コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ38
■全般
・支援はあくまで規制を回避するシステムなので必要以上の支援は控えましょう
(連投などに伴う規制について参考
>>3-あたり)
・次スレ建設について
950レスもしくは460kB近くなったらスレを立てるか訊くこと。立てる人は宣言してから
重複などを防ぐために、次スレ建設宣言から建設完了まで投稿(SS・レス共に)は控えてください。
※SS投稿中に差し掛かった場合は別です。例 940から投稿を始めて950になっても終わらない場合など
・誤字修正依頼など
保管庫への要望、誤字脱字等の修正依頼は次のアドレス(
[email protected])に
※修正依頼の際には、作品のマスターコード
(マスターコード:その作品の投稿が始まる、スレ番号-レス番号。保管庫の最優先識別コード)
を必ず記述して下さい
例:0003-0342 のタイトルを○○に カップリングを○○に
(↑この部分が必須!)
マスターコードを記述されず○スレ目の○番目の……などという指定だと処理ができなくなる場合があります
■SSを投下される方へ
1.投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れて下さい(または「何レス目/総レス」を名前欄に)
2.前書き・後書き含めて10レス以上の連投になると同一IDからの投稿が規制されます。(←「さる」状態)
間に他IDからの「支援」が入ることで規制は回避できますので、規制にかかりそうな長文投稿の際は
投下前に支援を要請して下さい。逆に、必要ない場合は支援の要らない旨を書いてください。
前レス投稿から30秒ほどで次レスを投稿することができます。(投稿に関する規制については
>>4- あたり参考)
3.投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為に必ずリロード。尚、直前の投下完了宣言から15分程度の時間を置いてください
4.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
5.なるべくタイトル・カップリング・分類の表記をして下さい。(特にタイトルはある意味、後述の作者名よりも重要です)
・読む人を選ぶような内容(オリキャラ・残酷描写など)の場合、始めに注意を入れて下さい。
6.作者名(固定ハンドルとトリップ)について
・投下時(予告・完了宣言含む)にだけ付けること。その際、第三者の成りすましを防ぐためトリップもあるとベスト。
(トリップのつけ方:名前欄に「#(好きな文字列)」#は半角で)
・トリップがあってもコテハンがないと領地が作れず、??????自治区に格納されます
前書きの中に、以下のテンプレを含むことが推奨されます。(強制ではありません)
【メインタイトル】
【サブタイトル】
【CP・または主な人物】
【ジャンル】
【警告】
【背景色】
【基本フォント色】
■創作発表板での投稿規制について 参考(暫定)
1レスで投稿可能な容量
・X:1行の最大 / 255byte
・Y:最大行数 / 60(改行×59)
・Byte :最大容量 / 4095Byte
但し、改行に6Byte使うので注意。例えば60行の文なら59回改行するので
6Byte×59=354Byte これだけの容量を改行のみで消費する
さるさん( 過剰数の投稿に対する規制 )
・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に
・毎時00分ごとにリセット。00分をはさめば最長20レスの連投が可能
連投規制( 連続の投稿に対する規制。短い間隔で連続の投稿ができない )
・30秒以上の間隔をあければ投稿可
おしりくさい虫など( 携帯のみ?同一内容の投稿に対するマルチポスト規制 )
・「支援」などの同じ言葉を繰り返し投稿することでも受ける規制。
違う内容を投稿すれば解除される。スペースを挟むだけでも効果あり
■画像投稿報告ガイドライン
ロスカラSSスレ派生画像掲示板
PC用
http://bbs1.aimix-z.com/gbbs.cgi?room=lcsspic 携帯用(閲覧・コメントのみ)
http://bbs1.aimix-z.com/mobile.cgi?room=lcsspic 1.タイトルとコテハン&トリップをつけて絵を投稿する。
尚、コテハン&トリップについては、推奨であり強制ではありません。
・挿絵の場合は、誰の何のSSの挿絵と書く
・アニメ他公式媒体などにインスパイアされた場合は、それを書く(例:R2の何話をみてテンさんvsライを描きました)
2.こちらのスレに以下のことを記入し1レスだけ投稿報告。
(SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。)
例:「挿絵(イメージ画像)を描いてみました。 画像板の(タイトル)です。
〜(内容・注意点などを明記)〜 よかったら見てください。」
・内容:挿絵の場合は、SSの作者、作品名等。それ以外のときは、何によってイメージして描いたのかなど
・注意点:女装/ソフトSM(首輪、ボンテージファッションなど)/微エロ(キス、半裸など)
/ゲテモノ(爬虫類・昆虫など) など(絵はSSに比べて直接的に地雷になるので充分な配慮をお願いします。)
画像掲示板には記事No.がありますので、似たタイトルがある場合は記事No.の併記をおすすめします。
*ただし、SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。
3.気になった方は画像掲示板を見に行く。
画像の感想は、原則として画像掲示板に書き、SSスレの投稿報告レスには感想レスをつけないこと。
画像に興味ない人は、そのレスをスルーしてください。
4.SSスレに投稿報告をした絵師は以下の項目に同意したものとします。
・SSスレに投稿報告した時点で、美術館への保管に同意したものと見なされます
・何らかの理由で保管を希望しない場合は、投稿報告時のレスにその旨を明言してください
・美術館への保管が適当でないと判断された場合、保管されない場合もあります
(ロスカラ関連の絵とは言えない、公序良俗に反するなど)
----以上、テンプレ終了----
前スレの497氏へ
(後編2)を37スレに、(後編3)を38スレに分けて投下することはできますでしょうか?
もし可能ならば、埋めるという点でもそちらのほうが望ましいのですが。
6 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:02:11 ID:YH1JjJ2Q
後編2の投下は終わりました。
では、さっそく後編3を投下してもよろしいでしょうか?
支援の準備はできとりますよ〜
8 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:06:45 ID:YH1JjJ2Q
了解です。
後編3、投下します。
9 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 23:07:27 ID:l1qIXJkw
そういうわけなので、しえん
10 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:08:33 ID:YH1JjJ2Q
政庁にあるKMFの整備格納庫を一望できるラウンジ。
パイロットスーツを着た唯一人の名誉ブリタニア人のパイロット、枢木スザクがそこにいた。
彼以外の人は誰もいなく、整備室から聞こえる声や機械音が小さく部屋中に響いているだけ。
長椅子に腰かけ、鋭い視線でガラス越しにあるランスロット・コンクエスターを見据えていた。
ドリンクボトルを握りつぶしたまま、片方の足を椅子の上にあげて、その場所に佇んでいた。
自動扉が開き、一人の男が入ってきた。
その姿を見たスザクはすぐに席を立って敬礼する。
「随分と険しい顔をしているな。ミスター枢木」
「サザーランド卿!またお会いできて光栄です」
2メートルを超す長身に、中年とは思えぬ引き締まった肉体。スザクと似て非なる、白を基調としたパイロットスーツ。オールバックの黒髪に、貴族特有の切り揃えられた髭。顔にある皺がその風格をより一層引き出している。
緑色の瞳に宿る鋭い眼光。
日に焼け、少し浅黒い肌。
スザクの眼前にいるのは、皇帝直属の騎士、ナイトオブラウンズ。
支援
12 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:09:59 ID:YH1JjJ2Q
ナイトオブツー、セルゲイ・サザーランド。
あの第5世代型ナイトメアフレーム『サザーランド』の開発者であり、武人としても数多くの歴戦をくぐり抜けてきた『生ける伝説』。
KMFを乗る者なら誰もが知っているKMFの第一人者。
「そう構えるな。楽にせい。…三月ほど前かな。ヴァインベルグの坊やを負かしたのは」
「あっ、いえ、あの時は…」
「トリスタンが調整中だったからな。あれは実力ではないと言いたいのだろう?」
「あ……はい」
「フン。あれはお主の勝ちだ。気にするな。
ラウンズたるもの、いかなる理由があろうとも負けは負けだ。おかげであやつ、より一層仕事に精を出しておるぞ」
「そ……そうでしたか」
フン、と鼻を鳴らし、スザクと目を逸らし、KMFの方に向けた。
スザクも彼に倣い、ランスロットに目を向けた。
互いに視線を合わせぬまま、話を続けた。
「…ユーフェミア殿下の崩御。誠に残念だった」
「っ!!」
「…愛していたのだな。ユーフェミア様を」
「………はい」
スザクの手に力が篭もる。震えだす身を辛うじて押さえつけていた。
セルゲイはそれを察しつつも、スザクに語りかけた。
彼は古老の武人でありながら、実力で人を分ける価値観を持っている。
そこに例外は無い。彼は高い実力を持つ武人を好む。
ブリタニア人であろうが無かろうが、自分より強い者、自身と並ぶ強者には対等に扱う。
これが彼のブリタニア人らしからぬ性格であり、最もブリタニアの騎士らしい人格を持っている。
「平和を望みながらも、その争いの根源たる剣を振るい、断ち切れぬ連鎖を生み出していく」
「我々軍人は、何とも矛盾した存在だな」
「……はい。私もその矛盾をどうすればいいのか。分かりません」
「ミスター枢木よ。これだけは覚えておけ」
「幸せは、勝者の特権だ」
13 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:10:35 ID:YH1JjJ2Q
そうやって背を向けた時、自動ドアが開き、場の空気をブチ壊すような声と共に二人の顔見知りが姿を現した。
一人はランスロット開発主任の変わり者の研究者。
そしてもう一人は彼の助手である妙齢の女性。
「あはー。お久しぶりです〜教授〜」
「おお!ロイドか!久しいな!」
「学生以来ですね〜。こうして顔を合わせるのは」
「ロイドさん!今はラウンズですよ!?…お久しぶりです。サザーランド卿」
「ん、セシル?見ない内に随分と美人になったなぁ。今夜どうだ?一緒に食事でも」
「もうっ、先生ったら。女遊びはほどほどにしてくださいね?」
「がはははは!そう睨むな。大丈夫だ。私は妻一筋だからな!」
「うふふっ。先生、ラウンズになっても、ちっとも変わりませんね」
「そうか?近頃は白髪が増えてきて、髪の色素だけは年には敵わんようだがな」
その光景を見ていたスザクは一時、呆けていた。
あのロイドさんがラウンズの中でも有名なサザーランド卿と親しげに話しているのだ。
セシルさんとも旧知の関係らしい。
「あ、あの、ナイトオブツー様とは、お知合いなんですか?」
「あれ?話して無かったけ?サザーランド卿とは学生の時から知り合いなんだ〜。僕もサザーランド卿の下で学んでいたからね〜」
「私の最初で最後の弟子だ。こいつは暇さえあればKMFをいじるか資料に目を通すしかしなかったからな。私があれだけ機会を与えてやったのに、女には無頓着でな。
だが、今は婚約者がいるんだろう?私の心配もこれで無くなるというものだ!」
大声で笑うセルゲイに対して、セシルは眉間に皺を寄せながらセルゲイに言った。
「それが最近はほったらかしで…相手は二十歳も行かぬ令嬢ですよ?先生からもロイドさんに女心というものを教えてやってくださいっ」
「がはははははっ!それは無理な注文だ。セシル。こいつとはKMFの話題で酒を飲み交わすのが好きなんだ!まあ、ワシとのデートに付き合ってくれるのであれば話は別だがな!」
「うーん。それだと酒が不味くなりますよ〜。さっさと一杯やりましょうよ。教授。実は婚約者から頂いたワインがあるんですよ〜」
「おおっ!そうか、なら早速頂こうか!」
「ちょ、ちょっと先生!?ロイドさん!?」
肩を組んで部屋を飛び出す二人。
しえんn
支援!
16 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:12:53 ID:YH1JjJ2Q
今度は、その後ろ姿をセシルとスザクは呆然と眺めていた。
「…もう、ロイドさんも先生も昔から女をほったらかしなんだから!
…スザクくん。今日のところはこれで引き上げていいわよ。
次の作戦も近いから、体を休めておきなさい。
あっ、そうだ。スザクくん。これ」
セシルはスザクに小さな弁当箱を手渡す。
「お昼、食べてなかったでしょ?夕食だけじゃ足りないかと思って、サンドイッチを作ったの。ちゃんと食べるんですよ?」
「はっ、はい。セシルさん。ありがとうございます」
「先生とロイドさんはこっちでなんとかしますから、じゃあね。スザクくん」
手を振りながら、自動扉を出て行った。
ポツンと一人取り残されるスザク。
黄色の弁当箱を開けるとサンドイッチが入っていた。
「相変わらず…」
凄まじい色の食べ物がずらりと並んでいた。背筋に怖気が走るが、セシルさんの好意を無駄にするわけにはいかない。
覚悟して、無難な色をしているサンドイッチをつまんだ。
パクパクパクパク…
「あれ?美味しい…」
スザクは予想外の展開に驚きを隠せなかった。
しーえーん
支援
19 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:14:56 ID:YH1JjJ2Q
コードギアス LOST COLORS「反逆のルルーシュ。覇道のライ」TURN00 「終わる日常」 (後編2)
アッシュフォード学園高等部の生徒会室の廊下、多くの一般人が行きかう中、僕は見覚えのある人影を見つけた。
相手もこっちに気づいたらしく手を振っていた。
アッシュフォードの制服を着た女子生徒で、僕と同じく生徒会のメンバー、
シャーリー・フェネット。
「あっ!ライ君。こっちこっち!」
「遅れてごめん、シャーリー。…あれ、何か疲れてない?」
「ううん。私は大丈夫だよ。ただ、昨日はナナリーちゃんと夜遅くまでお話ししてただけ」
「そうか。でも寝不足は駄目だよ。シャーリーの肌は綺麗なんだから、ちゃんと寝なきゃ、ね?」
「あははは。それ、ルルにも言われたことがある」
それを聞いた僕は彼女に微笑み返す。
彼女も僕に笑顔を返した。
「ねえ、ライ君。ルルは、本当に無事なの?」
「うん。傷もたいした事なくて、今日から完全復活だよ」
「そうなんだ……良かったぁ」
僕の話を聞いて、シャーリーは心底安堵しているようだった。
ルルーシュ。
こんな良い娘を心配させちゃ駄目だぞ。
「シャーリー。これはルルーシュから」
僕は懐から白い封筒をシャーリーに手渡した。
「手紙?」
「うん。直接会いに行けないから、渡してくれって」
「…わかった。ルルにお礼お願いね」
「分かってるよ」
顔を若干赤らめるシャーリー。
それを見て、僕の頭にカレンの笑顔が浮かぶ。
支援!
しえんする
22 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:16:12 ID:YH1JjJ2Q
シャーリーは制服のポケットからUSBメモリを手渡してくれた。
「中身はよく分かんないけど、ルルがライ君に渡してくれって」
「ありがとう。これ、とっても重要なやつなんだ。助かった。…それで、皆は?」
「皆元気にしてるよ。ただ、スザクくんとは連絡がつかなくて…」
「…そっか」
「ユーフェミア様があんなことになって……スザクくんは…」
僕たちは無言になってしまった。周りから人の話し声が聞こえる。
重い空気が漂う。
その時、目の先に見慣れた人影を見つけてしまった。
金髪で長身のアッシュフォードの女子生徒を。
「あっ」
「ん?どうしたの?ライくん」
「あっちにミレイさんがいる。見つかったらマズイ。…じゃあ、ぼくはこれで」
「あっ、ライ君。待って」
「何だい?シャーリー…って、やばい。こっちに近付いてくる」
「あの、これっ」
シャーリーは僕に小さなものを手渡した。
キラキラと光る星形のストラップだった。
最近、雑誌で見たことがある。
「プラチナスター?」
「よく知ってるね。これ、幸福を呼ぶアイテムなんだよ。私のお気に入りなんだ」
「これをルルに?」
「いや、これはライ君に」
僕は首をかしげてしまった。
本来、こういうものは彼氏にプレゼントするものなんじゃ無いのか?
「ルルは大好きだけど、ライ君もとーっても大切な友達なの。いや、生徒会のみんなもそう思ってる。会長なんかは特に。だから、ライ君も無事に帰ってきてくれなきゃ駄目だよ?」
(――――――――っ!)
急に胸から熱いものが込み上げてきた。
シャーリー…君って人は。
どれだけ人を温かくしてくれるんだい?
ルルーシュが好きになった理由がよく分かったよ。
もし、これがカレンだったら抱きしめてキスするところだ。
そんなことをシャーリーにしたら、ルルーシュに殺されるけど…
ごめんっ!ルルーシュ。
僕はシャーリーを抱きしめた。
「きゃっ!」
カレンよりも華奢な体が僕の胸に飛び込んできた。
「シャーリー。とっても嬉しいよ。…約束する。絶対帰ってくるって。
そして、ルルーシュは僕が守る。なんたって僕は黒の騎士団最強のパイロットだからね」
「…う、うん。ルルが頼りにしてるって言ってた」
首元から小さな声が聞こえた。
シャーリーの肩を掴んで、優しく離した。
彼女の顔が真正面にある。
僕は彼女に向けて、とびきりの笑顔を作った。
「じゃあ、行ってくる。ナナリーを頼んだよ」
そのまま、僕はシャーリーと別れた。
人込みをかけ分けて、裏口に向かった。
支援
24 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:17:13 ID:YH1JjJ2Q
「ねえ、シャーリー。ここにライがいなかった?」
「い、いえ。私もライ君かと思った人がいたんですけど、全くの別人でした」
「なんだぁ……まったく、こんな時に不良の義弟くんはどこに行ってるんだか…」
「…そう、そうですね」
「ん?どうしたの?シャーリー。顔が赤いわよ?」
「なっ、何でもないです!!」
支援!
26 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:18:17 ID:YH1JjJ2Q
ヨコハマゲットーにある黒の騎士団の二十六支部。
そこに零番隊の精鋭と四聖剣が率いる小隊が集結していた。
時間と共に続々と月下や無頼といったKMFが集まってくる。
黒の騎士団の主戦力とも言える軍事力がそこにある。
倉庫にあるKMFには多くの整備士が調節を行っており、黒のジャケットを着た人間が行き交っていた。
また、別倉庫ではラクシャータ率いる研究員がゼロの専用機、ガウェイン・ラグネルの最終調整を行っていた。
そのコクピット内で仮面を外したルルーシュとC.C.は待機していた。
「傷はもう大丈夫なのか?」
「ああ、心配することはない。生身で白兵戦をすることが無い限り、傷は開かない。もう十分すぎるほど休んだからな」
「そうか。なら心配はいらんな。だが無茶をするなよ?お前に死なれては困るからな」
「フン、心配するな。魔女。俺は簡単には死なないさ。ナナリーやシャーリーと共に安心して暮らせる日が来るまでは、な」
ルルーシュは足を組んで、C.C.と目を合わせずに話を続けた。
「…そうか。それは良かった」
「それに、俺にはライがいる。あいつがいる限り、俺たちに出来ないことは無い」
「ふん、そうか」
「そして、C.C. お前がいる」
「……」
C.C.は無言で後部座席に座っていたルルーシュを見上げた。
意外だったのか。
C.C.の心情がイマイチ表情からとらえにくい。
「この力、『ギアス』を与えてもらったこと。本当に感謝してるよ。C.C.」
「何だ。今さら」
「…自分でもわからない。でも、これは俺の本心だ。それは信じてほしい」
「ははっ。お前にして妙だな。…それに、そんなセリフを吐く人間は死ぬと、映画では相場が決まってるんだぞ?」
「フン、そんな相場は聞いたこと無いな。何度も言わせるな。俺は死なない。こんなところでは、絶対にな」
力強く断言するルルーシュ。いつもやることは徹底していて、自信に満ちている。
だが、それは計算し尽くされた結果を判断した後での言葉であり、他の人間とは重みが違う。
それがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの自信なのだ。
その言葉を聞いたC.C.は前を向いて、急に黙りこんでしまった。
彼女の後姿を見たルルーシュが不審に思い、声をかける。
「どうした?C.C.」
彼が問いかけても何も答えない。
ルルーシュがもう一度声をかけようとして、彼女は唐突に呟いた。
彼女にしては珍しく、弱々しい声だった。
「……何でもない。何でもないんだ。ルルーシュ」
しえんですよー
支援
29 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:19:56 ID:YH1JjJ2Q
シズオカにある黒の騎士団の本部『イザナミ』。
多数のナイトメアは既に出撃し、武装したナイトメアは基地周辺に陣形を作って配備されていた。
半数のナイトメアと人員はゼロが率いて、トウキョウ租界陥落作戦に出向いていた。
残りのナイトメアと団員はこの『イザナミ』に攻めてくるブリタニア軍を迎え撃つため、基地内は物々しい雰囲気が漂っていた。
僕たちの敗北条件は二つ。
一つ目は、三日以内にトウキョウ租界陥落作戦の失敗。
二つ目は、この『イザナミ』の陥落。
トウキョウ租界が完了すれば、日本は新たな独立国家の建国を果たし、ブリタニア介入の口実を潰す。
しかし、その間にサクラダイトを保有する『イザナミ』を含めるシズオカ周辺が征服されると、いくら独立国家が成立しても、弱小の武力の国家は直ぐに壊滅する。
また、シズオカを死守できても、トウキョウ租界陥落が失敗した場合はブリタニア軍からの援軍との戦争となり、さらに熾烈を極める戦闘を展開することになって、待っているのは破滅だ。
僕たちはこの三日間の内でトウキョウ租界を落とし、この『イザナミ』を死守しなければならない。
だから、戦力を半分に分け、シズオカに侵攻を開始した多数のブリタニア軍を向かえ撃つことにした。
サクラダイトをブリタニアに独占されれば、黒の騎士団は2日も持たない。
トウキョウ租界戦は『ゼロ』が、そしてシズオカ防衛戦は『僕』が指揮することになった。
青のパイロットスーツを着込んだ僕は、専用KMFが収容されている第一番格納庫に到着した。
しかし、格納庫内は明かりが点けっ放しで、二機のナイトメアフレーム以外は何も無かった。
外では団員達の声が飛び交っているのに、格納庫の中は声も足音も聞こえず、ただ、僕の足音だけが鳴り響いていた。
妙だ。
僕以外の壱番隊は全員出撃しているが、整備士すらいないなんておかしい。
連絡は2時間前に入れているし、先程、黒の騎士団の部下から第一番格納庫に来るように言われたはずだ。
どういうことだ?何がどうなっている?
支援!
31 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:21:05 ID:YH1JjJ2Q
「…まったく、遅すぎるわよ。ライ」
一機のナイトメアフレームの傍から人影が見えた。
それは。全身赤のパイロットスーツを着込んだ少女。
『ゼロの双璧』の一翼であり、僕のパートナーでもあり、恋人でもある女の子、
カレンが姿を現した。
その姿を見た僕は直ぐに、カレンの傍に近寄った。
「カレン、これはどういう事なんだ?僕とカレン以外誰もいないなんて…」
「だーかーら、ライが遅いからに決まってんでしょ?」
何故か僕を不機嫌な目で睨みつけてくる。
え?連絡したよね?僕。
「それは謝るよ。もう皆が出てるのに隊長の僕が遅れるなんて…」
「だーかーら、よっ!!」
不機嫌な顔が急に接近して、カレンが僕の頬がつねった。
「い、いひゃっ!?」
「なーんで、こういうことだけはニブいのかなぁ?ライは」
カレンの顔が視界一杯に広がった。
吐息が顔にかかって、くすぐったい。
でも痛い。
「ここまでして、分からない?」
「わ、わひゃりま、へん…」
カレンは僕の頬を両手でつねったまま、大きなため息をついた。
何で呆れた顔をするんだ?カレン。
「……これだからライは」
また大きなため息をつく。
呆れた目で、カレンはもう一度僕の顔を真正面から捉えた。
「じゃあ、教えてあげる!」
そう言って、僕の顔を両手で掴むと、
そのまま唇を重ねてきた。
支援
33 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:23:09 ID:YH1JjJ2Q
「―――――ンッ!」
「―――――ん…」
頭が固定されて唇が離れない。
柔らかくて温かい感触が僕の唇に伝わってくる。
一瞬戸惑ったが、カレンの腰に手を回すことにした。
そのまま腕に力を込める。
左右に対称的に置いてある赤と青のナイトメアフレーム。
カレンの紅蓮と、僕の蒼天。
黒の騎士団が保有する最高戦力にして、浮遊可能な7機のナイトメアフレームの内の二機。
僕たちを表わすように、ナイトメアも互いに向き合っていた。
数十秒ほど口づけを交わし合い、カレンの僕の体を抱きしめてきた。
スーツが擦れ合って、カレンの体温が少しずつ伝わってくる。
唇を離すと、カレンは僕の胸に顔をうずめた。
「…待ってた」
「…ありがと、カレン」
抱きしめたまま、彼女の髪を撫でる。
赤くて綺麗な髪。忙しいのに、よく手入れされて良い匂いがする。
カレンの頭に、僕は顔を埋めた。シャンプーの香りが胸一杯に広がる。
「……ライって、本当にすごいね」
「…急にどうしたんだい?」
「…ゼロの代役」
「…ああ。あれはきつかったよ。僕じゃあゼロは…」
ギュッ、とカレンの腕に力がこもり、パイロットスーツが擦れる音がした。
「…私ね。ライが、少し、怖くなっちゃった」
「…何でさ」
「ライって、何でも出来て、ゼロにも信用されて…」
「…私、ライの事、知らないことが多いなって思って…」
支援!
35 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:24:28 ID:YH1JjJ2Q
今度は僕がカレンを一層強く抱きしめた。
震える彼女の体を無理やり抑え込んだ。
最近、会う機会が少なかった。そして、数日間のゼロの代役。ゼロを心棒している彼女にとっては残念だったのだろう。自分が誰よりもゼロに近いと思っていたのに…
「カレン…これだけは言わせてくれ」
顔を上げて、僕の顔を見つめてきた。
不安そうな顔も可愛い。
「カレンが知っているライ。そして僕はカレンのものだ。これが変わる事は無いよ。絶対に」
「……本当?」
瞳には涙が浮かびはじめていた。それを見た僕は自分自身に怒りを覚えた。
(馬鹿か!僕は。カレンをこんなにも不安にさせるなんて、恋人失格じゃないか…)
精一杯の笑顔で僕は答える。
彼女にしか見せない最高の笑顔で。
「うん、本当だよ。カレン。大好きだ」
「……ライっ!」
僕たちは口づけを交わした。
さっきよりも長く、深く、激しく。
徐々に呼吸が乱れていく。
扇情的な音が格納庫に響き渡った。
胸が急に熱くなってきた。
「…むふぅ、…ん…くちゃっ…、あ…んっ…ふはぁ、はんぅ…」
愛おしさが込み上げてくる。
(駄目だ。これ以上は…)
理性が徐々に悲鳴を上げてきた。
でも、やめられない。
カレンも僕を求めてくる。情熱的に。
舌が絡み合い、粘着感のある刺激が、体中に広がっていくような感覚。
(カレン、僕は…)
しえん
支援
38 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:25:34 ID:YH1JjJ2Q
「…あー。お取り込み中のとこ、すまない」
「「!!?」」
第3者の声に、僕の心臓は跳ねあがった。
抱き合ってた態勢から急に離れたので、唇から銀色の糸を引いてしまった。
それに気づいて口を拭うがもう遅い。
見られた。
僕は頭が真っ白になった状態で声の先を見た。
彼は苦笑しながら、僕たちを見ている。
僕たちの昔からの戦友であり、今は壱番隊副隊長。
「す、杉山さん…」
「ったく、お前らがデキてるのは皆知ってるけどよ…程々にな。独り身の俺としてはこう、胸に来るものがあるんだが…」
「「あ、あはは……」」
恥ずかしさで顔から湯気が出そうな感覚だった。
うわー……けど、杉山さんでよかった。
玉城だったら冷やかされるし、扇さんだったら……考えたくもないな。
「で?そろそろ出撃しようぜ。副司令兼壱番隊長さんよ」
「!そ、そそそうよっ!ラ、ライっ!」
バシンッ!
真っ赤な顔をしたカレンは強い力で僕の背中を叩いた。
照れ隠しなのは分かるけど、ちょっと痛いよ。
でも、それがカレンらしいや。
「それじゃあ、カレン!」
「ええ、ライ!」
支援!
40 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:26:24 ID:YH1JjJ2Q
僕たちはナイトメアに拳をぶつけ合って、そのままコクピットに乗り込んだ。
青の羽根の形をしたキーを差し込むと、モニターや各機種に電源が入る。
中心のモニターには日本の国旗と共に、
『蒼天』
の文字が表示される。
両手の操縦桿を握り、各部の動作が正常に作動していることを確認できた。
モニターには外にいる部隊のKMFの位置が表示されていた。
(よし、全員配置についてるな…)
ハッチを閉め、ボタンを押した。
格納庫の扉が開いた。
目の前には闇と光が広がっている。
強い風が2機のナイトメアフレームに吹き付けてきた。
操縦桿を前に倒す。
『蒼天――――――――――――』
『紅蓮可翔式―――――――――』
『『出撃――――――――――――!!』』
瞬間、物凄い勢いで蒼天と紅蓮可翔式は加速し、飛び立った。
し え ん
支援
43 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:28:05 ID:YH1JjJ2Q
星々が輝く夜空に、二機のナイトメアのフロートシステムが赤く輝く。
僕を中心にして、地上には多数の月下が並んでいた。
紅蓮可翔式は僕の後方にいる。
空を飛べるKMFは黒の騎士団には7機しかいない。
蒼天と紅蓮可翔式以外は全てトウキョウ租界陥落に参加している。
だが、ゼロの率いる部隊と戦力的には同等だ。
このサクラダイトを所有する『シズオカ』を死守することが僕たちの役割。
中継地点から送られてきた情報によると敵陣はすでに50キロ前方に迫っていた。
(…もうすぐ、戦争が始まる)
その時だった。
プラチナスターを付けた携帯が震えだした。
僕はそれを取って、相手を見た。
『Suzaku Kururugi』
急いで僕は繋いだ。
「スザクか?今、どこにいるん…」
『ライ。ルルーシュは何処にいる?』
彼の第一声がそれだった。
僕は喉が干上がった。
支援!
支援
46 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:29:07 ID:YH1JjJ2Q
「…何を言ってるんだ?学園だろう?」
『…さっきから連絡が取れないんだ。君なら知ってると思ったんだけどね』
言い方に含みがある。
それも僕に気付いてほしいと言わんばかりの口調だった。
だが、そんな口遊びに僕は乗らない。
「…すまないが僕にも分からない。心配だな。ナナリーが寂しがってるだろう。何とかしな…」
『ナナリーは大丈夫だ。生徒会の皆がついてる』
スザクの声が平坦すぎる。
…どういうことだ?
「…一体どうしたんだい?スザク。何かおかしいぞ?」
『…ライ。悪い事は言わない。今すぐ投降してくれ。カレンと一緒に。君たちなら…』
「何の冗談だ?スザク」
馬鹿にした口調をしつつも、僕はいかにも彼らしいと一人ごちた。
甘い。
それが、スザクの弱点でもあり、美点でもあるんだ。
けど、僕も人の事は言えないくらい甘いと、昔ルルーシュに指摘されたことがあるけど。
『…僕は、君に聞きたい事があるんだ』
「何だい?」
『…今は言わない。ただ、すぐに聞くことになると思うよ。…君の手足を拘束した後でね』
完全な決別だった。
もう、スザクは僕たちに牙を向けている。
これは最終通達だった。
「…そうか。僕たちは、すれ違ってしまったんだね」
スザクは無言で僕の言葉を肯定した。
こんなにも早く、僕たちは刃を向け合うことになるなんて…
運命ってのは本当に残酷だな。
ほんの2か月前まで、笑い合っていたのに。
『…ライは一度決めたら、絶対に曲げない。だから、強い』
「それは君もだろう?スザク。君はいつも真正面から向かってくる。そして、君の信念は絶対に揺るがない」
『…そうだね。僕たち、似てるな』
「ああ。だから、全力で来い。僕は君を全力で叩き潰す」
支援
しえん
49 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:30:38 ID:YH1JjJ2Q
僕も彼に宣言した。
『殺す』って言えないのが、まだまだ甘いのかもしれないけど。
でもいざという時は、殺す覚悟は出来てる。
『…ライ』
「何だい?」
『僕たちは、親友だよね?』
…まったく、君ってやつは。
僕は苦笑するしかなかった。
君は僕より甘いよ、って面と向かって言えないことが残念だけど、
僕は素直に気持ちを述べた。
「ああ。親友だ。僕たちは」
『……もう、話す事は無いね』
「…ああ。じゃあ、切るな。もう時間が無い」
「分かった。なら次は…」
「『戦場で会おう』」
僕は携帯を切った。
ペットボトルを収納する小さなボックスに携帯を入れる。
もう敵はナイトメアのモニターで視認出来る距離にいる。
支援!
しぇーん
52 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:31:42 ID:YH1JjJ2Q
オープンチャンネルを開いた。
僕は、2万を超える部下たちに『命令』する。
「黒の騎士団総員に告ぐ…」
僕は深く息を吸って、声を限界まで張り上げた。
『生き恥を晒してもいい!!絶対に生き残れ!!!以上だ!』
『…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』
地上から歓声が上がった。
それだけでは無い。オープンチャンネルで団員が次々と大声を上げる。
『副司令!万歳っ!!』
『副司令ぃ!!俺の娘をくれてやるぜえええええっ!!』
『きゃあああああ!!副司令!結婚して下さいっ!』
『ちょっ!?何勝手な事言ってんのよ!ライはわた…』
『隊長っ!俺はアンタについて行くぜえええ!!!』
『ええ!地の果てまでお供します!!隊長!』
『ゼロよりも、私は貴方を信じますよ!!副司令!!』
『かっこ良すぎです!副司令―――――!!』
先程からスピーカーが鳴りやまない。
僕は予想以上の反響に内心冷や汗をかいていた。何故かカレンの怒号が聞こえるが気のせいだろう。いや、絶対気のせいだ。僕の激励は成功だったはず。
カレンに文句を言われるはず無いじゃないか。
うん。そうだとも。
53 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:32:17 ID:YH1JjJ2Q
僕はスピーカーをオフにして、もう一度気を静めた。
目を閉じて、深呼吸を繰り返す。
心に真っ赤に燃える闘争心と、状況を分析する冷静さが混じり合う。
この感覚だ。
体中は熱いのに心が冷え切っている感覚。
一際大きく深呼吸し、心を切り替えた。
「…来い、ブリタニアよ!」
しえん?
支援
56 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:33:45 ID:YH1JjJ2Q
ルルーシュが告げる。
「はははははははっ!終わりだ、ブリタニア。お前らの崩壊はここから始まる」
スザクが告げる。
「あれが本当なら、俺はもう立ち止まらない!ユフィのために。ならばせめて、俺の手でっ…」
ライが告げる。
「…とうの昔に僕の手は血で染まっていた。そして、これからも染まり続けるだろう」
「「「――――――――――――だから…」」」
支援!
58 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 23:34:09 ID:l1qIXJkw
しえん
59 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:37:29 ID:YH1JjJ2Q
後編3終了です。
19の題名がおかしいのですが、どうすればよいでしょうか?
修正とか出来るのでしょうか?
すいません。お手数ですがだれかお願いします。
POPPOさん。ごめんなさい!
おつかれさまでした〜
規制中のPOPPOさんにどうぞよろしく
これからじっくり読ませていただきますね
代理投下ご苦労様でした
61 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:42:49 ID:YH1JjJ2Q
…申し訳ありません。
今から設定資料を投下します。
支援、ひとつお願いします。
支援
63 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:46:04 ID:YH1JjJ2Q
ヘンリエット・T・イーズデイル
Age; 15
Sex; female
Height; 170cm
ノエルと同じクラスメイトの一人であり、絵に描いたような傲慢稚気なお嬢様。
淡い紫色の瞳に、同じ色をした綺麗な長髪。透き通るような素肌に、豊満な胸をお持ちの抜群のスタイルの持ち主。
文武ともに優秀な成績を収めているが、リリーシャのように飛びぬけているわけではなく、紙面上だけということ。(成績、実技は共に上位10位以内)
頭は悪くはないのだが、プライドが高いばかりにいつも空回りしていて、どことなく要領が悪い。(リリーシャは要領が良すぎる)
不真面目な人間は大嫌いで、特に、やる気が無くてサボり癖がある(ように見える)リリーシャは気に食わず、その上、自身よりも優秀な成績を残すために嫌悪感は一層拍車をかけていた。
だが、自分に非がある事はきちんと謝れる人間であり、傲慢な性格の印象が強いたためにそのような素直さが周囲に認識されていない。
ある日、階段で転びかけたところをライに抱きとめられたことがあり、ライに一目惚れしてしまった。それから、ライ様ファンクラブの副会長に上り詰めた。その時にファンクラブで知り合ったノエルと友好関係を築く。
性格さえ矯正すれば中等部のトップアイドルになりうる素質を持つ美少女であり、中等部ではリリーシャとヘンリエットはかなりの人気がある。
ぶっちゃげコメント
(ミーア・I・ヒルミックの顔つきを険しくした感じ)
64 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:47:05 ID:YH1JjJ2Q
セルゲイ・サザーランド
Age; 49
Sex; male
Height; 211cm
皇帝直属の騎士『ナイトオブラウンズ』の一角、ナイトオブツーであり、第五世代型ナイトメアフレーム、『サザーランド』の開発者である。
一度は戦場から身を引いて、帝立コンチェスター学院の教授職に就いていたが『血の紋章事件』後にビスマルクの推薦を受けて、ナイトオブツーに就任した。
彼の特性は年齢不相応な身体能力だけではなく、操縦者、開発者からの深い視点があり、この世界で彼以上にKMFを知り尽くしている者はいない。
酒と女をこよなく愛する軍人であり、豪快な性格。
彼は地上戦での惨状を目の当たりにしてきた経験から、KMFの必要性を感じ取り、開発に至った。そのため、従来の開発者とは毛色が随分異なる。
また、学院で教授をしていた頃、ロイドやラクシャータも彼の下で学んでいた。
65 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:48:46 ID:YH1JjJ2Q
《ガウェイン・ラグネル》
ガウェインをラクシャータが改良した第8世代型相当のゼロ専用ナイトメアフレーム。
ドルイドシステムを応用し、ブレイズルミナスによる絶対守護領域を搭載した。
武装は両肩にあるハドロン砲とワイヤーカッター式のスラッシュハーケンのみ。指揮と防御に特化した機体。
機動性も向上しているが、指揮官用のKMFとしては不要の性能となっている。
エナジーフィラーを二つ装着できるようになり、活動時間が大幅に伸びた。
66 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:50:07 ID:YH1JjJ2Q
《ベディヴィエール》
ナイトオブナイン、ノネット・エニアグラムの第8世代型相当の専用ナイトメアフレーム。
外形はグロースターを緑にカラーリングしたような機体。
しかし、所々の部位がグロースターとは異なっていて、全体的なシルエットはグロースターのよう重厚感では無く、ランスロットのような機動性を重視した印象を受ける。
特に胸部の形がグロースターと大きく異なっており、胸部は金色の槍のようにとがっていて、嘴のように展開すると奥には大型のファクトスフィアが内蔵されている。
背中にはフロートシステムに漆黒のマント。
武器は『ゲイボルグ』と名付けられた大型のランス。
ブレイズルミナスコーンを搭載した槍であり、槍先の側面や、柄の部分にも盾となるブレイズルミナスが搭載されている。
また、槍先の円輪には口径893mmベネディクト弾を連射するバルカンが装備されており、遠距離の攻撃も可能。
加えて、柄の先端には4つのスラッシュハーケンが付け加えており、捕らえたナイトメアを手元に接近させたり、縦横無尽に機体を翻弄したりと、乱戦にも対応している。
一本で攻守を担う巨大ランスだが、扱い方は非常にクセが強く、これを十分に使いこなせるのはノネット本人のみ。
ぶっちゃげコメント
(機体はガ○ダム00シーズン2に出てくるガデッサみたいな感じ。
『ゲイボルグ』は同じくジンクスVの槍を緑色にした感じ)
67 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:51:12 ID:YH1JjJ2Q
《蒼天》
第8世代KMFに匹敵する、ラクシャータの開発したライ専用のナイトメアフレーム。
『神虎(シェンフー)』の改良型であり、外見、出力、兵装もほぼ同等である。
ライの操作技術に合わせ、俊敏性が極限まで高められている。
『神虎(シェンフー)』と異なる点は、天愕覇王重粒子砲の代わりに、胸部には凝縮型輻射波動砲が搭載されている事と、両腕にはランスロットと同様のブレイズルミナスが装備されていること。
出力は紅蓮可翔式の約2倍はあり、性能も驚異的だが操縦者には大きな負担がかかるために、カレンでも女性の肉体であるがゆえに耐えきれないほど。
コクピット構造は紅蓮のようなバイクスタイルではなく、ライがサザーランド型のコクピットに順応しているためにブリタニア式の構造を採用している。
支援
69 :
代理投下:2009/03/13(金) 23:54:47 ID:YH1JjJ2Q
以上です。
多くの支援、本当にありがとうございました。
poppoさんは感想が読みたいらしいので(先ほどメールがきました)、批判、感想などの書き込みお願いします。
>>69 長時間の投下、本当にお疲れ様です。
>>19のタイトルは既に修正してあげておきましたので、ご安心ください。
>>69 代理投下、乙でした&POPPO卿、GJでした!
セシルさんのサンドイッチが美味しい……だと!?
そんな、そんな馬鹿な!
まさかこれは破滅への引き金!?
宇宙の法則がみだれるるるるるる……
イチャイチャするライカレを止めた杉山、君は勇者だ!
道を違えた親友、どうなるのかなぁ……
最後の三人のセリフ、くるねぇ、ググッとくるねぇ!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>66 893mmのバルカンはおかしいと思う。
72 :
代理投下:2009/03/14(土) 00:24:37 ID:0sU1CxKb
また書き込み申し訳ありません。メールが来ました。
設定資料に書かれているベネディクト弾の口径なんですが、893mmではなく114mmだそうです。
保管者トーマス卿、これもお願いします。それでは。
では本文・設定ともに114mmで統一しておきます。
投下代理の方、POPPO卿。お疲れ様です。
…凄いです。これだけの長文にもかかわらず、重厚な設定とストーリーで一気に読ませていただきました。
中弛みがないという点では、まるでギアス本編を観ているような感覚でした。
次回も楽しみにお待ちしております。
以下、ちょっと突っ込み
ベネディクト弾の口径についてですが…、114mmでも大きすぎると思われます。ましてや多砲身で。
バルカンと仰るからには、恐らく6砲身のアレを想像しておられるのでしょうが、KMFの身長(大体5m前後)を考慮すると、
機関部や弾薬を含めたそれはとても実用に耐え得るものではないかと。
因みに現存するこの手の兵器で世界最大のものは「アヴェンジャー」と呼ばれる30mm7砲身のガトリングガンで、その威力は戦車「切断」します。
さらに言うと「バルカン砲」とはゼネラル・エレクトリック社の登録商標であり、兵器の種類や形態を示す名称ではありません。
(コンビニ全てをローソンと言ったりゲーム機全てをプレステと言うようなもの)
意地悪な突っ込みすみません。元の文章が素晴らしいだけに、どうしてもこういう点が気になってしまったものですから。
修正はいつでも可能ですので遠慮なくお申し付けください。
以下、ちょっと突っ込み
>>POPPO卿、超GJ!
代理の人も乙です!
すごすぎすばらしすぎ。こんな話し見たことねえ!
オリジナルがちゃんとギアスに融合してる。全く違和感が無い!
つくづく才能を感じるわあ〜ほんとすごい
待ってたかいがありました!続き全力で待ってます!期待してます!
>>トーマス卿、乙です!いつもながら仕事が速い!
兵器にも詳しいんですね、びっくりです。
ちょっと聞きたいんですが114でもでかいなら卿的にはどれぐらいがベストなんでしょうか?
代理投下乙です!!
そしてPOPPO卿、GJです!!
オリジナル設定、ストーリーにも関わらずスラスラと読ませていただきました。
次回が今から待ち遠しい…
しかしまぁ、やっぱり114mmには引っ掛かりましたね…
口径が114mmてことは銃弾の長さ下手したら400mm以上はありそうですよね。バルカンっていうくらいだから毎分数千発?くらいは連射出来ると仮定したとして………質量的な面から見ても無茶があるのでは? ランスが有り得ないくらいでかくなっちゃいますよ…
トーマス卿の話に出てる兵器ですら全長5mか6mくらいあったはずですから。
しばらく見ないうちにこんな所に移転してたのか。
まとめサイトからの誘導がなかったらこれなかったぜ
あれだけ散々告知が繰り返され、
ギャルゲ板の旧スレにもスレの更新の度にアナウンスがあったのに?
保管庫のスレリンクはもうだいぶ前から創作発表板のスレになってるはずだけど
もう落ちてる36スレのだけどさ
>>75 個人的にですが、口径をさらに小さくして単砲身というのが現実的ですかね。
また、打突武器に搭載することを考えると、部品点数が多い所謂「外部動力式」は避け、発射時のガス圧を利用するごく普通の
ものを用いるのが無難かと無難かと。
で、超やっつけで描いたのがこれ
http://anime.geocities.jp/codegeass_lostcolors_2ch/Central/gee.JPG 口径は20mm程度を想定(これでも並のKMFの装甲程度なら簡単に貫通するだろう。弾頭にもよるが)。
ガトリングガンに比べて1門辺りの速度は落ちるが、機銃そのものを複数搭載することによってある程度は補える…と思う。
これでも多少無理があるが、そこはブリタニアの科学力に期待しましょう。
>>78 ほんとにすいません、リンクは修正しておきました。
>>79 すげえ…すごすぎるよトーマス卿…
なんでこんなに尽くせるんだ…
>>79 噴いたwww
よくもここまで細かい考察をw乙です
どうもこんばんは〜
ちょっとまだ間がありますが21:30より投下します〜
■本日の前書き■
コードギアス [手をとりあって]その4 【扇要】
本文・あとがきの17レス
※オリキャラ分・オリ設定分が少々
※まいどながらすいません「我がドイツの科学力は世界一イィィ!」です
※今回(自分基準で言うと)残酷描写がいくつかあります。フィクションとはいえ、そういうのはキライという方はご注意を
コテハン忘れてました
では投下一分前
どうぞよろしく
支援
───2018,Jul,トウキョウ租界
日が暮れていたのは不幸中の幸いだったに違いない。
藤巻と前田は最初の襲撃でやられている。
神宮寺と小林、皆川たちとは続く銃撃の最中に離れ離れになっていた。
それから?
そうだ、一之瀬だ。本当についさっきまで杉山の後ろを走っていたはずの彼女が姿を消していたことに、俺はまったく気が付かないでいた。
─── 扇副司令、奥様の代わりにわたしがお守りいたしますね ───
カレンより年長のはずだけど、とてもそうは見えない………そんな少女っぽさが抜け切らない愛嬌のある娘だった。
彼女がいなければ、俺は最初の銃撃でやられていたに違いない、のに。
いつの間にか走っているのは俺と南と杉山の三人だけになっていた。
兵士──なのだろうと思う。確信はない──たちは先頃から銃を撃たなくなっていた。市街地に入ったから───市民の目が気になるから、だろうか?
だけど、連中はターミナルでは盛大に撃ちまくっていたじゃないか。それなのにどういうことだ? 考えようとして、やめた。
今は少しでも多くの酸素を呼吸に使いたい。無駄な酸素を脳味噌に喰らわせて駆け足を鈍くさせるわけにいかない。
追っ手は無言。俺たちも無言。ただ、荒い呼吸音だけが俺たちの生存を声高に主張している。
連中が言葉を発するのは……おそらくこの音を止めた時なんだろう。
俺たちにとってはそれは最期を意味する。連中にとって俺たちは狩り立てられるキツネ、自分たちはハンターなのだろうから。
『この辺りはそろそろ………』
辺りの風景がいくらか寂しいものに変わってきていた。ここは租界内の再開発区域。
この区画は学校や公園・文化施設などが多い地域と隣接していて、交通の便もいい。治安の安定と共に人口流入がさらに増した租界の新たなベッドダウンとして開発が進んでいる区画なのだ。
なるほどな。
建設中のショッピングモールと思しき建築物を横目に俺は追っ手の思惑を察した。
人の目の届かないであろう再開発区画に俺たちを追い込もうというつもりか。
その考えは悪くない。悪くないと思う。
横目でチラっと右手の南を見る。
南も先刻ご承知といった様子だった。頷いて合図をし、左手を振って見せた。
──『3』『1』『2』──
指を三本、次に人差し指だけ一本、最後に二本立てて俺と杉山に合図をする。そして拳を握ってぶんと振り下ろした。
大切なことはそれだけで全て伝わる。
後ろから迫るハンター気取りの兵士は………6人。いや、後ろにはまだ同じくらいの人数がいるはずだ。
10人かそこら。まぁそんなものだろう。
さぁ、始めるか。こういう時って何か自分を奮い立たせるような言葉が欲しいな。
南なら「教育してやるぞ」だろうし、カレンなら「黒の騎士団!」なんだろうが………俺はどうしよう?
そんなことを考えていたら、もう二本目の路地を通り過ぎていた。合図から数えて“二本目”の路地。“三本目”の路地ももう目の前だ。
「なんて言っても今日の俺は特別だからな、ただじゃすまさないぜ」
外れ。南だったらいつもの「教育してやるぞ」だと思ったのに。
「なに言ってんだ、南。オレはお前以上に特別だかんな!」
挑発するように杉山も軽口を叩く。
「お前たち余裕だな」
呆れたように言う。言うが、それは俺にとっても同じことだ。
そう、追っ手が10人からいようが───さすがに20人を越えるともなると大変なんだろうけど───余裕なんだ。余裕なんだよ。
連中は何もわかっちゃいない。
目的の場所に追い込んだつもりなんだろうが………目当ての場所に追い込まれたのは、お前たちの方だ。
いいだろう。ゲリラってヤツがさ、こういう密林でいかに戦えるのか、どう戦うのかを教育してやろうじゃないか。
鉄筋の大木、生い茂るコンクリート、置きざらしの重機なんて絶好の遮蔽物。ここは人工物で出来た密林なのだ。
“三本目”の路地を通り過ぎた瞬間、俺たちはバッと身を翻していっせいにバラバラの方角に分かれて走る。
ただ分かれただけって訳じゃない。これは狩りの始まりを意味しているのだ。
俺たちというハンターが、追っ手気取りのキツネ共を仕留める狩りの始まりを。
俺は竹を削って作った肉厚細めのナイフを取り出しつつ、手近な建物の中に身を滑り込ませた。
あいにく支援はしない主義なんです
支援
トウキョウ租界に入る際のボディチェックは厳重だったから、当たり前の武器など持ち込めるはずもない。
だから当然銃器など持ち込めはしなかった。持ち込めたのは金属探知機にかからないこんな竹製のナイフくらいなもの。だけどこれで十分だ。
持ち手には布を巻いて固めてあって手によく馴染む。ストラップを手に通してしっかりと握った。その感触を右手に確かめつつ、今度は左手で靴底を捲る。硬い靴底は容易に外れ、柔らかい靴底が現れるのだ。
地下足袋のようなフィット感と接地感。
外した靴底は偽装したC4爆薬だ。それは腰のポーチに入れて俺は建物の中を中腰でサッサッと走り始める。
もちろん足音などはほとんどしない。そういう素材のそういう靴なのだ。
やれやれ、と思う。
一寸先は闇とは言うけれど、万が一のための準備がこう悉く役に立つというのはな。
暗い建物の中を走る。
動きをトレースされないように複雑に曲がり、進み、降りてまた上る。そうやって俺は事前のプラン“1”で決められた配置につくべく走る。
万が一の時のための合流地点、追っ手を逆に追い込むための戦闘ポイント。地図は事前に叩き込んでいた。だから暗くてもどうということはない。
そろそろ時間かといったころ、俺はポイントに到着していた。住宅とも商店とも思える建物の二階、道路側の窓際。
ポンっとシャンパンの栓が抜けたような軽い音が近場からした。
『合図』
ブリタニア兵は二人一組で動いていた。分散した俺たちをそれぞれ追うために三組に分かれたのだろう。
一人が前に立ち、もう一人がバックアップするオーソドックスなスタイル。
それが、今、俺の眼下に一組いるばかり、だった。
『素人じゃあるまいし、迂闊だな』
俺だったら二人じゃなく三人で行動する。必ずだ。そうしておけば前後から襲われても、もう一人が対応できる。
だけど彼らのその油断は俺たちにとっては生存に続く一筋の光だ。
音の正体を調べようと前衛に立つ兵士が銃を構え路地に近付く。二人の距離が離れた。躊躇はしない。俺は音もなく屋根から飛び降りる。
「?!」
バックアップに立つ男の真後ろ。絶好の位置。異変に気が付いてももう遅い。
着地の勢いをそのままナイフを構える両手に伝え、俺は身体ごと兵士にぶつかっていった。
ナイフは相手の脇の下あたりからズブリと入り込んでいく。鋭く削られた竹の刃は肉の抵抗をさほども受けはしない。
「!!!」
異状に気が付いた前衛の兵士が振り返る。振り返ろうとする。
ドンッ。
同じような衝突音。
路地に身を潜めていた杉山が飛び出し、同じように竹のナイフでしとめたのだ。
躊躇はない。
首に腕をまわし、大声を出せないように喉を潰す。そのまま押し倒した。俺たちは兵士たちを組み伏せてより深くナイフをその身に捻り込んでいく。
身をよじり、暴れるがすでにその力は弱い。
一瞬、その兵士の目尻に光るものが浮かんで見えた。
─── タ ス ケ テ ───
すがるような目。
「そんな目で見ないでくれ」
思わず口をついて出る言葉。
「すまないな、俺達だって殺されるのは─────好きじゃない」
コードギアス LOST COLORS [手をとりあって]その4 【扇要】
───2018,Jul,行政特区日本……二日前
「うおおおぉぉぉぉぉ───ッ!!!」
号泣する玉城をぼんやりと見ながら俺は『ズルイな…』と思っていた。
先に泣きだす奴は、ズルイ。先に泣かれてしまったら、俺たちはどうすればいい? 泣けないじゃないか。
「なんでだ、なんでだ! どうしてあんないい奴が死ななきゃならないんだよ!」
玉城を連れてきたのは井上だった。井上の言葉を信じようとしなかった玉城がここで発した第一声は「ウソなんだよな?!」。
俺だってウソであってほしかった。けど、ウソではなかった。ライは命を落としてしまったのだ。
支援
「戦友だって、友達だって思ってたんだ! 好きだったんだよ、あいつのことが!!」
「だからなんだってのよ!!」
怒声。床に座り込んでいた玉城を井上が無理やり立ち上がらせる。胸倉を掴んで無理やり立ち上がらせていた。
「死んじゃったわよ! ライだけじゃない、40人から…大勢死んじゃったわよ! もう死んじゃったのよ! そうやって泣いて喚いて、涙やら鼻水やら振りまけばなんかが、どうにかなるってのッ!?」
何も変わらないのよ、誰も生き返らないわよ。そう言って玉城を突き飛ばす。尻餅をつく玉城。井上もその場に座り込んでしまった。
絶望的だった。
仲間の死。それは今までにだってあった出来事のはずだ。なのにこんなにも強い、喪失感。
戦いは終わったと言うその安心? それが俺たちの緊張感を弛緩させていたのだろうか。
気持ちが重たかった。
部屋の中にあるのは絶望感だけだった。
部屋には小さなテーブルに端末が一つ。それを叩くディートハルトの他には誰も彼もが椅子に座るでもなくただ立ち尽くしている。
なにかしようという気持ちがわかない。
仲間を失ったというその事実が、何かが終わってしまったのではないかという恐怖が、俺たちから力を奪っていた。
「とにかく…とにかくさ、まずは現状の把握だろ? それから一つづつ対処していかなきゃ、な」
「あぁ、そうだよな」
やっとの思いで言葉を搾り出したのだろう南に答えた時、部屋の扉が開いた。
「皆揃っているな」
聞き慣れた変声機を通した声。
ゼロとC.C.だった。
・
・
・
「──すでに通常装備のレスキューでは限界が出ているはずだ。藤堂、自警団から適任者を選抜し、取り残された被害者の捜索・救助その他にあたれ。人間も装備も必要な物は好きに使ってくれて構わない」
「了解した、が」
常になく藤堂中佐が明瞭な返答で口を閉じなかった。
「すでに事件発生から10時間が経過している。ゼロはまだ生存者がいると考えているのだな?」
「可能性の多寡は問題ではないな。生存者はもういないという確認が得られない限りは、我々は捜索を続けねばならない」
つまり、我々としては助けを待つ人を決して見捨てないというポーズが必要と、そういことか。
ボンヤリとした頭にそんな皮肉めいた感想が浮かんだ。それはあまりにも意地の悪いな言い草だろうか。
今度こそ了解したと言葉を切って、藤堂中佐は傍らの仙波大尉に指示を与える。すぐに仙波大尉は部屋を退室していった。
さて、とゼロは言った。
「ディートハルト、テロ実行犯についての捜査状況はどうか?」
「政庁のサーバから引き出したデータの解析を進めています。有用なデータの分析までにはまだ時間がかかるものと考えますが」
「実行犯に関する情報はまだ見出せないか」
「いえ、少し妙な情報があがっています」
ディートハルトが立ったまま卓上の端末を操作して壁のモニターに映像を出す。
「事件発生の約二時間前の防犯カメラの映像です。この16:02:88の部分をご覧ください」
警備員の目の前を小柄な人影──少年が通り過ぎていく映像。
「このカメラは通常の物とは別にカモフラージュしたうえで設置してあるカメラです。いまのところこれ以外にはこの少年の映像は発見されていません」
素通りしていく場面をリピート再生させるディートハルトが俺を振り返った。
「おわかりですか? 何が妙であるか」
なぜだろう? 常になく、俺は彼に馬鹿にされたと感じた。
「それくらいは俺にだってわかる。政庁は一般に開放されていないのだから、本来警備員が一般人の……未成年の進入を見過ごすはずがない」
その通りですとディートハルトは軽く流した。彼はもう一度端末の液晶画面を指した。
「ありえないことが、起きたのですよ。実直で任務にも忠実な警備責任者である彼がその目の前を通過する一般人の少年が通っていくのを黙って見逃しているのですから」
「この少年が実行犯だということなのか?」
「確証はありませんが、非常事態の直前にこのような異常事態が起きているわけです。無関係だとは思えませんね」
「その警備員への事情聴取は?」
「進めていますが要領を得ないのです」
投げかける問いかけに、やや大げさな身振りをしてディートハルトは顔を横に振った。
支援
「少年がこちらに向かって歩いてくる姿は見た。けれど、その少年は突然かき消すように消えてしまった……」
もう一度ディートハルトは大げさなジュスチャーをしてみせた。やれやれ…といった感じの。
「幽霊を見た。そう主張しているのですよ。彼は」
「だけど警備の隠しカメラには……」
吉田が口を挟む。
そうだ、隠しカメラの映像では少年は姿を消すわけもなく、ただゆっくりと歩いて彼の目の前を通り過ぎていっている。なんの異常も見られない、当たり前の映像だ。
「その警備員がテロ実行犯の回し者であるという可能性はないのか? あるいは何かしらの精神的問題を持ち合わせているなどとは?」
「幹部でこそありませんが、黒の騎士団立ち上げ時からの古参団員です。ゼロ自身が直々に面談したこともある人物でありますし、各部署からの信頼も厚い」
ディートハルトは千葉中尉の質問に即答した。そうしてチラと藤堂中佐を見る。
「藤堂氏ご自身が政庁の警備主任に推挙した人物でもあるのですよ。これが」
幽霊を見たという荒唐無稽な証言。しかし警備責任者として信頼も厚い人物。
しかし、幽霊だと、消えたと言われた少年は当たり前のように彼の目の前を歩いているではないか。
答えははっきりしている。はっきりしているのに、どこか矛盾を感じてしまう。何かが間違っていると、もどかしさを感じてしまうのだ。
再び沈黙が辺りを支配する。
ガタン。
音を立てて椅子から腰を上げ、テーブルの上の端末に近付く──女。
「フム」
拘束衣のような白い服。相変わらず理解し難いファッションのC.C.が室内の重い空気を振るわせた。
「何か気になるところでもあるのか?」
「別に」
だるそうに、本当に面倒くさそうにゼロに返事だけはして、C.C.と呼ばれるその女は面白くもなさそうに端末をカタカタ操作し始めた。
誰が呼んだんだろう。そう思ってはたと気がついた。そういえば今日はゼロに付いてこの部屋に入ってきたんだっけ。
珍しいなと思った。普段このような場には率先してボイコットを決め込む彼女だというのに。
「おい、お前」
「何か?」
「使い方がわからん。動かしてくれ」
口答えはせずに目元を少し振るわせただけだった。ディートハルトは黙って端末を操作する。
「そうだ。リピートせずに続きを見せろ」
映像の時間表示が16:20:04を指した時だった。
少年の侵入を微動だにせず見逃した警備員が大きくその身を震わせた。あちこちをキョロキョロと見回し、落ち着かない様子で行ったり来たりを繰り返す。
酷く───何かに驚いたような様子だった。
「フム」
彼女はそれだけ口にすると端末から身を離し、座っていた…ディートハルトからかっさらった椅子に戻っていった。
「フムって………それだけですか? 何か気になる事でもあったのでは??」
「別に何もない。これだけだ。気にせず話を進めるがいい」
調子を狂わされた表情でディートハルトは咳払いをしてみせた。
「とにかく、情報部としてはこの少年を重要参考人として捜査を開始しています。映像や似顔絵その他の資料は自警団にも回しますのでご協力を」
そう言ってディートハルトは一歩後ろに下がって見せた。
座っていた椅子は彼女に奪われていたからだ。
幾人かが頷き、足早に部屋を出て行こうとする。出て行こうとした、その足を止める言葉が発された。
C.C.だ。
「それで結局のところだな、お前たちはこの行政特区日本とやらをこの先どうしていこうというつもりなのだ?」
彼女は何を言わんとしているのか? その言葉に誰も返答できない。俺も。
「事件が起こった。大勢死んだ。犯人はわからん。救助をしましょう、捜査もしましょう。それはせねばなるまい。だが、そんなこちらの都合に関係なくブリタニアは動くぞ?」
「おそらくはそうなる。そんなことはわかっている」
わかっているのと行動をもって対処するのとは別物なのだがな、と彼女は相変わらず面白くもなさそうな顔でゼロに返す。
「おそらく…などと言ってる場合か? 仮定ではなく、すぐにでもブリタニアは動く。その時お前たちは如何なる方針の元に対処するつもりなのだ」
そこでC.C.はややわざとらしく溜息をついてみせた。その仕草はさっきのディートハルトの発言以上にバカにされたかのように俺は感じた。感じてしまった。
「しかしこの事件が誰が何の目的で行ったものなのかさえ皆目見当もついていない。特区に反対する反ブリタニアの組織…例えばサムライの血であるとか、そういった連中の仕業なのかもわかっていない。そもそもブリタニアが行った陰謀って可能性だって捨てきれないんだ!」
「それはお前たちの都合だな」
支援
>>93 ゴミに手を触れちゃだめですよ。スルースルー
C.C.は冷然と言い放つ。
「事件の真相を調べるので、わかるまでの間待っててくださいとでも言うのか? ちなみに容疑者にはブリタニアの皆様も入ってますと付け加えて」
今度ははっきりとわかった。彼女の言葉に込められたものは敵意にも似た嘲笑だ。しかし何故だろう、俺たちに向けられたものじゃないと感じた。これはゼロにだ。ゼロに向けられた嘲笑だ、敵意だ。
重かった部屋の空気の質が変わる。
遠慮のない彼女の言葉がささくれ立った者たちの憤りを膨れ上がらせたのだ。
「もういい、C.C.」
椅子を蹴り、立ち上がるゼロ。
「今の時間まで救助捜索と治安維持のみに時間を費やし、方針決定に二の足を踏んでいたのは確かに責められるべき失策だ。この私の失態だ」
「それで?」
C.C.の声も、視線もただただ冷たい。
その冷たい視線がゼロを射抜く。彼女だけでなく、皆の視線もゼロに集まっていく。
「収容されたユーフェミアの遺体の件もある。彼女の遺体を送り届けることも、今回の事態についての説明も、コーネリアに対して直接行わなければなるまい」
言うまでもなく、エリア11総督府からは事態についての説明を求める連絡が幾度となく届いている。
─── 行政特区日本は早急に事態を収拾せよ。また代表者を立ててエリア11総督府に出頭すること。今回の事態について直接に詳細な報告を行うことを命ずる ───
だが、誰が行く? 誰が敵地かもしれない場所へと出向く?
「私が行こう」
ゼロは、その一言だけを口にした。
・
・
・
官舎に戻ったのはそれから更に二時間後のことだった。
時刻はすでに朝の八時。ようやく八時になったと言うべきか。
疲れているという自覚はなかったが、雲に隠れた太陽の、その弱い日差しですら目に痛かった。
「おかえりなさい要さん。お疲れ様でした」
鍵を開けて入ると同時に千草の声がかかった。
玄関に立つ彼女は夕べ食事に外出した時と同じ白のワンピースのまま。その上からエプロンを引っ掛けている。
溶けたバターの良い匂いがした。
「一之瀬さんからお電話もらったの。要さんがもうまもなく部屋に帰りつきますよって」
「千草、寝ていなかったのか」
はにかむように心配だったからと言って、彼女は俺のカバンを手に取った。
「疲れたでしょう? 軽いお食事を用意してありますけど…。それとも先にお休みになりますか?」
いや…と俺は頭を振った。
「すぐに政庁に戻ることになっているんだ。その後出張することになるんだが、多分長くなると思う。食事だけ軽くもらおうかな」
千草はそれ以上は何も聞こうとはせず、部屋の奥へと入っていった。
それに続いて俺も自室に向かう。
長くなる。それは予測ではなく、確定された未来だった。
「私が行こう」
その言葉の意味を咀嚼するわずかな時間の後、俺たちはいっせいに言葉を発した。
「それは危険だ! ゼロ!!」
俺をはじめ、集まった幹部全員が同様に反対を口にする。
総督府に出頭し、今回の事件についての報告を行う特使の任。それをゼロ自らが行うと宣言したこと。
それは俺だけではなく、皆にとっても予想の斜め上だった。
「報告もなにもよぉ、ライたちを殺ったのはその当のブリキ野郎どもだろうが!」
わざわざ自分から殺し屋たちの懐に飛び込むつもりかよ、とそれまで黙ったままだった玉城が怒鳴るように主張する。
仮にブリタニアの仕業でないという前提の上での判断だとしても、と藤堂中佐が玉城を遮るようにして言う。
「この時期にゼロ、君が特区を離れるというのは賛成できない」
「ならばどうする? 誰も行かない、行けません──では向こうも納得はしないだろう」
それはわかる。それはブリタニアの特区への治安行動───武力制圧への大義名分とされる恐れがあるからだ。
大義名分!
それこそが俺たちがもっとも恐れることだった。
横暴で冷酷非情のブリタニア軍──それは被征服者である俺たちの視点による印象ではあるが──であっても大義名分なしには一方的な軍事行動をとることなど容易には適わない。
だが事態は一刻を争う。一秒過ぎれば一秒分、一時間過ぎれば一時間の分だけ俺たちは敵にその大義名分を与えることになる。自分の首に自分で縄をかけることになるのだ。
支援
俺は一歩前へ出た。
「特区参加の際に、黒の騎士団は組織解体されたことになってるよな」
ゼロが無言でその仮面を俺の方に向けた。
「解体された組織の元副司令って肩書きは………ブリタニアからするとどれくらいのステータスになるものかな?」
「騎士団の組織解体は建前、有名無実な代物だと一番よく認識しているのは総督府の面々の方でしょうね」
そう答えるディートハルトに頷き、俺は更にもう一歩前に出た。ゼロの方に向かって。
「で、あればだ。黒の騎士団の副司令ってやつはそこそこの重要人物として受け取ってもらえるということになるな。連中も文句はないだろう」
場にいる全員の視線が今度は俺に集まる。
「ゼロ、その任務、俺に任せてもらえないだろうか」
コトンと置かれた皿にはスクランブルエッグとトースト。その脇にはポテトポタージュの注がれたマグカップ。
「あぁ、また作ってくれたんだね」
「要さん、美味しいって言ってくれたから」
そのポタージュを軽くすすり、俺はトーストにかじりついた。
千草は何も言わず、何も聞かないまま、ただ優しげに微笑んでいる。
チクリとどこかが痛んだ。
「千草、ちょっと頼まれてくれるか?」
首をかしげる彼女に一週間分くらいの着替えを揃えてトランクに詰めてくれと頼む。それ以外の物は政庁の方で揃えるからいいとも。
言葉にしたのはそんな事だけ。口をもっぱら食べるためだけに使い、俺は欠食児童のごとくに用意された食事をたいらげていく。
ふと顔を上げて千草の顔を見る。
そこには変わらず優しい微笑みがあるばかりだった。
「しばらく前の話だ。ライに聞かされたことがある」
ゼロもC.C.も無言のまま。
「行政特区参加はブリタニアの体制に取り込まれるという意味を持つ。日本人としての権利を取り戻すとは言え、所詮はブリタニアによって与えられた代物。それは与えた側の都合でいかようにも歪められるのではないか……」
それでもあえてこれに参加することには意義があります。そう彼は語った。
「ゼロ、君はライに語ったそうだな。これは足がかりだと。君は特区を足がかりに新しい世界を創り上げると語ったと。教えて欲しい、それはどんな世界なんだ?」
「私が作る新しい世界とは、か。君が望むのは長々と理念や修辞を聞かされることではないのだろうな」
軽く頷き、そしてゼロはもう一度深く頷いた。
「私が創り上げる新しい世界。それは、優しい世界だ」
それは聞く人によれば何を奇麗事をと、何を絵空事をと嘲笑されるような、抽象的な言葉だったろう。
だけど、俺は………。
「君は常に口にした言葉に責任を取ってきた。出来ない事を出来ると言った事はないし、出来ると言った事は必ず実現してきた」
だから。
「俺は君のブリタニアへの怒りは本物だと思っている。その怒りを横に置いてでも新しい世界を、ブリタニアをも取り込んだ新世界を築き上げるとと語ったのだから、俺は、君のその覚悟を信じる」
あるいは、これが初めてだったのかもしれない。
カレンや玉城にゼロを支持すると言ったことはあるかもしれないが、彼自身に俺自身が君を支持すると直接伝えることは。
だから。
「ゼロ、君はこの特区に……日本に絶対に必要な人間だ。万に一つのこともあっちゃいけない。だからって訳じゃないが、俺に君の覚悟を代理することを許可してほしい」
特区成立時にしつらえた背広。この半年の間、袖を通したのはホンの数回。今日のこれが四回目だったか五回目だったか。
出立の前に色々と手続きを踏まなければならなかった。キョウトのお偉方に会うのもその一つ。これも肩書きにくっついてくる義務というものなのだろう。
「要さん。ほら、ネクタイが曲がってますよ」
しっかりと両手で直してくれてから、彼女は「ハイ」と子供の背丈程のトランクを俺に渡した。
「着替えと洗面用具と、それからお仕事に必要そうな小物とか入れておきましたから」
「あぁ…、ありがとう千草」
不意に彼女の顔が歪む。目尻に涙が浮かぶ。
「ご、ごめんなさい。でも、本当に…本当に気をつけて………」
俺は彼女を抱きしめた。
「きっと無事に、帰ってきて…要さん」
緊急連絡を着信したのは、そうして官舎を出た直後だった。
───エリア11総督府は行政特区日本において発生した爆弾テロ事件に関し、治安維持と混乱の収束を主目的としてアンドレアス・ダールトン将軍指揮下の部隊を派遣することを決定。ただちにこれを進発せしめた───
支援
・
・
・
───2018,Jul,トウキョウ租界
余裕だとか言っておいてなんだが、結局のところ始末できたのは最初に追っ手にかかっていた六人だけだった。
後に続いていたもう八人に追いつかれ、そして俺たち三人は再び走っている。
「この公園まで辿り着けば租界の現地協力員が待機しているっての本当なんだろうな?」
「っていってもディートハルトの言うことだからさ、あの顎野郎の手配した人間がどこまで信用できるかわかったもんじゃない!」
南が俺に向かってぼやく。
「それにだ、いるにしても、いないにしてもさ、RVにあいつらまで引き連れてくわけにはいかんだろうが!」
「わかってる!!」
怒鳴るように返事する。というか、RVってなんだよと喉元まで出掛かった。合流地点だか集合地点の意味だったか? 言葉をこらえて俺たちは辿り着いた公園のトイレらしい建物の影に入った。
公園はそれなりに広い敷地を誇っている。広場と芝生、それに茂る木々。奥の方まで来たから、銃声がしてもこの時間なら人の注意を引くことはないかもしれない。
この辺りで応戦するか? 奪った銃を撃ってもそうは騒ぎにはならないだろう、そう言った時だった。
バシッ! バシッ! バシッ!
背にしたトイレのコンクリートの壁が銃弾に削られ、立て続けに破片が飛ぶ。
「こっちが気が付くことさ、向こうだって気が付く。道理だな」
さっき倒した兵士から奪い取ったサブマシンガンを構えて杉山が応射し始める。
「扇、靴底とってあるよな? 導火線と信管つけろよ。線は2〜3cmでさ。手榴弾代わりになるだろ?」
俺はバカか、と言った。
「いくら人気のない深夜の公園でもC4なんか爆発させたら大騒ぎになるだろうが!」
うッと声を詰まらせる南に奪ったサブマシンガンを放り投げる。
「とりあえずC4は最後の手段だろ」
「最新型じゃないけどいい銃使ってやがるな。これMP5SD6じゃないか。どうりでただのSMGよりより集弾性がいいはずだ」
「ったく、このミリオタが」
呆れたように言う杉山が一人仕留める。
「ミリオタじゃないって言ってるだろ」
漫才のような掛け合いをしつつ、南もあっさりとさらに一人を仕留めた。
なんのかんの言って息のあった二人だと今更ながらに感心する俺だ。
俺も手に取った拳銃の弾数を確認し、しっかりと握りしめ………そして敵の動きの変化に気が付いた。
「南、杉山、裏手から回り込まれるぞ。二人か三人」
「そっちは頼んだ」「まかせるよ」同じ意味の違う言葉。素晴らしいタイミングだ、やっぱり息があっている。
銃弾がコンクリを削る音が一層激しくなる。
陽動だ。
別行動に入った仲間の存在をカモフラージュするための見せ掛けだけの猛攻。
俺は身体を伏せ、匍匐前進で草むらの奥へと進んでいった。
大きく迂回して回り込んでくる敵を、さらに回り込んでその背後を突く。
奪ったサブマシンガンが二丁きりで、拳銃しか残ってなかったのが痛かった。これだとそれなりに近付かねば確実に1ショット1キルとはいかない。俺の腕前では。
60m程前方の木立に隙間に男の背中が二つ。
この位の距離なら俺にでも? いや、狙撃するには茂みや木立が邪魔だな。
もう少し、場所を、狙撃ポイントを探せ。
散々に飛んで走って疲れきった身体に鞭を打って俺は移動を中断しない。
死んでたまるか……俺はまだ日本人が本当の意味で未来を手にするところを見ていない。
俺の夢、ナオトの夢、ライが語った彼の夢、まだ何も成し遂げてなんかいない。
── きっと無事に、帰ってきて…要さん ──
そして唐突に思い浮かんだ彼女の顔。
死 ん で た ま る か !
目測で20mまで近付いた時、俺は腹ばいのまま拳銃を構えた。
カチャリと微かな金属音。だけど、それが鳴ったのは俺の頭の後ろから。
「カナメ・オウギを確認。クラブ2、クラブ3戻れ」
無機質な感情を感じさせない言葉。
背中に冷たい汗が噴出すのを感じた。致命的なミス!
ザッザッザッと茂みをかき分けて背後の兵士が駆け寄る。動けない。突きつけられた銃口の圧迫感を背中を通してチリチリと感じる。
前方の二人が振り変えって走り寄ってきた。
どうする、どうする? どうすればいい?!
支援
あなたのことにきまってるでしょ
ゴミなんて汚くて舐められるわけないでしょ?
それともゴミでも糞でも普通に舐められる国の方?
「手間をかけさせてくれたものだ」
クラブ2、3と呼ばれた二人もすぐに俺の前に立った。
手を踏みつけられ、握っていた拳銃を蹴り飛ばされる。武器───! あとは懐のナイフと腰のポーチに入ってる爆薬のみ。
だが、背中に突きつけられた銃口は微塵も動かない。ナイフを引き抜くどころか振り返る隙もない!
おしまいなのか? これでおしまいなのか!
ギリ……とかみ締めた奥歯が音を立てる。フン、という嘲笑が頭上から聞こえた。
「向こうの二人はもういい。一人いれば十分だからな。その意味では手間が省けたと言える」
「ではあちらの方は?」
「殲滅でかまわ……」
言葉は最後まで続かなかった。
ヒュッという空気を切り裂く音、それに続くのはドスッという肉を貫く鈍い音。
俺の背中に銃を突きつけていた男が、その右手に立っていたクラブ2がカクンと糸の切れた人形のように倒れこむ。
「なっ?!」
俺の目の前に立つ男が異常事態にあわてた一瞬。
俺は右手で抜いた竹のナイフをクラブ3と呼ばれた男の脚に突き立てた。
「うぐおっ?!」
バランスを崩しながらも銃を構えようとする、俺は腹ばいの体勢から身体を横に転がし、その反動で起き上がろうと試みる!
一瞬、半瞬、ほんの少しだけ間に合わないか? 俺はクラブ3の巡らせる銃口を目で追う。
その時、飛び込んできた紅い影がクラブ3の大柄な身体を突き飛ばした。同時にもう一つの影が俺を後ろに押しやって紅い影に重なる。
ドスッ。
再び鈍い音。肉を刺し貫く生々しい、音。
クラブ3が力なく芝生の上に倒れこむ頃、影二つが尻餅をついた俺へと振り返った。
「扇さん! 大丈夫よね? 間に合ったわよね?」
若さ溢れる声に幾分混じった怯えと心配の音色。
遠くから差し込む街灯の光が紅い髪を照らす。そこにいた。紅月カレンがそこにいた。
「あぁ、大丈夫だ……と思…う?!」
こういうのは結構劇的な再会というのではないだろうか。
絶体絶命の危機、大ピンチ。今、正に消え行く灯火を寸でのところで救われた俺。助けに入ったのは亡き親友の妹、彼の忘れ形見である少女。
絵になる情景ってやつだ。
そう思い、息を切らせて駆けつけたのだろうカレンを見ながら、でも俺はいささか場にそぐわない調子の外れた音程で返事をしていた。
「カレン様、向こうの御二方の援護に行ってまいります。お怪我はないようですからこのまま扇様をお連れしてRVまで御移動くださいませ」
ソレは俺以上に場の雰囲気にそぐわないかしこまった調子でカレンに告げる。
「え? えぇ、そう…ですね。お願いします」
カレンも戸惑った様子でソレに答える。どうやら俺が、俺の感性がおかしくなったわけではないらしい。
「その……なんだ、ソレ……こちらのご婦人はいったいどういう筋の、その…御方なんだ? カレン」
無論聞こえたのだろう。眩しいホワイトブリムがこちらに振り向き、丈の長いスカートは決して大きくひるがえることなく、ソレは完璧に礼儀に則った美しい一礼をしてみせた。
「これは御挨拶が遅れまして、大変失礼いたしました。わたくしは現地協力員として黒の騎士団のみなさまにお力添えさせていただいております、篠崎咲世子と申します」
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします、と彼女は自己紹介した。もちろん俺の戸惑いは消えなかった。消えるわけがない。
確かに公園まで行けば現地協力員が待機しているとディートハルトは言っていた。彼女がその協力員なのだろう。
ただ、だ。
その協力員であるらしい彼女は、何故メイドさんなのだ? 何故メイド服なんかを着込んでいるのだ?
「それでは失礼いたします」
そう言って彼女は銃声がいまだ止まないトイレの建物の方へ文字通り音もなく飛んでいった。
傍らに立つ木に飛び上がり、そこから…木から木へと飛び移って行く。本当に音もなく、枝も幹もさほど揺らしもしないで。
「最近のメイドさんは……なんだか凄いんだな」
それがやっと出た言葉だった。
「扇さん!」
俺が我に帰ったのはカレンの強い一言でだ。
カレンは咲世子と名乗ったメイドさんがトドメをさしたクラブ3の傍らにあった。
「扇さん、これを見て!」
その口調に切羽詰まったものを感じ、俺はあわてて駆け寄った。
・
・
・
支援
青さんー!スルースルー!
支援
相手すんなよ青嬢
その場所の名はアッシュフォード学園と言う。
さっきの公園は情報収集のためよく訪れたこともある公園だった。。学園近くの屋台も出る市民公園だ。
篠崎咲世子が最初その提案をした時、一瞬カレンの顔が戸惑いとは違う否定的な色を浮かべたのに俺は気がついていたけれど、俺は気がつかない振りを通した。
あんな所は柄じゃないなんていつも言っていたけれど、やはり愛着のある場所なのだろう。
カレンにとっては思い出のつまった学び舎であるのだから。
カレンが気が付いた事、それは兵士が身に着けていた簡易端末についてだった。それの液晶パネルに緊急通信の表示が表れていたという事。
間際に仲間へ救援信号を発していたのだ。どこからの発信かは端末に備え付けられたGPSによって判明するはず。敵はすぐにでも増援を派遣することだろう。
「おそらくは少人数でな」
南がそんなことを言った。
「まずこの武器だな。H&KのMP5SD6、こいつはEU製のサブマシンガンだ。わかるだろ?」
連中はブリタニア軍ではない?
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「ですが、それは問題ではないと考えます」
篠崎咲世子が南の言葉を引き継ぐ。
「この銃器はブリタニア軍では正式に採用されていないと聞きます。もっとも優秀な小火器でありますから、不正規戦を行う特殊部隊などに配備されている可能性がないとは断言できませんが」
つまりは?
「混乱に乗じた他国の工作員の陰謀であればもちろん、本当にブリタニア軍の行いであったとしても、これは正規の作戦行動ではないということですわ」
「要するに、連中は任務に大勢を動員することはできない。限られた少数の作戦要員だけで始末をつけざるを得ないってことさ」
ヒュウッと杉山が口笛を吹く。
「さすがミリオタ」
「ミリオタじゃねえって言ってるだろ」
じゃれる二人を尻目に篠崎咲世子が俺にさっきの男たちが持っていた別の銃器を示す。
「こちらもブリタニア軍で正規に採用されているアサルトライフルではありません。XM8。やはりEU製の比較的新しい銃でございます」
そのXM8というアサルトライフルを手に取る。滑らかな曲線主体のその銃はだいぶ軽いものだと感じた。ブリタニアのそれらと比べても1kgは軽いだろうか。それに持ちやすい、構えやすかった。
「なんにせよ敵はまた襲ってくる。しかしこちらはそれに気が付いている。相手が少数だということも含めて」
南が、杉山が、カレン、篠崎咲世子も頷く。
「迎え撃つ、か」
「今日のお前は俺以上に特別なんだろ?」
「そろそろ仕舞いにしたいところだしな。この戦いも、これまでの戦いも、な」
茶化す南とうそぶく杉山。それをさえぎることなく待つ篠崎咲世子。
それから「では……」と篠崎咲世子が提案したのだ。
地の利があり、誘い込んだ敵を迎撃するのに適した場所───アッシュフォード学園に向かうことを。
背の高い校門をくぐるとそこは別世界だった。
馬鹿みたいに広い庭園が延々と広がっている。その向こうにはでんと控える大きな噴水。さらにその向こうには宮殿かと見まがう豪奢な建物連なっている。
「あちらが学園の校舎でございます」
ため息が出た。南と杉山も、だ。
前に千草と遊びに来た時は学園祭中だった、あの時の色々な飾りつけやら屋台やらがない分、一層その巨大さが際立つ。
「どこで迎え撃つ?」
「校舎の奥に時計塔がございます。そちらに参りましょう」
「こっちよ」
カレンと咲世子が先に立って走り始めた。
よく手入れされた花壇と芝生、そして趣味の良い……というよりは垢抜けていると言うべきか、そんな建物の横を通り抜けていく。
屋根付きの渡り廊下を横切って、レンガで舗装された道をなおも走る。いくつかの角を曲がって、何かで見た覚えのあるヨーロッパの街並みにも似た空間のその先にそれが見えた。
時計塔。それもまたブリタニアらしく、とても大きかった。
「あれ、なんていったかな? ブリタニアの首都にあるでっかい時計塔。似てるよなこれ、その……ビッグ何とかってやつ」
ボソっとつぶやいた南に俺はつい反応してしまった。
「ビッグベンだよ。ペンドラゴンの元老院議事堂を兼ねている宮殿の時計台な。帝政が始まって30年目の1843年に着工、1859年に完成した……正確には時計台の大時鐘の愛称なんだけどな」
支援
うっぜえくたばれカスが
教師だった頃の癖か、つい授業みたいな口調になってしまう。
俺は、へぇ〜とかほぉとかふ〜んと言った素晴らしく知的で熱心な彼らの反応を受け止め、多少傷付きながらものほほんとした空気をあらためようと一つ咳払いをした。
「さ、配置に着くぞ」
無言で全員が頷く。
今度は皆が皆、真剣な表情で応えてくれた。
敵を誘導するために死体から剥がして持ってきた簡易端末は時計塔前に放置する。
前衛は篠崎咲世子。得物は自前の変わった形の刃物。拳銃も自前の物があるらしい。
バックアップは狙撃担当としてスコープ付きのアサルトライフルを持った杉山が。サブマシンガンを手にした俺と南が側衛に着く。
「わたしは?」
もっともなことをカレンが言った。
「お前は念の為の予備戦力だ。時計塔内の上階に待機」
その顔が髪の色に負けないくらい赤くなる。憤りの赤。本当にわかりやすい娘だ。
「わたしだって戦えるってわかっているでしょ!」
「カレン様、敵は少数と言えどもその構成人数、装備その他は不明なのです。こちらが先手をうてたとしても、後の先を取られないとも限りません」
決してでしゃばらない、カレンが言葉をきった絶妙のタイミングでスッと篠崎咲世子が進み出る。
「万が一そうなった時に敵の意表を突ける予備戦力を有するという事はいわば保険なのです。皆様方が生き残るため、最も重大な意味を持つ保険なのでございます」
それで一応は納得したらしい。カレンは渡された拳銃を手にして、渋々ではあったが時計塔の中へと入っていった。
「すまないね篠崎さん。俺が言うのではああはすんなり納得しなかったと思う」
「いいえ、出過ぎた物言いを致しました。申し訳ございません」
やはり完璧な仕草で深々と頭を下げて彼女は一礼をしてみせる。
カレンが言うには、彼女はカモフラージュだか変装だかでメイドさんの格好をしているのではなく、本物の現職メイドさんなのだそうだ。
ピシッとアイロンのかけられたエプロンは清潔感があって、無駄な装飾などもなく親しみが持てる白。
ただ、その白の一部分を占める返り血の赤黒さの非現実さが、かえって俺たちに自分たちがいる現実の生々しさを物語る。
「扇様、南様、杉山様、それでは参りましょう」
それ以上言葉はいらなかった。
篠崎咲世子が時計塔の影に隠れ、俺と南も別れて時計塔から若干離れて迎撃の体勢を取る。
杉山はライフルを担いで時計塔脇の校舎の壁をよじ登リ始めていた。
慣れた調子ですいすい登っていく。ハシゴもロープの助けもないのによくあれだけ難なく登っていけるものだと感心する。
── まずはエリア11じゃなく、日本を取り戻した後のアルプス踏破から、だよな。俺は ──
ブリタニア人の何とかという登山家がとある山の登頂に成功した……そんなニュースを目にした時の杉山の言葉だった。
── それにはまず生き残らなきゃ、な ──
横で聞いてた俺に照れた用にそう言って笑った。「いつか日本の天険っていう天険を全部まわってみたいんだ」それが杉山の理由の一つ。
「それにはまず、生き残らなきゃな」
俺もまた一人つぶやく。
できれば一人は生きたまま捕らえたい。この企みが誰の、何の目的によるものか、それを知りたいという気持ちはがもちろんある。
だけど、一番に優先すべきは『まず全員が生き残ること』。
そのためなら、俺は例え誰が相手だろうとも撃つ。躊躇などするものか。
俺は擬態用の迷彩シーツを被って地面に腹ばいになる。壁を背中に時計塔に至る通り道を見渡せるように場所取りして凝固の体勢を取る。
南もまた同じように迎撃の態勢をとっている。どちらかが死角から襲撃されてもフォローが出来る位置をとっている。
仮にこの待ち伏せが気取られていたとして、敵がこちらの更に裏をかいたとしても、俺たちから大きく離れた上層に配置した杉山がフォローに入る。
時刻はそろそろ2時になるのか、それともとっくに過ぎたか?
どちらにしてもトウキョウ租界に入ってから4時間以上が、5時間弱が立っていることになる。
疲れもピークなのだろうが、不思議と眠気や疲労感を感じはしていなかった。奇妙な高揚感だけが、この胸に灯っていた。
─── ……………! ────
一切の音が消えた、今!
『来たな……。こちらを見つけたか?』
支援
すいません、誰か支援の続き頼めますか?
まもなく視界に動く物を感じた。
時計塔を照らす弱い照明も、そちらの方にはあまり届いていない。それがどういう人物なのかの判別もつかない。
俺たちが時計塔の中庭に入ってきたのと同じ正面の道。真正面からソレは近付いてきている。
鼓動が高鳴る。太鼓を打ち鳴らすようにドンドンドンと。
影の歩みはいやにゆっくりした動きだった。時計塔に近付いてはいるのだけど遅い。警戒しているのか? 当然だろう。だがそれにしても?
落ち着け、落ち着け俺の心臓。グっと下腹に力をこめる。
最初に感じたのは違和感だった。人影がこぼれる明かりの照らし出す場所へと近付いてくる。
次に感じたのは不安。あれは、何だ? 敵、なのか? と。
人影が明かりの下に姿を現す。
「!?」
あまりにも無造作な歩み。
危機感を感じさせない動き。ソレは無警戒に、無防備に、無頓着にこぼれる明かりの下に身を晒した。
『子供?』
弱い光がその顔を照らし出す。
黒いシャツと膝を出した短パン、短い髪に可愛らしい容貌。それと……耳にかけたあれはインカム?!
その唇が微かに動く。
一瞬、現実を忘れかけた俺はソレで我を取り戻した。あれが、あの子供が敵なのか!
危機感が脳に到達し、脳がそれに対処しようと指令を発する直前、現実を取り戻したその直後だった。
襲い掛かったのは『タンッ』という銃声、『ズン』という灼熱の感触!
「がああぁッ!?」
悲鳴がこぼれ、俺は纏った迷彩シーツを剥ぎ取ることも出来ず、身体に巻きつけたまま転がった。
撃たれた?! 何処から?! 誰に?!
痛みで意識が飛ぶ。飛びそうになる! 反対側に銃声と共に南の苦痛の悲鳴があがったのを聴覚が微かに捉える。
どうしてだ! なぜ配置がわかった? どこから攻撃されたんだ!!
視界が曇る。痛みが段々と広がっていく。撃たれたのは肩口か、腕か。
わからない。何もわからない。ただ、痛みが広がっていく!
篠崎咲世子が時計台の影から飛び出した。何をするでなくただ立ち尽くす子供に駆け寄ってその手の刃をかざし───狙い撃たれたように倒れこんだ。
銃声がした。どこからだ? 上だ! 上から狙い撃たれたのか! 杉山はどうした、何をやっている!?
ドサっと墜落音が聞こえた。
杉山が校舎の上から落ちていた。
「ど、どうして………」
自分のうめき声を、俺は俺自身の耳で聞いた。
「───ウフフフフ」
コロコロと鈴を転がすような笑い声。
「もう、いいの?」
頭上からしたのは、やはり幼い声。
「もう二人時計塔の中にいるけど、出てこないよね。───出てこないのなら、放っておいてもいいんじゃない?」
時計塔の前に立つ方の子供は──女の子? いや、そうじゃない。声変わり前の男の子の声だ。
「ダメよ」
ドスンといういささか重過ぎる音を立てて俺の目の前に小柄な人影が降り立った。
歩いて近寄ってきた少年に、自らも軽やかな足取りで駆け寄る。
「お仕事はキチンと最後までしないと。ロロ兄ちゃんに怒られちゃうのよ」
降り立った? そんな生易しい音じゃなかった。
まるで何mもある高い場所から……杉山が待機していた“校舎三階の張り出し部分から”飛び降りたかのような重い音。
子供が飛び降りて平気でいられるような高さじゃあない!
何度も飛びそうになる意識をなんとかつなぎとめて俺は言葉を振り絞った。
「なんなんだ………」
二人の子供が俺を見下ろす。
「お前たちは、一体………なんなんだッ」
「気にしないで」
飛び降りてきた髪の長い少女が涼しげに答えた。
「大丈夫。落とした男も生きてはいるし、彼に狙撃させた連中も殺してはいないのよ」
だって貴方だって生きてるでしょ、と少女は笑った。
こいつは一体、何を言っているんだ? 杉山に狙撃をさせた? 俺たちを?! 何を言っているんだ、ありえない!
無邪気な笑い声は止まらない。
ひとしきり笑った後、少女は真顔に戻り………俺を見下ろした。
冷え冷えとした、その瞳。
知ってる。これは羽を毟られた虫を「可哀想ね」と笑う子供の瞳。幼い残酷さの顕現。
「嚮主様の御言い付けだから殺さないであげるの。ね? だから大人しくしていてね」
嚮主と言った。いまこいつは嚮主と言った!
「それが、そいつがこの茶番を仕組んだヤツの名前かッ!」
「なんだと?!」
短髪の少年の方が憤ったように声を荒げる。少女の方はそれを無言で押し止める。
「特区でテロを行い、大勢の命を奪った! 今また俺たちとブリタニアの戦いを───」
ガッと少女が俺の髪を掴み上げ、俺を黙らせる。ブチブチと何本かの髪の毛が引き抜かれる音。
少女がその顔を近づける。
「嚮主様を“そいつ”呼ばわりしたわね、あなた」
グッと力任せに吊り上げられる。凄い力だった。子供の力だなんてとても思えない機械のように圧倒的な力!
なんなんだ、お前たちは一体なんなんだ!!
声が出ない、息が出来ない。それでも俺は目を見開いて相手の顔を睨みつける。
「お、ま、え、た、ち、は」
透き通った白い肌、青い瞳。甘い息が顔にかかる。
「な、ん、な、ん、だ────」
少女の青い瞳が、真紅に染まった。
「いいわ、私のギアスで死になさい」
その時、その瞳に湛えられた真っ赤な光が鳥のように羽ばたいて俺の中に飛び込んだ。
───カチリ
それは本当にそんな音がしたのか、それとも音がした気がしただけなのか、俺にはわからない。
ただ、光の羽ばたきを受け入れた瞬間から俺の体は俺の体ではなくなってしまっていた、わかったのはそれだけだ。
── オレニ、オレノカラダニナニヲシタ ──
言葉を発することさえできず、俺は俺の意思によらずに立ち上がる。少女はいつのまにか俺の髪から手を離していた。
痛みを───そう、撃たれた傷の痛み。それさえものともせずに俺は立ち上がり、直立不動の体勢を取ったのだ。
俺の意思ではない。俺は俺自身に立ち上がれと命令していない!
「ウフフ………」
また少女が笑った。
「あ〜あ〜、いっけないんだ。ロロ兄に怒られるんだぞ〜」
とぼけた調子で言う少年を少女は軽く無視する。
「ただの人間の癖に嚮主様に無礼を言うなんて許せないの。あなたはここで死ぬのよ。私の異体同心のギアスでね」
目を閉じて、まるでピアノを弾くかのように少女がその両腕を広げる。
俺の左腕がありえない方向に曲がっていく。
そして、鈍い音と共に折れた。
── ウッグウウウウウウウ………ッッ!!! ──
やはり声は出せない。ただ激痛だけが俺の体の中を走り回る。
それでも俺の腕は重力に逆らい、俺自身の意思に逆らって捻られたまま下りない。
まるで人形遣いの手によって、思うがまま操られる人形だ。ありえない。こんな魔法のような力が現実にあるわけがない!
支援
支援
「信じられないのね、起こっていることが。怖いのよね、何がなんだかわからなくて。これは何? ギアスって何? わかるわよ、わかるのよ!」
憤りの色が嘲笑の色に取って代わった。
「でもいいの。もう何も考えなくてもいい所に送ってあげる。おしまいなの。さよならなの!」
上気した肌に恍惚とした表情で少女は俺に別れを告げる。同時に俺の体は再び俺の意思に反して不自然な動きを始めた。
首がギリギリと後ろを向き始める。
「さよなら。死んじゃったお友達に会えるでしょうから、寂しくなんてないわよ。……多分ね」
少女は俺の首が向く方へ横歩きしながらゆっくりと追いかける。
これで終わりなのか。
これでオシマイなのか。
カレンは時計塔から出てこない。
それでいい。このまま出てくるな………いや、この隙に逃げてくれ。この子供の姿をしただけの、化け物のような連中に関わらずに逃げてくれ。
そして、いつかナオトの…ライの……俺の、夢を、きっと、いつか───!!
ミシッと首の筋肉が、骨が悲鳴を上げ始め……。
「ヒッ───!?」
息を飲む音。
「僕の広域探査のギアスに反応?! なんだよ、これ───」
男の子の声、視界の外にいるため俺には何もわからない。
バスンッ!!
何かが破裂する音、ドサッという倒れこむ音がそれに続く。
「何よ、なんなのよッ!?」
初めて聞く感情的な───泡を食ったような少女の声。そして───
バスンッ!!
俺の目の前で彼女が熟れた石榴のように、“弾けた”。
もう限界だった。視界が霞む。
朦朧とする頭で俺は考えていた。こんなの別に驚くようなことじゃない。人間が弾ける様なんていくらでも見てきたさ。この8年間。
死はいつも傍らにあった。背中合わせにいつもすぐ側にあった。
だから、ついぞ今まで少女だった、その砕け散っていく赤黒いモノになど何の感慨も沸かない。
ベシャと顔に飛んできた柔らかい物はなんだろう?
『遠距離からの………狙撃、か』
それでも何が起こったのかを必死に探ろうとしている俺の意識。
突如、俺の身体を支えていた不可視の力が途切れる。同時に俺は重力の誘いに従ってゆっくりと倒れ伏し……地面とキスをした。激痛は………感じなかった。
血を流し過ぎたのか、それとも死にかけて痛みに鈍感になったのか、けど自分が助かったのだろうことだけは何故か確信を得ていた。
二度あることは三度ある、か。
一度目は一之瀬だった。二度目はメイドさんの篠崎咲世子。
しかし三度目に助けてくれた相手のことを俺が知る術はなく、俺は自然と両の眼をつぶった。
あぁ、俺は今、気を失うんだな。
気を失っていく過程を他人事のように観察しながら、俺はゆっくりと意識を手放した。
・
・
・
ガタン。
揺れた拍子に折れた左腕が何かにぶつかったのだろう、激痛が走り───俺はうめき声を上げて目を覚ました。
「紅月さんや、扇クンが目を覚ましたようだぜ」
男の声が止むや止まずの内にカレンの顔が俺の視界いっぱいを遮った。
「扇さん………」
「カレン、か………」
もう少し気をつけて運転してくださいよ、とカレンは運転席の誰かに文句を言ったようだった。
救急車に偽装した──もしかしたら救急車そのものなのかもしれない──で俺たちは租界を移動しているところだそうだ。全員無事。無傷ではもちろんないが、全員が生き延びたと聞いて安心する。
「命に別状はない、心配いらないから別の車両に乗ればよろしいと……何度も言ったンだけど、さ」
医師に変装をして傍らに座っている男───先程カレンに声をかけた人物───は声ほどには年をくってるようには見えなかった。
明石元一郎。
男はそう名乗った。彼と彼の部下たちはキョウトの桐原翁の要請で支援に来たのだと説明された。
支援
>>115 どうも!あとなんか人語を操る汚物が紛れ込んでるようですが、皆様全力でスルー願います。
では!
「お宅のお嬢さんは……と言うのは無礼かね。エースパイロットの紅月カレン殿はなかなかに手強かったそうさね。時計塔の中に先回りさせといたうちの人間を逆に絞め殺しかけたとか」
時計塔のカレンが飛び出してこなかった理由がわかった。先回りしていた彼の部下が理由を話し、彼女の暴発を止めていたというのだ。
そのせいでみんなが大怪我を負うことになったのよ! とカレンは言うが、仮にカレンが飛び出していたところで結果は同じだったろう。
連中は時計塔の中にもう二人いる、とその存在に気が付いていたのだから。
俺はあらためて明石と名乗った男の方へ首だけを向けた。筋を痛めたように痛む。
「あなたが三度目の救い主というわけですか」
言葉の意味がわかるはずもない。明石もまたその言葉に注意を向けることはしなかった。
「連中は人間がいるかどうかの探査を広い範囲で行えるもんでさ、レンジ外から狙撃する以外に君たちを助ける手はなかった」
その言葉が意味するところはつまり。
「あなた方は最初から俺たちをずっとトレースしていた?」
返事はない。沈黙はYESということなのだろうが。
「おたくらならば機情のエージェントくらい問題なく排除できると信じていたと言っとこうか。問題となる敵は連中じゃなく、その後に出てきた国教会の……嚮団の能力者だったもんでね」
機情? 国教会? 嚮団? 知らない言葉が続く。だが、能力者と呼ばれた者、それが指し示すモノに気が付きはした。
「なんなのですか、アレは」
他に質問のための言葉が思いつかなかった。だから単に「なんなのですか」とそれだけを口にした。
「当然の疑問さ。それだけに難しい……難しい質問なのさ、それはさ」
男はしかめっ面。ポケットからメモを取り出して開く。カレンは何がなんだかといった調子で俺と明石の顔を見比べている。
「あの連中……日本に潜入したギアス能力者は三人。一人は広域探査の力と言ってな、かなり広い範囲内の人間の存在を感知する能力」
あの少年の方か! まずこいつを潰さなければ俺たちは近寄ることもできなかったってわけよ。明石はつぶやくように補足した。
「そしてもう一人の女の方、こっちは───」
「異体同心のギアス…そんなことを言ってました」
そうそうそれそれ。明石は手元のメモをめくる。
「視線で縛った相手の身体を自分の思うままに動かす能力。対象の意思を無視して体を好きに操るギアス、だってよ。あんた喰らったんだろ? どうだった?」
「思い出したくもありませんね」
「そう言わずに。後学の為に、さ」
カラカラと笑う。キライなタイプだ。まして目が笑っていない。ますますキライなタイプだと思った。
「目に見えない力で身体が勝手に動かされる。動いてしまう。自分で自分の腕を捻り上げて折るなんて経験、学習したいとは思いませんがね」
そこでおれは先の明石の言葉に気が付いた。彼は何と言ったか? 彼はギアス能力者は三人と言った!?
「明石さん、能力者ってのは!」
「そうさね」
開いたページを俺に突き付ける。
貼り付けられた写真の顔は、あの政庁の隠しカメラに写っていた少年に似ていた。
「わかっているのはロロという名前だけ。どんな能力を持っているのか、どんな指令を受けているのか、その全てが不明ときたもんだ」
そう言って彼は頭を横に振った。
「いや、もう二つだけわかっていることがあるな」
「それは?」
「こいつと接触した奴ァ、一人として生きて帰ってこなかったっていうこと、さ。それと……」
それは俺たちが一番聞きたくなかった事実だったのかもしれない。
俺たちはその予測が間違っているということを信じて、戦いは回避できると信じたからこそこのトウキョウ租界に乗り込んできたのだから。
明石は淡々と語った。その語り調子は俺にその言葉を信じさせた。
「こいつらがブリタニアの諜報機関[機密情報局]に派遣されたエージェントだっていうこと。ブリタニアに属する殺し屋ってこと、さ」
まだ聞きたいことは、ある。山のようにある。たくさんあるのだ。
ギアスとは何だ。なぜブリタニアはあんな得体の知れない者共に俺たちを襲わせた? そもそも何故上手くいっていた特区を台無しにした、皇族であったユーフェミアさえ殺して!
再び目の前が暗くなってきた。カレンが俺を呼ぶ声、それが遠くに聞こえるような感じ。
まぁ、いいか。そう思って俺は自分を慰めた。
とりあえず、みんな揃って───生き延びた。生きているんだからと。
千草、君の下へ………生きて帰れるんだから、と。
>>118 おまえみたいにムカつくやつ久しぶりに見たわ。
支援しなきゃ汚物よばわりか
そっちこそスレを腐らせる害虫だろうが
支援
───2018,Jul,行政特区日本……四日後
病院の匂いはキライ。
看護婦さんや他の患者さんの非難がましい視線などは気にしないで廊下を走る私。井上さんからの連絡にあった部屋に飛び込んだ。
「あぁ……」
思わずため息をつく。泣きそうになる。
部屋の中ほどに置かれたベッドに彼がいた。彼がいる!
帰ってきた要さんは包帯に包まれていてまるでミイラのよう……とても痛々しかった。
その姿を見るだけで、私は涙を浮かべてしまうのだ。
「要さん………よく、無事で」
ダメ。我慢できない。ポロポロと流れ落ちる涙を押し止めることが出来ない。
「大丈夫、大丈夫だから。千草」
要さんがケガはしていないという右手でソッと私の頭を撫でる。
カラっと音を立てて背後の扉が開いた。お医者さんと看護婦さんが入ってくる。
「奥様でいらっしゃいますか? 怪我の処置を行いますけど」
看護婦さんが言外に部屋の外に出ていてくださいと言っている。ここにいますと私、自己主張する。
「あまり見ていて気持ちの良いものじゃないと思うんだが」
ううんと私は要さんにハッキリと答える。
「私ここにいますから。ここからどこにもいきません」
言ってから恥ずかしくなって、私は目を伏せた。要さんが笑う。振り向けばお医者サマの先生も笑っている。
「うらやましい限りですな!」
高い声で先生が茶化した。私はさらに赤くなった自分を自覚する。なんだか暑い。頬が火照ってるのがわかる。
看護婦さんに先生が頷いた。看護婦さん、テキパキと処置を始めていく。
胸に巻かれた包帯がほどかれ、汚れたガーゼが外されていく。痛々しいケガがあらわになった。
傷はふさがっているし、もう何ともない、そう井上さんは言っていた。
言っていた──────
チリ……チリ……
頭が、痛い。
「気持ちが悪くなったんじゃないか? 千草、気分が悪くなったんなら───」
気遣ってくれる要さんに、それでも大丈夫よと笑って見せて、私は備え付けの椅子に座る。
チリ……チリ……
あぁ、なんて痛々しい銃創なんだろう。
縫合は上手な人の手でキチンとされているようだけど、まだ……まだあんなにも痛々しい。
チリ……チリ……
頭が、痛いの。
なんで頭が痛いの?
それに。
なんで知っているんだろう、私。
要さんのケガを見ただけでわかった。あれは銃で撃たれた傷だって。
なんでそんなことがわかるの? なんでそんなことを私は知っているというの?
チリ……チリ……
頭が痛い。まるで誰かに呼ばれているような、感じ。
どうして?
誰が、私を呼ぶの?
それはまるで予感の様に私の心を揺らし始める。
声が、聞こえる。この声が私をどこかに連れて行ってしまう、そんな予感がチリ……チリ……と聞こえる、のだ。
早くおいで、と。戻っておいで、と。そう、聞こえるのだ────。
支援
【手をとりあって第四話の色々なこと】
H&K MP5SD6
MP5はドイツのH&K社が対テロ特殊部隊向けに、同社のHK31の製造技術を用いて1960年代に開発したサブマシンガン。
集弾性に優れており命中精度が高いが、構造が複雑で高価。日本では警察の特殊部隊SATに配備されている他、世界各国で使われている。
MP5はドイツ語で「5号機関拳銃」を意味する。HK54とも呼ばれていた。
MP5SD6はサイレンサー一体型のMP5SD3のモデルチェンジ型。
小林源文氏の劇画「オメガ7」では自衛隊特殊部隊隊員である主人公のメインウェポンとして登場。
ちなみに筆者は東側の銃ではあるもののチェコスロバキアのVz61(スコーピオン)もかなりキライじゃない。
XM8
XM8はアメリカ軍の次期制式アサルトライフルとして、開発が進められていたアサルトライフル。
同社のG36を基本に、強化プラスティックなどの新素材を多数使用しての設計は人間工学に基づいている。、
特に反動が小さく、銃口の跳ね上がりも少ないので、フルオート射撃でも非常に優れた命中精度を誇り、片手でのフルオート射撃も可能という高性能。
しかしアメリカ軍が次期主力アサルトライフルとして発表したものの、海兵隊や特殊部隊からの猛反発により決定が覆ってしまい、採用は延期になった。
非常に革新的で優秀なアサルトライフルだが今後の採用は未定とのこと。
筆者がなぜG36でなく、あえてこちらの名前を出したのかというと、ガンダムに出てても違和感なさそうな未来っぽいデザインのせいとかなんとか。
同じ理由でG11にも好感をもっているのはナイショだ。
広域探査のギアス
範囲系のギアス。
ギアスでとらえた空間を三次元的に認識し、その範囲内にある人間の存在を感知するギアス。
正確には範囲内に存在する心とか精神の揺らぎといったものを認識・把握する能力。
精神に作用するのがギアスという設定上、認識した空間を地図として把握することはできないが、自分を基点として高低差・距離などをかなり正確に測ることができる。
マオと同じ常時発動するタイプのギアスだが、この能力者はまだ暴走に至っていないためなのか任意にオン・オフが可能。
異体同心のギアス
他人の肉体をジャックする能力。視線による発現で行使される。
発現されることで対象者は一切の行動が出来なくなるが、意識を失うことはなく、ゆえに前後の記憶を失うことはない。
対象者の肉体と精神の間に能力者が介入することによって対象者の肉体の自由を奪い、能力者は自分の思うがままに行動させることができる。
ただし一度に発現させられる対象は一人のみであり、同じ対象には二度行使することはできない。また集中することで発現する能力であるため、長時間の行使が続いた場合、著しく集中が途切れた場合には強制解除されることがある。
明石元一郎
オリキャラ。
設定の殆どは旧版「手をとりあって」とほぼ同一。
元日本陸軍大佐。
くわしくは後日投下の第六話にて。
ビッグベン
もちろん現実にはイギリスの国会議事堂を兼ねているウェストミンスターの宮殿にある時計台の鐘のこと。
【ぎあすあとがき劇場 V.V.といっしょ】
投下終了と同時にわたしの横でV.V.がつぶやいた。
「ねぇねぇ、あおちゃん」
──なぁに? と聞き返すわたし。
「随分とおみかぎりだったわけだけど」
──そうですね、結局第三話から一ヶ月過ぎてしまいました。
いやいやそうじゃなくて、とブっちゃんは言った。
「そうじゃなくて、第二話のあとがき以来僕の出番がなかったよってこと」
それとブっちゃんはやめて。そう言う彼の目は笑っていなかった。
──まぁまぁそれはともかくとして、第四話でした。たまにはあとがきらしいこと書きましょうね。
そういうと彼は遠い目をした。
「ドイツの話やらなんやらで毎回あとがきらしくなくしているのはあおちゃんの方なんだけどね、まぁいいけど」
──ああ言えばこう言うんですね。
V.V.は相手をしてくれなかった。
「で、今回もあおちゃんのドイツ好きが端々に表れているわけだね」
わたしの目がキラッ☆と光る。
──まぁなんですか、銃器類には特段詳しい訳でも愛情があるわけでもないんですが………
絶対にウソだ、とV.V.はこっそりと、わざと聞こえるように言った。
「それにしてもさ、スパンが長いんだよね。第三話の後一ヶ月かかってるじゃない。間に番外編を仕込んでいるとはいえ」
──それを言われると弱いんですぅ・・・
「やっぱりさ、期待してるとか楽しみにしてますっていう読み手さまにもっと感謝の気持ちを伝えないとだよね」
──もちろんですとも!
「そのためにはなんでもする?」
──なんでもします!
「よく言った!」
急に大声をあげるとV.V.はわたしの方から視線を外し、いきなりモニターの方に向けてカメラ視線でポーズをとった。
──………あれは光魔法カッコイイポーズ?
それも華麗にスルーして、V.V.は用意しておいたらしいメモを読み上げる。
「そういうわけでいつも応援・支援・感想をあげてくれる読み手の皆様に感謝の気持ちを込めてプレゼントだよ
この[コードギアス LOSTCOLORS 手をとりあって]の第一話から第四話までと番外編ニ話、さらに
書き下ろしの第零話ユーフェミア編、計七話を収録した単行本第一巻【慟哭の誓い】を抽選で5名様にプレゼント!」
ブハアァッッ!!
わたしは飲んでいた麦茶を噴き出した。
「応募はメ欄に住所・氏名・年齢・電話番号またはEメールを記入の上で第四話の感想を書くこと。感想がない場合は
無効になるから注意してね。
なお、当選の発表は景品の発送にかえさせてもらうからよろしく。景品の提供は加古川スネーク文庫さまからだよ!」
──マテマテマテ!
「なにさ、なんでもやるって言ったじゃない。あそうか、提供が気に入らない? じゃ不死身ファンタ朗文庫ってのはどう?」
──イヤイヤイヤ!! 書きません、作りません、売りません。第一出版なんてできるわけないでしょ!
「なんでもやるって言ったじゃない!」
──それとこれとは話がウボアー!
今日もあとがきになってないじゃないというのはともかくとして、夜は二人にかまうことなくふけていくのでありました。
<つづく>
※このあとがきはフィクションです。単行本もプレゼントも当然のようにフィクションなのでホンキにしないでくださいね(はぁと
支援
129 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 22:03:30 ID:RL2NuWYq
と、ナイトオブイレブンも
以上でした
巻き込まれ規制を喰らっていたのに気が付いた時はどうなることかと思いましたが
一週間くらいでしょうか? なんとか解除されてました
三話からおよそ一ヶ月。月刊からせめて隔週に・・・と思いつつ、次回もがんばって書きますのでどうぞよろしく
それでは、また
あおいひとでした
なんかごたごたしたが、とりあえず乙でした。
この分量を一月なら十分に速筆の類かと思いますよw
>>130 乙でした。これから読みます。
あと、ageちまってスマン
ちょっと待て
IDで検索したら、あの118はトーマスだ
トーマスお前そういうやつだったのか?
本日のスルー対象 ID:MgoAasXr
専用ブラウザー使用の皆様は登録お願いいたします。
何とか言えや!!
待ってました!
青の姐さん……やはりアナタの文章は素晴らしいです。いつもながらレベルが非常に高く、思わず震えてしまいました……!
扇さんをこんなにカッコ良く書けるなんて、普通は出来ませんよ。
そして、相変わらずミリタリー関係の知識の豊富さも凄い。ただただ驚嘆するばかりです。
ああ、今から次回が楽しみだ……続きをいつまでも待っています!
それと、荒らしや汚物に反応するのは大人げないかと。
ああいう輩は、構うとつけあがるので、基本的にスルーが利口ですよ?
過剰に反応して、ご自分の品位を貶めることは、アナタにとってマイナスにしかなりません。
これが火種になってアナタが叩かれたりするのは、ファンにとっては本当に悲しいことです。
そのことを、少しでも頭の片隅に置いておいて下さい。
──生意気なことを長々と失礼しました。ご気分を害されたなら謝ります。
BLUEDESTINY卿、GJ&乙です。
いやはやお見事の一言ですね。構成・進行どれをとっても素晴らしい。
鳥肌が立つほどです
続きは一ヶ月先かな?待ち遠しい…いや、催促するのは野暮か。
いくらでも待つ所存です。楽しみにしております!
PS 実は
>>126で一番ニヤリとしたのは内緒ですw
>>130 GJでした。
長編なんですけど、そんなの気にもならずにスラスラ読み進められるし、話に引き込まれます
オリジナルギアスの発想も凄いし、読んでて楽しかったです
しかし、子供達が怖すぎw
いや、如何にも本編に出そうな子供達なんですが、描写が異常にリアルに感じられて、
本編のあの子達好きな自分としては少し悲しかったりして……
しかし、それでも青姐さんのシリアスは楽しい
どう終わらせるのかも気になるし
これからも楽しみにしてます
PS.あとがき劇場のやりとりも好きですw
なあ教えてくれ
こっちが真剣に聞いてるのに無視ってどういう了見だ?
たかが管理人が住民の意見を聞かないなんて許されると思ってんのか?
君は寄生虫であって住人ではないから。
>>130 BLUEDESTINY卿、GJでした!
やはり貴女の作品は素晴らしい!
読めばグイグイと引き込まれる!
この気持ち、まさしく愛だ!
扇さんが凄くカッコイイねぇ。
毎回出てくるキャラクター、すべてが大変魅力的です。
竹製のナイフ、返り血を浴びたメイド服、といった描写などもパッと思い浮かべる事ができ、スラスラと読んでいくことができました。
引きの千草の描写も次回以降が楽しみになる要因となります。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
ん、読み終わりました。
とりあえず単行本とプレゼントを下さいw
ギアスでこういった形の銃撃戦描写は、全く例がないわけではありませんが、
やっぱり新鮮ですね。
新しい要素が次々に出てくると、読んでいてそれだけで楽しいです。
テキストも読みやすいですし、なんというか、今読んでいても楽しいですが
後でまとめて読み返したい、と感じています。
そうかもういいそっちの意向はわかった
今日限りでトーマスは切らせてもらうわ
二度と顔も見たくない
さっさとこのスレから出ていってくれ
顔も見たくない……そもそも顔など見えていないのにこの発言
……ツッコミ待ちなんだろうか?
出ていって欲しいなら住民投票でもするか?
自分は
>>144に出ていって欲しい
良作読んだ後の余韻が台無しだ……
無能で不要。人を不快にさせることしかできない。
そんな奴にこのスレの管理人はやらせられない
>無能で不要。人を不快にさせることしかできない。
(;^ω^)……
本日の痛すぎるスルー対象 ID:MgoAasXr
専用ブラウザー使用の方は登録を。
それ以外の方は、脳内スルーをお願いいたします。
スルー検定の時間ですね!
変な子かまいすぎだろ君らw
あわわわ、青の姐さんには偉そうなこと言っておきながら……自分のバカ!
もういい
民度の低い連中と付き合ってたらこっちの品位が疑われるわ
俺はもう寝るからな
永遠におやすみ
そういや、ぼちぼちロスカラ一周年ですな。
記念して何か書かれたりする方、多いのだろうか。
そんなに嫌ならこなきゃいいのに、、、、寝て起きたらここのことは忘れてるといいな
1周年記念作品に期待したいね〜
あと変な奴にはV.V様ばりの『おやすみ』をプレゼント
159 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 00:50:00 ID:hwHPXIjI
こんな最中ですが、萌は文化卿、カムバックプリーズ!
魔法少女ライマーユニーの続きが見たいです。
ギャルゲーのSSスレが一年も続いて、しかもまだかなりの勢いがある。
今更だがライすげぇな。
161 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 17:48:42 ID:5M8d4cNE
BLUEDESTINY卿、GJ&乙です/.
>>130 BLUEDESTINY卿、あなたの文章は相変わらず素晴らしい。
ネタと分かっていても本気で出版化を希望してしまうw
続きを楽しみにしてます!
164 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 02:00:17 ID:Uyy5DX/h
みんな毎日ありがとうな。
>>165 ほっとけ ロスカラ関連スレに出没中のアレな子だから
「ふう……」
僕は、懐かしい気持ちで周りを眺めた。
そう、ここから始まったんだ。
長いようであっという間だったな。
そんな思いが湧き上がってくる。
いろんな事が思い出される。
楽しい事、悲しい事、辛い事、などなど……。
いろんな思い出が心に蘇っては消えていく。
そんな黄昏ていた僕の背中を軽く突付く指。
「こんなところにいたんいだ〜。探しちゃったぞぉ」
振り向いた先には、微笑むミレイさんの姿があった。
「あっ、ミレイさん」
「もうそろそろ始まるよ、パーティ」
「えっ、もうそんな時間ですか?」
慌てて時間を確認すると、確かにそんな時間だ。
「主役がいないと始まらないからね。しっかりしてよ、ライっ」
今度はバンバンと背中を叩かれる。
それに苦笑を返して頷いているとミレイさんがふと思い出したように呟いた。
「ここから始まったんだね、すべては……」
「そうですね。僕もそう思ってたんですよ。なんか昨日の事のようなのに、もう1年かって…」
すーっとミレイさんの手が僕の手に絡んでくる。
そして、僕の肩に頭を預けた。
「ふふっ。そうね。もう1年だもんね。いろいろあったよね」
ミレイさんの瞳が潤んでいる。
「ねぇ…、ライ。聞いていい?」
「なんですか?」
しっとりとした雰囲気が漂っている。
「こんな時に聞くのはさ、卑怯かもしれないけど……」
言いにくそうに言葉を続けるミレイさん。
「貴方的には……」
途切れ途切れの言葉が彼女の緊張を現れているようだ。
「本命の……」
自然とこちらも緊張してしまう。
「好きな子は誰なの?」
その瞬間、ミレイさんの絡めた手に力が入り、笑ってない目で見つめられた。
その目に僕の本能が警告する。
やばい……。
逃げないと……。
だが、がっしりと絡まれた手が僕を逃がしてくれない。
確かに手に当たる胸の柔らかさはすごくいいんだけど、今それを楽しむ余裕は僕にはまったく無かった。
「ねぇ…、教えてくれるかなぁ〜」
文句を言わさないようなオーラがひしひしとミレイさんから発されて僕を包んでいく。
まるで蛇に睨まれた蛙状態の僕。
助けてくれっ……。
そう願った時、助けが現れた……はずだった。
「会長、ずっこーーーいっ」
「そうですよっ、私たちにも知る権利ありますっ」
「ミレイちゃん、ひどいですっ」
「わ、私も…知りたいです」
シャーリー、カレン、それにニーナにナナリーまでが参戦する。
た、たのむーっ、
誰か何とかしてくれ……。
だが、その願いは、さらなる混乱を呼んだ。
「その話題は、私も気になるな」
ノネットさんっ……。
「そうですよね。エニアグラム卿の言うとおりですわ。ねぇ、おねぇさま」
「そうだな、ユフィ。私も気になっていたのだ。ライ、貴様も騎士なら、ずばっと言うべきだ」
「ふむ……。確かに。侍ならば、そうすべきだな」
ユーフェミア様、コーネリア様を焚き付けないでくださいっ。
千葉さんも、頷いてないで助けてくださいよっ。
「まぁ、まぁ、皆さん、落ち着いて……」
そういったのはセシルさん。
やっぱり、貴方だけだ。
僕の味方は……。
そう思った瞬間、彼女の笑顔が引きつっている事に気が付いた。
「ライくんはもう逃げられませんから。じっくり聞きましょう」
セシルさんっ、貴方もですかっ……。
そのセシルさんの言葉に頷いているのは、にこにこ楽しそうな微笑を浮かべている井上さんに、はしゃいでいる神楽那様。
さらに、真っ赤な顔して、気にしてないような素振りを見せながらこっちを気にしているヴィレッタさんまでいたりする。
いつの間に来てたんですかっ、貴方達はっ。
ほとんど、ロスカラ女性キャラ勢ぞろいじゃありませんかっ。
するととんとんと肩を指で突付かれた。
慌てて振り向くと、そこにはアーニャやモニカさん、ローマイヤーさん、それにヴァルキリエ隊のリーライナやマーリカまでいたりする。
R2の女性キャラの皆さんまで……。
一気に僕の身体から力が抜ける。
駄目だ、逃げられない。
そう観念した時だった。
「ふははははははっ、待ちたまえ、諸君」
そう言って変なポーズで現れたのは、ゼロ。
相変わらず、身体柔らかいんだな、ルルーシュ。
思わず、そう突っ込んでしまいたくなる衝動に駆られたが、今は自粛しておこう。
彼まで敵に回したくない。
そんな僕の心を知らず、ゼロは楽しそうに言葉を続ける。
「ライのお相手をここで決めるのは、ナンセンスだとは思わないかっ。
それにだ。もし、決まったとしてもほとんどの者が傷ついてしまう。
だから、この問題は彼らに託すべきだと思うが、いかがなものかな」
「彼ら?」
誰もが聞き返す。
「そう、彼ら…。つまりSS職人の皆さんにだっ」
その言葉に、納得する女性キャラ達一同。
「そうね。それが妥当なところか……」
「私は、まぁ、それでいいかな。人気あるし……」
「そっかー、そうすりゃ、ライを独り占めできる…」
「うふふふ……。ライをあんな事もこんな事もやりたい放題ね」
「うんっ、私にもチャンスあるし……」
中には、怖い台詞が混じっているが、この際、いろいろ言ってられない。
「そういう事なので……」
僕はやさしくミレイさんの絡んだ手を解く。
そしてゼロ差し出す手を掴んだ。
「助かったよ、ゼロ」
「気にするな。親友だろう」
そう言ってくれるゼロ、
本当にありがたいな。
そう思った瞬間だった。
じーっという視線を感じ、そちらを見るとうっとりとした表情でゼロと手を握り合っている僕を見る咲世子さんの姿があった。
ちゃんちゃん〜♪
ゲーム発売1周年おめでとうございます。
そして、これからも多くの物語が出てくる事を期待しています。
SS職人の皆さん、それを読んでくれる皆さん、これからも本スレを楽しく盛り上げていきましょう。
>>169 乙です!
良いですね〜女性陣のオールスターw
こうなったらライも形無しですねww
もうすぐロスカラ一周年!これからも、色々な作品を読める事を祈ってます
>>169 GJ!&もうすぐ1周年!
もう1年か〜。
この時期はR2が待ち遠しかったなぁ。
>>169 GJでしたっ!!
しかし、一言だけ
ド ロ テ ア さ ん は ?
173 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:33:49 ID:v8+oLV8p
>>172 忘れただけじゃないかな?他にも出てないのいるよ。C.C.に咲世子さん、天子様その他もろもろ
そこはボケないと
>>173 ド○テア「咲世子は…いるじゃあないかッ…!」
>>169 GJでした!
女性陣の争い……怖いな。
ゼロ、ナイスフォローだ!
そして咲世子さん、参加してないと思ったらライとゼロを見つめてるってw
貴方の次の投下を待っています!
ギネヴィア「……その他」
カリーヌ「……」
V.V.「僕がいないって…有り得ないだろ…このスレ的に考えて…」
「ふっ…。無様だな、ライ」
「またそんな事言って……。輪に入れなかったと素直に言ったらどうなんですか?C.C」
「う、うるさいぞ、マリアンヌ」
「はいはい、そういうことにしておきましょうね。くすくすくす……」
「えーいっ、笑うでないっ……」
「ねぇねぇ、シンクー」
「なんでしょう、天子様」
「あの集まりはなんなのじゃ?」
「あ、そうそう、あちらに珍しいお菓子を用意しております。さぁ、参りましょう」
ずりずりずり〜。
「なぜ、教えてくれぬのじゃ、シンクーっ」
天子様、退場。
そうか、もう1年になりますか。
ではご祝儀というか、場の賑やかしに19:10から3レスほどいただきます。
支援はご無用にて。
19:00ってなんだ。もう20:00でした、失礼を。
【メインタイトル】迷惑ヒーロータイム!
【ジャンル】ギャグ
【警告】R2終幕近くを思ってふと浮かんだだけの単発ネタです。あほんだらですご勘弁。
街に悲鳴が響くとき、彼女達は現れる。
「プリティレッド・カレン!……うわ、恥ずかしッ」
「大丈夫だいじょぶ!プリティブルー・ミレイで〜っす!」
「プリティピンク……アーニャ」
「ちょっとちょっと!血圧低くない?元気に行こうよ!プリティイエロー・シャーリー!」
「え、えっと……プリティグリーン・ニーナ、です……」
「「「「「美少女戦隊プリティファイブ!」」」」」
五人それぞれ手持ちの銃を組み合わせることで、何故かスケールアップした砲身が出現する。
「行っくよぉッ!ハイパワー・紅蓮キャノン!」
立て続けの砲撃の何発かが暴れまわっていた怪獣をとらえ、逃げ惑っていた人波に破片と緑色の飛沫が飛び散った。
さらなる悲鳴が上がる向こうで、流れ弾が街路に大穴を穿つ。
その騒ぎを、異形の装束に身を包んだ人影がビルの一角に立って見下ろしていた。
「性懲りも無く邪魔をしおって」
男は流れ弾の一発をこともなげに弾き返し、それが向かいの高層ビルを途中から崩落させるのに目もくれず号令を下した。
「往け、目玉兵!」
鳥除けみたいにでっかい目ん玉のモチーフを頭に戴いた覆面集団がわらわらと湧いて出た。無駄に数が多い。
街路を埋めて流れてくるそのさまは、ラッシュアワーの環状線かシーズンごとのバーゲン会場か。
「きゃー!押さないで押さないでつぶれる〜!」
「ちょっとどこ触ってんのよこのスケベ!」
「その人、女の人みたいだよカレン」
「アーニャ!後に隠れさせて!」
「……無理、どう見ても」
戦力の大半は肉弾戦向きではないのがこの戦隊の辛いところであった。
そんなんでどーして戦隊やってるの、とか聞かないように。選ばれた者に逃げることは許されないのだ。
というか、逃げ場を失って追い詰められている。
「どうした、そこまでか!」
「「「「「きゃー!ライ、助けて!」」」」」
「待て、鬼械将ジェレミア!」
「む、誰だ!」
「仮面ライだー!」
どこからともなく現れた黒い仮面の助っ人ヒーローは、ジャンプ一番、渾身のキックを放った。
繰り出された攻撃を敵は両腕のブレードで受ける。
凄まじい衝撃波が生じ、目玉兵の半数近くと一般市民全てが街路を吹き飛ばされていった。
周囲のビルのガラスは全部割れ、建築基準法を満たしていなかったものは傾き、老朽化の激しかったものは倒壊した。
「何だ貴公!名前そのままではないか!」
しかし攻撃を凌いだ敵から飛んだ怒声は、そんな事には全く頓着していなかった。
「しかも名が分かっているのに仮面の意味があるか?」
「そこはお約束ってやつです」
「安直な!」
「文句は脚本家に言ってください!」
必殺技を最初に繰り出すのは奇抜かもしれないけど失敗だなと思いながら、ライは剣を抜き放ち打ちかかる。
「つか、あのへっぽこと交代して書きません?個人的にはK林Y子さん風が好みですけど」
うるせえよ。戦隊とソロ・ヒーローを両立させるのに結構頭をひねったんだぞ!
昨今の戦隊物は途中からの助っ人が珍しくないし、美人助手つきライダーも居たからと自分を納得させてるんだ!
と、画面の外から脚本(ほん)書きはツッコミを入れたが、もちろん誰の耳にも届かなかった。
あまつさえ鬼械将は斬りむすびつつこう応じた。
「面倒そうだ、断る」
ここで説明しよう!
美少女戦隊プリティファイブ&ライの敵は、暗黒皇帝シャルルのもと、幼稚園バスジャックから貯水池汚染、要人拉致から大量破壊兵器の製造と放し飼いまで、手広くマルチにやってる悪の帝国ブリタニアである。
地球侵略を委ねられた悪逆皇子ルルーシュは、こういう場合のお約束として日本しかも東京をピンポイントで狙って作戦を展開した。
ちなみに先日は、山奥の石切り場で人食い植物を育てていた。いい頃合に育ったので都心へ移植しようとして、目玉兵が一ダースほど犠牲になったのはお茶目な失敗である。
さらについでに言うとルルーシュは、手っ取り早い侵略の方法として脚本書きにも挑戦した。
最終的に父に背き国名をルルタニアにしラスボス化するあたりは良かったのだが、その前に「寝坊してパンを咥え走ってきたシャーリーと角で衝突したことが発端で始まるラブコメ」エピソードを強硬に推しボツをくらった。
それは我慢したものの、今度は生き別れの妹ナナリーとのエピソードはふんだんに必要とワンクールの半ばをそれで埋めるよう主張。
これまたあっさり却下されたため審査員の現役脚本家達にギアスで大河ドラマを執筆させてしまい、特撮界に窮状を齎したのは誰も知らなくていい裏話である。
まあ。それはさておき。
「予告状を寄越したのは虚空騎士スザクだった筈、なぜ貴方が」
「ああ、虚空騎士は虐殺皇女ユーフェミア様たちとピクニックに行くというので代わった」
若い者は微笑ましいな、と呟く鬼械将。
それに「じじむさっ!」とツッコミを入れたのは、超のつくほど短いスカートから長い脚を惜しげもなく披露した褐色の美女だった。
「辛うじてまだ二十代で何を達観しているんです」
「要らんお世話だ、ヴィレッタ参謀。そちらこそいい年齢をしてそんな格好で飛び回るのはどうかと思うぞ」
特に妊娠中は腰を冷やさないほうがいい、と言葉が接がれる。美少女戦隊の司令・ナナリーの参謀役は真っ赤になった。
「な、何故それを!」
「改造好きなマッドサイエンティスト(注:プリンも大好き)のおかげでな」と敵将は色違いの左眼を指す。
「この眼にはいろいろ能力があるのだ。生体・武装等各種センサー、暗視、ターゲットスコープナノスコープ、ついでにギアスキャンセラー……のわッ?」
律儀に説明していた彼は突然の集中砲火をくらって吹っ飛び、手近なビルのエントランスに突っ込んでそこの創立者像とメインの柱を薙ぎ倒した。
「女性に年のこと言うなんて最低!」
「わ、私のうさぎさんパンツも見たんですか」
「えぇ?毛糸のアレまだ履いてたの?もう春だよ?」
「きゃー!セクハラよ、セクハラ!」
「……女の、敵」
「見ておらん、そんなもの!それになぜ攻撃力が上がっている!」
「心を一つにした時にパワーが倍増するのもお約束ですから」
応じながらライは相手の立ち直りの早さによりも『悪の帝国でもピクニックってやるんだ』と感心していた。
「ところで前から気になってたんですけど、皇女様にあの二つ名って不敬じゃないんですか」
「思慮が浅いな。悪の帝国を称する以上、これは尊称だ。『卑怯は褒め言葉』という名言もある。元を辿れば古の妖邪界に行き着く、けだし至言といえよう」
「なるほど、一理あるな。でも悪の帝国って自慢するのもなんだか」
しごくもっともな疑問を、しかし敵はふふん、と鼻で笑った。
「自ら美少女と名乗るのもどうかと思うが?諸君らに比べれば我が君の女装のほうが余程その名に値する」
カチーン!と、やたら大きな音でSE(効果音)が入った。
「その言い草、ムカつくねっ!」
「反論できないだけに痛いわ〜。やっちゃえ!」
「こんなこともあろうかと小型フレイアを」
「このこのこの!えいえいっ!」
「……破壊」
再び美少女たちの心が一つになった、その時!
「選りによって何故それを引き合いに出すっ!」
移動要塞アヴァロンから立て続けの砲撃と悪逆皇子ルルーシュの声が降り注いだ。
その場に居た者が皆、大爆発に巻き込まれて吹っ飛んだのはいうまでもない。ついでに半径50メートルばかりのクレーターも幾つか出来た。しかし。
「で、殿下?何をなさいます、会話中に不躾な!」
直撃をくらった筈なのに、ものすごく打たれ強い。さすがサイボーグ。得意技は乗機の自爆。
「やかましい!今回の作戦はもういいから、ナナリー司令宛のメッセージを渡してとっとと帰って来い!」
「ではこれを」
内ポケットから取り出された瀟洒な封筒をはいと受け取ったライは、しかしそこでにんまりと笑った。
「素直に帰すと思っているんですか」
言うやいなや、ヴィレッタ参謀が敵の背後からがっちりとホールドした。
さらに戦隊のメンバーが素早く周囲を固める。見た目はちょっと羨ましい状態かもしれない。
「全員が一個ずつ、ゲフィオン・ディスターバーのユニットを持っているんです。これで捕獲させていただきます!」
「うぬ、卑怯な!」
「褒め言葉なんですね、わかります」
にっこり笑ったその瞬間。
ぼぉんと音がして煙が上がり、鬼械将の居た場所に丸太ん棒が出現した。変わり身の術のお約束である。
そして彼本人はというと、少し離れたビルの屋上で新たに出現した人物にお姫様抱っこされていた。
「本当に、藪をつついて蛇を出すのがお上手ですね」
おとなしやかな顔立ちに、身体のラインまる分かりのきわどい忍び装束。カラーリングは白とピンク、実は全然忍んでない。
おまけに何故かメイドのヘッドドレスつき。実はこれが本体との噂も高い、彼女こそ!
「女忍邪サヨコ!次は貴方が相手か!」
新たな敵に闘志を燃やしてライが叫ぶ。
しかし天然系のニンジャ・ウーマンはまるっと聞いちゃいなかった。
「これで貸し五つ目ですよ。カフェであんみつおごってくださいね」
カフェ、あるんだ。悪の帝国に。しかもメニューにあんみつ、あるんだ。
つか何でどれだけ借り作ってるの。
もはや心でツッコミを入れるしか無いライの目前でずどーん!と爆発が起こり、敵の姿はその中に消えていった。微塵隠れのお約束である。
「ではまた会おう、自称・美少女戦隊とライ!」
「「「「「自称って言うな〜!」」」」」
叫び声に重なって、最後まで残っていたビルの倒壊音が響き渡った。
「恐ろしい敵だった、いろんな意味で」
いつしか暮れゆく陽の下、美少女(自称)戦隊とライは廃墟に佇み、戦いの空しさを噛みしめていた。
しかし戦いはまだまだ続く!
頑張れ、美少女戦隊!
負けるな、仮面ライだー!
「ところでライ、誰を助けに来てくれたのかな?」
「わたし!だったらちょっと嬉しいかな」
「怖かった……もうこれ止めようよミレイちゃん」
「べ、別に助けて欲しくなんか以下略」
「……お腹、すいた」
(続きませんよ、念のため)
以上、山の賑わいに枯れ木一本でした。
今後も皆さんの作品を楽しみにお邪魔させていただきます!
>>179 まさかのおまけwww
GJでした!
>>185 銀鰻卿、GJでした!
実にカオス! 素晴らしいカオスだ!
それにしても、ブリタニアの人的資源が豊富すぎるwww
それにしても、侵略手段脚本書きってwww
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
187 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:54:16 ID:v8+oLV8p
>>185 いや久々に笑わせてもらいました。出来れば続きを書いてほしいですね。
「大変だったね、ライ」
「あ、V.V。そうなんだよ。まさかあんな風にやられるとは思わなかったよ」
「その点、男は義理堅いよ。ふふっ……」
「そうだね。ゼロのおかげで助かったし……」
「そうだ。今晩、僕と二人で友好を暖めあわないかい?」
すーーーっ。(ライの血の引く音)
「い、いや……。今日は遠慮させてもらうよ。あはははは……」
「それは残念。でも、僕はいつでもOKだからね。待ってるから……」
その言葉に何とか笑顔で誤魔化すライ。
V.Vには近づくまい。
微笑みながら、そう決心したライであった。
パーティ会場にて……。
まだほとんど集まってない中、壁際で立ち尽くしている二人の女性。
「なんかさ、私達、影薄くない?」
「やっぱり……人気ないのかしら」
「「はぁ〜……」」
見詰め合って溜息をはいて慰めあっているギネヴィアとカリーヌの姿があった。
189 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 10:16:07 ID:S4hOs2rN
>>185 銀鰻卿、お久しぶりです!相変わらずノリがいいですね。
文章って音読すると良し悪しが分かるそうですが、まさにそれ。
このテンポの良さはピカイチっす。おまけに相変わらずキャラが楽しそう。
R2の「ルルタニア」は確かに人員構成が特撮の悪の帝国っぽいですけど、
まんまやられると破壊力でかいです。いや、この場合は正義の味方のほうがかww
>>188 >>179さんですよね?サービス満点のおまけをありがとうございます!
他のキャラを探したら書いてもらえるかなと思ってムックその他を引っくり返して
みたんですが、残念、見つかりませんでしたw
ところでV.V、何がOKなの?俺、子供だから分からないwww
>>188 さらにおまけw
乙です。
V.V.は何を言ってるw
ギネヴィアにカリーヌ、頑張れー。
ファンはいっぱいいると思うよ……きっと……たぶん……おそらく。
貴方の次の投下をお待ちしております。
>>188 乙です
楽しく読ませてもらいました。
ラクシャータ忘れられてますw
>>185 銀鰻卿も乙です。
こちらも面白かったですw
すいません保管庫内の「ピンクもふもふ卿」の「LOSTMEMORIES」が9話の「政庁崩落」以外が見れなくなっていたのですが、
これは私だけでしょうか?
それとも削除されたのでしょうか?
「こんにちわ、ミレイ・アッシュフォードです。ここはロストカラーズ1周年記念パーティ会場です。
今から関係者の皆様に、主人公であるライの魅力について語ってもらおうと思います。
さてと……だれかいないかなぁ〜っと……。あーーーーっといたいたっ」
黒髪の美少年にマイクを突きつける。
「すみませんっ、主人公のライさんの事でいろいろ聞きたいんですけど、よろしいですか?」
黒髪の美少年、不機嫌そうに……。
「ふんっ。確かにやつは優秀だ。だがな、主人公としては、まだまだだな。こう、アクというか捻りがだな……」
「あっ…ナナリーさんの車椅子を押してライさんがベランダの方に向かってますね。うわーーっ、いい感じですっ」
「な、なにーーーーーーーーっ。俺は、まだ認めたわけではないぞっ……。ナナリーっ!!」
慌てて駆け出していく少年。
黒髪の少年、退場。
「あはははは…。シスコン野郎はほっといて、次行ってみたいと思います。あっと、あの女の人なんていいかな…」
一人、食べる事に専念している女性にマイクを向ける。
「すみませーんっ。主人公のライさんの事でいろいろ聞きたいんですけど、よろしいですか?」
ぎろりっ。睨みつけられる。
「ライだぁ〜っ。ふんっ、私には関係ないね」
「あの〜、もしかして僻んでません?」
「ひ、僻んでなんていないっ。私はなぁ……」
「TVで1カットしか出なくて、さらにスザクさんに瞬殺されたとか…。
パーティ前のSSでは忘れられて、さらにそのおまけにも出してもらえなかったとか…」
いきなり泣き出す女性。
「わ、私だって…、私だってもっと出番があったらいいと思ったさ。誰かとのラブロマンスだってしたかったさ。なのに…、なのに……」
「あー…、泣いちゃいましたね。あははは……。次行きましょう」
逃げ出すミレイ。
で…次の相手を発見。
「あの〜…」
「すまないが、天子様を見なかったか?」
「へ?」
「だから、天子様だ。あの純粋無垢で可憐で清らかな天子様がこんな毒々しい場所にいて変なことを知ってしまわれたらと思うと……」
ごふっ…。(血を吐く)
「だ、大丈夫ですかっ…」
「いや、問題ないっ。興奮しただけだっ。すまないっ、では、失礼するっ」
さっさと立ち去る男。
「天子さまーっ。どこにおいでですかっ。貴方の愛しいシンクーが迎えに参りましたよっ」
「………………」
立ち尽くすミレイ。
「えーっと……次行きましょうか…。あーっ、あの子にしょう。
すみませーんっ。あのインタビューよろしいでしょうか?」
こくりと頷くピンク色の髪の少女。
「じゃあ、ライさんについてなんですけど……」
「素敵……」
「………」
「………」
「ほ、他にはありませんか?」
「好き」
「………」
「………」
「………」
「………」
「あ、ありがとうこざいましたーーっ。あはははは……」
次にいこう、次に……。
こういて、ミレイはパーティ中、会場をうろうろする事になったのであった。
>>193 ご本人の要請により削除いたしました。
(36スレ目のレス183をご覧ください)
>>194 シンクーw興奮して吐血ってw
ドロテアさん……泣けんでぇ。
何が泣けるって、読んでる私もレス見返さなかったら誰か分からなかった所が。
……ごめんなさぁい!
貴方の次の投下をお待ちしております。
>>195 そうでしたか。このスレと保管庫を覘くの二か月振りだったので。
手間をおかけしました
三分後に作品投下を行いたいと思います。
16.7KBありますので、お暇な方は支援をよろしくお願いします。
了解、支援を開始します
時間となりましたので投下します。
タイトル:【K I S S】
ジャンル:ギャグ
備考:ブルームーン編でハーレムものです
支援
【K I S S】
この日の日当たりはとてつもないほどに穏やかな物であった。
空は雲一つもない快晴ぶりを見せつけており、その下では放課後のクラブ活動に励む運動系のクラブの面々は元気のよい声を飛び交らせながらコーチの叱咤を受けている。
本日の放課後もクラブ棟内にある生徒会室では、放課後恒例の活動が行われている……はずなのだが……
内部には生徒会役員の面々が見あたらない。
本来ならば、この時間は迫る学園祭についての話し合いが行われているはずの時間帯だ。
ひっそりと静まりかえっており、人の気配はしないように見えたのだが実はいた。
「……可愛いですね」
顔を綻ばせながら声を潜めて話すのはシャーリー・フェネット。
他の女子、そして何故か体育教師のヴィレッタもこの生徒会室に集まって、ソファの前でじっと一点を見つめている。
ソファですやすやと可愛い寝息を立てて眠っているのは学園の女子の間では噂となっている幻の美形と称される少年、ライがいた。
生徒会の活動のために来たのはいいのだが、誰もいないからか自分でも気づかない内に眠ってしまったようだ。
透き通るような白い肌とすらりとのびた四股。
色素が薄く銀色を思わせるような髪が頬にかかり、ソファの上に布のようにサラサラと落ちている。
「ほんと、可愛い顔して寝てますわ」
ライの寝顔を見つめながら、神楽耶はにこにこ笑っている。
白くて柔らかそうなライの頬を触ろうと手を伸ばすが、カレンに取り押さえられてしまった。
「可愛らしい寝顔で……何かされても文句言えないわね」
ミレイはどこか不機嫌そうに、ソファで寝息を立てる可愛らしい少年に向かって呟いた。
自分以外の女にこうも簡単に寝顔を見せるのが気に入らないらしい。
「……会長、ライに変なことをしないようにお願いしますね」
鋭い視線でミレイを見てから、カレンはチラリとライに視線を移した。
何をするか分からないような人間がここには沢山いるのに、ここまで無防備に眠るライに短くため息をつく。
最初に彼を発見したのが自分でよかったと安堵の息をもらす。
他の連中よりも長くライの寝顔を見られたし、今日はいい日だと思うあたり、かなり彼に夢中なのだと気付かされる。
そんなカレンに対して、ミレイは口元に薄い笑みを浮かべながらこう言った。
「あら……ヘンなことってどんな事なのかしら?」
ニヤリという表現が一番合うだろうミレイの笑みに、カレンの顔が真っ赤になる。
どうやらこういう口合戦ではミレイのほうが一枚上手のようだ。
「とにかく…このままじゃ不味いのでは…?」
カレンはライの寝顔に頬を染めながら遠慮がちに話した。
このままライの寝顔を見ていたいというのが本心だが、さすがにそれでは生徒会の活動が出来ない。
もし、活動をしなかったら彼が起きた時、責任を感じてしまうかもしれない。
かといってこのままライを寝かせておけば、美女という名の皮を被った野獣がライに襲いかかるであろう。どうすればいいかと頭を悩ませているところだ。
「会長〜どうしましょう!」
カレンと同じことを考えていたシャーリーは自分で答えが出せず、隣にいたミレイに意見を求めた。
ミレイも心の中ではこのままライを寝かせておいてあげて彼の寝顔を独り占めにしたいと考えていたが、色々とこの後のことを考えた結果、生徒会会長として活動を行うために彼を起こすことに決めた。
「しょうがないわね、彼を起こしましょう」
そうキッパリと言い放つ。
カレンも「起こさなかったら彼、責任を感じるかもしれないですし」と付け足す。
その言葉に皆も頷く。ライを起こそうと、ミレイは歩み寄ってしゃがみこんだ。
これで一安心だ。そう思って、安堵の息が心の中で漏れた。しかし、次の瞬間には女性陣はミレイの行動を止めようと動き出した。
なぜならば、彼女達の目には今にもミレイの唇とライの唇が触れ合わんとする姿が網膜に焼き付いていたからだ。
「ちょっ!ちょっと!何を…!」
「な、なな、何やってるんですか会長―――!!もごっ」
支援!
いち早く、そのミレイが行おうとした事を理解したカレンとシャーリーは思わず叫んだ。だが、完全にそれが発することを許さんと言わんばかりにヴィレッタとニーナは二人の口を必死に押さえた。
二人は口を押さえられながらも、もごもごともがいている。
「ん……」
ライが小さな声をもらすと、皆の動きがぴたりと止まる。
ライを起こすとは決めたが、こんな風に騒いで起こしてしまうのは可哀相だと思っている女性陣はライが起きなかった事に安堵の息をもらした。
「ちょっと静かにしなさいよ〜ライが起きちゃうじゃない」
呆れたように溜息交じりに言うミレイに、ヴィレッタがすかさず問い掛けてきた。
「ライに何をしようとしていたのだ?」
その眼を剃刀のような形に変えながら睨め付けてくるヴィレッタの質問に、ミレイは顔色を変える事なくさも当然の如く平気で答えた。
「何って…キスだけど?」
語尾を少し上げてにっこりと微笑む。
それがどうかした?とでも言いたげなミレイに、カレンとシャーリーが抗議の声をあげようとしたが、ヴィレッタに抑えられる。
「ミレイさん、そんな事をしなくても普通に起こせばいいのでは?」
眉間に小さな皺を刻み、ニッコリと黒い笑みを浮かべてミレイをじっと見た。
ミレイは薄く口元に笑みを浮かべながら、ユーフェミア達を見てこう言った。
「あれ、知らないの?お姫様を起こすのは愛しい人の口付けだってことを」
クスッと小さく笑って見せるミレイ。その時、ピシッという音でも立てるようにその場の空気が変わった。
それから暫しの沈黙。沈黙を破ったのは笑みを浮かべていたユーフェミアであった。
「なるほど…それなら彼を起こすのは私の役目ですね」
自信あり気な微笑みを浮かべながら、ユーフェミアはライの前へと歩み出ようとする。
「って!ちょっと待ってください!!普通に起こせばいいじゃないですか!」
「あら?そうは言ってもシャーリーさんもキスをしたいんじゃないんですか?」
「なっ!?」
笑顔を崩さずに言い放ったユーフェミアのその言葉に反応するようシャーリーがキッと向いた。
暫しの睨み合い、二人の間に何か緊迫を凝縮した空気が空間の中に出現し始めた、それを見てニーナが必死に宥めた。
支援
支援!
「や、やめてください!2人共!!」
「そうよ。ライを起こすのは私だって決まってるんだから」
「ミレイちゃん!!」
「会長!場を荒げないでください!!」
火に油を注ぐ言葉を発した人物の名をカレンとニーナが同時に呼んだ。
カレンが鋭い目線でミレイを見るが、当の本人はまったく気にしない。
「ライ〜?早く起きてくださいまし、さもないと…うふふ♪」
声を弾ませながら彼に近づいて行くのは神楽耶。
ライの唇まであと数センチというところで、意外にもニーナが神楽耶を押さえ込んだ。
「ダ、ダメです!勝手なことをしたら益々…」
いつもの弱気でオドオドした雰囲気とは打って変わって今日のニーナは何故か強気になっている。力強く神楽耶の制服を掴み、ライから引き離す。
しかし、目の前で争いが起きているのを知らないライの寝顔を見たとたん、力がぬけたのか即座にいつもの弱気な彼女になってしまった。しかも顔は真っ赤に染まっている。
そんな二人をほとんど無視して、ミレイがライに近づいた。
「何をやってるのよ。ライも神楽耶ちゃんやニーナよりも私の方がいいに決まってるじゃない」
「あら!申し訳ありませんがライは私のものでございます!!ミレイ会長や他の方々はひっこんでくださいまし!!」
「待て!いつの間に彼がお前のモノになった?!ラ、ライはモノではないんだぞ?」
「そのように仰いますが、ヴィレッタ先生だってライのことが好きなの知っていますのよ?」
「なっ……!!」
諫めようと声をかけたのが逆に彼女の精神を逆撫でたようだ。神楽耶の言葉に、ヴィレッタは顔を紅潮させて、言葉を失っていた。
しかし、それだけで終わるわけなくヴィレッタには更なる追い打ちが待っていた。
「先生、隠してるつもりだったんですか……?」
「な、なんだと…!」
支援
しえん
呆れたような声を出すシャーリーに対して、怒りを含んだ声を出すヴィレッタの横で神楽耶はスカートのポケットから出した手帳を開き、そこに書かれている事を淡々と読み上げた。
「ヴィレッタ先生がライに恋愛感情にも似た好意を持っているのは言うまでもありません。ライと会話したあとはいつもより機嫌がいいですからね。もちろん、ここにいる皆様がそうなんですが……あ、そういえば、お財布のカード入れにはライの写真までも入っていますわね」
「な、なななななな……」
「何故そんなことを知っている?!」とでも言いたいのであろうが、思いも寄らない慌てが言葉を紡ぐのを邪魔していた。
普段は厳しく表情を崩すことなど皆無と噂のヴィレッタの慌てるその姿は神楽耶の言葉が如何に信用できるかを測るのに十分であった。
顔を真っ赤に紅潮させ、神楽耶の手帳を奪い取ろうとするが、彼女の素早い動きに翻弄されて奪い取れずにいた。
「みなさん、静かにしてください」
ライが眠っているのを忘れているかのように騒ぎ立てる彼女達に苛立ちを覚えたのか、ユーフェミアのその声は静かすぎる怒りの声が含まれていた。
響いたわけでもないのに耳の中で余韻を残すその声に六人はすぐに静まった。
「ぅ…ん」
「!!!」
横になっていたソファから半身を起こして、しぱしぱとする目を擦りながら小さく欠伸をすると問題の少年は瑠璃色の双眸を宿す眼を薄く上げながら周りを見回していた。
今、少年の目に映っているのは間違いなくこちらを見て固まっている女子生徒たちだ。
何故、この人達がここにいるのかという疑問よりこの人達が何故、こちらを見ながら固まっているのだろうかという疑問が先に立った。
だが、答えを見つけることより先にライは起きたときに言う言葉をぼんやりとした顔のままで呟いた。
「…おはよう…ございます?」
何故か疑問系で言うが、虚ろな視線と潤んだ瞳が徐々に全員の顔を認識したらしい。
だが、他の人達は心中穏やかでなく必死に自分の理性を押さえ付けて、今すぐに抱きつきたいという欲求を抑えていた。
ニーナやカレン、シャーリー、ヴィレッタなどは紅潮した顔を見られまいとライから顔を背けて何やら呟き、ライに近寄ろうとするミレイは神楽耶に妨害され、強いては腹黒口合戦が始まっていた、
支援!
しえん
「あれ…?みんな、どうかしたの?…」
眠そうに目をこすりながら、ライは目の前にいる人物に気づいた。ライがその人物の顔を見るより先に声が掛けられた。
「おはようございます、ライ。よく眠れましたか?」
ライと目線の高さを同じにするように屈んだユーフェミアは優しい声と共に微笑んだ。
「あぁ…おはよう…ユフィ」
必死にユーフェミアに応えようとしているのだが、それよりも眠気の方がまだ上のようであり、ライは目を擦りながら目を覚まそうとしていた。
ユーフェミアが銀色を思わせる髪を優しく撫でるとライはくすぐったそうに首を竦めた。
「まだ眠いですか?」
「………」
その問いにライは正直に頭を縦に振った。
「そうですか………では、いただきます♪」
そう言って、ユーフェミアは半身を起こしているライの横に座った。ライは二、三度ばかり目を瞬かせていた、
その姿をユーフェミアは優しく微笑みかけながら見ると細い指をライの頬に触れさせた。
そして、気づいたときにはライの前髪を優しくかき上げ、露になった額に唇を落としていた。
「あ………」
それを見ていた誰かが一つの言葉を呟いた。それをきっかけに他は思考が混乱を始めた。
誰が予想出来たのだろうか?こんな事を。誰が考えていたのだろうかこんな事を。
ユーフェミアのあまりの行動の大胆さと迅速さに周りは突然のことで思考が停止し、あんぐりと開いた口が塞がらないでいた。
そして、数秒後。ユーフェミアの唇がライの額から離れたのと同時に全員の思考が元に
戻った。
「「「「「「あ〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」」
そこで声を上げられたのは完全にユーフェミアが何をしたのか理解したということだ。
「ユ、ユ、ユーフェミア様………!」
「あらニーナ、それにみなさんどうかしましたか?」
青ざめた顔と震える声でユーフェミアの名を口から紡いだニーナに応えた彼女の声はいつもと変わらない声に聞こえるはずだ。
だが…何故だろうか、いつも聞くはずのその声が明らかに勝ち誇ったような感じで自分が今優位に立っているのだと言っているように聞こえるのは…
「いや、どうしたじゃなくて!だって、今…彼に、その…キ、キスを」
ワナワナと声を震わせるカレンに対して
「あぁ、その事ですか」
まるで、今思い出したかのように手をポンっと叩くとユーフェミアは手を合わせて微笑みを浮かべながら皆に向かって
「御馳走様でした♪」
それを聞いた瞬間にユーフェミア以外の女性陣の頭の中で何かが切れた。
「「「「「ゆるさ〜〜〜ん!!!」」」」」
「?」
「ほほほほほほ」
高らかに笑いながら、ユーフェミアはその部屋から逃げ出し、ミレイ達は怒りに駆られながらユーフェミアを追いかけ始めた。
当のライ本人は何をされたのか分からずに額にキスを落とされた場所を目をぱちくりとさせながら手で直に触って先程の柔らかい感触が何なのか考えようとした。
だが、それよりも寝足りないせいで眠気が一斉に襲って来た為に意識を手放した。
+++++++++++
「あら、今のは…?」
生徒会室に続く廊下でナナリーの乗った車椅子を押していた足を止めた咲世子は先程生徒会室から飛び出てきてすれ違った先程の人物達の後姿を見送りながら疑問符を浮かべていた。
自分の目が節穴でなければ、一番先頭にいたのはナナリーの異母姉であるユーフェミアであった。その次には、生徒会長のミレイとその他女性生徒会役員である。
こころなしか、ユーフェミア以外の女性陣の顔は怒りに満ちたような表情になっていたことからまるでユーフェミアが追われているようにも見えた。
疑問を覚えたとすれば、何故に彼女が追われているのかなのだが…
「咲世子さん、どうかしたんですか?」
ナナリーのその声に気がついて視線を戻せば、ナナリーが顔を振り向かせて咲世子の返答を待っていた。
「あ…申し訳ありません。ナナリー様」
咲世子はナナリーにそう言うと、再び車椅子を押し始める。そうしている内に先程の疑問も消えかかる頃には二人は生徒会室に到着した。
咲世子は辺りを見渡し、ナナリーは周りの音に耳を澄ませる。
「どうやら…誰も居ないようですね」
咲世子の言葉にナナリーは頷き、思わず首を傾げてしまう。本来ならば活動は始まってもおかしくはない時間帯なのだ。生徒会室に漂う静寂の空気はナナリーに少々の混乱を呼び込んだ。
「今日は学園祭のことで話し合うハズなのですが……」
ナナリーの言葉を聞きながら、咲世子はもう一度生徒会室を見渡す。
すると、咲世子の目は部屋の中にあるものに、正確にはその上にいるモノに止まった。そして消えかけていた疑問を掘り起こした。すると、咲世子は微笑みを浮かべた。
「咲世子さん?」
「ナナリー様、申し訳ありませんが、突 然 片付けなければならない用事を思い出してしまいました」
「え?そ、そうなんですか」
「はい。ですのでほんの少しの間だけお留守番をお願いしてもよろしいですか?」
ナナリーは咲世子の言葉に思わず頷いてしまう。
人間はある感覚が一時的、あるいは永久的に使用不可能と察知すると、人体が本能的に生存確率を上げるためにその他の感覚を鋭敏化させる。
ナナリーは幼い頃に受けた精神的ショックにより目を開くことができなくなった。それにより、発達した聴覚によってナナリーは咲世子の言葉が妙に弾んでいることに気が付いたのだ。
「ありがとうございます。では、さっそく……」
「咲世子さん?…ふぁ!」
ナナリーが名前を紡ぐと同時にその華奢な身体はふわりと浮かび上がる。
咲世子の行動が読めなかった為か彼女のその驚きは大きく、悲鳴が混じった声を出してしまう。
背面から腕を回して胴を掴むと共に、膝の下に差し入れた腕で足を支える。いわゆる、お姫様抱っこの状態でナナリーに浮遊感を味合わせ、咲世子は移動を始める。
咲世子の行動をどう理解すればよいのかわからないナナリーはただ言葉を探そうと一生懸命になっていた。
「?」
目的の場所に着いた咲世子はナナリーを静かにそこに座らせた。座らせられたナナリーの方はただ首を傾げるだけであった。
座らせられた所、制服のスカート越しに伝わる柔らかい感覚が伝わり、そこがソファの上だと気が付くのに時間は要さなかった。
「では、ナナリー様。私はこれで……」
そう言うと咲世子はナナリーから遠ざかる。
咲世子が遠ざかる音を耳に入れながら、ナナリーは手の平で改めてソファの柔らかさを感じ取っていた。
しかし、その刹那。
「あぁ、言い忘れてました。ナナリー様のお隣には、お昼寝途中のライ様もいらっしゃいますのでお声を出して起こさないようにお気を付け下さい」
と、部屋の入口から用事出かけたはずの咲世子がひょっこりと顔を出して一言伝えると即座に顔を引っ込めた。
「へっ……え!?」
ナナリーはまたもや驚きと悲鳴が混じった声を出した。その声が出てしまったのは、用事に出かけたはずの咲世子の言葉が聞こえた事と両膝の上に何かが乗ってきたのを感じ取ったからだ。
「え?ラ、ライさん?」
ナナリーは咄嗟に言うが、膝の上にいるものは何も答えない。その代わりに、可愛らしい寝息が漏れている。
「え、えっと?」
ナナリーは両膝の上に乗ってきた正体がライかを確かめようと、恐る恐ると手を両膝の上に伸ばした。
指先が最初に感じ取ったのは、サラサラとした髪の毛、次に感じ取ったのは柔らかく温かい肌の感触。
「んっ、んん…」
触れている指先がくすぐったいのか、ピクリと動き、言葉が漏れた。
「ほ、本当にライさん……なんですね」
自分の膝の上にいるのがライ本人の頭だと納得したナナリー。小さな手がライの頭に置かれ静かに撫でられる。
彼が彼女の膝枕で眠っている事実は変えようがなかった。
寝惚けているのか、それとも彼は自分の意志でしたのか今の状況では分からない。サラサラとしている髪が手の指に触れて少々くすぐったく思える。
指と指の間に入り込むライの髪をまるで、梳くように手を動かしてその感触を楽しむ。
次に柔らかい頬に指を這わせた。するとライの皮膚はピクリピクリと反応を示す。その反応が可愛らしく思え、悪いとは考えながらも何度もやってしまう。
すると、ふいに指先が頬とは別の場所を這った。そこは頬よりももう少し柔らかく、そしてどこか湿り気を持ってた。
それがライの唇だと知った刹那、ナナリーはパッと指を唇から離す。その後、徐々に顔全体に熱が篭るのを感じた。指先に触れた唇の柔らかい感覚がどうしても拭えなくなってきた。
「………」
辺りに耳をすませ、誰もいないことを確認したナナリーは何か決心をしたように自分の顔を下ろした。
ライの顔がゆっくりと自分に、正確には自分がライの唇に近付いて。三十センチ、十センチ、五センチ…
「んっ………」
ほんの少しだけ触れるようなキスであった。獣のように俊敏で本当に触れるだけのキス。ライの唇の表面から離れると同時に彼女の頭は一気に限界を越えてどう
にもならなくなってしまった。
だが、同時に自分が誰よりも優位に立っているのだとも理解した。
しかし、同時に彼女は自分のしたことが恥ずかしくなってきた。
自分の両膝を枕に静かに寝ているライは当分起きそうもない。だが、それはナナリーにとって都合が良かった。
赤くなった顔と熱る体温がちょっとやそっとでは下がらないからだ。
熱が下がり、そして、
彼が目覚める数十分後まで、ナナリーは幸せな気分を満喫した。
支援
投下終了です。
支援をしてくださった方々有難う御座いました。
>>220 蒼い鴉卿、GJでした!
ライが眠る前での女性陣の戦い、そしてユーフェミアの額にキス。
そんな状況で二度寝するライの微妙な鈍さがいいね!
そして、咲世子さんアシストでナナリー一人勝ち。
真っ赤になったナナリーを想像すると……非常になごむ。
GJ! ディモールトGJ!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>220 蒼い鴉卿お久しぶりですね! GJでした!
ニヤニヤがとまりませんでしたwナナリーはタナボタってヤツですかね?w
>>220 蒼い鴉卿お久しぶりにGJでした!
ほのぼのとした雰囲気にほっくりとさせて頂きました!
卿の次回作も楽しみにしていますw
あまーい!あまーい!あまーい!あぅまーい!
蒼い鴉卿GJ!
どうも、久々の続きの投下です。
前回の18話の投下が26スレですから、10スレ以上前ですねぇ。
まぁ、かなり期間が開きましたが、ぼちぼちゆっくりと完結させたいですね。
なんせ、私が最初に投下したSSなので思い入れはたっぷり入ってますし…www
タイトル 蒼天の騎士(19) 行政特区廃止命令
カップリング なし
ジャンル IFもの
では、投下いたします。
あれからすでに1週間が過ぎていた。
しかし、未だに皇帝陛下の率いる艦隊の行方は不明のままであり、国の最高位の不在にブリタニアは大きな支障が出始めている。
一部の委託を除き、何を行うにも皇帝陛下の許可が必要なためである。
政治に関しては、大部分を宰相たるシュナイゼル殿下に委託されていたため、それほど大きな問題はなかった。
しかし、軍事や外交に関しては、まったくといっていいほど委託されておらず滞ったままになっている。
特にEUの侵攻が始まっていたため、皇帝陛下に代わる代理の国の最高位を確立する事が急務となっていた。
そこで、貴族会の話し合いにより全体の8割近くの賛成を受けシュナイゼルを一時的とはいえ皇帝代理とする事が決定された。
内外的なことも含め、表面上は皇帝陛下の体調不良の為、シュナイゼルを皇帝代理とすると発表されたが、EUも超合衆国も事実上のシュナイゼルの皇帝就任と認識していた。
いくら隠ぺい工作や情報操作をしょうが情報は漏れるように出来ている。
皇帝陛下の行方がわからなくなっているという情報は、すでに両勢力とも手に入れていたのだから、そう認識するのが当たり前だろう。
そして、今まで以上にブリタニアに対して警戒が強くなるのに時間はかからなかった。
もっとも、両勢力も迂闊に動けない理由をそれぞれもっている為、様子見という感じが強かったが…。
蒼天の騎士(19) 行政特区廃止命令
シュナイゼル皇帝代理が就任してから、ブリタニアは大きく変化していった。
EUによる攻撃で失った領土の奪還と報復を名目に、まず治安維持の為の情報の規制と戦力の建て直しによる軍事力の増加が行われた。
次に各エリアの本国直轄領への変更と本国への収める税の増加などの命が発せられたのである。
そして、その矛先は行政特区日本となったエリア11にも向けられた。
「ナナリー皇女殿下、シュナイゼル皇帝陛下代理の命をお伝えいたします」
本国行政官が咳払いの後、ゆっくりと用意された命令書を読み上げていく。
その内容は、行政特区の解体とエリア11の直轄領事への変更、さらに騎士団の解散とナナリーを初めとするエリア11の行政官達の本国への帰還命令であった。
その一方的な命令にナナリーは素直に承服できないでいた。
なぜなら、今までの苦労をドブに捨てろと言っているのと変わらないからだ。
それに行政特区になったおかげでエリア11は以前よりも経済的にも内政的にも安定している。
うまくいっているものをなぜ解体するのだろうか…。
理由もなく命令されるのでは納得もなにも出来ない。
その思いは、行政特区に関わったほとんどのブリタニア人も同じだった。
「急な事ですので、返事はこちらの方から皇帝陛下代理に直接連絡いたします。ご苦労様でした」
そう言って本国行政官を追い返すので精一杯だった。
そうしなければ、ナナリーは不満を行政官にぶつけてしまっていただろう。
それほど納得の出来ない命令だったからである。
しぶしぶ本国行政官は帰還したが、多分あることない事を言うだろうというのは想像できた。
「まったく……。特区反対派の人間をよこすとは、皇帝陛下代理が我々をどう思っているか推し量る事が出来るというものだ」
誰かがそう呟いたが、それは特区日本に関わっているすべての人間も同じ思いだった。
だが、表立って皇帝陛下に弓を引く事は出来ない。
彼らとてそれはわかっている。
だからこそ、不満こそあれ、命令には従うしかない。
そう思っていた。
数人の人間を除いて…・・・。
ゆっくりとナナリーは、集まっている人達を見回すと発言した。
「私は、直接、皇帝陛下代理にこの命について質問したいと思います」
ざわめきが起こる。
だが、そのざわめきが収まるのを待たずしてナナリーは言葉を続けた。
「皇帝陛下の命は絶対でしょう。臣下として従うのが正しいのでしょうね。
でも、間違いを正すのも臣下の務め。だから、私は皇帝陛下代理のお考えをお伺いしたいと思っています」
その言葉にその場にいる全員が感激し、彼女と共にこの場にいられる事を誇りと思った事だろう。
就任当初、彼らにとって、ナナリーはただの皇帝の娘であり、皇位継承権の低いお飾りの人形でしかなかった。
しかし、今の彼女にはもうその面影はなく、そしてその場にいる誰もがそう思っていなかった。
ライや周りの優秀なスタッフの補佐があったとはいえ、行政特区日本を推し進め、実行していったのは彼女なのだ。
確かに今この場にいる者は、皇帝陛下の臣下だろう。
だが、今の彼らは、見えないほど高い上から見下ろして命令する皇帝や説明もなくやっている事を否定する皇帝陛下代理よりもナナリーの為に尽くしたいと思うようになっていた。
だから、このナナリーの発言に彼は反対するどころか賛同した。
彼女の下でなら喜んで働けると思いながら……。
そして、3日後、ナナリーと皇帝陛下代理との映像会談は行われた。
だが、それはもう話し合いでもなんでもなかった。
「ナナリー、これは皇帝代理としての命令なのだよ。いくらナナリーでも君の言い分は聞き入れられないものだ。わかるだろう……」
まるでナナリーの話に取り合わず、それどころかナナリーを駄々っ子扱いするシュナイゼル。
そして、理由や説明もないまま、ただ命令に従えという事を繰り返すだけ……。
その様子は、その場にいた行政特区の関係者を憤慨させるに十分だった。
だが、彼らは耐えていた。
そう、ナナリーがそれらの言葉に耐え、辛抱強く話していこうとしていたからだ。
会談は、実に3時間にも及んだが、意見は平行線のままだった。
「困ったね、ナナリー。これでは他のエリアにも示しがつかないな……」
シュナイゼルが呆れたようにそう言う。
「どういう意味でしょうか……、皇帝代理」
そう、ナナリーはこの会談中シュナイゼルの事を兄とは呼んでいない。
あくまで臣下として意見しているのだ。
そういう自覚があったからこそ、あえて使わないようにしている。
だが、シュナイゼルにしてみれば、この会談をそうは受け取っていないようだった。
あくまで駄々をこねる妹を相手にしているとしか映っていないのだろう。
周りから見ているものとしてはそういう風にしか見えないのだ。
これではいくら話し合っても無駄としか思えない。
だから、ついに我慢できず、一人の行政官が口を挟んだ。
「皇帝陛下代理、ナナリー様は、臣下としてきちんと意見を述べられているのです。それを判っていただきたい」
ナナリーが慌てて征しようとしたが彼は言い続けた。
「確かに、陛下の言葉は絶対かもしれません。ですが、臣下の意見も聞き入れる度量も必要だと思います」
その言葉にその場にいた者たちが頷く。
だが、シュナイゼルは違っていた。
しばし、無言の後、ニタリと笑うと冷たく言い放った。
「臣下だと……。何を勘違いしているのかな、君たちは……」
その言葉にその場がしーんと静まり返る。
今までのシュナイゼルからは考えられない発言。
そして、その雰囲気に満足したのか、周りを見渡すように視線を移した後、はっきりと言い切った。
「君らは、駒でしかないんだよ、私にとってはね。駒はただ私のいう事を素直に従っていればいい。
駒の意見など不要だ。わかるかい?これは命令なんだよ」
ぎらりと睨みけられるような目線がナナリーに向けられる。
目が見えないナナリーだが、自分に向けられた敵意は感じられた。
すーっと汗が流れる。
まるで蛇に睨まれた蛙のような心境だ。
だが、彼女は負けなかった。
「ですが……、それでは駄目だと思うんです」
なんとかしょうと必死に言葉を続けるナナリー。
だが、その言葉は、シュナイゼルのさらに冷たい言葉で切り捨てられた。
「わかった。もうこれ以上話しても無駄なようだ。残念だよ、ナナリー。残念だけど、実力行使を行う事としょう」
そして、通信は一方的に切られたのだった。
そこに残されたのは、呆然とするナナリー達。
そして、沈黙と真っ黒な画面のモニターだけであった。
「シュナイゼル様、首尾の方はいかがだったでしょうか……」
ナナリーとの映像会談を一方的に打ち切って、通信室から出てきたシュナイゼルにカノンが近づいて聞いてくる。
「ああ、順調だね。私の予想通りの反応をしてくれたよ、ナナリーや彼らは……」
満足そうな微笑を浮かべ答えるシュナイゼル。
「では、予定通り討伐隊を出発させます」
そう言いながら、持っていたファイルを渡す。
「うむ…。よろしく頼むよ」
カノンの言葉に満足そうに頷き、ファイルを受け取ると中身を確認していく。
そして、ファイルの確認が終わったのだろう。
それをカノンに返しながら、思い出したように聞いた。
「そういえば、彼はどうしてる?」
「ライ・エニアグラムの事ですか?」
シュナイゼルの問いにカノンは意外そうな顔をして聞き返す。
確か彼に関しての報告書は今朝だしたばかりで、シュナイゼル様は目を通されたはずが……。
そのカノンの表情を楽しそうに見ながらシュナイゼルは頷く。
「実験結果の報告書は今朝見たよ。私が知りたいのは、生の彼の様子だよ」
その問いにますます困惑気味の表情を見せるカノン。
彼にしてみれば、人を駒としてしか見ていないはずのシュナイゼルがここまで興味を持つというのは初めての事ではないだろうか。
「………」
困ったような表情を見せ無言のカノンにシュナイゼルは笑いながら答えた。
「私はね、彼にとても興味があるのだよ。こんなに興味が沸く相手というのは初めてかもしれないな」
そこまで言うと、くすりと笑う。
「そう…とても気になるよ、彼のことがね…」
そう言い切るとシュナイゼルは楽しそうに笑いながら、カノンを残してその場を去っていった。
あまりにも一方的なシュナイゼルの対応にナナリーは言葉を失っていた。
なぜなのですか…兄上。
特区設立の時にあれほど協力してくれた同じ人とは思えなかった。
彼女にしてみれば、今回の映像会談も、この提案は特区反対派が押し付けたものではないかという考えがあったからだ。
だが、完全に目論みは外れてしまい、さらに実力行使という言葉さえ使ってきた。
その言葉が本気だという事は、多分、その場にいた誰よりもナナリーはわかっている。
目の見えない彼女にしてみれば、音と触る事が目の代わりなのだ。
そして、耳に届いたシュナイゼルの言葉に嘘偽りがないという事が余計彼女を苦しめる。
とても思い重圧が圧し掛かってくる。
まさにそんな感じだ。
だけど彼女は決心しなければならなかった。
そして、彼女はいつものように格納庫に連れて行って欲しいとカレンに頼み込んだ。
私は、短く同意の返事をすると車椅子を押し始める。
さっきの会談の結果を知ってしまった以上、ナナリーが重圧に苦しんでいるのかはわかっている。
だが、ナナリーがどれ程の重みを感じ苦しんでいるのか一介の戦士でしかない私にわかるはずもない。
だから、言葉が出なかった。
何も言えなかった。
悔しいけど、自分の限界を感じてしまう。
ライ……。
早く戻ってきて…。
私じゃ、ナナリーを支えきれないよ。
不安と迷いが心を弱くしていく。
こんなに心細い思いは初めてだった。
結局、カレンは何も言えないまま、格納庫に着くといつもどおりに一機のナイトメアの前で止めた。
ナイトメア『蒼天』
ライの愛機だ。
そして、カレンは立ち去ろうとする。
これからはライとナナリー、二人だけの語らいの時間なのだ。
ライが行方不明になって、それはナナリーの日課となりつつあった。
だが、今日は違った。
「カレンさん、今日は一緒にいてもらっていいですか?」
ナナリーは、そう言うと手を伸ばす。
その手は震えていた。
「はい。今日はご一緒させてもらいますね」
カレンは、そう言うとその手を優しく握り締める。
その返事と握り返してくれた手の感触にうれしそうにナナリーは微笑む。
そして、いつもどおりに話しかけていく。
ライの愛機に……。
いや、彼女にしてみれば、ライ自身にだろう。
だが、その静寂な時間は、すぐにいきなり駆け込んできたローマイヤの報告によって破られた。
「はぁっ、はあっ、はあっ…た、大変でございます。ナナリー様っ…」
息を弾ませ、喋るローマイヤーに落ち着くように言うナナリー。
だが、ローマイヤの報告で彼女が慌てふためく理由がわかった。
ブリタニア本国から、命に従わないエリア11に討伐隊を派遣したと正式に発表されたのだ。
そして、討伐隊による再占領を行うとまで宣言されている。
「ど、どういたしましょう…ナナリー様」
普段物静かで動揺しないはずの彼女がこんなに慌てているのだ。
政庁の方はどうなっているのか想像できない。
「わかりました。すぐに皆さんを集めてください」
ナナリーは、そう言うと決心した。
私は……負けられない。
彼の為にも、そして、ユーフェミアお姉さまの志を継ぐためにも……。
1時間後、政庁の大会議室では主な関係者が集まっていた。
その中には、日本側の代表である皇神楽耶の姿も見える。
皆、言葉を失い、沈黙が場を占めていた。
ブリタニア本国からの正式な発表は皆、耳に入っている。
だが、どうすればいい……。
誰もが言葉を失っていた。
そんな中、ゆっくりとナナリーは口を開く。
「皆様ご存知かと思いますが、本日、ブリタニア本国よりエリア11、つまり行政特区日本に対して宣戦布告がなされました」
ナナリーは討伐軍派遣をあえてそう言ったのだ。
一瞬、ざわめくもののすぐに沈黙が再び支配する。
いくら言い方を変えたとはいえ、事実は変わらない。
ゆっくりとナナリーが周りを見回す。
いや、見えていないのだが、周りのものにはそう見えた。
そして、言葉を続ける。
「私は、今まで、皆さんと一生懸命になって行政特区日本を支えてきたつもりです。それに、エリア11の時以上の貢献も本国にはしてきたつもりでした。
ところが、本国は、理由も無く、それを廃止せよと言ってきました。私たちの努力をドブに捨てろと言ってきたのです。それも武力まで使って……」
普段のナナリーだったら使わない言い回し、言葉の数々。
だが、彼女は必死だった。
まるで息をするのを忘れているかのように喋り続けた。
「皆さんは、こんな理不尽な事が納得できますか?
私は納得できません。納得なんて出来るはずもありません。
それこそ、ここまでがんばってきてくれた人々の思い、そして今を生きる人々の生活を無に返す事こそ愚策だと考えます。
よって私は、行政特区日本を守る為にブリタニア本国と戦いたいと思います」
荒い息を吐きながらナナリーが言い切る。
思いを込めた言葉。
だが、まったく反応はなかった。
沈黙が完全に支配する。
ナナリーの心が不安に押しつぶされそうになった。
やはり、私では駄目なのだろうか…。
そう思ったとき、一人が拍手をしながら立ち上がった。
「そのとおりですわ。私は、ナナリー代表を指示いたします」
それは、皇神楽耶だった。
そして、それを合図のように次々と拍手が起こり、人々が立ち上がっていく。
いつの間にか、その場に集まっていた人のほとんどが立ち拍手をしていた。
その力強き思いにナナリーは感動し、泣きそうになった。
だが、泣くのはこの事態を何とかしたからだ。
そう新たな決意を彼女は胸に秘めた。
強い……。
ライ、貴方のお姫様は、なんて強いんだろう。
私は、ナナリーの言葉に心が震えていた。
彼女は、ブリタニア人とか、日本人とか関係なく、ここ日本に住む人々の事を考え、決断している。
あのナナリーが……。
1年前までは、守られるだけだった少女が……。
私は、ぎゅっと自らの手を強く握り締めた。
やってやる。
ナナリーの為に出来ること。
日本の為に出来ること。
私が出来る限りのすべての事をやってやる。
「何という事だ。こんな事を決定されるとは……。兄上は何を考えられているのだ」
コーネリアは、本国の発表を愕然とした表情で見ていた。
エリアの本国直轄管理。
これはまぁ納得できない事ではない。
だが、まさかのエリア11への討伐隊の派遣。
こんな時期の武力再制圧などおかしすぎる。
やはり、こうなったら兄上と直接お話せねばならないか……。
そうコーネリアが思ったときだった。
慌てた伝令が司令室に走り込み報告する。
「た、大変です。総司令官。て、敵の…EUの部隊が再度侵攻を開始いたしました」
くっ……。
こんな時に……。
なんて、間が悪いっ。
そう実感し、コーネリアは気が付く。
まるでこうなる事が事前にわかっていたかのようなEUの再侵攻。
ナナリーとの会談後、すぐに派遣された討伐隊。
あまりにも準備が整いすぎていないだろうか。
何かがおかしい……。
たが、確信があるわけではない。
偶々、そうなっただけかもしれない。
たが、彼女の本能がこの出来事の裏にきな臭いものを感じ、警戒を発していた。
19話終了
次回、20話「攻防」につづく
以上でおわりです。
では、他のシリーズか、蒼天の騎士の続きでまたお会いしましょう。
あしっど・れいん卿GJでした!
本性を表しだしたシュナイゼルに自分の考えを伝えるナナリー
続きが非常に気になりますw
蒼天シリーズと他のシリーズのどちらでも
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
うおおおおお!やったあああ!
あしっどれいん卿GJ!超嬉しい!
待ちに待っていた作品の続きがやっときました
重厚な話にグングン引き込まれていきそうです
他のシリーズとあわせて卿の作品を楽しみにしています
>>231 あしっど・れいん卿、GJでした!
シュナイゼルのいっそ清々しいほど理不尽な命令。
それに対して抗議、意見を述べるナナリーの成長っぷりがうかがえますね。
ライがどういうカタチで現れるのか? また、特区日本の行方は?
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
ロスカラ一周年ってことで、誰かライの誕生日ネタプリーズ!と叫んでみる。
トーマス卿へ質問です
この数日一周年記念ものが相次いで投下されていますがそういうのを一周年ものとしてまとめることは可能でしょうか
具体的にはスレッド別一覧みたいなかんじで一周年記念作品部屋みたいなのがいいかと
よかったらかんがえてもらえたらうしれいです
>>237 面白いアイデアですね。結論から言えば可能です。
ならば早速実行といきたいとこですが…、リンク関係の問題で直ぐ実装とはいきません。
少々お時間(数日単位)をいただけますでしょうか。
うお返事来た!トーマス卿ありがとうございます。なかば思いつきで言ったものをまさか汲み取っていただけるとは
本当に感激です。どうか焦らないでご自分のペースでゆっくりやってください。楽しみにしています
貴方のことはいつも尊敬しています。しがない読み手ですがいつも応援しています
>>239 あんなん誰でもできるでしょ
いちいち尊敬してるとか言わないでくれ
正直不愉快だ
トーマスさん、すみません。
保管庫の分で変更をお願いします。
>>229 彼の為にも、そして、ユーフェミアお姉さまの志を継ぐためにも……。
↓
彼の為にも、そして、ユフィ姉さまの志を継ぐためにも……。
よく考えたら、ナナリーはこう呼んでいたような…。
>>230 たが、彼女の本能がこの出来事の裏にきな臭いものを感じ、警戒を発していた。
↓
だが、彼女の本能がこの出来事の裏にきな臭いものを感じ、警戒を発していた。
濁点付け忘れてますね。
本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
>>240 それはいちいちここでいうお前が不愉快だ
トーマスなにやってんの?
職人サマが申してるんださっさと仕事しろ
お前から管理取ったら何ものこらんだろうが
何度もすみません。
付け忘れてました。
これは自分のミスですし、急いでやらなきゃいけない事ではありませんので、時間があるときにやっていただけたらOKです。
そういうことなのでのんびりよろしくお願いいたします。
いつまで待たせるつもり?
というかここでトーマスって単語を見るだけで不快になってくる
永遠にアクセス禁止食らえばいいのに
誰か運営側に要請してくれ
あしっどれいん卿も気の毒に
今頃イラついてるんだろうなあ
ほんとにあいつってば人を不快にさせることしかできないんだね
我々住人を敵にしてやっていけるとおもってるんだろうか
みなさーん、スルー能力検定の時間ですよー
>時間があるときにやっていただけたらOKです。
まさかこれを額面どおりに受け取るバカはここにはいないよな?
あのクズは別だけど
あしっどれいんさんの本音は「一刻も早くやってほしい」というのは明らか
あしっどれいんさんの怒りは察するにあまりある
職人にストレスを感じさせるクズはいらない
つーかあいつってこの前も体調不良とかで我々に何の断りも無くさぼったよな
あげくにそのことにたいして何の謝罪もなし
速く寝るんだったら人を雇えばいいのに
多少はスッキリした
ああもちろんこれで終わりじゃないから
また来るわ
PS 職人の気持ちを代弁したメールを大量に送りつけておきました
ウザキモい読者様だな。
みんな邪魔だと思ってるのに……
ねぇ?
254 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 09:21:39 ID:8fgZSf8+
何でこのスレこんなにカオスなの?
このいつもの奴を通報しようとしたら、もう通報されてたw
256 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 12:48:43 ID:eiqK5g/m
また荒れてるのかよ。トーマス卿に文句があるなら直接メールを送ればいいだろこんな雰囲気じゃ職人がSSを投下しにくくなる。職人に失礼だ。
258 :
K.K.:2009/03/20(金) 00:35:06 ID:o/XPscMt
皆さん始めまして。K.K.と申します。
今まで見ているだけの者でしたが、前に思いついたSSがあるので、今回思い切って投稿させていただこうと思いました。
初めてなので言葉選びもおかしなところがありますが、感想やアドバイス等をいただけるとありがたいです。
では
タイトル:新しい歌
カップリング:ライ×カレン
ちょいシリアス
259 :
K.K.:2009/03/20(金) 00:44:38 ID:o/XPscMt
望んだ物とは少し違った形で手に入った平和
完全な形ではないが、争いは終わったのだ
ユーフェミア・リ・ブリタニアが宣言した『行政特区日本』は色々とあったが無事に成立し、人々は一時期の平和を満喫していた。
新しい歌
最近ライの様子がおかしい……
カレンは思った
あの神根島の一件以来、1人で悩んだり、何処と無く悲しい目をしている
その後の特区日本での一件……
血だらけで発見されたライはなんとか一命をとりとめた。あの時はライが目覚めるまで生きた心地がしなかったのを今でも覚えている。なんでああなったのか誰も知らないし、ライも教えてくれない。恐らく知っているのはゼロだけだろう。
あの日に結ばれた二人は騎士団の双璧として活躍しながらも、ユーフェミアの計らいで学園に通っている。付き合っていると言うことから二人は常に一緒にいる形となる。
一緒に授業を受け(同じクラスだから当たり前だが)、一緒にお弁当を食べ(ライの手作りだったりカレンの手作りだったり)、一緒に生徒会の仕事をし(ミレイに弄られるのはいつもの事)、特区日本で仕事をしたりと……
だからこそか、カレンはライの微妙な変化に気付いたのだ
何か思い詰めたような表情、時々消えてしまいそうに見える彼……カレンはそれを聞くことの出来ない自分に苛立っていた
260 :
K.K.:2009/03/20(金) 00:45:28 ID:o/XPscMt
そんなことを考えながら、カレンは自分の前に座っている銀髪の少年を見つめる。
その青紫の瞳を黙々と書類に目を通しているライ。今の彼は誰が見ても普通のライにしか見えない。
多分今この場にいる生徒会の誰もが見ても……
カレンの視線に気付いたのか、ライは書類から目を離し、カレンを見る。
「カレン、どうしたんだ?僕の顔に何かついてる?」
「あっ、ううん!何でもないの!」
カレンは慌てて自分の持っていた書類に目を落とした。
「ただ、愛しのカッコイイ彼氏の顔に看取れてただけよ〜」
「ミッ、ミレイさん!!////」
カレンの真似をするかの様に発言したミレイにカレンは顔を赤くして声を上げた。
「えっ、違うの?妙にライにあつ〜い視線を送ってたからそうだと「違います!!////」
人差し指を口元にあて、考えるような素振りを見せながら言うミレイに、顔の赤いままのカレンが机を叩いて怒鳴った
カレンがむきになって怒鳴ったからか、その場にいる全員が驚いたようにカレンに目を向けている。
「もう、ミレイさんったら、からかわないで下さいよ〜////」
みんなの視線に気付き、カレンは縮まる様に席に座り、赤くなった顔を隠すように書類に目を通し始めた。気になってライを見ると、彼は困ったように笑っていた。
261 :
K.K.:2009/03/20(金) 00:47:45 ID:o/XPscMt
「で、お前はどうなのよライ。」
「えっ?何が?」
「だから、何時どうやってカレンにコクったんだよ?」
「「えぇっ!?////」」
ライとカレンは一気に赤くなる。
「きゅっ、急に…なにを……?」
「今まで誰一人として男に気を許さなかったカレンお嬢様。
その心を彗星の如く現れ、そして奪っていった男ライ。
報道クラブが二人を記事にしてからいつから付き合い始めたのかって疑問が至るところで飛び交ってるぜ。」
「あっ、私も気になる!二人とも気が付いたら付き合い始めてたもんね!」
リヴァルの出した話題にシャーリーも興味があるらしく、その話に食い付いた。
「あの時のカレン親衛隊は酷かったしな。」
確かにあれは酷かった。
さりげなく話を聞いていたルルーシュはふと思う。
報道クラブが二人が仲良くお弁当を食べている写真を撮って、さらに二人の仲を問いただした。
その時にライが肯定するような返事をしてしまったためにその記事でアッシュフォード学園が揺れた。
カレン親衛隊やライのファンクラブが生徒会室にまで押し寄せ、事実を説きに来た。
なんとか追い払ったものの、ライとカレンはミレイに尋問(?)され、その事実を認めたのだ。だが肝心の「付き合い始めたのはいつか」は本人以外は知らない……とされている。
まぁ、俺は知ってるが…
念のため支援
263 :
K.K.:2009/03/20(金) 00:53:28 ID:o/XPscMt
ルルーシュは苦笑いを浮かべる。
特区日本設立後、傷だらけで発見されたライの様子を見に行ったら、二人がキスしているところを目撃してしまったのだ。
悪気があった訳ではない。ノックをしなかったのは悪かったが。(そのあと少しだけ気まずかった)
「リヴァル、いい加減に二人の仲を探るのは止めた方がいい。プライバシーの侵害だ。」
ルルーシュは困り果てた二人に助け船をだす。(あの時のせめてもの罪滅ぼしのつもりだ)
「えぇ〜、お前は知りたくないのかよ?」
「残念だが、答えはYesだ。これは二人の問題だ。俺達が知る必要はない。
それよりお前は早く終わらせろ。後どれくらいかからせる気だ?」
「うっ……」
リヴァルは目の前の書類に目をやる。
ルルーシュのと比べると明らかに多い。リヴァルはぶつぶつとなにかを呟きながら書類に目を通し始めた。
「あら、ルルーシュったら二人を庇っちゃって。二人と何かあったの?」
「別に何もありませんよ。俺は早く終わらして帰りたいだけです。
今日はライと一緒に食事をする事になってますから。会長達がライに絡んで、ライが遅くなったら楽しみにしてるナナリーに迷惑です。」
「むぅ。仕方ないわね。いいわ、いつか必ず聞いてやるから。
いずれ、「ミレイさん、ライさんを私に下さい!」ってカレンが言いにくるはずだから。その時に」
「「ミッ、ミレイさん!!////」」
ライとカレンが顔を赤くする。
「会長、ライは男の子ですよ。どちらかと言ったらカレンが貰われる方ですよ。」
「スザク!////」
スザクの言葉にカレンの顔がさらに赤くなった。
ルルーシュは再び騒ぎ出したみんなを見ながら眉間を押さえ溜め息をつく。
『これはまだまだかかるな』
264 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:06:57 ID:o/XPscMt
「ふぅ。やっと終わったわね。みんな、ご苦労様。今日の分はこれで終わりよ。」
「全く。もっと早くに終わったでしょう。」
ルルーシュが溜め息をもらしながら言った。
「お疲れ様。じゃあルルーシュ、また後で。」
「あぁ、待ってるぞ。」
ライはルルーシュに声をかけると生徒会室の扉へと向かう。
カレンはそれを目で追った。すると、ライは部屋を出る直前にカレンを見る。まるで合図を送るかのように
カレンは自分の書類を置くと、「お疲れ様」と一言残してライの後を追った。
ライを追って屋上へやって来たカレン。
ドアを開けると、ライが手すりに寄りかかって空を見ていた。
太陽は既に沈み始めていて、空は赤く染まっていた。
「ライ?」
カレンが声をかけると、ライはゆっくりと振り返り「やぁ、カレン」と微笑んだ。
「気付いてくれたんだね。」
「前に貴方も気付いてもらったものね。」
「そういえばそうだね、懐かしいな。」
ライはハハッと笑った。
「…で、どうしたの?」
カレンが聞く。
するとライは笑みを浮かべたまま黙ってしまった。
その目は、どこか曇って見えた
支援
266 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:15:58 ID:o/XPscMt
ライは再び手すりに寄りかかって空を見上げる。
「話したい…事があるんだ。君に…」
「私に?」
「…あぁ。」
ライはそっと目を瞑る。吹き付ける風に銀色の髪が揺れた。
「実は………記憶が戻ったんだ」
「………そう…なんだ」
「…驚かないんだ。」
ライが驚いたように振り返る。
「ううん、驚いてる。けど……」
「けど?」
「なんとなくかな……?気が付いてた……」
カレンは胸に手を当てる。
「はっきりとはわからなかった。神根島の時から貴方の様子がおかしかったから、もしかしたらって思ったけど、
記憶が戻ったとしたら、ミレイさん達に話すだろうし、やっと戻ったんだから嬉しそうにするはずなのに……貴方はそうしなかった。
逆に思い詰めた顔をしたり、一人で悩んだりしてる。だから、違うのかなって思ったけど……」
「……」
ライは黙って聞いていた。ライも以前は話そうとしていた。
記憶が戻ったら、真っ先に生徒会のみんなには話そうと……けど
「……話せないんだ」
「えっ?」
267 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:18:33 ID:o/XPscMt
ライは静かに話し出す。
「恐いんだ、話すのが……」
「……」
ライが微かに震えているのがカレンにはわかった。
「僕は……この時代の人間じゃない……僕は……昔のブリタニアの領辺国の皇子だったんだ…」
「!」
それからライは話し出した。自分の母親の事、妹の事、“力”の事、そして、国民全員を殺してしまったこと……
「!!」
カレンは驚きのあまりに口を押さえた。とても信じられた話ではない。
命令するだけで人を操れる力。その力のせいで国民全員が死んでしまうなんて……
「……すべて僕の我が儘が引き起こした事なんだ。
母上や妹を護るために兄を殺して、父上を殺して、邪魔するものはみんな殺して…
そして…結局はみんな殺してしまった……母上も、妹も、みんな………」
ライは自分の二の腕を強く握り締めた。
「だから僕は死を望んだ、全てに絶望したから……母上も妹もいない世界に意味はないから……
でも、僕は死ねなかった。契約があったから。だから……僕は眠りについた…二度と目覚めない筈の眠りに……」
カレンは声が出せなかった。出そうとしても、声が震えてしまう。早くしないと彼が消えてしまう……そう思った
268 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:21:47 ID:o/XPscMt
「だけど、僕は目覚めた。目覚めてしまった!
目覚めさせられて、体を弄られて、実験されて……その時にはもう過去の事は覚えてなかったけど。
自分の名前以外わからない。なのに毎日実験の繰り返しが嫌だった。
だから、僕は逃げた。逃げて逃げて逃げて……消えたかった……」
最後の言葉は掠れるように発され、消えるように響いた。
もう耐えられなかった。哀しすぎる……カレンは思った。大切な人を自分のせいで失って、何もわからないのに嫌な事を繰り返されて……
ライは自分よりも何倍も辛い事を受けている。
そんな彼が本当に消えてしまいそうだった…
「でも、僕は……」
ライはゆっくりと顔を上げる。
「僕は、君達と出逢った。」
その顔は、“笑顔”だった。曇りのない、本物の笑顔……
「ミレイさん、ルルーシュ、スザク、ナナリー、シャーリー、リヴァル、ニーナ、そしてカレン。
君達と出逢って、君達と過ごして、君達と話して、笑って……僕は変わった。
最初は見えなかった色も、君達のお陰で見えるようになった。
世界はこんなに綺麗だったのに、見えなかったのを世界のせいにしてたんだ。
でも違う、僕が見ようとしてなかっただけだって気が付いたんだ。だから僕には今はっきり見える。この世界の色が……」
ライはカレンに近寄った。
「ありがとう」
269 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:23:57 ID:o/XPscMt
そう言って、そっとカレンの髪に指を通した。
「君がいてくれなかったら、今の僕はなかった…」
ライは目を細めた。
カレンはライの頬に手を伸ばす。今なら言える。自分の思いを
「……ライ。私は、あなたが過去の人でも、どんな罪を背負っていてもいいの……あなたはあなただから………」
「……」
ライはカレンの手に自分の手を重ねた。
「だからね、私は…何があっても貴方から離れない。
ずっと傍にいる。ずっと貴方を見てる。ずっと……貴方を愛してる…。」
ライはカレンの言葉に、只、頷いた。
そして、カレンの胸に顔を埋めた。
「!ちょっ、ライ!?」
カレンは急なライの行動に顔を赤らめた。
「ゴメン……もう少し…このまま………」
そう言うと、ライの体が微かに震えた。
カレンはそんなライを優しく抱き締め「大丈夫よ……」と、一言そう言った。
270 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:25:06 ID:o/XPscMt
この言葉を待っていたのかも知れない。
カレンの温もりを感じながら、こういう言葉を言ってくれるのを期待していたんだろう。
今はこのまま何も見ないで、只カレンの胸の中で、夢を見たい
昔感じた母上とは違う温もり、違う鼓動……
何をどうして歌えばいいかわからない歌よりも
今聞こえてくる歌を歌おう
彼女から感じる柔らかな鼓動の中で、“新しい歌”がきっと生まれてくるから……
fin
271 :
K.K.:2009/03/20(金) 01:39:27 ID:o/XPscMt
以上です
お読みになってくださった方、どうもありがとうございます
初めて書いたので出来は悪いかと思います。
イメージしている情景を言葉にすることがなかなか出来なくて、何とか終わらせることが出来たSSです。
「ここはこうした方が良いんじゃない?」とかございましたら言ってくださって結構です。
参考にさせていただきたいと思います。
>>271 初の投下、乙でした〜
『////』便利な記号ですが、やはり地の文で表現した方が良いのではないでしょうか?
過去にもそれで注意された人がいました。(その後、その人は改訂版を投下しました)
あと、細かいなと思うかもしれませんが『」』の前に『。』があったりなかったり
統一したらどうかと感じました。
生徒会の面々の雰囲気が良く出ていました。GJ!
GJ!!K.K.卿。新たな職人誕生に祝杯!
あのエンド後の後日談はこんな風ならいいな。
心温まる甘酸っぱい話をありがとう。
初投稿には思えない。
卿にはこれを機に、ぜひこれからも作り続けていって欲しいぞ。
GJ
ただ基本sage進行だから、それぐらいは守ろうぜ
>>271 K.K.卿、初投下乙&GJでした!
出来はなかなかいいと思います。
流れも違和感なくスッと読むことができました。
ただ
>>272さんの言うように //// という表現はやめておく方が無難でしょうね。
気になる人は非常に気になると思います。
地の文で「赤くなる」という表現があるので無くても照れてる、恥ずかしがっているというのは読み取れると思いますので。
優しい雰囲気もいいかんじでした。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
あと、
>>274さんの言っているsageとはメール欄に半角英数でsageと入力すればOKです。
……念のため。
>>271 GJでしたっ!!
初めて書かれたとは思えないですよ
普通に情景が頭の中に浮かぶし
またの投下をお待ちしてます!
初投下乙でしたK.K.卿。そしてGJ!
あなたのまたの投下を楽しみにまってます。
279 :
K.K.:2009/03/20(金) 22:42:21 ID:o/XPscMt
みなさん、感想やアドバイスの方ありがとうございます!
272さん
「////」は使わない方がいいのですね?ご指摘ありがとうございます!
「。」があったり無かったりというのは僕の確認不足です。すいません。
274さん
初めての投稿で勝手がわからなかったので、すいません。
275さん
sageの説明とアドバイスありがとうございました。これからは気をつけたいと思います。
皆さんのアドバイスを踏まえて、また後日に改訂版と、今回投下し忘れていた後日談の方を投下しようかと思います。
その時はまた、よろしくお願いします
おはようございます。
とても短いですか……。
まぁ、ネタ系なので許してくださいwww
タイトル アッシュフォード学園のお弁当事情 ミレイ編
カップリング ライ×ミレイ
ジャンル お弁当事情(笑
では、投下します。
アッシュフォード学園のお弁当事情 ミレイ編
「はい。どうぞ〜、ライ」
ミレイさんが、ちっょと大き目の可愛い包みを手渡してくれる。
その中には、大きめのランチボックスが入っていた。
「ありがとう、ミレイさん」
僕は、それを受け取ると蓋をあけた。
その中には、いろんな料理が色鮮やかに綺麗に詰められている。
「うわー、おいしそうだ」
思わず、そういってしまうほど見事なものだった。
「ふふん〜♪ミレイさんの実力を思い知ったかっ」
鼻高々という表現がぴったりするほど、腰に手をやって元々大きい胸をより反らすミレイさん。
いやぁ、うれしいのはわかるんですけど、それは目の毒です。
勘弁してください。
そっちばっかりに目がいっちゃって困ります。
「んんー。ではいただきます」
胸から離れようとしない目線をなんとかお弁当に戻し、料理を食べ始める。
隣で心配そうに覗き込むミレイさん。
「お、おいしいっ…これ…ほんとにおいしいよ、ミレイさん」
僕の言葉に一瞬ほっとした表情を見せるものの、すぐにさっきまでの表情に戻る。
「うふふ…。どう、これで料理できないというのはガセだとわかったでしょう」
「うん。さすがだよ…」
食べながら、僕はそう言う事しか出来ない。
それほどうまいのだ。
夢中で食べる僕をうれしそうに見守るミレイさん。
おいしいお弁当にもありつけたし、うれしそうなミレイさんの笑顔も見れたし…。
それに…反り返って強調された胸も見れたし…。(これは…秘密だ)
ほんと、変な噂に感謝しないとな…。
そう思いながら食事を続ける。
なお、その変な噂とは、ミレイさんが味覚音痴で料理がまったく駄目というものだった。
誰が流したかは知らないが、いつの間にか広がり僕の耳まで届くようになっていた。
僕が何気なく聞いてみると、ミレイさんは完全否定し、明日お弁当を作ってきてくれるという流れになったのである。
ほんと噂のおかけで、得したな。
そう思ってしまう。
「ほんと、ミレイさんのお弁当、美味しいよ」
思わず、またそう言ってしまう。
「あはははは……。そんなに言っても何もでないんだから〜♪」
真っ赤になって照れるミレイさん。
うんうん、かわいいなぁ。
なんか、もっと褒めたくなっちゃうじゃないかっ。
「どれも美味しいけど、特に味の染み込んだ肉じゃがとか甘めに味付けされた出汁巻き卵が絶品だね」
千葉さんが、この前作ってくれやつとは味付けが違うけど、これも美味しいや。
そんな事を思いながら食べていたのだが、ふと違和感を感じた。
なんか、ミレイさんの表情が急に戸惑っている様に見えたからだ。
なんか拙い事言ったかな……。
そんな事を思っていたら、ミレイさんが慌てて聞いてきた。
「ね、ねぇ、明日もお弁当作ってきてあげようか?」
「えっ、いいの?」
思わず聞き返す。
「もちろんよ。このミレイさんに任せなさいっ」
再び胸を反らすミレイさん。
本当に大きいよなぁ……。
今、ゆさって揺れたような……。
いかん、いかん……。
目線が胸に行ってしまうのをなんとか弁当に戻す。
そうだ。
どうせなら、リクエストをお願いしておこうかな。
明日も食べたいし……。
そう思って聞いてみる。
「じゃあ、また、肉じゃがと出汁巻き卵をお願いしていい?すごく気にいっちゃって……」
一瞬、ミレイさんの顔が強張ったような気がした。
そして、しばしの沈黙の後に、なんか覚悟を決めたような返事が返ってくる。
「う、うん。わかったわ」
どうしたんだ?
そう思っていると、いいにくそうに聞いてきた。
「ところで、どの料理かしら……。その肉なんとかとだせまけ卵って……」
ちゃんちゃん〜♪
以上で終了です。
このネタは、他のキャラでもやってみたいかなとか考えてます。
そう、気が向いた時に……www
>>283 GJです。いろいろ謎な部分があります。
一期でカレンの歓迎会、R2ではルルロロ無事帰還祝い(スザクの歓迎会と混同してるかも?)で
ミレイさんは料理上手のイメージを持っていた自分ですが、記憶違いかもと思い始めてます。
一期では使用人に、R2では結局指示だけしててルルーシュが大半を作っていたのかもと・・・
料理上手だけど、自慢したくて自分で噂を流した。肉じゃがと出し巻き卵だけ他の人に作ってもらった。
噂は真実で、弁当丸々、人に作らせた。
どっちなんだと? そして他の人って誰だ?(やはり咲世子さん?)
ともかく、新たなジャンルを開発した卿に、改めてGJ!
>>283 あしっど・れいん卿、GJでした!
真実は一体……というかんじの話でしたね。
こういう話もまた良いものだ。
というかライ、胸に注目しすぎだろ、どんだけ胸好きなんだよ。
……僕?
フッ、皆大好きだろう? おっぱいが!
おっぱい! おっぱい!
――っと、いかん。
寝起きで生の感情が剥き出しになってしまった。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
えーこんな時間ではありますが35分頃に投下します
前書き・本文・後書きの全部で16レスです
了解です
支援します
どうも、夜分遅くにこんばんわ
お待たせしました(?) 今回は12話をお送りしたいと思います
【タイトル】コードギアス 反逆のルルーシュR2 RADIANT WORLD
【ジャンル】シリアス(長編)
【警告】ギアス篇&黒の騎士団篇の合いの子ルートの
ギアス篇ENDからスタートしています
R2の豪快なifルート&オリジナルのキャラ&メカが
登場しますので苦手な方は御注意下さい
火力支援準備完了。いつでもいけます!
支援
支援
失くしたものはもう戻らない。
それを知りながらも探し求めるは、それが大切だからこそなのだろうか。
その想いは織り上がる度に誰かを傷つけていく。
それは現在も綴られている物語のはじまりの一つ―――――
ある一人の女性の生涯について少し語ろう。
彼女は古くからの高貴な血筋の娘として生まれる。
その家は脈々と異端の血筋を護り続ける家系でもあった。
『次代の継承は皇の者達であろう、だが血を絶やす事は許されん。海を渡れ、そして護るのだ―――――』
彼女はその意を承諾した、しかし快諾はできなかった。
血を護る事に意味などないのにという想い。
その想いを抱いたまま海を渡るが、その目指すべき国でも同じ考えを抱く者はいる。
『我等も血を護らねばならん、生すならば彼奴に―――――』
願いは届かず彼女は望んでもいない相手と婚姻する。
なにもない、唯々取り込まれていく生活。
その中でも彼女は宝物を手に入れた。
血は濃くなったのか薄まったのか、幸か不幸か、彼女の家が望んだ子は生まれなかった。
はじめはなにもなかったが我が子達と過ごす日々は彼女の生活の小さな輝きになる。
それすらも奪われたのもきっと我が子のせいではないのだろう。
『母上、僕はやっと母上達を護れる力を手に入れたんだ―――――』
あの日、彼女が強く強く願った想い。
我が子だけには継承しないで欲しいと唯々彼女は願っていた、それすらも叶わないならせめて―――――
『イ、生き……るのよ……』
我が子の頬に伸ばした手を優しくも力強く握る掌。
眼には涙が溜まっているのだろう、ぽたぽたと幾つも流れ落ちていた。
綺麗な色だと褒めた瞳の一つは忌まわしき赤き色に染め上がっている。
その眼を見て自分だけを責めてはいけない、今すぐそう言ってあげるべきだと彼女は想う。
だが、彼女の喉は言葉よりも違うモノを吐き出す事を望む。
それを叶えて彼女の生涯は終わった。
流され続けた女性の人生、流れていく幾人の記憶と願い。
それを知る魔法使いは記憶と願いを更に垣間見る。
『日本は……どうなったかしら……』
『どれだけ苦しかったか……生き続けるという地獄が……』
「願いは須く麗しき徒華、命は我等が臈たし種」
燃え盛る炎、立ち昇る煙、大地を染め上げる赤き奔流。
力強き王にその手で握り締めた剣を深く突き立てたまま、幼き王は涙すらも枯らしてただうなだれている。
地獄絵図の風景画、それと同じ風貌の風景画が幾多も飾られた世界。
その中に佇む影は一つにして背後に佇むは無数の仮面、無貌にして無限の集合体。
「世界よ、自らが孕み育てたモノに胎を喰い破られるがいい―――――」
第十二話『過去 の 残照』
中華連邦の全土を巻き込んだクーデターが終わりを告げて以降、世界のバランスは変革の一つを確かに迎えていた。
オデュッセウスとの婚姻の破談、大宦官達の一掃による政変。
中華連邦の在り方が変わる様にルルーシュ達も変わっていく。
蓬莱島にいる一般人、黒の騎士団の存在定義。
その事の交渉を含めてルルーシュは洛陽の朱禁城に滞在していた。
ただ、目的は他にもある―――――
「インドの独立と永世中立国化か。黎星刻、今回のクーデターは随分と根が深そうだな」
「否定はしないでおこう、理由はどうあれ結果はこれだ」
しえん
支援
支援開始
「インドについてはどうするつもりだ?」
「良い機会にもなる、天子様に出向いていただくつもりだ」
「では、護衛はこちらから出そう。君に交渉を担当してもらわねばならないのでね」
目的は徐々に達成しつつあるが少なからずイレギュラーも発生していた。
インド軍区の独立と中立の宣言、中華連邦の領土内での話とはいえ今回の問題は些か危うい。
黒の騎士団のKMFはインドを主に中東エリアから賄われている。
生産ライン等は中華連邦の幾つかの場所で補えるが肝心の技師達はそうはいかない。
ラクシャータが在籍してはいるものの主な製造工程に関してはインドのチームに依存しているのだ。
つまり、状況如何では黒の騎士団の新しい主戦力となる暁の配備が大幅に遅れかねない。
「扇、蓬莱島で斑鳩の補給と部隊編成をしてインドに行け。中華連邦での鎮圧行動もある、戦力配分に関しては藤堂との相談を忘れるな」
「わかったが……君はどうするんだ?」
「私には交渉の他に済ませておきたい用がある、それも中華連邦が草案を練る期間の間にな。当面の問題はないだろう」
「なるほど、それはわかったが用件は中華連邦内で済む事なのか?」
「ああ、少し探検をしてくるだけだからな」
ライ達を乗せたアヴァロン高速強襲型は一路ロシアへと艦を進めていた。
中華連邦での戦い以降、格納庫では慌しくもラウンズ専用のKMFチームが作業をしている。
ロイドやセシルといったキャメロットのチームもクラブの実戦データの処理に追われている。
対するパイロット達は穏やかなものだ。
ドロテアはヴィンセント・ウォードで得られた実戦データの吟味。
そしてノネットはライの部屋へと足を伸ばしていた。
撤退を済ませロイドやセシルと言葉を交わしてからは一度も部屋から出てこない少年。
ドアの前で彼女は少々悩んだが性分には合わないのだろう。
礼儀としての一応のノックをして彼女は部屋へと足を踏み入れた。
「疲れているみたいだな」
「それなりには……どうかしたんですか……?」
暗い部屋の中でライはベッドに寄りかかりながら床に座っている。
いつもと同じ顔、いつもと同じ声。
その彼から視線をベッドに向けて彼女が見たのはシーツが大きく波打った皺だった。
「……これからどうするつもりだ?」
「中華連邦での用が済めばインドの事で僕も出向こうかとは思います、シュナイゼル殿下は?」
「アヴァロンでカンボジアに行くそうだ」
「カンボジアに? ではインドには誰が……」
「エリア11に滞在している枢木達が代わりに出向する、行政特区の事で総督の手が未だに離せないらしいぞ」
独立と永世中立ともなれば後ろ盾は少なからず必要になる。
中立を謳うにしてもそれは他国との相互の保障があればこそだ。
先の戦いで中華連邦、というよりもインドが生み出したKMF。
紅蓮や神虎の力があればこその他国よりもKMF生産技術が秀でているという優位性。
それを盾にされてはブリタニアも黙ってはいられない。
再三にわたる黒の騎士団の行動、その原動力となるKMF。
現状でそれを一部でも抑えられるならブリタニアには願うべくもない。
「こんなところで降りて本当に大丈夫?」
「大丈夫ですよ、ちょっとした知的好奇心を満たすだけですから」
「好奇心、ね。君も僕の事は言えないんじゃない?」
「そうですね、否定はしませんよロイドさん」
一面が砂漠の中に風化しつつある遺跡が一つ。
そんな場所に興味がある事にセシルは少々疑問を持ったがすぐに払拭されてしまう。
彼女が出会った事があるラウンズのメンバーは例外なく変わり者だった。
他のラウンズより交流があるとはいえ、御多分に洩れずライも少なからずそうなのだろうと。
「クラブをお願いします、それとスザクにもよろしくと」
「ええ、わかったわ。インドでまた会いましょうね」
しえん
離れていくアヴァロン高速強襲型を見送りながら彼は少々自嘲した。
知的好奇心という表現に関してだ、それが当たらずも遠からずな事。
それは好奇心でありながら欲求にも似ている、どこまでも醜く愚かしいという注釈がつく程に。
そう思いながら彼は遺跡の中へと足を進めた。
自分を待っているであろうV.V.がいる壁画の前へと。
「やあ、随分と遅かったね」
「色々ある、それより誰もいないのか?」
「僕以外はもう誰も残っていないよ、君の忠告通りにしたのに不満かい?」
「別になんとも思わないな、好きにすればいい」
周りの静けさに耳を済ませても彼の耳にはなにも聞こえてこない。
V.V.の言葉に嘘はない、それは確かなのだろう。
だが同時に不可解な事もあった、もう一人いるべきであろう人間がいない事だ。
「ジェレミア卿はどこにいるんだ?」
「彼には黒の騎士団のお仕置きを任せたんだ、君が不甲斐無いからね」
「言い訳はしない、しかしジェレミア卿は―――――」
「調整は既に済んでいるよ、これを君に渡してくれと言った彼がしてくれたおかげでね」
V.V.から手渡されたディスクを見て彼は理解した。
ジェレミアを改造して自分の体を調整した人間がここに招かれたであろう事を。
「……始末するつもりか」
「さあ? どちらも僕にとっての不安要素にはならないんだけどね」
「相手次第、とでも言いたいのか?」
「そうだね、あまりに目障りなら―――――」
諸共消す、そう言いたげな表情を浮かべてV.V.は彼を見た。
全てを満たす選択肢はない、だが最善を尽くす事はできる。
その不安要素が確実に増える中で彼は自分の余裕の無さを再度痛感した。
神根島に存在する同じ壁画が赤い光を放ちながらV.V.をどこかへと運んでいくのを彼は見届けながら思い悩むしかない。
(ニーナがいたんだったな……それにミレイさんも……)
壁画の前にあるサークルに体を預けて待ち人が来たる時を望みながら、ふと彼は自己嫌悪した。
ルルーシュ達に執心してニーナやミレイを心配できなかった事を。
目指すべき果てに辿り着くまでに幾多の人を傷つけるであろう事を。
その行動のなにが正しく、なにが間違いなのか。
歴史はかつての彼の行動を是とした、しかし今の行動に彼は疑問しかない。
(僕の願いは叶えるべきではない、か……)
『幼き王よ……お前は王になるべきではなかった―――――』
蓬莱島での補給の間、そしてインドへ向けて出航してからもカレンは斑鳩内の自室から出なかった。
扇達は心配したがインドに向かう準備もあり誰一人として声をかける事はない。
それをする事ができたのが出航してからという事に扇は自身の無力感を痛感した。
だが、カレンだけがショックだったわけでもない。
大なり小なり他の団員もショックが表れていた、それもあり蓬莱島の一般人にはこの事実は伏せられている。
様々な現状を受け止める者、その一人であるルルーシュは扇にある事を頼んでいた。
「カレン、入るぞ」
閉じ篭り返事もしない彼女を気遣いながら彼は部屋に足を踏み入れて見たのは予想通りの現実。
そしてそ、うあって欲しくはない現実だった。
室内灯もつけずベッドの上で頭から上布団を被って彼女は視線すらも定めず空を見ている。
その現実の拒絶、現実からの隔離にも等しい空間と行動。
先の中華連邦での戦い、その戦いで砕かれたモノは彼女には耐え難いのだと言う様に。
「ライの自室を片付けたんだが……ゼロがこれを渡してくれとの事だ」
「……」
「どうするかはカレンに任せる、ここに置いておくぞ」
支援
支援開始
しえん
ノートPCを彼女の近くに置いて彼は部屋を後にした。
そうする以外の行動が思い浮かばなかったというのもある。
どう声をかけてやればいいのか、色々な事柄があったにせよライという存在。
かつてのルルーシュと同じく自分達を裏切ったという事実。
その結末を扇はどうしても認められない、それはカレンも同じだ。
一瞥もせず後退していくランスロット・クラブの背中。
そのいるはずのない実像に向かって彼女は渡されたノートPCを投げようとした。
しようとしたが、どうしても投げられなかった―――――
『立ち止まってもカレンはちゃんと向き合っているんだろう、僕はそれを弱いとは思わないよ』
「なんなのよ……」
自分と向き合おうとしない彼、彼と向き合おうとする自分。
答えの無い答えを求める様に彼女はノートPCの電源を入れた。
起動した画面では素っ気のないデスクトップにフォルダが数個あるだけ。
彼の性格を生き写した様に無駄な物はなにもない。
その中のKMFというフォルダを開いた彼女の眼に飛び込んできたのは紅蓮と保存されたレポートファイル。
それはテキストで紅蓮可翔式のスペック、運用手段、用途、打開案、欠点をまとめた物。
そして解説用のボイスレポートも同時に再生される。
『紅蓮可翔式。カレンの実力と共に十二分で双方に問題はない、ただカレンの気性が心配ではある』
「これって……」
『暁や斬月、蜃気楼との連携を考慮すれば心配はないかもしれない。だが親衛隊隊長である以上は―――――』
彼女や紅蓮の長所を丁寧にまとめて、不安要素も忘れずに注釈してボイスレポートは再生され続ける。
どうやら戦術プランも考えてあり仮想映像で彼女ではおおよそ思い浮かばない。
同時に考えていた動きをシミュレーション動画も再生していく。
その他の斬月や暁についても同様で、同じ様なファイルが存在している。
残っている他のフォルダを開けば騎士団における戦略論を細かにまとめたファイル。
存在するデータは全てが黒の騎士団がブリタニアに対抗する為の手段に関する物。
それを見た時、彼女は総領事館でライの月下の騎乗ログを見た時と同じ高揚を感じた。
その中でファイルの最終更新日に彼女がふと目を向けると、日付は彼が蓬莱島から発つ少し前になっている事に気づく。
『これで紅月も僕の秘密の共有者だな』
『カレン、君はライを信じているか?』
『少なくともあの二人は自分を、己の決断を信じているぞ。その結末がどうなろうとも』
「こんなモノがあるからって……なにを信じろっていうのよ……お母さん……お兄ちゃん……」
それからもカレンは部屋に篭り続けた、唯々ノートPCのデータを見つめながら―――――
アッシュフォード学園ではミレイの帰国の報せで賑わっていた。
先の中華連邦のクーデターは他国の民衆であっても気が気でない事態だ。
それが一応の沈静が見えれば日常に戻る者も多い。
だが、戻る場所が曖昧なロロにはある種の圧迫感しかない。
「兄さんはいつ戻ってくるの?」
『インドの動き次第だな。心配するな、それ程長くはならないさ』
「そう……ライさんは裏切ったけど―――――」
『問題はない、その時がくるまで放っておけばいいさ。ナナリーと同じくな』
ルルーシュがゼロへの決断を下して以降、彼に大きな変化はない。
しかし周りは静かに変化を続けていく、少なくともロロはそうだ。
通信が終わり学園地下に機密情報局が設けた司令室で一人、周りを見渡した。
ヴィレッタはライの副官としてラウンズに徴集、機情の指揮権を持つライも同様だ。
スザクはインドへの出向がある為にここは来ない。
これで学園はほぼ自由になった、と表現するのが正しいのだろう。
だが足りない、彼の中での自由という定義に対して不安要素はまだある。
それを確かめるかのように手で玩んでいた携帯電話の短縮に入っている番号を彼はコールした。
しえん
「やあ、アリス。元気だった」
『……なんの用? こっちは忙しいんだけど』
「大した用じゃないよ、ナナリーは元気なのかなって思っただけ」
『あっそ、あんたが心配しなくても元気よ。それがなに?』
「別に」
短い通話、確かめたかった事は実にシンプルなものだ。
アリスがナナリーの傍にいるのかどうか。
(悔しいけど……アリスの力は僕と相性が悪い……)
閉じられた携帯電話につながっているロケットが静かに動きを止めていく。
(兄さんにとって大事なのはわかっている……)
偽りから真実に、真実は現実に、現実は―――――
(でも、兄さんの邪魔になった時にはライさんに消えてもらうだけだ―――――)
彼にとってはどこまでも遠く、甘く、切なく、そして儚い。
眠りの淵で彼の耳へ静かに音が響いてくる。
かつん、かつん、とゆっくりと確かに。
足音は二つ、彼が招いた人物達はようやくこの場所へと訪れた。
「……随分と早かったな、ルルーシュ」
「手筈を整えるのに相手にも色々と必要だろうからな、それにしても似合っているじゃないか」
「ん? ああ、ナイトオブラウンズの服の事か……月下と青月の事なんだが」
「問題ない、星刻が用意したルートを通して日本への輸送を頼んである。で、ここがお前の言っていた遺跡か」
「そうだ。これがギアスに関する遺跡、皇帝達はこれがある場所を重点的に侵略していた」
「同じ物が神根島にあったな……なるほど、これが真実の一つという事か」
ライが寄りかかるサークルを見据えながらゼロの仮面を外してルルーシュは壁画を見上げた。
一年前、神根島に存在する同じ壁画の前で彼は敗れた。
そうして幾つもの道を見て、幾つかの道を進み、今ここに辿り着いた。
「それで、誰もいないのか?」
「V.V.はどこかに本拠地を移したんだろう、残っている物もこれだけだ」
「光ディスクのデータだけ、か。ライ、本当に大丈夫なのか?」
「相手は僕を利用している、まだ大丈夫だよ」
ディスクを見つめるルルーシュから視線を変えてライは同行してきたC.C.を見た。
彼女は複雑そうに、それでいて確かな力強さを宿して自分と壁画を見ている。
恐らく考えがあるのだろう、そう思い彼は静かに答えを求めていく。
「壁画に触れてみるといい、君が知りたい真実がわかるかもしれない」
「かも、か。お前でも確証はないのか?」
「ああ。僕も何度かは試みたけど、どうも駄目らしい……」
静かに目を閉じてなにかに胸中を撫でられているのか。
その表情にルルーシュは黙って壁画へと近づいた。
蓬莱時での偽りの袂を分かつ際、ライは敵の下へと戻る時に幾つもの便宜を謀った。
ナナリーの保護、ラウンズの侵攻緩和、ギアスに関わる真実。
その一つであるギアスに関わる真実、C.C.が語らない真実。
それを知る日がようやく訪れたのだと彼は実感した。
「しかし、これでなにを知―――――」
彼が壁画に触れた瞬間、壁画を中心に赤い光が遺跡中に拡がり彼をどこかへと連れ去っていく。
それを驚きもせず、ライとC.C.は黙って見送った。
幾つもの物語の一つ、その一つである彼の物語の転換期を見届けるように。
「これで良かったのか?」
「さあ、どうかな……」
感慨もない、ただあるがままだとでも言うように返事をするライへと彼女はゆっくりと近づいていく。
サークルに身を預けたままの彼を通り過ぎてサークルの反対側で彼女も身を預けて壁画を見上げた。
支援
しえん
「お前は私の願いを―――――」
「知らない。だが、予想はできる……どうしても死にたいのか?」
「前にも言っただろう、私は長く生き過ぎた―――――」
インド軍区の主要都市デリー、ここは地方を統括する軍区の中枢でもある。
そこにある中央政府庁舎には珍しい、しかしこれからは隣人の一つとなるブリタニアからの使者が訪れていた。
「では、マハラジャ氏としてはブリタニアからの要請次第ではKMFの生産にも協力をすると?」
「儂はそう考えております。あくまで市民や中立権を守って頂けるのであれば、ですがな」
「なるほど……概要はわかりました、数日中にインドとの外交担当も来ますの―――――」
「失礼致します、マハラジャ様……」
「……わかった、迎賓室で待たせておれ。失礼、枢木卿」
「いえ、お気遣いなく。それでは到着の間までに草案の用意をお願い致します」
礼をしていそいそとマハラジャが部屋から出て行くのを見届けながらスザクはある人物の事を思い出してた。
桐原泰三、今は亡きキョウト六家の重鎮。
交渉事で相対したとはいえ、スザクはマハラジャに彼と同じ気配を感じていた。
桐原と同じ老人でありながら、その老獪から滲み出る気配は小物のそれとは明らかに違うと。
ただ、求めているところは明確だった。
市民とインドの存続、それは本音だと態度で終始表現していた。
(ライにある程度は習ったとはいっても……やっぱり大変だ)
「やっと出てきたな……もう終わったのか?」
「意外に暑い……」
「ああ、ごめんごめん。一応の話はもう終わったから、後はインドからの返答を待つだけになると思うよ」
ジノとアーニャは廊下で待っていたのだろうが、二人はマントを片手に持って汗を少々かいている。
政府庁舎の室温は空調で調整はされているものの、あくまでインドの気温に対して快適な室温というだけだ。
ブリタニア育ちの二人にはこの室温でも暑いのだろう。
「このタイミングで宣誓、それからブリタニアとE.U.に交渉か。相手も相当切れ者だな」
「黒の騎士団のKMFは確かに厄介……」
「でも、これでこちらも主要生産ラインの一つは抑えられるよ。それに……あれ?」
政府庁舎の廊下からは庁舎の庭が見えるのだが、スザクはその庭の噴水の側にいる人物達が気になった。
釣られてジノとアーニャも庭へと視線を向けて彼が注視した理由を理解する。
確かに注視する価値の人物達だと。
「紅月、少しは食事を取ったらどうだ?」
「……大丈夫ですから」
「紅月も自己管理位はできる。千葉も放っておいてやれ」
「しかし―――――」
卜部はそれ以降は黙ってしまい政府庁舎へと視線を戻している。
カレンも持ってきたであろうノートPCにから視線を外そうともしない。
関係に軋轢が生じたわけではない、たった一人の人間がいなくなっただけだ。
そう、たったそれだけの事だとしか千葉に考える道はない。
「旗艦が入港しているとは聞いたけど……君も来ていたのか、カレン」
「っ……スザク」
「黒の騎士団のエース……紅蓮のパイロット……」
「太平洋での相手だろ。それにしても手配画像よりずっといいな、こういうのもタイプなんだ」
突如として三人の前に現れたナイトオブラウンズに身構えたが、相手は攻撃の意図を見せようとしない。
ただ、三者三様にカレンを注視している。
ジノは敵意よりも好奇心が勝っていると言う様に。
スザクは明確な敵対の眼差しを押し留める様に。
アーニャは冷たくもなにかを確かめる様に。
迎賓室の中には扇、神楽耶、天子、ラクシャータという異色の組み合わせでマハラジャを待っていた。
ただ、一様に無言で時計の針の音だけが刻々と時を告げるだけの空間。
その中でラクシャータは落ち着く事ができないのか、ソファーに座らず部屋を右往左往している。
その静寂に終わりを告げる様にマハラジャの従者がドアを開いていく。
しえん
「マハラジャのジジイ!」
「ラクシャータ! お前はまたその様な―――――」
「よい、いつもの事ではないか。そして当然の怒りであろう」
悠悠自適な立ち振る舞いをしてはいるが、その行動には傲慢よりも尊厳を晒してマハラジャはソファーに腰を掛けた。
そこから座っている三人と詰め寄ろうとしたラクシャータを一瞥するのを見て彼女も渋々とソファーに腰を下ろす。
ただの口論では折れないと態度で示されてしまったからだ。
「中華連邦の代表である天子様まで来られたのは意外ですな、それに皇の姫君まで」
「あ、あの……どうしてあの様な宣誓を……?」
「先日のクーデターが起きた同じ理由、我等も傀儡政権を良しとは思わないのですよ」
「その表現だとゼロ様の行動が遺憾だと言いたそうですわね」
「皇姫、ゼロの妻を名乗る貴方は同意すると?」
「当然ですわ」
「国の為ならばその身すら捧げる。なるほど、御立派ですな」
「……流石はマハラジャ様。ですが、それも国を思えばこそですわ」
「ならばこそ我々も志は同じ、ゼロは余りにも戦火を広げすぎる」
ゼロであるルルーシュが行なった行動、それに誰もが同意するとは限らない。
民衆にしても争いを好き好んでする者などそうはいない、それは彼も同じだ。
「ごめん、二人っきりにして貰えないかな」
「別に構わないけど……」
「先に口説くなよ〜」
ジノの本気か冗談かの判別がつかずスザクは苦笑いしながらジノとアーニャの二人を下がらせた。
彼はそのまま相手側の千葉と卜部にしても同様に下がってもらうようにと視線を向ける。
その眼には敵対、敵意、を含む意思を彼は覗かせていない。
今のインドは中立であり荒事は早々できない。
お互いが示し合わせたかのようにゆっくりと離れていき庁舎の庭に残された二人。
「君がいるという事はゼロも―――――」
「いないわよ。ついでに言っておくけど、今の居場所も知らないから」
「そうか……」
「用件はそれだけ? 悪いけど私はあんたと話す事はな……いいえ、あるわ」
「日本の事か、それともゼロ?」
「それもあるわね、けどもう一つ。ライの事よ、新しいナイトオブラウンズのね」
静寂に包まれた二人はサークルを背に違う方向を見ている。
ライは腰を下ろして眼前に広がる遺跡内の建造物を。
C.C.は悠然と立ったまま眼前に聳え立つ壁画を。
「……なら、どうしてブリタニアから離れたんだ。死を得るだけならブリタニアでもできただろう?」
「そうだな。だが、それではマオを救えなかった」
「それが袂を分けた理由なのか」
「もういいだろう。マオを救えず、願いも叶わずに終わった過去の事だ」
生きてきた数々の時代の事、忘却の積み重ね、それ等を経て彼女はこの壁画の前へと辿り着いた。
結局、彼女は忘れたのではなく忘れたかっただけなのだ。
自分はなにをしても変えられないという現実、呪いと表現した女性から受け継いだ運命の流れ。
それに抗う想いと力、そして自分という存在にピリオドを与えてくれる人物。
その一人である少年は彼女と同じく幾多の過去を超えてここにいる―――――
「また少し薄くなったな……」
「いつもの事だ、もう慣れたよ」
「ふっ、強情な男だ。それにしても……私もようやく得る事ができるのだな、自分自身のピリオドを」
壁画を見つめるのを止めて振り返った彼女は手を伸ばして彼の頭を撫でていく。
彼女が覚えている限りでは彼の髪の色は混じり気のないアッシュブロンドだった。
しかし今は明るさが少し増しておりシルバーブロンドと言うのが正しいかもしれない。
しえん
「なぜ今更―――――」
「事態は私にとっても傍観していられなくなったからだ、今全てを失うわけにはいかない」
「そうしてルルーシュに託す、か」
「いいや、あいつでは荷が勝ちすぎる。だからこそ―――――」
「僕に継承する気か、その永遠を?」
「お前はまだ死ぬべきではない、世界にとってもあいつにとっても」
サークルが蠢くように赤き光を放ち、その輝きで彼女の体を染め上げていく。
呪いの証である紋章も呼応して彼女の額に浮かび上がる。
ようやく、ようやく手に入る、その充足感にも似た感情の中で彼女は彼へと手を伸ばして―――――
「……どうやら来客のようだ、この話はまた後にしよう」
その手をすり抜けて彼が立ち上がると共に赤い光は消える中、彼は暗闇の中に視線を漂わせた。
背中を向けている彼、その背中に彼女はいつかの景色を思い出す。
見送るだけに終わった、淡い憧憬を重ねた景色を。
その場へ足音が一つ、また一つと二人に近づいていく。
「見慣れぬ顔だが……その服、ナイトオブラウンズの者か?」
「そうです。そして御初に御目にかかります、コーネリア・リ・ブリタニア皇女殿下―――――」
「これは……なんだ、ホログラムの類か?」
「驚いたな、まさかこんな無謀な事をするとは」
「っ誰だ!?」
「誰、か。随分と無意味な質問をする子だ」
浮遊神殿の様な場所に誘われたルルーシュ。
そこで彼が出会うべき人物をライはシャルルかV.V.を想定していた。
だが、事態は彼の思惑を既に外れている。
彼の前に現れたのはフードで全身を被った正体不明の人物。
「言語変換が上手くいかんな……思考エレベーター、ラグナレク、アーカーシャの剣―――――」
「なにを言っている!」
「……そうか、この子も落胤の大切な一片か」
「おい、人の話を―――――」
「そう急かすな、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアよ」
中性的な声でルルーシュの名を口に出して制止させた人物。
性別も年齢もその全てを悟らせない、強いて言えば―――――
「子供……なのか、お前は?」
「子供か、その表現が正しいかの判断は委ねよう」
「その雰囲気、C.C.に似ているな……ライにギアスを与えた奴なのか?」
「認識が違うぞ。私は開花させただけだ、あれは元来―――――」
「生まれ持った力とでも言う気か」
「当然だ。今は絶えた存在。継承者にして依代。力の器」
言葉を繋いでいく人物が語る度に世界は移り変わっていく。
ある時は遥か遠い時代の草原。
ある時は荒廃したゲットー。
ある時はアリエスの離宮。
そうして世界は無数の歯車が広がる場所へと辿り着く。
「あれは世界の真理、そして世界の真実の姿とは―――――」
「な、んだここは……それにこれは!?」
胎動し続ける歯車の音は心臓の音に似ておりそれはルルーシュに不快感を超えて恐怖を掻き立てる。
その音と共に無数の仮面がフードの人物を中心にして姿を見せていく。
しえん
支援
「くっ、お前は一体なんなんだ! ギアスとは―――――」
『嘘を着飾る者が真実を望むのか、その偽りの名でなにを手にしたのだ?』
「なにをだと!? 力だ! あのままでは得られなかった軍隊、部下、領土を―――――」
『その為にユーフェミアを喪い、スザクやナナリーには真実を自ら明そうともしなかった』
『ありのままでいたい、自身を理解してもらいたい』
『そう望みながら嘘を着飾る、そそうしながら真実の欲求をするなどと』
「ここは相も変わらずか、口だけはよく回る。その実、なにもしようともしてもいないのにな」
無数の仮面、それと共に己の幻影が話しかけてくる現象。
ルルーシュはパニックを抑えて対応しようにも状況は不可解すぎた。
だが、それに終わりを告げたのはフードの人物だった。
一声と共に耳鳴りにも似た声は止まり、ルルーシュは元凶とも捉えられる人物を見据える。
解答があるとすれば、問い詰めるとすればこの人物しかいないと。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにも仮面があるのだろう、ゼロという仮面が」
「当然だ、人は誰でも嘘をつき生きている。俺もそれに倣っただけだ!」
「それでなにをしてきた、なにをしている。知りうる限りでは―――――」
「このままでは国家間の垣根を超えるものになりましょう、それは望むところではない」
マハラジャは苦渋の色を顔に浮かべて扇達を見渡した。
インド軍区も一枚岩ではなく連邦からの独立を望む者と望まぬ者の両方がいる。
しかしマハラジャは独立を望む側だった、しかしそれはこういう形ではない。
「このまま協力を続けても中華連邦からゼロへと変わるだけ、それでは意味がない」
「それは……マハラジャ氏の言い分はわかりますが、だからってなにもブリタニアでなくても―――――」
「扇、といいましたな。民を守る為にも今はこれしかない、聞けばブリタニアでは行政特区を再度施政しておるそうですな」
「それは存じておりますわ、ですが私達はあの様な―――――」
「わかっておりますよ。ですがな、民を戦場へ駆り立てる国に未来はあるとお思いなのですかな天子様?」
「そ、それは……その……」
ルルーシュの取った行動、それはいずれ戦う術を持たぬ者。
つまり一般人を鑑みない戦いを強いる事になる、それは既に行なわれてしまったのだ。
「我々の協力はナリタ連山からでしたな、あれからの戦果は確かに素晴らしい。ですが被害はどうです、あれから何人の民が死にましたかな?」
戦争に犠牲はつきものかもしれないだろう。
だが無闇に、無作為に出すものではない。
マハラジャはそれが気懸りだった、ブラック・リベリオンにしても黒の騎士団の再編にしても。
その考えに同調、酷似しているスザクもまた気懸りだった。
「ライの事? なぜ君が彼を気にかけるんだ」
「中華連邦で戦ったから、だけじゃ不満?」
「少しね、それに君にとってはどうでもいいんじゃないのかい」
「どうしてそう思うのよ」
「君はゼロを信じているんだろう、利用されているとわかっていても」
スザクにとってゼロという人物像は使えるもの全てを利用する策略家。
そしてスザクにとってライは同じ様な人間だ。
しかし明確な違いを彼は身近で見た、だからこそカレンが気にかけるというのは不思議だった。
「そうだね……ライは利用できるものは利用するような人だ。でも、それは守る為にだ」
「だからなに、ゼロだって―――――」
「ゼロは過程で必要なら全てを壊そうとした、でもライはそれも守ろうとした」
「守るですって? 日本を売った人間が言う台詞?」
「そうだよ。僕は過ちを犯した、そして自分のルールも破った。だから言う資格はないかもしれない」
「なによ、それ……」
「僕もゼロも同じだ、結局壊す事しかしていない。だけどライは違う、僕にもう一度信じてみようと思わせてくれた」
「笑わせないで、なにが信じられるって言うのよ。大体―――――」
「彼はハーフだ、君と同じ。それでも彼はブリタニアの中で戦い続けてきた、相手のルールの中で」
しえん
カレンの知らないブリタニア軍でのライの戦い、スザクの知らない黒の騎士団でのライの戦い。
二人の見てきたライという少年の遍歴、それが二人の彼に対する信頼に明確な差を生む。
スザクは理想の影を背負い続ける姿を、カレンは理想の果てを求める姿を。
同じ理想を目指す二人が見たのは表と裏、だがそれはどちらも彼の真実の姿だ。
「君の考えが変わっていないのはよくわかったよ」
「違うわ。私は認められないだけよ、こんな世界を……」
「僕も同じだ、でも君達のやり方はやっぱり認められない」
想いは同じだとスザクは言う、それにカレンも少しは同調できる。
だが生きる世界も見える景色もこれ程までに違う、だからこそ二人は未だに相容れられない。
「なぜラウンズがここにいる?」
「殿下と同じですよ、ギアスについて少々調べていただけです」
「なんだと?」
コーネリア・リ・ブリタニア、ブラック・リベリオン以降は行方を知られる事が無かった彼女。
服も以前とは違い、皇族憮然というよりも一介の騎士のそれに近い。
左腕にはギブスらしき物が付けられている。
それを見ながらライはノネットから彼女の行方不明になった話を聞かされた時からある答えを抱いていた。
もし彼女がゼロの正体がルルーシュだと知っているとしたら―――――
「殿下は全てを白日の下に晒してゼロに復讐をするつもりですか?」
「……貴公がどこまで知っているのかは知らん、だがその答えは少し違うぞ」
「と、言いますと?」
「ギアスなる卑劣な力、それを我が血族の者が使った。そして―――――」
「ユーフェミア皇女殿下を操り、それを理由にして彼女を撃った」
「その通りだ、私はそれが許せん」
「それが皇族としての責務を放棄してまで追いかける理由ですか」
コーネリアという皇族もまた人間だ、しかし誇りは今も尚ある。
だからこそだろう、こうまでしてギアスの真実を知ろうとしている。
しかし、世界と違い真実は人に優しくはない―――――
「なるほど、ですがその果てには皇帝陛下を討つ事になりますよ」
「……父上をだと?」
「ユーフェミア皇女殿下を撃ったのはゼロです、しかし事のはじまりの一人は皇帝陛下です」
「な、にを……貴公は一体―――――」
「私が話す事を公言しないと言うのであれば知りうる真実を話しましょう―――――」
真実を知り偽りの仮面つける者、真実を知らず真理を追い求める者。
しかし、幾多の願いが集結する園に招かれたルルーシュは自身を追い詰められていく。
「破壊、それに尽きる。だから知らない、知りえない。あの者達の真なる願いを」
「願い……っ、お前はC.C.の願いを知っているのか!?」
「知っている、と言うのは語弊があるとは思うがな。簡単な摂理だ。死、自身の生の終わり」
「死ぬ事……だと……待て、お前は今―――――」
「そう、落胤もまた死を欲している。言葉に出さなくとも心の奥底で願っている、自身の終わりを」
フードの人物が語る、二人の願いの終局にあるのは死だと。
しかし、それは当然の事だ。
生きていればいずれ死は訪れる、だが二人はそれを待とうとはしない。
自らをそこへ導かれたいのだと。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアよ、生きる理由はあるか?」
「……ある、俺にはやらなければならない事が……そして守るものが」
「その為に犠牲を出した、そしてこれからも出すだろう。その中に二人も入る事になる」
「そうはさせない、これ以上はそうしない。そのために俺はこの力を―――――」
「あくまで逆らうか、ふっ……そうか」
しえん
ルルーシュの答えに満足したのか、それとも呆れたのか。
フードの人物が振り返るのに合わせて世界は輝きを増して彼の視界を光が満たしていく。
その光に彼は懐かしい思い出の輝きを見る、それが破滅を招く証だとでもいうように。
「随分と饒舌に話したな」
「これでコーネリアは迂闊には動けなくなる。でもバトレーのところに辿り着き、そしてルルーシュの行動次第では動くかもね」
コーネリアにライが話した内容、シャルルがギアスを保持している事やギアス嚮団との繋がり。
ブリタニアの侵略の裏に潜む真の思惑、それがギアスに関わる事。
その真実に近いのはバトレーだと彼は教えた、しかし代価も無く彼は教えたわけではない。
バトレーは今本国にいるであろう事を付け加えた時に彼はある条件を出した。
ルルーシュの行動を傍観して欲しい、その条件にコーネリアの表情は陰りを覗かせるも了承する。
本国に戻るにも手間は要るだろうという事でノネットに便宜を図る、その申し出の意図。
結局、彼女は知りえた事と見えない真実を抱えてこの場を離れる事になった。
「C.C.の事を問い詰められるかと思ったけど、まだ知らないみたいだな」
「どちらでもいいさ……」
「それもそうだな。そろそろ行くよ、インドの事が気になる」
「待て、まだ私の―――――」
「君の願いは違うはずだ、僕には君が死を望んでいるとは思えない」
視線を交わす事もなくライはC.C.の横を抜けて壁画へと近づいていく。
その態度には聞く耳はないとでも言うように。
二人は目指すところは同じかもしれない、しかしお互いの道を違えた。
それは傍観者と介入者という立場を選んだ故かもしれない、それでも―――――
「お前も私の願いを叶えてくれないのだな……」
「君の本当の願いはルルーシュが叶えてくれるさ。それに言った筈だ、人は変わり変われると」
「そうだな、そういうお前は確かに変わったよ。だが……その果てになにを望む?」
「それを探しているって事にしておくよ」
壁画が赤色の輝きを放ち彼を戻るべき戦場へと導く。
それを彼女はまた見送るだけに終わった。
「幻想に……過去にしがみついてお前はなにを……」
彼女は彼を見送るだけ、そして彼女は待ち続けた。
「ここは……戻ってきたのか?」
「戻ってきたか。で、誰がいたんだ?」
「あ、ああ……ライはどこだ?」
「行ってしまったぞ、お前との約束を守る為に」
「くっ! C.C.今すぐライを追え、あいつを放っておくわけにはいかなくなった」
「どうしたんだ、なにを慌てている?」
「なんでもいい、今すぐ追え! 俺は中華連邦との会談を早期に済ませてくる!」
焦りながらもルルーシュはC.C.にライの追従を要求した。
その行動に彼女はなにかが違うと感じた。
それは出会うべき人間に出会わなかったとでもいうようだと。
「ルルーシュ、お前は誰と会ったんだ?」
「ライの契約者だ、あいつはライの願いが死だと言った。そしてお前も望んでいると」
「ライの? ……いや、それよりも私の願いを聞いたのか?」
「あいつはそうだと言った……C.C.、まさかお前―――――」
「そうだ。私の願いは私自身の死だ、だがライに否定されてしまったよ」
「当たり前だ! 言葉遊びのような事を望んでどうする、それだけの人生に意味などないだろう!」
C.C.の願い、ライの深層意識にある願い。
それをルルーシュは受け入れられないと強く言い放った。
しかし、それは彼女にとってはもう忘れてしまった感覚でもある。
支援
「では、お前は死のない生に意味はあると思うか? 私は思わないな、それはただの経験と同義だ」
「だとしてもだ。それでも理由はあるはずだ。生きる事に、生まれてきた事に」
「それが奪い続けてきた人間がいう言葉として正しいのか、お前は証明でもする気か?」
「してみせるさ。俺が戦う意味を、お前達の意味も。そしてナナリーの願いもだ」
「そうか……しかし、ライの願いも死というのは一体―――――」
相対する二つの組織が中立である場所で出会ってから二日が経過した
その一つはインド軍区に寄港しているアヴァロン高速強襲型、その格納庫でスザクはランスロットを見上げている。
横には先程までランスロット・クラブが待機していたのだが今はインド軍区のドックへと移送されてしまっている。
整備員達も忙しなく右往左往しておりトリスタンとモルドレッドの整備も並行しているようだ。
「スザク君、こんなところにいたのね」
「セシルさん、どうかしたんですか?」
「アルビオンのシミュレーションデータが届いたの、一度目を通してもらえるかしら?」
手渡されたファイルのデータに目は通してみるものの、スザクの頭には中々入ってこなかった。
本国から通達された作戦、そしてカレンとの会話が気になっている。
通達された作戦もそうだが、彼女の意思に変化は無くとも態度の差異が気懸りなのだ。
「どう? これでもエナジーウイングの最終調整がまだだから、あくまで仮想性能になるわ」
「凄いですね、これ……」
「あは〜それも彼のおかげなんだけどね〜」
「ロイドさん? 彼ってライがですか?」
不意に現れたロイドに二人は驚いたものの、慣れてしまったのか然程驚きもせず流していく。
だが、スザクには気になる点があった。
それはライが新型のランスロット、ランスロット・アルビオンの建造に一役買っているという点だ。
「クラブでの戦闘データなんだけど試験機だから一杯取れてね〜」
「そうしたら趣味の世界にちょっと入っちゃって……」
「趣味って……それにこれだと量産には―――――」
「不向きだね〜ま、どっちでもいいよ。君達なら乗りこなせるだろうからね〜」
鼻唄をしながらくるくるとランスロットの周りを回るロイドにセシルがあれこれとアルビオンについて話をしている。
その内容は一介のパイロットには最早未知の世界の会話だ。
それを見ながら近づいてくるジノとアーニャに手を上げて彼は声をかける。
「なあ、この作戦本当にするのか?」
「今の指揮権はスザクに移った……どうする……?」
「ライが外交しているけど、どうだろうね。どちらにしても海上での迎撃戦になるよ、ここじゃ僕達は動けない」
本国から通達された作戦、それは斑鳩の撃沈命令だった。
しかしインド軍区では行動はできない、今はブリタニアと友好的な関係である以上はだ。
その為、現場の判断に任せるという大雑把なものでもあった。
「通常の命令じゃない……」
「どこから出されたんだか、なあ?」
「陛下の近辺じゃないのかな……って、カレン?」
携帯を弄りながら話しているアーニャに視線を向けた時、スザクは見慣れた顔が画面に映っている事に気づく。
撮影したのは政府庁舎の庭で話した時だろうとわかるのだが、なぜ撮ったのかが不思議だった。
「ちょっと気になっただけ……」
「そうだよな〜あの紅蓮のパイロットなんだろ。だったら気にもなるさ、それに結構タイプだったしさ」
「そういう事じゃない……」
「ジノ、君はまた……そうか、あっちにはカレンもいるんだったね」
スザク達が撃てと命じられた敵、その旗艦である斑鳩。
斑鳩もまたインド軍区に寄港している、それも目と鼻の先にだ。
その斑鳩の格納庫も忙しなく人が動いている。
出航するという事もあり整備員達はKMFの整備に余念がない。
「卜部は出会い頭に攻めてくると思うか?」
「わからん。だが、この状況で手を出さんとも考えられん」
「KMFの数はほぼ同数か、しかし紅月は大丈夫なのか?」
千葉が紅蓮へと視線を向けたのに倣って卜部も視線を向ける。
カレンはインドに来てから部屋でノートPCを弄っているか紅蓮の中に篭るを繰り返していた。
なにかに執り憑かれたように、ただそれだけをしていた。
そして今も紅蓮に篭ってなにかをしており斑鳩に戻ってきていたC.C.はそれを眺めている。
「……なんか言ったら?」
「なにか」
「……あっそ」
「ふぅ……まったく……」
信頼を見失った者、願いを見失いつつある者。
所以、今の二人は似た者同士だ。
だからこそこうしているのだろう、言葉も無く視線を合わす事も無くただ沈黙して。
「ねえ」
「なんだ」
「ラクシャータさん、何処にいるか知らない?」
「政府庁舎だろう、呼ばれていたからな」
中央政府庁舎の迎賓室には二人の人間が黙って座っている。
言葉を切り出すべきか、そんな事を思いながらラクシャータはマハラジャの顔を見た。
彼女が覚えている時よりも皺が増え厳格な風体も今は老人憮然としている。
「覚えておるか、お前がブリタニアへ留学しようとした時の事を」
「忘れるわけないでしょ。周りは大反対、賛成したのはマハラジャのジジイだけ」
「あの後は酷く責められたものでな。だが、ああして良かったと今でも思っておる」
「勝手に飛行機やらを手配した人間がそんな事言うわけ?」
ラクシャータはかつてブリタニアに留学していた。
その時にロイド達と出会い、KMFや医療サイバネティクスの躍進にも一役買っている。
だが彼女の留学をよしとする者は少なかった、彼女はインドで比類なき才覚者だったからだ。
だからこそマハラジャは強引に留学させた。
「夢の意味。秋雲の影響。女の考えと王様の本性は誰にもわからぬと言うであろう?」
「よく聞かされたわ〜それ」
「どれ程うねりくねろうと川は結局海に流れ込むともな、儂は今回の選択も正しいと思っておる」
「それで平和に繋がるなら人は争わないでしょ」
この話題、そして今回の中立宣言。
それを散々と二人は話し合った、これ以上は語る事はない。
志す場所は同じでもその為に選ぶ手段は幾つもある。
それが違うだけだった、そういう事だろう。
そんな考えを抱きながら彼女はソファーを離れ部屋を出て行こうとする。
「……ところでさ、裏には誰がいるわけ? マハラジャのジジイだけの考えじゃないでしょ?」
「なぜそう思うのじゃ?」
「この一年の間にさ、黒の騎士団についての意見が分かれていたのが急になくなったら不思議に思うのは当然でしょ」
「それもそうじゃな。とはいえ儂も正確な正体は知らぬ、名もディープ・スロートとしか名乗らんかったからのう」
「ディープスロート、ねぇ」
彼女の中で不思議とその名の意味を反芻してしまう。
ディープ・スロート、その名が示す通りなら随分と皮肉な名前だと。
「ブリタニアの戦艦はまだ追ってきているのか?」
斑鳩が出航して以降、扇はアヴァロン高速強襲型が追跡する事に不安が止まらなかった。
オペレータ三人が現在位置、通過地点、敵艦の現在地を告げていくのを聞きながら彼は判断に迷う。
カレン達がナイトオブラウンズに出会ったという情報、つまり相手には三人のラウンズがいるという事。
支援
(こちらの戦力は限られている……でも相手はエースが三人、数は同じでも―――――)
「扇さん、このまま海に出ましょう。相手も陸地の間は手を出してこないでしょうし」
「カレン!? しかし、それだと……」
「陸地伝いじゃ帰港が大幅に遅れる、だったら相手が動くかどうかを判断するのにこっちがあえて海に出ればいいと思う」
「カレン、お前……」
「私は紅蓮で待機してるから、それじゃ」
「頼りになりますわね、カレンさんも。扇さん、どうされます?」
「うーん……仕方がない、確かに手を出すとも限らないでしょう。よし、斑鳩はこのまま海上へ移動だ」
斑鳩の針路変更のアナウンスが流れる中、更衣室でカレンはパイロットスーツに着替えながら頭の中で考えをまとめていく。
敵の数は恐らく三、こちらはC.C.が戻ってきた事で飛翔できる機体は四。
数で圧せるだろうが相手の実力は侮れない、ましてやこちらには―――――
「出撃する気か?」
「戦闘になったらね、相手の出方次第よ」
「随分と手慣れた事を言うな、まるでラ―――――」
「それ以上言わないで! 裏切った人間の名前なんか……」
「……だが、そういう判断を下せるようになったのはライの残した物のおかげだろう?」
「わかってるわよ……でも、聞きたくない」
「そうか、受け止めているならいい。だが、もう手は貸してはくれんのだろうな。私にもお前にも……」
『斑鳩はまもなく海上へ出ます。卜部機、紅月機、C.C.機、千葉機はスクランブルの準備を。各団員も所定位置への移動を』
アナウンスと共に斑鳩艦内に緊張が張り詰めていく。
アヴァロン高速強襲型が動くかどうか、カレンにはスザクがどうするのかが判断しきれなかった。
そしてスザクも同じで行動を見送るかどうかを迷っていた。
「どうする……?」
「相手は海上に出たぜ、あれだと誘ってるんだろうな」
「わかってる……」
「アヴァロン高速強襲型もまもなく海上へ―――――」
斑鳩が海上に出て数分、これ以上静観すれば相手は加速して追跡戦に移行していまう。
攻めるべきか、傍観するべきか。
今にも迫る海辺、その判断をスザクが下そうとする中で迷い無く進む者は止まろうとはしない。
『オールハイルブリターニアッ!』
『こ、高熱源反応!?』
斑鳩とアヴァロン高速強襲型が同時に発見した反応は砂の大地を切り開いて大空へとその姿を現した。
KGFジークフリート、ジェレミア・ゴットバルトが駆る魔弾の射手は再び彼等の前に姿を曝け出していく。
「黒の騎士団、貴様達にはここで潰えて頂こう!」
歯車ががたん、がたんと音を立てて時を刻む世界。
その中でフードの人物は無数の仮面を背に佇み続けている。
『枢木よ、私は海を渡ります。貴殿の血も絶やさぬようにという当主の言葉もあります』
「願いは徒華、決して咲く事はない」
『に、いさ、ま……だい、じょ、ぶ、だよ……』
「しかし芽吹く時は訪れよう、今はまだ見えなくとも」
眼前に拡がるのは草原、かつて見たであろう景色。
その草原に吹き荒ぶのは風、その風がフードをたわわに揺らして人物の顔を晒していく。
髪の色は混じり気のないアッシュブロンド。
顔立ちは子供、それも少年そのものだ。
その閉じられていた双眼の瞼から深い色の碧眼を覗かせて少年は囁く。
「世界よ、なぜ人に魂という供物を与えたのだ―――――」
彼の眼前を馬が駆け抜けていく、その馬上には少年が跨っている。
その背でかつて王はそこにいたのだと語るように。
以上です
えー前回の本編に続きブッチギリなIF展開の連続で申し訳ないです
それと同時に少しづつ色んな事が見えてきたと思ったら見えなくなったりで先行き不安な感じですね
各自好き勝手に病んでおりますが元気になる日は……くるよ?
そんなこんなで次回は前日譚三話です
一周年記念に特になにもお届け出来ない事を先に謝罪しておきます
申し訳ないです、ただ違う場所で遅れながらでも一周年記念品を
笑顔で投下したいと思います
では、失礼しました
支援
>>325 ぷにぷに卿、GJでした!
なかなかのボリューム、大変読みごたえがあり、良かったです。
結局、このライはどの勢力に属しているのか、あるいは属していないのか……
そして、大地を貫き現れたジークフリート!
ジェレミア卿ktkr
……ジークフリートは地中に潜れるのか?
――はっ、まさかドリル!? 新武装・ドリルなのか!?
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
誰もいないかなー?
いませんよねー?
いないならー
投下しちゃいますよー
■タイトル:ライの固有結界FFX
■本文7レス
■元ネタは某動画のアレ
■某職人氏とのチャットリレーを元に書き起こしました
■このSSに限ってはライのCV保志某さんで
■大注意『このSSはみなさんの正常な精神とライのイメージを汚す恐れがあります。その点についてよく考えてからどうぞ』
■筆者にカミソリはおくらないでください
世は事もなく、クラブハウスは今日も平穏無事だった。
「やっほ、カレン。今日は出席できたのね」
「あ、会長。えぇ、今日は体調がよかったので」
ばったり出会ったその場所はクラブハウス、生徒会室の扉の前。
カレンがドアを開け、ミレイがくぐる。
特にどうということもない、当たり前の生徒会室の日常であった。
「ううーん」
部屋に入った二人がまず見たのは机につっぷすシャーリーの姿。聞こえたのはそのシャーリーのうなり声。
雑誌。
机の上に広げられた雑誌を見て、シャーリーがうなっていた。
「どうしたのよ」
疑問に思い声をかけるミレイ。
すると待ってましたとばかりにシャーリーがそちらを向き、語りだした。
「これ見てくださいよっ。女の魅力は胸の大きさに比例するって書いてあるんですよっ!」
雑誌を広げて見せる。
それはよくある少女向け雑誌の特集記事だった。
『あぁ、よくあるよくある』
ミレイ自身興味がないではなかったが、少女という年でもあるまいしと読もうとしたことはない。
「バスト☆マニアックス」
それがその特集記事のタイトルだった。
大変ですよぅ、胸の大きさで女の価値がきまっちゃうなんてぇ! とシャーリーは割と真剣にあたふたしている。
「あなたねぇ」カレンが呆れたようにつぶやいた。
「女性の魅力が胸の大きさなんかだけで決まるとかおかしいんじゃないかしら」
大体ね……となおも否定の言を続けようとするカレンの口が唐突に止まる。
シャーリーの視線が自分の胸の辺りをさまよっているのに気が付いたのだ。
『なにこの鋭い目付き……』
背筋に冷たい物を感じ、カレンは思わず手で胸を隠すポーズをとってしまう。
「な、なによッ……」
思わず怯んでしまった。それでも強気な言葉を口にする。
ニヤリ。
精神的に優位に立った自分を悟ったのか、シャーリーは更にその上をいく超強気な笑みを浮かべた。
「いやあ、説得力ないなぁ〜って思ったんだも〜ん」
この胸で、胸の大きさなんかって言われてもねぇ〜とシャーリーはカレンのソレをぽよんと突っついた。
「ちょ、ちょっとシャーリー?!」
真っ赤になるカレン。だけど言葉にならないのだろう。口がパクパクするばかり。
── 世は事もなく、クラブハウスは今日も平穏無事だわねぇ〜 ──
そんな二人をミレイは楽しそうに見ていた。
だがちょっと待ってほしい。
彼女は誰だ?
そう、ミレイ・アッシュフォードだ。
トラブルを見つけようものならば、猛進──猛襲──猛追の末に予測の斜め上を産み落とす女。
トラブルがなければないで、自らをもって渦巻きの中心と為し、惨劇──悲劇──喜劇を繰り広げる女!。
ルルーシュ・ランペルージは語る。
「彼女こそが災厄の中心(ハート・オブ・メールシュトローム)なのだ」と。
だから、彼女がこのような発言をするのは当然だった。
「じゃあ、さ。聞いてみようじゃない。どっちの言い分こそが正しいのか」
ルルーシュ流に言えば油の池に松明は投げ込まれた───そんな感じであろう。これがその瞬間である。
もっとも、
この時、何の気なしに投げ込んだ言葉が、あんなにも凄惨な災厄を呼び起こすとは………災厄の女王たる彼女さえ……知る由はなかったのだった。
「カレンの胸がいかに説得力のない胸かってことですか?」
ブハッ。
シャーリーに何かを吹き上げるカレン。
「ち、ち、ちがうでしょ! 女の魅力は胸の大きさに比例するかどうかってことにでしょ!!」
びちょ濡れのシャーリーに台拭きを渡しつつ(手近に拭くものがそれ以外なかった)、まぁまぁとカレンをなだめるミレイ。
しかし、その目は笑っていない。
カレンは気が付かない。シャーリーも気が付かない。
『面白い事』を見つけたときの彼女の、目。獲物を追いつめる狩猟者の目に。
「こういう水掛け論なことは第三者の視点っていうのが大事なのよね〜。だ〜か〜ら〜聞いてみましょうよ、うちの男衆にッ!」
そこで初めて「うん?」とか「おや?」とか思ったのだろう。
「あの〜」とカレンが恐る恐る声をあげ、「えーっと………」とシャーリーもミレイにうかがいをたてる。
「誰に、どんな風に聞くんですか?」
彼女たちにしてみれば、いつのまにか予想外の方向に流れはじめてるこの状況を信じたくないのだろう。
ミレイはにっこりと笑った。
「──────────────!!!!!」
二人は縮み上がった。
あぁ、これは悪魔の笑みだ。
自分たちが点けてはいけない火を灯してしまったのだとやっと理解したのだ!
「だからぁ〜、うちの男衆に聞くのよォ」
繰り返す。
「はたして女の魅力はバストの大きさに比例するのか? 小さなシャーリー、大きなカレン、どっちの胸こそ魅力的なクイーン・オブ・ジ・オッパイであるかをねっ!!!」
後悔とは、後になって悔やむから後悔と書くのだ。
二人はその言葉を多分一生忘れないことだろう。多分。
いまや精肉工場に曳かれていく牝牛の気分の二人を前に、ミレイはテンションMAXでとても嬉しそうだ。
暇つぶしのネタが出来て嬉しいんだろうなァ。
シャーリーは思った。
ちょっとだけ違う。
暇つぶしのネタが出来て“超”嬉しい!
ミレイはそう思っていたからだ。
ここ最近はイベントのネタがなくて退屈していたミレイである。まさに渡りに船!
「たとえばぁ」
その人差し指を形のいい唇にあてて、ミレイは名前をあげる。
「リヴァルとか」
「ヤです」
「遠慮しておきます」
二人の返事は早い。
シャーリーは特に「ヤ」の所に強く韻を踏んだ。ホントにイヤなのだろう。
カレンはなんの感情も込めずに言い切った。例えるならば路上の石ころのごとく。ホントに何の感情も向いていない相手なのだ、リヴァルは。
しかしこんな反応、ミレイも予測の範囲内。まったく動じてなどいない。
「スザクなら?」
「正直あんまり」
「絶対にイヤです」
これまた返事が早い。
ほうほうほう。
その巨大な胸の内で(ほっとけ)ミレイは意外な感触を受けていた。
カレンがこんなにも強くスザクに否定的な感情を発するとは。
『まぁいいや』
だが今回はまず関係ないファクターである、そのうち何かのネタに使うかもしれないにしても。
「ルルーシュ・ランペルージ!」
「え、ルル……ですか?」
シャーリーの返事がつまる。だが、
「会長、いいかげんにしてください」
ようやく一時の動揺から自分を取り戻したらしいカレンが低い声をたてた。
『ルルーシュの名前を持ち出したって反応するのはシャーリーだけよねぇ』
当然のことだ。カレンは冷めた表情でため息をついている。
しかし、ミレイには切り札があった。いわゆる一つのスペードのエースってやつだ。
『ライの名前を出してもそうやって落ち着いていられるかなァ!』
そう思ったその時、部屋の扉が開いた。
「おつかれさまです」「失礼します」入ってくると同時に聞こえた声。
ライとナナリーが仲良く一緒に部屋に入ってきたのだった。
「あ、いいところに………」
言いかけて止める。ライだけならばちょうどよかったトコなのにと、声を掛けかけて言葉に詰まるミレイ。
『ナナリーがいるんじゃいけないかなぁ。教育上ちょおっとよろしくないもんね』
「なんです?」と聞き返すライに「あはははは〜」と言葉を濁すミレイだった。
「ヘンなミレイさんだなぁ」と爽やかに笑い、ライはデスクについた。
それが始まりだった。
「うん? なんですか、これ」
ライが手に取り、
「あ、それ私の───?!」
シャーリーが声を上げ、
『あちゃあ』
ミレイはその巨大な胸の内(しつこい)で天を仰ぎ、
『くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」』
カレンはあわてふためいた。
「えっと……バスト☆マニアックス?」
ライは雑誌の特集記事のタイトルを大きな声で読み上げる。
「あ、いや。それはね………」
ミレイが声をかけるも間に合わない。ライは読み続ける。
「女性の魅力はバストの大きさに比例する……ですか、なるほど」
ライの表情が変わった。遠い目でどこかを見るような、そんな切ない顔。
そんな表情のライは少女たちの胸のその鼓動を速めてしまう。
「以前聞いたことがあります。ブリタニアという国の強さはバストにこそある。オール・ハイル・おっぱぁい、と」
『ああぁーッ!!!!!』
ミレイ・シャーリー・カレンと三者三様に頭をかかえる。
── オール・ハイル・おっぱぁい ──
それは神聖ブリタニア帝国、唯一皇帝シャルル・ジ・ブリタニア───またの名をおっぱいエンペラー───が全世界に向けて演説した言葉!!
しかし、まさかそれを肯定する言葉をライの口から聞くことになろうとは……。
まさに現実は予測の斜め上。
ミレイ自身も「そんなわけあるか!」とようつべで何度も見直したあの演説。
「オール・ハイル・おっぱぁい」
あのいかつい顔で、あの渋い声で、あのetc…etc…、とにもかくにも皇帝陛下は確かに言ってのけたのだ!
オール・ハイル・おっぱぁいと!
『ラ、ライはそんなこと言っちゃダメェ!!』
少女たちの声にならない声が世界をかけめぐる。
そんな悶絶する三人に気が付いていないのか、ライは静かに断言した。
「確かに女性のバストは母性の象徴、それをもって国家の力のシンボルであるとする皇帝の持論はもっともなものです」
一応支援
ピシッ
何かが折れた。自分の中の決定的な何かが折れた音を三人の少女たちは聞いた。
ライは遠い目で過去に思いをはせていた。だから彼女らの異常に気が付かなかったのだ。
そう、彼が思いをはせていたのははるかな昔、かつて彼が王だった頃の話。
「ライが命じる。お前たちは我らが母なるおっぱいに仕えよ!」
キュイィィィィン……カシャッ!!
「「「イエス・ユア・マジェスティ!! オール・ハイル・おっぱぁい!!!」」」
母と妹が幸せに暮らせる世界。それは皆が母なる母性の象徴を称える世界だと信じて、かつてライは戦っていた。
もちろんその世界はもはや存在はしない。自分自身の手で、この手で終止符をうってしまったのだから。
失われた時は、命はもう還らない。
だが、数百年の時を経たこの現代に自分が信じたその想いは生きていたのだ!
黒の騎士団に属するライにとってブリタニア皇帝シャルルは確かに敵ではある。
だが、それでも! それでもそれはライにとっていくらかの救いを感じさせるものだったのだ。
『こんなに嬉しいことはない! 許してくれるよね、母上たちにはいつでも会いにいけるから』
一人物思いにふけながら涙を流すライを女たちは遠巻きに見ていることしかできなかった。
だが、スっと一人、ライの前に立つ者がいた。
ナナリーだ。
しばらく考え込んでいたナナリーは意を決した表情でその一言を告げた。
「この、おっぱい星人」
精一杯の一言はしかし、ライにダメージを与えられない!
「違うね、間違っているよ、ナナリー」
優しい微笑みをたたえ、穏やかにライはナナリーにこたえる。
「女性を称えるのに妙なレッテルなんて必要ないんだ。ただ、僕らは母なるものを愛しているだけなんだよ」
百歩ゆずって言ってることはまともと言えなくもない。ただ、その手つきがいやに犯罪的だった。
『どうしたっていうの? ライ!!』
遠巻きにライを観察しながらカレンは思った。そして、ハっとする。
『ライ?! もしかして記憶が!!!』
が、とりあえずそれはこの話には関係ない。
ナナリーはそのライの言葉を聴いて率直に言い返した。
「じゃあ……このマザコンめ」
それは違和感。
普段のナナリーならばこんな刺々しい言い方などしないはずなのに。
まして、おっぱい星人だの、マサコンめだの、ナナリーが口にするにはやや似合わない言葉ばかりだ。その言葉にはどことなく“変態!”というニュアンスが混じっていただけに!
しかし、
バンッ!!! いきなりあがった大きな音に、部屋にいる一同は飛び上がって驚いた。ライが机を叩いて立ち上がったのだ!
「そうさ! 男はみんなマザコン……いや、むしろ変態。変態という名の紳士なのさ! 変態紳士なんだ!!」
『な、な、なんだってー』ミレイは心の中でお約束の一言を棒読みした。
「おっぱいがなぜ最強か? それはおっぱいこそ母性の象徴! おっぱいこそ母なるグレートマザー! 最強たるおっぱいはグレートマザーの象徴だからこそ許されるんだ! グレートマザーだからこそ最強の二つ名に相応しい!!」
その鬼気迫るライに誰もが思考停止に陥っているようだ。
「わかるかい? なぜおっぱいが最強なのか? それはただおっきいとか、形がいいとか、色がきれいとかすべすべしてるとかそんなことじゃないんだ!君たちは何もわかっていない!わかってない!!」
「そもそもおっぱいそのものに萌えなどない!それは絵に描いたおっぱいに意味などないように。それはもう確実だ!コーラを飲んだらゲップが出るように確実この上ないことなんだ!」
「ならばなぜ最強なのか?なぜ変態紳士はおっぱいに憧れ、おっぱいを求めるのか?仮に例えばよしんばよしや、豊胸手術をした男のおっぱいにも変態紳士は憧憬を持つのか!」
「 あ り え な い ! 」
「なぜならばそれは紛い物のおっぱい。所詮は男の厚い胸板の上に生えたシリコンの塊にすぎないからだ!そこにグレートマザーの神性など微塵も存在しないからだ、微塵も存在しないからだぁぁッ!!!」
「大事なことなので二回言いました」
「いいかい、同じおっぱいを取り上げたってその適正にかなうのは母性をもちえた女性のみ!大きいとか小さいとか形とか色とか触り心地とかそんなものに意味はないんだぁッ!」
「ましてマザコンだのおっぱい星人だの変態紳士だのといったレッテルも意味などなさない!ただグレートマザーの母性と神性に捧げる憧憬を言葉と行動で示すことだけが重要なんだぁッ!!」
「それゆえに僕たちにはおっぱいは必要!おっぱいは正義!オール・ハイル・おっぱぁい!オール・ハイル・おっぱぁいッッ!!!」
言い切った。言い切りやがった!
ライは言い切った。ナナリーはそれでも立ち向かう。
「ライさん、ちょっとお聞きします」
「うん、なんだい」
「貴方の論理では、貴方の言うグレートマザー……母性をもたれる方であればどんなおっぱいでもいいとしか聞こえません」
ビシッとナナリーはトドメをさすかのようにライを指差した。
「貴方の言う最強のおっぱいとは、貧乳でもかまわないということではありませんかっ!!!」
唇をかみしめるナナリーにライは
「その通りだけどなにか?」
ポッ
ナナリーは桜色に頬を染めた。
「おっぱいは───平等では……ない」
ナナリーがあらためてライの方へ顔を向ける。
「その大小、美醜、色も形も何もかもが違うからこそ………競い合い、その存在の価値を高めているんだ。だからねナナリー」
ライはニコっとさわやかな笑顔をナナリーに向けた。ナナリーにもそれがわかった。
「ナナリー、僕は君のおっぱいだって愛しているよ。心から」
その一言にナナリーは自分がさらに真っ赤に赤面したことを感じた。それがわかった。「ラ、ライさん………わたし……」
そっと差し伸べられたライの手をとる。彼の真心が伝わってきて、さらにさらにもっと顔が熱く、赤くなっていく。
そして
「ライ、もう思い残すことはないな」
ルルーシュの声が部屋のなかに響き渡ったのだった。
冷たい声とともに振り下ろされる鉄パイプをライはとっさに受け止める。
『おー、真剣白羽取りだー』
何の感慨もなくミレイは初めて見たサムラーイの妙技をデジカメに撮った。
「危ないじゃないかルルーシュ!」
受け止めると同時にルルーシュの腕をとって組み伏せるライ。
「うるさいっ! お前を殺して俺も死ぬーッ!」
「何を言っているんだ君は!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ二人の変態紳士の姿をミレイはやはり無感動にデジカメに撮る。
カシャッカシャッカシャッとシャッター音だけを彼女たちは受け入れる。
それ以外の音など、もう耳に入らなかった。
「さぁて…咲世子さんにお茶でも入れてもらおうかしら。ナナリーも行きましょ」
「はい、ミレイさん」
「あ、部活行かなきゃ〜」
「帰宅してもう休もうかしら」
彼女らが部屋を出て行くことに気がつきもしないで変態紳士二人は上になり下になりからみあう。
「このマザコンめ!」「君にだけは言われたくないよ!」同族嫌悪のお手本のような言葉を掛け合うのだ。
立ち上がり対峙する二人。
「お前がこんな変態だなんて思ってもいなかったぞ!」
「変態の先輩は君の方だろ! なんだよあの変態衣装!!」
「な!? 言ってはならんことをー! お前だって一度くらい着てみたいって言ってたくせに!!!」
「やめてよね。僕が本気になったらルルーシュがかなうわけないだろ!」
「ラァァイィィィッッッ!!!」
「ルルーシュウゥゥゥッッッ!!!」
ターンッ
どこかの遺跡の奥で銃声が鳴った………そんな既視感(デジャヴュ)。
それでも…、
世は事もなく、クラブハウスは今日も平穏無事だった。
(デデデデ、デデッ!)新ルート『乳の騎士団ルート』が追加されました。
異常です(割と間違っていない)
某所にて酔っ払った勢いでチャットした時のリレー(?)をベースに書いたものです
相手してくれてた某氏には「チャットの時の文章そのまんまでええやん」とか言ってしまいましたが
結局チャットの内容はベースとしてほとんど丸々書き上げる形にしてしまいました。ごめんなさいです
やっぱりギャグとかコメディは向いてないようです。シリアスの方でがんばります
次回は「手をとりあって」その4.25 篠崎咲世子編にてお会いしましょ
それでは、また
あおいひとでした
今気が付いた!
支援してくれた人ありがとーですー
>>338 乙です。
ライがピンク板の住人のようです。見事にライへの幻想を破壊させる問題作w
告白します。私もおっぱい好きです。ゲーキャラスレの6つ目を立てたのは私です。
コードギアス ロスカラのライ 温泉には大きなオッパイが6つ
それでは、次回作を期待して待ってます〜
>>338 すげーライを媒介にしてキラ山さんとルル山さんの二大人気イケメン主人公対決が実現したw
ルル山さんがんばれwそれはそれとして、やっぱりおっぱいはいい…乙でしたー
>>338 蒼い人GJ!!
っていうか大丈夫かブリタニア皇族?!久しぶりに某MADを見たくなりました。
でわでわ
>>338 チャットの相手をした某氏です。
蒼運命さんの嘘つきwww
まぁ、冗談はそれくらいにして…。
さすがというか、何と言うか……。
ベースとなった面白さ+アルファですからねぇ。
(ベースになったチャットもかなり壊れててそのままでも面白かったけど)
さらに壊力抜群の面白さでした。
GJです。
なお、機会があったらまた、やりましょう。
あの時の蒼運命さんはすごかったので、今度は私も負けずに酔っ払ってやりたいなと思いますwww
( ゚∀゚)o彡 ゚ おっぱい! おっぱい! オール・ハイル・おっぱい!
>>338 BLUEDESTINY卿、GJでした!
おっぱい! おっぱい!
おっぱいを全肯定する、ライ、そこにシビレる、アコガレる!
皆大好きだろう? おっぱいが!!
ブリタニア皇帝のおっぱい演説、面白いよね、あれ。
>本気になったらルルーシュが たしかに生身じゃ無理だw
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
346 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 18:18:52 ID:ZIAKm+Nt
タイトルの意味がわかんなかったんだがググってみて納得
そうかK1も保志だったか
とりあえず乙
チャットって何?
どこにあるの?
>>325 ぷにぷに卿、GJです。
いやぁ、話、掘り下げられてますねぇ。
それにキャラクター描写がいい。
そして、IFだからこそ出来る展開の冴え。
いやはや、じっくり読めば読むほど味が出てきますね。
この話でライやカレンはどうなるのか。
すごく楽しみです。
次回も首を長くして待っています。
久しぶりに投下します。
350 :
チュン:2009/03/24(火) 01:49:12 ID:gKSmf46i
受験が終わって見事受かったので、久しぶりにきました。
もう忘れているでしょうが、「優しいもうひとつの世界」その2、別名「ルルーシュの災難、ナナリーの制裁」
大体8レスくらいです。
351 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 01:53:11 ID:SggDgL7o
支援
クラブハウスの私の部屋で、私は自分が何故ここにいるのかを説明をしました。
「待ってくれ、全く理解出来ないんだが」
お兄さまは頭は良いけどスザクさんと同じぐらい頭が固いのが難点です。
「……僕は信じるよ」
ライさん…ありがとうございます。
「おい!そんな簡単に!」
「いいじゃないか、それにルルーシュ、君はナナリーの言うことが信じられないのか?」
「うっ!!……」
凄いです、あの、お兄さまが押されています。ライさんはお兄さまの弱い所を知っているようですが、
「あ、あの、ライさん」
「なんだい?ナナリー」
「お兄さまを余りいじめないでください」
「「!?」」
………あれ?空気固まった?
「な、ナナリィィィ!!」
「キャ!?」
お兄さまがなぜか抱き付いてきました。
「ナナリー!良かった!やっぱりナナリーは俺の味方なんだな!」
……お兄さまは何を言ってるんですか?
「最近、冷たかったから俺、俺……」
この世界の私はお兄さまに冷たい?どうして?
「それはお兄さまがライ さんに対して余りに酷い事をするからです!」
もう一人私が言った
え?というか私の思考を読んだ?それとも未来を読んだのですか?
「うふふ、それは秘密です」
また!?また読まれました!凄いです!
「?……ナナリー、さっきから何言ってるんだい?」
不思議そうにライさんが訪ねました。
「うふふ、何でもありませんよ。ライさん」
私……怖いです。よく分かりませんが怖いです。
「ただいま帰りました」
懐かしい声を聞き、私は振り向きました
バサッ!
咲世子さんが持っていた物が落ちたようです。
「ナナリー様が2人!?……まさか、ナナリー様陰分身が出来るのですか!?」
「「えっ?」」
咲世子さん…何言ってるんですか?
「私ですら、会得出来なかった陰分身を……ナナリー様、今度よろしければお手合わせしてくださいませんか!?」
駄目です!咲世子さんが暴走しています!
「ふぅ、咲世子さん、実は………」
ライさんが咲世子さんに事情を説明してくれています。
でも。信じて下さるでしょうか?自分でいうのもなんですが、かなり私の説明は怪しかったですし……
「あぁ、なるほど、そうでしたか。勘違いしてしまいました」
……あれ?何だか普通信じてくれてる? 「咲世子さん!?今の話を信じるんですか!?」
お兄さまが驚いたように尋ねました 「信じるもなにもナナリー様の言う事を疑う事などできません」
私、泣きそうです。信じられない事を言っているのに信じて貰えて……。
「ほら、ルルーシュ君だけだよ。ナナリーを疑っているのは」
「なっ!?おい!俺は疑うなんて一言も言ってないぞ!」
「ルルーシュ様がナナリー様を疑うなんて…あなたはシスコ・・妹思いが良いところだったのに」
咲世子さんが明らかに軽蔑しているようです。って言うかシスコンって言かけましたよね?
「だから!俺は疑ってなどいない!」
「お兄さまは私を信じてくれないんですね…お兄さまに信じてもらえないなんて私どうしたらいいんですか!?」
もう一人の私まで…でも、何だか笑ってるような……。
「だから俺の話を聞いてくれ!」
「お兄さまは私を信じてくれないんですね…」
もう一人の私まで…でも、何だか笑ってるような……。
「だから俺の話を聞いてくれ!」
なんだかショートコントを見ているみたいで
「うふふ」
思わず笑ってしまうほどお兄様は慌てていました。
「ナナリー、どうする?君の事を疑っている悪いお兄様を許すかい?」
ライさんが尋ねてました。
「だから、俺は」
「ナナリー様が望むなら、多少心が痛まなくもありませんが、ルルーシュ様にお仕置きをしますわ」
咲世子さんがお兄様にお仕置き!?…何をするんでしょうか?
「だか・・」
「それはいいな。咲世子さん手伝いますよ…ルルーシュには日頃の嫌がらせで酷いめに合わされてばかりですからね」 お兄さま……ライさんに日頃どんな嫌がらせをしているんですか? 「おい、ライここは穏便に…な」
なんだか流石にお兄様がかわいそう思えてきました。
「ライさん、咲世子さん」
「なんだい?」
「はい」
2人が私の方を向きました。
「私はお兄様をゆ「許しません!」
「「はいわかりました」」 待ってましたとばかりにクラブハウスへと向かう執行人と受刑者。
「ナナリー!?っておい!離せ!両脇を持ってはこぶな!止めろ!止めてくれ!」
バタン!
一応支援
「ナァナァリィー!!!!!」本当に何をされたのでしょうか?
あの後お兄様は
「ナナリーは絶対、ナナリーは絶対…」
と呟いていました。
その日クラブハウスに生徒会副会長の悲鳴が渡った。
オマケ
「ライ様これなどいかがでしょうか」
「いいね、可愛く映ってるじゃないか」
「頼むから、その写真だけは」
咲世子が持っている写真これはミレイに頼まれて盗撮していた、男女逆転祭りの写真
「ナナリーのもあるんだ、貰って良いかい?咲世子さん?」
「どうぞどうぞ。何枚でも差し上げます」
「ダメだ!ナナリーは、ナナリーだけは」
「そのナナリーを信じてあげなかったのは誰かな」
「くっ!、俺は俺は………ナァナァリィー!!!!!!」
359 :
チュン:2009/03/24(火) 02:39:30 ID:gKSmf46i
あ、8レスいかなかったか、やっぱり一時間やそこらじゃこれくらいにしかならないよな。
とりあえず、今回はこれで終わりです。支援ありがとうございました。
受験が終わって志望校に受かり気持ちに余裕が出来たのでたまに投下しにきます。
最後に本当にありがとうございました。
しえん
361 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 10:20:43 ID:SggDgL7o
ここのロスカラSSを読むと安心するな。まだまだロスカラ熱は冷めてないと再確認。関係ないかもしれないがライのキャラスレはもうダメかもなひどい荒れようだもの。ここもあっちのように荒れないことを祈るばかりだ。
362 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 11:09:24 ID:2Wz1sJu1
陰分身って卑猥すぎるww
影分身じゃね?
>>359 チュン卿、乙でした。
さ、咲世子さんが影分身を使えないだと!?
……いや当たり前か、使えたら人としておかしい。
写真――罰は写真を見られること、だったのかな?
貴公の次の投下をお待ちしております。
>>361 他スレに突撃したり拒否されてる動画直リンする馬鹿が粘着してるからなぁ
365 :
チュン:2009/03/24(火) 13:44:00 ID:gKSmf46i
>>362 本当だ影分身が陰分身になってる。確かに卑猥ですね。
……ネタが来たけど、ここじゃ無理ですよね。
>>361 本当だよ
どこぞのアホが他スレに迷惑かけたせいか余計な連中まで来てしまってさ
とにかく職人様たちGJ!
367 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 23:38:56 ID:XeE3dqqI
職人さん達にはいつもいつもSSを投下していただきありがとうございます。これからも頑張ってください。それにしてもキャラスレは酷い有り様だこっちにまで飛び火しなきゃいいけどな。
作品投下を行いたいと思います。
お暇な方は支援をよろしくお願いします。
タイトル:LOVE×VS
ジャンル:ギャグ
しえん
LOVE×VS
今日もいつもと変わらない日だ
そう、いつもと変わらない日
ただ……
少しいつもよりも五月蝿い日かもしれない
黒の騎士団の一員であるライは部屋で明け方から始まった仮眠と称した熟睡を思う存分に味わっていた。
時刻は既に十一時を過ぎており、普通の人ならば寝すぎている時間だ。
しかし、突然の大声によって起こされた。幻聴だと思ったがその声は今も外から響いている。
日本でもブリタニアでも見かけることは難しい灰銀色の髪を掻き、寝ぼけ眼を覚ます。起き上がり、扉に向かう。
声からして、誰のかは大方予想がついていた。
溜息にも似た息を吐き、ライは大声の原因のいる場所に向かった。
ラウンジの近くまで来ると声の五月蝿さは一層に増してきた。
ライはまたもや、溜息にも似たモノを口から静かに吐き出した。何故なら、ライはその声に聞き覚えがある。というよりもその声の持ち主を確実に特定していた。
部屋の中に入ると案の定の事その原因となっている二人が口論していた。
「私です!」
「いいえ!私ですわ!」
大声の発生源――片方は、卓越なKMFの操縦技術で紅蓮弐式を駆る少女、紅月カレン。そして、もう片方は黒の騎士団最大の援助組織であるキョウトの姫君、皇神楽耶である。
二人は口論。扇と井上は二人を止めようと必死だ。横では玉城が五月蝿そうに、寧ろ切れる寸前という感じで雑誌を読んでいる。
ディートハルトとゼロは喧騒を聞こえないものとしているのか、テキパキと次の作戦に関する話し合いを行っていた。
できるならば、この二人を止めて欲しいと願うがそれは期待するだけ無駄であると悟ったライは視線を動かす。
視線の先にいたのは積み重なったピザを黙々と食べているC.C.。ゼロのように聞こえない振りでもしているのかカレンと神楽耶の口論に興味を示している様子はなかった。
「…どうしたんだい、二人とも?」
しえん
喧嘩などを好まないライは少し呆れたように言いながらラウンジに入ると二人の口論はハタと止まった。他は各々の事をしている。
カレンと神楽耶の言い争いは何も今回が初めてというわけではない、神楽耶がアジトにちょこちょこと視察に来るようになってから二人の口論が聞こえてくるようになり、ライが二
人がいる部屋に近づこうとすると、口論はピタリと止むのでライは原因が分からずじまいなのであった。
「ライ!」
「ライ、丁度良いところに来ました。答えてもらいたいことがあるのです、キチンと答えてくださいまし!」
神楽耶の言葉からして、どうやら二人の話題はライの事で持ち越しているようだ。
「え?何で?それにしても、二人とも何を喧嘩しているんだ…カレン、何があったんだ?」
神楽耶の気迫にやや圧されながらもライは疑問の声をカレンに言いながらは二人の下に歩み寄る。
「私じゃない、彼女が……」
「私ではありませんわ、彼女からです」
そう言うと、二人は互いに指を指し合う。
そんな二人の言葉はほったらかにしてライは頭を掻きながら、他の傍観者に何かを求める視線を向けた。
しかし、その傍観者達は一人としてライと目を合わせようとしなかった。
一瞬、疑問符を浮かべたがすぐに取り払った。仕方無しに次は二人に訊いてみる事にした。
「……で、何が原因なんだ?」
「その前に、ライ。私の質問に答えてくれる?」
「ん?……別にいいけど」
それを聞いて、安心したのか。二人は深呼吸のような事をしている。
そして、二人同時に
しえん
「ねぇライ、神楽耶様と私どっちが好き?」
「私とカレンさん、どちらのことが好きですの?」
「はぃ?」
妙な問いに素っ頓狂な声をあげるライ。思わず、吹き出しそうになったが何とか留める。
ライの頭の中には、冗談という言葉が漂っていたが二人は至って真剣な眼差しをしてライからの返答を待っている。
どうやら、冗談ではないらしい。突然のことに頭を掻くライ。
詰め寄ってくる二人。
「ねぇ?」
「どっち?」
少し後ろにたじろぐ。周りは、何気にそば耳立ててその様子を窺っていたりする
「ど、どっちも好……」
ちょっと苦しげに答える。
「ダメです!どっちかです!どちらもでも、はダメ!」
まさに一刀両断。神楽耶に即答された。
横でカレンも首を縦に振っている。
「どっちかといわれても……」
このままどっちと言ってもまた五月蝿いことになることは明々白々。
片方を選んだら、もう片方とは必ず浅からぬ溝が出来上がる。唯一の逃げ道である両方を選ぶという選択肢もあっさりと断たれた。
頭の中で格闘するライ。
待ちわびるカレンと神楽耶。
そして、これを見届ける傍観者達。
「………どちらかというと…」
「「どちらかというと…?」」
固唾を飲んでその答えを待つ二人。
「…強いて言えば………」
「「強いて言えば…?」」
(((((強いて言えば・・・?)))))
しえん
心の中で反芻させる傍観者達。
そんなことを知らないライ達。
すると、突然歩みだすライ。
いろんな期待をしているカレンと神楽耶を素通りして周りに居た六人の内の一人の腕を掴んだ。
そして…
「強いて言えば、C.C.かな」
沈黙がラウンジの中の空間を支配した。
「「「「「「「「「何ィぃぃぃっっ!?」」」」」」」」」
全員が一斉に声を上げる。
先ほどまで見て見ぬフリをしつつ、そば耳を立てていた者達は凄い勢いでC.C.の方を振り向き、当の本人はピザのチーズをトロリと垂らしながら何が起きたと目をパチクリとさせて
いる。
カレンと神楽耶に関しては凄い落ち込みようであった。
「そ、そんな訳だから、少しC.C.を借りる」
二人の落ち込みように居たたまれなくなったライはC.C.の腕を引いてラウンジから出て言った、というよりも寧ろ逃げていった。
ラウンジに残された者達は微妙な心境をもたらしてくれた銀髪の少年に対して不満の声を漏らした。
ラウンジを出たライはC.C.を連れて格納庫に出た。
適当な座り場所を見つけると二人はそこに腰を下ろした。手を組んで頭の後ろに回して仰向けになった。
緑色の髪が見える。横にいるC.C.は連れ出される時に一緒に持っていたピザの蓋を開けて様々な具が乗ったピザの一切れを口の中に運ぶ。
黙って食べるその姿を見てライは言葉を紡ぎ出す。
「C.C.すまないな、巻き込んで……あの2人は何を考えているんだ?」
「別に構わん。少し、驚かされたが、先程の言葉が嘘だろうがお前を好む気持ちは変わらん」
「そう、よかった。僕のことが……」
…………………………
しえん
何だって?
沈黙が流れる。目を見開いてC.C.を見つめる。
少し間があった後、いきなり起き上がった。
「C.C.……今、なんて?」
聞き返すライ。それを、呆れ顔で返すC.C.は食べかけのピザを箱に戻すと四つんばいの状態で近寄る。
「お前の事が好きだと言った」
近くに迫ったC.C.の顔からは悪意は感じない。少なくともライをからかおうとしている訳ではないらしい。
ライは至近距離にあるC.C.の顔を直視して顔が赤くなる。
「お前は私の事が嫌いか?」
微妙に動揺するライ。赤くなった頬を掻いて、現状把握に脳を精一杯使っている
「いや、俺もC.C.のことは……その、好きだ、嘘ではないし、特別な意味で好きだ。けど、C.C.の言う『好き』はどういう………」
顔を少し俯かせ、顔を赤らめながら言う姿は普段のライからは想像できない一面だった。
「……これが答えだ」
それを聞いて、不意にライは顔を上げると先程よりもC.C.の顔が迫っていた。
いつの間にと思って驚いていると、唇に柔らかい感触が、いの一番に伝わってくる。
それは触れる程度の軽い、優しいキス。
四つんばいの状態だったC.C.は食べかけのピザをライの口に放り込むとそのまま立ち上がり、格納庫の出口へ向かう。
依然、ライは驚いたままで、殆ど放心状態だ。
「あぁ、そうだ。ライ」
呼ばれてはっと我に戻る。
C.C.の方を見るともうすでに格納庫を出るところだった。
「な、何だ???」
取り敢えず、返答するライ。口の中に放り込まれたピザが落ちそうになったので慌てて戻す。
「私のピザを食べたんだ。明日、学校の帰りに付き合え、いいな?」
そう言うとC.C.は普段見せない微笑みを浮かべて格納庫から姿を消した。
「……今のは、デートの約束……?って考えて良いのかな」
咥えてたピザが目に写り、それを一口食べる。チーズの風味と具材の持つ味が口の中に広がる。
それの一切れがつい数分前までC.C.が食していた物と知ると、収まりかけた熱さが再び沸き上がる。
辺りに人が集まりだし、KMFを整備する技術者達の声が聞こえてくる。
(こんな日もあり、か………)
そんなことを思いながらライはC.C.の後を追って格納庫から出て行った。
明日からは今までと違う日が始まる
今までと少し違う”いつも”が始まる
そんな気がしてならない………
その後、ラウンジに戻ったC.C.は、意気投合した神楽耶とカレンに追われたとか追われなかったとか。
しえん
以上で投下終了です。
支援してくださった方々誠に有難う御座いました。
このあとライがどうなったのか非常に気になるw
gjです!
>>381 蒼い鴉卿、GJでした!
二択を三択に増やす男、ライ、どちらかというと、から第三者選ぶとかw
いいね、C.C. その選択、イエスだね。
両想いとか……いいね!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>381 いやぁ、選択肢が増えても驚けない所がライですねww
面白く読ませていただきました。
しかし、この場合、C.Cよりもライの方に矛先が向きそうな気がしたのは僕だけだろうか…。
うーん、ある意味、被害妄想気味なのかもしれないwwww
次回も期待してお待ちしております。
こんにちわ。
ライシャリ初めて書きました。
ファンは、笑って許して……。
タイトル アッシュフォード学園のお弁当事情 シャーリー編
カップリング ライ×シャーリー
ジャンル お弁当事情(笑
では、投下します。
アッシュフォード学園のお弁当事情 シャーリー編
「はいっ、ライ。お弁当っ」
シャーリーがにこにこと笑顔で僕に包みを渡す。
「えっと……。これシャーリーが作ったの?」
恐る恐る聞いてみる。
彼女の料理下手は、いろんな人から聞いている。
その矛先がこっちに向く日が来るとは……。
「ひどいなぁーっ」
そう言って膨れるシャーリー。
慌てて僕は謝る。
「ご、ごめんっ……」
でも、そんな僕をいたずらっ子を叱るお母さんのようにおでこを突付くと笑い出す。
「大丈夫だよ。市販のものが多いし……。それに……」
思わずそこで言葉を切られて、思わず聞きなおす。
「それに…?」
「カレンに手伝ってもらっちゃった。あはははは……」
その言葉でさっき見かけたカレンの様子が頭に浮かんだ。
もしかして、さっきカレンがすっごい疲れたような顔でヘタってたのは……。
そうか、そういう事か。
ありがとう、カレン。
おかげで食べれそうな目処が立ったよ。
思わず、カレンを拝みたくなった。
「あ、だけど一つだけ自力で作ったのが入っているんだ。わかるかなぁ〜?」
ニコニコしながら聞いてくる。
えっ……。
すーっと背筋が冷たい汗で濡れる。
こ、これはどうすればいいんだろう。
多分……一発で判る気がする。
いろんな意味で……。
ここは、素直に言った方がいいのだろうか…。
それとも……。
「もう、どうしたのよっ、固まって。さぁ、開けてみて〜」
ううっ…どうしょう……。
言われるまま、包みを開けてランチボックスを開けた。
そこには綺麗に盛り付けられたおかずにサンドイッチが入っていた。
見た目で一発でわかると思っていた僕の考えは完全に外れてしまった。
うっ…。
これは予想外だ。
どうする……。
どうするよ、僕……。
地雷は、完全にカモフラージュされているぞ。
そう考えていたら、どうもシャーリーの様子もおかしい。
お弁当の中身を見て、僕と同じように動きが固まっている。
「ど、どうしたのかな……、シャーリー」
思わず声をかけてしまう。
すると慌てて我に返るシャーリー。
「あ、ううん、な、なんでもないよ。の、飲み物は、紅茶でいいよね?」
「あ、うん。ありがとう」
いや、本当はどうでも良くはないんですが……。
無茶苦茶怪しすぎて気になって仕方ない。
でも……。
ええーーいっ、男は度胸だ。
僕は、意を決して食べ始めた。
そして、結局……全部食べてしまっていました。
なぜかって?
そりゃ、全部うまかったからさ。
うーーん、料理下手というのはガセだったのかなぁ。
そんな事を思いながら、どれがシャーリーが作ったものかわからないまま食べ終わってしまった僕は、仕方なくお茶を濁す事にした。
「クリームコロッケがシャーリー作かな」
一番出来のいいクリームコロッケを言っておく。
これで問題あるまい。
そんな事を思いながら……。
しかし、しばしの沈黙の後、誤魔化すように口を開くシャーリー。
「あ…、う、うんっ。よくわかったね」
そう答えると、さっさとランチボックスや水筒を片付け始める。
どうしたんだ?
疑問が頭の中を駆け巡ったが、そもそも何でそんな対応をしているのかわからない。
うーーん、女の子って難しいな。
結局、行き着いた結論はその程度だった。
そして、午後の授業を受けようと教室に戻ったら、なんか教室がざわついている。
「どうしたんだ?}
近くの男子生徒に聞いてみた。
「カレン・シュタットフェルトが倒れたんだって……」
「えっ…、カレンが?」
「うん。なんでも食事中に倒れて、今、病院に運ばれたらしいんだ。大丈夫かな?」
うーーん、今朝はお弁当の件でヘタっていたし……。
元々身体弱いからな、彼女は。
無理してまでお弁当つくりをサポートしてくれて本当にありがとう……。
そしてお大事に……。
僕は、真剣にそう思った。
ちゃんちゃん〜♪
以上で終わりです。
シリーズものを書くのに飽きるとこういうネタ系ばかり書いているような気がします。
いい加減、シリーズもの書き上げないといけないなぁ。
そういうわけで、次は、シリーズものでお会いしましょう。
では……。
>>388 あしっど・れいん卿、乙でした。
シャーリーが料理下手、カレンと一緒に作った、カレンが倒れた。
そして、ライが答えた後のシャーリーの行動。
これらのキーワードから導き出される答えは――
いや、待て。 待つんだ俺。
ライの推測が正しいという可能性もある。
またしても真実は闇の中、か……
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
ここの管理人さんへ
ここでは過去スレをそのまま保存しているみたいですけど、ライスレも一緒に保存してくれませんか
よろしくおねがいしますm(_ _)m
>>338 こういう答えがわからないってSSもいいですね。
GJです!
サンドイッチってカレンのお弁当ぽいなあ、と思ったらこれだよ!
カレン、明らかに「違う」物体を前に食欲を抑えられなかったんでしょうか。
…もともと、どか弁食いだからなあ…
くすりとしました。乙です>388
393 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 12:12:18 ID:J70PVfP6
あしっど・れいん卿、カレンの健気なさに感動しました。次の投下を楽しみにしています。
394 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:11:29 ID:vvJOgv/a
みなさんこんばんは。
前に投下した小説の方を修正しましたので、再び投下しようかと思います。
では
395 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:14:24 ID:vvJOgv/a
望んだ物とは少し違った形で手に入った平和
完全な形ではないが、争いは終わったのだ
ユーフェミア・リ・ブリタニアが宣言した『行政特区日本』は色々とあったが無事に成立し、
人々は一時期の平和を満喫していた
新しい歌
最近ライの様子がおかしい……
カレンは思った
あの神根島の一件以来、1人で悩んだり、何処と無く悲しい目をしている
その後の特区日本での一件……
血だらけで発見されたライはなんとか一命をとりとめた。
あの時はライが目覚めるまで生きた心地がしなかったのを今でも覚えている。
なんでああなったのか誰も知らないし、ライも教えてくれない。
恐らく知っているのはゼロだけだろう。
あの日に結ばれた二人は騎士団の双璧として活躍しながらも、ユーフェミアの計らいで学園に通っている。
付き合っていると言うことから二人は常に一緒にいる形となる。
一緒に授業を受け(同じクラスだから当たり前だが)、一緒にお弁当を食べ(ライの手作りだったりカレンの手作りだったり)、
一緒に生徒会の仕事をし(ミレイに弄られるのはいつもの事)、特区日本で仕事をしたりと……
だからこそか、カレンはライの微妙な変化に気付いたのだ
何か思い詰めたような表情、時々消えてしまいそうに見える彼……
カレンはそれを聞くことの出来ない自分に苛立っていた
396 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:16:26 ID:vvJOgv/a
そんなことを考えながら、カレンは自分の前に座っている銀髪の少年を見つめる。
その青紫の瞳を黙々と書類に目を通しているライ。今の彼は誰が見ても普通のライにしか見えない。
多分今この場にいる生徒会の誰もが見ても……
カレンの視線に気付いたのか、ライは書類から目を離し、カレンを見る。
「カレン、どうしたんだ?僕の顔に何かついてる?」
「あっ、ううん!何でもないの!」
カレンは慌てて自分の持っていた書類に目を落とした。
「ただ、愛しのカッコイイ彼氏の顔に看取れてただけよ〜」
「ミッ、ミレイさん!!」
カレンの真似をするかの様に発言したミレイにカレンは顔を赤くして声を上げた。
「えっ、違うの?妙にライにあつ〜い視線を送ってたからそうだと「違います!!」
人差し指を口元にあて、考えるような素振りを見せながら言うミレイに、顔の赤いままのカレンが机を叩いて怒鳴った。
カレンがむきになって怒鳴ったからか、その場にいる全員が驚いたようにカレンに目を向けている。
「もう、ミレイさんったら、からかわないで下さいよ〜」
みんなの視線に気付き、カレンは縮まる様に席に座り、赤くなった顔を隠すように書類に目を通し始めた。
気になってライを見ると、彼は困ったように笑っていた。
397 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:19:50 ID:vvJOgv/a
「で、お前はどうなのよライ。」
「えっ?何が?」
「だから、何時どうやってカレンにコクったんだよ?」
「「えぇっ!?」」
ライとカレンは一気に赤くなる。
「きゅっ、急に…なにを……?」
「今まで誰一人として男に気を許さなかったカレンお嬢様。その心を彗星の如く現れ、そして奪っていった男ライ。
報道クラブが二人を記事にしてからいつから付き合い始めたのかって疑問が学園中至るところで飛び交ってるぜ。」
「あっ、私も気になる!二人とも気が付いたら付き合い始めてたもんね!」
リヴァルの出した話題にシャーリーも興味があるらしく、その話に食い付いた。
「いや〜、あの時のカレン親衛隊は酷かったな。」
確かにあれは酷かった。
さりげなく話を聞いていたルルーシュはふと思う。報道クラブが二人が仲良くお弁当を食べている写真を撮って、さらに二人の仲を問いただした。
その時にライが肯定するような返事をしてしまったためにその記事でアッシュフォード学園が揺れたのだ。
カレン親衛隊やライのファンクラブが生徒会室にまで押し寄せ、事実を説きに来た。なんとか追い払ったものの、ライとカレンはミレイに尋問(?)され、その事実を認めたのだ。
だが肝心の「付き合い始めたのはいつか」は本人以外は知らない……とされている。
まぁ、俺は知ってるが…
ルルーシュは苦笑いを浮かべる。
特区日本設立後、傷だらけで発見されたライの様子を見に行ったら、二人がキスしているところを目撃してしまったのだ。
悪気があった訳ではない。ノックをしなかったのは悪かったが……(そのあと少しだけ気まずかった)
398 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:22:22 ID:vvJOgv/a
「リヴァル、いい加減に二人の仲を探るのは止めた方がいい。プライバシーの侵害だ。」
ルルーシュは困り果てた二人に助け船をだす。(あの時のせめてもの罪滅ぼしのつもりだ)
「えぇ〜、お前は知りたくないのかよ?」
「残念だが、答えはYesだ。これは二人の問題だ。俺達が知る必要はない。
それよりお前は早く終わらせろ。後どれくらいかからせる気だ?」
「うっ……」
リヴァルは目の前の書類に目をやる。ルルーシュのと比べると明らかに多い。
リヴァルはぶつぶつとなにかを呟きながら書類に目を通し始めた。
「あら、ルルーシュったら二人を庇っちゃって。二人と何かあったの?」
「別に何もありませんよ。俺は早く終わらして帰りたいだけです。
今日はライと一緒に食事をする事になってますから。会長達がライに絡んで、ライが遅くなったら楽しみにしてるナナリーに迷惑だ。」
「むぅ。仕方ないわね。いいわ、いつか必ず聞いてやるから。
いずれ、「ミレイさん、ライさんを私に下さい!」ってカレンが言いにくるはずだから。その時に・・」
「「ミッ、ミレイさん!!」」
ライとカレンが顔を赤くする。
「会長、ライは男の子ですよ。どちらかと言ったらカレンが貰われる方ですよ。」
「スザク!」
スザクの言葉にカレンの顔がさらに赤くなった。
ルルーシュは再び騒ぎ出したみんなを見ながら眉間を押さえ溜め息をつく。
『これはまだまだかかるな…』
399 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:24:20 ID:vvJOgv/a
「ふぅ。やっと終わったわね。みんな、ご苦労様。今日の分はこれで終わりよ。」
「全く。もっと早くに終わったでしょう。」
ルルーシュが溜め息をもらしながら言った。
「お疲れ様。じゃあルルーシュ、また後で。」
「あぁ、待ってるぞ。」
ライはルルーシュに声をかけると生徒会室の扉へと向かう。
カレンはそれを目で追った。すると、ライは部屋を出る直前にカレンを見る。まるで合図を送るかのように…
カレンは自分の書類を置くと、「お疲れ様」と一言残してライの後を追った。
ライを追って屋上へやって来たカレン。
ドアを開けると、ライが手すりに寄りかかって空を見ていた。
太陽は既に西の空に沈み始めていて、空は赤く染まっていた。
「ライ?」
カレンが声をかけると、ライはゆっくりと振り返り「やぁ、カレン。」と微笑んだ。
「気付いてくれたんだね。」
「前に貴方も気付いてもらったものね。」
「そういえばそうだね、懐かしいな。」
ライはハハッと笑った。
「…で、どうしたの?」
カレンが聞く。
するとライは笑みを浮かべたまま黙ってしまった。
その目は、どこか曇って見えた。
400 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:26:19 ID:vvJOgv/a
ライは再び手すりに寄りかかって空を見上げる。
「話したい…事があるんだ。君に…」
「私に?」
「…あぁ。」
ライはそっと目を瞑る。吹き付ける風に銀色の髪が揺れた。
「実は………記憶が戻ったんだ…」
「………そう…なんだ…」
「…驚かないんだ。」
ライが驚いたように振り返る。
「ううん、驚いてる。けど……」
「けど?」
「なんとなくかな……?気が付いてた……」
カレンは胸に手を当てる。
「はっきりとはわからなかった。神根島の時から貴方の様子がおかしかったから、もしかしたらって思ったけど、
記憶が戻ったとしたら、ミレイさん達に話すだろうし、やっと戻ったんだから嬉しそうにするはずなのに……貴方はそうしなかった。
逆に思い詰めた顔をしたり、一人で悩んだりしてる。だから、違うのかなって思ったけど……」
「……」
ライは黙って聞いていた。ライも以前は話そうとしていた。記憶が戻ったら、真っ先に生徒会のみんなには話そうと……けど
「……話せないんだ。」
「えっ?」
401 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:28:14 ID:vvJOgv/a
ライは静かに話し出す。
「恐いんだ、話すのが……」
「……」
ライが微かに震えているのがカレンにはわかった。
「僕は……この時代の人間じゃない……僕は……昔のブリタニアの領辺国の皇子だったんだ…」
「!」
それからライは話し出した。自分の母親の事、妹の事、“力”の事、そして、国民全員を殺してしまったこと……
「!!」
カレンは驚きのあまりに口を押さえた。とても信じられた話ではない。
命令するだけで人を操れる力。その力のせいで国民全員が死んでしまうなんて……
「……すべて僕の我が儘が引き起こした事なんだ。
母上や妹を護るために兄を殺して、父上を殺して、邪魔するものはみんな殺して…
そして…結局はみんな殺してしまった……母上も、妹も、みんな………」
ライは自分の二の腕を強く握り締めた。
「だから僕は死を望んだ、全てに絶望したから……母上も妹もいない世界に意味はないから……
でも、僕は死ねなかった。契約があったから。だから……僕は眠りについた…二度と目覚めない筈の眠りに……」
カレンは声が出せなかった。出そうとしても、声が震えてしまう。早くしないと彼が消えてしまう……そう思った
「だけど、僕は目覚めた。目覚めてしまった!
目覚めさせられて、体を弄られて、実験されて……その時にはもう過去の事は覚えてなかった。自分の名前以外わからない。
なのに毎日実験の繰り返しが嫌だった。だから、僕は逃げた。逃げて逃げて逃げて……消えたかった……」
402 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:32:19 ID:vvJOgv/a
最後の言葉は掠れるように発され、消えるように響いた。
もう耐えられなかった。哀しすぎる……カレンは思った。
大切な人を自分のせいで失って、何もわからないのに嫌な事を繰り返されて……
ライは自分よりも何倍も辛い事を受けている。
そんな彼が本当に消えてしまいそうだった…
「でも、僕は……」
ライはゆっくりと顔を上げる。
「僕は、君達と出逢った。」
その顔は、“笑顔”だった。曇りのない、本物の笑顔……
「ミレイさん、ルルーシュ、スザク、ナナリー、シャーリー、リヴァル、ニーナ、そしてカレン。
君達と出逢って、君達と過ごして、君達と話して、笑って……僕は変わった。
最初は見えなかった色も、君達のお陰で見えるようになった。
世界はこんなに綺麗だったのに、見えなかったのを世界のせいにしてたんだ。
でも違う、僕が見ようとしてなかっただけだって気が付いたんだ。だから僕には今はっきり見える。この世界の色が……」
ライはカレンに近寄った。
「ありがとう。」
そう言って、そっとカレンの髪に指を通した。
「君がいてくれなかったら、今の僕はなかった…」
ライは目を細めた。
カレンはライの頬に手を伸ばす。今なら言える。自分の思いを
403 :
K.K.:2009/03/26(木) 23:33:11 ID:vvJOgv/a
「……ライ。私は、あなたが過去の人でも、どんな罪を背負っていてもいいの……あなたはあなただから………」
「……」
ライはカレンの手に自分の手を重ねた。
「だからね、私は…何があっても貴方から離れない。ずっと傍にいる。
ずっと貴方を見てる。ずっと……貴方を愛してる…。」
ライはカレンの言葉に、只、頷いた。
そして、カレンの胸に顔を埋めた。
「!ちょっ、ライ!?」
カレンは急なライの行動に顔を赤らめた。
「ゴメン……もう少し…このまま………」
そう言うと、ライの体が微かに震えた。
カレンはそんなライを優しく抱き締め「大丈夫よ……」と、一言そう言った。
この言葉を待っていたのかも知れない。
カレンの温もりを感じながら、こういう言葉を言ってくれるのを期待していたんだろう。
今はこのまま何も見ないで、只カレンの胸の中で、夢を見たい
昔感じた母上とは違う温もり、違う鼓動……
何をどうして歌えばいいかわからない歌よりも
今聞こえてくる歌を歌おう
彼女から感じる柔らかな鼓動の中で、“新しい歌”がきっと生まれてくるから……
fin
404 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:00:35 ID:Gd8F7IcA
以上です。
「////」を消したり、少しセリフを増やしてみました。
どうですかね?
では前に投下し忘れていた後日談を投下したいと思います。
405 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:02:54 ID:Gd8F7IcA
ルルーシュに招待され、夕食をごちそうになったライ。
ナナリーやルルーシュと他愛のない話をして、楽しい時間を過ごした。
今は夕食も食べ終え、ルルーシュと一緒に皿洗いをしている。
最初はルルーシュは断ったが、ライがどうしてもと言うので手伝ってもらうことになった。
「……で、カレンには話したのか?」
ルルーシュがライに聞く。ルルーシュは何だかんだと言ってライとカレンの事を気にかけてくれている。
本人は「二人に何か支障があると、騎士団の士気に関わるからだ。」と言っているが、真意は彼にしかわからない。
「……うん、話したよ。」
ライの皿を洗う手が止まる。
「カレンがね、『あなたはあなただ』って言ってくれたんだ……
『ずっと傍にいてくれる、ずっと愛してくれる』って………嬉しかった。」
「…そうか。」
ライの言葉に、ルルーシュの手も止まる。
「最初は話すのがすごく恐かった。嫌われるんじゃないかって、気持ち悪いって言われるんじゃないかって……
けど、カレンは受け入れてくれた。僕は過去に多くの物を失ってきた。だから、僕にはもう、彼女しかいないから……失うのが恐かった……」
「……確かに、何も知らない奴が聞いたら、現実の話だとは思わないだろうし、気味悪がるかもしれないな。」
ルルーシュがゆっくりと言葉を紡ぐ。
念のため支援
407 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:04:18 ID:Gd8F7IcA
「しかし、間違っているぞライ。」
「えっ?」
ライがルルーシュを見る。ルルーシュはライへと目を向けると、フッと笑っていった。
「前にも言ったろ?君の正体がどうであれ、俺たちが君への態度を変えるつもりはない。
君にはカレンだけじゃなく、俺たちもいる。俺たちは君の見方だ。」
「……うん、ありがとう。」
ライは嬉しそうに笑った。
「さて、さっさと終わらせるぞ。これが終わったらチェスでもしないか?久し振りに一曲打とう。」
「そうだね。今度は負けないよ。」
「フッ、どうだかな。」
「あっ、今鼻で笑った!」
「気のせいだろ?」
「いや、気のせいじゃない!絶対鼻で笑った!僕だって前よりは強くなったんだからね!」
「それはそれは、楽しみだな。」
これが幸せなのだろうなと、ライは思った。
赦されるはずがないと思っていた自分の罪。それを赦してくれる人がいた……こんなにも近くに……
だから、僕を赦してくれた彼等を護る。
それが、僕がここにいる為の理由だから……
fin
408 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:11:23 ID:Gd8F7IcA
以上、後日談でした。
こちらの方はこれで大丈夫ですかね?
またSSが出来ましたら投下したいと思います。
では…。
K.K.卿、投下お疲れ様でした。
一つ確認しておきたいことがあるのですが、
>>405からの後日談は今回投下された修正版と纏めて(一つの作品と見なして)保管するという形で宜しいですか?
K.K.卿、GJでした!
いいね、シリアスの中にあるほんわかさって・・・
こういうSSを見ていると不思議と楽しくなるわーK.K.卿ブリリアントだね。
次のSS投下も頑張って下さいね!!
411 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:29:00 ID:Gd8F7IcA
保管者トーマス卿へ
一応ひとつの作品なので、一緒でお願いします。
mailto:sageさん
ご感想ありがとうございます!
タイトルと同タイトルの歌を聴いているときにふと浮かんだ絵でして、
それをSSにするのに苦労しました。そう言っていただけてうれしいです!
ではその形で保管しておきました。なにかありましたら遠慮なくお申し付けください。
お疲れ様でした。
>>408 K.K.卿、GJでした!
修正前より読みやすくなっていると思いました。
後日談、過去を受け入れてくれる親友、いいね!
この幸せが続いていくことを願います。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
あと、誤字
>>407 君の見方 → 君の味方 だと思います。
あと 一曲 → 一局 かな?
414 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:31:40 ID:Gd8F7IcA
すいません、411がなんかおかしくなってます。
レスへのリンク(?)の仕方を間違えてしまいました。
どうしたらいいですか?
左端に番号がありますよね。この場合だと
>>410 レス指定についてはこのように書けばOKです。
誤字の修正もしておきますね。
あと、貴方の領地に作品が何も登録されていませんが、近日中に対処しますので暫くお待ちください。
416 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:39:48 ID:Gd8F7IcA
ok
418 :
K.K.:2009/03/27(金) 00:46:04 ID:Gd8F7IcA
>>416 できてましたね、保管者トーマスさんありがとうございました!
あと領地作業の方ありがとうございます!
>>413 ご感想と誤字指摘の方ありがとうございました。
これから良く確認しようと思います。
419 :
K.K.:2009/03/27(金) 01:39:18 ID:Gd8F7IcA
『コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS』発売一周年です!!
おめでとうございます!!
一周年か〜。おめでとう!ロスカラ万歳!!
ロスカラ発売一週年!!おめでとう!
久しぶりです。予告編を出していたアレ投下します。
前(R2放送中)につっくて置いたものです。
たぶん3から4使うと思います。
取りあえず投下します。
タイトルは
蒼き亡霊 ep1,00〜開始。傷だらけの少年〜
cpなしジャンルはシリアスで
何処からか声がする。
誰かを呼ぶ声だ。
突然、手に痛みが走る。
「痛っ。」
ベットに横たわっていた銀色の髪に血走っている眼をした傷だらけの少年が飛び上がる。
ここは、一体…何処だ。
見慣れない部屋。桃色の小物がやたらと目につく。
「ここは、」
「私の家。裏の林で倒れてた。」
ベットの隣にいた、少女は言った。
見た目僕より3つか4つ位下の桃色の髪をした少女だ。「所属と名前。」
いきなりでた言葉にびっくりした。
「特別派遣嚮導技術部。通称特派。のライです。」
「特派?」
「シュナイゼル殿下の直轄部隊。そこでテストパイロットを。」
何やっているんだ僕は。民間人に特派のことバラしてしまった。
取敢ず、ここを出て、あの男と会わば。
「記録。」
その声とほぼ同時に機械音が鳴った。
「アーニャ。ナイトオブシックス アーニャ・アールストレイム。」
なっ、ナイトオブラウンズ。
ノネットさんと同じナイトオブラウンズが眼の前に。
取敢ずここを出なければ事態は変わらない。
林の奥の洞窟にクラブを隠してある。それでなんとか。
ズボンのポケットの内側についている、隠しポケットにキーが…ない。
他のポケットの中を探していると。
「探し物。」
そういって、手に持っていたのは、クラブの起動キー。
「ありがとうございます。」
キーを受け取ろうとした時、キーを渡してはくれなかった。
「あの洞窟にナイトメアはない。今、キャメロットの整備室。」
しまった。
クラブが盗まれた。
どうしよう、あれには、まだ、未公開技術が注ぎ込んであるなるに。
早く取り返さなきゃ。
「それに絶対安静。」
その上逃げ出すことも。
ヤバい。
ここでギアスを使うか。
だか、暴走状態のギアスだ。使えるはずがない。ならば、
「アールストレイム卿、何故お助けに。」
「領地で死なれると、厄介。家は?」
家?何でこんな時に、
「そんな上等なもの有りません。寝床の鍵はそこに。寝床はどっかに持っていか
れました。IDカードと一緒に。」
そうだ。最近はクラブで寝泊まりしている。
「なら、ここに泊まればいい。」
ここに泊まるだと。こんなところで足止め喰らったら、バトレーに捕まってしまう。
「それには及びません。アールストレイム卿。僕はこれで失礼します。」
ライはベットから降り、ドアに向かった。するとアールストレイム卿は、手を水
平に広げ、行く手を阻むかの如く立った。
ライは、それを無視して、邸から消えた。
キーを取り戻さなかった。
それから数分後。
二人の少年達が邸に到着した。
「アーニャ、ライは、ライは何処に。」
茶髪の少年は問う。
「スザク、逃げた。」
「そう。」
「忘れ物。」
少女の手には少年の手の中にあるキーの色違いがあった。
「間違いない。ライのクラブのキーだ。」
「追う?」
一歩後ろにいた金髪の少年が言った。
「追うなら、私も手伝おう。トリスタンなら空からでも探せる。」
「ジノ、アーニャ、ありがとう。でも大丈夫。きっとどこかで会えるよ。」
ライ、君は何故あんな体で、何を求めているんだ。
銀の少年は、真実を知る為に。
茶の少年は、連鎖を断つ為に。
元特派のダブルエースは、帝都の地を踏む。
己が信念を曲げる事無く。
以上です。
次回もお楽しみに
>>429 御錬師卿、乙でした。
アーニャが拾ったか――ライにはやっぱり拾われ属性が付いてるんだろうね。
生身でトリスタンから……逃げ切れないよね。
さてさて、次回はどうなるか。
貴公の次の投下を全力で待っています。
1周年という事で短編を3つ投下させていただきます。
:1個目は黒の騎士団カレンルートエンド後。
:2個目はブルームーン編C.C.エンド後。
:3個目はギアス編での小話。
【おぼえていますか】
私達が触れ合ったあの日々を。
「ねえねえ、カレンはファーストキスの時の事覚えてる?」
「はあっ!?」
「あ、それは私も気になるかも」
シャーリーもいきなり変な事を言わないでよっ!
嗚呼、紅茶で制服が少し汚れちゃったじゃない。
シミにならないといいけど……
大体お菓子の話からそこにはつながらないでしょ、この子って本当にもう……
会長までなんか興味真摯じゃないの。
「もしかしてまだしてないの?」
「私達そういう関係じゃないですから……」
「そんな言葉でミレイさんの目は誤魔化せないわよ〜」
野次馬根性をこんな時まで発揮しなくても……ファーストキス、か。
ライとのファーストキスなんて涙の味がしてしょっぱかったのよね。
色気もなにもあったもんじゃ―――ってなに考えてるのよ!?
「ミレイちゃん、そういう話はあまりよくないよ」
「それもそうね〜でもライって人気あるでしょ?」
「特区の大使に任命されてからは凄いってリヴァルも言ってましたもんね」
そうだったんだ、見慣れてる私には普通だと思うんだけど周りはそう思うのかしら?
ただ頭が良くてナイトメアの操縦が上手くて顔立ちが綺麗って位でしょ。
探せばいくらでもいそうじゃない―――前言撤回、早々いるわけないわね……
もう、ライの事を考えだしたら気になってきたじゃない!
「この前は陸上部のマドンナに手紙貰ってたんですよね」
「それ私のクラスでも有名よ。後はこの前テレビのインタビューね」
「アナウンサーの熱烈アタック?」
「会長、体調が優れないから早退しますね」
ライに限って浮気なんて事しないはず!
でも、ありえないなんて言い切れないのが困ったわね……
生徒会のメンバーへの返事もそこそこになっちゃったけど気になるじゃない。
ライはそういう人じゃないと思うけど、でも恋人らしい事ってあれからなにかしたかな。
デートはしていないし会話もそこそこしてる程度、それが2ヶ月続いて―――これって恋人らしい?
ぜっんぜん駄目! 私なにしてるんだろう……
それにライもライよ、特区の事ばかりで―――
「カレン、こんな所でなにをしているんだ?」
「へっ? あ、え、あれ? ここ格納庫?」
「ああ、格納庫だけど。大丈夫か、疲れているのか?」
……無意識に格納庫まで来ちゃった。
ど、どうしよう……考えもまとまってないのに。
「あ、あのねライ。話があるんだけど」
「話?」
「こ、今度デートしましょ!」
「……カレン、浮気でもしたのか?」
「は、はいっ!? って、そうじゃなくてどうしてよ!」
「いや、井上さんがさっき『女は恋人に隠し事があると謝罪を兼ねてデートに誘う事もあるのよ』って言っていたから」
「ちっがーう、それはライの方でしょ!」
「なぜ僕なんだ?」
しまった……つい頭で考えてた事が口から……
ああもう、なんでこう先走っちゃうのかしら。
「まさか噂話を信じているのか?」
「だ、だってマドンナとかアナウンサーとか色々出てきたらそう思うでしょ」
「そういう君も色々噂があるのはリヴァルに聞いたけど」
リーヴァールーおーぼーえーてーなーさーいーよー
それにしても特攻して墓穴を掘るなんてナイトメア戦だったら即死コースじゃない。
でもこの場合は同じかな……って冷静に戦況分析してどうするのよ!?
「まさか本当に……」
「ち、違う! 私が好きなのはライだけよ! あっ」
「カレン、臆面もなく言われてもそれはそれで恥ずかしいんだが……」
なにやってるのよ私!?
ああ、こうなったら自棄よ自棄! 悩むだけ無駄!
「そういうライはどうなのよ!」
「僕? こうやって改めて言われるのもまんざらでもないかな」
「……えっ?」
「僕もカレンが好きだよ、だからこうして頑張っていられる」
……そうだった。
特区が安定したらお母さんを迎えに行きたいって私が言ったんだ。
そうしたら二人でゆっくり遊ぼうって約束してたのよね、すっかり忘れてた……
「僕が約束を破ると思ったのか?」
「ち、違うわよ、ただ心配になって……その……」
「そうか、ナイトメア戦でもそうだけどカレンはそそっかしいな」
なによそれ……頭を撫でられてるし……子供扱いしないでくれる。
ってそのまま抱きついてる私が言うのもおかしいわね。
恋人らしいか、こういうのも恋人らしいけどちょっと物足りないかな。
周りには誰もいないし少しくらいはいいわよね。
「少し恥ずかしいな……」
「だ〜めっ、2ヶ月分の利子よ」
「利子か、面白い表現だ」
自然と唇が重なる、けどはじめての時と同じ。
胸がドキドキするのはきっと好きだから、それから―――
「やっぱり……しょっぱい……」
「帰投したばかりだからな、すまない」
「ふふっ、でも私達らしいじゃない」
「らしいか、そうだな、僕達らしいかもな」
私達は私達らしく、こうして積み重ねていけばいい。
いつの日か笑い合う思い出を少しずつ。
おぼえていって歩いていけばいい。
【おぼえていられるだろうか】
私とお前が生きた時の意味を。
私も変わったな、まさか人と過ごす日々を楽しむ時が来るとはな。
それもこれもこの男が原因か。
「また荷物が増えていないか?」
「前にも言っただろう、ピザを食べているうちに増える」
「まったく」
ふっ、もう諦めたとでも言いたげだな。
あれから数ヶ月経つが態度は随分と変わったものだ。
いや、変わったのはライだけではなく私もか。
最初に出会った時はこうなるとは思わなかったぞ。
「とりあえずベッドから下りてくれ、掃除ができない」
「少し待て」
チーズ君を隠されては流石に困る。
ライはこれを人質にしようとしたからな、油断できん。
「……余程大事らしいな」
「当たり前だ、ましてや人質にされては敵わん」
「それは良い事を聞いた」
「私にも労働させる気か、言っておくが私は安くはないぞ?」
つくづく油断できん、記憶を失う前は貴族だったのか?
いや、その割には傲慢さが足りんな。
それに努力は嫌いではないそうだが……ふっ。
考えれば考えるほど変わった男だ。
「働かざる者食うべからずという諺もある、君も倣ったらどうだ?」
「それは人間が人間に言う諺だろう? 人間が魔女に言っても説得力はないぞ」
「はぁ……前にも言ったがこれじゃ利用する側とされる側だ……」
「不満か?」
「それなりには」
やれやれ、これだからボウヤは。
とはいえ……なにも話さないというのも酷か。
「仕方あるまい、少しは話してやろう」
私の痛み、私の苦しみ、私の哀しみ、私の望み。
改めて聞かせるのは思い返してみてもはじめてだな。
色々と積み重ねてきたが……
「所詮は終わりのない人生だ、結局はただの経験でしかない」
「だったらこれから生きていけばいい」
「ふっ……お前も永遠を生きるつもりか?」
「必要なら、僕達は一応共犯者なんだろ?」
まるで手に負えないな、どこまでも我儘な事を言うものだ。
だからこそか、こうして惹かれてしまうのも。
……少し疲れているな、頬を撫でただけでもわかる。
「息が少し荒いぞ?」
「うるさい……」
「見栄っ張りめ、そんな顔にキスをする身にもなれ」
唇もカサカサではないか、手入れを怠るのも駄目だと言っただろう?
相変わらず不器用な男だな、目が離せんではないか。
「っ……C.C.」
「顔が赤いぞ、ガキめ」
「くっ……」
ああ、お前はまだまだ子供だよ。
だから傍にいてやろう、いつまでも。
お前と生きた時を最後までわすれない為に。
【わすれますように】
みんなが僕と過ごした日々の事を。
やれやれ、C.C.の勧めで黒の騎士団に入ったのは良いんだが。
しかし忙しいな……学園に戻ろうにもタイミングを間違えるとこれだ。
時計は朝の6時を少し過ぎた辺りを指している。
資料整理だけにしておこうと思っていたのに徹夜してしまったな。
そろそろ学園に戻らないといけないな……?
「なんだ、いたのか……?」
「ふわぁ〜おはよぉ……って、ライ?」
「おはよう」
C.C.とカレンもトレーラーにいたのか、気付かなかったな……余裕がないのか?
いや、それよりもこの二人だな。
寝起きなのはいいが身なり位は注意した方がいいか。
「C.C.は寝癖が少し残っているぞ、カレンは顔を洗った方がいい、目やにがまだある」
「むっ……」
「うっ……」
二人とも気付いていなかったのか、余裕がないのは僕だけじゃないという事だな。
黒の騎士団の活動も活発だから仕方ないか、僕もスケジュールの調整をしっかりしよう。
とりあえず資料を片付けて―――なぜ二人揃って僕を凝視しているんだ?
「……どうかしたのか?」
「寝覚めの悪い夢を見たせいだろう、気にするな」
「偶然ね、私も変な夢を見たせいよ」
「? そうか、それならいいんだが」
夢か、夢といえば面白い説があったな、というよりは都市伝説らしいけど。
なんでも並行する世界にいる自分が体験した事を夢に見る事があるそうだ。
「内容は知らないけど夢には自分の持っている未来の可能性を見る事も稀にあるらしい」
「ほう、面白い説だな、だが今回の夢は違うたぐいだろう」
「同感、私らしくなかったもの」
「そうなのか、なら願望のあらわれじゃないか?」
「……笑えん冗談だな」
「……それ、笑えない」
「そこまで嫌な夢だったのか……」
やれやれ、この二人は似ているのか似ていないのか……いや、女性特有の思考か?
この様子だと深く追求しない方が良さそうだ、よほど不快な夢だったんだろう。
「だったら正夢にならない事を祈るしかないな」
……ところで二人して僕を凝視するのをいい加減止めてくれないか?
まるで僕が原因みたいじゃないか。
「まだなにかあるのかC.C.?」
「少しな……お前も存外に悩みの種なのだと認識させられたよ」
「なら気をつけるよ、カレンは?」
「似たような感じね、いなくなっちゃうんじゃないかって」
「変な事を言うんだな、そういう不安な事は逆に口から出さない方がいい」
本当にどうしたんだ、今日の二人は少し変だな。
大体なぜ僕の心配をしているんだ?
どういう夢を見たのかは気になるが……
「そういう心配事は忘れるに限るよ」
夢にしてもそうだけど何事も覚えていて良い事もある、その逆もだ。
今回の夢は二人にとって忘れる方が良い事なんだろう。
時には忘れてしまった方が幸せな事もある。
覚えていても辛いだけの事は沢山あるだろうから。
以上で終わりです
甘かったり、ほろ苦ったり、しんみりしたり
そういったロスカラの成分のいくつかをちょっぴり凝縮する事に挑戦してみました。
他にもほんわかしたりと色々ありますが
それは本編を再プレイして味わうのも一興かと思います。
でわでわ、駄文で御目汚しをしてしまいましたがこれで失礼致します。
>>436 GJでした!
短編連作、これは良いものだ。
一つ一つがそれぞれ独立していて、それでいて最後の小話に纏まっている。
非常に読みやすく、面白かったです。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
GJでした。
最初は話しが違う短編が3つ投下されるのかと思ってたんですが
まさか並行世界の話しとして綺麗に繋がっているとは。
面白かったです、卿の次回の投下を楽しみにしております。
GJでした。
短いながらも各キャラの心情が描けていて面白かったです
貴公の次回の投下を心待ちにしております
あとロスカラ発売一周年おめでとう
お久しぶりです。KOSEIです。
数ヶ月更新を滞らせてすみません。色々ありまして、もうホント色々……。
では、僭越ながら前回の続きを投下させていただきます。
全部で11レスになります。
シーン10『ロイ・キャンベルの憂鬱』Cパート。
ミーヤを家まで送り届け、ロイが政庁の入り口に足を踏み入れた頃には、すっかり夜も遅くなっていた。
施設の灯は二十四時間消えることはないので通路はまだ明るい。だが、流石に人の往来は、昼間に比べると少ない。
ロイは通路の一角にある休憩室の自動販売機でブラックコーヒーを買うと、歩き疲れた足腰に息抜きをさせようとベンチに座った。
「疲れたな今日は……」
デートなんて始めてだったから、変に緊張して肩がこったロイだった。
しかし、デートというのは確かに疲れるものではあるが、同時に楽しいものだというのもロイは良く分かった。
気になる女性のために計画を立てて、それを実行してその女性に喜んでもらえた時の嬉しさは筆舌に尽くしがたいものがある。ロイとて、遊園地を回った後のショッピングや夕食のお店のセッティングのルートを一応は事前に考えておいたのだ。
そして、ミーヤはその全てを喜んでくれた。
朝には不安だのなんの思っていたが、終わってみればミーヤとのデートはとても楽しかった。
ただ……今日のデートはただ楽しかっただけでもなかった。
収穫があったのだ。
ロイはデートを楽しみながらも、ミーヤからの情報収集を欠かしてはいなかった。そう、ルルーシュについての情報収集である。
そもそも、ロイはルルーシュの情報を得るためにミーヤに近づいたのである。それを忘れて、完全にデートにのめり込んでしまうほどロイは気楽な性格をしてはいなかった。
午前中は純粋に遊園地のアトラクションを二人で楽しんだ。昼になるとお腹も空いてきたので園内のレストランに入った。注文を済ませて料理を待つ間、ロイはミーヤとの雑談に花を咲かせた。
最初、ロイは学校の授業の事、クラブ活動の事、面白い友達の事などを話していたが、徐々にその内容を“ルルーシュの事について”になるよう導いていった。最初からルルーシュの事について尋ねるようなことはしなかった。
なぜなら、あくまでロイがルルーシュを調べるのは極秘でなければいけない。ロイは、なるべく他人に気付かれないように調査してほしい、というナナリーからのお願いを最大限遵守するつもりだった。
いつの間にかルルーシュの事が中心となったミーヤとのやり取り――ロイにとっては計画通り――の会話の途中で、注文した料理がテーブルに運ばれてきた。
その時、
――そうそう、
と言って、ミーヤはナイフとフォークを取った後、とんでもない情報を提供してくれた。
――そういえばルルーシュ君はね、スザク君と友達らしいよ。なんでも日本とブリタニアが戦争する前からの付き合いとかで。子供の時は毎日一緒に遊んでたみたい。
その話を聞いた時、ロイは思わず手に持ちかけたフォークを皿に落としてしまった。
目の前のミーヤが「何やってるの?」と微笑んだ。ロイは「いや、手を滑らせちゃって」などと言いながら照れくさそうに応じた。このように、表面では何でもない風を装ったロイだったが、内心は戸惑いの荒波が激しく渦を巻いていた。
ルルーシュとスザクが友達? しかも、子供の頃からの?
この事実は、ロイを驚かせるのには充分なものであると共に、彼の中である引っかりを生じさせた。
ナイトオブゼロを拝命してまだブリタニアに滞在していたころの話である。いつだったか、ナナリーとスザクが兄弟のように仲良く会話している場面を目撃したロイは、二人に近づいて、なにげなくこう言った事がある。
「本当に二人は仲が良いですね」
ナナリーの返答はこうだった。
――はい、私は小さい時からスザクさんにはお世話になりっぱなしで。
……確かにそう言ったのだ。
スザクとルルーシュは小さい頃からの友達。そして、スザクとナナリーも……。
ちょっと待て、とロイはミーヤとのデートの最中、何度も自問を繰り返した。
そうなると、この三人の間に幼少時代の繋がりが発生する事にはならないだろうか?
しかし、三人が過去に出会っていたとして、どうも解せないのは、それならばなぜルルーシュの調査をスザクには内緒で行う必要があるのか、という事だった。
ナナリーはあくまでスザクには内密にルルーシュの事を調べて欲しいと言っていた。この意味を単純に考えた場合、答えは一つしかない。
ナナリー総督はスザクを信用していない。
そういう事になる。しかし、物事はそう単純なものではない。
ナナリーがスザクを信用していないというのであれば、彼女はああも彼の事を頼りにするだろうか?
政庁職員から見れば、ナナリー総督から一番信頼をされているのはロイ・キャンベル、もしくはアーニャ・アールストレイムということになってはいるが、本人であるロイからすればそうは思わない。
確かに自分やアーニャは確かに頼りにされているし、信頼もされている。だがナナリー自身に危機的状況が訪れれば、最終的に彼女が助けを求めるのはスザクである、とロイは確信している。
しかし、そうは言ってもナナリーが信頼しているはずのスザクに、ルルーシュの事を秘密にしているというのは事実である。
秘密、といのは理由があるから秘密にされるものだ。
(ナナリー総督、ルルーシュ、そしてスザク。この三人には一体何があるんだ……)
考えれば考えるほど答えが出ず、突き当たるのは矛盾ばかり。
ナナリーの過去に詳しい人物に話を聞く必要があるかもしれない、とロイは政庁の廊下をややゆったり歩きながら思った。
ナナリーがルルーシュという人物を知りたいと願いながら、毎日その彼――ルルーシュと顔を合わせているスザクに何も尋ねない件、
また、スザク自身にルルーシュという人物を気にかけているのを秘密にしている件も、何か過去――もしかしたら、三人が繋がっていたかもしれないブリタニアと日本の戦前の出来事が関係あるのかもしれない。
(少し考えを飛躍させすぎだろうか)
と、ロイは思わなくも無かった。だが、少なくともそう考えを飛躍できるだけの情報の土壌があるのも事実である。
(とにかく、ここらへんがハッキリするまで、やはりナナリー総督にはルルーシュの存在を知らせない方が良いな……)
新たな事実が判明するたびにルルーシュの調査は胡散臭さを増している。ナナリーにルルーシュという人物の存在を報告するのは簡単だが、それが、また新たな問題を引き起こさないとは限らない。
以前心配していたブリタニア本土帰還命令も、行政特区不成立でうやむやになり、それによって、エリア11に滞在できる期間は増えた。
つまり、調査を急ぐ必要は無いのだ。
もちろん、ナナリーにはなるべく早く報告してあげたいとは思うが、それはナナリーにルルーシュの存在を教えても何も問題が無いと判明してからでもいいはずだった。
「今帰りかい?」
ロイが思考の淵に沈んでいると、廊下の向こうから白い軍服を着た栗色髪の少年が歩いてきて声をかけてきた。
「スザク……」
相手はナイトオブセブンの枢木スザクだった。
「何か考え事かい? 酷く暗い顔をしていたけど……?」
ロイはほとんど反射的に、「ああ、何でもないんだ……」と愛想笑いで応えた。しかし、
(いや、待てよ……)
と、考え直した。そして、ベンチから立ち上がると、眼鏡が修理中のために、今は万人にあらわになっている形の良い瞳を友人に向けた。
「ねぇ、スザク」
「ん?」
「今から、時間をもらえないかな? 少し話したい事があるんだ」
「……」
スザクは面を食らったようで、瞼を大きく見開いた。そして、
「もしかしてまだ怒ってるのかい? 僕がナナリーを放っておいて中華連邦に行った事」
と、心配そうにロイに尋ねてきた。
ロイはつい数週間前の出来事を思い出した。
スザクが中華連邦での作戦を終えて日本に帰ってきた後、ロイとスザクの間では小さないざこざがあった。
ロイはスザクに話がある、と言って政庁の個室に呼び出し、今までのスザクのあまりにも利己的とも思える考えを、同僚と親友の立場から諌めた。
最初は頑なな態度を取り、一時は喧嘩腰になっていたスザクも、ナナリーが、ロイの前で泣き出した事を告げると、スザクは「そんな事があったのか……」と、ショックを受けた様子で呟いた後、「確かに、君の言うとおりだ。次から気をつける」と素直に頭を下げた。
ロイはその瞬間、確信と共に安堵したものだった。ああ、やっぱりスザクはスザクだったと。
「いや、そうじゃないよ。ちょっと君の過去について訊きたいことがあってね」
ロイがそう言うと、スザクは安心したようで、歳の割には幼げな顔に、親しみが感じられる表情が浮かんだ。
「僕の過去? なんだい?」
「ある学生から聞いたんだけど。君はルルーシュと幼少からの友達だったんだってね」
「えっ……あ、ああ、そうだよミレイ会長にでも聞いたのかい?」
ロイはいや、と手を振って否定した。
「違う人だよ。それでスザク、君はナナリー総督とも幼少からの友達なんだよね?」
「……」
スザクは一瞬目を細めた後、しばらく間を置いてから返答した。
「そうだけど、それが何か?」
スザクのまとうオーラの質が変わった事にロイは気付いた。俺はこの話をしたくない、と思っている人間が醸し出す独特の刺々しさとでも形容すればいいのか、とにかくそんなオーラがスザクを覆いはじめた。
任務上、ロイが様々な交渉の場で相手から感じてきたオーラだった。相手がこのオーラをまとった時、これ以上交渉の進展は無い場合が多かった。
多少鋭くなったスザクの瞳を静かに見返しながら、ロイは考え込んだ。
スザクのこの反応に対して、ロイは別段、驚きを感じなかった。というか、どこか漠然と、スザクはルルーシュとの過去の事を聞かれたらこうなるとロイは予想していた。それがなぜ予想できたのかは分からないが……。
なにはともあれ、ロイにとってここは分かれ目のように思えた。もう少し突っ込んで訊いてみるか。それとも、ここまでにして次の機会にするか。
ロイは一瞬だけ躊躇して、更に突っ込んでみる方を選択した。
「いや、もしかしたら君たち三人は、昔、知り合いだったんじゃないのかなぁ、なんて思ってさ」
表情は真剣にせず、あくまでくだけた口調で尋ねた。
ルルーシュを調べている事は、スザクには秘密なのだから、今、自分がスザクを探っていると思われるわけにもいかない。いざとなったとき笑ってごまかせる、そんな態度で尋ねるのがこの場では最良だとロイは判断した。
「ロイ、君は……」
ロイは笑顔を浮かべながらも、スザクに微細な動揺が走ったのを見逃さなかった。
(やはり、なにかあるのか……)
スザクからそう感じ取ったロイは、そう感じ取った事を微塵も感じさせない態度で更に問い詰めようとした。
「ねぇ、スザク。もしかして君は、いや、君たちは――」
そのとき、
ゴスッ。
突如、ロイの右腹部に強烈な痛みが走った。
「!?」
ロイはたまらず膝を折って床に倒れこんだ。その過程で呆気に取られた表情でこちらに顔を向けるスザクが見えた。
ロイは腹部の痛みに呻いた。肺が空気を搾り出そうとするが、喉はそれを拒絶して息を飲み、結果、呼吸は止まった。先ほどまで同僚の一挙一動を見定めていた獲物を狙う鷹のように油断無いナイトオブゼロの瞳は苦痛に歪み、そこから涙が染みて潤みを帯びた。
ロイは、自分が半泣きという情けない顔になっている事を自覚しながらもなんとか顔を上げて、後ろを向いた。今の“打撃”は前にいるスザクからではない。となると、その犯人は背後にいるはずだった。
そして、ブリタニア屈指の騎士であるロイ・キャンベルの背後に、気付かれずに立てる人物というのはそうはいない。
案の定、見覚えのある少女がいた。
背後からロイの右脇腹にある肝臓に向けて渾身の一撃を叩き込んだ少女。その人物は、握りこぶしを眼前でひざまずく男に見せつけるように立っていた。
「……アーニャ」
その名を呟き終わる前に、ロイの呼吸は腹部の痛みによって再度詰まった。そのため、ロイは数度咳き込んだ。
脇腹への一撃だがアーニャ・アールストレイムが小柄だからと言ってその威力はバカに出来ない。
彼女は帝国最強のナイトオブラウンズであり、白兵戦においては、体格の問題で他のラウンズに一歩及ばぬところはあるものの、その実力は、一般の騎士とは比較にならないものを持っている。なにより、ロイは完全に気を抜いていた。
いくら鍛え上げられた腹筋でも、体というのは意識を向けていなければ力を発揮しない不便な構造で出来ているので、
そんなところに渾身の一撃を、しかも人体の急所の一つである肝臓に打ち込まれれば、ラウンズだろうが、一般人だろうが民主主義的に――すなわち平等に床に倒れこむ。
「アーニャ、一体何をするんだ……」
ロイは涙ぐみながら自分を見下ろしている同僚に尋ねた。すると、
パン!
自分がアーニャに頬を叩かれたのだと気づいたのは、ロイが痛みを認知してから数秒経ってからだった。
酷く乾いた音は意外にも広範囲に響いた。音が政庁廊下の隅々まで駆け巡り、片手の指では足りない数の職員が驚いてこちらに視線を向けた。
そんな周りの視線をものともせずアーニャは堂々とこう言った。
「これは、私の心の痛み」
まるで、私に非は無いと言いたげな強気な瞳が印象的だった。
更にアーニャは振り終えた手の甲を返してロイの顔面をはたいた。スナップが効いていた。再びパーンと竹を割ったような乾いた音が鳴り響き、ロイの頬の痛覚は生真面目に仕事をして、痛みを脳に届けた。
「そしてこれが……女心の痛み」
往復ビンタをされたロイは、これといって防御反応を取ることもなく、また、赤く染まり始めた頬を触るでもなく、ただ呆然として目の前の少女を見つめていた。
しえん
そんなロイの様子を、アーニャはどこか不快そうに見やった。
男と女の視線の交錯はしばらく続いた。やがて、アーニャの方から振り上げていた腕と共に視線を下げ、ロイに背を向けた。
続けて、彼女はポツリと呟いた。
「私が先に遊園地に誘ったのに、何で他の女とデートするの……」
ここで、ロイはようやく自分の嘘がこの少女にバレてしまったということに気づいた。なぜバレたのか? どうしてバレたのか? という疑問を抱く前に、まず、一瞬で心が罪悪感に染まった。
「アー――」
ロイは、詫びる言葉も見つからないのに、それでも少女の名前を呼ぼうとした。でも、できなかった。なぜなら、ロイが名前を呼ぼうとした少女からは、聞いたことの無い不規則な吐息が少女の小さな背中越しに聞こえてきたからだ。
「……泣いてるのか?」
自分でも弱々しいと思える口調でロイは尋ねた。
背を向けたアーニャは、その問いには答えなかった。
ロイは、更に言葉をかけようと努力した。しかし、その努力は結果に結びつく事は無く、結局ロイは、無言のまま、無為に数十秒の時を過ごしてしまった。
無言の時を遮ったのはアーニャの方だった。
「悪い?」
アーニャは、ロイに背を向けたまま更に呟いた。
「泣かせたのはロイ……」
普段の少女からは想像できない哀しみの込められた声で罪を訴えられたロイは、情け無い事にまた何も言えず、ただこちらに向けられた少女の小さな背中を見つめた。
というか、見つめるしかなかった。彼女はこちらから目を背ける権利はあるが、自分が彼女から目を背けることは許されない。ロイはそう思った。
「……すまない。あの、なんと言って良いのか」
小さく震え始めている少女の肩に、ロイはそっと手を置いた。その小柄な肩が一度だけ小さく震えたのは、寒い外を歩いてきたロイの冷えた手が、温かいアーニャの肌に触れたからか、それ以外の理由なのか、ロイは正直分からなかった。
それでもロイは、圧迫感にも近い責任感と罪悪感に背を押されて、「アーニャ……」と少女の名前を呼んだ。
「僕は……」
そのとき、彼女が急にこちらを向いた。
「!」
その瞬間、またビンタが飛んできた。完全に不意をつかれたロイは、また頬に衝撃を浴びせられた。
毎朝一時間の緩急を付けた激しいランニングや、定期的な筋力トレーニングで、KMFという鋼鉄の体を支配下に置くために鍛え抜かれたはずの強靭な足腰は、主人を易々と裏切ってその職務をあっさりと放棄した。
ロイの体は、まるで虚弱体質の男が貧血でも起こしたかのようにヘナヘナと情けなく床に倒れこんだ。
再び見下ろされる形になったロイは、アーニャに困惑の視線を向けた。はっきり言って女性にぶたれるのは生まれて初めてだった。
ちなみに、殴られた事はあった。だが、それはあくまで訓練中の組手等での出来事であり、その相手もアーニャではなく、主にノネットと、モニカのドSコンビ(ジノ・ヴァインベルグ命名)だった。
こちらを顔を向けたアーニャの瞳には溢れるものがあった。
しかし、そこは女だてらにナイトオブラウンズを務める女傑。その表情は弱々しさなど微塵も感じさせない毅然たるものだった。少なくとも表面上はそう見えた。しかし、彼女の瞳の奥に映るものを見たロイは、少女の表面上よりもさらに深い複雑な感情を察知する事ができた。
深く悲しんでいる、とても悔しがっている。だが、それ以上に“怒っている”。
ロイは身震いした。
男の涙は降参の証だが、女の涙は決意の証でもある。と、上手くも無い比喩を言ったのは誰だったか、と考えかけてロイはやめた。
先ほどまで悲しみに染まっていた少女の瞳が、縄張りに侵入した猫を追い払おうとするような、そんな戦闘態勢の光を、誰から見ても明らかに帯びたからだった。
「とにかく、詳しく話を聞かせてもらう!」
「うわっ!?」
ロイは襟元を掴まれた。そして、信じられない力で無理やり立たされた。
「あ、いや……、アーニャちょっと待ってくれ」
「ちなみに、とぼけても無駄。とっくにアルフレッドからネタは上がってる。あと」
アーニャは、ロイの襟元を掴む拳にギュッと力を込めた。
「簡単には許すつもりはないから」
アーニャの背後から黒いオーラのようなものが湧き上がっているのを、感じたくもないのにロイは感じてしまった。
ロイはこのエリア11に来て初めて、いや、ナイトオブラウンズになって初めてこの妹分から恐怖というものを感じた。
「いや、とぼけるつもりは微塵もないです、はい」
ロイは素直に非を認めた。
しえん
黙秘権、という便利な言葉は、ことアーニャ・アールストレイム裁判所では適用されないどころか、自身が不利になるものだとロイは熟知していた。
まったくをもって、ブリタニアとは民主的な国では無い言わざるを得ない。なぜなら、黙秘権が使えない裁判所が、ロイの周りには、まるで牢獄のようにいくつもそびえたっているのだ。ちなみに、名前はノネット裁判所、モニカ裁判所、ベアトリス裁判所だったりする。
「とにかく、詳しく聞く」
小さく呟くように、しかし一語一語に力を込めて告げると、アーニャはロイの背中の襟首を掴み、男一人を軽々と引きずって歩き始めた。
「……」
目の前で展開される状況を呆然と眺めていたスザクは、ロイが引きずられ始めた所で、思い出したかのように、アーニャを呼び止めた。
「あっ、ちょっと待ってアーニャ。まだ、僕はロイとの話が終わってな――」
スザクの制止を聞いて、アーニャはピタリと止まった。そして、
「何?」
と、ロイが感じたのと同様の威圧的なオーラを醸し出しながら、眠たげな瞳、いやこの時ばかりは狂気殺人をやってのける精神異常者のようにすわっている、と形容できる瞳でスザクを睨みつけた。
それは一種の警告でもあった。
私の邪魔をするな! さもないと……。
彼女の瞳は、確かにそう語っていた。
スザクは小さく身震いした。この時ばかりは、この枢木スザクもラウンズになって初めてこの少女に、喉元にナイフを突きつけられたかのような恐怖を感じたようだった。
その時、不思議な事が起きた。スザクの中の何か、生への執着以上の“強烈な何か”が、今のアーニャに逆らう事を強く拒否した。
次の瞬間、スザクの瞳には怪しい赤い光が宿っていた。
「……いえ、何でも無いです」
彼もロイと同じく躊躇無く白旗を揚げた。アーニャはそんなスザクを一瞥して、
「なら話しかけないで。今、忙しい」
と、警察に捕らえられて観念した泥棒のような顔をしているロイを、アーニャは遠慮無くズルズルと引きずって、その場から立ち去ってしまった。
残されたスザクはしばらくその場で佇んでいたが、突然ハッとして。
「……そうか、またか」
恨めしそうに呟いて、首を振った。
〇
政庁の地下。建物の中心を貫くように立っている特殊硬化ガラスの空間の中には木製の椅子があり、その椅子にはドレスを着た一人の女性が座っていた。
女性は完全にガラスに囲まれており、往来できる範囲を制限されている。しかし、空調、証明、とその他の設備はこの場所よりさらに地下にある場所――拘留所に比べたら格段に良く、過ごすには快適だった。
「お礼を言うべきかしらね」
椅子に腰掛けたドレス姿の女性――黒の騎士団ゼロ番隊隊長、紅月カレンは、感謝の笑みを作ってガラスの向こう側にいる人物に言った。
「正直、あの場所は暗いし、狭いし、本当に気が滅入りそうでね」
「すみません。こんな事ぐらいしか、私には……」
カレンの声に応えたのは、今このエリア11の最高権力者であり、ブリタニア帝国の皇女、ナナリー総督だった。
ナナリーはお供も連れず、ガラス越しとはいえ、テロリストの前に悠然とした態度であった。ナナリーにとって、カレンという存在はテロリストというよりは、やはり、兄、ルルーシュの同級生という認識の方がが強いらしい。
(まぁ、そういう子なのよね、ナナリーは)
カレンはナナリーに対しては好意的な感情を抱いていた。他人を無償で信じる。そんな奇跡みたいな荒業ができる少女はそうはいない。そして、それはカレンの中では良い意味での評価に繋がっていた。
「いいのよナナリー。手錠も取ってもらえたし。本当に助かったわ」
そう言って、カレンは両腕を小さく掲げて見せた。
「……」
それでも、ナナリーは押し黙って、俯いていた。
カレンは困ってしまった。ナナリーは自分の身を案じてあんな複雑な表情をしている、と分かってしまったからだった。
このままでは自分は殺される、という事をカレンはよく理解していた。そして、このエリアの総督であるナナリーもそれはよく理解しているだろう。
と言っても、カレン自身は、この状況にそれほど絶望してはいなかった。殺されるのは、あくまでこのまま何もせず、そして何もおきなかった場合である。
きっと、ゼロが助け出してくれる。カレンはそう信じて疑っていなかった。
――余計な事はするな。必ず助けてやる!
ゼロは、カレンがヘマをして敵の捕虜になる寸前まで、その言葉を繰り返していた。
カレンはゼロの命令どおり、余計な事をせず救出されるまで大人しくしているつもりだった。だが、
支援
しえん
(でも、せっかくこうやって敵地のど真ん中にいるわけだし、やれる事はやっておきたいわよね)
と、カレンは考えていた。
「ナナリー。ライを知らないかしら?」
そう問いかけると、ナナリーは眉間をギュッと寄せた。言い切れない何かを堪えたような、そんな風にも見えるナナリーの表情を見て、カレンは自分の質問の仕方の不味さを悟った。
「ああ、ブラックリベリオンからのライの行方は一応知ってるの。処刑されたんでしょ?」
「……」
ナナリーは答えない。明らかに何と言っていいか分からず困っている。それに、どこかこちらを哀れむような表情をしていた。
(もしかして自暴自棄になってるとでも思われたかしら……)
カレンは、今更ながらに考える前に発言してしまった事を後悔した。
「えっと、自暴自棄になってるわけじゃないのよ。順を追って言うと、私は、その処刑には不可解な点が多すぎると思っているの」
「えっ?」
ナナリーが首を傾げた。
「どういう事でしょうか?」
それから、カレンはゼロから聞かされた“ライの処刑についての不可解な点”をいくつか説明した。もちろんギアスの存在は伏せてだ。
あと、ゼロ=ルルーシュという事ももちろん話さなかった。ここらへんは兄弟間の問題であるので、自分が口にして良いものではない、とカレンは思ったからだった。
「だから、私はライが処刑されたということを完全に信用していないの」
カレンからすべての説明を聞き終えたナナリーは、しばし何かを考え込んでいるようで、一分ほど沈黙を保ったあと、
「ブリタニア本国では、ライさんは処刑された事になっています。それで、これは本当は一部の人以外に教えてはいけない事なのですが……」
ナナリーは唇を軽く噛んだ後、顔を上げた。
「いえ、是非カレンさんに聞いていただきたい事なのですが、ライさんの処刑に関しては、お父様――皇帝陛下から重い情報規制がかけられています」
カレンの顔の真剣味が増した。
「それって……」
「はい、おかしい事です。わが国では犯罪者の罪とその執行の公表は抑止力になるとされ、積極的に行われています。
しかし、ライさんに限ってはそれが行われず、それどころか、ライという犯罪者、及び死刑囚はデータ上、もしくは公にはブリタニアに存在し無い事になっています。裁判の記録ももちろんありません」
と、ここまで並び立てた後、ナナリーは急に元気を無くし、しゅん、と頭を下げた。
「しかし、これらの不可思議な点は全て事実ではありますが。どれもライさんが生きているというものに繋がるものではありません……。常識的な考え方に則れば、我がブリタニアがライさんを、その……」
「生かしておく理由は特に無い。どちらかと言えば、いくら不可解な点はあっても、実際にはライは殺されている可能性が高い」
「はい……」
カレンの言葉を聞いたナナリーは弱々しく頷くと、また黙り込んでしまった。それらの態度で、ナナリーはライの生存を願ってはいても絶望視している、という事がカレンにはよく分かった。
しかし、当のカレンはナナリーの説明を聞いて、それほど悲観的な気分にはならなかった。
ライの処刑について、その処刑情報の秘匿を初めとする数々の不審な点。
判明しているのがそれらだけならば、確かに生存も絶望と言えるが、カレンはナナリーが持ちえていない情報――ギアスの存在――を知っている。そうなれば、これらの不審な点を見る視点も色々と違ってくる。
(やっぱり、ルルーシュが調べたとおり、ライの情報はブリタニア内でも皇帝直々の情報規制がしかれているのね。いや、情報自体がなくなりかけてるわけだから規制じゃないか。とにかく、胡散臭いわね……)
もしかして、皇女であるナナリーならば、何かルルーシュでも掴んでいない情報を知っているかと思ったが、そうではなく、ほとんど同じものだった。しかし、
――外から調べた情報と、内部からもたらされた情報の一致、その確認はそれだけで成果だよ、カレン。
自分よりも、そして誰よりも情報というものを重要視していた少年の言葉を思い出して、カレンは一瞬寂しげな気分を味わい、それを振り払うように、自分の思考にのめりこんでいった。
(となると、やっぱりライはブリタニアで別人として生活しているという事か……)
カレンは内心でふむふむ、と何度も頷いた。
もちろん、ライが別人としてブリタニアで生活しているどころか、すでに殺されている可能性ももちろんある。しかし、カレンはそんな事を考えたくなかった。
それに、ライが死んでいるという事実をこの目で確認せずに、耳に入った情報だけで、いまさらカレンは、彼を助け出すという自分の行動を止めようとも思わなかった。
しえん
しえん
「ありがとう……。色々気にしてくれて」
「えっ」
「その様子だとあなたも色々調べてくれたんでしょナナリー。だから、ありがとう」
カレンが感謝を述べると、ナナリーはそれこそ泣きそうな顔で何度も首を振った。
「すみません。すみません、本当に……」
「ちょっと、ナナリー」
本気でなきそうになったナナリーに、カレンは柔らかな笑顔で声をかけた。
「ナナリーが謝る事じゃ無いでしょ。それに、言ったでしょ、ライは生きてる私はそう信じて――」
と、ここで、カレンは質問するべき内容の一つを思い出した。
「……あのさナナリー」
カレンは笑顔を浮かべたまま声をかけて、俯いているナナリーの顔を上げさせた。
「はい、何でしょうか……」
「ライと似た人を見たことはないかしら?」
「……はっ?」
この時、カレンは何も知らない人にとって、自分の質問の内容がいかに突拍子も無いものだったのか、というのを、ナナリーが呆然としている様子を見て気が付き、先ほどの質問に続いてまたやってしまった、と反省した。
――カレン、もう少し考えて行動しようね……。
自分よりも、そして誰よりも論理というものを重要視していた少年の言葉を思い出して、カレンは一瞬情けない気分を味わい、今度は振り払うのではなく、しっかりと心に刻んで反省した。
「あ〜、あのね、私たち黒の騎士団が仕入れた情報によれば、もしかしたら、ライは処刑される前に監獄から逃げ出して、ブリタニアで潜伏して生きてるかもしれない、っていうのがあるの。だから」
完全に即興で口からでまかせの説明だったが、
「そんな情報が……」
と、ナナリーは興味深そうにカレンの話を聞いていた。続いて彼女は車椅子の上で思案顔になった。数秒の沈黙の後、
「いえ、それは……でも……」
ナナリーはなにやらブツブツ呟き、そして、また無言になって考え始めた。
「もしかして……何か心当たりでもあるの?」
思わずカレンの腰が椅子からあがった。大した反応を期待してはいなかったが、どうやらナナリーには多少なりとも思い当たる事があるようだった。
「……」
しかし、ナナリーはそれ以上答えようとはしなかった。
「変な期待を掛けさせて後でがっかりさせたら申し訳ない、とか考えなくていいから、何でもいいから私に教えて」
カレンの強い口調を浴びせられつつも、それでもナナリーは躊躇していたが、やがて彼女はある自分の部下について話し始めた。
〇
「しかし、本当に酷い顔だ」
「僕もそう思うよ……」
政庁にあるナイトオブゼロの私室では、男二人がワインの瓶を挟んで座っていた。
一人はナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ。そして、もう一人は、
「酒を飲むと傷に染みる……」
ロイ・キャンベルはまるで猫同士の激しいケンカに巻き込まれたような顔をソッと指で撫でながら、赤いワインに満たされたグラスを傾けた。
その顔は酷いものだった。頬は腫れているし、顔のいたるところにはそれこそ猫に引っかかれたような傷もたくさんある。
政庁の廊下での一件のあと、ロイはアーニャの部屋に連れて行かれて、口論(と言っても、アーニャが騒ぎ、ロイが一方的に頭をさげるというもの)で付けられたキズだった。
「生傷のフルオーケストラだな。アンコールは無いのか?」ロイの銀髪の友人は、ロイの顔を見るなりそう表現して大いに笑ったものだった。
「ははっ、喚かれて叩かれて引っかかれて、散々だったようだな。もっとも、自業自得だから、同情はしないが」
「……」
ロイはムッと友人を睨んだが、すぐにその視線に注ぐ力を無くしてしまった。
「はいはい、そうですよ。自業自得ですよ……」
ロイはワインをチビチビと飲みながら、自嘲のオーラを醸し出し始めた。
その様子をジノは面白そうに眺めていた。
「まぁ、お前の場合は自業自得だが、巻き込まれたアルフレッド卿は本当に可哀想だ」
「それは……」
自身の優秀な副官の事を思い浮かべて、ロイは後悔の息を飲んだ。
今回は彼に――アルフレッドには本当に損な役回りをさせてしまった、という罪悪感が今回のアーニャへの嘘と同じくらいロイにはあった。
後から聞いた話によれば、アルフレッドはアーニャからの情報開示の要求を拒絶し続けて、最終的に彼女から決闘を申し込まれたらしい。
決闘には理由が必要である。アーニャの決闘の理由としては、貶められた名誉の回復のため、ロイ・キャンベルの情報を必要とする、というものだった。
しえん
しかし、決闘というものは申し込まれても、受けて立たなければ成立しないものである。いくら、アーニャが決闘決闘と叫ぼうが、相手が知らん振りを決め込めば、それは決闘にはならない。
だが、大衆の前でいくらラウンズとはいえ少女と形容できる人物に決闘を申し込まれてすごすごと引き下がれるほどアルフレッドは大人では無かったらしく、彼はその挑戦を受けて、二人はKMFの模擬戦で対決する事になった。
「そんで、ものの見事に負けたらしい」
ジノはなぜか面白そうに言った。
ロイが聞いた話によると、何でも、アーニャはアルフレッドには“ヴィンセント”に騎乗させ、自身は格闘能力が雌雄を決するKMFの模擬戦で、よりにもよって射撃専用と言ってよい“モルドレッド”に騎乗したらしい。
しかし、それでアルフレッドは負けた。
その経緯を、どこから仕入れてきたのかジノも知っていた。
「ギルフォード卿によると、アルフレッド卿はよっぽど無様な負け方をしたらしいな。今は部屋でいじけて、出てこないらしい」
ジノが肩をすくめた。
「……そうか」
ロイは、アルフレッドに悪い事をしたという罪悪感は沸き起こっても、アルフレッドがアーニャに負けたという事実に驚く事も疑問に思う事も無かった。
アルフレッドは一流の騎士であり、その能力に遜色は無い。だが、上司であるロイに言わせると、優秀な副官には少し突出するものが無いように思えた。
言ってみれば、アルフレッドは優秀ではなく万能なタイプなのだ、とロイは思っていた。この万能なタイプというのは決闘という限られた状況に置かれて、ラウンズのような能力が突出した者たちに勝負されるとすこぶる弱い。
(つまり、アルフレッドは、タイプとしては僕と同じなんだよな……)
ロイはそう分析した。ロイ自身、実を言えばラウンズの中で一番KMF戦能力的には劣っていると思っている。
恐らく、ナイトオブラウンズのジノ、アーニャ、モニカ、ビスマルク、ノネットなどと、平原など周りに何も無い所でガチンコ勝負をすれば、全員にコテンパンにされるだろう。というより、今までの、模擬戦の結果がそれを如実に証明している。
このように、純粋なKMF操縦能力だけでは他のラウンズに劣っているロイだが、それでも、ロイがラウンズとして、同僚たちに肩を並ぶ事を許されているのは、ひとえに純粋な戦闘能力ではなく、戦闘に対する応用力、柔軟力の賜物だった。
環境、状況を見極め、フェイント、だまし討ちを惜しげもなく駆使し、ただ直進するのではなく、あらゆるものを利用しつつ、時には迂回、時には直進とその場その場に適した行動、戦術を展開する。その場に適した行動の選択力、とでも言えばいいのだろうか。
そして、この選択力というものは選択できるものが多ければ多い状況なほど、力を発揮するものだ。そして、その選択力が発揮しやすい状況と言うのは、一体一の決闘ではなく、多数対多数が入り乱れる戦場のような場所なのだ。
そのロイの能力をいち早く見抜いたのはロイド伯爵だった。伯爵は、ロイとスザクの能力を比較し、算定する上で、こう結論付けた。
「ロイ・キャンベルと枢木スザクが同能力のKMFに騎乗し一体一で対戦した場合、おそらく高確率で枢木スザクが勝つ。しかし、お互い同能力の僚機を二機を与えられて、三対三の対戦になった場合、その勝率は反転するだろう」
選択力。
敵と戦う。ひとまず逃げる。迂回する。物陰に隠れる。撤退する。交渉する。相手の消耗を待つ。いざ、戦場に立てば、その選択は無限に広がっている。
その選択を適切に、そして適度に、そして充分な選択肢を保持できる場においてのみ万能なタイプというのは、超一流の能力を持つ者たちと肩を並べる事ができるのである。
かつて、ジノが引き起こした政庁襲撃事件の時、ロイは自ら出向く事を避け、まず味方のKMFをけしかけ、ジノに体力と精神力の消耗を強いた後、直接ジノの前に姿を現した。
それは、ロイがジノと真正面から戦っては勝てないという事を良く知っていたからこそ選択した行動だった。
そういう事もあって万能タイプであるロイは敵と正面から戦う、という選択だけを強いられる一対一の模擬戦などはあまり得意としていない。
と言っても、ロイの実力は敵と正面から戦う、という一択に絞られたとしても、その実力は他の一流の騎士達の追随を許さないものだ。だが、それでも他のラウンズ――超一流の騎士達と比べると、純粋なKMF操縦能力では一段劣る。
万能な能力を武器とする人間は、万能な能力を発揮できる状況で戦うべきである。
これがロイの持論であり。その持論を極限まで極めて、初めてロイは超一流の人間たちと肩を並べる事を許されている、と考えていた。
しえん
しえん
そういう経緯があり、ロイは自分と同じタイプのアルフレッドが、アーニャに模擬戦であっけなく負けたと聞いても、驚きもせず、まぁ、そうだろうな、とむしろ納得した。
この場合、アルフレッドの能力を見抜いてKMFでの模擬戦に勝負を持っていったアーニャの作戦こそ流石と言うべきだった。
「とりあえず、アルフレッドにはあとで謝りに行くよ」
「そうだな、ワインでも持っていけ」
無遠慮に笑って、ジノは哀れな副官の話から話題を変えた。
「ところで、結局アーニャとはどうなったんだ? お前の顔を見ればそれなりの修羅場だったことは想像できるが」
ロイの端正な顔に走るいくつかの傷と腫れを眺めて、ジノは人が悪い笑みを浮かべた。そんな友人を数秒睨んでから、ロイはため息混じりに口を開いた。
「今度の休日に、アーニャと一日デートする事になった……」
「ほぅ」
「今度の休日に朝九時集合。遊園地の前にショッピングモールで買い物。昼からは遊園地で、夜は三ツ星レストランでディナー。もちろん、代金は全部僕持ちで……」
ジノは大げさに手を叩いて見せた。
「いいんじゃないか? それで許してもらえるなら、安いものだろ」
「それは、そうだろうね……」
しかし、ロイは今度の休日を埋め合わせにつかう事で、アーニャからある程度の許しを獲得したにも関わらず、その暗い表情を一変させる事は無かった。
「おいおい、一応許してもらえたんだろ? なら、もういいじゃないか。お前が今すべき事は過去の反省ではなく、未来に向けて、どうアーニャに償っていくかだと思うね」
ジノのもっともな意見に、ロイは別段感心した様子も無く、その酔いが回り始めた視線を、自分の側面にガラス越しに広がる夜景に向けた。ガラスに映った顔が、ほんのり赤くなりはじめていた。
「それは、そうだけどさ。……それでもやっぱり、女性の涙を流させるのは気持ちのいいものじゃないから」
ロイはばつが悪そうに呟いて、ワインを口に運んだ。すると同時に、目の前のジノから、息を飲む音がきこえた。
「なんだと……?」
発せられたジノの声はかすかに揺れていたが、それは別に酔っているからではなかった。
「? どうしたのさ?」
ジノの様子が目に見えておかしくなったことは、ロイにもわかった。ジノは、まるで白鳥からアヒルの子供が生まれてくるところを目撃してしまったかのような、奇妙な顔をしていた。
やがてジノは手に持ったグラスを力無くテーブルに戻した。その時、ジノは友人から視線を逸らさなかった。
「泣いた? あのアーニャがか? 目にゴミが入ったとかじゃなくてか?」
その言い様が、自分を責めているものだと感じたロイは、バツが悪そうに金髪の友人から目を逸らした。
「うん、泣かせた。泣かせてしまった。それはスザクも見てるよ。でも、それは当然と言えば当然で、僕はそれほど、彼女を追い詰めてしまったという事で」
「……追い詰められたぐらいで、愁傷に泣くタマかよ、あいつが」
「んっ? 何か言った?」
「いや、別に……そうか、泣かせたのか。そりゃあ、……めでたいな」
「……なにが、めでたいんだよ」
ロイが眉をひそめて言うと、ジノはすぐに頭を振った。
「いや、そういうことじゃない。アーニャが泣いた事自体をめでたく思っているわけじゃないんだ。分かるだろ?」
「? 分からないけど?」
ロイが答えると、金髪の友人は、今度はなにやら失望した様子で頭を振った。
「ああ、そうか。お前はそういう奴だったな……」
「……なんか、失礼な事を言われている気がするな」
眉を寄せたロイの顔を、ジノはジッと眺めて、やや沈黙を保った。
「何なのさ……」
ロイが無言の視線に堪えかねて言うと、ジノはアルコールの混じった息を深く吐いた。相当飲んだ事が分かる息だったが、それでもジノの目はしっかりとロイを見据えていた。
「アーニャはさ、別にお前が嘘を付いたから怒ったわけじゃないのさ、お前が違う女性との約束を優先させたから怒ったんだ」
「?」
ロイはジノの言葉の意味をじっくりと頭の中で咀嚼してみた。しかし、結局、
「えっと、それはどうちがうの?」
と答える以外の選択肢を選び出せなかった。
「……こういうのは教えてもらうものじゃなくて、自分で考えて答えを出すものだ。っと、これは前にも言ったな」
ロイは怪訝な顔をジノに向けた。
「ジノ。君は時々、訳の分からない事を言って僕を困らせるね」
「普通はだれでも分かることだ。それでも訳が分からないと思うのは、それはお前が勉強不足だからだ。俺のせいじゃない。他人のせいにするな」
「……」
しえん
支援
ロイは何も言い返せなかった。理由は分からないが、友人の言葉に強い説得力のようなものを感じたからだった。
黙り込むロイをよそに、ジノはグラスを空にすると、そこにまた赤い液体を注いだ。
「泣く、というのは嬉しい悲しい等、様々な理由の違いはあれ、自分に許容できない出来事が起こった時の情緒的反応なんだ。そうは思わないか、ロイ?」
ロイは無言で頷いた、言っている事に間違いは無いと思えたからだった。
「そして、許容できない、というのはある意味その出来事に強い関心を抱いているという事だ。本気で泣く、本気で怒るというのは必ずその人が強い関心を持っているものが変化して起こるものなんだ。
そして、俺が知ってるかつてのアーニャは世の中の全てに関心が無いようだった。少なくとも、俺はそういう風に見えた」
「……」
「だが、アーニャはお前に向かって泣いた。それはどういう事なのか分かるか? つまりその答えは、どうやらアーニャにとってお前は、容易に許容できない相手だという事さ」
ロイはそれを聞いて、数度まばたいた後、ポリポリと頬を掻いて、
「えっと、よく分からないんだけど、それってつまり、僕はアーニャに嫌われてるってことかな?」
「何でそうなるんだ!?」
ジノは信じられないと言った様子で地団太を踏んだ。
「お前はアーニャにとって強い関心がある相手だ、って言ってるんだよ!」
それを聞いて、ロイは、
「ああ、うん。それはそうだろうね」
と、素直に認めた。
この態度はジノにとっては意外だったのか、彼は銀髪の友人をしばし呆然と眺めた後、「おおっ!」っと、大いに笑った。
「なんだ分かってたのか。そうか、そうだよな、いくらお前でもそりゃあ分かってるよな。さすが俺の親友は賢いねぇ」
ロイも笑って言った。
「当たり前だろ。だって、僕とアーニャは仲間じゃないか。強い関心を抱いて当然だよ」
「……」
ジノは疲れた顔をして、友人とカンパイしようとして上げたグラスを、無言で下げた。
〇
その場所には何も無かった。他の部屋と違い、豪華な調度品も、絢爛にかがやくシャンデリアも何も無い。
ブリタニア帝国。その皇帝にしか入室を許されていないとある部屋。そこには前面の壁を占領するテレビ画面だけがあり、後はむき出しのコンクリートの壁が周りを覆っている。
その画面の前に帝国最大の権力者、皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが微動だにせずに佇んでいた。
そのまま数分が過ぎた。
「きたか」
シャルルがそう呟くのとほぼ同時に、テレビの画面に光が灯った。
『……やぁ、またせてしまったかな?』
画面には少年の姿が映った。長い髪をオールバックにして髪留めでまとめているあどけない顔立ちの十歳前後の男の子だった。
「いえ、そんな事はありませんよ“兄さん”」
シャルルは口元を吊り上げて笑った。帝国の皇帝が目の前の少年を尊重ような今の口調は、見る人が見れば不審に思うに違いない。しかし、これでいいのだ。なぜなら彼らは兄弟であり、シャルルが弟で少年が兄なのだから。
『忙しいのに、わざわざ呼び出してすまなかったね』
少年は天下のブリタニア皇帝に対して、あくまで尊大な口調を緩めなかった。しかし、この二人の間ではそれが普通なのである。
「構いませんよ兄さん、それで、話とは?」
『彼についてだよ、シャルル』
どこか柔和に微笑んでいたシャルルの顔が、皇帝の威厳と取り戻したように見えた。
「彼については、すでに報告したと思いますが?」
『ああ、聞いてるよ』
兄は注意して見ていなければ気付かないほど微細に頷いた。
『でも、やはり、君の口からちゃんと聞いてみたいと思ってね』
「この一年間、彼の事については私に任せてくださっていたではありませんか」
『だから、急に気になったのさ。いけない事かい?』
アゴを上げてこちらを見下ろす形になった兄の姿に、シャルルは首を小さく振って応じた。
「いえ、いけなくはありません」
その返答に、兄の方は少なからず納得した様子だった。兄は足を組み替えて頷くと、少年らしい小さな唇を動かし、饒舌に話し始めた。
『ねぇ、シャルル。もしかして君は迷っているんじゃないのかい? 自分が本当に正しいのかを』
シャルルは数秒間、沈黙を通した。
「兄さん。話が見えませんが」
弟の返答を、兄は不敵な微笑みで受け止めた。
『あまり、言い回しをする趣味は無いんだ。だから、単刀直入に聞くよシャルル。シャルル、君はあの計画の実行、それ自体を迷ってはいないかい?』
シャルルの眉間の溝が深くなる。兄の方は、構わずに言葉を続けた。
しえん
『そして、それを見極めさせるために彼を生かした。彼は僕達と立場が似ているからね。
そんな彼が、僕達と同じ考えにいたるのか、それとも違う考えにいたるのか。同じ考えに至れば、僕達の行動の正しさは補強されるよね。こんな世界ならば、それは塗り返すしかないという選択を確信に近づける事が出来るわけだ』
兄は淡々と、沈黙を守る弟に言葉をかけ続けた。
『でも、もし彼が違う結論に達し、僕達とは違う世界救世の道を見つけたのなら、その時は……』
「何がおっしゃりたいのですか」
兄の口の動きを、シャルルは言葉で止めた。兄は表情を変えずに弟の返事を受け止めた、ように見えた。
しばらく、兄弟の視線が重なり合った。その交差にどんな意味があるのか、それは兄弟である二人には果たして分かっているのか。
『少数派になるのは嫌かい? シャルル』
弟から視線を外さず、兄はどこか淡々ながらも妙に圧迫感を感じさせる口調で尋ねた。
シャルルは眉間に溝を作った表情を変化させなかった。
「兄さん」
重い口調で言うと、シャルルは改めて兄を見据えた。
「私は本気で計画を果たそうと考えています。奴を生かすのは計画に使える人材だからです。それ以上の理由はありません」
『……信じても?』
その問いに、シャルルは心外だとでも言いたげに、ただ一度、コクリと頷いた。
「誓いをお忘れなのですか、兄さん?」
問い返されて、兄はどこか値段を見積もる鑑定士のような表情で弟の齢五十を過ぎながらいまだ少壮を感じさせる顔を見つめた。やがて、
『……そうだね。そうだねシャルル。悪かった。どうも歳をとると心配性になっていけない』
首を振って兄は謝罪した。弟シャルルの顔に再び微笑が戻った。
「私は兄さんに嘘はつきませんよ」
その言葉に、兄は心底満足そうに頷いた。
『うん、そうだね。この世でたった二人の兄弟だもの』
「ご納得いただけましたか」
『ああ、つまらない事を聞いた。忘れてほしい。お詫びといってはなんだけど、今日は夕食を一緒にしないかい? 教団に用意させるから』
「いいですな。では、時間になったら伺いますよ」
『待っているよシャルル。僕のたった一人の弟』
その言葉を最後に通信は途切れた。それでもシャルルは数秒間、灰色の画面に向ける微笑を絶やさなかったが、やがて、表情を厳格なものに戻した。
「迷っている、か……」
視線を下に向ける。しばし考えて、シャルルはどこか吐き捨てるように呟いた。
「人は何事にも完全な自信は持てぬもの。あなたもそうだろうに、兄さん……」
その呟きは誰にも聞かれることはなかった。
シーン10 終わり
シーン11『シャーリー』に続く。
投下終了です。
支援感謝です。
今後は不定期更新(また一ヶ月ほど空くと思います)になるとは思いますが、物語の最後まで投下したいと思いますのでよろしくお願いします。
>>464 お久しぶりです。そして投下GJでした!!
何があったかは聞きません。投下して下さったのですからw
アーニャ可哀想に…けど、デート出来る事になったし結果としては良かった…んだよな?w
さてさて、カレンがいよいよ核心に迫らんとしている!
一方で、皇帝達の間にも何やら不穏な空気ですか……
今後の展開が楽しみでなりません。
いやぁ、本当に嬉しいです。
次回の投下もお待ちしてます!
しっかし、ロイは鈍いにも程があるwww
ここまで鈍い友達相手にジノは良く耐えたなぁw
>>464 GJでした!
お久しぶりです!待ってましたよw
あいかわらずメチャクチャ楽しかったです。
ロイはあそこまでしてもアーニャの思いに気づかないとは…
次回も首を長くして楽しみにまってます!!
投下乙です。待った甲斐がありました!
あいかわらずとても引き込まれる文章でサクサク読めました。
次はついにあのシーンになるのか・・・。
貴方の次回の投下を楽しみに待っております。
あと、ロスカラ1周年おめでとう!!
KOUSEI卿、一日千秋の思いでお待ちしておりました。
今回を一言で言い表せるなら、まさに『萌』ですな!!
ロイの浮気(?)に涙するも、泣き寝入るのではしっかり折檻する姿に悶えましたw
しかし、まさか『生きろ』のギアスにまで反応するとは・・・アーニャ、恐ろしい子。
まさに物語の核心に迫ろうとするカレンとナナリーも、頭上で当の本人が修羅場を繰り広げているとは思わないでしょうねww
次回はついに12〜13話に迫りますか。
ミレイ会長の卒業イベントでロイとアーニャの行方は!
記憶を取り戻したシャーリーが明かすロイの正体は!!
ロイは訪れることが確定している悲劇を救えるのか!!!
・・・・・・そして、ロイとジェレミアが接触したならば、どんな結果を齎すのか!!!!
次回の投下、全力でお待ち申し上げます!!
P.S
トーマス卿、何故かスレ37に投下されたMrスケアクロウ卿の
「Another Lost Colors 色とりどりの世界を君に」3話が保管されていませんでしたよ
<<468です
後、千葉はライの嫁の「コードギアス The reborn world」5話もです。
両作品とも楽しみにしているので、是非保管していただきたいのですが・・・・・・
遅ればせながら、祝・ロスカラ一周年記念!
そして、R2での続編をぜひに!!
>>464 ああ、乙でした!
スザクとライの薄刃の上のような駆け引きに緊張。
アーニャに中断されてしまってほっとしたような残念なような。
またの投下を、お待ちしています。
>>436 面白かった!
さっくり読めてじんとする。素敵だなあと思います。
CCとカレン、女同士の組み合わせ、いい雰囲気ですよね。
>>468-469 申し訳ありません。現在当方のトラブルにより、(比較的古いもの以外の)SSの閲覧は「スレッド別一覧」からのみ可能となっております。
復旧に暫く時間が掛るものと思われます。何卒ご了承ください。
>>464 KOUSEI卿、GJでした!
ミーヤとデートしながらも、それを手段としてルルーシュの情報を収集する。
初めてのデートでそんな余裕があるのが凄いね。
あるいは特別な感情を持っていないからそういう事が出来るのか……
スザクとの会話中に割り込む――いや、殴り込むアーニャ、ひでぇw
気を抜いているときにリバーブロー、死ねるな。
涙を流しながらロイをぶつアーニャ、進展があるかと思いきや――ジノの頑張りに期待。
少しギャグになりかけなところで『生きろ』ギアスでシリアスなかんじにする、流石です。
カレンとナナリーとの対話、カレンはロイの事を知ってどう反応し、またどの様な行動を取ろうと思うのか。
カレンとロイ、二人が会ったら――
ライの強さの説明、万能型。
状況によって器用貧乏、凡庸型となりうるその強さをどの様に活かすか、読んでいて納得です。
皇帝兄弟の会話、シャルルは兄が既に嘘をついている事を知っている。
シャルルの言葉は嘘か真か……
今回も非常に楽しく読ませていただきました。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
むしろこの場面でのゐ`ギアスはギャグにしか・・・ゲフンゲフン
KOUSEIさんお久しぶりです、ずっと待ってました!
シリアスとギャグのバランスが絶妙で素晴らしい。
次回も楽しみに待ってます
>>464 KOUSEI卿、お待ちしておりました!
この作品は、俺の中では、ロスカラSS最高傑作です!
ストーリーはいよいよ核心に迫ってきましたね。カレンが捕まってナナリーとの再会を果たしライについて話すのは想像の通り再現されましたw
第二次東京決戦でライ、カレン、アーニャ、ナナリー、ルルーシュ、の運命がどう交錯しどういうルートに入っていくのか、無数の選択肢の中今から楽しみでしかたありません。
でも、本音は、そろそろライカレで本編への胸のすくような反逆、ハッピーエンドへのフラグ乱立を見たいんですけどね!(笑)
というわけで、どんなに先になろうとも卿に最後まで付き合います!次回会える日を心からお待ちしております。
・・・画像掲示板投稿報告です・・・
タイトル「生徒会でお花見」
lost colors 発売一周年に、
とにかく何かおめでたい絵を描こうとしたらこうなりました。
ちいさな生徒会キャラクターみんなでお花見です。
よろしければ
>>4 の画像掲示板より閲覧ください。
・・・
一周年に間に合わなかったなあと思っていたらちょうど規制が解除。
たいした賑やかしにもならないですが
これからもときどき投下させていただければ幸いです。
えー、まぁ覚えている人は居られないと思いますが、お久しぶりでございます。
本日の21:50くらいからSS投下します。
短編なので支援は必要ないと〜
【メインタイトル】
僕と彼女の関係
【サブタイトル】
《C.C.の場合》
【CP】
ライ×C.C.
【ジャンル】
不明。……日常風景?
トウキョウ祖界。
エリア11、南東部に位置する都市――政庁が置かれている事を考えると“首都”と形容してもいいかもしれない。かつて、この国が『日本』と呼ばれ、この地が『東京都』と呼ばれた頃と変わらず、トウキョウはこの国の中心地だった。
祖界、繁華街の大通りに面したとある飲食店…そのオープンテラスに僕と彼女はいた。
オープンテラスには白を基調とした円形のテーブルが5つほど置かれており、僕達はその1つに腰を下ろしている。
目前のテーブルには、先程、店内から女性の店員が素敵な微笑みと共に届けてくれた平べったい箱が。
その中にはスライストマトやピーマン、ペパロニサラミなど定番中の定番と言えるトッピングが乗せられたピザが、我が物顔で鎮座している。
微かに視認出来る白い湯気が、そのピザが出来たてであること雄弁に語っていた。
その名は、トッピングの彩りに違わず『ベーシックピッツァ』。バラエティーに富むピザが売りのこの店において、最もシンプルな商品であり、最も人気の高い商品でもあった。
原点回帰、とでも言うのだろうか。
まだ幼い子どもなどは、やはり目を引くバラエティーに富んだピザを食べたがる様だが、玄人となると極々シンプルなものを好むものだ。というのが正面の席に座っている少女――かどうかは怪しいものだが、外見の上では間違いなく“少女”である――の弁。
少女…C.C.は店員が『御待たせ致しました』という定番句を添えてテーブルに置いたピザ箱の蓋を開くと、一瞬、顔を綻ばし喜びの感情を全面に押し出したが、次の瞬間にはその表情を霧散させた。
直ぐ目の前に、他者…つまりは僕、が居るのを思い出したのだろう。
彼女は打って変わった無表情で、ピザの一切れに手を伸ばすとそのまま緩やかな動作で頬張る。
……どうでもいい事だが、無表情ではどうしても美味そうには見えない。なんて考えていると、
「ほら、ライ。お前も一つ食ったらどうだ?」
C.C.がそう言って僕に促した。正直に白状しよう。僕はこの時、心臓が口から飛び出るかというくらいに、驚いた。
またルルーシュに部屋を追い出されたのだろう、『記憶探し』を手伝うなどと口から出任せ(建前や口実とも言う)を言い今日も彼女は、僕にピザをたかっていた。………のだが。
普段の彼女なら絶対に口にしないだろう言葉に、内心の戸惑いを隠せない。
しかしまぁ、その珍しい気遣いに甘えるのもまた一興だろう、と僕は目を白黒させながらも均等に切れ目の入ったピザの一切れに手を伸ばした。
――――すると、何故かその腕をC.C.に掴まれた。
…………。
数秒、物言わぬ沈黙に辺りが包まれて。
「…どういうつもりだ?」
困ったように僕が訊ねると、
「“それ”は駄目だ。チーズと具の配合が絶妙の場所なんだよ。私が食う」
「………。わかった」
そこまで言うなら仕方がない。“それ”の右隣の切れを取ろうとすると、
「“そこ”も駄目だ。私が食う。……他のを選べ」
「………」
どうやら、“それ”と“そこ”は駄目らしい。
そのまま手を右回りで動かす。
「あぁ。それもだ」
「…………」
「それも」
「………」
「そこもだめだ」
「……」
「一応言っておくと、…それもだぞ?」
「…」
盛大な溜め息を吐き出しそうになったが、堪える。それでも、僕は不快感を敢えて隠すことなく、
「…じゃあ、“どれ”を食えと言うんだ?」
努めて抑揚を無くして言葉を紡ぐ。
「悪いな。よくよく見てみれば、お前にあげれるような物は一つもない」
特に悪びれる様子もなく、淡々とした口調で彼女は言った。
殆んど無意識の内に、ぴくり、と眉が跳ねた。
激情には程遠く、しかし穏やかなままでも居られない。言葉では言い表し難い、妙な感情が胸を燻る。
そんな僕の心情が見て取れたのだろう。さも可笑しそうに、C.C.の口元が弧を描いていた。
それが、少し気に入らなくて。
「………」
無言のまま、最初に取ろうとしたピザの切れを手に取り、
「…あっ!!」
C.C.のらしくない、女の子の様な悲鳴を背に口に運ぶ。
そのまま、咀嚼。続けざまに嚥下。
茫然自失としている彼女を尻目に、よく味わいながら食べる。
「ふむ。……確かに、美味しい」
「お、おまっ……!? 私の…」
世にも珍しい、困惑と怒りと、それから驚きが入り雑じった顔。C.C.もこんな顔が出来るのか、と心中で驚いていると、
「き、貴様…っ…何を考えて……信じられんっ!!」
どもるように、うまく言葉を口に出来ないC.C.。
ふと、また胸の中に妙な感情が孕む。しかし、先程の感覚とは違う、と思った。その感覚が何か、直ぐに自覚出来たからだろう。
曰く、『楽しい』と。
それは、相手がC.C.だからこそ感じれるものだろう。彼女といると、不思議な安心感を得ることが出来るのだ。カレンやナナリーと一緒に居るときに得る、あたたかな気持ちとは違う、感覚。
もしかしたらそれは、C.C.と僕がこの平和な世界から外れた、異端のような存在同士だからなのかも知れない。
だからだろうか、もっとこの感覚を味わいたくなり、僕は行動に移した。
「……こうも美味いと、もっと食べたくなるな」
言いながら、ピザに手を伸ばす。
「……あぁっ…お前というやつは!!」
僕の言動に反応し、ピザを死守せんとするC.C.。だが、遅い。あまりにも、遅い。
既に僕の手中には一切れのピザがあった。C.C.のディフェンスの間を縫って、意図も簡単に手に入れた戦利品である。
ピザを、そのまま口元に持っていく。
「よ、よせっ、食うなっ!!」
必死の形相。らしくない叫び声。
…それが見れただけでもよしとしよう。元から、食べる気などなかったのだし。
「ああ、わかったよ。 食べなきゃいいんだな?」
C.C.の意志に従い、ピザを箱に戻そうとして、…そこに透明な壁でもあるかのように、手が止まった。
一度手に取った食べ物を大皿(この場合はピザの箱だが)に戻すのは如何なものか、と思ったのだ。
刹那の間、躊躇った後、手に持ったピザの切っ先をC.C.に向けた。そのまま視線の高さまで持ち上げて見せる。
「…………」
「…………」
見詰め合う、僕とC.C.。…いや、C.C.が見ているのはピザの方か。
「食べないのか?」
僕が首を傾げると、C.C.は呆れたとばかりに首を数度横に振った後、吐き捨てるように言った。
「狙ってやってないところが余計に腹立たしいな、お前は」
「……?」
どういう意味だろう?
再び僕が首を傾げると、
「……はぁ。もういい」
ぐっ、と身を乗り出してC.C.がピザにかぶり付いた。そのまま、身を引くと、彼女の口元と僕の手元のピザが伸びたチーズで繋がった。
途中で途切れる事なく十cm以上伸びたそれは、何よりも上質のモッツァレラチーズを使っていることを証明している。
C.C.は己の口元から飛び出ているその醍醐的なものを、更に身を引いて引きちぎると、不機嫌そうに眉を寄せた。
「……なんだか、餌付けされてるみたいで気に食わん」
「そうか? 僕は楽しいけど」
そっと、笑って見せると、
「………むぅ」
呻き声と共に、顔を逸らされた。
少しの間、不貞腐れたように何処か遠くを見ていたが、ふと、顔の向きはそのままでC.C.が口を開いた。
「……ピザ」
「? 何か言ったか?」
「ピザをもう一枚寄越せ」
「なっ?! まだ沢山残ってるじゃないか」
テーブルの上に置かれた平べったい箱の中のピザは、まだほとんど手を付けられていない。しかも、僕の右手にも未だに食べさしのピザがあるのだ。
「二切れも食べたお前が悪い」
「……僕が食べたのは一切れだけだが…」
「似たようなものだ。責任を取れ。後、それはお前が食え」
言って、僕の右手――正確には、右手に持ったピザ――を形の良い顎を杓って指し示す。
傲岸不遜とは、こういう人間のことを言うのだろうか。ふとそんな事を思った。
天上天下唯我独尊。釈迦という、とある宗教の開祖が生を受けた時に述べた言葉だとされているが、C.C.より他にその言葉に相応しい存在は居ないに違いない。
ルルーシュに追い出されたのも、また道理。むしろ彼は頑張っている方である。食費が馬鹿にならないと言っていたしな。
そこまで考えて、…苦笑する。それでも尚、もう一枚位なら良いかと思えてしまう自分が居たからだ。
「…トッピングは同じのでいいか?」
立ち上がりながら僕が聞くと、C.C.は首を横に振った。
「いいや。……『身体に疲れを感じるソコのアナタ!! 吉報デス!! 元気百倍活力全快!! ナットーアンドオクーラの魅力にアナタもメロメロ!! さぁさ手に取りご賞味ください、ピッツァ』を頼む」
「……は?」
思わず、僕は素頓狂な声を上げてしまった。
なんだその滅多やたらに感嘆符を使ったものは。と言うか長すぎるだろう、商品名として。
というか、そもそも商品名なのだろうか。僕はこれからレジカウンターに向かい、先刻C.C.が言った言葉を一文字一句と間違わず、尚且つ店員に聞き取れるように伝えなくてはならないのだろうか?
(……嫌だ。嫌すぎる……)
「ついこの間発売されたばかりの新商品だ。これはもう、食わない訳にはいかないだろ」
「…いや、そういう問題ではなくてだな」
「ふん。何を尻込みしてるんだ。さっさとレジに行き『ナットウオクラピッツァを下さい』と伝えて来い。Mサイズだぞ」
「………」
それでいいのなら最初からそっちを言え。
無言で視線を向け威圧するも、そんなものが通用する相手ではない。
早々と諦めると、今度こそ席を立つ。
店内へ向かいながら、
「…また、一切れ貰っていいか?」
何の気なしに、それこそちょっとした気まぐれのような気持ちで言ってみると。
「仕方のない奴だな。好きにするがいいさ」
背後で、C.C.が笑った気がした。
end...
以上です。
ピザネタも使い古されたネタだろうなぁー…と思いつつ。まぁ書いてて楽しかったからいいか、と…
それでは〜
>>482 方舟卿、GJでした!
使い古されたネタ? ――だが、それがいい!
何故使い古されるのか、それはいいものだからだ!
そう、すなわち王道!
C.C.のからかうようなかんじに読んでいてニヤリときました。
ライがピザを食べた後のやりとりも想像しやすく、大変読みやすかったです。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
GJ!二人のやり取りに和んだ、ていうかピザを取られてあわてるC.C.に萌えました。
こういう風景を描いたSSはいいなあ、またの投下をお待ちしています。
KOUSEI卿、待ってました!
よかった・・・続きでて。
やっぱりKOUSEI卿のアーニャいいなぁ、続き期待してます。
今日はカレンの誕生日だったな。
ロスカラ一周年で忘れかけてた
●画像投下報告です●
1周年記念に1枚描きましたので、よかったら見てください。
おめでたい絵ではありませんが、まぁ、楽しんでいただければ幸いです。
タイトル 祝! ゲーム発売1周年記念
しかし、久々に遊んでみたんだけど、面白いよなぁ、ロスカラ。
皆さんも久々にやり直してみるといいかも……。
20:30から投下します。本文は3レス分です。
では、投下します。
作者:余暇
タイトル:二年目の誓い
カップリング:ライ×カレン
設定:騎士団編カレンEND後
(注意)
・とにかく甘いだけです。(本人はそうしたつもり)
・ちょっとエロいかもしれません。
本文は3レス分です。
『二年目の誓い』
「ん……」
その夜、ベッドの中で僕は不意に目が覚めた。時計を見ると、午前二時を過ぎた辺りを指している。
「変な時間に目が覚めてしまったな、明日から忙しくなると言うのに。いや、正確には今日からだったか」
実は、特区日本が成立してから今日でちょうど一年になる。つまり、これから特区は二年目に入るわけだ。
記念行事など多くのイベントが計画されており、これから忙しくなってくる。
「もう、一年になるのか。あっという間にも思えるし、長かったようにも思えるな」
この世界に目覚め、学園のみんなに良くしてもらい、黒の騎士団に入って戦いに身を投じ、特区日本という一つの成果を得た。
その後は学園に通いながら、特区を軌道に乗せるために奔走し、今では特区もかなり安定してきている。
(この世界を守るために自分なりに頑張っているが、僕の罪は消えることはないだろうな……)
過去の世界で、母や妹を含む多くの人たちを僕は殺した。これは決して許されることではない。本来ならば、この世界にいてはいけないのかもしれない。
だが、それでも僕はこの世界にいたい。大切な人たちがいるこの世界を、いつまでも守り続けたい。そして……。
(やっぱり、この人とずっと一緒にいたい。彼女を幸せにしてあげたい)
僕は、ベッドの中で僕の腕に抱かれながら静かに寝息を立てている愛しい人、カレンに視線を向けた。
(特区が成立して一年ということは、彼女と恋人同士になって一年という意味にもなるんだよな。色々あったっけ)
式典会場でユーフェミアに撃たれ、会場全体にギアスをかけた後、僕は気を失った。気がついたらベッドの上にいて、カレンが僕を見て泣いていた。
あの瞬間、僕は思った。「絶対、この人を離したくない」と。あんなに人を愛しく思ったのは、初めてだったかもしれない。
(その後彼女とキスをして、その日の夜はアジトの医務室で一緒に過ごしたんだっけ。思えばあの頃から、結構大胆だよな)
あの日はアジトに戻った後、医務室で一晩を過ごすことになったのだが、付き添いでアジトに残っていたカレンと同じベッドで眠ったのだ。
確か、僕が眠るベッドの隣で椅子に腰かけたまま眠っていたカレンを見て、僕が「体に悪いから横になった方がいい」と彼女に提案したのと、「一緒にいたい」という二人の気持ちが一致したのが理由だった。
あの時はやましいことは何もしなかったが、とても恋人初日にすることではないと、今でも思っている。
(旅行をして色々楽しんだり、喧嘩もしたりした。思い出すと恥ずかしいようなことも、結構あった。でも一つ一つがいい思い出で、忘れられない出来事なんだよな)
カーテンの隙間から零れる月明かりに照らされるカレンの寝顔を、僕は静かに見つめていた。その赤い髪を手で優しくなでながら。
(これからも、一緒に思い出をたくさん作ろう。そして絶対、君を幸せにするから)
僕はカレンの肩を抱き寄せると、腕に少し力を込めた。すると、腕の中にいた彼女の体が少し反応した。
「ん……。あれ、ライ?もしかして、起きているの……?」
(あ、まずい。起こしてしまったか)
カレンがうっすらと目を開け、僕の方を見た。思わず出た自分の行動を後悔しつつ、彼女と言葉を交わせることが僕は嬉しかった。
「眠れないの?」
僕の顔を見つめつつ、カレンが尋ねてきた。
「不意に目が覚めたんだ。だから、君の寝顔を眺めていたんだ」
「ずっと眺めていた挙句の果てに、私を起こしちゃったわけ?酷い人ね」
軽く僕を睨みつつ、カレンが僕の頬をつねってきた。
「すまない。色々思い出していたら、想いが募ってしまったんだ」
「ふぅん、色々って?」
「えーと、初日にいきなり寝床を共にしたこととか、色々と大胆で思い出すのが恥ずかしいことを……」
「うっ、どうして恥ずかしいことばかり思い出すのよ。もう少し美しい思い出に浸りなさいよ、バカ」
顔を赤くして、カレンが戸惑いの声を上げる。まあ、そう思うのが普通か。
「でも実際の所、そういう思い出の方が多い気もするぞ。デートの時、君が胸元の開いた服で現れたりとか、作戦終了後にパイロットスーツのファスナーを下ろした格好で現れたりとか。
ああいうのって、男としては目のやり場に困ってドキドキするんだぞ」
「な、何で私の服装のことばかりなのよ!?そんなにいやらしい目で、私を見ているわけ?」
カレンが明らかに動揺している。心の中では彼女に謝りつつ、彼女が動くたびに自分に当たる柔らかな感触を少し楽しんでいる僕がいた。
時間が経過することで、僕もすっかり変わってしまったのだろうか。
「いや、そんなつもりはないんだが。でも、その…君の魅力の一つがすごくクローズアップされて、そのたびに目を奪われるのは否定できない」
「エッチ……。でも、毎回狙っているわけじゃないんだから。その、ライが思い出したデートの時は少し狙っていたけど」
視線をそらしつつ、カレンが呟いた。そんな表情もかわいく思えて、僕は思わず小さく笑ってしまった。
「あ、今笑ったわね」
「ああ、すまない。今の仕草がかわいかったから、つい」
「か、かわいいって……。うぅ、一年たっても相変わらずライのペースに乗せられっぱなしだわ。
生徒会室での『まんざらでもない』発言に始まって、付き合いだしてからも、いつもプロポーズみたいな言葉を平気で口にして私をドキドキさせて。
でも、その言葉の一つ一つが心に響いて、胸が熱くなるのよね。『ああ、私はこの人に愛されているんだ』って」
カレンの指が伸びてきて、僕の胸板をくすぐった。そのくすぐったさや、耳元や首筋にかかる彼女の吐息が心地良く、僕は少し体が震えるのを感じた。
「だから、あなたのペースに乗せられるのは好きよ。それだけ想いが伝わってくるから。ただ、ちょっといやらしい目で見られるようになったことは予想外だったけど」
「それは謝った方がいいのか?君を見てしまうのは、君にとって嫌なことか?」
僕が尋ねると、カレンははにかみながら首を振った。
「ううん、嫌じゃないわ。私に魅力を感じてくれるのなら、それはとても嬉しいことよ。ただ、ちょっと恥ずかしくて照れくさいだけ。
だから、これからも私を見つめていて。そして、あなたの想いをたくさん伝えてちょうだい」
「ああ、そうしよう。もっと君に魅了されて、君を好きになって、想いを何度でも伝えよう。どうしようもなく、カレンのことが好きだから」
「うん、私もライが好き。世界で一番、あなたが好き……」
僕はカレンを優しく抱きしめ、キスをして熱い想いを伝えた。そして彼女もそれに応えるように、僕に向けた愛情を唇で伝えてきたのであった。
それから再び眠りにつくまで、僕たちはわずかに見える月明かりに照らされながら、お互いのぬくもりと想いを感じ合っていた。
「う……」
明くる朝、僕は人の気配で目を覚ました。目を開けると、ぼんやりした視界の中にカレンがいて、僕の頬を手でなでながら優しく微笑んでいる。
「おはよう、起きた?」
「ああ、おはよう。もしかして、ずっと寝顔を見ていたとか?」
「ええ、昨夜のお返しよ。おかげで、かわいい寝顔を見ることができたわ」
「なるほど、見事にお返しされてしまったな」
そう言いながら時計に目をやると、騎士団の集合時間にはまだ余裕があり、準備を整えるにはちょうど良かった。
お返しと言いつつ、カレンはちゃんと僕のことを考えてくれていたらしい。
「でも、ありがとう。おかげで、余裕を持って準備ができる」
「どういたしまして。ほら、早くベッドから出て準備しましょう」
そう言うと、床に下りたカレンが窓のカーテンをサッと開けた。眩しい朝日が部屋の中に差し込み、彼女を照らす。
光に照らされて、凹凸のはっきりした彼女のボディラインがワイシャツの下から透けて見え、すごく刺激的だ。
「うーん、今日もいい天気ね。」
「ああ。しかし、朝からその格好を見せられると、その…刺激が強い上に、どうしても目が行ってしまうんだが……」
「だ、だって朝はラフな格好でいたいんだもん。それに……。もっとライに、ドキドキして欲しいから。これまでの一年間より、もっと私に夢中になって欲しいから。
まあ、『ちょっと大胆過ぎたかな』とは思うけど」
両腕を胸の前で組んでモジモジしながら、カレンが言った。そんな仕草がかわいくて、僕はベッドから出て彼女の前に立つと、そっと彼女の頬に手を添えた。
「やっぱりカレンは素敵な女性だ。そうやって僕のために頑張ってくれて、まっすぐに気持ちを伝えてくれる。僕は幸せ者だな」
「私も、ライに対して同じことを思っているわ。いつだって私を見てくれて、色々な愛情表現をしてくれる。こんな素敵な人に愛される幸せ者は、なかなかいないわ。
それに、あなたが幸せだと感じるなら、私も幸せ。あなたの幸せは私の幸せでもあるし、いつまでもそう思える関係でいたいの。だから……」
カレンが僕に抱きつき、背中に腕を回してきた。彼女の柔らかいぬくもりを感じつつ、僕も想いを込めて彼女をしっかり抱きしめる。
「だから、これからもよろしくね。そして、一緒に幸せになりましょう。この平和な世界を守ってライと一緒にいられること、それが私の一番の願いだから」
「ああ、こちらこそよろしく。一緒にみんなのいる世界を守って、一緒にどこまでも歩いていこう。
僕にとって、君がいない世界なんて考えられない。だからこれからも、ずっと僕の隣にいて欲しい」
「ええ、喜んで」
朝日に包まれながら、僕たちは唇を重ね合わせた。二年目も、そしてその先もずっと一緒にいることを誓って。
以上で終了です。ロスカラ一周年記念&カレン誕生日記念を兼ねてということで。
実際に書き始めたのは去年の7月でしたが、こんなに長く職人やるとは正直思いませんでした。
これからも、このスレが長く続くことを祈るとともに、及ばずながら作品投下で貢献しようかと思います。
>>493 余暇卿、GJでした!
二人の間の落ち着いていて、それでいて甘い雰囲気が良いですね。
互いに相手を大切に思っている、好きでいたい、いてほしい。
というかんじから更なる甘さを感じました。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>493
逆行でボディラインが透けて見えるワイシャツ姿、
妙にはっきり想像してしまいました。これはえろいな!!
そのあとのはじらいもまた良し!
ほかほか。素敵SSごちそうさまでした。
>>493 投下お疲れ様でした。
しかし、甘い。
とても甘いです。
読んでて、こう、くすぐられている様な感覚になってしまいました。
こういう感じのSS、本当にいいですよねぇ。
でも、続けては……勘弁してくださいww
胸焼けしそうですwwww
GJでした。
497 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 02:05:37 ID:h+6pW0T9
>493
とてもいいSSを投下してくれてありがとうございます。
ところで、実は余暇卿が連載している「虫食い同好会」の特別偏
を楽しみにしているのですが、まだ投下する予定は決まって
いませんか?
ゆっくりでいいですから、気長に待っています。
>>493 GJでした!
余暇さんのSSは甘くて大好きです
これからも楽しみにお待ちしてます
10時半より投下します
それでは、投下開始します。
タイトル「KMF座談会・後編」
注意点
・ギャグです。
・パロディネタが多いです、気になる方はご注意を。
・知らなければわけがわからないネタも多いです。
・ごめんなさい
それは、ある本から始まった。
アッシュフォード学園生徒会室で一人の生徒が本を読んでいた。
「ん、リヴァル? 何を読んでいるんだい?」
「あぁ、これは……」
『コードギアス・ライの奇妙な冒険』
「へぇ、ジョ○ョねぇ」
「あぁ、日本の有名な漫画らしいぜ。
古本屋のおっさんが「日本の漫画文化は世界一ィィィイイイ!!!」とか叫んでいたしな」
「ふむ、面白そうだね」
「おぉ、じゃあ読んでみる?
第一部は読み終わってるから貸すぜ?」
「そうか……ありがたく借りていくよ」
特区日本、その政府内の休憩所にて一人の青年が本を読んでいた。
「お、ライ! 何を読んでんだ?」
「ん……なんだ、玉城か。 学園の友達から漫画っていうのを借りたんだ」
「おっ、お前も漫画読むのか! もっとかてぇ奴だと思ってたが学生っぽくて安心したぜ。
――で、なんて漫画だ?」
「ジョ○ョの奇妙な冒険って漫画なんだけど――」
「ジョ○ョだって! 懐かしいなぁ、おい!」
「知っているのか? 玉城」
「当たり前だってぇの! 日本に生まれてジョ○ョ知らねぇ奴の方が少ねぇよ。
読んだことないやつでも名前位は知っているはずだぜ」
「そうなのか……確かにこれは面白いし、不思議じゃあないな」
「あぁ――そういや学園の友達っつってたよな?
ブリキ――ブリタニア人にも分かっている奴がいるもんだなぁ」
アッシュフォード学園にて、二人の生徒が語り合っていた。
「ツェペリさんの台詞が良いと思うんだ。
「人間賛歌は『勇気』の賛歌ッ!!」それにこの後の散り際にも感動したよ」
「俺は……やっぱり多すぎて決められないな」
「二人とも、なんの話をしているんだい?」
「リヴァルに漫画を貸して貰ってね、今感想を言い合っていたんだよ、スザク」
「ほぅ、リヴァルはともかくライがそれほどまでに夢中になる漫画か……興味深いな」
「ルルーシュ、俺はともかくって酷くない?」
「ハハッ、言葉のあやってやつだ」
「でさ、なんて漫画を読んだんだい?」
「ジョ○ョの奇妙な冒険っていう漫画だよ」
「へぇ、懐かしいなぁ……昔に読んだっきりだよ。
確かスタンドっていうので戦っていたよね?」
「何を言っているんだい、スザク。
波紋の力で戦う漫画だよ」
「あー、スザクが言っているのは三部からだよ。
んで、ライはまだ一部しか読んでないんだろ?
ほら、二部も……あと三部も途中まで貸すよ」
「ありがとう、リヴァル。
三部って……一体何部まであるんだ?」
「えーっと……あれ? 何部までだったかな」
「ジョ○ョの奇妙な冒険として出版されているのは五部まで、ストー○オーシャンとして出版されているのが第六部。
そして後第七部はあるな……その先はどうなるか分からないな」
「あれ? ルルーシュって漫画とか読まないんじゃなかったっけ?」
「愚問だな、スザク。 読んでいないのと知らないのは全く違うぞ」
「ふーん……そうだ、僕にも貸して貰えないかな? リヴァル」
「ん、いいぜ。 ほい、こっからここまでが一部だ」
特区日本、ユーフェミアの自室にて、一組の男女が本を読んでいた。
「これがジャパニーメーションというものなんですね」
「いや、これはジャパニーズコミックって言う方が正しいと思うよ、ユフィ」
「あら、そうですか。
日本の文化はなかなか難しいものですね」
「うん、でもいいのかい?
少女漫画とかの方がユフィには読みやすいと思うんだけど――」
「ふふっ、気を使わなくてもいいのですよ。
それに、スザクが面白いと思うからこの本を勧めてくれたんでしょう?」
こうして徐々に、しかし確実に影響は広まっていった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「では、特区日本代表・ユーフェミア様と副代表・ゼロ様より記念の言葉をいただきます」
「私たちは一つの終点に到着し『夜明け』を迎えましたッ!」
「ブリタニア人と手を取り合う勇気を見せた日本人の諸君、日本人と手を取り合う決意をもったブリタニア人の諸君。
君達の持った『覚悟』は……この登りゆく朝日よりも明るい輝きで『道』を照らしている。
そして我々がこれから『向うべき……正しい道』をもッ!
二つの民族が手を取り合いもたらされた平和はッ! いずれ世界中に拡がるだろうッ!」
この行政特区日本の成立、そして一周年という事実は、優しい世界がある事の証明となりますッ!」
「しかし、証明は成されたが結果はまだ先にあるッ!
特区日本の更なる発展の為、優しい世界にする為に、君達の力を貸し続けて欲しいッ!」
「ねぇ、ライ。 あの原稿書いたのって――」
「僕とゼロ、ユフィの三人で書いたけど、何かおかしい所があった?」
「……やれやれだぜ」
(何で微妙にジョ○ョの台詞が混じっているんだろう?)
「あはっ、僕のランスロットの運動性能は世界一ィィィイイイ!!!」
「なら、私の紅蓮の機動性は世界一ィィィイイイ!!!」
「むっ、じゃあ僕のランスロットのブレイズルミナスは世界一ィィィイイイ!!!」
「はっ、私の紅蓮の輻射波動機構は世界一ィィィイイイ!!!」
「ロイドさん、ラクシャータさん、技術自慢は後にして仕事してください」
流行るジョ○ョ、しかし、特区を揺るがす事件が――
「ハハハ……素晴らしい! もう少しでコードRが……ブリタニアの医学科学は世界一ィィィー!
できんことはないイイーーーッ!!」
「バ、バトレー様、実験体が……」
ドドドドドドドドドド……
「オハヨウゴザイマシタ」
ジャーン
特区日本の行く末は……
「俺は人間をやめるぞ、スザクーーっ!
おれは人間を超越するッ!」
「ルルーシュ、君はッ!」
「スザク、俺はこんなにもすばらしい力を手に入れた!
ゼロ仮面からッ!
そう、俺は――いや、私は名実共に魔王となったッ!」
「ライ……ゼロを……ルルーシュを止めてくれ」
「しっかりするんだ、スザク!」
「この剣、MVSを……大丈夫、少し休んだら君を手伝いにいく……
Luck! (幸運を) PLUCK (勇気をッ!)」
「ほ、本当に君に協力したら助けてくれるのか?」
「あぁ約束しよう、ライ。
私の、ゼロの名に懸けて君の命を保証する」
「だが断る」
「ッ!?」
「僕の最も嫌いな事は約束を破る事だ。
スザクに約束したんだ……君を、止めると!」
ズズズズズズズズズズ……
「これで終わりがジ・エンド!
第三部、完ッ!」
バーン
おまけ
「あ、ありのまま今起こった事を話しますよ。
私が兄さんに向かって進んだと思ったら、後ろに下がっていました。
何を――」
「もういいよ、シャルル。
やっぱり答えが分かっているとやりにくいね」
「……そうかもしれませんなぁ」
「もう帰っていいよ、ロロ。
あーあ、面白いと思ったんだけどなぁ、DIOごっこ」
かかったな、アホが!
あるいは
残念でした! あなた騙されちゃったのよ!
ということで、やらせていただきましたァん! 四月馬鹿!
本当はタイトル「ライの奇妙な冒険・嘘予告」でした。
嘘予告なのでセリフメインということで……
もしかしたら今度普通に短編として書く可能性は無くも無いです。
『時事ネタを書く』『普通のネタも書く』
「両方」やらなくっちゃあならないってのが、「職人」のつらいところだな。
覚悟はいいか?オレはできてる。
そして気付く、これ、別に時事ネタではないよね?
最後に
「おとなはウソつきだ」と思った少年少女のみなさん、どうもすみませんでした。
おとなはウソつきではないのです。
まちがいをするだけなのです……。 by荒木飛呂彦
(・ωΩ)ノシ また見てギアス!
506 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 12:58:56 ID:31Syijxj
>>505 GJでした!
ジョジョ好きだからニヤニヤして読んでましたw
ロロの能力は確かにザ・ワールドですねwww
全く関係無いけど僕は二部が好きです!
>>506次にお前はGJと言う!
間違えた…
>>505 GJでした!
まさかギアスでジョジョネタをやるとはw
私は最近ジョジョを読み始めたから分かるネタと分からないネタが微妙にあるw
さて、四部の続きを読むとするかな!
どうもお待たせいたしました。
やっとこさ、完成しましたので投下いたします。
皆さん、楽しんでいただければいいのですが……。
タイトル 思いの後に・・・ 第11話 逆 転
カップリング ミレイ→ライ×ニーナ
ジャンル 昼ドロ
注意点
各キャラクターが大好きな方は、特にご注意ください。
愛憎劇ですので、かなりショックを受けると思います。
また、すでに各キャラクターともかなりの壊れが入っているので、ご注意ください。
なお、初めての方は、倉庫にて「思いの後に・・・」の1話から読む事をお勧めします。
多分、これだけだと絶対に判らないと思いますので……。
では、スタートします。
私は戸惑っていた。
確かに見てたはずなのに……。
絶対その場にいたはずなのに……。
なのに……。
なぜ……。
ニーナ、なぜ貴方は普段の表情でそこにいるの?
いつものように私に話しかけてくるの?
あれは私の錯覚?
いいえ。
あれは間違いなくニーナで、確かにあそこにいて、絶対あの光景を見ていた。
それなのに……。
私はいつの間にか背中に冷たい汗をかいていた。
そんな……馬鹿な……。
ライを手に入れたというのに……。
ニーナを見返したのに……。
すべては私の思ったとおりに進んでいたはず。
そのはずだったのに……。
なぜ、私はこんなにも怯えてしまっているんだろう。
なぜ、こんなにも冷たい汗をかいているのだろう。
ひたひたと何かに迫られる感覚が私の心を圧迫していく。
なんでなのっ。
その思考は止まる事がなく、私の頭の中をぐるぐると駆け回り続けた。
思いの後に・・・ 第11話 逆 転
「ミレイちゃん、学園祭のイベントのデータ、まとめあげておいたよ。はいっ」
私は、最高の笑顔で書類を渡す。
戸惑っている表情と言葉でそれを受け取るミレイちゃん。
そこには怯えの色が見え隠れしている。
くすっ。
これくらいで怯えてもらっても困るんだけどな。
私は、普段どおりに会話をして楽しそうに微笑み、そして再び学園祭の準備の作業に戻った。
心の中ではまったく別の事を考えながら……。
「変わったよなぁ、ニーナのやつ」
リヴァルがそう話している。
「うんうん、明るくなったよねぇ。なんかさ、話しやすくなったという感じ」
シャーリーが相槌を打つ。
「はい。なんか、ニーナさんの言葉の端々から毎日が楽しくて仕方ないって感じがします」
これはナナリーだ。
そして、その会話には参加しないで資料を読んでいたはずのカレンでさえも、彼らの会話を楽しく聞いているように見える。
どういう事なの……。
私の知らないところで何が起こっているの?
まだ、私とライの情事を目撃して3日も経っていないのに……。
そう思っていたら、私はシャーリーに突付かれた。
「かいちょぉー、どうしたんですか? 何度も呼んだのに……」
怪訝そうな顔で皆が私を見ている。
「あ……、ご、ごめんなさい。ちょっと考え事してたから……」
そう言って誤魔化す。
「さすが、会長。学園祭の事ですね。」
「う、うん。そうなのよ」
慌てて頷く。
勘違いしているなら、それに越した事は無い。
「いけないっ、言い忘れるところだったわ」
学園祭という言葉に資料を読んでいたカレンが反応する。
「ミレイさん、ニーナから伝言です」
ニーナという単語に身体が反応する。
いけない。
落ち着け、落ち着くんだ。
自分自身に言い聞かせる。
「ライを暫くお借りしますねって事です」
えっ……。
心臓の動悸が早くなる。
落ち着きかけた私の心が、再び乱れ、暴れ始める。
不安という暗幕が心を覆っていく。
だが、ここで我を忘れる訳にはいかない。
「え、ええ、判ったわ。ガニメデの調整かしらね……」
だから、表面状は何気なさを装って返事をする。
「そうみたいですね。学園祭までには、しっかり調整するだって息巻いてました。うふふふ……」
その時のニーナの姿を思い出したのだろうか。
カレンが楽しそうに微笑む。
私も微笑を返しながら、暴れる心を押さえつけるので精一杯だった。
「はいっ、ライさん。このデータでお願いします」
ニーナは、ニコニコと笑いながらそう言ってディスクを僕に渡す。
僕は、それを受け取りながら、彼女の顔を見つめる。
罪悪感が心をどろどろに溶かしていくようだ。
どうすればいいんだ。
僕は、彼女を裏切ったのに……。
心が、後悔の念で潰れそうだった。
約束を破っているのに……。
そう、1週間後に大切な話があると言ってから、もう期限はとっくに過ぎている。
でも、彼女は何も言わない。
それがますます僕を苦しめていた。
「あ、あのさ……。ニーナ……」
かすれたような声でなんとか話そうとする。
だが、思うように声が出ない。
言わなきゃ……。
軽蔑されてもいい。
罵られてもいい。
でも、言わなきゃ……。
謝らないと……。
そして、僕の気持ちを……。
僕は、なんとか言葉にしようとした時だった。
ニーナがやさしく僕を抱きしめる。
「いいんですよ、ライさん。何も言わなくても……」
その言葉と彼女の温もりが僕を包み込む。
彼女の優しさが、僕の心を癒そうとする。
だが、優しいゆえに、僕の心はキリキリと締め付けられる。
「大丈夫です。だって……私……」
そう言って、ゆっくりと僕の顔をまっすぐ見つめる。
「ライさんの事、信じてますから……」
そう言って、優しく微笑む。
心が……。
心がとても苦しい。
その痛みにどうにかなりそうだ。
だけど、彼女を悲しませたくないという強い思いが心を縛り付ける。
いや、もしかしたら、彼女を傷つけ、失う事の恐怖なのかもしれない。
決心がまるで砂の城のように崩れていく。
弱い自分が囁く。
いいじゃないか……。
彼女が大事なんだろう?
それはいい訳だ。
そう判っているのに……。
僕には……。
………。
……。
だが、どちらにしても判った事がある。
そう……。
僕は、
臆病で……
弱虫で……
そして、卑怯者だ。
1週間が過ぎた。
あれ以来、昼間はほとんどライと二人っきりで会えないでいる。
それに、たまに会っても、挨拶ぐらいしかしていない。
そして、夜、彼の部屋に行っても「疲れている」の一言で相手にもされない。
避けられている。
そう、私は、ライに避けられている。
どうして……。
どうしてよ……。
あんなに私に頼っていたのに……。
あんなに私を必要としていてくれたのに……。
あんなに愛してくれたのに……。
私の身体を、心を、すべてをあなたに捧げたのに……。
それなのに……。
なんで手に入れたものが、するりと逃げていこうとするのよ。
嫌よ。
絶対、イヤ。
何でこんな事になっているの。
何でよ……。
そして、そんな私をあざ笑うかのようにニーナは明るく生き生きとしている。
その姿が、ますます自分の惨めさを再認識させる。
嘘よ……。
こんなのウソよ。
なんで、ニーナが……。
ギチギチと締め付けられていく。
私のセイシンが……。
私のココロが……。
まるで拷問のように手加減なく。
締め付けられていく。
イヤダ……。
ナンデ……こんな……コトにナってイルの……。
イヤだ……。
イ……ヤ……。
……ダ……。
……。
私は、本当に狂いそうだった。
「はいっ。えーっとですね……」
ニーナは、顔を真っ赤にして、全員に包みを1つずつ渡していく。
私も1つ受け取った。
かわいい感じの紙で巻いてある。
「がんばっている皆さんに……差し入れです」
照れながら彼女はそう言うと微笑んだ。
「へぇ……ニーナがねぇ……」
リヴァルが少し驚き気味の言葉を漏らす。
だが、その気持ちはすごく判る。
多分、ここにいる全員がそう思っているだろう。
ほんの2週間ぐらい前のニーナなら絶対ありえない事だ。
だが、今のニーナならアリかもしれない。
そう思えてしまうほど、彼女は変わった。
だから、少し程度の驚きなのだろう。
「えーっと……美味しくなかったら、ごめんなさい……」
済まなさそうに言う姿もかってのニーナとは思えないほどかわいらしかった。
「おーっ、うまそうじゃん」
リヴァルが早速自分の包みを開けてみたようだ。
そこには、いろんな形のクッキーが入っていた。
ところどころにある黒いものは、チョコチップのようだ。
「えーっと、個人個人の好みに合わせて、ちょっと味とか中に入っているものとかいろいろ変えてるんです」
その言葉に、各自も自分に配られた包みを開けていく。
「あの……私のは、なんなの?」
シャーリーが遠慮がちに聞いている。
「えっと、シャーリーのは、ドライフルーツの刻んだのを入れてみたの」
そして、すーっと耳元に近づくとなにやら囁いている。
シャーリーの為に配慮してだろう。
多分、ダイエットしているシャーリーの為に糖分カットしてるとかいう事を言ったんだろうけどね。
だって、その囁きを聞いた途端、シャーリーったら、ニーナに抱きついて「ありがとう」って連呼してたから。
最近、シャーリーったら甘いもの断ってたからねぇ……。
そりゃ、甘いもの大好きの乙女としては、感謝したくなるだろう。
なんとなく、その気持ち、わかるよ、シャーリー。
シャーリーに説明している間に、皆それぞれ食べ始めたのだろう。
「へぇ…、やるじゃないか、ニーナ。美味しいよ、これは……」
あのルルーシュでさえ、素直に褒めている。
「本当に。美味しいです、ニーナさん」
ナナリーもうれしそうだ。
スザクもニコニコして食べているし、、リヴァルなんかもう遠慮なくガツガツ食べていた。
まぁ、この二人は、味わかっているか判らないけど……。
「カレンも食べてみて……」
ニーナに薦められて私も1枚口に運ぶ。
口の中で蕩けていくようなクッキーの感触とちょうどいい感じの甘さが広がっていく。
オーソドックスなやつだが、その素朴な中にも上品な感じがいいと思う。
「美味しい……」
私は、笑顔でそう言った。
「よかったっ」
ほっとしたようなニーナ。
そして、小声で言葉を続ける。
「カレンには感謝してるの」
意外な言葉が続き、私は思わず聞き返す。
「え?!」
少し照れながら、彼女は答える。
「だって……今の私があるのは、カレンが勇気くれたからだもの」
その言葉で納得できた。
そっか……。
あの時のことか……。
「ううん。あれはたまたまよ。それに決断したのはニーナ。あなた自身なんだから……」
そう言って微笑む。
そう、あれは、貴方に勇気があったから。
私は、少し背中を押しただけ……。
「それでも、私は貴方に勇気を貰ったと思っているから……」
私の言葉にそう答えるとニーナもまた微笑んだ。
この差し入れのおかげだろうか。
学園祭の準備で生徒会室に漂っていたピリピリした緊張が解れていくようだ。
ふふっ。
いい感じでみんな休憩できてるみたい。
よかったね、ニーナ。
みんな喜んでいるみたいよ。
自然と目を細め、うれしそうに皆と会話しているニーナを見つめた。
たが、そう思っていた私は、ふと気が付く。
こんな中で、ただ一人、固まっている人間がいる事に。
ライは、今は倉庫の方に行っていてここにはいない。
そう、その固まっている人物は、ミレイさんだった。
みんなが楽しそうにニーナの配ったクッキーを食べている。
とてもじゃないが、今はそんな気分じゃない。
今の私は、学園祭の準備という仕事があるおかげで、うわべだけは何とか平常のように見せているだけなのだ。
それに、私はニーナが怖かった。
彼女の笑顔の後ろには、憎しみと恨みの炎が見え隠れしている気がする。
じわじわと真綿で首を絞めるように私の物を奪っていく。
そんな気さえしていた。
たが、皆が食べている中、私だけ食べないわけにはいかないだろう。
私は、恐る恐る1枚を口に入れた。
そして、それを噛んだ時だった。
口の中に痛みが走り、血の味が広がっていく。
私は慌てて口を手で押さえ、異物を吐き出す。
そこには、クッキーの破片と紅い雫、そして……カッターの折れた刃があった。
私の背筋がゾーッとする。
そして、まるでぬめりつくかのような重くて冷たい汗が流れる。
周りのみんなは、この事に気が付いていない。
みんなに言わなきゃ…。
そう思った瞬間、私は視線を感じてその方向を向いた。
その先にはニーナがいた。
そして、彼女と視線が合う。
ニタリ……。
一瞬であったが、間違いなく彼女の唇が邪悪な微笑みに歪んだ。
その笑みには、私を嘲笑し、言いたければ言えば?という挑発が含まれている。
以前の私なら、挑発に乗っただろう。
しかし、私は、その笑みの前に、まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。
言っても無駄だ……。
いや、言ってしまったら……。
私は……。
私は、きっと……。
一気に血の気が引いていき、体温が下がっていくのが判る。
恐怖と絶望が私の心を蝕み、心臓が締め付けられていく。
ひぃぃぃぃーーーーっ……。
叫びたいのに声は出ない。
ただ、身体がガクガクと震えるだけだった。
助けて……。
誰か……。
タすケテ……。
たすケテょぉ……。
タ…ス……けぇ……。
………て……。
そして、私の意識は暗闇の中に沈み込んでいった。
《つづく》
以上で11話終了です。
本当に疲れました。
でも、楽しかったですね。
こういう愛憎劇は、本当に楽しい。
以前は、それほどでもなかったんだけどなぁ。
ハッピーエンドじゃなきゃ駄目だと思ってた時期もあったけど……。
若かったんだなぁと今では思いますwww
このシリーズもそろそろクライマックス。
皆さん、よろしければ最後までお付き合いくださいませ。
では、第12話か他のシリーズでまたお会いしましょう。
>>517 あしっど・れいん卿、GJでした!
怖ッ!
平然とした顔で何もなかったように振る舞うニーナ。
何も言わないから余計に恐ろしい。
クッキーに混入しているカッターの刃って……
うぅ、恐ろしい。
ドキドキ感が凄まじいです。
貴公の次の投下を全力で待っています。
――――でも怖い。
ミレイさん好きだが、このSSのミレイさんはもっとひどい目にあってもいいなと思うな
GJですあしっどれいん卿
酸性雨さんGJです!
今回も面白かった、そしてそれ以上に恐ろしかった…
怖いのに見ずにはいられない麻薬のような中毒性
次も怖いんだ…でも楽しみでもあるんだあ!
ついに直接的な攻撃に出たかニーナ。ほんとにどうなるんでしょうねこれから。
もっともっとエスカレートしていって…まさかの殺人にまでいくのだろうか?
怖い…でも見たい。続きをお待ちしております。
保管庫のとあわせて読んでいるが、あしっどさんのSSはいろんな意味で夜寝れなくなりそうだぜ
今回もGJっす
こんにちわ。
連投になりますが、24時間たっているので投下します。
また、残念ながら、「蒼天の騎士」でも「思いの後に・・・」でもありません。
まったくの新作です。
よかったら読んでみてください。
タイトル ロストカラーズ外伝 ヴィレッタ・ヌウ物語 第1話 出会い
カップリング ヴィレッタ×ライ
ジャンル シリアス?
注意
扇×ヴィレッタ派の方は、スルー推奨。
では、スタートします。
オレンジ疑惑。
それによってもたらされたジェレミア・ゴットバルト辺境伯の名声の低下、純血派の失墜。
ジェレミア卿の懐刀と呼ばれ、純血派の中心メンバーの一人である私にとってはあまりにも大きな痛手。
うまくいきかけていた矢先の転落。
その為、どうしても負のイメージが付きまとう。
だが、私は逃げ出すことは出来ない。
なぜなら、もう深く関わりすぎている。
確かに、ジェレミア卿のあの独特の人の良さもあるだろう。
それに、騎士に取り上げられてもらった時の恩もある。
だが、何より、主義をころころ変えるものに誰がついてくるだろうか。
貴族となるためには、多くの人望を集めねばならぬ。
苦しいからといって、見捨てるわけには行かない。
私は、ジェレミア卿、あの人を支え続けていくしかない。
そう自分に言い聞かせて納得するしかなかった。
目指していたものがますます遠くなる。
それが私をよりイライラさせる。
そんな時だった。
私がライと出会ったのは……。
場所は、ナリタ山。
そして、その時、私はこの出会いが私のすべてを変えてしまうほどの出会いとは思っていなかった。
ロストカラーズ外伝 ヴィレッタ・ヌウ物語 第1話 出会い
私は、ゆっくりと椅子に腰掛けると背もたれに身体をあずけた。
椅子が軽い音を立てて、私の身体を支えている。
ふう……。
口からは、自然と溜息が出た。
疲れたな……。
視線を部屋の中に泳がせる。
飾り気の無い実務のみ適した質素な部屋だなと思う。
年頃の女性らしくない部屋という事はわかっている。
だが、今の私にはこれでいいのだとも思えてしまう。
そして、自然と視線は机の上の写真立てに向かっていた。
そこには、まだ10代の頃の若々しい自分と騎士として立派な頃の彼が映っている写真が収まっている。
「父上……」
ぽつりと言葉が漏れる。
そう……。
幼き頃、死に掛けていた私を拾い、我が子のように慈しみ、育ててくれた男性。
命の恩人であり、私の育ての親。
そして、なにより私が始めて好意を寄せた異性。
でも、彼は決して私をそうは見てくれなかった。
彼にとって、私は唯一の家族。
そう、血は繋がらなくても間違いなく彼の娘だった。
だから、私は、自分の思いを我慢した。
これは、彼に知られてはいけない思いなのだ。
自分にそう言い聞かせながら……。
ぼんやりと写真を見ているとだんだんと意識がぼんやりとしてくる。
多分、疲れきっていたのだろう。
私の意識は、そのまま暗い闇の中に落ちていった。
彼と出会ったのは、私がまだ10歳の時だったろうか。
その時、私は、死に掛けていた。
真冬の雪が降る中、私は、薄い服だけで道端にうずくまり、凍えていた。
両親が事故で亡くなり、親類に盥回しにされ、虐待を受けながらも私は何とか生きてきた。
でも、もう我慢できなかった。
もう嫌だった。
私を厄介者としか見ていなかった叔父夫婦は、私を貴族の慰み者として売ろうとさえしていたのだ。
だから、私は逃げ出した。
もう、それしか選択は無かった。
そして、幼いながらも私は理解した。
力がなければ、何も出来ない。
力があれば、何でも出来ると……。
だが、今の私には、何も無かった。
そして……私は死ぬのだと思っていた。
意識に闇の帳が落ちていき、ぼけていく視界の中、近づく人影を感じながら……。
「気が付いたね。大丈夫かい?」
ぼんやりと意識が戻り、視界が開けた時、彼は笑顔で私を覗いていた。
私は、訳がわからず、きょとんとしている。
だって、死んだと思っていたのだから。
でも、心地よい暖炉の火が私を暖め、彼の優しく暖かい大きな手が私の頭を撫でてくれた時、一気に緊張が抜けた。
そして、彼にしがみ付き、私は泣き出していた。
それは幼かった私が無意識のうちに行った子供的な行動だ。
今まで、その行動を受け止めてくれるのは、亡くなった両親だけだった。
でも、彼は私を優しく受け止め、そして抱きしめてくれた。
その安心感、そして、彼の暖かさと優しさに、私は再び泣きながら眠りについていた。
再び、目が覚めた時、私は彼の胸の中で眠っていた。
「目が覚めたかい?」
やさしい彼の声に私はうなづく。
ああ、なんて優しい暖かさなんだろう。
久しく忘れていた温もりと笑顔に私は癒される思いだった。
「少し、聞いてもいいかな?」
やさしく労わる口調で彼は聞いてきた。
その言葉に頷き、私は彼に聞かれるまま、すべてを話した。
たどたどしい言葉と小さな声、そして要領を得ない子供の話を彼は辛抱強く一生懸命聞いてくれた。
私は、話したことですべてが変わるとは思っていなかった。
ただ、この暖かさに包まれていたい。
その一身で話したのだ。
そして、すべてを話し終わったとき、それはこの暖かさの終わりだと思った。
だから、話すことがなくなっても、何か話そうとした。
だが、彼はやさしく言う。
「もういいんだよ。無理しなくても……」
その言葉が胸に響く。
だが、次に出た言葉に私は驚く。
「お嬢ちゃんは、戻りたいかい?」
嫌だ。
絶対に嫌だ。
もう、あんなところに戻りたくない。
私は、必死になって彼にしがみ付く。
そして、首を左右に振った。
子供に出来る拒否はこんなものだ。
後は、泣く事だろうが、泣いても状況は悪化するだけ。
今までの経験でそれだけは判っていた。
そして、こういった行為も無駄だという事も……。
だけど、私のそんな必死の行為を彼は受け止めてくれた。
「わかった。じゃあ、こうしょう……。今から、お嬢ちゃんはおじさんの娘だ」
その言葉に私は驚く。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
そこには暖かな微笑みがあった。
「まずは自己紹介しないとな……」
少しはにかみながらの笑顔。
こうして、私は、彼の娘になった。
「ジ、ジェレミア卿、どちらへ行かれるのですか?」
一人さっさと先に進むジェレミア卿に私は尋ねた。
この人がまず先に説明するという事はまずない。
行動して示す。
それが彼のもっとうなのかもしれないし、心に決めた決意なのかもしれない。
だが、私としては、対処すべき事を予想しなければならず、大変な負担になっている。
もっとも、文句を言っても直らないだろう。
この人の場合は……。
そんな事を考えていたら、ジェレミア卿が立ち止まり、私の質問に答える。
「うむ、彼のところだ」
「彼?」
大体想像がついたがあえて聞いておく。
多分、あのライという男のことだろう。
「ああ、ナリタ山で我々をサポートしてくれた男だ。確か……」
「ライ、ですね」
「そうそう、彼だ。彼のところに行って礼を言わねばな……」
こういう気配りは、相変わらず律儀だと思う。
だが、問題は、相手がそれを礼と取れるような事を言ってくれるかどうかだ。
今や、純血派は肩身の狭い思いをしている。
そして、日が経つに連れて離れている者が増えているのが現状だ。
そんな中、彼をぜひ我等の同胞として迎え入れたい。
その思いがジェレミア卿にもあるのかもしれない。
そして、それは私も同じだった。
それに、なによりこれで少しは流れが変わってくるかもしれない。
そんな期待もある。
また、私個人もライという男に興味があった。
あの瞬時の判断力とナイトメアの腕前は、かなりのものだ。
彼は、強い。
これは、私の戦士としての本能が感じたものなのかもしれない。
そして、その予想は外れた事はなかった。
だから、私は素直にジェレミア卿についていく事にした。
私は、政庁にもどる車の中で先ほど会ったライの事を考えていた。
接触は、なかなか好感触だったと思う。
少々、話が先走りすぎた感じだったが、彼は迷惑とは思っていないようだった。
いや、そう思っただけかもしれないが、悪い感じではない。
それは、ジェレミア卿も感じているのだろう。
おかげで彼と会ってからというものご機嫌だ。
しかし、本当にこの人は、裏表が無いな。
ふとそう思う。
だから、見捨てられないのかもしれない。
そんな事を考えながら、ライの事を思い出す。
あの時のナイトメアの動きから受けた印象と実際に会った印象がかなり違う。
大胆にして、繊細な動きを見せたナイトメアから、私はかなりの猛者と思っていたのだが、会った印象は華奢で綺麗な美少年といった感じだ。
そして、すごく丁寧な言葉遣い。
確かにあの時のナイトメア戦でもモニター越しにその姿は見ていたものの、あの時はそんな感じはまったくしなかった。
ふふっ、面白そうな奴だ。
第一印象はそんな感じだった。
だが、変わらないものもあった。
彼は強い。
それだけは会っても変わらなかった。
まるで彼のようだな……。
ふと、父を思い出す。
父もナイトメアに乗ったときと普段のギャップの差が激しかった。
でも、強さを感じた。
そして、ナイトメアに乗った父はまるで鬼神のようだったな。
そんな事を思い出して、自然と微笑が漏れた。
「ん、どうした?ヴィレッタ」
そんな私の些細な変化に気が付いたのだろう。
ジェレミア卿が聞いてくる。
「い、いえ。なんでもありません」
「ふむ……。惚れたか?」
少し、からかい気味の言葉。
上機嫌の証拠だ。
「ち、違います。そんなわけありません」
私は、慌てて否定する。
なんでだろう。
少し頬が熱い。
「はははは、美少年だからな。だが、もちろんそれだけではない。彼は、我々に期待させる何かがある」
私は頷く。
もちろん、後半の部分にだ。
確かに美少年だが、我々に必要なのは、外見の美しさではない。
今、我々に欲しいのは、より強い力とより人を引き付ける魅力を持つ同胞なのだ。
そして、私は、私の目指すものを手に入れるために彼の力は必要だと判断していた。
「どうしたんだい?ヴィー」
泣きながら学校から帰ってきた私を彼はやさしく出迎える。
「あ、あのね……、トーマスがいじめるの……」
泣きながら答える私に、彼は「どうしてだい?」と聞いてくる。
彼の心配そうな表情が私を覗き込んでいた。
「私が拾われた子だって……。ヌウ家の子じゃないって……」
その言葉に、彼は一瞬悲しそうな顔をするものの、すぐに微笑むと私を優しく抱きしめた。
「そんなわけないよ。ヴィーは私の家族だ。たとえ、血が繋がっていなくても、私の大切な大切な娘だよ。だから、心配しなくていいんだ」
耳元で優しく囁く言葉に、私は安心する。
そして、私は感じる。
彼の思いを……。
強く……。
とても、強く……。
それは、何もなかった子供の私にとって、唯一の心の支え。
そして、それは私と彼との大切な絆だった。
「……」
私は、跳ね起きた。
そして、部屋を見渡す。
そこは、いつもの私の部屋だった。
飾り気のない実務だけに適した質素な部屋。
そして、人の生活感をあまり感じさせない部屋。
「ふぅ〜……」
口から安堵とも溜息とも取れる吐息が漏れる。
そして、ゆっくりと乱れた髪をかき上げた。
そして気が付く。
自分が泣いている事に……。
何年ぶりだろう、泣いたのは……。
手の甲で涙を拭き、ゆっくりとベッドから立ち上がる。
身体からシーツが離れ、汗ばんだ肌を外気に晒す。
ぼんやりとした頭のまま、キッチンに向かう。
そして、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターをとってコップに注いだ。
薄暗がりの中、僅かに入ってくる外の光が水をまるで別のもののように煌かせる。
私は、その水と光が演じる競演を少し楽しんだ後、ゆっくりと飲んだ。
汗をかき、乾いた身体に水分が染み込む感覚が気持ちいい。
飲み終わったコップをキッチンに置き、ぼんやりと考える。
どうしたんだ、私は……。
あの時、誓ったじゃないか。
父上の亡骸に……。
まだ感傷に浸るにはまだ早い。
浸るのは、目的を果たしてからだ。
そう、まだ私は、目標の途中までしか進んでいない。
だから、今は……まだ……。
ぴしゃりと自分の頬を叩く。
しばし、頬の痛みを実感する。
そして、もう一回叩く。
「よしっ……」
そして、ゆっくりとシャワールームに向かった。
まだ、普段起きる時間よりかなり早かったが、構わなかった。
私には、立ち止まって、昔を振り返る時間はないのだから……。
第1話 終了
以上で1話終了です。
まず、書くにあたっていろいろアドバイスを頂いたライカレ厨さんに感謝を。
おかげでなんとかこういう形になりました。
ありがとうございます。
それと、いつも読んで感想を付けてくださる方々。
本当にありがとうございます。
皆さんの感想が次回を書く大きなエネルギー源になっています。
それに皆さんの感想で、展開が実は変わってたりします。(大きくは無理ですけど実は、ちょこちょこ変わってます。)
感想によってアイデア浮かんだりするものなのですよ。
本当に助かってます。
そして、このSSを読んで、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
では、今回はこれくらいで……。
また、お会いしましょう。
あしっどれいん卿の作品は、色々な意味でこのスレのスパイスですな。素晴らしい。
>>530 GJでした。
さて、これからヴィレッタがどう変わっていくのか
シリアスな感じで進んで行くのでしょうか?
いや、シリアスな話は大好きですから、この感じで進めていってくれたら嬉しいなぁ
頑張って下さい
またの投下お待ちしてます
>>530 あしっど・れいん卿、GJでした!
いいね、シリアスは。
ヴィレッタメインで進んでいく話、ライは純血派ルートに進むのかな?
過去を振り返らない、そう決めたヴィレッタの進む道はどうなるのか。
続きが大変興味深いSSだと思います。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
新シリーズ乙&GJです。続きをお待ちしています。
GJ!あしっど・れいん卿!
今度はヴィレッタもの!?すげえ嬉しい…感涙ものですよ!SSそのものもレベル高いし、ほんとにすごいです…
こんなに連載を抱えてしかもこの速度でこのクオリティ。まさに化け物ですね!続きをお待ちしております!
いつもいつも素晴らしいものを読ませてくださって本当にありがとうございます!
>トーマスがいじめるの……
ここでもう一人の化け物出現に噴いた人挙手wwwwww ノシ
>>あしっど。れいん卿、乙&GJです
新連載が来たと思ったら、珍しいヴィレッタものとわ(褒め言葉です)
ここまでヴィレッタを掘り下げたものは、ここはもちろんネット上でも見たことない
本当に卿はなんでも書けるんですね。羨ましいかぎりです。
その天才ぶりに嫉妬と羨望をいだきつつ、続きを全力でお待ちしております。
>>535 ノシ これには確かに噴いたww
酸性雨さんお疲れ様です
貴重なヴィレッタ分の補給に全力で感謝。他の連載も遭わせて続きを待ってます。
>>535 ノシ …でも管理人さんは怒らないのだろうか?
乙です酸性雨卿
ヴィレッタスキーの俺としては狂喜乱舞モノの新連載。続きを全力でお待ちすると同時に
これだけの連載を抱えて、ちょっぴり心配してたりもします。お体には気をつけて下さいね。
>>535 ノシ
>>537 どうなんだろうね?でもトーマス卿の性格からするとむしろ喜びそうなキガス
感動した。なにに感動したってそりゃもういろいろ。
ひさしぶりのヴィレッタ・ヌゥの話、書けるジャンルの幅広さ、執筆速度、クオリティ。
個人的にはあしっど・れいん卿は自分の中での殿堂入りです。
しかし、大丈夫でしょうか?僕も
>>538さんと同じく心配してる者のひとりです。
投下は大変GJでありがたいのですが、くれぐれもご自愛くださいますよう…。
>>535 ノシ
ここに来てまさかの新連載。ええいあしっどさんは化け物か!?
>>535 ノシ
あしっど・れいん卿
GJ&乙です!
>>535 ノシ
>>577 事前に裏は取ってたりするんじゃないのかな。まあトーマス卿ならばよっぽど酷い扱いをされない限り
「ウホッ俺が出てるwktk」てな感じになりそうだけど
>>530 あしっど・れいん卿お疲れ様です
うむーヒロインのヴィレッタはもちろん他のキャラが書き込まれてますね
大抵のSSでギャグ扱いされてるようなジェレミアがかっこいいのもGOOD
トーマス卿の出演は嬉しいサプライズ
続きを全力で待ってます。
>>535 ノシ 不覚にもワロタ
>>あしっどれいん卿
まことにGJでした!
ヴィレッタ大好きーな私には新生活における最大のエネルギー源になりました!
ただお身体には気をつけてお願いします!
卿のような方が離脱してしまうとこのスレに
とって最大の痛手となってしまうので…
とにかく卿の作品の続きを全力でお待ちしております
長文失礼しました
あしっど・れいん卿GJ!本編では扇とピーなことになっちゃいましたが、こちらでは是非ともライと幸せにしてあげてほしいです。
続きを待たせてください!今回もお疲れ様でした!
>>535 ノシ
>>541 酸性雨さんってトーマス卿と結構仲良かったりするのかな?
>>530 超GJ!
…しかし喜んでばかりもいられない。ここからヴィレッタが不幸のどん底に落ちるような展開になるやもしれん
なぜかって?
そりゃ、 あ し っ ど れ い ん 卿 だ か ら に 決 ま っ て る
最後にはヴィレッタさんが幸せになることを祈らずにはいられない。
続きをお待ちすると同時に願わくばハッピーエンドを…!!
>>535 ノシ ノシ ノシ!!!
ちょwww感想の数がすげえwwwトーマス卿の呪いか?
あしっどれいんさん乙です
ヴィレッタをメインに持ってきたのにも驚いたがオリジナル要素をここまで違和感無く持ち込むのは流石です
投稿数も一番多いしマジで神がかってますね…尊敬します
他の連載も含めて次回を待ってます。
>>535 ノシ
あしっど・れいん卿GJ!goodじゃなくてgod!!
本編のアレのおかげで風当たりの強いヴィレッタ嬢をあえて持ってきたその心意気や良し!
まさにオアシスだぜ!…SSの内容は心が荒むものも数多く(ry
続き本気で待ってます。ええ、待って待って一生ついて行きますとも!
>>535 はいはーい挙手!
>>530 お疲れ様です。このSSと感想の数を見て、自分以外にもヴィレッタスキーが結構いることを確認できました。ありがとうございます。
545卿の心配が杞憂になることを祈りつつ続きを一日千秋の想いでお待ちいたしております
>>535ノシ
>>543ナカーマ
あれ?IDが重なってる?
まれによくあること >ID同じ
551 :
549:2009/04/04(土) 00:45:03 ID:ElDHawo6
変わったかな?
>>530 あしっどれいん卿、GJです。
ヒロインに珍しいキャラを持ってきたのもですが、普通に読み物として楽しめるそのレベルの高さに感服します
ライという稀有な人物と交わることで彼女がどう変わっていくのかとても楽しみですね。
続きをお待ちしております。
>>535 ふむ、手を上げておこうノシ
オマイラどこに潜んでいたんだと小一時間w
あしっどさんGJ!
>>535 ノシ
おいおい、マヂかよ!このSSスレにはとんでもない化け物が潜んでいやがった・・・
こんな人に出会えたことを神に感謝。
すごいな。ヴィレッタとトーマスさんに吸い寄せられたのか?まあ俺もなんだけど
いや、この言い方は酸性雨さんに失礼か。
>>530 あしっど。れいんさんGJです。ボキャブラリー貧困で大した感想書けない自分を許してください。
あらん限りの賞賛と感謝を込めてGJ。当然続きを期待していいんですよね?
>>535 ノシ つーかこれも多いw そのうち犯罪者役とかで出てきそうだww
この流れなら言える。酸性雨と言う名の神降臨と。
本当にGJです。毎日見てます。今回のものもですが、他の連載も単品も大好きです。
次回作を楽しみにしています
>>535 ノシ
この場を借りて私の中でのもう一人の神の双璧であるトーマス卿にもGJと感謝を
>>530 お疲れ様です。外伝と言っていますがヴィレッタ的にはむしろこちらを正伝としたいですね。
今後の展開をドキワクしながら続きを待ちます。ええ、それはもう全力で
>>535 ノシ
>>555 犯罪者クソフイタwwww
酸性雨卿!
僕は!あなたが泣いても!GJを言うのをやめないッ!
寝る前にほんの思いつきでこのスレを開いたのが運の尽き
怒涛の勢いでスレが進んでると思ったらこういうことだったのかw
先ずは
>>530のあしっど・れいん卿にGJとお疲れ様を
もうなんですね、ヴィレッタとかそういうのを抜きにしてひたすら凄まじいです
どうやったらこれほどのものをこれほどの速度で書けるんでしょうか?
きっと尽きることの無い泉のごとくアイデアが次々と浮かんでくるんでしょうが…
もう一度、GJです。でも体には気をつけてください。かのトーマス卿も病気には勝てませんでしたから…
>>535 まあ同意だわな。実際トーマス卿がどう思ってるか気にならないわけではないが…
弐分後に投下開始致します。支援をよろしくお願いします
>>559 俺も明日っつーかもう今日だけど朝から仕事なんだze
でもいいさ。あんな力作を見せられちゃな!感想はともかく謝意ぐらいは示しておかないとな!
酸性雨さんGJ!そして続きも待ってる!
>>535 ノシ
時間になりましたので投下致します。
ライ×神楽耶ものです。
題名は LOVE VUILS です。
支援
「……まだ、下がらないか」
昼前の十一時頃。千葉は様子を見る為に一時的に訓練所から戻っていた。
腋の下から体温計を摘み取って、表示された数字を見て、静かな声を紡いだ。
乾いた咳が部屋の中に小さく響き、それと同時に千葉が毛布を肩まで掛けると咳を発した人物を見た。
彼女の視線の先には布団に横たわった一人の少女――キョウト六家を束ねる皇家の姫君 皇神楽耶である。
事の発生は数日前に遡る。日本解放戦線の基地を構えるイシカワゲットーに神楽耶が事前の知らせもなしに訪れた。
本人は視察と言っていたが、とある人物を見るたびに駆け寄る姿を見ると別の思惑があると考えざるを得ない。
数日の滞在だとのことで部屋を用意しようとしたが、大所帯がゆえに部屋が足りず、同じ女性であることから自分と同じ部屋で寝ることになることが決まった時、彼女がまるで小さな子どものように頬を膨らませていたのは記憶に新しいことであろう。
違和感を感じ始めたのはその日からだ。日を重ねるうちにどこか無理をしているような姿を目にするようになったのだ。
部屋に戻った時、どうやら、神楽耶も自分に違和感を感じていたらしく、違和感を感じていた自分の容態をようやく千葉に話した所から始まった。
急いで医者に診せたところ、熱は四十度近くあったがただの風邪と言われてほっと安心した。
だが、そこからはよくない。薬を飲んで寝てれば治るという風邪も今日で四日目。熱はそれなりに下がったが、体調の状態はよくなる兆しを見せない。
普段、健康な人間ほど体調を崩してしまうとそれはなかなかに治りにくいものなのだ。
「……神楽耶様、本当に大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫ですわ。ご心配をおかけして申し訳ありません」
微笑んで紡ぐ言葉は千葉を心配をさせまいとする心遣いが含まれていた。
その言葉は心配だと看病を申し出る千葉に訓練に行った方がいいと言って断ったものでもある。
「では、私は訓練に戻ります。ちゃんと寝ていてください。お腹空いたらそこにお粥作ってあるから食べてください。勿論、食べた後の薬もお飲みください」
「わかっていますわ」
その声が終わるのとドアが閉まる音が一緒に重なり、部屋の中は一気に静寂が訪れていた。
「う〜〜頭ガンガンしますわ〜」
神楽耶は毛布を頭から被る。千葉にはああ言ったが、実は一人では寂しくていけなかった。
「……ふぅ」
小さく息を吐き出した。
sien
今日で四日目、視線の先に映るのは薄暗い色を被った白い天井。
既に見飽きたと言ってもいい。部屋にある雑誌は全て読んでしまったし、たくさん眠ってしまったから眠れない。
あの人はどうしているのだろうか?
今日もKMFを駆り、藤堂中佐と四聖剣を相手に訓練をしているのだろうか。
目を瞑ると何回もあの顔が浮かんでくる。あの人の顔を忘れる事ができない。
神楽耶は素直に顔が赤くなるのを感じ取った。だが、今は熱の所為だと自分に言い聞かせる事ができる。
「会いたいな……」
あの人が自分を好きになって欲しいと、思うようになっていた。
会う度にどうにもならないこの気持ちを彼の前で言おうとその場凌ぎの決心を何回したのだろうか、会おうと思っても呼び出す事ができず、言おうと考えていると目の前の世界が変わってしまう。
「お腹が空きました…………」
誰もいない部屋の中、神楽耶は布団の上に横になりながら、一人呟いた。
長針と短針が重なり合って、十二時を知らせると同時にお腹の虫も鳴り始めた。
千葉が作ってくれたお粥を食べようにも、体に力が入らないために動けない。
先程から鳴り続けるお腹を押さえる気力もなかった。
――コン、コン
「……え?」
来訪者が部屋に訪れたことを示すノック音に反応するも、こんな時間に部屋に来る者などいるわけがない。気のせいかと思う。
――コン、コン
やはりノック音である。
誰が来たのかと不思議がる神楽耶の目線の先で、扉が開いた。
「神楽耶様、具合はどうですか?」
自分の名を呼び、入って来たのは、片手に小さなクーラボックスともう片方の手にはビニール袋とガスコンロを持っている男であった。
神の気紛れかどうかは知らないが神楽耶の視界に入っている男は間違いなく彼女が会いたいと思っていた人物だ。
日本でもブリタニアでも見かけることは難しい灰銀色の髪を持ち、瑠璃色に似た瞳を輝かせ、日本解放戦線の一員である証のモスグリーンを基調とした軍服を着ている。
「しょ……少尉?ど、どうしてここに」
質問を質問で返す事は失礼な事と分かっているのだが、この時ばかりは彼が何故ここにいるのかと訊ねたくなる。
ライ――日本解放戦線で少尉の階級を持つ男は部屋の中に入り、手に持っていたクーラーボックスとビニール袋をテーブルの上に置いて、彼女の質問に答えた。
支援
「千葉中尉に頼まれたんです」
一言で済ませるライ。だが、答えとしては充分なものだった。
「千葉中尉から?」
「はい、神楽耶様の看病を頼みたいと」
更に問い掛けられた質問に答えながら、千葉の作ったお粥が入った鍋を見つけたライは離れた場所でガスコンロを点火させ、お粥を温め始める。
「で、でも今日は訓練のはずじゃ……」
心配そうな顔をする神楽耶の耳にトントンと何かを切るような音が耳に入ってくる。
「大丈夫です。藤堂中佐から許可を頂きましたから」
内心、ライが来てくれた嬉しさが体中に駆け巡り、神楽耶は悟られないように今以上に紅潮した顔を布団で隠す。
「あの……ご迷惑、でしたか?」
少し悲しそうな声を紡いだ時、即座に神楽耶はその言葉を否定した。
「そんな……!そんなことはありませんわ!」
瞬間、神楽耶の口から乾いた咳が数回発せられた。必要以上に声を出しすぎたようだ。口元を押さえて、更に数回の小さな咳が部屋の中を響かせた。
「大丈夫ですか!神楽耶様?」
「…はい、だいじょうぶです。でも、無理はしないでくださいまし……ただの風邪なんですから」
口ではそう言っていたが、本当はライが見舞いに来てくれて嬉しく思っており、顔がどうしてもにやけてしまう。
「ただの風邪とはいえ、床に伏せっている神楽耶様をお一人にするわけには参りません……それに、千葉中尉に頼まれずとも、抜け出して看病と見舞に来るつもりでした」
「え………」
ライは神楽耶のその思いを知らずに、心配させまいとする。しかし、その心遣いがさらに神楽耶の顔を綻ばす。
そこでライが温め終わったお粥を持って戻って来る。
それをテーブルの上に置き、食器によそった。小皿には鰹節に醤油をかけた物が乗っていた。
「起きられますか?」
「………ごめんなさい、少し無理みたいです」
「失礼」
ライは神楽耶に一声掛けて彼女の背中に手を回し、起きるのを手伝った。食べるのに不自由しない程度に神楽耶を起こすと、寄り掛かれるように枕がクッションのように形作られる。
「これで、どうですか?」
「あ、ありがとうございます」
神楽耶がライを一瞬見上げた。食べるところを見られるのが恥ずかしいのだろうか、ライは水を持ってくる、と適当に理由を作り、その場を立ち去ろうと踵を返した時。
明らかに何かが落ちる音が耳の中で反響した。
手に力が入らなかったのか、床に落ちたレンゲと、口に入ることなかった少量のお粥を見つめて神楽耶が項垂れた。
「ご、ごめんなさい少尉」
「いえ、大丈夫です。少々、お待ち下さい」
レンゲを拾い上げて洗い、落ちた少量のお粥を片付けるとライは布団の端に座り、神楽耶に向き直った。お粥をレンゲで掬い上げ、微笑みながら彼女の口元へ持っていく。
すると、たちまち神楽耶の顔が赤くなった。
「あ〜ん、してください」
「ふぇ…?えっ、少尉!?」
ライの行動に暫く戸惑っていた神楽耶だったが、観念したのかゆっくりと口を開きそれを含み、ゆっくりと咀嚼し、胃袋へ送り込むとライが声を掛けてくる。
「おいしいですか?」
「は、はい!おいしいです」
ライの思わない行動に未だに驚きが抜けないためか、神楽耶はワンテンポ遅れて返事をした。
そうですか、とライは微笑んで再びレンゲに粥を掬い上げて神楽耶の口へと運ぶ。二度目とあってか神楽耶もすんなりとレンゲを口の中へ迎え入れる。それらが何度か繰り返される内に鍋の中に入った粥はすっかりと無くなり、神楽耶は満足そうな表情を浮かべる。
「ごちそうさまでした……」
両手を合わせて御馳走になったことに対する感謝の言葉を述べるとそれを見計らったようにライがレンゲや粥の入った鍋を片付け始める。
「最後にこれを…と」
と思ったら新しい投下がw
寝る前に最後の支援
感想はまた明日
しえん
支援
ある程度片付けると、ライは一つのグラスを両手で差し出す。グラスの中に入っているものの正体がいまいち分からずにクエスチョンマークを頭に浮かべる。
神楽耶はグラスを回しながら、匂いを嗅いだりする。そして、指先で触ってグラスの中のモノが震えたことにより、グラスの中に入っている物体の正体を悟った。
「まぁ……プリンですわね」
「えぇ、仙波大尉に作り方を教わったんです、風邪にはコレが一番だと。初めて作りましたのでお口に合うかどうかわかりませんけど……」
苦笑しながら頬を指先で掻くライ。
神楽耶はプリンの色を楽しんでからゆっくりとスプーンですくって食べる。ほんのりとした甘さが口内に広がり、身体が温まるのを感じた。
「美味しい…とても美味しいですわ、少尉!」
神楽耶はあまりの美味しさに頬を緩ませる。キョウトの姫君とはいえ、その表情は年相応の少女そのものだった。
プリンの美味しさに嵌ったらしく、神楽耶は一気にそれを平らげた。その様子はライが思わず苦笑するぐらい豪快だった。
「喜んで頂けたようでよかったです。今回はブランデーを隠し味にちょっと入れてみたんです」
おかわりとして二個目のプリンも食べ始めるとブランデーの効果なのか神楽耶の頬は今以上に赤くなっていた。
風邪をひいていることなど忘れてしまいそうな表情で食べる神楽耶。すると、その横で微笑んでいるライと目が合った。その時、神楽耶は瞬間的に顔を背けた。
無邪気に食べる様子を見られて恥ずかしいのか先程以上に頬が紅潮してきている。しかし、それでも彼女はプリンを食べることを中断せずに、黙々と食べていく。
神楽耶の心中を知ってか知らずかライは微笑みを崩さずに神楽耶の様子を瑠璃色の双眸に収めている。その次の瞬間、顔の前に銀色のスプーンに掬われたプリンが顔との距離を数センチまでに縮めていた。
「あ、あの神楽耶様?」
スプーンを突きつけているのが神楽耶と気が付くのに時間は掛からなかった。神楽耶の行動にライは恐る恐ると尋ねる。
sienn
支援
しえん
「あ〜んをしてください、少尉」
「え?は、はい?」
「してくださいっ」
「な、何故でしょうか?」
ズイっ、とスプーンを近づける神楽耶の勢いに圧されるライは思わず後ずさりそうになる。理由を問われた神楽耶はライに対して、何やら体をモジモジとさせている
「わ、私だけ食べている姿を見られるのは、不公平ですわっ!ですから…その、少尉も…」
最後辺りになるとボソボソと声が小さくなってくる。風邪のせいか、それともブランデーのせいなのか神楽耶の顔は赤い。
「と、とにかくあ〜んをしてくださいまし!」
更にプリンが乗ったスプーンを近づける神楽耶。どうやら、食べなければ彼女の気は済みそうにない。
ライは少しだけ、逡巡してから口を開き、スプーンを口の中へ招き入れる。舌で味わい、よく咀嚼をしてから飲み込む。
それを見た神楽耶は膨れた顔から笑顔を綻ばせた。そして、プリンをもう一掬いしてライの口に運ぶ。慣れたのか今度は驚かずに素直にスプーンを銜えた。
だが、表情は些か恥ずかしそうであった。
「どうでしたか?少尉」
神楽耶は恥ずかしそうな表情を浮かべているライに声を掛ける。
「え、えぇ、まぁその……何というか」
「あら、どうなさったですの?」
「何だか、神楽耶様がしていた事って恋人達とかがやっていそうだな、って感じがしまして……その」
しどろもどろな言葉遣いとなっているライ。頬を指先で掻き、何故か神楽耶と視線を合わせずに言葉を紡いでいく。
「こい、びと」
それに対し神楽耶はライの紡いだ言葉の中でも恋人という言葉を反芻させる。それを数回繰り返すと、先程とは比べ物にならないほどに顔が林檎のように真っ赤になってしまった。
そして、ライもそれにつられて、更に顔を真っ赤に染め上げた。二人の間に沈黙が生まれる。
「そ、それじゃあ!僕はお粥とかを片付けますのでっ…失礼します」
流れる沈黙に耐えられなかったらしいライは慌てたようにカチャカチャと粥を盛った皿などを重ねて腕の中に収めると神楽耶に背中を向けて立ち上がろうとした時、小さな違和感を腰の辺りに覚えた。
簡単に振り払えてしまうぐらいの力が体を引き留めているのだ。違和感のある所に目をやると、小さく華奢とも言える手が軍服を掴んでいる。誰のものかというのは考えるまでもない。
「あ…」
支援
神楽耶は小さい声を上げるとすぐに手を離した。
「神楽耶様?」
少し固まった後、彼女の方に向き直り、ライは質問する。だが返ってきたのはしどろもどろな応答。
「な、なんでもない…です」
その声色にライは小さく首を傾げた。
「本当ですか?」
「だ、だから…なんでもないです」
赤らめた顔で繰り出される問いを返してくる神楽耶。口調も態度も平常を装っているがライにはなんとはなしに解っていた。
「…そうですか。では、出ていきますよ?」
「!!」
間を空けて話し、ライがいざ踵を返す音がしたと思った瞬間、弾けたように神楽耶が向き直った。それが罠だとも知らずに。
「あ…」
振り向いたすぐ側にあるのは布団の淵から動かない男の微笑、そして現している感情が移る眼球。
「どうしました?神楽耶様」
悪戯っ子のような感情を込めた声でライは言った。
「………少尉のいじわる」
顔を真っ赤にしてぷ〜っと神楽耶は頬を脹らましながら声を紡ぐ。どうやら、自分がライの罠に引っ掛かった事より、その罠に嵌めた張本人が許せないらしい。
「すみません、でも神楽耶様が仰ってくだされば、このようなことはしませんでしたよ?」
「むぅ……」
それを聞いた神楽耶は何か意を決した様に先程とは違った声を出した。
「少尉……す、座ってください!」
神楽耶がそれまでの子供めいた雰囲気を止めて、真剣な面持ちで対面しながらライへと話し掛けた。
それと同時に、神楽耶の真剣な言葉に思わずライは体をこわばらせる。
「あの……」
それだけ言って、神楽耶は真っ赤になった顔で俯いた。
握り締めた拳が寝間着の上で震えていた。想い人が視界に映るたびに嬉しくなる。
顔が真っ赤になってしまって、今は顔を見ることなど恥ずかしかった。
だけど、声が聞けると嬉しくて。隣を歩く自分を想像するのが恥ずかしくて、けれど望んでた。
どんどん好きが溢れてきて止まらない。恋はだんだん、深く望みを帯びてきる。
「あ…あの、その…なんと言えば」
しえん
支援
神楽耶は自分でも何を言おうとしているのか全然分からずにいた。自分で言おうとしている言葉の意味を知った瞬間にその意味が全身に浸透してゆく。
数瞬の逡巡の後に神楽耶は決意を固めて顔を上げた。
「私…少尉の事が好きなんです。だから…だから、私を少尉の、恋人として見てください!」
漸く紡ぐことの出来た言葉を出した後に訪れてたのは短い時間を長く感じるような沈黙だった。
ライは神楽耶の言葉に対してライは少々、いや、かなりの驚きを含ませた表情を浮かべている。恐る恐ると指で自分を指差す
「神楽耶様が僕の、事を……?」
今の彼女にできる事は無言のままライのその言葉に対して、ただ打ち下ろす鎚の様に頭を頷かせるだけだった。ライは静かに息を吸い込み、準備を整える。
「あ、あの少尉、ご迷惑でしたか?」
反応の見えぬライに何を覚えたのか神楽耶はやや上目遣いでライに話しかける。すると、ライは首を振り、神楽耶の言葉を否定した。
頭を掻き、呟くとライは仄かに頬を赤らめ、少し、しどろもどろに口を開く。
「僕も…神楽耶様のことをずっと、お慕いしておりました。その……好きです」
その言葉に神楽耶は目をパチクリとさせている。
「ホントに………?」
ライが自分に対しての紡いだ言葉信じられないのか、神楽耶は思わず問い掛けてしまった。
その目はまるで混乱している。そんな神楽耶に対してライは若干恥ずかしそうに微笑み
「………信じられませんか?だったら、何度でも言います。僕は、神楽耶様のことが、大・好き・なのですっ」
言葉の内容を理解させるように区切りながら伝えると、神楽耶の小さい体がライに覆い被さるように見えた。否、見えるのではなくて神楽耶は彼に抱きついている。
思わず、よろめいたがバランスを立て直して何とか後ろに倒れずに済んだ。
「あ、ちょ…」
「うれしい……本当に、うれしい……」
神楽耶はライの服を力強く握り、胸に顔を埋めているからか、聞こえてきたのは消え入りそうな声だった。身体を密着させている為に神楽耶の肌と髪の匂いが鼻を擽った。
さすがにこの状況は自分の理性と神楽耶の風邪が心配だ。そう考えて彼女を離して布団に戻そうとしらライであったが
「離さないで……ちょっとだけ、ホンのちょっとだけこのままでいさせて・・・?」
子供のようなその行動に陶磁器のような肌を持つ手がそっと頭を撫でた。
今度は自分から神楽耶の背中に手を回して抱き締めて、ライは彼女の頭を自分の胸板により深く埋めさせた。
「はい、貴女の望むままに。神楽耶様」
軽く溜息をつくと彼は布団の中に戻すこと諦めて、腕の中にいる愛しい少女の希望を尊重した。
支援
次スレどうするの?
ようやく、眠ったか……神楽耶の枕元に座るライは声に出さず心の中で呟く。
いきなり、千葉中尉から看病を頼まれた時は驚きを隠せなかった。それもそうだった、ライは看病などをやったことはなく思わず仙波大尉に視線で助けを求めるぐらいだ。
水に濡らした手ぬぐいを絞って、ライは神楽耶の額に浮かんだ汗を拭く。今の彼女の寝顔は安らかなものだ、この表情を見れば初めての看病の成果が伺える。
食べ終わった食器を本格的に片付け始めようと神楽耶に背中を向けて立ち上がろうとした時、小さな違和感を腰の辺りに覚えた。
「少尉……もう行ってしまうのですか?」
いつの間に目を覚ましたのか何処か寂しげな表情を浮かべる神楽耶がモスグリーンの軍服の裾を掴んでいた。
「……もう少し御傍に居てもらえませんか?」
「え?」
「せめて私が…その、眠るまで…手を握っていていただけませんか?」
ライの目が思わず丸くなった。神楽耶が子供のように甘えているのである。風邪の成せる業なのだろうか。
風邪のせいなのか、目を潤ませての表情で顔を見上げられながらの懇願。
それを直視してしまったライは自分の心臓が大きく弾んだことを即座に理解した。
「少尉……ダメ、ですか?」
まるで、親から離れたくない子供のように軍服を握る手の力が強くなる。
普段では考えられないその弱々しい神楽耶の姿は如何にライの中にいる獣に刺激を与えたのであろうか。
「い、いいえ。神楽耶様がお望みでしたら……」
それを必死に抑えつけたライは軍服を握る神楽耶の手を優しく握っていた。
神楽耶は自身の要望が叶って嬉しいのか、満面の笑みを浮かべる。
「嬉しい……」
それに安心感を持ったのか、神楽耶はゆっくりと眼を閉じ始めた。
ライは握った手を重ね合わせる。
華奢で小さく、柔らかな手だ。
そこから伝わるのは温かい体温。守ってあげたい。
決意にも似たその思いを、胸の中に宿すと、ライはその手を優しく、しかし強く握った。
投下終了です。こんな夜更けに支援をしてくださった皆様方々有難う御座いました。
蒼い鴉卿、乙です。
ほっと心が温かくなりそうなSSですね。最後の展開で一瞬「大人タイム?」とか思ったのは汚れてるせいですねw
すみませんタイトルのウイルスのスペルが違っていました
VUILS 正しくはVIRUSでした修正お願いします。
蒼い鴉卿GJでした。
柔らかく丁寧な描写に心癒されました。
本編の神楽耶は突っ走る感じなのに対して、この神楽耶はいじらしくて可愛らしい
こんな神楽耶もいいなぁ。
またの投下お待ちしてます。
仙波さんがプリンw想像出来んw
>>530 GJです!本編で絶望した分、喜びもひとしお。続きを全力で待ちます!
>>535 ノシ
>>586 GJです。…おおっ?ライが積極的だ。
いいですね何か新鮮です。次回作も楽しみにしてますね
GJ!神楽耶がいじらしくて可愛い。温かいSSをありがとうございました。
>>586 蒼い鴉卿、GJでした!
神楽耶、いいね!
穏やかで和みそうな雰囲気が大変良かったです。
千葉さん、ナイスアシスト! 仙波さんはアドバイスしたのかな? ―――まさかスルーか?
こういうほわっとするSSは良いものだ。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>530 酸性雨さんGJ!ヴィレッタを幸せにしてやって!
>>586 この二人のカップルは珍しいですね。というか仙波がプリン…?想像したら噴いたww
>>586 いやぁ、ほんわかしか感じが神楽耶様らしかったですね。
よくわかっていらっしゃる。
GJです。
いやぁ、短編で終わらせるのもったいないなぁ。
続編希望という事で、よろしくお願いいたしますwww
>>530 酸性雨さんお疲れ様です。ヴィレッタのハングリー精神はここで育ったのでしょうか?
本編に取り入れて欲しかったと思うぐらいのクオリティ。
続きが楽しみでしょうがありません。
>>535ノシ
>>535のあしっど・れいん卿GJ!続き待ってます!
次スレだけどテンプレは現状維持?それとも削除?
現状維持でいいなら立ててくるけど
>>1の関連スレは4つともいらないと思う。どれも荒らされて機能不全になってるし
このスレを見ている人はこんなスレも見ています。でこのスレが表示されるのも…
もうこうなったら徹底的に無関係を貫いたほうがいいと思われ
>>530 GJ、お疲れ様です!昼ドロに続いて今度はヴィレッタ嬢ですか…
卿のバイタリティと創造力には驚くばかりです!
続きを全力で期待しています!
>>535 ノシ
>>530 素晴らしい酸性雨さん!オリキャラオリ要素をここまで違和感なく盛り込めるとは!
こりゃあ先が楽しみだ!次回作をキリン状態でお待ち申し上げております!
>>535ノシ
>>530 あしっど・れいん卿、GJです。本編で非業の最期を遂げたヴィレッタに是非とも祝福を
続編をお待ちいたします
>>535 多すぎだろうw でもノシ
>非業の最期を遂げたヴィレッタ
ひでえwでも同意
期待を込めて
>>530のあしっど卿にGJと乙を贈ろう
続きはもちろんあると信じていいんですよね?
感想どんだけあるんだよwww
感想少ない職人泣くぞw
と、いうわけで、俺から全職人にGJを!
>>530 ヴィレッタ来たああああ!頼む酸性雨さん、敵を…カタキをとってくれ!
次回に全力で期待!
このスレにこんなに人がいたことに正直驚いてる
そしてヴィレッタの本編での扱いに納得のいかなかった人が俺以外にこんなにいたことに嬉しさを感じる
オール・ハイル・酸性雨!我々は貴方に全力で敬意を表する!
これからも全力で執筆していただきたい!
みんな聞いてくれ。
>>530はあの酸性雨さんだぞ。いやGJなのはもちろんだが、
この先暗転する可能性がなきにしもあらずということだ…。
俺はもちろん幸福な結末を望むが、もし不幸なENDになっても決して叩いたりはしない。
どんな作品を書くかは職人さんの自由だから。
改めて酸性雨さんにGJ
どんな結果になっても責めたりしないよ。ただじっと読んで続きを待つだけさ
>>530 GJ
>>535 ノシ
>>530 あしっど・れいん卿乙です。いつも楽しみにしています。これからも頑張ってください。
>>530 ノシ
なんか異常な数だが、感想は多くてもいいよな?別に投下を邪魔してるわけではないし
あしっどさんがプレッシャーに押しつぶされるといけないので一言だけ
>>530GJ!
えー、皆様、こんにちわ。
前回は、もう、びっくりするくらいの感想と応援ありがとうございます。
もう、ひっくり返ってましたよ、PCの前で……。(マジに)
本当にありがとうございます。
おかげさまで、燃え上がってしまいましたwww
そういうわけで、第2話です。
楽しんでいただければ幸いです。
タイトル ロストカラーズ外伝 ヴィレッタ・ヌウ物語-2 父と娘
カップリング ウィレッタ×ライ
ジャンル シリアス
注意
ゲーム版ヴィレッタをベースにオリジナル解釈で書いています。
その為、TV版、ゲーム版とは、違っているかもしれませんのでご注意を。
また、ヴィレッタ×扇が好きな人は、スルー推奨です。
では、開始します。
まるで優雅なダンスを踊っているかの様に白と蒼に塗られたナイトメアが戦場を舞う。
また1機、また1機と黒の騎士団のナイトメアが破壊され動きを止める。
そのあまりにも美しく、そして力強くて鋭敏な刃物を連想させるような動きに、私は見入ってしまっていた。
確かにナリタ山での戦いでも彼の動きには驚いた。
だが、今の動きは、あの時とは比べものにならないほど強く美しかった。
あれがライ卿の本当の力か……。
それはまるで、幼い頃に見た父上の戦っているナイトメアの姿と重なって見えた。
そして、8機の敵ナイトメアは、彼のひとりの手によってすべて倒されていた。
ロストカラーズ外伝 ヴィレッタ・ヌウ物語 第2話 父と娘
あれ以降、ライ卿は頻繁に政庁の我々の所に顔を出してくれるようになった。
いつもにこやかな笑顔と落ち着いた感じの会話でやさしい印象を受ける。
だが、自らの意見ははっきりと口にするし、彼の言葉には人を納得させる理論と巧みさがあった。
あのジェレミア卿でさえ、彼の言葉には納得させられる事も多いのだろう。
普段ならまず聞く事が出来ない「考慮してみょう」とか「考えておこう」といった言葉が出てくるほどだ。
「卿は、面白いな……」
そう言った私の言葉に彼は苦笑した。
まだ何も知らないような10代の少年のさわやかな笑顔。
だが、彼は、私の目の前でゼロの事で暴走するジェレミア卿を諭し、落ち着かせたのだ。
そう、私でさえもなんとも出来ないほどの暴走をしていたジェレミア卿を……。
だから、思わずその時の感情が言葉となって口から出ていた。
深い意味はない。
だが、そり言葉は私の偽りのない本心だった。
さすがに笑っただけでは誤魔化せないと思ったのだろうか。
諦めたかのように少年の口が開く。
「僕は、ただ、ジェレミア卿が本心から皇族の身を案じている忠臣の方だと思ったから言っただけのことですよ」
何気なく簡単に言った言葉。
だが、その言葉は、間違いなくジェレミア卿の本質をいい当てている。
物事の本質を見極める目とそれをうまく言葉に出来る知識を持っている証拠だ。
さすがと言うべきか……。
見せ付けられるかのような才能の違いに驚くと同時に納得してしまう。
私は、それほどの格の違いを感じていた。
だからだろうか。
「なぜ、私にそんな事を話す? 」
思わずそう言ってしまう。
この言葉は蛇足だ。
だが、私は聞いてみたかった。
彼にとって、私はどういう風に映っているのかを……。
しばし私を見つめる彼の目は、私の真意を探ろうとしているかのようだった。
だが、それはすぐに悪戯っ子のような表情になる。
「ヴィレッタ卿は、僕の事を試されているのですか? 」
その言葉には、私をからかう口調が含まれていた。
私は、思わず苦笑してしまう。
「いや、深い意味はない。ただ、聞いてみただけだ、ライ卿」
その言葉に彼は笑い、それに釣られ私も笑い出していた。
そして、笑いが収まると彼は微笑んで言った。
「ヴィレッタ卿には、誤魔化しは無理だと思いましたし、……それに貴方はいい人みたいだから……」
そう言うと彼は挨拶をして部屋を退出した。
その後姿を、私はただぼーっと見送っていた。
自然と頬が熱を持ち、頭の中で「いい人みたいだから」という言葉が何度もリプレイされる。
だが私は、すぐに我に返った。
わ、私は、今、何を考えていた?
慌てて、今、心の中に浮かび上がった感情を打ち消す。
彼は、我々の大切な同士なのだからという言い訳を塗り重ねて……。
「ヴイレッタ、そろそろ君の父上の命日ではないのか?」
ジェレミア卿が思い出したかのように聞いてきた。
本当にこういう気配りはしっかりしていると思う。
これは、ジェレミア卿の美徳の1つだろう。
だが、それを私は思い出したくなかった。
「はい。5日後です」
私は、静かにそう答える。
「ふむ。どうするつもりだ?」
少し申し訳なさそうな表情のジェレミア卿の顔。
そう、私の父の死に関しては、彼はいまだに引け目を感じている。
だから普段のジェレミア卿らしくない対応になってしまうのだろう。
それゆえに、私は事務的に答える。
「さすがに本国に戻るわけにはまいりませんから……」
その言葉に、ただ「そうか……」とだけジェレミア卿は答えた。
幸せな彼との生活。
当時、私は、それが永遠に続くと思っていた。
けど、幸せは、永遠には続かない。
幸せとは、危ういバランスによって保たれている事を思い知らされる出来事が起きたからだ。
それは、私が21歳の夏に起きた。
彼の娘になって11年が過ぎ、私は、大学へと進学していた。
当時のブリタニアは、今と同じく拡大政策を行い戦争を繰り返しており、騎士たる父も軍務で家を空ける事が多かった。
それでも、休みになると我が家に帰ってきてその時間の殆どを私と過ごしてくれた。
一度、「私なんかより、彼女でも作って結婚すればいいのに…」と言った事がある。
当時、父上は、40近くではあったが若々しく、かなりの男前だった。
聞いた話だとかなりの女性からアプローチがあったと言う。
だが、彼は苦笑して「結婚は、もう懲りたよ」と言っただけだった。
その辛そうな感じから、私はそれ以降聞いていない。
それは、父上にとって触れてはならない領域だと思ったからだ。
また、いつしか私の心には、彼を父としてだけでなく異性として見始めていることに気が付いたから……。
だから、私は、休みになるとまっすぐに私の元に帰ってきてくれる事にうれしさを感じていた。
そして、今年の夏もそうなるはずだった。
日本との戦争もほぼ終了し、彼が帰ってくる。
戦争のおかげで、実に半年振りの再会。
学校の事、普段の生活の事、話す事はいっぱいあった。
そして、二人で過ごす何気ない時間と何気ない会話。
それらすべてが楽しみだった。
幸せとは、こういうものかもしれない。
そして、こういうのも悪くないと思い始めていた。
だが、帰ってきた彼は、変わり果てていた。
あの精悍だった彼の姿はそこにはなかった。
戦場で受けた傷が原因で左手と視力を失い、そして、親友であり、上官でもあるゴッドバルト家当主との確執によって、騎士としての権利を剥奪されていた。
誇りさえも失った彼。
出迎えた私に済まない表情の彼の姿が痛々しい。
そんな私の気配を察したのだろう。
悲しそうな、そして申し訳なさそうな表情で彼は口を開く。
「すまない、ヴィー。私が……」
そう言いかける彼を、私はただやさしく抱きしめて言葉を止める。
「父上が生き残ってくれただけでも私はうれしいのです。おかえりなさい、父上」
そう囁き、私はより強く彼を抱きしめた。
「ヴィー……」
彼も右手でやさしく私を抱いてくれる。
今はそれだけで十分だった。
彼が生きて、私の傍に戻ってきた。
それだけで……。
熱めのシャワーを勢いよく浴びる。
まだ寝ぼけている体と頭を熱い水が刺激していく。
肌に流れる水滴が、眠気だけでなく、すべてのわだかまりや思いを洗い流してくれればいいのにと思ってしまう。
だが、それは無理な相談だ。
記憶がある限り、人は悩み、迷う存在なのだから。
シャワーを止め、排水溝に流れるお湯をみつめて溜息をつく。
すっきりしない。
そう、なぜこんなにも落ち着かないのだろうか。
なぜ、こんなにも昔の事を夢で見る。
それは、やはり……。
脳裏に一人の男の姿が浮かぶ。
銀色の髪と優しげな瞳。
ライ……。
彼と出会ってからというもの、彼の姿が、仕草が、父のものと重なるのは何故なのだろうか……。
いや、違う。
彼と父は、違うのだ。
そう自分に言い聞かせる。
そして、心に湧きあがってきた感情を打ち消していく。
それは、かって父であった彼に持った感情。
そして、決して彼には言えなかった感情。
湯気が少しずつ晴れていき、目の前の鏡が私を映し出す。
その鏡に映る自分の姿は、まるで不安に怯えるか弱い少女のように見えた。
そう、己が感情を押し殺し、父親を失って泣き濡れたあの頃の自分のように……。
違う……。
思い出すな。
思い出しちゃいけない。
必死になって自分に言い聞かせる。
それでも身体はガタガタと振るえていき、記憶が浮かび上がってくる。
グラリと身体がゆれ、私は身体を支えるかのようにそのまま壁に両手を付いた。
だが、身体の力か抜けていき、滑る様にその場にしゃがみこむ。
温まったはずの身体が少しずつ冷えていく。
だが、私は動けなかった。
今、動いたら……私は間違いなく泣き出していただろうから……。
私は、自分がこれほど脆いとは思いもしなかった。
「食事ですよ、父上」
私は、父の寝ているベットの傍のテーブルにトレイを載せた。
「すまないな……、ヴィー」
父は済まなさそうにそう言った。
「もう、二人っきりの家族なんだから、そういうのはなしでしょ……」
私は、何かあるたびに父の口からでる言葉をいつもの言葉で返した。
あれ以来、父はすっかりやせ衰えていた。
日々の食事もだんだんと細くなっていく。
そして、心配は、父だけではなかった。
日々の生活にも支障をきたし始めたからだ。
元々、ヌウ家はそれほど裕福な家庭ではない。
確かに父は騎士であったが、離婚の慰謝料でその財産の殆どを失っており、さらに今は騎士の権利も剥奪されている。
つまり、まったく収入がない状態なのだ。
その為、今までの思い出の詰まった家を売り払い、なんとかアパートに移って二人で細々と生活している。
しかし、どれほど節約しょうとお金には限りがあった。
まるで転落していくかのような生活の急な変化。
だが、私はくじけなかった。
叔父夫婦の家から逃げ出したとき、私は何も出来ない弱者でしかなかった。
だが、私は彼によって助けられ、今はやろうと思えば出来ることは山ほどある。
そう、今こそ彼に恩返しをしなければならない。
そして、私の大切な家族を守る時なのだ。
私は、自分にそう言い聞かせて自分自身を奮い立たせた。
そして、始まった二人だけの新しい生活。
父の看病とバイト、そして学業。
だが、3つの掛け持ちは、若さでも精神でもカバー出来るものではなかった。
疲労が蓄積し、精神は削られ、ついに私は、大学をやめる決心をする。
退学届けを出しに行った時、担当の教授はすごく残念がっていた。
君ほどの優秀な生徒を失うのは遺憾だと……。
学費は援助金を使えば問題ない。
だから、卒業までがんばったらどうか?
何度もそう言ってくれた。
大変ありがたかった。
そして、うれしかった。
だが、それは無理な事。
だって、父を見捨てられない。
大切な、私の大切なただ一人の家族。
そして、大切な思い人を……。
「ふう……」
冷えた身体を再度シャワーを浴びて温めてると風呂場から私は出た。
そして、私服に着替えると私は部屋を後にする。
今日は、非番の日であったがのんびりとはしていられない。
ジェレミア卿は、ゼロ絡みになると正常な判断が出来ない。
そうなるとやれる事は一つだけ。
独自で動き、調査する。
それしか方法はない。
そう考えた私は、わずかな手がかりだけで調査を始めた。
私立アッシュフォード学園の男子学生。
ただ、それだけの手がかりであったが、それでも何もないよりはマシだった。
そういえば……。
確かライ卿も普段はアッシュフォード学園にいたのだったな……。
ふと彼のパーソナルデータを思い出す。
そして、一瞬、彼がゼロではないのかという考えが浮かぶ。
彼ならば、今までゼロがやってきたような大胆な計画もやりこなすのでは……。
そう思えてしまったからだ。
だが、私は、その考えを却下する。
彼がゼロのはずがない。
純血派として行動し、ブリタニア軍人として働く彼がそんな事があるはずもない。
そうだ。
私は何を考えている。
そして、そう思った瞬間、ほっとしている自分がいることに気が付いた。
それは、彼のようなすぐれた才能を持った者を敵に回さなくて安心した安堵だったのか、それとも別のものだったのか私にはわからない。。
いや、それは嘘だ。
わかっているのに、わからない振りをして誤魔化さなければならない。
そうでなければ、この心に湧きあがる感情を否定できないと思ったから……。
第2話終了
以上で2話終了です。
本当にたくさんの感想と応援ありがとうございました。
全部楽しんで読ませていただきました。
いやぁ、恥ずかしいやら、うれしいやらで、もう感謝、感謝です。
後、一部の方が心配されていたトーマスさんの件ですが、実は事前にお見せしてOKは貰ったんですよ。
(というか、こっちが言うまで気が付いてくれませんでしたwww)
ですから、ご安心を。
それと、皆さんのヴィレッタへの気持ち(愛でもいいですが)確かに受け取りました。
善処いたします。
ただし、予定は未定ですので、絶対ではありません。
その点は、ご勘弁を。
でもとてもうれしかったです。
僕もヴィレッタは好きなキャラクターなので……。
よって、これからもがっちり書いていきたいと思います。
さて、長々となってしまいましたが、このSSを読んで皆さんが少しでも楽しんでいただければ幸いです。
では、次は「蒼天の騎士」でお会いしましょう。(予定)
>>622 あしっど・れいん卿、GJでした!
過去がなかなか悲しいなぁ……
ヴィレッタの父の命日、か。
ライを重ねて見てしまう、その気持ちの行き着く先はどうなるのか。
続き、気になりますね。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>622 GJ!これだけのオリジナル設定でここまで読ませるとは。
ヴィレッタの過去と現在彼女の目の前にいるライ。それが今後どうクロスして、彼女や世界を変えていくのか。
続きをお待ちしてます。
>>622 来たアアアアアア!GJですあしっどれいん卿!こんなに早く続編が読めるなんて…!
>>622 乙!今回も期待通り、いやそれ以上の出来でした!続きを楽しみにしています!
あしっどさんGJ!いつも応援しています!
>>620 乙です!
…ヴィレッタ…辛い思いをしてきたんですね。自分の尊敬する人間が衰弱していく様を見るのは
ほんとに堪えると思います。でも、その辛い経験が今の向上心を育てたのでしょうね。
>>620 ちょwww早すぎでしょwww
なんですかこれ?マジで体大丈夫ですか?投下して下さるのはとても嬉しいし当然今回もGJですけど、くれぐれも無理はしないでくださいね?
>>620 GJだ!GJなんだけど…GJすぎて確かに心配になってくるぜ。ちゃんと寝てます?飯食ってます?
SSに限らず何事も体が資本なのでお気をつけて。過労で入院経験がある者より…
俺は今日大きな幸福と大きな不幸を味わった。
大きな幸福とは、あしっど・れいん卿の続編をこんなにも早く読めたこと
大きな不幸とは、リアルタイムで支援が出来なかったことだ
いや、支援要らんだろう
>>622 早速の続編お疲れ様です。キャラの息遣いがこちらまで伝わってきそうな表現が見事です。
次回も全力でお待ちいたしております。
>>633 まあ、あって困るものでもないでしょう。やり過ぎはどうかとも思いますがね。
>>622 あしっどさんGJです。いよいよ物語が本格的に動き始めましたね。
ライとかかわりヴィレッタがどんな変化をもたらすのか、楽しみです。
次回も楽しみにしています。
それほど残りレスも少ないようなので提案を
規制されているときやタイミングを逃した感想
あと単純に雑談などの受け皿に、外部に避難所作ったらどうだろうと思います。
もし可能なら、移転のときに使った議論板に一本立てさせてもらってリンクするとか
3月中の規制は長くてきつかったので。
折角だからしたらば活用しても良いと思うんだがね
638 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 14:08:12 ID:ok07U2AJ
それなら、いっそのこと倉庫との連動で感想書けるところ作ったら?
倉庫で読んで、感想書きたくなってことがあるからなぁ・・・
移転のときに使ったしたらばの板の体裁ってここの避難所だったような。
使っていいならあれが一番手間がいらなさそう
>>638 単純に保管庫にそこへのリンクつけて感想を即行書けるようにしてもらえればいいとおもう
投下大丈夫ですか、次のスレまで待った方がいいです?
次スレ立ってますよ。
そっちのほうがいいかと
すいません、アドレス貼ってもらえますか?行けなくて・・・・・。
じゃあ埋める?
埋めますか
埋め用に企画を提案 【歴代SS 心に残る名セリフ】
タイトルのとうり歴代SSの中で、心に残る名セリフ・印象深いセリフを各自発表なんてどうかな?
自分は、これ↓
「浮気したら…殺すかんね…」
0015-0018 蒼天の騎士(5) 思い (あしっど・れいんさんの作品)
カレンのライ(ナナリーの騎士!)に対する激しい?燃える様な?愛を感じました
【歴代SS 心に残る名セリフ】
『お、おおおお前の大事なものは…い、命だろう?なら…』
このルキアーノの言葉に対しての
「違う。僕の大事なものは自分の命じゃない。」
0022-527 キューピッドの日の災難 最終章 第3部 カレンとライ 後編
(ポタラさんの作品)
この台詞に痺れたね。ライの決意がバリバリ感じられて。
特に前編からずーっとヘタレてた後だから余計に…。
本当にかっこいいと思いました。
>>647 それいいかもしんない
んじゃあ俺は
「カレン! 今は全力で僕を見捨てろ!」
0003-0263 コードギアス・ラストカラーズ〜蒼月のライ〜『R2前夜』3(KOUSEI卿の作品)
ライがこのギアスを発するまでの過程込みで泣ける
では私は
「そうだ。僕がゼロだ」
0006‐0263 手を取り合って 1話 言わずと知れたBLUEDESTINYさんの作品。
リメイクしてたりするけど、やはり最初にこの作品を読んだ時の高揚感というか、そういったものは忘れられない。
652 :
toto:2009/04/07(火) 01:21:06 ID:wNCeuu2i
アクセス規制解除されました。totoです。
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」(後編4)を投下したいのですがスレ39はどこにあるのでしょうか?
654 :
toto:2009/04/07(火) 01:25:02 ID:wNCeuu2i
ありがとうございます
生徒会会報を作る事が決定したアッシュフォード生徒会。
しかし、あのミレイさんが、ただの会報だけで済ますはずもない。
気が付くと会報作りがすごい事になりつつあった。
「シャーリーっは、ポエム書いてっ。ルルーシュは、簡単に出来る10分間クッキングの記事を…」
次々と会報らしくない記事が作られていく。
「あ、あのぉ……、それって会報には必要ないんじゃ……」
ついにたまりかねて僕そう言った。
きっと周りのみんなも同意してくれると信じて……。
しかし、実際はその逆だった。
僕が見渡すと、誰もがめを伏せていく。
ええーーっ、みんな、諦めているのっ?!
愕然としている僕の肩をポンと叩く者がいた。
ルルーシュだ。
「ライ。残念だか……とてもすごく残念だが、すでにその意見は3回却下されている」
ああ……だからなのか……。
身体中の力が抜けて僕はその場にしゃがみこむ。
こうして、アッシュフォード学園生徒会がそれこそ持てる総力をつぎ込んだ会報作成の幕は切って落とされた。
次回予告 「アッシュフォード学園生徒会の会報作成の事情」
君は、そこにミレイさん以外の人の涙を見る事になるだろう……。
すみません…。嘘です。
即席で作った嘘予告です。
申し訳ありません。
笑って許して……。
>>655 乙!
>ミレイさん以外の人の涙を ひでぇw
ええーっ嘘予告!?じゃあ続きはないってことか…残念
ume
【歴代SS 心に残る名セリフ】
参加したの
>>647-650 だけって・・・
せめて、「いっぱいありすぎて、選ぶ事なんかできない」とか
フォローの言葉が欲しかった。なんだかんだで、499.2KB・・・
突発すぎたんじゃね?埋め
フォローの仕方まで不特定多数に向かって指定って無茶な。
思い通りにならないからと言って、駄々こねるもんじゃないよ。埋め
うめめ
他愛もない埋めネタ
ある日の純血派
「さぁ、同士ライ卿も一緒に……オールハイルブリタニア!!!」
「……オールハイルブリタニア!」
「声が小さい! オールハイルブリタァァァニア!!!」
「オールハイルブリタニア!」
「もっと愛をこめて! オールハイルブリタニア!!!」
「オールハイルブリタニア!!!」
「よし、なかなかだ。 今日の発声練習は終わり」
「……なんで僕は毎日声出しの練習をしているんだろう?」