容量オーバーしてたので急遽立てさせてもらいました
容量オーバーしてたのか…タイラントオーバー>>1乙
スレ発祥連載作品紹介!(※紹介文には多少の誇張表現も含まれています)
【荒野に生きる(仮)◆8XPVCvJbvQ】
再生暦164年、コンクリートの荒野が広がる未来――。
獣の耳と尻尾を持つ「ヒューアニマル」の少女達はひたすらに戦う。対鋼獣用人型兵器・ヴァドルを駆って――!!
怪獣VS獣耳っ娘!? 話題騒然のデスマッチ!!
【CR ―Code Revegeon― ◆klsLRI0upQ】
これは、悪夢に立ち向かうちっぽけなひとりの人間と、「怨嗟の魔王」と呼ばれた機神の物語。
アンノウンの襲撃で家族を失った潤也は、漆黒の鋼機・リベジオンの玉座に身を沈める。反逆と復讐を遂げるために……!
人類震撼! 暗黒のレコードオブウォー!
【瞬転のスプリガン◆46YdzwwxxU】
スーパーカーから伸びる鋼の腕――神速の挙動と極微の制動を可能とする、エーテル圧式打撃マニピュレータがその正体!
異世界の侵略者・魔族により廃墟と化した街角で、幼いことねは機械仕掛けの拳法家を目撃した。
変形ロボットならではの技が炸裂する、極超音速機動武闘伝!
【パラベラム!◆1m8GVnU0JM】
Si Vis Pacem, Para Bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ
意思ある機械人形(オートマタ)・リヒターと、彼のマスターとなった少女・遥(19)の戦いが始まった!
なんだかおかしなキャラ達による軽妙な会話と、動きを魅せるアクションに定評あり。ファンタジックロボット冒険活劇!
【ザ・シスターズ◆klsLRI0upQ】
平凡な大学生、大野啓介の元に届いた大きなダンボール箱
その中に入っていたのは妹を自称するヒューマノイドで―――
超展開を超展開でねじ伏せる、お気楽ドタバタロボットコメディ!
【電光石火ゼノライファー◆.dMD1axI32】
「俺、戦うよ。兄さんの代わりに」
正体不明の敵「アンノウン」来襲! 柊頼斗は兄の遺志を継ぎ、巨大ロボット・ゼノライファーに搭乗する!
少年少女の思いが交錯する超王道スーパーロボットの活躍に、キミのハートもブレイズアップ!
【Tueun◆n41r8f8dTs】
全てを無くしたこの世界で――青年と人形は明日を咲かす
荒廃の大地に安住の地を求めるショウイチ。彼と旅する巨大トラクター・タウエルンには、とんでもない秘密が隠されていた!?
「家業継ぐわ…」「農業ロボ!?」 そんなスレ内の小さな種(ネタ)から◆n41r8f8dTsが丹精こめて育てた、痛快娯楽開墾劇!
【海上都市姫路守備隊戦記◆gD1i1Jw3kk】
「鉄の鎧を纏いし日出ずる国の兵」。帝国に虐げられる民が希望を見出した救世主伝説。
兵士として生きる男・清水静が愛に目覚めた時、戦乱の異世界に重装甲強化服のローラーダッシュの唸り声が響き渡る!
止められるものなら止めてみよ! 熱と硝煙! 剣と魔法! 凄絶無比のヘビーアーミー!
【最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ◆46YdzwwxxU】
ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビドゥビドゥビッドゥドゥビドゥビ!
今日も今日とてロボヶ丘市で激突するのは、変な正義と変な悪!
ハイテンション! 歌うスーパーロボットバトルアクション!
・読者側は、積極的にエールや感想を送ってあげよう! 亀レスでも大感激! 作者はいつまでだって待ってるもんだぞ!
・作者側は、取り敢えずは作品で語れ! 自分のペースでも完結まで誠実に奮励努力せよ!
・我らスレ住人は、熱意に溢れた新作をいつも待ち望んでいる! 次スレの紹介文には、キミのロボットも追加させてみないか!?
荒野とゼノライファーの二名のチェックがまだだけど、大きく外れてはないと思う。
何かあれば次スレまでに修正します。
>>1乙
時間に余裕が出来て、そろそろ投下出来そうだから覗いてみたら、何か面白い事になってるw
そして自分のヤツが的確に纏められてて笑ったw随分前に投下して以来だけど、纏めてくれた人ありがとう。
スレがたつ前に修正出来ればよかったけど、一足遅かった。>ヒュー「マ」ニマル。「ヒューマン」+「アニマル」の造語。
でも、こういう要点を纏めているのって良いね。
内容が把握しやすい分、読み手に親切だ。
とりあえず、近々投下させていただく報告ですた。
大変失礼しました。ああ素で間違えていたとも。
みなさん乙です。
さっそく投下します。一番乗りかな?
スプリガンが捌きを主体に敵の体勢を崩し飛礫のごとき強打を浴びせれば、ドルンドメオンは再生能力を前提
に巨岩のふてぶてしさで一撃必殺を狙う。
鮮烈の青と深遠の黒。
神掛かった瞬発力と電光の反応速度のスプリガン、悪魔の憑いたような生命力と予知めいてさえいる防衛本能
のドルンドメオン。互いに決め手を欠いたまま、二体の巨人は丁々発止と打ち合う。
「分かっているぞ、スプリガン。オルピヌスに曝け出すまいと、まだ本力を隠しているのだろう。愚かしくも憎
めなんだ我が配下、リクゴウを屠ったあの流儀だ」
赤銅色の魔族オルピヌスは二人から一定の距離を保ち、複眼を光らせている。長く垂れた触覚の動きが止まる
様子はない。人族の兵隊カーストの一挙一投足を探るのだ。
魔族にとって、スプリガンはこれまで遭遇したことのない強敵だった。
もちろん、人類との戦いで死傷した魔族もいないわけではない。だが、それは数匹のスズメバチが蜂球となっ
た数百匹のミツバチに焼き殺されたようなものであり、一対一の格闘戦で圧倒されたなどといった記録は皆無と
言い切って良かった。新種との交戦データとなれば、価値は計り知れない。
「ふむ」
膠着状態に業を煮やしたか、ドルンドメオンが不意に間合いを大きく開いた。思案げな響きに上位個体の意思
を察したオルピヌスがすぐさま背後に控える。
無機質な複眼が光を孕む。
「ならば本気を出させてやろう」
『何だと?』
演算能力を戦術の検討に費やしていたスプリガンは、咄嗟に真意を量りかねた。
「今の貴様と我とは実力伯仲。ならば我が力を増せば、貴様は流儀を披露するしかあるまい」
『力を、増す』
スプリガンには思い当たる節があった。
予想される事態は、期待されていた勝利の確率に激変をもたらす。心臓が跳ねるように大きく。
『メンタルバーストか!』
「そのような呼び方は知らぬが」
魔族の戦士は憮然とした声を発した。それは、あくまで人類の呼称にすぎない。
魔族のうち上級のものは、平時に余剰エネルギーを魔石というかたちで体内に蓄えておき、必要に応じてそれ
を崩壊させることで莫大なエネルギーを取り出す。
それが、メンタルバーストである。
「あのリクゴウも間違いなしと太鼓判を押すに相違あるまい」
『させると思うな』
胸の奥に焦燥が燻ぶるように、スプリガンの出力がじわじわと暴走気味に値を伸ばす。
「持ち堪えよ、オルピヌス。三秒もいらぬ」
「承知」
進み出る赤銅の魔族。スプリガンの視界で存在感を増したその体色は、使命感に燃えているようだった。生け
る盾となり外敵からコロニーを防衛する、兵隊カーストの本分。
ある種のハチやシロアリなど真社会性の昆虫は、生殖者・労働者・兵隊といった階級(カースト)に分化し、
役割を分担して生活している。
生殖とは生物の究極の目的のはずだが、例えば兵隊アリは子孫を残さない。ならば彼らは自分の遺伝子に興味
がないのかというと、そうではないという。人間に例えるなら、子どもを産んで莫大な養育費を掛けるよりも、
甥や姪など血縁者の子どもを支援し続けた方が遥かに楽に自分に近しい遺伝子を残すことができる。個体数や生
存確率、コストや共通する遺伝子の割合を冷徹に計算した結果なのだ。
だから彼ら兵隊カーストは、巣を襲撃する捕食者とも命懸けて戦うことができる。
魔族を大別する四大属の中でも昆虫に似た彼ら甲属の魔族は、生殖カーストたる猛甲ラピュラパズロイと契約
を交わした、死を恐れない狂戦士だった。
もっとも、それは機械仕掛けの拳法家とて変わらない。
蒼穹よりもなお青いスプリガンが急加速。疾走しながら弓を絞るように右腕の肘を引く。すぐ右側を流れてい
く建築物の群れとは、接触しないのが奇跡というべき、数センチメートルの距離だった。
瞬きひとつの最接近に、オルピヌスが構える。背面からエーテルを高速噴射。短時間ならば体重の大きい魔族
をも飛翔させ得る推進力がスプリガンを待ち受ける。
ビルと胴体との間の翳に隠されていたスプリガンの豪腕が、ビルの壁面を舐めるように射出される。
極超音速すら越えた神速のために、魔族の時間分解能をもってしても全貌は不明。それでも、言えることがひ
とつだけある。
赤。
そう、赤いのだ。どこまでも青いはずのスプリガンの右手が。
目映いばかりの赫光を帯びた、それは炎の拳。
立ち塞がるオルピヌスの左上腕に着弾。
鉤状の突起によって大地を掴まえる魔族の爪先が空中に投げ出され、重力に引かれて大地に激突する。万全の
態勢から止めようとしても持ち堪えられない巨大な運動量。
傷口から溢れ出る体液を蒸発させながら、オルピヌスの赤銅色の上肢が千切れて宙を舞った。びっしりと生え
ていた棘は熱に融解し、焼け爛れた腕と混じり合う。
本体もただでは済まない。左半身には重度の熱傷。体液は煮え滾り、甲殻は沸騰して気泡を生じる。
遅れて轟音。スプリガンの右後方、ビルの壁面が無惨に抉られていた。破壊痕に刻まれた幾何学模様は、スプ
リガンのタイヤの溝と一致を見る。
構造物に引っ掛けたタイヤの摩擦力で腕の振りを掣肘。それだけならば速度が落ちるが、それに抵抗させるか
たちで蓄えた駆動力を解放すれば、単純に殴るよりも遥かに強力な打撃が可能になる。
それだけではない。スプリガンはもともと、流体の微細な乱れに干渉することで一帯の衝撃波を分解し、自機
や周辺の構造物に掛かる負荷を軽減している。その微小擾乱整流技術を応用すれば、大気圏に突入した隕石が曝
されるような高熱を、より低速で得ることも容易だった。
エーテル圧式打撃マニュピレータの先端を、急速に圧縮された空気が生じる熱により赤熱化。
流派超重延加拳“火炎車”を発動したスプリガンが纏うのは、魔族の甲殻の断熱能力を凌駕して焼夷効果を発
揮する、地獄の業火からの貰い火。
『未熟』
白煙と陽炎が揺らめく光景の中、青に還りつつある巨躯が姿勢を直立気味に戻す。
破壊力においては流派最強の技のひとつとして数えられる火炎車だが、ここに重大な欠点を露呈していた。
『今の私では、精度が落ちるか』
しばし訪れた静寂を最初に破ったのは、スプリガンの痛恨の言葉だった。
「……ぎ、ぃっ……!?」
それは呻き声だったのか、関節の軋む音だったのか。
酸鼻を極める姿になりながら、オルピヌスは九死に一生を得ていた。スプリガンのスピードに反応できず、体
を張っての防御にならなかったことが逆に幸いしたとも言える。肩から先を吹き飛ばしながら、鋼の拳じたいは
左上腕を抉っただけで、直撃ではなかったのだ。
そして。
エーテルブラスト。
『ちっ!』
スプリガンは見切って躱すが、暴風めいた余波によってオルピヌスから引き離される。
人類に気づかれることなく世界に満ちていた、粒子であり波。魔族やスプリガンが我がものとする超常能力の
根源。魔族が用いる言語を借りて命名された、それがエーテルである。
ある種の魔族はそのエーテルを不可視に近い帯として放射する、エーテルブラストという強力な攻撃手段を有
する。発動に何らかの制約があるらしく乱発はしてこないが、最も警戒するべき武器のひとつと言えた。
「再生には時間が掛かりそうだな、オルピヌス」
廃墟に聳え立つ魔族の戦士ドルンドメオンは無傷だった。
全身から炭化した闇黒の甲殻が、剥離していく。上へ、上へと。魔窟より飛び立つ蝙蝠の群舞のようだった。
脱皮するその下には、美麗種の甲虫を思わせる金属光沢の黒色。
ドルンドメオンは内臓を灼く火炎車の熱波を、抜け殻と積層甲殻の二段構えで遮ったのだ。
『メンタルバースト……』
スプリガンは沈黙。呆然としているふうに見えるが、状況の変化に応じた再演算を実行している。
導き出される勝利の可能性は、極めて低い。
メンタルバースト。カルシウム不足に陥った体が骨から成分を溶かし出すなどといった働きに感覚としては近
いが、魔石の機能はより攻撃的といえる。体質や形態をも劇的に変えてしまうそれは、昆虫における羽化や、い
わゆる特撮ヒーローにいう“変身”にも等しい。
変身。
(ただでさえ化け物じみた魔族が!)
臭い立つような殺気。
魔族の戦士ドルンドメオンのシルエットは大きく変貌を遂げていた。ブラックホールが誕生したかのように、
そこだけが深淵の暗闇に思える。
白昼の悪夢が始まった。
今回はこんなとこで。
なんか短い上にタイミングの微妙な説明ばっかでスミマセン。もうちょっと読みやすくしたい所存。
「火炎車」というネーミングは1スレ目の
>>995さんからいただきました。ありがとうございました!
どういたしまして!
荒々しい靴音で目が覚めた。
椅子の背もたれに上体を預け、食後の昼寝と洒落こんでいた天農は、顔に被せていた少女漫画をずらして扉の
方を見やった。まるでアイマスクを着けたように、鼻から上半分を翳は隠れている。
そこは狭い部屋だった。
年季の入った事務机には、だいぶん旧型のパーソナルコンピュータ。無造作に載せられた青いミニカーが木目
に映える。
壁一面を覆う本棚には、まるで統一性のないジャンルの書籍が、滅茶苦茶に突きこまれていた。
対魔族兵器の開発に関する研究所、客員である天農にあてがわれた一室。
魔界に通じる門、エーテルポイントが地上に現れるようになって数年――。
そこを征途に地上侵略に乗り出す魔界の住人“魔族”は、災厄や疫病にも近しい、人類史上最悪の敵のひとつ
となった。
魔族との戦い方を模索する研究施設は、今や世界中に点在し、複雑なネットワークを構築している。熾烈な派
閥争いも見られるにせよ、人類は概ね一丸となって、異世界からの侵略者に立ち向かっているといえた。
ノック音が立て続けに鳴らされる。手加減なしの乱暴さに天農は嘆息を漏らした。
「天農さん! いらっしゃるんでしょう?」
金切り声は、ドア越しにも響くほど大きい。声の主の女が激昂していることは明らかだった。
「失礼しますからッ!」
返事を待たずに重たい扉が開け放たれる。そのまま壁に叩きつけんばかりの勢いに、天農は破損を心配した。
リノリウムの床を打ち抜く硬質な靴裏の響きが再開し、すぐに止んだ。
地味な色のスーツを着た女研究員が、天農の傍に仁王立ちしていた。
藤本久仁枝(ふじもと くにえ)という名前を、天農はどうにか思い出した。
平時から癇の強さの表れた顔立ちだったが、今は般若の相になっている。彼女の表情に鬼女の能面のイメージ
を重ねてしまって、天農は危うく吹き出しそうになった。
「天農さん! 毎日毎日、HWS−03に何を教えているんですか!」
「拳法」
刺々しい糾弾の響きにも、天農は平然としたものだった。このところの自らの行動を顧み、彼女の怒りの原因
を悟りながら、悪びれもせずに答える。
ここではHWS−03という型式番号で呼ばれる、無人の人型兵器。
天農は訳あってその機械仕掛けに心を宿らせようと試み、“超級人工知能”を用いてそれに成功していた。
問題は通常の電子頭脳に比べてよりデータの入力に慎重を期す必要があることで、HWS−03は現在も様々
な学習の課程にある。そのプロセスは、産まれたばかりの赤ん坊を育て上げていくのにも似ていた。
「けんぽう……?」
藤本は露骨に眉根を寄せた。ロボットについての彼女の常識にそのような概念はない。
「俺の流派だ」
そう告げる男は、どこか誇らしげだった。
白衣の裾から突き出た手はごつごつと骨張っており、何度も皮を破いた痕が窺える。
“延加拳”の、天農。
彼はロボット工学の専門家でありながら武術を嗜み、我流の拳法の開祖となった変わり種だった。学者離れし
た剽悍な物腰から、人類未到のはずの魔界から生還したなどとまことしやかに囁かれている。
個人的な趣味から、魔族出現以前より研究されていた人型兵器(HW)を模倣し、規格外の性能を誇るロボッ
トを独創してみせたという、冗談のような実績の持ち主でもある。情勢の悪化に危機感を覚えた政府によってそ
の機体“HWS−03”が接収された時から、客員として研究所の一席に収まっていたが、性格と素行の悪さか
ら同僚達の顰蹙を買っていた。
藤本としては決してぞんざいには扱えない人物だったが、HWS−03を未だに私物化しているような彼の言
動にはよほど腹に据え兼ねるものがあるらしい。
「HWSシリーズの挙動については、既にカリキュラムが組まれているでしょうに。あなたが自修時間に邪魔す
るせいで、スケジュールに遅れが生じているんですよッ!」
「分かった、分かったから。そうキンキン声で怒鳴らんでくれ」
まるで子どもを遊びに連れ出してばかりの父親と、教育熱心な母親の態だった。
「だいたいですね」
当事者でありながらどこ吹く風と受け流す天農の神経に呆れ果てながら、藤本はこの機会に日頃の鬱憤を晴ら
してやるとばかりに矢継ぎ早に非難を浴びせる。
烈火のごとき怒りは、いつしか燻ぶるようなものに変わっていた。
「あのファンタジックな呼び名は、あなたが付けた愛称なのですか? HWS−03は、まるで自分本来の名前
であるかのように話していましたよ」
それを聞いた途端に、天農の口許に喜色が浮いた。
「“SPRING‐GIGANT”、撥条仕掛けの巨人さ」
「邪悪な妖精の一種でしょう? 綴りは“SPRIGGAN”ですが」
「俺流の洒落だ。ちと強引なのは認めるがね」
とぼけたことを言って、天農はもう話すことはないとばかりに漫画本の位置を戻した。赤色の目立つ表紙では、
主人公らしき少女が憂いを帯びた表情を浮かべている。円らな瞳の中にいくつの星が瞬いているのか何となく数
えようとして、藤本は自制した。眩暈を覚える。
「まだ話は終わっていません! そもそも殴る蹴るだなんてあんまり原始的です!」
「ゴキブリを殺すとき」
静かだが有無を言わせぬ調子で、天農が藤本の声を遮った。
「君ならどうするね?」
藤本が何か言いたげに口をぱくぱくとさせるが、構わず天農は言葉を紡いでいく。出鼻を挫いたかたちだ。
「ひとつ、足音を忍ばせて距離を詰める。武器は丸めた新聞紙か、殺虫剤のスプレーか。ふたつ、匂いで誘き寄
せ、罠に嵌める。粘着シートや毒餌だな。みっつ、部屋に有害物質を充満させ、一網打尽にする。そういう噴霧
器が最近の流行りらしい」
列挙される屋内害虫の駆除方法。対魔族戦術になぞらえていることは、藤本にも容易に察しがついた。
「君のお好みは、確か殺虫剤のスプレーだったな。魔族にも効きそうな重火器を、いかに高い適応性を持って取
り回すか」
「ええ。少なくとも、新聞よりはましでしょう」
「だが、いくら殺虫剤が進化を遂げようとも、丸めた新聞紙を手に取る者が消えることはないのだよ」
「……ちょっと考えてみれば、ナンセンスな比喩です。状況がほとんど噛み合っていません」
天農は「違いない」とあっさりと自論を放棄し、くつくつと可笑しそうに肩を揺すった。言い負かされた格好
だが、彼は頓着しない。屁理屈をこねて強弁はしても、議論をする気などさらさらないのだ。半分は気になる女
の子に嫌がらせをする心理にも近い。
「別に私も、殴る蹴るが悪いといっているわけではないのです。実際にHWS−03には魔族との格闘戦を遂行
するだけの力があるのですし。ただ……」
議論を制したことで多少は溜飲を下げたのか、藤本も落ち着きを取り戻していた。客員の顔を立てておこうと
する余裕まである。
「それがベストとはとても思えないのだろう? ……君の感覚は極めて正常だ。俺だって拳法があれば他に何も
いらないとまでは考えていない」
そもそも、一口に魔族と括っているが、その種類は多岐に渡っている。
猛獣スチラロボススに率いられる獣属。毛むくじゃらの魔族。
猛禽グーリーロックの翼下にある禽属。翼を携える魔族。
猛鱗テティスカンティルラを隠す鱗属。鱗に覆われた魔族。
猛甲ラピュラパズロイの仔である甲属。殻を纏った魔族。
そして、権能によって四大属を統べる“魔王”。
魔族とは、魔界に棲息する多種多様の高等生命体の総称なのだ。
必然的に、種の特徴に合わせて臨機応変に戦術を変える必要がある。もちろんHWS‐03一体きりであらゆ
る敵と戦わなくてはならない法はないが、資材が不足している時勢でもあった。人型だからというわけではない
が、ある程度の汎用性が期待されてはいる。
「まあ、HWS−03なら、いずれはほとんどの種類の魔族を徒手空拳で殺傷できるようになるだろうがね」
「エーテルドライブ、ですか」
「そうだ」
天農はにやりと笑った。
魔族との戦いにおいて効果が期待される、謎多きエーテルの力。
エーテルの制御には、これまで数多くの学者達が挑み、失敗してきた。その中には、極めて貴重な魔族の生体
組織を素材として用いた者さえ存在する。
閉塞した議論の中で、「エーテルは心を通わせた生き物に味方する」という仮説を発表したのは、大ヘルマヌ
スの尊称で呼ばれる老齢の博士だった。彼はエーテルを空想上の精霊に喩えて、物理法則ではなく、人間の意思
や感情といった精神の働きに強く影響されると唱えた。
当時の誰もが一笑に付したそのロマンチックな説は、やがて彼の弟子達の手で実証されることになる。
ただしそれは、エーテルの利用に大きな制約が付き纏うことを意味してもいた。
天農が、悪名高き欧州のヴォルゼウグ学派から第六世代型コンピュータを取り寄せてまで超級人工知能を完成
させたのも、それが理由である。
結果として、ロボットであるHWS−03は心を持つことに成功し、エーテルドライブという機関により超常
の力を我が物とした。
この件に関しては、対魔族兵器以外に利用されることを恐れた天農が、未だに厳格な秘密主義を貫いている。
最初に組み上げられてから三年。改良を重ねたHWS−03は、心を得て、エーテルを得て、今や既存の人型
兵器を闇に葬り去るほどの力を獲得していた。
天農は言う。
「あれはもはや、HWSシリーズがどうとかいう次元にない。言うなれば、金属の魔族だ」
それは、鋼の体と人の技を武器とする、有り得ざる魔族。
熱を帯びたその口振りは、四大属ではないという“魔王”を向こうに張るかのようだった。HWS−03のポ
テンシャルの一端を垣間見たことがあるだけに、藤本も不遜を糾せない。
「極超音速で陸海空を駆け、敵対者の全てを鋼の拳で打倒する、身長512cm/体重4075kgの鋼鉄の男。
HWS−03“スプリガン”こそ、次世代最強の対魔族兵器なのだ」
目のない男は豪語した。
廃墟と化した街角で幼いことねがスプリガンと出会う、数ヶ月前のことだった。
今回は以上です。ちょっと仕切り直しついでに前日談。
>>14の名前欄は誤りで、(4)になります。
今週中に予告編2と後編を投下するつもりでしたが、予想以上に忙しくて無理でした。
というわけで、途中の予告編2前半を投下します。
これは偶然重なってしまった異なる世界、交わり紡がれていく物語。
神の如き性能のマザーコンピュータによって支配された完全管理社会。その端末を兼ねる、人間を超える人間として創られた人工人間。
人類が生み出した中で究極かつ完璧な統治システムと完全な人間達を創ってしまった日本人は、優秀な「子供達」に本土から追い出されてしまう。
海上都市での生活を余儀無くされた日本人の人口は全盛期の半分以下、五千万人となっていた。
一部に本土奪還を目指す者はいるものの、皆「子供達」による保護と管理によって平穏な日々を送っていた。
誰もが知る歴史であり、現実。だがそうなっていない世界があるとしたら。
海上都市連合「正統日本」に所属する、旧式の小型海上都市「姫路」。
姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静は全く違う世界へ召喚されてしまう。
偶然だったのか、それとも必然だったのか。答えは神のみぞ知る。
動き始めた運命の車輪は止まる事を知らず、更に速く激しく廻り続ける。
海上都市姫路守備隊戦記×最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ クロスオーバー作品
劇場版 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ 異世界からの来訪者 予告編2
重装甲強化服の右脇に装着してある連装発射筒から放たれた100mm超振動極熱ミサイルは対戦車用に使われる切り札。
比喩ではなく本当に蟻一匹すら逃さない神の目の索敵と情報解析、1mmの誤差も無く正確無比に迎撃する嵐の如き間接防御射撃を潜り抜けて、
絶大な防御力の戦車に一撃で修復不可能な致命傷を与えられるように開発された。
レーダーに映らず、目に見えず、音も無く、匂いすら無く、あらゆる探知手段から逃れる高度な遮蔽と情報解析による精密な誘導を行いながら地表すれすれを飛行する対戦車ミサイルは、
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの足元に到達すると慣性の法則を無視したような急上昇で顎に直撃、爆裂した。
ボクサーの渾身のアッパーカットで顎を下から突き上げられたように態勢を崩して後ろへ倒れていくネクソンクロガネの目から悪山の機械恐竜に放たれるはずだった二条の極光、ネクソンクロガネビームが虚空を薙ぐ。
そのまま倒れると思ったが、素早く片足を後ろに引いて態勢を立て直した。
「ダメージ無し、か」
ミサイルが直撃した顎下部に全く損傷が無い。
振動波と逃げも離れもせず極短時間で急速に伝播する特殊熱の相乗作用、分解蒸発で敵を撃破する振動熱兵器は絶大な威力を発揮する。耐振動熱防御と防御用振動熱発生機能の両方が無いならその威力は正に地獄の如く。
特に100mm対戦車超振動極熱ミサイルは通常の振動熱兵器よりも強力な超振動波と極大特殊熱を使用する。
欠片すら残さず完全に分解蒸発する危惧を考慮して、振動熱の威力を10分の1以下に調整して撃ったのだが杞憂でしかなかったようだ。流石は異世界のスーパーロボット、か。
巨人の顔が離れた場所にいるこちらを向き、碧眼が正確にこの三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタムを見据えている。
ネクソンクロガネの全高は29.30m。重装甲強化服は全高3mと足底に装備した機動靴の15cmを合わせて3.15mしかない。全高だけで約10倍も差がある。巨人と小人、簡単に踏み潰せる体格差。
いや、それ以前にスーパーロボットと二世代も旧式の量産機では話にならない。戦えばどちらが勝つか、言うまでもないだろう。そんな事は骨身に染みて理解していた。
自分の役割は悪山の支援であり真正面からネクソンクロガネを打倒する事ではないが、並大抵の攻撃は全く通用しないのはさっき証明されたばかり。
手加減して対抗出来る相手ではない。全力で戦わせてもらおう。
現実と全く変わらない仮想訓練で飽きる程戦い続けてきたが、スーパーロボットとの戦闘経験は無い。自分の実力と重装甲強化服の性能がどこまで通じるのか試してみるのも一興。
自身の名前のようにどんな戦闘であろうと冷静であり続けてきたが、今に限っては子供のように気分が高揚していた。
こんな気持ちになった事は一度も無い。次元の異なる世界に召喚されてスーパーロボット相手に戦いを挑もうとしている今の異常な状況が精神に影響を与えているのかもしれない。
「行くか」
右脇の連装発射筒から二発目の100mm超振動極熱ミサイルを調整無しの最大威力で発射。同時に機動靴の自在車輪が最大出力で唸りを上げ、地形に合わせて自在に形状を変化させる。
右手に主兵装である25mm重機関砲、左手に鞘から抜刀した150cm振動熱斬刀を構えながら、時速100kmを超えるローラーダッシュでネクソンクロガネに向かう。
以上。
後編はなるべく早く投下するつもりです。
ネクソンクロガネって本編を見る限りそんなに強く見えないw
三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタムは、例えるならザクUに近い性能を出せるよう改造したザクTですから。
ザクがガンダムに勝っちゃ駄目だろうと、そういう事です。簡単にダメージ与えられたらネクソンの作者さんが不愉快に思うかもしれませんし。
まぁ、劇場版本編ではネクソンクロガネを戦記側の技術で勝手に強化改造する予定なのでどう思うかは分かりませんが。
次まで時間が空きそうなので、重装甲強化服が使っている武装の設定を一部公開。
紛らわしいが機体そのものは重装甲強化服、兵士が着用した状態を重歩兵と呼称する。
重装甲強化服の武装
基本的に全て火薬ではなく電力で発射。使われている弾は全てケースレス弾です。
短針弾発射機 敵弾迎撃専用の間接防御兵器。頭部両側、こめかみに一基ずつ計二基装着するのが基本だが、機体の何処にでも取り付けられるよう設計されている。
超音速の振動熱短針で敵弾を迎撃する。その精度は同じ振動熱短針を迎撃可能な程である。
多目標同時攻撃・防御が前提とされている作中の現代ドクトリンによって開発されたこの兵器は、生身の歩兵が撃つ小銃弾、機関銃弾程度なら前後左右、全方向から同時に放たれても完全に迎撃可能。小型軽量で弾数が多い。
長針弾発射機 敵弾迎撃専用の間接防御兵器。頭部両側、こめかみに一基ずつ計二基装着するのが基本だが、機体の何処にでも取り付けられるよう設計されている。超音速の振動熱長針で敵弾を迎撃する。
生身の歩兵が撃つ小銃弾、機関銃弾程度なら前後左右、全方向から同時に放たれても完全に迎撃可能。小型軽量ではあるが短針弾発射機より弾数が少ない。その代わり威力が高く、短針弾で迎撃出来ない敵弾を迎撃可能。
ちなみに本編で帝国軍の兵士を殺しまくっていたが、説明にあるように本来は間接防御専用兵器であり元の世界では攻撃に使用しても全く役に立たない。
多連装6.25mm機関銃 ガトリング砲と違い、銃身がそれぞれバラバラな方向を向けての射撃が可能な間接防御兵器。
間接防御兵器の中で最も威力が高く射程が長い。100mm超振動極熱ミサイルのように寸前で迎撃しても甚大な被害を被る兵器を離れた距離で撃墜出来る。
長針弾同様、本編で帝国軍の兵士を殺しまくっていたが、説明にあるように本来は間接防御専用兵器であり元の世界では攻撃に使用しても全く役に立たない。
25mm重機関砲 重歩兵の主力武装。大威力長射程であり、対地対空、目標によっては対艦攻撃も可能。
20世紀時代の兵器なら90式戦車を1発で欠片も残さず分解蒸発、完全に消滅させられる。連射なら戦艦も沈められる。こんな代物を帝国の兵士とはいえ生身の人間にブッ放ちまくった清水さんマジ外道。
コンピュータ制御による反動を利用した照準の修正と発射速度の微調整により、連射でも狙撃と変わらぬ精密射撃が可能となっている。その高い命中精度によって、状況によっては間接防御兵器としても使用する。
片手で使用出来るように設計されているので両手に持って戦う事も可能。
弾倉は100発入り。本編で超重装甲強化服改が使用している25mm重機関砲改は200発入りの大型弾倉である。
以上。
電力で発射ってえことはレールガンみたいなモンなのか?
なんだか変なプライドが出てんのか、クロスのさせ方が危なっかしくて不安に思わんでもないが・・・
共同作業でもなし、当人同士が納得できるならどうでもいいか。
それはそうと、人、いねーなー・・・
25 :
創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 09:02:41 ID:Fj2bJWbK
あえてageる
近々覚えている人が居るか分らんが、ハルとデイブを投下しようと思う
少しでも活気づくなら良いな
>>24 海上都市姫路守備隊戦記は22世紀〜23世紀ぐらいの近未来を想定しており、火薬発射式は旧時代の遺物としてほぼ完全に廃れています。
普通の拳銃ですら少ない電力で高い威力を発揮する、超高効率のレールガンみたいな物です。
発射に必要なのが本当にただ電力のみ、コンピュータ制御により発射速度を自由に設定して威力を調整出来るので凄く便利。
>>25 投下、楽しみにしてます。
複数パイロットの人数ってどれくらいが妥当かね?
役割分担とかさせた場合、誰が何やるかとかも細かく決めた方がいいのだろうか
>>27 その作品のジャンル・方向性やら、そのロボットの役割なんかでかなり変わってくると思うけど。
戦隊ロボットだとなんかよくわからないけどとにかく5人か3人乗ってるって形になるし。
装甲戦闘車両や軍用機を参考に考えてみると、
機長(判断指揮・他機との情報交換)・操縦手・照準手の三名か、
パイロットと火器・電子機器統制官の二名の
どちらかが基本で、指揮統制機や偵察・電子戦機なんかの機種には指揮官や観測要員も乗ってるってとこか?
結局はそのロボットの役割・性質によるなあ。
俺が考えた変なロボットだと、遠隔操作でパイロットは搭乗しないけど、人間は乗ってる(というより積まれてる)ってのがあるけど。
戦闘書き始めると無駄に文量とっちゃうなぁー
書いてる分には楽しいんだけれど、物語がほとんど進んでないから
読む人退屈しないか凄い心配で、書いては消しての繰り返しだ
無理矢理にでもオープンチャンネルにして人間の会話を入れてくようにしようかねぇ
色々おまけも考えてるけれど…おまけの作業だけが進んで本編の進みが遅くて涙目
>>28 すごいカレンデバイスを思い出すなw
30 :
28:2009/06/02(火) 02:34:34 ID:VKQy1b8i
>>29 カレンデバイス知らなかったからググってみたけど、人間を道具扱いで積む、って意味合いは似てるかも知れない。
俺の考えたので積まれてるのは普通の人間の整備士だけど、睡眠薬漬けだし、感覚的にはほとんど整備用装備だから。
あとロボットの最大の特徴が「とにかく弱くてこそこそ行動する」。
>戦闘だと文量が増える
オイラと逆だなあ〜。
当時小学生だったけど、凄まじくハードで重いストーリーだったなぁ、フロントミッション。
特にカレンデバイスは……。精神的にかなりきつかったけど、容赦無い重厚な物語がフロントミッションを傑作としている。
6はいつ出るんだろう?
カレンデバイスとは違うかもしんないけど
最近のとこではアスラクラインのロボットもそんな感じ・・・なのかな?
この前見てみたら、それにもクロガネってやつが出てきてびっくり
デザインは違うけど、黒に金の縁取りってのまでいっしょだったし
>>23 おー乙です。
まあ、あんまし俺のことはそうお気になさらず。派手にかましちゃってくださいw
今ダウン中だけど、続きも書かないとなぁ・・・
>>30 俺が技名叫ばせて終了にするのが味気なくて嫌なだけでもあるんだけれどね
いや、これ自体が悪いんじゃなくて
俺がそれやるとなんか自分の中にあるロボット像と違和感があるというか
だから無茶苦茶でもいいから技名とかはいわないようにして行動を描写してると
簡単に3000字〜2万字ぐらいになる
一応、スレ投稿用に戦闘の内容は枠に収まるようにあんまりややこしくしないように意識はしてるんだけどねw
>>31 ゲームの方はやらんから知らないけど、ヤングガンガンのマンガ見てもハードだってわかるなあ。
APFSDSのサボが離脱する作画とか衛星からの情報を利用した戦闘とかがあって感心してたら太田垣スタジオだったみたい。
>>32 クロガネ(鉄)は割とポピュラーな気がしなくもない。
かのマジンガーでも、 空に そびえる くろがねの城♪ と……
……マジンガーおまえ超合金Zでできてんだったろ。クロガネ(鉄)じゃないだろ。
>>33 >技名叫ぶのに違和感
ちょっと違うかも知れないけど、
ボトムズの始めの方で、キリコが戦闘中に「バルカンセレクター」とか言ってるシーンがあって、エラい違和感感じたことが。
>>27>>28 艦船とかの配置部署を参考にした巨大ロボで
艦橋は艦長と航法レーダー手と通信手と操舵手、
機関部に機関員とかがいて出力を調整
戦闘はCICで砲雷手とミサイル手が…って考えたが
Bメカに乗ると死ぬんですね、わかります
そういやこのスレ多人数乗りのロボ少ないよな
何がいたっけ?
熱風・疾風
>>1乙バスター
前スレは容量オーバーだったというのか……!
今まで気付かなかった私の奥の施設を破壊してくれ、ドミナントとの約束だ!
>>37 ゼノライファーが二人乗りだったはず
>>38 ども。前スレ見返したら確かに二人乗りっぽかった
逆転検事にうつつを抜かし、投下が遅れてしまった。
<あらすじ>
最西暦164年。鋼獣という異形の生物に溢れた世界。
地中を高速で駆け抜け、コンクリートをスナック菓子のように噛み砕く鋼獣土竜型との戦闘を
見事勝利で収めた対鋼獣用人型兵器ヴァドル。
その搭乗者は、3人のヒューマニマルと1人の人間の男だった。
以下数レス投下。
1章 鋼の体を持つ獣
(1)
エルツは汗と埃に塗れた栗色の前髪を片手でかき上げながら空を見た。
日はまだ高い所にあり、その日差しは熱く鋭い。
ヴァドル部隊での初陣となる、鋼獣土竜型との戦闘に勝利してから2時間。
ヴァドル部隊とそのサポート部隊は、無事に第十六都市へと帰還を果たしていた。
エルツはパイロットスーツのまま、ハンガールームと呼ばれるヴァドル専用の格納庫の前に腰掛けている。
巨大なシャッターは半分ほど閉じているが、それでも、エルツがジャンプをしたくらいでは手が届かない高さである。
ハンガールームの中は慌しく、特に半壊している二号機の修理が最優先で行われているらしい。
メカニックは人間が7割、ヒューマニマルが3割と言った所で、その先頭ではヴァドル部隊の隊長である瀬名龍也が、
50人近いメカニックに的確に指示を出していた。
龍也の後姿をボンヤリと見つめて居る内に、いつの間にか自分の尾が嬉しそうに振られている事に気付く。
ヴァドルとの神経接続は想像以上に負担が掛かるらしく、ヴァドルから開放された途端に襲ってきた疲労感の中に
エルツは居るのだが、彼女の尻尾はそんな事も構わないらしい。
自分の気持ちを素直に代弁してくれる尻尾に対し、エルツは少しばかり困ったような表情を浮かべた。
エルツ自信は全く自覚していないが、彼女はどうやらこの瀬名龍也という男に好意を持っているらしい。
通常ならば、感情を抑制されたヒューマニマルは”好き嫌い”の概念が希薄だ。
戦争をするに当たっての不要な感情を持たないからこそ、冷静で的確な判断が下せる。戦争をする為に生み出され、
荒野で死ぬ事が運命のヒューマニマルにとって、その様な感情は元より必要ないのだ。
しかし、エルツは、珍しい事に”好き”という感情が制御されきれて居ない。
もっとも、その事自体に意味は無い。生まれてくる際に、何らかの要因があって制御し切れなかっただけの事だ。
他のヒューマニマルには無いモノを持っているという事に、エルツは負い目を感じていない。
ソレは確かにヒューマニマルという種には不要なものかもしれないが、持っているからと言って、戦えなくなる
訳ではないと彼女は考えている。
そして、胸の奥で静かに鼓動するソレは不快では無く、むしろ心地良さすらあるのだ。
龍也の背中をボンヤリと眺めている間、彼女の尻尾は常に左右に振られていた。
(2)
「くそっ!」
頭から熱いシャワーを浴びながら、リートは腹立たしげ声を上げて壁を殴りつけた。
ミシリと重く鈍い音を立てて壁のタイルにヒビが入るが、彼女は壁も自分の手も気にする様子がない。
シャワー室には彼女以外に誰も居なかった。
つい先程までディーネが一緒だったが、彼女は「用事がある」と言い残し、シャワーを浴びると早々に出て行った。
俯いたリートの鼻先や顎から滴り落ちる水滴が、彼女の大きく膨らんだ胸で跳ねる。
その胸の内側で渦巻く理解不能の何かが、彼女の苛立ちの原因だった。
自分が何に悔しがっているのかすら解らない。
しかし、自分がこうなった要因は分かっている。
(アイツだ。あの、瀬名龍也という人間――)
思い起こせば、あの男とであった瞬間からこの苛立ちは始まっていた、とリートは考える。
この不快感、苛立ちの原因は分からないが、あの男との接触によるものなのは間違いが無い。
リートは人間を嫌っている。
偶然な事にも、リートもまた、エルツと同様に感情の抑制がされていない。
しかも彼女の場合は、エルツの様に”一部の感情”が抑制状態に無いのではなく、”ほぼ全ての感情”が抑制状態に無い。
その感受性は、殆ど人間と変わらない。
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の言いなりにならなければならないのか)
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の代わりに戦い、死なねばならないのか)
(何故人間は、無能の癖に、ヒューマニマルに対し傲慢な態度を取るのか)
(何故人間は、ヒューマニマルと共に荒野に出て戦わないのか)
(何故――)
再生暦119年にヒューマニマルが生み出されて以来、現在までに構築された、人間とヒューマニマルとの関係が、リートには理不尽で仕方が無い。
リートが人間を嫌うのは、人間の、ヒューマニマルを物として見ている言動と、自分はリスクを背負おうとしないその態度にある。
(ああ、そうか……)
リートは気付いた。
あの男は、”人間でありながら荒野に出て、鋼獣と戦っている”。リートの中の「人間」という存在に当てはまらない。
今日の鋼獣土竜型との戦闘だってそうだ。
リートの独断での行動により、二号機は中破。彼自身も土竜型に喰われかけたというのに、あの男はリートに一切の処罰与えないどころか、
ソレを気にした様子すらない。
そして、自分達を見る、あの目――。
(幾つだ? 幾つの感情が混ざっている?)
考えるほどに、胸の内側の何かが激しく渦を巻く。
リートはシャワーを止め、ノロノロとした動作で水を吸って重くなった尻尾を絞る。
判らなかった。
その思考の末に、自分が何を求めているのかが。
瀬名龍也という男が何を考えているのかが知りたい?
彼を理解する事で、彼自身と何かを共有したい?
彼にしてもらいたい?
何を?
物理的接触?
それとも、ただ単に、自分の望む言葉をかけてもらいたいだけ?
(わからない……)
正体不明の苛立ちの中、リートはゼンマイの切れかけた人形の様にゆっくりと天井を仰ぎ見た。
一度に投下するのもアレなので、今回はココまで。
世界観の説明と複線を考えて推敲してたら、1章だけで予定の10倍の量になっていた。
きりが無いので、兎に角話を進める事にした。後で加筆修正すること前提で読みにくいけど、その分ペース上げます。
1章はあと3パートほどでおしまい。
全部で7,8章予定。
ロボSSというか、ケモ耳少女と化け物をロボで繋いだだけの話だけど、お付き合い下さい。
>>34 それをいっちゃあw>クロガネ
あれは「硬くて黒い金属」程度の意味合いなのか
>>43 乙です。真面目にキャラ描写を積み重ねてけるのはすごいと思います。前回に
「青みがかった銀色の長髪の、狼の耳と尻尾を持つ二十代半ばの女性」
「栗色の柔らかそうな髪の、犬の耳と尻尾を持つ15歳程の少女」
「炎のように真っ赤な髪をした狐の耳と尻尾を持つ女性」
という描写があったけど、今回の誰に当たるのか分からないのがちょっともったいない?
今後に期待しつつ。
あ、読み飛ばしてましたスミマセン・・・
>>43 続き、楽しみにしてます。
神経接続して動かすってのが、思考制御とコンピュータ補助で動かすうちの重装甲強化服と似てますね。
ただ重装甲強化服の方は脳とコンピュータを擬似的に繋いでいるだけ+コンピュータ補助のおかげで体に負担がかかりません。
以前の重装甲強化服の武装の続きを投下します。
予告編2後半はもうしばらくお待ち下さい。
50mm狙撃砲
威力、射程、発射速度、命中精度。全てにおいて極めて優れ、重歩兵最強の武器と高く評価する者も少なくない。ただし全長5mもある50mm狙撃砲は大きく、重く、25mm重機関砲と違い両手持ちで無ければ扱えない。
装弾数は10発と少なく、装填にも時間がかかる。
折り畳み式50mm狙撃砲
50mm狙撃砲を小型軽量低威力化し、重装甲強化服の肩に装備出来るようにした兵器。
ぶっちゃけボトムズのバーグラリードッグのドロッパーズフォールディングガン。
50mm連装迫撃砲
50mm迫撃砲の弾薬庫を兼ねた特大バックパックに二つの迫撃砲身がくっついた、背中全体に装着する大型の武装。
両肩から2本の砲身が突き出た形になる。
100mm多目的ミサイル
相手と状況に合わせてありとあらゆる弾種になれる自在兵器。魔法の如く便利な代物だが、専用の弾種に比べれは威力は落ちる。それでも好んで使う者が多いのは、他の兵器には無い究極ともいえる汎用性の為。
100mm超振動極熱ミサイル
対戦車用に使われる切り札。
比喩ではなく本当に蟻一匹すら逃さない神の目の索敵と情報解析、1mmの誤差も無く正確無比に迎撃する嵐の如き間接防御射撃を潜り抜けて、絶大な防御力の戦車に一撃で修復不可能な致命傷を与えられるように開発された。
レーダーに映らず、目に見えず、音も無く、匂いすら無く、あらゆる探知手段から逃れる高度な遮蔽と情報解析による精密な誘導を行う。
150mm無反動砲
150mm弾を発射する、重歩兵が扱う兵器の中で究極の破壊力の兵器。後部に大型弾倉が取り付けられており、最大5連射可能。
小型低出力光熱衝撃砲
熱で敵を撃破する光熱波に物理的な破壊力を付与した兵器。
弾数制限が無く、電力がある限りいくらでも使えるという利点があるが、衝撃に極めて優れ耐光熱防御が施されているのが標準となっている重歩兵にはあまり効果が無い。腕に装着して使用する。
光熱衝撃砲
本編で不死の暗黒兵団を瞬殺した兵器。元々は教授が小型低出力光熱衝撃砲を原型として設計開発した。
高効率、大出力化に加え、あまり強力ではないが振動熱機能が付与された事で威力が桁違いとなっている。
60cm振動熱斬刀
振動熱で敵を斬断する重歩兵用格闘戦武装。刀身が短く軽量なので簡単に扱える。刀身に触れれば大抵の物は跡形も無く分解蒸発するので盾代わりとしても使用される。
残念ながら五右衛門の斬鉄剣のように銃弾を格好良く弾き返せない(分解蒸発してしまう為)
150cm振動熱斬刀
振動熱で敵を斬断する重歩兵用格闘戦武装。重装甲強化服の全高の丁度半分の長さで片手で持てる為とても扱いやすい。
強力な耐振動熱防御と防御用振動熱発生機能を備えた戦車の装甲をも斬り裂く威力がある。ただし「戦車斬り」をすると確実に修復不可能な程大破するので、戦車攻撃の際には消耗品として扱われる。
300cm超振動極熱刀
超振動波と極大特殊熱で敵を斬断する重歩兵用最強の格闘戦武装。重装甲強化服の全高と同じ長さと大重量の為、両手持ちでなければ扱えない。(本編の清水静専用超重装甲強化服改は例外)
補助
伸縮可変鋼線射出機
最大全長100mの伸縮可変鋼線を射出する装置。腕に一基ずつ、計二基装着する。
重武装、最大戦闘重量の重歩兵二人分の重量を支える強靭さと柔軟さを備え、主に移動に使用される。この伸縮可変鋼線によって重歩兵のどんな地形、気候でも戦える汎用性が更に高められる。
他にも輸送機に伸縮可変鋼線をくっつけてぶら下がり輸送する、という使用法もある。
実際、重歩兵輸送用大型ヘリは完全武装の重歩兵10人を機内に、10人を機の下にぶらさげて、一機で最大20人を輸送可能。
展開式軽装甲盾「折り畳み傘」
折り畳み傘のように展開、収納が可能な小型軽量の盾。防御力は低く、振動熱榴散弾を防ぐ程度でしかない。
むしろ防御以外の目的で重宝される。空挺降下、又は高所からの降下の際に折り畳み傘を展開させてパラシュート代わりとして使用可能。
高い遮蔽能力があるので、傘を差した状態で25mm重機関砲を敵航空機に撃つなど。
その他
組み立て式簡易100口径12.5cm速射砲
巡洋艦の副砲又は駆逐艦の主砲として使われている100口径12.5cm速射砲を重歩兵に扱えないか、という発想から生まれた兵器。重歩兵一個小隊10人で運用可能。
12.5cm砲弾を四発収納した弾薬箱を両手に、背中に分解された組み立て式簡易100口径12.5cm速射砲の部品を背負って移動する。
組み立て→設置→砲弾装填→発射(一発)→分解まで1分しかかからない。
簡易な組み立て式なので威力、射程、発射速度共にオリジナルの100口径12.5cm速射砲には若干劣るものの、少数の重歩兵で何処にでも簡単、短時間に設置して12.5cm砲を使える意味は大きい。
重歩兵一個小隊で12.5cm砲弾80発使用可能。
簡易25cm砲
戦艦の副砲又は巡洋艦の主砲として使われている25cm砲を重歩兵に扱えないか、というとんでもない発想から生まれた兵器。旧大日本帝国陸軍の九八式臼砲を参考にして開発された。重歩兵一個小隊10人で運用可能。
25cm砲弾を一発収納した弾薬箱を両手に、背中に分解された簡易25cm砲の部品を背負って移動する。
組み立て→設置→砲弾装填→発射(一発)→分解まで3分しかかからない。
所詮簡易でしかないので威力、射程、発射速度共にオリジナルの25cm砲には大きく劣るものの、少数の重歩兵で25cm砲弾を使える意味は大きい。重歩兵一個小隊で25cm砲弾20発使用可能。
簡易50cm砲
簡易25cm砲の開発成功と良好な試験結果に気を良くした軍上層部が、今度は戦艦の主砲である50cm砲を扱えるようにしろと要求し開発された兵器。重歩兵一個中隊100人で運用可能。
簡易25cm砲の時と違い砲弾をそのまま持って運ぶのは不可能なので、10個のパーツに分解出来るよう開発された改造50cm砲弾の入った大型弾薬箱を両手に、背中に分解された簡易50cm砲の部品を背負って移動する。
流石に簡易25cm砲のように3分とはいかず、組み立て→設置→砲弾装填→発射(一発)→分解まで30分かかる。
所詮簡易でしかないので威力、射程、発射速度共にオリジナルの50cm砲には大きく劣るものの、少数の重歩兵で50cm砲弾を使える意味は大きい。重歩兵一個中隊で50cm砲弾20発使用可能。
以上。
うーん・・・
まとめwiki、まだ更新されてないな。
更新履歴が2009-05-22のまま。
まーwikiは皆で作っていくものだけどねー
デザイン決めてくれないと書こうにも書き込めない
失礼します。
悪のマッドサイエンティスト・悪山悪男の住まいでもある悪山研究所は、背の高い枯れ草に覆い隠されていた。
ロボヶ丘市外れの荒れ地である。徒歩なら数分ばかり山に分け入らなければならず、わざわざ訪れようという者でもなければ目にす
る機会もそうはないはずだった。
雑木林の中にぽっかりと開けた土地は、緑というのも憚られる色の濃い木々に囲まれ、陸の孤島といった風情であった。
門前にはシロアリに食い荒らされた板状の木材が無造作に立て掛けてあり、墨で書かれたひどい癖字が、ここが「立入り禁止」であ
る旨を告げている。
生えるに任せた藪に埋没するように建てられた和洋折衷の一軒屋は、持ち主の荒んだ心の表れのようでもあった。
もっとも、柵で仕切られた敷地内は存外に手入れが行き届いており、不作法な茅の侵入も目立たない。
玄関口に整然と並べられた陶器の鉢が、色とりどりの季節の花を咲かせていた。軒先に遠慮がちにスタンドを下ろした赤い自転車の
上品な光沢が陽光に眩しい。
長い歳月に渡って風雨にさらされた建物は、廃墟と呼んでも差し支えないほどくたびれている様子だったが、それらのために瑞々し
い生活感を失っていなかった。
人里からやや離れた林間の研究施設は、いつもは寂しいほどに静かだった。強いて鳥達を騒がせるものといえば、まれにマッドサイ
エンティストの地下活動が引き起こす、爆発音や機械の唸り、謎の地響きくらいのものだ。
だが、その日ばかりは、いつもとは少し趣きが異なっていた。
「出て行けというとろうがゃぁっ!」
しわがれた怒鳴り声がこだまする。
摩り硝子を張った研究所の扉がけたたましい音を立てて開かれ、若い女が勢いよく転がり出た。
レディ・ビジョンという暗号名で呼ばれるその女は、庭先で平然と体勢を立て直す。
黒に限りなく近い灰色のスーツの土埃を払い、癖のようにずれてもいない眼鏡に手をやると、ちょうど自分を突き飛ばした男がサン
ダルを突っ掛けて玄関から出てくるところだった。
老爺である。
身長は低めだが背筋はぴんと伸びて、物腰はかくしゃくとしていた。糊の利いた白衣をいかにも着慣れたようすで羽織り、長い裾を
恐竜の尾のように流してずんずんと歩く。
やや後退した頭髪は、白髪のために遠目には薄い灰青色に見えた。顎先に同じ色の髭が茂っている。
皺だらけの顔は、どこか風化した鉱物めいて恐ろしい。
気難しそうに引き締められた唇ががばりと開かれる。
「ワルサシンジケートじゃとぅ? 誰が貴様らなぞに手を貸すものか! この悪山悪男を何者だと心得るか!」
強靭な意志を窺わせる眼差しには、燃えるような怒りがあった。
「悪の天才・悪山悪男ぞ! 儂は、悪であっても外道ではない!」
口角泡を飛ばしながら、老博士は大喝した。
言っていることは無茶苦茶だったが、有無を言わせない年嵩の重みがある。巨大犯罪組織ワルサシンジケートの構成員として修羅場
をくぐってきたレディ・ビジョンでも、ややもすれば気圧されそうになるほどだった。
――ロボヶ丘に在住する在野の技術者、悪山悪男を味方に引き入れること
それが、上司であるイッツァ・ミラクルからレディ・ビジョンに下された命令だった。
破格の条件を揃えてじきじきに出向したのだが、交渉に入る前に破綻した。
不用意に素性を明かすほど彼女も迂闊ではない。表向きは犯罪行為とは無縁のダミー企業を新たに創立し、そこの開発主任として迎
え入れるという手筈だった。
しかし、悪山悪男の勘働きは衰えていなかった。二、三語言葉を交わすなり「さてはお前さんワルサじゃろ? ワルサじゃな? な
らば出て行けぇ!」とレディを追い出しに掛かったのである。実際に彼の直感は的中しているわけだが、決めつけ方はどこか偏執狂じ
みてもいる。おかげで手の掛かった計画が水泡に帰した。
悪山悪男は、研究所の奥に向かって声を張り上げる。
「エリス! 塩じゃ! 塩! 瓶ごと持ってきてくれ!」
「だめです。またお花枯らすから」
廊下を響いて伝わった少女の返事は、ひどく冷たかった。
途端に、悪山悪男が硬直する。どうやら前科があり、そのときも彼女に叱られたらしい。さっきまでの激怒が嘘のような、ひどく情
けない表情を浮かべていた。
レディ・ビジョンは鉢植えをちらと見た。資料によれば、悪山エリスは偏屈な彼が溺愛している孫娘で、足繁く研究所に通っては家
事手伝いをしているという。悪山悪男は花を愛でるような人物には見えなかったが、これらは彼女が世話をしているものらしい。
「とにかく! 儂は貴様らに協力などしないからな! 覚えておけっ!」
削がれた気勢を繕うように裏返った嗄れ声で言い捨ててから、悪山悪男は慌てて研究所の中に引き返していった。戸締まりの仕方も
どこかバツが悪そうだった。
「あの……エリスちゃん? 違うんじゃあ、今のは……、な、ナメクジを退治しようと……」
「――嘘つき」
「ままま待って? ちょっと待って? ……わ、儂は、儂ゃあ、あー、えーとその、つまりー」
扉越しにしどろもどろな弁解の台詞が聞こえる。それもだんだんと薄くなっていき、やがて玄関先に静寂が戻った。
「…………」
レディ・ビジョンは、呆然と立ち尽くしていた。
『やはり拒否されましたか』
通信機能のあるピアスが震えた。わざとらしい嘆息の主は、イッツァ・ミラクルその人だった。
「恐縮ですが最上級ワルジェント、イッツァ・ミラクル。あの老人はそれほどの人物なのですか?」
懐柔するにせよ脅迫するにせよ、いかにも骨が折れそうな手合いだった。只者でないことは明らかだったが、そこまでするだけの価
値があるのかというと疑わしいものがある。
『そうですよ』
男性にしては高めの声には、どこか楽しむような響きがあった。
『彼のティラノザウルスのロボット、連敗こそしていますが、技術じたいは我々やE自警団より遥かに上、何世代先をいっているのか
分からないほどです。ネクソニウムなどという宇宙のミラクルも使わず、ネクソンタイプとほとんど互角に戦える巨大ロボットとは、
まさにイッツァミラクル!(それは有り得ないほど素晴らしい!)』
最大級の感嘆を籠めて、口癖を繰り出す。
『世界最狂から数えて九番目の男、悪山悪男。先代のドン・ワルザックが各界の重鎮に根回ししてでも手に入れたがった、一種の巨人
ですね。あなたにとって分かりやすいところでは、ドクトルポイズンが私淑していた人でもあります』
「あの悪の巨大頭脳・ドクトルポイズンがですか?」
唯我独尊を地でいく横柄さを思い出し、レディ・ビジョンは驚きを隠せない。
『発表以来、字が汚すぎて誰にも理解できなかったという伝説の悪山ノートの解読にミラクル的に成功したのが、当時からシンジケー
トにいた彼らのチームなのです』
イッツァ・ミラクルはしみじみと過去を語る。時に大仰な語り口となるのも彼の特徴のひとつだった。
『何を隠そう、ワタクシも十年ほど昔、まだ暗号名もイッツァ・ミラクルではなかった幹部候補の頃です、孫娘のエリスちゃんを拐か
してご協力いただこうとしたことがありました』
そこで事実を誇張するように抑揚をつけた。
『……今生きていられるのがミラクルですよ。ええ、まさかあの可愛らしいリボンにあんなド外道な仕掛けがあろうとは。それ以降、
リボンの女の子はワタクシ大嫌いです』
レディ・ビジョンの手は、無意識に髪に伸びていた。リボンは、ついていない。
そのことに安堵しつつ、悪に身を捧げた女は大きく深呼吸した。
(田所カッコマンの件での失敗の分、必ず挽回してみせる……! 必ず!)
レディ・ビジョンの灰色の瞳は、来る者を拒むように聳え立つ研究所を睨み据えた。
第5話 恐怖! シロガネ四天王現る!
※
「ボクの名前はカッコマンエビル。分かりやすくいうなら、悪のカッコマン……さ」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ張りの登場をした悪の神速飛翔ロボ・シロガネソニック。嘲りを含んだ声が告げたそのパイロット
の名を聞いて、セイギベース4に戦慄が走る。
恐るべき悪の総本山・ワルサシンジケートからの刺客。シロガネ四天王いちのスピード、カッコマンエビル!
セイギベース3司令室の大型モニタは、神速飛翔ロボ・シロガネソニックを様々な角度から捉えた映像に埋め尽くされていた。
銀翼と化した両腕で虚空を抉る、機械仕掛けの鳥人。美しい機体だったが、不気味な悪意のような気を全身から発している。
「黙れッ! 今のお前に、カッコマンを名乗る資格はない!」
はぐれ研究員・龍聖寺院光は手にメガホンを握り締め、怒りを露わに叫んだ。正確にはそれじたいは拡声器ではなく、屋外のスピー
カー設備に音声を入力する装置である。
カッコマン。もしくはカッコウーマン。
武闘派市民団体・E自警団が、擁する巨大ロボットの専属パイロットとなった者に託す呼び名である。それは、伊達や酔狂でという
以上に、正義のヒーローとしての自覚を彼らに促すものでもあった。
悪がカッコマンを騙るなど、許されることではない。
「ほう」
研究所外にこだまする龍聖寺院光の怒鳴り声を聞いて、カッコマンエビルはことの奇遇さを笑った。
「ここの責任者はあなただったんだね。武御雷光華琉(たけみかづち ひかる)姐さん」
「それは昔の偽名だ馬鹿め!」
「博士落ち着いてください」
大型モニタに跳び蹴りをかましそうな剣幕の龍聖寺院光を、田所正男は必死に止めた。さりげなくはぐれ研究員の若気の至りが暴露
されていたが、現在とさほど変わるものでもない。
「それより博士! あなたは彼のことをご存じなのですか?」
田所正男は尋ねる。口振りから二人が旧知の間柄らしいことは明らかだった。
「ああ、間違いない。悪のカッコマン……カッコマンエビル! 昔の名を森本カッコマン! かつてネクソンタイプを手土産にE自警
団を裏切った、裏切り者だ!」
龍聖寺院光は、憤怒のあまり自らの表現の重複にも気づいていないようだった。メガホンがみしみしと軋んでいる。
「フッ。その名前はとうに捨てましたよ」
「カッコマンは捨てられなかったようだがな」
「これはおかしなことを。ボクは今でもこんなにカッコイイというのに」
冗談めかしたカッコマンエビルの声には、正義の代名詞とされるカッコマンへの皮肉の響きがあった。
はぐれ研究員・龍聖寺院光と、元森本カッコマン・カッコマンエビル。話題は彼らにしか分からない貶し合いへと発展していく。
映像を介さない音声だけの応酬には、しかし互いの呼吸を体で覚えているような軽妙さがあった。田所正男の知らない、彼らの黄金
時代の残り香なのだろう。完全に二人だけの世界が構築されていた。
(カッコマンエビルか……)
自分以外の全てを嘲弄するような、妙に癇に障る喋り方をするこの青年も、かつては愛と勇気を胸に巨大ロボットを駆って、巨大な
悪と戦ったのだろうか。
会話に入っていけない田所正男は、ひとり拳を握り締めた。
取り残された孤独感、カッコマンエビルに対する悪印象、ある種の嫉妬にも近い負の感情が、このとき彼の胸の奥にわだかまってい
たことは否定できない。
しかしそれでも。
(俺が性根を叩き直して、必ずヤツを森本カッコマンに戻してみせる!)
田所正男の瞳には、決意の光があった。
カッコマンエビルに引導を渡し、正義の心を甦らせる。
それが、今のカッコマンとして自分に出来ることだと彼は信じたのだ。
「博士! 俺は最強無敵ロボ・ネクソンクロガネで出ます!」
「……っ!? ああ!」
我に返ったような龍聖寺院光に、田所正男は微笑み掛けた。
「行ってきます。博士」
「そうか! 頼んだぞ田所カッコマン! だが気をつけろ! 敵は、ひとりじゃない!」
警告に頷きを返し、愛の戦士は走り出す。
セイギベース4を襲った悪の剛力無双ロボ・シロガネマッスルも、既に移動を開始していた。
(そうそうにこのカッコマンエビルをなんとかしなければ、二対一に持ち込まれてしまうことは必定……!)
それどころか、二体の他に悪の巨大ロボットが参戦しないという保証はどこにもないのだ。
シロガネ四天王。
彼らの口にした不吉な名前を思い出して、田所正男の体に、恐怖からとも武者震いからとも知れぬ鳥肌が浮いた。
※
「待たせたな、シロガネ四天王いちのスピード・カッコマンエビル!」
魂にも響く若者の声に遅れること数瞬、空の高みより降臨する巨大な物体。母なる大地へのいたわりのために着地はやわらかい。だ
が、人の心の幸せを壊す悪ならば容赦なく踏み砕くだけの力を持っている。
それは、不動明王の化身とでもいうべきスーパーロボットだった。
頑強な皮膚はどこまでも黒く、表面に星の煌めきを映しとっている。全身を駆け巡る金色の光は、夜行蝶が俯瞰した街の灯しび。
カメラの眼には、悪の心胆を寒からしめる凄み。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ。その威風堂々たる出陣だった。
対峙する黒と白、二体の巨大ロボット。
「ううん、今来たところさ」
逢い引きの待ち合わせのようなふざけたことをいい、カッコマンエビルが臨戦態勢に入る。
悪の神速飛翔ロボ・シロガネソニックの巨体が離陸。地面から数メートルの距離で静止する。まるで重力を操作しているような不可
解な空中浮遊だった。
ワルサシンジケートの技術力に慄然としながらも、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの操縦桿を握る田所カッコマンは、果敢に先制
攻撃を仕掛ける。
内蔵兵器を起動。
装備箇所は左右の肩当て。金の装飾に紛れたハッチが重たげにスライドし、下の兵装に命が吹き込まれる。
(ワルレックス級の重装甲にはともかく、空を飛ぶために体重を削ぎ落とした敵にならば通用するか)
我こそはと唸り声を上げるのは、各六門の砲身を束ねた回転式機関砲が二基。
「ネクソンクロガネバルカン!」
『ネクソンクロガネバルバルバルカン!』
作詞・作曲・歌/ネクソンクロガネバルカンズ
バルカンは弱い 巨大ロボ全盛期
こめかみからバババ やられメカすら倒せない
剣にビーム 空飛ぶ拳 突進攻撃
ド派手な必殺武器 俺の出番はまだ来ない
スペックシート 武装の欄の賑やかし
だけどしっかり 役に立つんだ
せめて今日は 敵を牽制するよ
ババババ バル バルカン バルバル バルカン
ババババ バル バルカン バルバル バルカン
いつか必殺 バルバル ネクソンクロガネバルカン
バルカンはしょぼい いつの間にお約束
肩口からバババ 逃げ惑うのは生身の人だけ
ドリルにキャノン 火炎放射に パイルバンカー
トドメは最強武器 俺は脇を固めるぜ
全身火器の 武装の欄に花を添え
だけどやっぱり 役に立ちたい
せめて今日は 敵を引き立てよう
ババババ バル バルカン バルバル バルカン
ババババ バル バルカン バルバル バルカン
いつもおそばに バルバル ネクソンクロガネバルカン
ババババ バル バルカン バルバル バルカン
ババババ バル バルカン バルバル バルカン
愛と勇気の ネクソンクロガネ バルバル バルカン
「悪は滅びよ!」
徳の高い僧侶のような厳めしい台詞を唱え、田所カッコマンは白銀の悪魔に機関砲の集中砲火を浴びせる。
悪の神速飛翔ロボ・シロガネソニックは、その名から予想される高い回避性能を発揮しなかった。ふてぶてしい態度は、バルカンの
ごときは躱すまでもないと言いたげであった。
実際に、砲弾の豪雨を銀翼に浴びながら、シロガネソニックは無傷だった。分子一個分すら削れているか怪しい。カッコマンエビル
は呆れと哀れみの入り混じった声でぽつりと呟く。
「あのさ……その武装、もう外した方がいいよ?」
「やはりダメだったか……」
田所カッコマンはヘルメットの下で目を伏せる。考えが甘すぎたと言わざる得ない。「敵にまで同情されるネクソンクロガネバルカ
ンの活躍の場はこの先来るのだろうか」などとどうでもいいことまで心配する。
実はネクソンクロガネバルカンは、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネにくっついているというだけで、その性能は型落ちの近代兵器
と何ら変わりない。防御力偏重の巨大ロボットを相手に、これほど頼りない武装はなかった。
「超ネクソン白鋼をふんだんに使ったボクのシロガネソニックは、軽くて強くて丈夫なのさ。しかも、美しい」
聞いてもいないことを自慢たらしくぺらぺら喋るカッコマンエビル。しかし、彼によって明かされた事実に、田所カッコマンはネク
ソンクロガネバルカンが通用しなかったこと以上に衝撃を覚えた。
「何だって!? こいつもネクソンタイプだというのか……!?」
『ワルサシンジケート。……それほど大量のネクソニウムを確保していたとはな』
龍聖寺院光もまた深刻そうに腕組みをした。もしシロガネ四天王の巨大ロボットが全て超ネクソン白鋼製なのだとしたら、それはも
はや最強無敵ロボ・ネクソンクロガネといえども一機でどうこうできる事態ではない。
「これならどうだ!」
カメラアイの下、隈のように開いた砲口の深淵に、亜空間から重金属粒子群を大量転送、莫大なエネルギーを添加して野に放つ。最
強無敵ロボ・ネクソンクロガネの内蔵兵器最大の破壊力を誇る高出力金属粒子ビーム。
「ネクソンクロガネビーム!」
全てを磨滅させる光の帯が、宙に伸長していく!
「思ったほどの射速じゃないね」
神速飛翔ロボ・シロガネソニックが機体を上昇。鳥人ハルピュイアを思わせる翼が発生させる推力で、苦もなく射線から逃れる。
それは恐ろしい速さであった。田所カッコマンの動体視力では追いつかず、突然に消え、突然に現れるようにしか見えない。ほとん
ど瞬間移動に近いものがある。
その度に発生する強烈な衝撃波の煽りを受けて、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの体勢が崩れる。
「へぇ……。そこらのロボットならソニックブームだけでお釈迦だ。伊達にネクソン名乗ってないってことか」
本来それは、掠めただけで敵を斬り裂く、神速飛翔ロボ・シロガネソニックの攻撃手段であるらしい。
衝撃波を浴びせ掛けるために、着かず離れずの至近距離を超音速で疾駆する銀翼の巨大ロボット。他に携行武装は見られず、敵との
接触をひどく嫌っているようだった。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが目許からビームを放ちながら太い首を動かして捉えようとするが、シロガネソニックの立体機動
の前に翻弄され、虚しく空を薙ぐのみ。
「くそっ! 狙いが定まらん!」
「ボクに当てようと思ったらさあ! レーザー光線でも持ってくるべきだね!」
田所カッコマンはネクソンクロガネビームの照射を中断し、挑発するように空中を自在に飛び回るシロガネソニックを観察した。
(まずい、状況だな)
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは、基本的には鈍重な部類の巨大ロボットである。自然、初手には比較的高速のネクソンクロガネ
ビームが選ばれていた。そしてネクソンクロガネビームは強力すぎるため、大抵は一撃で決着がついてしまう。それが通用しないとな
ると格闘戦に突入することになるが、田所カッコマンのまともな戦闘経験はさほど多くない。
まして三次元となると全く未知の領域だった。最強無敵ロボ・ネクソンクロガネに飛行能力はない。滞空時間の長い大跳躍ならば可
能だったが、それで神速飛翔ロボ・シロガネソニックに対抗できるはずもなかった。
救いはシロガネソニックの衝撃波攻撃が、ネクソンクロガネの重装甲を通らないことだった。このまま延々と直撃を食らい続ければ
ともかく、今のところは千日手といっていい。
(だが、まごまごしていると敵の援軍が到着する……!)
焦る。焦る。焦る。
頭に昇った熱い血を使って、田所カッコマンは思考する。
これまで生きてきた経験。書物で読んだ知識。誰かから教わったこと。すべてが彼に味方する!
思いついたことがあった。
「……教えてやろう。なぜ最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが“鋼の王”と呼ばれているのか!」
「……初めて聞くけど?」
「必殺! ネクソンクロガネビーム!」
不敵な笑みを、はったりでは終わらせない。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの下瞼に、アルミホイルの切れ端のような金属片と、砂鉄のような金属の微粒子が発生。ただしそ
れはエネルギーを滾らせることもなく、霧のように空気中に拡散していった。
そのままロボットの関節可動を利用して、首を360度回転。
まるでビームの態をなしておらず、やや上空を旋回するシロガネソニックにも全く届いていない。風に煽られるままの薄片と粉塵が、
一帯で浮遊と沈殿を繰り返すのみである。
「何だそれ? まさか煙幕とかチャフのつもりなの? ばればれなんだけど」
ともすれば沙漠の砂嵐のような量だったが、さして脅威とも思えなかった。
カッコマンエビルは、もう幾度目になるのかも分からない衝撃波攻撃を敢行。これまで通り、手も足もビームも躱せる軌道を神速で
飛翔する。
しかし今回に限って、神速飛翔ロボ・シロガネソニックが発火した。
「え?」
いや、それは発火などという生易しいものではない。
摩擦熱によって一瞬にして蒸発した金属群の膨張が生み出す、空間の爆轟だった。カッコマンエビルの視界を支配する激しい発光。
乱気流がシロガネソニックの翼を殴りつけ、操縦桿を奪う。
それだけではない。超高水圧によって物体を切断する工業機械であるウォータージェットの水には、削る力を高めるために砂鉄が混
ぜてあるが、大気中に散布された金属粉は今、それと同じ働きをしてシロガネソニックの機体に甚大なダメージを与えるのだ!
転移させた物質を融点や沸点を違える数種に合成することで、複数の効果を実現したネクソンクロガネビームの応用。
「命名!! ネクソンクロガネストーム!!」
これでもまだ致命的な損傷ではない。カッコマンエビルが、火達磨となったシロガネソニックを思わず減速させる。
だが、それこそが田所カッコマンの狙い。
そこは衝撃波を浴びせ掛けるための、着かず離れずの至近距離。他に携行武装は見られず、接触をひどく嫌っているようで。
「ここで一度負けて」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの豪腕が唸る。
「龍聖寺院博士に謝ってこい!」
ネクソンクロガネパンチ。
鋼の王の鉄拳制裁が、神速飛翔ロボ・シロガネソニックを捉えた――!!
なんかえらい長くなりそうだったので一端切ります。
なお、科学考証は例によってインチキ。
前回から止むなく文章の方向性を変えてますが、これは前のテンポが良いかも。
自分でも迷走してるなあとは思うんですけど、ノリだけではなかなか。
やっぱ四人は多すぎたよなぁ・・・と悩みつつ。
うげっ。
>>55の五行目はこれ「ベース3」ですね。
なんかここんとこ毎回ミスがあるな・・・
気合、根性で勝つように見せかけて、結局は機体の性能差
前のテンポも良かったけど、今のノリも中々いいですよ。
機転を利かせた発想でピンチを凌ぎ、シロガネソニックに豪腕炸裂!
鋼の王の鉄拳制裁はどれほどのダメージを与えたのか、そして残る敵の巨大ロボは!
続きが気になる展開です。
な、なんというペースなんだ! ◆46YdzwwxxU氏は化物か!?
相変わらずのノリとテンポ、惚れてしまいます
そしてカッコマンエビルがテッカマンエビルに見え(PAM!
今まで自分が書いた文が、海上都市姫路守備隊戦記39KB。
ネクソンクロガネは調べてみたら78KBで二倍も差がある。
追いつけるようにもっと頑張らないとな。
投下させていただきます
前編からそのまま続きます
ネクソンクロガネパンチは、確実に神速飛翔ロボ・シロガネソニックの腹を打突する軌道に乗っていたはずだった。
しかし直後に、田所カッコマンは瞠目することになる。
振り抜かれた最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの腕は、拳ひとつ分ほどシロガネソニックから逸れ、空を切ったのだ。
もっとも、田所カッコマンの驚愕の理由はそれではない。どうして打点がずれたのかは明白だった。それはカッコマンエビルの緊急回
避が間に合ったからではない。
殴打する動作じたいに干渉があったからだ。
超特急新幹線などよりも桁違いに重く速いネクソンクロガネパンチに横殴りに衝撃を与えて、その弾道を捻じ曲げた者がいる!
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの前腕に、凹みが生じていた。直径50センチメートルばかりのそれは、隕石が落下したクレーター
を思わせる。砲弾の痕だった。
『馬鹿な!? 最強無敵を謳われた超ネクソン黒鋼の装甲に!?』
司令室のはぐれ研究員・龍聖寺院光の悲鳴。それほどの異常事態だった。これまでの激戦を通して、内部機構に不具合は生じたことは
あっても、装甲が損傷したことは一度たりともなかったというのに!
「こんなことができるのは……!」
田所カッコマンは右方を向いた。これが本職の狙撃手ならば、不用意に誰かに姿を晒すような真似はすまいが。
果たしてそこにあったのは、月からの逆光に浮かび上がる三つのシルエット。
一夜にして新たに建造された高層ビルか。馬鹿な。
それこそが敵影。夜空に食いこんだ銃弾にも似て禍々しき。
「ちぇっ! もう来た」
カッコマンエビルが唇を尖らせる。台詞とは裏腹に、声調には安堵の響きがあった。
神速飛翔ロボ・シロガネソニックが羽ばたき、大きく弧を描いて彼らに合流。
そうして、四体の超級巨大ロボットが遂に、月夜のロボヶ丘に揃い踏みした――!!
『なんてことだ……』
龍聖寺院光の呆然とした声が届く。気丈な彼女にも、今にも崩れ落ちそうな気配があった。
「こいつらがそうなのか……?」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの操縦桿を握る田所カッコマンの手には、じっとりと汗が滲んでいた。内臓の機能に異常を来たし、
吐き気を催すほどのプレッシャーを感じる。
ネクソンクロガネストームの閃光に眩んでいた瞳が暗順応。次第に彼らの正体が明らかになる。
体型や武器の差はあっても、銀の粒を表面にまぶしたような、美麗な白色だけは違いがない。
神速飛翔ロボ・シロガネソニックと同じ、超ネクソン白鋼の質感だった。
彼らこそは、白銀に統一された無法の戦士。悪の総本山によって送り込まれた刺客。恐怖の巨大ロボット軍団。
すなわち――
「忍耐とはスナイパーの美徳だ」
四人のうちの一人、向かって左端に立つ、細長い影が口火を切った。
長大な銃身のライフルを手にした彼は、巨大ロボットを狩る猟兵。
猟銃をくるくるとステッキのように回し、銃把を下にして大地に突き立てる。天を指す銃口からは、白煙が靡いていた。ネクソンクロ
ガネパンチを射ち抜いたのもそれか。
「たとえ飢え死にしようとも、糞尿を垂れ流そうとも、藪蚊に刺されようとも。じっと好機を待ち、決して外さない……。それ故に我が
名はスナイパーガマン。シロガネ四天王いちのスナイパーだ」
左目には無骨な眼帯、恐らくは照準器に類する装置を当てていた。
全身の模様は、シロガネマッスルは赤、シロガネソニックは青だったが、この機体は黄であった。ヤドクガエルの警戒色のように鮮や
かで、白色の強い装甲にも埋没しない。眼帯のない右カメラアイを中心として爪先まで、一定の間隔を置きながら拡大していく同心円の
パターン。自分自身をターゲットと見立てたような、ひどく奇異な装いだった。
「私の愛銃を紹介しよう。百発百中ロボ・シロガネスナイパー」
操縦席で叫ぶのは、厚手の防弾服に似たパイロットスーツを着た壮年の男。
胡麻色の髪をオールバックに纏め、左目には巨大ロボットと同じくスコープを装着していた。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを前にしての余裕ある態度からは、豊富な経験に裏打ちされた自信が見て取れる。
四天王いちのスナイパー・スナイパーガマン、百発百中ロボ・シロガネスナイパー。それが一人目。
「前から思っていたんだけど」
右隣。気だるげな声で、やや蕩の立った女が続く。
芸術的な曲面を繋ぎ合わせた西洋甲冑だ。前方に張り出した胸甲の滑らかなラインは、その巨大ロボットが女騎士の特注品であること
を如実に表していた。
何より目を引くのは、それが携える剣か。取り回しの楽そうな適度な長さ。両刃が放つ光沢は鎧のものよりも一層強く、凄絶な切れ味
を予想させる。
「四天王いちじゃあ、凄いんだか凄くないんだか分からないんじゃないかしら。四人ぽっちの中で一番だから何なの?って思ってるわよ、
カレ、きっとね。世界いちとは言わないけど、シンジケートいちくらいは名乗りたいものだわ」
「身も蓋もないな」
スナイパーガマンが失笑する。
騎士鎧の優美さを損なわないよう配慮された板金の継ぎ目に、不気味な緑の光が嗤うように蠢く。ヤコウタケという茸が夜に発するも
のに似ていた。兜の頭頂から伸びた、馬の尾のような毛髪の飾りも同じく。総じて亡霊じみてもいた。
「そう言うアタシは四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌ。で、この子は一騎当千ロボ・シロガネブレード。たぶん、この一夜
限りの付き合いだけれど、よろしくね」
地味なライダースーツで強調された豊満な胸を反らし、女は蕩かすような声を発した。白い肌に浮いた口許には妖艶な微笑み。色の濃
い紅を引いた唇が吐くのは、炎か毒か。
四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌ、一騎当千ロボ・シロガネブレード。これで二人目。
セイギベース4を強襲し、海老原カッコウーマンの一撃必殺ロボ・ネクソンアカガネを捻じ伏せた巨大ロボットもいる。
「ふむ。まだまだ幼いが、無限の可能性を秘めた、よい筋肉だ」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを評しながら、次々にマッスルポージング。興奮のためか、筋繊維の入れ墨がより赤味を増している
ような気がした。
機械仕掛けでありながら、それの特徴を端的に表すのに「筋肉質」以上に相応しい言葉は存在しないだろう。ボディビルダーを思わせ
る重厚な体躯は、距離の隔たりを越えて田所カッコマンを威圧する。
「そしてカッコマンエビル。きみはもう少し筋肉をつけた方がいい。その方がいい」
パイロットである禿頭の巨漢は、穏やかな教師のような声で隣人に忠告する。
「だから、あそこからボクの華麗な逆転劇が始まる予定だったんだって」
言い訳がましく返す声は、先ほど最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと死闘を繰り広げた魔鳥の巨大ロボットからだった。吹き抜ける青
い風を象った紋様に曇りはない。
彼らの名前ならば、田所カッコマンにも覚えがある。忘れるはずもない。
四天王いちのマッシブ・ニック・W・キム、剛力無双ロボ・シロガネマッスル。
四天王いちのスピード・カッコマンエビル、神速飛翔ロボ・シロガネソニック。
彼らが三人目、四人目となり、これで全員が確認された。
「ひとついいことを教えてやろう。我々は結成以来、一度も四名揃ったことがない」
「私達は強すぎる」
「エージェントがどうしてもっていうから特別に参戦させてやるけど、残り三人はいらなかったな」
「光栄に思いなさいな、最強無敵ロボ」
四人が好き勝手に叩く軽口は、苛烈な戦場の兵士が口にするようなユーモアとは違う。そもそも緊張感など微塵もないのだ。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネですら敵ではないというのか。国際犯罪組織ワルサシンジケートにより製造された超級の巨大ロボッ
ト、そのために選び抜かれた最高のパイロット達の前には!
「剛力無双ロボ・シロガネマッスルのニック・W・キム。四天王いちのマッシブ!」
「一騎当千ロボ・シロガネブレードの切り裂きジャンヌ。四天王いちのテクニシャン!」
「百発百中ロボ・シロガネスナイパーのスナイパーガマン。四天王いちのスナイパー!」
「神速飛翔ロボ・シロガネソニックのカッコマンエビル。四天王いちのスピード!」
筋肉隆々たる巨漢が、妖艶な女騎士が、眼帯の狙撃手が、嗤う鳥人が、高らかに名乗りを上げる。
「四人揃ってッ!!」
『シロガネ四天王現る!』
作詞・作曲/ドクトルポイズン
歌/シロガネ四天王&ワルサ音楽隊
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 無法の戦士
ヤツらが通ったあとには ぺんぺん草も残らない
根こそぎ奪うぜ お宝 スマイル 生きてく希望
シロガネ四天王 誰か止めてくれ
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 悪逆非道
ヤツらが踏み締めた大地からは 愛と平和の歌も消え
一切合財奪うぜ 金銀 財宝 お前の貯金
シロガネ四天王 誰が止められる
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 無銭暴食
ヤツらが渡った海では 赤潮青潮流れる血潮
まるごと奪うぜ 食べ物 飲み物 三時のおやつ
シロガネ四天王 誰かが止めなくちゃ
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 悪党好色
ヤツらが現れた街では ヤツらが王様 逆らうな
とにかく奪うぜ 恋人 花嫁 気になるあのコ
シロガネ四天王 誰も止められない
シロガネ四天王 シロガネ四天王 シロガネ四天王 悪さしてんのう
シロガネ四天王 シロガネ四天王 シロガネ四天王 あしたキミのもとへ
「シロガネ四天王ッ!!」
背後で謎の大爆発が発生。
思い思いのポーズを決める巨大ロボット軍団は壮観だった。
「か、勝てる気がしない……ッ」
『……ッ! 呑まれるな!! しっかりしろ!! 田所カッコマン!!』
はぐれ研究員の鼓舞もどこか遠い。田所カッコマンの頬を冷や汗が伝い落ちた。
彼を蝕むものそれは……恐怖……!
シロガネ四天王、ロボヶ丘に集結――!
単独でも最強無敵ロボ・ネクソンクロガネをあれほど苦しめた神速飛翔ロボ・シロガネソニック。
それと同等の性能を誇ること間違いなしの四天王ロボ全員を一度に相手どり、果たして田所カッコマン達はこの戦いに勝機を見出せ
るのであろうか!?
さらにシロガネ四天王には、まだとんでもない秘密が……!?
かつてない窮地に、みんなの熱い声援が必要だ!
ここが正念場だ! 田所カッコマン!
踏ん張ってみせろ! 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ!
つづく
以上!!!!!
思ったより大した量じゃなくてよかった。
レス大感謝です。
>>63 どうもです。そこんとこ結構不安だったので安心しました。
>>64 実はこっそり意識してました。ボルカッコォォォッ!!とか言わせる予定だったのですが、さすがに没に。
>>65 恐縮です。まあでも長ければいいというものでは
そういやこのスレで今までボリュームが一番多かったのってロボものって何なんだろう?
◆gD1i1Jw3kk氏に質問
超振動極熱〜という用語が付く武装は具体的にどういったものなの?
あとボトムズが好きなのはわかるけど、あまりにもそのまま過ぎるのはどうかと
>>72 質問、ありがとうございます。
自分の未来観が大きく関わっているので、人によってはおかしいと思うかもしれません。
どうしても受けられない方は適当な駄文と思って読み流して下さい。
過去から現在、そして未来へ、科学は人の夢と願い、想いを元に高性能と高効率を求めて際限無く進歩していく。
当たり前ですが、物は使えば壊れます。壊れない物などこの世に存在しません。どんなに大事に扱おうと、長年使い続ければ必ず。諸行無常、生者必滅の理……は少し違うか。
例えば目の前の液晶モニターと隣にあるパソコン、人によってはノートパソコンでしょうが、どんなに大事にしていても使い続ければいつか必ず壊れます。
生物が死ぬように、絶対に避けられない運命。子供でも理解出来る当たり前の事。ですが……
壊れないパソコンを求めた事はありませんか。どんなに酷使しようが、数十年使い続けようが絶対に壊れないパソコンを、心の中で少しでも。
絶対に壊れないパソコンなど夢物語のような物。人によっては一笑に付す妄想。ですが、本当にあったらいいと、少しでも思った事はありませんか。
ここで思うか思わないかで、自分の未来観を受け入れられるか否かが分かれると思います。
海上都市姫路守備隊戦記の時代は約22世紀〜23世紀頃。現代よりも科学が遥かに発達した時代。
どのぐらい科学が遥かに発達しているかというと、パソコンやらテレビといった家電製品、自家用車などが100年酷使し続けても壊れず、修理どころか整備すら全く必要無い。そんな「物」が当たり前にどこにでもある時代。
普通の家電でも並大抵の使用では壊れないのだから、軍事兵器だと尚更。
10万トンを超える戦闘艦が大破しても、ドックに入れば修理が完全に完了するまで24時間かからない。
科学同様医療技術も発達しており、死んでなければどんな状態だろうが治せる、脳さえ無事なら大丈夫、というレベルで、大人数を短時間で心身共に完璧な治療が可能。
兵器及び兵士を襤褸雑巾同然にしてもすぐに直(治)って戦場に戻って来る。兵器は修復不可能な致命傷を与えるまで、兵士なら殺すまで何度でも続く。
昔には当然の常識とされていた、兵士を負傷させて後送し兵站に負担を与えよう、という考えは全く無かった。
戦場に存在する敵を如何にして確実に「潰す」か、それだけが考えられ、その為の思考錯誤と技術開発が進められた。
敵の兵器、兵士を塵すら残さず完全に消滅させる兵器。そんな人によっては一笑に付す御伽噺の如き代物を真剣に求め、発達した科学が応えた。
振動熱兵器。
物体を分解させる振動波と逃げも離れもせず極短時間で急速に伝播する特殊熱の相乗作用、分解蒸発で敵を撃破する革新的兵器の誕生である。
とまぁ、こんな感じですね。
上記の壊れない家電や振動熱兵器、あるいはそれに近い代物は、科学が発達していけばいずれは実際に作られるだろうと、自分は考えています。
振動熱兵器に関しては他作品との差別化を図りたかったのも理由の一つです。自分が思いついた、他の作品にはないオリジナルの設定を入れたかった。
自分が知ってるアニメ、マンガ、ゲーム、小説、映画などに作中の振動熱兵器を使っている作品は無かったと思います。強いて言えばガンダムのヒートホーク、ヒートサーベルぐらいでしょうか?
振動熱兵器か、それに近い物を使ってる作品があるのなら教えて下さい。
ボトムズそのままにならないよう工夫してはいるんですが……
ボトムズのATのローラーダッシュは足底に内蔵されているけど、重装甲強化服のローラーダッシュは内蔵せずに、足底に機動靴を装備して使用可能になるなど。
まじめに戦闘書いてみたらすげー疲れた。もうしばらくは書きたくない。
>>74 >>72じゃないけど、よく分からん!
しかし俺はよく分からないものをよく分からないまま平気で食っちまうんだぜ
物体の分子結合を解くのに一番手っ取り早い手段は熱だぜ
あと、ガンダム00のGNカタールの設定がちょっと似てる。あれの刀身に用いられてる素材は熱伝導率が異常に高いって設定で、つまり刃にとっつけたその素材を加熱して、斬り付けると即座に敵装甲に熱が転移して溶断……だったはず。俺の記憶だから間違ってるかも。
熱が特殊ってのが、何言いたいのかよく分からん。物体の分解、がどのスケールの話をしてるのかも分からん。
対象物の分子構造内に瞬時に拡散し、金属が蒸発するレベルの熱を発する何らかの架空物質ってことか? 未発見の凄まじい放射線核種くらいしか思い浮かばんが。そしてその架空物質が行き渡る隙間を作るために、その振動機構で分子間結合を緩くする、と。
んなもんがあるなら、正直プラズマでもぶっ放した方が手っ取り早いような気がしないでもない。
多分、直感的な理解なら「二重の極み+爆熱ゴッドフィンガーソード」、なのかな?
まぁそれはともかく、物体を分解させる振動波ってのが、熱伝播に何らかの寄与をするのか(しないんなら伝播可能な熱だけでいい)。熱に特殊もクソもないんだから、何らかの熱担体があるのか、それは伝播しうるのか。そのへんがちょっと気になった。
単なるヒートソードならそれこそガイシュツ。それに対し、別になくたって理屈の上では何の問題もない振動なんちゃらをつけてオリジナリティとしているならば、笑止千万といわざるを得ない。そこまで胸を張るなら理屈をつけてくれ。
未来観に関しては同感。アーサー・C・クラーク大好きだし。
振動ナイフってようは摩擦で熱起こさせて切ってるんだっけ?
>>78 >爆熱ゴッドフィンガーソード
それはシャイニングフィンガーソードでは……? あるいは爆熱ゴッドスラッシュ
>>79 摩擦熱で切る、ってのは少なくとも俺は聞いたことない(´・ω・`)
ナイフを当てて、押して引いて捻じ込んでの動作を機構の中に組み込んだもの、ってのが多い気がする。
フルメタなんかだと極微サイズのノコギリ、だっけか
>>80 すげぇヒートソードって印象が伝わればそれでいいww
こんなに返答があるとは思ってなかったです。
振動熱兵器は
>>77、
>>78さんの言うような代物ですね。
例えば鍋を火にかけると中の水が沸騰するまで時間がかかるじゃないですか。通常の熱と違い急速に伝わり数十、数百倍の速度で水を沸騰させられるのが特殊熱です。
架空の物質などは全く使っておらず、必要なのは電力だけです。
正直大した科学知識は無いので、大体そういう風なモノと深く考えずに理解してもらえると助かります。
特に皇帝戦はほぼ完全に少年漫画的勢いとノリの話になる予定なので。
熱とはどういう概念かを誤解している気がしないでもない。
まぁいいや。SF板に帰るわ
>>81 ラージャ!
単分子カッターですね。
クリムゾンエッジみたいな形の武器、好きだなぁ。
さて、近い内に自分も続きを投下しようかしら。
みんな近いうちにっていうから期待しているのに、
なかなか来ないのでおれはマチクタビレッタ
>>86 おぉ、これは懐かしい!後でゆっくり読ませていただきますね!
凄く時間が掛かっちゃいました、お久しぶりですorz
取り合えずやっとタウエルンの本来の姿を書く事が出来ました
ぶっちゃけ殆どファンタジーの域ですが、生温かく読んでいただけると幸いです。ではどうぞ
<4,変形>
ギーシュは焦っていた。それは何故かと言えば、村長である村長からの連絡が全く来ないからだ。既に1時間以上経っている。
ちらりと目線を正面に向けると、村長の女房がおぼつかない視線で時計を見つめている。その表情には明らかに不安の色が浮かんでいる。
「大丈夫ですよ、奥さん」
ギーシュは明るい音色と、出来るだけ明るい表情を浮かべて、女房に声を掛けた。
「少し話が立て込んでいるんでしょう。大丈夫ですよ。ロッファさんは無事に戻ってきます」
女性を励ましているつもりではあるが、ギーシュはその言葉を自分に言い聞かせているのだと心の底で思った。
先日の事だ。酒場からトニーを送ったギーシュが自宅に帰ると、留守番電話に村長からのメッセージが入っていた。それは……。
「夜分にすまない。どうしても伝えておくべき事があってね。……トニー君の件は聞いたよ。……すまなかった。私が彼らと契約を結んだばかりに……。
……実は昨日、彼ら、いやデイトに飛行船に来るように連絡を受けたんだ。どんな要件なのかは来てみれば分かると言われたよ。どう考えても穏やかな内容ではあるまい。
しかし私は思うんだ。もしここで断れば、恐らく私達は、かつての平穏な生活を永遠に失うのではないかと。そこで私は決心を固めた。
明日、彼らの誘いに乗る事にするよ。そして、彼らが行っている圧政を直談判しよう。彼らの暴挙を許したのは私の責任だ。私自身が動かねば何も解決しない……
そこでだ。ギーシュ君。君に頼みがある。明日、君には私の自宅に来てほしい。妻一人だけを家に残しておくのは何分不安でね。
腕っ節が強い君なら一緒に居ても安心だろうと思い、電話を掛けた次第だ。来てほしい時間は〜……
事が済み次第連絡する。恐らく1時間もしないと思う。もしも都合が悪ければ悪いで折り返し連絡してくれ。それじゃ……」
村長のこのメッセージに、ギーシュは正直戸惑った。村長の決断がとてもじゃないが英断とは思えないからだ。
シュワルツがどれだけ性悪なのか、ギーシュは嫌というほど知っている。あの男が何を考えているかは分からないが、村長の言う通り穏やかな用件で呼ぶ訳が無い。
止めよう。もし村長に危うい目に合えば今度こそ、この村は終わる。留守電ボタンの明かりが消えたと同時に、ギーシュは決心を固めた。
しまった……時すでに遅し、ギーシュが村長の家に着く既に1時間前に、村長はシュワルツのアジトへと出向いたらしい。
女房がギーシュが到着した際、ドアを開けてか細い声でそう説明した。ギーシュは女房の話に耳を傾けながらも、自らの失態に頭を抱えた。
決意を固めたはずだったが、休日である事が災いしていつもより遅く起きてしまった。自分がこれではトニーの事を馬鹿とは言えないな……。
今更村長を追いかける訳にも行くまい。ギーシュは肩を落として、女房と共に村長の連絡を待つ為家に入った。
そして今、ギーシュは村長から鳴って来る筈の電話を待ち続ける。村長――――ロッファが殺された事も知らずに。
「着いたぞ。これだけ荒れてるが……本当に大丈夫なのか?」
トニーが背後を歩くショウイチに声を掛けた。ショウイチは立ち止まり、後ろのタウエルンに手をかざして停車させると、周囲を見渡した。
所変わり、ここはトニーが数週間前に全く芽が出ない為、に続行不可能として判断し、耕すのを諦めたスイカ畑だ。
常々水を与え気を配ったはずだが、なぜだか全くと言っていいほど実らない。実らない以前に……ショウイチは畑に足を踏み入れた。
「種が出てこない?」
「あぁ。何というか奇妙なんだ。まるで……」
ショウイチはしゃがむと、何処からか取り出した薄い手袋で土を掘り返した。そしてトニーに顔を向ける。
「ここ数日で、何か変わった事は無かったですか? そうですね……」
視線を宙に向けて、数秒何か考える仕草を見せると、ショウイチは言葉を続けた。
「今まで順調に実っていたのに、ある日を境に突然実らなくなったとか。天気も環境も変わり映えない……
ごめんなさい、言い方を変えます。去年と全く状況は変わらないのに、何故か今年は全く上手くいかないって感じはしませんか?」
ショウイチの表情と口調がさっきまでと全く違い、異様に静謐さを秘めている事にトニーは戸惑った。まるで、別の人間の様だ。
ショウイチの言っている事の意味がいまいち飲み込めないが、ここは真剣に答えるべきだろう。
「あぁ、ここ数カ月はとんでもない大不作だ。幸い自分たちで食っていける分は確保できているが……とても商売にならんよ」
「やっぱり……」
小さな声でショウイチはそう呟くと、手袋を脱いで、腰に両手を当てた。そして鋭い表情を柔和な表情に変えると、トニーに顔を向けた。
「大体の事情は分かりました。さてと、では耕しましょう!」
「片づけておきなさい。後々使いますから、これ以上傷は付けない様に」
シュウルツがまだ生暖かい血を流しながら息絶えたロッファを一瞥すると、そう言って踵を返した。
固まっていた研究員たちが、ハッと我に返り各々仕事に戻る。シュワルツの取り巻きである二人の男が淡々と、シュワルツの死体を片づける。
ダルナスに動きは特にない。が、シュワルツは妙な予感を抱いていた。ダルナスを見上げて思う。何かが、妙だ。
全て上手くいっている。微力ながらも村の中心となっているロッファは失せ、もうすぐダルナスが復活を遂げる。何ら不備は無い……。が、心の靄が晴れない。
その時、研究員の一人がシュワルツに声を掛けた。シュワルツはダルナスから目を逸らし、そちらへと向かった。
研究員が怪訝な表情でモニターを見、シュワルツに困惑した様子で言った。
「エネルギーの充填率が5パーセント落ちています。今までこんな事は無かったのですが……」
シュワルツはモニターを覗き見る。確かに先ほど見た時よりも、充填率を表すメーターが若干下がっている。
「……あり得んな。まさか……実るというか? 農作物が」
シュウルツはメガネを下げると、冷静に言い放った。確かに農作物が最低限のラインを越えて実る事はあり得ない……筈だ。
ダルナスはこの村全体の畑の地中奥深くにある、巨大なソーラーパネルより吸収される太陽光をエネルギーとしている。
その為、農作物に必要な太陽光を根こそぎ奪ってしまうのだ。
シュワルツはそれでは面白くないと、ある程度生活できる分の農作物を作らせる為、パネルの一部を消灯させた。
やろうと思えばスグにでもダルナスは復活できるが、それでは興が無い。
トニーおよび農民達が農作物が取れないと嘆き、苦しむのを見るのがシュワルツには可笑しくて堪らない。
だが今のシュワルツには嘲笑う気分ではなかった。抱いていた予感が、今現実になろうとしている。
モニターから離れ、シュワルツは研究員の肩に手を乗せると優しい声で言った。
「どの地域で何が起きているかを早急にリサーチしておいてください。大事の前の小事です。芽はしっかり潰さないと……ね」
「モードを田植えから野菜・果物に変更……速度は低速で……よし、オッケイ!」
タウエルンの上部からパネルを引き出し、ぶつぶつ言いながら何か設定を終えたショウイチがパネルを下して、トニーにサムズアップした。
ショウイチはタウエルン押しながら畑に再度、足を踏み入れる。ショウイチが立ち止まると、タウエルンが自動で動き出す。
「後はタウエルンが耕し終わるまでのんびり待ちましょう。時間にして……15分程度ですね」
何処からか取り出した懐中時計を見ながら、ショウイチが笑みを浮かべて畑から出る。トニーはタウエルンに目を移した。
タウエルンの前部と後部から二本のアームが延びている。そのアームの先には、クワの刃を思わせる物体がついたローラーが、のんびりと畑を耕している。
正直滅茶苦茶な事をされるのではないかと不安だったが、タウエルンに付いたそのローラーは畑を至極丁寧に耕している。
しかし……別に今の時点では、このタウエルンにショウイチが語った様な無茶苦茶な機能があるように見えない。というか、この程度なら自分自身の力で十分耕せるからだ。
まさかこのショウイチと言う男は本気で……トニーは疑念を浮かべたその時。
「所で……トニーさんは自動人形についてどんなイメージがありますか?」
ショウイチの何気ない一言に、トニーは一瞬何の事か理解が出来なかった。今、ショウイチは確かに自動人形と言った。
イメージ? そんなモノは決まっている。平和な世界を破壊した、度がし難い憎悪すべき存在。それ以上でもそれ以下でもない。
実際トニーはそう、両親から教えられた。そして自分自身、自動人形によって住んでいた場所を奪われた。戦争と言う事を配慮においても、許せる訳がない。
「……質問の意味が分かりかねるな。もう少し具体的に聞けないか?」
あくまで感情を押し殺して、トニーはショウイチに聞いた。ショウイチの返答次第では、強硬な態度に出るつもりでいる。
大体、ここまで付き合っておいて難だがどうにも信用できないのだ。これだけデかく得体の知れない物が、トラクターとはとても思えない。
それにさっきまで膨らんでいた疑問が明確になる事が……怖い。それはタウエルンが――――。
「……ナノマシンを分布するには、タウエルンが変形する必要があるんです。人型の、ロボットにね」
「……それで?」
「もしも……もしも貴方が、自動人形に対して嫌悪感を抱いているのなら、僕は彼と共にここを去ります。
ですがもし、貴方が僕の話を信じてくれるのなら、その機能を使ってこの畑を蘇らせましょう。勿論目の前で」
そう言うショウイチの目には、確かな意思が宿っていた。トニーはその言葉に対し馬鹿にしているのかと一喝しようとしたが、ショウイチの目に、言葉が出ない。
しかし、だ。もしここでタウエルンに頼れば、それは自分自身の価値観を否定する事にならないか? 今だって自動人形に……。
だが、だがもし、タウエルンがショウイチが言う通り、とんでもないメカだったら、本気でこの状況から脱する事が出来るのかもしれない。
どうせこのままでは状況は変わらない。ならば一回くらい、突拍子の無い希望に掛けてみてもいいのではないか。
自動人形は憎むべき存在だ。だが、今はそんな事を言っていられるような状況じゃない。考えてみれば、今の我々には打開策が何も無いんだ。
……トニーは右手で目を覆い、天を数秒仰ぐと、ショウイチに向き直った。
「信じてやるよ。だがもし君の発言が嘘だとしたら、容赦はしないぞ」
トニーは苦笑いを浮かべて、ショウイチに返答した。ショウイチはトニーの言葉に力強く頷くと、畑を耕し終えたタウエルンに向かって大声を上げた。
「タウエルン! トランス!」
その瞬間、タウエルンの車体が縦に割れ、ローラー部分が左右に分離する。見るも奇想天外な変形を重ねがら、タウエルンはその姿を露わにした。
さっきまでどこか鈍重で野暮な姿のトラクター姿とは似ても似つかぬ、人型のロボットがそこに立っていた。変形終了と共に、排気口の重低音が響く。
腕部と足部、そして胸部に車体の装甲が移行しプロテクターとなっており、重厚な印象を抱かせる。闘牛を思わせるヘッドパーツのデュアルアイが鈍く赤く光る。
「す、すげー……」
タウエルンの変形を見て、トニーは思わず感嘆した。するとどこからか、かわいらしい少年の声がした。
「ショウイチー。もう仕事しても良いのー?」
その声は紛れもなく……タウエルンから出ていた物だった。
何処からしゃべっているかは分からない。が、無邪気に右腕をショウイチに向かって振っている。思わずトニーは脱力した。
「あぁ、存分に働け!」
ショウイチが言うが早く、タウエルンは背中の排気口から何かを噴出した。一見ジェットの様に見えるが、それはキラキラと光る青い粒子だ。
あの重そうな自動人形が軽々飛び上がる様に、トニーは呆然とショウイチに呟いた。
「……あれもソーラーエネルギーって奴なのか?」
「ええ。詳しい事は長くなるので言えませんが」
タウエルンはしばらく昇ると、空中で静止した。すると腕部と足部がパカッと縦に二つに割れ、中からウエハースの様に薄い板で成形された部分がせり出てきた。
ゆっくりとタウエルンは降下しながら、その部分を下にする様に体をうつ伏せにした。
そして驚くべき事にその状態のまま、排気口から粒子を吹き出し、畑の上空を飛び回る。ウエハースの部分から、緑色の粒子が降り注ぐ。
「あれが例のナノマシンか……」
タウエルンから降り注がれる粒子を眺めながら、トニーは畑に目を移した。そこには驚くべき光景が広がっていた。
全く芽が出る事が無かったスイカの種が成長しているのだ。無論最初から完成している訳ではないが、これから充分育てられるほどには。
トニーには目の前の光景がまるで魔法の様だと思った。それほどあのナノマシンとやらがトンデモナイ代物なのだ。
「……で、あれほどの装置と言うか物体が、どうやってトラクターの中に収納されてるんだ?」
「詳しい事は長くなるので言えません、ごめんなさい」
次第にタウエルンから分布されていたナノマシンが、穏やかに薄くなっていき、うっすらと消えていく。
当初は荒れ果て、手の打ちようがないほど荒れていた畑が、今では立派なスイカ畑として生まれ変わっている。
ショウイチはこちらに飛んでくるタウエルンを、満足げな表情で迎えている。と、タウエルンがショウイチに近寄り、音声のボリュームを最大にまで下げた。
「ナノマシンにショウイチが言っていた例のシステムを破壊するバグを組み込んでおいた。地中のパネルは此処に限れば、もう作動しないと思う」
「良くやった、タウ。……また争う事になるかもな。いや、既に……」
「疑ってしまってすまなかった、ショウイチ君」
トニーがショウイチにそう言って頭を下げた。ショウイチは首を横に振って、笑顔で返した。
「いえ、僕の方こそ妙な事を言ってすみませんでした。いきなりあんな事言われても引きますよね……」
ショウイチの言葉に、トニーは小さく首を振り、言葉を続けた、
「いや、私が勝手なイメージで君達を拒絶してしまったんだ。君達に非は無いよ。ホントに驚いた、まるで夢みたいだよ。
君達を雇う件、私の方から頭を下げるよ。是非ともこの村で働」
「まさか自動人形が他にあったとは……信じがたいな」
背後から声がして、トニーは振り向いた。6体ほどの黒騎士を従えた、シュワルツの取り巻きの一人である大男が数メートル先に立っていた。
そして大男は腕に意識を失っているのか、ぐったりとしたメルティを抱えていた。大男はにやりと笑うと、言葉を続けた。
「シュワルツ様の命で異常を探りに来たが、まさか他タイプの自動人形が見つかるとはな。これはとんだお宝を見つけた」
「き、貴様……メルティをどうする気だ!」
怒りと恐怖で声を震わせたトニーがそう聞くと、にやけ顔を崩さぬまま、大男は返答した。
「無論シュワルツ様に上納するんだよ。恨むなら、お前自身のふがいなさを恨め」
大男はそう言い切り、もう片方の腕で、トニーとじっとしているショウイチとタウエルンの方に向けて腕を上げると、声高らかに叫んだ。
「行け、黒騎士共! 自動人形は傷つけずに倒し、他の雑魚は叩き殺せ!」
「行けるか、タウ?」
「……これで、争い事は最後にしたいね」
<バッファローモード.起動>
続く
投下終了です。何か凄く力技というか、強引な展開ですみません
粒子がもろにアレっぽいですがまぁ……良くあるトンデモエネルギーって事で許して下さい
夜分失礼しました
>>93 わかった、コジマ粒子ですね(違
ついにタウエルンの殺陣が読めると思うと、ワクワクが止まりません。バッファローって事は、ハ●ケーンミ●サーが(ry
それにしても、ナノマシン……まるで神の奇跡のよう……
>>93 自分のテキトーな思いつき設定をここまで広げてくれるとは素直に感謝です
なんか想定してたのよりもさらに壮大になってるw
タウエルンは三段変形だったのか!?
おいおい何だよそれ。ますます欲しくなったじゃないか!
つまり1/40タウエルン発売ですな!
あるいは超合金タウエルン。
……いや、超合金はネクソンクロガネ向きか。
さて、帰宅したら投下だ!
<マスター、これは不得手なフィールドです>
リヒトを肩に乗せて疾走するハーシェンが呟いた。
無理も無い。確かにこの遺跡の中はある程度の広さはあるが、彼女が暴れるにはいささか狭すぎる。機動力が殺されては、防御力に乏しい彼女の勝算は少ない。
「やれ連戦だの不得意なフィールドだの、神様も随分と意地悪してくれるな。……そういえばお前、レーダーは使えるか?」
<本来の半分以下の性能ですが、なんとか>
きっぱり即答。わかりやすくてよろしい。
「そうか、キツいな。バリアにマナを多めに回しておけ」
<イエス、マイマスター>
マナの壁が厚みを増す。これなら強力な攻撃も一発なら止められるだろう。
<ところでマスター。早速ですが前方に反応、確認しました。降りてください>
「あいよ」
飛び降り、そして華麗に着地。
「俺は三つ編み娘の確保を優先する。……支援ができるのははその後だ」
<イエス・マイマスター。勿論危なくなったら助けてくれますよね、期待してます>
早口で言ってさっさと行ってしまう。
−−−−抑揚は無い。が、その声は緊張を孕んでいて。
「……可能ならな」
あいよと笑って、リヒトもその場を走り去った。
パラベラム!
Episode 05:激突、黒騎士vs白ウサギ〜乱入してくるとはとんでもないやつだ〜
<反応、急接近。エンゲージ>
疾風。
鋭い回し蹴りが一閃。騎士がそれを受け止める。先程の野良とは明らかに違う圧倒的なプレッシャーが、物影の遥にもはっきりと伝わって来た。
いや、それよりも−−−−
「え……?」
視界に飛び込んだ白い閃光に、遥は驚きを隠せない。
「あれ、さっきの−−−−」
耳のように見えるレーダーと長い足、バイザー状の赤いカメラ・アイ。それは先程遥を助けた白いウサギに他ならなかった。
白と黒、互いに距離を離す。
<あなたですか、キングは>
唐突に口を開く。内容は意味不明。
<キング……何の>
ウサギが低い体勢から繰り出した、不意打ちの貫手。このままでは避けられない−−−−!
遥が息をのんだ、その時だった。
「君、大丈夫か?」
突然現れた男に話し掛けられたのは。
髪は赤く、顔立ちは精悍。年齢は一見すると十代後半から二十代前半だが−−−−油断の無い物腰と鋭い目つきのせいだろうか−−−−見ようによってはそれ以上にも見える。
「……はえ?」
次から次へと襲い掛かる非日常に、遥の頭はパンク寸前。まともな返事を返す事ができず、首を傾げた。
「大丈夫じゃあなさそうだな……」
「あ、いえ、大丈夫です!」
慌てて表情を取り繕う。
「……とにかく、ここは危ない。彼女がアイツを食い止めている間に逃げよう」
男が手を差し延べる。
「彼女……?」
一体誰の事だろうか、と混乱する頭で考える。彼女とはおそらく、あの白い−−−−
「ま、待ってください!」
差し延べられた手をがしりと掴む。
「あなたの」
「名前はリヒト・エンフィールド」
「あ、失礼しました」
突然名を名乗る男。何故このタイミング……?
「リヒトさんは、あの白」
「そう、正解だ」
何故このタイミング……!? いや、そんな事より、今は、
「ならお願いです、今すぐ戦闘を止めさせてください!」
♪ ♪ ♪
繰り出された、不意打ちの貫手。これは……直撃コースか。
黒い騎士−−−−M-12は素早く、そして冷静な判断ですぐさま左の肘と膝で相手の腕を挟み込む。そしてそのまま首を掴み、白いオートマタを壁に叩き付けた。
<ぐむっ……!>
<キングとは……何の事だ>
空いている右手にマナを集め、それを相手の下腹部に突き付ける。
<あなたの事じゃないですか。手下を使って女の子を襲うとは、神経腐ってますね>
ウサギは気丈だった。生殺与奪の権を握られているというのに。
<何の事だ……>
<壊れかけのレディオですかあなたは>
ウサギは気丈だった。しかしそれは無感情な機械的なものではなく、意地だとか、覚悟だとかいう類の人間的なもののように感じられた。
<わかりました、ならこちらから質問させていただきます>
やれやれ、と呆れた声で質問する白いオートマタ。何故この状況で。
<それは許可できな>
<あなたの目的は何ですか>
……何故この状況で?
<私の目的は>
「そこまでだ、ヘーシェン。戦闘行動を中止しろ。彼は敵ではないそうだ」
いつの間にここにいたのだろう、おそらくはこの白いオートマタのマスターであろう男が割り込みを入れてきた。タイミングが最悪だ。
<あの穀潰し、タイミングが最悪ですね……。構いません、続けてください>
間が悪いのはそちらも同じだと思うのだが……口には出さない。
<私の目的は、彼女の>
「お願い、手を離して!」
今度は女性の声。マスターだ。ああ、間が悪い。
<イエス・マイマスター>
しかし素直に従い、手を離す。そしてしばらくの間を置き、改めて、
<私の目的は>
<あ、いいです。今ので大体わかりました>
おお、なんと間が悪−−−−
<……これは>
アラーム。
敵だ、それも近い。
黒い騎士は主の前に素早く移動し、マナの防壁を展開した。
「え、な、何!?」
<敵です、マスター>
閃光が瞬く。
その閃光は防壁を突破して黒騎士の装甲の一部を溶かし、変形させた。防壁によって威力は減衰していたが、これは、
<荷電粒子砲……>
マナを加速し、撃ち出す兵器だ。その威力は絶大で、防壁、装甲を易々と貫通し、目標を溶解させる。
どうやら今のは威力を加減して撃ったようだが……一体どこから。
<乱入してくるとはとんでもないやつだ。……高額な光学兵器を装備しているとは、とんだブルジョアジーですね。死ねばいいのに>
「まったくだ」
無駄口を叩きながら戦闘態勢に以降する白いオートマタと、赤髪の男。
「ええ!? まだ来るの!?」
べそをかきながら辺りを見回す三つ編みの少女。
そして−−−−
<まさか、こんなに早く君が現れるとはね。リヒター……リヒター・ペネトレイター>
先程の機体よりも遥かにクリアな声、流暢な言葉。
ゴーグル状のカメラ・アイをオレンジ色に光らせながら、蒼いそいつは現れた。
次回へ続く!
今回はここまで!
ふぅ……携帯だとどこでも書けるのがメリットですが、慣れていないと面倒ですね。
前回までより分かりやすくなってる
リヒターってリヒトが命名するとか、なんか関係があるのかと思ってたけどそうでもないのか・・・
パラベラムの荷電粒子砲はまた一風変わっているらしいが
どんなもんなんだろう
荷電粒子砲なのに光学兵器なのか?
あんまり揚げ足とるようなことはしたくないけどさ。
厳密に言えばレーザーの類だけだろうけど
現実で実用化された訳でないし
実弾兵器よりは光学兵器っぽいからって理由で
光学兵器に分類されてるって世界観なら
何も問題はないな
ま、厳密にいうなら指向エネルギー火器だわね。
どうでもいいけど、「実弾兵器・実体弾」って表現に違和感あるのって俺だけ?
よく対比とされてるビーム火器だって、レーザーだって光には粒子性もあるし、粒子ビームならもろ物質をブチ当ててるワケで。
「実弾兵器とは呼び得ないもの、実体弾と対比されるべきもの」と言われると、
風力砲みたいなゲテモノ(あと強いて言えばトールボーイか。ま、これもゲテモノよりか)が浮かんじゃうんだよ。
それで個人的には指向エネルギー火器って言い方にこだわってるんだけど。
荷電粒子砲を光学兵器と呼んでも問題無くなる裏ワザ……電荷を帯びた光子を撃っていると……いや何でもない。
>実弾
たまにいるよね、そういうの気にする人。
俺もいざ文中で使うとなると「あれ? これって・・・?」と尻込みする方
でもぶっちゃけ気にしすぎてもしょうがないような気もする。
何だろう……妙に申し訳ない気分にwファンタジーすぎるかも知んない…タウエルン
遅くなりましたがレスありがとうございます
>>102 リヒター…一体どれほどの実力の持ち主なのか気になりますね
続きを待ってますです
>>94-95 魔法というか得体の知れない物として書きたかったのですが結局ファンタジーにw
中々リアルに、というかリアリティを出そうとして書けないですね…orz
>>96 三段変形というかリミッター解除というか。本来のタウエルンに戻るって感じです
出来るだけカッコ良く書きたいですね。要なので
110 :
107:2009/06/13(土) 22:39:49 ID:NrRbP3Aj
>>108 まあ、俺も「自分ではそうは書かない」レベルで、いちいち他の人の書いたものにケチ付けたりはしない方ではあります
(
>>107で書いたのは、その上で用語の使い方の話になってたから)
ぶっちゃけ、呼び方なんかより、よく指向エネルギー火器が高威力火器として描かれてる(特に装甲目標に対して)ことの方が
気になる人間だし。
そのエネルギー別のことに使えって話か
まぁいいじゃない。ヴィジュアル的には格好いいし。
ビーム兵器が自分の頭脳だと使いきれる気がしないので不思議兵器として扱ってるなー
とりあえず不思議なモノなの、なんか凄いものなの、で通そうとか思ってる
しかし、書いて削ってを繰り返してると中々完成しない…途中のキリのいい所で切って前編として投稿した方がいいんだろうか…
>>112 1シーン単位でやってる人(荒野、スプリガン)もいるし、
一話をわりと短くしている人(パラベラム)もいるし
いいんじゃないか?
>>112 良いと思いますよー。自分自身区切りの良い所で
確かに推敲してると長くなっちゃいますよね…
タウエルンもだった。ごめんごめん。
けっこうボリュームがあるんで短いという気がしなかった
深夜のガンダムに備えて寝ている間に盛り上がっている、だと!?
てか、鯖、復活していたんですね
>>103 ゲインとゲイナーみたいなノリで(ry
一応関係はある……ような、無いような
>>104 単純にメガ粒子やGN粒子をマナに置き換えたものだと思っていただければ
>>105-108 単純に自分の知識が足りなかっただけです、はい。
そうか……。荷電粒子砲って、光学兵器じゃないのか……
>>109 むしろそのファンタジックな光景、Yesだね!
>>115 いえいえw毎回書いてて思うんですよねー、詰め込みすぎだってw
短く書くのを目標にはしてるんですけど、心理描写云々入れるとどうしても長くw
>>116 えぇ、これからもファンタジックを目指しますよ。キーが一ミクロンも打てないですがorz
ふと思ったんですけど、設定って作った方がやっぱ良いですかね
他の作者さん達が結構緻密な設定を投下しているので、自分だけが物語だけ投下してるのもアレかなと
>>117 今のところは2〜3つぐらいでいいと思いますよ、設定
設定が少ないと、かなり自由にできますから
あんま設定つめると意地悪な人に突っ込まれる件
>>118-119 そうですね……取り合えず物語に重要そうな所は作っておきます。上手くできるか自信ないけど
助言どうもです。それではおやすみなさい
設定作ってるように見せかけて、実はあんまり作ってない人ですw
プロットも…オチだけ決めてそこに突っ走ってる感じなので、結構思いつきで書いてることも多々
背中押してもらいましたのでとりあえず現在、誤字脱字と矛盾無いかの確認作業に入ってます
今日の夜には落とせるかな
それは一瞬の出来事だった。
大地に舞い降りた漆黒の鋼機は腰から引き抜いた大きな黒槍をその場にいた天狼の喉元に突き刺したのだ。
機体から紅い閃光が走り、その閃光は軌跡となって、天狼の機体になだれ込み、黒槍の矛先に収束していく…。
矛先の空間が歪みはじめる。
その歪みは紅の光を通し、一点の大きな光となっていく…。
そうして集められた光を漆黒の鋼機は黒槍にあるトリガーを引く事で解放した。
閃光。
それは指向性を持った強大なエネルギーとなって黒槍の矛先から解放され天狼の巨躯を体の中から蝕む。
それは貯蓄した力の全てを放出するように天狼の体の中を駆け巡り、その肉体を陵辱し、その存在を蹂躙し、それがそこにいたという事実を消滅させていく…。
そうして天狼は塵芥残さず消滅した。
この間、漆黒の機体がこの大地に舞い降りてから、わずか5秒の出来事である。
なんという威力か――
その黒槍は超振動により対象の装甲を削り裂く鋼機のナイフですら受け付けぬ天狼の装甲をあっさりと貫き、それを一瞬で対象を消滅させたのだ。
その場に居合わせたものがいたのならば、その光景に余りの理不尽さを感じただろう。
漆黒の機体は足元に両腕を破壊され倒れている蒼白の機体の全身全霊を賭した戦いを茶番だと言わんばかりにいとも容易く一蹴したのだ。
自らの機体が半壊しながらも執念で戦い続けた蒼白の鋼機がそれでも届かない圧倒的な差を示された前にそれを圧倒的な能力で一瞬で消滅させてしまった。
漆黒の鋼機は肩、膝、背の各部を展開しはじめる。
展開した部分から紅い光りが迸る。
そうして放出された光りは周囲に降り注ぐ。
周囲にあった草木はその光りを浴び、色を落とし、枯れていく……そして、それはそんな中にそびえ立っていた。
漆黒の御身に紅蓮の光を纏う機械仕掛けの悪魔。
まるでそれはこの世に破滅をもたらす魔王のように見えた。
そう、これこそが世界政府から現在指名手配を受けている謎の漆黒の鋼機、通称:ブラックファントムである。
ブラックファントムは背中にある機械仕掛けの大きな黒翼を広げ飛び立とうとする。
その時、怒号のような銃声が鳴り響いた。
それとほとんど同時に漆黒の鋼機の周囲に大きな爆発が起こる。
ブラックファントムの機体がその爆発で揺らぐ。
そこに空から三機の蒼白の鋼機がパラシュートで降下してくる。
蒼白の鋼機、つまりは三機のS−21 アインツヴァインは着地後にすぐさまブラックファントムを包囲するような陣形を取った。
そしてアインツヴァインは自身の持つ、アサルトライフルの銃口を全てブラックファントムに向けた。
「けっ、本当にあの化け物を破壊しちまうとはな、こいつ本当に鋼機なのか?」
オープンチャンネルで蒼白の鋼機のスピーカーから人声が流れ始めた。
声の硬さからして男だろうか…発言の軽さからか若干、ぶっきらぼう人柄が感じられる。
それに同調するようにもう1機の鋼機もチャンネルを開く。
「データ上1世紀前の鋼機、S−16と類似している点は多い。例えばあの背部の翼に使われているブーストユニットは当時実験中だったフライトシステムの可動ブースターそのものだ。
鋼機とフライトユニットの一体化を狙ったものだったそうだが、僕から言わせてもらえれば、フライトユニットの一体化なんて無駄に機体の重量を重くするだけで愚考でしかないよ。
今ではフライトユニットは使い捨てのモノが当たり前になっているが、なんで最初からそうしなかったんだろうねと僕は思わざる終えない。」
その男の声にはヒヤリとするような冷たさがある。
「でも、今の見ただろう?あんな事できる鋼機なんて聞いたことないぜ。50年前には魔法使いでもいたっていうのか?」
「馬鹿も休み休み言え。」
「だがよー。」
「α5、α6、黙れと私は言ったんだが、聞こえなかったか?」
三機目の鋼機が二人を静かに言い放つ。
「誰が勝手にチャンネルを開いて良いと言った。通信したければ、普通に話せばいいだろう?なんで、わざわざスピーカーを通す必要がある。」
三機目の鋼機から発せられた声の質からしてその鋼機に乗っているのは女性であることは間違いなかったが、その声はそれが女性だと感じさせぬほどの静かで、それでいて威圧するような物語りだった。
その女の声には静かなその他の二機の鋼機の搭乗者に対する、怒りを感じさせられる。
もし、その場に立ち会っている人間がいたのならば、誰もが彼女こそがこの二機の鋼機を統括するこの場の指揮官なのだと理解しただろう。
「そんな事を言っても――」
「α5、私は黙れと言った。」
反論しようとした、ぶっきらぼうな男を女の指揮官は臥せるように一喝する。
「申し訳ありません、隊長。」
即座にもう一人の男が女に謝罪を述べ、
「はいはい、申し訳ありませんでした!!」
それに続くようにぶっきらぼうな男もしぶしぶと投げ槍な謝罪をする。
「さて、そこの黒い鋼機、大変見苦しい所をお見せしたが、私の声が聞こえているかね?」
指揮官は、自身の部下達に言い放つのと同じ口調でブラックファントムに対して語りかける。
「…………。」
ブラックファントムは沈黙している。
ただ、その紅い瞳はその指揮官の乗るアインツヴァインを睨む様に見つめていた。
―退け、さもなければ殺す―
まるで、その相貌はそんな事を無言で語りかけているように指揮官は感じた。
それに対して指揮官は何かを頷くような素振りを見せ。
「ふむ、喋る気が無いのかね、まあ、それもいいだろう。ああ、そうかそうか、大事な事を忘れていた…自己紹介がまだだったね、私の名前はシャーリー・時峰(ときみね)という。
世界政府第7機関に所属する組織『イーグル』の構成員の一人だ。見ての通り、この馬鹿どもを率いる小隊長のようなモノをやらせて頂いている。
一応、君に銃口を向けているのは我々の恐怖心からだ非礼だとは思うが、許していただきたいと思う、それに君ならば、この程度なんの脅威にすらならないだろう?
あと、君の足元に半壊して倒れている鋼機も一応は私の部下でね、命令無視して特攻した馬鹿なんだが、それでも私の部下でね、よければ返してもらえないかな?」
声の強さを変えず、淡々と小隊の指揮官、シャーリー・時峰はブラックファントムに語りかけた。
だが、ブラックファントムは無言で返す。
ブラックファントムの黒を貴重に、紅の光を纏ったその様は人の目にはなんとも禍々しく映る。
一見するとその機体には血の通った人間が乗っているのでは無く、どこともしれない悪魔がそれを動かしているのでは無いかと思えてしまう程だ。
だが、そうでない事をシャーリーは知っている。
「ああ、ちなみにだ、その機体に人間が乗っている事は我々は重々に承知している。S−15以降の鋼機にはパイロットが生存しているか否かを発信する機能があってね、君の機体は我々の推測によればS−16をベースに大幅に改造を行ったモノだ。
ならばだ、もしかするとまあ、その生体反応を発信する装置は生きているかもしれない…と我々は考えて行動させてもらったわけだよ。少々、古い機種だったので判別が少々大変だったがね、人間の生体反応をしっかり確認できたよ。
勿論、あのアンノウンの仲間が乗っている可能性を考えなかったわけでは無いが、送られてくる情報から君がこの地球の人間だということはしっかり確認できた。うん、だからそうなんだ、君がその機体に乗っているという事を我々は知っている。」
確認した事実をシャーリーは次々と淡々に述べていく。
「つまりはだ、まとめると私の目の前にいるどこの骨董品かもわからない一世紀前のメタルアーマーのカスタム機には地球人が乗っているという事だよ。
しかもだ、その正体不明の骨董品は、その骨董品より一世紀後に出来た最新鋭の機体でも倒せないような敵をまるでゴミ屑のように消滅させていってしまっている。
驚異的な事だと思わないかな?まさにこれは驚嘆に値する事実なんだ。だから、我々としても非常に気になるんだよ、君の機体はいかなるズルをして彼らと戦っているのかとね。それに――」
「―――で、用件は何だ?」
漆黒を身にまとった機械仕掛けの悪魔がついにその閉ざしていた口を開いた。
男の声だろうか、その声にはその漆黒の機体の印象も相乗してか暗くて重いものを感じさせられる。
「ありがとう、ブラックファントム。君とコミニケーションを取るのも私の目的の一つだったんだ。ああ、そうだブラックファントムというのは私達が君に勝手につけた呼称だよ。
気に入らないかもしれないが、中々洒落ていると思うんだが君はどう思う?」
「あんたらに何と呼ばれようが興味は無い。ここで寝てる奴にさして興味も無い、勝手にもっていくといいさ…それよりさっさと本題に入れ…俺に銃口を向けておいてまでしようとする用件は何だ?」
ブラックファントムの声に少量の怒気が混じっているのをシャーリーは感じた。
「なるほど、確かにそろそろ本題に入っても良い頃かな。さて、ブラックファントム。我々は君の機体に使われている技術に大きな興味を抱いている。あの鋼獣を一蹴するほどの力をね。
いったいどんな理論で、どんな理屈で、どんな技術を持って、その機体を作られているのか?我々は知らなければならないんだ、奴らとの戦いに勝利する為には……だから、だからだ、ブラックファントム…我々が奴らに勝利する為に――君を捕獲されてくれ。」
いつもと変わらぬ口調、変わらぬ強さで、シャーリー・時峰は眼前の機械仕掛けの悪魔に対し、自身の目的を告げた。
お久しぶりです
そして凄い中途半端なところで終わってしまってすいません
実はSIDE Cも引きみたいな終わり方をする予定なのでちょっと展開の過食気味になるんじゃないかとその実心配してたりします
設定に関してちょっとした説明
生命反応からブラックファントムに乗ってる人間を人だと判別する所なのですが
元々はそういった手段を使わずもうちょい長い尺を取って話を作るつもりでした
なのですが、当初のSIDECの構想が長すぎて、なんでそんな本筋でもない所に話割いてんだボケとセルフ突っ込みを繰り返した結果
強引だけど簡単な方法を取ることになってしまいました
他にも突っ込み所ありそうですが暖かい目で見て頂けると嬉しいなーと思います
tes
失礼。
「シャーリー時峰」ってなんか耳に残るネーミングw
文章がときどき怪しいけど、内容は今後に期待を持たせてくれる出来じゃないだろうか
リベジオンが遣っている赤い光の正体とかいかにも謎って感じでいいわー
命を奪う赤い光、ですか。これは鋼機に乗ってる人達かなりヤバいんじゃ……
シャーリー時峰さん、堂々としとりますなぁ
>>127 文章はキャラに視点を置かないやり方がはじめてなので結構おっかなびっくりやってます
だから、今回ものすごく遅くなりました…元々直情型な人間なので結構不慣れででも書いてて新鮮で面白いのですが
周りから少しづつ盛り上げてく予定なので大きな盛り上がりはもうちょっと先になるかもしれませんが
気長に付き合ってもらえると嬉しいです
ネーミングはなかば思い付きですw
>>128 光の正体に関しては色々想像してもらえると筆者としては凄い嬉しいです
これがリベジオンの特徴でもありますし、この辺りは結構頑張って設定作ったので
シャーリーは揺るがない女をイメージして言動を書いています
男ばっかだと面白み無いし、リーダー女にしようか、でも、○は後々出す予定だし、上に立つ人間だしなーという事で
いつでも余裕を持って話すような感じにしてみました
質問だけどここってスーパーロボット系でなくてもOKだよね?
近いうちにちょっと作品書こうと思ってるけど
ロボ全ジャンルOKだと思います
アンドロイド系までもいるし
スーパーロボット限定だなんて何処にも書いてないぜブラザー!
というか、そもそもスーパー、リアルに分けるのがナンセンs(ry
>>130 期待してるぜ
ここ数日は議論もあって活発で良いな
投下します
強すぎる光によって目は潰れるというが、濃すぎる闇によってもまた同じなのではないか。
感覚の許容量を越えてしまうほどに、そこに顕現した翳は、黒く、暗く、また重たげであった。尋常の精神力
では直視できまい。まして自らがそれと敵対する身ともなれば、果たして正気を保てるかどうか。
「……素晴らしき哉、人族のスプリガン。我ら甲属魔族の進化はいつも、貴様のような強敵を超克するところか
ら始まったのだ」
漆黒の魔族ドルンドメオンの余裕ある口振りは、勝利を確信するからこそ。
スプリガンは多次元センサを総動員して、魔石のエネルギーにより変貌を遂げた魔族を分析する。
もともと頭頂高5メートルのスプリガンより二回りほど大きかったドルンドメオンの身の丈は、今や7メート
ルに達していた。重厚さを極めた積層構造の甲殻が、全体を肥大化して見せる。増大した体重で地盤が沈下。
言及を避けられないのは、四本にまで数を増やしたその腕。昆虫のような姿に似合いの肢だった。背面から伸
びていた用途不明の黒翼が遂にその正体を現したのだ。三つの節のそれぞれが異常に長尺で、発達した脛節の鉤
爪は禍々しい。日本最大の甲虫ヤンバルテナガコガネは、その名の通り前脚長が体長のおよそ1.4倍もあるが、
印象はそれに近い。
ドルンドメオン・メンタルバーストフォルム。
伝家の宝刀を抜いた、魔界の実力者がそこにいた。
「さあさ、来ませい!」
カマキリの威嚇姿勢のように長い腕を大きく拡げ、古強者は声を張る。それだけで地響きを生ずるほどの気迫
に満ちていた。
「来ませい来ませい!」
直後。ドルンドメオンの姿が、スプリガンのエーテル光学センサの視界から消滅。
そこには地表から剥がれた瓦礫だけが舞っていた。足下から伸びる影さえ置き去りにするような超高速移動。
空間に灼きつく黒色が残像となったのも、スプリガンが追いきれなかった理由のひとつ。
「来まっせぇいッ!」
言葉と裏腹に、ドルンドメオンが速攻。
新たに追加された怪腕による左右同時攻撃は、さながらクワガタムシの大顎だった。つるはしのようにスプリ
ガンを打ち据える鉤爪は、強烈な死の臭いを放つ。
スプリガンがそれを回避できたのは、“戦士の勘”とでもいうべきショートカット認識の賜物だった。天農と
の鍛練によって超一流の達人となった彼は、しばしばロボットの常識を覆す。
代わりにアスファルトの大地を掘削する黒光りの凶器。スプリガンの装甲に用いられたアンブロシア鋼とて、
直撃を受ければ耐えられまい。
トンボの幼虫ヤゴは、種によってはわずか千分の五秒という早業で下唇を伸ばして獲物を捕らえるという。甲
属魔族の雄ドルンドメオンの一連の動きは、それを思わせる電光石火。
「今のはいかんな。誘っておきながら、ついこちらから手を出してしまった。どうしてくれよう、有り余まるこ
のパワー……」
冗談めかした独り言を口にしながら、ドルンドメオンは悠然と構えをとった。関節で甲殻が擦れ、ごりごりと
生物らしからぬ軋轢音がする。二本の触覚が緩慢に旋回。
足捌きを殺して腕だけの戦いに持ち込めば競り勝てると踏んだスプリガンは、果敢に前に出る。
エーテル圧式打撃マニピュレータは、地上最強最速の運動エネルギー兵器だ。少なくともスプリガンはそれだ
けの自負を持っている。
二大巨人が互いの剛腕の射程圏内に突入。
拳打、掌打、手刀、手の甲での捌き、手首の返し、腕先によるいなし、爪弾き、指での圧迫、鉤爪の刺突。
足を止めての攻撃の応酬は、余波だけで周囲の地形を変える。遠目には小さな自然災害にも見えた。
スプリガンの公算に反して、実力は互角だった。速さでは確かにエーテル圧式打撃マニピュレータが圧倒的に
有利。しかしドルンドメオンにはそれ以外の武器がある。
『四本の腕……!』
「本来はもげたときのための替えなのだが、貴様に二本では足りぬようだったのでな」
肢の数的優位を得て、ドルンドメオンの猛攻の激しさは嵐のそれになっていたのだ。
上級魔族であるドルンドメオンの戦闘能力は、先に葬り去ったリクゴウなどとは次元が違うものだった。デー
タを収集しながら、スプリガンは舌を巻く。
『強い……!』
「貴様のいうことではない!」
危なげなく攻撃全てを捌いてみせるスプリガンにドルンドメオンが返し、また防御不能の鉤爪を振るう。スプ
リガンはその有効範囲を見切り、逆に“火炎車”の要領で一挙に懐に跳び込んで胴に回り蹴りを叩き込んだ。
昆虫に似た彼ら甲属魔族は、食餌や呼吸とは別に、鬼門という器官から大気中に満ちるエーテルを摂取し、体
内で燃焼させている。脇腹に開いた幾つかの孔がそれで、つまり弱点となる可能性が高い。
確かな手応えが、スプリガンの駆動系に抵抗として伝わる。
「……そんなものか?」
だが、重戦士の鎧のような殻を砕かれながらも、ドルンドメオンは平然としていた。スプリガンの目の前で、
罅割れに粘性の高い体液が滲み、わずか数秒で損傷がみるみる塞がっていく。メンタルバーストにより強化され
た即効再生能力だった。
「フンン!」
ドルンドメオンの両腕の腿節と經節を繋ぐ関節から、エーテルの奔流が迸る。
エーテルブラストは、射速こそさほどでもないが効果範囲が広い。動力炉であるエーテルドライブへの悪影響
が予想される以上、スプリガンは距離を開けるしかない。
スプリガンは流派超重延加拳の初歩“歯車”により、傍らのビルの壁面に前腕のタイヤを押し当て、逆回転を
掛けて大きく後退、さらに遮蔽物の多い複雑な地形に分け入る。
「消えた……か?」
ビル越しにも響くドルンドメオンの声には、戸惑いが含まれていた。
生命体であるならばいかに巧妙に潜伏したところで全くの無音・無動作・無温とはいかないが、スプリガンは
あくまで機械体である。最低限の機能だけを残して休眠状態に入れば、無機物にまぎれて魔族からは捕捉が困難
になる。
上級魔族の多次元感知や、禽属など一部が持つという完全空間把握までは欺けないにせよ、個体の能力を群れ
で補う甲属魔族はそれらとは趣を違えた方向に感覚器を発達させている。あらかじめ死角に入っておきさえすれ
ば、充分に姿を隠滅できた。
この状態から機を待ち、始動直後のエーテルドライブが発揮する高出力のままに飛び掛かるのが、流派超重延
加拳“朧車(おぼろぐるま)”である。
もっとも、密林の王者の狩猟に倣った奇襲戦術をもってしても、その一撃のみではメンタルバーストしたドル
ンドメオンを仕留められまい。
稼いだ時間で情報の整理を実行。出し惜しみはできない。
好敵手を捜し求めるドルンドメオンが立てる物音が、寂静の廃墟を揺すっていた。
魔族の戦士の足取りには、動きを隠そうという意思はなかった。事実上不死身となったために、以前よりも大
胆に攻勢を掛けることができる。
(逆にいえば、それだけ無警戒になっているということだ。そこを突くしかない)
恐らくドルンドメオンは今、「一、二発攻撃を貰ってからどう対処するか考えれば充分だ」と考えているはず
だった。事実としてスプリガンには体格という埋め難い弱点が存在する。一概に油断ともいえない。
メンタルバーストフォルムとなった難攻不落のドルンドメオンを攻略するには、対魔族戦術の基本に倣って、
治癒の暇を与えずに絶命させるしかない。とはいえ重甲殻の防御力の前では一撃必殺など望むべくもなく、同一
箇所への集中攻撃はエーテルブラストや機動力で振り切られる。これでは千日経っても勝てない。
(流派超重延加拳。その極意は、「駆使」の二文字)
進退窮まった状況において、スプリガンは努めて流派の初心に帰る。天農の教えだった。
それは、人型兵器(HW)ならではの格闘術として考案された流派。HWS−03“スプリガン”は、変形に
掛かる駆動力やタイヤの回転力を利用し、人体の限界を越えた動きの足し引きをしている。
この状況で何をどう足して、どう引くのか。スプリガンは決断する。あとはタイミング。
恐ろしげな足音が最接近。まだ見つかってこそいないようだが、そこは既に目と鼻の先だった。
ドルンドメオンが、ビルの向こうから、ぬうと貌を出す。
「そこか!」
複眼のひとつひとつに鮮烈な青が映り込むより速く、スプリガンがエーテルドライブを始動。「撥条仕掛けの
巨人」という名の由来に違わぬ、驚異的な瞬発力で跳ぶ。
振り上げた右脚が弧を描いて、一動作で“朧車”の踵落とし。メンタルバースト以降に追加されたもうひとつ
の左腕を強打して内外の骨格を歪ませ、数瞬だけの麻痺を期待する。
それで下拵えは終わった。そこからの派生技こそが流派超重延加拳の真骨頂。
魔族の肩に噛みついた右下腿部のタイヤをそれじたいの摩擦力により固定、わずかに回転。密着状態から全身
を屈曲し、脇腹を狙って左の膝蹴りを放つ。
重甲殻の粉砕により、当該部位の防御力が激減。
ドルンドメオンがスプリガンを振り落とそうと超高速移動を開始するが、右脚のタイヤが根を張った宿り木の
執着心で吸いつき、引き剥がせない。
スプリガンがまた左膝による第二撃。第一撃による傷口から黄濁した体液の飛沫が滲み出すよりも早い。
間合いをとることを断念し、スプリガンを先に絞め殺そうとドルンドメオンが棘の浮いた腕を動かす。さなが
ら抱擁によって死をもたらす拷問具。だが、攻撃の役目から自由となっている二基のエーテル圧式打撃マニュピ
レータが防衛圏を築き、剛力を発揮させない。それでも過負荷で損耗し、関節が火花を散らした。
さらにスプリガンが前回までと同一の動きで第三撃。
ここまでが転瞬の出来事だった。
『終わりだ』
鋼の声が宣告。
第四撃により魔族の生命維持に関わる重要器官を完全破壊。ドルンドメオンの絶叫が響く。
微調整を行いながら敵の肩においてタイヤによる進退を繰り返し、敵の特定箇所を致命傷に達するまで幾度で
も抉り続ける。杭打ち機という大地を穿つ機械にも似た兇悪な連続攻撃。
高機動・重装甲・即効再生と三拍子揃った難敵を一点突破で破壊する、流派超重延加拳“崩山車(ほうざんぐ
るま)”、スプリガンの会得した中でも屈指の荒技が激戦を制した。
スプリガンの青い装甲は、緑に染まっていた。凄惨な戦いを振り返り、あの幼い娘などには見せたくないとふ
と思う。しかし生物である魔族と殺し合う以上、それは避けられないことでもあった。
「ドルンドメオンが、ドドの大戦士が、敗れるとは……」
動けるほどに回復したオルピヌスが、呆然と膝を屈した。リクゴウは死に、ドルンドメオンの命も長くない。
遊撃種の兵隊カーストの一小隊で残っているのは、赤銅色をした彼だけになってしまっていた。
「み、見事だ……! 人、族の戦士、スふッ、スプリガンンよ! 我に生じた慢心を、見抜かれたかぁっ!」
地上に横たわる瀕死ドルンドメオンが、溢れる体液を喉につかえさせて吼える。
「オオル、ピ、ヌス……」
「ここに」
「このデータタ、生きて必ず、も持ち帰る、のだ……!」
「ドルンドメオン!」
「役目を、果た、せ……」
それきり魔界の実力者ドルンドメオンは事切れた。
最期まで任務のことを考える彼に、スプリガンは敬意を禁じ得ない。魔族の戦士達と機械仕掛けの自分は似て
いると思う。
しかし、だからこそ、同じく譲れないものもある。
『オルピヌスといったな』
低い声には、魔族すら震える凄みがあった。
『魔界に生還などさせると思うな』
人類の置かれた状況は厳しい。
突発的に出現するエーテルポイントからは甲属魔族の兵隊カーストが湧き、時には獣属魔族によって大都市が
一夜にして壊滅する。世界中の空を禽属魔族が舞い、海では群れからはぐれた鱗属魔族が船舶を脅かす。
誰もがことねのように白昼に悪夢を見ているのだ。
魔族という生ける災厄が跳梁する時代。
新世代の対魔族兵器であるHWS‐03“スプリガン”は、誇張なく人類の希望となる存在だった。
データなど、断じて渡すわけにはいかない。
「ぎぃ……っ!?」
オルピヌスがしゃくるような悲鳴を上げて後退さり、びっこを引きながらのろのろと逃走を試みる。千切れて
短くなったままの触覚が力なく震えていた。
スプリガンもまた“崩山車”中の攻防でエーテル圧式打撃マニピュレータに不具合を生じており万全ではない
が、重傷のオルピヌスに止めを刺すには十二分だ。
(せめて一撃で)
スプリガンが、オルピヌスの背中に必殺技を打とうとしたときだった。
何者かが放ったエーテルブラストの疾風が、スプリガンが足を踏み出す先をごうと横薙ぎに通り過ぎ、土砂の
壁を築く。オルピヌス追撃に対する妨害の意図は明らかだった。
出鼻を挫かれたスプリガンは首だけで頭上を振り返る。
上空に敵影。
スプリガンに翳を落とし、青の鎧から輝きを奪う。それは、ガリバー旅行記の世界でもない限りは魔族でしか
有り得ない、翼を拡げるだけで天を覆う“巨鳥”だった。
今回はここまで。相変わらず分かりにくくて申し訳ないです。
「崩山車」は、1スレ目の
>>992様からいただきました。ありがとうございました!
戦闘描写凄いなー
機械感が出ててメカメカしくて呼んでて凄い楽しいです
色々と忙しかったりスクコマ2に思いっきりハマってたりで随分と遅れてます。
>>129 このまま戦闘になってしまうのか、それとも……続きがとても気になる展開です。
>>132 でもスーパーやリアル系とかの作品ばっかりの方が、後でスパロボ的作品を作りやすいかもしれない。
>>139 凄まじい戦闘、強大なる敵ドルンドメオンを仕留めたスプリガン。しかし、最後に現れた巨鳥とは……。
現在執筆中の予告編後半で一つ質問があるんですが、ネクソンクロガネの時代って20世紀後半〜21世紀初頭辺りであってますか?
おお、続々と新技が。これは“轟”級の技にも期待ですね!
>>141 ロボット物総合スレ版ディケイドですナ
レスどうもです。
次で戦闘させずに最終回の予定だったけど、もうちょっとだけ続けてみようかと思ってます
>>141 時代は全然決めてないですが、たぶんそのへんじゃないですかね。・・・もっと現代に近いかも
家電とかは現代と変わらない感じで話は作ってあります
未来というよりは、どこかで一部の技術だけが変な方向に発展したパラレルワールドのような
間違えました
20世紀後半〜21世紀初頭辺りだったらそのまんま現代やんか・・・orz
なので一行目二文目は撤回しますです
暇潰しに
>>4に挙げられている作品でスパロボを妄想しようとしたが、すげー難しいな
ワープ抜きだとある程度は世界観を犠牲にしなきゃいかんということか
本家スパロボではどうしてたっけ・・・
本家スパロボは大抵、ある程度崩してるよ
やり方が失敗してるとKみたいな感じで非難され
成功してるとスクコマ2とかWみたいな感じで絶賛される
まー大事なのは、それぞれしっかり立てておくことかなー
ふむ。
スタンダード(CR、スプリガン、ゼノ、ネクソン、姫路B)
荒廃(荒野、タウエルン)
魔界(姫路、スプリガンB)
ファンタジー(パラベラム)
砂漠地帯とか言い訳すれば荒廃をスタンダードに組み込んだり
勢力圏を分けてファンタジーと魔界を統合できるかも?
最低二つの世界なら割とまとまっているはず
・・・っつっても、キャラ把握できるまで進んでる作品はそんなに多くないから
実際始めるのは無理だろうが。あとはクロスオーバー妄想くらいが関の山か
>>146 K、まだやってないけどそんなにストーリーひどいのか。
作品の続きを書けないのはスクコマ2のせいだ!と言い訳しておく。
>>147 実際にクロスオーバーやろうとしてる人間がここにいますよ。
こっちの姫路は特に理由も無く異世界に召喚された、という設定なので他作品とのクロスはやりやすいかと。
海上都市姫路は自走可能なので基地兼母艦代わりとしても使えます。
荒廃系とは気が合うと思いますよ、一度地獄を見てますから。自分の脳内の一次創作他作品(ロボット物ではない)ですが、全面核戦争で北斗の拳状態になった事がありますから。
死に物狂いで復興して、究極の統治システム完全管理社会を築いたまでは良かったが、自分達の創造した子供達に本土から追い出されてしまった、というのが本編開始数十年前の状況です。
同類項をまとめてみた
アンノウン(CR、ゼノ)
鋼獣(荒野、CR)
魔族(スプリガン、姫路)
悪人(タウエルン、ネクソン)
マナ・エーテル・魔法(パラベラム、スプリガン、姫路)
自動人形(タウエルン、パラベラム)
軍事組織系(荒野、CR、姫路、スプリガン?)
民間組織系(ゼノ、ネクソン)
無頼(パラベラム、タウエルン)
・CRのように主人公だけ浮いてる作品もあり、これだという分類は難しい
学校いってるキャラ(ゼノ、ネクソン)
ただ、同じアンノウンでも、CRの場合パイロット寄りで、ゼノの場合ユニット寄りなんだよなー。
魔族や鋼獣もそうだけど、なまじ同じ名前なだけにかえってクロスさせにくい。
下手に格差つけて勢力組み込むのもうまくないしなー。
現状、あまり面白いクロスというものが思いつかない。
もう二作品ほど新作が出るか、各作品の謎が解明されていけば糸口が見つかるか(チラッ)
ま、暇潰しのネタとしてはまあまあだった。
>>148 荒廃チームに入れれば序盤のバランスがちょうどいい感じになるか
でもさー、原作のままだと静はいきなり魔界チームいっちゃうんだよね
居残り組の守備隊の同僚とかはあまり描写されてないし。教授は出しやすそうだけど
戦艦不足は確かだからありがたいことはありがたいか
ついでに今だから忠告するが、アンタは書き方が露骨すぎるときがある
ウザがられる前に自重を心がけた方がいい
ま、気持ちは痛いほどわかるし、作者たるものそれくらいプライドがあったほうがいいのかも判らんけど
CRクロス用に参考資料欲しいなら簡単な方針と設定まとめたの作るよー
結構、流れや資料が分散してるから、まとめるのに少し時間かかるけどw
>>149 >魔族や鋼獣もそうだけど、なまじ同じ名前なだけにかえってクロスさせにくい。
むしろここが一番の頑張り所だと思う
こういう名前似かよってる所になんだってー!というクロス設定考えるのがスパロボ流クロスオーバー
スパロボWに例えるとガオガイガーとゴライオンの獅子つながりで設定色々クロスさせたり
テッカマンとオーガンはビジュアル似てるからそれつながりで始祖アイバとかやらかしたりと
難しいかもしれんがこういう所は最もおいしいネタだと思うなー
何か凄く面白そうな流れ……
私事が結構忙しく、まだ投下には時間が掛かりそうですorzすみません
>>150 設定よりむしろ本編を一段落するまで進めて欲しいキブン。先を楽しみにしてるぶん、ネタバレが来そうで怖ぇーし。
CRとか複雑化しそうなのは特に、とりあえずの方向性が決まらないとクロスさせようもないからぁー
そりゃー言うは易しってやつだよ
・俺たちは鋼獣(C)をこれまで鋼獣(荒)と同一視してたけど、全くの別のバックボーンがあったんだよ!
・実は鋼獣(荒)もまたアンノウン(C)操る兵器だったんだよ!
・鋼獣(荒)は、アンノウン(C)の命令を聞かなくなった、いわゆるはぐれ鋼獣(C)だったんだよ!
後ろの二つはどう考えても角が立つよなぁ・・・できればやりたくないね。
鋼獣(荒)に公式の黒幕がいて、それがアンノウン(C)と関わりがあるとかできればいいけど、分かんないし。
「あれがゴライオンか。噂どおりだな」みたいな敵のリアクション芸に留めるという手もあるが。
>>152 >設定よりむしろ本編を一段落するまで進めて欲しいキブン。先を楽しみにしてるぶん、ネタバレが来そうで怖ぇーし。
それはごもっともな意見だw、頑張ります(´・ω・`)
でも方向性がガチっとするのは結構時間がかかりそう
俺のは扱いに困ったら踏み台にしても良いよーとだけ一応言っておく
>>149 こうして見ると、拙作とタウエルンって結構共通点あるんですな
しかし、こういう面白い話が出ると気合い入っちまいますねw
・・・といっておいてなんだが、原作再現は必ずしも必要というわけじゃないんだよな
最低限キャラやロボの把握さえできれば、散発的に原作の敵と戦いながらその決着は「これからだ」エンドにして
スパロボ用にでっち上げたオリ敵を倒す方向で話を収束させるなんて手も使える。
いつ完成するかも分からん作品のクロスなら、そっちの方がいいかもしれん
ただ、それでもまだ参戦できない作品も
>>4にはあるけどな
>>155 スパロボでもいるだけ参戦なんてしょっちゅうだしね
参戦できない作品…
シスターズですね、わかります
アイディアはかなり出てきてるんだけどとりあえずCR書かないとw
シスターズも非戦闘シーンの癒しとしてサイドストーリーくらいには関われそうだが
キャラの情報や会話のサンプルが圧倒的に少ないとか、どういうロボットがどういう戦闘をするのか未明なのとか、そういう方が厄介。
CRなら「主人公はしばらく無所属のまま、人類軍にマークされつつも勝手にアンノウンを狩っていきます」程度にでも明らかにされれば割と楽に参戦できる。
そういう条件でいくと、
パラベラムも出会い編の後、旅に出るとか金を稼ぐとか当面の方針が決まれば充分
タウエルンやゼノライファーは戦闘待ち
荒野が三人娘の残り一人の把握と会話サンプルがあれば書けなくはない
直後に急展開が控えていて、「その再現なくして作品なし!」というならまた別だけど
そろそろ正式名称決めないと……。
以下数レス頂きます。
今回は前回投下分含めて、1章全部を投下。
早くもかなり修正されて居たりします。すいません。(ボクには良くある事)
1章 鋼の体を持つ獣
(0)
暗闇。
暖かな液体に包まれている感覚。
聞こえる音は、心音と小さなモーター音。
目は開かない。
いや、開けたくない。
開けてしまえば、また、あの光景が目に映る。
恐怖。
ここに居る限りは安全な筈。ココは世界で一番安全な場所。
でも、同時に、死と隣り合わせの場所。
何故ワタシはココに居る?
何故ココに生まれた?
エメラルドグリーンの培養液が緩やかに対流する中、脳裏に電気信号が走る。
ああ、イヤだ。
目が開く。
恐怖が視界に広がる。
痛い、苦しい、熱い――。
脳ミソが鷲掴みにされ、捏ね繰り回されているかのようだ。
ココは子宮と同じ筈。
世界で一番安全な場所の筈。
なのに何故、ココにはこんなにも苦痛で溢れている?
(1)
エルツは汗と埃に塗れた栗色の前髪を片手でかき上げながら空を見た。
日はまだ高い所にあり、その日差しは熱く鋭い。
瀬名龍也率いるヴァドル部隊の初陣――鋼獣土竜型との戦闘に勝利してから2時間。彼女は丁度、
仲間達と無事に第十六都市へと帰還を果たした所だった。
エルツはパイロットスーツの胸元を大きく開き、バタバタと仰いで涼を取っていた。
ゴム質のパイロットスーツは厚手で異様なまでの伸縮性を持っており、着心地は悪くないが、高い防寒性の為に、
この様な直射日光の下では直ぐに蒸し暑くなってしまうのだ。
エルツがスーツの内側に風を送る度に、彼女の二つの未成熟な膨らみがチラチラと覗く。
しかし、彼女はソレを気にする様子は無い。
エルツはハンガールームと呼ばれるヴァドル専用の格納庫の前に腰掛けている。巨大なシャッターは半分ほど
閉じているが、それでも、エルツがジャンプをしたくらいでは手が届かない高さまで開いていた。
ハンガールームの中は慌しく、特に半壊している二号機の修理が最優先で行われていた。
メカニックは人間が7割、ヒューマニマルが3割と言った所で、その先頭ではヴァドル部隊の隊長である瀬名龍也が、
50人近いメカニック達にそれぞれ的確な指示を出している。
「瀬名さん、疲れて居ないのかな……」
龍也の後姿をボンヤリと見つめながら、エルツはポツリと呟いた。
ヒューマニマルの自分でさえ、ヴァドルとの接続を切った後に時間差で襲ってきた疲労感に参っているというのに、
目の前の男は一切その様な素振りを見せないのだ。
龍也はパイロットスーツを半分だけ脱ぎ、上半身裸の状態でいる。
高温多湿のハンガールーム内を何度も右往左往し、指示を出している彼は、頭から滝の様に汗を流していた。
鍛え抜かれた逞しい筋肉が汗によって輝やいている。
そんな龍也を眺めて居る内に、エルツはいつの間にか自分の尾が嬉しそうに振られている事に気付いた。
自分の気持ちを素直に代弁してくれる尻尾に対し、エルツは少しばかり困ったような表情を浮かべた。
エルツ自信は全く自覚していないが、彼女はどうやらこの瀬名龍也という男に好意を持っているらしい。
龍也の傍に居たい、あるいは龍也に触れてみたいと考えている時に限ってこのように尻尾が振れているのだから、
人を好きになるという事は、この様な思考状態にある事を指すのだろうとエルツは客観的に考えている。
通常ならば、感情を抑制されたヒューマニマルは”好き嫌い”の概念が希薄だ。
戦争をするに当たっての不要な感情を持たないからこそ、冷静で的確な判断が下せる。戦争をする為に生み出され、
荒野で死ぬ事が運命のヒューマニマルにとって、その様な感情は元より必要ないのだ。
しかし、エルツは、珍しい事に”好き”という感情が制御されきれて居ないらしい。
もっとも、その事自体に意味は無い。生まれてくる際に、何らかの要因があって制御し切れなかっただけの事だ。
他のヒューマニマルには無いモノを持っているという事に、エルツは負い目を感じていない。
ソレは確かにヒューマニマルという種には不要なものかもしれないが、持っているからと言って、戦えなくなる訳ではない
と彼女は考えている。
そして、胸の奥で静かに鼓動するソレは不快では無く、むしろ心地良さすらあるのだ。
龍也の背中をボンヤリと眺めている間、彼女の尻尾は常に左右に振られていた。
(2)
「くそっ!」
頭から熱いシャワーを浴びながら、リートは腹立たしげ声を上げて壁を殴りつけた。
ミシリと重く鈍い音を立て、シャワー室の壁のタイルにヒビが入る。
シャワー室には彼女以外に誰も居なかった。
つい先程までディーネが一緒だったが、彼女は「用事がある」と言い残し、シャワーを浴びると早々に出て行った。
俯いたリートの鼻先や顎から滴り落ちる水滴が、彼女の大きく膨らんだ胸で跳ねる。
その胸の内側で渦巻く理解不能の何かが、彼女の苛立ちの原因だった。
自分が何に悔しがっているのかすら解らない。
しかし、自分がこうなった要因は分かっている。
(アイツだ。あの、瀬名龍也という人間――)
思い起こせば、あの男とであった瞬間からこの苛立ちは始まっていた、とリートは考える。
この不快感、苛立ちの原因は分からないが、あの男との接触によるものなのは間違いが無い。
リートは人間を嫌っている。
偶然な事に、リートもまた、エルツと同様に感情の抑制がされていない。
しかも彼女の場合は、エルツの様に”一部の感情”が抑制状態に無いのではなく、”ほぼ全ての感情”が抑制状態に無い。
その感受性は、殆ど人間と変わらない。
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の言いなりにならなければならないのか)
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の代わりに戦い、死なねばならないのか)
(何故人間は、無能の癖に、ヒューマニマルに対し傲慢な態度を取るのか)
(何故人間は、ヒューマニマルと共に荒野に出て戦わないのか)
(何故――)
再生暦119年にヒューマニマルが生み出されて以来、現在までに構築された、人間とヒューマニマルとの関係が、リートには理不尽で仕方が無い。
リートが人間を嫌うのは、人間の、ヒューマニマルを物として見ている言動と、自分はリスクを背負おうとしないその態度にある。
(ああ、そうか……)
リートは気付いた。
あの男は、”人間でありながら荒野に出て、鋼獣と戦っている”。リートの中の「人間」という存在に当てはまらないのだ。
今日の鋼獣土竜型との戦闘だってそうだ。
リートの独断での行動により、二号機は中破。
彼自身も土竜型に喰われかけたというのに、あの男はリートに一切の処罰与えないどころか、ソレを気にした様子すらない。
彼女の知る人間ならば、真っ先に嫌味を吐き、ここぞとばかりに普段の彼女の単独行動癖を叩いてくるに違いない。
しかし、彼は違った。
ただ無言でリートの瞳を覗きこみ、全てを見透かしたように小さく鼻を鳴らしただけだ。
今の所、ヴァドルを中破させた事も、命令無視の上の単独行動も、一切の処罰を与えられていない。
そして、あの目――。
(幾つだ? 幾つの感情が混ざっている?)
瞳を覗きこまれた時に感じた、背筋に寒気が走るほどの強烈な”何か”。
考えるほどに、胸の内側の何かが刺激され、激しく渦を巻き、不快な思いをさせる。
リートはシャワーを止め、ノロノロとした動作で水を吸って重くなった尻尾を絞る。
普段ならば、炎の様に赤い毛の尻尾からボダボダと水滴が滴り落ちる度に、自分の中にある不純物が零れ落ちていくような心地良さがあるのに、
この日に限ってソレが無かった。
「判らない……」
この思考の末に、自分がどの様な答えを求めているのかが。
瀬名龍也という男が何を考えているのかが知りたい?
彼を理解する事で、彼自身と何かを共有したい?
彼は人間なのに?
いや、人間だから故か?
彼にしてもらいたい?
何を?
物理的接触?
それとも、ただ単に、自分の望む言葉をかけてもらいたいだけ?
(わからない……)
正体不明の苛立ちの中、リートはゼンマイの切れかけた人形の様にゆっくりと天井を仰ぎ見た。
(3)
ハンガールームの喧騒が落ち着いた頃、外では既に日が沈み、冷たい風の吹く漆黒の闇に包まれていた。
メカニックはその殆どが引き上げ、ハンガールームには人影が殆ど無い。
巨大な鉄製の台座<ハンガー>に鉄の巨人が5機、吊るされる形固定されている。
その内の1機、02とプリントされた機体だけは、上半身と下半身が分断された姿をしていた。
ハンガールームの片隅に設置されたプレハブの中に、1人の男がコンピューターを無表情で操作していた。
男の名は瀬名龍也。ここに吊るされている鉄の巨人ヴァドルのパイロットの1人であり、部隊の隊長である。
プレハブは6畳ほどの広さであるが、敷き詰めるように並べられた机とコンピューター類によって、その大半が埋められていた。
おそらく、4人もパイプ椅子に腰を下ろせば身動きが取れなくなるであろう。
龍也はコンピューターのスロットに挿入していた携帯端末を抜き取り、自分の懐に戻した。
仕事に一区切り付いたこともあり、彼は無意識の内に深い溜息をついていた。
プレハブの窓からハンガールームの様子を窺うと、最後のメカニックが各点検を終えてシャッターを潜って出て行くところであった。
これから6時間の休憩を挟み、再び修理メンテナンスを再開する予定である。
プレハブ内は狭かったが、エアコンが取り付けられている為に室内は快適な温度に設定されている。
横になれずとも、このまま目を閉じていれば、午前中から激務であった龍也は直ぐに深い眠りに落ちてしまうだろう。
「ココならば、あと5時間は誰も来ないか……」
小さく呟き、龍也はゆっくりと目を閉じた。
途端にドロリとした感覚が首筋を伝い、全身を包み込んでいく。
五感が殆ど効かなくなり、ズブズブと溶けた鉛に飲み込まれてゆく様な感覚だけが脳に伝わってくる。
龍也はこの感覚が好きではなかった。
まるで自分が死んでいるのだと錯覚するからだ。
しかし、彼の思いとは裏腹に、肉体はソレを喜んで受け入れていた。極限まで疲労した肉体は、数十時間ぶりの睡眠に狂喜している。
(5時間……5時間だけだ……)
何度も自分にそう言い聞かせながら、龍也の意識は暗闇に飲み込まれた。
(4)
ディーネは第十六都市自衛軍本部の二十五階の廊下を歩いていた。
毛足の長いカーペットが敷き詰められた廊下には他の人影は無い。
長官室と書かれたプレートの掛けられた部屋の前に立つと、程無くしてドアのロックが開く音がする。
「失礼します」丁寧に頭を下げ、ディーネは入室した。
「いらっしゃい、待っていたわ」
部屋の奥のデスクに腰掛けていたこの部屋の主である女性は、ディーネを笑顔で迎えた。
彼女の名は天沢香織。
この第十六都市を管理する自衛軍のトップに立つ人間であり、同時に『新人類派』と呼ばれる、ヒューマニマルに人権を求める立場の数少ない人間でもある。
日本には現在全部で十六の都市があり、それぞれの都市を長官が纏めていが、無論、彼女以外に長官という立場でありながら新人類派の人間は存在しない。
本来ならばヒューマニマルを道具として扱う立場の自衛軍に、新人類派は存在してはならない筈なのだ(組織の言動に矛盾が生じる為)。
しかし、天沢香織という人物はソレを堂々と公言している。
三十代半ばの、まだ若々しい容姿をした(美人というよりも)可愛らしいその長官は、部屋に入ってきたディーネの姿を見て少しばかり驚いた様子を見せた。
ディーネは、スカートタイプの軍服に身を包み、髪を一切縛らずにいた。
普段の彼女は有事の際に即行動出来るように都市迷彩の軍服を纏い、髪を後頭部で纏めている事から、現在のこの姿は非常に珍しいと言える。
「どうしたの、その格好」ニヤニヤと目を細めながら香織はディーネに訊ねた。
「瀬名隊長の命令……というと少々語弊がありますが」
ディーネは第十六都市に帰還してからの出来事を簡潔に説明した。
「提出した報告書の通り、二号機が中破しました。フレームは無事でしたが、人工筋肉と擬似神経が駄目になったので、新しいパーツと取り替えている最中です。
ソレに伴い、二号機の修理と他のヴァドルのメンテナンスが完了するまでの間、休養を取れと隊長に命令された訳です」
「なるほど、それでその格好……」
香織はもう一度「なるほど」と呟き、腕を組んだ。
要は暇な訳である。
それも、あえて出撃まで時間がかかる服装に着替えてしまった程に。
ヒューマニマルは連続で6時間以上の休養を与えられる事が無い。
彼女達は人間よりも短い時間で体力の回復が可能であるし、荒野に出て鋼獣を狩らずとも、都市を防衛するという重大な任務を抱えている。
人権を持たない彼女達は、それこそ家畜同様に扱われているのである。
もっとも、ヒューマニマル自信も、ストレスに強く、不満などの感情を強く持たない事もあり、その事自身に問題はないようだ。
香織からすれば、この様な現状が認められていること事態が異常なのであるが、鋼獣との戦況がやや劣勢であり、慢性的な人員不足にある現状を考えれば、
仕方のない事だと渋々耐えている。
故に、香織はヒューマニマル達の一番の娯楽である食事に関しては、特に力を入れている。
一般市民からは「ヒューマニマルの食事にしては豪華すぎる」との不満の声が度々上がるが、都市を守っているのは他でもない彼女達なのだからと、
その不満に対応している。
「隊長には、この休養自体も任務の一環なのだと言われまして」
「普段なら待機中にする細かな仕事も禁止されていると」
「はい」ディーネは苦笑しながら頷いた。
「それじゃあ、仕方ないわね。隊長の命令に従わないと」
悪戯っぽく笑う香織に、ディーネは困ったような表情を浮かべて唸った。
「ところで……」
他愛の無い話を一通り済ませた所で、香織が真面目な顔で切り出した。
普段は笑みを絶やさない、軽いノリの彼女ではあるが、こういった際の切り替えは驚くほどに早く、きっちりしている。
まるでスイッチが切り替わったかのような香織の雰囲気の変化に、何年もの付き合いで慣れたディーネですら、偶に戸惑う時がある。
「瀬名龍也くんの事だけどね」
香織はデスクの隅を叩き、エアディスプレイ(空気中に投影されたホログラムのディスプレイ)を出すと、デスクに内蔵してあるキーボードを
操作して一つのファイルを開いて見せた。
「新第一都市自衛軍の総合データベースから調べてみたんだけど、怪しい点は無し」
「戸籍も、ですか?」眉を顰め、ディーネが訊ねる。
「ええ、戸籍も。実在するわ。勿論、DNAチェックも問題無し。彼は正真正銘、瀬名龍也って事になる」
「……そう、ですか」
「納得いかない?」
「……わかりません」ディーネは首を横に振った。「ただ、なんと言うか、納得できない事が多すぎるんです」
「ソレについては私も同感よ」
香織は自ら淹れた紅茶を啜りながら頷く。
「貴女達ヒューマニマルが鋼獣と戦うようになって以来、人間は種を絶やさない事を第一にするようになった。
ソレは40年ほど前、丁度ヒューマニマルが荒野に出るようになった少し後の事。
諸外国との連絡が一切取れなくなり、コレを”日本以外の国が滅びた”と自衛軍は考えたから。
人間はもう、日本にしか存在しない。人間は例え一人でも数を減らしてはならない。
その考えが強まり過ぎ、歪になって、今のヒューマニマルを軽視している悲しい現状を作り上げた訳ね」
「ですが、瀬名隊長は荒野に出て、自ら鋼獣と戦っています。それも、自らを囮にするという危険な作戦まで立案して――」
ソレは酷く不自然な話である。
自衛軍の思想では、ヒューマニマルに「人間の代わりに戦い、死ぬ事」を任せて居る人間は「絶対に死んではならない」義務を負っているらしい。
ならば何故、瀬名龍也という人間が荒野に出向き、鋼獣と戦うなど以ての外だ。
「しかし、総官は彼をココに送ってきた。ヴァドルを正規採用するか否かの試験運用部隊の隊長として……」
それに何の意味があるのだろうか?
(考えるとするならば、荒野に”何か”あるのか、彼が荒野で戦う事に意味があるのか。
前者の場合は、ヒューマニマルに触れさせたくない物、あるいは動かせない程に大きくて人間にしか扱えない何かが、この第十六都市付近の
荒野に存在する事を意味する。
後者の場合、意味を成すのは”荒野で彼が死ぬ事”かしら? でも、彼が死ぬ事で何が変わる?)
香織はカップで揺れる紅茶を眺めながら、思考の海に深く潜っていく。
無数に浮かび上がる可能性を一つ一つ吟味し、選り分けて、自分の仮説と関係のありそうなワードを幾つか掴んで、水面へと上昇する。
(やはり、彼自身よりも、”上”の方を調べるべきかしらね……。気は進まないけど、もう一度あの狸親父と腹の探り合いをするしかないか)
考えを纏めた香織は紅茶を一気に飲み干し、ディーネに向き直った。
「ディーネ、貴女にはコレまで通り副隊長として瀬名くんを補佐してもらいます」
「はい」
「彼に気取られない程度でいいから、目を光らせていて。もし何か気付いても、私に報告するまでは彼の指示に背く事はないようにね」
何かあった場合は後手になるけれど、と彼女は心の中で付け加えた。
それでもなお現状維持を決めたのは、エルツ同様、香織自身もまた、瀬名龍也が悪人でない様に思えて仕方が無いからだ。
今、香織がすべき事は、瀬名龍也の……あるいは瀬名龍也を背後から操る存在の真意を掴む事なのだ。
ソレがハッキリするまでは慎重に行こうと香織は考えている。
以上です。
ココは覗く度に面白い展開になっている気がするw
荒野〜は僕自身も手探りなくらい伏線張りまくってる(ケモ耳への愛と伏線の練習の為に書き始めた)作品なんで、
ボクはともかく読者には設定が訳解らないだろうなぁと思うんで、協力(?)ついでに幾つか設定を書いて見ます。
・都市
(新)第一〜第十六の16からなる、日本で人間が唯一生活していく空間。
日本以外の国の状況は一切不明になっており(コレは後に判明するけど)、現在は日本以外は絶滅したと考えられている。
・鋼獣
彼?等自身に黒幕は居ません。
あくまでも異常発生・進化した存在で、彼等の正体が実は――とかいう展開は残念ながら存在しません。
・瀬名龍也
がっちりした体系の無表情な男。伏線のメインだから語ること無いw
・エルツ
チームで一番小さな娘。それでもスペックは成人男性に並ぶ。
素直で一途で龍也ラブな設定。
・リート
ある意味一番人間臭い、真っ直ぐな娘。体格は龍也とよりやや背が高く、細い位。
思春期といえばいいか、そんな精神状態。
・ディーネ
容姿も性格も一番大人な娘。リートとディーネはヒューマニマルの中ではイレギュラーなほどの長生き。
それだけ腕と運があるといえる。
ヒューマニマルの模範的な感性や従順度。
こんな感じかしら?
解りにくい本編の補佐程度に捕らえてくれれば。ネタバレはしてないはずなんで。
<投下ココまで>
あれ?
トリまちがえちゃってる?
プレビューじゃあ間違ってないんだけど、書き込むとトリが変わってるなぁ。
コレは一体何事か!?
>>165 なんとなく、ファフナーとかの世界観を思い出した
主人公の不自然さが語られていてかなり興味を引かれる。
獣耳娘ズにはもっと惹かれるけどw
えーっと話が大きくなってきたが
本気でスパロボやる気があるなら、参戦作品の条件が揃うのを待って音頭とってもいいけど
ただ、参戦を表明した作者には、世界観を含む設定の刷り合わせを許容してもらうし、SSの一部は請け負ってもらおうよ。
極端なこというと、
>>152の下二つみたいなこともあるかもしれん。あるいは「ここだけは絶対に譲れない」というとこを明確にしておいて欲しい。
キャラクターが同じだけの寄り道シナリオとか、「スパロボではこうなってるけど、原作ではもっと強いし、全く別の謎や裏があるんだよ」
ってことにして無礼講にお祭りするのが一番いいんだけどな。
・・・個人的にはキャラ立ちもまだのうちに動かさなくちゃならんので、だいぶ時期尚早って気がするが、
逆に作者のモチベーションが上がるということもあるかもしれん。ダメ元でやってみるか?
空白入ってるとか?
やっと出来た……お待たせしましたorz
正直今までの雰囲気と違って凄く……バイオレンスです
それと世界観と主人公、そしてタウエルンについて簡単な設定も作りました。あわせてどうぞ
<5,本性>
何者かがドアを叩いている。ギーシュは立ち上がり、ドアの付近まで歩み寄った。ロッファの妻が怯えた表情でギーシュを見つめる。
ギーシュは妻が声を出さぬように口元に人差し指を立てるジェスチャーをし、振り返ってドアの前に立った。
「俺だ、ギーシュだ。今ちょっと村長の代わりで留守番しててな。何か用があるなら、俺が村長に伝えておくよ」
ドアの前の何者かに、ギーシュはそう言った。すると、その何者かは低い声で返答した。
「その村長を返しに来た」
「なっ……」
その瞬間、ドアを吹き飛ばすほどの衝撃波がギーシュを襲った。ギーシュは両腕で防ごうとするが、抗えずに背中から壁にぶつかった。
妻は驚愕し、椅子から転げ落ちた。完全に腰が抜けたらしく、両膝を付いて震えている。ドアとその周りの壁は、衝撃波によってガラガラと崩れ巨大な穴を開けていた。
何者か――――否、シュワルツの取り巻きである二人組の大男、その片方が、1機の黒騎士を携えてロッファの自宅へと踏み入った。
ちなみにもう片方はタウエルンと対峙中である。
「シュワルツ様からの配達だ。受け取れ」
大男が指を鳴らすと、背後から黒騎士が手で吊り下げた何かを、妻の前にボトリと落とした。それは……。
「あ、貴方……」
妻はその何かに目を見開き、両手を口元で覆った。そこには額に穴を開け、目から光を失ったロッファの亡骸が転がっていた。
大男は壁にぶつかった際に頭を打ち、その痛みで意識が朦朧としているギーシュの方へ歩み、ギーシュの耳元にしゃがむと、用件を伝えた。
「見ての通り、お前達を束ねていた村長は死んだ。これでもう、お前達の支柱は無くなった訳だ。
薄々感じてはいただろうが、この村は我々が掌握している。ここで村長の死により、この村は完全に我々が掌握した。俺が言っている意味が分かるな?
明日、我々はこの村をある実験に使う。
そこでだ、シュワルツ様は、お前達が明日までにこの村から立ち去ればお前達には一切干渉しないという慈悲を与えて下さった。
俺の言っている言葉の意味が分かるならどうするべきか、よく考えろよ。まぁ……お前達が心中しても、我々は痛くも痒くもないがな」
大男は立ち上がり、踵を返して外へと向かう。黒騎士はその後ろを幽霊の様にゆったりと浮遊して付いていく。
がらんとした空間には、二度と起き上がらないロッファに寄り添いすすり泣く妻と、壁に寄り掛かり、頭から流血するギーシュしかいない。
朦朧とする頭をどうにか支えながら、ギーシュは立ち上がり、テーブルの上の受話器に手を掛けた。
大男の発言は朦朧とした意識の中ではっきりと聞こえた。一つはっきりしている事は――――もはやこの村で生きていく事は出来ないという事だ。
突如、タウエルンの動きが静止した。ショウイチはその様子をじっと見ているだけで、全く黒騎士達に意を示さない。
トニーはショウイチとタウエルンが微動だにしない事に、凄まじい不安を抱いた。距離がまだ遠いとはいえ、黒騎士達は背中にマウントしていた槍を構えて突進してくる。
というより、黒騎士達が扇型に一斉に突っ込んでくる。トニーはあわててタウエルンの背後に隠れ、ショウイチに声を掛けた。
「ショ、ショウイチ君! どうする!?」
「ショウイチ……君?」
返事を返さないショウイチに、トニーは首を傾げた。ショウイチはタウエルンの方を向いて何かぼそぼそと唱えている。
黒騎士達が目前まで迫ってくる。トニーが焦ってショウイチに取りすがる。が、ショウイチはトニーの事を忘れているようにタウエルンに何かを呟いている。
「ショウイチ君! もう敵が迫って……」
「ソーラーキャノン、展開」
ショウイチがそう呟いた瞬間、タウエルンの胸部が両端にスライドし、黒光りする武骨な砲口が姿を現した。
その砲口は上下左右すると、黒騎士達へと狙いを定めた。驚くべき事は、この武装が展開するまでの時間は――――僅か0.59秒である。
砲口より繰り出された眩い光のそれに、黒騎士達は巻き込まれた。ショウイチ達に向けていた槍が見る見るうちに融解していく。
レーザーともビームとも違うその攻撃は、まるでバーナーの様に黒騎士達を炙ると、ゆっくりと収束していった。
危険を察知したのか、攻撃範囲に至らなかったのか、2機が素早い動きで後方へとバックステップした。攻撃の余波を受けたのか、持っていた槍の先端が溶けている。
そこには上半身を失い、機能を停止した黒騎士達の脚部が一機、二機と倒れていく。得体の知れないパーツ群が露出したその姿は、どこかグロテスクである。
「ば、馬鹿な……な、何なんだ、おい!」
大男が驚愕と言った表情でタウエルンを見、そう叫んだ。トニーはと言うと、目の前で起こった事が理解できず、ポカンと口を開けている。
「あ……えっと」
首を振って呆けを覚まし、トニーはショウイチとタウエルンに目を向けた。何が何だか正直理解できないが、凄い。
タウエルンはあの黒騎士を一瞬で数機葬ったのだ。その証拠に、上半身を失った黒騎士達が地面に突っ伏している。その時だ。
「ショウイチ君! 上だ!」
空から黒騎士が、タウエルンに向かって襲いかかってきた。タウエルンを危険な存在と認知した事で、大男の命令より、破壊を優先する様だ。
タウエルンは黒騎士に対して顔さえ向けず、右腕を上げた。すると右腕の装甲が大きくスライドし、中からウエハース状の物体が飛び出した。
瞬間、ウエハースの隙間から、先程の光と同じ物質が黒騎士を貫いた。巨大な板の様に成形されたそれが、黒騎士を蒸発させるのに数秒掛からなかった。
連携攻撃のつもりか、正面から最後の黒騎士が小細工なしでぶつかってくる、が、タウエルンはただ空いている左腕を正面に向けただけだ。
そして、タウエルンは装甲を元の状態に戻し、上げていた右腕を下げると、左腕と同じく、黒騎士に向かって正面に向けた。
黒騎士が両手を広げ、タウエルンの両腕とぶつかる。黒騎士の腕部分が軋む音がする、がタウエルンは微動だにせず、反応もしない。
すると、タウエルンは体勢を低くし、一気に黒騎士の拳を叩き潰した。黒騎士が拳を失い、バランスが揺らいだ瞬間。
タウエルンは一気に黒騎士に接近し、密着すると、展開状態であるソーラーキャノンを押しつけた。そしてタウエルンは呟く。
「……許してくれ。君達に、罪は無い」
一瞬の閃光――――そこには黒騎士の姿は無く、ソーラーキャノンを露出させたままのタウエルンが立っていた。
「ま、マジかよ……」
大男は目の前の光景にただただ青ざめるしかなかった。ソーラーキャノンを収納したタウエルンが、一歩、二歩と大男に近づいてくる。
「来るな……来るんじゃない!」
腰元から大きなナイフを取り出し、大男はメルティの頬に当てた。自らを奮い立出せる為でも、最終的な自己防衛でもある。
「もしもこれ以上近づいてみろ。この女の顔に、一生物の傷が付くぞ」
「や、やめろ! メルティに手を出すな!」
トニーは慌てて、大男にそう叫んだ。が、大男は興奮状態で今にもメルティを斬りつけてしまいそうだ。
「ショウイチ君……」
トニーはショウイチに対して、タウエルンを元の状態に戻してほしいと言おうとした瞬間、大男のナイフが、宙に舞った。
気づけば、ショウイチの右手に拳銃が握られている。そしてショウイチは続いて、大男の肩に向かってトリガーを引いた。
大男が呻き声をあげて、抱えていたメルティを話す。ショウイチはトニーに向かって叫んだ。
「トニーさん、今です!」
ショウイチの言葉に、トニーはハッとすると、直にバランスを崩した大男からメルティを抱きかかえてその場から逃げだした。
「やった……」
黒騎士がいなくなった事で安心したのか、信じられないくらいに軽いフットワークで、トニーはメルティを救い出せた。
メルティはまだ気絶している様だ。早く家に、と言うより安全な場所に避難したい。……そうだ、先ずショウイチに礼を言わねばならない。そう思ってトニーは振り向いた。
そこには、拳銃を構えて、大男の体を足で踏みつけながら、冷徹な表情を浮かべるショウイチがいた。
ショウイチ……いや、あそこに居るのはショウイチという青年だが、ショウイチに見えない。まるで、別の人間が乗り移ったかのようだ。
大男は撃たれた傷口が痛むのか息を荒くしている。が、ショウイチはお構いなく、大きな図体を踏みつけて問答する。
「誰からの命令だ? 黒騎士を所有してるって事はそこらのチンピラじゃないよな?」
「……何者だ、お前……あの自動人形と良い……射撃の……精密さと……」
ショウイチが大男の耳元を威嚇射撃する。その目、雰囲気、全てがさっきまでのショウイチと違う。
「俺は褒めろとは一言も言ってない。死にたくなきゃ吐け。お前をここに送り込んだのは誰だ?」
大男は息を荒げながらも、ショウイチに目を合わせた。その表情には何故だか、穏やかさが漂っていた。まるで死を待っていたかのように。
「……俺は、ただの、雇われた用心棒、だ。クライ、アントの事、何か、知らねえ……」
ショウイチは無言で大男に視線を合わせる。大男は観念したようため息をつくと、言葉を続けた。
「シュ……シュワルツっていう……元、帝国、軍人の野郎、だ。あんたと、同じように……な。場所は……」
その瞬間、大男の頭に風穴が開いた。ショウイチは銃弾が飛んできた方向に目をやると、何者かが逃げていくのが見えた。
大男は完全に撃ち抜かれた様だ。非常に凄惨な光景である。ショウイチは大男から足をどけた。
と、タウエルンがショウイチの肩に手をのせた。ショウイチは疲れたそぶりで、タウエルンの手に、自分の手を重ねた。
「ショウイチ……」
「悪いな、タウ……昔の癖が出ちまったみたいだ」
破壊された黒騎士達と、横たわる大男の死体。戦いはひとまず終わったようだ。
「取りあえず……トニーさん、メルティさんと一緒に家に帰りましょう。ここに居ると危ない」
「あ、あぁ……そうだな」
なるべく、大男の姿を見ない様に、トニーはメルティをおんぶし、自宅へと足を進めた。ショウイチもそれに続く。
と、ショウイチは振り向き、タウエルンに言った。
「タウ、悪いけど……頼むな」
ショウイチの言葉に、タウエルンは無言で背部のブースターを吹かし、あの機能を作動させた。
森の中を、もう一人の大男が疾走している。肩に狙撃用のライフルを引っ提げて。
「信じられん……あれほど、あれほど強力な自動人形だったとは……」
走りながら大男は腰のホルスターに引っかかっている無線機を取り、通信を入れた。
「レフトだ。シュワルツ様に繋げ。
……失礼します、シュワルツ様。異変の原因が分かりました。それと、ライトが……」
トニーは自宅のカギを開けた。幸運な事にこの家に危害は及んでいないようだ。
メルティを寝室に寝かせ、トニーは居間の椅子に座った。何故だが偉く疲れた。一気に疲労感が襲ってくる。
だが、妙な突っかかりが頭の中をぐるぐると回っている。それは全て……。
「……少しいいかい? ショウイチ君?」
目の前で座っている青年、ショウイチ・マーチマンの事だ。今更ながら実感する。この青年は普通じゃない。
あのタウエルンという自動人形も、正確に大男を倒した射撃技術にしても、何もかも普通じゃない
「はい、何でしょう?」
あっけらかんとした明るい口調で、ショウイチはトニーに顔を向けた。奇妙な緊張感が張り詰める。
「君は……君はいったい何者」
その時、激しくドアを叩く音が部屋に響いた。トニーは一瞬体を強張らせると、ショウイチに待っている様に言ってドアに向かった。
訪問者に声を掛ける。
「すまないが今取り込み中なんだ。またの機会にしてく」
「トニーさん、あたし! クレフよ! 早く開けて!」
馴染みのある声に、トニーはドアを開けた。すると目に涙を浮かべたクレフが飛び込んできた。
「ちょ、クレフちゃん!?」
「村長が……村長がシュワルツに殺された!」
続く
投下終了です。それと設定的な物を。
上から世界観・主人公・主役ロボです
ずっとずっと先の未来、自動人形と呼ばれるロボット同士の戦争で荒廃した世界
人々はその中で残った僅かな資源を活用しながら、畑を耕し、自然と触れ合いながら生きている
時折、前大戦の負の遺産である自動人形が掘り返される。まだ利用できる場合は利用され、不良品の場合はパーツなどをばらされて市場に売られる
完全な状態で利用できる自動人形もあるらしく、内戦等でいまだに戦争の道具として利用される自動人形も、ある事にはある
ショウイチ・マーチマン タウエルンと旅をする不思議な青年。外見は青年だが年齢は不明。
年齢以前に経歴他も現時点では一切不明。一つ分かる事は、タウエルンとはパートナーである事のみである
タウエルン ショウイチと旅をする自動人形。トラクター→人型→戦闘用と三段変形する
ショウイチと同じく、全てが謎に包まれている。ただ、太陽の光が重要なエネルギーらしい。
耕作用にも戦闘用にも。
>>168 承諾しました。
まぁ自分のは設定みたいなのは上の三つくらいしかないんで、どうとでもなりますよw
スパロボ企画に
瞬転のスプリガン
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ
で参加表明しときます
本編で出してない敵って出していいのかな?
うちなら獣属・鱗属の魔族とか、よそなら作者様の了解や設定を受けて土竜型以外の鋼獣とか、天狼以外のメタビとか。
個人的に、獣属vs獣耳とかやってみたい!
>>176 肥えはスリル・ショック・サスペンス!
タウエルン&ショウイチの強さ、堪能させてもらいました
ソーラーキャノンっていうネーミングがなんか好き。フシギバナー
個性的だからスパロボでも埋もれなさそう
おっと念のため。
tes
ショウイチとタウエルンが悪党共を叩き潰す様がいい。シュワルツを倒すんだ!
海上都市姫路守備隊戦記、参戦OKです。
実際やるとして最初から全ての作品世界が融合している普通のスパロボ式か、別々の世界が融合されるスパロボZの多元世界方式とどっちがいいですかね?
>>177 姫路の魔族はジャーク帝国以外敵とみなしていないので、スプリガンの魔族と味方になる事はまずないでしょう。
敵対関係か、同じ魔族同士なのでお互い不干渉を決めているのか、対ジャーク帝国戦のみ協力している、という所です。
>>180 私がやると私情が入りそうだ。
この際(受け持ってくれる作者様がいれば)丸投・・・そっくりお任せしても面白いかもしれませんね。
■1 企画概要
2ch創作発表板「ロボットSS総合スレ」発祥作品群によるクロスオーバー
■2 参戦作品(募集中→■3)
☆海上都市姫路守備隊戦記◆gD1i1Jw3kk
☆最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ◆46YdzwwxxU
☆瞬転のスプリガン◆46YdzwwxxU
☆Tueun◆n41r8f8dTs
・五十音順
・ここには
>>168以降に作家本人による参戦表明が明確になされた作品のみ記載します
■3 参戦作品募集条件等(要議論)
(1)原作者が2ch創作発表板「ロボットSS総合スレ」の住人であるか、また住人となること
(2)原作者がプロローグ募集開始(→【4】)までに、“原作者以外が人物や機体を動かせそう”な程度の設定及びSSの発表をすること
・参戦させたい人物の「会話」と、参戦させたい機体の「戦闘」は必須
(3)原作者が最低一本は自作品以外のキャラを使用したクロスオーバーSSを書く意志を持つこと
(4)原作者が自作品及び他作品、そして参加者を尊重できること。また、企画の成功と自作品の完結のために努力できること
・以上の条件を全て満たせるなら、いわゆる飛び入りもOKということ
■4 参加資格(参戦作品原作者以外も含む)
(1)2ch創作発表板「ロボットSS総合スレ」の住人であるか、また住人となること
(2)参戦作品そして参加者を尊重できること。また、企画の成功のために努力できること
■5 プロローグ(要議論)
募集準備中
・参戦作品確定後に募集し、参加者による決を取ります(その際、議論による微修正等も検討します)
■6 舞台世界(要議論)
暫定的な方針として、基本となる世界の他に「ファンタジー系作品を包括できる異世界(便宜上「魔界」と呼びます)」を設定することを提案します
・基本世界日本(現代もしくは近未来の日本。作品としては姫路B、ネクソン、スプリガン)
・基本世界荒廃(地理的には中東あたりで。作品としてはタウエルン?)
・魔界(初期は召喚など限られた手段でしか行き来できない。ジャーク魔法帝国(姫)、魔族(姫)、魔族(ス)の勢力圏。作品としては姫路、スプリガンB)
もちろん、最初期にタウエルン組が日本の農地でオロオロしていたり、スプリガンが(設定上可能なら)魔界で武者修行していてもいいでしょう
ただし、「魔界」は異世界であることに留意し、明確に基本世界を舞台とする作品のキャラの場合には要議論ということで
まずはこの三つをフィールドに、世界観のやや近い二、三作品くらいでクロス
あとは特に縛りは入れずに作家陣の発想に任せたいかなと。行き詰ったら議論
■7 SSについて(要議論)
(1)リレーSS形式で行います
→形式的にはロワ企画に近い感じで
(2)要予約(→■8)
(3)投下までの期限は大雑把に一週間
→一言断れば更に一週間延長アリ。つまり予約してから最長二週間。それ以上は“原則として”破棄
(4)文章量の規定はなし。一話一話が短くてもバンバンリレーが進む方がいいかも
→インターミッションだけ、戦闘だけ、悪人同士の悪巧みだけ、でも結構です
(5)同一作家によるリレーは推奨しませんが、作家が少人数になると予想されるため止むなしか?
(6)参戦作品の原作者以外にも作家募集中!
(7)■3(4)及び■4(2)に違反した場合は議論に掛けます
(8)作家は予約、延長申請、投下の場合にはトリップを付けてください。
■8 予約について(要議論)
「同一時間に同一人物が別の場所にいる」といった矛盾を生じさせないための措置です
予約された人物や機体は、他の作家によって使用できなくなります(量産機等を除く)
予約を行った作家は、人物や機体を独占しているという自覚を持ち、可及的速やかに執筆してください
(1)基本的に作品名(→■2)、集団名、もしくは人物名で、「作品名A、作品名B、人物名1@作品名C、集団甲@作品名D・・・」などという形式で行います
・ここでいう「集団」とは、「シュワルツ一味」「村の人々」「セイギベース3」「ドルンドメオン部隊」などで、その構成員全てを含みます
(2)機体はパイロットとなる人物と合わせて登場させることができます
・「清水静」で予約すれば、「専用重装甲強化服」がもれなく付いてきます
(3)パイロットなしで単独行動できる機体や、個体名を持つ巨大生物などは人物扱いとします
(4)「予約した作品や組織の中でも、特定の人物や機体だけを他の作家に譲る」といった特殊な状況では追記してください
・あんまりややこしくするのも何なので、他の作家に使われると困るものを書き出す方向で
・フルネームでなくても判別できればいいです
・執筆途中に面白い展開を思いつくこともあるでしょう。宣言すれば途中追加もアリとします
■9 クロスオーバー(要議論)
・時間的な矛盾が出ないようにしながら、作品単位ではなく人物単位で動かすと多作品クロスオーバーの幅が出るでしょう
・情報交換を活発にしつつ、自作品のキャラ以外でも頑張るようにしましょう
・某ディケイドの「虫(ワーム)には虫(クウガ)だ!」といったような、面白い組み合わせを探してもいいでしょう
■10 敵(要議論)
敵は絶対的な種類が少ないので、原作の組み合わせに拘らず、割と自由にシャッフルしてやれたらと思います
世界各地に出現する設定などを上手に使いましょう
・荒廃世界でスプリガンを出さずに「タウエルンVS甲属魔族」とかで害虫駆除バトルをしても、それはそれでOK
・原作未未登場でもいることが明らかな敵は、原作者に設定の提供を依頼するか、勝手に設定したものでも原作者の許可を得ればOKとしたいと思います
・ラスボスは要議論
俺の考えた要綱はこんな所。
まだまだ手探りのためとんでもない見落としが山ほどありそうですが、これをひとまずの叩き台に議論してもらえれば。
異議や質問があれば誰でも遠慮なく。
・・・つか別のスレでやった方がいいかのう
スレ名間違えた
×ロボットSS総合スレ
○ロボット物SS総合スレ
この手の企画は元作品が完結してからじゃないとコケる。ぜっっったいにコケる。
クロスオーバー企画が楽しいのは分かるし、俺もやってみたいと思うけどもうしばらくは我慢した方がいいと思うよ。より楽しく、より良い作品にしたいのなら。
完結してもコケるときはコケる
俺は各作品が完結するまで待っていたら一生できないと思うね
とりあえず、投下や参加表明自体はこのスレでいいとして
そこらへんのルールその他は避難所なりなんなり、別の場所でやったほうがいい
あと言っちゃ悪いが、いきなりトリつけてルールをポンと出してその態度は
傍からすりゃスレの私物化っぽく見えなくもないので、注意したほうがいい
近いうちに企画を動かしたいというのに文句を言うつもりはないが
もう少し我慢して、他の人も交えて色々煮詰めた上でも遅くはないんじゃないかな
まぁ取りあえず、各作者さんの意見を聞いてみたいな
後、参戦確定した作品以外の作者さんの参戦意思も
主導するのはいいってかむしろ率先して動いてくれるのはありがたいのだが
>俺は各作品が完結するまで待っていたら一生できないと思うね
お前さ、これはちょいと作者さんに失礼なんじゃねーの。暗にどうせ完結しねーんだろって言ってるも同じじゃねぇか。
まぁ言いたいことは分からないでもないんだけど、ね。
すまない。いいすぎたし、一人ではりきりすぎた。意見を感謝する。
俺は個人的には、この企画が作家陣の創作意欲の刺激になればいいと思っている。
このスレは基本的に感想が少ない。作者からすれば、自分の作品がどう思われているのか全然分からんはずだ。
それでは完結させるだけのモチベーションも湧かないだろう。
スパロボで作家陣だけでも連携できれば、あるいは活性化につながるんじゃないかと思って強引に進めてみた。
更に言えば、それほど壮大化・長期化させるつもりもない。
一段落付いた作品で楽しく遊ぼうと、そんな感じだ。
それでも時期尚早だというならそれもそうかもしれん。
参戦を表明してくれた作者も、今から撤回してくれても構わん。
ま、企画が企画だしゆっくり考えてけば良いよ
まぁ本編間際の息抜きって感じで楽しんでさ
CR参戦します、よーわからん場合はキャラ世界観ぶっ壊しまくっても構わんです
赤い光の正体はそれなりに引っ張る予定なので、自分の執筆がそこまでいけてなかったら
なんかよくわからん不思議パワーとして扱ってもらえるとうれしいです
クロスオーバーで新規設定にされると嬉しくなって作者に抱きつきます(富野監督風にw)
とりあえず一応の描写のイメージとばらしてもいい程度の設定だけ
無視、改変いくらでも来いなので参考程度にしてくださいw
・黒峰潤也
あんまりまだ描写してないので詳しく書けないんですが
一言だけ言うと捻くれ者です
一応、SIDE Cの終わりに・・・ゲフン、ゲフン
・リベジオン(ブラックファントム)
いわゆる魔王のイメージです、鋼機をベースにしてますが、操縦方法が鋼機と若干違います
武装は多機能可変の槍(普通に突くのと展開して遠距離射撃をする二つの機能があります)
両方とも赤い光を利用していて突いた対象を消滅させたりします、自己修復機能持ちです
赤い光が漆黒の機体を駆け巡るイメージです(若干、違いますがOFのエネルギーラインのイメージに近い)
ロストテクノロジーが使われていますがベース自体は昔の機体をベースにしてますので、そこら辺をクロス設定に使ってみると面白いかも
・鋼機
作中であんまり説明する余裕が無さそうなので、せっかくなのでここで説明
これ自体はこの間公開した、シャドウミラージュから設定をほとんど変えずに作ってます
共通武装はバイブレーションナイフのみです
コンセプトはシンプルなベースを使ったカスタム機で搭乗者によてMSV並のバリエーションが出来たら良いなーとかいう、儚い願望がありますw
武装に関してはかなり自由です、作中で出す武器はモンハンとMGSの二つをモチーフにしてたりするのでそこら辺から武器をチョイスして貰えれば俺のイメージに近いと思います
弓系の武器とかは爆弾矢を発射するみたいな感じで考えています
出てない武器を使っても俺の中では違和感全然ありません、ビーム兵器は現状ではまだ出す予定が無いのでちょっとイメージとは違うかも知れない
作中に出てきたディールダインというのはエネルギー増幅作用がある特殊な鉱物です
これを用いる事によって、低燃費で高いエネルギーを得る事が出来ます
これを使う事によってアインツヴァインは機体の小型化と多機能化に成功しています
ただし、あんまりにもエネルギー増幅量がピーキーなので、中々実用化には至れませんでした
それをさまざまな研究の末に実用化したのがS-21アインツヴァインになります
形式番号を21にしたのはBJから、アインツヴァインは逆転の意味を含めて
・鋼獣
えーと、SIDE Bの時点で気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが
驚異的な能力と引き換えに索敵がゴミ屑レベルです、あとあんまり数がいません
数がいないから政府軍が持ちこたえられているという感じです
ちなみに天狼は鋼獣の中の下ぐらいの能力です
これも本編で説明するか不明なんで言っておきますが特に空中にいるときは聴覚の神経をカットしているので、まったく音が聞こえないなんて状態になってます
その内(といっても今、非常に忙しい状態ですので申し訳ないが少し時間かかると思います)、レポートみたいな形式で政府軍側から見た鋼機に関しての考察みたいなのを投下する予定です。
一度書いてたのがデータ飛んじゃって涙目になってたりはするんですが(´;ω;`)
・秋常譲二
正統派主人公タイプ
熱血漢かつ、頭が良いが熱し易いのが難点
最新鋭機アインツヴァインの開発が彼がいてこその賜物
リベジオンに嫉妬と羨望が混じったような感情を抱いている
・シャーリー・時峰
世界政府第七機関「イーグル」所属で戦闘部隊の隊長、一応この人に関しては説明したのでまあいいかと
シスターズも参戦させたいけど
こっちは現状じゃ背景まったくなくて無理だからな(´・ω・`)
まあ、乱入させやすい設定だけど、無理やりがいくらでもできる設定だし
反応を見た感じ、みんなが企画の是非も含めてちゃんと意見を出してくれそうなので、俺が仕切る必要もなくなった。
よって俺は一参加者に戻る。不快な思いをさせてすまなかった。
1からみんなでやり直そう。
>>193 感謝する
予告どおりリアルロボット系にて参戦!
といってもボトムズとかガサラキとかの様な小サイズのロボットです
そしてガンパレ風味
少女機甲録(仮)
1/15
建物の影に身を屈める様に隠れていた87式機士の頭部センサーアイに光が灯り、ゆっくりと上半身を起こす。
身長4mの人型の装甲騎兵はその鋭敏なセンサーに複数の敵影を捉えていた。
敵の発する熱量、歩行する時の振動を各種のセンサーが関知し、その種類と数が即座に分析される。
「ガールズ・マルヒト(01)よりガールズ・マルマル(00)へ…
タイプA、6 タイプB、4 本町信号機前を通過し国道227号線を南下中…予定通り市営住宅の火点で迎撃する
マルヒトとマルフタ(02)はこれより誘導を開始、3秒間の射撃の後、後退する」
マルヒトの符丁を与えられた87式機士に搭乗するパイロットは10代の少女特有の高いソプラノの、透き通った声で仲間へと通信を行う。
接近してくる敵に電波無線が傍受される恐れは無いが、奴らはこちらと同様に熱や音には鋭敏な感覚センサーを有している。
目前500mにまで接近してきた敵に気付かれないよう慎重に立ち上がったつもりだったが、しかし気づかれてしまったようだ。
舌打ちをして操作グリップに回避行動の命令を入力する。
1秒後には隠れていた建物のコンクリ壁に十数本もの太い槍の様な弾丸が打ち込まれていた。
2/15
「マルヒト、射撃開始! 撃(て)っ! マルフタ援護っ!」
87式機士の右腕に装備された25ミリ機関砲がバースト(点射)モードで炎を吹く。
ドンドンドン、ドンドンドン、と2回に分けて三発ずつ打ち込まれた砲弾は敵、タイプAの6本足のうち3本を吹き飛ばし
マルヒトはそのまま背を向けて全力で後退した。
それを援護するマルフタの、同じく25ミリ機関砲のドンドンドンドンドンドンという連続した発射音。
マルフタはどうやらフルオート(連射)で撃ちまくっているらしい。
「マルフタっ! 射撃はバーストでって行ったでしょう!」
後退射撃位置に付いたマルヒトは事前の申し送りをマルフタが無視したのを叱責しながら、マルフタの後退するのを援護するために再度射撃を行う。
マルフタは連射でタイプBの1体の胴体を蜂の巣にすると、迅速に後退行動に入る。
これを繰り返しながら、じりじりと後退を続けるのがマルヒトとマルフタの任務だ。
「火点に到達するまでに敵の数を減らしておくのも大事だと思うけれど」
「そういことは考えなくていいの! 私達は軽装甲なんだから、まともに敵とやり合おう何て考えない!!」
3/15
言葉を交わしながら、後退→射撃・援護を交互に繰り返す。
軽騎兵型である87式の装甲防御力は頼りない。 敵の針弾を一発食らっただけでも戦闘不能になることもありえる。
致命部位に損傷を受けたら、それはパイロットの死を意味するのだ。
だから、マルヒトとマルフタの与えられた任務は偵察と、建物から建物へと退きながら敵をこちらが罠を仕掛けているポイントまで誘導する囮だ。
今のところ、被弾は無い。 あと800m後退すれば、火点に到達できるはずだ。
と、後方から白い煙の尾を弾いて一発のミサイルが飛翔してくる。
そのミサイルはおそらく目標にしたであろうタイプAと自身の間にある民家に突っ込み、爆発した。
「マルマルっ、今の誰!? まだ攻撃距離じゃないでしょ!? マルナナ(07)!?」
マルヒトが怒りの声を上げると、ノイズ交じりの通信にマルナナが答えた。
「私じゃねーよ、初李だよ。 だから言ったじゃん、こっからじゃ当たんないって…」
初李、とはマルハチ(08)のパイロットの名前だ。
マルナナ・マルハチの82式機士は砲撃・火力支援型の砲兵型と言われるタイプである。
砲やミサイルを装備し、遠距離から装甲目標を精密攻撃したり、小型目標を面制圧したりする。
「…87式と82式はデータリンクがあるから、マルヒトかマルフタが照準している目標に誘導が可能だわ」
「何馬鹿なこと言ってんの! 打ち合わせにあったこと以外はしない! それに、81式誘導弾の性能じゃ
市街戦では建造物が邪魔になって当たらない!! ボケてるの!?」
4/15
データリンクは情報共有、他者のセンサーで捉えた目標の情報を自分も手に入れることが出来る機能である。
例えば、マルヒトの87式機士が照準に入れた敵は82式のセンサー外にいてロックオンしてなくても、情報共有によって
ミサイルを発射すれば敵に命中させる事が可能である。
しかし、今マルハチの82式機士に装備されている81式誘導弾は障害物を自己判断で回避して目標に命中する機能は持っていない。
そのため開けた場所でしか使えないのだが、マルハチのパイロットは何故か発射してしまった。
もっともイチイチそれを責めていてもしょうがない。
マルマルからマルハチまで、パイロット全員が戦闘に関してはほぼ素人なのだ。
それに今は作戦行動中だ。 言い合いやお説教をしている暇は無い。
戦闘が終わって機士から降りた後にするべき事だ。
マルヒトは小さく舌打ちすると、諦めて任務の続行に専念した。
そして、マルヒトとマルフタが予定のポイントに到達しようとした時だった。
「よし、あと50m…ってちょっとぉぉぉ!?」
「全体、撃てーっ!!」
まだ敵が予定の攻撃圏内に入りきっておらず、マルヒト・マルフタが回避しきっていないのに火点から射撃が開始されてしまったのだ。
仲間たちの放った無数の機銃弾、砲弾、ミサイルの雨に飲まれ、閃光と爆発に囲まれながらマルヒトの操縦室内でモニターがブラックアウトした。
5/15
…機士という兵器の始まりは、まだ人類が剣と槍と鉄砲で戦争をしていた頃に遡る。
突如として戦場に革新を与えた新兵器、それは人間が装着する事で何倍もの筋力を得る事が出来、
しかも刃物も矢玉も跳ね返す頑丈な甲冑を纏った歩兵であった。
倍増した筋力によって通常の人間が複数でなければ持ち運び出来ない重火器を携帯でき、
倍増した脚力によって塹壕も障害物も楽々と越え、そして装甲によって銃弾の雨の中でも平然と戦い続けることが出来る。
まさに、絶対に倒れる事の無い不死身の兵士の登場だった。
やがて戦争は、強化服…パワードスーツとも呼ばれた甲冑を纏った兵士同士の戦いへと移行する。
パワードスーツ同士がぶつかり合い、銃弾や砲弾を浴びせあい、敵の火力に対抗するためにより重装甲に、
敵の装甲を打ち破るためにより重火力に、そして増大した装甲と武装の重量を支えられるようにより高出力に、
そうして性能を肥大させていったパワードスーツは通常の等身大サイズから、2m、3m、そして現在の4mに到達した。
それが、「機士」と呼ばれる装甲された巨人、人型兵器の誕生である。
現代では、歩兵の主力はほぼ機士だ。
機士以前の3m以下のサイズのパワードスーツを装備している歩兵部隊もまだ残ってはいるが、二線級の部隊が多い。
あるいは、技術や経済力の追いついていない後進国は旧来のパワードスーツを主力にしている。
しかしユニオン合衆国や日本、ヨーロッパ連合諸国や社会主義連邦などの先進諸国は機士を配備していない軍は
ほぼ存在しないというくらいに常識化している。
そして、戦車等の兵器はほぼ存在しない。
昔から、野戦砲などはパワードスーツで牽引すれば良かったので、車両の発達を促さなかったのだ。
そのため、現在の軍隊の多くは輸送車両や、一部の自走榴弾砲や自走ロケットランチャーを除いて戦闘車両は無い。
装輪式の軽戦車・駆逐戦車というものを配備している軍隊があるのみだ。
6/15
このように優秀性を発揮した機士に代表されるパワードスーツ兵器だが、大きな謎があった。
一つは、誰がどのようにしてこのような兵器を発明したのか全く不明である事。
もう一つは、パワードスーツの搭乗した当時、人類はまだ蒸気機関車の黎明期にようやく手が届くという程度の
文明しか持っていなかったにも拘らず、パワードスーツというオーバーテクノロジーを手に入れることが出来たという事。
最後の一つは、パワードスーツを初めとして、この世界でそれらの発達した兵器の製造を担っている
「セントラル」と呼ばれる企業組織について、誰もその詳細を全く知らないという事だ。
そして、その機士という兵器、現代の甲冑を身にまとい北海道は函館を守るために日々訓練している少女達が存在した。
「……全員、そこに正座!!」
コンピューターソフトによる訓練シミュレーションプログラムが終了し、ソフトの自動採点の結果が
Bマイナスという厳しい評価だったことよりも何よりも、訓練中の様々なことがマルヒトのパイロットである
葉倉 玲(はくら れい)の怒りを有頂天に到達させていた。
一つ、僚機であるマルフタのパイロットである井沢 咲也(いざわ さくや)は無駄に弾を撃ちまくる。
一つ、砲兵班のマルナナのパイロット、野礼寺 初李(のれいじ はつり)は攻撃圏外からミサイルを撃つ。
一つ、極め付けに、予定のポイントで攻撃するタイミングが早すぎる。 あまつさえ、自分ことマルヒトと、マルフタが
退避を完了してないのに巻き添えにする。
おかげでマルヒトは大破・戦死判定、マルフタは脚部大破、脱出判定…
「これがシミュレーションじゃなくて本番だったら、私死んでたのよ? そんなに私を殺したいわけ?
敵じゃなくて味方を撃ちたいわけ? だいたい、事前に作戦内容を3回も念入りに説明したよね?
何聞いてたの? 聞いてなかったの? それとも私の説明が足りなかったの? 馬鹿なの? 死ぬの?」
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一列に並んで正座させられている陸上自衛軍第28連隊の第4中隊の面々は、顔を下に向けてシュンとしていたり
頭をポリポリ書いていたり、何を怒られているのか理解してなさそうなキョトンとした表情をしていたり、
私は何もしていないのに…と迷惑そうな顔をしていたりと様々だった。
中隊といっても玲を含めて14名、せいぜい2個分隊相当の人数しかいない。
そのうち、機士は8台しか無いので戦闘に出られるのは半分だけで、残りは整備班とか、機士のトランスポーター(輸送車)の担当だ。
戦闘に参加してない(シミュレーターを見ていただけ)のに正座させられた上にお説教もされて不満顔の整備班だがこれも連帯責任という物である。
部隊は規律と結束が必要なのだ。
「えー…でも敵は全滅できたわけだし…ほら、麗は尊い犠牲という奴で」
「私はまだ尊い犠牲とかになるつもりは無いの! それとも今度はあんたが87式に乗って偵察と囮をする!?
でもって味方に撃たれて見なさい! このスカポンタン! 幕の内!」
「ま、まくのうちゆーなー!」
言い訳をしようとして、逆にどなりつけられて涙目になりながらうーうー抗議しているのは暮内 麗美(くれうち れみ)。
重歩兵型の89式機士、符丁マルサンを担当し、一応中隊の隊長を任命されているが隊長としての威厳はあんまり無い。
幕の内という彼女のあだ名は配属初日の顔あわせで名前の暮内を「幕の内」と読み間違えられたのが原因だ。
そして、今のところ中隊長である麗美よりも、先に第4中隊に着任して訓練を始めていた玲の方が「最先任」であり立場が上だ。
中隊長というのは本来、幹部(士官)である。
しかし、軍隊というのは階級よりも「先にいた先輩」の方が立場が強いと言う事がある。
経験者である最先任は中隊長や小隊長の補佐をするサブリーダーであり、時には中隊長に代わって部隊を取りまとめる陰の実力者である。
支援
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加えて、中隊長といっても麗美は配属されたばかりのド素人。
最先任の役目には新米隊長を厳しくも優しく叩き上げて一人前に鍛えることも含まれている。
玲の麗美に対するそれも、中隊長に早く立派になって欲しいという愛の鞭である…はず。
「まあまあ玲、そのへんにしとこーよ。 仮にも中隊長様がかわいそうだ」
「真璃、あんたは82式の装備が打ち合わせと違ったみたいだけど、またシミュレーション設定を勝手に弄ったの?」
助け舟を出そうとした桐嶋真璃(きりしま まり)、マルナナのパイロットが玲に問い詰められて慌てて白々しく目を逸らす。
真璃は作戦内容の用途や役割よりも、自分の好み・趣味で装備を選びたがる傾向がある。
この間も、迅速な機動力と陣地転換を求められる訓練で82式に重量のかさばる105ミリ砲を装備させ、足が鈍って
敵の砲撃で逃げ切れず大破判定をくらっていた。
「せ…戦争は火力だと私は思う! ランチェスター大先生も言っていた!」
「そうね、戦争は火力ね。 ついでに言えば弾幕ね。 でもって敵、『ワーム』は装甲は固いから小銃弾は効かないけど
20ミリ機銃や40ミリ機関砲は有効だから、それらによる銃弾の雨を浴びせるのが一番いい。
単発の威力が大きい105ミリは魅力的なのは私もわかる。 でも徹甲弾を撃つよりも、榴弾の方が効果的。
…そういえば私、今回は105ミリ砲弾を食らって戦死したようだってシミュレーションソフトは分析しているのだけど
真璃、あなた私を狙って撃ったとかそういうのは無いよね? いくらなんでも、味方を狙って撃ってるとかは無いよね?」
玲が般若の様な恐ろしい表情で笑いながらじっと見つめてくるので、真璃は顔を絶対に正面を向けることが出来ない。
しかし、玲は横に回って嫌でも真璃と顔を合わせようとする。 怖い。
ダラダラと嫌な汗が真璃を襲った。
「玲…あんまり真璃を虐めるのはよしなさいよ。 真璃だってわざとやったんじゃ無いんだろうし」
「有理、マルヒトとマルフタのそれぞれの大破判定に合わせて、整備班に両2機の徹夜の完全整備を申し付けようか?」
「OK、真璃の責任ね! 全部真璃が悪い!」
麗美を助けようとして自分の薮蛇状態になってしまった真璃を助けようと整備班の真門 有理(まかど ゆうり)が
口を挟もうとするが、同じように薮蛇になる事は速攻で回避した。
真璃と有理は親友同士ではあるが、玲の怒りの矛先が我が身にも及ぶようなことだけは御免こうむるようだ。
そして真璃は「うらぎりものぉ…」と泣きそうな顔になりながら呟いていた。
9/15
「いい!? 兵隊はそれぞれの勝手な判断で動いちゃいけないの!! 一人がチームワークを乱したら、全員が危険になる。
自分が正しいと思う考えを持つなんてのは、綺麗さっぱり捨てなさい!! それは大抵の場合、間違ってるから。
間違った行動を間違ってると気付かずに延々と続けるのが、敵よりも厄介な敵なの。 自己判断よりも、部隊の方針に従うこと!!
以上、解散!!」
小一時間ほど説教されて、痺れた足や軋む腰をさすりながらめいめいが立ち上がる。
機材を片付けて、掃除して、着替えてシャワーを浴びたら休憩時間だ。
休憩時間が終わればまた訓練がある。 軍隊とは訓練に次ぐ訓練の連続だ。
戦時下とあれば、尚更である。
そう、この時代の日本は今、戦争状態にあった。 敵は『ワーム』と呼ばれている。
ワームは80年ほど前に地球上に出現した謎の生命体群であり、人類に敵対行動を取る全世界共通の敵だ。
その正体は宇宙人であるとも、どこかの国が開発した生物兵器であるとも噂されるが、よくわかっていない。
6本あるいは8本の脚を持ち、2m〜8mの様々な大きさと種類をもち、頑丈なうろこ状の皮膚の表面には
16個の目の様な感覚器官を持つが、視覚は持たず聴覚・嗅覚、そして赤外線を探知して周囲の環境を把握している。
ワーム同士の主なコミニュケーション手段は一種のフェロモンであり、分泌物質の匂いで意思疎通を行う。
彼らを一言で表現するなら、まるで陸上生活に適応して歩行するタコに似ている。
ワームの目的は、土地の占領だ。
人類に戦いを挑み、その土地の人類を皆殺しにして占領し、そこに共生している菌類の様な植物を移植する。
それを栽培してワームは食料を獲て、そして繁殖している事がわかっている。
ワーム達の繁栄には、共生植物を植える土地が必要ということだ。 同時に、共生植物の養分にするための動物の死骸も。
人間も、その他のあらゆる動物をワームは捕獲し、殺して引きちぎり、共生植物の胞子を植えつけて苗床にする。
ワームにとって人類は敵であり、同時に肥料というわけだ。
日本がワームと本格的な戦争状態に突入したのは、中華民国がワームに破れ台湾に逃げ込んだ30年前からだ。
東アジアはほぼワームの制圧下に置かれ、日本は大陸にあった植民地を失い朝鮮半島まで勢力を後退した。
日本、ユニオン、社会主義連邦の共同による総攻撃もワームの侵攻を食い止めることが出来ず、大陸から完全に撤退したのが20年前。
そして、ついに本土に上陸したワームとの総力戦が開始されたが、大陸撤退戦後に戦力を改編し
防衛に力を注ぐ形で特化した自衛軍はワームの侵攻をよく食い止め、一進一退のこう着状態を作り出すことに成功した。
ワームは上陸するたびに海に追い落とされ、島国日本はその地理的状況を優位に活かし初めて人類にとっての一定の勝利を生み出した。
10/15
だが、ワームは突如として西日本からの上陸戦を切り替え、東・北日本への撹乱行動とも言える上陸作戦を仕掛けてきた。
北海道と本州を分断するための津軽海峡制圧戦もその一つである。
本土との連絡を閉ざされた北海道駐留の陸上自衛軍第2・第5・第7師団と第11旅団は窮地に立たされ、
不足する兵員を補充するためについに学生を兵士として動員する政策を北海道地方政府に提案する。
この動員には志願という建前で多くの16歳以上の学生が戦争に身を投じたが、その中にはごく少数の女子学生兵士の姿もあった。
「…まあ、自衛軍の軍人さんたちも、女子が軍隊に志願してくるなんて想定してなかったんでしょうね」
グラウンドの片隅に設置された水飲み場で口を拭きながら一息つくと、整備班の八橋 由香里(やつはし ゆかり)が玲に声を掛けてきた。
水飲み場の周りには運動着を着た中隊の全員がぜいぜいと息を付きながらへばっている。 地面に倒れこんでる者もいる。
10kmのランニングをしただけでこのザマだ。 兵士にとって最も重要な体力が足りない。
それほど苦しそうにしていないのは、彼女らより半年も早く訓練を受けていた玲と、由香里。
元々運動のできる咲也とかぐらいで初李や有理といったインドア派はもう死にそうになっている。
女子というのは体力的に男子より劣るものだ。 だから、兵士としては余り役に立たない。
立つとしても、後方任務等が関の山で、歩兵なんかには通常は配属されない。
しかし、戦う意気に老若の区別なく、志願にも男女の別は無いという建前で学生への呼びかけを行った自衛軍は
彼女達を受け入れざるを得なかった。 結果、持て余している。
「…だからなんなの? 適正があろうと無かろうと、私たちはもう兵士。 与えられた本分を果たすだけでしょ」
玲は平然と…平然を装ってそういうが、由香里はちょっと困ったような苦笑いをして玲に言う。
同い年なのに玲より8センチも背の高い由香里は第4中隊が設立されて以来の同僚だ。
当初、第4中隊には男子・女子合わせて中隊の定数を満たすほどの人員がいた。
学生動員といっても、学生に本気で戦わせるつもりはない。
彼らは一定期間の訓練の後、後備として駐屯地の警備や一般市民の避難誘導に使われるはずだった。
しかし、前線での消耗が大きく人員の磨耗が予想よりも増えてしまったため、急遽第1〜第3中隊に大幅に人員を引き抜かれてしまったのである。
本来の中隊長(成人の、正規教育を受けた幹部)も、中隊長の戦死した第3中隊へと移動してしまった。
その後に配属されてきたのが、玲と由香里以外の現在の中隊の人員たちである。
あるぇ……さるさんバイバイか?
大丈夫かー?
>葉倉 玲(はくら れい)の怒りを有頂天に到達させていた。
ブロント語……?
というか投稿規制避けるためにももうちょい短いレス数にまとめた方が…
一レス、20行ぐらいが平均だし
ここは60行までは大丈夫なんだから
とりあえず40行ぐらいは使って次のレス行った方が良いよ
感想は全部投稿終わってからー
11/15A
学生兵士の麗美が中隊長を任命されているのも、その辺の関係で正規軍人を回す余裕がないからだ。
ちなみに、関係ないことだが麗美は玲より5センチも背が低く中隊で一番のチビである。
「真璃、貴女が軍に志願した理由って何だったかしら?」
由香里が唐突に、へばっている真璃に対して問いかける。
真璃は億劫そうな表情で、顔だけ向けて答える。
「えー…? 奨学金がでるからとか? まあ大学に上がるまで生きてればだけど。
うち貧乏だから、学校に行く金ないんだよ」
真璃の実家は雑貨店で昔は函館に観光に来る人々を相手に商売をしているが、ワームが松前半島に上陸し
本州との行き来を分断してから観光どころではなくなったために経営難に陥っていた。
由香里は次に、4台ある89式機士のパイロットを担当しているうちの一人の宵町 留美(よいまち るみ)に質問した。
「軍隊に入ればお腹いっぱいご飯が食べられるって聞いたからー」
11/15B
幼児の様な屈託のない笑みを浮かべて留美は答える。
留美も家の財政事情は良くなく、留美の住んでいた道北では一部食料品が配給制になっているため
家族の多い留美は食い扶持を減らす意味でも軍隊に志願したのだった。
「私は機士とか格好いいと思ってたし、触りたかったからかな。 乗れないのは残念だけど」
そう答えるのは整備班で、軍事オタクの川城 翠(かわしろ みどり)。
実家は自動車整備工場であり、機械オタクでもある。
彼女が機士に乗れないのは、車酔いしてしまうからだ。 機士は歩いたり走ったりすると結構揺れるのである。
「あたしはワームをやっつけるためよ! エースパイロットになって、タコの怪物どもをギッタンギッタンにしてやるんだから!!」
「私は散乃ちゃんに引っ張られて…」
勇ましい動機を叫ぶのは氷川 散乃(ひかわ ちるの)。 ロボットアニメやヒーローアニメが好きな、脳がお子様。
ご希望通りに89式のパイロットだ。
その散乃に付き合わされて志願したのはサイドポニーの髪型が可愛らしいにも関わらず、名前の字は女の子らしくないという
コンプレックスを抱える気弱な少女、泉沢 大(いずみさわ ひろ)。 通称だいちゃん。
皆に可愛がられる整備班のアイドルである。
12/15A
有理は女子高にいたが、妙に血気と結束にはやる同級生達がクラス丸ごと軍に志願するというので自分も志願せざるを獲なかった。
しかし、何故か自分以外は違う連隊の方に配属されてしまった。
初李は親が自衛軍の将校だったので、体力の無いにも関わらず世間体というので志願させられた。
対照的に麗美も親が自衛軍に所属しているが、彼女は自分からワームと戦うために志願した。
咲也は戦災孤児で、身寄りも無く施設も受け入れ先が少ないため軍に志願するしかなかった。
他にも、音楽大学に進みたいけどお金が無いので真璃同様奨学金目当てという歌川 美鈴(うたがわ みすず)…89式パイロット
好きな男子が志願したため自分も志願したけど、相手が別の中隊に配属されてしまった蛍原 理玖瑠(ほとはら りくる)…整備班
なんだかよくわからない内に「あなたも志願するでしょう?」と勝手に決められてしまった小沢 早苗(おざわ さなえ)…89式パイロット
皆が皆、望んで軍に志願したわけでも、兵士になりたかったわけでも無い。
様々な理由でここにいる。 無理に訓練した所で、命がけで戦えと言って従う方が少ない。
「加えて、たった14人で中隊なんて実質上の『書類上だけ存在する幽霊部隊』…真面目になってやっても馬鹿を見るだけよ?
必死に焦らなくても私達にまともな戦闘任務なんて来ないでしょうね。 もう少し気楽にやってもいいのじゃないの?」
…実際、第4中隊は第1〜第3中隊に引き抜かれなかった「余り物」の人員で構成されている部隊だ。
歩兵には必須の装備である機士も8台しか無い。 かといって通常型パワードスーツも無い。
12/15B
自衛軍の駐屯地には余裕が無いからと、部隊が駐屯しているのも生徒が疎開して無人になったので徴発した函館市内の高校の校舎である。
言い渡されている任務も「主力部隊の前線が打ち洩らした敵の浸透部隊が函館市内に侵入するのを阻止せよ」であるが、
今のところ出動命令が下された事は無い。 常に待機任務である。
「だからって、訓練をおざなりにしていい理由なんか無い」
玲は不機嫌そうに、自分のタオルを引っつかんで校舎の昇降口へと歩いてゆく。
由香里は、何かに苛立っているかのような玲のそんな後姿を心配そうに見送ったあと、疲れきった表情でいる中隊全員の顔を見回した。
(散乃とか、一部のお子様脳は回復も早かったのか立ち上がって整理体操を始めていたが)
「…私たちは素人もいい所なのよ? こんなペースで訓練につき合わされていたんじゃ、皆が持たないのに」
シミュレーションでも基礎体力練成でも、玲は厳しい。
中隊の最先任として、素人ばかりの中、成人の正規軍人の教官すらいない状況で数少ない、半年分だけ早い経験者として
全員を引っ張っていかなければならないと使命感に燃えているのかもしれないが、それにしても焦りすぎる。
何が彼女を急き立てているのか由香里には理由がわからなかった。
13/15A
午前中は教本片手に座学による講義と、実践に即した状況でのシミュレーション。
午後は体力づくりのためのランニングや、小銃での射撃訓練。
これを繰り返したら一日は終わり、日の落ちる頃にはクタクタである。
お風呂に入って汗を洗い流し、当番の者が夕食の準備をする。
暇な者は自分の洗濯物を洗うとか掃除をする。
軍隊生活は共同生活が基本だ。 全員が一つ屋根の下で同じように生活し、規則どおりに寝起きする。
が、それでもそれぞれの自由裁量で出来る部分が無いというわけではない。
特に、大人の軍人がいない第4中隊では規律はそれほど厳しくなく、少女らそれぞれの感性に任される部分も少なくなかった。
「I can't stop listening to Night Bird〜♪
Sing a song with a Curse IF I stop my nars
Crazy night I just want to listen to a terder curse?
Through the night I just want the voice」
「お、今日の夕食当番はみすちんだったか」
真璃が歌声と漂ってくるいい匂いにつられて食堂兼調理室になっている、元家庭科教室を覗くと美鈴が歌いながらシチューを作っているところだった。
13/15B
「材料は缶詰の戦闘糧食だけどね♪ ただ缶を湯煎して出しただけじゃつまらないし、そのままの缶詰糧食って
あんまり美味しくないしさ…ちょっと工夫したらどうかなって」
「いや、いいと思うよ私は。 みすちんって結構いいお嫁さんになりそうだよな」
軍隊生活での数少ない楽しみは食事だ。 暖かく美味しい食事は兵士の士気を維持するのに必要でもある。
そんな会話をしていると、匂いをかぎつけて留美、散乃らもドヤドヤと入ってくる。
食べ盛りの女子たちは食べ物のにおいにはかなり過敏である。
「シチューの匂い…今日はシチューなのかー」
「あたし、みすちんの作るごはん好きだよ! みすちん料理うまいもの!」
「はいはい、あと5分くらいで出来上がるからね。 真璃、そこの棚からお皿出してくれる?」
騒がしい欠食児童たちを抱えて、美鈴はまるでお母さん役の様だ。
やがてまた一人二人と食堂に人が集まり、めいめいに皿を取ってシチューを盛り付け、訓練から解放された楽しい夕食の時間を過ごす。
友人と談笑したり、一人でゆったりと食事をしたり。
散乃と留美がお互いの皿の肉を取り合ってふざけながら走り回り、大ちゃんと理玖瑠が叱って制止したりする一幕もあり。
14/15
夕食後は消灯時間までの間が自由時間になる。
自主訓練するのもリラックスするのも個人の自由だが、だいたい休んでいる。
空き教室の一つにソファーやテレビなどを持ち込んだ談話室か、共同の寝室のベッドの上でゴロゴロするのが慣例だ。
ファッション雑誌などを見ながら髪形はあれがいい、服はこれがいいと話しているのは咲也や美鈴、麗美。
ボードゲームに興じている初李と有理、横から観戦している真璃。
早苗は実家に電話をしているし、散乃や留美は相変わらずはしゃぎまわってテレビを見ていた理玖瑠に怒られる。
軍事情報誌のバックナンバーを読みふけっていた翠が、ちょいど理玖瑠が散乃に投げつけて外れたクッションが運悪く当たった。
ふと、由香里は玲の姿が談話室にも寝室にも無いので大ちゃんに尋ねたが、彼女も知らないと答えた。
「…こんな所にいたら、風邪を引かない? 湯冷めしちゃうわよ?」
由香里が玲を見つけたのは、校舎の屋上だった。
玲は手すりに体を寄りかからせ、西の方角の赤く燃える夜空の端をじっと見つめている。
南側には、函館山の方角にキラキラと宝石を並べたように輝く函館市内の輝きが見える。
電力不足で大分その輝きは、平時の4割といった程度に少なくなっていたが、夜景の美しさはまだまだ損なわれていない。
だが、玲の目はその美しい夜景にではなく、ワームとの戦線がある、今も自衛軍の主力が戦い、侵攻を阻止しているであろう
北斗市の方面に向けて注がれていた。
15/15A
耳を澄ませれば、砲火の音が風に乗って運ばれてくるのが聞こえるだろう。 その方向には、戦場がある。
函館市内から3キロと少ししか離れていないが、すぐ目と鼻の先に兵士が戦い命を落とし、それと引き換えにして市民を守っている。
そして、玲たちも守られている。
第28連隊の大勢が、半年前に共に志願して入隊し、訓練を共にしてきた学生兵士達も、彼らの後ろにいる全てのものを守るために戦っている。
「あそこにいるのは、戦友なんだ…」
玲は、何かに憤るようなそれでいて悲しげな声を絞り出した。
「私も一緒に戦うはずだったんだ…みんなと…」
由香里は、玲の肩にそっと優しく手を乗せた。
第4中隊は余り物だ。 他の学生兵士の全員は、今あの燃えるような赤い空の下で戦い、傷つき、命を散らしている。
玲は、悔しかった。 許せなかった。 自分たちだけが、戦わずにここにいる事に。
戦う事や死ぬことを賛美するつもりは無い。 だが、共に過ごし、共に訓練し、共に笑いあった仲間が死んでゆくのに
自分だけが『余り物』として戦場に行くことなく、生きている事に玲は例えようの無い罪悪感の様なものと、
そして自分が『余り物』として引き抜かれずに中隊に残された。
15/15B
仲の良かった友達も、ほのかに憧れていた男子も、見知った全てが他の中隊に異動になり、玲と由香里だけが中隊に残された。
校舎と、訓練機材と少数の機士だけとともに取り残され、教官もおらず、ただ待機を命じられる日々。
後任の中隊長は適当に任命された学生兵士で、新たに配属された学生兵士を入れても中隊はわずか14名。
全員が女子。 自衛軍は、玲たちに戦わせたくなかったのかもしれない。
欺瞞だとわかっていても、女子を戦場に出したくなかったのかもしれない。
だが、玲は思う。 それなら何故、志願なんかさせたのか。
「どうして…どうして私達だけが? この国のため、家族や街を守るためって勇んで志願したのに…
一緒に訓練した仲間たちが死んで行ってるのに…どうして私達だけは、仲間と一緒に戦えないの?
皆を見捨てて、自分だけ安全な所にいろっていうの? どうして?
ねえ由香里…どうしてなの…教えてよ…」
涙を滲ませ、嗚咽交じりの声で慟哭する玲に由香里は、かけてやる言葉が見つからなかった。
ただ、玲の震える背中をそっと抱きしめてあげる事しかできなかった。
(続く)
投下終了 支援感謝
そして連投規制に引っかかった…
気付いても気付かなくてもどうでもいいことだが
登場人物の名前を考えるのが大変だったので
某ゲームのキャラクターから捩って使用しています
>>208 急遽、投稿を再分割
書いてるときはそんなに長くなってるように思わないのに
投稿する時は難儀するとは…
>>207 そんなつもりは無かったが自然とそんな言葉が出てきてしまった
ちょっとのブロントネタにも反応するのは本能的に長生きするタイプ
投下乙です。さっきは途中でレスしてしまいすみません。
ただ作中のネタという訳でもないブロント語に突っ込まずいられない。
つまり◆kNPkZ2h.roさんは生粋のブロンティストということ。スミカ・ユーティライネンです(´・ω・`)ノシ
いいですねぇ、こういう学校みたいな雰囲気、好きですよ。
あ、自分もスパロボ参戦してもよろしいでしょうか?
設定のほうは、本編のほうが一段落したらになりますが……
>>218 誤解されてるw
やってほしかったのは逆
レス一回に20行の文章を書くんじゃなくて
レス一回に40行ぐらいの文章を書くこと軸にして(そうすると大体長くても50行ぐらいで収まる)
書いていくと、レス数が少なくて済むよという話だったのw
大体、24、5行で次のレスに行ってたから、もうちょっと1レスで行数使って書き込めば
7〜9レスで収まったんじゃないかなとw
内容は現代に近いリアルモノで確かにガンパレとかオルタを思い出した><
ベタだけど、面白いね
>>221の書くというのは分割するときのカキコの時の意味ね
私には参戦を撤回する意志はありません
参戦作品があんまり少なければ、二つのうちどっちかをキャンセルしたかもしれないけど、そんなこともなさそうですし。
スプリガンについてはあとで利用できそうな設定をまとめておきます
>>218 軍隊って大変そうだなァ・・・と思いつつ。
触s・・・ゲフンゲフン、ワームの嫌らしさとセントラルの胡散臭さは異常。
おお,バリバリリアル系ktkr!
描写が面白いけど、ちょっと登場人物多くて把握しづらいかも。ちょっと絞った方がいいかと思ったり思わなかったり
登場人物の名前がアレだけど、こっちもナフィアの外見を小悪魔同然にしてあるから人の事は言えないか。取り敢えず自分は熱心な桐嶋真璃×野礼寺初李派。
機士は全高4mだから姫路での超重装甲強化服と同じ大きさか。機士と重装甲強化服の設計開発思想も似ている。歩兵が等身大のパワードスーツである軽装甲強化服を纏う軽歩兵へ完全に代替されて生身で戦う事が完全に無くなった時期。
軽歩兵でも技術的には大重量の武装を持たせられるものの、体格的に無理があった。そこで軽装甲強化服より大型で圧倒的な性能を誇る全高3mのパワードスーツ、最初の一式重装甲強化服が開発された。
重装甲強化服は市街地、大きな建物内、砂漠、極寒の雪原、丘陵、山岳、森林、泥濘地、水中(海中)など地球上のあらゆる戦場でも戦え(宇宙と深海でのみ専用の装備を装着しなければならない)
兵装によって対地、対空、対艦、対潜などありとあらゆる敵に対応出来、簡易的な工場機械ともなる人間以上の器用な手先と大重量の荷物を短時間で簡単に運べるパワーによってどんな細かい作業もさせられる、究極の人型汎用兵器である。
軽装甲強化服を着た上で着用するのが前提なので、重装甲強化服でも入れない閉所や屋内での戦闘も全く問題無い。
以上の条件を満たすのに全高3mで十分だった事と、大きさ、重量による輸送の問題などによって、三式重装甲強化服と同時期に一機のみ開発生産された全高4mの試製超重装甲強化服は圧倒的な性能を誇りながらも役立たずの失敗作として、
清水静専用機として改造、復活されるまで海上都市姫路の倉庫に誰からも忘れられて数十年間埃を被っていた。
重歩兵(重装甲強化服)は戦場において主力の兵器ですが、最強ではありません。戦車が陸の王者として君臨しています。確かフロントミッションが似たような設定だったはず。
一時期は重歩兵が主力かつ最強であり各種戦闘車両が消滅しかけた事があったものの、地形に合わせて自在に形状を変化させる自在軌道、自在車輪の採用、対重歩兵用に近接戦闘能力を徹底的に強化した事で生き残った。
ここら辺の設定はスパロボ企画の方ではあえて無視した方がいいだろう。
海上都市連合「正統日本」陸軍主力戦車
全長15m 重量100トン
武装
150mm3連装戦車砲×1
50mm機関砲×2
10連装6.25mm機関銃×4
500cm超振動極熱刀×4
その他長針弾、短針弾多数装備。重装甲強化服の腕を改造した大型マニピュレーターを二基搭載。
重装甲強化服同様に思考制御とコンピュータ補助で操縦する一人乗り。
3連装戦車砲による速射と最大3目標同時攻撃は絶大な威力を発揮する。性能強化が行われる前は懐に入り込めばその時点で重歩兵の勝利が確定したが、今では近付く程危ない。歴戦の戦車兵は熟練の重歩兵ですら「人狩り」と呼び恐れる程である。
ストパry) グシャ!
ああ自分も投下したいけど書く時間がない…
しかし少女のみで編成された部隊かぁ
自分は現職の施設MOS持ちの普通科隊員(真っ先に突撃して障害を除去します)
ですけど、WACですら腫れ物扱いされる事が多いのでそういう部隊があったら
扱いは難しいだろうね
そういや
警察ロボとか土建ロボとかやったとして
程よく量産されてたり相応に壊れ易ければ
リアルロボ扱いになるんじゃろか
設定だけこさえてもいまいちでした・・・
ネタバレになりそうだし、スプリガンの方は近いうちに一気に完結させちまいます
結局鱗属の出番は作れなさそうだけど
>>228 スーパーリアルの区分も難しいですよね
あれは機体のスペックなのか人間ドラマの比重なのか・・・
姫路さん家あたりはスーパーに見えるw
自分もスパロボ風SSには参加続行ですよー
ただ今回のエピソードをまず完成させて、一段落ついたらって事で
>>228 パトレイバーは間違いなくリアルロボだとは思いますw運用方法等で
当初はタウエルンはリアルというか、ほのぼの系の話にするつもりだったんですよ
でも他の作者さんの作品に触発されて、いつの間にか今の路線に
そもそもスーパーリアルを提唱したスパロボすらもうそんなもの無くなったといってるしなー
設定的にも、ゲームのステータス的にも微妙なラインの作品が増えてきてますしね
てか、もとから「っぽい」ものとして使ってただけだしな
見た目ガンダム的な系譜がリアル、マジンガー的な系譜がスーパーってだけ
ロボを「ヒーロー」として扱うか「兵器・工業製品」として扱うかの違いが
スーパーとリアルの違いではないかと思ったり
そしてその間に明確な区別の無い中間存在もあるし
Gガンとかかな、リアルとスーパーの中間。リアルよりもスーパー寄りな気はするが。
最近ココに流れ着いたんだけど、ss投下してもいいですか?
何か、クロスオーバー企画やってるみたいだけど、参戦する意志無しの方向なんで、どうしたもんかと…
ばっちこい
>>236 参戦は別に全員やるってわけじゃないから全然OK
了解、サンクスです
今日にでもまとまったらその分投下させてもらいます
スパロボでよくある冒頭の3D戦闘シーンを想像して書いてみた。
全部書くと七月になっちゃいそうだから書けた最初の方だけ投下。
多元世紀元年、世界は崩壊した。
多元世紀一年。幾多の異なる次元の世界が交わり合って一年が経ち、世界の混迷は極限にまで達していた。
歪んだ闇の世界を破滅から救う為戦い続ける者達がいる。
本当に世界を救えるのか、最後は誰にも分からない。
未来は誰にも見えず、ただ目の前だけを見つめて突き進む。
限界知らずの戦いで、未来を阻む敵をブチのめし切り開く。
Si Vis Pacem, Para Bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ
かつて百万人は住んでいたであろう都市は、廃墟となったビルが墓標のように林立するゴーストタウンになっていた。日々数え切れない程の車が行き交っていた道路は荒れ果てていた。縦横無尽に亀裂が走り、クレーターが幾つもあり、底の見えない穴が点在している。
在りし日の活気を全く感じない都市の荒れ果てた道路に、四体の鉄の巨人が静かに立っていた。
強固な装甲に包まれた無骨なデザインの巨人の名は「対鋼獣用人型兵器」……通称ヴァドル。地球上に蔓延る鋼獣という異形の怪物に対抗する為に開発された、戦闘用ロボットである。
骨組みとなる強化金属フレームを人工筋肉と擬似神経で覆い、ソコにパイロットの神経をダイレクトに接続する事で、あたかも自分の肉体を操るように機体を操縦出来る。
ダイレクトに神経を接続する仕様の為に以前は操縦時の負担や接続を切った後の疲労感など問題もあったが、別の世界の兵器に使用されている思考制御+コンピュータ補助操縦技術を一部導入した事で大幅に改善された。
モーターやエンジンを積まない最新の動力システムを搭載している為に、ヴァドルは全体的にシャープなシルエットをしている。
ヴァドルは全長10メートル程で、やや足が短く、逆に手が少し長い。流線型の装甲タイルが人口筋肉を覆っており、甲冑を纏っているというよりは直接体に鉄板を打ち付けたような容姿をしている。
加えて、僅かな手足のバランスを覗けば殆ど人間に近い造型をしている事や、駆動が静かで滑らかな事から、ヴァドルからはロボットという機械っぽさがあまり感じられない。
隊長機を意味する「00」とプリントされたヴァドルは、砲身だけで4メートルはあるシールド付きの大型ライフルを手に、腰には鉈に近い形状のブレードを装着していた。
四機は何処から攻めてきても対応可能な菱形の陣形で敵を待ち構えていた。隊長である瀬名龍也を先頭に、右後方に一号機を駆る副隊長のディーネ、左後方に二号機のリート、三機の後方、隊長機の真後ろにエルツの三号機という配置。
荒野から都市へ野獣型の鋼獣の大群が迫ってくる。龍也達の世界における人類最大の天敵。人類の生存を脅かす幾多の脅威が存在するこの多元世界において人類最大の天敵とまでは呼べないかもしれないが、今でも脅威に変わりはなかった。
ヴァドルの胸部前面に位置する、衝撃を吸収するゲル状の液体に満たされたコクピット内で、無数のコードが繋がったパイロットスーツとヘルメットを身に着けた男――瀬名龍也は告げた。
「各機へ。作戦を開始する」
『一号機了解』
『フン……。二号機、了解』
『さ、三号機了解です』
それぞれの返事と共に各機との通信が切れ、一斉に攻撃を開始。隊長機と一号機のライフル、二号機と三号機のマシンガンが火を吹く。放たれた砲弾は二足歩行あるいは四足歩行、個体によって姿形が大きく異なる野獣型を次から次へ屠っていく。
四機の巧みな連携攻撃に接近すら出来ず野獣型は一方的に殺戮されていく。優勢でありながらも油断など全くしない。鋼獣の恐ろしさは彼らが最も骨身に染みて理解している。足元に響く微少かつ異常な聞き慣れた音。
「散開!」
龍也の叫びに三号機のみが少し遅れてその場から飛び跳ねる。ヴァドルの足元が盛り上がったかと思うと、地面から巨大な黒い柱が四つ立ち上り宙に舞った。 全長20メートルを越える黒色のソレは、体の大半が口で出来た奇妙な生物だった。
巨大で禍々しい顎を持つ、太く短い胴の、バランスの悪い魚のような容姿をした怪物、土竜型の鋼獣。他の三機は回避と同時に至近距離で攻撃を浴びせられたが、動作が遅れた三号機は持っていたマシンガンを食われてしまった。
魚の様に水中から飛び出した土竜型の一体、三号機を襲った個体は、空中で身を捻り、三号機のヴァドル目掛けて急降下した。
他の三機が攻撃しようとするが間に合わない。三号機の回避も既に遅い。
彼ら四人に手立ては無く、どうする事も出来なかった。だが、戦っているのは彼ら四人だけではない。土竜型が巨大な口を開き、ヴァドルに喰らい付く。その寸前。土竜型の側面に強烈な一撃が撃ち込まれた。
バターに熱したナイフを沈み込ませるように土竜型の体を容易く貫いた砲弾は体の中心で爆発。絶大な振動波と特殊熱によって、三号機を襲おうとした土竜型は塵すら残さず分解蒸発した。
四機の顔が同時に同じ方向を向く。時速150kmで凸凹の荒れた道路を整地された地面のように滑走する、ヴァドルより遥かに小さい人型兵器。
全高4m、基本重量2トン。海上都市姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静の駆る清水静専用超重装甲強化服改。
土竜型を葬った左肩の50mm折り畳み式狙撃砲を元に戻し、右手に持った主兵装である25mm重機関砲をエルツの三号機に放り投げながら、無駄の無い流水の如き動作で背中の鞘から300cm超振動極熱刀を抜刀する。
取り敢えずここまで。
精力的だなあ・・・
細かい議論は参戦作品が出揃ってからにするとして
今は議題をまとめつつ俺も妄想に励んでおくか
「あれは……」
成層圏の果てから徐々に高度を下げ、地上からも視認できるようになった浮遊物がある。
半天の水色を塗り変える、ぞっとするような白。不可思議なことに、地上側を向いた底面には薄っすらとも陰
が生じていない。光を透く幽霊のようだった。
一体の生物としては到底信じられない巨大さ。それが歴とした鳥影だということにも、ことねはしばらく気づ
けなかった。
羽毛は群雲、炯眼は肥えた月。
先に目撃した甲属魔族達はまだしも分かり易い怪物だったが、これはもはやその存在じたいが一種の異常気象
に等しい。
岩から削り出したような手でひさしを作り、延加拳の天農は空を仰いだ。遮光器を常用する彼には意味がない
はずだったが、遠くを見渡す仕草として体が覚えていたのだろう。
「禽属の魔族か。それも大物だ」
「とりぞく」
ことねは意味を察しながらも、何とはなしに鸚鵡返しに呟いた。強力なエーテルブラストの影響で鳥肌が浮い
ていたが、今度は気にするようすはない。
魔族を大別する四大属の一、禽属の「禽」の正確な読みは「キン」である。天農がここで敢えて「トリ」とい
う言い回しをしたのは、先刻の反省がまだ辛うじて心に残っていたからだった。
「魔界の生き物である魔族には、ケモノ、トリ、ウロコ、コウラの四つのグループがある。このうち鳥の仲間に
似た姿をしているのが、禽属だ」
そこで自分自身を納得させるように、「中身は全くの別物だがな」と付け加えた。
「数が少ないが一体一体が恐ろしく強力で、音速の数倍から十数倍というスピードで空を飛ぶ、敵に回すと一番
厄介なグループでもある」
説明に不安を煽られ、ことねは不安げに視線を遠くへやった。
昆虫の魔族らが激戦の末に総崩れになったらしいことは、天農から聞いていた。そこに出現したのが、恐らく
は彼らよりも強いという、あの鳥の魔族である。
連戦にでもなればと思うと、気が気ではない。
「スプリガンさん、だいじょうぶでしょうか」
「今のスプリガンでは勝てない」
天農はきっぱりと断じた。
「互いに攻撃が当たらず引き分けか、やられるだけのワンサイドゲームになるだろうな。だいたい、禽属とは相
性が悪すぎる」
禽属魔族の攻撃は、もっぱら超高空もしくは高空からの広域エーテルブラストに限られる。戦闘中において降
下するという状況が有り得ないため、徒手空拳では攻撃が届かない。
流派超重延加拳としては、極超音速という速さを乗せた機体そのものを砲弾と化して射ち出す対空の技“昇車
(のぼりぐるま)”が考案されてはいる。
しかし、地形に恵まれなければ照準合わせすら困難を極め、発動できたとしても足場のない空中では直線的な
動きにならざるを得ない。同等以上の速度で自在に空を舞うことのできる禽属魔族にはまず命中しないだろう。
実戦で使用するには、大幅な改良が必要だった。
(エーテルドライブの出力がもう少し上がれば、あるいは空を飛ぶこともできるだろうが……)
銃火器もなく飛行能力もない現状のスプリガンには、最初から勝ちの目がないのだ。
「そんな……」
ことねは胸の奥から漏れそうになる絶望を閉じ込めようというのか、小さな手で口許を覆った。この世の終わ
りのような顔だった。
(果報者だな、スプリガンさん)
自分がひとまずの安全圏にいることは彼女も分かっているはずで、気にしているのはむしろスプリガンの安否
なのだろう。それが天農には微笑ましい。
(さぁて。それで、どうするかね?)
雲行きの怪しさを肌に感じながらも、天農はにやにやと締まりなく笑うばかりだった。
今回はここまで。短すぎですねすみません。
しかし、いつも場面転換で切っている都合上、ここできります。
ネクソンの方は・・・難航しています。
ただ、珍しく真面目にやった戦闘シーンがようやく終わったので、
前半だけは来週中までに投下できそうな感じ?
>>248 乙であります
全く人をじらすのが得意なお方だぜ。ネクソン共々続きに期待しております
しかしいつまで経ってもスプリガンがその内合体するんじゃないかと思ってしまう俺は生粋の合体フェチ
>>248 ネクソンクロガネ、あの苦境をどうやって凌ぐのか、今から楽しみです。
OPの続き、投下します。
清水静の超重装甲強化服改が装備している頭部両側の長針弾発射機と左腰の10連装6.25mm機関銃は、本来は放たれた敵弾を迎撃する為の間接防御専用兵器。
主兵装である25mm重機関砲をヴァドル三号機に渡したので、針の穴を射抜く精密さと高度な情報解析と計算で迫り来る高速の多目標へ同時迎撃が可能な間接防御専用兵器を攻撃に使用。
鋼獣に浴びせられる横殴りの豪雨同然の猛射撃は一発一発が急所を貫く必殺の一撃。高い防御力を持つ鋼獣だが、体の全てがそうではない。
弾丸自体に誘導機能があると思わせる程の正確無比な精密射撃で、振動熱効果を伴う長針弾の急所への滅多刺し、6.25mm振動熱徹甲弾が脆い箇所から進入し貫通、口径の十倍以上の穴を穿つ。
ヴァドル隊のライフルとマシンガン、25mm重機関砲から放たれる25mm振動熱徹甲榴弾が加わり、地獄への片道切符大配布は更に果て無く激しくなる。
清水静は射撃を行いながら全速前進し、右手に構えた300cm超振動極熱刀で次から次へ鋼獣を流し斬る。生身の人間ならかすっただけで全身が消滅する刀身を全力で叩き込まれた鋼獣の全てが原型を留めず体積の半分以上を失い、
薄い緑と紫色の蒸気を立ち昇らせる固体とも液体ともつかぬぐちゃぐちゃな泥状の残骸と化す。
地面を覆い尽くすように鋼獣の死骸が散らばり、見渡す限りに生きた敵の姿は無い。
攻撃が止みわずかな静寂、先頭に立ち戦った清水は後ろへ振り返ると300cm超振動極熱刀を構え直し、全速のローラーダッシュで一直線に向かう。ヴァドル隊の隊長、瀬名龍也へ。
一号機から三号機全てがライフルとマシンガン、25mm重機関砲の砲口を隊長機に向ける。高く跳躍した超重装甲強化服改の握る刀の切っ先が真下を向く。
龍也のヴァドルが全力で飛び跳ねる。同時に龍也のヴァドルが立っていた地面に大きな亀裂が走り大きく盛り上がり、特大の土竜型鋼獣が姿を現す。
全体の全てが地表に出る前に、全体重とフルパワーを込めた過負荷出力の300cm超振動極熱刀を頭蓋に根元まで突き刺し、周囲を取り囲むヴァドル四機の十字砲火が叩き込まれる。
巨大土竜は上半身が消滅して下半身が乾いた砂のように崩れ去った。地面に着地した清水静は過負荷出力に耐えられずボロボロになった刀身を柄から取り外し、予備刀身と交換。鋼獣は全て倒した。しかし、休む間も無く新たなる敵が現れる。
空を飛ぶ獣を模した機械兵器、鋼獣(メタルビースト)。十体と数は少ないが、極めて高い戦闘力を持つ恐るべき敵。ヴァドルが砲口を向け、清水は刀を構え直す。その時、鋼獣(メタルビースト)を討つべく一体のロボットが現れた。
悪魔的なフォルムを持つ10m超の漆黒の鎧。黒峰潤也が駆る黒い謎の鋼機(メタルアーマー)リベジオン。その肩に黒髪赤眼、黒衣を纏った外見年齢二十歳程の男、魔王ラウディッツ・バルディウスが両腕を組み仁王立ちになっている。
一機と一人、二つの魔王は鋼機(メタルアーマー)に対して尋常ではない殺気を込めた視線で睨み据えていた。
以上。
この後、スプリガン、タウエルン、パラベラム、ネクソンクロガネを出演させる予定です。
間違えた。最後の行、鋼機(メタルアーマー)じゃなくて鋼獣(メタルビースト)。
人、いないな。どうしたんだろう?
いますよwただまだちょっと投下には時間が掛かりますorzごめんなさい
>>247 スプリガンがどう行動を起こすか気になりますね……
投下乙です
>>251 上のレスから凄いっす!
描写が細かいから脳内に映像が浮かびますねー。wkwkしますよ
>>236です。話の導入部分がなかなか纏まらずに四苦八苦…
とりあえず絵でも描いてイメージ先行でのらりくらりと進めてますが、初投下は週末くらいになりそう;
>>247 乙であります
上空からの広域エーテルブラスト……なんていやらしい攻撃なのかしら
次回も楽しみに待ってますw
>>251 ウヒョー!
二つの魔王って何か痺れますね!
そしてついにパラベラムの出番が……他の二作とどう絡むのか、楽しみで仕方ありませんw
あ、おせっかいかもしれませんが、段落の初めは一文字分空けたほうがいいですよ
>>256 ゆっくり、満足できるまで書き込むのもアリですよ
とか言ってる自分も、邂逅篇は次で終わりなのになかなか纏まらない……
>>255 どうもありがとうございます。
タウエルンは次の次くらいで出せそうです。
>>257 パラベラムの人達は次の次、タウエルン+ショウイチと一緒に出す予定です。
オートマタと自動人形をバッタバッタブチ倒しまくるつもりなので、御期待下さい。
自分の妄想設定ですが、このOP風ではタウエルン本編の話で既にパラベラムの人達が合流していて、村の人達は一人も死なずシュワルツ一味を撃退してます。
しかし、死んだと思っていたシュワルツが彼らの前に現れ……。
一条 遥「げぇっ、あの最低野郎、生きてたんだ!?」
レスどうもです
うまいこと進んだのでネクソンの第六話前半は今日明日中に投下します。
いろいろと期待に添えそうもないことだけは謝っておこう・・・。
>>249 最終回仕様としてトレーラーと合体する「大スプリガン」の設定を作ったことがありましたが、
きれーに没りました……。劇場版でもやらない限りお蔵入りだろうなー。
>>252 おつかれさまです。
私以外がスプリガンをどうするのかは興味ありますね。
でも、どうせなら参戦表明したのは全作品出して欲しいな!
>>256 絵もお描きになるんですかー
※
紺色の靴下を履いた足を恐る恐ると伸ばして、悪山エリスは廊下の暗がりをまた一歩だけ前進した。
進めば進むほど闇が濃度を増していく、窓のない通路だ。
もっともエリスの慎重さは、見通しの利かない足元を不安に思ってのことではなかった。そこは彼女が幼少の頃から出入りしている
悪山研究所の内部であり、その気になりさえすれば目を瞑っていても行き来できる。
仰々しい言い方をすれば、悪山エリスは今、隠密行動中なのだった。
(抜き足、差し足、忍び足……)
その足どりからは、わずかな物音も立てまいと神経を尖らせているようすと、また歩行という連続した動作を細分化して相手にそれ
と認識させまいという徹底振りが窺えた。多くの肉食動物が狩りで用いる戦法でもある。
(抜き足、差し足、忍び足……)
魔法の呪文のように心の中で繰り返すと、少しだけ動悸が楽になった気がする。古びた床が立てる軋みの音さえ、今の彼女には恐ろ
しい。こうしてこそこそとしていることじたいが、ある種の裏切りのようで後ろ暗い。なけなしの勇気でもう一歩。
(抜き足、差し足、忍び足……)
白磁のような両腕が大事そうに抱えているのは、料理の載ったトレイだった。ラップを押し上げる直角二等辺三角形は、手製のサン
ドウィッチである。具には彼女なりに趣向を凝らしてあった。
悪山エリスの向かう先には、木製の扉一枚を隔てて、彼女の祖父が築き上げた“男の城”が広がっている。大雑把に資料の収集や設
計図の作成などを行う書斎と、さらに奥にはさまざまの機械の唸る研究開発室、そのまた向こうに巨大ロボットの保管や整備などを司
る格納庫などが存在する。
その男の名は、悪山悪男。毎週毎週大型肉食恐竜型のロボットを手作りしては、ロボヶ丘市を恐怖のどん底に突き落とす、悪のマッ
ドサイエンティストだ。
細心の注意を払って足音を忍ばせ、エリスはようやく地獄に通じる門に辿り着いた。
そこで困り顔になる。
ここまでの静粛性は完璧だという自負がある。これが潜水艦同士の海中戦なら、もう敵は死んでいるも同然だ。ましてや最近少し耳
の遠くなった悪山悪男が、接近に気づけるはずはなかった。溺愛する孫娘のこととなると彼はしばしば人類の限界を越えるため、絶対
とまでは言い切れないにせよだ。
だが、ここに来て、今回のミッションにおける最難関が立ちはだかった。
建てつけの悪さから、よく開け閉めに難儀する引き戸である。祖父が巻き起こす爆風のせいで歪んでいるのではないかとエリスは見
ているが、それは今はどうでもいい。
経験上、その戸板はびくともしないか大きく動くかの極端で、開くときは必ずそれと分かる音を立てるのである。
(どうしよう……)
しばらく途方に暮れて呆然と扉を眺めるうちに、エリスは端から光が漏れていることに気づいた。
真正面からでは分からなかったが、角度をつけると数ミリメートルほどの隙間が生じている。
(中、見えるかな?)
悪山エリスは桜色の唇をわずかに窄めて息を吸ってから、ぴたりと潔く止めた。
そのまま青み掛かった瞳を壁に寄せて、そっと中を覗き見る。
戦慄した。
(深夜に包丁を砥ぐ鬼婆を目撃した旅人の気分です……)
他者の共感が得られるかはともかく、我ながらなかなか的確な比喩だとエリスは思う。ざんばらと白髪を振り乱し、三白眼を血走ら
せた祖父のようすには、まさしく鬼気迫るものがあった。エリスにとっては、優しい祖父が“悪のマッドサイエンティスト”であるこ
とを改めて思い知らされる光景でもある。
予想よりもずっとひどそうな状態に、エリスは聞こえよがしに溜め息を漏らした。ありのままを確かめられれば、もう存在に気づか
れようと構いはしない。もっとも切羽詰まった彼はそれにも気づいていない。
ここ数日の悪山悪男は、まるで何か悪いものにとり憑かれたように、自らの“城”に篭っていた。ちょうど悪山研究所に珍しい訪問
者があり、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネがシロガネ四天王と戦いを繰り広げた、その翌日からだ。
そこでの悪山悪男の活動内容はエリスが訪問する度に違ったが、今回は書斎の隅の古びた学習机に黄ばんだ大学ノートを広げ、何や
ら書き殴っていた。まるで別種の生物のように背中を丸め、洟を擦りつけんばかりに紙面に顔を近づけるのは、彼のいつもの流儀だ。
握り締めるような鉛筆の持ち方も、行き詰まると上端を齧る悪癖も、もう矯正のしようがない。
悪山悪男は試行錯誤に没頭するあまり、寝食を忘れていた。愛孫であるエリスの手料理は欠かさず平らげていたが、どこか燃料を補
給するような作業的な食事だった。睡眠時間にいたっては、まるごと削っている節がある。
とはいっても、それだけならば、悪山悪男にとっては別段珍しいことでもない。エリスとしても、毎度のことに呆れながら世話を焼
いていればよかったのだ。
しかしエリスは、祖父のようすにいつもと違う雰囲気を嗅ぎとっていた。
(おじいちゃん、ちっとも楽しそうじゃない……)
趣味人に特有の熱意も、明朗さも、今の悪山悪男からは感じられないのだ。エリスにとっては、そんな祖父は見るに堪えない。それ
では彼女が悪山悪男の悪行を黙認する“共犯者”でいる意味がないではないか。
サンドウィッチのトレイを片手に持ち替え、それなりの勢いをつけてノックを鳴らす。反応を待たずに戸を引くが、すぐにつかえて
しまった。こうなると手渡しは難しい。エリスはそのことに心のどこかで安堵していた。
「おじいちゃん? お昼ご飯、ここに置いていきますから」
「おう」
差し入れには生返事を返しておいて、悪山悪男は顔も向けずに言葉を継いだ。
「今日も、街へ行くのか」
「はい」
悪山悪男は渋い顔をした。
今のロボヶ丘市は明らかな“危険地帯”だ。下手に外を出歩こうものなら、それこそ命の保証はできない。
エリスがそれを承知の上で、市街にある住居と郊外の悪山研究所を往復し、また暇を見つけては中央商店街などにも足を運んでいる
ことを悪山悪男は知っていた。
命をどぶに捨てるような行為だ。言語道断だとは思うが、何を言ってもエリスは聞く耳を持たない。
「……気をつけてな」
結局は、今日もそう言い含めることしかできなかった。
こんなこともあろうかと悪山悪男が贈った謹製のリボン・護身用自動伸縮装飾帯は、10メートル級の戦闘用ロボットくらいなら八
つ裂きにできるはずだった。油断はできないが、今はそれに頼むしかない。
遠ざかっていく愛孫の足音を寂しがりながら、悪山悪男は唇を震わせるように独白した。
「……あの子は、がっかりしとるじゃろうなぁ……」
彼女がわざわざ危険を冒す理由に、彼はうすうす勘づいていた。ずいぶんと婉曲的に“お願い”をするものだと思う。
「しかし、しかし。この保険だけは間違うわけにいかんのだ」
悪山悪男は筆を置き、今し方ようやく出来上がったばかりの図面に目を通す。
鉛筆の硬さは2Bで、筆圧は強い。消しゴムも下敷きも使わない彼のノートは、ひどく黒ずんで汚らしい。
古今東西の文字を彼自身にしか分からない法則に従って崩し、また複雑な設計図を脈絡もなく挿入するために、そこに踊るものの正
体は判別不可能。世界第九位の狂博士である悪山悪男本人か、かつてワルサシンジケートを震撼させたというかの巨大頭脳以外には。
悪山悪男は息を吐く。休んでいる時間はない。サンドウィッチを摘まんだら研究開発室に直行だ。
ワルサシンジケートの魔手がエリスに及ぶであろう、あと数日のうちには完成させなくてはならないのだから。
「ワルレックス系列最凶最悪の機体となる、この“ダイノスワルイド”だけは……!!」
悪のマッドサイエンティスト・悪山悪男の嗄れ声には、悪魔に魂を売り渡さんばかりの切実さが篭っていた。
それは、まだ影も形もないはずだというのに。
機械仕掛けの暴君竜の咆哮が遠雷のように聞こえたのは、果たして気のせいだったのかどうか。
第6話 戦慄! シロガネ四天王再び現る!
※
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネのカメラアイ下に配置されたビームドライバが亜空間から転送する金属粒子は、極めて不安定な存
在であり、わずか数秒で地上から完全に消滅する。ネクソンクロガネストームが地表に施した鈍色の厚化粧も、今では薄っすらと色褪
せたものになっていた。
未だに残留する顆粒を蹴立てながら、ぶつかり合う二体の巨大ロボット。
それが最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと、悪のロボット軍団・シロガネ四天王との壮絶な戦いの始まりを告げた。
「ネクソンクロガネパンチ!」
「何のッ!」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの放った必殺パンチが、剛力無双ロボ・シロガネマッスルの分厚い胸部装甲に押し戻される。巨大
ロボット一体分はあろう重量差と、超ネクソン白鋼の強靭さのために、衝撃が伝わるより先に肩が後退してしまうのだ。
激しい反動に痺れながらもネクソンクロガネはその場からさらに右の拳を突き出すが、今度は片手で受け止められた。追撃の左も同
じく。戦いは、両手を組んだままに互いを圧倒しようと押し合う、剛力対決の様相を呈する。
だが、田所カッコマンは失念していた。
敵はシロガネマッスル、“剛力無双ロボ”なのだ。
「筋肉は隆々! 仕掛けをごろうじろ!」
拮抗できたのも一瞬のこと。シロガネマッスルの赤い入れ墨が力強く発光。重量と駆動力の差で押し負け、最強無敵ロボ・ネクソン
クロガネの踵が大地を削った。
「こんの、馬鹿力め!」
両腕を捻り上げようとする動きを察し、田所カッコマンは真っ向勝負を放棄。ネクソンクロガネは自ら背中から倒れ込むと同時に片
脚でシロガネマッスルの胴を蹴り上げ、相手の勢いを利用して投げ飛ばす。
「男の真筋勝負に柔術まがいの受け流しとは、不粋千万ー!」
宙を舞う四天王いちのマッシブ。
綺麗な放物線とはいかず、後頭部から地面に激突。金属粒子のカーペットを滑って粉塵を巻き上げた。
「いや、しかしあれもまた美しき筋肉の躍動といえるか、ううむ……!?」
仰向けに倒れたシロガネマッスルの中で、ニック・W・キムが腕組みをして唸る。声に苦痛の響きはなく、とぼけているようにさえ
聞こえた。受け身をとったようすもないというのに、大した損害も見られない。
「寝てな、おっさん!」
シロガネマッスルのタフさに悪態を吐く暇もなく、音速飛翔ロボ・シロガネソニックの急襲を迎える田所カッコマン。
内蔵兵器を起動。背面装甲のハッチを左右二箇所展開し、VLS(垂直発射システム)を引き出す。
「ネクソンクロガネミサイル!」
超音速巡航ミサイルを射出。損傷はおろか命中すら望むべくもなしと、着弾を待たずに自爆させる。
轟音と閃光を目眩ましに身を翻し、暗躍する百発百中ロボ・シロガネスナイパーとの隔たりを踏破。ネクソンクロガネパンチの強打
を浴びせる。
鉄拳の芯に異物感。
陽炎のように立ち昇る薄緑の毛髪。
狙撃手の護衛に就いていた一騎当千ロボ・シロガネブレードが割り込み、迎え火の剣を当てていたのだ。女騎士の凶刃が中指と薬指
の間に侵入し、そのまま手首、前腕と竹のように両断していく。超ネクソン黒鋼の装甲などあってなきがごとき、常軌を逸した切断力
だった。
田所カッコマンは改めて自覚する。これまでのように頑丈さに物を言わせた戦いは、もうできないのだと。
これは死闘。命を懸けた、本当の意味での“潰し合い”。
「許せ、ネクソンクロガネ……!」
地獄にでも付き合うと応える巨人の聲を、確かに聞いた。
故に最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは止まらない。半分に割れた拳をシロガネブレードの顔面に突き刺す。鋭すぎる切れ味のため
に剣では抵抗にならず、速さはほとんど減じていなかった。斜めに斬り飛ばされた腕の半分が空中で回転するのを、田所カッコマンは
横目に見た。ロボットの痛みをパイロットが引き受けることができれば、どれだけ楽か。
拳を振り抜くまま、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが回し蹴りの体勢に移行。
衝撃に頭をぐらつかせながら、切り裂きジャンヌが金切り声を上げる。
「この子、調子に乗ってッ!」
「どけ、ジャンヌ」
シロガネスナイパーのライフルが火を噴く。狙いを過たず、閉ざす暇のなかったネクソンクロガネのミサイルVLSに銀の銃弾が滑
り込む。重装甲で跳弾し、内部機構に深刻なダメージ。それでも怯むわけにはいかない。
まさかりを振るうがごときネクソンクロガネの蹴撃を、切り裂きジャンヌは機体を沈ませて躱す。抜け目なく関節に剣を突き入れ、
歯車を狂わせようとするが、逆に刃を折られそうな気配を察したか断念。
「中身も化け物なの!?」
「ネクソンクロガネは、アーマーとフレームが未分なのだ」
解説しながら、スナイパーガマンが引鉄を絞る。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの左カメラアイを狙った魔弾は、わずかに逸れて下のビームドライバに着弾、その機能を奪う。こ
れでネクソンクロガネビームの威力が半減。
(またひとつ、追い詰められたか……!)
シロガネマッスルとシロガネソニックが復帰。超音速で飛行できるシロガネソニックが先行して到達し、衝撃波の刃を放つ。
先読みしていた田所カッコマンが、回し蹴りの動作中に密かに振り撒いていた金属粉により、ネクソンクロガネストームが発動。シ
ロガネソニックが爆光に呑まれる。
「またかよ!?」
「学習しろ、エビル!」
スナイパーガマンが怒鳴る。マグネシウムなどの燃焼に、あわや命にも等しい視力をやられるところだった。
「してるさ! 見た目は派手だけど、超ネクソン白鋼ならいくらでも耐えられるってね!」
「そうじゃない! お前の役目は撹乱だ! いらぬ攻撃に我々まで巻き込むんじゃない!」
「はああ!?」
シロガネ四天王、一体一体は確かに強力だ。最強無敵ロボ・ネクソンクロガネに優るとも劣らないだろう。だが、一度も揃ったこと
がないというだけあって、彼らの連携はうまくない。
(四対一だと思うな。これは一対一の四連戦。ただの、消耗戦だ!)
広い背中で爆風を受け、地上の帆船となったネクソンクロガネが、猛然とシロガネスナイパーに掴み掛かる。
スナイパーガマンはゼロ距離射撃を試みるが、響いたのは銃撃音ではなく警告音。
「銃口に異物? ……ちぃっ!」
防塵仕様でない現装備の四天王ロボに、ネクソンクロガネストームは脅威だった。
「このスナイパーガマンを一芸だけの男と思うな!」
シロガネスナイパーがライフルを持ち替え、銃把の仕込み針で首筋を穿とうとする。死神の大鎌のように銃身が風を切る。
田所カッコマンが内蔵兵器ネクソンクロガネバルカンを起動。空中の金属粉で暴発。同じ牽制を食うスナイパーガマンではないが、
今度は最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの側が爆発を制動に利用、躱しようのない体勢から躱してみせた。
動きが止まったところに、左右からシロガネブレードとシロガネマッスルが殺到。
同士討ちさせようとネクソンクロガネが爪先で地を蹴って背後に跳ぶが、絶妙のタイミングでシロガネソニックが空襲し、激しい衝
撃波で押し戻される。
田所カッコマンは戦術を変更。先に接地した左足底を強く踏み締めながら上半身を回転し、左のネクソンクロガネパンチ。
――激突!
先に到達したシロガネブレードが、体重を乗せた刺突でネクソンクロガネの胴体を背から腹へと串刺しにする。難攻不落のシロガネ
マッスルに押しつけるような、逃げ場のない必殺の挟撃。両者の思いきりのよさは、多少の損傷は覚悟の上のものらしかった。
切り裂きジャンヌの毒々しい唇は嗜虐の笑みに歪んでいた。シロガネブレードは貫通した剣を掻き回し、ネクソンクロガネを抉る。
けれど。
「馬鹿な……。この私の、アツい胸板……が……」
この局面で真っ先に苦しげな呻きを漏らしたのは、四天王いちのマッシブ、ニック・W・キムだった。
剛力無双ロボ・シロガネマッスルの山のような巨体がぐらりと傾ぐ。
鍛え抜かれた大胸筋に似た胸部装甲は、弾性の限界を越えて陥没していた。穿つは最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの鋼の拳。そん
な芸当は、通常のネクソンクロガネパンチでは不可能。同等の硬度と、如何ともし難い本体の体重差で弾かれるためだ。
だが、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネはそれを、“衝突の瞬間にシロガネブレードの突進力を借りる”ことで補ったのだ!
衝撃のエネルギーが完全に伝導されたネクソンクロガネパンチの前には、超ネクソン白鋼の積層装甲すら鉄壁の防御とはいかない。
「ニック!」
「呆けるな、ジャンヌ!」
どうと崩れ落ちるシロガネマッスル。
自然に引き抜かれた左手を、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは今度はシロガネブレードの右腕に伸ばす。背後を手探りする無理な
動作で、決して素早くはなかった。
シロガネブレードは退避しようとするが、ネクソンクロガネの背に埋もれた白刃が抜けない。そこで愛剣を手離すことを躊躇したの
が、切り裂きジャンヌの不覚。最強無敵ロボ・ネクソンクロガネがシロガネブレードの利き腕を鷲掴みにし、全握力を費やした圧迫行
動を開始。女騎士自慢の白銀の腕甲が悲鳴を上げた。
「乱暴な男だ!」
シロガネスナイパーが回復したライフルを連射。ネクソンクロガネの五指に全弾命中させ、その手先の感覚を一時的に麻痺させる。
神業めいた援護を活かし、シロガネブレードはネクソンクロガネの背中に足を掛けて強引に剣を引き抜き、どうにか武器を失うことな
く窮地を脱した。
仕切り直し。
台風の目のように激戦の最中にぽっかりと生まれた小休止を、戦士達は彼我の残存戦力の分析に費やす。
状況はシロガネ四天王の圧倒的有利。
たとえシロガネ三羽烏になろうが、カッコマンエビルが役に立たなかろうが。遠近をカバーできるシロガネスナイパーとシロガネブ
レードのコンビネーションが決まれば最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは手も足も出まい。これまで最強無敵を誇った超ネクソン黒鋼
の装甲も、よりネクソニウムの純度を高めた専用武器の前にはボール紙も同然。
有利なはずだというのに。
(勝てる気がしないのは、何故……?)
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは満身創痍。
引き裂かれた右前腕の半面が脱落。十のうち八本の指の動作に不具合がある。肩口と背面腰部の内蔵兵器回りは、四箇所とも再起不
能だ。背面から正面までを刺し貫かれ、破損箇所からは火花混じりの黒煙が止めどなく噴き出す。二基あるビームドライバも片方は機
能を喪失し、攻撃力に不安を抱えている。至近距離で繰り返し爆発を浴び、装甲の光沢も今は曇天のように鈍い。
胸部中央の操縦室に籠るのは、手負いの獣の息遣い。パイロットである田所カッコマンの疲労もまた、心身ともにピークに達してい
た。ヘルメットに縦横の亀裂が走り、頭のどこかから垂れた赤色が顎骨と鼻筋を滑り落ちていく。はぐれ研究員・龍聖寺院光の必死の
呼び掛けも、耳に入らなくなって久しい。
勇姿を知る誰もが目を背けるであろう、惨憺たる状態だった。身構える動作も、どこか精彩を欠いて見える。
それでも、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネには、たったひとつだけ変わらないものがあった。それが百戦錬磨の切り裂きジャンヌ
をして、捉えどころのない弱気を生じせしめたのだった。
たったひとつ。
悪の心胆を寒からしめるカメラの眼の凄み。
それだけが!
「これが最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ……!」
四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌが発した声には、かつてない感情が篭められていた。シロガネ四天王がこれまで敵味
方を問わず与えてきた、“恐怖”などとは似て非なるもの。
――“畏怖”。
切り裂きジャンヌは、無意識にシロガネブレードを一歩、後退させていた。
「武御雷光華流姐さんのおめがねに適っただけのことはある、かもね。……田所とかいったっけ?」
手持無沙汰に上空を旋回していた四天王いちのスピード・カッコマンエビルも、徐々に愛機の高度を下げていた。敵味方入り乱れて
の接近戦には、シロガネソニックでは混ざりづらいのだ。
「だがもう限界だ。そろそろ仕留める」
四天王いちのスナイパー・スナイパーガマンは、その洞察力で最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが気力だけで立っている状態だと見
抜いていた。手の中のライフルが鎌首をもたげる。
今にも最終ラウンドのゴングが打ち鳴らされようかという、そのときだった。
『やれやれ……何をしているのです?』
四天王ロボの画像通信に割り込みを掛ける男がいた。奇病に冒されたような痩身に黒いスーツ。殺人をも厭わぬ冷酷な性を眼鏡が強
調する、それは危険なかほりの男。
シロガネ四天王のメンバーに、稲妻のような緊張が走った。
「これはこれは。最上級エージェント、イッツァ・ミラクル」
悪の総本山・ワルサシンジケートでも屈指の魔人。
シロガネ四天王をロボヶ丘に派遣した張本人でもある。
『四対一でやっと勝てました!では、コマーシャルにならないではないですか』
「猛省しております」
悄然とわずかに顎を引くスナイパーガマン。
イッツァ・ミラクルは激情を顕わにすることがない。しかし、たしなめるような口調に、どこか逆らいがたい迫力があった。
『こうなれば一対一です。つい先日、悪の巨大頭脳・ドクトルポイズンからレクチャーがあったでしょう、“あれ”をおやりなさい。
シロガネマッスルは動けないようですから、こちらで遠隔操作します』
「いや。それには及ばないよ……」
地に倒れ伏していた金属塊が、熊のようにむくりと上体を起こす。
『お目覚めですか、ニック・W・キム』
「鍛え抜かれた筋肉がなければ危なかった」
暑苦しく微笑んでみせるシロガネ四天王いちのマッシブ。
まさかの復活に、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの勝利の可能性がいっそう低下する。
田所カッコマンは悔しげに歯噛みするが、それでも戦意だけは失くさない。シロガネ四天王が盛んに暗号通信を交わし、とんでもな
いことを実行しようとしているとも知らずに!
「では、やるか。……みんな、準備はいいか?」
「まさかぶっつけ本番とはね」
「ハハハ。ぼやくなぼやくな。未知なる筋肉と、さらなる筋肉だ」
「ちぇっ。こんな展開じゃ、悪のカッコマンどころかカッコワルイマンじゃないか」
御伽噺の三銃士さながらに銃と剣と拳とを交差させる、シロガネスナイパー、シロガネブレード、シロガネマッスル。
「イチ!」
「ニ!」
「サン!」
「シロガネ! 四身一体!」
音速飛翔ロボ・シロガネソニックが彼らの腕先を飛び越えたかと思うと、巨大な独楽となって回転し始める。翼端からは飛行機雲の
ように無限の白煙が放出され、見る見るうちに全員を覆い隠していった。
ネクソンクロガネビーム同様に亜空間から転送した荷電粒子によるバリアフィールドだ。吹き荒ぶ電磁竜巻は半径およそ七十メート
ルに及び、十数秒間に渡って外部からのあらゆる干渉を拒む。
わずかに青色を帯びた雷雲の向こう側は、千里眼をもってしても見通すことは不可能。無謀にも侵入を企てようものなら、流体の螺
旋運動に弾き飛ばされ、また電磁気の嵐に電子機器を狂わされるだろう。二重三重にシールドを施された最強無敵ロボ・ネクソンクロ
ガネですら、どうか。
ネクソンクロガネパンチを跳ね返し、ネクソンクロガネビームをも遮断する電磁竜巻の渦中。
地上に聳え立つ三機が散開する。
「ヤツらが手と手を合わせたらァ! 正義の味方は皆殺ぉしぃっ!!」
こんなときにもマッスルポージングを決めるシロガネマッスルから、傷ついた前面重装甲が剥離。頭が横倒しになって胴体に沈む。
首無しの全身が左右に分離し、腕を背後に回しながら再接近。下腿が折れて大腿と同一化し、内股にあるジョイントだけで再結合を
果たす。半回転して上下と腹背を入れ替えれば、シロガネマッスルの剛腕を脛に装備した、大巨人の下半身が完成する。
「何もかも奪うぜッ! 形のあるものッ! 形のないものッ!」
ヤケクソじみたパイロットの歌に乗り、シロガネスナイパーが跳躍。ライフルを手離した両腕を上空に伸ばし、上腕の狭間に頭を隠
す。両脚を合わせながら角度にして90°腰を屈曲、下半身をまるごと肩に、上半身を上肢として形態を移行。投げ出されていたライ
フルを、先端の二つの掌で掴む。銃の向きから、大巨人の左腕であることが知れた。
「シロガネ四天王! 誰か止めてみよ!」
シロガネブレードも同様に、こちらは胸甲を優美な手甲とした右腕をなす。握り締める武器はもちろん剣だ。
シロガネソニックが急降下。自慢の銀翼は、後方にそれぞれ45°展開していた。
「シロガネ四天王! シロガネ四天王! シロガネ四天王! 悪さしてんのう!」
翼の付け根から出現したジョイントを目掛けて、両側からシロガネスナイパーとシロガネブレードが飛来。青と黄と緑の火花を激し
く散らしながら、シルエットをひとつにする。イッツァ・ミラクルの手配で新品に交換されたシロガネマッスルの胸部装甲が、恐ろし
く巨大な前面を封印。大巨人の上半身の準備が整う。
「シロガネ四天王! シロガネ四天王! シロガネ四天王! もうホラ! キミの隣!」
金属塊が衝突する轟音を響かせながら、遂に大巨人の上下が合わさり、そして――!!
『全世界の皆様に、重大発表がございます!』
魔窟Mk−Uから、イッツァ・ミラクルは朗々と声を張った。
『この度、我ら悪の総本山・ワルサシンジケートの戦力貸出プランに、空前絶後の超大型ロボットが新規参戦いたします! 正義の味
方にあと一歩のところで勝てず、大願を果たせないとお嘆きのアナタ! 自分達を弾圧する国家権力を根絶やしにして、自由と尊厳を
勝ちとりたいと理想に燃えるアナタ! あるいはムカつく上司の家をぺしゃんこにして困らせたい陰険なアナタも!』
どこかのコメディ番組のように、下手くそなジョークにサクラの笑声と喝采が沸く。
『今なら皆様の見果てぬ夢を、ワタクシどもがミラクル特価で実現させていただきます!』
内外を隔絶する絶対不可侵の超電磁竜巻を、古城の尖塔のような四本角が突き破る!
その尖端から放たれる尋常ならざる殺気に、田所カッコマンは戦慄した。
夕陽色をした眼が視ている! 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを睨み返すように!
「こいつは!?」
田所カッコマンは、正体不明の微振動に気づく。ネクソンクロガネが震えているのだ。はぐれ研究員・龍聖寺院光の言葉が届いたな
ら、あるいは一種の共鳴現象であることが分かったかもしれない。ネクソニウムの共鳴だ。
敵は世界最新鋭機にして、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと同じ出自を持っている!
イッツァ・ミラクルによって、その名が明らかになるとき。
正義にとっての暗黒時代が始まる。
『とくとご覧あれ!! これが“真最強無敵ロボ・ネクソンシロガネ”であるのです!!』
※
掛け布団を跳ね上げた田所カッコマン、いや田所正男の顔色は真っ青だった。
シーツに湿気が染み透るほど汗を掻いており、だぶついたTシャツが肌に貼りついて気味が悪い。
「ぐ……うっ!?」
胸元に痺れるような鈍痛。身動ぎの度に、長らく油を差していない機械人形のようにぎしぎしと体が軋む。
田所正男はそこで初めて、自分の全身に包帯が巻かれていることに気がついた。ところどころが緩かったりきつかったりで、処置は
お世辞にも上手くない。もっとも、手当てをしてもらっておいて不満に思うほど、田所正男は図々しくもなかったが。
(ここは……どこだ?)
田所正男が寝かされていたのは、まるで見覚えのない、木目張りの小さな部屋だった。
見上げるにつれて徐々に狭まっていく天井が、いかにも屋根裏といった風情である。裸電球が蜘蛛のように垂れ下がっていたが、日
中は四角いガラス窓から採光できる設計になっており、今は点灯しないでも充分に隅々までを見渡せる。
簡素なベッドのほかには家具調度もない、殺風景な空間。
いや、枕元に緑茶の入った200ミリリットルのペットボトルと、子どもっぽい目覚まし時計が置いてあった。
目覚まし時計は、ステゴサウルスという恐竜をモチーフにしたと思しき、モスグリーンの一風変わった品だった。山なりの背に並ぶ
大きな骨板のうちの三本が、三針となって時を刻んでいく。機巧の動くカチコチという音が、静寂にやけに大きい。
現在時刻は午前十一時半。寝坊もここまでくれば笑うしかない。ただしそれも、今が平時であるならばの話ではある。
「俺は、いったい……」
少し喉につかえたが、ちゃんと声は出せる。
“昨夜”の記憶は、ひどくあいまいだった。
シロガネ四天王という恐怖のロボット軍団と戦ったことまでは何となく覚えている。恐らくはその戦いで全身に大小の傷を負い、意
識を失ったと思われるのだが、ここは自宅でも病院でも、ましてセイギベース3でもない。
腑に落ちないことが多すぎた。
「む?」
よくよく見れば、ステゴザウルスの時計は、白い紙きれを尻に敷いていた。
田所正男がずきずきと痛む腕を伸ばして抜きとってみると、きっちりと四分の一に折り畳まれたメモ用紙だった。
部屋の主の残した置き手紙らしいが署名はない。切れ味のよい丁寧な書体だった。性別は恐らく女だが、あのはぐれ研究員は意外に
まるっこい字を書くので、彼女ではない。
日付を三度ほど更新した跡があり、これまでの経緯とロボヶ丘市の近況とが綴られていた。
もろもろの疑問が氷解していく。しかし明らかにされた事実は、田所正男を愕然とさせるに足るものだった。
「馬鹿な……!!」
手紙を残した謎の人物は言うのだ。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが、完膚なきまでに敗北し。
現在のロボヶ丘市は、ロボット犯罪者達が跳梁跋扈する、無法地帯となっていると!
今回はここまで。お楽しみいただければ幸いです。
対四天王戦は正直この作品らしくないので迷ったのですが、せっかくの機会なのでやっちまいました。
どうでもいいけど「シロガネ」という四文字、今回だけでいくつ書いたかな・・・もう見たくもねぇよ・・・
あ、ペットボトルの容量がおかしいですね・・・orz
500くらいか・・・
>>268 熱い! いつにも増して熱い! 火傷するくらい熱い!
それにしてもシロガネ四天王が合体してネクソンシロガネになるとは……不覚にも「おお!」と感嘆の声を上げてしまいました
次回からロボヶ丘世紀末救世主伝説の始まりですね! 楽しみにしております!
「汚物は消毒だー!!」
>>268 乙です
よもやロボスレ初(ですよね?)の合体ロボが敵側とは。にしてもやっぱり合体ロボは強いなぁ……
続きを楽しみにしてます
―――『それ』は、霧の中から現れた。
数センチ先すらも見えない濃霧の中、先日の“一件”の事後調査のために派遣されたZILCH(ジルチ)の一個機動小隊。
最新鋭機L11“Imitated(イミテイテッド)”8機で構成されたその部隊は、たとえその半数が本来の戦闘用ユニットではなく、“残骸”などを運ぶためのカーゴユニットを装備していたとしても、十二分な戦力を誇るものであった。
そう、間違っても、生身の人間になど負けることなどあるはずも無い。
そのはずだった―――
最初の異変、コックピット内ディスプレイに映る複合式レーダーの探索域、そこに一瞬だけ映った大型の機影にZILCHのパイロットたちが気付いたのは、ほぼ同時だった。
「…っ!機影確認、各員――」
一瞬の動揺の後、隊長機のパイロットがとっさに各機へ通信を繋ぐ。
しかし、それが終わるよりも早く、ギュリッ…!っという歪な金属音が外部スピーカーを通じ、全ての機体のコックピット内に響いた。
「……………。」
一瞬の沈黙。
ゴゥンッ…!
二度目の金属音が鈍く響き、その沈黙を破る時、小隊の先頭を行くイミテイテッドの頭部が、地を転がった。
首を失いながら立ち尽くす躰。
その切り口から、数瞬遅れて、どす黒い駆動系の潤滑油が噴出す。
「なっ…!?」
繋がったままの通信から、隊員の絶句する声が流れる。
「…………。」
首をなくした機体は動かず、反応もない。今の一撃で操縦者が気でも失ったのだろうか。
「…なんだ、今のは…いや、それよりも…」
隊長機のパイロットは眉をひそめた。
映っていない。
レーダーに、何も表示されない。
“敵”は確かにそこにいるはずだ、この白い闇のどこかに。
「…戦闘ユニットは配置につけ、カーゴユニットはコンテナをパージ、装備Bで索敵を最大にしろ」
状況の把握を続けながら、隊長機のパイロットは隊員達に指示を出した。
274 :
>>256:2009/06/27(土) 00:43:04 ID:eF6tEF/d
え〜…とりあえず、本当に頭の頭だけですが;
ちなみに小説書くのは初めてなのでお手柔らかにお願いします…
>>257 ありがとうございます。ゆっくりやってみました。ゆっくり過ぎますがw
>>258 絵はイメージを纏めるのに便利なので落書き程度に走り描きで
小説を書いてて矛盾が出てくると怖いので…
>>274 うん、さすがに情報不足過ぎて何とも言えない
とりあえず続きに期待。後ネタバレにならない程度に設定もプリーズ
276 :
>>256:2009/06/27(土) 01:32:01 ID:VfK36UZZ
>>275 やっぱり短すぎますか、でも今日は流石に眠いのでここまででご勘弁を…
明日から本格的に投下できればと
設定も現在未定の箇所が多いので、明日の休日を使って纏めて行きます
一応世界観だけ行っておくと、パラレルワールドですが、ほぼ実際の世界と同じです。国などもほぼそのままですが、所々地名が違ったり架空の街が出てきたりはします。時代としては現在から10年程度未来、という感じです。
まぁいずれにせよ明日以降という感じです;
>>274 現在までの書き込みで感想を述べるとすれば、
「生身の人間に負けるはずはない」という、
機動小隊が生身の人間との接触を予期しており、かつ兵器との接触は予期していなかったであろうことを示唆する文があったのに対し、
実際には何らかの機体が現れた点が気になるなあと。
引きとして効果を発揮してると思う。
>矛盾が出るのが怖いので絵を描く
わかる。俺も某スレで出したオリジナルメカで、一応機構のレイアウト考えたし(絵には起こさなかったけど)。
むしろタイトルの方が知りたい
>>274 生身で人型巨大兵器を破壊……もしや通りすがりのガンダムファイター!?
という冗談は置いといて。
いやぁ、自分が初めてパラベラムを投稿した時を思い出しました。自分も短すぎると突っ込まれたものですw
という思い出話も置いといて。
人間のサイズで兵器を破壊できる(それも一撃で)というのはかなり厄介ですね。
小隊は全滅してしまうのか、それともこのピンチを切り抜けるのか……続きが気になるところです。
絵は自分もよく描きますよ……上手いか下手かは別として、ですが;
どうも、ご無沙汰です
ようやっと続きがキリの良いところまで書けたので投下させてもらいます
三体の球体人形へ向けて飛翔するライファーのコクピット内で、頼斗と希美は短いやりとりを交わす。
「武器はサイファーの時と変わってないよな?」
「はい。サポートユニットとの合体機構はサイファーより簡略化されていますが、それ以外は基本的に変化ありません」
それを聞いて、頼斗がニヤリと笑う。
「おーし、だったらあの団子三兄弟に先制攻撃で一発ぶちかましてやるか!」
頼斗は右腕を向かってくる人形へ向け、左手でそれを支える。
トレースシステムで動くライファーも、それに倣って右手を人形に向けた。
「食らえ、アームバスター!」
そして何か武器を使おうとしたのかそう叫ぶ頼斗。しかし、機体には何の変化も起きない。
「……あれ? アームバスター!!」
もう一度叫ぶ。当然何も発射されない。
今度は何も出ない右手をプラプラと振る頼斗。ライファーもそれを忠実にトレースするが、無論手には何の変化も起きはしなかった。
「……希美、音声入力システムは採用されなかったのか?」
訝しげに尋ねる頼斗。
彼の言うように本来人体には存在していない内部火器を使用する場合、サイファーは音声入力を行っていたのだ。
「えっと、音声入力は採用されてるよ。頼斗君が名前を間違えてるだけ。腕の武器はアームバスターじゃなくてアームブラスター」
彼の問いに、希美は申し訳なさげに答えた。
「だったらすぐに教えてくれ。俺が馬鹿みたいじゃないか」
脱力する頼斗。と、
「敵からビーム攻撃が発射されました! 直撃コースです!」
「へっ……何ぃ!?」
頼斗は咄嗟に回避運動をとるが、間に合わずにビームが左肩に命中した。
衝撃でコクピット内が小さく揺れる。それと同時に、頼斗の左肩に軽く痛みが走った。
ロボットとパイロットの神経をリンクさせ全く同じ動きを取らせることのできるトレースシステムではあるが、このように機体の受けたダメージをパイロットにフィードバックしてしまうという弊害も併せ持っていた。
「くそっ、被害状況は?」
「衝撃はありましたが損傷は軽微です。あの程度の威力なら同じ箇所に七、八発当たらなければどうと言うことはありません」
「よし、じゃあさっさとお返ししてやるか!」
三体の黒い人形から連続で放たれるビームを回避しながら、頼斗は再び右腕を敵の一体に向けて構える。
「アームブラスター!」
すると今度こそライファーの腕に変化が起き、神経リンクのカットされた右拳が腕の中に収納される。
そして銃口となった右腕から一条のビームが人形に向けて放たれた。
ビームの直撃に耐えきれず、黒い人形の腹部に大きな穴が空く。と同時に、人形は炎に包まれ爆散した。
「よし、このまま残りも片づけるぞ!」
「はい!」
頼斗は次の敵に狙いを定めた。
時を同じくして、春風荘。
避難を指示するアナウンスなどどこ吹く風といった様子で、善司は部屋の窓から空を眺めていた。
目をこらせば、遠くに戦っているライファーと謎の敵の姿が確認できる。
「……」
無言でその一点を見つめ続ける善司。と、不意にドアの方から「善司……」と声をかけられた。
「どうした、蘭?」
窓から目を離し、善司は部屋のドアの方を向く。そこには、携帯を握りしめた蘭の姿があった。
「頼斗が携帯に出ないの……」
そう告げる彼女の声は震えていた。よく見れば携帯を握る手もまた震えている。
五年前にアンノウンによって家族を失った彼女にとって、この状況で不安に駆られるのも無理はない。
「……私、頼斗を探してくる!」
普段の明るい彼女からは想像も付かないような声音で彼女は叫び、玄関に向かって駆け出そうとする。
が、善司が彼女の腕を掴んでそれを引き留めた。
「待て、この状況で探しに出てもまず見つからない。それどころかお前だって危険だ」
「何でそんなに落ち着いてるの!? 頼斗が心配じゃないの!?」
激しい剣幕で善司を睨みつけ蘭は必死になって腕を振り払おうとするが、予想以上の力で腕を掴まれておりそれも叶わない。
「俺だって心配はしている。だが幸い戦闘は上空で行われているし、命に関わる危険にはそう見舞われないはずだ。
それにこの状況では携帯に出ないのもそれ程不思議な話ではない。戦闘が終わってからもう一度電話をかけてみて、探すのはそれからでも遅くはないはずだ」
努めて冷静に、そして真剣に語る善司の言葉を受けて、やがて蘭は小さく頷いた。
「……わかった。ごめん、大声上げちゃって」
「いや……」
善司は蘭の腕から手を離し視線を再び窓の外、戦闘が行われている場所に向けて口を開いた。
「心配するな。あいつなら大丈夫なはずだ」
「アームブラスター、発射!」
ライファーのアームブラスターが二体目に向けて放たれる。
だが、敵は完全に胴体部を捉えた筈の一撃を体をいくつもの球体に分裂させることで回避した。
「野郎、分裂しやがった」
「伊達や酔狂で体を球体で構成しているわけではないということですね。敵球体群、エネルギー反応増大。こちらに対してビーム攻撃を仕掛けてくるつもりのようです」
希美の言ったとおり、分裂した球体一つ一つがそれぞれライファーに向けてビームを放ってきた。
「ちっ、一つ一つ潰してる余裕はないか……」
アームブラスターで一体ずつ落とすのはリスクが大きいと判断し、頼斗は別の武装を使用することにした。
「ラピッドフィンガーショット!」
頼斗のかけ声と共に、収納されていた右拳が再び姿を現す。
そして両手の指先に内蔵された機関砲が球体群に向かって火を噴いた。
威力はアームブラスターに比べて数段劣るものの、広範囲の敵に対応するには有効な武装である。
無数に降りかかる銃弾の嵐を受け、球体群が一つ、また一つと撃墜されていく。
と、希美がライファーに向かって急接近するエネルギー反応を感知した。
「左から攻撃が来ます! 回避して下さい!」
「何っ!?」
ライファーが攻撃を中止して回避運動を取る。直後、先程までライファーのいた地点を高出力のビームが通過していく。
ビームの放たれた方に目を向けるライファー。そこには、今までのものよりも二回り程巨大な黒い球体人形が存在していた。
「新手か!」
「妙ですね。データでは飛来した物体に大きさの差異はなかったはずなのに……」
希美のその疑問の答えは、目の前で敵が身をもって解答してくれた。
今まで戦っていた球体の残り、そして残るもう一体の人形が分裂し新たに現れた大型の人形に結合したからだ。
「一体一体じゃ勝てないから合体か。どこも考えることは同じなんだな」
「解析の結果、あの敵を構成している球体は今までのものの約八倍と測定されました。恐らく地上に降りた機体の全てが結合していると推測されます」
「つまりアレを片づければ万事解決ってわけか。丁度良い」
頼斗は右腕を敵に向ける。
「アームブラスター!」
ライファーの右腕からビームが放たれ、人形の左肩に直撃して爆発が起きる。
だが、人形に動じる様子は全くない。それどころか地面に転がっていた球体の残骸が再び左肩に集結し、破損部が即座に復元されてしまう。
「効いてないのか!」
「確かに相手の肩部は破損していました。敵の構造から考えて、心臓部を破壊しない限り球体を再結合して破損部を復元できるのだと思われます」
希美がコンソールを操作しながら口を紡ぐ。
「よし、なら俺がもう一回攻撃するからエネルギーの流を調べて心臓部の位置を特定してくれ」
「了解です」
再びアームバスターを発射するライファー。それに対して、敵は頭部の球体から放つビームで対抗してきた。
ライファーと大型人形の丁度中間辺りの空間で二つのビームが直撃する。同時に辺り一面がまばゆい光に包まれた。
「野郎、味な真似してくれるじゃねえか」
左手で光を遮断しながら、頼斗は悪態をつく。
「合体した分、ビームに使用できるエネルギーが増えたのでしょうね。出力はアームブラスターとほぼ互角でした」
「そりゃ、やっかいだな……」
と、ライファーのセンサーがエネルギーの反応をキャッチした。
「攻撃、来ます!」
希美の言葉を受けて頼斗はすぐにその場から離れた。それと同時に、ビームが今までライファーのいた場所に向けて放たれる。
「にゃろっ!」
すかさずそこにアームブラスターによる攻撃を加える。狙いは頭部の球体、ここを潰せば復元するまでビーム攻撃は行えないだろうと考えたからだ。
そして狙い通り頭部に命中、爆発が起きる。
「よっしゃ! これで少しの間攻撃は出来ないだろ」
一気に大型人形との距離を詰めようとする頼斗。
それを希美の叫び声が阻んだ。
「敵の両腕にエネルギー反応!」
「っ!?」
直後、人形の両腕から放たれたビームを紙一重でかわす。
「危ねぇ……そういやついさっきまで分離してビーム撃ってたんだよなあいつ」
額の汗を拭う頼斗。そんな動きまでライファーは忠実に再現する。
「敵機、頭部の復元を終えました」
「心臓部は?」
「ビーム攻撃の際のエネルギーの流れと合わせてほぼ特定できました。やはりと言っては何ですが、胴体の中央部です」
「よし、だったら隙を突いてアームブラスターを叩き込んでやるぜ」
頼斗の言葉に希美が首を横に振る。
「無駄です。アームブラスターの火力では心臓部まで攻撃は届きません」
「だったら……」
「はい、ブラストナックルファイヤーです」
ブラストナックルファイヤー。それはエネルギーを炎の塊にに変換し敵にぶつけるという、サイファーの武装中最大の火力を誇った武装である。
頼斗はその必殺武器を使用するべく、右腕を腰に据えた。
「ナックル、エネルギーチャージ!」
音声入力を受け、腰に据えられたライファーの右腕にエネルギーが収束し始める。
無論そんな隙を見逃すはずもなく、大型人形がライファーに向かってビームを放ってきた。
それに対して、ライファーは左腕を正面に突き出す。
「サークルプロテクション!」
瞬間、ライファーの左腕から円形の防御フィールドが出現、ライファーの正面を覆うように展開された。
そしてビームがサークルプロテクションに接触し、頼斗の左腕に衝撃が直に伝わってくる。
「グッ……エネルギー充填率は!?」
「97……98……99……行けます!」
その言葉を受け、敵の攻撃が止むと同時に頼斗は機体を急上昇させる。
そして人形を見下ろせる位置で静止すると、右腕を天に向かって突き上げた。
「右腕アーマー、展開!」
頼斗の言葉を受け、突き上げられたライファーの右腕装甲の一部がスライド展開する。そして、スライドした装甲の隙間から炎が吹き出す……と頼斗と希美は疑いもなく思っていた。
だが、装甲の隙間からは炎など微塵も噴き出さず、その代わりに溢れんばかりの電流が流れ出始めた。
「なっ……!?」
「何ですか……これは……」
予想外の事態に戸惑う二人。機体の故障かとも思ったが、右腕のリンクは正常に行われている上、頼斗の右腕は特に痛みも感じていない。
と、突然モニターに『BLAST KNUCKLE SPARK』の文字が浮かぶ。
「ブラストナックルスパーク? こんな武装、取り付けた記憶は……?」
戸惑う希美を余所に頼斗は天に突き上げられ、電撃を纏ったライファーの右腕を一度見て、アバウトに結論を出した。
「ま、どの道炎だろうが電撃だろうが結局ぶちかますことには変わりないか。行くぜぇぇぇっ、ブラストナックル、スパァァァァァクッ!!」
頼斗は天を向いていた拳を人形に向けて突き出す。
同時に、ライファーの右腕から凄まじい勢いの電撃が放たれた。
自らに向けて放たれたブラストナックルスパークに、大型人形は頭部と両腕からビームを放って対抗しようとする。だが、その攻撃は電撃の奔流に触れた途端、あっさりと飲み込まれ消え失せてしまう。
そして電撃の矢は見事に人形の胴体を捉え、一瞬にして人形の腹に大きな風穴が形成された。
一瞬の静寂の後、人形は大爆発を起こし、黒煙が周囲に広がっていく。
「やったのか?」
間違いなく倒したのだと確認するまで気を抜かず、頼斗は身構えながらそう尋ねる。
「敵機の反応、完全に消失しました。撃破したと考えて間違いないです」
希美がはっきりとそう言いきった所で、頼斗はようやく肩の力を抜いた。
「ふぅ、どうにかこうにか片づいたな」
「お疲れ様でした」
「ああ……」
短くそれだけ言葉を交わすと、二人とも何を話すべきか分からず顔を見合わせたまま黙り込んでしまう。
コクピット内に微妙に気まずい空気が流れ始め、そんな空気に耐えられなくなった頼斗がとりあえず口を開いた。
「……そういやさっきの電撃の事、お前も知らなかったんだよな?」
「えっ? はい、これっぽっちも知りませんでした。……よくよく考えてみれば開発仲間の私に内緒で変な武装を追加しているなんて、ちょっと許せませんよね」
フフフフフと、とても良い笑顔を浮かべる希美。それは彼女を知っているものが見たらすぐさま全速力で逃げ出すだろうと思わせる程の、とっても良い笑顔だった。
頼斗は心の中で顔も知らないメカニックの皆さんに合掌を送る。
何となく頼斗の考えていることが分かったのか、希美は小さく微笑んだ。
が、すぐに人形が爆発した地点に目を移し、今度は険しい顔で何事かを考え始める。
(それにしても、思っていた以上に簡単に勝つことが出来た。人工物であるのは確実として、送り主が私たちの戦力を見誤っていたんでしょうか? それとも試されていた? こちらの戦力を……)
戦闘の終了と同時刻、戦闘の起きた場所から遠く離れたとある町。そこに、黒人形との戦闘を終え空中に佇むライファーに向けて拍手を送る壮年の男がいた。
黒い紳士服で身を包んだその男は、常人では決して見ることができない筈の距離から今の戦闘を余すところなく観察していたのだ。
男の不可思議な点はそれだけではない。彼は建設中のビルの天辺に、まるで蝙蝠のように逆向きに立っているのである。
「ブラボー、流石に殲滅プログラムの第一段階を退けただけのことはある。中々良い戦闘兵器じゃないか」
男は懐からシガレットケースを取り出し、煙草のようなものを一本口にくわえる。
そして左手の人差し指からまるでライターのように火を灯し、煙草に火をつけた。
「……でも、残念だったね。僕が来てしまった以上君たちには滅亡という未来しか残されていないんだ」
男はスーツの襟元を正す。と、それまで磁石のように鉄骨に吸い付いていた足が唐突に離れ、男は重力に従って地面に落下を始めた。
だが、地面に激突する寸前に男は足を下に向け、何事もなかったかのように地面に着地する。
これまた不可思議なことに、周囲の人間で男の今の行動に気が付いた者は誰一人として存在しなかった。
「さてと、仕事の前に少し町を歩いてみようかな。何か僕の琴線に触れるものが有るかも知れないし」
男は小さく微笑み、人混みに紛れて消えていった。
『電光石火ゼノライファー』―――To be continued
今回は以上です。
戦闘シーンって難しい……
もうすぐゼノライファーには合体出来そうです
スパロボ企画の方ですが本編の方でゼノライファーを出せるまでは参戦は控えさせて貰います
待った待った!
>>274の「生身の人間」と「大型の機影」ってどっちがどう話に関わってるのか俺には判断つかないぞ
これだけなら何かの伏線かミスにしか見えない
>>286 おお内蔵兵器がいっぱいだー!
けっこうな激戦っぽいのに「結構簡単」なのは合体を残しているからか
そして一人称が「僕」の壮年男性ってなんか素敵・・・!
来たついでに
>>4も修正してくれると嬉しいんだけど
ちょ、今気づいたのだがwikiがちょっと更新されている!
超乙です!
>>286 お久しぶりですw
ひゃっほう! バリバリスーパーロボットしてるぜぇ!!
ライファーでこれなら、ゼノライファーは一体……。
さて、自分もそろそろ−−−−今日明日には投下できそうです。上手くいけば、ですが。
290 :
tueun ◆n41r8f8dTs :2009/06/27(土) 13:59:26 ID:NW6aaBLd
まさか規制に巻き込まれるとは……orz一応話は出来ているので、規制が解け次第投下できると思います
>>256 オォウクロガネ…
これから田所はどうするのか、ロボヶ丘市はどうなってしまうのか、wktkしますな
>>273 初投稿乙です
確かに情報がまだ少ないですね。それだけに先の展開を早く知りたい所。
続きを待っています
>>286 おぉ、お久しぶりです!
相変わらずの熱い展開で良いっすなー。最後に出てきた男の正体は如何に
こう良い作品が投下されると、早く書きたい衝動がw規制恨むで
おのれ規制
失礼します
当方、無法地帯となったロボヶ丘市で悪行の限りを尽くすロボット犯罪者の設定(特にロボットの名称)を募集中・・・
雑魚メカなので活躍は約束できませんが、第6話(後半)、最終章に掛けて複数採用します。
あなたも自慢のロボットで、腐りきったロボヶ丘を鮮やかに駆け抜けてみませんか?
規定/
機体名のみ必須。大雑把な外見やスペック、パイロット設定もあれば助かりますが、それは自由ということで。
いずれもワルサシンジケートの製品ということで、「ドルンドメオン」のような完全造語のネーミングだけ避けていただければ、あとは自由です。
犯罪者が個人的に愛称をつけていたりするのもありです。
(事情によって設定を多少いじったり、部分的に採用したりといったこともあるかもしれませんが、ご容赦ください)
期限/
未定。また報告いたします。だいたい1週間くらいになるものと思います。
ご応募お待ちしております!
ショードクダー。
火炎放射器を装備した、頭がモヒカン形状の雑魚ロボット。
火炎放射器をあっさり奪われて火炎放射でやられるとディモールトベネ。
「汚物は消毒だ〜!!」
規制中ではありますが、完成した作品をこのままにしておくはどうもムズムズするので投下します
かなり長いので前編と後編で分けて投下します。
デスク上の受話器を置き、シュワルツは椅子に腰を下ろした。両手を組み、思考に耽る。
正直驚いていた。ライトが死んだ事にではない。所詮雇った用心棒の命など取るに足らない物。
シュワルツが驚いているのは、黒騎士達が全滅したという事実にだ。村人達に、黒騎士に対して抗える手段は持っていない。
持っていない……筈だ。黒騎士の防御力は伊達ではない。粗悪な短機関銃程度では傷など付く訳が無い。
だがレフトの報告によると、黒騎士達は例の「自動人形」によって、原形を残さないほど破壊されたらしい。
そうだ……「自動人形」だ。レフトは興奮した口調でそう言った。黒騎士達が、「自動人形」によって完膚無きほどの叩きのめされたと。
正直信じられない。黒騎士を圧倒する程の実力のある「自動人形」がこの村に居るなんて。それもレフトによると軍の紋章も無かったようだ。
つまり、その「自動人形」は少なくとも、我々の味方では無いという事だ。そして、恐るべき敵であるという事。
当り前の事実だが、今のシュワルツには不愉快極まりない。
まさか村人達が「自動人形」を発掘したのだろうか。いや、それなら村を徘徊している黒騎士が事前に察知し、知らせてくるはずだ。
と、シュワルツの思考を断ち切る様にもう一度受話器が鳴った。シュワルツは舌を打って、受話器を取った。どうやら外部からの様だ。
「私です。計画の進行はいかがですかな、ミスターシュワルツ」
「特に不調は無い。だが聞きたい事がある」
「何です? 私で良ければお答えしますよ。無論答えられる範 疇でね」
「ダルナスの起動を早めたい。村人達は既に立ち去ったと思うのでね。まぁ……立ち去ろうが残ろうが構わないのだが」
「ん? あぁ、構いませんよ。ただ、絶対に傷を付けないでくださいね。もしもの場合……御存知かと思いますが」
「分かっている。事が済み次第連絡する。切るぞ」
「それではより良い返事を期待しております。世界に美しき花を……」
「下衆が……」
シュワルツは受話器を叩きつける様に戻し、手を組みなおした。しばし熟考すると、ゆっくりと顔を上げた。眼鏡の奥の目が鈍く不気味に光る。
受話器に手を伸ばし、ボタンを押す。
「レフト、お前に任務を課す。好きなだけ黒騎士を使っても構わん。その自動人形とやらを捕らえてこい。
どんな手を、使ってでもな」
<6,反旗(前篇)>
この空気は一言でいえば、悲痛だ。大声を上げて泣く者、声を潜めすすり泣く者、ただただ呆然とする者etc。皆に共通しているのは一つ。
例え微力だったとしても、村人達の心の支えとなっていた村長、ロッファが無残な死体となって帰ってきた事に対して、各々が感情を爆発させているのだ。
昨日、トニーがシュワルツ達と一悶着を起こした酒場に、村人達が集まっていた。召集を掛けたのは怪我を負い、頭に包帯を巻いたギーシュだ。
ギーシュが呼んだ村人達の中には、家族を持つ者や、妻帯者もいる。皆、ギーシュからの連絡に戸惑った。こんな夜に全員酒場に集まれとは何事かと。
ギーシュは伝えた。ロッファが殺されたと。証拠はという者には、丁重に包んだロッファの遺体を見せて。
そして、村人達の中にはトニーもいる。未だに泣きやまぬクレフと、事態を察し気を落としたメルティを連れて。ショウイチはというと。
「……僕は行かない方がいいですよね」
落ち着いたクレフから事情を聴いたトニーに、ショウイチは怪訝な表情でそう聞いた。トニーは悩んだ。
もしもショウイチを連れていけば、恐らく槍玉に上げられる事だろう。部外者を村の事情に巻き込むなと。
しかしそれ以上に危惧すべき事がある。それはだ。
ショウイチはタウエルンという名の自動人形を連れている事だ。これがトニーの頭を悩ましている理由である。
トニー自身は完全に払拭してはいないものの、タウエルン、および自動人形に嫌悪感を抱く事は少なくなった。だが、今の村人達はどうだ。
ロッファを殺された事によって、自動人形に対していつも以上に憎悪を滾らせている筈だ。もしもショウイチが自動人形を所持してると知ったら……。
「……すまないね、ショウイチ君。多分すぐ戻るから、自由にくつろいでてくれ」
トニーはショウイチにそう伝え、起床したメルティとクレフを連れて、酒場へと向かった。ショウイチはひらひらと手を振って見送った。
ドアが閉まり、ショウイチは一呼吸置くと、踵を返して窓の方へと近づいた。
「どう思う、タウ。想像以上に根が深そうだぞ」
何処からともなく、人型状態のタウエルンが空中で一回転して地上に降りた。戦闘時に見せたバッファローモードは解除されている。
「どうするもこうするも……一番悪い奴を倒すんだろう。ショウイチが何時もやってる事じゃないか」
呆れたような口調でそう言うタウエルンに、ショウイチはワザとらしくため息を吐いた。
「そうじゃないよ。その一番悪い奴がトンデモないド外道でな。村の人達の神経をこれ以上無いほど逆撫でしたみたいなんだ。
おそらく……黒騎士、いや、自動人形をこれ以上無いほどに憎んでると思う。つまりだ、皆まで言わなくても分かるよな。
俺だって早く行動したいのは山々なんだけどな、もし下手に動いてトニーさんやメルティさんが責められでもしたら、やり切れないだろ?」
「……ごめん、無神経だった。確かに僕達を迎え入れてくれたトニーさん達に迷惑は掛けられないね……」
しょんぼりとヘッドパーツを項垂れるタウエルンに、ショウイチは髪を掻きあげるとニコッと笑った。
「お前は優しいな、タウ。しかし困った。いつもみたいに俺達だけなら直に終わるだがなぁ」
その時だ。タウエルンが突如、素早い動きで空に体を向けた。ショウイチがその動きに合わせるように、目線を空に向ける。
「ショウイチ……」
「タウ、俺に考えがある。上手くいけば村人達と協力できるかもしれない。その前に」
瞬間、ショウイチの頬を斬る様に巨大な槍が、窓の隣の壁を貫いた。綺麗に開いた穴にミシミシ亀裂が走り、数秒後にはあっという間に壁が崩れ去る。
ショウイチの目前には、すでに武器を構え戦闘態勢を取った黒騎士達が待ち構えている。それもかなりの数だ。
良く良く観察するが、さっきの大男(ライト)の様に黒騎士に対し命令を行う人間はいない。まずい事が起きそうだ。それも厄介な。
まぁ、後々それは何とかするとして、今は目の前の敵、だ。
「タウ、のんびりは戦ってられんぞ。ナノマシンを使う」
背後を向いたまま、タウエルンはバッファローモードへと移行し、ショウイチに返答した。
「分かった。すぐに終わらせよう」
一通り時間が経ち、ギーシュが村人達を座らせる。ギーシュは皆に話が行き届くように、中央に座る。皆、不安な表情を浮かべている。
張り詰めた空気の中、ギーシュが静かに口火を切った。
「突然召集を掛けてすまなかった。今回皆を呼んだのは他でもない」
「今見て貰ったように、俺達の支えとなってくれた村長が亡くなった。何故か? 遂にシュワルツが本性を露わにしたからだ。
俺は今日、村長の伝言で奥さんと共に、村長の帰りを待った。だが村長は帰ってこなかった。代わりに奴らが……黒騎士が今の村長を連れてきた。
奴らは村長を殺した事で、完全に俺達の村を掌握したと言ったよ。そして俺もこのざまだ。奥さんは村長が死んだ事で完全に寝込んじまった」
一気にまくし立てた為言葉が詰まる。慌ててトニーがギーシュに水を差しだした。ギーシュはそれをグイッと飲み干すと、言葉を続けた。
「すまない、上手く話が纏まらなくて、今でも少し混乱してるんだ。……でだ。奴らは村長の遺体を届けに来ただけじゃない。もう一つ。
明日、この村で得体の知れない実験をするらしい。その実験の為に、俺達にこの村から出ていけと言った」
ギーシュの言葉にザワザワと、村人達が反応を示す。無論トニー達もだ。
「出ていけってそんな……まるで俺達が邪魔みたいじゃないか」
トニーの憮然とした言葉に、泣きすぎて呼吸が整わないクレフの背中を擦りながら、メルティが答える。
「邪魔みたいじゃなくて邪魔なんでしょ。すっごく悔しいけど……」
ギーシュがゴホンと咳払いをして、村人達を静かにさせる。再び話しを続ける。
「信じられないだろ? だがこれだけ非道な行為をされたんだ。奴らは冗談でも何でも無く、本気で俺達を追い出そうと考えていると、俺は確信している。
正直悔しいって感情じゃ収まらないぜ。突然この村を乗っ取られた揚句、俺達が出ていく事になるとはな。……ここから本題だ」
一方、黒騎士達の襲来により、修羅場と化したトニー宅。
黒騎士達はタウエルンにジリジリと近寄る。タウエルンはというと、背中を向けたまま動く気配が無い。
ショウイチがタウエルンに触れると、収納された半透明のタッチパネルが、ショウイチの前に出てきた。
パネルを見、ショウイチは素早い動作でタッチパネルを弾き、ENTERと刻まれたボタンを押す。
パネルが閉じ、タウエルンのデュアルアイが赤く発光する。背後で、黒騎士達が意を決し、一斉に飛びかかってきた。
次の瞬間、タウエルンの排気口から白い煙が放出される。
その煙は襲いかかってきた黒騎士達と、その後ろで待ち構える黒騎士を巻き込んで膨大に膨れ上がった。
「悪いが時間が無いのでな……苦痛は無い」
ショウイチが周囲の黒騎士達に、憐みを込める口調でそう言った。
その煙に巻かれた黒騎士達の動きが次第に硬直し始める。すると、黒騎士達の外部装甲が少しずつ剥がされていく。
剥がされるというより、溶けていく様だ。その内、その攻撃――――ナノマシンによる浸食はは黒騎士達の内部まで達する。
黒騎士達のヘッドパーツが地面に落ち、そのまま水たまりが地面に吸収されるように消えていく。
他の機体も続く様に崩れ落ちていく。やがて、白い煙が収まっていき、曇っている周囲が晴れていく。
そこには、群がっていた黒騎士達の姿は既に無かった。奇妙な静寂が漂う。
タウエルンがバッファローモードから通常の状態に移行する。ショウイチはタウエルンの背中に飛び乗った。
「タウ、黒騎士達が何処に行ったか分かるか?」
「何となく! しっかり掴まっててよ、ショウイチ!」
ブースターを吹かし、タウエルンが飛翔する。ふと、ショウイチはタウエルンに声を掛ける。
「タウ、粒子残量は大丈夫か?」
「たぶんまだ持つと思う……。けど、太陽熱のエネルギーが少し危ないかもしれない」
「……まぁ、何とかなるか」
続く
投下終了です。尻切れとんぼで申し訳ない
タウエルン強えぇー!ナノマシンが極悪過ぎる。
けど、これならOP風で思いっきり無双出来ます。
ターンエーターン!
しかしエネルギー切れでダルナス相手には苦戦必至?
強力だけど分かりやすい弱点があるっていうのはいいな。
タウエルンは今回も絶好調でぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁる!!
圧倒的じゃないか……。
前回から物語が急激にスピードアップし始めましたね! こいつは次回も楽しみだっぜ!
久々に1スレ目を読み返したんですが、火炎車の名付け親こと1スレ目の
>>995がまさか自分だったとは思わなんだ。
◆46YdzwwxxUさん、採用してくださってありがとうございます!
さてさて、今日こそ投下……できるかなぁ、できるといいなぁ
>>292 ザコダ1010(せんとう)印
金魚鉢のような頭部と骨のペイントが特徴的な機体
いっちょまえにマシンガンと刀で武装している。恐ろしく弱い
>>300 乙であります
なんというエネルギー切れフラグ……
確かにタウさん燃費悪そうだもんなぁ……
ともあれ続き楽しみにしてます
所で◆gD1i1Jw3kkさんってスパロボに参加しない作品に対して割りと冷たいですよね。こういうこと言っちゃ悪いとは思いますけど
さて、これより投下を開始しようかと思います
それにしても今回はいつになく長くなってしまった……
両手に持った二挺のレーザーライフルでウサギと黒騎士それぞれにピタリと狙いを付けながら、そのオートマタは言った。
<まさか、こんなに早く君が現れるとはね。リヒター……リヒター・ペネトレイター>
猫を彷彿とさせるしなやかな蒼いボディ、男とも女ともつかない中性的な声。長い尻尾が落ち着き無く揺れる。
パラベラム!
Episode 06:−−−−それでは諸君、慎ましくいこう。
<……誰だ、貴様は>
唸るような低い声で、黒騎士。戸惑いを隠し切れていないのか、声が少し震えている。
<へぇ、メモリーを消したのか。……あるいは、消されたか。……まあいいや。私の名前はフェーレス。以後お見知り置きを>
クスッ。小馬鹿にしたような笑いを漏らす、蒼い猫。相変わらずその長い砲身はピクリとも動かない。
<何の事だ……!>
<だから壊れかけのレディオですか、あなたは。ほら、落ち着いて深呼吸してください。ひっ、ひっ、ふー>
……ラマーズ法?
遥が首を傾げたその時だ。
「お嬢さん」
リヒトが遥を呼び止めたのは。
♪ ♪ ♪
<面白い子だね、キミ。やられるかもしれないのにそういう事が言えるなんて>
<そんなに褒めないでください、惚れてしまいます>
ウサギが演技がかった動作で頬に手を当てる。
「いやお前、ありゃ馬鹿にされてんだ」
<ですよねー。……さてと、ひとつ質問してもいいですよね>
断定口調。ウサギはどうにも強引だった。
<許可しよう>
同じく余裕たっぷりのフェーレス。
<そこにいるのは、誰ですか……!>
<嘘だ! 反応なんて無かっ>
しかしその余裕はすぐに消滅した。振り返れどもそこには何も無い、誰もいない。
<しまった!?>
気付いた時には、もう遅い。
「よし、行け! ゴー!」
「は、はいっ! GO Ahead!」
すぐさま指示を飛ばす。
<イエス・マイマスター>
「ハーシェン、お前も!」
<合点承知の助!>
黒騎士と白ウサギの二機が同時に飛び掛かった。
<かかったなアホが!>
狙いは長い、その砲身。がっしとつかんで、ブン投げる。くるりくるりとレーザー砲が宙を舞った。
<やったね……!>
飛びすさり、距離を離す。その声音に、先程の余裕は無し。
<……形勢逆転だ>
<でも、まだだ、まだだよ。レーザーを取られたぐらいじゃ>
フェーレスのマニピュレーターから、五本の光刃が飛び出した。
<私に勝ったとは言えない!>
鋭い眼光、揺れる尻尾。四脚で立つその姿、それはまさに猫そのもの。
<……所謂本気モードですか。まあ、勝たなくてもいいんですけどね>
幼い声で嘲笑うウサギ。
<……まさか!>
「黒騎士さん、ウサギさん、下がって!」
<イエス、マイマスター>
<では、ごきげんよう>
遥が、大きく振りかぶって、円筒状の物体を−−−−
「とーんーでーけぇぇぇぇぇぇ!!」
投擲。結構な速度で弧を描いて飛んでいく、その物体は本日二つ目の白燐超高熱(中略)発煙化学爆弾。またの名を、煙幕という。
<閉所でこんな物を!?>
「駄目押しだ、こいつも持っていけ!」
ロッドを地面に突き立てて、ライフルを召喚。フェーレスがスモークグレネードに気を取られているところに特製のペイント弾を叩き込む。
<ああ! 目が! 目が!>
命中。カメラ・アイが塗料によって朱に染まる。それと同時に白燐(中略)焼夷弾頭型(後略)が破裂、部屋中に煙が広がった。
「よし、逃げるぞヘーシェン! お嬢さんも!」
ライフルを捨てながらリヒトが促す。ライフルは光の粒子となって消えた。
<言われなくても脱兎の如く。光の速さでスタコラサッサですよ>
「はい! 行こう、黒騎士さん!」
<イエス、マイマスター>
走り出す、各々マスターを背に乗せて。
フェーレスがこちらを追い掛けてくる気配はない。
ミッション、コンプリート。
♪ ♪ ♪
走り続けて数十分、流石にもう大丈夫だろうと街道に出て歩を休める。
「落ち着いたところで、改めて自己紹介タイムといこうか。俺はリヒト・エンフィールド。見ての通り、通りすがりの神子様だ」
近くにあった手頃な岩に腰掛け、腕を組みながら、リヒト。
<とんだ不良神子の穀潰しですけどね>
「お前は黙ってろ。こいつはヘーシェン、俺のパートナーだ」
<ヴァイス・ヘーシェンです。……謝って済む事ではないかもしれませんが、先程は壮大な勘違い、失礼いたしました>
ゆっくりと、丁寧に頭を下げる。
「いえ、こちらこそありがとうございました。……もし黒騎士さんとあなたがたの助けが無かったら私きっと殺されてました。あ、私 一条 遥 といいます」
「いや、当然の事をしたまでさ、遥ちゃん」
爽やかな笑みでサムズアップ。
<あ、剃り残し>
ぶちっ。ヘーシェンの、見かけとは裏腹に細やかな作業を可能とするマニピュレータが、リヒトの剃り残しを根本から引っこ抜いた。
「へあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」
爽やかスマイル台無し。服が汚れるのも構わず、地面をのたうちまわる。
「何すんだテメー!!」
しかし復活は早かった。無駄の無い動作で起き上がり、
「ここまでカッコ良くキメてたのに台無しじゃねーか!」
びしりとヘーシェンを指差す。
<所詮は三枚目という事ですよ>
「せめて二枚目半と言え!」
「ぷっ……ふふっ」
目の前で進行する台本の無いコントに、遥が思わず噴き出した。
「今、誰か俺を笑ったか?」
<あげゃげゃげゃげゃげゃ!!>
「笑うなぁぁぁ!!」
手近に転がっていた小石をヘーシェンに向かって全力で投擲。カチンと虚しい音を立ててそれは弾かれる。余りにも情けない光景に、遥は笑いを隠し切れない。
「ふふっ。いつもこんな感じなんですか?」
「いんや」
<ここにさらに五人加わります>
「五人も!」
遥が驚きの声を上げる。それだけの人数がいたら、どれだけ賑やかな事だろう。二人でこれなのだ、きっと毎日が楽しいに違いない。
「すっごく楽しそうですね。いいなぁ」
「君にもいるじゃないか、相棒が」
リヒトの向ける視線の先、おいてけぼりを食らっていたリヒターがぴくりと反応した。
<何かご用でしょうか、マスター>
それはまるで「待て」を命じられていた犬のようで。
「あ、今は」
<現在自己紹介タイム、あなたのターンです>
……間が悪い。
<了解いたしました。私はM-12>
「型式番号ジャネーヨ、名前聞イテンダヨ」
青筋を立ててメンチを切るリヒト。何故かひどく片言だ。
<名前はまだ>
「リヒター・ペネトレイター……だよね?」
名前はまだ無い、そう言おうとした黒騎士を遮る遥。
<……イエス・マイマスター>
黒騎士はそれを静かに肯定した。
♪ ♪ ♪
「リヒター……ウーン、いい名前じゃないか。俺の名前と似てるところとか特に」
<あまり縁起のいい名前ではありませんね、改名を推奨します。もっとカッコイイ名前にしましょう、ネオブラックドラゴンとか>
「待てやコラ」
そんなやり取りを遠い目で見ていた黒騎士改めリヒター、指の触覚センサーに反応を確認。頭部を巡らせると、
「あの、リヒターさん」
三つ編みの少女がこちらを見上げていた。
<リヒターで構いません。……何でしょうか、マスター>
「じゃあ、リヒター。色々聞きたい事があるけれど、今はひとつだけ質問します」
<はい>
「私には神子としての素質はありません。このまま私と契約を結んでも、待っているのは穏やかな死です。……それでもいいの?」
<私の目的はマスター、あなたの護衛です。それにお言葉ですが、マナの使役は不可能ではありません>
リヒターは言った。まだ芽吹く前の種子であるというだけだ、と。
「その根拠は?」
<“賢者の石”です>
「賢者の石……」
そういえば。遥は細身の襲撃者が言っていた事を思い出す。
−−−−ソレサエアレバ、忌マ忌マシイ神子共ニ尻尾ヲ振ル必要モ無イ−−−−
<賢者の石はマナを無限に生み出し続ける永久機関だという情報があります。真偽は定かではありませんが、それが本当だとしたら>
本来、神子がマナを使役する時は各地に散らばる“管理者”の端末装置にアクセス、許可を貰ってマナを提供してもらう必要がある。しかし自分でマナを作り出せるのなら、許可を貰う必要は無い。才能だって、必要無い。
「でもそれってズルなんじゃ」
<はい。それに管理者にアクセスできない以上、本来得られる管理者からのバックアップを得られない、一度に大量のマナの供給ができない等の様々な制限が科せらせます。しかしマナの使役に慣れれば、そのうち管理者へのアクセスも可能になるでしょう>
「……そういうものなの?」
<はい、データによるとそういうものだそうです>
「……はあ、さいですか」
なーんか胡散臭い。
<ただ、いくつか問題があります。ひとつは、アクセスが可能になるまで−−−−つまり神子になるまで時間がかかる事。もうひとつは、インストラクターが必須だという事です>
「ははぁ、インストラクター……」
つまり誰かに弟子入りしなければならないという事だ。しかし、
「いるかなぁ、そんな人……」
<お手数をおかけします>
リヒター、謝罪。平淡だがどこか沈んだ声は、まるで叱られた犬のようだった。
「あ、いいのいいの。いつまたああいう類の奴らが“賢者の石”とかいうのを狙って襲い掛かってくるかわからないし」
−−−−前から欲しかった相棒もできたしね。と、胸中で付け加える。
「でも、インストラクターなんてどこに……あ」
「君達、何をコソコソしとるんだね? ウン?」
<えっちなほんですか? 先生にも見せなさい>
白ウサギとそのマスター、来襲。白ウサギはいつの間にかその姿を金属性のロッドに変えていたが。
そこで遥は気付いたのだ。
そういえば、彼……リヒトは神子じゃないか、と。
いっその事彼に弟子入りしてしまうのもアリかもしれない。が、向こうがOKを出してくれるかはわからない。……そんな事を考えていると、予想外のチャンスが舞い降りてきた。
「そういえば遥ちゃん、君はこれからどうするんだ? 少なくとも、元の生活には戻れないとは思うけれど……。リヒターの事もあるし、なんならウチに来るかい?」
今度こそ爽やかスマイル成功。もう剃り残しは抜かせない、触らせない。
<うわ、こんな可愛い娘を身ぐるみ剥いで売りに出す気ですか。最悪ですね>
<その場合は実力で排除します>
<なら安心ですね、その時は私も協力します>
<感謝します、ヴァイス・ヘーシェン>
「うっせーぞ外野。……で、どうかな。きっと俺の仲間達も歓迎してくれると思うんだよ」
遥に向かって右手を差し出す。
<今なら漏れなく不良神子の自堕落な本性も付いてきますよ。夜な夜な部屋に入って来て破廉恥な事されます>
<その場合は実力で排除します>
<なら安心ですね、その時は私も協力します>
<感謝します、ヴァイス・ヘーシェン>
「お前ら海に沈めるぞコラ。……さて、気を取り直して。どうする?」
聞かれずとも、遥の答えは決まっている。
「よろしくお願いします、リヒト・エンフィールドさん」
その手を握り、朗らかに笑う。心中で「やった」と小躍りしながら。
「ああ、こちらこそよろしく」
リヒトも同じく笑みを返した。心中で「計画通り」とニヤつきながら。
♪ ♪ ♪
<ああ、くそっ!>
カメラに付着した塗料を洗浄液とワイパーが自動で洗い流す。カメラは回復したが、視界は真っ白だ。
<しかし私に勝ったと思ったら大間違いだぞ!>
−−−−視界が晴れたと同時に切り刻んでやる。
低く構える、視界が晴れる。
が、
<−−−−あれ?>
目の前には、誰もいない、何もない。という事は、つまり、
<に、逃げた! 私から! 私から逃げた! 逃げられた!>
悔しさにわなわなと震える。フェーレスはドジなくせにプライドが高いのだ。
<はっ。あんな嘘に引っ掛かるなんて、とんだおバカさんね>
頭上から響く、人を小馬鹿にしたような笑い声。その声は高くて、幼い。
<だ、黙れシュヴァルツ!>
<黙るのはそっち! これはあんたのミスでしょうが!>
<や、奴が……機械人形殺しが来たのかと思ったんだ! 機械人形殺しは貴様だって怖いだろう! 貴様だって!>
<近付かれる前に気付けるもん、あたしなら。それに、結局何もいなくて、目標には逃げられて、戦力も失ったじゃない。これをバカと言わずして何と言うのよ?>
<ぐっ……>
言い返せずに歯噛みする。
<……いつの間にここは動物園になったんだ>
また新たな声。今度の声は低く、唸るような、大型の肉食獣を彷彿とさせる声だ。
<レオンは黙ってて!>
幼い声−−−−シュヴァルツが低音ヴォイスのレオンに噛み付いた。
<喧嘩をしとる場合ではないだろう>
またまた新たな声響く。次の声は老獪さを感じさせる、老人の声。
<そうそう、過ぎた事でウジウジしてても仕方ないじゃない?>
続いて悪戯っぽい妙齢の女性の声。
<虎徹のじーさんとムジナちゃんの言う通りだ。喧嘩はよくない>
さらに飄々とした若人の声。
<むっ……。わかったわよ、トゥグリル>
シュヴァルツが渋々引き下がる。その声音から、むすっとふてくされているであろうという事は想像に難くない。
フェーレスがほっと溜息をついた。
<皆、いるようだな>
その時響いた、キザっぽい男の声。
<遅かったな、フラガラッハ>
<私も暇ではないのでな、レオン>
フッ、とフラガラッハがキザっぽく笑う。
<さて、フェーレス>
<あ、ああ>
緊張で、尻尾が固まった。
<貴様のドジは今に始まった事ではないので良しとしよう。そもそも今回は顔見せだ。多少ナメられた感があるのは否めないが>
<すまない……>
<それよりも、だ!>
声を張り上げる。
<“彼”が目覚め、賢者の石のありかのひとつが判明した。状況は新たな局面を迎えたと言えよう。……だが、まだ大規模な行動を起こすには戦力が足りない。よってしばらく諸君らには耐えてほしい。今までの通り、散発的なゲリラ活動を頼む。以上だ>
最後に少しの間を置いて、フラガラッハは悠然とした態度でこう締め括った
<−−−−それでは諸君、慎ましくいこう>
地下で暗躍する、その組織の名はアンサラー。メンバーの大半が機械人形で構成された、正体不明の反動勢力である。
次回へ続くッ!
今日はここまで!
まだ味方のレギュラーキャラが5人出ていませんが、今回で序章となる『邂逅篇』は終了です。ここまでお付き合いいただいて、ありがとうございました。
次回から、まったりゆるゆるな(そうでもない)『神子見習い篇』が始まります、そちらのほうもお付き合いいただければ幸いです。
しかし、けっこう書いたと思ったら、そうでもなかったですね。意外だわ……。
どもっす
>>303 こちらこそありがとうございました
火炎車は名前決めてから「どうやって熱くしよう」とか考えてました
それまではあまり特殊機能は使わない方向で技を作っていたので
いい意味でふっきれたきっかけになった技でもあります
パラベラムはこれまで以上に物語が大きく動き出して期待大です
ときどき童話的?というか独特なリズムがあって私好み
>>312 自分、まさかああいう形で熱を発生させるとは思いませんでした。アイデアの勝利ですね!
そういえば、没になったという『大スプリガン』
スパロボに出すってぇのはどうでしょう。……いやまあスパロボ企画そこまで進んでませんけど。
というか今まで物語が動いてなかっただけなんですけどね! まさに今始まったばかりです、はい。
リズムに関しては、けっこう無意識のうちにああいう感じになります。幼い頃によく絵本を読んでいたせいかもしれません。
企画が進んでないなら進めればいいじゃない!
という訳で(?)OP風3、投下です。
鋼獣(メタルビースト)へ全速で迫るリベジオンの肩を蹴り、魔王ラウディッツは放たれた砲弾の如き凄まじい勢いで天高く飛び立つ。
生身の人間なら確実に死ぬ音速を超える速度で飛翔しながらも、外見は人と変わらぬ彼は苦痛を感じる所か穏やかな微笑を浮かべている。顔以外の首から下を完全に覆う黒衣が翼のように広がりはためく。
一気に懐へ入り込んだリベジオンは腰から引き抜いた大きな黒槍を鋼獣(メタルビースト)の喉元に突き刺す。機体から走る紅い閃光が軌跡となってなだれ込み、黒槍の矛先に収束していく。
矛先の空間が歪み始める。 歪みは紅の光を通し、一点の大きな光となっていく。 そうして集められた光をリベジオンは黒槍にあるトリガーを引く事で解放した。
閃光。
それは指向性を持った強大なエネルギーとなって黒槍の矛先から解放され鋼獣(メタルビースト)の巨躯を体の中から蝕む。
貯蓄した力の全てを放出するように体の中を駆け巡り、肉体を陵辱し、存在を蹂躙し、それがそこにいたという事実を消滅させていく。 そうして鋼獣(メタルビースト)は塵芥残さず消滅した。
仲間を一瞬で葬ったリベジオンを敵と見なし向き直る九体の鋼獣(メタルビースト)だが動きが遅過ぎた。既にリベジオンは別の鋼獣(メタルビースト)の体を黒槍で貫き、先程のように容易く消滅させる。
同じやり方で六体の鋼獣(メタルビースト)を滅ぼした所でリベジオンは黒槍を腰に戻す。残り二体の内一体が突撃してくる。
リベジオンは再び黒槍を取り出しもしなければ回避もせず、向かってくる鋼獣(メタルビースト)に全速飛行、凄まじい相対速度によって一気に距離を詰めると大きく広げた右手を突き出し、腕を鋼獣(メタルビースト)の体にめり込ませた。
鋼獣(メタルビースト)の弱点である胸元の装甲の奥にあるコアを掴んで引きずり出し、血管のように繋がっている十数本の配線を力尽くで無理矢理引き千切り、握り潰す。
コアを取り出され潰された鋼獣(メタルビースト)は糸が切れた人形のように停止し、地表へ落ちていく。
リベジオンの肩、膝、背が展開して各部から紅い光りが迸る。漆黒の御身に紅蓮の光を纏う機械仕掛けの悪魔。まるでそれはこの世に破滅をもたらす魔王のように見えた。
だがリベジオンは、黒峰潤也は理由はどうあれ確かに人類を救う為に戦っていた。もう一人の魔王も。
上空から降り注ぐ炎が最後の鋼獣(メタルビースト)を覆い尽くす。ラウディッツの放った大魔法である。
「地獄の炎だけでは満足してはもらえないだろうな」
もがき苦しむ鋼獣(メタルビースト)を覆い尽くす炎が氷に変わり、炎状の氷に包まれる。
「心を凍てつかせる終焉の氷結でもまだ足りない」
ラウディッツの手から放たれた雷が氷に包まれた鋼獣(メタルビースト)を撃つ。氷が砕け散り周囲に飛び散る。
「魂を打ち砕く神の怒槌(いかずち)、遠慮無く受け取りたまえ」
ラウディッツは腕を掲げ、指を鳴らす。同時に鋼獣(メタルビースト)の全身が粉々に砕け散った。
「満足して頂けたようで何よりだ」
鋼獣(メタルビースト)の全てが二人の魔王によって殲滅された。しかし、戦いはまだ終わらない。
廃墟となったビルが墓標のように林立するゴーストタウンに、身の丈五m程はある昆虫の姿をした敵が次から次へと来襲する。
魔族。
ヴァドル隊、清水静の超重装甲強化服改、黒峰潤也のリベジオンが迎撃に出る。魔王ラウディッツも。
姿形が全く異なるとはいえ同じ魔族に遠慮も情けも無く大魔法を連発し、塵へと変える。戦闘を続け、十体程滅ぼした所で、ラウデッィツは見知った姿を目撃する。
攻撃の手を止め、空中から地表のズタズタになった道路へ降り立つ。相手も同じように、静かに降り立ち対峙する。ラウディッツは自分より遥かに大きな相手を見上げる。
幾つもの節に分かれた胴体は、縦長の楕円立体。空気を弾き飛ばせそうな肉厚な二本腕には、兇悪な棘がびっしりと並ぶ。正面から見て体幹をはみ出すほどに大きい、翼とも脚ともつかぬ何かを背負っていた。
更に仰げば、太陽を食らうように、昆虫のカミキリムシを思わせる奇妙な貌がある。禍々しい重甲殻で全身を覆った、漆黒の巨体。巨大にして頑強極まる異形の体躯に、人類の修めた物理から遥かに隔絶した異能の力を宿す。
「御久し振りで御座います、ラウディッツ殿」
昆虫の姿をした異形の怪物は、彼らが見下す人間には決して行わない丁寧な口調で静かに語る。
「ドルンドメオンか、久し振りだな」
敵意の全く無い穏やかな口調でラウディッツは呟く。黒の瘴気を纏った魔族ドルンドメオンは禍々しい外見には似合わぬ丁寧な口調で続ける。
「ラウディッツ殿、お戯れはもうお止めになってはいかがですか。貴方程の御方が人族などの味方をするなど、貴方様の品位を下げるだけで御座います」
「戯れ、か」
ラウディッツは目を閉じ、小さく呟く。
「確かに、姿形が全く異なる種族とはいえ、同じ魔族同士。戦いたくない気持ちはこちらも変わらぬ。人間がどうなろうが知った事ではないしな。だが、日出ずる国に手を出すなら話は別だッ!」
ラウディッツは閉じた目を開き、赤眼がドルンドメオンを射抜く。実体化した黒と赤の禍々しい濃縮な魔力がオーラのように全身から噴き出す。魔王の覇気に晒されたドルンドメオンは脚を後ろへ下げそうになり、こらえる。
「ならば、ラウディッツ殿。答えは一つですな」
「そういう事だ」
ラウディッツは拳を固く握り、ドルンドメオンを睨む。ドルンドメオンの体は細かく震えていた。恐怖、否、歓喜の武者震いであった。魔王と戦うなど一生に一度あるかないかである。自身が尊敬の念を抱くラウディッツが相手となれば尚更。
互いに隙を伺い合い、両者が同時に踏み込もうとした、その瞬間。
「ラウディッツ殿。申し訳ありませんが、貴方と戦う前に勝敗を決しなければならない相手がおります」
ドルンドメオンは構えを解き、ラウディッツの後ろを見ている。ラウディッツは後ろを振り向き、微笑を浮かべる。
「そうか、先約がいたか。ならば仕方が無い」
そう言うと、ラウディッツは空へ飛びその場から離れる。入れ替わるように、ボロボロの道路をスーパーカーが駆け抜けてくる。流麗なフォルムをした超高性能乗用車、透き通る空のような鮮烈な青。
『フォルムチェンジッ、ロボットフォルム』
それは、スーパーカーが放った声であった。青い車体が前転するように起き上がる。屋根側は、変形後の背面に相当する。変形を終えたスーパーカーは、正しく機械仕掛けの巨人。スーパーロボットと言えた。
車輌形態の美麗な曲面と目映い青色を受け継いだ、芸術のような機体。目鼻口の揃った精悍な貌には光があった。 巨人は自然体に構える。前腕と下腿に移動したタイヤを、慣らすようにわずかに回転。
「待っていたぞ、人族のカースト。否、瞬転のスプリガン!」
ドルンドメオンの歓喜の叫びが、荒廃した都市に響き渡る。
「ドルンドメオン、今日こそ決着を着ける」
極超音速という神速の挙動と、ミクロン単位という極微の制動とを可能とする、エーテル圧式打撃マニュピレータの油断も隙も無い完璧な構え。スプリガンとドルンドメオンは同時に踏み込み、両者の拳が激突。
青い稲妻と化した生ける鋼鉄スプリガンと、黒の瘴気を纏った魔族ドルンドメオン。二大巨人の想像を絶する激戦に、一帯の次元と空間さえ歪んで見えた。
以上!
次がタウエルンとパラベラム、その次がネクソンクロガネで終わりの予定です。
ちょっとした事情で酉を付けられませんorz
感想の程、ありがとうございます
まだまだタウエルンにはビックリ機能があったりなかったり。期待しないで待っててください
後ガス欠フラグですがこちらもまぁ……w
>>311 乙です!掛け合い良いですね〜
リヒトが良いキャラしてます。敵組織の今後も含め次回にwktk
>>318 乙です!巨人同士の激戦にビリビリ来ますよ
雌雄を決するまでが凄く激しそうな戦いだなぁ…
今回は前回の後編ということで
戦闘シーン自体はありません。ごめんなさい
<6,反旗(後編)>
「俺はこのまま、シュワルツの思うがままには絶対にならない。このままこの村から出ていくくらいなら、一矢報いてやる。
今日の深夜、俺は持てるだけの武装をして、シュワルツのアジトへと乗り込む。もしシュワルツに一矢報いる事が出来なくても……」
そう言いながら、ギーシュは懐から何かを取りだした。それは紛れもなく……。
「……ちょっとギーシュ、それって!」
メルティの甲斐もあり、調子を取り戻したクレフが、ギーシュが握っている物に声を出した。
ギーシュの手には、警告マークが記された、赤色のダイナマイトが握られていた。無論導火線を完全に切ってはあるが。
「俺はこいつを身に纏って、奴の飛行船に風穴を空けるか、もしくはたかって来た黒騎士共をあいつの目の前で木っ端みじんにしてやるんだ。
既に俺の計画に賛同してくれている奴がいる。立ち上がってくれ」
ギーシュがそう言うと、1人、また1人が立ち上がり、延べギーシュ含めた12人が立った。
そのメンバーは皆、恋人も家族もいない。だが、ある共通点を持つ男たちだった。共通点に気付いたクレフが驚嘆する。
「……なんで、何であんた達が賛同してるの!?」
ギーシュ含めたメンバーは皆、クレフと同じ炭鉱業で働く男達だ。筋骨隆々な男達で、戦力にはなりそうだがそれとこれと話が別だ。
ギーシュの悲痛な面持ちから分かる通り、どう考えてもこの戦いに勝ち目など無い。クレフは激哮する。
「ギーシュ! 今すぐこんな事やめてよ! 死んじゃったら……死んじゃったら何の意味もないじゃない!
また別の土地で皆で暮らしていこうよ! 生きていれば……生きていればきっと」
言葉に詰まり、目に涙をためるクレフの肩に、ギーシュは両手を乗せ目を合わせる。そしてゆっくりと諭すように語りかける。
「クレフ、俺達は死にに行くんじゃない。男として、全てを奪った悪漢を倒しに行くんだ。
男にはな、どうしても立ち向かわないといけない時がある。今はその時なんだ。分かってくれ」
ギーシュの言葉にクレフは足から崩れ落ちる様にその場にしゃがみこんだ。メルティがすかさず寄り添う。
「ギーシュ、本気なのか?」
今まで静かに話を聞いていたトニーが、堪えかねた様にギーシュに話しかける。
「俺は親友として、お前には死んでほしくない。思いなおす事は、出来ないのか……」
トニーの言葉にギーシュは小さく首を振る。
「何時かこうなる事は分かってたんだ。それが少し早くなっただけさ」
「ギーシュ……」
「トニー、お前はメルティとクレフを守ってくれ。それがお前の役目だ」
ギーシュは村人達1人1人の顔を見まわし、言葉を紡いだ。
「このメンバーで、俺達は最後まで奴に抵抗したいと思う。志願者は、良く考えてから俺に申し出てくれ。
恐らく、いや、絶対に生きちゃ帰れない。この戦いは良くて相打ち、それか死ぬだけの戦いだ。
あらかじめ言っておくが、妻帯者や家族がいる奴は入れん。自分の大切な人を守れ。ひとまず話は以上だ。後で避難ルートを教える。
それと、俺の指示があるまで酒場から出ないでくれ」
その時、酒場の窓ガラスが一斉に割れるほどの轟音が、外に響いた。まるで大地震の様にテーブルが震えだす。
「伏せろぉぉ!」
ギーシュが叫びながら、村人達にテーブルの下に隠れるよう、指示を出す。数秒後、その音が止む。
入り口付近に見覚えのあるシルエットが浮かぶ。何者かが、ドアを蹴り上げて入店してきた。ギーシュはゆっくりと立ち上がり、ドアに視線を向ける。
そこには、あの男が悠然とギーシュに向けて軽薄な笑みを浮かべて立っていた。
「着様……!」
「先程振りだな、お留守番男。退去の支度は終わったか?」
ギーシュに全ての終わりを告げた大男の片割れ――――レフトがライフル銃の銃口を、ギーシュに向けた。
ぞろぞろと、黒騎士達が店内に入ってくる。村人達が怯えて身を寄せ合う。レフトはふっと笑うと、そこにある椅子に腰を下ろした。
「まぁ落ち着け、お留守番男。お前達の退去を邪魔しに来た訳じゃない。俺が用があるのは……トニー・クロウス。お前だ」
レフトが銃口を、しゃがんでいるトニーに向ける。トニーはクレフの台詞に戸惑った。クレフが何を言いたいのか、何となく、分かった。
「お、俺にか? 何、何の用件かな」
トニーは自分自身の震えを抑える為に、無理やり膝元を立ち上げた。クレフは一転厳しい顔つきになり、その用件を話し始めた。
「さっきは驚いたぞ。まさか黒騎士共をあそこまで叩きのめすとはな。それにライトまで殺すとは全く……人は見かけによらない者だ」
レフトの言葉に村人達がどよめく。そしてギーシュも怪訝な表情で、トニーを見つめる。
「で、ここからがお前に聞きたい事だ。黒騎士達を倒したあの自動人形は、お前の所有物か?」
一瞬空気が凍る。トニーは自分の足元が揺らぐ感覚に陥る。
村人達が一斉に、トニーに視線を向けた。その視線には様々な思惑が含まれている。
ギーシュが戸惑いと疑問が入り混じった複雑な表情で、トニーに問う。
「……どういう事だ、トニー。お前は……」
「質問しているのは俺だ。黙ってろ」
天井に向けて、レフトが銃声を鳴らした。ギーシュはくっと歯ぎしりをして俯いた。
「どうなんだ? トニー・クロウス。返答次第ではこのまま見逃してやる。が、正直に話せよ。
さもないと、ここが血の海になると思え。お前のせいでな」
銃口を向けたまま、レフトがトニーの返答を待つ。村人達とギーシュの視線が突き刺さる。
「俺は……俺は……」
トニーの思考は混乱している。
どうする? このまま正直に答えても、レフトが無事に済ます可能性は極めて低い。
だがだんまりを決め込めば、皆殺しにされる。しかし……。
「どうした? 答えられないという事は、お前の所有物という事で良いのだな?」
「待て、違う! アレは……」
ふと、レフトは天井を見上げた。パラパラと、埃の様な物が落ちてくる。
いや、これは埃じゃない。破片だ。天井を成型するパーツの破片が落ちてきている。瞬間、レフトの瞳孔を開いた。
天井が破壊され、何かが落ちてくる。レフトは慌てて、その場から逃げだした。
ギーシュも察知し、村人達にすぐに逃げるように叫ぶ。何かは天井を抜け、レフトがいた場所へと落ちてきた。
「……おい、タウ。ちょっと粗過ぎるぞ、もう少し静かに出来んのか」
「だってショウイチが早く飛ばせって言うから……」
タウエルンから降りたショウイチが、肩を動かしながら苦笑交じりに不満をぶつける。
反省のつもりか、タウエルンが手を象ったマニュピレーターでヘッドパーツを掻いた。
「ショ、ショウイチ君!? どうしてここに!?」
乱入してきたタウエルンとショウイチに、驚愕したトニーが思わず声を上げる。
ショウイチは服に付いた汚れを掃いながら、トニーに返答する。
「ちょっと危険を感じましてね。いてもたってもいられなくなったもんで」
「まさか自分から出向きに来てくれるとは……嬉しいよ、自動人形」
ドア付近に移動していたレフトが、タウエルンとショウイチに向かい、興奮を抑えきれないといった様子で話す。
ショウイチは無言でレフトを見張ると、はっきりと、レフトに告げた。
「俺も嬉しいよ。手を抜く必要が無さそうだからな。全てを話してもらうぞ、ド悪党」
続く
投下終了です
次で話が凄く進む予定。まぁダルナス起動させればいいんだけど
>>318 おつかれさまです。
ドルンドメオン・・・おいしーやつめ。しかし敬語の似合わんキャラだなぁ・・・。
ひとつだけ。「人族のカースト」ではなく「人族の兵隊カースト」ですね。
ただの脱落かとも思うのですが、本編でもまともに説明したことはなかったような気もするので、こちらの落ち度かも。
もう本編では機会がないと思うのでここに書き残しておきます。
甲属のカースト(階級)制度では、生殖(アリでいう女王アリと雄アリ)、兵隊(兵隊アリ)、労働(働きアリ)に大きく分かれ、
兵隊ならさらに遊撃・迎撃・防衛、労働なら狩猟・運搬・建築などの種に細分化してます(同種でも、全員甲虫のような姿をしているわけではない)
仰々しい名前のわりに「猛甲ラピュラパズロイ」は巣の奥でひたすら卵を産み続けるだけで激弱……というか戦いじたいできません。
甲属の最強はラピュラパズロイを護衛する近衛種兵隊カーストの軍団ということになります。
(遊撃種は、領土を見回って労働カーストの護衛や情報収集をする連中で、性能だけなら量産機みたいなものですかね。
ドルンドメオンあたりはエースの乗った量産機かな)
獣属・禽属・鱗属の集団はまた違った仕組みで纏まっています。
>>323 こんな絶妙のタイミングを見計らったような登場、ヒーローにしかできねぇ!
村人達の姿にふっと「荒野の七人」とか思い出しました。
この機会にお尋ねしたいのですが、タウエルンってだいたいどのくらいの大きさでしたっけ・・・?
>>313 ありがとうございます。おかげさまで。
絵本ですかーいいですねぇ。参考にします。
そういう裏技もアリなら、一回やってみてもいいかも・・・?>大
私も暇があったらちょっとスパロボ企画に先行して遊んでみようかな・・・
荒野に生きる(仮)、CR、パラベラム、タウエルン、姫路守備隊戦記、少女機甲録(仮)で私以外の参戦表明全員ですよね?
よかったらキャラとロボお貸しいただけないでしょうか。
>>323 男なら、危険を省みず、死ぬと分かっていても行動しなければならない時がある。負けると分かっていても、戦わなければならない事が。ギーシュはそれを知っていた。
これから悪党をブッ潰す最高の展開が待っているんですね、テンション上がってきた!
実は最初、ネクソンクロガネではなくタウエルンとのクロスオーバーを考えていました。
本編でのジャーク帝国との戦い振りを見れば分かりますが、うちの清水さん、悪党相手には某世紀末救世主並に情けも容赦も血も涙もありません。
ショウイチとは気が合うんじゃないかなー、と思います。
>>324 「人族の兵隊カースト」でしたか。素で間違ってました。
姫路守備隊戦記、オッケーです。好きにやっちゃってください。全高3m、超重装甲強化服改で4mしかないので動かしやすいと思います。
勝手にスプリガンやネクソンクロガネ側の技術で開発した新兵器とか使わせてもいいですよ。
こっちも劇場版の方でネクソンクロガネに……おっと、こいつはまだ言えない。
>>318 オォウ。なんという魔族夢想……もとい無双、まさにスパロボといった感じですね!
そしてついに次回、タウエルンとウチの子らが……ゴクリ
>>323 様々な人の意地と思惑が交錯してますね。
それにしても、前半とはふいんきが大きく変わりましたよね。みんな臨戦体勢で、ヤマが近いという事がひしひしと伝わってきます。
>>324 あと川柳とか俳句とか……あと詩もですね。けっこう参考になりますよ。
そして来るか、大スプリガン……!
>よかったらキャラとロボお貸しいただけないでしょうか。
もちろんOKです! 好きにしちゃってくださいw
パラベラム! のオートマタは2m後半〜5mくらいですね。結構バラつきがあります。
あぁ、何と言う初歩的な間違いをorz
>レフトが銃口を
の下りの「クレフ」は全て「レフト」の間違いです。投下したさいにチェックが抜けてました。
ごめんなさい
328 :
taueru:2009/06/30(火) 23:09:09 ID:F3Mqywle
それと、感想の方ありがとうございます。
>>324-326 結構力技ではありましたが、村人(というかギーシュ)達にスポットを当てる事が出来ました。
これからショウイチと村人達がどうやってシュワルツを倒すのか
書きたい所ではありますがちょっと体調が芳しくないので、投下にはかなり間が空くかもしれません。そのときはごめんなさいorz
後、スパロボ企画については、特に言うことは無いです。ショウイチもタウエルンも好きに使ってください!
それと大きさですが4mくらいですかねぇ(適当)正直考えてなかった・・・
どうも。いっぺんに全員出すわけにはいかなさそうな雰囲気。
まずは大は妄想にしておいて軽く1作品組ませてみようかなと
30m ネクソンクロガネ
10m リベジオン、ヴァドル
5m オートマタ(大)、スプリガン
4m タウエルン、超重装甲強化服改、機士
3m以下 オートマタ(小)、重装甲強化服
偏りがありますねw 今はちっこいのがやや人気?
大は15〜20mあたりの中間圏を狙ってみるか・・・?
スパロボで例えるなら
30m ネクソンクロガネ サイズL
10m リベジオン、ヴァドル サイズM
それ以外Sって感じですかね、今の所。
戦闘シーン入れすぎて話が進まない
これは明らかな構成ミスだ・・・orz
前回はトリが化けたけど、今回は大丈夫かしら?
>>324 個人的に、スパロボ企画は二次創作としてみているので、キャラ等の使用はご自由にどうぞ。
尋ねられれば設定等の資料は開示できる分なら協力します。
ただ、まだ話が余り進んでおらず、出てない情報が多い為、パラレルものとして、ある程度設定を改変したほうが使いやすいと思いますw
夜あたりにまた少し投下予定
もうコレがトリで良いよw
>>328 すみません
第一弾は分かり易いタウエルンとやってみようと思い立ったのですが
タウエルンの色って赤でいいんでしょうか? 緑と書かれているところもあるような
キャタピラってことは履帯トラクターってやつですよね(現在資料集め中)
・・・悪役どうしよう
>>330 Lの仲間がホシイ・・・求ム新人!
>>331 大丈夫ですよ!(根拠ないけど)
みんな戦闘大好きだし!
一昔前(いやもっと前か)に主流だった50m級がいませんね、そういえば
ガンダムやメタルアーマーの18m級も無い。
>>331 Let's取捨選択!
しかし捨てようとしたその瞬間、脳裏にチラつくメッセージ
『それをすてるなんて とんでもない!』
>>331 そういう時は思い切って、バッサリ必要だと思う・思わないシーンに分けて切っちゃった方がサクサク進むかも
実際自分はそうやって話作ってますしw
>>334 ぶっちゃけると色も大きさも、というか設定自体全く考えてなかったんですorz
最初の頃に緑色系と書いてたんで、緑色系でおK。トラクター状態では履帯トラクターですね
イメージとして、キャタピラ部分は某メガデウス見たく、背中に移動してたり。まぁどうでもいい設定ですが
敵はそうですね……自動人形その物でも良いですし、自動人形を操る暴漢でも何でも良いですよw
少女機甲録(仮) 2
投下開始
今回は全10/10の予定
1/10
「やばいっ! 咲也後退!! …って私の援護はいいからさっさと下がって!!」
「ピンチね!? よーし、突撃ー!!」
「ちょっと!? なんで歩兵が前に出てくるのっ!!」
「この馬鹿チル!! ああもう私たちも行くぞ!!」
「全員前に出てこなくていいから!! あーもうぐちゃぐちゃ…」
「ロック…発射。 よし、撃破…え!?」
「大破だ…初李はスコアはいいけど、撃破したの全部タイプAだな」
「初李…遠距離攻撃してくる大型を最初に狙うってわかってる?」
「むきゅー」
「ねーねー機士の装備にドリルとかないの?」
「あるわけないっ」
「工兵型のには坑道掘削用ドリルとかあるけど…」
「…ドリルと言うよりミキサーじゃんそれ」
「私はパイルバンカーがいいな!」
「翠、あんたの好みは聞いてないから」
「昨日までのシミュレーションの結果を踏まえて…機士の兵器としての立ち居地と、それぞれの役割が
なんであるのか理解していない人があまりにも多すぎると判断しました。
よって、今日の座学講習は基本事項の再確認になります。 じゃ、教本Tの24ページを開いて」
2/10
葉倉 玲は中隊で最先任の兵士だ(次席は由香里)。 階級は学生兵士の基本階級である3等陸士で、曹候補学生ですらない。
だが、第4中隊には他に幹部(士官)も曹(下士官)もいない。
教官すらいないため、玲や由香里が教官に代わって中隊の訓練指導を行うのだ。
訓練といってもただ走ったり戦闘シミュレーションを行うだけが全てではない。
教本を読んで知識を身につけることも重要であり、それを実地訓練であるシミュレーションで体験させ、
その結果を吟味させさらなる技術向上につなげるのだ。
が…中隊の面々である女子学生諸君は一部を除いてあまり乗り気ではないようである。
「機士は現在の歩兵の主力装備であり、機士でない歩兵というのは、機士の4mの大きさじゃ入れない
屋内や施設の制圧戦ぐらいのものね。 でも、基本的に歩兵と機士の戦術は変わらない。
建物や掩体の陰に隠れ、敵の弾丸を防ぎながら、撃ちまくる。
これが一般的に重歩兵型と言われている89式や、その一世代前の73式の役割ね。
はい麗美、89式の主要武装はなんだった?」
唐突に質問が来るので、隣の井沢 咲也とヒソヒソ談笑していた暮内 麗美はビックリして思わず立ち上がった。
話を半分しか聞いていなかったので焦る麗美に咲也が小声で「89式の武装です」とフォローし、麗美はどうにか答える事が出来た。
「に、20ミリガトリング機銃と、40ミリ機関砲…」
「正解。 場合によっては75ミリ低反動砲も装備する。
では、重歩兵型は他のタイプに比べて厚い装甲を持っているけど、その装甲部位が胴体と脚部、
そして肩アーマーにしか取り付けられていない理由は何故? 次、翠が答えてくれる?」
軍事オタクで、こういう座学をほぼ唯一熱心に受けている川城 翠は、麗美と違ってハキハキと答えた。
「はーい、重歩兵型に限らず、機士の腕は兵装取り付け箇所、ハードポイントに過ぎないから別に壊れても問題ないから!
胴体が壊れたら中のパイロットは死んじゃうし、脚が壊れたら動けなくなるけど、腕は壊れても武装が使えなくなるだけで、歩いて帰ってこれるしね!」
玲はうん、正解と機嫌よく頷いて両名を席に座らせる。
補足すると、機士の装甲は脚よりも胴体のほうが重視されている。
脚も、動けなくなったらなったで機体から降りてパイロット自身の脚で帰ってくればいいからだ。
3/10
「次、騎兵型…騎兵と言っても大昔の重騎兵みたいな役割は87式には無い。
一世代前の74式でそれをやろうとして失敗してるの。 だから、87式の仕事は偵察や陽動を目的とした軽騎兵。
装甲が薄い分、走行速度は89式の約1.2倍の時速60kmとかなり速いけど、防御力はあんまり無いから
正面から敵と撃ち合いをするのは不向きね。 主武装は25ミリ機関砲。
60式近接兵装って名前のでっかい機士専用ナイフもあるけど、使わない。 なんで使わないかは、咲也、わかる?」
玲は今度は自分と同じく87式のパイロットを担当している咲也に質問を振る。
昨夜は静かに立ち上がって冷静に答えた。
「機士同士の白兵戦闘は、あまり起こらないからです。 機士同士だけでなく、ワーム相手でもまずあり得ません。
機銃や機関砲を装備している機士は距離を置いての射撃戦が主体であり、わざわざナイフを使って挑む理由がありません。
ワームもタイプAやタイプCなど一部の種類は白兵戦を挑んできますが、ワームの触手の多さと、その筋力に機士の出力では
太刀打ちできません」
正解である。 答え終えた咲也は平然としてまた静かに座った。
60式近接兵装は別名「高振動ナイフ」といい、秒間数千回転という速度で振動してノコギリの容量で対象を真っ二つに
切断する兵器だが切るというより掘削するという方が性質的にはより正確であり、どちらかというと兵器というよりは
「邪魔な障害物をバラバラに解体して排除するための工兵用ツール」と言ったほうが近い。
元々は対機士・対車両用の通行を阻害する設置障害物などを、工兵班を呼ぶまでも無く自力で排除するために開発された装備で
白兵戦用というのは不測の事態でそういう状況が発生したときのための、お守りでしかない。
重歩兵型や砲兵型は装備する事の無い(他の装備を両手に持つので余裕も無い)ものなので、慣習的に騎兵型の装備になっているだけなのだ。
「そして砲兵型…82式。 一世代前の75式は本州にしか配備されてないからお目にかかる機会は無いけど、
砲兵型は世代が変わっても性能には殆ど違いが無い。
砲兵型は装甲は騎兵型以下だけど出力は重歩兵型以上で、より大口径かつ多くの装備と弾薬を携行できるのが特徴。
はい、ミサイル大好きの初李さーん、82式の主要装備を全部答えて?」
「…腕取り付けは62式75ミリ低反動砲、75式110ミリ低反動ロケットランチャー、81式100ミリ誘導ミサイルランチャー。
肩取り付けは88式90ミリ砲、75式105ミリ砲、96式100ミリ自動擲弾発射機。
ただし最大積載量制限との兼ね合いから、以上か最大3種類までを選択して装備することになる。
…また、ロケットランチャーとミサイルランチャーは、片腕に最大三連装まで取り付け可能。
両腕とも同じ武装にした場合、最大6発のロケットあるいはミサイルを装備可能。
肩取り付けの武装は実際には自動擲弾発射機以外は装備されることは少ない。
これは90ミリ砲と105ミリ砲の反動が大きく、射撃には専用のジャッキの追加装備と、射撃安定姿勢を取らなければ
ならないためで、迅速な陣地転換と戦場機動が求められる前線ではかえって運用が難しいため。
だから、砲兵型がこれらの大口径砲を装備する時は後方地点からの、文字通り砲兵としての任務が求められる時。
…普段の砲兵型の任務は重歩兵型を直協火力支援するための、突撃砲と心得るべき」
4/10
装備の形式番号までしっかり言い切って長々と回答というより講釈を述べた砲兵パイロット野礼寺 初李は、
最後に同じく砲兵パイロットの桐嶋 真璃をチラリと見て何か含めるような視線を送った。
真璃は「もうわかったよ…勘弁してくれってばぁ…」とげんなりした表情と小声で呟き、頭を抱えた。
単発の火力重視主義で大口径砲に拘る真璃に、その使いにくさに関してここ最近初李は何かと「教授」している
(真璃がうんざりするほどであるらしい)ようだが座る前に玲の「そうねー、あと誘導弾は弾頭の費用が高いし予備も少ないから、
できれば今度から砲兵組は低反動砲か擲弾発射機だけを使って欲しいところね」と言う言葉に思わずゲホゴホとむせた。
誘導弾に対してというか高度精密兵器信者である初李は真璃の105ミリ砲至上主義を笑えないのだ。
肩にミサイルランチャーが装備できれば、82式を両腕両肩に合計12発の多連装自走ミサイルランチャー化させたいのが
初李の抱く妄想である。
「…さて、ここまで機士の種類とそれぞれの主要装備についておさらいしてきたけれど、実は機士は装備と装甲を
それぞれで交換できるという高い互換性も持っているの。
だから、騎兵型に40ミリ機関砲とか、砲兵型に20ミリガトリング機銃とか、そういう事も出来るし、
歩兵型の装甲を騎兵型に付け替えて重騎兵化もできる…まあ、機体重量バランス変わるしマッチングが面倒くさいけど。
下手すると歩行性能も下がるし、基礎もなって無い未熟なウチの人員じゃそういう変則的な運用はできないわね。
整備班にはこの間教えたけど、機士同士は腕とか脚とかの交換もできる…といってもあんまり意味はありません。
元の素体、基本骨格フレームは共通だから換装そのものは容易だけど人工筋肉やバッテリーの出力調整が必要だし
そもそも、前線で同型の部品が足りない時に他のを流用できるためにモジュール化構造にしただけなので…」
講義を続けながら、玲はつかつかと後ろのほうの席に早足で近づいてゆく。
途中の席の女子たちはギョっとして慌てて机を移動しで道をあけるか、玲の視線の先で机に突っ伏しているその少女に
あーまたか、的な視線を向けた。
「構造的に、私たちみたいな学生兵士とか、女子とかでも、前線での整備や装備交換が容易な様に設計されています。
ちゃんと話を聞きなさい馬鹿チル!!」
「きゃあっ!?」
バチコン、といい音がして頭を教本でぶっ叩かれた氷川 散乃は素っ頓狂な悲鳴を上げて顔を上げた。
5/10
休み時間を挟み、次はいつものシミュレーター訓練を取りやめて機士の操縦教習のおさらいだ。
たまには実際に機士を動かさないと、シミュレーターの感覚に慣れすぎると良くない。
機士の動力は水素電池。 稼働時間は本体内蔵電池で1時間だが、背中の外付けバッテリー2個により
最長10時間まで連続活動が可能になる。
それでも全力・最大出力で走り回らせていると2時間で電池を使い切ってしまう。
ただ、バッテリーを交換さえすれば何時間でも継続して活動可能である。
脚が壊れない限り。
ガシュン、ブシュ、ガシュン、ブシュ、という高分子セルモーターの駆動音を繰り返しながら、グラウンドを
2台の87式が走り回っている。
乗っているのはもちろん、パイロットの玲と咲也だ。
それを、計測機材と87式の動きを交互に見比べながら八橋 由香里と真門 有理が眺めている。
今行っているのは操縦教本にもある基礎動作のパターンである。
「玲は加速が早いけど、やっぱりターンする時に時間がかかるクセが直ってないのね。 急停止もワンテンポ遅れるし」
「咲也は方向転換が早いけど、加速時の立ち上がりが遅い。 まるで正反対…ねえ由香里、玲はともかく咲也が
騎兵パイロットの担当になったのって何でなの?」
生徒のそれぞれの適性診断と操縦教習の成績を見て、どの機士にどのパイロットを任命するか決定したのは整備班責任者の由香里である。
由香里は玲に次ぐ中隊の古参として、専門は違えどそれなりに発言力のある存在だ。
そして由香里は、玲と咲也を87式の担当にした理由をきっぱりと言った。
「あの二人が一番車酔いに強いから」
…機士は走っている時かなり上下に揺れるのである。
87式は軽量さも相まって機士の中では最も走行速度が早いのは前述の通り。
舗装された道路上でトップスピードに到達した87式の中はもう、シェイクされた状態だ。
よって、通常はそこまで速度を出さないで歩行する。
戦闘中の歩行速度は時速40kmを超える事は無い。 撤退する時などは別として。
由香里は以前、自分で87式に乗った時の事を思い出しで首を振る。
6/10
「私なんかは50kmまで出た辺りで吐いちゃったし。 操縦室内の掃除がもう大変よ。 もう二度と乗りたくない」
「82式ならゆっくりしか歩かないのだし、どうしてそっちに乗らなかったの?
私は正直、真璃や初李より由香里の方が砲兵に向いていたと思う。
あの二人は歩兵型に乗せて機関砲でも好きなだけ撃ちまくらせてれば良かったのに」
有理は整備班でソフトウェア系、機士のベトロニクス(運動制御)のプログラミングやそれと連動した人工筋肉の調整を担当している。
これも適性によるもので、由香里の人選だ。
それ自体に疑う所は無い。 有理自身、自分にはその適性があると思っている
が、整備班として共に講義や実習を受けて、由香里は自分らより早く訓練を受けていた先輩という以上に機士に詳しく
パイロットとしての適性や能力があるのでは無いかとも感じる。
機士の効率的な操縦テクニック、急速な方向転換や180度転回、急減速と走行体勢から射撃姿勢への変換の仕方などは
まるで機士の手足が自分の手足であるかのように最適な操縦技量を見せるのだ。
玲と由香里がタッグを組んで機士で作戦行動を取れば、シミュレーターのような無様な戦闘結果にはならないだろうに。
「だって、機士の操縦室は狭いし、殆ど身動きできないし。
一時間以上もあれに閉じ込められたら、エコノミー症候群になっちゃう。
やだわ、ゆかりんそんなの耐えられない☆」
由香里はそう言いながらウィンクをしてぶりっ子しておちゃらけて答えるが、有理はあーはいはい、とハァ?何やってんの?と
両方あるいはどちらかを言いたげな冷めた表情で返す。
微妙に外した空気を追い払い、由香里は真面目な顔を取り繕う。
「まあ、私がパイロットやるのもいいのだけれど、それだと戦闘以外のところでも玲をサポート出来なくなるの。
玲は今のところ実質的な中隊の責任者で、指揮官で、教導役もこなしてる。 かなり無理をさせてるっていう自覚はある…。
でも戦闘班としてのベストメンバーと、中隊としてのベストな人選は違うのよ」
「…あれもベストな人選?」
由香里のもっともらしい真面目な言い訳にそう言って指差してジト目で有理が言うのは、グラウンドの反対側で
89式を好き勝手動かしまくっている重歩兵組の面々だった。
『みてみてー! 機士ってこんな動きも出来ちゃうんだから!』
拡声器からお子様脳特有の無駄に大きな声が流れる。
89式を寝そべらせて腕立て伏せを繰り返して遊んでいるのは散乃だ。
「腕立て200回とか余裕ね! やっぱあたし最強エース!」とか言っているが、動いているのは散乃自身ではなく89式の腕の人工筋肉だ。
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「機士は人間にできる動作はほぼ再現できるっていうけど…これってなんのための機能なんだ?」
『さあ…? ねえ他に面白そうな動作って無いの?』
「うーん、スクワットとか懸垂もできるそうだけど…」
マニュアルに載っていた反復横とびの動作を試しているのは歌川 美鈴。
…やらせたのはマニュアル本をぺらぺらと捲る蛍原理玖瑠だが。
ちなみにこういった動作はあらかじめ機士の内臓OSにプログラミングされている運動パターンの中から選択して
パイロットの操縦グリップに付いているマルチボタン/トリガーに割り当て、任意にオートマチックで実行させる事が出来る。
宵町 留美は留美で片足で腕を左右に広げてバランス立ちさせているし、完全に機士を玩具にしていた。
もっともこうなったのは、玲と由香里の両方が目を離している間、彼女らを任せた中隊長さまの所為ではあるが。
『ちょっとー! お前たち私の言う事を聞けってばー! ちゃんと基本動作やってよ!』
「そうだよー! そんな風に動かしたら機士の人工筋肉が痛んじゃうからやめた方がいいよ!
散乃ちゃんも、遊んでばかりいないで麗美ちゃんの言う事聞こうよー…」
涙声になりそうになりながら言う事を聞かせようとしているのは我らが麗美中隊長。
そして、後で整備点検が大変になることを懸念している泉沢 大(ひろ)こと大(だい)ちゃん。
どうでもいいが大ちゃんは中隊長さまに「ちゃん」付けである。 なんて威厳のない中隊長。
『いーじゃん、マニュアルに動作が書いてあるんだし、書いてあるって事はこういう風に動かしても平気って事だよ』
『うわーん咲也ぁ! 玲ぃ! 誰も言う事聞かないよぉ!!』
とうとう麗美は泣きが入り始めてしまったようだ。
麗美には歩兵組と整備班を纏めきるのは無理な様である。
そこへ、真璃と初李の82式をハンガーから誘導しながら川城 翠と小沢 早苗が歩いてきた。
「オーライオーライ、あと40センチ右ー。 そこ段差あるから気をつけてー。 …って何やってんの? また麗美虐め?」
「はーい、自由時間終わりですから皆さんこっちに集合してくださいね。 一列に並んでー。 美鈴さんは私の89式から降りてくださいね?」
美鈴が動かしている89式の本来の担当である早苗が支持すると一同は以外にも素直に集まって来て機士を並ばせ、降着姿勢にした。
麗美のときとは偉い違いである。
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『なんで早苗の時はすぐ言う事聞くんだよぉ…!? おまえらー!!』
『あれだろ、中隊長向いて無いんじゃないか?』
『麗美は人を惹きつける空気の様なものが足りて無いわね』
操縦室内でなきべそかき始めている麗美に追い討ちをかけるような真璃と初李のそれぞれの言葉に、
「うわぁぁぁぁん!」と叫びながら校門の方に向かって89式を全力ダッシュさせる麗美。
そんな彼女を中隊の面々はそれぞれがそれぞれの思いを抱きながら見送った。
「なんで言う事聞かないかっていってもさあ…散乃とか留美とか、頭がお子様なのは麗美じゃお守とかできそうにないし」
…翠。
「というか、自分より精神年齢低そうなお子様の指示なんか従う奴いないよね。 そもそもお飾り中隊長じゃん」
…理玖瑠。 何気に酷い。
『まあ早苗はお姉さんって感じだしな。 落ち着いてるし余裕あるし、子供の扱いが上手い。
早苗の方が中隊長やった方がいいんじゃないかって思うときがあるな、私は』
…真璃。
「でも、麗美ってあれで小さい妹とかいるみたいだよ? その割には一番自分が子供っぽいけど…すぐ人に頼るし泣きそうになるし」
「そうなのかー? 私は麗美が末っ子なんじゃないかと思ってた」
…美鈴、留美。
「まあまあ、麗美さんだって一生懸命なんですから…あんまり困らせちゃダメです」
…早苗だけがフォローを入れる。
それぞれの言い草を聞きながら由香里は苦笑する。
まあ麗美があんまり中隊長として認められてないし尊敬もされてないのは、彼女自身はただの学生兵士であること、
さらに、実質的な中隊長としての仕事を殆ど玲が取り仕切ってしまっているからなのだが。
これは確かに問題ではある。
玲自身は麗美を蔑ろにしているつもりはないのだろうが、仮にも中隊長という役職にあるのに部下から敬意を払われてないし
中隊長としての仕事もあんまりしていないというのは、玲が実質的中隊長として君臨し、麗美を自分の格下に置いている状況が
あるからに他ならない。 近いうちに何とかしないといけない、と由香里は考えていた。
9/10
だが、能力的な面でも精神的な面でも他の学生兵士と差のない「新兵」である麗美にいきなり中隊長らしい事を
やらせようとしても上手く行かないのは目に見えている。
どうするべきか、と由香里は一計を案ずる。
『ちょっと…ちゃんと計測はできたの? あと麗美は何処いったの?』
『基礎動作運動、終わりました』
グラウンドの真ん中辺りから玲と咲也がゆっくりと87式を歩かせて戻ってくる。
機材で計測した両者の運動パターンや操縦の癖は、後でコンピュータで分析し補正をかけてベトロニクスのプログラムに
組み込み操縦する時のソフト側からサポートを行うのだ。
これによって運動時の無駄な動きなどを無くし、機士のハード側の反応係数を向上させ、効率的な運動が可能になる。
『んじゃあ、次は私たちの番だな。 82式は走らないからゆっくりで行くよ?』
「オッケー。 それじゃあ、開始位置に付いたら始めていいから」
87式と入れ替わるように82式がグラウンドに進入し、基礎動作を開始する。
歩いて、右側に向きを変え、歩いて、左側に向きを変え、また歩いて、停止し、後進し…というのを決められた手順どおりに
反復するだけなのだが、単純な動作でも機士を操縦するのには慣れとコツがいる。
機士の操縦そのものは両足のフットペダルと、両手のグリップレバー、そして前述のボタン/トリガーに加えて
簡単な音声認識命令、あとはあらかじめプログラムされた動作パターンである。
パワードスーツの延長上にある兵器とは言え、マスタースレイブ式で装着者の動作をそのまま伝達するスーツ型とは異なる操縦になる。
加えて、機士の動作は結構過敏な部分もあったりする。
「真璃、初李より4m遅れている。 もう少し歩行速度を上げて」
『了解…!』
「ちょっ…早すぎ!」
急速に歩行速度を加速させた真璃の82式は初李の82式を追い越す際、肩が接触しお互いによろけさせてしまう。
初李はすんでの所で姿勢バランスを制御し転倒を回避するが、ぶつけられた怒りは収まらない。
10/10
『何やってるの!? 大事な機体をぶつけて傷つけないで欲しいのだけど。
あなたの操縦は荒っぽいんだから、また花壇とかブロック塀みたいに破壊したら、弁償するのは誰かしら?』
『悪かったなあ、私だってぶつけたくてぶつけたんじゃないんだよ? 大体、ぶつかりそうなら初李こそ避けろよ。
接触するくらい幅寄せてこなくていいっての!』
『何なのその言い草。 操縦の運動神経だけじゃなくて言語野も雑なつくりなの?』
「ちょっとちょっと、真璃、初李、喧嘩しないでよ! 真璃もぶつかったのは自分なんだから素直に謝ったらいいでしょ!?」
開始するなり衝突を始める真璃と初李。
慌てて仲裁に入ろうとする有理だが、翠は「放っとけばいいじゃん、あれで結構仲がいいんだから」と楽天的だ。
実際、真璃と初李に有理を加えた三人(+翠:主に軍事や機士の話題の時)で屯ってる時間は多いしそれほど仲は悪くないのだ。
「…というか、真璃は絶対わざとぶつけたよね」
「そうねー、さりげなくさっきの座学の仕返しをしているのね」
87式から降りた玲がスポーツドリンクで汗として流した水分を補給しながら由香里と談笑していると
同じく89式(校門辺りに降着姿勢で乗り捨て)を降りた麗美が咲也に手を引かれてこっちに戻ってくるのが見えた。
玲はスポーツドリンクのペットボトル容器をくしゃりと握りつぶすと、小さく呟いた。
「さーて、中隊長様のご機嫌取りもしなきゃいけないかな…」
(続く)
>>347 投下乙です!んん……良い!
女の子達の瑞々しい会話が良いです。上手く言えないけど、なんか、良い
ミリタリズム溢れる兵器の解説も良いっすねー。高振動ナイフとか男の子の部分がビンビン響きますヨ
次も待ってますよー
>>332 はいな。獣耳っ娘だーっ!
>>336 緑ですかー。りょうかいです。
なに、「サ・キ・バ・シ・ル! 元気!」での執筆分を書き直せば・・・見通し甘えorz
これで色の組み合わせ的には緑と青か。・・・癒し(オアシス)系コンビですね。
というわけで『Red,Blue&Green』と題しました。順番に他意はないです。
悪役は後詰めになると思うのでぼちぼち考えよう・・・
もう一点、タウエルンって変形にはショウイチの許可必須とかいう設定あります? それとも単独で行動できます?
>>347 座学ということで分かりやすくロボットの解説を入れるあたりがうまいなぁと。
少女と軍事の取り合わせってオイシイ・・・
荒野に〜は副題なんだけど、肝心のタイトルがニンともカンとも。
トリが化けたまま固定されてるっぽいんで、以後このトリになります。(僕自身は変えてないんだがw)
最近投下される作品多くて嬉しい。
以下数レス投下。
2章 その想いの正体
(0)
死にたくない。そう思い、抗う事の何が悪い。
痛い事も、苦しい事も、生きる上では避け様の無いモノなのかも知れないが、少ない方が良いに決まっている。
彼の視線が恐ろしい。
その眼は一体、何を想ってコチラに向けられているのか?
期待? 憎しみ? 殺意? それとも、羨望?
アナタが何を求めているのか、分からない。
ただ、その何かに応えないと、自分は生きていられない。役立たずと認識されたら最後、殺されてしまう。その事だけがハッキリと分かる。
自分に出来る事は、ただ、僅かばかりの延命をするが為に、与えられる任務を果たす事のみ。
しかし、ソレでいいのか。
自分に課せられた任務は、明らかに人類に牙を向いている。
自分が任務を遂行する事で、鋼獣との戦況は、人類側が更に不利な状況へと傾く事は間違いない。
ならば、任務に背くべきか。
背いて、大人しく死を受け入れ、処分されるべきか。
イヤだ。
自分は死にたくない。
例え、任務を遂行した所でホンの数ヶ月しか延命できないとしても、それでも、自分は生きていたい。
例え、自分の行動によって人類を不利な状況に追い込むとしても……死にたくない。
自分は生きているのだ。
理不尽な死から逃れようとする事に……。
生きていたいと思う事に……。
誰が反対できようか。
(1)
「……ん」
首筋に僅かな痛みを感じ、瀬名龍也の意識は覚醒した。
まるで電源を入れられたばかりのコンピューターの様に、低い唸りを上げながら彼の心臓という名のエンジンは
徐々に活力を取り戻してゆく。
ソレに伴い、今まで五感が隔離されていたかのように、一切の刺激を認知しなかった肉体が次第に感覚を蘇らせる。
目からは光を、耳からは空気の振動を、鼻からは空気中の成分を、口からは空気の味を、皮膚からはソレに触れる
全ての感触を――。
それらの情報を、龍也の脳は処理を仕切れずに居た。半ばフリーズしている彼の脳は、酷い倦怠感として肉体に
エラーを示す。
まだ睡眠量が足りないとでも言うように、脳も、肉体も、久しぶりに得た睡眠と言う快楽を手放す気は無いらしい。
龍也はまだ感覚の無い腕を持ち上げ、胸ポケットから小さなプラスチックのボトルを取り出した。
力の入らない、震える指先で蓋をこじ開けてボトルを煽る。中の錠剤を一気に口内に流し込むと、即座に胃がソレを
拒んだ。
口から内臓が飛び出しそうな激しい嘔吐感を堪えながら、錠剤を噛み砕き、飲み下した。
薬は直ぐに効果を示した。龍也のこめかみの血管が浮き上がり、頭にズクズクとした鈍く激しい痛みを走らせる。
「ぐぅあぁぁぁぁぁ!!」
平衡感覚すら確かでない龍也は咆哮しながら床に倒れた。両手で頭を掻き毟り、押さえ込み、身を縮めて痛みを
堪えるその姿は熱病に侵された末期患者の姿を連想させる。
暫く頭痛を堪えていると、ゆっくりと五感が正常な状態へと回復していく。
「はぁ……はぁ……」
龍也は仰向けになり、肩で息をしながら目を開いた。
濁った視界は瞬きをする度に鮮度を増してゆく。
三十秒ほど時間を掛けて、龍也は自分がハンガールームの片隅に設けられたプレハブに居る事を理解した。芋づる
式に自分が意識を失う以前の事を思い出す。
上半身を起こし、スリープ状態になっていたコンピューターを立ち上げて時間を見る。予定していた時間より若干早く
目が覚めたらしい。
龍也はプレハブの窓からハンガールームの様子を窺った。
薄く開いたシャッターから夜明け時分特有の蒼い光が差し込んでいる。まだ休憩時間中な為に、メカニックは誰も来て居ない。
無人のハンガールームを見回し、龍也は安堵の溜息を吐くと、フラフラと立ち上がった。
プレハブのドアを開けると、エアコンの聞いた室内にハンガールームの篭った熱気が流れ込んでくる。
夜明け目前だというのに、ほぼ閉め切っていたハンガールームの室温はあまり下がっていない。
ヴァドルの人工筋肉の培養槽がフル稼働しているせいであろう。薄暗いハンガールーム内には
培養層のモーター音と培養液が泡立つ音だけが響いていた。
ユラユラと体を揺らしながら、おぼつかない足取りで龍也はシャッターの前に辿り着く。
新鮮な空気が吸いたかったが、今はシャッターを潜る気力さえ無い。
溶接されているのかと思うほどに固い(少なくとも龍也はそう感じた)シャッター開閉ボタンを何とか
押し込むと、想像以上に大きな音を立てながらシャッターが持ち上がっていく。
ソレと同時に、シャッターの向こうから小さく悲鳴が聞こえた。
「あ、あれ?」
ゆっくりと上がっていくシャッターを潜り、ハンガールーム内に姿を現したヒューマニマルの少女は
龍也の姿を見て目を丸くした。
「瀬名さん……?」
「……エルツか」
よりにもよって、と龍也は内心で舌打ちした。
栗色の柔らかそうな毛を持つこの犬型ヒューマニマルはエルツ。特に感知に関する能力が優れて
おり、その感知性能は最新型のレーダー機器に勝るとも劣らない。
ヒューマニマルとしての戦闘スペックは並かそれ以下しか持たないが、彼女が歴戦の勇士である
ディーネとリートに並びヴァドル部隊に配属されたのも、龍也がその能力に目を付け、天沢長官に
申請したからに他ならない。
その能力は確かで、先日の鋼獣土竜型との戦闘の際、彼女達が土竜型に察知されるより以前に
伏兵として身を隠すことが出来たのも、エルツの感知力が土竜型のソレを上回ったからだ。
彼女は視力、聴力、嗅覚、振動、熱源、その他通常では感知できない何かにすら反応する事が出来るのである。
例えソレが、人間等が放つ”感情”であろうとも、彼女にしてみれば”匂い”や”色”として認識できるらしい。
(まずいな……)
万全な態勢ならば自分の思考や体調を隠し通す自信が龍也にはある。
しかし、今は彼にとって最も不調である寝起きの状態であり、しかもまだ”クスリ”が抜けて居ない
状態であった。
コレ以上彼女と顔を突き合せているのは、彼にとって得策ではない。
案の定、エルツはすぐに龍也の様子に気が付いた。驚きの表情が途端に曇り、心配そうに龍也に歩み寄ってくる。
「瀬名さん、寝ていないんですか?」
「逆だ、今起きた」
エルツに視線を合わせずに、龍也は歩み寄ってくる彼女の小さな体をわざと乱暴に押し退けて
ハンガールームから出た。
季節は夏になろうというのに、外気は身を切るように冷え切っている。
龍也はゆっくりと冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、代わりに体内で澱み濁りきったモノを吐く。
それを三度ほど繰り返した所で、ようやく新鮮な酸素が脳に行き渡ったらしく、龍也は体調が持ち直して
きていることを実感した。僅かではあるが頭痛が引き、ふら付く感覚は既に殆どなくなっている。
「俺の事よりも」
龍也は僅かに振り返り、コチラを心配そうに見つめているエルツに訊ねた。
本当ならばコレ以上エルツの前に居たくないのだが、このままこの場を去っては彼女に不信感しか
残さないと判断しての行動だった。
「何故お前がこんな所に居る」
「えっと、それは、ヴァドルを見たくて……」
「ヴァドルを?」龍也が片方の眉を僅かに吊り上げる。予想外の言葉に、何か別の意図があるのではないかと考えたからだ。
しかし、エルツはそんな事を気にした様子も無く、恥ずかしそうに笑みを浮かべるだけだ。
「はい。まだ、アレと自分が一体化している自覚が沸かないんです」
「眺めた所で自覚が湧くとは思えないがな。お前は鏡を見て、そこに映る物が自分だと実感できるのか?」
龍也が鼻を鳴らして言うと、エルツは「そう、ですね」と苦笑する。
「確かに、難しいと思います」
そんな彼女の様子には、他意があるようには見受けられなかった。
龍也とココで鉢合わせたのも、本当にタダの偶然であろう。
エルツはまだ少しばかり心配そうな表情を見せていたが、龍也が次第に調子を取り戻している事を感じ取って
いるらしく、既に先ほどの龍也の「寝起き」という言葉を素直に信用しているようだった。
エルツに薬の事を感じ取られておらず、またコレ以上詮索されない事を確信し、龍也は前を向いた。
「まぁ、好きにしろ」
「瀬名さん!」
歩き出そうとした龍也を、エルツが呼び止める。
「無理、していませんよね?」
確認するように訪ねてくるエルツに、龍也は答えなかった。
(それはお前が勝手に、俺がヒューマニマルじゃないから、脆弱な人間だと見下しているから、そう感じ、そう思うんだろうが……)
再び歩き出しながら龍也は内心で吐き捨てた。
(何がヒューマニマルだ。何が人間だ。俺は、そのどちらでもない。
俺は、瀬名龍也という一人のパイロットだ! それ以外の何者でもない!)
龍也は自分に言い聞かせるように何度も無言で咆哮した。
背後でエルツが何か言っていたが、もはや彼には何も聞こえていなかった。
ココマデ
投下の配分をミスった・・・
次回からヴァドルに乗ってタタカウヨー
ここでクスリですか。彼も何やら複雑なものを抱えているようで。
人工筋肉の培養槽というのが生々しくていいなと。
次のバトルに期待。
遅レスですが。
>>304 自分としてはそんなつもりは全くないんですが……そんなに冷たく見えますか?
>>336 ベック・ザ・グレートRX3の事かぁぁぁぁぁーーーーーッ!
>>347 真璃と初李と有理の三角関係とか、初李と有理が真璃を取り合ったりとか、想像するだけでヤバい。
>>354 うわぁ、OP風でエルツだけ土竜の接近に気付かなかったという痛恨のミスをしてしまった。
>>347 ああ、華々しさがあっていい、いいぞ! 実にいい!!
キャラ達の成長が楽しみですw
>>350 ハッハ−−−−! 俺も嬉しいぜメルツェェェェェル!!
犬耳、いいですよね!
でも狼とか狐とかも捨て難(ry
次回は戦闘という事でワクワクが止まらんなあ兄弟ぃ!
さて、自分も早く新章スタートさせたいところですが、なかなか上手く書けません。スランプかしら……。
追加キャラはロリ(またロリか)と黒髪お姉さん(お姉さんなのは外見だけ)といい男(ウホッではなく)と弄られキャラ(チャラ男)、そして機械人形のたまちゃん(教官)を予定しております。
>>349 基本、ショウイチの判断により変形しますが、状況によっては自分自身の判断で変形を行う事もあります
また、ナノマシン等武器の使用はショウイチが近くにいないと出来ないという面倒な制約があったり
赤と青。
荒漠の地と空虚の天。決して混じらぬ水と油のように、世界の果てになだらかな地平線を引いている。
かんかんに赤熱して罅割れた地表は、卜占の亀甲を思わせる。疎らに立つ黒い木はどれも干乾びて、花を手向
ける者の絶えて久しい集団墓地のようだった。
蒼穹の色は凄絶なまでに強く、見渡しても一点の曇りもない。もっともそれを快晴と有り難がるには、雨季と
乾季で二分されるこの地帯の気候は、そう変わり映えしないものではある。
視界の下方は赤く、上方は青い。ニ色のコントラストには造り物のようなある種の美しさがあったが、数分も
眺めれば光景の単純さに嫌気が差す。
「……熱いな」
寂莫たる平原にぽつんと立ち尽くす男は、気晴らしにがちりと歯を打ち鳴らした。気温も暑いが、今は陽射し
が熱いのだ。
「沙漠の真ん中、か?」
棒のような長身に研究者らしい白衣を靡かせ、金属の遮光器で目許を隠した男だった。
当てにならない地図と狂ったコンパスを手にし、息を吐く。他に持ち物はない。水筒や食糧を肌身離さず持っ
ておけばよかったと後悔する。
髪をばさばさと手で掻いて風を通す。焼け石に水だが、気休めにはなった。
姓は天農(あまの)、名は不明。ただし自ら編み出した拳法の流派から“延加拳の天農”と呼ばれることは、
しばしば。
魔界より現れて人類を襲う難敵“魔族”に対抗するための人型兵器(HW)の開発を手掛ける狂博士だ。
今は研究を面倒臭がり、“弟子”の武者修行に付き合って世界を巡っているのだが、彼とも戦いのどさくさで
逸れてしまった。
「あの歳で迷子になるとはな」
天農はにやにやと嗤った。彼に言わせれば、迷ったのはあくまで弟子の方であって自分ではない。
通信も幾度か試したが、どうにも利かない。天農の遮光器にはその機能が備わっていたが、今のこの場では役
に立たなかった。
その理由は火を見るより明らかだ。
天農はうんざりと空を仰ぐ。
夜更けの外灯でもあるまいに、太陽にじゃれつくように飛ぶ“蛾”が一匹。
遮光器が弾き出した前翅長は5メートル。世界最大の夜行性鱗翅類であるヨナグニサンは14センチメートル
だから、その35倍近くになるか。もちろん地上の昆虫などでは有り得ない。
魔族。
獣禽鱗甲の四大属のうちの甲属。人類に敵対する魔界の住人がその正体。
恐ろしく巨きな翅でしきりに羽ばたき、空気を震わせる。黒褐色の地に、派手な黄を発色する目玉模様。
広く発達した櫛歯状の触覚は、脈を残して食い荒らされた葉に似ていた。
巨人族の寝袋とでも喩えるべき、でっぷりとした腹。強度に優れたエーテル光繊維の鎧は、あるいは硬い甲殻
などよりも攻略には難儀するかもしれない。また体重が軽量で、飛翔も緩やかなために、衝撃のエネルギーをも
柳に風と受け流すことができよう。
四枚羽の表層から剥がれ落ち、砂嵐のように風に舞うのは、燐光を纏った鱗粉。それは電波やエーテル波を乱
反射させる性質を持つらしい。
ゆえにこの一帯では、遠隔の連絡手段のほぼ全てが封殺されるのだ。
「あのタイプが攪乱に精を出しているということは、まだ他にも魔族が潜んでいる可能性が高いな。どうにか、
合流まで生き延びたいものだ」
下手を打てばそこが死地に早変わりするというのに、口の端を吊り上げてみせる。
天農が差し当たっての方針を決めようと、遮光器越しに薄汚れた地図へと目を落とした時だった。
「ショウイチ〜! どこ〜?」
少年の声がした。
見やれば、朱に染まった沙漠をのろのろと移動する緑色の重機。長らく葉緑素の色を目にしていなかったから
か、天農は草叢が歩いているのかと思った。しかし当然そんなはずもなく、それは塗装にすぎない。
「というより、目がちかちかするな」
天農は遮光器の下で目をしばたたかせた。
赤と緑は補色の関係に近く、互いに強調し合う。凝視していたくはない組み合わせだった。
不整地を走破するために、車輪に履板の環を嵌めたキャタピラ式の自動重車輌だ。洗練されているとは言い難
いが、男らしい武骨なフォルムだった
重機といったが、天農はそれを農業用クローラートラクターと見抜いた。ただしこれほど大型のものは未だか
つて見たことがない。
「この不毛の大地に、トラクターとは」
沙漠の緑化は至難の業だが、天農としては絵空事だとは思っていない。灌漑の工夫や高吸水性高分子などの新
技術に寄せられる期待の声にも覚えはある。
それでもこのようなトラクターがただっぴろい荒野に一台というのはどうにも解せなかった。それとも意外に
人里が近いのだろうか。
いぶかしみながら、天農は白衣を翻して近づいていく。地面の熱が靴裏に染みるのが厭になる。
「ショウイチ〜? って、わわ……っ!」
声の主は操縦者だろうか。歩み寄る天農に気づいたものらしく、そちらも戸惑ったように数メートルの距離を
置いて停止した。
奇妙な沈黙。
(しかし見れば見るほど)
天農は興味深げに筋肉質の腕を組んだ。
「怪しい車だな……」
(怪しい人だな……)
“トラクターの運転手”が自分の風体を見てどのような感想を抱いたか、遮光器の狂博士には知る由もない。
ともあれ。
延加拳の天農と、自動人形タウエルン。灼熱の大地を踏み締め、彼らはこうして出逢ったのだった。
Tueun◆n41r8f8dTs vs.瞬転のスプリガン◆46YdzwwxxU SS
『Red,Blue&Green』
つづく
今回はここまで
隔日くらいのペースで短期集中連載予定。
魔族はあと一体くらい出しますが、できる限り自重します。説明に行数とられるし。
天農博士、さりげなく名前に「農」が入っていると今更気づいた。だから何というわけでもないけど。
・・・言葉通じるのかはもう気にしない方向で。
>>358 お貸しいただきありがとうございます。矛盾とかあったらお願いしますね
>>361 スプリガンさんかい? 早い、早いよ!
そういえばどちらも車にトランスフォームするロボですねー。
>「怪しい車だな……」
>(怪しい人だな……)
うん、いいコンビだw
スプリガンとショウイチの組み合わせも楽しみにしてます!
かなり遅れてるのでちょっと補足します
えーとリベジオンの書いてた5000字あまりがPCフリーズした際に全部飛びました・・・orz
そのため、現在書く意欲を喪失中です
絶対書こうとは思っているのですが、結構、気合入れて書いてた為
意欲が戻るまでもう少し時間かかるかもしれません
お待ちしていただいている方もいらっしゃるのならば、この場を借りてお詫びさせて頂きます
>>361 乙。何か微笑ましい始まりだなw
やっぱクロスオーバーは良いなぁ。次回に期待
>>363 何という悲劇だ・・・
分かるぜ。凄い喪失感を覚えるんだよな、そういうのって
まぁ気を取り直して頑張ってくれ! こっちは何時までも待ってるからさ
ふと思ったんだが、このスレ、作品が多いのは結構だが絵師いないよな
どれも個性的だからイメージで見てみたいと思ったり
「誰も乗っていない、か」
「……」
確かに少年の声を聞いたのだが、調べてみてもトラクターの操縦席に人影はない。
天農は思い出す。
このあたりでは“自動人形”という非搭乗型ロボットが幅を利かせているらしい。大抵は持ち主の命令を忠実
に遂行するだけだが、中には機械でありながら自らの意思を有するものもあるとか。
巨大にして堅牢。このあたりに広く流通する武器などではとても歯が立たないそれらは、悪党の元にあっては
己が欲望を満たす暴力の究極形であり、まっとうな住民にとっては憎悪の対象だという。
自動人形を持つ者に逆らってはならない。命が惜しければ。
目の前のこれは人型ではないが、技術的には“自動トラクター”の製造も充分に可能ということではある。ト
ラクターは別の意味で自動に決まっているので、自律というべきかもしれないが。
さらにいえばその設計思想は、天農が専門とするHWとも多少、似通ったものがあった。全く馴染みのないも
のでもない。先程の声についても、たとえばただの録音だとか、何とでも説明はつけられる。
「ふむ」
天農はごんごんと緑の外装を手の甲で打ってみせた。揺るぎない重さが頼もしい。機械はこうでなくては、と
ひとしきり頷く。
遮光器の狂博士の推測は、実のところそこまで大きく外れてはいない。しかしこのトラクターの正体が、心を
宿し、あまつさえ喋りもする規格外品の自動人形であるということには、さすがに気づかない。まして彼が無遠
慮な扱いに辟易しているなどとは、完全に想像の埒外だった。
(あんまり叩かないで欲しいんだけど……)
世にも不思議なお喋りトラクターが、天農に正体を明かそうとしないのには理由があった。
悪用されることの多い自動人形は、兵器という忌まわしい出自の悪印象も手伝って、俗に言う“嫌われ者”で
ある。彼自身、パートナーであるショウイチともども石もて追われたことも、一度や二度ではない。
だが、そのことについては、寂しいと思いこそすれ、特に恨みはなかった。ただ、耕すべき畑と安住の地を求
めて、優しすぎる彼らは旅をする。
(人を、怖がらせちゃいけないよね……)
こうしている分には大型のトラクターである。不審がられはしても、畏怖や嫌悪といった負の感情まで向けら
れることはまずあるまい。この形態なら会話してもいいような気もするのだが、自らの情報を開けっ広げにする
ことはやはり躊躇われた。
(これからどうしよう)
当座の最優先事項は、ごたごたに巻き込まれて見失ってしまったショウイチとの合流だった。
ただの自律型の農業機械を装って、何食わぬ顔で彼を避けるというのが最適解だろう。
もっとも、荒野の中央で立ち往生している人間を放置していくというのも気が引ける。遮光器の男は、トラク
ターの気持ちなど露とも知らず、興味津々といった風情でキャタピラに土を振り掛けたり車体によじ登ったりと
やりたい放題だった。
(ちょっ、やめてくれないかなコノヒト……)
堪りかねた自動トラクターが、思いきって声を掛けようと決意した直後。
「ほうほう! これは! これは! こんなところにも人族はおるのかね!」
膠着した空気を破壊するものが、高空より現れた。
隕石のように飛来した巨影は、天農とトラクターの傍に着地。衝撃波で濛々と赤土を舞い上げる。
赤色透明な薄翅が、ずんぐりした胴体の背後に隠れていく。甲殻は派手ではあるが黄金というには些かみすぼ
らしい、金属光沢のある山吹色だった。
首がほとんどなく、逆三角形の頭は肩にまぎれて分かりづらい。両端に球体の複眼があり、針状の口吻が下方
に伸びている。
後脚で立ち上がった体長4メートルのセミとでもいおうか。人族などという言い回しをすることからも、魔族
であることは疑いようがない。上空の蛾と同じく甲属のもの。
「遊撃種にその者ありと謳われた小生! このデデ系列のデイバルデパブロイの獲物としては物足りないが!
地上でも『巨大なる堤防も矮小なる蟻の巣穴によって決壊する』などと言い慣わすであろう! 同じこと! こ
こで見逃すのは、いかにも後味が悪い! ああ悪いとも! 悪いとも!」
やかましい魔族だった。
「そちらの緑の兵隊カーストもろとも爆殺(ダイナマーイト)だっ!」
おまけにせかっちだ。わけのわからないことを口走りながら、蝉の怪物は慌ただしく翅を拡げ、突然のことに
呆けるひとりと一体に猛然と襲い掛かった。
魔族は人類のことをさほど詳しく知らない。彼らじたいが多種多様な形態であることも関係しているのか、た
だの乗り物を“戦闘用に進化した人類”、甲属でいう兵隊階級であると認識している節があった。
衝撃波を都合良く捻じ曲げながら、彼らはものの数瞬で極超音速に達する。マッハ幾つの砲弾すら発射後から
見切る驚異の時間分解能と相まって、攻防ともに隙はない。
目で見ることなど不可能だ。人間であるならば。武術の達人である天農でも、攻撃を予測することはできても、
肉塊が反応するには遅すぎる。
けれど。
「いけない!」
魔族の攻撃発動後にも天農は生きていた。
瞬殺を是とする魔族デイバルデパブロイの急襲を、防風林となって全身で受け止めた者がいる。それは、植林
の苗木が大樹へと生長するように体の高さを増した。魔族が到達するよりも早く。
「何!?」
驚愕の声を発したのは、魔族デイバルデパブロイだったか、天農博士だったか、あるいは彼ら二人ともか。
トランス。
色の濃い野菜のような瑞々しい緑。天農には見覚えがある。つい先ほどまで沈黙していた重車両と同じ。
しかし、履帯トラクターのシルエットは、今や大きく変貌を遂げていた。
それは身の丈4メートルの機械仕掛けの巨人。鋼鉄の四肢には、原野に挑む開拓者の頑強さ。事実としてそれ
はエーテルブラストを身に纏っての甲属魔族の突進にもびくともしない。
頭部には、猛き雄牛を象った兜。赤のデュアルアイが意志の光を放つ。
無限軌道を履いた車輪が移動し、背嚢と化していることを、庇われる天農は確認した。
「可変型の自動人形か!」
わずかに振り返った優しき巨人の目には一抹の寂しさ。またそれをも上書きする断固とした戦意があった。
「話が違う! 小生の情報網では、地上で気をつけるべきは青いのくらいということになっていたのに、アンタ
緑じゃないすか!」
いきなり砕けた物言いでいちゃもんをつけるデイバルデパブロイ。
緑の重戦士は意にも介さず、剛力を乗せた拳をがら空きの胸板に叩き込む。一発、二発。踏み込みだけで大地
を耕す殴打は、あらゆる防御システムや術理をまとめて破壊するような重さだった。
おかしな悲鳴を上げて吹き飛んだ怪物蝉が、翅をばたつかせて空中で体勢を立て直す。
「なんという怪力か!?」
硬度に長けるという甲属魔族の重甲殻をも掘削する破壊力。不用意に攻撃を受ければ無限かとも思われる加重
に圧殺されるだろう。真っ向勝負など愚の骨頂。
デイバルデパブロイは、エーテルブラストによる牽制を交えて距離を保ちながら、必死に損傷を再生する。
「しかし小生も音に聞こえた甲属のデイバブッ」
大鍬を振り下ろすような大跳躍からの踵落としが、三角形の頭を直撃。標本ピンさながらに魔族を地表に押し
つける。
「とどめだぁ!」
鉄火場には似合わない少年の声には、しかし幾度も修羅場を潜った者に特有の雰囲気もあった。
アスファルトを砕く木の根のように、乾燥した空気の層を自動人形の巨腕が突破。
正攻法では対抗できないと見た魔族デイバルデパブロイの判断は素早かった。
「空蝉ノ術!」
手応えが軽い。緑の巨人の打突が粉砕したのは、金粉を散りばめた山吹色の抜け殻のみ。忍者のような身のこ
なしで上空に飛び上がり、エーテルブラストの乱射で砂塵を巻き起こして視界を奪う。
「また会おうっ!」
泡を食って一時撤退する甲属魔族デイバルデパブロイ。気取った言いようの割りに口振りには余裕がない。
ふらふらと飛び去る魔族が微細な点になるまで、自動人形は口惜しげに見送った。
(ショウイチがいれば、ソーラーキャノンが使えるのに……)
彼が秘匿する多彩な内蔵兵器を起動するには、パートナーであるショウイチが必要だった。
本体にもある程度の浮遊能力はあるのだが、空中戦を専門とする者に格闘だけで渡り合えるかというと際どい。
向こうが退却するというなら、全力を発揮できない今、敢えて深追いする理由もなかった。
それに何より、足元の人間をこんな危険地帯に置き去りにしていくわけにもいかない。
「助かったよ。自動人形くん」
聳え立つ緑の躰を見上げる遮光器の男は、口を笑みに歪めていた。ちゃっかり助けてもらったにしては、態度
はふてぶてしい。
この地域に根強い、自動人形に対する偏見とも無縁のようすで、巨人は徐々に緊張を解いた。正体が露見した
以上、もはやだんまりを決め込むこともない。
「あなたは、僕を怖がらないみたいだね」
「極東の技術大国から来たのでね。ああ、俺の名は天農。下は男の子のヒミツだ」
彼にとってはいつもの自己紹介をして、天農は握手の代わりに巨人の爪先に拳を当てた。
心を宿した機械仕掛けは、少し考える素振りをしてから、少年の声で名乗った。
「僕は、タウエルン」
「田植え……るん……?」
冗談のような脳内変換の結果に、唇を引き攣らせるしかない天農だった。
つづく
どもっす。
今回はここまで。
あんまり凝ったことはせず、サクサクいきます。次は頭文字Sコンビで。
田植えるんファーストツッコミGetだぜ! 関係ないけど「タウエルン」で検索してみたら最初に地名がヒットしてフイタですよ。
ネクソンクロガネとエリスだけ落書きがあr(ry
>>363 本気で気合入れて書いてると1KBだけでも大変ですからね。
時間は気にせず頑張って下さい。
>>364 ロボは描くの大変ですからね。
>>368 出会い、天農の前で変形してしまったタウエルン。
これから二人はどうするのか。そしてスプリガンとショウイチは?
後、デイバルデパブロイのキャラが良過ぎるw
海上都市姫路守備隊戦記の外伝を投下します。
OP風を待っている方には申し訳ありませんが、もうしばらくお待ち下さい。
足底に装備した機動靴の自在車輪は地形に合わせて自在に形状を変化させる事で、如何なる悪路をも滑らかに走破出来る。他にも垂直の壁を駆け上がる、使う機会は無いだろうが天井に張り付いたままの走行も可能である。
地球上のどんな天候、環境、地形でも戦える究極の汎用性、全領域戦闘能力を更に高める機動靴は無くてはならない必須の装備であり、ある意味最強の武器とも言えた。機動靴の自在車輪は時速20kmの低速で、無音で機体を前進させている。
全身に纏っている軽装甲強化服。その外側の全高3m、基本重量500kgの重装甲強化服。正確には三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタムという名称である。
二世代旧式の三式重装甲強化服を一世代先の四式重装甲強化服に近い性能を出せるよう改造した機体であり、名前の由来である右肩のみ濃紺の真っ青な色は海上都市姫路守備隊の標準色。
遮蔽機能を最大限に発揮している今は肉眼で姿を確認するのは不可能であり、戦闘中の現在は遮蔽を解除しても周囲の景色に合わせてカメレオンのように機体色を変化させる。
遮蔽機能によって目では見えず、音も無く、匂いすらしない。レーダー、熱、振動など考えられるありとあらゆる探知手段から逃れられるが、絶対に見つからない完璧な代物ではない。重装甲強化服は遮蔽を見破る索敵機能を併せ持っている。
それは相手も同じだ。息を殺し、気配を消し、存在しないかのように行動していても発見されてしまう事はある。敵を見つける為に、敵に見つからない為に、常に全周囲に気を配る。
思考制御とコンピュータ補助で操縦する重装甲強化服は脳に直接情報が送られる。収集した莫大な情報を計算、解析したコンピュータは思考制御機能を通して、人間の脳に負担が掛からないよう極限まで簡略化した情報を、
操縦者の思考を読み取り、周囲の状況を判断し、求めている又は必要不可欠である最適な質と量を常に流し込む。この操縦方式によって全くの素人でも神業の動作を容易くさせられる。だが「使える」と「使いこなす」では天地の差がある。
戦場で相手を倒し生き残るには地獄の如き修練と研鑽を積み重ね、神業の神業の域にまで己の腕を高めなければならない。そうでなければこの世界で十日も生き残り続けるなど不可能だった。
地平線に半分隠れたまま永遠に沈まない太陽。無限に広がる荒野の中心にある巨大都市。夕焼けで紅く照らされたゴーストタウン。大人数を短時間で大量に輸送可能な公共交通機関は全く動いておらず、
莫大な車両が行き来可能な都市全体に張り巡らされた血管、大動脈たる道路に一台の車も走っていない。規則正しく林立している巨大な建造物の群れは墓石のようであり、人の営みは無く、誰も生活していない。
その代わり、鋼鉄の鎧に身を包む血に飢えた修羅が其処彼処(そこかしこ)で蠢いていた。おかしい、異常。そんな感情は全く無い。この都市は用意された戦場であり、元々人など住んではいないのだから。
最大限に発揮した遮蔽で姿と気配を消しながら、見渡す限り何者も存在しない大都市の道路を機動靴の自在車輪によって、時速20kmの低速で進んでいく。
思考制御+コンピュータ補助操縦技術で重装甲強化服の索敵用各種センサーは自身の五感と化しており、360度全方向が見える。
大昔のロボットアニメであった操縦席から外の光景が見える全天周囲モニターなどではなく、上下左右、全ての景色が視界に映る。死角は存在せず、周囲を確認するのに頭を動かさなくていい所か目を閉じたままで構わない。
脳に直接情報を流せるので「見る」という間接的行為自体が必要無いのだ。人間は広い範囲が見えていても、実際には限られた視界の極一部しか理解出来ない。集中すればする程精度は上がるが視野は狭くなる。
本棚に収まっている全ての本をただ見るだけであれば誰でも一瞬で可能だが、全ての本の題名を理解するとなると相当時間が掛かる。死角の無い全方向の視界を扱うには人間の能力は圧倒的に不足しており、普通ならば宝の持ち腐れにしかならない。
しかし、第二の脳として機能するコンピュータが計算、解析、脳に直接情報を流す事で欠点は完全に解消される。初めて重装甲強化服を着用して全方位視界を体験した者の多くが、自分が神になったような感覚になる、と語る。
神になったような感覚という表現は大袈裟過ぎるとしても、それ程までに便利だという事だ。頭上で弾けた100mm多目的ミサイルから撒き散らされる振動熱榴散弾の千を超える破片数、一つ一つを全て一瞬で理解出来る程度には。
腰の後ろに二つ装備している展開式軽装甲盾「折り畳み傘」の一つが、その名の通りに柄が一気に伸びて膜状の軽装甲を傘状に展開。降り注ぐ赤い地獄の豪雨を完全に防ぐ。
生身の人間が受けたのならともかく、「折り畳み傘」無しでまともに浴びても耐振動熱防御と防御用振動熱発生機能を備えた重装甲強化服に低威力の振動熱榴散弾は通じない。こっちを狙った相手は損傷を与える為に使用したのではない。
最も初歩の基本戦術。遮蔽で隠れた敵がいるであろう位置へ、広範囲に撒き散らせる振動熱榴散弾を使って発見する索敵方法。損傷は無かったが位置を完全に掴まれた。
「折り畳み傘」を展開する前、頭上で100mm多目的ミサイルが弾けたと同時に既に全力の回避行動を取っていた。機動靴の自在車輪が最大出力で唸りを上げ、脚部後部の装甲が開き内蔵している移動補助装置、圧縮噴射推進機二基が
圧縮した空気を進行方向と逆に噴出、絶大な推力で機体を急加速させる。
両腕の伸縮可変鋼線射出機二基から伸縮可変鋼線を二本射出。近くのビルに射ち込み、フルパワーで鋼線の収納と短縮を行う。本来なら150kmまでしか出せない速度は、凄まじい牽引力が加わり限定的だが200kmを超えていた。
先程までいた場所を敵の25mm機関砲弾が空を裂く。こちらの回避を予測して未来位置に撃って来たが、間接防御兵器を一切使わず全弾回避しビルとビルの間、敵の攻撃の死角へ退避した。
「相手は四式だな」
敵は遮蔽で巧みに身を隠していたので正確には分からないが、これまで積み重ねた豊富な戦闘経験から判断した。今はもう移動しているだろうが、攻撃してきた事で敵のおおよその位置は掴めた。無論、向こうもこちらの思考は理解しているだろう。
さて、どう戦うべきか。一旦、現在の武装を確認する。
三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタム
全高3.15m(機動靴により+15cm) 全備重量約3トン
武装及び装備
頭部側面 短針弾発射機×1 長針弾発射機×1
右手 25mm重機関砲×1
左手 150cm振動熱斬刀×1
右腕 小型低出力光熱衝撃砲×1 伸縮可変鋼線射出機×1
左腕 装着式軽装甲盾×1 伸縮可変鋼線射出機×1
右肩 9連装100mm多目的ミサイル発射機×1
左肩 100連装10mm小型高機動迎撃ミサイル発射機×1
右脇 連装100mm超振動極熱ミサイル発射筒×1
左脇 5連装6,25mm機関銃×1
腰後部 展開式軽装甲盾「折り畳み傘」×2
右腰 12.5mm重拳銃×1
大腿部 60cm振動熱斬刀×2
脚部側面 3連装50mm弾発射機×2
脚部後部内蔵 圧縮噴射推進機×2
足底 機動靴×2
内蔵の圧縮噴射推進機は論外として、伸縮可変鋼線射出機と機動靴以外の全てが、十日前に現実と変わらない仮想空間、訓練用の都市に来て倒した敵から奪った物だ。最初に持ち込んだ物は全て敵に破壊されてしまった。
難易度の低い仮想訓練ならゲームのように弾薬が無限だったり、一定時間経てば回復したりするが、武器弾薬の補給は敵から奪う以外に方法は無い。それがここの掟だ。如何に武器の損傷を防ぎ弾薬の消費を最小限にし敵を倒すか。
形振り構わず全ての武装を使用するなら敵の重歩兵を容易とはいかないまでも、高い確率で勝利出来るだろう。だが、そうするつもりは全く無かった。弾薬の消費も理由の一つだが、俺には「奴」との戦いが控えている。
十日前から最終日の今日まで、脱落者に「奴」の名前は無かった。この都市の何処かに必ずいる。五式重装甲強化服を纏った「奴」が。これまで999回挑んで一度も勝利した事が無い最強の重歩兵が。
「悪いが、早々に決着を着けさせてもらう」
遮蔽で隠れながら敵を攻撃するのが定石だが、敢えて無視する。隠れていたビルから元の道路へ再び姿を出す。海上都市姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静の戦いを見せよう。
予告
鉄の機兵が走る、跳ぶ、吼える。機銃が唸りミサイルが弾ける。
休む間も無い戦場で死肉を食らうが如く敵の全てを蹂躙し、遂に「奴」は姿を現す。
敵の血潮で濡れた肩、地獄の使者と人の言う。歴戦の猛者でも敵わぬ無敵無敗、最強の重歩兵。
赤い肩をした鋼鉄の修羅が静を待ち構えていた。
次回「仮想戦闘記録 中編」
次も静と地獄に付き合って貰う。
以上!
設定のみだった五式重装甲強化服を敵として登場させる予定です。
果たして静は二世代旧式の機体で勝てるのか。
>>363 な、なんと……。100文字だけでも萎えるのに、5000文字とは……。
自分はいつまでも待ってるので、自分のペースで再構築を!
>>364 自分も遥とヘーシェンなら……
>>368 やっぱり魔族の中にも愉快な奴はいるんですねw
>タウエルンでググる
あ、ほんとだ地名が……メキシコ?
>クロガネとエリスの絵
気になる、気になるぞ兄弟ィ!
>>373 新鋭機vs旧式の魔改造機……そそられますなぁ
自分もクロスオーバーしたい……でもまだ本編が……!
>>361>>368 俺以上にタウエルンを強く書いていただきありがとうございます!いや、マジで俺もこんな感じで書いてみたいんですけどねorz
次のショウイチとスプリガンのコンビがどんな感じになるのか楽しみです。にしても天農、良いキャラです
>>373 市街戦は良い。ロボット物では定番のシチュエーションですが、心が躍ります
性能差がある機体での戦いってのも良いですな。次回をお待ちしてます
で、タウエルン本編ですが案の定難航ww
頑張って週末まで完成させたいのですが、規制が……良い訳ですね、頑張ります
ちなみに
>>375はわしじゃ、代行人が名前欄忘れたんじゃ
タウエルンとショウイチが乱入する数分前の上空にて。
「もうすぐ着きそうだな。反応はどうだ、タウ」
「ちょっと待って……動体反応が一点に集中してる。多分トニーさん達がいる場所だと思う」
「自動人形はどうだ? 少数ならそれなりに対処できるが」
「んっと……6機以上、10機以下……かな? 建物に居るから明確にブラックキューブの数を捉えられない、ごめん」
「……タウ、ちょっとパネル弄るぞ。しかしいつも以上に消費量が多いな。粒子が肝心な場面で切れなきゃいいが」
<7,共同戦線.(前篇)>
ショウイチとレフトの視線がぶつかり合う。レフトはショウイチの台詞に口元を歪ませ、冷静な口調で返す。
「何を言い出すかと思えば……お前は状況を理解しているのか?」
レフトが右腕を上げると、レフトの背後に佇む黒騎士達が一斉に槍を掲げた。その数、延べ6機。対してタウエルンは1機。
一見すると不利なのは明らかにタウエルン側だが……。レフトは悠然と大股で歩きながら、ショウイチに語る。
「のこのこと俺の前に出て来た勇気は褒めてやろう。だがな。さっき、お前は俺になんて言った?
全てを話してもらう? おいおい、逆だろ。お前が俺に全てを話すんだ。お前が連れているその……」
ショウイチの横で立ち止まり、レフトは一度語りを止める。粘着質な視線で、ショウイチを睨みながら再開。
「化け物の事をな」
同時に、レフトは思いっきりショウイチの腹筋を握り拳で全力を込めて殴打した。鈍い音が周囲に響き渡る。
「!? ショウイ……」
「おっと、動くなトニー・クロウス。もし下手にこいつを庇って見ろ。黒騎士がいる事を忘れるんじゃない」
反射的に立ち上がろうとしたトニーに気付き、レフトは鋭い声でトニーの動きを制した。
黒騎士達が掲げた槍を村人達に向ける。村人達は畏縮し、身動きが取れなくなっている。トニーはくっと歯ぎしりをした。
トニーと同じく、ギーシュも苛立ちと焦りを感じていた。理由は二つある。
レフトによって、動く事を封じられている事と、突如空から落ちてきた、得体の知れないロボットにあの男の素性だ。
屈んでいる為、あの男の顔は見えない。だが妙に聞き覚えのある声だ。どこかで聞いた様な……。まぁそれはひとまず置いておく。
最初はレフトの仲間かと思ったが、何やら様子が違う。あの男はレフトに対して、敵対している様なセリフを吐いた。
単純に考えて、レフトとあの男は味方同士ではなく、敵対しているようだ。だが安心する気は無い。あの男が、我々の味方とは限らないからだ。
ふと、レフトとトニーの会話が頭をよぎる。レフトがトニーに行った「自動人形」という言葉。
あの男とトニーが関係しているとしたら……。その時、俺はどうすればいい? 何故か軽く手が震える。
と、ギーシュはふと自分の周囲の変化に気付く。空気中にキラキラと光る粒子が散らばりながら浮遊している事に。
「ねぇ、お姉ちゃん……」
「し! 今は静かにしてないとまずいわよ、クレフ」
あくまで小声だが、声を発したクレフにメルティは声を出さぬように、口に人差し指を立てた。
クレフは小さく首を振ると、目線を宙に漂わせて、二言目を発した。
「あいつは気付いてないみたいだけど、さっきから変なのが浮いてるんだよね。何か埃みたいなのが……」
「埃……?でも埃にしちゃ変ね。何かキラキラしてて……」
「そうそう、言い忘れていたが、お前も妙な行動を取るなよ。こいつらを死なせたくなきゃな」
トニーから向き直り、レフトが、ショウイチにそう告げた。その口調には、勝利を確信したという余裕がある。
だが、レフトはふと妙な感覚に囚われる。状況は優位なはずだ。こちらに落ち度など何もない。
自分がすぐにでも命令すれば、黒騎士達が村人達に鉄槌を加える事が出来る。奴らに選択権など無い。だが――――。
何故お前は微動だにしないんだ? 不気味なほどに、ショウイチはレフトに対して反応を見せない。
あくまで自分本意ではあるが、完全に今の殴打、というかストレートは入ったはず。その種の人間ならともかく、普通の人間ならとっくに崩れ落ちている筈だ。
百歩譲って俺の殴打に耐えるほど屈強な人間だとしても、大勢の人間が死ぬ事に何ら戸惑いは無いのか……?
何故だ、何故お前は何の反応も見せないんだ? お前の命だけでなく、目の前の人間の命が脅かされているというのに。
と、レフトはふと気がつく。自分の右腕が、ショウイチに握られている事に。目線がショウイチに向く。
「……何のつもりだ?」
レフトの問いに、ショウイチは答える。
「良いライフルだ。――――軍属だっただろ、お前」
レフトの右腕を思いっきり捻り上げた。瞬間、レフトの体が腕の回転に巻き込まれるように宙に舞う。
「おぉぉぉぉぉっ!?」
ショウイチの予想もつかない行動に、レフトは驚嘆し叫び声を上げながら床に叩きつけられた。
背中から叩きつけられ、視界が真っ逆さまになる。背中に心地の悪い痛みが走り、呼吸が一時的に鈍くなる。
数秒意識が飛ぶが、すぐに気を取り直す。真っ逆さまになった視界で、レフトは槍を構えている黒騎士達に叫ぶ。
「馬鹿野郎が! 黒騎士ぃぃぃ! 今すぐそいつらをぶち殺せぇ!」
レフトの叫びに対し、黒騎士達は従わ、ない。槍を構えたまま、動く様子が無いのだ。村人達も、次第に異常に気付いていく。
ショウイチは屈むと、転倒したままのレフトが肩に下げたライフルを器用な手付きでするりと取り上げた。
そしてライフルを天井高く掲げる。すると、黒騎士達は槍を背中にマウントし、ショウイチの方へと一斉に片膝を付いた。
その様はショウイチに対して、忠誠を誓っている様だ。驚嘆し、瞳孔が開きっぱなしのレフトにショウイチは淡々と話す。
「ナノマシンってのは便利なものでな。食物の成長を促す事も出来れば、同じ自動人形を壊す事も、操る事も出来るんだ。
ただ、そういう対外的な事は出来ても、自ら物体を作り出す事が出来ないのが不便だがな」
くるりとライフルのトリガー部分を回して、ショウイチは銃口をレフトに向けた。
銃口の先はレフトの頭部だ。何時の間にかレフトの左足は、ショウイチの右足によって抑えられている。逃げようと思えば不可能ではない。
だが、レフトは何故だかショウイチから目を背ける事が出来ない。それはショウイチが醸しだつ、一種の威圧感からだ。
「……そうか、お前だったのか。ライトと黒騎士を倒した奴は……」
レフトが自嘲気味にそう呟く。自らの誤解に苦笑しているとも、目の前のターゲットの力を見誤っていた事に対する自虐ともとれる。
「……参ったよ。だが、俺は話さんぞ。どうせこのまま帰った所で、あのイカレ野郎は俺を殺すだろうしな」
あくまで悪態をつくレフトに、ショウイチはライフルを下ろし、レフトから目をそらさずに言葉を紡いだ。
「聞かせろ。お前もあの男も、なぜ下種な真似に走る? まだ軍は……」
「……捨てられたんだよ。俺もライトも。上層部の糞ったれにな。……まさか」
ショウイチは微動だにしない。が、レフトは何かを悟ったのか、小さく口元を歪ませた。
「あんただったのか。小耳に挟んだ事はあるが、これほどの野郎だったとはな……そりゃあ勝てんわな」
ショウイチは答えない。静かな水面の如く冷静な目をレフトに向けたままだ。レフトは一息吐くと、言葉を続けた。
「……これから何時間後は知らねえが、巨大自動人形をあいつは動かす。あいつはやるぜ。お前らがいてもいなくても、な」
村人達がレフトの言葉にざわめく。無論、レフトが言っていたシュワルツの「実験」の意味が分かったギーシュと、話を聞いていたトニーも。
「大型自動人形……だと? そんな物を本気で……」
「そんな……そんなのって……」
「それだけか?」
ショウイチの問いに、レフトは弱弱しく笑って答える。
「ライトから聞いてないのか? 俺達はただ、あいつから雇われただけだ。それ以上の事は教えられちゃいねえさ」
「……そうか。お前の身柄は捕らえる。どちらにしろ危険な存在だからな」
「その必要は無い」
ショウイチの言葉を否定し、レフトは奥歯の何かをかみ砕いた。その音に気付き、ショウイチはレフトの胸ぐらを掴んだ。
遅かった。レフトは笑みを浮かべたまま、口元から血を流した。血の量は次第に増し、白目を剥いたレフトはショウイチの手から崩れ落ちた。
「馬鹿野郎が……」
ショウイチは屈んで、レフトの首筋を触る。小さく首を振ると、立ち上がり、黒騎士達に向けてライフルを大きく仰いだ。
黒騎士達は背中を向けると、続々と酒場から出ていく。同時にショウイチはタウエルンにも酒場から出ていくよう、声を掛けた。
「タウ、悪いがあいつらをまとめておいてくれ。後で使うから。それと、この男も頼む」
タウエルンは頷き、立ち上がるとレフトの亡骸を両腕で抱え、酒場を後にした。酒場から、自動人形と呼ばれる存在はいない。
「ふぅ……」
事が一段落ついて、ショウイチはトニーの方を向いて二ぃッと笑った。そこには先程の冷徹な表情を浮かべた青年はいない。
「ええっと……何はともあれ、ご無事で何よりです、トニーさん、メルティさん」
「ショウイチ君……」
「待て!」
トニーが何か言おうとその時、ギーシュがトニーに声を掛けた。ゆっくりとショウイチに近づいていく。
「やっと思い出した。昨日、クレフの友人と名乗っていたな。……まぁそれは後で良い。さっき出て言った自動人形……あれは、あんたのだな?」
ギーシュの言う自動人形とはタウエルンの事であろう。ショウイチは無言で、ギーシュに向き合う。
「奴らから助けて貰った事には感謝する。だが、俺達はあんたを信頼してる訳じゃない。分かるよな? 俺が言ってる意味が」
「あんたの素性を話してもらうぞ。そしてトニー。お前にも話してもらう。その男との関係をな」
投下終了です。ちょっと長くなりそうなので分割
早く規制が解けてくれればいいんだけどorz
どうもです。
あまりひと気がないね? 休日はみんな忙しいか。
>>373 勝負を決するのは・・・パイロットの発想力!(剣心風)
次回の激戦は見物ですね。
>>374 絵は半分挫折したようなもんなので、そのうち吹っ切れればー
>>383 どうもです。安心したような申し訳ないような。
ブラックキューブ! そういうのもあるのか!
軍の影がちらついて一気にきな臭くなり、はらはらします。
第四回の戦闘に集中してたものでRGB第三回はちょっと遅れるかも・・・
何とか今日中にはきりのいいとこまで書けるといいな。
ついでにスパロボ先行SSということで、ちょっと遊んでみます。
>>292もまだ募集してますので、よろしくお願いします。
>>383 タウエルンtueeeeeeeeeeeeee!!
一対多向けの機体だというのか、タウエルンは……!
>>384 ひとつ即席で作ってみました!
■ロボット:パラノイダー
無骨な砲戦型。長々砲身のジェットポートピア砲(通称ジポ砲)が武器。というかそれ以外に武器が無い。接近されるとマッハでボコされるのは目に見えている。
■パイロット:ドン=エフィール
妄想癖のある男。
ちなみに『首領』なのに部下はいない。だって妄想だから。
……なんだこれは。
>>383 タウエルンが強い!そして、遂にショウイチの過去が明らかに……。
>>384 クチサキダーK
見た目は強そうだがとんでもなく弱い。果てしなく弱い。ダンボールで出来ているのかね?
パイロット 朽崎野男(くちさき やお)
態度は偉そうだがとんでもなく弱い。果てしなく弱い。いつも自分の方が優位っぽい台詞を吐いて逃げ出そうとする。
『ここに隠れていれば、ひとまずは安心か』
沙漠の大岩が落とす黒々とした陰から溜め息が漏れる。精悍な気性を察せられる青年の声には、今は疲労の色
が濃い。
そこに駐車しているのは、青色の超高性能乗用車。スタイリッシュな流線形には、地上にありながら戦闘機の
面影がある。高層ビルの立ち並ぶ大都会ならばともかく、赤褐色の砂塵舞う辺境にはどう考えてもミスマッチだ。
さらに妙なことに、スーパーカーの運転席に人影はなかった。助手席にも後部シートにも、周囲にも。
それもそのはず。何故ならその正体は型式HWS‐03、スプリガンの名を与えられた可変型“HW”。魔族
を駆逐するための人型の兵器、あるいは人類の叡智か。
今は車輌の形態をしているが、本性は精神を宿すロボットなのだ。官憲の手を煩わせないために人間を乗せる
ことがあっても、運転手を必要とせずに自由意志をもって単独行動することが認められている。
(まさか善良なる一般市民から攻撃を受けるとは、私も予想だにしなかった。驚かせたこちらにも非はあるだろ
うが……)
スプリガンはもう一度、苦々しい記録を再生する。
数時間前。海亀に似た甲属魔族と遭遇しこれを撃破したものの、旅の同行者である天農博士と離れ離れになっ
てしまった。
魔族の広域ジャミングによって通信機も用を為さず、止むなく近隣の集落にそれらしい男を見掛けなかったか
聞き込みを行ったのだが、運転手のいない不審車の話に耳を傾ける奇特な人はそうはいまいと考え、人型に変形
してみせた。
後悔した。
今思えば、別にスーパーカーフォルムのままでも、物珍しさから興味を持つ人はいたに違いないのだ。「人間
と円滑なコミュニケーションをとるなら、より人間に近い形態のほうがよいのではないか」などという御託を一
理あると採用したのが運の尽き。
半狂乱になった村娘の悲鳴を聞いて飛び出してきた屈強な男達十数人に追い掛け回された揚句、こうして村外
れの岩場に身を潜める羽目になったのだった。
彼らの手にしていた石つぶてだの農具だの猟銃だのが、対魔族兵器に限れば恐らく世界最強のスプリガンを傷
つけられるわけはないのだが、あの尋常ならざる恐慌と敵意を目の当たりにすれば退散するしかない。
『どうなっているのだ、この村は……』
欧州の狂博士ルートヴィヒ・ヴァン・ヴォルゼウグの遺産を基に、延加拳の天農が完成させた超級人工知能が、
提出された幾つかの予測を検討する。……どれもあの過剰とも思える反応の説明としては弱い。ひとり会議は村
社会の閉鎖性などという的外れなところにまで及び、軌道修正を余儀なくされた。
「やあ」
孤立無援のスプリガンに、気さくに声を掛ける青年がいた。
見覚えのある顔だった。先の騒動で、いち早く娘を庇った男。
半端に伸びた頭髪が、砂を吸った荒野の風に震える。赤シャツの上から羽織ったジャンパーは、乾いた土の色
だった。腰に提げるのは使いこまれた水筒。
無精髭の浮いた口許を緩ませる人懐こい笑みは、一見して好青年然としているが、どうにも頼りなさげな印象
も拭えない。
(さっきとは雰囲気がまるで別人だ。この男はいったい……)
スプリガンと娘の間に割り込んだ、只者とも思えぬ眼光の鋭さと身のこなしは記憶に新しい。スプリガンは彼
の動きに、師である天農にも近いものを感じたのだ。
『あなたは確か、村の……』
「ショウイチ・マーチマンだ。俺もこの村には流れ着いたばかりだけどね」
『車輌形態で失礼。私の名はスプリガン。心を持った、ロボットだ』
HWの知名度は、世界的にはさほど高くない。まだしも分かり易い説明だろうとスプリガンは言葉を選ぶ。
(やはり“タウ”と似たような自動人形か。珍しいな)
どこをほっつき歩いているとも知れぬ相棒“タウエルン”を脳裏に浮かべながら、ショウイチ・マーチマンは
しげしげとスプリガンを眺めた。同じく車輌への変形機構と人格を有する自動人形、共通点は多いといえなくも
ない。ただし、全く異質な機体であろうとも分析する。
「ちょっと気になってさ、追い掛けてきた。それで、スプリガン。君はどうしてあの村に?」
村民に拒絶される彼の姿に、自分達の境遇を重ねて同情したことも否定できない。事情を聴いて、できれば力
を貸してやりたかった。
『私は、はぐれてしまった旅の連れを探しているだけだ』
スプリガンは心なしか、ばつの悪そうな口調で答えた。手ひどい歓迎を受けたことが未だに尾を引いているも
のらしい。
『奇妙な遮光器で目許を覆った白衣の男で、天農と名乗っているはずだ。見覚えはないだろうか』
「ない、な。そんな風変わりなよそ者が現れたら、間違いなく村で噂になってるよ」
『もっともだ』
ショウイチの即答に、スプリガンは少しおかしげに声を発した。
「俺も探している仲間が待っているんだが、緑色のトラクターを見なかったか?」
「緑のトラクター。いいや」
記録には該当なし。村落に辿り着くまでの道のりを彩っていたのは、変化に乏しい赤と青ばかりだ。
奇しくも天農とタウエルン、二人の探し人もまた、そこからそう遠くない地点で巡り会っていたのだが、それ
はまた別の物語である。
『もうひとつ、尋ねてもよいだろうか』
ひと呼吸を置いて、スプリガンは村人達の反応について疑問をぶつけた。何故、変形しただけで蜂の巣をつつ
いたような大騒ぎになったのか。
「ああ、さっきは災難だったな。だけど覚えておいたほうがいい。このあたりの人は、みんな自動人形を怖がる
んだ。実際に、所有者には悪人が多いしね」
そう説いて、ショウイチはどこか自嘲するように目を伏せる。
『そうか。……彼らには悪いことをした』
「ん?」
殊勝に呟くスプリガンに、ショウイチは首を捻った。
「天農という人は、教えてくれなかったのか? 無闇に変形するなとか」
『師匠はいい加減だからな……』
心を有するほどの自動人形にしては、不可解なほどに杜撰な管理だ。この無法の荒野では無用に人々を脅かす
ことになるし、最悪の場合トラブルにも巻き込まれるだろう。平和惚けか、でなければわざと危険を呼び寄せよ
うとでもしない限りは、まずやらない愚行だった。
機会があれば天農という人物に釘を刺しておいたほうがいいかもしれないなどと考えながら、ショウイチは踵
を返した。
「さて。そろそろ休憩が終わりそうだ。俺は一旦村に戻るよ。また何か分かったら伝えに来るから」
振り返った顔の微笑みは、やけに頼もしげだった。
『……感謝する、ショウイチ』
スプリガンは一にも二にもなく、青年の申し出を受けることにした。鮮烈な青のスーパーカーはとかく目立つ。
既に自動人形であるという噂は広まっているだろうし、単独での情報収集は絶望的かもしれない。
『私も周辺でトラクターを探してみよう』
「助かる。トラクターは君と同じく心のある自動人形で、名前はタウエルンだ」
謎の青年ショウイチ・マーチマンと対魔族兵器スプリガンは、ここに一度、袂を分かった。しかし、彼らの再
会は、思いのほか早く訪れることになる。
寂れた村落に魔手を伸ばす、恐るべき悪の影によって――!!
つづく
ぎりぎりっ!
遊ぶとこまでいかなかった。
自動人形相手ということで、迷った挙句ショウイチの一人称は「俺」です。でもちょっとフレンドリー。
そんなこといわないとかあったらゴメンナサイ。
>>293 >>304 >>385 >>386 ユニークな悪党をありがとうございます!
最後の最後に御礼申し上げようと思って今までレスさぼってました! すみません!
ぎりぎりっ!
遊ぶとこまでいかなかった。
自動人形相手ということで、迷った挙句ショウイチの一人称は「俺」です。でもちょっとフレンドリー。
そんなこといわないとかあったらゴメンナサイ。
>>293 >>304 >>385 >>386 ユニークな悪党をありがとうございます!
最後の最後に御礼申し上げようと思って今までレスさぼってました! すみません!
すみません。ミスりました。・・・かっこ悪
・・・あやまってばっかだな今回
活気が無いので適当に話題でも。
仮想戦闘記録前編で会話文が「相手は四式だな」「悪いが、早々に決着を着けさせてもらう」のみ。
自分の場合、会話文よりも地の文書いてる方が楽なんですが、他の作者さんはどうなんですかね?
うーん、自分は会話ですかね。
ノリにノればどちらもけっこうイケるのですが……。
>>389 乙です。スプリガンカッコいいっす!理知的で。タウエルンと天農見たくいいコンビになりそうです
あと一人称は俺でも良いですよww
>>392 特に考えずに書いてます。描写がノれるなら描写、会話がノれるなら会話で
あぁ、それとついでに。文章中で突然出てきたブラックキューブについて記述します
ブラックキューブは言うなれば自動人形の動力といった物で、コイツが太陽光をエネルギー・ナノマシンetcに変換します
逆にいえばブラックキューブは人間でいう心臓そのものなので、コイツが破壊されたら機能を停止する事になります
……正直だんだんタウエルンの機能がトンデモすぎやしないか心配になってきたorz
どうもー
タウエルン以外も光合成なのかぁー
>>392 会話・・・ですかねぇ。
でも対四天王戦みたいな戦闘が一番楽しい。
NK4話でやった「魔窟MK‐U」みたいな感じの文章もノるかも。次は黒騎士でやろう。
つうか名無し見ないな。議論になると人知れず現れるのだが
俺以外の名無し、いたら返事してくれ
沸いて出ました名無しです
名無しは、そこにいますか?
ここにいるぞ!
う−ん・・・何だろうな、この過疎wちょくちょく作品は投下されてんだけどw
まぁそれは置いといて。今日は七夕なんだが、各作品のキャラが短冊に願いを書くとしたらどんな願いを書くのかな
お題には全力で応えなくてはなりますまい。
「世界が平和でありますように 正男」(願わずにはいられない)
「新必殺技のアイデアがひらめきますように 田所カッコマン」(基地の笹ではこっち)
「 世 界 征 服 ひかる」(冗談か皮肉のどっちか)
「ファッショナブルな白衣欲しい ひかる」(物欲)
「孫のエリスが無病息災でありますように 悪山悪男」(毎年これだけは丁寧に書いているらしい)
「今に見ておれ 悪の太天才・悪山悪男」(あとは独力で叶えるという意気込み。誤字あり)
「祖父が元気で長生きしますように エリス」(幼い頃は「おじいちゃん」)
「友達ができますように エリス」(友達いない)
「流派の絶招を会得してみせる HWS‐03 スプリガン」(抱負)
「もろもろの めんどーごとが かたづきますよーに あまの」(やる気なし)
なんか無難だな・・・
エリスあたりはこっそりハッチャケてそうな気もする。
書きたいのに全キャラ出し切ってない俺僕私……
決めたぞ! 今日中に7話を投下してやる!
『投下する』と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!
>>399 黒峰潤也「……か……くそ……」
シャーリー時峰「とりあえず彼氏が欲しいな、私は」
大野啓介「いつも通りに暮らしたいです、帰ってこい俺の日常!!」
ミナ「お兄ちゃんといつまでも一緒にいれますように…」
天沢長官
『ヒューマニマルが人として認められますように』(自室にひっそりと)
『鋼獣との戦争に勝利できますように』
エルツ
『瀬名さんとずっと一緒に居れますように』
ディーネ
表『人類が再び繁栄できますように』
裏『隊長の指揮能力にあやかりたい』
リート
『あの男に勝つ』(筆で力強く)
龍也(エルツにせがまれて渋々参加)
『孫の顔が見れますように』
リート「なぁ、これは……冗談だよな?」(龍也の短冊を見ながら)
ディーネ「いや、でも、隊長がこんな冗談を?」
エルツ「……なんで子供じゃなくて孫なんだろう?」
ウチのメンバーならこんな感じ。
>>399 タ「七夕か―。なんて書こうかな」
シ「ぶっちゃけ叶う可能性は皆無だから、何でも良いんだぞ、タウ」
タ「け、結構シビアだね、ショウイチ……」
〜10分後〜
シ「ようし、書けたかタウ」
タ「うん。ショウイチも書けたみたいだね」
シ「おし、互いにどんな願い事を書いたか同時に言おうぜ。一緒だったら叶うかもな」
タ「分かった!せーの」
タ「世界が平和になって皆伸び伸び畑を耕せますように!」
シ「タウの洗浄代が毎月かさむのでクリーナーが値下げしますように」
タ「えっ」
シ「えっ」
シャーリー意外と乙女w
「牽牛」とタウエルンて実はすごい近い? トラクターって牽引車だしっ
いかん言い忘れ。
今日はRBG休載しますごめんなさいっ!
突発的に思いついたネタで再構成してたら間に合わなくなった
清水静「戦いの無い世界が訪れますように」
ラウディッツ「ジャーク帝国を滅ぼして平和を取り戻す」
教授「重装甲強化服の改造と調整は飽きた。スーパーロボット造らせろ。
ああ、そういえば『アレ』は分類するならスーパーロボットだったか。サイズが小さい、ラスボスっぽい外見の二点が気に入らんが」
教授の言う『アレ』は仮想戦闘記録の最後で出す予定です。
?????「清水静と直接会える日が来ますように。その時は……」
とりあえずここまで出来た分をEpisode 6.5として投下しようと思います。
後にEpisode 07としてきちんと書き上げた上で投下するので、出来についてはご容赦を……。
>>406 乙女というよりかは
そろそろ彼氏でもつくらんといけんかなーとか
ちょっと冗談めかして言ってるイメージですw
東の空が明るくなり始めた頃、神子・まどか・ブラウニングはベッドから緩慢な動作でもぞりと起き上がった。長い黒髪が肩から零れ落ちる。
−−−−今日は休日だ、学校は無い。
少女は寝ぼけ眼をさすりながら、危なっかしい足取りで部屋を出た。
パラベラム!
■Episode 6.5:なんでも屋“やおよろず”へようこそ!
廊下に出ると、ベーコンの焼ける香ばしい匂いがまどかの鼻腔を刺激した。それに誘われてふらふらと階段を降りる。
「やあ、おはようまどかちゃん」
人の良さそうな微笑みを浮かべるのはルガー・ベルグマン。まどかの所属するなんでも屋“やおよろず”のマネージャーだ。
2メートル近くはあるだろう長身は筋骨隆々、鍛え抜かれた美しい逆三角形。そしてきちんとそろえられた長い金髪と知的な青い目、整った顔立ちはまさにイケてるメンズの体言者。……身につけた猫さんエプロンについてはコメントは控えるべきか。
「あいー、おあようごあいあふ」
まどか、夢現の状態で返答。少女は朝が弱かった。
「おーい、まどかちゃんしっかりー」
肩を掴んでゆさゆさと揺する。
「あい?」
「ほら、コーヒー」
ルガーが煎れたてのホットコーヒーを差し出した。少女はそれをホットコーヒーと認識する前に口に運び、
「うわー、ありあとうごらい……熱い!」
まどか、夢の世界から帰還。少女は猫舌であった。
「はっはっは。改めて……おはよう、まどかちゃん」
「お、おはようございます。びっくりした……」
舌をチロリと出す。どうやら火傷したようだ。
「……水、いるかい?」
水をとくとくとコップに注いで渡すと、
「はい、いただきます」
まどかはそれをぐいっと飲み干した。どうやら相当喉が渇いていたようだ。
「あ、コーヒー」
「これは僕が責任を取って飲み干すよ」
「すみません」
しゅんとするまどかを見て、ルガーがくつくつと笑った。
「それよりも、朝食が出来たから二人を呼んできてくれないかな」
「どこにいるんです?」
「ガレージ。シロちゃんのフレームを修理中。外装もフレームもボロボロだって」
正式名称はヴァイス・ヘーシェン。昨日昼頃に修理中にもかかわらず出撃し、夕方にボロボロの状態で帰ってきた、ヘーシェンタイプのオートマタだ。
「何かあったんでしょうか。リヒトさんも、シロちゃんも……」
そのへんの野良に襲われたにしては損傷が大き過ぎる。騎士団か傭兵団、他の神子とトラブルでもあったのだろうか。
「……主従揃って性格に難有りだからね。正直何をやらかしても不思議じゃない」
「根はいい人達なんですけどね、根は……」
二人揃ってはぁ、と深い溜め息。同時にチン、とパンの焼けた音。
「おっと、パンが焼けたみたいだ。……まあ、その話は置いといて、今は」
「はい、二人を呼んできますね」
♪ ♪ ♪
“やおよろず”のガレージは別棟となっていて、家を出てすぐ前にある。いつもは仕事が来ないせいで閑散としているが、今日は珍しくメカニック達が右に左に大忙し、
「ライディーンさんライディーンさん! 見てください! 天井に穴が!」
……というわけでもないようだ。
「あー、どうりで雨漏りが……って、ライディーンじゃねーよ! ライディースだよ!」
名前を間違えられた茶髪の男はライディース・グリセンティ、通称ライ。二人のメカニックの内の片割れだ。二年前に突然転がり込んできた少年で、軽薄そうな外見とノリで経験も浅いが、手先の器用さには定評がある。
そしてツナギを腰まで下ろして黒いタンクトップを露出させるというセクシーな出で立ちの少女はリタ・ベレッタ。身長142センチ、童顔、無乳。サラサラのプラチナブロンドと舌っ足らずな声がその幼さに拍車をかけている。
まどかやライと違い“やおよろず”創設時から所属しているリタは、創設前に傭兵をやっていたリヒトの下で長年メカニックを務めており“やおよろず”でも−−−−こんなナリだが−−−−その経験を買われてチーフメカニックを任されている。
「リタさーん、ライディースさーん」
そんなリタとは対象的な大人びた顔立ちにくまさんパジャマを纏ったまどかが大きく手を振って二人を呼んだ。
「あ、おは」
「おはようございますサチエさん!」
……間が悪い。
「ちょっと、なんで割り込むんスか!?」
「あら、すみません。しかし私は謝らない!」
右手を腰に当て、左手をライに向かって突き出す。その勢いたるや、まどかには、ビシィッ! という効果音が聞こえた程だ。
「いや今謝った! 今謝ったよアンタ!」
ライも上司(一応)に対するツッコミに余念が無い。
「で、何かありましたか、まどかさん!」
「無視かよ!」
「はい、朝ごはんです。今日の当番は」
「ルガーさんですね!」
「はい、ルガーおじさまです!」
女子二人がきゃっきゃと喜んだ。
「無視かよ!!」
取り残される男子一名。
なんでも屋“やおよろず”では食事等の家事は当番制となっていて、昨日の食事当番はまどか(それなり)、今日の当番はルガー(奥様顔負け)だ。ちなみにライが当番の日は手抜きが目立ち、リヒトが当番の日は味がやたら濃く、リタが当番の日なんかは断食確定だ。
「でさ、ルガーは何作ってたの?」
ツナギのジッパーを腰まで下ろしながら、ライ。
「トーストと……あの匂いはベーコンでした」
「それ以外は?」
「すみません、確認していません」
ライが「そっか」と肩を落とす。
「まあ、たかが朝飯だし、期待するほうが馬鹿ってね」
へっ、と自嘲気味に笑うライにズビシャアッ! とモンキーレンチ−−−−彼女は工具を常に携帯している−−−−を向けて声を張り上げる上司。
「たかが朝飯とは何ですか! 朝ごはんは、今日一日の活力と、明るく楽しい明日のための、重要な」
くどくど、くどくど。
「あはは……馬鹿がいた」
呆れ返る部下。
「−−−−つまり! パンよりごはんのほうが、私は好きだと、そういう事です!」
そう高らかに宣言(いつの間にパン派・ごはん派の話になったんだ)し、リタは手の中でマイナスドライバー(いつの間に持ち替えたんだ)をくるくると回しながら大腿部にあるポケットにしまった。
「あ、私もごはんのほうが好きですよ」
「参加すな!」
<お前達、何をしている!>
突如響いた、女性の声。
「あ、たまちゃんだ」
「起きてたんですか、たまちゃんさん!」
「おはようございます、たまちゃん教官」
その正体は“教官”“たまちゃん”こと玉藻・ヴァルパイン。まどか・ブラウニングと契約を交わしたオートマタだ。稼働年数が長く、博識な彼女はなんでも屋の知恵袋であり、切り札でもある。マスターが未熟なため、あまり前線には出ないのが難点だが。
<貴様らなぁ……>
ドスの効いた声からは苛立ちが垣間見える……というか丸見えだ。
<朝、顔を合わせたら、まずは挨拶だろう……?>
「しかし教官! 自分達はまだ顔は合わせていません!」
<口答えするな!>
「はいぃっ!」
物凄い剣幕で怒鳴られ、ライが裏返った悲鳴を上げて気をつけの姿勢をとった。
<……なんてな。冗談だよ、冗談だ。それより早くルガーのところに行ってやれ。飯が冷めるぞ>
「このリタ・ベレッタ、空腹の中で朝食を忘れていました……っ」
<いいからっ、早く行けっ!>
今日はここまで!
さあ、次は七夕ネタだ……
遥『早く一人前の神子になれますように』
『収入が少しは安定……しないよね、そういう職種だもんね……』
リヒター『マスターが安全でありますように』
リヒト『キョクトーに旅行に行きたい。いや、絶対行こう』
ヘーシェン『早く人間になりた−−−−い』
『皆が無病息災でありますように(匿名で)』
まどか『テストの順位が上がりますように』
『この楽しい日がずっと続きますように』
ルガー『とりあえず筋肉』
『有名どころとのコネをつけられますように』
ライ『モテたい、モテたい』
『上司をどうにかしてほしい(匿名)』
リタ『おなかいっぱいケーキが食べたい。いや、絶対食べよう』
玉藻『少年よ、大志を抱け』
よし、色々やっつけだけど何とか間に合ったぞ!
色々、やっつけだけど……
『早く戦争が終わりますように』
『みんなと街を守ってください』
『家族に会いたい』
『エースパイロットになる!』
『お父さんの仇をうつ』
『夏休みをください』
『メロンが食べたい』
『誰も死なないで』
『ワームがいなくなりますように』
『みんなの願いがかないますように』
…第28連隊 第4中隊の短冊
こっちのスレには初めてうかがいます。こんばんは
一応ロボット物ではあるからいいかなーと思ったりなんだり
もし畑違い、よそへどーぞということでしたら遠慮なく言ってください
ほんの5レス程度になります。投下させてくださいね。
──いつしか、戦いは日常のもう一つの姿になっていた。
そこで新しい絆が生まれ、それまでの絆が壊れていった。
ARTIFACT LEGACIAM
多分ユウにとって意識を失っていた時間は数分の一秒にも満たない間だったに違いない。
ハッとしたと同時に彼は瞬間的にレバーを捻っていた。
ビシャーン!
それは耳障りで、生理的に不快で、いくつものそうした音達を重ねたような形容し難い音楽だった。そのように聞こえたのだ。
『音を音と認識できてる間はまだ死んでいないッ』
死んでいないということは、まだ生きているってことだ。そう自分を奮い立たせながらユウは次々に飛んでくる熱線をレガシアムの巨体を横飛びに跳ねさせて回避する。
「ユウ、砲撃来るッ! 至近弾ふたあぁつぅ!」
黒猫の姿をしたカイアが耳元で叫ぶ頃にはユウはバリアーをピンポイントで展開させていた。
至近弾の爆発はバリアーで受け止めたものの、強烈な衝撃となってコクピットを揺らす!
体中に衝撃が走る。神経電位接続とかなんとかというシステムの影響で、機体が受けるダメージはユウ自身にも届く。
それはフィルター越しとは言え、当たり前の少年であるユウには耐え難いものだ。
「直撃よりはずっとましだけどッ」
言葉を吐き捨て、ユウはレガシアムが右手に携えたガトリング砲を無照準で乱射する。
もとより撃破を狙っての射撃ではない。E&Eの体表は強固な装甲でもあったし、その前面には強力なバリアフィールドが張られてもいる。
「よっしゃっ!」
カイアが喝采をあげる。牽制の為のガトリング乱射はE&E(ダブルイー)の体勢を大きく崩すことに成功していた。
いくらか着弾すれば儲けモノ程度でばら撒いたそれが当たりに当たり、体勢を崩してくれもしたのだから大もうけと言ってもいい。
だが、
「これ以上は銃なんて撃てない……」
いまはまだ郊外での戦闘だからまだいい。だが、戦闘空域は次第に市街地へと迫っている。
「これ以上は街に被害が出ちゃうんだよ!」
山が潰れ、川が踏み壊された。このままでは街までもが燃やされてしまう、その恐怖!
街に被害が及べば家も学校も、家族も友人も死んでしまうかもしれない。それはユウにとって恐怖以外のなにものでもなかったのだ。
「一気に決めるしかない!」
「ユウ、それは危険なことなんだよ?」
「それでも」
「やるしかないなら」
「やってみるさ!」
叫ぶと同時にユウはペダルを踏み込む。
ブーストオン。レガシアム背部のコーン状の推進器が光を発するとともに爆発的な加速がレガシアムを一直線に飛翔させる!
体勢を整え終わったE&Eがあの破壊の熱線を発する腕部をこちらに向ける!
「や、ら、せ、る、も、ん、か、ッ、!」
緊急加速にも似たその爆発的な急加速はレガシアムのコクピットシステムでも減殺しきれるものではなかった。
シートに沈み込む──というよりムリに押さえつけられているような状態のユウの声は喉を絞められた鶏にような奇妙な声色になる。
レガシアムはブンっと手に携えていたガトリング砲をE&Eに向かって放り投げる。それは見事にE&Eの構えた腕部に命中してくれた。
暴発した熱線がガトリング砲と共に自らの腕さえも爆発の中に弾けさせた。
そして、ユウはレガシアムの両の手にバリアーのエネルギーを収束させる。
1000、2000とあった距離が埋まるのに必要だった時間は正に瞬きする間もないくらいの一瞬だった。
ギギギギイィィィィィンン……。
衝撃がレガシアムを襲う、だけど次に拳に感じた衝撃はさらにその何倍も鈍く、熱い代物だった。
「ユウ、真芯を捉えた!」
「オオオオアアアァァァァッッッ!!!!!」
少年の咆哮と共にレガシアムはE&Eのフィールドを破った。その光を纏った拳は生物とも無機物──金属とも定まらない不可思議な“表皮”を突き破る!
その拳が、真芯を捉えた!
「フィールドッ──」
「──全開イィィッッ!」
E&Eの真芯まで届いたレガシアムの両の拳。その拳が纏ったバリアーフィールドが急速に膨張する!
通常兵器には強固な盾として機能するバリアーも、強靭な装甲も、内部からの攻撃には無意味だった。
・
・
・
「目標、爆散しました。エネルギー反応0、消滅を確認! レガシアムは健在ですっ」
長門通信士のその宣言は司令室の中に安堵の吐息の連鎖を生み出したのだった。
「よろしい。状況をイエローに移行。関係各所への連絡を行ってくれ」
大和孝和の落ち着いた声にもやはりホっとした色は表れている。クスリと笑って、今だにティーンエイジャーの癖の抜け切らない長門通信士は「了解です」と連絡作業に入った。
「今回もなんとかしのげたか」
確かにホッとはした。したけれども部下たちのようには安堵の気持ちに浸れない大和だった。
『敵の侵攻は明らかにその間隔を狭めている。今回はしのげた──これまでもしのげた。だがこれからは?』
連邦評議会の反応は鈍い。まして実際に侵攻の標的となってるはずの日本政府の動きはさらに鈍かった。
それを思うと気楽にはしゃげない気分の大和なのだ。
「それに、結局今回も優作君に頼る……丸投げしちまう結果になっちまったもんなぁ」
指揮卓にふんぞり返ったままの信濃丈史がポツンと言う。
「信濃、人の思考を読むなと何度言えば聞いてくれるんだ」
「わかりやすい顔してるてめェが悪ィんだよう」
やっと大和の顔に少しだけ笑みが浮かんだ。その瞬間だった。
「大和長官、日本政府からのコールです。……その、いつもの」
長門通信士の一言が、彼の笑みを一瞬で消し飛ばした。大和の顔にみるみるうちに苦いものが浮かんでくる。
『あぁ、そうか。いつもの、なぁ』
ニヤニヤしつつも、友人であり上司でもある大和の心労を想像するに、出来る事ならば代わってやりたいとも思う信濃である。
もちろん本当に代わってやるつもりはないのだが。
「わかった、私の部屋の方に回してくれたまえ。50秒後にとる」
ハァとため息をつく大和に信濃は一応同情の視線を向けた。
「気苦労がたえないな。長官殿」
なあに、と大和は力なさげに胸を張ってみせる。
「優作君は命をはってくれている……。彼を守ることは我々を、ひいてはこの星を守ることにもなるのさ。これくらいはな」
そうして彼は彼にしか出来ない戦いに向かっていく。
「守り守られる絆、か。お前のそういう生真面目なとこ、嫌いじゃないぜ。多分……優作君もな」
その言葉は大和が司令室を出た後にこぼれたものだったから、当然彼には届いてはいなかった。
「三番から四番、コンタクト!」
格納庫におさまったレガシアムに整備員たちが群がる様子は、まるで童話のガリバーと小人たちのように見える。
コンタクト完了の報告を受けると同時に笠置はキャットウォークで待機する分隊員たちに指示を飛ばした。
「よぉし、各部強制開放!」
その声がレガシアムが鎮座しているせいで手狭な印象を与えるこのだだっ広い格納庫に広がる切るころには、その装甲がいっせいに展開していった。
同時に展開した装甲と本体の間から蒸気にも似た熱が放出されていく。
「冷却作業急げよ。後の作業が詰まってんだからな」
腕組みをする姿は正に職人。その周りを整備員たちが忙しなく、しかし統一された意思の下にとでも形容できるメリハリのある動きで行き交っている。
損害は皆無というわけではなく、深刻というわけでもなく……といったところだった。
大和が日本政府との折衝という戦いに挑んでいるころ、この研究所兼格納庫においての戦いも始まっていた。
「おらあ、トロトロしてんじゃねぇぞ! とんまな奴にゃあ整備部名物重油入りシチューを食わせるからなっ」
そんな風に檄を飛ばすのは主任に抜擢されたばかりの生駒だ。『野郎、調子にのってやがるな』笠置は嘆息する。
どうやらまだまだ引退はできなさそうな現状だった。
「どうですかオヤジさん」
かけられた声に笠置は振り返る。
「おぉ、鞍馬か」
鞍馬と呼ばれたひょろっとしたメガネと白衣の優男は笠置の横に立ってレガシアムを見上げる。
「ダメージは内臓にまで達しちゃいねぇ。最初の頃にくらべりゃ上手くケガするようになってきたぜ」
「そうですか」
「まぁ装甲板だってタダじゃねぇんだ。きっちり避けて損害が出ねぇようにしてもらえりゃ楽だけどよ。欲を言いだしたらきりがねェな」
それに……とヘルメットをぽんと叩いて視線を落とす。
「レガシアムはオーバーテクノロジーの産物よ。一回出撃すりゃあほとんど全部手直しだからな、損害の大小はあんまり関係ねェよ」
「そうですね」
「なんとか……なんとか、坊主の負担を軽くできるような、何かがありゃあいいんだけどなァ……」
「……」
鞍馬は答えない。笠置の方も返事を求めての発言ではなかった。
「あいつは、あの坊主はよくやってくれてるよ」
「えぇ、本当に」
初めて鞍馬の視線がレガシアムから笠置の方へと向いた。
「彼は、不破君はわかってくれています」
「だったら」
頷いて再び鞍馬はレガシアムを見上げる。
「世界を守ってくれる彼を、僕たちが守らなければなりません。知恵と力を振り絞って──全力で」
それが自分たち大人とユウ──不破優作をつなぐ絆だと信じて。
二人は拳を握り締めていた。
時刻はもう10時を過ぎていた。
『やばいよなぁ。約束破っちゃって』
戦闘が終って、基地に戻って、でも意識を失っていたユウはほんのさっきまで医務室で眠っていたのだ。
「しょうがないよ、今日だって戦闘はハードだったんだしさ」
「カイアは僕が戦っているのを知ってるからいいよ。けどさ、基地の人以外で僕の事を知ってるのって伊吹だけなんだよ?」
背負ったリュックから顔だけ出しているカイアにユウはちゃんと隠れておいてよと言うのだが、
「隠れてたら一人で会話する危ない人に思われちゃうじゃん」
と反論されてしまう。
「どっちにしろ猫と会話してるヤバイ人に思われちゃうよ」
ため息をつくものの、カイアはまるで気にしたふうもない。
「伊吹ってあの子だよね、あのおっぱいでっかい子。流行りのツンデレっ子ってヤツでしょ。あんたのことが気になってる訳じゃないンだからネッ! ってヤツ」
「カイアってホント変なことばっか覚えるよね」
自宅近くまではSARFの車で送ってもらえた、その残りのいくらかの道でのことだ。
住宅街の道に他にあるのは心許ない明滅を繰り返す街灯くらいのもの。
動くもの、喋る者はユウとカイア以外に皆無だった。
だけど、
シンと静まり返った住宅地であっても、家々には明かりが灯っている。人が住んで、人が暮らしている証がそこにある。
「ユウ……」
唐突に、でも静かにカイアが声をあげた。
「君の守った街だ。君が守った人たちなんだよ」
返事はない。
声は必要なかった。
リュック越しでもカイアには分かっていた、芽生えた絆がそれを伝え合っていた。
「ただいま〜」
鍵を開けて家に入るが、明かりは何一つついていない。
「千歳? もう寝ちゃったのかな」
カイアに喋るなよと言いながらリュックから下ろす。
「誕生日会してくれるってのにすっぽかしちゃったからな。怒っているだろうな」
そうしてリビングに入って明かりを点けた時だった。
「……」
テーブルと、卓上のご馳走と、そして、
「ち、千歳?」
待ち続けていたのだろう妹が座っていた。
「お、お前……」
眠っているわけではない。椅子に座って、俯いたまま、そうして待っていたのだ、ずっと。
「……ずっと待っていたのか? もしかして戦闘があった間も?!」
答えはない。
千歳はユウと目を合わせようとしなかった。
いや、ユウの方こそ千歳と──誕生日の約束を守らなかった妹と目を合わせなかったのかもしれない。
快活で明るい、誰とでも仲良くなれるといった太陽のような少女がいま、深く沈んで光を失っている。
だけど、ユウは逆に怒っていた。誕生日の約束を破ってしまったという負い目からそのように感情を発してしまったのだ。
「どうしてだよ! 避難命令は出ていたんだろ? 逃げなきゃダメじゃないか!」
「……」
無言の苦痛がよりいっそうユウに気持ちと裏腹の言葉を並べさせる。
「今日は良かったよ、こっちまで戦闘の被害は及ばなかったからさ。でももしこっちにまで飛び火してたらって……そう思わなきゃダメじゃないかッ」
しかし千歳は俯いたまま答えない。
──大丈夫だよ、千歳は僕が守るからね。
いつか自分が言った言葉が胸に蘇る。
「……千歳」
それ以上いたたまれなくってユウは妹に背中を向けた。
「今日は、その、ごめん」
ガタンっと椅子が倒れる音。次の瞬間ユウは後ろから抱きしめられていた。
「千歳?!」
「……と、いたの」
小さなか細い声。それは「今まで誰といたの」と聞こえた。
今度はユウの方が黙る番だった。
レガシアムのこと、SARFのこと、誰にも言えない、自分だけの秘密。
「伊吹さん? 伊吹さんといたの? そうなの?」
違うよという言葉はいかにも力なく、それは確かに事実ではあったけど、真実であるという説得力には欠けている。
「イヤだよ…。そんなのイヤだよぉ」
その言葉は段々と湿り気を帯びてきて、やがてすすり泣く声へと変わっていった。
「なんだよ、そんな……泣くことなんて、ないだろ?」
「だって、だって、怖かったんっだよ、とても怖かったんだよ!」
すがりつく妹にユウはただ、その背中を好きにさせている。
「伊吹とはなんでもないよ。それに……ごめん、今日は一緒にいてやれなくって。でも本当に危ない時は絶対側にいて守ってみせるから」
声が、止まった。
「だって、この世に二人だけの兄妹なんだもんな」
「違う」
それは暗い、暗くて深い……深淵から響いてきたような声。
「千歳?」
次の瞬間ユウは突き飛ばされていた。
「わたし、わたしだって知っているんだからあッ!!」
絶叫はユウの心に突き刺さる。
千歳の左目に涙が浮かんでいた。
──本当の涙は左の瞳に浮かんで、左の瞳から零れるの。
そう言ったのは、はたして誰だったろう。
「何を、言って、いるんだよ……。千歳」
それは、女だった。ユウの知ってる妹の顔ではなかった。妹は、千歳は“女”の顔をしていた。
「お兄ちゃん、好き。愛してるの」
だから──とユウも告げる。
「僕だって好きさ、兄妹なんだもの」
左の瞳から、涙が零れた。
「違う」
それは絶望的な響きが込められた言葉。
「わたしは、わたしはお兄ちゃんの妹じゃないッ! ホントは……ホントは兄妹じゃないって──」
これは夢なのかもしれないと少年は思った。夢であってほしいと少年は思った。
「──知っているんだからァッッ!!」
走り出す妹を見ながら、彼の瞳は何も見ていなかった。
白い巨大なロボット、異形の“敵”。戦い、そして……そして……。
日常と一緒に絆も壊れていってしまうのか?
わずかな達成感も粉々に消し飛んでしまった。何をする気力も湧き上がらず、
──不破優作は今日、17歳の誕生日を迎えた──
■次回予告■
生まれる絆、壊れゆく絆
17歳の誕生日、その夜に少年は『はじまりの日』を思う
それは、あの夏の日
爆音、熱風、そして巨大な異形のモノ達が飛び交うソラ
逃げ惑う人々の中、出会ったのは、黒と白
白いマシンと黒い猫
次回 アーティファクト・レガシアム
猫とマシン
むかーし“ちゅーがくせー”の頃に書いていたロボット物をちょっと書き直してみました。
レガシアムっていうのが主人公ロボなんですが、イメージはEX−Sガンダムとガイアギアを足して二で割ったスーパーロボットみたいな感じ
敵メカのE&Eはエンジョイ&エキサイティング──ではなくてエクストラインテリジェンス&エネミーシングの略です
イメージとしてはメカメカしいラーゼフォンのドーレムってとこですか。
謎の侵略者E&Eから世界を守る地球連邦評議会直轄の防衛組織SARFと彼らにコンタクトしてきた謎の黒猫カイア、
カイアによって目覚め、少年不破優作とリンクすることによって力を発揮するロボットレガシアム。
やがて物語は18年前の火星開発の為におくられた開拓団の壊滅事件にまで及び・・・というストーリーでした。
まぁ話は最後まで考えていたものの、完結するまで書き上げはしなかった代物なんですが。
もし気に入ってもらえたら幸いです。
ちなみにいまのところ続く予定はねーです。次回予告なんてまぎらわしいことしてすんません。
よかったら、また何か投下させてください。では〜
>>424 新しい……惹かれるな
>EX−Sガンダムとガイアギアを足して二で割ったスーパーロボット
すごく……好みです……。
でも線が多くて描きにくそうw
てか全然畑違いじゃないじゃないですか、どストライクですよw
続編にせよ新作にせよ、次期待してますぜ!
気分転換にリヒターを描いてみたけれど、なんだかロボ描くの下手になったなぁ……
>>416 新キャラ続々ゾクゾクですね。にしても濃いメンツ。
一番真人間そうなのがリヒターというのがまた
>>424 緊張感とノリ、そして妹が絶妙ですね
ぜひ続きが見たいのですが
母さん、お久しぶりです。俺の事を覚えていますか?
長期旅行満喫中で俺の事なんて頭の片隅にもいないだろうけれど、俺です、大野啓介です。
あなたのお腹の中から生まれた子供です。こうやって言うとオレオレ詐欺みたいですね。
ここ最近、嫌な夢ばかりを見ます。
昔よく話したあの夢の話ではありません。
テスト前日の一夜漬けをしていたら、いきなり、妹を名乗るミナという女性アンドロイドがテスト前にダンボール箱に入ってやってきて、涙目になって俺の脳天にベアナックルかましていったのです。
おかげで俺はテストでまったくいい点を取れずに単位を落としてしまう羽目になってしまいました。
酷い悪夢です。
しかもその後、勝手に居座ると言い張って、この家から出て行こうとしません。
親父公認らしいので、法的にも追い出すのは無理みたいです。
本当に酷い悪夢です。
まったくもって、本当に…
「お兄ちゃん、何を書いてるの?」
本当にこれが夢ならば良いのに…。
メールを打っているのを小柄でエプロン姿な女性アンドロイド、ミナが興味津々にやってきたのを見て俺はそう思った。
高嶺町3丁目 大野家。
2×××年8月1日。
キッチンの前にエプロン姿でミドルへアーな少女がいる。
一昨日までのこの家には無かった光景だ。
少女は俺の方に振り向いて笑顔で尋ねてきた。
「お兄ちゃんは今日の朝御飯何が良い?」
「―――カツ丼。」
俺はそう即答する。
その回答に少女は不満そうな顔をする。
「えー、朝からそんなの食べちゃダメだよー、朝はご飯に納豆に味噌汁、それにダシ巻き卵が一番だよ。」
少女の名前はミナという、正式名称は1M―010 ミナなんとかとかだと自分で名乗っている。自称、俺の妹でアンドロイドなんだそうだ。
「そこまで明確に決めてあるのならば、俺に聞くなよな。というかそういう話をロボットのお前がどういう所から仕入れてるんだ?」
「んー?ネットにアクセスして、おいしそうな献立探して、栄養価を計算して、お兄ちゃんに喜んでもらえるようにと…。」
そのおいしそうなという基準は一体どこから来てるんだと内心、俺は突っ込んだ。
「じゃあ、俺はアスパラガスと蓮根が嫌いだからそれ考えて献立してくれれば良い。」
そういうとミナはぷくーっっと怒ったフグみたいに顔を膨らませて
「お兄ちゃん、好き嫌いしてると大きくなれないんだよ!」
とどっかの小学生の好き嫌いを怒る母親みたいな事を言って来た。
「あのなぁー、見りゃわかるだろうが、俺は既に成長期は終わってるの、これからは小さくなる事があっても大きくなることはほぼ無わけ。ロボットの癖にはそんな事もわからんのか?ちょっとは合理的に考えろよ。」
「ロボットじゃないよ、アンドロイド、体の7割は有機物質で出来てるからそれなりに人間に近い体なんだよ。」
俺の発言を不服そうな顔をして、この自称:妹は言ってくる。
「へぇー。」
なんかあんまり非現実的な話が始まりそうだ。それに人間の体に近いからといわれても…中身は…なわけだしなぁー。
「機能的には人間と違いなんてのは三つぐらいしかなくて、一つ目は私の頭の中に無線が組み込まれれていつでもネットワークに接続できるという事、これは知識の収集をするというだけじゃなくて、プロジェクトへの自動返信も行っているの。」
「へぇー。」
「二つ目は−」
「へぇー。」
「もう、お兄ちゃん、聞いてないでしょ。」
というよりかは――
「興味がない。」
そう言うとしゅんと首をうな垂れて…少し涙目になって
「お兄ちゃん!これは大事な話なんだからちゃんと聞いてよね!!」
こうして言われると相手がロボット、いやアンドロイドだっけか、まあ、それだとわかっていてもちょっと可哀想になってくる。
昔から女性の扱いには慣れないのだ、それがアンドロイドだとしても外見はどう見ても少女な為、つい心が動いてしまう。
「大事といわれても、俺、正直、お前がなんだろうとなんつーか知りたくないというか、知ってどうなるって事でも無いだろう?」
「違うよ、知らないと駄目な事があるの、お兄ちゃんはミナのお兄ちゃんなんだから、知らないといけないの!」
必死に抗議するような目でミナは俺を見つめてくる。
こうしてみると、人間と何も変わらなく見える。きっと外に連れて出ても誰もこいつが中身は機械だなんて信じないだろう。
だが、自分はこいつが機械なのを知っている。
こいつが我が家にやってきた時、俺はこいつが人間じゃない事を散々に思い知らされた。
「お兄ちゃん、聞いてる?」
「あー、知らないと駄目な事があるとかそういってた所までは…。」
そういうとミナは少し目に涙を浮かべる。
うるうるした涙目で俺を見つめる。そんな顔をするミナに俺は不本意ながら可愛い等と思ってしまう。親父め、俺はロリコンじゃないんだぞ…。
「悪かった、ごめん、ちゃんと話を聞くから許してくれ?」
そういう俺の発言を信じられなそうな顔をしてみる。
まー今までが今までだから仕方ない。
「本当?」
「本当だ。」
「ちゃんと話を聞く?」
「ああ、聞くよ。」
「指きりしてくれる?」
「ああ、するよ。」
俺はそういって小指をミナの前に突き出した。
そうするとミナは無邪気に笑ってどこからともなく包丁を取り出し、振りかぶって―――
「おおぅぅぅぃぃぃぃぃ!!!!」
間一髪だった。
即座に指を引き振り下ろされた包丁を回避することが出来た。
もし、あとコンマ1秒でもミナの右手に握られているそれが何なのかを認識するのが遅れたら確実に俺の小指は切り落とされていただろう。
「お、お前、俺を殺す気か!!」
殺すというのは言葉の綾だ。
「え…だってお兄ちゃん指きりしてくれるって言ったし、お兄ちゃんの言葉を信じて指きりしようと思ったのに…お兄ちゃん避けちゃうし、やっぱりお兄ちゃんミナの事、嫌いなんだ。」
そういってミナは泣き出した。
このミナの反応に俺はいやーな悪寒が背筋を走る。
「いや、あのなお前、指きりの意味知ってるのか?」
「ぐす…うん、知ってるよ、お父さんが人と約束をするときは指切りをするもんなんだって、言ってた。
だから指きりの意味をNASAのデータベースから調べたもん。自分の小指の第一関節から上を切って相手に渡す事で約束を絶対守るという決意を表す日本古来の風習なんだってそこに書いてあったから、それ信じてやったのに…。」
一体、何時の時代の人ですか、あなたは…。
いや、人じゃなくてアンドロイドか…というか微妙に間違ってるのも仕様ですか、というかなんでNASAなんだよ!!
だが、そんな事を知らずにミナは泣きやまない。
俺は記憶を呼び起こすようにしてミナに言った。
「いや、あのな、それは江戸時代ぐらいに遊女が意中の人に自分の愛が本物なのを示す為にやっていた事でな、原義はそんなんだが、今の指切りはそういうものじゃないの。」
ちょっと自信が無いがこれで合っていた筈。
そんな俺の発言にミナは心底驚いたような顔をする。
「え…嘘。」
「嘘じゃないよ、何でNASAが出てくるのかわからんが、俺の事が信じられなかったら他のデータベースでも調べてみるといいさ、あくまで現代的な意味でな。俺の口から説明すると指切りというのはだな――」
ミナに向かって指切りとは何をする事なのかを説明する。
「ミナ、わかったか?」
「うん、わかった!お兄ちゃんを信じる!」
笑顔一杯でミナは答えてくる。
「んじゃ、実践してみようか。」
と俺はミナの目の前に小指を付きだす。
正直に言うとさっきのことが脳裏をかすめてちょっと怖い。
ミナは先ほどと同じように無邪気に笑って――小指を自分の小指に絡めてきた。
指に体温を感じ、ふぅーっと俺は安堵のため息をついた。
「んじゃ、あとはわかるな?」
俺はミナに確認する。
「うん。」
「じゃあ、せーのの合図でやるぞ。」
「うん。」
ミナが快活に応答する。
「ゆびきり〜げんまん〜うそついたら〜はりせんぼんの〜ます、ゆびきった。」
そうして俺とミナは絡めた小指を離す。
ミナはその後、自分の小指を見つめ、嬉しそうな顔をしていた。
そんなミナを見て、俺はまたため息をついた。
一つ、わかった事がある。このミナという女性アンドロイドはまだ生まれたばかりの赤ん坊なのだと言う事だ。
インターネットにアクセスする事で、いわゆる知識自体はたくさん持っているのだが、それは知識だけでしかない。
いうなれば、普通の人間ならば持っている常識が欠如している。たとえば、先ほどの指切りは原義はそういった意味を持っていたかもしれないが時代を経るにつれて今のような意味に変わってしまっている。
普通ならば人はそれを経験から知っているのだけれど、この前にいるミナにはそれが無いのだ。
つまり知識だけはある赤子といっても差し支えない。データでしかモノを知らないから、そのデータ自体を信じてしまう。その言葉に別の意味が含まれているなんて知る由も無い。
おそらくは最初、俺の小指を切り落とそうとした時、彼女にはなんの悪気も無かったのだろう。
彼女単に、指切りは指を切って約束を守る事の決意を相手に見せるという行為だと認識していたのでそれをそのまま実行に移しただけなのだ。
ミナが俺の家にやってきたあの日、親父の手紙にはこんな事が書いてあった。
ミナを育てて、一人前にしてやってくれ。
俺には最初その意味がわからなかった。
だが、今ならその意味がわかる。つまり、これは俺がこいつに普通の分別がつくような奴にしてやってくれという事なんだろう。
なんつーめんどくさい事を押し付けるんだ、まったく…。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。」
そう俺を呼びながら、ミナが俺の肩を叩く。
「ん?なんだミナ。」
「またボーっとしてたでしょ、話を始めるよ。」
「ああ、悪い悪い。」
ミナは胸に手を当ててすぅーっと息を吸う動作をする。
「じゃあ・・・あっ!」
ミナは何かに気づいたように口に手をあてた。
「ん、どうした?俺はしっかり聞いてるぞ。」
「大事なこと忘れてた、お兄ちゃんが約束破った時の為の針千本買ってこないと!で、でもお兄ちゃん、針なんて千本もどこ行けば売ってるかな?」
悪意なく無邪気に聞いてくるこの女性アンドロイドとの共生に俺はこの先、すごーーーーい不安を感じるのだった。
こいつが来る前に戻れないかなー本当に…。
シスターズ第二話「シスターズの定義」 了
けーちんとミナっちの次回予告〜
ミナ「二話はバトルものになる筈だったのに、なんの心境の変化か、こんな感じになっちゃったシスターズ!!」
啓介「バトルものって…俺、バトルとか嫌いなんだけれど…。」
ミナ「そもそも前回告知したサブタイトルは何処いったのか?それは神のみぞ知る!!!」
啓介「正直、このままでも十分辛いんでこれ以上は俺の心労増やさないでくれると嬉しいなぁー。」
ミナ「だが、ついに次回からはバトルものになる確率60%!!!」
啓介「なんか高いのか低いのかわからん数値だな。」
ミナ「ついに明かされるシスターズの宿命、裏に隠れるNASAの陰謀、ついに始まる超展開!!」
啓介「なんか嬉しそうに超展開って言っているがそれあんまり良い意味で使われるてること無いぞ。」
ミナ「現れた巨悪に裸で立ち向かうお兄ちゃん、それを公衆猥褻罪で捕まえようと追う警察!!」
啓介「また、俺裸かよ!!」
ミナ「警察の数の暴力により、窮地に追い込まれるお兄ちゃん!そのとき、お兄ちゃんの体が金色に輝きだしたのだ!」
啓介「いや、正直きもいよね(´・ω・`) 」
ミナ「これぞ、裸になることによりオーラーを高め、絶対無敵の超人になる大野家秘伝の奥義、スーパーゼンラ!!」
啓介「ネーミングが安直すぎるよ…。」
ミナ「次々と襲い掛かる警察をバッタバッタなぎ倒すお兄ちゃんはついに指名手配犯となって世界を敵に回すのだった。」
啓介「巨悪どこいったよ!巨悪!!」
ミナ「大丈夫、安心して!ミナはいつでもどこでもお兄ちゃんの味方だよ!」
啓介「一人にしてください、お願いですから…。」
ミナ「次回!ザ・シスターズ第三話『新たなる脅威 PNはパ○なしの略』」
啓介「一体、この次回予告からどうやってそのタイトルにたどり着くんだ…。」
ミナ「さー、次回もサービス、サービス!」
啓介「最後だけ思いっきり時事ネタなのな…。」
というわけでシスターズ第二話です。
俺の中でシスターズは駄菓子みたいな感じで書いているので、そんなものぱりぽり食べる感じで読んでもらえると嬉しいです。
当初はもっと動のある話だったんだけど、あんなことがあったせいかなんかぼけーっとした応答を書きたくなって
急遽シナリオを変更する羽目になってしまいました。
といっても元々短くすませる予定だった部分だったんだけど、設定もある程度これでわかりやすくなったかな
ちょっと補足説明すると、ミナの赤子という意味に関してですが、ロボットもの好きにわかりやすく説明すると
例としては黒歴史という言葉がありますよね
この言葉の本来の意味は∀ガンダムにおける、かつてあった災厄を内包した過去の歴史であり
テーマとしての意味はそういった過去があった上でそれをしっかり認めて同じ過ちを繰り返さないようにしようという意味であり
それがネットスラングとして意味が暴走して、無かった事にしたい作品という意味を持つ言葉になってしまいました
ミナは例えば黒歴史という言葉の意味を知ろうとすると、テーマやネットスラングなどが候補に挙がっても原義こそが正しいのだと認識してしまいます
つまりはミナにとっての黒歴史とはかつてあった災厄を内包した過去の歴史という意味を黒歴史だと思ってしまうわけです
なのであの作品って黒歴史だよなーなんて発言をするとその作品を大層とんでもないものだと理解しちゃうことに…
というのが現状でのミナの思考です
包丁持ってるからヤンデレとかじゃないんですよ…
んーたとえとしてはわかりづらいなw
本当ならば、次の話までまとめて書いて二話とするのが理想だったのですが、あんまりこっちにかまけてると
中途で投げ出し状態になってるリベジオンがアレになるので、区切りの良いこの辺りで切りました
シスターズはリベジオンと違って気楽に書いてる話でもあります、どんなシスターズが読みたいかというのを言ってもらえると
もしかするとその方針で書くこことになるかも…(あんまり先のこと考えず書いてるんですよねー)
433 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 13:58:45 ID:79W9AREb
age
>>426 冷静に考えてみたら1番真人間なのが人間じゃないっていうのはちょっと問題ですねw
>>432 まさかのシスターズktkr!
相変わらずのハイテンション、惚れてしまいますw
>どんなシスターズが読みたいか
そうですね……これから幼馴染みとか謎の組織とか絡みつつラブコm(ry
とまあ、冗談はこれくらいにして。
自分の好きなように書いてはいかがでしょうか。……まあ、それが1番難しいのですが
さて、容量がもう 470 KB 越えそうですが、いかがいたしやしょう
そういやまとめwikiについてだが
作品そのものをコピペして纏めたページを勝手に作ってもいいもんなん?
あった方がいいかとは思うが、作者の許可とかがいるのかが分からんの
>>424 面白かったです。次の投下も待ってます。
>>432 関係無いかもしれないけど、読んでて時計じかけのシズクを思い出した。
>どんなシスターズが読みたいか
思いっきり意表を突いて時計じかけのシズクみたいな魂を振るわせる感動傑作とか。
それにしても皆、そんなに妹が好きなのか。自分としては姉の方が(ry
でも、兄を殺したい程愛してる(兄は妹の存在自体知らない)ヤンデレブラコン妹とか良いかなぁ、とか思ったりしてます。
>>435 そもそも全然更新されてないから積極的にやって欲しいなぁ、と。
取り敢えず、自分の作品は好き勝手にコピペして纏めていいです。
>>434 >ハイテンション
気分転換含めて勢いで書き上げました
普段、あんな鬱々な設定の物語考えてるせいかとにかく元気な話が話が書きたいと思って書いたのが出てるんだと思います
そのせいか、あんま校正せずその後の勢いでだしたのでちょっと文章がおかしいとこいくつか見えるので反省してます(´・ω・`)
>どんなry
幼馴染は良いですね、もらいです><
>>436 俺は実は幼馴染属性だったりしますw
妹も大好きだけどね
>感動傑作
実はみんな、バトルに走ってるし、俺もリベジオンでバトルやってるので
この作品は応答を活かしたドラマで物語を作っていくのも良いかなーとちょっと思ってます
問題はその構成力が俺にあるかですがw
時計じかけのシズクは知らない作品なのでこんど読んでみますね
>>435 望むところです! 全弾持っていけ!
>>436 自分もどっちかというと姉歯……もとい姉派ですぜ!
でもロリも好きなんだ……。
あと三つ編みお下げも好きなんだ……。
だから低身長で三つ編みお下げでお姉さんが至高だと、僕は思(ry
>>437 自分も勢いだけでどうにかするところを治さないとなぁ。
よし! なら幼馴染みはふたつ上のお姉さ(ry
……たまにはこういう雑談もいいものですねw
test
やっと規制解除されましたorzレスを試してごめんなさい
これから出来るだけ早く投下するようにしますね
>>416 賑やかなメンツで良いっすなぁ。ヴァルバインに叱られたかったり
>>424 これまた良い引きで……続きが楽しみですよ〜何時でも投下お待ちしてます
何と中二…・…いや、男の子心をくすぐるキーワード!
>>432 和みました。ここの所戦闘ばかりだったもので、w
ミナがこれからどう成長していくのか、啓介の心境にどんな変化が出てくるのか
楽しみです、色々と
>>435 僕自身は全然かまいませんよ
ちょっと寂しかったのでジャンジャン作ってもらってほしかったりw
>>440 おきゃーりなさいませー
>ヴァルパインに叱られたかったり
さては貴様Mだな!
ところで、スレの容量が(ry
ギリギリっぽいし新しく建てて貰った方がいいですかね
自分は最近他の板で立てたばっかりなので、立てられませんがorz
自分もパソは規制喰らってますね……
おk、ROM民が行ってみる
ダメだった…すまん
じゃあ俺が行く
>>447 お疲れ様でございます!
>>432 ところどころ「ああこの子はロボットなんだなぁ」と思うことがあり、うまいなあと。
>>435 おおおおおお願いします!
おおいかん
ネクソン&スプの私です
>>447 これ以上無いほど乙でございます
さぁ早く仕上げないと…
>>447 乙です。素早いスレ立て、惚れてしまいます
あ、繰り返しスミマセン
タイミングが微妙なのでRBGの投下は明日落ち着いてからにします・・・
き、キリのいいとこまで書けてるんだよ!? ほんとだよ!?
ということで失礼をば。
埋めるついでに何か投下しようかと黒歴史ノートをあさっていたら鳥肌が、鳥肌が!
>>435の中間報告
とりあえず「タイトルがある」「ストーリーらしい内容である」を基準に
初代スレから作品のみをコピペしてまとめてみました
全26タイトル(7/10現在)で話数個別でカウントすると100近いな!
10日は休みだし寝る前にちゃちゃっとやっとくかと思ったら
予想以上の量でこんな時間だよ!!
小学生の頃から、夏休みの宿題は8/25辺りから処理し始め地獄を見るタイプだったが
それは成長しても変わってないようですな……
このスレを見てる学生の皆!夏休みの宿題はコツコツやろう!
という訳で、今から纏まったブツをwikiに書き込んでいきます
この作業が終わったら……ぐっすり眠ってから3連休を満喫するんだ……
追伸
探してます
・◆8XPVCvJbvQ氏が2号機の517で投下した「ノリと勢いだけ」の代物
・Tauerun <3,動き出す(前篇)>
・パラベラム! Episode 04
お持ちの方は
http://ux.getuploader.com/sousakurobo/ にアップして下さるとありがたいです
>>454 あー……ガッデム、シット、なーんてこった
すみません、話数のカウント、ひとつ余分にしてました……orz
>>454 乙です!
結婚してください!
誤字とかは勉強したら自分で直せるようになるかな・・・
やっと……
やっと全て終わった……
これで……私も…………
眠りに…………就くこと…………が……………
459 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 13:06:59 ID:vU8dm0gD
>>458 超乙!!
1スレから纏めるとは凄い漢だ・・・ゆっくり休んでくれ
>>458 乙彼様です! 今はゆっくり休んで、次の戦いに……備えましょう
>>458 大変な作業、御苦労様です。ゆっくり休んで下さい。
ここはあとどれくらい書き込めるんかね?
SS1話分くらいですかねー
「先輩! 埋めネタのためだけにロボットを新造しました!」
「そうか。……ってデカイなオイ!?」
「目測17メートルはありますから!」
「ちゃんと測れよ」
設計図はどうした?
「その名も、ポリモマッピオンです!」
「……んなに? 何だって、名前」
「ポリモマッピオン!」
「ポリ……それ名前なの!? かっこ悪くね?」
「そ、そもそも! これが人型をしているのは、十六世紀初頭に南米に覇を唱えた、チンゴロナイタ族独自の原
始宗教における最高神モッケプロココの権能を象徴する聖剣ポリモマッピを人類が運用するためであって――」
「そんなたった今テレビの前でごろ寝しながら考えたっぽいオモシロ設定用語どうでもいいから」
「失礼ですっ! すごく大切な名前なので間違えないでください。ポリマッピオンですからね」
「……早速何か脱落した気がするが。ポリモマッピオンでいいんだよな」
「よくできました! ……さっきのは、わざと間違えてみただけです。いわば確認テスト。あなた試されていた
のです」
「そうか」
「うっかりとかじゃないです」
「うんもういいよわかったから」
「とにかく! この銀色の巨人がちょっと本気を出せば〈翼ある蛇機関〉のごときは、なんかもうメタメタです。
悪いけど、そういうことです」
「待った。また変な名前が出てきたんだけど?」
「〈翼ある蛇機関〉ですか。ケツァルコアトル神を担ぎ出し、現代の世界を滅ぼして自らの思うがままになる六
番目の世界を創ろうと企む、悪の魔術結社です。構成員は猫科の動物が嫌いだそうです」
「それは……悪そうだな」
「でしょう?」
「……? なんか変な音がしないか?」
「先輩! モニタをご覧ください!」
「ていうか高校の地下にこんな設備造るなよ。って、あれは……UFO!? どことなくワニっぽいけど……」
「遂に来たのですね……。〈翼ある蛇機関〉の尖兵、ナワトル兵!」
「もうちょっと緊張感を刺激するネーミングに……」
ああポリモマッピオンの時点で、無理か……。
「激戦の予感ですが、続きは4スレ目の埋めネタまでおあずけです!」
「まさか俺が強引に乗せられるなんてひねりのない展開じゃないよな。俺は嫌だぞ面倒くさい」
「……」
こいつ目を逸らしやがった!
つづく?
まとめにはのせないでー!
「斬光のポリモマッピオン」でしたがこの際なので改題。
キャラも先輩と後輩に変更。あとの設定も書いてあることが全てです
>>465-466 ネーミングセンスが良いな、色んな意味でw
あと、まとめwikiって過去ログhtml化して残すから
どの道間接的には載るんでないの?
「ナワトル兵は、体長300メートルのワニとでもいうべき巨大なメカであった。漆黒の魚鱗のようなもので全
身を覆い、顎門から覗く鋸状の牙は朱に染まっている。空中に浮遊する禍々しき姿は、まるで伝説の悪霊チャク
ムムルアインのようでもあった……!」
「そんな解説はいいから! 敵がデカすぎ! このロボ17メートルしかないじゃん!」
「ダビデに牛若丸と、小が大を倒す物語の構造は昔から人気があるのです。ポリモッピオンも人気者です」
「勝ち目があればな! バイクでダンプカーに挑んでも無理だろ!」
「勝ち目ならありますとも! かつて超大陸パンゲアを分断したとのウワサが一部地域でまことしやかに囁かれ
ていたという聖剣ポリマモッピ……。ポリモパピヨンは、贅沢にもその剣を脊椎として流用した“偽造された巨
神”。どんな怪物だってイチコロです」
「微妙に不安を煽る説明だが、そんなことより、さっきからことごとく名前を間違えているのは気のせいか?」
「わざとです」
「そうか」
「だいたい、ロボットアニメとかでも巨大な敵が現れるのはお約束じゃないですか。プリンハモハモンの場合は
それがたまたま初陣に当たったという、ただそれだけの話なのです」
「それはそうかもしれんが……。おい、もう原型がほとんどないぞ」
「先輩ならやれます!」
「また話題逸らしか! ……というか、俺はポリモマッピオンになんか乗らないっていってるだろ」
「私は気にしません!」
「俺が気にするんだッ!」
「大丈夫です。そんなことで殿方の浮気を責め立てるような狭量な嫁ではありません」
「……はあ? どこからどう話がズレて……? ……はっ!? 乗るの乗らないのにそんな暗喩含められても知
らんわッ!」
「夜の営みではむしろ私が乗りたいところですが、まあ今はどうでもいいです」
「それ以前に、お前は俺にとってただの後輩であって恋人でも何でもないからな」
ついでに創作発表板は全年齢対象なので言葉に気をつけてほしい先輩心だった。
「話を戻しますが、ナワトル兵は今こちらをサーチしている真っ最中です。ポリ袋は透ける物をご使用ください
を発見次第、猛攻撃を掛けてくると思われます。時間がありません」
「既にカタカナですらないのかよ……」
「先輩、どうか高校のご同輩を救うと思って……!」
「もとはといえばお前が高校の地下に基地を建造しなけりゃみんなは危険な目に遭わなかったんだけどな」
「……夢だったんです。『がっこうのちかにひみつきちがある』というシチュエーションが……」
憎む! タチの悪さでは右に出る者がないこの娘にそんな夢を植えつけてくれた某宇宙人を俺は憎む!
「……仕方がない。今回だけは非常事態みたいだからな。乗ってやるよ」
「先輩!」
こいつも見てくれだけは可愛いんだよな。こういうときの笑顔とかは最高だと思う。
「先輩って何だかんだでチョロ……、こほん、優しいから大好きです!」
「死ぬがよい!」
見てくれだけだが。
「ポリニモマケズのシートの座り心地はどうですか」
「ネーミングネタしつこいなァ。……まあ、具合はそれほど悪くはない。でも俺ケンカとかしたことないんだけ
ど大丈夫か? というかこんな台詞系の出来損ないみたいな形式で戦闘シーン書けるの?」
「ばっちぐーです! いざとなればネクソンク○ガネみたいに歌って誤魔化しますから!」
「この女……」
つづく?
まだ容量余裕ありそうだし
>>467 ネーミングは拾い物で俺がやったんじゃないけどねw
まあそうなんだけど、所詮埋めネタだし
独立させてもなーと
まだいけるか?
先輩……………………本名不明。今日も今日とて半眼のまま後輩の奇行に振り回される男子高校生。ツッコミ気質。
後輩……………………本名不明。恋する乙女。何でもあり。高校の地下に基地を構え、ポリモマッピオンを製造した。
ポリモマッピオン……17m級スーパーロボット。南米のある部族の宗教における最高神が持つとされた聖剣を脊椎とする人造の神であるとも。
翼ある蛇機関…………ケツァルコアトル神復活によって世界を創り変えようと企む悪の魔術結社。
ナワトル兵……………翼ある蛇機関の尖兵。ワニに似た巨大なメカ。空を飛ぶ。
Σ(゚Д゚ )4スレ目が人いないから3スレ目を確認しにきたらポリモマッピオンだとぉ−−−−ぅ!?
>>469 埋めネタとはいえ
ここまで細かく色々書いてるんだったら
まとめwikiに載せても良いのではないでしょうかw
あと15KBほどか
色々考えてチョイス
リベジオン
OP 「REASON」小坂由美子(テッカマンブレード OP)
ED 「尽きる」初音映莉子(ドラッグオンドラグーン テーマ)
まあ、まんまなイメージですね、他にもイメージソングは結構あるんですが、まあ、それはその内にでも
尽きるは鬱なシーン書くときにかける気満々です
雰囲気だけなので歌詞の意味までは考えないでくださいw
あとCR執筆再開しました、遅くなった分頑張るつもりです
シスターズは考えた事なかったのでなんだろう
作品にむしろ合ってないような曲が一番あってる気がする
凄い格好良い曲に全然あってないようなOP絵つけたりとか
>>474 おお! 自分はてっきり『永遠の孤独』がくるかと思っていましたw
>作品にむしろ合ってないような曲
所謂OP詐欺って奴ですね! ……うん、違な、うん
さて、埋めるための燃料投下ー。
皆さんプラモって作ります?
>>475 OPに勢いが欲しくて迷ったあげく
勢いのある方にw
こっそりこっちに登場
アルケーガンダムを青く塗って、ガンダムMK.Xもどきにしようかなと思ってたりなんだり
最近は色々とメドイさんなもので、完成品ばっか買ってます
ロボット魂とか
こっちは主にコードギアスモノばかりですが
>>475 プラモより戦隊ロボとかTFとかの元々完成品なのを買ってきて弄る方が好きなヘタレでスイマセン
いっぱい貯まってるのですが、色々忙しくてなかなか手がつけられませんね〜
いざ箱を見ると手が動かないというかw
プラモはMG ∀ガンダム以降は触ってないかな
てか富野アニメ新作が来たみたいな情報が来て、早くガセかマジか知りたい(´・ω・`)
他スレで見ましたねw>富野監督の新ガンダム
何やら農業とかごにょごにょ
そういや
「プラモが実体化する」
って設定のロボもアリっちゃあアリだよな
>>478 ブンドドする時、少し気が楽……でもありませんな、完成品って高いし……。
シンケンオー欲しいけどお金ナッスィング。
今度ROBOT魂でアーバレストが出るのでドキワクです。リボのレーバテイン、モデロックのM9、ファルケと並べたくてウズウズする。
自分は最近気まぐれで買った1/100デスティニーガンダムを作りましたねー
やっぱり背負い物無いほうがカッコイイよこやつ……。
デュアルフェイスにHGデスティニーにエクシアR2等々々、罪プラが山脈を築きつつありますが、さらにそこにMGエクシアが増えますか、このやろー。
デュアルフェイスはもうパチでささっと作っちゃおうかしら。
御禿様の新しいガンダム……30周年イベントで発表があったりするんでしょうか。話によると35周年には何かするらしいですが。
それにしても、地元なのに行けないってどういう事なの……。はいそうですね、金欠ですね。
test
>>465氏と同様、俺も埋めネタ考えてみたんで投下してみます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ギリシャ神話の最高神三兄弟は、それぞれ天界・冥界・海洋を治めているそうだ。
現実に存在している海洋が、観念上の存在である天界・冥界と同列に並んでいるのはおかしいと思ってきたが、
ここにいると、なるほど、古代ギリシア人の慧眼ぶりに感心せずにはいられない。
周囲に隙間なく、いや、隙間など押し潰して満ちている、暗く、重く、冷たい、死の媒質を、
高度な素材技術と構造設計で何とか押し退け、どうにか存在場所を確保しているここにいると、
確かに海洋は少なくとも冥界に近い場所なのだと、全身の皮膚から骨の髄まで浸み透るように感じさせられずにはいられない。
アレンは「ヤドカリ」に乗って例によって例の如く警戒任務に就いていた。
いつの間にやら皆がそう呼んでいたため、最初に誰がつけたのか知らないが、
この深海用アトモスに対して「ヤドカリ」とは、実にいい仇名だ。
円筒形に近いバラスト、作業用アーム、接触圧式操行装置「つっかい棒」、それに目玉のようなライトを備えた姿は、
まったくもって機械仕掛けのヤドカリの親玉そのものだ。
まあ、せっかくついている強力なライトだが、少なくとも今のところはこの海中プラント以外は何も照らし出していない。
パッシブソナーも何も捉えていない。
そんなことしなくたって十二分にわかってるっていうのに、
わざわざ高度な技術をふんだんに使った文明の利器(無駄に凝ったオモチャともいう)を使って
「お前は孤独だ」なんてわからせてくれるとは、「ヤドカリ」をつくった連中は実に懇切丁寧な奴らだ。
暇で仕方ないんだろう。
アレンはまた移動する。
面白いもので、最初にこの任務についた頃は、大量の爆弾を積み込んで歩きまわるのになんて
慣れることはないだろうと思っていたが、今ではまるで気にならない。
何言ったってどうしようもないと思ってるからか?
すると存外、この出来の悪い冗談みたいな任務にも慣れてしまう日が来るのかも知れない。
軍事というファクターから見ると、衛星プラントやこの海中プラントみたいな、
建造が困難でかつ価値の高い施設を相手から奪い取る場合、単にその存在場所を制圧するだけでは駄目である。
何故ならば、相手が敵の手に渡るくらいならと自ら破壊してしまうことを考慮しなくてはならないからで、
それならどうするのかというと、つまりはそんな時間を与えずにとっとと施設の各位置から相手を駆逐しなければならない。
これが陸上にある施設であるならば、装甲パワードスーツに身を固めた歩兵の出番なのだが、
宇宙空間やら海中やらにある施設の場合はそうはいかない。
人間がそう簡単に行ける場所ではないからだ。
そしてこの、制圧目標の施設が人間がそう簡単に行けない場所にあるというところがポイントで、
じゃそもそも、人間が行けない場所でどうやってそんな施設をつくったのかというと、ロボットを使ったわけである。
つまり言い換えれば、そういう施設にはその手の施設をつくるのに使うロボットなら入り込むことが出来る。
なら、装甲パワードスーツではなくて、そういうロボットを戦闘用に仕立て直したものに人間を詰めて送り込めばいい。
そして反対にそんな施設を持ってる側から見れば、とっとと駆逐されてしまってはかなわないから、
防御戦闘やら、やっぱりもう守り切れないとなったら早いとこ各部を破壊するやらのために、
自分達もそういったロボットを配備しよう、と、そういうことになる。
それが「極限環境中施設制圧用ロボット」、アトモスが生まれた理由だ。
そしてアレンが爆弾を積み込んだ「ヤドカリ」で警戒に歩き回っているのもそういったわけである。
実に素晴らしい発想だ、もし思いついた奴に出会ったら、その発想に免じて、殴るのは顔の形が変わったところでやめてやろう。
アレンは移動を続ける。
それにしても、重要な(それこそものと見方によっては人類規模で重要な)施設を
他人のものになるくらいなら破壊してしまえというところには、
てめえが安穏に暮すことより他人が幸せになるのを邪魔する方が大事だという、
人類がずっと持っているジコギセエセエシンがここでも遺憾なく発揮されていて、実に頭が下がる。
ありがたやありがたや。なんまんだぶなんまんだぶ。
しかし、そんなコーショーなセーシンの持ち主であるならば、てめえ達で破壊作業までやってくれりゃいいものを、
こんな卑小にしてチャランポランな人間を捕まえてお前がやれとは、そりゃ怠惰が過ぎるというものではないだろうか。
まあ怠惰だって強欲と妬みと同じく七つの大罪の一つなので、怠惰だけ発揮しないというのは不平等だと思ってるんだろう。
実に博愛精神に満ちた連中だ。俺とあんたらの給料の不平等も是正してくれ。
それにしてもだ、自分以外の誰かのものになるとなったらぶっ壊しちまう気のくせに、海中プラントは随分と大事にされている。
例えば、今アレンの乗った「ヤドカリ」は移動しているわけだが、
これが何というか、ふわーっ、ふわーっという感じで進んでいくのである。
「ヤドカリ」はスクリューを装備していて、推進力は基本的にそれで得るわけであるが、スクリューと舵という組み合わせだと、海中プラントのような極めて入り組んだ場所では、小回りが追い付かずにあっちこっちにぶつかってしまう。
そのため、まあおおざっぱにいえば緩衝装置を仕込んだ動かせる棒である接触圧式操行装置、通称「つっかい棒」を使って、
本体が衝突しないように動くわけである。
例えて言うなら、水中に沈められたジャングルジムの中に、ものをつかめないほど分厚い手袋をはめた人間がいたら、
こんなふうに移動するのだろう、という感じで移動するのだ。
だがしかし、この「つっかい棒」に仕込まれた緩衝装置と、接触部の保護材が、
施設に損傷を与えないよう、やたら柔らかいせいで、どうしてもふわーっ、ふわーっという動作になり、機敏な動きが出来ない。
幸いにして、アレンは実際にそうなったことは無いのだが、敵と遭遇したら、これじゃまずいんじゃなかろうか。
まあもっとも、敵と出くわしたとしても、相手もそう威力のある武装は装備していない。
いろいろ理屈は付けられているが、結局のところはやはりそれも、海中プラントに損傷を与えたくないからである。
どうやら自分達には一思いに殺してもらう権利も無いらしい。
と愚痴ったところで、アレンはその自分の愚痴がそんなに大した意味が無いことに気が付いた。
こんな冥獄の底みたいなところに追い遣られている時点で、
どの道、海の上にいる連中が迎えをよこしてくれなけりゃ同じことなのだ。
そのことに思い至ったとき、アレンの頭に、いつか読んだ日本の短編小説が浮かんできた。
地獄で苦しむ主人公が、天国から垂らされた蜘蛛の糸を伝って天国に行こうとする、という話だ。
俺達も似たようなもんだ。
ただ、蜘蛛の糸を垂らすか否かの決定権を持ってる奴が慈悲深さとは縁遠い、というところが違ってる。
すると糸を垂らすという決断を蜘蛛自身にしてもらうしかない、ということか?
頼むぜ蜘蛛、ほら、俺はヤドカリに乗ってる。同じ節足動物だろう?
はは、いいな、がんばれ節足動物。脊椎動物なんぞ駆逐しちまえ。
そしてアレンは、そんなどうしようもない笑いを浮かべて、冥府の底を這いずり回り続ける。
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これで終わりです。俺のもあんまいじってもらわない方向でw
あと5KBほどか
ハイセンスだなぁ
埋めネタにしとくにはもったいない
深海にはロマンがあるよな。怖いけど。
490 :
>>486:2009/07/19(日) 23:56:01 ID:6qipRhWG
>>489 どもども。
まあ実はむか〜ッし考えて、完全に時期を逃した話の中のロボ設定だけでも人前に出してやろうと思ったのもちょっとあったり。
>深海にはロマンがある
いいよね深海。もうね、人跡未踏の地ってのはスゴくいい。未知への憧憬無くしたら人類は終わりだよなあ。
いいなこういうSFちっくなのも。主人公がプロっぽくて渋い
せっかくなんだったら生き物や謎めいた敵の描写を一つ二つ入れとくと深海っぽさが強調されたかもしんないw
アレンのキャラクターが渋くて、惚れてしまいます
この世の物とは思えない生物とかいますもんね>深海
宇宙といい深海といい、浪漫に危険はつきものですなぁ。いや、危険だから浪漫なのかも
てすと
494 :
>>486:2009/07/21(火) 00:33:33 ID:9RDi+UB3
>>491>>492 >生物
確かに後から振り返ってみるとうまいこと生物入れたかったなあ。やはり好きなので
(接触圧式操行装置の設定は、
両生類の祖先筋の魚類が、骨と筋肉のあるヒレで、河川を植物を押しのけたり、押して間をぬったりして移動していたという仮説に
着想を得てる)。
まあ二時間で書いたらそんなもんか。
あと、一つ手塚先生に怒られそうなボケをしてたり〜
495 :
tueun:2009/07/21(火) 17:56:23 ID:fQm2UPCg
>>494 遅ればせながら読ましていただきました
「ヤドカリ」の武骨なメカニック描写が良いっすな!一度乗ってみたいです
アレンの渋さが「ヤドカリ」を一層魅力的にしてると思います。出来れば次作も読んでみたいなとか思ったり
なかなか埋まらないのでここでネタでも
皆さん自分の書くキャラに、声優さんの声とか想像したりします?
自分はショウイチに平田宏明さん、タウエルンに水橋かおりさんを想像してますね
>>495 タウの声は釘宮さんを想像(アルフォンス的な意味で)していた俺、参上!
でも水橋さんでもイメージピッタリ。
平田さんに至ってはドンピシャァァァァッ!!
声については皆さんそれぞれイメージかあるかもしれませんが、作者の中ではこんなイメージ(敬称略)
一条 遥:佐藤 莉奈
リヒター・ペネトレイター:泰 勇気
リヒト・エンフィールド:緑川 光
ヴァイス・ヘーシェン:広橋 涼
玉藻・ヴァルパイン:伊藤 美紀
まどか・ブラウニング:中原 麻衣
リタ・ベレッタ:大谷 育江
ルガー・ベルグマン:森川 智之
ライディース・グリセンティ:福山 潤
フラガラッハ:諏訪部 順一
フェーレス:斎賀みつき
シュヴァルツ:広橋 涼
レオン:てらそまさき
ムジナ:水橋かおり
虎徹:土師 孝也
トゥグリル:平田宏明
ただやっぱりイメージでしかない上、作者が優柔不断なのでその時々で二転三転しますが。
しかしちょっとステレオタイプ過ぎるかもしれない、このチョイス。
そして何か足りないと思ったら永遠の17歳と速水さんが足りない。
さらにてらそまさんがいるとてつをが欲しくなってしま(リボルクラッシュ!)
規制解けるのが早くて良かった…
>>496 実は自分も釘宮さんでしたが、流石にベタすぎるかなとw
大体自分と同じイメージですね〜玉藻……faのオペ子まんまが再生されるww
俺まったく考えてないから
逆に皆がどう考えてるか知りたいwwww
>>498 自分はCRだと
黒峰君はキレてる演技が良い福山潤
秋常さんは熱血漢で関智一
シャーリーさんは大人な感じで折笠愛ですね
シスターズは
啓介は困ってる大学生でも嵌る福山潤
皆はドタバタな妹キャラで後藤麻衣で
>>497 馬鹿野郎+教官の時点である意味お察し下さいって感じかもしれません。
てか、タウさんもリンクスでしたか。……ひょっとすると戦場で相見えてるかもしれませんねw
>>498 ならば考えてみよう!
黒峰潤也:櫻井 孝宏
秋常譲二:関 智一
シャーリー・時峰:田中 敦子
α5:小山 剛志
α6:坂口 周平