ニコニコ動画バトルロワイアルβ sm10

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1創る名無しに見る名無し
鬱です。

本日はニコニコ動画バトルロワイアルに 御アクセス頂き、 ありがとうございます。

ここはニコニコ動画の人気キャラを用いてバトルロワイヤルをするというリレー小説のスレッドです。
大変申し訳ありませんが、 この企画はフィクションであり実在の団体・人物等とはまったく関係ありません。
ルールさえ守っていただければ誰でも参加可能です。

またの御アクセスをお待ちしております。

前スレ:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236627460/

Wiki:http://www19.atwiki.jp/niconico2nd/
したらば:http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12373/
2創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 20:36:16 ID:08yVX09W
【基本ルール】

全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
生き残った一人だけが、元の世界に帰ること及び望んだ願いを叶えることができる。

ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる

【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
但し義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
支給品として地図、コンパス、筆記用具、水、食料、時計、懐中電灯、
及び各作品や現実からランダムに選ばれたもの1〜3個が渡される。
3創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 20:37:02 ID:08yVX09W
【主催者】
・進行役
右上@ニコニコ動画
左上@ニコニコ動画
・黒幕
運営長@ニコニコ動画

【ステータス】
投下の最後に、その話に登場したキャラクターの状態・持ち物・行動指針などを表すステータスを書いてください。
テンプレはこちら。
【地名/○○日目・時間(深夜・早朝・昼間など)】
【キャラクター名@出典作品】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(武器・あるいは防具として扱えるものはここ)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なものはここ)
[思考・状況](ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
      複数可、書くときは優先順位の高い順に)
4創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 20:38:04 ID:08yVX09W
【予約について】
キャラの予約は基本的には3日。申請があれば2日くらいは延長するかも?
(ただし最初はなし)

【作中での時間表記】
深夜:0〜2  
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24

【地図】ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0144.png
    ttp://www11.atpages.jp/nico2nd/(現在位置表)
5創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 20:40:24 ID:YSca7whu
乙に天下を見るのならば、乙の下におれ!

誰も分かんないだろうなこのネタ
6創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 21:51:51 ID:IfgVn/Wg
日本史の成績が1の俺が>>1乙をしてみた
7創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:23:02 ID:GFeAVU/R
一乙です
代理投下行きますです
8代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:26:04 ID:GFeAVU/R
613 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:47:19 ID:o6ythg5.0
仮投下します。

614 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:47:52 ID:o6ythg5.0
 図書館の二階。
 本来ならば静寂に包まれているはずの場所に可愛い悲鳴が響く。


「むきー! あたいをバカにして! こんななものぐらい!」
 チルノは冷気を放出し首輪を凍らせる。


「凍っただけじゃないか」
 チルノからできるだけ離れた位置に座った少年、タケモトは冷めた目でそれを見つめる。
「うるさいわね、たまにここからパリンと……」
「何の話だよ」
「蛙」
 タケモトは頭を抱えため息をつく。


@ ある程度の力を持っている。
A 自己再生能力が強く丈夫だろう。
H バカ。
 この三要素を満たすチルノに危険の伴うが首輪の無効化には避けて通れない首輪の分解作業を行おうと思ったわけだが頭が弱くすぎてさすがに手間取る。


「チルノ、蛙と首輪は同じようには壊れないんだ」
「どこが違うって言うのさ」
 チルノが不満げに答える。
「有機物と無機物じゃ……」
 と言いかけてどうせ説明しても分からないんだろうなとため息をつき口を閉じる。


「まあ、そんなことはどうでもいいさ。これで、叩き壊せよ」
 手段を探させていたら確実に日が暮れてしまう。
 タケモトはレンから借りておいたゴム鉄砲を差し出す。


 チルノはいろいろと持ち方を模索した後銃身を握りしめ高く跳びあがる。
 首輪が衝撃で爆発する可能性もあったが、本来突然の死があり得ないチルノにとってそこまで考慮するは頭はない。
 そして、躊躇いなく天井近くから勢いよく振り下ろした。
9代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:27:56 ID:GFeAVU/R

615 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:48:53 ID:o6ythg5.0
 やれやれ、やばい奴らもいるもんだと感心するタケモトの目の前で首輪は甲高い音を立てながら輪の一部をつぶされる。
 偶然か必然か首輪に異変は起こらない。


「やっぱ、あたいったら最強ね」
「そうだな」
 偉そうに胸を張るチルノに生返事をし、恐る恐る首輪に近づく。


 首輪の断面は潰れていて判別しにくかったがおそらく首輪の構造は金属の筒に爆薬が入った構造であることは間違いなかった。
 また破損した部分から見える配線らしきものから何かしらの装置が入っているのも間違いないとみていいだろう。
「やっぱ、これだけじゃよく分からないな」
 タケモトがこの破損部分から分かったのはそれだけ。
 正規の分解方法で分解したかったのだが継ぎ目となりそうな部分が存在しないのだ。


 力ずくの方法ではあるがこの場では最善の策をとったつもりだ。
まあ、首輪を作る側の心情に立てばわざわざ参加者に分解されるような形で首輪を作るわけがないのだが。


「チルノ、お前の力でこの中のものを取り出したり出来るか? まあ、期待していないけど」
 また、チルノをけしかけると思いタケモトはチルノに声をかける。


 この大変単純な思考回路をしている少女は負けず嫌いに分類される人間だろうということはすぐに分かった。
 否定的な評価は覆そうという行動原理は利用するタケモトの側としては大変都合がよかった。


「あたいをなめないことね、そのくらい!」
 チルノはタケモトの方をにらみつけると首輪の方を見つめて首輪を握りへし折ろうと力を込める。
 顔を真っ赤にして力を込めるけれど首輪は折れない。
「痛っ」


 チルノの肩に痛みが走る。
 大分怪我は治ったとはいえまだ完治とは言い難かった傷が痛みだしたのだ。
「おいおい、無理すんなよ」
 これ以上チルノに無茶をさせても何の得もないと判断したタケモトはチルノからさっと首輪を取り上げる。


「ん?」
 さっきは気づかなかったが気になるものを見つけた。
 金属の薄幕。
 非常に小さいが確かにそれがあった。


 用途を推察する。
 これだけでは判断に困るがひとつ頭に浮かんだことがあった。
 コンデンサーマイク、小型化に適したマイクだ。
 おそらく用途は盗聴。


 タケモトは再び残骸に目を配る。
 あった、トランジスタ。
 こいつはコンデンサーマイクに必要なものだ。
10創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:28:32 ID:balrLD6P
支援しよう
11代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:28:47 ID:GFeAVU/R
616 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:49:24 ID:o6ythg5.0
◆ ◆




 図書館の一階。
 ここでもあまり図書館に似つかわしくない音が響く。
 肉体と肉体がぶつかり合う音。
 ここでビリーと美鈴は闘っていた。


 といっても、殺し合いではない。
 単なる腕試しである。


 その周りではドナルド、レンがその様子を見つめている。
 特にレンは二人の闘い方を学ぶようにドナルドに言われているのでその目は真剣だ。


 美鈴とメタナイトの二人組がこの奇妙な一行に加わったのは少し前、図書館に入る前になる。
 南に向かって歩いていた二人が騒がしい集団に気付かないはずがなかった。
 騒がしかったのは主にチルノが原因だったが。


 美鈴とチルノが知り合いだったこともあって、この二組の集団は順調に情報を交換することができ、互いをある程度信頼することになった。
 お互いの目的が同じであることもありとりあえず行動を共にすることにしたのだ。
 図書館に行くと提案したのはタケモト、施設を回るためである。


「ドナルド、いつまでここにいるんだ?」
 飽きてきたのかドナルドの隣にいるレンが囁く。
 レンにとっての第一目標はネガキャンをしていた悪党を倒すこと。
 建物の中にこもっていたとしても達成されないことは明らかだ。


「タケモトが戻ってきてからかな?」
 ドナルドはタケモトに二階へ人を入れないように言われていた。
 首輪の理解のためにチルノを利用するらしい。
 おそらくビリー、美鈴、メタナイトはこのことをあまりよく思わないだろうと判断したのだ。
 ドナルド自体はチルノの利用価値は大きいと判断していたのであまり失いたいものではなかったが首輪の解除より優先すべきものはないと判断していたのでタケモトの行動を許していた。


「なるべく早くしてほしいんだよ、こうしているうちに誤解が……」
 ドナルドは適当に相槌を打ちつつ新しく仲間に加わった四人の利用方法を考えることにした。
12代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:30:12 ID:GFeAVU/R
617 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:49:55 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



「誰かいるのか?」
 藤崎を殺す機会を逸しながら遂に図書館についてしまったバクラが呟く。
 聞こえたのは戦闘音。
 かすかながらも聞こえる何かがぶつかる音がする。


「よく分かりませんが、どうします?」
 言葉が心配そうにバクラを見る。
 図書館に入れば無用な争いに巻き込まれる恐れがあるが、図書館を離れれば月との再会は望めない。
 もちろん利用し合っている仲なので会えなかったとしても大した問題ではないのは確かなのだが。


「お前ら殺し合いに乗っているのか?」
 急に聞こえた声。
 気がつけば藤崎の頭の上に乗った丸い生物がいた。


「ひい! 何するんや!」
 藤崎の首元に突き付けられたナイフ。


「ちょっと待ってくれよ、殺し合いに乗ったやつが三人で行動してると思うか?」
 このよく分からない生物も参加者なのかと不思議に思いつつもバクラは答える。
 藤崎が死のうとかまわない話だが、この場では善人であるかのように振舞う方が安全だろう。


「ふむ、それもそうだな。とりあえず、中で話を聞かせてもらおうか」
 奇妙な生物は図書館の中を指さす。
 相変わらずナイフは藤崎の首にぴったりと添えられていた。


「さっき、戦いの音が聞こえてたんですけど」
 言葉が不安そうに言う。


「大丈夫だ、中にいるのは全員仲間だからな。中でやってるのはただの運動だ」
13代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:30:58 ID:GFeAVU/R
618 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:50:26 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 見張りをしていたメタナイトとともに現れた三人の人間。
 ドナルドは新たな信者候補を見てほくそ笑んだ。


「そいつらは一体どうしたんだい?」
 ドナルドは藤崎の首にナイフを突き付けているメタナイトに尋ねた。
 美鈴とビリーの二人も手を止めてメタナイトの返事を待つ。


「ああ、外にいたんだ。殺し合いに乗っている様子でもないし一応連れてきたんだが」
 メタナイトが頭の上から飛び降りて言う。


「三人ともお名前は何と言うんですか?」
 美鈴が汗を拭きつつ質問した。


「バクラだ」
「私は桂言葉といいます」
「俺は藤崎瑞樹っちゅうもんや」
 三者三様の自己紹介。


 ドナルドは三人の値踏みをしながら、とりあえず席に着くように促す。
 その後二階から降りてきたタケモトとチルノも加わり朝食を兼ねた情報交換が始まった。
14創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:31:07 ID:balrLD6P
 
15代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:31:44 ID:GFeAVU/R

619 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:51:02 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



「因幡てゐは殺し合いに乗っている、か」
 美鈴はため息をつく。
 知り合い、とはいっても名前程度らしいが、殺し合いに乗っていると聞かされるのはあまり気分の良いものではないのだろう。


「あいつなら乗ってもおかしくはないけど」
 チルノが呟いた。
 美鈴もそれに相槌を打つ。


 こんなにもあっさり信じるとは。
 バクラは想定外の状況に驚きつつも喜んだ。
 こんな簡単に知り合いに殺人者になったと思われるとは悲しい奴だ。


「とりあえず、今わかってる段階でやばい奴らはブロリー、黄色い怪物、てゐ、呂布、志々雄といったところか?」
 メタナイトがまとめる。
「いづれも劣らず厄介な奴らだよね」
 それにドナルドが相槌を打つ。


「ああ、人知を超えた強さを持つ奴、話し合いも通じない獣、頭脳と実力を兼ねる幼女、後世に名を残す最強の武将、どいつもこの状況ではあまりお目にかかりたくないよな。レンを殺さなかった志々雄はまだましな方だな」
 タケモトが頭を抱える。


「ん?頭脳と実力を兼ねる幼女ってのはてゐのことだよな。あいつ実力なんてあったのか?」
 バクラは気になったので尋ねてみる。
 バクラの記憶ではてゐは力を持っている素振りはなかったが。


「ええ、ああ見えても数千年生きているという噂もありますよ」
 美鈴の答えを聞いて早めに縁を切っていたことを喜ぶ。
 もし、あのまま手を組んでいたらいつ寝首をかかれるかわかったものじゃないということだ。


「そうだ、ビリー」
 藤崎が口を開く。
「俺はお前に謝らなきゃいけないんや。俺はこの殺し合いに来てから始めカズヤと一緒に行動してたんだが、ブロリーに襲われて……結局、俺の代わりにカズヤは死んでしもうたんや。俺のミスなんだ」
 藤崎は唇をかみしめる。


 ビリーはその様子をチルノを抱えたままじっと見つめていた。
 しかし、すぐに微笑みを浮かべ口を開く。
「仕方ない、戦いに敗れたなら仕方ないね。パンツレスラーとして闘って他人を助けられるなら本望だろうね」
 藤崎はビリーを見つめそして二人のパンツレスラーへの感謝を新たにしたようだった。
16代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:32:31 ID:GFeAVU/R
620 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:51:37 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 言葉は何もしゃべらずに考えていた。
 バクラはあっさりとこの一団と行動を共にすることを選んだが一体この後どうするつもりなのだろう。
 この中には私たちではかなわない相当な強者がいるはずだ。
 ここからどうやって優勝を目指すというのか。
 言葉にはさっぱりわからなかった。


「これを見てくれ」
 タケモトが立ち上がり一枚の紙を取り出す。
 そこには読みやすいように大きく文字が書かれていた。
 『首輪には盗聴器がある』と。


「見たか?」
 各々それに応じてうなずく。
 その様子を見たタケモトはその紙を裏返す。
 そこには『首から外した首輪はよっぽどのことがなければ爆発しない』と書かれている。


 彼は首輪を外そうとしているのだろうか。
 だとしたら勇気のある人だ、と言葉は考える。


「まあ、これぐらいだ」
 少しぼかした言い方。
 盗聴器が付いていると言っていたからその対策だろう。


「まあ、これから分かったことがあったら伝えるから」
 タケモトはそう言って席に着いた。
17代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:33:18 ID:GFeAVU/R
621 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:52:07 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 タケモトと入れ替わるようにドナルドが席を立つ。
「さて、これからどうするかを決めるよ」
 ドナルドは一人一人の様子を窺う。


「首輪解除のための班のと殺人者駆除の二つに分けたいと考えているんだけどどうかな」
 ドナルドはあまり大人数で動きまわるのは良くないと考えていた。
 狙われやすくなることは当然だし主催からも目をつけられやすくなる。
 それに何より信者一人一人の動きを把握する余裕がなくなる。


「何か反対意見はないかな?」
 周りに尋ねる。
 もちろん、反対意見があったとしても丸め込むつもりだが。


 暫しの沈黙。
 その沈黙を賛成とみなして話を進める。


「さて何か希望があるかな?」
 ドナルドはメンバーの分かっているだけの情報をまとめながら顔色をうかがう。


「俺はできれば少人数で動きたい」
 タケモト。
 もちろん首輪解除のための最重要人物だ。
 言うまでもなく首輪解除班のリーダーだ。


「俺は兄弟を助けに行きたい。だから、殺し合いを止めるために動きたい」
 レン。
 順調に育っているみたいだけれど実力不足なのは否めない。
 でも手元に置いておきたいね。


「私は後で映画館に行かなくちゃいけないですし……」
 美鈴。
 見た目は麗しい女性だがなかなかの実力者であることはさっきのビリーとの試合で分かっていることだ。
 また、参加者である知り合いと主従の関係を持っているらしい。
 何か利用できないだろうか。
18創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:34:13 ID:balrLD6P
支援ぴーん
19代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:34:44 ID:GFeAVU/R
622 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:52:38 ID:o6ythg5.0
「私はどちらでも構わない」
 メタナイト。
 よく分からない生命体であるがやはり実力を持っているとみて間違いないだろう。
 頭が堅そうなので利用しにくいかもしれない。


「俺はどちらかというと頭脳労働はなんだ」
 バクラ。
 厄介な相手だ。
 頭も回りそうな奴だろうしタケモトの手伝いをさせるのが妥当だろう。


「……」
 言葉。
 普通の女子学生に見える。
 さっきから一言もしゃべらずに考え込んでいる。
 そのせいで、あまりどんな人物かはドナルドには分からなかった。


「悪いが俺に殺し合いができるとは思わんでくれ」
 藤崎。
 こいつが一番曲者だ。
 人一人死なせてしまったくらいでナーバスになるような理想論者であることも困るが、彼の持つある種のカリスマ性がドナルドにとって邪魔になると感じた。


「あたいが最強ってとこ見せてあげる」
 チルノ。
 傍若無人な行動が目立つのでビリーに面倒を見てもらっている。
 行動を共にしてさっさと信者にしてあげよう。


「強者と戦いたいね」
 ビリー。
 彼もまた厄介な方の人物だ。
 まあ害をなすものにぶつけるのが妥当だろう。


「うんうん、よく分かった」
 彼らの意見と交えて最適なチーム編成を考える。
 とりあえず十人いるので五対五に分けるのが基本だろう。


「じゃあ、とりあえず殺人者駆除班はドナルド、チルノ、レン、ビリー、言葉かな?」
 チルノとレンはじっとしていられるタイプじゃないだろうしこちらの班に入れておく。
 したがって、この二人を洗脳するためにはドナルドもこの班。
 ビリーは本人の希望があるからやむなし。
 言葉はどんな人物か見極めるまで手元に置いていくのがよいだろう。


「そして、首輪解除班はタケモト、美鈴、メタナイト、バクラ、藤崎かな?」
 タケモト、バクラが解析担当。
 美鈴、メタナイトがその護衛という訳だ。
 そして、藤崎は――
20創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:36:00 ID:balrLD6P

21代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:36:38 ID:GFeAVU/R
623 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:53:25 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



「まったく、なんであいつがリーダーみたいに仕切ってやがるんだ」
 バクラが悪態をつく。
 その隣で美鈴が苦笑する。


「まあ、誰かが仕切っていかないとぐだぐだになるだけですから」
 二人は図書館の外でドナルドを待っていた。
 会議がまとまった後、こっそりと話があると耳打ちされたのだ。


「まあ、別にどうでもいいことなんだけどよ。お、来たようだぜ」
 バクラの視線の方向には派手な道化師が姿を現していた。


「待った?」
 ドナルドがいつもの笑みを浮かべながら歩いてくる。


「で、何の話だよ」
「ちょっとね。藤崎を始末してほしいんだ」
 ドナルドの口から出たのは表情に似合わない言葉。
 二人の視線が鋭くなる。


「な、何言ってるんですか?」
「平たく言えば殺してくれってことかな?」
「それは分かります。でも、何で!」
 美鈴は狼狽する。


 訳が分からなかった。
 仲間を殺せだなんて。


「一体、どういう風の吹きまわしだ? 冗談で言っているわけじゃないだろ」
 面白そうなものを見つけたバクラは口元に笑みを浮かべる。


「藤崎は理想を追って現実を見失いかねないからね。それで仲間が犠牲になるのを避けたいってわけさ」
 ドナルドの表情は変わらない。


「たったそれだけの理由で人を殺すんですか?」
 美鈴には理解できなかった。
 そんな簡単なことで人を殺そうとする考え方が。


「たったそれだけ、本当にそうかな? 君はフランちゃんの力になりたいんでしょ? 
   もし仮に殺人者に向かって藤崎が説得しようとする。その隙に飛び道具を使ってタケモトが殺されちゃったら? タケモトは首輪を何とかできる才能がある。だからそういう機会を除きたいんだ」
 ドナルドは美鈴の目を覗きこむ。
 まるで心の中を見透かすように。
22創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:36:48 ID:08yVX09W
支援
23代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:37:25 ID:GFeAVU/R

 美鈴の心は揺れ始めていた。
 確かにドナルドの言う通りかもしれない。
 藤崎はこの殺し合いの中においては甘すぎるのかもしれない。


「でも!」
 美鈴はドナルドから目をそらす。
 保身のために人を殺す覚悟はなかなかできなかった。


「まあ、かまわないさ。邪魔さえしなければね」
 ドナルドは美鈴に向けてやさしい笑みを浮かべる。


「バクラ、君ならやってくれるだろう?」
 ドナルドは視線をバクラに移す。


「ああ、構わない。武器さえくれればな」
 バクラはドナルドに向けて不敵な笑みを浮かべる。


「武器、もう持ってないんだけどねえ。チルノが持っているらしいから借りられないかな?」

624 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:54:21 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 出発を前にして十人は支給品の交換をしていた。
 チルノは案外あっさりとナイフを渡してくれた。
 毒が塗られている優れものとはありがたいとバクラは笑みを浮かべる。
 ついでにチルノが持っていたDMカードもなんだかんだ理由をつけてもらっておいた。


「とりあえず第二放送まではお前の知り合いを待つ。その後、映画館に向かうってことでいいんだな?」
 タケモトが声を掛けてくる。
 案外バクラを信用しているようだ。


「ああ、それで構わないぜ。それまでにたどり着けない様じゃ月もたいして役に立たない奴ってことだからな」


 バクラはみんなで仲良く主催を倒す正義ごっこをやるつもりはさらさらなかった。
 おとなしく集団に随っているのは一つの考えがあったから。
 人間は絶望から日常に救いだされればそれだけでも幸せに感じるが日常自体を幸せに感じるわけではない。
 つまり、変化を幸せに感じるということだ。


 逆に言えば希望が見えたところで絶望に落せばこの上ない絶望を感じることだろう。
 バクラそのときに爆発的に増大するであろう心の闇に目をつけた。


 まあせいぜい小さな希望を楽しめよ。
 バクラは誰にも見られないように笑みを浮かべた。
24代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:38:11 ID:GFeAVU/R
【ドナルド組共通思考】
1:首輪解除のためにタケモトを助ける。
2:殺し合いに乗っているもの足を引っ張るものは殺す。



【D-4 図書館/一日目・午前】
【ドナルド組首輪解除班共通思考】
1:第二放送までは図書館の調査。月を待つ。
2:第二放送の後映画館を調査。フランを待つ。
3:それと平行して首輪の解析。



【バクラ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 】
[状態]:服に軽い汚れ、疲労(小)
[装備]:千年リング@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 毒蛾のナイフ@ドラゴンクエスト DMカードセット(翻弄するエルフの剣士、鉄の騎士ギア・フリード、ガーゴイル・パワード)@遊☆戯☆王
[道具]:共通支給品、 光学迷彩スーツ@東方project、コメント一覧@ニコニコ動画
[思考・状況]
1:ドナルド組首輪解除班として行動する。
2:脱出フラグをへし折り、参加者の心の闇を急速に増大させる。
3:誤情報を流し争いを促進する。てゐの情報など 。
4:最終的には優勝狙い。
※原作終了後(アテムが冥界に帰った後)から登場



【タケモト@自作の改造マリオを友人にプレイさせるシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:アイスソード@ちっこい咲夜さん
[道具]:支給品一式、精密ドライバー@現実 野菜ジュース@ぽっぴっぽー カミーユの首輪(一部破損) ドアラの首輪 シルバーウルフ(12/12)(予備弾188本)@フルメタル輪ゴム鉄砲 万葉丸(11/30)@零シリーズ 強姦パウダー@ニコニコRPG(4/9)
[思考・状況]
1:生き残り脱出する,そのためには……な……
2:大連合は組まない、最低限の人数で行動
3:施設を回って情報を集め、その真偽を見抜く
4:首輪を外せはしないと判断。無力化するための協力者を少人数集める
5:規格外の者に対抗出来るように、ある程度の戦力が欲しい
6:人の首って切りにくいんだな。落ち着けて設備のある場所で実験するか
7:誰が創造者なのか教えてやんよ
※僧侶のネガキャンを間接的に聞きました
※ドナルドが強力な支給品を持っていると判断。持っているとは限りません。
※首輪についての情報(盗聴器、死者の首輪は爆発しにくい)を知りました。
25代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:39:02 ID:GFeAVU/R
625 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:55:29 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 美鈴は悩んでいた。
 いま問われていることは、主人のために人を殺せるかということなのだろう。
 美鈴はそう解釈していた。
 従者として主君を助けるために何ができるのか。


「顔色良くないね」
 後ろから声がする。
 振り返るとそこにいたのは筋肉ムキムキの男、ビリーだ。


 そういえば。
 探し人のことを思い出したのだ。
「赤さんって、知り合いですか?」


「赤さん? 仕事仲間だけど」
「あなたを私の主君が探していたんです。もし会ったら仲良くしてあげてくださいね」


 とりあえず、いま私にできること。
 主君が会いたがっていた人に合わせることは従者としてやらなきゃいけないこと。



【紅 美鈴@東方project】
[状態]小疲労、フランドールへの絶対的な忠誠
[装備]無し
[道具]支給品一式
[[思考・状況]
0:ドナルドの命令に従うべきだろうか。
1:タケモトたちと行動をともにし日没までに映画館へ戻りフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
2:十六夜咲夜を警戒
3:知り合いの情報集め
4:殺し合いに反対するものを集める
5:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい
6:テトを探す
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。



【藤崎瑞希@現実】
[状態]決意、疲労(小)
[装備]なし
[道具]支給品一式、金属バット@現実
[思考・状況]
基本思考:主催者の目論見を粉砕し跪かせる
1:ドナルドたちに従う。
2:参加者を救う 。
3:受け継がれた意思を持って、戦う。
26代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:39:48 ID:GFeAVU/R
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]小疲労、顔面打撲、決意、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止め、終わらせる
1:タケモト達の護衛。
2:美鈴の知り合いの情報集め
3:殺し合いに反対するものを集める
4:触覚の男との決着
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※北に目撃した参加者は誠、南に目撃した参加者はキョン子とアカギです。
※E−2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました

626 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:56:18 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 殺人者討伐に向かう五人は西に向けて足を運んでいた。
 話に上がった殺人者は西の方であっている。
 まずこの殺人者たちを打倒そうというのがこの五人の当面の目標だった。


「あんた、強くなりたいんだってね」
 レンにチルノが声を掛けてくる。


「ああ」
 気が立っているレンはチルノの方を振り向かず短く返事をする。
「だったら、あたいがいろいろ教えてあげる。なんたってあたいは最強なんだから」


「最強ねえ」
 タケモトに術の弱点を見破られた姿を見ていたレンは話半分にチルノの言葉を聞き流す。
「そう、最強」


「悪いけど、俺は早く強くならなきゃいけないんだ。兄弟たちを守るために。兄弟たちを殺そうとする悪人たちを殺せるように……」
 レンは決意を口に出す。
 兄弟を守るために殺すことさえ厭わない、そう決めたんだ。


「あんた、まだまだね。全然まだまだ。殺さなきゃ助けられないと思っているところがまだまだ。本当の最強は誰も殺さなくったってみんな救えるんだから」
 チルノが満面の笑みを浮かべる。


「殺さなくても……?」
 レンは不意を突かれた感じがした。
 レンだって本来歌がうまいだけの子供である。
 本当は人を殺すのだって嫌だ。


「最強ってのはそういうものなのよ」
 レンにはチルノの純粋な笑みがとても眩しく見えた。
27代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:40:34 ID:GFeAVU/R
【C-3 街道/一日目・午前】
【ドナルド組殺人者駆除班基本思考】
1:西に向かい、ブロリー、呂布、てゐ、志々雄、黄色い怪物(スプー)の討伐。
2:役立たずは……



【鏡音レン@VOCALOID】
[状態]:肉体的・精神的に疲れ ドナルド信者状態
[装備]:朝倉さんのナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:支給品一式×2 不明支給品0〜1 ダイヤの結婚指輪のネックレス@ネ実板(ブロントさん) スタンドマイク@VOCALOID
[思考・状況]
基本思考:弱い悪党から殺していき、出来る限り早く強くなる。(悪気はないが足を引っ張る参加者=悪党)
1:拡声器でミクの悪口を言っていた悪党(僧侶)を殺しに行く
2:強くなって、いつか志々雄にリベンジする
3:兄弟たちに会いたい
4:ドナルドを尊敬、信頼
5:不安だったがタケモトも見直した
6:チルノの言う『最強』に興味
※僧侶のネガキャンを聞きました。



【チルノ@東方project】
[状態]全身強打、右肩甲骨、左肋骨に若干のヒビ(怪我はそこそこ回復)
[装備]なし
[道具]支給品一式
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らないが手当たり次第倒して部下にして回る、主催を倒す
1:一気に部下が増えたわ。あたいってさいきょーね。
2:さいきょーを証明する。
3:さいきょーのあたいがさいきょーのチルノ軍団を結成して主催者を倒す。
4:リョホーセン(呂布)を倒して部下にする。
【備考】
※漢字が読めません。
※空は飛べますが体力を余計に消費します
※ビリー・レン・タケモト・ドナルドを勝手に部下にしました。
※スプーを妖怪だと思っています。
※氷符 アイシクルフォールは制限対象に入っていないようです。
弱体化してはいますが、支障なく使えます。
但しイージーモード限定です。自機狙い5way弾は出せません
28創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:41:03 ID:balrLD6P
支援
29代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:41:34 ID:GFeAVU/R
【ドナルド・マクドナルド@ドナルド動画】
[状態]:健康 興奮
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品0〜1 1outキノコ@奴が来る
[思考・状況]
基本思考:教祖として信者を沢山作りつつ、信者を指揮してバトルロワイアルを盛り上げ主催者になりかわる
1:レンとチルノを殺し合い向きな人材に育てていく
2:タケモトの首輪解除及び無力化のための手伝いをする。利用した後は……
※僧侶のネガキャンを聞きました。



【ビリー・ヘリントン@ガチムチパンツレスリング】
[状態]:小ダメージ、股間が少し痛む。 
[装備]:敗れかけの半袖ジーパン(二試合目の最初の姿)
[道具]:支給品一式,万葉丸(15/30)@零シリーズ、強姦パウダー@ニコニコRPG(4/9)、不明支給品0〜1個
[思考・状況]
基本思考:強者を求める。
1:ドナルドが気に入った。
2:強者と戦う。
3:トキともう一度戦いたい。
4:リョホーセンやあの怪物(スプー)戦いたい。
【備考】
※チルノから呂布の簡単な姿と行き先を教えてもらいました。
30代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:42:29 ID:GFeAVU/R
628 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:58:38 ID:o6ythg5.0
◆ ◆



 前を歩く三人の後を言葉は黙って歩いていた。
 バクラさんは優勝を狙う気をなくしてしまったんでしょうか。
 言葉は不安になっていた。


 あっさりと主催に異を唱える大集団に入り込んでしまったらうかつに動けなくなってしまう。
 それは、分かり切ったことだった。
 脱出する希望はあるのかもしれないけれど言葉にとってそれだけではダメなのだ。


「誠君……」
 彼女の最愛の人。
 誠を生き返らせなければ目的を果たしたとは言えない。


 バクラさんがその気なら私はどうすれば。
 言葉は手にもつライフルを見つめた。



【桂言葉@SchoolDays】
[状態]:疲労(小)、病み具合微上昇中
[装備]:ランサーアサルトライフル(350/350)@Gears of War2
[道具]:支給品一式、ののワさん@ののワさん、魔法の石(ののワさん使用中)@Heart Of Darkness
[思考・状況]
0:月、バクラと協力し、3人で優勝を目指す。(所謂ステルスマーダーとして行動)
1:バクラに対する不信感、でもとりあえずドナルドたちについていく。
2:どんな方法でも誠くんを生き返らせる。生き返るなら自分は死んでもいい。
3:ベジータやブロリーのように圧倒的に強い相手には無理を避けたい。
※アニメ最終話後からの参戦です。
※希望を見出したため、ヤンデレ分は沈静化し、目のハイライトも戻っています。
※支給品交換によって以下のように支給品が移りました
万葉丸×11@零シリーズ ビリー→タケモト
強姦パウダー×4@ニコニコRPG ビリー→タケモト
シルバーウルフ(12/12)(予備弾188本)@フルメタル輪ゴム鉄砲 レン→タケモト
毒蛾のナイフ@ドラゴンクエスト チルノ→バクラ
DMカードセット(翻弄するエルフの剣士、鉄の騎士ギア・フリード、ガーゴイル・パワード)@遊☆戯☆王 チルノ→バクラ
スタンドマイク@VOCALOID 美鈴→レン
31代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:43:15 ID:GFeAVU/R
629 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/25(水) 13:59:21 ID:o6ythg5.0
以上です。
タイトルは『危険人物?いいえ、対主催です』

680 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/27(金) 13:31:46 ID:p/teheYY0
◆ ◆



 出発を前にして十人は支給品の交換をしていた。
 チルノは案外あっさりとナイフを渡してくれた。
 毒が塗られている優れものとはありがたいとバクラは笑みを浮かべる。
 ついでにチルノが持っていたDMカードもなんだかんだ理由をつけてもらっておいた。


 藤崎を殺せ。
 ドナルドは言った。


 バクラはそもそも自分を人畜無害に見せようと思っていたが、どうも驚いたことにそういう風に振舞うとこの集団では居心地が悪いようだ。
 それにドナルドはおそらくバクラに本質を見抜いているのだろう。
 まったく厄介なことだ。


「とりあえず第二放送まではお前の知り合いを待つ。その後、映画館に向かうってことでいいんだな?」
 タケモトが声を掛けてくる。
 案外バクラを信用しているようだ。


「ああ、それで構わないぜ。それまでにたどり着けない様じゃ月もたいして役に立たない奴ってことだからな」


 バクラはみんなで仲良く主催を倒す正義ごっこをやるつもりはさらさらなかった。
 おとなしく集団に随っているのは一つの考えがあったから。
 人間は絶望から日常に救いだされればそれだけでも幸せに感じるが日常自体を幸せに感じるわけではない。
 つまり、変化を幸せに感じるということだ。


 逆に言えば希望が見えたところで絶望に落せばこの上ない絶望を感じることだろう。
 バクラそのときに爆発的に増大するであろう心の闇に目をつけた。


 まあせいぜい小さな希望を楽しめよ。
 バクラは誰にも見られないように笑みを浮かべた。
32代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:44:11 ID:GFeAVU/R
【ドナルド組共通思考】
1:首輪解除のためにタケモトを助ける。
2:殺し合いに乗っているもの足を引っ張るものは殺す。



【D-4 図書館/一日目・午前】
【ドナルド組首輪解除班共通思考】
1:第二放送までは図書館の調査。月を待つ。
2:第二放送の後映画館を調査。フランを待つ。
3:それと平行して首輪の解析。



【バクラ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 】
[状態]:服に軽い汚れ、疲労(小)
[装備]:千年リング@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 毒蛾のナイフ@ドラゴンクエスト DMカードセット(翻弄するエルフの剣士、鉄の騎士ギア・フリード、ガーゴイル・パワード)@遊☆戯☆王
[道具]:共通支給品、 光学迷彩スーツ@東方project、コメント一覧@ニコニコ動画
[思考・状況]
1:ドナルド組首輪解除班として行動する。
2:脱出フラグをへし折り、参加者の心の闇を急速に増大させる。
3:誤情報を流し争いを促進する。てゐの情報など 。
4:最終的には優勝狙い。
※原作終了後(アテムが冥界に帰った後)から登場



【タケモト@自作の改造マリオを友人にプレイさせるシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:アイスソード@ちっこい咲夜さん
[道具]:支給品一式、精密ドライバー@現実 野菜ジュース@ぽっぴっぽー カミーユの首輪(一部破損) ドアラの首輪 シルバーウルフ(12/12)(予備弾188本)@フルメタル輪ゴム鉄砲 万葉丸(11/30)@零シリーズ 強姦パウダー@ニコニコRPG(4/9)
[思考・状況]
1:生き残り脱出する,そのためには……な……
2:大連合は組まない、最低限の人数で行動
3:施設を回って情報を集め、その真偽を見抜く
4:首輪を外せはしないと判断。無力化するための協力者を少人数集める
5:規格外の者に対抗出来るように、ある程度の戦力が欲しい
6:人の首って切りにくいんだな。落ち着けて設備のある場所で実験するか
7:誰が創造者なのか教えてやんよ
※僧侶のネガキャンを間接的に聞きました
※ドナルドが強力な支給品を持っていると判断。持っているとは限りません。
※首輪についての情報(盗聴器、死者の首輪は爆発しにくい)を知りました。
 バクラはドナルドに向けて不敵な笑みを浮かべる。


「武器、もう持ってないんだけどねえ。チルノが持っているらしいから借りられないかな?」
33創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:44:55 ID:YSca7whu
我が支援、見破れるか!
34代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:44:56 ID:GFeAVU/R
681 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/27(金) 13:35:49 ID:p/teheYY0
◆ ◆



 美鈴は悩んでいた。
 いま問われていることは、主人のために人を殺せるかということなのだろう。
 美鈴はそう解釈していた。
 従者として主君を助けるために何ができるのか。


「顔色良くないね」
 後ろから声がする。
 振り返るとそこにいたのは筋肉ムキムキの男、ビリーだ。


 そういえば。
 探し人のことを思い出したのだ。
「赤さんって、知り合いですか?」


「赤さん? 仕事仲間だけど」
「あなたを私の主君が探していたんです。もし会ったら仲良くしてあげてくださいね」


 とりあえず、いま私にできること。
「それと、レン君の知り合いなんですけど重音テトって人にもし会ったならフランドール様が探していましたってお伝えください」
 主君が会いたがっていた人に合わせることは従者としてやらなきゃいけないこと。



【紅 美鈴@東方project】
[状態]小疲労、フランドールへの絶対的な忠誠
[装備]無し
[道具]支給品一式
[[思考・状況]
0:ドナルドの命令に従うべきだろうか。
1:タケモトたちと行動をともにし日没までに映画館へ戻りフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
2:十六夜咲夜を警戒
3:知り合いの情報集め
4:殺し合いに反対するものを集める
5:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい
6:テトを探す
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。



【藤崎瑞希@現実】
[状態]決意、疲労(小)
[装備]なし
[道具]支給品一式、金属バット@現実
[思考・状況]
基本思考:主催者の目論見を粉砕し跪かせる
1:ドナルドたちに従う。
2:参加者を救う 。
3:受け継がれた意思を持って、戦う。
35代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:45:42 ID:GFeAVU/R
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]小疲労、顔面打撲、決意、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止め、終わらせる
1:タケモト達の護衛。
2:美鈴の知り合いの情報集め
3:殺し合いに反対するものを集める
4:触覚の男との決着
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※北に目撃した参加者は誠、南に目撃した参加者はキョン子とアカギです。
※E−2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました

682 : ◆/4zBz3jiVQ:2009/03/27(金) 13:40:26 ID:p/teheYY0
指摘されたところを修正しました。
>>624>>680>>625>>681に修正します。
月曜日までパソコンに触れられないので問題がなければ代理投下お願いします。
36代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:47:41 ID:GFeAVU/R
以上で『危険人物?いいえ、対主催です』の代理投下終了です
修正は行っていないのでwikiに乗せる際には>>35の通りに修正をやってください

次の代理投下行きます
37 ◆CqqH18E08c :2009/03/27(金) 23:49:14 ID:GFeAVU/R
申し訳ない代理投下はこれで終了です
自分の物の本投下行きます
38創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:49:26 ID:balrLD6P
了解だ、支援を続行する
39 ◆CqqH18E08c :2009/03/27(金) 23:51:45 ID:GFeAVU/R
 E-2の洞窟。
 その洞窟は至って普通だった。
 入口と、その付近に限れば――で、あるが。

 洞窟内にも関わらず空気は澄んでおり澱みはなく、どこかで空気に入れ替えが行われていることは明白。
 さらには苔や草などの植物、鼠等の動物、蟻などの昆虫すらそこには存在しない。
 そこにあるのは無。響くのはアカギの歩く音のみ。

 洞窟は深い。
 アカギは休憩することを目的としここに入ったのだろうがもう既にその目的は忘れ
 この洞窟はどこまで続いているのかという純粋な興味で動いているようだった。

 そんなアカギの前に分岐点が訪れる。
 右の道か、左の道か。
 アカギは迷う事なく左を選択する。
 判断理由は別にないのだろうただの直感――それ以外に考えられない。
 むしろ一般的な考えだと道の選択方法は直感でしかありえないだろう。
 だがアカギという人間は一般という考えでは測り知れ無い存在である。
   直感以外の判断材料もあった可能性も捨てきれない。

 左の道をただ歩くアカギ。
 そのまましばらく歩き続けるとまた分岐点が訪れる。
 先ほどと同じように左か、右か。

 アカギはまたしても迷うことなく左の道を選択し歩く。
 彼があるく先に現れるのは――またしても分岐点。
 右か、左か。


「ククク……」


 アカギは笑うと写真の束を取り出し埃一つ落ちていない床に写真を一枚だけ置いた。
 そしてまた左の道を選択し歩く。
 また歩き続けると――分岐点。

 分岐点ではあるが、今までの分岐点とは明らかに違う。
 アカギが先ほど置いた写真が置かれているのだ。
 知らぬ間にアカギが同じ場所に戻ってきた――いや同じ場所に戻されたというのが正しいのかもしれない。

 アカギは写真をその分岐点残したまま今度は右の道を選択する。
 右の道をしばらく進むとまたしても分岐点。
 だが今度は先ほどとは違う場所であることがわかる。
 アカギが残した写真がその場にはなかった。。

 アカギはまた写真を一枚だけその場に残し右の道を進む。
 しばらく進み続けると――分岐点。
 今度は写真が置かれている。
 アカギが写真を確認すると置かれている写真は最初に置いたものだった。
 まさに無限ループ。最初の場所に戻されているのだ。

 アカギは右の道を進む。
 そして現れる分岐点には写真。
 こちらの写真はアカギが二枚目に置いたもの。
 アカギは先ほど右の道とは逆に左の道へ進む。

 しばらくして現れるのは分岐点。
 だが写真はその場にない。
 写真をまた一枚その場に残しアカギは進む。
40創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:52:28 ID:balrLD6P
倍支援だ
41代理 支援お願いします:2009/03/27(金) 23:53:32 ID:GFeAVU/R
 新しい分岐点に差し掛かれば写真を一枚残し進む。
 写真が残されている分岐点に差し掛かれば写真を確認し現在地を把握する。
 それからは記憶を頼りに新しい分岐点を目指しひたすら進む。

 この行動を何度繰り返したころだろうか?
 大量にあった写真の束の枚数が少なくなるころにアカギはようやく洞窟最奥と思しき所までたどり着いた。
 普通であれば同じ分岐点に戻されているということに気が付かず、運だけでここまでたどり着かざるを得なかっただろう。
 いや、ここまでたどり着くことができずに入口まですごすごと引き返すことになったはずである。
 アカギほどの強運の持ち主ならば運だけに頼ってもここまでたどり着くことは可能だったかもしれないが。
 それこそ膨大な時間をかけながらもサイコロの100の目を出し続けるようにして。

 だがアカギは数度分岐点に戻されただけでループに気が付いた。
 そして自らの持つ写真を一枚づつその場に置き続けで進んだ。
 その行動がアカギを洞窟最奥まで運んだのだ。

 だが洞窟最奥はパッと見る限りただの行き止まり――
 しかし行き止まりだが今までの洞窟の光景とは明らかに違った。
 光苔や雑草などが自生しど、鼠等の小動物がいる、蟻などの昆虫がいる。
 今までの物を明らかに人工的に作られた洞窟だとするのならば
 この洞窟は自然の洞窟を模し自然の洞窟だと錯覚させるために作られた洞窟といってよいような形。
 そんななかで不自然に調べてくださいと言わんばかりに苔がこびりついたか所があった。
 そこにアカギが接近すると何の前触れもなく扉が開く。

 アカギはその扉の中へなんの警戒もすることなく足を踏み入れた。

◆◆◆◆◆


「誰得の部屋……ねぇ……」

 壁に掛けられた説明板をアカギは読む。
 説明板曰く
 1、何のためか分からない部屋
 2、特に必要でない時にも現れる
 3、誰も求めていないものがあったりなかったりする

「ククク……」

 このロワ参加者の多くが求めるもの――それは食糧や武器、首輪解除に必要なもの。
 だがアカギはその多くの参加者が求めるのは欲さない
 アカギは狂気の沙汰を愉しむことを目的としている。
 つまり狂気の沙汰を愉しむなんて言うための道具、場所というものはまさに誰が得するのか分からない。
 それこそ得するのはアカギぐらいだという所。
 それがこの誰得の部屋。

「これではこのゲームとやらが俺に狂気の沙汰を楽しめと言っているようではないじゃないか……」

 アカギは誰得の部屋の探索もそこそこに本来の目的、休養を取るために目を閉じる。

「ククク……この部屋を活用すれば優勝しなくても主催者と命をかけた勝負ができるかもな……」
42創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:54:35 ID:YSca7whu
…し、支援だあああ!
43 ◆CqqH18E08c :2009/03/27(金) 23:56:07 ID:GFeAVU/R
    誰得の部屋までたどり着いたアカギはやはり天才にして類い稀なる強運の持ち主なのか――


 ――それとも主催がアカギのような人物のためにわざわざこのような場所を用意したのか


        はたまた全く別の要因でこのような誰が得するか分からないような場所が用意されたのか――


       ――それは誰にも分からない。神のみぞ知るというものである。

   
 ただ一つ言えることはアカギという人間は常識の中枠で測りきれぬ狂気の存在だと言うことである。



【?-? 洞窟最奥(?)誰得の部屋/一日目・昼】
【赤木しげる@闘牌伝説アカギ 闇に舞い下りた天才】
[状態]:右肩にダメージ(小)、ユベルに興味、疲労大(睡眠をとり回復中)
[装備]:レイガン(12/16)@スマブラX
[道具]:支給品一式、DMカードセット(スピード・ウォーリアー、魔法の筒)@遊戯王シリーズ
   写真(残り数枚)@心霊写真にドナルドらしきものが
   ヤンデレ妹の包丁@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ
[思考・状況]
1:ともかく今は休憩する。
2:愛……そういう賭けも悪くない。
3:キョン子(名前は知らない)ハク(名前は知らない)アレックス(名前は知らない)も
  いずれ…
4:殺し合いに乗り、狂気の沙汰を楽しむ
5:主催者と命を賭けた勝負をする
6:誰得の部屋……ククク……
[備考]
※スピード・ウォーリアーが再使用出来るのは8時間後、
※魔法の筒が使用できるのは12時間後。
※アカギが進んだ道には途中から心霊写真が置かれています。
※誰得の部屋には誰が得するのか分からないような道具が多く存在するかもしれません。
※なにかアカギに興味を示させるほどのものがあったようです。
※この誰得の部屋まで放送が聞こえるかどうかは不明です。


誰得の部屋について
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm6525745
44 ◆CqqH18E08c :2009/03/27(金) 23:57:13 ID:GFeAVU/R
以上です
代理投下を避難所の方でお願いしてもらえれば見つけた分は代理投下しますです
45創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 00:15:16 ID:18Izpk6n
代理投下乙だぜ。

ドナルド組はいい具合にばらけたな。
いろいろな思惑が絡み合って面白くなってきた。

アカギはザ・ニューエリア!を見つけたか。
このエリアは重要なキーになるのかな。
46創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 07:39:28 ID:ZAbG9Mnk
誰特の部屋www
きっとアルパカがいるに違いない
47創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 10:48:15 ID:KZ0e9TpI
バトルドームとかもあるな
48創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 14:12:13 ID:wXi7tuuT
バトルドームはメタ様の支給品だぜ

ドナルド組タケモト組の今後にすっげぇwktkしてきたぁぁ
49創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 10:50:31 ID:UkqkrFX1
今更だけど、タイトルを忘れてますよ。
50創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 15:31:47 ID:H4Zcmec+
そういえば墓場組の本投下はまだなの?
51創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 17:59:45 ID:CuTlpK79
あと予約の期限切れてる人、停滞してるから何かしら反応してくれ
予約荒らしとみなされても知らんぜ
52創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:20:21 ID:3aYjAlN5
これから◆sh/9YAh26Q氏の投下
◆CMd1jz6iP2と◆/4zBz3jiVQ氏の修正投下をしようと思います。
長くなりそうなので、支援をしてくれたら非常にありがたいです
53創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:22:01 ID:3aYjAlN5
642 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:09:10 ID:eIPJVR7o0
「HAAAA……デパートに着いたよぉぉぉ」
「ここも随分ひでぇことになってんなぁ……」
森乃進と城之内の見つめる先に、デパートが建っていた。
そのデパートの一部に見える激しい損傷。
間違いなく戦いがあったことは二人の目にも明らかだった。
「と、とにかく中に入ろうよぉ」
「爺さん、気をつけろよ。ルガールさんもいねぇんだから、危ねぇ奴がいたら大変だぜ?」
ちょっと忠告したつもりだった城之内だったが、森乃進はビビリ、入り口でウロウロし始めた。
「(困ったもんだぜ……ルガールさんたち、まだ来ねぇな。何か成果があるといいんだけどよ)」

「治らないなぁ……これくらい、いつもならすぐなのに」
フランは橋の下で、体を休め再生に専念していた。
だが、失われた左手の再生はうまく進まなかった。
目の前の死体を見るたびに、無くなった左手を見るたびにイライラが募っていく。
殺した新堂から手に入れたクリムゾンの銃口を、死体に向ける。
一発、二発、三発。
反動で跳ねる死体を見て、フランは少し気がまぎれた。
とはいえ、ここには何もフランを喜ばせるものはない。
何やら小さい壊れた人形が落ちているが、動きもしない。

とりあえず弾切れになった銃に、慣れない手つきでマガジンを装填する
「あれ、なにこれ?」
クリムゾンを握っていると、何やら光点が二つ見えた。
それが、ドンドンとフランのいる場所に近づいてくる。
「……誰か来るの?」
どうやらこの銃の特殊能力らしい。
自身も人の気配を感じて、まだ休みたいフランは静かにすることにした。

「痛っ」
ズキリと、失った左手が痛む。
「……隠れたって、見つかっちゃうかもしれないよねぇ」
さっきの銃声も聞かれたかもしれない。
54創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:23:25 ID:3aYjAlN5
643 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:10:07 ID:eIPJVR7o0
死体といっしょにいるところなんて見たら、どうせまた酷いことをしてくるに違いない。
「……痛いのは、もう嫌」
だったら、ヤレラル前に殺ラナイト。

ルガールと羽入は、城之内たちと行動を別にし、橋の近くまで探索をしていた。
危険人物がいないか、誰か協力者はいないかを探すためである。
「誰もいないようなのです」
「そのようだな……橋を越えた先に誰もいないようなら、城之内たちと合流するとしよう」
あちらも長く離れていては危険である。
慎重に行動するように言ってはあるが、森乃進の挙動を知る以上心配ではあった。
「(それにしても……どうして私と鉄平だったのか……)」
羽入は、呼ばれた人選の異様さに頭を悩ませていた。
圭一や梨花はおらず、知り合い(一方的な)は前回の世界で逮捕された鉄平のみ。

「(完全なランダム……? そう考えれば、森乃進の知り合いがいないのも納得できるのですが……)」
深い思考を続けるが、そもそも情報も少ない現状では無駄な思考であった。
「羽入、どこまで行くのだ?」
「はう? って、ああ!?」
ルガールを見ると、彼は橋の中央に立っていた。
ならば、羽入はどこにいるのか?
羽入は周囲を見渡し、とっくに橋を超えていたことにようやく気がついた。
「ボンヤリするのは関心せんな。気付けにデパートまで運送しようか?」
「し、死んでしまうのですよ〜!」
慌てて戻る羽入に、ルガールはため息をつく。
「(もう少し周囲に気を配らねば、危険に対応できんぞ?)」
そう考えるルガールだったが、彼もまた気がつかなかった。

足元……橋の下から発せられる、激しい狂気を感じるまでは。
「(!? 橋の下に、何かが……イカン!)」
羽入の無防備さを心配していたルガールもまた五感に僅かな鈍りがあった。
硝煙の匂い、そしてそれを掻き消すほどの、血の匂い。
何も知らぬ羽入は走ってくる。
55創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:24:33 ID:3aYjAlN5
644 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:10:57 ID:eIPJVR7o0
何者かの気配の直下まで、無防備に。

「(ギガンテックプレッシャー……いや、このタイミングでは遅い!)」
運送による回避を思考し、即座に却下。
このタイミングでは、運ぶ体勢になった瞬間二人まとめて攻撃される。
ならば、ルガールが取るべき最良の手は。
「レップウケン!!」
「は?」
羽入の足を止めることだった。
ルガールの攻撃を慌てて回避する羽入。
銃声と共に橋から飛び出した銃弾は、空を切る。
ルガールの判断に間違いはなかった。
ルガール本人の身の安全を、度外視すればだが。

続けて銃声が響く。
「ぐ……ぬぅ!」
「ル、ルガール!?」
技の硬直で動けなかったルガールのわき腹を、銃弾が貫く。
よろめくルガールに、さらに銃弾が発射された。
だが、それがルガールを捕らえることはなかった。
大きな水しぶきを上げ、ルガールは川へと落ちた。

「ルガール!!」
悲鳴にも似た羽入の叫び。
それを掻き消すように橋から黒い影が飛び出す。
「何者ッ!?」
黒い影は、そのとおり黒い衣装に身を包んだ人物だった。
その衣装はびしょ濡れで、左腕部分がダランとしていた。
その異様な姿に、羽入は息を呑む。

羽入は逆刃刀を構え、相手を見据える。
相手も羽入を見据えると、銃口を羽入に向け、無造作に引き金を引こうと力を込める。
56創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:25:28 ID:sMw3F3H5
支援
57創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:25:48 ID:3aYjAlN5
645 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:12:02 ID:eIPJVR7o0
「うっ!?」
仮面ごしに照らされた太陽光に怯む。
そのスキに、羽入は踏み込もうと足に力を込め。
「うぅ、まぁいいや」

黒衣の人物は、それを上回る速度で走り去っていった。

「待つのです! くぅ……ルガール!」
逃げた相手を追わず、羽入は川に流されたルガールの名を呼んだ。
川の流れは中々に速く、人影すらも見えなかった。
無事であれば良いが、と羽入はルガールの救出のために走る。
「城之内たちと合流するのが遅れてしまいますが、まずはルガールを助け……」
そこまで考えて、足を止めた。
城之内たちに連絡すべきかと考えて、見落としに気がついたのだ。
「……しまった!」
あの黒衣が逃げた方角には――デパートがあった。


「HAAAA……漏らしそうだよぉぉぉ」
森乃進はビビリすぎたのが原因か、トイレに走っていた。
ん、今まではトイレどうしてたのか?
もちろん行ってるさ、全員総カットだけどな。

「(でも良く考えたら、このデパート怖いよぉぉぉ。
床とか崩れてるとこもあるし、ゲームならシステムの問題で落ちないけど、わし落ちるよぉぉ)」
「爺さん……トイレぐらい落ちついていこうぜ」
後ろについて歩く城之内も、流石にビビリすぎの森乃進にため息をつく。
「あっ、ここここ! この先にトイレがあるよぉ!」
捜し求めたトイレに、森乃進は喜び駆け出す。
そして。
「HAAAAAA!!!! 吉田あぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!」
これまでにない、恐怖に満ちた声と共にUターンしてきた。
58創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:26:39 ID:3aYjAlN5
646 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:12:51 ID:eIPJVR7o0
「なっ、どうしたんだよ爺さん!」
「ニゲロニゲロ!! 吉田ァァァァ!!」
城之内の呼び止める声にも止まらず、森乃進は走り去った。
「はぁ? いったい何だってんだ……よぉ!?」
トイレのある曲がり角。
ちょうど森乃進がUターンしてきた場所から、
「あ は は は は は は
  は は は は は は !」
黒い仮面の人物が現れた。
片腕だけのそれは、ゆっくりと銃に弾を込めている。
「お、おい!」
城之内の声にも耳を貸さず、仮面の人物は銃口を城之内に向ける。
「じょ、冗談じゃねぇぞ!」
城之内もまた逃げる。
一発の銃弾が響き、逃亡劇は始まった。


スゥ〜(´-。-`)ハァアアアアアァ( ゚д゚ )
「ゲホッ! ゲハッ! ガッハァ! (な、何あれええええ! 吉田の新種ぅぅ!?)」
森乃進は、違うトイレの個室に逃げ込んでいた。
城之内を置いて逃げた罪悪感もあったが、何より恐怖心が彼の心の大半を占めていた。
「(ごめんよぉぉぉぉ……でもあいつに追いつかれたらゲームオーバーだよぉ! コンティニューなんてできないのにぃ)」
できる限り声を押し殺し、森乃進はガタガタと震えた。
その彼の耳に、信じられない音が聞こえてくる。

「爺さん! 爺さぁぁぁん! どこだ、無事なのか!」
「(HAAAAAA!? 城之内君、なにやってんのぉぉぉぉ!?)」
吉田がいるのに! 城之内は自分より森乃進の保護を優先した。
「(だ、駄目だよぉ! 吉田に殺されちゃうよぉぉ!)」
だが、どれほど心で思っても城之内の声は止まらない。
59創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:26:51 ID:sMw3F3H5
支援くれてやる!
60創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:27:31 ID:3aYjAlN5
648 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:16:15 ID:eIPJVR7o0
しかし人外ではあるが、吸血鬼にはほとんど効果は無かった。
その結果を確かめることもなく。
秋山森乃進は、既に心臓を止めていた。

「城之内!」
「おお、羽入ちゃん! あれ、ルガールさんは?」
城之内を見つけた羽入は、事情を説明する。
「マジかよ! くそ、あいつだ……羽入ちゃん、いっしょに爺さんを探してくれ!」
「森乃進がどうかしたのですか!?」
おそらく同じ奴に襲われたことを聞くと、羽生の顔色が変わる。
「そのときに爺さんとはぐれちまって……今、むてきまると手分けして……」
城之内の言葉が言い切られるよりも前に、銃声がデパートに響いた。
けして遠くはなかった。
「……ま、さか!?」
駆け出す城之内を、同じ不安を抱いた羽入が追いかける。
どうか、間違いであって欲しい。

その願いは、トイレに転がる森乃進の死体を前に、脆くも崩れ去った。
「嘘だろ……爺さん!」
そこにあったのは、森乃進の死体のみ。
ディパックもカメラもないところを見ると、持ち去られたのだろう。
さらに言えば、死体も妙だった。
老人である森乃進の肌はもちろんハリがない。
それでも、明らかに異常なほどに干乾びていた。
「これは……吸血鬼の仕業だとでもいうのですか?」
「爺さん、すまねぇ……俺がもう少し早く……!」
城之内は、森乃進の死にただただ涙する。
「(無理も無いのです……仲間の死は、本当に辛いことなのだから)」
だが、羽入の考えとは裏腹に城之内は涙を拭う。

「城之内?」
「……いくら泣いたって、爺さんは帰ってこねえんだよな。
だったら、こんなとこで泣いてたって爺さんに笑われちまうだけだ。HA、ってな」
61創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:28:36 ID:3aYjAlN5
649 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:17:02 ID:eIPJVR7o0
「城之内……ええ、その通りなのです! 一刻も早く、森乃進の仇を……」
討とう。そう続けようとした羽入の言葉を城之内は制す。
「違うぜ、羽入ちゃんよ。爺さんをこんな目に合わせた奴は、ぶっ飛ばして土下座させて詫びさせるさ。
でもな、俺たちがやらなきゃいけないことは他にある。このゲームをぶっ壊すって、でっかい目的がな!」

城之内は、復讐に囚われなかった。
それを、薄情と思う者もいるかもしれない。
だが、出会って僅かな二人に、しかし絆は確かにあった。
それを知っているからこそ、羽入はその選択に感動さえ覚える。
「城之内……城之内は気高き精神を持っているのです。
ええ、その目的を果たしましょう! あなたにならば、その望みを叶えられるのです!」
城之内は力強くうなずく。
その目には、どんな苦難にも負けない力強さが秘められていた。
「爺さんの分も、頑張ろうぜ羽入ちゃん! 見せてやるんだ、俺たちの結束のちかr」

刹那。
トイレの壁が一瞬光りを放った。
光は熱へと変わり、衝撃へと変わり、壁を破壊した。
その衝撃は天井までも崩し
ガレキが、羽入と城之内の姿を飲み込んでいった。

「あはははは! 凄い凄い! 弾幕と違って汚いけど、凄い威力なんだねぇ」
フランは、クリムゾンの破壊力に満足げな笑みを浮かべていた。
自身の力を使わずにトイレをガレキに変えた威力はすさまじいものだった。
だが、クリムゾンはあくまで銃。それが一撃でトイレを破壊できるだろうか?
その秘密は、クリムゾンが進化する銃であることにあった。
使い込まれるたびに溜まった進化に必要なゲージ。
死体であろうと、人を撃てば撃つほど溜まる負の力。
その第一段階の進化は、敵の位置を表示する「サイトスコープ」。
それによって、近くの人間の居場所は簡単に見つけられた。
62創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:29:29 ID:3aYjAlN5
650 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:18:46 ID:eIPJVR7o0
そして、森乃進を殺害したことで、きっちりと第二段階に進化するだけのゲージが溜まったのだ。
フランが選んだ進化は、ミサイル。
銃弾を一度のみミサイルへ変換し、トイレの壁に打ち込んだのだ。
「あれ、誰がどこにいるか見えなくなっちゃった」
「サイトスコープ」の機能までなくなるほどゲージを消費してしまったらしい。
だが、フランは気にしない。
「まぁいいや。また嫌な奴を何人か殺せば元に戻るよね」

マガジンを交換し、空になったマガジンを捨てる。
歩き出し、次はどうしようかと考えるフラン。
その耳に、ありえない音が聞こえる。
ガレキを吹き飛ばす音。フランは振り返り、その音の正体を目撃する。
潰れたはずの羽入がそこにいた。
打撲や擦り傷こそあるが、自力で這い出してきたらしい。
「へぇ、丈夫なのね。でも、もう一人はどうしたのかしら?」
フランの軽口に、羽入は歯をギリッと食いしばり片手に持つ「ソレ」を見せた。
「……無駄と知りつつ、手を伸ばした。だが、ガレキの中から引き寄せられたのは、これのみであった」
真っ赤に染まった、ディパック。
さらにそれには、毛髪や肉片らしきものまで付着している。
「アハハハハ! 残念ねぇ、あの男は……」
「……そうだ。運命を打開できたであろう尊き精神の持ち主、城之内克也は死んだ。
秋山森乃進同様、あなたに命を摘み取られた」
羽入の様子がおかしいことに、フランは気がつかない。
ただ、ディムロスの説教とどこか被り、フランの精神を逆撫でた。

「うるさいなぁ。
私を愛してくれない人なんて……壊れちゃえ!」
クリムゾンの引き金を引く。
連続で三発。リズム良く破裂音が響く。
オプション銃の効力は失われたが、人一人程度簡単に壊せる。

ただし、当たればの話であるが。
63創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:30:26 ID:3aYjAlN5
651 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:19:40 ID:eIPJVR7o0
「あれ?」
クリムゾンの扱い方を、フランはある程度理解し始めていた。
弾幕的に言えば、少しズレが生じる直線弾。
そのズレも、相手の中心を狙い何発か撃てばどれかは当たる。
だから、体のどこかに当たると確信していたソレが当たらなかったことにフランは疑問符を浮かべた。
「もう、壊れてよ!」
再び、三度続けて引き金を引く。
それでも、弾は羽入の後ろに弾痕を残すのみであった。

「どうした、人ならざる者よ。それでは人の子らとなんら変わらぬぞ?」
「うるさいなぁ! 一発でも当たればゲームオーバーなのに!」
カチッ、カチッと言う音に、弾が切れたことに気がつく。
弾を込めるべきか、弾幕で吹き飛ばすべきか。
フランが思考した隙に、羽入は駆けていた。
羽入が構えるのは刀。それを見ても、フランは笑うばかりだ。
まっすぐに飛んでくるなら、打ち落とす。
「これで、ゲームオーバーなのさ!」
弾幕を展開しようとクリムゾンを手放し力を込める。
フランの動きを察したのか、羽入の表情が驚きに変わる。
「遅いよ、あんたも潰れちゃ―――」
その発言は最後まで口にされることはなく、また間違いでもあった。
「飛天御剣流―――九頭龍閃」
羽入はすでにフランの眼前まで肉薄し、九撃も放っていたのだから。

『壱』唐竹、『弐』袈裟斬り、『参』右薙ぎ、『肆』右斬上げ、『伍』逆風、『陸』左斬上げ、『漆』左薙ぎ、『捌』逆袈裟、『玖』刺突

九方向へのほぼ同時の斬撃。
その名を、飛天御剣流「九頭龍閃」。
「(この技は……まさか、あの本を読んだから、なのでしょうか)」
羽入の驚きは、突進したときに自然と頭の中にこの技が浮かんだことによるものだった。
『玖』である刺突が、本に書いていた通りの柄による一撃であったため命を絶つには至らない。
64創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:31:25 ID:sMw3F3H5
しえん
65創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:49:08 ID:dtt71d7m
我が支援、読み切れるか!?
66代理投下:2009/03/29(日) 20:56:24 ID:UkqkrFX1
652 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:20:11 ID:eIPJVR7o0
それでも、余りある威力にフランは壁まで一直線に吹き飛ばされる。

「こ、のぉ……あっれ?」
砕かれた壁から這い出てきたフランは、そのまま前のめりに倒れた。
この技は、本来体格の良い者が使うことによって真価を発揮する。
羽入の体格は一般的女性と大差はなく、本来の威力には程遠い。
だが、それを叩き込んだ相手は羽入よりも小さなフランドール・スカーレット。
相手を行動不能にする威力は十分にあった。

「―――それでは私に勝つことはできない。私をただの人と侮ったのが間違いであったな」
被っていた帽子は、いつの間にか落ちていた。
頭から覗く角に、フランは相手が人ではないことを知った。
「何よ、あんたも鬼だったの? そのくせに巫女で妖怪退治なんておかしいねぇ」
「巫女ではない。私は神……オヤシロ様などと呼ばれ恐れ崇められる、祟り神……それが私だ」
話しながら近づく羽入から離れようともがくフラン。
だが、まったく自由に動かない体はそれを許さなかった。
死にたくない―――その思いがフランの意識を支配する。

「く、くず鉄のかかし! ――あ、あれ?」
なんとかカードを掲げ、宣言する。
しかし、使用制限時間内である今は無意味であることをフランは知らない。
「……残念ながら」
目の前まで近づいてた羽入はフランからカードを奪う。
「これは使用から半日はただの紙へと戻る。その行為は無意味だ」
フランを見下ろす羽入の目は、まるで生き物を見るものではない。
路傍の石か、何かとてもつまらないものを見下す目だった。

だが、そこまでだった。
それ以上、羽入がフランを殺すわけでもなく会話もない。
「(どういうこと? ……もしかして)」
フランはある仮説にたどり着き……口にした。
「見逃して、くれるの?」


67代理投下:2009/03/29(日) 20:58:40 ID:UkqkrFX1
653 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:20:41 ID:eIPJVR7o0
「……城之内は決断した。けして復讐に囚われないと。
ならば、仲間である私はその意思を可能な限り尊重したい」

やっぱりだ。
フランは目の前の人間……もとい神は思った通り『まとも』らしい。
仲間を殺されてなお、常識的な「歪みない」存在であり続ける。

「神の名に懸けて誓おう。あなたの命を奪うことはしない」
「へぇ……優しいのねぇ」
殺せるのに殺さない。
ほんの数時間前、フランが行おうとしたことである。
その結果は、思い出すのも嫌になる。
「(いいよ。ここで殺さなかったことを後悔させてあげるから)」
灰化した腕の治りは遅く、再生には夜までかかるだろう。
たとえここでクリムゾンを奪われても、体が治れば生身でも戦える。
先ほどの攻撃でスーツは破れ、今ディパックにある仮面では日光の脅威から逃れることはできない。
それも、デパート内で代用品を探せばいい。
準備を整えれば、今の立場を逆にできる。
目の前の神を、骨も残さず壊しつくすことも。

「―――ですが、その心根は捨て置けない」
その言葉の意味を、フランには理解できなかった。
フランは説教でもされるのかと、心底嫌そうな顔をして、

迷い無く手の甲を貫いた刀に、悲鳴と苦悶の表情に塗り替えられた。
「殺さぬと誓おう――殺しはせぬと誓おう。
あなたには、あなたが犯した罪を知ってもらわねばならぬのですから」
「ううう……な、何をする気よ!」
「私の友人の一族に伝わる手法を真似させてもらう。
ほんの少し、死んだ二人の痛みを知ってもらうとしよう」
そんな、とフランは抗議の声を上げる。


68創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 20:59:53 ID:gYL025L2
しえんちゃんウフフ
69代理投下:2009/03/29(日) 21:01:03 ID:UkqkrFX1
654 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:21:14 ID:eIPJVR7o0
「よく回る口だ。ならば引き金を引く手などいらぬだろう」
「えっ?」
刀が掌から抜けていた。
否、そもそも気づけば腕から
「ア、アアアアアア…………!!!」
手が、腕から切り離されていた。
この程度の怪我、普段ならどうということはない。
だが、既にフランは左腕がないのだ。
両手を失ったフランは、立ち上がることもままならない。
「(嫌、嫌、嫌嫌嫌―――そ、そうだ!)」
スーツは破れている。つまり、翼も出ているのだ。
目の前の相手から逃げるため、空に飛び上がる。

「無駄です」
飛び上がろうとするフランの高度が低いうちに、羽入はその翼を無造作に掴んだ。

「ギッ―――!?」
小枝が折れるような音がして、地面に叩きつけられるフラン。
そして、刀が背中に振るわれた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!??」
翼は、根元から刈り取られた。

狂ったように床を転がるフランの足に、刀を突き刺す。
もはや悲鳴すら上げず、フランは小刻みに痙攣を始めていた。
「……?」
羽入の耳に、大きな羽音が聞こえる。
振り返れば、そこには大きな蜂がいた。
「あなたは……むてきまるか。済まない、あなたの主人は……」
むてきまるは、ディパックに大きな針を向ける。
「……これを持つ者が主人、ということですか? ……ならばむてきまる、手伝ってもらおう」
突然現れた大きな蜂。
身動きできないフランに、それは恐怖の存在でしかなかった。


70代理投下:2009/03/29(日) 21:02:28 ID:UkqkrFX1
655 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:21:47 ID:eIPJVR7o0
「ぁ――――――ヤメ、テ」
「安心せよ――死にはしない」
そして、羽入は口にする。

「やどりぎのタネ」と。

「か……は……」
植えつけられたタネは、フランを苗床に成長していく。
傷すら治らぬフランに、生命力そのものを吸う行為は地獄の時間だった
そして、しばらくしてタネは枯れた。
「……ぁ、ぅ」
体力を吸い尽くされたフランは、身動き一つしなかった。


「……人ならざる子よ。これからも続けるが、何か言いたいことはあるか?」
「――――――もう、いいでしょ。これじゃ、死んじゃう、じゃない」
その胸ぐらを羽入が掴む。
「あの二人は……泣き言一つ口にすることもできず死んでいった。
……答えよ。なぜ二人を殺した!」
「うる……さいっ!」
返ってきた返答は、噛み付きだった。
「ぐ……あぅ!」
だが、どういうわけかフランはいつの間にか組み伏せられていた。

「……そっか。おかしいと思ったら、あんたの能力って咲夜と同じなのね」

最初に、フランの銃が当たらなかったのは照準の問題だけではなかった。
オヤシロ様の能力、時間操作。
引き金が引かれるたびにそれを使用し、銃弾を避けていたのだ。
「答えよ。その命を摘み取られたくなくば」
自分と同じ能力、という言葉に反応した羽入だったが、それよりも返答を促した。


71代理投下:2009/03/29(日) 21:03:30 ID:UkqkrFX1
656 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:22:36 ID:eIPJVR7o0
「……私は、狂気を持ってるんだって。嫌な奴が苦しむのを見ると楽しいの。
私にとって、一番楽しいことがそれなの。それ以外の遊びなんて、知らないもの。
私には『歪みある生き方』以外できない。『歪みない生き方』をしようと思ったけど、苦しくて仕方がなかった!
こんな私でも愛してくれる人がいる! だからいいの! 私は自分が楽しく生きるの!」
肩で息をしながら、フランは叫ぶ。
「それが、二人を殺したり理由か?」
「……そうだよ」
一瞬の沈黙のあと、聞こえたのはため息だった。

「初めに言ったとおり、あなたを殺すつもりはないのです。
ただ、「歪みある」あなたをこのままにしておくわけにはいきません」
「また殺すから? アハハハハハハハハハハ!!!
無理よ、無理! 私は壊すわ、殺すわ! 嫌な奴はみんな殺してやる!」

「―――ええ。それについては問題ないと思うのですよ」
拷問の受けすぎで、耳までおかしくなったのだろうかとフランは自身を疑った。
羽入の口調が若干、元の柔らかいものに変わっていたが、そこまでは気がつかない。
「世の中には、どうしようもないムシケラは存在してしまうのです。
それを狩るならば、あなたを止める理由など、本来はまったくありはしない。
城之内も森乃進もルガールも、この意見に異を唱えるかもしれませんが」
困ったように、フラン以上に危険な発現をする神。
だが、古来より人と接してきた羽入は十二分に知っている。
素晴らしい人間を食いつぶす、どうしようもないクズはたしかにいる。
100年以上繰り返しても、綺麗な鉄平とはついぞ会えなかったように。
だから、それが死のうと羽入は自業自得と思うだけだ。

「……なら、私の歪みを治す必要なんてないじゃない。
二度と私に近づかなければいいのよ……アンタだけは許さないけどねぇ」
精一杯の殺気を放つフランに、羽入は首を横に振る。
「まだわからないのですか、フランドール・スカーレット。
あなたは、全てを壊したいと言いながら愛を求めている。


72代理投下:2009/03/29(日) 21:04:39 ID:UkqkrFX1
657 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:23:13 ID:eIPJVR7o0
その矛盾を、「歪みある」と言わずなんと言えば良いのです?」
「そ、それは……よ、弱い奴なんて、私の友達になんてなれない、もの」
そう言うフランの脳裏に、テトが、ラガナーが、ゆっくりが浮かぶ。
自分より弱くても、彼らは自分と行動していたではないか、と。
「今までと、発言が違っているのですよ。
フランドールはこう言っていたではないですか。―――「嫌な奴を殺す」と。
ならば教えて欲しいのです。城之内の、森乃進の、ルガールの、どこが嫌な奴だったのか」
「そ、それは―――ぁ」

答えなければとフランは思い――しかし何も答えられなかった。
フランにはわからない。
城之内が、森乃進が、ルガールが、アカギと、殺した男と同じ嫌な奴だったのか。
なぜなら
「わから、ない……話してなんか、ないもの」

「歪みある生き方」と「歪みない生き方」
ラガナーの意思がどうだったかは知るところではない。
ともかく羽入は、そんなものはそれまでの人生で異なってくると判断した。
これが自分の生き方だと信じて疑わなければ、「歪みない生き方」であることに違いない。
それが間違っていると思ってしまったとき、初めて「歪みある生き方」へと変わるのだと。
――とはいえ、その多くはそう簡単に変えられるものではない。
フランドールの押さえ切れない狂気のように。

「(フランドールの狂気は、一生消えぬ深きもの。
ですが、彼女は生きたいと願い、愛されたいとも願っているのです。
ならば、その「方向性」なら正せると思ったのは間違いではなかったのです)」
無差別な狂気は、その命も、共に歩む者も得られない。
羽入は知らないが、アカギこそがまさにそれだった。
アカギに触発され狂気を開放したフランだったが、そのベクトルは異なっていた。
見敵必殺では、フランの望みは叶わない。
それがフランの発言と行動を微妙にズレさせ……「歪み」を作り出していたのだろう。


73創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:05:08 ID:gYL025L2
支援
74代理投下:2009/03/29(日) 21:07:15 ID:UkqkrFX1
658 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:24:52 ID:eIPJVR7o0
「あなたは恐れの象徴である吸血鬼。鬼は恐れられぬはずがない。
たとえ、あなたの友人であっても同じこと。
それでも、あなたを好いてくれることは、あなたが一番知っているはずなのです」
「うるさい。お前が美鈴や魔理沙のことを口にしないで」
だが、それに思い当たることはフランにはいくつもあった。
「おっかないわねぇ」などと言いながら、ごく稀に会えばそれなりに相手をしてくれる霊夢。
「おお、怖い怖い」などと言いつつ、弾幕ごっこの後にも遊んでくれる魔理沙。
美鈴も、怖がりながらも忠誠を誓うと約束してくれた。

「……ありがと。じゃあ、フランちゃん……無理しないでね?」
その誰より弱いテトは、最後まで自分のことを気にかけてくれていた。

「……城之内も、森乃進も、良き人間でした」
「やめてよ」
「特に城之内は――とても面白い遊戯を知っていたのです」
その言葉に、フランは目を見開く。
「ですが、それを知る機会は永遠に失われた。それが運命だったのでしょう」
「うんめい、ですって?」
運命という言葉に、フランは強く反応した。

「運命とは切り開くことが難しい絶対の力。私には城之内と森乃進の運命を切り開く力が無かった。
フランドールがこのまま「歪んだ生き方」をするのも、運命ならば仕方がないのです」
運命。それはフランの姉、レミリアが多用する口癖。
そんなことをフランは認めたくないし、信じない。
「運命運命……そんなもの、壊せばいいのよ」
すでに力など無いはずのフランの体から、殺気が蘇る。
「運命なんて、私の能力で壊してやるわ。
――そう。あんたに弄ばれる運命だってねぇ!」
羽入が危険を感じ離れるよりも速く。
手首だけになったフランの腕から、一発の弾が生み出され羽入を襲った。


75代理投下:2009/03/29(日) 21:08:36 ID:UkqkrFX1
659 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:25:40 ID:eIPJVR7o0
「がぁっ!?」
羽入は血を吐きながら倒れこむ。
「ご忠告どうも。お礼に、アンタは「私の意志で」グチャグチャにして殺してあげるよぉぉ!!!」
羽入の狙い通り、狂気の方向性は正された。
もちろん、散々嬲ってくれた羽入へ向けられるように。
「くっ―――!」
羽入が何かをフランめがけて投げる。
避ける体力も体も持たないフランは、それを顔面に浴びる。
「うぅ!? なに、コレ」
妙な匂いのする何かが潰れ、目に汁が入りしみる。
「これくらい……!」
涙で歪む視界に、あの大きな蜂がいた。
何やら奇妙な光を放つと、フランの視界を包み込み、景色が歪む。

「なに、これ。こんなもの……効かないよ!」
フランは、渾身の力で羽入に飛び掛り、首に噛み付いた。
妙な味だったが、神様の血はこういう味なのだろうと我慢した。
抵抗はまったくなく、血を吸い尽くした羽入は恐怖の表情をしたまま死んでいた。
「アハハハハハハ!! 誓ってあげるよ、オヤシロ様!!
あんたの言うとおり、アンタみたいな嫌な奴だけを殺しますってね!」
フランは心の底から笑った。
狂気を秘めた、しかし本当に楽しそうな笑顔で。


「ア、レ?」
頭がクラッとして、気がつくとフランは目の前の死体が消えていた。
「気でも失ってたのかな? あの蜂は……いないみたいね」
羽入がいた場所には、血痕と帽子だけが残っていた。
「あの蜂が持って帰ったのかなぁ。んー、まぁいいや」
死体を嬲る気も失せていたフランは、気にしないことにした。
落ちていたディパックも這って集めておく。クリムゾンも無事だった。
血まみれのディパック……羽入の仲間が持っていたものも落ちていた。


76代理投下:2009/03/29(日) 21:11:48 ID:UkqkrFX1
660 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:26:17 ID:eIPJVR7o0
中身は羽入と共に蜂が持っていったのか、基本的な支給品しか入っていなかったため捨て置く。

「んー、神様の血を吸ったおかげかなぁ。凄く体調がいいや……手と翼がどうにかなれば完璧かな」
昼のせいなのか、再生は体力が戻っても遅いままだった。
翼にいたっては、二度と戻るかわからない。
「とりあえず拾っておこう。後で固定しておけば、くっつくかもしれないし」
血溜まりに落ちていた、自分の翼と指を荷物に入れておく。

「どうしようかなぁ……あっ」
いいものを見つけた、とフランは目を輝かせ這いつくばりながら進んだ。
「んしょ、っと」
フランが見つけたものは、買い物に使うカートだった。
それを支えにして、歩くことにしたのだ。
「荷物も中に入れてーっと。服でも探そうかなぁ、これじゃ外に出れないし」
コロコロと車輪を転がして進むフランの目の前に、書店が広がっていた。
「服はないのかなぁ……あれ?」
本屋を一瞥したフランの視界に、一冊の本が目に止まる。

『Hでもわかるデュエルモンスターズ公式ルールガイドブック』
間違いなく、先ほど聞いた面白いゲームについての本だろう。
「やったー! 何が運命よ、あっさり打ち破れたじゃない」
喜び勇んで、本を手に取ろうとして……取る手がないことを思い出した。
「なんとか、こう……あー、弾幕やったら壊れるよねぇ」
やっぱり本なんて嫌いだ。
「こういうときにテトがいたらなぁ。それか……」
壊れたトイレを見る。
その下には、本など見ずともスラスラ答えられる人間がいた。

「うーん……ごめんね」
少し迷った後にそれだけ言って、フランは服を探しに本屋を離れた。
フランドールは、ようやく自分らしさを取り戻した。
気に入らない奴は殺してしまおう。戦うのは好きなんだから我慢する必要はない。
話して楽しい奴なら仲良くなろう。面白い遊びを知っていれば教えてもらおう。
「とりあえずお話、だったよね。でも、アイツみたいに攻撃してきたら殺しちゃおうかな」
殺して楽しいことと、殺さずに楽しいことを、両方楽しむのだ。


77創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:12:09 ID:gYL025L2
しえん
78代理投下:2009/03/29(日) 21:14:00 ID:UkqkrFX1
それが、その極端さこそがフランの狂気との付き合い方だった。
――これが、最後の決断となるかは誰にもわかりはしないのだが。

そして最後まで、フランは気がつかなかった。
近くに落ちていた、水分の一滴も残っていない、牙の痕が残る赤い野菜の存在に。

F-3 デパート内/一日目・昼】
【フランドール・スカーレット@東方project】
【状態】:体力全快、全身に拷問痕、翼喪失、左肩に銃痕、両手喪失、左腕が一部灰化、足に刺し傷
【装備】:ショッピングカート
【持物】:基本支給品一式*2、クリムゾン(弾数0/6、予備弾12/36)@デスクリムゾン、セーブに使って良い帽子@キャプテン翼
ゼロの仮面@コードギアス、射影機(07式フィルム:28/30)@零〜zero〜、予備07式フィルム30枚、フランの翼と指
【思考】歪みない生き方=今まで通りの自分の生き方をする。
1、外に出れる服を探す。
2、嫌な奴を殺す(アカギ(名前は知らない)、ブロリー)
3、嫌な奴かは話して決める。襲ってくる奴は殺す。
4、本屋にあるDMの本を読みたい。
5、手が再生しないと何もできないよ。
6、映画館どうしよう。
※「ゼロの衣装セット」は仮面以外破れました。太陽に晒されれば死に至ります。
※美鈴達と情報交換をしました。
※体の欠損の再生速度、および再生の可否は不明です。次の書き手に一任します。
※くず鉄のかかしの使用制限を知りました。
※フランは羽入の名前を知らず、オヤシロ様とだけしか知りません。
※クリムゾンの進化ゲージは初期値に戻りました。
※本来より速く、二、三人の殺害(もしくは死体撃ち)でゲージは最大に溜まるようです。

79代理投下:2009/03/29(日) 21:15:10 ID:UkqkrFX1
662 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:27:49 ID:eIPJVR7o0
同じ頃、デパートに向かう二人組みの姿があった。

「アポロ、デパートが見えてきたぜぃ!」
「そのようですね……随分時間がかかってしまいましたね」
みさおとアポロは、デパートの近くまで歩いてきていた。
「ごめんな。ちょっと休憩しすぎたかなぁ?」
「仕方が無いですよ。山道を降りてきた疲労が出たのでしょう」

少し時間を遡る。
「おーい、早く行こうぜアポロォ! デパートに向かってダーッシュだってヴぁ!」
人に会いたいみさおは、ちょっと慌て気味に進んでいた。
「あまり急ぐと転びますよ、みさおさん」
注意力も散漫になっているみさおを諌めるが、聞いてはいないらしい。
「ダイジョブだって、そんなアホに見えヴぁあああああ!!?」
ばたりと転び、悲鳴を上げるみさお。
「だ、大丈夫ですか!? 敵の攻撃が!?」
「あ、足が……つ……攣ったってヴぁー!」
「……」
アホの子の介抱に時間を食って、結局着くのに時間がかかってしまった。

そして時間は戻る。
「ちょっとアホだったかもな。やっぱ柔軟体操はしないとなー」
ぽりぽりと頭を掻くみさおに、アポロは答えない。
「アポロ?」
「……みさおさん、後ろへ」
アポロは短剣を構え、なんとなく険しい表情に変わる。
「も、もしかして……ヴぁ!?」
振り返ると、みさおの背後に迫る馬鹿でかい蜂の姿があった。
「モービスに改造された生物兵器か!?」
後ろに隠れたみさおを守るように短剣を前に突き出す。
だが、いつまで経っても襲ってくる様子はない。


80創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:15:48 ID:nHly8bde
しえん
81代理投下:2009/03/29(日) 21:16:14 ID:UkqkrFX1
663 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:28:22 ID:eIPJVR7o0
「(モービスの作った兵器はどこか挙動がおかしいから、ある意味おかしくもないのですが……)」
「な、なぁアポロ。あの蜂、何か持ってないか?」
みさおに言われ、よく見ると確かに何かを持っている。
それが何かを良く見て、アポロは驚愕した。
「人だ!」
「な、なんだってー!?」
それは人だった。背負ったディパックとの間に針状の腕を通して運んでいる。

恐る恐る近づくが、蜂は襲ってこない。
「……お前、もしかしてこの人を守ってんのか? 私ら、危なくないぜ?」
その言葉を理解したのか、蜂は人物を下ろす。
下ろされた人物は、腹部に赤い染みを作り、とても息が荒かった。

「いけませんね、危険な状態だ。どこかで休ませないと……どうかしましたか、みさおさん?」
「な、なぁ……その人の頭、なんかおかしいってヴぁ」
みさおの指摘に、頭を見るとたしかに妙なものが生えていた。
「角のようですね。まさか……彼女も改造手術を!? モービスの仕業か!!」
「酷すぎるぜ〜。でも、角以外は普通の女の子だなー」
「人間をベースとしているようですね。私のような姿でないだけマシですが、人によっては怖がるでしょう」
みさおは、アポロを始めてみたときのことを思い出していた。
「そーだなぁ。私もアポロに出会ってなかったら、角について色々言っちゃいそうだってヴぁ」
「とにかく、安全なところへ運びましょう。デパートは、避けた方がいいでしょうね」
一瞬なんで? と思ったみさおだったが、この蜂が来た方角を考え、理解した。
「やっばい奴がいるかもしれないのか?」
「ええ、すみませんが予定は変更しましょう」
それに同意し、みさおは少女を担ぐ役を申し出る。
「私じゃ戦えないしな。こういうことくらい私がやるぜ」
角を気にしているかもと、自分の海賊帽子を少女にかぶせる。

アポロを先頭に間にみさお、後ろに蜂という隊列で歩く一行。
橋を越えたところで、アポロは異臭を感知した。

82創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:19:22 ID:nHly8bde
 
83代理:2009/03/29(日) 21:24:07 ID:gYL025L2
664 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:29:14 ID:eIPJVR7o0
「みさおさん、ちょっと待っていてください」
「おっ、どした?」
アポロは、橋の下へと消えていき、すぐに戻ってきた。

「……すみません、みさおさん。気のせいでした」
「アポロ〜、あんま驚かせんなってヴぁ」
「すみません。では行きましょう」
再出発した一行だったが、アポロの表情は苦いものだった。

「(なんてことだ……新堂さん!)」
首のない死体が、橋の下にあった。
その服装からして、おそらくは新堂誠に違いなかった。
「(みさおさんには、伏せておきましょう。……ここで言っても、危機を呼ぶだけでしょう)」
次の放送でわかることを伝えても、みさおを悲しませる時間が早まるだけだ。
死体を埋めようなどとみさおが言えば、危険な人物に追いつかれるかもしれない。
「(許してくれとは言いません。ですが、私は命あるものを守らねばならないのです)」
死んだ彼の分まで、みさおさんを守って見せよう。
そう、アポロは固く誓った。

新堂の死体のある橋の下。
一体の振り付けマスターはが、踊り続けていた。
あれから、ずっと踊っていたのだ。
そのお題目は「一休さん」。
ずっと寝ていた振り付けマスターは、誰の興味も引けなかった・

【E-2/草原/1日目・昼】
【日下部みさお@らき☆すた】
[状態]:健康
[装備]:ゴブリンバット@ニコニコRPG
[道具]:共通支給品、キッチリスコップ@さよなら絶望先生、アイス詰め合わせ@VOCALOID
[思考・状況]
基本思考:人なんて殺せね〜けど生き残りて〜な〜…
84代理:2009/03/29(日) 21:26:14 ID:gYL025L2
665 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:30:18 ID:eIPJVR7o0
1:この子(羽入)を守ってやるぜ! 背負うだけだけどなー
2:デパートに行きたかったぜ
3:新堂も探してやっか
4:柊…あやの…あいつら心配してんだろうな…
5:アポロ見た後だと、角生えてるとかどうでもいいな。
6:でも蜂はそのまま過ぎてマジ怖いぜ
※ゴブリンバットは新堂の支給品です

【アポロ@チーターマン2】
[状態]:健康、悲しみ
[装備]:ガリィ@FF11 FFW、
[道具]:カレーセット@るろうに剣心、共通支給品、不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本思考:ゲームの転覆
0:モービスの仕業か! 許さん!
1:彼女(羽入)を安静できる場所に運ぶ。
2:新堂さん……
3:首輪の解除についても考えるべきですね…人材を探しましょう
4:自分の得意とする武器(弓矢・ボウガン)がほしいです。
※少女(羽入)と蜂はDr.モービスの生物兵器だと思っています。
※新堂の死体を発見しました。みさおには伝えていません。

※橋の下で、振付マスターは『一休さん』を踊っています。寝ているようにも見えます。

みさおに背負われる羽入。
彼女はフランに殺されたはずだというのに、なぜ生きているのか。
それは、むてきまるの「あやしいひかり」によりフランが混乱しての誤認だった。
ならば、なぜフランの体力が回復しているのか?
あの瞬間に戻り、実際に見てみよう。

「(完全に、油断していたのですッ……)」
腹部に一撃を食らった羽入は、自分の甘さを悔いた。
85代理:2009/03/29(日) 21:28:19 ID:gYL025L2
666 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:32:10 ID:eIPJVR7o0
両手がなく、体力も尽きた状態で襲ってきても対処できると思ったのだ。
それでも、フランを殺しはしない。
「(フランドールを憎くないといえば嘘ですが……彼女の意思に、賭けたいのです)」
初めは、城之内と森乃進を殺した罪を悔いてもらうためだった。
だが、今は違う。
彼女は危険な存在であるが、運命を打ち破る強い意志を持っている。
分の悪い賭けではあったが、彼女の力はゲームを破壊する力になるかもしれない。

「(この命は、城之内にもらった命なのです。ならば、彼の決意を継いで見せるのです!)」

トイレのガレキに埋もれるよりも直前。
城之内は一枚のカードを使った。
それは、天使のサイコロ。使用した相手は、羽入。
そして、その出た目は……6。
攻撃力、防御力を大きく上昇させた羽入は、ガレキを耐え切れたのだ。
目の前で潰れる城之内。
―――悪ぃ、後は頼むぜ。羽入ちゃん。
そう語りかけるかのような瞳を、心に焼き付けた。

「(6を出し続けても、このゲームには勝てないのかもしれない)」
6を出しても城之内は死んでしまった。
ならば、このゲームを打ち破るには、6の限界を超える必要がある。
それこそが、フランではないかと羽入は考えたのだ。
「(7や100どころか、マイナスまで揃っているサイコロではありますが……)」
それを畏れることを、羽入は止めた。

羽入は城之内の最後の支給品である回復アイテムをフランに投げる。
回復食べ物セット。それが城之内最後の支給品だった。
マキシムトマト、ピーマン、ドーナツの三点セット。
それぞれ回復量が違うそうだが、もっとも輝くトマトをフランに投げつけた。
本当なら、無理矢理でも食べさせるつもりだったが余裕はない。
食べてくれるかは知らないが、そこまで面倒を見る義理も無かった。
86創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:31:00 ID:nHly8bde
支援
87代理:2009/03/29(日) 21:32:04 ID:gYL025L2
667 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:32:45 ID:eIPJVR7o0
「むてきまる、あやしいひかりなのです!」
フランに奇妙な光を浴びせ、羽入はその場から逃げ出した。

あやしいひかりで混乱していたフランは、わけもわからず目的を果たしたつもりになっていた。
そう、フランが羽入だと思ったのは、マキシムトマトだったのだ。

デパートを出てすぐ、ドーナツを食べる。
「……もっと、ゆっくり味わいたかったのです」
残念そうな一言を吐ける程度に、体力は回復した。
一見普通の食べ物に見えるが、栄養ドリンクや点滴以上に活力を満たしてくれた。
それでも、意識は途切れそうになるほどの疲労は消えなかった。
時間操作は、羽入の力の中でもっとも疲労する力の一つ。
連続で使用した能力は、羽入の体力を削り取っていた。
「ルガールを、探すのです、このゲームを、打開せね、ば……」
デパートを出たところで、糸が切れたように羽入は崩れ落ちた。
それをむてきまるが運び、アポロたちとの出会いとなったのである。

フランに恨まれながらも、殺さなかった羽入。
彼女は、逆刃刀の持ち主のように殺さずを貫くのか。
それとも、時には非情となり命を殺めるのか。
それはまだ、神すらも与り知らぬことであった。

【E-2/草原/1日目・昼】
【古手羽入@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:不安、重度の疲労、全身に痣、腹部に怪我
[装備]:逆刃刀・真打@フタエノキワミ、アッー!、海賊帽子@ミュージカル・テニスの王子様
[道具]:共通支給品、うまい棒セット@現実 ヒテンミツルギ極意書@ニコニコRPG、ピーマン@星のカービィ
くず鉄のかかし@遊戯王シリーズ、モンスターボール(むてきまる)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況
DMカードセット(天使のサイコロ、悪魔のサイコロ、スタープラスター)@遊戯王シリーズ
[思考・状況]
88代理:2009/03/29(日) 21:33:15 ID:gYL025L2
668 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:33:33 ID:eIPJVR7o0
基本思考:首輪を解除して、運命を打ち破る。
0:気絶中
1:城之内……森乃進……
2:ルガールが無事か心配
3:フランが今後どう動くかに期待と不安
※参戦時期は、皆殺し編終了後です。
※オヤシロ様としての力は使えるようですが、非常に疲労するようです。
※思いつめていて多少判断力が鈍っている恐れがあります。
※右上左上の後ろに何かがいると断定しました。
※来た世界が違う人間がいると断定しました。
※九頭龍閃を習得しました。
※ヒテンミツルギ極意書に出てきた刀と逆刃刀・真打が同一のものと気づいていません。
※くず鉄のかかしは後10時間、天使のサイコロは12時間使用不可です。
※咲夜という人物が同じような時間操作を使用すると推測しました。
※美鈴という人物がフランと知り合いであると知りました。

※フランは、羽入が死んだと思っています。

アポロたちが橋を越えた同じ頃、遠く離れた場所。
「ん……ここはどこなの、ミキは美希なの?」
「ふむ、美希君というのかね?」
アイドル、星井美希はなぜか眠っていたらしい。
こんなに暗いということは、もう夜なのだろうか?
「服も乾いた。速く着ねば風邪を引くぞ」
服? と言われ、自分の姿を確認する。
「……きゃ(もごもごもご)!?」
美希は自身の常態に驚く。
なぜか、下着しか身に着けていなかったのだ。
悲鳴をあげようとするが、口を塞がれ止められる。
体格の良い怖そうなおじさんだった。
「(だ、誰なのこのおじさん! 助けて、しゅーぞーさん!!)」
「あまり叫ぶのは好ましくないな。というより、何も覚えていないのか?」
89創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:34:21 ID:nHly8bde
90代理:2009/03/29(日) 21:35:17 ID:gYL025L2
669 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:34:06 ID:eIPJVR7o0
何のこと? と美希は頭を唸らせる。
「……あ」
奇跡的に、美希は記憶を呼び覚ますことができた。

「あー、やっと橋なの。あそこで休憩しよっと」
デパートに続く橋がようやく見えてきた。
そこに、人影が見えた。
「二人かな? 殺し合いに乗ってないか確かめないと」
こちらに気がついていないらしい二人に声をかけようとした瞬間。
銃声が美希の耳に響き、思わず逃げてしまった。
「ど、どうなったの?」
少し離れ、振り向く。
ちょうどその瞬間、誰かが川に落ちた。
「も、もしかして……撃たれたの!?」
美希のいる方向に流れてくる人影。
その人影を、美希は追った。

「助けないと! でも、届くわけ無いの……そうなの!」
自分はゴム人間になったことを思い出した美希。

〜美希のてきと〜バトルロワイアル計画 流れてくる人を助けよう編〜
手を伸ばす→掴む→ありがとー→救出成功なの

簡単なの、と早速実行に移す。
「うーーん……えい!」
振りかぶって伸ばした腕は、何度やってもうまく流れる人を掴めなかった。
何度か掴めず殴ってしまったことまであった。
「今度こそ掴むの!」
伸ばした腕は、今度こそ流れる人を掴む。
「やったの! あ、あれ、ちょ、ええええええ!?」
だが、伸ばした腕が戻ることはなく、逆に美希が川へと引きずり込まれた。
「やだ、ガボッ、死、助……」
91代理:2009/03/29(日) 21:36:24 ID:gYL025L2
670 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:34:51 ID:eIPJVR7o0
悪魔の実の能力者は、泳げない。
その意味を美希は体感する。まるで手足が凍りついたかのように体を動かせないのだ。
沈んでいく体。死にたくなくて何かを掴むが、それも沈んでいた棒のようなものだった。
「(美希にヒーローなんて、無理だったのかなぁ?)」
死ぬ。それだけを理解して、美希は意識を失った。

「そうだったの! おじさん、もしかして流れてた人?」
「ああ、そうだ。若い女性の服を脱がし、悪いと思ったが風邪を引いたら大変だからな」
「変態さんかと思ってごめんなさいなの。それと、全然助けられなくてごめんなさいなの」
逆に助けられてしまったことに、美希はショックを受けていた。
「何、まったく無意味だったわけではない。ある意味、君のおかげで助かったようなものだ」

美希が引き込まれた瞬間、ルガールに激しい衝撃が走った。
簡単に言えば、ゴムゴムのロケットのような形で美希がルガールにぶつかったのだ。
「ぐはぁ!?」
失っていた意識を取り戻すルガール。
沈んでいる少女をもぐり引き寄せる。
だが、そこから岸に上がることができない。腹部の出血と痛みが、ルガールに自由を与えない。
「(いかん、このままでは共倒れだ。だが、だからといって彼女を見捨てるわけにもいかん)」
焦燥感に襲われるルガールの耳に、何か声が聞こえる。
「まずいな、幻聴まで聞こえるとは」
『幻聴ではない。私を使え!』
その声は、水の中……抱きかかえた少女の手から聞こえた。
いつの間に掴んだのか、そこには赤い剣があった。
「なんと、喋る剣とはな。……ならば、遠慮なく使わせてもらおう!」
剣を手に取ったルガールは、岸に剣を突き刺した。
美希を岸に上げた後、なんとか自らも河から脱出することができたのだった。

「なんとか助かった……というには早いか」
ルガールの腹部からは、未だ出血が続いている。
生半可な方法で止まる出血ではない。
『……少し乱暴な手段だが、どうにかなるかもしれんぞ』
92代理:2009/03/29(日) 21:38:32 ID:gYL025L2
671 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:35:31 ID:eIPJVR7o0
「かまわん、どうせこのままでは死は避けられまい」
そういうと、物言う剣……ディムロスは刀身を赤く熱する。
「……なるほどな。良い選択だ」
ルガールはディムロスを手に取り、そして。
「ヌ、ウウウウウウウウ!!!」
傷口を焼いた。


出血の止まった腹部を見せ、ルガールは語った。
「というわけで、何とか助かったわけだが。質問はあるかね?」
「痛くないの?」
率直に疑問を聞く美希に、不適に笑いながらルガールは答えた。
「イ タ イ」
「聞いたミキがバカだったの」

服を着た美希は、お互いの自己紹介を始めた。
「殺し合いを止める、か。やはり首輪の解除が専決だな」
「そうなの! ところで、ここはどこなの?」
別に夜になったわけではなく、橋の下だと気づいた美希は場所を聞く。

「おそらくは、F−4の橋の下だろう。すぐ近くにデパートが見える」
「えー、戻ってきちゃった。ミキの努力、すべてパーなの」
ぐでーっと倒れこむ美希。肉体的疲労と精神的疲労が折り重なった結果だった。

『……ルガール。あなたをを襲った人物についてなのだが……黒衣を着た小柄の人物で間違いないはないと?』
「間違いなく、その人物だ」
それを聞いたディムロスは、悲痛な表情が浮かんでくるような呻きをあげた。
『……我の責任だ。フランは、正義感があるわけでも、他人の幸せを優先する性格でもなかった。
それを、我は元のマスターと同じつもりで接した。その結果が、彼女の心を狂気に染めてしまった』
「あまり自身を責めるな。ともかく今は放送を待とう。
日の高さから考えればそろそろのはずだ。」
93創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:41:42 ID:zjRjKNa7
支援運送
94創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:41:43 ID:nHly8bde
95代理:2009/03/29(日) 21:42:12 ID:gYL025L2
672 :惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 02:36:15 ID:eIPJVR7o0
『ああ、たしかにまだ放送は始まっていない。これからのはずだ』
「しゅーぞーさんは無事なのかな……」
二人と一振りの剣は体を休めながら放送を待つ。


【F-4橋の下 /1日目・昼】
【星井美希@THE IDOLM@STER】
[状態]:ゴムゆとり・疲労により熱血沈静化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、モンスターボール(おにぽん)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況、
新型萌えもんパッチ@ポケットモンスターで擬人化してみた、ねるねるね3種セット@ねるねるね
[思考・状況]
1.人は殺したくないの。
2.雪歩を探すの。
3.でぃおとレッドさんを探しながら山(E-1)に向かうの。
4.ゲームに乗らず、人を殺さずゲームを終わらせるために、首輪を外すの。
5.レッドさんの言うこともわかるの。悪い人とあったら説得できるの?
6.しゅーぞーさんが絶対に来てくれる事を信じるの。
7.でぃおさんに謝ってもらうの。もし襲ってきたら……
8.ルガールさんは良い人なの。ディムロスさんは剣なの。
9.水は怖かったの。
※ゴムゴムの実@ワンピースを食べました。能力者になったことに少し気がつきました。
※サンレッドをヒーロー役の俳優だと思っています
※ルガール、ディムロスと情報交換しました。
96創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:53:16 ID:3aYjAlN5
673 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:37:15 ID:eIPJVR7o0
【ルガール・バーンシュタイン@MUGEN】
[状態]:腹部に銃創及び焼き痕、疲労
[装備]:無し
[道具]:共通支給品、ディムロス@テイルズオブデスティニー、不明支給品*0〜2(武器はない)
[思考・状況]
基本思考:主催者を倒し、荷物を取り返す。
1:羽入たちが無事か気になる。
2:首輪を解除できる仲間を集める。
3:社員や八雲紫が巻き込まれていなくて安心。
4:羽入を新入社員としてスカウトする。
5: デパートにとりあえず向かう。
6:城之内も運送をできれば良かったのに……。
7:右上、左上の背後にはなにかいるのだろうか?
8:厄介なのも居るようだな…
※同じMUGEN出展の者については知っていますが、それ以外は分かりません。
※ルガール運送鰍フ社長なので、KOFのルガール・バーンシュタインとは異なります。
※G・ルガール、オメガ・ルガールに変化可能かは不明です。
※右上左上の後ろに何かがいる可能性を認識しました。
※美希、ディムロスと情報交換しました。


【城之内克也@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 死亡】
【秋山森乃進@まったり実況プレイシリーズ 死亡】


支給品情報

回復食べ物セット@星のカービィ
マキシムトマト、ドーナツ、ピーマンの三点セット。
すべて体力を回復させる効果を持つ。
マキシムトマトは全快。ドーナツ、ピーマンはどちらもそれなりに体力が回復する。
なお、怪我を治癒する効果はない。

674 名前: ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:39:01 ID:eIPJVR7o0
以上、修正版です。
指摘された点は直したつもりですが、誤りがあれば指摘お願いします。
97創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:54:56 ID:zjRjKNa7
支援疾風脚
98創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:55:33 ID:3aYjAlN5
そしてすみません、部分抜けを補完
646と648の間にこれを追加してください。

647 名前:惨劇起きてすぐ覚醒〜狂気の最終鬼畜オヤシロ様(修正) ◆CMd1jz6iP2[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:14:30 ID:eIPJVR7o0
「(勇気……あるんだなぁ)」
思えば、出会ってから迷惑のかけっぱなしだった。
このままでは、彼は吉田に殺されてしまう。
彼を、危険に晒すわけには行かない。
森乃進に、僅かに勇気の炎が灯る。
「(わし、頑張るよ!)」
トイレの錠を外し、外へと飛び出した。


ドンッ


「HA……あああ?」
体に走る衝撃に、森乃進の体は崩れ落ちる。
真っ赤に染まる、トイレの床。
「もう終わり? つまんないなあ」
クリムゾンで打ち抜かれた、森乃進の血だった。
森乃進の視界には、仮面を外したフランの姿があった。
「(ああ……吉田なんかより、全然カワイイお)」
表情は狂気に囚われた悪魔そのものだった。
それでも、吉田などから比べれば遥かに愛らしい姿に、不思議と恐怖は少なかった。
「か、かわいいねぇ、お嬢ちゃん」
「……?」
意識の朦朧となった森乃進は、カメラを手に取る。
何の意味もない行動。それでも、何かできるとしたら、彼にはそれしかなかった。

「(こ、これでスキを作って逃げるよぉ。それで、城之内君に逃げるように言って、それで)」
思考すらまとまらず、しかし森乃進は行動する。
「HA……はいちーず」
カシャっと音と同時に、目をくらます光がフランを襲う。
「きゃっ!? 何これ、ちょっと熱い……」
騒霊、亡霊、半人半霊。幻想郷には射影機が通用する存在が多く存在する。
99創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:56:49 ID:3aYjAlN5
次に越前、DIO、CCOのSSを代理投下します

684 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:39:44 ID:Y.zmkbNE0
『それじゃあ、次の放送が聞けるように存分に殺しあってくれ…』


「既に十人以上殺されたな……」
「殺し合いに乗るなんて愚かなことだぁ。」
「全くですぅ。人の命をなんだと思っていやがるんですか。」

放送を聞いて憤る三人。
まあもっともDIOは内心、殺した者に賞賛を送っていたりするが。

「それで、二人の知っている人は居たかい?」
「いや、ダニーもグレッグもここにはいないらしい。」
「翠星石の知り合いもいないですぅ。」
「そうか、私の知り合いも居ないようでね、巻き込まれていなくて本当によかった。」
(どうやら他にスタンド使いは居ないらしい。これでこのDIOの優勝が一歩近づいたということだ!)

DIO自身、何かしら自分の力に制限がかけられていることを察知しているが、それを考慮
してもスタンドを知る者がいない事でかなり優位に立っていると考えていた。

「(フフフ……)そういえば越前君。できれば武器としてメスなんかが欲しいんだがどこ
にあるか分かるかい?あと、出来れば血も手に入れたい。」
「そういうことなら任せろぅ。」
「あ、翠星石も行くです!」
「それにしてもやっぱ吸血鬼って血を飲むんだなぁ。」
「その為に人を襲ったりしてるんじゃないですか?」
翠星石がDIOに疑いの眼差しを向ける。

(こいつは危険な奴に違いないですぅ!)
(ふん、貴様ごときにぼろを出すDIOではない。)
「いやいや勘違いしないでくれ。飲まなければ生きていけないわけではないし、どうして
もという時は親しい知人に譲ってもらっていたよ。もちろん了承は取ってね。」
「怪しいものですね。」
「おいおい翠星石、仲間を疑うのはよくないぞぅ。剣崎だって、吸血鬼にもいい人はいる
って言っていたじゃないかぁ。」
「む〜」
100創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:57:48 ID:3aYjAlN5
685 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:40:15 ID:Y.zmkbNE0
「いやいや、彼女が悪いわけではないさ。私が化け物であることには変わりないのだからね。」
「そんなこと言うなよぉ。俺達は信じてるさぁ。」

そんなことを言う越前の後ろでは翠星石が睨んでいるが、DIOはまるで気にしていない。



そうこう話している間にめぼしい所から次々とメスを見つけ出す。
DIOはそれらを全て自分の懐に入れていった。

「メスなんて役に立つのかぁ?」
「威力は余り期待できないだろうが投げれば牽制としてそれ相応に武器になる。無いより
は大分ましさ。二人とも少しは持っていた方が良いだろう。」
「なら貰っておくかぁ。」
「翠星石はいらないですぅ。」
「そうだなぁ、翠星石じゃ投げても届かないだろうし。」
「そういう意味じゃないですぅ!馬鹿にするなですこのアンバランス人間!」
「な、このやろぅ!人が気にしてることをぉ!」
「まあそう怒るな越前君。」
言い争いを始める二人。
そんな二人をなだめながら、DIOは翠星石に困ったように言う

「だが参ったな。翠星石君には自分の身を守る術が無いのか……」
「む、翠星石だって戦えるです!」
「そうかい?とてもじゃないがそんな力があるようには見えないが。」
「翠星石には植物を操るっていうすっごい力が……あ。」

(かかったな。)
「ほお、植物の力か。吸血鬼の私から見ても不思議な力を持っているのだね。」

「あ、えーと……」
(ま、まずいですぅ!こいつに翠星石の力を教えちゃったですぅ!)

「どんな力なんだぁ?」
「そ、それは必要になったときに見せるです!」
101創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:58:35 ID:3aYjAlN5
686 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:41:49 ID:Y.zmkbNE0
「フ……そうか、楽しみにしているよ。」

翠星石は悔しそうに歯を食いしばる。
(やれやれ。自律行動する人形と聞いて何かあるとは思ったが、念のためにかまをかけて
おいてよかったな。大事な場面でヘマをしていたかもしれない。)




続けて探索を続ける三人。
今度は輸血パックを手に入れる。
初めて見るそれにDIOは素直に驚いた。

「ほぉ……驚いたな。これ程までに新鮮な状態でに血を蓄えられるのか。」
「現代医学に不可能はないっ!」
越前が得意気になる。
「なんで越前が偉そうにするですか。」
「いいじゃないかぁ。俺だって医者なんだぜぇ。」

話している様子を見ると、二人にはそれなりの信頼関係はあるらしい。
それを見ながらDIOは考える。

(越前にはもう警戒心はほとんど無い。お人よしというかポジティブというか、全く騙し
やすい奴だ。これから色々役に立つだろう。だが、人形の小娘はDIOの本性を察知してい
る。まあそれ自体はバレバレで、頭もそんなに良くないようだが、恐らく手駒にすること
は叶わないだろう。意思があるとはいえ人形に肉の芽が効くとも思えない。それにこの二
人がそれなりの信頼関係を持っている以上、万が一越前が翠星石の考えに感化されること
が無いとも言えない。)

「DIO、これで問題ないか?」
「ああ、かなり上出来だよ。いい物を手に入れられた。」

(できれば早めに始末してしまいたい……が、三人しかいない現状で殺すのでは確実に私
に疑いがかかる。折角の越前の信用がパァになっては意味がない。ザ・ワールドを使えば
証拠は残らないが、それでも疑念は残るだろう。あるいは翠星石が襲い掛かってきたと正
当防衛として殺すか?ザ・ワールドで時を止めてあたかも翠星石が越前に攻撃したように
……いや、植物の力とやらを偽ることは出来ないか……)
102創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:58:40 ID:JYoBywF9
支援するのかぁ
103創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 21:59:22 ID:3aYjAlN5
687 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:42:29 ID:Y.zmkbNE0
「用が終わったならさっさと戻りますです。」
「ああ、あいつらがなんか急用で戻ってくるかも知れないしな。」

(とりあえずは越前の信用をこちらに傾けるしかないか。越前に肉の芽を植えるという考
えもあるが、このまま普通に信用されている方が、他の参加者と会った時都合がいい。あ
れはいささか妄信的過ぎる。明らかに不自然だろう。)

ふと越前が足を止める。
「何してるですか越前?早く行くです。」
「ああ、ちょっと待ってくれ。」
「なんなんだいそれは?」
「見取り図のようだぁ。そんなに広く無いから、殺し合いに乗った奴が来た時に逃げるのにどうしようかと思っててな?」
「一理あるな。どれどれ……なんだ、階段は中央に一つしか無いぞ?逃げ場なんて無いじゃないか。」
「そうなんだ。俺達は窓から逃げられなくもないけど、DIOは日の光がダメだろぅ?どうしたものかぁ。」
「まあ撃退すればいい事さ。さっきも言ったがこれでも力はそれなりにある。それに植物
の力とやらがあれば怖いものは余り無いだろう。」
そう言いながらDIOは翠星石の方を見る。
勘繰るような視線をあまりよく思わなかったのか翠星石はDIOをムッと睨むが、自分の力
を頼りにされるのは悪い気がしないらしく、越前に向かって偉そうに言う。

「まあ、弱っちそうな越前は私が守ってやるです。」
「俺はそんなに弱くないぞぉ。まあ、頼りにしてるZE!」
「任せろですぅ!この翠星石にかかれば悪人の一人や二人けちょんけちょんにして…」

――――コツ、コツ

(……?)

「しかし俺にもクリムゾンがあれば戦えるのに、無念!」
「……越前君、ちょっと静かにしてくれ。」
104創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:00:21 ID:3aYjAlN5
688 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:43:00 ID:Y.zmkbNE0
「ん?どうかしたのかぁ?」
「なにやら物音がした。誰か病院に来たかもしれない。」
「も、もう来たですか!?」

――――コツ、コツ、コツ

「……やはり」
下から足音が聞こえてくる。
ちなみに探索を続ける間にDIO達は二階まで来ていた。

「どうするんだDIO?」
「やり過ごすとしても見つかったときのリスクが高い。余裕がある分こちらから接触する
方がいいだろう。殺し合いに乗っている者か、乗っていない者かでその後の状況は大きく
変わるがね。とりあえず私が行ってこよう。」
「ま、待つです。翠星石も一緒に行くです!」
DIOが行こうとしたところに翠星石が付いて行く。
危険人物かもしれない奴とDIOを二人にすることに危機感を感じたからだ。

「おいおい、俺はどうすればいいんだ?」
「様子を見て、殺し合いに乗っている者だったらそのままここに居てほしい。」
「そりゃあないぜぇ。一人だけ隠れてなんていられないぞ。」
「だが相手が強力な者の時はどうなるか分からない。まあ、殺し合いに乗ってなければ一番いいんだが。」
「とにかく早く行くです!ここまで来られたらどうするですか!」
「そうだな、とにかく越前君はここに居てくれ。」
「しょうがない、無事でいてくれよぉ。」
「任せるです。」





「ここが病院か。随分と立派なもんじゃねえか。」
越前たちが探索している頃、志々雄は目指していた病院の見える位置までたどり着いていた。
「ククク……さあ何人いる?全員斬り殺してやる。」
105創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:01:25 ID:3aYjAlN5
689 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:43:49 ID:Y.zmkbNE0
鞘から刀を抜きだらりと構えると、病院にむかっていった。

「ビンゴだな。」
入口近くの壁などが粉砕されており、既にここに入っていることが分かった。
志々雄は獲物がいると分かり笑みを深める。

コツ、コツ、と足音を立てて辺りを探し出す志々雄。
(さあ、強い野郎ならさっさと出てこい。弱い奴なら探し出して殺してやる。)
病院内は見たことのないようなものばかりであり、志々雄は少しばかり興味をそそられる。
すると階段から誰かが降りてくる音がした。

(来やがったな。さあ、どんな奴だ?)
志々雄は期待に胸を膨らます。
しかし、現れたのは奇妙な風貌の男に小さな女の子供であった。
志々雄は心の中で落胆する。

「……初めまして。随分とひどい怪我のようだが君は治療を、もしくは助けを求めに来た
のかい?それともその刀で誰かを殺す為に来たのかい?答えによって対応は変わるのだが。」
「もし殺し合いに乗ってないっていうんだったら翠星石の仲間にしてやるです。」

二人は警戒しながら尋ねる。
ミイラのように全身を包帯で巻いているところを見ると、病院に治療する為に来たように見える。
しかし、刀を構えている様と、その雰囲気からまるでそうは感じられなかった。

志々雄はそれを聞いてニヤリと笑う。
「残念だが、答えは後者だ。俺はこの殺し合いに乗ってる。」

それを聞くと二人はさっと構える。

「……そうか。ならお引取り願おう。こちらは二人いるし、そちらとしてもその方が身の為だと思うが。」
一応言ったもののDIOは答えに期待はしていない。
志々雄はこちらが二人だと分かっていながら殺し合いに乗っていると言ったのだし、よほ
ど自分の腕に自信があるのだろうと推測していた。
106創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:02:11 ID:3aYjAlN5
690 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:44:21 ID:Y.zmkbNE0

「却下だな。目の前に獲物が居るのに逃げる奴がどこにいやがる。それにてめぇみたいなナヨナヨした野郎と女子供に負ける訳がねえ。」

ナヨナヨしていると言われDIOの頭に青筋が浮かぶ。
だが、翠星石と越前がいる以上本性を出す訳にはいかない。

「そうか。そう言うならこちらもそれなりの対応をするしかないな!」
DIOがメスを投げる。

「なかなかいい腕してるじゃねえか、っと!」
それを難なく弾く志々雄。
次いで襲ってきた蔓も慌てず転がってかわす。

「ちっ、惜しかったですぅ。」
「こっちの餓鬼も只者じゃねえな。ククク、思ったより楽しめそうだな。」





「本当に大丈夫なのかぁ?」

自分には力が無いことを理解していたが、それでも一人みすみす隠れているというのも越前自身が許せない。
(殺し合いに乗ってなければいいんだがなぁ……)
そんなことを考えていると、下から交戦する音が聞こえてきた。

「ま、まずい!俺も行くぞ!」
越前は迷うことなく階段を駆け下りていった。





「くっ、人間にしては手ごわいな……」
107創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:02:22 ID:JYoBywF9
夕べの支援かいなー
108創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:03:01 ID:3aYjAlN5
691 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:45:03 ID:Y.zmkbNE0
「どうした、さっきから当たってないぞ?」
「人間の癖に生意気ですぅ!」

左右からのメスと蔓の連携も避けるか弾くかでかわされている。
志々雄は人間としてはありえないほどの身体能力の持ち主であった。
だが、刀の範囲内に入らないように離れて牽制するDIOと翠星石に志々雄も攻めあぐねていた。

(いつも通りの力が出ねえな。)
志々雄は主催者によって熱を奪われた事でいつもと同じ力が出せないでいた。
発火する恐れは無いが、その分気分も高まらず力が入らない。

両者ともに有効な手を打てないでいた。

「DIO、翠星石、大丈夫かぁ!?」
そんな中、越前が降りてくる。

「もう一人いやがったか。どうやら今日の俺は運がいいらしいな。」
「危ないから下がってるです越前!こいつただの人間じゃないですぅ!」
「とても君を守って戦っていられる状況じゃない。ここは逃げた方がいい。」
「そんなこと出来るか!俺だって戦えるぞぅ!」

逃げるように促されるが、二人に加勢しようとメスを投げる
しかし、メスは狙いが定まらず志々雄の脇を通り過ぎてしまう。
「もう一度だぁ!」

何度か投げるが、どうしてもDIOとはスピードも正確さも違いことごとく外れる。

「なんでえ、三人目は雑魚か。」
それを見ていた志々雄は一気に越前との距離を詰める。
「うっ!」

いきなりの事に驚く越前。志々雄はそのまま反応できていない越前に刀を振り下ろそうと
するが、首を狙って飛んできたメスを避けるためにバックステップする。
「チッ、邪魔な野郎だ。」
109創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:03:48 ID:3aYjAlN5
692 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:46:30 ID:Y.zmkbNE0
「大丈夫かい越前君!?」
「あ、あぁ……」
「だから危ないって言ったです!さっさとどこかに逃げるですぅ!」
「今見た通り、並みの相手ではない。言いたくはないが銃が無い状態の君では足手まとい
にしかならないんだ。ここは逃げてくれ。」

DIOの言葉に言い返せない越前。
デスクリムゾンがあればともかく、今はただの元傭兵であり、それだってかなり昔の話で
ある。明らかに力不足であった。
自分がもしこのまま残っていたら今度はDIO達が危険にさらされるかもしれない。
でも一人逃げるような真似もしたくはない。

どうするべきか迷っている越前を、DIOが後押しする。

「私は自分も死にたくないし君にも死んで欲しくはない。奴を倒したら君を呼ぶ。だから今は安全な外へ!」
「……く、くっそぅ!」
なんとか迷いを振り切り逃げる越前。

もし戦いの音が終わっても何も合図が無ければそれはDIO達が殺されたということ。
そしてその時は自分だけでもどこかへ逃げろという事である。
自分だけ戦えないことに悔しくてたまらないが、ここにいるせいでDIOたちを殺す訳にも
いかない。逃げてきた越前は病院から少し離れた場所で後ろを振り向く。

(何がコンバット越前だ!何も出来ないじゃないかぁ!)
自分の無力さを嘆く越前。どうか彼らが無事であることを祈る。
(DIO、翠星石、無事でいてくれよぉ!)





越前が去った後、それを見ていた志々雄は愉快そうに微笑む。
「戦いのなかで雑魚は邪魔になるってえのは分かってるらしいな。あのままやってりゃあ
隙をつかれてどいつか死んでた。」
110創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:04:40 ID:3aYjAlN5
693 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:47:05 ID:Y.zmkbNE0
「あんな言葉を吐いたのは不本意だがね。彼にはここにいてもらう訳にはいかないのだよ。」
志々雄の言葉に対し怪しい笑みを浮かべるDIO。
何か変な雰囲気を感じる志々雄だったが、飛んできた蔓に思考を中止させる。

「ボーッとしてたら死ぬですよ!」
「翠星石君、今度は固まって攻撃するぞ。」

今度はDIOと翠星石が同じ方向からメスと蔓で交互に攻撃し近づけないようにする。
当たりそうには無いが、志々雄はかわすのに集中しなければならない状態である。
再び進展の無い状況が続く。

(そろそろ頃合だな。)
志々雄の様子を見てDIOは心の中で呟く。
サッと一歩下がり翠星石の後ろを取るとスタンドを出した。
突然現れた人型の異形に志々雄は目を見張るが、前しか見ていない翠星石は気付いていない。そして、

「『ザ・ワールド!』時よ止まれ……」
DIO以外の全ての動きが止まる。
「無駄ァ!」
DIOは志々雄めがけて翠星石をザ・ワールドで思いきり殴る。
次いでその後ろから十本以上のメスとライトセイバーを投げた。

「そして時は動き出す……」

再び時間が進み始める。

瞬間、翠星石が感じたのは全身に走る激痛と、自分の体が前へ吹き飛んでいく感覚。
何が起きたか理解できないまま反射的に見た眼前の光景は、自分めがけて迫り来る刃であった。

「何が……起き…た…です……か…」

胴体を深く斬られた翠星石は苦しげに言葉を吐く。
111創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:05:25 ID:3aYjAlN5
694 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:47:38 ID:Y.zmkbNE0
自分のいた場所を見ると、そこには見たことのない人形のようなものと、笑っているDIOの姿があった。
(やっぱりあいつは危険な奴だったです。こんな事なら誰かに言っておけばよかったですね……)
翠星石はもはや遅いいと知りながらも後悔をせずにはいられなかった。
そして最後の力を振り絞り、届くことの無い言葉を送る。

「死ぬな……です…よ…公苗……」
それきり翠星石は動かなくなった。



一方翠星石を斬った志々雄にも次々と凶器が襲う。
突然眼前まで迫った翠星石に気を取られ、かわすことが出来なかったのだ。
メスが何本も刺さっていき、ライトセイバーも足に刺さる。
倒れるのはこらえるが、志々雄もまた何が起きたか理解出来ず混乱していた。
(いきなり餓鬼の捨て身の攻撃?そんな素振りは無かったし、この場面でやることでもね
え。だがあの男は待ってましたと言わんばかりに武器を投げてやがった。)
志々雄は刺さった刃を抜くと、笑みを浮かべたDIOを睨みつける。
傍らには先ほど現れた謎の人型が立っていた。

(そのこととあの人形みてえなやつを考えると、あの野郎が何か仕掛けたんだろうな。)

「耐えるとは、思った以上にタフなようだな。」
「……今何をしやがった。その珍妙な人形の力か?」
「人形ではない、これはスタンドという物だ。人形とはそこで転がっている物のことを言うのだよ。」
もう動かなくなった翠星石を指差してDIOが言う。

「餓鬼の特攻もてめえの仕業か?どうやったか知らねぇがいきなり仲間を使い捨てるとはな。」
「その小娘は邪魔だったのだよ。越前はまんまと騙せていたのだが、この人形は私の本性に感づいてしまった。」
「だから殺したってのか。今までそのスタンドってのを使ってなかったのは、もう一人の
男にその力を知られない為にってところか?」
志々雄は、越前が逃げた時にDIOが怪しい笑みを浮かべていた事を思い出す。
112創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:05:47 ID:JYoBywF9
 
113創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:06:12 ID:3aYjAlN5
695 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:49:51 ID:Y.zmkbNE0

「察しがいいな。まだ越前には使いどころがあるから私のことを知られる訳にはいかない。
だからスタンドを出すには、越前にいなくなってもらわなければいけなかったのだよ。」
「さっきの言葉もこれの為か、とんだ役者だな。だがそんなにてめえのことペをラペラ喋
っていいのか?それにそいつを殺したせいで今や一対一だ。俺に勝てるか?」
二対一だったところを、わざわざ不利な状況にしたのだ。当然志々雄は疑問に感じた。
(それともそのスタンドってのはそれだけ強いっていうのか?)

「その事なんだがね……ここは一つ、平和的解決といこうじゃないか。」
「ああ?」
「私は訳あってここから動くことが出来ないのだよ。そこでだ、代わりとして貴様に動い
てもらい、参加者の数を減らして欲しい。ただ越前、さっきの男は殺さないでおいてくれ。」
「俺を駒扱いする気か?気に食わねぇな。」
「いやいや、勘違いしないで貰おう。貴様の実力を私も認めているからこそだ。貴様なら
期待できると思ったのだよ。それにこのまま戦って、もしどちらが勝ったとしても勝者は
大きな痛手を負うだろう。貴様にも悪くない話だと思うのだが。これは私からの提案、ひ
いてはお願いさ。」
「…………」

(口ではああ言っているが、結局てめぇの代わりに動けってのは駒と同じだろ。天下を取
ろうってのにこんな奴の言いなりになるのは言語道断……って言いてぇ所だが)
志々雄はスタンドを見やる。

(あいつが何やったのか分からねぇ以上、対処は難しい。この祭りだってまだ始まったば
かりだ。これから殺しを楽しむのに、今素性の分からないこいつと戦うのは利口じゃねえ。
どっちにしろ殺して回るつもりでいたからな、その手に乗ってやるのも悪くない。逃げる
みてぇでむかつくが、こいつを殺す楽しみをとっておくと考えりゃあいいさ。)

「話は分かったが、タダで乗るわけにはいかねぇな。」
「いいだろう。欲しいものがあれば言ってみろ。」
「そうだな……水をよこせ。」
「そんな物でいいのか?ホラ、受け取れ。」
DIOは自分のデイバックから水を取り出し投げる。

「よし、いいだろう。その話乗ってやる。」
114創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:06:58 ID:3aYjAlN5
696 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:51:11 ID:Y.zmkbNE0
「交渉成立だな。私の名はDIOだ。感謝の意をこめてこれも送ろう。治療の道具が入っている。」
今度は医療品一式を取り出し投げる。

「羽振りがいいな。俺の名前は志々雄真実だ。それと話には乗ったが、次会った時にはて
めぇも斬ってやるから覚悟しとけよ。」
「構わない。その時を楽しみにしておこう。」
「いい度胸してやがる。あと聞きたいことがある。てめぇはこの首輪、外す方法に心当たりはあるか?」
「いや、私にも私が出会った者にも心当たりは無いな。」
「そうか、ならもう話は終わりだ。あばよ。」
「フ、吉報を待っている。」



【C-4 草原/1日目・午前】
【志々雄真実@るろうに剣心(フタエノキワミ、アッー!)】
[状態]:数箇所軽い刺傷、右足に傷。いずれも処置済み
[装備]:日本刀@現実
[道具]:支給品一式、禁止エリア解除装置@オリジナル、スタポカード刺しクリップ@
Ragnarok Online、リボン@FFシリーズ
[思考・状況]
1:会場を回り見つけ次第殺す。
2:余裕があれば禁止エリア解除装置を使った盛大な罠を張る。
3:小僧(鏡音レン)を利用する。ドナルドがどう動くか気になる。
4:次会ったらDIOを殺す。
5:無限刃が欲しい。
6:機会があれば首輪を調べる、そのための人材なら生かしてもいい。
7:鳥頭は優先的に殺す。
8:弱肉強食の理念の元、全員殺害し元の世界に戻って国盗りの再開をする。
[備考]参戦時期は剣心が宗次郎戦を終えた時期からです。



「行ったか。」
DIOは志々雄が去ったことにホッとする。
115創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:07:45 ID:3aYjAlN5
697 名前: ◆sh/9YAh26Q[sage] 投稿日:2009/03/29(日) 02:52:58 ID:Y.zmkbNE0
(奴の性格からして戦闘になる可能性も高かったが、とりあえずは思惑通りといったところ
か。人間にしてはなかなかのようだからな。このDIOの為にもせいぜい働いてもらうとしよう。)

邪魔な存在である翠星石の排除と、危険人物である志々雄の撃退。更には自分の代わりに動く駒を手に入れたのだ。
三つも自分に有利なことが起き、機嫌がよくなるDIO。
(ここまで上手くいくとはな。不安要素であったザ・ワールドの力も発動した。そして予想通りであれば……)

「『ザ・ワールド!』時よ止まれ……」
再び時を止めようとするDIO。
だが今度は発動しない。

(やはり制限の内容は連続使用の不可か。サンレッドの時に二回目が使えなかったのに、
先ほど使えたこととも辻褄があう。)
自身の状況を確認するDIO
辺りを見回すとふと床に転がる翠星石が目に入る。その胸には輝く結晶が現れていた。

「これがカラクリというわけか。」
それを手に取るとDIOは宙に放り投げ、

「無駄ァ!」
スタンドで叩き割った。

「翠星石、貴様はもう少し賢いか馬鹿だったらもっと長く生き延びられたのだがな。さて、
そろそろ越前を呼び戻すとするか。」





「音は止んだが、まだなのかぁ?」
外で待っていた越前は、戦いの音が止んでも中から自分を呼ぶ声がしないことに焦りを感じていた。
116創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:11:17 ID:JYoBywF9
しえん
117代理:2009/03/29(日) 22:13:35 ID:gYL025L2
698 : ◆sh/9YAh26Q:2009/03/29(日) 02:53:34 ID:Y.zmkbNE0
(DIO……翠星石……)

殺されたということなのだろうか?
そう考えて弱気になる越前。
その時、入口から志々雄が出てくるのが見え、咄嗟に隠れる。

(あいつが出てきたって事は……)

越前は最悪の可能性にたどり着く。
二人は殺され、そして次殺されるのは自分の番なのだと。
見つかる前に逃げなくてはと考えるが、志々雄は特に越前を探す様子も無くどこかへと去っていった。

「どういうことだぁ?」

自分を見逃してもメリットは無いはず。
不思議に思いながらも、越前は気になる仲間の状況を確認する為に病院の中へ入っていった。



「DIO!」
「越前君!」
入ってすぐに越前はDIOを見つける。だがDIOの顔は暗く、傍には翠星石が見られない。

「無事だったのか!良かったぜぇ……あれ、翠星石はどうしたんだぁ?」
「……落ち着いて聞いてくれ越前君。」
「ど、どうしたんだぁ?」
いやな予感がする越前。
そしてそれは当たってしまう。

「彼女は、翠星石君は……私を守るために捨て身の攻撃をして」
「う、嘘だろぉ?」
「嘘じゃない。その際に……腹を斬られて殺されてしまったんだ。」
ガクリ、と越前は膝をつく。
118代理:2009/03/29(日) 22:15:53 ID:gYL025L2
699 : ◆sh/9YAh26Q:2009/03/29(日) 02:55:21 ID:Y.zmkbNE0
「お、オーノー……さっきまであんなに元気だったんだぜぇ?それが、なんということだぁ……」
頭を抱えて嘆く越前。今頭を占めているのは、自分も戦える力を持っていれば助かったの
ではという自責の念である。
DIOはそれを察して越前に言う。

「自分に力があればなんて思わないでくれ。力不足だったのは私も同じだ。それよりも越
前君。彼女を見てやってほしい。」
「う……分かった。」

DIOは翠星石のもとに越前を案内する。
腹を斬られ動かなくなった翠星石を見て越前は涙を流す。

「越前君。彼女の命を懸けた攻撃でなんとかあいつを追い返すことが出来た。私たちが今
生きていられるのは彼女のお陰なんだ。」
「ああ……」
「だから、私たちは彼女の分もしっかりと生きなければいけない。彼女の死を無駄にすることの無いように。」
「ああ、言うとおりだ。いつまでも泣いてるわけにはいかないよな。人間、辛抱だぜ!」

DIOの言葉に涙を拭き立ち上がる越前。

「とりあえず翠星石を運んでやるかぁ!床のまんまじゃ可哀想だしな!」
「そうだな。ソファーにでも持っていってあげよう。」
「よし、俺が運んでやるぜぇ!」

落ち込んだ気持ちを切り替えようと空元気を出す越前。
大事そうに翠星石を抱えると、ソファーに向かって運んでいく。
そんな越前を見て後ろでほくそ笑むDIO。

越前がそれに気付くことはなかった。



【C-4 病院/1日目・午前】

119代理:2009/03/29(日) 22:18:05 ID:gYL025L2
700 : ◆sh/9YAh26Q:2009/03/29(日) 02:56:55 ID:Y.zmkbNE0
【DIO@MUGEN、ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]軽傷(自然治癒力によってマシになった)、去勢
[装備]ライトセイバー@外人が想像したとてつもない日本が出てくるゲーム(RedAlart3)、
阿倍さんのツナギ@くそみそテクニック 、メス 50本
[道具]支給品一式(水抜き)、マスクザ斉藤のマスク@ニコニコRPG、便座カバー@現実
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの参加者はもちろん、あの主催者どもも全て殺す。
1:越前を利用し、更に他の参加者の信用を得る。
3:サンレッドを殺す、そのためなら手段は問わない。

備考
自身の能力が制限されている可能性を理解しました。
剣崎達にはザ・ワールドの存在を教えていません。ザ・ワールドの時止め能力が、時
間を空けないと使用できないことを理解しました



【コンバット越前(越前康介)@デスクリムゾン】
[状態]:精神的疲労(弱)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、翠星石@ローゼンメイデン、未確認支給品0〜2(但し銃器の類
は無い)、医療品一式(包帯、消毒液など) 、メス 10本
[思考・状況]
1:翠星石をソファーに寝かせてやる。
2:このゲームを破滅へとミチ☆ビクッ!
3:剣崎ブレイドと協力する。
4:知人、友人と合流する。
5:民間人の保護。
6:夕方まで病院で待機
7:クリムゾンを回収する。
8:主催者及び統制者に関係するものに注意。
9:この茶番にデスゾルトスは関わっているのかぁ?

補足
あくまで原作準拠です。
ブレイバックル以外のランダム支給品は確認していません、次の書き手さんにおまかせします
120代理:2009/03/29(日) 22:22:39 ID:gYL025L2
◆sh/9YAh26Q氏の代理投下終了。
あと ◆CMd1jz6iP2氏の再修正も追加。

679 : ◆CMd1jz6iP2:2009/03/26(木) 22:56:56 ID:eIPJVR7o0
ご指摘の箇所を再修正しました。
これで大丈夫だと思います。

>>76
>>660

中身は羽入と共に蜂が持っていったのか、基本的な支給品しか入っていなかったため捨て置く。

「んー、神様の血を吸ったおかげかなぁ。凄く体調がいいや……手と翼がどうにかなれば完璧かな」
昼のせいなのか、再生は体力が戻っても遅いままだった。
翼にいたっては、二度と戻るかわからない。
「とりあえず拾っておこう。後で固定しておけば、くっつくかもしれないし」
血溜まりに落ちていた、自分の翼と指を荷物に入れておく。

「どうしようかなぁ……あっ」
いいものを見つけた、とフランは目を輝かせ這いつくばりながら進んだ。

>>78
>>661

【F-3 デパート内/一日目・昼】
【フランドール・スカーレット@東方project】
【状態】:体力全快、全身に拷問痕、翼喪失、左肩に銃痕、両手喪失、左腕が一部灰化、足に刺し傷
【装備】:ショッピングカート
【持物】:基本支給品一式*2、クリムゾン(弾数0/6、予備弾12/36)@デスクリムゾン、セーブに使って良い帽子@キャプテン翼
ゼロの仮面@コードギアス、射影機(07式フィルム:28/30)@零〜zero〜、予備07式フィルム30枚、フランの翼と指
【思考】歪みない生き方=今まで通りの自分の生き方をする。
1、外に出れる服を探す。
2、嫌な奴を殺す(アカギ(名前は知らない)、ブロリー)
3、嫌な奴かは話して決める。襲ってくる奴は殺す。
4、本屋にあるDMの本を読みたい。
5、手が再生しないと何もできないよ。
6、映画館どうしよう。
※「ゼロの衣装セット」は仮面以外破れました。太陽に晒されれば死に至ります。
※美鈴達と情報交換をしました。
※体の欠損の再生速度、および再生の可否は不明です。次の書き手に一任します。
※くず鉄のかかしの使用制限を知りました。
※フランは羽入の名前を知らず、オヤシロ様とだけしか知りません。
※クリムゾンの進化ゲージは初期値に戻りました。
※本来より速く、二、三人の殺害(もしくは死体撃ち)でゲージは最大に溜まるようです。
121創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:27:32 ID:xv6I07ia
122創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:27:44 ID:xv6I07ia
123創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:27:58 ID:xv6I07ia
124創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:28:20 ID:xv6I07ia
125創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:28:35 ID:xv6I07ia
126創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:28:45 ID:xv6I07ia
127創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 22:29:13 ID:xv6I07ia
128代理:2009/03/29(日) 22:31:38 ID:gYL025L2
>>120
ちゃんと修正されてました。すみません・・・orz
129創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 23:37:51 ID:dtt71d7m
投下乙!感想をば。
>惨劇起きて〜
森乃進…凡骨…乙
フランは一体何処にあの可愛さをやったんだとw
羽入TUEEEEEwwwあんなに強いのか羽入…
そして社長無事とかwww
ゆとりもアポロもみさおも頑張れ!マジ頑張れ!
>DIO様は〜
流石DIO様と言わざるを得ない。
CCOもやっぱり強いなぁ。越前は相変わらずだが…
そして翠星石…
賀斉神&オンデゥルがDIO様に対して疑念あるし…今後が楽しみだwww
二人とも、代理の方、乙!
130創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 00:42:40 ID:2csS1ZNj
羽入SUGEEEEEEEEEE
まあなんだ、フランは頑張れや。
131創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 00:43:58 ID:1FE3FxLJ
今の妹様は芋様(笑)みたいな
132創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 00:46:00 ID:Y8mPh5f+
投下乙!今まで死んだ21人中3人しか死なないとはマーダー補正は留まるところを知らないのか!?
133 ◆CqqH18E08c :2009/03/30(月) 00:56:37 ID:T+mdxGZ0
投下乙ー
妹様の状態が……

>>49
また忘れてた/(^o^)\
タイトル:アカギーポッターと誰得の部屋
です
134創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 01:06:49 ID:ATzunu0I
芋様ちょっとワロタ
羽入は今のところガチで神だな
どっかのおっぱい野郎とは違ってw
135創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 01:12:56 ID:ATzunu0I
あ、IDがZUNだ
136創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 01:26:03 ID:1FE3FxLJ
神主仕事しろ
137創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 01:44:53 ID:j974gnZn
感想遅れてごめんなさい
お二方投下乙

>◆CMd1jz6iP2氏
凡骨、森乃進が退場か
フランがやりおる。
はぬーがちょっと説教臭かったが
これがひぐらしの要素なんすかね

>◆sh/9YAh26Q氏
ジャンプ悪役マーダー2人の停戦協定
そして、翠の子、破壊。なんだかわくわくしてきたぞ

138創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 09:08:29 ID:qijD2wIe
DIOとCCOの邂逅にwktkするあたり、俺はジャンプっ子なのかもしれない
139創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 09:43:38 ID:jnJwu4uQ
囲炉裏ー!
幼女が行ったぞー!
140創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 15:58:13 ID:qcYyTtMG
◆CMd1jz6iP2氏へ
Wiki編集の時に分割しないといけないので、分割する場所を教えてもらえると助かります。
141創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 16:06:18 ID:qcYyTtMG
前スレに書いてあったのを見逃してたorz
>>140は無視してください。
142 ◆jU59Fli6bM :2009/03/30(月) 17:34:04 ID:JX2OTdzp
CMさん、sh氏、代理投下の方乙でした!
妹様とDIO様イイヨイイヨー

ではKAITO繋ぎ投下します。
CMさんのSSと被るところがあるのでフランも少し描写しています。大丈夫かな
143 ◆jU59Fli6bM :2009/03/30(月) 17:35:55 ID:JX2OTdzp
誰もいないデパートの一階。
聞こえるのはぶらぶらと行ったり来たりを繰り返す俺の足音だけ。

――ハクとアレックスが行ってから、どのくらい経ったかな。

本屋の壁にあった時計を見る。そんなに長くは経っていなかった。
こうやってただ無意味にうろうろとしていると、時間の流れがとても遅く感じる。
そう、だから。

――まだまだ、時間がある。

二人を追いかけるか、このままここで隠れながら過ごすか。
どちらを選ぶのか決めるこの猶予の時間が苦しくて仕方なかった。
実を言うと、あれから俺の葛藤は一向に進展していない。

「ハクのせいだ、ハクがあんなじゃなかったら、俺だって……」

――何を言っているんだ、悪いのは俺の方だろう。

口をついて出てくる言い訳も鬱陶しくなって首をぶんぶんと振る。
ああ、元々ここを出て行く気なんて、アレックスについていく気なんて全く無かったのにな……。
わざわざ外を歩き回りたくないし、襲われてる人を助けるなんて危険な事、絶対に無理だ。
むしろ、俺がいても邪魔にしかならない。役に立つはずない。

――だから、こんな俺を誘ってくるあいつらが悪いんだ。

何度目だろう。さっきからずっと頭の中は同じような言葉の繰り返しだ。
そして結論がでないまま、無駄になった時間だけが流れていく。
そんな中、頭には先ほど見たハクの姿がちらつく。
笑顔で、はきはきと話しかけてきたあの姿を。

「ハクがネガティブ思考じゃないなんて……」

いつも後ろ向きで、事あるごとに弱音を吐いていたハク。
それは普段話す時も、踊る時も、歌う時でさえ変わらなかった。
なのに、なのにさっきのハクは。

――まるで別人じゃないか。
144 ◆jU59Fli6bM :2009/03/30(月) 17:38:52 ID:JX2OTdzp
こんな殺し合いに呼ばれているのに、いつも通り弱音を吐いて泣きべそをかいてるだろうと思ったのに、あれは何なんだ。
弱音どころか、俺を説得する余裕さえあるなんて。
初め、ハクじゃないんじゃないかとさえ思ってしまったのは秘密だ。
けれど、ハクは俺の好きなアイスの種類を知っていた。
ちゃんと俺の知っているあのハクだったんだ。

もう無理です、ツマンネ、って愚痴ってうずくまるお前はどこに行ったんだよ。
あがって上手く歌えなくておろおろと慌ていたお前はどうしたんだよ!
これじゃ、これじゃあ。

――俺が惨めすぎるだろ……!

情けなかった。
年下のハクにも慰められる自分が、とても、とても。
そして別れる際に言われた言葉。ハクの思いが針のように俺のヘタレ根性に刺さっているようで、凄く痛い。
だから、俺の絶対に行かないという意思は揺らぎに揺らいでいた。
ハクでさえ、あんなに頑張っている。ミクに、リンとレンもそれぞれ必死に生きてるんだろう。

――でも、それでも、俺は。

何度考えても、次にはこの言葉が出てくる。
本当は嫌なのだけれど、嫌でたまらないけれど、どうしてもそう思ってしまう。
俺には怖くて無理だ、と。
そして、何度目か分からない保身的な反論を返した時。


「痛い、痛いよ……。もう、太陽なんて嫌い……!」


俺の体は一切の動きを止めた。

「ひっ……」

電流が走ったかのような衝撃が体を震わせ、思わず声が漏れる。
危うく腰を抜かしてしまいそうになった。

耳を裂くような爆音。
デパートの奥で瓦礫となった壁が、床が、棚の商品が宙に舞っている。
不規則にばらまかれる鮮やかな弾が飛び回り。
そのリズムに合わせるかのように混じる甲高い笑い声。
そして、全ての中心に、黒ずくめの何かがいた。

北側の入り口から入ってきた誰かが、このデパートを破壊している。
誰か?何か? いや、何と形容すればいいんだろう。あれはまるで――

――悪魔。

145 ◆jU59Fli6bM :2009/03/30(月) 17:47:41 ID:JX2OTdzp
「あの女も、あの男も、綺麗に並んだこいつらも!嫌いよ!!
みんな壊れちゃえ!」


怖い。
怖い。
怖い。

何だよ、あれ……!


「あ はは は は は はは は !!!」


ヤバい、ヤバい、殺される。このままじゃ俺、死ぬ!
だから……。
お願いだ、俺の足、動いてくれ!
何でさっきから棒みたいに固まってるんだよ!

「あ は は は は は は は は は !!!」

少しだけ、少しだけでいいから。このままじゃ、見つかる!死ぬ!!
だ、誰か来てくれよ、頼むよ!
ああ、こっち、こっち来……!
う、うわあああああああ!!


……あ?

尻餅をついてふと見ると、あの姿は消えていた。
あぁ、助かった。あの道を曲がったのか。
運が良かった。俺は陳列棚の影にいた。
だから、あの仮面の化け物は俺に気づいていなかった。

「今の、うちに……」

一歩、一歩、物陰から出口へと進んでいく。
棚の隙間から人が見えたような気がしたが、今は見なかったことにしよう。
確認する余裕なんてない。それに、こんな危険なところに来る奴なんかいないだろう。
うん、いない、いないはずだろ。声がする? 空耳だ、そうに決まってる。

そして、東側の出口からなんとか脱出した。
気がつけば四つん這いに這い出してなんとも情けない姿となっている。
安堵のため息が出た。
気が抜けて、一休みしようかとうずくまり――

「いぎゃああああ!!」

地面が震えるような衝撃にまたも戦慄した。
右奥に見える壁が木っ端微塵に吹っ飛んだのだ。
瓦礫の中にどろりとした赤い塊を見たような気がして、全身ががたがたと震えた。

もう嫌だ。
何でもいい、早くデパートから離れないと。
ああ、何なんだよ。あんな奴がいるなんて聞いてないぞ!
見てない、見てない、俺は何も見ていないっ!!
146 ◆jU59Fli6bM :2009/03/30(月) 17:48:34 ID:JX2OTdzp
今度は足に力が入った。俺は駅へと全力で駆け出す。
あんな所はもうごめんだ、今は駅に隠れるのが一番安全だろう。
あの二人に見つからないように、そっと、そろーっと入ることにしよう。

二人についていくかは、まだ決まってないのだから。
――また人を見殺しにした、こんな奴は誰に合う資格もないのだから。

【F-3 デパート前/1日目・昼】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、苦悩、全力疾走
[装備]:ベレッタM96(残弾数11/11)@現実
[道具]:支給品一式、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタル
ギアソリッド、必須アモト酸@必須アモト酸、2025円が入った財布(ニコニコ印)@???
、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実 ]
1:死 に た く な い
2:ミク、リン、レン……許してくれ……
3:生きるためなら例え卑怯な事をしても許されるはずだ
4:とにかくデパートから離れて安全そうな駅へ
5:でもあの二人についていくかは決めかねている

[デパート備考]
※500円がデパートB1階レジに置いてあります。
※城之内の死体はデパート外に吹き飛ばされ、放置されています。
147創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 17:49:51 ID:XNx/55eQ
SIENN間に合うか?
148 ◆jU59Fli6bM :2009/03/30(月) 17:50:54 ID:JX2OTdzp
投下終了です。
題名は「デパートでほぼイキかけたKAITOの御退散レース」で。
そういやこれ優勝記念予約だったの忘れてた
149 ◆SHdRN8Jh8U :2009/03/30(月) 18:13:19 ID:iMYMA9MB
投下します
「うむ…一体あやつらは何処に行ったのじゃろうか?」

剣崎やリン達と別れ、唯一人べジータ達を追った賀斉ではあるが、彼らが何処へと逃げたのかは全く分からなかった。
地図で言う端っこに当たる部分ではあるが施設も多くまた逃げる方向も沢山ある為何処に行ったのか分からず仕舞いである。
ましてやあのスピードで逃げられては、既にこの島から脱出している可能性もあった。


「この近くにあるのは…駅、寒村、温泉ぐらいか」
橋をとっくの昔に渡り終え、地図と睨めっこしながら歩く賀斉。
彼らが何処に逃げ、何処を捜索しようと悩む。

「しかし逃げるものが目立つ建物に逃げるとは思わんな」

普通逃走者が建物に逃げることは無い、なぜなら逃げ道が無くなるからだ。
ましてやあのスピードであればどっかに逃げるよりもっと離れた方が得策である。
そう思い、彼は地図をしまい、寒村近くの森の中へと入っていった。
「やはりそう簡単に見つかるものでもないか…」
寒村近くの森の中を調べて暫くの時間が経ったが、人の面影など何処にも無く少しがっかりする彼。
ここには居る可能性が少ないと思っていた彼だが、やはり早く見つけたいのだ。

森の中を抜けると、目の前には山が広がっている。
「このまま東へと逃げたかも知れんな…」
地図上では行き止まりになっているがもしかしたら道が続いているのかも知れない。

そう思いながら彼は更に山へと足を踏み入れたのだった。
152創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 18:21:30 ID:jKe+sUOi
支援!
「見事に何も無いな…」
山へと足を踏み入れた彼はその自分の判断をすぐ恨むことになった。
見事に何も無いどころか思ったよりも坂が急で鍛えている彼でもしんどくなる様なきつさだった。

彼らに会うためには、これぐらい我慢する彼。
どんどんどんどん山の上のほうへと行く彼。
汗を少しずつ出していくが、彼にとっては耐えれる範囲である。

人間ではあるが武将ゆえか、常人よりも早いスピードで山頂へとたどり着く。


山頂へとたどり着いた彼だが、行き止まりな上誰が居た痕跡も無い。

「何も無いな…む?あれは」
そう下を見る彼の目には下の寒村の方にいる小さい人影。
しまったと心の中で思うが、彼は顔には出さずすぐさま足を降りる方へと向け歩いた瞬間。

ズリッ!
なんとも嫌な音を立てながら、彼は石で滑って転んでいた。

「うっ!」
足元に気を使っていなかったのか彼らしくも無い壮大な転び方をする。
暫く地に伏せていた彼だが、すっくと立ち上がり周りを見渡す。



「全くこれから気を付けなければな…ここは一体?」
先ほどと同じ山であるが全く違う光景に驚く彼。

さっきは寒村あり駅も小さいながら見えたものだが、今は大きな鉄の塊しか見えなかった。
第一山を下りる方向が違うのだ。


これは主催者が作った世界。
だから端のほうへ行っても、対称な端っこへと繋がっている。
これがからくりだった。

しかし遥か昔から来た彼はワープと言う単語すら知らなかった。
このような現象を見せられたところで、自分の頭がおかしくなったのかと思う事しか出来ない。
それに全く移動したと言う感じが微塵にも彼は感じていなかった。

だから彼はワープをしても気づかない、近くに禁止エリアがあっても…


「とりあえず山を降りるか、あの鉄の塊に向けて」
彼は頭を捻りながらも山を降りれば分かるだろうと思い、A-10RCLの方へと山を降りていった。
【A-5/一日目・昼/山】
【賀斉@101匹阿斗ちゃん】
【状態】肉体疲労(中)
【装備】MEIKOの剣@人柱アリス
【持物】基本医療品、基本食糧、包丁@現実
【思考・行動】
基本思考:仲間を増やして、ゲームを倒し、脱出する。
1、あの二人が悪者かを知る為、直ぐにでも追うが…一体ここは?
2、とりあえず大きな鉄の塊(A-10RCL)の方へ向かう。
3、剣崎に二人を任す。少年は信用ならないが、リン殿が居る限りは大丈夫だろう。多分。
4、翡翠石のような娘が欲しい。
5、DIO殿…貴殿を信じて良いのですな?
※剣の花びらは視界を遮る恐れがあるようです
※賀斉はどこかの明治時代の人と違って普通に日本語が読めます。でも最近の物(携帯電話等)は分からないと思います。
※Eー5からワープしましたがその事に気づいていません。
投下完了。
端のほうへ行ったら反対のエリアに行くのはおkでしょうか?
156創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 18:35:54 ID:jKe+sUOi
投下乙です。
ワープか……。賀斉、下手したら転送先が水面だったり禁止エリアだったりした可能性もあった訳か。
個人的に面白い試みだとは思いますが、うーん……。仮投下にしといた方がよかったかな?
157創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 19:03:32 ID:1FE3FxLJ
「じゃろうか」じゃ無くて「だろうか」だと思うんだけども、違うかな?
158創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 21:19:23 ID:2csS1ZNj
ワープに関しては議論したほうがいいんでは?
159創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 21:22:21 ID:8qttf7QX
亀だが、城之内がこんなに早く死ぬとは思ってなかったから驚いたな
羽入とむてきまる(ポケモンキャラには愛着沸くw)には頑張って欲しい
160 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:47:28 ID:jKe+sUOi
投下します。




起 特命エリアサーチ18XX

 青々と茂る枝の隙間から、木漏れ日が差し込む。
 朝の日差しをその身に受け、相楽左之助は森を行く。
 その身に装着したローラースケート型デバイス、マッハキャリバーの導きに従い、かつてその道を通った参加者との合流を目指して。

「こっちでいいのか!?」
『ええ。前方約30メートルの少し開けた所まで直進です』

 マッハキャリバーの言葉に顔をしかめ、歩みを若干緩める左之助。

「その“めーとる”ってヤツは止めてくれって、さっきも言っただろ。
 言いたい事は何となく分かるんだが、イマイチ実感が掴めねぇ」
『そうでした、サノスケ』

 メートル法が日本に導入されたのは明治19年。生まれが万延元年、江戸時代である左之助は、尺貫法で測るのを当然の事としていた。
 1メートルというのがどのくらいかはマッハキャリバーから聞いたものの、つい何尺何寸と自分の知る単位に直して考えてしまうのも致し方ないと言えよう。

「まあいいか。んで、この先は?」
『前方右手に進み、窪地を突っ切って下さい』
「よっしゃ、行くぜぇ!」

 言って左之助はその足を早めた。森の中という、どう見ても足場がいいとは言えない状況に関わらず、その足取りは確かな物だ。
 ローラースケート、いやスケートさえ知らない筈の人間とは思えないバランス感覚で、マッハキャリバーの指示に従って進んで行く。
 左之助の研き抜かれた技術と、黎明の間行った鍛練の成果による、本来の使い手ではないとは思えない程遜色ない動きで――

『サノスケ、木の根が張り出しています。回避して――』
「分かってらぁっ!」

 声と共に地を蹴り、根を飛び越える左之助。

『――着地したらその場で一旦……駄目です。速い!』
「のわっ!?」

161創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 21:48:31 ID:TDxL0Ksx
>>148
投下乙!
カイト結局駅行くのか。相変わらず葛藤が読んでて面白い
ハクだって頑張ってるんだから熱くなれよ!

>>155
投下乙!
ワープに関しては、個人的にはアリかな
162 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:50:57 ID:jKe+sUOi
 遮った言葉の続きを耳にし、その意味を把握するより先に、急に視界が開けた事に左之助は驚きを見せる。
 その驚きは、加速を付けて跳んだ足先が、着地すると予測したタイミングを外した事によって上塗りされる。
 視界が開けたという事象から、己がたった今森を抜け出したという事実にたどり着く前に、左之助は予想より低い地点で接地した。
 森と平原との境目、その一部分に高低差が生じていた事実を知る由もない左之助は、勢い余って斜面となっている箇所まで跳んでしまったのであった。
 下り勾配となっている斜面に着地した為、傾斜によってつま先が低くなり、意思に反し重力に引かれて坂を下る。
 想定外の加速に足が持っていかれ、後傾してしまった体を前に戻そうと踏ん張った左之助。
 だが、結果反作用でつま先が浮き、踵を支点にウイリーするという不安定な姿勢に――

「……」
『……』
「……」
『……まあ、こういう事もあります。相棒も最初は……』
「……」
『……』
「……行くか」
『……ええ』

 天に突き出された己の足を見つめ、左之助はひっくり返った体勢のまま、その一言だけ発した。


 森を抜けてからの移動は速やかに進んだ。
 障害物の無いなだらかな地において、その機動力を活かしクラッシャーとリンの後を追う左之助とマッハキャリバー。
 やがて彼らはE-5に架かる橋の袂にたどり着いた。
 およそ1エリア分の距離を移動した勘定になるが、人影は一向に見当たらない。

「次はこの橋の向こうだな!」
『ええ。この先です――』

このゲームが開始されて以来、ずっと行動を共にし、お互いの意思を交わしあったからだろうか。
 なかなか姿が見えない現状でありながら、マッハキャリバーの誘導の信憑性について左之助は微塵も疑う事はなかった。
 ――少なくとも、この時までは。


『すみませんサノスケ。ちょっと待って下さい』
「ん? どうした? 走り詰めで疲れたのか?」
『いえ、そうではなく……』

 橋を目前にしてのマッハキャリバーの制止に、左之助は休憩を求めているのかと想像した。
 デバイスであるマッハキャリバーには金属疲労やオーバーヒートといった単語の方が正しいのだが、それはともかく、普通デバイスはこの程度で消耗するようなヤワな造りはしていない。
 マッハキャリバーが案じたのは、辿っていた熱源。それがここで――

163 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:52:52 ID:jKe+sUOi
「おい、どうしたんだ。まさか見失っちまったとかいうんじゃないだろうな?」
『……いえ、熱自体は確認できます。ただ――』
「なんだよ。えらく歯切れが悪いじやねえか」

 冗談のつもりで言った一言に芳しい返答が来ず、気になって左之助は先を促す。
 左之助自身はマッハキャリバーの辿った経路について、少なくとも森を抜けるまでは正しかったと判断していた。
 整備されていない森林を、痕跡一つ残さず歩き切るのは一般人には不可能である。
 不自然に折れた枝、柔らかくなった地面に残された足跡。人は必ずそれらを残す。
 マッハキャリバーが示したルートには、その痕跡が僅かながらも点在していた。
だからこそ彼はマッハキャリバーの情報を確信の域にまで押し上げていったのだ。
(尤もあれは、正解となる道を聞いていたからこそ気付けた物だ。前情報無しで、残された痕跡だけを頼りに追跡しろって言われたら、お手上げだった。
 答えを教わっといて後からどうのこうの言うもんじゃねえしな。その事はいいんだが……)

「どうなんだ。どっちにいったか分かったのか?」

 この言葉は、質問というよりも肯定の返事が返ってくる事を前提とした、確認の色が濃い物だった。
 左之助は当然の如く返ってくるであろう返事を待ち――

『申し訳ありません。目標をロストしました』

 ――その言葉に目を見開いた。

「どういう事なんだ……。ここで痕跡が途切れたわけじゃないんだよな?」

 マッハキャリバーの発言を思い返し、そう確認する左之助。
 しかし、言ってて自分で違和感を覚える。ここで途切れていないのならば、何故その先を辿れない?
 まさか本当に痕跡を見失ってしまったのだろうか。そんな不安に襲われる中、マッハキャリバーが言葉を発する。

『いいえ。サノスケの言う通り、痕跡は続いています。
 ――複数の方向に』

164 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:54:43 ID:jKe+sUOi
 マッハキャリバーの言葉に意表を付かれた左之助は、続けて発せられた提案――この近辺の詳細な調査に、一も二も無く同意する。
 尤も、サーチだのチェックだのと早口で外来語を連発するマッハキャリバーに押しきられたという側面もあったのだが。
 ――まず最初に調べたのは、橋の手前、川のこちら側だった。
 マッハキャリバーによると、今まで左之助達が追って来た者の他にも、ごく最近この橋を渡った人間がいたらしい。
 川の向こう、西側からやって来て、東、寒村の方へ去っていったというその人物――べジータ達である――が残した痕跡があるという事なので、それを詳しく調べるらしい。

「調べるって言っても、何を調べるんだ? まさか、詳しく調べれば、人数が分かったりするのか?」
『いいえ。残留している熱量からそれを探るとしても、憶測の域を出ない情報になってしまいます。
 この調査の目的は、熱源が追跡可能かどうかを判別する事にあります。
 時間が経ち過ぎて熱量が微弱でしたら、相手に追いつく前に痕跡が途切れてしまうかもしれません。
 サノスケは、とにかく他の参加者と合流したいのですよね? そうであれば、合流出来る可能性が最も高い相手を追跡した方がいいでしょう』

 マッハキャリバーの、合理的だがややもすれば非情とも取れる発言に、左之助は憤りを覚え、即座に反論する。

「可能性だぁ!? そんなの関係ねぇ! 救えるヤツは全て救う! 一刻も早く、――誰かの手に掛かる前に!
 誰かを追うんじゃねえ。全員を追うんだ!」

 左之助の頭の中にあったのは、左上の放送が告げた11人の死者。
 左之助が関与した者は一人もいなかったが、全てを守ると決めた彼にとって、それはあまりにも重い数字。
 放送直後はそのような素振りを見せなかったが、内面では守れなかった死者に対して、彼なりの葛藤を抱えていた。それがここに来て噴き出したのだ。
 左之助の決意を込めた言葉を受け止めたマッハキャリバーは、自らの思いを左之助に投げ返す。

165 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:56:47 ID:jKe+sUOi
『……確かにサノスケの言う通り、全員の救助が理想です。それを目指して行動するというのは正しい事でしょう。
 ですが、私達に出来る事には限りがあります。私達のボディーは一つしかないのですから。
 災害現場では、まずは先に助け出せる要救助者から救助を行います。それは、何も救助が困難な者を見捨てた訳ではありません。
 確実に助け出せたはずの要救助者を、二次災害で被害に巻き込むのを阻止する為です。
 緊急時に、より危険度の高い者を優先することもあります。ですが、確実に、一人一人救助して行かなければ、総倒れになりかねません。
 あの時あちらを優先していれば……。そう思う時が来るかもしれません。ですが、目の前の確実に救える相手から救って行かなければ、全員の救助は出来ないのです。
 救助出来る時に救助する。レスキューとは、確実に、一歩ずつ進めていく物なのです』

 マッハキャリバーの思い。それは、相棒たるスバル・ナカジマとの幾多の現場での体験と、先人から学んだ数々の教訓から来る、レスキューの精神。
 決して非情ではなく、助けたいという思いがあるからこその判断。冷静な口調の中に秘めた、熱い思いを知って、左之助は素直に非礼を詫びる。

「すまなかった。少し熱くなりすぎていたかもしれねえ。おめえにはおめえの考えがあるんだな。
 それを考えず、自分の思いだけ一方的にぶちまけちまったか」
『いいえ、私の方こそ出過ぎた真似をしました。
 マスターのサポートこそが私達の役割。判断はあくまでサノスケが行い、私はバックアップに徹します。 このような事を話している内に、痕跡が消えてしまいかねませんね。調査を続行します。
 最後に一つ。レスキューに携わる者は、時として生還の見込みが殆ど無い任務に就く事があります。
 ですが、己の命を始めから捨ててかかっている訳ではありません。己が倒れたら要救助者を助ける者がいなくなります。
 命を懸けて行動するのは構いませんが、命を捨ててかかる事なく、必ず生きて帰るという思いを片隅に置いてかかって下さい』

166 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:57:45 ID:jKe+sUOi
 左之助の言葉にそう返し、マッハキャリバーは近辺の捜索に移る。
 最後の言葉に含まれた、己への思いを受けて、左之助は我知らず胸が熱くなる。
 外来語混じりではあったが、マッハキャリバーの言わんとする事はしっかり左之助に伝わった。全ての言葉を受け止めて、左之助もまた動き出す。

「……俺もその『レスキュー』ってやつをやり遂げるぜ。
 一歩一歩確実に、か。
 やってやろうじゃないか。この殺し合いからの脱出をな!」

167 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 21:58:59 ID:jKe+sUOi
承 三方一応損?

「こいつを見てくれ。どう思う?」
『凄く……ドリフトしすぎです』

 橋の東、何者かが向かったと思われる方角を調べた左之助達は、まるで酔っ払って蛇行運転を繰り返した後のような、デタラメなグリップ痕の数々を目にした。
 ドリフトという発想自体が影も形もない時代の出である左之助に、何とかグリップ痕の意味を知らしめたマッハキャリバーは、D1グランプリ会場かと見紛う程の惨状を前に、己の推測を述べた。

『これは好都合です。熱源はこのタイヤの跡と同じ方向に続いています。
 恐らくここを通った人物は、この跡を見付けて辿っていったのでしょう』

 べジータ達がどのような思惑の元でこの道を行ったのかは分からない。だが、彼らは確かにこのグリップ痕が続く、F-5の寒村へ向かって行った。
 マッハキャリバーの推測は、過程はともかく結論は正しかった訳だ。

「そうか……。どうする? この先まで行って調べるのか?」
『いいえ。これだけ分かれば十分です。
 幸い熱量も追跡が十分に可能な程ありましたので、調査を終えてから追跡を始めても、十分追えるでしょう』

 太陽の戦士に炎の妖精、躁鬱の流転する王子という三人組の放つ熱気故か、子供二人と成人男性三人という単純な熱量のさ故か、こちらに残留する熱は今まで辿った熱よりもハッキリしていた。
 それを示して判断を下すマッハキャリバーに、特に異論も無く左之助は従い、元来た道を引き返した。
 道すがらグリップ痕に目をやる左之助は、ふと浮かんだ疑問を口にする。

「この轍は酷いな。じどうしゃって物は、こんな風に跡を残す物なのか?」
『……いいえ。普通に運転する分にはここまで酷い事にはならないのですが、これは急発進に急ブレーキ、ドリフトというよりもいっそスピンと呼ぶべきステアリングを繰り返した結果です。
 この軌道で橋を無事に渡りきったのは、奇跡と言っていいでしょう。
 ……もしかしたら、川底に沈んだのかもしれませんが』

 実際、橋への侵入角度を見る限り、欄干に激突するか川に突っ込むの半々といった所で、無事に渡りきった姿を想像するのは困難な状況と言えた。
 そんな会話を続けながら先へ進む左之助達だったが、やがて路上に現れた物を見て言葉を失う。

168創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 21:59:22 ID:TDxL0Ksx
支援
169 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:00:55 ID:jKe+sUOi
「遅かった……か?」

 それは、路肩の見付けにくい位置に溜まった、人の血液。DIOの操るクレイジータクシーによって傷付いた修造のものだった。
 その血溜まりから点々と続く血痕を辿った左之助だが、血痕の途切れた地点まで着いても血痕の主は見つからなかった。
 この血を流した者を救えなかったという無念から、沈んだ口調になる左之助。
 そんな様子を気遣ってか、マッハキャリバーが声を掛ける。

『いいえ。この程度の出血では、致死量には至りません。
 この血痕があちらから点々と続いていた事からすると、傷を負った者が自力又は他者の助けを借りてこの岩影まで移動し、手当てを受けた後にこの場を去ったと見るのが正しいでしょう』

 出血は微量ながらも臓器にダメージを受け、そのまま帰らぬ人となる事もある。
 その事は十分過ぎる程に承知していたが、それでも尚、そうでない可能性を強く説くマッハキャリバー。
 その励ましに答え、左之助は気持ちを切り替え先を見据える。

「……そうかもしんねえな。今はウダウダ考えてる場合じゃねえか。即効で追いかけねえとな」
『そうですサノスケ。まずはこちらの方向から調べましょう』

 マッハキャリバーが示したのは北側、美希が進んだ方向。
 こちらには目印となるような痕跡は何もない為、残留する熱を辿るしか策はないのだが……

『ダメですサノスケ。恐らくこちらにいった者は、真っ直ぐ北上したと思われますが、こちらの熱量はとても微弱で、途中で途切れてしまう可能性が非常に高いです』
「何!? くそっ、とっとと残りを調べて結論を出さねえとな」

 こちらを進んだ美希は放送開始以前に移動しており、人数も一人しかいないため残留する熱量に乏しく、追跡するには心許ない状況となっていた。
 追跡が完全に不可能になる前に決断を下すため、急ぎ残り一箇所の熱が観測された方向へ進む左之助達。
 そちら――西側、リン達が進んだ方向――に移動を終えた彼らはしかし、時間が無いというにも関わらずその場で立ち尽くした。

『これは……ウイングロード? まさかブリッツキャリバー、貴方もこの場に連れて来られたというのですか!
 それともまさか、相棒がこの場に……?』

170 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:03:55 ID:jKe+sUOi
 マッハキャリバーとは姉妹機にあたるデバイスと、相棒たるスバル・ナカジマの存在を疑うその発言は、目の前の光景からマッハキャリバーが導き出したものだった。
 ウイングロード。それは魔力によって光の道を作るという魔法であり、マッハキャリバーの知る限りでは、この魔法を扱うのはナカジマ姉妹と、そのデバイスであるマッハキャリバー及びブリッツキャリバーだけであった。
 これに類似する技能を持つ者は若干一名存在するが、その者を含めた三名のみが使える能力と言っても過言ではない、大変珍しい魔法であった。
 それ故に、その光景を目にしたマッハキャリバーは両者の安否を気遣い、それ以外の事に思考を巡らす余裕が消え失せた。
 ――左之助の言葉を聞くまでは。

「何だかよく分からねえけど、魔法とかそんなんじゃなくて、何か重い物が載っかった跡じゃねえのか? これ」
『…………え?』

 左之助の指摘を受け、目の前の光景を改めて確認する。
 そこにあるのは、平原に唐突に現れた道。西に真っ直ぐ続くその道は、地図のどこを探しても記載のない、何者かが新たに作り出した物だ。
 そこから観測された魔力らしき反応に、マッハキャリバーは魔法によってこの道が作られたと判断した。
“道を作る魔法”という事象を身近な物としていたマッハキャリバー故の思考だったが、よくよく観察してみると、その判断は誤りであった事が判明した。

 確かにウイングロードは、魔法陣を道の形に構成する事によって物理的に道を作り出す魔法であり、本来空中での移動に用いるそれを地上で使った場合、地平にウイングロードの跡が道となって残る。
 だが、空中への足掛かりに使うべきそれを地面に沿って展開させたところで何の意味もない上、そこで観測された魔力はマッハキャリバーの知る近代ベルカ式魔法とは異なる未知の物だった。

『確かにこれは私の想像する魔法とは違うようです。この魔法は一体……?』

 左之助の言葉に現状の認識を改めたマッハキャリバーだったが、魔法が関与しているという先入観を棄てきる事が出来ず、悪戯に思考を巡らす。
 マッハキャリバーが魔法によって作られたと判断したこの道、実は純粋に物理的な力のみで形成された物である。
 製作者はクラッシャーとリン。そして、使用した道具は――ロードローラーだ。

171 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:05:41 ID:jKe+sUOi
 ロードローラーとは本来、自重によって地面を押し固める用途で使用される建設機械である。
 人に叩き付け、押し潰す用途は想定されていないし、速度を出す必要性も全く無く、むしろ舗装の際は低速でじわじわと押し固めて行く物だ。
そして当然、舗装された路面以外を走行した場所、その箇所は押し固められ、後には道が現れる。
 クラッシャーとリンは紙の状態のロードローラーを所持したまま修造とニアミスし、その後、地図から読み取った情報だけでは橋にロードローラーが通過出来るだけのキャパシティがあるかどうかが不明だった為に、橋を渡ったこの位置でロードローラーを実体化した。
 そしてロードローラーに乗ったまま剣崎達との邂逅を果たして病院に向かった。
 つまり、橋を越えていくらかの地点から、西、病院の方向に向かってロードローラーの跡が残っている訳である。
 そう。左之助達の目の前の物こそがそれである。

 ここで観測された魔力のような物とは、ロードローラーが二次元から実体化した時の謎のパワー、もしくは建設機械でありながら時速100kmを叩き出すというロードローラーの謎のエネルギーだ。
 道を作るのに直接関わったとは言い難い代物なのだが、魔法の存在が当然のように日常にあるマッハキャリバーには、建設機械で道を作ったという、ある意味当然の発想に至る事が出来ず、どうしても魔法と結びつけて考えてしまう。
 方法を探るマッハキャリバーの思考は、またしても左之助の言葉で中断した。

「どうやって作ったかなんて別にいいじゃねえか。大事なのは、これを作ったヤツがこの道の向こうにいるって事だ。
 方法が知りたいんなら作ったヤツに直接聞けばいい。この道を行くんなら、そんな事すぐに分かると思うぜ?」
『……そうですね。
 申し訳ありません。手段を考えてる暇は無いんでしたね。
 問題は、どこを辿るかですね』

 マッハキャリバーは今までの考察をすっぱり打ち切り、三方を調べて得た情報を元にそれぞれの箇所についての問題点を洗い出す。
 サポート役としての矜持からか、先程の不手際を挽回するかの如く、即座に情報をまとめ、左之助に全てを伝えた。

172 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:07:27 ID:jKe+sUOi
『東側は、熱量については申し分無いですし、おおよその目的地も予想出来ます。
 川で区切られたあの狭い範囲であれば、相手がそこを発ったとしても、くまなく探せばいずれ出会えるでしょう。
 ……逆に言えば、こちらを後回しにしたとしても、合流は不可能ではないという事です。
 後回しにした事でその者達に不測の事態が迫るかもしれませんが、多くの者との合流を目指すのであれば、その選択肢もあり得ます。

 次に北側ですが、熱量に乏しい上に、目印となるような物もなく、行き先も不明です。
 ……正直、合流出来るかどうかは五分以下だと思って下さい。こちらは断念するというのも考えに入れて置いて下さい。

 最後に西側ですが、こちらは熱量はともかく明らかな道標があります。行き先は不明ですが、この道が続く限り追跡するのは容易でしょう。
 ですが、この道がどこまでも続いているという保証はありません。
 手段が分からない以上、いつこの道が途切れるかどうか、全くわかりません。
 そうなった際、それ以外の情報を元に追跡することが可能かどうかも不明です。それは、行ってみない事にはわかりません。

 この三つの内、どれを辿るか。それは、サノスケの考えに一任します。
 どれを選んでも、私は全力でサノスケのサポートをします。ですが、選択するのは
サノスケ、貴方自身です』
 左之助の前に並ぶ、三つの選択肢。そのいずれも、利点もあれば欠点もある。 どのような方針を取るかによって選ぶべき道が異なるこの現状に、正解はない。
 神ならぬ左之助に出来るのは、ただ最善と思う行動を取るのみだ。
173 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:08:49 ID:jKe+sUOi
転 それなんで×××してんの?

 一刻も早く結論を出すべき状況でありながら、難題「最善の手段 -三方の選択-」はEasyでもNormalでもなかった。
 この決断によってその後の運命が大きく変わる事を考慮に入れれば、おいそれと結論の出せる物ではない。

「……中々難しいな、こりゃ。
 こっちをいった場合……? いや……。
 あ〜、何か参考になるような物はねーかな。
 ……そんな都合のいい物……ん?
 待てよ? 確か、何に使うか分からない物が入ってたよな。あれ、何かに使えねえか?」

 思考の果て、かつてマッハキャリバーに尋ねようとして、放送に遮られたその存在に考えが至った左之助は、早速それ――残りの支給品をデイパックから取り出した。
 取り出した物の内、穴の空いた平たい円盤――スタープラチナのディスク――をマッハキャリバーに見せ、その正体を聞いてみる。

「さっきは聞きそびれたんだが、こいつ、一体何だか分かるか?」
『これは……ええ。分かります』

 あっさりと答えが返ってきた事に、驚きと共に若干の喜びを感じながら、左之助はその続きをせがむ。

「本当か! どういう物なんだ。どう使えばいい? 教えてくれ!」
『これは……可搬記憶媒体の一種でしょう。読み込み専用か書き込みも可能なのかはわかりませんが』
「……あ?」

 質問の答えは出た。だが、それを理解する事となると、話が別だった。
 フロッピーディスク世代所の話ではない、電気製品さえ儘ならない程の隔たりがあっては、どのような物なのか想像さえ出来ないだろう。
 左之助は、『可搬記憶媒体』という単語を漢字に変換する事すら儘ならなかった。
 時代が違うから仕方ないとはいえ、その後のマッハキャリバーの説明は、かなり端折った説明だったにも関わらず、その半分も理解されなかった。

『……という訳で、それには何らかの情報が入っている筈です。そして、それを確認するのに必要なのが――』
「こんぴゅーたってヤツなんだな。大体分かった。要はそいつを見つけたら、このDCの中身がわかるって事だな?」
『……ええ。DCではなくCDですが、取り敢えずそれだけ覚えておけば十分です』
「把握した」

174 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:11:15 ID:jKe+sUOi
 結局全容を説明することは諦め、必要最低限の事だけを教える事にしたマッハキャリバー。
 説明書が付いていた事を知らず、どことなく疲れた様子で説明を終える。
 左之助がその存在を忘れていた説明書。左書きだから読めなかったということで思考から外れた代物だ。
 時代が違うから仕方ない……という訳でも無い。この理由も、そろそろ使い古されてきた。
 逆から読んだから意味がわからなかった。左之助はそれで解読を諦めた訳だが、ちょっと考えて欲しい。日常の中で鏡文字を見かけた事は、一度ならずあるだろう。そんな時、普通ならいずれ、それが逆から読めば意味が通じる事に気付くだろう。
 読めないからといって、そこで思考停止せずに読み方を変えてみれば、あっさり分かった筈である。
 現に、同じ時代から来た筈のCCOは、何故かは分からないが(彼の主観で言えば)文字が逆向きから書かれている事に気付き、支給品の使用法をしっかり会得した。
 これでは時代のせいにする訳にはいかない。左之助側の怠慢である。
 それによって、要らぬ苦労を背負い込むこととなったマッハキャリバーは、その支給品についての考察を始めようとしたが、左之助が続けてもう一つの支給品について尋ねてきた為、その思考を中断することとなった。

「じゃあ、これは何だか分かるか?」
『……これは? もう少し詳しく見せて下さい』

 マッハキャリバーの指示に従ってそれを弄る左之助。
 やがてマッハキャリバーの中で一定の結論が出たのか、左之助への指示を止め、調査の結果を知らせる。

『これは、やけに細長いですが、恐らく個人用携帯情報端末ではないかと思われます。……今から説明します』
「…………頼む」

 先程と同様に、説明が必要だと感じたマッハキャリバーは、その機能について解説する。
 だが、その説明は若干の誤りが含まれていた。
 携帯情報端末とは、本来パソコンを簡易化、小型化した物であるが、左之助に支給されたのは携帯電話。
 何故マッハキャリバーはこのような取り違えをしたのか?

175 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:12:45 ID:jKe+sUOi
 実はマッハキャリバーは、魔法による念話と通信機による交信以外の通信手段を目にする事が非常に少なかった。
 最前線に身を置くマッハキャリバーにとって、それ以外の存在は、知らない訳ではなかったが慣れ親しんだ物でもなかった。
 実際に使用する場面を目にした事もあったのだが、それらは殆どが通信専用といっていい存在で、まさに携帯する電話といった代物だった。
 故に、その携帯電話を見て、その機能を調べた際、スケジュール表やアドレス帳、メモ機能や辞書、電卓といった機能が備わっている事から判断して、それを携帯情報端末だと結論付けたのだった。
 電話機能が付いている場合、それはスマートフォンと呼ばれるのが一般的であるが、只の電話機にそこまでの機能を付けるという発想がない環境で過ごしてきたマッハキャリバーに、その事を知る由はなかった。

『……このような機能があるようですが、今のところはこれが有益な物かどうかの判別は付きません。
 妙に長いのにも何らかの機能があるかもしれませんし、もっと詳細に調べてみないと――』

 その言葉を遮って、左之助は強引にまとめる。

「取り敢えず、今は何の役に立つかは分からないって事だな。
 ――この、PDA(長)は」

 瞬間、ナイフが空から降ってきた。
176 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:14:24 ID:jKe+sUOi
結 P××長って言った奴誰だ!

 時は少し遡る。
 十六夜咲夜はD-6の橋の前で迷っていた。
 橋の向こうに見えるのは、大規模な戦闘があったと思われる破壊の跡。
 明らかに何者かがいたと思われるその状況を目の当たりにし、咲夜は橋を渡ることを躊躇していた。
 むやみに他の者と接触する事を避けたい咲夜としては、少しでも他者のいる可能性の低い所を通って温泉まで行きたいと思っていた。
 それ故に、戦闘後回復の為にその場に留まる人間がいるかもしれないこの場所を通過するのは、得策とは言えないのではないかと考えた。

「まあ、いいわ。ここを通らないと目的地に辿り着けないというわけではないのだし」

 諮詢の後、咲夜は結局この橋を渡ることなくその場を離れた。
 もしこの時咲夜が橋を渡る決断を下していたら、誰とも遭遇することなく温泉まで辿り着けていただろう。
 なにせ川を越えてD-6からF-6までの区間は、一人も参加者が存在しなかったのだから。

 F-6へと渡るもう一つの経路である、E-5の橋へ足を進めた咲夜は、己の選択を激しく後悔することとなった。
 遭遇する事を避けていた参加者が、目の前にいたのだ。
 和服を着たその男は、どういう訳か橋の近辺から離れようとしない。
 位置的に、時を止めたとしても、橋を渡る前に確実に気付かれてしまうだろう。
 ここが渡れないとしたら、一度大きく北上し、E-2に架かる橋を渡ってから南下するか、列車を使い川を渡るしかない。
 この上更に遠回りするのは、参加者との遭遇の機会を増やすだけになってしまう。
 早く目の前の男がこの場を去ってくれないかと念じる中、男が何かを取り出すのが見え――



177 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:16:29 ID:jKe+sUOi
 咲夜は一瞬、自分が何をやったのか理解出来なかった。
 気付いた時には手の中にあった筈のものは消えており、手に持っていた刃物――フジキを五本とも条件反射的に投擲していた事を知ったのは、暫しの時間が経過してからだった。
 極力避けるつもりだった戦闘を自らの手で起こしてしまった事が信じられず、なかなか現状を認められない。
 ――そう。何故こんな事をしたのか、今の咲夜には理解出来ない。

「くそっ。やる気のヤツか。いきなり来やがって!
 取り敢えず、このPDA……PA……? まあいい。こいつの事は後回しだ」
『PDAです。
 ……サノスケ! PDAが上手く入っていません!
 PDAが落ちました!』
「構わねえよ。どうせPDA(長)なんて戦いの役にはたたねえ。
  使えないPDA(長)なんて、ほっておけばいいさ」
『すみません。PDA(長)にこだわり過ぎました』

 ――全くもって理解出来ない。理解出来ないったら理解出来ない。
 ――ただ猛烈に、ナイフを投擲したいとしか、思えない。
 思わずその衝動に身を任せてしまいたくなるが、僅かに残った理性でそれを押し留める。
 これ以上の悪評の流布を防ぐ為、咲夜が考慮した選択肢は、襲撃か撤退かの二つ。
 目撃者は消せの言葉通りに目の前の人物を物理的に口を聞けなくするか、自分の姿をはっきり判別される前に姿を隠すか。
 目撃者を懐柔するという選択肢は、我が強い、悪く言えば自己中心的な者が住人の多くを占める幻想郷に長く身を置いた咲夜には、成功率の高い作戦とは思えなかった。――氷精相手なら話は別なのだが。

(正直、遮蔽物の乏しいこの場所では、私の力を使ったとしても相手から逃げ切れるかどうかは良くて五分ね。
 第一、余程うまいタイミングで時を止めないと、瞬間移動をする者に襲われたという事になってしまうわ。
 スネークに私の力を見せてしまった以上、そんな事になればいずれ二つの情報が合わさって、襲撃犯=十六夜咲夜という図式が成立してしまう。それでは退く意味がないわ。
 ――そういえば、幻想郷の住人があれだけいたら、遠からず私の情報が広まるんじゃないかしら?)

 咲夜が思い浮かべたのは、スピーカーが羽を生やして飛び回っているような、最速のパパラッチと、偽報策略騙し討ちな因幡の禹詐欺の顔。

(あの二人なら、私を危険人物扱いする事に何の躊躇もないでしょうね。
 ――私が妹様をそう扱ったように)
178 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 22:18:22 ID:jKe+sUOi
 二人はそういう人物だと、咲夜が認識しているのと同程度に、咲夜は殺人に躊躇がないと二人に認識されているという自覚はあった。――まあ、事実なので否定のしようがないが。
 咲夜には、彼女達が嬉々として自分の悪評を振り撒いている姿が容易に想像出来た。
 白を黒と言う二人のこと、グレーを黒に仕立てあげる位は朝飯前だろう。まして今や咲夜は完全に黒。二人がその事を知ったら、一日と経たずに会場の隅々まで情報が行き渡るだろう。
最悪のケースを想像してしまい、思わず頭を抱えてしまいたくなるも、相手を目の前にしたこの状況でそんな事が出来る訳も無く、只その怒りを目の前の男にぶつけるだけだ。
 だが、自分の現状を改めて確認したところ、現状で攻勢に出るのもなかなか厳しいと悟った。
 武器となる物は、果物ナイフ二本と手元に無いがフジキが15本、石礫が6つにサーセンwと腕時計型麻酔銃だ。
だが、サーセンwの技の威力は確認していないが為に未知数で、最悪、見かけ倒しで終わる可能性すらある。
 そして、腕時計型麻酔銃は近距離戦でしか使う機会がない上、致命的な事に、やる夫に針を射ち込んで以来全く触れていなかった。
 つまり、一発しか装填出来ない針を、射ってしまったままという訳だ。
 その上この距離では、相手の急所に命中する前に、投擲武器が尽きてしまう。 念のためにフジキをもう五本出したものの、八方塞がりな現状を打破しうる決め手に欠ける咲夜は、ただ相手の出方を待った。


 上空からの攻撃に左之助が気付くのと同時に、マッハキャリバーが警告を発する。

『サノスケ上です! 後ろに回避して下さい!』

 数瞬の後、そこには地面に斜めに突き刺さる五本の刃物だけがあった。

「クナイか? それにしても、遠いな……」

 初撃を回避した左之助は、マッハキャリバーとの会話を続けながら、冷静に策を練る。
 左之助に与えられた選択肢は、機動力を活かして一気に距離を詰め、その拳を相手に打ち込むか、この距離を維持したまま相手の様子を探るか。
 全てを受け入れ、救助すると決意した左之助には、この場から退くという選択肢はなかった。
179創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 22:24:24 ID:1FE3FxLJ
支符「ニコロワβSSの支援」
180創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 22:25:32 ID:J2MkrjLv
滅、支援拳!
181創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 22:29:21 ID:ER8Y2JwY
支援・・・かいなぁ!?
182 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 23:00:09 ID:jKe+sUOi
なんか自分で書き込んだ方が早い気がしてきた。



 二つの選択肢の内、左之助が選んだのは後者。
 実力が未知の相手に接近戦を挑んでカウンターを喰らっては堪らない。現在の距離で牽制しながら相手の出方を伺うべきだと判断したのだ。
 牽制といっても、手持ちの装備で出来る事は限られている。左之助が取った方法は――


 男の様子を伺う咲夜は、男の手に何かが握られているのを認めた。
 それを警戒する間もなく、男は、大きく振りかぶってそれを投げた。

「甘いわね……」

放物線を描いて落ちてくるそれを、咲夜はフジキを投擲することで対処する。
 上方への攻撃に優れるフジキを二本投げつけ、数瞬後、その内の一本が見事命中する。

「きゃっ!?」

 咲夜が投げたフジキはそれ――飲料水のペットボトルを貫通し、結果、中の飲料水が辺りに降り注いだ。
 顔にかかった水に、思わず目を瞑ってしまう咲夜。一瞬の硬直時間の内に、次撃は決まっていた。


 鍛え上げたその体をもって、手に持った透明な物体を相手に投げつけ、あわよくば投擲武器の無駄撃ちを狙った左之助。
 その企みは目眩ましという予想以上の成果を出し、牽制の意を込めて投げつけた次撃は見事相手に命中した。
 遠くまで飛ばせそうだという判断の元、左之助が投げたそれ――スタープラチナのディスクは、咲夜の頭に命中し――


183 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 23:03:14 ID:jKe+sUOi
【E-5/平原/一日目・午前】
【相楽左之助@るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚〜】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS 
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
0:……やったか?
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:温泉から出ていった人物を追う
3:志々雄を倒す。
4:二重の極みが打てない……だと……?
5:主催者相手に『喧嘩』する。
6:弱い奴は放って置けねぇ。
7:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
8:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ

【マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 】
[思考・状況]
1:サノスケに同行する。
2:可能な限りの参加者を救助したい
3:志々雄真実に警戒
4:相棒……無事ですよね?

※マッハキャリバーの不調もサノスケの不調も制限によるものです。
※佐之助はマッハキャリバーを結構使いこなせていますが”完全”には使いこなせていません。
※佐之助の機動力はかなり強化されています。
※E-5の橋を通過した者のおおよその行き先を知りました。
※支給品について、マッハキャリバーから説明を受けましたが、若干事実とは異なっています。
※PDA(長)(携帯電話)を落としました。
184 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 23:05:04 ID:jKe+sUOi
【十六夜咲夜@東方project】
 [状態]:疲労(中)、???
 [装備]:果物ナイフ×2、時計型麻酔銃@名探偵コナン、フジキ@ゆっくり村×3
 [道具]:基本支給品、 石礫×6@現実(会場内)、時計型麻酔銃の予備針(残り2発)@名探偵コナン、
 サーセンw@自作の改造ポケモンを友人にやってもらった、フジキ@ゆっくり村×10
 [思考・状況]基本思考:優勝し、死亡者含め全ての参加者を元の所に戻すと主催に望む 
 0:???
 1:なるべく戦闘したくない……なかった。
 2:どうしようもない場合は即座に暗殺。
 3:参加者が減ってきたら慎重に本格的に行動する。
 4:まともな投擲武器が欲しい
 5:連合は組まない。単独行動。
 6:温泉に入ろうかしら?
 7:首輪解除の技術はわりとどうでもいい
【備考】
 ※七夜志貴の名前を知りました。
 ※ときちくは姿しか知りません。
 ※時間操作は2秒が限度です。
 ※飛行が可能かどうかはわかりません。
 ※主催者側が参加者を施設を中心として割り振ったと推理しました。
 ※高い能力を持つ参加者は多くが妖怪と思い、あえて昼間挑む方が得策と判断しました。
 ※僧侶のネガキャンを聞きましたが、その情報を完全には信用はしていません。
 ※やる夫のデイパックは列車内に放置してあります。
 ※サムネホイホイ(出だしはパンツレスリングだが、その後別の映像は不明)は、A-5の平原に投げ捨てられました
 ※カミーユ・ビダンの死体を確認。首輪を解除しようとしてる人がいると推測しました
 ※一度幻想の法則から外れた者ももう一度幻想の法則の中にもどせば幻想の法則が適用されると推理しました。
 ※ヤバいDISCがINしました。スタープラチナが使えるようになるのかは後の書き手に任せます。

 ※E-5橋付近にフジキが計7本あります
185 ◆xHiHmARgxY :2009/03/30(月) 23:08:39 ID:jKe+sUOi
遅くなりましたが投下完了です。
……遅いですよね。もう本当にごめんなさい。
書き上がった文章を打ち込むだけで一日潰れたとか、ありえないですよね。


タイトルの細部、リリカルを付けるか否か等で小一時間悩んだのは内緒だ。
プロットの段階では、大まかな行動とたった一つのネタしか考えてなかったのも内緒だ。



名前欄に入り切りませんでしたが、タイトルは起、承が 機動拳士リリカルさのすけ デバイスジェネレーション・ギャップ
転、結が 時をかける従者 です。

咲夜さんがプッツンした理由が分からない人がいたら……いや、分からないままの方がいいのかも。
取り敢えず、咲夜さんに刺されてきます。
186創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 23:28:38 ID:ER8Y2JwY
乙。今の所左之助SSではキワミネタに絡んだ描写が全く出てきてないなw
まああの独特の空耳ネタを上手く織り交ぜるのは難しいだろうから仕方ないけど
187 ◆KX.Hw4puWg :2009/03/31(火) 00:11:05 ID:XfuXKjCm
PAD長ですね。分かりアッー

呂布投下します。
188 ◆KX.Hw4puWg :2009/03/31(火) 00:11:48 ID:XfuXKjCm
木々の狭間から入る光が、唯一の光となって、館を後にした大男―――呂布の折れた斬馬刀と盾であるイージスに反射する。
ふと、何故か分からないが、木々で隠れていた空を見上げる。
その狭間から薄ら見える太陽が自分の真上に来ていた。

「…もう昼になったのか」

ふぅ、と呂布は一旦息をつく。
よく考えてみれば、本当に早く、そしてとんでもない半日であった。
冷気を使う少女との遭遇。
一頭身の剣士との勝負。
自分を知っていた、言う事は違うが自分が生きた時代、場所は同じであろう、自分の支給品をディパックごと持っていった白髪の青年。
そして自分をまるで今までの相手の様に、赤子の手を捻るかの様にあしらった、金髪の男―――
…この殺し合いは呂布に対して、様々な楽しみを与えてくれている。
確かに半ば無理矢理に連れてきた事などには今でも怒りを感じている。
だが、呂布はあの時自らの体と同じに終わるはずだった自分の武が、この殺し合いで様々な強者達にもう一度だけ自らの武を振るえるという喜びを与えた事に対しては感謝している。
彼が自らの舞台、戦場において、愛馬である赤兎とともに「人中の呂布、馬中の赤兎」と謡われ、恐れられたのは有名な話だ。
だがその威名もこの殺し合いには無いも同然。
相手は怖気づく事も無く、振るえる力を最大限に活かし、自らに襲いかかる。
自らが居た世界に突然現れた、あの少女達の様に。

「…」

もう一度、深く呂布は息をつく。
一回、二回、三回。
先程とは違う、深い呼吸。
吸っては吐き、吸っては吐きを幾度か繰り返した後、呂布は刀と盾を握り直し、歩みを速めた。

◇◇◇
189 ◆KX.Hw4puWg :2009/03/31(火) 00:16:21 ID:XfuXKjCm

しばらく歩いていた呂布の目に入ったのは無惨な姿の少女とそこから少し離れた場所に、少女と同じ様死んでいた、少年らしき死体。

「…む」

少年らしき方はもはや辛うじて分かる程になっていた為、呂布は上半身のみ残っていた少女に駆け寄り、見てみる。
下半身はまるで果実を握り潰したかの様に、潰れている。
どうやら臓器等をやられたのだろう。
―――ここでふと、呂布は疑問に思う。
死体を幾度も見てきた呂布であっても、明らかにこの死に方はおかしかった。
呂布の判断は、何かに潰され、死んだ、という事であるはずだ。
だが一番可能性がある木による圧死では無い。
死体の周りの木々は死体周辺には倒れてはいない。
つまり木によって殺したというのでは無い。
…ある世界では馬で人を殺すというのを聞いた事があるが、それならば肉体一点に蹄が当たり、貫通するかだろう。
ならばまた未知の者達が自分が居た時代には無い力でこの二人を殺したのであろうか―――

「…むむむ」

何がむむむだ。

◇◇◇
190創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 00:17:36 ID:VV5+BVTq
しえんしえんにしてやんよ

何がむむむだ!!
191 ◆KX.Hw4puWg :2009/03/31(火) 00:19:41 ID:XfuXKjCm

疑問に思いながらも呂布は更に歩みを進める。
しばらく歩き、長かった森も終わりに近付いてきた頃。
すると遠くの方に…その、何と表現していいか分からない―――簡潔にいうと生首が跳ねて移動(?)していた。
流石の呂布でも一旦驚くが、すぐに持ち直し、よく見てみる。

「…あれは…!」

支給品を入れるディパック。
それを生首は所持していたのだった。
これは呂布にとっては絶好の機会だ。

「天は俺に味方せり…か」

そう呟くと呂布は自らの口先を上げ、生首に近付いていった。

192創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 00:21:17 ID:VV5+BVTq
覇者の求心を伏兵状態のせいで打てないというのはよくあること
193 ◆KX.Hw4puWg :2009/03/31(火) 00:21:28 ID:XfuXKjCm
【A−3とB-3の狭間/一日目・昼】
【呂布@iM@S演義】
[状態]腹部に打撲 、全身謎の液体まみれ、疲労(小)
[装備]折れた斬馬刀@るろうに剣心、イージス@FF11
[道具]
[思考・状況] 基本思考:強そうな奴には片っ端から喧嘩を売る。優勝狙い
1:デイパックをすぐにでも確保せねば…
2:罠を張った奴はここには既にいないようだな……
3:術師には負けない。
4:チルノとはまた会ったら決着を着ける。
5:メタナイトと全力の決闘をしたい。
6:ブロリーとも決着をつけたい。
7:主催者も殺す。
8:術者(馬岱)との決着もつける。
※イージスは意思を持っていますが、封印されているのか本来の持ち主でないためか言葉を発しません。 ※デイパックは馬岱に奪われました。
【ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙@ゆっくりしていってね】
[道具]ランダム支給品(0〜2)基本支給品×2(食料・水-1) 三国志大戦カード(UC董白)@三国志大戦、 葉団扇@東方project 包丁@現実 射命丸文のカメラ@東方project
サバイバルナイフ@現実 果物ナイフ@現実 偽起爆リモコン(4-5時間使用不可)@オリジナル 拳銃(0/6予備弾24)@デスノート
[思考]0.不明
※呂布には気付いていません。

194創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 00:22:57 ID:XfuXKjCm
投下終了。タイトルは…「りょふだよ。たたかいもするけどこうさつもするよ」で。
SSタイトル元ネタはパワポケのほるひすです。
195創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 00:23:01 ID:TOFvgFaO
ゆっくり討ち取ってね!!!支援
196創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 00:26:46 ID:VV5+BVTq
投下乙ー
まるで三国志界隈での名言のバーゲンセールだな……
197創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 00:42:05 ID:TOFvgFaO
ゆっくり支援した結果がこれだよ!

いや、二人とも投下乙です。
呂布はゆっくりをどう扱うんだか。

咲夜さん怒ってばかりだと皺が(グサッ
198創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 12:05:50 ID:9mH6WD9/
この3日でやたら沢山投下されたな
皆様乙&GJです

カイトがハクより年上・・・?と思ったら、
考えてみればハクが1歳なのに対しカイトは3歳なんだよな
外見年齢はまやかしって事を忘れてたぜw
199 ◆MY9PsNVpck :2009/03/31(火) 16:26:30 ID:2FkrSs3M
ドナルド組首輪解析班とジョインジョインジョイン…ジョイントキィ!

予約させていただきます。大丈夫ですよね?
200創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 16:36:50 ID:XfuXKjCm
大丈夫だけどしたらばの予約スレで予約しようぜ
201創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 17:24:25 ID:OKJjdfx5
それと一応キャラの名前は出そうぜ
202 ◆MY9PsNVpck :2009/03/31(火) 18:13:45 ID:2FkrSs3M
>>201
IDがOK

至らない点が多くすみません、次からはそうさせてもらいます
203創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:04:23 ID:VV5+BVTq
294 : ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:52:26 ID:brkjARzo0
完成しました。
規制されてるのでこっちで投下させてもらいますね。

295 :戦う理由 ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:53:33 ID:brkjARzo0

 塔での戦闘から数十分後。
 美鈴たちが立ち去った後、アカギが訪れる少し前。
 図書館には誰もおらず、見ていない僅かな間隙。
 キョン子たちはなんとか無事に図書館の中まで逃げ切っていた。

「・・・段差があるのに、あの丸いの乗り回してる。」

 映画館内でも平気でDホイールを乗り回すグラハムに、キョン子は呆れ返る。
 段差だろうと狭い空間だろうと踏破していく様子は確かな操縦技術を感じさせるが、
 マナー的にどうかと言う気がする。
 こんな場でマナー云々言ってもしょうがないとは分かっているけれど、
 更に服がボロボロの文を抱えているのでヤバさは更に倍増している。

「まさに、眠り姫だ…!」

 ようやくDホイールを止めて文を下ろしたグラハムが言ったのは、そんな言葉だった。
 暴走を続けるグラハムにドン引きしながら、キョン子と大河も近くの長いすに座り込んだ。
 いくらグラハムがDホイールの速度を緩めていたとはいえ、
 それなりに疲労する速度だったことには変わらない。
 二人が汗を拭いながら呼吸を整えていると、突如グラハムが立ったまま口を開いた。

「二人とも、死んだ覚えはあるか?」
「は?」
「いえ、ありませんけど」
「死んで地獄に落ちたからこのようなものに参加させられたと私は思ったのだがな。
 射命丸の見立てによると私は生きていて、未来から来たらしい。
 君たちが死んだ覚えが無いというなら、そちらが正しいのだろう」
「いや、どう考えてもどっちもおか」
「たぶん、それで間違いないと思う」
「未来人を見ても、驚かないの?」
「まぁ、知り合いにいるから」
「どういう交友関係持ってんのよ!?」
「…あなただって塩に入れこんでたじゃない」
「そ、それは…その。」

 口ごもる大河に、横からグラハムが割りこんだ。

「塩だろうとなんだろうと、彼が漢であったのは確かだ。
 私は射命丸に着せる服がないか探しに行く・・・と言っても、
 このような施設に服があるかは怪しいが。二人とも休んでいるといい」
204創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:05:11 ID:Oe8HwBEf
296 :戦う理由 ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:54:25 ID:brkjARzo0

 そう告げて、グラハムは立ち去っていった。
 残ったのは長いすの上で寝息を立てている文と、静かに座っているキョン子と大河。
 とは言っても二人だけ残されても、話題はなかなか思いつかない。
 もともとキョン子はどちらかというと聞き手よりなのだし、
 大河は塩の死のショックがまだ抜け切っていないのか黙りきっている。
 互いに言葉を発することもないまま、ゆっくりと、だが確実に時間が過ぎていく。
 微妙な空気に耐え切れなかったのか、キョン子は何か話題は無いかと思っていた。

「…なんか揺れてない?」

 それが起こったのは、その時だった。 
 外でのフランドールとアカギの戦闘だ。
 映画館間近で行われている戦闘は、当然映画館に影響を及ぼす。
 向こうから降って沸いた話題を、思わずキョン子は呟いていた。
 けれども。

「…私、自分が何をしないといけないのか考えてた。
 何で塩のやつは、あんなにがんばれたのかって」
「え?」 

 あさっての方向を向いた、返事が返ってきた。
 大河の言葉に、思わず間の抜けた言葉を返すキョン子だったが、
 それを尻目に、大河は立ち上がる。足を震わせながらも、意を決したように。

「様子を見てくる。」
「は!?」
「誰かが襲われてるかもしれないでしょ。
 それに、爆弾降らしてる奴が入ってくるかもしれないし」
「いや、どう考えても危ない・・・」
「私もキョン子に同感だな」

 そんなことをさらりと言ったのは、いつの間にか戻ってきていたグラハム。
 どうやら服は結局見つからなかったらしい。
 そうしている間にも、現在進行形で音は響き揺れは続いている。
205創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:05:57 ID:Oe8HwBEf

297 :戦う理由 ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:55:46 ID:brkjARzo0
 
「引きこもってるだけじゃどうにも・・・!」
「では逆に聞くが。
 映画館を揺らすほどの存在と相対した場合に、私たちが勝てると思うか?」

 大河の言葉は、あっさりと静止される。
 はっきり言って、ただの人間でしかない彼らの戦闘力は低い。
 間違いなくこの殺し合いに参加している中では下位に位置するだろう。
 グラハムは、文とバルバトスの戦いから冷静に自分の戦力を評価している。
 だから、グラハムは動かない。

「確認したところで、今の私たちに打つ手はない。ならば、確認するだけ無駄だ」
「でも、でも…他にもやらなきゃいけないことはあると思う。
 他の施設がどんな感じか、人が死んじゃう前に調べないといけないし、
 私は最初から、塩とそうするって決めてて・・・」
「現在、私たち四名の中の最大戦力は言うまでも無く射命丸だ。
 故に、彼女が目覚めるまでは動く気はないし、それからでも遅くは無い。
 それより他にすべきことがあるだろう。
 キョン子くん、君は未来人に会ったことがあると言ったな?」
「え、あ、はい」
「ならば、そういったことについて互いに知っておくべきだ。
 塔では最低限のことしか話していなかったからな」
「・・・」

 グラハムが提示した行動指針に、大河は黙り込む。
 情報交換。確かにそれは必要なことだと彼女も思う。
 それでも、じっとしていることが耐えられない。
 塩が頑張ったのに、自分は安穏と平和を享受していていいのかと思ってしまう。
 どこか気まずい空気の中で、会話は進む。
 自分の住んでいた街はどんな場所で、どんな技能があるか。
 今まで出会ってきた参加者はどんな相手か。
 どんな支給品があって、どんな時に使えるか。
 揺れも音も無くなってから結構な時間が経った後、大河は一つの道具を取り出した。

「マイリスト機能?」
「十時間に一回、あらかじめこれに記録した施設にワープできるんだって。
 記録の数にも限りがあるらしいから、まだ何にも記録してないんだけど。
 でもこれを使えば、ここから出てもすぐ戻ってこれる」
「…さっきからずいぶん、外へ行くことに拘っているな、君は」
「うるさいバカ! さっき外で派手に戦いがあったばっかりじゃない!
 こうしてる間にも人が死んでるのかもしれないのに!
 引きこもってばかりじゃ、何にも解決しないし・・・」
206創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:06:51 ID:Oe8HwBEf
298 :戦う理由 ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:57:32 ID:brkjARzo0

 大河の言葉は、明らかに自分の感情に踊らされて戦況を見失っているだけ。
 戦況が冷静に分かっているグラハムが、それに追従するはずが無い。
 それにグラハムとしては、正直解決する必要は無いのだ。
 極論すれば、最後に自分と文が残ったところで自分が自殺してもいい。
 ただ単に参加者を殺して回ろうとは思っていないだけで、
 積極的に主催者をなんとかしようと思っているわけではない。
 もちろん、文を守るためには味方が多いほうが多いとは思っているのだが。
 だからため息を吐いて、話題を違う相手に向けた。

「・・・キョン子、君はどう思っている?」
「え、あ、私ですか?
 その…確かに引きこもってばっかりじゃどうしようもないとは思いますけど、
 文さんが起きてからにしたいなぁ、って…」
「ふんだ。別にいいけどね、私一人で。
 もともとこれでワープできるのは一人だけってあるし。
 そいつが起きる前に、ちょっと他の施設の様子を見てくるだけだから。」

 大河に大人しく下がる気はないらしい。
 死への恐怖がなくなったわけではない。寧ろ、その心中には塩の死が色濃く残っている。 
 だから何か行動していないと、恐怖と罪悪感で押しつぶされそうになる。
 いくら理屈を捏ねようと、感情を無理やり理論で後追いさせているに過ぎない。
 今の大河は、塩を死なせた自責感から逃れようとしているだけだ。

 だが部下を失い修羅の道を歩んだグラハムにそれを責める資格はないのも、事実だった。

「・・・わかった、好きにすればいい。
 ただし、条件がある」

 諦めたような声を出すと共に、グラハムはいきなりカードを投げつけた。
 慌ててキャッチする大河。

「う、うわ!?」
「そのカードを貸そう。使用可能になる時間帯と、効果は述べた通り。
 すぐ戻ってこれると言うなら、何があろうと午後3時までには戻って来たまえ。
 私たちがここを離れる場合でも、最低でも書き置きくらいは残しておく」
207創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:07:56 ID:Oe8HwBEf
299 :戦う理由 ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:58:46 ID:brkjARzo0


 しばらく言葉を交わして大河が映画館を離れて言った後。
 おずおずとキョン子は口を開いた。

「あの・・・いいんですか?」
「言っても聞かないだろうさ、彼女は。同じ経験があるから分かる」

 珍しく真剣な顔で、グラハムは返した。
 彼にとっても、大河の心境は理解できないわけでもない。
 大切な仲間を失い、その悲嘆から自分の命を失ってでも目的を果たそうとする。
 いわゆる死にたがり・・・グラハム自身が体験したことだ。
 
(最後の出撃で私を見送った者達も・・・このような気持ちだったのか?)

 思わず、グラハムは心の中で呟いていた。

【D-2 映画館外/一日目・午前】
【逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:健康、死への恐怖
[装備]:バスタードチルノソード@東方project派生、ハネクリボー@遊戯王GX(使用可能まで4時間)
[道具]:支給品一式×2、しじみ@松岡修造、ハロー大豆3パック@かんなぎ、
 もやし3パック@THE IDOLM@STER、ケフィア(瓶)@現実、ランダム支給品(0〜1)
 マイリスト機能@ニコニコ動画、オリジナル
[思考・状況]
0:殺し合いをせずに脱出する。
1:塩だって頑張れたんだから、きっと私だって何かできるはず。
2:どこかの施設を見て可能なら仲間を増やした後、三時までに映画館に戻る
※塩の言葉により死への恐怖を克服したわけではありませんが、だいぶ感じなくなりました。 また、吐き気はおさまりました。
※グラハム、キョン子と情報交換しました。
※マイリストに映画館を記録しました。

【D-2 映画館中/一日目・午前】
【キョン子@涼宮ハルヒコの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:DMカード【ユベル】@遊戯王デュエルモンスターズ (使用可能まで6時間)、
    言葉のノコギリ(レザーソー)@school days
[道具]:支給品一式、長門有希のギター、Ipod(少佐の演説の音声入り)@HELLSING
[思考・状況]
1:殺し合いには乗らない
2:とりあえず文さんたちと一緒にいる
3:町へ行きたいけど贅沢は言わない。
4:異世界という確信を得るため情報を得る。
5:生きて帰りたい
6:ユベルはなんで放送のこと知ってるの?[\
※グラハム、大河と情報交換しました。
【ユベルの思考・状況】
1:大好きだよ、十代……
2:十代に会うためこの世界を『愛』(苦しみと悲しみ)で満たす。
3:そのために女(キョン子)を利用し、痛みと苦しみを味あわせる。
4:彼女も誰かを愛しているのかな……?フフフ……
[備考]
※ 制限によりユベルは参加者の体を乗っ取ることができません。
※ 参加者との会話はできますが、自分からの実体化はできません。
※ バトルロワイアルの会場を異世界の一つだと思っています。
※ 自身の効果以外で破壊された時、第2形態、第3形態に進化できるかは不明
208創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:08:42 ID:Oe8HwBEf
300 :戦う理由 ◆VoBPM./vd6:2009/03/30(月) 23:59:36 ID:brkjARzo0

【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダム00】
[状態]:ほっぺたにビンタ痕
[装備]:養由基の弓@三国志\(矢残り8本)
[道具]:支給品一式(一食分食糧と水消費)、ホイールオブフォーチュン@遊戯王5D's
[思考・状況]
1.フラッグ(文)に惚れた
2.フラッグを守る
3.ひとまずここから離れる
※参戦時期は一期終了後(刹那のエクシアと相討ちになった後)。
※キョン子、大河と情報交換しました。

【射命丸文@東方project】
[状態]:睡眠中、疲労(中)、脇腹に中程度のダメージ、服がボロボロ
[装備]:七星宝剣@三国志\
[道具]:支給品一式(一食分食糧と水消費)、究極のコッペパン@ニコニコRPG
[思考・状況]基本:一番大事なのは自分の命、次がチルノさん。後はどうでもいい。
1.情報収集。自己保身を優先する。特に究極のコッペパンは絶対に自分で食べる。
2.主催者の方が強そうだったら優勝狙い、脱出できそうなら脱出狙い。それまでは1に徹する。
  少なくとも人数が半分以下になるまでは立場を確定させない。
3.優勝狙いが確定しない限りグラハムと一緒にいてやる(ただし優勝狙いに決めたら速攻で殺す)。
4.ブロリーと出会ったら何を犠牲にしても全力で逃げる。
5.呂布、バルバトスを警戒。

【マイリスト機能@ニコニコ動画、オリジナル】
あらかじめマイリストに登録しておいた施設に、使用者をワープさせる。
使用間隔は十時間に一回、記録できるのは三つまで。

301 : ◆VoBPM./vd6:2009/03/31(火) 00:00:51 ID:RjVXDzrw0
投下終了です。
問題なければ誰か代理投下お願いします。
302 :アカウントナンバー774:2009/03/31(火) 01:20:39 ID:y.OLc46E0
グラハム冷めてんなww
いや、熱いのかww恋にww
面白いですし問題ないと思います
ですが、身の回りについて詳しく述べたということはハルヒコの神様説なんかも話したのでしょうか?

303 : ◆VoBPM./vd6:2009/03/31(火) 01:29:56 ID:RjVXDzrw0
えっとですね、自分ではどこまで話したかは決めていませんし、この作品で決めるつもりはありません。
確定してるのは未来人くらいで、あとは後の書き手さんにお任せしますということで。

304 :アカウントナンバー774:2009/03/31(火) 01:39:54 ID:brMzFVwI0
図書館の中まで逃げきったと書かれているが、映画館の中ではないか?
俺が間違ってたらすまん。

305 : ◆VoBPM./vd6:2009/03/31(火) 01:44:34 ID:RjVXDzrw0
間違いです。ごめんなさい。
>>295を修正。

 映画館には誰もおらず、見ていない僅かな間隙。
 キョン子たちはなんとか無事にその中まで逃げ切っていた。

で。
209創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:10:30 ID:Oe8HwBEf
以上代理投下でした
210創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 03:20:31 ID:Ju1NqZFD
ニコニコのコメがおかしいwww
211創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 04:26:33 ID:H4Hh7sv9
投下&代理投下乙!
ティガー地味にやばくね?
212創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 13:31:53 ID:42OUnd+i
それでも大河なら…大河ならなんとかしてくれる…
213創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 15:35:13 ID:DWvI34yi
それでも釘宮なら……釘宮ボイスのツンデレキャラなら
……悲惨な結末しか思いつかない
214創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 15:55:42 ID:Oe8HwBEf
世の中にはツンデレのジンクスというものが存在する
だから安心するんだ
215創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 18:55:33 ID:kwTvViEg
グラハムが自殺覚悟してんのに驚いた。
二期で今一つだった分活躍希望。
216創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 20:20:35 ID:42OUnd+i
文ハムか
今までの文ハムのSSのニヤニヤ感と来たらもうwwwww
217創る名無しに見る名無し:2009/04/02(木) 03:24:31 ID:slaW98wC
呂布の紹介文にこれ追加しようぜ
http://m.nicovideo.jp/watch/sm6607221
ダブルギフキッタ
218 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:31:25 ID:tqQ5V2A0
図書館組、仮投下させてもらったSSが特に問題なかったようですので本投下致します。
「完全自殺マニュアル…コーラン…なんか本当によくわからないチョイスですね」
図書館の調査をしていた美鈴が呟いた。
「あぁ、管理人の意図が伺われないな」
本に隠れて姿が見えないメタナイトが声だけで返す。
「教材用VHSも結構あるんやな…『つくってワクワク』に『ぐ〜チョコランタン』、『チャレンジ1年生でかっこいい1年生にへんしん!DVD』へぇ〜」
貯蔵されている本と同じく、VHSなどの表紙も汚い絵で飾られている。
パッケージの表紙で笑っているキャラクターがまさか朝話題に挙がっていた黄色い怪物とは思わずに藤崎はVHSを棚に戻した。
バクラとタケモトは二階で調査を続けている。二人の気を散らさないようにと美鈴たちは下の階の調査を行っていたのだった。
美鈴はドナルドたちが出立してから常に視界に藤崎を入れるようにしていた。
ドナルドの命令に従うべきか、答えが出る前にバクラに藤崎を殺させてしまうのは後味が悪い。踏ん切りが付くまでバクラには待ってもらおう、そう考え美鈴は藤崎の身に危険がないかを監視していたのだった。
ふと、藤崎をじっと見る。出会ってからずっと藤崎の表情は晴れないままだった、それは彼は口だけではなく、何か想いを心に背負っているからだろうと思う。

私はどちらかというと藤崎と同じ意見だ、みんなで、なるべく犠牲を出さず、主催者を打倒したい。
だが現実は非情だ。多くが生き残るためには少数が犠牲にならなければならない時もある。おまけに自分は守らねばならない主人がいる。
私の考えは、藤崎の考えは甘いのだろうか。メタさんだって私と同じ事を考えてくれているだろう。フランドール様だってきっと…。
この仕事を依頼されたメンバーに何故メタさんとタケモトが省かれているかを理解した。
タケモトはドナルドと行動を共にしていた…何かしらドナルドと共通の思想を持っているはずだ。だからこそ、藤崎の殺害について前もって説明する必要は無かったのだろう。
メタさんは…頭が固い、ドナルドにあんな事を言われたら斬りかかるに違いない。それを丸め込めるのは私ぐらい…。
ドナルドの賢さが恨めしい。こうもドナルドの考えがうまくいっているのは彼が正しいからだろうか。

藤崎を殺すしかないのか。

彼を庇い、一人は死に、一人はバケモノに戦いを挑むことになった。
確かにここで彼を殺しておけば後々仲間への被害は軽減するかもしれない。
でも、私は……






220 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:35:19 ID:tqQ5V2A0
その頃、二階でタケモトと共に首輪の解析をしていたバクラは綿密な藤崎の殺害計画を立てていた。

奥の机ではタケモトが突っ伏して眠っている。
ゲーム開始から十時間ちょっと、眠るにはあまりに早い。
しかしこの十時間は彼にとって全く慣れないものであり、それは彼には疲労他ならないものだった。
チルノを利用した首輪の調査ができないので、解析に突破口を開くことができず、首輪にどう手を出していいかわからなかった事もある。
「どうせ第二回放送まではここに居なきゃいけないんだ、休んだ方がいい」
そんなバクラの言葉もあってタケモトはすっかり眠っていたのである。

藤崎の殺害は簡単に請け負ったものの、考えてみるとなかなかに難しそうだった。
そんなにも事を急ぐこともない、しかし第二回放送までには殺しておくのがいいだろう。
第二回放送後はこの図書館を出立し移動することになる。
外に出れば藤崎は周囲への警戒度を上げるだろう、そうなると殺害は困難になる。
それにドナルドの言う通り藤崎が邪魔者ならば行動を起こす前に始末するのが一番というものだ。
藤崎を殺すことはそう大きな仕事ではない。バクラの手にはナイフにDMカード、更に光学迷彩スーツがある。
しかしあの仮面のボール―メタナイトの存在が彼にとって計画の障害となっていた。
メタナイトはかなり腕が立つ。そして考えは藤崎に近く、できるだけ他人を守ろうとする。
もし藤崎の殺害に成功したとして、彼が美鈴の説得を素直に聞くだろうか。
彼は自分の思想に熱い所がある。少し話しただけだが実直な騎士の精神は彼から痛いほど感じられた。
そんな彼が簡単に考えを曲げるとは考えにくい。自分が藤崎を殺害した現場を見た瞬間、『問答無用!切り捨て御免!』とばかりに斬りかかって来かねない。
となれば、やはりここは……

「騙すしかねぇな…」

他人を騙すことには自信がある。美鈴も適当に口を合わせてくれるだろう。
取る手は一つ、『藤崎を殺し、メタナイトに嘘の死因を伝える』

しかしそうなると絶対に藤崎殺害の瞬間をメタナイトに見られるわけにはいかない。
また、『二階で首輪の解析をしていた』というアリバイを作るため、下階に降りてきた事もメタナイトに気付かれてはいけない。
221 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:37:05 ID:tqQ5V2A0

〜バクラくんの藤崎殺害計画〜
奥の手の光学迷彩スーツを使い誰にも気付かれることなく階段を忍び下りる。

藤崎がメタナイトの視界から外れた所を毒蛾のナイフで音もなく喉をかっさばく。

再び急いで二階へ上り、さも今まで首輪の解析を行っていたかのように振る舞う。

藤崎の無惨な死体を見てびっくり仰天する。

きっと殺人者がこの近くに潜んでいるんだ!

メタ「藤崎は哀れな犠牲者か…許さんぞ!殺人者ども!」

〜バクラくんの藤崎殺害計画〜 完

「…いや、これは無理だな」
偉大なる河童の光学迷彩スーツは蒲の穂程度の物、例えばナイフ等なら使用者と共に透明にしてくれた。
しかし藤崎を襲った返り血によってできる足跡は透明にはならない。それに…
「このナイフがなぁ…」
バクラの持つ毒蛾のナイフは刃に毒蛾の鱗粉を塗られている。
先程、適当な本に試し刺ししてみたが、このナイフは傷口周辺に金色の粉を付着させ、非常に特徴的な傷を作る事がわかった。
朝の会議中、メタナイトは「刃物を持っている者がいれば分けてほしい」と言ってきた。
チルノは自分より先にメタナイトと接触を取っており、メタナイトがレンのナイフを手にしていたことからチルノたちにも同じ要求をした可能性は高い。
このナイフの前の持ち主は威張りたがりのバカである。
メタナイトに向けて得意気にこのナイフを見せている光景が目に浮かぶ。
もしメタナイトが毒蛾のナイフの存在を知っているのなら藤崎の殺害にこれを使うのはまずい。

DMカードなどはもってのほか。
召還したモンスターに犯行を行わせるにしても、チルノがDMカードをメタナイトたちに見せていた場合、モンスターの種類でバレる可能性がある。
これもまた前の持ち主が持ち主だけに心配なのだ。

ならば絞殺、撲殺を強行するしかないのだが、これも危ない。
まず絞殺だが、体格的にこちらが不利なのだ。騒ぎは免れない。
おまけに光学迷彩スーツの説明書には「丁重に扱うように!」と書いてあったのだ。
もみ合っているうちに迷彩が壊れてしまっては全てが終わりになってしまう。
次に撲殺、これは静かに一撃で仕留められる自信がない。
どうシュミレートしても音が立ってしまう。
音が立つことは藤崎の遺体の早期発見に繋がり、それは二階へ戻る際の難易度を上げる事になる。

問題はまだある、美鈴が藤崎から目を離さないのだ。
バクラにとって光学迷彩スーツとコメント一覧表は切り札である。できれば最後まで秘密にしておきたい。
藤崎が目の前で突如死亡すれば、美鈴とてバクラが何らかのアイテムを隠していると怪しむだろう。それは避けたい。
バクラの藤崎殺害計画は殺害方法うんぬんよりもまず、怪しまれないように藤崎を二人の目から逸らす方法を考えねば始まらないのだった。






222 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:39:10 ID:tqQ5V2A0
その時、入り口の扉を擦るような叩くような音、とにかく扉の向こうに何かが居るような音がした。
大きな音ではなかったが、図書館の調査をしていた三人は素早く反応し、異変に備え本棚の陰に隠れる。
緊迫した空気の中、ふらふらとした歩みで扉の向こうから現れたのは白装束の大男。
彼は図書館の扉を閉めると、そのまま玄関に倒れ込んだ。
「お前は…トキィ!」
藤崎が倒れ込んだ大男に駆け寄り、必死に彼に呼びかけながら彼の体をゆする。
「トキィ!無事やったんやな!トキィ!」
バクラとタケモトが首輪の調査に勤しんでいる間、藤崎とこれまでの動向について情報交換をしていた美鈴とメタナイトはトキのことを聞かされていた。
突然の侵入者が藤崎達を守るため人知を越えたバケモノに単身立ち向かっていったトキなのだと知り、二人はトキを図書館奥へと運ぶ。
いまだに呼びかけている藤崎をメタナイトが手で制し、トキの体を調べた。
「…大丈夫だ、顔色は悪いが致命傷は受けていない」
メタナイトの言葉に藤崎が顔を綻ばせる。
「よかった…生きててくれたんだな」
その言葉を発したのは二階から降りてきたバクラだった。
藤崎の声を聞きつけたのだろう。一人で降りてきたということはタケモトには待機するよう言っているのか。
バクラはさも心配したという顔で話し、その直後に顔をしかめて言葉を続ける。
「でも、顔色が良くないな」
バクラの言う通り、トキの顔色は非常に悪く青白い。

格闘ゲーム『北斗の拳』にてトキが使う刹活孔の代償は原作『北斗の拳』と比べて非常に小さい。
原作では使用者の命を削るものが、ゲームではキャラ全員に付加されている体力自動回復機能がしばらく停止するだけなのである。
この小さすぎる代償がトキの世紀末最強伝説の要因なのだが、これはゲームではなく現実、刹活孔には原作と同じ代償が加算されていた。
もちろん刹活孔の効果が切れた今、トキの体力は徐々に回復している。
しかし元々病人の身であるトキの顔は、刹活孔の代償と連戦の疲労でまるで死人のように見えるのだった。

バクラが地図を広げ、言った。
「近くに病院があるな…何か点滴とか薬とかを探してきた方がいいんじゃないか?」
バクラに藤崎が賛同する。
「そうや!このままトキィを見殺しにはできへん!」
メタナイトまでも「確かに医療品はこの先必要になるかもしれない」と言い始めた。
「なら、こうしようぜ」
発案者であるバクラが場を取りまとめ、具体的な意見を出す。
「月との約束がある限り全員で図書館を離れるのは好ましくない…。つまり二班に分かれることになる。俺とタケモトは首輪解除に専念したい…だから図書館に残る。
月も俺が居ないとお前らを信用できないだろうし、だいたいこいつを連れて歩くのは危険だしな」
バクラはトキを指差し話すと、美鈴とメタナイトに向き直り言葉を続けた。
「外は図書館に比べて襲撃に合うリスクが高い…しかし首輪解析班の護衛も必要だ。そうなるとお前たち二人のどちらか一人に行ってもらうのがいいと思うんだが…」
223 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:40:24 ID:tqQ5V2A0
美鈴は迷っていた。


これはたぶん藤崎を殺すためにバクラが立てた計略なのだろう。
先程の支給品交換会でタケモトがビリーから薬のような物を受け取っているのを見た。
効能については聞いていないがあれは使えないのか、そもそも何故こんな重要な会議にタケモトを呼ばないのか。
おそらく薬品収集はただの建前に過ぎないのだろう。
メタさんが居る限り藤崎を殺すのは難しい。藤崎の殺害計画についてメタさんに打ち明ければ、彼は藤崎を擁護し、果てには藤崎と二人でグループを抜けてしまうかもしれない。
それは私にとってこのグループに対する裏切りとなる。
タケモトの技術の恩恵を受けられなくなるのだ。それは私だけでなくフランドール様の命にも関わる。
メタさんに藤崎の殺害計画について打ち明けるのなら事が終わってから、もしくは適当なことを言って騙すのが得策だ。
『病院に薬品を取りに行く』、メタさんに席を外させるにはもっともな理由だ。
メタさんが病院に行けば、バクラは藤崎を襲うだろう。
私は藤崎が目の前で殺されるのを黙って見ていられるだろうか…。


「私が病院に行きます」
美鈴が重々しい口調で言い、ゆっくりと腰を上げた。
「待て、やはり一人で行くのは危険だ。私も行こう」
メタナイトの言葉に美鈴は首を振って答える。
「ダメですよメタさん。護衛が一人は残らないと」

「あー、それやったら何とかなるかもしれん」
言葉を発したのは藤崎だった。一同が彼に注目する中、藤崎はトキのディパックをたぐり寄せて中身を調べた。
「あったあった、これやこれ」
藤崎が取り出したのは…見る限りただのカッターナイフだった。
「なんかようわからんけどワープできるらしいで。もしもの時はこれで逃げればいいんちゃう?」
同意を求めるように一同を見渡す藤崎にバクラが肯定意見を出した。
「あぁ、そんなモンがあるんなら二人で行った方がいいかもな。これ以上誰も被害を出さない方がいい」
美鈴はバクラがこちらをちらりと見たのを見逃さなかった。
――お前らが病院に行ってる間に仕事を終わらせてやるよ…
美鈴にはその視線はそう言っているかのように感じられた。
「じゃあ決まりやな、早う行けや」
美鈴の心は揺れ動く。
ここでメタナイトと二人で病院へと行くのは藤崎を見殺しにする事と何ら変わりはない。
(私は…どうすれば………見殺しにするしかないのでしょうか……)


224 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:42:11 ID:tqQ5V2A0
少しの沈黙の後、美鈴が口を開いた。
「わかりました…行きましょう、メタさん」
メタナイトはすっくと立ち上がり、藤崎に向き直り言った。
「藤崎、バクラとタケモト、それにトキを頼んだぞ。だが危ない時はすぐに逃げてくれ」藤崎が顔を晴れさせながら答える 。
「おう、俺に任せとけや」
図書館を出て、美鈴とメタナイトは病院へ走る。
(私は、本当に正しかったのだろうか?
 これは本当にフランドール様のためなのだろうか?
 私はこの決断を従者としてフランドール様に誇れるだろうか?

 藤崎が見ているのは本当に夢物語なのだろうか?)

気持ちをごまかすように美鈴は走る速度を上げる。
メタナイトが二三言何かを言ったが美鈴の耳には届かない。

美鈴の心は晴れなかった。




【D-4 草原/一日目・昼】
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]小疲労、顔面打撲、決意、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止め、終わらせる
1:病院に急いで行き、医薬品の収集
2:美鈴の知り合いの情報集め
3:殺し合いに反対するものを集める
4:触覚の男との決着
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※北に目撃した参加者は誠、南に目撃した参加者はキョン子とアカギです。
※E−2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました



【紅 美鈴@東方project】
[状態]小疲労、罪悪感、フランドールへの絶対的な忠誠
[装備]無し
[道具]支給品一式
[[思考・状況]
0:私は…
1:病院で医薬品を集める
2:日没までに映画館へ戻りフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
3:十六夜咲夜を警戒
4:知り合いの情報集め
5:殺し合いに反対するものを集める
6:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい
7:テトを探す
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。






美鈴とメタナイトが出立した図書館一階。バクラは再び二階へと上って行き、そこにいるのはトキと藤崎だけである。
緊急脱出手段であるショートカッターは藤崎が持っている。バクラが自分に渡すよう言ったのだが藤崎が「これは俺のだ」と言い張り、渡さなかったのだった。
「よかったなぁトキィ、もうすぐ薬が届くでぇ…」
相変わらずトキに呼びかけていた藤崎は何かを閃いた顔をした。
「そうや!ここに医学書あるんちゃう?」
常識的に考えてこれまでの調査結果からそんな物は無いとわかりそうなものだ。
しかし彼は何か行動を起こさずには居られないテンションだった。
まだ調べていなかった本棚を選び、調べる。
見ると倒れた本棚があった。倒れた衝撃で本はほとんど本棚から落ちたようで藤崎一人でも起こせそうだ。
「しゃーないな…どっせーい!」
ベンチプレス90kgの記録を持つ藤崎の強腕が本棚を起こした。
倒れた本棚の下には石の下のダンゴムシの如く、大量の本が散らばっている。
「こりゃ酷いな…」
本をかき集める藤崎、その指先をふと妙な感触が襲った。
「なんや、このヌルッって……この赤いの…血か?」
本をどけていくと表紙が赤く染まった本がある。指の赤い物はこれのせいだろう。
「なんや?インクか?」
藤崎は本を開いてみる、本は中まで赤く染まっていたが文字は読みとれた。


・・・・・あいつは私のお友だち・・・・私もあいつのお友だち


嫌な予感がする。本を閉じようと思うが心とは裏腹に手は次のページをめくる。


・・・・・みんなで死のう・・・・楽しく死のう・・・・


もう止まらない、藤崎は震える手でページをめくる。


そのページに挟まっていたのは……人間の目玉だった。


「うわぁー!」
思わず後ろに飛び上がる藤崎、その背中に何かがぶつかる感触と共に足に激痛が走った。
混乱冷めあらぬ様子で激痛の走る足を見ると、脛にナイフが刺さっている。
「な、なんでなん」
膝をつき、激痛が走るにもかかわらず急いでナイフを抜き捨て、激痛と共に痺れが走る足を庇い、赤い本から這って離れる。
ようやくしてやっと落ち着きを取り戻した藤崎は息を整えながらその場で大の字になった。
「なんなん……あの目玉……あの本……あのナイフ……」
天井を見据える藤崎の視界に再びあのナイフが現れた。
「あぶなっ!」
藤崎は自分の顔面めがけて振り下ろされたそれを必死に転がってかわす。
(自分を殺そうとする透明人間が居る!?)
あまりに馬鹿げた考察と思いながらも目の前の状況はまさにそれだった。
「ショートカッター!A-1や!」
藤崎は咄嗟に取り出したショートカッターに向かって叫び夢中で本棚に切り込みを入れると、中へと飛び込んでいった…。
226 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:46:54 ID:tqQ5V2A0



【A-1 ???/一日目・昼】
【藤崎瑞希@現実】
[状態]決意、疲労(小)、脛に軽い刺し傷(鱗粉付き)、足に痺れ、罪悪感、精神疲労(小)
[装備]なし
[道具]支給品一式、金属バット@現実、ショートカッター(残り0枚)@ドラえもん
[思考・状況]
基本思考:主催者の目論見を粉砕し跪かせる
1:俺を襲ったの奴は誰なん?
2:自分だけ逃げ出した罪悪感。
3:参加者を救う 。
4:受け継がれた意思を持って、戦う。



 ◇



バクラは藤崎が飛び込んだ空間に手を伸ばしたが遅かった。
切り込みはぴったり塞がり、バクラの手は本棚を撫でただけだった。

バクラの藤崎殺害計画は完璧だった。
しかし彼は結果、藤崎の殺害に失敗した。
バクラは二階に戻って来た後、タケモトがよく眠っていることを確認すると光学迷彩スーツを着用し音もなく下階に下り、藤崎の隙を待った。
藤崎が本を読んでいるのを確認すると後ろに忍び寄り、ナイフで首を切ろうと…
227 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:49:04 ID:tqQ5V2A0
…した瞬間、藤崎は後ろに飛び上がりバクラの体は大きく後ろに突き飛ばされた。
手にしていたナイフはそこで手放してしまい、辺りを見渡すとなんと藤崎の足に刺さっていた。
しかし幸運なことに藤崎は混乱していたようで冷静な状況分析ができていなかったのだった。
バクラは藤崎が抜き捨てたナイフを拾い、再度チャンスを待つ。
チャンスは必ず来る、なぜならこのナイフはただのナイフではない。
屈強なモンスターをも麻痺させる毒蛾のナイフだ。
藤崎が大の字に倒れ込んだのを確認し、とどめを差しに行く。
光学迷彩スーツのおかげで藤崎には頭上に掲げられたナイフは見えていない…はずだった。
迷彩が藤崎に突き飛ばされて壊れたのだろうか、ナイフはその空間に目視で確認することができた。もちろん藤崎にも。
しかし、毒蛾の鱗粉で藤崎は動けない…はずだったが、麻痺率100%ではないからだろうか、藤崎は振り下ろされたナイフを見事にかわして見せた。
そしてもしもの時のとっておきのショートカッターを使い…
「…逃げやがった」
常人ならば、某先生でなくとも絶望するところである。
しかし彼は内心この状況を笑っていた。決してヤケになった訳ではない。
「あいつがショートカッターを使ったのは俺のせいさ…でもな、あいつは俺たちを残して自分一人だけ逃げやがった。
あいつが足を引っ張る邪魔者と実証されたじゃないか。なぁ?」

誰ともなく、バクラは散らばった本の上に転がる目玉に、本の山の下に埋もれていた潰れた頭に呼びかけていた。

かくして、藤崎の運命は誰も予想しない方向へと転がっていったのだった。



【D-4 図書館/一日目・昼】
【ドナルド組首輪解除班共通思考】
1:第二放送までは図書館の調査。月を待つ。
2:第二放送の後映画館を調査。フランを待つ。
3:それと平行して首輪の解析。


228創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 18:50:02 ID:6ayxaZkj
支援スパーク
229 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:58:14 ID:FKbYOzi0
【バクラ@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 】
[状態]:服に軽い汚れ、
[装備]:千年リング@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 毒蛾のナイフ@ドラゴンクエスト DMカードセット(翻弄するエルフの剣士、鉄の騎士ギア・フリード、ガーゴイル・パワード)@遊☆戯☆王
[道具]:共通支給品、 光学迷彩スーツ@東方project(機能に支障あり)、コメント一覧@ニコニコ動画
[思考・状況]
1:ドナルド組首輪解除班として行動する。
2:脱出フラグをへし折り、参加者の心の闇を急速に増大させる。
3:藤崎が消えた言い訳を考えなくちゃな。
4:誤情報を流し争いを促進する。てゐの情報、藤崎の情報など 。
5:最終的には優勝狙い。
※原作終了後(アテムが冥界に帰った後)から登場
※光学迷彩スーツが故障しました。使用者の透明化に支障はありませんが手に持った道具は消えません。(メタルギアのステルス迷彩使用時と同じ状況で、武器だけが宙に浮く状態)
※秋月律子の潰れた頭を発見しました。
※毒蛾のナイフは特徴的な傷跡を残す事に気が付きました。



【タケモト@自作の改造マリオを友人にプレイさせるシリーズ】
[状態]:健康、休眠
[装備]:アイスソード@ちっこい咲夜さん
[道具]:支給品一式、精密ドライバー@現実 野菜ジュース@ぽっぴっぽー カミーユの首輪(一部破損) ドアラの首輪 シルバーウルフ(12/12)(予備弾188本)@フルメタル輪ゴム鉄砲 万葉丸(11/30)@零シリーズ 強姦パウダー@ニコニコRPG(4/9)
[思考・状況]
0:Zzzz…
1:生き残り脱出する,そのためには……な……
2:大連合は組まない、最低限の人数で行動
3:施設を回って情報を集め、その真偽を見抜く
4:首輪を外せはしないと判断。無力化するための協力者を少人数集める
5:規格外の者に対抗出来るように、ある程度の戦力が欲しい
6:人の首って切りにくいんだな。落ち着けて設備のある場所で実験するか
7:誰が創造者なのか教えてやんよ
※僧侶のネガキャンを間接的に聞きました
※ドナルドが強力な支給品を持っていると判断。持っているとは限りません。
※首輪についての情報(盗聴器、死者の首輪は爆発しにくい)を知りました。
※トキが来たこと、メタナイトと美鈴が病院に行ったことは知りません。



【トキ@北斗の拳】
【状態】肉体疲労(大)、罪悪感、刹活孔の代償、睡眠中
【装備】なし
【持物】支給品一式×2、エリアジャンプスプリクト機能(現在使用不可能)@ニコニコ動画、不明支給品0〜1
【思考・状況】
[基本思考]
死ぬまでの間に多くの人を救う。
1:Zzzz……
2:ブロリーを倒し、少女を救う…筈だったのだが…
3:強者と戦うが殺害はしない。
4:ビリーともう一度戦う。
※刹活孔の効果時間は切れました。
230 ◆MY9PsNVpck :2009/04/03(金) 18:59:58 ID:FKbYOzi0
投下終了です。

新たな誤字、脱字、矛盾、違和感ありましたらどうぞ
231創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 19:49:09 ID:A91sYQiJ
投下乙
A-1とボッチがよく目立つロワですね
232 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:32:15 ID:IT8x/mjk
本投下ボクも行くのですよ〜
233 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:33:41 ID:IT8x/mjk
                 何が目的なのか?
             それを探すのはお前じゃないか?

                 何が黒幕かって?
          そもそも「何の」黒幕なんだ?存在するのかい?

                 何が突破口かって?
           「突破口」なんて本当に存在するのかい?

             さて、こんどはこちらからの質問
                 これは「何の話」だい?


                     meguU

◆◆◆
234 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:34:31 ID:IT8x/mjk
――とり……運び……う……

 聞こえるのは男の声。
 店……よくわからないのです。
 運ぶ……ルガールなのですか?無事でよかったのです。
 でもごめんなのです。城之内と秋山を守れなかったのです。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

――わ……た……

 女の声。リカ……いや、リカはここにいないのです。
 誰なのでしょうか?分からないのです。
 わ……た……?綿……?
 綿流し……?
 ごめんなさい。城之内と秋山は死んでしまったのです。
 罪は償うのです。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 ここは暗いのです。
 どこなのですか……?ルガール。教えて欲しいのです。

 僕はどうしたらいいのですか?
 罪は僕が受け入れて流さなければならないのです。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

◆◆◆
235 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:35:33 ID:IT8x/mjk
「とりあえずこの店の中に運びましょう」
「わかったてヴぁ」

 アポロ達一行はE-2の道具屋まで来ていた。
 みさおは羽入を店の中に運び入れ、蜂に入り口付近にいるように伝えていく。
 殺風景で品物もかなり少ない店ながらも薬草などの最低限のアイテム及び生活必需はわずかではあるが常備してあった。
 アポロはタオルを取ると自らの支給品である水で濡らしそれを羽入の額に乗せる。
 みさおに近くの川まで水を取りに行かせアポロが応急処置をすればアポロ自身の支給品を使わずに済んだのだが川の周囲には新堂誠の遺体があるのだ。
 それをみさおに見せるのは酷な話であるし戦闘があった場所の近くには危険人物がいるお恐れがある。
 そんな所にみさお1人で行かせるのは論外と言わざるを得ない。

「アポロォ……こいつ大丈夫なのか?」
「えぇ、命に別状はないでしょう。しばらく待つか水でも欠けてあげれば疲労は激しいですが目を覚ますと思います。ですが……」

 アポロは羽入を見る。
 それにつられるようにしてみさおも羽入を見る。
 一見すればただ気を失い倒れているようにも見えるが――

(ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん――)

 羽入は誰にするともなく謝り続けていた。
 それはフランの罪を受け入れらなかったが故なのか、城之内と秋山を守れなかったせいなのか
 それとも自分の世界での記憶が原因なのか、それともその全てが要因なのか。
 とにかく羽入が誰へというわけでもなく謝り続けていることは事実だった。

「いったいこいつは誰に謝り続けてるんだ?」

 みさおは疑問を口にする。
 さきほどからずっと謝罪の言葉をうわごとのように発し続ける羽入。
 その謝罪の相手をしらないみさおは疑問を口にする。 

「わかりません。あの場で怪我をしていたこととあの蜂から守られていたことを考えると
 この子は恐らく誰かに襲われ同行者を失ってしまったのではないかと思います。自分のミスか、不注意が原因で
 それ以外は私は思いつきません。」
「でもそれだけじゃなく逆に誰かを襲ってその誰かに対して謝っているという可能性は……危ないってヴぁ!!」

 アポロの言葉に反応し僅かにではあるが羽入と距離を取るみさお。
 そんなみさおの方は見ずアポロはうなされている羽入の顔を見続ける。

「恐らくそれはないでしょう。これは甘い思考なのでしょうがこんなにも許しを請うて気絶しているこの少女が……
 殺し合いに乗っているとは思えませんし。思いたくありません。」
「アポロがそう思うなら多分そうなんだってば!私はアポロを信じる」
「いいんですか?みさおさんの考える可能性も十分あります。あくまで私の希望的観測なのですが」
236 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:36:25 ID:IT8x/mjk
 アポロの言葉に軽く信じると言ってのけるみさお。
 それに対してアポロは疑問を返す。

「私は殺し合いなんて言われても実感がわかないてば。そんな私の考えより今まで戦ってきたアポロの考えの方が信用できる」
「みさおさん……」
「それにアポロはミュータントの戦士なんだろ?もしこの子がいきなり襲ってきたとしてもアポロは私を守ってくれるってば」

 アポロの言葉には何の証拠もない。
 ただ漠然とした感覚でこの子は殺し合いに乗っているとは思えないと言っただけである。
 しかしそれに対してみさおは良くいえばアポロを信頼し、悪く言えば何も考えず単純に言葉を返した。
 その単純で同じに純真な言葉はアポロの心に突き刺さる。
 この状況で特に何も考えず初めて会った”良い人”だからと言うだけでも信頼するみさお。
 実際にまだ戦闘を行っていないということも要因としてはあるのだろうがその言葉はアポロの心に何かをつけるのには十分だった。

(信頼されるとはいい物ですね……犠牲者は私の見ていないところで出続けているのでしょう
 私は無力なただのチーターです。ですが私の見えるところの命。みさお……せめてこの命は守りたい
 信頼に応えるためにも、私がミュータントの戦士でい続けるためにも)

 信頼してもらえる。頼ってもらえる。
 それが戦士としてどれだけありがたいか。
 同時にその信頼が戦士としてどれだけの重みになるのか。
 それをアポロは実感した。
 見えないところの命を救えず迷った自分を励ましてくれたのは誰だったか。
 それを思い出し僅かな時間ではあるが感傷に浸る。

「アポロ?アポロォ?」

 そんな彼を心配する声。
 そんな声が近くにあるのだ。その声は墓場で彼を励ました。
 その声の主を守れずして誰が戦士だろうか。
 信頼され、頼られ、そして励まされる。そんな相手を守るのが戦士ではないだろうか?

「……。すみません。ちょっと考え事をしていました。」
「また墓場の時みたいに落ち込んでるのか?希望はちゃんとあるんだってば」
「いえ、落ち込んでるわけではありませんが……」

 また励まされてしまった……そんな心中が生まれる。
 みさおは一介の高校生ではある――いや一回の高校生であるが故に眩しいものを持っている。
 アポロにはその眩しいものを持つ彼女がとても素晴らしいものに思えた。
237 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:37:16 ID:IT8x/mjk
「ありがとうございます。そしてすみません」

 自然と出たその言葉。
 別に何に感謝しているというわけではない。
 ただ一緒にいる。そのことに感謝するのだ。

「アポロ?本当に大丈夫か?」

 いきなり謝るアポロに困惑するみさお。
 そりゃいきなり謝られたらだれだって驚く。
 後ろから足音まで付いてくるなんていうことがあれば驚くどころか病気になってしまう。
 そんな病気の原因(?)がこの場にいるがそれはまた別の話である。

「いえ、大丈夫です。」

 いきなり謝った自分自身に苦笑しながら彼は返す。
 あんな行動を取られたら困るということが自分でも分かったのだ。

(また余計な心配を掛けてしまったようですね。信頼に応える前に心配をかけない様にするべきでしょうか)

 苦笑を続けながら。あたまを掻く。
 そんな彼に顔を近づけ追及するみさお。

「本当の本当にか?」
「大丈夫です。大丈夫ですからそれ以上顔を近づけないでください。」

 彼を心配している顔。
 そんな顔を心底守りたいとまた思うアポロ。
 チーターのミュータントである自分に対した恐怖も持たない人も珍しい。

「心配だから顔を近づけるんだってヴぁ、そうだアポロ。このアイス食べるか?」

 そんなことを言いながら自分のデイパックからアイスを取り出す。
 そんな彼女うはとても無邪気で――

(本当に私は心配をかけてばっかりで……私なんかよりもみさおのほうがよっぽど落ち着いている……)

 多少抜けているところのあるアホの子とはいえみさおは落ち着いている。そうアポロは感じ始めていた。
 抜けていて危なっかしいのは事実。しかしそれと同時に戦闘に遭遇していないとはいえこの状況下希望があると言い切れる心。
 落ち着いて最低限自分にできる行動こなす程度の力。
 力が自分に劣るとはいえやれることは立派にやっている。

「あまりお腹はすいていないですが頂きましょう。」
238 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:38:09 ID:IT8x/mjk
 そんな彼女を見ながらアイスを貰おうとするとどこからか腹の音が鳴った。
 それはアポロから出されたものではない。実際にアポロはそこまで空腹感を感じてはいないのだから。
 かといって気絶している羽入からその音が出たわけではない。ならば当然その音の出どころは残る一人からでしかんく――

「腹減っちゃったってば」

 笑いながら自分の頭を小突くみさおの姿があった。
 やはりどこか抜けていて、ぐーたらなのが彼女なのだ。

「アイスよりも普通に食事をした方がよさそうですね」
「そうみたいだぜ」

 アポロは軽く溜息を付きながらも笑みを浮かべる。
 その笑みにつられるようにしてみさおも笑みを浮かべる。
 それはこの場にはある意味で相応しくないとても平和な光景だった。
 時間は過ぎ去りすでにもう昼。

「この子も起こした方がいいかな?」
「どうでしょう?疲労は激しいと思いますがかといってこのまま傷が治るまで看ているわけにも行きません
 まだ起こすのは明らかに速いでしょうが早く起こしたほうがよいと思います」

 みさおは羽入を見ながら聞く。
 怪我人を起こすかどうかの判断は普通の高校生である自分が判断するよりも戦士であるアポロが決めた方が良いと思ったから。
 アポロは本来ならば起こすべきではないと思いつつ現状を考え自分の言葉を伝える。
 それをみさおを聞くやいなや速攻で反応する。

「なら起こすぜ。おーい」

 みさおはペチペチと羽入の頬を叩く。
 アポロは羽入が突然襲ってきても大丈夫なように臨戦態勢を整える。
 何度か頬を叩いたのち――

「う……うぅん?」

 羽入は意識を取り戻した。

◆◆◆
239 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:39:21 ID:IT8x/mjk
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 守れなかったのです。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 許しなんて求めないのです。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 僕が全部悪いのです。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

◆◆◆
240 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:40:24 ID:IT8x/mjk
「大丈夫かぁ?」

 目を開く羽入の瞳に映るのはレナの姿
 しかしレナはこの場にいるはずもない。
 ここは羽入が本来いる場所ではないのだ。

「……??」

 レナの幻影は羽入の前から一瞬で消え去りみさおの姿が現れる。
 別にレナとみさおが似ているわけではない。少し髪の色が似ている程度だ。
 それでも羽入の目には一瞬ではあるがレナの姿が見えた。
 それは彼女の不安から来た妄想なのだろうか。

「安心してください。私たちはあなたに害をなすものではありません。」

 羽入がレナの幻影と今の状況に困惑していると視界の外から話しかけてくる声がした。
 そちらを視界の中に収めながら、それと同時に視界に収めるのを拒否しながら質問をする。

「ここはどこなのですか……?」
「E-2の道具屋です。あ、体はまだ起こさない方がいい。疲労が激しいようなので」

 羽入が体を起こそうとするのをアポロは止める。
 気絶したままの方がよっぽど危ないとはいえあの戦闘から対して時間もたっていないのだ。
 羽入の体には疲労が濃く残っている。このような場でなければ病院に入院させるのが正解である。

「あ……あぅあぅ」

 実際に体を起こそうとし痛みが発したのか羽入は体を起こすことを諦める。
 とりあえず現状危険がないのであれば僅かな時間でも休養を取ろうとの判断。

「あの蜂はお前の仲間なのかぁ?」

 みさおが店の入り口に佇む蜂を指さす。
 蜂は店の入口で警戒するでもなくぼけーとしながらなにやら本を読んでいる。
 蜂の身でなんとも針を器用に使っているのだ。
 主の安全を確保したので「働きたくないのでござる!」というわけでオタクまるとしての趣味読書に精を出しているのだろうか?
 というかいつのまにデイパックから極意書とり出したのか、まったくもって疑問である。

「そうなのです……えぇと……むてきまる、戻るのです」

 そんな風に器用に本を読むむてきまるに羽入がボールを向ける。
 そのボールから放たれた一筋の光がむてきまるに当たると極意書を残してむてきまるはボールの中に戻った。
241 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 20:41:14 ID:IT8x/mjk
「おおー凄いんだぜ」
「あの大きな蜂……むてきまるというのですか……その小さなボールに入るとは、興味深いです」

 極意書を拾い羽入に返しながら賞賛の言葉を述べる二人。
 別に羽入がそれをやったわけでは無く支給品の力なのだが素直に褒められる彼女。
 そんな褒められながらも羽入はハッと気が付いたように暗い影を落とす。

「……私を見て恐れたりしないのですか?角のある私を見て」

 羽入は自身の引け目である角のことを口にする。
 普段の彼女ならざる行為。通常時の羽入であればこのようなことを口走ることはまずないだろう。
 しかしなぜだか分からないが咄嗟に口走ってしまった。

「アポロを見てたら別にそんなこと気にならないぜ」

 そんな彼女に軽いノリで単純明快にみさおは答える。
 みさおが指をさす先にはチーターのミュータントであるアポロの姿。
 羽入がなんとなく視界の中に入れるのを拒否してしまった存在である。
 そのアポロは微笑みを浮かべており、こんな存在をなんとなくという理由で拒否してしまった羽入は自分を恥じる。

「あぅあぅ。」

 寝転がりながらいつもの世界でしていたようにあぅあぅと呻く羽入。
 たしかにこのチーターと一緒にいれば角程度では驚かないだろう。

「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はアポロ、チーターのミュータントです」
「私は日下部みさお、ハンバーグとミートボールが好きな普通の高校生だぜ」

 みさおとアポロは軽く自分の名前を名乗る。
 だがそれに羽入は即座には答えない。
 警戒――というわけではないが自分の名前を名乗って問題ないだろうかなどといった思考のためである。
 羽入にしてこのようなタイプの思考は珍しいと言えるだろう。
 このような思考を行うのは羽入がこの状況で動揺しているのかそれとも仲間を失った悔やみが原因なのか

「……」

 短い沈黙。
 だがそこまで長い時間の沈黙ではない。
 アポロもみさおもなぜすぐに答えないかぐらいは楽に察しが付く。
 あれだけの怪我をしていて「ごめんなさい」と言い続けていたのだ何かあったと分からない方がどうかしている。

「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ、最初に言ったように私はあなたに害をなすつもりもありませんしこの殺し合いに乗るつもりもありません
 気を張っているばかりでは大事な時にミスをしてしまいます。もうちょっとらくにしてください」
「そうだぜ、なにか危ない目にあったみたいだけど少なくとも今は落ち着いてほしいぜ」

 みさおとアポロは再度自分たちがこの殺し合いに乗っていないことを証明し落ち付いてもらうために言葉を出す。
 羽入は自分が落ちていると思いながらも自分に火があることを素直に認める。

「ごめんなさいなのです。僕は羽入というのです。」

 そこから僅かな時間ではあるが羽入とアポロ&みさおの情報交換が行われた。

◆◆◆
242創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 20:51:58 ID:dMXOyg2x
支援!
243 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 21:00:59 ID:IT8x/mjk
「なるほど……それでそのフランという奴に仲間を……」
「そうなのです。ボクがもっとしっかりしていれば……」
「だからそうやって気を張り詰め過ぎるのがダメなんだってば!そんなんじゃ見つけたい真実までのがしちまうぜ?」

 そうなのです。僕は見つけたい真実を逃してしまったのです。そのせいでルガールが……
 ルガールはまだ生きている可能性があるのです、だから無事でいてください、ルガール。
 でもここは不思議なのです。店と言う割には品物が少ないのです。
 あいつらが意図的に少なくしたのでしょうか?

「さて、情報交換もある程度終わったところですし昼食と行きましょうか
 大した量はありませんがここに食材はありました、いまから食事を作ろうと思います。」
「私も手伝うってウ゛ぁ!」

 料理は得意分野。
 もっと親しくなるためにもここは料理をふるまうのです。

「えぇっと……僕も手伝うのです」
「怪我をしている人に無理はさせられません。そこで寝ていてください。私たちで作っておきますので」
「そうだぜ、無理をしちゃダメなんだぜ」

 確かに体中が痛い。
 素直に好意をうけて寝ておくのです。

 わざわざ気を使わせちゃって悪いのです……
 料理に行くなら1人で十分なのに2人でいった、僕に時間をくれたわけです。
 本当ならもっと落ち着いて城之内や秋山の死を悲しむべきなのでしょう。

 でもここで考えなきゃいけないのです。
 悲しいけど……悲しいけどここで止まったらさらに死ぬ人が出てくるのです。
 わざわざ僕に一人で考える時間をみさおとアポロはくれたのです。
 この時間を有効に活用しないと。

 まずあの最初に襲われた時に中断してしまったことの続きです……ルガール。無事でいてください。
 でもここで止めたらダメなのです。考えなければ。

 最初に考えることは人選。
 人選がまずおかしいのです。パッと見ると完全なランダムとしか思えないのです。
 でも完全なランダムにしては猛者や強力なアイテムが多すぎる。
 僕にしてもルガールにしてもあのフラン、DMカードにむてきまる。明らかに一般人とはかけ離れているのです。
 戦闘力を持つ存在と持たない存在。殺し合いというゲームを相手が楽しむ嗜好があるならこれは明らかにおかしい。

 アポロもそうなのですアポロは僕やフランと同じように明らかに人外、そんな存在とみさおが戦ったとしてみさおが勝てる可能性は少ないのです。
 城之内や秋山も一緒。一般人が人外級の存在と戦ったとして勝てる可能性はまずないのです。
 ならなんでそんな一般人をあの主催者とその後ろにいる存在は呼び出したのですか?
 そこになにか鍵かルールがあるはず。

 でもここで逆に考えないと。
 呼び出したくて呼び出したのではないと仮定したら。
 ルールを守りたくても守れなかったとしたら。
244創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:01:04 ID:dMXOyg2x
さるさんか……。
支援をする頃に
245 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 21:01:46 ID:IT8x/mjk
 まず最初に目がいくのは強力な戦闘力を持つ参加者なのです。
 僕も含めて明らかに人の身ではありえないレベルの力を持つ者が多い。
 出会った人は少ないですが一部のエリアにこれだけの猛者が集中しているとは考えにくい。
 主催の目的がそのような力を持つ者同士の戦いを見たい。もしくは一掃だと仮定するならば。

 まず呼び出したい猛者がいる。
 そしてその猛者を連れてくる際に引きずられるようにして連れてくる参加者がいたとするなら。
 それならば僕を呼び出すのに鉄平が巻き込まれた、ということで僕の知り合いについては説明が付くのです。
 鉄平はイレギュラーな存在、僕が呼び出される時に巻き込まれたということで。
 でもこれだけでは他の知り合いがいない参加者について説明ができないのです。

 だからこそここで重要になるのが強力なアイテム、支給品の存在。
 DMカードやむてきまるという存在は僕の世界ではありえない。
 でも少なくともDMカードは城之内の世界に存在する。
 城之内が軸となりDMカードが呼び出されたのではなくDMカードが軸として城之内が呼び出された。
 これならば一般人である城之内がこの場にいることに説明が付きます。

 でもこの法則は秋山とみさおには適応されないのです。
 なぜか、秋山の知っている参加者もみさおの知っている参加者もこの場にはいないから。
 でもまだこの場には分からないことばかり。
 他の参加者が呼び出されるのに巻き込まれたとのではなく、城之内のように支給品の呼び出しに巻き込まれたとするならば――
 これは十分に可能性がある。まだ僕はほとんどの参加者に合っていないし支給品もあまり見ていないのです。
 ならば秋山やみさおの世界の強力な支給品がないとは限らない。いや、ある可能性は非常に高いのです。
 
 戦闘能力を持たない一般人をこんな殺し合いに巻き込んだところで誰が得するのか分からない。誰得なのです。
 得がないならば別に参加させる必要がない、ならさっきのように参加させざるを得なかった。
 イレギュラーな存在と考えたらある程度は説明が付く。
 そして名簿には伯方の塩とかいう明らかに人外の名前がありました。
 ”塩”ってなんですか”塩”って
 でもこの塩がもともと参加者ではなく支給品として配られるはずのものだったとしたらまた変わってくるのです。
 支給品として配られるはずだったものがなんらかの影響を受け意志を持ってしまいやむなく参加者とした――

 こ十分説明ができるのです。なんらかの影響というのがよく分からないけれどこの状況それ自体が訳が分からないのです。
 ならばイレギュラーとして考えた方が自然なのです。イレギュラーで意志を持った支給品。
 でもこうなるとあまりにもイレギュラーが多い……逆に出来すぎな気がする。

 実は全部イレギュラーなどではなく誰か――主催が得するように仕組まれたものでイレギュラーなんて存在しないのでは――
 いや、それはないのです。もともと別世界から呼び寄せるなんて言う無理な行為をしているのです。
 本来時を超えるだけでも力を大きく消費する無理な行為。それどころか時空、空間を超えるなんてそれ以上の無理があるのです。
 それだけの無理をしてイレギュラーが起きないはずはない。
 本来離れている世界を繋ぎ合わせそこから参加者を呼び出しこの場に召還する。
 これだけのことをやってイレギュラー一つ起こらない……ありえないのです。それどころかイレギュラーだらけになって当然。
246 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 21:03:04 ID:IT8x/mjk
 むしろこのイレギュラーは必然。
 つまり主催者の目的は僕やルガールのような参加者とDMカードやむてきまるのような強力な支給品を集めそれを眺めると。
 でもそ集める際に必然的に起こるイレギュラー、秋山やみさおのような存在を一緒にまとめて処分を兼ねたこの殺し合いに参加させた――
 これならば名簿の不規則性に説明が付きます。

 しかし本当に卑劣極まりないのです。
 人選についてはこんなものでしょうか?
 人選がおかしいように見えるのはそれがイレギュラーの塊だから。

 問題はそのイレギュラーの要因。
 一つは参加者及び支給品を呼び寄せる際に巻き込まれた場合。
 鉄平や城之内のような存在のこと。
 これだけでは現在の時点ではみさおと秋山がなぜ参加しているのか説明できない。
 でもおそらく場が進むにつれて強力な支給品――もしくは他の要因が見えてくるはずなのです。
 ともかくそのイレギュラーを除けば人選は納得いくものに見える。
 これが真実なのです。最も参加した側から見たら選ばれた時点で納得はできませんが。

「他に考えることは……首輪……」

 そうなのです。首輪。この首輪があるせいで僕たちは殺し合いに乗ることを強制させられているのです。
 何のために付けられたか――それは当然殺し合いを強制すること。主催する側のほうが強いのを主張するため。この2つがあげられるのです。

 でも殺し合いを強制するだけならば自分の方が圧倒的に強いということを示すだけでも十分なのです。
 僕のようにそんなことをされても乗らない参加者いるでしょうが好戦的な奴ならば殺し合いに乗ってしまうでしょう。
 別に好戦的でなくとも絶望した人間が殺し合いに乗るという可能性は極めて高い。
 だから別に首輪なんかをつける必要はないのです。ならなんで首輪をつけたのか――

 首輪が付いていれば参加者を制御しやすくなる。参加者を制御できる。ここがポイントなのです。
 主催が圧倒的に強いならば制御なんていらない。力づくで抑え込めばそれで解決する話。
 なのになぜ主催は制御しようとしたのか。それは主催する側が圧倒的に強いとは限らないから。
 もしかすると参加者の中には主催より強い人が入っているかもしれないのです。
 首輪を取り付けるだけであれば僕のように時を止める能力を持つ人が一人いれば事足りる。
 首輪さえとりつけてしまえばそれだけで参加者は主催に対抗できなくなる。

 それにあの右上と左上の背後には誰かいる。
 ならなんで背後に隠れる必要があるのか、圧倒的に力があるならば先頭に出てきても良いはず。
 即ち主催者側の方が僕たち参加者側よりも強いとは限らない。
 ここが突破口となるはずのです。

 ……あぅあぅ。
 これ以上はきつくて考えがまとまらないのです。

◆◆◆
247 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 21:03:54 ID:IT8x/mjk
「アポロォ?羽入、大丈夫か?」

 みさおは軽い料理を作りながらアポロに問いかける。
 店には軽い食事程度ならば作れる設備と僅かではあるが食料と調理用具があった。
 それに自分に支給された食品を使っているのだ。

「分かりません。少なくとも無理に全ての責任を自分の中にため込んでいるように思えます」
「責任かぁ……そういうのは全部ほっぽり出したくなるぜ」
「全ての責任を投げ込むのはよくありませんがある程度であれば責任は投げだしてもいいと思います
 羽入さんのようにあそこまで思い詰めるのはよくありません」

 責任はすべて投げだすのはよくないが抱え込むのはよくない。
 適度な責任は自分を動かすための力となるが過度に責任を抱え込むとそれはストレスとなる。
 そのストレスは判断力を失い集中力もを損なう。

「今の私たちにできるのは見守って安心させて彼女のストレスを軽減させることだけでしょう
 こんな危ない状況でストレスを軽減させると言っても意味がないことかもしれませんが」

 自分の言葉に僅かに苦笑しながらアポロは続ける。
 別にアポロが料理をしているわけではないので語りかけることぐらいはできるのだ。

「あと、これから先ほどあったという戦闘の話と角の話は禁句ですよ?
 この話を出すとまた彼女は責任を全て自分の中にため込んでしまうと思うので」
「それくらいは私にも分かってるってば。なんか気にしてることぐらいわかるて」
「ははは、申し訳ありません」

 そんな風に料理を作りながら放送の時間が近づく。
 現状ではわりと平和なその光景である。


 しかしオヤシロ様と呼ばれた存在は気が付いているだろうか?
 自らがおかしな思考を働いているということを
 ストレスで危険な状況に陥り1人思い悩む。
 相談さえすれば解決する。信じる力を持てば解決する。
 その可能性があるのにもかかわらずただ一人、オヤシロ様は悩む。
 そしてオヤシロ様は知らない。
 自らの仮説が仮定の上に仮定を重ねただけでなんの証拠ないということを
 自分の思い込みに思い込みを重ねているだけだということを

 このオヤシロ様と呼ばれた存在の思考をどこかで見たような覚えがあるのは私だけだろうか?

◆◆◆
248 ◆CqqH18E08c :2009/04/03(金) 21:04:41 ID:IT8x/mjk
【E-2/道具屋/1日目・昼】
【日下部みさお@らき☆すた】
[状態]:健康
[装備]:ゴブリンバット@ニコニコRPG
[道具]:共通支給品、キッチリスコップ@さよなら絶望先生、アイス詰め合わせ@VOCALOID 果物ナイフ@現実
[思考・状況]
基本思考:人なんて殺せね〜けど生き残りて〜な〜…
1:羽入を守ってやるぜ!軽く料理でもつくるか
2:デパートに行きたかったぜ
3:新堂も探してやっか
4:柊…あやの…あいつら心配してんだろうな…
5:アポロ見た後だと、角生えてるとかどうでもいいな。
6:蜂が小さいボールに入るとは驚きだぜ
※ゴブリンバットは新堂の支給品です
※羽入と軽く情報交換をしました

【アポロ@チーターマン2】
[状態]:健康、悲しみ
[装備]:ガリィ@FF11 FFW、
[道具]:カレーセット@るろうに剣心、共通支給品、不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本思考:ゲームの転覆
0:モービスの仕業か! 許さん!
1:羽入のストレスが心配ですね
2:新堂さん……
3:首輪の解除についても考えるべきですね…人材を探しましょう
4:自分の得意とする武器(弓矢・ボウガン)がほしいです。
※羽入と蜂はDr.モービスの生物兵器だと思っています。
※新堂の死体を発見しました。みさおには伝えていません。
※羽入と軽く情報交換をしました。

【古手羽入@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:不安、疲労大、全身に痣、腹部に怪我
[装備]:逆刃刀・真打@フタエノキワミ、アッー!、海賊帽子@ミュージカル・テニスの王子様
[道具]:共通支給品、うまい棒セット@現実 ヒテンミツルギ極意書@ニコニコRPG、ピーマン@星のカービィ
くず鉄のかかし@遊戯王シリーズ、モンスターボール(むてきまる)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況
DMカードセット(天使のサイコロ、悪魔のサイコロ、スタープラスター)@遊戯王シリーズ
[思考・状況]
基本思考:首輪を解除して、運命を打ち破る。
0:思考して主催の目的などを見極める
1:これからどうしよう?
2:ルガールが無事か心配
3:フランが今後どう動くかに期待と不安
4:(城之内……森乃進……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。)
※参戦時期は、皆殺し編終了後です。
※オヤシロ様としての力は使えるようですが、非常に疲労するようです。
※思いつめていて多少判断力が鈍っている恐れがあります。
※右上左上の後ろに何かがいると断定しました。
※来た世界が違う人間がいると断定しました。
※九頭龍閃を習得しました。
※ヒテンミツルギ極意書に出てきた刀と逆刃刀・真打が同一のものと気づいていません。
※くず鉄のかかしは後10時間、天使のサイコロは12時間使用不可です。
※咲夜という人物が同じような時間操作を使用すると推測しました。
※美鈴という人物がフランと知り合いであると知りました。
※戦闘力の低い一般人はイレギュラーとして巻き込まれたと推測しました
※むてきまるが九頭龍閃を習得したようです
※アポロとみさおと情報交換しました
249創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:05:00 ID:dMXOyg2x
あれ?
さるさんって支援の意味なかったっけ?

まあいいか。
以上です
指摘お願いします


修正前
 こ十分説明ができるのです。なんらかの影響というのがよく分からないけれどこの状況それ自体が訳が分からないのです。
 ならばイレギュラーとして考えた方が自然なのです。イレギュラーで意志を持った支給品。
 でもこうなるとあまりにもイレギュラーが多い……逆に出来すぎな気がする。

修正後
 これで十分説明ができるのです。なんらかの影響というのがよく分からないけれどこの状況、それ自体が訳が分からないのです。
 ならばイレギュラーとして考えた方が自然なのです。イレギュラーで意志を持った支給品。
 でもこうなるとあまりにもイレギュラーが多い……逆に出来すぎな気がするのです。
251創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:08:46 ID:IT8x/mjk
>>249
さるさんは支援の意味ありますよ〜
支援ありがとうございました

猿さんについて
http://info.2ch.net/wiki/index.php?Good-By_Monkey
252創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:18:38 ID:dMXOyg2x
投下乙です。
流し見た感じでは矛盾等は感じられないですね。
そして、皆いい感じに自重してないなw
羽入は……あれにかかる事はないと思うが、今後どうなるかな。
253創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:24:48 ID:dMXOyg2x
>>251
把握しました。
人の事言えた口じゃないんですが、最近支援を見かけなくなったので、板が変わったせいで制度が変わったのかなと。
254 ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:01:20 ID:dvzrxpt2
投下します。
255Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:02:10 ID:dvzrxpt2

館を後にしたときちくと雪歩は住宅街をまっすぐ通り抜けていた。
馬岱の元を去って以降誰とも会わなかったため、オフィスビルの目の前にすんなり到着することができた。

「オフィスビル……」

雪歩は目の前にそびえるビルを目にし、ぽつりと呟く。
外観は違っているが、自分の所属している芸能プロダクション、765プロ
自分が元いた世界でアイドル活動をしていたあの高いビルを思い出していた。
きっと765プロの中ではプロデューサーさんや小鳥さん、みんなが心配して
私たちのことを必死になって捜しているに違いない。
雪歩の頭の中に、血眼になって自分たちを捜しているプロデューサーたちの光景が
ありありと浮かんできた。

「絶対に、帰らないと……」

雪歩は今にも出そうな涙をおさえる。今は泣いてる時じゃない。
この殺し合いで優勝して、今までのことを無かった事にする。
雪歩は崩れそうな決意を必死にとどめながらときちくへ話しかける。

「ここを調べるんですか?」

雪歩の問いかけにときちくは軽くうなづく。

「ああ、だがその前に」

ときちくは馬岱から奪ったデイバッグの中にあった紅白のボールと
奥に入っていた説明書を取り出す。

「それって……」
「説明書によると、この中に何が入っているそうだ。確かめる」

ときちくはボールを地面に向かって
するとボールが、割れ――――



             /  ̄ ̄ \
             /         ',
               l <に)> ,r─┴-、
            /l      ー‐┬‐ノ
           /,/丶        , '
.         /,/   /` ー--‐ く
      /,/   ,/ムヘ /\/ヽ 〉
   / /    /,/  ヽT) (Tハ
  〈_,/    / / , ヘ \_ノ  ヘ
          ヽ// /  │    ',
         ∧ /      |     l
          l  ヽ     │    │
           │ │ l  l  |  l  l│
            |==| ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l´|
            |==| ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l´l
           ` ̄` ̄| | ̄ ̄| | ̄ ̄
            ⊂ニ二二> <二二ニ⊃


中から鳥のような奇妙な生物が現れた。

256Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:02:54 ID:dvzrxpt2
「……………」

あまりの奇怪な生物の登場に2人は沈黙し、辺りに重たい空気が流れ始めた。
それを感じ取ったのかボールから飛び出してきた生物は
明後日の方向を見ていた目線を、彼らに向けた。


             /  ̄ ̄ \
             /         ',
               lに)>,r─、<(こjl
            /l   ー、,r-   l
.            / /丶        ハ
.            / / /` ー--‐ くヘ l
           / / /ムヘ /\/ヽ 〉l l
         / / /,/  ヽT) (Tハ l
       〈_,/./ / , ヘ \_ノ  ヘ,j
          ヽ// /  │    ',
         ∧ /      |     l
          l  ヽ     │    │
           │ │ l  l  |  l  l│
            |==| ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l´|
            |==| ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l´l
           ` ̄` ̄| | ̄ ̄| | ̄ ̄
            ⊂ニ二二> <二二ニ⊃


「「こっち見んな」」


ときちくと雪歩のセリフがシンクロした瞬間だった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
257創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:03:15 ID:GRYlAt4T
ネイティオwww支援
258Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:03:41 ID:dvzrxpt2


結局ときちくは鳥の生物、ネイティオをすぐにボールの中に戻し
オフィスビルの内部は2人で探索することになった。

自動ドアをくぐり、2人はビルへと入る。
玄関のフロアが最初に2人の目の前に現れたが、そこには人の気配がまるでなかった。
朝の陽射しがオフィスビルの内部を照らしているものの
それでも人の気配がないこのビルの中は少々無気味であった。

「誰も、いませんね……」

雪歩はオフィスビル内をきょろきょろと見回しながらつぶやく。

「そうだな、この探知機にも反応がない。このビルに潜んでいる奴はいないようだ」

ときちくはデイバックから取り出した首輪探知機を見ながら雪歩にこたえる。

「あの、そうじゃなくてオフィスビルで働いてる普通の人たちがいないってことなんです」
「そんなもの、殺し合いの場に参加させられている奴らとの
区別がつきにくくなるだろ。勝手に動き回られても向こうとしても不都合だろう」

ときちくは呆れたような顔をしながら雪歩を見る。

「そうなんでしょうか……?」
「そういうもんだろ。ほら、次の階へ行くぞ」
「はい……」

ときちくと雪歩はオフィスビルの階段を上る。
上の階の廊下へとさしかかった時、突然ときちくは足を止め、立ち止まった。

「ときちくさん……?」

雪歩はときちくに何があったんですかと尋ねる。

「この階から血の臭いがした」

ときちくは警戒しながらゆっくりと歩みを進め、血の臭いが漂ってくる部屋の扉を開ける。

「やはり、か。鉄の臭いがしたと思ったら……」

ときちくが開けた部屋の中には血の海を作り
部屋の壁に死体がもたれかかっていた。
259創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:04:33 ID:GRYlAt4T
こっちみんなw
260Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:04:43 ID:dvzrxpt2

「うっ……うぅ……!」

雪歩は自分の胃の中から一気にこみ上げてくる物を両手で必死に抑える。
ときちくは慎重に、倒れている人物へと近づく。
倒れている人物に触れると氷のように冷たく、すでにこと切れていたのは明白の事実であった。

「…………」

ときちくはまじまじと男の遺体を見つめる。
胸に銃創の他に、喉元に何か棒のようなものを押し付けられていた跡が見つかった。

周りに血が飛び散っていないことから、この男は棒のようなものを喉に押しつけられて
衰弱したところを銃で撃たれ、それが致命傷になったのだろう。

ときちくは、男の死体の顔に目を移す。
四角い顔の輪郭、への字に曲げている口……。

「また……か…」

ときちくは放送で囲炉裏の名を聞いたときのような感情におそされた。
ついさっき死体として初めてあったはずだというのにときちくは
この男のことを何故か知っていた。

「―――――!?」

ふと、ときちくは男の方を見ていた顔をあげる。
突如とちきくの脳裏に目の前の男が壇上に上がり、何かを話している場面が浮かんできたのだ。

「これは……」

261Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:05:30 ID:dvzrxpt2

『日本人の底力、甦らせなくてはなりません』


『私は決して逃げません。私は決して悲観しません』


「くっ……!」

ときちくの頭の中で男のセリフが断片的に流れ続ける。
それにつれて頭痛がどんどんと大きくなっていく。

「ときちくさん、どうしたんですか……?」

雪歩はときちくの異変に気付き、声をかける。
しかし、ときちくは頭痛のおさえるのに精一杯で
雪歩に声をかけることすらままならなかった。

『日本人の力をどこまでも信じて疑いません』

「くっ……うぅ……」


男が演説するにつれてときちくの頭痛はひどさを増していく。
ときちくは思わず頭をかかえる。


『とてつもない国日本』


鐘を鎚で打ち鳴らすかの如く頭痛による痛みは激しくなる。
ときちくはもはや立っていられず、崩れゆくように膝を着く。

「とちきくさん!!」

雪歩は思わず駆け寄って今にもその場に倒れそうなとちきくを支える。

「大丈夫ですか?ときちくさん」

「あ、ああ……大丈夫だ……少しだけ目まいがしただけだ」

ゼェ…ゼェ…荒い息をしながらときちくは答える。
262創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:08:19 ID:GRYlAt4T
ゆきちく支援
263Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:09:00 ID:dvzrxpt2

「突然倒れるなんて、ときちくさん疲れてるんですよ。どこかで休みましょう」

「だが……」

ときちくの言葉は間髪をいれずに雪歩にさえぎられる。

「ときちくさんがいなくなったら、私どうしようもなくなっちゃいますよぅ……。
お願いです。少しでもいいんで休んでください」

雪歩はときちくの体を肩にかつぎ、部屋を後にする。

雪歩に支えられながらときちくは混乱する頭の中を整理していった。

(あの男の顔を見た時、俺の頭の中にあの男の演説と2つの言葉は浮かんできた。
「麻生太郎」……「総理大臣」……一体何なんだ、この2つの言葉は。
俺は何故奴のことを知っている……何故、知りもしないあの男の死を悲しんでいるんだ……)

考えれば考えるほど頭痛は鳴りやむことはなかった。
痛みに苦しむ中、ときちくのまだ頭の中ににふと一つの疑問が浮かんできた。
それは突拍子もなく、今まで自分がまるで思いもしなかったことだった。


(俺は一体誰なんだ?)


その頭の中の答えをくれる者は誰もいなかった。
答えるのは頭の中でいまだに鳴り響く頭痛だけであった。


【A-1 オフィスビル内/一日目・午前】
【ときちく@時々鬼畜なゲームプレイシリーズ】
[状態]:健康、精神疲労(中)記憶の混乱?(思考は正常) 少しの苛立ち
[装備]: ナイフ×3、包丁×3、ブレード@サイべリア フライパン
[道具]:基本支給品*3、フライパン、フォーク、張遼の書@ニコニコ歴史戦略ゲー 、
首輪探知機(残り52分) 銃(14/15)@現実、モンスターボール(ネイティオ)@ポケットモンスター
【思考・状況】
1:オフィスビル内のどこかで休む
2:囲炉裏……麻生太郎……?
3:雪歩を利用する。
4:自分からは殺さない。
5:絶対に生き残る。
6:自衛のための殺害は已む無し。

【備考】
※七夜志貴と十六夜咲夜の姿を確認しました。名前は知りません。
※元世界の知識はかなり封印されていましたが、少し解けたようです。
※囲炉裏に関しては今は『知っている』という程度だけです。
※ローゼン閣下(麻生太郎)に関することがフラッシュバックしました。
※元々の能力などのせいで他の参加者に比べ疲労が激しいようです。
※自分の記憶がおかしいと自覚しています。
264Chain of Memories ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:09:47 ID:dvzrxpt2
【萩原雪歩@THE IDOLM@STER】
【状態】:健康、精神疲労(小) 、決意
【装備】: コアドリル@天元突破グレンラガン
【道具】:ナイフ(血で濡れている)、支給品一式×2(水少量消費)ジャージ@へんたい東方 
     デスノート(鉛筆付き)@デスノート

【思考・状況】 基本思考:優勝して全てを元通りにする。
1:オフィスビル内で休める場所を捜す
2:優勝して全てを元通りにする。
3:ときちくについていく。
4:死にたくない。
5:殺すのは辛いけど、頑張らなきゃ……。
※ルイージのデイパックは雪歩が持っています。


【モンスターボール(ネイティオ)】
せいれいポケモン。なんとも言えない表情の鳥のようなポケモン。
神々しいデザインがあいまってネイティオは大変なトゥートゥーや
東方ネイティオフェイスではもはや宗教に近い物となっている。
またトゥートゥーと鳴き、それがあだ名となっている。

‐取得している技-
・サイコキネシス:強い念力を相手に送って攻撃する。
・リフレクター:味方全体に物理攻撃によるダメージを軽減させるバリアーをはる。
・テレポート:最後に訪れたポケモンセンターにワープするわざ。
        このロワでは施設に訪れた施設に飛ぶ。
・ひみつのちから:場所によって追加効果が変化する技。
265 ◆BRxsUzTn5A :2009/04/03(金) 23:10:33 ID:dvzrxpt2
投下終了です。疑問点・問題点などありましたらレスをお願いします。
266創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:14:07 ID:GRYlAt4T
投下乙です
ネイティオktkr
ゆきちくで何か和んでしまった…
267創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:18:02 ID:DuI9IUeF
投下乙。
ネイティオは支給品ポケモン初の出展元トレーナー無しかな?
ネイティオに限らずポケモンたちには頑張ってほしいなぁ

トゥートゥー
268創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:21:51 ID:Wbaa4I7s
投下乙!
トゥートゥーwww俺の金のメインメンバーに居たなそういや。ゆきちくはまさしく今ロワの名コンビ。異論は認めない。
羽入…ここまで来るとカワイソス(´・ω・)アポロ(CV.子安)とみさおも面白くなってきた!
つまり、
も り あ が っ て ま い り ま し た 
269 ◆F.EmGSxYug :2009/04/04(土) 00:03:31 ID:3ek2Dsrh
ブロリー、ルガール、美希、投下します。

草原の上に、太陽が昇りつつある。
例え殺し合いの場であろうと、日光は平和に、平等に人々の上に降り注ぐ。
だが……日光が照らしているものの一つ、
デパートの中で吸血鬼が大惨事を起こしているのは外の人間には知る由もない。
宇宙そのものを破壊しつくす、悪魔でさえも。

「どういうことだァ……これは?」

F−3の草原に降り立ったブロリーが、呟きながら立ち尽くす。
元々ブロリーは頭のいいほうではないし、瞬間移動という概念も無い。
ブロリーのスピードならば、普通に移動しただけで瞬間移動するように相手は見える。
宇宙空間ですら生身で移動できる彼にとって、ワープなどという事象は未経験だった。
ましてや相手を無理やりテレポートさせるような道具など、想像の範疇外である。
ただ分かるのは、獲物に逃げられたということ。

「……チッ」

舌打ちをしながら、首を動かす。周囲に人影は見当たらない。
その姿はとうの昔にスーパーサイヤ人でなくなっていた。
ブロリーの実力ならば、一日中スーパーサイヤ人の状態を保つことも可能だ。
それが戻っているのは、戦闘を強制終了され興冷めしたから。
川に下りて水を舐める。塩辛くは無い。つまり、淡水。
ならば、EかFのどこかであるとはブロリーにも見当が付いた。
様々な惑星を旅した身分だ、それくらいの知能はある。逆に言えば、そこまでだが。

「もう終わりか……」

戦いが強制終了したことで、更にブロリーの苛立ちは募る。
その視界にあるのはすぐ側にある建物、デパート。
いっそあの建造物を破壊しつくそうか――
そうブロリーが思考しかけた矢先。

「む?」

その視界の端に、ふと何かが移る。動くものが。
それがあったのは、川。当然、彼の興味はそこへと移る。

そう。時間帯にして、デパート内部でフランドールが暴れている頃は。
その時間帯は、ルガールが川に流されている頃でもあった。

「……クククッ」

ブロリーはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、歩き出す。
幸運だったのは、デパートの中にいた者達。
彼らが外に出る前に、ブロリーは興味を失ってその場を離れていたのだから。
不幸だったのは――ブロリーの興味を引き、追跡されることになったルガールである。


271創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:04:50 ID:xc7g6SYA
支援玉になっちゃえー!

「しゅーぞーさんは無事なのかな……」
「……待ちたまえ」

ルガールが、突如警戒を顕にして荷物を置く。
美希が呟くと同時に、遠くで何かが震えたような音が響いたのだ。
距離の関係上、河のせせらぎと変わらない程度の音量ではあったが……
それはルガールの警戒レベルを一気に最大まで押し上げて余りあるものだった。

「どうしたの?」

まだ疑問符を浮かべたままの美希に、ルガールは答えない。その表情は真剣そのもの。
感覚を最大限に引き締めたルガールの耳に、
ブロリーの足音が響き始めるのはそう時間が掛からなかった。
そして、二人の目の前にブロリーが姿を現すのも。
ルガールから数十メートルほどの所まで来たところで、ブロリーの足が止まる。
その表情にあるのは、露骨な戦意……いや、殺意だった。
ブロリーが危険人物だとはルガールには言葉を交わすまでもなく分かることだったが、
それでも念のために声を掛けた。

「……先ほどの音の主は君かね。
 ただ動くだけで騒音問題とは、運送した時はどうなるか気になる所ではあるな」
『……気をつけろ。こいつはただの人間ではない』
「見れば分かる……!」

ディムロスの言葉に、そう返すルガール。
あらゆる格闘技と運送技に精通する彼にとって、相手の資質を見抜くことなど容易い。
勝てるかどうかは、別問題だが。

「私の名前はルガール・バーンシュタイン。運送会社の社長を務めている。
 よろしければ、君の名前もお聞かせ願いたいな」
「ブロリー、です……」
「こんにちは〜。
 私は美希って言って、アイドルを……」
「……下がりたまえ、美希君」
「え?」

自分も自己紹介をしようと前に出た美希を、ルガールの腕が制止する。
同時にブロリーとルガールの視線が交錯した、刹那。


「フン!」
「烈風拳!」

一気に突進を開始した剛体へ、地を這う気弾が衝突する。
だが、ブロリーは微動だにしない。突進が止まるどころか、減速すらしない。

(烈風拳で怯みすらしないとは……だが!)

相手の頑丈さに流石のルガールと言えども驚いたが、既に次弾は撃ってある。
烈風拳が巻き起こした土煙の中を変わらず突進するブロリーの身体に、
続いて放たれていた宙を飛ぶ気弾、カイザーウェイブが着弾した。
更に煙が舞い上がる。依然ブロリーは止まらない。
だが視界が隠されたその隙に、既にルガールが猛進している――!

「――運送!」
「ヌァッ!?」

ブロリーの巨体が一瞬にして動いた。首に叩き込まれたルガールの腕によって。
吹き飛ばされたのではない。文字通り、「運ばれた」のだ。
ラリアットをぶつけた相手を放さず、そのまま一気に叩きつける。
これぞルガール運送の代表技、ゴッドプレス――!

……だが、素人である美希でさえ、明らかな異常に気付いた。
運送していたルガールが止まる。まるで押し負けたかのように、その勢いが消える。
その表情が苦痛に歪んでいるのは……ブロリーではなく、ルガール。

「ルガールさん!?」
「美希君、私の荷物を持ってここから離れたまえ……
 どうやらこの男は、容易く運ばせてくれないようだ」

274創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:06:41 ID:xc7g6SYA
天は我に支援せり

ルガールの顔に、汗が滲む。
その腕は、ブロリーの顔に当たってはいない――
ブロリーの手が、その寸前でルガールの腕を握り締めていたのだ。
故に、ゴッドプレスは止められた。ブロリーの豪力によって。
そしてその圧力に、ぎちぎちとルガールの骨が悲鳴を上げている。
いかにルガールといえど、涼しい顔をしていられる状態ではない。

「早く行きたまえ!」
「は、はい!」

慌てて走り出す美希。
それを目で追いながら、ブロリーがにやりと笑う。

「他人の心配をする前に自分の身を心配したらどうだ……?」
「言ってくれる!」

ルガールの脚が垂直に蹴り上がる。過たず、それはブロリーの顎にヒットした。
だが、その身体は揺るぎもしない。

「その程度で……」
「――ハッ!」

瞬間、上がりきった脚が今度は振り下ろされた。
まるで重力ごと上下反転したような踵落としが、脳天に突き刺さる。
これは予想外だったのか、さしものブロリーも怯む。
その隙にルガールは拘束から逃れ、距離を取っていた。

「どうした? 辛そうだぞ……」
「ふん。
 その言葉、そっくりそのまま返させて貰おう――カイザーフェニックス!!」

言葉と同時にルガールは両腕を広げ、構える。
そして前方に腕を突き出すと共に撃ち出される無数の気弾……!
次々と着弾する。場が土煙に覆われる。
数秒後経っても、ルガールは撃つ手を緩めず、ブロリーもまた煙から出てこない。

――少しは効いたか?

そう、ルガールは思考しかけ。

「クククッ!!!」

そして、それは正解ではないと思い知らされた。
スーパーサイヤ人にすらなっていないブロリーが、
口から流れた血を舐めつつ煙の中から現れる。先ほどとは完全に逆の立場。
それに反応する余裕はない。かろうじて、出てきたのが視認できただけ。
煙でルガールの視界が潰れていた隙に、ブロリーは最高速に達していた。
巨腕がルガールに直撃し……直後、ルガールの背中に衝撃が走る。
最高速で飛行したブロリーが、坂までルガールを運送していた。
その威力たるや、まるで隕石が落ちてきたようなクレーターが出来るほど。
無論、中心部にある隕石はルガールである。しかし。

「ほぉ……?」

ブロリーの腕もまた、直撃していない。ルガールの腕に止められていた。
……そう、立場は完全に逆だ。運送が止められることまで、含めて。
スーパーサイヤ人にすらなっていない上、
何重にも制限が掛かっているブロリーの攻撃を止められないほどルガールは弱くはない。

「レディは丁重にもてなすのがマナーというもの……
 君のように粗野なだけの運送は見逃すわけには、いかん……!」
「時間稼ぎか。そうかそうか……
 ちゃんとアイツが逃げ切れるといいなァ……?」

そう呟いて、ブロリーはルガールから離れる。
そのままクレーターから抜け出す暇も与えずに、気弾を一つルガールへ向けて放つ。
とっさにガードを固めるルガール。だが、気弾は、その目前で止まった。

「な……?」

ルガールが疑問に思った瞬間、その気弾は反転して宙を舞う。
思わず目でその動きを追い……先にあるものに、思わず息を詰まらせた。
気弾が新たな目標として追跡しているのは……橋を渡っている最中の、美希。

「いかん、美希君、逃げ……!!」

叫ぼうと、もう遅い。
過たず橋に着弾した気弾は爆発する。そこに情はなく、隙もなく。
……まるで埃を払うかのように、美希を上空へと吹き飛ばしていった。

「ククク、ハハハハハハ、ハーハッハッハッハ!!!」

高笑いを始めるブロリー。
ブロリーはただ相手を殺すことをよしとしない。一撃で即死させず手加減していたぶり、
或いは相手ではなく大事なものを狙い、目の前で奪い去る。
故に悪魔。全宇宙を殲滅しつくす、悪魔の権化である。

「……そうか、君の性分はよく分かった」

それを目の前にして、ルガールは静かに立ち上がった。
非戦闘員を安全な場所に逃がすというのも、ある意味「運ぶ」という事象だ。
しかし、ブロリーの気弾によって美希は吹き飛ばされ、空へと運ばれた。
どちらも運送と取れなくも無い……
だが、荷物を粗雑に扱う運送などルガールが認めるはずも無い。

「――ならば、こちらもそれ相応の運送でやらせて貰おう!」

そう叫ぶと同時に服の一部が弾け飛び、金色の髪が銀色に染まる。
引きちぎった眼帯から現れるは、赤く染まった眼。
……殺意の波動と暗黒パワーの両方を全開にした状態。
人は今の彼の姿をこう呼ぶ――ゴッド・ルガールと。
それに只ならぬものを感じたか、ブロリーは笑いを止め。

「ンンンンンンゥ……
 ハァァァアアアアアアアア!!!

金色の閃光が走る。ブロリーにもまた、変化が訪れる。
黒色の髪は金色に逆立ち、その身に纏うは黄金の炎。
……戦闘力が通常の50倍まで上昇する、スーパーサイヤ人の姿。
ブロリーは破壊衝動のままに宙へ飛び上がり、敵目掛けて急降下を開始する。
自分以上の変化を見ても、ルガールは冷静だった。
降りてくる――否、落ちてくる相手へ跳び上がり、足を振り上げる!

「ジェノサイドカッ!!!」

その脚は華麗な円を描く。まるで吸い込まれるように、ブロリーの額に打ち込まれる。
だが……ブロリーは怯むどころか、それを受けて寧ろ笑みさえ浮かべていた。

「ぬあっ!?」

ブロリーの拳が、ルガールに直撃する。
吹き飛ばされ地面に倒れこむ相手の頭を、更に容赦なく掴み叩きつける。
割れた。ルガールの頭ではなく、コンクリートで補強された川岸が。
そのまま地面ごと水へと叩き込もうとする直前、ルガールが消えた。

「はっはァ!」
「ヌゥ!?」

いつの間にかブロリーの背後に回りこんだルガールが、首へと回し蹴りを叩き込む。
ゴッドレーン。阿修羅閃空と対を成す、殺意の波動による移動術。
だが。必殺の意図で放った蹴りは、傷一つさえも負わすことができていなかった。

「ちぃっ……がッ!?」

蹴りの勢いを残したまま、右拳を叩き込もうとするルガール。
しかし、その腹部に強烈な裏拳がカウンターでめり込んでいた。
まるでボールのように吹き飛ばされ、川岸に叩きつけられる。
それも美希が渡る予定だった向かい側の岸まで、放物線すら描かずに。

「ヌゥ!?」

とっさに両腕で受け止めると同時に、土煙の中からルガールが現れる。
その周囲を覆っているのはダークバリア。飛び道具を反射する防護壁。
飛び道具である限り、このバリアの前に反射されるという理を覆すことは出来ない。

「チ、厄介なものを……」

舌打ちをしながらも、川を跳び越してルガールへ迫るブロリー。
その首に、再びルガールのラリアットが直撃した。
前回と違うのはガードされていないこと、そして勢いが段違いであること。
勢いのままルガールは荷物ごと川を跳び越し……対岸へと相手を運送する!

「ぬぁぁぁああああああ!」

烈昂の気合いと共に、ルガールは元いた北側の岸へブロリーを叩きつけた。
ただ相手を坂にぶつけるだけでは飽きたらず、同時に暗黒パワーが迸る。
巨大な爆発と共に坂が崩れ、その中にブロリーもまた埋もれていく。

ギガンティックプレッシャー。
ルガールの誇る運送の極致が、伝説のスーパーサイヤ人を地中へと運送した。

「……ぐ……力を使いすぎたか……」

頭を抑えよろめきながらも、なんとか後退するルガール。
暗黒パワーと殺意の波動、その両方を顕在化させた今の状態は極めて不安定なものだ。
攻めているうちはいいが、一度戦闘不能に追い込まれればそれで終わり。
致命傷を追っていなくとも、自分の過剰な力に飲み込まれ死ぬ。
疑うまでも無くルガールは消耗している。だが、休もうと膝を折るわけにもいかない。

太陽がしっかり身体を照らしているというのに。
まるで殺気を当てられているがごとく寒さを感じるというのはどういうことか。

「……ここまで来ると逆に興味深いものだ」

しばらく後、予想通りの物を見ると同時にルガールは吐き捨てた。
目に映っているものは言うまでもない。崩れ落ちた土砂の中から姿を現した、ブロリーだ。
その姿は、一筋頭から血が流れているだけで……傷は見えない。

「少々しつこすぎるな、君は」

息を荒げながら、呟く。
流石のルガールと言えども、辟易せずにはいられない頑丈さ。
だが諦めるわけにはいかない。賭け金は、自分の命だけではないのだから。

280創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:10:02 ID:xc7g6SYA
支援スピリッツ

「い、いったーい……」

美希は生きていた。地面に倒れこんでいるが、大した怪我は無い。
理由は二つ。
ゴムゴムの身の能力と、美希を攻撃したときのブロリーがスーパーサイヤ人でなかったこと。
彼女は空へと吹き飛ばされ、勢いがなくなると共に今度は地上に落ちたが……
単純な上昇・及び落下ならあくまで打撃。ゴムゆとりである今の美希なら耐えられる。
もちろんゴムにも伸びる限界がある以上、吸収しきれる打撃に限度はある。
その点は、ブロリーがスーパーサイヤ人状態でなかったことに助けられた。
もっとも尖った小石による擦り傷などは、さすがに耐えられないが。
それでも、痛みを堪えて美希は立ち上がる。

今彼女がいるのは、F-4とF-5の境界上。
あの土煙の中でルガールが美希の無事を確認できたことは偶然だった。
自分から姿を現し対岸へ運送したのも、ブロリーの注意を自分へと向けるためである。
そんなことは美希には分からないし、助けられたことさえ分かっていない。
分かっていないが、とりあえず自分がこの場にいてはルガールの邪魔になることは分かった。
だから走る。逃げるのではなく、ルガールを助けようと。

「しゅーぞーさんでも誰でもいいから……早く……!」

誰か、戦える人を連れて来るために。

【F-4とF-5境界線上 /1日目・昼】
[状態]:ゴムゆとり、全身に擦り傷、疲労により熱血沈静化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×3、モンスターボール(おにぽん)@いかなるバグにも動じずポケモン赤を実況、
新型萌えもんパッチ@ポケットモンスターで擬人化してみた、ねるねるね3種セット@ねるねるね、
 ディムロス@テイルズオブデスティニー、不明支給品*0〜2(武器はない)
[思考・状況]
1.人は殺したくないの。
2.雪歩を探すの。
3.誰かルガールさんを助けてくれる人を探すの。
4.ゲームに乗らず、人を殺さずゲームを終わらせるために、首輪を外すの。
5.レッドさんの言うこともわかるの。悪い人とあったら説得できるの?
6.しゅーぞーさんが絶対に来てくれる事を信じるの。
7.でぃおさんに謝ってもらうの。もし襲ってきたら……
8.ルガールさんは良い人なの。ディムロスさんは剣なの。
9.水は怖かったの。
※ゴムゴムの実@ワンピースを食べました。能力者になったことに少し気がつきました。
※サンレッドをヒーロー役の俳優だと思っています
※ルガール、ディムロスと情報交換しました。

282創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:15:20 ID:xc7g6SYA
どうした!?
283創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:38:02 ID:qfHwVYjn
さるさそ?
284創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:38:17 ID:2OKssZex
264のテレポートの説明文が「施設に訪れた施設」と意味不な文になってるな
「最後に訪れた施設」が正しいと思う
後投下乙
285創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:39:57 ID:qfHwVYjn
とりあえず代理糖かします

311 名前: ◆F.EmGSxYug[sage] 投稿日:2009/04/04(土) 00:15:38 ID:6uCdXFjw0
例のごとく猿に妨害工作喰らったのでこっちに投下。
死ねばいいのに……猿……

312 名前: ◆F.EmGSxYug[sage] 投稿日:2009/04/04(土) 00:16:08 ID:6uCdXFjw0

巨腕が振るわれる。掠めるだけで並みの人間は死ぬそれを、ルガールは掻い潜る。
ブロリーの攻撃は何の技術も無い。素人がただ適当に腕を振っているのと変わらない。
――ただ、その速度がとんでもないものである、ということを除けば。
ブロリーは何一つ技術と言うものを知らないし、知る必要も無かったのだろう。
生まれ持ったものだけで、ブロリーは星を破壊できるのだから。
故に、ルガールがブロリーに勝るのはたったの二つ……技術と知識だけであり、
それがこの闘いにおける、か細い命綱だった。
懐に潜り込んだルガールの左腕が、ブロリーの首に叩き込まれる。
もう何十と繰り返したのに、ブロリーは意に介していない。
それどころか、ルガールの方が疲労で速度が鈍化し、後退が遅れている始末。
――左拳を、掴まれた。

「ぐ……あ!」

苦悶の声が漏れる。
ブロリーが手を握ると共に、その中にあったもの……ルガールの左拳が握り潰された。
それでも痛みを堪え、左手をぐちゃぐちゃにしながら後退する。
……理不尽極まりない勝負だ。
ルガールはいくら殴ろうとブロリーに傷を負わせられず、
逆にブロリーの一撃は甚大なダメージを負わせる。
これを理不尽と呼ばずなんと呼ぼう。
もちろん相手は腹部が弱点な事くらい、とうの昔にルガールにも分かっている。
だがブロリーは、腹部を意識してガードしている。それを掻い潜るのは容易ではない。
もちろん、ゴッドレーンで背後に回ることはできる。
できるが、そこから腹部を狙うのは位置的に無理だ。

(……すまんな、息子よ。この腕ではもう運送は引退のようだ。しかし!!!)

だからこそ、狙いは首。或いは首に巻かれたモノ。
元々自分の肉体の頑強さに任せ、ガードをしないのがブロリーの性分。
更に腹部を意識しているため他の部分はがら空きになっている。

(首輪を付けている以上は、これを爆発させれば殺せるはず!)

美希を逃がした後、ルガールは執拗にブロリーの首を狙っていた。
それも、左側の一点。同じ地点に、何度も何度も寸分違わず……
そう、文字通り一寸のズレもなく衝撃を与え続けてきたのだ。
恐らく、首、あるいは首に巻かれたモノの負荷は相当なものになっているはず。
その負荷を顕在化させる一撃を叩き込むべく、ルガールは突進を開始する。

313 名前: ◆F.EmGSxYug[sage] 投稿日:2009/04/04(土) 00:16:56 ID:6uCdXFjw0

「無駄なことを……今楽にしてやる……!」

右腕が、風より早く追ってくる。
それを寸前で避けて、ルガールは右へと走った。ブロリーはそれに反応できない。
今までルガールは左に動き続けたが故に、そちらに目を慣らされている。
懐に潜り込んで放つはラストジャッジメント。
左拳を失った故に連打数は落ちているが、構わない。
一足速く自分の腹へと守っているブロリーの左腕も、構わない。
それらを無視し、全ての打撃を右首に撃ち込む。
286創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:40:55 ID:qfHwVYjn
それらを無視し、全ての打撃を右首に撃ち込む。
その位置は、今まで打ち込んだ一点の正反対側。
衝撃は散々撃ち込んできた左側へと伝わり――累積したダメージが首を砕く。
あるいは首に巻かれたモノの耐久力が限界に達し、爆発する。

その、はずだった。

ブロリーの首から、血が流れ始める。
その首に巻かれたモノにヒビが入り始める。
だが――それだけだ。

「キサマァ……!」

砕けたのは、ルガールの甘い予想。
首が砕けているのなら、残っているのなら……声など出せるはずが無い。

(首は折れず、爆発もしない……か……)

冷えこんだ思考でそう呟いたルガールの身体に、蹴りが叩き込まれる。
それで肋骨どころか、胃が粉々になった。血が逆流して吐き出される。
更に倒れこむその顔を掴み、その身体を持ち上げるブロリー。
思わず、ルガールは笑った。あまりもの力量差に、笑うしかなかった。
同時に――零距離でブロリーの気弾を撃ち込まれた体が、爆発した。



314 名前: ◆F.EmGSxYug[sage] 投稿日:2009/04/04(土) 00:18:00 ID:6uCdXFjw0

ルガールは知らない。ブロリーの首に巻かれたモノは首輪ではないことに。
首に巻かれていたのはリミッター。それが損傷したのだ。
万全な状態ならばともかく、損傷した状態でいつまで無事にブロリーを抑えられるか。
リミッターは常時、ブロリーの強大な気の奔流に晒されているのだ。
もし耐え切れず砕け散れば、それはブロリーの制限が一つ減るということを意味する。
もっとも、ブロリー自身もそんなことには気付いていないが。

「……ハ、アアアアアアア」

傷ついた首を抑え、苦しげに息を吐き出すブロリー。
ルガールの攻撃は致命傷に至らないとは言え、ダメージとしては十分だったのだ。
ブロリーに四重の制限が掛かっているとは言え、
一対一でダメージを与えられただけでもルガールは賞賛に値する。
彼が与えた衝撃は、首を砕くには至らずともしっかりと累積していたのだ。
自らに走る痛みに、ギリ、とブロリーは歯をかみ締める。

「舐めた真似を……
 いいだろう、あの女もすぐに貴様の所へ送ってやる……!」

轟音を響き渡らせて、ブロリーはその場を飛び去った。目指す先は、当然南。
……そう。ブロリーもまた、美希が無事だったことを確認していたのだ。
ただしこの場合は偶然ではなく必然。
遠くの星に気弾を撃ち込むブロリーの視力は、半端なものではないのだから。




沈んだ神が行った行為は、悪魔を倒す一助となるのか。
或いは、神の死を糧として悪魔は更に拘束を引きちぎるのか。
それはまだ、誰にも分からない。
287創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:42:16 ID:qfHwVYjn





【F-4 橋 /1日目・昼】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】疲労(中)、全身に軽い怪我、右足首骨折 、腹に深刻なダメージ、
  首にダメージ(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1〜3
【思考・状況】
[基本思考]全てを破壊しつくすだけだぁ!
1:ルガールへの怒りが収まらないので、美希を殺す。
2:腹の攻撃を極力避ける。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが小破しました。今後、壊れる可能性があります。

【ルガール・バーンシュタイン@MUGEN 死亡】

315 名前: ◆F.EmGSxYug[sage] 投稿日:2009/04/04(土) 00:18:30 ID:6uCdXFjw0
投下終了。誰か代理投下お願いします。
288創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:43:44 ID:qfHwVYjn
>>286の冒頭はミスです、すいません
289 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 00:45:13 ID:xc7g6SYA
投下乙!
社長…格好良かったぜ…アンタ…
遂にMUGEN勢が残り一人か…(笑)に期待しよう
俺も投下します。
290エチゼンとバンパイア ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 00:46:35 ID:xc7g6SYA
先程の闘いから数分後。
まるでそれが無かったかのように静まった病院に、越前とDIOの靴の音が響く。
越前の手には暗躍する吸血鬼に騙され動かぬ人形となった―――、翠星石が抱えられており、腹部には大きな傷痕が刻み込まれていた。
それに感化されたのか、二人は無言のまま、廊下の奥の部屋に入っていく。

「…これでいいなぁ」

越前は動かなくなった翠星石を慎重にソファーに寝かせる。
華奢で小さな体に刻み込まれていた斬られたであろう跡が、その生々しさを物語っていた。

「…すまない。私がもう少し周りの気を配っていたら…」
「いや、俺が無力だからぜぇ。せめて…せめて銃とかの武器があれば、ああはならないんだがなぁ」

支給品らしき布で汗を拭きながら、手をぶんぶんと振って越前は否定する。
DIOはそれを聞き、「完璧に自分を信用している」と改めて確認し、内心あざ笑う。

「…ところで」

越前がDIOに対してまた口を開く。

「…なんだ?」
「俺に、翠星石を見させてほしいんだ」
「は?」

つい、DIOは目を点にして、抜けた声で答える。

291創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:47:08 ID:2OKssZex
これが本当の投下乙かwww
ルガール・・・がんばったぞ!首輪・・・どうなるか期待だ
そして美希死ぬな!
292エチゼンとバンパイア ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 00:48:30 ID:xc7g6SYA
DIOの目が点になるのも無理では無い。
既に死んだ、いや壊れた翠星石を見て、何になるのだろうか。
…持て余していた性欲等の類いを、翠星石にぶつけるのだろうか。
おもわずDIOらしくない「?」を頭上に浮かべる。

「いや、流石にこのままじゃ可哀想だからなぁ。
俺も一応医者だし、せめてこの大きな傷以外の小さな傷とかを治してやろうかと思って」
「…言いたくは無いのだが、既に動かなくなった彼女を何故そこまで…」

まさかの返答に少し戸惑いながらもDIOは越前に尋ねる。
越前は翠星石を見ながら、答える。

293創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:48:42 ID:qfHwVYjn
支援
294エチゼンとバンパイア ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 00:49:25 ID:xc7g6SYA
「いつ死ぬか分からない、そんな場所で俺は生きてきたんだぜぇ。
常に自分の側には人間だったものがあって、そして俺も敵をその〈だったもの〉にしていったんだぁ。
たくさん仲間も死んでいったさ。
でも別にその場に死んだ奴らの家族とかが居る訳じゃないし、そこまで気にはしていなかったんだぁ。
でも翠星石は違う。翠星石は一緒に居た賀斉を昔からの仲の様に喋っていて、楽しそうだった。少なくとも俺は、翠星石をこんな姿で賀斉や越前に見せてやるなんて出来ない。
自己満足かもしれないけど、頼むぜぇ」

越前は顔つきを鋭くして、DIOの方を向き頭を下げる。
DIOは顎に手を当てながら、少し黙った後言う。

「…分かった。翠星石を任せる」

DIOの言葉に越前は顔を上げ、DIOの手を握る。
正直嫌だったのだが、表には出さず、笑顔で頷く。

「…ところで私はどうしておけばいいかな?」
「すまないけど、部屋の外に居てほしいんだぜぇ。
少し時間かかるだろうし、同じ部屋にDIOをずっと居させるのは気の毒だしなぁ」
「いや、構いはしない。私もここに居させてもらうよ」
「そうかぁ…じゃあ構わないぜぇ。あ、それと」

突然ディパックを開け、越前は何かの機械を取り出し、DIOへ投げる。

「PSPっていうゲーム機だぁ。変なデザインだけど、暇潰しにでもやってみてくれぇ」

PSPを受け取ったDIOは適当にツナギの中に入れ、近くにあった椅子に足を組んで座り、下を俯く。
外に居ても構わないのだが、翠星石に何をするかは分からない。
それにそういう事をすれば、すぐにまたスタンドを発動出来る。

(既に奴はもう私を信用しきっている。
だからここからが私のショータイムだ。越前康介)

カリスマ吸血鬼の暗躍がこの場において止まる気配はいまだ無い。

295創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:49:53 ID:2OKssZex
受け取れ!支援だ!
296創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:50:00 ID:jLnlBHR4
社長乙
見事な漢だったぜ。
297エチゼンとバンパイア ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 00:51:06 ID:xc7g6SYA
【C-4 病院/1日目・昼】
【DIO@MUGEN、ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]軽傷(自然治癒力によって少しマシになった)、去勢
[装備]ライトセイバー@外人が想像したとてつもない日本が出てくるゲーム(RedAlart3)、阿倍さんのツナギ@くそみそテクニック 、メス50本、痛PSP@現実
[道具]支給品一式(水抜き)、マスクザ斉藤のマスク@ニコニコRPG、便座カバー@現実
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの参加者はもちろん、あの主催者どもも全て殺す。
1:越前を利用し、更に他の参加者の信用を得る。
2:サンレッドを殺す、そのためなら手段は問わない。
[備考]
※自身の能力が制限されている可能性を理解しました。
※剣崎達にはザ・ワールドの存在を教えていません。ザ・ワールドの時止め能力が、時間を空けないと使用できないことを理解しました。
【コンバット越前(越前康介)@デスクリムゾン】 [状態]:精神的疲労(弱)
[装備]:市販傷薬(医療品一式)
[道具]:支給品一式、川田のバンダナ@バトルロワイアル、医療品一式(包帯、消毒液など)、メス10本
[思考・状況]
基本思考:このゲームを破滅へとミチ☆ビクッ!
1:翠星石の傷を出来る限り治してやる。人形だけど、大体は人と同じだろうし。
2:賀斉や剣崎…なんて言うだろうなぁ…
3:剣崎ブレイドと協力する。
4:民間人の保護。
5:夕方まで病院で待機
6:クリムゾンを回収する。
7:主催者及び統制者に関係するものに注意。
8:この茶番にデスゾルトスは関わっているのかぁ?
[補足]
※あくまで原作準拠です。
298創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:51:16 ID:MbLa/w7s
投下乙
ブロリーならアイドルには優しく振る舞う。そう思ってた時期が(ry
てか次回以降の書き手次第だが、下手すりゃブロリー倒すの無理ゲじゃねーか?w
299 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 00:52:39 ID:xc7g6SYA
投下終了ー。
はー…あんな格好良い散り様前に見せられたから、明日は大丈夫だな。
支給品の説明は少し遅れます。
300創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:57:36 ID:CUm6FCah
投下乙です
しゃちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおウ!!!
ブロリー倒すの無理ゲ臭がひしひしと……
でもベジータならば制限かかりまくりのブロリーと互角に……無理だな

DIO様の暗躍はいまだ止まらず……
痛psp乃中に入っている情報に期待
301 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/04(土) 01:10:47 ID:xc7g6SYA
支給品説明。
【川田のバンダナ@バトルロワイアル】
原作バトルロワイアルでも人気が高く、桐山に並んで最強説もある川田省吾のバンダナ。
特にそれ以外の効果は多分無い…かもしれない。
【痛PSP@現実】
ある馬鹿が自分の技術をフル活用し作ってしまったPSP。
普通に格好良いのは格好良い。
今回は冥王バージョン。中に何かのソフトが入っているかは分からないが、メモリースティックがある為、何かの動画や画像等が入っているかも。
302創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 01:12:28 ID:HMQxVieo
対主催大丈夫なのかw
なんか勝てる気がしないんだがw
303創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 01:16:51 ID:xc7g6SYA
それでもブロリーは色んな人達が傷痕残してくれてるよね…
カズヤの腹と足、社長の首輪みたいに
いずれそれが勝機になると信じてる!
304創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 01:23:49 ID:dRDS5/3u
そもそもブロリーは全参加者中最強(*制限抜き)だからなぁ……
生身で惑星を破壊できるんだ。拮抗できるのは本気ゆかりんぐらいじゃね?
まあ肉体・精神の両面において付け入る隙は結構あるから勝機はある……と信じたい。
305創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 01:31:23 ID:0rJpyYYp
>>303
首輪壊されると色々終わると思うが
306創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 01:47:56 ID:qfHwVYjn
投下します


754 名前: ◆/mnV9HOTlc[sage] 投稿日:2009/04/02(木) 14:43:18 ID:YX1a5I0g0
とりあえず仮投下します。

755 名前: ◆/mnV9HOTlc[sage] 投稿日:2009/04/02(木) 14:43:53 ID:YX1a5I0g0
ここはB-3。
さきほどまでこのエリアではブロリーとトキが戦っていた。
だが、その戦いの最中に入ってきた少女、初音ミクを助けるためにトキは自分の支給品である「エリアジャンプスクリプト機能」を使った。
その結果、ブロリーを飛ばす事ができた。
だが、一つのミスにより、ミクと自分自身までもが飛ばされてしまったのだ。

その飛ばされてしまったうちの一人、初音ミクはE-3のオアシスに飛ばされていた。

「あれ…?」
やはり彼女も驚きが隠せなかったようだった。
さっきまで目の前に大の大人二人が馬鹿臭い事をやっていたからである。

「とにかく嘘吐きを倒さなきゃね。 ここにはまだたくさん嘘吐きがいるんだもの…。」
魔導アーマーに乗った初音ミクは嘘吐きを倒すためにそれを動かした。

「シゲル、大丈夫?」
先ほどの戦いで、かなりのダメージをくらってしまったシゲル。
シゲルはドレインで回復をしているが、まだダメージは回復されないのだ。

「無理させてゴメンね。 でも嘘吐きを倒すためにはどうしてもシゲルの力が必要なの。 だからもうちょっと待っててね。」
「…」

彼女にとってシゲルは信頼できる数少ない仲間であった。
本当は他のボーカロイドの友達も信頼していたのだった。
だが、その友達であったテトが嘘吐きだったということがあったので、その考えは取り消された。

オアシスを越え、草原を渡っていくと何かが見えた。

756 名前: ◆/mnV9HOTlc[sage] 投稿日:2009/04/02(木) 14:44:56 ID:YX1a5I0g0
それは橋であった。
川の向こう岸へと続く橋であった。

彼女が地図を確認するとデパートが向こう側にある事を知った。
嘘吐きがたくさんいそうだったので彼女はそこへ行くことにした。

橋を渡り終え、周りを見渡すとなにやら人影が橋の下に見えた。
彼女は魔導アーマーに乗りながら、橋の下へと行った。

「あなたは嘘吐きさんだったの?
それとも嘘吐きさんに裏切られて殺されたの?
ねえ、どっちなの?」

もちろん話している相手が死んでいるのは誰が見ても一目瞭然であった。
首がない人間だったのだから当然である。

「壊れた人形は何もしゃべらない…と。」

次に彼女が向かった先は倒れているスーツ姿のおじさんのほうであった。
彼はいまだに「一休さん」を踊っていたのだ。

「あなたは嘘吐きさんなの?
あの人を殺した嘘吐きさんなの?」
307創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 01:49:05 ID:qfHwVYjn

彼女の存在に気づいた振付マスターは後ろを振り向く。
彼の目に見えたのは得体も知れない機械とそれに乗った緑の長い髪の少女だった。

「ねぇ答えてほしいの。 嘘吐きかそうじゃないかって答えてよ。」

757 名前: ◆/mnV9HOTlc[sage] 投稿日:2009/04/02(木) 14:46:28 ID:YX1a5I0g0
「チチチ…チチチガガガ…」

振付マスターは声が出にくくなっていた。
さすがにナイフを突き刺されたのだからしょうがない事であった。

「そう…やっぱりあなたも嘘吐きさんだったのね。」
彼の声が聞こえなかったせいか、ミクは彼が嘘吐きだから自分の質問に答えられないと思ってしまったのだ。

「嘘吐きさんにはおしおきだね。」
それを言うと、ロボットの足が大きく上がり…

「死んじゃえ…。」
振付マスターの上にへと踏んづけたのである。

「やっぱりこの人も嘘吐きさんだったんだね。」
「見かけでは判断できないって事だね、ミクちゃん。」
「そうだね。 シゲルの言ってた事が正しかったよ。」

そして、彼女を乗せたそのロボットは動き出した。
そこに体をぐちゃぐちゃになった振付マスターを置いて…。

【振付マスター@完全振り付けマスター 死亡確認】

【E-2/橋の下/一日目・昼】
【初音ミク@VOCALOID2】
【状態】混乱(大)、恐怖、精神疲労(限界突破)身体疲労(限界寸前)
【装備】ルイージの帽子@スーパーマリオシリーズ、魔導アーマー(左腕欠損、武装チャージ中1/2)@FF6
【道具】基本支給品、あおばシゲル@MF2死ぬ気シリーズ
【思考・状況】
基本思考:重度の疑心暗鬼により、不明
※初音ミクは今現在正常な判断ができません。精神に多大なショックを受けたようです。

【オボロゲソウ「あおばシゲル」の思考】
【状態】大ダメージ(移動と戦闘に支障はない。ドレインの効果で再生中)
【思考・状況】
1:嘘付きからミクを守る
2:ミク……

758 名前: ◆/mnV9HOTlc[sage] 投稿日:2009/04/02(木) 14:47:14 ID:YX1a5I0g0
投下終了です。
短くてすいません。
それなのに延長してすいません。

タイトルは「嘘吐きがいたらすぐ殺す〜狂気の初音ミク」でお願いします。
308 ◆F.EmGSxYug :2009/04/04(土) 10:18:58 ID:3ek2Dsrh
寝て起きたら投下ミスって抜け落ちがあったことに気付いた。
>>278の後半部と>>279の前半部を修正。



「ちぃっ……がッ!?」

蹴りの勢いを残したまま、右拳を叩き込もうとするルガール。
しかし、その腹部に強烈な裏拳がカウンターでめり込んでいた。
まるでボールのように吹き飛ばされ、川岸に叩きつけられる。
それも美希が渡る予定だった向かい側の岸まで、放物線すら描かずに。

「その程度のパワーアップで、この俺を倒せると思っていたのか?」

ブロリーは、追わない。土煙の中出てこない相手を視認しようとしない。
そのまま、埋もれたままのルガール目掛けて緑色の弾を放ち――
それはそっくりそのまま、ブロリー目掛けて返ってきた。

「ヌゥ!?」

とっさに両腕で受け止めると同時に、土煙の中からルガールが現れる。
その周囲を覆っているのはダークバリア。飛び道具を反射する防護壁。
飛び道具である限り、このバリアの前に反射されるという理を覆すことは出来ない。

「チ、厄介なものを……」

309創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 02:02:46 ID:gBzdB+w/
投下乙です
ミクがいい具合に壊れてまいりました
ただ付近のメンバーを考えると微妙な立場ですね
先に期待
310 ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:28:46 ID:7zD1cqaQ
仮投下の際に指摘された部分をようやく修正。
多分矛盾点は無いと思うので本投下いきます
311強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:30:22 ID:7zD1cqaQ

早くもこの理不尽なゲームの犠牲者となってしまったはっぱ隊員の死体を無事に埋葬し終え、
妙な暑苦しさを感じさせる3人の男達と1匹の謎のクリーチャーは情報交換に移ろうとしていた。
出会って以語、修造から未だ何の情報も聞けていなかった事を思い出したサンレッドは真っ先に修造に問い質し、
修造もその事をようやく思い返したらしく、いつもの明るい口調で語り始めた。

修造の話によると、初めに温泉近辺にて美希と出会い、その後、2人で温泉旅館へ入ろうとするや否や、
やや発狂気味の眼鏡を掛けた少年に襲われたとの事だった。
だが、修造が決死の反撃を仕掛けたことで一時的に動きを止め、その隙に命辛々逃げ切る事に成功したらしい。

襲われたという事はその少年は殺し合いに乗っているという事。それは明らかである。
しかし―例え相手が子供といえど既にこのような残虐極まるゲームに乗ってしまっているからには容赦は出来ない。
『正義』の味方たるサンレッドは既に『悪』を討つ覚悟を決めていた。

「いや〜あの時は言っても聞かなかったんだけどね〜・・・
 あの子だって絶ッ対根は良い子だと思うんだよ!うん!」

当の修造は襲われた身でありながら、決してその少年の人格を否定する事無く、
寧ろ少年の心中を必死に理解しようとしていた。殺し合いという絶望的な状況にいるにもかかわらず、
修造の口から発せられる言葉は、恨み辛みや恐怖といった負の感情は微塵も感じさせない。

(こいつ・・・少し鬱陶しいけど、やっぱり人間出来てるよな・・・)

心の中でそう呟きながら、サンレッドは続けて尋ねる。

「んで?DIOの野郎に気絶させられた後はどうした?」
312強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:31:27 ID:7zD1cqaQ

「気がついた後は・・・今言った子と金髪の女の子が2人で歩いてるのを隠れて見てたよ。
 何話してるのかまでは分かんなかったけど・・・2人とも殺し合いに乗ってるって事は確かなんだよ。
 あ、ちなみに男の子の方は何か女の子に惚れてるっぽかったよ!ずっとムスッとしてたけど
 なかなか可愛かったからねあの子ねえ・・・ホント」

『Hmm... では以後その眼鏡の少年と金髪の少女の2人組には注意を払わなければいけませんね』

情報を一通り聞き終えた所でルカが要約するが、松岡は一人で変に納得しながら未だブツブツ言っている。
一方、松岡の熱い声援によって再び自信を取り戻したベジータは腕を組みながら近くにあった岩に腰掛けていたが、
修造が見聞きして得たせっかくの情報を殆ど聞こうともしていない。
どうやら依然としてブロリーの事以外は頭に無いようである。

その2人の様子を眺めていたルカが半ば呆れた口調でサンレッドに囁く。

『・・・いまいち纏まらないグループですね』

「まあ・・・仕方ねーだろ。おいベジータ」

サンレッドがそっぽを向いているベジータに呼びかけると、ベジータは相も変わらずつっけんどんな態度で応じる。
既に自明の事ではあるが、馴れ合う気は毛頭無いらしい。

「お前もこれまでに会った奴くらいは教えてくれたっていいだろ?減るもんじゃねーんだしよ」

「・・・チッ、仕方ない。そんなに知りたいのなら教えてや・・・」

サンレッドの方へ向き直ろうとした途端、不意にベジータは最初に出会った言葉との約束を思い出す。

(私達の事は誰にも言わないで下さいね。ベジータさんは今まで一人で行動していたって事にしてください……)

「・・・・・」

彼女らには一応借りがある。その彼女らとの約束を反故にする訳にはいかない。
不本意ながらそう思い直したベジータはそこで思考を止め、再び背中を向ける。
313強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:32:11 ID:7zD1cqaQ

「・・・いや、俺はお前に会うまでは誰とも会っとらん。最初の放送までずっと一人で行動していた」

ベジータの不審な言動に違和感を感じたサンレッドは、すかさず問い詰める。

「は?お前今明らかに誰かに会ったような口振りだったじゃねーか」

「う、うるさい!とにかく俺はお前ら以外には誰とも会っていないんだ!
俺の事など気にせずに早く話を続けろ!」

その後もサンレッドは説明を求めたが、ベジータは頑として何も喋ろうとしない。
やがて詰問が面倒臭くなったサンレッドは推察を始める。
最初の口振りからして、誰とも会っていないというのは嘘だろう。だとすると、
会った人物からその人物の情報を口外しないで欲しいと頼まれたと考えるのが妥当だ。
ベジータらしくもなくこのような状況で約束を律儀に守っている辺り、
ベジータはその人物に何らかの借りがある可能性が高い。
しかし、それから先の事は肝心のベジータが何も言わない以上全く見当が付かない。

『本人が言いたくないのであれば、仕方ありませんね。
 いずれにせよ彼が全くの無傷という事は、それ程危険な参加者には
 出遭っていないという事です。確証はありませんが・・・
 今は話を進めるしか無いでしょう』

サンレッドはルカの的確な意見に同意し、次にここから何処へ向かうかを決める事にした。
尤も、川に囲まれたこの東南エリアから選べる道は大分限られているのだが。

「北か南か・・・どっちに行くかだな」

『一応西に戻るという選択肢もありますが・・・
 先程遭遇した追っ手と再び相対する可能性が高いですし、避けた方が良いでしょうね。
 サンレッド、貴方はどうするべきと考えていますか?」

ルカが補足を加えながらサンレッドに尋ねる。

「別に・・・どうせ当てなんかねーしな。適当に進めばそれでいいと思うぜ。
 さて、どうするよベジータ?」
314強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:33:36 ID:7zD1cqaQ

「そうだな・・・ならばこのまま北にあるデパートへ向かうぞ。
 ああいった施設なら比較的人は集まりやすいはずだ。」

「デパートだな。よし、んじゃ修造も行くぞ」

サンレッドが修造に呼びかけるが、彼は口を閉ざしたまま一向に動こうとしない。
つい先刻、並の人間とは思えないスピードで全力疾走したことによる疲れがまだ大きく残っているのだろうか。
サンレッドが軽い気遣いの言葉を掛けようとした時――修造が何かを告げようとしている事に気づいた。

「・・・・・修造?」

その場の空気がやや張り詰める。そして数秒の静寂の後、彼は意を決したように口を開いた。

「・・・俺はここで二人と別れるよ」

突然の思いがけない発言にサンレッドは困惑する。
逆にルカは修造の思惑をある程度悟ったらしく、あまり驚いた様子を見せなかった。
当然ながらブロリー以外にはまるで関心の無いベジータは全く動じておらず、顔色一つ変えずに修造を見ていた。

「は・・・?わ、別れるって・・・どういうつもりだよ」

修造は、真剣な眼差しで自身の思いを伝え始める。

「一緒に走ってる時とかにね・・・よく分かったよ。
 君達二人は俺とは比べ物にならないくらい強いんだ、って。
 もしこれから殺し合いに乗ってる滅茶苦茶強い奴が現れて、戦うって事になったらさ・・・
 俺なんかじゃ絶対に敵わないじゃん。でもさ、君達二人はそういう奴らに対抗するだけの力を持ってる。
 そう、君達は正真正銘の"ヒーロー"なんだよ!そのヒーローの足をいざって時に引っ張っちゃったら
 どうしようも無いでしょ?だから・・・俺はここで君達と別れる!」

命のやり取りを行った事すら無いただの人間と、日々命懸けの戦いに身を投じている猛者達―。
実力においても経験においても、天と地ほどの差がある事はもはや明白である。
前者側の人間である自分が後者にあたる者に付いていった所で、
足手まといにしかならないであろう事は修造自身が一番理解していた。
315強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:34:20 ID:7zD1cqaQ

「け、けどよ・・・お前がまた一人になって、今度こそバケモンみたいな奴に会ったらどうすんだ?」

サンレッドは一人になる事の危険性を必死に訴えかける。
何の武器も持たない修造を一人きりにさせてしまえば、彼に多大なリスクが伴うのは必然。
もしそのまま殺し合いに乗っている実力者と鉢合わせれば、
成す術も無くあっという間に命を奪われてしまうだろう。

「その時は・・・ただ単に俺がツイてなかったって事だよ」

無論それは修造も十分分かっている。そう、分かった上で一人になる事を選ぼうとしているのだ。

「なんだそりゃ・・・お前が力を持たないのは仕方ねえ事なんだから
 ちょっとくらい足手まといになってもいいじゃねーか。下手な手打って、お前が死んじまったら・・・」

「そう思ってる奴がいたら!!! 一番残念なことです!!!」

「!?」

サンレッドの言葉を遮る形で修造がとうとう啖呵を切った。
この不屈の精神を持つ男の心に一度火が点けば、もはや誰にも止める事はかなわない。

「お前らは悪い奴等を倒しに行くんだろ!?だったら自分の全ての力を出し切って戦えよ!
 俺みたいな弱い奴を守りながら全力出せんのか!? 出せないだろ!!
 俺の事より限界までやる事を考えろ!全力で一所懸命頑張ればッ!辛い目標だって達成出来んだよ!
 出来る! 出来る!! 絶ッ対に出来るんだから!!!」

「修造・・・」

一歩間違えば即命を落とす、この熾烈を極めるゲームの中で修造が見せた勇気、男気、覚悟。
修造は自分の存在が枷となって、"ヒーロー"たる彼らに限界が生じてしまうような事だけは避けたかった。
全てはこのゲームの犠牲者を一人でも多く減らす為。
だからこそ自分の命よりも彼らのコンディションを優先させたのだ。
316強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:35:53 ID:7zD1cqaQ

「分かったか!?なら君達はさっさと行ってこい!!」

「・・・・・」

下手をすれば殺されるかもしれねーってのに・・・。本当に肝が座ってる奴だぜ。
ある意味俺よりこいつの方がよっぽどヒーローらしいじゃねーか・・・。
けど中身はどうあれ、実際にヒーローと呼ばれていい程の力があるのは俺の方なんだ。
修造の言う通り、こういう時こそ俺みたいなヤツが全力で気張らなきゃいけねえんだ――

『気負い過ぎるのも良くありませんけどね。
 ただサンレッド、貴方の力が誰かに必要とされている事は確かでしょう』

ルカがまたサンレッドの心を鮮明に読み取ったかのように言う。
修造とは対照的に、彼女の口調はいたって冷静なものだ。

『貴方が今すべき事は・・・DIOのような殺人鬼を一刻も早く倒す事です。
 誰かを守ろうとするなら先に敵を絶つのが一番ですから』

ルカの言う事はもっともだった。

「そうだな・・・一般人の護衛だの首輪解除だの脱出だのは全部後回しだ。
 当分はゲームに乗った連中を始末する事だけに集中するぜ」

そうと決まればここでいつまでも立ち止まっている訳には行かない。
現時点で特に脅威的存在と思われるDIOやブロリーを早急に探さなくてはならない。

「俺とベジータはこのまま北へ行く。修造はゆっくり休んで好きに動けばいい。
 ・・・絶対に死ぬんじゃねーぞ」

「ああ、大丈夫!どうにかなるって!」
317強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:36:49 ID:7zD1cqaQ

勿論そんな保障など何処にも無い。が、持ち前のポジティブ精神のみで修造はそう答える。
そこで、何も言わずにただその場の成り行きを傍観していたベジータがやっと口を開いた。

「修造・・・貴様は武器を持っていないのか?」

「え?ああ・・・うん」

「そうか・・・ならばこれをくれてやる」

ベジータはおもむろにデイパックから金色の剣を取り出し、修造の足元へ放り投げる。
他の三人はベジータがこんな見るからに強力そうな武器を今まで仕舞っていたという事実に驚いた。

「何だお前、武器持ってたのかよ。それならそうと早く言えっての」

『これは予想外ですね。この剣以外には何か使えそうな支給品は入っていましたか?』

「後は妙な竹ひごのオモチャが入っていただけだ。
 説明書を読んでいないから詳しい事は分からんがな」

「・・・そこらへんの確認ぐらいちゃんとしとけよ」

「ふん、支給品をどう扱おうが俺の勝手だろう。いちいちほざくな」

サンレッドとベジータが言い合っている傍で、修造はその変わった形状の剣を手に取り、
物珍しそうな目で眺め回す。刀身はやや尺が短いものの、上空を覆う枝葉の隙間から
差し込んでくる木漏れ日によって立派な金色に光り輝いている。
特に注目すべき点は二対の枝刃を備えている事と、鍔部分に何やら赤い宝石らしき物体が埋め込まれている事だ。
そう、それはこのゲームの参加者の一人であるメタナイトが所持していた剣――宝剣『ギャラクシア』であった。
318創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 19:38:27 ID:UGECiTvu
支援
319強い力を持っているあなたに ◆4LgZV6zKDw :2009/04/05(日) 19:39:01 ID:7zD1cqaQ

「これ・・・本当に貰っちゃっていいの?」

「かまわん。そんな剣を持っていたところで戦い辛くなるだけだ」

ベジータの了承を得て、修造の顔はぱっと明るくなった。
同時にサンレッドは、今のべジータの発言で彼が武器を不要とする程の確固たる自信を
持っている事を改めて理解し、また一つ彼の知られざる戦闘能力についての確信を得た。
修造は無力な自分に貴重な武器を授けてくれたベジータに感謝の意を込め、頭を下げた。

「ベジータ・・・ありがとうッ!」

「・・・勘違いするな。別に貴様の身を案じている訳ではない。
 ただ俺にとっては邪魔な荷物にしかならんから譲ってやった、それだけに過ぎん」

ベジータはあくまでぶっきらぼうに受け流すが、修造は再び頭を下げ、熱く気持ちを伝える。

「それでも、ありがとうッ!!」

「・・・ふん、さっさと行くぞサンレッド!」

ベジータは少し照れ臭そうにし、表情を見られまいとするかの如く進行方向に向き直り、早足で歩き始めた。
その一連の流れを見て、ルカがさりげなく呟く。

『・・・ツンデレですねぇ』

「は?何か言ったか?」

『いえ、何でもありませんよ』
320代理投下 強い力を持っているあなたに:2009/04/05(日) 19:46:47 ID:KlZgXu3e
「・・・?」

ルカが最後に何を言ったのか気になったが、大した要件では無さそうな口振りだったので
サンレッドは変に詮索せずにすぐさま行動を開始する事にした。

「じゃあ修造、俺達はもう行くわ。後でまた必ず会おうぜ」

「ああ勿論!そっちも気をつけろよ!!」

そしてサンレッドとベジータは遠くに見えるデパートを目指して走り出した。
修造は明るい表情で勢い良く手を振って、二人(と一匹)を見送る。
この一時の別れが永遠の別れとならない事を切に願いながら。

熱き魂をその身に宿した男―修造が手にした宝剣・ギャラクシアは、
その時僅かながら烈火の炎を思わせる赤い光を放っていた。
321創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 19:47:32 ID:/mzpcxnT
スーパー支援ブラザーズ
322代理投下 強い力を持っているあなたに:2009/04/05(日) 19:48:06 ID:KlZgXu3e
【F-5 駅の近く/一日目・昼】
【ベジータ@ドラゴンボールZ】
[状態]:健康
[装備]:爆破ヅラ@テニミュ
[道具]:支給品一式、パッチンロケット@つくってワクワク
[思考・状況]
基本思考:ブロリーを倒し、元いた世界に帰る
1:ブロリーにヅラを被せて殺す!
2:見つけたらDIOとかいう奴も殺す!
3:ブロリーを倒す為にある程度の実力を持った参加者を集める。
4:頭が爆発するようなら殺せる!きっと殺せるはずだ!多分な……
5:もし優勝したなら、言葉に借りを返すため、伊藤誠を生き返らせる 。
6:くだらんゲームなどどうでもいいが、邪魔な奴はぶっ飛ばす 。

※参戦時期は「燃え尽きろ!!熱戦・烈戦・超激戦」でブロリーの強さに戦意喪失している頃です。
※力が大きく制限されていることに気がつきました。
※1マス以上離れた相手の気を探れません。
※ニコニコ動画の影響で、テンションの高低が激しくなるときがあります。


【サンレッド@天体戦士サンレッド】
[状態]:脇腹に怪我(応急処置済み)、上半身に打撲、やや失血 軽い疲労感
[装備]:DIOの上着、たこルカ@VOCALOID
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:主催者の打倒
1:DIOを見つけ出して殺す。
2:見つけたらブロリーとかいう奴も殺す。
3:ブロリー・DIOを倒す為にある程度の実力を持った参加者を集める。
4:ゲームに乗っている参加者の排除
5:たこルカを信頼。
6:誤解されてるが・・・どうすっかな

※制限について気がつきました。
323代理投下 強い力を持っているあなたに:2009/04/05(日) 19:48:50 ID:KlZgXu3e
【F-5 寒村/一日目・昼】
【松岡修造@現実】
[状態]:頭部に怪我(止血は終了)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(おにぎり1個(食料)消費)、宝剣ギャラクシア@星のカービィ、鏡@ドナルド
[思考・状況]
基本思考:出来るだけ早いゲームの中断
1. これから何処へ行こうかな・・・あはぁ〜ん
2.ゲームに乗らず、人を殺さずゲームを終わらせる為に、首輪を外す方法を探す。
3.クラッシャーと一度腰を据えて話し合いたい。もしかして説得できるんじゃないか?
4.目指すのは富ッ士山だ!

※修造は、クラッシャーはリンに対して好意を抱いていると思い込んでいます
※ギャラクシアが修造の熱い想いに反応して発熱効果を得ました。修造自身はまだそれに気が付いていません。
※修造がギャラクシアでメタナイトが実際に使っている技を繰り出せるかどうかは不明です。


【パッチンロケット@つくってワクワク】
洗濯バサミを挿した竹ひごと、ストローと広告のチラシで作られたロケットがセットになったもの。
ロケットを竹ひごに通し、発射台となる洗濯バサミの端っこをつまんでから放すと、
ロケットが3m程度の距離を勢い良く飛んでいく。 <ワースゴーイ

【宝剣ギャラクシア@星のカービィ】
メタナイトが所持していた剣。二対の枝刃が備わっており、鍔の部分に赤い宝石が埋め込まれている。
強大なエネルギーを秘めており、これを上手く使いこなせば衝撃波や竜巻、果てには電撃や炎まで出せる。
ニコロワでは原作の設定を踏襲している為、アニメ版のように意思を持ってたりはしない。
324創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 19:49:31 ID:/mzpcxnT
siensiendance
325創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 19:49:45 ID:KlZgXu3e
代理投下終了です。

そして王子……現在ブロリーが接近してくる真っ最中だぜ……
ゆっくりしてる場合じゃないぜ……
326創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 21:14:09 ID:Z0PLkCQm
なんかF-5だけ熱いなーww
投下&代理乙です
327創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 21:37:08 ID:1lUlcP3+
投下乙なんだぜ
修造ハジマタ?
328創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 22:39:20 ID:edsZjHzT
ギャラクシアktkr
329創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 23:40:41 ID:p3fyoJH0
そういえばグラッドンソードはどうなったんだっけ
330創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:03:12 ID:UxtSw5MV
修造がまさかの戦闘で活躍フラグ?

マーダー側で最強なのはやっぱブロリーなんだろうけれど、対主催で一番強いのって誰なのかな。
得意武器別に戦力になりそうなのは、
剣:メタナイト、ブロントさん
銃・弓矢:スネーク、コンバット越前、アポロ
格闘:アレックス、めーりん、兄貴、べジータ、サンレッド

このくらいか…? 大丈夫かな。
331創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:12:54 ID:hKrbdbd5
>>330
文とトキとオンデゥルを忘れないであげて下さい
文は原作最強、トキも実力はかなりある、オンデゥルは腐っても仮面ライダーだからなwww?
332創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:13:57 ID:r2/eP7Rv
文は最強じゃなくて最速な。

あとトキはたぶんもう戦えない……
333創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:16:32 ID:WDVLvc/Y
ケザキは平成ライダーの中でも最強クラス
気合で無限に強くなるし
334創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:18:23 ID:3Q5rf99W
左之助やトキや剣崎もそれなりに強いだろうが相手を選びそうだからな
純粋な戦闘能力がトップクラスなのはやはりべジータかサンレッドだろう
335創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:24:12 ID:hKrbdbd5
そして忘れられる賀斉神

一応彼も武将なんだぜ…今はまさに劉禅軍の神(笑)だけどさ(登場話以外ろくに活躍してないし、騙されるし、エリアは飛ばされるしロードローラーには追い掛けまわされるし、支給品はアレだし)
336創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:27:00 ID:r2/eP7Rv
だって出展元である三国志\的に考えると、
呂布どころかここにいるぞにも勝てないんだものあの人
337創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:28:00 ID:k3pwSF5k
賀斉はあの暗愚を覚醒させるほどの実力の持ち主
ベジータとかそんな感じの奴を覚醒させることもありうる
338創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:29:06 ID:hKrbdbd5
三国志11なら…三国志11なら希望はあったハズなのに…!(顔グラ的な意味でも)
339創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:34:40 ID:k3pwSF5k
大丈夫だ、三国志演義補正さえ取っ払ってしまえば賀斉は馬岱ぐらいなら余裕で超える
正史にわずか2度しか名前を出していない馬岱よりも
呉の名将として活躍した賀斉の方がよっぽど強いはずだ!!
340創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:42:50 ID:3Q5rf99W
とりあえずサンレッドと王子がこれから出くわすであろうブロリー相手に
致命的な痛手を負わせてくれる事に期待
死ぬかどうかは別として
341創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 01:28:50 ID:fn6CV+Gy
北斗の世界も少しおかしいからな。
蹴りで2m超える奴がビルに突き刺さるし
ジャンプでビルの4,5階ぐらいまで行けるし
万全の状態なら期待できるんだが…
342創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 01:47:13 ID:Upc+1N6H
ベジータ&サンレッド対ブロリーとか現時点での最強カードと言っても良いレベルだよな
美希と修造あたりがどうなる事やら

マーダーの方は体力を温存してるステルス達が怖い
てかステルスが多いよなこのロワ
343創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 02:30:41 ID:p7dYraUq
バクラにしろてゐにしろ質の高いやつが多い気がする
それにしてもブロリー戦い過ぎだろw
344創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 08:00:06 ID:pl4YJ1+P
力が無い奴らみんなステルスなのが怖いな
あとドナルドやときちくみたいな煽動しまくる人らも

別の話だが
書き手の方々、仮投下したら本スレか避難所で報告して欲しいんだぜ
気付かない人も出てくると思うから
345創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 12:44:41 ID:hKrbdbd5
ニコロワβカワイソス四天王(現在)
重音テト(色々な意味で)
秋月律子(フラグを撒き散らす前にオワタ、死に方も最悪)
海原雄山(誰とも会えず、至高のボッチ)
賀斉(武将としても三国志メンバーの中では下だし、騙されるし、エリアは飛ばされるし、支給品はアレだし)
次点には鉄☆平やタケシ等が並びます
346創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 14:23:51 ID:XQLOx1MS
四天王ならミクや雪歩なんかも入っていいと思うんだが
347創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 14:44:05 ID:Jq3AtUzA
首輪解析して主催者倒すよりマーダーを全滅させる方が難かしそう
348創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 14:57:24 ID:NQjLjPwi
まあマーダーVSマーダーの展開も後々あるだろうし
あまり大袈裟に考えずに見守っとこうぜ
349創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 14:59:37 ID:TwokQo+b
マーダーなんて多いくらいでちょうどいいよ
350 ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 20:55:54 ID:lfwephkl
投下したいんですが誰かいますか?
さるさんに屈したくないので支援をお願いしたい…
351創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:01:10 ID:PJFVrJRE
よし、支援だ
352創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:03:57 ID:94OhKqjl
\ここにいるぞ!/
353創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:04:41 ID:NQjLjPwi
支援します
354 ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:05:52 ID:lfwephkl
よろしい。ならば投下だ

遅れてごめん。半端なく長いので支援よろしく
355352:2009/04/06(月) 21:06:13 ID:94OhKqjl
すまんageちまった…。
356創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:07:07 ID:hKrbdbd5
我が支援、止められぬ者はおらぬぅ!
357それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:07:33 ID:lfwephkl
「死にたくねえ!」

悪魔のような少女を目にし、恐怖に取りつかれ全力疾走し、そして胸を衝いて出た言葉がこれである。
こんな土壇場になってまたもこの台詞が出てきたのだから笑える。もはや俺にとってこの台詞は口癖のようなものだ。
代名詞といってもいいかもしれない。無論、カッコ悪いこと極まりない代名詞だけれど……
だが死を恐怖する事の何が悪いんだろうか。死とはつまり、終わりだ。俺が俺でなくなるという事だ。
俺が俺の存在を守る事に執着する事の何が間違っている?自分の命は他人の命よりも優先されるべきだろ?
だから正当防衛っていう言葉があるんだ。どれだけカッコ悪く見えようとも、情けなく見えようとも、俺の行動は全て”正当”な”防衛”だ。

妙に冷静な脳内に反して、彼の表情はいつものように恐怖に染まっている。
恐怖に目を滲ませ、無我夢中で駆ける事数分。漸く気持ちが落ち着き始める。

相変わらずデパートにいるであろう少女の存在が恐ろしいが、走り続けてさすがに息が切れてきた。
俺は一度後ろを見渡し、誰もいない事を確認すると、大きく息を吐いて走りから歩きに切り替える。

「怖かった……」

俺は一人ぽつりと呟いた。まるでこの世の害悪全てを具現化したかのような禍々しい女。
あんな女や、かつて出会った恐ろしい外国人の少年が跋扈するこの殺し合いを、俺が勝ちぬく事ははたして可能だろうか。
俺は自問自答したが相変わらず答えは出ない。常識的に考えて俺が生き残る確率は万に一つもなさそうだが……それは認めたくない。
死にたくない。俺はこれからもずっと生き残れる。根拠なんてないが、ただそう信じていたい。

ふと気付くと、前の方に二人の男女の背中が見えた。自分と同じ方向に歩いている。
またも危険人物か、と一瞬身構えたがすぐに気付いた。あれはハクとアレクだ。
ほっと安堵し、二人に向けて駆けだそうとしたその時だ。俺は何か恥ずかしいものを感じ、足を止めた。

俺ではなくミク、リン、レンを守ってくれ、そのために別行動をしよう、と大見栄切って言ったのは誰であったか。
この殺し合いで初めて発揮する事が出来た勇気。俺はなけなしの勇気を振り絞ってアレク達に、自分ではなくミク達を助けてやってくれ、と頼んだのだ。
そう言ったすぐ後に涙目でアレク達を追いかける事になるなんて……
このままアレク達に情けなく助けを求めてしまえば折角俺が振り絞った勇気が無駄になってしまう。
それどころか、かなり情けない。厚顔無恥とはこの事ではないか?

「カッコ悪いにも……程があるぞ」

俺はぽつりと呟き、歩くスピードを落とす。アレク達に助けを求めるのはカッコ悪い……
だけど怖いから、死にたくないからやっぱりアレク達と共に行動したい。
矛盾した気持ちが俺の心を錯綜し、そして俺が選んだ最良の行動とは……このまま何もしない事だった。


それから数分後、何かの気配を感じて後ろを振り向いたアレクに俺は発見される。
努力して演技した甲斐あって、俺はアレクに怯えている事を悟られなかった。
涙を拭い、平静を装い、何でもない様子で俺は二人を追いかけ、そこを二人に見つけて貰った。

俺が来てくれた事を二人は素直に喜んでくれた。俺は平静を装う事を忘れず、
なるべく淡々とした口調で二人が去った後デパートで起きた事を話した。
恐ろしい女がやって来て、逃げるしかなかったという事を、脚色を交えて話す。

「それは仕方ないな」
「ああ……ついさっき別々に行動しようと言ったのにな……」
俺はなるべく悲しそうに話した。こんな風な態度で、こんな台詞を吐けば、きっと二人は俺を見損なう事はない。
俺は二人に助けを求めるために、”守って貰うために”来たのではない。恐ろしい危険人物の襲撃を受け、仕方がないから駅の方へ来たのだ。
同じようなものだろ、と思うかもしれないがそれは違う。断じて違う。

守って貰うために二人を追いかけたのなら、俺がデパートで二人に見せた勇気(俺ではなくミク達を守ってやってくれ)は嘘になってしまう。
ちょっと危険に陥って、ミク達を守るはずのアレクに助けを求めるなんて、カッコ悪過ぎるだろう?きっと二人に呆れられてしまうだろう。
だが、助けを求めてきたのではなく、仕方がないからという事にすれば、きっと二人に呆れられる事はないだろう。
俺の見せた勇気は確かなものであったと判断され、俺は嘘つきではなくなる。

自分の命よりも弟や妹達の命を優先するカッコイイ兄貴。
俺の演技と台詞によって、アレクとハクはもしかしたら──本当に万が一の話だ──俺の事をそう思ってくれるかもしれない。
358創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:07:50 ID:PJFVrJRE
どのくらいのペースで支援すればいいのかな?
とりあえず支援
359それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:09:53 ID:lfwephkl
「仕方ないですよ。私だってそんな場面になれば逃げます……」
お前の場合は確かにそうだろう。今は気丈に振る舞えているハクだって、土壇場になればきっといつもの気性が出るに違いない。
「だが、俺はまたアレクの厄介者になってしまう。ミク達を守って欲しいのに……俺なんか助ける価値ねえのに」
「カイトさん……そんな事ありませんよ……」
ハクは微笑みながら俺の肩をぽんぽんと叩いた。

「……お前に、自分の命よりも大切なものがあるとはな」
アレクもまた笑みを浮かべて、俺に言った。少しだけ俺を見直してくれたようだ。
「それは……当たり前だろ。醜態をさらしてまで自分の命に縋るなんて……俺だってそんなの嫌だよ」


それからしばらくの間、三人で談笑しながら歩いた。演技と、言葉を選んだ甲斐あって、なんとか俺のプライドは保たれた。
それどころか、アレクとハクは俺の事を見直している節さえある。俺だってやれば出来るもんだ。
……本当はただの臆病者のヘタレ。ここまでやってきた理由もただ助けを求めて無我夢中で追いかけてきただけ。

アレクとハクは俺の事を見直している。だけど、もし俺の心情を完璧に理解している奴がいるなら、
きっとそいつは俺の事を今まで以上に情けない奴だ、と思うんだろうな。俺のやってる事は全て保身のため。
演技したのも全て自分のプライドを保つため。アレクとハクにこれ以上情けない奴だと思われたくなかったからだ。


『俺の事はいい。ミク、リン、レンを守ってやってくれ』
俺がこんなカッコイイ台詞を本心から言えると思うかい?
日常なら、ゲームならともかく……こんな本物の殺し合いの中で……。
ただの保身と怯え、それとプライドを保つために吐いた言葉だ。精神的な意味で、俺はこれ以上惨めになりたくない。


「カイトさん、怖いですけど……自分を信じて頑張っていきましょう。
 探していればきっといつかミク達にも会えるはずですよ」
ハクが決意に満ちた目を向け、俺に言った。さっきから嫌にハクが俺に絡んでくる。
多分、俺がやって来てくれた事を喜んでいるのだろう。だからこれだけ俺に話しかけてくる。

「ハク、なんか変わったよな……」
「そうですかね……?まあ、私が変わったのだとしたら、それは全てアレクさんのおかげだと思います」
ハクはにっこりとアレクに微笑みかける。アレクは照れくさそうにしている。
そんな二人を、俺は恨めしそうに見た。


そして、ハクが俺に妙に絡んでくる理由で、考えられるのがもう一つ。
ヘタレなハクは俺に仲間意識を感じているのだろう。ヘタレなカイトもきっと頑張れば私のように立派になれるはずだ。
立派になった私がカイトを成長させてあげなければ……! とかなんとか思っているのだろう。
こいつはきっと自分の成長を俺に自慢したいのに違いない。俺がヘタレている横で立派な事をしてアレクに褒められて、
俺を見下し優越感に浸っているのだ。

俺は正直ハクに嫉妬していた。俺と同じく臆病者な癖に、いつの間にやら俺の知らない所で立派になりやがったこいつがむかつく。
年下の癖に俺の事を心配し、気を使ってくるこいつの余裕ある態度に腹が立つ。
ヘタレな俺と立派になった自分とを比べて、優越感に浸るハクがウザくて仕方がない。

「カイトさんが来てくれて嬉しいです」
ハクは笑顔でそう言った。俺は適当に相槌を返す。


うぜえ。お前の本心はこうだろう。
『自分よりもみっともないカイトさんが来てくれて、優越感に浸る事が出来て嬉しいです』


まあ、いずれ化けの皮がはがれるだろう。人間はそう簡単に変われるものじゃない。
アレクのような奴は少数しかいないからこそ、凄いのだ。人間はそう簡単に立派になれない。
俺やお前がアレクのようなヒーローになんてなれるわけがないだろう?

────ハク、お前はこちら側の人間だよな?アレクとは違う、俺と同じタイプの人間だよな?
360創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:11:13 ID:94OhKqjl
支援戦隊うろたんだー
361それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:11:40 ID:lfwephkl


「そろそろ駅だな。急ごう。電車に遅れたら大変だ」
アレクが急かす。
「ミク達……生きているといいですね」

うるせえ馬鹿。そんな殊勝な事なんて言わなくていい。自分の命だけ心配してろ。
お前だけそんなに立派になったら、ますます俺がみじめじゃないか。

▼ ▼ ▼

「チョチョチョットハウャァスギジャニイディスクァ?」
「いいえ。早すぎる事なんてないわ。あのバカにも運動させてあげないと」
剣埼は疾走するロードローラーの助手席から身を乗り出し、後方へ視線を向ける。


「ちょ!!!ちょ!!!リィィィィィン!!!
 はええんだよこのバカ!!!!アホか!!!!ぶっ殺すぞゴルァアアアアアアアアアアアア!!!!!」

軽快に走るロードローラーの後ろを全力疾走で追いかけてくるキーボードクラッシャー。
駄目だ。あいつは可愛いけど性格最悪だ畜生!!心中でリンを罵るが決して口には出さない。
時折、ロードローラーの助手席に乗った剣埼が振り向き、クラッシャーの事を心配そうに見てくる。
そしてリンに何事かを言うが、剣埼に何かを言われてリンが後ろを振り向いた事は一度もない。


いい加減にイライラしてきた。なんで俺があいつにこうもこき使われて、あいつにあそこまで偉そうにされなければならないのだろうか。
ちょっと可愛いからって調子に乗りすぎだ。外見に騙されて今までなんだかんだで従順に従って来てやったのはどう考えても間違いだ。
そもそもあれくらいの可愛さがなんだ。俺は世界のキーボードクラッシャー様だぞ!?
あんな小娘一人に飼いならせるほど俺は甘くねぇ!!絶対にいつか復讐して(ry

「タピオカッッッッッッ!!!!!!」

突然ロードローラーが急停車し、クラッシャーは全力で衝突する。
鼻血を流して少しの間ふらふらとした挙句、べしゃりと地面に倒れ込んだ。

「だ、大丈夫ディスカ!クラッシャー君」
すぐに剣埼がロードローラーから降りてクラッシャーを案じる。
警戒しているとはいえ、ここまで疲弊した少年を放置しておけるほど剣埼は非常になれなかった。
だがクラッシャーは鼻血を流しながらであるがすぐに立ち上がり、リンに向かって吠える。

「てめえいい加減にしろゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
 死ぬかと思ったわバァアアアアアアアアアロォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「…………」
リンは何も言わず、クラッシャーに視線すら向けず、ゆっくりとロードローラーから降りている。
「お前可愛いからって調子に乗るんじゃねえぞこの鬼畜があッッ!!!」
「…………」
「お前……!!!お前なあッッ!!許さんぞお前なあッッッ!!!」
「…………」
「あの………その……お前いい加減にしろ!!!!!!」

「剣埼、駅の様子を見てきなさい」
「あ……うん。いいけどクラッシャー君はどうする気ディスか?」
「クラッシャー? どうもしないわ」
すました顔でリンはそう言った。

駅の様子を見る事は安全確認のため必須なので、剣埼は釈然としないまま駅の入口へと向かう。
クラッシャーは地面に膝と両手をつけ、orzのポーズをとり落胆していた。
さすがにクラッシャーが可哀想だ。つい先ほどクラッシャーに襲われた剣埼さえそう思うほど、今のクラッシャーは見ていて痛々しい。
362創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:11:46 ID:hKrbdbd5
支援の歌を聞け!
363創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:11:54 ID:PJFVrJRE
支援
364創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:12:49 ID:PJFVrJRE
支援が来い
365それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:14:08 ID:lfwephkl
「てめえ……さすがの俺でも怒りが三倍アイスクリームだぜ」
剣埼が駅の様子を見に行った後、クラッシャーはリンを睨んで言った。
「貴方は私の奴隷なの。協力さえすれば互いの態度なんてどうでもいいはずでしょ?
 私を利用して生き残りたいなら我慢しなさい」
「なんて高慢な女だ。さすがの俺もストレスで寿命がソーセージだけ……」
クラッシャーの言葉を聞いて呆れたように溜息をつくリン。

「貴方、いちいち妙な言葉使いをするけど、それって全然面白くないわ」
「…………なんだと!?」
さすがに今の台詞には本気でカチンとくる。クラッシャーの台詞は日本で大人気なのに。
「もっと紳士的で……上品な言葉使い……あの人のような。貴方には一生かかっても無理だから諦めなさい」
「ああん!?」

リンが度々口にする”あの人”。クラッシャーから逃げたあの青マフラーの男だ。
リンはあの男の事をどうにも心酔しているようだが、どこか違和感を感じる。
高貴で美しい、まさにお姫様のようなリンが何故、情けないという言葉を具現化したかのようなあの男にここまで入れ込むのだろうか。
クラッシャーには全く理解出来ない。……もしかして青マフラーの男の良さを理解出来るような素養を持っていないから、
クラッシャーはここまで嫌われているのだろうか。

いや、それは関係ないか?ただ単に俺があまりにもそこらへんにいる庶民だから嫌われているんだろうな。
クラッシャーは考える。リンみたいな高貴なお姫様に釣り合うのは高貴な王子様だけだ。

「偉そうにしやがって畜生!お前と協力するメリットがなくなったら速攻でトルネードスピンするからな」
リンは何も言葉を返さなかった。何か話題を探そうと、クラッシャーがしどろもどろしていると、剣埼がやってきた。
相変わらず嫌な奴だ、クラッシャーは剣埼を睨む。


「リンシャン、クラッシャー君。駅には誰もいませんよ」

意気揚揚と探索から帰ってきた剣埼が言う。クラッシャーは明らかに剣埼に聞こえるであろう音量で、舌打ちした。
タイミングが悪い。この鬱陶しい奴め。剣埼は何が何だか分からないようで、混乱している。

「ただ、もうすぐスィタラ、ディンシャがやってくるようなんディス。もしかしたらそこに誰か知り合いが乗っているかもしれません」
「なら、とりあえず駅のホームでその電車を待とうかしら」
「そうディスね。そうしましょう」



「電車が来るまであと何分かしら……」
「あと10分くらいディスね」
電車に危険人物が乗っているかもしれないという事を考慮し、適当な所に隠れ、電車を待つ。
ここに隠れていれば、電車に乗っている人物を先に確認できるだろう。
知り合いなら接触を図り、明らかに危険人物である場合は剣埼に戦って貰えばいい。

駅の前に止めてあるロードローラーがどうしても目立っている。
電車に乗っている何者かはあのロードローラーを見て何かしらの警戒をするかもしれない。
もし危険人物である場合、警戒状態に入られるのは苦しいものがあるが、
ロードローラーを隠せる場所など特にないので仕方がないと言えば仕方がないだろう。

リンはロードローラーから奴隷二人へと視点を移す。

それに、例え戦闘になったとしても、剣埼とクラッシャーがいる。
いざとなれば奴隷二人に戦わせておいて、自分はとんずらすればいい。クラッシャーと剣埼はそれなりに戦える。
相手がだれであろうと時間稼ぎくらいは出来るだろう。姫である自分が逃亡するのは癪なので、あくまで最終手段。最後の保険だ。

いや、クラッシャーとは早く別れられるなら、逃亡の恥も我慢できるかもしれない。
クラッシャーよりも剣埼の方が強いのは先ほどの戦いで証明された。自分に必要なのは強い奴隷。
クラッシャーのような軟弱で、五月蠅くて、下品な従者など必要ない。
ずっとずっと別れたいと思って来た。もし電車に危険人物が乗っていて、戦闘になるのならば、丁度いい機会だ。
366創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:14:20 ID:94OhKqjl
悪ノ支援
367それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:15:54 ID:lfwephkl
クラッシャーに時間稼ぎを命じて、剣埼と二人で逃げてしまおう。いい加減クラッシャーの喚きに耐えるのも限界だ。
おまけになんだか知らないがクラッシャーの視線が少しずつ気持ち悪く感じてきた。
最初に会った頃もたいがいではあったが、クラッシャーの視線から感じられる一種の気持ち悪さのようなものが、
少しずつ増幅されているような……そんな気がする。

「リンの知り合いはカイトって奴だけなのか?」

クラッシャーが沈黙を切り開き、私に質問して来た。知りあいはあの人だけではない。
他にも何人かいる。だがクラッシャーにそれを教える義理などどこにもない。
私はいつものように言葉を返さなかった。私が無視したのを見て、クラッシャーはいつものように少し悲しげな表情をした。

そうやって悲しそうにしていればいつか話しかけてくれると思っているのかしら。
だとしたらそれは大きな間違い。私は粗暴な貴方が大嫌いだし、そもそも身分が違い過ぎる。
どうして貴方の機嫌を直すために、私があれこれしないといけないのかしら?
クラッシャーには身分の差を弁えてほしい。必要な事を伝える以外、私に話しかけないで欲しい。切に願う。

私はすぐ傍にいる二人の奴隷の顔をちらりと見た。本当に下品な人たち。いや、こいつらは人ですらない。
二人の全身から滲み出る醜さと卑しさは家畜にも劣る。本当にどうしようもなく低俗で哀れな存在。
そんな存在と行動を共にしているのだから、泣けてくる。

こう言う事を考えるといつもあの人の顔が頭に浮かぶ。青いマフラーを纏った、素敵な素敵な王子様。
品があって優しくて、紳士的で勇気があって……私の大切な大切な人。あの人と結ばれるなら何を犠牲にしてもいいくらいに……私はあの人が好きだ。
早くあの人に会いたい。電車に乗ってやってくるのがあの人ならばどれだけいいだろう。どれだけ幸せだろう。
もしあの人に今すぐ会えたなら、今までクラッシャーや剣埼から与えられたストレスも全て吹き飛ぶ。

ああ────早く会いたい。KAITO様……


「────来たぜ」
クラッシャーの押し殺した声が聞こえ、私は頭を切り替える。電車がやってきた。
駅に電車の到着を告げるアナウンスが流れる。私達は壁に隠れ、電車の様子を慎重に覗き見る。
私のいる位置からはよく見えない。

「クラッシャー、剣埼。誰か見える?」
忌々しいが、奴隷二人に声をかける。
「マッチョな奴が一人見えた」
「銀髪ポニーテールの女の子……あと、青いマフラーの男が」
「なんですって!!」
剣埼が言い終わる前に、私は身を見開き、半ば叫ぶように言った。
体を動かし、剣埼の体を押しのけ、壁の影から慎重に顔を出して電車の様子を覗いた。

────いた。確かにいた。

「あいつ……まだ生きてたのか。良かったじゃんリン」
クラッシャーもまた私のすぐ横から電車を覗き言った。

愛しい私の王子様は、筋肉質の男と銀髪の女の後ろに隠れ、慎重に電車を降りてきた。
あの人の顔を見た途端、私の胸は一気に弾んだ。心臓の鼓動がどんどん加速しているのが分かる。
すぐ目の前にあの人がいる。カイト様がいる。殺し合いのにいきなり強制参加させられて、ずっとずっと不安だった。
死んでしまわないかどうか……もう一生会えないんじゃないかと……怖くて怖くて仕方がなかった。

「良かった……本当に良かった……」

安心したせいか、足に力が入らなくなり、私はぺたりとその場に座り込む。
クラッシャーが「ちょwwwww見つかるwwwww」とか言って慌てているがそんな事どうでもいい。
今はただあの人に会えた事が、心の底から嬉しいと思う。
368創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:16:18 ID:PJFVrJRE
支援・オブ・支援
369創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:17:46 ID:94OhKqjl
イスラエルにトルネード支援
370それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:17:55 ID:lfwephkl



「そんな事……考えていません!!」



その時、銀髪の女の叫び声が駅に響いた。カイト様が叫び怒り狂う女に対して何事かを冷静に言った。
近くに居る筋肉質の男が話に割り込もうとするのを、カイト様が止める。
カイト様は女に向かって話し続ける。怒っているように見える。女に対して酷く怒っている。

女が涙ながらにカイト様に何事かを訴える。冷静なカイト様は、鬱陶しい女の言葉にもなんら怯みもせず、淡々と話している。


あの女はいったい……カイト様とはどういう関係なの……?


▼ ▼ ▼



「そんな事……考えていません!!」



「嘘つけよ。お前がそんなにはしゃいでいるのは、俺の事を自分よりもヘタレだと、蔑んでいるからだ。
 気持ちは分かるぜ?アレクはこれ以上なく立派な人間だ。殺し合いにも動じない勇気の持ち主だし、何より強い。
 そんな完璧超人と二人で居ると、劣等感で辛くて辛くて仕方がないもんな。分かるよ。
 だからお前は自分よりも下等な俺がのこのこと着いて来てくれて嬉しいんだ。だからさっきからテンションが高いし、俺によく絡んでくる。
 アレクよりも自分よりも情けない奴の存在を何度も何度も確認して、それで心の中で優越感に浸っているんだろうが」
俺は一息に言った。ハクと俺の口論は、電車から降りようとした時の、俺の一言から始まった。

電車から一番に降りるアレク、そしてこの俺を守るようにして2番目に電車を降りたハク。
俺はそんなハクが無性にイラつき、言った。『調子に乗るな』……と。
ハクは意味が分からないようにきょとんとし、『どういう意味ですか?』と俺に質問して来た。
そこで俺は、ハクに対して俺が抱えている不満をぶちまけてやった。
『俺を見下して優越感に浸るんじゃねぇ。お前は立派になったんじゃなく、アレクの威を借りているだけだ。
 虎の威を借る狐なんだよお前は。そんなお前が、俺よりも上の人間だなんて勘違いしやがって……調子に乗るな』


「だいたいお前はいつも情けない奴だった。音痴で、すぐ落ち込んで酒を浴びるように飲んでは現実逃避する毎日。
 たまに貰える仕事も、いつもステージの上で慌てて何も出来ずに終わり、台無しにしてしまう。客からはツマンネと罵倒され続け……
 誰よりも情けない歌手だったお前が……調子に乗ってんじゃねえ……! 確かに俺は普通の人間よりも臆病者だよ。
 だがな。お前よりも『下』になったつもりは一切ねえ……!!俺を嘗めるなよ……!」
「カイト……お前どういうつもりだ?」
アレクが俺とハクの間に割って入る。

「アレクは引っ込んでろよ。これは俺とハク、臆病者通しの話だ。お前には百年経っても理解出来っこない。
 お前のような強い奴と一緒に行動していて、自分まで立派になったと勘違いしているハクに気付かせてやるんだ。
 ハクは俺よりもずっとずっと情けないヘタレだって事を思い出させてやる。ヘタレの癖に俺の事を馬鹿にしやがって……!」

なんだか俺も泣きそうだ。俺の言葉によってハクの目は滲んできている。
ハクは確かにむかつくが、別に心底憎んでいるわけではない。むしろ好きだ。
気の合ういい友人だった。だけど、そんな友人にこんな言葉を浴びせるしか、俺の自尊心を保つ術はない。
俺の心に残った最後の自尊心は、ハクを貶める事によって保たれる。ハクをヒーローから俺のような雑魚へと貶める事によって、俺は救われる。

だから────だからごめんよハク……許してくれ。
371創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:18:02 ID:PJFVrJRE
運動会プロテイン支援
372それでも僕は死にたくないT ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:19:57 ID:lfwephkl
「私……嘗めてなんかいません……蔑んでなんかいません!」
「嘘つけよ。お前だけは俺と同類だろ?アレクと一緒にいて成長した気になっているだけだ」
「違います。私は友達のカイトさんと一緒に行動が出来て、素直に嬉しいだけで……」
とうとうハクの目から大粒の涙があふれ出す。


「『友達と一緒に行動出来てただ純粋に嬉しい』……か。立派なもんだ。こんな時でもアレクへのアピールを忘れないんだな。
 私はカイトよりも立派な人間です。だから私を見捨てないでください、ってか?」


突然、俺の頬に強烈な痛みが走った。あまりの痛みに俺は両足に力が入らなくなり、ぺたりと倒れ込んだ。
揺れる視界の中、俺は憤怒の表情のアレクを見た。どうやらアレクに頬を平手打ちされたらしい。
死ぬほど痛い。痛くて痛くて涙まで出てきた。

「アレクの前で話したのは……間違いだったかな……いてえ……」
「それ以上口を開くな!」
アレクは泣いて蹲っているハクの元に駆け寄り、抱き締めた。
ハクはアレクに、マスターに抱えられた安心感からか、今まで以上に激しく泣き始めた。

「カイト、どういうつもりだ」
アレクはハクを慰めながら、俺にもう一度問うてきた。
「どういうつもりかは、さっき言っただろ?」
「ただの嫉妬でハクを泣かせたのか!」

違う。それは違う。ただの嫉妬なんかじゃ断じてあり得ない。やはりアレクのようなヒーローには俺の気持ちなんて理解出来ない。
俺は自分の存在を保つためにハクに色々と言ったのだ。何にも出来ない、臆病者でヘタレで卑怯な俺がこの世に存在するためには、
自分以下、もしくは自分と同じレベルの存在が必要なんだ。集団行動をして初めて分かった。
このままでは、精神的な意味でも俺は死んでしまう。情けないハクに調子に乗られたままでは……

「ただの嫉妬なんかじゃないんだアレク……」

自分よりも下の人間がいなければ安心すら出来ない愚かで情けない自分。友達のハクにあそこまで辛辣な言葉を浴びせざるを得なかった自分の弱さ。
普段ならトラブルにもならず、流せるような事でも、この殺し合いにおいては違う。
少しでも安心したいから、俺はハクに言ってしまった。

自分の弱さが身にしみて、情けなくて情けなくて、俺はハクと同じように泣いた。

「ヒーローには分からねえよ……この気持ち……」

▼ ▼ ▼
373それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:21:23 ID:lfwephkl

「剣埼、クラッシャー……あの女と筋肉質な男……二人とも殺してきなさい」

ぼぅっとした表情で、リンは天地が引っ繰り返るような事を言った。
クラッシャーはともかくとして、剣埼はリンの言った言葉をうまく飲み込めず、目を瞬かせている。

カイトと銀髪の女と筋肉質の男の間に何があったのかは分からない。叫び声は聞こえてきたが、普通の話声は音量が足らず、聞きとれなかった。
けれどもカイトが困惑し、涙を流し、頬を叩かれたのだ。
愛しのカイト様があそこまで不当な扱いをされて、黙っていられるほどリンは我慢強くなかった。
カイト様に対して盾突いた女と男を始末しなければならない。一刻も早く。
そしてカイト様を私達のチームに迎え、奴隷二匹を使って殺し合いを脱出するのだ。

「許さない……!絶対に許さない……!あんな低俗な二匹の家畜が私のカイト様にあのような仕打ちをするなんて……!」
あの二人も初音ミクとかいう売女と同じような存在だ。一刻も早く殺してカイト様を私の元へ連れて来なければならない。


リンの心の中に居るカイトは誰よりも有能で素敵な、絶対の存在だ。
故に、目の前で繰り広げられた一連のトラブルは、カイトが原因である事に気付かない。
考える事すら出来ない。全ての害悪はカイトとリン、そして召使であるレン以外の下等な連中が引き起こすものなのだ。

────カイト様は正しい。悪いのは連中だ。

もはや信仰にも似たその思いは、リンに剣埼が自分とクラッシャーを警戒している事を忘れさせた。
その結果、リンはクラッシャーだけではなく、殺し合いに乗っていない剣埼にまで、殺害を命じてしまった。
リンはお姫様として育って来たのだから、例え剣埼であろうと本気で命令したら言う事を聞く。そんな風に考えているのかもしれないが……

「さあ!早く殺してきなさい!クラッシャー、剣埼!」
「チョチョチョット……どういうことディスか!?」

剣埼は慌てて聞き直す。リンとクラッシャーは出会った当初から怪しいと思っていた。
だが、まさかこうも突然にこんな事を言い出すとは思ってもみなかった。
二人が悪事をするとしたら、剣埼の目を盗み、あくまでこっそりするはず、そう思い込んでいた。

「どうもこうもないわ。早く、殺してきなさい!」
「ド、ドンドコドーン、本気で言ってるんディスか!?」
「何を言ってるのか分からないけどさっさと殺してきなさい!」
「そんな……」
やはり二人は危険人物だった。こうもあっさりと本性を見せるとは予想外だ。
「俺が行くぜ。連中をぶっ殺して優勝へ一歩前進だぜ( ゚∀゚)アハハハ八八八ノ ヽノ ヽノ ヽ/ \/ \/ \」
「やっぱり、やっぱりモマエニャ殺しニァいにニョッテイチャノカー!!」
二人を倒すべき悪だと確信し、剣埼は声を荒くする。そのため、いつも以上に滑舌が悪くなってしまった。

クラッシャーが刀を握りしめ、壁の影から飛び出そうとするのを、剣埼は彼の後方から肩を捕まえ、必死に止める。
パワー、スピード……剣埼はその全てがクラッシャーよりも勝っている。だが大人しく諦めるクラッシャーではなかった。
眼をぎらりと光らせ、振り向きざまに刀を払う。

「きゃあ……!」
刀を避けるために、剣埼が後方に飛び退く。その際にリンにぶつかってしまい、リンは短い叫び声をあげた。
「何ジェだ!ドゥスィテコニョチワイにドるんニャ!!」
「もう何回言ったか分からねえけど、優勝しなくちゃ死ぬんだから乗って当たり前だろうがドンドコドーン!!!!!」
何故かオンドゥル語で切り返しながら、剣埼に切りかかるクラッシャー。こんな一瞬では変身すら出来ない。
生身で戦うしかない。だが、ここで諦める訳にはいかない。

剣埼はクラッシャーに向かって自ら接近する。
逃げるか、その場にとどまり避けるか、剣埼はそのどちらかの行動をとるしかないと考えていたクラッシャーにとって、剣埼の動きは想定外のものだった。
クラッシャーが振るう刀は、剣埼がさっきまでいた場所を切り裂こうとしている。今更刀の軌道を変えることなど、剣士でも何でもないクラッシャーには出来ない。
だからクラッシャーは悪態を吐きながらそのまま刀を思いっきり振るった。
374創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:21:45 ID:hKrbdbd5
修羅場すぎるwwwwwwwww
375創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:22:02 ID:94OhKqjl
支援ボッ!!!
376創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:23:29 ID:PJFVrJRE
どうしてどんどこど支援
377それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:23:53 ID:lfwephkl
予想外のスピードで接近して来た剣埼に、刀は上手く当たらない。刃の根もとの部分が剣埼の肩を切り裂く。
鮮血が舞ったが、根元で切った故にその傷は浅い。剣埼の行動に何の支障も与えないほどに、効果のない一撃だった。
剣埼の動きは止まらず、クラッシャーの懐に潜り込み、そしてタックルを仕掛ける。

狙いは、刀を握りしめたクラッシャーの腕。渾身の一撃を放った直後であるため、
クラッシャーは剣埼の攻撃を避ける事はおろか、反応すら出来なかった。
必死にクラッシャーに体当たりする剣埼。自分よりも大きな体を持つ剣埼の体当たりをまともに食らったクラッシャーは、大きくバランスを崩し、

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
彼の手から刀が離れた。刀は宙を舞い、地面に落ちる。
金属質な音をたて、地面に落ちる刀。おそらくこれで電車から降りた三人も何事か異常が起きていると判断してくれるだろう。

「テメエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
クラッシャーは怯みもせず、剣埼に掴みかかる。彼の頬を思い切り殴った。
だが剣埼は怯まない。この程度の荒れ事、今までに何度も経験している。
またも殴りかかるクラッシャーに、剣埼は逆に拳を叩き返した。クラッシャーの顔面を思い切り殴る。
殴って殴って、蹴って蹴って蹴りまくる。刀さえなければ恐ろしい相手ではない。ライダーに変身しなくても簡単に勝てる相手だ。
だがクラッシャーは倒れない。何が彼の体をここまで支えているのか……

「ロウリイラレンアリラレルンビャア!!」
もういい加減諦めるんだ、と叫ぶ。興奮によってますます日本語が危うくなってきた。
「ああん! てめえだけには絶対負けねえぞ……俺は」
つい先ほど、クラッシャーはリンの前で剣埼に敗北を喫した。同じ相手に二度も負けてたまるか。
これ以上リンに嘗められてたまるか。俺はドイツのキーボードクラッシャー様だ。
こんな滑舌が悪い野郎にも、そしてお姫様ぶってるリンにも、嘗められたままで終わらせない。
ネット上でカオスの名を欲しいままにしてきたように、この殺し合いでだって、俺は圧倒的パワーで優勝してみせる。

────リンと協力して!!!!

「ぶっ殺してやるぜ……!」
笑みを浮かべてファイティングポーズをとるクラッシャー。
「いい覚悟だ。敵ながら……」
剣埼はクラッシャーと対峙し、睨みあう。

剣埼はこの時、クラッシャーとの闘っている間のほんの一瞬ではあるが、ある事を失念していた。
敵はクラッシャーだけではない。もう一人いるのだ。

「しまったあッ!」
剣埼は叫んだ。リンが足元に落ちている刀を拾い、それを自分の背中に器用に隠して、今まで隠れていた壁の影から飛び出したのだ。
リンは電車から降りた三人の元に向かっている。間違いない。殺す気だ。
裏切った剣埼と、その剣埼にボコボコやられているクラッシャーに愛想を尽かして、自ら殺しに行こうとしている。

リンは走っている。クラッシャーを倒し、そしてリンを追いかけてあの三人が襲われる前に彼女を倒さなければならない。
変身していない生身の状態で、この一瞬の間に、そんな事が出来るのか?

「まだまだ勝負は終わっちゃいねぇ!!!!!」
クラッシャーがまたも殴りかかってきた。

どうする。どうする……どうするんだよ俺!!!!




リンはカイト達から見えないように刀を上手く隠しつつ、カイト達の元へと急ぐ。
剣埼には、そしてクラッシャーには呆れを通り越して絶望してしまった。
剣埼は姫であるこの私の命令を断り、クラッシャーはそんな剣埼にさえ勝つ事が出来ない。
なんという下らない存在だろうか。
378創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:24:47 ID:fn6CV+Gy
支援
379創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:25:23 ID:PJFVrJRE
もう終わりだぁ!支援
380それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:25:58 ID:lfwephkl

カイト様の顔がどんどん鮮明になっていく。それに合わせて、私の胸の鼓動は加速していく。
カイト様は相変わらず、悲しそうにしていた。許せない。あの女と男を殺して、家畜の餌にしてやらなければ気が済まない。
クラッシャーは頼りにならない。だったら私が殺ってやる。考えてみれば、私自身の手で殺した方がすっきりするかもしれない。
低俗な者の血を浴びるかも知れないと考えると嫌だが、それでカイト様が喜んでくれると思えば……血を浴びる事すら苦ではない。

特にあの女は念入りに殺して見せよう。あの女がカイト様に盾突いたから、カイト様はあそこまで悲しんでいるのだ。
元凶であるあの女は、絶対に絶対に絶対に絶対に許さない。

カイト様が近づいてくる私の存在に気づき、目を見開いた。何故か知らないが、銀髪の女まで驚いている。
私が駅のプラットホームに入ると同時に電車は出発した。カイト様……やっと会えましたわ……
最愛の人に再会して感極まったのだろうか。私は目に涙が滲む。だけど……泣いている場合ではない。

ああ────見ていて下さいカイト様。今、貴方の傍で蠢く害虫を、この私自身の手で始末して見せますわ。

▼ ▼ ▼

「リン……リンなのか?」
俺はお化けでも見るような目つきで突然現れた妹を凝視した。
ハクも俺と同じく、アレクに抱かれながら驚いた表情でリンを見ている。

さっきから駅の中が騒がしい。どこかで聞いた事がある叫び声が何度も聞こえてきたり、何かの金属がコンクリートに当たるような音も聞こえてきた。
そんな物音に俺はいつものようにすっかり怯え、アレクになんとかしてくれ、と喚いていた。
その時だ。その時、突然リンが駅の改札口からこちらへやって来たのだ。

「リンちゃん……」
ついさっきまで涙を流し、悲しそうにしていたハクはリンの姿を見るなりぱっと表情が明るくなる。
そんなハクを見て、アレクは彼女から離れた。俺はリンに再会出来て素直に嬉しかった。
もう二度と会えないかと思っていた。リンは俺にとって妹のような存在……家族なのだから。

ハクの表情が明るくなったのは何故だろう。リンとハクは知り合いではあるが、別に仲が良かったわけではないはずだ。
売れっ子のリンと日陰者のハクにどのような接点があるのだろうか。何もない……はずだ。
リンはいつも双子のレンと一緒に元気に遊びまわっている。ハクとは年齢が離れ過ぎているから、きっと友達にもなれない……はずだ。
それなのに、ハクはどうしてあれだけ喜んでいるんだ?

俺は考え、すぐに気付いた。

……知り合いだからか。知りあいの無事を確認できて、知りあいに再会できて、ハクは素直に感激しているのだ。
こんな時にまでどうにかしてハクを貶めようとしている自分の思考回路に、俺はほとほと嫌気がさした。

「リンちゃん……無事だったんですね」
リンににこりと微笑みかけるハク。
「リ、リン……生きて再会できて、本当に良かったよ」
ハクに負けじと、俺も兄貴らしいところを見せる。

「カイト様……」
「……え?」
リンが妙に色っぽい表情で俺に向かって「カイト様」と言った。聞き間違いではない。確かにあいつはカイト”様”と言った。
「この殺し合いの場でも、いつか再会できると信じておりました……」
何かが、何かがおかしい。何かが確実に狂っている。リンの奴、俺の事をからかっているのか?
それにしてもあいつ……いつからあんな色っぽく……着ている服も妙に扇情的だし……って俺は妹に対して何を考えているんだよ。

「か、からかっているのか?」
「……いいえ。どうしてですか? どうしてそんな事を言うの?」
真顔でリンは言った。違う、あれは演技じゃない。俺をからかっているようには見えない。
ならばどうして、どうしてリンは俺に対してあんな恭しい態度を取るんだよ。
(何かおかしいのか?)
アレクが俺の耳元でそう囁いた。俺は口をパクパクするだけで、何も答える事が出来なかった。
381創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:26:16 ID:hKrbdbd5
areyoufromsien?
382創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:27:47 ID:94OhKqjl
オンドゥル支援スヅンディスカ-!!
383それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:28:11 ID:lfwephkl

「リンちゃん……私も会えて嬉しいです」
「待てハク!」
リンのところへ駆け寄ろうとしたハクを俺はとっさのところで捕まえる。

何かがおかしい。あれは間違いなくリンだ。リン以外の何者でもあるはずがない。
確信を持って言える。あそこにいる女の子は、俺の妹、鏡音リン。
だが────リンはあんな事言わない。ふざけているのならともかく、素で俺に対してあんな口調を使うなんて、絶対にリンではない。
だけど……だけどあれがリンである事は間違いない。だけど……わけわかんねえ……!

「どうしたんですか?」
訝しげに、そして不満そうにハクは言った。ハクにしてみれば自分をとことん卑下した相手に、知り合いとの再会まで邪魔されているのだ。
きっと俺の事がウザくてウザくて仕方がないのだろう。だが、なんとなく直感的に、このままリンに近寄らせてはいけない気がした。
「わ、分からない……分からないけど。あれはリンだよな?」
ハクは俺の質問には答えず、疲れた顔をして微笑みかけた。その顔を見たとたん、俺の胸に何やら気分の悪いものが湧いて出てきた。

やめろ。その顔はやめろ。頭が悪くて、妹すらも警戒するような情けない俺を卑下する表情。
その表情だけは本当に虫唾が走るからやめてくれ。俺はヘタレじゃない。例えヘタレだとしてもお前よりは遥かにマシなんだから……!

「……当り前じゃないですか。口調が少し違うのはカイトさんをからかっていからですよ。
 カイトさんは……えっと、慎重すぎるんです」
「今、言葉選んだな」
「え?」
「慎重すぎるって言う前だ。お前、えっとって言った。お前は臆病者って言おうとして、考えなおして慎重すぎるって言葉に変えたんだ!
 きっとそうだ!」
「い、言いがかりです……!」
こんな場面であるにも拘らず、またもハクと口喧嘩してしまう俺。
だが口を衝いて出てきたハクへの非難の言葉は一度飛び出してしまえば収まりがつかない。

「リンちゃんがそこにいるんですよ!?妹の前で喧嘩なんて……やめて下さい」
「分かってるよ。分かってるけどお前がああ言うから────」
突然、誰かに背中を叩かれた。後ろを振り返ると、アレクだった。
複雑な表情をしている。アレクの言いたい事は分かる。だけど……そもそもあいつは本当にリンなのかよ……

「カイト様……私が思った通り、この二人に苦労させられているようですね」
リンが少しずつこちらに近づいてくる。ハクはその言葉を聞いて、さすがに違和感を感じたのだろう。
目を瞬かせてリンを観察している。
「リンちゃん、それってどういう意味ですか……」
「カイト様、私と共に行動しましょう。愚鈍な従者たちは捨てなさって……私は貴方の言うとおりに、完璧に従いますわ。
 利発で勇敢な貴方の事……きっと、この下らない殺し合いとやらを打破する方法も、考えていらっしゃるのでしょう?」
リンはハクにもアレクにも全く視線を移そうとはしない。俺だけを、嫌に官能的な表情を浮かべて見ている。
声も蜜のように甘ったるい。俺の耳に心地よく溶けていく。

「リン……冗談ならやめろ」
俺は半ば震えながら言った。冗談でない事くらいリンの態度を見ていれば分かる。だが言わざるを得なかった。
頼むから演技であって欲しい。俺をからかっているだけならどれだけ嬉しいだろう。
間違いない。リンの身に何かが起きたのだ。何者かがリンに何かをして……そして別人のようになってしまった。
あるいは別の何かが起きて……。ともかく、このリンはいつものリンではない。

────この殺し合いは、俺の大切なリンを奪っていきやがったんだ。

「冗談なんて……私は本気ですわ。何やら様子がおかしいようですが、そこにいる2人に何かされたのですか?
 もし、そうなら私……」
「リンちゃん……」
ハクが再び、近づいてくるリンに歩み寄る。それに追従してアレクも。
得体の知れない不安が錯綜し、混乱している俺は、もはやハクを止める事が出来なかった。
あれはリンであってリンではない。あのリンとハクが接触した時、いったい何が起こるのだろう。先を考えるのが怖い……
もしかしたら流血。こんなあり得ない考えまでごく自然に俺の脳内に浮かんでくる始末。
もはや頼りになるのはアレクしかいない。ヒーローであるあいつしか、頼れる奴はいない。
384創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:28:45 ID:PJFVrJRE
いかん、危ない危ない危ない・・・
385それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:30:59 ID:lfwephkl

ハクが微笑みながら、リンの小さな体を抱きしめようとしたその時だ。何かが叫びながら、プラットホームに飛び込んできた。



「フォノフォハロロシリウァイウィロッレルウォー!!リヲルンルンラー!!」
※訳(その子は殺し合いに乗ってるぞー!!気を付けるんだー!!)
「チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!逃げちゃイヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

カイトは勿論の事、ハクもアレクも、突然乱入して来た二人に驚愕する。
乱入して来た剣埼は見た。近づいてくるハクに切りつけようと、刀を自分の体の陰に隠し持っているリンを。
ハクとリンの距離はもう2メートルもない。いつ切りつけてもおかしくはない。

「ヘシン!!」

全力疾走で走りながら、ブレイバックルにカードをセットし、仮面ライダー剣に変身する。
一気に運動能力が増すのを全身で感じながら、後方から追いかけてくるクラッシャーを突き離し、リンに向かって加速する。
早くリンを止めなければ、あの銀髪の女の子が殺されてしまう……!



カイトは恐怖で頭がどうにかしてしまいそうだった。突然現れた男二人。
先頭に立ってリンに襲いかかろうとしている男については、見た事がないし、何を言っているのか見当もつかない。
だが、後方からリンに「逃げるな」と叫んでいる男の事はよく知っている。
殺し合いが始まった直後、俺と隊員を襲った少年だ。また出会ってしまった。今度はリンを殺そうとしている……

例え俺の知らないリンでも、俺の妹であることには変わりない。だからあいつらに殺されてしまうのだけは嫌だった。
リンは俺にとって大切な存在だ。あの外国人のガキに俺の大切な人を殺されるなんて……そんなの認めたくない……!

そう心に決めたが、やはり俺の足は恐怖によって固まり、一向に動かなかった。
だから、すぐ近くに居るアレクに縋り寄り、必死になって叫んだ。



ハクは事態が呑み込めずにいた。リンと自分達の再会に突然乱入して来た男二人。
彼らの顔つきから判断して、どうにも穏やかではなさそうである。彼らはリンに向かって疾走して来ている。
このままではリンが危ない。直感でそれだけは分かった。あの二人の目的はリンだ。
リンに危害を加えようとしているのに違いない。

私は怖かった。怖くて怖くて仕方がなかった。だけど自分よりも年下で、まだ幼いリンちゃんを見捨てられはしない。
怖くて怖くて逃げだしたい。どうして日陰者の私がリンちゃんのような売れっ子を助けてやらなければならないのだろう。
いつもいつもこの少女に私は嫉妬してきた。そんな私がどうしてこの子を助けなければならないの?
そんな弱音が沢山頭の中に浮かんでくる。けれども、土壇場で最も強く私の脳裏に浮かびあがってきた言葉は、マスターが言ってくれた言葉だった。
アレクさんは私の事を信頼しているのだから……その気持ちを裏切るわけにはいかない……

私はもう、弱音なんて吐きたくない。アレクさんのもとで立派な歌手に……弱音なんて吐かない強い人間に……なりたい。

「リンちゃん!来て!」
私はリンちゃんの小さな手を握りしめて引っ張り、迫って来る男達から逃げる。

アレクさんに認められたい。もっと信頼されたい。今になって思えば、その気持ちがカイトさんを苦しめていたのだろう。
私がアレクさんに認められるため、気丈に振る舞うのを、カイトさんは自分への当て付けだと邪推した。
カイトさん……気持ちは痛いほどよく分かります……ですけど……

386創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:33:10 ID:hKrbdbd5
剣崎マジで自重しやがれwwwwwwwwwwww
支援
387創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:33:19 ID:PJFVrJRE
剣崎何言ってるかわからねぇw支援
388それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:34:25 ID:lfwephkl
「フォステンクンカスンカ!!」
※訳(どうして逃がすんだ!!)
「アレク!!リンを、リンをあいつらから守ってやってくれぇ!!」
カイトが叫ぶのを聞いて、アレックスは事態を見極める。先頭に立ってリンを追うカブトムシっぽい男は見た事も聞いた事もないが、
後方からリンを追う外国人の少年の風体は、カイトから聞いた危険人物に酷似している。
カイトの怯え具合から見て、あの少年はほぼ間違いなくカイトとはっぱの男を襲った少年だろう。
となると、あのカブトムシの男は少年の仲間と考えられる。リンに向けている殺意は間違いなく本物だ。
危険人物どおしが手を組むとは……

「アレク……リンだけは守ってやってくれよ……
 大事な大事な妹なんだ……こんな馬鹿げた殺し合いで死んでいい奴じゃない」
「分かってる。分かってるさカイト……!」
鏡音リンについてはカイトとハクから何度も聞いた。彼らにとって大切な存在。
特にカイトにとっては家族同然の存在だ。この殺し合いで漸く再会できた家族。守ってやらなければならない。
リンを……そしてもう一人……リンを連れて逃げた勇気あるハク。アレックスは決意する。

────マスターとして、リンとハク、両方を完璧に守りきる……!!

アレックスはカイトの元から離れ、リンとハクを追いかけるカブトムシの男に向かって疾走する。

疾走する二人の男の前に立ちふさがるアレックス。少年はともかくとして、カブトムシ風の男は相当なスピードで走っている。
その運動能力は人間以上、バルバトスのような恐ろしい実力の持ち主かもしれない。
アレックスは気合を入れ、二人の男を一喝する。

「止まらなければ、お前らを倒す!!」
「ロイテレフルェ!!フォウェハリカラナンラ!!アラクフィエンロアロロラ!」
※訳(退いてくれ!!俺は味方なんだ!!早くしないとあの子が!)

カブトムシの男が接近してくる。速い。想像以上に早い。
アレックスは男を凝視してスピードを見極めようと努める。拳を握りしめ、タイミングを合わせ、そして────

「チェリャア!!!」

渾身の力を込めて走って来る男に向けて放った。その拳が男の顔面に当たるかと思った瞬間、男の身体がアレックスの視界から消える。
男はパンチが当たる直前、アレックスの身長よりもぎりぎり高くジャンプし、そしてそのまま高速で飛び越えたのだ。
仮面ライダーの運動神経を最大限に生かした回避方法に、さすがのアレックスも虚を突かれた。

アレックスを飛び越えた剣埼は、そのまま線路へと降り、リンとハクを追いかける。

「クソッ!」
「どけえええええええええええええええええええええええ!!!!」
息をつく間もない。カブトムシの男の次に、少年がアレックスに向かって突進して来た。
顔から血を流し、いかにも疲弊していそうな少年の走るスピードは、さっきの男に比べると明らかに遅い。
だが、その代わり、彼の眼は恐ろしいまでに狂気の色で光っていた。

「イスラエルにトルネードスピィィィィィィィィンンンンンンン!!!!!!!」
突然少年が高速で回転し、アレックスにスピンアタックを仕掛けてくる。
どうする? アレックスは唸りを上げて迫る少年を前にして自問自答する。
さっきのようにパンチするか?それとも、奴を止める事をまず最優先に考えタックルでもするか?
そんな風に行動して、はたして止められるのか?さっきの男のようにまた予想外の方法で避けられはしないか?

「死ィィィィィィィネエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

────もう考えるな!やっぱり俺には、これしかない!!

「おおおおおおおおおお!!」
アレックスは雄叫びをあげながら、スピンアタックしてくるクラッシャーを掴みにかかる。
アレックスの十八番、バックドロップ。こう言う土壇場で出す技は、やはり自分にとって一番使い慣れた、得意な技、それが相応しい。
389創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:36:35 ID:PJFVrJRE
 
390創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:36:45 ID:94OhKqjl
剣崎www訳ワロスwww
支援
391それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:37:07 ID:lfwephkl

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アアアアアアアアアアア!!!!!!」
「おおおおおおおおおおおおおお!!」
クラッシャーのトルネードスピンアタックがアレックスに衝突する。
アレックスは恐ろしいまでの衝撃に、倒れそうになるが、全身に万力のような力を込め懸命に耐える。
鍛え抜かれた筋肉が軋みを上げる。そしてクラッシャーの身体を掴みにかかる。だが、クラッシャーの身体は怖ろしい勢いで回転していた。
掴もうとしても手が弾かれ、なかなか思うようにいかない。このままでは押し切られてしまう。

「俺は最強のキーボードクラッシャー様だアアアアアアアアア!!!!誰にも負けてたまるか!!!死んでたまるかチクショオオオオオ!!!!」
「俺は、俺はハクのマスターだ!!こんな馬鹿げた殺し合いで、ハクやあの黄色い女の子が死んでいいはずがない!!
 俺は────力なき者を守る!!!守ってみせる────うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

相撲のように、組み合い、互いに押し切ろうとするクラッシャーとアレックス。
アレックスの両手が、クラッシャーの身体を掴もうとすると、クラッシャーがそれに抗う。
互いに全力。アレックスは使命感、そしてクラッシャーはこれ以上負けてみじめになりたくない、リンに呆れられたくないという自尊心。
一瞬の膠着状態の末、とうとうアレックスはクラッシャーの体を完璧に掴んだ。

────クラッシャーの視界が引っ繰り返る。クラッシャーは一瞬、何が起こったのか全く理解出来なかった。


「ヤアァッッ!!」


クラッシャーの体がアレックスの筋肉に支えられふわりと持ちあがり、そして次の瞬間、地面に頭から叩き落されていた。
アレックスの十八番、バックドロップ。それが今、完璧に決まった。

「あ……く、くそ……お…………」
意識が朦朧としたクラッシャーが悔しそうに何事か呟く。それをちらりとだけ見て、アレックスはすぐにハク達の元へと走る。

あの少年の事は気になるが、今はハクとリンの命を守らなければ。アレックスはクラッシャーに注いでいた意識をすぐに切り替える。
全速力でハクとリン、そして危険なカブトムシの男を追いかける。あの男は強い。クラッシャーよりもずっと強い。
だが、負ける訳にはいかない。ハクやカイトと出会って、自分は常人にはない力を持っている事を自覚させられた。
今こそそれを行使すべき時、力なき者を守る時────



「じょ……上等だぜ……」

アレックスが去った後、倒れたクラッシャーは両手を支えに必死に体を持ち上げる。
剣埼から与えられたダメージ、アレックスから与えられたダメージ。それらによってクラッシャーの体はすでにぼろぼろだ。
だがここで頑張らなければ……きっとあとで後悔する。事態は予想外にも不味い方向へと転がっている。

リンは何故あそこまで無警戒に、剣埼の前でアレックスとハクを殺せと言ったのだろうか。
あれでは自分から剣埼に殺してくれと言っているようなものだ。そして実際にその通り、剣埼はリンを殺しに向かっている。
アレックスとハクとカイトが、リンではなく剣埼をゲームに乗っている者と誤解してくれたのは嬉しい事だが……

剣埼は強い。恐らくアレックスよりも。両方と戦ったクラッシャーだからこそ分かる事実だった。

このままではリンは殺される。あのむかつく剣埼に……!

「させねえ……!させねえぞ畜生!!リンは俺が利用するんだ……!
 この殺し合いを優勝して生還するために、俺とチームを組んでこれからも共闘するんだ……!
 こんなところで殺されてたまるか……!リンは俺のものだ畜生……!!」


リンに戦闘力はない。俺がやられてしまえば、殺し合いに乗っている俺達は必ず殺し合い抵抗者に始末されてしまう。
だから、絶対に負けられない。何度負けても諦めない。俺はリンの命も背負っている。
一度、チームを組んだからには、一蓮托生だろうが……!!
392創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:38:41 ID:PJFVrJRE
支援
393それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:39:33 ID:lfwephkl

クラッシャーはふらつきながらも、必死になって立ち上がる。

「待ってろ……邪魔者の剣埼は絶対に殺してやるぜ……あの銀髪女もマッチョ野郎もみんなみんなぶっ殺してやる。
 みんなぶっ殺して優勝に一歩前進だぜ。リンを利用し尽くしてやる……!こんなところであの女を殺されてたまるか……!」

だが、クラッシャーの体は思うように動かない。二三歩歩いた後、べしゃりと倒れてしまった。

────こうなったら……『アレ』を使うしかない。『アレ』を使わない限りは、この苦境を挽回する術はない。

クラッシャーは精神を集中させる。彼は全世界で有名なキーボードクラッシャー。
それ故に、あらゆるところへと一方的に名が知られている。だからこそ、だからこそ身につけた必殺の技術があった。


────ある日、クラッシャーの家へ届いた謎のビデオテープ。
ドイツ国家に伝わる最強の武術が記録されたそのビデオテープを、クラッシャーは取りつかれたかのように何度も見て、研鑽を積んだ。
彼の得意技『イスラエルにトルネードスピン』も、そのビデオによって独学で会得した技だ。

そのビデオには、禁忌の技も記録されていた。無暗に使うと命を落としかねない諸刃の技。
大量の体力を消費してしまう恐ろしく危険な技だ。だがそれ故に、返って来るメリットもまた恐ろしく大きい。
この技を使えば、クラッシャーの身体能力は何倍にも跳ね上がる。剣埼やアレックスとも互角以上に渡り合う事が出来るだろう。

クラッシャーは呼吸を整え、『アレ』の発動にかかる。
彼が危険を省みず、リンと自分を救うために使うその技とは────


「運動会☆プロテインパワー……発動!!!」


▼ ▼ ▼

「リンちゃん。あの、お姉さんいつも弱音吐いてるけど……だからって心配しないで。
 見捨てたりしないからね。今回は絶対に私が守ってあげるからね」
強くリンの手を握り、駅の構内を必死に走るハク。ハクに手を取られたリンは酷く不快そうにハクの背中を睨んでいた。

よくもまあ、ここまでのぼせ上れるものだ。私は一言も助けてくれなどと言っていない。
私とカイト様の再会を邪魔してくれたこの女にますます腹が立つ。
この女はカイト様を困らせて困らせて、挙句の果てに勝手に泣いてカイト様の気を引こうとするクズだ。
絶対に許さない。カイト様の代わりに、私が殺す。

────カイト様のする事はすべて正しい。それに逆らうこいつは家畜以下。クラッシャー以下の存在よ。


「あ……あそこ!」
ハクは駅のトイレを見つける。リンの手を引っ張り、少し迷ってから男子トイレに駆け込んだ。
男子トイレを選んだのは女子トイレに隠れるよりは男子トイレに隠れた方が見つかり難いのではないか、ただそう直感しただけだ。
女性のハクとリンが駆け込むとしたら女子トイレ、追って来る男がそう思いこんでくれれば幸いだが、期待は出来ないだろう。
特に深い考えがあって男子トイレを選んだわけではない。

男子トイレの個室にリンと2人で隠れる。あえて扉は閉めなかった。
扉が閉まっているのを見られたら、誰かがそこに潜んでいる事は一目瞭然だからだ。
個室の壁に潜んでいた方がまだ見つかり難いのに違いない。

ハクは息を吐く。まだ心臓がドキドキしている。怖い。恐怖が頭の中を渦巻いている。
殺意丸出しで追いかけてくる二人の男の顔を思い出すだけで、ハクの全身はガタガタと震えた。
死にたくない。こんなところで私は死にたくない。こんな唐突に、理不尽に、訳の分からない場所で死にたくなんかない。

「リンちゃん……大丈夫。大丈夫だからね」
394創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:40:23 ID:PJFVrJRE
ハク・・・支援
395創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:41:30 ID:hKrbdbd5
ハク頑張れ…
支援
396それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:41:52 ID:lfwephkl
ハクは自分に言い聞かせるようにして、リンを抱きしめた。リンの温かい体温が、とても心強く感じる。
こんなに小さいのに、こんなに無力な少女なのに、一緒に居てくれるだけで、ただただ安心させてくれる。
リンを守ってあげる自分が、リンの存在に安堵してどうするんだろうか。情けない自分に、ハクは心の中で苦笑した。

「────あ……」

何かが、ハクの腹に突き刺さった。固い何か、銀色の刃が、ハクの腹から生えている。
何が起こったのか理解出来ない。誰が誰に何をどうしてこんな事になった?自問自答するが答えは全く出てこない。
痛い。血が溢れてくる。それと並行して、ハクの意識が薄らいでいく。

どうして私のお腹に刃物が生えているんデスカ……?

「リン……ちゃん……どうして」

目の前の光景が理解出来なかった。まだまだ幼さが残っているリンが、私の腹に刀を突き刺している。
どうしてリンがこんな事をするの?どうして……どうして? 意味が分からない────これはきっと夢なんだ。


「リン!ハクゥ!!」


腹からの出血と共に、私の命が少しずつ失われていく。そんな中、私は男子トイレに飛び込んできたカイトの声を聞いた。
おそらく追いかけて来てくれたのだろう。あの恐ろしい二人の男達よりも早くに。
良かった。心からそう思う。カイトさんがきっとなんとかしてくれる。ヘタレで、すぐ弱音を吐く私なんかじゃあリンちゃんを守る事は出来ない。
いつも引っ張りだこで、売れっ子なカイトさんならきっとなんとかしてくれる。私の負傷も治してくれる。

────死に……たくない…………

▼ ▼ ▼

「は……ハク……?」

ハクとリンが逃げ込んだ男子トイレに駆け込み、個室を覗きこんだ俺は目を疑った。
ハクが血を流して倒れている。眼は虚ろで、俺は医学なんて全く知らないけど、ハクはひどく大変そうな状態に見えた。
いったい誰がこんな事をしたんだ。ここにはリンしかいない。いったい誰が、誰がこんな事をするんだよ────

「は……ハク……おいハク!」

近くにぼうっと突っ立っていたリンを押しのけ、俺はしゃがみ込んで、苦しそうなハクの体を揺さぶった。
ハクは何事か呟いているが、小さすぎて聞き取る事が出来ない。意味が分からない。本当に意味が分からない。
さっきまであれだけ元気だったのに。いったいどうしてこんな事に?

俺はハクから手を離す。何気なく自分の手を見た。俺の両手はハクの血で真っ赤に濡れていた。

「な……なんだよこれ……なんなんだよ……いったい、いったいどうしてこんな事になるんだ……
 あ、ああああああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

頭を抱え込み、ハクの目の前で蹲る。こんな事になるならアレクと一緒にいれば良かった。
一人で先走ってリンとハクを追いかけたりなんかせずに、闘っているアレクを応援していれば良かった。
俺なんかが誰かを助けられるわけないのに!誰かの迷惑になるだけなのに!

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

発狂したように叫ぶ俺の体に誰かが手を回して抱きしめた。リンだった。
ハクの血を浴びて、リンの体は真っ赤に染まっている。

「落ち着いて下さいまし、カイト様」
「あ、ああああ……リン……リンン」
リンの温もりに、俺は少しだけ安心した。涙を流しながら血塗れのリンを必死に抱きしめる。
訳が分からない。ハクが刺されて、死にそうになって……。それでも、リンの存在は俺をこれ以上なく安心させてくれた。
397創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:43:44 ID:PJFVrJRE
ハクウウウウウウウウウウウウウ!!!!!
398創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:43:55 ID:qGEmQa+e
支援
399創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:44:01 ID:hKrbdbd5
欝すぎる…
400それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:44:04 ID:lfwephkl

「ううう……ごめんなぁ兄ちゃん何も出来なくて……ハク姉ちゃんがこんなになっちまってなあ……」
ぼろぼろと涙を流し、鼻からは醜く鼻水を流しながら、俺はリンの頭を血塗れの手で力いっぱい撫でてやった。
愚かな俺を、ヒーローには決してなれない俺を許して欲しかった。みすみすハクを死なせてしまった自分が情けなくて仕方なかった。

「気にしないで、カイト様。私は貴方の望むままに行動しますから。この女だって、私が殺してみせたのよ?
 カイト様、貴方のためを思って……貴方に尽くせるなら、私……」


このおんなだってわたしがころしてみせたのよ……このおんなだってわたしがころしてみせたのよ?

────私が殺してみせたのよ? 殺してみせたのよ!?


「い、今なんて……?」
「何度でも言いますわ。私は貴方に尽くしたいの。ずっとずっと永遠に……」
リンが俺の胸に顔を埋める。
「貴方のためになるなら……私、家畜の血を浴びる事だって耐えられる……」

嘘だろ? おい……。そんな馬鹿げた事起こってたまるか……
リンが……俺の大切な妹のリンが……ハクを殺っちまっただと?

「リ……ン…………どうして」

俺はリンを凝視した。彼女も顔をあげて、俺の目をじっと見ている。まだ幼さの残った顔だ。
普段はレンとタッグを組んで俺やミクに悪戯ばかりしてくる鬱陶しい奴だが、俺は何を血迷ったか、リンの事を可愛いと思ってしまった。
こんな可愛い奴が、俺とメイコとミクとレンとずっとずっと一緒に暮らしてきた家族のこいつが……ハクを殺したなんて、
そんなの────そんなの嘘だ。認めろっていうのか、妹が俺の友人のハクを殺した事を。

俺はリンをますます強く抱きしめた。リンもそれに応えて俺に身を任せる。

────聞かなかった事にしよう!リンは誰も殺していない!

「ああ……!カイト様!」

だけど、だけどハクはどうなる?リンに刺されて死にかけているハクは……?
それもなかった事に出来るのか?日陰者の癖に俺と妙に気があった友人のハクを、俺はなかった事に出来るのか?

全部忘れて有耶無耶にしていいのか?俺はまた逃避するのか?つらい現実からまた逃げていいのか俺は!?


男子トイレの床に何者かの足音が響く。俺ははっとして、リンから体を離した。
追いかけてきたカブトムシ風の男が、俺とリン、そして瀕死のハクに強烈な視線を注いでいる。

「そんな……間に合わなかった、のか……」

落ち込んだ声とは裏腹に、男は怒りに満ちた恐ろしい表情でリンを睨んでいた。
俺は何か恐ろしい予感がして、ごくりと唾を飲み込んだ。殺される。俺もリンもハクも全員、この男に殺される!

「何か用かしら?全くもって無粋な下僕だわね、剣埼」
驚いた事に、リンは俺とは違い、剣埼という男に対して全く怯えを見せず、堂々とした態度で言った。
「許さない……よくも、よくも……!」

「あ……あああ」
男が一歩こちらに歩み寄る。怖い怖い怖い怖い怖い……!
アレクはどうしたんだ!?あいつはヒーローじゃないのか!?何やってんだよ!勘弁してくれよ、もう。
怖くて怖くて仕方がなかったが、リンは違う。まだまだ余裕の表情を浮かべている。
401創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:45:51 ID:94OhKqjl
支援ツマンネ
402創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:46:54 ID:qGEmQa+e
しえーん
403それでも僕は死にたくないU ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:47:10 ID:lfwephkl

「誰に対してそんな無礼な態度をとっているのかしら?私は姫よ?
 何よ、クズ一匹掃除したくらいで、どうして貴方がそれだけ怒るの?怒る権利が貴方にあると思っているの?」
挑発するリン。やめろ……それ以上挑発するな……殺される、みんなみんな殺されてしまう!

このままではリンが殺されてしまう。大切なリンが、家族のリンが……
頑張れよカイト、ヒーローなら、アレクならここで命を張って頑張るはずだぞ!?このままでは俺の目の前でリンが殺されてしまう。
きっときっと後悔する。守れよ!リンを守れよカイト!お前は兄貴だろうが!!

相変わらず全身の震えが止まらない。怖くて怖くて、逃げ出したくて仕方がない。
だけど逃げたらリンがなすすべなく死んでしまう。だけど、だけど怖いんだよ畜生!!
俺に、俺にアレクのような力があったら……俺がヘタレじゃなくヒーローだったなら……!!


俺の体に何かが触れる。驚いた事にそれはハクの手だった。必死に俺に手を伸ばし、一瞬だけ触れて、そしてまた倒れた。
俺の目をじっと見ていた。ハクが俺に伝えたい事、何故かハクの一連の動作だけで俺に伝わった。
奇跡か?偶然か? 違う。ハクの執念だ。執念が俺にメッセージを伝えてきた。

『リンを守れ』と────

「リ、リン、やめろ……やめてくれ」
俺はガタガタ震えながら剣埼の前に立ちふさがるリンを引きよせる。相変わらず怖くて怖くて仕方がない。
だけど死にかけているハクにあんな事言われたらやるしかねえだろうが……!

「そんな……まさか、貴方も悪人なんですか?」
剣埼が驚いた眼で俺を見てくる。違う!何を勘違いしてやがる……
俺は悪党じゃねえ! リンは……リンは悪党……違う!!
「ど、どの口がそうほざくんだ? 悪党はお前だろうが」
「ち、違う!みんな誤解しているだけだ!」

「黙れぇ……!」
全身が恐怖で凍りつきそうだ。今にも足が萎えてその場に座り込んでしまいそうだ。
くそう……帰りたい……!畜生!俺の人生どこから狂ってこうなったんだ……!畜生、家に帰りてえよこのクソ野郎が!!
ああ畜生!!またファンの前で歌を歌いたいんだよコラ!!

「ハァ……!ハァ……!!俺は最強だ……!お前なんかよりずっと強い……!お前なんか殺すのに一分もかからねえぞ!
 さっさと逃げろ!!見逃してやるからさっさと逃げやがれこの雑魚野郎が!!」
弱い犬はよく吠えるとは真実であったらしい。俺の恐怖が極限まで達した時、剣埼に対してとれた攻撃は、ただ吠える事のみだった。

「俺はこの世で一番強い男だ!!」
リンの前で涙を流しながら、鼻水を垂らしながら、汗を滝のように流しながら、ひどい顔で吠える。
「アレクよりもお前よりもずっとずっと強いんだぞ!?」
リンが怪訝そうな顔で俺を見ているのが目にとまった。そうだよな、失望するよなこんな俺。
「笑いながら人だって殺せるんだ!お前は世界一危険な男を前にしているんだぞ!」
恐怖による震えで立っているのが辛い。早く逃げたい……!

「見逃してやるからさっさと逃げろやコラ!!!」

俺が言い終わった刹那、剣埼の体が超高速で運動する。拳が、俺とリンに向かって疾走してくる。
嫌だ死ぬ────間違いなく死ぬ!!!!!!死んだら終わりだ!!!終わっちまう!!!


────し、ししししししし死にたくねえぇぇーーーーーーーーーーッッ!!!


▼ ▼ ▼
404創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:49:14 ID:PJFVrJRE
流石ヘタレの代名詞支援
405それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:49:24 ID:lfwephkl

男子トイレから聞こえてきたカイトの声を聞き、アレックスは男子トイレに向かって疾走する。
ハク達がどこに逃げたのか、完全に見失っていたため、ずいぶんと遅れてしまった。
まだ全員無事な事をアレックスは祈った。

男子トイレに飛び込み、そしてアレックスは見た。眼を逸らしたくなるような残酷な光景。
ハクが重傷を負っている。まだかろうじて命を繋いでいるが、すぐに治療してやらないと死んでしまう。
アレックスが目を逸らしたくなったのは、ハクだけが原因ではない。カイトもその一因なのだ。
あまりにも情けないカイトの姿に、アレックスは呆れを通り越して、ただただ悲しくなった。

「なんて、なんて真似をするんだカイトォォ!!!お前はそこまで命が惜しいのか!!」

カイトは、ガクガク震えている。自分が咄嗟にとった行動を漸く理解して、戦慄しているようだ。
カイトの前で、リンが苦痛に顔を歪めている。人生で始めて味わった痛みに苦しみもがいている。
リンはべしゃりと地面に倒れ込んだ。

「痛いぃぃ……痛い痛い……痛いよぉカイト様ぁ……」


「何故だ……何故そんな真似をしたんだ……」

アレックスがトイレに駆け込んで初めて見た光景が今も目に焼き付いている。
カイトはリンの肩を掴み、彼女の体を無理やり自分の前に移動させていた。
そうした理由は、剣埼のパンチを防ぐため。パンチを食らうのが恐ろしかったから。自分の命が惜しかったら。

「────どうしてリンを盾にしたんだ!!!カイト!!お前はそんな奴なのか!!本当にお前は、お前は……!!」
溢れる感情を言葉に出来ない。アレックスはカイトのあまりの情けなさに涙する。
ハクも守ってやれず、挙句の果てに妹の体を自分の命惜しさのために盾にして、人間はそこまで卑怯になれるものか?
自分の命とは、そんな卑劣で醜い真似をしてまで守るものなのか?
アレックスには分からない。カイトの気持ちが全く理解出来なかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」
剣埼が慎重に口を動かし、アレックス達に言った。なんとなくだが、自分の言葉がいまいち相手に通じていない事には気づいていた。
通じていれば、誤解されずに済んだのではないだろうか。今更後悔しても後の祭りだ。
とにかく一刻も早く、慎重に伝える事だけを告げて誤解を解かなければならない。
だが、剣埼の思惑は功を奏さない。最後の役者がトイレに飛び込んできて、強烈な大音量で叫んだからだ。


「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

クラッシャーはトイレに入り込むなり、そう叫んだ。彼もまたアレックスと同じくハク達を見失い、少しの間右往左往していたのだが、
トイレから聞こえる叫び声からここに隠れていると気がついたのだ。勿論、クラッシャーはアレックスの叫び声も聞いている。
リンが今痛みに苦しんでいるのは、カイトが彼女を盾にしたからだという事を知っている。

クラッシャーはカイトを強烈に憎悪した。リンはカイトの事が好きだった。
彼のマフラーを後生大事に持ち歩き、彼の生存を知ると安堵の涙を流すほど、カイトを愛していた。
そんなリンの気持ちを、カイトはこれ以上なく残酷な方法で裏切った。純粋なリンの思いを、あの男は────

今、リンはきっとあまりの悲しみに絶望しているだろう。リンの心境を考えると、クラッシャーは身を切られるような思いがした。
カイトの事を思っている時のリンの顔は本当に綺麗だった。その顔をもう二度と見られないと思うと……

「リイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!」
クラッシャーは固まっている五人の間を、すり抜け、リンに向かって走り出す。
だが、悲しい事に、クラッシャーがリンの元へ駆け寄る事を許す者はこの場に一人もいなかった。

「あ、あ、あ、アレク!!リンを、リンを守ってやってくれえ!もうこれ以上リンを……!」
「どの口がそうほざく!!」
泣き喚くカイトに対してきつく返答しながら、アレックスはクラッシャーに掴みかかる。
406創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:50:57 ID:qGEmQa+e
支援
407創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:51:44 ID:PJFVrJRE
 
408それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:52:10 ID:lfwephkl


────どうしよう……誤解が解けない。
剣埼はただ殺し合いに乗っているリンとクラッシャーの悪行を止めようとしているだけだった。
それが不運な事に、剣埼は殺し合いに乗っており、クラッシャーの仲間だと勘違いされている。
さらにこの場に居る全員はリンが殺し合いに乗っているとは思っていない。
銀髪の女が刺されたところを見たであろうカイトという男も、何故かリンの味方をしている。
一刻も早く誤解を解き、クラッシャーとリンを倒したいが、事態はこじれ続けている。
誤解を解こうと思っても、状況に流され解けないという始末。もはや言葉では誤解は解けそうにない。
一番いいのは、行動で示す事だ。剣埼の仲間だと思われているクラッシャーをこの手で倒す。
誤解も解けるし、当初の目的も果たす事が出来る。一石二鳥という奴だ。

剣埼はクラッシャーへと攻撃を仕掛ける。クラッシャーにアレックスと剣埼、二人の男が挟み打ちの形で攻撃を仕掛ける。

「上等だアアアアアアアアアアアアアアアアてめえらあああああああ!!!!運動会プロテインパワー!!!!!」

アレックスは驚愕した。どう見ても重傷を負っているクラッシャーが今まで以上に俊敏なスピードでパンチを放ってきたからだ。
どう考えてもおかしい。ダメージを負う以前よりも、運動能力が遥かに向上している。
アレックスの胸にクラッシャーの拳が突き刺さる。それを必死に耐え、クラッシャーの体を掴みにかかる。
そこに剣埼の蹴りがクラッシャー目がけて飛んで来た。

「お前らにイイイイイイイイィィィィィィィ!!!リンを殺させはしねえええええええええええ!!!」
「……なんだと!?」

クラッシャーの言葉に驚いたアレックスは、ほんの一瞬だけ力を緩めてしまった。
運動会プロテインパワーによってパワーアップしたクラッシャーはその機を見逃さない。
アレックスの拘束から抜け出し、剣埼の蹴りを右腕で受け止める。恐ろしい衝撃がクラッシャーの右腕に走った。

────あの男が少年に攻撃をしかけただと!?
クラッシャーの言葉に続いて、アレックスはまたも衝撃を受けた。
気づいていない何かがある、とアレックスは思考しようとしたが、クラッシャーは考える暇すら与えてくれなかった。

「イスラエルにトルネードスピィィィィィィィィィン!!!!!」

クラッシャーが恐ろしいスピードでスピンした。その回転力によって、剣埼もアレックスも吹き飛ばされる。
トイレはそれほど広くはないから、吹っ飛ばされた先で、それぞれ壁にぶち当たった。
クラッシャーは明らかに強くなっている、アレックスも剣埼もそう確信した。

あっさりと吹っ飛ばされたアレックスを見てカイトは絶叫する。アレックスこそ完璧なヒーローだと信じていた。
色々あったが、彼さえ来てくれれば全てを解決に導いてくれると信じていた。
恐慌状態にとらわれているカイトは、剣埼がクラッシャーに攻撃した事に関して、何も気づく事が出来ない。

剣埼が行った、クラッシャーとは本当は敵通しであるという証明。
カイト、ハク、アレックスの三人の中でこれに気づいたのは、今のところアレックス唯一人。


全ては俺達の早とちりだったのかもしれない。アレックスは起き上がりながら必死に考える。
剣埼とクラッシャーの目的がカイト、ハクと親しいリンであった事から起きた誤解。
確かに剣埼はクラッシャーと共にリンを追いかけた、いや、そう見えた。
だが、共に同じ目的を持ち、リンを追いかけていたというわけではないのかもしれない。

……ハクはいったい誰にやられたのだろうか。俺はリンを殴った剣埼が同じようにハクも痛めつけたものだと思い込んでいた。
本当にそうなのか? そういえばクラッシャーはリンの名前を叫んでいた。苦しむリンを見て怒っていた。
────まさか……剣埼とクラッシャーがコンビを組んでいるのではなく、リンとクラッシャーが!?

クラッシャーが迫る。起きあがったばかりのアレックスは、クラッシャーの攻撃に何の対応も出来ない。
顔面にクラッシャーの蹴りが入る。それによってまた壁に打ち付けられる。どこからこれだけの力を引き出しているんだ?
アレックスは鼻血を流しながら、クラッシャーを睨んだ。ここで負ける訳にはいかない。
剣埼が敵か、リンが味方なのかどうか怪しくても、クラッシャーだけは間違いなく敵だと言いきれる。
こいつだけはなんとしても倒す。
409それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:54:28 ID:lfwephkl

「カイト!! ハクを連れて逃げろ!」

本当はカイトの手なんて借りたくなかった。
妹を盾にしてまで助かろうとする根性無しの力でさえ、借りなければならないこの状況が憎い。
カイトは俺に名前を呼ばれるとびくりと体を震わせて、それからハクの体を起こしにかかる。
あえてリンの名前は出さなかった。もし敵なら、もしハクを刺したのがリンなら、絶対に許しはしない。

「イスラエルにトルネードスピィィィィィィィンンンンンン!!!!」

クラッシャーが十八番の技を使いこちらに向かって疾走してくる。これを喰らったらまずい。
だが、バルバトスとの戦いで受けた傷も癒えていない今では……避ける事が出来ない。

クラッシャーの回転アタックがアレックスの身体に直撃する。アレックスのすぐ後方に壁がある。
壁に押し付けられた形になったが、クラッシャーの勢いは止まらない。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!死ィィいいねえええええええええええええええ!!!!」

アレックスが押しつけられている壁が軋みを上げる。クラッシャーは最後に、アレックスに向かって思い切り拳を突き出した。
恐ろしい衝撃がアレックスの腹に突き刺さり、とうとう壁が破れる。アレックスの体は壁を突き破り、向こう側へと消えた。
巨大な音を立てて壁が崩れ、土砂が舞う。アレックスはどうやら崩れた壁に埋まってしまったようだ。
カイトも剣埼も、そして地面で苦しみのた打ち回るリンも、アレックスをとうとう倒してしまったクラッシャーの強さに驚愕した。

「あ、アレクゥゥ!!!」
カイトはハクを抱え、どうしようかと視線を右往左往させる。アレクがやられてしまった。
もう自分の味方は誰もいない。リンもハクもこんな化け物たちと渡り合える力なんて持っていない。
本当にどうすればいいのかわからない。

「あはははははははは……次はてめえの番だぜ、卑怯者」
クラッシャーが疲弊した顔でこちらを睨んで来た。一歩、また一歩こちらに近づいてくる。
カイトは逃げようとしたが、ハクを抱えたままでは思うように逃げられない。ハクを捨ててしまえば逃げられるが……
「よくもリンの気持ちを裏切りやがったな……」
「なんだよ……お前はさっきからリンの何なんだよ!お前みたいなクズ野郎とリンが知り合いなわけないだろうが!!」
「うるせええええ!!俺とリンは仲間だ!この殺し合いを乗り切るためのな!!!」
「ふ……ふざけんなよ」
クラッシャーがカイトのマフラーを掴む。やばい、殺される!


「クラッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

剣埼が意識を取り戻し、クラッシャーの後方から奇襲を仕掛けてきた。
さすがのクラッシャーも後方からの攻撃には対応出来ない。蹴り飛ばされ、クラッシャーの目の前にいたカイト共々バランスを崩して倒れる。
アレックスを倒したクラッシャーだったが、運動会プロテインパワーは確実に彼の体を蝕んでいた。
視界はぼやけるし、手足に思うように力が入らない。そろそろ副作用が耐えられないレベルまで悪化して来ている。
「決着付けてやるぜこの日本語崩壊野郎が!!」
それでも自分の体に鞭を打ち、剣埼へと果敢に立ち向かう。


カイトは何故クラッシャーの仲間であるはずの剣埼がクラッシャーに攻撃を仕掛けたのか理解出来なかった。
だが今はそんな事はどうでもいい。とにかく逃げる事が先決だった。
涙目でハクを背中に背負い、さっきからずっと地面に横たわり泣いているリンに呼びかける。
その際にクラッシャーによって引っ張られた彼のマフラーが首から外れて地面に落ちたが、そんな事を気にする余裕はない。

「リン!は、早く立て!殺されるぞ……!遊びじゃないんだから俺の言う事を聞くんだ……!」
「痛い……痛いぃ……」
リンが苦しむ姿を見て、カイトは心を痛めた。リンは他でもないカイトのせいでこんなに苦しんでいる。
辛くて辛くて仕方がない。自分のとった行動を後悔してもしきれない。だが、今はそんな事で心を痛めている場合ではない。
カイトは右腕を必死にリンの方へ伸ばす。
410創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:55:05 ID:94OhKqjl
支援
411それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:56:29 ID:lfwephkl

「は、早くしろ……兄ちゃんと一緒に逃げるぞ」
「もう嫌……カイト様どうして私を……」
リンは肩を押さえて泣いている。もしかしたら骨折しているのかもしれない。
大国の王女であったリンは今までにこれほどの痛みを感じた事がない。今まで他人に強いてきた痛みが自らに帰って来たのだ。
────殴られるという事がこれほど痛いとは思わなかった。
初めてその身に感じた激痛は、リンの人生全てを揺さぶるほどに大きな意味を持っていた。

カイトはハクを背負ったまま必死に手を伸ばして、リンの手を掴んだ。
そして無理やり引き起こす。早くしないとクラッシャーと剣埼の戦いが終わってしまう。
「痛い痛い痛いよぉ!!」
「が、我慢しろ!」
手を引っ張られて、負傷した個所が痛むのだろう。リンは大声で泣き喚いた。
それに構わず、カイトはリンを引っ張りトイレの外へと走り出した。なんとかして逃げなければならない。
アレックスがいない今、クラッシャーと剣埼どちらに襲われても勝ち目はない。ただ殺されるのを待つだけだ。

────もっとも、誰か一人を犠牲にすれば、他の誰かは助かるだろうが……

▼ ▼ ▼

全身がだるい。眩暈も吐き気もしてきた。頭もガンガンと痛む。運動会プロテインパワーを使う以前に受けた傷も相変わらず痛む。
だが、だがここで頑張らなければクラッシャーとリンは殺される。
現実を見ずに殺し合いを打倒するとぬかしている頭の弱い連中に引導を渡されてしまう。

クラッシャーはリンが落とした無限刃を拾った。全身全霊の力をもって、今度こそ剣埼に勝利する。
────三度目の正直だ。今度こそ


あの筋肉質な男は自分が味方である事に気付いてくれただろうか。剣埼は不安を抑え考える。
カイトはほぼ恐慌状態にあるため、おそらく剣埼が何を言っても聞いてすらくれないだろう。
だから剣埼のメッセージがアレックスに伝わってくれていると嬉しいのだが……

全ては今目の前に居るクラッシャーを倒せば解決する。剣埼への誤解も解けるし、カイト達の安全も確保できる。
まだリンが残っているが、彼女の心は折れているように見えた。おそらくクラッシャーよりもずっと容易い相手に違いない。

だが、クラッシャーは突然強くなっている。彼にはたして何があったのだろうか。間違いなく過去の二度の勝負のようにはいかない。
それでも剣埼は負ける訳にはいかない。────二度ある事は三度あるという奴だ。絶対に負けない。


「悪党め……こんな馬鹿げたゲームに乗ったお前を、俺は許さない」
「うほほ……それって筋が通ってないぜ。このゲームは殺さなければ生き残れないんだぜ?俺の行動は全部正当防衛だろ?
 本当に悪い奴は右上と左上だぜ。お前正義の味方なんだろ?」
クラッシャーがにやりと笑う。

「だったら俺やリンが悪人じゃねえって事くらい正確に見抜け馬鹿野郎!!!!
 イスラエルにトルネードスピィィィィィィンンンンンンンンンンンンンッッッ!!!!!!!1」


今度はただのスピンアタックではない。刀を持っている。回転斬りだ。剣埼目がけて刃が迫る。
剣埼は一瞬だけ反応が遅れる。クラッシャーに言われた事に対して反論が出来ない。
今までクラッシャーとリンは万人に害をなす悪人だと思っていたが、真の悪人は別にいる。
右上と左上こそが────

クラッシャーと、少しだけ遅れた剣埼が交錯する。それでも勝ったのは────剣埼だ。クラッシャーにはもう力が残っていない。
剣埼の拳が適格にクラッシャーの頬を捕らえた。クラッシャーは訳の分からない悲鳴を上げ、刀を落として剣埼の目の前で倒れた。
剣埼は倒れたクラッシャーに馬乗りになり、拳を打ち続ける。

また負ける────もう嫌だ。負けたくない。このままでは死んでしまう。
嫌だ。死にたくない。帰って家族に会いたい。日本に行きたい。天皇陛下を万歳したい。
こんな訳の分からない所で死ぬなんて俺は嫌だ。
412創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:56:46 ID:hKrbdbd5
賀斉「ここに居なくて良かった…」
支援
413創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:57:59 ID:PJFVrJRE
支援支援
414それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 21:59:24 ID:lfwephkl

クラッシャーは、最後の切り札を隠し持っていた。運動会プロテインパワーを超えるドーピング技。
絶対の禁忌として封印されていたその技に頼る以外、この窮地を切り抜ける術は残されていない。
ぼこぼこに殴られながらも、剣埼を睨み、そして叫んだ。いつものように、破壊的な大音量で────


「三倍アイスクリイイイイイイイィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーームッッッッ!!!!!!!!!」


「うほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!!!!!!!」
力が漲る。剣埼のラッシュに対してラッシュで返す。再び力を取り戻したクラッシャーに剣埼は驚きを隠せない。
剣埼の拳の弾幕を通り抜け、クラッシャーの拳のラッシュが剣埼の胸に突き刺さった。
馬乗りにしてなおこの威力。クラッシャーの耐久力と底力はいったいどこまで……?

「俺はアアアアアアアアアアアアアア生き残ってええええええ!!!!!天皇陛下を万歳するッッ!!!」

剣埼はクラッシャーの拳に耐え懸命に、反撃する。互いにノーガードの殴り合い。
────負けてたまるか!!負けてたまるかぁッッ!!! 剣埼は訳の分からない言語でそう吠える。
────ここで俺が負けたらッッ!!!越前さんにもガサイさんにも申し訳が立たないッッ!!
俺は殺し合いを打倒するッッ!!死んでもだ!!負けてたまるかァァーーーーーーーーー!!!


────死にたくねえええええええええええええ!!!!!リンも死なせたくねぇえええええええええええええ!!!!


「お前が悪かどうかなんて俺には分からない!!!だが、お前を殺す事で誰かが助かるのなら────」

「タピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピ
 タピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピ
 タピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピ
 タピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピ
 タピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピ────────


 ────タピオカァァパアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァンチ!!!!!!!!!!!!」


クラッシャーの超必殺技、タピオカパンチが馬乗りになった剣埼の体に直撃する。
なおも攻撃を止めようとはしない。タピオカパンチの連打、すなわちタピオカラッシュは、とうとう剣埼の体を宙に浮かす。

剣埼の脳裏に、過去の情景がフラッシュバックされる。目の前で死んだ両親の事、アンデットとの戦い、ライダーの仲間達……
そして越前や賀斉という、ここで出会った仲間達。彼らは、クラッシャーを悪とみなすのだろうか。
俺のように、答えを出せないままクラッシャーと戦う事を選ぶのだろうか。


マシンガンの如く打ち出される拳の弾幕に剣埼は無抵抗に痛めつけられている。
そして────


「死ィィィィネエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!
 タピオカパッパカパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!」


タピオカパッパカパーンの声と共に、今まで一番威力のある拳が打ち出された。
剣埼の胸に突き刺さり、上空へと吹き飛ばす。トイレの天井を突き破り剣埼は血反吐を撒き散らしながら上空へと飛ばされていく。
心臓を潰され、顔面はもはや原型を留めていない。数秒後に、剣埼はトイレ跡に落下する。
415創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:59:25 ID:qGEmQa+e
支援ライダー剣!!!
416創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:01:31 ID:hKrbdbd5
剣崎いいい!!!支援
417創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:01:35 ID:PJFVrJRE
オンドゥル・・・頑張ったよ
418創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:01:52 ID:94OhKqjl
オンドゥル…。
419創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:02:24 ID:fn6CV+Gy
予想外の強さだ
420それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:02:53 ID:lfwephkl

────勝った……!勝った……!アレックスにも剣埼にも俺は勝った……!
これでもう俺達の命を脅かす敵はいなくなった……!勝ったぞ……!

「勝ったぞリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンン!!!!!!!」

すでに絶命している剣埼を確認して、クラッシャーは吠えた。

▼ ▼ ▼

俺は瀕死のハクを背負い、負傷したリンを引っ張り、必死になってトイレから離れる。
後方のトイレから馬鹿みたいにでかい破壊音が聞こえてくる。どいつもこいつも人間じゃない。
こんな馬鹿げた連中が集う殺し合いにどうして自分達一般人が招待されたのか理解に苦しむ。

「痛いよ……カイト様……お願いだから休ませて……」

リンを盾にした事を、アレックスに責められた。確かに俺だって信じられない。
まさか俺が、土壇場の状況だったとはいえ、妹を盾にするなんて鬼畜な所業を平気で出来るとは思ってもみなかった。
だがそれでも俺は悪くない……いや、仕方なかったというべきか……

「ねぇお願いだから……お願いだからそんなに強く引っ張らないで……痛いぃ」

確かに俺がした事は後味の悪い行動だ。だけどああでもしないと俺が死んでいた。
死んだ後から後悔しても遅いんだ。だから仕方ない。俺はあの時、生きるために最良の選択をした。
誰にだって自己の生存を優先する権利はあるはずだろ?他人の命よりも自分の命を優先する事のどこが罪なんだ?
アレックスは一方的に俺を悪者扱いした。だが冷静に考えてみると俺は全然悪い事はしていない。
アレックスのような超人には、俺の気持ちは永遠に分からないんだ。

「ああ痛いィ!!」
リンが叫んだ。俺ははっとなって足を止め、振り返る。どうやらリンの手を強く引っ張りすぎたらしい。
相変わらず、リンは泣いている。真っ赤に目をはらしていて、痛々しい。
「あ……悪い」
考え事をしていた所為でリンが苦しむのに気付かなかった。
「どうして……どうしてですかカイト様……どうして私を盾にしたんですか?」

俺はその質問に言葉を失う。ついさっきまで心の中で、自分の正当性を構築していたというのに、
いざこうして「何故?」と問われると何も言えなくなる。「命が惜しかったからだ」と言えばそれですむのに。
その返答で何も間違いはないし、きっとリンも納得してくれる。駄々をこねられても何度も謝ればきっと許してくれる。
それでも俺の口は一向に開かない。何も言う事が出来ない。

「私はカイト様を愛しているのに……カイト様は私の事を奴隷のように思っているのですか?
 私の命なんてちりみたいなものだと思っているの……?」
リンがさめざめと泣く。悲しそうなリンの顔は、俺の心を打った。
「お、俺だってリンの事は……好きだよ」
気恥ずかしくて、俺は愛しているという表現を避けた。

「それならどうして……?」
沈黙。命が惜しいからと言えばいいのに、どうしてもそれを言う事が出来ない。
それを言ってしまえば、それを認めてしまえば俺はさらに惨めに、情けなくなってしまう。

何と答えようかと考えていると、俺はとある事を思い出した。思い出した事をそのまま言葉にしてリンに返した。

「お前、ハクを刺しただろ? だからお仕置きだ」

言い終わってから、ああ俺はなんて卑怯なんだ、と思った。
リンがハクを刺した事は、アレックスにも誰にも言わず俺の心の中に封印していた。
リンがアレックスに殺されるのが嫌だから、アレックスにハクを守れなかった自分を責められるのが嫌だったから、事実を隠蔽していた。
それなのに俺はこの隠していた事実を、俺がリンを盾にした行動の正当性を裏付ける証拠の一つとして、リンの前に曝け出している。
表面上は否定しているが、俺はどうも常に保身を意識して行動しているらしい。
情けなくて情けなくて仕方がない。いったいどの口がハクをヘタレ、卑怯者だと罵っていたのだろうか。
421創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:04:28 ID:qGEmQa+e
支援
422それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:05:38 ID:lfwephkl
「こ、この女は……カイト様にとって邪魔だったから私が始末したまでですわ」
「やっぱりお前、リンじゃないな?」
「……え?」

自らを卑怯者と罵る俺の心とは裏腹に、俺の口は勝手に動いて、俺の正当性を固めていく。

「会った頃から疑問に思っていた。お前はリンの口調とは少し違う。態度も色々とおかしい」
「そ、そんな……私はいつも通りですわ!」
「極めつけに、『カイト様』なんて言いやがる」
「……様付けが気に入らないのなら……そう言ってくだされば……」

リンが絶望している。不思議だ。俺の頭は目の前に居るこいつを完璧に鏡音リンだと認識しているのに、
俺の口はこいつをリンではないとほざいている。罪から逃れられるなら、俺はどんな嘘でも平気で言えるようだ。

「お前を盾にした理由の一つに、お前がリンではないって考えていた事もあるんだ。
 俺は大切な大切なリンを盾にするような卑怯者なんかじゃない」
俺の言ってる事は屁理屈だ。言い訳だ。そんな事は理解できてるのに……
リンは固まっている。俺の言葉にショックを受けたからだろう。

「今のお前はリンじゃない……誰かに、何かされて、きっと人格に障害が出来たんだ。
 だから時間をかければ元のリンに戻れるだろう。だから俺の言葉なんて気にせず早く一緒に逃げよう」
「言ってる事……滅茶苦茶ですね」
俺ははっとし、自分の背中の方に目を向けた。ハクが意識を取り戻していた。
俺の顔のすぐ横にハクの顔がある。ハクは、酷く複雑な表情をしていた。

「カイトさん……私は本当に……心から貴方に失望しました」
「……ッ! 黙れぇ!!瀕死の癖に俺を馬鹿にするな!」
俺は叫んだ。今の言葉には心からイライラさせられる。
「貴方はこの殺し合いが始まってから一度でも、他人の気持ちを考えた事がありますか?
 アレクさんから聞きました。最初に出会ったはっぱの人を見捨てて、そして次に私を見捨てて、最後にリンちゃんの気持ちまで裏切って……
 生きるっていうのは、ただ我武者羅に保身に走る事を指すのでしょうか。私は違うと思います」
ハクが涙ながらに喋る。瀕死の癖に喋りすぎだ。今すぐ口を塞いでやりたい衝動に駆られる。

「お前が俺に説教なんて……していいと思ってるのか!? 日影者でヘタレで……情けないお前が!」
俺は叫んだ。アレックスに説教されるならまだ納得できる。だがハクにされるのは納得出来ない。
しかも俺は悪くない。俺がリンを盾にした正当な理由はさっき話した。ハクも聞いていたはずだ。
話を理解出来ないのだろうか。日本語が理解できていないのだろうか。そこまで馬鹿なのかこいつは。

「カイト様……私は鏡音リンです!別人なんかじゃありません!人格に障害なんてありません!」
「お前は、今は黙ってろ!今はハクと話しているんだ!」
突然話の腰を折ってきたリンに虫唾が走り、怒鳴ってやった。だがリンは口を閉じようとはしなかった。



「私は別人じゃないわ……別人なのは、カイト様の方よ!私が知っているカイト様は貴方みたいに卑怯な人じゃない!!
 私を……私を盾にするなんて……」

リンの知っているカイトは、勇猛果敢で、頭が切れて優しくて、理想の王子様のような人だった。
万人から愛されるヒーローだった。勿論リンに対してもどこまでも優しくて……だから彼の事を好きになった。
だけど、今目の前に居るカイトは違う。このカイトは、度胸もないし力もないし言い訳ばかりする。
挙句の果てに、保身のためリンを盾に使った。

盾にされて初めて味わった痛みは絶大なものだった。あれほどの苦痛を、リンはカイトによって与えられた。
リンが知るカイト様なら、きっとリンを守るために逆に盾になってくれただろう。
423創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:06:02 ID:94OhKqjl
KAITO良い感じに卑怯だなw
支援
424創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:07:41 ID:hKrbdbd5
\(^O^)/<支援
425それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:08:06 ID:lfwephkl
「だから言ってるだろ!?お前はハクを刺したし、そもそもお前はリンじゃない!
 お前なんて俺が盾に使おうが、文句を言える立場じゃないんだよ!」
「さっきカイトさんはリンちゃんがリンちゃんではないという理由に、人格に障害があって別人になっていると言いました。
 でも、人格に障害が出来たとしても、リンちゃんはカイトさんと今まで一緒に暮らしてきたリンちゃんです。
 カイトさんは人格が変わったくらいで、今までのリンちゃんとの付き合い全てを放棄できるんですか?」
「お……お前はこの、紛い物のリンに刺されたんだろうが!どうしてリンの肩を持つんだ!」

カイトの意見はもっともだった。どうしてリンの肩を持つのだろうか。
ハク自身よく分からない。多分、あれが現実の事だとは信じられないからだろう。
妹のように可愛がってきたリンが自分を刺すなんて、悪い夢としか思えない。

「自分でもよく分かりません。きっとリンちゃんには何か理由があったはずです。
 それか、カイトさんの言うように誰かに人格を変えられて、私を刺すように命じられたのかも……
 でも、別にリンちゃんに特に理由がないと分かっても、多分私はリンちゃんの肩を持つと思います」
カイトが怪訝そうにハクを見た。

「リンちゃんは私の妹分です。そしてリンちゃんは、音痴な私にレン君と一緒に歌を教えてくれる先生です。ずっとずっと仲良くしてきました。
 私はリンちゃんの事を愛しています。一度刺されたくらいでは、嫌いにはなれません」
ハクは微笑んだ。カイトは唖然としている。
「きっと……理由があったんだよね? リンちゃん?」
「やめろよ……俺を差し置いてそんな事言うなよ……ふざけんなよ……」
こんな台詞を堂々と言うハクを、カイトはどうしても認めたくなかった。

「私、貴方の事は知りませんわ。ハク……初めて聞いた名前……だから刺す時にも何の感傷もなかった」
リンがぽつりと漏らした言葉に、ハクは目の色を変える。
「お前、やっぱり人格とか記憶とかを誰かに弄られて……」
「それはカイト様……貴方の方です……」

「あいつか……あのクラッシャーとかいう奴だな!俺のリンを変えやがったクソ野郎は!」
「クラッシャーは関係ない……あれは私の奴隷……いえ、仲間です。
 私は私の意志でハクを刺して、そして私の思うままに貴方に話しかけているんです」
そう言ってリンは、おもむろに背中に背負っていたデイパックを降ろして、中を弄った。
取り出したのは────鉈だった。

「ヒィッ!」
カイトが短い悲鳴を上げる。リンはそれに構わず、折れてない方の腕で、しっかりと鉈を握りしめて立つ。
「ハク……私は貴方の事を何も知りません。記憶にないのです。本来、貴方は存在しない人なんです」
リンがカイトの方へと迫る。

「私とカイト様の話がこうも噛み合わないのは、カイト様の記憶や人格が何者かに改変されたからなのかもしれません。
 もしそうだとしたら、その何者かは、カイト様とは知り合いなのに私とは知り合いではない、ハク、貴方が最も怪しいですわ」
リンの双眸がカイトに背負われているハクに向く。
「カイト様、ハクを降ろして下さい。今、ハクを殺して貴方を元のカイト様に戻してみせます」
「ふざ……けんな……」
カイトは怯えきった目でリンを凝視した。ハクを殺されたくない。だけどこのままでは自分まで危ないかもしれない。
このリンは常軌を逸している。

「あのカブトムシの男に殴られた時痛かっただろ!?そんな刃物で切られたらもっと痛いんだぞ!?
 分かって言ってるのかお前は!」
「全て承知の上で、です。私は何度も何度も民に死刑を宣告してきました。さぞ痛かったことでしょう。
 不思議なものですわ。初めて苦痛というものがどれだけ辛いか知った今は、民衆や奴隷たちの気持ちがよく分かります」
奴隷とか死刑とか、洗脳されているのは完全にリンの方じゃないか、カイトは思ったが、怯えて言葉に出来なかった。
426創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:08:22 ID:PJFVrJRE
清々しいまでの卑怯っぷり支援
427それでも僕は死にたくないV ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:10:14 ID:lfwephkl

「ですが、そのハクは別です。私は貴方のためなら何でもしてみせる……ハク、痛いですが我慢して下さいね。
 私も背に腹は変えられないの。カイト様を元に戻すために、仕方ない事なのよ……。さあ、ハクを降ろして下さい」
リンがまた一歩こちらに迫ってきた。ハクの顔を見る。妙に清々しい表情だ。恐らくもう助からないと諦めているのだろう。

「さて、困りました。助けて下さい、カイトさん」
「ぬかせよ……俺に、出来るわけないだろうが……」
「でも相手は片腕を骨折した女の子ですよ。いくら鉈を持っているとはいえ、逃げ続けたおかげで未だに無傷なカイトさんなら」
「だから無理だって言ってるだろ!!俺はお前の言うとおり卑怯者なんだよ!戦えるか!」

カイトは叫んだ。もういい加減にして欲しい。
どうしてただの歌手であるはずの自分がこんな事に巻き込まれなくてはならないのか。

「今度は自分は卑怯者だから助けないと言い訳するですか?確かに貴方は本物の卑怯者です。
 公言すると同時に証明していますね。見事ですね」
ハクはカイトに冷やかな視線を送る。ハクの言葉も視線もカイトにとって耐えがたいものだったが、
それでも自分の事を卑怯だと叫んだことによって、感情のタガが外れる。
全ての思いを開放して一気にまくしたてた。

「そうだよ!俺は卑怯者だよ!だがこれが俺なんだ!殺し合いなんて馬鹿なゲームに巻き込まれたから、
 卑怯者っていう俺の一部分が殊更目立っているだけで、俺は生来こんな人間なんだよ!日常ではこんな卑怯な真似をする機会なんてねぇ!
 俺は俺だ!リンは俺の事を洗脳されているって言うけど、洗脳なんかされてねぇ!洗脳されているのはリンだろうが!
 奴隷だの死刑だの訳の分かんねえ事を言いやがって畜生!!」

カイトは無造作に背負っていたハクから手を放して、地面に落とす。
ハクが地面に落ちて、痛そうに苦悶の声を上げる。

「ここまでやったからには認めてやるよ!俺は卑怯者だ!だがな、これだけは言わせて貰うが……」
カイトはまた涙を流し始める。


「俺は何も悪くない!全ては仕方ない事、そして正当防え────」


言い終わる直前に、リンが片手で思い切り鉈を振るった。もうこれ以上痛々しいほどに情けないカイトを見たくなかった。
だから一刻も早くハクを殺したかった。非力なリンが振るった鉈はハクの頭に当たる。
非力なために鉈はぶれてしまい、刃の部分が上手く当たらなかったが、それでもハクの頭から血が吹き出す。

カイトは子犬のような悲鳴を上げて、一目散に逃げて行ってしまった。
428創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:10:50 ID:k3pwSF5k
しえん
429創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:10:53 ID:a6YxZZ3C
ボカロ勢みんなすっげぇことになってるなぁ・・・

支援
430創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:12:13 ID:PJFVrJRE
支援
431創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:12:49 ID:hKrbdbd5
MEIKO「ここに居なくて良かったとほとほ(ry」
432それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:13:07 ID:lfwephkl

「カイト様!」
ここでカイトを見失うわけにはいかない。リンは追いかけようとしたが、肩の痛みで走る事が出来ない。
おまけに驚いた事に、今思いっきり頭を鉈で殴られたハクが、リンの前に立ちふさがった。

「貴方……痛くないの……?」
リンは目を大きく見開いて驚愕し、頭と腹から血を流しながらふらふらと立つハクを凝視した。
「痛い……よ……? リン、、ちゃん」
「それなのにどうして!早く死んでよ!見ていて痛々しいのよ!」

ハクは、リンの言葉を無視して、相変わらずの清々しい表情でぽつぽつと話し始めた。
もうそろそろ死ぬだろう。喋る事もそろそろ出来なくなる。だけど聞いてほしい。大好きなリンに聞いてもらいたい。

「どうして?って言ったね、リンちゃん……教えてあげます」
ふらふらとリンへと近づいていく。
「私も、カイトさんのように卑怯で……情けなくて、どうしようもない、人間なんです…
 リンちゃんの前では……いつも強がっていました。けど……一人でいる時は、いつも泣いて、
 いつもお酒を飲んで現実逃避して、どうしようもない女、でした」
ふらりとバランスを崩すハク。そしてべしゃりと地面に倒れてしまった。

覚悟していたはずなのに、やっぱり死ぬのは怖い。死への恐怖の所為で涙が溢れてきた。
これではまたカイトに馬鹿にされてしまう。ハクは、怖くて怖くて涙を流しながら、それでも喋る事を止めなかった。

「でも、そんな私を……信じてくれる人が現れました……。
 その人は、頼んでもいないのに、、進んで日陰者の私のマスターになってあげる、、ってそう言ってくれたんです……
 私、、その言葉を聞いた時…ああ、こんな私を信じてくれる人がいるんだな…って思って、嬉しくて嬉しくて……」

もう一度、アレクさんに会いたい。マスターに会いたい……

「私も頑張らなくちゃ……って、思ったんです…アレクさんの信頼に答えようと……ヘタレなハクを卒業しようって思って…
 怖かったけど…自分なりに……頑張りました……」

誰かが近づいてくる足音が聞こえる。ハクは地面に耳がくっついているから聞こえるのだろうか。
リンは足音に気づいていないようだ。


「私、自信を持って言えます。私は、以前の私よりも確実に立派になった……そう、確信しています。
 だから私は…簡単には死にません……リンちゃんと最後まで、お話したい、、です」


リンは複雑な面持ちで、静かに口を開いた。
「どうして私にそんな事を……?」
ハクは涙を流しながら微笑む。

「決まってるじゃないですか……いつもいつもレン君と一緒に私の歌の先生になってくれたリンちゃんに……
 アレクさんって人のおかげで少しだけ立派になれたよって……自慢したかったからです……」

ハクはふふっと軽く笑った。今目の前に居るリンは、ハクの事を知らない。
それでもいい。それでも伝えておきたかった。いくら記憶や人格が異なろうとも、リンがリンである以上、ハクは彼女の事を心から愛していた。


足音がどんどん大きくなってきている。誰かがこちらに近づいてきている。誰だろうか。
「カイト様……クラッシャー……」
リンが驚いて、やって来た二人を見る。

「畜生!やめろ!俺は死にたくない!!」
クラッシャーに無限刃を突き付けられ、ここまで歩かされてきたカイトがそう喚いた。
ふらふらしながら、ほとんど意識も何も残っていなさそうなクラッシャーがにやりと笑みを見せた。
「王子様を捕まえて、連れてきてやったぜ……お姫様……」
偶然クラッシャーに近づいてしまったのが、カイトの運の尽きだった。
433創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:13:25 ID:NQjLjPwi
ボカロ勢色々とヤバすぎるだろw
434創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:13:42 ID:k3pwSF5k
しえん
435創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:13:55 ID:qGEmQa+e
駄目だこのKAITO
436創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:15:02 ID:k3pwSF5k
ボカロ勢がどうしてこんなことに・・・
437創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:15:15 ID:PJFVrJRE
まともなのがハクとテトという亜種だけだもんなぁw支援
438それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:16:20 ID:lfwephkl

「────ハク……」
ハクの耳に、懐かしい声が届いた。離れ離れになって一時間も経っていないのに、ひどく懐かしく感じるのは何故だろう。
ハクは一度閉じた目を薄らと開く。目の前にいたのはアレックスだった。

「アレクさん……私、成長しました……貴方が私を信じてくれたように、私は自分を信じてみました……
 有難う……アレクさん。貴方はまさにヒーローです……」
「がああッ!!おらあ!!くそがッ!」
カイトが必死になって喚きながら、クラッシャーの一瞬の隙を突き、逃げ出した。


「…………一つ……カイトさんに伝えてほしい事があるんです」
「言ってみろ……」
アレックスはぼろぼろの体でハクを抱きしめる。ハクは耳元で何かを囁いた。
それを聞いたアレックスは、複雑な気持ちで、絶対伝えると強く頷いた。

やり残した事はもうない。そう思うと、力が一気に抜けた。相変わらず怖くて怖くて仕方がない。

「怖いです……死にたくないです……」
「お前は立派だった!自分を誇っていい!だから、だから……」

弱音はもう吐かないって決めてたのになあ……やっぱり怖いよ。涙もぼろぼろ出てくる。
死にたくない。どうしてこんな馬鹿げたゲームで死なないといけないの?
私の日常を返してよ……死にたくない。死にたくない────


「死にたくない……アレクさん…………」


▼ ▼ ▼

ハクの顔から生気が消えるのを確認してすぐに、リンは遠くへ逃げているカイトを凝視した。
洗脳されているのであれば、カイトは元に戻って、あんな情けない事をせずに、リンの所へと戻って来てくれるはずだ。
だが、カイトは足を止めなかった。そのまま見えない恐怖に対して罵りながら、色々と言い訳しながら、逃げて行った。

「ハクを殺したのはリン、お前だな」
「カイトや……剣埼かもしれねえだろうが……」
ふらふらのクラッシャーがリンを守るようにして、アレックスの前に立つ。
「あのクズにそんな根性はない。剣埼でもない。俺達は勘違いしていた。あいつは殺し合いに乗っていない。
 となると、あの状況でハクを刺せるのは、リン。お前しかいない」
「まだやり合う……っていうのか?」
クラッシャーが刀の切っ先をアレックスに向け、威嚇する。
アレックスは静かに、妙に落ち着いた雰囲気で口を開く。

「正直言ってお前達に対して何の怒りも感じていないと言えば嘘になる。出来れば殺してやりたい。
 だが、俺は今回だけお前達を見逃そうと思う。ハクがリンに話していた内容は俺も聞いている。
 ハクの思いを汲んでやりたい。ここでお前達を殺すのは簡単だが……ハクの死体の前でリンを殺す事だけはしたくない」
アレックスは一旦言葉を切り、そして鋭い視線をカイトが逃げて行った方向へと向ける。

「それに、今すぐに追いかけて思い切りぶん殴りたい奴がいる……」
439創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:16:27 ID:TwokQo+b
カイトも最終的には覚醒しちゃうんだろうなぁ…最後まで卑怯なままでいてほしいけど支援

卑怯なまま覚醒?いやいや覚醒しただけでもうロワ王道展開ですよ
440創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:19:47 ID:PJFVrJRE
ハク…
441それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:20:06 ID:lfwephkl

アレックスはハクの死体を綺麗に整え、カイトが逃げた方へと歩き始めた。
クラッシャーはアレックスの姿が見えなくなるまで身構えていた。彼の姿が見えなくなると、大きく溜息をして、リンの方へと向き直る。


「腕、折れてるだろ、それ……」
「……そうみたいね」
「歩ける……か?」
「動いたら痛いわ……凄く……」
「仕方ねえな……くそ……」

クラッシャーは刀をしまい、リンに背中を向けて中腰になる。
リンはクラッシャーの行動を見て戸惑っている。

「ロードローラーまで……背負って連れてってやる……」
「でも、貴方の体は私以上にぼろぼろだわ……凄く痛そう……」
「いいから早くしろよ。アレックスが戻ってきたら俺達今度こそぶっ殺されるぞ……
 背負うくらい大丈夫だ。キーボードクラッシャー様を嘗めるな。うほほほほ……」

リンは少し考えた後、素直にクラッシャーにおんぶして貰った。クラッシャーは苦しそうに呻いたが、気合でリンを運んでいく。
「いつもより元気のない『うほほほほ』だったわ……」
「仕方ないだろ……運動会プロテインパワーはおろか、三倍アイスクリームまで使ったんだから……」

必死になってリンをロードローラーの助手席まで運び、それからクラッシャーは近くから使えそうな木の枝を探してきて、
リンの折れた腕に添え木し、簡単な応急手当てを施してやった。それから、クラッシャーはロードローラーを運転し、全速力で駅を離れる。
リンは結局ヘタレだったカイトの事を思い出し、涙を流した。悲しくて悲しくて仕方がない。
カイトが本当に洗脳されていないのだとしたら、リンはあんな情けない、なんの魅力もない男に惚れてしまったという事になる。

「カイト様…………」
クラッシャーはリンの呻くような声を聞きながら、ロードローラーのハンドルを握りしめる。

「……病院にはいかないの……?」
「賀斉がいるかもしれん」
林にとりあえずロードローラーを止める。治療品を求めて病院に行こうとも思ったが、考えなおして林に隠れる事にした。
もしかしたら待ち合わせの約束を守って賀斉が来ているかもしれない。
剣埼がいないのを見られたら怪しまれるし、いざ襲いかかられたら今のクラッシャーでは何も対抗できないので、病院に行くのはやめておいた。

「クラッシャー……骨折って痛い……ここまで痛いなんて知らなかった……
 今まで私が奴隷たちに強いてきたことを思うと……」
「だけど……俺達は殺して優勝しないとダメなんだ……悲しいけどな」
クラッシャーはリンのデイパックの中に使えるものはないかと中身を見る。
リンが欲しがっていそうなものを見つけて、取り出す。

「見ろ。灯台下暗しって奴だ……ベッドには劣るけどな……ほほほ」
中にあったのは、はてなようせいの可愛らしい絵がプリントされた毛布だった。
見た目は痛々しいが、毛布は毛布なので暖かくて気持ちいい。
リンが温かいベットで寝たいと数時間前に言っていたのを、クラッシャーは覚えていた。

「俺は車体の上で寝る。誰か来たら起こせよな」
クラッシャーから毛布を受け取る。それからクラッシャーはロードローラーの座席から、
車体の方へと移り、そこで気が抜けたようにごろりと横になった。毛布をくれたのは嬉しいが、リンはそれどころではない。
カイトの事を思うと涙が出てくる。悲しくて悲しくて……。時折、カイト様、と呟くのがクラッシャーの耳に届いた。


駅での一連の騒動で、クラッシャーは気づいた事がある。どうも自分は、リンに対して仲間以上の感情を抱いているらしい。
だけど自分がリンの気を引けるわけがない事はすでに気づいていた。決して叶わない恋だ。
御姫様のようなリンは、王子様のような男が似つかわしい。クラッシャーの風体と雰囲気は王子様とは程遠い。
442創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:20:09 ID:qGEmQa+e
支援
443創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:20:32 ID:k3pwSF5k
しえんしえーん。
444創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:20:51 ID:94OhKqjl
ボカロ勢はまともなヤツがいなくなっちまったなぁ…。
支援
445創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:22:28 ID:TwokQo+b
クラッシャーが男前すぎてちょっぴりマイサンがエレクトしてるぜ支援
446創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:22:37 ID:k3pwSF5k
>>444
なにを言う
カイトは卑怯でヘタレでどうしようもないだけで十分まともだろ
むしろ一番まともとも言えるじゃないか


支援
447それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:22:46 ID:lfwephkl

リンの事が好きなクラッシャーは、リンがいつまでも悲しそうに泣いているのが我慢できなかった。
泣いているリンより、カイトの事を思いうっとりしているリンの方が可愛い。
クラッシャーは剣埼を倒した後、偶然見つけた『それ』を握りしめる。恐らく自分がカイトをトイレで掴んだ時に、落ちたものだろう。

それを取り出して、クラッシャーは泣いているリンに向かって投げた。
リンはそれを見て目を瞬かせている。

「これって……」
「カイトのマフラーだ。本物のな。うほほほほ……嬉しいだろ?」

リンはクラッシャーから貰ったマフラーに顔を埋める。ついさっきまでカイトが巻いていたマフラー。
カイトの匂いが、汗が、全て染みついている。その匂いは、リンが憧れ、恋い焦がれたあのカイトの匂いと寸分違わない。
現実のカイトは情けない男でも、リンの記憶に残るカイトは完璧なヒーローだ。
このマフラーの匂いは、リンに完璧な方のカイトをリアルに思い出させた。なんといったって匂いなどが全て同じなのだから。

「カイト様ぁ……」
マフラーに顔を埋めて、切なさと愛しさからリンはまた泣いた。
涙こそ流したが、リンは嬉しかった。例え思い出だとしても、マフラーによってヒーロー、カイトの鮮明な姿を思い出す事が出来たのだから。
リンは、過去に触れ合ったカイトを思い出して、微笑む。


リンを励ますためにやるだけやったクラッシャーは目を閉じる。

どうやらリンはひとまず元気を取り戻してくれたようだ。好きな人の事を考えている時のリンは一番いい。
クラッシャーの一番好きな、しかしクラッシャーと顔を合わせている時には決して見せる事のない、とてもいい表情だ。

それにしても、偶然拾ったマフラーがリンの笑顔に変わるなんて……ラッキーだな。

そう思った後、クラッシャーは気絶するかのように眠りに落ちた。

クラッシャーが眠ってから少し経った後、はてなようせいがプリントされた痛々しい毛布が彼に優しくかけられた。
深い眠りに落ちているクラッシャーは毛布をかけられた事に気づかない。

【D-5/一日目・昼/林】
【鏡音リン@VOCALOID2(悪ノ娘仕様)】
【状態】健康、軽度の疲労。右腕骨折(応急手当済み)、悲しみ
【装備】KAITOのマフラー@VOCALOID、ロードローラー@ぶっちぎりにしてあげる♪
【持物】基本支給品、レナの鉈@ひぐらしの鳴く頃に、不明支給品0〜1
【思考・行動】
基本思考:?????
1、クラッシャーと協力する。誰かが来たらクラッシャーを起こす。
2、レンに会いたい。カイト様は……
3、ロードローラーに一目惚れ
※初めて痛みを知って、色々と価値観が変化したようです

【キーボードクラッシャー@キーボードクラッシャー】
【状態】全身打撲、顔の痛み、極度の疲労、睡眠中
【装備】無限刃@るろうに剣心
【持物】支給品一式×2、ブレイドバックル@仮面ライダー剣、Rホウ統(使用済)
ブレイドバックルの説明書、医療品一式(簡易な物のみ)、不明支給品0〜1(ただし銃器は無い)
【思考・行動】
基本思考:優勝して日本国籍を手に入れる。
1、リンと協力する。リンの事が好き。
2、カイトの情けなさに呆れた
3、殺し合い打倒しようとか現実から逃げてんじゃねえええええええ!
※剣埼の支給品を奪いました。

448それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:25:24 ID:lfwephkl
俺は逃げた。どこまでもどこまでも逃げ続ける。俺はなんて卑怯な奴なんだろうな、
だとか、今すぐハクのところに戻ってやれとかいう心の声を無視して走り続ける。

情けなくて情けなくて、それでも罪だけは認めたくない。俺がした事は全て悪い事ではない。

俺はハクを殺したわけではない。悪いのは、リンだ……リンが訳の分からない人格になって……
いや、あれはきっとクラッシャーがリンをあんな風に変えてしまったのだろう。そうに違いない。
という事は、一番悪いのはクラッシャーだ。ハクが死んだのもリンが死んだのも全部あいつの責任だ。

「くそぅ……クラッシャー、お前のせいで俺は……リンは……」

クラッシャーという諸悪の根源を見つけ出した俺は、一気にあいつの事が憎たらしく思えてきた。
あいつの所為でハクは死んだ。俺の大切なリンはあいつに洗脳されて人殺しを強要させられているのだ。
そうに違いない。嫌がるリンを脅して、無理やり意のままに動かしているのだ。
なんという鬼畜だろう。殺してやりたいくらい憎い。

だが、俺には殺せそうにない。俺は弱いし、あいつは強い。俺には勝てるわけないんだよ……
あのクソ野郎の手から、誰かリンを助け出してくれる奴はいないだろうか……

クラッシャー……死ね……さっさと死ねよ馬鹿……

俺はクラッシャーへの呪いの言葉を呟きながら、歩いた。
ふと気がつくと、周りには何の障害物もない。このままでは誰かに襲われてしまうかもしれない。
そうなると……死。死にたくない……俺はまた震え始める────



意外にも、カイトとは簡単に再開する事が出来た。駅から少し離れた所に、悲しげに蹲っているカイトをアレックスは見つけた。
逃げだしたはいいが、これからどうすればいいのかわからず、一人恐怖と孤独に苛まされ、途方に暮れていたようだ。
カイトはアレックスを見ると、すぐに気まずそうに顔をしかめた。
それでも懸命に表情を作って、アレックスに愛想笑いを浮かべながら近づいて来たのは、やはり彼とて罪悪感を感じているからだろうか。
それとも、ただ単に自分の身を守ってくれる人間が追いかけて来てくれた事を喜んでいるだけなのだろうか。


「お、追いかけてきたんだな……」
俺は一生懸命笑顔を作って、アレックスに言った。アレックスはすでにボロボロで、自分の体重を支える事すらきつそうだった。
「クズめ……」
アレックスは吐き捨てるように言った。俺は言われた台詞を理解できなかった。
その時、俺の頬に電撃のような鋭い痛みが走った。訳の分からないまま天と地が逆転し、俺は情けなく地面に膝をついた。
どうやらアレックスに殴られたらしい。頭が霞がかったようにぼんやりしている。

「どう、して……」
「どうしたもこうしたもあるか……卑怯者め」
「卑怯……卑怯かもな……だがお前に俺を殴る権利はあるのか?
 俺は卑怯だが、何も悪い事なんてしちゃいねえぞ……」
俺は薄らいだ意識でアレックスを睨んだ。

「一々言われないと分からないのか? お前は今までに何度他人を裏切った?
 今までに何回言い訳をしたか覚えているか? 適当な理由を作り上げて、他人を裏切るための大義名分にしている」
「だったらなんだ……?それって悪い事なのか?自分を守るために我武者羅になって何が悪い?」
「……悪い、悪くないの問題じゃない」
アレックスの奴は俺の問いかけをかわしている。
「悪い悪くないの問題じゃないだと? という事はやっぱり俺は悪くないんじゃねえか。
 よくも無実の俺を殴りやがったな。何の罪もない一般人をお前は平気で殴るんだな」
俺はふらふらと立ち上がり、ますます鋭くアレックスを睨んだ。
449創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:26:38 ID:PJFVrJRE
支援
450それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:26:59 ID:lfwephkl


「この三流ヒーローが! 殴る相手を間違えてんじゃねえ!」


「本当に自分に何の罪もないと思っているのか?罪って言うのは法律で決められている項目だけを指す言葉じゃないぞ。
 俺はお前の心に聞いている。本当にお前は何の罪も感じていないのか?罪悪感はないのか?」
「ったく、ハクも守れずに何やってんだよお前は……俺だけは頑張って守れよな」
「俺の質問に答えろ!」
アレックスが突然激昂し、俺に叫んだ。俺はびくりと体を震わせる。

「罪悪感……そんなもん、感じるわけないだろうが!」

俺は思い切り嘘を叫んだ。本当は罪悪感を感じている。ハクにもリンにも申し訳ない事をしてしまった。
だけど罪悪感がある事を認めると、俺は悪者になってしまう。俺は何も悪い事をしていないから罪悪感なんて感じない。それでいいんだ。
アレックスは俺の言葉を聞くと、ますます真剣な目つきになり、口を開く。

「ハクに伝言を頼まれた。死に際に、あいつはどんな言葉をお前に残したと思う?」
「……伝言、だと!?」
俺は言葉に詰まった。伝言……。正直言って聞くのが怖い。あいつは俺の事を憎んでいるに違いないからだ。

「教えてやる。あいつは最後にこう言っていた。
 ────そうまでして生きたいですか? とな」

電撃のような刺激が俺の脳に走る。俺は言葉を返す事が出来なかった。そうまでして生きたいですか?
ハクの最後の言葉が、俺に重くのしかかる。

他人の期待、信頼、気持ち、好意、頼み、命、を裏切って────そうまでして
俺は浅ましく、醜く、情けなく、惨めに、ここまで生き伸びてきた。

────カイトさん。それでいいのですか?
────人間は生きる事に種の保存以外に何か別の意味を見出す事の出来る唯一の生き物です。
────カイトさん生き方は、およそ人間とは言えるものではありません。むしろ獣に近い。
────ただ生きる事だけを追い求めるのは、動物と同じです。

────カイトさん、これまで動物のように生き延びてきた貴方に、人間の尊厳が残っていますか?

ハクの声が聞こえてきたようだった。

もはや俺はアレックスに何の言葉も返せなかった。今までの事が走馬灯のようにフラッシュバックされる。

一緒に殺し合いを潰そうと持ちかけて来てくれたはっぱ隊員を俺は見捨てた。
ハクの悲鳴が聞こえてきたのに、アレックスに一緒に助けに行こうと誘われたのに、俺は無視を決め込んだ。
ハクの成長を認めてやる事が出来ず、嫉妬と我が身可愛さのあまり、彼女を非情な言葉で罵った。
剣埼に殴られそうになった時、俺は命惜しさに実の妹を盾にした。
ハクがリンに殺されそうになった時、助けを求めてきたハクを無視して、俺は逃げた。

「うううぅ……」
俺は地面に手を付き、もう何度目か分からないが涙をぼろぼろと落とした。

────そうまでして生きたいですか?
────そうまでして生きたいですか?
────そうまでして生きたいですか?

ハクの言葉が脳内で何度も何度も繰り返される。
451創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:27:09 ID:hKrbdbd5
目からブリオッシュ
支援
452創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:28:10 ID:k3pwSF5k
支援
453創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:28:31 ID:qGEmQa+e
しえん
454間違えた。>>450の修正 ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:30:05 ID:lfwephkl

「お前は自分が恥ずかしくないのか!」
「恥ずかしいわけないだろ!やっぱりお前には俺の気持ちなんて分からないんだよ!
 力もあって勇気もあるお前はヒーローだ! だけど俺には何の力もない。クラッシャーに襲われたら何の抵抗も出来ずに死んでしまう。
 俺は非力なんだ!ヒーローだったら俺に卑怯な振る舞いをさせる前にさっさと俺を助けろよ!
 それがヒーローの義務だろうが!!」
恥ずかしくないのかと問われて、俺はアレックスに腹がたった。そもそもアレックスがもっと頑張っていれば俺は卑怯者にならずに済んでいた。
超人なら、ヒーローならもっと頑張りやがれ……!

「お前は俺をどうしても悪者にしたいようだが、そもそも怒りの矛先が間違っていないか?
 誰よりも悪いやつなのは右上と左上だろうが!それとリンを洗脳しやがったクラッシャーだ!
 俺はこのクソゲームの最大の被害者なんだ!俺が悪いわけあるか!」
俺は勢いに任せて、アレックスの胸倉を掴んだ。
「お前がそんなにキレているのはハクが死んだからだろ? だったら俺を責めるのはますますおかしいよな?
 俺は仕方なくハクを見捨てたが、殺してはいない。殺したのはリンだ。そしてその仲間のクラッシャー。
 怒りに任せて殴るならそいつらを殴ってこいよ!どうして俺が殴られなくちゃいけないんだ!」
俺は思い切りアレックスの頬を殴る。


「この三流ヒーローが! 殴る相手を間違えてんじゃねえ!」


「本当に自分に何の罪もないと思っているのか?罪って言うのは法律で決められている項目だけを指す言葉じゃないぞ。
 俺はお前の心に聞いている。本当にお前は何の罪も感じていないのか?罪悪感はないのか?」
「ったく、ハクも守れずに何やってんだよお前は……俺だけは頑張って守れよな」
「俺の質問に答えろ!」
アレックスが突然激昂し、俺に叫んだ。俺はびくりと体を震わせる。

「罪悪感……そんなもん、感じるわけないだろうが!」

俺は思い切り嘘を叫んだ。本当は罪悪感を感じている。ハクにもリンにも申し訳ない事をしてしまった。
だけど罪悪感がある事を認めると、俺は悪者になってしまう。俺は何も悪い事をしていないから罪悪感なんて感じない。それでいいんだ。
アレックスは俺の言葉を聞くと、ますます真剣な目つきになり、口を開く。

「ハクに伝言を頼まれた。死に際に、あいつはどんな言葉をお前に残したと思う?」
「……伝言、だと!?」
俺は言葉に詰まった。伝言……。正直言って聞くのが怖い。あいつは俺の事を憎んでいるに違いないからだ。

「教えてやる。あいつは最後にこう言っていた。
 ────そうまでして生きたいですか? とな」

電撃のような刺激が俺の脳に走る。俺は言葉を返す事が出来なかった。そうまでして生きたいですか?
ハクの最後の言葉が、俺に重くのしかかる。

他人の期待、信頼、気持ち、好意、頼み、命、を裏切って────そうまでして
俺は浅ましく、醜く、情けなく、惨めに、ここまで生き伸びてきた。

────カイトさん。それでいいのですか?
────人間は生きる事に種の保存以外に何か別の意味を見出す事の出来る唯一の生き物です。
────カイトさん生き方は、およそ人間とは言えるものではありません。むしろ獣に近い。
────ただ生きる事だけを追い求めるのは、動物と同じです。

────カイトさん、これまで動物のように生き延びてきた貴方に、人間の尊厳が残っていますか?

ハクの声が聞こえてきたようだった。
455創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:30:22 ID:TwokQo+b
ハク の おきみやげ! こうかは ばつぐんだ!しえん
456創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:32:04 ID:PJFVrJRE
支援
457創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:32:22 ID:hKrbdbd5
> ハク の おきみやげ! こうかは ばつぐんだ!しえん

てめえwwwwww感動を吹き飛ばすなwwwwwwwww
458それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:32:27 ID:lfwephkl


もはや俺はアレックスに何の言葉も返せなかった。今までの事が走馬灯のようにフラッシュバックされる。

一緒に殺し合いを潰そうと持ちかけて来てくれたはっぱ隊員を俺は見捨てた。
ハクの悲鳴が聞こえてきたのに、アレックスに一緒に助けに行こうと誘われたのに、俺は無視を決め込んだ。
ハクの成長を認めてやる事が出来ず、嫉妬と我が身可愛さのあまり、彼女を非情な言葉で罵った。
剣埼に殴られそうになった時、俺は命惜しさに実の妹を盾にした。
ハクがリンに殺されそうになった時、助けを求めてきたハクを無視して、俺は逃げた。

「うううぅ……」
俺は地面に手を付き、もう何度目か分からないが涙をぼろぼろと落とした。

────そうまでして生きたいですか?
────そうまでして生きたいですか?
────そうまでして生きたいですか?

ハクの言葉が脳内で何度も何度も繰り返される。
俺にどうしろっていうんだ……そうまでして生きたい、じゃない。俺にとってはそうまでしないと生きられないんだ……
分かる……ハクの言いたい事は分かる。俺はとても惨めで、自分や他人を裏切り続けている。
俺はとてつもなく醜い人間だ……だけど

「俺には……俺には力がない……!だから仕方ないだろうが……!
 どうして俺みたいな弱者が他人の期待に答えるために頑張らないといけないんだよ……」

俺はそれからしばらくの間、後悔と悲しみの念に駆られ、泣き続けていた。
そうまでして生きたいですか? そうだな、ハク。俺は『そうまでして』生きたくはない。
これ以上醜くなりたくはないんだ。

俺はずっとポケットに入れておいて、結局一度も使わなかった拳銃の存在に気付いた。
生きたいけど死ぬのは怖い。だけど、自分のタイミングで死ぬ事が出来るなら、俺はこれ以上醜くならずにすむかもしれない。
俺の人生をここで終わらせる事が出来るかも知れない。

俺は思わぬところで気付いた。これ以上醜くならずにすむ方法がある。
ハク、お前の死体を丁寧に埋めに行ってやるよ。せめてもの罪滅ぼしだ。
その後、俺は自殺しようと思う。これ以上惨めになりたくないから……


カイトと俺はその後駅に戻り、ハクの死体と剣埼の死体を丁寧に葬った。
剣埼の事はよく知らないが、ハクの人生を思うと悲しくなってくる。
弱気で引っ込み思案で、後ろ向きで……こんな馬鹿げたゲームに参加させられて、そして友に裏切られ、友に殺された。
それでも、ハクはきっと何かを成し遂げたのだと信じていたい。

カイトとハク、二人とも弱気な性格だが、それでも二人は決定的に異なっている。
最後に自分の気持ちに素直になれたハクと、今まで他人と、そして自分を裏切り続けてきたカイト。

カイトは言った。お前には俺の気持ちは理解出来ない、と。
確かにそうかもしれない。俺にはなまじ力があるから、逃げ回るカイトを理解出来ない。
戦えばいいのに、精一杯闘って、それで負けて死ぬなら本望じゃないか。ついそう思ってしまう。
おそらく俺はなんだかんだいって自分の強さに自信があるのだろう。

だがカイトやハクは違う。彼らは力を持たない。狩る者には決してなれない。
だから逃げる。だから弱音を吐く。他人を出し抜き、単純な力以外の全てを用いて足掻こうとする。

カイトの足掻きは、本当に見るに耐えない。自分に嘘をついて、ただ生を追っている。
だがハクは違った。彼女だって勿論生きたかったが、最後の最後で自分に嘘をつかなかった。
リンに自分の全てを訴え、そしてカイトを逃がし、死を受け入れた。

俺はハクの生き方の方が好きだ。だが、本当のところ、どちらが正しいのかは分からない。
自己を守る事は正義。それは疑いようがない。ハクの最後の生き方は、自分の命を放棄しているように……見えなくもない。
459創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:32:45 ID:94OhKqjl
支援
460創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:32:51 ID:qGEmQa+e
それでも支援
461創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:33:23 ID:k3pwSF5k
>>455
ハクノ置き土産でカイトの攻撃力と特殊攻撃力が2段階下がるわけですね、わかりますしえん
462創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:35:33 ID:X1tP/zsF
アレク気をつけろ支援
463それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:35:36 ID:lfwephkl

「アレク、俺……ちょっとトイレに行って来る」

カイトがそう言った。ハクの言葉を伝えてから、カイトは酷く大人しい。
ハクの最後の言葉が身にしみたのだろうか。あの言葉を切欠に、生まれ変わってくれることを俺は期待している。

『そうまでして生きたいですか?』一見嘲笑の言葉のように思えるが、実はそうじゃないと思う。
ハクとカイトは似た者通しなのだから、ハクとカイトは腐っても友達なのだから、
ハクの言葉には嘲笑以外の別の意味が込められている、と俺は思いたい。

もしカイトのように非力なら、俺もあんな風に惨めに行動する事を選ぶのだろうか。
俺もあれだけ醜くなってしまうのだろうか。考えても仕方がない事だ。実際、俺には力がある。カイトが言うには勇気も精神力もあるらしい。
俺とカイトとでは全く立場が違う。俺がカイトの立場に立ってモノを考えたとしても、その溝は永遠に塞がらないのに決まっている。

カイトはこれからどうなるのだろう。さすがにこりたのだろうか。
自分を見つめ直し、勇気を振り絞って欲しい。そうでなければ、ハクがあまりにも不憫だ。


────ドンッ!


トイレの方から乾いた銃声が聞こえてきた。確かカイトは銃を持っていた。
俺の額に汗が滲む。全速力でトイレまで走り、中を覗いた。
崩壊し、あたりに瓦礫が散乱するトイレの真ん中に、カイトはいた。

「死にたくねえ……死にたくないんだ……アレク……」

涙を流しながら、俺の脚に縋りついて来る。拳銃が足元に落ちている。
その近くの地面には、つい先ほど出来た弾痕がある。

「どれだけ醜くても……どれだけ浅ましくても……どれだけ人間としての尊厳が失われようとも……」

カイトは自殺しようとして、土壇場で恐怖し、代わりに地面を撃ったようだ。
俺の脚を抱いたまま、カイトは涙ながらに口を開く。



「どれだけ卑怯と罵られても……それでも俺は死にたくない……!」



「俺は悪くない……全部全部仕方がない事なんだ! アレックス……頼むから俺を見捨てないでくれ……これからもずっと俺を守ってくれ
 それとあの糞野郎、俺のリンを奪ったクラッシャーをぶち殺してくれ……一生のお願いだから……」
……なんという事だ。
ハク、お前がした事は、お前の伝言は────どうやら無駄だったようだぞ……


【剣崎一真@仮面ライダー剣 死亡】
【弱音ハク@VOCALOID 死亡】

【残り46人】
464それでも僕は死にたくないW ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:37:09 ID:lfwephkl

【D-4 駅/1日目・昼】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、苦悩
[装備]:ベレッタM96(残弾数11/11)@現実
[道具]:支給品一式、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタル
ギアソリッド、必須アモト酸@必須アモト酸、2025円が入った財布(ニコニコ印)@???
、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実 ]
1:それでも俺は死 に た く な い
2:リンを洗脳してハクを殺させたクラッシャーを憎悪。殺してやりたい。
3:生きるためなら例え卑怯な事をしても仕方がないだろ。正当防衛の一種だ
4:ミク、リン、レンが心配。特に洗脳されているリンが心配

【アレックス@MUGEN】
[状態]:極度の疲労、全身に打撲。左腕に刺し傷。悲しみ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:自殺しなかったのは良かったが……駄目だこいつ……
2:クラッシャーとリンを警戒
3:殺し合いを止める為、仲間を集める。知人や、首輪が解除できそうな人物を優先。
4:バルバトスと会ったら倒す。
5:あのピエロに出あったらどうしよう……
6:温泉にはいつか行きたい……
※F-3のデパート内に、床に大きく穴が空き、壁が一部粉々になっている部屋が一つあります。
※トキ、DIO、十六夜咲夜をMUGEN出展の彼等と誤解しています。
 また、MUGEN内の扱われ方からDIOと咲夜が親子だと思っています。
※名簿が最初白紙だったのには、何か理由があると考えています。
465創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:38:00 ID:NQjLjPwi
もう駄目だコイツ
466創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:38:13 ID:qGEmQa+e
それにしてもこのカイト、ヘタレである支援
467 ◆jVERyrq1dU :2009/04/06(月) 22:38:21 ID:lfwephkl
投下終了。俺は、俺はさるさんに勝った……!
長時間の支援有難うございます。長くてすまん
468創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:38:35 ID:k3pwSF5k
もう駄目だこいつ・・・でも実際俺もそうなりそうだな
469創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:38:44 ID:TwokQo+b
カイト覚醒しないでくれ!ずっと卑怯なままでいてくれ!お願いだ!しえん
470創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:39:18 ID:Tw3kU5Lu
投下乙
カイトオワタ
そしてクラッシャーつええ
471創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:40:18 ID:a6YxZZ3C
投下乙!
見ていて清々しい卑怯だ
472創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:40:43 ID:X1tP/zsF
投下乙。

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「ケンジャキの大活躍とアレ×ハクを妄想してたら
次の話で二人死んで代わりに殺害犯がフラグを立ててた」
な…何を(ry

しかしKAITOほどのヘタレはパロロワでもそうはいないw
473創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:41:36 ID:hKrbdbd5
投下乙!乙!乙!乙!
ハク…剣崎…お前ら頑張りすぎだろ…
死者スレでゆっくりしておけ
クラッシャーとリンは…あれ?クラッシャー格好良くね?そしていまではリンも可愛いです^^
主人公(笑)は…気の毒としか言い様が無い…
剣崎が死んだ事で越前・DIO・賀斉はどうなることか…(一番ヤバいのは賀斉か)
474創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:42:18 ID:UceeUWHg
投下乙
キークラ、ライダーより強かったのかwww
しかし、ハクも救われないしロワらしい鬱バナやね
475創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:42:30 ID:PJFVrJRE
投下乙です。
なんというか……実にバトルロワイアルらしいSSだった気がする
最後まで自分を貫いたハク、殴られて痛みを知ったリン。
なんかかっこいいキークラ、なんだかんだで熱く戦った剣崎、KAITOを本気で叱り付けるアレックス。
そして、本当に惨めでどうしようもないKAITO。
素晴らしい大作だった。GJです。
最後の一文、「無駄だったようだぞ」がいい味出してるなぁ。
476創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:43:07 ID:94OhKqjl
投下乙です。
ハクとオンドゥルはよく頑張った!!
リンとクラッシャーのコンビも面白くなってきたな。
それにしてもクラッシャー男前過ぎ吹いたwww
KAITOはここまで来たら最後まで突っ走って欲しいな。
主人公(笑)はまぁ…色々と大変だろうが頑張れw
477創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:44:36 ID:aSZYFfPh
投下乙
うわあ!、ハクが死ぬなんて!、もっと生きてアレクと絡んで欲しかったが……
ああ、あの状況だと洗脳してるようにしか見えないか。本当は違うんだけどな。
KAITOはどうなるんだろう?、ロワだと卑怯な行動も+に結びつくこともある場合もあるが
ヘタレだけど誰かに憎悪抱いてる状況は危ういぞ
アレクはハクを失いヘタレを守ることになったか
長編面白かったです! GJ!
478創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:44:41 ID:k3pwSF5k
投下乙
カイト・・・これにつきるぜ
479創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:46:02 ID:NQjLjPwi
アレクはこれからカイトをどうするんだろうな
もう失望し過ぎて完全に愛想を尽かしただろうし
480創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:35:31 ID:Fg3d1zQC
凄い違和感があると思ったら、剣崎が剣埼になっているのね
それはともあれお疲れです
こういう波乱こそがパロロワの華ですよねぇ
ゲゲゲ、ハク、お疲れ様
481創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:44:21 ID:7i2XroIS
あれ、なんだろう…俺もロワに参加したらKAITOのごとき保身に走るんだろうなあと思うのに、
そのKAITOに腹が立って仕方がない…?
死にたくないから見栄を張って、嘘をついて、身代わりを立てて身を守って、自殺も死ぬのが怖いし痛いのが嫌だからしなくて…
どう考えても自分が取るであろう行動なのに、それをやったKAITOが許せない…?

…KAITOのバカヤロー!!!
お前が、お前がもうほんの少しだけでもしっかりしてればハクは死なずに済んだかもしれないのに…剣崎だって…畜生!
こんなに気分の悪くなるSSを読んだのは初めてだ…勿論、いい意味でだけど。
乙だしGJなんだけど、中身を見ると(質の問題じゃなくて、質のベクトル的な意味で)素直にそうと言えない…orz
482創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:44:44 ID:zLgAgYLN
投下乙です
オンドゥル…ハク…お疲れ様としか言えねぇよ…でも二人ともすげぇ頑張った。
KAITO、また誰かを見殺しか…なんかもう逆方向に覚醒してるよなぁ
そしてクラッシャーかっこよすぎるだろJKwマーダーだとか気にしたら負けw
アレックスまじ頑張れ、主人公(笑)から主人公(真)になれるよう頑張れ
483 ◆jVERyrq1dU :2009/04/07(火) 00:00:03 ID:ftHPCm8I
>>480
指摘ありがとう
wikiに収録されるようなら、編集して直しておきます
484創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:02:53 ID:huB3RCry
前に誰かが書いたが賀斉はこのド修羅場にいなくて本当に良かったよな。
悲惨な奴四天王とかに挙げられていたりもしたがある意味運がいい奴かもしれない。
485創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:04:19 ID:JNisoa7F
悲惨な奴四天王にハクも入れてやるべきだと思った
486創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:06:38 ID:ZSQXRssW
>>481
同族嫌悪ってやつじゃないかしら
俺もKAITOに感情移入しっぱなしだけど、奴の不甲斐なさにイライラしてくる
487創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:10:00 ID:schz6YWY
というか至高のボッチはキャラとしては悲惨だがロワ内ではむしろ幸運な方なんだから外したほうがいいのでは

至高のボッチは至高のボッチでいいと思う
488創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:17:35 ID:T2bhwAju
ハクのおきみやげ!
KAITOにはぜんぜんきいていない!
489創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:20:28 ID:2LhABwv/
投下乙。こ、こんなヘタレ見た事無いぞ…。むしろクラッシャーの方を応援したくなったくらいだ。
銃やクレイモア地雷も持っているのに…どうやったら更正できるんだこいつは…。

ところで、カイトが装備してるベレッタの残弾数が減っていないけれど、リロードしたの?



あと、書き手さんが本投下する大体の時間を予告してくれれば皆支援がしやすいんだが…
490創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:21:05 ID:T2bhwAju
オンドゥルも死んで、とうとう対主催が\(^o^)/状態に
それでもブロントさんなら…メタ様なら、めーりんなら、ベジータなら、サンレッドなら、スネークなら!

……なんかいまいち希望が沸いてこない^q^
491創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:22:50 ID:schz6YWY
そういやブレイドバックルって適合性が高くないとダメなんだっけ?あと闘争心とか
誰が装備できるんだろうなぁ
492創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:26:40 ID:2LhABwv/
>>491
闘争心っつったら熱い心だろ?
サンレッドには必要無いし、そしたら、その、ほら、あれだ。
493創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:31:14 ID:JNisoa7F
対主催で期待できそうなのは
美鈴 修造 美希 アレク べジータ  羽入  左之助 サンレッド メタナイト ブロントさん スネーク
あたりかな

こんなにいるじゃまいか!!
494創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:36:49 ID:2LhABwv/
>>493
兄貴やアポロはー?

ダブルオー見た事無いからよくわからんのだけど、グラハムってどれくらい強いの?
銃とかは大体扱えるんだろうけど。A-10RCLが操縦できるのなら、或いは…。
495創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:39:50 ID:zdkBH0EJ
美鈴はフラン関係で微妙に危うい気がしないでもないな
そしてブロリー戦を控えた四人も中々ピンチだし

てか対主催に搦手に対応出来そうなのがスネークぐらいしか居ないんだがw
496創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:41:04 ID:Ytgvkhi4
そしてこの場でも忘れられる賀斉神
497創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 00:52:01 ID:ts2RctWg
賀斉神は・・・うん・・・うっかりだし、地味にツンデレのジンクスに当てはまってるし・・・
しかも賀斉神はニートとか馬岱と違って幻術とか妖術、教唆みたいな戦闘とか騙し合い向けのスキルを持ってるわけでもない・・・
三国志\の要素が色濃く入るなら戦闘に出てないせいで熟練低いからガチバトルでも・・・orz
498創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:05:02 ID:Ytgvkhi4
賀斉の能力を調べてみた(MAX100)
賀斉
統率77
武力71
知力69
政治70
歩兵300弓兵300水軍400攻城300
斉射、連射、蒙衝、楼船、井蘭、奮戦、奮闘、鼓舞持ち
因みに呂布・馬岱は
呂布
統率94
武力100
知力25
政治16
馬岱
統率76
武力84
知力56
政治52
使えない訳じゃ無いんだけどね…
499創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:14:14 ID:zdkBH0EJ
つまり中途半端という事かw
500創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:20:05 ID:Ytgvkhi4
実際やってみると分かるんだが、確実に勢力を広めていくと必ず惇とかに出番取られる人。
一応戦える対主催なのに、まるで神(笑)だなwww
501創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:26:10 ID:BrjRCYVJ
あと三国志\だと重要な能力は統率>知力>武力>政治だが、
ロワだと武力>知力>政治>統率だし……
>>494
MSをドラクエの武器に例えるとはがねのけんでおうじゃのつるぎを持った相手とやりあえるレベル。
502創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:27:46 ID:ts2RctWg
賀斉
統率77 武力71 知力69 政治70
歩兵300弓兵300水軍400攻城300
斉射、連射、蒙衝、楼船、井蘭、奮戦、奮闘、鼓舞

呂布 
統率94 武力100 知力25 政治16
出典元を見ていないので不明でも高水準
上に同じ。しかし高水準

馬岱 
統率76 武力84 知力56 政治52
スキルの必要熟練から考え全て800以上
全スキル取得


見劣りするねぇ、流石三国志演義補正の被害者
503創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:30:28 ID:ge2ZlbIf
投下乙です。
カイト見てると凄い自己嫌悪を感じる。。。
504創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 02:03:46 ID:iQAv4AKC
参加者が六人もいるのに未だ一人も死んでない東方勢は何気に凄い
505創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 02:05:03 ID:I/T5988f
大作投下乙!
・・・それでも修造なら・・・修造に出会えたなら端正してくれる・・・はず
506創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 02:13:32 ID:N6guR+c1
>>504
今にも全員死んでしまいそうなボカロ勢の方がもっと凄い
507創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 02:16:33 ID:BrjRCYVJ
つーか御三家でまともな対主催できそうな生存者が美希と美鈴だけな件について
508創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 07:10:40 ID:rBy2pisH
御三家は良くも悪くも個性強いよな
509創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 09:26:52 ID:kwd2dHAO
今読んだ。
俺ボカロファンでよかったと心底思った。
510創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 11:38:01 ID:TtXcpmBj
しかし何でこうも駅では惨劇が起きやすいんだ
511創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 12:37:55 ID:uvmVn0Jr
>>504
6人中3名が人数が減るまで大人しくする方針だからじゃね?
というか真面目に対主催やってる奴がむしろ浮いてるという事態が東方勢の異常性を如実に物語ってると思う。
512創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 12:54:01 ID:E7/mXqqJ
ボカロ
ミク→嘘吐きは全員死ね☆
カイト→死にたくない死にたくない死にたry
リン→極悪非道な王女様?
レン→ドナルド様の仰せのままに

アイマス
ゆきぽ→ときちくさんと頑張って優勝目指します
ゆとり→熱くなるの!

東方
PAD長→フランとかシラネ、人が減るまでおとなしく。
めーりん→フラン様の仰せのry
フラン→歪みある生き方したい
H→H
あややや→グラハムうぜえ
兎詐欺→スネークを利用してやりたい

皆スタンス濃いなwww
513創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 13:05:01 ID:schz6YWY
ボカロ勢はそれくらいやんないとキャラ薄くなっちゃうからね
514創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 13:11:59 ID:L2bDxHf1
一番早死にしそうな東方キャラは誰だろ
515創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 13:31:54 ID:E7/mXqqJ
>>514
おっとそこから先は禁止だぜ?
516創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 13:39:11 ID:zdkBH0EJ
スタンスまとめてみた

純対主催:修造、瑞希、美鈴、美希、賀斉、アレク、左之助、ベジータ、羽入、
ブロントさん、サンレッド、越前、キョン子、大河、トキ、みさお、アポロ、
メタナイト、スネーク、ボッチ
危険対主催:レン、ドナルド、ときちく、タケモト
マーダー(無差別):ミク、リン、キークラ、フラン、雪歩、馬?、呂布、CCO、
ブロリー、バルバトス、アカギ
マーダー(ステルス):咲夜、てゐ、バクラ、DIO、渚、言葉
特殊:グラハム、ビリー
スタンス不明:KAITO、文
H:H

つまり強対主催が少ないんだよな
というかマーダーが異常に強いw
517創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 13:51:25 ID:Ch5HqXsP
◆jVERyrq1dU氏へ
「それでも僕は死にたくないU」が容量オーバーでWikiに収録できません。
どこかで分割する必要があるので、分割する場所の指定をお願いします。
518創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 14:27:21 ID:qoxFG3kC
>>516
意外な話だが、てゐが如何にステルスを殺せるかにロワの明暗がかかってるな。
ブロリーはブロリーです。
519創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 15:00:38 ID:iQAv4AKC
>>516
ときちく「よし首輪が外せたぞ」
ドナルド「じゃあ主催者を殺っちゃうよ♪」
バクラ「主催者の座は俺の物だぜ」
DIO「もう主催者に従う必要が無いから私も力を貸そう」
CCO「主催者相手に戦か…面白い」
呂布「奴らめ、この俺を怒らせた事を後悔させてやろう」
アカギ「ククク…俺もお前らに命を賭けよう」

この展開なら対主催が非力でも問題は無さそう
520創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 18:25:39 ID:N1w+DMZ/
>>519
これなんて最強メンバー?
521創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 18:53:13 ID:UVYXqSUL
王子や松岡や至高に期待するしかないな、いろいろな意味で……
522創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 18:57:08 ID:pEqaKERN
>>516
フランは無差別マーダーと言うよりは無差別対主催じゃないか?
自分で言ってて何だかおかしい言葉だが
523創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 19:04:30 ID:qoxFG3kC
一応危険対主催でいい……ハズ。

考えてみたら、羽生は
神+鬼+宇宙人+巫女+時止め+幽霊
だから東方的に見れば「ぼくのかんがえたさいきょうキャラ」状態なんだな。
そらフランにも勝てるわ。
524創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 19:06:46 ID:UVYXqSUL
そんな東方的に見るとなんていうと、
神や大魔王を超えた界王を超えた界王神を超えた
力を持つ王子やブロコリがとんでもないことになる
525創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 19:13:59 ID:MnE25G1/
東方的に考えるととんでもないことになる遊戯王(かなすわが子供に見える年代の神や月より遠くの宇宙人テンコ盛り)
>>524
閻魔も越えてるぜ
526創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 20:10:57 ID:UsjPT9ib
この間読み返してて思ったのだが
なのはを倒した1st阿部さんとかトキと対等に戦ってたビリーみたいな
ニコニコ補正かかった参加者ってどんぐらいいるんだろう
527創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 20:21:20 ID:0iqglzuZ
ぱっと思いつくのではドナルドだな
正確にはMUGEN補正なのかもしれない
相手を扇動できて、現時点でまだ実力を隠している。
528創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 20:25:28 ID:rBy2pisH
ドナルドは教祖だもんな
529創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 20:25:37 ID:pEqaKERN
キークラが一番補正効いてる気がするな
元ネタはただの廃ゲーマーだし
ニコニコRPG補正もあるのかもだけど
530 ◆SHdRN8Jh8U :2009/04/07(火) 21:59:24 ID:N1w+DMZ/
投下したいんですがおkでしょうか?
531創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 22:03:31 ID:rBy2pisH
こいこい
532 ◆SHdRN8Jh8U :2009/04/07(火) 22:08:38 ID:N1w+DMZ/
バリボリ…バリボリ…バリボリ…バリボリ…

「不味くは無いけど、美味くも無いよな…これ」

誰も居ない住宅街で、一人奪った食料を食べつつ一人呟く馬岱。
自分の主君であった呂布との館での戦いを終えた彼は呂布から離れていた。
腹が減っては戦は出来ぬの格言通り食料を食べていた。


求めに求めた食料ではあるが、大して美味しくも無い食料を食べて文句をたれていた。
そのくせその食料に夢中になっていたのか、特に方向を定めず呂布から離れてしまったため…

「あれビルだよな…」

彼の目の前に見える見覚えのある建物。
彼にとっては始まりの場所のビルなのだが、少し顔を顰める彼。

「また戻ってきてしまったのか…」

いくら食料に夢中になっていたとはいえ、彼らしくも無い失敗。
強い奴と戦うなら、他のとこに行くべきだと思い、東へと足を向けようとした瞬間。
533創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 22:09:16 ID:Ytgvkhi4
おk
534 ◆SHdRN8Jh8U :2009/04/07(火) 22:09:49 ID:N1w+DMZ/
「うっ…」
そんな呻き声が彼に聞こえてきたのだ。
彼が何処から声がするのかと周りを見渡すと…


「………」
目の前には、20代ぐらいの男が足を庇いながら必死に歩こうとしている姿。
その男は自分に気づかないのか、こちらを見ようともしていない。
あの少女のように何かの囮かもかもしれないと思い、近づかず様子を見る。
必死にこっちに向かってもがいていた男だが、余りの激痛のためかとうとう気を失って倒れてしまった。


数時間前の少女の事もあり、少し警戒していた彼だが。
ばったりと目の前で男が倒れその足が見え、その足に特徴的な模様を付けている刺し傷が見える。


馬岱はその男に慎重に近づきながら体を見る。
脛に刺し傷があるがそれは軽そうであり、これが倒れた原因では無さそである。
またそれ以外に目立った外傷は無い、とするならば脛に何か毒か麻痺薬かを仕込んでいるような物を切りつけられたのかも知れなかった。


もし毒ならば種類にもよるが、死に至る可能性もある。
こうした弱い奴を放置したり、道具だけでもって逃げるような鬼畜なマネはさすがに彼には出来なかった。


「やれやれ…めんどくさいな」
そう言いながらも、彼は男を背負いながら近くの家に入っていった…
535創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 22:12:10 ID:rBy2pisH
536 ◆SHdRN8Jh8U :2009/04/07(火) 22:12:34 ID:N1w+DMZ/
男をソファに寝かせながら、その怪我をしている脛を見る。
馬岱は別に医者では無い、だが数々の戦場で戦ってきた彼は数々の怪我を見てきている。
だから応急処置ぐらいはできると思いこの家に運んできたのだ。


「特徴的な傷跡は付いてるが…毒では無さそうだ」
男の顔を見ればそれは分かった、安らかな顔をしているからだ。
もし毒ならば苦痛に満ちていそうだが、そんな事は無かった。


おそらく刺されたショック、肉体精神的な疲労などが原因なのだろう。
生死に関わるほどの物でないと分かり、とりあえず安心した彼は違うソファに座る。

この男をどうしようか考える。
おそらく男は弱い奴に分類される参加者である。


自分の目的は自分の力を試すために強い奴と戦う事であり、弱い奴を助ける事では無い。
だけど弱い奴でも強い奴の事を知っているかも知れないと思う。
そうならば別にこの男を殺す必要は無い。


むしろ生かして情報を聞くべきなのだと思う、それに怪我をしている弱い奴を見捨てるわけにもいかない。
戦闘の邪魔さえしなければ、預けれそうな奴に預けるまで一緒に居た方が良いのかもしれない。
彼とて鬼では無い、優しい心だって有るのだ。
むしろ殺したり、放置は呂布軍の一員として後味が悪い。


そこまで考えた馬岱だったが、幻術と戦闘と移動による疲労が溜まってきたのか眠気が急に襲ってくる。

「少し眠いな、これから強い奴と戦うだろうし…少し眠るか」

そう言うと彼はソファに寝そべって寝始めたのだった。
537 ◆SHdRN8Jh8U :2009/04/07(火) 22:13:57 ID:N1w+DMZ/
【B-2/住宅街/1日目・昼】
【馬岱@呂布の復讐】
[状態]:頭にたんこぶ 幻術と戦闘による疲労(中)、睡眠中
[装備]:鍬@吉幾三、三国志大戦カード(群雄SR馬超)@三国志大戦
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
1:Zzz…
2:起きたら男(藤崎瑞希)から強い奴の情報を聞く。
3:殺し合いに乗って、自分の力を試す
4:弱い奴からは情報を聞く。
5:呂布……記憶障害とは大変だな……
6:もうちょいまともな武器が欲しい
7:ブロリーとは遭遇したくない
※参加者の多くの名前を見た覚えがあることに気が付きました。ニコ動関連の知識の制限は実況者達等に比べて緩いようです

【藤崎瑞希@現実】
[状態]決意、疲労(小)、脛に軽い刺し傷(鱗粉付き)、足に痺れ、罪悪感、精神疲労(小)、気絶中
[装備]なし
[道具]支給品一式、金属バット@現実、ショートカッター(残り0枚)@ドラえもん
[思考・状況]
基本思考:主催者の目論見を粉砕し跪かせる
1:………………
2:俺を襲ったの奴は誰なん?
3:自分だけ逃げ出した罪悪感。
4:参加者を救う 。
5:受け継がれた意思を持って、戦う。
538創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 22:15:10 ID:rBy2pisH
 
539 ◆SHdRN8Jh8U :2009/04/07(火) 22:16:55 ID:N1w+DMZ/
投下終了。またもや短いツナギです。
タイトルは弱い奴は囮…そんなふうに考えていた時期が俺にもありました
でお願いします。
540 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/07(火) 23:52:41 ID:Ytgvkhi4
投下乙!
馬岱は…強者限定マーダーにしては優しいな。藤崎も地味にヤバいけど…
じゃあ俺も投下します
541 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/07(火) 23:55:35 ID:Ytgvkhi4

「…っておいい!?」

俺が投げ、そして命中したはずであろう「それ」は、俺の目の前で女の額からそのままの形で入っていった。
何も前触れも無く、俺の目の前で起こった突然の出来事に、俺はマッハキャリバーに尋ねてみる。

「…今、見たよな?」
『はい。見ました』
「…なぁ、あれって一体何なんだよ?」
『…生憎ですが、私の世界にその様な技術はありません。ただ…』
「ただ?」
『前を見た方が良いですよ、サノスケ』

その言葉で俺は前を向くと、目の前に迫る刃物―――!

「―――ッ!?」

俺はその軌道の隙を狙い、くぐり抜けるが、その軌道があまりに奇妙すぎて、少し読みにくい。
これが雨の如く降り注いでいたら下手したら死んでいたかもしれない訳だし、アレには気を付けておくかな。
…にしても、今さっきはどういう事なんだ?
アレが元々そういう道具だとしても、特に何も意味は無いみたいだしよ…
こいつでも知らないとなると、後々考える必要があるな。
ま、今はこいつを相手にするのがいいけどな。

542 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/07(火) 23:56:17 ID:Ytgvkhi4
「…案外やるわね」
目の前の女が呟くと、持っていた袋からさっきの刃物を複数取り出し、俺に投げようとしていた。
…間違いなく、下手したら終わる!
そうやって俺が避ける構えをし、地面を蹴った瞬間―――!

「…残念だったわね、ただこれを投げているわけじゃ無いのよ」

俺の景色がそこで固定された。
体も鎖で縛られたかのように、少しも動こうともしない。
マッハキャリバーも、一切喋ろうともしない。

(…嘘だろ)

時間を、止められた。
あり得ない事。でも今、俺の時間が止まっている。
そしてその静粛の支配が終わった瞬間、先程とは全く違う数の刃物が俺の視界を制していた。

(…畜生ッ!そんな事…そんな事有りなのかよ…)

必死に俺は前転なり踏み込んで避けるなりするが、圧倒的な数の前にはやはり無謀なのか、少し刃物の先が当たったりした。
それでも直に当たらなくて良かった方だけどよ。

543創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 23:57:30 ID:rBy2pisH
544 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/07(火) 23:57:37 ID:Ytgvkhi4
『サノスケ!分が悪すぎます!一度ここは撤退しましょう!』
「…仕方ねえけど、それが良いみたいだな…」

マッハキャリバーの提案に俺は承諾すると、すぐにでも急いでそこから離れた。
一回後ろを振り返る。あの女はこちらに向かって来ようとしていたけど、速さに追いつけないのか、一度止まったまま俺の視界から遠ざかって行く。

「おい、こっちは確か西だよな?」
『…ええ、そうですが…最初からこっちに?』
「あぁ。他の参加者と合流が先にしても、どっちにしても俺はこのかなりの熱は何かしらがあると思ってるんだ。
だから俺はこっちに行く」
『…分かりました。私の全力の力を持って、貴方をバックアップ致しますので、自らが思うままに進んでください…ところで』
「ん?何だよ」

俺は走りながらマッハキャリバーの方を向き、変わるであろう話題を聞く。

『…貴方、案外あっさり退きましたね』

…あぁ、そういう事か。
俺は前を向き直し、マッハキャリバーに言う。

「…いや、本当は悔しいんだけどよ、今の俺じゃああの女は倒せないし、…お前が目の前の事に目が行き過ぎると駄目だって言ってたしな」
『サノスケ…』
「…ってこうしんみりしちゃいけねえよな。
早いとこ行こうぜ!」

俺はそうマッハキャリバーに言うと、更に自分の足の速度を速めた。
…実は行く方向なんて今その場で決めたんだが、黙っておこう。

◇◇◇
545創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 23:57:42 ID:rBy2pisH
546 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/07(火) 23:58:54 ID:Ytgvkhi4

「…追いつけそうに無いわね」

ふぅ、と咲夜は遠ざかる左乃助を見ながらため息とも言える息をつく。
目の前で殺せなかったのは悔しいが、仕方ない事。
…ただほんの少し自らの正体が広まるのを早まっただけだ。
ならば早いところ、更に作戦を考えたいところだ。
ならば一度安全であろう温泉に向かい、考えてみるのが先であろう。

「…取り敢えず…今からでも行ってみようかしら」

そう呟き、咲夜は一人左乃助が来た温泉の方へと歩みを進める。
自らの背中にスタンドがある事にも気付かずに。


【E-5/平原/一日目・昼】

547創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 23:59:33 ID:rBy2pisH
548 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/07(火) 23:59:46 ID:Ytgvkhi4
【相楽左之助@るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚〜】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS 
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:西へ向かう。出来たら今すぐにでも!
3:志々雄を倒す。
4:二重の極みが打てない……だと……?
5:主催者相手に『喧嘩』する。
6:弱い奴は放って置けねぇ。
7:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
8:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ

【マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 】
[思考・状況]
1:サノスケに同行する。
2:可能な限りの参加者を救助したい
3:志々雄真実に警戒
4:相棒……無事ですよね?

※マッハキャリバーの不調もサノスケの不調も制限によるものです。
※佐之助はマッハキャリバーを結構使いこなせていますが”完全”には使いこなせていません。
※佐之助の機動力はかなり強化されています。
※E-5の橋を通過した者のおおよその行き先を知りました。
※支給品について、マッハキャリバーから説明を受けましたが、若干事実とは異なっています。
※PDA(長)(携帯電話)を落としました。
【十六夜咲夜@東方project】
[状態]:疲労(中)、???
[装備]:果物ナイフ×2、時計型麻酔銃@名探偵コナン、フジキ@ゆっくり村×3
[道具]:基本支給品、石礫×6@現実(会場内)、時計型麻酔銃の予備針(残り2発)@名探偵コナン、サーセンw@自作の改造ポケモンを友人にやってもらった、フジキ@ゆっくり村×3
[思考・状況]基本思考:優勝し、死亡者含め全ての参加者を元の所に戻すと主催に望む 
0:???
1:なるべく戦闘したくない……なかった。
2:どうしようもない場合は即座に暗殺。
3:参加者が減ってきたら慎重に本格的に行動する。
4:まともな投擲武器が欲しい
5:連合は組まない。単独行動。
6:温泉に入り、事態を考える
7:首輪解除の技術はわりとどうでもいい
【備考】
※七夜志貴の名前を知りました。
※ときちくは姿しか知りません。
※時間操作は2秒が限度です。
※飛行が可能かどうかはわかりません。
※主催者側が参加者を施設を中心として割り振ったと推理しました。
※高い能力を持つ参加者は多くが妖怪と思い、あえて昼間挑む方が得策と判断しました。
※僧侶のネガキャンを聞きましたが、その情報を完全には信用はしていません。
※やる夫のデイパックは列車内に放置してあります。
※サムネホイホイ(出だしはパンツレスリングだが、その後別の映像は不明)は、A-5の平原に投げ捨てられました
※カミーユ・ビダンの死体を確認。首輪を解除しようとしてる人がいると推測しました
※一度幻想の法則から外れた者ももう一度幻想の法則の中にもどせば幻想の法則が適用されると推理しました。
※ヤバいDISCがINしました。スタープラチナが使えますが、自覚していません。※E-5橋付近にフジキが計14本あります
549創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 23:59:47 ID:rBy2pisH
550創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:01:39 ID:pCIHJSK6
時止めって止められてる方は認識できたっけ?
イマイチ判断しがたいんだけど
551 ◆jVERyrq1dU :2009/04/08(水) 00:02:03 ID:ftHPCm8I
>>517
指摘ありです
では>>391までを、それでも僕は死にたくないU。>>393からをそれでも僕は死にたくないV。
それから元のVをWに、元のWをXといった具合に一つずつ数字をずらしていく感じでお願いします
552 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/08(水) 00:02:10 ID:9wxQkNmb
投下終了。
何か間違ってたらごめんなさい。
昨日中に書けなくてごめ(ry
取り敢えずタイトルは「極みスイーツ(笑)〜フジキ!スタンド!マッハキャリバー!」で。
タイトルに悪気はあります。
553創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:09:25 ID:CHu6pdpX
>>550
咲夜、七夜、ときちくの初登場話「とある館の暗殺者達」より抜粋
----
 驚きはどちらのものでもあった。
 一人は標的の位置に対して。もう一人は自分の能力に対して。



 少年は間髪入れずに前方に飛び込んだ体勢のまま後方にいるメイド服の少女に蹴りを放った。
 動揺し反応が鈍ったせいであろうか。少女は攻撃を完全には躱わすことは出来ずそのまま吹っ飛ばされた。



「ガッ……!!」



 そのまま少女は後ろの壁にぶつかり、掠れた息を吐き出した。



「やれやれ……瞬間移動とは驚いたな。でも武器を奪おうとするならなんで俺の後ろに……」



 そう言うと少年は何か気付いたような顔をしてニヤリと笑った。
----
七夜は咲夜の能力を事後の状況から推察しています。
よって、時止めは止められた側からは認識できず、”あたかも”瞬間移動に見えるようです。
554 ◆KX.Hw4puWg :2009/04/08(水) 00:17:18 ID:9wxQkNmb
おっと失礼。
>>542を修正。

「…案外やるわね」
目の前の女が呟くと、持っていた袋からさっきの刃物を複数取り出し、俺に投げようとしていた。
…間違いなく、下手したら終わる!
そうやって俺が避ける構えをし、地面を蹴った瞬間―――!

「…残念だったわね、ただこれを投げているわけじゃ無いのよ」

そう女が言った瞬間、俺の景色が一瞬固定された。

そして俺が一回二回瞬きをした瞬間、先程とは全く違う数の刃物が俺の視界を制していた。

(…畜生ッ!そんな事…そんな事有りなのかよ…)
…普通に考えてあの女が本気を出したって事か?
ただでさえ奇妙なんだから、下手に速さを変えられたら困るんだよ馬鹿野郎…!
そんな相手の投げた刃物を必死に俺は前転なり踏み込んで避けるなりする。
…嘘だと思いたいが、悲しいけどこれ現実なんだよな…

「…畜生ッ!」
圧倒的な数の前には少し無謀なのか、少し刃物の先が当たったりした。
それでも直に当たらなくて良かった方だけどよ。
に修正でおkですかね?
555創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:20:13 ID:AoyxcTPa
おkだと思います。
えっと時を止める能力があると気付くのか?
556創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:30:56 ID:HwvdEbDe
投下乙です。
容量がやばいので次スレ立ててきます。
557創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:36:20 ID:HwvdEbDe
次スレ。
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1239118377/

ふと気になってラウンジクラシックくぉ見に行ったら、
相変わらずスクリプトがハッスルしていた……なんだかなぁ。
558創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:39:18 ID:2B2iaGPy
>>557
乙!
他ロワがあるから大丈夫だと思っていたが、別にそんなことはなかったか・・・
559創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:40:53 ID:hqnqXBFD
>>555
気付く…というか、能力者の方から
「貴様見えているなっ!?」
等のセリフと一緒に丁寧に教えてくれる。

といっても、このロワじゃDIOと咲夜と羽入しか見えないハズだけど。
邪神パワー全開のバクラなら見えたかもねぇ…
560創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 15:20:38 ID:cn8MMeBh
このベジータとブロリーは時期的にいつ?
561創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 15:33:31 ID:6O2MHPL9
登場話読んでから書き込もう、なっ!
562創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 19:47:09 ID:QWvfn3n6
兎に角対主催にとって対ブロリー戦が重要だね。
563創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 20:00:36 ID:dkK0CljF
いや、優勝狙いだってブロリーには困るだろw
フラン、ルガール、トキで駄目ならマーダー側にも勝てそうな奴いないぞ
564創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 20:04:54 ID:5DnHFDWT
まだだ。まだ慌てるような時間じゃない
制限がありえないほどかかりまくったブロリーぐらいなら制限がかかっているベジータ・サンレッドコンビが何とかしてくれる
ベジータがいつものように油断癖を発動させなければだけドな!!
565創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 20:29:41 ID:w2Q6Aeuj
ベジータって、ニコニコ動画上では1000回以上はブロリーのラリアット喰らってるよなw
566創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 20:49:59 ID:qL3yGOk3
ブロリー以外の人外レベルの強さっていうと

美鈴、ベジータ、羽入、トキ、メタ様、ドナルド、フランちゃん、DIO、文
これくらいか。
567創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 20:55:27 ID:HmtQY/1l
呂布も人外に入るんじゃね?
568創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 21:01:11 ID:9wxQkNmb
CCO、馬岱もじゃね?
569創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 21:04:24 ID:HwvdEbDe
馬岱は微妙じゃね?
五虎将とか現実で奉られてるレベルなら人外だろうけど。
570創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 21:33:26 ID:qL3yGOk3
野球に例えるとこんな感じだな

呂布=イチロークラス
馬岱=内川クラス



賀斉=G.G.佐藤クラス
571創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 21:39:29 ID:hMKt+/nd
佐藤は一応すごいんだぞう!
北京以外じゃすごかったんだぞう!

もっと守備がファンタジスタな連中の動画が評価されずにGGばかり有名になったあたりに五輪の凄さを感じるぜ・・・
スポーツカテゴリのネタ動画に慣れ親しんだ人なら「落下点に入っただけすごいよ!」って気持ちになるはず!
572創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 21:49:42 ID:OLXRzuHu
そもそもベジータは最悪のタイミングでロワ参戦してるだろw
今でこそ持ち直しちゃいるが……ブロリーと出会ったら戦意喪失するおそれは十分あるぞw
573創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 21:51:47 ID:+Ms+OzvF
それでも爆破ヅラなら・・・
爆破ヅラならきっと何とかしてくれる・・・
574創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 22:01:55 ID:9wxQkNmb
もうやめて!賀斉さんのライフは0よwwwwww

ダメだ、何か賀斉が活躍出来ぬまま死にそうで怖くなってきた…w
575創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 22:04:30 ID:71heDqRD
サンレッド&修造&美希&ディムロスの熱気に触れればきっと熱くなってくれるさw
この一帯だけ確実に気温が上がりそうだ…
576創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 22:08:18 ID:N/W/TRJX
なんか賀斉もボッチ化しそうだな…

ベジータはやれば出来る子
577創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 22:17:58 ID:dkK0CljF
>>574
賀斉は元ネタの動画的にもそんな扱いで間違ってないと思うけどなw
神(笑)、いわゆるゴッド(笑)なんだし

どうでもいいが、何故か賀斉には犠打が巧いイメージがある
578創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 22:19:29 ID:9wxQkNmb
>>575
多分60〜100くらいじゃね?
>>576
というかベジータってかなり強くないっけ?

と、ここで劉禅軍の神(笑)の史実の紹介動画組曲「山越」
http://m.nicovideo.jp/watch/sm6649148
今見つけてきた。ごめんなさい。
579創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 22:55:16 ID:OLXRzuHu
ベジータの主な性能
・飛行可能(注:DBではよくあることです)
・高速移動可能(注:DBではほぼデフォです)
・強力な飛び道具持ち(例:ギャリック砲、連続エネルギー弾)
・実は全力を出せば地球を破壊できる
・人をお空へ飛ばせるほどの格闘能力

……どう見てもチートです。本当にありがとうございました。
これを越えるブロリーはいったいどんだけなんだよ
580創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 23:00:50 ID:gXhvSIk/
ブロリーはダメージも蓄積してるが制限もひとつ外れかかってるからなあ…ラストマーダーになる可能性もあるから恐ろしい。
対主催ではべジータ&サンレッドが一番戦力になるのかな。
2人で最強ですからね。最強、サイカヨウwww
もしくは無差別マーダー同士の潰しあいに期待するしか…
581創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 23:07:48 ID:HmtQY/1l
制限が外れたブロリーは恐ろしい
582創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 23:15:04 ID:w2Q6Aeuj
ブロリー、制限が外れたら会場吹っ飛ばして主催者もデデーンされるだろうな。
583創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 23:44:58 ID:0DrFaNhv
>>580
スネークや越前もなかなか。
生身での戦闘能力こそ劣るものの銃器・爆発物など必要なものさえ揃えば相当。
謙虚なナイトなんてまさに理想の前衛じゃないか。

>>582
ガチで可能だから困るww
584創る名無しに見る名無し:2009/04/09(木) 01:33:29 ID:fWPRcHwB
ベンチプレス90kで耐寒マラソン3位って意外とスペックが高いな>藤崎
周りが怪物ばかりじゃ意味なさそうだけど(´`)
585創る名無しに見る名無し:2009/04/09(木) 23:12:15 ID:VP92gQ8J
アレックスだって強いんだ━━━━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━━━━ン!!!!

出展がタツカプならば……!
586創る名無しに見る名無し:2009/04/09(木) 23:21:05 ID:U1dP2WXO
まてアレックスの出展はMUGENだ。
だからシステムディレクション全開アレクになれば……!
587創る名無しに見る名無し:2009/04/09(木) 23:22:18 ID:pV2wI60Y
伝説の超サイヤ人ってのはブロリーのことだって説もあるよな
他の奴らは超サイヤ人だけど伝説のではないとか
588 ◆wgfucd.0Rw :2009/04/09(木) 23:22:37 ID:qh1YxgW/
おまたせしました。
支給品変更及び色々修正版投下します
589矛と盾の話――PRIDE―― ◆wgfucd.0Rw :2009/04/09(木) 23:25:13 ID:qh1YxgW/
「……少しは回復したな」 

 文との戦闘後しばらく大の字に寝転がっていたバルバトスがゆっくりと起き上がる。
 いつ誰が来るか分からないこの状況この場所で寝こけるつもり等無く、疲労を回復する為の小休止を終え、自分の体調を確かめる。
 若干の疲労感は残る物の肉弾戦をする分には支障はない。だが、晶術などの技を放つ度に消費するTPには殆ど回復が見られない。

「調子に乗って使いすぎたか……、晶術を撃てて後数発、ジェノサイドブレイバーで一発といった所か」

 晶術が殆ど使えない状況に陥ったバルバトスではあるが、その事に関しては大して気には留めていない。
 晶術をばかすか放つバルバトスではあるが、だからといって彼は晶術が無ければ何もできなくなるような相手ではない。
 彼の一番の武器、それは異常なまでのタフネスとキーボードですら凶器になりうるその膂力。
 晶術が思う存分撃てなくなる程度はバルバトスにとって致命的な事態ではない。ただ、使う機会を見定めればいいだけなのだ。
 必要最低限の休憩を終え、塔の中にでも入って休むべきか、戦う相手を探しに歩き回るか思考するバルバトスの視界に人影が映った。
 鎧と剣を装備した耳の長い男と、奇妙な帽子を被ったチャイナ服の少女。物々しい装備をした男がバルバトスの目に留まる。

「ククク、休む暇も無しか。まぁ、俺を楽しませてくれるなら文句は言わんがな」

 獰猛な笑みを浮かべたバルバトスの脳裏に、タミフルの存在が浮かぶ。
 バルバトスの支給品であるキーボードは宝剣と渡り合ったとはいえ、所詮はキーボード、相当なガタが来ている。これで男の持っている剣と渡り合えばどうなるのかはわからない。
 TPも残ってない以上、今こそが使い時では無いのかという考えがバルバトスに浮かぶが、それと同時にそれを忌避する考えも浮かぶ。
 アイテム嫌いではある彼だが、厳密に言えばアイテムの存在その物を嫌っている訳ではない。戦闘中にアイテムを用いる相手、及びそのアイテムが嫌いなのだ。
 命がけの戦闘は彼を昂らせ渇きを癒す。その最中にアイテムで回復するという事は命を賭けて戦う自分に対して水を差す行為である。
 同じ理由で、逃げ出す者、守りに徹する者、術でもって仕留めようとする者にも彼は不快感を示す。
 そういった相手には容赦なく術を放ち殲滅するのだが、戦闘に突入する前、厳密に言えばバルバトスが戦闘態勢に入る前に、術を使うなり、逃げるなり、アイテムを使うなりしてもバルバトスは気にも留めない。
 そして現在、相手らしき物を確認こそしたがアレックスを見つけた瞬間に襲いかかった時とは違い、バルバトスは戦闘態勢に入っていない。
 アイテム嫌いの彼でも、現在はアイテムを使用しても問題の無い状況なのだ。
 しかし、それでは目の前の相手に勝ち目が無いから事前にタミフルを使うようにバルバトスは思ってしまう。
それはプライドの高い彼にタミフルを使わせる事を躊躇わせるのに充分な理由であった。
590創る名無しに見る名無し:2009/04/09(木) 23:25:30 ID:KSj5NwlD
支援するぜ!
591矛と盾の話――PRIDE―― ◆wgfucd.0Rw :2009/04/09(木) 23:26:00 ID:qh1YxgW/
(男に後退の二文字はねぇ、弱気な考えも必要ねぇ、必要なのは前進の二文字とどんな相手でも倒す意志だけだ)

 不利な状況へと自らを追いやったというのに、バルバトスの戦意は削がれるどころか際限なく昂っていく。
 その顔に狂喜に満ちた不敵な笑顔を浮かべ、こちらの存在を確認した二人と対峙した。

「貴様ら、こんな所で何をしている?」
「何いきなり話しかけてきてるわけ?」

 互いの視線がぶつかり合う。
 殺意を隠しもせずに話しながら一歩一歩距離を詰めて来るバルバトスに対し、渚を庇う様に緋想の剣を構えながらブロントさんが前に出る。
 ブロントさん達が民家から出てすぐに、文達を探しにとりあえず塔を目指して歩いていた。
 もし彼らが数時間早く向かっていたら文達に会えていただろうが、時既に遅く、この場に残っていたのはバルバトス一人であった。
 油断なく構えるブロントさんを見てバルバトスは少しは楽しめそうだと、その笑みを濃くしながら立ち止まった。

「俺の名はバルバトス・ゲーティア。貴様ら殺す者の名前だ……、覚えておけぇぇぇぇぇい!!!!」

 咆哮と共に飛びかかるバルバトスは手に持ったキーボードをブロントさんの脳天目がけ振り下ろすが、それをブロントさんは緋想の剣で受け止める。
 だが体重と勢いの乗った一撃は予想以上に重く、両手に遅いかかる負担にブロントさんは顔を顰める。
 恐らく切り払おうと振り上げていればそのまま押し切られていたであろう、尋常ではない膂力に舌を巻きながらブロントさんはバルバトスを吹き飛ばす。

「ブロントさん!!」
「あnぎさは逃げるべきこいつの力はちょとsYレならんしょ・・
俺が押さえるからとっとと逃げるべき
でないと塔の世界でひっそりと幕を閉じる事になる」
「で、でも……」
「黄金の鉄の塊でできたナイトがキーボード装備のジョブに遅れをとるはずがない
倒したらすぐ行くから安心しろ」

 自分の分のデイパックを預け、顔はバルバトスに向けたまま、ブロントさんは渚へと指示を出す。
 自分よりも戦闘力のあるブロントさんが厳しい顔を向ける相手、今の自分が足手まといになりかねない状況を理解し、渚は一歩後ろに下がった。

「……約束ですからね」
「hai!」

 ブロントさんの返事を聞くと渚は茂みの方向へと駆け出して行く。
 バルバトスが渚を狙わない様に渚とバルバトスに対して直線上にブロントさんは立ちはだかるが、当のバルバトスは特に動く事もせずに渚の姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
592矛と盾の話――PRIDE―― ◆wgfucd.0Rw
「どういうつもりだ?」
「今日の俺は紳士的でな、態々貴様から戦ってくれると言うから、少しだけ待ってやっただけだ。
安心しろ、すぐにあの女も貴様が今から向かう場所に送ってやる」
「……そうか」

 場の空気が張りつめる。
 楽しそうな笑みを浮かべたバルバトスと、バルバトスを鋭い目で睨みつけるブロントさん。二人は一呼吸置き。

「さあ! 楽しもうぜ、この戦いをよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
「バラバラに引き裂いてやろうか!」

 声と同時に互いに駆け出し、キーボードと緋想の剣がぶつかり合う。
 剣とキーボードが弾かれてはぶつかり、ぶつかっては弾かれ、ぶつかっては鍔迫り合い、鍔迫り合っては弾かれる。
 左腕が使えない状態に加えてキーボードを使う相手に決定打を与えられず、自分と拮抗している状況。
 ブロントさんは内心で目の前の男が本来の実力でなかった事に感謝した。もしもまっとうな武器を持ち本調子であったのなら、危なかったかもしれない。

「ふははははははは! どうしたブロントサン! その程度で終わりじゃねぇだろうなぁ!!」
「おいィ? サンまで名前と勘違いしてるようだから言っておくが俺はBuront(ブロント)だ
正直なところ殺そうとしてくる相手にさんづけされるのは座りが悪いんでやめてもらえませんかねぇ・・?」
「そうかよ! じゃあ改めて楽しもうぜぇ、ブゥロントォォォォォォゥ!!」

 そうしてまた緋想の剣とキーボードがぶつかり合う。その瞬間、キーボードに亀裂が走った。
 異常な耐久力を誇ったキーボードとは言え、名剣といわれる部類の剣を相手の二連戦でついに限界が来てしまったのだった。
 弾かれると同時に上半分が吹き飛ぶキーボードを尻目にバルバトスは後ろへと飛び退る。
 どうするか、武器を持っている分あちらが有利、ふと、右手が掲げているデイパックへと伸びようとしている事に気付き、凍り付いた。
 自分は今、何をしようとしていたのか。デイパックには武器は無く、ある物はタミフルというアイテム。
 戦闘中にアイテムを使う。それはバルバトスにとって許されない行為。
 だが、この状況では仕方ない。死んでしまっては意味が無い。そう考えている自分がいる。
 その一方で、例え死んでしまったとしてもアイテムを使いたくない、軟弱者になどなりたくないと考える自分がいる。
 生存かプライドか、二つの自分が鬩ぎあう。
 何かを取り出そうとするバルバトスに対し、身構えるブロントさん。そしてバルバトスはデイパックからタミフルを取り出し、