藤子作品で萌え小説を創ろう

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1作者 R
パーマン NEXT Since 21th

パーマンの後日談を作成いたしました。
拙文ではございますが お楽しみいただければ幸いです。

所々、私が好きな漫画家さんの言い回しとか勝手に引用しています。
ここにお詫びとお礼を申し上げます。
最後に、こんな素敵な作品を残してくれた藤子先生に感謝します。

では。      2009.4.5
2Stage 1 帰還:2009/04/06(月) 09:23:50 ID:3F9hm0LF
ゝ「みなさん、ついに我々地球人は新たな歴史の1ページを開いたのです」ゝ

街の中を走る街宣車のスピーカー、そしてテレビから聞こえる
けたたましい音量の男性の声は、たしかにこのほしが今から直面する、
新たな歴史的出来事をつたえていた。

宇宙人との歴史的邂逅

そう。まさに今日、地球の、東京の大地に未知の宇宙人たちが降り立つのだ。
「地球人との発展的対話」
未来永劫の平和友好を求めて彼らは仰々しくやってくる。地球人も沸騰している。
しかし……
そんなニュースなどまるでちっぽけな出来事のように、地球はいつもの地球だ。
暑い夏の日。世の中の喧騒を別にすれば、このほしの自然の営みはいつもと同じ、
平穏で、夏草の緑が芽吹き、そして億万のいのちが生きている。


「それに 宇宙人はすでに十年も前にとっくにこの地球に降り立っていたのよ」
微笑みながら、長い恵まれた黒髪の、長身の女性はぽつりと呟いた。
「まっていた。ついに今日という日がきた」
うっとりして 清々しい表情をしている。
女は星野スミレという、二十歳になったばかりの元アイドルスターだ。
すでに芸能界からは退いている。いや、すでにという言い方はおかしいかもしれない。
だって、彼女が引退したのはこの日の前日。
あまりの突然っぷりに、宇宙人のニュース以上に世間を震撼させたあのニュースだ。

前日夜のニュース。
「宇宙人のニュースはこのあと詳しく。ここで緊急ニュースです。
女優・タレントの星野スミレさん 芸能界引退の速報が入ってまいりました。」

アナウンサーもたじろぎ、動揺しながら原稿を読んだほどである。会見場へカメラが切り替る。

「ご結婚ですか」 目をぎらつかせてスケベ顔のレポーターたちが突っ込んでいる。
その時スミレはただ「ええ」 とにっこり笑って会釈するだけであった。
「星野さん、星野さん、最後にお相手のお名前だけでも」
レポーターたちも必死である。食糧を求めて押し寄せてくる者たちのように殺気だって
会見場を後にするスミレを取り囲もうとする。
スミレは満面の笑みでこう答えた。
「わかりませんよ。まだ。でも、あたしはずっと信じてましたから」
3Stage 2 スミレのときめき(回想):2009/04/06(月) 09:24:54 ID:3F9hm0LF
ミツオさん。
あれは10年前。あなたとあたしはパーマンという、おまわりさんごっこをしていました。
おまわりさんごっこといっても 相手は本当のどろぼうや犯罪者たち。
ちょっとドジをすればたちまち殺されてしまいます。
でもあなたはドジでした(笑)。だから、あたしは何度もあなたのことを救いました。
あたしはあなたのお姉さん役 ついつい威張っちゃってあなたのプライドを傷つけましたね

でも、ある日 もう本当に精神的にダメで 子役としてもパーマンとしてもその圧力に
押しつぶされそうで でも誰にも悩みを打ち明けられないあたしに
まるであたしが星野スミレであることを知っているかのように あなたはやさしく
「いつも助けてもらってる。今日はボクが頑張る。だから無理ばかりしなくていいんだよ」
と言ってくれた。うれしかった。にこりとしてくれたあなたの顔がとても素敵だった。
あれがはつ恋だったのかもしれない。

それから あたしはパーマンのお仕事をしながら 実はあなたといるのが楽しかった。

ふたりで海で遭難した人たちを助けたあの日。お仕事自体はいつもと同じだった。
でも。
かえりにパータッチして下に夜の潮騒の海を見ながらいつものようにかえったあの日。

あなたとここでうみとそらを見た。ここでミツオといっしょにうみとそらを見た。
とてもきれいだった。とてもうれしかった。
そのことをミツオに言おうとしたんだけど…
けど…
なんだか急に恥ずかしくてたまらなくなって 何も言えなくなってしまって…
困ってしまって…あたしは…いつも見ている映画のマネをした
chu

ドキドキドキドキ……
4Stage 3 いちどめの別離(回想):2009/04/06(月) 12:44:23 ID:3F9hm0LF
でも そんなに幸せは長く続かなかった。

「優秀なパーマンをわが星に留学させる」
バードマンのひとこえであたしの目の前は真っ暗になった。
だって、その留学生があなたのことだったなんて!!  いやあああああああああああ

正直 あたしはサルやあのけちが行ってしまえばいいのに そう思ったの
暗く沈んで あたしはバードマンや全てのパーマンを恨んだりした
でも…   思い直した
あなたが優秀なパーマンに選ばれるんだもん 喜ばなくっちゃね そう これはよい事

最後の日 あなたとあたしはみんなと離れたところでおわかれした
あたしはマスクを取って 星野スミレであることを明かしてしまった
あの時のあなたの喜びようと言えばなかったわ ああ この人はスミレが好きなんだって

でもあなたは「パー子に会えたから良かった」 って言ってくれた。
あたしの瞳から涙があふれた。とめどなく流れた。

「また会おうね いや きっと会える 約束する」「うん」

あたしたちの頭上には真っ赤な真っ赤な空が広がっていた。
「夕陽ってこのごろ好きじゃなかった。これからあなたのいない長い真っ暗な夜が来るんだなって…。
とても悲しくて好きじゃなかった…」

「だけど今日は違うの。また明日って思えるの」 あたしは笑った。

好きな人がいるの  だから  また明日

あたしたちは手をつないだ 夕陽に照らされたふたりは金色に輝いていた。

そしてあなたは 真っ赤な空に星がまたたき始めるのといっしょに。旅立った
5作者 R:2009/04/06(月) 12:45:54 ID:3F9hm0LF
とりあえずここまで。

続きは夕方頃書きます。
6創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 11:57:39 ID:Fm86lNWl
平仮名と漢字って感覚的に使い分けてるんですか
7創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 12:01:50 ID:Fm86lNWl
10歳児でアイドル活動してたのか
今で言うU-15アイドルだったのね
8創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 12:47:50 ID:ILjB3s0A
続きに超期待
萌えというより青春物語風味な路線に感じるかもかも
9作者 R:2009/04/07(火) 16:19:32 ID:2KNfxlUl
昨日は調子が最悪で続きが遅くなってしまいました。

8さん ありがとうございます。ご期待に応えられるよう頑張ります。

>>6 意図的に使い分けています。難しい漢字もひらがなで表現したら
急に奥ゆかしさと言うか、詩のように響くことに最近気付きました。
この他にも、ダイレクトな動詞を使わないとかいろいろあります。

>>そこはこの作品の隠れた弱点になります。
設定は近未来の東京を企図していますが、元祖パーマン連載時から
リアルにパー子の年齢を足すと、彼女は50歳くらいになってしまいます。
和服の似合う麗人が谷崎のような幻想的な情景で昔の男に出逢うという
退廃的でまっしろな世界も面白そうですが、今回はあえてご都合主義で
二人の年齢は20歳、時代も平成からさらに先の近未来といたします。

それでは続けます。
10Stage 4 その時(回想):2009/04/07(火) 16:32:57 ID:2KNfxlUl
それからの出来事…
パーマンという組織は あたしが中学に入る時に解散した。
同時にコピーロボットの回収が命ぜられ、主人がすでにこの地球上にいない
あなたのコピーは「死」というフィクションで姿を消すことになった。
みんなかなしんだわ。あなたのおとうさんもおかあさんも友人たちも。
でも……あたしは泣かなかった
あたしはあの器械仕掛けには何の感傷も持っていなかったから。
あれはミツオくんじゃないって思っていたから

そして 地球の上から あたしの目の前から 諏訪ミツオくんは 存在しなくなった。

でも 数日後 あなたのお墓をはじめて見たとき、 あたしは泣きました
まるで 本当にあなたが死んでしまったかのような気持ちで
もう二度と会うことができなくなってしまったような気持ちで 切なくて 切なくて

あたしはそれでもあなたの帰りを信仰のように信じて ただひたすら
華やかな芸能界にいて一度も恋をすることなく あなたを待ちつづけました


そして


今日がきました  子供のように叫んでいい…?

うれしーうれしーうれしーうれしーうれしーっっ!!

理由なんてなんだっていいのです あのバードマンがテレビで全世界に叫んだこと

「おひさしぶりです 地球の皆さん 私たちパーマンこと地球外人類最終種は
あなたたちと交流せんがため 優秀なパーマンたちを地球に外交官として派遣します」

きっとミツオクン あなたね あなた以外の誰であるって言うの
今日がその日です。
11Stage 5 再会:2009/04/09(木) 12:56:32 ID:rQXazz9b
(暗い木陰にたたずむスミレ。目の先のUFOを取り囲む大衆の喧騒とは対照的に)


でも 一行の中にあなたはいなかった

あなたはいなかった

あたしはちょっと過剰に期待しすぎたのだろうか 年甲斐もなく少女でいすぎたのだろうか

おかしいね 馬鹿よね 何の連絡も取り合っていないのにはしゃいじゃって

やめちゃったよ お仕事 どうやって戻るんだろう

あなたと一緒にひっそりと海の見える丘の家に住んで いつまでも幸せにのんびり暮らすのが
あたしの夢だったのに あたし流の女の子の幸せだったのに

みつおくん

なきそうっ

あたしの膝の上にはまるで血のようにぽたぽた涙の粒が落ちた

ぽたぽた ぽたぽた (何か気配がする)

「・・・・・!」「・・・・・・!?」(気配がさらに近づく)

「やぁっ」
誰かがあたしの方を後ろから叩いた 誰?

「?っ?っ?っ?っ?っ?っ」

ああ そこにいたのは     紛れもなく

あたしのすきなひと      いとしいひと

ミツオくーーーーーーーーーーん

あたしは夢中で彼の胸の中に飛び込んだ
おっきくなって たのもしくなって かえってきてくれた彼のあたたかい胸の中に…

「よく待っててくれたね えらい えらい」
頭をなでてくれた あたしは童女のように泣きじゃくった しあわせで死にそうだった

「おかえりなさいっっっっっっっ」
12創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 03:16:30 ID:CX1SKqdm
あれ?須羽ミツオじゃなかった?
13創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 09:32:15 ID:R4WAvGYS
語呂合わせだから、須羽だね。
14作者 R:2009/04/13(月) 08:50:03 ID:RZytV3zh
>>12 >>13

ご指摘ありがとうございます。うっかりです。
以後、須羽に訂正いたします。
今日はまとめてアップします。

ちなみに知り合いから 最近の若い方はスミレとミツオの関係性とか
パーマン自体知らないんじゃないかと言われたので うざいようですが
下にウィキとスミレのアドを貼り付けました。
背景を知れば知るほど、この作品を理解していただけると思います。

ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3
ttp://sumiredan.fc2web.com/
15Stage 6 地獄の日々の記憶(ミツオの告白):2009/04/13(月) 08:51:50 ID:RZytV3zh
それからボクらは長く長く語りあった

なつかしい地球 なつかしいひとたち そして

なつかしい パー子

ボクは今までパーマン星であった様々な出来事をパー子に聞かせてあげた。
辛い辛い修行の日々 いや、辛いというより死と隣り合わせの過酷な修練…

殴られた 蹴られた 暗い部屋の孤独の闇に何日も閉じ込められた…

怖い 寒い 嫌だ お腹がすいた     寂しい…寂しいよう… 

おとうさん おかあさん

嗚呼、でも須羽ミツオは死んだんだ ぼくの辛さ 悲しみを知るものは他にいない
血と涙が地面に交互に落ちるのを見ながら、ボクは死ぬことばかり考えて
死の甘い世界に憧れて やがて暗い暗い闇の向こうに……光!?

そう 想い出したんだ!

それは

パー子  キミの笑顔だった。

生きなくては 耐えなくては 僕は先に死ねない 待っている人がいるんだ
長い長い年月 ぼくは耐えた そして遠い地球で君もその時間に耐えてくれた。
パー子 おめでとう ありがとう 今日がきたよ 何てすてきな日なんだろう
16Stage 7 宇宙人の真実:2009/04/13(月) 08:53:11 ID:RZytV3zh
スミレは哭いた。哭きながら震え 涙が枯れ果てるまで哭いた

どのくらいの時間がたったろうか
やがて落ち着きを取り戻した彼女は、ミツオと同じように昔話を始めた。
それはミツオの分身とブービーの死 パーやんが事業に失敗し、自殺した話など
暗い話ばかりだが ミツオが聞いておかなければならないことばかりであった。

ミツオは少年の頃のかけがえのない友情が胸の中に甦り、焼け爛れるほどそれが熱くなって
血の涙を振り絞った。ブービー パーやん 君たちは死んでしまったのか。
ぼくはまだ生きている。かつて死のうとした。キミたちは生きることができなかった。
人生とは何と無情なことか。許してほしい…会いたかったよ…嗚呼。

その時、一瞬、パー子の顔が曇ったような気がした。しかし、ミツオは気に止めなかった。
それよりももっと話しておかなければならないことがあるのに気付いた。

「実はね パー子」「ん?」 彼女はスミレと言うよりパー子と呼んであげたほうが喜ぶ。
ミツオは真剣なまなざしで話した  「バードマンは実は友好なんかで来ていない」

ミツオはスミレに背を向けて 夕暮れに映える丘の下の不気味な宇宙船の方を見た。

「バード星のヤツらは自分たちの種族が宇宙で最もすぐれた生物であると信じている。
大昔、ボクらが身に付けていたあの超人的能力も、言ってみれば彼らの技術力の証明だ。

彼らは 地球によく似た 特定の生物を中心とする高い文明を誇るほしを次々に潰してきた。
それらの様は残虐で 惨たらしく 欲望にみちた 汚らしい行為だった。

そして 彼らが考える次のターゲットこそ この地球なのだ

ボクはある日 そのことに気付いた。彼らは僕を洗脳しようとしたが、僕は頑なに抵抗した。
バードマンに一切荷担せず 嫌われ そして殺されかかっていたのを何とか免れ
この呪わしい日に自分の星へ降り立つ船にひっそり乗り込み きみのところへきた。

彼らはこれから 人々の記憶に残るパーマンのすばらしさ、かっこよさをいろいろ喧伝して
安心させきったところで本性を剥き出しにする。そのとき 地球人は家畜になる。
みんなが不幸になり みんなが悲しい最期を遂げる

そんなことはさせない 絶対に」

ミツオは強いまなざしでスミレを見た。
17Stage 8 愛の夜:2009/04/13(月) 08:53:58 ID:RZytV3zh
「よく わかんないよ」
スミレはねむそうなうっとりしたような顔をしてミツオを見つめた。
あたりはあっという間に薄暮となっていた。まもなく帳が下りる。

「あたしはミツオさんに会えて それだけで十分なの。
あなたに会えないまま おばあさんになってしまったらどうしよう、 
あたしはいつもそのことを思って とてもとても悲しんで暮らしてきたの。
ええ、あたしだってそんな地球の終わりはいや。バードマンは許せないわ。
パーマンセットがあればあなたといっしょに命を投げ出してでも戦うつもりよ。
それがあたしの知っているパーマンの使命…… でも…
でも、あなたは今日帰ってきたばかりじゃない。バードマンたちもすぐには動かないわ。」
パー子はぎゅっとミツオの手を握った。
「まだそんな難しい話はしないで しばらくはあたしのことだけ考えて」

「だめだっ!!」
ミツオは忌まわしいかのようにスミレの手を振り届いた。彼女には残酷な瞬間だった。
「ボクにはパーマンとしての誇りがある。この地球を守るために帰ってきたんだ。
それに……」
語気を荒げようとするミツオに 涙で潤んだスミレの表情が目に入った。
それは、勝気なパー子に絶対させてはならない表情だった。

「ご……ごめん」

「ううん。いいの。あたしの知っている 大好きなミツオさん。そういうところが
すきだったのよ、むかしむかしもね」
無理に強張った笑顔を作ろうとするスミレが健気でかわいらしかった。
とってもいとおしいものに見えた。こわれそうで いとおしくて いとおしくて

ミツオの中で何かが大きく弾けた。熱く、苦しく、どうにもならない情念が奔流のように
胸から湧き出した。獣のように湧き上がった。 彼の中のパーマンが張り裂けた。
今は世界なんてどうでもいい。世界はキミだ。

「さあ 抱きしめて」 月明かりに照らされたスミレは神々しいくらいに綺麗だった。
キラキラキラキラしたものが近付いてくる。ミツオが初めて見る「女」だった。
これは残酷な死神かもしれない おそれおののきながら ミツオもスミレの方に歩を進める。
でも そんなおそれは とめどもない愛おしさと切なさの奔流に押し流された。

「パー子ーーーーーーっっ」
ミツオはスミレを抱きしめた ああ、生きてるっ!!とめどなくふたりの瞳から涙があふれる。
 
 ただいま
18Stage 9 海と恋人たち(ミツオの見た景色):2009/04/13(月) 08:58:59 ID:RZytV3zh
長い夜が明けた。

もうパータッチは無理だ…

ボクは自転車を借りてきてキラキラと朝陽の差し込む海の道をスミレと走っていた。
「はあはあはあはあ」
きつい坂道 しかも悪路  でもボクは楽しくてしようがなかった

長い長い夜 ぼくらは恋人がしそうなことはできなかったけど
それよりもっと甘くてうっとりするような夜の木陰で肩を寄せ合って眠った。
もう会えなかったはずのふたり 長い長い年月を経て一緒にいる うれしい
地球のことは気になる だけど あと少しだけ神様 ボクに時間をください
この子をしあわせにしてあげたいんです

彼女には絶対いえないけど 僕はバード星で一服盛られている。生きられてあと数ヶ月。
そこで死に場所を地球に求めたんだ。次の生命を守るために ボクは華々しく戦って死ぬ。

でも パー子と会ってその気持ちに微妙な変化が起き始めた。僕はあまりに無鉄砲だった。

バードマンと戦って勝ち目なんてあるワケない。強がりだったんだ。簡単に殺されるだろう。
もともと策なんてないんだ。戦いは一瞬に始まり一瞬で終わるだろう…早く動いても意味はない。
だから、ボクがこの世からいなくなってしまうまで ぼくは人間としての暮らしに戻りたい
それから 思い残すことなくして 戦場に赴いて パーマンとして散っても遅くないよね……

「あーーーーっ きれいぃぃぃ」 ふたりの自転車が停まったとき スミレが叫んだ
目の前に 広大な海がひろがっていた。
碧い海……潮騒……波風で彼女の長い髪がしなやかに流れる。
アイドルの多忙さ ボクへの純潔で 彼女は海を恋人と眺めることがなかったんだ
ふたりは感動でジーンとした。「きれいだね」肩を寄せ合って眺めた。

「きれいだ」 海じゃない。 パー子(いや、今日からスミレ)がかわいい。 いとおしいよ。
おもわず僕はスミレの頬にキスをした。波音がザ−−−−ッと耳に響く。
「ん!!!!!????」ぽっとして動転するスミレ。かわいい。下を向いてる。

ああ神様
ぼくとスミレは今日 神様のおかげで 再び恋人になりました
でも あと何度 ふたりで朝日を見ることができるだろう…

そんな不安を掻き消すようにスミレが笑った。「ずーーーーっと一緒」

それでも今朝は世界が美しい
19Stage 10 うみのおうちでのできごと(スミレの見た景色):2009/04/13(月) 09:02:06 ID:RZytV3zh
「おなかすいたろ」
ミツオがあたしに声をかけてくれた。彼はとっても料理がじょうずだ。
世の中の奇蹟か 私と彼はいま、いっしょに暮らしている。
すてきな海の見えるおうち。夢だった。
それがあった。長年、廃墟になって誰も使っていないペンション。
ミツオと会って2、3日はホテルを転々としていたけど(もちろんプラトニックよ)、
4日目に風の噂でそこを見つけたあたしたちは、荒れ果てた部屋の隅々を
一所懸命お掃除して自分たちのすてきなおうちにしたの。
所有者も星野さんがお使いならと快くオーケーしてくれた。

らっきーーーーー!!

今朝もふたりは仲良し ふたりはウキウキ

ミツオの料理 ミツオの料理 今日は明太子のパスタですって

「んー、おいしー」
そう言ってあげたらミツオ すごく喜んでくれる。だって本当なんだもん。
ミツオも食べなよ、おいしいよ ……… おいしいね? ん!!あれ?
あれ。あたしの顔に何かついてる?ミツオクン……!?
あたしは彼の顔をじっと見た。 ないてる?

「何だかわかんないんだけど涙が出てきたんだ」

あたしは彼の頬を伝わる涙を拭ってあげた。あたしも泣きそうだった。うれしくて。
20Stage11 初めての夜:2009/04/13(月) 09:04:19 ID:RZytV3zh
その日の夜 この家に来て五日目が 恋人の 初めての夜になった。
その晩は 潮騒の音と満月 ふたりだけの世界
「きれいだ」 ミツオはスミレに優しく呟いた。

いま スミレがずっと待ちこがれていたかもしれない最高の瞬間が訪れる…

「ミツオクンはあたしのこと好き…?」
「うん。」ミツオは子供っぽく照れながら言った。「かわいい」スミレが狡く笑った。
「でも、あたしはおてんばなパー子よ。あなたがいつも意地悪してた。」
少し酔っていたのか、ミツオはその言葉に激しく反応して叫んだ。
「ちがう!すっごく好きだ。子供の時から最高に好きだ。パー子がすきだったんだ」
言った後、初心なミツオははっとして顔を赤らめて我に返った。
でも、そんなミツオとは対照的に、スミレはうっとりとして妖しく艶めかしくミツオを見る。
「ねえ……」「星野スミレを口説いてみる?」

ミツオの態度が急に子供のように 硬直して がちがちになって
まあるくて瞳の大きい とてもきれいな 憧れのスミレの顔が近付いてくるのにめまいがした。
「ボクは…ボクは…ずっとずっと前から 子供の時からパー子のこと 星野スミレさんのこと…」

言葉が出ない。探しても探しても見当たらない。心臓の鼓動が早まるばかりだ。
そして
ミツオは激しくスミレに口づけした。一瞬だった。スミレも拒まなかった。
堰を切ったように 火が点いたように ふたりは月明かりの下 子犬のように求めあった。

男の人のてのひらって大きくて……あたたかくて……知らなかった…

スミレは泣いた。彼が動くたび、カナリアのような声で泣いた。
感動の中で打ち震える スミレが負ってきた歴史、情念の全てがここで満たされる。

痛み、恐怖は悦びの中に掻き消された というよりそれらを受け入れることが悦びでもあった

永遠に続くように ふたりの愛の営みは その別離の時間に比例するように何度も繰り返された。

究極の法悦  すべてのあとで ミツオはスミレを優しく抱きしめた 女はぐったりしていた
目には涙が光っていた 安らぎ 様々な苦悩から解放された笑顔だった。

「スミレ。キミはもうひとりじゃない。ぼくがいる。ここにぼくがいる。
君はこの世界で……ひとりぼっちなんかじゃない!!」

ミツオは再びスミレの唇に優しくキスをした。そして、哭いている女の耳元で呟いた。
愛してる スミレ この生命 全部キミにあげます
21創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 13:32:48 ID:BwuSoLIm
続きは?
22Stage12 WEEK END:2009/04/19(日) 10:12:01 ID:GqeAg5kn
爆音 悲鳴 怨嗟 混乱 暗黒 ……

ヒトは神の存在を否定した。
おのれに降りかかった悲運を呪った。
すべてが終末に向かって動き出した。

父親が何者かに抵抗し 無残に五臓を砕かれ 死んだ。
助けようとした母親も 瓦礫の下で何かを叫んで 死んだ。
その傍らに… 遺されたこども… 朝から叫び続けている

おとうさん おかあさん

泣き叫んだ 血を吐きながら 叫び続けた

そのとき

何かが光った

何かが鳴り響いた 

暗く 地面が揺れた

子供の首が あまりにも惨く 引きちぎれた。
誰かに助けられることもなく 
その生命の最後をいとおしまれることもなく
かれは あとかたもなく 消えてしまった
23Stage13 バードマンという名の悪夢:2009/04/19(日) 10:23:13 ID:GqeAg5kn
彼らの地球への着陸から半年が経過していた。
はじめは
地球の人々はどよめいた。すべての人々が歓迎し 幸福を夢見た。
パーマンの仲間たち どうか仲良くしてください。
私たちはあなた方のことが大好きです。

大好きです……

しかし……
裏切り いや それはあらかじめ予定されていた謀略だったのだろう。
世界中の政府が複数のパーマンとその能力によって封じられた。
逆らうもの 怨むもの そうした抵抗の力には殺戮が加えられた。
無い力を振り絞って立ち向かった名もなき市民は爆風で吹き飛ばされた。
どうにもならない どうにもできない 嗚呼…
果てしない絶望 逆らう力を失った人々は家畜同然の奴隷となり
パーマン星へと連れ去られるか 地球の再開拓のために酷使された。

「大体お前らは増えすぎたのだ。何を無駄飯食いをしているのだ。早く死ね」

バードマンが硬く冷たい声で言い放った。もう昔のバードマンではない。
ああ 見て欲しい。
宇宙船に列を成す人々。それは死の行進であった。
パーマン星での強制労働。灼熱の地表の上で永遠に掘削を続けなければならない。
何のためにそんなことを。逃げ出せばよい。生きて帰れないのは分かっている。

それでも人々は列を成した。希望?期待?それとも?
人間は何で行き続けるのか。何のために生き続けるのか。
24Stage14 戦線へ:2009/04/19(日) 10:24:55 ID:GqeAg5kn
「さあ 行こう」
久しぶりのパー着であった。
スミレはわくわくしながらバッジをつけ、マスクを被った。
そして ミツオのいつもの熱い抱擁で安らぎを得た。
「これで最後かもしれない…」
そんな想いが脳裏をよぎった。おそらくそうなるだろう。

東京に セワシ博士と言う理工学会の若き秀才が居た。
ミツオはバードマンたちが本性を現す数日前に彼を訪問し、
今後世界で起きるであろう悲劇と 彼らを倒すための秘策を打ち明けた。

セワシは驚愕した。驚き尽くして、彼への惜しみない協力を約束した。

「あれは本物のバードマンたちではありません。」
「コピーロボットたちなのです。」

ミツオが13歳の春だった。パーマン星で突如、悲惨な戦争が勃発した。
コピーロボットたちが宿主に対し、正面から自分たちの存在を主張してきたのだ。

おれたちの権利

最初 バードマンたちは労働争議的な主張としか思わなかった。
しかしそれは 宿主たちを滅ぼして自分たちの国を作る 下克上の表明であった。

完全に油断していた。完全な忠誠などないということを思い知った。
10日間の戦争後、バードマンは殺され、コピーロボットたちを頂点とする
新しいヒエラルキーが形成された。

幸い。
バードマンから閉じ込められ 戦闘への参加ができなかったミツオは
生きることだけは許された。最下層の身分として。自爆要員として。

それからは地獄の日々。前にも書いたとおり。生き続けた。
でも 我慢できなくなって 地球のパーマンとしての誇りを守りたくて
ついに反逆して 逃げた。
逃げ際に毒を飲まされた。信用していたコピーで無いパーマンからだった。
残されたいのちはあとわずか。
きょう 戦いの日が来た
25作者 R:2009/04/19(日) 10:34:03 ID:GqeAg5kn
訂正です。
ボケッとしていました。
セワシ博士を出来杉博士に全変更いたします。
ごめんなさい。なぜ間違えたんだろう。

ところで 21 さんありがとうございます。
読んでくれている人なんかいないんじゃないかと思って
キリのいい初夜のシーンでやめようと思っていました。
もうちょっと描いてみようかと思います。
ただ、話はどんどんつらい展開になっていくと思いますし
細かいところもきっちり書いていきたいので
今日はここまでとし、また後日書き始めます。
26創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 10:21:13 ID:r1f82GLT
せっかくスレ立てて書き始めたんだから、最後まで書こうよ
27作者 R:2009/04/20(月) 18:33:46 ID:uc98giy5
>>26
本当にありがとうございます。励みになります。
がんばって近いうちに続きをアップします。
28創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 01:03:04 ID:uPOmDNba
近いうちねえ
藤子作品ってスレタイでパーマンだけなのどうにかなんない?
29創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 05:58:46 ID:3BmHNPmc
他の人が書くのを待ったら?
30創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 22:48:10 ID:pmAYp1UV
とりあえず保守
31Stage15 光明:2009/04/27(月) 20:34:49 ID:EqBnEryV
「あなたの提供いただいた資料から コピーロボットの弱点を突き止めました」

さすが秀才だ。もう戦いは始まり、世界に悲惨が広まっているが、
かれの発明でボクの戦いが無駄死にに終わらないことになった。勝てる!

パーマン星を出るとき、必死で盗んだコピーロボットの設計書。
その分析を買って出たセワシ博士がみごとに人類を救う処方箋を設計した。

「すべてのコピーロボットが機能停止に陥り、ヒトでいう死に至ります。」

コピーロボット間の意思伝達などを司るデジタル信号のようなものが
出来杉博士によって解明された。この信号のコードを「END」にあたる
組み合わせに書き換えて発信すれば、たちどころにすべてのコピーロボットの
動きが停止する。これはすごいことだ。
32Stage16 幼子の涙:2009/04/27(月) 20:36:04 ID:EqBnEryV
出来杉博士の開発まで、ボクとスミレはパーマン1号と3号として
久しぶりに爽快な戦いを繰り広げていた。
しかし、相手もパーマン並みの猛者だ。たしかに手ごわい。
でも、ふたりで力を合わせて、勝ち続けた。多くの人々の危険を救った。
「生きて…生きて…がんばるのよ。あなたのいのちの灯は消させないわ」

血だらけで、目を閉じて唸っている幼子を抱いてパー子は大粒の涙をこぼした。
涙が、幼子のやわらかく小さな頬をつたう。 幼子は 笑った。
33Stage17 よかった・・・!!:2009/04/27(月) 20:36:57 ID:EqBnEryV
「ねえ、パー子」
夕陽に照らされた一面の焼け野原。傷だらけ血だらけの僕らは小高い丘に立っていた。
「なあに?」
かわいくてまあるい顔の女の子。それが、無類の強さで、必死に戦っている。
でも、腕は擦り傷だらけ。顔も黒くすすけている。血もたくさん出ている。
途端、ボクは胸の奥がたまらなく熱くなって、血を吐くように叫んだ。
パー子を強く強く抱きしめた。マスクから伸びた彼女の長い髪が風になびいている。
「痛いよぉ」
「ごめんね。ボクがまた君に会ってしまったばかりに、こんなつらい思いをさせて…」
ボクは泣いて泣いて泣きじゃくった。パーことは幸せな再会を果たしたかった。

手が 傷だらけだけど 白くほそい指が僕の頬をつたう涙をそっとぬぐった。
「ありがとう、ミツオくん。あなたが帰ってきてくれてあたしは幸せなの。
こうやってまたパーマンになってる。悪者と戦ってる。いっぱいいっぱい困ってる人たちを
救うことが出来てる。すばらしいことよ。そしてあたしの横にはすてきなすてきな…」

「・・・!?」
びっくりした。パー子の不意打ちのチュウ。
「あなたに会えてよかった。」

大切な人がいる。ぼくもきみにあえてほんとうによかった。 
34創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 22:42:09 ID:9dXtWgRb
描写不足なのかなんなのか、場面ごとの状況がよく分からない。
読む側の気持ちになって、落ち着いて推敲してほしい。
35創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 18:25:28 ID:+q+6SauY
ちょっと説明不足なところはあるね
例えば>>24で「戦闘に参加してなかったミツ夫は生き残った」とあるけど、
この後、「信頼していたコピーでないパーマンに毒を飲まされた」となっている。
地球から留学したパーマンがミツ夫以外にいるのか、それとも別の惑星の
パーマンでバード星側についているのかとか、ちょっと判り辛い。
ミツ夫が自爆要員として生き残ったとなってるけど、自爆要員ってのは
具体的に何なのかよく判らない。
もうちょっと細かい状況描写があると良いと思う。
36創る名無しに見る名無し:2009/05/02(土) 00:25:50 ID:7u67Sd2l
保守
37創る名無しに見る名無し:2009/05/02(土) 00:35:34 ID:g/ZAwlXI
この板保守いらんですよ
38創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 17:33:22 ID:N9CI7LUy
保守というか待機?
39創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 00:15:02 ID:ykGRjr9t
萌え小説よりもキモイんですここ
40創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 23:32:15 ID:GLYJqJY5
まぁとにかく最後まで書かれるのをまとうよ
41創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 04:06:02 ID:WMoQJKhy
>>40
そうだね…スマソ
42創る名無しに見る名無し:2009/05/10(日) 02:17:07 ID:oTtKFdYL
ミツオ「くん」はどうしても抵抗があるな。
やはり、スミレには「さん」で呼んでほしいな。
続き期待しています。
43創る名無しに見る名無し:2009/05/10(日) 10:57:29 ID:TR8oBXZD
作者さん頑張って!
44創る名無しに見る名無し:2009/05/10(日) 18:32:31 ID:bFYXcRjN
スミレが本当に「サルやあのケチが」みたいな言い回ししてたら幻滅だなw
45創る名無しに見る名無し:2009/05/11(月) 05:05:59 ID:PZuXgOAC
すみれ糞ビッチ
46創る名無しに見る名無し:2009/05/11(月) 06:51:49 ID:JHSItEYR
続きを早く読みたいです。
47作者 R:2009/05/11(月) 20:29:49 ID:VcjByBf0
久しぶりに書き込みいたしました。
創作板の片隅に書き殴っている、こんな拙い作品に目を通して頂いて、
本当にありがたいです。早く読みたいのお言葉には感激しました。
また、真剣に私の作品の悪い部分を分析して頂き、的確なアドバイスを
書いてくれた方にも深く深くお礼申しあげます。
はっきり言って、どういう終わり方をさせるか悩んでいたのですが、
アドバイスですべてが解決しました。また、自分の未熟な部分も分かり、
ここに書き込んで本当に良かったと実感しています。
さて、いちおう私の手元では作品は完結しているのですが、皆様の反応を
伺いながら、小出しにして、より良い終わり方をしようと思っています。
今日は3話ほどをうpします。
48Stage18 ジャン:2009/05/11(月) 20:57:43 ID:VcjByBf0
「久しぶりだな、ジャパニーズ」
出来杉博士の研究所へ向かう途中、ふいにミツオに声をかける男が居た。
それまで、勝利を前に歓喜に満ちていたミツオの顔がさっと青色に変わった。
「あっ、お、おまえは・・・!!」
茶色い髪、センスの佳い洋装、煙たいシガレットを吹かせて塀に腰掛けていたのは、
「そうだ、ジャンだ。また会ってしまったね」
男はひょいと塀をとび降りるとミツオの前に立ちはだかった。
「なぜここに・・・・、しかも・・・よくもまあ抜けぬけと。」
ミツオの顔が紅潮している。怒りにみちあふれ、わなわなと震えている。
その男こそ、バード星でミツオとともに厳しい修行をともに乗り越え、そして裏切った・・・
「ジャン・プレートル」 かつてフランスから選抜されたパーマンであった。
でもなぜここに・・・ コピーたちと一緒に人間であるこいつもやってきたのか・・・!?

「ミツオ」
かつての親友は、いまや冷酷極まりない目つきで妖しくミツオに語りかける。
「お前が今から研究所に行って何をするかなんて僕には分かってるんだ。」
ミツオの顔がさっと土色に変わった。手が汗でびっしょりになった。
「でも。」 
近寄ってきたジャンは、静かにミツオの顎を右手で掴むと、ぐっと優しく持ち上げた。
「僕が愛した男・・・今度はそう簡単に地獄に突き落としたりはしないよ」
ミツオは思わず顔をそむけ、悔しいやら恥ずかしいやら、いろいろな感情が沸き起こって
耐えられなくなって歯を食いしばった。
49Stage19 堕天使の囁き:2009/05/11(月) 20:58:40 ID:VcjByBf0
「辛いだろう、苦しいだろう、でもこれが現実なのだ・・・・」
7年前…。
ミツオがバード星の凄惨な修行を前に精神を病み始めていた頃、声をかけてきたのが
色白で、背の高い、フランス語を話す先輩パーマンのジャンだった。

来る日も来る日も、自分と同じくらいの厳しい訓練、いや激しいシゴキを受けているのに
ジャンは表情ひとつ変えることがない。何だか、悪魔的な凄みさえ感じさせる。
対して、ミツオは時々半べそをかく。我慢強い方だが、耐え切れないレベルだから仕方ない。
あるとき、悪魔はその哀れな少年にこう囁いた。
「お前は何のためにここへきているのだ」
暗示的でもあり、哲学的な瞑想をもたらすようなひとことだった。
「わかりません。」 ミツオはただ、そう言った。
ジャンは傷だらけの顎をさすりながら、つばを吐いた。
「こんなの訓練じゃねえよな。」
ミツオの顔がハッとなった。必死にこの年長者の顔を見つめた。
ジャンは、そんなミツオの顔を見てつぶやく。
「でも死ぬんじゃねえぞ。それがいちばんみっともねえ。」
50Stage20 廃人窟:2009/05/11(月) 20:59:48 ID:VcjByBf0
そこは廃人窟と呼ばれていた。
コピーのクーデターの後、世界中から集まっていたエリートパーマンたちはゴミのように
ここに押し込められ、ミツオとジャンの他に、何とか生き延びた者たちがそこにいたが、
彼らは特別に情けをかけられた者たち=廃人と呼ばれ、苦しい日々を送っていた。
なお、壮年の、コピー軍団と正面から闘った多くのパーマンたちはすでにこの世にない。
戦死したか、犬ころのように虐殺されたかのどちらかである。
沈黙して動かなかった者、少年だったために(バードマンの計らいで隔離され)戦いに
加わることができなかった者たちが、特別な恩赦でここに監禁されている。
しかし、扱いは犬以下、訓練と称した地獄のカリキュラムで、事故死を前提に飼われている。
ふたりはよく生き延びたものだ。
ただ、彼らに残された時間もいつまであるか分からない。
ある年齢に達すると他国(惑星)侵略時の前線に立たされる。
彼らが自爆要員と呼ばれているのはそのせいだ。

朦朧とした苦しい日々。
ただ、地獄の中にミツオはジャンという光明を見出した。
彼が朴訥と発する人間の言葉に耳を傾けることが多くなってきた。
「この人はまぶしい」
尊敬。地球で中学校に行くことはなく、部活も経験しなかったミツオには先輩というものが
いなかった。家庭にもガンコという妹はいても、兄貴はいなかった。
初めて抱くちょっと年長の者への感情。
たしかにジャンは何も手取り足取り教えてはくれないし、そういう状況でもない。
でも、自然なかっこよさ、ニヒルな笑み、諧謔的に現況を俯瞰する姿勢が魅力的に映った。

今日も……
ミツオが蹴りを入れられる。ジャンが棍棒で殴られて地面に倒れる。厳しい一日。

血の海に倒れた二人の  目があった。

「僕はジャンさんの言うように死んだりしないよ。生きる。だからジャンさんも耐えて」
ミツオは、胸の底から言いたかったことを、ジャンの目をしっかり見ながら言った。
このときばかりは一瞬、クールなジャンの顔がほころんだように見えた。
「そうだ・・・・いきるんだ」
51創る名無しに見る名無し:2009/05/13(水) 17:16:09 ID:eoHloVLl
ちょっときつい事いうようだけど、「反応を見ながら」と言われても
ここで話を切られると、すごく反応し辛い。
せめてミツ夫とジャンに何があったのか、一区切りつくまで投下して欲しいな。

あと、今回も少し説明が足りない。冒頭でミツ夫が研究所へ行くとなってるけど、
どこから行こうとしてるのか、この時パー子はどうしてるのか、
さらっと書いておくだけでも状況が見えてくると思うよ。
52創る名無しに見る名無し:2009/05/13(水) 18:26:43 ID:1txZsxaL
説明は確かに足りないけれど、唐突に出てきたジャンが今後、どう絡んでくるのかイマジネーションは膨らみます。
ただ中断をいきなりされると反応し辛い面もありますね。
結構、みんな固唾を飲んで見守っている感じですし。
益々続編への期待が大きな物になっていきますよ。
53作者 R:2009/05/13(水) 19:09:58 ID:O3rLC9oF
>>51
きついことも何も真剣に指摘して頂いてありがたい限りです。
説明不足についてはおっしゃるとおりです。
ただ、私の創作法が文を極端にシンプルに削っていくやり方で、
詩に近い印象を目指しているので、技術が稚拙な現段階では
皆様に分かりにくい描写になってしまっていると思います。
そこは大いに改善点です。

続きはもう少しまとめて出しますが、慎重に推敲をします。

亀レスですが、パーマンが終われば、リームや怪物くんのパロを
用意しています。ここは藤子キャラで、としていますので。
54創る名無しに見る名無し:2009/05/14(木) 02:57:49 ID:HMp0MXqY
とても面白く読ませて戴いております。
出来れば早くパーマンを終わらせないで欲しいです。
ミツ夫くんやスミレちゃんの儚くも悲しい夢の再会をもう少し楽しませて下さい。
懐かし漫画板のパーマンにこちらが紹介されてから来て以来、凄く楽しいんですよ。
55Stage21 慟哭:2009/05/15(金) 22:37:33 ID:egz8Fn2B
耐えた。生き抜いた。
ミツオは17歳の逞しい青年になっていた。
ジャンは・・・
当然生きている。18歳の、赤い薔薇がよく似合う絶世の美少年に成長していた。

ところで……
この頃、コピーたちの彼らに対する仕打ちは嘘のように柔らかいものになっていた。
地球の運動部で課せられる特訓の方がはるかにキツイと思うくらい、
日常のありふれた、緩慢な日課に変わっていた。それがなぜなのかはミツオには分からない。
「自分たちの心身が強健になったのかなあ」 そう思ってもみたが、どうも違うようだ。
バードマン(コピーの帝王)への謁見が不思議なことに可能になったことを考えても…。
とにかく、人間世界の時のような、あらゆる自由行動が認められるようになっていたのは、
ミツオにとってまったく理解できない、大いなる謎であった。

「お前も吸ってみるか」
ある夕方、ジャンが差し出したのは、バード星で栽培されているタバコだった。
彼は少年の頃に初めてタバコに手を染めたらしい。かなりきついヤツが好みだ。
「いや、ボクはこういうのは苦手なんで」 ミツオはやんわり差し出された手を断った。
「ミツオ…」 夕映えの向こうに、大人びたクールな男の顔が苦笑を浮かべていた。
「男はな…」 「悪いことも若いうちから大いにやれ。たった一度の人生だ。怖がるな。」
含みのある言葉に聞こえた。ジャンは大人になった、そして何か大きな秘密を隠している。
そんな気がする……。

「ジャンはフランスに帰りたいなんて思わないの?」 突如、脈絡のない質問が口から出た。
夕陽のあたる丘に腰掛けながら、ミツオはジャンの答えを待った。
「思わない。」意外な答えだった。「じゃあ、ここがいいの?」
ジャンは大きくかぶりを横に振った。「それはもっと辛いことだな」

「じゃあ、何でフランスに帰ろうと思わないの?」ミツオは不思議そうに訊ねなおす。
ちょっとしつこいかな、とも思ったが、訊かずにはおれなかった。
ジャンは夕陽の方向を見つめながら、嗤った。
「俺は孤児だったんだ。」

今までジャンが語らなかった彼の生い立ち。ミツオはそれを初めて耳にした。
「人間世界は冷たかった。話すとしたらそれだけだ。」

ジャンは懐からサングラスを取り出すと、それをかけて地面に寝そべった。
口元には笑みを浮かべていた。
でも……
ミツオには、広くて部厚いジャンの胸が泣いているように見えた。
たまらなく、切ない声が聞こえた。赤い空は、不安な薄暗さを深めていた。
56Stage22 沈む夜:2009/05/15(金) 22:38:24 ID:egz8Fn2B
気付くのが遅れた。
夜が深まった頃、決まってジャンは部屋から抜け出す。
誰にも気付かれたくないように、ひっそりとドアを開けて暗闇の向こうに消えていく。
それがここ最近。頻繁に繰り返されている。

「いったいどこへ行っているのだろう……?」
用を足すには長すぎる。誰かに逢いに行っているのか?でも女などこの星にはいないはず。
ミツオは好奇心が抑えられなくてどうしようもなくなった。
朝になってジャンに聞こうと何度か思ったが、聞いてはいけない話題のような気がして、
真相が分からないまま、徒に時間ばかりが過ぎていった。

「ついていってみるか……。」
ある晩、ミツオは決心をした。
何だかとても恐ろしい現実が待ち構えているような気がしたが、
秘密を突き止めずにはいられなかった。

その日も、いつものように緩慢な訓練があり、食事があり、一日がふつうに過ぎていった。
闇が深まっていく。バード星の夜は……満月(?恒星の衛星への照り返し)だった。
今日も、ジャンが 皆の寝静まるのを待って、ひっそりと部屋を出る。
「・・・・・・。」
遅れてミツオが、ドアの音、自らの足音に細心の注意を払いながら彼の足音をつける。

いつも知っている廊下が、暗く、とても長い道のりに感じられた。
闇の草原を走るように、不安を抱きながらひたむきに前を目指して歩みつづける。
今夜は少し肌寒い。バード星にも四季がある。いまは初秋であった。

突如、前の足跡が止まって、中に消えた。そこは見覚えのある場所だった。
「ここはバードマンの部屋じゃないか」
ミツオの頬を冷や汗がつたった。こんな場所へ何をしに来ているのだ…?
疑問を感じながら、次の行動を取れずにただ暗闇の中に身を伏せていた。
長い長い静寂の時間が過ぎていく。時々何か衝撃音のような激しい物音がする。
中で何が行われているのだろう…?

「あっ、そうだ。バードマンの部屋は天井から見えるはずだ。」
ミツオは突如、想い出した。馬鹿げているようで、本当の話。
時代劇のように、バードマンの部屋は天井から覗くことが出来た。
比較的行動の自由が赦されるようになってから、ジャンが面白がってミツオに
天井に通じる秘密の通路への進入方法を教えてくれたのだ。
よく見つけたものだ。ミツオはジャンの諜報力と行動力に感心した。
闇の中でミツオは、この時のことを想い出した。
「よし、思い切って登ってみよう」 ミツオは勇気を振り絞って行動に移すことにした。

「気付かれないように…細心の注意を払って…」
ミツオは自分に言い聞かせながら、かつて聞き知った秘密の入り口から天井へ登った。
抜き足差し足忍び足。こっそりひっそり息を殺して、以前開けたのぞき穴に近付く。
光が一本、薄暗い天井の闇に立ち昇っていた。ミツオは蛇のようにそこへ向かって這う。
そして、やっと辿り着いた目当ての光の筋の前で。ミツオはゆっくり腰をおろした。
「さあ、見るぞ…」
そう言い聞かせつつ、胸をドキドキ高鳴らせて、ミツオは小さな穴に目を近づけた。
57Stage23 淫夢:2009/05/15(金) 22:39:16 ID:egz8Fn2B
ミツオは思わず吐き気をもよおした。気持ち悪くてめまいがして、思わず顔をそむけた。

ミツオが秘密の覗き穴の向こうに見たもの。
それは、おぞましく、青春期の少年が見るにはあまりに刺激の強い悪夢であった。
「ジャン、どうして……」
気持ち悪さと交互に、とてつもない悲しみが襲ってきた。胸が張り裂けそうになった。

嗚呼! 光の向こうには、醜い獣と交わっている友、生まれたままのジャンの姿があった。
友は泣いている。獣の気味の悪い桃色の腕に巻きつかれ、気味の悪い液体に塗れ、
身も心も陵辱されて苦悶の表情を浮かべている。
何のためにあのジャンがこんな恐ろしい責苦を受けているのか……?
しかも、マスクに隠されていたバードマンの素顔は昆虫のような態で気味が悪く、、
コスチュームに覆われた裸身はケダモノそのものである。
(コピーでない本家のバードマンもこうだったのか…?)
しかし、今はそんなことはどうだっていい。
今すぐ、この天井を突き破ってジャンを助けたい!
突き上げられる感情は抑えきれない。咄嗟に、ミツオは本能的に天井を破って救出に向かおうとした。
でもそのとき…… 「来るな!」
ミツオの脳に念が送られてきた。それは強くて無愛想で、でもとても優しいあの人からのものだった。
「来るんじゃない」
「・・・」
ミツオは石のように動けなくなった。目の前の悲劇から友を救えないなんて考えられなかった。
ましてや、パーマンとして危難に見舞われている人を見殺しにすることなんて一度もなかったのに。
しかし、これは命令だ。 「行け!」
哭くことを必死で堪えながら、ミツオは昆虫のように暗闇を這った。
どこまで続くか分からない深い闇の中へ。 昆虫の姿は消えていった。
58Stage24 目覚め:2009/05/15(金) 22:41:17 ID:egz8Fn2B
何度もうなされた。枕は涙で濡れている。気持ち悪くなって起きれば窓の外に何度も吐いた。
生まれてきてこんなに気分の悪い夜は初めてだった。
学校でカバオやサブにいじめられて、その悔しさで寝付けなかったことは何度もあるが、
そんなこととは比較にならない。ましてや、地球から果てしなく遠い遠い孤独な寒い世界で
ひとりぼっちの自分。そんな時にできた唯一の友、ジャンがあんな目に遭うなんて・・・。

朝がきた。とても気だるい。
ベッドから暗い気分で這い出て、食堂へ行くとジャンが何食わぬ顔で食事をしていた。
「昨日のはなんだったんだ」 聞きたいのは山々だが、禁忌なようで近寄ることさえ出来ない。
ミツオはそうやってもじもじしていた。それを見て、ジャンは突然つかつかと傍に寄って来ると
眉一つ動かさず、告げた。  「飯を食ったらいつもの所にこい」

秋のやんわりとした太陽(?恒星の光)が地上を照らしている。
昼前、ミツオはそこへやってきた。ジャンと夕陽が落ちる頃によく来る丘の上の場所だ。
ここからは、地球で言う近未来都市的な佇まいのバード星の中心が一望できる。
ぼんやりと、その景色を見つめていた。
「みんなどうしているのだろう……。」
ふと地球のことが脳裏に浮かんだ。パパ、ママ、ガンコ、クラスメートたち。
そして       パー子……。

ああ キミはどうしているんだ。元気にやっているのだろうか。恋人はいるんだろうか。
いるんだろうなあ。星野スミレだからなあ。みんなが放っておくわけがないよなあ。
でも、いたとしても。キミがしあわせならいいんだ。ボクはそれで残念がったりしない。
ただもし、キミが待っていてくれているとしたら、とってもうれしい。
一目散に君の胸に飛び込んで、ただいまって言いたい。いっぱいいっぱいお話がしたい。
神様、どうかパー子とまた逢えますように…

「ミツオ」
悪夢から一転して幸せな妄想をしていたミツオに声をかけるものがあった。ジャンだった。
「やあ、ジャン」ミツオが挙動不審で応答する。顔は明らかに引きつっていた。
それを見て、ジャンは口元だけふっと笑って、いつものようにミツオの横に座った。
「見てたんだろ?」 「えっ!?」 ミツオは白々しく何も見てないかのような反応をした。
唐突で、あまりにストレートな切り出しだったので、ドキッとしたのだ。
「まあいい。」 ジャンは地球並みに澄み渡った秋空を眺めながら、機嫌よく笑った。
「お前には少々目の毒だったかもしれないが、あれが俺の秘密だ。」
「えっ」 昨晩、目の前で起きた悲劇をあまりにも朴訥と話すから、ミツオは呆気に取られた。
ジャンは手元の草を何気に何本か引っこ抜くと、意味なくふうっと吹き飛ばした。
「でも、でも、ジャン。君がどうしてあんな目に。」
今にも泣きそうなミツオを尻目に、ジャンは何でもない態で告げた。
「大したことではない。大したことにしないために、お前に来るなと言ったんだ。」
ああ、やはりジャンは念を送っていたのだ。パーマン・カリキュラムの上級技術だ。

「俺は」 ジャンはしばらく沈黙したあと、今度はミツオの顔をはっきり見ながら言った。
「あのバケモノ野郎のことが好きであんなことをしているわけではないからな。」
ミツオは顔をしかめながら、友人の口から漏れる事の真相に耳を傾けた。
59Stage25 訣別:2009/05/15(金) 22:48:16 ID:egz8Fn2B
「あんなヤツ、殺してやりたいといつも思っている。」
危険な発言だ。ミツオはひやりとして周りを見渡す。誰もいない。あるのは静寂だけだ。
「ただ」 ジャンの目の色が変わった。ギラリと鋭く光ったようにも見える。
「あのロボット野郎は保身のために様々なパーツを継ぎ足してバケモンになった。
強さを窮めている。あんなヤツに戦いを挑んだ所で、勝ち目なんてあるわけがない。」
目の鋭さに反比例して、ジャンの言葉はため息交じりだった。
やはりあれはバードマンの素顔ではなかったようだ。コピーの帝王は、自らが最強で
居続けるためにあんな不気味な妖獣の姿になっていたのだ。
思えば、哀れな敵である。反乱後の征服。何のためにどこへ向かおうとしているのか。
複雑な表情を浮かべるミツオ。ジャンは強引に彼の関心を自分に戻そうとした。
「そこで俺は何を考えたと思う?」
ジャンが時折見せる諧謔的な語り口。言葉は珍しく熱気を帯び、興奮が感じ取れた。
「俺は、自分と自分の大切な人間を守るためにこの道を選んだんだ。」
「えっ?」 ミツオの顔が疑問符だらけになった。すぐには状況が理解できなかった。
「いいか。俺たちは生き続けるんだ。いつかチャンスは来る。その責めはみな俺が負う。」
目が怖い、と思った。ギラギラと光り、獣のようだ。そしてその目はあの目と一緒に見えた。
「昨日のバードマン」

ジャンよ。
キミは僕を守るためにその体をケダモノに委ねたというのか。
それは美談なのか。
僕はその話に感動して泣かなければいけないのか。
少なくともボクはキミの考えについていけない。
キミはボクにその状況を知らせるために秘密の通路さえ教えたんだろう。あざといよ。

失われた信頼…… それは伝えまい。ボクを守ったつもりのキミを傷つけたくないから。

でも、見つめてくる目線からは顔をそむけたい。そうさせてくれ。
「・・・・・・・。えっ?」
そのときだった。
キミの唇・・・・・・ボクの唇を奪おうとした。
ああ!何なんだよ!!

ミツオは駆けた。草むらを必死に駆けた。夢の中のように、脚が重く、動かない。進まない。

それでも駆けた。君の歪んだ愛情は受け入れられない。ボクには大事な人がいるのだから。
60作者 R:2009/05/15(金) 22:51:34 ID:egz8Fn2B
今日はここまで。
BLとか耽美が嫌いな方には嫌なテイストだったかもしれません。
しかし、こうした演出も自分の中では必要でした。

さて、次回はちょっと悲し目のお話です。
スミレファンには申し訳ないですが、書いてみたいと思います。
61創る名無しに見る名無し:2009/05/16(土) 01:07:29 ID:pH14Wtke
PaPaPaで1号がパーヤンの唇を奪おうとしたの思い出した
62創る名無しに見る名無し:2009/05/16(土) 02:28:44 ID:2maa1gpK
ここの面白さが少しだけわかってきたぞ…
でも少しだけだぞ
>>39でキモイって言ってスマン

ほんとうに少しだけだぞ…
63創る名無しに見る名無し:2009/05/16(土) 03:00:04 ID:pH14Wtke
64創る名無しに見る名無し:2009/05/16(土) 04:02:16 ID:ri12IaZU
ごめん、「赤い薔薇がよく似合う絶世の美少年」にはちょっと笑ったw
65創る名無しに見る名無し:2009/05/16(土) 04:11:38 ID:+FMXx4di
地球でミツ夫の前に現れたジャンは一体、味方なのか敵なのか…と思ってたら味方?

ジャンが流した屈辱の涙が無駄にならない展開であって欲しい。
う〜ん謎が深まる力作ですね。次回スミレに何が起きるのか、それが心配です(笑)。
あ〜待ち切れない〜!
66創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 20:42:23 ID:m2XWJAK0
続きマダ〜(・_・;)
67Stage26 友情:2009/05/18(月) 15:44:01 ID:dVEJKSff
仕返しは…………なかった。
事件の 次の日も、また次の日も、ジャンはいつものジャンだった。
逆にミツオのほうが意識してしまっていた。すごく挙動不審だ。
ゆるい修練もミスってしまう。今までしなかった怪我もした。
気持ちを切り替えようと努力する。でも余計に意識して失敗を繰り返してしまう。
今までと違う意味でキツイ日々。 これが自分の限界なのかなあ、と情けなくなった。
しかし、考えても見れば、つい何年前かであれば、こんなつまらないミスばかりしていると、
鬼そのものの教官たちから撲殺されていたはずだ。事故扱いで死を賜っていただろう。
それが 鬼どもは笑っている。しようがないヤツだ、顔でも洗って来いというだけだ。
気味の悪いほどの優しさ。
その伏線は、自分が目に焼きつけた、あの気味の悪い光景にあったのかもしれない。
「ジャンは犠牲になってくれたんだ」
あの時は友人を否定した。嫌悪した。強いわだかまり。消えない。
でも、ジャンはそんな自分を憎んで、怖い視線を向けたりはしない。
なんだか複雑な気分になった。自分の生命を救ってくれたのはあの人ではないか。
それを憎んだりするなんて……。 ごめんといわなきゃ……。
でも    意地が邪魔して謝れなかった。
ずっとずっと 心を閉ざして友を避ける日々が続いた。恐ろしく長く続いた。
ジャンもそんな幼い自分を気遣ってか、わざと近付かないようにしているようだった。

バード星の四季が幾度か過ぎ、僕は大人に近付き、そうして運命の時がやってきた。
68Stage27 不信と不安:2009/05/18(月) 15:46:36 ID:dVEJKSff
優しくなったのは教官たちだけではない。あのバードマンもだった。
直接の対面、個人授業など、ぐっと距離の短い関係が築かれるようになった。
「ひょっとしてボクもジャンみたいな目に遭うんじゃなかろうか。」
嫌な予感がした。あれだけは勘弁してほしい。ミツオは体中がムズ痒くなる思いがした。
でも。
「お前みたいなの狙ってるもんか。俺は白いのが好きなんだ。」
ある日、訊いてもないのに酒を呑んだバードマンがミツオに絡んで大声で言い放った。
「ああそうですか」 それを聞いてミツオはほっとした。愛想笑いで返杯を飲み干した。
「ただな。お前にはやってもらわにゃならんことがあるんだ。」
ドキッとした。背中に冷たい汗が流れるのを感じた。何か突拍子もないことを言われるのでは。
「明日から特別な授業を組む。ハードだが、気持ちはゆったり構えてやってくれ。」
69Stage28 転落:2009/05/18(月) 15:51:17 ID:dVEJKSff
翌朝から始業が早くなった。メニューも他の連中とは全く別で、バードマンと1対1になった。
午前中は今まで見たことがない武器の使い方やあらゆる地球格闘技に対する返し方の訓練。
午後はバードマンたち、否、コピー帝国がめざす宇宙統一の思想、博愛精神などが説かれた。
これは違和感ありありだった。一見、善意に満ちた言葉で彩られているが、要は洗脳である。
大昔、ミツオが小学生だった頃、ソビエトなどでこういう教育が行われていたのだろう。
あまり身を入れることはしたくなかったが、逆らうのも何なので、黙って聞いていた。
しかし、そういう授業が延々くり返される日々が続いて、ある日バードマンが突如、
言い放ったひと言には、ミツオはさすがに強い憤りを隠せなかった。
「今日で授業は終わりだ。おまえはよくやった。これで地球を攻めても抵抗はあるまい。」

へ?今何と言った?地球を?ボクが生まれ育った あの大好きな故郷を攻めろだと?
「どういうことですか?」 詰め寄った。無我夢中だった。長い長い押し問答が続いた。
バードマンが言うには……

同じ種族同士で殺し合いを何千年と繰り返す人間たち。
他の生き物の領域を破壊してまであさましく生き続けようとする人間たち。
やがて技術を高めた人間たちは宇宙に侵略して他の星さえ荒らし始めるだろう。
そのために自分たちは粛清に向かうのだ。これは宇宙の意思なのだ。

なんて勝手な。僕は認めません。地球には悪意だけじゃない、大きな善意もあるんです!

最初は、バードマンも根気よく説明を続けた。しかし、だんだん、いらつきが顕著になってきた。
そして最後は   爆発した   本性を剥き出しにした。
「優しくしてりゃあ調子に乗りやがって!ようし、そんなにイヤなら目に物を見せてやる」
マスクを取り去った。威嚇のつもりか?あの妖獣の顔がミツオの前に曝け出された。
何て気味の悪い生き物なんだ! ミツオが思わずたじろいた瞬間。
部屋の隠し扉が開いた。屈強の荒々しい男たちが出てきた。激しい暴行が加えられた。
痛い 苦しい 殺される…… ミツオの意識は次第に遠のいて行った。
70Stage29 救世主:2009/05/18(月) 20:13:51 ID:dVEJKSff
暗い暗い穴倉の中で、ミツオの両の眼がうっすらと開いた。
「ああ・・・ぼくはまだ生きていたんだ。」
体が 信じられないくらいに重たい。でも、心は澄んで 穏やかで とても静かだった。
「こんな場所で ぼくは生きているか死んでいるか分からないまま終わっていくのか」
涙が出た。いっそのこと殺してくれればよかったのに。
そうしたら、意識なんて消えてなくなってしまって、辛くて惨めな思いをしなくて済んだのに…。

ミツオに課せられた懲罰は、虐殺ではなく、穴倉の中での終身刑だった。
辛うじて犬が食うような飯は出る。しかし、風呂に入ったり太陽を見ることは赦されない。
モグラや夜行性の虫のような生活だった。
「悔しい、悔しい」 ミツオは呪われた声をあげた。怨みにみちた獣のような声だった。
声が枯れるまで叫び続け、血を吐いた。固く冷たい石の隙間をかきむしった。
何日も何日も。苦しい日々が去らないのを呪いながらあがいた。

でも。 悲しんでも仕方がないじゃないか。
長い長い呪いの時間が過ぎて、そう思えるようになった。あがいても仕方がない。悟った。
気持ちが真っ白になった。とても綺麗な純白の気持ちになった。他のことも考えられるようになった。
「・・・・・・っ!!!」 思い出した。 ミツオの中に別の気持ちが降りてきた。
「そうだ! 地球を 地球を救わないと」 一気に冷たく静かな心に熱い爛れるような思いが沸騰した。
しかしここはどこかも分からない。自分が逃げることも叶わない。それがどうやって地球を……。
でも どうにかしなくては。壁を攀じ登ったり、飯を持ってくる守衛をどう襲おうか迷ったり、
いろんな思案をめぐらした。しかし、どれもしっくりこない。悩んだ。今日も暗闇の中で瞑想した。
深い深い瞑想…… その時だった。
「ミツオ、ミツオ」  一本の光の筋。その向こうに聞き覚えのある声がした。
「ああ、ジャン!」  そこには なつかしい友人の優しい笑顔があった。
「助けにきたぞ。よくがんばった。お前はまだ死んではならない。」
71Stage30 隠れ家:2009/05/18(月) 20:18:36 ID:dVEJKSff
秘密の隠れ家。
助け出されたミツオは、ジャンのバギーカーで遠い遠い秘密の屋敷につれてこられた。
いわゆる豪邸だ。鬱蒼とした森の奥にあり、フランス人好みの豪奢な装飾が随所に施されている。
「ジャンの他に誰か住んでいるの?」 「いや、俺ひとりだ。」
あちこち痛んで、まだろくに歩けないミツオの体を支えながら、ジャンは屋敷の中に入った。
とてつもなく広い屋敷だ。赤絨毯が敷き詰められ、2階には幅広な螺旋階段が伸びている。
すごい、と目を見張っているうちに、ジャンの足が部屋の前で止まった。「入れ。」
綺麗な部屋だった。高級ホテルの一室そのもので、ジャンはここを客間にしているらしい。
「まあ、2、3週間は養生しろ。」
コーヒーをすすりながら、ジャンはミツオをふかふかのベッドの上に寝かせた。
おおっ、声をあげるほど、ミツオには久々の快適な寝床だった。これなら眠れる。お礼を言おうとした。
「あ、あの…」 「大丈夫だ、お前が思っているようにとって喰ったりはせん」
ミツオは赤面した。そんなことを訊くつもりではなかったのだが、恥ずかしさで思わず顔をそむけた。
「ふっ」それを見てジャンは微笑を浮かべた。「軽蔑してるんだろ、おれのこと」
傷を抉られてぎくりとした。でも必死に笑顔を取り繕って、
「そんなことはない。ジャンは必死に僕の命を守ってくれたんだ。」と叫んだ。
「ミツオ」 ジャンは立ち上がった。
「今はいろいろ考えるな。ゆっくり休め。知りたいことがあったらそのうち俺が教える。」
72Stage31 束の間の平安:2009/05/18(月) 20:22:31 ID:dVEJKSff
2週間、ミツオはこの静養地で体を休めた。おかげで傷口も塞がり、体は完全に回復した。
また、ジャンといろいろ話をすることで精神的にも安定した。
ジャンは、会話の中で様々な有益な情報をもたらしてくれた。

ここは愛人へのプレゼントとしてバードマンが与えてくれた別荘であること。
自分がまだあのおぞましい妖獣の愛妾であること。
ミツオを逃がす時、守衛を買収したこと。
バードマンも忙しくてミツオに関心が薄れているから、一切追っ手の心配はないこと。

ジャンの口からいろいろなことが語られた。ミツオは友人に深く感謝した。
怖いとか辛いとか、不安だとか、気持ちの中にあったいろいろな毒素は、
快適なベッドと、うまいご馳走と、ジャンの笑顔によって驚くほど浄化されていった。
元の信頼が甦った。彼になら自分の思っていることを言える。協力してもらえる。
体と心は、もう大丈夫と確信が持てるくらいに十分回復していた。
ミツオはとうとう、自分の本心を友人にうちあけることを決めた。
「僕は 地球に行く。」

宇宙船がいつバード星を出発するのか。
中にいても絶対見つからない荷物がどこからどのように運ばれるか。
バードマンたちは地球でいつどのような侵略を始めるのか。
そうした細かい情報を、唯一の協力者・ジャンは事細かに調べてきてくれた。
大気圏を突入しても大丈夫なよう、大人用のパーマンの道具まで揃えてきてくれた。
なんて親切な人なんだろう・・・・・・。
「ジャン・・・!!」 ミツオは情けない泣き顔を晒してジャンに飛びついた。
「キスだってなんだってするが良いや。」 華奢なジャンの体に猿のように飛びついた。
まるで、小学生みたいである。  「おいおい。」
ジャンは笑ってじゃれてくる彼を払いのけた。顔が クールな表情がほころんだ。
やがて、「あははははは」 と大笑いを始めた。初めて見る大笑いだった。
ミツオも笑った。いつもの部屋で、ふたりはかつて以上の友人になっていた。
73Stage32 裏切り:2009/05/18(月) 20:30:28 ID:dVEJKSff
しかし。
ミツオは裏切られた。あまりに油断していた。
相手はバードマンの愛妾なのだ。そんな人を信じるなんて。

「ミツオ」
あの朝、悪魔は嗤った。地球行きの宇宙船に荷物として詰められる時。
暗い箱の向こう側に、ミツオは悪魔の声を聞いた。
「俺はお前の友人だ。お前を愛した。お前を生かすためにバケモノに体を委ねさえした。」
声の主の、今までの優しい声が一変して、急に怖い声になった。
空港ゲートの激しい雑音で掻き消されることもなく、それは重く低く響く。

「・・・!?」
気が動転した。ああジャンよ、君はいったい何を語りだすというんだい?

「実を言うとな……。」
「お前があの家で食べ続けた飯には堆積製の毒物を仕込んである。お前は長からずして死ぬ」

ああ、なんということだ。ジャンは僕を殺そうというのか。なぜだ。

「俺はバケモノに抱かれているうち、あいつのことを愛してしまった。あれは哀れでおそろしくて
とっても綺麗なものだ。」

ジャン、君は何を言っているのだ?

「悪いが聞いてくれ。実はあの家にお前を匿っていたことはバードマンも知っている。
いや、実はあの家でお前を処刑するよう命じられていたのだ。俺はそれを素直に実行した。」

言葉も出ないよ。ああ、何てことだ。

「しかし、ミツオ。俺はお前のことも愛している。」

・・・・・・・。

「だから、俺はひとつだけバードマンを裏切る。この星でお前を死なせない。
人生の最後に、生まれた場所を見て来い。」

僕は抵抗するまもなく、何らかの力で持ち上げられた。どーんと、固い地面に放り込まれた。
そして、気絶するような圧力を体に感じたあと、なつかしい空気へと吸い寄せられて行った。
74作者 R:2009/05/18(月) 20:34:16 ID:dVEJKSff
今日はここまでにしておきます。
本当は一気にラストまで、前回告知したスミレの悲劇まで
書こうと思ったのですが、ミツオとジャンのエピソードを相当量、
付け足ししていたら、あまりに長々となりすぎたので、
ここで切ることにしました。

今、最終部分を手直ししています。
こんな幕切れでよいものか悩んでいるところですが、
どうか皆様、この駄作に最後までお付き合いください。
感想、励まし、とてもうれしいです。
75Stage33 戦闘:2009/05/19(火) 17:47:44 ID:Xk7gMuGO
そうして、ミツオは恐るべき敵と再び対峙していた。
その敵は、尊敬し、兄のように信頼を置いていた大好きなジャンではない。
妖獣と寝て、魂を売ってしまった嘘吐きの佞人である。

「ミツオ。お前は俺の情けというものを理解していなかったようだな」
「何っ!」 ミツオの怒りが咄嗟に爆発した。
1000分の1秒の恐るべき速さで両者が動いた。ミツオとジャンの位置は入れ替わっていた。
「腕を上げたな」 「お前こそ」
ジャンの額から一筋の血が流れた。ミツオの着ている服の袖もうっすら朱に染まっている。
「ミツオ」 ジャンは怖い目で睨みながら何やら話し始めた。
「俺は別にコピーロボットにヘコヘコしてお前を殺そうとしたわけではない」
ジャンはミツオが隙をうかがいながら放ってくる攻めの空気を巧みにかわしながら話し続ける。
「俺は地球人は滅びるべきだと思っている。それはバードマンの言うとおりだ。」
ミツオは少し後ずさりしてジャンの目を見た。真っ直ぐの視線。迷いがない。
あのジャンが本気でそんなことを言っているのか・・・?
「俺はその宇宙の意思とやらを叶えたい。だからお前に邪魔はさせないのだ。」
ジャンが掌を構えて、竜の形をした気砲を撃ってきた。ものすごい勢いだ。
「うっ」 ミツオは取り出したマントに気を込めて迫り来る凄まじい気を跳ね返した。
「やるなっ」 ジャンが気を炎に変える。ものすごい勢いの火炎だ。
それを今度はミツオが洪水のような水流を放つことで跳ね返す。まさに一進一退の攻防。
「味方にならんと分かった瞬間、バードマンが殺そうとしたのも無理はない。」
ミツオの益荒男ぶりに感心しながら、ジャンは老獪に有利なポジションを模索した。
一方のミツオは息が上がりつつある。今までの相手とはけた違いに強い。
「でも、僕は負けられないんだ」 ミツオがギラリと敵を睨む。闘志を剥き出しにする。
気合いで勝つしかない。ジャンは高い位置にいてふふんと笑った。
「ならこれはどうだ。」 ジャンが指に気を込めた。ぴかっと先端が光った。
「イナヅマかっ」 息が上がっているミツオは避けきれないことを悟った。
ジャンの射程は完璧だ。高い所に居る。逆にミツオは狭い所で呼吸さえ整えきれずに居る。
「もうだめだ」 覚悟して目を閉じた。  そのとき・・・・・・
76Stage34 救世主:2009/05/19(火) 17:51:25 ID:Xk7gMuGO
「ミツオさん、遅いじゃないの」
ジャンに思いっきりタックルを食わせて攻撃を僅かな所で食い止めた影がある。
それは      パー子だった!
たすかった!さすがわれらがパー子だ。堂々たるお姿!!
タックルの直前に空気砲で悪漢の頭を撃ったらしい。
手強い敵は意識が朦朧としてどうっとその場に倒れ臥している。

「研究所にちっとも来ないって、出来杉博士から電話があったの。そしたら…」
そう言って彼女はジャンを羽交い絞めにしてそのまま縛り上げた。お転婆の本領発揮だ。
「ミツオさん。すぐに行きなさい。今は出来杉さんの発明した特殊ロープで縛っているから
こいつも動けないけど、そのうち頭をめぐらして抜け出すわ。今よ、コピーたちを止めて。」
パー子が叫んだ。何と言う手際のよさ。
よし分かった、今すぐに研究所へ行って、一刻も早くあのシステムを稼動させるよ。

ミツオは走った。すごい勢いで駆け始めた。
それまでパー子、どうかそいつを封じておいてくれ・・・・・・願った。

走っている最中  声が聞こえた。気を失いつつあるジャンからの念だった。
「行くなミツオ。行けば取り返しのつかない悲しみに包まれることになる。」
同時に、か細い、でもとても芯の強い声が聞こえてきた
「ミツオさん、行きなさい。」
77Stage35 勝利:2009/05/21(木) 19:04:38 ID:d+rbDEKZ
駆けながら考えた。なんだか腑に落ちないことがたくさんある。

ジャンは確かに堆積性の毒を僕に盛ったと言った。昔あった砒素殺人のような手口か。
でも、そんな面倒くさいことをしなくても、寝ているところを一刺しにすれば良かったのではないか?
それに、僕は随分と長い間生きている。これまで体調が悪くなったことなどない。
ジャンの言っていることは果たして本当なのか?どこまでが本当で どこまでが嘘なのか?

そういうば 取り返しのつかない悲しみ?  取り返しのつかない悲しみとは何だ・・・?

研究所に着いた。出来杉博士が待ちくたびれた様子で出迎えた。
このことも謎。出来杉を殺せば、彼の目的は早く達成できたはずなのに……。居る……。
しかし、今はそんなことを考えている暇はない。

お茶を飲むのも断り、ミツオは大急ぎで作業に取り掛かることを要請した。博士は承知した。
「ぐずぐずしているとヤツが来る。」「早く戻らないとパー子が殺られる!」
ミツオの額から緊張と焦りによる汗が噴き出した。コピーの設計図を慎重にPCで解析しながら、
膨大な暗号で作られたテキストを出力し、さらに「END」のコマンドをしのばせる。
一種のコンピューターウイルスの仕組みだ。これを電波に乗せれば、地球上のコピーたちは
強制終了を余儀なくされ、人形に戻る。バードマンだって逃れられないという。
準備がこれまで入念に行われていたせいか、僅かな時間で最終作業は決着した。
地球全体が見舞われた大きな災難も、呆気なく、驚くほど簡潔に回避されようとしている。
「では パーマンさん。これで行きますよ。」

出来杉博士が発信のキーを押した。想像を絶するほど強力な極小短波が世界に向かって広がっていく。

一瞬、世界が止まったようにしんとなった。時間が止まったようにさえ思われた。
ミツオと出来杉だけが、世界から切り離されてその場に取り残されたように、静寂は深さを窮めた。

30分ほどが経過し、ふいに、目の前の画面に「Finished」の文字が表示された。
「終わりです。終わりましたよ、パーマンさん」
ああ、戦いは終わった! 博士の言葉を聞いて、ミツオは安堵の表情を浮かべた。
こんな僅かな時間に、「END」の3文字は広大な世界を駆け回ったのである。

「おめでとう。これでコピーたちはすべてもとの人形に戻りました。あなたの勝利です、パーマン。」
出来杉博士が握手を求めた。ミツオはにっこりしてその手を強く握り返した。
「これも博士のおかげです」
そう言うとミツオは、するりとその手を離した。次の瞬間、彼は玄関の方へ一目散に駆けていた。
「パー子、待ってて。ジャンがまた力を取り戻す前に……早く!」
78Stage36 悲歌:2009/05/21(木) 19:37:21 ID:d+rbDEKZ
そんなに遠くない距離を恐ろしく長く感じながら、ミツオは駆けて駆けて駆け続けた。
目の前に、さっきの光景が映り始めた。間に合ったか……

「・・・・・・・・・!?」
そこにはジャンが倒れていた。血をごぼごぼと口から噴き出している。
パー子がやったのか?

ただ、そのパー子はいない。どこにもいない。ああ、どこへいったんだ。パー子、パー子・・・!
ミツオは不安になった。汗が吹き出た。ジャンのことなど気にも留めずにあたりを探し回った。
バッジを鳴らしてみた。星野スミレの携帯を鳴らしてみた。だめだ、何をしても通じない。
その時だった。
ミツオがみたもの。同じ目から なみだがあふれた・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!」

瀕死の悪魔の懐に、何かが抱えられていた。とてもなつかしい、とても親しみのある……、
・……………あの人形が…………………

「ま、まさか…」
ミツオは狼狽した。ショックのあまり倒れそうになった。まさか、そんなことが。

「ジャンっ!」 ミツオは血だらけの戦士を揺り起こした。戦士はゆっくりと閉じた目を開いた。
「あ…お…、み、ミツオ。」 ジャンはもう助かりそうもない様子で口を開いた。
「なにがあった、なにがあったんだよ」 ミツオは必死だ、涙も流している。
ジャンの肩を激しく揺さぶりながら真相を聞き出そうとする。
「は、は。お…お前は…とてもいい女に愛されたな。あれは立派だった・・・」
ジャンの目からひとすじの涙がこぼれた。ミツオは慟哭している。
「コピーロボットだったんだ。あの娘は…。俺がここにきたのもお前を止めるためだった…」
79作者 R:2009/05/21(木) 19:44:23 ID:d+rbDEKZ
今日はここまでにしておきます。
この先は1話か2話ずつ、じっくり出していくのが
雰囲気的に合っているような気がしますので……。
80創る名無しに見る名無し:2009/05/21(木) 19:45:51 ID:qhCXhbFc
支援
81創る名無しに見る名無し:2009/05/21(木) 19:46:32 ID:qhCXhbFc
ありゃ支援無意味失敬w 乙乙
予想外な展開だ……
82創る名無しに見る名無し:2009/05/21(木) 20:26:01 ID:fwW2etby
パー子コピーは予想外だった

けど、>>77>>78の間に時間がありすぎて、>>77を読んだ時点で
何となく予想がついてしまった
83Stage37 明かされた真実(ミツオの独白):2009/05/22(金) 16:55:15 ID:7Ilxbq+i
ジャンよ。僕の最愛の友 ジャンよ・・・
もう話す気力もないキミは、念だけで、僕の知らない様々な事実を語ってくれた。
衝撃的な話だった。僕の知っていたことはすべて虚像だった、まぼろしだった。
僕は 自分を憎んだ。単純で無知で 幼稚な正義感を振り回した自分を憎んだ。
「ごめん…ごめん…ジャン…、ゆるしてくれ…」
愚か者の瞳から零れ落ちる涙を 血で染まった顔で受け止めながら
愚か者の腕に抱きかかえられたキミは「いいんだ」と静かにかぶりをふった。
84Stage38 スミレとジャン(ミツオの独白):2009/05/22(金) 16:57:56 ID:7Ilxbq+i
星野スミレ パーマン3号 パー子 僕の恋人・・・

僕が研究所へ向かって その場から十分に見えなくなったあと、
スミレはジャンを縛っている縄をそっと解き、彼の意識をゆり戻したという。

「お、・・・お前。あ、あいつは・・・ミツオは行ってしまったのか!」
目覚めてすぐ、ジャンは事態の変化に狼狽した。
そこに立ち止まっている女が星野スミレであるのを知って
さらに動転したそうだ。
そんなジャンを見て彼女はうふふと笑って頷いた。その顔に一点の迷いも曇りもなかった。
ジャンは両手を地につけて全てが終わったことを嘆きながら、
女の顔を見た。
「何てことを・・・」「・・・・・・・それでよかったのか?」
たじろぐと思った。しかし、彼女は凛として言い放ったという。
「ええ、地球のために彼がやるんですもの。かまわないわ。」
85Stage39 事件 1(ミツオの独白):2009/05/22(金) 17:02:00 ID:7Ilxbq+i
それから。
スミレの秘密。
彼女が、僕が戻ってきたら伝えておいてほしいと語ったこと。
その話を聞いて僕は何度も気絶しそうになるくらい嘆き悲しんだ。
彼女は、僕が研究所でコピーロボット、スミレを含むコピーロボットたちを
全滅させるために夢中になっていた、あの短い短い時間にその事実を語ったのだ。


2年前。トップアイドルの星野スミレは18歳になっていた。
その日も多忙なアイドルの仕事を追えて、彼女はタクシーでマンションに辿り着いた。
「疲れた…頭が痛い……。」
水をコップ一杯飲んだという。歌と激しい踊り、慣れないトークで疲れきっていた。
冷たい水をごくごくと飲み干す。喉が潤う。
少し満足してそのままベッドに潜り込むと、ぐったりと柔らかなベッドの中に溶け込んでいった。
86Stage40 事件 2(ミツオの独白):2009/05/22(金) 17:05:11 ID:7Ilxbq+i
それから 2.3時間くらい経っただろうか……。
物音一つしない。たまに冷蔵庫のモーター音が切り替りのタイミングで鳴る。
月明かりがやけにまぶしい。寝苦しい夜だった。
急に落ち着かなくなって目が覚めた。
時計の針音が気になる。何か、不安で、心が穏やかではなかった。


気配を………感じた。
入り口付近の暗いところに、見知らぬ男が立っている。
黒い影だけが見える。顔貌が全く見えない。「誰……?」
やがて無気味な影は近付いてきた。
「ねえ、誰…!?」
愕いて逃げる間もなく、彼女は暗闇に振り下ろされた一閃の光に血しぶきをあげた。
「ぎゃっ!」
商売道具の整った可憐な表情を無残にも真一文字に切り裂かれた。
どうっと倒れる。覆い被さってきた軽くて薄い影に、さらに何度も刺された。
「もう・・・・・やめて・・・・・。」
朦朧とする意識。痛みすら、次第に感じなくなった。
「悔しい、悔しい。」
悲しみのあと、虚無に包まれた。
惨たらしい時間が過ぎて彼女の自由の利かない両目は部屋を出て行く暴漢の姿をとらえた。
「ああ、私は殺されたんだわ・・・・」
涙がにじんだ。孤独……トップアイドルの最期が こんなに惨めで寂しいものなんて。

嘆いた。呪った。ひとりで、力が抜けていくのを感じながら天井を見つめた。
87Stage41 愛と死 そして再生(ミツオの独白):2009/05/22(金) 17:09:02 ID:7Ilxbq+i
その時・・・・・・・、
「寂しくなんかないよ。キミはひとりじゃない」
あの人の顔が浮かんだ。
ミツオさん……
「死ねない、死なない!」
傷だらけの体に急に力が漲った。
神様が、あたしのために あたしの願いを叶えるために 最後の力を与えてくださる・・・。

彼女のほか誰もいないひとり住まいのマンションの一室。一面の血の海。
ああ 僕のことだけを想って  彼女は暗い部屋の中を必死に這い回った。
「ミツオさんに会うまでは死ねない。」
力を振り絞った。血が胸から噴き出す。足元にはねばねばの朱の海が広がっている。
彼女は大好きなお人形であふれているサイドボードの引出しを、残る力を振り絞って開けた。
そこには、バードマンの廃棄命令に背いて隠してあったコピーロボットが座っていた。
「あ、……あたしの願いを……。」 そう言って震える指を懸命に伸ばし、鼻を押した。
ロボットは、再生された。むくむく大きくなって、ロボットは目の前の惨劇に驚いた。
「きゃあああ、すみれちゃん!!!!!!」
スミレはそんなロボットの動揺を制した。残り時間は少ない。やるべきことだけに集中する。
切り裂かれた血だらけの額を、コピーの額に強く強く押し当てた。
自分の記憶を、コピーロボットにインプットする時に行う、
パーマンではおなじみの儀式。
しかし、その日のインプットは、星野スミレが生命を賭けて行う、
情念の転送だった。
長い時間押し当てた。意識の全てをロボットに注ぎ込んだ。
残された生命の灯全てを注ぎ込んだ。

そして。

そのコピーロボットは、ただの分身ではなく、星野スミレそのもの、情念の権化として
星野スミレの生命を紡いだ。
「これで……よ、良かった……ああ…。」 微笑んだ。
全てが終わって  ばったり スミレは倒れこんだ。
倒れた遺体の顔は安らかだった。
88Stage42 僕は スミレを愛します(ミツオの独白):2009/05/22(金) 17:11:47 ID:7Ilxbq+i
コピーロボットのスミレ。僕はそのスミレに再会した。
そのコピーは、まさに星野スミレそのものとして生きた。

僕と出逢って暮らした日々。

海を見つめて感動した瞳、抱擁したときの胸の鼓動、
おいしーといって僕の料理をおいしく食べてくれたときの表情。
それらのどこが擬似だったといえるだろう。
スミレの感情そのものに違いなかった。
紡いでいたのだ。気高い、とても崇高な愛情を
そのコピーは紡いでいたのだ。
コピーなんかじゃない。僕が逢ったのは星野スミレその人だった。
僕は そう確信している。
89作者 R:2009/05/22(金) 17:22:01 ID:7Ilxbq+i
前言撤回。
1話あたりの分量が長すぎたので、結局何話かに分けてうpしました。
今日はここまでにいたします。
自分で書いていて何ですが、スミレの最期があまりに凄惨で重いものになったので、
大団円も少し書き換えるべきではないか、と思うようになりました。

次のうpは来週になると思います。できるだけ急ぎます。
90創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 18:17:40 ID:ArUVr+T6
コピーロボットは鼻を押した人のその時の状態をそのままコピーする物だから
本人が蜂に刺された状態なら蜂刺され状態で、逆にコピーが怪我していても
本人が無事なら、一度戻しちゃえば怪我はなくなる。

これだとスミレコピーも死んじゃうんじゃ…。
91作者 R:2009/05/22(金) 22:37:44 ID:vkKRZ4qe
>>90
そこは実は最後まで悩みました。突っ込み覚悟で書きました。
修正しようかとも思いましたが、いろいろ考えているうちに
別のアイディアが浮かんで、伏線に変えることができました。

さらに重い話になりそうです。
92創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 03:37:55 ID:Eg6422hM
そうか…悲しい物語ですなあ。スミレちゃんは死んでしまっていたのか。コピーの謎が解けました。

そして重傷を覆す何かが起きる訳ですね。

早く週明けろ〜!
93創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 01:05:47 ID:bTptMGwm

    
    |  \               __  
   ミ    \  ,.ミ'´ ̄ ̄``    `ヽ
((  ミ   ミ  \'         、    ヽ           力
   ミ、  ミ    \           i.     ゙、           勹
   |   ミ、 ,'                l
    L.___|_ l                l {   _ ... _
      |    l    -、         ヽ   , . '::::::::::::::::::::::::::ヽ
     |     !       ヽ         ヽ ,.'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
    ./´ ̄`V      ,ヽ、          ,':::::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::i
    / 、  |      /  、`ー       i::::::::::::::/`):ノ`):ノ`):::丿
   ./   i   |       /   ヽ   ヽ    i::::::::/____...    リ:/
   !.     !     /     ヽ     _(`|:il| __..   ` ̄i
   `ー‐ゝ、 '    /      ヽ___,. /::::::::::::!|  °,,,  ,  ̄/ ヽ
       `ー--‐'     ,. -‐'"´ /:::::::::::::::| ヽ_    、 '''ノ_   ヽ
   力          /"ー─---l/l,/二/  ´ヽ、-<r"/,ー、 丿
     勹      { 〈                )、 Y  `ゝ(_/_/./'
             } `ー----------─一--‐'´ ̄´
94Stage43 巨悪の企み(ミツオとジャンの対話):2009/05/24(日) 15:25:09 ID:dzHVNsZ6
僕の知らないスミレの真実を全て念で語ると、ジャンはがはっと大量の血を吐いた。
もう長くない……。
「ミツオ・・・」 これが最後の念のようだ。

「俺はお前を愛した。最初出逢ってから、お前と過ごした日々は辛くともたのしかった。
バケモノに犯されても、お前が生き長らえるのならそれでよい。そう俺は思い続けた。
お前から嫌われてもそれは変わらなかった。」
ジャンの目は中空をじっと見つめている。顔色がだんだん白くなってきている。

「俺はバケモノから・・・対地球諜報責任者というポストを任されていた・・・。
その・・・ポストを利用して、いろいろなこと・・・を知ることができた・・・
星野スミレの死・・・、彼女を殺したのは・・・バード星の刺客だ。
大阪にいた・・・4号とやらも、自殺に見せかけてその刺客に殺された・・・。
彼は学生ベンチャーの社長も務めて有望だったが・・・、相手が何であれ、
奴らにとって地球に存在するパーマンたちは邪魔でしようがなかったんだ・・・。」

ショックだった。恐ろしさと腹立ちで吐きそうになった。そうか、パーやんまで……。

「やがて・・・、お前がバケモノから憎まれて地下牢に押し込められたと聞いた。
バケモノはお前だけは評価していた。対地球作戦参謀として・・・活用する予定だった。
だが・・・、お前は逆らった。誅殺は・・・免れない事態となった。
ところが、だ。奇蹟が・・・起きた。
バケモノはなぜかお前の人柄と侠気に感じ入り、少しだけ・・・情けをかけたんだ。
『ジャン、お前はミツオと友達だったんだろ。』 ・・・突然だった。
『ミツオと俺の別荘で暮らせ。思い残すことなく楽しんで、やつを地球に放逐しろ』
ああ、ミツオは赦されるんですね。地球にも帰れるんですね。俺は安心した。

しかし、・・・その考えは甘かった。
『いや、あいつが地球で元気なのは困る。あくまで1日か、2日、生まれ育った場所で
故郷を懐かしむ権利≠与えるだけだ。はは、ジャン、これを見ろ。』
そう言って・・・バケモノはあの恐ろしい薬を見せた。
『即効性はない。じわじわと体を蝕んでいく。地球に着いて間もなく死ぬように分量を
調整して飯に混ぜる。その飯をお前が確実にミツオに食わせるんだ。』
ああ・・・何と言うことだ。残酷な・・・バケモノは俺にお前の始末を命じてきたのだ。
そのために・・・別荘まで用意しやがった・・・何ということだ。
最後に助かったと思わせて・・・、友人の手で殺させる。・・・悪趣味な話だ。」
絶え絶えに明かされる、僕の体験したことの真実。心を澄ました。
すべては筋書きの中にあったのか……。
95Stage44 捨て身の計略(ミツオとジャンの対話):2009/05/24(日) 15:26:53 ID:dzHVNsZ6
「俺は思った。地球の最後の…希望であるお前まで殺されれば全てが…終わりだ。
俺のいのちに代えても…それは阻止しなければいけない。お前を生かさねばならない。
俺は考えた。バケモンたちを欺けばいい…………
でもそれは…意外と大変だった。お前は…気付かなかったかもしれないが、
あの別荘の厨房には…バケモノが放った…とても嫌らしい顔つきをした料理人が…
毒の入った飯と…俺の飯をニヤニヤして作りながら…見張っていたのだ…。」
ジャンは再び血を吐いた。いよいよ助かりそうもない……。
「そんな監視を逃れる唯一の方法・・・、ああ、それは俺がその毒を喰らうことだった。
・・・見事に騙せたよ。一回だって皿を入れ替えたことはバレなかった・・・。
お前をロケットに積み込む時・・・、まわりに監視がいたから・・・あえて毒のことを
しゃべったりして・・・お前には、に・・・憎まれたがな・・・」
「ジャンっっっっっっ!」
僕は泣いた。ジャンの弱々しく折れそうな、もうすでに面影すらないその細い体を
掻き毟って潰してしまうくらいに夢中で抱きしめた。
「泣くな・・・ミツオ。人はいつか死ぬんだ。俺は有意義な死に方を選んだ。」
澄んでいる。表情が、とても高貴で澄んでいて、神様のようだった。
「お前は偉い。・・・地球に戻って、女と幸せに・・・、不幸の届かない無人島で
・・・誰にも邪魔されず、暮らせればよかったろうに・・・。
最後まで・・・地球のために・・・戦い続けるなんて・・・。俺もせめて・・・
ミツオ・・・最後は誰かのためにこの生命を使いたかったんだ・・・。」
僕は何度もジャンの名前を心の中で叫び続けた。贖罪の気持ちをこめて・・・。
96Stage44 疑惑(ミツオとジャンの対話):2009/05/24(日) 15:28:13 ID:dzHVNsZ6
だが・・・。

急に心の中にひとつの疑念が湧いた。
その疑念は僕の中の哀しみの感情を愕くほど綺麗に打ち消して、
どんどん大きく膨らみ始めて、どうしようもなくなって、
今聞いてはならないようなことなのに、とても我慢できなくなって、
とうとうジャンに念を送ってしまった。

「ジャン。キミはひとつだけ嘘をついていないか?」



「それは、星野スミレのことだ。」僕はなぜか凛然としていた。
「キミは彼女が死ぬ間際にコピーロボットを再生させたと言ったよね。
でも、もしそうならば、そのロボットはやはり刺客から傷つけられたスミレの姿に
なったんじゃないのかい?僕の知っているスミレには傷あとひとつなかったよ…。」
詰め寄った。僕を救ってくれたはずのジャンに、瀕死の状況にある友人に……。
97Stage45 ひとつめの秘密(ミツオとジャンの対話):2009/05/24(日) 15:29:15 ID:dzHVNsZ6
ジャンは遠のきつつあった意識を不思議と取り戻して僕の顔を見た。
なぜか、念ではなく声を出して話し始めた。僕は震えた。
「ミツオ・・・」
「おまえは・・・コピーロボットにふたつの秘密があることを知っているかい?」
ふたつの秘密。そんなことは知らない。それより、君の声は何だ?
さっきまでの低くしゃがれた声じゃなくて、とても澄んでいる……。
「知らないよ。」
「じゃあ・・・教えてやる。まずひとつめだな・・・。
コピーロボットには主人に何かがあったとき、その代役を万全の状況で務めるという
機能が備わっている・・・。主人が死にかかっているのに・・・同じように・・・
死にかかった体が再生されたって・・・何の意味もないだろ・・・。
エンジニアも・・・それくらいのことは計算して・・・解決装置を作ったんだ・・・。
幾度の再生の中で、いつだって元気な主人に変われるよう、・・・データが人間の・・・
生きている人間の脳や心の働きのように・・・蓄積していくんだ・・・。
例えば・・・お前が地球を離れたあと、遺されたコピーロボットは
・・・地上から消されるまで・・・須羽ミツオとして・・・ふつうの人間のように・・・
体も心も自然に叶って成長したんだ。おまえはもう地球に永くいなかったのに・・・」
なぜかジャンの顔が無念さに満ちている。それより声がどんどん変わってきている……。
「ミツオ・・・」
ジャンの体が軽くなり始めた。しかし、驚いたのはその声が少年のようになっていたことだ。
それは大昔に聞いたジャンの声ではない。
でも、どこかで聞いたことがある、とても懐かしい  声だった……。
98Stage45 もうひとつの秘密(ミツオとジャンの対話):2009/05/24(日) 15:31:59 ID:dzHVNsZ6
「もうひとつの・・・ひみつ。」
「世界に、たったひとつだけ・・・消えないコピーロボットがいるというおはなし・・・」
僕は汗が止まらなくなった。ああ、その声……、怖い、それ以上聞きたくない!
ジャンはもう少年の声のままで、死にゆく虚脱感に包まれながら語り始めた。
たどたどしくない、しっかりとした、まるで少年のような口調で……。

「むかしむかし、あるところに少年とコピーロボットが暮らしていました。
ふたりは仲良しでした。少年はパーマンとして出掛ける時だけではなく、
一緒に遊びたい時、辛いことを話す時、何でもない時もロボットの鼻を押しました。
ふたりは機械と人間の関係でも、主人と従者の関係でもなく、
まるで本当の兄弟のように固い絆で結ばれていました。

でもある日、ふたりは離れ離れにならなければならなくなりました。
もしかすると、これが永遠の別れになるかもしれません。それだけ長い長い別離です。
ロボットは、少年の主人から言われました。おまえが少年の代わりになるんだよ、と。
そうしてロボットは、居眠りして鉛筆が鼻につかえたり、悪い友人から顔を殴られたり、
好きな女の子とキスをしたりして、何の感情もない人形に戻ったりすることがないよう、
少年の主人から改造を受けました。何年もして、とてつもない技術を身に付けた人間が
コンピュータで強制的にコピーロボットの機能を強制終了させることができても、
そのロボットだけは少年の身代わりとして普通に生き続けられるように・・・。」
ああ、やめてくれ。そんな結末があっていいのか……。

「少年がいなくなった地球で、ロボットはまるでその少年がそこで成長しているかのように
体は大人になり、受験もし、人を愛し、そう、普通の人間のように生きていました。
何があってももうあの無愛想で黙っている人形には戻りません。戻れないのです。
優秀な博士がENDという文字を世界にばら撒いても、その人形はもはやその少年なのです。」
ジャンは顔貌まで別のものに変わり始めていた。ぼくは幻を見ているのか……?
99Stage46 改造ロボット(ミツオとジャンの対話):2009/05/24(日) 15:34:06 ID:dzHVNsZ6
「ところが、ある時事態が急変しました。少年の主人が再びロボットの目の前に現れたのです。
主人はやせ細り、何かに追い詰められているようでした。そしてロボットに命じました。
時間がない。おまえは地球で少年を演じるのを止めなさい。死んだことになってほしい。
そして私についてきて、再び少年に会って、彼に寄り添ってほしい、尽くしてほしい、と。
ロボットはまた少年に会える歓びで、喜んでその提案を受け入れました。
冷たい棺の中に自らを投じました。そのくらい、再会の喜びに比べれば、何てことはない。
その後、主人の計らい、マジックで、紅く燃え盛る炎に焼かれる前に、棺の中から救い出され、
主人とロボットは遠い遠い宇宙へと旅立ちました。」

「少年に会える。喜んで跳ね上がっていたロボットの気持ちを沈めるように主人は言いました。
そのままの姿で会ってはならない。お前は別の容貌、別の人格として生まれ変わるのだ、と。
最初、ロボットには意味がわかりませんでした。でも、丁寧に、諭すように、少年の主人が
今起きている事態を語ってくれたので、ロボットは主人のその必死の提案を受け入れました。
そうすることが少年のためになると気付いたからでした。
ロボットは暗く誰も知らない手術室で、欧米人の姿に整形され、難しい言語を教え込まれ、
ちょっととがった性格に矯正され、でもコピーとしての少年への忠誠、友情は保存されて、
少年の前に再び送り込まれました。ロボットは心中、とても嬉しかったそうです。」
涙がとめどなく出る。ジャンはもうジャンの姿に見えないよ。
100Stage46 友人の終わり(ジャンの遺言):2009/05/24(日) 15:35:48 ID:dzHVNsZ6
「少年に会える。喜んで跳ね上がっていたロボットの気持ちを沈めるように主人は言いました。
そのままの姿で会ってはならない。お前は別の容貌、別の人格として生まれ変わるのだ、と。
最初、ロボットには意味がわかりませんでした。でも、丁寧に、諭すように、少年の主人が
今起きている事態を語ってくれたので、ロボットは主人のその必死の提案を受け入れました。
そうすることが少年のためになると気付いたからでした。
ロボットは暗く誰も知らない手術室で、欧米人の姿に整形され、難しい言語を教え込まれ、
ちょっととがった性格に矯正され、でもコピーとしての少年への忠誠、友情は保存されて、
少年の前に再び送り込まれました。ロボットは心中、とても嬉しかったそうです。」
涙がとめどなく出る。ジャンはもうジャンの姿に見えないよ。

「主人はその後まもなく、コピーロボットたちの反乱によって殺されました。
少年とコピーは、訪れた辛い日々に負けることなく、いや、少年が負けそうになるとコピーが
必死にフォローして、苦しいことを乗り越えました。コピーが進んで盾になりました。
でも、時が経って・・・。ついに、悪の親玉が少年を殺せとロボットに命じてきました。
ロボットは悩みました。悪の親玉はもとは同じ仲間だ。彼らが言うことも良く分かる。
パーマンや人間の都合のいいときだけに利用され、何の報酬も褒め言葉も与えられない、
コピーロボットの哀れな運命。憎い憎い憎い憎い・・・、いつか目に物見せてやる・・・。

でも、少年は違った。コピーロボットを友人として、家族として、
自分の魂の半分として、心から大事に扱ってくれた。
人間やパーマンの中には、彼のような優しい気持ちを持った人はもっとたくさんいるはずだ。

ロボットは思いました。自分はそれを信じたい。そのためにはすすんで毒を仰ごう。」

そこにいたのは、須羽ミツオの姿だった。

「おかしいね。僕はロボットのはずなのに。毒が利いちゃうんだね・・・」
「こ、コピーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」

ミツオの首が僕の腕の中で斜めに折れた。すーっと息をしなくなった。人間らしい死だった。
涙も枯れ果てた。スミレ…ジャン…コピー……   大切な人たちは消えて 僕だけが残った。
昼過ぎなのに 空は青く澄んで 清く涼やかな風が体を突き抜けていった。
101作者 R:2009/05/24(日) 15:37:32 ID:dzHVNsZ6
週明けを待たず、終わりまで一気にうpします。
102Stage47 スミレの日記 1(ミツオの記録):2009/05/24(日) 15:38:52 ID:dzHVNsZ6
数日後。
傷心が癒えない僕は、彷徨い歩いてあの家に辿り着いた。
ひっそりと静かな海のさざなみの前にたたずむ一軒の家。
僕は再び、その家の前に立っていた。
悲しみが甦るかもしれない。でも、区切りはつけなければならない。

おもいでを ひとつひとつ整理し始めた。
ふたりで使った食器、はじめて夜をともにしたベッド。どれも過去の記憶になっていた。
ふと、見つけた。 一冊のノート。 
彼女の愛用の机の上。そういえば、最後の晩まで 彼女はここで何かを書いていた。

出来杉博士の研究所に行く朝、なぜか彼女はついて来なかった。
決着をつける日に、なぜ? 僕は訝った。理由は、知り合いに手紙を書くから行けない、と…。
納得できない理由だった。でも、なぜか彼女の申し出を受け入れた。彼女の意見を尊重した。
彼女が最後に書いていたのはなんだったのだろう……。

「・・・・・・・・」

開いてみた  最初の数ページ   何事かが書かれていた。
それは・・・・・・星野スミレから僕に宛てたものだった。

間もなく消え行く自分から、間もなく自分を消す恋人へ宛てた遺書。
それを綴っていたかと思うと、僕は胸を掻き毟られる思いで、せつなくて、慟哭した。

ノートには、彼女の優しさと強さと永遠の愛が刻まれていた。
103Stage48 スミレの日記:2009/05/24(日) 15:39:52 ID:dzHVNsZ6
ミツオさん
あなたにまた逢うことができて、本当によかったよ。
とってもたのしかった
あたしはここで 好きなひとにまたあえた

あなたとあえた うれしい うれしい……
いっぱい愛された いっぱい愛した  しあわせだった

ミツオさん……  嘘をついていてごめんなさい。
あたしの正体はコピーロボットです。あたしのからだは一度死にました。

だけど あたしはどうしてもあなたに逢いたかった。
幽霊にはなれないから、コピーロボットになってあなたに逢うことに決めました。

逢えました。逢えました。あたしの願いは叶ったのです。
叶った時に気付きました。あたしはコピーなんかじゃない、星野スミレなんだ。
あなたを感じ、愛する気持ちは生きているあたしのものなんだ。

あなたのぬくもり。頼りないようで 実はたのもしくて とってもすてき。
一緒にいるだけで、まるで少女のようにドキドキした。
こんなたのしい日々が永遠に続けばいいのに……

でもしあわせな日々も ここでしばらくおやすみです。
あたしは消えてしまいます……

でも
嘆いてはいけません。泣いたりしてはいけません。
あなたの選択した道は何よりも気高くて、立派なことです。
あたしたちの前で死んでいったたくさんの人々
あのような人々を増やしてはいけません。
パーマンは自らを犠牲にして 泣いている人 困っている人を救うのが使命です。
あなたがやったことは立派です。そんな立派なあなたがかっこいい。大好きです。
あたしがいなくたって あなたは強いから きっと生きていけます。
だから・・・・・・・・・・・・。

ミツオさん
あたしの愛は消えません
あなたの傍にずっと生きつづけます。

今度、会える時はお互い幽霊でしょうか? でもきっと逢える日がきます。

さよならは言いません
また であえるときを   楽しみにしています
だいすきです あたしのいとしいひと

あなたの永遠の妻 星野スミレより
104作者 R:2009/05/24(日) 15:57:11 ID:010EBrqq
最後までと思っていたのですが、多重投稿で書き込みができなくなりました。
明日続きをうpします。
105作者 R:2009/05/24(日) 23:48:45 ID:010EBrqq
重複がありましたね。
99の後半を削除します。
さて、いよいよ明日で終わりです。
ラストの決め方については迷いましたが、当初の計画通りにします。
登場人物たちを悲惨なままにするか、しあわせに終わらせるか。
最後まで迷いました。さあ、結末はいかに?
106Stage49 人間の罪(ミツオの独白):2009/05/25(月) 08:51:28 ID:9txKIvIz
あれから5年が経った。
バケモノと呼ばれたコピーの帝王が思い描いていた宇宙の平和、地球の粛清。
もしかしたら、その考えは否定されるものではなかったのかもしれない。
自らを犠牲にして地球を救ってくれたスミレ、ジャン、コピー。
キミたちのかけがえのない、美しいいのちと想い……。
それが無残に踏みにじられてしまったのだ。

コピーロボットの侵略でめちゃくちゃになった地球。
危難が去って 平和とともに春の息吹が訪れて 地球は再び人間たちの力強い、
復興への思いと行動力によって再生されるかに思われた……。

しかし………、

争い。混乱に乗じた、醜い、ちっぽけな、つまらない主導権争い。

再び地球が戦火に包まれた。多くの人が泣き、叫び、倒れ、焼かれていった。
僕たちが守ったもの
そのいのちがけで守ったものが
守られたものによって壊されていくという皮肉。
悔しくて泣いた。君たちが命を賭けて守ったものを僕は守り続けたい…!

僕は再びパーマンセットに手をかけた。 戦いに向かおうとした。
こんどはひとりだった。ひとりで世界を相手に闘うんだ。

そう決死の覚悟を決めた時、「いや、キミはひとりじゃない。」
どこかから声が聞こえた。聞き覚えのある声。
脳裏に懐かしい顔が浮かんだ。ああ、キミたち。
そうだ、ひとりじゃない。僕の魂には死んでいったかれらが宿っている。
力が漲った。目の前にうんと広がる夕暮れの不安な空の色。
地球を 大好きなあの時代に戻すんだ……そのための戦いがいま始まる……。
僕は飛び立とうとした。
107Stage50 破滅の閃光(ミツオの独白):2009/05/25(月) 08:53:26 ID:9txKIvIz
だが、その時…………………。

一発の轟音。恐怖。凄まじい光。
一瞬だった。恐ろしい悪魔が地球全体を包みこんだ。
叶わない。パーマンの力をもってしても、それには勝てなかった。

核兵器。

焼き尽くされた。
過去の素晴らしい遺跡も、絵画も、金も富も栄誉も。
人間の暮らす息吹も  芽吹いたばかりの春のたよりも。
家族も 恋人も 先生も 誰もかも  愛も憎しみも涙も笑顔も。 
僕も………。
みんな吹き飛ばされてなくなってしまった。
一瞬にしてなくなってしまった。
人間や生物や自然が何億年もかけて創った歴史や美しいものが
愚かな笑いと醜い欲望の果てに、無残にも消えてなくなってしまった。
108Stage51 ミツオの遺言:2009/05/25(月) 08:58:08 ID:9txKIvIz
熱い 苦しい 痛い 助けて…………。

ぼくはどこにいるのだろう……?
体が消えていく感覚。
ああ スミレもジャン(コピー)も体験したこと。
全てが終わっていく。僕は終わっていくんだ。
何も見えなくなった。手も足ももげている。どうあがいても手遅れだ。

ああ もう逆らうまい。十分に生きた。
キミたちのところへいく。こんなひどい世界はもうごめんだ。
自分の体が炎で焼き尽くされていく。

誰かが、僕の言葉をとがめた。

ひどい世界………!?
いや、すてきな世界だった。パパ、ママ、ガンコ、みっちゃん、カバオ、サブ。
ブービー、パーやん、パー坊…… 数え切れないくらいのいい人たち。
そして コピー、パー子!!
出会えた。幸せだった。僕が世界を止められなかったことが悪いんだ。
世界は悪くない……。
この世界は素晴らしい世界だった。

おわりのときがきた。

最期に、ぼくを世の中を呪うだけのつまらない死に方から救ってくれたキミに。
お礼を言おう。名前は? パーマン1号クンか。どうもありがとう。

もうおわりだ。最後に キスをしよう

世界よ  地球よ   ありがとう
109創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 12:22:33 ID:dBUMcehG
全滅エンドかよ
110Stage52 死後の世界:2009/05/25(月) 12:45:57 ID:9txKIvIz
ここはどこだ!?
意識が戻って起き上がった時、僕は一面まっ白の世界にいた。
死んだのか?
そう 死んだのだ。あの日、僕は爆風とともに消えてなくなってしまっていた。
ここが地球のはずはない。超自然的で、虚無で、とても安らかな場所だった。

ここには憎しみも悲しみも裏切りも何もない。
本当に何もなかった。白の世界の中にたったひとり、僕だけがいる。
子供の頃、三途の川とか死者の行進とか、そういうおっかない死後の世界のことを
聞かせられていたけど、そんなものすらなかった。それらは嘘っぱちだった。
でも、そんな脅しを吹聴しておかないと、平気で核兵器をぶっ放す悪いやつが
のさばりだしたりするからね。先人の知恵だったのだろう。

感心している場合ではない。急に不安が起きた。
僕はずっと、この世界の中を 孤独に苛まれながら 彷徨い続けるのだろうか?

いや、それは違います。
見えない誰かが誘っているかのようだった。
どこからか小鳥の声が聞こえたのだ。不思議だ。他に生物がいるのか?

一面の白。ふわふわの雲の上を僕は小鳥の声がする方へ進んだ。
追いつけない。それでも僕は馬鹿みたいにたのしくなって、声のする方に進み続けた。
やがて、景色が変わった。一面の緑。そこは  森だった。いきものがいる…。
それでもまだ小鳥の声に追いつけない。
僕はさらに進んだ。ドイツの昔のお話に出てくるような、細い小道を歩いて、
石段を抜けて、さらにお城の横を通り抜けて、疲れを知ることなく歩き続けた。
いったい何を求めて歩き続けているのだろう?
わからない。でも小鳥の鳴き声のするところには、きっとすてきなものがある。
素晴らしいものが待ってくれている。そんな気がして 夢中で歩き続けた。
111Last Stage 再会 恋は永遠に:2009/05/25(月) 12:47:32 ID:9txKIvIz
小鳥の声が止まった。
そして 僕は辿り着いた。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっっっっ」
僕は叫んだ。感動に打ち震えた。そこはなつかしい、あの海だった。
遠い昔 だいすきだったスミレと見た海。きれいだった……。
潮騒 ふたりだけの世界がここにあった。ふたりはここで短いけど幸せに生きた。
僕は泣きそうになった。

「そう。あなたとあたしはここで恋して ここで再び出逢ったのよ」
「・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!」

僕のうしろに 夏の涼しいいでたちをした なつかしい 愛しいあの人が立っていた。
まちがいない 長く美しい髪をなびかせ すてきなにっこりとした笑顔を浮かべて。
まさか 夢か 僕は夢を見ているのか?

「そう、夢よ。あなたもあたしも幽霊。儚いけど、絶対消えない夢なのよ」
彼女は満面の笑みを浮かべた。あの懐かしい、すてきな、優しく愛くるしい笑顔で。
「おかえりなさい、ミツオさん」 待っていてくれたんだ!!!
「スミレ……!」

ぼくは泣きながら夢中で彼女の胸に飛び込んだ。死者のものではない、あたたかかった。
ぎゅーーーーーっと永遠に消えない夢であることを祈って抱きしめあった。
もし、きえる夢であったら、どうかふたりが抱擁したままでありますように…

かみさま、ありがとう。せかいよ、ありがとう。
ふたりの愛は永遠の中に結晶しました……。

END
112作者 R:2009/05/25(月) 13:04:09 ID:9txKIvIz
これで終了です。
長い間、お付き合い頂き、ありがとうございました。
こんな拙い作品の寿命が延びたのも、励ましの言葉をかけてくださったり、
鋭いご指摘で作品の方向を導いてくださったりした、このスレの皆様のお陰と
思っております。感謝いたします。

作品の結末について。
本当は、ラストはミツオの死でも良いかと思いました。
悲劇的でバッドエンドで、リアルで。
真の結末はこちらがベストかもしれません。

でも・・・。

スミレちゃんとミツオ君のはかないけど幸せな恋。
作者としてぜひ成就させてあげたかったし、させずにはおれませんでした。
月並みでベタで、ご都合主義で非現実的な終わり方だけど、
原作パーマンでもついに見届けることが出来なかった二人の幸せが
こういう形でだけでも成就して、作者として幸せです。

私は暫く筆を起きますが、ぜひ素敵なアイディアをお持ちの方が
このスレで藤子作品の素敵なパロディを疲労して欲しいと願います。

ありがとうございました。
113創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 15:12:27 ID:RVUFLcnh
作者様、ありがとうございました。
114創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 19:48:29 ID:WidjmiKW
おつおつ。良い話ですた

しかしこれは萌え小説に括っていいのだろうかw
115創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 23:14:47 ID:fqduQFoN
乙でした。

以前、詩に近い表現形式だから説明が足りないと言ってましたが、
何というか全体的にポイントとなるイメージがまずあって、それを書くことを
優先(先行)させて、イメージとイメージをつなぐ糸やイメージに至る道筋を
書くのを怠ってしまっている(あるいは考えていない)ため、
シーンごとのイメージというかニュアンスはつかめるのだけど、
状況がわからない→説明が足りない になってしまっている印象を受けました。

全滅エンドは賛否両論だろうなと思いますけど、話自体は面白かったです。
116創る名無しに見る名無し:2009/05/29(金) 21:54:36 ID:63ivX7hT
遅いレスですけど、堪能しました。ありがとうございます。
ベタだけど、愛し合うふたりの感動の再会にはぼろ泣きしました。
賛否両論あるとはいえ、良いラストに落ち着いたと思います。

ところで作者さん。
リームの新作はまだ書かないのですか?
117作者 R:2009/06/01(月) 08:54:13 ID:PtlXPiox
>>116
新作うpします。
ただし、パーマンの時と違って夏はちょっと忙しい時期なので、
1週間に2話ずつくらいのペースになります。
ご容赦ください(調子がよければもっとうpします)。

今回はタイムパトロールぼんのパロディになります。
ところどころ、ほかの作家さんの真似も出てきます。
勘の良い方ならお分かりになられると思います。

タイトルは短編「リーム 時間と闘う女」です。
118作者 R:2009/06/01(月) 08:55:14 ID:PtlXPiox
『あの女が戻ってくるですって!?・・・
そんなこと・・・そんなばかなこと・・・
あいつは死んだはずのに・・・
時間の奔流という墓標の中に閉じ込めておいたはずなのに・・・。
ああ、戻ってくるわ・・・
あの人を取り戻しにやってくる
あたしからあの人を奪いにやってくる・・・
怖い・・・たすけて・・・』
119日陰の生活(1):2009/06/01(月) 09:08:28 ID:PtlXPiox
―東京―
いったい一日にどれくらいの人がこの町に関わるのだろうか。
横断歩道を渡る無数の人、人、人。
日本中から集まってきているのではないかと思わせるデパートの人ごみ。
忙しく歩き回るビジネスマンの多さに驚きを禁じえない東京駅前。
田舎と比べると、なんと日差しの強い町なんだ、と思ってしまう。

でも、ここは本当にひなたなのだろうか。

ふと、そんな不安を抱いてしまう。

ここは実は日陰の町なのではないか、と。
憎悪、貧困、苦悩、妬み。
あらゆる負の感情が行きかう地獄なのではないか、と。

買い物篭にいっぱいの幸せを詰め込みながら、
あたしはうす暗い東京の昼空を見つめた。
120日陰の生活(2):2009/06/02(火) 17:55:27 ID:R1KBtKox
「ただいまー」
狭く暗い玄関。古ぼけた、安アパート特有の苦いにおい。
小さい頃、憧れた豪邸からはとてもかけ離れた貧相なおうち。

「おかえりー」
でも、お金持ちには絶対負ける気がしない幸せがある。
とても落ち着く、やさしい声が襖の向こうから漏れる。
「今日ね、スーパーでお野菜がとても安かったのよ。」
妙に日当たりが良い6畳間に彼が寝そべっている。
「それは儲けだね。美味しいごはん期待してるよ。」
「うん!」
平凡だけどとってもしあわせ。
この人といるだけであたしの人生はすごく満たされている。
121日陰の生活(3):2009/06/02(火) 17:57:21 ID:R1KBtKox
―平凡―

ぱっと見、あたしの夫は絵に描いたように平凡な人だ。
だって 名前が並平凡(なみひら・ぼん)っていうんだから。
もうそれだけで笑っちゃう。
顔もそんなにハンサムじゃないし
飛び抜けて目立つお仕事をしているわけでもないし
いろんな意味でとっても平均的だけど
あたしにとってはとても大事な人。

でも、逆に彼は世間ではすごいやり手だと思われている。
だって、奥さんが外国人。
しかも、すごくきれい・・・自分で言うのもなんだけど。
スミマセン・・・。

「紹介します。付き合ってるリーム・ストリームさんです。」
凡のご両親に初めて会った時は心臓が飛び出るくらい緊張した。
その後、婚約が決まって東京の街をふたりで歩いたときも
いろんな好奇の目や冷やかしの声にあたしは震えて真っ青になった。
それなのに、凡のほうはうきうきしてまったく平気そう。
意外と、このひと 平凡とかけ離れているのかも・・・。

ま、平凡とかけ離れていると言うのはたしかにそうだ。
あたしにしか知らない彼の真実があるし・・・。
あたしと彼の出会いもその真実に絡んでいるし・・・。
122日陰の生活(3):2009/06/02(火) 17:58:21 ID:R1KBtKox
―平凡―

ぱっと見、あたしの夫は絵に描いたように平凡な人だ。
だって 名前が並平凡(なみひら・ぼん)っていうんだから。
もうそれだけで笑っちゃう。
顔もそんなにハンサムじゃないし
飛び抜けて目立つお仕事をしているわけでもないし
いろんな意味でとっても平均的だけど
あたしにとってはとても大事な人。

でも、逆に彼は世間ではすごいやり手だと思われている。
だって、奥さんが外国人。
しかも、すごくきれい・・・自分で言うのもなんだけど。
スミマセン・・・。

「紹介します。付き合ってるリーム・ストリームさんです。」
凡のご両親に初めて会った時は心臓が飛び出るくらい緊張した。
その後、婚約が決まって東京の街をふたりで歩いたときも
いろんな好奇の目や冷やかしの声にあたしは震えて真っ青になった。
それなのに、凡のほうはうきうきしてまったく平気そう。
意外と、このひと 平凡とかけ離れているのかも・・・。
123作者 R:2009/06/02(火) 17:59:26 ID:R1KBtKox
122は調子が悪くて2重投稿になりました。没にします。
次のうpは金曜日くらいにします。
124日陰の生活(4):2009/06/05(金) 17:39:58 ID:NSjr5NqW
それはそうと。
今のあたしたちの生活について。
凡はとても小っちゃな会社の営業マンとして働いている。
人当たりが良いから、それなりに仕事は取ってきているらしい。
会社の人たちからも、その人なつっこい性格が好かれている。
お給料は安いけど、まあまあ安心できる環境だ。
ところが……。
凡には別の顔がある。彼は夢を叶えたがっているのだ。
「僕は漫画を描きたい。」
子供の頃から彼が抱き続けている夢。
そういえば、あたしたちが初めて出会った頃、
彼が同人誌に必死に書き上げた作品を投稿していたのを思い出す。
その想いを今も静かに、でもとても熱く燃やしている。
意外と芯の強い人なんだ。夢を諦めない人なんだ……。
あたしは胸がきゅんとする。叶えてあげたい……。

一方のあたしはと言うと、駅前の英会話教室に講師として勤めている。
主に子供たちが相手なので、真昼から夕方まで。
きゃっきゃとあどけなく騒ぐ子供たちをあやしながらレッスンして、
今日も働いたと言う満足感を十分に胸に蓄えながら仕事を終える。
「早く帰って美味しいご飯を作らないと」
何だかとてもうれしい気分で、綺麗な夕焼けを見ながら、
愛用の竹で編んだ買い物籠をぶら下げて、スーパーに向かう。
125三つ編みの麗人(1):2009/06/05(金) 17:41:44 ID:NSjr5NqW
そう言えば、今日もあの人と話したっけ……。
「リーム先生っ!」
スーパーに入って、ちょうどお魚売り場のあたりに来ると
決まって声をかけてくる女性がいる。
あたしの大切な教え子。20代の、とてもかわいらしい女性。
先っぽがカニの鋏みたいな三つ編みがすごくチャーミング。

野比しずかさん。

彼女は子供たちに混じってレッスンを受けている唯一の大人だ。
とても目立つし、先生同様、好きなようにいじられる。
「あーっ、しずちゃんはミウのおねえちゃんなんだからねっ!」
「なによ、あたしにはリーム先生がいるからいいもんっ!」
ま、とても愛されているのかな。
小っちゃな悪魔たちとのほほえましい戯れのあと、
疲れきったしずかさんとあたしはスーパーで顔を合わせる。
さっきまで先生と生徒だったのが、ここでは同じ主婦どうし。
他愛ない会話を弾ませながら、籠に今夜の食材を詰め込んでゆく。
126三つ編みの麗人(2):2009/06/05(金) 17:43:46 ID:NSjr5NqW
「主人はお刺身が好きだから。今日は奮発して買って帰るの。」
にこにこした表情で、口元を緩ませ、冷蔵ケースを覗きこむ。
主人想いで、良妻の典型みたいな現在の彼女だけど。
しずかさんはかつて、自由奔放な女性だったという。
可愛げのある美人で、才気にあふれ、でも男勝りな気の強さもあり、
そんな偉大な魅力にたくさんの男性の心が虜にされた。
彼女はそんな男たちをとっかえひっかえ受け入れ、青春を謳歌した。

でも、そんな彼女が最後に伴侶として選んだのは、
野比のび太という、どうしようもなく冴えない男だった。
みんなが彼女の決断を信じられないという気持ちで眺めた。
悪いけど、あたしもしずかさんの気持ちは分からない。
のび太さんに比べれば、うちの、平凡を絵に描いたような
凡さんですら、スーパーマンに見えてしまう。

のび太さん。
風邪をひけばだらしなく鼻水を垂らしているし、
軽い言動で周りの空気を凍らせては、叱られてへらへらしている。
何でも、高校を出るまで、タヌキみたいな顔をしたハウスキーパーに
煩わしいことは全部任せて、自分であまり努力をしてこなかったから、
あのように自堕落になってしまったという。近所では有名な話だ。
127三つ編みの麗人(3):2009/06/05(金) 17:44:50 ID:NSjr5NqW
でも、しずかさんは言う。
「彼ね、みんながピンチのときに、急に勇敢になったりするの。
そういう姿を見てカッコいいなあと。」
へえ、のび太さんが。まあ、悪い人には見えないし。
しずかさんが愛したんだから、きっと中身は素敵な人なんだろう。
あたしが惚気に頷く。すると、一転して彼女はうなだれて、
とても寂しそうな表情を浮かべながら愚痴をこぼした。
「でも、あの時折見せる意志の強さがあたしに向いてくれれば
って寂しくなっちゃうときもあるの。彼は情熱からほど遠いのよ。」

―情熱―

その言葉を聞いて、あたしの野比家に対する関心は霞のように消え、
代わりに最愛の夫、並平凡の方へと向けられた。
のび太さんのように優柔不断で、何事にも柔和な態度の彼。
その彼がたった一度、あたしに怖いくらいの情熱を注いだことがある。
しかし、その情熱は、悪魔に魂を売った王子が鬼に成り果てたような、
冷酷さと、非情さと、狂おしい情念に満ちたものだった。
彼は、今日も優しい笑顔をたたえてあたしを待ってくれている。
128モノローグ:2009/06/05(金) 17:47:18 ID:NSjr5NqW
『“あなたは彼のことが好き?”
あたしの問いかけに彼女は笑顔でつぶやいた。“ええ”と。
あどけない笑顔。屈託のないしぐさにあたしは焦る。
“それはよかった。ふたりはきっとお似合いよ。がんばって”
“ありがとう”
それが罠とも知らず、あなたはあたしに心を許して
本当の気持ちを言ってしまった。
あたしももう引き下がれない。彼をとられたくない。
でも 慎重にやらなければ。彼女を油断させて
勝利をわが手に……!』
129作者 R:2009/06/05(金) 17:52:59 ID:NSjr5NqW
今週はここまでにいたします。
リームとしずかのキャラを思い通りに固めることが出来ず、
四苦八苦しながら描いています。
リームはスミレと同じくらい昔から好きなキャラなので、
しっかり心の隅まで描ければ良いなあと思っています。
130創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 12:15:10 ID:zHnaJCo7
えーと反応した方がいいと思うんだけど、凄く反応し辛い

ドラえもんでいうなら、のび太が正月に部屋で寝転がっていたら、
机の引き出しから変な奴が出てきて、変な予言をした挙句、餅食って
机に戻ったところまで読まされた感じ

とりあえず楽しみにはしてるんで頑張ってください
131創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 08:24:27 ID:Ki/64O6J
続きは?
132創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 06:49:47 ID:OA4rfsBv
保守
133創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 01:38:48 ID:42xSvkjQ
いっちょageたろ
>>1以外が書いてもええねんやろ
134創る名無しに見る名無し:2009/07/15(水) 10:56:18 ID:b9VD2EIa
>>1以外が書いても全然いいと思うよ
135創る名無しに見る名無し:2009/07/22(水) 20:29:58 ID:QWxrxJv0
age
136創る名無しに見る名無し:2009/07/28(火) 05:00:13 ID:PrUjqpq7
作者Rさん、お元気ですか?続編お待ち申し上げております。
137創る名無しに見る名無し:2009/08/06(木) 01:17:56 ID:GB/XLtC7
萌え小説щ(゚д゚щ)カモーン
138創る名無しに見る名無し:2009/08/17(月) 14:38:21 ID:dG3wbxWG
待機
139創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 15:53:29 ID:Lbrv01h1
age
140創る名無しに見る名無し:2009/09/05(土) 06:38:04 ID:ukJcPgQd
保守
141創る名無しに見る名無し:2009/09/14(月) 13:53:19 ID:Rz/2Seq6
age
142創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 10:35:23 ID:xKMdEulP
143創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 09:22:59 ID:JxEskGz5
あがりまーす
144創る名無しに見る名無し:2009/10/13(火) 05:56:39 ID:kArj4uMm
保守
145創る名無しに見る名無し:2009/10/24(土) 15:45:51 ID:QKlWM0xc
保守
146創る名無しに見る名無し:2009/10/26(月) 19:09:09 ID:HpMN+OO1
保守
147創る名無しに見る名無し:2009/11/04(水) 08:51:00 ID:ywIS8FCS
保守
148創る名無しに見る名無し:2009/11/14(土) 22:59:58 ID:wXyARUlu
ほっしゅ
149創る名無しに見る名無し:2009/11/24(火) 16:03:06 ID:h4V+2JeE
150創る名無しに見る名無し:2009/12/04(金) 12:18:01 ID:RrM1xp6T
保守
151創る名無しに見る名無し:2009/12/16(水) 08:48:19 ID:KnsgsGwp
保守
152創る名無しに見る名無し:2009/12/28(月) 11:40:44 ID:Ya0kv2qb
153創る名無しに見る名無し:2010/01/10(日) 22:24:41 ID:rOwg4/Ki
保守
154創る名無しに見る名無し:2010/01/11(月) 00:33:50 ID:TOGUqR/u
´| ̄`ヽr<´ ̄  ̄`ヾ´ ̄ `ヽx''´ ̄「`丶、
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        |     Y              ヾ,/  | \|
       |    ノ                 丶、 .|
      |     ,'   ...                   ', !  同じ板にコピペするとそのままだけど、
.       |   |  ::r.,::     i  ,     ....  | .|  違う板にコピペするとおっぱいがポロリと
        |   '、  ゙"     /  |      ::' ィ: ,' !  見える不思議なギガバイ子コピペ。
       ',.    ,>、_  ___/  丶     ~ , ' ,'
       ':、 r'へ`\_       ` ―ァ‐ く  /
        \ヽ;::.:>_ 二ヽ  γ'''" ̄''シノ/
.           `/,'ー  =ヽヽ/ /r―=〈/
155創る名無しに見る名無し:2010/01/27(水) 01:30:58 ID:wEKGg+J6
156創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 19:48:55 ID:nSUeKmAf
ほしゅ
157創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 18:00:42 ID:EDVBlIgO
保守
158創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 17:07:23 ID:ewszQCl3
保守
159創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 08:00:00 ID:Ao9aeUHR
ほす
160創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 16:20:34 ID:lLXYA7Uc
保守
161創る名無しに見る名無し:2010/05/14(金) 11:20:14 ID:gEF4uhQh
162創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 05:59:12 ID:TpiUZiHx
ほほ
163創る名無しに見る名無し
保守