THE IDOLM@STER アイドルマスター part2
「あふぅ。今日もお掃除、お留守番、タイクツなの……」
窓を拭く夢を見ながら、夢の中で美希は呟いた。
ゲイノウ国のプリンス『プロデューサー』の『アイドル』を探すオーディション。
その名も『アイドル・アルティメイト』。今日はその決勝戦がお城で行われている。
“プロデューサーに選ばれたアイドルは、幸せな人生を送る事が出来る”
ゲイノウ国にはそういう伝承があり、年頃の女の子はみな、プロデューサーのアイドルになる事を夢見た。
「ミキも行ってみたかったな……王子サマ、どんな人なんだろ」
美希はアイドル候補生であり、アイドル・アルティメイトには美希の先輩達が何人か参加していた。
だが美希だけは見学も許されず、いつものように事務所で一人、お留守番と雑用を命じられていた。
「ミキだって、ステキな王子サマにプロデュースしてほしいのに……」
ゲイノウ国は、何故かどの代のプリンスもプリンセス(花嫁)を現役アイドルから選ぶ。
いつからある伝統か定かではないが、巷では「王家はロリコンの血筋」という黒い噂まで流れている。
したがってこの国で『アイドル』とは“未来のプリンセス”という意味も含まれているのだ。
ぐぎゅるるるるる〜〜。
「うう、夢の中とはいえお腹減ったの。そういえば今日、何も食べてないの……」
空腹で目覚める。夜食にとっておいたおにぎりを取りに事務所の冷蔵庫を開ける。
しかし、そこには――。
「あれあれ!? 無い……ミキのおにぎりが……ないっ!!」
あるはずのおにぎりが無い。好物であるおにぎりに関して、美希は結構うるさい。
研ぎ澄まされた思考が、その謎を解き始めた。
「そういえば……社長、出かけるとき、口にごはん粒と海苔がついてたの……」
美希は己の境遇を嘆いた。アイドルとしてデビューさせてもらえないばかりか、さらにこんな酷い仕打ちを受けるなんて。
保っていた心の線が切れた。美希は家出を決意し、事務所を飛び出した。
「ひどいよっ! ミキばっかりこんな……今頃みんな、会場のお城でご馳走をタラフク食べてるの!」
夜も更け始めていた。寒空の中、美希はアテもなく孤独な夜を彷徨う。
「おやおや……何を泣いているのかな、子猫ちゃん……?」
今居る場所も、自分がこの先どうなるかも分からない。
走りつかれた美希がうずくまり泣いていると、美希の前に怪しげな男が現れる。
それは、黒い魔法使いだった――。