THE IDOLM@STER アイドルマスター part2

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212瞳(1/3) ◆DqcSfilCKg

初産であることを差し引いても、娘の難産には正直、自分の時以上に血の気が引いていく感覚に襲われた。
既に産気づいてから十時間も経過しようとしていた。震えの止まらない手を、既に他人になって久しい夫の大きな掌が包む。
そういえばあの子を産む時もこうして貰った気がする。思い出とはなんと都合が良いのだろうか。
思えば、あの子には何度謝っても謝りきれない大きな傷を、大きな溝をつけてしまった。
あの子の弟でもあるはずなのに、さも私達だけの息子が亡くなったという意識が、あの子をどれほど苛ませたか。
慣れないことをしてでも笑わせようと無理をしたあの小さな女の子をどれだけ追い詰めたか。
今更になって責め立ててくる罪悪感に涙を流すことしか出来ない。親としての私はなんと脆いのだろう。
せめて傍にいてやりたい。励ますことだけでも、と息巻く私達をあの子はきっぱりと跳ね除けた。

大丈夫。私はもう、一人じゃないから

その瞳は泣きじゃくるだけのあの子ではなく、母親としてのそれだった。