ハルト「七夕だな」
倉刀「七夕ですね」
美作「七夕だね」
ハルト「というわけでお前たち!願い事は書いてきたか!」
倉刀「バッチリです。」
美作「へへっ笹も準備オーケイですぜ旦那!」
ハルト「よしっそれでは!」
美作「おお!」
ハルト「第一回!」
倉刀「第一回?」
ハルト「『織姫彦星お幸せに(はぁと)七夕を飾る素敵アート製作大会』ぃぃぃ!」
美作「ヒャッハー!」
倉刀「ひ、ひゃっはー。」
美作「倉刀テンション低い!」
倉刀「……ゴメン。」
ハルト「と、まぁ気を取り直してだ。要は七夕をテーマに皆で何か作ろうという話だ。」
倉刀「師匠にしては珍しくまとも……?」
ハルト「ただし!」
倉刀「じゃなかった。」
ハルト「各々の作品を比較し、最も七夕に相応しいと思われた作品の製作者の願い事を、敗者は叶えなければならない!」
美作「つまり、勝った人の願い事を他の二人が叶えてあげるってことだね。」
ハルト「いぐざくとりぃ。」
倉刀「それって最初から勝負が見えてるような……」
ハルト「因みに審査員はこいつだ。」
柏木「やぁ、久しぶり。」
美作「あ、柏木さんだ。」
倉刀「お久しぶりです。」
ハルト「二人も知っているように、こいつは私が嫌いだ。私も嫌いだ。なのでお前たちに偏った判定をしてくれるだろう。」
倉刀「ハンデ……ですか?」
ハルト「そのとおり。」
倉刀「……美作。」
美作「はいはい。」
倉刀「やってやろう。師匠の高い鼻を複雑骨折させてやる。」
美作「おーけー!」
ハルト「……ふふふ。」
柏木「じゃあ、いいかい?」
倉刀「あの、美作との合作は良いですよね?」
柏木「もちろん良いよ。えぇと、制限時間は今から三時間。作品のジャンルの指定は無し。場所はここ、ハルト邸エントランス……」
倉刀「師匠、覚悟しててくださいね。」
ハルト「望むところだ。」
美作「ばっちゃん、願い事は覚悟しててね!」
柏木「……それでは、用意……ドン!」
倉刀「さぁ、何を作ろうか?」
美作「僕は彫刻が良い!」
倉刀「三時間じゃあ厳しくないか……?」
美作「そうだねー……あっ!」
倉刀「どうかした?」
美作「ばっちゃんが居ない!」
倉刀「えっ!?……本当だ。」
美作「急がないと!えぇと……三時間じゃあ少ないよお……!」
倉刀「本当に。でもやるしかない。三時間で作れて、かつ師匠を越えられるもの……」
美作「絵画?」
倉刀「……駄目だ、時間が無い。」
美作「オブジェ。」
倉刀「たった三時間じゃ師匠を越えられるレベルは無理だ。」
美作「じゃあどうしろってんだよ!」
倉刀「ゴメンゴメン。……実は、ちょっと良い考えを思い付いてさ……」
美作「本当?」
倉刀「……ゴニョゴニョ……」
〜そして三時間後〜
柏木「さぁ時間いっぱい。君はもう戻ってきたけど……」
ハルト「……」
柏木「……来ないな。」
ハルト「……」
柏木「これはもう不戦勝かな?」
ハルト「……」
柏木「じゃあ、後十秒以内に戻らなかったら負けにしよう。10……9……」
倉刀&美作「ちょおっと待ったあああああああ!」
ハルト「!」
倉刀「ぜぇ……ぜぇ……危なかった……」
美作「うー気持ち悪い……」
柏木「……君たち、作品は?見当たらないけど。」
美作「のんぷろぶれむ!」
倉刀「向こうの部屋に……用意してあります。」
柏木「へぇ、じゃあ、行こうか。」
倉刀「どうぞ、お入りください」
ハルト「……これは?」
柏木「へぇ、意外だな。」
美作「僕たちの作品は、これです!」
ハルト「料理か。」
倉刀「愛情は入ってませんが、精一杯作りました。」
美作「さあ席について!」
柏木「じゃあ、いただくよ。」
美作「ほらほらばっちゃんも。」
ハルト「え?私もか?」
倉刀「師匠だけじゃなく、僕たちもです。」
美作「皆、席についたー?」
美作「それじゃあ皆で!」
「いただきます。」
柏木「……うん。美味しいよ。」
倉刀「ありがとうございます。」
ハルト「すまないが、醤油をとってくれないか?」
美作「はいはーい。」
柏木「……ふぅ。美味しかった。」
美作「でしょ?」
柏木「だけど、作品が料理とは……わざわざ自分たちの苦手分野を……。」
倉刀「ふふふ、早とちりしてもらっては困りますよ。」
柏木「……?」
倉刀「僕たちの作品は料理じゃありません。美作。」
美作「ほいほーい、デザートお持ちしまーす!」
柏木「?」
倉刀「窓、開けますね。ほら、天の川が綺麗です……。」
ハルト「……成る程な。」
倉刀「ところで柏木さん、師匠の作品は?」
柏木「いや、まだ……」
倉刀「じゃあ師匠、お願いします。」
ハルト「わかった。」
柏木「バイオリン……?ああ、そうか、そういうことか。」
倉刀「そういうことです。」
美作「デザートお持ちしましたー!」
ハルト「少しチューニングを。」
柏木「君たちの作品は――」
倉刀「――『幸せ』です。」
美作「どうですか。」
倉刀「晴れた七夕に、天の川の下で、師匠のバイオリンを聞きながら、皆で食卓を囲む……これ以上の幸せは無いです。」
柏木「……うん。素晴らしい作品だ。」
美作「でしょ?」
ハルト「まさか私の作品を読み、それを利用するとはな。」
倉刀「正直ヒヤヒヤしてました。曲じゃなかったらどうしようって。」
ハルト「はは。じゃあ、いくぞ……。」
ハルト「……即興曲を一つ……」
美作「ところで――」
倉刀「ん?」
美作「――勝敗はどうなるの?」
倉刀「美作、お前そんな……」
柏木「ん?ああ、それはもちろん――」
美作「もちろん――」
柏木「――ハルトシュラーの勝ちだよ。」
美作「――僕たち――ってえええ!?」
柏木「だってそうだろう。君たちの作品は彼女の作品ありきの、他力本願なものだ。残念ながら、彼女には及ばないね。」
美作「そんなぁ〜!」
倉刀「じゃあ……」
柏木「それではお待ちかね、だね。」
ハルト「楽しい罰ゲームたいむだ!」
美作「うぅ……」
倉刀「まぁ、うん。」
柏木「ではお願いごとをどうぞ。」
ハルト「ふふふん、では二人とも、よく聞け。私の願いは――」
倉刀&美作「……」
ハルト「――『来年は私に勝つこと』だ。」
倉刀「え……」
美作「え?」
ハルト「……頼むぞ、二人とも。」
倉刀「……は、はい!頑張って、一人前に成ります!」
美作「ううー厳しいなー。」
柏木「はは、良い師匠じゃないか。」
倉刀「ですよね!」
ハルト「止めろ恥ずかしい。」
美作「ばっちゃん大好き!」
ハルト「馬鹿もの、止めろ!」
柏木「はは、君がこんなに顔を赤くするのを初めて見たよ。」
ハルト「ば、ばか!お前たちもやはり未熟ものに過ぎる!来年も再来年も打ち倒してくれるからな!覚悟しておけ!」
倉刀&美作「望むところだ!!」
ハルト「この未熟もの――――!!!」
おわり