投下乙
ジョナサンカワイソス主人公まっしぐらだなあ
こんなカワイソス見たことねえぜ
投下乙
ジョナサン▼
FFのド外道ぶりに拍車がかかってきてGJ
あとアレッシーがこんなに活躍するとは思わなかった。
それとようやくダービー戦へのフラグが固まったな。
まだ放送まで時間があるし。ジョナサンはもっとひどい目に会うと思う。
親父の次はエリナだから……次はスピードワゴ(ry
ざんねん! ジョナサンの紳士道は ここで おわってしまった
投下乙です
FFの魔改造が進んでいくなあ。それに比べてアレッシー(笑)ときたら……
そしてジョナサンがあああんまりだああああああ
ダービーズチケット渡すことには成功したけど、立ち直れるのか!?
途中報告を。
現在五割ほど書き上げました。進みはあんまりよくないです。考察書くの難しい……
土日に頑張って、日曜夜か月曜に投下予定
えっとぉ…そのぉ…チャットってどこでやるのん?
>>353 時間になればスナイプガールさんがこのスレにアドレスを貼ってくれるぞ
と、半からからずっと張り付いて更新を連打している俺がいってみる
>>353 10時にここにアドレスが書き込まれるよ!
なるほどぉ。
つまり9時から更新連打してたアタイは馬鹿ってことね!
まあ気長に待とうや・・・フフ。
ふむ、トリップキーは使えないみたいですね。
今から入る方、注意ですね
いつもの4人(?)だw
こんばんわ、◆7d53oKGJP2です。
先程、自分でトリップキーを晒してしまうという禁忌を犯してしまいました。
ロワを見ている皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、このトリップはもう使いません。
スナイプガール様、他にも見ていらした方々、重ね重ねご迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げます。
あれ…表示が…
なんかトリがうまく出ませんが、◆7d53oKGJP2です。失礼しました。
「……以上が俺の考察だ」
ダムが決壊するように一気に、それでいて要点は小川のように淀みなく語ったブチャラティ。
「ミスタ、長いこと話に付き合わせて悪かった」
「い、いや、別に構わねーよ」
だが、頭の出来が人並み以上とは言い難いミスタにとって、それは経典を読み聞かされるようなもので。
普段使わない頭脳を働かせたことで血流が良くなったのか、頭をぼりぼり掻いている。
「要するに、今から確かめる他ないってことだろ?」
「まあそんなところだ。今までの話は推測でしかない。俺たちは圧倒的に情報が足りていないからな」
とはいえ、相手の言いたいこと、要点はしっかりとつかんでいる。
付き合いの長さ、上司と部下としての関係がそれを可能とさせるのだ。
首輪。
ゲーム参加者に課せられた最大の制約にして、荒木が傍観者でいられる所以。
脱出、反逆、逃避、静観……それらを不可能にする、軽量にして強固な拘束具。
勝つためには知らねばならない。
無知は罪だ。だが、知るということは時として罠が待ち受ける。
その罠は死を持って全てを飲み込むかもしれない、それでも。
「覚悟はいいか? オレはできてる」
彼は誓った者のため、罠とて飛び込む覚悟がある。
★
話しながら歩くというのは誰だってしたことがあるだろう。
歩くこと。話す、あるいは聞くこと。両方やるのはそう難しいことではない。
だが、片方に意識を集中すればもう片方の作業効率は落ちる、当然だ。
彼らとてそうだ。
ブチャラティらは、老人のようにのろい歩みを取らざるを得なかった。
考察内容と自らの見解を語り、そこから質疑応答に用いる時間を踏まえれば歩調の緩みは当然である。
だが、おかげで時間を有効に使う事が出来たようだ。
「おそらく、ここから南に真っ直ぐ行けば禁止エリアだ」
時計の針は9時を指す。ちょうど【C-1】が禁止エリアになる時間。
先のやり取りで費やした時間は無駄にはならなかった。
「まさかこのまま行くわけじゃあねえよな、ブチャラティ?」
「荒木は『即、爆発することはない』と言っていたが、そのまま受け取るのもどうかしてるからな。
まずはこの首輪で実験する」
ブチャラティは、スージーの思いとともに受け継いだ首輪を取り出した。
それに荒縄を結び付け、犬のリードのようなものにする。
「なるほど、それを禁止エリアに投げれば、俺たちが禁止エリアに入らなくても首輪の反応が見られるってわけか」
「そうだ。尤も、この首輪は機能が停止しているかもしれないが。
地面に落とした程度で爆発することは……ないな。もしそうなら、激しい戦闘に耐えられない」
荒縄を持って、首輪を投擲。
わずかに音を立てて着地。だが、首輪は一向に変化を見せず。
位置を間違えたかとも考え、更に南へと投げたものの変わらず。
「やはり機能していないのか?」
「やっぱり突っ込む覚悟するしかねえな」
「ああ、オレもそのつもりだ」
縄を手繰り寄せつつ返事するブチャラティ。
「ブチャラティ、悪いがここは俺が行く。あんたの『スティッキィ・フィンガース』は首輪を外すのに必要な『希望』だ」
「……俺だって最悪のケースは予想している。『荒木の言ったことは嘘で首輪は即爆発、侵入した途端再起不能』というケースをな」
「それだけじゃあねえ。銃のない今、俺が一人で生き残れるかどうかは怪しい。捨て石ってわけじゃあねえが行くべきは俺だ」
ブチャラティにとってミスタの提案は、嬉しくもあり、辛くもあり。
有難い部下を持った事には感謝する、だが余計に部下に負担を掛けるのも、リーダーとしての面子にかかわる。
言っていることは理に適っているから、たちが悪い。
少々の沈黙を経て、彼は――
「ミスタ、禁止エリアに侵入してくれ」
――その覚悟に懸けることにした。
★
「大丈夫……だよな? たぶん、きっと」
「おそらくは。殺し合いを見て愉しむような奴が、禁止エリアによる死を望むだろうか?」
決意はしたものの、膝が震えているミスタ。
ブチャラティが落ち着かせようと言葉を掛けるが、不安要素が多いのは事実。
「禁止エリアによる死を望まない。なら、何らかの手段で知らせてくるはずだ。そこに侵入した事実を。
しかし、注意しなければ感じ取れないもの……例えば、光とかで知らせるのなら。
夜ならまだしも、今は陽が出ているからな。ミスタ、どんな微細な変化でも見逃すな」
首輪に電球が付いているのは確認済み。
もしこれが禁止エリアを感知するものだとしても、自分からは見えにくい。
だが、地図の確認がしづらい夜に、強い光でもって禁止エリア侵入を伝えるという機能なら納得がいく。
「本当は俺も行って互いに観察すべきだが、ミスタの覚悟を無駄にしたくない」
「……わ、わりいな。先走ろうとしちゃってよ」
「いや、いいんだ。俺一人がいい格好するわけにもいかない」
わずかに笑みが生まれたが、南を見据えると自然二人の顔は引き締まった。
推測に推測を重ねたところで、事実という壁を前にすれば理はあまりにも薄っぺらく、か細い。
だが挑む。膝の震えは止まった。覚悟はとっくにできている。
地を踏む。足を上げる。砂が舞う。
目線は首輪。歩みは南。
地を踏む。足を上げる。砂が舞う。
歩幅が小さくなっているようだが、気にしない。確かに近づいているのだから。
地を踏む。足を上げる。砂が舞う。
一時たりとも気は抜けない。命というチップは何より重い。
地を踏――――
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
「なッ」
「戻れ、ミスタ!」
声が聞こえるや否や、バックステップを取ったミスタ。
ブチャラティの命令より早く、離脱を図る。
「グッ!」
「い、今の声は……」
『禁止エリアからの離脱を確認。起爆タイマー、解除』
「まさか……!」
慌てて地に倒れこむミスタ、疑問を投げかけるブチャラティ。二人を無視するように音声響く。
声の主は。
「アラキ……!」
知らぬはずがない、邪悪の化身。
「クソッ! 奴のスタンドか!?」
「待てミスタ!」
周囲の警戒に当たるミスタ。
ブチャラティは顔に滝の様な汗を浮かべていたが、あくまで冷静に振る舞おうとする。
「しかしよブチャラティ、今荒木の声を聞いただろう!?」
「首輪から発せられた音声、だ。
荒木の警告が、例えば精神に直接訴えかけるものだったらオレに聞こえることはない。とすると……」
口元に手を当て思案するブチャラティ。
だが、口を押さえていても分かるほどに笑みがこぼれていた。だが先のそれとは違う。
それはまるで、大事なテストで山勘を当てたかのような、そんな笑み。
「何か分かったのか、ブチャラティ? 荒木に繋がる何かが?」
「ミスタ。前もって言っておくがオレは別に気が変になったとかそういうことはない。
だから、少しの間俺が何をしていようと黙っていてくれないか?」
こくりと頷くミスタ。
ブチャラティはチームリーダーを務めるほどに聡明だ。
こんなときに意味のないことをする男であるはずがないと、ミスタは自信を持って言える。
だから言われた通り静観しようと思っていたのだが。
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
『禁止エリアからの離脱を確認。起爆タイマー、解除』
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
『禁止エリアからの離脱を確認。起爆タイマー、解除』
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
『禁止エリアからの離脱を確認。起爆タイマー、解除』
ミスタは、境界線を行き来するブチャラティを見て、首を傾げざるを得なかった。
★
「すまないな、ミスタ。待たせた」
「何をしたかったのか全くもって理解不能だぜ、ブチャラティ」
ミスタの頭の中では、疑問符が飛び交っていることだろう。
しかし、ブチャラティは決して気が触れたわけではない。その表情、至ってまじめだ。
「そうだな……理由から説明すると回りくどい。結論から言おう。
荒木のスタンド能力が、首輪に関係している可能性は極めて低い」
ややあって、ミスタが腑に落ちないといった表情で問いかける。
「全ッ然分からん」
「逆に考えるんだ、もし首輪が荒木のスタンドなら、どんなタイプか? と」
スタンドによる戦闘経験が決して少なくないミスタにとって、この質問に答えるのはさして難しいことではなかった。
「そりゃあ、『遠隔操作型』か『自動追跡型』じゃあねーか?」
「そうだ。だが二つともあり得ない、説明がつかないことがあるんだ」
「一つずつ頼むぜ」
ああ、と軽く息つく間をはさんで、ブチャラティは自論を展開する。
「まず『首輪が遠隔操作型のスタンド』である場合。これは論外だ。
荒木がどこにいるか分からないが、この広い街で首を吹っ飛ばすだけの威力を出せるか?
パワーは距離に依存するから、首輪の爆発力を一定に保つのは難儀だ。
感覚を共有していても生死の確認なんて苦労するどころの話じゃあない。
一瞬たりとも気が抜けなくなる。88人の大所帯となればな。おちおち寝てもいられない」
メモを取り出すブチャラティ。
「同じ理由から、『首輪に作用するスタンド能力で生死の確認を行っている』というのも可能性としては低くなる。
別の手段、例えば監視による二段構えの確認をされているかもしれないがな」
そして、こう書き加える。
・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
→可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
「そして『自動追跡型』の場合。パワーが距離に関係なく出せるから、どちらかというと遠隔操作型より可能性が高い。
しかしだ……ちょっと地面を見てくれ」
そこには、子供が陣取りでもしたかのような感じで線が引かれていた。
その前に立つブチャラティ。一歩踏み出す。
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
忠告に従い、すぐさま離脱。
『禁止エリアからの離脱を確認。起爆タイマー、解除』
「ミスタ、この首輪は『精密すぎる』んだ。禁止エリアへの侵入を必ず伝えてくる。寸分狂わずな」
「『自動追跡型』は大雑把な動きしかできないからありえねえわな」
「そうだ。ついでに言えば、『町全体の3/100』だけを禁止エリアに指定している時点でかなり精密だ。
あげく、最初に88人一斉に別々の場所にワープだのやられちゃあ、大雑把だなんて口が裂けても言えないさ」
両手の平を上に向け、「やれやれ」といった感じのポーズを作るブチャラティ。
それとは対照的に、ミスタは怪訝な顔をブチャラティに向けていた。
「ああ、よーくわかったぜブチャラティ。だが、分からねえ。
アラキのスタンドが完全に判明したわけでもねえのに、あの笑みは何だったんだ?」
「確かにアラキのスタンド能力は分からないが、アラキを打倒する上で大切なことが分かった」
人差し指を立ててブチャラティは言う。
「アラキは、ほぼ単独で動いている」
「どういうこったい?」
「順を追って説明する」
確信に満ちたその瞳。
ミスタは、ブチャラティの言葉を不思議に思っても否定はしない。
「あくまで俺が述べたのは『アラキ一人で首輪にスタンド能力を作用させた場合』に言えることだ。
他の誰かにさせているのなら全くの的外れになる」
「それがないと言い切れるってことだよな? 理由は?」
「俺たちが集められたホールの舞台には『アラキしかいなかった』。これが答えだ」
息つく間もなく話は続く。
「参加者に反抗されないために、自分の協力者を示しておくのは意義がある。
単純に考えて、全面対決することになった場合、敵が二人なら戦力が二分、三人なら三分される。軍隊ならほぼ対処しようがない。
湖に船を浮かべるくらいだ。奴は自分の強さをやたら見せつけたがっている。
なのに、スタンドのヴィジョンすら見せなかったのは『出来ないから』だろうな。
敵が一人なら、不意を突けば打ち取れるはずだ……!」
「協力者がいないってことか?」
「いたとしても、そいつは積極的に協力しているわけではないだろう。
もしくは、あの場にいてもハッタリが利かないような奴かもしれない」
紙上で鉛筆を躍らせるブチャラティ。
・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む)
「あんな少ない情報からここまで分かるもんなのか……流石だぜ、ブチャラティ」
「断定するのは危険だがな。それにもしかしたら、『そう思わせるのが目的』なのかもしれない」
「アラキの手の内で踊らされていただけでした、ってのは勘弁願いたいぜ」
肩を落として深くため息をつくミスタ。
「さて……もう一つの仮説を確かめに行くか」
荷物をまとめて進路は西へ。
箱庭の外を知るために。
★
「特に壁で仕切られてるとかじゃあなさそうだな」
地図でいう所の西端に来てみたはいいものの、情景にこれといった変化はなかった。
見たところ、地図の外に出ようと思えば出られそうである。
「俺の予測が正しければ、この先は禁止エリアだ。逃げようとしていきなりズガン! だったら先に伝えてるだろう」
「その方が、みんな中央によりだがるしな」
歩む、歩む、歩む。
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
「やはり、な」
「地図の外側に城を構えてる、って可能性は本格的に出てきたな」
軽く話し合う余裕を見せつけて、引き返す。
『禁止エリアからの離脱を確認。起爆タイマー、解除』
「大体のラインを見極めるか」
往復開始。
侵入と離脱の知らせが続く。
こうも繰り返されると、荒木も『いい加減しつこいね』とか言ってくればいいのに、
と、ミスタはくだらないことを考えていた。
しばらくして、ブチャラティはピッチャーマウンドを踏み固めるような動きで地面に跡をつけた。
「でもよお、跡なんか付けてどうするつもりだブチャラティ? 判別の正確さを再確認するのか?」
ブチャラティの返答は、わずかに遅れが生じたものだった。
「俺たちは見せつけるしかないんだ。荒木の居場所を見つけ出すためには……」
「死地に突っ込む『覚悟』があることを!」
弾かれたように、西へ駆け出していくブチャラティ。
「馬鹿な、ブチャラティ――――――!」
『禁止エリアに侵入。30秒後に首輪が爆破されます』
唐突にして突然、ゆえにミスタの反応は遅れ、止めること叶わず。
警告もなんのその、ブチャラティは止まる気配を見せない。
その走りは、戻ることなど微塵も考えていないスピードだった。
『20秒後に首輪が爆破されます』
更なる警告にも、ブチャラティは怯まない。
途中で動きが止まる。周囲を確認していた。
振り返り、帰還しようとする。
『10秒後に首輪が爆破されます』
無情にも迫る制限時間。ミスタは焦っていた。
ブチャラティが駆けた距離は優に100メートルは超えている。
一流のスプリンターでも10秒でこの距離は至難。
それ以前にブチャラティは往復するのだ、息が続かない。
『5秒前』
死の宣告を言い渡すカウントダウン。
録音の筈なのに、笑みを抑えきれない荒木の表情が浮かび上がってくる。
『4――』
遠い。圧倒的に。人の足では。
『3――』
「『スティッキィ・フィンガース』!」
精神の像を発現。大地を殴りつける。
諦めの意からなる行為ではない。
触れると同時にジッパーが出現。まるで線路。
『2――』
「開け、ジッパー!」
引き手を掴み、自動的に切開。それを推進力とし高速移動。
摩擦音響かせ滑る。滑る――
『1――』
★
「無茶しないでくれよブチャラティ! せめて俺に一言言ってから」
「言ったら……止めただろう?」
図星を突かれてミスタは黙る。
実際、かなりの無茶だった。
ジッパーの長さは残る距離全てを補うことはできず、
野球選手が塁に向かってするかのようなヘッドスライディングでギリギリ抜け出すことに成功したのだ。
ジッパーが生む推進力がそれを可能にさせたが、少しでも足りなければ死体が一つ出来あがっていたことだろう。
息が切れ切れのブチャラティは顔を伏せていたが、それは部下が自分の考えを容認しなかったからではない。
「……見当たら、なかった」
「え?」
「荒木が隠れ家にするような、そんな場所……見当たらなかったんだ……!」
『エアロ・スミス』の射程距離はせいぜい数十メートル。
二酸化炭素のレーダーの範囲は100メートルといったところ。
その範囲内に行ってみたはいいものの、それらしき施設はなかった。
374 :
代理:2009/08/10(月) 15:41:40 ID:lBN/UOsc
「考えてみれば分かることだった。索敵なら弾丸に『セックス・ピストルズ』を乗せて
上空に打ち上げた方が広範囲を調べられる。人物となると難しいだろうが施設なら事足りる。
……やはり俺の思い込みだったのか」
「諦めるなよブチャラティ。地図の外って言っても、海の向こう側もあるんだ。
移動手段が限られるから、そっちの方が可能性が高い」
「そう、だな。それに、地下施設なら気付きようがない」
こうして、実験の結果が書き加えられた。
・ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり
→西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も)
「これからどうするんだブチャラティ? 北側で同じような事すんのか?
ああ、いや、別に止めはしねえけどよ」
「やめておこう」
即答。北端を行くというのは自分で言ったことなのだが。
「さっきので思い知らされたが、そう簡単に荒木の居場所を見つけられるとは思えない。
それに、何度も同じことをすればアラキに警戒されるかもしれない」
「じゃあジョースター邸か?」
「彼らは彼らでするべきことがあるだろうから、下手に付き合わせるわけにはいかない。
だが、今いる位置が位置だ。ワンチェンの支給品を回収してから立ち寄るだけのことはしよう。
ワンチェンに銃が支給されてたら見逃すわけにもいかないし、協力してくれる以上ジョナサンたちとは情報を共有したい」
主要な施設に行こうにも遠いし、何より拳銃のない今ミスタは足手まといと言っても良い。
石ころでも代用は利くが、不安要素を減らすためにも慣れた武器を手に入れる必要があると判断した。
中心地へ行くのは時期尚早、返り討ちにあうのが関の山。
「じゃあ行こうぜ、ブチャラティ」
彼らの身を呈した考察は、徒労に終わるのか? いつか実を結ぶのか?
だが、無駄なことなど何もない。
辿り着こうとする意志がある限り。
375 :
代理:2009/08/10(月) 15:42:28 ID:lBN/UOsc
【B-1 西端/1日目 午前】
【チーム・ブチャラティ】
【ブローノ・ブチャラティ】
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:肩に切傷(血は止まっている)、左頬の腫れは引いたがアザあり、右腕の骨折、トリッシュの死に後悔と自責
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、荒縄、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
1.【B-2】へ行き、可能ならワンチェンの支給品および首輪の回収を行う。
2.その後はジョースター邸へ(ジョナサンらと一緒に行動する気はない)。北端に沿って東を見に行くのは中止。
3.絶対にジョセフと会い、指輪を渡す。彼にはどう詫びればいいのか…
4.チームの仲間に合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。
5.“ジョースター”“ツェペリ”“空条”の一族に出会ったら荒木について聞く。特にジョセフ・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリ(死亡したがエリザベス・ジョースター)には信頼を置いている。
6.ジョナサンとブラフォードを信頼。できれば他のジョースターにも出会いたい
7.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※ブチャラティの投げた手榴弾の音は、B−2の周囲一マスに響きわたりました。
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。
@荒木飛呂彦について
・ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり
→西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も)
・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む)
A首輪について
・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
→可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
B参加者について
・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから
376 :
代理:2009/08/10(月) 15:43:23 ID:lBN/UOsc
【グイード・ミスタ】
[時間軸]:54巻、トラックの運転手を殴った直後(ベイビィフェイス戦直前)
[状態]:健康、左頬が腫れている、トリッシュの死に深い動揺とゲームに対する怒り
[装備]:ナランチャのナイフ、手榴弾2個
[道具]:不明支給品残り0〜1(あるとしたら武器ではないようです)
[思考・状況]
基本行動方針:ブチャラティと共に行動する。ブチャラティの命令なら何だってきく。
1.【B-2】へ行き、可能ならワンチェンの支給品および首輪の回収を行う。その後ジョースター邸へ
2.エリナの誤解を解きたい
3.アレッシーうざい
4.あれこれ考えずシンプルに行動するつもり。ゲームには乗らない
[備考]
二人がした情報交換について
※ブチャラティのこれまでの経緯(スージーとの出会い〜ワンチェン撃破まで)
※ミスタのこれまでの経緯(アレッシー、エリナとの出会い〜ブチャラティと合流まで)
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
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さるさんくらっちゃいました。時間帯考えるべきだったかなorz
どなたか代理投下お願いします
代理投下終了
投下乙です!
ただの考察だけでは無く、ミスタとブチャラティの禁止エリア・首輪の性能把握のためのギリギリの実験にドキドキしました。
「ブチャラティ、悪いがここは俺が行く。あんたの『スティッキィ・フィンガース』は首輪を外すのに必要な『希望』だ」
ミスタは男前ですね…彼の覚悟を辛いながらも汲んで、禁止エリア侵入を命令するブチャラティも、信頼し合ってるからこそ命令できるけど、
そんな大切な仲間を危険な目にあわせてしまうこの状況下…、彼の辛さが心に響きました。考察内容も以前変わりなく、COOL!
ほんとに2人はいいチームだなあ…
しかし…向かうジョースター邸にはエリナを失ったジョナサンが…!どうなちゃうのよォ!
今後がすごく楽しみになりました!
したらばに新作キター−−−−!!!
が、見事に荒れてるなオイ。
氏の新作が、無事にこの板に乗ることを祈るぜ……
【荒木飛呂彦】投下します。
元「二人式有限確定情報ゲーム」です。
これは、後の4人組VSゲス二人とは、何の関係もない、単発の話です。
一寸(約3p)にカットされた桃色の大理石と墨色の大理石が、32組ずつ隙間無く敷き詰められている。
それらの石片を動かないように固定している枠は
目が痛くなるほどに、精巧な唐草模様が彫られた白檀の樹で作られており
この状態でも十分鑑賞用に耐えうる資格を持っているのに、さらにその上に宝玉で作られた駒が乗っていれば
チェスセットとしては、十分に過ぎたる物であると言えよう。
普通なら博物館の宝物庫に仕舞い込まれるべき一品を、おしげもなくテーブルの上に広げて二人の人影が向かい合う
人影の一つが、石英で作られた歩兵の駒を手に取ると相手に向かって2マス進めた。
対する人影も、黒水晶の歩兵を相手が置いた駒の向いへと1マス進める。
e6とe4。
フランス防御と呼ばれる、定石中の定石である。
初手としてはありふれていると言えよう。
先手を打った人影―――荒木飛呂彦は、本に書かれたような定石に顔をしかめた
彼としては、もう少し破天荒な初手を期待していたのだ、キングフィアンケットの防御とか。
荒木飛呂彦は軽く嘆息すると、大量の薄荷と角砂糖の入った自分のグラスに熱い茶を注いだ
一息ついてこのガッカリ感を吹き飛ばそう、という根胆らしい。
荒木の落胆を感じ取ったのか、向いに座る人影は指先でチェスの縁をコツンと叩いた。
意味を訳せば、(古典的な定石でも別にかまわないだろう?ゲームはこれからなんだから)といった所か。
その様子を横目で眺めながら、荒木飛呂彦はグラスに注いだ液体を嚥下する。
薄荷の清涼感と、無駄に加工されていない砂糖の優しい甘みが、荒木の落胆を少しだけ慰める
舌の上にわずかに残る苦味を楽しみながら、荒木は瑪瑙で作られた僧侶の駒をc4に進めた
相手も翡翠で作られた僧侶をc5に置く、二つのビショップは向かい合う形になった。
この状態だと、どちらの僧侶も動けない。
この展開に少し満足すると、荒木飛呂彦はテーブルの向こう側に座る相手に親しげに話しかける。
「人数が人数だから、3日ぐらいはかかるかなと思ったけど、このペースだと一日以内で終わりそうな勢いだね」
そう言うと、手に持った金剛石の王をe2に置いた
荒木飛呂彦が主催するこの「バトル・ロワイヤル」、始まってまだ9時間しかたっていない。
それだというのに、参加者の約半数近くが死亡しようかという勢いである。
この原因は主に参加者達にあるのだろう、元々殺しを生業としている者や、殺しそのものを趣味にしている者
そして、それらを撃退しようという意思を持つ者達、つまり彼等は殺し、殺されるということに慣れている
それに加えて「スタンド」「波紋」「吸血鬼」といったような異能の力
それらを一か所に集めれば激突し、潰し合うのは自明の理であると言えた。
荒木は更に続ける。
「だけど空条承太郎まで死んじゃうとはね、僕も彼の奥さん殺したりして揺さぶってみたりしたけどさ
あそこまで綺麗に繋がるとは思わなかったよ」
笑っちゃうよね、と言いながらも荒木の顔は笑みを浮かべない
面白くない、というよりは誰が死のうが生きようが関係無いといった体だ。
生前、敬意をはらった人物でも、死んでしまえばもう興味は無い。
その様子は子供がおもちゃに遊び飽きて放り投げる様によく似ていた。
もっとも、このような思考回路の人間だからこそ、殺人ゲームを主催しようという気になったのだろうが。
黙したまま返さない相手をいいことに、荒木はさらに話続ける。
「こうやって、チェスに興じれる時間が持てるのは良い事だけどさ
早く誰か殺し合ってくれないかな、面白い死合いがあったみだけど見逃したみたいだし、退屈でしょうがないよ」
少し前に起きたアクシデント―――
支給品の一つである、カメオのランプで呼び寄せた二人の参加者。
その中の一人が、荒木の保持する「日記」を盗んだのである。
いくら彼女のスタンドが、かなりの小型かつ「小さくする」能力という気づかれにくいタイプのものであったとしても
盗まれた事自体に気がつけなかったというのは、かなりの痛手であった
チェスの相手をしてくれているこの人物から、そのことを指摘されなければ、今頃どうなっていたか……
最悪、日記の秘密を解き明かされ、このゲームを根底からひっくり返されていたかもしれない
それを防ぐためにも、荒木は日記を取り返すために自らゲーム盤に降り立ち、参加者の一人に接触したのだった
荒木の不満は、その時見逃してしまったゲーム内容にあるようだ。
それにくらべて、ここを出る前に見たあの殺し合いは最高だった。
何の能力も持たない上に、足を封じられた少年がほぼ無敵に近いスタンド使いを下したのだ
またあんな殺し合いを見てみたい、拮抗した力を持つ者同士の死力を尽くしたバトルも良いが
圧倒的な戦力差を知力のみで覆すバトルも、また良いものがある。
ん?と荒木は次の手を指さない相手の様子で現実に引き戻された
顔色を伺うと、わずかに苛立ったような気配が伝わってくる、荒木はその苛立ちの原因を探るべく声をかける
「ひょっとして君、勝手に参加者に接触した事を怒ってるのかい?
しょうがないだろ「日記」盗られちゃったんだから、イレギュラーだったと思って見逃してくれよ」
荒木と彼が「日記」が奪われたと知った時、相手が主張したのはグェスと花京院両名の処刑だった
自分達の正体を少しでも知られるような不安材料が相手の手に渡ったのだ、用心するに越したことはない。
その言葉に荒木は反対したのだ、「それでは面白くない、駒はゲームの中でこそ死ぬべきだ」と
結局、荒木の主張が勝ち「日記」は戻ってきた、結果論としてはこれで良かったのかもしれない。
(まぁ、僕に甘いってことなんだよね)
そう考えるとなんだか微笑ましい、思わずにやにや笑いを浮かべる荒木に
相手は嘆息すると猫目石の騎士をf6へ置く、つまり一気にこちらの陣地に切り込んで来る形になる
その一手にむっと眉根を寄せると荒木は手に持った歩兵を何処へ置いたものかと思案する。
c3に置くべきか、c4に置くべきか
「歩兵はチェスの魂である」と先人の言葉にもあるように
序盤で歩兵を何処に置いたかによって、終盤の難易度はガラッと変わるのだ
参加者達の殺し合いは佳境に入ったようだが、自分達の勝負はこれからだ。
出入り口一つ無い、真っ白な室内の中に駒を置く音だけが響く―――
【when where who which ?】
第二回放送までにこの対局が終わるのかは、未だに謎である。
【???/10時】
【荒木飛呂彦】
[時間軸]:不明
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:不明
[思考・状況]
基本行動方針:不明
投下完了です。指摘、感想をお待ちしています。
投下乙ッ!
成る程……分割ときたか
これだけでも、話として成り立ってるから大丈夫だと思います。
能力設定チャットに参加してないから、詳しい事は言えないけど
読む限りでは、問題はとくになさそうだと感じました。
後、毒スレの批判とかは気にしなさんな、みんな暑くてカリカリしてるだけさ。
残りの話も期待して待ってます。
投下乙です。
荒木の対戦相手が誰なのか気になるところ。
続きを待ってるぜ。
これを忘れていました。
※荒木は8〜10時の殺し合いを、一部見ていない可能性があります。
問題なさそうなので、この話は先にWIKIに上げます。
残りの話は、整理中ですのでもう少しお待ち下さい。
【ナルシソ・アナスイ、マウンテン・ティム、ドナテロ・ヴェルサス、ティッツァーノ
Jガイル、片桐安十郎(アンジェロ)、荒木飛呂彦】投下します
しとしと雨が降り注ぐ中、4人の男達が進んでゆく
「うッ……」
4人の中の一人、ドナテロ・ヴェルサスはうめき声を上げると、自分の肩にある星型の痣を押さえた
アナスイにウェザーの事を聞かれるまで、すっかりこの痣の存在を失念していたのだ。
エンリコ・プッチの言葉によれば、この痣は元々ジョースター家の人間にのみ発現する物らしい。
ジョースター家の人間で無い自分達に、この痣があるのは
自分達の父、ディオ・ブランドーが100年前に、ジョナサン・ジョースターという男の体を
死闘の末、首から下まで乗っ取ったからなのだと言う。
最初に、この話を聞いた時「そんな荒唐無稽な話があるか」と思わず突っ込みを入れた自分に、
神父は目を見据えてこう言ったのだ「私の話が嘘かどうかは、ここにいる君が一番よくわかるのではないか?」と。
くやしいが、プッチの言う通りだった。病室に集められた、自分と同じ痣を持つ若者達、ウンガロとリキエル。
いきなり、自分の異母兄弟だと紹介された時は驚いたが、不思議と納得している自分がいたからだ。
体では無く心が、理性では無く魂が。この二人を兄弟として認めたという事なのだろう。
(そして続けてあの野郎はこう言いやがった……)
出生の秘密を暴露されて戸惑う自分達に、プッチはこう言ったのだ「ジョースターと同じ痣を持つ君達なら
ジョナサン・ジョースターのひ孫、空条承太郎とその娘、空条徐倫の居場所を感じ取れるはずだ。
ここまで言えばわかるね、私の言いたい事が。私を「天国」へと押し上げるためには、君達の存在は不可欠なのだ
…………協力してくれるかい?」その言葉にヴェルサスは従った。
プッチの言葉で自信を取り戻し、前を向いて歩けるようになったから。
不幸続きの自分の人生に、何らかの意味を見いだせたと思ったから。
だが、今自分がいる「バトル・ロワイヤル」において神父の言葉が持つ意味はそれだけでは無い。
(つまり俺が、空条徐倫の居場所を感じ取れるってことじゃねぇか!)
徐倫の位置さえわかってしまえば、彼女と鉢合わせないように行動する事も可能である。
そう思って、先ほどから痣に意識を集中し、「探って」みたのだが
(1……2……3……4ッ!?何でこんなに多いんだよ!どれが空条徐倫なのかわかんねぇぞ!)
空条徐倫以外の星型の痣を持つ者達まで、カウントしているのだろう
よく考えたら、プッチと一緒に病院で徐倫を待ちかまえていた時も、リキエルと徐倫の存在を一緒に感じ取っていた。
しかも「大体、北の方に二人いるんじゃないかなぁ」「北東に一人いる、気がする」「南に一人……あれ?近い?」
といった漠然とした物である。はっきり言ってまるで役に立たない。
その絶望感が、冒頭のうめき声に繋がるのだが。
「どうかしましたか、ヴェルサス?」
もう一つの絶望感の原因がやってきた。
自分の声を聞いてか、先ほどから自分の目の前で、アナスイとティムに相談していたティッツァーノが戻って来たのだ。
ヴェルサスはうっと言葉を詰まらせた、2時間ほど前に自分の勘違いを発端にして
こんな可愛い子が女の子のわけないじゃないか、という事をリアルに体験してしまったのである。
その時の事を思い出すだけで羞恥心で死にたくなる、「穴があったら入りたい」という諺があるが
今から地面を『アンダー・ワールド』で100mほど掘りこんで、その中でしばらく泣いていたい気分である。
自分の様子をみかねたのか、「大丈夫ですか?」とティッツァーノが声をかけて来た。
本人は気遣っているのだろうが、今のヴェルサスにとっては傷口に塩を塗り込む行為でしかない。
「何で男なんだよぉぉぉぉぉぉッ!俺が何したっつーんですか神様!!」
あァァァんまりだァァアァWHOOOOOOOHHHHHHHH!!
再び地面につっぷして泣き始めたヴェルサスに、
うるさいですよ、とティッツァーノが無情にフロントチョークを決めた。
* * *
「あの二人どうするんだよ、ティム」
傍から見れば、じゃれあってるだけにしか見えないティッツァーノとヴェルサスの様子を
横目で眺めながら、ナルシソ・アナスイはマウンテン・ティムに問う。
聞かれたティムは、締めあげられて酸素不足のため変色し始めたヴェルサスの様子を、何となく見ながら答える。
「そうだな、愛は性別の壁を必要とはしていない、人を愛することで一番大事なのは外見では無く
相手を思いやる気持ち、それだけなのだろうな」
「まぁ、俺も自分が女だったとしても徐倫に告白してただろうしな。って違うぞ。
俺が言いたかったのは、あの二人を完全に信用出来るかってことだ」
先ほどあったばかりの人間というのもあるが、問題はティッツァーノだ。
「相手に嘘をつかせる程度の能力」と彼は説明したが、自分達はそのスタンドのビジョンすら見ていないのである
つまり、「相手に嘘をつかせる程度の能力」という説明そのものが、嘘であるという可能性があるのだ。
それに……とアナスイは思う。
(あのヴェルサスって野郎、明らかに俺の顔見てビビッてやがった。
初めは、俺の殺人犯としての顔を知っててビビッてるのかと思ったが、先ほどから様子を見る限り、どうもそんな感じじゃねぇ。
あの反応は、俺の事を殺人犯以外の人間として知ってる奴の顔だぜ……?)
プッチ神父もこの殺し合いに参加させられている以上、この男がその手先であるという事もありえるのだ。
警戒はしておくに越したことは無い。
体に張り詰めさせたアナスイに、ティムは優しく声をかける。
「そう気張る事はないさ、俺が見る限りあの二人は白だ。俺の保安官としての目を信用してくれ。
それよりも……気がついていたか?」
「ああ、わかってるぜティム。雨が降る方に進もうと言ったオレが悪かった、この雨はウェザーにとっては
こいつらを撒くための物だったんだ!クソッ!」
未だにギャイギャイと揉めてるティッツァーノとヴェルサスに振り替えると、アナスイは大声で叫ぶ。
「お前らいつまでもイチャついてんじゃねーぞッ!何かいやがる!警戒しろッ!!」
べ、別にイチャついてなんかいねーよ!という抗議の声は無視し、アナスイは地面に『ダイバー・ダウン』を潜航させる。
慌ててヴェルサスが『アンダーワールド』を出すのが見える。
ティムも既に手にロープを構え、戦闘態勢は万全のようだ。
ティッツァーノは、スタンドビジョンを出さない。
出せないのか、ティムの様にスタンドビジョンを持たないタイプなのかは判断出来なかった。
(うだうだ考えててもしょうがねぇ、目の前の物から一つずつ片づけてゆく!
お願いだから無事でいてくれよ、徐倫。こいつらをなんとかしたら、すぐに行くから。)
ざあざあと降りしきる雨の中、水煙に紛れる4人の人影が―――6人になった。
* * *
「ちょっ……おまっ……やめてマジで苦しッ!キブ!ギブギブギブギブギブ!!」
ばしばしと自分の腕を叩くヴェルサスに、ティッツァーノは腕の戒めを解く。解放されたヴェルサスはゲホゲホと咳きこんだ。
苦しげに、酸素を供給を行う相手を見ながら
ティッツァーノはヴェルサスの呼吸が落ち着くのを見計らって、再び首に腕を回す。
また締め上げられるのかと、体を強張らせるヴェルサスを手元に引き寄せ、耳元で小声で囁く。
「首は締めませんから、このままで少し私の話を聞いて下さい」
「何だよ」
「貴方、あのアナスイという男の事、何か知ってるのではありませんか?」
「うぇッ!?……いやほらアレだよアレ、バラバラ殺人のナルシソ・アナスイ!
新聞にもでっかく載ってたから知ってたんだよ、お前だって名前くらいは聞いた事あるだろ?」
嘘だな、とティッツァーノは思う。
アナスイが殺人犯だというのは、本人も自己申告してきたのもあるし本当だろう。
だが、長年ギャングをやってきたティッツァーノの目は誤魔化せない。
(君の反応は、殺人犯を目にした時の一般人の物じゃない
まるで、旧知の人物にいきなり出会ったかのような驚き方なんだよ!)
しかも、さっき締め上げた時に気づいたのだが、ヴェルサスの肩に星型の痣があるのが見えた。
ここに来る前まで、自分とスクアーロが追いかけていた裏切り者、ジョルノ・ジョバーナと同じ形の痣が。
よく考えれば、自分はこの男の事を何も知らない、知っている事といえば
「過去を掘り起こす」スタンドを持ち、幸せになりたいという気持ちは人一倍強いという事だけ。
「って、いいかげんに腕どけろよティッツァーノ!ティッツァ!」
その声に、ティッツァーノはわれに返った、知らず知らずの内にまた締め上げていたらしい。
ったく、と首をさするヴェルサスにティッツァーノは静かに言う。
「ヴェルサス、貴方の事で一つだけわかった事があります」
ずっと気になってはいたのだ、彼を見ていると何故こんなに苛立つのか、
彼を見ていると、何故スクアーロの事ばかり考えてしまうのか。
その答えは、さっき彼が自分の名前をある呼び方で呼んだ事に気づいた。
「似てるんですよ、貴方は。スクアーロに……私の相棒に……」
優しい、だけど遠くを見るような目つきで見つめられてヴェルサスはたじろぐ。
「何だよ……お前そいつに会いたいのかよ」
「ええ、とてもね」
寂しそうに微笑まれると、何だか居心地が悪くなる。
ヴェルサスはティッツァーノから視線を外し、そして何かに気づいたかのように目を細めた。
その視線の先には、水煙にまぎれるように二つの人影が立ちふさがっている。
「あれは……?ウェザーじゃねぇな、誰だ?」
「これだけ離れた距離から、あの人影を「ウェザーじゃない」と判断出来るという事は
やっぱり貴方初めから、ウェザーという人の事を知ってたんですね……」
「へ?あ、違ッ!この、それは!?」
「お前らいつまでもイチャついてんじゃねーぞッ!何かいやがる!警戒しろッ!!」
「べっ、別にイチャついてなんかいねーよ!」
と叫び返しながら、ヴェルサスは『アンダー・ワールド』を出現させる。
自分も、スタンドは出せないが周りを警戒する。
自分達の前に立ちふさがったまま動かない二人に対し、ティムはロープを握りしめ問いかける。
「そこの二人!こちらはこの殺し合いに乗っていない!もし君達も同じように乗っていなければ
両手を上にあげて、戦闘の意思が無い事を示して欲しい!」
だが、二つの人影は動かない。
聞こえていなかったか?そういぶかしんだティムが、相手に向かって足を踏み出した瞬間だった。
「ティムッ!」
ティムの肩に、拳ほどの大きさの水の塊がへばり付き、さらには口の中に潜り込もうとしている。
『アクア・ネックレス』水素を媒介にして動き回る、水で出来た死の首飾りだ。
このスタンドに潜り込まれたが最後、内側から操られるか、最悪の場合、陸の上で溺死させられてしまう。
だが、それは。
「!?」
潜り込まれた場合の話だ。
ティムは『アクア・ネックレス』が自分に潜り込もうとした瞬間、自分の顔をロープでバラバラにしていた。
『アクア・ネックレス』は突然の事態に付いてゆけず、口と本来ならば喉があるべきはずの場所で立ち往生している。
「『ダイバー・ダウン』ッ!空にしたペットボトルごとティムの体内に「潜航」させる!」
『ダイバー・ダウン』がペットボトルを手に持ったまま「潜航」し―――といっても
ペットボトルそのものは体に入れることは出来ないので、ペットボトルは体の外に出ている形になるが……
そして、金魚すくいでもやるような形で、『アクア・ネックレス』はペットボトルの中に閉じ込められた。
アナスイがそれを素早くキャッチし、蓋をキュッと締める。
「す……すげぇ……」
呆然とヴェルサスが呟く。
アナスイとティム、スタンドを手足のごとく使いこなしているのもあるが
彼らの一番素晴らしい所は、その状況判断能力なのだろう。
またたく間に、襲いかかって来たスタンドを無力化した二人を見て、ティッツァーノもそう思う。
ペッドボトルの中で、ジタバタと悪あがきをする「アクア・ネックレス」を持ちながらアナスイが叫ぶ。
「そこの二人!お前のスタンドは無力化した!最後通告だ!
すぐさま投降しなきゃ、殺されても文句はいえねぇと思え!」
だが、そこまで言われても目の前の二人は動かない。
いや、これは動かないのでは無い、動けないのだ、この二人は歩く事も呼吸をするこすらも出来ない!
ティムが気づいて叫ぶ
・・・・・・・・
「こいつらは人形だアナスイ!誰かが操っていやがったんだ!」
その声と共に、水で出来たハンバーグの様な髪型をした人形と、ドリアンみたいな体型の人形が
まるで、糸が切れた操り人形のようにバッシャンと水たまりの中へ倒れ込んだ。
この二つの水で出来た人形は、囮だったのだ。
「ティ……ティッツァ……」
ヴェルサスが、震える声で自分の名前を呼ぶ。
彼の視線をたどって自分の胸を見れば、赤い染みがみるみるうちに広がってゆく所だった。
そう、あの二つの人形は囮。
そちらに攻撃を集中させ、後方にいる自分達の油断を誘うための……
焼けつくような痛みを胸に感じながら、ガクリと膝をつく自分をヴェルサスが抱きとめるのを感じる。
一体どうやって攻撃された?
俺とヴェルサスには、どんなスタンドも近づいてこなかったはずだ。
痛みで霞むティッツァーノの視界の中、雨粒の中にミイラのようなスタンドの姿が映った気がした。
* * *
青い顔をしながら、自分達の元を離れていったティッツァーノを見送りながらティムは思う。
ティッツァーノ、自分の事を、ギャングだと名乗ったあの青年。
ティム自身は保安官であるものの、ギャングや殺人犯に偏見を持っているわけではない。
彼は他人の評分よりも、自分の目で見た物を信用するタチだし
実際に話してみるまで、その人間性は図れないものだと考えているからだ。
ティムが考えこんでいるのは、ティッツァーノの出自に関してではない、彼の話した会話の内容についてだ。
彼は「自分は裏切り者の一派と、暗殺チームと敵対している」と言った。
この情報は正しいと判断するべきだろう、自分の置かれている立ち位置を明確に示すことは、このような状況であれば、必須の事だ。
誤情報は誤情報を生む、彼の様なタイプの人間がそのくらいの事を分かっていないはずがない。
この話が正しければ、彼は二つのチームから命を狙われるような
ギャングの中でも重要なポストに、ついていたのではないだろうか。
だが、彼は一言もその事を話していない。
(面識の無い人間にも、知られちゃまずいポストに付いていたのか?)
もしくは、自分達を経由して他人に伝わると、さらにマズイ事でも起きるのだろうか。
彼等と話した時に気づいたが、自分とティッツァーノ達の年代には時間差がかなりある。
ティッツァーノの顔色が変わったのも、年代の話をした時だったな、とティムは思う。
彼がくわしく自分の事を話さなかったのは、その辺に理由があるのかもしれなかった。
ここで一つ言っておこう、ティムはティッツァーノがくわしい情報を提示しなかった事を怒っているのではない。
むしろ、この状況では当然の事だろうと考えている。
自分に不利なカードは伏せ、自分に痛みのない情報だけを相手に与える、駆け引きにおける基本である。
ティッツァーノからは、もうかなり情報を引き出せている、これ以上の情報提供を望むのは酷だろう。
ティムはちらりと、自分の隣を歩くアナスイを見る。
今までに考えた事をアナスイに話すつもりは無い、彼は徐倫の事だけでも手いっぱいなのだ
確信の持てない不安材料を与えて、不信感を植え付ける事はしたくなかった。
このような「殺し合い」という特殊な状況で、何が引き金で悲劇が起こるかわからない。
不確定な材料は出来る限り自分の胸に秘めておこう、必要となった時にアナスイに話せばいい。
そんな事を考えていると、アナスイが自分に向かって「あの二人をどうする?」と聞いてきた。
その言葉に適当にボケて返しながら、ティムはさらに思考する。
それに、あの二人は俺達二人に危害を加える理由も無ければ、危害を加える方法すらない。
「嘘をつかせる能力」「過去を掘り返す能力」これだけでは、殺し合いを生き抜くのは無理だろう。
早いが話、二人ともてっとりばやく、戦闘能力の高い味方が欲しかったのではないだろうか。
そのために、あそこまで情報提供を惜しまなかったと考えれば合点がいく。
「そう気張る事はないさ、俺が見る限りあの二人は白だ。俺の保安官としての目を信用してくれ。
それよりも……気がついていたか?」
ティムはアナスイを宥めながら、注意を前方の不審者へと向けさせる。
水煙にまぎれるように立つ、二つの人影。
この雨の中、流れ落ちる水滴を拭いもせずにぼーっと突っ立っている。
また、一筋縄でいかなそうな奴が出てきたな。
俺の獲物が縄だけにってか?
ティムは手にいロープを握りしめると、二つの人影に向かって一歩踏み出した。
* * *
「隠れろ、Jガイル。誰か出てくる。」
イケメン四人組に、Jガイルとアンジェロが襲いかかる少し前。
サンタルチア駅前の広場の隅で、コソコソと動く二つの人影があった。
ブラックモアとウェザー・リポートが、第二回放送時に駅を襲撃するという話を聞いたJガイルとアンジェロは
一足お先にサンタルチア駅周辺を、散策する事に決めたのだった。
反射物の位置や、蛇口や水道管の場所を探っておけば、戦う時に有利だからである。
ヴァニラ・アイスVSブラックモア+ウェザー・リポートを離れた所で観戦し
弱った方にとどめを刺す、それが先ほど二人が出した決断だった。
「あれは……アレッシーか?何であいつこんな所に」
サンタルチア駅から、バタバタと飛び出してきた妙な髪型の男
中で何があったのかは知らないが、恐怖で顔を引き攣らせていた。
「アレッシー?」
「ああ、俺の同僚で、自分よりも弱い奴や子供をいじめてスカッとするのが趣味の男だ」
「俺と気が合いそうな奴だな、俺も子供をいじめるのは好きだぜぇ?」
いじめ過ぎて殺しちまう事もよくあるけどな、とアンジェロは笑う。
「どうする?あのアレッシーとかいう男も俺達の仲間に引き入れるか?」
「いや、やめておこう。アレッシーが駅から飛び出して来たってことは、ヴァニラに殺されかかったんだろ
俺達もここから駅に近づくと、ヴァニラに気づかれるかもしれん。それに」
「うわ、あいつの支給品バイクかよ」
「そういうこった」
バイクに乗って一目散に逃げてゆくアレッシーを横目に、Jガイルとアンジェロは駅を迂回して北上する事にした。
ウェザーはまだ雨を降らし続けてくれている、自分達は雨雲を追いかける形になった。
アンジェロの「アクア・ネックレス」には水分が、Jガイルの「ハングドマン」には反射物が必要だからだ。
そして、北上した彼らが見た物とは。
「東方仗助?」
「誰だ?そいつは」
今度はJガイルが尋ねる番だった。
ラバーソールに食い破られた事を示す二つの死体、もっともその大半は食い散らされ
学生服の端切れくらいしか、その身元を判別出来るものはなかった。
東方仗助は制服を改造していたのが幸いだった、彼の顔はわからなくとも、その服を見れば誰だか一発でわかる。
特に、彼に恨みを持つ者なら、なおさらだろう。
「俺をムショ行きにしやがった奴の孫だよ、こっちの死体は知らねえな
同じ学生服だから、同じ学校の奴だったんだろ」
思い出すのも忌々しい、とばかりにアンジェロは吐き捨てる、よほど嫌な目にでも遭わされたのだろう。
そんな相方の様子を見ていたJガイルが、いいことを思いついたとばかりに右手と右手を打ち鳴らした。
「アンジェロ、お前のスタンドでその二つの死体を、元の姿に化けさせることは出来ないか?」
聞かれたアンジェロは、一瞬だけ怪訝な顔をしたものの直ぐにその意図に気づき「アクア・ネックレス」を発動させる。
水たまりからゴボゴボと、二つの死体にスタンドが注ぎ込まれてゆく。
むき出しの骨に肉づけをするように、水が纏わりついてゆく。
以前、彼が東方邸で年代物のウイスキーに化けたのと同じ要領である。
しばらくして、二つの死体は実体を取り戻し、ゆらりと立ち上がった。
「あーだめだ、この状態にする事は出来るけど、近くで見たらばれるな」
「二つの死体」に化けた己のスタンドを見ながら
アンジェロが残念そうに首を振る、だがJガイルはニヤリと口を歪める
「それがいいんじゃぁねえか……、遠目から人影が立ってるってわかるだけで十分だぜ」
アンジェロもニヤリと笑い返す。
「で、俺達はこの死体にホイホイ近づいてきた奴らを美味しく頂いちまうってわけだ」
二人は顔を見合せてゲラゲラと笑い合った。
そして、実際この作戦は上手くいった。
『ハングドマン』の攻撃を受け、地面へと崩れ落ちる長髪の男を見ながら、Jガイルはほくそ笑む。
「おい……、俺を早くあのペットボトルから出してくれ……」
「おっと、でも抜けがけして勝手に攻撃したあんたが悪いんだぜ?ほらよ」
『ハングドマン』がペットボトルを一閃する。『アクア・ネックレス』は、ずるりと地面に滑り落ちた。
アナスイとティムが、どこから攻撃されたのかと、うろたえたようだが関係ない。
Jガイルがティッツァーノとヴェルサスを、アンジェロがアナスイとティムを攻撃する、そういう口約束だったが。
「あれ?」
『ハングドマン』で切りつけたはずの、ティッツァーノとヴェルサスの姿が見えない。
どこにいったかと辺りを見回せば、さっきまで二人がいた地面に直径一mほどの穴が開いていた、そこに逃げ込んだらしい。
「なぁ、アンジェロ」
「何だよ、今集中してるから手短にな」
アンジェロはめんどくさそうに言う、アナスイとティムの二人を相手するのは手がかかるのだ。
だが、それにもめげずJガイルは声をかける。
「俺の獲物が地下に穴掘って逃げやがった、穴の中じゃ光がとどかねぇ
悪いけど、俺の獲物とお前の獲物、交換してくれねぇか」
「そりゃしょうがねーな……、分かったぜ、地下だな。
いつもよりスタンドを移動出来る範囲がせまいが、逃がしはしないぜ」
* * *
はっ、はっ、はっ、はっ。
明かり一つ灯らぬ真っ暗闇の穴の中を、ヴェルサスはティッツァーノを抱えたまま走る。
彼のスタンド『アンダー・ワールド』は制限により、この殺し合いが始まる前の事は掘り返せないが
普通に地中を掘り進むことは、今まで通り可能であった。
彼等の前を先行して掘っていた『アンダー・ワールド』が振り返って報告する。
「ヴェルサス、イツモヨリホリニクイヨ、シタニイクホドジメンカタイゾ」
「わかってる、ここから離れる事が出来たら何だっていい!出来る限り掘り進め!」
手に抱えるティッツァーノからは、血がどんどん流れだしている。
命に別状はなさそうだが、早く手当をしないとまずいかもしれない。
「ヴェルサス……下ろしてください……」
「馬鹿言うな、その怪我で走らせられるか!」
地中に降りてから、ティッツァーノを襲ったスタンド攻撃は追ってこない
だからといって、この怪我で無理をさせるのは良心が咎める。
そう思って、ティッツァーノの申し出を却下したヴェルサスだが
「違います……私を置いて行って下さい」
「はぁ!?」
ヴェルサスはおもわず足を止めてしまった。
いきなり何を言い出すのかという、自分の怪訝な顔を見ながらティッツァーノは続ける。
「このまま、私を担いで走っても逃げ切れません、私を置いて逃げてください」
「ふざけんなよ!その怪我でここに置いてゆけるわけないだろ!」
ヴェルサスはティッツァーノの胸倉を掴みあげる
「さっきから様子がおかしいぞ、お前。……あいつらに何か言われたのか?」
ティッツァーノは答えない、だがその沈黙が雄弁に答えていた、何かあったのだ。
二人の足元に流れ込む水が、足首に達しようとしていた。
暗闇ゆえ、ティッツァーノの表情はわからなかったが、腕に伝わる震えで彼が何かを耐えているのが感じ取れる。
そして、ティッツァーノは、ぽつりぽつりと話し始めた。
アナスイとティムと情報交換をした時。
(ティッツァーノはギャングなのか)(ええ、イタリアのパッショーネという組織に属していました。
お二人は、アメリカ出身だから知らないと思いますけど)(そうだな、知らないな)
(ん?パッショーネ?)(どうした、アナスイ)(パッショーネって麻薬の取引をやっていた所か?)
(ええ、やっています)(いや、どうでもいい話なんだが独房に入ってたヤクの売人が)
(10年前にパッショーネのボスが代替わりしてから、ヤクを売らなくなったって嘆いてたのを思い出してさ)
「それがどうかしたのかよ、10年前にお前の所のボスが変わったってだけの話だろ
別におかしな話でも、何でもないぜ?」
何故そんなに衝撃を受けるのかわからない、といった体でヴェルサスが尋ねる。
「ヴェルサス、今は何年ですか?」
「2011年だろ」
即座に答えるヴェルサスに、ティッツァーノこう返す。
「私は、2001年だと思ってたんです」
「それが何か……あ」
2011年。2001年。10年前。ギャング抗争。ボスが変わった。あれだけ銃弾を受けて生きているわけが。
それらのキーワードが、グルグルとヴェルサスの頭を支配する。
ちなみに、この質問にアナスイは「2011年」、ティムは「1890年」と答えている。
「まさか、お前と相棒がついてたのって前のボスの側なのか?」
「そうです、だからスクアーロが私が撃たれた後も生きていたとしても
彼はきっと、新しいボスに殺されてしまっている……」
戒律を重んじるギャングが、前のボスについた、しかも親衛隊の男を生かしておくはずがない。
どう考えても、スクアーロの生存は絶望的だった。
暗闇にすすり泣くような音が響く、ティッツァーノは泣いているのかもしれなかった。
ヴェルサスは、そんな彼の様子に声をかけることが出来ずに、何となく足元に目をやった。
穴から流れ込んだ水は、膝の辺りのまで達しようとしていた。
さっきまでは、足首までの深さだったのに?
水の勢いとは、こんなに早いものだったろうか。
「しまった、これはスタンド攻撃かッ!?」
『その通りだぜ!!』
どこからともなく声が聞こえたかと思うと、自分達の足元の水がどんどんせり上がってくる。
せまい穴の中では、流れ込みせり上がってくる水からの逃げ道すらない。
慌てふためく自分達を、ゲラゲラと品の無い笑い声が取り囲む。
『穴の中に逃げ込んだのが運のつきだったな、二人まとめて溺死しな!!』
ヴェルサスとて、無駄に慌てふためいていたわけでは無い。
即座に『アンダー・ワールド』を使い、逃げるための横穴を掘ろうとするが
掘ったはしから、噴水のように水が噴き出してくる。どうやらアンジェロは、この辺りの水道管を破壊したらしい。
二人の周りの土壁も、噴き出した水を含んでドロドロと溶け始めている。
このままじゃ良くて溺死、悪くて泥に埋まって窒息死だ。
「もういいんですヴェルサス、私の事は放っておいて早く逃げて……」
「うるせぇよティッツァ!俺に指図すんな!」
一人だけなら、ここから脱出できるかもしれない。
ここで身軽になれば、地上に逃げる事も可能かもしれない。
だがヴェルサスは、光を失ったティッツァーノの瞳を見て言う。
「しっかりしろよ!アナスイの話がただの勘違いかもしれねーだろうが!
お前がどこで野たれ死のうが、誰に殺されようが、知ったこっちゃねーよ!だけどよ……!だけどよ……!
俺の周りで死なれる事ほど、迷惑な事はねぇんだよ!!」
ぐったりとしたティッツァーノの体を掴みなおし、迫る来る水と泥の中ヴェルサスは吠える。
「やっと、胸をはって自分の人生を歩めるようになったんだ!
俺以外の人間すべてが投げ出したとしても、俺はあきらめてやらねぇ!
どんなに絶望的な状況でも、俺だけはこの泥の中から星を見続けてやるッ!!
こんな所で死ねるかってんだああああああああああああああああああぁぁぁぁぁァァァッ!!!」
二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。
一人は泥を見た。
一人は星を見た。
彼はどちらを見たのだろう。
ゴ ヴ ン ッ ! !
突如、ティッツァーノとヴェルサスの周りから水が消えた。
いや、水だけではない、泥も、そしてあれだけぬかるんでいた足場さえも消えている。
ヴェルサス達の立っていた地面は、地下に吸い込まれるように消えてしまった。
そして、ティッツァーノとヴェルサスは、何も無い空中に放り出されていた。
何が起こったのか理解出来なくて、辺りを見回す。
アナスイとティムはともかく、むこうで自分達と同じ様にに落下している
頭のハゲた男と、配達員みたいな男は何者なのだろう。
後、みんながみんな、何が起きたのか理解出来ていないって顔をしているのが笑える。
顔文字で例えるなら。
( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ )
↑ティム ↑アナスイ ↑Jガイル ↑アンジェロ ↑ティッツァーノ
こっちみんな。
まぁ、俺も同じような表情になってるってのは否めないけどな。
重力に従って自由落下をし始める俺達を、雨が濡らしてゆく。
上空を見上げれば、青味を増す空に、消え損ねた星が一つ見えた気がした。
目が、霞む。
ともすれば、うっかり寝入ってしまいそうだ。
ヴェルサスは、体中を蝕む倦怠感と戦いながら、ティッツァーノを担いだまま
巨大な穴の真ん中に、橋のように伸びた水道管の上を進む。
落下している、と感じた次の瞬間ヴェルサスがとった行動とは?
自分達の近くの「水道管がアンジェロによって破壊された記憶」を「掘り起こし」それにしがみ付くことであった。
ちなみに自分達のように、落下を止める手段を持たなかったアナスイとティムと残りの二人は、眼前の遥か下に落ちていった。
底の方は真っ暗闇で、下に落ちた彼等がどうなったのかは確認出来なかった。
この高さである、全員地面に叩きつけられ、死んでしまっている可能性が高いだろう。
ヴェルサスは穴の淵へとたどり着くと、側面を『アンダー・ワールド』を使ってよじ登る。
なんとか地上へと這い上がると、適当に目に付いた民家に入る。
木張りの床にティッツァーノを横たえると、自分もその横に座りこむ。
座ると張り詰めていた緊張感が解け、疲れがどっと押し寄せてくる。
(やりすぎたか……)
実は、自分達に迫りくる水と泥を逃がすために、ちょっとだけ縦方向に穴を掘るつもりだったのである。
それが、思いのほか力いっぱい掘ってしまったらしく、結果的には自分を中心に300m近い大穴を掘ってしまった。
昨日スタンド使いになったばかりのヴェルサスに、手加減しろと言うほうが無理な話かもしれない。
地面も水を吸って柔らかくなっていたのが、さらに掘りやすくなっていた原因であろう。
まぁ、自分達を襲ったスタンド使いも下に落ちて行ったようだから、結果オーライという奴である。
(でもこれから絶対やらねぇ、こんな疲れる事もう絶対やらねぇ)
一回使うたびに、死にたくなるほどの疲労感に襲われる必殺技などもう使いたくもない。
このまま床に身をゆだね、眠り込んでしまいたかったが、まだもう一つ仕事が残っていた。
ティッツァーノの手当である。
命に別条はなさそうだが、このまま放置しておいてよいものでもないだろう。
傷口を洗い、包帯でも巻かねば化膿してくるかもしれない。
そのためには上着を脱がし、傷口の状態を見なければいけないのだが。
「………………。」
ヴェルサスは、上着に脱がしかけたまま固まっている。
上着の下から現れたのは、ティッツァーノの均整のとれたしなやかな肉体と
その胸に、真一文字にパックリと開いた赤い傷口。
だが、それらよりもヴェルサスの目をひいたのは、体中に刻まれた無数の古傷だった。
銃創や切り傷に始まり、中にはどうやって付けられたのかは不明だが、獣の牙のような跡もあった。
それは、彼が長年ギャングの親衛隊として過ごしてきた証なのだろう。
「驚きましたか?」
おもわず絶句するヴェルサスに、ティッツァーノは微笑みかける。
「そうでもねぇよ」