701 :
創る名無しに見る名無し:
畑部「ピンと来て無い様ですねぇ…ホラ、ここにあるクロスボウも…んっ」カチャッ……グルグル
…ビシュッ――――ガィィィン!!
畑部「訓練しなきゃ使えないでしょ?皆でちゃんと訓練しなきゃ…害虫さんなんて、一匹だって殺せやしないんです」
畑&音「お、おぃ今の…見た?」「ホンモンの矢だぞ…」「嘘だろ…」ザワザワ
畑部「長槍だってそうですよ?突けばいいってもんじゃありません」ギラッ
畑&音「刃が…ついてる…」「そんな、今までは刃なんて…」「え、ネタじゃないの…?ねぇ?」ザワザワ
畑部「だから皆さん!!一緒に訓練―――…」
畑&音「ざっけんなあぁぁ!!」「先輩、何ですかコレ!!」「ちゃんと説明しやがれぇええぇぇ!!」ワアアァァ!!
畑部「し、静かにしてくださーい」
畑&音「早くメアド教えろおぉぉぉぉぉ!!」「大体なんだ、害虫ってぇぇぇー!!」「女さん達とどう違うのぉ!?」ワアアァァ!!
畑部「静かにしてくださ…」
畑&音「どうなってんだあああぁ!!」「説明しろおおおぉぉ!!」「訳わかんねェ事言ってんじゃねえええぇ!!」ワアアァァ!!
畑部「チッ…」
新畑(ひ…畑部さんの表情がぁ…)
畑部「……」チラッ
弓部「……」コクッ
新畑(ん…?)
弓部「すぅ…」
弓部「全隊、弓を構ええぇぇーーーッ!!」
畑「長槍、及びクロスボウ隊構えぇーーーッ!!」
ガシャッ……ザッ!!
畑&音「!!!!!!?????」
おー♪
じゃNEEEEEEEE
|ョω・`)支援ダヨ
なんかすごいことに
705 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/26(月) 17:42:01 ID:DKpPtEvI
畑「…………………」ギラァッ…
畑&音「そんな…」「さ、さっきの機械だぞアレ…」「まさか、本物じゃ…ないよな?」ザワザワ…
音「おいおい、冗談は…」
―――…ビイィィィン!!
畑&音「は…?」「え、先輩…何を…」「ち、ちょっと…やめ…」ザワザワ…!!
弓部「…フフ…死にたくないなら、黙ってる事ね?次は当てるわ」
弓「…………………」グググ…
畑部「状況が分かったか?勇敢なる兵士諸君、コレは冗談でも何でもない。我々は本気だ」
畑&音「な…バカな…」「嘘だろオイ…」「狂ってる、狂ってるよ…」ヒソヒソ…
畑部「これから起きるのはハルマゲドン。神と悪魔、文明と非文明、理性と非理性の戦い」
畑部「そして諸君等はその名誉ある戦いに、参加するたけの能力を持った精鋭だ」
畑部「だから結果は見えてる、寸分の疑いも無く…奴等は完膚なきまで敗れ…我々が勝つ…」
畑部「ただしそれは…諸君等一人一人が、自らの役割を放棄する事なく真っ当したらという前提の上で、だ」
畑部「ここでいう役割とは…例えば…槍隊ならば、持ち場に立ち続け…クロスボウと長弓なら撃ち続け…軍楽隊なら演奏を続ける…簡単な話だ、作業自体も極めて簡単」
畑部「これから行う訓練は、これらの作業の反復によって…例え、死の危険があっても同じ効率で同じ作業を行えるか、それだけの事に過ぎないし―――…」
新畑(誰もが…息を呑んでる…)
畑部「ただそれだけの事で、勝利は約束される。諸君等は実に幸運だ…」
新畑(振ってわいたような展開…静かな声によって、一方的に突きつけらていく…否応の無い現実……)
畑部「最小の危険で、最大の勝利への貢献者として、歴史の転換点の最前線に立会い……」
新畑(全てが…まるで夢の様で……)
畑部「一つの世界の終焉を、その両の眼に焼き付ける事が出来るのだから――……」
新畑(私だって信じられない…)
畑部「…………」ジロッ…
新畑(本当に、私達が…本や漫画でしか見たこと無い…あの……)
畑&音「…………………」シーン…
新畑(…戦争を?)
畑部「永遠に語られる戦いだッ!!有史以来続いてきた、我々と害虫共の闘争に終止符が打たれる!!」
畑&音「――――――…ッ!!」ビクゥッ!!
706 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/26(月) 19:04:27 ID:DKpPtEvI
畑部「奴等は己が利によってのみ、結びつけられてる!!矮小な、歪で吹けば飛ぶような団結だ!!だが我々は違う!!」
畑部「高貴なる理念によって、固く結束し!!全員が全員…己の使命に喜びを持って、公共の為、命を捧げられる者達だ!!」
弓部「結束、ねぇ…」クスクス
畑部「幾千年の永きに渡り絶えず世界を理性の光で照らし続けた、文明の尖兵として!!高等生物である人類の守護者として!!豊かなる己の故郷を守った愛郷者として!!」
畑部「この戦いで死んだ者は、死して後も崇められ!!生き残った者は、その絶大なる栄光を身に纏う!!」
新畑(部長さん…)
畑部「諸君、今や害虫共は追い詰められ…狩り立てられ…神の災いを名乗り、最期のを抵抗を試みんとしている!!ならば神の名の元、殲滅してやろうではないか!!」
畑部「例えそれが雌だろうと、幼虫だろうと、老虫だろうと……沈みゆく船から、一匹足りとも生かして帰すな!!」
畑部「元より共存の道など有り得なければ、慈悲も容赦も必要無い!!そう、奴等は何だ!?」
畑&弓「――――害虫だッ!!」
畑部「害虫を踏み潰す事に躊躇はあるか!?」
畑&弓「否ッ!!」
畑部「では、どうする!!何を望む!!?」
畑&弓「殺せッ!!」
畑&音「ひッッッ…………」
新畑「ッ…ぅ…」クラッ
弓部「あら、大丈夫…?」
畑部「聞こえんぞ!?父祖の土地を食い荒らす害虫共を!!?」
新畑「だいじょ…ぶです…」(本当、だ…)
弓部「ま、分かるけどね…」
畑&弓「殺せッ!!殺せッ!!殺せッ!!殺せッ!!殺せッッ!!」ワアァァァァ…
新畑(殺意、圧倒的な…殺意……)
弓部「フフ…凄いわね…」ジュン…
畑&弓「殺せえええええええええええええぇぇぇぇッ!!!」ワアアアアァァァ……!!
新畑(噎せ返るような…全身に突き刺さる様な……)
畑&音「……………………」パクパク
新畑(本当に戦争が、殺し合いが…やって来るんだ…)
弓部(パンツ代えなきゃ…)
707 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/27(火) 03:45:50 ID:jbll+9qH
ごめん、今度から三年生の畑部員とベテランとしてベ畑と表記します。後づけ多くてホントすまん
畑部「ふぅ…」
弓部「ご苦労様、中々の名演説だったわね」
畑部「分かっちゃいましたけど…あの人達に平時で最低でも一年一杯かける軍事教練を、即席で…しかも実戦で使えるまでにさせる…こりゃ大仕事ですね……」
ベ畑「畑部は傾注!!女性は基本的に全員クロスボウ、男性は槍を担当、各集団には必ず三年生が混じり指導する形になります」
ベ畑「それぞれ、男女別、言われた通りの武器を手にして下さい」
畑「私達、これからどうなっちゃうんだろ…」「俺達の槍には刃がついてないぜ…」「見ろよ、先輩達の腰…鉈を…」ザワザワ
新畑(実戦…丸めた矢が飛んできただけでも、あんだけ怖かったのに……)
弓部「大丈夫よ、もしもの時は私達がいるじゃない」
畑部「なるべく使いたくはないですけど…頼りにはしてますよ?鉈だけじゃ弱いですから」
弓部「あ、そっちか…ま、本業が畑仕事なんだから仕方ないけど…最大の敵は、寧ろ背後にいるって訳ね」
新畑(…背後?)
畑部「えぇ、今年は新入部員が多いですし…何たって私達も、教育こそされてきましたが、本当の意味での実戦は皆初めてです」
弓部「私達も初めてだけど…怖い?」
畑部「まさか…あ、新畑さん」
新畑「は、はい!!」
畑部「貴方は今後助手として、基本的に私の傍にいて下さい。クロスボウの練習の時だけは混ぜて貰って…この旨先輩に伝えてきてくださいね?」
新畑「わ、わかりました!!伝えてきます!!」タタッ…
弓部「フフ…アンタにそのケが無いのは知ってるし…随分と買ってるのね、あの娘の事」
畑部「…一人、知ってるんですよ。新畑さんに似た目を持った人を」
弓部「へぇ…もしかしておn」
畑部「男です」キッパリ
弓部「何だ…」
畑部「その人は彼女と同じに…優しいけど、優柔不断で…見た感じだって頼りないです…でも…」
畑部「――…絶対に、何事からも目を逸らさない強さを持った人です」
弓部「……」
708 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/27(火) 17:36:36 ID:jbll+9qH
新畑「伝えてきましたー!!」
畑部「はいっ♪」クスッ
弓部「フフフ…確かに、ね」
新畑「へっ?な、何…ですか?」
畑部「身に染みて分かってるってトコですか」クスクス
新畑「ふぇ…?」
弓部「違いないわ」クスクス
新畑「むっ…ま、またバカにしてるんじゃないでしょうねぇ!!」
畑部「いえいえ。あー、アンサンブル部の皆さん」
音「っ…」ビクッ
畑部「貴方達の役割はもう分かってると思いますけど、演奏による合図、命令の伝達です。なので…」
音「あ、あの」
畑部「はい、なんでしょう?」ニコッ
音「その…何とか…降りれないでしょうか?」
畑部「…はい?」
畑部「おっ、俺も!!別にメアドいらないし…!!」「お、俺だって…!!」「あんなんいらないから…他に楽器出来るヤツを…!!」ザワザワ…
新畑(な、何だろ…この微妙な気持ち……)
畑部「ふむ…そうですね、それも良いかも…」
音「じ、じゃあ――!!」
―――ビタッ…
新畑「ぶ、ぶちょ!?」
畑部「フフ、良いですね。調度良いタイミングです。逃亡兵がどうなるか、初っ端からガツンと先例を作っておくのも手ですし…」
新畑(ッ!!は、背後って…まさか……)
音「っ…ぅぁ…」
畑部「幸い貴方達は部外者、大した思い入れも無い…この機会に、皆さんに…現実を叩き込む手助けをして貰いましょう……」
音「あぁぁぁ…」ジョォォ…
弓部「うわー…これだから男ってのは…ったく、だらしないわねぇ……」
畑&音「きゃあああー!!」「う、うわっ…何やってんだアレ!?」「ひ、人殺しぃぃぃ!」ワアァァ!!
畑部「ホラ、見て下さい。注目が集まってきました…フフフ…見せしめには最高の舞台ですね?」ググ…
音「たっ、助…助けぇ…ひぁぁ…」ドクドク…
709 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/27(火) 19:46:16 ID:jbll+9qH
新畑「ぶ、部長!!やめっ…!!」
弓部「良いのよ、殺しゃしないわ」グイッ…
新畑「でっ、でも首!!首から血がぁ…!!」
弓部「大丈夫。アイツは冷静に、加減を心得てる…信じてやりなさい」
新畑「でも…」
ザワ…ザワ…
畑部「良いですか、皆さん!!この鉈は敵を斬る為にあるのではありません、臆病者の敗北主義者を叩き切る為にあります!!」
畑部「貴方達は勝てるんです!!各人が持てる70%程度の力を実戦で発揮さえしてくれれば良い!!しかし…!!」
畑部「この様に任務を放棄せんとする者を許せば、勝てる戦いも勝てなくなる!!私だって『人間』を殺したくはありません!!」
畑部「しかし、それによって死ななくても良い、無垢の犠牲者が増えるなら!!ほんの少しでも勝利の可能性が揺らぐなら!!」
音「ひっ…ぐぁ…」ドクドク…
畑部「私達は喜んで殺人者の汚名を着ます!!」ドンッ
音「ッ…」バタッ
畑部「一日目です、今日の所はコレだけで許してあげます。分かりますよね?次はありません」
弓部「ね?」
新畑「ほっ…」
畑部「軍規は後程、明確に文書化し提示しますが…」
畑部「一つだけ確実に言える大原則は…今後逃亡、又は戦意の停滞を促すような発言、行動、命令不服従を確認した場合は例外なく処分するという事です」
畑&音「…………………」
新畑(だけど処分って…本気…なのかな…)
畑部「ん?話は終わりですよ、持ち場に戻って下さい♪」
畑&音「は、はいぃぃっ!!」「お、おい!!ぼさっとすんな!!」「は、早く楽器出せ!!楽器!!」ダダダ…
弓部「うふ、鞭が多いわね。強制は余り好きじゃない筈じゃなかったかしらぁ?」
畑部「仕方ありません。状況が状況ですから…ただ恐怖によってのみ従ってる状態は確かに脆いです…」
畑部「後は教育で意識を変えていくしか…」
新畑「よ、よかった…アレは本気じゃなかったんですね…」
畑部「いえ、本気ですよ?今度からはちゃんと殺します」
弓部「当たり前じゃない」
おぅい
710 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/27(火) 20:28:38 ID:jbll+9qH
畑部「殺し合いに参加するんですよ、私達は。どこの国でも軍隊の罰則は、重罰が基本です」
新畑「ッ…!!」
畑部「居眠りで銃殺なんて当然よね」
新畑「だ、だけど…私達は一緒に戦うんですよ!!そんな、本気で、鉈なんかもって…脅かすんですか!?」
畑部「納得できませんか?」
新畑「ひっ…酷いですよ!!やりすぎだと思います…逃げたいって言っただけで、殺すなんて…最低です……」
弓部「アンタねぇ、こっちだって…」
畑部「新畑さん。こういう戦い…古代から続いてきた槍や弓の戦いには一つの傾向があります」
弓部「……」
新畑「い、一緒に戦う仲間を脅かしたり、殺したりする事ですか!?」
畑部「落ち着いて下さい。両軍が衝突してる戦闘の最中は殆ど死者が出ないんですよ」
新畑「へっ…せ、戦闘…なのに?」
畑部「実際の殺し合いでは無いですが、前の害虫さん達との戦闘でもそうだったでしょう?」
畑部「火器の威力だってたかが知れてる上、隊列を組んで戦うから…死者が発生するのは殆ど、敵と接触してる前面で…後ろの方は立ってるだけ」
新畑「そ、そういえば…」
畑部「あらゆる手段を使って…敵に背を向けさせさえ、すれば良いんです。つまり、こうゆう戦いの傾向というのはですね…」
畑部「一度逃げ出したら逃げ出した側の死者は、極端にうなぎ上りになり…逆に逃げ出させた側の死者は極端に、うなぎ下がりになるって事です……」
新畑「あ……」
畑部「伝染するんですよ、感情が。例え一部でも独断で行動したら…密集した隊形を、組んでる兵士達は集団心理で、あっという間に流される」
畑部「背を向け様ものなら、例え後方の兵士達は怯えていなくても…踏みとどまって圧死するより、一緒に逃げ出す方を選ぶ」
畑部「指揮官の建て直しの声や、合図も耳に入らず…軍隊としての機能は崩壊、ただの無防備な標的、人の群れと化すんです」
新畑(あの時の…国際交流部の人達だ…)
畑部「盾や、槍だって前面に向けてる時以外、防御の役には立ちません。飛び道具は当たり放題。しかも敵との距離は最初から近く、追撃する側は簡単に追いつけ」
畑部「逃亡する敵の姿を見て士気は最高潮に、騎兵だって動員してくるでしょう…そうなると最後尾近くの兵士か、騎兵しか逃げられませんし…」
畑部「混乱の中で退却のスピードは落ち、運が悪ければ囲まれ…外周部の兵士は殺され、中央部の兵士は圧死します」
弓部(本当に、気に入ってるのね……たかだか新兵に…ここまで説得する上官だなんて……)
711 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/27(火) 20:49:39 ID:jbll+9qH
新畑(私達は…)
畑部「ましてや敵の全てが機動力のある騎兵で…歩兵主体の軍隊で対決した場合…一旦敗走が始まれば……」
新畑(もし…あの時の戦いが本物なら……)
畑部「新畑さんも…この先がどうなるか…実体験で分かりますよね?」
新畑「……」コクッ
畑部「二度と…あんな失態を犯すわけにはいかないんです…命が掛かってる」
畑部「この戦いに参加する人達だけじゃない…私達の土地に住んでる…皆の命が掛かってるんです……」
新畑「……」
弓部「そうよ?だから畑部は、権限があるのに最低限の人数しか集めなかったの。戦闘集団としてのモラルが低下するのを避けてね」
新畑「……」
畑部「…新畑さんは…十分の一刑なるモノを知ってますか?」
新畑「いえ…」
畑部「命令不服従や、逃亡、重大な逸脱行為を犯した部隊は…兵士の中から無作為に、十人に一人の割合で当たるくじを引き……」
畑部「当たった兵士は、他の九人の兵士から石や棍棒で、撲殺されるという古のローマ軍の罰則です」
弓部「うっわ…エグいわねぇ…」
畑部「戦友を殺しても、くじを免れた兵士への罰則は続きます。小麦では無く馬の糧食である、大麦を食わされ…テントで寝る事も許されない」
畑部「古代ローマの敵にも…害虫さん達は存在しました。ヌミディアに、パルティア、フン…」
畑部「あの、プロ意識の高いローマ軍ですら、こうした並外れた厳罰主義でモラルを維持せざる負えなかったんです」
新畑「……」
畑部「これでも私達のやり方をやり過ぎと言えますか…?」
新畑「…戦争…なんですね、これが…」
畑部「えぇ」
新畑「……」
何このおしっこ漏らしそうなシリアス展開
ジョボボボボボ
713 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/28(水) 00:18:11 ID:586+gM1k
遊(アルグン…入り口にまで来たな…)チラッ
女「〜〜〜〜〜♪」
遊(まだ入ってこない…)
ベ「良い音色だ…」
遊(それだけゲルの連中の意識が集中してるのか…?)
遊(まだ…)
ア「……」バサッ
遊「……!」
ベ「ん?」(表の見張りが入ってきた…)
女「……」コトッ
ベ「おい、どうした?ハハ…まさか曲を忘れたんじゃないだろうな?」
女「いや……」
―――――ヒュッ…ビタッ!!
敵遊「!!!?!?」
ベ「……」
女「……」ググ…
遊「へへ……おっと、テメェ等も動くなよ?」チャッ
敵遊「き、きさッ…!!」「なっ、ななな何を…!?」「し、正気か…!?」
女「黙れ。ベルケは私の間合いにいる、奥の方にいる連中も…分かるな?」
敵遊「くっ…!!」
遊「動いたらここにいる7人の全員の首が飛ぶぜ」
敵遊「でっ、出会え!!出会えぇぇぇェェ!!外にいる連中は何を!!」」
女「静かにしてろ…」
敵遊「ベルケ殿ッ!!敵襲―――がはッ…」ドサッ
ア「……」
敵遊「て、敵襲…だと…」「此処の事じゃないのか?」「ま、まさか…」ザワザワ…
女「ったく、聞こえんだろうが――…」
女「破滅の嘶きがな…」ドドドドドドド…
714 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/28(水) 18:41:23 ID:586+gM1k
畑部「戦争です…」
新畑「……」
畑部「戦争…」
弓部「……」
畑部「私達は……」
畑部「私達はこれから…敵を、殺さなければ行けない。新畑さん、貴方は仲間を殺したりなんて言いますが……」
畑部「害虫さん達なら、何も感じずに殺せるんですか?」
新畑「っ…」
畑部「今まで生きてきたであろう、十数年を…この先生きていくであろう、十数年を…貴方は……」
畑部「何も感じずに、奪えるんですか?」
弓部「ち、ちょっと…」
新畑(そうだ…)
畑部「どうなんですか?殺すんですよ?害虫さんとはいえ…私達は殺すんです、命を絶つんです…」
新畑(どの道殺すんだ…名前も知らない、誰かを…)
弓部「ほ、他に聞こええたら……」キョロキョロ…
新畑(…全て…敵っていう理由…ただそれだけで―――…)
畑部「嫌ですか?」
新畑「嫌…です…」
畑部「そう、当然です。当然嫌…奴等を同族扱いするのは不本意ですが…それが当然なんです」
新畑「部長さん…」
弓部(畑部…)
畑部「本来人間には…他の高等生物と同じく、種の保存の為に、同族殺しを抑制する本能がある筈なんですから」
畑部「だけど槍や、弓や火器…一撃で敵を殺せる様な道具の発達は…人の抑制本能の発達が付いていけるスピードではなかった」
弓部(アンタ、自分が…)
畑部「それらの道具は必然的に…その本来の動物としての抑制本能を麻痺させ…人に加減を無くさせる……」
畑部「そこで社会的抑制が生まれた。私達は小さい頃からずっと…人を殺しちゃいけないと教わってきましたよね?」
新畑「……」コクッ
弓部(…何を話しているか分かってるの?)
いますかい
今北支援
見ています
717 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/28(水) 20:42:05 ID:586+gM1k
畑部「だから…本能+社会的抑制の二重のプロテクトがかかってるから、私達は……」
新畑(はっ……)
『人間なぞ獣と大して変わらん』
畑部「頭では分かっていても…そうするしか無いと知っていても――…」
『逃げた敵は傷を癒し…必ず再び牙を剥く……』
畑部「敵をそう簡単には殺せない…嫌なのは当然、なんですよ…」
『我々は‘その事'を知っている…身をもって…嫌という程にな…』
畑部「でもこれは、自然界で他に類を見ない…もっとも大規模な同族殺し……」
『だがな、この違いは大きい…この違いがあるから…』
畑部「所謂、戦争において大きな障害になります」
『人は人を徹底的に殺す』
畑部「かつて人口増加と、それによる圧力で慢性的な食糧不足がおきやすい農耕社会において…騎士や、武士等の戦士階級が君臨し…」
畑部「政治的な主導権を握りっていたのはこの為です」
新畑(私達は、知恵を…知ってしまったから…)
畑部「独特の死生観と美学を持ち…蓄積された富を背景に…殺し合いのみを生業に生きる者……」
新畑(豊かさを持ってしまったから…)
畑部「彼等が支配する社会では、家父長制が主流で…無意識的に女性へ母性への迫害や、人口調整の為の女児の死亡率引き上げ等を招きました」
弓部「……」
畑部「…けれども、戦争は基本的に彼等に任せてさえいれば良かった」
畑部「戦士階級が存在しなくなった今…文明が進歩し、同族殺しへの社会的抑制は益々強くなった一方……」
畑部「戦争は、万人のモノになりました」
安心したw
718 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/28(水) 21:56:06 ID:586+gM1k
畑部「戦争を、普通の善良な市民が担う様になった以上…いかにして彼等を、戦場で敵に対してのみ殺しのプロテクトを外させるか…」
畑部「グロテスクな写真を見せるなど、様々な方法が試みがなされましたが…それでも……」
新畑「……」
畑部「例えば、コレは南北戦争のケースですが…ある戦場で回収された銃の内半分が装填中のままで、その殆どが複数発以上装填してあったといいます」
畑部「中には二十四発もの弾丸を装填してる銃もあったとか。こんなモノ本当に撃ってたら自分がミンチです……この結果の意味する所が分かりますか?」
新畑「撃て…なかった…?」
畑部「はい。黒目の見える距離で敵と撃ちあわなければならなかった、当時の相当数の兵士達は……」
畑部「敵を目の前にして発砲出来ず、空しく装填作業を繰り返してたという事です……」
新畑「……」
畑部「同様の記録は枚挙に暇がありません。火器が発達して交戦距離が伸びても明後日の方向に、向かってに撃ってただとか…」
畑部「殆ど訓練期間も無しに動員されざる負えなかったフランス革命期や、ロシア革命内戦期の兵士達…」
畑部「一般社会で培われた健全な心理的障壁が、大きく働きすぎる彼等に至っては……」
弓部「有名な話ね。背後に督戦隊を付けられ…殺さなければ、味方に殺される。そんな状況下でようやく戦えた…今の誰かさん達にそっくりじゃない?」
新畑「私達…」
畑部「正にそうです。彼等の勝利は決して愛国心や、理想に燃えて〜なんて単純な結果だけがもたらした物ではありません」
畑部「ましてや、私達の武器はクロスボウ等の飛び道具が少ない…槍等の近接武器が主体…同じ様に近接武器を主装備に使っていた戦士階級が…」
畑部「独自の死生観や美学を形成してまで、回避しようとしていたストレス…恐らく現代の私達にとって生半可なモノじゃないでしょう……」
新畑「……」
畑部「近年、ようやくゲーム感覚で敵を殺せるような訓練方法が確立され…兵士の発砲率は先にあげた南北戦争の頃よりもぐんぐんと上がって来ています…」
畑部「弓道部さん達は、実際三年間に渡ってその訓練方法に基づき訓練されてきた来た兵士…彼女達なら、戦える…」
弓部「えぇ、殺人への根強い抵抗感を超越できる…最新の心理学と条件反射を使った反復的な訓練よ…少し、時間はかかるけどね…」
畑部「だけど…そんな彼女達すら、実際に殺しあった後正常でいられるのか…一度外した殺しのプロテクトは、再び完全に戻す事ができるのか…」
弓部「っ…」
畑部「PTSD等の問題は今も絶えず…帰還兵問題は何時だって戦争当事国を悩ませでいるんです……」
弓部「……」
畑部「本当に人が人を殺す事に…躊躇いを無くさせるなんて…今の訓練方法を持ってしても…きっと……」
畑部「新畑さん…」
畑部「どう足掻こうが…殺しは私達を変える…どう取り繕おうが、拭いきれない痕になる……」
719 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/29(木) 01:15:02 ID:axeWZdRS
畑部「けれども…これから私達が戦う連中は、違う…確かにヤツ等は生物学的には紛れも無く人間……」
新畑「……」
畑部「しかし一人一人が…完全な殺人マシーンとして機能する人間です」
畑部「彼等の社会には貧しさ故、他人の生産に依存する戦士階級等いない…生まれた時から死は、これ以上無い程身近で……」
畑部「好戦的な神話、伝承が発展し…大胆さや武勇が至上のものとして、骨の髄まで社会の構成員全体に浸透している…」
新畑(女さんも…)
―――ドドドドドドド…ヒヒヒィィィィィン!!
敵遊「うわあああぁぁ…!?」「かっ、囲まれてるぞォ!!」「は、早く馬に…っぐあぁァ!!」ワアアァァァ!!
ベ「……」
敵遊「はっ、謀ったな貴様…!!我等を謀りおったな…!!」
女「ベルケを頼む、腰のモノは外してあるから丁重に扱えよ」
遊「ハッ」
女「外が少し心配だな…」スタスタ…
敵遊「女あぁぁ!!答えろッ!!貴様、最ッ初からこのつもりでええぇッ―――…!!」ガタッ
遊「動くな!!」ググ…!!
女「もう良い」
敵遊「な…」
畑部「生活の為の狩猟、乗馬の技術は…そのまま殺しの技術に直結し…一人前になるという事は、一人前の戦士になるという事に寸分違わない…」
新畑(女さんも…そう、なんだよね…それも…リーダーなんだ……)
畑部「彼等は『敵』と見なしたら最期…」
新畑(けど、あの時見た…女さんは……)
畑部「それが顔見知りだろうが」
新畑(確かに怖かったけど……)
『どうして解って…えぐっ…くれんのだ……』
畑部「名前も知らない人間だろうが…」
新畑(けど…)
『うえええぇぇぇん……』
畑部「それこそ何の感情も、抱くこと無く―――…」
女「殺せ」
720 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 22:03:50 ID:TFafHYkR
やっと解除きたあああああぁぁぁ!!
誰かいますかー!?
いるかなー
722 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 22:12:45 ID:t6dMaPh+
いるぜ!てか規制だったのか!
つまりこれから
>>1000までの怒涛の投下が始まるわけですね、わかります
支援( ^ω^)
723 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 01:48:12 ID:plBM126F
敵遊「」ドサァ…
女「ひー、ふー、みー……うむ、八人か…目算通りだな」
敵遊「くッ、糞おおおおぉぉぉ!!」「ぶっ殺せええええぇ!!」「うおおおおぉぉォ!!」ダダッ
女「諸君。万が一にもあっちがやられちゃ仕舞だ、とっとと片付けるぞ」
畑部「だから…この鉈は…」
畑部「私達の敵が、そういう連中で…私達の誰もが、殺しを未経験な以上……絶対に外せないモノ」ギラッ…
畑部「かくゆう私達の背中も…これから弓道部さん達の矢尻が常に捕える様、命ずるつもりです…一歩も退け無いのは私達とて同じ」
新畑「!!」
畑部「こうやって…互いが互いを縛り、監督する……人は…責任を持って、誰かを監督する立場に付けば、無意識的にその地位に合った行動を取れる」
畑部「看守は看守らしく、囚人は囚人らしく…ソレは逃亡を防ぐ為だけにあるんじゃない……」
弓部「……」
畑部「どこまでも冷酷になるため…責任の所在を一手に引き受けるため……」
新畑(責任の…所在…)
畑部「上官に強制され、命じられた…父祖の土地を守る為に戦った……これ以上の理由が、大義名分が果たして存在しえるでしょうか?」
新畑(畑部さんは―――…)
畑部「これだけは覚えておいて下さい、新畑さん」
新畑「…はい」
畑部「私達は私達全体で一つの殺人マシーン…」
新畑「……」
新畑「例え、何がどうなろうと…」
畑部「貴方達を決して、害虫共の様な人殺しにはさせません」
>>722すまんww色々あって殆どためれて無いwww
724 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 01:59:26 ID:plBM126F
敵遊「ひゅッー…ひゅッー…」
女「…おい、ソイツ」グサッ
遊「ん?」
女「ソイツもまだ息がある、楽にしてやれ」
遊「おいおい…しぶてぇヤローだな、頭割れてるってのに…」
女「アバカ、首と胴が離れるまでは油断は無しだ」
遊「分かってまさァ」ザクッ…
ベ子「……ぃ」ブルブル
ク「……」ギュッ
遊「アタマンッ!!ご無事ですか!?」
女「あぁ、カサルか。入ってきても大丈夫だぞ、調度終わったところだ…そっちの方は?」
遊「掃討段階に入っています。確認はまだですが、損害はほぼ皆無かと」バサッ
女「フッ…確かに怒声も下火だな、杞憂だったか」フキフキ
遊「……」
ベ「……」
遊「アタマン、私は」
女「良い。見事な手際だった、タイミングも完璧だ」
遊「ハッ」
女「だから、しばらく…」
遊「分かりました。全員出るぞ」
ベ子「…ぅ…ぁ」ブルブル
ク「手を繋いで…しっかり…」
遊「何をしてる。そこの女とガキも、とっとと――」ズイッ
ベ子「うッ、うわああああぁぁぁあ!!ちっ、ちち父上のて、敵めぇぇぇぇっ!!」ダッ!!
畑部「今までの話、聞かされた所で…納得は出来ないでしょう……」
新畑「……」
畑部「分かってます、何もかもが…余りに急すぎる……」
畑部「何故私が?何故俺が…?生まれ育った土地を……あるいは、大切な人を守るため?」
畑部「害虫さんを良く知る私ですら…どんなに理由を探しても、どんなに頭では理解できても………」
畑部「選択の余地等ハナから無いものが…命を掛けるに値する事、として果たして実感が持てるか…」
725 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 03:17:35 ID:plBM126F
畑部「ましてや…今の今まで機密保持の為、敢えて何も知らされる事の無かった皆さんが……」
畑部「どれ程の驚愕と困惑を持って、この事態を迎えているかなんて…正直、想像すら付きません…」
弓部「……」
畑部「だけど…」
新畑(あぁ…)
畑部「歯車は、動き足したんですよ」
新畑(やっぱり…怖いんだ、畑部さんも)
畑部「もう、走りきるしかないんです。何が、何でも…」
新畑(それも、多分…ずっうと前から……)
畑部「走れない者がいれば……私は、私の培ってきた信頼や、絆、青春…全てを血の海に投げ捨てでも…走らせるまで……」
新畑(私達と同じ様に…不安に怯えて……)
畑部「走りきれない者がいれば…この鉈で、斬り捨てるまで」
新畑(私達と同じ様に、平和を望んでて…)
畑部「そうやって走るしか…」ブルッ…
新畑(それでも、絶対に―――)
畑部「それしか…っ」
新畑(部長さん、なんだ)
遊「何だァ?」
ベ子「お、おおおおお前等なんてッ…!!父上が…もがっ、んんん!?」
ク「止めなさい」
遊「おっ…」
ク「大丈夫だから…ね?ホラ、外に」
遊「お、おい…見たか?」「あぁ、暗くて分からなかったが…こうして見ると…」「だがベルケの女だぜ?手を出す訳にゃ…」ザワザワ
ベ子「んんーー!!」ジタバタ
ベ「…ッ」ギリッ…
女「……」
遊「アタマン、血は流させません故――…」
女「他のを使え、指一本とて触れるな」
遊「ハッ…」「ほれ見ろ…しゃあねぇ、他を当たろうぜ」「けっ…もう粗方、姦っちまってるだろうよ」ゾロゾロ…
ベ子「んんんーーー!!」ズルズル
726 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 03:49:40 ID:plBM126F
畑部「…ごめん、なさい」
畑部「まだ新入生の畑部さんに…こんな…頼りない先輩ですね」ニコッ
新畑「わ、私の方こそ…ごめんなさい…部長さんの事も考えずに……最低、なんて…っ」
畑部「良いんですよ。きっと…そう言ってもらいたかったんですから」
新畑「……」グスッ
畑部「それに…恨んでくれても。分かってるとは思いますが、選択権が無いのは新畑さんだって例外じゃありません」
新畑「た、確かに納得は…出来ないです…」
畑部「えぇ」
新畑「けど…」
畑部「けど?」
弓部「……その位にしときなさい、畑部」
畑部「そう…ですね…えへ…調子に乗っちゃいました」
新畑「そ、そんな…」
弓部「ったく…とにかく懺悔はコレで全部済んだのね?」
畑部「いーえ」
弓部「…は?」
畑部「しょせん言い訳ですよ、言い訳…フフフ、懺悔なんて大層なモンじゃありませんってば」
弓部「……」
畑部「もぅ…だから弓部さんまで、心配してくれなくて結構って言ってるんです。柄じゃないですよ?」
弓部「そ、そっちが柄に無い事するからでしょうが…」
畑部「まぁまぁ…私は最高指揮官として、貴方達に思う存分戦ってもらう様にするだけですので。愚痴や言い訳はこれで最期…」
弓部「当然よ…そうして貰わないと困るわ…」
畑部「えぇ!!計画は全部立ててあるし、下準備も今日出来ました!!明日からはいよいよ、本格的な実行の段階です!!」
新畑「まだ下準備だったんだ…」
弓部「ま、アンタの事だし…指揮権譲渡を要求してきた時点で、予想は付いてたけど…」
弓部「その様子じゃ、もうとっくに一から十まで決まってる様ね?」ニヤッ
畑部「そのとーり!!今後も口は一切出させませんし、手だって一切空けさせません!!部下は黙って付いて来い!!状況を身体に刻み付こんでやりますっ!!」
新畑「ひぃぃ…!!」
弓部「フフ、頼もしいわ。上官はやっぱりこうでなくっちゃね」
畑部「ハートマンとよんでください!!」
727 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 21:01:35 ID:plBM126F
―――シーン…
女「…何も、言わないのか」
ベ「……」
女「……」
ベ「もう…」
ベ「…もう我慢しなくても、良いんじゃないのか?」
女「!!だっ、だだ大丈夫だ…!!耐えて…見せる…」
ベ「ハハ、そうか」ニコッ
女「うっ…」
ベ「……」
女「…よ、ようやく…話したかと思えば」
女「お前の手にかかっちゃ…形無しだ…な…フフ……」ゴシゴシ
ベ「いじめちゃ悪いと思ってな、優しい配慮だろう?」
女「こ、このバカ…お前が強すぎるだけだ…」
ベ「……」
女「お前が、強すぎるから…っ」プルプル
ベ「美しくなったな」
女「え…は?」
ベ「しばらく見ないうちに、見違える程美しくなった」
女「な、何を…」
ベ「お前にも…やっと大切な人が出来たんだな」
女「……っ///」カァァ
男「へくしッ!!」
男「あー…やっぱ屋上は寒ぃな」
男(ここからなら…来ても直ぐに見つけられると思ったんだけどな…)
男「……」
男(何やってんだよ…女さん…)
728 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 21:20:40 ID:plBM126F
ベ「ハハハ、そうか。図星みたいだな」
女「う、あぅ…///」
ベ「にしてもあの女がなァ…で、相手は誰なんだ?」
女「ちっ、ちち違ッ!!勝手に納得するなっ!!まだ何も言って無いぞ!?」
ベ「よせよ、何年来の付き合いだと思ってんだ?ハッキリ、顔に書いてんぜ?」
女「うぅぅ〜っ…///」
ベ「いいから早く言えよ、ソレくらい良いだろ?」
女「ぜ、絶対…からかうなよ?」
ベ「もちろん」
女「はっ、初めて…好き、になった…///」
ベ「片思いか?」
女「……///」コクッ…
ベ「なら…何故奪わない?お前なら簡単だろうに」
女「いや彼は、だな…その…」
ベ「あ、あぁ…すまん…確かにこの情勢じゃな…ただでさえ、お前はこーゆーのからっきしだろうし」ポリポリ
女「違う、そうじゃなくて…」
ベ「ん?まさか…同族か?俺も知ってる様なヤツか?」
女「ち、違う…」
ベ「おいおい…もったいぶらないで教えろよ、未だに態度を表明していない連中なんざ……」
女「違うんだ、彼は…!!」
ベ「あぁ」
女「男は…この世界の人間じゃない」
ベ「……」
女「……」
ベ「………………嘘、だろ?」
女「本当だ」
ベ「お、驚ろいたな…」
見てたら支援くれー
_・)チラ |彡サッ!
730 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 22:41:14 ID:plBM126F
ベ「お前が、恋ってだけでも充分驚きなのに……」
女「……///」
ベ「よりによって、虫ケr」
女「男は虫ケラじゃないッッ!!」
ベ「っ…とと」
女「た、確かに男は、虫ケラ共と一緒に暮らしてはいるが!!強くて、優しくて、格好良くて…っ!!」
ベ「あ、あぁ」
女「その上、すっごく強いんだぞ!!」
ベ「強い二回言ってるぞ、お前」
女「私にだってそうだ!!全ッ然怯まないどころか…何時もニコニコ笑ってくれて!!何時も助けくれて!!」
ベ「どぅどぅ」
女「弓だって上手いんだからな!?お前にも見せてやりたかった位だ!!演習で男が、バッタバッタと虫ケラ共を射ち倒す勇姿ッ!!」
ベ「……」ニヤニヤ
女「だからアイツは…!!ただ、少し環境に手違いがあっただけで!!間違っても虫ケラなんかと―――――…なっ、何がおかしい!!?」
ベ「あ、いや…本当にベタ惚れなんだなァ、と」ニヤニヤ
女「くッ…///」
ベ「強くて、優しくて、格好良くて〜か。女アタマンも意外と乙女チックというか、何と言うか…」ニヤニヤ
女「う、うぅ…だ、だから…貴様に話すのは嫌なんだ…からかうなと言ったのに…」
ベ「んー?からかってるつもりは無いんだが」ニヤニヤ
女「嘘付け…だ、大体…私はホントのこと話しただけではないか……」
ベ「うんうん」ニヤニヤ
女「それなのに、お前は何時も何時も…からかいおって…」
ベ「フフ、そうだな…お前は…ガキの頃から、自分の好きな事となるとすぐムキになる」
女「悪かったな…」
ベ「なぁに、慣れっこってモンだ」
女「どうせ愚か者だってか…」ムスッ
ベ「あー、むくれるな、むくれるな。言えた事じゃないのは互い様だ、分かってる」
女「ふん…」プイッ
ベ「あー…」
731 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 04:39:07 ID:9CdY1vSV
しししえええんんん
話が微妙にわからなくなってきた……
732 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 15:37:10 ID:2dfCJym8
>>731すまん、自分でも分かりにくいと思うwwごめんねwww
草原
女、男と帰ったその日に、マジャーニ族の大ハーンの軍勢への合流の報と部族成員の大量離脱に遭遇
↓
以前より躊躇ってた計画を実行する事を決意、部下を率い早朝に出立
↓
近隣の部族長が大ハーンの元に向かってる隙に、その長男である親友ベルケに交渉を呼びかける
↓
失敗したため、やむなく奇襲
↓
ベルケ一家捕虜←今ここ
学校
畑部、倉庫より武器を取り出す
↓
他の部活を巻きこみ畑部を中心に、秘密裏に少数での戦時体制に移行←今ここ
男、放課後になっても女がいなくて心配中←今ここ
733 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 16:07:37 ID:2dfCJym8
ベ「……」
女「……」ムスッ
ベ「べー」
女「っく…」
ベ「ばぁー」
女「ぷっ…」
ベ「んげぇー」
女「くっ…あはッ!!あはは!!き、貴様というヤツは…!!こんな時にまで…はははははッ!!」
ベ「こんなんでウケるお前も大概けどな、赤ん坊じゃあるまいふぃぃ〜〜」ベー
女「や、やめろッ!!この…ば、あはははは!!く、苦しッ!!あはははははッ!!」
ベ「ぶッ、ハマりすぎだろ!!ハハッ、こ、こっちまで…!!」
女「だ、だって…貴様のマヌケ面がぁ〜!!あははははは!!腹が!!」
ベ「お、おま…ハハ…に言われたくない!!ハハハ!!」
女「ははははは!!やぁーい、マヌケ面ぁー!!」
ベ「る、るせぇー!!ハハハハハ!!」
女「はははははは!!はは…!!」
ベ「アハハハハハハ!!ハハハ…!!」
女「はは…は…ば、ばぁーか」ゼェゼェ
べ「ハハハ…お、お前もな…ハハ…」ゼェゼェ
女「ははっ、あははは…」
ベ「ハハハハハ…」
女「はっ…ぁ」サッ
ベ「見せてくれ」ガシッ…
女「…ぅ」
ベ「泣いてる所を、見せてくれ」
女「わ、私は…泣かないって決め…」
ベ「最期に」
女「…っ」
ベ「最期に、どうしても見たいんだ。頼む」
734 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 16:35:37 ID:2dfCJym8
女「ふ…ぁ…」プルプル
ベ「……」
女「うぁ…っ」ジワッ
ベ「……」
女「あ、ぁ…うあぁぁ…ああぁぁぁぁぁ…」ボロボロ
ベ「良かった、泣き虫も健在だな」
女「だ、だから…うぇっ…きさ…が強……」ボロボロ
ベ「ハハ、何言ってるか分かんねェよ」
女「ふ、ぅぁ…あぁぅ…ば、ばかあぁ…ぁぁぁ…」ボロボロ
ベ「……」
女「ばかあああぁぁ……!!」
遊「アタマン!!」
女「っ…な、なん…だ」
遊「準備が完了しました、略奪品はすべて携行。直ぐにでも執行出来ます」
女「……」
ベ「……」
遊「アタマン?」
ベ「クランが付いてる…未練を残すだけだ……」
女「…………分かった」
ベ「……」
女「殺れ」
遊「ハッ!!」
ベ「……」
敵遊「せ、せめて!!せめて礼を持って殺せッ!!俺はカル―――…ぐはぁ!!」ドサッ
遊「時間が無いぞ、クラン殿とテルムチ殿をお並べしろ。他は手早く済ませるんだ」
ベ子「うぅっ…は、母上ぇ…母上ぇ…」
ク「お願いします、目隠しを外してやってください」
遊「し、しかし…」
ク「お願いします」
遊「分かりました…」
735 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 17:26:40 ID:2dfCJym8
ベ子「母上ぇぇ!!」
ク「テムルチ、愛しいテムルチ…」
――ザシュッ…バシュッ
「ぎいゃああああああ!!」「うがああぁッ!!」「きゃああああぁぁぁッ!!」ワアアァァ…
遊「次の列、前に出ろ!!」
ク「どうか泣かないで…貴方は私と勇者ベルケの子…涙なんて流してはいけません……」
ベ子「うぁぁ゛で、でもっ…でもぉ……ッ!!」
ク「ほら、涙を拭いて…顔を上げて…見えるでしょう?」
ベ子「う゛ぅ…うぅ…」
ク「どこまでも澄み切った青…美しい蒼天…何も、怖い事なんて無い…」
ベ子「うぅ…ぅ…」
ク「還るだけ…」
ク「私達は皆…母なる大地から生まれ…父なる天の元に還るだけ―――」
ク「いずれ誰もが通る道を、テルムチは他人よりも少し早く通る……決して終わりなんかじゃないの」
ベ子「何でっ…死…ひっぐ…のに……」
ク「……」
遊「次の列、前へ!!」
ベ子「みんな…もう…えないのにぃッ!!」
ク「会えますよ…」
ベ子「嘘っ…嘘だぁ!!だって…何で…っ!!」
ク「――…天の魂が、あるからです」
ベ子「っ…」
736 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 18:36:26 ID:2dfCJym8
ク「テムルチ、良い?よーく、聞いて…」
ベ子「……」グスッ
ク「私達、生きとし生けるもの…全ての内にはね…」
ク「母から得た血と肉の魂、父から得た骨の魂…そして、天から授かった天の魂が宿ってるの…」
ベ子「…天の…たましい?」
ク「えぇ、天の魂…血や骨の魂は、肉体が大地に溶け込んだら無くなってしまうけど…天の魂は違う」
ク「他の二つの魂が無くなれば、最期にスーッと額から出ていって…天に昇ってゆく……」
ベ子「……」
ク「そうして昇っていった魂は、テングリで永遠に存在して…家族も、友人も、アタマンも…みーんな今まで通りにそこにいて……」
ク「地上で飼ってた家畜を飼い、地上で暮らした人々と暮らす…親も子も、友人も、奴隷も、全部そのまま……変わる事なんて何一つ無い」
ベ子「全部…そのまま…」
ク「そうよ…後は、私達の祖先が私達にしてくれたように…地上の子孫達を見守るだけ…」
ベ子「じ、じゃあ…父上もっ…母上も…バルフも、クトクも、ノガイも…!?」
ク「もちろん…みんな、みんないる…フフッ…今まで、食べてきた羊たちだって待ってるわ」ニコッ
ベ子「……」
ク「だからね、テムルチ…」
遊「……」
ク「受け止めなさい」
ベ子「…ッ」ビクッ
ク「死を受け止めて、何も残しちゃいけません…恨みも血も…何も、大地に残しちゃいけない」
ク「残せば魂が囚われる…地にへばりついたまま、天に還れなくなる…そんなの嫌でしょう?」
ベ子「!!」ブンブン!!
ク「じゃあ、母上の目を見て…笑ってごらんなさい」
ベ子「え…えへ…へ…」
ク「フフ、勇敢ね…テムルチ…それでこそ私とベルケの子…」コクッ
遊「……」スッ
ク「これで…」
ベ子「えへへ…へ…ぅ…」
ク「向こうで、また―――…」
―バシュッッ……!!
737 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 20:39:29 ID:LRkSWFBh
ベ「……ん、どうやら済んだ様だな」
女「……」
ベ「もう一つの願いは、頼むまでもなかった…か」
女「当たり前だ、見損なうな…」
ベ「ハハ、すまん。しっかし…」
女「……」
ベ「良く泣くなァ、お前は」
女「泣いて…欲しいんじゃないのか…」
ベ「あぁ、泣きながら殺して欲しい」
女「あ、悪趣味なヤツめっ…これの何が…」
ベ「俺だけが…知っている顔かと思ってた。今日までは」
女「…っ」
ベ「……確かに、強いんだろうな。その男ってのは。お前が惚れるくらいだ」
女「あぁ…」
ベ「そんな面白いヤツが、向こう側にいたなんて…フフッ、すっかり忘れてた……」
女「……」
ベ「そう、広いんだったな…世界は…」
女「……」
ベ「俺達ほど、その広さを知っている人間はいない筈なのに……」
女「うっ…」
ベ「俺達ほど、その広さに焦がれてきた人間はいない筈なのに………」
女「く…ぅ…」
ベ「お前の瞳はずっと、俺達より遥か遠くを――――――…」
女「ベ、ベルケ…私はただ…っ」
ベ「走りきれ、女」
女「ぁ…」
ベ「アッチにお前の居場所はねぇ、絶対に見守っててやるから…」
738 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 20:51:24 ID:LRkSWFBh
ベ「例え…地平線が消え、虫ケラ共が草原を埋め尽くそうが…大ハーンの軍勢が、幾ら時代を巻き戻そうが…」
女「……」
ベ「お前だけは…最期まで、本当の狼の子として生きるんだ」
女「ベルケ…」
ベ「何者にも囚われず、何者にも犯されず…」
ベ「その羨ましい虫ケラヤローと一緒に…新しい世界を走りきってみせろ……」
女「…!!」
ベ「そのために殺されたとなりゃ…俺も少しは…な?」ニコッ
女「ベ、ベルケ…お前…」
ベ「……」
女「お、おお前…もしかして…」
ベ「……」
女「お、おい…お前…っ!!」
ベ「……今更、かよ」
女「っあ……」
ベ「ハァ…鈍すぎんだ、何時だってお前は…その癖、この段になって……」
女「あぁ…ぁ…」
ベ「これでも、ちっとぁ気を引いてきたつもりだったんだがな……」
女「ん…で……」
ベ「……美しくなったな…その可愛い泣き顔も…元より高嶺の花だったが…」
女「なん…でっ…」
ベ「へへ、今じゃ手に届きそうな気配すら―――」
女「何でえええぇぇぇッ!!」
739 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 21:33:35 ID:LRkSWFBh
ベ「うっせェ…」キーン…
女「お、おお前ぇええぇ!!ふ、ふざける゙なぁ゙ッ!!何でぇっ!?」グイッ
ベ「何でって…」
女「さんざん他人の事、言ってお゙いて…!!何でぇ!!何故、今まで言わなかったぁ゙…!!」
ベ「そりゃ…お前が俺をそういう風に見て無い事位、俺にだって分かる」
女「だ、だが貴様ごそっ!!貴様こそ奪ったり何だったり゙出来たはずだろ゙うがぁ…ッ!!」
ベ「無理無理…だって、お前の方が全然強いだろ」
女「う…っ…ぁ…」
ベ「だから…今から俺は殺される。妻も子も仲間も、何一つ守れずに殺されるんだ。違うか?」
女「あ゙あっ…うあっぁ…ぁ…!!」
ベ「さ…そろそろやってくれ。悪趣味はもう、たっぷり満足出来た」
女「うあっ…うあぁぁ゙…!!」
ベ「ホラ、早くしろ…外は落ち着いた様だし…」
女「あ゙あぁ…うああ゙あ゙ぁぁぁ…っ!!」
ベ「聞かれる前に、済ませちまった方いいんじゃないのか…?」
女「っ…ぅぅ゙…!!」チャッ…
ベ「…よし」グッ
女「ゆ、赦しは…うぇっ…」
ベ「……」
女「赦しは…乞わんっ…!!」
ベ「当然、草原の習いだ」
女「ハッ…!!ハァ…ハッ!!ハッ…!!」
ベ「……」
女「ハッ!!ハッ…!!ハァ…!!ゴクッ…!!」
ベ「……杯、嬉しかったぜ?」
女「うっ…うああああああああああぁぁぁぁッ!!!!!」
740 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 22:50:46 ID:LRkSWFBh
ゴオオォォォォ…
女「ベルケの首を包みたい、手頃な袋をくれ」
遊「ハッ」
女「ん…安らかな顔だな。確か、テルムチだっけか?」
遊「ハッ…母共々、立派に最後を…」
女「そうか…きっと、無事に昇れるだろうな」
遊「えぇ」
女「…よし!!全員撤収だ!!全速で冬営地に戻れッ!!」ヒヒィィィン!!
遊「ハイヤアアアアァァァァ!!」
――パカラッ…!!パカラッ…!!
女「……」
遊「やったな…」ヒソヒソ
女(ベルケ、お前は…)
遊「あぁ、一片の容赦も見せずにやり遂げた…」ヒソヒソ
女(私より…弱くなんか無かった…あの時、何も盛らなかったのは……)
遊「言ったろ、やはりアタマンは変わってはいなかったんだ…」ヒソヒソ
女(私が、男を射れなかった理由と同じ…)グッ…
女(その為に、全てを失っても…お前は最後まで笑っていられた……だが)
遊「畑部の時は、所詮互いに制限してたからな…本当に何か意図があったのやも…」ヒソヒソ
女(私なら、どうだ…?)
女(私なら――…)
おーい…誰かぁぁ…
任せろ
23:00:00以降交互にレスしてこうか
743 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 23:04:28 ID:LRkSWFBh
>>742すまんwペース遅いからそれは悪いww
不安に駆られただけだから、たまに支援してくれるのが一番嬉しいww
人員確認かよwwwwww
スレ立てからずっとスレ見てんだから心配すんなw
745 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/21(土) 10:32:30 ID:AhGROT2V
スレたてから見てるなら
>>1が淋しがり屋なのは知ってるだろ?
コノコノ( ・∀・)σ)д`*)エヘヘ
支援
746 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/22(日) 08:59:27 ID:r32rPJBm
遊「おぉ、帰ってきたぞ!!」
女(まだ、夕方…か)テクテク
遊「で、どうだったんだ?」「交渉は失敗したらしいな」「まぁな…だが、代わりに皆殺しだ」ワイワイ…
女(略奪品も、思ったより少なかったせいか…本当に早く…)テクテク
女(早く…)ピタッ
遊「あっ、アタマン。損害は――」
女「……」
遊「アタマン?」
女「……」ダッ!!
遊「な、なんだァ?」
――――バサッ!!
女「うっ…」(私の寝台に…)
女父「ん、女か…話は聞いた、よくやったな」
女「い、いえ…」(置いてたナイフの位置が…違う……)
女父「念の為に聞くが…ベルケ一家の死体は、全てその目で確認したか?」
女「はい、母から子まで…安らかな死に顔でした。ベルケの首はココに」(まさか…)
女(いや、見た目自体はどこにでもあるナイフだ…気付かれる筈……)
女父「それでこそ我が娘だ」
女「……」
女父「……これからも…為すべき事『のみ』を為せ」ポンッ
女「…っ」
女父「寝台が汚れるぞ、早く血を落として来い」バサッ
女「……」ギリッ…
・・・・・・
女「はぁッ…はぁっッ…!!」パカラッ!!パカラッ!!
遊「それでよ、四人目だ。へへ、全員心の臓に当ててやったぜ」「何か…嘘くせェんだよなぁ、お前のホラ多いし」「ちゃんと直に殺したヤツの耳なんだろうな、ソレ?」
女父「すまん。娘を見なかったか?」
遊「何だt…あ、いえ…」「あー…そういやさっき何か、やたら急いだ様子で駆けてった気が」「げぇ…ホントかよ、今朝からずっと早駆けしっぱなしだぞ?」
女父「……そうか」
>>744ごめんよwwこれからもたまに支援よろwww
>>745めんどくさいヤツで申し訳ないww
支援
748 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/24(火) 19:07:27 ID:gdXk5zTM
男(ハァ…結局、下校時刻になっても来なかったな……)トボトボ
男(一日会えなかっただけで、こんなに不安になるなんて……)トボトボ
男(俺も、どうかして――…)ピタッ
女「はは…」
男「女さん…!!」
女「遅刻…だな…」ボロッ
男「遅刻って…」(というか何時にも増して、ボロい格好だな…)
女「ス、スマン…ちょっとばかし弓の張り替えかえやら何やら、色々してたら…つい…な」
男「そんな事、学校ですれば良いじゃんか…」
女「む?男は何時もそうゆう事、人前でやるなと言ってただろう…」
男「あ…い、いや…そりゃそうなんだけどさ…」ポリポリ
女「もしや男……私がいなくて…さ、淋しかったか?」
男「…うん」
女「っ…///」
男「……」
女「ば、馬鹿者っ…まだ…約束から二日しかたってないんだぞ?当分は迷惑、掛け続けると言ったろうが…っ」(男…)
女「なのに、たった半日会えなかっただけで……淋しい等と軟弱な事を言うんモンじゃない…」(心配じゃなくて…淋しいって…)
男「…の割りには、すんごい嬉しそうな顔してるけど」
女「う、ううるさい…ほら、いいから一緒に帰るぞ…///」パカパカ
男「でも女さん、せっかく来たばっかりなのに」
女「帰り道で迷惑掛けてやると言ってるんだ、早く来い」ファサッ…
男「あ…」
ペース遅くてすまん、野暮用が多いもんで
749 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/24(火) 19:29:37 ID:gdXk5zTM
パカ…パカ…
男「ね、ねぇ女さん…」(やっぱり、何かおかしい…)
女「ん…何だ?」
男「何というか…少し、疲れてる?何時もより、元気ない感じだし…」
女「えっ…そ、そそんな事ないぞ!?元気いっぱい!!」クワッ
男「……」
女「むぅ、元気が無いのは男の方だろ…調子狂うぞ…」
男「あのさ…ホントに、弓の張替えとかしてただけなの?」
女「……どういう意味だ」
男「髪に、血がついてる…」
女「っあ…こ、これは…そのっ!!」サッ
男「……」
女「そ、そうだ…解体もしたから……きっと、コレはその時に付いた血だな…うむ…」(しまった…急いで全部、洗い流したつもりだったんだが…)
男「解体なら、見た事あるけど…ちっとも血なんて出なかったじゃんか……」
女「私にだってミスくらいある…あぁ、あるいは血を飲んだ時に少し零したからその手で髪を――――…」
男「でも女s」
女「男、だからキリが無いと言ったんだ。私は大丈夫…これでこの話は終わりだ」
男「……」
女「………よ、よおぉーし!!それじゃあ今日は本物の弓を射させてやろう!!折角、張り替えて来たんだしなっ!!」グイッ
男「え…い、いや…ちょっと」
女「良いから持ちたまえ!!今日のはまえ騎馬戦で射ったのと違って、実戦仕様の本格的な弓だぞ!?」
男「全然違わない気が…相変わらず小さいし……」
女「今日のは弦の強度が子供の訓練用じゃないって事だ。とりあえず弦を引いてみろ」
男「引いて見ろって…こんな短いの簡単に……んんッ!?」ググ…
女「フフ、何とか引けたようだな…だが…そのまま構えてられるか?」
男「っくぐ…!!な、何コレ!!なんか凄い…固ッ…!!構えてられないっ…!!」プルプル
女「ふふん、だから実戦用と言っただろう。なぁに、気に病むな。訓練していなければ当然…複合弓は全長に比べ強い張力が必要な弓だからな」
男「はぁっ…はぁ…複合…弓?」
女「うむ。このM字型の短い弓…何を隠そうコイツこそが……我々遊牧民の持つ最強の武器だ」
750 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/25(水) 00:40:44 ID:/neB6cOY
男「こんな弓が、最強の兵器…?」
女「フフ…そうだとも、こんな弓がかつて世界を制していたのだ。古の東ローマ帝国等、我々から高額で買い取ってまで、複合弓を軍隊に導入していた位だからな」
男「せ、世界を…」
女「あぁ、遥かスキタイやそれ以前の時代から…世界を席捲した遊牧民達は必ずコイツを効果的に戦法に取り入れ、その力を十二分に使って来た」
男「そんな昔からあるなら…わざわざ輸入なんかしなくても、自分で作れそうなもんだけど……」
女「いいや、そうはいかん。コイツは木製の下地に、動物の骨や腱、金属板等など…様々な素材を絶妙に合わせ、初めて出来るシロモノなんだ」
女「もちろん製造方は門外不出。手間だってかなりかかる」
男「複雑な作りなんだね、コレ…」
女「うむ、もっとも…だからこそ使えるのだがな。虫ケラ共が使う、木材のみの単純な単弓と一緒にしてくれるなよ」
男「じゃあさ、ウチの学校にも…何か特別な弓を使ってる弓道部があるらしいけどアレは……」
女「例によって、単素材で作った芸の無い虫ケラ共の弓だ。ロングボウというらしいが、要求される筋力も尋常じゃないし、長すぎて馬上でなんかとても使えん」
男(というか馬上で使うっていう発想も、そんな無いだろうけど…馬に乗るってだけでも大変だろうに……)
女「技術が無いから、大型化で威力を向上させざる負えなかったんだろうが……安心しろ。複合弓も訓練は必要だが、あそこまでの扱い難さは無いぞ?」
男「はぁ…」(きっと…女さん達は殆ど、馬に乗る生活だから必然的に生まれてきたんだろうな……)
女「小型さ故、馬上での取り扱いに優れ、連射も簡単、弦を引く距離は僅かですむ。お陰で矢自体も短く、多くの矢を携行可能……おまけに」ググッ
男「ん?ちっ、ちょっと…!?」
―――ヒュッ…ビイイィィン!!
女「空気抵抗による威力の低下も少ない長射程。見たまえ、少し引いただけでこの威力…フフッ」
男「ブ、ブロック塀に…こっ、こんな小さな弓で……穴が…」
女「俗に複合弓は肘の位置まで、引くだけで…胸の位置まで引いた虫ケラ共、自慢のロングボウに匹敵する威力があると言われているが……」
男「っていうかこれ、人ン家なんだけど……」
女「実戦ではさらに弓懸を使い、弦を耳元まで引く事が出来る上……獣骨の矢尻にトリカブトの猛毒をたっぷりと塗りたくる…」
男「ト、トリカブト…」
女「そうなると射程は四百メートルを優に越え、必中距離は馬上から約五十メートル……放たれた矢は…もはや、どんな防具だろうが貫通を防ぐ事は出来ない」
男(それってもう…初期の銃より遥かに強いんじゃ……)
751 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/25(水) 02:12:39 ID:/neB6cOY
女「分かるだろう男?この弓無くして…古来からの、虫ケラ共に対する我々の軍事的優位は有り得なかった」
男(って事は待てよ…矢尻を丸めてたとはいえ……畑部さんの時は相当加減してた…のかな?)
女「これぞ…我々遊牧民の誇る、最強の兵器の所以なのだ!!」ババーン
男(何だかんだいって、絆創膏で済んだ程度だし…距離も近かったから、急所を外してたとか……)
女「さて…では説明も終えたので、もっかい射ってみましょう」
男「あ、いえ結構ですぅ」
女「大丈夫だ、私が優しく指導してやるっ♪」
男「いえいえ、ホントに」
女「遠慮するな、楽しいぞ?ヒュンバシュッてなった時、すごい気持ちぃーぞ?」
男「いやでも街中じゃ危ないしね、ウン」
女「むむ…!?何と、あんな所に調度良い川原が!!」ビシッ
男「昨日、寝転んだよね。しかも来た道、引き返さなきゃだよね」
女「男ぉぉ〜…」グイィ
男「ちょ…まっ…馬の上から服、引っ張ぱんないで!!」ズルズル
女「騎馬戦の時あれだけ狙いが上手かったでは無いかぁ〜…後は弦さえ引ければだなぁ〜…」グイィィ
男「だ、だってホラ…もう結構暗いし…時計見てって……」ズルズル
女「あっ…うぅ…も、もうこんな時間なのか」
男「ね?だから、そろそろ帰ら――…」
女「むぅ、仕方ないな…」パッ
男「ぐげッ!?」ドサッ
女「すまん…フフ、余り迷惑掛けられなかったな…時が経つのは早い…」
男「いや、充分掛けれてるんじゃないかな…」ズキズキ
女「…そ、そうか?」
男「ま、いつもの調子に戻ってくれて良かったけど…」ボソッ
女「え…」
男「いっ、いや何でも…無い…」
女「……」
女「……そう、だな…男と話すと楽しいから…な」
男「アハハ…な、なんか照れ臭いなぁ…///」
女「……」
ほうら
>>1よ、これがほしいんだろう?
つ ミ[支援] フォラヨッ
うん、ちょっとやってみたかったんだ(´・ω・`)
753 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/26(木) 19:20:16 ID:/DkSxezl
キーンコーン
男「あっ…女さん、来てたんだ」
女「おぉ、男。お早う」キュッキュッ
男「ごめん。急に場所変わっちゃってさ、書置きできなかったよ…」
女「なぁに、適当に時間を潰していたから大丈夫だ。フフ、こっちこそ何時もありがとな」ゴチャ
男「う、うん…」(何か迂闊に注意出来なくなったな…しかし態々、馬具を他人の机に……)
女「〜〜♪」キュッキュッ
男「…あの女さんさ…最近、大体この時間帯に来るけど……やっぱそっちの方、大変だったり?」
女「ん?まだ大丈夫だぞ。無理になりそうなら事前に言うか、きちんと一日丸々休む」キュッキュッ
男「そ、そっか…ならいいんだけど」(あれから一回も休みこそしてないけど…前は、精々遅刻しても二限目とかだったもんなぁ……)
女「私は来たくて来てるのだ。男が気に病むことは無い」キュッキュッ
男「うん…」
女「まったく…そういう男こそ、大丈夫なんだろうな?もうすぐテストだぞ?」ガチャ
男「まさか女さんに、テストの心配されるとは思わなかったな…」
女「何を言う。私は毎回、安定した高得点だ」キュッキュッ
男「テスト前になると必ず抜き身で、職員室回ってるのは……」
女「アレはテスト戦略の一環だ、何なら今度から男の分も頼んどいてやろうか?」ガシャ
男「これ以上、俺の築き上げてきた温厚な生徒像を壊さないで下さい」
男友(俺の机が、馬具に埋まって見えない…だと?)
畑部「……」
>>752いただきいいぃ!!
754 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/27(金) 01:30:57 ID:n65HW2hK
タガ〜タンタンタン♪タダダン♪
ベ畑「モタモタするなァ!!」
畑部「はッ…はぁッ…!!」ザッザッ…
弓部「傍から見てると、パレードみたいで楽しそうよね」
畑部「楽器等の合図にいかに早く、正確に反応できるか。近代以前の戦争は、一見お祭りみたいな雰囲気がありますからね」
ベ畑「そこォ!!集合が遅い!!最初からやり直せ!!」
畑「ひいいいいいいぃぃッ!!」
弓部「でも実際は…もうかれこれ三時間以上…毎日フル装備で、隊列の移動と転換の繰り返し……ホントよく持つわね、あの子達」
畑部「持つというか、持たせてるんですけどね。歩兵は耐えるのが仕事です。それに野戦築城班だって大変ですよ?」
トントン…カンカン…
弓部「他の生徒に怪しまれない様、狭っ苦しい倉庫の中で…ひたすらバリケードと馬防柵の作成か……弓部で良かったわ、私」
畑部「一応アレだけは…クロスボウを製作した工作部の人も一部動員してますけどね。進軍ルートの制限は、この戦い一番の鍵ですから」
弓部「情報漏れは大丈夫でしょうね…?」
畑部「厳命してあります、機密漏洩は例外無く死刑。それに上の方はこの戦いの意義に対する理解も進んでますし」
弓部「教育成果って訳ね…あの子達もせめて、三年になってから巻き込まれればこんな受け止め方せずに済んだでしょうに」
畑部「ま、いざコトが始まれば皆一緒ですよ。誰も実戦経験は無いんです」
弓部「……」
新畑「れ、練習おわりましたぁー…きょ、教官がもういいって……」ゼェハァ
弓部「はい、お疲れ様♪」パサッ
新畑「あ…ど、どうも…」フキフキ
畑部「フフ、そろそろ思想教育の時間ですからね。槍隊と楽隊の人達も後、一巡したらやめてもらいましょう」
弓部「ね、マッサージもしてあげよっか?」ワキワキ
新畑「手をワキワキさせないで下さい。近づかないで下さい」
男友(何やってるんだろうあの人達…)
755 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 00:30:54 ID:oN83H+0L
新畑(思想教育、それは部長さんが言うに……女さん達のもたらす害悪と…その根絶される正当性を皆に分かってもらう為の教育)
畑部「〜例えば幼少から騎乗していなくとも、姿勢を安定させる事で、乗馬を飛躍的に容易にした鐙」
新畑「ふふっ…」
畑部「例えば長大な射程と火力により、騎兵の白兵効果の減少と、その存在をただのデカい的にまで貶めた火器」
新畑(いっつも事前に聞いた様な話ばかりだから、この訓練だけは楽勝ですっ!!)
畑部「我々が誇るこれらの発明一つ一つが…騎馬戦士としての害虫さん達の存在意義を消滅させていったのです」
新畑「……」
畑部「では唯一勝っていた軍事的利点までも、我々に凌駕された彼等は……一体何か?」
新畑(でも…一つだけよく分からないや………)
畑部「土地の私有を否定し、国民という共通属性を否定し、暴力を崇拝し、数千年前から変わる事の無い停滞した日々を送る……害虫さん達」
新畑(私と話す時の部長さんは、絶対に女さん達の事を…害虫だから〜なんて理由で片付けたりしない……)
畑部「そう、彼等にはもう…モノホンの害虫程度の価値さえ無いんです……寧ろ、なまじヒト科なだけその罪悪は深い」
新畑(口は悪いけど…ちゃんと、女さん達がこうせざる終えない事情だって説明してくれて…その上で戦おうって……)
畑部「その一点にのみ希望を抱き、寛大なる文明人として…我々が何世紀にも渡り行ってきた教化と、慈悲の努力の全てが……矢玉を持って無碍にされ続けたのだから」
新畑(これが、部長さんの…立場ってヤツなのかもしれないけど……)
畑部「奴等は、奴等の最後を……自らの手で絞める道を選んだという事です…レミングの様に……」
新畑(けど、部長さんは…私にだって…本気で女さん達を憎んでるって言うんだ)
畑部「そして近代国家が誕生し、地上を隙間無く埋め尽くした今……時は来たんです」
新畑(あんなに色々な事を知ってるのに…あんなに女さんとよく、喧嘩してたのに……)
畑部「近代国家の原理とは決して相容れる事の出来ない異物、進歩に対する最大の障害として………もはや、我々と奴等の間にかつての様な形の共存は不可能」
新畑(それでも……)
畑部「それ故…奴等を駆除し、残された蒙昧の地を文明の光で照らすは、神から与えられた我々の明白なる〜」
弓部「やっぱりアンタにゃ…分からないかしら?」
新畑「え…」
弓部「アイツは、いや普通はそう…フフ…誰もシラフじゃあね…」
新畑「こ、これくらい分かりますよ…失礼な…」ムスッ
弓部「そっちじゃなくて」
756 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 18:14:38 ID:oN83H+0L
男友「しっふぁし…」モグモグ
男「んー?」モグモグ
男友「まーた、畑部さんの手作り弁当かよ。てっきり振られたかと思ったのに」
男「るせぇな…だからコレはお礼だってば…」
男友「律儀な人だよなぁー」
男「まぁな…」(アレから他の事では一切、話しかけられないけどな…渡したらすぐどっかいっちゃうし…)
女「ふん…」
――――ダカタンタンタン♪ピ〜ヒャラ♪
男(にしても外、何やってんだ…)
男友「……後さ…いっつも食べて無いけど…大丈夫なの、あの人?っていうか何で最近ここにいるの?俺、帰っていい?」ヒソヒソ
男「いやいやいや…待ってくれ…一応俺にとっちゃ両方友達なんだし…もう少しお前も仲良くなってくれるとありがたいんだが……」ヒソヒソ
男友「怖いよ!!屋上の時以来マトモに話してないよ!?今だって、明らかに俺の事邪魔者扱いしてるし!!めっちゃ睨まれてるし!!」ヒソヒソ
女「ゔ〜…」グルル…
男「ア、アレはホラ…俺が悪いけどお前もさ…セクハラまがいの事したんだから……」ヒソヒソ
男友「それ以前だって、一方的に話された事あるだけだよ!!大体女さん、お前以外のヤツと仲良くしようとする気サラサラ無いだろ!?」ヒソヒ
男「ぐ…」(確かに、わざわざ壁を作ってる感じが…今だって威圧してるもんな…)
女「おい、男友」
男友「ッ…は、はぃ!?」
女「さっきから何を食ってる」
男友「へ…は、え?コ、コレ?」
女「あぁ、何だソレは」
男友「イ、イカフライ…ですけど…」
女「いか…ふらい…」
男友(あれ?もしかしてコレ睨んでた?)
女「……」ジイィィ
男友「あの…食べます?」
女「いらん」
男友「えぇ…いや、ガン見されながら言われても……」
男「た、食べてみたら?」
757 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 18:32:57 ID:oN83H+0L
男「美味しいよイカフライ?俺も好きだし」ニコッ
女「む…お、男がそこまでいうなら…仕方ないな…少しだけだぞ?」ガシッ
男友(そこまで言って無いんですけど。少しっていうか、三つ鷲づかみにしてるんですけど。三分の一なんですけど)
女「……」モグモグ
男友「…美味しいですか?」
女「ふむ…まぁまぁだな」ガシッ
男友(まぁまぁで追加…)
女「……」モグモグ
男友「…気に入った?」ヒソッ
男「みたいだな」
女「ひはし…変わっは肉らなコレは…豚は鳥?いふぁ、前に男から貰っのはほんな……」ボロボロ
男「女さん、これは肉というか…イカだよ」
男友(良く聞き取れるなオイ)
女「いふぁ…?」ボロボロ
男友(あぁ、俺の机が……)
男「あー、イカってのは海に棲んでる――」
女「ぶふッ!!」
男友「うわー、何かイカフライが戻ってきたー」
女「なっ、なな…な…!!」プルプル
男「お、女さん…?」
男友「勘弁して下さい、お願いします。勘弁して下さい」
女「…う、海って…水、だよな?…お前…そんなに貧しかったのか?」
男友「へ…水?」
女「こんな…水の中に棲んでるモノを食べる程、暮らしに困ってたのか?」
男友「困ってないけど…普通に食べてる…え、何で哀れっぽい目?」
女「はー…」
男友「え、女さん達は…魚とか食べ…ない?」
女「いや…た、確かにチンギスは幼少の頃、貧窮の余り川から魚を取って食っていたというが…これは……」
男友「川とかあるなら…普通に獲ったりすれば…」
女「そ、そもそも…獲り方もさばき方も分からん…滅多に見ないし…まさか、虫ケラ共は日常的に魚を?」
758 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 18:53:52 ID:oN83H+0L
男友「うん、まぁ…かなり…」
女「何と酔狂な…貴様等なら、他にも山程食材があるだろうに……」
男友「あるけど…結構獲れるし、基本的なメニューだよ…魚は」
女「そ、そうなのか…?というかまず魚にイカだとか、種類があるのも凄いな…」
男友「いや、だからイカは魚じゃ」
女「しかし…なんというかこう……」
男友「ん?」
女「意外と…悪くは無かったな…」ジュル
男友「そ、そう」(イカフライどんだけー…)
女「……」
女「あっ…」
男(お?)
女「……ありがと…な///」
男(おぉっ!!いいぞ!!いいぞコレ!!)
女「ふんっ…」プイッ
男友「え、何?もっかい言って、聞こえない」
女「人の話は聞いてろッ!!」バキィッ
男友「かひッ!!」
女「ったく、痴れ者が…」ブツブツ
男「……何でそう、すぐ調子に乗るんだ…お前は」
男友「いやね、仮にもメインデッシュだったもんでね」ムクッ
男「うおっ、復活はや…」
男友「耐性が出来たというか、手加減があったというか」
男「良く分からんが、良かったな」
女(…成る程、魚か)
男「今度から獲ってみたら?俺も獲り方とか良く分からないけど、女さんなら狩りとかしてるんだしコツ掴めば簡単じゃないかな」
女「っ…わ、わわ私が虫ケラの真似事なんかしてたまるか!!」ギクッ
男友「でも美味しかった、違いますか?」ズイッ
男「お前…」
759 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 21:31:59 ID:oN83H+0L
女「うっ…そ、それは…」
男友「ホラ、恥ずかしくないから。そこは素直に認めよう?ウン」
女「うむ。美味しかった、美味しかったから―――」
男友「そう。最初からね、そうやって素直に言ってくれればね」
女「明日から毎日イカフライ獲って来い」
男友「こっ…ってえええぇ!?獲ってくる!!?イカフライを!!?」
女「結構獲れるのだろう?私には魚を獲るなどど、虫ケラじみた行為は出来んが…貢物を食うのは別だ。何、今日くらいの量で構わん」
男友「ちょ、ちょっと待っ…確かにイカフライ大好きだけど…流石に毎日は……」
女「頼むぞ、イカフライ」ポンッ
男「ぷっ…wwイカwフラwwww」
男友「あれ…?もしかして俺の名前、イカフライになってる?」
男「そういやイカフライ、お前数学得意だろ?数学初日らしいし、今日の放課後でも教えてくれよ」
男友「えっ…やめて、ホントに定着しそう」
女「む…やはり苦戦してるではないか男。何も私に頼ってくれれば、数学なんて…」
男「女さんが『自力で教えてくれる』教科なら頼みます」
女「ふむ…そうだな、今回の世界史ならば…色々教えられる思うが?」
男「あぁ、確かに今回の範囲は……よし…世界史ならイカフライが苦手だし、帰りに三人でやろう」
男友「ねぇ、ちょっと自然に使わないで」
女「チッ…何だ、コイツが苦手なのか…」ジロッ
男友「……」
女「もっと勉強しろよ、イカフライ」
男友「……」
―――校庭
畑部「良いですかー。今日が期日なので、ちゃんと書いてくださいねー♪」
新畑(まさかこの歳で……)カキカキ
畑部「はい、皆さん!!ネガティブにならない!!飽くまでコレはもしもの時の為のモノですから!!」
畑&音(本当に…遺書を書く事になるなんて………)ズーン
イカアレルギーの俺が支援
男友「〜でここを二乗して終わりと。どうだ?分かったか?」
女「んぐっ…んぐっ…」
男「成る程、そういう事か。しっかしお前、ホント数学だけは得意っつーか…」
女「ふぅ…」
男「教え方も分かりやすいし、頼りになるよなぁー…」
女「……」ピキッ
男友「へへっ、こう見えても俺ぁ数検二級だぜ?恐れ入ったk」
女「……調子に乗るなよイカフライ、数学以外は全部男のが上だろうが」ボソッ
男友「すいません…」(うぅ、さっきから男に感心されるたびにコレだ……)
男「んじゃ、キリの良い所まで教わったし。そろそろ…」
男友「世界史、か…まぁ確かに苦手だけど…」チラッ
女「はぁ〜?世界史だァ…?貴様、頭いいんだろォ?男に頼りにしてもらってたしなぁ…?んぐっ…んっ…んんっ…」
男友「……」
女「ぷふぃ〜…そんなイカフライ様なら…げふっ…私に頼まずとも、世界史ていど楽勝じゃないのかぁ?あぁ〜ん?」ボタボタ
男友「い、いやそんな事は…ちょ、お酒零れてる…」
女「けッ…イカフライの分際で、良い気になりおって…たまたま男の苦手科目が得意科目だっただけではないか…」グチグチ
男友「な、なぁ絶対コレ逆効果だろ?どんどん反応キツくなってる気が…」
男「気のせいだろ、イカフライ」(飲んでんなー…)
男友「お前もか畜生」
男「でも…俺も折角だから女さんに教えてほしかったんだけど……女さんが嫌ならしょうがな――」
女「っぷは!!よし。くれぐれも男の足だけは引っ張るなよ、イカフライ」
男「おぉ、ありがとう。女さん」
女「フフッ…良いって事だ。なんせ男・の・頼みだからな♪」
男「ハハ…///」
男友「すいません、生まれてきてすいません」
女「ふん…貴様も害虫共のお仲間にしてはまぁ、殊勝な心がけだ。特別に私の杯を注ぐ名誉をくれてやろう。注ぐが良い」
男友「アリガトウゴザイマス、ウマレテキテスイマセン」トクトク
男(ま、まぁ何はともあれ…なんとか仲良く(?)はやってけそうな感じだよな、ウン…)
図「あ、あのぅ…と、図書室でお酒はちょっとぉぉ〜…」ブルブル
イカフライかわいそすぎだろwww
まぁ農民派だし仕方ないのか…
イカフライの扱いw
764 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/21(月) 19:43:56 ID:CQzC2stY
新畑「……」
畑部「なーに黄昏てるんですか、新畑さんっ」ポンッ
新畑「あ、部長さん…」
畑部「今日はもう解散して良いんですよ。それとも、何か考え事ですか?」
新畑「まぁ…」
畑部「フフッ、やっぱり。思教の時もボーっとしてましたもんね」
新畑「あ、ぅ…す、すいません…」ペコッ
畑部「良いんですよ、新畑さんなら。普通以上の負担を私の我侭で負わされるてるんですから」
新畑「そ、そんなこと…訓練だって他人より少ないんだし…むしろ……」
畑部「……とにかく新畑さんは私の助手です。害虫関連の疑問なら、私に遠慮なく聞いてやって下さい」
新畑「でも大した事じゃ」
畑部「私は聞いて欲しいんですよ、新畑さん。聞く聞かないは貴方の自由ですけど…言わばソレが、助手である貴方の仕事とでも思ってくれれば」
新畑「う…は、はぃ」(何で、この人は私なんかを助手にして…)
畑部「えぇ」
新畑「それじゃ…あの…」(何で…女さん達をあれほどまでに……)
畑部「はいっ♪」ニコッ
新畑「…っ」
畑部「ん、どうしました?」
新畑「……」
畑部「新畑さん?」
新畑「えと…その…き、起源を…」
畑部「起源?害虫さん達の、ですか?」
新畑「は、はいっ…私、その、実は何で女さん達がこういう暮らしをする様になったか知りたくて……」
畑部「それなら思教で教えたと思うんですけど…」
新畑「そ、そうじゃなくて!!」
新畑「ちゃんと、知りたいんです。女さん達について」
765 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/24(木) 18:04:45 ID:A+LgjsiL
畑部「……」
新畑「何でああいう暮らしをしてるのか…その、私に教えてくれてる時みたいに…ちゃんと」
畑部「フフッ…ちゃんとですか?」
新畑「う…い、いえ、ちゃんとというか…」
畑部「新畑さん、答える用意はあります。だけど私は……この戦争に関わる直接的な事情は、新入生の中で…全て新畑さんにだけは包み隠さず伝えました」
新畑「は、はい。ありがとうございます…」
畑部「新畑さんの知識は現状の把握には、もはや何の問題も無いレベルです。一介の兵卒として見た時は、知りすぎてる位……それでも尚」
畑部「新畑さんはこれから戦う相手について知りたい、と?戦術とか組織構成とかじゃなく…そんな余分な事まで…?」
新畑「はい」コクッ
畑部「何故…」
新畑「だって、部長さんも言ってたじゃないですか。避けられないなら、やっぱり…せめて納得はしたいです」
畑部「……知るだけで納得出来るなら、なぜ私はこんなモノを?更に重荷を増やすだけ、意味の無い事だとは考えないんですか?」ギラッ…
新畑「わ、私は別にそうは考えません。どんな事でも…女さん達について知って、それで何か感じて……その感じたままの気持ちを抱いて戦う」
畑部「……」
新畑「それがきっと…」
新畑「きっと私に出来る…女さん達に対する最低限の責務と最大限の納得、だと…そう考えてますから」
畑部「ッ…!!」
女「えー。ではまず、貴様等には我々の社会構成の単位から学んでもらおう」
男「おぉー」パチパチ
男友「あの…それより、イル・ハン国の初代h」
女「殺すぞイカフライ。良いか?当然ながら我々のもっとも小さな社会的単位は、一つのゲルに同居する家族だ」
男友「うぅ…」(さっきからずっと質問してるのに…)
女「これらの家族は通常、『共通の先祖を持つと信じられてる』他の家族と共に一つの遊牧集団を作って共に遊牧する」
男「うんうん」カキカキ
女「この遊牧集団が我々の最も基本的な単位である『氏族』で、ソレを構成する家族数は数家族の場合もあれば、三十から五十家族という大所帯の場合もある」
男「女さんの所は?」
女「三十ちょい、だな。多分」
男「そんないた様には見えなかったけど…」
女「全員かなり広範囲に分散してるからな、貴様等から見たら大した数に見えなくとも仕方あるまい」
畑部「貴方は、本当に……」
新畑「?」キョトン
畑部「こんな…可愛い顔して……」
新畑「ぅ…」
畑部「……」
新畑「ま、またそうゆうコト言って…からかわないで下さいっ…///」
畑部「……フフ、分かりました。起源…ですね」
女「で、氏族が他の氏族と合わさって、一つのより大きな遊牧集団を形成したモンを『部族』と呼ぶ。どうしたイカフライ、鉛筆が止まってるぞ?」
男友「うぅ…こんな事より早く教科書の問題を…」カキカキ…ブツブツ…
女「そして更にこれらの部族が、他の諸部族と連合しより大きな単位を構成した場合、コレを『部族連合体』あるいは『国家』と呼ぶのだ」
男「え、国家…?部族が集まったのが?」
女「そうだ、国家だ。我々の言葉ではウルス。ただし虫ケラ共のソレと違う『遊牧国家』だが」
男友「遊牧国家…」
女「うむ。貴様がバカの一つ覚えで言っていたイル・ハン国もそうした遊牧国家の一つだぞ」
男友「せめて『様な』ってつけて…んで、ソレは俺達の言う国家とどう違うの?」
女「様々な違いがあるが…まず今いった様な氏族、部族をその構成要素とするピラミッド状の政治的統一体という所が挙げられるな」
男「血縁共同体が中心なんだ…」カキカキ
女「また、この統一体は外の部族や部族連合体を柔軟に吸収、屈服させる事で急速に支配地域を拡大していくってトコにも特徴がある」
男「あー…モンゴル帝国とか?」
女「あぁ。あのスピーディーな領土拡大は馬の力だけじゃない、次々とあらゆる部族を台風の目の様に引き込んでいった結果だ」
男「へぇぇ…」カキカキ
女「次に指導者の選出の仕方も特徴的だ。これは『クリルタイ』という国会において選出される。クリルタイは他にも君主の交代や、戦争などの様々な国家事項を多数決で決定する」
男友「ふーん、民主主義的だな…」
女「…だがココで重要なのはこのクリルタイで選ばれる指導者は、その『遊牧国家形成に当たり中核となった特定の一氏族』から出され、他の氏族からは原則不可能ってトコだ」
女「例えば突厥の場合は阿史那氏、ウイグルの場合はヤグラカル氏……」
男友「え…な、なんで?一番有能だったら良いんじゃ…?」
女「その特定氏族内で、という条件付きでな。コレは当然の事だ。氏族を基本単位としてる我々が、自らの氏族の支配的権威を確保しようとしたに過ぎないし…」
女「勿論その権威は実際的な力で…遊牧国家の中核をなした氏族のみが築き挙げるモノ。貴様等と違い、名誉だけの権威はあり得ん」
男「原則って事は例外も?」
767 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/25(金) 00:46:27 ID:2yhg/Kwe
男「原則って事は例外も?」
女「うむ、他の氏族から選出されるケースもあるにはあるが…例えば自らの素性を隠してヤグラカル氏と自称したり…力ある者も形式として、名門氏族を名乗る」
女「だから原則的には何も変わらんって事だ」
女「そしてこのクリルタイに参加出来る者もまた、指導者を選出する特定氏族の成員達の他には『遊牧貴族』に限られている」
男「ええっ…遊牧民にも貴族なんているの?」(女さんの話聞いてたらそういうのいなそうな感じだったのに…)
女「フフ…コイツも貴様等の貴族とは違うがな。『多数の一般遊牧民を支配下に持つ者、遊牧部族の支配者』それが遊牧貴族だ」
男「そっか…これも実力の伴った支配者なんだ…」
女「これで分かっただろう。多数の氏族から構成される『部族』その部族の長である『遊牧貴族』そして複数の部族の連合体である『遊牧国家』」
女「指導者は『特定の氏族』から選ばれ、国会はその氏族と遊牧貴族だけが参加する。これが遊牧国家の階層構造だ」
男友「思ったよりややこしいね…」
女「そうか?単純だぞ。例えば具体例としてはウイグル遊牧国家は『アフシ』や『スクト』や『フン』等の九つの部族が連合していて…その中に『ウイグル』部族がいるんだ」
女「『ウイグル』部族を構成するのは、指導者を選出する『ヤグルラカル』氏を筆頭にこれまた九つの氏族」
女「このウイグル部族が先に上げた諸部族と連合した結果が『ウイグル遊牧国家』で『連合体の外に存在した他の部族や部族連合体』を支配する事によって成立していた」
女「よってこのウイグル遊牧国家の国会に参加出来るのは、ウイグル部族を始めとする、九つの『支配部族』の支配者である遊牧貴族達……どうだ、単純だろう?」
男友「うん」
男「う、うん…」(やべ、途中書いてて聞き逃した…)
女「まったく、これだからイカフライは……」
男友「えっ、今のこっち?逆じゃね?」
女「ハァ…」
男友「ねぇ、止めて。お手上げのポーズ取らないで。憐れみの目で見ないで」
畑部「人類の生産形態の発展として狩猟から、農耕へというのは良く知られているところですが…では遊牧はという生産形態はどの段階から確率されたのか?」
畑部「狩猟から、それとも農耕から…?大きく分けて二つの説があります。いずれも中央アジアの草原地帯を舞台に数千年前には存在していたと」
新畑(へぇ…やっぱり古いんだ……)
畑部「一つは狩猟社会起源説、狩猟民の間から遊牧民が発生したと考え。二つ目の説は逆に農耕社会起源説、農耕民の間から遊牧民が発生したと考えます」
新畑「ふむふむ」
畑部「ところで新畑さん、遊牧の成立に必要不可欠だと言われている三つの技術を知ってますか?」
新畑「…へ?う、う〜ん…お、お乳しぼりとか?」
畑部「あっ、凄い!!正解です、新畑さん!!」
新畑「えへへ…///」ポリポリ
新畑さんと畑部さんがお乳しぼりあえばいいのに
769 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/25(金) 19:06:02 ID:2yhg/Kwe
畑部「搾乳の技術は害虫さん達にとって有限な肉塊から、無限の食品を生産する事を可能にしますからね♪」
新畑「でも…後の二つは?」(に、肉塊って…)
畑部「去勢と、騎馬の技術です」
新畑「え……きょ、去勢って…あの?」
畑部「そうです。おちんちんもぎ取っちゃうアレです」
新畑「あ、ぅ…///」(そんな言い方しなくても…)
畑部「良いですか。去勢の技術は、オス同士が多数群れの中にいる事により発生する闘争を制限し、安定した群れとして人間が支配する事が可能にします」クスクス
畑部「そして騎乗の技術はそうやって、闘争を制限し増えていった家畜達と放牧範囲の拡大に人間の機動力を対応させられる様にするんです」
新畑「な、なるほど…だから必要なんだ…」
畑部「では本題に戻って、二つの説ですが…これは、これら三つの技術をどういった過程で手に入れたかという推測でもあります。まず第一の狩猟社会起源説では……」
畑部「森林で狩猟生活を送っていた人々が、その周囲の草原で群れを成す有蹄類の動物に目を付けた」
畑部「始めはこれらの動物の後に従ってく形で彼等と関係を持ち始めたんですが、やがてこれらの人々は搾乳、去勢、騎馬の技術を獲得」
新畑(やっぱり、違う……)
畑部「ついに動物の群れをほぼ完全に支配する事に成功し、ここに狩猟社会とは異質な遊牧社会が成立した。という風に説明されてます」
新畑「へぇ、動物に人間がくっ付いてったんですねー」(私にこうして話してくれる部長さんは…思教の時とは……)
畑部「フフ…確かにユニークな発想ですが、生物学的な立場からすると例証にとぼしいみたいです。現在最も説得力が、あるのはもう一方の説ですね。つまり…」
新畑「…農耕民から?」
畑部「えぇ。この説では西アジア南部のオアシス地帯で狩猟民が農耕技術を身に付け、定住を始めたが、時たまオアシス周囲の動物も殺して食糧として利用していた。と」
畑部「そのうち若干数をオアシスに連れ込み飼育を開始。ところがオアシスの人口が増加し始めると動物に対する需要が増大し、より多くの動物が必要となってくる」
畑部「そこで乳製品を確保する為、牧畜技術の発明が行われたが、それでも増加する人口に加えオアシスは多数の動物を飼育するには狭すぎた…」
畑部「やがてオアシス内で動物を飼育していた人々は、ついに周辺の牧草を求めて再び草原へと出て行く事を決意。この過程で去勢、騎乗の技術を獲得……」
新畑(再び…出て行った…)
畑部「ここに動物との生活を専門とする人々による、遊牧社会が成立した――って風な説明がなされています」
新畑「……」
畑部「またオアシスとは別に灌漑が始まる事によって、農耕と牧畜が分離したとも考えられますねー」
新畑「灌漑とも、関係があるんですか…?」
畑部「はい。雨水に頼っていた頃の農耕なら連作が効かない為、定住しても五年ないし十年程で移住します。しかし泉や川を水源とした場合は違う、一年間に何毛作も出来る」
畑部「この段階で分離が起きたと言われています。なぜなら雨水に頼る農耕と違い、灌漑農耕はそこを草原で無くしてしまいますから、必然的に分離せざる負えなかった…と」
畑部「ま、どちらにせよ害虫さん達は…一度はその膝を土に埋めておきながら……農耕を捨てたって事です」
新畑「……やっぱり…農耕より、牧畜の方が良いと思ったんでしょうか?」
770 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/25(金) 21:09:51 ID:2yhg/Kwe
畑部「さあて、フフ…昔の害虫さん達の気持ちなんて分かりようもありませんが…私が思うに……」
畑部「彼等は敗者なんですよ♪」
新畑「…っ」
畑部「農耕の発達による人口圧力に負け、より劣った生産手段を取らざる負えなかった敗者……良かれと思ってその道を選んだ訳じゃない」
畑部「だってフフッ…不自然じゃないですか?動物を狩るんじゃなくて、支配して暮らすんですよ?まるで弱者の必死の知恵」
新畑(違う…)
畑部「遊牧の方が優れてるなんていうのは、害虫さん達の負け惜しみで…逃げ込んだ先の僻地で育まれた屈折したプライド…慈悲を素直に受け取ろうともしない」
新畑(また…また、あの部長さんだ…口調は落ち着いてるけど…)
畑部「獣と暮らし、己自身が獣と化した刹那的な思考の中で…恵みを乞わず、虚勢だけを張って……」
新畑(さっきまでの…部長さんじゃ…)
畑部「だからこそ彼等は……有史以来、今より草原がずっと広大だった頃から常に…一度は袂を分かった筈の農耕地帯に引き寄せられ、侵入し続けて来た」
畑部「それこそ虫ケラが光に吸い寄せられる様に…」
新畑「…部長、さん」
新畑「太古の昔から…ずぅ〜っと」
新畑「部長さんは、ホントに…」
畑部「憎んでますよ?」ニコッ
新畑「ぁ…」
畑部「私は、ヤツ等を、憎んでます」
新畑「あぁ…」
畑部「もちろん――私自身の純然たる意思で」
男「あれ?」
女「ん、どうした男。何でも聞いていいぞ?遠慮するな」
男友(うぅ…俺の質問は散々スルーした癖に…)
男「さっきまでの話だと…限られたメンバーとは言え国家の重要事項は国会で決められるみたいだし…じゃあ指導者は何するの?」
女「流石は男…うむ、非常に良い質問だ♪」
男友「うひょー、男サイコー」
女「ぶち殺すぞイカフライ。良いか?私達の指導者は、絶対的存在ではなく契約的要素が強い。きちんと権利と義務が定められてる」
男友「……」
女「そもそもだな。部族が連合し国家を作ってるという時点で、我々にとって危機による利害の一致や、結集した力で狙うべき獲物が迫ってるという事だ」
教科書的でごめんよ、遊牧民の特徴を物語中に出来るだけ多くつめこもうとした結果です
771 :
創る名無しに見る名無し:2009/12/26(土) 18:18:54 ID:hENIdpLI
男(そっか…女さん達は…普段は強力な権力なんて、俺達と違って求めてないんだ)
女「そしてその遊牧国家の指導者となると、やはり義務は必然的に軍事的な性質の強いモノになるだろう。遊牧国家において政治と軍事は分離不可」
男友(物騒な国だな…)
女「では具体的に指導者の義務とは何か?それは戦時においては『外敵に対して軍を率い勝利し、そこで得られた戦利品を公平に分配する事』」
女「平時においては『守るべき規律を定め、部民の平穏を確保し、巻き狩りの獲物を適切に分配する事』等だ…これらの義務が果たされた時」
女「最高の駿馬に最高の女…指導者には、戦争によって得られた『戦利品の最高の部分を第一に取得出来る権利』が保障された」
男「じゃあ義務を守れなかったら…?」(戦争前提の権利…)
女「さっきも言ったように、国会には『指導者の交代を決議出来る権限』もあるからな…ソイツと同じ特定の氏族から、次の指導者を再び国会で選出するまでだ」
男「成る程、そうやって有能な指導者を確保し続けるのか」
女「うむ。その氏族の中で最も戦争に長けた男を、な」
男友「強ぇ訳だ…」
女「フフ、だが軍事的資質を問われるのは指導者だけじゃないぞ?」
男友「え…」
女「国家の要となる国軍…これも通常の遊牧国家では遊牧民としての特性を引き継ぎ、氏族、部族がその重要な構成単位となっているからな」
男「えと、どうゆう事?」
女「つまりだ。遊牧国家では指導者の親衛隊を別にすれば、十人隊、百人隊、千人隊、万人隊という『十進法に基づく軍事組織』を所有してる」
女「……そしてこの大小の軍事組織は戦時に当たって特別に組織されたモノではない。こう言えば分かるだろう?」
男友「あ、兵民一c」
男「平時と組織構成が同じ?」
女「おぉ、やはり男は冴えてるな!!見事だっ♪」
男友「…ちくしょぅ」
女「そう。これらの『大小の軍事組織はぜんぶ平時における氏族、部族組織そのもの』日常的な社会組織をそのままの形で軍事組織として利用していて……」
女「百人程度の氏族員を持つ氏族の長は、その氏族を率い百人隊を…千人程度の部族員を持つ部族長は、その部族を率い千人隊を構成する」
女「だから平時における氏族長や、部族長は同時に『遊牧国家の軍の大小の単位としての指揮官』達でもあるんだ。コイツらも皆が皆、戦争に長けてなければならない」
男「権力は全て…徹頭徹尾、戦争の上手さにかかってるんだね…」
女「あぁ、それが我々の社会だ」
男&男友「……」
やっと終わったwwwメリクリwwww
772 :
創る名無しに見る名無し:
男(以前、畑部さんが言ったあの言葉は…)
『貴様等にとって指導者の一番の資質……殺しが、戦争が上手いからだろ戦争屋?』
男(こういう事だったんだ…)
女「男?」
男(そして女さんは、どれくらいの単位かは良く分からないけど…そんな彼等の指導者……)
女「…お、男?」
男「あ、うん…」
女「だっ、大丈夫か?少し疲れたか?」
男「いや何でもないよ、一瞬ボーっとしちゃって…」
男友(しかしコイツ等…)
女「そうか…無理はするなよ。一杯飲るか?」キュポッ
男「だ、だから学校ではいいってば…」ヒソヒソ
男友(ホントに、まだ付き合ってないんだよな?何だよこの愛情オーラは……いや、相当ありがた迷惑っぽくもあるけど)
男友(それに、俺は畑部さん一筋だから何だっていいが……コイツのどこが、女さん好みなんだ?今までの話聞いたら益々分からなくなった…)
男友(体はちっこくて細いし……思い当たるふしと言えば確かに、弓は妙に上手かったけど……それ以前から好きだったみたいだし……)
男友(男の良い所……いやでも…優しさなんて…あんな社会で育った女さんの中で、そんなに強い魅力に成り得r)
―――バキィ!!
男友「ぐおおおぉぉ…て、蹄鉄があぁぁぁ……」ドクドク
女「ボーッとするなイカ野郎!!講義中だぞ!?」
図「おっ、お願いですから…うぅっ…なるべく図書室では静かにってあの人にぃぃ〜〜…うぇぇぇ…」ビクビク
男「すいません、ごめんさい。分かりましたから泣かないで下さい」
・・・・・・
女「〜という訳で、今回の試験範囲ではチャガタイ・ハン国やイル・ハン国…」
男友「ゔぅぅ…」ズキズキ
女「これら教科書に出てくる様々な遊牧国家『ウルス』…コイツを虫ケラ共の持つ確たる領域国家という概念で、理解しようとするのは重大な誤りだ」
女「その証拠に、ウルスは現在のモンゴル語で『国』と訳されるが…中世モンゴルの歴史書である『元朝秘史』の漢訳でも、ウルスを『国』と訳してる場合が多い」
女「ところが箇所によっては、この同じ単語であるウルスを『人衆』と訳してる例も少なくはないのだ。つまり国と人々を表す言葉が同一……これは即ちどういう事か」
男「……」