ。
嫌だ。絶対に聞きたくない。中ボスの声を聞くのも嫌だ。
とにかく、今はあの中ボスの元から出来るだけ離れておきたかった。
物凄くやり辛い。この人の前じゃ、あたしは何も出来ない。
あたしはこの人の前だと、ホントに小娘みたいになってしまう。
あたしが、エトナじゃなくなってしまう…。
正直、この人とはこれ以上付き合っていられない。
レシィも魔剣良綱も、今は何もかもどうでもいい。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ―――――!!
気が付くと、あたしは中ボスに背を向け、村の方角へと疾走し出した。
あっちなら、鬱憤晴らしになる他のオモチャ位、いくらでもいるだろう。
それに、中ボスの生暖かい、まるで父親が我儘娘に向けるような、
実に不愉快な生暖かく突き刺さる視線とも離れる事が出来る。
だが鬱陶しい事に、中ボスはあたしを追いすがって駆けてくる。
「…お待ちなさい、エトナ。貴女にはまだ話しておきたい事が――。
『あーもう一々付いてくるな鬱陶しい、勝手に保護者面するなボゲェッーーーー!!!!』」
中ボスがなおもこちらに話し掛けようとするが、
あたしは自分の鼓膜と喉が潰れようがお構いなしの絶叫で、
空気を切り裂いて中ボスに噛み付く。
「大体、お前はあたしの父親でもなけりゃ、
あたしも世話が必要なガキじゃねーだろうがッ!!!!
てめーは過保護で子供をニートにする馬鹿親かッ?!!!
あたしは一人前のレ・デ・ィなのよッ!!!!
今更、あたしがオヤジだなんて要るかッ!!!!」
そう。あたしが欲しいのは――。
「私の考えを、急に押し付けてしまった事には謝罪します。ですが――。」
『“お花摘み”にいってくるのよ、それが悪いっての?』」
「いえ。悪くはありません。ですが、花を摘みにいかれるのなら…。
もう少し、時と場所と場合を考えて頂きたいのですが。」
一旦は立ち止まるあたしに、なおも喰い下がろうとする中ボス。
あたしはそれを遮る。これ以上は聞きたくないから。
続きを聞けば、きっとより辛い思いをするのだから。
中ボスの無自覚な生暖かい上から目線であたしを気遣う口調が、
さらに機嫌を逆撫でする。そこには全くもって悪意はないのだ。
だが、だからこそ…。
そう、だからこそ…。
あたしは中ボスに一度だけ向き直り、大きく息を吸い込む。
空気よ裂けよ、鼓膜よ割れよとばかりに絶叫を叩きつける!!
「“お花摘み”って、ようは“特盛りウンコ”の隠語だろーがッ!!!
具体的に言わねーと、そんな事すらわかんねえのかテメーはッ!!!
だからテメーはいつまでも中ボス呼ばわりされるのよ中ボスッ!!!」
…それともナニか?…やっぱりアレか?
その加齢臭漂わせるおっさんどもと一緒に臭い汁滴らせてる辺り、
テメーは“自分の娘”の脱糞さえしげしげ眺めてハァハァしたがる、
どうしようもねぇロリコンのスカトロマニアなのか、ええゴルァ?!」
あたしの顔は、おそらく凄まじく歪んでいるだろう。
だが、これ以上はもう、まともに顔を合わせてなんかいられない。
中ボスが酷く悲しそうな顔をしてがっくりと項垂れるが、
そんなのあたしの知ったこっちゃない。自業自得だ。
あたしは反転して再び全力疾走でこの場を離れる。
うまく、この気持ちがごまかせればいいのだが。
もういい。もういやだ。もうこの場にいたくない。
もう中ボスなんかとは、一瞬だって一緒にいたくない。
今のあたしは、もうあんたに保護されるほど弱くもなければガキでもない。
今のあたしは、あんたの娘なんか絶対にじゃない。
そんな扱いだけは、絶対に嫌だったんだ。
あたしはあんたの娘なんかじゃなく――――。
―――×××として、認められたかったのに。
―――エトナという存在を、一人の×××として。
たとえ、叶わなくったって良かったのに。
でもなんで、よりにもよってあんたの、“あいつ”の娘扱いなのよッ!
あああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああっ!!!!
うざいうざいうざい一体なんなんよもうっ!!!!
ワケわかんないけど、胸がすっごく痛いじゃないっ?!
心臓がチクチクとか、もうそんなレベルじゃない。
心臓に隙間なく見えない氷柱が突き刺され、体温を奪われる。
痛い上に寒い。しかもその凍えは内側からやって来やがる。
でも、どうにもなんない。ワケがわかんない。
多分、オメガヒールでもこれは治らないだろう。
現実の心臓には、何一つ刺さってないのだから。
そのもどかしさが、イライラをさらに加速させる。
そんな、ひどい違和感。
でも、痛みの理由なんて知らない。考えたくもない。
知ってしまえば、あたしはもっと酷い事になるから。
悟ってしまえば、あたしはきっと壊れるだろうから。
――あー、ちょっと目が疲れてるのかな?
視界が少しばかり、にじんでるような気がする。
それに鼻もムズかゆい。季節はずれだけど、花粉症かな?
それに目もかゆい。かゆくて痛くてたまんない。
そして首がただ焼けるように、熱い。
あたしは全力で駆ける。振り返らずに。
駆けて駆けて駆けて駆けて、駆けまくる――。
何もかも、忘れたい。
何もかも、聞かなかった事にしたい。
あたしの前に出る脚は地に溝を穿ち、音を置き去りにし。
あたしの前に出る身体は空気を切り裂き、砂塵を巻き上げ。
あたしの眼前の景色が高速で流れ、その輪郭を失う。
誰も付いて来れないように。
誰もあたしを見ないように。
正直、今のあたしの顔は誰にも見られたくないから。
きっと、相当酷い顔をしているのだろうから。
何かこう、今の気分をまとめてすっ飛ばせるものが欲しい。
ストレス解消に、バラして遊べる人間でもいればいいのだが。
そしてほどなくしてから、その視界の先に――――。
地図にあった、C-3の村が映った。
◇ ◇ ◇
だが、その村からは。
むせ返る様な新鮮な血の臭いと、肌にゾクッと来るほどの殺気に満ち溢れていた。
その気配はかなり濃く、周囲の空気さえ陽炎のように揺らめいてさえ感じる…。
だが今は、斬撃の、刃を打ち鳴らすような音は聞こえない。
また今は、矢が風を切る様な音も、銃声さえも聞こえない。
これらが意味する事は――。
この近辺で戦闘があり、つい最近一人の死者が製造されたという事。
そして、この死体を製造した殺気の持ち主が近辺を徘徊しているという事。
なぁぁぁんだ、幸先いいじゃなーい♪
あたしは舌舐めずりして殺気の漂う辺りを捜索し始めた。
早速、活きの良さそうなオモチャが見つかりそうね?
フッフーン。ま、今の憂さ晴らしにゃ丁度いいわ。
このあたしがぶち殺してあ・げ・る♪
それがあたしと全くの同類なんだろうが、
それがセートーボーエーの結果だろうが、
今のあたしの知ったこっちゃない。
――何故かって?
そりゃ、あたしの機嫌が最ッ高に悪い時に出くわしたんだから。
出会い頭に即ぶち殺されたって、それはもう仕方がないって奴よ。
…ねえ?
人間なんて、経験値とヘルを巻き上げるだけの、
十羽一絡げのゲームの雑魚に過ぎないんだから。
一々、人間の事情なんて知ったことじゃない。
そ、人間。
クリチェフスコイ様が選んだあの女も、また人間。
たかが人間風情。
所詮は人間風情。
すぐによぼよぼになって死に、ちっぽけな力しか持たない人間。
支援
さるさるさん食らった…。
忘れてた…。
残りはまた後程に。
支援が間に合わなかった…orz
申し訳ないです。続きの投下も楽しみです。
10時間経過したけど続きの投下がない…
大丈夫なのかな…
死んでんじゃねーの
12時間スレに書かないだけで死亡扱いとか、どんなロワだよ。
予約入れたまま数ヶ月間音沙汰のない人は
ニバス先生にお持ち帰りされてなきゃおかしい。
当ロワは臨時放送により12時間ルールッ!!
ひいっ!!
すいません連絡が遅れまして。リアルの都合で遅れました。
帰宅次第続きの投下します…。
>>400 ご無事で何よりです。正直ちょっと心配してました。
寒くなりましたね、ご自宅までお気をつけて。
直訳すると
冬至が近づいてきたな
暗い夜道には気を付けな
月の出てる晩ばかりじゃねーんだぜ
って事だな
…
……
………
そ の 時 、 首 輪 が 爆 発 し た ! !
【不明/一日目 深夜】
【 ◆j893VYBPfU @SRPGロワ書き手:死亡】
【残り書き手:0人 生存者無し】
「やれやれ、期待した私が馬鹿でしたかねぇ?」
座上でくつろぐ白髪の美青年は、侮蔑し切った顔で三人の臣下達に語りかける。
三人はそろって首肯し、眼前のモニターの前の惨状に呆れ、溜息を零す。
そこには『悪魔すらも呆れる』、喜劇が展開されていた。
「フム。参加者達よりも先に書き手が12時間ルールに違反されるとは。」
「呆れて声も出ぬとはこの事ですな?カッーカッカッカッカッカッ!!」
「ムー。ビーニャ全然活躍出来なかったよぉ?つまんなぁーい!」
「まあ、たかが一書き手如きに多くを期待した、我々にも責任があったという事でしょう。
しかし、物語の紡ぎ手がいなくなった以上、この殺し合いも意味がなくなりましたね?」
レイムはモニター上の参加者を愛しそうに、だが名残惜しそうにそれを見つめる。
それはある意味、人間以上に人間らしい、ある種の情感に溢れていた。
「15人。期待外れではありましたが、それなりのデータは取れました。
機会があれば、次回の肥やしにでもいたしましょう。」
「あとは…、後片付けが残っておりますな?」
キュラーは口元を歪め、不敵に哂う。
後片付けが一体何を指しているか、それは言うまでもない事象であるが故に。
誰もその内容を確認しようとはしない。する意味がない。
「ええ。『狡兎死して走狗烹らる』という事です。
では、後はお任せいたしますよ?キュラー、ガレアノ、ビーニャ。」
レイムは満足げに微笑むと、三名に命令を下した。
「ははっ。お任せを。」
「ま、成上がり者風情に遅れは取りませぬわい、カァーカッカッカッ!!」
「では、ちょっとおじさん達と遊んでくるね。レイム様?」
…こうして、三名の下僕は虚空より消え去った。
その言葉の端に、限りなく不吉な血臭の気配を残して。
-了-
とまあ即興で思いついたネタ投稿は置いといて。
今から本編続き入ります。
大変長らくおまたせして申し訳ありませんでした。
初期のあの頃のネタ投稿、色々と好きだったなぁ…。
あんなのに情けをかける理由なんて、全くない。
あんなのを真剣に愛する魔王様の気がしれない。
悪魔より遥かに脆弱な人間を選ぶ、そんな酔狂さが理解できない。
あんなつまんないの、気晴らしに適当にぶち殺して、
飽きたら魂はプリニーとして扱うだけでいいのよ?
――悪魔だったら、皆そう思わない?
あたしは一人悦に入りながら、村内を駆け廻り続けた。
◇ ◇ ◇
「お、殺ってる殺ってるー♪いーい感じじゃなーい?
なんかこう、ドキドキする修羅場って感じでさぁ?」
――あたし向きのオモチャは、すぐさま見つかった。
殺気と血の臭いが濃くなっていく所を辿ること数分。
その黒い巨大なゴキブリみたいなのは逃げも隠れもせず。
手元に落ちてある手首の付いた槍を拾い、静かに佇んでいた。
その姿は、どー見たって落ち武者。昔魔界で流行った
“黒騎士シリーズ”っぽいものを身に纏っているが、傷のない所はどこにもない。
特に胸部は大きく裂け、その隙間からは青白いブキミな炎が揺らめいてたりする。
ただそいつから溢れ出る闘志の質量だけは、到底人間の出せるレベルとは思えねー。
――こいつ、デュラハン?魔界の暗黒議会から、ここに誰か呼ばれてたっけ?
あたしはその溢れる殺気の異常性から、同じ魔界の住民を連想する。
でも、それは違う。全く以て違う。
ゴードン達とよく似た、悪魔とは異質の気配。
やっぱり、アレは人間なんだ。
あたしの直観が、直ちにそう告げる。
そう。魔界の住民にしては、態度にふざけたような所がないのだ。
悪魔の感情にはムラが多い。卑怯卑劣である事をモットーとしてるが、
人間のように真剣に狂ったり、真剣に遊んだりすることは皆無である。
ようはまあ、モノ凄い気分屋ばかりだったりする訳だ。
ま、あたしだって他悪魔(ひと)の事言えた義理じゃーないが。
あの黒いのから出る殺気は、悪魔(あたしたち)のものにしては、
あまりにも研ぎ澄まされ、洗練され過ぎている。
雑念や欲望のような不純物といったものがない。
あたかも、ごく一握りの人間が作った、
馬鹿みたいな金のする工芸品のように。
極限にまで研磨された宝石類のように。
完全に濾過された何かの結晶のように。
悪魔らしいちゃらんぽらんな雰囲気と言うか、
態度に面白半分なふざけた部分が、あまりにもなさすぎるのだ。
その黒い騎士が拾った三叉槍には両腕が付属しており、そして近くには生首が、
さらに少し離れた所には、前脚の折れた首なし馬が血の池を作り出している。
――血の池地獄。
そうとしか言いようがない、ステキ極まる光景だったりする。
うーん、いいねえー。やっぱ馴染みの空気は最ッ高だわー♪
フロンちゃんが見れば、多分卒倒するかもしんないけどね。
――目の前の惨劇。おそらく全てはこの黒いのがしでかしたものだろう。
でもこのあたしにとっては、
この黒いのも美味しいカモでしかない。
どれだけ強かろうが、所詮は人間って事。
そうである以上、悪魔のあたしの敵じゃねー。
むしろネギ(槍)やらガスコンロ(斧)やらを背負っているから、
一粒で二度・三度も美味しい鴨と表現したほうが正確かもしんない。
「へぇー。いい感じにスプラッターしてるじゃなーい?
しかもその鎧、少し前に流行った“黒騎士シリーズ”じゃないの?
まさか、アンタ。あんなショボい鎧が支給品だったわけ?」
支援
>>402-404 「◆j893VYBPfU様は貴様たちなんかに殺させやしないぞ!!
この人を殺す権利は僕だけにあるんだっ!
僕だけが…この人を殺してもいいんだ…っ!!」
by. ◆LKgHrWJock
黒いのは問いに答えない。
一切の反応を、このあたしに示さない。
だが、こちらを慎重に品定めするように、
視線だけは上から下へとゆっくりと動く。
その嫌に鋭い視線だけは、肌で感じる。
…なによこいつ。こいつも実はド変態の仲間だとか言わないよね?
「…でもね、アンタさぁ。
少しはヤルようだけど、所詮は人間なのよね?
悪魔のあたしの機嫌が超悪い時に出くわしちゃったから。
…うん、残念だけど。もう生命は諦めて、ね?
あ、でもね。持ってるもの全部差し出して土下座して命乞いすれば、
今回は見逃す事くらい考えてあげたっていいわよ?」
あたしはそう言って、口元をニィィと吊り上げる。
だが、元より見逃すつもりなんてない。一切ない。
万が一、あたしの要件を飲んだところで、約束を守るつもりも一切ない。
その貰った斧で首チョンパするだけだ。
ま、あたしは「考える」と言っただけで、見逃してやるとは言ってないし。
ついでに言えば、死後もプリニーとしてこき使うつもりだけど。
やっぱり、殺った後もキッチリとリサイクルして上げないとね?
ようは、どっちにしろこのあたしにぶち殺されろって事。
優しく殺されるか、嬲り者にされるかって違いがあるだけで。
だが、黒いのはあたしの考えに気付きでもしたのか、
三叉槍の石突を強く地面に叩き付け、拒絶の意志を伝える。
衝撃音とともに、するすると槍に付着していた両腕が下がり、
それらはボトボトと音を立て地面に転がり落ちる。
うわお、怖ーい。
背筋になんかこう、ゾクッと来るものがあるわー♪
アイツ、結構良い線行ってるわねー♪
ま、それだけ活きがいい方が、コッチも嬲り甲斐もあるってもんだからね。
「この鎧。今は加護無く用は為さぬと言えど、亡き主より賜りし最後の絆。
貴様ごとき小娘に、一切の愚弄は許さぬ。」
黒いのは何かを抑え込んだ調子で、初めてあたしに口を利く。
――ったく、人間ごときが何を勘違いしているのだか?
黒いのは槍を旋回させ、無言でその穂先をこの私に突き付けた。
なにコイツ、よほどの大物のつもりなの?
それとも状況が分かってないの?あっきれた。
ま、いーや。身の程を教えてやるとすっかね?
あたしは溜息交じりに最後通告を出す。
ま、YesだろうがNoだろうが、死刑だけは確定しているんだけどさ。
「あー。ホンットわかってないわね、アンタ。
あたしが言っているのはね?お願いじゃないの、命令。
そもそも、プリニー声してる癖にナマ言うんじゃないわよ。
今から5数える間にさっさと全部の武器捨てな?
…さもないととっととぶち殺すわよ。わかった?」
あたしは一方的に、カウントを開始する。
勿論、律儀に5秒後に攻撃するつもりはない。
残り2秒あたりで不意を突いてぶっ殺すつもりだ。
こういうカッコつけに「卑怯者~!!」とか言わせて、
吠え面かかせるのが最ッ高に楽しいから。
『5』
『4』
あたしはカウントする。一方的な処刑宣告。
―――だが。黒いのはあたしのカウントなどそもそも聞いちゃいなく、
むしろ穏やかに口元を綻ばせながら、こちらに話しかけてきた。
(その兜の大きく横に裂けた頬当てから、表情だけはハッキリとわかるのだ)
「フッ、欲しければ力づくで『死ね』」
――スイッチが入る。唐突に。
その薄笑いを消す。…掻き消してやる。
あたしは言葉の内容など聞かず、腰にあった手斧を無造作に投擲する。
そしてそれを追いかけるように、前方へ駆け大きく踏み出す。
轟と、風が唸る。斧が高速で回転し、黒いのの胸板に吸い込まれる。
だが、手斧は黒いのが無造作に薙ぎ払った斧によって払いのけられ、
有らぬ方向へと飛ぶ。
――だが、それで終わりじゃない。
生意気な奴ね。大人しく喰らいなさいよね、ったく。
でもま。不意討ちってね、一撃で終わりってわけじゃないのよ?
…バーカ、くたばりな。
あたしは手斧を追いかけるように、間合いを詰めていた。
あたしは右足で地を蹴り、前方に跳躍。
左足を後ろへと引き絞り、その勢いのままに、
黒騎士の股間へと回し蹴りをかます。全力で。
アレに決まれば、男なら悶え死に確定だろう。
だが、あたしの飛び回し蹴りもまた、僅かな捻りで躱される。
打ち払った姿勢のままで。身体の軸を変えただけで。
その身体には届かない。あたしはその勢いのままに通り過ぎ、構え直す。
擦れ違うときに何かがあたしの頭を掠めたのか、右側のおさげが解ける。
うっわ~、バッレバレじゃん…。
こいつ、最初から警戒しまくってやがったか。
チッ…、臆病さだけは人一倍なのねこの人間。
あたしは軽く舌打ちする。
この不意討ちで、一気に決めちゃうつもりだったんだけどなー。
でも。ま、いっか。まだまだ武器はたっくさんあるんだし。
「…この程度か?」
「あっらー。ごっめんなさーい。
ちょっとムカついたから思わず手足が滑っちゃったわ?」
自己支援。
イオスネタを…。
またさるさるさん食らった…。
しかし、さっき間違えてあと一歩でRPGロワに投下するところだった…。
あー、ヒヤリと来たわ。
ゆっくり投下でもさる規制って食らうんですね。
あと少しだけなら私も支援できると思いますが…
いつか使いたかったイオスきゅんネタ。
何かを抑え込んだ、実に冷やかな声をあたしにむける黒いの。
あたしはことさらに厭味ったらしく笑顔で答えてやるが、アイツはまるで動じない。
むしろ、この黒いのは大斧を真横に振るい、
なんとあたしを蠅でも追い払うかのような仕草を取った。
「今の一合で理解した。期待外れ、という事か。
…小娘。命惜しくば、背を向けてここを去れ。」
黒いのの淡々とした声に、こちらに怯えた様子はまるでない。
あたしに返す視線と言葉は、ただ軽侮と失望にのみ満ちている。
あいつが抑えていたのは怒りなんかじゃない。軽蔑感なんだ。
つまりはこの黒いの、あたしなど歯牙にもかけていないって事になる。
――心の底から。
ナメてんのかぁぁぁあああ、コイツはぁぁぁぁああああアアァァ!!!
このあたしを!
悪魔であるこのあたしをッ!
あの女と同じ、たかが人間の癖にッ!!
百年にも満たずよぼよぼになって死ぬ、たかが人間の癖に!
ちょっとしたことで簡単に壊れて死ぬ、ひ弱な人間の癖に!
あの女と同じ、たかが人間の癖にッ!
「不意討ち一度防いだ程度で、随分と調子ぶっこいてくれるわねアンタ?
たかが人間風情が悪魔ナメまくってくれてんじゃないの、アアンッ?!
楽には死ねねーぞテメーはよおー!!」
あたしは怒声を張り上げる。
だが、黒いのはそれに一切怯む事も無く―――。
むしろ氷点下を下回るような、こちらが怖気さえ走るような、
これまでで一番冷ややかな、敵意を剥き出しにした口を利いた。
「…愚弄しているのは貴様の方だ、悪魔。」
「たかが化け物風情が、人であるこの私を斃すつもりだと?
人の及ばぬ多大な力に溺れ、人の足掻きを知らぬ貴様ごときが?
…不可能だ。私の、我が師ガウェインの剣を見切ることは。
所詮人間ではない貴様ごときには、絶対に凌げぬのだ。
人の剣技というものは。」
――ああ?
なにコイツ。今、なんて言いやがった?
あたしの事、このあたしの事…。
“化け物風情”だってぇ?!
“悪魔は決して人間には敵わない”、だってぇ?
…ま、妄想抱くのは自由なんだけどねッ!
でもま、あのお兄さん結構いい年みたいだから、
そろそろ現実って奴を教えて上げてやんないとね?
お兄さんのそのはったりと格好付け、
それでもって人生はここでオシマイって訳。
もうコイツに付き合うのも飽きちゃったし。
つーか、ウゼェ…。
――――捻り潰して、やる。
あたしは殺意を固めると、目の前の黒いのに向きなおった。
◇ ◇ ◇
――――つまらぬな。
今宵の宴の主賓たる剣姫が、この私を探し求めてわざわざ舞い戻ったのかと思いきや。
期待を胸に抱き振り返れば、それは想い人でもなければ私を愉しませる程の戦士でもなく。
それは身の程知らずの、ただ馬鹿げたまでの身体能力だけが取り柄の、凶戦士しか来なかった。
―――私はただ、失望の吐息を一つ漏らす。
この小娘からは。
先程の対峙の時に抱いたような戦いへの高揚も、
己が死線を潜る時に感じる冷たく甘美な恐怖も、
難敵を貪る際にのみ抱くあの抑えがたい歓喜も。
その一切を私に感じさせる事は無く。
ただ私は、沸き上がる酷い失望感にのみ支配された。
先程の一合で気付いたこと。
膂力は向こうが優る。
速度も向こうが優る。
体力も向こうが優る。
おそらくは身体能力の全てにおいて、この私を凌駕している。
加えて、士気も極めて高い。闘争心と殺意があの小娘を今支配している。
ラグズの王族を、力はそのままに人の形を取らせれば、おそらくはこうなるだろう。
あの小娘が自称するように、あれがアティ殿から聞いたいわゆる“悪魔”と
呼ばれる存在なのだろう。常識外の身体能力が、それを裏付けている。
その上、先程の不意討ちの手際といい、
戦闘経験は十分に積んであるようだ。
アティ殿のように、傷つけ合いどころか、
殺戮に嫌悪感を抱くことさえも一切ない。
心身ともに“只の人間”は遥かに凌駕しているだろう。
それは、確かに“只の人間”に到底敵う存在ではない。
――だが、それだけだ。所詮はそれだけなのだ。
あの小娘は、己の心身を磨き抜いた純正の戦士などでは決してない。
あの小娘は、快楽に耽溺した単なる殺戮嗜好者に過ぎないのだ。
支援
あれの心には、極限にまで研ぎ澄まされた緊張感というものがない。
全身全霊を以て、目の前の敵と対峙しようという真剣な意志が無い。
戦闘という生命の奪い合いを、ただ己の一方的な収奪行為と見なし。
刺激的な遊戯の延長と見なし、だがそこで、その心は止まっている。
己もまた殺される可能性がある事を、寸毫も考えてはいないのだ。
己もまた殺される可能性をも存分に愉しみ、歓喜する事を知らぬのだ。
現に、不意討ちの擦れ違いざまに、その細首狙いで鉤に曲げ差し出された私の左腕。
あれが寸前であえて“外された”事にすら、あの小娘は気づいてはいなかった。
己の身体能力が、そのままに己の頚骨を無残に折る凶器へと堕していた事実にすら。
己の身体能力を、その呼吸を完全に見切る人間がいる現実にすら。
――何一つ。そう、何一つ。
あの小娘は、気付いてなどいなかったのだ。
その救い難い無知は、己への過信が起因するものであろう。
己のあまりにも恵まれた身体能力が故に、
これまでに敵を寄せ付けなかったが為の、致命的な弱点。
そう。あの小娘はよく知っているのだろう。
人間というものが、いかに脆弱で壊れやすい存在であるかを。
人間というものが、いかに非力で動物にすら劣るという事実を。
己がいかに優越した存在であるのかを。
だからこそ、油断する。
だが、あの小娘は全く知らないのであろう。
人間というものが、いかに己の非力さを知り抜いているという事を。
人間というものが、いかにその上で脆弱さの中から工夫を凝らし、
時には摂理すら曲げる奇跡すら起こしえるのだという事実を。
己もまた、いかに無力なる存在であるのかを。
だからこそ、慢心する。
武術とは、決して肉体の優越だけで全てが決まるものではない。
そんなものではありえない。
それでは術技の意味がない。
力を制してこその技、
力を利用してこその技。
己に優る、あらゆる敵を打ち負かす術理を用意する。
武術の神髄とは、そこにあるのだ。
動物にすら身体の劣る、何も持ち得ぬ貧弱なる人間が。
なけなしの知恵を絞り、神経を極限にまですり減らし。
寸毫の隙を探し出し、寸毫の時間をも惜しみ、
寸毫の距離さえも奪い、死力を尽くして敵を討つ。
余分なものは何一つない。そんな余裕は持ちえない。
人類の叡智の積み重ね、機能美の極致。
その結晶こそが、刀剣術技(ブレイドアーツ)と呼ばれる至芸。
人が生み出したしたる、最高の殺しの芸術。
それはただ身体能力にのみ頼る者には、到底身に付けようがない。
それはただ恵まれた才にのみ奢る者には、理解出来ようはずがない。
その必要性が、全く以て発生しないのだから。
獣の世界に、武術が決してあり得ないように。
心身を極限にまで削り取られ、またそれにより磨き抜かれた者にしか。
貧弱なる人間のみが用いる、人の剣技は理解できないのだ。
小娘、貴様は私の敵ではない。
小娘、貴様は我が師ガウェインの剣の敵ではない。
たかが悪魔(けもの)の武術では、
人の武術の足元にも及ばぬのだ。
――それを今、貴様に教えてやろう。
私は眼前の不遜な小娘と対峙し、得物を構え直した。
【C-3/村/1日目・夜(放送後)】
【エトナ@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:健康 、全力疾走による疲労(小)、精神的喪失感(中) 、
激しい苛立ち、右半分のおさげが解けている。
[装備]:クレシェンテ@タクティクスオウガ、エクスカリバー@紋章の謎
[道具]:支給品一式(1/2食消費)(道具・確認済み)
[思考]1:あぁ~、何かイライラするッ!!
2:魔剣良鋼が欲しい。
3:目の前の黒いの(漆黒の騎士)をぶち殺して装備を奪う。槍と斧もあることだし。
4:優勝でも主催者打倒でも人助けでも、面白そうなこと優先 (とりあえず暫くは主催打倒でいいかも…)
5:胸が痛い。すごく痛い。でもその理由は知らない。考えたくもない。
[備考]:エトナの投げた手斧@暁の女神が、C-3の村内西側の何処かに転がっています。
漆黒の騎士のウルヴァンにより薙ぎ払われたので、損傷している可能性があります。
【漆黒の騎士@暁の女神】
[状態]:健康、若干の魔法防御力向上(ウルヴァンの効果)、全身の装甲に酷い裂傷、
鳩尾に打撃痕、肉体的疲労(小)※いずれも所持スキル「治癒」により回復中。
[装備]:ウルヴァン@暁の女神、グラディウス@紋章の謎
[道具]:支給品一式、エルランのメダリオン@暁の女神、ハーディンの首輪
[思考] 1:……………愚か者め。
2:オグマに出会ったら、ハーディンの事を必ず伝える。
3:アティに対して抱いている自分の感情に戸惑い。ミカヤには出会いたくない。
4:催されたこの戦い自体を存分に楽しむ。勝敗には意味がない。
5:優勝してしまった場合、自分を蘇らせた意趣返しとして進行役と主催者を殺害する。
[備考]:アティからディエルゴ、サモンナイト世界とディスガイア世界の情報を得ています。
鳩尾の打撃痕と肉体的疲労に「治癒」スキルが働いています。
漆黒の騎士はこれまでの戦闘から、首輪には単なる能力制限機能のみならず、
微弱な感情増幅効果と、それに伴って身体能力強化するいわば「小さなメダリオン」
ではないかと推測しています。
[共通備考]:近辺にハーディンの両腕と生首が落ちています。
少し離れた場所にハーディンの遺体(胴体部分)と、
その懐に抱えたままの闇のオーブ@紋章の謎があります。
村の西側の大通りに、両前脚が折れ、首が切断された軍馬の死体と、
ハーディンのデイバッグがそのままに放置されています。
【C-3・小山の麓/1日目・夜(放送後)】
【中ボス】
[状態]:軽症(顔面の腫れと痛みは引きました) 、うなだれている
[装備]:にぎりがくさい剣@タクティクスオウガ
[道具]:支給品一式 、ウィーグラフのクリスタル
[思考]:1:ゲームの打破
2:自分が犠牲になってでもラハール達の帰還
3:…困りましたね、反抗期?
4:ス、スカトロマニアですと……orz
支援
> 己もまた殺される可能性をも存分に愉しみ、歓喜する事を知らぬのだ。
しっこくのこういうとこ、たまらない。
では、続けて後半部分の投下を行います。
さるさるさん、どうなるかな?
『これにて第一回放送を終了する。さあ――殺し合いを再開せよ』
――やっぱり、そう来やがったな?
「死者蘇生」…。実に分かり易い、安っぽい奇跡って奴だ。
ま、今回はその奇跡の大安売りのお陰で、こっちも蘇ったンだがな。
“この殺し合いの参加者達の中には、我々が蘇らせた存在もいる。”
この位の情報は、あえて力の誇示にバラしやがるかと思ったが…。
案外、あいつらも情報ってヤツを出し惜しみするもンだな。
それとも、こういった情報は自分達の口から出すより、
オレ達蘇生者が自発的に流すに任せたほうが、真実味が増すとでも判断したか?
ま、どちらにせよこれで厄介事が増えるってのは、間違いないだろうな。
――オレは横目で、早速その“厄介事の種”になりそうな少年の顔を眺めていた。
レシィの俯いたその顔は見るからに青褪め、形のいい唇はブルブルと震えている。
目頭には大粒の涙が溜まり、さっきから小声でうわ言を繰り返している。
アメルさんが、うそだ、と。信じられない、と。
どうして、みんな簡単に殺しあったりするんだ、と。
さっきの死亡者達の中に、知り合いがいたのは疑いようがねえ。
…何言ってやがる。人間ってのは、そういう風に出来ているンだよ。
レシィ。お前はな、人間の醜さってのにまるで無知なンだよ。
ま、知り合いの一人や二人死ンだ程度で泣き喚いているようじゃ、
この先到底生きていけンのだがな。戦場じゃ、もっと死ぬもンだ。
その程度で一々悲しンでたら、気が狂っちまうンだよ。
(ま、オレもとっくに気が狂っちまってるのかも知れンがな。)
今は殺し合いの真っ只中にいるって事を、すっかり忘れてやがる。
泣いたり笑ったりするのは、それが終わってからでも充分だろうが。
今は、その感情を切り離せ。心を凍らせろ。兵士である事に徹しろ。
英雄たらんことは、露ほどにも思うな。ただ現実のみを見据えろ。
それが、一人前の人殺しを生業とする奴ってもンだ。
――そうでなきゃ、オレはお前という役立たずを斬らなきゃならン事になる。
オレがこの戦場で、最後まで生き残るためにな。
一方、ウィーグラフもまた目の前のオレの事を忘れて、
沈痛な面持ちでレシィを気遣っていた。
さっきの放送がもたらた事位は、あの石頭にも想像ができるようだ。
“これから”もたらす事にも、想像が追いついているかは疑問だが。
…だが、こちらへの警戒心を、そちらに移す手助けにはなりそうだ。
向こうじゃエトナって狂犬が気障な優男相手に大声で喚き吠えている。
耳を凝らして聞いてみるに、内容はどうにも痴情のもつれにしか聞こえン。
一人の女扱いされたい背延びしたガキと、あくまでも娘扱いをする優男。
認識が根本から違う為、互いを理解できそうにないってことか?
――内容は、ああ、なるほど…。
こりゃ上手く利用できそうだ。
二人はしばらく痴話喧嘩に興じていたが、
やがてエトナが優男に凄まじく下品な言葉を並びたてると、
やがて稲妻を思わせる速さでこの場を走り去って行った。
――おいおい、騎馬より速えじゃねえか。あの化け物女は?
優男はしばらくの間、あの度し難い女が走り去っていくのを茫然と眺めていた。
そして、何かを思い直したようにこちらへと向かってくる。
おそらくはあの糞の役にも立ちそうにない、
それどころか存在自体が有害でしかないあの狂犬女を
探しに追いかけに行きたいとでも申し出るつもりだろう。
“父親”として、愛する“娘”とやらを。
――――冗談じゃねえ。
いや、待て。ともすればこれは絶好の機会かもしれン。
エトナを非難されず堂々と、あるいは人知れず間引く為のな。
――――あの女。関わり合うには、どうにも危険が大きすぎる。
遊び半分の気持ちで、軽々しくオレ達を「殺す」つもりだった。
それも二度も。理不尽も極まる理由で。
おそらくは何の考えもなく、気の赴くままに。
支援
自己支援
まただ…orz
さるさる解除の基準ってなんだろう?
他の書き込み数?それとも時間?
また規制? ゆっくり投下&連続じゃなかったのに。
もしかして規制条件が厳しくなってるのかな…
規制は毎時0分に解除されると聞きました。
他にも条件ってあるのかな…
あの女、おそらくはこのまま放置しておけば、
その時その気分次第で平然と殺戮を続けるだろう。
そこに一切の計画性はなく、それ故にいかなる妥協も打算も通じはしない。
そんな危険人物と手を組めば、こちらもその同類だと見られかねない。
あの女が有る程度計算高く状況を把握できれば話しは別だが、
それでも己の感情を最優先するようにしか見えン。
つまり、いくら強かろうが存在次第が足手まといでしかないのだ。
今後、このゲームに乗るにしろ、反逆するにしろ。
あのイカれた女と関わり合うメリットは絶無であり、
また放置する事によるデメリットは極めて大きい。
あんな馬鹿ガキに脱出のカギを握る重要人物でも殺されればコトだ。
目も当てられん。
――そして、なにより。
あの女の知り合いが現れやがったのだ。
しかも、随分と親しい様子ときやがる。
あの優男は、あの狂犬を何があっても守ろうとまで抜かしてやがる。
同行すれば、確実にその自己中心的な厄災に巻き込まれ、
その尻拭いをこちらも手伝わされる破目にしか会わんだろう。
あれと仲間扱いされるという事自体が、全てに支障をきたす。
そうなれば、あの女は隙あらば早急に始末するしかないだろう。
あの優男と再会する前に。あの気狂い女の尻拭きを手伝わされる前に。
事は一刻を争う。出来るだけ迅速に。出来るだけ確実に。
やらねばならん事が出来ちまったって訳だ。
だが、これだけの人間に囲まれながら
あの小娘を始末するのは流石に不可能だ。
何よりオレ一人が汚名を斬るばかりで、何一つ良い事がない。
――殺せば地獄。
――殺さずとも地獄。
ならば、あれをどうにかして始末するためには、それに適した状況を作り出すしかない。
今の集団を上手く分断し、エトナを殺す為の装備を取り戻すに最適な状況を、だ。
支援
でもそろそろ急落ちすると思います、ごめんなさい。
だが、レシィから力づくで剣を強奪する訳にもいかン。
二人の監視の目もある。状況は己に不利となるばかりだ。
それに、たとえ体よく盗めた所で。
先程のように、レシィが動物並の嗅覚で
体臭を頼りに追跡してくるのは確実だ。
ここで奪うのは、あまりにも割に合わン。
もう一度依頼して、レシィがもう一度快く貸与してくれればいいンだが。
それにした所で、ご主人さまが見つかった時は剣を返す必要がある。
もっとも、その間にレシィが人知れず死にさえすれば話しは変わるのだが…。
――そう、人知れずにな。
オレの中にある、極めて醒めた傭兵として部分が、そう囁く。
第一、生前から邪魔者は手段を選ばず排除してきた身だ。
敵味方問わずに、な。
その犠牲者の中に純真な少年の死体が一体加わったところで、
今更何の良心の呵責も抱きはしない。
そんな役に立たないもンは、とっくの昔に捨てちまったからな。
それが一体どういうものか、今じゃもう思い出す事すらも出来ン。
レシィを置き去りにする事が極めて困難である以上、
彼の処遇についても早々に決めてしまわなければならンだろう。
この先あいつを利用し続けるべきか?
あるいは、早々に始末すべきなのか?
――オレは考える。
非難されずに邪魔者のみを効率よく排除する方法を。
レシィから武器を頂き、安定した戦力を得る方法を。
この俺に、出来るだけ火の粉が被らないように。
この俺が、まだ両方の立場も選択出来るように。
そして、その状況を得る一つの論理と回答を得た。
――あとは、実行あるのみ。
オレは計算を終えてそう判断すると、レシィに向かって大声を上げた。
支援ありがとう
◇ ◇ ◇
「オイ、レシィ!いつまでもボケッとしてんじゃねえッ!」
「――え?!あ、はい!!ガフおじいさん!!」
レシィはほとんど反射的にオレの返事に答えた。
まだ返答するだけの元気と正気は、どうやら残っていたらしい。
ウィーグラフはおろか、こちらに向かおうとしていた優男も、
オレの出したその大声に注意を引かれる。
オレはこの場の主導権を、周囲の注目を集める事で奪う。
あとは、どれだけこの状態を維持できるか?それで全ては決まる。
これ以上、厄介な不条理に振り回れるのはたまったもンじゃねえ。
不確定要素や不安要素は、早期に出来るだけ潰しておくに限る。
ウィーグラフやレシィは、まあどうとでもなるだろう。
だが、問題はあのエトナの自称父親のあの優男だ。
…こちらの誘導には、エトナとの隔離には、
まずあいつをまずどうにかせにゃいかン。
さっきのエトナって小娘との会話で、優男の性格はおおむね想像は出来た。
あの優男の言葉遣いからは、十分な知性というものが感じられる。
おそらくは、その外見以上に濃い人生経験を重ねているのだろう。
だが、情が深いが故にそれが絡むと目が曇るタイプと見えた。
だからこそ、すでに打つ手も見えている。だが、過信は禁物だ。
…オレの見立てが、果たして間違いじゃなきゃいいンだがな。
オレは別の思考を並行させながら、次の言葉を紡ぎ出す。
「レシィ!お前にゃ泣く前にまだやるべき事があるだろうがッ!
御主人様を探して、無事その剣を渡すって大事な仕事がなッ!
死んだアメルって奴が、お前がそこで挫けて腐っている様を見て、喜ぶとでも思ってるのか?
そこで手をこまねいていて、アメルがそれでいいとでも思ってくれるのか?」
オレはここで一呼吸を入れる。この次を、殊更に強調するために。
自己支援
「思いはしねえだろ!むしろ、自分や他の仲間の事を先に考えろっていうだろうが!
わかったら、そこでいつまでも女みたいにメソメソしてやがるンじゃねえッ!!
てめえも前に付いてるもンがある、立派な男なンだろうがッ!!」
オレの一喝に、レシィは衝撃を受けたように背を伸ばし、心を奪われる。
陳腐に過ぎる激励の言葉だが、使い古されている分安定した効果はある。
ま、この部分についてはオレも嘘は付いちゃおらンだがな。
ウィーグラフは非難がましい、警戒感を剥き出しにした視線をこちらに寄越す。
――ま、これも想定通りだ。
「それとも何か?さっきのヴォルマルフの野郎の言い分に乗り、
死んだ奴を蘇らせるため、早速オレたちを残らず殺す決心を固めてやがるのか?
…ま、それも良いかもしれンな?なにせ、オレも生き返った身の上だ。
死んだ人間の一人や二人、纏めて蘇らせるなど造作もないだろうからな?」
少々勿体ないが、ここで温存していたカードを一つ切る。
ウィーグラフとのやり取りは、レシィも覚えていただろう。
死者蘇生において、これは極めて現実味を帯びる事になる。
もっとも、今の暴露はレシィが危うい方向に傾く前に、
あらかじめ釘を刺す意味合いも含まれているのだが。
だがまあ、こいつに限ってこれはあり得ンわな?
あいつにはまだ四人、仲好しの知り合いがいるからだ。
オレは心にもない事を口にし、レシィの反応を窺う。
「ガフガリオン、貴様…。」
ウィーグラフの視線が、怒気を通り越して殺気すら帯びる。
その利き腕は、既に腰の剣にかかっている。
「これ以上余計な事を言えば斬る」とでも言いたいのだろう。
だが、レシィはウィーグラフの前に立ちそれを阻むと、オレに向きなおる。
「違います!ボクはそんな事、絶対にいたしません!!」
レシィがオレを睨みつける。
だが、その瞳の奥に燃える感情はオレへの憎悪ではなく。
悲壮感と、ある種の決意が見て取れた。
「それにです。もし、ボクがそんな事をすれば…。
ご主人様やネスティさん、それに多くの仲間たちがみんな、みんな悲しみます!
アメルさんだって、ボクがそんな事をして蘇らせた所で絶対に喜びません!
ご主人様達の為に!
この場にいる皆の為に!
なにより、アメルさんの為にッ!
ボクはこの先どうあろうとも、みんなと一緒にこの争いを止めてみせますッ!」
レシィの瞳には、先程の淀んだ濁りは既になく、その奥には光が戻っていた。
空元気、とも取れなくはない。だが、根が単純な分、効果は絶大だったようだ。
「…よし、これで喝は入ったな。レシィ?」
ここで俺は、取って置きの笑みを浮かべる。
見せ付けるような、腹黒い策士の笑顔だ。
そう。今の台詞は芝居である事を強調した方がいい。
さらに奥底に潜む真意だけは、決して悟られてはならないが。
オレの芝居がかった笑顔に、レシィは得心したように顔を輝かせ。
一方で、ウィーグラフはまとめて苦虫を噛み潰したような表情でこちらを見た。
オレの芝居を理解はしたが、こちらをまだ信用してはいないらしい。
…意外に、オレの真意にはおぼろげに気付いているのかもな?
「…ガフガリオン、貴様が他人を思いやるのには驚かされたが。
物事には、まずは言い方というものがあるのではないのかッ?」
言葉の端に怒気すら滲ませて。ウィーグラフはこちらへとにじり寄る。
ただし、声高に非難する様子はない。こちらの言い分の正しさをも、理解しているが故に。
そして、相手がこちらを正しく理解しているなら、次に発する言葉も恐らくは想定通りだろう。
「それとも、だ。他になにか狙いでもあるのか、ガフガリオン?
昔から目的の為なら手段を選ばぬ貴様が、ただで他人を利するなどありえない。
この少年を再び誑かせて、今度は一体何を企んでいる?」
正解だ。そして正しい認識って奴だ。
だがな、その言葉こそを待ってたンだ。
「…で、もしもこのオレが何か企ンでいるとか言ったら?」
「斬る!やはり貴様は信用ならん。甘言を弄して何か企みを為す前に、
厄災の種は早々に摘み取るに限る!」
オレの軽くおどけた挑発に対して(実は嘘など付いちゃおらンが)
ウィーグラフはそう言って、今度こそ剣の鞘に手をかける。
なンだ。その一点じゃ意外と気が合いそうだな、お前とは。
ま、こちらが摘み取る厄災の種って奴は違うンだがね。
「ほう。丸腰のオレをただ“疑わしい”って理由だけで斬るって言うのか?
万一、無実ならどうするつもりなンだ?それでも念のため殺るっていうのか?
それもたった今、レシィ達の前でか?そりゃ、大した騎士道精神だな。
今は亡き骸騎士団の連中も、さぞや感心するだろうよ。
アンタは疑わしきは滅する、正に騎士の鑑だってな。
誉れ高き東天騎士団の某分隊長にも、決して引けは取らンだろうとよ。」
オレはあえて「骸旅団」ではなくて「骸騎士団」の名を出す。
そしてその引き合いに、あいつが軽蔑しているオレの事を出す。
その言葉が持つ、痛烈な皮肉の意味合いに気づいたのか。
ぐぬっ…、と小さなうめき声を挙げて悩み出す白騎士。
己の「騎士道精神」とやらが、大きな障害となったのが目に見える。
確かに、こちらに決定的な不正の証拠もないままに、
問答無用で斬り捨てればレシィは黙ってはいまい。
後味の悪いものを、数多くその場に残すことになる。
レシィがウィーグラフを一切信頼しなくなり、
むしろ憎悪するようになるのは当然の結果だ。
一緒にいる、優男の信頼も失うかもしれない。
それ位はあいつの頭でも理解はできるのだろう。
…お前の判断は、決して間違ってなンかねえよ、ウィーグラフ。
過去の経歴を知ってりゃ、尚更だ。
もしオレがお前の立場なら四の五の言わせずに、
たとえ無実だろうが疑わしきは斬り捨てるがね?
ま、「人知れず」って条件は付けるがな。
それが一番確実だからだ。オレ達は所詮人殺しだ。
それが死体を増やす事に、一々躊躇うンじゃねえ。
自己支援。
今度はさるさん来るな…。
支援
多分今日はこれが最後かな。明日は書き込めるかどうか…
オレは目の前の騎士が同じ発想に到る前に、
続けて言葉を繰り出す。
「オレが怪しいかどうかは、オレの話しを聞いてから決めても遅くはねえだろ?
それに――。」
「それに?」
オレは一旦言葉を切り、優男に視線を送る。
無論、しばらくここに釘付けにする為にだ。
「この先オレ達全員がどう動くにしろ、情報交換は欠かせン。
レシィも、ウィーグラフも、そしてアンタもだ。
何も知らず、今下手に動くの危険過ぎる位はわかるだろ?
…まずはそれからだ。」
正確には、「このオレが上手く動くために」なンだがな?
オレは心の中でのみそう呟いてから、口を開き始めた。
◇ ◇ ◇
情報交換という名の“情報収集”は、意外とあっけなく終わった。
一縷の望みをウィーグラフに託してはいたが、
やはりというか、大した情報は与えられていなかったらしい。
これまでに遭遇した人物の情報も一切なし。
…ようは、オレの勘は外れってことだ。
あえて収穫を挙げるなら、神殿騎士団全幹部の名前及び戦力だろう。
この殺し合いを、ヴォルマルフ一人で取り仕切っているとも思えん。
対峙する事になるなら、いずれそういった連中と向き合う事になる。
オレはその幹部達の名を尋ねた。
神殿騎士ローファル・ヴォドリング 文武に長けた魔法剣士
神殿騎士バルク・フェンゾル 反体制派の機工士
神殿騎士クレティアン・ドロワ 才気溢れる妖術師
神殿騎士イズルード・ティンジェル 理想に燃える若き騎士
神殿騎士メリアドール・ティンジェル 父の術技を受け継ぐ剛剣使い
神殿騎士幹部全員の大雑把な戦力とその性格をウィーグラフから聞き出し、
参加者名簿の空白欄のメモに残らず書いておく。
後々、役に立つ事があるかもしれンからな。
気が付けば、流石にその情報の重要性に気付いたのか、
残る二人もその名前を名簿に刻んでいた。
特に後ろ二人は重要だ。
ともすれば、ヴォルマルフの人質に出来るかもしれン。
ただし、ウィーグラフからの話しを聞く限り、
到底このゲームに賛同する性格だとも思えン。
そもそも、この二人に到っては最初から協力させていない可能性すら考えられる。
ま、あまり当てには出来ンって事だな。
表情はつぶさに観察してみたが、全ての情報において別段嘘を付いている様子もない。
つまりは言い分を信じるなら、「ウィーグラフは本当に捨てられた」事になる。
今の段階では、未だ断定には足らンのだが。
まあ、元から真面目すぎて融通の利かなさそうな奴だ。
せいぜいが猪武者としてしか利用できん。諜報戦など論外だ。
ヴォルマルフが捨てたくなる気持ちも、まあ分からンでもない。
だが、おそらくはそれも織り込み済みでスカウトしてるだろう。
もし、ヴォルマルフがこいつを殺すつもりなら、
もう少し有効な形で使い捨てる筈だが?
オレが推測できるのは、それまでだ。
ビューティー男爵『中ボス』というけったいな名の優男の情報も、
それなりに価値のあるものだった。主に、危険人物に関してであるが。
いわゆる正義馬鹿だと思われるフロンとゴードン。
エトナって狂犬の他にも、ラハールという魔王の息子って奴が知り合いにいるらしい。
ラハールはエトナに輪をかけてのかなりの厄介者らしい。
あの会場で高笑いしてバールって奴に吹き飛ばされていた、あの半裸の少年だ。
関わり合いになりたくない奴だとは思ったが、
あいつもまたこの優男の知り合いとはな。
…アンタにゃ、心より同情するよ。
そんな者達の保護者をやってたなンてな。
支援
まあそんな所で。
それぞれの簡単な自己紹介とそれぞれの知り合い、
これまでに出会った人物達の確認、
そして今後の取るべきの確認にいたった訳だが…。
件の優男は、見るからに焦りを見せていた。
『“お花摘み”にした所で、どうにも遅すぎる』という事だろう。
――ま、あの様子じゃ二度と戻っては来ンだろうがな。
もう少し、お前は女心って奴は理解したほうがいい。
そのため、これから一人失う破目にあうンだからな。
――さて、本番はこれからだ。
優男が口を開こうとする直前に、オレはあいつの要望を先に口にする。
この場を仕切っているのはオレだ。余計な流れに持っていってはならない。
「…あのエトナってお嬢ちゃん、随分と遅いもンだな?」
「もしかして、エトナさんに何かあったのでしょうか?」
知り合いのアメルって娘が死んだのがまだ堪えているのか?
不安を煽る事を口にするレシィ。…いいから、お前は黙れ。
露骨に顔色を悪くする優男に、俺は静かに諭す。
「“何かあった”んじゃなく、“ここで何かあった”からって事かもしれンがな。」
「…どういう事なのか、お答えしていただけますか?ガフガリオンさん。」
出会ったころの情けない顔とは違い、張り詰めた顔で俺に話しかける優男。
ま、想像も付かンってのは理解できる。親馬鹿ってのは、そういうもンだ。
オレは出来るだけわざとらしく、聞えよがしに大きな溜息を吐く。
「…やっぱり、気付いちゃいなかったンだな?」
オレは肩をすくめ、心底呆れた顔を作る。
ウィーグラフがそんなオレを見て神経を尖らせるが、それは黙殺する。
「“子の心、親知らず”って奴だよ。
お前さん、あのエトナって娘の気持ちを考えた事はあるのか?
そりゃお前さんなりにってのは理解できる。誰にだってわかる。
さっきお前さんは『彼女を実の娘のように思っているようだから、
父親として必ず守ってやる』みたいに言わなかったか?」
この優男の言葉は、じつの所はほとんど聞こえていない。
エトナって小娘だけがやたら大きかったので、その内容から推測するしかない。
だが、その大きく驚いた顔から、事の核心は付いていたようだ。
「そりゃ、あの娘が怒り出すのも当然って奴だ。
あの位の年頃の娘ってのはな、みんな親から自立したがるものだ。
『親が無くともやっていける。あたしは一人前なンだ』ってな。
『親の助けを必要とする程の未熟者なんかじゃない』ってな。
ようはな、お前さんに認められたいンだよ。対等の存在としてな。
それをな、お前さんは頭ごなしに否定しちまったンだよ。優しくな。」
オレの話しを聞き、小さく後悔のため息を漏らす優男。
随分と年季の入った溜息だが、見た目以上に長生きしているのかね?
まあ異世界のルカヴィだってことらしいが、どうにも人間臭すぎる。
禍々しさやおぞましさなんぞ、欠片も感じやしねえ。
その耳さえ尖って無けりゃ、人間だっていっても通用するほどに、だ。
少なくとも、グレバトス教会の糞坊主どもよりは余程人間味がある。
「今、お前があのエトナって娘を追いかけても、却って逆効果だ。
出会って何を言っても、火に油にしかならン。
向こうにしてみりゃ、こっちを悪気なく小馬鹿にしくさった、
分からず屋の“父親”なンぞ顔を合わせたくすらないだろう。
しばらく向こうの頭が冷えるのを待って、それからゆっくり話しあえ。
過保護に構い続けるんじゃなく、時にはあえて一切の手や口を出さず、
娘の自立を黙って促せてやる。
それも、立派な父親の仕事の一つなンじゃねえのか?」
これも別段、何一つ間違った事は言っちゃいない。
無論、オレが伏せている推論はある。
「『あのガキは背伸びしてお前に惚れてるんだ』ってな?
『一人のオンナとして、認められたんじゃないか』ってな?」
まあ女のヒステリーの理由なんて、大半が惚れた腫れただ。
そりゃ古今東西、どこの世界でも変わらン。
傍で見ている分にゃ可愛いもンだ。
まだ行ける、支援!!!
だが、あの娘のヒステリーは台風並の破滅しかもたらさんだろうが。
――周囲を盛大に巻き込んでのな。
オレは優男に向けて口元を歪める。
ここはさっきの策士の顔でなく、年長者の貫録の笑顔で。
そういや、オレにも家族ってのが昔あったな。
ま、今更思い出すつもりもサラサラないがな。
オレはふと遠くを眺めたが、その様子が優男の心の琴線にでも触れたのか。
優男はどこか疲れた様子で、釣られてオレに微笑を向けた。
「ええ。貴方の言う通りかもしれませんね。
私にとってみれば、まだまだエトナは不安なのですが…。
あの娘の成長を、もう少し信頼してあげるべきなのでしょう。
私はいつまでも我が子が心配な、駄目な父親なのかもしれません。
親離れ・子離れの時は、すでに来ているのかもしれませんね…。
――困ったものです。」
溜息を交え、優男は寂しげに笑う。
いや。お前の判断は正しい。まったくもって正しい。
あの気狂いは野放しにすると危なすぎるンだ。
今付いているような首輪でも付けて、絶対に外にでも出ないよう、
いつまでも監視しておくべきだったんだ。
だがな、もう心配するな。あの娘がこれ以上なにもしでかさないように――。
――オレがキッチリ責任を以て、あの世に一人立ちさせてやるからな?
その殺意を決して表情には作らず。おくびにも態度には出さず。
オレは一つの決心を固める。
「だが、ま。あの娘がどうしても心配ってのなら、
オレが代わりに遠くから見守ってやってもいい。
危なっかしそうなら止めてもやる。
頭が冷えた折り合いを見て、あいつに声を掛けてやろう。
あの娘との再会は時間をかけてから…そうだな。
深夜0時位に、あのB-2の塔で合流しよう。
オレがあいつを説得して、どうにか引き連れる。
…そいつでどうだ?」
オレの提案に、優男は不安な顔を浮かべるものの、
やがて苦渋の笑顔を浮かべ、俺に依頼する。
「ええ、こちらこそ。願ってもない提案です。
貴方なら先程のレシィのように、任せるに足り得るでしょう。
では、よろしくお願いいたしますよ?…ガフガリオンさん。」
「ま、任せておいてくれ。…おい、レシィ!!」
「は、はい!」
「…レシィ!一緒にエトナの奴を探しに行くぞ?
この薄暗闇の中、お前の鼻なしじゃどうにもならン。」
「じゃ、アンタ達は先行して、塔の様子を見に行ってくれ。
そこに他の参加者がいないとも限らンからな。
さりげなく。ごく自然に。
オレは人員を都合のよいように選りわけ、
武器を手にいれてエトナを始末しやすい布陣を引く。
優男をこちら側から遠ざける理由。
レシィ(と手に持つ剣)をこちらに引き寄せる理由。
このどちらも、周囲を納得させるには十分なものだ。
無論、オレがエトナを連れて塔に向かうつもりは毛頭ないのだが。
向かうとしても、エトナが塔に戻れるようには決してしないだろう。
…レシィは、まあ。あいつ次第だろうがな?
オレの呼び出しに、レシィは一も二もなく付き従う。
その純真さがお前の取り柄だが、今回ばかりは仇になるかもしれん。
――俺はそう腹の底では考えながら、
もう一度こちらに剣を貸すよう促す。
以前よりは悩む時間が格段に増えていたが、
先ほどの励ましが効いたのだろう。
快い笑顔を向けて、オレに“二振りの”剣を差し出した。
鳥の翼の付いた、あの魔剣も添えて。
「オイオイ、こっちはヤバいからいらンと言ったはずだが?」
「いえ。これはやはり貴方に持っていたいのです。こちらは差し上げます。
今の剣はご主人様のものです。こちらはやはり差し上げられませんから…。
こちらは、あくまでもお貸しするだけです。
それに、さっきのように、もう一度別れてしまうような事があるかもしれません。
その時、何も無いよりはよいかと思います。どうせ、ボクには扱えませんし。
どうしてもっていう時にのみ、そちらの剣をご利用になってください。」
オレの抗議に、レシィは破顔して答える。
なるほど。あいつなりの厚意と返礼ってことか。
こりゃ、断る方が気まずくなりそうだな。
ま、これを抜くことはないと願いたいが――。
オレは二振りを腰に差してからレシィを促し、この場を立ち去ろうとする。
――エトナを探し回り、確実に始末をしに。
支援
支援
さるさん来やがった…。
オレは背を向け、ゆっくりとレシィを先頭に村への方角へ向かおうとするが――。
ウィーグラフがオレに抗議の声を上げる。…ま、そう来るだろうな。
「貴様、どうにもうまく二人を丸めこんだようだが、私の目は誤魔化せんぞ。
どうにも怪し過ぎる。私も、貴様に付いて行くことにしよう。貴様を監視する為にな。」
来やがったな。こいつがいると、どうにもやり辛くなる…。
だが、その辺りのトラブルはすでに想定済みだ。
「ま、勝手に付いて来るのは別に構わンのだが…。
お前は今、丸腰に近いその相棒を放置してオレに付いて来るのか?
この薄暗闇の中、ゲームに乗った奴がどこにいるかもしれんのに?
こりゃ、このオレも随分と慕われたようだな?」
その実に分かりやすい反論に、ウィーグラフは言葉を失う。
あいつは、その義理固さからあの優男を決して一人出来ないだろう。
そして、優男は今エトナと出会えば火に油を注ぐ事になる。
だからこそ、こちらには決して付いて来れない。
ま、分断工作って奴だ。
「…悪い事は云わン。お前はそいつを守ってやれ。その方が、オレといるよりやり易いだろ?
それに、だ。お前の考えるオレのような奴が、まだまだこの近辺にいるかもしれんからな?」
オレはウィーグラフの不審を軽くあしらう。
ま、お前さんの推測は全く以て外しちゃおらンだがな?
オレを疑いたいのなら、証拠を出せないなら
まずは味方を付けておくべきだったな?
オレは心の中で舌を出しながら、今度こそ二人で村へと向かい始める。
ウィーグラフ達はこちらを見送ってから、西に向かいだした。
ま、これでしばらくあいつらの足止めは叶ったということか。
あとはエトナとレシィをどうするか、についてだ。
――――エトナはいかなる場合においても、必ず殺す。
これは揺るぎ無い。気分次第で誰にでも噛み付く上に、
全く交渉の余地のなさそうな狂犬は害にしかならン。
だが、どのようにして始末すべきか。そこが問題だ。
あの様子だと、誰でもいいから最初に出会った赤の他人を襲い出しかねン。
迷惑な事この上ない。まあ、今回の場合だけはむしろそうあって欲しいのだが。
そうでなければ、レシィの目を振りほどいて闇討ちをする手間がかかっちまう。
まあエトナが暴走した場合、あれを文句なく殺せる大義名分が出来る為、
こちらとしては願ったり叶ったりだからな。
レシィにも、十分な言い訳は立つ。
もっとも、完全に承服するわけでもないだろうが。
襲われた方にも「助けてやった」恩義も高値で売り付けることもできる。
言う事なしだ。その恩義は後々に大きく活用できるだろう。
万が一、襲われた方ももしこのゲームに乗っているなら、まとめて殺せばいい。
それがもしこちらの手に負えそうな存在でなければ、早々に逃げれば問題ない。
その為にこそ、レシィという生きた人間の盾があるのだ。
それでどちらにせよ「武器を手に入れてエトナを殺す」真の目的だけは果たせる。
だが、その場合はレシィが殺害されるところだけは見届けておくか、
自分自身の手でで止めを刺しておく必要性はあるだろう。
同じ失敗を二度繰り返すつもりは、毛頭ない。
――――ただし、レシィは状況次第によっては生かしておく。
こいつの戦力と、底抜けのお人好しさは利用価値がある。
邪魔になるようなら始末も止む無しだが、
こちらはエトナと違い制御できる余地はある。
ウィーグラフやアグリアスのような堅物相手に交渉する際、
その人の良さは緩衝材としては有効に機能する。
こいつの仲間と判断されるだけで、警戒心は和らぐだろう。
エトナとは真逆、ということだ。
ま、出来れば生かしておいてやりたいンだがね。
あとは、レシィ。お前さん次第だ。
オレは冷徹に計算しながら、レシィを先頭に村へと向かいだした。
【C-3・草原の村側(西側)へと向かう道/1日目・夜(放送後)】
【ガフ・ガフガリオン@FFT】
[状態]:健康、エトナに対する限りなく冷たい殺意
[装備]:絶対勇者剣@SN2、碧の賢帝(シャルトス)@SN3、天使の鎧@TO
(血塗れの)マダレムジエン@FFT、ゲルゲの吹き矢@TO
[道具]:支給品一式×2(1/2食消費) 生肉少量 アルコール度の高い酒のボトル一本
[思考]:1:どんな事をしてでも生き延びる。
2:まずはラムザと赤毛の女(アティ)を探して情報収集。邪魔者は人知れず間引く。
3:ラハール・アグリアスには会いたくない。
4:エトナを中ボスとの再会前に必ず始末する。
5:レシィがエトナ殺害や逃走の邪魔者になるなら、まとめて斬る。
6:ウィーグラフを警戒。機会あらば悪評を流すか、人知れず不意を討ち始末する。
[備考]:ジョブはダークナイト、アビリティには現在、拳術・カウンター・メンテナンス、HP回復移動をセットしています。
【レシィ@サモンナイト2】
[状態]:健康 、強い決意、精神的喪失感(小)、刺激臭による嗅覚の低下
[装備]:サモナイト石[無](誓約済・何と誓約したものかなど詳細は不明)@SN2or3
[道具]:支給品一式(1/2食消費) 死者の指輪@TO 生肉少量
[思考]1:ガフおじいさん、貴方を信じます!
2:殺し合いには参加せず、極力争いごとは避ける。
3:どうしよう? 臭いがまだ鼻に残っている…。
4:アメルの遺志に従い、仲間や協力者を集めてゲームを破壊する。
5:ラムザ、赤毛の女性(アティ)、ラハールを探してみる。
[備考]:シュールストレミングの刺激臭を吸い込んだ後遺症により、鼻の効きが若干悪くなっています。
少休止したことにより、歩き詰めによる疲労は回復しております。
【C-3・小山の麓(西に進行中)/1日目・夜(放送後)】
【ウィーグラフ@FFT】
[状態]:健康 、ガフガリオンに対して軽い不信感
[装備]:キルソード@紋章の謎
[道具]:いただきハンド@魔界戦記ディスガイア、
ゾディアックストーン・アリエス、支給品一式
[思考]:1:ゲームの打破(ヴォルマルフを倒す)
2:仲間を集める。
3:ラムザと、ガフガリオンの言う赤毛の女(アティ)、ラハールの捜索
4:ガフガリオンをあくまで警戒(不審な行動を見せれば斬る)
[備考]:ジョブはホワイトナイト、アビリティには現在、拳術・カウンター・攻撃力UP、HP回復移動をセットしています。
:ガフガリオンの過去の経歴を知っている為、
彼の言動に本能的な違和感を感じています。
ただし、疑うに足る確証もまたありません。
【中ボス】
[状態]:顔面に軽症(行動に一切の支障なし)
[装備]:にぎりがくさい剣@タクティクスオウガ
[道具]:支給品一式 、ウィーグラフのクリスタル
[思考]:1:ゲームの打破
2:自分が犠牲になってでもラハール達の帰還
3:…困りましたね、反抗期?
4:やはり、構い過ぎなのでしょうか?ダメな父親ですね、私も…。
5:赤毛の麗しきマドモワゼル(アティ)。フム、気になりますね…。
って、これは浮気じゃないですよ皆さぁーん!!
[備考]:先程のレシィとのやり取りと、エトナの事に関する助言で、
完全ではないものの、ガフガリオンを概ね信頼しています。
[共通備考]:情報交換により、神殿騎士団幹部五名の大雑把な情報を入手しました。
以上五名は、この殺し合いの管理補佐を任されている可能性を考慮しています。
(メリアドール・イズルードの存在については、ガフガリオンは疑問を抱いています。)
中ボスの情報提供により、ラハール、エトナ、フロン、ゴードンの事を知りました。
なお、カーチスとは直接の面識がないため、中ボスは特に何も語っていません。
ガフガリオンがラムザと赤毛の女(アティ)を重要人物として捜索している
この場にいる三人に話しました。
なお、午前0時に、B-2の塔でエトナを連れて再会する予定を立ててます。
(ただし、ガフガリオンは生きたエトナを連れて来る予定は毛頭ありません。)
投下終了。
ご協力、ありがとうございました。
すいません。進行方向ですが…。
ガフガリオンとレシィは東側で、
中ボスとウィーグラフは西側です。
wiki掲載時に直しておきます。
山を登るより平野を歩いた方が速いですからね。
しかし、何を間違っているんだか…。
投下乙です!!!
天候の都合で用件が来週に延びたので帰宅してきた。
いつものことですが、◆j893VYBPfUさんの鋭い人間観察眼と洞察力、
ストイックでサディスティックなセンスと発想には惚れ惚れします。
ガフじいさんカッコいいな。
しかし自分があの場にいれば間違いなく真っ先に間引かれる罠。
そしてガフじいさんがシャルトスを持って漆黒のところに行くとなると
ますます先が見えなくなりますね。一体誰が生き残るんだろう。
よし。このモチベーションが続くうちに。
デニム、カチュア、パッフェル、ヴォルマルフで予約します。
今回、最後の御大関連でちょっとマズいかも…。
いやったあああああああああああああ!!!!!!!!
ついに、ついにあの話が投下されるのですね。
しかもヴォルマルフも出てくるなんて、楽しみすぎる。
最後に何が起きるのか、ワクテカして待ってます。
過疎ロワだし、ある程度は自由にやっちゃっていい気もしますが…
よし、テンションが上がってきた。私も続きを頑張ります。
(テンション上げて鬱話を書くってどうなの?)
ちょっと気になったんだが、マグナとホームズの話が臨時放送直後に
なってるけどそういった描写は一切ないよな?これは二人が放送を聞き逃した
ということでいいのか?
>>462 ◆j893VYBPfU氏の『焦燥』が臨時放送直後になった経緯ですが、
作中でマグナが進入したE-4が禁止エリアになるのは19時からです。
そのことに気付いたのがwiki収録後だったので、
後日投下する私のSSで辻褄合わせを行うという形で
とりあえず時間のみ修正する形になりました。
(勿論、◆j893VYBPfU氏の許可は得ています)
城を出てから臨時放送までの一時間の空白時間に
ホームズとマグナが何をしていたのかはSSに書きます。
臨時放送は、聞いていたという形でいいかと思っています。
むしろ、キュラーの声を聞いたことで絶望感が決定的になり、
自殺の引き金になったのではないかと考えています。
マグナはキュラーの声を聞いた時点でガレアノやビーニャ、
そしてレイムの関与も推測できるでしょうから。
フォローサンクス。
書いて後に気付いて、氏と話し合いして、まあ補完していただけるという事で。
ご迷惑をお掛けします。
しかし、張った伏線を伸ばす時期が近づいてきたな…。
いえいえ、補完は補完で楽しいですから。
それが好きなSSなら尚更です。なのでお気になさらず。
wikiのフラグまとめも助かりました。あれはいいものだ。
予約分ですが、一本目の繋ぎパートを週末には投下したいです。
遅れまくっていて申し訳ありません。
そういやずいぶん前にも話しがありましたが。
サモンナイト2のアヴィスって、人間が使っても他の人間の血識を奪えるのかな?
それとも血識を奪えるのは悪魔限定?
>>466 作中で明確に語られてないから、何とも言えないな。
・ガレアノが悪魔であるバルレルに使わせようとした
・レイムによって血識を与えられた三悪魔の肉体は人間のものであり、レイムの肉体も人間のものである。
この二つが判断基準かな。
なんだかものすごく微妙な感じだが、ロワ用にレイムが細工して
人間も使用可能という設定にすれば、とりあえず問題ないかもね。
>>467 おk。主催側にコンピュータ関連の技術を持たせたかったが、
これで色々と矛盾が解決しそうだ。ありがとう。
すいません。
構想していたプロットに矛盾がありそうなので、予約を破棄いたします。
うーん。昔は執筆したSSは必ず批評も頂けたからある意味安心していましたが、
今はそういった役目も全部自分でやらなきゃならんのが怖いな。
えええ、予約破棄ですか?
件のパートは特に楽しみにしていただけに残念です。
キャラや原作設定の把握は勿論、洞察力や発想についても
◆j893VYBPfUさんは卓越したものをお持ちなので、
プロットの矛盾は気にせずに書き上げて欲しかったです。
致命的な矛盾やどうしても気になる個所があれば、
後のSSで補完や辻褄合わせをしますし。
矛盾点を逆手に取って新展開に繋げるという手もありますし。
うーん。少し言うのを迷ってはいたんだが。
◆6tU9OIbT/c氏、予約はどうなっているでしょうか?
リアルが余りにも厳しいようでしたら、
予約破棄しても問題はありませんので。
とりあえず、返答だけでも頂けないでしょうか?
執筆が厳しいようなら、ちょっくらアイクでも
動かしてみたいなとか思ってはいるですが。
ここまで音信不通状態が続くと気がかりですね。
スランプで筆が進まなくてなんとなく顔を出しにくいだけならともかく
リアルで何かあったのかも…と心配になります。
お待たせしてばかりなのも何なので…
ルヴァイド&カトリ&ハミルトン組の繋ぎSS「残照」の
冒頭部分とラスト部分を仮投下スレに投下しました。
本編はこの二つのパートの間に入ります。
完成品を今日中に投下したかったのですが、
ちょっと間に合わないかもしれません。ごめんなさい。
先にこの部分のみを投下したのは、
色々な意味で自信がないので意見を聞きたかったからです。
あと、過疎に甘えて延長しまくっているので、
投下する気があるという意思表示をしておきたかったというか。
素晴らしい。タルタロスとハミルトンの心情が実に丁寧に描写されています。
ただし、これだけでは評価しきれないから、あとは全部投下されてからですね。
続きも頑張ってください。
ありがとうございます。
自分ではちょっと、というかかなり、二人のキャラを
きちんと書けているか不安だったので嬉しいです。
一番悩んでいるのが、タルタロスの二つ目の台詞です。
あれはもっとハミルトンの心を抉るような言葉にしたほうがいいのか。
それともあのままの方がシンプルでいいのか。
ご意見をお聞かせください。
未完成の部分も来週中にはどうにかしたいです。
そういやさ。
サモンナイトの話題が多いから把握率は高いが、
FFTの把握率ってどうだろ?主催関連だがあまり話題にならないし。
>>475 凄く丁寧で主旨も分かりやすくなっているし、あのままでいいと思う。
あえてシンプルに行く方が想像の余地も残るし。
前より格段に読みやすくなっているから、まあ頑張って。
>>477 ありがとうございます。
いろいろな意味で迷いが多いSSでしたが、励みになりました。
完成版をなるべく早めに投下できるよう、頑張ります。
FFTはプレイ済みですが、何せ随分昔の話なので記憶が曖昧です。
(プレイしたのはPS版のみで、リメイクのPSP版は未プレイです)
正直、ロワのSSを読みながら「ああ、そういえば!」と思い出すことが多いです。
折角なので再プレイしてみようかな。
すいません。以前投稿した「想いこらえて」ですが、
少しだけ台詞の単語が変わります。
これが違うだけで、大きく意味合い変わりますから。
って、昔の投稿したSSの内容忘れてるよ自分orz
wiki収録版を確認しました。
しっこくのエトナに対する台詞の
“化け物”が“怪物”になっていましたね。
化け物だと、最初から人間離れしているような印象ですが
怪物だと、人間のなれの果てのような印象を受けます。
前者は外見や身体能力の特異性を表す言葉、
後者はそれらに加えて内面の異常性をも表しているというか。
自分を律しているしっこくと、気分の赴くままに暴れるエトナの対比のような。
その一方で、しっこくもまた得体の知れないものを抱えているわけで
いつまで人間のままでいられるのかという自問のようにも見えるのがいい。
すいません。矛盾が解決しそうなので、
デニム、パッフェル、ヴォルマルフの三名?で予約入れなおします。
あと、年内に◆6tU9OIbT/c氏の連絡がなかったら、
予約破棄扱いでもよろしいでしょうか?
◆6tU9OIbT/c氏の予約の件ですが、基本的には、
期日までに連絡がなければ破棄扱いでいいと思います。
このまま連絡が取れないようなら、そうせざるを得ないでしょう。
ただ、期限は、年内ではなく1/3(日)23:59まででいかがでしょうか?
理由ですが、顔を出せない理由が心理的なものであった場合、
年始の挨拶という形であればチャットなどに顔を出せるかも知れないこと。
また、物理的な理由で顔を出せないのであっても、
正月休み中なら時間が取れることを期待できるので。
(正月休みのない職種もあるので確実ではありませんが)
そして予約キターーーーーーーー!!!!!!
楽しみです。とても。私も早く本投下できるよう頑張ります。
凄くつまらん質問だけど。
パッフェルって、女性の中では一番大柄なほうだよね。
オープニングや会話を見る限り。
サモン2のギャラリーにキャラ対比表があるんだが、今は確認できないな。
でも結構身長は高い方だと思う。(あくまで女性の中では)
確かにパッフェルさんには大柄なイメージがあるな。
◆6tU9OIbT/c氏の予約破棄の件
連絡期限は1/3(日)23:59までにした方がいいと思う。
正直、ここまで連絡がないとなると、期限を三日延ばした程度で
結果に変化はあまり期待できないだろう。
問題は、この話を最初に出した人間が負うことになる責任。
◆6tU9OIbT/c氏と連絡が取れない以上、
期限を設けて予約を破棄扱いにするという話は
誰かが言わなければならなかった。
しかし最初にそれを言った人間には責任が発生する。
だから期限となる日時は別の人間の案を採用するほうがいい。
つまり、複数の書き手の連帯責任にするということ。
問題が起きたときのことを考えると、そうしておくのがいいと思う。
>>4865了解しました。
もし見られましたら、あくまでも予約破棄されるだけなのであって、
あまり深刻には考えないでください。出来れば連絡を頂けたらそれが一番嬉しいのですが。
復帰、お待ちしていますので。
イスラの召喚適正ってたしかゲーム上では霊だけだが、
実際どうなんだろ?
ある意味アティの鏡なんだし、全部使えるという事にしてもいいのかな?
そうですね。>全部使えるということにしてもいい
原作の能力値を忠実に再現して
戦闘シミュレーションを行っているわけではないので、
原作のユニット性能と異なる点があってもいいと思います。
二次創作として表現したいことを優先する形にして、
気になるようなら作中に説明を入れるようにすれば…
うーん。まあ設定上は五分とはいえ、
安易に手を出すのは危険かもしれんな。
そこは説得力を持たせないとな…。
キルスレスはシャルトスと等価という設定になっているが、
あっちにもハイネルの良心と核識がぶち込まれているので
リスクもほぼ等価って事でいいんだよね?
逆を言えば、その気になればシャルトスを使って
悪霊や死霊を強制的に従える事も可能ということで。
何それすごい萌える!!!>シャルトスで悪霊や死霊を強制的に従えるアティ先生
優しくて可愛くて穏やかな印象のアティ先生が
そういう禍々しいのを従えるなんてツボすぎる。
ぜひ読んでみたいです。しっこくも惚れ直すに違いない。
>>492 先生は性格的に絶対やろうとする訳ないと思うが?
イスラの時もそうだが、死人にさらなる苦痛を与えて
無理やり従える訳だから。暴走していればわからんけどな。
第一、あの辺りで悪霊化しそうな人材自体に碌なのがいない。
>>492 シャルトスを先生専用と勘違いしてないか?
シャルトスとキルスレスのスペックの話だけど、
シャルトスは名前通り召喚関係のスキルに長けてて、
キルスレスは再生能力のスキルに長けてるんだと思う。
魔剣で従えられる悪霊や死霊っていうのは
負の残留思念みたいなもののこと?
霊属性の召喚獣の悪霊には無効なのかな?
ロワの内容で具体的に言うと、今タルタロスが持ってる
ダークレギオンの対抗手段として使えないかってことだけど。
どっちも従えられると思う。
16話でイスラが呼び起こしたのは、転生できずに島に縛られた無色の魂だし、
その中に亡霊召喚獣も混じってた。
つかタルタロスはサモナイト石の使い方を知らんだろうから、別に放置でもよくね?
マグナと行動していたからといって、あいつが使い方を教えているとは考えにくいし。
サモナイト石といえば、折角支給された石のセットはいつ誓約されるんだ?
マグナが一緒にいたのにすぐ別れたから、もう誓約できる機会ないんじゃないか?
モンスターのような状態の死霊・悪霊にも有効ってことなら
TOのダークロア他、サモン以外のゲームの亡霊召喚系魔法の
対抗手段として使えるって考えていいのかな?
サモナイト石詰め合わせは確かに勿体無いな。
誓約できるのは、あとはネスティとアティだけ?
超律者とアズリアを忘れてる。あと多分イスラも。
誓約の儀式はいつかやりたいが…。
アズリアとイスラもできるなら割と機会はありそう…かな。
マグナはああいう精神状態だしこれからどうなるか分からないけど。
できればクライマックスに入る前に召喚獣を使ったバトルを見てみたい。
そういえば一度もないよな
召喚術使ったバトル
今よりしたらばに仮投下開始いたします。
今回、オープニングとTrisectionの伏線回収もあり、
かなりシステムに突っ込んだ話しになってます。
ヴォルマルフ達の目的がこれで完全に明らかになるわけですが、
ご意見ございましたら教えてください。その為の仮投下ですし。
大丈夫なら、本投下は後日行います…。
――世界は、一変した。
僕の中なる、そして僕を取り巻く世界さえもが変じた。
素晴らしい。
素晴らしい気分だ。
…理由は分からない。
ただ、僕がより高次の存在へと生まれ変わった。
それだけは、確かなのだ。
――あの時から。
――あの時とは?
“いや、それは如何でもいい事だ”
仮投下乙です!!!!!
ついにヴォルマルフの目的が明らかになりましたね。
ジョーカーのタルタロスに伝えるという形で明かされるのかと思っていましたが、
デニム=アドラメルクに伝えるという今回の形の方が、確かに自然だと感じました。
そしてデニムがカチュアに別の価値を見出したことにより
二人の関係がまた深くなったり波乱があったりしそうですね。
そしてたとえカチュアが先に死んでしまったとしても、
単なる優勝復活狙いの奉仕マーダーだけで終わらない
このロワ独自の鬼畜化が期待できそうで素晴らしいです。
しかし髪をほどいたパッフェルさんは美人カッコいいだろうな。
正統派美人女暗殺者って感じで絵になりそう。
>>501 投下乙です。
なんとなくだけど、アティはディエルゴ側にも狙われそうな。
では、特に問題なさそうなので。
誤字訂正した本投下を開始いたします。
僕は姉さんをベッドに寝かせ、静かに部屋を出る。
長い回廊を歩き、やがて中庭に出た。
さあ、敵を狩らなくては。
もっと、愉しまなくては。
残りたったの、三十八人なんだから。
窓から外を眺める。嫌に五感が冴え渡る。
――深呼吸。夜の冷えた空気を、全身に取り入れる。
身体は羽のように軽く、常に活力に満ち溢れている。、
そして気分は、皓々と夜空を照らす満月よりも冴え渡る。
これは高揚感ではない。
むしろ清涼感や、爽快感といったものに近い。
いや、冴え渡るのは五感だけではない。
この地に漂う数多の精霊達の気配さえ、身近に感じ取れる。
目を瞑ろうとも。
耳を塞ごうとも。
鼻を摘もうとも。
口を閉じようとも。
肌を覆おうとも。
その存在を、心身の全てで。
魂同士が繋がったかのように。
地水火風の喜びが、憤りが、哀しみが、楽しみが。
僕には正確に掌握出来る。
これなら、たとえ魔道書が手元になくとも
ある程度の魔法は容易く行使できるだろう。
何故なら、僕は正しくそれらを理解しているのだから。
理解が進めば、それ以上の事が出来るのかもしれない。
僕の頭蓋に、貴重な知識が刻み込まれていくのだから。
――世界は、一変した。
僕の中なる、そして僕を取り巻く世界さえもが変じた。
素晴らしい。
素晴らしい気分だ。
…理由は分からない。
ただ、僕がより高次の存在へと生まれ変わった。
それだけは、確かなのだ。
――あの時から。
――あの時とは?
“いや、それは如何でもいい事だ”
僕は、考え直す。それは意味のない事だ。
既に終わってしまった過去事なのだ。ならば、意味はない。
五感が嫌に鋭敏になったせいだろうか?
遠くにあるはずの人間の気配が、手に取るように感じ取れる。
窓からの風がもたらす、その芳しき若い雌の匂いが鼻を擽る。
城への侵入者の足音が、呼吸が、耳朶を打つ。
目を合わせる距離に近づけば、鼓動さえ聞けるかもしれない。
それは汗と潮、そして砂の匂いを纏わりつけて。
足音は不規則で、その息遣いも随分と荒い。
疲労困憊といった有様である。
先程の轟音の主は、状況から察するにおそらく彼女なのだろう。
それで、ひっそりとこちらに侵入したつもりか?
支援
…笑わせてくれるッ!
女、お前は狩られるのだ。
女、お前は嬲られるのだ。
何故だって?
当然の報いだ。お前はヴァレリアの未来を担う、
ベルサリア・オヴェリス女王陛下の生命を…。
いや、違う。そうじゃない。そうじゃないんだ…。
そんな他人行儀な理由だけでは決して無い…。
た 血 りが も、
僕 って 愛 姉さ ら。
――――――――誰だ?
それは、誰だ?
それは、何だ?
頭が不意に漂白されたような感覚。
おかしい。頭はこれ以上なく冴え渡っているはずなのに。
掛け替えのない大事な記憶を、僕は忘れかかっている。
決して失ってはならないモノを、僕は失いかけている。
頭がおかしくなってしまったのか?
いや、そんなはずはない。
当たり前の事から、記憶を整理し直す。
僕はデニム・モウン。
そして、今出た部屋に寝かせた女は、ベルサリア・オヴェリス女王陛下。
――どこか、おかしくはないのか?僕は彼女をそんな他人行儀には……。
いや、それは間違いではない。それは厳然たる事実だッ。
血の繋がりがないとはいえ、義弟のこの僕に欲情の念すら抱く愚かな女である。
全く、身分の貴賎を問わず、人間という生き物は全てが喜劇の存在でしか無い。
何かに縋らなければ精神を安定させる事すら出来ない、本当に脆弱な存在だ。
あの女は手っ取り早く始末してもよかったが、他ならぬ僕が懇願しているのだ。
まあ無碍にはできないさ。それに、殺すだけならいつだって出来る。
しばらくは、あの女の心身を弄んで楽しんでやってもいい…。
――いや、それは違うッ!
――いや、違わないさッ。
僕の、僕達のしている事。いや、していた事はそうなのだから。
――違わないのかい?デニム・モウン。
相手の想いに結論を出さず、拒否もしなければ肯定もしない。
ただ徒に時を過ごす。それを弄んでいるとは言わないのかい?
まあ、どちらにせよ同じことだ。
――……………。
――まあ、そう深刻に考えるな。気楽に行こう。
あの女にはずっと昔から、散々迷惑と面倒をかけさせてくれたのだ。
その位の見返りを頂いても、全く問題はない。
僕がヴァレリアで挙げた功績を考えれば、謙虚に過ぎる位だ。
第一、それが彼女の望みでもあるのだろう?
ならばデニム・モウン。その期待に答えてやれ。
それが“僕達”の責務でもあるんだッ。
『愛する者に奪われたい。汚されたい。犯されたい。』
彼女が望むもの、その全てをただ与えてやれば良い。
何一つ、問題はない。口を噤めば誰にもわからだろう。
この久しぶりの現界、愉しみの一つでもなければ面白くもない。
――何一つ間違えてはない、のか?
――何一つ問題はない。己の内なる声に従え。それが答えだッ。
僕はこの上なく、己が何者であるかを正しく認識している。
記憶にもなんら齟齬も欠落もない。体調も万全以上である。
むしろ、自分でも怖くなる位に五感も冴え渡っている。
気力もこの上なく充実している。
やはり、気のせいだ。
気のせいなのだろう。
“僕達”の目的は、“血塗られた聖天使”をこの地に降臨させる事。
“それ以外の事は如何でもいい事だ”
支援
――――――――さて、狩りに向かうか。
“僕達”が迷いを振り払っていた所、
『――初めまして、皆様方。
私は悪鬼使いキュラーと申す者。以後、お見知り置きを。』
同胞ハシュマリムを差し置いた、不遜なる余所者からの放送とやらがあった。
◇ ◇ ◇
「もう、ヘトヘトですよー。」
ただでさえ身体に密着した扇情的な制服を、
全身から滴る汗でさらに張り付かせた茶髪の女性は、
誰に聞かれるでもなく、この上なく大きな溜息を一つ付いた。
その姿は砂埃にも塗れ、見るからに不快そうである。
「はぁー、お風呂にでも入りたいですねぇー。」
この殺し合いの場で呑気も極まりない事を口にしているが、
女の惨状を見れば、誰もその意見に反論は述べないだろう。
その発言が完全な空元気であり、見るからに憔悴しきっている事は
誰の目にも明らかであるから。
『自分の肉体』という最大の武器を、常に万全かそれに近い形で
運営維持を図るのは、元暗殺者として当然の心得である。
体調がまっとうでなければ、本来出来るはずの仕事さえもしくじってしまう。
休憩によるロスタイムと、強行軍を続ける場合の効率低下を天秤にかけた結果、
体調回復を何より優先せざるを得なかっただけの話しである。
疾走中に聞いたキュラーによる臨時放送といい、
考えるべき問題、やるべき事は山ほどあるのだ。
そして、皆に伝えるべき事も。
それも、迅速に。
奴らの次に打つ手よりも速く。
今、ここで疲労で倒れるわけにはいかないのだ。
本当は、ここまで呑気な事は言っていられない。
さっきからの独り言も、湧き上がる焦燥を噛み殺す為に、
あえて自分に言い聞かせていたものであった。
焦りは過ちを産み、
疲労は誤りを生む。
何一、良いことはないのだ。
城門を駆け抜け、適当な一室を探す。
先客がいる可能性もある以上、あまり長居をする事は出来ない。
それが、イスラの言う“襲撃者達”や、
先程考えた“第三者”の可能性もある。
決して、油断だけは出来ないだろう。
だが、逆にこの城にネスティが避難している可能性もある。
あるいはマグナや先生、またはその仲間がいた場合は、
思わぬ助力にもなるかもしれない。…可能性は薄いだろうが。
休憩後も、しばらくはこの城の捜索を行う必要性があるだろう。
それが敵なら、遠くから顔を覚えるだけでも後々優位となれる。
無論、こちらから先の捕捉と用心を常に心がけねばならぬのだが。
それに、先程の臨時放送の内容確認も行っておきたい。
うまくやれば、抜け穴を見つけて武器庫の武器のみを
調達する事も可能かもしれない。
ベルフラウの首輪は、ここではまだ使いたくはない。
あれは、脱出の為にだけに使われるべきものだから。
――――まあ、何はともあれまずは着替と休息ですね。
手近な使用人の一室を見つけ、
内部を確認すると室内に侵入。
鍵も鏡も付いていなかったが、この際は仕方がない。
より良い部屋を探し回るゆとりはないし、
そもそも長居をするつもりもない。
そこで、着替えがある事を確認すると、
着た服を手早く脱ぎ始める。
この制服は、もう捨ててしまっても良いだろう。
汗と潮の臭いと砂埃を強く残したものなど、
持っているだけで周囲に存在を誇示するようなものだ。
お気に入りではあるのだが…。
元の世界に帰れば、いつでも買い直せるのだ。
元の世界に帰れれば、ではあるのだが。
制服に続き肌着を外し、髪を解き。
パッフェルは一糸纏わぬ姿となる。
ぺットボトルを二本ほど空け、頭からその水を全身に浴びせる。
こびり付いた汗と潮の臭い、そして爆発時に浴びた砂埃を、
水と共にまとめて洗い落とす。
流石に風呂まで沸かして入るつもりなどない。
単に臭いを消すだけなら、これで充分だろう。
濡れた身体は、近くにあるシーツで適当に拭く。
床が水で滴ってはいるが、この際は気にすまい。
支援
最後に、部屋で見つけたサイズの一番近い服を目の前に置く。
何故か、アズリアの名の刺繍が入った軍服一式を見つけた。
着替か何かだろうか?他にもビジュやアズリアの副官(名前は失念した)の軍服もある。
アズリアのものは少し丈が小さく、特に胸が窮屈そうだが、この際贅沢は言えない。
男のものでは流石に大きすぎるし、特に腰周りが緩すぎて軽快に動けない。
アズリアには悪いが、あとで別のものを探す必要があるだろう。
――だが、それをに袖を通す前に。
二・三、大きく延びをしながら、自分の身体をつぶさに観察する。
――筋肉が付いている。それも、かなり。
二の腕を曲げると、見事な力こぶが出来る。うん、逞しい。
前かがみの姿勢を取ると、突き出た肩も随分と凄い事になる。
脂肪でない分マシだが、お世辞にも女性らしいとは言い難い。
身体の質感は、女性にしてはやや固い。
手は長年の登攀術や刃物の訓練やらでタコができ、
あちこちがゴツゴツになってしまっている。
爪も何度か割れたせいか、所々歪なままだ。
目を凝らして見てみれば、所々に細かい傷痕がある。
白くすべすべした珠の肌とは、お世辞にも言い難い。
身体だけは若いからこそまだ持っている、といった風情である。
アメルやミニスのような、男性の保護欲を掻き立てるような代物ではない。
空を舞う蝶を思わせる儚く華奢な身体でも、
新雪のように無垢な、白く柔らかい肌でもない。
男性がその身体を埋め、預けたくなるものではあまりないだろう。
自分よりも逞しい女性に、身体を預けたい男性なんているものか。
アメルらの身体は、家族に大事に育て上げられたからこそ出来上がった、
白磁器のような、人形のような。
女性らしさの極地であるが故に。
例えるなら深窓の令嬢が持ち得るような、気品ある美しさ。
アメルの方は村育ちだが、彼女ならドレスを着せても充分似合うだろう。
…私とは、違って。
そう。私の身体は。色々ととても大きく、逞し過ぎる。
嫌になるくらいに。
「はぁ。私って、やっぱり女性としての魅力ないのでしょうかね…。」
独り言を漏らす。溜息が一つ、溢れる。
「マグナさん、誘っても全然手を出してくれませんからねー。」
そう独り言を呟き、自らの乳房を指の腹でなぞり、その先端を軽く指で弾く。
その感覚を、自身の手で確かめるように。
――――やっぱり、アメルさんのようなタイプが良かったのでしょうかね…。
私に近寄ってくるのは、オルドレイクみたいな色魔か物好き位、か…。
そう思い悩むと先程よりさらに深く重い溜息が、もう一つ溢れた。
ただし、それはパッフェル自身から見ての事。
その同性すら羨む見事なまでの胸の双丘は、豊満さと美しさをも兼ね備え。
それでいて、何の支えもなしに一切垂れ下がる事もなく、上を向いている。
それだけではない。長くしなやかに伸びた無駄のない手足も、引き締まった臀部も。
実の所、その美しさは長年に渡り鍛え上げた全身の筋肉が支えているからでもあり。
その野生の躍動美と女性の豊満さを兼ね備えた見事な体型は、
一言で例えるなら、“美獣”。
未成熟な女性からすれば、パッフェルの肢体は
もはや憧憬と羨望の象徴ですらあった。
だが、本人にそこまでの自覚はなく。
彼女の溜息も、結局はないものねだりにも等しかった。
――――でもまあ。そういう初心な所が、彼の良いところなんですけどね。
――――「茨の君」だなんて呼ばれてた時代が、少々懐かしいですよー。
戦場には全く似つかわしく無い事を懸想していたせいか。
幾分か、重い気分もほぐれては来た。
気分転換には丁度良かったのだろう。
あと少し休めば、本調子とまではいなくとも、
行動には支障もなくなる。
――――だが。
――――ちょぉっと見通し、甘かったようですねー。
――――パッフェルさんともあろう者が、ここに来て痛恨のミスですよー。
パッフェルは、溜息をさらに一つ吐く。
今度は己の不手際に。致命的な失態に。
自嘲と後悔の。
それはいかなる者の手によるものか?
それはいつの間に行われたのだろうか?
支援
何よりも警戒深い、潜入を得意中の得意とする元暗殺者が。
意味のない夢想に耽り、油断し切っていたとはいえ。
身体の酷使で、心身共に消耗しきっていたとはいえ。
その悪意に手足が生えたがごとき存在の接近を
一切感知する事が出来ず。
『動くなッ、女…。まずは両手を頭の後ろに組むんだッ。』
パッフェルはその何者かに無防備な背への接近を赦し、
その首筋に、月光より蒼白く光る刃を突き付けられていた。
―――――時は遡る。
『その“救いの手”を受け入れるか、あくまでも拒絶するかについては、
貴方達の自由意思に委ねましょう。これは強制ではありませんからね。
このゲームでは、なにより自由意思による選択こそが尊重されるのです。
貴方達のご健闘に期待しておりますよ…。』
キュラ―なる余所者の、意図の見え透いた詭弁を聴き終えた直後。
僕達は自分の首輪より別の、馴染みのある者の声を聞くことになった。
「聞こえているか、アドラメレク。」
「聞こえているさ、ハシュマリム。」
何かを確認するかのようなあいつの声に、僕は確信を以って答える。
明瞭になりつつある僕の記憶から、この声の持ち主がこの殺人遊戯の
進行役を務めていた事を思い出させる。
「“そちら側”の調子はどうだ?」
こちらを気遣うというよりは値踏むような、ハシュマリムの声。
“僕達”という一つの軍団(レギオン)は、質問に応じる。
「器との融合は、今一つという所かな?
体調は悪くないが、今一つ意識がはっきりしないんだ…。
元の人格に刺激を与えるような言動は、
やっぱり控えた方がいいみたいだね…。
融け合ったものが、引き剥がされるような感覚になる。
だが、それもしばらくの我慢。
やがて“僕達”は、完全な一つのデニム・モウンになる。
なにも、問題はないさ。」
“僕達”という一つの軍団(レギオン)は答える。
“僕達”の同調が進み、違和感や齟齬は大分薄れては来たが。
それでも元の僕の意思に反する事をする場合、心身が強張る。
まるで、“僕達”が二人の“僕”になるように。
だが、僕達の本来の目的以外は、全てどうでも良い事なのだ。
無理に僕の不興を買い、心に荒波を立てる事もないだろう。
僕達はそう考え出していた。だが、その様子を怪しむかのように、
ハシュマリムは疑いの声を掛ける。
「…もしやとは思うがな、アドラメレク。
お前の方が、元の肉体に引き摺られているのではないのか?」
ハシュマリムは訝しむ。ああ、そういう所は相変わらずだな?
“僕達”は“彼ら”の神経質さに内心で苦笑する。
「融合である以上、“こちら側”にも影響が出る事は否定はしないさ。
以前、ハシュマリム達もヴォルマルフの娘に対して、
最後まで未練の感情を有していたようにね。
ラムザの傍らで、あの父娘の愉快な寸劇は見せて貰ったよ。
…違わなかったかな?」
僕達はデニム・モウンの口調で、ハシュマリム達にあの時の事をからかう。
ハシュマリムは僕の軽口にその機嫌を悪くしたようで、急に押し黙る。
遠くで、あいつの苦虫を噛み潰したような顔が目に浮かぶようだった。
「…世迷言はいい。」
僕の軽口を、あいつはいなす。
だが、その口調には隠し切れぬ敵意が潜んでいた。
あいつは普段は饒舌だが、怒ると口数が極端に少なくなる。
まあ、からかうのはこれ位で終えた方がいいだろう。
「…では、伝えるべき事のみを伝えるぞ。
先程許可は得てあるとはいえ、長話はディエルゴが口煩いからな。
このゲームについてのルールは、貴様の器にある記憶と同じと考えて良い。
あとは、“我々”の目的だ。これは元々レイムとの取り決めにあった事だ。
そちらを伝えておこう。だが、その前に確認する。」
支援
先程の苛立った空気は消えて。
ハシュマリムが事務的な口調に切り替わる。
これからの内容が、極めて重大なものであるが故に。
そして、この内容はあのディエルゴとやらも聞いているらしいのだ。
迂闊な答弁は、控えた方が良いだろう。
こちら側の弱みを与えかねない。
「“我々”の目的とは一体何だ?」
「今更、問うまでもありません。常に一つです。」
「“我々”の主として仕える存在は何者だ?」
「今更、問うまでもありません。常に一つです。」
“僕達”は確信をもって答える。
“我々”なら、もはや問いに答えるまでもないような事柄だ。
“血塗られた聖天使を再降臨させる。”
“聖天使ただ一つが我々の主である。”
目的と主は、これ以外には有り得ない。
如何に力有る存在だろうが、ディエルゴなどでは断じてない。
奴らに聞かれても分からぬよう、だがハシュマリムにだけは伝わるよう。
“我々”のその意思を明確に伝える。
「…よろしい。ならば、だ。
数ある器達から主を一つ選び、聖天使を覚醒させよ。
この場に多くの血を流し、我らが主の再降臨を為せ。
貴様はそれを補佐し、器を導けばよい。
この私がディエルゴごときと協力した理由も、
この野望を為せるからなのだ。それを忘れるな。」
ヴォルマルフの口から、淡々とした口調で指令が下る。
だが、それにはあまりにも疑問が多すぎた。
様々な点で矛盾に満ちている。
「…待ってくれ。聞きたい事は山ほどある。
まずは一つ。ならば、この僕達はどうなるのだ?
参加者達が残り一人となるまで殺し合うのが、
この場における絶対のルールだったはず…。」
そう。このゲームは参加者たちが最後の一人になるまで殺し合うのがルールの筈。
ハシュマリムはこの僕にアルテマを覚醒させてから、自ら捨石になれというのか?
たしかに、また時間さえあれば我々は再び蘇るのだが…。
無意味に逝き、また狭間に囚われるのは御免被りたい。
「だから言ったはずだ、アドラメレク。
“我々”は今、どちら側の立場にいる?」
ヴォルマルフは気安げに返答する。
なるほど。“我々”は主催側の存在でもある。
そうであるならば、“僕達”も…。
「会場に“我々”のみが残った場合…。
参加者は全滅したと見なし、そこでゲームは打ち切られる。
元よりディエルゴとの取り決めだ。そこだけは心配いらんよ。
奴らの目的は、人間どもが織りなす極上の負の感情を暴食する事だ。
第一、“我々”のような猛毒など、奴らのディナーたりえん。
そこまでは利害が一致する。」
このゲームで殺し合う“参加者達”としては“我々”はカウントしないという事か。
それなら、無意味に同胞同士で無駄な血を流すこともない。
「そういう事か。それなら僕達にも理解は出来るな。
つまり、状況に応じて“我々”の同胞を呼び出し、
最終的には“我々”のみになればよいと言うことか。」
つまりは、このゲーム自体がある種の茶番劇ということか。
ハシュマリムも。
ディエルゴ達も。
それぞれに参加者には秘めた目的があって、このゲームを開催している。
参加者の全滅も優勝も、その数有る結果の中の一つに過ぎず、
必ずしもゲームの完遂が成功の条件ではないという事である。
“参加者同士”が殺し合い、その中で生まれ出るモノだけが目的であるが故に。
殺し合わせて生き残った一人に、ディエルゴとしてはたいした意味はない。
だが、“我々”としてはそれが聖天使で無い限りは、失敗したも同然なのだ。
支援
「“これから先”の事を考えても、少しでも戦力が必要だ。
そちらもぬかるなよ。」
“これから先”…。意味深な事を言う。
聖天使さえいれば、我々は完全となる。
あとは時間さえあれば、聖石などなくとも自由に同胞を召喚出来るはず?
早急に戦力が必要な事態でもあるとでもいうのだろうか?
ああ、なるほど。そういう事か…。
確かに、事が終われば奴らは用済みだ。
むしろ我々にとっては邪魔者でしかない。
あいつも傍で聞いているだろうからな。
僕達は頭に閃いたものを、その口から出る寸前に押し止める。
「…分かったよ。ディエルゴには、“我々”なりに感謝の意を示せという事ですね。」
「…そういう事になる。“我々”なりにな。」
僕はその言葉に悪意を乗せ、ハシュマリムに伝える。
“これから先”も任せろ、という意味で。
「そしてもう一点。これは僕の聞き間違いか?
数ある器達から主を一つ選び、とお前は言った。
だが、血塗られた聖天使の器は、あくまでも一つ。
そして、それはあのアルマのみだったはずだが?」
そう、これが二番目の疑問。
かつてアルテマと融合した聖アジョラの転生体のみが、
聖天使の器足りえたのだ。だからこそ一つの筈?
「ああ、本来ならそうなる。」
「…本来は、だと?」
奇妙な確信を持つハシュマリムに、僕は疑念を抱く。
つまり、これについても何かあるという事か?
「…なあに、発想の転換という奴だ。
以前のラムザと我が主との戦いで、
融合していた聖アジョラとアルマの魂は完全に分離した。
故にこそ、もはやアルマ一人に拘り続ける必要はない。
そして、これよりもさらに重大な発見があった。」
「血塗られた聖天使の器は、常に“一つの世界に”一つだったのだ。
そして、ディエルゴは異世界を渡り歩き、召喚する力を持っていた。
その上で、“我々”に接触し、手土産持参で取引を持ちかけたのだ。
あいつが“我々”に提供したものが何か…、これでわかるな?」
「これらの発見と力添えがあったからこそ、私はディエルゴに従い、
そしてこの悪趣味な趣向の進行役を努めさせてもらったという訳だ。」
そういってハシュマリムはさも満足げに、笑う。嗤う。哂う―――――。
あいつが喉を鳴らす音までが、首輪越しに聞こえた。
いや、それは“僕達”が鳴らしたものかもしれない。
「そんな事が…、そんな事がありえるのかッ!
道理で、道理でお前があいつらと手を結ぶわけかッ!
そうか…。イヴァリースにだけとどまっていては、
“我々”の野望の実現は不可能…。素晴らしいじゃないか…。
それだけは、ディエルゴの力添えに感謝しなければいけないね。」
“僕達”も歓喜のあまり、釣られて笑う。これほど、愉快な事はない。
“僕達”にとっては、到底考えられぬほどの好条件だ。
「では、聖天使に“相応しい肉体”。器達の名を全員話しておこう。
アティ、アルマ、カチュア、カトリ、シーダ、フロン、ミカヤ。以上7名だ。
これらの中から、最も優れた器を選別し、育成するのが我々の目的だ。
あとは頃合を見計らい、こちらから聖石ヴァルゴを転送する。」
ヴォルマルフは示した。
己の仕えるべき主の肉体を。その器の名を。
「なんだと?アルマはともかく、あと6体もいるのか?」
「もっとも、うち数体は既に破壊されたがね。だが、修正は効く範囲内だ。
出来るだけ器同士で共喰いをさせ、もっとも適性の高いものを選び抜け。
その為の最適な舞台こそのが、このバトルロワイヤルという殺し合いなのだ。
ディエルゴは、これを“女王蜂の選定戦”に喩えたがね。」
支援
「では、“僕達”はさしずめ女王蜂にロイヤルゼリーを与える“働き蜂”という事か。」
ディエルゴとやらも、この状況をうまく喩えたものだな。
確かにこれは、自然界の女王蜂の選定戦にも近いものがある。
だが、これはどちらかと言えば陰陽術の蠱毒ではないのか?
僕達はこの殺し合いの有様を思い、益体もない夢想に耽る。
「もっとも、“我々”が器に与えるのは、絶望と狂気と言う名の滋養なのだがね。
故にこそ、器の覚醒を促進させるであろう者どもをも同時に召喚した。
奴らの所業やその死が、器の心身に多大な影響を与えるだろうからな。
ようは器どもの“触媒”という訳だ。」
「なるほど。それがかつての僕をも含めた、
このゲームの参加者どもの選定基準という事か。」
このゲームの“我々”の事情は、これで全て見えた。
あとはディエルゴ達の事情を知っておきたいが、
こればかりは関係者達から聞き出すしか無いだろう。
たとえ、どのような手段を使おうとも。
「まあ一部、参加者どもに意図を悟られぬためのダミーや、
ディエルゴの益体もない遊び等も混じってはいるのだがね。
マグナとか言う召喚士と、ネスティという亜人。
レシィとかいう護衛召喚獣に、マグナの女…パッフェルといったか。
あとルヴァイドという黒騎士が混じっているのは、
以前煮え湯を飲まされた、奴なりの意趣返しということだ。
興味があるなら、詳しい事情は当事者どもにでも聞くがいいだろう。」
事情説明を装って、実にさりげなく主催側に関する情報源を与えるハシュマリム。
なるほど、察しが良くてこちらも助かる。これから、やるべき事も充分に見えた。
その者達から可能な限り情報を引き出し、“これから先”に備えよという事か。
だが、当事者達とは必ずしも協力する必要はない。
情報だけ引き出せば、後は始末してもいいだろう。
聖天使の器とは、一切関係がないのだから。
「器の覚醒を促すため、やるべき事は分かるな?
…器どもの心の拠り所を完全に破壊し、心身を極限にまで苛め。
自分が何者であるかすら忘れる位にな。
その方が、こちらとしても都合がよい。
器の自我など、どこにあっても邪魔なだけだ。
だがな。いくら予備があるとはいえ、決して無意味には殺すなよ?」
支援
その声色に若干の喜色を混ぜて、ハシュマリムは目的を話す。
幸い、こちらにも器が一つ手元にある。
短慮ゆえ一度は危うく破壊しかけたが、
これならもはや僕も不満は出ないだろう。
別に殺すというわけではない。
むしろ絶対に殺さない。主の器である限りは。
むしろ姉さんはより高次の存在として、
“僕達”とともに永遠の生命を得られるのだから。
それなら、何一つ問題はない。
そうじゃないか、デニム・モウン?
――――………………。
――――僕達は絶対にベルサリア女王を殺さない。そこに問題はないはずだが?
「だが、いちいち煩わしいな。器の殺害だけは厳禁という事か。」
「やむをえぬ場合は仕方ない。不可抗力程度は認めるさ。
だが、限り有る優れた素材ばかりだ。決して無駄にはできん。
ディエルゴからの助力は、一度きりなのだ。それを忘れるな。」
僕達は一つの不満を漏らす。
だが、ヴォルマルフはその不満を一蹴する。
これ以上の条件は、流石に望めないという事か。
それに、第一…。
「僕達の手で蘇らせれば、器が歪んでしまうからね。
それでは、聖天使の“相応しい肉体”として機能しない…。
仕方ありません。では、“僕達”に任せておいてください。
同胞達に“相応しい肉体”も発見すれば、
それらも一緒に覚醒させておきましょう。
この仕事、“僕達”だけでは少々骨が折れるでしょうからね。」
僕は肩を竦める。これからは随分と忙しくなりそうだ。
「…どうやら、時間のようだ。これ以上の会話は禁止という事らしい。
では、“今後の事”は任せたぞ。アドラメレク。」
ハシュマリムは唐突にそう言うなり、首輪からの声が途絶える。
どうやら、必要以上の会話は禁止されているらしい。
奴にも進行役としての立場がある、という事か。
あいつからの全面的な援護は、おそらく期待出来まい。
だが、僕達が勝手に他の参加者から情報収集を行い、
それがハシュマリム達に伝わってしまう分には、なんら問題はない。
ようは、そういう事だ。
――――さて、此処から先は、“僕達”の仕事か。
耳を澄ませば、すぐ傍から侵入者の近づく気配がする。
どうやら、こちらの存在にはまだ気づいてはいないらしい。
僕達は聖石を見つめ、意識を集中する。
以前の僕達の器だった男の、ダイスダーグの持ち得た技能を検索。
その内の、ささやかな一つを選ぶ。
その技能を、僕達は扱ってみせる。
――気配をどこまでも殺し、意識を周囲と同化させる。
己は風景の一部であると、己に言い聞かせる。
デニム・モウンの身体が、完全に周囲へと溶け込む。
――透明化。“潜伏”のリアクション・アビリティを用いる。
やがて、こちらに近づいてきた女性は、傍にいた僕達に気付くことなく。
こちらを素通りして手近な部屋を確認すると、その中の一つに押し入った。
僕はその背をゆるりと追うと、その様子を伺う。
どうやら、水浴びと着替が目的だったらしい。
やがて彼女が自ら服を脱ぎ、完全に油断した機を狙い。
僕は彼女の荷物を奪い、少しだけ距離を開け。
彼女の首筋に、その背中から刃を突き付けた。
支援
『動くなッ、女…。まずは両手を頭の後ろに組むんだッ。』
声が響く。まだ年若い少年の、澄み切った声が。
だがそれは少年のものとは迫力が明らかに違い。
壮年の男性が、少年の声優を見事演じているような。
身近に喩えるなら、エクス総帥の声を聞いているような、
ある種の不自然さと違和感を感じた。
そして、その黒く禍々しい気配もまた、人間の少年のものではありえない。
暗殺者特有の機械的な殺意ではない。
戦闘狂がもつ猛々しい戦意でもない。
そう。喩えるならキュラ―達と同じ…。
人間の薄皮を被った悪魔とでも対峙する、そんな感覚にもその気配は似た。
「いけませんねー。年頃の少年が、よりによって覗きだなんてー♪」
「でもどうしても見たいって仰るんでしたら、少し位なら前に回って見ても良いですよー♪」
パッフェルは軽口を叩き、少年を誘う。
だが、無論ただで身体を見せるわけではない。
相手の隙を狙い、ぶちのめすつもりだからだ。
背中からでは、相手の位置が分からない。
間合いが掴めない。得物が把握出来ない。
せめて、何とかして少年を前に回らせて、敵を把握したい。
あわよくば、こちらの裸に見惚れている隙を付いて武器を奪い、
少年のの胸板に突き入れる事も考えはいるのだが。
そのような隙は、残念ながら全く与えてくれない。
少年は一切の誘惑にも、挑発にも応じない。
「つまらない色仕掛けはよしてくれないかな、マグナの恋人さん?」
支援
―――うあっちゃー。ずっと前から潜伏していましたか…。
パッフェルは自らの不覚を呪い、同時に羞恥に顔を赤らめる。
緊急事態に裸を見られたところで別段恥ずかしくはないが、
先程の独り言をほじくり返されるのは、流石に少し辛いものがあった。
だが、パッフェルの恥らいを他所に。
少年はふと思い出したように、聞き捨てならない台詞を口にする。
「でも“マグナの女”、という事はもしかして…。そうか、君がパッフェルなのか?」
何故?
何故、この少年は私の名前が分かる?
驚きのあまり、立場も忘れて振り返ろうとしたパッフェルの首筋に。
ほんの少しだけ、蒼白く光る刃がめり込む。
首の皮一枚だけが斬られ、血がわずかに伝う。
傷こそ小さいが、その鋭い痛みは現状を再認識するには充分過ぎるものであった。
パッフェルはその無言の警告の意図を読み、再び硬直する。
「僕が許可するまでは、決して振り返らないでもらいたい。…いいね?」
警告の言葉とは裏腹に、どこかしら楽しげな口調で。
背中から、こちらの首筋に刃を突きつける少年。
もし、もう一度偶然・故意に関わらず不審な動きがあれば…。
この少年は、間違いなくこの自分を斬るだろう。
「では、パッフェルさん。僕から聞きたい事がある。
ディエルゴと君達の事、この世界の事、色々とね。」
少年はディエルゴと、“この世界”の事を聞き出す。
背後の少年も、何かに気付き出した可能性があるという事か。
このゲームに乗った人物なら、主催の情報など殆んど意味はない。
ならば、会話には乗ってもよいのかもしれない。
しかし、だからといって信頼できるわけでもない。
第一、こちらが無防備の時を狙って背後から剣を突き付ける辺り、
お世辞にもその態度は友好的なものではないのだから。
「…全部答えれば、私が助かるって保証は?」
パッフェルは、尋ねる。己の命運を。己の未来を。
安易にこちらが知る全ての情報を与えても、
「用が済んだら」という事にもなりかねない故に。
「君が僕の敵でないと、証明出来るものがあればそれでいい。
その為に、パッフェルさんには少しでも協力的であってほしい。
チャームを使って、君の心を捕えてから聞いてもいいけど…。
理性がなければ、難しい質問には到底答えられないからね。」
少年は礼を失するが、極めて合理的な返答を行う。
たしかに、これまでの行動と言葉は矛盾しない。
こちらを危険人物である可能性をも考慮に入れ、
もっとも無防備な瞬間を狙って、姿すら見せず交渉を持ちかける。
その後の対応は、相手次第。絶対の優位に立ってから交渉を行う。
不愉快な事この上ないが、緊急事態においてはある意味正しい対応でもある。
パッフェル自身でも、時と状況次第では同じ事をするかもしれないから。
ただし罪悪感だけは、心の奥底に噛み締めて。
だが、しかし…。この少年は、何かが違う。
どちらかと言えば蜘蛛の巣にかかった獲物を物色するように。
それは、心よりこの状況を楽しんでいるとしか思えなかった。
パッフェルはさも楽しげに、少年の非礼をなじってみる。
「うっわー。貴方って最っ低の性犯罪者ですねー♪
レディの裸を覗き見するだけじゃ飽き足らず、
やっぱり屍姦とかもやっちゃう人なんでしょうかー?
私は、ちょぉっとお断りですよー?」
「僕も、出来ればパッフェルさんには手荒な真似はしたくない。
丁重に帰されるかどうかは、全て貴女次第だッ。」
やはりというか。
少年にはこちらの辛辣な嫌味に一切動じることはなく。
己の非道をこちらに詫びる様子すら、一切なかった。
こちらに掛けるその言葉こそ優しいが、心の底では嘲笑っている。
パッフェルは少年の態度に底知れぬ悪意というものを、
言葉の端々から感じ取っていた。
パッフェルは確信する。
支援
これは、返答に関わらず無事に返すつもりは一切ない。
おそらくは、向こうの用が済んだら容赦なく始末される。
最大限の幸運が働いても、彼の慰み者にされてしまう位か。
どちらにせよ、あまり嬉しい結末ではない。
ネスティを襲った襲撃者、あるいは第三者というのも、
あるいはこの少年の皮を被った悪魔なのかもしれない。
――パッフェルは短い会話の中で、この姿見せぬ少年を敵だと認識した。
だが、この絶体絶命の危機は、同時に好機でもある。
この背後にいる少年は、ディエルゴの事になぜか興味を持っている。
そして、こちらが一目でパッフェルであることも知っていた。
おそらくは何か有益な情報を持ち得ている可能性がある。
会話次第では、うまく情報を引き出す事も可能だろう。
……但し、彼から無事逃げ出し、生き残る事が出来ればの話しだが。
――――ま、なんとかして逃げなきゃどうにもなりませんよね…。
パッフェルは一つ深呼吸をすると、改めて返答の為に重い口を開いた。
【C-6/城(小部屋)/夜(臨時放送後、夜中前)】
【デニム=モウン@タクティクスオウガ】
[状態]:プロテス(セイブザクィーンの効果)、身に打撲(軽症)、潜伏中、アドラメレク融合率60%、
[装備]:セイブザクィーン@FFT 炎竜の剣@タクティクスオウガ、ゾディアックストーン・カプリコーン@FFT
[道具]:支給品一式×2、壊れた槍、鋼の槍、シノンの首輪、スカルマスク@タクティクスオウガ
:血塗れのカレーキャンディ×1、支給品一式×2(食料を1食分、ペットボトル2本消費)
ベルフラウの首輪、エレキギター弦x6、スタングレネードx5
[思考]:1:パッフェルを尋問し、まずはディエルゴ達に関する情報を集める。
2:デニム・モウンとして、カチュアを守る。
3:アドラメレクとして、聖天使の器(カチュア)を覚醒へと導く。
4:パッフェルは用が済んだら始末して、その首輪を貰う。
但し、より良い使い道があればその時は別とする。
5:シノンの首輪を、地下の武器庫で交換しておきたい。
6:久しぶりの現界を楽しむ。
[備考]:アドラメレクとの融合により、人格に影響を及ぼしつつ有ります。
融合率が格段に増した事により、以前の“肉体(ダイスダーグ)”が
所持していたリアクション・アビリティ(潜伏)をも行使し始めています。
現在のクラスはソードマスター。転生により超自然との親和性が高まったため、
魔道書なしでも神聖系を除く全ての補助魔法が行使可能です。
融合が完全なもの(100%)になれば、以前の聖石カプリコーンの持ち主であった
ダイスダーグとアドラメレクの所持する全てのスキルが使用可能になります。
パッフェルのデイバッグは、空のペットボトルを除いて
着替中にデニムが隙を見て全て奪い取りました。
ヴォルマルフとの会話により、別世界の存在を完全に認識し、
また進行役側の真の目的を正しく理解しました。
【パッフェル@サモンナイト2】
[状態]:健康。身体的疲労(中度) 、精神的疲労(中度)、全裸、
後悔と羞恥、首筋にかすり傷
[装備]:なし
[思考]1:火災が沈静次第、ネスティの探索及び手がかりの調査を行う。
2:これまでの考察をメモに纏めたい。
3:アティ・マグナを探す(その他の仲間含め、接触は慎重に行う)
4:見知らぬ人間と遭遇時、基本的には馴れ合うことは無い
5:背後にある致命的危機を、何としてでも脱する。
6:出来れば、背後の少年から出来るだけ情報を引き出しておきたい。
[備考]:参加者達は、それぞれ別々の世界・時間から集められていると確信しました。
ベルフラウを殺害した犯人は“殺しの素人”であると、ある程度の憶測を立てています。
パッフェルの目の前に、新品のアズリアの軍服と空のペットボトル2本が置かれています。
[共通備考]:ヴォルマルフ側のゲームの目的は“血塗られた聖天使”アルテマの再降臨にあります。
ただし、聖天使に“相応しい肉体”の器は複数存在し、
その内のどれかを覚醒させる事がヴォルマルフ達ルカヴィの目的となっています。
(アティ、アルマ、カチュア、カトリ、シーダ、フロン、ミカヤ。以上7名です。)
覚醒の為の最適の環境が、このバトルロワイヤルという会場という事です。
聖天使アルテマを始めとするルカヴィのみがこのゲーム会場に残った場合、
その時点でゲーム終了(優勝者なし)というディエルゴとの取り決めになっています。
マグナがパッフェルED通過後の、サモンナイト3番外編終了後の登場で確定しました。
投下終了。
支援ありがとうございました。
作品名の元ネタはそれぞれ
・悪の軍団(FE紋章の謎の第一章の敵行動フェイズのBGM)
・選ばれし者達(FE紋章の謎の自軍優勢時のBGM)
・Espionage(スパイ活動の意、FFTの死都ミュロンドでの戦闘時のBGM)
となっています。
そろそろ、原作を元にしたBGMのストックが切れそう…。
投下乙です!
パッフェルさんの煽り台詞が仮投下時とは変わってる!!!
そしてマグナの恋人がパッフェルさんで確定、か。
ってことは、マグナにとってはアメルの死が希望の終わりじゃない。
まだまだ鬱転落要素は山積みってことですね。これは楽しみだな。
そして、完全融合デニム&アル魔&ラムザの合流シーンを見たくなった。
デニムとアル魔の外道鬼畜対決とか。
しかし、もしかすると、支援を入れてもさる規制を食らうようになってるのかな?
支援の入れ方を変えなきゃいけないのだろうか…
激しくおつ!!
主催の目的がわかってロワが進んだって感じがしてきてとても良かったです。
全女性計18人中、
チキ、アメル、エトナ
が女性なのに器候補じゃないのはなんとなくわかるが、
サナキ、ベルフラウ、ティーエ、オリビア、
アズリア、ソノラ、パッフェル、アグリアス
この8人が候補に挙がってないのが微妙に気になるw
「聖天使の器は、常に一つ。」ですからね、基本的には。
他の聖石に相応しい肉体とは違って、適性のある人間自体が
物凄く貴重な存在ですから…。ある意味、適格者みたいなものかな?
そこまでホイホイいるなら、ヴォルマルフ達も苦労しませんし。
アグリアスはすでにFFTの世界の住民だから確実に×。
そうだったら原作のストーリすら変わっているw
臨時放送迎えていないのって、C-3の村組以外でどこがあったっけ?
アルガス&サナキと、あとはカ―チス達以外で。
ルヴァイド組は次回投下で書くとして…
オグマ、イスラ、アズリア、アイク、ニバス、ソノラは
◆6tU9OIbT/c氏の投下待ち状態ですね。
予約無しのキャラで臨時放送まで行ってないのは
ネサラ、カチュア、ゴードン&ミカヤかな。
あと、タルタロスとアルマは時間がかなり飛ぶので、
臨時放送周辺を書きたい方がおられればどうぞ。
いつも長くなってしまう…。
今度こそは、今度こそは短く簡潔な作品を書くぞ…。
アルガス&サナキで予約。
今年中に書き終わるかな、これ…。
すいません。やっぱり予約取り消します。
プロットからして破綻してた…。
予約なしの投下ですが…
カチュア単独SS「虚ろな器」を仮投下スレに投下しました。
淡白な内容の繋ぎの短編、記述自体も過去のSSのおさらいなので
致命的な矛盾はないとは思いますが、何かあればおっしゃってください。
予約したパートよりもこちらが先に上がってしまい、
申し訳ありません。予約分もなるべく早めに投下します。
あと、臨時放送を迎えていないのはウィーグラフ&中ボスもですね。
投下が最近だったのでてっきり迎えたものだと思ってた…
広い城に誰かが入ったら気づくと思ったけど以外と気づかないのだな。
まぁ…疲れてるから仕方ないか
パッフェルのあれは、デニムが潜伏まで使っているからね。
ラムザの時といい、意外に役立つなこのアビリティ。
>>552 投下お疲れ様。
カチュアのヤンデレがいつの間にか進行しとるw
しっかし、デニムの中身が変わりつつある事を
知ったらどうするんだろうか?
というか、今のデニムを見たらどうなるんだろうか?
予約分も楽しみにしてます。
姉が山羊の存在に気づいたら、共倒れしそうだな。>この兄弟
山羊はまあ、最悪の場合は姉を殺しても代用品を探せばいいからね。
あの嫌らしい真っ赤な食い込みレオタードを来た聖天使てんてーとか
聖天使カトリとか聖天使ミカヤか…。
まあ、アリじゃないかな。
では、カチュア単独SS「虚ろな器」を投下します。
一部、仮投下の時点とは変わっている部分があります。
説明不足と思われる部分に加筆を行った形ですが。
「姉さんは僕が守るから、だから……」
デニムが次に何と言うのか、私は既に知っている。
何故知っているのかは分からない、何故知っているのかと疑問に思うことすらない。
私の心を形作る想いは一つ。デニムと離れたくない、ただそれだけ。
けれども、全てを言い終えたら、デニムはどこかに行ってしまう。
だから私は彼の言葉を遮った。続きを言わせないために。彼を手放さないために。
「待って、デニム。訊いておきたいことがあるの。貴方は私のことをもう名前では呼んでくれないの?」
言いながら、宙に向けて手を伸ばす。そして私を抱きしめるデニムの背に腕を回す。
恋人同士がするような形で私はデニムに触れることができる、それをデニムが受け入れてくれる、
それがただ嬉しくて、私は自然と笑顔になる。しかしデニムは笑わない。怪訝そうな顔で私に問う。
「名前……?」
「そうよ。二人きりなんだから名前で呼んで欲しいって頼んだときには応じてくれたのに」
「ああ、そうだったね。姉さんが望むのなら、僕はいつでもそうするよ」
「姉さんが望むのなら、ね。つまり、貴方は私を名前では呼びたくないってことかしら?」
「いいや、そんなことはない。僕だってそうしたいよ、ベルサリア・オヴェリス女王陛下」
少し困ったような、少し寂しそうな、いつもどおりの淡い笑顔で、デニムは穏やかにそう言った。
転落する。デニムを抱きしめ、そして抱きしめられたまま、心だけが落ちてゆく。
「デニム、悪ふざけはやめて。二度とそんな堅苦しく呼ばないでと言ったはずよ」
「何を言ってるんだ、望んだのは君じゃないか。二人きりのときは名前で呼んで欲しいんだろ?
だからそうしたんだ。知ってるはずだ、君の本当の名前はベルサリア。ベルサリア・オヴェリス」
もう、デニムは笑っていなかった。
ランスロット・タルタロスを思わせる冷酷な目で私を見据え、彼と同じことを口にした。
「やめなさい、デニム。その名前では呼ばないでと言っているのが分からないの?
どうして私を困らせるの……。私の言うことが聞けないの?」
「……カチュア、君は孤独なのだよ」
また、タルタロスと同じ言葉。しかも今度は彼の口調を真似ていることがはっきりと分かる。
私は孤独、それは多分間違っていない。だって、寂しさは私の中から決して消えはしないのだから。
でも、それをデニムに指摘されるのは耐えられない。何故なら、彼に手放されたも同然だから。
僕には姉さんの孤独は癒せないし癒すつもりもないと宣告されたも同然だから。
それだけでも許せないのに、その上デニムはタルタロスの言葉を真似て私をからかっている。
知っていたのね。タルタロスが私に言ったことを。私がどんな気持ちになったのかを。
なのに貴方は助けてくれなかった。タルタロスの声が聞こえるほど近くにいたのに、なのに。
それどころか、私があの男の手に落ちるのを黙認し、挙句の果てにこんな真似を――
デニムの背を抱いたまま、もう一方の手を自らの携える短剣に伸ばした。
殺してやる。私のものにならないなら。私で遊ぶなら。私を捨てるなら。貴方を殺して私も死ぬ。
そんなことをすればヴァレリアの未来は潰えるけれど、でもそれは貴方が悪いのよ、デニム。
だって貴方は私の気持ちを知っていたのだから。私の人間性をも知っていたのだから。
なのに私をそんな風に扱うなんて、貴方には破滅願望があるんだわ。だから――
何の前触れもなく、男の声がした。神経に纏わりつくような声、初めて耳にする声だった。
言葉の意味は分からない。間近で聞こえる声なのに、何を言っているのかが聞き取れない。
ただ、激しい苛立ちを覚えた。邪魔しないで! 私には大切な用事があるの。
デニムのことなの。何よりも大切なことなの。貴方に構っている暇なんかないわ。
そう思いながら、短剣を振りかざす。でも、そこには誰もいない。あるのはただ暗闇のみ。
男の声が私の意識に侵入する。首の辺りから聞こえる声。逃れたいと思うのだけれど、
骨を震わせるほどの存在感と神経に突き刺さる違和感が無視することを許さない。
黙って! 私は行かなきゃいけないの。デニムを探さなきゃいけないの。
それでも男は喋り続ける。声は明瞭になってゆき、その言葉が聞き取れるようになる。
「――“救いの手”を受け入れるか、あくまでも拒絶するかについては――」
黙りなさい。デニムでもないくせに、私にそんな口を利かないで。
デニム以外の人から差し伸べられる救いの手なんて、汚らわしいだけだわ。
受け入れるか拒絶するか、そんなことを考える必要すらないの。だからもう静かになさい。
私はまだ眠っていたいの。夢の続きに戻らなきゃ。そうしてデニムを殺さなきゃ。だから――
――夢……?
そこでやっと、自分の思考のおかしさに気付く。
目を開くと、見知らぬ天井がそこにあった。男の声はもう聞こえない。
夢だった。それを認識した途端、胸の中で燃え盛っていた殺意の炎が静かに消えた。
そうよ、デニムがあんなことを言うはずがないわ。だって、デニムは私を愛しているのだから。
あれはただの夢。現実じゃない。その正しさを確認し、実感するために、デニムの言葉を思い出す。
『それでも僕は姉さんを愛している!』
……それは、今日の昼間のこと。
この奇妙な世界で知り合ったマルスという少年と二人で森の中を歩いていたときのこと。
木立の間から現れたデニムは、私の手を掴むと、何も言わずに駆け出した。
私は苛立ち、憤った。私を捨てておきながら、どうして私の自由を奪うのかしら。
私は新しい弟を見つけたのに。私の言うことをよく聞いて、私に寂しい思いをさせない、
出来のいい弟、マルス。私を一人にしておきながら、新しい弟まで奪うなんて。許せない。
私は手にした短剣をデニムに振りかざそうとした。そのとき、デニムが言ったのだ。
それでも僕は姉さんを愛している、と。私に殺されようとしているのに、抵抗もせずにそう言った。
私の全てを、暗部も含めた全てを受け入れる覚悟がなければ、あんなことはできない。
だから、デニムは私を愛している。本当に、本気で愛している。
そう確信したからこそ、私は新しい弟を捨てた。デニムは私を愛している。これが、現実。
――本当に、そうなのかしら?
当然でしょ。あのときのデニムの表情を見れば分かるわ。
何かを諦めたような顔で、どこか醒めたような目で、愛していると私に言った。
そして、殺意を捨てた私を見て、事務的な仕事を終えたような顔で薄く笑った。
底なしの虚無に沈み込むような表情をデニムが私に見せたのは、初めてのことだった。
――おかしいわ。私のことを愛しているのに、どうしてそんな顔をするのかしら?
別におかしくなんかないわ。デニムがあんな顔をしたのは、私がこういう人間だからよ。
自分の生命を脅かすような人間を愛してしまったのだから、絶望的な気分にもなるわ。
それを知っても尚、憎むことや嫌うことはおろか愛を捨てることすらできないというのに、
どうして“普通の人”と同じように屈託なく笑うことができるのかしら。
デニムは繊細なのよ。愛だとか何だとか奇麗事を言いながら笑顔で他人を貪るような
鈍感な連中とは心の造りが違うの。おかしいなんて思う方がおかしいわ。
――でも、表情と言葉が一致しないのはおかしなことだわ。
そう、おかしい。いくら言葉を重ねても、この感覚を覆すことはできない。
それは、本能的な違和感だった。
デニムは私を愛している、いくらその根拠を積み重ねてみても、隙間から違和感が滲み出る。
消すことのできない思考の隙間を塗り潰してほしくて、私は生身のデニムを求めた。
しかし、室内に人の気配はない。自分の立てる物音のほかには、何も聞こえてこなかった。
「デニム……? デニム、何処なの?」
慌てて半身を起こす。ベッドが軋み、世界が揺らぐような眩暈に襲われた。
貧血特有の気分の悪さが、傷のない身体に昼間の出来事を思い出させる。
長髪の剣士に斬られ、死の淵に落ちていくはずだった私を、デニムが助けてくれたのだ。
でも、どうやって? それはデニム自身も覚えていないという。
――本当に?
それは本当なのだろう。嘘や隠し事の類いを抱えているようには見えなかった。
けれどもその一方で、デニムに異変が生じていることも事実だと言えた。
たとえば、この城に戻る直前のこと。
デニムは参加者名簿を眺めながらとても嬉しそうに笑っていた。
しかし、その笑顔は、これまでデニムが見せていたものとは明らかに質が違っていた。
もしもランスロット・タルタロスが憎悪や復讐心といった人間的な感情を抱いたならば、
そしてそれを満たすすべを見つけたならば、そんな風に笑うのではないかと思いたくなるような。
顔立ちは同じなのに、中身は別人。デニムという器に、タルタロスの魂が入っている。
そんな印象を受けずにはいられない、冷酷で残忍で大人びた笑みをデニムは浮かべていた。
そして、第一回放送の直前のこと。
デニムの態度に不可解なものを感じて問いただそうとした私の両肩を押さえつけたときの、彼の顔。
そこに人間らしい温かみはなかった。物を見るような冷たい目、残忍な期待に歪んだ口元。
デニムのそんな表情を私は初めて目にしたけれど、それが彼なのだと私は素直に受け入れた。
だって、デニムが私を求めてくれたのだから。これまで隠していた表情を見せてくれたのだから。
デニムが私を自分よりも劣った存在として扱う、それはつまり、デニムと二人きりのときだけは
私は姉であることからも女王であることからも自由になれるということなのだから。
自由になることを、デニムが許してくれたということなのだから。
それに何より、私はデニムを愛している。そして、デニムは私を愛しているのだから。
――でも、もし、その前提が誤っているのだとしたら?
そう、長髪の剣士に斬られ、死を覚悟したときのこと。
私はデニムに訊いた。私を愛しているというのは、家族としてなのか、それとも女としてなのか、と。
デニムは答えなかった。けれども私はそれで良かった。
だって、デニムは私を愛している、それは確かなのだから。
彼の私に対する愛は、容易く言葉にできるほど軽いものではないのだから。
――でも、もし……、
『僕は姉さんを愛している』という言葉に、私の知らない思惑があったのだとしたら?
嘘や偽り、或いは隠し事の類いが秘められていたのだとしたら?
信じていた世界が崩れてゆく。自身の存在が、急に心許なく思えてくる。
デニムの無事を確認したくて、デニムに愛されていることを実感したくて、私はベッドから抜け出した。
私を置いて、デニムは何処に行ったのだろう。デニムは今、何を思っているのだろう。
一刻も早く探し出さなければ、彼は私の手の届かないところに行ってしまう。そんな気がした。
けれども、いくらデニムの名を呼んでも、それに答える声はない。物音一つ返ってこない。
眠りに落ちる直前の記憶は、私を抱き締めるデニムの温かい腕。
最後に聞いた言葉を脳裏で反芻してみると、世界の崩壊が停止した。
デニムはやはり私を愛しているのだと思えてくる、そう思っても許されるような気がしてくる。
でも、一度崩れた世界はもう元には戻らない。崩壊の途中で時間が停止しただけのこと。
『姉さんは僕が守るから、だから……』
ごめん、と呟き、私の知らない呪文を唱えるデニム。
ねっとりと纏わりつくような抗いがたい睡魔に襲われ、全身から力が抜けた。魔性の強制睡眠。
でも、どうしてデニムは私にそんなことをしたのだろう。異変なんて何一つとして起きていなかったのに。
それに……、デニムは何処で、何時の間に、私の知らない呪文を覚えたのだろう。
眠りをもたらす魔法の存在は私も知っているけれど、でもそれは悪夢を伴うものだったはず。
こんな術は知らない、噂に聞いたことすらない。でもデニムは当たり前のように行使していた。どうして?
デニムの見ているもの、感じていること、知っていること、経験したこと。
それら全てが私の知っているデニムとは、私自身とはかけ離れているように思えた。
そして、私たちの距離が縮めば縮むほど、致命的な乖離は進行してゆく。
それはもはや「人は変わる」だとか「男女の仲になればこれまでの関係は壊れる」だとか
そういう次元の話ではなかった。私が感じているのは、もっと異質で悪辣な違和感。
「デニム、何処なの……?」
扉を開け、廊下に出た。空気は冷たく、辺りは静まり返っていて、私に答える者はいない。
一刻も早くデニムを探し出さなければ。でも、何処に行けばいいのだろう。
私は自分がデニムに置き去りにされた理由すらも知らないのに。
一体何が起きたのか、或いは何も起きなかったのか、それすらも知らないのに。
【C-6/城(寝室近くの廊下)/夜(臨時放送後、夜中前)】
【カチュア@タクティクスオウガ】
[状態]:失血による貧血
[装備]:魔月の短剣@サモンナイト3
[道具]:支給品一式、ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ
[思考]:1:一刻も早くデニムに会い、その無事を確認したい。
2:デニムは本当に私を愛しているの?
3:デニムは私に一体何を隠しているの?
[備考]:アズリアの私服(イスラED参照)に着替えています。
一日目19時の臨時放送を聞き逃しました。
放送があったこと自体は知っているのか、それすらも気付いていないのかは
後続の書き手の方にお任せします。
投下は以上です。
自分で書いておいてなんだけど、この部分…
> デニムは繊細なのよ。愛だとか何だとか奇麗事を言いながら笑顔で他人を貪るような
> 鈍感な連中とは心の造りが違うの。
姉さん、デニムを社会不適合者認定しているような気が…
そもそもタクティクスオウガにまっとうな良識人なんてほとんどいないから大丈夫。
タルタロスの部下のテンプルコマンドからして色物集団だし。
まともなキャラは白ランスぐらいだし
それにここのTOキャラは虐殺ばかりやってるやつらだ
タルタロスの部下と白ランスといえば…
オズマ姉さん×白ランスが好きです(カプ厨自重)
「虚ろな器」ですが、wiki収録版には少しだけ加筆修正をしています。
大きな修正ではないのですが、一部文章のおかしな個所の直しと
>>562の中ほど「信じていた世界が崩れてゆく」以下に二行追加。
信じていた世界が崩れてゆく。自身の存在が、急に心許なく思えてくる。
デニムがあんな目で私を求めたのは、私を愛しているからではなかったの?
デニムが私の質問に答えなかったのは、私を愛しているからではなかったの?
デニムの存在を確認したくて、デニムに愛されていることを実感したくて、私はベッドから抜け出した。
ヴォルマルフ(*´Д`)ハァハァ
いや、40がらみのオッサンにハアハアして楽しいか?
あれに妻子がいた事自体が驚きでもあるが。
ところでこのロワに妻子持ち(離婚・死別含む)って何人いたかな?
既婚→ネサラ、ハーディン、カーチス、ハミルトン
既婚子持ち→中ボス、ニバス、ヴォルマルフ
オイゲンとガフガリオンはどうだったっけ…?
その二人は居てもとっくに捨ててるか離別してそうな…。
あとはリュナン、ホームズ(&カトリ)、リチャード(&ティーエ)か。
ゴードンはエンディング直後だったら、まだ婚約すらしてないだろうが。
シーダはエンディング直後だと正式にマルスと結婚しているか。
なんだ、意外とカップル多いな。
そういえばリチャードは結婚式に招待するとか言ってたね。
リュナンやホームズたちも、式はまだだろうけど結婚前提のお付き合いだろうし。
ミカヤの参戦時期は曖昧だけど、ED後ならサザと結婚してるね。
生き残ってる中で原作からのカップルは
ホームズ&カトリ、マグナ&パッフェル、デニム&カチュアか。
リア充ならぬ原作充か。
なんかムカつくなw
クリスマスだから余計にか。
そういや今日はメリアドールの誕生日でもあったな。昨日はローファルの。
マグナ→タルタロスにタゲられてる。
パッフェル→デニムにタゲられてる。
ホームズ→マグナと一緒にいる。
カトリ→アル魔と一緒に予約された。
デニム→人格が別のものになりつつある。ある意味死にかけ。
カチュア→いつ暴れだすか分からないヤンデレ。
幸せになれそうな人が見つからない件。
メリアドールさんは出てこないのかな…流石にキャラ大杉かな…
へたれデニムが山羊化しても、ウィーグラフみたいに肉親はどうでもいいとか言わなそうだな。
576 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/24(木) 21:59:23 ID:j2uM5wNQ
>>574 一人位は救いがあっても良さそうに感じてきた…。
メリーさんは親馬鹿団長に与える影響力考えれば美味しそうだが、
これ以上主催側増やすと多分収集つかなくなるからいいでしょ。
第一、決別してるし。
ところで、たまには清涼感のある、救いのある、あるいは明るい話しが読みたいな…。
それが必ずと言っていいほど踏みにじられるのがロワの宿命とはいえ。
カップルの扱いは難しいな…
ホラー(原作ロワのジャンル的に)モノでのカップルの役回りは
正直、惨劇に血の花を添えてナンボってところがあると思う。
でも、原作充がことごとく不幸になるっていうのも複雑だな…
かといって、一人だけ生き残るのもかえって可哀想な気がするし。
SRPGロワオリジナルのカプにも頑張ってもらえばいいのか。
オリジナル・カップル?誰かいたっけ?
ゴードンとミカヤ
アティとカーチス
ニバスとソノラ(?)
アグリアスとフロン
うん。言っててなんだが、全員顔に死相が出ていて仕方がない。
そろいもそろって、一方通行的な恋愛しか想像できない。
>>578 死相どころか既に死んでる人が入ってる件。
レンツェンとチキ
アルガスとサナキ
しっこくとアティ
一方通行的な恋愛すらできるのかどうか怪しい
M男たちを忘れないで!
これが、カプ厨というやつか…
避難所にも触手を伸ばして…恐ろしい…
アルガスとサナキとか、無茶すぎる。
> 避難所にも触手を伸ばして…恐ろしい…
ネサラ×避難所の触手プレイですね、分かります。
マジレスするなら、兄弟(姉妹)愛とか家族愛の傾向のほうが強いよな。
イスラとアズリア。
ラムザとアルマ。
デニムとカチュア。
中ボスとラハール(&エトナ)。
兄弟弟子も入れるなら、マグナとネスティ。あとアイクと漆黒の騎士か。
サナキとミカヤはともに影が薄いので、なんとも言えない。
サナキはアルガス調教でキャラが立ったと思うけど
確かに妹キャラって印象じゃないな…
長らくお待たせして申し訳ありません。
臨時投下スレにハミルトン組の繋ぎSS「残照」を仮投下しました。
本投下時にはもう少し加筆修正を行うと思います。
作中のホームズ(名前は出ていませんが)の金髪の描写、
タイトルに合わせて残照を受けて輝くと書きましたが、
時間的にはもう夜ですよね、月明かりに変えたほうがいいかな?
あと、ハミルトンの怪我の回復度合いもどのようにするか決めかねています。
>うわあ。例のブログ主、今日の更新もすごいな。
>「最近は投下後に吐いてます」って。ゲロアピールキメェ。
>
>他の書き手が見てるブログ、鳥出して書いてるブログで
>そういうこと書くのって普通に配慮なさ過ぎでしょ。
>それとも何、あなたのロワの他の書き手さんは
>公衆の面前でゲロ報告されて喜ぶようなド変態なの?
>
>合意の上の変態プレイに第三者が口を挟むのは
>愚の骨頂なのでこの辺にしますが。
>
>こんな基地外が他ロワの人間関係に口出しとかないわ。
>心身の不調を吐き出すのは病人だからまだ仕方ないとしても
>「感想レスが何の励みにもならない、カタルシスを得られない」とか
>コテ付きで言うのは書き手としてアウトでしょ。
>いつも感想書いてくれてる相方さんに対して明らかに失礼だし。
>失礼っていうか、傷つけるような発言だし。
>
>あれだけ無神経なことをやっておいてよく他ロワに口出しできるわ。
>相方に対する思いやりがないから、自分の発言のおかしさが理解できないんだろうな。
>>585 ノリノリっすね
この書き手がまったく無関係のスレを日記帳にしてるから説得力がないな
そんなことより渡…失礼、ロワ参加作品やキャラの話をしようぜ。
>>587 残念ながら、話の通じる相手ではないと思います。
幼稚な手段や発言内容から察するに、他ロワの書き手関係者の仕業ではないでしょう。
他板の某スレで本ロワの書き手数名に粘着し、そこで話題に出たネサラのSSに
筋違いな文句をつけていた荒らしの手口に酷似しています。
現在のログ容量は464kbなので、私の投下(20kb前後)が終われば次スレですね。
上の方でも書き手に対する不謹慎な発言がありましたし、
したらばへの移行も視野に入れたほうがいいと思います。
>>589 ですよねー
---ここから引用---
「おまえの発言が不快すぎて吐いた」
って言葉の矛盾も理解できないなんて哀れ
他人の不快さを批判するために自分はゲロアピールとか
しかも次の日はなにげに下痢便アピールとか
普通の羞恥心があればまずできない
基地外の上に変態ですか、大変ですね
でも普通の人はゲロやウンコを出されてもドン引きです
変態性欲の出しすぎは自重してくださいね
あと人が純粋な興味だけで質問したことに対して
「強制」とかレッテルを貼っておいて
自分の強制ぶりに気付かないのは笑いました
「強制してるわけじゃない」とか言っても無駄です
あなたの性格自体が相手に「強制」してます
あなたみたいな人に何か言われたら
刺激しないように相手の言葉に合わせるしかないから
そうやって腫れ物扱いされてたからそこまで増長したのかね
あれだけ好き放題かいておいて相手のコテをNGワード指定とか笑える
本人の抗議はおろか第三者の擁護すら受け付けないとかどんだけチキンなんだよ
で、無理矢理書き込んだら被害者アピールするつもりだったんだよね
被害者アピールして、自分の嫌いな奴を取り巻き(笑)に攻撃させるっていう
それ境界性人格障害の常套手段だから
取り巻き(笑)を利用してるだけだから
要するに、それとなく被害者アピールしたら凸してくれた人がいたから
調子に乗って長文で煽動しただけでしょ
普通に良心があれば、凸してくれた人が傷つけられた時点で
煽動するような真似はやめるはずだから
人のこと煽りだとか何だとか言ってるけどおまえが一番煽ってるよね
それだけ他人を利用しておいて何が「人を傷つけるのは嫌」だよ
「人を傷つけたくないならさっさと死ね」って言葉がおまえほど似合う奴もいないわ
---引用ここまで---
なーんて、誰かさんがやたら不謹慎な発言してましたもんねー
メンヘラ野郎がネットに中傷日記垂れ流すって、こういうリスクも背負ってるんですよー
ああ、ソース添付忘れてましたサーセンwww
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9437/1253873258/ ID:d2kHwXWo0
ID:aTi5RKhk0
ID:QfhtzKHI0
ID:1LodKlgs0
ID:o.PA1dTw0
ID:ZWFFgDoY0
ID:e8GgluS.0
ID:AMNCYcA.0
ID:rZsQ5SkQ0
ID:N13ukIRQ0
ID:biE8dyZ60
ID:.ngaiqNk0
ID:HslfFYKY0
>>◆LKgHrWJock
他人の庭に勝手に巣作ってんじゃねーっすよメンヘラさん
いい加減ウゼエんでキレてんですわこっちも
二度と顔見せないでくれるとありがてーっす
ついでに補足すると、
こいつが粘着してた書き手さんはブログ閉鎖を決めちゃいました
あの人は苦言を言ったんじゃなくて自分を見つめ直すためにブログを書いてたのに
他ロワに口出すどころか書き手を追い詰めるとかどういう神経してんのよ
メンヘラだから仕方ないとでも思うとか考えてんのか?あ?
>>◆LKgHrWJock
俺からも苦言というか
SRPGロワがどうなろうと知ったことじゃないが別の企画に飛び火させんな
迷惑だ
日記帳にするならこのスレにしろ
SRPGロワの書き手ですが、当ロワの代表として一言。
>>589-593 ◆LKgHrWJock氏
ID:fBpV21pZ氏
ID:GcJJeBii氏
ID:C99/bSPF氏
ここでの「SRPGロワの他の書き手、読み手を不快にしかさせない」
一切の中傷・議論行為を当ロワの代表として禁止いたします。
>>591当該スレッドで◆LKgHrWJock氏本人か否かの確証は私には取れませんでした。
ただし、もしご本人であるならば、今後のそちらでの書き込みは一切を辞め、
外部での活動も可能な限り控えてください。
内容の是非はともかく、結果として他人に不快感を与えるものでしかありません。
>>593氏には一言。当ロワが警告を無視した議論の継続によって危機的状況に陥った場合、
議論場所をも失い、今後「別の企画」に問題が飛び火する恐れがあります。
貴方の懸念を現実のものとしないよう、くれぐれもご自重の程をお願いします。
悪かった
スレを日記帳にされるのがどれだけ迷惑か考えて欲しかったんだが、よく考えたら彼に通じる訳はなかった
以下完全スルーで進行して下さい
煽るような発言をしてしまい、申し訳ありません。軽率でした。
投下はしばらく様子を見てからにします。
他所のスレのログを貼り付けて私に絡んでいる人へ。
ここは、SRPGに登場するキャラクターを用い、バトロワのパロディSSを
執筆・投下する、二次創作リレー小説スレッドです。
つまり、パロロワのルールに則って創作したSSを発表するための場であり、
書き手の人間性や本スレ以外の場所での言動をあげつらう場ではありません。
老若男女プロアマ問わず、人間性や経歴やリアルでの状況も一切関係なく、
極端な話、基地外だろうが殺人犯だろうが他板で荒らし活動を行っていようが
スレのルールに則って一定以上のクオリティの作品を投下すれば歓迎ないし容認され、
逆に、素晴らしい経歴を持つ容姿端麗な人格者であっても作品がクソなら見向きもされない、
つまり、スレに投下した作品のみで評価される、評価されるべき場所です。
このスレ内での言動に対し、節度を持った形で苦言を呈するのならばともかく、
それ以外の場所での出来事をこの場に持ち込むのはやめてください。
そのような行為はスレの主旨に反するものであり、作品の投下の妨げになります。
少し考えてみて欲しいのですが、自分の立てたスレや毎日楽しみにしているスレに、
スレの主旨とは関係のない文句ばかり書き込む人が来たら、どんな気分になりますか?
他スレの私怨を持ち込んで荒らされたり、妄想や誤解を根拠にしつこく文句を言われたら?
そんなことをする人が住み着いたスレに作品を投下したいと思えますか?
今後はその点をよく考えてから書き込むようにしてください。
とはいえ、人が集まれば不満が生まれるのは当たり前のことです。
作風や二次創作に対する考えが合わないといったものから、感情的な私怨まで、
スレに持ち込めば運営に支障をきたすような、しかし我慢にも限界があるような、
そのようなネガティブな諸々の受け口として毒吐きなどの隔離場所があります。
今後、書き手やSSに対して強い不満が生じた場合はそちらをご利用ください。
SSそのものに関する感想は、不満や批判も含めて歓迎します。
人に言われて初めて見えてくることもあるので、遠慮なく書き込んでください。
加筆修正作業ができるのは今年はもう明日しかないので
できれば仮投下SSに対するご意見をお聞かせください。
よろしくお願いします。
>少し考えてみて欲しいのですが、自分の立てたスレや毎日楽しみにしているスレに、
>スレの主旨とは関係のない文句ばかり書き込む人が来たら、どんな気分になりますか?
>他スレの私怨を持ち込んで荒らされたり、妄想や誤解を根拠にしつこく文句を言われたら?
>そんなことをする人が住み着いたスレに作品を投下したいと思えますか?
>今後はその点をよく考えてから書き込むようにしてください。
あんたが日記帳にしてるスレはまったく別のスレだったんですがねぇ
◆LKgHrWJock氏
ID:Efl8u+4v氏
重ねて、両者に警告いたします。
一切のこの件に関する発言を禁止します。
少なくとも加害者が言っていいことではないな。
>>597 責任転嫁も大概にしなさいな。
自身の行いでスレに迷惑をかけてるのを理解してくれ、いい加減。
どれだけの人間に不愉快な思いをさせて、無駄に敵を作ったと思ってる?
お前一人のせいで元のスレ住人がどれだけ嫌な思いをしてるかは理解してるか?
スレ主の顔を立ててこれ以上は繰り返さんが、自重しろと注意されておきながら
その反省の欠片もない態度は単なる燃料投下にしかならん。
そろそろスレ主にも見放されるぞ、お前。
ロワスレはあまりレスがないのに最近は多いな
そういや多いな。意外と見ている人は多いのか?
書き手が少ないだけで。
誤爆スレ辺りから来てんじゃねーの?
少し荒れただけで報告する馬鹿がいるだろうし。
ほっとけば居なくなると思うぞ。
申し訳ありません。
急用が入ってしまい、本日中の投下が難しくなりました。
努力はいたしますが、無理だった場合は
後日改めて投下したいと思います。
時間が取れました。
ハミルトン組のSS「残照」を投下します。
私は戦争が嫌いだ。
あれほどまでに愛した妻を私から奪った不条理をどうして好きになどなれるだろう。
しかし、私は騎士。戦場は私を必要とする。
しかも、聖騎士の称号を持つ私は、部隊を指揮する立場に身を置かねばならない。
己の抱えるこの矛盾に耐えられなくなることがある。特に、戦いの前夜には。
明日、私は何人の敵兵を殺すのだろう。何人の部下を死なせるのだろう。
彼らにだって家族や友人はいるだろうに。彼らの死を嘆き悲しむ者だっているだろうに。
この私の発する言葉が、ありとあらゆる判断が、その一挙手一投足が、
あのとき私が味わった耐えがたい悲嘆を多くの人間にもたらすのだ。
その重みが、私には恐ろしくてならなかった。
自分という存在が、この世のあらゆる災厄の中心であるかのようにすら思えてくる。
やはり、あのとき死んでおけば良かった。
あのとき、妻が死んだとき、私の中に息づいていた力強い何かも共に死んだ。
何かを欠いた私が不幸の連鎖の紡ぎ手に成り果てたとしても、それは当然の帰結というもの。
愛する妻を死なせることしかできなかった私に、一体誰を救えるというのか。
私のような人間は、ここにいるべきではないのだ。
私より優れた者はいくらでもいた。このような立場に相応しい者はいくらでもいた。
なのに何故、彼らが死に、私が生き残ってしまったのだろう――
夜が明ける前に、自らの手で、この世との繋がりを断ってしまおうか。
そんな誘惑に身を委ねたくなる。
しかし、私には一線を越えることなどできなかった。
大勢の部下の命を預かる私が、戦う力を持たぬ民の代わりに戦わねばならぬ私が、
果たすべき役目を前にして、感傷に溺れて命を投げ捨てるなど決して許されない。
そんな真似をすれば、私を信じてくれている者たちにどれほどの被害を与えるだろう。
そんな真似をすれば、今度こそ本当に妻に合わせる顔がなくなってしまう。
だから私は妻の遺したオルゴールに手を伸ばす。
オルゴールの奏でる懐かしい音色は、耐えがたい苦痛を私にもたらす。
妻と過ごしたかけがえのない日々、決して取り戻すことのできない日々が、
まるで昨日の出来事のように鮮やかな映像を伴って次々と脳裏に甦る。
そして、もう二度と彼女には会えない、という当たり前の事実に圧倒される。
それでもオルゴールに手を伸ばすのは、そこに妻がいるからだった。
限りない痛みと喪失の只中でのみ、私は妻の存在を身近に感じることができるのだ。
そして、彼女は教えてくれる。誇りを失ってはならない、と。
無意味な死など存在しない。明日の“犠牲者”を不幸なだけと断じてはならない。
そのような考えは、死んでしまった彼女を貶め、その生を否定することに通じる。
私よりも優れた者が何故死なねばならなかったのか、と嘆いてはならない。
死者と比較して自分が劣っていることなど、逃避行為の言い訳にはならない。
私は生き残った。重要なのは、その理由などではない。
私は知っている。愛すべき者が、敬意を払うべき者が、志半ばでたおれた者が
かつてこの世にいたことを。私の存在に希望を見出す者がこの世に存在することを。
それだけで充分だ。それを知っている以上、選択すべき道は一つしかない。
人の心には、自浄作用がある。喪失を乗り越え、過ちを正す力を人は誰しも有している。
だから私はそれを信じ、己の成すべきことに全力を尽くせばいいのだ。
全ての生は、全ての死は、いつの日か必ず訪れる輝かしい未来に繋がっているのだから。
……そう信じていられたからこそ、私は“強者”になれたのだ。
しかしその信念も、あの地下牢で崩れ落ちていった――
◇ ◆ ◇
可憐で優しげなカトリの顔が凍りつき、まるで魂が抜けるように血の気が失せていった。
ヴォルマルフによる第一回放送、読み上げられる死者の名前。
私を支えるべく肩を貸すルヴァイド、その身体が一瞬だけ強張るのが分かった。
理由は察しがつく。死者の中に、見知った者の名前があったのだろう。
ルヴァイドの表情は窺えない。自力で立つこともできず、彼にもたれかかる格好の私には。
それでも、ルヴァイドがカトリに顔を向けたのは分かった。そして声をかけたことも。
「カトリ、もう少し休むか」
「いいえ、私は大丈夫です。行きましょう、日が完全に落ちる前にできるだけ移動しておきたいの」
「いや、それでは俺が困るのだ」
「ルヴァイドさんが、どうして……?」
「この中で今、剣を振るえるのは俺だけだ。こちらには首輪探知機があるとはいえ、
あのような放送を聴かされた直後では判断を誤りかねぬ。少し、時間が欲しい」
しかし言葉とは裏腹にルヴァイドの口調には迷いがなく、その声色も放送前と何ら変わりはない。
彼は冷静沈着そのものだった。恐らく、死というものに慣れ切っているのだろう。
しかし冷酷な人間ではない。「俺が困る」と言ってはいるが、実際にはカトリを慮っている。
彼女に負担をかけぬよう、そして嫌とは言わせぬよう、あえて自分一人の都合であるかのような
言い方をしたのではないか。つまり、カトリを休ませるために、責任を背負い込んだということだ。
近寄り難いように見えて、意外と面倒見の良い男なのかもしれない。
しかし、対するカトリもまた、その第一印象に反する気質を持ち合わせているようだった。
茫然自失の体で立ち尽くしていたカトリは、ルヴァイドに声をかけられてはっとした。
胸の前で固く握り締められた細く白い指、うっすらと涙の滲んだ優しげな眼。
彼女の声はか細く、少し震えていたが、その言葉には確固とした意志があった。
それは純粋な優しさに裏打ちされたものだったが、一旦決めたことを成し遂げるまでは
てこでも動かぬ頑固な気質を感じさせた。
「でもね、ルヴァイドさん。ランスロットさんの服はまだ少し湿っているの。
陽が沈んだら寒くなるわ、そしたらどんどん体力を奪われちゃうでしょ。
ランスロットさんは怪我をしているのに、その上風邪までひいたら……。
そんなことにならないように、一刻も早く村のどこか暖かい場所で休ませてあげたいの」
「なるほど、確かにハミルトンの体調を第一に考えるのならば、先を急ぐべきだろう。
しかしカトリ、いくら彼を気遣ったところで、村まで無事に辿り着けぬようでは元も子もないのだぞ」
「それなら私に考えがあります。ルヴァイドさんの負担を減らせばいいのでしょう?」
湿度を帯びた夕暮れの風に、カトリの長い髪が揺れる。
しばしの沈黙の後、ルヴァイドが口を開いた。
「……話を聞こう」
「この杖でゾンビを召喚して、囮になってもらうの」
言いながら――ルヴァイドが返事をする前に――、カトリは禍々しい装飾の施された杖を掲げた。
まるで水が沸騰するように地面が泡立ち、ドラゴンを思わせる巨大生物が地中から現れる。
いや、それは生物ではない。漂う腐臭、吐き気を催すこの悪臭は明らかに死臭だった。
ゾンビを召喚すると言ったカトリの前に現れたのは異形の竜、初めて目にする異界の腐竜だった。
しかし、この結果にもっとも驚いたのは、私でもルヴァイドでもなく当のカトリ本人だったのか。
彼女は絶句し、信じられないものを見るような目を自身の召喚した魔物に向ける。
だが、それもほんの僅かのこと。驚愕は喜びへ、そして安堵へと変わっていった。
「ああ……ユトナ神よ、感謝いたします……」
平時であれば、或いは戦時であれば、私は衝撃を受けただろう。
神に仕える善良な少女が屍術もどきを行使する異邦の文化、私の知らない価値観に。
しかし、今はただ感謝した。卑小な己を恥じながら。カトリの決断に、その純粋な優しさに。
彼女は見知った人間の理不尽な死に直面しながら、泣き言一つこぼさずに
ルヴァイドと私の双方を犠牲にしないよう最善を尽くしてくれたのだ。
私はあの放送を聴きながらデニム君の名が呼ばれなかったことに安堵してしまったというのに。
「ドラゴンゾンビなら囮になってくれるだけじゃない。ちゃんとした戦力にもなるわ」
「カトリよ、そのドラゴンゾンビを制御するには、どれほどの精神力を要するのだ?」
「精神力っていうほどの集中は必要ありません」
「ならば、これを預かってほしい」
ルヴァイドの差し出した風変わりな腕輪をカトリは躊躇いながらも受け取った。
「首輪探知機を私に? でも、これはルヴァイドさんの……」
「しばしの間、おまえに首輪探知機の監視を頼みたい。俺には他にすべきことがあるのでな。
若干の集中力を要するが……、任せていいな?」
「ええ、私は大丈夫です」
カトリは静かに微笑んだ。哀しげではあったが、確かな意志を感じさせる笑顔。
ふと、一つの仮説が浮上する。ルヴァイドは、カトリの意識を仲間の死から遠ざけるために、
あえて首輪探知機の監視を彼女に委ねたのではないだろうか、と。
言葉になったことのみが本心なら、移動すると決めた時点で――つまり放送前の時点で――
カトリに首輪探知機を渡していたはずではないか。
しかし、実際に手渡したのは放送後、それもカトリが休息を拒んでからのこと。
ルヴァイドの人間性を裏付けるはずのこの仮説に、胸の奥が冷たくなる。
私は危惧していた。歩くこともままならぬ身で足手纏いにはならないだろうか、と。
しかし、私の存在が彼らを阻害しかねないのは、怪我のせいだけではないのだろう。
何故なら、私にはカトリの心を支えることができなかった、いや、それどころか、
彼女の心を支えようと考えることすら忘れていたのだから。
私の誇りだった聖騎士の称号は、決して戦いの腕だけで得たのではないにも関わらず。
一行を先導するように、或いは護衛するように、ドラゴンゾンビが低空飛行する。
幾度となく小休止を挟みながら、私たちはC-3エリアの村を目指していた。
怪我は徐々に癒えていくものの、私の折れた右足は未だ自身の体重に耐えることができない。
休息を終え、ルヴァイドの肩を借りて立ち上がろうとしたとき、耳慣れぬ声が首輪から聞こえた。
「――初めまして、皆様方。
私は悪鬼使いキュラーと申す者。以後、お見知り置きを」
ルヴァイドがはっと息を呑み、その身が強張るのがはっきりと分かった。
彼の表情を確認することはできないが、第一回放送のときとは明らかに反応が違っている。
ルールの改定を告げるキュラーの声を、ルヴァイドは微動だにせず聞いていた。
首輪の制限時間の変更に関する説明を終えたキュラーは、
救済処置と称して、更に悪質なルールの追加を我々に告げる。
その内容は、死者の首輪と引き換えに、生前の所持品を与えるというもの。
しかもそれは、ここに召喚される前に身につけていた武具の類いだという。
断固として拒絶せねばならない、愚劣極まりない悪魔の囁き。しかし、私の心は揺れた。
歩くこともままならなず、聖騎士としての精神すらも失いつつある私であっても、
見返りを求めずに私を助けてくれたルヴァイドやカトリの恩に報いることができるかも知れない。
私の愛剣ロンバルディア。ルヴァイドならば使いこなせるだろう。そして皆を助けてくれるだろう。
悪魔の囁きに揺さぶられる私の心を見透かすように、キュラーが更なる追い討ちをかける。
「――例え足手纏いの方々であろうとも、
自らの生命を皆様方に差し出しさえすれば、貴重な時と品々をお与えになり、
残された仲間達に貢献する事が出来るにようにあいなりました――」
そう、私が死ねば――しかし、悪魔の同意を得ることで、私の心に疑問が芽生える。
新たなルールを受け入れて私が自ら命を絶てば、この二人はどんな気分になるだろう。
私が首輪を差し出すことで彼らの心に波風を立て、苦悩を背負わせ、正常な判断力を奪うなら、
それは命を捨てるだけではないか。そのような真似はできない、断じて。しかし、もし――
キュラーによる臨時放送が終わると、ルヴァイドが静かに口を開いた。
「……このゲームの破壊を目論む者や脱出を望む者を、一人でも多く集めたい。
戦力が必要なのでな。だが、烏合の衆に過ぎぬようでは、主催の打倒は困難を極めるだろう。
そこでハミルトン、おまえに一つ頼みがある」
「……話を聞かせてほしい」
「交渉役や助言を頼みたいのだ。異なる世界の者達が互いに手を取り合えるよう」
「喜んで引き受けよう。しかし団結を促す役目ならば、貴公の方が向いているのではないか?」
「いや、俺には戦うことしかできんよ。それに、剣を振っている方が性に合っているのでな」
その言葉は私をキュラーの甘言から遠ざけるためのものだろうか。
しかし、それにしては、ルヴァイドの声色からはこれまでにない切迫した決意が感じられた。
彼はキュラーを知っている。それは間違いないと思った。しかしどのような関わりがあったのか。
それを問おうとしたときに、カトリがあっと声を上げた。首輪探知機に反応があったのだ。
南方のE-4エリア付近、今しがた禁止エリアになったばかりの一帯に、誰かが足を踏み入れた。
その人物を追いかけるように、新たな光が現れる。相手はどうやら二人組みのようだ。
彼らは禁止エリア付近で一体何をしているのだろう。
二人はしばし立ち止まり、やがて今来た道を引き返していく。
二つの光が探知機から消えた。私もまた、問うべき機会を失った。
◇ ◆ ◇
カチュア・パウエルという少女は、私の名を口にしようとはしなかった。
彼女は私を“騎士様”と呼んだ。敬意ゆえではなく、恐らくは真逆の思惑を隠すために。
しかし、そのことに気付いていながら、私は笑顔で彼女に接した。
彼女は笑わない娘だったから。誰に対しても刺のある言葉を使う娘だったから。
そのように振舞わなければ生きていけなかったのだと思ったから。
彼女が悪なのではない、繊細な少女をしたたかな女に変えた民族紛争こそが悪なのだと思ったから。
だから私は彼女の心に宿る自浄作用を信じ、余計なことは言わずに笑顔で接した。
そうすることが優しさなのだと信じていた。そうすることが誠意なのだと信じていた。
しかしそれは偽善だった。恐ろしいまでの虚無をうわべだけの笑みで包んだ、正真正銘の偽善だった。
地下牢で再会したカチュアは、まるで未亡人のように黒いドレスをまとっていた。
私の宿敵であり、ヴァレリアの脅威でもあるランスロット・タルタロスに寄り添い、彼女はこう呟いた。
「私はデニムを愛していたわ。たった一人の弟だもの。当然よね。
でも弟じゃなかった……。そして、私を見捨てた……。手に入らないのなら、いっそ……」
ヴァレリアの正当なる後継者が、ヴァレリアの未来のために戦っている者を殺す。
姉が、弟を殺す。繊細な少女が、この世でもっとも愛する者を殺す。
大義も正義も理想も存在しない、自分のためですらない寂しさゆえの殺人。
加害者も犠牲者も、私と関わりを持った人間。私が信頼し、仲間だと認めた人間。
人の心に宿る自浄作用を信じ、正しいと思うことをした結果がこれなのか。
私はカチュアの豹変に打ちのめされた。
カチュアを洗脳したタルタロスを恨むことすらできなかった。
何故なら、私はカチュアの異常性に気付いていたのだから。
その根底にあるものが何なのか、それを察することができていたのだから。
気付いていながら、何一つ手を打たなかった。その結果が、タルタロスの勝利だ。
目先の喪失を恐れた私は、自浄作用とは真逆の存在に成り下がっていたのだ。
タルタロスは私の前から去った。ガン細胞の切除は終えたと言わんばかりの顔で。
そのかわり、夢に彼が現れるようになった。夢の中で、彼は言う。
「ゼノビアの聖騎士よ、貴公は残酷な男だ。
戦争を嫌っていながら、それが訪れるような世を望んでいるのだから。
貴公は何故戦争が起きるのかを考えたことがあるかね?
それまでの社会システムでは解決できない事態に直面したから……
言うなれば、社会というシステムに破綻が生じたからだ。
では、何故破綻する? 弱者が支配するからだよ。
それを知っているからこそ、私は強者による支配を理想とするのだ。
人間の持つ自浄作用になど期待はできぬ、そのようなものは何の希望にもならぬ。
何故なら、戦争もまた、“人間の持つ自浄作用”の一環だからだよ。
人間という種の作り上げた社会というシステムに備わった、自浄作用だからだよ」
やめろ! そのような危険思想を受け入れることなど私にはできない。
到底容認できない、不快な考えだ。タルタロスを否定したかった。しかし、言葉が出てこない。
剣でしか物事を解決できない私のどこに、彼の言葉を覆すだけの説得力があるというのか。
「……人の持つ自浄作用を信じるというのは残酷な行為なのだよ。
何かが汚濁として排除されることを容認ないし歓迎する、ということなのだから」
馬鹿な! それではまるで、まるで私は――
弱者や人の弱さをガン細胞呼ばわりし、その排除を当然とするタルタロスの同類ではないか。
そんな馬鹿なことがあるか、私はタルタロスの思想には同意できない、その生き方を認めたことなどない。
そのような詭弁で私の信念を挫けると思うな。そう言いたかった。そう言わねばならなかった。
私はランスロット・ハミルトン、ゼノビア聖騎士団団長、力を持たぬ民のために戦ってきた、
そのように生きられることを誇りに思ってきたのだから。
しかし、心の中で何かが落ちた。転落ではない。陥落でもない。
胸に開いた空洞を圧迫するように漂っていた鉛の玉が収まるべき場所にすとんと落ちた。
そう、私は納得した、納得してしまったのだ、タルタロスの言葉に、彼の目に映る私自身の姿に。
目覚めると、納得は絶望へと姿を変える。
なんという夢を見てしまったのだろう。いや、原因は分かっている。良心の呵責だ。
カチュアを救えなかったことと、それによって多くの血が流れることに対する罪悪感が見せた幻だ。
それでも、いや、だからこそ、“こんな夢を見た”という事実に絶望せずにはいられなかった。
夢に現れたタルタロスは私自身、彼は私の心の奥底に潜む言葉を語ったに過ぎない。
にも拘わらず、その内容は本物のタルタロスが口にしたとしても違和感のないものだった。
それが私の良心の正体なのか。些細なことで闇に呑まれそうになる私を律していた良心は、
ランスロット・タルタロスの信念そのものだったのか。
そうなのだろう。嘆息しながら、胸に何かが満ちるのを感じる。息が詰まるような諦念。
そう、私と同じ名前を持つ彼は、立っている場所が違うだけの、もう一人の私なのだろう。
タルタロスは、理想に全てを捧げた男。一方、理想を失った私には、もはや何も残っていない。
たとえ生きてゼノビアに帰ったとしても、私には、もう――
「ルヴァイドさん、首輪探知機に反応が……」
切迫したカトリの声が、自らの闇に落下しつつあった私の意識を現実へと引き戻した。
それは、D-3エリアでのこと。南方のE-3エリアから接近する二つの首輪を探知機が捉えた。
彼らの進行方向は我々と同じ。その足は速く、このままではいずれ追いつかれてしまうだろう。
我々は一旦足を止めた。戦闘になった場合に備え、私とカトリは岩陰に身を隠す。
やがて人影が目視できるようになると、残照を受けて夕闇にきらめく金の髪が私を捕えた。
私の胸に、圧倒的な喪失感を伴う郷愁が満ちる。
――デスティン……?
いや、彼ではない。彼はここには召喚されてなどいないし、そもそも体型がまるで違う。
それでも思い出さずにはいられない。デスティンと初めて会った日のことを、共に戦った遠い日々を。
あの頃は――妻を喪った哀しみが癒えず、胸に開いた風穴に呑まれそうになることもしばしばだった。
それでも、自分には成さねばならないことがあると使命感に燃えていた。
民のため、故国のためにできることが自分にもあると信じていた、信じることができた。
忘れていたはずの記憶が昨日のことのように甦り、名前も知らない人々の顔が脳裏を去来する。
帝国の圧政に苦しみながら、それでも私に笑顔を向けてくれた無辜の民。
私の本質がタルタロスと何も変わらないのだとしても、彼らの笑顔に偽りはなかったはずだ。
彼らの笑顔を、そこに込められた想いを無価値なものと断じるのならば、
今度こそ本当に私はタルタロスの同類に成り下がってしまうだろう。それではいけない。
私は自らの首に意識を向けた。この首輪を手にした者が、ロンバルディアの所有者となる。
ロンバルディア。新生ゼノビア王国聖騎士団長の証。私の誇りであり、人生そのものの象徴ともいうべき剣。
不意に首輪が熱を帯び、神経を研ぎ澄ますような荒々しい活力が全身にみなぎるのを感じた。
私はまだ死ねない。心の底からそう思った。愛剣を、この首輪を、殺人者などに奪われるわけにはいかない。
ロンバルディアは、戦う力を持たぬ無辜の民のためにこそ振われるべき剣。
このような殺し合いに荷担する者の手に渡るなど、決してあってはならないのだ。
しかし――キュラーの声が、その言葉が、脳裏に絡み付いて離れない。
私は死など恐れない。命を賭ける価値があると信じることができるのならば。
自らの行為が、その選択が、輝かしい未来に通じていると信じることができるのならば。
怖いのは、誇りを失うこと。理想を見失い、自分を見失い、命の価値を見失うことだ。
【D-3/平原/初日・夜(臨時放送後)】
【ランスロット・ハミルトン@タクティクスオウガ】
[状態]:重傷(肋骨と右足を骨折、現在治療中)・体力消耗(大)・右足に当て木・歩行困難
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考]0:ゲームの破壊、脱出。
1:せめて自力で歩ける程度までは身体を回復させたい。
2:デニム他、信用できる人物との合流。カチュアを警戒。
3:足手まといになるくらいなら、いっそ…
【カトリ@ティアリングサーガ】
[状態]:健康
[装備]:ゾンビの杖@ティアリングサーガ
[道具]:火竜石@紋章の謎、支給品一式
[思考] 0:みんなで生還
1:ホームズ達と合流する
2:ルヴァイドさんやランスロットさんの役に立ちたい
3:あまりゾンビの杖を振り過ぎないようにする
【ルヴァイド@サモンナイト2】
[状態]:健康
[装備]:バルダーソード@タクティクスオウガ
[道具]:首輪探知機、支給品一式
[思考] 0:主催者の打倒
1:こちらに接近する二名に備える。
2:自分とカトリの知り合いと合流する。
3:赤髪の女性(アティ)、金髪の青年(ラムザ)を探す
4:信用できる人物を探す
5:戦いを挑んでくる相手には容赦はしない
以上で投下は終了です。
現在、ログの容量が493kbですので、そろそろ次スレですね。
投下乙。
続きも待っているよ。
アティ先生が殺人を告白する夜会話は第何話ですか?
13話だね。
しかも、その事を少しだけ話すのは元暗殺者の
スカーレルだけにというのも色々と興味深い。
あと、殺人を犯したのは両親を殺された直後の頃だと思われる。
当時は本人の台詞を聞く限り、極度の心身喪失状態で
発狂寸前だから、その辺りと考えれば時期的にも一番符号する。
軍に入った頃は入隊動機も復讐の臭いが全くしない極めて前向きなものだし、
それを考えれば軍隊にいた頃に脱走して復讐相手を血眼になって探し回り
連続殺人をこっそり犯して隠蔽してたとは到底考え辛い。
列車事件にしたところで、アティが「軍人として殺さなければならない
人間を殺せなかった」のが事件の発端だから、その頃から殺人への禁忌はあった筈。
当然あの頃は子供だから、いかに素の戦闘力からして凄まじいかが推測される。
魔剣なしでも充分過ぎる程に強いでしょうね。特に剣士タイプだと。
まあそれ以上に。復讐とは言え過去に殺人を犯した人間として見てみると、
本編の台詞の意味合いがまるで違って聞こえてくるから面白い。
何にせよ、己の犯した事を正当な復讐ではなく大きな罪として捉え、
決して忘れることなく背負い続けて今の彼女となったのではないかと。
そういえば、アティってカクテル名で、「弁護士」って意味があるみたい。ただし、味は辛口らしいが。
まあ元々サモンナイトはカクテル名のキャラクターかなり多い。ただ、主人公までそうだとは思わなかった…。
>>619 ありがとう。13話の夜会話を見てみます。
やっちまった…
ルヴァイドのドンアクを治療する場面をすっかり忘れてたorz
書いたり消したりしてるうちに書いたつもりになってた…
修正版投下なり続きのSSでフォロー入れるなりします。
そろそろこっちを埋めたいと思います。
wikiの「書き手用動画資料」に、さりげなく「しっこくハウスとの遭遇」が
追加されていたことに気づいて笑った。それ、資料の役になんか立つのか?
書き手用動画資料、タルタロスとカチュアのシーンもあるんだね。
「カチュア、君は孤独なのだよ」っていう殺し文句、
エレノアの設定を踏まえて考えたら自虐にも見えてくる。
では埋めついでに。
第一話から最新話までで、一番印象に残った話しとその感想を聞いていきたいが。
「セキガンのアクマ」
これは本当にすごい。感想は後日改めて…
「セキガンのアクマ」
人体の構造と武具の特性を熟知した独創的な殺害方法。
タルタロスの強さと冷酷さ、矯正不可能な異常性と
その裏に秘められた決して言葉にされることのない
深い哀しみが感じられるのが凄い。というか凄まじい。
どす黒い一方で、フロンとアグリアスに対する
タルタロスの大真面目な反応がユーモラスだった。
じゃあ自分も一つ。
No.60「箱庭会議」
とかく濃いマーダーどもの暗躍だけが目立ち、対主催陣営が翻弄される中で、
対主催側が初めて反撃の狼煙を上げた回という意味合いは極めて大きい。
実にイスラらしい狡っ辛い描写も良く、これがなければオグマは確実に堕ちていただろう。
そういえばデニムとパッフェルさんの共通点にアル魔の存在があるな。
接点が薄すぎてSSで使うのは難易度高すぎるが。
ああ、そういや二人共通の敵だ。しかも毒デニムはアル魔の地雷敷現場近辺見て、
明らかに罠に気付いてたっぽいし。あと共通で出会った生きている人間はイスラか。
そういや質問。
レギオンってマルコの福音書のどの辺りにあったっけ?
大雑把な内容はもろちん知っているが、原典の文が知りたい…。
>>632 5章…のようですが、手元に原典がないので正確なことはわかりません。
急ぎでなければ調べますが。金曜夕方まで待っていただければ。
ああそうか、デニムがあの罠とパッフェルさんの匂いの
関連性に気づけばいいのか。>アル魔との接点
ダイスダーグ人格のことしか見えてなかった…
あと、ダイスダーグの人格が表に出ているときは
外見年齢と実年齢が違うというのも共通点になるかな。
単に融合して合計した実年齢がはねあがっているから、違和感かんじるとも言える。
解釈次第でしょ。
福音書は、ちょっと気になっただけだから別にいいかな。
埋め立てを兼ねて報告をします。
まず、予約の件ですが、破棄はしません。
ただ、投下は少し遅くなる(2月以降)と思います。
過疎に甘えて身勝手を押し付け、申し訳ありません。
修正版ももう少しお待ちください。
埋まるかどうか分からないので小ネタでも…
マーダーの逆読みのREDRAM→red ram→赤い羊って
アティ先生のイメージと重なると思った。
赤毛、穏やかな人柄、実は私的な事情で人を殺しているという点。
ram=雄羊って点が苦しいけど、剣士としてのイメージをそこに当てはめれば…
(さすがにそれは強引な気もするけど…)
>>635 馬鹿山羊の実年齢はおっさんとかおじいちゃんなんてレベルじゃねー!
人間離れした得体の知れない違和感はありそう。