【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
生き残った一人だけが、元の世界に帰ること及び望んだ願いを叶えることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
但し義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
支給品として地図、コンパス、筆記用具、水、食料、時計、懐中電灯、
及び各作品や現実からランダムに選ばれたもの1〜3個が渡される。
【主催者】
・進行役
右上@ニコニコ動画
左上@ニコニコ動画
・黒幕
運営長@ニコニコ動画
【ステータス】
投下の最後に、その話に登場したキャラクターの状態・持ち物・行動指針などを表すステータスを書いてください。
テンプレはこちら。
【地名/○○日目・時間(深夜・早朝・昼間など)】
【キャラクター名@出典作品】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(武器・あるいは防具として扱えるものはここ)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なものはここ)
[思考・状況](ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
複数可、書くときは優先順位の高い順に)
【予約について】
キャラの予約は基本的には3日。申請があれば2日程度延長します。
【作中での時間表記】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【地図】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0144.png ttp://www11.atpages.jp/nico2nd/(現在位置表)
一物
それは、この殺し合いの中で生まれた奇跡のような五角形だった。
追跡者達は自らが追跡されている事を知らず、視界の中の標的へと歩を進める。
誰もが自分が置かれた現状に気が付く事なく足を動かし続ける。
僅かな均衡の上に成り立っている五角形は、それぞれの接近に伴い、徐々に縮まっていく。
そして、遂にはその五角形は崩れ落ちる事となった。
そのペンタゴンを破壊したのは、五角形の一角を担うあるヘタレが放った一撃。
その一撃により一人の少年の命が失われ―――そして、始まるは大乱戦という名の大混戦。
同じ目的を掲げている筈の人間達は、坂を転げ落ちる握り飯のようにすってんころりと、戦いを始める。
誰も止められない、止める事の出来ない悲劇が―――今、開始される。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
鋼のような筋肉に身体を包んだ金髪の男・アレックスは茫然とその光景を見詰めていた。
鼻腔を突き刺す悪臭。
様々な地を旅してきたアレックスでさえも経験の無い、強烈で吐き気を催す香り。
だがその悪臭すらも歯牙には掛かからず、アレックスはただ茫然とその光景を見ている。
いや、見ている事しか出来なかった。
「……カイト……お前……」
先程まで言葉を交わしていた少年は、たった数分で見るも無惨な姿に変貌していた。
消し飛んだ上半身、力無く垂れた下半身、炭化した傷口。
異臭、異臭、異臭……訳が分からない。
何故、こんな事になっている?
ようやく心を交わせたと思っていたのに、こんな殺し合いの場でも分かり合えたと思ったのに……!
「見てくれよ、アレク。俺は手に入れたんだ、力を……」
惨劇の中心でKAITOは……KAITOの声を発する機械のような鎧を纏った人間は、笑っていた。
達成感に満ち溢れた、心底からの歓喜を含んだ声。
何処か歪んだ声色が静寂の草原を通り抜けていく。
支援
「やっとだ……やっと手に入れた……これで皆を守れる……リンもレンも助けてやれる……俺は強さを手に入れたんだ……」
KAITOの視界にアレックスの姿は映っていなかった。
ただ、手に入れた力に酔いしれる。
自身のコンプレックスを打ち破った事に震撼し、仮面の下で笑顔を浮かべていた。
壊れた人形のような、脱力しきった笑みを張り付かせ、KAITOは空虚な声を上げる。
「何で……こんな真似をっ……!」
その時、振り絞られたような悲痛な叫びが、KAITOの耳を叩いた。
瞬間、KAITOの表情に力が戻る。
殺人という禁忌を犯した事により齎された放心状態を、心中に燃え広がった憤怒が塗り潰したのだ。
「何でこんな真似をだと……? てめぇが……てめぇがしっかりしねぇからだろうが!! 何でこの糞野郎を見逃してんだよ!!! コイツは剣崎の仇で! リンを不幸にさせた張本人なんだぞ!!
何でそれを平然と逃がそとしてんだよ!! 頭おかしーんじゃねぇか、ボケが!!」
その獣のような咆哮と剣幕に、そしてKAITOが口にした内容に、アレックスは思わず言葉を失ってしまう。
そう、クラッシャーは殺人犯だ。
殺し合いに乗り、恐らくは剣崎を殺害し、先程もまた優勝を目指して行動していた。
クラッシャーは、確かに悪だ。それは確固たる事実であった。
だが――
「違う! クラッシャーは改心しかけていた! 自身の犯した罪に気付き、行動を改めようとしていたんだ!
お前は……お前はその未来を奪ったんだぞ!! 罪滅ぼしのチャンスを、お前は奪ったんだ!!」
――クラッシャーは、目を覚まし掛けていた。
支援
最後に別れた時、クラッシャーの瞳は人殺しとは思えない程に澄み切っていた。
アレックスも見た事のある瞳。
ファイトが終わった後のような、悔しさと清々しさの入り混じった瞳。
その瞳を見れば分かる。
――この男は変わる。必ず、変わる。
その確信を持って、アレックスはクラッシャーに背を向けた。
下手すれば後ろから刺されかねない状況。だが、アレックスは僅かな躊躇も覚えなかった。
歩き始めたその時には思い描いていた。
近い未来、クラッシャーと手を取り合い強大な悪に立ち向かうその光景を――。
それを、この男は、踏みにじった。
怒りを感じずには居られなかった。
KAITOの考えも理解できる。だが、それでも怒りは収まらない。
「改心ン? 人を殺しといて改心だと!? 死にたくないから人を殺して、気分が変わったから改心する……そんな都合の良い事が許されっと思ってんのかよ!!
奴は殺人を犯して、リンを酷い目に合わせたんだ!! 生きて改心する事が罪滅ぼしじゃねえ、死ぬ事しか奴の罪滅ぼしはねぇんだよ!!」
先の叫びはアレックスの気持ちの丈が込められた渾身のものだった。
だが眼前の少年の心を揺らがす事は叶わない。
KAITOは怒号と共にアレックスの襟首を掴み上げる。
表情は仮面に阻まれ伺い知る事が出来ないが、それでも怒りに満ちていると理解できた。
そのKAITOの反応に、アレックスが覚える感情は絶望。
――何故、分かってくれない。
――何故、気付いてくれない。
――この殺し合いの場では、改心をする事さえ許してもらえないのか。
――この殺し合いは、そんな些細な望みでさえ叶えさせて貰えないのか……!
沢山の悲しみと絶望の中、ようやく舞い降りた希望。
だが、そんな希望ですら易々と砕け散った。
――誰もが死んでいく。
気前の良い運送屋の社長も、闘争を好む冷酷な殺人鬼も、凄まじい戦闘力を誇った喧しい剣士も、心優しいネガティブな少女も、殺し合いの果てに正義の心を理解しかけた少年も……誰もが死んでいく。
何なのだ、この殺し合いは?
何故、人々をこんなにも狂気へと引きずり込む?
何故、何の罪も無い人間を殺人鬼へと昇華させてしまう?
この地獄からどうすれば抜け出せる?
誰でもいい、教えてくれ。
腕っ節しか取り柄の無い俺は、この狂気の中、どうすれば良いんだ……!
たぴおか支援
支援
「分かったか、アレク。俺は何も間違った事はしていない。人を殺したクソ野郎を裁いてやっただけだ……そう、間違ってはいないんだ」
押し黙るアレックスを睨み付けながら、KAITOは自身に言い聞かせるよう、言葉を紡ぐ。
そんなKAITOに掛ける言葉を、アレックスは持ち合わせていなかった。
虚脱感に染まった顔で、見詰め続ける事しか出来ない。
この殺し合いにより何かを狂わされた哀れな少年を――。
ナギッ
――だから、気付けなかった。
奇妙な音と共に高速で迫る男の姿に、アレックスは気付く事すら出来なかった。
瞬間、アレックスの視界から消えるKAITOの姿。
表情を染めていた虚脱感が驚愕へと変化し、同時に視線が、唐突に乱入してきた男に移る。
「お、お前は……!」
その男はアレックスにも見覚えのある男だった。
肩にまで伸びた銀髪、下顎を覆う無精髭、引き締まった鋼の如く筋肉を携えた男。
曰わく、病気さえなければ北斗神拳を継承していた男。
曰わく、存在自体がバグ。
曰わく、北斗格ゲー最大の戦犯。
世紀末スポーツアクションゲーム……ではなく荒廃した世紀末から連れてこられた男――トキが二人の前に颯爽と現れた。
シエン
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
―――時は僅かに遡る。
その時トキは、一人の少女と共に駅から出て来た男達を追っていた。
男の内の一人は顔に憤怒を貼り付かせながら、男の内の一人は臆病風に吹かれた様子で、走っている。
トキ達は付かず離れずの距離を保ちつつ、その二人を追跡し続けていた。
「……ねぇ、どうしてさっさと声を掛けないのよ」
顔に浮かぶ苛々を隠そうともせずに、少女――逢坂大河がトキへと問い掛ける。
前方の二人組が結構なスピードで走っているとはいえ、声の届かない距離では無い。
声を掛け足を止めてもらった後に、ゆっくりと情報交換をすれば良い……大河はそう考えていたのだが。
が、大河の言葉にトキは首を横に振るだけ。
距離を詰めようとも、呼び止めようともせず、目を細め前方の二人を眺めていた。
その無愛想な様子に頬を膨らませ、トキを睨み付ける大河。
怒りを含んだその視線を受け、大河の不機嫌が伝わったのか、トキは苦笑を浮かべながら大河へと視線を移す。
「あの二人は何か様子がおかしい。万が一という事もある、少し様子を見てから接触した方が良いだろう。
私の身体もまだ全快とは言えないのでな、すまないが少しばかり我慢してくれ」
苦笑と謝罪で締めくられた説明に大河も成る程と納得し、同時に自身の浅慮さに後悔を覚えた。
何も考えず二人組と接触を計ろうとした自分、最悪の事態も考え様子を見ているトキ……どちらの判断が正しいかは小学生にも分かる。
大河は顔を俯かせ唇を噛み締めながら、自身の不甲斐なさに肩を震わせる。
(こんなんじゃあ、塩の意志を継ぐ事なんて出来ない……もっと慎重に行動しないと……)
トキを護衛につけ無理矢理図書館から飛び出した時点で、慎重さなど欠片も存在しないのだが、大河がその事実に気付く事はない。
表層だけの戒めを自身に投げつけ、大河はトキ同様に二人組の観察を始めた。
使命感と責任感に強張ったその表情。
少なくとも普通の女子高生が浮かべるような表情ではない。
そんな大河を視界の端に捉えると、トキは再び苦笑を浮かべ大河へと語り掛ける。
支援
世紀末支援
「そう気張ることはない。厄介事は私に任せ、大河は自分の身を守ることに専念するんだ。
弱者の救済こそが私が目指す北斗神拳……大船に乗った気でいれば良い」
諭すような、優しいトキの言葉。
その言葉に大河の顔から緊張が少し抜け、微笑みが宿る。
「……ありがと」
そして、僅かに頬を染めながら一言。
その反応にトキは苦笑を笑顔へと変え、大河を見詰める。
一緒に行動してから初めて見たトキの笑顔に、慌ててそっぽを向く大河。
大河の顔は茹で蛸のように真っ赤な物へと変貌していた。
「べべべ、別に心の底から感謝してる訳じゃないんだからね! そ、それに大人が子供を守るのはと、当然なんだから!」
照れ隠し百%の憎まれ口にトキは益々笑みを深くし、大河の顔は更に赤く染まっていく。
―――核という悪夢が発生せず、世が平穏のままだったのならば、このような天真爛漫な子供達も増えたのだろうな……。
大河の姿に、トキはそう思わずにはいられなかった。
コロコロと機嫌の変わる、純粋で子供っぽい少女。
トキが生きてきた世紀末の世界では珍しい、明るく活発な少女。
守り抜くべき……守り抜かなければならない少女だ。
口に出すことはしないが、トキは決意した。
この少女を守り抜く為、病に犯された身体を最期の最期まで酷使し続けようと、
命に代えてもこの少女を守り抜こうと、
――トキは静かに決意した。
「トキ……何かマッチョな方が他の参加者と遭遇したみたいだけど……」
と、そこで、不意に掛けられた大河の言葉が、思考と決意に集中していたトキを現実へと引き寄せた。
気付けば両脚は追跡を止めており、二人組との距離は相当離れている。
気の緩みを戒めながら、トキは二人組へと視線をやった。
二百メートル程離れたそこには三人の人物。
地面に寝そべる眼鏡の少年、少年を睨み付ける筋肉質の男、二人の後ろで何らかの逡巡を見せている少年……その状況は明らかに剣呑なものへと変化していた。
「ねぇ、何が起きてるのよ」
常人の域を出ない大河には、遠方にて繰り広げられているその光景が漠然としか見えていなかった。
金髪の男が寝転がっている男に近付いているようにしか見えず、その表情の機微までは読み取れない。
徐々に悪化していく雰囲気を察知できたのは、この場に於いてトキ只一人であった。
(何かを話している……?)
前方の男達は睨み合ったまま動こうとしない。
口の動作から何らかの会話を行っているようだが、トキの聴力を持ってしてもその内容は聞き取れず。
だが、二人の間に流れる空気が一触即発の匂いを漂わせている事は確か。
地面に寝転ぶ少年はあれ程の接近を許しているというのに、立ち上がろとはしない。
いや、おそらくは立ち上がれないのか……少年の身体は相当に蝕まれているように見える。
対する西洋風の男は無抵抗な少年を睨み付け、何か言葉を吐いていた。
襲い掛かろとはせず、だが手を差し伸べようともしない。
その表情には様々な感情が入り乱れており、次の行動を予測する事が出来なかった。
今にも攻撃を開始するようにも、このまま見逃すようにも見えた。
「……大河、私はあの二人の仲裁に入ろうと思う。だが、万が一という事もあるし、君をみすみす危険に晒す訳にもいかん。
済まないが、私が片を付けるまでそこの茂みの中に隠れていてくれないか?」
結果、トキが選択した道は仲裁。
少なからず闘争に発展する可能性がある限り、止めに入るべきだとトキは判断した。
加えて、眼鏡の少年に戦う意志や戦いに注ぎ込める余力は感じられない。
どのような状況であろうと弱者は救済する……それが、先の短い人生で彼が目指す北斗神拳である。
迷う要素は欠片もあらず、トキは直ぐさま仲裁に入る道を選んだ。
「……いやよ、私も行く」
だが、予想外な事態とはどのような場合にもつき物。
この時もまた、トキにとって予想外な事態が発生した。
大河がトキの指示を受け入れないのだ。
思わず視線が男達から離れ、横に立つ大河へと向けられる。
「……ここは聞き入れてくれ。私の身体は病に蝕まれており、疲労とダメージも少なくない。
襲撃された際は命懸けで守ると約束するが、わざわざ危険に赴く事は無い。大河は隠れていて――「イヤよ! 絶対にイヤ!」
トキの言葉を遮り叫び出されるは、純粋な拒絶の意志。
豹変したかの如く剣幕に、トキは目を見開き、大河を見詰める。
「もう見ているだけはイヤなのよ! 塩はあの時、私達を守るために化け物に食べられて死んだ! 私は……私は何も出来なかった!
悔しかった! もうイヤなのよ! 何も出来ないまま、仲間を死なせるなんて絶対にイヤ!」
この時、ようやくトキにも大河が無謀な行動を取り続ける意味が理解できた。
仲間がいる映画館を飛び出し、仲間がいるホテルを飛び出し、仲間がいる図書館を飛び出した……まるで自ら死地に突き進むかのような行動の数々。
この行動の主がビリーのような実力者ならまだしも、大河の身体能力は決して高く無い。
恐怖という感情が欠如している訳でもないし、未来を思考する能力が欠如している訳でもない。
トキには、何故大河が無茶な道を進み続けるのか、その原因を突き止める事は出来なかった。
――だが、今この瞬間、遂に理解できた。
「大河、お前は……」
この少女は自身の無力さを呪っている。
そして、自身の無力さを認めようとしていない。
自分が無力だったからではない。自分が行動しなかったから『シオ』という名の仲間を失ったと思考している。
だから、強引な行動を繰り返し続けているのだ。
過去の、化け物を前に行動しなかった自分を乗り越えようと、行動をし続けるのだ。
(……危ういな……)
恐らく大河がその化け物に立ち向かったところで、勝ち目は無かっただろう。
そもそも大河の実力で覆る位の戦況ならば、『シオ』を犠牲にせずとも逃亡できた筈だ。
大河は弱い。だが、弱い事は罪では無い。
自身の無力さを認知せず、暴挙に近い行動を取り続ける事が問題なのだ。
このまま暴走を続ければ、大河は近い未来必ず死ぬ。
これまでの行動を省みれば、今まで生き延びたこと自体、幸運とも言える。
「駄目だ……此処は私に任せ、大河は身を隠していろ」
「イヤって言ってるで―――」
依然首を縦に動かそうとしないトキに大河が喰い掛かったその時―――トキの右腕が動いた。
知覚できない程の速さで放たれた手刀は、大河の首筋へ寸分と違うことなく命中。
痛みも衝撃も感じる事なく、大河の意識は深淵の中へ吸い込まれていった。
支援病
「すまぬ……」
倒れる大河を優しく支え、茂みの中へと寝かせるトキ。
説得する時間すら惜しいとはいえ、守護すべき弱者に拳を振るったのだ。
その心中に浮かぶ罪悪感は相当なものであった。
だが、このまま大河を闘争に巻き込む訳にもいかない。
時間はなく、加えて大河は自分を見失っている状態……トキは苦心を押し殺し、武を使用した。
茂みの中に身体全体が隠れた事を確認し、トキが男達の方へ振り返る。
そして、トキの視界に飛び込んできた光景は―――
―――紫電を纏った剣が、無抵抗を貫き通す少年の上半身を吹き飛ばした、その瞬間。
「なん……だと……?」
遅れて届いた衝撃音に身体を包まれながら、トキは呆然と立ち尽くす。
そう、結果だけを言えばトキの救済は間に合わなかった。
現在の状況と大河の心中を把握している間に事態は最悪な展開に転がり落ちていたのだ。
アレックスの説得、そしてKAITOの暴走……トキが大河に気を留めている間にも状況は変化していき、そして起爆へと至っていた。
「私は……何をッ……!」
瞬間、トキは全力で疾走を始めていた。
両手を翼のように広げ『ナギッ』という音と共に、仮面ライダーに変身したKAITOへと急迫する。
―――『何で……こんな真似をっ……!』
米粒ほどの大きさにしか見えなかった男達が、接近に伴い、徐々に大きくなっていく。
そして、聞こえてくる男達の話し声。
筋肉質の男が、不思議な恰好をした機械のような人間に怒鳴り声を上げていた。
―――『何でこんな真似をだと……? てめぇが……てめぇがしっかりしねぇからだろうが!! 何でこの糞野郎を見逃してんだよ!!!
コイツは剣崎の仇で! リンを不幸にさせた張本人なんだぞ!!何でそれを平然と逃がそとしてんだよ!! 頭おかしーんじゃねぇか、ボケが!!』
支援物語
しえん
対する声は憤怒に満ちた、若々しい声質とは裏腹の荒々しい言葉であった。
同時に声の主は筋肉質の男に掴み掛かり、脅し付けるかのように大声を上げる。
自身の失念が招いた事態に焦燥するトキが、その言葉の裏にある怯えに気付く事は無かった。
―――『違う! クラッシャーは改心しかけていた! 自身の犯した罪に気付き、行動を改めようとしていたんだ!
お前は……お前はその未来を奪ったんだぞ!! 罪滅ぼしのチャンスを、お前は奪ったんだ!!』
―――『改心ン? 人を殺しといて改心だと!? 死にたくないから人を殺して、気分が変わったから改心する……そんな都合の良い事が許されっと思ってんのかよ!!
奴は殺人を犯して、リンを酷い目に合わせたんだ!! 生きて改心する事が罪滅ぼしじゃねえ、死ぬ事しか奴の罪滅ぼしはねぇんだよ!!』
それは違う、とトキは心の中でKAITOの叫びに反論していた。
確かに救いようのない性根の腐った奴は存在するし、トキの義弟などはそのような奴等を情け容赦無く、北斗神拳を用いて排除し続けている。
その生き方をトキは否定する気は無いし、寧ろ肯定側に立っていると言っても良い。
有情の拳で、苦痛を与える事は無いとはいえ、数多の悪人を葬り去ってきたのだ。
今更、悪人の殺害を否定などと聖人君子のような事を言うつもりはなかった。
だが、それでもトキは、KAITOの言葉を肯定しない。
身内を救う為、やむを得ず他者を殺害する者もいる。
仲間を救う為、苦心の果てに殺人を犯す者もいる。
生き延びる為、苦悩の末に人殺しの道を選択する者もいる。
殺人を犯した全ての者が修羅ではないのだ。
どうしようもできない何らかの理由があって、葛藤に悩み抜きながら殺人に手を染める者だっているのだ。
勿論、殺人は罪だ。然るべき場所で然るべき処罰を受ける必要がある。
だが、それを安直に人の手で裁くのは間違っている。
それに加えて、殺し合いを制覇せねば生還できないという現状。
弱者を修羅の道へと導くには、充分すぎる環境なのだ。
人殺しだから、という単純な理由だけで人を断罪する事は間違っている。
フタエノキワミ支援
支援
支援ッ
―――『分かったか、アレク。俺は何も間違った事はしていない。人を殺したクソ野郎を裁いてやっただけだ……そう、間違ってはいないんだ』
違う。
そんな傲慢な裁きなど在ってはならない。
幾ら相手が殺人犯であろうと、無抵抗な人間を殺害する裁きなど許される訳がない。
そんなものは只の虐殺だ。
改心しかけていた者が相手であれば尚更だ。
――ナギッ
胸中に宿るその思いに応えるかのように、トキの身体が加速する。
遠く広がっていた間合いは瞬く間に消失。
同時に流れるような蹴り上げがKAITOの顔面に叩き込まれる。
アレックスとの口論に集中していたKAITOは反応すら出来ず、グルグルと回転しながら宙を舞った後、頭から地面に墜落した。
「お、お前は……?」
横で驚愕しているアレックスを無視し、トキはKAITOに向け戦闘体勢を取る。
無抵抗な少年を殺害したこと、口にした傲慢な理論、そしてあの虐殺を裁きと言い切る精神……様々な要素が組み合わさった事により、トキの中でKAITOは倒すべき敵と認識されていた。
(殺すつもりはない……だがその戦力は奪わせてもらう)
長い長い鍛錬により会得した有情の拳を掲げ、トキは眼光鋭くKAITOを睨む。
「我が名はトキ。貴様の悪行を見せて貰った……殺すつもりはないが――相応の覚悟はしてもらうぞ」
トキは気付かない。
KAITOもまた、恐怖に圧し負け修羅の道に進んでしまった哀れな犠牲者だという事に、
KAITOもまた、守るべき弱者だという事に、
トキはその事実に気付く事なく―――KAITOへとその拳を向けた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
支援支援
支援
支援
急変した事態にKAITOは混乱していた。
鋭い痛みを発する頭部に、落下の衝撃により鈍い痛みを発する胴体部。
身体の奥からせり上がってくる吐き気は、今まで感じた事のない感覚であった。
(な、なにが起きた!?)
何とか体勢を整え、四つん這いの状態になりながら、視界を移動させる。
そこには白装束を纏った銀髪の男が立っていた。
そして、その身体から滲み出るは圧倒的な戦意。
戦闘経験の殆どないKAITOでさえも危機感を覚える程のオーラが、トキの身体からは放たれていた。
「我が名はトキ。貴様の悪行を見せて貰った……殺すつもりはないが――相応の覚悟はしてもらうぞ」
「ヒッ……!」
思わず、息を飲む。
殺される、とネガティブな思考が脳裏をよぎった。
今まで頼りにしていたヒーローは、謎の乱入者の横で間の抜けた顔を見せている。
駅での争乱の時も然り、先程のクラッシャーの時も然り、今回も然り、何処までも役立たずなヒーローであった。
「な、何なんだよ、お前は!」
何故、眼前の男がいきなり襲撃してきたのか、
何故、眼前の男が敵意の籠められた瞳で睨み付けてくるのか、
KAITOには分からない。
ただ顔面と身体中に走る痛みがKAITOをパニックへと追い込んでいく。
「痛みを与えるつもりはない……だが、その力は奪わせてもらう」
怒りは無い、寧ろ慈悲に満ちたトキの表情であったが、今のKAITOにはそれが悪鬼の如く歪んだものに映って見える。
心を支配していくは、恐怖と混乱。
クラッシャーを殺害した事により我を失っていたKAITOは、更に劣悪な精神状態へと流されていく。
恐怖が膨張し、混乱が津波の如く押し寄せる。
眼前には凄まじいオーラを放つ化け物、ヒーローからの助けは期待できそうにない状況……KAITOの精神は極限まで追い詰められ、そして――
「う、がぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」
――遂には暴発へと至った。
支援
恐怖が痛覚を凌駕し、恐怖が限界以上の身体能力を発揮する。
四つん這いの状態から獣のような瞬発力で立ち上がると、その身体はトキへと一直線に迫っていき、右拳が振るわれる。
技術も駆け引きもない、がむしゃらな一撃。だが、仮面ライダーの身体能力で放たれるそれは必殺の力を秘めた一撃。
直撃すれば、鍛え抜かれたトキの肉体であろうと易々と破壊するだろう。
……直撃すれば、だが。
「未熟な技では私には届かんぞ」
気付いた時には、トキの身体はKAITOの後方へと移動し終えていた。
その一瞬、KAITOの視界に映った光景は、流水の如く滑らかな動きで自分の後ろに回り込むトキの姿。
速く、僅かな無駄も存在しない一連の動作。
素人であるKAITOにも理解できる圧倒的な実力差。
KAITOの精神に更なるプレッシャーが上乗せされる。
「ッ、クソがぁあああああああああああああッ! 」
振り返りざまの裏拳……というには余りに無様な攻撃。
トキは僅かに身を引くだけでその一撃を回避、その首筋へ手刀を叩き込む。
秘孔を利用した手加減無しの一撃。
身体能力や反射能力が向上しているとはいえ所詮はヘタレ、KAITOは回避をする事も防御をする事も出来ず、直撃してしまう。
「効かねぇんだよぉぉぉぉおおおおおおおおおッ!!」
だが、止まらない。
トキの一撃を喰らって尚、KAITOはダメージを寸分も見せる事なく動き続ける。
逆に驚愕したのはトキの方であった。
しかし、驚愕の原因はダメージを与えられなかった事ではない。
頼みの綱である秘孔がKAITOに届かなかった事実に、トキは驚愕していた。
その全身を覆う不可思議な鎧に阻まれ秘孔を突く事が出来ない。
再び振るわれた破れかぶれの一撃を回避しながら、秘孔を突かずとも眼前の男を無力化する手段を、トキは模索する。
無力化の手段自体は星の数ほど存在する。
片や身体能力が優れているとはいえ技術が無い素人。
片や北斗四兄弟の中で最も華麗な技を使うと称されたトキ。
幾ら病気に蝕まれていようと、そのような輩を相手に苦戦を強いる程、トキは堕ちてはいない。
事実、その病弱な身体で、かの拳王に膝を付かせる事にすら成功するのだ。
相手がKAITOならば、秘孔が通用せずとも、ライダーの力を利用されたとしても、トキの勝利は揺らがない。
瞬殺すら有り得る実力差が、二人の間には存在する。
支援支援
しかしながら、トキは後手後手に回り続けている。
それはトキの優しさ……この殺し合いの中では甘さとも言える感情からだった。
秘孔を突かず戦闘不能にするには『痛み』を与える他、方法は無い。
だが、有情を信条とするトキには『痛み』を与える事に躊躇いを覚えていた。
それが、後手に後手にと追い込まれる大きな原因となっているのだ。
(……仕方あるまい……)
数秒の逡巡の後、遂にトキは決断する。
竜巻のような勢いで迫るKAITOの左フックを交い潜り、右拳を握り締める。
そして返しの右フックに合わせる形で一撃。KAITOの水月へ拳をめり込ませた。
続いてその顔に渾身の拳を、掬い上げるように当てる。
たったそれだけの攻防で、あっさりと、簡単に、KAITOは意識を失った。
「すまない……」
崩れ落ちるKAITOに大河の時同様の言葉を掛け、トキはその身体を支えた。
KAITOの身体が発光し、仮面ライダーの姿から元の人間体へと戻っていく。
不可思議な現象に驚きながらも、KAITOを地面に寝かせるトキ。
そして、人差し指一本だけを立てその身体へ近付けていく。
鎧が消滅した今なら秘孔を突く事が出来る。
気絶から覚醒した後、裁きと称し再び暴れ回る可能性もある……そう考えたトキは戦闘力を奪う為、秘孔へと手を伸ばしていく。
「ちょっ……ちょっと待ってくれ!」
と、そこでその行為を呼び止める者が一人。
突然の乱入者と唐突に始まった戦闘に呆然としていた男――アレックスが、此処にきてようやく我を取り戻す。
アレックスは、秘孔を突かんとするトキの右腕を掴み、抑え込んだ。
腕を通して伝わるその力に感心しつつ、トキがアレックスへと向き直る。
有情支援
支援
「大丈夫だ、命を奪いはしない」
その口から告げられるは、優しげな言葉。
だが、アレックスは手に込めた力を緩めようとはせず、懇願するような表情をトキに向けていた。
「頼む……そいつはヘタレで、仲間を見捨て盾にしたロクデナシで、遂には一線を越えてしまったクズ野郎だ……。
……でも、こんな殺し合いに巻き込まれてさえ居なければ……もうほんの少し勇気を持っていれば……仲間と幸せな人生を送っていた筈なんだ……!
頼む! 命だけは……命だけは勘弁してやってくれ!」
こちらの言葉を無視し始まったのは、独白のような、愚痴のような、弁護。
命を奪いはしないと言った筈だが……などと考えつつ、トキはアレックスに向け、再び口を開く。
先程よりも優しい口調で、温和な笑みを見せつつ、アレックスへ語り掛ける。
「安心してくれ、私は命を奪おうとまでは考えていない。ただ力だけは奪わせてもらう。
お前も言った通り、今の少年の精神状態は危険すぎる。戦力を奪っておかねば、また無用な犠牲者を増やす可能性が高い……分かってくれるな?」
そう言うと、トキは指の一本ずつを紐解き、アレックスの右手を外す。
……が、その右手はしつこくも再びトキを掴み、離そうとしない。
「……KAITOから、手を、離せ」
このアレックスの様子により、ようやくトキの顔にも訝しげな感情が宿る。
同時に心内に湧き立つは当惑と警戒。
トキは何が起きても良いよう、心を構えながらアレックスを見詰めた。
互いに無言。二人の間に何時しか流れ出すは、険悪な空気。
何故自分の言葉が信じて貰えないのか、トキには分からない。
嘘は吐いていない。だが眼前の男は、自分に対し明らかな警戒を見せている。
「……信じてくれ、絶対に殺しはしない」
言葉と共に、再度優しく指を解くトキ。
アレックスも納得したのか、今回は掴み直そうとしない。
やっと信用してくれたのか、とトキは安堵しながらも、KAITOの方へと向き直る。
ゆっくりと掲げられる右手。
殺さぬよう、だがしっかりと戦闘力を奪えるよう、トキは秘孔の位置を見極め、力を加減する。
そして、緩慢な動作で右手が振り下ろされ――
「止めろ!!」
――KAITOの首筋に命中する寸前、トキの後頭部に鈍重な衝撃が走った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
支援
俺は悩んでいた。
眼前には一人の男。
俺も良く知る、いやMUGENで頂点を狙う者なら誰もが知っている男――トキ。
凶悪なキャラ性能でステージを所狭しと駆け回り、十割コンボを決めまくる男。
苦労に苦労を重ね、ようやく勝利へと持ち込めたと思いきや、ブッパッコーからのテーレッテーにより紅の豚さんありがとう。
「命は投げすてるものではない」などと言いつつ、鬼の如く勢いでコンボを継続。
オーバーキルや開幕十割など日常茶飯事。
2ラウンド連続テーレッテーも有り得る。
有情にして無情……自分の知るトキとはそういう男であった。
それはこの殺し合いの場でも変わらない。
「痛みを与えるつもりはない」と口にした直後、KAITOに悶絶物のボディーブローを打ち込み気絶させ、そして「命までは奪わない」と言いつつ接近していく。
表情は真剣そのもの、とてもじゃないが嘘を吐いているようには見えない。
―――だが、俺はその言葉を信じ抜く事が出来なかった。
アレックスの知るトキとはそういう男だったから。
言動や態度と行動がまるで正反対の鬼畜男……それがMUGEN界でのトキという男だったからだ。
根は良い奴だとは分かっている。だがそれでも、信じきる事は出来なかった。
KAITOへと近付くトキが、その命を奪おうとしている様にしか見えなかったのだ。
正直なところ、トキがKAITOを殴り倒した光景を見て、俺もある種の爽快感を覚えていた。
様々な醜悪な姿を見せ、遂には殺人まで犯しそれを『裁き』と称して正当化しようとしたKAITO。
流石に憤りを感じずにはいられなかった。
その所為か、トキがKAITOを殴り飛ばした瞬間は、胸に仕えていた物が消えたような、不思議な気持ちが湧き上がっていた。
だが、殺すとなると話は別だ。
如何なるヘタレであろうと、殺人を犯してしまったクズ野郎に墜ちたしても、KAITOは仲間である。
俺の仲間であり、俺を御主人様と慕ってくれた少女の仲間……どんな理由があろうと殺害させる訳にはいかない。
だからトキを止め、そして頼み込んだ。殺さないでくれ、と説得を試みた。
しかし、そんな言葉であのトキが考えを改めてくれる訳もなく―――トキは俺を振り切るとKAITOへと歩みを進めていく。
口では殺さないと語っている。
だが、どうしても信じる事が出来ない。
あの男を、俺は、信じきれなかった。
だから、実力で阻止した。
仲間を守る為に、ハクやクラッシャーのような犠牲者をこれ以上出さない為に―――俺は拳を振るった。
格闘家としてはあるまじき、後方から不意打ち紛いの一撃。
流石のトキも回避するには到らず、直撃と共に地面に倒れた。
……が、直ぐさま立ち上がる。
困惑と戦意に顔を染め、俺を睨むトキ。その様子からは大したダメージは見受けられない。
正面から戦い勝てる気はしない。だが、KAITOを救う為にも引く訳にはいかなかった。
支援!
さるが心配だな
しえん
支援
支援
支援
―――どう戦う?
何時も通りに構えを取り、自問しながらトキを見詰める。
鼓動が早い。
汗が吹き出す。
気を落ち着けるように俺はゆっくりとゆっくり深い呼吸を繰り返す。
西の方角には、この緊迫の場には相応しくない綺麗な夕焼けが映っていた。
思いがけない方向からの強烈な一撃に、トキの意識は闇の中へと飛び掛けた。
だが、そこは元北斗神拳後継者候補。
寸でのところで自身の口内に歯を立て、その痛みにより覚醒の淵へと踏みとどまる。
何故、信じてもらえないのか……解ける筈の無い問いを思考しながら、トキはアレックスと相対し直す。
「信じてくれ! 私はその少年を殺す気などない!」
「……悪いが、信用できない。少なくとも、普段のお前を見ている俺には、その言葉を信じる事ができない」
最後にそう言うとアレックスは、肩まで下りた金髪を左右に揺らしながらトキへと急迫。
最も隙の少ない横薙ぎの手刀を牽制に、自身の必殺技が決められるタイミングを探る。
アレックスの一撃を回避すべくトキが取った行動は、後方ナギッ。
前ダッシュで縮まった距離は一瞬で倍以上に開いた。
「何を言っている! 私とお前は、この場で初めて出会ったのだ! 何時ものお前を見ている、とはどういう事だ!?」
話が噛み合わないまま突入した戦闘。
アレックスの言葉により擦れ違いの片鱗に気付いたトキは、逃げに徹しながら口を動かす。
「俺とお前は戦ったことさえある……お前にとっては記憶にも残らないような相手だったのかもしれないが、な」
会話はやはり噛み合わない。
アレックスはトキの言葉を、『記憶にない』という意味ではなく『記憶に残りすらしなかった』と受け取ってしまう……話は何処までも噛み合う事は無かった。
「クッ……!」
数々のストリートファイトと日常的に行われてきた鍛錬により洗練されたアレックスの動きが、トキを焦らせる。
単純なスピードだけなら先程の少年の方が遥かに上。だが、アレックスは一つ一つの動作に隙が少ない。
十秒にも満たない戦闘で、相手が相当な実力者だという事が、トキにも理解できた。
「頼む、引いてくれるだけで良いんだ……KAITOを見逃してやってくれ!」
――だが、その拳には殺気の類が微塵も含まれていなかった。
むしろ、拳から伝わる感情は苦渋に満ちたもの。
その苦渋の染み込んだ攻撃を回避し続けながら、トキは思考を開始する。
自分にこの男を説き伏せる事は、おそらく不可能。
これまでの様子を見る限り、如何なる言葉を通しても、自分を信じる事は無いだろう。
だが、あの少年が危険人物であることもまた事実。
秘孔を突き戦力を奪取しておかなければ、無用な犠牲者が増える可能性もある。
支援支援
支援
支援
しかし、
(この場は……引くか……)
この時既に、トキは後退の二文字を選択肢として考え始めていた。
アレックスの不信が余りに強固だから? ―――確かにそれもある。
だが、それ以上にトキは眼前の男を信じてみたかった。
仲間とはいえ、数分前までは敵対していた筈の少年を、傷付いた身体で守護しようとするアレックス。
その姿を見てトキは、信じてみたくなったのだ。
この男ならばあの少年を御しきれるのかもしれないと。
少年を元の光ある道に引き戻せるのではないかと。
先の少年の様子からは到底成し得ないだろうその可能性に、トキは賭けてみたくなったのだ。
「……分かった、諦めよう」
ピタリと、アレックスの動きが停止する。
眉間に皺を寄せ、僅かに惚けた様子でトキを凝視するアレックス。
有る筈は無いと考えていた降伏宣言にアレックスは小さな驚愕を覚えていた。
「本当……か?」
「ああ、だが約束してくれ。もう二度と、その少年が殺人を犯さないよう監視する……と」
彼の知るトキからは考えられない一言に、アレックスは困惑しつつも首を縦に振る。
その肯定にトキが満足げな笑顔を見せた。
「頼むぞ」
文字にすれば、たった三つの言葉。
だが、その言葉は面白い程にアレックスの胸へと染み込んでいく。
―――何かが違う。
言葉に出来ない程に漠然とだが、自分が知るトキと目の前で柔和な笑みを浮かべるトキとは、何かが違う様に感じた。
「……ああ、任せてくれ」
考えても、考えても、その違和感の答えは出ない。
戸惑いはそのままにアレックスはトキの頼みを承諾する。
返答に再び微笑みを見せ、アレックスに背中を向けるトキ。
先程まで一方的に攻め込まれてた相手に背を向けているというのに、その背中には僅かな警戒心も存在しない。
これもまた、アレックスの知るトキであれば絶対に有り得ない行動。
徐々に深まっていく困惑。だが解答を出すには余りに情報が足りない。
遠ざかっていくトキの背中を、アレックスは何処か腑に落ちない表情で見送る事しか出来なかった。
支援
そして、場には二人の人間と一体の死体だけが残される。
夕焼け空に見守られる中、静寂に包まれる世界。
唐突に吹き抜けた微風には何処か虚しさが含まれていて。
最強を目指す男は惨劇の場の中心で、小さく溜め息を吐いた。
「フ タ エ ノ キ ワ ミ ! ! 」
―――瞬間、突如発生した奇声が静寂を突き破り、アレックスの頬を横殴りの衝撃が走り抜けた。
支援
「ア ッ ー ! ! 」
余りの衝撃に、アレックスの口から飛び出しのは意味不明な絶叫。
その筋肉に包まれた身体が錐樅状に回転し、草原を数メートルに渡り滑る。
不意に訪れた強烈過ぎる一撃に、アレックスはピクリとも動く事なく、意識を失った。
「ちっ、まだ本調子には遠いな」
鳥の巣のようにボサボサな頭髪。
背中に『悪』と掛かれた白色の上着、同様に白一色のズボン。
奇声と共にアレックスへ鉄拳をぶち込み、そして気絶させた乱入者が、不満を呟きながら、草原に立ち尽くす。
その場は奇しくも先程までアレックスが立っていた場所と一致。
だが、そんな偶然に気付く訳もなく、乱入者は自身の片手を見詰めた後、地面に寝転がるアレックスへと視線を移す。
「へっ、一発でお寝んねか? ゴツい見た目の割りにゃあ打たれ弱ぇなあ」
『……やり過ぎですよ、サノスケ……警告の一つくらい言えないのですか?』
「そんなもん知るかよ。コイツは仲間の仲間を襲ってやがったんだ、鉄拳制裁って奴よ」
乱入者の近く――少なくともその声が届く範囲――には気絶しているKAITOやアレックス以外、誰も居ない。
だというのに、乱入者は何者かと会話を始めた。
無人の空間から聞こえてくる声。
乱入者が無線や携帯電話などの連絡手段を行使しているようには見えない。
他の参加者が見れば首を捻るであろう光景だ。
「……誰だ、貴様は」
そして、それはアレックスの叫び声に戻ってきたトキも同様。
謎の会話に困惑を覚えながら、トキは乱入者を睨む。
完全には事態が読み切れないまでも、その光景からトキにもある程度の事は予測できていた。
顔を険しい物へと変化させながら、トキは両腕を挙げ、戦う為の体制を整える。
対する乱入者は慌てた様子でトキへと、制止を促すように両腕をひらつかせた。
「おいおい、何か勘違してんじゃねえか? 俺はアンタを助けに来たんだぜ」
男の弁解を聞き、トキもまた僅かに顔を緩める。
……が、完全な信用を得るには程遠く、その構えを解こうとはしない。
元々、乱入者自身、現状の説明が出来るほど口が回る訳でも無いし、頭が良い訳でもない。
もし、乱入者がもう少し言葉を選び、上手な説明をしていれば場は和解の方向へと進んでいく筈であった。
だが、この男にそのような高度な行動を求めるのはどだい無理な話。
緊迫した空気は未だ変わる事がない。
「だから、無闇に突っ込むなと言っただろう。先のような登場をすれば誰であろうと疑って掛かるぞ」
「そうですよ。私達の忠告を全部無視して突撃しちゃうんですもん。ちゃんと考えて動いて下さいよ」
しかし、此処に来て、ようやく助け舟とも呼べる人物達が参上する。
チューリップのような仮面に身を包む、最強の一等身にして世界一カッコ良い一等身と噂される騎士―――メタナイト。
緑を基調とした服に身を包む、清水のように滑らかな紅髪を携える少女―――紅美鈴。
片や背中に生えた悪魔を思わせる棘々しい翼を羽ばたかせ、片や鍛錬により強化された脚力をフルに稼働させ、トキと乱入者の間に立つように現れた。
「お前たちは……」
突然現れた既知の人物達に驚きながらも、トキは乱入者への警戒を解く事はしない。
決して悪人には思えなかったアレックスを、不意打ち紛いの一撃で打倒した乱入者。
第一印象としては最悪。というか、勘違いされても仕方が無い登場の仕方だ。
やはりその印象が尾を引いているのか、仲間の二人が乱入者へ親しげな言葉を投げ掛けている光景を見ても、油断する事は出来なかった。
美鈴とメタナイト、そして乱入者との間に視線を行き来させつつ、トキは現状の把握に勤しんでいた。
支援
シエン
支援
支援
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。この鳥の巣頭の人は仲間ですから」
そんなトキの様子を見て、美鈴が苦笑と共にフォローを入れた。
メタナイトと乱入者も首を縦に振り、その言葉に同調する意志を見せる。
「お前とそこの男が戦闘しているところが見えてな。助けに向かったのだ」
―――それから後の数分間は、互いの状況を理解し合う為の会談へと変わっていた。
435 : ◆vXe1ViVgVI:2009/07/20(月) 20:15:15 ID:8NxGdkac0
メタナイト達の話は以下の通りである。
トキ達を発見したメタナイト達であったが、物陰に隠れながら移動する二人を見て疑問に感じた。
単純な思考で早く近付こうという左之助――後の乱入者である――を抑え、自分達も様子見に徹する事にした。
更に数分後、大河を気絶させたトキの行動に驚愕しつつも、その向かう先を辿り、二人の男を発見。
トキの意図に気付き手助けに向かおうとするメタナイト達であったが、その時には既にトキが男の片割れを圧倒していた。
後からゆっくりと接近していったメタナイト達であったが、此処でもう片方の男がトキに攻撃を開始する。
その瞬間、真っ先に飛び出したのが左之助。
様子がおかしいと言う美鈴とメタナイトを振り切り、脚部に装着されたマッハキャリバーを駆使して突撃していく。
少し遅れてメタナイトと美鈴も追随を始めるが、人間離れした脚力とマッハキャリバーを用いて進む左之助に追い付く事が出来なかった。
そして、左之助の乱入騒ぎ。
奇声を発しながらトキと対抗していた男に渾身の一撃を見舞った。
加速度も上乗せされたこれ以上ない、最高の一撃。
だが撃った本人からすれば何処か物足りない、やはり本来のものからは程遠い未熟な一撃。
そんな一撃を放ちつつ、場に混乱の風を吹き込んだ乱入者――左之助であった。
「……成る程、そういうことか……」
美鈴の話を受けようやく事態が理解仕切れたのか、トキが頷く。
だが、その表情に明るさは無く、渋い色が広がっていた。
そして、未だ地面に寝転がっているアレックスに目をやり、溜め息と共に口を開く。
「……一つ、お前達は勘違いをしている」
メタナイト達の話を聞いた今、トキは現状の全てを把握していた。
左之助の乱暴すぎる登場の理由も把握したし、また彼等達がある勘違いをしている事にも気付いた。
全て戦乱の中心にいた人物は自分のみ。その勘違いを拭い去る役目も自分以外に有り得ない。
「勘違い……ですか?」
首を傾ける美鈴へ首を縦に振り、トキはその擦れ違いを払拭する為に、この数分間の出来事を語り始める。
左之助が倒した男の名はアレックスだという事、アレックスは殺し合いに乗っていない事、ただ仲間を救う為に拳を振るった勇敢なファイターだという事、彼との戦闘に於ける非は自分にある事……トキは、それら事実を早口に語った。
「あぁ? てことはそこの大男は悪人じゃねぇって事か?」
「おそらくは……だがな」
「でも、そのアレックスさんのお仲間さんが、そこの人を殺害したんですよね?
もしかしたら、って事もあるんじゃないんですか?」
黒こげ死体を見詰めて吐かれた美鈴の疑問もまた、当然の物であった。
トキの話によると先に問題を起こしたのは、アレックスの仲間である少年。
加えてトキは、少年がこれ以上の凶行に走る事を阻止したに過ぎず、命を奪おうとした訳では無い。
暴力を行使してまでトキを止めようとしたアレックスの行動が、美鈴にはお門違いのように感じた。
支援
「……理由は分からないが、アレックスは私がその少年を殺害すると思い込んでいた。
……暴力に出たのはそれが原因だろう。言葉が足りなかった私にも非があるのだ」
「そうですか……」
肯首はするが、その表情に未だ納得はあらず。
美鈴は目を細めて気絶中のアレックスへと視線をやった。
「それでどうする? このまま捨て置く訳にはいくまい」
その思いは横に立つ仮面の騎士も同様。
何処か釈然としない様子で、これから成すべき事を三人に問う。
少なくとも同行するつもりは無いと云う意志がその言葉から読み取れた。
「……せめて何処か身を隠せる場所に移動させてやりたいが……」
二人の視線を受けつつトキもまた妥協案を挙げる。
元々は、自分も彼から離れようとしていた身だ。
アレックスの覚醒まで見守ってやりたいとは、流石に口にする事は出来ない。
「身を隠す場所ですか……。確かあっちの方に駅がある筈ですけど」
「ならば、そこに彼等を置いていこう。あと大河を連れてこねばならんな。お前たちは待っていてくれ」
「いや、私が行こう。病体で連戦したのだ、トキも疲れているだろう。ゆっくり休め」
放置していた大河の元へ歩き始めようとするトキを制し、立ち上がるはメタナイト。
ネギをクルクルと軽快に回すと、その短すぎる脚からは想像も出来ない程の俊敏さで疾走を開始する。
「すまないな……私の我が儘を聞いてもらって」
走り去る一等身を見送りながらトキがポツリと呟いた。
左之助は気不味そうに、美鈴は苦笑しながらその言葉を受け止める。
「……あー、いや……まあ、大元の原因は俺みてえだしよ。あんたが謝る必要は無いと思うぜ?」
「フフッ、トキさんは気負いすぎですよ。そんな一人で抱え込まないで、少しは仲間も頼った方が良いと思いますよ?」
その返答にトキの表情が呆けたように固まり、数瞬後、温和な笑顔へと変わっていく。
守り抜くべき存在である男達に、まさか諭されるとは思っていなかった。
だが、その暖かい言葉は面白い様に胸の奥へと染み渡り、優しげな喜びをもたらす。
この殺し合いの場にも確かに存在する希望に、トキは歓喜と新たな決意を覚えていた。
「――ありがとう」
謝礼の言葉は辛うじて二人に届くような小さなもの、だがその中にはトキの万感が込められており―――トキは二人に向けて笑顔を見せた。
左之助と美鈴もトキに応えるよう、笑みを浮かべる。
この瞬間、絶望しか産み出さない筈の殺戮遊戯の中には確かな希望が光っていた。
トキが、美鈴が、左之助が……互いに笑顔を向けながら誰も希望を思い浮かべ、
そして――
「ぐぉぉぉぉおおおおおおお!!?」
―――トキの右脚から、まるで夜空に咲く花火のように、鮮血が噴き出した。
脚を襲う激痛に叫び声を上げながら、地面に倒れ伏すトキ。
噴出する血液に隠されているが、その右脚には指先大の小さな貫通傷が刻まれていた。
「な!?」
支援
支援
支援
支援
余りに唐突な事態に、美鈴は身構える事すら出来なかった。
ただ茫然と、うずくまるトキを見詰め、困惑の表情で立ち尽くし、
―――そして、衝撃。
「あ……あああああ!!!」
気付けば美鈴もトキ同様に地面へと倒れており、左腿を襲う激痛に絶叫していた。
「爺さん! 美す―――ガァア!?」
残された左之助も痛みに絶叫する二人へと駆け寄ろうとし―――そして、自身も二人と同じ様に地面へと倒れる。
痛覚の発生源へと視線を移動させると、そこには流血を起こした右脚。
美鈴とトキ同様の貫通傷がそこには在った。
「どうした! 美鈴、トキ、左之助!」
三人の絶叫を聞き、舞い戻ってきたのは世界一カッコ良い一等身・メタナイト。
翼をはためかせ最高速の帰還を果たしたメタナイトは、三人を守護するようにネギを取り出し、周囲に警戒を投げ掛ける。
が、襲撃者の存在は確認できず、傍目には平穏な草原が何処までも続いているだけ。
見えない敵の存在、そして短時間で三人を攻撃した敵の手際……僅かな条件からでも理解できる敵の実力に、知らずメタナイトの頬を冷や汗が伝っていた。
「む、向こうだ……おそらくは狙撃……南の方角から行われた筈だ……」
そこで、メタナイトに声を掛ける者が一人。
痛みに喘ぎながらも、その並外れた精神力とタフネスにより状況を伝えるはトキ。
灼熱の痛みに包まれながらも、自身に刻まれた傷跡や文字通り身を持って把握した射角から、メタナイトに狙撃手の存在とその位置を知らせた。
その脅威の状況判断力にメタナイトは驚愕しつつ、取るべき道を思考する。
道は二つ。
自分が囮となり、三人が撤退するまでの時間と隙を作り出すか。
それとも単独で侵攻し、トキが存在を教えてくれた狙撃手を打倒するか。
前者は三人が撤退可能なまでに回復できるかが問題となり、後者は自分が攻め込んでいる間に三人が再び狙撃されないかが問題となる。
そもそも狙撃手が自分を凌駕する実力を有していたとすれば、どちらの策も破綻を期すのだが。
「大丈夫だ、二人は私が命を賭して守る……メタナイトは敵を攻撃してくれ……」
此処でもまたトキが後押しをする。
未だ血が流れ続けている右脚を右手で抑えると、残る左手で自身の首筋を軽く突く。
ただ、それだけの動作でトキの表情から幾分か痛みの色が落ちた。
「……分かった。美鈴と左之助を頼む」
「気を付けろ……。恐らく敵は相当な手練……少なくとも銃器の扱いに関してはかなりのものだ」
メタナイトは顔……というより身体全体を縦に動かし、翼を羽ばたかせる。
遠距離からの攻撃を得意とする敵にはスピードが無くては接近できない。
疲労は溜まるがこの場は飛行能力を行使せざるを得ない、とメタナイトは判断した。
そして、仮面の騎士が一本の野菜を振りかざし、飛翔する。
その外見も武装も、敵に関する事は全てが不明。
されど仲間を救うため騎士は立ち向かう。
草原の中に隠れる謎の敵へと自身の信念を掲げ、メタナイトは夜の草原へを駆け抜けた。
支援
「頼んだぞ、メタナイト……」
そして残されたトキは飛び去るメタナイトの背中を眺め、ポツリと呟いた。
秘孔を突いた事により右脚の傷は既に出血も止まっている。
トキは直ぐさま美鈴と左之助の容態を確認し、自分と同じ箇所の秘孔に触れた。
「ッ……何だ、こりゃ……!」
「……痛みが、引いた……?」
首筋にトキの指が触れたかと思いきや急激に痛みが沈黙していく。
その不可思議な現象に驚きの表情を見せる左之助と美鈴。
とはいえ全快には遠く至らず、トキは自身の服の端を破り二人の傷に巻き付け、応急の処置を施した。
「……す、凄い……」
「ああ、此処まで腕の良い医者は見た事がねぇ……恵だってこうは……」
その的確な処置に感嘆を覚えながら、二人は上半身のみではあるが身体を何とか起こす。
そして、夕焼けの空に消えていくメタナイトに視線を送る。
その瞳には足手まといになった自分への後悔と、メタナイトの無事を願う切願の念が浮かんでいた。
「チッ、俺もいくぜ! こんなショボい怪我でお寝んねたぁ、喧嘩屋斬左の名が廃るってもんよ!」
「……私も行きます。メタさん一人を危険な目には合わせられませんから」
そして、後悔の念は何時しか無謀な感情へと移り変わり、二人の拳闘家は完治には程遠い足で立ち上がった。
だが、貫かれた足は本来の機能を果たしてくれない。
脱力し崩れ落ちる両脚。
美鈴は再び地面に転び倒れてしまい、左之助は持ち前の根性とタフネスで立ち続けるもそれで精一杯。
到底メタナイトの援護には行けない状態であった。
「無理をするな。今のお前たちが向かった所で足手まといにしかならん。メタナイトの帰還を祈るんだ」
そんな二人へ、その場で唯一悠然と立ち尽くすトキが語り掛ける。
彼とて完治に至っている訳ではない。
ただ他の二人と比較し何もかもがずば抜けているだけだ……精神力も身体能力も何もかもが。
「でも……!」
「なら、黙って見てろって言うのかよ!」
「違う、私達は私達で狙撃手から身を守るのだ。彼の足手まといにならないこと……それが今の私達にできる最大の手助けだ」
諭すように語るトキに二人はまだ逡巡を見せ、動かない。
トキの言う事もまた納得できるが、それでも心情的には受け入れることが出来ない。
二人は苦い顔を浮かべたまま、俯く。
トキは、狙撃に注意を巡らせながらも、その二人に言葉を掛けることはない。
決断すべきは二人なのだ。
このような殺し合いの場ではその決断が出来なければ、死ぬ。
その事実を知るからこそ、トキはそれ以上の助言は行おうとしない。
二人の成長を望んで、この窮地の場に於いても、見守る立場を貫き通す。
「――よぉ、雁首そろえて何落ち込んでだよ」
そして、その決断の場に颯爽と参上するは、包帯にくるまれた身体を紫の着物に包んだ男。
苦悩する三人とは対称的に、愉悦の色を浮かべながら男――志々雄真実が現れた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
支援
「てめぇ……!」
「どうした鳥頭、俺を見張ってるんじゃなかったのか?」
小馬鹿にするような笑みで見下ろす志々雄に、左之助は悔しげに唇を噛む。
様々な事態が発生したとはいえ、最も目を光らせておかねばならない相手を短時間であるが野放しにしていた事実。
目先の事に気を取られ、志々雄の存在を完全に失念していた。
それは、左之助だけでなく美鈴やメタナイトも同様。
五角形の内で連続して勃発した騒乱と、自身達が犯したある種の勘違いとに意識を奪われ、危険人物と把握している対象から監視の目を外してしまっていた。
志々雄を睨み付けながら、左之助と美鈴の二人は自身の短慮さを後悔をしていた。
「……誰だ、お前は」
唐突に現れた仲間達と言葉を交わす男を見て、トキの心は警報を鳴らし続けていた。
互いに顔見知りということは仲間である筈なのだが、この剣呑な雰囲気からはどうにもその結論には至れない。
そして、何よりこの男が纏う空気は平穏を望む者のそれとは全く違う。
寧ろあの男に近いものを感じる。
そう、似ているのだ。
自ら拳王と名乗り、暴力に汚染された世界を、暴力で支配しようとしたあの男に―――。
「別に大した者じゃねぇよ。コイツらとちょっとした同盟を組んでるんでな、はぐれちまったからわざわざ探しに来てやった訳だ」
刺すようなトキの視線を受け、それでも志々雄は余裕を崩さない。
不敵な笑みを浮かべたまま、包帯に覆われた口を回す。
「……いつ彼等とはぐれた? 美鈴達の話を聞く限り、はぐれる機会は無いように感じたが」
「お前に接近してる途中でコイツ等が勝手に走り出してな。その時はぐれちまったんだよ」
「何故、お前は追わなかった? お前も走っていれば美鈴達とはぐれる事はなかった筈だ」
「あ? 鳥頭から話聞いてねぇのかよ? 同盟組んじゃあいるが、俺は殺し合いに乗ってんだよ。
つまり、誰がどうなろうと知ったこっちゃねぇって事だ。楽しそうな火種をわざわざ消すバカがいるかよ」
志々雄の言葉が紡がれる度に、トキの眼光が鋭さを増し、力強いものへと変化していく。
足に穿たれた貫通傷を物ともせずに、トキが志々雄へと一歩近付いた。
「ならば悪いが……此処で眠ってもらう」
「……その足で、か?」
「この程度の傷、ハンデにすらならん」
ヒュウと、窄められた志々雄の口から甲高い音が漏れる。
表情に未だ焦りの欠片も宿す事はなく、寧ろその笑みを深淵なものへと変貌させながら、腰に差した刀へと手を掛ける志々雄。
場を包む空気が緊張の度合いを急速に高めていく。
「志々雄、てめえ!」
「トキさん、落ち着いて下さい!」
怒りの声を上げるは、満足に動かない足で怨敵に飛び掛からんとする左之助。
宥めの声を上げるは、トキの行動を抑えようとする美鈴。
先の襲撃さえなければ三対一の状況なれど、実質は一対一。
さらにはその唯一戦闘を行える男さえも足を負傷している。
人斬りと暗殺拳を学びし者……元来の実力差はあれど、どちらが有利でどちらが不利かは判断しかねる状況である。
少なくとも両者共に無事で済む事はない……ただそれだけは確信できる未来であった。
―――そして、場の空気が限界まで張り詰める。
シークレットソード2支援かいな
が、予想外にも
「……止めだ、止め」
―――起爆の寸前に至って人斬りが両手を天に突き出した。
あの志々雄真実が、まるで降参の意を表すかのように両手を上げて、日本刀から手を離していた。
「なに……?」
「え……?」
「はぁ!?」
その行動に虚を突かれたのは相対する三人であった。
そりゃあ戦闘しないに越した事はないが、これだけ高まった空気の中、まさかの寸止めとは想像だにしていない。
両手を上げるミイラ男を前にして、三人は思わず困惑を口から零していた。
「なに……?」
「え……?」
「はぁ!?」
その行動に虚を突かれたのは相対する三人であった。
そりゃあ戦闘しないに越した事はないが、これだけ高まった空気の中、まさかの寸止めとは想像だにしていない。
両手を上げるミイラ男を前にして、三人は思わず困惑を口から零していた。
「てめえ……何を考えてやがる?」
「別に何も考えちゃあいねぇよ。まぁ、俺にとっちゃあお前等はまだ利用価値があるって事だ。此処で争うのは無しって事にしようぜ」
アレだけの発言をしておいてこの不遜な態度。
その様子から感じ取れるは圧倒的な自信。
左之助には眼前の人斬りが何を思考しているのか、理解する事が出来ない。
そして、それは戦乱の世を生き抜いてきたトキや、弾幕ごっこを介して様々な妖怪や人間と触れ合ってきた美鈴も同じ。
そういう意味では、三人は眼前の男に呑まれ掛けているのかもしれない。
茫然と当惑する三人を見て笑みを深めながら、志々雄が歩みを進める。
三人のいる場所にゆっくりと近付いてきた。
「……で、何でお前等はこんな所で座り込んでたんだ?」
一歩、また一歩と近付きながら、志々雄が三人に問い掛ける。
「……何処かから狙撃された。今、メタナイトが討伐に向かっているところだが……」
負傷中の二人を庇うように一歩前に出て、トキが答える。
その顔には未だ警戒の色が浮かんでいた。
「へえ、そりゃあ災難だったな。……そういゃあ治療に使えそうな道具があった筈だ。
此処でてめえらにくたばって貰っても困るんでな。一つ貸しって事にしといてやるよ」
支援
支援
空を向いていた両腕の片一方が、肩に掛けられたデイバックへと突っ込まれる。
その探索に使われた腕は右腕。
志々雄は利き手でデイバックの中をゴソゴソと弄び、お目当ての支給品を探し求める。
歩みは止まらない。
「……ちょっと待て、どうやら奥の方に潜っちまったらしい」
と、トキの手前数メートルの地点で志々雄が足を止め、支給品の探索に意識を集中する。
何か手間取っているのか、その手はなかなか現れない。
怪訝を顔に映しながら、その光景を見詰めるトキ達。
数秒ほどの沈黙が場を包み込み―――瞬間、光刃が翻る。
後方にて座り込む美鈴と左之助には、ヒュンという風切り音と月夜に走る白銀の閃きしか、知覚する事は出来なかった。
気付いた時には、デイバックを探っていた筈の志々雄の右腕が、握られた刀と共に外へと出ていた。
何時の間に調達したのか、志々雄はデイバックに隠し持っていた刀を不意打ちの一撃と共に振り抜いていた。
「な―――」
美鈴と左之助は驚愕の声すら出す事ができない。
一旦の間を置き油断を誘い、タイミングをズラしての一閃。
ただ襲い掛かるだけなら、美鈴や左之助も充分に対応できただろう。
だが、間に見せた同盟継続の意志を二人は信じてしまった。
敵意はあれど、この場は志々雄自身が語ったように引くのかと思ってしまったのだ。
結果だけを見れば、美鈴と左之助は志々雄の策略を見抜く事は出来なかった。
だから、二人は志々雄の不意打ちに反応をすら出来ず、その一撃を茫然と見送っていた。
だが、二人が血を流す事はない。
志々雄の狙いは左之助達ではなかったのだから。
志々雄が標的としたのは、この場で最も厄介であろう男――トキ。
『弱肉強食』を信条と掲げる彼だからこそ感知できた、自分とトキとの間に存在する実力差。
恐らく、正面からの戦闘で勝利をもぎ取る事は不可能……その事実を志々雄真実は本能的に理解していた。
しかし、その実力差を理解したからと云って、志々雄が敗北感を覚えた訳ではない。
この世は『弱肉強食』―――強い者が生き、弱い者が死ぬ。
死ねば弱者、生きれば強者である。
つまり、死なない限りは敗北ではない。
どんな姑息な手段を取ろうと、どんな卑怯な手段を取ろうと、突き詰めれば敵が戦闘とは何ら関係ない事故で死のうと、生き延びれば強者。
如何なる手を使っても、最後に生きている方が強者。
眼前に立つトキという男が幾ら強かろうが、最終的に生存した方が―――強者なのだ。
その信条が根底を築いているからこそ、志々雄は迷わず不意打ちという手段を選んだ。
左之助達の元へ向かう道中に打ち捨てられていた愛刀―――無限刀をデイバックへと隠し、最適なタイミングを選択した。
どんな実力差があろうと生き残れば、強者。
そして、その意を決しての一撃は――
「――無駄なことを……」
――トキの頬を掠めるに終わった。
志々雄真実が放つ抜刀は超速。
加えて、握り手や得物の正体はデイバックに隠されている。
だというのに、北斗四兄弟の次男はその一撃を完全にではないが、回避しきった。
志々雄が歩み寄る中、決して弱まる事のなかった警戒心、そしてその鍛え抜かれた反射神経が、不可避であった筈の一閃すらも無意味な物へと没落させた。
回避と共に動作へと移るトキの身体。
両の手を祈るように合わせ、抜刀し終えた体勢のまま動けない志々雄へと突き出す。
(速い!)
その神速の手刀は、志々雄をして驚愕に至らせる。
志々雄は風を切りつつ切迫する手刀を見詰めつつ、思う。
―――自身が考えた策の失敗を?
―――自身の敗北を?
違う。
志々雄はこの瞬間にこそ、確信したのだ。
―――自身の勝利を。
トキの手刀が志々雄の身体を切り裂こうかというその瞬間、ガツンという鈍く、そして巨大な音が辺りに響いた。
志々雄の不意打ちにすら反応できていない左之助と美鈴は、当然の如く事態に付いていくことが出来ず、その光景を見ているだけ。
その光景―――天から急降下してきた少女が、手に持つ木鎚でトキの頭部を地面へとめり込ませているその光景を―――左之助と美鈴は茫然と見詰めている事しか出来ないでいた。
獰猛な笑みと共に近付く志々雄、闇夜を駆けるひとひらの煌めき、一言言葉を告げるトキ、そして次の瞬間には地面に埋まっていたその頭部……二秒ほどの僅かな時間で行われた一連の出来事。
理解が付いて行かない。
何が起きたのか分からない。
視覚はしていれど知覚する事は出来ず……その全てを把握している者は志々雄真実と天空から襲撃者だけ。
「やった……やったーーーー!! これで死なない!! これで首輪は爆発しないーーーー!!」
空から舞い降りたウサ耳少女は歓声を上げながら、何度も何度も何度も何度も、動かないトキへと木鎚を振り下ろし続ける。
猫を被る事すら忘れ、その愛くるしい顔を狂喜に染めていた。
支援
「……何やってんだよ、オイ……」
その凄惨な光景を前に、左之助がようやく再動した。
思い出したように、腑抜けた顔で言葉をポツリと零し、拳を握る。
だが、その小さすぎる呟きは、無邪気に木鎚を振るう少女には届かない。
少女は、止まらない。
「何やってんだって言ってんだよ、くそガキぃ!!」
そして、喧嘩屋が吼えた。
感情を憤怒へと激化させ、己の象徴である拳を振り上げる。
立ち上がると同時に、銃撃を受けた脚から血が噴出するが、左之助は全く怯まない。
この一瞬に於いて、怒りが肉体を凌駕する。
少女との間に在る距離は数メートル。マッハキャリバーを用いる必要も無い。
左之助は緑に覆われた地面を踏み抜き、少女へと拳を振るう。
「フタエノ――「遅ぇんだよ、阿呆が」
だが――届かない。
少女と左之助との間に割って入るは白色の包帯を身に纏った侍。
瞬間、左之助を襲う灼熱の斬撃。
炎に包まれた切っ先が左之助の身体を袈裟に斬り裂き、斬傷と火傷を同時に負わせる。
筋肉や骨、内臓すらも斬り、そして灼いた。
消火の役割を果たすは斬傷から噴き出す鮮血。
その鮮血を真っ向から浴びながら、志々雄が口を歪ませた。
「て……め……ぇ……」
志々雄の悪鬼の如く笑いに左之助は拳をぶつけようとし、だが限界を越え、力尽きる。
自身の血液が形成した水たまりに身体を沈ませた。
立ち上がる気配は、無い。
「……トキ、さん……左之助……さん……」
一瞬にして二人の仲間を失った美鈴は、まだ自失の時から帰還を果たすことが出来ずにいた。
「……貴様等ぁぁぁぁああああああああああああ!!」
しかし、鼓膜を叩く人斬りの高笑いが、激情を駆り立てた。
足を襲う激痛も、敬語を使用する事すら忘れ、鮮血に身体を染めながらも笑い続ける志々雄目掛けて、一歩踏み込む。
体幹と軸足の捻りから作られたタメを利用し放たれるは、高速の上段蹴り。
急激の負荷に銃痕から血液が噴き出すが、激情はその痛覚すらも断ち切り、少女を突き動かす。
支援
「ついでにもう一人ウサ〜♪」
そして、その後方から聞こえるは愉悦に占められたウサ耳少女の声。
何時の間にかトキを叩く事を止めていた少女は、キルカウントを伸ばそうと美鈴へと侵攻を開始していたのだ。
志々雄へと完全に意識を集中さていた美鈴は、白兎の接近に気付く事すら出来なかった。
その隙だらけの背中にウサ耳少女の一撃が命中。
続けて振るわれた一撃が後頭部を捉えると同時に、美鈴は意識を漆黒の中へと墜とした。
だが、ウサ耳少女はまだ攻撃を続ける。
地面に倒れる美鈴へ駄目押しの木槌を三回ほど振り下ろし、動かなくなった事を確認して、ようやく止まった。
こうして正義の意志を持った三人が倒れ、後に残るは二人の殺人鬼のみ。
……結果、五角形を制したのは優勝を企む二人の殺人鬼であった。
―――さて、此処までは、五角形の行く末をトキという一人の登場人物にスポットを当て、語ってきた。
そして、その道中には様々な謎が残されている。
トキ達を狙撃した人物は誰だったのか?
何故、因幡の白兎が志々雄と協力する形でトキ達を襲撃したのか?
この段階に至ってまで、スネークと雄山は何故登場しないのか?
左之助達と別れた空白の時間に志々雄は何をしていたのか?
次の章で語られるはそれら全ての謎に対する回答。
この五角形の裏側――もしくはこちらが表側なのかもしれないが――で展開されていた様々な出来事。
五角形を巡る話はまだまだ終わらない。
この話は、ようやく折り返しへと到達したばかりなのだから―――。
支援
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
これは志々雄がトキ達を襲撃する十数分前の出来事。
まだメタナイト達がトキと大河を影から追っていた時の事だ。
メタナイト、左之助、美鈴、志々雄の四人は草原の中に立ち、前方に見える二つの影の様子を伺っていた。
「あの二人は何をしているのだ……?」
「なんなんでしょう、何か話し込んでるみたいですけど……」
「どうでも良いからよお、早く追い付いちまおうぜ。そんなこと追い付いて後でアイツ等に聞けば良いじゃねえか」
「阿呆か。ああやってコソコソと密談してるって事は、誰かから身を隠してるって事だろが。
俺達が不用意に近付いて、その誰かが気付いちまったらどうすんだ、阿呆」
「ああ成る程……って、てめぇ、二回も阿呆って言ったな!」
「ちょっと二人共静かにして下さいよ!」
「落ち着け、左之助。志々雄もこれ以上挑発するな。お前もこんな所で同盟を破綻させたくはないだろう」
「分かってるよ。余りにこの単細胞が考え無しなもんでつい、な」
所々に剣呑な空気を巡らせつつも、共に動く四人組。
その様子は決して良好なものには見えないが、崩壊に至る兆しもまだ見えない。
実際この時点では、志々雄も動乱を起こすつもりは皆無であったし、まだこの同盟関係を継続させようと考えていた。
「考え無しだと!? てんめぇ……」
「落ち着けと言っただろう、左之助。ここで怒れば奴の思う壺だぞ」
小さな火種はあれど、まだしっかりと歯車は噛み合い周り続けていた。
その歯車を狂わす出来事は、この数秒後に発生する事となる。
始まりは、美鈴の一言だった。
「メタさん! トキさんが大河さんをっ……!」
慌てた様子で発せられた美鈴の一言。
その場を包んでいた喧騒が止み、三人の視線が美鈴へと向けられる。
そして、美鈴の視線を辿るように視界が移動していき、そこでメタナイト達は見た。
トキが気絶した大河を草むらの中に隠している、その光景を。
「おい、何やってんだよアイツは」
「……分からん。だが、殺害した訳ではないんだな?」
「はい、お腹を殴って気絶させただけですけど……」
トキが行った謎の行動に、それぞれ困惑を浮かべその光景を見詰める三人。
トキを良く知らない左之助は小さな疑心を、僅かであるがトキの人間性を知るメタナイト達は当惑を覚えながら、その行動を見守る。
草原の彼方から青白い光が迸ったのは、そしてトキが疾走を始めたのは、その数瞬後の事であった。
美鈴達はトキが向かう先……つまりは発光現象が起きた場に目をやり、そこにいる赤色の鎧を纏った少年とゴツい筋肉を纏った青年の存在に気付く。
同時に二人組の側に転がる黒こげの死体も発見。
左之助以外の四人は、その光景を見てトキの行動の真意を理解した。
「……志々雄の言う通りだったらしいな」
「は? どういう事だ?」
「多分トキさん達は、隠れながらあの二人組を追ってたんですよ。おそらく、接触するべきかどうか迷ってたんだと思います。
で、あの二人組が危険人物だと分かったから、倒しに向かった……多分、そんな感じだと思うんですけど」
「ああ、そういうことか。……ちょっと待て。でも、だったらあの嬢ちゃんを殴る必要は無いんじゃねえのか?
あのトキって奴は、何でわざわざ嬢ちゃんをノシてから向かったんだよ」
「……大河は背負いすぎる節があるのでな。戦場について来ないよう、気を失わせたのだろう」
「……そうか」
メタナイト達の話を聞き、三人に遅れて左之助もまた、理解する。
二人組へと迫っていくトキを遠目にボンヤリと眺める左之助。
そして数秒の間を取った後、
「よっしゃ、俺も行くぜ!」
両脚に備わる魔具をフルに活用し、駆け出した。
余りに唐突なスタートにメタナイトと美鈴は呆気に取られてしまう。
我に返ったのは左之助が走り出してたっぷり三秒ほど経過した後。
二人は驚きを顔に滲ませながら、呆れたように大きく溜め息を吐き出した。
「……あの人は単純というか猪突猛進というか……」
「まぁ、悪い男ではないようなんだが……」
「……ですね」
再び、溜め息。
二人は顔を見合わせた後、どんどん遠ざかっていく左之助へと首を回す。
「……お前は大丈夫なのか? 主人との約束があるのだろう」
左之助の背中を見詰めながらメタナイトはある疑念をこぼす。
数時間前に彼等が遭遇したやけに派手な姿をした少女――フランドール・スカーレット。
美鈴がもう一人の主人として従事を決意した、吸血鬼の少女。
メタナイトは覚えている……あの邂逅から僅かな時間、美鈴の様子が少しおかしかった事を。
その様子を覚えているからこそ、彼自身からフランドールに関する話題に出す事は無かった。
だが、このタイミングでメタナイトはその話題に触れた。
西に沈む太陽が彼女達の約束の期限を示していたから、
あの太陽が沈みきったその時こそが、タイムリミットだと分かっているから、
メタナイトは遂にその話題を口にした。
「大丈夫ですよ」
満を持した質問の答えは笑顔であった。
美鈴は微笑みと共にメタナイトに語り掛ける。
「此処から映画館までは2キロくらいですし、それ位なら全力走れば十分も掛かりませんし。それに、いざとなれば飛んで行けば良い訳ですしね」
その答えに嘘はなかった。
確かに間に合うかどうか心配ではあったが、メタナイト達はここまで共に生き延びてきた『仲間』だ。
『主人』と比較すればその優先順位は遥かに低い。
だがそれでも『仲間』を放置してまで『主人』の元へ向かう事が、美鈴には出来ない。
せめて、約束のリミットギリギリまで力を貸して上げたい……美鈴の心は何時しかそのような願望を思っていた。
そして、その願望が、美鈴の心配ないと語るような笑顔になっていた。
美鈴の笑顔を受け、メタナイトもまた仮面の下で小さく笑う。
胸に宿る幾分かの安堵が、メタナイトの鉄仮面を僅かに揺らがしていた。
「そうか……すまないな、迷惑を掛ける」
「言いっこなしですよ。私だってお嬢様に関連する事で、メタさんに力を借りるかもしれないんですし」
二人は互いに笑い合い、共に走り出す。
向かう先は数秒前に駆け出した左之助の背中、そしてその先にて鎧の男と戦闘しているトキの元。
こうして三人の戦士達は先に待つ混沌を知らずに、戦場へと踏み入る事となった―――。
そして、場に残されるは最強の剣客が一人、志々雄真実のみ。
志々雄は呆れ顔で前方を走る三人を見詰め、嘲笑を浮かべる。
事態が急展していったとは云え、最も注意を払うべき自分の存在を忘れて、仲間の助けに向かうその考えの至らなさ。
呆れを通り越し、笑えさえする。
あの単純バカが居なければ、あの二人ももう少しマシな判断を下せただろうが……仕方がない。
此処で別れたとしても、折角組んだ同盟が無碍となる。
再び溜め息を吐き、先を走る三人に追い付こうと志々雄も足を踏み出し――
皆で殺し合ってくれって言われた瞬間パーンってなりましてね首輪が
支援
支援
「動くな。両手を挙げろ」
――同時に、後方から低い嗄れた男の声が届いた。
チャキ、という軽い音と共に、堅い金属の物体が志々雄の後頭部に押し付けられる。
志々雄はその冷たい感触に覚えがあった。
何時しか警官隊の誰もが装備するようになっていた遠距離兵器――拳銃。
刀を得物とする志々雄自身は一度も扱った事はないが、拳銃に関するある程度の知識は持っていた。
引き金を引くだけで遠くにいる人間の身体を易々と破壊する、魔法のような兵器。
刀、そして剣客という存在を退廃へと追い込んだ原因の一つである兵器。
その兵器が、何時の間にか後頭部に突き付けられていた。
特別な警戒をしていた訳ではないとはいえ、この自分を相手に楽々と間合いを詰め、銃口を当てられる距離にまで接近した謎の敵……敵が持つ技量の高さに、志々雄は素直な感嘆を覚えていた。
「……仕方ねぇな。降参だ、逆らいはしねぇよ」
そして、志々雄は驚くほど素直に、謎の襲来者の命令を受け入れた。
おそらく、志々雄の実力ならば抵抗は充分に可能な状況だっただろう。
だが、その状況で彼は降伏の道を選択した。
完全に背後を取られ、また敵の姿形や装備している武器すらも把握できていない現状……此処で無理な反抗を行えば確実に痛手を負う。
志々雄は、先に続く闘争を見据えた上で冷静な判断をしてみせたのだ。
「……懸命な判断だ。まずは、デイバックと刀を足元に置け。そして前方の草むらへと蹴り飛ばすんだ」
淡々とした口調で矢継ぎ早に指示が飛ばされ、それと同時に銃口の冷たい感触が志々雄の後頭部から離れる。
破れかぶれの反撃を警戒してのその行動に、志々雄は、敵が相当な訓練を積ん
だ兵士だという事を再確認した。
「距離を取らせてもらうが、銃口は依然お前の頭を狙っている。少しでもおかしな真似をしたら容赦なく撃たせてもらうぞ」
忠告を聞き流しながらも志々雄は敵の指示通り武装を解除していく。
肩に掛かったデイバックと脇に差さった日本刀を地面に置き、草むらへと蹴る。
続くボディーチェックを受け、そして遂に志々雄は敵と対面を果たす事ができた。
「ほう……」
そこにいたのは、熟練した雰囲気を漂わせる三十代半ばの兵士。
肩まで掛かる長髪に顎部を覆う無精髭。
武器は拳銃が一丁。構えに隙は少なく、一目で武器を扱い慣れている事が分かる。
思った通り相当な手練。
現在の状況では、戦闘したとしても無傷で勝利を得る事は困難だろう。
男は、地に転がるデイバックに回り込みながら近付き、銃を突き付けたままそれらを拾い上げた。
その一連の動作にも、やはり隙は少ない。一挙一動に男の実力の高さが滲み出ていた。
「お前は殺し合いに乗ってるな?」
「ああ、乗ってるぜ」
男の問いに対し、志々雄は平然と真実を語る。
焦りも躊躇いもない返答に、逆に面を食らったのは男の方。
眉が微かに吊り上がり、銃を握る手に力が籠もる。
「……向こうに俺の仲間が待機している。詳しい話はそこで聞かせてもらう」
「良いだろう」
装備は解除され唯一の武器である刀も没収された。
志々雄にとっては圧倒的に不利な状況。だというのに志々雄の口は弧を描く。
このギリギリの状況すら楽しんでいるかのように笑い、男の言われた通りに行動を開始した。
支援
しえん
そして歩き出してから数十秒、志々雄は無精髭の男が言う仲間とやらに出会う事となる。
人数は二人。
ウサ耳を生やした幼女に大層な着物を纏った中年オヤジ。
その二人は、草むらの陰に身を縮こませて隠れていた。
異色極まりない……もはや犯罪の匂いすらするその二人組を見て、志々雄は思考する。
(さて、どうするか……)
後方には相当な実力者であろう無精髭の男。
前方には素人同然の男が一人にやけに血走った瞳をしている幼女が一人。
選択肢はまだ提示されてすらいない。
「その男は誰だ!」
この先、どう行動していくか……中年の叫びを聞きながら、志々雄はただ思考していた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「その男は誰だ!」
横に立つ中年の叫びを聞きながら、てゐはただ純粋に焦っていた。
西の空を見ると、世界を照らす恒星が今にも地平線と触れようかという位置にある。
あの恒星が沈みきったその時こそがタイムリミット。忌々しいこの首輪が爆発するその時だ。
時間にすればあと一時間も無いだろう。
そう、つまりこのまま時間が経過すれば自分は死ぬ。
白色の首輪は黒色に変化する事なく、自分の首ごと爆散するのだ。
嫌だった。
死にたくなかった。
横に立つ中年でも良い、スネークが連れてきた包帯の男でも良い、いざとなればスネークであっても良い……早く誰かを殺さなくては―――。
「ス、ス、スネーク! その男は殺しても良いウサか!?」
思いと比例するように木槌を握る手は力を増していく。
焦燥が胸をこがし、自身の生き延びる為の『餌』となる人物を求める。
「落ち着け、てゐ。こいつを殺するのは情報を引き出してからだ」
そのてゐの思考に反し、無精髭の男――ソリッド・スネークは首を横に振る。
だが、その否定を受けながらも、てゐは安堵に心中を包み込まれていた。
『餌』が……『獲物』が、見付かった。
先程のスネークの台詞は、情報を引き出せば殺しても良い、と言ったも同然。
てゐは無邪気を装う仮面の下で凄惨な笑顔を浮かべ、獲物を眺める。
支援
支援
「スネーク! いくら殺人犯といえど殺害してしまうのは……!」
「……雄山の意見も分からない訳ではない。だが、このままではてゐが死ぬ。それにコイツは、殺人に対して何ら嫌悪感を持っていない……そんな瞳をしている。
この男を生かして置くと沢山の人が犠牲になるんだ。お前には理解できないかもしれないが……俺は、そう思う」
「く……! だが……!」
スネークの言葉に言い返せず押し黙る雄山。
唯一の不安材料も折れ掛かっている。てゐの安堵が揺らぐ事はなかった。
その脳内には、目の前の男を殴り殺すその瞬間が映像となり、何回も何回もリピートされている。
確実に訪れる未来、揺らぐ筈のない未来……言い争う二人の男達を前にてゐは心の笑みを更に深くしていた。
「……分かった、今回は見逃そう」
結果的に折れたのは、てゐの予想通り雄山であった。
苦渋を顔に滲ませながらも、腕を組みその場から引き下がる。
スネークは雄山の決断に一つ礼を言い、そして志々雄の正面へと回り込む。
その表情は徐々に冷淡な物へと変化していき、志々雄と対面した時には雄山に見せた物とはまるで別種なものへとなっていた。
情報を吐かせるには手段を問わない……その顔は志々雄に無言で語っていた。
「まずは名前を教えてもらおうか」
「……志々雄真実だ」
その表情を前にして、志々雄は嘘を吐く事が無意味だと悟る。
笑顔を崩す事なくスネークの視線を真っ向から受け、自身の名を口にした志々雄。
その脳内では現状の打開を目指し模索を続けている。
「……志々雄、次の質問だ。お前と共に行動していた奴等は何を目的としている?」
―――天恵が舞い降りたのはその問いを聞いた瞬間であった。
組み上がるは、この状況を脱出する方法。
決して楽な道のりではないが、全てのハードルを越えればイケる。
対応を失敗しなければ、イケる。
状況の打破どころではない。
奴等もコイツ等も全てを排除できる魔法のような、そんな展開に持っていける。
その為にも、此処だ。
この切り返しで強烈な印象を植え付けるんだ。
そうすれば、危うい所ではあるが―――極上の未来を引き寄せられる。
「フ……ハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!
!」
―――そして、熟考の剣客が動き出す。
唐突に口から飛び出すは、張り巡らされた思考とは裏腹の狂ったような高笑い。
何が起きたのかと、目を見開き驚くのはスネーク達三人。
これまでの態度は狂気の色を孕んでいるとはいえ、ある程度の冷静さはあった。
だが、今は違う。
まるで脳組織の何処かが破損したかのような豹変。
三人は驚愕と警戒に包まれながら志々雄を睨む。
「……静かにしろ」
制止の言葉を上げるはスネーク。
だが、その声が聞こえているのか、いないのか志々雄の笑い声を止む気配すらない。
支援
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ! こりゃあ面白え! 傑作だぜ、お前等はよぉ!!」
笑う、笑う。
狂ったようにただ、笑う。
「……静かにしろと言っている」
「そうだ、お前はアイツ等を見逃しちまったんだよなあ! スネークって言ったか? 阿呆だよ、お前はよぉ!
俺を捕まえたところでアイツ等を自由にさせてちゃ、何ら意味がねぇんだよ!!」
――ズドン、とその狂言を遮るように銃声が響き渡った。
天に向かって放たれた銃弾は何にも命中する事なく、地面に落下。
その大音量に流石の志々雄も高笑いを止め、スネークへと目をやる。
志々雄の表情には未だ笑顔が張り付いていた。
「今お前は、アイツ等を自由にさせてたら意味がない、と言ったな」
「ああ、言ったぜ」
「……それは、どういう事だ」
「言葉通りの意味さ。俺を殺したところで奴等は殺戮を続ける……それにアイツ等は俺よりもずっと強く、凶暴だ。
さっき体の良い獲物も見つけたしな……今この瞬間にも一人や二人は殺してるかもしれねぇな」
神の視点に立つ者なら一目で分かるような虚言を並べ、志々雄はスネークを見詰める。
だが、スネークはその嘘を見破る事が出来ない。
彼の経験からして、眼前の男が殺し合いに乗っているのは確かであり、その男と協力するという事は、その協力者達もまた殺し合いに乗っているとしか考えられない。
夜神月のように仲間を口八丁で騙して……という可能性もあるが、ならば自分達に対しても嘘を吐く筈。
殺し合いに乗っている事実を易々と語るということは、志々雄にはそれだけの自信が……対主催を掲げる参加者達と正面から対立し、そして勝ち抜く事ができる自信があるという事だ。
夜神月に比べればまだ戦い易い相手、だがまた別の意味で厄介な相手でもある。
そして、殺し合いに乗っている男と行動を共にするという事は、彼等もまた殺し合いに乗っているという事。
自発的に動いていたその様子を見る限り、暴力による強制的な従僕の線も消える。
今回の発言に関しても、おそらく志々雄は嘘を言っていない……スネークは上記の考察を経て、そう判断付けてしまった。
勿論、志々雄が語った殆どは嘘。
彼と行動を共にしていたメタナイト達は殺し合いになど乗っていないし、スネークと同じくゲームの転覆を目標と掲げる立派な対主催だ。
志々雄よりも凶暴てはないし、実力的にも拮抗していると言える。
だが、スネークは志々雄の嘘を看破する事ができなかった。
彼の観察眼を曇らせたのは単純な情報不足。
相手を殺人鬼だと把握しながらも手を組むなどという複雑な同盟関係を、スネークが知る由もないし、そのような同盟など彼からすればナンセンスの塊。
加えてメタナイト達の同盟に関する情報は皆無。
流石のスネークといえども、この状況では志々雄の嘘を見破る事は限りなく不可能に近い。
事実、彼は志々雄の嘘に気が付く事はなく――
「分かった、貴重な情報をありがとう。礼と言っては何だが―――少し寝ていろ」
――勘違いをそのままに全ての事態を収集する方法を選び取った。
告げ終えると同時にスネークの拳が志々雄の腹部を襲った。
その鉄拳は完全に志々雄の鳩尾を捉えている。
抵抗の暇もなく、呻き声を一つ上げ崩れ落ち、腹這いに倒れる志々雄。
その姿を一瞥し、スネークは後方に立つてゐと雄山に声を掛ける。
「俺は今からこいつの仲間達を止めに向かう。志々雄は『体の良い獲物を見つけた』と言っていた。
おそらくは現在進行形で襲撃を行っているのかもしれない。俺一人で何処まで手助けできるかは分からないが……出来る限りの事はやってみるつもりだ。
雄山とてゐはさっきと同じ様に此処に隠れていてくれ」
志々雄から与えられた嘘の情報を信じ、スネークは動き出そうとしていた。
志々雄と接触した地点で、志々雄の仲間達の姿は確認していた。
阻止の方法は未だ思い浮かばないが、迅速に行動をせねば無駄な犠牲者を出す事となる。
スネークは、何としてでも志々雄の仲間達を止めるつもりでいた。
支援
「……早めに始末を付けておくんだな、てゐ。取り敢えず無力化はしておいた、トドメを刺すのは容易だろう。
それと雄山はこれを装備しろ。拳銃と比べればまだ扱い易い筈だし、桑の実やコッペパンよりは余程タメになる筈だ」
そう言い、雄山へと差し出されるは鞘に収まった一振りの日本刀とデイパック。
先程、志々雄から没収したばかりの物品だ。
日本刀を装備した事により何が変わる訳でもないが、素手に比べれば生存率も多少は上がる筈だ。
スネークの判断は概ね間違いではないと言える。
「……すまんな」
雄山も頭を下げ、素直に日本刀を受け取った。
持ち慣れない武器に顔を苦ませながらも、一回二回と納刀状態のまま素振りを行う。
手に馴染む感覚はない。
初めて持つ日本刀は雄山に僅かな不快感を植え付けていた。
「じゃあ俺は行く。他の襲撃者が現れた時は俺に構わず逃亡しろ、分かったな?」
「うむ……了解した。お前も気を付けるんだぞ」
「分かったウサ……無理しないでね、スネーク」
そうして歩き去るスネークを見送り、場には二人の人間と一匹の兎が残された。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
スネークは草むらの中に身を隠しながら、遠くに立つ三人組を見る。
奴等の足元には二人の人間が横たわっている。生死の判断はこの位置からは不可能。
奴等が介抱をする気配はない……対主催だとすれば、気絶した仲間をあんな乱暴に放置する事はしない筈だ。
やはりあの志々雄の情報は正しかったのだろう。
そもそも志々雄という危険人物と行動を共にしていたのだ。
その時点で奴等の人間性を把握するには充分だ。
「……やるか」
奴等からはこの位置は風下。距離も二百メートルほど離れてる。
自分の腕ならギリギリ狙撃は可能な距離。銃声も届く事はないだろう。
「まずは奴等の手足を潰し無力化を計る。その後に説得が可能か接触。……任務としては単純明快、イージーランクだな」
草むらから身体を乗り出し、呼吸を整えるスネーク。
大きく一度深呼吸し息を止め、視界のブレを無くす。
そして、酸欠により視界が霞むより早く―――引き金を絞った。
一発、
二発、
三発、
次々と放たれる弾丸が、正確無比にトキ達を貫いていく。
叫び声は聞こえないが、彼等が倒れ伏すのは確認できた。
スネークは、冷静に敵勢力に与えたダメージを観察し、任務の達成を把握する。
「任務完了か……」
銃弾は狙った箇所に寸分違わず命中した。
当分は立ち上がる事も出来ない筈だ。
……と、スネークが僅かな安堵を覚えたその瞬間――その表情が固まった。
「何だ……アレは?」
支援
支援
誰もが倒れ伏すその場に何時の間にか、不思議な物体が乱入していた。
それは、異常に短い手足と悪魔を連想させる羽根生やした球体。
その球体が宙に浮きながら、奴等の一人と会話している。
二本足で立つ有袋類や兎のような耳を生やした幼女を見てきたスネークであったが、その特異すぎる姿に思わず驚愕をしてしまった。
「球体……に手足と羽根が……? それに動いて……」
そして、思わず呆然としていたスネークに、その球体が羽根を羽ばたかせ直進してきた。
スネークも直ぐさま気持ちを切り替え銃を構えるが、銃撃しようにもその標的には手足がない。
結局、引き金を引く事はできず、スネークは再度茂みの中へと身を隠した。
「くそっ……何なんだ、あの生物は……」
悪態を尽きながらも、飛来したメタナイトを観察するスネーク。
よくよく見れば、志々雄と遭遇した時にもこんな生物がいた気がする。
その身体の小ささにより狙撃する箇所は少ないが、無力化できない事はない。
(だが、そう簡単にいく相手でもなさそうだな……)
装備から見るに、敵は近接戦を得意としている。
そして、驚愕していたとはいえ自分は奴の接近を許してしまった。
先の無条件に狙撃できる状況とはまるで違う、不利な状況。
明らかに自分は致命的なミスを犯した。
「敵の実力は未知数だが……やるしかないか」
意を決し、スネークは拳銃を握り締める。
トキ達とは別な場所で彼等の戦いもまた、始まった。
【D-4 草原/1日目・夕方】
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]顔面打撲、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:狙撃手の打倒
2:志々雄真実を強く警戒
3:美鈴の知り合いの情報集め
4:殺し合いに反対する者を集める
5:脱出方法を確立する
6:触覚の男との決着
[備考]
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※E?2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました
支援
支援
【ソリッド・スネーク@メタルギアソリッド】
【状態】肉体疲労(小)
【装備】コルトパイソン(3/6、予備弾31/36)@現実、TDNスーツ@ガチムチパンツレスリング、越前の軍服
愛犬ロボット「てつ」@日本郵販テレホンショッピング
【持物】やる夫の首輪、ハイポーション@ハイポーション作ってみた、馬鹿の世界地図@バカ日本地図、全世界のバカが考えた脳内ワールドマップ
咲夜のナイフ@東方project、さのすけ@さよなら絶望先生、基本医療品
【思考・行動】
基本思考:情報を集める。また、首輪を専門の奴に見てもらう。
0、目の前の男(?)を倒し、志々雄真実の仲間と接触。その後F-5へ向かう?
1、オフィスビルに向かう途中に図書館へ向かい、バクラ、言葉が危険人物か確認した上で、危険人物なら排除する。
2、自分から攻撃はしない。見つかった場合も出来れば攻撃したくない。
3、十六夜咲夜のような奴が居れば、仲間に誘った後、情報を聞き出した後倒す。
4、てつを使用し、偵察、囮に使う。
5、てゐが邪魔か否かを判断し、首輪が白くなったら延命させる。
6、十六夜咲夜、紅美鈴、フランドール・スカーレット、サンレッドを警戒。
[備考]
※馬鹿の日本地図の裏に何か書いてあります。
※ミクが危険人物という情報を得ましたが、完璧に信用はしていません。
※盗聴されている可能性に気付きました。また首輪に電波が送られているか何かがあると思っています。
※電波を妨害するチャフグレネード等の武器を使えば、どうにかなると考察しています。
※てゐからは千年以上生きている、知り合いの事を話してもらいました。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
―――そして再び時は巻き戻され、スネークが離脱した直後の場。
地面に倒れる剣客と、木槌を持ち標的に迫る白兎、そして全てを見守る覚悟を持った美食家が集結した会場に視点は移る。
透き通るような静寂の中、最初に動き出したのは因幡てゐ。
歓喜を面に出さないよう注意して、わざと沈痛な表情を装い、気絶中の志々雄へと近付いていく。
喜々として殺人を行えば雄山に怪しまれると思っての行動であった。
雄山も複雑な胸中を顔に滲ませていたが、てゐの行為を止めようとはしない。
殺人鬼であろうと、人を殺す事に納得はできない。
だが、眼前の少女が命を失う事もまた雄山にとっては納得できなかった。
湧き上がるは無力な自分への苛立ち。
自分に力があれば、自分にこの忌々しい首輪を解除できる技術があれば……それらの思いは後悔となって雄山にのし掛かっていた。
雄山は唇を噛み締めその光景を見つめる。
決して目は逸らさない。
複雑な事情があるとはいえ殺人を認可したその事実から、雄山は目を逸らそうとはしなかった。
その視界の中で、てゐが高々と木槌を振り上げた。
あれを振り下ろせば、男は死ぬ。
自分の目の前で、人が死ぬ。
罪の瞬間を雄山は両の瞳で見詰め続ける。
そして、木槌が振り下ろされ――
支援
ゴキリ、
――奇妙な音と共に雄山の視界がひっくり返った。
地が天に、天が地に……視界そのものが逆さになり、雄山の思考は一瞬にして混乱の極みに陥る。
だが、疑問を口から吐こうとするも声が出ない。口を開く事すら出来なかった。
(な、何が……?)
身体を動かす事が……指一本も動かす事ができない。
視界が急速に狭まっていき、漆黒に染まっていく。
自分の身体に何が起きたか理解することすら出来ずに―――雄山は永遠の眠りについた。
「う、そ……」
自身が持つ木槌の矛先を見詰めながら、てゐは驚愕に言葉を呟いていた。
その木槌の先にてゐが想像していた光景は無い。
潰れた頭蓋に辺りを濡らす鮮血と脳漿……そんな光景が在る筈だった。
標的はスネークが完全に戦力を奪っており、外す訳がない。
非力な自分でもこの木槌を本気で振り下ろせば、人間の頭くらいは簡単に砕き散らす事ができる。
動くことのない敵、人を殺害するには充分な武器……まさかの要素はない筈だった。
その筈だったのに、
何故、どうして、この男は―――立っている。
「外れだな、嬢ちゃんよぉ」
それもただ立っているだけでない。
てゐの一撃を回避した志々雄は、それと同時に雄山へ接近して、その頸椎を捻り折っていた。
それは予め決定されていたかのような、淀みない流れるような動き。
獣の如く敏捷性で立ち上がり、疾走し、雄山を殺害した。
油断があったとはいえ、その一連の動作はてゐにも読み切れる事はなく、おそらく雄山には知覚すら不可能であったろう。
頭頂部と顎部の位置が逆さまになった雄山を棄て置き、志々雄がてゐへと歩み寄る。
「な、何で……気絶してた筈じゃ……」
「気付けに、ちょいと唇を噛み切らせてもらってな……延髄狙われたらヤバかったが、臓腐への痛みくらいならこれで耐えられるんだよ。
あの男なら気付くとも思ったがな、仰向けに倒れたお陰で何とかなったようだ」
言葉と共に吐き出された肉片は決して小さい物ではなかった。
よくよく見れば、その口からは夥しい量の血が流出している。
ダメージに繋がる訳ではいが、相当な痛みが志々雄を襲っている筈。
だが、志々雄は変わらぬ瞳を白兎へと向けていた。
殺意に染まった瞳を―――、
殺人を犯した直後だというのに欠片の罪悪感も見受けられない瞳を―――、
まるで捕食者の如くギラついたその瞳を―――、
志々雄はてゐへと向けている。
てゐはその志々雄の瞳から目を離す事が出来ない。
数瞬前までの余裕と歓喜は何処かに吹き飛び、恐怖が心を支配する。
やはり自分は兎なのだと、やはり自分は搾取される側なのだと、てゐは心の端でその理不尽な真理に絶望していた。
支援
支援
支援
「ひっ!」
恐怖が音となり、口から漏れる。
猫を被る余裕も、口八丁でこの場を切り抜ける余裕も、なかった。
恐怖に駆られた兎は眼前へと迫る捕食者に対抗する術を持たない。
命の危機に身体を震わせ、そして心の絶叫と共に全力で走り出す。
―――逃げなくては、この捕食者から逃げなくては!
ただ全力で駆ける。
文字通り脱兎の如く捕食者からの逃亡を計る―――が、易々と逃亡を許すほど、志々雄真実という捕食者は甘くない。
志々雄は、雄山の死体から日本刀を奪うとてゐの行く手目掛け、それを投擲した。
「ツッ!」
夕焼けの草原を駆ける閃きがてゐの脚を掠め、肉と脂肪とを僅かに削り取る。
傷としては大した事のないもの。だが、その痛みがてゐの動きを止め、地に転ばせる。
気付いた時には、てゐは仰向けに地面へと転がっており、そのてゐへ志々雄が迫る。
そして馬乗りになると、てゐの平坦な胸を右手で抑え、地面に押し付けた。
「逃げることはねぇだろ、もう少し楽しんでいこうぜ」
「た、助けて……何でもするから……お願い……助けて……」
胸部を通して伝わる重い力に、てゐは動くことができなかった。
拘束から逃れている手足をばたつかせるも、志々雄の身体に届くことすらない。
今のてゐに成せる事は、必死に命乞いをし、心変わりという矮小な可能性に全
てを賭ける事だけ。
「何でも……何でもするから……死にたくない……こんな、所で死にたくないぃ……」
双眸に演技ではない本物の涙を浮かべ、てゐが譫言のように呟きを続ける。
もはや狡猾な白兎はこの場には居らず、ただの『餌』と化した幼女が残されただけであった。
「何でもする、ねえ」
対する志々雄はそんな白兎を愉悦で見下ろしていた。
まるで値踏みをするような視線でてゐを舐めまわす。
この『餌』をどう利用し、どう活用するか……その方法を熟考しながら、志々雄はてゐを観察していた。
「……良いぜ。助けてやる」
「え……?」
――そして、志々雄は『餌』の利用方法を決定した。
てゐを抑える右手を離し、その小さな身体を拘束から解放。
そのまま地面に転がる日本刀を拾い上げ、腰と帯との間に挟み込む。
支援
支援
シエン
支援
「なに惚けてんだ? この場は見逃してやるって言ってんだろが」
「え……あ……? あ、ああ、ありがとう御座います!」
本当に見逃してくれるとは思っていなかったのか、茫然自失状態にいたてゐがようやく活動を再開する。
恐怖が抜けきっていない、強張った顔で謝礼を叫びながら立ち上がるてゐ。
そんなてゐを横目で見て、志々雄は口を歪ませる。
(――計 画 通 り ! ……って奴だな)
そう、全てが上手くいっていた。
先の天恵で閃いた全てをこなす事ができた。
あの時――スネークに左之助達について問われた時、思い付いた天恵。
それは『スネークと左之助達をぶつけ合う』という物であった。
スネークという男は敵と正面から戦闘する事はない。
物陰に身を隠し、敵の不意を付き、無力化させるその戦法。実力差や人数差による戦力差を埋められる、最も賢い戦い方だ。
おそらくあの三人……トキを合わせれば四人を相手にしてもそれなりの戦果は上げられる筈――志々雄はそう考え、スネークと左之助達がぶつかるよう仕組んだ。
その特異な同盟関係を逆手に嘘の情報をスネークに刷り込み、左之助達の元へ向かわせたのだ。
そして、戦いにより負傷し弱体化したアイツ等を叩く。
個々の力は大した物であらずとも、あれだけの人数が集まれば厄介なもの。
そこにトキという男も加われば、戦力は更なる飛躍を遂げるだろう。
そして、それは反逆が困難な状況に追い詰められていく事と同意義。
だが、何も知らないコイツ等を上手く利用すれば、打開は可能。
スネークと奴等をぶつけ、その疲弊したところでタイミングを見計らえば、まだ可能性は見える。
結果として、策は―――奇跡的なまでに上手く進んだ。
スネークは奴等の襲撃に向かい、兎娘という手駒も入手でき、一人の邪魔者も殺害できた。
『体の良い獲物を見付けた』との嘘を付き、スネークの離脱を仕向けたのは確かだが、此処まで戦果を上げられるとは考えてもいなかった。
(運も俺に味方しているか……)
このまま娘を連れて逃亡する事も出来る。
このまま奴等と合流し、同盟を継続する事も出来る。
だが、運の波が傾いてる今なら―――勝負を掛けても良いかもしれない。
「おい、娘。付いてこい」
「は、はいウサ……」
雄山の死体からデイパックを奪い取ると、志々雄はてゐを連れて歩き出した。
向かうはスネークと左之助達が戦闘している筈の場所。
あの四人に、スネークがどれ程のダメージ与えられてるかは分からない。
だが、それでも今なら勝利を得られる気がした。
「おい、娘。お前てゐって名前だよな」
「そ、そうウサ……」
「美鈴って娘を知ってるよな。お前も、奴のように空を飛べるのか?」
「飛べますけど……」
「そうか」
志々雄は一考する。
奴等を葬れる完全な策を、
奴等を殺害できる策を、
「……お前、何で俺を殺したがってた」
「! そ、それは……」
SIEN
支援
支援
支援
しえん
殺人に対する考え方の違いはあれど、スネークと雄山は完全な対主催思考だった。
だが、このてゐという娘は違う。何故か明確な殺意を持ち、攻撃をしてきた。
そして、それをスネークと雄山は容認していた。
何故、少なからず殺人に忌避の念を抱いておきながら、殺人を許可するのか……志々雄はその矛盾を疑問に思い―――そして利用するにはこの上ないとも考えていた。
「……言いたくないなら、言わなくて良い。絶対に殺人を犯さなければいけない理由が、お前にはある。そうだな?」
「……そうウサ」
「へっ、じゃあお前は幸運だな」
「え?」
「今から俺達はある集団を襲撃する。お前も殺せるよう頑張るんだな」
志々雄の言葉を受け、てゐもまた熟考する。
目の前の男は恐ろしい程に強い。少なくとも自分よりは遥かに、正面からの戦いなら恐らくあのスネークよりも。
その男と共に行動すれば、敗北する事はない。
上手く立ち回れば漁夫の利を得る事も出来る。
何時か逃げ出さねば殺害されるとしても、今この瞬間の自分には有り難い同盟だ。
「……分かったウサ。協力するウサ」
「じゃあお前は、空中で待機してろ。俺が攻撃をしたら上から奇襲するんだ」
考え付いた策は単純なもの。
だが、単純が故に成功した時のリターンは大きい。
見る限り、逃亡する様子もない。
充分、成功する要素はある筈だ。
「じゃあ行け。上手くやれよ」
「任せてウサ!」
―――そして、空に向かうてゐを見送り、志々雄は遠くに見える左之助へと近付いていく。
奴等は負傷したようでうずくまり、メタナイトの姿はない。
まともに戦えそうなのは、トキのみ。
意を決し左之助達に声を掛けようとする志々雄。
が、その時、踏み出した右足が何かを踏みつけた。
足裏からその何かが、長細い硬質の物体だという事が伝わる。
志々雄の視線が下に向く。
そこに転がっていたのは―――一振りの刀。
志々雄の口が歪む。
その刀は愛に殉じた少年が武器として装備していた刀。
殺害された際の一撃で少年の手から零れ落ち、こんな遠くにまで吹き飛んだのだ。
その刀の名は無限刃―――そう、志々雄真実の愛刀であった。
志々雄は愛刀を拾い上げ、その腰にではなくデイパックへと入れた。
刀はもうある。ならば奇襲用として忍ばせておいた方が、後々の展開によっては役に立つ筈だ。
加えて、武器を隠しておくには最適なデイパックという存在もある。
これからの事を考えて、忍ばせておくに越した事はない。
「やはりが運が傾いているか」
そう、先の窮地からの脱出といい、この無限刃の件といい運は自分に傾いていた。
勝機は充分にある。
「――よぉ、雁首そろえて何落ち込んでだよ」
―――そしてそれらの過程を経ることにより、志々雄は五角形を掌握した。
対主催を目標と掲げる三人を血の海に沈め、自身は殆ど無傷で場に立ち尽くしている。
志々雄の完全勝利とも言える状況。
スネーク達との接触という危機を乗り越え、志々雄は勝利をもぎ取ったのだ。
支援
支援
支援
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「所詮この世は弱肉強食。弱ければ死に、強ければ生きる。お前達は……弱者だ」
勝者は自身の信条を敗者へと語り、小さな笑い声を上げる。
その姿を後ろから見詰めるは、九死に一生の状況を経て、この惨状を造る大きな要因となった白兎。
顔には生存条件を達成したことによる歓喜が居座っており、身に纏う白服は鮮血に染められている。
てゐはその惨状を一頻り見回し、そしてその中心に立つ志々雄へと口を開く。
「志々雄……さん、これからどうするウサ?」
まだ先の殺され掛けた記憶が残っており、記憶は恐怖となって顔面神経の動きを阻害する。
強張った顔と声で志々雄の様子を伺うてゐ。
最悪の場合を考えて何時でも逃亡を開始する用意は出来ていた。
「……そうだな、取り敢えずスネークとメタナイトの奴も始末しておきてえが……今はまだ良いだろ。取り敢えずこの場から離れるぞ」
「……分かったウサ」
だが、志々雄にはまだてゐを見捨てる気はないらしい。
それは利用される時間が増すということと同意義なのだが、てゐはひとまず安堵する。
死ななければどうとでもなるのだ。
時間が経てば寝首を掻くチャンスが訪れるかもしれないし、この捕食者の弱点を発見できるかもしれない。
生きていれば……命さえあればどうにでもなる――てゐは現状を肯定的に捉え、志々雄の後を付いて行く。
そして、遂にその場から誰も居なくなると思われたその瞬間――
「…………待………………て………………」
――後ろから声が届いた。
小さく短い言葉であるが、確かに声が届いた。
志々雄は怪訝な顔で、てゐは愕然とした顔で、後方に振り返る。
この謎の声の主が誰なのか、二人は気付いていた。
だからこそ片や怪訝の色を、片や愕然の色を顔に宿している。
有り得ない、あの傷で生きているなど有り得ない……そう思考しつつ振り向いた二人が見た物は、
「あんたまだ生きて……!」
かち割れた頭部から滝のように血を流し、その銀髪の一本一本までをも塗らしつつ、それでも立ち上がる男―――トキ。
何故、生きている。
幾度となく頭を殴打され、幾度となく地面と木槌に頭を挟まれ……何故、立ち上がる。
常人であれば……いや常人でなくとも即死、もしくは失血死に陥る傷は追っている筈。
何がこの男を支えている。
何がこの男を奮い立たせる。
何を見ているのか、そもそも本来の機能を果たしているのか……亡霊の如く生気の失った虚ろな瞳で、トキが二人を睨み付けていた―――。
支援
支援
支援
自分は死人だ。
あの核の光に襲われたその時から、自分の頭上には告死の星が輝き続けていた。
だから、命など惜しくはない。
ただ一つこの世に未練があるとすれば、あの実兄の愚かな覇業を阻止できなかった事のみ。
幼き頃に誓ったあの約束。
だがその役目も、結果的には義弟である真の北斗継承者に託すこととなった。
自分は敗北した。命を賭して望んだ拳王との一騎打ちにおいて、自分は完敗を喫した。
だから残る全てを義弟に頼んだ。
あとは短い余生で一人でも多くの人々を、この呪わしき拳で救済していければ良い……そう、思っていた。
……そして、そう思っていた矢先に、このバトルロワイアルへと呼び出された。
血も涙もない、絶望と悲哀だけを産み出す狂気の宴。
あの右上とやらの説明を受けた時、怒りは沸かなかった。
ただ悲しみと虚しさが襲った。
人間とはこういう物なのかと、あの愚かな戦争を経てさえ人間の思想は変革を覚えなかったのかと、ただ空虚な感情が胸中に漂った。
だから、誓った。
この殺し合いの場で人々を救う事を、様々な強敵(とも)を見付け協力し右上達の企みを壊す事を……誓った。
――そして今、自分は死の危機に瀕している。
空からの襲撃は予想外であったとはいえ、致命的な一撃を喰らい、棺桶に片足を突っ込んでいる状況。
ただでさえ病魔に蝕まれていた身体、加えて先のブロリーとの戦闘で突いた『殺活孔』……もはや身体は満足に動かず立ち上がっただけでも精一杯だ。
視界が歪み、二人の姿を確認するのがやっと。
血が止まらず、頭部どころか身体すらも濡らす。
寒い。体温が血液と一緒に外へと流れ続ける。 ただただ寒かった。
幾度となく死を覚悟した事はあるが、此処まで身体が言うことを効かないのは初めてだ。
これが本当の『死』。
体験したことのない脱力が身体を支配していた。
仲間も守れなかった。
メタナイトとの約束も守れず、二人の仲間を殺させてしまった。
自分があの不意打ちを避けられいれば、この襲撃者達を倒せていれば―――失わずにすんだ仲間達。
左之助も美鈴も良い奴だった。
時に単純で、時に冷淡な面を覗かせた彼等であったが、その根本は善人であった。
何故、回避できなかった。
何故、倒れてしまった。
後悔だけが心の中を埋め尽くす。
―――戦わなくてはいけない。
北斗の使者として、約束を守り通せなかった愚者として、意識がある限り『悪』と戦い続ける。
戦いの末、この『悪』が『強敵(とも)』になるかもしれない。
この『悪』を打倒する事が、後々に対主催を目指す者達の未来へ繋がるかもしれない。
もう少しだけで良いのだ。
この『悪』と戦う為に身体よ、動いてくれ。
頼む、あと少しだけ――……。
支援
支援
光の無い、幽鬼を想わせる虚ろな瞳でトキが二人の殺人鬼を睨む。
「……ハッ、面白え。そうだ立ち上がれ、立ち向かってこい。俺が憎いんだろ? 俺を殺したいんだろ? 仲間を殺した俺を!」
トキの視線を正面から受けて尚、志々雄は笑みを浮かべる。
そう、自分を倒そうとするのならば限界の一つや二つを越えて貰わねば話にならない。
一瞬の驚愕は直ぐさま愉悦へと流変し、闘志を掻き立てる。
志々雄は右手に持った愛刀を構え、トキへと歩みを進めた。
「北斗神拳…………奥、義…………」
悠然と近付いてくる志々雄へとトキも奥義を以て、応対する。
二本の指を掲げ志々雄へと振り上げ、秘孔を突こうとする―――が、遅すぎる。
あの拳王すら驚愕に至らせるスピードは見る影もなく、蠅さえ止まりそうな緩慢な動作で、トキは志々雄へと右手を振るっていた。
「なんだ、そいつは?」
その一撃を半身になる事で回避した志々雄が、言葉を吐く。
嘲りと、幾らかの落胆を含んだ口調。
志々雄は満身創痍のトキへと情け容赦なく、刃を走らせた。
肩口から脇腹へと傷口が一線に刻まれ、そしてその傷口を紅色の炎が焼く。
「斬る」と「焼く」を同時に喰らうのは百戦錬磨のトキでも初めての事。
そして、その傷は余りに巨大な物。それ単独で見ても致命傷と成りうる傷だ。
ただでさえ限界を突破している身体が、更なるダメージに悲鳴を上げ、意志とは関係なく動きを始める。
膝を付き、再び仰向けに倒れてしまった。
「……終わりだな。鼬の最後っ屁にも至らねえ下らない悪あがきだったぜ」
まだ立ち上がろうとするトキの首筋に無限刃を当て行い、その命を握る志々雄。
志々雄を見上げるトキは、その胸中に諦めを描いていた。
もう動かない身体。
限界を越えて立ち上がったが、拳の一つも満足に振るうことが出来ない。
自分の物語はここで終焉だ。
結局は何も成せなかったが、あとは藤崎やビリーやメタナイトが道を引き継いでくれる筈。
元の世界でもケンシロウが道を継承してくれた。
足手まといの病人はもう舞台から下りる時なのだ。
(あとは任せたぞ……私は星となり皆を見守ろう……)
「諦める、か……つまんねぇな」
跪いたまま達観の笑顔を見せるトキを見て、志々雄は刃を振り上げる。
確信するは勝利。
ボロボロの身体で良くも頑張ったとは思うが、 所詮はこの程度。
あと数秒もすれば死ぬ。弱ければ死に、強ければ生きる世界でこの男は死ぬ。
結末は何ら変わらない。
そして、志々雄は刃を振り下ろす。
鞘との接触により発火する刃。刃は無慈悲にその身体を―――両断した。
胴体から真っ二つに切り裂かれた上半身と下半身が燃え上がる。
極悪な臭気を撒き散らし、十数年活動を続けていた身体が、灰という名の無機物に変換されていく。
「……生き、て……」
支援
シエン
「な、に……?」
―――そして、それは死体の直ぐ側で転がるトキも同じく。
混乱と衝撃に上手く機能しない頭でトキは漠然と理解する。
その言葉が―――『逢坂大河』が遺した最期の言葉が、自分に向けられたものだと、
―――トキは呆然と理解した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
目を覚ました時、周囲は暗闇に染まり掛けていた。
覚醒と同時に思い出されるは、気絶する寸前の出来事。
奇妙な二人組の元に向かおうとする自分と、それを止めようとする老人のような外見をした青年。
彼に言い寄ったその瞬間までは記憶に残されている。
だが、それから先の映像がどうしても続かない。
何で自分はこんな草藪の中で寝ているのか、少女――逢坂大河は不思議で仕方がなかった。
困惑する頭で辺りを見回すも、トキの姿は何処にもない。
そもそも自分はどれだけの時間、意識を失っていたのか。
あの二人組はどうなったのか。
トキは何処に行ってしまったのか。
さっぱり事態を把握する事が出来ないでいた。
そして、少女は困惑に包まれたその状態で行動を始めた。
漠然とした不安に潰されないよう、行く宛もなく足を動かす。
空はどんどんと暗くなっていき、周囲の見通しを悪化させていく。
夜への移り変わりと同調するかのように大きくなっていく焦燥。
迷子になった子供のように、今にも泣き出しそうな顔で大河は進んでいた。
すると、突然大河の視界の端にて何かが煌めいた。
遠方の草原にて一瞬だけ灯った奇妙な形の炎。
その不可思議な光景に疑問を思いながらも、大河はその発火現象が起きた場へと近付いていく。
―――この行動が大河の……そしてトキの明暗を、分けた。
夕刻の薄暗さも影響してか、大河にその全貌が把握できたのは百メートル程の距離を歩いたその時だった。
最初に見えたのは草原に立ち尽くす一人の男とその後方に付き添う一人の幼女。
大河の記憶にはない二人組であった。
次に見えたのは、地面に倒れる人間達。数は、一……二……三……四……五……六人いた。
この時点で大河の警戒指数はマックスに到達。
恐怖に息を飲みながら、身を隠すように姿勢を低くした。
だが、数秒して大河は何故か立ち上がってしまう。
恐怖が宿っていた筈の顔を驚愕に変えて、大河は立ち上がり、その光景を見た。
その光景―――自分を守る為に付いて来てくれた男が地に伏す、数十分前に別れた仲間達が倒れている、その光景を―――大河は見てしまった。
その場にて死に掛けている仲間達の存在に、守ると言ってくれた仲間が死の淵に立っているその事実に、大河は気付いてしまった。
支援
SIEN
支援
シエン
そして、身体が勝手に動き出していた。
考えなど、ない。
多少の武道をかじってはいるものの、そんな事実が本当の殺戮者には無意味だという事は、タケモトの手に拠って教え込まれた。
作戦もなければ、強力な武器がある訳でもない。
何かしなくては、何とかして皆を……トキを助けなくては―――ただその一念が大河を動かしていた。
全力疾走に揺れる視界の中で、満身創痍のトキが立ち上がり、そして大した抵抗も出来ずに斬り倒される。
その行動は殆ど無意味だっのかもしれない。
だが、大河の心に深く深く衝撃を与え、その足を加速させた。
膝を付くトキを目掛けて、振り上げられる刃。
大河はがむしゃらに走り、彼の生存を祈る。
―――そして、刃がトキを斬り裂こうかという刹那……大河はトキを突き飛ばした。
救済の代償は、自身の命。
コンマ三秒前までトキの身体が存在した空間に、横殴りに乱入した大河の身体が、在った。
―――衝撃。
視界が紅蓮に埋まり、身体から力が抜ける。
痛覚が許容量を突破してしまったのだろうか、遂に訪れた死の瞬間にも関わらず、痛みは少ない。
ただ、何も分からない。
トキが助かったのか、自分がどうなってしまったのか、自分は何を口にしたのか……何も分からず、大河は死亡しだ。
……結果的に大河は、心の何処かで自分は死なないと考えていたのかもしれない。
だからこそ、こんなにも無謀な行動を起こせたし、振り降ろされる刃に無謀な突貫を果たせた。
結局、その誤った思考は彼女を死へと誘う事となった。
だが、大河が一つの命を救った事もまた真実。
その結果が幸運だったのか、不運だったのか……それは大河自身にしか、判断する事はできない。
ただ一つ分かることは、バトルロワイアルの場からまた一つの命が消えたその事実のみ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
それは余りに唐突な乱入劇だった。
トドメが振り降ろされたその刹那、トキを突き飛ばす一人の少女。
トキへ意識を向けていた志々雄達は勿論、トキさえもその接近には気付けなかった。
突き飛ばされたトキは刃が疾走する軌道上から逃れ、その代わりに斬撃を受けた物は乱入者の身体。
その細い躯が斬撃に耐えられる訳がなく、物の見事に真っ二つ。そして、炎上した。
最期に言葉を遺し、そして一つの命を救済して、少女は天へと召されていった。
「な、ぜ……」
トキの思考は静止したまま、活動を停止していた。
死を受け入れかけたその瞬間に起こった惨事。
何故、自分などを助けたのか?
何故、死を宣告された自分ではなく、未来ある少女が死ななければならなかったのか?
自分などを助けて、何故―――?
急展する事態に、トキは後悔を思う事さえ出来なかった。
ただ眼前の光景を見詰め、無意味な自問を繰り返すのみ。
支援
「何だ、コイツは?」
意識を現実へと戻したのは、未だ炎に包まれる大河の死体を見下ろしながら吐かれた志々雄の呟き。
呆れを含んだ口調にトキの身体が反応していた。
燃え盛る大河に視線を置いたまま、トキの拳が握り込まれる。
「さて、邪魔が入っちまったが……これでトドメとさせてもらうぜ」
―――その時、燃え盛る大河の死体から……いや違う、その死体が背負っていたデイバックから、謎の物体が転がり出た。
それは、CDのような形状をした物体であった。
持ち主より先に燃え尽きたデイバック。
灰と化した事により本来の機能を失い、その中身すらも延焼してしまう。
だが、何の偶然か、そのDISCだけは炎の魔手から逃げ仰せた。
そして、消沈するトキの方へ、コロコロと転がっていく。
「大河……」
トキは気付かない。
知らずの内に自身が拾い上げていたその存在に―――、
眼前の炎の中から生還を果たしたその支給品の存在に―――、
トキは気付かない。
……気付かず、拳を握り込んでいた。
握り締められたDISCは、奇妙に決して割れることはなく、更に奇妙な事にトキの身体へと侵入していた。
まるで泥沼に沈み込むかのように、トキの身体へ挿入されていくDISC。
その存在に気付く者は誰もいない。
後方にて行き先を見守るてゐも、終劇を齎す為に刃を振り上げる志々雄も、トキ自身さえも―――DISCの存在には気付けない。
―――そして、DISCが完全にトキの中へ埋没した。
―――ジョインジョイントキィ―――
―――同時にトキの脳内に鳴り響いたのは謎の効果音。
―――本人以外の誰もが知らぬ内に世紀末を示す音が演奏された。
―――世紀末は、この瞬間に訪れた。
―――激流の末に、世紀末は訪れたのだ。
支援
しえん
「なに……?」
閃きの速度で振り下ろされた無限刃は、地面を傷付けるに終わった。
確かにそこに居た筈の死に掛けの男に命中する事もなく、無機質な地面を抉っていた。
「う、後ろ!」
鼓膜を叩く声に首を回すと、未だ傷という傷から血を流している男が立っていた。
いつのまに……、と不審を浮かべつつ志々雄は振り返る。
首元を狙った一撃は、確実に奴の命を奪った筈だった。
だが、何の奇術を使用したのか、この男は必殺の刃を回避し自分の後ろを取った。
白兎の声を聞くまで、後方へ回り込まれた事に全く気付けなかった。
つまり、その影を追う事すら自分には出来なかったのだ。
まさかそれ程のスピードでこの半死人が動いたとでも――?
「……何をした」
常に張り付けていた笑みは遂に陰りを見せ、トキを睨む志々雄。
彼の発汗機能が正常であれば、その頬には冷や汗が流れていただろう。
対するトキは、その言葉を聞き流し志々雄を見やる。
瞳には未だ覇気が宿っていおらず、構えを取る訳でもなく志々雄を見る。
「……てめえは、何をしたんだ……!」
志々雄は明らかな警戒を見せていた。
今まで常に愉悦と余裕を持って戦っていた志々雄が、明らかな警戒を……。
引き締まった表情で無限刃を構える志々雄に油断は見られなかった。
「……貴様に……」
そんな志々雄を前にして、トキが遂に動いた。
ポツリと言葉を落とし、僅かな感情を宿した瞳を志々雄へと向ける。
彼を知る者であれば、その瞳に映る感情を見て驚く事だろう。
「――貴様に今日を生きる資格はないッ!」
『憤怒』―――その感情が彼の瞳を染め上げていたのだから。
元来、トキが『怒り』を見せる事など殆どない。
彼が救済を努めていた村が強盗集団に襲撃され、沢山の人々が殺害されたとしても彼は怒らなかった。
彼が本気で『怒り』を覚えた唯一の時は、拳王の正体を知ったその時のみ。
それから様々な戦いを経るが、彼が『怒り』という感情を宿した事はない。
その振る舞いを見た人々は、彼を聖者とさえ呼び敬った。
支援支援
支援
だが、そんなトキが今この場では憤怒に身をたぎらせている。
主催者達が設けた精神操作の所為か、彼の内に埋まった一枚のDISCの所為か、それともそのどちらもが影響してか―――彼は真に『怒り』を見せていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そのDISCは大河に支給された最後の支給品であった。
CDの形をした、まるでジョジョの奇妙な冒険に現れるスタンドDISCのような支給品。
その説明書には大河も目を通していたが、内容を理解する事はできなかった。
だから、大河はDISCについてを誰にも告げなかった。
告げる暇がなかったという方が正しいかもしれないが、大河がその支給品について語る事はなかった。
説明書に記されていた内容は以下の通り。
『支給品名・ニコ産AI』
『このDISCは。ニコニコで産まれたMUGENキャラのAIです。
装備したキャラのAIレベルをMAXにまで引き上げる事が可能です。……が、
装備できるキャラはMUGENにてキャラが作成されている者だけなんで気を付けてね』
MUGEN、キャラAI、MAXまで引き上げる……大河にとっては意味不明な単語ばかりが載せられた説明文。
見た目はただのCDで、装備の方法すら分からない。
取り敢えず、手に持ってみたものの何ら変化が起きた様子はなし。
その時、行動を共にしていた伯方の塩にも持たせてみるも何も起きず。
およそ数分に及ぶ試行錯誤の末、大河はDISCをデイバックの奥底に沈めた。
そして、後に起こった様々な出来事と、その理解不能な内容とが影響して、その存在は忘却の彼方へと追いやられてしまった。
その支給品が今、巡り巡ってトキへと装備された。
原作性能とまではいかないが、それでもMUGEN界で世紀末っぷりを見せ付けるトキへと渡されたのだ。
そしてAIレベルがMAXとなったトキは将に―――世紀末。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ゆくぞ!」
ナギッという音と共にトキの姿が掻き消える。
否、掻き消えたかの如く加速で志々雄へと一直線に直進した。
間合いは一瞬で詰まり、トキの拳、志々雄の無限刃どちらもが届く距離へと縮まる。
「チィッ!」
自身の宿敵にさえ迫りかねない異常な速度に舌を打ちながら、志々雄が刃を横に薙ぐ。
その高速の横薙に対しトキが選択した行動は、
「――激流では勝てぬ」
白刃取り。
線と化した日本刀を両の掌で易々と受け止める。
そして放たれるは返しの裏拳。
白刃取りに使用された両腕の片一方を離し、流水の如く滑らかな動きで一撃。
まるで吸い込まれるように志々雄の顔面に当たり、その身体を吹き飛ばす。
―――ナギッ、ナギッ
地面と平行に飛ぶ志々雄を高速移動術で追尾するトキ。
宙に浮く志々雄は抵抗の術を持たない。
追い付いたトキの蹴撃が、その腹部に直撃する。
蹴り上げにより志々雄の身体が、まるで打ち上げ花火の如く空高く舞い上がった。
そして始動するは―――世紀末コンボ。
「北斗天翔百烈拳!」
技名を体現するようにトキが天へと飛翔、腕が増えたとさえ錯覚させる程の連打を志々雄へ撃ち込む。
衝撃に包まれ、地面へと墜落する志々雄であったが、まだトキのターンは終わらない。
志々雄よりも早く地面へ降り立ち、膝立ちからの小パン。
次いで、まるでリピートされているかのように同じ動作で蹴り上げ。
トキの身体が飛翔し、百の拳が炸裂した。
そして、志々雄に追撃を行うためまたもやトキが駆ける。
―――ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショウヒャクレツ―――
終わらない。
―――ナギッカクゴォナギッナギッナギッフゥハァナギッゲキリュウニゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッ―――
幾度と宙を舞い、幾度と叩き落とされ、幾度となく叫びを上げても―――そのコンボが途切れる事はない。
地面に触れさせてさえ、もらえない。
何時までも何時までも、空宙で弄ばれ続ける。
―――カクゴォハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーン―――
「北斗有情断迅拳!!」
―――ようやく地獄が終焉を迎えるかと思われたその時、最後の最後にトドメの奥義が志々雄を貫く。
最早、地面と数センチの距離にまで迫っている志々雄に有情(笑)の手刀が振り下ろされ、全身の秘孔に衝撃が走った。
「あ……あ……」
眼前でリアル世紀末を見てしまったてゐは、再び蛇に睨まれたカエルになっていた。
自分にとっては捕食者とも云える存在の志々雄が、手も足も出せずに瞬殺された。
数秒前まではただの死にかけだった人間が、突如として驚異的な復活を遂げた。
意味が分からない。
この男は何者なんなのだ。
自分達は――この男に手を出すべきではなかった。
ジョインジョインシエン
世紀末支援
支援
「……う、うわぁぁぁぁああああああ!」
恐怖に押し負けたてゐが、無防備に背中を見せ逃亡を始める。
飛行能力も駆使されたその速度は相当なもの……だが、この世紀末病人から逃げ仰せるには何もかもが足りなかった。
ナギッ、またの名を北斗無想流舞で回り込むと、トキは殺気の籠もった眼でてゐを睨む。
「ひっ!」
逃亡が不可能だという事に気付かされたてゐは、反射的に右手を差し出していた。
そして、指先から撃ち出される何十に及ぶ魔力弾。
ほんの数メートルの距離から放たれる弾幕。壁のように迫るそれに対してトキが構えを取った。
「―――激流に身を任せる」
両手が描くは真円。
たったそれだけの動作で眼前に迫る暴力の波は無効化され、代わりとして蒼色の球体が返された。
球体は弾幕という名の激流を意にも介さず直進し、てゐに急迫する。
「なっ!?」
自身が放つ弾幕を物ともしない謎の反撃に、てゐは驚く事しかできない。
一瞬の間の後に命中……その体勢を大きく崩した。
「闘剄呼法!」
命中と同時に放たれた追撃の衝撃波が、怯んだてゐを宙に吹き飛ばす。
そして、そのままコンボを繋げ、地に伏せる志々雄の所へと運送した。
―――が、そこで何故かトキの動きが止まる。
トキは苦しげに胸を抑えその場にうずくまってしまった。
苦悶の表情と共に口から吐き出されるは鮮血。
この土壇場……トドメの瞬間に至って、彼の全てを奪った病魔が再び暴れ出したのだ。
―――『怒り』とは北斗神拳の真髄……そしてトキはかつて伝承者に一番近いと称された男。
『怒り』を解放したトキはあの拳王すら凌駕する可能性さえ、ある。
だが、病に冒された『怒り』はトキの身を著しく蝕んでしまう。
拳王との初戦に於いても、『怒り』により病魔が進行し、一度の交錯のみで限界を向かえ敗北。
そして、トキはカサンドラへ幽閉されてしまったのだ。
その時と同様の現象が、今この瞬間にも発生していた。
今まででさえ『怒り』と『ニコ産AI』の二つの要素より、何とか身体を動かしていた状況。
此処にきて一転、トキは命の窮地へと追い込まれる事となった。
「シャアアアアアアアアア!!!」
加えて状況はまだ悪化する。
あれだけの攻撃を受けた志々雄が立ち上がり、刃を振り被ったのだ。
偶然により訪れた最後の勝機を、男は瀕死の身体であろうと見逃さなかった。
限界を超える身体を無理矢理に走らせ、トキへと急接近する。
支援
支援
「ガァァァぁぁぁぁああああああ!!」
志々雄の左手では、トキにより運送されたてゐが首根っこを掴まれていた。
おそらく気絶しているのだろう、てゐはピクリとも抵抗する様子がない。
そんなてゐを志々雄は利用する。
この弱肉強食の世界を生き抜く為に、自身の最強を証明する為に―――志々雄はてゐを投擲した。
視界がてゐの身体により覆われ、トキは志々雄の姿を見失ってしまう。
病により動かない身体、加えて敵を見失った現状……この最大の好機を前に志々雄が吼えた。
全身に襲うダメージを精神で抑え込み、疾走する。
(所詮この世は弱肉強食……強ければ生き弱ければ死ぬ)
志々雄が身を置いた場は、てゐの真後ろ。
奴の背後へと回り込めば、あの化け物はおそらく察知する。
自身の命を省みず、敵の排除を優先する筈。相討ちすら視野に入れて行動する筈だ。
ならば、この娘を盾に近付き、娘ごと奴を斬り裂く。
奴の攻撃が徒手空拳である以上、盾を貫通して攻撃を喰らわす事は不可能。
「生きるべき者は――」
この勝負、勝つのは――
「―――この俺だ!!!」
てゐの身体を刃が貫き、その先にいるトキへと襲い掛かる。
切っ先の直線上にはトキの頭部。
それは、刃が命中すれば確実に命を墜とすだろう部位。
迫る刃を前にトキは――
―――時は2006年……ある格ゲー大会の決勝にて理不尽な決着がついた。
ルールは2ラウンド先取。
1ラウンドを勝ち取ったのは、終始攻め続けた『タジ君』。
2ラウンドを勝ち取っのは、結果としてこの大会の覇者となる男『紅の豚』であった。
『紅の豚』の持ちキャラは、その当時圧倒的な性能で誰もが最強と認めていた曰く厨キャラ。
そんなキャラを用いて決勝に勝ち抜いてきた『紅の豚』を、応援する者は極少数だった。
会場の大半が『タジ君』に声援を送り、厨キャラを破っての優勝を望んでいた。
その勝負、優勢だったのは『タジ君』……客席が望んだその瞬間が確かに近付いているように思えた。
いや、誰もがそう確信していた。
コンボを失敗するも必殺奥義を命中させ、体力ゲージから見てもしても『タジ君』が有利な状況。
壁際に追い詰めた『紅の豚』へとブーストで接近する『タジ君』。
ここでコンボに成功すれば優勝、テーレッテーを決める事も可能。
だが――
しえん
支援支援支援
SIEn
セッカッコーハアアアキィーン
――この世紀末ゲーは……いや、この世紀末病人は―――最後の最後で全てをぶち壊した。
カウンターで当てられたブッパッコー、もといセッカッコーが『タジ君』を反対側の壁へと吹き飛ばす。
『タジ君』が壁に激突した時、『紅の豚』は既にコマンドを入力し終えていた。
テーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーン
―――会場中が溜め息に包まれた瞬間だった。
歓喜するは『紅の豚』とその取り巻きのみ。
会場の殆どの人間が拍手すら送らず、悲しみと虚無感に静まり返っていた。
圧倒的劣勢を覆す余りにも無情な様式美……このコンボは後々にMUGEN界にも知れ渡る事となる。
その名も『紅の豚さんありがとう』――この世紀末ゲー愛好家を震い上がらせた凶悪コンボは、MUGEN界に於いても様々なキャラを葬ってきた。
そしてそれは、このバトルロワイアルでも例外ではなく―――
「――刹活孔!」
その技名が聞こえたと同時に、盾として差し出されていた筈のてゐが、物凄い圧力と共に吹き飛んだ。
逆に押し返され、自分へと迫るてゐを志々雄は身を捩り、避わす。
「チィッ!」
が、その身体を貫いていた無限刃の軌跡には僅かなズレが招じてしまい、無限刃はトキの頬を削り取るに終わった。
てゐの身体が、まるで氷上を滑るスケート選手のように後方へと飛んでいく。
その光景を背中で見送りながら、志々雄は空振りの刃を引き戻し、再び掲げた。
(まだ抵抗するとはな……なら、これで終わりにしてやるよ)
下方から掬い上げるように、刃を地へと擦り付ける。
鍔元から切っ先まで、無限刃の鋸状の刀身全てを地面に当て、その全発火能力を開放。
「終の秘剣・火産霊神(カグツチ)!!」
刃を隠す程の巨大な火炎が渦を巻き、無限刃を覆う。
その熱量は今までのものとは比べ物にならず、まさに業火と云うに相応しい。
志々雄が持つ、最強にして最後の奥義が発動された。
だがしかし、
しえーん
(なに―――)
志々雄が勝利を確信する事はそれでも、ない。
逆に志々雄は、血煙の先に現れた不可思議な景色へ、意識を取られていた。
(あいつは、何を―――)
何の原理か宙に浮かび胡座をかくトキ。
トキは、驚愕の志々雄と迫る火炎を前にして、両手を降参を表すかのように掲げる。
勿論、それが意図するところは降参などではない。
その不可解な体勢から放たれるは読んで字の如く一撃必殺の―――
「―――北斗有情破顔拳!!」
―――テレッテー♪
「ハァーン!!」
―――紅の豚さんありがとう!!
外道支援
身体を包む衝撃……だがその衝撃の中に痛みは含まれておらず、むしろ志々雄は快感すら覚えていた。
薄れ歪んでいく意識で、志々雄は最後の光景を知覚する。
それは、夕刻だというのに燦々と空に輝く一組の星座。
そして、もう一つ……七つ連なるその星座に寄り添うように光る星。
志々雄はその光を最後まで見詰めながら、後方に吹き飛ばされたてゐと同時に―――爆散した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そして、立つ者が誰もいなくなった草原……トキは爆散した二つの死体を眺め、血を吐いた。
「……まだだ……まだ……」
それでもトキは力尽きようとはしない。
てゐの不意打ちと志々雄の斬撃により限界へ追い込まれていた身体は、『ニコ産AI』と『怒り』の効果により限界を越えた動きを行い、もうボロボロだった。
だがそれでも、トキは手足を引きずり身体を動かす。
一つでも多くの命を、一人でも多くの人々を助ける為に、トキは動く。
「頼む……生きて、くれ……」
視線の先にいるのは、地を鮮血で染める二人の人間。
今のトキには、二人が生きているのか死んでいるのかすら、判断する事すらできない。
……事実だけを言えば、二人の心肺は既に停止しているのだが……それを知らずにトキは最後の瞬間を燃やし続ける。
そして、二人の元に辿り着いたトキがその身体に触れた。
「……ダメ、か……」
直接触れる事により、その事実はようやくトキにも伝わった。
温もりはまだあるものの、拍動は感じられない。
二人は―――死んでいる。
「……い……や……まだ……諦め……」
その事実を認識して尚、トキは北斗の拳を振るった。おそらくはこれが最後になる拳を……。
もはや漆黒に染まる視界の中でも、トキの二指は正確に秘孔を貫いた。
何度も、何度も、何度も何度も、何度も……その効果が回数に比例しないと知っておりながらも、トキは二人の秘孔に刺激を送り続ける。
「……頼、む……生き返ってくれ……頼……む……」
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も……トキは、秘孔を突き続ける。
「……命は、投げ捨てるものでは……ないのだ……こんな殺し合いなどで…………投げ捨てられるもの……で、は…………」
まるで祈るように、それ以外の動作を忘れてしまったかのように、秘孔を突く。
「……命は……投げすてるもの――「うるせえんだよ、人殺し野郎がぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」
―――そして、トキの頭部へと、唐突にスケボーが振り降ろされた。
頭部がグシャッと凹み、血を噴き出す。
だが、それで開放される事はあらず……先程のトキのように何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、振り降ろされるスケボー。
スケボー自体が衝撃に耐えられず、徐々に崩壊へと進んでいく。
そして、スケボーのデッキ部が割れ、武器として役目が果たせなくなったその時に至り、ようやく動きは止まった。
「ちっ、クソが」
半分に割れたスケボーを手に、トキを殺害せし者―――KAITOは周囲を見回し、唾を吐き捨てた。
KAITOが意識を取り戻した時には、全てが終わっていた。
血を流して横たわる五つの死体に、倒れ伏すアレックス。
動いている者は一人……アレックスと口論の最中、突然襲撃してきた男のみ。
その惨状をボヤけた意識で眺め、KAITOは決め付けた。
この惨劇を起こしたのはあの男だと、やはり殺し合いに乗っているから自分を襲撃したのだと……大した思考も行わず、歪んだ答えを押し付けた。
仮面ライダーに変身していたお陰か、身体に大したダメージは残っていなかった。
KAITOは側に転がっていたスケボーを拾い上げ、何かを呟きながら死体を弄ぶ男へと近付く。
そして、迷う事なく振り降ろした。
何度も、何度も、何度も、スケボーを振り下ろし、最後の瞬間まで仲間を想い続けていたトキを―――殺害した。
「アレックスは……もう良いか。所詮、俺の正義も理解できない筋肉バカだ。
この男にも負けたようだし、連れて行っても足手まといにしかならないだろ」
今まで助けて貰っていた自分を棚に上げ、言うだけ言ったKAITOは歩き出す。
惨場の中に仲間だった男を放置して、自分が成した罪に気付こうともせずに―――KAITOは五角形の織り成す惨劇から抜け出した。
【D-4 草原/1日目・夕方】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、精神的疲労(中)、高揚感、
[装備]:ベレッタM96(残弾数10/11)@現実、ブレイバックル@仮面ライダー剣
[道具]:支給品一式×3、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタルギアソリッド、
必須アモト酸@必須アモト酸、2025円が入った財布(ニコニコ印)@???、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実、
Rホウ統(使用済)、ブレイバックルの説明書、医療品一式(簡易な物のみ)、はてなようせいがプリントされた毛布
[思考・状況]
1:クラッシャー殺したぞ、俺は強くなったんだっ!
2:強くなった俺が間違ってるはずはない、死ぬはずもない!
3:知り合いが殺されたんだから例え人殺しをしても仕方ないだろ。仇討ちの一種だ。
4:生きるためなら例え卑怯な事をしても仕方がないだろ。正当防衛の一種だ。
5:リン、レンが心配。特に洗脳されているリンが心配。
※高揚しているので気づいてませんが、ブレイバックルにより自身の崩壊のイメージが植えつけられました。
再び臆病になると強くイメージが脳内に現れるようになります。
※クラッシャーのデイバッグを拾いました。
「ウッ……」
「グッ……」
KAITOが地平の彼方へと歩き去った数分後、死が蔓延する場に、声がなった。
この場に残された唯一の生者は、その疲労の深さも影響してか、沈黙のまま気絶している。
この声はアレックスのものではない。だが、他の六人は既に死体と化している。
二人は斬り裂かれ、二人は叩き潰され、二人は爆散して、死んでいる。
アレックスを除けば、声を出せる者など誰も居ない。
その筈なのに―――僅かではあるが、声が響いたのだ。
―――少し、考えてみよう。
この場にある死体の殆どは相当に損傷している。
大河は胴体を真っ二つに裂かれ、加えて無限刃の発火能力により炎上、炭化。
志々雄とてゐは北斗有情破顔拳の効果により顔面と上半身が爆散。
トキは執拗な殴打により、その判別が付かない程に顔面を潰されている。
この四つの死体は、物理的にすら声を上げる事は不可能だろう。
ならば―――答えは自ずと見えてくる。
そう、トキは二人の蘇生に成功したのだ。
幻の北斗神拳継承者の技巧が、死を前にしたガムシャラな気持ちが―――奇跡を起こしたのだ。
彼は最後に二人の仲間を死から救う事が出来た。
血塗られた、悲哀と闘争に支配された彼の人生は『救済』によって締めくくられた――
【海原雄山@美味しんぼ 死亡】
【逢坂大河@とらドラ! 死亡】
【因幡てゐ@東方project 死亡】
【志々雄真実@るろうに剣心 死亡】
【トキ@北斗の拳 死亡】
KAITO氏ね支援
支援
支援
【D-4 草原/1日目・夕方】
【紅 美鈴@東方project】
[状態]頭部にダメージ(大)、右脚に銃痕、フランドールへの絶対的な忠誠、気絶中
[装備]無し
[道具]支給品一式
[[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:日没までに映画館へ戻りフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
4:十六夜咲夜を警戒
5:知り合いの情報集め
6:殺し合いに反対する者を集める
7:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい
8:脱出方法を確立する
[備考]
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。
【相楽左之助@るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚〜】
[状態]:肩から脇腹にかけて斬り傷と重度の火傷、左脚に銃痕、気絶中
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:三人と共に行動。
3:志々雄を警戒
4:二重の極みが打てない……だと……?
5:主催者相手に『喧嘩』する。
6:弱い奴は放って置けねぇ。
7:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
8:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ
【マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 】
[思考・状況]
0:なんという……
1:サノスケに同行する。
2:可能な限りの参加者を救助したい
3:志々雄真実を警戒
4:相棒……無事ですよね?
[備考]
※マッハキャリバーの不調もサノスケの不調も制限によるものです。
※佐之助はマッハキャリバーを結構使いこなせていますが”完全”には使いこなせていません。
※佐之助の機動力はかなり強化されています。
※E-5の橋を通過した者のおおよその行き先を知りました。
※支給品についてマッハキャリバーから説明を受けましたが、若干事実とは異なっています。
※PDA(長)(携帯電話)を落としました。
※マッハキャリバーが意思を持っていることは誰にも気付かれていません。
※志々雄と自分の時間軸が違うことに気付いていません。
支援
支援
【アレックス@MUGEN】
[状態]:重度の疲労、全身に打撲(少し回復)、左腕に刺し傷(少し回復)、困惑、気絶中
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、九条ネギ@現実、伯方の塩(瓶)@現実、魔王(芋焼酎)@現実、福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話
[思考・状況]
1:カ……、カイト…………。
2:自身についてを再認識。
3:リンに出会ったら…………。
4:バルバトスが死んだことに安堵
5:殺し合いを止める為、仲間を集める。知人や、首輪が解除できそうな人物を優先。
6:あのピエロに出あったらどうしよう……
7:温泉にはいつか行きたい……
※F-3のデパート内に、床に大きく穴が空き、壁が一部粉々になっている部屋が一つあります。
※トキ、DIO、十六夜咲夜をMUGEN出展の彼等と誤解しています。
また、MUGEN内の扱われ方からDIOと咲夜が親子だと思っています。
※名簿が最初白紙だったのには、何か理由があると考えています。
※弱音ハクの支給品を拾いました。
※D-4の草原にトキ、大河、志々雄、てゐの死体が転がっています。
またその側に、ニコ産AI@MUGEN、日本刀@現実、無限刃@るろうに剣心、
トキのデイバック(支給品一式×2、エリアジャンプスプリクト機能(二日目午前まで使用不可)@ニコニコ動画、不明支給品0〜1)、
志々雄真実のデイバック(支給品一式、医療品一式、禁止エリア解除装置@オリジナル、スタポカード刺しクリップ@ Ragnarok Online、リボン@FFシリーズ )、
てゐのデイバック(支給品一式)が放置されてます。
※トキの死体等から二百メートルほど離れた場所に雄山の死体と雄山のデイバック(支給品一式、桑の実×10@現実、至高のコッペパン×10@ニコニコRPG
ニコニコ列車のダイヤ表、佐賀⇔ソウル間のチケット@塚☆モール、A-10のマニュアル(英語)@現実?(おじいちゃんのエースコンバット6))が放置されてます。
※大河のデイバックは死体と共に燃えてしまいました。
支援
支援
支援
代理投下終了。支援どうも
さて感想
CCOがいい悪役しててカッコよかった
カイトは頭冷めて真実知ったら死にたくなるだろうな
代理投下乙ー
結局最期の言葉が命は投げ捨てるものになってしまうとは皮肉な…
言い忘れてた。
>>58は前編になってるけど、それは間違いで本当は後編に含まれます
代理投下乙
ここに来て5人も死ぬとは、これがロワなんだな…
知らない間に仲間が全滅しているスネークが放送を聞いたら驚くだろうな
代理乙です。
>>182間違いすら認めないだろ。多分事実を否定し続ける。
>>186 確かに最終的には俺は悪くないって開き直りそうだけど、それに至るまでは物凄く落ち込みそう
今までも事あるごとにうじうじ悩んできてたから
投下&代理投下乙です
大河は足手まといのまま死ぬと思っていたが、最後トキ覚醒につながるとは
そしてCCOはなんとかサラマンダー脱出したな
代理投下乙。と、VX氏乙。
死亡者の人数は予想外でした。今後の展開もかなり変わってくるかもしれない。
どの人物も自分の思い通りにならない事象に立ち向かえなかった結果だろうか。
得をした人物は一人もいないとも思えるなあ
立ち向かえなかった×
立ち向かった○
おいおい、東方キャラが死んでるじゃないか
どういうことだよ
贔屓されてたんじゃなかったの?
投下乙!
いやー死んだ死んだ。
カオスかつ熱い展開、これこそニコロワってな感じの大作!しかも誤解フラグのびっくり市と来たもんだ。
CCOの暗躍とトキの世紀末振りが印象に残ったなwwてゐは結局一人も殺せずか。
CCOのキルスコアが一般人二人ってのも彼の信念を表してるようで何とも。
鎮火して尚交戦中の二人の今後も気になるな。特に仲間二人を同時に失って誤解だけが残ったスネーク。
遺体の位置までハブられたボッチカワイソス。遺体5+気絶3で誰も動かないって凄いな。
にしても二人が蘇生できて良かったな。トキも少しは救われる。
感想が長くなったけれど、大作投下乙でした。あとKAITO氏ね。
代理投下乙です
うわ、多く死んだな。よくこの難しいパートを書ききったな
絡まった糸が縺れに縺れた結果の果てがこれか。まだ続くだろうけど
CCO、悪党の貫禄と狡猾さがよく出てたぞ。周りの奴らが道化だぞ
てゐは首輪のせいで追い詰められてたが相手が悪かったな
大河、確かにお前は無力な存在だったかもしれない。でもよくやった
中国と鳥頭は今回はいいことが無かったが生きててよかった。しかし目を覚ましたら混乱するだろうな
アレクは運も悪いがヒーローであろうとして厄病神に運を吸い取られた感じがするなw
そしてトキよ………お前はよくやった。最後までその命を燃やしたか
しかしスネークはどうなるんだろう? 誤解フラグが立ってしまったぞ?
え? ヘタレですか? これはもう暴れるだけ暴れた見苦しく死ぬんじゃないの?
事実を知っても否定し続けて孤立するだろうな
代理投下とVX氏乙
みんなこれからどうなるんだ
特にカイト
作者と代理投下乙
こんなにもカッコいい『紅の豚さんありがとう』が見られるのはニコロワβだけ!
ところで、MUGENディスクが使えるのってどれだけいるだろうか
そうだ、代理投下の人も乙!
ここまでウザいとKAITOは1stのような神(笑)に……
無理か
咲夜さんの時といいて兎詐欺といいスネークはホントに騙されてばっかりだなwww
こういうタイプのキャラは普通騙されにくいのに。
CCOvsトキィは熱かった。氏は本当にバトルが上手すぎる。
激戦の巻き添えに近い形でちにゃ!された素兎に吹いたwww
タッグでのスマイルビームはホントに20割がザラだから困る。
そしてKAITOはもう戻れないな・・・・
さらに現時点の生存者のメンツをみるかぎりKAITOはどう転んでも不幸のどん底だと思う。
トキの遺体は撲殺されていたし木槌を使ってたてゐは死んでるしマハキャリが全部見てるから
気絶してても犯人がわかる
命の恩人を殺したヘタレにお灸据えに行くだろうな
それともメタナイトの支援が先か?
近くにあの人とかこの人もいるしヘタレ詰んだ?
MUGENは修造とかKAITOとか言葉までいるしなw
呂布は…ワールドヒーローズのとかいるからアリなんだろうか
MUGEN登場キャラ一覧
KAITO、ドナルド・マクドナルド、チルノ、射命丸文、十六夜咲夜、紅美鈴、
フランドール・スカーレット、呂布、アレックス、ブロリー、べジータ、
アポロ、メタナイト、ソリッド・スネーク、桂言葉、(ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙、コイキング)
<開発中>
鏡音リン
なるほど、システムディレクション全開アレクフラグか。
>>202 でもこの中で、AIMAXになったところで活躍できるのが何人いるか・・。あくまでMUGEN準拠で、だけどな。
呂布とか普通に強いけど、MUGENではAIMAXになったところでたいしたことないだろ。そこら辺どうなるの?
ウメハラインストールですね、分かります
アポロ
氷精様タケモトバクラ
-------------------------------------
禁止エリア
-------------------------------------
【図書館】
中国キワミアレク ヘタレ(移動中)
メタナイトvsスネーク
呂布
【病院】(神とDIO) リン
E-5の橋 咲夜さん
……メッチャ詰んでるぞ、ヘタレはどこ行っても地獄。
KAITOがなんかウザさ一周して可愛く見えてきた俺の頭はきっと世紀末。トキに入っていたディスクはどうなったんだろうか?
しかし、この惨劇、元はと言えばKAITOとクラッシャーの因縁からだけどな
最初に殺されたはっぱ隊は、ある意味幸せだったのかもな
片割れのクラッシャーは死んだとはいえ、kAITOは暴走しているからなぁ
落ち着いても変身の代償で錯乱しちゃうだろうし……
KAITOにばかり目がいってるが、地味に気絶三人組かなり不味くないか?
下手すりゃ気絶したまま呂布に襲撃されるぞ。DIOもそろそろ動き出すし。
……メタナイトスネーク早く来てー!
KAITOが呂布や咲夜さんと真正面から戦って勝てる気がしないな。
咲夜さんなんか、是非戦うべき相手ともうすぐ会えそうだし。
それでも神なら……、神ならなんとかしてくれる
……、原作だと南斗乱れる時に北斗現れるだけど、逆もあるものだと信じるほかない
>>210 そもそもそんな奴らと正面から戦うカイトが想像出来ないなw
びびって逃げるだろ
>>210 仮面ライダーの防御力があれば、ナイフを武器とする咲夜さんと位なら戦えるんじゃね?
……とか思ったけどスタプラがあったわ
>>212 咲夜さんは見た目はメイドだしカイトは雰囲気でびびっても虚勢張って喧嘩売るだろう
下手すると呂布でも喧嘩売るだろうなw
素晴らしい!
素晴らしいよ!!
陰謀と誤解による対主催同士の潰し合い。これぞロワだ。いや長く待ったかいがあった!
個人的に今回一番の戦犯は、危険人物放り出してヒーロー殴り飛ばしたキワミだと思うんだぜ
「ア ッ ー ー ー ー ー!」と言って吹き飛ぶアレクには笑ったけどなww
確かにキワミにも責任あるよな。あと騙されまくりなスネーク。軍人しっかりしろww
KAITOのおかげで盛り上がっていた気持ちが冷めました
お前ら贔屓の東方キャラが死んだってのに、誰も文句を言わないのは何故?
誰も文句を言わないならいいじゃないか
>>218みたいなのがいる中、無難かつ大胆に死者を出してくれてよかったわ、ほんと。
あんだけ贔屓してたくせに、いざ死んだら何もなしってのはどうよ
真っ昼間から○ロワ行ったりこっち来たり大変ですね
>>223 それはないだろ
最多出場でここまで誰も死んでなかった時点で充分贔屓なんだから
問題は、何故急に掌を返したのかってことだ
>>199 考えてみると本編からして騙されてんだよな
思いつくだけで最低3回
それもこれまでのストーリをひっくり返す大どんでん返しで
>>224 @偶然
A殺すうまい機会が無かった
Bそれがバトロワと言うものだ
後は毒吐きでも行っとくれ
スネークとメタナイトは互いに互いの事しらないのか、まあ「スマブラ」出展ではないしな
KAITOは・・・この周りのメンツだと終わる匂いがぷんぷんしてならないなw
しつけえな
このキャラは○○と出会わせてから散らせる予定とか考える書き手もいることぐらい想像付くだろ
まあ全員生存ルートからいきなり路線変更したとかアホな発想しか出来ない奴ははろくにプロットとか考えた事無いだろうけどさ
そもそもてゐは普通に死亡フラグ立ちまくりだったじゃん
登場回数を重ねるごとに取り返しのつかなくなっていくKAITOがだんだん楽しくなってきた
こいつ一体どこまで堕ちるんだろうかw
いや、お前らもう少しスルースキルをだね……
>>227 スマブラ出展だったらメタの扱いはトキと変わらなくなるぞ
狂った技が何個かある上に復帰力も最高クラス、おまけに逃げに回れるバグ技まである
なんせ、ネット対戦でメタを見かけたら落ちる奴もいるくらいだしなぁ
まぁ、スネークも三強に入るくらいには強いんだけど、北斗みたく、トキとレイくらい差がある
救いだったのはタイマンゲーじゃなかったところだろうなぁ
……残る一人のファルコは次回でるのかなぁ
そうめんネタで一気に知名度は広がったけど、原作ファンとしてはなんとも言えない
いや、なんで贔屓否定するのかわかんないけど
贔屓は間違いなくあったよね?
それがいいか悪いかは別としても
なんか可哀想になってきた
スマブラはアイテムやステージの要件が加味されるから強さネタはなんとも言えん
ハハッ()
>>232 スマブラXから出展するなら そうめん ホッピングおじさん ぐらいじゃないか?
まぁ どちらも知ってる人は知ってる位だからなぁ…
そういやコレで放送いけるよな。
大体何日くらいから予約開始になる予定?
>>238 土曜か日曜あたりがベストかと。
いくら夏季休暇といってもそうでない人は多いからな
とりあえず仮投下されてる放送を代理投下してからだな。
あの放送って問題無かったよな?
相当前に投下されてるけど、指摘された分は修正してあるな
今日、明日、明後日には本投下されるだろうし、予約開始は土曜くらいからか
また東方を引き合いに出して荒らそうとしてる馬鹿がいるのか
◆vXe1ViVgVI氏へ
激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・前編)が容量オーバーのためWikiに収録できません
分割する場所の指定をお願いします
必死だね。
どこかの誰かさんは。
めーりん生き返ったから東方贔屓とか言い出しそうで怖い
生き返って当然
東方は贔屓作品なんだから
てゐも生き返らせるべき
それにしても美鈴って普通の二次創作だったら不憫な扱い受ける事が多いけど
今回東方出展のキャラの中では一番目立ってるんじゃないか?
開始直後からメタさんと組んでて安定してるからそう見えるだけなのかもしれんが
>>248 上手い具合に目立ってないともいえる
目立ちすぎやスーパー空気は死ぬ率高い
IEのスレッドおすすめに東方のアンチスレらしいのが載ってるから
そこから変なのが流れてきてるみたい。
無視が一番かと。
俺の嫁の行く末が気になるぜ
頑張って華麗に散ってくれ
>>249 悪目立ちしててもインパクトが変に強いと一周して生存率が高くなるんだよな。
どこぞの金ぴかとか良い例だと思う。
スーパー空気も逆に空気過ぎるとかえって殺しにくくなる。
これも某デジアドキャラという良い例が(ry……
……殺すチャンスが舞い込んてきたら待ってましたとばかりに殺されたけどね。
ところでこれで放送に行ける?
放送いける。
いけると思う。放送投下していい?
禁止エリアは結局E-6、B-1にした
んー、禁止エリアが連なるのが気になりますが……まあいいんじゃないでしょうか
自分も大丈夫と思います。
投下楽しみにしてますー
投下します
「────運営長」
左上の澄んだ声が部屋に響いた。その顔は氷のように白く、何の感情の起伏も感じさせないくらいに平坦な印象を見る者に抱かせる。
運営長の老いた両眼は能面のような左上の顔を薄く見据える。特に左上に用事があるわけではない。
運営長は右上を何度か叱ったが、左上に関してはノータッチだった。左上は命令した事を愚鈍なまでに忠実に実行する、ある意味で究極の部下。
奇想天外にして突飛にして非凡な発想力と遊び心を持つところが魅力の右上とは違い、放置していても何の問題のない部下だ。
その左上が、自分の意思で運営長が籠る部屋へとやってきた。
「……ふむ。どうした? 何かアクシデントでも起きたのか?」
「アクシデント……。そうですね。アクシデントと言えばアクシデントでしょう。
私は、ロワ運営に関して明らかに不安要素となるアクシデントについて、
何の対応もとらない運営長殿に対して疑問を覚え、一言物申しにやってまいりました」
左上の冷徹な瞳が運営長を正面から見つめる。いかに運営長とはいえ、右上とは違い、この女の瞳からは何の機微も捕える事は出来ない。
愚鈍なまでに職務を忠実に遂行し続ける事で漸く培った瞳なのだろう。
「ブロリー、です」
運営長が今最も警戒している参加者の名前を、左上は淀みなく言い放つ。
「彼の首に巻かれたリミッターが日中、完全に消滅した事をご存じのはずです。私と右上は、職務通り貴方にこの事を報告いたしました」
「うむ……それに関しては確かに承知しておる」
運営長が苦々しげに言う。それを見て、左上は怪訝そうに目を細めた。
「承知しているのなら、どうして何の対策もとらないのですか?
今は弱っていますが、もし今後、首のリミッターと同じく額、腰のリミッターが消滅してしまえば手がつけられなくなります。
言うまでもなく、現在のブロリーはバトルロワイアル遂行への最大の不安要素です。
そうやって静観しているのは、ブロリーの本来の戦闘力をご存じないからですか?」
愚鈍なまでに生真面目、そしてバトルロワイアル遂行という職務に忠実な女だ。運営長は改めてそう思った。
右上とは違い、自分が正しいと思った事に関しては当然のように意見してくる。
怒らせると首をはねられかねない運営長を相手にしても、それは同じである。
「ブロリーについては……保留という形で、しばらく様子を見る事にしておる」
「保留? 保留している間にもしブロリーが本来の力を取り戻したら、いったいどうなさるおつもりですか?
我々が持ちうる全戦力を総動員しても、全参加者達の力を結集させたとしても、本来のブロリーを前にしては、一瞬にして宇宙のチリです」
「しかしな…………」
渋る運営長を見て、しばらく沈黙する左上。
しかし、いつまで経っても口を開かない運営長に、左上は業を煮やし今まで以上に冷徹な雰囲気を纏って、口を開く。
「一刻も早く、我々の手でブロリーを殺害すべきです。奴はバトルロワイアル遂行について、害以外の何者でもない。
危険を無視して生かしておくメリットなどどこにもない。違いますか?」
「覚えていないのか?制限と首輪は直結している。お前の言うとおり、奴を殺すためにわしがここで奴の首輪を爆破させたとしよう。
しかしそれで殺せるとは限らない。制限が一つ外れている奴なら、万が一にも、生き残るかもしれない。
もしそうなれば最悪だ。奴を殺せないまま、制限と言う鎖を消滅させる事になる……」
運営長は左上に向かって捲し立てた。左上は相変わらずの無表情で沈黙している。
「今の段階ではこのまま静観を貫き、サンレッドやベジータ達対主催どもにブロリー討伐を任せるのが最も賢い方法だ。
ブロリーの首輪を爆破する事は常に危険が付きまとって来る……」
一旦言葉を切り、運営長は厳格な態度で続きを話す。
「それに、ブロリーを我々の手で殺害するのはあまりにも味気ない。良いか?わしは殺し合いを望んでおるのだ……。
血みどろで嘆きと苦痛が絶えない阿鼻叫喚の地獄絵図。ブロリーはわしが望むバトルロワイアルを実現させるための優秀な駒でもある。
今の段階では、リスクを犯してまで首輪を爆破する事は出来ん。これからの経過をしばらく見守るべきだ」
一息に言いきる運営長。右上が恐れた運営長の狂気だったが、左上はそんな狂気を相手にしても意見を曲げはしない。
左上は口を荒くして、運営長に反論する。
「運営長、お言葉ですが貴方は殺し合いに酔っています。右上に毒されています!
現状が理解出来ませんか?ブロリーという不安要素を殺害するのは今が最も好機なのです。
奴は先ほどのサンレッド、ベジータ達との戦い、さらにPAD長との戦いで大きく消耗している。
今、首輪を爆破せずして、いつ爆破すると言うのですか?後になって悔やむつもりなのですか?
さらに言うとサンレッドやベジータはもう放っておいても死亡しそうなくらいに限界です。
他の対主催達に関しても、彼らのほとんどが危険人物、ないしは足手まといを抱えている。連中にブロリーを殺せるわけがない!
参加者にブロリー討伐を任せるのはあまりに安易な発想です!貴方はブロリーという重圧から逃げている!」
左上は運営長の考えが理解出来なかった。何よりも最優先されるのはバトルロワイアルを完遂させる事だ。
参加者達の絶望、苦痛、争い、裏切り、その他全ての参加者間のいざこざを優先するような事は決してあってはならない。
微塵たりともあってはならない。バトルロワイアルを終了させる事が唯一にして最大の任務。
例え参加者達に嘗められるような事があっても、危険と言う理由だけで一参加者の首輪を爆破しても、左上にとっては何の恥にもならない。
左上にとって、バトルロワイアルを予定通り終了させる事が出来ればそれでいいのである。他の全ての物事などは、はっきり言って何の価値もない。
「左上……!お前はバトルロワイアルの『質』について考えた事があるか?
上手くバトルロワイアルを終了させられたとしても、その内容がお粗末ならば何の価値もない!
参加者達の正当なる殺し合いに我々が手を出す事は、第三者による手前勝手な介入は、バトルロワイアルの品質を大きく下げる!
ましてやブロリーの首輪は」
「もういいです!」
運営長の言葉を切り、左上は割って入る。
「いいでしょう……運営長。ならば私が、私がブロリーを殺して参りましょう」
意外な言葉に、運営長は思わず沈黙した。
「ブロリーの首輪を爆破する事をなるべく回避したいという運営長の考えは重々理解しました。
しかし、私自らがブロリー討伐に向かうのであれば何の異論もないはずです」
「────馬鹿野郎!!!」
突然部屋の扉が開き、右上が現れた。怒りの形相で左上を睨みつけている。
のしのしと左上に向かって大股で歩き、左上の胸倉を思い切り掴んだ。
「突然現れて、どこを触っているんですか?私は一応女ですよ?」
「糞真面目なロボットにもオスメスの区別があるとはな。今初めて知ったよ」
仕方なしに右上は左上を睨みつけながら突き飛ばす。
「右上。突然現れて、何の用だいったい」
右上は思い出したかのように運営長に顔を向け、そしていつものように人をからかうかのような、へらへらとしただらしない表情を見せた。
「運営長。俺はずっと部屋の扉に耳を付けて、こいつと運営長との話を盗み聞きしていたわけなんですが……
こいつの糞真面目な態度と考えに、今まで溜まりに溜まっていた鬱憤がとうとう爆発してしまったようなんですよ」
「…………」
運営長は沈黙している。
「私は今までに一度たりとも貴方にとって不都合な行動や思考をとった覚えはありませんわ」
「それ、ギャグで言ってるのかい? いいかい左上サンよ。今までに何度も何度も繰り返した俺の有り難い忠告だが、
あんたの耳にはまだタコすら出来ずに愚かな行動を繰り返しているようだからもう一度言ってやる。
いつものように糞真面目に直立して、俺の話を一言一句残さず聞き取りやがれ」
支援……要るかな?
「いいか?あんたの考えはつまらない。誰も得しない愚かな考え、生き方、性格、人間性、ユーモアの欠片もない愚鈍さ……
お前という人間は完全に誰得だ。お前の言うとおりバトルロワイアルを運営していけば、
誰も得しない、誰もがつまらないと言うようなバトルロワイアルが出来上がるだろうぜ」
怒りのまま言葉を紡ぐ。そのおかげか、かなり辛辣な内容である。しかし左上は右上の理不尽な中傷にも眉一つ動かさない。
そして、厳かに右上に反論する。
「相変わらず、貴方の頭の中は必要のないもので充ち溢れ、飽和し、腐っているようですね。
何よりも優先されるのは【バトルロワイアルの完結】。それは異論ないはずです。
貴方の考えはバトルロワイアルを上手く運営する上で、障害にしかなりえない」
「それは異論ないはずです、だって? やっぱり根本的に考えが違うようだねぇ、左上サンよ。根っこから勘違いしているようだから言ってやる。
何よりも優先されるのは【極限状態における参加者達の行動】だ。それを阻害するような事をしてどうする。アホなのか?
バトルロワイアル運営に何か障害が起こればその障害を俺達だけで粉微塵になって働き、解決すればいい。
参加者達がロワに障害をもたらしてくるなら正面から相手をしてやればいい。いいか?運営に拘って質を低下させるな」
右上の言葉に、運営長は首を傾げた。
「右上、貴様、さっきはブロリーが驚異なら首輪を破壊すればいいと言ってはいなかったか?」
この言葉に右上は凍りつく。確かにへらへらしながら言ってしまった。
「…………むむむ」
「何がむむむだ!」
あの時は運営長が恐ろしくて、とてもじゃないが本心を言えなかっただけである。
今は、左上が運営長に向かって偉そうに意見していたので、右上も本心を言っても平気だろうと踏んだのである。
勿論、左上への怒りもあった。どうしても本心を左上にぶつけたくなったのだ。
「まあ、いいだろう。お前の気持ちもよく理解出来る。【質の低下】はわしもなるべく回避したい」
右上はその言葉を聞き、ほっと一安心する。
「よく分かりませんね……質とやらが低下するからと言ってブロリーという不安要素を無視するのですか?
何よりも重要なのはバトルロワイアルを円滑に終わらせる事です。ブロリーは始末しなければならない。
首輪を爆破するとバトルロワイアル未完遂の可能性が少なからず出てくるのであれば、私が始末してきましょう」
「何も分かってないねぇ。運営長も先ほど仰ったはずだ。第三者の介入は絶対にあり得ないのさ。
考えてみろ。バトルロワイアルって奴は参加者どもが極限状態の中、縦横無尽に右往左往するところが面白いんだ。
そこに俺達が手を出したら全て台無しだろうが。本質を見極めろ」
平行線な議論に嫌気がさしたのか、どうしても自分の考えを理解しようとしない右上への怒りが募って来たのか、
左上の眉がとうとうぴくりと動いた。
「その口ぶりからして、貴方はバトルロワイアル運営におけるあらゆる不安要素を全て無視するつもりのようですね。
例え首輪が外されようとしても、例え参加者の内誰かが会場から脱出しようとしても、貴方はその全てを静観するのですか?
快楽に取りつかれたギャンブル狂のような考え……私には理解出来ません」
左上が言う問いに、素直に答えるべきかどうか、右上は一瞬だけ躊躇した。
だが、先ほど思うがままに本心を述べていた左上を思い出し、本心をそのまま述べてやろうと決意した。
左上はいけ好かない女だが、相手が誰であろうと自分の考えをはっきり述べる、ある種の意志の強さは、素直に尊敬できる。
それを見習って、俺も本心をありのままに伝えてやろう。
「上等ってやつだよ。首輪を外せるものなら外せばいい。脱出出来るものならすればいい。その上で俺達は相手になる。
首輪を外して捨て身の反撃を仕掛けてきた対主催が今後現れるようなら、全身全霊の力を持って連中と戦い、勝利してメシウマしてやんよ。
それでこそ、バトルロワイアルは最高に盛り上がるはずだ。まあ、そんな事……ここにいる生真面目な運営長殿が許してはくれんだろうがね」
「……狂気の沙汰です。貴方は快楽に取りつかれている」
「狂気の沙汰ほど面白い……って言葉を聞いたことあるだろ?あまりにも馬鹿馬鹿し過ぎて覚えていないか?
まあ、効率主義の狂信者であるあんたの目を通すと、アカギなんざ理解不能な愚か者でしかあり得ないんだろうな」
左上は沈黙して、それから大きく溜息を吐いた。右上とは完全に馬が合わない。これほどまでにいけ好かない男は初めてである。
そして、そのいけ好かない右上は、組織のトップである運営長までその悪しき思想で染め上げようとしているのだ。
左上はもう一度溜息を吐き、ぽつぽつと話し始める。
「貴方が、貴方の本心を正直に述べるのであれば……私もこの際、言いたい事を言ってしまいましょうか……」
「ははは。どうせ下らん事を言うのは目に見えてるぜ」
嘲笑する右上を、左上は半ば本気になって睨みつける。
「……私は何としてもバトルロワイアルを完結させたい。首輪を外される事なんて絶対にあってはならない……。
脱出なんてありえない……ありとあらゆる綻びをなくし、最後の一人が決まるまで、何のアクシデントも絶対にあってはならないんです。
バトルロワイアルを確実に終了させるために、ブロリーは勿論のこと、首輪解除フラグを持つ者全員の首輪を爆破してやりたい!
まあ、そんな事……ここにいる快楽主義の運営長殿が許してはくれないでしょうが……」
左上は運営長の目をじっと見つめた。狂ってやがる、と右上は呟き、心の底から呆れた。
「運営長!お願いです!ブロリーの殺害をこの私に命じて下さい!
確実に殺害し、バトルロワイアル運営における憂いを完全に断ち切って見せましょう!」
「黙れ左上!そもそもお前なんかがブロリーに勝てんのか!?」
右上は怒り、叫んだ。右上の問を無視出来なかったのか、左上はちらりと横目で見て、返答する。
「確実に殺せます。おそらく、戦闘にすらなりはしないでしょう。今のブロリーは弱っている。
参加者ならともかく、ゲームマスターの一人である私ならば、奴に気づかれずに暗殺する手段など腐るほどあります」
淀みなく言い切った左上に、右上は呆れの混じった、怪訝そうな表情を返した。
「お前のような論理しか信じない女には殺せるわけないぜ?奴を殺すには熱さと信念が必要だ!」
「この期に及んで訳の分からない事を言わないで下さい」
左上は右上を嘲笑したが、右上は意に帰していない。そして、右上は左上に向かってではなく、運営長に向けて、口を開く。
ここまで来たなら言ってしまえ、右上は決意を胸に秘め、ブロリー打倒への秘策について話す。
「運営長!この生真面目な女の言う事を一々鵜呑みにすれば、バトルロワイアルはまさに誰得と言われる内容になってしまいます」
「黙りなさい!ブロリーを放置する事は、決してあってはならない!」
左上が罵るのを、右上は手をかざして遮る。
「そう!ブロリーを放置する事は確かに危険だ。そこでだ、俺はちょいと面白い策を思いついてる。
ブロリーを殺せて、バトルロワイアルの質も恐らく向上するであろう、素晴らしい策です。なぁに、簡単な事です」
右上は運営長ににやりと笑みを見せつける。今まで右上と左上の口論にじっと耳を傾けてきた運営長は、興味深げに話の続きを促す。
「現在ブロリーがいるエリア、そして奴が今死にかけていると言う事実を次の放送で言ってやればいい……!」
右上は勝負あったな、と勝ち誇った顔を左上に見せつける。
「放送でこれらの事を言えば、ブロリーに恨みを持つ者はこぞって奴のいるエリアに討伐へ向かうでしょう。
一番行きそうなのは、まあ、死にかけだが、ベジータサンレッドゆとり組。ブロリーをこの際殺してしまいたい連中は他にも沢山いる。
これでバトルロワイアルの一つの醍醐味である、魂のぶつかり合い、所謂戦闘って奴が発生し、大いに楽しめるし、
さすがのブロリーも放送を聞いてわんさかやって来る参加者どもが相手ならば死ぬしかないでしょうよ」
運営長は右上の提案を聞き、微妙な表情を示している。左上に至っては呆れを通り越して絶望、といった表情だ。
しえん
「反論させて頂きます」
「またか……」
当然のように口を出す左上に、右上はさすがに嫌気がさした。
「まず、その策の問題点は、ブロリーが確実に死亡すると言いきれない所にあります。
貴方の無駄なものが詰め込まれた脳内では、ブロリー打倒のために沢山の参加者が動くと思っているようですが、
実際はほとんどいないでしょう。さっきも運営長に言ったのですが、対主催のほとんどは危険人物、もしくは足手纏いと行動を共にしている。
ブロリーにまで手が回るはずがない」
「それでも、何らかの戦いは起こるはずだ。ベジータ達がブロリーをこのまま放置しておくとは思えないね」
「ブロリーを殺せるかどうかは分からない。貴方の大好きな戦闘はおそらく起きるでしょうけれど……。
さらに言うと、そんな放送を流すと頭の良い参加者にロワ運営に何かあったのではないかと、気づかれてしまうかもしれません。
そうなれば、また新たな不安要素が生まれてしまいます」
右上は苦々しそうな表情をしている。
「考えすぎだ。それにな、少しくらい不安要素があった方が対主催どもに希望が生まれて後々面白いんだよ。
先に希望を与えておいてから叩き落した方が奴らは絶望するだろ?面白いだろ?」
「ありえない……」
呆れている左上を無視して、右上は運営長へと向き直る。そして、声高らかに言い放つ。
「丁度次の放送は俺の番だ!運営長、ブロリーの情報を参加者達に伝える事を許して下さい!」
それを見て右上に負けまいと、左上も急いで運営長に向かって口を開く。
「ブロリーは確実に殺害しなければなりません!首輪を爆破出来ないのであれば、運営長!どうか私にブロリー殺害の許可を!」
互いが互いを牽制しながら、必死になって運営長に懇願する。
右上か左上か、本能か理性か。三人の中で唯一本能と理性を併せ持つ運営長が選ぶのは……はたしてどっち!?
▼ ▼ ▼
時は来た。放送が始まる。右上はマイクに向かっていつものようにだらしない声を出す。
「やあ、お前ら久しぶりだな。久しぶりっつってもたかが半日ぶりなんだが……
どうだい?バトルロワイアルって奴に参加していると時間の流れが極端に遅く感じたりするんじゃないか?
まあ、俺の方としてはこの12時間は驚くほどあっという間に過ぎていったな。お前らが次々死んでいく様は素晴らしい娯楽だ。
面白くて面白くて……な。時間も忘れるの当然って奴だ。おっと、今のは挑発じゃないぜ?単純に感想を述べただけだ」
右上は楽しそうに、まるで歌でも口ずさむように喋る。
「この6時間は色々あったな。魂が震えるかのような熱い死もあり、心の底から鬱になるような悲しい死もあり、
あっけない死から華々しい死……バトルロワイアルってのは色んな死の形を見れるから面白いよな?
見ている俺でもこれだけ楽しいんだから、参加しているお前らは楽しくて楽しくて仕方がないんじゃないか?
おっと、念のために断っておくが、今のは純粋に挑発としてとらえてくれて構わないぜ?」
右上は楽しそうにからからと笑った。
「さぁて、それじゃあ死亡者発表といこうか」
ブロントさん
古手羽入
日下部みさお
松岡修造
コンバット越前
ビリー・へリントン
キーボードクラッシャー
海原雄山
逢坂大河
因幡てゐ
志々雄真実
トキ
支援
支援
おいおいおいおい、とうとう残り人数が半数切ったぜ?残り32人だ。すげえな、お前らやる気満々だなw
盛り上がってるようで嬉しい限りだよ、ほんとに。続いて新たな禁止エリア発表といこうか。
言うぜ?20時からE-6、22時からB-1だ。オーケィ?」
「さぁて、この禁止エリアで困る奴はいるかな?いてくれたら嬉しいんだがな!
さあ、長話しててもだれるだけだからそろそろ後半戦開始と行こうか!
それじゃあまた6時間後な! 次は左上が短い放送するんでよろしくー」
▼ ▼ ▼
「右上さん……運営長の言いつけ通りに放送しましたね。少し意外です。
命令を無視して、先ほどの提案通りにブロリーを殺せと罵るかと思っていました」
「俺はあんたと違って空気を読めるの!ま、俺も命令守ったんだからあんたも守れよ?
俺の意見同様、あんたの意見もあのジジイに却下されたんだからな?」
「勿論です。私は空気を読みませんが命令は忠実に守ります」
それからも右上は暇なので左上に何度も話しかけ、その度に彼女を馬鹿にした。
左上はいつものように右上に視線すら向けず、柳のように右上の言葉をかわし続けた。
右上は飽きたのか、沈黙する。その沈黙を破り、左上がぽつりと言った。
「ブロリーは絶対に我々の手で迅速に殺すべき……どうして運営長は……」
「……未練が残ってんのか? まあ、気にすんなって。俺の提案だって断られたんだから。
一旦忘れて、これからは仲良く協力して働けば、きっと運営長だっていつかは俺達の提案を聞いてくれるさ」
結局、運営長が選んだのは【保留】という選択。
右上も左上も、ブロリー対策として彼らなりに今出来得る最良の行動を考え、そして提示して来たのだが、運営長はばっさりと二つとも却下した。
二人が考えるブロリー対策は、一言で言うとどちらも極端すぎる。
極端すぎるがゆえに効果は見込めるかもしれないが、その分失敗した時のリスクも高い。
ブロリーは弱っている。これは事実。放っておいても、参加者の誰かがブロリーを殺害してくれるかもしれない。
そんな希望がまだ残っている。ブロリーが死ぬ希望が残っている間は、あまり派手に動くべきではない。
否、動きたくない。
本能と理性、二つの相反する性質をそれぞれ一つずつ持つ右上、左上という二人の部下。
どちらも異なる意味で優秀な部下だ。右上は想像力と自主性に富み、左上は忠実さと正確さに長けている。
彼らが互いに互いを尊重する事を覚え、協力しあう事が出来れば我々はきっと最強の組織になる……
本能と理性を併せ持つ運営長が選んだ選択は【保留】
この選択が正しいのか、それとも右上の提案が正しいのか、左上の提案が正しかったのか……。
誰の選択が正しいのか、間違っているのか、今はまだ分からない。
「それにしても、死亡者の出るペースが落ちませんね。色々と不安要素がある中、ペースが落ちないのは正直助かります」
「すげえ殺伐としてきたもんな。血で血を洗うって感じで俺的にすげえ好みだね」
「無差別マーダーの数が少ない事が気にかかりますが……ね」
「まあ、気にすんなって!今は無駄な事をしてる奴もその内殺し合いをせざるを得ないってのがバトロワだよ。俺が保障してやんよ」
左上は右上をじとりと見る。右上は楽しそうに笑っている。
「何を指して無駄と言っているのか……。無駄無駄言いたいだけでしょう? DIO様じゃないんですから……常識的に考えて」
正反対な思想と性格を持つ割に、よく喋る二人である。
ブロリーの処遇について運営長、右上、左上がそれぞれ考える中、殺戮ゲームの後半戦が始まる。
はたして参加者達の運命はどのような方向へと向かうのだろうか。
※ブロリー対策はとりあえず保留
投下終了です。支援してくれた方、有難う
乙でしたー
左上もいい性格してるなw
乙でしたー
これで、次の段階に…
投下乙です
右上も左上もそれぞれの信念を曝した感じだな
そしてこの放送聞いて動揺したり方針変えたりする人が多そうだ
これで予約が来るかな?
投下乙ですー
左上と右上の考え方は、まんま読み手や書き手のパロロワの楽しみ方に当てはまる気がするw
この放送で呼ばれた死者達は色んな参加者に影響与えるだろうなー
投下乙!
左上も右上も言いたい事溜まってたんだあ
しかし運営長、アカギいるのに【保留】を選ぶのは敗北フラグ臭いぞ、単騎待ちに魔法を掛けられてしまうw
この運営長にはヘタレ臭を感じる。
奇遇だな俺も感じた。
ちょいと質問なんだけど、予約開始は土曜からなのか?
五角形パートが投下されるまでかなりの時間が空いてた訳だし、別に明日の0:00からでも良いような気もするんだが。
どうしても週末が良いって書き手氏がいるのなら全く話は別だけど、明日で大丈夫って人ばかりなら、そっちの方が良いと思うんだけど
運営長はバランスタイプなだけにいまいち影が薄い…
>>276 俺は週末がいいなあ
同じく週末派。
>>276 どうしてもってわけじゃないができれば週末がありがたい
>>277、
>>278、
>>279 そうですよね……すみません、我が儘な意見を言っちゃって。
じゃあ予約開始は金曜の24:00(土曜の00:00)て感じかな?
少なくとも二人の書き手氏は予約してくれる様だし、楽しみだw
ミスった……二人の書き手氏×、三人の書き手氏○
また予約合戦になるだろうなぁ…希望キャラ取れるか不安だ
あのサンレッド達の大激戦がなかったらトキ達もこういう形で死ぬことはなかったのかなぁ
面白いな
そう考えると、五角形はサンレッド達の戦闘で生まれたものなんだな
志々雄もてゐも大河も、間接的にブロリーに殺されたようなもんだ
もう駄目だ…ブロリーには誰も勝てない…もう終わりだ…
あきらめんなよ、あきらめんなおまえ!
とりあえず、自分はブロリーを倒せる可能性をひとつ導いてるぜ
言ったらおしまいだから言わないけどな!
対主催の中で想定し得る最高火力って何だろうな?
やっぱり本気ベジータだろうか。
個人的にはサンレッドがディムロス持ったらいい線いくと思う。
・スーパーベジータのファイナルフラッシュ
・ファイヤーバードフォームレッドさんの豪火球
・ギャラクシア+メタナイトのマッハトルネイド
火力的にはここら辺が三強かな
ところで五角形パートは崩れたがこれから書くのに難しそうな場所ってどこ?
そういえば大きな危険を何故か回避しているキャラって誰だろうか…
ときちくは大きな危険にはあってないな。後はバクラとか賀斉とか。…三国志の二人は殺し合いに貢献して、二人とも格好良いというのにお前と来たら…
まぁ行く道によっては対主催三人が倒れてる場所へ行く可能性もある訳だし…しかもトキが死んだし、何か影響があるのかな…
まぁ今からが本番ってとこかな、地味・危険回避キャラは
危険回避つったらチルノとか?
バカ補正かもしれんが、危ない橋を全部避けてる。
いや、チルノが居ないと惨劇が起こるのか?
バカなお陰で強者から見逃してもらってる感じかもしれん。
メタナイトはCCOが死んだことでやっとまともな剣が手に入りそうで何よりだな
まずスネークの誤解を解く事から始めなきゃならんが
なんとなく思ったが大河を助けた塩やトキが死んだりミキから庇った修造やルガールが死んだりしてるし
非力な萌えキャラは対主催にとって死神みたいな存在なのだろうか
でもパワーアップや快進撃のきっかけになったりする時もあるぞ。
前回の妹ちゃんがいい例だな。始めは死神そのものだったが、彼女がいなければキバ君はあそこまで強くならなかっただろう。
そんな中盤の終わりも近づくなか、いまだに生きている参加者に全く自分の名を知られていない男がただ一人
ふとログ見てて
>ときちくは、自分が暗殺者で無くゲームプレイヤーだ、とはっきり知覚してしまった場合、
>ただのゲームの上手い青年になってしまう気がするんだが、そこんとこはどうなるんだろうか。
>「あれ、僕リアルで人殺したことなくね?」→「うわああああああ」みたいな。
のレスみて思ったけど、ときちくは「囲炉裏死んだ」ってので心も折れそうな希ガス
記憶を戻すきっかけというかタイミングがネックか
実況勢の中では期待してるんだけどな…
いまんと篭城してるけど、禁止エリアになったら絶対戦う羽目になるからな
そういえばまだ前スレ埋まってないね
>>296 今のときちくがよくわからん
アルタイルな記憶依存してるのか、ゲームしてる時の記憶しか無いのか
しかも実況なら集団でいるしタケモトのが死なない気が
>>298 姿は見られてるけどときちくもだ、ゆきちくは篭城してるから暫く名前バレないな
一応名簿はあるからその場にいる奴ら名前はわかる
そういや支給品のデスノートは使える?
出さないほうがいいな。
出して荒れなかったのは大学ロワだけだし。
このロワに出てるのもレプリカだしな。
メモ帳としては使えるんじゃね?
>>301 デスノートの知識がある奴に対してならハッタリとして機能するんじゃね
>>301 ネタ潰しになるから言えないけど、色々と面白い使い方があると思うよ
運営長はそのうち一人用ポッドで脱出しようとしたところを見つかって粛清されるような気配がする。
>>304 ブロリーを対主催に引き込めば面白そうなんだけどなw
あずさットがいればry
運営長「これも運営の運命か…!」バキバキメメタァ
>>304 おまいのせいで俺の脳内での運営長の姿がパラガスになっちまったじゃねーかw
>>299 タケモト組、文組が映画館に行く(戻る)
それに加えて現在滞りなく映画館に向かっているのがアポロと赤木とフラン
死ぬとまでは言わんが何も起こらないわけがない
タケモト、バクラ、H、文、グラハム、キョン子、ユベル、アポロ、アカギ、フラン
9人+1か
これは映画館で何かが起こるな
かなりいいペースで死んでるから脱出フラグ持ちそうな奴以外はどんどん死んでくれw
その方が面白いw
文 【映画館】
【塔】キョン子
グラハム
アポロ
タケモトバクラチルノ 【橋】(アカギ)
-----------------------------┐
禁止エリア │ 【デパート】(フラン)
※川は省略
魔の五角形との相違点は二つ。
参加者によって映画館との距離が違う(フランのみ極端に遠い)という点。
アポロ、タケモト、バクラ、チルノは既に遭遇直前という点。
いったいどうなるんだ……
フランは日が沈むまでデパートの外に出られないから参加できるかは微妙
アカギと鉢合わせしたらどうなるか楽しみではあるが
前スレ埋めるか?
フランは飛べるけど飛ばない可能性もあるからわからん
前スレは放置でもいいけどな。どちらでもいいと思う
距離的に1時間以内に全員映画館に辿り着くだろうしなあ
遅れる奴は間違いなく出るが
>>313 フランはさすがに遠すぎると思うぞ……
F-3な上に映画館とデパートを結ぶ線路もないし。
>>314 道のり的には4kmもないぞ。それに一心不乱に映画館を目指すから
どんなに遅くても一時間くらいで着くはず
今のフランが一心不乱は難しくね。
体力は回復してるけど、体は未だボロボロだし。
動けるまで回復しただけ上出来というべきかも知れんが。
支給品といえばラウズアブソーバー@仮面ライダー剣はないの?
あれジャックフォームとキングフォームになるために必要なんだが。
まあニコニコに無いネタになっちまうからもう期待はしてないが・・・・・・
いやライダーロワじゃできなかった強化形態を実現できたらいいなと思っただけなんだ。
318 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/24(金) 06:19:04 ID:I7AihRco
魔道アーマーで移動できないの?
放置してるだけで壊れてないじゃん
この間のディケイドにも出てたしな
しかし、キングはいろいろチートすぎて手に負えない
重力・時間・磁力と物理の根源を全部自在に操れる上、不死生物をもとにして作った半不死生物を滅却しうる攻撃力をもっているからな
ディケイドがでるまで、最強のライダー候補はクウガかカブトかブレイドだったし
……ああ、剣崎並に融合係数高い奴がいないから、単純な強化形態にすればいいのか
いやここはディゲイドライバーをですね
カメンライドカブトォ!
アタックライドクロックアップ!
時間制限はあるけど体感時間じゃないから一気にチート化しそうだ
>>316 どうかなあ
もうすぐ右腕も完全に繋がるっぽいし他の損傷も治ってきてるみたいだからさして問題なくね?
回復速度が遅いんだか速いんだかいまいちわからんけど
今日の24時から予約か
wktk
だよなー。
1ヶ月の間が空いての予約合戦だから尚更、楽しみで仕方ないw
どれだけ予約が来るかな
>>322 制限で遅くはなってるハズだけど、トマト食ったお陰で回復速くなってるんだろうよ。
トマト食ってなかったらベッドの上でまだ死にかけてるだろうなw
ヘタレの次の遭遇者でヘタレの運命が決まるな
候補はリン、呂布、咲夜さん、メタナイトとスネークかな
>>327 案外病院までたどり着いたりしてな。
剣崎が持ってた「あれ」をKAITOが所持しているわけだから、
一時とはいえ剣崎と行動をともにしたDIOと賀斉の反応が楽しみでならない。
予約合戦とか言ってて、一つ二つしか来なかったら悲惨だよね
0だったりしたら尚更
それもまた一興。
ところがどっこい……
333 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/24(金) 23:24:54 ID:nAEonYPF
さすがに期待外れは勘弁な
いやあ、予約楽しみだなあ
予約が凄いことになっとるwww
ぱねぇwww
予約ぱねぇw
お、リンとカイト邂逅か?
しかも気絶組とブロリーが混ざってる罠
そして映画組が9人とも予約か
どうでもいいが、映画組って聞くとなんか楽しそうに思えてくる
リン、左之助、美鈴、アレックス、KAITO、ブロリー
これは・・・誰が死んでもおかしくないなw
絶対死人出るだろこれ。すげぇ
>>339 わかるw
修学旅行で京都の映画村行く組のようだ……
アレクにはmugen勢最後の一人として頑張ってもらいたい所だが・・・
ブロリーとカイトの遭遇が楽しみで仕方がないぜw
>>340 左之助、美鈴、ブロリーと、既に三人死に掛けてるからなw
メンツ的に映画館も修羅場となる予感。
そして、密かに遭遇する時止めコンビに、誤解だらけのメタナイトスネーク、更に教祖様か……ヤバい臭いしかしないw
>>343 なんじゃこりゃあああ!!
二問しかわかんねえw
もう半数だから文も態度変えるかもな
キョン子も文に恐怖抱いてるしユエルもいるからどう転ぶか
タケモトとバクラも癖があるしアカギとフランが再開したら再戦だろうな
三国志勢が空気だw
>>343 7問正解でついに不合格かー…無念。
しかしだんだん難しくなってるなw
次はとんでもないことになりそうだw
まだ分からんが位置的に見てKAITOとブロリーがタイマン張る事になりそうだなw
熱血ゆとり組しか残ってない件について
その熱血ゆとり組も予約され、
残ってるキャラ全員があっという間に予約されたという
何…だと……?
しかし三国志キャラが三人同時で予約されるとは
一人肉の芽持ちが居て不安ですが
>>319のチート能力手に入れるKAITO想像たら、なんか前回のHALが頭をよぎった
行くとこまで行ってヘタレラスボス化とか…ねえなw
仮投下の作品、読みにくいな
でも停滞するよりマシだから本投下して欲しい
まあとりあえず修正もしくは破棄を待つしかないな
あのままで本投下されたらほぼ確実に空気悪くなる
出来に関して具体的にどうこう言うつもりは無いが
新人だから不安だったが…あれはひどいな
あのまま投下したら間違い無く荒れる
地の分とスネークの心理描写が微妙な感じにまじってて微妙に読みにくいな。
少なくともメタ視点はいれるべきだな。
あのままだとメタの最後があっさりしすぎてるのもあるし。
まぁ、スマブラX三強の2人の戦闘っていうワードが頭にあったぶん
少し期待しすぎてたってのもあるが…
スマブラでの強さとか抜きにしても
どっちも個性強くて人気高いキャラだからなぁ
というか本気でアレが何の批判も無く通ると思って書いたんだろうか
だとしたらちょっと擁護のしようが無いな
話題の新作を見てきたら想像通り過ぎて吹いたw リア消乙www
ところで「NON」ってフランス語なの知ってたかいボンジュール?
はいはい煽り乙
気づかれてないみたいなので一応。
避難所の方に仮投下しました
感想は本スレ投下の時に書くけど問題ないです
まさかあのケツドラムBの話の……いやまさかな……そこまで厚顔無恥じゃないか
……、予約合戦に乗り遅れて今来たら、予約できるキャラがいない俺をだれか慰めてくれorz
今日は不幸続きなんだorz
自分を
慰めるが良い
大きな問題がないようでしたので投下します。
太陽は山へと姿を隠し、辺りは段々と暗闇に包まれていく。
そしてあの大きな戦いがあった戦場も、少しずつ熱が冷めていった。
戦士達は各々の場所へと退き、休息を取る。
黒雲が散り、月が空へと上がるとき放送は始まった。
『やあ、お前ら久しぶりだな』
「放送なの!」
特徴的な語尾を持ち、声を上げたのはアイドルの星井美希。
戦闘には参加しなかったが、男二人をその身一つで屋敷まで運んだ。
彼女もまた、戦士であるといえよう…常に熱血を保ち続けた男の意志を継ぐ者としての。
『魂が震えるかのような熱い死もあり――』
「しゅーぞーさんなの…」
美希は、ぼそりと呟いた。
彼ほど熱い人はいなかった。
時には暑苦しいと思える場面もあったが、それでも悪い人には思えなかった。
美希の心に残っている修造への思い。
熱く、それでいて真っ直ぐな。
恋慕とも親愛とも違うこの気持ちは―――憧憬。
美希の中で彼は、ヒーローだったのだ。いや、ヒーローであり続けるのだ。
故に、悲しさも大きかった。
『日下部みさお "松岡修造" コンバット越前』
その名を聞いた美希の目から、涙が溢れる。
死んだことは薄々分かっていたが、それでも涙は出てきてしまう。
主催者が如何にも楽しそうに名前を呼んでいるということへの怒りもある。
しかし、それでも悲しみや悔しさの方が大きかった。
「うぁああっ……ううぅ…えぐっ…あぁあ…っ」
美希は、傍で寝ている二人が居ることも忘れて泣き続ける。
放送は既に、耳に入らなくなっていた。
しかし、そんな美希を現実へと引き戻す者がいた。
「ご主人様…ご主人様」
「…なんなのっ…もうボールに戻ってもいいの…」
慟哭する美希に声を掛けたのは、彼女の支給品であるおにぽん。
現在は萌えもんパッチにより人の形を取っている。
「…ご主人様、落ち着いてください」
「う、うるさいのっ…ミキは悲しいから泣くの…おにぽんは――」
「現実から目を背けないで!!」
急な怒声に美希の動きが止まる。
「私だって、姿は見えなくてもボールの中から聞いてました。
確かに仲間が死ぬのは悔しい…私だって、ここに来る前なんども経験しましたから…
でもね、生きてる仲間はいるんですよ…どんなにつらくても、涙は見せられない」
「………っ」
「この場所でも、同じ。確かに修造さんは死んでしまった。
でもあなたには、生きている仲間がいる。傷ついて、HPが1しか残ってない仲間が」
そうでしょう、と、微笑みながらおにぽんは言った。
美希も、それにつられて小さく笑みを浮かべる。
「…ミキが挫けたときに、しゅーぞーさんは言ったの。
『あきらめんな』『熱くなれ』って。美希、忘れてたみたいなの」
その小さかった笑みは、満面の笑みに変わる。
完全に復活した、アイドルの星井美希の笑顔だった。
「熱くなるの。諦めないの。
ミキは、修造さんの言葉を忘れないの。
修造さんはあのブロリーを倒した、すごい人なの!ミキはそれを――」
「ちょっと、待ってください」
熱くなり、手を上げて宣言しようとする美希を、おにぽんが制する。
その所為で美希の顔がまた暗くなるが、おにぽんは気にせず言った。
「…ブロリーは死んでなかったんです」
「え?…ど、どういうことなの」
美希は疑惑と不安の入り交じった表情をした。
おにぽんは、一呼吸置いて口を開く。
「美希さんは、何人もの仲間を失いましたね」
「そ…そうなの、ルガールさんや修造さんが死んじゃったの」
「どちらも、放送で確認しましたね?」
「…うん」
「ブロリーは、放送で呼ばれてません」
美希の動きが、再度止まる。
それもそのはず、今の今までブロリーは死んだと思っていたのだ。
修造が命と引き替えにしてまで倒したのに、死んでいなかった。
そんなこと、信じられるわけがない。信じたくない。
「…う、嘘なの。放送で言うのを忘れてるだけなの」
「いいえ…今まで放送に間違いはなかったはずでしょう?」
「でも、だって……」
「残念ですが、本当です…。
とりあえずサンレッドさん達に報告しましょう」
おにぽんは立ち上がり、寝ているサンレッドに触れようとする。
しかし、それは美希の声によって止められた。
「待つの! 二人には伝えないでほしいの」
「で、でも…放っておいて、ブロリーが襲ってきたら…」
「美希が行くの。今ならブロリーも、あんまり動けないはずなの。
ディムロスを使えば、ミキでも勝てるかもしれないの!」
「そんな無茶です…いくら弱ってても、あの化け物ですよ!?」
「ゴチャゴチャと五月蝿い奴らだ……」
「「!!」」
頓着状態の二人に、ひとつの声がかかる。
黒い髪を立てた、紺色と白の戦闘服に身を包んだ男。
ブロリーと同族であり、その種族の王子。
「ベジータさん!」
「静かにしろ。この男はまだ寝かしておいた方が良い…」
「ベジータさんだって傷だらけなの! 寝てた方が良いの」
「フン、そう言うわけにはいかないな。
俺はサイヤ人の王子、ベジータ。
女に戦わせて自分が寝ているだけでは、誇りに傷がつく!
それより…そこの女、ブロリーが生きていたというのは本当なんだな」
「…はい、主催者が間違っているとは思えませんから…」
「なら、もう一度倒してやるまでだ…!
まだあの男…修造に、借りを返せていないからな」
ベジータはそういうと、ベッドから飛び降りた。
戦闘服はあちこちが破け、その中には痛々しい傷跡がまだ残っている。
美希は耐えきれず、慌てて口を開いた。
「そ、そんな体で行ったって、意味ないの!」
「邪魔をするな…! 俺は誇り高きサイヤ人の王子、ベジータ様だ!
サイヤ人というのは生きることが最重要、あの程度の傷、2時間寝れば軽くなる…!
こうしている間にも、ブロリーは回復を続けているんだ、だから―――」
「なら分かったの、ミキも連れていくの!
もうミキは守られるだけの存在じゃないの…しゅーぞーさんは、ただの人間なのに戦ったの!
サンレッドさんみたいな大きな炎も出せないし、ベジータさんみたいに光る弾なんて出せないのに戦ったの!
ミキだって戦える、ミキだって、熱くなるの!!」
ベジータの言葉を遮るように、大声で叫ぶ。
その気迫に折れたのか、ベジータは渋々了解した。
「……勝手にしろ」
「ベジータさん…ありがとうなの」
「フン、行くならさっさと準備をしろ。俺は先に行くぞ」
ベジータはそう言い残すと、ぶっきらぼうに扉を開けて歩き出す。
美希は焦りつつも、おにぽんに声を掛けた。
「おにぽん、ミキとベジータさんが戻るまで、サンレッドさんのこと、絶対守るの!」
おにぽんは、一瞬躊躇いながらも深く頷く。
その姿をしっかりと見届けると、ミキは満面の笑顔を浮かべ、宣言した。
「ミキは、ブロリーを倒すの…力のない人達のため、
ルガールさんのため、しゅーぞーさんのため、サンレッドさんのために、戦うの!
絶対に負けない!ミキはもっともっと、熱くなるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
【F-5 寒村はずれの屋敷/一日目・夕方】
【星井美希@THE IDOLM@STER】
[状態]:ゴムゆとり、全身に擦り傷、熱血、疲労(中)
[装備]:ラフタイムスクール@THE IDOLM@STER、ディムロス@テイルズオブデスティニー
[道具]:支給品一式×4(二食分の食料と水一本消費)
[思考・状況]
1.ブロリーを追う。
2.今度はミキが二人を守る番なの。
3. 人は殺したくないの。
4.雪歩を探すの。
5.ゲームに乗らず、人を殺さずゲームを終わらせるために、首輪を外すの。
6.レッドさんの言うこともわかるの。悪い人とあったら説得できるの?
7.でぃおさんに謝ってもらうの。もし襲ってきたら……
8.ルガールさんは良い人なの。ディムロスさんは剣なの。
9.水は怖かったの。
※ゴムゴムの実@ワンピースを食べました。能力者になったことに少し気がつきました。
※サンレッドをヒーロー役の俳優だと思っています
※ルガール、ディムロスと情報交換しました。
※美希の支給品の一部はサンレッドの元にあります。
【おにぽんの思考・状況】
1 サンレッドを守る。
2 敵が来たら「さいみんじゅつ」で眠らせる。
※「新型萌えもんパッチ@ポケットモンスターで擬人化してみた」をつけています。
※擬人化のままでも技は使えるそうです。
※ボールはサンレッドのデイパックに入っています。
【サンレッド@天体戦士サンレッド】
[状態]:気絶中、脇腹に怪我(応急処置済み)、全身に重度の打撲、やや失血、 疲労(極大)、ダメージ(極大)
[装備]:DIOの上着、ファイアーバードフォーム@天体戦士サンレッド
[道具]:ねるねるね3種セット@ねるねるね、鏡@ドナルド、美希の私服
[思考・状況]
基本思考:主催者の打倒
1:(気絶中)
2:ルカ……。
3:DIOを見つけ出して殺す。
4:ゲームに乗っている参加者の排除
5:たこルカを信頼。
6:誤解されてるが・・・どうすっかな
※制限について気がつきました。
※ブロリーを殺害したと思っています。
【ベジータ@ドラゴンボールZ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身に重度の打撲、ヘタレ脱却
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、パッチンロケット@つくってワクワク
[思考・状況]
基本思考:ブロリーを倒し、元いた世界に帰る
1:修造に借りを返すため、今度こそブロリーを倒す。
2:見つけたらDIOとかいう奴も殺す!
3:もし優勝したなら、言葉に借りを返すため、伊藤誠を生き返らせる 。
4:くだらんゲームなどどうでもいいが、邪魔な奴はぶっ飛ばす 。
※参戦時期は「燃え尽きろ!!熱戦・烈戦・超激戦」でブロリーの強さに戦意喪失している頃です。
※力が大きく制限されていることに気がつきました。
※1マス以上離れた相手の気を探れません。
※ニコニコ動画の影響で、テンションの高低が激しくなるときがあります。
※スーパーサイヤ人への変身が制限されています
※修造の熱い言葉に感化され一時だけスーパーサイヤ人に変身できましたが、今後なれるかは不明です。
投下完了です。
タイトルは「いかなる恐怖にも動じずブロリーを打倒」です
投下乙です
おにぽんカッコいい!
熱血ゆとり組には期待してしまう……
投下乙!
ベジータがまともでよかった。
サンレッドは起きたら間違いなく2人を追うんでしょうね。
個人的には次の話とかで、このときのベジータの心境をかいてほしい。
まぁベジータ主観で書いたらベジータ死にそうだけど。
投下乙です
確かにベジータが崩れる可能性があったがよかったよかった
期待してしまうが他の参加者に遭遇する可能性があって怖いな
投下乙!
美希とべジータがブロリー討伐に行くのか
べジータはどうなるかと思ってたが、女一人を戦わせるのはプライトが許さないだろうからなー
そういやサイヤ人って瀕死状態から回復するとパワーアップしなかったっけ?
>>379 する。
加えてサイヤ人は戦闘民族だから地球人に比べ傷の治りが早い。
また、青年期が長いといった特徴がある。
要は人間よりトレーニングの効果が大きいと考えればOK。
俺ドラゴンボールよく知らないんだけどさ、ブロリーってそんなに強いの?
初め見た時は、「あーこいつ前回のYOKODUNAみたいなポジかな−」って思ったけど、リミッター何個も付けてあの強さ、しかもなかなか死なない。
おまけに主催からも恐れられてるってヤバすぎじゃね?原作でもあんな感じなの?
だってジャンプ&鳥山明だもん
>>381 全力を出さずに惑星を軽く消し飛ばせる程度の能力。
これで理解していただけると思う。
制限を抜けば会場ごと参加者と主催者をまとめて吹っ飛ばせる。
だいたい前回でた主催者側兵器のジアースを見境いなくした感じかな?
原作でもあんな感じだよ。劇場版だからパラレルにはなるけど。
強さ云々は変なの沸くから言わないけど、
ブロリー映画第一作目は戦闘シーンは殆どブロリーによる悟空達リンチ描写。
もしも制限がなかったら、一瞬で会場ごと吹き飛ばされる。胸に埋め込まれた爆弾?
制限がなかったらそんなんじゃ死なない。何よりドラゴンボールっていう作品出展だし。
>>384 制限無しはそれ以上の強さだと思うが…。
制限なしだとかるーく銀河系をぶっ壊せるレベルかなあ
原作者じゃなくて脚本家の話だから扱いはどうか不明だけど、
傲慢さによる油断さえなければドラゴンボール世界の誰も勝てないらしい。
さらにパワーに上限も無いらしいし。
ブロリーはジアースと被るけど参加者は前回と違って纏まるかって思えるがなw
参加者が少数でも脱出出来たら制限が飛んで会場アボーンでもいいけどなw
>>381 リミッターなし状態だと気弾一発で惑星破壊、Z戦士余裕でフルボッコ。フリーザ様あたりなら瞬殺レベル
そういやブロリーはパラガス共々謀殺されかけたうえ、それにより弱ってるところにフリーザによる惑星破壊が重なったんだっけ。
このときブロリーはまだ赤ん坊だったけど、パラガスいわく「ブロリーの潜在パワーが死の淵から己の身を守ってくれた」らしい。
つまりブロリーは惑星が壊れる程度じゃ死なない。
制御されて擬似超サイヤ人の状態で
・超ベジータの攻撃ガン無視(無防備で喰らって無傷)カカロットォォ…。
・映画冒頭で巨大銀河まるまる破壊
そこからさらに超サイヤ人化で戦闘力50倍パワーアップ。
さらに伝説の超サイヤ人(ムキムキ白目)化することで戦闘力無限になる。
ちなみに生まれた時の戦闘力1万。
ちなみに月けし飛ばした亀仙人が139〜200、月片手で消し飛ばしたピッコロが約1300、
ナッパが4,000でバーダック(悟空のオヤジ)が9800以上って言えば
どんぐらいすごいかわかると思う。
数人の脱出成功者の中にブロリーが紛れてるってのも面白そうだな
>>390 ブロリーだけじゃなく、多分ベジータも惑星の爆発程度じゃ死なない。
フリーザ様が悟空に瀕死にされ、ナメック星爆発に巻き込まれたけど、死んでなかった。
DB世界じゃ、スーパーサイヤ人レベル以上の攻撃の威力>星の爆発の威力。
最初期ベジータで惑星破壊余裕な上、それより破壊力のある4倍かめはめ波+
元気玉喰らって死ななかったからな。
正直終盤のDBの奴らはどのレベルの攻撃で死ぬのか正直わからん
結論
ドラゴンボールはインフレの象徴
インフレし過ぎて作者がついていけなくなった漫画代表格だしな。
鳥山氏も当初はピッコロ倒して終わるはずだった漫画を
よくもまああそこまで続かせたものだ
なるほど、丁寧な解説をありがとう。
・・・へたれベジータに激しく共感した。これマジでブロリー以外の全参加者が力合わせても無理じゃね?
デデーン♪ENDが現実味を帯びてきた・・。
>>398 劇中において、ブロリーは油断と慢心で手を抜いて、それで足もと救われちゃうんだよな。
しかも2度。はじめから全力でたたきつぶせば勝てるのにそれをせず敗北を喫する。
つまり、勝ち目はある。ブロリーの気分次第だがな!
熱血組VSブロリーも将にそんな感じだったしな。
慢心と油断しまくりのところに手痛い一撃喰らって致命傷という、流石ブロリーさんとしか言いようの無い負け方
ブロリー「慢心せずして何が伝説のスーパーサイヤ人だあ!」
ブロリー強いよブロリー
ニコロワ検定40人受けてるのに合格者が0ってどういうことなの・・・
ブロリーの単体での強さは作者公認でDB世界最強だという話を聞いたことがある。
ギルガメッシュみたいなもんか。でもまた慢心したとしても、ベジータ+サンレッド以上の火力って可能か?
主催がまた運営の最終兵器として、ちせでも出してこないかぎり無理じゃねww
駄目だ・・ブロリーには勝てっこない・・・デデーン♪ENDされちゃうんだあ・・。
そうだなぁ。
フラン
メタさん
ベジータ
サンレッド
DIO
教祖
咲夜さん
中国
アレックス
さのすけ
チルノ
アポロ
文
が今残ってる戦闘要因かな。少し強い一般人を除くと。
支給品の道具なりで戦闘要員なぞいくらにでも増やせるさ
まぁ現時点ではスタプラの一撃でダメージ受けるレベルだから、DIOレッドさんベジータ呂布辺りなら勝機はあるかもな
>>404 東映の公式サイトでは劇場版最強はジャネンバ、次点でヒルデガーンって発表されていたけどな。
ブロリーの強さはだいたい、デブブウから純粋ブウクラスだろ。
強さ議論禁止
DBの戦闘力議論は荒れるから止めようぜ。
もう本当にDBの戦闘力論議は
2ちゃん問わずネット上どこでも勃発するなw
正直、ブロリーが参戦することは恐かった。
バランス崩壊なんて生温いもんじゃない、DB信者が暴れるんじゃ?と思うと気が気ではなかった。
俺は間違いなく左上タイプ。
つか首輪破壊されてるんだから、他のロワならルール上爆弾爆発されててもいい気がするが、
そこは右上が微妙にルールに穴を開けたからなんだろうな…
>>406 呂布、馬岱らへんも行けるんじゃね?賀斉は…無理臭いな。即殺されるだろうし
ブロリー参戦と聞いて思わずwktkした俺は勿論右上タイプ
ブロリーだけでなくジャンプキャラが前回より多数参戦して把握しやすくなったんが嬉しいな
ブロリーはいい意味でも悪い意味でも人気キャラだからなあ
こうしてみるとニコニコはジャンプ系ネタが豊富なんだな
遊戯王ドラゴンボールるろうに剣心デスノートジョジョと多彩なこと
他の作品は絶望的なくらい知名度低いけどね
それらの作品も、正しくキャラ把握出来てない人多そうだし
>>418 熱く戦ってくれた彼のために北斗の拳も追加してやってください
元々ジャンプは知名度あるからな。ニコニコに限らず
ブロリーの見た目そのものと戦闘力に惹かれている人は多いだろう
でもブロリストはブロリーの面白さと悲しい設定にも惹かれていると思いたい…
ブロリスト人気の一翼に親父ィ…を忘れないで挙げて。\シュワット!/
俺は運営長がパラガスに見えてしょうがないんだ……
親父ィ参戦してたらどうなってたんだろうか
間違いなく中盤から終盤にズガン
親父ぃは多分ステルスマーダーになっただろうな
パラガス「ブロリーが会場を破壊し尽くす前に、なんとしても脱出せねば!」
自分だけ助かろうとする→強対主催に取り入る→バレる\シュワット!!/→
→開き直り、「やっと能天気なお前でも気づいたようだな」
or「そのようなことがあろうはずがございません!」
親父ィのセリフは意外とステルスマーダーに向いてる。
ていうか親父ィもサイヤ人だけあって並の超人より遥かに強い件。
パラガス「よく見ろ、地獄に行ってもこんなおもしろい殺戮ショーは見られんぞ、フーハハハ」
親父ィはバトロワとか好きそうだよな
「勘違いするな……」->気弾で始末
バトロワ向けの台詞が多いな……ブロリーと一緒に参加してたら面白かったろうに。
馬鹿止めろそんなこと言っていたらエピやおまけSSで大変なことになっちゃうだろ
さすがにすぐ作品は来ないか
明日の夜かな?
前スレがまだ埋まってないけど、埋める必要は無いかな?
残ったままだから少し気になった
頭が回る上に戦闘能力も結構あって性格は冷静にして冷酷、
あれ?かなりパロロワ向きのキャラじゃね?>親父ィ
今更だけど、やる夫が殺されたときスネークが怒ったのは「裸だったところに
服をもらったから」てのはあるのか?
どうだろう?
かもしれないが結びつきが弱いような
女狐に手玉に取られた怒りの方が強いような気がする
目の前で無抵抗な奴をあんな殺されかたしたら、誰でもキレると思うよ?
いや、やる夫は自業自得だと思ってるけど。
そういや何で親父ィは空飛んで逃げなかったんだろう?飛べないのか?
>>437 映画で、脱出用ポッドで逃げようとしたシーンのことか?
それなら簡単で「宇宙空間での活動ができない」からだ。
サイヤ人はチートだけど、それでもできないことだってあるんだ
まあ短時間なら可能らしいけど、生活は不可能だから他の惑星に侵略に向かう際には必ずポッドを使ってる。
俺の知る限り例外はブロリー(バリアを張る)、悟空(瞬間移動)。他にもいるかも知れない。
仮投下の作品(メタと蛇でメタ死亡話)は同じ作者が修正するようだが大丈夫かなぁ…
他にもメタと蛇で考えてる書き手っているのか?
パラガスさんは対主催をブロリーにけしかけるものの
観覧中にブロリーに発見、ビーム撃たれてデデンがオチ
>>438 だがアニメ版は悟空を除く主要サイヤ人はほぼ全員(ナッパ、ベジータ、バータッグ、
ブロリー、悟飯、ゴテンクス)宇宙空間で活動してたりするww
>>441 だよね。やっぱ活動してるよね。
サイヤ人でそれなりの職にあったんだから、普通に宇宙空間でも活動できるんじゃないの?
ぶっちゃけ鳥山らしいっちゃらしいんだがね。
>>437見て思い出したんだが、確か死者スレでは下界の様子が見れるんだよな?
つまりやる夫は咲夜さんの温泉での入浴シーンを無修正で見たんじゃないんだろうか。
なんて妬ましい・・・。
>>434 能力的にハイスペックなのにどうしても拭えない小物臭が、なんとなく運営長との共通点を感じる気がする。
やる夫だけでなくロワでは主人公補修ないから主人公の方が死にやすい
ブロリーやベジータみたいなのが逆に生き残りそうだな
それと東方連中のようなクールでドライだけどクセがあるキャラとか
しかし文は途中でマーダーに転向したら死亡フラグ立ちそう
ぶっちゃけ誰が生き残るかなんて状況次第
>>439 一応破棄になった時はすぐ書き始めるつもりでいる
>>439 予約できなかったから、知っているキャラには飛びつきますよ?
なんだかんだで人気パートだしな。
でも俺はパス。
戦闘描写苦手だし、何より今は諸事情で他事が身に入らない。
忙しいってわけじゃないんだけどね……
ベジータ達より早くブロリーの所に着きそうな奴っているかな?
強力な支給品も無いし、2人とも万全でもないし、このままじゃあもう終わりだあ…
あ、予約見て思い出した、ブロリーはアレックス達と出くわす予定なんだっけ。
アレックスたちは今気絶中なんだっけ
対主催はみんなぼろぼろだし、もうブロリーには誰も勝てないんだぁ…
ところで今更だけど最新話のSSの時間が夕方になってるんだけど、夜で合ってるよね?
まあ、ブロリーも死に掛けだけどな。
超サイヤ人になれない程に消耗してるし
>>454 夜だね……と思ったら早くも修正入ってた。
wiki職人さん乙です
アニロワの旦那みたいに、対主催8人くらいで連合組まなきゃ勝てそうにないな、ブロリー。
でも今死ぬには惜しいきがするなぁブロリー
ステルスは多いけど無差別がいないからなー
厨二と若本の働き分を受け保っていると考えれば妥当な活躍かと
なあに、世の中には
『脇腹に裂傷。麻痺毒の影響を僅かに受けています。全身数箇所に打撲』
で(軽症)と判断されるロワもあるんだ、色々大丈夫だろう。
サイヤ人故致し方なし
ブロリーが「半身をもぎ取ったくらいで俺に勝てると思うな!」とか言い出しても俺は驚かない
というかドラゴンボールにはそんな奴いっぱいいる……
原作のボスは殆ど体が吹っ飛ぶからな。
フリーザ様は下半身が切れるし、セルは上半身が消し飛ばされても大丈夫。
ブウは論外。
ニコニコでブウに人気が無くて本当に良かった。
出てたらブロリーより質が悪い。
ブウって、本当何でもありのボスだったよな
強くて空飛べて、顔変えたり分身したりも余裕で
そもそも魔法で何でも出来るみたいだし
それを力技で倒せるのは、DBくらいだなw
そういえば投票前あったけどなんだかんだ言ってだめになったんだよな。
投票やってみるか?
やるなら準備してくるが。
やらないか
個人的にはやりたいなー。
やるとしたらどんな感じでやるんだ?
部門別?それとも前回みたいな感じ?
・バトル部門(作品名で投票)
・繋ぎ部門(作品名で投票)
・セリフ部門(キャラの言ったセリフで投票)
・死者部門(キャラ名で投票)
・総合部門(作品名で投票)
これでおk?
>>458 もうブロリーが頑張らなくても着実に参加者は減っていくと思うけどね
DIOも呂布も殆どダメージ受けてないし今予約されてる映画館組も穏便に済むはずが無い
KAITOやリンがこれからどう転ぶのかも気に掛かるし
投票って範囲はあるの?
>>468 良いのでは?
ただもう少し他の人の意見を聞いた方が良いかも
夜になるからDIOも動くだろうしな
部門が多すぎるのも萎える
SS部門
キャラ部門
台詞部門
この3つでいいような気がする
あまり部門を増やさない方が、手軽に投票できていいと思う
予定スケジュール
【投票期限】??
【投票対象】1話の『グリーン・グリーンズ』から186話の『激流に身を任せた結果がコレだよ!!/激流の後に訪れる―――/―――世紀末』までの作品への投票
投票形式
上位5作まで選出可能(必ず5作選出しないと駄目、という訳では無い。一位のみへの投票なども可)
1位を5P、2位を4P、3位を3P、4位を2P、5位を1pとして計算する
・SS部門(作品名で投票)
・セリフ部門(キャラの言ったセリフで投票)
・キャラ部門(キャラ名で投票)
こんな感じでおk?
投票対象はOPから第一放送まででいいんじゃない?
投票形式はそれでもポイント制でもどちらでもいいよ
第一まではもうやんなかったっけ?
てか、放送ごとに何回も投票する機会もないだろうし、投票対象は
>>475で良いと思う
でも実際こんだけの範囲はやりづらいからなあ・・・
>>476の言うとおりにするか?
さすがに範囲が長すぎるぞ
それはそうと明日ぐらいに投下来るかな?
仮投下に前回の修正きてるぞ
>>477 詳細決まらず見切り発車でお流れ
やるなら放送ごとにわけるべきだな。
後は期間決めて開始当日にしっかり本スレに告知すりゃなんとかなるっしょ
今夜は来ないか
>>483 GJ!!!
早速見てきました。
個人的には17番目のが好きだったかな。
歌詞の「●●●●しない ●●●いたい」は感動した。
※●はネタバレ防止用ですw
予定スケジュール
【投票期限】7月25日(土)0時〜7月31日(金)24時
【投票対象】0話の『オープニング』から85話の『一里四辻・一鹿六兎』までの作品への投票
投票形式
上位5作まで選出可能(必ず5作選出しないと駄目、という訳では無い。一位のみへの投票なども可)
1位を5P、2位を4P、3位を3P、4位を2P、5位を1pとして計算する
・SS部門(作品名で投票)
・セリフ部門(キャラの言ったセリフで投票)
・キャラ部門(キャラ名で投票)
これでおk?
>>483 おおおおGJ!!
もう全部の歌詞がスゴすぎる……特に修造のパートはマジで涙腺にきました……
>>485 投票期限・・・OTL
8月1日(土)0時〜8月8日(金)24時でおk
今日は投下の日だな!
wktkだぜ!
今日は来ないな・・・・・
少しくらい遅れても待てるからがんばってね
490 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/31(金) 13:37:26 ID:4vROigFo
避難所に投下来てるな
投下というか試作というか
仮投下の更に前段階というか
だいぶましになったと思うのですけどどうでしょうか
かなり上手くなってるよな。
まだ直せる所は見つかるが向上心も有るから
結構有望かもしれんね
修造「頑張れ頑張れやれば(ry」
まぁあれだ、気楽に頑張れよ
これがのちの芥川賞作家である。
今からしたらばの「なんでもあり」で投票を開始します。
お待たせしました。
それでは投下を開始します。
夕暮れ。
だが、周辺の天候は曇り。そのため、大地が赤く染まる度合いは低い。
アポロとタケモト達の出会いもまた、血を流すことはなかった。
豹人間という明らかにまともではない存在とはいえ、
そもそも脇に妖精がいるのだから特段驚くほどのこともない。
バクラも牙を向くことなく終わり、話は穏便に済んだ。
但し。
「……フランドールが参加者を殺害したというのは、間違いないのか?」
「間違いないでしょう。羽入さんが仲間を皆殺しにされたと言っていましたから。
一応無力化したとは言っていましたが、今後殺しをやめるかどうかは分からないと」
「なるほど。
美鈴と合流する前に遭遇した場合は、最悪の事態も考えるべきだな」
過去の罪は、長く尾を引く。
アポロの言葉に、タケモトは非情な判断を下した。
実際は羽入の勘違いであり、ルガールの死因はフランではないのだが……
今となってはアポロにそんなことは知る由もない。況してや、タケモトたちには。
「ともかく、今は映画館に向かう」
その言葉に合わせるかのように、放送が始まった。
■
よしきたっ!
支援するぞっ!
「……とうとう半分を割ったか」
放送を聞き終えた、グラハムの第一声がそれだった。
その表情に何か勘付いた――何だかんだで半日以上付き合っているので分かる――のか、
文がトーンを抑えつつ口を開く。
「……知ってる人が死にました?」
「ああ、フラッグはその頃寝ていたのだったな。
……単独行動を取らせた者が死んだ。それだけだ」
「フラッグはやめて下さい、いい加減に」
いつも通りに茶化すグラハムだが、最初と比べるとやや覇気に欠けていることは否めない。
それでも、この二人は立ち止まらない。最期まで立ち止まることはない。
例え独りになろうとも失った者の遺志を忘れず目的に邁進する武士と、
そもそも計算高く自分の生存のためには優勝さえ考慮している天狗。
――つまりは、普通の人間ではなく、その精神は通常のそれから隔絶している。だから、
「……その……本当に殺し合いをなんとか出来ると思いますか?」
黙り込んでいたキョン子が、我慢できなくなったかのように弱音を吐いた。
ここには三人がいるのではなく、一人と独りと一体がいるだけだ。
仲間を失い、独りガンダムに挑んだフラッグファイターと、違う生態の妖怪がいるだけ。
普通の人間であるキョン子とはどこまでも隔絶している。
だから、耐えられない。
「……努力はしている」
苦い声で重々しくグラハムが答える脇で、文は黙り込んでいた。
キョン子の言葉に答える義理はないし、下手に答えても感情を悪化させるだけだと分かっている。
だから、大人しく考えに没頭している。
(……そろそろ、決断しないと駄目なのかも)
そんな、どこまでも利己的な思考に。
■
橋を渡り、道具屋の外。
消えていく夕日を頼りにメモを追えたアカギは思考する。
(やはり、第二回放送を聞き逃したのは痛いな……)
以前フランドールとの戦いで破れた白シャツを捨て、
道具屋で調達した新たな服に着替えつつ舌打ちする。
能力的にはただの人間でしかないアカギにとって、
武器になりえるものはなんであろうと必要になる。そして、情報もそれに含まれる。
アカギが賭け金に使えるものはあまりにも少ない。
無論、それは命を賭けて補っていくしかないということである。
アカギにとってはむしろ喜ばしいことではあるが……
大きな賭けを打つためには、やはり相応の元手が必要となるのも確かだ。
思考しながら歩を進めていると、ふと前方に集団がいることに気付いた。
まだはっきりとは見えないが、何か騒いでいるらしい。
しかし彼にとって何よりもその中の異形……アポロ。
(確か新堂が豹人間に襲われたと言っていた……
少なくともその豹人間本人か、或いは関係のある同種と見て間違いはない。
しかし、奴が新堂の言っていたような行動を取っている様子もないが……)
離れて様子を窺うことを考えたアカギだったが、それはすぐに打ち切りとなった。
しばらくあと、一人……バクラが周囲を警戒し、アカギがいる側に視線を移したのだ。
言うまでもなく、コメント一覧の機能による副産物である。
(……どうやらこっちに気付けるような何かを持ってるらしいな。
どのみち聞き逃した第二回放送の内容を確認する必要がある……接触してみるか。
俺が殺し合いに乗っていることを奴らが既に知っているのなら、
それは俺のツキが尽きただけの話だ……)
覚悟を決め、アカギは再び足を動かし始めた。
■
放送の内容は、タケモトたちにとって驚くべき内容であった。
ドナルドと行動を共にしているはずのビリーを始めとして、
トキなど一応面識を持っていた相手が相当数死んでいる。
何か事件が起きたのは疑いようもない。
「で、どうするんだ? 戻るのか?」
「……図書館に戻って状況を確認するべきなのは事実だな」
重く響くタケモトの返答。
アポロの言葉から図書館に他の参加者がいることを突き止めたとはいえ、
一刻を争うような情勢と化したことは十二分に推測できる。
それに、人数が減ったということもまずい。タケモトはバクラへの警戒を怠ってはいない。
この調子だと6時間後にはバクラへの対応が出てくる。
「じゃあさっさと戻ればいいじゃないのさ」
「アポロ、悪いが一旦映画館に戻ってお前の仲間に伝言を……」
「ちょっと待った、そこまでだ。どうやらお客さんらしいぜ?」
チルノの言葉を完全に無視して放たれたタケモトの言葉を、当のバクラが制止する。
全員が(チルノはふくれっ面で)指差す方を見やると、青年が観察していることに気付いた。
言うまでもなく、アカギである。
アポロが弓を構える。しかし、アカギは両手を上げたまま堂々と足を進める。
ほとんど夕日が落ちた中、一人だけ血に染まっているように赤く照らされながら。
「おい貴様。とりあえず、殺し合いに乗ってないって言うならそこで立ち止まりな」
「……クッ」
バクラの言葉に、ようやくアカギは立ち止まる。
とりあえず自分の行動を知っているものはいないようだ、と判断して。
……この時。アカギが服を着替えていたのは最大の幸運であり、
アポロにとっては最大の不幸であった。
彼の知る危険人物とは「白いワイシャツを来た」白髪の青年。
しかし、今アカギが来ているシャツはグレー。故に、判断を保留せざるを得ない。
顎の鋭い男、とキョン子が言っていれば一発で判断できただろうが。
「まず、名前を言え」
「アカギ――赤木しげるだ」
闇にくすんだ返答。だからこそ無意味。
アポロもキョン子も、アカギの名を聞いてはいないのだから。
だからこそ、アポロは確かめるために口を開く。
「すみませんが……その服は支給品か何かで、着替えたりしたものですか?」
「どういう意味だ、アポロ?」
「住んでいた場所の知り合いに、それと似た服を着ている者を知っているのです」
タケモトへの返答は、言うまでもなく嘘である。
アポロが知りたいのは「着替えたか否か」の一点。
即ち、元々白いワイシャツを着ていたかどうかということだ。
「いや、こいつは元々俺が着ていた服だ」
「……そうですか」
だが、それを読めないアカギではない。意図を素早く読み取り、煙に巻いた。
ある程度の距離を保ちながら受け答えは続く。
数分後。その過程で、アカギは二つの情報を得た。
支援
(こいつらはバカというわけじゃない……相応にこの場について把握し警戒をしている。
……だが、だからこそ仲間も信じてあってはいない)
アカギは直感的に、チルノ以外はそれぞれお互いをどこか警戒しているように感じた。
故に出会ってから時間が浅いか、或いはほとんどが互いを牽制し合っていると踏んだのだ。
言うまでもなくどちらも正解であり、アポロは前者、タケモトとバクラは後者にあたる。
そうでないチルノは、ほとんどバクラとタケモトにまともな相手をされていない。
だからこそ、白でも黒でもないグレーは闇に隠れながら相手へ迫る。
「俺は新堂という男と行動を一時共にしていた。
そいつから、豹人間に襲われたという話を聞いたが……」
暗闇の中、周囲の視線に晒されるアポロ。
彼は慌てて弁明をせざるを得ない状況に追い込まれた。
「アポロって兄弟がいるの?」
「え……ああいえ、そういうことではなく、確かにそれは私でしょう。
ですがそういうことではなく、私はこのような出で立ちですし、
新堂さんに誤解を与えてしまったのです。私がその気でなかったということは、
映画館にいる人たちと合流すれば分かって貰えると思いますが……」
チルノのボケを修正しつつ説明するアポロ。だが、ただの返答ではない。
「映画館にいる者と合流しアカギの正体を見極める」という意図も含まれた言葉だ。
流石のアカギもここまでは読めない……というより、想像しようも無かった。
「それより、新堂さんを殺した者に心当たりはありますか?」
今度はアポロから言葉を返し、タケモトとバクラの視線がアカギに戻る。
依然、チルノ以外の面子による探りあいは続く。
「さぁてな……共に吸血鬼と戦っていたが、途中ではぐれた。
そいつに殺されたんじゃあないのか?」
「……まさか、フランドール・スカーレットのことですか?」
「……知っているのか?」
思わず反射的に口を開くアカギ。
実際のところ、新堂の末路は適当に予想に言っただけだったのだが、それがツイていた。
アポロは彼女を知っている。
羽入からの伝聞で、羽入からの視点だけで確かめられた彼女の一面を知っている。
それを聞かせてもらううちに、思わずアカギは心中で笑みを浮かべていた。
(なるほど……クク、俺と出会ってようやくブレーキを踏み外したか。
そして、あの吸血鬼に仲間を殺された奴と共にこの豹男が行動している……
更に、こいつは新堂を知っていて、敵対心を持っていたわけじゃない……
まさしく天佑……!)
この様子だと、恐らく確実にフランドールは生きている。
そして、彼女が危険人物だと思わせればそれだけ自分は全うな人間だと思わせられる。
人間は往々にして二極化して物事を考えたがるものだ。
それを、わざわざアポロの論が補強する、故に天佑。
アカギはフランドールとの戦いについて、一部だけを掻い摘んで話し始めた。
■
「……そろそろいいかな?」
一瞬聞き逃しかけた放送が終わってからしばらく後。
夕日が山に隠れたのを確認したフランドールは、抜き足差し足で外に出る。
まずちょっと手を出して灰にならないか確認したあと、ちょこんと足を踏み出す。
「うん、もういいよね」
夜闇の中を軽やかにステップ。
久々の闇。月は雲に隠れているが、別に彼女が気にすることではない。
慣らし運転も兼ねて、ゆっくり空を飛ぶつつ目的地に向かう。
しばらくすると、あっさり橋が見えてきた。もちろん、川も。
「……意外と、外って面倒なんだ」
ぶつくさ言いつつ、軌道修正して橋の上を飛ぶようにする。
架かっている橋の上を通らないと流水の上は渡れないのだ、空を飛んでいても。
もし帰ったら流水を壊してみようかなぁ、などと呟くフラン。
外に出れるようにならないと駄目と思ったところで、ふと彼女は思い当たった。
「美鈴はどうしてるかなぁ……」
生きていることは分かっている。分かっているけど、それだけだ。
自分みたいに、約束を守れないような状況になっていたりしたら、困るかもしれない。
そんなことを考えていると、ふと、前方に人影が集まっているのに気付いた。
■
話は終わった。
それぞれが考え込む中、一番最初に口を開いたのはチルノだった。
「ま、フランの相手はあたいに任せてよ。
さいきょーのあたいがちゃんと部下にして美鈴に会わせてあげるから!」
「……その羽といい、こいつはなんだ?」
「ガキの言うことだ、気にすんな」
「なんでよ!」
ブーブー文句を言うチルノを無視して、アカギは現状を整理する。
情報交換は終わった。聞き逃した第二回放送の内容も聞いた。
とりあえず、アカギとしては及第点と言える……だが。
(本番はここからだ……)
ここに来ての倍プッシュ。
演出に気を遣いながら、アカギは敢えてカードを切ることに決定した。
「ところであんたら……『支給品の』デュエルモンスターズを持ってるか?」
「ああ――確かにあるけどよ、そいつがどうした?」
「そいつは重畳……
俺が持っているカードのほとんどは使用したばかりの状態にある……
出来れば二枚ほど交換して欲しいんだがな……」
そう告げて、グレーに染まる曇天の下カードを二枚を持ち出すアカギ。
言うまでもなく、「誰得の部屋」で回収したただのカードである。支給品ではない。
タケモトがやや警戒の色を見せ、バクラの眉が露骨に顰められた。
「藪から棒に、何のつもりだ?」
「ククク……なぁに、少なくとも悪い交換条件じゃないと思うがな……!」
同時に、アカギがカードを持っていた指をずらす。微かに生まれたその隙間……
アカギが提示した二枚のカードに、何かを書いた紙が挟まっている。
盗撮も盗聴もできないであろう、絶妙な角度と方法で提示された情報。
……タケモトの目が、興味深げに縫い止められた。
「そこまで言うなら貰っておこう。バクラ」
「ったく、しょうがねぇ。
ただし、俺が出すのは使用出来る一枚だけだ。1:2交換だが文句は言わねえな?」
「まぁ……妥当なラインだな」
悪態をつきながら、バクラはカードを指に挟んで手を伸ばす。
しょうがない、というのはバクラの本心である。
明らかにアカギの行動は盗聴と監視、両方に備えたもの。重要さも伝わっては来るが……
あまり脱出要素が揃ってしまうのはバクラにとって愉快なことではない。
万全な脱出計画を立てられると、へし折るのも困難だ。それに、何より。
(俺様にはよぉく分かるぜ。
この二枚には精霊や魔物が宿っていやしねえ。
恐らくただのカード……こいつ、俺たちを騙す気満々じゃねぇか)
カードを交換しながらも、心の中で舌打ちする。
元々バクラはデュエルどころか古代エジプトにおけるディアハも知っている身だ。
カードに宿る精霊について感じ取ることなど造作もない……もっとも、言う気はないが。
(ま、いいけどよ。てめぇがそういう奴っていうならせいぜい利用させてもらう。
挟まっていたメモ……カードは偽者だったが、こっちはどうなのかねぇ?)
僅かに見えたメモの内容を思い返した、その瞬間。
虹色の星が、降り注いだ。
支援
「……先に行ってて!」
声が響く。
それを誰一人確認する余裕もなく、爆音が響く。
巻き散らかされる爆発と、水蒸気。熱に溶かされた氷の弾。
止められた弾幕は、霧の残滓を残して視界を遮断する。
その中を振わすのは、ガラスが割れるような異様な音。
「これはいったい……」
「――どうやら、噂のフランドール・スカーレット嬢のお出ましらしいぜ?」
アポロの言葉に、皮肉げな笑みを浮かべてバクラが言う。
現状を言ってしまえば、アカギを視認したフランが即座に復讐をしようとした。
その先制攻撃をチルノがとっさに迎撃した、シンプルと言えばシンプルだ。
だから、いつの間にかチルノの姿は消えている。
響いている音は、チルノとフランが撃ち合っている戦いの音。
明らかに切羽詰ったいきなりの状況。そこで、元凶が状況を操作するべく動いた。
「ヤツの能力上、固まっていると蜂の巣……人数が多いだけでは無駄に犠牲者が出る」
アカギの言葉に、続いてバクラを口を開く。
狙いを読んだ上で、更に体よく厄介払いするために。
「一旦別れようぜ。少人数で動いたほうが生き残れる確率は恐らく高い。
俺とタケモトは予定通り映画館を目指して、そこにいる奴に援軍を頼む。
アポロはアカギと一緒に図書館へ行って、そっちの確認をしてくれよ」
「しかし……」
「得意とする弓も、残っている矢が少ないと聞いたが……?」
援護しようとする意図を含んだアポロの言葉は、アカギに封殺される。
同時にほんの一瞬、アカギとバクラの視線が交錯し火花を散らしたが、それに気付いたのは本人達のみ。
こうしているうちにも煙は晴れつつある。決断の余裕もないのもまた事実。
「アポロはバクラに付いて行ってくれ」
「……分かりました」
アカギのメモ――誰得の部屋について記したものを確認したタケモトにも後押しされ、しぶしぶアポロは同意する。
それに、もしアカギが危険人物ならば自分が見張らなくてはいけない、と思ったのだ。
……そこに、フランが危険人物ではないかもしれないという思考は欠片もない。
かくして、チルノを残し幻想的とは言い難い霧の中、四人は撤退を開始した。
バクラにせよタケモトにせよ、正直チルノの扱いに手を焼いていた。
彼女が率先して殿を引き受けてくれるならば、別段止める気はない。
正真正銘、一対一で幻想の戦いが幕を上げた。
■
空を舞う。
手を翳して氷を放つ。
幸い、呂布にやられた傷はほぼ全快している。全力を出すのには問題ない。
けどそれは、
「……楽しくない」
相手が放った弾幕に、あっさりと消し飛ばされた。
それどころか押し返された分を、とっさに斬り捨てないといけない始末。
そんなあたいを見て、ふん、と相手――フランはため息を吐いた。
「妖精じゃすぐ壊れちゃうからつまんない。邪魔だし、さっさとどっか言ってよ。
それに、私が用があるのは貴女じゃないし」
「……やだ。悪いけど人殺しなんてさせないよ。
はにゅーとか言う奴の仲間もあんたが殺したって聞いたわ」
そう言って、あっかんべーしてやる。
……どうやら、凄く気に食わなかったらしい。フランは異様に顔を歪めていた。
「……うるさい、このバカ。
別にいいよ、遊んでくれるって言うなら。けど」
フランの掌がこっちを向く。条件反射で
ぶつかりあった弾幕が、再びあたいたちの視界を覆い隠して。
「あんたが、コンティニューできないのさ!」
目の前に、フランドールが現れていた。
消えかけている霧の中を奔る左腕と爪。とっさに反射で剣を振るう。
剣と腕。明らかに有利なはずなのに、止めた筈の一撃が、止められない。
分離させていた左のスイカソードに沿って爪は走り、横殴りにあたいの体を一閃した。
身をひねって躱して……それでも避けきれない。
夜闇の中を奔る血痕。脇腹に刻まれる爪痕。
重傷じゃないけど、かすり傷ってわけでもない。
「こ――の……!」
我慢して剣を振るう。
踏み込んだ敵に、右の当たり剣を振りぬく……!
「な――」
鈍い金属音。素早く引き戻された右手でそれも止められた。
まるで寒さに凍える人間のように、震える右腕。
魔力の桁が違う。筋力の桁が違う。存在そのものの桁が違う。
剣と素手だっていうのに、露骨なまでに埋められない壁がある。
「なぁんだ、もうおしまいなの? 剣を持ってるからそっちが得意だと思ったのにさ。
もっと氷見せてよ、チルノちゃん……?」
支援
支援
支援
吸血鬼がワラう。
右手で剣を掴んだまま相手の脚が動く。
脳天目掛けて繰り出される蹴りを、
「……これ、くらいで!」
とっさに剣を分解させて弾き飛ばす……!
「痛っ……!?」
吹き飛ばされるフラン――但し無傷で――を確認した途端、痛みが走った。
割れるような頭痛。相手から受けた傷のせいじゃない。
直感的に、この剣を直に持った時のあの頭痛だと気付いた。
ふと見ると――緒戦の熱で柄を覆わせていた氷が溶けて薄くなってるのに、気付いて。
「えいっ」
「――ッ!?」
それを元に戻す、余裕なんてなかった。
二度三度四度五度、繰り出される相手の攻撃を弾く。
相手の右腕は露骨に動きが悪い、だから両方ちゃんと使えるこっちはなんとか対応できる。
防戦一方、それでも今度はなんとか剣技を駆使して凌ぎきる。
――だから、それが、おかしい。
堪えきれずに、相手の力の流れのまま後退して落ちた。
衝撃で吹き飛ばされて地面に叩きつけられそうになるのを、なんとか抑えつつ着地。
頭痛は止まない。止める余裕がない。
別にそれほど痛いわけじゃない。フランにやられた傷の方がよっぽど痛い。
ただ、この頭痛は、何か……
「おっかしいなぁ。
段々強くなってるような……もしかして、手加減してたの? ずいぶん余裕なんだ」
続いて地面に降り立ちながら、疲労も見せないでむっとした表情でフランは言う。
まさか、と思う。あたいは手加減なんてしない。答える余裕はないけど。
流れ込んでくる何かが、強引にアタイを押し上げているだけ。
なぜか剣が使えるようになった自分。
なぜかどんどん剣が上手くなっていく自分。
その元凶は、間違いなく……
「――じゃあ、幻想郷らしく遊んでみよっか?」
フランの言葉に、荒れていた呼吸を慌てて整える。あっちは息を荒げてさえいない。
そして、彼女の右手から闇夜に浮かび上がるは遠大な炎の剣――!
支援
「レーヴァテイン!」
「ッ、ダイヤモンドブリザード!」
またも激突する氷と炎。けど結果は見え透いている。
氷は飲まれて消え、炎は少しも減衰せずにこっちへ迫る。
体勢を気遣う余裕なんてない、転がり落ちるように急いで後退した。
それでも腕を僅かに炎が舐めていく。そして、それを気遣う余裕はない。
戻ってくる返しの剣を避けるために、息を切って跳ぶ。
地面に残った炎は消えない。
草花を燃やしたまま残留し、あたいの動きを束縛する。
「こん、のお!」
左手で弾幕を放ちながら、右腕でバスタードチルノソードをバラした。
あいかわらず、頭痛がひどい。けど右腕は独立した機械のように剣を外す。
そのまま、六剣のうち二剣を飛ばして投げつけた。
巨大な剣が戻ってくるにはまだ時間が掛かる。
氷に紛れて飛ぶ剣は、何にも邪魔されずに飛び――
「なぁんだ、これくらいか」
剣も、氷もフランにあっさりと叩き落された。
着地に失敗して膝を付く。疲れきって、氷を放っていた手も地面に突きつけた。
そんなあたいを、フランはあざ笑って、
「あれ? 弾幕撃つのもやめちゃって……諦めたの?
ふーん、それならそれでいいけど――!?」
そこまで言ったところで、慌てて振り向いた。
その先にあるのは、弾き飛ばしていたはずの剣が戻ってくる様だ。
吹き飛ばした二つには、アタイの魔力が込めてある。
その軌道を操作することくらい、そっちに集中してればなんとかやれる――!
素早く腕を振って戻ってきた剣を叩き落すフラン。
その隙に……
「――コールドディヴィニティー!」
ありったけの氷を、叩きこんだ。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
残っていた炎と炎剣が消える。残っているのは氷が生んだ水蒸気だけ。
息を吐きながら、剣から手を離す。それで、ようやく頭痛は止んだ。
少なくとも、フランが回避した様子はない。なら、十分な威力なはず。
死んだはずはない――そもそも最初からその気はない――けど、十分効いた、はずだ。
そう、思って。
「……あ……」
声が震える。
晴れていく霧の向こう。しっかりと立っている影を、見た。
ノーガードで耐え切ったのか、それとも全部近距離で叩き落したのか。
どっちにせよ限界だ。これ以上はどうしようもない。
手元を見る。
――もう、なんであたいが剣技を使えるようになったかなんて分かっている。
その元凶であるドーピング剤が、今か今かと解放を待っていた。
「……わかって、る、けど」
恐怖を振り払うように息を吐く。それでも怖い。消えない。
だから柄を凍らせた。握っただけで意識が飛んだのは忘れていない。
でも、このままじゃ負ける。だから恐怖ごと、唾を飲み込んだ。
「……よし」
柄に包ませていた、氷を一部だけ消す。
ちょっとだけ、ちょっとだけだ。この戦闘をする短い間、指一本柄に触れるだけ――
ぱりん、と。
自分の大切な何かが、割れて。
その隙間に、何かが無理やり、押し込まれた。
「……考えごとだなんて、まだ余裕あるんだ?」
「!?」
考えるより先に、まるで他人に動かされたみたいに跳ぶ。さっきまでいた場所が爆ぜる。
遠くにいたはずの吸血鬼が、すぐ近くにいた。いつの間にか、霧が消えていた。
分からない。ワケが分からない。いつの間に接近されたのかさえ分からない。
――そもそも、自分に何が起きたのかさえ分からない。
何より、今はこの頭痛をなんとかしたい。
なんとか意識は保てるけど、頭痛は今までの比じゃないほど肥大化している。
いっそヤケになって、痛んでいる頭を破り捨てたくなる。
それでもそんな事情一切合財を無視して、相手は攻撃しようと接近しながら弾を撃つ。
……いや、無視しているのは吸血鬼じゃない。
なぜか自分の思考も瞬時に纏まり、体まで勝手に動く。
どうすべきか、とっくに知っていると言わんばかりに。
相手の攻撃を当然のごとく、アタイは二刀を交差し防ぎきっていた。
「っ、こんの……!」
予想外の反応に吸血鬼は戸惑ったのか、追撃の爪は鈍い。
頭蓋を砕こうと走る右腕を左手の剣でいなし、右手の剣を突く。相手の帽子が落ちる。
見えるのは次々に襲ってくるフランの爪と、それを自分の腕が防ぐ他人事。
更に奔るアタイの左剣。同時に、自分の視界の端に見えた赤い光。
アタイはあたいが今までしたことがない反応で、上空から落ちる弾をバク転して回避した。
追撃の弾幕が走る。それに反応して翻る体。迅る刃。
頭が割れそうなほどの頭痛の一方で、今までに無いくらい思考は澄み渡る。
……やれる。根拠の無いはったりじゃなく、冷静に思考した上でそう思える。
フランの体の所々は、どこか動きが鈍い。だから、今のアタイにはやりようがある。
借り物の力、借り物の技術、借り物の知識だろうと、あたいが戦えてることは確か。
だから例えそれが異常を示すランプが真っ赤に染まってるような事態でも、棚に上げる。
相手が手負いである以上、一対一なら今のアタイには勝機が見えてくる……!
「――たあっ!!!」
左剣から手を離し、アイシクルフォールeasyを左手で放つ。
手加減してるはずのスペルは、なぜか弱くなったダイヤモンドブリザード並みの威力を保持してる。
ただし、それは真正面以外の話。もともと真正面が開いてるんだから当たり前だ。
だから予測どおり、正面からバカ正直に来るフラン。
普段のあたいなら追いつけない速度で一気に懐に潜り込んで、腕を突き出してくる。
……だから、それがバカだ。
四刀は既に一刀に戻り、地面に突き刺されてそれを待ち構えているっていうのに。
「剣技――クライムハザード!」
「え……」
姿勢を下げ、フランの攻撃を下から潜り抜けながら地面に突き刺した剣を跳ね上げる。
突き刺さって抑えられていた勢いは、一気に解放されて奔っていく。
それでも、吸血鬼は避けた。それこそ小数点第二位で表現されそうなタイムラグで。
けれど――それで崩れた体勢の不利は否めない。
「取った――!」
振りぬいた勢いのままくるんと回って、すぐさま体勢を戻した。
同時にコンマ数秒で、相手ができることと最良の追撃を予測する。
頭痛に苦しむあたいと、冷静に思考するアタイが心の中で同居している。
振りかぶる追撃の剣。体勢の崩れた相手は、どうやっても回避が間に合わない。
殺す気なんてない。戦闘能力を削ぐだけだ。押さえつけて説得する。
速度も威力も調整は十分、そして攻撃が届くのはどう考えてもこっちの方が、速――
がくん、と。
世界が、歪んだ。
衝撃。
自分が倒れたんだと気がついたのは、地面に頭をぶつけてからだった。
フランの攻撃は一度も受けてない。それはすぐに分かった。
自分に掛かった過負荷で……限界を越えて何かおかしくなったと気付いた頃には。
フランが、地面に倒れているあたい目掛けて、腕を振り上げていた。
ざくざくざく、と音がする。
「……え?」
理解が追いつかない。出血しながら後退するフラン。
それを追い撃つかのように風が舞い、フランの体を吹き飛ばし……
這い蹲っているあたいを守るように、文が異形の烏と共にその場に降り立っていた。
■
「はぁ……」
映画館の一室。椅子に座り込んだキョン子は一人ため息を吐いた。
戻ってきて新たな仲間も得たのだが、ここにはほとんど人はいない。
文は映画館の近くで遭遇した人たちからチルノの現状を知って飛び立っていったし、
タケモトとグラハムは外に見回りに出ている最中だ。
つまり、ここにいるのはキョン子と……
「やぁ。退屈だし、ゲームでもしないかい?」
バクラだけ、ということになる。
声を掛けられて、顔を上げるキョン子。
そこには、映画館の売店から盗んできたトランプを持ったバクラがいた。
「いや、色々思いつめてそうだったからさ。気分転換でもしようよ」
タケモト辺りが聞いたら吐きそうな優等生っぷりで、バクラはキョン子に話しかける。
そして、キョン子が色々と精神的に参っているのは確かだ。
弱音を吐こうにも、仲間は意地でも弱音を吐かない人間と弱音に共感しない天狗。
普通の人間である彼女にとって、同じように普通の人間に見える相手は非常に有り難い。
――実際は、悪魔どころか魔神とも言うべき存在なのであるが。
「……あ、うん、ありがとう。了くんだっけ?」
「バクラでいいよ。そっちの方が聞きなれているから」
向かい側の席に座り込むバクラを、キョン子は自然に受け入れてしまう。
……羽入がバクラの危険性についてアポロに伝え忘れたのは、致命的であった。
「バクラくんって高校生? なんか髪が凄いけど」
「いや……まぁ、これは生まれつきだから。
それに、友達はヒトデみたいな髪型してるし」
「どんな髪型よそれ。よく校則に引っかからないわね」
(……そういや俺は先公に色々言われたが遊戯は何も言われなかったな。
どんな基準なんだあの学校は?)
駄弁りながら二人が始めたのはブラックジャック。
単純に言えば21に近いほうが勝ちと言うゲームだ。
とりあえず互いにトランプを引く途中、ふとキョン子が気がついた。
「あれ? なんか暗くない?」
「電灯の調子が悪いんじゃないかな」
ふーん、と呟いてあっさりと信じながら、キョン子はカードを提示する。
キョン子が提示したカードの数は17、対してバクラは21。バクラの勝ちだ。
「あっちゃあ、負けちゃった」
「……ああ。罰ゲームだ」
そう呟いて、バクラはキョン子に指を向けた。
■
支援
バクラ…!? 支援
す、と微風を巻き起こしながら持ち上げられる緋想の剣。
とりあえず、今の所、文はまだ殺し合いに乗るとも対主催に専念するとも決めていない。
グラハムとタケモトに、やれるかもしれないことがあると彼女は聞いた。
だから、行動方針もその成否次第だ。今は、現状維持に努めるだけ。
「……こんなことをやってるだろうとは思いましたが」
文の赤い瞳が吸血鬼を睨む。文が従えている烏も同様だ。
その言葉に、フランは少し首を傾げる。
「こんな、こと……?」
「状況は明らかです。
貴女がチルノさんに襲い掛かったようにしか見えませんね」
その言葉に、フランは慌てて違うと首を振った。
……ずっと閉じ込められて暮らしていた彼女に、歴然とした説明を求めるのは酷と言うものだろう。
「違う……私は、悪くない」
「……よく言いますね。その割にはチルノさんを攻撃していましたが」
「それは……私の邪魔をした、こいつが、悪いだけ」
天狗が眉を潜める。風が吹く。論理の隙間に、大気が入り込む。
「……だったら。
なぜチルノさんを攻撃している貴女は、ずいぶんと楽しそうだったんです?」
そして、その大気は、劇薬だった。
「悪いけど貴女はここで殺します。私がどうするにせよ貴女は危険すぎますし。
……消耗しているうちに、消すわ」
「…………ッ!」
フランが襲い掛かろうとした機先を制し、文が従える烏が風を放つ。
嘴がないその烏の名はBF(ブラックフェザー)・疾風のゲイル。
攻撃力は僅か1300だが……彼には、強力な特殊能力がある。
「きゃっ!?」
「嘘……!」
その光景を、チルノさえもが疑った。
フランが相殺しようと放った弾幕は、風に飲まれて消えた。
行き着く暇も与えず文が追撃の弾を放ち、それでフランの肩が裂けると共に迫るゲイル。
とっさに腕を振ったフランの腕を容易く回避し、ゲイルは相手に蹴りを叩き込んだ。
「こいつ……!」
痛みを堪えて、弾幕を放つ。それさえ容易くゲイルは回避し、更に風を放って反撃。
あっという間にフランの傷が増えていく。そこに、チルノと戦ったときのキレはない。
――フランがたかだが攻撃力1300程度のモンスターに圧される理由はたった一つ。
それが、疾風のゲイルの能力だからだ。
いかなる存在であろうと、耐性がない限り攻撃力・守備力を半減させる。
文がフランを吹き飛ばした時に、ゲイルが追い討ちで決めた風。それで効果は発動した。
効果さえ発動できれば、ゲイルは単体でブラックマジシャンを撃破するほどの力を持つ。
文の援護を受けている状態なら、チルノとの戦いで消耗しているフランなど敵ではない。
鴉天狗というこれ以上ない指揮官を得た精霊は、その命を受けて軽やかに宙を舞う。
文が左手から弾を撃てばそれに合わせて右から襲い掛かり、
自分が文の攻撃の邪魔になっていると気づけばすぐさま道を開ける。
烏を従える天狗の能力と、存在そのものが噛み合った抜群のコンビネーション。
「だったら……!」
大本を叩けばいい、とフランは文へと突撃した。
相変わらず文はチルノを庇うように立っている。一歩も動いていない。
弾幕を撃ってその場に釘付けしながら突っ込むフラン。
避けるとチルノに当たるから、文は動かずに弾を撃ち落とす。
そこへフランは左腕を突き出した。顔をトマトのように砕こうとする、必殺の意図を載せた攻撃を。
文はくい、と首を傾けるだけで、避けた。
「え……」
更に、闇夜を奔る緋の閃光。
こと身体能力においては群を抜く文に、緋想の剣の特質は更にプラスに働く。
とっさに防御しようと動くフランの右腕。
その動きの鈍さを見抜いたかのように、剣はその腕を横に両断する。
防御行動と共に後退していなければ、体まで真っ二つにしていただろう。
「こ、の……二対一で弱点から狙うなんて、卑怯よ!」
「……何か勘違いしてるみたいですね? これは殺し合い。
卑怯も何もない……だいたいこの剣はそういう剣ですし。
まあ、脳のない吸血鬼にはとても理解できない事柄かもしれませんが」
「ッ……!」
再び襲い掛かろうとするフランの行動は、未遂に終わった。
ゲイルが後ろから急襲してくるのに気付いたのだから、そちらの迎撃を強いられて当然。
だが、それすら読んでいたかのようにゲイルは素早く文の元へと舞い戻っていた。
文が伸ばした左腕にちょこんと止まりつつ、悠々と羽繕いするゲイル。
それを褒めるように撫でる文と、息を荒げながら睨みつけるフラン……
勝敗は、既に明らかだった。そのまま、文は数m先にいる相手に緋想の剣を向けて。
「いい子ね、ゲイル。後は私に……」
「ま、待って!」
突然、起き上がったチルノに止められた。
「どうかしました? 敵の増援ですか?」
「違う! 殺しちゃ駄目!」
「……いや、チルノさん殺されかけたじゃない」
「それでも殺しちゃ駄目なの! アタイは最強なんだから!」
「だから、意味分かりませんってば」
露骨に邪魔だと言わんばかりの表情をする文。
それでも、チルノは文にしがみついたまま離れない。
「最強だってことは、みんなを守る正義の味方ってことなのよ!」
「人間の命に関わる悪戯をしてるチルノさんが言っても説得力無いんですが……
いつからそんなルール決めたんですか?」
「違う、確か、昔、大切な人から、聞い、て……」
「チルノさん……!?」
「あたい、あたい、は……」
どさりと、チルノは地面に膝を付く。
まるで自分の発言が信じられないように、彼女は頭を抱えて呻いている。
自分が本当に自分なのか、どこまでが自分なのか、そんなことさえ今の彼女には分からない。
文には、十分過ぎるほど異常な事態がチルノに起こっているのがわかったけれど。
「クァッ!」
何が原因がなのか、それを確かめる暇はない。
ゲイルが啼いた。それは紛れもない警告の証。
視線を起こした先では、既にフランが炎を巻き起こして放っている。
とっさに風を起こし食い止めるゲイル。だがフランが全魔力を注ぎ込んで起こした炎は、
ゲイルの特殊効果下にあってなおゲイルの風を圧していた。
「……風よ」
だからこそ、文は緋想の剣を翳す。流れ出す緋色の風。
風を操ることに特化した羽団扇ほどではないが、緋想の剣もその能力上風は起こせる。
風を起こすような気質をまとめ、それを放てばいいのだから。
起こす天候は、竜巻――!
「捲れ――!」
月下に舞い起こされる火消しの風。
それは容易く炎を吹き飛ばし……その範囲の一切合財を無に返す。
だが――そこにはもうフランはいなかった。
「逃げられちゃいましたか……まぁ、あれだけ隙を晒せば当然ですね。
貴方も当然、夜目は利かないのよね?」
「クァ……」
「あ、別に責めてるわけじゃないわ。カラスなんだししょうがない。
とりあえず、今は戻ってくれる?」
「クァ!」
顔を俯けるゲイルを、文が慰める。
このシーンだけ見れば、ペットと飼い主の微笑ましい光景だろう。
実際は、先ほど見事な連携で人の形をしたものを殺しに掛かっていたコンビであるが。
自らの式神がカードに戻るのを確認すると、文は素早く倒れているチルノに駆け寄った。
「……気絶してる……生きてるけど……
あの吸血鬼と戦った時、明らかに妖精の範疇じゃない異常な動きをしていたし……
ああもう、確めなきゃいけないことが多すぎる!」
大きくため息を吐きながら、散らばっている剣を回収してデイパックにぶち込んだ後、
しっかりと感触を確かめるように、文は気絶しているチルノを抱き上げた。
「ああ、チルノさんの肌すべすべ……役得役得……くっ、ここにカメラがあれば……
ってそんな場合じゃなかった、映画館に戻りましょう、うん!」
■
吸血鬼は、夜の眷属だという。
だが果たして、今の彼女を見て、そんなことを思い浮かべる者はいるだろうか?
「……痛い」
治り掛けたところを両断された右腕をぶら下げて、フランは走る。
今にも泣き出しそうな表情で、雲に隠れた月の下をたった独り。
その様子はまるで無力な子供でしかなく、それ以上のものでは決してなかった。
ただ、以前襲われた仕返しをしようとしただけなのに。
それだけなのに、体中傷だらけで、腕は真っ二つ。
――ぎり、と歯を噛み締める。
その脳裏に浮かぶのは美鈴でもなければ文でもチルノでもなく――アカギの姿だった。
「あいつの、せいだ……」
強く噛み締めすぎて、唇から血が零れる。
あいつがいなければ、こんな苦しい思いはしなかった。
あいつがいなければ、こんな痛い思いはしなかった。
あいつがいなければ、みんなに嫌われることは無かった――!
「――絶対、殺してやる」
フランドールは、始めて。
純粋な憎悪から、敵を壊すのではなく、殺そうと思った。
■
暗い月夜を、タケモトとグラハムが歩く。場所は映画館の裏、川の近く。
一見すると、世間話でもしているように見える。だが、実際は違った。
映画館の売店から持ち出した下敷き。
それを紙の下に敷いて、歩きながらグラハムとタケモトは筆談していた。
無駄な会話で、主催者の目を晦ましつつ。
「フラッグをどう思う?」
『盗聴に備えて筆談と言うのは分かる。だが盗撮の危険は?』
「……だから、フラッグという呼び方は分かりにくいんだが」
『バラした限りでは、カメラと思しき装置はなかった。盗撮の危険はない』
そう返しながら、タケモトは真っ二つになっている首輪を見せる。
元は、映画館の遺体から回収した首輪。
文はここを離れるのにそれを緋想の剣で両断してから飛び立っていった。
言うまでもなくタケモトの依頼だ。理由は単純。
死者の首輪は爆発しないと言うことを再度確かめるためと、今度こそ中身を確認するため。
「射命丸の服はボロボロだ。
しかし、それがどこか破廉恥さと艶美さの境界のようでよりフラッグらしい」
『会場に監視カメラや生体用レーダーが設定されている可能性もあるのではないか?』
「……お前はアホか。というかもう少し違う話題を選んでくれ、本気で」
『それは否定できないが……。
誰得の部屋が主催者が想定しないものでかつこの会場に監視カメラが大量にあるなら、
主催者側はアカギが監視から消えたことを警戒し、アカギに何かをしている。
だがアカギが無事に出てこれたことからすると、
少なくともそういったものは監視のメインとなっていない。
あったとしてもそれで捕捉できなくなっても気にも留めない、サブだな』
タケモトはこう書いたものの、かと言って無警戒と言うわけでもない。
わざわざ見回りと言う名目を付けて映画館から出て、
その裏……かつてアカギとフランが戦った場所で筆談している理由がそれだ。
戦闘が行われたここでなら、仮にカメラがあったとしても破壊されているだろう。
それほどまでに周辺の破壊規模は大規模なものである。
タケモトのメモに頷いて、グラハムはペンを走らせる。
「では、違う内容を話そう。
彼女の太ももについてどう思う?
元々フラッグは細身で、そういったところも彼女がフラッグらしい一因だ。
後は黒を基調にした服装にしてくれるとありがたいのだがな」
『あまり時間を掛けると不審がられる。手短に行こう。
「誰得の部屋」について、仮に情報が正しいとすればどう考える?
私は入った者の位置情報を偽装する何かがあの部屋にある、と推察している。
恐らくこの首輪は、生存を伝える通信と位置情報を伝える通信を発しているはずだ。
そして「誰得の部屋」が主催者の意図したものでないのなら、
仮に気付いた際主催者はアカギに対し何か動きを見せているだろう。
敢えて見逃すという選択肢は外部からの不測事項を見逃すということになる』
グラハムのメモに、タケモトはとんとんとペンを叩く。話している内容を考えないようにして。
周囲を、ただ月の光と電灯だけが照らす。
その中で頭を捻りながらも、彼は解答を紡ぎ出した。
「…………」
『確かに参加者が予定外の場所に行っても、主催者側は何の動きを見せていない。
そのことからすれば主催者は気づいていないとする仮定は有力……
だがそれだけで首輪の機能と部屋の機能を特定するのは危険だ。
仮定を重ねすぎるのは危険すぎる。別の可能性も念のため洗っていこう。
仮に首輪に位置情報を伝える機能がないとしよう。
そのためにアカギが誰得の部屋に行っても気づかれなかったとする場合は?』
支援
支援
倍支援プッシュだ……!
528 :
代理:2009/08/01(土) 01:35:44 ID:4L7skI79
「黙り込まれても困るな」
『禁止エリアはどうなる?』
「……こんな会話をされたら誰でもついていけん」
『禁止エリアに常時「首輪を爆破する」という信号を送っていればいい。
禁止エリアに入ったから首輪を爆破する信号を送るのではなく、
首輪を爆破する信号が送られているのが禁止エリアだと仮定される』
「では、私とフラッグの馴れ初めについて話そう」
『成程。だが、参加者の生死を確認するのはどうなる?
生存を伝える情報を首輪が送っているとすれば、それを使って位置が特定できる』
「もういい……黙っててくれ、気が散る」
とうとうタケモトは筆談と会話の両立をギブアップした。
一応グラハムは監視しているだろう主催者たちを誤魔化すためにわざとやっているのだし、
タケモトもそうだとは勘付いている。
勘付いているが、限界と言うものがあった。
『生きているという情報を常時送るのではなく、死んだ時にそれを情報として送る……
いや、これは駄目だな。首輪を破壊してその爆発で殺すという作戦に対応できない』
『ふむ……私が書くのもなんだが、会場の監視カメラを生存確認の補助に使っているとすれば?』
『それだと誰得の部屋にアカギが消えたのが問題にされるはずだ。
メモが正しいなら、誰得の部屋を監視しているはずはないからな。
少なくとも首輪には生存と位置情報・音声を送る機能があり、それが監視のメイン。
誰得の部屋は位置情報を偽装する機能がある……
それを自由に使えるようにして、主催者から送られるだろう爆破電波を首輪から遮断。
これが首輪を無力化できる現在の道筋だ。
――アカギの情報が正しく、確実に主催者が誰得の部屋に気付いていないのなら』
『結局はそれだな。それを確認しない限りは、先には進めないというわけだ』
月が雲から、僅かに顔を覗かせる。
そこまで書き上げたところで、タケモトはペンを閉まって告げた。
「きっかり30分だ。見回りはやめて映画館に戻るぞ」
「了解した」
「……あと、お前の好みの女を自慢するのはやめてもらえないか?」
「それは断る」
■
529 :
代理:2009/08/01(土) 01:38:09 ID:4L7skI79
月夜に砂が照らされる。
図書館への道のりを、アカギたちは歩く。
禁止エリアのせいとは言え、砂漠を歩いて行くのは多少難儀だった。
……そんな中、アポロは時折、不自然にアカギから目を向ける。
(こいつは見張り……適当な所で切り捨てないとな……)
心中で嘯くアカギ。
アポロがアカギを警戒していることは、当人が気付いている。
誰得の部屋を確認するという当初の望みは果たせそうにないが、構わない。
他に、やることがあるのだから。
(現状でも、十分面白いギャンブルは出来る……!)
今のアカギの狙いは、単純だ。
美鈴に会って、「フランは人を殺して回っている」と言うこと。
嘘ではない。ただ、アカギが原因であるということを言わないだけである。
以前のフランの言葉から、美鈴とフランに何らかの繋がりがあることは見え透いている。
だから、アポロを殺さない。自分の言う論を補強させるために。
――アカギは無力ではない。
なぜなら情報は武器となり、その武器を扱えるのは知恵者のみなのだから。
(ククク、ここからだ。いよいよ面白くなってくるぜ……!)
■
支援
531 :
代理:2009/08/01(土) 01:39:58 ID:4L7skI79
「おやおや、わざわざ僕と直接話したいだなんてねぇ……」
キョンの口が、決してキョン子のものではない言葉を紡ぎ出す。
バクラがキョン子に施したのは軽いマインドクラッシュ。
それは本当に軽く、20分もあればすぐに回復するものだ。
逆に言えば、20分間は精神が砕けたまま、ということになる。
――そんな存在を乗っ取ることなど、今のユベルでも十分可能だった。
「今の僕じゃ、彼女の精神が再び結合すればすぐ体を奪い返されるんだけどね?」
「構わねえよ。時間としては十分だ。二人っきりで話がしたいだけだって言ったろ?
……てめえ、ここに残ってただろう怨念に何かしたか?」
ちかちかと、蛍光灯が点滅する。
大邪神ゾークの力の源は闇。それは、心の闇も含まれる。
タケモトが文に頼んで首輪を調達してもらう際に、バクラは確かに三つの遺体を見た。
ここで惨劇があったことは疑いようがない。相当な無念を遺して死んだはずだ。
しかしながら、バクラは自らの存在意義である闇をそれほど感じ取れなかった。
もし、心の闇を食べるような存在がいるとすれば……?
「ああ、もちろん。
ここに残っていた闇はきっちりと回収させて貰ったよ。
ヴィンテージものの心の闇だったね。まあ、あんな死に方をすれば当然か」
ユベルの言葉に、バクラは軽く舌打ちをする。
バクラが仕組んだとはいえ表に出てこれたのは、同じくユベルの力も回復してきたから。
映画館。三人が無念を残したまま死んだそこには、極めて濃い闇が残留していた。
それを回収したことで、大きくユベルの力は増していたのだ。
「ふん、まあいい。なら用はねえ」
「それだけかい?」
「それだけだよ。
こっちとしてはお前がその体を乗っ取って暴れられる準備をするのが主な目的だ。
取っ掛かりは与えてやったんだ、後はてめえでなんとかしな」
「ああ、そうさせてもらうよ。フフ……」
その言葉に、ガクンとキョン子の体が崩れる。
確かにマインドクラッシュは軽度のもので、すぐに精神は元に戻る。
だが一度バラバラになったものが、完全に元通りになるとは限らない。海馬がいい例だ。
また元の様に動けるようになっても、ヒビがあったり脆くなっている可能性もある。
即ち、何かの拍子にユベルがキョン子に乗っ取れる可能性も出てきたということだ。
敢えて敵に塩を送るような真似する形になったが、言うまでもなく慈善行為ではない。
ユベルをわざわざ表に引っ張り出したのは、適当な頃合でユベルと直接対決を行うため。
無論、その方法は殴り合いではない。
命を賭けた闇のデュエル。勝った方が心の闇を総取りというわけだ。
全く面倒なことになりやがったぜ……とバクラが呟くと共に、キョン子は目を覚ました。
532 :
代理:2009/08/01(土) 01:41:23 ID:4L7skI79
「……あれ? 私」
「気がついた? 君、ゲームの途中で寝ちゃったんだよ」
いけしゃあしゃあと言うバクラ。そうだっけ?とキョン子は首を傾げる。
「疲れてるんじゃないかな。少し休んだほうがいいんじゃない?」
「……まぁ、確かにろくに寝てないし、そうするかな。
まずちょっとトイレ行って来るから」
「じゃあ、売店から何かジュースでも探して持ってくる」
明るい映画館の電灯の下、バクラは廊下を歩いていった。
――悪魔は、正体がバレない限り人間に優しい顔をする。
況してや、魔神が人を騙さないはずがない。
【D-2中央/一日目・夜】
【射命丸文@東方project】
[状態]:疲労(小)、脇腹に中程度のダメージ、服がボロボロ
[装備]:七星宝剣@三国志9
[道具]:支給品一式×2(一食分食糧と水消費)、究極のコッペパン@ニコニコRPG 三国志大戦カード(不明)@三国志大戦 DMカード(不明)@遊戯王
緋想の剣@東方project、BF−疾風のゲイル@遊戯王5D's
モンスターボール(空)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況
[思考・状況]基本:一番大事なのは自分の命、次がチルノさん。後はどうでもいい。
1.とりあえずチルノさんを助けないと……
2.情報収集。自己保身を優先する。特に究極のコッペパンは絶対に自分で食べる。
3.主催者の方が強そうだったら優勝狙い、脱出できそうなら脱出狙い。それまでは2に徹する。
首輪を無力化できるかの成否次第で決める。
4.優勝狙いが確定しない限りグラハムと一緒にいてやる(ただし優勝狙いに決めたら速攻で殺す)。
5.ブロリーと出会ったら何を犠牲にしても全力で逃げる。
6.呂布を警戒。
※自分の方針を再確認しました。
※野々原渚が何らかの特殊な移動手段を持っていると考えました。
※疾風のゲイルが使えるようになるのは12時間後です。
533 :
代理:2009/08/01(土) 01:43:57 ID:4L7skI79
【チルノ@東方project】
[状態]脇腹に切り傷、疲労(極大)、気絶
[装備]バスタードチルノソード@東方project派生
[道具]支給品一式
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らないが手当たり次第倒して部下にして回る、主催を倒す
1:あたいはいったいどうなっちゃったの?
2:最強を証明する。
3:最強のあたいがみんなを守る?
4:呂布を倒して部下にする。
【備考】
※空は飛べますが体力を余計に消費します
※ビリー・レン・タケモト・ドナルドを勝手に部下にしました。
※氷符 アイシクルフォールは制限対象に入っていないようです。
弱体化してはいますが、支障なく使えます。
但しイージーモード限定です。自機狙い5way弾は出せません
※バスタードチルノソード越しに並行世界の情報を得ることで、
その世界の自分の能力を使えます。
ただし並行世界の自分の情報と混濁するため記憶障害などの負担が掛かります。
※並行世界の知識を得ましたが、一瞬触っただけのため断片的にしか得られておらず、
習得した剣技もまだ不完全です。
※少し漢字が読めるようになりました。
※微妙に知的になりました
534 :
代理:2009/08/01(土) 01:45:12 ID:4L7skI79
【D-2 映画館裏/一日目・夜】
【ドナルド組首輪解除班共通思考】
1:映画館を調査。フランは敵。
2:それと平行して首輪の解析。
【タケモト@自作の改造マリオを友人にプレイさせるシリーズ】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:アイスソード@ちっこい咲夜さん
[道具]:支給品一式、精密ドライバー@現実 野菜ジュース@ぽっぴっぽー カミーユの首輪(一部破損)
ドアラの首輪 シルバーウルフ(12/12) (予備弾188本)@フルメタル輪ゴム鉄砲 万葉丸(11/30)@零シリーズ 強姦パウダー@ニコニコRPG(4/9)ブロントさんの首輪(真っ二つ)
[思考・状況]
1:生き残り脱出する,そのためには……な……
2:大連合は組まない、最低限の人数で行動
3:施設を回って情報を集め、その真偽を見抜く
4:首輪を外せはしないと判断。無力化するための協力者を少人数集める
5:規格外の者に対抗出来るように、ある程度の戦力が欲しい
6:人の首って切りにくいんだな。落ち着けて設備のある場所で実験するか
7:誰が創造者なのか教えてやんよ
8:チルノの変な記憶とやらが気になる
9:アカギと獏良を警戒
※僧侶のネガキャンを間接的に聞きました
※ドナルドが強力な支給品を持っていると判断。持っているとは限りません。
※首輪についての情報を知りました。
※チルノの異変について気が付きました
※トキから情報を得ました
【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダム00】
[状態]:ほっぺたにビンタ痕
[装備]:ガリィ@FF11 FF?、ゴブリンバット@ニコニコRPG
[道具]:支給品一式×2(一食分食糧と水消費)、ホイールオブフォーチュン@遊戯王5D's
DMカードセット(天使のサイコロ、悪魔のサイコロ、スタープラスター)@遊戯王シリーズ
不明支給品(1つ)、ヒテンミツルギ極意書@ニコニコRPG
キッチリスコップ@さよなら絶望先生
[思考・状況]
1.フラッグ(文)に惚れた
2.フラッグを守る
3.もう自分のミスで誰かを死なせてはならない。
※参戦時期は一期終了後(刹那のエクシアと相討ちになった後)。
※キョン子、大河、羽入、アポロ、みさおと情報交換しました。
535 :
代理:2009/08/01(土) 01:46:12 ID:4L7skI79
【D-2 映画館内部/一日目・夜】
【バクラ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 】
[状態]:服に軽い汚れ、疲労(中)
[装備]:千年リング@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 毒蛾のナイフ@ドラゴンクエスト DMカードセット(翻弄するエルフの剣士、鉄の騎士ギア・フリード、)@遊☆戯☆王
普通のDMカード二枚@現実
[道具]:共通支給品、 光学迷彩スーツ@東方project(機能に支障あり)、コメント一覧@ニコニコ動画
[思考・状況]
1:ドナルド組首輪解除班として行動する。
2:脱出フラグをへし折り、参加者の心の闇を急速に増大させる。
3:タケモトが話のわかる奴でよかった。
4:誤情報を流し争いを促進する。てゐの情報、藤崎の情報など 。
5:最終的には優勝狙い。
※原作終了後(アテムが冥界に帰った後)から登場
※光学迷彩スーツが故障しました。使用者の透明化に支障はありませんが手に持った道具は消えません。(メタルギアのステルス迷彩使用時と同じ状況で、武器だけが宙に浮く状態)
※秋月律子の潰れた頭を発見しました。
※毒蛾のナイフは特徴的な傷跡を残す事に気が付きました。
※トキから情報を得ました
【キョン子@涼宮ハルヒコの憂鬱】
[状態]:健康 悲しみ、文に対する怖れ
[装備]:DMカード【ユベル】@遊戯王デュエルモンスターズ、くず鉄のかかし@遊戯王シリーズ DMカード(不明)@遊戯王
言葉のノコギリ(レザーソー)@school days
[道具]:支給品一式×3(食料、水一食分消費)、長門有希のギター、Ipod(少佐の演説の音声入り)@HELLSING
カレーセット@るろうに剣心、うまい棒セット@現実 、ピーマン@星のカービィ
アイス詰め合わせ@VOCALOID、海賊帽子@ミュージカル・テニスの王子様
カレーセット@るろうに剣心 不明支給品@1
[思考・状況]
0:うーん……疲れてるのかなぁ?
1:生きて帰りたい
2:殺し合いには乗らない
3:とりあえずグラハムさんたちと一緒にいる
4:異世界という確信を得るため情報を得る。
5:ユベルはなんで放送のこと知ってるの?
※グラハム、大河と情報交換しました。
※ 不明支給品は塩のものでした、(武器ではない?)
536 :
代理:2009/08/01(土) 01:47:23 ID:4L7skI79
【ユベルの思考・状況】
1:大好きだよ、十代……
2:十代に会うためこの世界を『愛』(苦しみと悲しみ)で満たす。
3:そのために女(キョン子)を利用し、痛みと苦しみを味あわせる。
4:彼女も誰かを愛しているのかな……?フフフ……
5:あの女(文)もちょっと面白そうだ……。
[備考]
※ 制限によりユベルは参加者の体を乗っ取ることができません。
但しキョン子の体は何かの拍子で乗っ取ることが可能かもしれません。
※参加者との会話はできますが、自分からの実体化はできません。
※ バトルロワイアルの会場を異世界の一つだと思っています。
※ 自身の効果以外で破壊された時、第2形態、第3形態に進化できるかは不明
【E-3 砂漠/一日目・夜】
【アポロ@チーターマン2】
[状態]:健康
[装備]:養由基の弓@三国志\(矢残り6本)、逆刃刀・真打@フタエノキワミ、アッー!
[道具]:共通支給品、果物ナイフ@現実
[思考・状況]
基本思考:ゲームの転覆
1:図書館に向かい、タケモトたちの仲間と合流。
2:アカギを警戒。
※羽入と蜂はDr.モービスの生物兵器だと思っています。
※新堂の死体を発見しました。みさおには伝えていません。
※羽入と軽く情報交換をしました。
【赤木しげる@闘牌伝説アカギ 闇に舞い下りた天才】
[状態]:右肩にダメージ(小)、ユベルに興味
[装備]:レイガン(12/16)@スマブラX、寝袋@現実
[道具]:支給品一式(水一食分消費)、写真(残り数枚)@心霊写真にドナルドらしきものが
DMカードセット(スピード・ウォリアー、魔法の筒、ガーゴイル・パワード)@遊戯王シリーズ
ヤンデレ妹の包丁@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ
普通のDMカード数枚@現実、折り畳み式自転車@現実、乾パン入り缶詰×3@現実
[思考・状況]
0:第4放送までに誰得の部屋まで戻りたいが、無理か。
1:図書館に向かい、美鈴とやらにフランの行動について教えてやる。
2:愛……そういう賭けも悪くない。
3:キョン子(名前は知らない)ハク(名前は知らない)アレックス(名前は知らない)もいずれ…
4:殺し合いに乗り、狂気の沙汰を楽しむ
5:主催者と命を賭けた勝負をする
6:誰得の部屋……ククク……
7:対主催組に期待
[備考]
※魔法の筒が使用できるのは2時間後。
※ルールを壊せるかもしれないという点で、誰得の部屋に興味を示しました。
537 :
代理:2009/08/01(土) 01:48:31 ID:4L7skI79
【E-2 /一日目・夜】
【フランドール・スカーレット@東方project】
【状態】:全身に拷問痕&切り傷、左肩に銃痕(大体回復)、右手が真っ二つ、足に刺し傷(大体回復)、疲労(中)
【装備】:
【持物】:基本支給品一式*2、クリムゾン(弾数0/6、予備弾12/36)@デスクリムゾン、セーブに使って良い帽子@キャプテン翼
ゼロの仮面@コードギアス、射影機(07式フィルム:28/30)@零?zero?、予備07式フィルム30枚、フランの指
【思考】歪みない生き方=今まで通りの自分の生き方をする。
0、あの白髪頭は絶対に許さない。
1、美鈴に会えたら、デパートに連れて行って壁とか山の事を調べる。
2、嫌な奴を殺す(アカギ(名前は知らない)、ブロリー)
3、嫌な奴かは話して決める。襲ってくる奴は殺す。
4、本屋にあるDMの本を読みたい。
※「ゼロの衣装セット」は仮面以外破れました。太陽に晒されれば死に至ります。
※美鈴達と情報交換をしました。
※再生はできますが、速度は遅いです。
※くず鉄のかかしの使用制限を知りました。
※フランは羽入の名前を知らず、オヤシロ様とだけしか知りません。
※クリムゾンの進化ゲージは初期値に戻りました。
※本来より速く、二、三人の殺害(もしくは死体撃ち)でゲージは最大に溜まるようです。
※自分の所為であおばシゲルが死んだことがわかっていません。
※ブロリー達の戦闘に気付きました。
※一部の壁がおかしいことに気がつきました
※山の向こうに興味を持ちました。
【BF−疾風のゲイル@遊戯王5D's】
遊戯王5D'sでクロウの扱う、鳥を基調としたモンスター・BFシリーズのうちの一枚。
攻撃力1300、守備力400のチューナーモンスター。なのでシンクロ召還が出来る。
更に自分フィールド上に「BF−疾風のゲイル」以外の「BF」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
そして1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力・守備力を半分にする事ができる。
但し能力自体は低いので、先手を取れられればスピードウォリアーにも負ける。
(参考動画)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm5850794
538 :
代理:2009/08/01(土) 01:53:30 ID:4L7skI79
これで代理投下終了です
波乱が起こると思った。戦闘があったがとりあえずはまだ協力体制継続か
でも獅子身中の虫の策動やフランがどう動くか?
投下乙&代理投下乙
ナイスな作品だぜ。
東方キャラ同士の戦闘、遊戯王闇キャラ同士の会合
さらなる一手に出るアカギ。たくさん見どころがあって飽きない展開でした
投下乙
案外死人は出なかったけど、色々と面白い展開になってきたなぁ
アドベントチルノ超強いからな
遺跡の壁とか破壊しまくりだしな
乙です!!
フランの話を美鈴が聞いたらフラン本人以上にアカギに殺意を抱いたりするんだろうか?
投下します。容量がかなりあるので支援をお願いします
これは支援せざるをえない
「残り32人……もう半数切ったのか……」
放送で右上が言った、残り半数という言葉が耳に残る。なんだか意外だった。
こんな俺でもここまで生きてこられたのだ、と無駄に誇らしい気分になってしまう。
カイトは名簿を取り出し、死者の名前に斜線を引いた。クラッシャーの名前に斜線を引いた時、心地よい達成感を感じた。
(もう、半分……もしかしたら、いけるかも……生き残れるかもしれねえ)
カイトは自嘲気味に笑う。生き残ると言うのはつまり優勝すると言う事なのだが、
そのためには兄弟やアレクのような仲間も殺さなければならない。
そんなことまで考えて、カイトが『いけるかも』と考えたのかどうかは定かではない。
(残り半分。残り半分だ。いける。きっといける。今までの俺でもここまで生き残って来れたんだ。
力を手に入れた俺なら、後半戦だってきっと……!)
辺りを見回す。そういえば、クラッシャーの死体の上半身がどこかに飛んで行ってしまっている。
出来ればリンに、今まで彼女を苦しめてきたクラッシャーの死体を見せたいと思っていたので、上半身を探す事にした。
クラッシャーの無残な姿を見た時のリンの反応が楽しみだ。きっと洗脳が解けて元のリンに戻り、感謝してくれるだろう。
本当に、楽しみだ。
▼ ▼ ▼
得体の知れないざわめきがリンの胸を焦がした。何かが、決定的な何かがつい先ほど起こった気がする。
私の知らない所で、私の知らない間にきっと何か恐ろしい出来事が起こった。間違いない。
奇妙なくらいに嫌悪感を催すその胸騒ぎは、ロードローラーで北へと走れば走るほど、一層強くリンの胸をざわめかせる。
何かが起きたのだ。リンは胸を押さえて、確信する。根拠なんて何もないが『予感』で分かる。
もうすぐ途方もない悲しみが私を襲うはずだ。
そして放送が流れる。リンは首を傾けて、夜空に浮かんだ右上の姿を涙を流しながら睨んだ。
放送が流れ終わり、リンはロードローラーを止めひとしきり泣いた。
身分の低いクラッシャーのために涙を流すなど、過去の自分からは考えられない事だった。
この殺し合いに放り込まれてから、リンの価値感は劇的に変化した。ここは誰もが同じ立場に立ち身分関係なしに殺し合う世界。
その世界でリンは痛みを知り、自分はどんな人間も逆らう事が出来ない高貴な王女などではなく、一人の娘だと言う事と
拷問されれば苦しいし、処刑されれば死んでしまう下劣な奴隷どもと自分は同じという事に気付いた。
ちっぽけな自分に気づいてからは、クラッシャーの存在がとても愛おしく思えるようになった。
気付くまでは高貴な身分であるリンを守るのは当然の事だとクラッシャーに欠片も感謝していなかった。
そうではないのだ。クラッシャーは、リンが高い身分に位置する人間だから守っていたわけではない。
リンという一人のちっぽけな娘を有り難い事に大切な存在と見なしてくれて、非力なリンを守っていたのだ。
無償で、優しく、文句を言われても決して離れずにいてくれた。
駅での戦いの間、ずっと私の事を最優先に考えていてくれた。
かつて愛しかったあの人は、早々に私を見捨てたと言うのに……
かつて王女だった少女の価値感は完全に崩壊し、残ったのは一人の娘。
死ぬ事に、苦しい事に、悲しい事に身分なんて関係ない。刺されれば痛いし、殴られたら骨が折れるし、切られれば死ぬ。
この世界はそんな世界。非力なリンが殺し合いを制する事など今考えてみれば到底出来るはずもない。
心の底から信頼出来て、頼れる存在は、レンを除くとクラッシャーしかいない。
この世界では自分を守ってくれる人間とは、当然のようにいるものではなく、代わりのきかないかけがえのない存在なのだ。
それなのに、それなのにクラッシャーは死んでしまった。勝手に私の言いつけを破って勝手に死んだ。
「どうして……!どうして私を置いて逝くのよクラッシャー……!レンとはいつまで経っても会えないし、私はこれからどうすればいいのよっ!」
ロードローラーのハンドルに顔を埋めてリンは泣き叫んだ。絶望に身を震わせ、自暴自棄になりハンドルに額を何度もぶつける。
子供のようにわんわんと泣き叫び、彼岸へと逝ってしまったクラッシャーの名前を何度も叫んだ。
助けて、助けてクラッシャー。貴方がいないと私は死んでしまう……!他の参加者達は誰も私に優しくしてくれないわ……!
貴方だけが、貴方だけが私を王女様として扱ってくれたのに────
「リ、リンか!?そこで泣いているのはリンなのか!?」
ふと気付くと、目の前にリンを見捨て、保身に走ったかつての思い人が立っていた。
リンはロードローラーの運転席に座ったまま、泣きはらした目でカイトへと視線を向けた。
「カイト様……」
未だに『様』とつけてしまったのは、単なる習慣でそう呼んでしまったのか、
それとも未だに自分はカイトの事を愛しているのか、リンにははっきりと判断できなかった。
「な、泣き声が聞こえて、もしかしたらと思って来てみたんだ。無事で良かった!本当に」
ロードローラーの正面に立って声をかける。カイトの目には涙が滲んでいた。
「本当に心配していたんだ。俺がお前を元に戻す前に、お前に死なれたらどうしようかと……俺は……俺は」
リンは何故か懐かしい気持ちになった。カイトは自分の事を思ってくれている。
今までずっと愛してきたカイト様のように、私の事を思ってくれている。
(なんだ。今まで通りじゃない。カイト様優しいし、下劣な奴隷は傍にいない)
もしかして、あの駅での一件は全て夢だったのではないだろうか……
本当はクラッシャーなんて初めからいなくて、カイト様だって本当は優しく接してくれていたのに、
私が勝手に混乱してあのような酷い妄想をしてしまったのではないだろうか……
「来てくれ、リン。お前に見せたいものがあるんだ。今までお前を苦しめ続け来た極悪人の、なれの果てを見せてやる」
カイトが歩き出す。リンは少しの間、カイトを信じていいのかどうか逡巡したが、
カイトの「来いよ!」という自信に満ちた声に押され、流されるままアクセルを軽く踏みゆっくりとカイトの後を追った。
「駅では少し情けない姿を見せちまったけど、これからは心配しなくていいぜ?
これからは俺が守ってやる。今までカッコ悪いところばっかり見せてきたけどさ、安心していい。
なんつったって俺はお前の兄ちゃんだもんな!」
違う。貴方は私の兄などではない。相変わらず私達の間には何らかの食い違いがあるようだ。
しかし、違和感こそあれど、今のカイト様の言葉には、駅の時とは違う、安心感のようなものがあった。
この人ならきっとどんな逆境にも負けない。そう感じさせるほど、今のカイト様は自信に充ち溢れている。
そんなカイト様の言葉に耳を傾けながら、私はふらふらと後を追う。
今のカイト様を見ていると、本当に駅での一件は夢だったのではないかと思えてくる。
妄想染みた馬鹿な考えだとは自分でも気づいている。けれど、本当にそう感じてしまうのだ。
カイト様が元に戻ったからなのか、あるいは駅での一件を、クラッシャーの存在をなかったことにしたいから、
私はそんな妄想に取りつかれているのかもしれない。
カイト様が先導して辿り着いた所には、三人の人間が転がっていた。
一瞬死体かと思い、ギョッとしたが、すぐにただ気絶して寝転がっているだけだと言う事に気づく。
「カイト様、いったい何があるんですか?見せたいものとは、この気絶している三人の事ですか?」
私の言葉を聞き、カイト様は僅かに顔をしかめた。
「……様をつけるのはもうやめろ」
「…………」
無言の私を放置して、カイト様はある方向へと指をさした。指示した先には、人間大の何かが二つ転がっていた。
暗くてよく分からないが、ぴくりとも動かないと言う事だけは何故か分かった。
アレを見た瞬間、なにか、とてつもなく嫌な悪寒が私の全身に走った。
「あれは何ですか?」
「……分からないのか?」
「暗くて、分かりません」
「近づいて見ればいいじゃないか」
カイト様は至極当然の事を言った。確かにその通りだが、私の体はあの物体に近づく事を何故か頑なに拒否している。
「早く見に行けよ」
カイト様が苛立ち紛れの声で私を急かす。
私はカイト様と二つの物体を何度も交互に見比べる。額には、いつの間にか汗が滲んできている。
「いや、です」
漸く絞り出した言葉。
「どうしてだ?」
「なんとなくです」
嫌だった。どうしても近づきたくなかった。あの物体の正体は何なのか、確かめる事が恐ろしかった。
「心配しなくてももう動かないよ」
「嫌……いやよ……何かいや」
私は首を振る。何度も何度も首を振る。
カイトは薄く笑った。本当に優しい笑みだった。まるで兄が妹をからかうかのような……
「お前、アレがなんなのか、実は分かってるんだろ?分かっていないふりをしているだけだ」
「…………」
「正体に気づいているけど、確認するのが怖いんだな。弱虫だ、リンは」
「…………」
「そう。御察しの通り、アレは死体だ。誰の死体だと思う?」
その言葉を聞いた途端、私の体は硬直した。死体を怖がる妹を可愛がるかのように、
カイト様はロードローラーに近づき、私に手を差し伸べた。
「怖いなら一緒に見に行こう。お前はあの死体が誰なのか確認しなければならない。
多分、確認したその時、お前の洗脳は解けて、お前は元に戻るはずだ」
カイト様は私の手を握る。これから確認する事実を予感し、恐怖で足が萎えてしまった私を強引に引っ張る。
私は引かれるがまま、ロードローラーから半ば無理やりに下ろされ、二つの死体へと引っ張られた。
「どうせ放送でもう知ってるんだろ?誰が死んだかって事を」
カイト様が私の顔を覗いてにやりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「誰があいつを殺したと思う?誰がハクとお前の仇を取ってやったと思う?アレクじゃないぜ。実は俺なんだ」
近づく。近づく。ゆっくりと、しかし確実に二つの死体へと距離を詰める。
相変わらず、私の全身はあの死体に近づく事を拒否していた。出来る事ならば一生確認したくないと思っていた。
確認さえしなければ、もしかしたら生きているかもしれない、という希望に縋る事が出来るからだ。
しかしカイト様は確認しない事を許してはくれない。私に確認する事を強いる。
全くの善意で、妹を喜ばせようと、カイト様は私にこれ以上ない苦行を強いる。
「いやよ……いやよ……いや、いやぁ」
恐怖で歯がかちかちと音をたてる。震える唇から漏れたか細い私の声は、妹を喜ばせようと躍起になっているカイト様の耳には届かない。
「いや、いや……いや」
「見ろ。クラッシャーの死体だ。アレクじゃなくて、俺がクラッシャーをぶっ殺したんだ」
その死体はクラッシャーだった。この世の時間が凍結したかのような気分に陥る。
私の顔は唖然とした表情のまま固まり、声一つ漏らす事が出来ない。
目の前の凄惨な光景、変わり果てたクラッシャーの姿が私の心と全身を揺さぶる。
クラッシャーは死んでいた。間違いなく死んでいた。カイトに殺され死んでいた。
上半身と下半身が真っ二つに別れ、それぞれ黒こげになり、クラッシャーは死んでいた。
無残にも残酷なまでに強力な力で殺されていた! カイトに────!
「上半身がどっかに飛んで行って、見失ってたんだが、
お前に上半身下半身揃ったクラッシャーの死体を見せたくて探し回ったんだよ。結構苦労したな」
「…………」
「お前に正気に戻って欲しくて俺は精一杯頑張ってこいつを殺したんだけど、
何故か知らないけどアレクの奴が訳の分からない理論で俺にキレてな。
正直、認められなくてイライラしてたんだ。でもリンは喜んでくれるよな?もう正気に戻ったよな?」
どうしてこうなった
リンは何も喋らない。カイトが一方的に話した言葉も、彼女の心をただ素通りしていくだけだった。
光の失った眼で変わり果てたクラッシャーを見下ろす。クラッシャーは動かない。どれだけ待ってももう二度と動かない。
このゲームは残酷だ。王女であり、かつて暴虐の限りを尽くした悪ノ娘ですら、バトルロワイアルに放り込まれればただの一人の少女と化す。
王女である時は庇護者など腐るほどいたが、この世界ではそうはいかない。
この世界では、慈愛と憧れの象徴であったカイトは駄目人間と化してしまい、かつての召使とはいつまで経っても再会できない。
リンにとって、この世界での唯一の庇護者はクラッシャーのみだった。そのクラッシャーは死んでしまった。
かつての思い人によって殺された。無残に、呆気なく、理不尽に……
▼ ▼ ▼
ゆっくりと瞼を開く。どうやら俺は気絶してしまっていたらしい。
いったい何があったのだろうか。トキがカイトに何かしようとするのを止めようとして、それから……
どうも記憶が曖昧だ。何かが起こり、自分は気絶してしまったのだが……
覚醒しつつある意識と並行して、不明瞭だった視界も次第にはっきりしてくる。
目の前に広がる凄惨な光景を目の当たりにして、俺は言葉を失った。
人が沢山転がっている。見覚えのない人間達。その中にトキが含まれているのに気付いた時、俺はますます混乱した。
しかし、そんな混乱をさらに上塗りするような、吐き気を催す光景に俺は気付いた。
転がった人間達のちょうど真ん中のあたり、トキの死体のすぐ傍に、カイトとリン、そしてクラッシャーの死体があった。
「どうしたんだよ、リン。見ろ!クラッシャーは死んだんだ!もうお前を困らせる奴はいない!
洗脳は解けたよな?何か喋ってくれよ……頼むから、頼むから喋ってくれよ!」
リンの肩を強く掴んで、必死に呼びかけるカイト。カイトはリンの不穏な様子に不安と焦燥を感じ、泣きそうになっていた。
やってしまったか……。俺はその光景を見ただけで、カイトが何をしたのか容易に想像が出来た。
無知とは罪なものだ、俺はどこか他人事のような気持で呟く。
立ちあがって、カイト達の元へ向かわなければならない。トキが何故死んだのか、俺のすぐ傍で気絶している男女はいったい何者なのか。
気になる事は沢山あるが、今何よりも最優先すべきなのは、カイトとリンを落ち着かせる事だ。
俺は倦怠感漂う体に鞭を入れ、立ち上がろうとするが、思うようにいかない。どうやら俺は脳を揺さぶられて気絶したらしい。
思うように力が入らず、そして頭が働かない。とにかくカイトの所に向かいたい。
その思いをばねにして、俺はやっとの事で立ち上がり、二人の元へととぼとぼと歩み寄る。
カイト、声を出して呼びかけたが、小さな声しか出ない。全身が鉛のように重い。近づくだけで精いっぱいだ。
「なあリン! リン!どうしたんだよいったい!」
リンの肩を揺さぶりながら、カイトは必死に叫んだ。リンの目に光がない。
底なし沼のような深い虚無を携えたその瞳が、俺の目に留まった。かつてないほどにリンは傷ついている。
俺の想像が及ばないくらいに、リンの心は深く抉られてしまったようだ。
「なんでだよ……クラッシャーを殺せば元に戻るんじゃないのか……?
どうして、どうして……」
カイトは頭を抱えている。その時、リンが小さく呟いた。
「クラッシャー……」
リンのか細い声を聞き、カイトはわなわなと震え、呆然とした顔をクラッシャーへと向ける。
リンとクラッシャーを何度も交互に凝視し、何を思ったのか、カイトはクラッシャーの死体を踏みつけ始めた。
「…………ひっ!!」
リンが短い悲鳴を上げたのを無視して、カイトはクラッシャーを何度も何度も踏みつけた。
「こいつが!!こいつが全部悪い!!死んでからもリンを洗脳し続けやがる!!
さっさと堕ちろ!!地獄に堕ちろ!!」
「やめて……お願いだからやめて……もう許してあげて下さい……!」
リンがカイトの体に飛びつき必死に止めようとするが、たかが少女が成人男性であるカイトを止められるはずがなかった。
カイトが上半身を振るうと、リンは簡単に跳ね飛ばされ、地面にべしゃりと叩きつけられる。
「どうだ!!思い知ったかクラッシャー!!くたばれ!!もっとくたばれ!!永遠に死ね!!
いい加減リンに纏わりつくのはやめろ!!」
どうしてこうなった
跳ね飛ばされたリンはすぐに立ち上がる。泥だらけになっても構わず、再びカイトに飛びついた。
しかしまたもや跳ね飛ばされる。それでもリンはクラッシャーの死体を守るために立ち上がる。
何度も何度もカイトの邪魔をして、その度に跳ね飛ばされ、彼女の体は泥泥に汚れた。
「いい加減にしろ……!いい加減にしろカイトォォ……!」
俺は今出せる最大の音量の声でカイトに呼びかける。
しかし声は届かない。脳震盪によって力が入らない全身を、俺は心の底から恨めしく思った。
「もうやめてあげて────お願い、お願いしますから……」
リンがカイトの一瞬の隙を突き、カイトとクラッシャーの間に潜り込んだ。
クラッシャーの死体の上に覆いかぶさり、クラッシャーの盾となる。
カイトは顔を歪ませ、リンを睨んだ。
「やめろ……!クラッシャーを守るなんてやめろ……!
そいつは悪い奴だったんだろう?人を殺してお前を誑かした悪人じゃねえか……
どうしてそんな屑を守るんだよ。お前がそんな事したら、俺の方が悪者みたいじゃねえか……!」
やめてくれ、やめてくれと言いながら、カイトはリンの服を掴み、クラッシャーから引きはがそうとする。
しかし、リンはクラッシャーの死体に必死に抱きつき、離れようとしない。
「カイト……」
俺はカイトのすぐ後ろから声をかける。カイトはぴたりと動きを止め、どうしてもクラッシャーから離れないリンから手を離し、後ろを振り向く。
カイトの顔は不安と焦燥と後悔で、ぐちゃぐちゃに歪んでいた。元の整った顔立ちの面影はどこにも見られない。
「なんだ、起きてたのかよアレク」
今にも壊れてしまいそうな顔をしていながら、俺に対しては未だに強気だ。
カイトは虚勢を張っている。俺はすぐに気付いた。
「素っ込んでろよ雑魚が……!今から俺がリンを元に戻すんだ。クラッシャーから救うんだよ。
こんなところでしゃしゃり出て、邪魔するんじゃねぇ!」
カイトは啖呵を切りながら、俺を間近から睨みつける。俺はふらふらする体に精一杯力を込めて、声を出す。
「目を覚ませ……何度も言ってるだろうが。クラッシャーはリンの味方だったんだ……
クラッシャーが死んで、リンが悲しむのは当り前だろう……?
現実から目を離すな……!逃げるな……!自分の過ちを認めてしまえ……!」
俺はカイトの頬を平手打ちした。パン、という乾いた音が響く。
「てめえ……!」
その直後、俺の腹に衝撃が走る。カイトに思い切り殴られたのだ。俺を嗚咽の声を上げる。
カイトは変身を解いている。しかし生身とはいえ、重傷の、そして無抵抗の俺にとって、カイトの拳は酷くきいた。
ごほごほと咳きこみ、酷い吐き気を感じた。立つのは到底無理だった。その場に中腰になって、必死に腹を押さえる。
痛い。苦しい……畜生、俺はいつもこんなんだ。土壇場になるといつも駄目なんだ、俺は……。
「お、俺が現実逃避しているだと……そんな馬鹿な事があるかよ。俺は何も間違ってなんかいないんだ」
「クラッシャー……クラッシャー……」
カイトの目に、涙を流しながらクラッシャーの死体を抱きしめるリンの姿が目に留まった。
俺はやばい、と直感した。
カイトがライダーへと変身し、リンの体を蹴りあげる。
リンの体は紙屑のように宙を舞い、クラッシャーから離れそして地面に激突する。
どうやら腹を蹴られたようだ。青い顔をして、リンは胃の中のモノを吐瀉した。がはがはと咳きこみながら、全て吐瀉する。
鼻からも吐瀉物が飛び出している。彼女の顔立ちもまた、カイトと同じようにかつての面影を残していない。
カイトはリンが離れたクラッシャーの死体に向けて、殺した時と同じように火炎放射を放った。
「あ、、ああああああああああああああああああああああああ!!!」
リンが悲鳴を上げながら、燃え盛るクラッシャーへと這って近づく。
「カイト……やめてくれカイト……」
俺に出来る事はただカイトへと制止の言葉を叫ぶだけだった。
支援
燃えるクラッシャーの体へ飛びこもうとするリンを、カイトは襟首を掴んで引きとめる。
カイトの制止を引きはがそうと必死に暴れ回り、子供のように恥も外聞も気にしない様子で泣き叫んでいる。
時折クラッシャーという言葉が聞こえてくるが、それを除けば、彼女の叫び声のほとんどが理解不能の獣のような唸り声だった。
リンは壊れてしまうのだろうか。このままでは、実の兄の善意によって、彼女は壊されてしまう。
「どうだ!これで元に戻ったか!?いつものリンに戻ってくれるか!?」
「やめてくれ、カイト……もう充分だろう……?まだ暴れ足りないのか……!」
俺は苦しみで喘ぎながら、燃え盛るクラッシャーの前に佇むカイトに声をかける。
カイトは返事を返さない。ただ黙ってクラッシャーを見ている。
俺は暴れ回るリンをカイトの手から奪い、抑え込む。このままでは自分から炎の中に飛び込んでしまう。
「クラッシャー!クラッシャー!!」
がっちりと抑えつけられたリンは身動き一つとれない。
それでも相変わらず暴れ回り、クラッシャーの名前を叫んでいる。
「カイト……!クラッシャーの死体を燃やして、何か好転したか!?」
「…………」
「自分の過ちを認める事は、何も恥ずかしい事なんかじゃない!」
カイトは黙っている。じっとクラッシャーを見つめている。
「やめて……許してあげて……」
カイトはクラッシャーから目を離し、光を失った眼で静かに呟くリンを凝視した。
放心した表情から、さらに血の気が消える。カイトの目から力が消え、ライダーの状態から普通の状態へと戻る。
カイトは両膝を付いて、項垂れる。どうやら気づいたようだ。
クラッシャーを殺しても、彼の死体を燃やしても、リンはカイトの知っているリンに戻らなかった。
そしてリンは相変わらずクラッシャーを慕い、リンのためを思って行動しているカイトに、悪魔を見るような視線を向ける。
さすがのカイトも気付いたようだ。リンにとってクラッシャーは大切な人だったと言う事。
カイトがクラッシャーを殺した直後にした俺の話は、怒りに任せて否定していいような、そんな軽々しい話ではなかったと言う事。
あいつは俺にも勝る力を手に入れ、正義の力を手に入れたと錯覚し、自分の全てが正当化されたような心地に陥っていた。
クラッシャーを殺す事も正義。自分の全てが正義。俺のように、異議を唱える者は悪。
自分が正義などではなく、クラッシャーがリンを洗脳しているなどという話は全て自分の思い込みだったと言う事を自覚した時、
カイトは地面に手を付き、項垂れ、大粒の涙を落した。
カイトは何も変わっていなかった。自分の事をヒーローだと錯覚していただけなのだ。
夕日が落ち、辺りに夜の帳が下りる。俺は項垂れているカイトをひとまず放置して、リンの介抱を行った。
リンの顔に着いた吐瀉物や泥をペットボトルの水で洗い流す。その間、リンはずっと無言だった。
目の焦点が合っていない。一連の悲劇に、放心してしまっているようだ。このまま壊れてしまわなければいいが……
俺は悪い予感を無理やり拭い捨てて、ペットボトルの水を飲む。
地面に座り込み、リンと同じように放心しているカイトに目をやる。
俺にはカイトを正気に戻す義務がある。ハクやクラッシャーが死に、
リンやカイトが傷つくのを今まで目の前で見てきたにも拘らず、俺は何も出来なかった。
このままではまさに、いつかカイトに言われた役立たずのヒーローになってしまう。
俺は死んだハクが為そうとした事の続きを、俺の手で成し遂げたい。カイトに勇気を授けてやりたい。
何故なら俺はヒーローだからだ。ハクにもカイトにも、かつて俺はヒーローと呼ばれた。
本物のヒーローなら、カイトに勇気を授けてやる事だって、きっと出来る。
薄暗闇の中、燃え盛る死体が爛々と輝く。夕暮れ特有の涼やかな風が背中を流れたが、心地よさはない。
正面にあるクラッシャーの死体から感じる熱気が、心地よさの全てを奪い去っている。
カイトはひたすら沈黙を保っている。ここまで大暴れしたが、リンは何も変わらなかった。
この結果を見て、カイトが何を思っているのか、俺には想像できなかった。
ヘタレ支援
支援
「お前が何を思い、クラッシャーを殺したのかはよく分かっているつもりだ」
俺はぽつりと話を切り出す。カイトが聞いているのかどうかは分からないが……とにかく落ち着いた声を出そうと努めた。
「お前はただ、リンと自分を救いたかっただけなんだ」
「……お前がクラッシャーを殺した直後、お前の事を頭ごなしに悪いと言ったのは本当に後悔している。
お前がクラッシャーを殺害したのは、事態が好転すると思って、良かれと思ってやった事だ」
しばらくの間、沈黙し続けたカイトだが、俺の言葉を聞いた後、小さく「そうさ」と呟いた。
「全部良い事と思ってやったんだよ。クラッシャーは悪者だと信じたかったんだ。
クラッシャーを殺せばリンは元に戻る、危険人物も減る、そう信じ込みたかったんだよ。
そう信じて俺は暴れた。力を手に入れた時は本当に嬉しかった。
クラッシャーを殺した時は何かをやり遂げたかのような気持ちのいい達成感を感じた。俺は……」
俺は溜息をつく。カイトの体が、なんだかいつもよりとても小さくなっているように見えた。そして俺は口を開く。
「……クラッシャーは悪、自分は正義。お前はそう信じ込んで暴れたわけだ」
「そうだ。だが、事態はそんな善悪の二層構造なんかじゃなかった。そんな単純なものではなかった」
「違う……!クラッシャーは悪人じゃないわ……あんたが悪よ。悪悪悪悪……!信じられない、あんな酷い事……!」
リンが焦点の合っていない眼をカイトの背中に向けて、罵る。カイトの背中が、ますます小さくなる。
クラッシャーを殺し時の、俺を罵っていた時のかつての威勢は感じられない。
「そうさ。リンの言うとおり、見方を変えれば俺の方が悪人だったんだ!
なんつったってクラッシャーはリンの事を守っていたんだからな! しかもアレクの話からすると、
クラッシャーは改心の余地ありだったらしいじゃねえか。こいつにとって、俺が正義であるはずがない!」
「その通りだ。お前は正義の味方なんかじゃない。だが、反対にお前を悪と厳密に決める事も出来ない。
お前はなんといっても、殺し合いに乗った危険人物の一人を排除したのだから……」
カイトは涙こそ流していないようだが、背中からは、これ以上ないほどの悲しみが感じられた。
「リン……お前はクラッシャーに洗脳されていたわけじゃないのか?」
ぽつりと言ったが、リンはカイトの事をひたすら罵り、時折クラッャーを懐古して悲しむばかりで、質問に答えようとはしない。
「どうしてクラッシャーがこんな目にあわないといけないの?どうしてクラッシャーが殺されなきゃいけないの?
どうして私からクラッシャーを奪うの?どうしてどうしてどうしてどうして────」
狂ったように同じ言葉を繰り返すリンを、固く抱きしめた。リンはもう暴れていない。
深く深く傷つけられたリンの事が、どうしようもなく哀れに思えて、とてもとてもやるせない。
「……お前とリンの話に食い違いが生じるのは、洗脳だとかそういう特殊なものじゃなくて、
ただ単にリンがお前の知っているリンじゃないと言う事なんじゃないか……?」
「どういう意味だ……」
「同姓同名のよく似た他人……いや、それだとリンがカイトを『様』付けして慕うのはおかしいな……」
「…………わかんねえ。どうしてリンはこうなったんだ……?」
「あんたの、方こそよ……」
リンの目に僅かに力が戻り、強烈な憎悪をこめてカイトを睨む。
「どうして貴方はそんなに駄目なの?どうしてそんなにクズになってしまったの?
かつての貴方はどこに行ってしまったのよ……優しくて勇敢で完璧だったカイト様はどこに消えたのよ!返してよ!」
リンの言葉は、何故か俺の胸にまで突き刺さった。罵られている本人はもっと深く傷ついただろう。
「わかんねえよ……もう自分が分からない。どうして俺はこんなにクズ野郎なんだ?俺は普段からこんな奴だったのか?
クズで卑怯で臆病で、俺は本当にどうしようもない奴だ……これが俺の本性なのか……?」
一陣の風が吹き、クラッシャーの死体の炎を一瞬だけかき消した。
炎から垣間見えたクラッシャーの死体は、すでに真黒に炭化していた。
カイトの問いかけに応えてやる事が出来ない。辺りはしんと静まりかえり、死体が燻る音だけが響く。
どうしてこうなったのだろう。誰が悪いのかと言えば、勿論主催者なのだが……
俺達はこの惨劇を食い止める手段がどこかにあったのではないか?
俺がもっと頑張っていれば、こんな事にはならなかったではないか……
今回の惨劇を生み出したのは、リンを傷つけたのは、紛れもなくカイトだ。俺がなんとかすれば止められたかもしれないが、今回は無理だった。
カイトが精神的に復活しなければ、どうしようもない。
「誰だって死ぬ事は怖い。肉体的な意味でも、精神的な意味でも……
だから人は自分の身を守るし、自分の心を守るために、自分を正当化しようとする。
カイト、お前はそれが、自分を正当化しようとする心の働きが、特に顕著だったんだよ。
言っちゃ悪いがお前は臆病者だ。だから……な」
カイトは反論一つせず、俺の話に耳を傾けている。
「だが、どんな臆病者でもヘタレでも、成長できる可能性はあるはずだ。
いや、例え可能性がなくても、俺がお前を成長させてやる。お前を勇敢にさせてみせる。
ハクが生きていたら、きっとお前を見捨てはしないだろう。同じように、俺もお前を見捨てない」
死体の炎が燻り、火力が次第に弱まっていく。カイトは項垂れたまま、何も反応しない。
俺の言葉を聞いているのか聞いていないのか、はっきりしない。
「自分の気持ちに正直になれ。リンとクラッシャーに対して、何か思う事があるはずだ。
俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている。妹のために殺人鬼に立ち向かう兄などそういない。
だからこそ、自分の本当の気持ちに気づいてほしい。実は後悔しているんだろ……?
────リンに謝れ。クラッシャーを殺してすまないと、心の底から謝罪しろ」
俺の声が虚空に空しく響く。カイトは無反応だ。辺りは静まり返っている。
リンの涙ぐむ声を除くと、辺りは静まり返っている。俺、カイト、リン、三人が三人ともどこか空虚な気分だった。
やるだけやって、これ以上なくらいに悲しい気持ちになって、もうどうでもいい。
ついそんな、投げやりな気分になってしまう。どうしてこうなったんだ。俺は、俺達はどこで道を間違えた……
カイトがゆっくりと立ち上がり、俺の方へと顔を向ける。
悲しみと屈辱と後悔にまみれたカイトの表情は、見るに堪えないものだった。
「俺は……俺は悪くない!」
「まだ、言うのか……確かにお前だけが悪かったわけじゃない。だが、リンには謝れ」
「俺は悪くない。悪くないんだ!仕方がなかったんだ……」
「カイト!」
般若のように顔を醜くしかめながら、カイトは必死に主張した。本当に、どうしようもなく弱い男だ……
「謝ってくれなくても結構ですわ」
「リン……何を……」
リンがぎらついた眼をカイトに向ける。
「そんな見え透いた見当違いな謝罪、そんなものはいらない。
どれだけあんたが謝っても、クラッシャーはもう二度と帰って来ないのよ!」
「リン……し、仕方がなかったって言う事が分からないのかよ!俺にどうしろっていうんだよ!」
「もう消えてよ!あんたなんかもう二度と見たくない!消えて!二度と私の前に現れないで!」
「おい、リン……」
カイトの顔がさらに歪んだ。
「何よ……あんたって本当に口だけ。口では私の事を大切に思ってるだとか、自分は兄だから守るのは当たり前だ、
なんて言っておきながら、土壇場になったらあんたはいつも逃げるじゃない!いつも私を見捨ててばっかり!
その上、私があんたの思う通りに動かなかったら、構わず私を殴るじゃない!蹴るじゃない!
その点、クラッシャーはそんな事しなかった!いつも私を第一に考えてくれた!」
リンは罵りながら、カイトに掴みかかろうとする。俺は何とか、寸前のところでリンを止めた。
「もうやめろリン!」
叫ぶ。だが、リンの罵りは止まらない。カイトは何も口が出せないでいる。ただ、わなわなと震えているだけだ。
「どうしてクラッシャーが死んであんたみたいなクズが生き残ってるの!?生きていて恥ずかしくないの!?
クラッシャーに申し訳ないと思わないの!?クラッシャーに殺されれば良かったのに!」
「あ、ああああああ……アレク、俺はどうすれば……どうすればいいんだ……どうすれば!!」
リンの一言がトドメだった。カイトは痙攣をおこしたかのようにわなわなと震え、地面に四つん這いになる。
その間もリンはカイトに向かって消えろ!と繰り返し叫んでいる。
「謝れ!何でもいいからさっさと謝っちまえ!!許してくれるまでリンに謝り続けるんだ!!」
カイトの心に積もりに積もった罪悪感は、ついにここで決壊する。
その時、カイトは思い切り吐いた。吐瀉物には血が混じっている。
呻きながら、涙を流しながら全てを吐き出すカイトに、リンは驚いたのだろうか、沈黙する。
あり得ない量を吐き終えたカイトは地面に頭をぶつけ始める。何度も何度も執拗に頭をぶつけ、ついに額から出血した。
────壊れてしまった!
目の前の光景を見て、俺はそう直感した。
「カイト!カイトォォ!!」
「リ…ン。俺が悪い!俺が悪いんだ!!」
「やめろ!」
俺はリンの傍から離れ、頭を打ち続けるカイトを止めに入る。
「もう嫌だ……どうしてこうなったんだ……どうしてこんなに悪い事ばかり起こるんだ」
「カイト!悪いのは主催者なんだ!気をしっかり持て!お前は悪くないんだ!」
このままでは取り返しがつかなくなってしまう。お互いがお互いを憎み、また死人が出てしまう。
この状況を、右上や左上は楽しそうに見ているのだろうか。そう考えると本当に腹が立った。
「クラッシャー!ああ、ここにいたのねクラッシャー!」
リンが地面に落ちている刀を拾い、相変わらず焦点の定まっていない眼で凝視している。
訳の分からない光景に、俺とカイトは目を疑った。
「何を、しているんだリン」
「ああああああああああ……!クラッシャ……ああああ」
奇声を上げて刀を抱きしめるリン。かろうじてクラッシャーという単語だけは聞きとれる。
よくよく刀を見てみると、ある事に気づく。あれはクラッシャーが愛用していた刀だ。
まさかリンはあの刀をクラッシャーと錯覚しているのか?そんな馬鹿な話、本当にあり得るのか?
「どうしてなんだよ……ああ、どうして俺はこうも馬鹿なんだよ!畜生」
「そうよ。レンを見つけるのよクラッシャー。クラッシャー!早くあのバカな召使を探しなさい!
こんなになるまで私をどうして放っておいたのよ」
「お前ら落ち着け!!!」
リンとカイトはそれぞれ独り言を叫んでいる。生憎俺の体は一つだ。
どちらか一方しか止める事が出来ない。俺一人ではこのカオス過ぎる状況を鎮静させ事は出来ない。
「レン……助けてレン……クラッシャーが死んでしまったわ……」
リンがぶつぶつ言いながら、ロードローラーに向かって歩いていく。
俺はカイトから離れ、リンの前に立ちふさがる。
「何をする気だ」
「レン……」
支援
支援
支援
俺の横を通り過ぎようとするリンの肩を、俺は掴む。
「レンを探したいのか?だったら俺とカイトが手伝ってやる。だからどこにも行くな。一人で行動するのは危ないだろう?」
「はなしてよ……あんた達と一緒に行動するなんて、死んでも嫌……
あんたもカイトと同類よ。駅でクラッシャーを痛めつけたのはあんたでしょ……」
俺は無言でリンの肩を掴み続ける。リンの暗い目が俺を睨みつけた。
その瞬間、リンの持つ刀が死体の燻る炎を受けて、赤く煌めいた。
リンが思いきり振り回した刀を俺はぎりぎりのところで回避する。
クソ……!結局こうなってしまうのか……
「ジョセフィーヌ!!行くわよ!」
リンはそう叫ぶとロードローラーに向かって走る。俺は追いかけたが、リンの方が明らかにロードローラーに近い。
リンはすぐにロードローラーに飛び乗り、エンジンをかける。俺もまた全力で走り、ロードローラーに飛びつく。
「やめろ!落ち着け!」
「来ないで!」
俺は車体の上に立ち、座席に座るリンへと手を伸ばす。
その時、恐ろしい衝撃が俺を襲った。ロードローラーがあり得ない急発進をしたのだ。
恐ろしい勢いで加速するロードローラーのスピードによって、俺はバランスを崩す。
リンはと言うと、しっかりと座席に座り、シートベルトまで着けているので、バランスを崩した様子など全くない。
どう見ても14歳そこそこの少女にしか見えないのに、どうしてこんな神がかった運転テクニックを持っているんだ。
あまりにも理不尽だ。馬鹿げている。ロードローラーに必死にしがみ付き、俺は運転を止めさせようと再びリンへと手を伸ばす。
事態はどうしても俺が思ったように動いてくれないらしい。リンがハンドルから片手を離し、その片手に刀を握りしめ、
振り向きざまに突き刺してきたのだ。バランスを取るのに必死な俺はその刀を避ける事が出来なかった。
俺の腹に深々と刀が突き刺さり、激痛が走る。俺は痛みによって呻き声をあげ、思わずバランスを崩す。
バランスが崩れたその瞬間を狙って、リンはハンドルを思い切り右へと切った。
がくんと車体が傾き、俺の体はロードローラーから吹き飛ばされる。
地面に激しく激突。ロードローラーを睨んだが、すぐに夜の闇の中に消えていってしまった。
腹から激しく出血している。真っ赤な血が地面を濡らしていく。あまりの激痛に、俺は意識を失いそうになる。
このままでは間違いなく死んでしまう。両手を使って患部を抑え、出血を防ごうとしたが、ほとんど意味がない。
早く治療しなければ、冗談抜きにヤバい。
「畜生……どうしていつもいつも上手くいかないんだ……」
ハクの時もクラッシャーの時もそして今回も、カイトと出会ってから俺はいつもいつも状況に流されているだけのような気がする。
物語のヒーローのように、ピンチを一気に挽回出来るような目覚ましい活躍など出来た覚えがない。
ただ道化のように、その場の状況を改善できないまま右往左往しているだけだ。
ハクやカイトにヒーローと言われたが、はたして俺は本当にヒーローなのか?
カイトの元へと歩きながら戻る。今のカイトを一人にするわけにはいかない。
両手で傷口を塞いでも、出血は完全には止まらない。
出血のせいだろうか、酷く喉が渇く。俺はデイパックから水を取り出し、がぶ飲みした。
俺はもう、長くないのかもしれない……
「知らねえよ。俺が目覚めた時にはもう誰もいなかったぜ?」
「嘘をついてるわけじゃないだろうな……」
「嘘をついて何の意味があるんだよ。俺だってそいつに、カイトだっけか、一つ聞きたい事があるんだ。
いたら問答無用で捕まえてたさ」
トキやクラッシャーの死体が転がる場所に戻った頃には、すでにカイトの姿はなかった。
代わりに左之助という、気絶していた男が目覚めていた。カイトの行方を尋ねると、知らないとの事。
左之助が嘘をついていないのなら、どうやらカイトは左之助が目覚める前にここを去ったという事らしいが……
支援
どうして勝手にどこかに行くんだ……今度はいったい何なんだ?
「くそ……!くそ!くそっ!どうして思うようにいかないんだ!なんなんだ畜生!」
上手くいかない運命を罵る。どうしようもない無力感を感じて、辛かった。
「ずいぶんとそいつを心配しているらしいが、お前はカイトって奴とどういう関係なんだ?」
「…………」
左之助の質問に、即座に答える事が出来なかった。カイトに出会ってから一日も経っていないのだが、
いつの間にか、一言で答えられるほど簡潔な関係ではなくなっている。
「唯の腐れ縁だ……」
しばらく考えてから、俺はそう答えた。左之助はどうでも良さそうにしている。
「ほらよ」
カイトが、腰に巻いているサラシを外して、俺に渡してきた。
「それで腹の傷を塞げ。まあ、ないよりはマシだろ。滅茶苦茶バイ菌塗れだろうけど気にすんな」
俺は左之助に礼を言った。ぶっきらぼうな男だが、悪い人間ではないようだ。
左之助の人間性を信じて、俺は一つ頼み事をしてみる。
「良かったら、カイトを探すのを手伝ってくれないか?彼女が目覚めるのを待ってからでも、構わないから」
「別に断る理由なんかねぇ、んだが。お前、ここで何が起こったのか気にならないのか?あの白髪の死体、見覚えあるだろ?」
俺はぴたりと挙動を止める。そういえば、どうしてトキは死んでしまったのだろう。
今までカイトやリンの事で手いっぱいで、頭が回らなかった。
「カイトって奴の事をそんなに優先するなら、あえて語らないってのもありなんだがな……
あ、これだけは謝っとくけどお前を殴って気絶させたのは俺だ。悪いな」
全然悪びれていない。この男は謝罪の仕方を知っているのか?
「いや、済んだ事だし、別にいいさ。それよりも、ここで何があったのか教えて欲しい」
「ずっと気絶していたお前が知らないの当然の話だ。この白髪野郎、名前はトキって言うんだが……
こいつを殺した犯人は────カイトだ」
俺の喉はからからに乾いた。大量に失血しているからなのかもしれないが、原因はそれだけではない。
カイトが、トキを殺した……?
▼ ▼ ▼
「ジョセフィーヌ……もっと速く。もっともっと速く。いい子ね、ジョセフィーヌ」
ジョセフィーヌとは、リンが王女様だった頃、飼っていた愛馬の名前。
ロードローラーを、何を思ったのか彼女はジョセフィーヌと呼んでいる。
無骨なロードローラーを愛馬と見間違えるような人間は、はたしているのだろうか。
助手席には、クラッシャーが愛用していた無限刃を立てかけてある。
「ジョセフィーヌ……ジョセフィーヌ……クラッシャー…………」
ブレーキを踏む。無骨な車体が軋んで、そしてやがて止まる。リンは刀に手を伸ばし、悲しみを帯びた目で、それを見つめた。
「クラッシャー、これからどうしよう……これから……」
リンは涙を流す。もうどうしようもない事は、自分でも気づいている。
自分は王女なんかではない。一人では生きられない、そこらの奴隷と同じなのだ。
「助けて、助けてクラッシャー……!」
刀をクラッシャーと見立てているのも、ロードローラーを自分の愛馬に見立てているのも、別にリンが狂ったからしているわけではない。
クラッシャーも愛馬も傍に居る。いざとなったらクラッシャーが助けてくれる。ジョセフィーヌがいるから寂しくない。
無理やりそう錯覚して自分を安心させなければ、怖くて怖くて、不安で不安でどうしようもない。
本当は愛馬もクラッシャーもここにはいない事なんて分かっている。だが、頼れる者がいなければ、リンは何も出来ないのだ。
仮初めでもいいから、庇護者が欲しい。だから自分の想像力を使って強引に作り出し、リンは自分で自分を慰める。
SIEN
支援
支援
支援
「レン……レンに会いたい。クラッシャーは死んだ。クズはもう駄目……」
カイトに関しては、もう完全に諦めがついた。二度と会いたくない。名前を聞く事すら不快だった。
となると、やはり信頼出来て頼れる人間は、もうリン以外にいない。
「レン……助けてレン……お願いだから私を見捨てないで……!
こんなところで、奴隷のように無残に死ぬなんて……私は絶対に嫌……!」
リンは呪文のようにぶつぶつと呟くながら、首に巻いていた本物のカイトのマフラーを憎々しげに投げ捨てる。
マフラーはロードローラーのタイヤに巻き込まれ、耳障りな音を立てて引き裂かれた。
「助けてレン……死にたくない……」
【C-4/一日目・夜/】
【鏡音リン@VOCALOID2(悪ノ娘仕様)】
【状態】健康、軽度の疲労、右腕骨折(応急手当済み)、悲しみ、極度の精神的疲労
【装備】ロードローラー@ぶっちぎりにしてあげる♪、無限刃@るろうに剣心
【持物】基本支給品、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、KAITOのマフラー@VOCALOID、不明支給品0〜1
【思考・行動】
基本思考:レンを見つけて守って貰う
1、レンを探す
2、ロードローラーに一目惚れ。
3、バトルロワイアルに恐怖。元の世界に帰りたい
※色々と現実逃避しています
アレックスがリンの操るロードローラーに飛び乗り、闇の中へ消えていったすぐ後、
カイトはおもむろに立ち上がり、ふらふらと歩き始めた。どこに行くかなど考えていない。
ただ、一人になりたくて、ぶらぶら歩いていれば心が落ち着くのではないかと浅はかにも考えて、
それで死体や気絶している者が転がっている場所から離れたのだ。
(どうしてこうなった。どうしてこうなったんだ……)
クラッシャーとの因縁は案外深い。カイトがクラッシャーと始めて出会ったのは、殺し合いが始まって間もない頃だった。
あの時逃げなければ、はっぱ隊員を見捨てずに一緒にクラッシャーと戦い、殺してしまえばこうはならなかったのかもしれない。
そうすればリンはクラッシャーと出会う事はなかった。リンにあそこまで嫌悪される事もなかった。
(どうして俺はあの時逃げたんだ……思えばあの時、奴を殺しさえしていれば……)
あの時殺していれば、リンとクラッシャーが組む事もなかっただろう。
リンとクラッシャーが親密な関係になる事もなかったし、駅での一件も起こらなかった。
カイトがクラッシャーを殺していれば、ハクもまた、死なないで済んだはずだ。
アレックスだって、あそこまで傷つく事もなかっただろう。
カイトはどうしようもなく無念な気持ちになって、足を止め、地面に座り込んだ。
こうやって、自分の不甲斐なさに絶望するのはいったい何度目だろう。
その度に、自分の行動を猛烈に後悔するのだが、いくら後悔してもカイトは変わらなかった。
変われない自分がどうしても嫌で嫌でたまらなかったが、カイトにはどうする事も出来ない。
(どうして俺はあそこで逃げてしまったんだろう?)
夜空を見上げ、ぼんやりと考える。あの時逃げたのは、単純に死ぬのが恐ろしかったからだ。
本当に唯それだけ。はっぱ隊員を見捨てる訳にはいかないだとか、殺し合いに乗っている者を放置するわけにはいかない、
なんて考えは全く浮かんでこなかった。ただ、恐ろしかった。本当に恐ろしかっただけなのだ。
(どうして俺は隊員と一緒に戦わなかったんだろう。
俺は拳銃を持っていたじゃないか。どうして使わなかったんだ。どうして勇気を持てなかったんだ?)
あそこでクラッシャーを殺していれば、何もかもが上手くいっていたかもしれない。
そう思い始めると、身を焦がすような後悔が、カイトの心に重く落ちた。
(隊員も、ハクも死ななかったはずだ。リンにも、アレクにも嫌悪されなかったはずだ。
なんだよ……結局全部自業自得じゃないか。俺が初めてクラッシャーに出会った時に、勇気を見せずに逃げた結果がこれだ)
支援
支援
(全部全部、俺が悪い。それなのに俺は力を手に入れてから図に乗って、ついさっきまで正義面してきたんだな……
挙句の果てに、リンまで傷つけてしまって……リンの言うとおりだ。俺は口だけで、リンを本当に守ってやった事なんて一度もない。
俺なんかよりクラッシャーの方が遥かに立派だ……)
だが……、とカイトは思う。過去の自分の過ちが元になって、今までの惨劇は引き起こされたという事は、納得出来る。
自分が悪い、自業自得だったという事は認めざるを得ない。しかし、カイトにはどうしても納得出来ない事があった。
(そんなに悪い事なのか……? 勇気を発揮できずに、殺人鬼から逃げる事が、そんなに悪い事なのか?
俺の過ちは、ハクも隊員もリンもアレクも傷つけるような悪い事だったのか……?
それほどまでに俺の犯した罪は重いのか……?)
ふと、腰に巻いたブレイバックルに目が映る。悲劇の大元の原因はカイトが一番初めにはっぱ隊員を見捨てた事だが、
このブレイバックルだって悲劇が起こってしまった一因を担っている。この都合のいい道具がなければ、俺はここまで惨めにはならなかった。
ここまで酷い事にはならなかっただろう。そう思うと、ブレイバックルの事がますます疎ましく思えてくる。
『力』を手に入れた時はこれ以上ない解放感を感じたが、今となって見れば、ただ疎ましいだけの存在。
この『力』がなければ、俺はもっともっとマシだっただろう。
カイトは少しだけ迷ってから、ブレイバックルを外して、遠くへ思い切り投げ捨てた。
ほんの少しだけ後悔したが、また惨劇を繰り返すのはごめんだ。
(俺みたいな馬鹿が力を持っていても、持て余すだけだ……)
大きな力を操るには、その力を持つにあたって生じるあらゆる物事の責任を、負えるだけの強い覚悟を持たなければならない。
その覚悟が、カイトには全くなかった。このまま『力』を持っていれば、自分の衝動に任せて無暗に力を行使してしまうような、
そんな気がしてならなかった。『力』を自ら捨てた事によって、少しだけ、罪の重さから解放されたかのような心地になった。
(生まれ変わろう……一から。アレクは俺の事を根は優しい人間と言ってくれた。
そうとも。俺は本来ならクズで卑怯で臆病な人間なんかじゃない。アレクがそう言ってくれたんだ。
きっと本気になれば俺だっていい所を見せられる……きっとそうだ)
元の場所に戻るため、カイトは歩きだす。気持ちのいい開放感が、彼の心を包んだ。
(残り32人……大丈夫だ。ブレイバックルなしでもきっと生き残れる。だから大丈夫だ。怖がるな……)
頭の端っこで、このような打算的な考えをしている事を、カイトは特に意識しなかった。
しかし、いや、やはりと言うべきか、一度手に入れた『力』を易々と放棄できるほど、カイトは強くない。
歩き始めてから、すぐに、カイトは背中に得体の知れない気配を感じた。
後ろを振り返って見たが、誰もいない。気の所為かと思い再び歩き始めると、また奇妙な気配が後方で蠢くのだ。
不気味な感覚にカイトは冷や汗を垂らす。もしかしたら後ろから誰か付いてきているんじゃないか?
生身の肉体になり、再び無力な自分に戻ってしまった事を不安に思い、
あり得ない妄想をしているだけだと言う事に気付いたのは、それから数分経ってからの事だった。
自覚してみると、ますますはっきりと、カイトは強い恐怖心に襲われた。
どうして自分は浅はかにもあのブレイバックルを捨ててしまったのだろうか。
頭が悪いにも程がある。今は一人。アレックスも傍にいない。誰かに襲われたら抵抗も出来ずに死んでしまう。
(ブレイバックル……やっぱり取りに戻るか……今思えば、何も捨てる事はない。
俺の心が強くなるまで、アレクに預かって貰えばいいんじゃないか?)
とことん弱い男である。カイトは恐怖に震えながら、歩いてきた道を引き返す。
そして、ブレイバックルを探して右往左往していると、『そいつ』はいた。
支援
支援
「なんだぁ?これは……」
(なんなんだあの化け物は!!)
アレックス以上に筋骨隆々な大男がブレイバックルを物珍しそうに拾っているのを見た途端、カイトは全身に悪寒が走った。
近くに雑草が群生している場所があったので、すぐにそこに隠れ、がたがたと震えながら様子を見守る。
「カワイイ!」
(それのどこら辺が可愛いんだよ)
ブロリーは嬉しそうにブレイバックルを掲げている。良く見ると全身が恐ろしいくらいに傷んでいる。
あれだけの傷を負ってどうして未だに生存していられるのか、カイトには訳が分からない。
(何か、食べてるような……)
ブロリーが手に、何かを握り、それを口に運んでいる事に気づく。
何を食べているのか無性に気になったので、暗闇の中必死に目を凝らした。
驚愕した。ブロリーが食べているものは、なんと人間の腕だった。恐らく男性のモノと思われる腕を口に運び、食いちぎる。
くちゃくちゃという耳障りな音がここまで聞こえてきた。カイトは恐怖のあまり卒倒しそうになった。
あいつはヤバい。間違いなくヤバい。クラッシャーや突然襲撃して来た白髪頭とは比べ物にならないくらいの恐ろしさを感じ、身を縮める。
(殺される……!見つかったら間違いなく殺される……!ブレイバックルなんて取りに戻るんじゃなかった!
あいつ、間違いなく殺し合いに乗っている……!)
カイトはゆっくりと地面を這い、ブロリーから逃げようとする。しかし、ふとある事に気づき、カイトは動きを止めた。
今の状況に、どこかデジャビュを感じる。デジャビュの発端に気づいた時、カイトは愕然とした。
そうだ。今の状況は、クラッャーと初めて出会った時とどこか似ている。
このままブロリーを放置してしまえば、間違いなく誰か犠牲者が出てしまう。
そうなると、また惨劇の繰り返しだ。カイトはがくがくと震えた。
もう逃げたくはなかった。また新たな因縁を生んでしまうのだろうかと考えると、恐ろしくて恐ろしくて仕方がない。
つい先ほど、生まれ変わろうと誓った決意を試す時が、まさかこんなに早く来るとは思いもしなかった。
(に、逃げるのか……?俺は、俺はまた逃げるのか?)
カイトは心の中で自問自答する。相手は瀕死だ。不意を突けば殺せるかもしれない。
しかし、どうしても悪いイメージが頭を離れない。
『自分の気持ちに正直になれ。リンとクラッシャーに対して、何か思う事があるはずだ。
俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている。妹のために殺人鬼に立ち向かう兄などそういない。
だからこそ、自分の本当の気持ちに気づいてほしい。実は後悔しているんだろ……?』
脳内で、ついさっきアレックスが言った言葉が渦巻く。勿論、後悔している。
どうしてこんな事になってしまったのかと後悔している。
(自分の気持ちに、正直に……)
『俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている』
(本当の俺……俺の本性は────ヘタレなんかじゃねえんだ!!)
意を決してカイトはポケットから拳銃を取り出す。ガチガチ震えながら、ブロリーに向かって照準を合わせる。
ブロリーはもぞもぞと何かしているようだが、暗闇の所為でよく分からない。
(殺してやる!ぶっ殺してやる……!俺は強い!世界最強だ!いつまでも逃げてばっかりでいられるか!)
「────ッッ!?」
カイトが引き金を引こうとしたその瞬間だった。ブロリーの体が突如光に包まれる。
あれは……。カイトはその光景を見た事があった。あまりの衝撃と恐ろしさに、拳銃がぽろりと手から滑り落ちる。
まさか装備できるとは思わなかった。あれを装備できるのは、確か限られた人間だけのはずだ。
どうしてあんな、生身でも化け物みたいな奴が装備できるんだ。不公平過ぎる。
支援
伝説の仮面ライダー支援
「カカロットオオオオォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」
(無理だ……無理だ!無理なんだ!俺にはッ!アレク……これが俺の本性なんだ!)
カイトは必死に這いまわって、ブロリーから逃げる。見つからない事を心の底から祈った。
先ほどの誓いなど、すでに頭の中から消えていた。
咆哮するブロリーは、自分が生まれ変わったような心地を感じた。
この鎧のおかげで、全力とはいかないまでも、それなりの力が出せるようになったはずだ。
面白いものを拾った、とブロリーは大声で笑った。
「ははは……まだだぁ。まだまだ……まだまだ暴れ足りぬぅ!!」
なんとブレイバックルを身につけたブロリーがライダーに大変身!!
これにはカイトは勿論、作者もビビッた!!!
しーらない
しーらないっと!
【E-5北部/1日目・夜】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】通常形態、、疲労(中)、額にダメージ(小)、顎にダメージ(大)、左腕に刺し傷、ダメージ(極大)、全身に大きな怪我、
右足首骨折、腹に超深刻なダメージ、首にダメージ(中)、全身に火傷
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、忍具セット(火薬玉、忘却玉)@忍道戒、不明支給品0〜2
【思考・状況】
[基本思考]全てを破壊しつくすだけだぁ!
1:あの女は殺す。
※額のリミッターにダメージがいっています。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが消滅しました。
※伝説の超サイヤ人形態になったため会場全体が暗雲に覆われましたが、少しすれば晴れます。
※伝説のスーパーサイヤ人に変身できるかは不明です
支援
しえん
支援
「トキは訳の分からねえ力で志々雄とうさぎ女を倒した後、目覚めたカイトに殺された、ってこいつは言ってるぜ」
「こいつとは誰だ?」
「…………説明しないと駄目か?」
アレックスが当然のように頷く。左之助は面倒臭そうにして、なかなか説明を始めなかったが、
譲らないアレックスの態度を見て、渋々マッハキャリバーについて説明を始める。
アレックスは初めこそマッハキャリバーについて驚いていたが、
今まで主催などが持つ未知の技術に触れて免疫がついていたため、すぐに受け入れる事が出来た。
「嘘じゃないだろうな……」
「こんな嘘ついてどうするんだよ」
さも当然のように左之助は言った。まるで信じて当然という態度で接する左之助に対して、アレックスはほんの少し苛立ちが募った。
確かに、納得出来ない事はない。カイトはトキからの攻撃を受けて気絶したのだから、
気絶から目覚めた後にトキの事を敵と勘違いしたまま殺してしまうのも充分あり得る話だ。
あの時カイトは平静を失っていたのだから、恐怖と怒りのままトキを殺す事はいかにもありそうな話である。
むしろそうでない方が不思議なくらいだ。左之助の話はおそらく嘘ではない。真実だろう。
しかし、アレックスはカイトに話を聞くまで、トキを殺したのはカイトだと断定したくはなかった。
断定して、もし万が一左之助の話が偽りだった場合、カイトはまたも傷つくだろう。
もうカイトにこれ以上の苦難を味あわせたくはなかった。これ以上カイトを追い詰めると、きっと狂ってしまうだろう。
「そこの女は、お前の知り合いか?」
「ん? ああ、そうだな。おい起きろ」
左之助は地面に倒れている女を軽く蹴った。女性に対してそんな行動をとるのはどうかと思い、アレックスは顔を歪める。
何か一言言ってやろうかと思ったが、アレックスが口を開く前に左之助はマッハキャリバーに小言を言われていた。
「構うか。体中痛くてしゃがみ込むのが辛いんだよ。立ったまま蹴り起こすのが一番楽だ」
そう言ってまた蹴った。
機嫌の悪そうな顔で美鈴は目を覚ました。蹴っている左之助と目が合い、恨めしそうな視線を送って見たが、
左之助は美鈴の恨みなど意に帰さず、飄々とした態度で「よう」と声をかけてきた。
「何がよう、ですか。もう少し別の起こし方があるでしょう?」
「まあいいじゃねえか。お互いまだ命がある事をまず喜ぼうぜ」
「そう言えば……お前達はどうしてここで気絶していたんだ? と言うより、ここで何があった?」
騒動を収めたトキをカイトが殺したという話は聞いている。しかし、分からないことだらけだった。
美鈴が全身の激痛に耐えながら立ち上がり、アレックスにじとりとした視線を送る。
左之助とアレックスを見比べ、すでに和解は済んだという事を理解する。それから美鈴は辺りを見回し、眉をひそめた。
トキが死んでいるのだ。頭を叩き割られている。てゐと、自分達を裏切った志々雄の姿はない。分からないことだらけだ。
さらに、すでに日が沈んでいる。主人であるフランとの待ち合わせ時間に遅刻してしまった。
アクシデントがあったとはいえ、なんということだ。美鈴は項垂れ落ち込んだ。
とにかく、今分かる事からはっきりさせていかなければならない。
「さて、本当に何があったんでしょうか……左之助さん。分からないことだらけです」
「まあ、そこら辺の心配はいらねえよ。マッキャリが全部見ていた」
「マッキャリ……?」
「ああ、本当はマッハキャリバーって言う無駄に長ったらしい名前なんだが……」
左之助は美鈴にも、マッハキャリバーの存在を説明する。今まで特に隠していたわけではないが、説明する暇がなかった。
左之助、美鈴、アレックスの三人はいずれも戦いの途中で気絶してしまい、事の顛末を知らない。
しかし、左之助が装備しているマッハキャリバーだけは最初から最後まで、戦いの全てを見ている。
ブロリーwwww
支援
支援……しーらない、しーらないっと!
「通りで奇妙な格好をしていたんですね。少し安心しました。それは左之助さんの趣味じゃないんですね」
どういう意味だ、と左之助は無駄にほっとしている美鈴に白い眼を向ける。
「まあ、そういう訳だからよ。説明頼むぜマッキャリ」
『……どうして突然略すんですか』
「略されたくなかったらもっと簡潔な名前に改名しろよ」
「…………」
アレックスと美鈴は、左之助とマッハキャリバーが語る騒動の真実に、熱心に耳を傾ける。
左之助が勘違いしてアレックスを殴り、気絶させた後、何者かからの狙撃があったらしい。
トキの説得によりメタナイトという仮面の一等身が狙撃手の撃退に向かったが、未だに帰ってきていない。
それからすぐ後に包帯男、志々雄が現れ、ウサ耳幼女、てゐと共に奇襲を仕掛けてきた。
左之助と美鈴は彼らによって重傷を負わされ、そこで意識を失った。
同じく重傷を負ったトキはそれでも果敢に志々雄達と戦ったが、まるで歯が立たなかった。
いよいよトキが殺されようとする時、少女、逢坂大河が現れ、トキの盾となり死亡した。
彼女は完全に燃やしつくされ、死体も灰としてしか残っていない。
彼女の死に激高したトキは『何かよく分からない力』によって突然覚醒し、圧倒的強さで志々雄とてゐを殺した。
その後トキは瀕死の肉体を引きずって、心肺が停止していた左之助と美鈴を蘇生させた。
殺人鬼二人が死んでから少し経った後、トキによって問答無用で気絶させられていたカイトが目覚め、
トキは悪人だという勘違いをしたまま、重傷だったトキをスケボーで滅多打ちにして殺した。
「とまあ、こんな感じらしい……ぜ」
「トキさん……大河さん……」
美鈴と左之助の顔色は重く暗かった。アレックスも例外ではないが、
美鈴と左之助と比べてカイトへの理解があるため、彼の悲しみは一層複雑なものだった。
「ついさっきこの辺りを適当にぶらついてみたら、肉片が沢山落ちていた。多分アレは志々雄かてゐのもんだな。
あそこの辺り、地面が黒ずんでいる場所は多分大河が死んだところだ」
「そしてトキさんの死体に、良く分からない謎の黒焦げ死体……ほとんど炭になっているようですね」
左之助が補足し、美鈴が確認するように言う。
「メタさんはどうなったんでしょうか……」
「…………」
二人の顔にまた影が差す。狙撃手の元へ向かったメタナイトが帰ってきていない。
撃墜は成功したのだろうか。それとも何かあったのだろうか。そもそもあの狙撃手はいったい誰なのだろうか。
十中八九、志々雄かてゐなような気がするが、そうと断定できる根拠はどこにもない。
「アレックス、お前も放送を聞き逃したらしいな」
「ああ……すまない」
一言カイトに尋ねていれば良かったものの、アレックスは後悔する。殺し合いが始まってから、ずっと後悔してばかりな気がする。
「ま、情報交換はこれくらいにして、これからどうするつもりだ?」
「俺はカイトを探したいんだが……」
「そうだな、そいつとメタナイトを探さないとな。で、どこに行ったんだよそいつらは」
それが分かれば苦労しない。途方に暮れる三人。
しばらく誰も口を開かなかったが、美鈴が思い出したかのように唐突に口を開く。
「あの黒焦げ死体はいったい誰なんでしょうか……見たところ、ついさっきまで燃えていた感がありますが……」
「あれは……」
アレックスの顔に影がさす。説明するのが恐ろしく憂鬱だった。出来れば話したくはない。
しかし、美鈴と左之助が意味深に黙り込むアレックスの顔を覗き込んできたため、話さざるを得なくなる。
「あの死体は、キーボードクラッシャーという男だ。────あれもカイトが殺した」
「……またカイトですか」
美鈴が呆れたように言った。カイトと言う男は、トキの死だけに関わっているわけではないらしい。
「カイトって奴は、本当に悪人じゃねえんだろうな。殺されたクラッシャーってのはどんな奴なんだ?」
「クラッシャーは、殺し合いに乗っていた奴なんだが……」
左之助と美鈴は拍子抜けしたように顔を見合わせる。
支援
「それなら、まあ、クラッシャーの事に関しては何の問題もないですね」
「だな。トキまで殺してる事からしてかなり落ち着きのない野郎な気はするが……」
アレックスは勝手に納得している二人をほとんど恨めしげに睨んだ。睨まれている事に二人は気づいていない。
何も悪い事を言ったなどと考えていないからだ。殺し合いに乗っている者が殺されたところで何の感慨もわかず、
むしろ喜ぶ二人が、今のアレックスには別の生き物のように見えた。
「結局、カイトって人がトキさんを殺したのも勘違いかららしいですし……仕方がないんでしょうか」
「一発殴ってそれで終いにするしかねえだろ。トキって奴が、カイトと殺し合う事を望んでいるとは思えねえぜ」
「打算的な事を言うようでなんですけど、クラッシャーという人を殺したくらいなんですから頼りがいがありそうですしね……
ここで無暗に敵対するようではやっぱり、駄目ですよね……」
「お前ら、クラッシャーが死んだ事については何も思わないのか?」
アレックスの唐突な一言に、二人はぽかんとしている。
「クラッシャーは殺し合いに乗っているんだろ?」
「────事情があったんだよ……あいつは死んでいい男じゃなかった」
重々しくアレックスが言ったのを見て、美鈴は息をのんだ。左之助は特に何も反応していない。
クラッシャーの死はどうでも良くて、トキの死は大いに悲しむ。アレックスはどうしても納得出来なかった。
クラッシャーさえ生きていれば、和解出来ていればリンもカイトも……そしてハクも……!
事情があったと聞いて息をのんだ美鈴はまだ許せるが、それでも平然としている左之助に怒りが募る。
アレックスは思わず、感情に任せて言い散らかした。
「クラッシャーはただ単純に死にたくなかっただけなんだよ。主催者に立ち向かう勇気のないものは、
ルール通り殺し合いに乗って優勝を目指すか、何もせずに右往左往するしかないだろう?
殺し合いに乗っている奴全員が悪なわけがあるか。主催者に逆らうだけの勇気と力がなくて、
それでも死にたくなくて、元の日常に戻りたくて、ルールに従い優勝を目指す。
お前らはそんな奴がいるって事を想像した事があるか!? 死にたくなくて死にたくなくて、優勝目指したのがクラッシャーという男だ。
────それすら出来ないのがカイトだ……」
美鈴は失言したと気づいたのか、沈痛な面持ちだ。しかし、左之助は違った。未だに平然としている。
「そんなもん知るか。殺し合いに乗った奴は、この世界では悪なんだよ」
「そんなぶっきら棒に決めつけていいのか!?」
猛るアレックスに左之助は冷たい目を送る。
「だったらお前は、やむを得ない事情があって殺し合いに乗ったカワイソーな奴に、大切な人を殺された時どうするつもりだ?
可哀想な殺人鬼に同情して許すってのか。馬鹿じゃねえのか」
アレックスは反論できず、口を閉ざす。
「お前はどう考えてるのか知らねえけどな。俺にとっては弱い奴を助ける事が最優先なんだよ。
殺さない奴を俺は殴らねえが、殺す奴は問答無用にぶん殴る。殺し合いが収まるのなら俺は何でもいいんだ。
それにな……極論言っちまえば、悪だとか正義だとかは後付けじゃねえか。その場の常識に従う奴が正義で、逆らう奴が悪だろ?
正義だった奴らも時代が変われば悪と罵られるかもしれねえ。赤報隊のようにな」
「…………やむを得ず殺し合いに乗った連中の、気持ちはどうなる……」
「どうにもならねえよ。仕方がない事だ。俺はそんな連中よりも殺し合いに乗っていない奴らの気持ちを優先してやりたいね。
まあ、殺し合いに乗っていない奴らとやむを得ない事情で殺し合いに乗ってる奴らのどっちを守りたいかって事だな」
「両方とも守ろうとは思わないのか!?お前達はそれなりに戦える力を持っているんだろう!?」
「俺は殺す奴から殺さない奴を守るだけだ」
睨みあい、一触即発の二人を美鈴が間に入って宥める。アレックスは見るからに怒っていたが、左之助は未だに冷静だった。
「お前、少し休んだ方がいいんじゃねえか?」
「そう、ですね。まあ、アレックスさんの気持ちは分かりますけど……もう少し落ち着いて……」
アレックスの考えをまるで理解しない二人の言葉。美鈴は、アレックスに哀れなものを見るような視線を向けてくる。
なるほど、俺は気がふれていると思われてしまったようだ。そうじゃない。俺は正気だ。
どうして理解してくれないんだ……
「お前らは、クラッシャーの事情を何も知らないから、そんな事が言えるんだ……
クラッシャーだって、何をやっても悪い方向にしか転がらないカイトだって、きっと何とか生まれ変われたはずなんだ。
俺の手でなんとか生まれ変わらせて……やりたかった」
アレックスがぽつりと言った後、美鈴が「そうかもしれませんね」と気を使うように言った。
それがますますアレックスの琴線に触れたが、もう何も言わなかった。
俺がこいつらなら、手早くカイトとの関係を絶っていたのだろうか。
俺が左之助や美鈴なら、カイトのあまりの駄目さと卑怯さに落胆し、あいつを見限るのだろうか。
もしかするとあまりのカイトの駄目さに嫌気がさし、殺してしまうかもしれない。
アレックスにとってはあり得ない事だが、やむを得ず殺し合いに乗るような者を否定する左之助ならば、
カイトを否定しても不思議ではないだろう。
アレックスは溜息をついた。左之助と美鈴の言い分は確かに理解出来る。
殺し合いを止めようとする人間が、殺し合いに乗った連中に同情してしまうなど、本末転倒もいいところだ。
きっぱりと割り切る必要があるのだが、アレックスにはどうやってもそんな気にはなれない。
駄目な奴だって悪事を働いた奴だって、それぞれに理由がある。彼らは彼らで苦しんでいる。
そして、道を正してやる事だってできる。ハクが立派になれたように、クラッシャーに改心の余地があったように……
だから、カイトもきっとやり直せるはずだ。俺が必ず、改心させる。カイトを一人前の男に成長させると誓う!
「気のせいですかね。何か悲鳴が聞こえませんか?」
唐突に美鈴が口を開く。耳を澄まして、ある一点を指差す。
確かにその方向から何かが近づいてきているような音が聞こえてくる。
「どうやら気のせいじゃないみたいだぜ。誰か知らないが、こちらに来てる……」
「カイトだ。この声はカイトだ……」
「自分でどこかに消えて自分でまた戻ってきたわけか。何がしたいんだ?」
事情を知らない左之助の言葉は、逐一アレックスの心を逆撫でる。
「あいつは本当に傷ついている。再会できなかったかもしれないんだ。戻って来てくれただけでも、御の字だ。
頼むから、暖かく迎えてやってくれないか?」
「……お前、嫌にあいつの肩を持つんだな」
「事情があるんだよ……話すと長いが……」
アレックスの沈痛な表情を、左之助はけろっとした顔で見ている。
「いくら事情があろうとな。トキを殺した落し前はつけさせて貰うぜ」
「…………」
左之助と美鈴は、トキの死体を悔しそうに凝視した。アレックスは何も言えなかった。
カイトの声が次第に大きくなっていく。どうやら錯乱しているようだ。
今度は何があった、と思い、アレックスはまた心を重くする。カイトを落ち着かせようと、アレックスは彼の名前を呼んだ。
カイトの喚き声が止み、一直線にこちらに向かってくる。闇の中からカイトが現れ、アレックス達三人の前で、力なく座り込んだ。
「カイト……今度はいったい何があったんだ」
「化け物が……化け物がいたんだよ。俺はまた逃げちまった……」
化け物という言葉に、左之助と美鈴は目敏く反応した。美鈴はすぐさまカイトがやって来た方向に意識を集中させる。
つい数時間前に感じた邪悪な威圧感が、さらに強くなって感じられた。いったい向こうに何がいるんだろう、
得体の知れない怪物への恐怖感から、美鈴は僅かに体を震わせる。
「化け物……か。トキを殺したようにそいつも殺そうとは思わなかったのか?」
左之助はカイトの胸倉を掴み、引き起こす。突然そんな事をされたカイトは、当然のように驚いている。
混乱して、目を白黒させながら左之助を見る。その顔には恐怖の色が浮かんでいた。
「ト、キ……? トキって誰なんだよ」
「やっぱり知らねえらしいな。お前がついさっき殺した白髪頭の野郎だ。どうしてあいつを殺したんだ?」
「どうしてって……あいつは悪人、だろ……? おい、まさか……」
カイトの顔が病人のように白んでいく。さすがのカイトも、真剣な表情の左之助を見て気がついた。トキは────
その瞬間、カイトの頬に電撃のような痛みが走った。左之助に殴られたのだ。
天地が逆転したかのような心地に陥り、カイトは正面から地面に倒れた。
支援
「おいやめろ!何も知らなかったんだから────」
「知らねえからって許される事だと思っているのか?一発ぶん殴らねえと気が済まねえよ」
アレックスの言葉をすぐさま叩き斬る。左之助はぎらついた視線をアレックスに向ける。
「正直言って俺はこいつと……こいつの肩をやたらと持つお前が気に食わねえ」
「だ、だが、カイトの事情を知らないお前に、一方的に殴る権利なんてあるのか!?」
「権利なんて知らねえよ。気に入らねえから殴る。悪いか?」
左之助の発言に驚愕しているアレックス。こいつはただ暴れたいだけなんじゃないか?
気に入らないから殴ったなんて……信じられない。アレックスは縋るように美鈴に視線を移す。表面上は中立を保っている彼女も、
内心では、左之助がカイトを殴った事が嬉しいのだろう。顔が僅かに綻んでいた。
「怪物だかなんだか知らねえが、また逃げて来たってわけか」
左之助が倒れているカイトに言葉を浴びせる。
「どんな事情があるのか知らねえけどよ。お前はこのまま一生逃げるつもりなのか?
もしそうだとしたら、さっさと俺の前から消えな。気に入らねえんだよ。守る価値もねぇ」
左之助の乱暴な扱いは、カイトの心をさらに抉った。そうだ。自分はまた逃げたのだ。
さらに、俺が殺したトキは実は悪い男ではなかったらしい。今回ばかりは完全に俺が悪い。
クラッシャーの時とは全く場合が違う。この俺が、クラッシャーのような奴ではなく、この俺が、
殺人鬼、クズ、ゴミ────悪……!
「お前に……お前のような奴に何が分かる。何も知らないお前が……俺はクズだから、仕方がないだろうが」
ふるふると震えながらカイトはぽつりと言った。その小さな小さな声は、左之助の耳には届かない。
はっきりとカイトは自覚した。自分はクズなのだ。この駄目な自分が、本当の自分であるようだ。
全て自分が悪いと、自分はクズなのだと自覚してしまった時、カイトの心の中で何かが弾けた。
今まで溜めに溜めた負の感情が、奔流のように心の中を疾走し、カイトを闇に染めていく。
もうどうしようもならなかった。もうどうやっても止める事が出来なかった。
どうやろうとも、クズな性質を治す事が出来ない。当然だ。今までの、極限状態の俺の有り様こそが、俺自身の本性だったのだ。
アレクは間違っている。あいつは俺の事を根は優しい奴だと言った。違う。それは間違いだ。
何故なら俺はクズだからだ。俺は今まで、全ての人間に劣る最低最悪の本性からひたすら目を背けて生きてきたらしい。
俺は正義だ、俺は悪くないと喚いて、クズな本性を誰にも悟られないように必死に押し隠し生きてきたのに過ぎないのだ。
アレクは言った根は優しい奴だと。リンは妙な印象を俺に抱いていた、俺は憧れの王子様なのだと。
ハクは期待していた、俺が勇気に目覚める事を。はっぱ隊員は俺に希望への話を持ちかけてくれた、そしてその後死んだ。
俺の本性を見抜けず、俺の人生を賭けた必死の擬態に欺かれた連中はみんなみんな不幸になった。
俺はクズの本性が出そうになった時、いつもいつも自分を偽って生きてきた。卑怯な行いも仕方ないのだ、俺は悪くない、
と懸命に本性から目を退けて生きてきた。
俺と行動を共にした連中は言う。
「お前は根はいい奴だと信じてる」
「カイトさんが来てくれて嬉しいです」
「カイト様!」
「これから頑張れば大丈夫だって。怖いのは誰だって同じだ」
馬鹿がてめえら……騙されやがって。俺の本性はクズだ!ゴミだ!
────俺の本性は悪なんだ!!!
それなのにてめえらは俺の必死の演技に騙され、俺を信用して来たんだ。
どうしようもないクズの俺をな!!!!てめえらは自業自得だ!!クズの俺に騙されやがって!!
俺を勝手に信頼したお前らが悪いんだよ!!死んで当然、不幸になって当然だ!!
支援
支援
支援
「おいカイト!大丈夫か!」
アレックスがカイトの体を揺する。いつまで経っても立ち上がらないカイトが心配で、
アレックスはいても経ってもいられなかった。きっといつか、カイトを勇気を持った強い人間に変えてみせる、
ついさっき決意したのだ。カイトにはこのまま死んでほしくなかった。
「おい、化け物ってのはどんな奴だった?」
左之助がカイトに声をかける。カイトは体を起こし、殴られた傷を痛そうに擦りながら、化け物の特徴を左之助と美鈴に伝える。
事細かに伝えていく内に、美鈴の顔が次第に深刻になっていく。
「それってもしかしてブロリー、ですか?」
名前は知らない、とカイトは返答した。美鈴はバクラ達から聞いた、ブロリーについての情報を思い出す。
カイトの言った化け物の特徴と、バクラの言ったブロリーの特徴が見事に一致している。
参加者の中で間違いなく最強クラス、そんな殺人鬼がすぐ傍に居るのだ。
「カイトさんの話だと、ブロリーは瀕死、なんですね?」
カイトは頷いた。持っている銃で撃っていれば、何とかなったかもしれない、と途方に暮れた顔で言った。
一々絶望するネガティブなカイトを放置して、美鈴は思考する。
ここは、今すぐにブロリーを殺すべきなのではないだろうか。カイトの話だと、今、ブロリーは瀕死。
危険人物を排除する絶好のチャンスだ。しかし、ブロリーを倒しに行く事はフランとの約束を破るという事だ。
美鈴は左之助の顔へと視線を移した。
「行くしかねえな。美鈴」
「そんな……行くと言っても……メタさんは、どうしましょうか」
未だに帰って来ないメタナイトが心配でたまらない。メタナイト以外にも、ご主人さま、フランの事も気にかかる。
はたして自分はメタナイトとフランを放置したままブロリーを倒しに行っていいのだろうか。
ブロリーが瀕死なら、確かに今が倒しどころなのだが……ブロリーを倒す事が出来れば、
フランの命の危険を軽減させる事が出来るのだが……
「探したいなら探してきて構わねえぜ」
「うーん……そうしたら、左之助さん一人でブロリーと戦いに行くでしょ?」
「あー……心配するなって。多分何とかなる」
何とかなるとは思えなかった。ブロリーが瀕死とはいえ、同じように美鈴も左之助も重傷を負っている。
勝つか負けるかの激しい戦いになるだろう。死を覚悟しなければならない。
「メタさんがいれば、戦いも有利に進められるのに……」
一刻を争う事態だというのに、戦力が揃わない。
「丁度いい戦力ならそこに居るぜ?」
左之助がカイトとアレックスを指差す。カイトはびくりと反応した。
「俺は行かねえぞ……アレクも行かせない」
三人の目が、同時にカイトを捕らえた。カイトは卑屈な目をして、さらに言葉を紡ぐ。
「俺なんて戦力になりはしねえよ。アレクも同じだ。ついさっきリンに刺されたらしいじゃねえか……
行かせられるか……アレクに死なれたら天国に行ったハクに申し訳が立たねえんだよ。
ハクへのせめてもの罪滅ぼしだ……アレクをみすみす死なせるような真似は絶対にしたくない」
確かにアレックスは、先ほどリンに刺されてからずっと顔に血の気がない。
見るからに苦しそうだし、喉が渇くのか、ひっきりなしに水を飲んでいる。
「カイト……俺は別に」
アレックスは所在なさげに美鈴と左之助を見た。
「そのブロリーという奴が危険人物なら、俺は────」
「別に構わねえよ」
アレックスの台詞に割り込むようにして、左之助が口を開いた。
「お前だってついさっき言ってたじゃねえか。カイトを生まれ変わらせたいだとかなんとか。
丁度いいからここはカイトの言う事を聞いて引きな。俺がブロリーを殴っている間に、その馬鹿を更生させてやれよ」
それを聞いて、カイトの湿った視線がアレックスを捕らえた。
(アレク……そんな事を言っていたのか)
支援
支援
「確かに言ったが……」
アレックスは曖昧な態度をとっている。すぐ傍に倒すべき敵がいるのに、ここで背を向けていいものかと迷っているようだ。
「そうだな……お前らはメタナイトのような強い連中を探し出して、援軍を頼んでくれ。
ブロリーを倒すために、二手に別れる事にしようぜ。これならいいだろ?」
「それは……結構いい考えかも知れませんねぇ」
美鈴が大きく頷く。メタナイトの安否も確認できるし、彼らにフランを保護してやってくれと頼んでおけば、
ある程度彼女の安全も保障される。ブロリー打倒への仲間を集める事も出来る。一石二鳥どころの話ではない。
「そのついでに、さっき言ってたリンとか言う女も捕まえてやればいい」
「…………」
アレックスは沈黙している。
「アレク、そうしよう。俺はブロリーの所にまた戻るのは絶対に嫌だ」
「相棒もそう言ってるぜ」
アレックスは押し黙り、考え込んでいる。根拠はないが、何か嫌な予感がした。
勿論気のせいだろうが、全てが水泡に帰してしまうような悪い予感が、一瞬脳裏に走った。
「なあアレク」
「……そうだな。リンも放っておくわけにはいかないし」
「決まりだな」
左之助は嬉しそうに笑った。
最後に四人はそれぞれ持っている情報をなるべく細かく伝えあった。
美鈴は、フランという女の子を見つけたら、私は危険人物を排除にしに行く事になったと伝えて欲しい、
とアレックスに頼んだ。カイトは、他の三人が知らない放送の内容を伝えた。
トキ、てゐ、志々雄、大河の死が告げられた時、三人はそれぞれ複雑な表情を見せた。情報交換が終わり、いよいよ別れる時が来た。
カイトは結局、最後の最後まで、ブロリーがブレイバックルを身につけパワーアップしている事を、左之助と美鈴に伝えなかった。
「何か罰が当たりそうですが、トキさんの死体にメタさんへの伝言を張り付けておきましょう。
言っちゃ悪いですけどいい目印になりますからね。本当はすぐに埋葬してあげたいところですが……」
「埋葬している暇なんてないからな……」
トキの死体に紙を張り付ける。紙にはメタナイトへのメッセージが書き込まれている。
美鈴と左之助はブロリーを倒しに行ったという事、カイトとアレックスという者に増援を呼ぶよう頼んであるという事、
メタナイトがこの紙を見たら、すぐさま対ブロリーへの援軍に駆けつけて欲しい、しかし、無理なら来なくても構わない、
と言った事が紙に書かれている。
「すまないな……力になれなくて」
「いいですって。そんな事より、カイトさんを何とか立派にしてあげて下さいよ」
「その通りだな。どうも俺には出来そうもないが、細かい事ばっかり考えるお前ならなんとなくできそうだ」
アレックスと美鈴、左之助はそれぞれに言葉をかけ合い、別れを告げる。
カイトだけがその輪から離れ、幽霊のような覇気のない目で突っ立っている。
最後に落ちていたデイパックを拾い、各々に振り分ける。
アレックスとカイトはブロリー打倒への仲間を探しに、そして左之助と美鈴はブロリー打倒へ、それぞれ歩き始める。
二組はどうも互いにいがみ合ってばかりで、お世辞にも意気投合したとは言えない。
それでも、目標は同じ。バトルロワイアルを阻止する事。一人だけ、異端児が混じっているような気がしないでもないが……
「アレクさん、何か不安ですね……色々背負いこみ過ぎてしまっているというか……」
美鈴は言う。左之助は何か考え込んでいるようで、返事を返さなかった。
(鳥頭の癖に何を考え込んでいるんでしょうか……)
美鈴はしばらく左之助を眺めた後、視線を前方に戻した。
支援
SIEN
支援
結局、美鈴はブロリーの打倒へ向かう事にした。フランとの約束を破る行為だが、最強クラスの危険人物を排除できる、
折角の大チャンスを失いたくはない。生真面目なアレックスにフランを保護してくれと約束させたのだから、
きっと悪いようにはならない、はずだ。そうだと信じたい。
ともかく、今はブロリーだ。美鈴は前方を見据えて、気を引き締める。
アレクを見ていると、どうも剣心の事を思い出してしまう。何もかも自分で背負いこみ、単純明快な答えをなかなか出す事が出来ないあたり、
剣心とアレクは似ている。全部割り切ってしまえばいいのに。悩んでいて何か前進するのだろうか。
気に入らない奴は殴ればいいし、気に入った奴は助けてやればいい。それだけでいいじゃないか。
善悪なんて、状況によって変化するものだ。そんなものを突き詰めて考えたところで仕方がない。
(ちっ……むしゃくしゃしやがる……)
あんな風に、己は絶対に正義だと信じ込もうとする奴を見ると、どうもイライラする。
絶対の正義なんてあるわけがない。気に入る奴と、気に入らない奴がいるだけだ。
政府に奉仕した赤報隊が悪と呼ばれたように、悪と正義の境なんて案外曖昧なものなんだ。
そんな事を考えても頭が痛くなるだけだ。だから俺は初めから考えない。ただ自分の思うように拳を振るうだけだぜ。
(アレックス、お前にとって俺は悪か?)
倒すべき志々雄はすでに倒され、自分が目覚めた時には戦いの全てが終わっていた。
左之助は力を持て余していた。イライラしている時には限界まで暴れてすっきりするのが一番いい。
ブロリーを思い切り殴って、全てのわだかまりを払拭させたい。
正義だとか悪だとか議論するよりも、目の前の『敵』を倒す事の方がずっと大事だ、と左之助は思う。
正直言って、カイトが、自分達はブロリーを倒しに行かないと言った時、左之助はしめたと思った。
アレックスのようないらない事を一々考えて悩む奴と共闘するのは煩わしくて嫌だった。
喧嘩というものはすっきりしているのが一番いい。悪だとか正義だとかの議論は、戦いが終わった後からいくらでもやればいいのに、
あいつは戦う前から悪だ正義だとか言って勝手に悩んでいる。悩む暇があったら、目の前の敵を倒すべきだ。
左之助は背後に目を向ける。アレックスとカイトの姿はもう見えない。
奴にとって、俺はさぞかし異端に見えただろうな、左之助は思う。
アレックス、お前にとって、単純な理由で拳を振るう俺は正義か?それとも悪か?
(ま……俺を悪と呼んでくれても、別に構わねえぜ。
お前がそう呼んでいる間に、俺は一人でも多くの『気に入らねえ奴』を、殴り飛ばしてやるだけよ)
左之助の背中に書かれた『悪』の一文字が、風に吹かれてひらりと舞った。
支援
支援
【D-4 草原/1日目・夜】
【紅 美鈴@東方project】
[状態]頭部にダメージ(大)、右脚に銃痕、フランドールへの絶対的な忠誠、気絶中
[装備]無し
[道具]支給品一式、医療品一式、禁止エリア解除装置@オリジナル、スタポカード刺しクリップ@ Ragnarok Online、リボン@FFシリーズ
[[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:ブロリーを倒す
2:ブロリーを倒した後、映画館へ向かいフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
4:十六夜咲夜を警戒
5:知り合いの情報集め
6:殺し合いに反対する者を集める
7:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい。メタさんの安否が気になる
8:脱出方法を確立する
[備考]
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。
【相楽左之助@るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚〜】
[状態]:肩から脇腹にかけて斬り傷と重度の火傷、左脚に銃痕、気絶中
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:ブロリーを倒す
4:二重の極みが打てない……だと……?
5:主催者相手に『喧嘩』する。
6:弱い奴は放って置けねぇ。
7:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
8:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ
支援
支援
支援
支援
「アレク……大丈夫か?」
俺はクズだ俺はクズだ、カイトはアレックスに声をかけつつ、心の中で呟き続ける。
「止血はしているんだがな……さすがに、辛い」
さっきからずっと、歩いては休み歩いては休みを繰り返している。その度にアレックスは水を飲む。
喉が渇いて仕方がないらしい。三日分あった水はすでに後少ししか残っていない。
「アレク……そんな傷で、ブロリーと戦いたかったのか?」
「……本音を言うとな」
秘密を打ち明けるかのように話し、アレックスは微笑する。そんなアレックスを見て、カイトも微笑む。
「でもな、お前とリン、そしてクラッシャーとの因縁を解決しないまま、お前のもとを離れる訳にはいかないだろう……
俺はずっとお前と一緒に行動して来た。正直言ってお前との縁を切りたいと今までに何度も思ってきた。
だけど結局、今に至った。腐れ縁って奴だな」
「アレク……お前がいないと、俺はすぐに死んでたよ……アレクにはどれだけ礼を言っても言い足りない」
「礼なんかいらないさ。俺が勝手にやっている事だ」
アレックスはそう言うが、カイトは何故アレックスがそこまで自分のために頑張ってくれるのか、理解していた。
「ハクに、ヒーローと言われたからだろ?」
そう言うと、アレックスははにかむ。カイトも笑った。
「鋭いな……馬鹿な話だが、俺はリンやお前にそう言われて、はっきりと自分のするべき事を自覚したよ……
俺は強かったんだ。そして、左之助と違って、本当に助けを求めている連中に、気づいてやれる長所を持っているんだ。
そうさ。ハクやお前が言ったとおり、俺はヒーローだ」
カイトは苦笑する。アレックスもだ。
「そんな事言って恥ずかしくないのか?」
「事実だろ?例えば、左之助がお前を助けると思うか?」
カイトは左之助に殴られた事を思い出し、顔を暗くする。
「助けないだろうな……俺が逃げた時点で、あいつは俺を見下していた。それにしてもずいぶん左之助の事が嫌いみたいだな」
「嫌いというわけではないんだが……」
アレックスは言葉を選ぶようにして、ゆっくりと話す。
「多分、左之助は左之助で正しいんだと思う。あいつは、細かい事を抜きにして、誰かを助けようとしているだけなんだ。
俺の場合、一々気にかけてしまうような細かい事でも、あいつは気にしない豪快さを持っている。
俺とあいつは全然違うが……あいつは、悪い人間ではない、はずだ」
「俺を殴ったのにか……?」
「それは早とちりしてトキを殺したお前が悪い」
カイトが乾いた笑みを見せる。
「ちょっと待ってくれ……また、痛んで来た……」
「水飲むか?」
「ああ……すまない」
アレックスの水はすでに底を突いている。それを知っていたカイトは、自分のデイパックから水を取り出し、アレックスに渡す。
受け取ったアレックスは水をがぶ飲みする。リンに刺された傷は想像以上に深手だったようだ。
血を流し過ぎたため、喉が渇いて渇いて仕方がない。アレックスが満足するまで水を飲むのを、カイトは眺めていた。
「少し、休ませてくれ……」
美鈴と左之助の元へ一刻も早く援軍を送ってやらなければならない。
しかし、事態はやはり思ったように進行してくれない。こんな事ばかりだ、とアレックスは心の中で呟く。
無理をしてでも歩かなければ、と思うが全身がだるくて思うように動けない。おまけに頭まで痛くなってきた。
「大丈夫か……頼む、頼むから死なないでくれよ」
縋るようにカイトは言った。アレックスはカイトに笑みを見せ、大丈夫だと言った。
「行こう……二人が死んでしまう前に……援軍を」
と言うものの、アレックスは立ち上がる事が出来ない。体中のだるさは相変わらず、頭痛はどんどん酷くなっていく。
仕方なくカイトはアレックスに肩を貸す。
支援
支援
支援
「カイト……お前は根は優しい男なんだ。俺の知り合いに、お前ほど妹の事を思い、自分の過ちを後悔出来る人間はいない……」
「どうして急にそんな事言うんだよ……もう死ぬみたいじゃねえか。やめろよ」
カイトは狼狽して言った。アレックスに肩を貸しても、思うように進めない。
かなり限界のようだ。纏まった休息を取った方がいいかもしれない。
「お前に足りないのは、自分が悪い事を認め、反省する事が出来ないというところだ……
カイト、良く聞け。自分の過ちを認めて、反省しない奴はどうやっても成長出来ないぞ。
認める事は、恥ずかしい事じゃないんだ……悪い事をしてしまったとしても、取り返しがつかないなんて事はめったにない。
ハクも、お前が成長している事をきっと望んでいる……」
「ハク……」
カイトは呟いた。アレックスは彼女を思い出して、何度目か分からない涙を流す。
隣には、ハクを見捨てた男カイトがいる。いつかカイトを立派にしてやる事が、ハクへの弔いになるとアレックスは頑なに信じていた。
(カイトも、リンも……天国に行ったクラッシャーもハクも、みんなみんな俺が幸せにしてやる……
ヒーローの俺が────)
「カイト……頑張ろうなあ。俺はお前を見捨てないぞ……俺はお前を絶対に一人前の男にしてやる……
そして、リンと仲直りさせてやる……本来の、お前に戻してやる。優しい、兄貴に……きっと」
アレックスの容体が急に悪くなってきたような気がする。
「アレク……大丈夫か?」
「さあ、な……さっきから頭が痛くて痛くてたまらん……」
「頭が痛いのか……」
「ああ……突然頭痛が……」
それを確認したカイトはアレックスの腹を思い切り殴った。
アレックスを地面に引きずり倒し、馬乗りになってアレックスの顔面を何度も何度も執拗に殴った。
ぼろぼろになったアレックスの顔に唾を吹きかける。アレックスは訳が分からなかった。
きっと悪い夢を見ているのだろう。きっと、そうに違いない。根は優しいカイトが、こんな事を突然するはずがなかった。
瀕死のアレックスに跨り、カイトはにやにやした笑みを見せつけた。そして、また唾を吹きかけた。
ポケットから、何かを取り出す。ビンだった。元々は何かの薬品が入っていたようだが、今は空だ。
「これが何だか分かるか?アレク」
アレックスの目の色が驚愕へと変わる。カイトが何を持っているのか以前確認した時、
それは確かに彼のデイパックの中に入っていた。飲むと、頭がパーン爆発して死亡してしまうという危険な……
「…………必須……アモト酸……か」
声帯の潰れたアレックスがしわがれた声を出した。
「御明答。こっそりペットボトルに入れておいたんだ。
人から貰ったものを無暗に飲食してはいけないと、子供の頃に習わなかったか?」
得意気な顔で、カイトは言った。
「お前の頭痛はこの毒薬の所為だ。もうすぐお前は、頭がパーンとなって死ぬ。
もうお前は俺を守る事は出来ないだろ?今まで世話になったな」
アレックスは悪に染まったカイトの笑みを見て、信じられない思いで目をこれでもかというほど見開いた。
理解出来なかった。確かにカイトは今まで散々な事をしてきた。しかし、カイトはそれでも、自分のしてきた事に絶望していたし、
弱い自分をなんとかしようと自分なりに頑張っていた。ライダーに変身して暴れた後だって、自分の過ちに絶望して涙を流していた。
根はいい奴だった……どこにでもいる、妹思いの青年だったはずだ……
支援
支援
支援
支援
「何故…………だ……何故なんだ、カイト……」
アレックスは呟いた。本当に意味が分からなかった。
「何故だと?答えは一つしかないだろ?」
カイトはアレックスの髪の毛を掴み、無理やりカイトの方へ顔を向けさせた。
「────優勝して生き残るための、人数減らしだ」
「馬鹿な……お前は、そんな人間じゃ、なかった……そんなクズじゃない」
「いいや違う。俺はクズで卑怯で本当にどうしようもない人間だ。どうして今まで気がつかなかったんだろう。
どれだけ頑張っても俺は一向にお前のような立派な人間になれない。俺の卑怯でクズな性質は生まれつき、定められたものなんだ。
アレク……お前の話だと、俺は根はいい奴なんだってな……。違うんだよ。俺はなあ!俺の本性はなあ!」
アレックスの頭から手を離し、カイトは自分の頭を押さえて、喚くように言った。
「俺は善人なんかじゃない! 俺は────悪魔だ!」
そう宣言した後、アレクに跨ったまま、カイトは項垂れる。
しばらく項垂れたままぶつぶつ何かを呟いていたが、突然跳ねるように顔を上げる。
「俺は、世界から、この世の全ての人間から拒絶されているんだよ!アレク!」
血走った眼でアレックスを凝視した。カイトの言っている意味が、アレックスにはよく分からない。
「俺は勇気がない!俺は卑怯だ!だがそれって悪い事なのか!
俺が今までしてきた事は、ただ勇気を出せなかったことだけだ!勇気を出せない事がそんなに悪いのか!?
ただ臆病に走った事が、妹からまで死ねと罵倒されるほど悪い事なのか!?
人を殺したクラッシャーよりも、臆病な真似をした俺の方が悪いってのか!!
ふざけるな!ふざけるな!!死にたくないって思う事が!そんなに悪い事なのか!?
────ふざけるなああああああああああああああああああああ!!!」
そう言いながらアレックスを殴った。殴り続ける。
カイトは色々と喚いているが、そんな事に答えが出せるはずがない。
殴りながら、カイトはまるで演説のように威厳たっぷりに言い放つ。
「だがな!どうもこの世界の常識に照らし合わせて考えてみると!やはり俺は悪であるらしい!
俺のしてきた事は悪だ!紛れもない悪だ!だからこそみんなみんな最後には俺を憎む!!ハクもリンも左之助も!!
だがどうすればいい!?生きる事を止めろとでも言うのか!それとも殺人鬼相手に!
勇気ではなく無謀を振り絞って勝ち目のない戦いを仕掛けろとでも言うのか!?どっちもごめんだ!!俺は生きたい!!」
はあはあ、と息を切らせながら、アレックスを殴るカイト。それはそうだろう。
誰だって生きたい。だが、生きる事自体が恥を撒き散らす行為に等しいのなら、人はいったいどうなってしまうのだろうか。
「俺は生きたくて生きたくて仕方がない!!だが、俺が生きようともがく度に!必ず誰かが不幸になってきた!!
何故なんだ!?それは俺の本性が悪魔だからだ!当然だ!俺は何をやっても反省出来ない!失敗を生かす事が出来ない!
それは心の中で密かに自分は悪くないと言い張っているからだ!やっている事はどう見ても悪なのに!
俺は悔い改める事すら出来ない!────否! しようとすらしない!!!
それこそが悪魔である証拠だ!!俺は自分のためならどんな事でも出来る人間なんだ!!
人の本性はどうやっても変えられねえ!!俺はいい奴なんじゃない!!────これが証拠だ!!」
叫びながら、拳を叩きこむ。息を切らして、カイトは体を休める。
アレックスはまだかろうじて生きていた。
「おま……えは、、やけに……」
「自暴自棄になっているだけとでも言うのか?違うね。俺は俺の本来の生き方に気づいただけだ」
支援
支援
支援
「悲しいもんだぜアレク。俺は生きようと足掻いているのに、お前を除く全員が俺に死ねと圧力をかけてきやがる。
当然だよな。俺が生きていると周りの連中が不幸になるからだ。俺と俺を除く全員は、互いに相容れない存在だ。
さっさとこの事実に気づいちまえば良かったのに……俺は今まで生きて来て、自分の本性に全く気がつかなかった。
リンやミクやレンやメイコと今までのほほんと暮らしてきたが、今思い返してみるとあれほど歪んだ光景はないな。
クズ野郎と善良な人間が同じように生活していたんだぜ?いつか破綻するに決まっている。そして、予定通り破綻したんだ……
だが俺はやはり輪に入っていたかったんだよ。悪魔だろうと、他人に害を撒き散らす存在であろうと、
俺は普通に兄弟や友人達と仲良く暮らしたかったんだ。それがこの世の摂理に背くような行為でも、だ。
一人は寂しくて寂しくて死にそうだから、世界の秩序の中に生きていたかったんだ。
それは無理な話だと、このバトルロワイアルの中で気付かされた」
くつくつとカイトは笑う。アレクはひたすら呆然とした目をカイトに向けていた。
この男を信じていたハク、隊員、リン、そして兄弟達はどうなる?
カイト自身が自分を悪魔と名乗って、どうする……自分の事を蔑んでどうする……
────開き直ってどうする!!
「─────ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
あれほど愛した兄弟の死も!『ああそうか』と俺の心を通り過ぎていっただけだ!!
成長した友人の窮地からも! 俺は一目散に逃げ出した!!
最も大切だったリンも! 命を守る楯として使えるなら容赦なく使うまでだ!!
希望を語る仲間なんていらねえ!! 悪魔に仲間なんざいるか!!利用された馬鹿が悪い!!
クラッシャーもトキも俺という悪魔の視界にのうのうと入ってきた事自体が!!そもそも自業自得なんだよ!!」
「覚えているかアレク!右上の言葉!残り半数、後半戦開始だというあの言葉!
あの言葉を聞いた瞬間、俺というクズ野郎の脳みそはそろそろ積極的に動く頃合いだと計算を始めていたんだ!
自分が悪魔だと自覚したからには!もう容赦入らねえ!お前のような優しい人間を利用しまくってやる!
楯にしてやる!お前のように、俺を守る護衛として、生き残ったクソ雑魚どもを利用してやるよ!!」
アレックスは怒りで震えた。もう体のどこも動かす事が出来ない。それでも怒りだけはめらめらと湧いて出てくる。
許せなかった。こうなってしまったカイトが心の底から許せなかった。
隊員はクラッシャーはトキは!こんな外道に殺されたのか!
ハクはリンは……こんな外道に不幸にさせられたのか……
「カイ……ト……ふざ、けるな。このクズ野郎が……!」
「その通り!俺はクズ野郎だ!もう言い訳も言い逃れもしない。正々堂々卑怯な事をしてやるよ!
もう俺の心には、プライドも良心も罪悪感を感じる心も残っていないからな!!
クズ野郎だから、生き残る事以外はどうでもいい!!ククク……ハハハハハハハハハハ!!!」
アレックスは絶望する。完全にカイトは変わってしまった。最悪の方向へ、こいつは変わってしまった。
俺は、俺達の思いはどうなる?カイトの犠牲にあったみんなの気持ちはいったいどこへ……
「俺が死んだら………左之助達が、、不審に思うぞ……覚悟は、出来てるのか」
「馬鹿が!左之助達は今頃死んでるよ!呆気なくな!」
カイトは服の裾を上げる。あるべきはずの物がそこになかった。
ライダーに変身できるブレイバックル。カイトの腰に着いているはずだったそれが、ない。
カイトはにやにやと笑って言い放つ。
「ブロリーにとられちまった。あいつは見事にライダーに変身してたぜ。
ライダーを、瀕死の雑魚二人が倒せるはずがない!!あいつが暴れれば暴れるほど俺の優勝は近付く!!俺の生還は近づく!!」
勝ち誇った顔でカイトは言った。俺は途方に暮れた。ただでさえ強いと言われるブロリーが、さらに強力になってしまった。
「お前も美鈴も左之助もこれで終わりだ。これで残りは29人。
ククク……いいぞ。あと少し、あと少しだ」
支援
支援
支援支援
────どうしてこうなった
────どうしてこうなった
何をどうすればカイトは道を誤らなかったのだろうか。アレックスには分からなかった。
ただ、今は……頭が痛い。頭が痛い……
「今まで俺の食い物になってくれて有難うアレク。あんたはこのゲームの中で一番俺のために働いてくれた。
その功績をたたえて、クズである俺の卑怯さによって殺してやろう。今まで死んでいった奴らには誰一人向けなかった俺の悪意だ。
初めてクズ野郎である事を自覚出来た記念だ────喜んで死ね」
カイトは腰を上げて、立ち上がる。アレックスを見下した後、背を向けて立ち去る。
「パーン\(^o^)/という間抜けな断末魔を楽しみにしてるぜアレク。精々大声で叫んでくれ」
カイトは高笑いしながら、闇の中へ消えていった。
もうカイトの声は聞こえなかった。アレックスは津波のように押し寄せてくる激痛によって、何も考えられなくなっていた。
頭が痛い。頭が痛い。カイトはアレックスを一瞥すると、彼の支給品を全て奪い、彼の元から去っていく。
とにかく頭が痛かった。恐ろしいくらいに痛かった。
その時、アレックスの頭の中に痛み以外の何かが走った。これは何だろう。何か懐かしい香りがする。
すぐに気付いた。これは思い出だ。走馬灯だ。今までのバトルロワイアルの中で出会った人達が、次から次へと現れ消える。
リン、クラッシャー……お前達の無念を晴らしてやる事は出来無さそうだ……
ハク……お前は間違っていた。俺は、ヒーローなんかじゃなかったんだ。
ただ、悪と善の区別が上手く出来ない……優柔不断な……
頭が……! 痛い……!!
頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が
頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が────
最後に頭に浮かんだ人物。それはカイトだった。カイトはいつものように卑怯な自分に絶望して涙を流している。
ハクを死なせ、リンを傷つけ、クラッシャーを殺し、トキまで道連れにした────
どうしようもなく嫌いだったカイトの卑怯さだが、あの頃は卑怯な行いを後悔していただけ、まだ可愛げがあったな……
カイトを……変えてやりたかった……リンと仲直りさせて、クラッシャーの墓を立てて祈る────
そんな平和な光景が、最後の最後に、俺の脳裏に映った。
(俺の行動は全て、無駄だったみたいだよ。ハク……
ごめんな。俺はヒーローなんかじゃなかったんだ)
頭が……
─────頭がぁぁあああああああああああああああ!!!!!!
「頭がっ……パーン\(^o^)/」
【アレックス@MUGEN 死亡】
【残り31人】
「アレクを殺したのはいいが、俺を守ってくれる奴がいなくなっちまった……ちょっと軽率すぎたか?
いやでもあいつは勝手に一人で死んでもおかしくないくらい死にかけだったからなあ」
これで残り人数は、最大31人。優勝が近付いたのはいいが、誰も守ってくれない今はとにかく恐ろしい。
アレックスを殺した事に関しては、何も罪悪感を感じなかった。悪魔として目覚めたおかげだろう。
そう。これこそが本性なのだ。今までは無理して善人であろうとしてきたから、悲しくて悲しくて仕方がなかったんだ。
俺の本性はクズ、卑怯者。それ以外の何物でもない。だが、クズでも生き残りたいという欲はある。
悪魔である俺だって普通の人間と同じように死を恐怖する。だからクズはクズなりに、優勝を目指すだけだ。
深呼吸する。晴れ晴れとした空気が肺を満たした。清々しい気分だ。
まるで生まれ変わったかのような、そんな心地だ。
名簿を眺めていると、ある名前に目がとまる。レンだ。
「アレクが死んだから、次の俺の保護者を探さないとな……レンなら兄貴の俺を裏切るわけがない。
レンに守って貰おう。まだまだ子供の弟に守って貰うってのが、実にクズで卑怯で、俺らしくていい感じだ。
さっさと会って守って貰わないと、怖くて怖くて死にそうだ」
クズの自覚をしたとはいえ、恐怖が消える訳がない。カイトは足早に北を目指す。
リンに会った時はどうしようか。カイトは考える。涙を流して靴でも舐めれば許してもらえるだろうか。
何故かリンは俺に対して恋愛感情を持っていたようだから、一発抱いてやれば気が変わるだろうか。
とにかく許してもらいたい。許して貰って守って欲しい。俺が一人で生きていける訳がない。
食い物となる善人が必要だ。だから……弟よ、妹よ、お兄ちゃんに愛をくれ!
クズを自覚した悪魔カイトには、守るべきプライドなどどこにも存在しなかった。
【D-4 草原/1日目・夜】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、精神的疲労(中)、高揚感、
[装備]:ベレッタM96(残弾数10/11)@現実、日本刀@現実
[道具]:支給品一式×5、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタルギアソリッド、
2025円が入った財布(ニコニコ印)@???、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実、ニコ産AI@MUGEN
Rホウ統(使用済)、ブレイバックルの説明書、医療品一式(簡易な物のみ)、はてなようせいがプリントされた毛布
エリアジャンプスクリプト機能(二日目午前まで使用不可)@ニコニコ動画、九条ネギ@現実、伯方の塩(瓶)@現実、魔王(芋焼酎)@現実
福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話 不明支給品0〜1
[思考・状況]
1:どんな手段を使ってでも生き残る。クズで卑怯な事でも躊躇わずする
2:レンを見つけて守って貰う。リンとまた出会ったら仲直りしたい
3:ブロリーに期待
4:卑怯で卑劣な真似をするのは当たり前。何故なら俺はクズだから
※今のカイトにはプライドがありません。どんな恥ずかしい手段でも卑怯な手段でも、生き残るためなら躊躇わず使用します。
※自分の本性は卑怯でクズでどうしようもない悪魔だと確信しています。
※アレックスの支給品を全て奪いました。トキのデイパックも拾いました
※雄斬の死体とデイパックはまだ放置されています
支援
パーン支援
必須シエン酸
投下終了。急いで書いたので色々と荒があるかもしれないです
お疲れ様でした!
もうここまで来るとKAITOがどこまで堕ちるのか逆に楽しみになるw
___
/ || ̄ ̄|| ∧_∧
|.....||__|| ( ) どうしてこうなった・・・
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
| | ( ./ /
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/ || ̄ ̄|| ∧_∧
|.....||__|| ( ^ω^ ) どうしてこうなった!?
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
| | ( ./ /
___ ♪ ∧__,∧.∩
/ || ̄ ̄|| r( ^ω^ )ノ どうしてこうなった!
|.....||__|| └‐、 レ´`ヽ どうしてこうなった!
| ̄ ̄\三 / ̄ ̄ ̄/ノ´` ♪
| | ( ./ /
___ ♪ ∩∧__,∧
/ || ̄ ̄|| _ ヽ( ^ω^ )7 どうしてこうなった!
|.....||__|| /`ヽJ ,‐┘ どうしてこうなった!
| ̄ ̄\三 / ̄ ̄ ̄/ ´`ヽ、_ ノ
| | ( ./ / `) ) ♪
何はともあれ投下乙。KAITO兄さんが前回とはうってかわっての卑怯戦隊
いやぁ、これは逆に清清しくて素敵すぎ
投下乙です。
アレクが…アレクが死んだだと!?
そしてKAITOはマジで死んでくれ。
氏ねじゃなくて死ね。
本当にKAITOは前回のHALポジションに近づきつつあるなあ…
投下乙!
これは…誰も救われない鬱展開だ…
ブロリーは仮面ライダーになっちゃうし、アレックスは頭がパーんで死んじゃったし、リンも大変なことになってるし…
ついでにKAITO死ねと言わざるおえない
変なところがあると言えば、状態表で美鈴と左之助が気絶中になってる事ぐらいですね
乙です
ブロリーまだ強くなんのかよw
KAITOが良いキャラになってきたな
つか必須アモト酸が予想以上に即効性あって強い
次に会うのは呂布あたりになりそうだから、どうやってこれを飲ませるか、かな
最終的にドロ…ごめん何でもない
同じブロリーに会ったヘタレでも、ベジータとKAITOは正反対になったな。
KAITOにも修造がいたら、道を踏み外さなかったのかねー
>>641 アモト酸はもうなくってるぞ
HALが神(笑)ならKAITOは疫病神(笑)
むしろ悪魔(笑)じゃね?
お互いにサンレッドとアレクとか仲間がいて、ヘタレを直されようとしてたのも同じだな。
投下乙です!
登場人物みんなの気持ちが納得できるだけに、まさにどうしてこうなった状態。
自分がロワに入れられたらKAITOみたいになりそうで、KAITOを嫌いになれないww
>どうしてこうなった5部作
確かにモノホンの悪魔がいるしなぁ……
「善意の参加者を利用する」というスタンスだけ取ってみても今は亡きてゐや、
タチが悪いバクラ、首輪解除フラグ持ちの鬼畜なタケモトに比べると3流以下のにおいがプンプンする。
>映画館2部作
今までパッとしない一般人のキョン子に嫌な脱・一般人フラグ!!
そしてアカギの頭脳が冴える。当のキョン子をピンポイントで避けるとか運良すぎw
一番の貧乏籤はフランか。テトと別行動取ってからの転落ぶりが半端ない。
グラハム、バクラ、タケモトはノリノリですな。お前ら少しは自重しろ。
やめろぉKAITO!!やめるんだぁ!!
ブロリーを利用しようとするのは典型的な死亡フラグだ!!
……と、パラガスこと親父ィが申しております
シュワット!? 支援できなかった!
現在位置表見るとD−4に死体の山が出来てるな。
ああ飲み干したのか、状態表ちゃんと見てなかったスマソ<<必須アモト酸
KAITOのMUGENキャラニコニコで見てきたけどかなり強いね
手刀を中心に戦い、ドナルドがポテト出すみたいにでかいアイス出して攻撃したり氷柱を出現させる氷属性
巨大ロボやボカロ仲間召喚系はここじゃ無理かな
アレックスと同じ強さになんのかな?
投下乙
どうしてこうなったw
予定スケジュール
【投票期限】8月1日(土)0時〜8月8日(金)24時
【投票対象】0話の『オープニング』から85話の『一里四辻・一鹿六兎』までの作品への投票
【投票場所】したらばの「なんでもあり」にて
投票形式
上位5作まで選出可能(必ず5作選出しないと駄目、という訳では無い。一位のみへの投票なども可)
1位を5P、2位を4P、3位を3P、4位を2P、5位を1pとして計算する
・SS部門(作品名で投票)
・セリフ部門(キャラの言ったセリフで投票)
・キャラ部門(キャラ名で投票)
ニコロワβも中盤にさしかかっています。
なので、投票をしたいと思います。
書き手のモチベうpのためにもいいと思うので、是非参加してください!
乙です
ただ、ラウズカードのファイアでもない限りブレイドは火炎放射は使えませんよ?
クラッシャーの体を焼いたのは、サンダーのカードの電撃です
投下乙
KAITOはここまできたら今更対主催になるわけないし、これは生存フラグは消えたかw
ロワの記憶に残るむかつくキャラとして物凄く頑張ってほしい!死ぬまで。
それでは、投下します。
支援は俺に任せろ!
「そうか」
――俺はきっと無表情でそう言った。
32人。そう、32人だ。
残りはたったこれだけしかいない。
見知らぬ誰か達は飽きることなく殺し合いを続けているようだ。
奴の言うとおり殺る気満々な奴がいるのかもしれないが。
それは、なんて無様な――。
何故、生きる努力をしない。
どうして自己保身をしない。
この殺し合いの参加者のするべきことは殺し合いだけじゃない。
生き残ること。これこそが重要だというのに。
どうして、大量発生して錯乱したレミングのように自ら死にに行くんだ。
おおよそ俺には理解できない。
死にたくないのなら、生きるべきじゃないのか。
「それとも、諦めのいい奴が多いのかもな」
俺としては勝手に殺し合ってくれた方が助かる。
一つ一つは繋ぎ合わさって連鎖となり、さらに拡大されるのだろう。
みんなで広げよう殺戮の輪。…入りたくねえけどな。
死人はどんどん増えてくれて構わない。
禁止エリアもかろうじて外れてるし、大した問題ではない。
しかし、気になることが一つだけあった。
カチ、かち。
カチ、カチ。
カチ。
「…うむ」
スイッチを入れる音と切る音が交互に響く。
液晶のディスプレイに映る映像を視ながら、回転椅子をくるくると回す。
気分はさながらメリーゴーラウンド、な訳ない。どっちかと言えばコーヒーカップか。
「さて、どうするか……」
画面に映る一点の光。
それが俺の最大の懸念事項だった。
支援
◆◆◆
今更ながら、少人数での籠城には欠点がある。
簡潔に言えば、情報が集められないということだ。
運よく特定の情報でのアドバンテージはあるものの、参加者の相互関係、スタンスの把握においては明らかに劣る。
いずれは出会わねばならないのだから相手の素性くらいは把握しておきたいものだ。
そうでないと、前述の奴に話しかけることになりかねない。
だから、最低でも一人か二人は会っておきたいのだが……誰も来ないし。
それはいいことなのだろうが、ここまで来る気配がないというのも考えものかもしれない。
来ないのは仕方ない、仕方ないけど。
ところで、B-2に映る点。
どう見てもヒキコモリですありがとうございました。
人の事はいえないがそんなのはどうだっていい。
賢明な判断だと思うよ?
あれだけの家があれば意図的に探し出すことはほぼ不可能に近いし
力がなくて単独行動なら間違いなくそうするだろうな。
てか、動いてる奴の神経を疑いたいね。それとも非力な奴はあらかた死んだということだろうか?
こいつはいい判断をしていると思う。
けど俺に見つかっているのが運のツキだ。
これからもこいつは動かないだろうし、他の奴にも見つかりはしないだろう。
なら、こっちから出会ってやるまでのこと。
見つけた以上は思い通りには動かせてはやらない。
それにそろそろ探知機の寿命が半分に近づいてきたし。
余計な観察を減らすために越したことはない。
しばらく考えて、外に出ることにした。
カツコツと、ブーツが床を叩く音が響く。
無機質な雰囲気で囲まれたフロアは、昼間とは違い言いようのない不気味さを感じさせる。
静かだ。誰かの寝息しか聞こえない。
いい加減起こさないとな。
まあまあ良く寝ていらっしゃる。
えーと、かれこれ2、3時間以上か?
こんなにも無防備だとヤられても文句言えないな。
「おい、起きろ」
「ぅ……ん…、あと3分」
定型文みたいなセリフ吐きやがった。
構わず起こすけどな。
「おい」
「ふぁ?……――!!」
少々小突いたら起きた。
それはもう凄い勢いで。思わず顔面がぶつかるところだった。危ない危ない。
支援
「あ!?え?え……もう夜?…まさか……!!」
「ああ、残念ながら聞き逃したようだ」
「ご、ごめんなさい!!ちょっと寝るつもりだったんだけど……」
「聞いてなかったのは、お前だけだから」
「え?……あ、ああ…そうなんだ……」
「幸いここは禁止エリアにならずに済んだ。当面は問題ないだろう」
「そうですかぁ…よかった」
多分次かその次くらいには入るかもしれないが。
その時には残り人数は20人を切っているだろうから本格的に動けるはずだ。
20人とは言ったが、別にその人数が多少上下しようとも構わない。
今からするように、俺の行動もあるわけだし。
「目は覚めたな」
「はい」
「じゃあここを出るぞ」
「え!?」
いちいち驚かれても困るんだが……。
「出張だ出張。しばらく離れるだけだ」
「でもそれじゃあ、誰もいなくなっちゃいますけど……」
「来るやつはいない。これから向かう所以外にいる奴は最低でも3kmは離れている。時間にも余裕はあるだろうよ。
それに……鍵は閉めていくし」
◆◆◆
室内は全て消灯された。
電気の消えたビルはさながら真っ黒な箱の様で、周りに電灯がないのがそれをさらに際立たせる。
非常階段から裏口を出て、ぐるりと正面ドアに回り込む。
ちなみに、開く扉は正面の自動ドアだけだ。そして一面に張られた水。
微かに、パチパチという音が聞こえる。
仮にゴム靴を履いてるやつが侵入したところでシャッターも閉まっている。
どのみち、ビルの中には誰も入れないようなものだ。
入れるのは、鍵を持つ人間のみ。
……
視界には闇しか映らない。
月はまだ低く、反射される光はまだあまり意味をなしていない。
気の利いた街灯も全く立っておらず、何故こんな所にビルがあるのか理解しようがない。
山奥に六本木ヒルズを建てるようなものだ。でもそれはそれで地域活性化が期待……出来そうにない。
「少し……怖いです」
「何度も言うがな、奇襲の心配は無用だ」
「いえ、そうじゃなくて、周りの雰囲気が」
ああ、そういう。
確かに生物の気配が全く感じられないというのは不気味極まるものだ。
虫の声すらしないのだから。
たとえこれらの植物が本物だとしても、作りものとしか思えない。そんな感じだった。
ジオラマの世界を歩き続ける。たまに吹き付ける風がうっとおしい。
会話も殆んどなく、歩き続けること数十分。
ようやく住宅街へと入った。ここら辺で街灯が規則的に立っている。
ここから概算で400m。先に、目的の奴がいるはずだ。
確認。
うん、やっぱり動いていない。
このまま進攻してもいいかもしれないが、今は、やっておきたいことがいくつかあったのだ。
◆◆◆
経過30分。
標的が潜む家の向かいから5軒右隣の家に俺達はいた。
ここまで時間がかかったのは、単に道草食ってたからだ。
武器調達、道具調達etc……。ちなみに確認してわかったのだがどこの家も鍵がかかっていなかった。
しかし中の家具や小物はどこか使われていた様子を思わせる。謎だ。
それにしても、暗がりの中で男女共にいるというのは……別に変ったシチュエーションではないだろう。
「向こうも明かり、点けてませんね」
「相手もそこら辺は用心してるみたいだな」
今のところこちらの存在が気付かれている様子はない。
しかし相手が何らかの方法で(挙げるとキリがない)察知していた場合、はなからこの計画は台無しだ。
それを憂慮したところで、何も変わりはしないのだが。
「まあ、とりあえず俺が家に入ったらお前は待っておけ。先に俺が調べてくる」
「待っておくだけでいいんですか?」
「……そうだな。もし、俺が出てこなかったら――その時は自分でどうすべきか考えろ」
異論を挙げられる前に外に出る。
そんな声はなかったのだが。
……もうちょっと何かあってもいいんじゃないかい?
支援
支援
ひっそりと、音を立てずに壁伝いに道を進む。
重要なのは音を立てないことより見つからないことなのだが、そこは雰囲気の問題だ。
ゆっくりと、素早く。
こういった侵入時の緊張はいつもながら―――――――?――慣れるものではない。
相手の力量も測りがたいものだ。
軍人クラスが銃で武装していたら正面からでは無傷で済む可能性はかなり低い。
なるべく被害を最小限に留めるならばやはりいつも通り――違ぅ―でいいだろう。
家の内部構造がわからないので地の利はあまり良くない。
だからと言ってここで引き返すのも癪な話だ。ビビったままでは事態は進まない。
此処は前進あるのみだ。
目標がいる家の前にきた。
門灯も点いていない。窓と玄関は正面。ガレージは向かって右側にあり、左側にベランダがある。
こう言う場合はどうやって入るかはだいたい決まってくる。
アレだな。住宅街ってのは、家が密集しすぎなんだよ。
一般人にしては十分な間隔なんでしょうがね。
ということで、俺は五軒隣の家に入ったのだ。
あくまでも万全を期して。気付かれてたらただのピエロだが。
そして、五軒隣の屋根の上。
構造によってまちまちだが、家々の間の距離は4メートルくらい。
…どうやって屋根に昇ったかって?野暮なことは聞くだけ無駄なのさ。
ホップ、ステップ、ジャンプっと。
屋根を飛び継いで、着地。
起こした音に心配する必要はない。
・・・・・・・・・・・
あちらから見えていない限り、気づかれることも無いのだから。
だが、ここからが正念場だ。
さらにベランダに着地。
カーテンで窓の中、もとい部屋の中は見えない。
気配を窺って見れば、この部屋に人がいる気配はしないのだが……いないという保証はない。
できるだけ100パーセントに近づけたい。確証がほしい。
方法はあるにはあるのだが、よくよく考えてみればものすごく無謀だし相手の警戒心を上げるだけなので止めておくことにした。
今がベストと考えるのがいいだろう。これ以外に無難な方法が見当たらない。
自分の感覚を信じる。これが俺のとった方法だった。
気を張り詰めて、一か八か。
事態に備えながらからりからりと大窓と、網戸を開ける。
支援
……。
よし、良し。
今この部屋には俺しかいない。
二階からは何も物音がしない。息遣いを感じろというのは少し無理な話だが。
ターゲットは一階にいると見てほぼ間違いないだろう。
勝手に動き回られる前に早めに行ってしまおう。
階段を下り、一階の床に足をつけ――……る前に、立ち止まる。
ここが一番危険なのではないだろうか。
何せ、家の構造上目の前に見えるのが玄関だけなのだ。
すぐに知れたことだが、廊下とリビングの扉はちょうど階段の横にあって死角になっている。
……てか、近づいてきてないか?誰がって、そりゃあ…
秒を待たず接近する足音。無警戒とも警戒ともとれる感触。てか、どっちかわからん。
まさか気付かれたのか?いや、そうじゃないのか?どっちだ。
わからない、わからないから――
「「!!!」」
視線が交錯する。
姿を確認すると同時に、どう対処すべきかを考える。
と、相手は思考するより逸早く俺を敵とみなし排除に乗り出したようだ。
ギラリと鈍色の包丁が光る。
ハ、殺気全開ってか。だが、無駄だ。
初動では遅れたが速度の上では俺が上回っている。
出会う前から攻撃してこなければ、その程度のスピードでは掠りもしない。
胸を狙ってまっすぐと向かってきた包丁を間髪で回避する。
この程度の斬戟、避けられずして何が暗殺者か。
俺を殺したければこの百倍は持ってこい。いや、しなくていい。
しかしよく見れば片手に2本も包丁を持っていらっしゃる。
そんなに持たなくてもそのくらいの刃渡りなら一本だけでも充分に致命傷だと思うけどなぁ。
当たってはやらないけど。
現在、攻撃を躱したということは、相手の腕はちょうど俺の脇腹の横にある。
というわけで、伸びきった相手の腕を脇に挟み込んでまず左手を封じる。
次が来るかと思いきや、来ない。必死に手を抜こうとしている。
不思議に思いながら相手の右手を見れば、成程、こりゃあ鉛筆も持てないな。
ふーんと独りで納得していると左方向から回し蹴りが飛んできた。
それも胴と腕で挟み込む。威力は意外とあるけど、まともに当たらなきゃ意味がない。
しーえん
鬼畜支援
「くっ……!!」
左手と右足を封じられた相手は何とか危機を脱しようと必死でもがいている。
もうちょっと見ていたい気もするが、遊んでいる暇はないのですぐさま拘束を緩めてそいつを蹴り飛ばした。
「きゃっ!……」
可愛らしい声をあげて、尻もちをつく。
蹴り飛ばしたといっても足で押し倒した程度だからそれほどダメージはないだろう。
「怪我はないか?」
「ハァ!?人を蹴っておいてよく言うわね!」
「先に襲ってきたのはお前だろうが」
正当防衛で無罪です。
しかし戦意は全く衰えていない様子で。
けどね、手前の武器は俺の足元にあるんだよ。
「まあまあ落ち着いて、何も敵対するつもりはないから。少し話を聞きたいんでね」
「信じろっての?馬鹿じゃない……」
「信じるとか信じないとかどうでもいいんだが……あんまり下手な行動はしない方がいいと思うな」
拾った包丁の側面を撫ぜながら、俺は目の前の女に静かに言い放った。
◆◆◆
さて、今俺はちょうど女…野々原渚の目の前に面と向かって座っている。
ちなみにこいつのバッグはリビングのソファの上に置いてあったのでそれごと占領中だ。
一方女の方は丸腰で小さくなって座っている。
てか、チャイナ服ってどうよ。
趣味の問題をどうこう言っているわけではなく、露出が多いからあまり野外活動には向いてないと思うんだが…。
しかし、縮こまってはいるものの未だに俺に対しての敵意は衰えず、双眸をぎらつかせている。
さながら獣のようで、女って怖いなあとしみじみ思う瞬間だった。
状況の説明はここで切って、本題に入る。
まず第一印象は最悪。ギャルゲーでもこんな出会い方しねえわ。
まあ殺し合ったし当然と言えば当然なんだが……これを和らげるのは難しい。
特に話術も持ち合わせていない俺にとって結果的にはごり押しになってしまうのだ。
こんな風に。手で、包丁を弄くりながら。
「今まで誰に出会ったか聞かせてもらおうか、え?」
まるでヤクザである。
渚の視線が、俺の持つ包丁を追う。追いながら、
「いやだ、って。言ったら?」
「想像に任せよう」
平然と言い放つ。
「……」
「わかったわ、言うわよ。言えばいいんでしょ!えっと「待った、一つだけ」」
ブチィ、という音が聞こえた気がしたが、きっとパンツのゴムでも切れたんだろう。
気にすることじゃない。
「死んだ奴の情報はいらない。生きている奴のだけをくれ」
「……そう」
略。
内容について端的に述べよう。
説明するだけの尺がもったいないとかそういうメタ的な意味じゃなくて、語るべきことが殆んどないのだ。
こいつ…渚は会った奴の名前を知らない。
口ぶりからしてそれなりの人数には出会っているようだが。
要するに、こいつは名前を教えるだけの人間関係を作っていないということだ。
貧乏くじ引いたかな、俺。
こうなったら死人のことも聞くべきだろうか。いや、それで墓穴掘ったらどうする。
藪蛇は勘弁したいところだ。で、数少ない情報から得られたのが、映画館での出来事だ。
主にカラス女と金髪の男。
色々あったようだが、特にカラス女に関しては話すテンションがとんでもなかった。
陰鬱で、憎しみをこめた言葉を口に出していた。
あくまでも彼女の主観でだが、それはもう凄惨な人物(?)だったのだろう。
指を切り落としたのもそいつらしいし。とんでもないドSである。
「ちょっと……聞いてもいい?」
「どうぞ」
何の気なしに質問を受けてしまった。
いや、質問如きに身構えるのもおかしな話だが、ここはそうすべきだったと思う。
その質問は度肝を抜くとまではいかないものの結構驚きに値するものだったからだ。
「私にはお兄ちゃんがいるんだけどね……顔が思い出せないのよ。
いいえ、思い出せないというよりは誰がお兄ちゃんの本当の顔なのかわからないの。
すごく……記憶があやふやで……あなたもそんなことない?」
支援
支援なのですよ〜
「……いや、ないな」
正しい選択、だったろう。
動揺を出すわけにはいかない。付け込まれる可能性も十分にあるからだ。
それに嘘をついたところで誰にもわかるものではない。
そう、俺以外には――
「他にもそんな奴がいたのか?」
「うん、もういないけどね…」
「……ふぅん」
考えるような仕草をしてから、静かに考える。
一応、少ないが情報は手に入った。
後はこいつをどうするかということだが……
「おい」
「何よ」
「俺と協力しないか?」
「…は?」
露骨にそんな顔しないでくれー。
そこまで論外なこと言ったか?言ってないだろ?
こういう交渉の場ならこんな言葉が飛び出すのも普通だろうに。
……まあ、前準備は出来てないわけなんだが。
「お前も最後まで生き残れるとは思ってないんだろ?俺も実はそうなのさ。
それに渡り歩いて耳にしたんだが首輪を解除しようとしているグループがあるらしい。
だからそのグループに取り入ればお前の目的もひとまず一歩近づけるだろ。
別に悪い話じゃあるまい。単独より複数人の方が行動できるしな」
嘘である。
首輪を解除しようとしているグループなんて見たことないし(可能性としてはあるが)
そんなものは希望的観測でしかない。首輪も実際にどうにかできるかと言えば怪しいものだ。
出来たならそれにあやかりたいところだが……
「……わかったわ」
…意外と簡単に了承してくれたな。
いや、そうでもないか。表情を見ればまだ疑っているのがわかる。
まあこいつに対しても警戒すればいいかな。荷物も奪っておくし。
「そう言ってくれるとありがたい。一番重要なことは、殺すことじゃなくて生きることだからな」
「………」
支援
支援
◆◆◆
渚を連れて外に出たときちくは、果たして若干の呆れ顔となった。
「いたのか……」
家の外壁にもたれかかる様に、雪歩が立っていたのだ。
どこか心配そうな表情が見受けられる。
「ああ、こいつな。とりあえずは協力してくれることになった」
「……ときちくさん、ちょっといいですか」
「あ?」
5メートルほど下がって雪歩は言い放った。
どうやらときちくとだけ話がしたい様子だ。
「ああ、お前は下がっておけ」
渚を言葉で固定させておいて、彼は静かに雪歩のところへ寄った。
「何だ」
ひそひそと蚊のような声で会話する。
「……いいんですか?最初の目的からずれてません?」
「最初の目的…?ああ」
最初の目的。
二人で出会った人間を殺していき、最後に残った方が願いをかなえてもらうという話。
眼鏡の男のこともあったので、雪歩は少し違和感を覚えていた。
「方針は変えてない。ただな、目的を遂行するにはやり方ってものがあるだろ?
あいつはそのための布石だ。何れはあいつに死んでもらうことになるさ。
最後に残るのは、俺とお前のどちらかだ。それは変わらない」
「そう…ですか」
そう言ったものの、表情はまだ昏い。
「まだ何かあるのか?」
「いえ…あの人、なんだか怖いんです……気をつけた方がいいかと」
「言われなくとも分かってるよ」
お前にも十分気をつけるけどな、と心の中で彼は呟いた。
支援
「よかったな、お前。こいつにも了承してもらえたし、早速戻るか。
ああ、それより自己紹介しとけよ。それなりのつきあいになるだろうし」
「萩原雪歩です…」
「…野々原渚です」
粛々と事は進められ、それぞれの思惑を胸に目的地へと向かうことになった。
スタンスは違う。一時的の協力は、それに拍車をかけさらなる不和を生む。
それを承知での協力であり、だからこそこうして共に行動することになったのだ。
利点は、あるだろう。だがそれは時として、人によっては全くの不利にしか見えないものである。
だから彼女は、その例外に漏れず、思う。
(何よ……あんたたちの考えてることなんかすぐ分かるんだから。
どうせ私が邪魔になったらすぐに殺すつもりなんでしょ?そういうことで
その女も了承したんでしょ?見え見えなのよそんなの……!!)
そういう不信を抱くのはある意味当然とも云えるのだが、彼女のは度を超えていた。
彼女本来の性格によるものもあるが、前まで共に行動していたブロントという男の軽挙。
その所為でこうやって傷付くことになり、みすみす惨めに逃げなければならなかったのだ、と。
そういった時間経過と状況によるストレスの蓄積により、かなりの人間不信に陥っていた。
こうやって行動すれば、再び同じような目に遭うのではないか。
そういった疑念が彼女の心の中で渦巻いていたのだ。
(ふざけるな……誰がお前らなんかについていくもんか。
さっきは脅されてただけ……従うとでも思ってるの?あんたたちと行動したってもう何の意味もないのよ!)
行動していくうちにいずれはあの女とも顔を合わせるかもしれない。
いや、すでに情報は知られているのだ。その情報は知れ渡って彼女の知らない
人間までが彼女を危険視することになるだろう。これから誰と出会うことになっても、
野々原渚は自身の身が危うい状況に貶められるのだ。
そんな状態で、彼女が平静を取り繕えるはずもない。
起こそうとするのは現状打破。
自分を守りたい、自分の危険を排除したい。
ただ、その一心で
――あんたなんか、死んじゃえ――
支援
!? 支援
◆◆◆
彼は幸運だった。
いや、この場合どちらも幸運だったと言えるだろう。
結果的に物事はうまく作用し、プラスマイナスゼロといった形になった。
ただし、痛み分けという意味で。
「がっ……――――――!!!!」
背中に奔る激痛。
刺すような痛み。
衝撃と同時に一瞬にして沸き起こる。
錯覚ではない。刺されたのだ。何故?
――ではなく、誰に?
彼横にいる女、雪歩は何が起きているのかわからないといった顔をしている。
おまけに距離は1メートル以上は離れている。その状態で彼の背中左部分を刺せるかといえば、無理だ。
では残りは後ろにいる女、野々原渚、か。そうとしか考えられない。
だが、バッグを奪っている以上武器は持っていないのだ。その後も彼は観察していたので分かる。
行きつく結論は、容易い。
(武器を――隠していたのか――!)
どこに隠していたかを彼は知る由もないが、敢えて言っておくと
彼女は靴下に、家から調達したアイスピックを忍ばせておいたのだ。
丈の長いチャイナドレスのお陰で、ときちくの注意を逸らすことに成功した。
偶然とはいえ、こうして要因の一つは完成したのである。
得物が引き抜かれる感触。
二撃目を繰り出すつもりか。
そう判断したときちくは、すぐさま前面に転がり出た。
寸のところで頭上を何かが掠める。
「きゃああああああっ!!?」
彼は転がったその拍子で、バッグを2つとも取り落としてしまった。
それに走り寄る渚。
手を伸ばそうとするも、彼の体勢では遅れる。
かろうじて一つのバッグを蹴り飛ばし、もう一つは奪われるという結末で済んだ。
だが、まだ終わってはいない。
渚は自分の服の胸の隙間に手を突っ込み、中からカプセルのようなものを取り出した。
それが容器であるならカプセルと言って差し支えはないだろう。
ただし、中に何が入っているかといえば、
パリン、と。
ガラスが割れる音がすると同時に中からヒトガタが現れた。
ヒトガタと形容したのには理由がある。
全身を青と赤を基調としたスーツ……とも言い難い。
体に直接色が付着しているようで、おまけにその肉体も無機質な雰囲気を漂わせている。
何より、そいつの頭部は、まるで機械だった。
支援
支援
「そいつらを殺っちゃって!!」
そう言うや否や、渚は逃走を開始した。
「待て!!」
待つはずもなく、少女は闇へと駆けていく。
そしてその姿を遮るかのように、カプセルから出てきたヒトガタが立ちはだかった。
「誰だお前は……?」
そいつは答えない。
その代り、ときちくを強い既視感が襲った。
いや、フラッシュバックというべきか。
(確か……こいつは……)
かろうじて思い出せない。
サイボーグ忍者。ディープ・スロート。グレイフォックス。
決定的な理解に記憶は追い付かない。
だが、それに気を張っている暇はなかった。
「邪魔をする気か…」
「――俺はただ、お前と戦うだけだ……」
そういうと男は、手に持った刀を構える。
交渉も期待できそうにない、とときちくは判断すると、一歩後ろに飛んでバッグからモンスターボールを放り投げた。
「行け!ネイティオ!――」
支給品には支給品。
とにかく今は体勢を立て直すことが重要だった。
投げたモンスターボールが開き、赤い光が流れ出ると同時にポケモンが姿を現し―――
支給品VS支給品VS支援
びちびち。
びちびち。
「――てええええええええええええええ!!!!??」
モンスターボールの中身は直接は見えない。
トレーナともなればベルトに付けて位置を把握しているのは当然だが、生憎彼はそうではない。
自分のバッグが、こけた拍子に野々原渚のと入れ替わっていることに気付かなかったのだ。
そして、目の前にいるコイキングを見た時の彼の驚きようは尋常ではない。
態勢を落ちつけようと思ったら逆に自分で壊していた。何を言って(ry
…無理からぬ話ではあるが。
哀れにはね続けるコイキングにサイボーグ忍者は目をやると、綺麗に刀を突き刺した。
それでもまだびちびちと暴れるコイキング。
「…お前はなぜこのネイティオとやらを出したのだ?」
(いや、それネイティオじゃありませんってば)
なんて口に出せるわけもなく、頬に冷や汗を伝わせながらゆっくりとブレードを構えた。
もはや、戦うしか選択肢はない。
「雪歩、下がってろ!」
「は、はい……」
風もないのに冷たい空気が漂っている。
距離はおおよそ4メートル。
お互いが踏み出せば一足で間合いを詰められるくらいだ。
有り得ない、感じたこともない久しぶりの緊張感を彼はまざまざと味わっていた。
瞬。
剣戟と火花が飛び交った。
一般人ではおおよそ目で追えそうにない速度。
わずか一秒の間に数撃の刃がときちくを襲う。
それを彼は、ギリギリのところで弾いていた。
知識が、経験が、暗殺者としての神経が彼の肉体を動かす。
実際まだ余裕はあるものの、先程の動揺が拭い切れていなかった。
支援
(やっぱり殺すべきだったか……)
反抗されることはあるだろうと思っていた。
だがそれが、協力関係を結んでからたった数分で破られるとは思いもしなかったのだ。
背中の刺し傷が疼く。
奇跡的に内臓や主要な血管を傷付けてはいなかったが、それでも血が流れ続けていた。
このまま動き続ければ拙いことになりかねない。
人間としての彼の考えが、脳裏にあった。
「!!」
突如、男の姿が消えた。
闇に紛れたとかそういうレベルではない。
何か、ベールにでも包まれたかのように掻き消えたのだ。
「馬鹿な……」
『どこを見ている』
ステルスか――。
声の出どころがわからない。
耳をそばだてようにも自身の心臓の音が五月蠅い。
正面か、後ろか、左右か。それとも、
ザッ、という音。
「上か!!」
予想は当たった。
切り結ぶ刀と刃。
次第に相手のステルスが解けて姿が現われてくる。
おそらく、意図的に解いたものであろうが。
必殺と決め込んでいたようで、その刀には全体重が掛けられていた。
それをときちくは、なんとか右へと往なす。
「ほぉ…今のを止めるとは中々だな」
そう言いながら、そいつはまた闇へと消えた。
「どうも……」
誉めてはもらったもののあまり喜べる状況ではない。
方向がわかってもどの位置から攻撃してくるかはさっぱりわからなかったので
先程のはほぼ勘で対処したと云っていい。
つまり、次はないということに他ならないのだ。
ステルス状態の敵を視認することはときちくには無理だ。
相手の動きを探ろうにも、そのまま忍び足で来られたならば対処のしようがない。
ならば、どうすべきか。
何を思ったのか、ときちくはすぐさま後方へと駆け出した。
『…逃げる気か?』
追いかけてくる音。
タイムラグのお陰で一応距離は開けられた。
今の彼ならば、それで充分。
ブレードを腰に戻し、そのまま彼は両手を構えた。
「そうだ、それでいい……。戦いの基本は格闘だ」
男も刀をしまい、丸腰になる。
乗ってくれてありがたい。
思惑としては素手での戦闘に持ち込むことで致命傷を避けるのが目的だったのだが、
相手が乗ってくれるかどうかが心配だった。だから一旦距離を開け、様子を見たのだ。
若干危険ではあったが、ステルス状態の敵をそのままで相手するよりはマシと考えたのだろう。
それに、目の前の男がこういうことに乗ってくれるとどこか確信があったのかも知れない。
どこから来るものかは、当人にもわからなかったが。
「武器や装備に頼ってはいけない」
(ステルス使うお前が言うなよ、と)
軽口を叩く暇はない。
一刻も早く此処はケリをつける。
すかさず相手の懐に潜り込む。
そしてそこから相手の拳をくぐりぬけ、顔面にフックを二発お見舞いした。
「ガァッ……!」
効いたようではあるが、ときちくはそのまま攻め込めず、再び奮われた相手のストレートを避け、
後方に下がるだけに終わった。
「硬っ……」
わかってはいたことだが、やはり相手の肉体は特別のようだ。
拳を入れるだけでもこちらにダメージが入る。
あぐねている最中に、再びそいつはステルス状態になった。
「言ってることとやってることがちぐはぐだな、オイ……」
愚痴をこぼすも、届きはしない。
近くにいるのか、まだ遠いのか。
そして後ろからの衝撃。
「っ……!!!」
脇腹に蹴りを入れられた。
かなり痛い。鉄棒で殴られたようなダメージだ。
二撃目の攻撃は僅かに顔を掠め、それを頼りに相手の腕を掴む。
痛みに耐えながら、そのまま足を思い切り絡め取った。
支援
支援
ドン、と相手の体から地面へ叩きつけられた振動が伝わる。
自身の体重も含めアスファルトの上に思い切り傾れこんだのだ。
これでダメージがなくては困る。
しかし、相手はまだ健在のようだ。
体が、宙を舞った。
正確には、ただ無様に身体が吹っ飛んだにすぎない。
痛みに声を上げることも忘れ、そのまま5メートル程ゴロゴロと転がる。
しかしそれを堪え、なおもときちくは立ち上がった。
痛みはある。だがそれだけだ。実際にダメージはそれほど受けてはいない。
だが、現状は何も変わらない。
またしても振り出しに戻っただけだ。
そして、さらに数度の拳や脚の応酬が続く。
どちらも退くことはない。事態は、何も変わっていない。
と、その時。
「どうした?もうお終―――」
男の身体が突如光に包まれ、セリフを最後まで言い終わらない内にその場から姿を消した。
代わりに残っていたのは、男を模したと思われるフィギュアが入ったカプセルだけだ。
「……???」
唖然としていた。
何が何だかわからない。
軽くポルナレフ状態に陥ったときちくであった。
彼が知っているわけもないのだが、発動から5分が経過すると、このフィギュアは元に戻る仕組みになっていた。
そしてその後はしばらくしないと使用できない。
十秒も呆然としていると流石に我を取り戻し、そのカプセルを拾った。
叩いても振っても何も起こらない。
「何か発動条件でもあったのか?まあいいけど……」
ときちくはそれをデイパックに収め、そのまま渚を追おうと歩きだした、が。
「あれ?あいつ……どこ行った?」
雪歩が、いない。
この場から、影も形もなくなっていた。
そして、離れた場所から響く銃声。
それで彼は全てを理解した。
「あの馬鹿……!!」
◆◆◆
「ふぅん、一人で追ってきたんだ。あいつを待たなくてもいいの?」
「関係ありません。私が、あなたを殺します」
現場から100m離れた家の庭で、少女が二人立っていた。
一人は野々原渚。
そしてもう一人は、萩原雪歩。
雪歩の緊迫した様子とは裏腹に、渚は余裕を見せている。
「へえ……私を殺せるの?猫も殺せなさそうな顔してるけど」
「とっくに……一人殺してます」
ハ、と。
渚は嗤った。
「……何がおかしいんです?」
「いいや別に。まあ、それじゃあいい気になるかもね……。
だけどそれは、あんたの意志だったの?」
嘲笑い、舐めるように渚は言う。
「何を」
「あんたが自分の考えで人を殺したの?って聞いてるのよ。
どうなの?あいつに命令されたんじゃないの?」
「違――」
わない。確かに雪歩は、ときちくに命令されて一人、ルイージを、殺した。
だけど、それがどうした。そう、雪歩は問う。
「あんたさ、いいようにあいつに操られてるだけじゃないの?
いいように使われて、いいように殺しをさせられて。あんたはそれでいいわけ?」
そんなことはない。
言い返したかった。でもそれは、
「所詮人形なのよ、あんたは。あんたと組んでもいいかな、って思ったけど逆に足手纏いになりそうだし。
此処で殺してあげるわよ。ありがたく思いなさい」
違う。
私は――
「だからおとなしく……何、その目。ああ、そう。そんなに殺してほしいの?
いいわよ、来なさいよ!人形の分際で!!」
「――――――人形じゃ、ない!!!」
ゆりしーVSゆりしー支援
乾いた銃声。
リボルバー式の拳銃は、持ち主の意思どおりに弾を発射した。
しかし、それまでだった。
当たらないものは、当たらない。
何を言っても彼女は一般人でしかないのだ。
そんな者が銃を扱えるかといえば、疑問符を五つ並べたところでは足りない。
そもそもルイージを殺せたのだって零距離から撃ったからであり、実質のところ命中精度は杜撰にも程があるのだ。
だから、当たらない。掠りもせず、見当違いな方向へ命中した銃弾を尻目に、渚は一気に距離を詰める。
「ああっ!!」
殴られた。
その拍子に一時的に顔面が変形する。
渚はアイスピックを持った左手で、思い切り殴り抜けたのだ。
敢えて武器を使わず、素手で攻撃した。
そのまま雪歩は地面に倒れ、仰向けになる。
起き上がろうとする――暇もなく、簡単にマウントポジションを取られた。
完全に固められてはいないが、のしかかられた衝撃で動きを止めるに至る。
「気に入らないのよ、あんたみたいなのは」
そう言うや否や、渚は再び雪歩を殴った。
「強い奴の横にいれば自分も強くなったと勘違いしてるんでしょ?」
「がっ……!!」
殴った。
「強い奴の言う事を聞いてれば死なないと思ってるんでしょ?」
「ぅあっ……!!」
殴った。
「力もないくせに調子に乗ってんじゃないわよ。この蟲が!」
また、殴った。
素手で殴り続けたせいで、渚の左手はかなり傷んでいた。
尤も、雪歩が受けたダメージほどではないが。
胸、首、顔と立て続けに殴られ、痛みが疼く。
「…………」
殴られたショックや痛みで抵抗する気力もなく、雪歩は沈黙してしまった。
「……もう言い返す気力もないのね。まあ、いいわ。これですっきりしたし」
そういうと渚はアイスピックをそばに放り、代わりに落ちている拳銃を手にする。
「じゃあね、バイバイ」
そういや中の人同じか
支援
支援
何も考えられない。
此処で死ぬのだ、という実感も湧いてこない。
ただ、ぼんやりと今までの事を考えた。
今までの自分の人生。今までの自分の生き方。
人形みたいだと言われれば、そうでないとも云えるし、そうであったとも云える。
常に自分は意志を持てていたんだろうか?
自分は本当に必要とされているんだろうか?
道を踏み外すのが怖くて、逆に合わないレールに乗っている。そんな気がした。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
黒いモノがこっちを向いてる。誰かが嗤ってる。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられない。
そんな状態とは裏腹に。
腕が、動いた。
ゆりしーかわいそうです(;ω;)
うまい棒おいしいです
支援
「―――――っつ、あ――――――!?」
刺さった。いとも容易く。
実際のところ、相手が油断していたのだから反撃は容易だったのだ。
要は、心の持ちようで。そして運も重なって。
ぽとり、と拳銃を取り落とす。
女が苦痛に呻いている。惨めに蹲っている。
自分もさっきこんな感じだったのかと思うと、呆れる。
だがその前に。やらなければならないことがある。
かちり。
「……!」
銃口を額に押し付ける。
人の骨の感触が伝わってくる。
これなら絶対に外れない。一歩進んでダメだったのなら、前と同じ方法でやればいい。
女が目を見開いている。何か言おうとしてる。
そんなの、関係ない。
「五月蠅い」
「やめ―――――!!!」
ぱん、と。今度こそ。
銃弾は、渚の頭蓋を貫いた。
(あ―――おにい、ちゃん―――)
走馬灯というべきか。
かつて過ごした平穏な日々。
ペルソナをかぶり続けることで過ごせた日々が、そこにあった。
だが、肝心の兄の顔は、浮かぶことはなく。
彼女の意識は、完全に闇に堕ちた。
【野々原渚@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ 死亡】
ゆりしーはやっぱりカワイソス
支援
◆◆◆
経過二発。
音の出どころに辿り着くのは容易だった。
傷はあまり問題ない。
消毒やら何やら必要だが、思ったより自分は丈夫なようだ。
そんな事を考えながらその場に辿り着く。
「ああ、ときちくさん」
「―――お前」
血に濡れた少女の姿。
だが、それは彼女自身の血ではなく、その下に横たわっている女の返り血だった。
「がんばりましたよ、私。一人でも出来ました」
窘めるべきではない。それはわかっている。
だけど、褒めていいのか?よくやったと言うべきなのか?
言ってはいけない。うっすらとそんな予感がした。
「……そうか、殺したんだ、な」
そんな言葉しか言えない。
それ以上に無難な言葉が思いつかない。
だけど、そう言うと、雪歩は薄く笑った。
その眼は、夜の暗がりより、とてもとても、暗かった。
ヤンデレ雪歩くるーw
支援
◆◆◆
応急処置やらやることが色々で、しばらくこの家に留まる事になった。
今後の考えもまとめたかったし、なにより気持ちの整理が必要だった。
バッグの中にあった首輪をどうするか、とか。(おっさんの生首はダストシュートに捨てた)
コンディションは問題ないか、とか。
荷物の整理、とか。
そして、同行者の事とか。
彼女には出来るだけ引かず押さずの対応でいいだろう。
下手に刺激してこちらが殺されてはたまらない。匙加減が難しそうだが。
一応、武器を預かることを了承してくれたので問題はないと思うが……警戒度は上げないとな。
さっきみたいな無様な真似は御免だ。
ところでふと、庭にある、掘り返したような跡が気になった。
こんもりと盛り上がって、まるで何かを埋めているような――
この時、なんでこんなものに気が付いてしまったんだろう。
この時、なんでこれを掘ってみようと思ったのだろう。
この時、なんで中に何があるか気になったんだろう。
見なければよかったのに。
見るべきじゃなかったのに。
でも、後悔してももう遅いのだ。
既に僕は、何があるか見てしまったのだから。
「ああ、……そうか」
青年が、埋まっていた。
死人だ。死んでから少し時間が経って、もう冷たくなっている。
どこかで見たことのある顔、いや、そうではなくて
「囲炉裏、さん」
やっと、見つけた。
姿は、天倉螢というゲームの登場人物のものだった。
しかし、ここにそういう人物は、いない。
何故だか、まるで方程式にあてはめるかのように自然に答えが導かれた。
そう、単純に、これは
「ゲームのキャラクターの姿を借りた、囲炉裏さんってことか……」
彼の顔を知っているわけがない。
だって彼は実況プレイヤーで、声しか知らない、存在なのだから。
そこからわかること。
話が出来ればよかったのだが、もう彼はいない。
だからこの考えも仮定になってしまう。
だが、この結論しか出ない。
そしてこの仮定が正しかった場合、其処に行きつく結論は。
それを考えると、恐ろしくて堪らない……!!!
嗚呼、どうしてこうも裏目に出る?
上手くいくとは思ってはいない。だけど、もう少し良くてもいいんじゃないか。
これから、自分はどうすべきか。
やはり真実を見つけるしかないのだろう。
「なら、俺は確かめないとな」
ようやく会えたというのに、ようやく見つけたというのに彼の心にそれほどの感慨はなかった。
まだ、足りない。欠けているモノが残っている。
それを見つける為には、止まれない。
たとえそれが破滅の道だとしても。
たとえそれが自分を破滅させるとしても。
もう、それしか道は残されていない。
◆◆◆
流水が体を洗う。
汚れた体を流すために。
シャワーからはとめどなく水が流れる。
すべすべとした肌を水が流れる。
暖められた体はほんのりと薄赤くなっている。
だけど瞳の色は、それでも冷たかった。
また、一人殺した。
かなり無様な形になったが、殺せた。
頬がひりひりと痛む。
でも痛みはあまり気にならない。
自覚はしている。
自分だけでは上手くいかない。自分は何もできないのではなく。
だから、ときちくについていくのだ。
自分で考えて、自分の意思で彼についていく。
それは変わっていない。
私は、人形じゃないから。
人形は、言いなりになるだけの存在。
私はそんなのとは違う。違う。
だからこれは、私の意思。
最後まで、ときちくさんと行動する。
もし自分が死んだとしても、願いは託せるのだ。
だから、何も迷わない。
もう、何も躊躇わない。
それで、いいんですよね―――
支援
支援
ざわ…ざわ…
◆◆◆
彼女は、失うたびに得る。
彼は、得るたびに失う。
己を失うことで、、自分の思いを取り戻す。
自分の思いを取り戻すことで、己が失われる。
正反対。
望むことは、同じに見えて全くの正反対。
だからこそ共にいる。
共に、歩む。
壊れるたびに一歩進み、一歩進むたびに壊れていく。
それを否定することはできない。
なぜなら、それは彼らが選んだ道だから。
どのようなカタチであれ、それは彼らの願いなのだから。
【B-2 住宅街・家の庭/一日目・夜】
【ときちく@時々鬼畜なゲームプレイシリーズ】
[状態]:左肩下に刺し傷(応急処置済み)、全身にダメージ(小)、精神疲労(中)、記憶の混乱(思考は正常)、悲しみ
[装備]: ナイフ×3、包丁×3、ブレード@サイべリア フライパン
[道具]:基本支給品*3、フライパン、フォーク、張遼の書@ニコニコ歴史戦略ゲー 、
首輪探知機(残り48分) 銃(12/15)@現実、モンスターボール(ネイティオ)@ポケットモンスター
アシストフィギュア(サイボーグ忍者)@大乱闘スマッシュブラザーズX 支給品一式×3(一食分消費)、タバコ一箱@メタルギアシリーズ、
タミフル@現実、北条鉄平の首、北条鉄平の首輪、不明支給品0? 、モンスターボール(空)
【思考・状況】 基本思考:生き残り、真実を知る。
0:囲炉裏、さん……。
1:とにかく、今後の事を考えないと…。
2:参加者が20人を切るまで基本的に動かない。
3:誰か着た場合には十全に対処する。
4:雪歩を利用するが、今まで以上に警戒しておく。
5:他にも使えそうな人間がいれば駒として利用する。
6:自分からは殺さない。
7:自衛のための殺害は已む無し。
8:頭痛が治まってよかった。
【備考】
※七夜志貴と十六夜咲夜の姿を確認しました。名前は知りません。
※元世界の知識はかなり封印されていましたが、半分程度解けたようです。
※囲炉裏に関しては、かなり思い出しました。
※ローゼン閣下(麻生太郎)に関することがフラッシュバックしました。
※自身の記憶に関してのフラッシュバックがありました。
※元々の能力などのせいで他の参加者に比べ疲労が激しいようです。
※自分の記憶がおかしいと自覚しています。
※オフィスビルのネットは主催者と繋がっていると推測しました(真偽は不明)
※映画館での出来事を知りました。
支援
【B-2 住宅街・室内/一日目・夜】
【萩原雪歩@THE IDOLM@STER】
【状態】:精神疲労(大)顔、胸、首に打撲傷 、決意 、シャワー中
【装備】: コアドリル@天元突破グレンラガン
【道具】:ナイフ、支給品一式×2(水少量消費)ジャージ@へんたい東方
デスノート(鉛筆付き)@デスノート
【思考・状況】 基本思考:優勝して全てを元通りにする。
1:私は人形じゃない。
2:ときちくさんについていくのは、自分の意志だ。
3:死にたくない。 自分だけでは生き残れないのはわかっている。
4:ときちくさんと、最後まで生き残る。
※ルイージのデイパックは雪歩が持っています
※チャイナ服と、ピョンタ君は渚が装着したままです。
【オフィスビルの現状】
裏口の鍵は閉まっています。
正面扉は開いていますが、一階ホールには電流が流されています。
【アシストフィギュア(サイボーグ忍者)@大乱闘スマッシュブラザーズX】
使用制限時間は5分です。
再び使うには4時間経過しないといけません。
以上です。
支援ありがとうございました。
投下乙
ゆりしーかわいそうですとゆりしー大勝利が一度にきたこの瞬間な感じでございます
なんという力作。感想が間に合わん。ともかく2作ともGJ!
文の相棒よりにもよってゲイルかwあのチートカードやっぱロワでも強いか。
見た目もマッチしたいい組み合わせだね。
遠近戦両方こなして空飛びまわる東方勢の戦闘は熱いな。
アレクと左之の言い争いは考えさせられた。実に対称的な二人だ。
左之はアレク殴り飛ばした辺り空気読めない困り者だと思ってたが、細かいこと考えず信念に生きるスタイルもかっこいいと思えた。
しかしアレックス…惜しい人材が消えたな…
いい奴から死んでいく…これがロワか
アレックスの冥福を祈りたい
ここまでくるとむしろKAITO最高だwww
前までは死ね死ね死んでしまえと思ってたが、こうなったらもう簡単には死んでほしくない
これからの動向に期待
しまった感想書いてるときにもう一人来てた
ここまできてときちく初戦闘!意外とかっこいいじゃないか。と思ったら覚醒しちゃったかー。
雪歩も雪歩で覚醒してるし、これからどうなるんだろな。気になる2人だ。
渚乙。極限状況で一般人が壊れて殺しまわる、原作ロワばりのいい活躍だった
うーむ、
>>653でも言ったけど、なんかスルーされててwiki掲載までされてしまったのでもう一回……
クラッシャーを焼いたのはライトニングスラッシュに使われたサンダーのカードの効果の電撃で、火炎放射じゃないです。
◆F.E氏の作品、「バレットリボルバー」じゃなくて「Hバレットリボルバー」じゃないか?
wikiに間違って収録されてる
乙です
囲炉裏さんの死体見ちゃったかぁ
ニコニコの記憶が戻るっていうのは大きなアドバンテージ
初対面の人間のウソに騙されずに済みますからね
この二人がどこまでいけるか期待
・キョン子がユベルと合体したいフラグ
・KAITO暗黒進化
・雪歩暗黒進化
どうも不穏な空気が漂ってきたなぁ。
まさにロワ。
ことさらゆとりと雪歩はロワに対する反応が正反対で感慨深い。
したらばで投票やってるよー
カイトは己の弱さを認める事で一回りも二回りも変化したな。
>>723 ・キョン子がユベルと合体したいフラグ
・KAITO暗黒進化
・雪歩暗黒進化
・ブロリー伝説の仮面ライダー化←NEW
・対主催×2が↑の討伐=死亡フラグ←NEW
やばいな、暗雲立ち込めすぎてる
大丈夫… ネイティオ先生なら全部まとめてトゥートゥーしてくれる!
と思ったらユベルさんのが普通に強そう。
両者お疲れ様です
ときちくのニコニコに関する解けた記憶は囲炉裏ネタしかないのかな
ゆきちくは、状態を元に戻すという目的を一致させてより団結が欲しいとこ
カイトもリンもレン便り、レンの負担が知らず知らず増えていく
そしてブロリーがそろそろチートに達するんじゃw
>>726 伝説のスーパー仮面ライダーというのも面白いな。
てゐやらCCOやらアカギやらが誤解を振りまいたせいで小集団が団結してくれないのが一番痛い。
今のブロリーは集団リンチで落とせるのに嫌な具合に五月雨式突撃……
遅くなって申し訳ありません
今から投下開始します
さあ、支援の時間だ
壮絶な死の宴が開始してから約半日以上が経過し、闇は再びエリア一帯を覆い尽くしつつある。
時が経てば経つ程に視認性が失われていくこの状況の中、数多の修羅場を潜ってきた二人の男が対峙していた。
一方は、集った同志達と共に、憂うべき国の未来を変えるべくして謀反を起こした誇り高き騎士。
一方は、核弾頭を搭載せし暗黒兵器の脅威から世界を救った、一介の傭兵にして伝説の英雄。
自身が掲げる正義を絶対に崩す事無く、"士"として直向に生き続ける怜悧冷徹な現実主義者である彼ら。
本来ならば互いに手を取り合い、主催者に反旗を翻す者同士であるはずなのだが――、
ある狡猾な剣客の虚言によって一方的な誤解が生じ、不要な衝突が起こっているという事実にはどちらも未だ気付くことは無い。
事の成り行きしだいではどちらか、運が悪ければ双方が命を落としかねないこの状況。
果たして二人は無事に真実に辿り着けるのか。彼らの生死を分けた静かなる攻防が今、始まる。
「何処だ…?」
狙撃があった方向へと全速で飛翔するメタナイト。
が、暗闇と鬱蒼と生い茂る草本とに邪魔をされ、狙撃手の位置を捕捉する事が出来ない。
滑空しつつも瞬時に状況判断を終えた彼は、茂みの奥へ一直線へ飛び込んでいく。
華麗に着地を決め、再び来るであろう銃撃を回避すべく素早く身を屈めた。
この茂みの中にいれば、自身の小柄な体躯が周りに曝される心配も無く、銃器で狙い撃ちにされる危険性も下がるだろう。
とは言っても、敵の所有武器が単純な銃器だけとは限らない。他にも何か武器や能力を隠し持っている事は十分考えられるし、
何より敵が一人だけと決まった訳でも無いのだ。現在の様相だけで見るなら、明らかにこちら側が不利。
だが――、彼としては出来る限り早急に勝負を着けて、美鈴達と合流したい所。
何とか長期戦に縺れ込む前に敵の位置を探り出し、接近戦で一気に片をつけなくては。
「…とにかく細心の注意を払わねばな」
呟くと同時、蝙蝠のそれに似た漆黒の翼を再びマントへと戻す。
そして、唯一の武器であるネギを片手に、360℃全方向に注意を向けつつゆるりゆるりと進み始めた。
空中からなら少しは敵の位置も探り易い筈だが、既にこちらは位置を殆ど把握されているのだ。
敵が遠距離攻撃に特化した者であるとすれば、上空へ飛んだ所で格好の的になるだけ――、
彼はそう考えていた。
◆ ◆ ◆
「まずいな…かなり距離を詰められた」
迎撃に失敗したスネークは、匍匐前進で敵から一旦離れつつもこの状況を打開する策を考える。
人間とかけ離れたその余りにも異質な姿に僅かながら動揺してしまったのも一因ではあるが、
その一頭身が持つ小さな身体と、並大抵のものではない俊敏性が動きを捉える事をより困難にさせていた。
そんな敵がこの茂みに潜り込む形となると、先程のような正確な狙撃を浴びせるのはかなり難しい。
大胆に立ち上がって真っ向勝負を仕掛けるという選択もあるが、あらゆる面でリスクが大き過ぎるのが問題だ。
敵に関しては何もかもが未知数、あの仮面にしても仮に防弾仕様だったとしたら、競り負けるのは十中八九こちらだろう。
当然弾も次なる戦いに備え、温存しておかねばならないし、誤って射殺してしまえば情報を引き出す事も出来なくなってしまう。
よって、彼は不意を突くという安全かつ確実な方法を狙う。
肝心なのは、その不意の一瞬というものを如何にして、作るか。
スネークは冷静に思案を続け、デイバックから目当ての支給品を引っ張り出す。
(……此処はまたこいつを使うしか無いらしいな)
スネークが取り出したのは言うまでも無く、自立思考が可能な高性能愛犬ロボ「てつ」である。
見た物、聴いた物に応じて、持ち主にしか分からない各々の信号を送る事が可能という、偵察や囮として使うに打ってつけの代物。
十六夜咲夜との戦いにおいても、戦果は挙げられなかったとはいえ、重要な役割を果たしてくれた。
敵の接近を許した今の状況において、これを使わない手は無いだろう。
スネークはてつをすぐ傍に置き、これから彼が行う作戦と指示内容を一字一句丁寧に小声で伝え始める。
支援
「…指示はこれが全てだ。分かったか?」
「ワカッタ」
てつが頷くのを見て、スネークは安心する。
当初はその愛らしい外見から若干勘繰ってしまったものの、やはり想像以上に頼もしい存在だ。
「…よし、じゃあ頼んだぞ」
スネークは最後にそう言い、敵の外側を廻り込むようにしててつから距離を取る。
当然堂々と立つ訳にいかない分、移動は匍匐前進で物音を最小限に抑えた緩やかなもの。
こうした挙動一つ一つが頗る機敏で慎重になるのは、戦地で死を掻い潜ってきたスネークだからこそか。
やがててつから20mほど離れた所まで来た辺りで動きを止め、一旦コルトパイソンの弾を補充する。
そうして偏に身を隠し続け――、てつが生み出してくれるであろうチャンスを、スネークは待ち続けた。
切迫した状況、そして実力・知性共に拮抗した二人であるが故に最終的に生じるのは、膠着。
ただ時間だけが延々と過ぎていき、戦場には似合わしくない閑寂とした空気が、その場を支配する。
◆ ◆ ◆
戦闘とは言い難い戦闘が開始してから、大よそ5分が経過した所でメタナイトは一考する。
先刻の出来事から判断するならば可能性としては限りなく低い――が、
余りにも長い間の為か、対主催側である彼は最も望ましい線も今になって視野に入れ始めた。
(…敵は先刻、どういう意図で撃ってきたんだろうか…?
ゲームに乗った者である事は確実だろうが…聞いてみる価値はあるか)
ほんの僅かな希望であっても、一度交渉を試みるのも良いかもしれない。
万が一相手がゲームに乗っていない者で、何らかの誤解で仲間を撃ったものなのだとしたら、
互いに無駄な血を流さないのに超した事は無い。
声を出すという多少危険な行為ではあるが、このままでは埒が明かないのもまた事実。
意を決したメタナイトは、狙撃手の耳にも届く範囲の大声で叫んだ。
「先刻私の仲間を撃った者に問いたい!其方は既にゲームに乗っているのか?
もし乗っていないなら姿を見せ、話を聞かせてくれ!勿論、私も武器は捨てる!
我々はこのゲームに乗っている訳では無い!」
支援
◆ ◆ ◆
この土壇場に来て、敵の思いがけない発言を聞かされたスネークは逡巡する。
悪人である志々雄と堂々と手を組み、ほぼゲームに乗っていたと思われる者が突然口にした、スタンスとは正反対の内容。
あの一頭身が、至って普通の声と人語を使って喋った事にもまた驚いたが――、正直言って今はどうでもいい事だ。
スネークはさっき見聞きした様々な事象と照らし合わせ、推察を始めた。
――どうすればいい?ゲームに乗っていないというならそれが一番だが、そう愚直に相手の言葉を信じる訳にもいかない。
奴は志々雄と共に対等な関係を保った上で行動していた。それは確かな事実。
奴と一緒に居た他の参加者も、俺が見た時には既に二人の人間を気絶、もしくは殺害した直後だった。
が、それも事前に志々雄の証言を聞いていたからそう判断しただけであって、何も決定的な証拠があった訳では無い。
仮に敵の今の発言に信を置くとするならば、先刻の志々雄の一連の発言は全て嘘偽りで、
倒れていた二人についても、敵の仲間が来る前からその状態にあったか、本人達に何らかの原因があったという事になる。
そもそも志々雄が奴らとの関係について事実を述べていたという確証など何処にも無い。
つまり、この段階ではどちらかが嘘を言っているという事が分かるが――
「…現時点では判断材料が少な過ぎるな」
いずれにせよこの局面でスネークに決断を下す余地は無かった。
ここで少しでも声を出せば、相手に自分の位置が知られてしまう。
もし今の発言が自身を誘い出す為の単なるハッタリでしか無かったら、声を出した時点で窮地に追い込まれるのは確実。
敵かも味方かも分からない者の話を聞くなら、完全に無力化してからの方が遥かに効率が良い。
あれこれ悩んだ末に、とうとうスネークは返答を返す事無く、現状維持に徹したのだった。
支援
支援
◆ ◆ ◆
メタナイトは辛抱強く待ち続けたが返答は返ってこない。
何十秒と経った後でも、鼓膜を叩くのは夜風が草を揺らす音のみ。
彼はやや落胆し、現状での説得は無理だとの結論に至る。
「……反応無し、か。まあ予想はしていたが……やはりこの手で倒すしか無いようだな」
当初の予定通り敵を反抗不可能な状態に追いやる事を決め、再び敵を探し出そうとした――その時であった。
「 アソボウヨー! 」
突如辺りに響いたのは、覇気の無い、子供のような愛らしい声。
殺し合いの場には全く似つかわしくないその声にメタナイトは一瞬呆気に取られたが、
素早く声のした方向へと向き直り、鋭い視線を投げかけた。
「狙撃主か…?」
今の台詞にどういった意味があるのかは分からない。
が、すぐそこに何者かがいると判明した以上、確かめない訳にもいくまい。
疑念と混乱が頭の中を渦巻きながらも、彼は声の発信源を突き止めるべく、声主の元へ近づこうとする。
「アソンデヨー!」
一度目と全く変わらぬ口調・声量で、その"誰か"は同じような台詞を続けざまに叫ぶ。
一体何をどうしたいというのか。余りにも支離滅裂なその言動にメタナイトは一層訝しみ、より警戒心を強める。
ネギを振り上げ攻撃体勢を整えながらも、一歩一歩、着実に声の正体に接近していく。
「コッチダヨー!」
3度目の台詞。もはや敵がこちらを誘って来ているのは明白である。
長く続くこの空白の時間に痺れを切らしたのか、或いは腕に余程の自信があるのか。
この際どちらでも構わないが、このまま行けば真っ向からのぶつかり合いになる事だけは必至。
100m以上離れた距離からあれだけ正確な狙撃をやってのける人物だ。
一筋縄にはいかない相手であるのは間違いない――が、だからと言って退く気は毛頭無い。
極度の緊張に身を任せながらも、メタナイトは草を掻き分け、その領域へと足を踏み入れる。
そして遂に、"それ"は姿を現した。
支援
支援
そこに居たのは、犬。恐らく姿さえ見れば誰でも即座にそれと分かるような、極普通の犬だった。
余りにも見当違いなその風貌を目の当たりにしたメタナイトは拍子抜けし、余計に混乱する。
まさかこの犬が犯人だとでも言うのだろうか。
それにしては特に武装もしていないし、迫力や殺気といった気質が微塵も感じられない。
大きさも一般的な品種と差して変わらず、このゲームの参加者の中では比較的小柄体型であるメタナイトよりも小さい。
暫く様子を窺ってみるものの、攻撃を行う素振りどころか、喋る気配すら見せなかった。
不可解な台詞を繰り返し叫んではいたものの、これでは正直話が通じるのかどうかさえ疑わしい。
常に冷静で機転の利く彼故か、この時メタナイトは明らかな違和感を覚え始めていた。
とにかくこの犬が何なのかを知るべく、更に前へ近付くと――
「 アソバンカーー!! 」
「! 何だ…?」
距離を詰めるや否や犬がまたも叫び、メタナイトは衝撃を受ける。
言葉の意味そのものは先程までのものと相違無い。ただ、今度は張り上げる声がさっきと比べやや大きいのだ。
それは――まるで "何らかの変化を誰かに通告している" ようにも取れる。
「!!」
待て、冷静にこの犬をよく見ろ。この犬は何処にも首輪らしき物は付けられていない。
仮に爆弾の役割を果たす物が首輪という形状に縛られないにしても、
必ずそれが身体の何処かに、周囲の人間が判別可能な形で付けられている事が参加者である絶対条件だ。
つまりこの犬は参加者では無い。参加者で無いとすれば、残る線はただ一つ。
支給品だ。支給品であるこの犬が直前まで叫んでいたという事は、これは何者かによって仕組まれた紛れも無い囮。
その囮がたった今、自分が肉薄した途端にその前の3回とは"微妙に"異なる台詞を叫んだ。
この一連の動作を行わせた目的は何か――、それが支給品だと分かれば、自ずと答えは見えてくる。
「後ろかッ!!」
弾かれた様に地面を蹴り、メタナイトはとっさにそこから飛び退こうとする。
だがメタナイトが気付いた時には既に遅く、撃鉄が鳴るのと同時に発射された2発の銃弾が彼に迫っていた。
1発は彼の所持する強固なネギを真っ二つにし、もう1発は左腕の上部――メタナイトにとっては、肩に当たる部位を抉った。
「グッ…!」
瞬間、電流の如き激痛の波が走り、鮮血が飛び散る。彼は呻きながらも瞬間的にマントに包まり――、
文字通り、そこから一瞬にして消え失せた。
◆ ◆ ◆
スネークがてつに対して与えた指示は次のようなものだった。
『自分が移動を開始してから1分後に「アソバンカ」以外の適当な台詞を15秒の周期で叫び続け、
その後、敵がてつのいる位置から半径5m以内の領域に入ってきたら「アソバンカ」と叫べ」
まず最初の1分の間に、てつや敵と十分な距離を取り、敵の隙を突く体勢を整える。
アソボウヨと叫ぶ際にわざと15秒の間隔を置かせているのは、てつに与えた役割を敵に気付かれ難くする為。
叫んでいるてつの元に近付いていくであろう敵の背後を無難に狙える位置へ再び移動し、
そして、てつが敵を引き付けた事を知らせる合図を受けて立ち上がったスネークが、背後から一気に叩くという算段だ。
この作戦は結果として巧く働いたものの、発砲する寸前で敵もこちらの狙いに気付いたらしい。
放った2発の銃弾を完全に躱される事は無かったが、その直後に奴が突然マントに身を包み――、
はっきりと目で捉えていた筈のその姿はいつの間にか影も形も無くなっていた。
「……消えた…?」
続く3発目を発射する事も出来ず、スネークは敵の予想外の反応と抵抗にただ唖然としていた。
敵が透過能力や瞬間移動に準ずる能力を発現する術を持っていたとは、流石の彼も想定していなかったのだ。
尤も今目の当たりにした現象は、時間そのものを無視した完全なる"瞬間移動"を行った十六夜咲夜の時とは違い、
スネークが元居た世界の技術力と科学レベルを考慮に入れれば決して珍しい事では無い。
支援
支援
支援
真っ先にスネークの脳裏に浮かんだのは、このゲームに連れて来られる前に目にした、最新型の兵器である"ステルス迷彩"。
メタルギアREX開発班チーフである、オタコンことエメリッヒ博士がアームズ・テック社のステルス技術の枠を集めて
完成させたという画期的な光学迷彩装置だ。
アームズ・テック社のバックアップを受けた戦闘部隊の間では既に実用化が進んでいる装備品らしく、
自分も実際にオタコンを始め、FOXHOUND部隊の隊員の一人であったサイコ・マンティス、
かつての盟友にして宿敵であるグレイフォックスと思しき忍者が使用しているのを確認済みだ。
だとしたら、敵が翻したあのマントにもステルス迷彩と同様の原理で作られた何らかの機能が
実装されていると考えるのが妥当だが――、
早合点しても痛い目を見るだけなのは承知している。そもそもこの世界では現世の常識というものが何一つ通用しない。
自身の持つ知識と情報だけを頼りに、起こった全ての事象を推し量ろうとするなど、余りに無意味な行為だ。
この場では、単純な戦闘技術と自身が持ち得る第六感をフルに活用して状況に対処するより他無い。
スネークは引き金に指を掛けたまま、注意深く辺りの様子を窺う。
(俺の勘が正しければ…敵はまだ此処から離れてはいないはずなんだが…)
やがてそれを裏付けるようにして、やや離れた距離で草がガサガサ、と音を立てるのをスネークは聞いた。
すかさず銃口をその位置へ向け、敵がどう動くかを見極めようとする。
最初の一撃で既に武器の破壊には成功している。まだデイバッグの中に何かを隠している可能性は否めないが、
一向に反撃を仕掛けてこないという事は、少なくとも遠距離からの攻撃は不可能と見ていいだろう。
この局面であれば、説得して仲間に引き入れる事も難しくはない。
思考を纏め、スネークが口を開こうとした瞬間――、
その丸い影は、茂みから飛び出し猛スピードでこちら側へと突っ込んできた。
不服としか言いようの無いそのタイミングに思わず舌打ちし、正確にその影に照準を合わせ指に力を込める―――が、
「!?」
その丸い影は前面に盾か何やら分からぬ物体を突き出し、身体全てを覆い隠していた。
◆ ◆ ◆
メタナイトがスネークの銃撃から逃れる際に使った技は、"ディメンジョンマント"と呼ばれるもの。
翼にも変形可能なそのマントに内包された魔力を一気に放出することで、
一時的に別次元へ転移、簡単に言えばどんな攻撃も受け流す透過状態になる特殊な技だ。
ただし、マント自体に宿った魔力が微々たるものである事に加え、主催者によって施された制限がある故に、
現状この技を使って一度に姿を消せる時間は僅か0.8秒程度しか無く、連続での使用もおよそ3回が限度である。
しかし、その1秒にも満たない時間の最中、メタナイトはスネークの追い討ちを回避し、再び茂みの中に移動したのだ。
敢え無くネギを破壊されたメタナイトは、傷の出血を抑えながらも次の一手を模索した。
ここでふと、ランダム支給品の一つであるバトルドームの存在を彼は思い出していた。
有効な活用法が見出せず、一向にデイバックから出る事の無かったその玩具――。
それをこの瀬戸際で巧く活用する、取って置きの方法をメタナイトは閃いた。
まず、周知の通りメタナイトは身体が非常に小さい。
彼のライバル(?)として知られるカービィ(身長約20cm)よりやや大柄であるとはいえ、
実際に計測したとしても恐らく50cmあるか無いか程度のもの。
対するバトルドームは机上に置き、それを囲む形で同時に4人までが遊べる3Dアクションゲーム。
当然そんな卓上ゲームも相応のサイズを保持したものとなっており、
支給されたNEW! アメリカンタイプの型は、全幅625×奥行625×高さ340mm!
メタナイトの身体を覆い隠すには十分過ぎる程の大きさを持つ。
彼はこのバトルドーム上部にある緑色の突起を掴み、それを盾のように使うことで
敵の弾を防ぎつつ一気に接近するという、一見無謀としか思えない作戦に出たのだ。
一か八かの大博打である事はメタナイト自身も十分理解していたが、
現状で思いつく最良の反撃方法がこれだった以上、このトンデモ展開もやむを得ないだろう。
まさに超!エキサイティン!!である。
支援
◆ ◆ ◆
スネークは焦燥感に追われながらも後退し、迅速かつ的確に狙いを定め、銃を放つ。
当然単なる玩具として作られたバトルドームで、コルトパイソンのマグナム弾を防ぎ切る事など出来る訳が無いだろう。
だが、即席の盾の役割を果たしたバトルドームの阻害を受け、勢いを殺がれた弾はゼロの仮面を貫くまでには至らない。
仮面にヒビが走るがそれにも構わずに、メタナイトは更に距離を詰めていく。
ここでスネークが4度目の銃撃を放ったことで、装填されていた残りの弾全てを消費し、完全に無防備な状態となる。
その後、遂にメタナイトがスネークの眼前まで踏み込み、手にしていたバトルドームをスネークの顔面目掛けて投げつける。
スネークはそれを間一髪で回避するが、自身のそれを遥かに上回る機動力を持つメタナイトの追撃に間に合わせる事は出来ない。
間髪容れずに、拳銃を握り締めているスネークの手に向けて、上方から凄まじい勢いで手刀を叩きつけ、
手刀をまともに喰らったスネークが堪らず銃を取り落とし、
それを素早く先に拾い上げたメタナイトがその銃口を、スネークへ突きつけようとした――、
――そんな時、放送の時間は訪れた。
『――やあ、お前ら久しぶりだな――、』
「………」
「………」
上空に出現したモニター。それに映った、かの右上による定時放送。
戦闘中とはいえ、主催者側から伝えられる唯一の情報であるそれを聞き漏らす訳にはいかなかった。
二人は目の前の相手に対し最大限の注意を払いながらも、一体に響き渡る機械音声に耳を傾ける。
右上の意味深な前置きが終わり、死亡者と禁止エリアについての情報が告げられ始め――、
そこで呼ばれた名前を聞き、両者が示した同様の反応。
声には出さないものの、互いの表情がその感情を露にしている。
彼らの居ぬ間に突如発生した"死"によって浮かび上がる、様々な感情――そして疑問。
書き込めたのでこのまま投下続行します
支援
やがて放送が終了し、先に口を開いたのはメタナイトであった。
「…ここはまず話し合おう。どうやら我々が戦っている間に事態は思わぬ方向に進展していたらしい」
「…確かに、それが賢明だな」
メタナイトの率直な意見に、スネークも同意する。
放送では、つい先刻別れたばかりの仲間の名前がはっきりと呼ばれていた。
敵との条件がほぼイーブンに縮まった今、殺し合いに乗っていると断定出来ない相手と無闇に争いを続ける必要は無い。
それよりは、情報を共有し合い真相解明に努める方がずっと利口で、建設的だ。
スネークが茂みの外へ場所を移すよう提案すると、メタナイトもそれに応じ、奪い取った銃をスネークの元へ返した。
両者は攻撃が来ない事にひとまず安堵し、停止していた足を再び動かし始める。
かと言ってどちらも未だ相手を完全に信用している訳では無い為、常に警戒は怠らない。
スネークがてつを回収した後、二人は無事に茂みの外へ抜け出し、
メタナイトの傷の手当と並行する形で情報交換は始まった。
◆ ◆ ◆
それぞれの簡素な自己紹介から始まり、
このゲームに召還される直前はどのような状況にいたか、
ゲームが開始してからどのように行動してきたか、
与えられた支給品はどういったものか、
現状で信頼に足る人物、また危険人物と見られる人物は誰か――、
その他諸々の事を互いにかいつまんで話し合う。
ここまで来てようやく、二人はある程度お互いの事を信用するようになった。
共に冷静沈着で聡明な二人故か、終始要点を正確に纏めた発言に徹し、大した脱線もしなかったことで、
情報交換が非常に的確かつスムーズに進んだからだ。
途中、スネークが特に強い口調で話した十六夜咲夜に関する情報を告げられたメタナイトは、
その少女が美鈴の同僚、端的に言えば身内に当たる存在であると聞かされた事を思い出し、
表情を怪訝なものへと変えたが、スネークがそれに気付く事は無い。
仮面で顔全体を隠しているのだから当然の話ではあるが。
やがて議題が志々雄が関わる所まで行き着き、一気に殺伐とした雰囲気に変わる。
彼らが衝突を起こした原因は紛れも無くその男にあるのだ。
そして――、
支援
伝説のスーパー支援
「――つまり…お前達はそういった事情で、志々雄に同盟を組む事を持ちかけられても断れなかった、という訳か」
「…ああ。あの場では、ああするより他に無かった」
メタナイトは、あの時に志々雄から目を外してさえいなければ、と自身の注意の足りなさを呪わずにはいられなかった。
スネークも自身が志々雄に踊らされていた事を改めて悟り、ぶつけようの無い怒りと悔恨の念を抱く。
「…すまないな。俺が志々雄の嘘を見抜けてさえいれば、こうしてお前達を傷付ける事も無かったんだが」
「あの状況では仕方あるまい。それよりも今は一刻も早く彼らの元いた場所に戻り、真相を確かめなければ」
「…その通りだな」
そう、何時までも自身が犯した過ちばかりに目を向けていてはいけない。
いくら失敗しようとも、何を失おうとも、生きる意味そのものが完全に消滅する訳では無い。
重要なのは反省をし、それを次に生かす事。過去を悔やんでいる暇などありはしない。
二人にはまだ、すべき事が残っているのだから。
メタナイトとスネークが交戦する傍で、突如として巻き起こった"何か"。
スネークが行動を共にしていたという因幡てゐと海原雄山、メタナイトらが追っていた逢坂大河とトキ、
そして、最も厄介な存在であった志々雄真実、計5人の不可解な死。
美鈴と左之助だけが生きているという事が気に掛かるが、本人らと再開して直接話を聞くまで答えは出せないだろう。
事件の真相を探るべく早速元居た場所へ引き返す事を決めた二人は、不穏な空気が漂う中、夜を静かに往く。
その空気とは裏腹に、辺りは不気味な程に静けさを保っていた。
空になった弾倉に新たな弾薬を詰め込みながらスネークは何気なく呟く。
「しかし…これで残り32人、約半数が死んだという事になるな…」
「ああ…右上は後半戦の開始だ等とふざけた事を言っていたが」
「………」
そんな味気の無い問答を交し、スネークは何とも形容し難い空虚な視線を浮かべていた。
死者が次々と増えていく事で――、彼の心の中で渦巻く感情はより一層複雑なものへと変貌していく。
「…? 何か気に掛かる事でもあるのか」
押し黙るスネークを不審に重い、メタナイトは彼に問い掛ける。
すると、スネークは重々しい口調で呟いた。
「……俺が今までに助けようとした奴は皆死んだ。俺が生きていた世界でも、このバトルロワイアルの中でも――だ」
「!」
「戦いとは無縁の者が次々と死に、兵士である俺が今もこうして生き延びている事が…皮肉としか思えなくてな」
「………」
何処までも苛酷、それでいて不条理さが付き纏う戦争という名の悪夢を身を以て
体験してきた者でしか口にしないであろうそんな苦言。
それを受け、心の奥底で少なからぬ共感を覚えた騎士が、英雄と呼ばれたその男に掛けるべき言葉は見当たらなかった。
【D-4 草原/1日目・夜】
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]顔面打撲、肉体疲労(小)、精神疲労(小)、左肩に銃創、ゼロマスク
[装備] ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造、4箇所にヒビ)@コードギアス
[道具]支給品一式、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:何が起きたのかを突き止める
2:美鈴、左之助と合流
3:殺し合いに反対する者を集める
4:脱出方法を確立する
5:触覚の男との決着
6:十六夜咲夜、サンレッドを警戒
[備考]
※E-2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドール、スネークと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました
【ソリッド・スネーク@メタルギアソリッド】
【状態】肉体疲労(小)、精神疲労(小)
【装備】コルトパイソン(6/6、予備弾22/36)@現実、TDNスーツ@ガチムチパンツレスリング、越前の軍服
愛犬ロボット「てつ」@日本郵販テレホンショッピング
【持物】やる夫の首輪、ハイポーション@ハイポーション作ってみた、馬鹿の世界地図@バカ日本地図、全世界のバカが考えた脳内ワールドマップ
咲夜のナイフ@東方project、さのすけ@さよなら絶望先生、基本医療品
【思考・行動】
基本思考:情報を集める。また、首輪を専門の奴に見てもらう。
1:何が起きたのかを突き止める。
2:メタナイトの仲間と合流。行き先はその後で決める。
3:自分から攻撃はしない。見つかった場合も出来れば攻撃したくない。
4:十六夜咲夜のような奴が居れば、仲間に誘った後、情報を聞き出した後倒す。
5:てつを使用し、偵察、囮に使う。
6:十六夜咲夜、フランドール・スカーレット、サンレッドを警戒。
[備考]
※馬鹿の日本地図の裏に何か書いてあります。
※ミクが危険人物という情報を得ましたが、完璧に信用はしていません。
※盗聴されている可能性に気付きました。また首輪に電波が送られているか何かがあると思っています。
※電波を妨害するチャフグレネード等の武器を使えば、どうにかなると考察しています。
※てゐからは千年以上生きている、知り合いの事を話してもらいました。
投下乙!
なんだか希望が見えてきた。
……しかし、サンレッドはいつまで誤解され続けるんだ(汗
投下乙!
メタナイト対スネークの頭脳戦は引き分けか。
美鈴たちがブロリーと遭遇するまでに追いつけるかが勝負だな。
しかしメタナイトは中々武器に恵まれない。
しかしバトルドームは吹いたww
投下乙
MUGEN勢は早くも全滅かー
次回にはゼットン級の狂キャラを集めないと駄目かもしれん
投下乙っす
超ーッ!!!エッキサイティーーーーーン!!なバトルだったwww
なんとか穏便に事が済んでよかった・・・
これで伝説の仮面ライダー☆ブロリー戦に向けて対主催が集まるかな
乙です
メタナイトは紅魔館のメンバー構成については話さなかったの?
>>763 一応紅魔館メンバーの関係についても伝聞でしか知らないとはいえ、全て話した事にはなっています
いずれにせよスネークが後々美鈴と接触した時、十中八九咲夜やフランとの関係を本人に直接聞くと思うので
あえて細かい描写はしませんでしたが
状態表を軽く訂正。
【D-4 草原/1日目・夜】
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]顔面打撲、肉体疲労(小)、精神疲労(小)、左肩に銃創(処置済み)、ゼロマスク
[装備] ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造、4箇所に亀裂)@コードギアス
[道具]支給品一式、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:何が起きたのかを突き止める
2:美鈴、左之助と合流
3:殺し合いに反対する者を集める
4:脱出方法を確立する
5:触覚の男(呂布)との決着
6:十六夜咲夜、サンレッドを警戒
[備考]
※E-2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドール、スネークと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました
【ソリッド・スネーク@メタルギアソリッド】
【状態】肉体疲労(小)、精神疲労(小)
【装備】コルトパイソン(6/6、予備弾22/36)@現実、TDNスーツ@ガチムチパンツレスリング、越前の軍服
愛犬ロボット「てつ」@日本郵販テレホンショッピング
【持物】やる夫の首輪、ハイポーション@ハイポーション作ってみた、馬鹿の世界地図@バカ日本地図、全世界のバカが考えた脳内ワールドマップ
咲夜のナイフ@東方project、さのすけ@さよなら絶望先生、基本医療品
【思考・行動】
基本思考:情報を集める。また、首輪を専門の奴に見てもらう。
1:何が起きたのかを突き止める。
2:メタナイトの仲間と合流。行き先はその後で決める。
3:自分から攻撃はしない。見つかった場合も出来れば攻撃したくない。
4:十六夜咲夜のような奴が居れば、仲間に誘った後、情報を聞き出した後倒す。
5:てつを使用し、偵察、囮に使う。
6:十六夜咲夜、フランドール・スカーレット、サンレッドを警戒。
[備考]
※馬鹿の日本地図の裏に何か書いてあります。
※ミクが危険人物という情報を得ましたが、完璧に信用はしていません。
※盗聴されている可能性に気付きました。また首輪に電波が送られているか何かがあると思っています。
※電波を妨害するチャフグレネード等の武器を使えば、どうにかなると考察しています。
※てゐからは千年以上生きている、知り合いの事を話してもらいました。
※メタナイトを通じて、美鈴、咲夜、フランドールの関係について新たな情報を得ました。
修正点の指摘有難うです。また後日、wiki編集で直しておきます
容量がやばいから次スレ立てたいんだけど、予約の件はもうテンプレ書き換えていいのか?
いいと思う。反対意見が特にないし……
>>769 おつおつ
容量もう500か
早いものだな
>>761 ゼットンが出たら誰も勝てる気がしないな
未登場のニコニコキャラでゼットンを倒せる奴がいるとは思えない
>>771 だが、MUGENのゼットンは諸事情で等身大のかわいいサイズ。街をもぶっちぎる巨体ではにぃ。
……それでも1兆度の熱線とかワープ投げとか火球の散弾とか鬼畜なんだよねぇ。
うーん、バカムートの核攻撃やジェネラル、ゴンザレスを呼べば何とかなるか?
基本的に分が悪いけど。
>>772 1兆度は熱線ではないよ。火球の方。まあ、後付け設定だし、科学特捜隊のビルはあらゆる衝撃や熱に耐える、という設定もあったこことだし。
手から出してる波状光線はゼットンファイナルビーム。
ピロロロロ・・・ズゥェットォォォン・・・
まあ、いずれにせよ原作設定でもMUGEN設定でも
こいつを倒すSSを書ききるにはかなりの説得力が必要。
ブロリーとまでは言わんけど並大抵の強さの描写では駄目だ。
ゼットンも結構種類あってピンきりだからなぁ…原作での強さなら
弱
帰マン養殖ゼットン
メビウスマケットゼットン
パワードゼットン
マックスゼットン
初代ゼットン
強
こんな感じのイメージがあるかなぁ
ゼットン? 宇宙最強(笑)がいるぜ! 制限にビックリするくらい弱いけど。
::| 从
::| 从从
::| 从从从
::|. / |.| ヽ.
::|. / |.| ヽ
::|-〈 __ || `l_
::||ヾ||〈  ̄`i ||r‐'''''i| |
::|.|:::|| `--イ |ゝ-イ:|/ ゼットンなんて俺の手に掛かれば一撃だろ。
::|.ヾ/.::. | ./ そんな強くねーよ
::| ';:::::┌===┐./
::| _〉ヾ ヾ二ソ./
::| 。 ゝ::::::::`---´:ト。
::|:ヽ 。ヽ:::::::::::::::::ノ 。 `|:⌒`。
::|:::ヽ 。ヾ::::::/ 。 ノ:::i `。
::|:::::::| 。 |:::| 。 /:::::::|ヾ:::::::::)
::|::::::::| . 。 (●) 。 |:::::::::::|、 ::::〈
お帰りくださいw
まあ、宇宙最強(笑)はともかく、MUGENのゼットンはマジで強い。
コイツ以上となるともはや格ゲーしてない連中ばっかだからな。
まともにやってる連中の中ではトップというイメージが強い。
トキもルガールもバルバトスもアレックスもゼットンの前では塵芥。
しかし『軸のアルカナ』クラウザーさんは楽々ゼットンを倒していた
あれはうp主の調整でゼットンが自重してたから
それと軸移動が使えるのはクラウザーだけじゃないぞ
あれは餓狼のシステムだから
まあ、次回があるならゼットン出すのもいいかもね
ゼットン自身にセリフが無いから動かしずらいけど
>>781 >まあ、次回があるならゼットン出すのもいいかもね
いや、それはない
MUGEN出展で出せるキャラは最低でもゼットン相手に負ける事が前提だな
ジェネラルとか暴君とか通行人とかストライダーとか
ゼットン以上は、ほぼ神キャラに等しいからな
一応バルバトスも特殊カラー次第でゼットンを倒せるけどな
ペネないとあんまり強くないけどね
やっぱ出るんだったら京とかリュウの方がいいなあ
中身ウメハラなリュウならMUGEN以外のニコニコでも良く見るから出せるかもね。
MUGEN出展で人気あるつったら…ババア?
不破さんとSUMOUパワーの人もいけるな
白レンも人気がある。
SUMOUって女の子?…人気あったっけ?
不破はMUGEN枠以外でも人気あるから普通に出られそうだな。
リョウとアレックスはもう出ちゃったからな…
フェルナンデス…きつい…バレッタ…微妙…タクワン和尚…そこまでじゃ…
出れなかった…といえば今回は京アニが無いよな…CLANNADとか来ると思ったんだがなぁ
だが次回はけいおん!もある訳だし京アニ増えそうだよなw
まぁ後は歴戦の二次創作キャラ出してほしかったかなぁ…
でも誰が居るっけ…武将なら陶濬や関☆羽、国宝厳輿とか居るけど、今回が最高の面子かなぁ
関☆羽、顔君主。究極のマゾ動画からSOSOもいけるな。
あと張角、賈?も秀逸な動画が更新中のため、最近注目されてる。
今回映画出演してる関☆羽は確実に来そうだが、実際に出たら書き手が苦労すること必至
(主に気持ち悪さ的な意味で)
以外とドラクエキャラの出番は有りそうで無いよな
次回作があるなら人気の高い東方枠と若本枠は確実で
まだまだ出せるキャラの多い三国志とMUGENも高確率で出そうだ
人数多いはずのアイマスが出ない確定一歩手前w
もっとひどいのはひぐらしか。ロリ二人が出たらメインキャラもういなくなる。
いや、まだダホマ、ロリ坂が居る…でもきついよなぁ…
既出制限解いた方が良いだろうな。うん。
だがここでチャージマン研!を推す
こなたとハルヒの第二次世界大戦とか把握的に厳しいなんだろうな
エピローグまで合わせたら全60話もあるw