THE IDOLM@STER アイドルマスター part2

このエントリーをはてなブックマークに追加
114風船の在処(1/2) ◆uQHpKry736
改めて見回せば、本当に大きなテーマパークだと感じた。このご時世、どこにそんな大金があるのかと思う程の開発。
オープン記念の握手会と、風船の配布。雪歩のアイドルランクに見合った大きな仕事であったが、子供相手のそれは滞りなく終了し、撤収は完了している。
その矢先の泣き声に振り向くと、空を見上げる男の子。彼の視線を追う。

これだ。そう思う。
それはもう、手を伸ばしたって届かない。遥か高みを目指して昇る球体は、雪歩に似ている。
11インチのラテックスが、ヘリウムを糧に上昇していく。
あの子は、俺だ。
背後から聞こえた泣き声と、悲しそうな表情。見送るあの姿は、まさしく今か。あるいは未来か。

「プロデューサー」
不意の呼びかけに、意識を戻す。視線を向ければ、雪歩の姿がある。
「風船、余っていませんか?」

雪歩に余った風船のひとつを手渡し、その成り行きを見守る。単純なことだ。男の子のところへ駆け寄り、ヘリウムは無いので自分で空気を入れる。サインをして、手渡す。
たったそれだけの事なのに、胸の空くような思いがする。風船には替えが利く、たったそれだけの事なのに。
男の子の笑顔が眩しくて、目を背ける。もう、あの風船は見付けられなかった。


「お待たせしてごめんなさい、プロデューサー」
ああ、と迎え入れて、お疲れ様と労う。何でもないように装う。
何だか放っておけなくて、と笑顔で話す雪歩を見て思う。この子はどこか遠くへ飛んで行ってしまった風船に、何か思うところはないのだろうか。
「でも、あの風船なら大丈夫ですよ」
「・・・何が?」
「勝手に飛んでいくことなんてありませんから」
「は?」
「中身はヘリウムじゃないですし」
振り向いて男の子を見ると、風船は彼の両手を行き来している。
まあ、それはそうだ。この子が口で空気を入れたのだ。浮かばないに決まっている。