「
>>1 乙。お前なかなか目端が利くな、鹿馬ロ入るか?」
「GJだよ
>>1 くん!御褒美にこの“生キャラメル(?)”をあげるよ!」
「やめろよサン……
>>1 、それ多分ジンギスカンキャラメルだからな。コーヒー置いとくぞ」
「
>>1 さん手際良いっス!怪我したらこの保健委員を呼んで欲しいっス!手厚く看護するっス!」
「中身を見たい生き物がいたら持って来ると良いっス。僕がヤってあげるっス……うふふ」
「白倉先生、保健委員とキャラ被ってますよ」
「……ぼそぼそ(跳月先生こそキャラ立ってなくて埋没してまスよ)」
「
>>1 おつ。おい塚本、お前《馬鹿ロリータ》とかいうチーム作って小学生襲ったらしいな。指導室来い」
「塚本……君はハルウララだと思っていたのに。少年院でも達者でな。僕は祈ってるよ、別名祈り虫だけに」
「お前も馬鹿ロリータの一味だって聞いたぞ鎌田。指導室来い」
「ナ、ナンダッテー>Ω ΩΩ」
「
>>1 おっつー。私がハルカ特製肉じゃが作ったげる」
「……お前マジでおかんみたいだぞ」
「うっさい爬虫類、タバコ食べさせるぞ☆」
「持つべきものは友ニャ。そして乙するべきは
>>1 なのニャ」
「おお、さすがクロにゃ、シャコージレイをわきまえてるニャ」
「あの、えっと……
>>1 さん、乙かれさま、ニャ」
「ニャー!コレッタ、おまえ天然ぶりっこするなニャ!」
「ひゃっほーー!!雪ゆきユキ!え?
>>1 ?僕は雪で頭がもうなんかもうひゃっほーー!」
「コラ犬太!待て!ステイにゃ!」
「うおー!何処だ冬将軍!!寒いだろーが!!」
「確かに寒いなー。それに探しても全然冬将軍て居ないなー。ちょっとベンチで休むかー」
「そうだな!もう何か月も探してるから、焦ってもすぐには見つからないのかもしれない!」
「へー、そんなに探してるのかー、大変だなー。とりあえず
>>1 乙しとくかー」
「雪ゆきユキ〜〜!あれ、こんな所に雪だるま?……うわ!でっかいカマキリが死んでる?!」
「こら犬太!虫の死骸食べるんじゃないニャ!」
「ぐえっ、食べてないってばっ、り、リード緩めてっ、ぐえっ」
獣人総合すれ、5つ目おめでとうさんどす。 今回もいい記事(ねた)書かせていただきやすさかいに、よろしうおねがいいたしやす。ほな。
「よ…葉狐ちゃーん…」
「もたもたしてると置いてくでー。こっちや、こっち。」
「ちょ、ちょっと待ってってば、ふぅ」
「しっかりしいや、香苗姐ちゃんは体力ないなァ。
なんやまだ
>>1 乙もやっとらんやないの。ほんなら私が済ませてまおか」
「あんまり年上からかっちゃダメよ。レイギっていうのがあるでしょ」
「そうよ、店長さんなんだから敬意払わなくちゃ」
「はーい、メイドのお姉ちゃん。」
「「私はメイドじゃないの。ウェイトレスなのよ」」
「ふーん、どっちかわかんないや」
「はぁ、はぁ(こ、こいつ………!)」
「それじゃ私たちも
>>1 乙やっておきますかー うふふ」
「(あぁ!息あげてる間にタイミング逃した!)」
>>1 オッツー
>>7 悪キャラ来た!
中等部だろうか、高等部だろうか
うっひょうGJです!! 二人はハッピーエンドかと思ってたけど、まだまだトラブルの種には事欠かないww
おお、目付きが危うい新キャラw 一回留年て事は、中学じゃなくて高校ぽいなー
スレ立て
>>1 さん乙でございます。
久しぶりに投下します。
おき楽三人組をお借りしました。
見慣れぬバイクが校門で止まっていた。 帰りがけのぼくを引き止めるネコの女性がいた。 「ヒカルくんだよね?覚えてる?わたしのこと…」 ぼくは大きく首を縦に振ると、彼女はバイクのエンジンを静かに黙らせた。 レトロチックなバイクに跨る彼女は確か名を『杉本ミナ』と言ったはず。短い金色の髪が光りを受けて白く輝くヘルメットから顔を見せ、 古めかしい車体の大きなバイクは楽々と彼女の細い体で操られていた。まるで荒れ狂う馬に跨るジャンヌ・ダルクのように。 「ねえ、どこに止めたらいいかな…。コイツったら」 「えっと、自転車置き場があるのでこっちにどうぞ。すぎも…」 「ミナでいいよ!」 気持ちいいくらいからっと澄んだ女の子らしい声が、端的に彼女の性格をよく表す気がする。 ミナはすっと尻尾を振り回しながらバイクから降りて、ぼくと一緒に自転車置き場へと愛車を押していく。 少し帰りが遅くなったぼくも一緒に自転車を押して、つい先程までいた自転車置き場へ付き合うことにした。 顔が映るほど磨かれたメーターが示すように、きれいに磨かれたレトロ調のミナのバイク。 ミナはこれでもかと自慢することなく、さりげなくぼくに見せ付ける。 「これ、『エストレア』だよ」 「エストレア?」 「そそ。のんびり走るにはコイツが最高なのね」 ぼくの細い自転車とは違い、荒々しいメカ丸出しのエンジンに上品に滑らかなボディは野性的でもあり、女性的でもあった。 そう、ぼくの横にいる杉本ミナのように。 自転車置き場に近づくと、きれいに並んだ自転車に紛れて大きなバイクが一台見えてくる。 ミナのものとは少し違い、精悍な体つきを持ちつつ大人の貫禄さえたたずむ大きなバイク。 それを見て鋭く反応したミナは少年のように声を上げた。 「あれ?あのZUさあ、誰の?」 「あのバイクですか?あれは現社の先生の…」 「男の先生?」 「いや…女の先生です。獅子宮先生って言う」 まじまじと獅子宮先生の愛車を眺めながら、なかなか年季の入ったヤツだよね、とミナが語る。 こんなに愛されながら乗ってもらえるなんて、ZUも果報者だと。 ミナのバイクに対する愛情がひしひしと伝わってくる、そんな優しい一言をかみ締めて、 頷き尻尾を思わず揺らしていると、ミナが声を上げる。 「あぶない!尻尾!」 いきなりの声で反射的にぼくは尻尾を丸めると、先程の気の強い顔は飛び去り、少し焦ったミナを見た。 ミナはぼくを心配する顔をして、まるで実の弟のようにぼくを叱った。 「ふう、マフラーで尻尾が焦げるところだったよ。エンジン止めてもこいつだけはまだまだ熱いんだから気をつけてね」
ミナは自転車置き場の開いた場所にバイクを止めると、白いヘルメットを脱いでぶるると首を振る。 同じくぼくもその横に自転車をとめると、ミナはぼくにヘルメットを手渡してきた。 尻尾をブラシで梳くからちょっと持っていてとミナは言う。きょうは風が強いから、尻尾がちょっと乱れちゃった とぶつくさと言いながら、ミナは袈裟懸けしたバッグからブラシを取り出す。そう言っている間に風がぼくらの間を通り抜ける。 バイクのシートに腰掛けて、器用に手元に風に晒された自分の尻尾を回し、丁寧に梳き始めた。 黙ってぼくはミナのヘルメットを抱えてその光景を見ていた。 「メットから、お姉さんのいいにおいがするかな…?ヒカルくん」 「……」 髪を梳きながらミナはぼくをからかう。ぼくはぎゅっとミナのヘルメットを両手で抱えていた。 尻尾を梳き終わったミナは辺りを見回し、きょうの授業を終わらせた学び舎を見つめる。 「サンはまだ?」 「サン先生?」 「そそ。サン・スーシだよ」 生憎、サン先生は追試の監督で教室にいるのだ。始まったばかりの追試が終わるのはあと30分後。 ぼくの帰りがちょっと遅くなったのはサン先生の命で、残されていたからだ。文系教科なら得意なのだが、 理科系独特の『理論』だの『理屈』と言う言葉はなかなか難儀なもの。数学者の話しは好きでも数学の計算式ははっきり言って苦手。 放課後の学園は若者の自由と学生の義務が交錯する空間なのだ。そして、自由を持て余すお気楽三人組がここに集う。 そう。グラウンドでは中等部のおき楽三人組が野球をしているのである。 アキラが腕を風車のように回して暴走しているのがここからでもはっきり見える。 「オラオラオラオラオラ!!ナガレいくぜえええええ!!」 「……」 あっけなく風に乗せられ、セロテープで固められた紙の球はポカチーンと打ち上げられ、 球は腕を伸ばしたアキラの頭上を鳥のごとく飛んでいった。 「うおおおっ!オレのWBC仕込みの大リーグ球が打たれるとは!タスク!バックバック!!」 「ふわぁ!」 青い空にふわりと舞う球は地面に落ちて風に煽られて転がり、ぱたぱた走るイヌ少年に追い駆けられる。 球を見失ったタスクは「貴重な球を失くすな」とアキラからの怒声を浴びる。 一方、ナガレは彼らを横目にのんびりグラウンドを周り、楽々とランニングホームランを決めていた。 「ははは。アイツらバカでいいよね」 ミナは笑いながら、グランドで跳ね回るおき楽三人組を見つめていた。 風がぼくの毛並みをすり抜けてゆく。春風はぼくを冬の眠りから目覚めさせる。
「ところで、ヒカルくんさ。彼女はいるの?」 そういえば、この前も同じことを聞かれたような気が。ぼくはミナにからかわれているのか。 いきなりの質問に黙って横に首を振ると、ミナは自分の手の毛並みをペロペロと舐めていた。 きっとミナなりの照れ隠しなのだろうか。さっきまでの『お姉さん:』は『子ネコ』に移り変わっているではないか。 滑稽なことに子ネコは子ネコの姿のまま、オトナの返事をしている。 「そっかあ。きっとヒカルくんもいつか、いい子と出会うはずだよ」 「ぼくなんか、人と話すのは苦手だし…恋人なんかできませんよ」 「話しなんかできなくったって、好きになったら関係ないよ。例え、ずっと顔なんか見えなくてもね」 続いてバイクのシートに座ったままミナは尻尾の毛を指で摘み、恥ずかしそうに話している。 ぼくはさらにぎゅっとミナのヘルメットを抱え込むと、暖かくお姉さんの匂いがする。 「わたしってね、ネコってことが時々嫌になるんだよね。気まぐれだし、素直じゃないし。 ヒカルくんみたいなイヌに憧れるんだよ。わかるかな…これ」 ぼくと目を合わせずに話すミナは足元の小石をぽーんと蹴った。 グラウンドではタスクがぽーんと球を打ち、何も言わずにナガレがキャッチしていた。 「あのとき、言っとけばよかったのね。今考えたらさあ」 「あのとき?」 「うん。わたしがヒカルくんよりちょっと上の歳のころのことね。でも…また、きょうここで会ったら言えなくなっちゃうかもな」 遠くでアキラの大きな声が響く。 「タスクー!今度アウトになったら、ここで好きな子の名前を叫べ!」 「そ、そんな!ぼく…」 毛繕いの手を止めて、ミナが呟く。 「そうね。わたしもあのときそうしときゃよかった。だって、一緒に過ごす時間なんてあのときぐらいしかなかったじゃないの。 アイツったら、こういうのって鈍そうだし……ごめんね。愚痴っぽくなってるかな。わたしのバカバカバカ!」 アキラが球を投げる。構えるタスクは力いっぱいバットを振る。 タスクが球を打つ。バットに運をつけた球は気持ちよく跳ね、守るナガレをかすめて素早く転がっていった。 「わーっ!ナガレ!そんな球、ミスるなよ!ナガレのバカバカバカ!!」 ぼくはヘルメットを少女のように恋に恋焦がれるミナに返す。 するといきなり、 「よしっ!ヒカルくん。ヤツラと一緒に野球をするぞ」 ミナはヘルメットをバイクのミラーにかけて叫ぶ。
ダウンベストを揺らしながら、ミナはおき楽三人組に向かって走り出した。 ミナは少年のままだ。ミナは少年をオトナにしたような…いや、ミナは女性だから違っているような、でも強ち違わないような。 そうだ。泊瀬谷先生とは全く違うタイプの女性というのは間違いない。 泊瀬谷先生は言ってみれば、ぼくのような若輩者が見ていても何かをしてあげないといけないような人だ。 ミナの方はと言うと、ぼくのような若輩者を見ると何かをしてあげないといけないくなる人だ。 そんなミナはブーツをグラウンドの砂で埃まみれにしながら、お気楽三人組に向かって駆けて行く。 「おーい!きみたち中学生?」 「へえ、野球ごっこかあ。いいなあ」 「グラウンドで走り回ったら楽しいだろうなあ」 そんな会話が遠くから聞こえてくる気がしないか。 いつのまにかにミナはお気楽三人組に溶け込み、ぼくに向かって手を振っていた。 ぼくが駆け付けるとミナはお気楽三人組と掛け合い漫才のような会話をしていた。 その証拠にタスクが早速ミナに気に入られているのだ。 「きみにはお姉さんがいるね?多分!」 「ええ?そ、そうです!」 「やっぱり。おお、ヒカルくんも来たか。みんな揃ったところでポジションの発表をしようかな。 ナガレくんがピッチャー、アキラくんはファースト、タスクくんはライト、ヒカルくんはショート。 そして、バッターはわたし!いい?それじゃあ、みんなしまっていくよ!!タスクくん、声が小さい!」 バットを持って張り切るミナの振り分けの元、ぼくとお気楽三人組みはそれぞれのポジションに着く。 ナガレがじっとミナのバットを持つ構えを見つめている。太陽の光を受けてメガネが反射する。 そして、剣道の面を振り落とすがごとく鋭い動きで第一球を投げると紙くずとは思えない鋭い速さでバットに飛び掛った。 ミナがバットを振る。球が当たる。そして、ポカチーンとあっけなく打たれた球は天に虹を描くように空を切る。 「ヒカルくん!バック!バック!!」 ぼくは必死に球を追いかける。こんなに走るのは体育の時間以来。球は風に吹かれて距離を伸ばす。 地面に落ちる前に捕球しようとぼくはジャンプをするが、タイミング悪くぼくの方が地面に落っこちてしまった。 そして、ぼくを笑うように球はぼくの頭の上に落っこちた。 「ははは!ヒカルくん!ファインプレー!」 ミナはぼくに『賞賛』の言葉を与えてくれたが、無様な格好をミナに見せてしまって、少し心が痛い。
ミナの声とは別に、遠くで声がする。 子どものような大人のような、学園ではその名を知らぬ者はいない人気者。そう、ご存知サン・スーシ先生。 サン先生は泊瀬谷先生と取りとめの無い雑談を交わしながら、グラウンドの側を歩いている。 どうやら数学の追試が終わったようである。いつものように目をらんらんと輝かせながら、泊瀬谷先生と歩く姿はまるで子どものよう。 その声にミナも動きを止めている。そしてサン先生の方はと言うと、持ち前の大声でぼくらに向かって叫んでいる。 「おお?ヒカルくんにアキラくんたち?球技はぼくの得意分野だってコト、知ってるよね?」 これはサン先生なりの「野球に参加させろ」の合図。敏感なサン先生によってぼくらのお遊びを嗅ぎ取られてしまった。 サン先生は素早くグラウンドに入り込み、センターのポジションに着くと、さあ来い!と球を待ち構えた。 「おお?サン・スーシか。待ってたぞ」 「なんだと?杉本ミナ!ぼくに取れない球があると思ってるのか?」 「バーカ。サンなんかに取れっこないよ」 バットをブンブンと振り回し、約一名に限って挑発しているミナだった。 トントンとバットを地面に叩くと、ミナはぼくらに向かって声を飛ばす。 「よーし!わたし、本気出しちゃうからね。きみたち、覚悟しなさい!」 ミナはナガレにど真ん中に球をよこすように目で合図する。ナガレも渾身のスイングでミナのリクエストに答え、 まるで獲物を見つけたハヤブサのような球をミナに向かって投げた。見事にバットの芯を捕らえた打球はきょう一番の放物線を描き、 サン先生へと向かってのび続ける。球が先か、サン先生が先か。勝負はこれから。 「もらったぞ!!」 サン先生の小さな身体は砂煙を上げながら地面を蹴って飛び上がり、傾きかけた太陽と重なり小さな体のシルエットをぼくらに見せ付ける。 空中で手のひらに球が吸い込まれると、サン先生はもんどり打って再び地面に生還し、ニヤリとぼくらの方に向かって雄叫びを上げる。 「あははは!どうだ!!学生時代『フリスビー連続キャッチ選手権』で優勝したのも伊達じゃないぞ!」 「初めて参加したときに、フリスビーを顔にぶつけて泣いてたくせにー!」 「泣いてないって!!」 ミナとサン先生とのやり取りに、アキラたちはどっと笑っていた。もちろん、ぼくも笑った。 フリスビーを顔にぶつけて泣いているサン先生、そんな姿が目に浮かばないか。
―――遊び疲れたアキラとナガレは帰り支度へと校舎に戻り、ぼくは帰宅のため泊瀬谷先生と自転車置き場に向かった。 サン先生も自分の荷物を取りに職員室に戻る。もうすぐ下校の時間。現を抜かしている時間はお終いなのだ。 一方ミナはタスクが気に入ったようで、しきりにタスクの尻尾を追い駆けて遊んでいた。 逃げる尻尾を掴んでは離し掴んでは離しと、走り周る姿はまるで姉妹でじゃれ合う子猫のよう。 「や、やめてよお!」 「ははは!タスクくんは彼女はいるのかね?」 「い、いないよお!」 「じゃあ、彼女が出来たらこんなことされるのかなあ」 確かにタスクは年上の女性にかわいがられる(からかわれる)のが得意のようで。 アキラが「早く来い」と叫び、ナガレがメガネを陽に光らせている。ぼくのそばでは泊瀬谷先生がくすくすとその光景を見ながら笑う。 「ヒカルくんって、やっぱり…ああいうお姉さんのほうが…」 「…え?」 「なんでもないですっ。ごめんなさい」 ふわりと髪を揺らし、泊瀬谷先生はすっとぼく横から駆けていった。 コツコツと大人の足音だけが逃げていった。 「こらーっ!ヒカルくん!下校の時間だぞー!」 白い尻尾と両手で握ったトートバッグを揺らしながら、泊瀬谷先生は自転車置き場でぼくを呼ぶので 急いでぼくは自転車置き場に走り、一緒に学校を後にすることにした。 「ヒカルくん。さっきのこと、気にしないでね」 「……」 「ほ、ほら!さっきの野球、カッコよかったよ」 必死に慣れないウソを吐く泊瀬谷先生は、正直すぎると思う。こんなぼくにでも一発で見破られる、真っ白なウソしか吐けないなんて。 押されて自転車の車輪が回る音だけが、ぼくらの気まずい間を繋ぐ。やがて、ぼくらは校門に近づいた。
ぼくらは白いヘルメットを被ってバイクに跨るミナが、校門の前でリュックを背負ったサン先生と何かを話しているのを目撃する。 愛馬と共にはやる気持ちを抑えきれない旅人と、一時の別れを惜しむ弟のように見える。 ミナは今から帰るところなのだろう。毛繕いをしていた繊細なミナと違って、からっとしたミナがぼくの目に映る。 「ねえ、ラビットはどう?」 「ああ、街乗りには最高だよ。ミナもエストレアに結構乗ってるよね」 サン先生はくんくんと鉄の馬の匂いを嗅ぎながら、傾きかけた陽を跳ね返すバックミラーに負けじと目を輝かせる。 ぐいっとミナはタンクに顔を近づけたサン先生の頭を押さえ込んだ。 「ZUに乗ってる先生、いるね」 「獅子宮センセ?は…はは」 「怖いんでしょ?獅子宮先生って人。いつも叱られてるんだ」 「うるさいよ!」 校舎からアキラたちがぼくらの側を通って帰宅して行く。言うまでも無く、三人の話題はミナのことで持ちきりだった。 特にタスクはミナに気に入られていたことに、二人から突っ込まれていた…というのは言うまでもない。 「サン先生、さよならー」 「おお!宿題忘れんなよ!」 「はーい。あっ!ミナさんもさよならー」 「あ…、カッコいいな。そのバイク」 「また、野球やろうね!タスクくん、しっぽ!しっぽ!」 タスクの毛の乱れた尻尾がアキラとナガレの笑いをクスクスと誘い、黙って彼らを見ている校門を潜っていった。 お気楽三人組の帰りを見届けると、サン先生はミナの足を軽く蹴りながら問い詰めた。 「ところで、ミナさあ。男子をかどわかして、何やってるんだよ。あの歳の男子はコロッとミナくらいの子になびいちゃうんだよ」 「だって、男の子たちと外で遊ぶのが楽しいんだもん」 「ったく、アイツらを勘違いさせんなよ」 「なによ!まるでわたしが悪い女みたいじゃないの。その気になんかさせてないもん!だって…弟みたいでかわいいんだもん!」 「ぼくはミナみたいな子が家にいたらやだなあ」 「わたしだってサンみたいな兄弟がいたら、毎日蹴り飛ばしてるよ」 学生時代もミナはサン先生をからかい、そして手のひらで踊らせていたのだろう。そんな姿が目に浮かばないか。 ミナはバイクに跨ったままサン先生の足を軽く蹴り返すと、「また来るね」と、エンジンの音を立てて学校からの坂道を下っていった。
「あれ、サン先生もおかえりで?」 泊瀬谷先生は小柄な若き教師ににこっと微笑みかける。その教師は照れくさそうに微笑返し。 春風に乗って咲くことを恥ずかしがる、桜の花のようにも見えるというのは言いすぎだろうか。サン先生は少し俯き加減でぼくらに話す。 「どうして女の子って…ねえ!ヒカルくん!」 「ええ?は、はい?」 「この間、ミナが旅に出かけてさあ、帰ってきたからてっきりお土産でもと思ったら…。 なんだい、ぼくに会っておしまいだなんて言うんだよっ。なんかお土産くれよお!けち!」 そういえば、ミナの顔がサン先生と会う前と会った後で、明らかに輝きが違う。ぼくの瞳を信じれば、きっとそうだった。 まあまあ、とサン先生をぼくがなだめると泊瀬谷先生がポツリ。 「ミナさんって言うんですか?あの女の人。かっこいいなあ、わたしもバイクに乗ろうかな…」 「……」 「……」 「心配しちゃったかな。ごめんなさい」 「いつか、先生をバイクに乗せてあげますよ」 「え?」 泊瀬谷先生はぼくが初めて先生と一緒に帰った、秋の日のことを覚えているのだろうか。 そんなことをふと思いついた矢先、ぼくの口からそんな言葉が飛び出したのだ。 あの秋の日のせいだ。ぼくが泊瀬谷先生を困らせることを言わせたのはきっと、秋の日のせいだ。 泊瀬谷先生の足音が消えた。サン先生も歩みを止める。 風の音だけが聞こえてくる。花をまだ知らない桜の枝がぼくらに小さく腕を振る。 このときばかりは落ち着きの無いサン先生も黙ってぼくらを見ていた。 この沈黙はぼくが破る。 「風が大分暖かくなりましたね」 「うん…そうね!」 バイクに一緒に乗ったら、あのときの風がまたぼくらに吹くんじゃないかと。 あの秋の日に、泊瀬谷先生を自転車の後ろに乗せた日のことを毎日思い出せるんじゃないかと。 どうして、こんなことを考えているんだろう。きっと、ミナが仕掛けた悪戯に嵌ってしまったのかもしれない。 できることなら、満開に咲いた桜の花の中に飛び込み隠れてしまいたい。が、季節はそれを許してくれはしなかった。 泊瀬谷先生はぼくの顔を覗き込むと、尻尾を揺らしてぼくに尋ねる。 「ヒカルくん?バイク、乗れるの?」 「……いいえ」 「おや?ヒカルくん!バイクに乗りたいの?難しいぞお。数学が出来なきゃ免許は取れないからね!!」 ぼくのようなバイクの素人が聞いても、嘘っぱちだと分ることを平気で言い放つサン先生。 その目はシロ先生や英先生に仕掛ける悪戯を思いついたように、当然ながらキラキラとさせていた。 さらに泊瀬谷先生もサン先生と同じように目を輝かせて、ぼくに張り切って言い放った。 「野球の球も取れなきゃ、バイクの免許は取れないぞお!」 おしまい。
>>7 今後、楽しみなキャラですな。
風が寒い…。投下おしまい。
ぬおお ハセヤンとヒカルきゅんが段々惹かれ合っておるう 焦れったいような心地よいような GJ!
和やかな日常的な雰囲気がいいな
>>7 ルルつええw
新キャラいいねいいねー
ザッキー悩みの種がまた増えたな、頑張れよw
>>19 ラブいですのう、きゅんきゅん
こっちにもww お嬢様ー!次スレ次スレー!
おお、なるほど!こっち見てやっと分かった 立体にしてくっつければいいのか すげぇぜ
り、立体とな!? 印刷して切り取って貼ればいいのか
こういうアイデアは嫉妬するなーw 人を楽しませる方法って、ほんとに色々あるもんだ
書き忘れてたのですが、黒線が切り取り線、赤線が谷折り、青線が山折りです。 概ね150dpi位で印刷すると、15cm角ぐらいの大きさに出来上がります。 薄い紙で作ったらぶよぶよになってしまいました(笑)
おおおおおおお!? すっげ!!!
うふふうふふ、ついに完成したわ・・・・ このケータイを翠香のケータイとすり替えれば、翠香は・・・・なんねん・・・ 学園ナンバーワンは・・・ひとりでええんや! せや、あたしひとりや! 芳本亥狐鹿はぶつぶつとつぶやくと、工作室から出ていった 「ネェ翠香、またケータイいじってんの?」 「いいじゃんべつにさー」 「で、何見てんのさ」 「2ちゃんの京浜東北線スレでアホを煽ってんの」 「あんた変人だわー」 「さあ授業始めるザマスよ」 生徒たちが大稲荷先生に促されて着席する 「ケータイの電源は切るザマス。鳴らしたら没収するザマス」 他の生徒が電源を切るなか、翠香だけはまだあのスレに未練があるようで、先生の注意を無視してしまった 授業の半ばまでは平穏だった 数人の生徒は机と一体化し、眠りこけていた くそ退屈な授業はもうすぐ終わる、ほかの生徒たちはそう思っていた 授業終了まであと10分、突如翠香のケータイから大音量の着メロが流れてきた 教室の片隅で気持ちよさそうに寝ていた塚本や来栖を叩き起こし、甲山が教科書の陰で 飲んでいたドリンクを噴出した 「山手さん!ケータイは没収するザマス。放課後職員室に来るザマス!」 「ちょっと返せよドラキュラー」 「ダメザマス!」 芳本は二人をチラチラ見ながら、これはチャンスとほくそ笑んだ 翠香はイラついていた ランチタイムにケータイがない 翠香にとって、それは考えられないことだった 「うううう・・・・」 「翠香大丈夫?」 「大丈夫じゃない」 翠香は憮然とした表情でつぶやくと、黙り込んでしまった 放課後 職員室で大稲荷先生が延々と説教する それを聞き流す翠香 「・・・返せ」 「明日まで学校で保管するザマス」 「パパに言うぞ」 「校長先生とあなたのお父さんから許可を得ているザマス。無駄ザマス」 「くそドラキュラー」 「頭を冷やすザマスね」
その頃、校舎の裏で芳本と加東がコソコソ話をしていた 「アカネ、お願いがあるんやけど」 「何ね?」 「職員室にある山手のケータイを持ち出してほしいねん」 「えーなんでね?」 「理由は聞かんといてや」 「タダならいやよ」 「あんたが欲しがってたシュシュつきTシャツとワンピースのセット買うたるさかい」 「ニットパーカーとキャミワンピほしいなー」 「わかったそれも買うたる」 「約束ね」 ニコリとしながらケータイを受け取るアカネ 高いものについたと嘆く芳本 その夜のこと 翠香は帰ってきたパパにひどく叱られてしまった ケータイを没収されたのもショックだったが、パパに叱られたのもショックだった 翠香は涙をこらえて布団に潜りこんでしまった その頃アカネは校舎に忍び込み、鮮やかな手口で仕事を果たした 翌朝 呆然としながら登校する翠香 誰かが通りすがりに挨拶しても、魂が抜けたかのように反応しない いのりんが声をかけてみたが、やはり反応はない 翠香はそのまま教室に入っていってしまった。 ぼんやりとじぶんの席についた 机の上を見るとなぜか自分のケータイがある 大稲荷先生が返してくれたのかもしれない 翠香は嬉しさのあまり、ケータイを持って教室から出ていってしまった 教室の隅でその様子を眺めていた芳本はニヤリとした 「あんたは今日で終わりやねん、あたしの天下よ」 ケータイをいじり始めた翠香、見守る芳本 芳本が作ったニセケータイは、あるボタンを押すと屁の音と強烈な臭いが出る仕掛けになっていた 夢中でケータイをいじる翠香、だが変化はない 「おかしいねん。ちゃんとすり替えたはずやねん」 芳本は自分の持っている翠香のケータイのボタンを押してみた ぷぅぅううぅぅーと間の抜けた音がして、ケータイから異臭が放たれた 「わ!なんだ!くせえ!」 「うっ!誰だ!」 「窓だ!窓を開けるんだ!」 「しまった!間違えた」 「うーうー、くっせー」 「テロだ!アルカニダのしわざに違いない!」 教室は大混乱に陥り、混乱に乗じて芳本は逃げ出してしまった 芳本は逃げながら次こそ翠香を倒してやると誓った 一方、翠香は何事もなかったかのようにケータイをいじり続けた 異臭も混乱もものともしないこのねーちゃんは、実は偉大な人なのかもしれない おしまい。
登場人物紹介 山手翠香(やまて すいか) ペンギン人の女性。超お金持ちの令嬢だが令嬢らしくない 鉄ヲタで2ちゃんねらーでケータイが手放せない女の子 芳本亥狐鹿(よしもと いこか) 関西弁もどきを喋るカモノハシ人の女性。メカに詳しく機械工作が得意 烏丸、加東とよくつるんでいる 加東アカネ 身長1hydeの人間の女性。オシャレできれいなものに目がない少女 自分の利益のために手段は選ばない 大稲荷丹(おおいなり まこと) 今春から勤務する狐人の男性。公民の先生 黒い服装に好物がフレッシュトマトジュースで、生徒からはドラキュラ伯爵と呼ばれている 口癖はザマス。全然似ていないかわいい弟がいる ケータイに夢中のYさんと自分の機械で自爆したYさん AAは借り物 , -─- 、 、′・. ’ ; ’、 ’、′‘ .・” /::::::::::::::::::::::::\ /:::::;;;::::::::::::::::::;;;::::::', ’、′・ ’、.・”; ” ’、 l:::::(●)::; - 、:(●):::::l ’、′ ’、 (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”; r .、 l:::::::::::::( ー' )::::::::::::l ’、′・ ( (´;^`⌒)∴⌒`.・ ” ; ’、′・ l:::::l 〉:::::::::::::`~´:::::::::::::〈 、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、"'人 ヽ |:::::l /::/` ─----─ ´ ヘ:', 、(⌒ ;;;:;´'从 ;' 芳 ;:;;) ;⌒ ;; :) )、 ヽ |::::::', /::/ __l^l_ ';:', ( ´;`ヾ,;⌒) ´元 从⌒ ;) `⌒ )⌒:`.・ ヽ ,[] |::::::::ヽ. /::/ 「r─ュ |. ';:ヽ ;゜+° ′、:::. ::: (,ゞ、⌒) ;;:::)::ノ ヽ/´ l:::::::::::::`::::;' |.| l | l::::ヽ `:::、 ノ ...;:;_) ...::ノ ソ ...::ノ ';:::::::::::::::l. | !.-'´ | l:::::::::', ヽ::::::::::l | ( ̄:`:::-、l:::::::::', `7:::::! └─ヽ::::::::::::::::::::::::l l:::::| 山手 `丶、 _:::::::ノ
オカマの先生…だと…?
携帯依存症のペンギンって想像するとちょっとかわいいw
だがしかしイケメン
>>37 ホストっぽいwww
なんて濃い男なんだw
ルーイwwww
これはボコられるわwwww
ヤンキーって実は根暗をクラスに溶け込ますのに一役買ってたりするよねwww GJ!
かるかんっていうお菓子があった気がする。 新キャラ続々登場で楽しいんだぜ。 〜〜 「はっくしょ!」 「んだよ鹿! せっかく気持ちよく寝てたのにうるせぇ」 「すまん、花粉症で目が」 「ったく、山手のケータイといいザマス吸血鬼といい転校生といい、今日は本っ当うぜぇ日だな」 「クシャミが、ふ、とまらない」 「今はやりの鳥インフルエンザじゃね?」 「花粉だっての。 学級閉鎖して欲しい、目が、めがぁああ」 来栖はズルズルと鼻水に苦戦していた。 花粉症、鳥インフルエンザ、冬眠覚め、季節の変わり目は多くの生徒が不調を訴える。 風邪をまったくひかない塚本が、窓の桟に腰掛けて夕日で馬面を赤く染めていた。 まだ寒さの残るグラウンドから爽やかな声が聞こえてくる。野球でもしているんだろうか? なんにせよ体育会系は頑張るなあと人事のように思った。 「……はっくしょ!」 「大丈夫かよ」 「いいえ」 「いいえじゃねぇよ」 「あ、」 クシャミと共に、教室にカランと乾いた音が響いた。 足元に一対の角が転がる。 とうとう来栖の角が一年の役目を終え、地に落ちた。 「おつかれ、角!」 「俺の角に馴れ馴れしく話しかけんな!」 「ふひひ、角の無い来栖、何年ぶりだ?」 「一年ぶりだから、毎年だから」 来栖は頭を抱えた。 角が落ちると大体数日は話題にされる。 人畜無害な泊瀬谷先生や猪田先生にまで授業中の雑談の種にされてしまうことすらある。 花粉症のくるしみと相まって不登校になりたい気持ちになる。 ゆえに来栖は春が嫌いだった 「おい、どこにいく? 来栖?」 「職員室で紙袋貰ってくる」 「頭から被るのか?」 「あほ、角を入れて持って帰るんだよ」 「待てよ、ついてく」
正直なところ塚本について来てもらって心強かった。 角の無い自分の頭を見られてクスクス笑われようものなら精神が持たない。 たとえ指を指されて笑われようとも、かたわらに知り合いがいるだけで楽な気持ちになる。 たとえアホでも、親友。 職員室前で獅子宮先生と擦れ違った。 開け放たれた戸から同じクラスの奴等が数人見えた。 「塚本、紙袋、とってきてくれ」 「ぁあ? 自分で行けや」 「この頭を見られたくない鹿心を察してくれ」 「ったくよ」 塚本はしぶしぶ職員室に入っていった。 塚本、ごめん、そしてありがとう。 ほっとしながら壁に背をつく。 なぜか涙が出そうだった。 しかし、来栖は失敗したと思った。 職員室前にいたら、より多くの人の目に触れてしまう。 角の無い鹿が、手に角を持って立っている。 こんな滑稽な場面があるだろうか。 だからといって職員室に入るほど度胸もない。 せっかく行ってくれた塚本に申し訳ないし、中にはあの転校生がいるし、 芹沢に爆笑されるだろうし、保健海賊に「あたま治療するっス」とか絡まれるだろうし。 ふと、目の前にペンギンの獣人がいるのが見えた。 普段ガメラと一緒に図書館にいる初等部の子だ。 一冊の本を小さな体に抱えながら、職員室を覗いたり離れたりしている。 そして、こちらをつぶらな瞳で見上げて、無言で訴えてくる。 「な、なんだよ」 「……あの、」 「なんだ?」 「……美術の先生、呼んでもらえますか」 「ぁあ? 自分で行けや」 「……ごめんなさい」 ペンギンは本を抱えながら職員室に入っていった。 我ながら、情けない。 うっかり職員室に身を隠す格好のチャンスを逃してしまった。 おまけに初等部の子に意地悪な態度を取ってしまった。 来栖の角の無い頭は、自己嫌悪でいっぱいになった。 別の意味で涙ぐんできた(花粉症のせいでもある)
「あの」 「うお!」 「ごめんなさい」 ボーっとしていたらペンギンが戻ってきていた。 抱えている本にグラフィックやら構図やらの単語が見える。 まだ小さいのに真面目だなと思った。 「美術の先生って、どこにいると思いますか?」 「プールだろ、多分」 「……え?」 「寒中水泳部だから、美術の先生なのに」 「ど、どんな先生、なんですか」 「海パン、としか言いようが無い」 「え、え? 海パンをデッサンしたりするんですか?」 「海パン で デッサンしてるような先生」 「こわい……」 「怖いな」 水島先生といえば、自分がクリスマスツリーにされた時、看板を達筆で書きやがったアザラシ。 普段は美術室で(やはり海パンで)絵を描いてるか、年中プールで泳いでいる。 露出度の高さは教員一だが、なぜセクハラで訴えられないのか分からない。 「ありがとうございました」 「い、行くのか」 ペンギンは行ってしまった。 「来栖がノーパンの子を口説いている」 「ちげぇよ!」 そういえば、下半身に何も身に着けていないペンギンだったが、 美術を心目指す者は露出度が高いんだろうか? 「ほれ、紙袋。 花柄だけどいいかしらって英が」 「さんきゅ!」 上品な百貨店の紙袋に角を入れた。 なぜか恥ずかしさから開放された気分だ。 何も、恥じることは無いんだ。 思い出が詰まった角が取れただけ。 先ほどまでウンザリしていた自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。 「おつかれ、角!」 「く、来栖?」 春の柔らかな夕日が廊下に差込馬鹿二人の影を長く伸ばした。
いったいどうしたんだ
海パンw 角持ち帰ってどうすんだろ?www
保存するんじゃね? ほんとに怖いわww
そうか、やっぱり角落ちるのか
飾りのついた「デコツノ」を妄想した。
塚本の落ちた角 ↓ デコってきらきら装飾 ↓ 付け角 こんな妄想が瞬時に! 付け角って新しくね?
塚本違った、来栖だった デコ付け角つけた塚本妄想してたもんで間違えた
鎌田「つけ触覚は!?」
つけ触角はゴキっぽくなるからw
>>53 即席なんちゃってユニコーンか(白くないけど)
カマキリって分類の方法によってはGと同じ枠に入るんだってね
ユニコーンは鹿やトナカイと違う形の角だから 犀とか一角の角もらわないとダメじゃね? あ、いやおしゃれグッズで馬系獣人用つけユニコーン角とかあるのかな
うわ、投下一杯来てて流れ早!! とにかくスレ起て
>>1 乙 テンプレ
>>2-6 &烏丸先輩も乙
>>58 闇夜の鎌田とGは区別出来ないの法則
>>60 塚本に一本角……ヤンキーでメンチ切ってくるユニコーンは見てみたいw
白馬の馬系美少女に付けてほしいな、ユニコみたいなチビっこい角をちょこんと
馬系獣人の定番アクセみたいな位置づけで存在してそう
美少女馬獣人+角は大いにありだと思うけど 塚本+角は想像してみたらただの中二病にしか見えないww
宣伝おつ〜 このスレ避難所とかないもんね そこらにじりじりしてる規制されっ子がいそうだ
向こうに立てさせて貰ったら?向こうでももふもふな話が出来たら嬉しい
話ぶった切って申し訳ないんだけど、バレンタインは割と盛り上がったのに ホワイトデーは全然話すら上がらなかったような気がするんだぜ! というかもう1ヶ月経つのか、早ええ。
おう全然立てていいぜ スレ単位の避難所もどんとこいなのにどこのスレも立てずに困ってたんだ 先陣きってもらえれば他のスレも立てやすくなって助かる
ホワイトデー… あいつらちゃんとお返ししたんかな
チョコにまみれた猛を思い浮かべた。 コワモテがお菓子作ってると萌える
ヨハンと康太はホワイトデーどうしてるんだろうな 康太は貰う数はそこまで多くないだろうが、 ヨハンは貰ったもの全てに同額ぐらいのクッキー返してたら破産しそうだ
>同額ぐらいのクッキー返してたら破産しそうだ きっと愛でカバーしているに違いない!
愛の手作りだな!
そういや音楽教師だったなヨハン なんか忘れがち
ふと、職員室内の席ってどうなってるんだろうと思った。 やっぱ科目ごとに並んでるのかな 社会科のグループが、マーシャ、いのりん、獅子宮、伯爵って ここだけすっげー異様な空気流れてそう
75 :
創る名無しに見る名無し :2009/03/16(月) 21:23:11 ID:D6W9GdJr
マーシャ(おかんの眼差し)→いのりん(父親の眼差し)→獅子宮(ひたすらいじる)→伯爵(ヒギィッ!!) うん、全てはマーシャといのりんに任せて問題ない
伯爵(小言を言う)→獅子宮(不貞腐れる)→いのりん(困る)→マーシャ(別のことを考えている)→
>>75 これでよし
セルフ抱き枕だと!?
大っ! かわゆい
ヨwwwハwwwンwww でもちょっとモフってみたい気もするw
、 ヽ |ヽ ト、 ト、 ト、 、.`、 /|l. l. | |l l | | l |l.| |l. l /' j/ ノ|ル'/レ〃j/l | -‐7" ヾー---┐|_.j  ̄ ./゙ニ,ニF、'' l _ヽ :: ,.,. |ヽ 」9L.` K }.| l' """ l ) / h、,.ヘ. レ'/ レ′ r.二二.) / ≡≡ ,イ . / ! \ / ├、 ::::::` ̄´ / !ハ.
おまけが本編w
乙ですー
これは普通に売ってそうだなww見つけたら買っちゃうわ
これなら5個買って人に贈るwwwww
この二人って誰だっけ。 遺伝子的に子供の出来ない子ら?
只今個人的にキャラ棚卸し中(笑)
これから暖かくなると、もふ尻尾枕よりも爬虫類のひんやり尻尾の方が良い
かもしれませんね(尻尾様に“円錐形”に編んだ竹夫人とか)。
>>89 マンクスの兄妹です。 無尾なので、それがふたりの絆だとしても、やはり
ちょっとコンプレックスも有るのかなとか思ったりも。 実は以前の『尻尾
エクステ』の時に描き逃したので、今回描いてみました。
アングルがやべぇ! 太ももがー太ももがー
美希奈姉さん!見えそで見えない!
お姉ちゃん美人だよぉ ちょっとまて、新しいハイヒールを履こうとしているということは、すぐ近くに脱ぎたてが・・・
>>94 _、_
.(;^ω^)\
| \ / \√|
( ヽ√| ` ̄
ノ>ノ  ̄
レレ ((
アニメ化だと!! やべぇ、ときめいた
バックライト増築した初代とはまた通なものを
空が映り込んでるんじゃないかな
深夜十二時まで帰れない呪いww なまらガタガタww
深夜十二時まで残業の呪いは酷いです。怖すぎます
共食いwww
前髪目かくれとはなんというギャルゲ主人公
康太が野郎とツーショットなんてかなりレアだよな と言うか康太のようなフラグゲッターに男友達がいるのが奇跡
よくよく考えてみたら惣一もハーレム状態な件について。
卓もハーレムか。 まったく、この教室にはエロゲ主人公が三人もいるんだぜ
まったくなんつー教室だ
>>110 厳密に言えば卓はハーレムとは違うかと。
関わりのある女性は今の所、朱美だけのようだし。
対する惣一はと言うと、空子に鈴鹿、そして女子プロレス部員数名と言う陣容!
けど、全員、惣一よりも背が高いw
あんまりハーレムハーレム言ってるとモテない男子生徒男子教員から 袋叩きに遭うぞ!背後に気をつけろ!
ハーレムっていうとニューヨークの黒人街を思い出す
「ねえ、ハーレムってなんでしょうね?狗音さん」 「ふふ、わたしたちには分らない世界ってあるものですよ、御琴さん」 「そうですね。わたしたちはわたしたちで永遠の世界に耽るのですね」 「そういうこと。あむ…」 「くすぐったいですわ…」 甘噛み同好会の会室からこんな声が漏れてくる、春の日差しの暖かい午後のいち風景。
>>116 物凄く欲しそうにしてる牛沢先生に萌えたw
Wスウォッシュロゴがカッコいい!! しかし現実に中国製品でありそうなメーカー名だw かわいいよ花沢先生かわいいよ、ガラスに鼻べったりでトランペットに憧れる黒人少年状態w
日本読みだと「マイキ」、ロゴは「ニャオッシュ・ライン」(笑) 花子先生はマイケだけど、伊織先輩は「ミズノ・ランバード」のユーザーだろうなと。
女子プロレス部、虎宮山姉妹のリングシューズはオニツカタイガーですね…って 直球すぎる、ヒネりがたんねー こういうダジャレ好きな人助言よろ とりあえず「PUMA」は「KUMA」でいけそうだww
INUQRO
>>120 鈴鹿「私だってオシャレくらいしたいんだ……だから、リングシューズじゃなくて流行りのパンプスを履きたいんだ」
>>91 つい書いてしまいました。
まだお姉さんのイベント発生させてませんでしたし
毎日顔をあわせているので、何かイベントを起こさないと好感度が大きく上がらないのが難点のキャラです
>>104 ども、雅人思ったとおりで驚きました。メタボックマ
>>105 それじゃあギャルゲの主人公じゃなくてエロゲの主人公じゃないか!スクイズEDはイヤ!
かくなる上は左目だけ髪で隠れないようにしてイヤホン常時装備させてワイルドに目覚めさせればスクイズEDは避けられるだろうか
「ふぅ……」 両脇に抱えた紙袋をベンチに下ろして、俺は小さく息を吐いた。日曜日の昼下がり、真上から差す日光は、春先の暖かさで降り注いでくる。 荷物を持ってうろちょろしたせいで、少し暑いぐらいだった。 デパートの屋上には子供向けの遊具が並んでいて、家族連れで賑わっていた。小さな子供とその両親ぐらいで、若い人はほとんど居ない。 買い物帰りに屋上まで足を伸ばす人は、案外少ないのかもしれない。 3月にもなれば、流石に少し汗をかいてしまう。顎から汗の一滴が、ぽたりと床に落ち、すぐに蒸発した。 ああ、なるほど。コンクリートの屋上の照り返しが暑かったのか。夏に来たらどんな惨状になっているのだろう。お子様たちは熱中症にならないのだろうか。 100円入れると音楽を流しながら動く、あの動物の乗り物(正式名称は知らない。と言うか知ってる人はいるのだろうか)に乗ってはしゃいでいる子供たちを見ながら、ぼんやり考える。 夏場の練習でも、伊織さんが口うるさく『水分摂取は大事だぞ』とか『喉が渇いたと思ったら、すぐに飲み物を飲め』とか注意してくれる。 こういう場所にぽつんと座っていると、どうもくだらない考え事に耽ってしまう。別に悪い事じゃないのだろうが、今回は裏目に出てしまう。 俺の背後から、足音を忍ばせて近寄る白い影に気付く事が出来なかった。 首筋に冷たい物体をぴとりとくっ付けられて、ようやく俺は反応をしめした。 「ひゃっ!?」 「フフ、おまたせ康太」 俺が奇声を上げて飛び跳ねると、後ろからはイタズラっぽい笑い声が聞こえる。 慌てて振り向くと、ジュースの缶を手に持った白い狼、つまりは俺の姉さんが、笑顔を浮かべていた。 「あー、ビックリした。姉さんもイタズラ好きだよね」 「生まれつきなのよ。割り切って付き合いなさい」 そう話しながらジュースを俺に手渡し、姉さんは俺の横に座る。姉さんは大人っぽくて要領の良い狼だけど、どうにも茶目っ気が強い。 受け取ったジュースを飲みながら、非難がましい視線を向けるが、姉さんはおかしそうに笑うだけだ。 「まあいいか。ジュースありがとう」 「気にしなくていいのよ。今日は随分引きずり回しちゃったもの」 「あはは、本当に随分引きずり回されたよ」 心の底からそう呟く。この近くのデパートやブティックを梯子して、散々洋服を見て試着して、結局買わない、別の店に行こう、と言う寸止めを何度もやらかされて。 今日買ったものと言えば、姉さんが一目見て購入を決めたハイヒールと、春物の薄手の服に、舞へのお土産にデパ地下で買ったお菓子ぐらいだ。 買いもしない服を眺めて過ごすと言うのは、俺のようなファッションに興味も無い男には、丸っきり分かりそうに無い。 「今日は私の買い物だけで、康太は少し詰まらなかったかしら? 康太と二人で出かけるの久しぶりだったから、少しはしゃいじゃったわ」 「気にしなくていいよ。それなりに楽しんだし。姉さんと出かけるの楽しいからさ。 さ、そろそろ昼飯喰いに行こうよ。俺は外食って言ったらラーメンばっかりだし、姉さんの教えてくれる店って楽しみだよ」 ジュースの残りをぐびっと飲み干すと、紙袋を抱えなおして立ち上がり、片手を差し出す。 姉さんは飲みかけのジュースを持ったまま、もう片方の手で俺の手を掴んで立ち上がった。 「ありがとう。康太のそういう優しいところ好きだわ」
「煽ててどうするつもり?」 「このジュース飲んで。新発売だったから買ったけど、あまり好きじゃなかったの」 階段へ向かって歩きながら、俺へと飲みかけのジュースを差し出してくる。 うーん、飲みかけ。嫌じゃないけど、と少し困りながら俺は頭を掻いた。 何となく、姉さんは舞と違って、家族と言う感覚と一緒に、異性を感じさせるから困る。 間接キスとか、そういうくだらない事をどうしても気にしてしまう。舞が相手ならこういう悩みもないんだけど。俺は逃げるように答える。 「俺もこれはあんまり好きじゃないからいいよ。 階段降りて近くの自販機の所にゴミ箱あるし、そこに捨てちゃおう」 「やっぱり私の飲みかけじゃ嫌?」 「違うって」 「フフフ、やっぱり可愛い。お父さんがお母さんと結婚して良かったわ。 じゃなきゃこんな弟とも会えなかったんだから」 「ね、姉さんっ!」 姉さんは俺の腕に、白い毛皮に覆われた綺麗な腕を絡ませる。 毛皮の色と同じ、白い服は清潔感が溢れていて似合っている。こうやって密着すると、やっぱり姉さんは綺麗だ。 こんな風に腕を組んで歩いて、すれ違う人にどう見えるかとても不安にもなるが、うーん……、やっぱり姉さんには勝てない。 腕を組んだまま階段を降りて、デパートの窓際に良くある、自販機と横長の椅子が並んだ場所へと出た。 姉さんから受け取ったジュースの缶をゴミ箱に投げ捨て、近くのエレベーターへ向かおうとする。 だが、姉さんが立ち止まって俺を引きとめた。どうしたのかと視線を向けると、窓際の椅子に座り込み、俺に手を差し出していた。厳密には、俺が小脇に抱える紙袋に向けている。 「デパートから出る前にハイヒール履いてみようと思うの。 気に入っちゃったし、折角康太と二人でランチなんだから、お洒落しないとね?」 「家族で食事なんて、そんなお洒落して行くものなの?」 「だから、康太と二人での食事だからよ。未来の滑り止めになるかも知れない人なんだから」 「そういう冗談はよしてって……」 俺は肩を落として見せながら、ハイヒールの箱の入った紙袋を姉さんに渡した。 姉さんはどうにも要領が良くて、俺はいつもあしらわれると言うか、手玉に取られてばかりだ。 やはり俺より4つも上の姉なのだ。俺より2枚も3枚も上手なのは仕方ない事かも知れない。 姉さんは俺から紙袋を受け取ると、箱を取り出して蓋を開ける。姉さんが取り出したのは、桜を連想させる淡いピンクのハイヒールだ。 元から履いていたハイヒールを脱いで地面に置き、新しいハイヒールを片方ずつ履く。 椅子に座ったまま脚を前方に突き出し、白い毛皮と桃色のハイヒールの映える様を見ている様子は、珍しく子供っぽくて、少し可愛かった。 「やっぱ似合ってるなー。今度は俺の服を選んでよ」 「任せなさいよ。康太のお小遣いで買える範囲で、似合いそうなの選んであげる」 上機嫌に微笑んで立ち上がると、姉さんが俺の手を握って、エレベーターの方へ引っ張っていく。 何でも、昼飯は姉さんがよく行く、ケーキの美味しい喫茶店へ連れて行ってくれるそうだ。 エレベーターに乗り込むと、珍しく途中で止まる事無く、最上階から1階まで、ノンストップだった。 徐々に近くなってくる街の景色を、エレベーターの窓から二人して眺め、小さく笑いあう。 今日は結構疲れたが、姉さんも楽しそうで何よりだ。デパートを出ると、春の心地良い日の光が眩しかった。 終
短いですが以上ですー
乙です。 康太め!www
おいそこ代われやギャルゲ主人公!
ギャルゲ→エロ無し、ハーレム エロゲ→エロ有り、ハーレム つまりR-18かどうかなだけであって大差無いという事なんじゃ!!? な、なんだってー>ΩΩΩ
>>125 > かくなる上は左目だけ髪で隠れないようにしてイヤホン常時装備させてワイルドに目覚めさせればスクイズEDは避けられるだろうか
6股も可能になるが死亡フラグがビンビンだぞ
nice boat.
出会う娘出会う娘とフラグ立てまくるが死ななかった主人公の小説を見たことあるな 主人公が死なない代わりに女の子が逝きまくるんだが
帆崎せんせで短いものを。
「おーい、おやじ居るか?」 「居らん!」 蕗の森に構える古書店『尻尾堂』に現れた古文教師・帆崎尚武の声を聞くなり、店主のおやじは即答した。 帆崎は自宅の如くためらい無く奥に進み、一人通れるかどうか分らない山積みにされた古書を掻き分けると、 本棚に挟まれた店舗隅の椅子にどっかと座り、イヌハッカのタバコをのらりくらりとふかすおやじが埋没していた。 帆崎の飽きれ顔は親父には届かない。体中の毛並みが埃で煤けることを帆崎は気にする一方、 おやじは煙のために自分の時間を費やすことに熱心であった。あえて、帆崎の顔を見ずにおやじはセリフを吐き捨てる。 「誰だ。おまえ」 「ふう、帆崎だよ。帆崎尚武。古いお得意様を忘れるほどボケちまったのか?」 「三十路のハナタレが何をぬかす。この間まで売り物の本に座って万葉集を読んでただろ」 「それ、高校生のときの話だって。ったく」 「もうすぐ大事なお客が来るんだ。わしの邪魔をするとただじゃおかんぞ」 おやじは不機嫌そうに尻尾を本棚に叩きつけて、埃をあたり中に散らしている。 自分が小さい頃から変わらないと、安心するやら呆れるやら、と帆崎はおもむろにおやじに相談を持ちかける。 「おやじ、聞いてくれるか?ウチのさあ…」 「自慢話は聞き飽きた。ルルのことか?」 おやじは耳を帆崎の方に回した。興味はもちろんルルにだけだが、帆崎は気付かない。 あたりにネコを惑わす魅惑の香りだけがふわりと残った。まるで、その部分を世間さまから除け者にされたように。 足で床をゆっくり叩き、頭を抱えながら帆崎は話しを切り出すが。 「そりゃ、尚武が悪い」 「何も言ってないって。まずは俺の話から聞いてくれよ」 「知らん!」 おやじの一蹴にも負けず、帆崎はことの顛末を話す。
帆崎の話しはこうだ。 ルルがいつものように帆崎の毛繕いをしようと、ブラシを持って帆崎の後ろに座った時のこと、 くんくんと鼻を利かせるうさぎのような姿のルルがいた。いつもならそのようなことはけっしてしないのだが、 当然の如くその様子を帆崎が不審に思い、つい「何か付いているのか?」と帆崎は尋ねる。と、 こめかみに青筋を立てながら「せんせ。わたしのシャンプー使ったでしょ?」とルルは低い声で切り替えしてきた。 「最近、わたしの使ってるシャンプーの減りが早いと思ったら、せんせがわたしのシャンプーで体を洗ってるんでしょ? だって、せんせからわたしの髪の匂いと同じ匂いがした!どうしてせんせは自分の『ネコ用ボディシャンプー』使わないの?」 と、帆崎の耳に指を入れてくるくると回しながら、ルルは甘い香りをあたりに振りまく。 このとき、帆崎にはルルの持っているブラシが、何もかも無慈悲に突き刺す鋼鉄の武器に見えたという。 ルルの背後にのびる影にはかつて絵巻物で見たような、顔の赤い鬼の角が生えていたという。 はっきり言って、帆崎はただ間違えてルルのシャンプーを使っただけだ。しかも、今回限り、即ち初犯である。 ルルのシャンプーの急激な減りのことと、今回の事件の因果関係はない。と、断言したい帆崎は四面楚歌。 ルルの気迫に押されて論理的な釈明をすることが出来なかった帆崎はこのとき「理論など、感情の前では非力に近い」と悟ったのだった。 「タダでこのシャンプーを使わせるほど、わたしは甘くはありません。甘いのはわたしのシャンプーの香りだけで結構です。 わたしはこれから市場に買い物に行って来ますので、貴方はわたしが帰ってくるまでになんとかするように。これはせんせへの宿題です」 「ル、ルル…」 「宿題を忘れた生徒は…分ってるでしょうね?」 いつもよりも大きな音で扉を閉めたルルを見送ると、帆崎は尻尾堂までのこのこやって来たと言うのだ。 ルルが戻ってくるまでに何かいい智恵でも、と尻尾堂までやって来たのだがおやじはどこ吹く風。 「おれは知らん。ルルの勝手にさせろ」 尻尾堂のおやじは否定も肯定もしない。かえって、帆崎を悩ませる答えだが、第三者的には納得のいく答えであった。
オスネコ二人が色気のない話をしている中へ、一人の女のネコがやって来た。 コート姿でコツコツとブーツを鳴らし、尻尾を揺らすシルエットからして、大人のネコだと分る。 年の頃は帆崎よりかやや年上、それでも少女のような目の輝きで多少若く見える彼女。 「あのー。頼んでおいた本、入りましたか?」 「おお。待っとったぞ、確かここに…あったあった!」 おやじは先程までのどんよりとした毛並みとはうって変わって、初恋に恋焦がれる若いネコのように目を輝かせた。 持ち出した一冊の本を彼女に渡すと、おやじの饒舌さが加速する。 「いいかい、お嬢ちゃん。この本は宇宙でたった一冊しかないんだ。お嬢ちゃんのために、わしが手に入れてきたんじゃから大切にしてくれよ。 まあ、お嬢ちゃんならきっと大丈夫じゃろう。わしの目に狂いはない、お嬢ちゃんもそう思うじゃろ」 「は…はい、後生大切にします。ありがとうございます!」 「はは、わしもこの本みたいにお嬢ちゃんに大事にされたいのう」 おやじのどうでもいい言葉に彼女はニコリと返している。帆崎はと言うと、その真逆であった。 彼女はおやじから手渡された古い表紙の本をぎゅっと握り締め、らんらんと笑顔を振り見た。 彼女が家路に着こうと踵を返したとき、おやじは別れを惜しむかのようにぽんと手を鳴らす。 「ええと、お嬢ちゃんの名前は…」 「時計川です!」 「おお、下の名前じゃよ」 「ミミです!時計川ミミ」 「そうじゃった、覚えとおくよ。また、何かあったらウチにおいで。ミミさん」 時計川ミミは「またいつか」と、お辞儀をして去っていった。 その一部始終を見ていた帆崎は苦虫をかみ締めたような顔して、おやじに文句を垂らしている。
「何故、名前を聞く」 「……」 「黙るな!」 「お前もルルにこのくらいの愛想を振ったらどうだ。だから、ああいう疑いをかけられるんだ。 女はな、男の気前よさ一つで輝いたり不貞腐れたりするんだぞ。このくらい分っとけ、このあまちゃん三十路が。 もっとも、今回の件はお前の負けのようだが…違うか?早く、ルルのシャンプーでも買ってこんか」 何も言い返せない帆崎の惨めさったら、ルルが見たら間違えなく笑いものにするだろう。 煙の輪を部屋に飛ばしながら、おやじは面倒くさそうに帽子を被りなおした。 「ルルは生きとし生ける全てのケモノから、ネコを選んだんだぞ。尚武はこれを誇りに思え」 「ネコねえ…いいかなあ?」 インチキ臭そうなおやじの姿は見慣れているのだが、きょうは特にインチキ臭く見えてしょうがない。 もっとも、帆崎が同じ言葉を教壇で言ってみたとしても、子ネコちゃんたちの子守唄になってしまうだろう。 おやじがふかすタバコの煙と、帆崎から香るシャンプーの甘い香りが尻尾堂の立ち読み客となってはや30分。 帆崎の携帯がわめき出す。送り主はルル。しぶしぶその文を確かめると、帆崎は呆れてニヤリと笑った。 「こんなことでメールするなんて、ルルはしょうもないヤツだな」 「しょうもないと思うなら、すぐに帰ってやれ。そう思わないならおれの相手をもう少しろ」 無論、帆崎は尻尾堂から去ることにした。おやじの世話なんかまっぴらだ、と言わずとも帆崎の声が聞こえる。 おやじの言うことはイヌハッカのタバコと同じ、惑わされていると気付くか気が付かないうちにじわじわと効いてくる。 だが、気付いたときには振り返ることさえ、面倒くさくなるのだ。帆崎もそれは十分承知。 埃まみれの店からはおやじのかすれた声が聞こえる。 「尚武、二度と来んなよ」 「また来るからな、おやじ」 帆崎は外のまだ明るい蕗の森を歩き、自宅のマンションに向かう。 何時になく帆崎は尻尾が重く感じた。 おしまい。
春物の準備しないと…。おしまいです
良い香りのザッキーww
二人の関係が既に甘いぜちくしょう
シャンプー同じの買ってこいよw
甘ああああああああああああい!!!
ボトルテラプリティーwww
なんてかわいらしいw
そしてやっとPCに触れる環境になれたんで
>>100 をやっと見れたよ
携帯じゃ見れなかったんだー
新任いじめひでぇww
これがケモ学教師の洗礼かw
猫用シャンプー見て思ったんだが、この世界って 服も日用品もいろいろ種類が必要で地味に大変そうだよね 大分し難いマイナー種族の皆さんとか苦労してそう。朱美とか
人間男達は皆飛行系の子達と関係があるのか しかしあれだな。こう並ぶと惣一ちゃんの身長の低さが(ry
ケモノ用シャンプーと人間用を風呂場で取り違える悲劇もままありそうw
胸がけしからんのう ケモ用でもふこふこ用とかつやつや用とかいろんな種類があるんだろうなー
>>152 シャンプーの間違いでルルとザッキーがまた痴話喧嘩してるの想像してふいた
もちろん甘い香りを漂わせながらね
夏目兄妹(あれ?姉弟だっけ?)はアクロンとかモノゲンとかでふんわり 仕上げちゃうんだろうかと思いましたよ。
毛糸洗いに自信のある洗剤ですね
毛皮+頭髪ありで容姿に気使ってるヨハンなんかきっと シャワーがめっさ長い
モフモフしてる梟な佐藤先生も朝は忙しそうだ
仕事中にニュー速で試合経過を眺めてた俺は さっき社長にバレたので何らかの懲罰が下るのは確実
ちょっw いろいろと乙w
>>163 そうか、梟は大体夜行性だから朝が弱いのも当然だよな。
それにしても佐藤先生のもふもふ感は異常
セクシーすぐる もふセクシー 気怠げもふセクシー
夜行性は確かに朝がきつそうだなw
168 :
代理投下 :2009/03/25(水) 22:47:02 ID:ltSyO6VG
まさかの24時間営業。 夜間定時制もありそうなケモ学園〜
目が隠しきれてないww
鎌田かわいいw
鎌田はボンボン派かっ! 通だな
>>170 おお、浅川くん。次回はいつ佳望学園にやってくるんだろう。愛車が気になりますな。
このメンバー、それぞれ個性的な単車乗りなんだろうな。
>>175 タイガー兄弟いいなあ。末っ子は手乗りタイガーか?
>>170 愛車がZIIにラビット(&ポケバイ)にV-MAXとな、皆個性強いな〜、でもよく似合ってる
浅川くんは某バイク屋つながりでスズキ系とか(ちょっと内輪受け入ってます)
BMWのR80みたいな見た目古くてゴツいヤツをフツーに乗ってるのが似合いそう
鹿馬ロ改め、+1してガラワリー'sとか 右端のジーニアスが意味不明でワラタ
>>174 下の話はアバンギャルドすぐるw ヨハン先生はやっぱり皆の期待を裏切らないwww
>>175 ヤ○ザキのロールちゃん? あ、サクサクぱ◯だでしたかw
虎兄妹、昨晩描いていて投稿用に縮小したところで間違えて上書き保存してしまい、 心折れたまま仕上げて投稿。自棄酒呑んで寝て起きて会社に来て見返してみたら、な んだかアメコミみたいですね(笑) せりふ縦書きなのに、不思議。 末っ子はまだ就学前だけど、兄達はケモ学の初等部に居るはず。 ライダーズは、川崎に富士重に川崎にヤマハ。こうしてみると本田鈴木が無いのかぁ。 ライダー扱いされたのに鎌田がライダーズに入ってない(笑)この学校、免許所得は 禁止されてないのかな? あぁ、そうか、夜学が有るとバイク通学禁止するのが面倒になるってのもあって、 「生徒の自主性に委ねる」になるか。 資料集めてるけど、一寸前のバイクって探すの案外大変ですね。 エストレアは現 行だからカタログ貰えるけど、V-MAXは新型が出ちゃったからなぁ。 モノゲン(モノゲンユニ)って、ピンクで羊の図柄の一斗缶に入ってなかったっけ? 実は、昔有った「ライポン」って台所洗剤とライオンの駄洒落画を描こうと思って 挫折しました。
レオポン?
印南の大好物
>>178 ちょっと前の型番の車種は中古車サイト(GooBIKEとか)にありますね。
サンせんせの「富士重」は個性的すぐるなあw
尻尾をなびかせながら走るライダーズを思い浮かべたら、なんかかっちょいい。
すげー! バイクうめー! メットかわえー
>あの線の細さが映えるバイクって・・・・・自転車とか? 自分でカスタムした「仮○ライダー自転車」に乗って失疾走る鎌田を想像した。
獅子宮せんせはラッキーストライクあたりを吸ってそう。ネーミング的に。
雪だ。 彼女が呟いた。読んでいた本から顔を上げると、窓際にいた彼女と目が合った。 その後ろで、街灯の明かりを帯びて、淡くおぼろに光りながら牡丹雪が舞っていた。 もう一度雪だよ、と今度は私に言う。 こっちに来てと笑いながら、手招きをする。 その様が、猫である彼女に映えていた。 「初雪だな。今年は暖冬だったからか、ずいぶんと遅い初雪になってしまったな」 「ねぇ、積もったら明日雪合戦しよう」 「ぬう、牡丹雪だからつもりはせんだろう。それにせっかくの休暇を徒労に終わらせたくはない」 「なによ、けちんぼ。妻のお願いを聞いてあげるのが夫の役目でしょ」 「お前は猫なのだから、炬燵で丸くなっていれば万事解決だのに」 雪がすべての音を吸い取ってしまったのだろうか。 殆ど何の音もしない。ただ、時計の音だけが部屋の中に染み込んでいく。 ふと、もう寝ただろうかと思い横を見やると、こちらを見つめる彼女と目が合った。 「ねぇ、そっち行っていい?」 「ん」 もぞもぞと芋虫のように動きながら、腕の中に納まる。 「へへ、あったかい。 そう言いながら喉をゴロゴロと鳴らし、両手を揉むように動かす。 そしてそのまま眠りに落ちてしまった。ろくに体を動かすこともできない。 幸せそうな彼女の寝顔を見つめながら、私はふうとため息をついた。 今夜も眠れない、長い夜になりそうだ。 時期的にギリギリセーフ? ちょっと前の月桂冠のCMの夫婦みたいなシチュが好きです。
久々の無印SSだ!
猫妻かわいいよ猫妻
新しくページ作って編集しようとすると、何故かログアウト状態になってしまう… すっごい手間だぜちくしょー
気持ちよさそ〜う
バイクの事はさっぱり分からんちんちんだが 清々しい絵だ
せんせー、かわええ! ラビットはポップな雰囲気があるから、ケモ学女子部にも似合いそうだなあ。 チャリ通派は泊瀬谷せんせ、いのりん、ヒカル君他なのかな…。
山野「徒歩!」
すごっ!
>>199 何か物凄くギュンギュンきているんだが上手く言葉にできない。
>>199 浅川くんの不器用さがいいな。
そんな奴を応援したくなる
こまけーかっけーー
獅子宮先生は前に書いてもらったでしょう
かっけえ!
今日はエイプリルフール!エイプリルフーーーール!!
>>210 え?朝イチでサン先生から「今年は中止になった」って連絡が来たけど…?
嘘だッッ!!!! というのも嘘なのか、いや、それも嘘なのか、落ち着けこれは誰かの陰謀なんだ!
サンスーシ「僕は嘘しか言わないよ」
前に絶望先生とかであったよね。普段嘘吐かない人がエイプリルフールに急に嘘を吐く 結果皆が信じてしまい大騒動に いのりん「仕事にかまけて家族との時間が全然とれなかったんです。 自分も精一杯で子供たちの気持ちも妻の気持ちも分からなくて。 娘の涙で気付かされました。僕は、やはり教師には向いていません。 これからは、もっと子供たちや家内と一緒に過ごそうと思ってます。 もう未練はないと言えば嘘になりますが、教師は辞めて、家内と一緒に実家の食堂を継ぎます」 演技指導:サン先生
ぎゃああぁー!! なんだこのかわいい生物はわわわわ
あーもーかわいい!
サン先生!サン先生!
いまさらだがルパンスレでサン先生が活躍してて吹いた
丁度1スレ目の最後の方と2スレ目の最初で戦ってるぜ
あのスレはわざとキャラ変えてるから このスレのサン先生とは性格違うけどね サン先生どころかケモ学学園長までいるぜw
ちょっと分からないんでkwsk
この板をルパンで検索 創発板中のいろんなスレのキャラが戦うトーナメントを書いてる人がいるんだ
▼・ェ・▼
=荒らし注意報発令= へんな人が沸いても無視すべし
ルパントーナメントをしらないのは勿体ない サン先生かっこいいよ
ケモ学のほのぼの気分で見に行ったら面食らった
一試合目はまだサン先生らしかったんだけどなw
内心ビックリするって事はまさか既に……
トイレ、広っ!
>>232 嘘と関係なく1コマ目でなあにいいぃっ!!?ってなったw
…まあ、そりゃそうか。2人ともいい大人だしな。
なんてナマナマしい四月馬鹿w つーか塚もっちゃんリアル馬鹿www
そんな・・・事後・・・だと・・・!?
バカなっ! ザッキーの何処にそんな甲斐性が!
に、妊娠!?
どこの時差だよw
尻尾ふりふり〜 そういえばこの前国道沿いにでっかい鯛焼き専門店をみた あんな一等地にでかい店舗で鯛焼きオンリーってやっていけんのだろか
ふと、鯛焼きを解剖する白倉先生を思い浮かべた
>>242 なんて愛らしい先生なんだッ!
オスなのに…
その鯛焼きの中のひとつが激辛ハバネロカレー入りだったら と想像する私は悪い子だろうか しかも最後の2個まで当たらずに他の人に食べきれないからあげる とかするんだろうなーという場面を想像してしまった
実はジンギスカンキャラメル入り
不味いわ銀歯取れるわ大惨事
食べさせられるのは、ドラキュラ先生?
激辛ハバネロカレー鯛焼きを考案するサン先生 ↓ 白倉先生が巧みなメスさばきで、健全な鯛焼きにジンギスカンキャラメルを移植 ↓ サン先生が職員に配る ↓ いのりん先生がハバネロ鯛焼きに当たる(メタボに効くと誤魔化しながら汗だくで悶える) ↓ 安心した伯爵が、手元の鯛焼きを食べると、ジンギスカンキャラメルだった、ウボァ こんな電波を受信した
>移植 悪循環ってレベルじゃねーぞww
あの歯にキャラメルがくっついたら大変だろうな
激辛ハバネロカレー鯛焼きを考案するサン先生 ↓ 白倉先生が巧みなメスさばきで、健全な鯛焼きにジンギスカンキャラメルを移植 ↓ サン先生が職員に配る ↓ いのりん先生がハバネロ鯛焼きに当たる(メタボに効くと誤魔化しながら汗だくで悶える) ↓ ジンギスカンキャラメル鯛焼きに当たったのか獅子宮先生噴き出して咳き込む ↓ その様子を見て会心の笑みを浮べながらサン先生、一個余った鯛焼きをパクリ ↓ 実は獅子宮先生のは演技、サン先生が食べたのがジンギスカンキャラメル入りだったウボァ こんな策士策に敗れる的な電波を受信した
サン先生w
帆崎先生がやきそば鯛焼きを食べながらそんな二人を見て やきそばってハズレなのか当たりなのか悩んでいる光景を受信した
意外とうまそう焼きそば鯛焼き
餡子無しで入ってるならまだいけそうだが、そのまま餡子入りの 焼きそばなら相当きつそうだw
あんこ入りパスタ鯛焼き…だと…
トマトも入れるザマス
あんこ入りは危険><
つまり、頭は餡無しお尻は餡入りのを頭から食べて やっぱりハズレだった、しかも時間差 という感じで餡入りやきそばがくるのか
お、デジタル線画初めて?
264 :
(´゜゜) :2009/04/05(日) 00:58:47 ID:l3kgXiSZ
吸血鬼伝説、いまここにwww 一枚絵もすごいけど、マンガも良いッスね
ハバネロにタバスコはひどい><
もし、ハバネロじゃなくてジョロキアだったら…ゴクリ
267 :
創る名無しに見る名無し :2009/04/05(日) 10:22:31 ID:XGG8GsCX
落ちシュールwww
なんか伯爵かわいいなw
見てないで助けてやれよww
271 :
創る名無しに見る名無し :2009/04/06(月) 22:40:51 ID:5T7DXpp0
ぬこぽ
何その神速反応
ぬこぽ、ニャッってかわいいな
275 :
代理レス :2009/04/07(火) 00:04:01 ID:rBy2pisH
何この愛らしさ
にゃっ!?にゃっふう!!
ラブリー過ぎる!!!
280 :
創る名無しに見る名無し :2009/04/07(火) 03:39:05 ID:kX8H8gD8
か、かわいすぎる!!
>>277 タブを何度も切り替えてしまう呪いが掛かっている…
同じ呪いにかかったw
ファイル往復はデフォだろjk…
285 :
代理レス :2009/04/07(火) 12:37:43 ID:rBy2pisH
36 :名無しさん@避難中 :sage :2009/04/07(火) 10:36:40 ID:WRop31HE0 すみません、規制続行中代理書き込みお願いしますー。 本スレ288、283へ GIFアニメーションにしたら悶絶もんで、呪い悪化しました。
>>286 1スレ目のSSだっけ
懐かしいな
公開可ですよ〜
>>277 かわい
うま
――と、脳殺されてしまったところで
カード化スレの話です。
皆様のご協力のおかげで、セット内容もだんだん充実してきました。ありがとうございます。
今回は
>>286 の絵を使ってカードを作ったのですが、公開してもよろしいでしょうか?
>>288 ありがとうございます、帰ったらうpしますね。
リツ君を描いたときに(意図的に)お嬢様を描いてなかったんですけど、そろそろい
いかな、って思って。 あの世界ももう少し描いてみたいな、と。
>>289 どうぞー、お使いください。
すごく、web拍手の画像に使いたいです
縮小するとぽすっがぼきっに見えるなぁと言うことはともかくかわいい
お前のせいでもうぼきっにしか見えないじゃないか
えと、「ぽすっ」を元サイズのままで他を縮小したものに差し替えました。
これはデスクトップのすみっこで延々表示してたくなるwwww
ううぬ!クロっ、クロめ!いや、コレッタも…いやミケも…
>>286 ケモスレで初めて投下したSSだ。またあのキャラの絵が見れるとは、非常に感謝でございます!
トラップというより地雷なのは確か。 ていうか俺らにはこのスレあるじゃないか!SNSだって何もそのサイト じゃなくても済む話じゃないか!(mixiやpixivも他色々あるし)
一応、このまえ登録して見たんだよ 特に変わった様子はないし、管理もゆるそうだからそのままやっていくつもり
URLで検索すると獣人関係にマルポの形跡があるの
後このSNSの設定で忍び足モードっていうのがあって 相手の足跡に足を付けずに閲覧できるみたいだ
わざわざここに登録する意味がよくわからない
ヌコポ ル ポ
ニ ャ ガッ
310 :
創る名無しに見る名無し :2009/04/09(木) 14:37:26 ID:i5HB2Ina
ニ ャ ガッ ミスった・・・ニャガッってなんだよ畜生・・・
忍び足モードって余計タチ悪いような
ニガッ
黒猫かっ
ホモの巣なんだろ 登録する価値なし
ケモホモにはロクな奴が居ない
もういいよ、そういう話は別の場所に移動してくれ
びっくりした、スレを間違ったかと思った
なんか色気あるなw
生産中止かー 開発機だったYF-23は選ばれなかっただけで負債ガ残ったのに F-22は選ばれて配備されないとなるとどんだけ金が吹っ飛ぶのやら
>>322 YFとかつけるなよ。ゴーストに特攻したガルドを思い出しちゃうじゃないか
付けるなとは随分無理な注文だなw
ヌコかわええのぅ 狼さんは護衛になりそうだけど、ウサギさんは脱兎の如く逃げそうだw
肉体派熱血狼と頭脳派クールな兎が、些細なことで小競り合いになって喧嘩し 怒ったお嬢様にグーパンチを食らわされるところを想像した
>>328 かっこいいけどすごい絵面だな二枚目とか特に
低空飛行ってレベルじゃねえぞ
「おなかが、かゆーい、ずさー」
超高速で腹擦りながら飛ぶ鷹男か・・・
お腹が削れちゃいます><
とりあえず同意!
スパッツは正義!!!
>>328 >>336 惣一「なあ、白頭……白い車体に書かれてるって事はあれはハクトウワシなんだろうな?」
空子「まあ、言われてみればそうね……それで、ソウイチは何が言いたいわけ?」
惣一「いや、あのF1カーがさ。この前、購買の人気メニューを手に入れようとしたお前が、
購買の真ん前で転んでスライディングしている姿と被って見え――ってアイアンクローは止めくぁwせdrftgyふじこlp;」
ハハ^> ほんまに、おもろい人でんなぁ。いい記事書けそうどす。
>>338 の下を獣人化したとしたら、一体どういう状況になるんだろう?
とふと思ってしまったw
下じゃなくて上だ。
火を吹く…のか?
おお、なるほど! ここでハバネロたい焼きに繋がる……のか?
ほほうそんな複線が
そして火事が起こる
つながったw
ケツからファイヤー
根拠は無いが なぜかスカンクの獣人が頭をよぎった
対地速度が速すぎて靴ブレーキが炎上・・・と思ったけど靴履かないのか
尻尾が!尻尾がもふもふすぎるるるるるる
九尾!九尾! 割りと普通のイスなのに尻尾と服でもうなんかソファみたいになっとるw 本当は妖怪で、その証拠に尻尾が九尾あるのに、 「突然変異です。うちの近所に原発があるんです」 と言い張ってケモ学初等部入学して、巨乳の狐っ子と徒党を組むんですね!? 違うか?!
逆に考えるんだ 獣人がいるんだから九尾くらい珍しくない むしろ左利きくらいなものだと考えるんだ
某所でサン先生見つけたので 305 名前:創る名無しに見る名無し 投稿日:2009/04/12(日) 01:53:32 ID:/9tIvYSz .,.///.,, / ^ ^ \ (ノ (●)-(●)( ゝ い ” ▼ ”) \。, 人 ..,.. \
>>355 なんだこれwww
そういや絵師とSS師は結構いるけどAA職人はいないんだよなこのスレ
,.::::.、 丿 .....::::::::i ::::ヘ::::..,,,―' ゙゙゙̄<::/ i:::' ':::! / \:::' _人人人人人人人人_ ::i// '/レヽ/ i \ フ > ぶー! ぶー! < / /・\ l//・\ \  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ |  ̄ ̄ 。  ̄ ̄ | ノ (_人_) ミ 彡 \⌒、 | ミ  ゙゙゙̄―-. \_| / /⌒`γ´ハ_,,.イ´レ`ヽ、 /⌒ヽ、 〈r'^ヽi /^L_!ムイ_」^ヽ. .〉´ / i' \ / /' § !、_ !,イ__'⌒ヽ、ノ i _ / ./______ ノ、/、__ ⌒ヽノ ――――‐| ヽ_ノ∪. r|――――――――― (( | そーなのCAR.| ̄|..`'ー‐、 )) |_r−、____|_|_r−、__| ヽ_,ノ ヽ_,,ノ ,.::::.、 丿 .....::::::::i ::::ヘ::::..,,,―' ゙゙゙̄<::/ i:::' ':::! / \:::' _人人人人 ::i// '/レヽ/ i \ フ > ぶッ < / /・\● /・\ \  ̄^Y^Y^Y ̄ |  ̄ ̄ 。  ̄ ̄ | ビスッ! ノ (_人_) ミ 彡 \⌒、 | ミ  ゙゙゙̄―-. \_| /
姫系の盛り髪みたいに尻尾ウイッグを8本つけたギャルっ娘という結論に至った
どこか旅行に行きたいな、と思いつつ投下します。
旅は一人に限る。 こんな言葉を誰が言ったか知らないが、誰彼に気兼ねすることなく、自分の時間で自分の興味のあるところへ うろちょろと歩き回ることが出来るのは素晴らしい。羽を伸ばすという言葉がぴったり当てはまる一人旅は周りに人が居なければいないほど、 心地がよいものである。連れ立つ者の居ないという身軽さを言い換える言葉が見つからない。 「母さん、行ってくるから…日帰りだよ」 「リオ、何かあったら電話するんだよ。帰りは父さんが駅まで迎えに来るからね」 休みを利用して、ちょっとした旅行を企ててみた。荷物はそんなにいらない。着る物も余り気を使わなくていいかな。 普段愛用しているメタルフレームのメガネを早朝の陽に光らせながら、父の運転する車で駅に向かった。 旅の始まりはこの駅。見送りはここでいいよ、と駅入り口で別れて改札口へと歩道を鳴らす。 わたしの住む街から郊外電車に揺られておよそ3時間、穏やかな海が広がる片田舎の駅で電車を降り、まず目指すのは島への渡船場。 青い海と空に小島がポツリと浮かぶのが見え、線路沿いの岸にはのどかな漁村の風景が広がっている。 その海風の薫る町の一角に渡船場はあった。台風のひとつでも来たら吹き飛ばされそうな小屋と、ミシっと音を立てながら浮かぶ桟橋。 そしてクラス全員が乗ったら沈んでしまいそうな小さな船。恐らく島に向かうのはわたしだけ。 知らない世界に放り込まれたという、非日常的感覚に陥る自分の周りで広がる日常は淡々と過ぎてゆく。 小屋に掲げられた筆で描かれた看板は色あせても、自分の役目を果たそうとしていた。 『宇佐乃島へはこちら』その下の行には『注意・この島にはイ…は……ん』 文字は消えていていくら頑張っても読むことが出来ない。 小屋の窓口を覗き込むと、ウサギの老婆が舟を漕いでいる。 「高校生、一人…すいませーん」 ガラスの窓を軽く小突いて老婆を起すと、眠そうな目を擦りながら船の切符をわたしに捌いてくれた。
―――先日、学校で嫌なことがあった。 「委員長の因幡さんがしっかりしなきゃダメじゃない」 「そうだよ、因幡。しゃきっとしろ」 どこの誰かが当たり前の言葉でわたしを責める。 正しく正論だ、わたしがしっかりしなきゃいけないのだ。でも、ついつい弱音を吐いてしまい、 その隙を狙って見えもしないガラスの破片がわたしの胸にぐさりと突き刺さる。刺した本人たちは知らん顔を通している。 自分ひとり痛いのは耐えられない。ガラスのナイフを抜こうと握ると、自らの手を傷付けてしまった。 「そうね、校則は校則ですから!」 「因幡さんはそればっかりだ」 ケモノの中でも一際大きいわたしの耳は幾ら塞いで嫌な言葉を拾ってゆく。ウサギの耳が恨めしい。 真面目が真面目に損をする。よい子のウサギですいません。でも、悪い子にだってなってみたいんです。 学校に行くのをやめよっかなあ、と影から黒いウサギがささやく。でも、委員長だからそんなこと出来るわけが無い。 誰でもいいから(除く、ヨハン)弱音を聞いて欲しいと職員室にふらりと寄ると、地理を教えるクマの山野先生が話し相手になってくれた。 「旅に出なさい。一人旅に」 山野先生はリュックひとつでふらりと国内外問わず、旅に出かけるという行動派。 対して、わたし因幡リオは余り出かけることが無く、出かけるといったらコミケのイベントぐらいというインドア派。 いくら、旅に出ろといわれても手がかりが掴めないわたしに、山野先生は旅のことなら何でもと言わんばかりに、 とある島をわたしの旅行先に勧めてくれた。初めての一人旅は初めての大きな寄り道だ。 寄り道は誰にも内緒でするのが一番楽しい。家族と山野先生だけとの秘密だぞ。 行き先だけ決めて、時間も予定も決めていない『ゆるい』旅に、休みの日に行くことにした。 ―――その島は今、わたしの目の前に浮かんでいる。 内海なので穏やかな鏡のような海面を船は進む。船の客はわたし一人、ウサギの船長が慣れた手つきで舵を取り 目的の島の桟橋にゆっくりと船を着ける。船と桟橋の間で水音がしている。 「それじゃ、お昼2時にまた来るからな」 「はい、お願いします」 チケットを渡し、古びた桟橋を伝って島に上陸するも、未だ船の上のように揺れる感覚が続いていた。
歩いて周っても一周、数時間の小さな島。右手に鬱蒼と木の生い茂る丘、左手に申し訳程度に整備された浜辺、 わたしはまだまだ土を固めた舗装をされただけの細道を道なりに歩く。 なぜ、この島を山野先生が勧めたかはいずれ分ってくると思う。そう、山野先生は言っていた。 目的の無い旅なんだから、ここにたどり着くまでが目的のようなものだ。帰りの時間だけ気にして、何もかも忘れる。 潮の香りがよそ行きブーツを鳴らすわたしの鼻腔をくすぐる。短いわたしの髪がなびかれて口に入った。 しばらく歩くと、右手に広場が開けてきて、大きな何か古びた建物が姿を現す。 しかし、建物といってもそれは外郭だけ残した言わば『廃墟』だ。立ち入り禁止のバリケードが頑なに侵入者を拒んでいた。 「何かの工場なのかな…。真っ黒だ」 わたしの学校の校舎ほどの大きさのその建物は役目を終えて、ただそこに存在するということしか出来ない。 高くなったお日様と重なり、逆光となった建物がわたしのメガネに写っている。 「もっとおっきく掘れよ!」 「この間、大きいの掘ったじゃないか」 建物の向こう側で子供の声がしてきた。島の住人なのだろうか、急に興味が湧いてきたわたしは声の方へ走る。 そこでは小学生くらいのウサギたちが、地面に座り込んで穴を掘っていた。 丁度、腰を浮かせて正座した形になり、脚の間から後方に向けて両手で土を掻き出す姿は正しくケモノの本能。 茶色の子はざっざと穴を掘り、黒い子は鼻をひくひく鳴らせて見守っている。 白と茶色の子は穴掘りに飽きたのか、彼らが掘った穴に草を敷き詰めて入り込み、ごろ寝をしていた。 「あ、女の人だ」 「お姉さんだ」 「都会の人かな」 わたしに気付いた小学生ウサギ三人はそれぞれの行動をやめて、わたしに注目を浴びせる。 土だらけの手をぱんぱんっとはたくと、三人揃って前歯を見せて笑った。随分と興味深くわたしを見るんだな、 わたしなんかそんなに見つめてもしょうがない、ただのしがない『女子高生のウサギ』なのにな。 バッグをスカートの前にまわして、お辞儀をするとわたしを「都会っ子だあ!」と彼らは歓声を上げた。
「初めまして。この島に初めて来たんです」 「へえ、とりあえずようこそ。ここさ、何にもないでしょ」 茶色の子は土の付いた手で鼻を擦っていた。隣の黒い子は黙ってわたしを見つめていた。 白と黒の子は穴ぼこから起き出して、物珍しそうにわたしのスカートを見ている。 「やっぱ、都会っ子は違うね。ウチの島の女子とは大違いだ」 彼は何のことは無いただの古着を大層な持ち上げ方をする。モエやハルカの方がもっとお洒落なのだけどな、 とクラスのみんなを思い浮かべる。そう言えば、この島にはわたしを知るものは一人も居ない。 「ここって、ホントに…」 「うん。ウサギばっかだよ」 踵を返した茶色の子は再び穴を掘り始める。島が彼らに穴を掘るように仕向けているようにも見える。 彼らは穴ぼこだらけの地面を自慢げに見せてくれた。 「これ、ぼくが掘ったんだ」 「うそつけ、これはおれだよ!にんじん十万億本かけるか?」 「クロ太、見たよな!」 「……」 自分たちが掘った穴の自慢を始める三人の子供のウサギ。時の流れを止めたままのこの島はウサギ本来の姿がよく似合う。 都会ではまず聞けない会話を楽しんでいると、茶色の子はわたしに近づき、ウサギ穴の審査をわたしに委ねてきた。 「うーん…そうだな。あの穴がいいと思うよ」 バリケード近くの一番大きくて深い穴をわたしが指差すと、白と黒の子がガッツポーズを取った。 「ちくしょー!パン太郎のヤツが一番かよ!お姉ちゃん、ぼくの穴もすごいだろ!」 「すごいすごい」 茶色の子の頭を優しく撫でながら、三人と時間を共有。仲間に入ろうと、波の音が聞こえてきた。 そう言えば、弟のマオが公園の砂場でウサギ穴を掘っていたが、さすがに幼稚園に上がる前までのこと。 都会のウサギは小学生になったウサギがウサギ穴を掘ることはまずない。 「一番の穴を掘ったんだから、ぼくが一番偉いんだからね!!」 「うるせー!パン太郎のバカ!うんこ!」
「ちょっとー。男子たち、何やってんのよお」 背後から彼らと同い年位の声がする。振り向くと、二人の女の子ウサギがわたしと三人を遠くから見つめていた。 一人はグレー、もう一人はメガネの白の女の子。彼女らは髪の毛を揺らしながらこちらに走ってくる。 メガネの子は男子三人につっかかる。まるで、学校での自分を見ているようで恥ずかしい。 「六年にもなってまだ穴堀りしてるの?」 「立派な穴を掘れるヤツがすごいんだぞ。島の英雄になれるんだぞ」 「子供だ!まったく、男子ったら」 メガネの子はポンと足で地面を叩いた。それに歯向かうように、男子もポンと足で地面を叩く。 大人しそうにしていたグレーの女の子はわたしにぼそっと話しかける。 「あの…都会の人ですか…。このスカート、かわいい」 「そ、そう?たいしたものじゃないんだよねえ。お友達の方がもっとお洒落だし」 携帯の写メを子供たちに見せてあげると、またも歓声が沸き起こる。 彼らは本物の携帯を見たことがないらしい。 「あー、イヌの女の人だ!美人だ!」 「リボンのネコの人のブラウス、いいなあ。かわいい」 この島で生まれ育った子供たちは今まで、ウサギ以外の人たちに会ったことがないと言う。 「このメガネのイヌの子、お姉ちゃんのクラスの人?」 「それ…数学の先生」 都会に思いを馳せる子も居れば、田舎の島に誇りを持つ子もいる。 まだまだ、彼らもガキなんだからどんなウサギになるかは誰も知らない。 きっと、わたしたちの横でそびえる廃墟になった工場も、朽ちた果てた生きるしかばねに自分がなるとは思っていなかったのだろう。 そういうものかもしれない。きっと。 携帯の画面を元に戻すと男子が待ち受け画面を見て、静かな池に小石を投げ込んだようにざわつき出した。 「それ、もしかして『若頭』?すげえ!」 「かっちょいいな!!『おれたちは世間さまから外れていることなんて、わかりきっているさ』」 男子のセリフに反応してしまい、思わず続きのセリフを言ってしまう。 「『ひっそりと世間さまの隅っこで暮らしていく。そんなこと、もう心得ているよ』だよね?確か」 「お姉ちゃん!すごい!!」 「すごい!さすが都会っ子だ!そうだ、パン太郎。この間貸した『コミック・モッフ』返せよ!」 まさか、『若頭は12才(幼女)』のセリフで彼らと会話するとは思わなかった。
いつも持ち歩いている『布教用』の『若頭』最新刊をバッグから取り出すわたしはまるで、初めて鉄砲を伝えた異国の者の気分だ。 インクの匂いが新鮮なビニールのかかったままの単行本をじっと羨望の眼差しで眺める男子たち。 本屋に行きたくてもなかなか行けない事情なのか。いわんや、ネット通販をや。 折角の布教用なので、彼らに一冊差し上げることにした。「いいのいいの」と、わたしは本を手渡す。 わたしは一向に構わないのだが、彼らは深々とお辞儀をした。 気が付くと迎えの船が来る時間を携帯の時計は示していた。彼らとの別れを惜しみ、もと来た道を引き戻そうとすると、 グレーの女の子がわたしのスカートを摘んでポツリと目を潤ませているではないか。 「こ、こんどは電話の写真のお姉さんたちを…連れてきてくださいね」 「クウ子。この島はね、ウサギ以外は入っちゃだめなんだよ。知らなかったの?」 「ハル子、そうなんだ」 わたしに似たハル子と言うメガネっ子がクウ子の肩を叩くと、彼女の耳が元気なさげに垂れた。 静かに頷くクウ子を慰めようと、今度は街においでね、と再会をわたしは約束した。 「そうだ、まだ自己紹介してなかったね。因幡リオだよ」 「リオ姉ちゃん!」 「じゃあ、またいつか会おうね」 「リオ姉ちゃん、バイバーイ!」 遠くから手を振るお子たちが小さくなり、声だけが耳に響いた。 今頃、お子たちは子供らしいけんかをしているんだろう。 「バカ」だの「ブス」だの「うんこ」だの。 そんな会話が思い浮かんでは消え、船の待つ桟橋にわたしは向かう。 山野先生は行こうと思っても、けっして行くことのできない『うさぎの島』。こんな島があるなんて、 先生から教わるまでわたしは知らなかったし、そしてあの子らにも会うことはなかったのだろう。 旅のお土産はないけれど、むしろそれがない方が一人旅の締めくくりとしては幸せかもしれない。 だいいち、この旅のことは家族と山野先生しか知らないし、旅の間はクラスの子のことを半分忘れかけていたから。 お礼のメールを送ろうと、再び携帯を取り出す。『若頭』の待ち受けと共に浮かび上がる文字を見ると、重要なことを思い出した。 「圏外かあ」 とりあえず、明日学校でお礼を言おうかな。学校に行くのが楽しみになった。 おしまい。
モデルは西日本にある某島だったりします。 投下、おしまい。
猫の楽園田代島かとおもったけどあれは東北だから違うな
>>364 の部分がなんだかエロく感じてしまった俺はもうだめだ
ストレス多きウサギは旅にでる。 うーしみるねー。
旅行にまで布教用持って行くとはw
本能か…上手いなぁ 昔飼ってたウサギ思い出した ふかふかな前足で驚くほど穴掘るよなあいつら
獣人総合スレにも絵チャほしいなぁと思ったんだけど、設置したら 参加する人いますかねー 提供できるのはタカミンしかないのですが
>>373 それも考えたんだけど、ここのスレ以外の人がずっとROMしていたり
他のスレの人が使うのに重なったりするとアレだよなぁと。スレの内容に
よっては、他から来た人が入りづらくなる可能性もあるので。
まぁタカミンは無料だし、自分の手持ちが1個余ってるのでもし使う時は
出してみるよ。
そういえば今日はオレンジデーといって、バレンタインみたいな日らしいよ。 相手にオレンジやオレンジの物を贈って愛を確かめ合うものらしい。 猫系には柑橘系はきつそうだけども!
へーそんな日があるのか
,,,,,-- ,,,,
ノ"""ヽ __ 彡 ヾ
| ヾ ノ⌒ ""--彡 :: σ ο ミ
\ ::;;;:: ;; 丿::: ▼ :::ミ
ヽ ::: ;;┌=ヽノヾノ┐ ちょっと天国いってくる。
 ̄ヾ ‖ ::::::::::::::| ‖ 津田さんに球届けに。
. | .::‖:::::::::::::::::::| ..‖
|;; ::::‖;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ_‖
. |;; :::: ..‖;;__---==;;;; ]
|;; _ :: :::;;;;;彳≡≡≡≡;;彡
ヽ ;;;ノヽ ::::::::;;;;;;;; ミ≡≡≡≡彡
|.;;;「 《 ::;;;;;;==.....ミ≡≡≡彡
. | ヽ .. ゝ ;;;;;| ..ヾ:;;;; |
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"::;;;ノ | :;;;| .. / ::;;/
ヽ _;;
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1239673496/14
見えそで見えない!
なんていけない髪だ!
鳥の人たちは鉛筆とかも足で持つから 授業中なんだかすごく態度が悪そうな事になってるとか ちょっと妄想した
別に足で持っても手(翼)で持っても、どっちでも良くね?
片足で立ち、片足でチョークを持ち、首180度回転して生徒を見る そんなアクロバティックな国語の授業をこなす佐藤先生 という電波を受信した
>>378 かなり痛そうだと思うと同時に惣一が羨ましく思えた。
そう言う訳で俺もグリップミー!
って、佐藤先生が本気でやるのは止めくぁwせdrftgyふじこlp;
ホント微笑ましいカポーだなこいつら また夫婦喧嘩かと野次をとばしてやりたい
ハシビロコウ氏www目がぁww
なんて気持ちよさそうなんだろう
いい汗かいてるなー まだ八重桜なら咲いてるんだぜ?むしろ今満開なんだぜ?
さり気に子供ワインが零れているw
>>390 うさうさ
ウサウサ
もふうさ
ウサモフ
他板のスレに絵師さん達の絵が転載(つってもあぷろだのURLのみだけ) されてるんだけど、何だかなぁぁ…って胸がキリキリするよう
絵師さんが静観してるなら外野が勝手に何かするべきではないよ。 見てもらいたくない絵ならupしないだろうし。
人にもよるけど、転載されてなんぼみたいなところはあるな 自分では微妙な出来のものが転載でひとり歩きしてってしまうとまるで拷問だがw どうせ禁転載と書いてもされるときはされるので、気にしないが吉だ
うん、転載されるのはむしろステータスに近いかも 描いてて快感になってくるw
どこに転載されてるの? 気になる気になる
BBSPINKというお子様厳禁なエロ板の半角二次というところ
あとは定期的にVIPに立つスレがオススメかな 今はpixivで検索するのが一番手っ取り早いけどね でも創発が一番まったりできて好きなんだー!
角煮かよ エロじゃないのにねえ
あっちのスレの人は、このスレうざくて見てない人が少なからず居るのに わざわざ絵を持っていく意味がわからんよー
良い絵だと思った誰かが持って行っただけで、深い意味は何もないだろうね まあ、これがきっかけで両スレの間に敵対的な空気が流れたら残念だなとは思う
牙スレからアンケートが来た時から不穏な空気が漂ってる。
嫉妬深いホモがいるんだろ
>>405 前回の時もここで散々「やめてくれ」と言われたんだから、もうここに
出さないでくれ、迷惑
嫌がらせにだけは労力を惜しまない奴って、居るんだね
おすすめ2ちゃんねるが酷い状態になってるな 乗り込まれてるのか
>>408 それは元からだったかと、この獣人スレが始まった頃からおすすめにある様だし。
それより、病気が治ってからスランプ気味な俺に誰か励ましの言葉をかけてくれぃ……
>>409 さぁ理想のもふもふを作り出す作業に戻るんだ
ロ、ロマンスグレー黒豹だと!? あとタスク痛いそれは痛いw
ウサモフというロシア兎人
・・・いや、なんでもない、忘れてくれ。
>>412 痛い痛い痛い痛いもふもふもふ
>>412 タスクはわざと誘ってるだろww
まったく構ってくんだなあ、タスク。
ウサモフキター! ありがたやーありがたやー なんか妙に強そうに見えるのはロシア人補正か?w
ううう…うpロダが重いよう
>>410-411 うう、励ましてくれて有難う。
取りあえず頑張って書いてみるよ。
>>412 ちょwwww それはヤバスwwww
>>416 お嬢に尻を蹴飛ばされない内に書き上げるよ!(`・ω・´)
ちょい時間おいたら見れた! お嬢様!お嬢様!
実が多いからかな>多産
子供は8人くらいが・・・・ってなんの話だ
やっぱり犬はお産が軽かったりするんだろか
犬の出産見た事ないの? 普通に血が出るよ
犬でなく獣人だし人間と同じようなものだと妄想した
しーさーあんだぎー でもどっちかというと亜人スレ向き??
かもかも。 まあ、とりあえずはいいんじゃない? 何気にモデル立ち?w
んー亜人はもっと人間味が強いもんじゃね? こっちでいいと思うぜ 最初おっぱいがあることに気付きませんでした
私は亜人って「人の姿をしているが人にあらざるもの」って理解だったの で… 一応神獣なので実在の生き物でもないしかといって妖怪でもなさそ う、それを疑似化してるとは言え擬人化スレでも無さそうだし、と言う感 じで描いた後にぐるぐるしてました。 元々は一匹だったのに、狛犬とかの影響で二匹セットになって、阿吽形に されて、いつの間にか雄雌つがいって設定になってるとか居ないとか。 と言うことで、片一方は雌にしましたですよ。
シーサーだ! これは新しいな!
割とひょうきんに見える 魔除けにならなそうw
雑談スレからコピペ 601 :創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 15:47:56 ID:hGq5XNBT 今気がついたけど創作発表板のうpろだ 四月二十七日にファイル完全削除だってさ
サイトリニューアルでいろんな形式に対応したり一度に複数ファイルうpできるようになるらしいんだけど そのシステムアップロード時に今のうpファイル全部消えてしまうらしい
これまで投下された絵はみんなもう保存してるんじゃないかな。 リニューアル日数日前だけ注意すれば問題なさそう。
しかしそう言って油断してると忘れる罠 懸賞とか申し込み書類とかで「締め切りまで少しあるからまだいいや」と思ってると・・・ という経験のある奴はケモ学とかにも居るに違いない
あるあるw
必修科目の選択申請とか期末試験のレポートとか 卒論とか
う、嫌な思い出が
Wikiにあるやつはアップローダーと直結してるの? それともWikiに直接アップしてるの?
wikiに直接うpだよ うpロダのやつを一度ローカルに保存してwikiにうpしてるから
にゃるほろ じゃあWikiにアップされて無いやつは保存したほうがよさげか
まほうつかーい
なんて叱ってる姿と叱られてる姿が似合うんだ…
まるで叱られる子供だなw
もう親子だなw
450 :
レス代行 :2009/04/21(火) 02:33:05 ID:ID3uO/Ay
260 :冬の風物詩 :sage :2009/04/21(火) 02:15:46 ID:V/2p3pyA0(7) なんてこったもう春だ。中途半端なとこで遅れてごめん激しくごめん。 3スレ目で始まって4スレ目に続いた冬の風物詩のやっと完結編です。支援あったら助かります。 <よくわからないあらすじ> 朱美と卓が落ちた。
451 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:34:47 ID:ID3uO/Ay
『冬の風物詩』第3話 ……… …ねて……み…… ……く…なさ…… …おき…卓…… ……… …… … 目が、覚めた。 ぼんやりと見える色は、白。 白い…天井だ。見知らぬ天井。 目線をゆっくりと横に移していく。 カーテンレール…蛍光灯…窓…耳… 「朱美っ!?」 痛っ!!!! 慌てて起き上がった瞬間、背中から腰に鋭い痛みが走る。 「だっ、ダメよ卓君っ!寝てなきゃ…」 ベッド脇の椅子に座っていた朱美の手を借りて、再びベッドに横たわった。 背中の激しい痛みに耐え深呼吸すると、ズキンと胸が痛み、少し息苦しい。 それらに耐えながら、なんとか声を絞り出した。 「朱美…無事…か…?」 「あたしは大丈夫。無理しちゃだめだよ卓君」 「俺は…どう…」 朱美の話によると、俺の容態は背中全体に軽度の打撲とのこと。 要するに背中全体でうまく落ちたらしい。下がコンクリートじゃなかったのも運がいい。 相当な幸運だったんじゃないかこれ。いや痛いけどさ。 あとアバラの2本ほどにひびが入ってるとか。 「…アバラ?」 「ごめん!!あたしのせいなの!」 「ぅえ?」 朱美の下になって受け止めたときにボキッといったらしい。 完全に朱美のクッションになってたわけだな。俺グッジョブ。いや痛いけどさ。 「…ははは。いやぁ、3階から落ちてこの程度で済んだんならすげぇラッキーだろ。朱美も無事だったことだし…」 軽い気持ちで朱美に顔を向けて、そこでやっと気づいた。 朱美の左上腕部、皮膜を巻き込んで白いギプスと包帯で固定されていた。
452 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:35:06 ID:ID3uO/Ay
「…朱美!? その腕は!?」 「ああこれ? まあ、ちょっと…ね。落ちたときじゃないのよ」 「え…でも…」 「疲労骨折…ってやつ? ちょっと無理させすぎちゃったみたい」 「そんな…」 「ほーらそんな顔しない! なに、なんてことないのよ、ちょっとひびが入っただけなの」 朱美は首から吊っていた手を抜いて、クイクイと腕全体を動かして見せた。 「ちょっ!! 平気なのかよ!?」 「普通に生活する分には問題なし。まあしばらく飛べないけど、それだけよ」 あたしは大丈夫!と、笑いかけてくれる朱美を見て、俺もようやく一安心できた。 ベッドから上半身を持ち上げる。大丈夫だ、ゆっくりなら痛くない。 「えっ、ダメだよ無理しちゃ…」 「いや大丈夫、ずっと寝てるのもな。あと寝てても微妙に痛い」 「そっか…」 朱美の手を借りてゆっくりと体を動かし、ベッドに腰掛ける。 「あ」 「いや、いいよ」 自然と、同じベッドの左手側に朱美も腰掛ける形になった。
453 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:35:17 ID:ID3uO/Ay
ふと思い出した。いや、何で忘れてたんだろう。 「朱美…3階にさ、赤ちゃんが…」 「あ、それは大丈夫」 「えっ!?」 朱美の表情は明るい。 「実はあの後すぐ、騒ぎに気付いた宮元先輩が戻って来たのよ。で、すごい勢いで3階に突っ込んで助けてくれたの」 「ええぇマジで!?」 「すごいのよ先輩、赤ちゃんが寝てるベッドごと掴んで降りてきたの」 「おおぉ!」 「あれはすごかったなぁ…」 「へええぇ…」 なるほど、あの人ならやりかねない… 雄叫びを上げて部屋に突っ込む宮元さんの姿が、脳裏にありありと浮かんだ。 実際見てはいないがこの想像、そう違ってはいないだろう。 「…すごいな」 「うん、すごいよね……あたしと違ってさ…」 急に朱美の声が陰る。驚いて顔を向けた。 「…え? いやそんなことは…」 「比べるとあたしはダメね…一人じゃ何にもできないし」 「ちょっ、そんなことないって! 朱美のほうがすごかったよ! 二人も助けたじゃんか」 「………」 朱美は下を向いて黙りこんでしまった。こんなとき、どう言葉をかければいいだろうか… 「朱…」 …!!!? え!? あれっ、何っ!? 何この状況!? 突然のことで、一瞬何が起こったのかわからなかった。 視線を下げると、朱美のポニーテールが目の前にある。
454 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:35:37 ID:ID3uO/Ay
自分の顔が熱くなるのを感じる。 胸の鼓動が高鳴る。朱美に聞こえるんじゃないだろうか。 情けないことに俺はしばらく、まるで動けなかった。 「お、おい朱…」 なんとか声をかけようとして、やっと気付いた。 朱美の体が小刻みに震えている。 …泣いてる…のか…? 「……ん……めん…」 小さな、震える声が聞こえてきた。 「ごめんね…ごめんね…卓君…あたし…」 「朱美…」 「あたしのっ、せいで、卓君がひどい怪我してっ……」 「…そんなことないって。俺が勝手に落ちただけだよ」 「でもっ、あたしの……」 「朱美は悪くない。悪くないんだ。立派だったよ」 「あたしっ……」 朱美の声が大きくなる。 「もしっ卓君がっ、死んじゃったらっ、てっ、ずっとっ」 うあああああぁぁん ついに声を上げて泣き出した。 「…大丈夫。大丈夫だよ…」 初めて見る朱美の一面。弱く繊細な心。 小さく見えるその体を、割れ物を扱うように、そっと抱きしめた。 朱美が、大切な仲間が、こんなにも俺のことを思ってくれている。 これほど嬉しいことはない。 たぶん生まれてきてから一番、幸せな時間だったと思う。
455 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:35:58 ID:ID3uO/Ay
「…大丈夫。俺は死なないよ、朱美」 ひとしきり泣いて、ようやく治まってきたころ、 朱美にゆっくりと語りかけた。 「小さいころからさ、利里と三人でずっと一緒にいただろ。危ないこともいろいろやってきた」 「…うん」 「でもさ、今よりずっと小さかったのに大怪我したことなんて一度もなかっただろ?」 「うん…でも…」 「今日のだって大したことない、こんなのへっちゃらだ。 しかも子供を二人も助けたんだぞ。すごいことじゃないか」 「…うん」 「なぜか、なんてわからない。でもさ」 「一緒にいればなんでもできる。一緒にいれば俺達は無敵だ。俺はそう思うんだ」 「…ふふっ」 「なんだよ、笑ったな」 「そんなの無茶苦茶だよ、卓君」 「いいんだよ、細かいことは」 「うん。ごめんね。ありがと。卓君」 「…ああ」 それから少しの間、静かに体をよせて、ただお互いの体温を感じていた。 少し時間がたって離れようとしたとき、朱美の手に引き留められた。 「…ごめん、ちょっと待って」 「何?」 「たぶん…今顔がひどいことになってる」 「ティッシュ」 「どうも」 少し顔を拭いて朱美は顔を上げた。数分のことなのに、なんだかひさしぶりに顔を見た気がする。 頬の毛皮が貼り付いて、見るからに泣きはらした顔だ。 「はは、ひどいな」 「ちょっと、笑わないでよ」 「ここらへんとか全然」 「なっ!」 つい自然に手が出た。朱美の頬の、濡れた毛の感触。 「ちょっ!女の子の顔に」 「いいから。じっとしてろって」 濡れた顔を、ティッシュでゆっくりと拭いてやる。 「…ねえ、恥ずかしいよ」 「別に誰も見てないって」 「…う…うん」 恥ずかしげに俯く朱美は、いつもよりずっと女の子らしく。可愛らしく見えた。 「うん、だいぶましになったな」 「…ありがと」
456 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:37:37 ID:ID3uO/Ay
ポツリと、朱美が声を出す。 「卓君さ……あのときの、助けてるときの卓君、かっこよかったよ」 「……え? そうか? 俺ずっと朱美に運ばれてただけで」 「ううん。かっこよかった」 「そう…か。でも、朱美がいたからだよ」 「あたしだって、卓君がいたからだよ」 「一緒にいてくれてありがとう」 「あたしも、ありがとう」 「これからもよろしくな」 「うん。よろしくね」 二人の視線が重なる。 何かに吸い寄せられるように、視線が近づいていく… …………… ……… ゥォォォォォォォ ドドドドドドドドドドド ウオオオオオオオオオオオオオオ!! ぱこーん バーーーン!!!! 「卓ーーーっ!!!! 朱美ーーーっ!!!!」 「ぬぅおおおぉぉぉぉ…」 「っきゃああぁぁぁ…」 「うあああああ死ぬなー卓ー!!朱美ー!!」 病室のドアを吹っ飛ばして飛び込んできた利里は、それはそれは驚いたことだろう。 利里が見たのは、両腕を押さえてうずくまる朱美と、ベッドでのたうち回る俺。
457 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:37:54 ID:ID3uO/Ay
「いっ医者ー!二人とも死ぬなー!医者ーーーっ!!」 「まっ、待ってっ利里君!」 「ちょっ慌てんな利里っ!平気だから!ここ病院だから!」 真相は簡単だ。痛めた腕でつい反射的に突き飛ばしてしまった朱美と、背中をベッドに打ちつけた俺。 それだけのことで大騒ぎにされたらたまったものではない。 「へっ平気なのか!? 二人とも大丈夫なのかっ!?」 「大丈夫!二人とも大丈夫だから!」 「怪我っ!怪我はー!?」 「俺のは大したことないよ」 「あたしも大したことないのよ。二人とも元気」 「そうっ、そう…か……」 利里は尻もちをつくように、ドカっと床に座り込んだ。心の底からホッとした様子が見て取れる。 「お前らがどうかなっちまったら…俺どうしようかと…無事でよかったぁぁぁ…」 肩を大きく揺らして、乱れた呼吸を整える利里。 「もしかして…ずっと走ってきたのか…?」 「あー…電車なんか待てなかったー…」 「ごめんね、利里君。すごく心配かけちゃって…」 「俺のことはどーでもいい。お前らが無事で本当によかったぞー」 「…ありがとう、利里。お前と友達でいれて本当によかったよ」 「利里君。ありがとう」 「おー。こっちこそー」 「いいねえ、美しい友情!」 振り向くと、見慣れた教師の姿がそこにあった。 「ザッキー!」 「俺だけじゃないぞ」 続々と病室に入ってくるクラスのみんな、そして先生達。 いのりんに、白先生、伯瀬谷先生に獅子宮先生。あとヨハンも。 鹿馬ロの3人に、猛とハルカ、りんごに保健委員。ヒカルまで来てくれるとは。 他にも数人の教師と生徒で、広かった病室はあっというまに人で埋まってしまった。 「えっ!? あのっ!」 「ああ、学校から遠いってのに場所教えたら結局こんな集団になっちまった。悪いな」 それから、本当にたくさんの話をした。 途中でライダーが飛んでいったり、ヨハンの様子がおかしかったり、騒がしすぎると看護師さんに注意されたり。 怪我人の病室だというのにさっぱり自重しない困った奴ら。頼りのいのりんもニコニコと最低限の注意しかしてくれない。 でも、みんないい奴らだと改めて実感した。話すほどにみんなの気持ちが伝わってくる。 こんなにもたくさんの仲間が俺たちのことを心配してくれている。本当に嬉しかった。 結局、面会時間いっぱいまでその騒ぎは続いた。
458 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 02:38:10 ID:ID3uO/Ay
やたらと静かに、そして広く感じるようになった病室。 軽い診断を受け、味の薄い病院食を食べたら、就寝時間はすぐにやってきた。 薄暗い病室、ベッドに包まって朱美に語りかける。 「はぁ…やっと落ち着いた。まったく困った奴らだよな」 「卓君、顔が笑ってるよ」 「見えんのかよ…。ははは…まぁ、な。いい奴らだよ、みんな」 「うん、本当だよね。早く帰ろうよ、みんなの学校に」 「ああ。あんな風にしょっちゅう騒がれたらたまらん」 「ふふ、そうだね。おやすみ卓君」 「おう、おやすみ、朱美」 それから。 結局のところ、二人とも入院が必要なほどの大怪我ではなかった。翌日からは体の痛みもだいぶなくなった。 ほとんど検査入院のようなもので、三日後には二人揃って退院することができた。 学校に顔を出したら、早い早すぎる、心配して損したなどと散々な言われようだったが、 変わらないみんなの態度が嬉しかった。 その後、なんと消防庁から表彰を受けてしまった。朱美と、俺と、そして宮本さん。 小さい記事だが全国紙にも載り、特に話題性のある朱美は一躍有名になった…のかもしれない。 そんなこと気にならなかった。そんな場合ではなかった。 なぜなら、現状が非常にやっかいな状況だから。宮本さんが見事にしでかしてくれた。 「待ってー飛澤先輩ー!」 「御堂せんぱーい!!」 表彰状を受け取ったその場で、発言を要求した宮本さん。何を言うかと思えば… 大空部の熱烈な宣伝、それはまあいい。次が問題だった。 あろうことか、朱美が大空部のエースで、俺は朱美を鍛え上げたコーチ、的な意味にとれる発言をされてしまったのだ。 はっきりそう言ったわけではないし、嘘も言っていない。が、見事にやられた。宮本さんの作戦勝ちだった。 「待ってー逃げないでー!」 「特訓してくださーい!」 そして、朱美と同様に俺も追いかけられる対象に入ってしまったというわけだ。 今現在も、爆発的に増えた大空部の中等部の子たちから、朱美と一緒に逃げ回っている。 俺も、まだ朱美も飛べないから地上戦だ。鳥の人たちが大挙して地上を走る姿、実に異様な光景だろう。 「だーかーらーあたしたちはー!」 「鉄道研究部だって言ってるだろーがー!」 果たしてこの状況はいつまで続くんだろうか… おわり ※後で番外編書く予定。
459 :
創る名無しに見る名無し :2009/04/21(火) 03:23:15 ID:/rM7DBZl
>>444 目がいい感じじゃのう
もっふもふやで!
ところでこれ何のキャラ?
>>458 うわーい、淡い恋模様焦れったいです(^p^)
ライダーをなぜ飛ばたしw
GJでした
>>459 俺も気になるー
どっかで見た記憶があるんだけどなぁ それはそうと別のスレから帰ってきてくれて安心した あそこはかわいいケモ絵に嫉妬する人外爬虫類厨がいるし近寄らない方がいいよ
>>456 あと少しだったのになんというラブコメ王道…
じれったいw
>>459 テイルズってこんなキャラがいたようないなかったような
かわいいのうかわいいのう
>>461 まあそう言うな、変な趣味の子はどこのスレにもいるし
相手してたら何も描けなくなる、スルーこそ最強
もふもふな子だけこっそりお持ち帰りしてるw
来た!続ききた!メイン続き来た!これで勝つる!
利里はニヤニヤを見事ふっ飛ばしてくれたなwでもこういう友達欲しい
>>459 神羅万象チョコのハルト・フェルト
うおぉぉぉぉぉ身悶えるほどうらやまc あぁぁもう畜生背中痒くなる王道だからこそこう感じるのか何なのかそしてGJ
467 :
冬の風物詩 :2009/04/21(火) 23:00:03 ID:ID3uO/Ay
あれ、俺包帯属性なんてなかったはずなのに・・・
うわ名前欄が代理レスしたときのままだった
>>465 卓はこんなにイケメンだっただろうか・・・
メスケモウザ><
卓イケメンすぐる
また某スレ発祥で痛い子沸いてきてるので総スルーでいこう
皆さんどうもお久しぶりです、といいつつ通りますよ……
皆の励まし(?)と
>>416 のお嬢に発破をかけられたおかげで何とかスランプから脱出が出来ました。
御礼を申し上げます。
と、その反動で滅茶苦茶長くなったのを投下しますので、お暇な方は投下支援をお願いします。
内容としては、卓の設定がいろいろとボンボンと出まくっている上に、
あの内気なキャラがよく喋って動いてます、なので気になる方はコテをNGにしてください。
では、次レスより投下開始。
「あれ? 御堂じゃないか……お前が図書室に来るなんて珍しいな。本でも借りに来たのか」 図書室入り口の一目で高級な材木を使っているであろう重厚な扉を開け放ち、 室内の本のインクと接着剤の臭いが交じり合った特有の空気を感じる間も無く、 俺の存在に気付いた図書委員の和賀が首を伸ばし、酷く珍しそうに声を掛けてきた。 「いや、ちょっとしたヤボ用って所だな」 「……ヤボ用? って事は本を借りに来た訳じゃないのか?」 俺の答えに伸ばした首を不思議そうに傾げさせる和賀。 それと同時に図書室の隅の席で本を読んでいたヒカルも俺の存在に気付くが、 一瞬だけ珍しい物を見る様な眼差しを向けた後、直ぐに興味を失ったのか本へと視線を戻した。 相変わらず人嫌いな奴と言うか心に壁を張っている奴と言うか……ま、それは気にしないとして。 「まあ、言ってしまえばそうだな。ちょいと織田さんに用事があるんだ」 「織田さんに?……御堂、織田さんにヘンな事するんじゃねえぞ?」 「分かってるって、流石にお前には噛まれたくないしな」 軽く答えつつ後手をひらひらと振って、 和賀の怪訝な眼差しを背に受けながら向かったのは、春の日差しも暖かい貸し出しカウンター。 其処で暇そうに頬杖を付いていた司書の織田さんも俺に気付き、笑顔を浮かべて声を掛ける。 「あら、御堂君」 「織田さん、俺が前に言っていたアレ、持ってきました」 言いながら俺がカバンから2冊の本を取り出す。 一冊はかなりの年代物と思しき英語のタイトルで書かれている本、 そしてもう一冊はごく最近の、それもついさっき製本されたばかりと思しき文庫本。 カウンターに並べられたそれを見て、織田さんは少し不安混じりな表情を浮かべて言う。 「本当に持ってきてくれたのね……これってかなり高価な物なんでしょ? 御堂君、本当に良いの? ここに寄贈しちゃって」 「ああ。親父も構わないって言ってたし、気にしなくても良いですよ」 古びた方の本を指差しつつ何処か不安混じりに問う織田さんに、俺は不安を紛らわせる様に明るく答える。 その際、俺が持ってきた本が気になったのか、さっきまで本を読んでいたヒカルが俺の後からそっと覗き込んで来た。 そして、カウンターに置かれた2冊の本を見るなり、ヒカルはやおら尻尾をピンと跳ね上げ、 「ちょ、これって!? ルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』の初版本!? そ、それにもう一冊あるそれは、池上 祐一作『名探偵片耳のジョン』シリーズの最新刊21巻『探偵と騎士』!? それの発売まで後1ヶ月も先だと言うのになんで!? 何で御堂がこれを持ってるんだよ!?」 全身の毛皮を思いっきり逆立て、鼻息を荒くして俺へ詰め寄るヒカル。 何なんだ、この凄まじいまでの食いつきは。 何時もの大人しく人見知りな印象のヒカルは何処行った? つか、余りの態度の変化に和賀は呆然としているし織田さんも苦笑いを浮べてるぞ? それにも気付かないとは、こいつ、かなり興奮しているみたいだな。
「いや…まあ、親父が小説作家をしている関係でな……」 「小説作家!? まさか、ひょっとしてひょっとすると……」 「うーん……まあ、そのまさか、といった所かな?」 「う、嘘だろ!? 卓君のお父さんが名探偵片耳のジョンの生みの親だなんて!? ぼく、大ファンなんだよ!」 俺の苦笑いを浮べながらの返答に対し、もう鼻と鼻がぶつかり合う寸前の距離まで詰め寄るヒカル。 ちなみに、池上 祐一と言う名は親父のペンネームである。 それと、さり気にヒカルの俺に対する呼び方が、御堂との呼び捨てから卓君へとランクアップしているようだが、 ここは敢えて気にしない事にしよう。 「大好きな本の作者が、俺の親父だと知って幻滅したか…?」 「そんな訳無いだろ! まさかクラスメイトの父親が作者の池上 祐一大先生だなんて……本当に夢みたいだ……」 「大先生って……いや、まあ良いけど」 「ヒカル君、ずいぶんと興奮しているみたいね……」 「…………」 呆れる俺と織田さん、そして言葉を失っている和賀の三人の眼差しすら気にする事無く恍惚した表情を浮かべるヒカル。 この時点で、彼の尻尾は扇風機も真っ青な高速大回転を見せている。 ――ここで改めて紹介しておくが、ヒカルが興奮しきりなこの『名探偵片耳のジョン』は 過去の事件によって削ぎ落とされた片耳に、薄汚れた着古しの黒のスーツ、 そして常に咥えたパイプと言う風貌の狼族の探偵、ジョン・カーターが主人公の推理小説。 そのチンピラまがいな風貌とは裏腹の巧みな話術と卓越した推理力で難事件を解決して行くストーリーで、 20年以上も前に第1巻が発売されて以来、今も年に一冊のペースで新作が発表されるロングセラーである。 一般の人の間では余り有名ではない物の、推理小説ファンの間では根強い人気を持つ作品でもある。 息子の俺が言うのも自画自賛な様な気もするが、実際に読んでみればかなり面白い事は確かで、 現場の空気をリアルに感じ取れる文章力と最後の1ページまで飽きさせない構成力は、 ヒカルが引きこまれてしまっても無理もないと俺は思う。 ……そうだ、ヒカルがここまで大ファンだと言うなら、ちょっと喜ばしてやっても良いかな? まあ、こいつの隠された一面と言うのを見てみたいってのもあるけど。 「なぁ、ヒカル、其処まで親父の小説の大ファンだって言うなら、今度の日曜、俺の家に来てみないか? その日だったら多分、親父も家に居ることだろうし」 「…ゑ゛っ!? 本当!?」 「ヒカル君。『このタイミングで嘘を言う奴はそうそう居ないだろう?』」 余程信じられなかったのか、思わず聞き返すヒカルへむけて、 俺はちょいと試しに13巻『探偵と空の浮船』113ページの辺りで、ジョンが助手へ言った台詞を返してやる。 「あっ!『もし居るとすれば、そいつは相当な詐欺師か単に忘れっぽいだけさ』だったね」 ヒカルは直ぐ様耳をピクリと動かして反応し、合いの手を入れる様にその続きの台詞を返してきた。 この反応だけでヒカルが正真正銘の大ファンだと分かってしまう辺り、 俺もまた、親父の小説にのめり込んでいる様だ。
「…でも、本当に良いのかい? ぼくなんかが来たら大先生の…いや、卓君の家族の迷惑になるんじゃ…?」 「大丈夫だって。 親父もそんなに気にする人じゃないし。義母さんだって喜んで持て成してくれる筈さ。 それに見た所、お前の尻尾は『何と言われようとも行きたいです!』って言ってるみたいだしな?」 「――っ!? もうっ、からかわないでくれよ! これは反射的な物なんだからさ」 俺の指摘で、ヒカルはようやく大回転し続けている自分の尻尾に気付き、恥かしそうに両手で尻尾を隠す。 だけど、それでも余程嬉しいのか、抑える両手からはみ出た尻尾の先端がプルプルと振られ続けている。 こう言う所があるから、犬族のケモノは考えが読みやすい。 それを見ていた織田さんもクスリと笑っているぞ。 「はは、からかって悪かったな。ヒカル。……と、それより、お前、俺の家のある場所知ってるか?」 「知ってるよ。…確か藤ノ宮電停の辺りだったね」 「へ? あ…いや、知ってるんだったら良いんだけど……?」 ……ありゃ? これは意外や意外。 ヒカルの奴、俺の家のある場所を知ってたよ。つか、教えた憶えはないのに……? と、その考えがどうやら表情に出てしまっていたらしく、それをあっさりと読み取ったヒカルはクスリと笑って言う。 「藤ノ宮から三駅隣の東小宮電停近くに、ぼくの行き付けの古本屋があってね。 其処に自転車で向かう最中、藤ノ宮電停で電車を待ってる卓君の姿を見た事があったんだ。 それで多分、卓君の家は其処にあるんだろうなと思ったけど、その顔からすると読み通りだったみたいだね」 「うわ、カマかけかよ。ひっでぇな」 「尻尾の事でからかったお返しだよ。お互い様」 「ちっ、お互い様とあっちゃ仕方ないな……」 どうやら人間もイヌ族の尻尾の様に、表情で考えが漏れてしまうみたいだな。 それで憮然とする俺に向けて笑う名探偵 犬上 ヒカル。そう言えばこいつがこうやって笑うのは初めて見る。 誰だ? ヒカルは暗い奴だって言ったのは。話してみるとこいつ、意外に面白い奴じゃないか。 どうやらこいつに対する”本だけの口下手な奴”と言う思い込みは、思考のゴミ箱へ捨てた方が良い様だ。 ヒカルがこうだから、ひょっとするとおバカな塚本の奴も意外と頭が良かったりとか……いや、それは無いか、流石に。 「んじゃ、藤ノ宮に着いた時には電話でも入れてくれ、俺が直ぐに迎えに行くし。 あ、これ、電話番号な」 「うん、分かったよ」 俺が渡した携帯の番号を書いたメモを、ヒカルはカバンから取り出した自分の手帳へと丁寧に綴じる。 この几帳面さは利里の奴に学ばせたい所だ。 あいつ、大切なメモを渡した側から無くしてくれた事有るし。 と、メモを渡したタイミングを見計らっていたかの様に、生徒達へ下校を促すチャイムが鳴り始めた。 それに気付いたヒカルは「あれ?もうこんな時間か」と漏らしながら慌しく読んでいた本を元の本棚へと戻し、 「それじゃ卓君、今度の日曜、電停についた時は必ず電話するから。それと、織田さんもさようなら」 「はい、さようなら。ヒカル君」 と、俺と織田さんへ向けて尻尾と手を振りながら図書室から去っていった。 その背と尻尾を見送った俺へ、ようやく茫然自失状態から開放された和賀が呟く。 「……なぁ……あいつ、あんなキャラだったか?」 「さぁな。ひょっとすればアレが本当の姿かもな?」 その呟きに、俺は図書室の出入り口を眺めつつ返すのだった。
……そして、時はあっという間に流れて日曜日。 「よ、犬上。 待たせたか?」 「いや…それほどでも」 冬の寒さの名残さえも吹き飛ばした春の暖かな日差しが降り注ぐ中。 電話を受けて迎えに来た俺が藤ノ宮電停そばの本屋で立ち読みしているヒカルの白い毛並みを見つけ、声を掛ける。 しかし、本を本棚に仕舞う彼から返ってきたのは味気も素っ気も無い返事が一つ。尻尾の揺れも今一つ。 どうやら、あの時のテンションは時間と共に冷めちゃっている様で。 まあ、それも仕方ないとしよう。本来ならこいつが来る事自体が奇跡みたいな物だし。 取りあえず、今頃は義母さんも菓子を用意して待っている事だろうし、さっさと行くとしようか。 「んじゃま、とっとと俺の家に……って、如何した?」 「……」 ヒカルを自宅まで案内するべく店から出た所で、彼は唐突に歩みを止めた。 そして、同じく足を止めた俺に向けて、耳を伏せ視線を逸らしたヒカルは申し訳無さ気に言う。 「いや…やっぱり帰るよ。…卓君の家にぼくが行っても迷惑になるかもしれないし…」 をいをい、今更になってネガティブモード発動ですか……しっかた無いなぁ、もう。 「だから…その……」 「『少年は、恐いからと言って其処で歩みを止めてしまうのかね? まあ、行かなければ行かないで良いさ。少なくとも僕には関係の無い事だ。しかし……』」 ヒカルがもぞもぞと言おうとするのを遮って、 俺は片耳のジョン第十三巻『少年と探偵』で家出少年を親元に返すシーンでジョンが言った台詞をぶつけてやる。 と、その台詞を言いきる間も無く、ヒカルが伏せていた耳を立てて鋭く反応し、 「『恐がってばかりでは本当の世界は見えてこない。時には、恐れを捨てて進んでこそ見える世界が有る』 …ずるいよ、卓君。よりによってその台詞を持ち出してくるなんてさ」 「でも、多少は行く気になっただろ?」 「まあ、ね。…ここで引き返しちゃ大先生にかえって失礼だ」 さて、ヒカルが行く気を取り戻した所で早速、ご招待と行こうか。 「所でさ、大先生…じゃなくて卓君のお父さんはどんな人なの?」 「どんな人ってか?」 本屋を出て我が家へと向かう道すがら、 既に景色が桜色から新緑へと移り変わった桜並木を歩いている所で。唐突にヒカルから問いかけられた。 俺はオウム返しに聞き返した後、暫し思考を逡巡させて答える。 「そうだな……親父を一言で言うと、とにかく寡黙な人…ってとこだな」 「寡黙…? あの、ぼくも無口だって良く言われてるけど?」 「いやいや、うちの親父はそれ以上に無口なんだよ。何せ、必要最低限な事以外は一切喋らないし。 例え喋ったとしても、ひらがな換算で12文字を超える言葉を喋る事は殆ど無いと言って良いんだ。 もうある意味、寡黙さにおいては親父は徹底しているよ」 「うわぁ…流石と言うか難と言うか…」 「まあ、その代わり、eメールや手紙とかの文章のやり取りにおいては、親父はかなりの饒舌家なんだけどな。 それは『名探偵ジョン』の後書きから見れば分かるけど、長い時だと10ページほど使っている事もある位だし」 「あ、確かにそうだね…」 何処か納得した感じに呟くヒカル。ゆらりとゆれる彼の尻尾。
「そしてもう一つ言えば、親父は何考えているのかさっぱり分からない…って所もあるな」 「へ? それって如何言う事?」 「親父はな、寡黙なだけじゃなく、感情さえも余り表に出さないんだ。 嬉しい時も楽しい時も怒っている時も悲しい時も、何時もの穏やかな態度、無表情のまま。 だから外面からじゃ、何を如何言う風に考えているのかさっぱり読めやしないんだよ」 「へぇ…ぼくには余り想像できないけど」 「そうだな、分かりやすい例として…あれは1ヶ月ほど前か、 親父が俺と一緒に出掛けた時、チンピラに因縁付けられた事があったんだけどな。 様々な罵詈雑言を並べて煽り立てるチンピラに対して、親父は『ふむ』とか『そうか』とか静かに返すだけ。 俺はその横で『流石は親父、貫禄あるなぁ』と感心したその直後だよ」 「…どうなったの?」 興味深そうに聞くヒカル。俺は呆れた様に溜息を付いて 「次の瞬間、親父が無言で放った右ストレートがチンピラの顎を捕えてた。無論、チンピラは即KO。俺、唖然。 後で親父に聞いてみると『腹が立ったからやった』と、何時もの穏やかな態度で一言。 まあ、この話から分かると思うけど、外面じゃ怒ってない様に見えて実はブチ切れてたって事は何度もあるんだ」 「うわぁ…それってある意味厄介だね」 「そうなんだよな、特にイタズラしてそれがバレた後となるとな……。 もう怒ってないのか、それともまだ怒り心頭なのか、こちらからじゃ全然分からないんだよ。もう恐いのなんの」 両手で自分の肩を抱いて身を竦める俺に、ヒカルはハハ、と声に出して笑って見せる。 と、話に夢中になっている間に桜並木の向こうから俺の家が見えてきた。 うむ、何かに夢中になっている時は何時も周囲がタイムワープする様だな。不思議発見。
「ここが俺の家だ」 「ここが…」 「思ったより小ぢんまりとした家だろ?」 藤ノ宮電停からゆっくり歩いても約10分程の道のりの先。 俺達が辿りついたのは閑静な住宅街の家々に紛れる様にして建つ、ごく有り触れた大きさと外装の住宅。 この家こそが俺の自宅であり、同時にヒカルの憧れる大先生が住む家である。 家を見上げるヒカルの目には、然程大きくない俺の家でも巨大なお城の様に映っているのだろうか? まあ、憧れの人が住む家だと思ってる以上は、そう言う風に見てしまうのも無理も無いだろう。 さてと、ヒカルの気が変わってしまう前にとっとと入るとするかね。 「ただいまーっと。ほら、お前も入れ」 「え…でも…」 「良いって、義母さんも待ってる事だしさ」 俺は尻尾と耳で難色を示すヒカルの手を取って、家に入るように促す。 にしてもこいつの手の肉球、他のイヌ族の野郎に比べて全然柔かいでやんの。 一瞬、男相手にドキッとしてしまったじゃないか。落ちつけよ俺の煩悩。 「やっぱりぼく…」 「あら、おかえりなさい、卓ちゃん…って、その子が昨日言ってたお友達?」 それでもヒカルが難色を示そうとした所で、玄関のドアが開いた音と共に家の中から優しげな女性の声が掛かる。 俺とヒカルが振り向き見てみれば、玄関先に春物のカーディガンの上にエプロンを付けた姿をした、 端で縛ったロングヘアーの黒豹の女性の姿があった。 「ああ、こいつが昨日言ってた親父の大ファンだって言ってたクラスメイト。犬上 ヒカルって言うんだ」 「まあまあ、君がうちの主人のファンなのね? ヒカル君って言うんだ。 こんな可愛いイヌの子をファンに持つなんて、うちの主人も捨てた物じゃないわね? けれど今、主人はちょっと立て込んでるから、もうちょっとだけ卓ちゃんの部屋で待っててくれるかしら?」 「…は、はい…」 俺がヒカルの事を紹介するや、彼女はまるで子供を相手する様に中腰になって微笑みながら話しかけてくる。 対するヒカルはと言うと、初対面の女性に話し掛けられたのに緊張したのか、尻尾を強張らせ返答も上の空だ。 取りあえず、俺はヒカルの緊張を解きほぐす為に彼女の事を紹介する。 「えっと、紹介するけど、この人が俺の義母の利枝(としえ)さん。職業は雑誌の編集担当。特技は菓子作り」 「宜しくね、ヒカル君」 「あ…う、うん」 俺の紹介と同時に手を差し出す義母さんに、ヒカルは緊張しながらも差し出された手を握る。 余程手を握られた事に興奮したのだろう、さっきからヒカルの尻尾の毛が爆発している様になってしまっている。 この様子から見ると、如何もこいつは年上の女性にとことん弱いみたいだな……。 「それじゃ、今直ぐお茶の用意をしてくるから、ヒカル君は卓ちゃんと部屋で待ってて頂戴ね?」 「わ、分かりました…」 「卓ちゃんも、ヒカル君に意地悪したりしないで頂戴ね?」 「はいはい」 言って、義母さんは俺と緊張するヒカルへ微笑みかけた後、 漆黒の尻尾を上機嫌に揺らしながら、パタパタとスリッパの音を残して家の奥へと引っ込んで行った。 ……玄関のドアを開けっぱなしにしたままで。相変わらず義母さんはそそっかしい。
「……す、卓君のお母さん…綺麗な人だったね」 開きっぱなしの玄関をぼんやりと眺めながら、ポツリと俺へ言うヒカル。 俺はその肩を叩いて、頭を横に振りつつヒカルへヒソヒソと話す。 「…ヒカル、見かけに騙されるんじゃないぞ。ああ見えてあの人、実は英先生と同い年なんだぜ?」 「え゛!? 嘘っ!? 如何見ても二十歳くらいとしか……」 驚愕の事実に驚きを隠せないヒカル。 俺はそのピンと立った耳に向けて更にひそひそと続ける。 「其処が恐ろしい所なんだよ…実は言うと、義母さんは若さを保つ秘訣としてな、もげんた――」 「卓ちゃん、さっきからなにをやってるの?」 「――おっと、いけねぇ! 義母さんにどやされる前にとっとと入るぞ」 「…え? ちょ、ちょっと、卓君! 『もげんた』って何? ねえ?」 義母さんの横入りで切られた話の内容が余程気になったのか、 玄関へ向かいつつヒカルが何処か必死になって聞いてきた。 しかし、「悪いが、その話は後。とっとと家に入るぞ」という俺の適当な返答に、彼は納得行かない表情を浮かべた。 …納得行かないのも分かるけど、この話を義母さんに聞かれたら俺の身が危ないんだ。悪いな、ヒカル。 「…お邪魔します」 やはり他人の家に入るのは緊張するのだろうか、 まるで悪い事をした子供が、恐る恐る家に帰ったときの様な態度で玄関に上がるヒカル。 彼にとっては、他人の家に上がる事さえも危険渦巻く迷宮に乗り込む事と同意なのだろう。 しかしそれでも、框に上がる際に足の裏の肉球を自前のハンカチで拭くのを忘れない辺り、几帳面と言うか。 そうやって玄関から俺の自室に向かう最中、彼はマズルを前に突き出してしきりにすんすんと辺りの匂いを嗅ぎまわる。 「如何した? なんか変な臭いでもするのか?」 「あ…いや、他人の家に上がるのは初めてだから…」 ヒカルは俺の指摘に気付くと、少し照れた様に耳の後辺りを掻いた。 今まで遠目で見ていた時は、ヒカルの奴はイヌ族らしくない奴だと思ってたけど。 こういうさり気ない行動を見ると、こいつもやはりイヌ族なんだなと思ってしまう。 「…何? さっきから薄ら笑いなんか浮べちゃって…」 「あ、いや、ちょっと思い出し笑いしちゃってな。 気にすんな」 「……?」 危ない危ない、どうやら思いっきり表情に出てた様だ。 表情筋の豊かな人間はこう言う所が難儀な所だ。ポーカーフェイスを心がけないと。
「ここが俺の部屋。まあ、自分の家の様にゆっくりとくつろいでくれ」 「……」 そんな感じで我が御堂家の2階にある、俺の自室へと到着。 多分、他人の部屋に入ったのは初めてなのだろう、ヒカルは尻尾を揺らしながらしきりに鼻をスンスンと鳴らしている。 そして、その流れで本棚に目を向けると、彼は直ぐに興味を引かれたのか本棚へと向かった。 「へぇ…卓君の事だから、漫画本ばかりかと思ってたけど…小説が一杯あるね?」 「まあ、な。親父が物書きをしている関係、って言うんだろうかな、 良く何処からか本を貰ってきてな、その度に読んでみろって俺にくれるんだよ」 他人に本棚の内容を見られるのに何だかこっぱずかしい物を感じ、俺は思わず頭をぽりぽり。 「…ぼくと同じだね。ぼくも父が物書きしてるから、家には本が一杯あるんだ」 言いながら、ヒカルは本棚に整然と並ぶ背表紙に暫し見入った後、 ある一冊の本に目を止めて、「これって」と呟きながらその本を手にとる。 「ああ、それか…確か、それは親父の大学時代の親友が、自分が初めて出版した本だってくれた物だってさ。 その本、何度か読んでみたけど、何だか読んでると心が暖かくなるような詩集だよな?」 「これ…ぼくの父が書いた物だよ…まさかぼくの父が大先生、じゃなくて卓君のお父さんと知り合いだったなんて…」 驚きを隠せぬままに手にした本をぱらぱらと捲るヒカル。 言われて見りゃ確かにその詩集の作者は『いぬがみゆたか』、ヒカルと同じ苗字だ。 そう思うと、ページを捲るヒカルは古い友人に久しぶりに会ったような表情を浮べている様に見えた。 詩集を本棚に仕舞った後、ヒカルはふと、部屋の窓際に備え付けられた勉強机の上にある物に目を止める。 「所で…その机の上に並べられてるのは何?」 「ああ、これか?」 「うん」 机の上に並べられたそれを手にとって、俺はヒカルに聞き返す。 一見したら針金のピンの付いた丸いボールのような奇妙な物体。ヒカルが疑問の感じるのも無理も無い。 「これは閃光玉だよ。このピンを引っこ抜いてから3秒ほどで強烈な光を放つんだ。 その光をうっかり直視したら最後、10分近くは目が見えなくなるぜ」 「へぇ…これが…」 俺がこの閃光玉を作り始めたのは、小3の頃に親父が貰ってきた本に書かれていた製法を知ったその時から。 以来、小学生の頃は親や教師から逃げる時に、そして中学生から今では絡んでくる不良に対する牽制に、 この閃光玉は何時の時だって役に立ってきた。もうこれは俺にとってはアイデンティティみたいな物となっている。 閃光玉が置かれた台の横には、それを製作する為の高精度な計量機や乳鉢、フラスコやビーカーなどが並んでいる。 ここだけを見ると、とても一介の高校生が使っている机とは到底思えないだろう。 もし、これを科学教師のはづきちが見たら何と言うか…
「そう言えば、『片耳のジョン』第18巻で、ジョンがこれに似たのを使ってたような…」 「それ、俺が閃光玉を作ってるのを知った親父が、『面白そうだ』と言ってジョンも作ってるって設定を作ったんだよ…。 俺がそれを知った時の恥ずかしさとあったら、もう今直ぐ穴を掘ってその中に入り込みたいくらいだった」 「うわぁ…ある意味ファンにとって憧れのシュチュエーションじゃないか…なのになんで恥かしいの?」 首を傾げて問うヒカルに、俺は何処か暗い面持ちで『片耳のジョン』第18巻のある一節を言う。 「『この閃光玉はジョンが12歳の頃、カーター家の隣にあるマーカス家の人間の悪童に作り方を教えてもらった物だ』 …この『悪童』は他でもなく俺がそのモチーフ。しかもその『マーカス家の悪童』は後の作品にも度々登場しててさ…」 「えっと、その『マーカス家の悪童』に関する話と言うと、 確か、巨大な落とし穴を掘ったのは良いけど、ターゲットが落ちずに無関係な自動車が落ちて大騒ぎになった話とか。 大木にツリーハウスを作ろうとして、半分ほど完成した所で設置した枝諸共落ちてまたも大騒ぎになった話があったね。 それはひょっとしてひょっとすると…」 更に問うヒカルに、俺は大きく溜息を漏らして、 「それも全部、俺が今までにやった事だよ…親父、俺の忘れたい失敗談を面白おかしく書いて作品に載せるんだ…。 今まで俺は何度も止めてくれって頼んでるのに、親父は「善処する」の一言だけで一向に止めてくれる気配が無くてな」 「そう言えば卓君が図書室へ持ってきてた第21巻でも、『マーカス家の悪童』の話があったね。 爬虫類種の人が冬に飲む保温剤を、ジュースだと間違って飲んでその場でひっくり返ったって話。 それもひょっとして、卓君の失敗談って事かな…?」 「そうだよ…本当にこれだけは勘弁して貰いたいよ。もう次に何を書かれるかと思うと不安でならないぜ…」 「はは、ぼくの父が詩集作家で良かった。少なくとも自分の失敗談を本に書かれたりしないからね」 がっくりと項垂れる俺に、ヒカルは同年代の少年らしい笑いを漏らす。 にしても、もう読まれていましたか……流石は本の虫、ヒカル。俺の口から思わず漏れ出てくる溜息。 無論、この話も、俺が小学生の頃、利里のホットドリンクを間違って飲んでその場で倒れた出来事が元である。 こんな俺の失敗談を親父は何処からどうやって調べ上げているのか分からないが、いい加減止めて欲しい物である。 これ以上、自分の恥を全国レベル、いや、ワールドワイドにふれ回られたくは無い! と、俺が独り頭の中で憤慨している所で、部屋のドアからコンコンと軽いノックが響く。 このタイミングからすると、どうやら義母さんがお茶とお茶菓子を持って来た様だ。 「卓ちゃん、入るわよ?」 「義母さん、まだ入って良いって……っ!?」 俺が何かを言う間すら与えず、勝手にドアを開けて入ってくる義母さん。 そんな図々しい行動に対して、俺が一言文句を言おうと振り返り――そのまま絶句した。 「今日は主人の大ファンが来ているから、お母さん、張りきっちゃったわよ♪」 義母さんがにこやかに笑いながら呆然とする俺とヒカルの前に置いたのは、何処にでもあるホットケーキ。 ……ただし、その量が半端ではない。 何せ皿の上にホットケーキが何十段も積み重ねられ、さながらホットケーキの塔になっているのだ。 ……張り切り過ぎだ、義母さん。これ、朱美なら兎も角、ヒカルには明らかに食い切れんだろ? 「ヒカル君。遠慮せずにたっぷり食べて頂戴ね?」 「は、ハイ…」 義母さんは緊張と呆れを入り混じらせた表情を浮かべるヒカルににっこりと微笑みかけ、 ふんふん♪と鼻歌を鳴らしながらスリッパの足音を残して、俺の部屋を後にしていった。 後に残されたのは、盆の上で湯気立てる紅茶と部屋にそびえる一対のホットケーキタワー、 そしてそれを前に呆然とする人間とケモノの少年二人。
「……」 「ヒカル。無理して食わなくても良いんだ…後で俺が何とか……」 「食べるよ、ぼく」 「え? おい?」 暫し呆然とした後、ヒカルは何を思ったか、俺の制止を振りきってホットケーキタワーに挑みかかった。 銀に輝くフォークとナイフを武器に携え、高くそびえる狐色の塔に挑むは純白の毛皮の勇者、犬上 ヒカル。 彼の孤独な戦いの幕は今、切って落とされた! 「…うぷ。もう限界…」 ――そして10分後、戦いはあっさりと終結した。 あれからホットケーキを3枚半ほど食べた所で、彼の胃袋が無条件降伏を申し出てきたのだ。 何だってこんな無茶をしたんだこいつは……如何見ても食い切れないだろうに……。 「ほら見ろ、無理して食うからそうなるんだ…」 「で、でも…残したら卓君のお母さんに悪いと思ったから…」 ああ、なるほど……やっぱりこいつ、年上の女性にとことん弱いんだな…… もし、彼のこの性分が大人になっても続いていたら多分、姉さん女房に尻に敷かれている可能性は高いな。 「このホットケーキ、後で朱美でも来てもらって食べてもらうよ。流石に俺でもこの量は食べ切れんし」 「…ごめん…迷惑かけて」 少しでも消化の助けになればとヒカルの背中を擦りながら言う俺に、ぐったりとしたヒカルは申し訳無さ気に言う。 義母さんのホットケーキは美味しい事は美味しいんだけど、ボディブローの様に後になって胃にもたれてくるからな、 それを一気に3枚も食べたとあっちゃ、彼がそうなってしまうのも無理も無い。 まあ、朱美ならば、ホットケーキタワーだろうがものの三十分足らずで全て平らげてくれる事だろう。 ……問題は、どうやって義母さんを誤魔化すか、だが……まあ、それは後でゆっくり考えるとする。 「如何する? おやつ食ったら親父の部屋に行こうと思ってたんだが…お前のその様子だと無理じゃ…」 「行くよ。その為にぼくは卓君の家に来たんだ。これ位の事で会わないで帰るなんて今更出来ないよ」 問いかける俺の言葉を遮って、ヒカルは満腹で動くのが億劫な筈の体を奮い立たせる。 ピンと立った白い尻尾から見ても彼の闘志(?)は充分。どうやらここで彼を止めるのは野暮な様で。 ならばと俺は立ちあがり、ヒカルへ手を差し出して言う。 「其処まで言うなら仕方が無い。予定通り、俺が親父の部屋まで案内するよ」 「…ありがとう、卓君」 差し出されたその手を取って、ヒカルは微笑を浮べた。
「ここが親父の部屋だ」 「……」 俺の部屋から二部屋隣に有る、親父の書斎兼仕事部屋の前に俺とヒカルは到着した。 俺達の前で堅く閉ざされた重厚な書斎の扉は、果してヒカルにとっては如何見えているのだろうか? 皇帝が控える謁見の間へ続く扉か、それとも暗黒の魔王が待ち構える部屋へ続く扉か。 そのうちのどっちなのかは、彼の緊張した横顔からは読み取る事は出来ない。 そう考えている俺へ、唐突にこちらへ顔を向けたヒカルが問いかけてきた 「ねえ、今、ぼく達が部屋に入ってきたらお父さんの仕事の邪魔になったりしないかな…?」 「あ? ああ、この時間だと今は筆を休めている頃だろうし、入っても大丈夫だろう」 「え? そうなんだ…」 「親父はな、執筆作業をするのは1日に8時間まで、と決めてるんだ。 ンで、その理由を聞いてみると、何も親父が言うには『それ以上は疲れる』だって。 実にシンプルな理由というか、ただやる気がないだけというか……」 「へぇ…」 俺の呆れ混じりな返答に、感心しているのか呆れているのか分からない相槌を漏らすヒカル。 しかし、俺は彼のその態度にムッとする事は無かった。 そう、俺には一目で分かったのだ。今のヒカルは極度の緊張状態に置かれていると。 ……その証拠に、彼の尻尾と頭の毛がこれまでに無いくらいに逆立っている。 やれやれ、何処までも世話を焼かせるんだろうか、この文学少年は。 「さて、と、何時までも部屋の前でうだうだしている前に、とっとと入るかね」 「え!? 、ちょ、まだ心の準備が…ふぎゅ」 「親父、前に俺が言ってた大ファンの子、連れてきたぜ」 慌てて止めようとするヒカルのマズルを片手で抑えつけ、俺は盛大にドアをノックしながら声を上げる。 そして、そのまま数瞬ほどの間を置いて―― 「入れ」 うっかりしていたら聞き逃しそうな低いトーンの一言が、ドアの向こうから返って来た。 俺は義母さん譲りのスマイルを唖然とするヒカルの方へと向けて 「さあ、許可が出たぜ。早速入るとしようか」 「す、卓君…酷いじゃないか、まだこっちの心の準備が出来てないってのに…」 「あのな、だからと言って心の準備云々ってやってたら、それこそ親父の仕事の邪魔になるやも知れないんだぞ? お前はそれでも良いのか? ヒカル。…まあ、良いって言うんだったら俺は別に構いやしないけど」 「う…卓君はやっぱりずるいよ…」 ヒカルはまだ文句が言いたげだったが、俺は構う事無くドアのノブヘと手を伸ばす。 手に独特の抵抗を感じ、ガチャリと言う音が鳴り響くと、重厚な扉は俺の手によってゆっくりと開いていった。 「親父、失礼するよ」 「……」 悠然と部屋へと入る俺に続く様に、ヒカルは恐る恐るといった感じで部屋に入る。 其処に広がっていたのは、天井一杯の高さの本棚に整然と並べられた古今東西多種多様の本であった。 小説は元より漫画本に辞書、科学専門誌や生物図鑑、果てや解析不明の文字で書かれた奇妙な本まで、 それらが種類毎にあいうえお順になって整然と並べられていた。 それを前にしたヒカルの口から感嘆の溜息が漏れるのも無理はないだろう。 何せ息子の俺ですらも、この親父の部屋に本が何冊あるのか分かっていないのだ。 ……ひょっとすると、当の親父自身ですらも把握してはいないかも知れないが。
「……」 その書斎の最奥にある、本棚に囲まれた古びた机の前に座る、 『片耳のジョン』の様に右の片耳が途中で失われた灰色の毛皮の狼人の男性。 彼は口の端に咥えたパイプをぷかぷかと吹かしながら、部屋に入ってきた俺達を見守っていた。 尻尾をゆっくりと揺らす彼を俺は掌で指し示し、ヒカルへ紹介する 「そう、この人がお前の憧れの池上 祐一大先生であり、俺の親父でもある御堂 謙太郎(みどう けんたろう)だ」 「この人が…」 俺の紹介の後、ヒカルはある疑問に至ったらしく、はと俺の方へと振りかえる。 だが、ヒカルが何かを言い出そうとする前に、俺は静かにその口を軽く押さえ、頭を横に振る。 ヒカルも直ぐに俺が止めた理由を察したらしく、それ以上は言おうとはしなかった。 そんな俺とヒカルのやり取りに気付いてか気付いていないか、親父が低いトーンで俺へ問う。 「その子か?」 「ああ、こいつがこの前言ってた犬上 ヒカル。俺のクラスメイトだ」 「そうか」 俺の返答に対し、親父はポツリと簡潔に返す。 そのまま緊張しているヒカルをつぶさに観察する様に暫し無言で眺めた後、 親父はゆっくりとした動きで俺に退室する様にと手でジェスチャーを送ってきた。 親子同士の言葉を超えた関係、と言うのだろうか、それで何となく親父の意図を察した俺はヒカルへ言う。 「どうやら、親父はお前と一対一で話したいんだとさ、ヒカル」 「へ?…な、何で?」 「さぁな? 俺にも親父の考えている事はさっぱり分からんよ。 ま、そー言う訳でお邪魔な俺はとっととお暇しますわ」 「ちょ、卓君!? ちょっと待―――」 慌てて何かを言おうとしたヒカルの姿を、バタンと言う音と共に重厚な扉が覆い隠した。 これから親父がヒカルに対して何を言って、何を話すのかは俺には全く分からない。 まあ、流石に色々な意味で食われる事はないだろう。親父にそのテの趣味は無いと思いたいし。 もしあったらあったで貴重な体験が出来たと思ってくれれば……いや、流石にそれは駄目だな。色々な意味で。
「…あの人があんなに嬉しそうなの、久しぶりね」 「義母さん…」 背に掛かった声に振り返ってみれば、其処にあったのは漆黒の尻尾を揺らす義母さんの姿。 声を掛けられるまで気配を全く感じなかった。自分の義母ながら流石は黒豹と感心。 にしても、親父が嬉しそう? 俺が見た限りじゃその様子は全く見えなかったんだが…? 「あの人の表情はね、長く連れ添った私だけに分かるのよ、憶えて頂戴」 俺の表情を読みとってか、義母さんは年相応の穏やかな笑みを浮べ、俺へ言い聞かせる様に言う。 ……俺が生まれる20年以上も前、小説家と担当と言う関係から愛が芽生えて結婚した親父と義母さん。 以来、楽しい時も嬉しい時も苦しい時も悲しい時も、何時だって二人で分かち合って過ごしてきた。 そんな関係だからこそ、他人には決して分からない親父の微小な変化を、義母さんは読み取れるのだろう。 俺も、何時かは朱美とそう言う関係になれるのだろうか?……今はまだ、分からないままだ。 「…今までね、あの人の所にファンが来たって事はなかったのよ。 元から口下手な性格もあって、あの人、ファンの人が自分と会っても面白くないんだろうかって、独りで不安になってね。 それで、自分の住所とか電話番号とか一切伏せちゃって、一回も来させた事がなかったのよ」 ドアの向こうに居るヒカルと親父を眺める様に、何処か遠い眼差しで語り始める義母さん。 「でも、何と言うのかしらね? ヒカル君。 あの人は卓ちゃんの話を聞いて、若い頃の自分と重ねて見ちゃったのかしら。 無口で、人嫌いで、本だけが唯一の友達で、狼なのにわざわざ人を遠ざけていたあの人の若い頃。 それが今のヒカル君と殆ど同じだったから、あの人はヒカル君なら来ても良いって思ったのかしらね」 「…………」 俺は何も言わない――いや、言う事は出来ない。 ここで俺が何か一言でも言えば最後、義母さんが浮べている恋する乙女の表情が泡の様に消えてしまいそうだから。 寡黙で人嫌いな狼の小説家の青年へ恋心を抱く、黒豹のうら若き女性の純粋な気持ち。 それは20年以上たった今も尚、義母さんの中へ消えずに在り続けている。 ここまで想われている親父が、何だか羨ましい。 「あの子にも、何時かは私と同じ様に想ってくれる人が出来るのかしら? 出来るわよね? いや、ひょっとしたらもう出来ているのかも? あの子、あの人の若い頃に似て結構可愛いから」 義母さんの話を聞いている内に、俺は何時の間にかある新米教師の顔を思い浮かべていた。 だが、俺は直ぐに、それは流石に有り得ないだろうと、その考えを思考のゴミ箱へと放り捨てた。 幾らなんでも、そう言う考えは邪推に過ぎる。俺の勘違いは、あの新米教師にとっては迷惑な事この上ないだろう。 そう、人の勝手な思い込みほど、人を傷付けるものは無いのだから。
と、義母さんの話が終わり、俺が何かを言おうとした矢先、ガチャリと重厚な扉が開いた。 「……」 出てきたのは、両手で大きな封筒を後生大事に抱えたヒカル。 彼のその白い尻尾はフルフルとなんとも言えない動きを見せている。 さっきまで、ヒカルは親父と如何言う話をしていたのだろうか? 胸に抱えたその封筒の中には何が入っているのだろうか? 色々な疑問が頭の中で湧いては消えて行く。 「…どうだった、親父と何か話したのか?」 「ぼく…今日と言う日を一生忘れないよ」 「……?」 質問した所で返って来たヒカルの妙に意味深な台詞に、俺は思わず首を傾げてしまった。 一生忘れられない……どっちの意味で? まさか、親父……ヒカルに変な事してないだろうな? いや、親父に限ってそんな事は…しかし、万が一って可能性もある。 う〜ん、考えているだけで何だか凄く不安だ。 「卓君、本当にありがとう。君に招待されてなかったらこう言うチャンスは2度と訪れなかった」 「そ、そうか…そいつは良かったな」 「あらあら、良かったわね。ここまで喜んでくれるなんて、あの人の妻としても嬉しい限りだわ」 …どうやら凄く喜んでいる様で。尻尾の振りは勿論の事、目の輝きが違う。 この様子を見る限り、俺はヒカルを家に呼んで正解だった様だ。彼は何物にも換え難い宝物を得たようだから。 それにしても、こいつがここまで喜んでいる姿は初めて見る。 多分、今までに舞いあがるヒカルを見たのは佳望学園の生徒では俺だけかもしれない。 ……まあ、後でこの事を他の誰かに話したとしても、誰一人として信用してくれなさそうだが。 と、そうやっている間に気が付けば、時計の短い針は時刻が夕刻に差し掛かっている事を報せていた。 「あら、時間が経つのって早いわねぇ? ヒカル君、ご両親が心配すると悪いから、暗くなる前に早くお家に帰りなさい」 「…は、はい」 「卓ちゃん、電停までヒカル君の事、頼んだわよ?」 「はいはい」 義母さんは言うだけ言うと、はと何かを思い出したのか、 「ちょっと玄関で待っててね」と言う言葉を残し、パタパタとスリッパを鳴らして下の階へと駆けて行った。 うーむ、義母さんの事だからまた何かやらかしそうな予感。 しかし独りで不安になっている訳にも行かず、俺はヒカルを連れ立って1階の玄関へ。 「まってまってまって〜、卓ちゃん、ヒカル君、帰るのはちょっと待って」 「義母さん、一体なんだよ……慌てなくても待ってるぜ?」 そのまま俺が靴を履こうとした所で、片手に紙袋を下げた義母さんが慌てた調子でやってきた。 恐らく、俺の予想が正しければ、義母さんの持っている紙袋は……。 「ハイ、ヒカル君。これ、お土産のケーキ。ご両親と食べて頂戴」 「え? いや、その…そんなに気を使わなくても…」 「良いの良いの。 私の趣味みたいな物だから、遠慮しなくても良いのよ」 「……」 紙袋の中身は俺の予想通り、義母さんが腕によりをかけて作った手作りケーキ。 当然、ヒカルは受け取るのを遠慮する物の、結局は義母さんの強い押しにあっさりと屈し、素直に受け取った。
そして、夕日が辺りを黄昏色に染める夕暮れ時。 彼方此方の家の台所の窓から、夕飯の準備の匂いが漂う藤ノ宮電停へと向かう道を、 俺は両手にお土産をぶら下げたヒカルと共に歩いていた。 「ねえ、卓君…」 「ん、何だ?」 「いや、何でも無い…」 如何言う訳か、ヒカルは家を出てからと言うものこの調子。 俺に何かを聞こうとしては、途中で思い止まって言葉を止めてしまうを繰り返す。 恐らく、ヒカルは親父の部屋で言おうとした、俺の家族に関するある事を聞こうとしているのだろう。 そうなるのも無理も無い。けど、何時までもこうやっていても仕方が無いし。そろそろ切り出すとしよう。 「……父親が狼で母親が黒豹なのに、息子の俺が人間ってのおかしいとおもったんだろ?」 「あ、う、うん…」 考えていた事を俺にズバリと言い当てられ、 ヒカルは一瞬驚いた表情を浮べ、そして直ぐに尻尾を丸めて俯いた。 しかし、それに構う事無く、俺は話を続ける。 「実は言うとな、血の繋がった本当の両親は俺が赤ん坊、旅行先に事故にあって帰らぬ人になってるんだ。 んで、孤児になった俺が、親戚中をたらい回しにされている所を引き取ったのが、 他ならぬ実の母と親しい関係だった親父と義母さんだった訳」 「……」 俺の語った話に、ヒカルは悪い事をしてしまったかのように耳を伏せ顔を俯かせる。 御堂家の家族構成に疑問を感じた人が、本当の話を聞いてしまった時に必ずと言って良い程に浮べる表情。 他人の知ってはいけない、触れてはいけない部分を聞いてしまった罪悪感と言う黒雲が浮べさせる暗い表情。 多分、ヒカルもまた、その罪悪感によって心の内をどんよりと曇らせている事だろう。 だが、そんな時は俺は何時も、その黒雲を晴らす為に太陽のような笑顔を浮かべて言ってやるのだ。 「別に気にするなよ。俺の親友の利里だって朱美だって、俺の家族見て最初は同じ疑問を聞いてきたんだ。 『両親と種族が違うけど、何で?』ってな。でもな、血の繋がりが無いから何だっての。 血が繋がらなくとも、俺達が家族で有る事には何ら変わりは無いんだ」 「……」 「親父は寡黙だけど、あれでも俺の事はキチンと見守ってくれているし。 義母さんも義母さんで、少々お節介な所があるけど、実の息子の様に俺の事を深く愛してくれている。 それで良いんだよ。家族ってのは血の繋がりや戸籍とかじゃなくて、愛で成り立ってると俺は思ってる。 だから俺も気にしちゃいないし、お前も気にすんなよ」 「……」 ヒカルは最後まで、黙って俺の話を聞いていた。 そのまま暫く経った後、いきなりプっ、と噴き出して俺へ言う。 「愛とかって…まるでヨハン先生みたいな事を言うね、卓君」 「…っ! い、言うに事欠いて出たのはその台詞か!? この文学少年がっ!」 うん、心の黒雲の晴れた良い笑顔だ。しかし、よりによってヨハン先生をここで出すか!? おかげで俺の良い話がヨハン先生の受け売りっぽくなって全部台無しじゃないか! チクショウっ! 顔を引き攣らせて愕然とする俺を、ヒカルの奴はイタズラの成功したサン先生みたいに腹を抱えて笑う。 「プッ、あはは、図星だね。――って、耳引っ張るの止めて、アハハ」 「くっそー、触り心地の良い耳をしやがって! こんなラブリーな犬耳なんて揉みしだいてやるぅっ!」 「止めてって、くすぐったいじゃないか。ぷっ、あははは」 そして、夕暮れの太陽が暖かく見守る中、 笑い声と共に、イヌと人間の少年二人がじゃれ合う影が、遠くの何処までも続いていたのだった。
* * * かくて、ヒカルにとっては大冒険にも等しい我が御堂家招待ツアーも終わり。 日が落ちて再び日が昇れば何時もの通りの、少し気だるく生暖かい日常は戻ってきた。 あれから、ヒカルは少しは俺に対する態度が変わったかと思えば、さにあらず。 朝、教室に入った俺が「ヨッス」と挨拶をしても、本を読んでいる彼は俺を一瞥するだけで一言も返さなかった。 其処にいたのは何時もの通りの。無口で人嫌いで本だけが友人のイヌ族らしくないクラスメイトであった。 まあ、人の性格が1日やそこらで変えられる筈も無いのは俺自身よく分かっていたし、 これも仕方が無いかと思う事にした。 その中で、たった一つだけ変わった事とすると……。 「ったく、利里の奴も朱美も、家の都合で学校に来てないなんてな……。 今日は独り寂しくお弁当タイムですか、なんかやってらんねぇな」 その日の昼休み、俺が愚痴を漏らしながらやってきたのは、春の日差しも眩しいいつもの学校の屋上。 しかし、その隣に何時もいるであろう利里の大きな姿は無く、少々物寂しい。 と言うのも、何も利里の奴はこの日、祖母の三回忌で鹿児島にいるそうで……帰って来るのは明後日だそうだ。 ならばと意を決して朱美を誘ってみようと思ったのだが、朱美も朱美でNG。 何も、ザッキーから聞いた所によると、重要な用事があってこの日は来れないとの電話があったそうな。 如何言う重要な用事なのかは分からないが、何も学校を休むまでの用事なのだろうか……? (尚、後日聞いた話によると、その日、朱美は四月に廃止されるとあるローカル私鉄に乗りに行ってたそうで……。 その事実を知ったザッキーといのりんが怒りで毛を逆立てたのは言うまでもない事だろう) それならば、いっそのこと他の奴を誘えばと一瞬、思いはしたのだが、、 何時も利里とつるんでいる俺が今更、他のグループの輪に入るのは何処かこっぱずかしい物があって出来ず。 結局、俺はなし崩しに昼休みに突入してしまった。 まあ、そう言う理由もあって、この日に限っては、俺は独り寂しくお弁当タイムとなった訳である。 義母さんが作ってくれた3段重のお弁当も、この日ばかりは何処か寂しそうである。 「ま、こう言う日もあるさ…」 独り誰もいない空へ呟いて、俺は弁当包みを開く。 中に広がっているのは義母さんによって厳密に栄養計算をした上で色取り取りに盛り合わされた豪華なおかず達。 しかし、義母さんが腕によりをかけた弁当の中身も、見て味わうのが俺だけじゃ物足りなかろう。 「…凄い弁当だね」 弁当に箸を付けようとした所で、唐突に背に掛かった声に俺が少しギョッとしつつ振り向けば、 其処にいたのは何とヒカルの姿。その手には購買部で買った物だろう小さな紙袋とパック牛乳。 恐らくは昼飯を食いに来た、といった所だろうが……確か、何時もなら誰もいない場所で食ってた筈だよな? 「それ、お母さんが作ったの?」 「あ、ああ…」 驚きの余り、うめく様に答える事しか出来ない俺の様子に構う事無く、 ヒカルは俺から約数メートルほど離れた場所のベンチに腰を落ちつかせた。 そして、紙袋から取り出した佳望学園購買部特製日替わり名物、カレーヤキソバパンをぱくつき始めた。 そのまま何も語らう事無く昼飯を食べつづけて約数分、先に言葉を発したのは驚いた事にまたもヒカルだった。
「所でさ、卓君のお父さんの部屋。…ぼくが見た事の無い本がいっぱいあったね」 「あ、ああ、そうだな」 確かに、親父の部屋には如何言うルートで手に入れたか分からない本が沢山ある。 中には、かなり昔に絶版となって今や古書マニアが血眼になって探し続けている本もある。 しかし、それに如何言う価値があるかとか、そう言うのには余り興味が無い俺には全く分からないのだが……。 「出来れば…その、本を貸してくれたらなって…」 「……は?」 「い、いや、迷惑なら貸してくれなくても良いんだ。 …ただ、ちょっとだけ、読んで見たいなって思っただけで…」 恥かしそうに顔を俯かせ、言葉を萎ませて行くヒカル。 なるほど、こいつがわざわざここまで来た理由は、俺にこれを頼む為と言う理由があったからって訳か。 「良いぜ」 「…へっ?」 俺の返答が理解できなかったのか、思わず耳をピンと立てて疑問符を漏らすヒカル。 其処から数瞬ほどの時間を置いて、ようやく俺の言った事を理解した彼が顔を上げて、 「ほ、本当に良いの?!」 「ああ。どうせ親父の部屋においてても埃を積もらせるだけだからな。 だったら、本が好きな奴に大切に読んでもらった方が、本にとっても幸せだろうと思ったし。 それに、お前ならば親父も良いと言うだろう。……けど、ただしだ。代わりに二つ守ってもらう約束がある」 「守ってもらう約束…」 俺の言い出した『約束』の言葉に、ヒカルの表情に不安が過ぎる。 貴重な本の貸し出しと引き換えに言いつけられる約束。果してどれくらい厳しい物なのだろうか? と、ヒカルの頭の中には色々な想像がサイダーの泡の様に浮かんでは消えている事だろう。 しかし、俺はその想像を打ち消す様に、良い笑顔でサムズアップして言う。 「返却は一週間厳守、そしてこの事は他の奴には秘密な?」 「……そ、それだけ?」 ポカン、と呆気に取られた表情で聞き返すヒカル。 俺は胸を張って答える。 「当前だ、学校の図書館も貸しだし期間は一週間って決まってるしな。 それに、俺の家に貴重な本があると知って、それで悪さする奴が校内にいないとも限らないからな。 だから、借りる以上はそれだけは守ってもらうぞ?」 「う、うん。守るよ、絶対に守るよ!」 「よし、良い返事だ。……で、最初は何を借りたいんだ?」 ヒカルは暫く悩んだ後、意を決した様に顔を上げて、その本の名を告げる。 「そうだね…先ずは――――」 ……そう、たった一つだけ変わった事。 それは、俺とヒカルだけの秘密のやり取りが行われる様になった事。 恐らく、利里や朱美ですらも知らない、秘密の関係が出来た事。 たった、それだけだ。 ――――――――――――――――――――――了――――――――――――――――――――――
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……orz とにかく支援してくれた方に迷惑かけてすまなかった、 もう某シューティングゲームの弾幕くらいに厚くお礼を申し上げます。 避難所にも書きましたが、ヒカル君が貰った封筒の中身に関しては皆さんの想像にお任せします。 その方が話が膨らむと思ったので……。
乙ですw
よく見たら訂正するべき場所が…… ×……俺が生まれる20年以上も前、小説家と担当と言う関係から愛が芽生えて結婚した親父と義母さん。 ○……今から20年以上も昔、小説家と担当と言う関係から愛が芽生えて結婚した親父と義母さん。 読み直しているのになぁ……なんで気付かないんだろorz
おおぉ、乙。卓の設定が一気に広まったなぁ。なんかスケットダンスのボッスン思い出した。
卓は本当に主人公キャラな。やっぱ作者も人間だからそうなりやすいのか。
黒豹義母さんってなんか新しい。パタパタママ可愛いな。そして父さんはダンディー狼か、いいなぁ。
あとヒカル君の動きがいちいちかわいくて和んだ。尻尾掴んでも振りまくってる状況あるあるw
>>460 理由は番外編で書くつもり。今度は富樫病にかかんないように気をつけるわ
>>465 おおぉ!これは嬉しい!卓がすげーイケメンだ
ものすごく身悶えする羽目になったわ。こういうのって自分で書いたのに後から相当来るなw
すげえ!GJ!! ダンディ狼父、かっちょいいな。 ヒカルくんの大人しいけど、子どもっぽい所が良く引き出されてるww
モノレールみたいな形をした星間ロープウェイが到着し、気圧室から通じるロビーの扉が開いた。 その瞬間、扉の向こうで待ち構えていた11人の月兎(ルナ・エルフ)が仰々しく一礼した。 「Wellcome home!サザンコンフォートにようこそ!」 11人の月兎を代表して、一人が一歩あゆみ出る。彼が片手を胸に添え、もう一方をぴ しりと制服の折り目に合わせて紡ぐ礼の姿勢は、如何にも芝居掛かった調子だった。 だが、それでも星間ロープウェイの乗客達は、月兎の仕草ひとつひとつに歓声をあげた。 月兎はルナツアーの目玉なのだ。月兎とはコンピューター上で原子レベルまで再現した 月で、“無理の無い進化”を模索した結果生まれた宇宙種族であり、ゲノムデザイン担当 が日本人だったためか、おおいに兎似である。 そうして完成した月兎の可愛らしさったら、普通の兎と同じか、むしろそれ以上だった。 全身を覆う真っ白な毛並み、ピンと伸びた耳、赤いみつくち、ルビー色のつぶらな瞳。 まるで兎をちょっと大きくして服を着せ、2足歩行させたみたいな感じである。 「当月面ホテル“サザンコンフォート”は、お客様の第二の故郷を目指しております」 月兎は眼のルビー色を、茂った純白の柔らかい毛で細めながら、如何にもこなれた笑顔 でホテルの説明を始めた。 「ここは第二の故郷。溢れ出す郷愁!薫り立つあの日々!存分に浸ってください!」 11人の月兎は一斉に散らばり、客の一人ひとりに握手したり、ハグしたりしながら 「お帰りなさい!」と声をかけてゆく。 一通り挨拶が済むと、やはりさきほどの一匹が代表して話を進めた。 「御覧ください。どうです?核戦争で焼け爛れた糜爛まみれのあの星……地球も、ルナか ら見れば綺麗なものでしょう?」 月兎は、もこもこした手指で天井を指差す。 ロビーの天井は全面が透明度の高い樹脂で誂えられており、満点の星と、やや靄掛かっ た青い星が浮かんでいた。 「離れてこそ、郷愁は呼び起こされます。その情動は遠く離れるほど強く、深く、狂おし いほど愛おしい!土地を離れ、時が流れたらば、かの地は郷愁の対象となるでしょう」 大仰に天を仰ぎ、大きく腕を延ばしてくるりとターンしてから、自分を抱いて胸いっぱ いに空気を吸い込む。如何にもなオーバーアクションだが、その仕草は、戦前のディズニ ーショーにすら匹敵するような、堂に入ったものだった。 「思い馳せる郷愁の地。それこそが我々の目指すホテルでございます」 月兎はそこまで言うと、一旦鼻の頭の湿りをフカフカした柔毛の手で確かめ、にっこり と微笑んで続けた。 「お客様方。どうか当ホテルをご利用の間だけでも、地球の鬱屈を忘れてください」 月兎は、ピョン、と跳んで見せる。数十人もの客達の頭上を軽々と飛び越えた。 「いえ、きっと忘れられるでしょう。何せ星が押し退けるヒッグス粒子は1/6ですから ね。重力だって1/6です。皆さんどうか“ばいばい、アース”と言う気持ちでいてくだ さい」 月兎はそこまで言うと、さっきどおりの芝居掛かった調子で一礼した。
?シウ窶包シ代?ョ縺溘a縺ォ譖ク縺?縺ヲ縺?縺溘¢縺ゥ縲∝?ク蝙狗噪縺ェ迯」莠コ繝阪ち縺ォ縺ェ縺」縺溘?ョ縺ァ縺薙■繧峨↓
↑ S―1用に書いたけど、典型的な獣人ネタになったのでこちらに投下します って書いてます 文字化けサーセン
>>523 よく考えたら卓両親って犬と猫の夫婦なんだなー
ヒカル君頑張れヒカル君
GJでした
>>527 さすが日本人いいセンスしてんな
激しくかわいいんだろな
ただかわいらしさの裏になんかありそうな気がして仕方ないのはなぜだ
ぼいーん!(←そこかよ ・・・・・・・・・。 ぼいーん!(←結局そこかよ パイプの加え方とかかっこいいね。
>>534 何時も良い絵を有難うございます。
二人ともまさにイメージ通り、御堂夫婦の中の良さを感じさせる。
……それにしても、こんな血の繋がらないママンが居る卓が正直ウラヤマシス
>>526 漫画の方しか読んでないですけど、私は澪が好きだす(笑)
>>527 70年代日本SFな雰囲気を感じる気がするです。
>>535 御免なさいねぇ、おっぱいとふくらはぎが好きなもので(笑)どーしても…
パイプは、実はあんな形が有るかどうかも不明です。と言うか、ブラスで繋いだ
ら熱かろうと思うけど、何となく少し形の歪んだ物を持たせてみたかったので。
只、この形だと掃除が大変そう…
>>536 血は繋がってないけど、父親と卓の顔は何となーく似せてみました。
それにしても、旦那に恋してるこんな奥さんって、良いですねぇ。
うおこの2人かっこよすぎる!
恋する獣人妻は美しい
>>521 ヒカルくんと卓くんの話、楽しかったです!尻尾のモフさが目に浮かぶ。
池上先生と卓くんとヒカルくんの今後も期待っす。
で、ヒカルくんと泊瀬谷先生のお話を書いてみました。
長いので、今回は前半を投下しますよ。
the first part 〜父とぼく〜 サン先生に叱られた。 「ヒカルくん、これはー…よくないね」 ケモノの牙のような厳しさの中にも円らな瞳のような優しさを含んだ言葉で、サン先生はぼくを叱った。 教室で悪ふざけをして、危うく窓ガラスを割りそうになった…からではない。それはこの間、サン先生が英先生に叱られた理由だ。 本当の理由は数学の小テストの点。もともと得意ではない理数系のテスト、ぼくは白は白、黒は黒というはっきりした 答えを求める問題が苦手だ。頭で考えるより、どちらかと言えば尻尾で感じる文系のテストの方が得意だ。 いや、よくよく後から考えれば解ける問題なのだが、短い時間内で難解な数式を解くことが苦手なのだ。 そうだ。『片耳のジョン』のような明晰な推理が小テストで発揮できるならと思うと、尻尾がいつもより重い。 ただ、他の生徒が見ていないときにこっそりとぼくだけを職員室付近の廊下に呼び出して、 ところどころギャグも加えつつ諌めてくれるサン先生の細やかな心遣いに大人の暖かさを感じた。 ところが残念なことに、誰もいないと思っていた廊下に担任の泊瀬谷先生がふらりと通りかかったのだ。 職員室の近くだから泊瀬谷先生が通りかっても当然と言えば当然だ。泊瀬谷先生だって悪気は微塵もない。 だが、ぼくは泊瀬谷先生のことで、尻尾を振ることができなくなるぐらい落ち着きを失ってしまった。 ぼくが気にしているのはぼくが格好悪いところを見せてしまったと言うことではなく、 ぼくのことで泊瀬谷先生が気にしてしまうのでないかという、杞憂にも近いぼくの心情であった。 「ご、ごめんなさい!見てません、見てません!!」 自分が悪くもないのに泊瀬谷先生は自分がサン先生に謝り、抱えていた出席簿を爪跡が付くぐらい握り締め、何処かへ駆けていった。 柑橘とオトナのネコの香りを振りまくと、古びた廊下の木目に名の知らない白い花びらがはらりと落ちているように見えた。 「大丈夫だよ、ヒカルくん。今度点数取ればいいじゃん」 「そうですね…ありがとうございます」 小さな身体で背伸びしながらぼくの背中をぽんとサン先生は叩いた。 サン先生の言葉を頂いた後、校内でもっとも心落ち着く場所にぼくは自然と足が向かう。その場所への重厚な扉を開くと、 メガネをかけ、ふんわりとした栗色の髪を束ねた人間の女性がカウンターで軽くお辞儀をしていた。 側では小さな体のカメの生徒と、大きな体のゾウの生徒がのんびりてきぱきせっせと雑務をこなしている。 インクと活字の森は相変わらず静かなたたずまいを保つこの空間。顔の恐ろしいケモノの生徒もここに来れば 1、2、3を数える間もなく優しい子ネコになってしまうという、図書館マジック。そんな魔力を感じたことはないか。
「ヒカルくん、いらっしゃい。もうすぐ新刊が入荷するね」 「はい」 ぼくも司書の織田さんに会釈を返すと、そのまま歩きなれた通路を通りいつもの900番台の棚へ。 900番台。そう、図書館では毎度おなじみの人気コーナー。文芸書が本棚狭しとひしめく一角。 小説・詩歌・随筆と、ただ単に文字の羅列をそのまま紙に刷りまとめたものだけなのに、人を魅了することが出来るということに 気付いて世に送り出そうと考えた者ははっきり言って、すごい。なんとなく、「こうすればいいじゃん」と思って作り出したのだろうか。 ふと、先ほどサン先生から数式の解法を「こうすればいいじゃん」って言われたのを思いだした。 もしかして、ただぼくが数字を一方的に毛嫌いしているだけなのだろうか、と忘れていた小テストのことを思い出す。 しかし、小難しい理論はここでは無用。そんな思いでぼくの周りでふわふわと飛び回る理屈だけの数字を振り切ろうと、 目で見て、読んで、感じることも大事なんだぜ、と教えてくれる本たちをじっと見つめる。 しばらくして、今回借りたい本が決まった。 いつものように、前回の続きの本を一冊、お気に入りの作者で未読作品の本を一冊、そして新規開拓の本を一冊。 ぼくは図書館でも本屋でも必ずこのようにまとめて本を選ぶ。本の重さと読む前の期待感は等しいと思う。 貸し出しの手続きのためにカウンターに寄ると、外から体育部の部活生たちの歓声が聞こえてきた。 文科系だと自覚しているぼくにとって、体育会系の奴らの歓喜の声はある意味羨ましくも思う。 「あ…」 窓から一羽のタカの生徒が風をきっている様子が見える。大空部の部員たちが夏の大会目指して滑空の練習をしているのだ。 ぼくはカウンターに立寄る前にその光景をじっと見ようと、窓に近づきのんびりと眺める。 つーっ、と翼を広げて風任せに舞う一羽の部員。着地寸前、少し羽根を羽ばたかせ減速し、脚を浮かせて体勢を整える。 るっ、と静かに地面に降り立つと地上の下級生の部員たちは拍手をして、無事の帰還を讃える。 と、見覚えのあるイヌの男性が大空部員の中に紛れているのを見た。何だか見てはいけない人を見たような気がする。 出来ればその場から早く帰って欲しい。別にその人物を毛嫌いしているのではない。ただ、『この場所』からいなくなって欲しいのだ。 すこし恥ずかしくなったぼくはその光景を振り切ろうと、そして手元にある本を借りるべく、 カウンターに小走りで駆け寄り司書の織田さんに手渡すと、読んでいた外国の雑誌をたたんだ。 こなれた手つきでリズムよくバーコードを読み取りながら、織田さんはにっこりと笑っていた。
「そういえば、この間ね。あの人…浅川くんに会ってね」 「浅川…さん?あ…あのカギ尾のネコの」 世界中、本を求めて旅する根無し草のネコ。浅川シュルヒャー、職業・写真家であり旅人。 話によると彼は今、ぼくらの街にいるという。もともと住むところなんか気にしていないという浅川がこの街に居ることは 何か所以があってのことなのだろうか。織田さんに理由を聞くと照れ笑いをしながら、首を傾げるだけだった。 「なんでも、気になる人がこの街にいるんだって…。浅川くんらしいね」 「気になる人ですか」 「あの人、考えより行動が先に出る人だから…。おもしろいね」 織田さんの細い声をさえぎるように、廊下から聞き覚えのある笑い声が響いてきた。扉が開きっぱなしらしい。 ぼくはその声の元に走る。原動力が何だかは分らない、と言うより分りすぎて言いたくない。 兎に角、声が気になって仕方がないのだ。織田さんの一瞬大きくなった声が、無防備なぼくの背中に突き刺さる。 「ヒカルくん。図書館は走っちゃダメよー」 少し開いていた重厚な図書館の扉をさらに開けると、英先生と先ほどまで大空部員たちに混じって拍手をしていた 一人の初老の男のイヌが校内を歩いていた。彼は英先生に世間話をしながら、ゆっくり図書室に向かっている。 「いやー、先生のご趣味はお菓子作りですか?羨ましいですな!ウチの奥さんが仕事で海外に行くことが多いので 料理をすこしずつ覚えているところなんですがねえ。いやあ、何が難しいかって…奥さんの味に近づけないと息子が食べてくれない。 そうだ。わたくし、お菓子といえば最近わたくし、ホットケーキを焼くのに凝ってましてね、 この間、張り切って息子の為にたくさん焼いてみたんですよ。で、外から帰ってきた息子に見せたら『もう食べられない』って…。 一瞬、わたしの焼いたホットケーキがまずいのかと思ったら、友達のうちでおなかがはちきれるほど食べたわけですよ。 まあ、わたしもホットケーキだけに、…っと胸をなでおろしましたよ。ホットだけに、…っと、ね?」 「普段はお一人でお食事の支度をしているんですか?」 一人で嬉しそうな彼はぼくの前で立ち止まった。 ぼくと同じ毛並みを揺らし、ぼくと同じ尻尾をバタつかせているこのイヌの男性。 初めてぼくと彼を見た者でも、二人の関係はすぐに分るだろう。そのくらい分り易いのだ。 「あら、犬上くんのお父さまが今さっきお見えになって、図書館へとご案内しているところだったんですよ」 「父さん…何やってるの」 「おお!我が息子!こんな美人な先生に英語を教えてもらってるなんて、父さんもまた英語を勉強したくなったぞ! 英先生、さあ!!授業の時間ですよ?きょうは一人称の授業ですね。しまったあ!教科書忘れた!廊下に立ってこようかな」 「先生、彼にチョークを投げつけてやって下さい」 父は笑うだけだった。
いきなりすっと、ちんまい影が現れたかと思ったら、それはサン先生だった。 サン先生とぼくの父がお互い自己紹介すると、サン先生は父のことを見抜いたのか今までの流れに乗ってきた。 流れを察する能力がずば抜けているサン先生、初等部の生徒よろしくビシッと手を挙げて叫ぶ。 「英先生!犬上くんが教科書持ってくるの忘れたそうでーす!いけないと思います!帰りの会で問題にしたいと思います!!」 父は尻尾をピンと跳ね上げ、慌てた『演技』をする。 「サ、サンくんのいけず!!この間だって、サンくんは…」 「犬上くんもいけないと思います!この間、英先生のお菓子入れにこっそりとジンギス…」 「サン先生、お声が高いですよ。進路相談をしたいって生徒が…いらっしゃるようで…ね?」 学校一声の大きいサン先生の声は静寂を好むこの場所では歓迎されなかった。 顔色を変えた英先生はオトナの事情により若干オブラートに包んだ文面で、サン先生に生徒指導室へ来るように命じた。 サン先生は涙を浮かべて笑顔で感嘆する姿は本物の初等部の生徒のようであった。 「英先生のいけずー…」 遊び友達を失った父とぼくは揃って図書室の奥へと進む。だいいち、借りようと思った本をカウンターに置きっぱなしだったのだから。 「父さん、何しに来たの?仕事は?」 「ご挨拶だね、ヒカル。父さんはここに仕事に来たんだ。働く男は美しいだろっ。 見てごらんなさい。この光り輝くケモノの瞳はどんな金剛石にも負けないということを」 「うそつく暇があったら、ホントのこと言いなよ」 カウンターで一人ぼくが借りようと思った本を捲っていた織田さんは父を見ると、すっくと立ち上がり深々とお辞儀をした。 まるで、古くからの恩師に再会したように慇懃にお辞儀をしている織田さん。 図書委員の比取はきょとんと突っ立って、父を見ていた。そして、ぷりぷりっと尻尾を震わした。 織田さんはカウンターを比取に任せて、父とぼくを連れて図書館の隅の棚に連れて行ってくれた。 広い図書館の隅は古い蔵書で埋め尽くされているが、あまり借り手のないのも現状であった。 事実このあたりまで来ると、ちらほらいた人影もすっかり居なくなってしまっている。 しかし、ぼくにとって見覚えのある本が、ちらほらと目に入ってきたということはどういうことだろうか。 父は図書館の中ということを配慮して、迷惑のかからない程度の声で話す。 「ほう、ここに来ると本も立派に映るもんですね。見てみなさい、ヒカルくん。あれはぼくの尊敬する池上先生の初版本だ。 池上先生の文章は男のロマンを感じるよ。ぼくにはなかなかああいう文は書けない、やっぱり池上先生は天才だね」 古い本を褒め称える父はとある他の一冊を棚から手に取り、パラパラと捲り出した。 付近に古い紙の匂いだけがあたりに漂い、大人しい背表紙の色がぼくらを包み込んでいる。 そして父は本を捲る手を止めると、ニヤリと笑いぼくと織田さんに見せてくれた。 「ありましたよ。ほら、ヒカルが噛み破ったところです」
その本の途中のページは確かに破られていた。 その本の破られた部分は幼いケモノの歯型が付いていた。 その本の背表紙には父の名前が刻まれていた。 『19××年8月吉日 犬上裕 春屋書房にて購入』 父の筆跡と印鑑が歴史を物語る。父の年代の人は必ずこうして買ってきた本に署名をしていたらしい。 父は本を懐かしそうに捲りながら織田さんに昔話を語りかける。そうは昔でない昔話。 「ヒカルは小さい頃は泣き虫でしてね、いつもベソをかきながら家に帰ってきたもんですよ。 それでヒカルが泣いて帰ったときはわたしがなんとか彼を笑わそうと…苦心しましたよ。 でも、わたしが構ってやれないとき彼は決まって書斎に閉じこもっていたんです」 「そうなんだ、ヒカルくん」 「……」 ポンとぼくの肩を叩く父は話を続ける。 「ある時ですね、なかなか書斎から出てこないと思っていたら、こいつったら本に噛み付いていたんですよ。 急いで引き離そうと思って駆けつけたら、この有様です。急いで引き離そうとしたわたしもいけなかったんですけどね」 思い出した。 初等部に入ったか入らないかの年の頃、尻尾のことで近所の子にからかわれ、泣かされて父の書斎に閉じこもったことを。 まだ幼くて分別の付かないその頃のぼくは本を噛み破った後、いつもくだらないことばかり話す父から叱られたことを。 母からは何度か叱られたのを覚えているが、父から叱られた記憶はこれぐらいしかない。 「ごめんなさい」 ぼくは父と本に時を越えて再び謝った。何故かきょうは謝ってばかりだ。 ところで何故その本が学校の図書室にあるかのか。その答えは父が話す。 「ぼくの知っている写真家で、まだまだ若造なんだけど浅川くんって子が居てね。彼は有望ですよ。 そして、なんでもここにたくさんの本を毎年寄贈しているって聞きまして」 「そうなんですよね。浅川くんの本、わたしたちも毎年楽しみにしてるんです」 「彼が頑張っているんだったら、ぼくも負けられんってね…、ウチの蔵書をこっそり寄贈したんだよね」 「そのときはありがとうございます、犬上さん」 若い人たちに読んでもらえると本も喜ぶからと、父は説明した。どおりで見覚えのある本ばかりだ。 織田さんは「なかなか本の管理が進まない」と嘆いていたが、むしろぼくにとってはこのことがまだクラスのみんなに 見つからなかったことで内心ホッとしている。そこにぼくが噛み破った本がそれに混じって、図書館に並んでいたというわけだ。 「その浅川くんときょう、この学校で会う約束をしてるんだけど…遅いね、彼」
父はその破られた本を織田さんに渡すと、再び本棚を見渡し出した。 「これだけ本に囲まれていると、なんだか創作意欲が沸いてきますね。そうだ!紙とペンはありますか? 早く!早く!思い立ったら吉日とはよく言ったもんですよ!ね?織田さん?浅川くんよ、ごめんよ」 カウンターに行けば幾らかはあると織田さんが答えると、父は一目散にカウンターに駆けていった。 「犬上さーん。図書館は走っちゃダメよー」 織田さんの声はもはや父に届かない。しかし、その姿を見て笑っている人がいる。織田さんだ。 その理由を聞くと「尻尾の振り方がヒカルくんとそっくり」だからと。織田さんは目のつけどころが違う。 ぼくらがカウンターに戻った頃、父は夢中で書き物をしていた。比取がじろじろと父の背中を見ている。 父がものを書き出したら誰も止められない。そんなことは息子であるぼくには重々承知。 「ああいう人なんです」 そうやって織田さんを納得させるしかない。 止まることのない父を図書館に置いて、ぼくは借りた本を携えて再び窓から外を覗いた。 「あ?」 「どうしたの?ヒカルくん」 すでに大空部の部員たちは居なくなり、開いたグラウンドにいたのはカギ尾のネコの男性と短い金色の髪のネコの女性。 もちろん、ここの生徒ではないのは分りきったこと。だが、二人とも見覚えがある。 「あら、浅川くんが来てるね」 横から織田さんが並んで呟くと、熱心に紙に向かったまま父が尻尾だけをぶんと振る。 一方、ネコの女性は杉本ミナ。相変わらず、ラフな格好な彼女である。 二人の声はここの図書室まで突き抜ける。 「浅川くんよ、いい球投げるね!」 「球技は得意中の得意です!杉本さんが喜んでくれれば、オレは…!」 ミナと浅川はキャッチボールをしながら、楽しそうに笑っている、特に浅川ときたら…。 その姿を見ていると、浅川についてふつふつと興味が湧いてくるのは道理であった。 父といい、織田さんといい浅川という男に何らかの形で繋がっているから、興味を持つなと言うことは無理なお話。 織田さんにお辞儀をして、執筆中の父を図書室に置き去りにしてグラウンドの方へ向かうことにした。
以前、図書館で会ったときに浅川は話していた。 「きみの父上にお世話になってねえ。犬上ヒカルくん」と。 あのときはあまり話す時間はなかったが、今なら…と考えるとすこし毛が震え上がってきた。もちろん、いい意味で。 正直者の尻尾はゆらゆらと揺れている。廊下を一人駆け抜ける。グラウンドまであと少し。 「ヒカルくんの尻尾、捕まえたっ!」 子どもっぽい言葉と共に、後ろに引っ張られる感覚がした。 振り向くと、サン先生のような笑みを浮かべる若いネコの姿が目に入る。その笑みは次第に薄れ、潤んだ目に変わる。 「…ごめんね」 「……」 泊瀬谷先生は耳をくるりと回して声を小さくする。 もしかして、サン先生に叱られていたぼくのことを気にしていたのかもしれない。 わざと子どもじみた、しょうもないいたずらを仕掛けて、明るく振舞おうとしているのだろうか。 でも、心配しないで欲しい。ぼくは大丈夫。だんだん尻尾を掴む手が緩んでくる。 「尻尾…柔らかいね」 「そうですか」 誰もまわりにいないことを泊瀬谷先生は確認すると、ぼくの尻尾を手から離す。 一日の仕事を終えて、我が家へと向かう泊瀬谷先生。自慢したかったのか春の日差しに似合うスカートがふわりと揺れる。 真新しくスカートの尻尾穴の仕立て具合は美しく、そこから伸びる尻尾は戸惑いを隠せない。 ふと、ぼくの手首に柔らかくも、香りで言えば甘酸っぱい感覚がした。落ち着かないのか、無意識に出した泊瀬谷先生の爪が軽く触れる。 ぼくの鼻の位置に泊瀬谷先生の髪がふわりとなびく。廊下に若木が生え、伸びて、明るいミカンが周りに実り出す。 吹き抜ける春の風はぼくらにミカンの香りを運んでくる。誰にも見えないかもしれないが、ぼくには確かにそう見えた。 廊下の木目を数える目線で泊瀬谷先生は呟いた。 「玄関まで…一緒に、いこっか?」 「え…」 「迷惑かな。迷惑だよね…」 ぼくの手元を見ると、泊瀬谷先生の薄い手がぼくの毛並みに隠れていた。
いきなり名前欄間違った。 今回はここまで。次回に続く。
尻尾がwww
尻尾「テンション上がってきた」
>>548 つ、つ、続、続きが!きき、き、気になる!気になるう!!
>>548 キター!はせやんとヒカル君キター!待ってた!続きが超気になる
はせやんってもう完全に乙女だよなw
漫画から出た設定を使いこなしてるのはさすが
>>549 あれ卓が戻っ…ヒカル君かわいいねヒカル君
彼と友達になりたいな
555 :
告知です失礼 :2009/04/26(日) 12:10:28 ID:fxR/f9Os
創作発表うpろーだのシステムリニューアルについて告知 ・4月 27日ファイルアップロードの停止、及びファイルの完全削除 ・4月 29日新システムへの移行 という事らしいです。 今日明日でファイルをうpしても、すぐに消されちゃうみたいですね。 27日からリニューアル完了の4月29日までうpろーだも使えない、と。 ファイルをうpしようとしてる方はお気をつけ下さい。 大事なイラストは保存を忘れんな! もふもふ!
冬の風物詩、第3話の番外編。いなかったメンバーの話です。 本編と同時に見ないとわからないかもしんない。 『レッツゴー三匹』 「え…! 嘘…」 冬の休日、自宅でのんびりしていた芹沢モエのもとに届いた、一通のメール。 佳望学園とは別の隣町に住む仲間から送られてきたそれを見て、彼女はつい声を上げてしまった。 すごいものを見た。コウモリの女の子と人間男子が火事のマンションから子供を救助して 途中で墜落、病院に運ばれた。そんな内容の、軽いノリのメール。 一般的な犬や猫に比べると、コウモリは数が少ない。それが人間男子とつるんでいて そんな無茶をする女の子なんて、あのコ以外に考えられない。 即座に電話そしたが、どこの病院に運ばれたかまではわからないようだ。 そこで得意の高速タイピングで、数人いる隣町の仲間のアドレスに詳細求むメールを一括送信。 いつものギャル文字は使わない。真剣なメールであることは伝わるだろう。 それが功を奏して返信は早く、すぐにその病院を突き止めることができた。隣町で距離はあるが、電車に乗ればすぐだ。 行き先を尋ねる弟を無視して、身支度もそこそこにモエは家を飛び出した。 病院にたどり着くと、小さな体で踏み台に乗って受付と会話する、よく知る教師の姿があった。 「サン先生!」 「おぉ!モエじゃん」 「あのっ朱美がっ!」 「うん、ぼくもそれ知って急いで来たんだ。まさかあの2人がねえ」 「それでっ2人はっ!?」 「うーん…それがねぇ…」 サン先生が腕を組んで難しそうにうなる。 手に汗を握るモエをじっと見つめて…そしてニコリと笑った。 「2人とも元気だってさ!大きな怪我はないんだって」 張り詰めていた緊張の糸が切れて、モエは大きく息を吐いた。 「もー!やめてよ先生!」 すぱーん! ほっとした勢いで、つい弟にやるように教師の頭をどついてしまった。 「…痛い」 「あっごめんサン先生!」 「いやいーよ、さっきのはぼくが悪かった。さすがに冗談やってる場合じゃないね」 「そっか、2人とも無事なんだ…よかった…」 「ホント無事でよかったよ。同じ病室にいるってさ」
病室は3階の一番奥。少し遠いその距離を、まるで姉弟のように見える教師と生徒は並んで歩く。 先に来ていたこともあるだろうが、サン先生は2人の状況を驚くほど把握していた。 「え…サン先生現場にいたの?」 「いないよ。ぼくも人から聞いた話」 「なんでそんなに詳しく知ってるわけ?」 「ふふ…それは企業秘密さ」 サン先生は悪戯っぽくニシシと笑った。 モエのギャル仲間によるネットワークは広いが、彼はそれ以上に広い。相変わらず謎の多い先生だ。 3階の、最後の廊下を歩いているとき、サン先生がポツリと声を出した。 「あいつらさ、どうしてこの隣町にいたんだろうね…2人で」 モエはぴたりと足を止めた。サン先生も止まる。 2人。現場にいたのは2人だ。 あいつらは仲良し3人組だったはず。休日にこの隣町で、2人で、何をしていた? 「わかる? っていうか同年代だと2人のそういう話聞く?」 「…聞かない。たぶん、一緒にいたのは偶然だと思う」 誰と誰がどうだ、という話は、若い女子高生にとって話題の中心だ。 ことモエにいたっては、同学年のそういう情報なら全て把握している、と言っても過言ではない。 そしてあの2人については…親友レベル。どこまでも親友レベルの話しか出てこない。 そういう事実はたぶんないのだ。そう、今はまだ。 「吊り橋効果って知ってる?」 「えっと…何だっけ?」 「危険な状況を共にした2人は恋愛に発展しやすい。危険によるドキドキが恋愛感情によるドキドキだと勘違いするんだ。 ハリウッド映画で主人公とヒロインが絶対にくっつくあれだね」 サン先生の眼鏡がきらりと光る。 「で、あの2人も今かなりそれに近い状況だと思うんだよね」 「うん、あるある」 なんだか楽しくなってきた。この先生が大人気な理由はここなのだ。 「…若く健全な関係が生まれるのは素晴らしいことだ。他人が邪魔しちゃいけない」 「…え?」 「好きな人と一緒にいられる時間が、ずっと続くとは限らないんだから。僕は…」 「あのサン…先生…?」 「よしっ!行こうか。2人を邪魔しちゃいけないけど、ぼくは教師として見守らなきゃね」 一瞬、いつものサン先生とは違う、別人のような顔が見えた気がしたのだが… いつもの調子でズンズンと歩き出したサン先生の後を、モエは慌てて追った。
病室の前にたどり着き、かかった名札を確認する。 飛澤朱美 御堂卓 あとは空欄になっていた。8人入りの病室に2人きり。完璧ではないか。 音を立てないように少しだけ引き戸を開き、モエは上、サン先生は下と並んで中を覗き込んだ。 いた。奥から二番目のベッドに眠る卓と、ベッド脇のイスに座る朱美。 視界は良好だ。覗く2人は小さくガッツポーズをした。 しかし、問題もあった。 「あれっ朱美なんかしゃべった!?」 「あっちくしょー聞こえなかった!」 卓君…と、朱美の呟く声はなんとか聞こえた。続けて何かをしゃべったように見えたのだが、少々距離が遠い。 耳に意識を集中して、サン先生は耳をくいと持ち上げて聞いているのだが、2人の犬耳ではその小さな声を聞き取ることができなかった。 声が小さいと聞こえないのだ。これでは下手をすると重要な部分を聞き逃してしまうではないか。 せめてもう少し耳がよければ。もしくは耳のいいメンバーがここにいてくれたら。 そうだ、りんごだ。ウサギのりんごがここに来てくれたら… 「ちょっとあなたたち、何してるのよ!」 背後から突然響いた声に、2人はビクッと振り向いた。 天に伸びる長い耳。腰に当てた手。きらりと光る眼鏡。 「りっ、リオっ!?」 まずいリオはまずい。リオは真面目のまー子だ。覗きなんて認めないに決まっている。 「サン先生まで! 病室の前で何をs」 「リオー! 待ってたんだよリオ!」 最後まで言わせず、サン先生が嬉々としてリオに向かっていった。両手を取ってぐっと握りしめる。 天然…? いや、態度とは裏腹に尻尾がこわばっている。サン先生は必死だ。 「君の才能が必要なんだ!ずっと待ってたんだよ!来てくれると信じてた!!」 「え、あの…」 仮にも教師にそこまで言われて嬉しくない人はいないだろう。戸惑いながらもリオはまんざらでもない様子だ。 だったら私はリオの女の子の部分にかける。話せばリオもきっとわかってくれる…はずだ。 「リオ!今すごく大切な所なの! 朱美にとって正念場なのよ!」 「で、でも」 「ねえわかるでしょ、今邪魔しちゃいけない所なの!」 「そうなんだよ!今は静かに見守らなきゃいけないところなんだ」 「ねっ、ちょっとだけだから!後でかわいいアクセのお店に連れてくから!」 「わ…わかったわよ」 2人の猛烈な説得に圧されて、風紀委員リオはついに折れたのだった。 リオはたまたま用事で近くにいて、話を聞いていち早く駆け付けたとのことだった。何の用事かは聞けなかったが。 リオに簡単に状況を説明し、引き戸の隙間に3人の目が並んだ。上からリオ、モエ、サン先生だ。 「モエもうちょっと頭下げて、よく見えない」 共犯になったリオは割とノリノリだった。
※ここから先は極端に動きが少ないため、音声のみでお送りさせていただきます。 サン「こっちは準備万端なんだけどね…うーん…授業中ならまだしも…」ゴソゴソ サン「こらそこ! 寝てるんじゃない御堂卓!」バッ モエ「ちょっ!チョーク投げちゃダメだって!」 リオ「早く目覚ましなさいよ!飛澤さんかわいそうじゃない」 モエ「こら起きろー卓ー!」 リオ「…起きた」 モエ「起きたよ」 サン「想いは届くもんだ」 モエ「へぇー…」 サン「運が良かったんだね」 リオ「(あばらが2本イッたって…)」 リオ「飛澤さん…ホントに無理したんだ…」 モエ「何やってんのさ卓の奴…」 サン「いやあの、卓も頑張ったと思うんだけど」 リオ&モエ「女の子に怪我させてちゃダメ!!」 サン「…はい」 サン「卓起きた…あ」 リオ「…お」 モエ「…! キター!」 リオ「隣キター!」 リオ「宮もっ!!?」 サン「リオどしたの?」 リオ「……なんでもない」 モエ「へぇー、宮本さんってすごい人だね」 リオ「(わたしは落したのに…)」 リオ「飛澤さん…」 モエ「ちょっ卓何やってんのさ!情けないなーもー」 リオ「あーもーその無駄に広い胸は飾りか!」 モエ「今こそ使うとこでしょーが!」 サン「…やっぱり男って胸広くないとダメ…?」 リオ「おおおぉぉイッター!!」 モエ「朱美からイッター!!」 サン「………」 モエ「朱美…」(号泣) リオ「飛澤さん…」(号泣) サン「…冷たい」
サン「……ん…?」 モエ「あれっ?卓なんか言ってる?言ってるよね!?」 サン「うーん聞こえない…リオ!聞こえてる!?」 リオ「静かに!!」 リオ「…ぶふっ!!」 モエ「えっちょっ!!」 サン「卓何言った!?」 リオ「ええぇ…何、これ言えって…えええぇぇ」 モエ「教えて!ねえお願いリオ!」 サン「リオ!頼むよリオ!」 リオ「ええっと…ねぇ…」 リオ「…2人一緒なら無敵だ…的な」 モエ「ああああぁぁぁぁ!!」ビシビシビシ サン「痛い痛い痛い」 モエ「ほとんど告白じゃーーん!」スパーン サン「痛ったい!」ゴッ モエ「ふがっ!」 リオ「御堂君も言うわね…」 サン「…お、動いた」 リオ「やっと離れ……!!」 モエ「ちょっ卓っ!! ……///」 サン「うわ…ごめん見てる…」 リオ「ぅあああぁぁ…///」 モエ「やばい…やばいって…///」ギューーー サン「ふぎゅっ…くっ苦しっ…当たっ…」 リオ「…ふぅ」 モエ「あれ…これは…」 リオ「この雰囲気は…あ…」 モエ「やばい…いくか……」 サン「おおおぉぉ…!」 モエ「いけ…いっけええぇぇぇ!!」 リオ「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!」 ウオオオオオオオオオオオオオオ!! ぱこーん 周りの状況などまるで見えないリオレウスの突進の直撃を受け、 三匹のケモノは、まるでボウリングのピンの如く弾き飛ばされたのだった。 それはそれは美しい放物線で、三つの軌跡が描かれたそうな。 <おわり> 後でも一つ書く予定です。
ヌコかわえー
和風ですな
いちいち許可するためにレス返すのが面倒でしたら、
先手を打ってメール欄にでも[カード化許可]と入れていただければ。
>>562 ぬこぉぉー!
同一人物だとして話を進めてしまって実は別人だった場合のほうがトラブルになりやすいので、
そのあたりは慎重に行っています。
>>566 俺の為にメール欄で一手間ヨロという事ですねわかります
相変わらず乙でんな
>>567 まあ、そういうことになりますね……
二手間掛かるよりはマシだと思ってご辛抱ください。
軒を貸してなんとやら
さすがにちょっとどうかと思った
許可得るのが当然なのか… 同人板の 【管理人に】同人サイト乗っ取り・騙り厨警報xx【なってあげます】 に近い臭いがする。
さすがにメル欄に要請するのはちょっと重い気がするよ。 このスレの人達は、カード化するために絵を描いている訳ではないし。
時間があったからMTMスレ見てきたよ。 あなたのバッジの輝き具合は、同じものを纏うすべての仲間のバッジの輝きに影響することを常に意識してほしいな。
>>566 以前も書きましたが、ここに公開した画像を使うのは構いませんが、「カード化するた
め」に描いているんでは“無い”ってことをご理解いただけますように再度お願いして
おきます。
これから複数有った場合はちゃんと判別できるようにお答えしますので、それでご勘弁
ください。 あと、回答するときには一応同時に一枚は画を添えるようにしているため、
多少遅れる事が有りますので、その辺はご容赦ください。
話かわって
それにしても、卓から始まってひかるまで、思春期少年の話が一気に花開いたのは春だ
からですか(笑)?恋の季節っすか? 咀嚼能力遅くなってるので描くのが追いつきま
せんです。
土曜の土砂降りの日は、外に出たら目の前の階段の手摺りで烏丸さん達が大量に雨宿り
していてびびりましたよ。
あと、避難所の方で出ていましたが、某社の某デジタル一眼のCMのアニマトロニクス
はたまりませんなぁ。 早速新しいカタログ貰ってきました。
そっちのリクエストがなきゃどれをカード化したいのかわからないじゃない このスレ全部に許可出されたら全部カード化するの? 絵を投下するには毎回カード化について気にしなきゃならんの? 絵師さんどころかそっちにも負担増えると思うよ てか全然関係無いスレの負担をこっちに転嫁するなよ そしてケモナーの憩いの場に乱入すんなよ ヌコってかわいいよな
分かりました。
>>566 での発言は撤回します。
>>572 そのスレがどんなスレかは存じませんが、ケモスレを乗っ取るつもりはまったくありません。
カードはあくまでも“副産物”ですので。
>>575 ああ、あの時の方でしたか。
重ね重ねのご忠告ありがとうございます。
あなたには毎回お世話になっています。この場を借りてお礼を言わせていただきます。月並みな言葉ですが、本当にありがとうございます。
>>576 現状では乱入以外にリクエストの方法がないのが非常に心苦しいです。
あと、自分の負担が増える分には一向に構いません。むしろ(今もこうして)このスレの容量に負担をかけてしまっていることのほうが心配です。
ヌコかわいいは同意
スレの容量までは気にしなくていいと思うんだがw お互いにスレあるんだし、ばんばん意見交換?みたいにしても 全然問題ないと思うんだがねー
>>577 現在のやり方も、現状ではベターかなと思いますし、今回の二度許諾要請も安全方面に
ふった結果だと判れば納得できました。 ただ、他の方は判りませんが少なくとも私は
たまに貴殿がぽろっと出してくる「ご自分ルール」に、びっくりして『えっ?』っとな
ってしまうのです。もちろん、押し付ける意図など無いとは思いますが、とにかくびっ
くりするのです。 ですので、そこだけご配慮いただければ有り難いと思っております。
よろしくお願いします。
あ、途中で接続切れたのでIDが変わっちゃってますね。 597は575で、昨晩の562です。
ヌコポ
ニャッ
そのひとが頭オカシイのかどうかは知らないが とりあえずネコはかわいい。
なんのかんのいって初等部のコレクロミケ犬太ヨーコらはちみっこくてカワゆい
昨晩ひかる父を描いていて、途中でロダがメンテ中だってことを思いだして酒呑んで寝
ちゃったんですけど、あれっ?ロダって今現在でもまだ動いてます?今晩は流石に駄目?
>>585 実は初等部には流虎の弟達が居る(末の妹は就学前)って妄想してます。 が、今wiki
をみてたら「ケモ学」と「難解」って別シリーズなんですね。 勝手に弟妹描いてたけ
ど、これは別じんだよってしたほうが良いかしらん?
自分で描いた「夜会」を見返していて誰だか判らないひとが居てしばらく悩んで花音
だって事を思い出したものの…
某一眼のカタログのせいで虎スイッチが入ってる今日この頃。 手足が太くて短い虎の
こっこが犬太なんかとわきゃわきゃ走り回ってるって考えるだけで鼻血出そうです。
>>586 難解シリーズは、SSの中でもDNA(両親と子供の)の話が出てきて
「ケモ学とはまったく別シリーズだよね」ってかなり過去のスレで
持ち上がったはず
どのみちこのスレのキャラだし、厳密に分ける必要はないよ ケモナーがわいわい集まって創作できる場として成り立ってれば多少の整合性は犠牲でおK
>>586 そうだ、こうすれば良い。ウィキに直接うpするんだ。
今回だけはうpろだがメンテ中と言う理由がある訳だし、誰も文句は言わないだろう。
ヒカル父のイラストを堪能しつつ、後半を投下します。 なんだか、甘々展開の演出ですいません。 出来れば、さるさん除けに支援お願いいたします。
しえん!
the latter part 〜ヒカルと学校〜 女の人、ましてやぼくの担任教師。ぼくの手首をはじめて握った手の持ち主はそんな人のもの。 幼きぼくが書斎にこもり、誰かに構って欲しくなったように泊瀬谷先生は誰かを必要としているのかもしれない。 ゆっくりと揺れるぼくの尻尾が、泊瀬谷先生の尻尾に触れた。ぼくはどう答えていいのだろう。 言葉で答えずに、通り慣れた廊下をぼくは泊瀬谷先生と一緒に歩くことで返事とした。 ネコなのに柑橘の香りが好きだなんて、教師なのにすすんで生徒の手を握ることぐらい珍しい。 もし、幼きぼくが父の本を噛み破ろうとしたときに今の泊瀬谷先生に出会っていたら、というありえない仮説が頭に浮かんだ。 きっとぼくは泊瀬谷先生の甘い匂いに包まれながら泣いていたかもしれない。その匂いが全てを許してくれるかもしれないから。 柔らかい尻尾を枕によいこのねんねをしていたかもしれない。そして、本を噛み破ることもなかったかもしれない。 分別付く前だからネコとイヌというケモノの差を忘れて、思いっきり泊瀬谷先生の手を握っても許されたのに。 所詮、それは叶わぬ夢。現実に戻ると、玄関から吹き抜ける風に乗って、泊瀬谷先生の甘酸っぱい香りがぼくの鼻をくすぐる。 今の泊瀬谷先生は教壇に立っている姿を忘れさせるのに十分なくらい、小さく、そして幼く見えた。 「わぁーお?男の子!甘酸っぱいね!」 さばさばした声がぼくらに届くと共に、すばやく泊瀬谷先生は手を引っ込め隠すように後ろに回した。 声の主は杉本ミナ。ふわふわとミカンの林を歩いている間、気づかないうちにぼくらは玄関まで来ていたのだった。 手に野球のグローブをはめ、腰に手を当てている体育会系のミナ。彼女は校舎の様子を見に玄関まで来ていたのだ。 ミナは泊瀬谷先生の姿を見ると、グローブを外して軽くお辞儀をして、冷たい風を耐え切るような大人の口調でこう尋ねた。 「学校の方ですね?サン先生はいらっしゃいますか」 「ええっと、サン・スーシの方はただいま席を外していまして…」 泊瀬谷先生はさっきまで見せていた家庭的なお姉さんの顔でなく、世間と闘うりりしいキャリアウーマンの顔をして、低い声で答える。 ご生憎さまにサン先生は英先生に連行されたまま(表向きには『生徒と進路相談中』となっている)、未だ解放されていない。 泊瀬谷先生は職員用の下駄箱から自分の春物のパンプスを取り出し、履き替えミナと一緒に外に出た。 ぼくは追って生徒用の玄関から外に向かう。その間に考えた。ミナにぼくと泊瀬谷先生のことを見られてしまったのではないかと。 からっとした性格のミナのことだから、別になんとも思っていないだろうが…やはりぼくが気になるのは…。
「泊瀬谷先生って言うんですね?ども、浅川と申します」 「杉本です。サン先生とは学生時代、お世話になりました」 そう。とっぴな行動を見られたのじゃないかと、泊瀬谷先生が気にしていること。 泊瀬谷先生はなんでもかんでも自分のせいにして、自分で自分を追い詰める人だから尚更心配だ。 グラウンドに着くと、泊瀬谷先生と杉本ミナ、そして浅川が一堂に会してごあいさつをしていた。 浅川はかすかにつんとする香りを漂わせていたが、それは写真の現像で使う酢酸という薬品の匂いらしい。 朝方まで自宅の暗室にこもり、出版社に送る写真の現像作業に追われていたからだという。 「ビジネスのためだからね。ネコ用シャンプーの減りが半端ねー!」 ミナはミナでサン先生に会いに来たらしいが、会うことが出来ずケラケラと笑い飛ばす。 半ばあきらめモードのミナ。履き慣れた編み上げブーツで小石を蹴る。 「よし、浅川くんよ。キャッチボールを続けるよ」 「は、はい!不肖・浅川、杉本さんに付いてゆきます!」 グラウンド端に二人は走り、キャッチボールを再開させた。 長身の浅川から投げ出される球は結構速い。大空部の滑空には及ばないが、それを受け止めるミナも負けじと好球を返す。 ふと、ミナの投げた球を浅川が取りこぼしぼくらの方に転がり、飛び出した泊瀬谷先生が拾った。 泊瀬谷先生はわたわた走る。初めて見る鞠に何ごとかとじゃれる、幼い子ネコのようにも見えた。 「泊瀬谷せんせーい!こっち!こっち!」 浅川の声がするほうに泊瀬谷先生は思いっきり投球を試みるが、あさっての方向に飛んでいってしまった。 それでも愚直にも浅川は追いかける、そして遠くに走る。しかし、泊瀬谷先生の投球は偶然ではなかった。 泊瀬谷先生は例えば職員室で失敗したときの顔をしていなかった、というのがぼくの目にも分る。 玄関でミナと会ったときの顔と同じだったからだ。いや、後姿しか見えなかったから確証がないが、きっとそうに違いない。 それを裏付けるかのように、泊瀬谷先生は投球の後、「うん」と頷き、すぐさまミナの元に走っていった。 気になるぼくも付いていく。 ぼくがミナの元にたどり着くとミナは疲れたからと、ぼくにグローブをぽんと投げ渡し交代を申し出た。 「杉本さん、お待たせ…おお?今度はヒカルくんだね!よし、浅川大リーグボールを受け止められるかな!」 無駄に張り切る浅川の瞳は炎立つ。しかし、気になるのは背後から聞こえる弱気な泊瀬谷先生の声。 「杉本さん…」 「ミナでいいよ!」 「あの…さっき…。さっきのこと…」
生徒の手首を掴み、並んで歩く教師を見ればきっと教師の方に氷の視線が突き刺さるだろう。 でも、ミナはそんなことではやし立てるようなネコではない、はずだ。 泊瀬谷先生は本当に物事を気にしすぎる。早く泊瀬谷先生の尻尾を楽にさせてあげたい。 でも、大丈夫。ミナを信じて欲しい。 浅川のボールが返ってくる。ヤツは本当に球技が上手いのか、運動の苦手なぼくにでも上手く取れる球を返してくる。 しばらくはミナと泊瀬谷先生の声とボールの捕球する音しか聞こえない。 「ミナさん。あの…あの…」 「大丈夫。ヒカルくんを信じてね。先生、わたし…応援してる」 「そう、ですか」 「でもね。せんせは『お姉さんだから』って、張り切っちゃだめよ」 サン先生と同い年のミナは泊瀬谷先生より上だ。ミナは何でもこなせるようにも見える。が、こんな人ほど孤独に弱い。 校舎のほうから父の声がした。 「ヒカルー!仕事終わったよ」 「ずっと仕事してていいのに…」 父に聞こえるように大きな独り言。それでも懲りないのが父の良いところでもあるし、悪いところ。 「いやー、やっと仕事があがってね。詩ばっかり書いててもなかなか収入がねえ…、奥さんに叱られちゃうんだよね。 『あなた、もっとお金になる仕事をやってみたらどうなの?』ってね。このままじゃ、今度帰って来たときにまた怒られちゃう。 だ・か・ら、エッセイを書いてみたんだよね。思ったままつらつら書けばいいからねえ、周りのことを。 そうそう、我が息子よ。エッセイのネタ、ありがとう!出演料として10円あげよう!嬉しいだろ」 嫌な予感がした。父の尻尾は振り切れそうだが、ぼくの尻尾は力なくだらりと垂れている。 浅川は父に会えたことに興奮し、ミナはケラケラ笑い、泊瀬谷先生はご都合さまの愛想笑い。 「おお!浅川くんよ!素敵な企画を持ってきたね。作家が母校に戻って来る写真記事、編集さんに後生大切にしてもらえよ! さて…浅川くん。鬼のような編集者の目に涙を溢れさせるほどの作品を撮ってやろうじゃないか!」 「犬上先生!それじゃあ、早速図書室に行きますか。オレ、機材持ってきますから!」 張り切る浅川はグローブをぼくに渡した後、どこかに走っていった。 泊瀬谷先生はぼくに「もっと数学を頑張らないといけないぞお」と強がってみせた。 そして、独りぼっちになったミナは心なしか無口になっていた。
こつんと小石を履き込まれたブーツで蹴っているミナは今までのミナとは違う声で呟く。 「いいお友達を持って、よかったと思うんだ。うん」 「……」 「ヒカルくん。泊瀬谷先生を大事にしないといけないよ」 例えばネコの女と、イヌの男。種族が違うふたりが一旦破れてしまえば元に戻ることはあるのだろうか。 幼きぼくが噛み破った本のように、元に戻らず痛々しくもちぎれたまま形を残してしまうのだろうか。 それを考えるのはつらすぎる。 グラウンドに大きな声が響き渡る。どうやらサン先生が英先生のお説教から解放されたようだ。 「いやー!生徒がどうしてもぼくと相談したいって聞かなくて!」 「サン!遅いぞ!サンの方から呼び出しといて、こっちは待ちくたびれたんだから!」 「ぼくも忙しいんだからね。早くぼくのポケバイを見てくれよ!コイツったら、駄々をこねてるんだぜ」 「ふう、今度はポケバイね。ホント、サンはバイクばっかり乗ってるんだから」 「ミナもね」 ミナはサン先生に向かって走り、ペチンと快音をサン先生の頭で鳴らして、二人とも自転車置き場へと消えて行った。 残されたのはぼくと泊瀬谷先生だった。 「英先生も大変ですね」 「でも…、サン先生はもっと大変かも」 ぼくらが二人の心配をする権利も義務もない。 英先生は教師の義務を果たしているだけ。サン先生は学園の一員としてぼくらを楽しませているだけ。 こんな小難しいセリフを言わなくても、理屈なく学校は楽しい。 「サン先生、楽しそうですね」 「そ、そうね。ヒカルくんもそう思うんだ」 多分、学園の誰もがそう思っているに違いない。大人のクセして、少年の行動力を持つ数学教師、サン・スーシ。 しかし、同じような人物がぼくの身の周りにいたことを忘れていた。彼の名前は犬上裕。そして、もう一人、浅川シャルヒャー。 学校にいても、家に帰ってもコドモな大人がいるぼくにとって、彼らの魅力はこうして初めて気付く。 犬上裕と浅川シャルヒャーが校舎からニコニコしながら出てくるのが見えた。嫌な予感がする。
待ってました!支援
「おお!我が息子、何を憂う?いやー、撮影は楽しいねえ。何しろカメラマンの腕がいいし、被写体も最高…だなんてね。 おや?お隣にいるのはもしやヒカルの担任の先生、とか?ヒカルも美人の先生に囲まれて、コイツったら!」 「犬上くんの担任の泊瀬谷です。お父さま、初めまして」 泊瀬谷先生は深々と父にお辞儀をした。 一緒にやって来た浅川はと言うと、ミナが居なくなっていることに気付いて少し落ち込んでいた。 「杉本さん…、帰っちゃったかな。あはは」 「……」 「でも…キャッチボール、楽しかったなあ。杉本さん喜んでたし、まっいいか…ははは」 力なく頭をかきながら笑う浅川だが、立ち直りは早そうに見える。 「父さん、尻尾が濡れているんだけど…」 「いや、その…なあ!浅川くん。説明してあげなさい!」 「いやいや!ここは『言葉の錬金術師』犬上大先生の素晴らしいセリフで、みなさんのハートを鷲掴み!」 「父さん…ぜったい何かやったでしょ」 父の尻尾が明らかにおかしい。尋常じゃない濡れかただ。いい歳して水遊びでもしたのだろうか。 それに、必死にぼくらから隠そうとしているところが怪しすぎる。 「浅川くんがやろうって言ったんだよね?『芸術の為なら、このアングルは外せない』とか、 『これを外すなら、オレは写真家を辞めてやる』って。ぼくは知らないよ!浅川くんのせいだもんね」 「い、犬上先生?!先生とあろう方がなんてことを!『ぼくの詩にはこのカットがぴったりだ』って言ったでしょ?」 いい歳をした大人が子どもじみたいい争いをしているのを見て、泊瀬谷先生は笑っている。 口数が少ないゆえ泊瀬谷先生の気持ちを動かせないぼくに対して、いとも簡単に泊瀬谷先生の笑顔をかっさらう父と浅川に嫉妬。 早くこの話題を振り切りたいのか、浅川はぼくらに提案を始める。 「ところでヒカルくんに、泊瀬谷先生。折角だからここで一緒に写真でも撮りましょうか?」 「そうだね、ヒカル。浅川くんに撮ってもらうなんてなかなかないぞ!お友達に自慢しよう!」 ぼくと泊瀬谷先生の写真…。 普段は無機質な建物ばかり撮影している浅川だが、お調子者の性格なら人物の写真を撮る方が向いているのではなかろうか。 内気な泊瀬谷先生を言葉巧みとは言えるほどではないが、どんどん乗せて教室で見せる以上の笑顔をレンズに向けている。 「ヒカルくん!もっと!ほら、泊瀬谷先生を恋人と思ってくっついて!あー!その先生の笑顔、頂きました!」
さるさん?
ちくしょう。ラスト1レスがエテ公で…。 避難所に投下しました。支援の方、お願いします。 そして、ありがとうございます。みんな、だいすきだー!
606 :
代理投下 :2009/04/29(水) 00:27:16 ID:kKtcqigV
浅川のお陰で時が過ぎるのを忘れる。そして、浅川はぼくらをフィルムに次々と焼き込んでゆく。 姿は永久に残るが、心地よい柑橘の香りは今だけ。浅川とてそれを残すことは無理なこと。 「ほう、ヒカルも泊瀬谷先生もなかなかお似合いのカップルに見えてきたな」 「犬上先生!これが『浅川マジック』っすかね?人を撮るなんて久しぶりですけどね! 泊瀬谷先生の耳を摘みながらの上目遣い。最高っですよ!ヒカルくん。恥ずかしがらない!」 夢中でシャッターを切る浅川の背後から、ミナが自分のバイクを押しながらやって来た。 おそらく、自転車置き場に向かったと言うことは何らかの修理をしていたのだろう。 「素材は生かすものなんですかね?だんだん乗ってきたなあ!おおっ、ヒカルくんの尻尾の揺れがいい具合に モーションブラーがかかってる。躍動的だな。ほら!もっと尻尾を振って、尻尾を振って!」 喜劇を演出する舞台監督のようにぼくに演技指導を始める浅川。背後にはその姿を見てよほど滑稽に見えたのか、 くすくすと笑っているミナ。浅川は悲しいかな、全く気付いていなかった。 「ははは!今度はあっちの銀杏の木の側に移りますか?被写体が良いとオレのシャッターの冴えもいつもとは格段に違…、す?杉本さん?」 全身の毛並みが逆立てた浅川。カギ尾がくるりとまるく収まる。 男・浅川は普段のおちゃらけたカメラマンの姿をミナに見せるより、仕事に徹する職人の姿を見せたかったのだろう。 今すぐ浅川に爪とぎ用の木の板を渡したい。きっと夢中で爪を研ぎ始めるだろう。 「う、うむ。これこそわたくしが求めていた芸術だな。はは…。で、では…後一枚でフィルムがお終いですが?」 「浅川くんよ、無理するな。体が針金みたいになっているぞ」 父の言葉なんか全く耳に入れず、カメラを構える手はしっかりとプロの姿をしているが、尻尾は少年の日を思い出したように揺れていた。 最後のシャッターを切ろうとした瞬間のこと。ミナがぼくらの前にバイクに跨ってすいっと横切った。 「わたしも撮ってよね?」 「す、杉本さん?お安い御用ですよ…!今度一緒に写真撮りに行きま…しょう」 ぼくらを背景に最後の一枚は愛車に跨るミナの姿で終わった。 浅川は悔しそうだが、むしろ満足気に見える。しかし、もっと満足そうなのは泊瀬谷先生だった。 何故なら、父の目線とカメラのレンズがミナの姿に隠れたのをいいことに、そっとぼくの手首を握っていたのだから。 おしまい。
あれ?支援足りなかった?
皆さん、ありがとうございます! これで投下終了っす。さるさん、どうにかしてよ…と思いながら、また…。
何か近頃さるさんの基準おかしくなるのが多いみたい。そこら辺は運任せだのー。 ぐああ…泊瀬谷先生とヒカル君の組み合わせがギュンギュンくるぜ…! 浅川の「今度撮りに」も気になるぜ…! ヒカル父は尻尾濡らしてまで何をしてたんだぜ…!
ああぁー なんかもう…あああぁぁー 焦れってー焦れってえなぁ畜生w 微妙に微妙に現実的になってきたな はせやん乙女っぷりにも程があるってんだ
↑は誤爆です、無視してください。
↑は誤爆です。610さん御免なさい もふもふされたい!!!!
おちけつw
サン先生が考案する ↓ 水島先生がデザインする ↓ 英先生が縫う ↓ ヨハン先生が試着する ↓ 来栖が黄色いレオタードを着る ↓ 烏丸氏が撮影する ここまで妄想した
私も思ったですよ。でも権利団体が「二次創作は徹底的に叩く」とか言ってるってのを 聞いて一気に醒めました。 そこまでして奴等につきあうネタでもなかろう、と。 これならマーシャにアナロ熊の格好させたほうが楽しそうな気が…
しかしアナロ熊は基本クマーだからな さすがにマーシャのイメージに合わないw
先生ノリいいなww
雅人くんを忘れてたぜ ていうかマーシャ先生ノリが良いなw
なるほど必要なのはあのポーズかw しかしこう並ぶとマーシャって意外に小さいのな。なんともかわいいおばちゃんだ。
ヒカルとはせやんがいい感じになるたびに頭の中でぼくたちの失敗が流れて欝になる俺は駄目な子だ
ねーよww
や、あるあるww
高校教師かよw ギャップありすぎだろ
あ。アナログマで思い出した。ニュース記事みてたら、アナログマって 2ちゃん発祥のものだったのかw てっきり何かの公式キャラかと思ってたよ…ちくしょう、だまされたw
あー…わかる ケモ学は基本和むんだが、読んでたり書いてたりすると たまにどす黒い何かをぬるりと感じるんだぜ おまえらだ卓康太惣一ヒカル
ヨハン涙目www
ギャルゲ主人公たちかwww
人間女性が意外と少ない? ルル 織田 祥子 美千代 他にいたっけ?
いのりんの奥さんとか?
>>617 見てふと思った
マーシャって見事に
(=ω=.)
だよなw
AAにするとこなたw
英先生しかりマーシャしかり、なんでこの学校のおばちゃん達はこんなにも魅力的なんだらうw
ババァ結婚してくれ!
ババァと申したか
ババァのなかでも白先生派なのは俺だけじゃ…ない筈だ。 白先生!叱ってくれ!
消毒されるぞ・・・
ああそれも本望だ
こいのぼりかぁ 幼稚園で作るんだよね、こういうの
マーシャといのりんの子供が幼稚園で同級生・・・ こういう繋がりを見てるとなんだかほんわりした気分になるわぁ・・・
404 File Not found...
あららら、アップローダのリニューアルが丁度入ってしまったのですね…
みれないざんねん
645 :
創る名無しに見る名無し :2009/05/04(月) 18:08:49 ID:Kyorn79O BE:31401784-PLT(15000)
おぉこれは和む光景だ こういうちっこい鯉のぼり作ったなぁ、懐かしい 写真二枚は両親…? いや、気になるとこだ サン先生というよりフリードリヒの顔してるよね
何故かマーシャの旦那と息子の顔をもう少し隠しておこうかと思ったものの、 結局描いてしまいました。 いのりんの息子も最初描いたときはおとなしそ うな感じだったのに、だんだん私の中で元気なボウズに。 フリードリヒの二枚の写真は… (ヒント:カーネーションが二本、赤と白)
「八木教頭♪」 「気味が悪いですぞ」 立派な皮のソファにどしりと腰を下ろすとかすかに埃が舞った。 分厚い資料を丁寧に開き、校長は上機嫌に語り始めた。 「みたまえ、この学力テストの結果を!」 「校長が試験を受けたワケじゃないのにやけに嬉しそうですな」 「他校と比べても恥ずかしくない結果じゃあないか、絶好調絶校長!」 「そりゃ、名門私立としては悪い学力偏差を出すわけにはいかんでしょう」 「正直、足を引っ張ってる生徒もちらほらいるわけで、今回のテストは心配だったのよ」 「んー、私としては、もうちょい伸びてほしいところではあるんですがな……」 「八木ちゃん、どうにかしてよ。頭悪いのはみんな顔が怖くて注意したくないのよ」 「どうにもならん奴はどうにもならんですな。 下を引き上げることより上を伸ばす授業を、と考えております」 「それでいいよ」 八木教頭は老眼鏡を掛けなおし、学力テストの順位を一つずつ追っていった。 「犬上、蜂須賀、柊と……上位に食い込むのはやっぱりいつもの面子」 「あー、頭良い奴も顔が怖いのねー」 「そういう問題ですか」 「9割ってすごくね?」 「彼らにしちゃ、ちょっと下がってますね。 それほど難度の高い問題だとは思わなかったんですが」 「きびしっ!」 「順位は下がり気味にもかかわらず……なぜ」 教頭はペラペラと順位を遡っていく。 ほぼ満点の点数の中から「佳望学園」の名前を探す。 校長はすでに紙面ではなく教頭を見つめていた。 「……誰だ? 校長、これは、どなたかご存知ですか?」 「横文字ぃ? だれだっけか、こんな人生徒にいたかな?」 「500点満点。 これはなかなか期待できるんですが」 「フリードリヒ?」 「誰ですか? 私は存じ上げませんよ」 「だ、誰?」 「私の記憶に無いってことは、てっきり校長が裏口入学させた生徒なのかと」 「ないない、そんなのないよ」 「気味が悪いですね」 「転校生かなー? いないよねー? 新入生にも、フリードリヒって……」 「ミスプリントですかね、ちょっと電話で確認してきます」 「あいよ、よろしく八木ちゃん」 八木教頭は足早に校長室を出て行った。 扉が閉まったとき、埃が少し舞った。 「掃除しなきゃ……」
白いカーネーションは故人の母に贈る花だっけ…
>>648 カーネーションの花言葉は
白…尊敬 純潔の愛 亡き母を偲ぶ
赤…母への愛 真実の愛 愛情
…深いなぁ。すげーじわっときた。
勝手に作った設定が生かされてるってのは嬉しくて仕方ない。多謝。
>>649 相変わらず楽しい校長だな。
しかし校長記憶に無いのかよwそれはさすがにダメだろww
名前知ってるの本格的に英先生だけじゃんw
652 :
649 :2009/05/05(火) 00:32:33 ID:AF0qBM/K
伏線を 張ったつもりで いたのです 掃除しなきゃ…… はフリードリヒ関連を隠す意味で言わせてみた フリードリヒの正体を明かさぬように校長は教頭を騙したわけだ。 ごめんなさい意味不明でした。
>>648 両方ともすごくいい絵
いのりん、マーシャ両家の男の子は母親似かぁ
たまに見せる大人の顔、普段の雰囲気、表情との落差がすごいよ、サン先生
>>649 マジなのかイタズラなのか判別がつかないw
しかし高校のテストで満点採るのは現役教師でも難しいらしいという話
>>652 そうだったかー…いやこっちも読みが甘かった
すまん校長あんたを軽く見すぎてた
そりゃあ曲者揃いの中で校長やってるんだもんな
いのりん・帆崎・はづきち・白倉・獅子宮・サン「曲者だなんてとんでもない」
みんなで言うなw
『拝啓 天国の母さん。 そちらでは如何お過ごしでしょうか? ここはもう春も過ぎて少し汗ばむ位の陽気になりました。 不安と期待を入り混じらせながら始まった高校生活も既に一年が過ぎ、楽しく学園生活を満喫しています。 多分、母さんは俺の事が心配かと思いますが、俺は大丈夫です。 恐い顔だけど気が優しく友達想いな利里。 天真爛漫で場を明るくしてくれる朱美。 小学生の頃からの長い付き合いの二人と一緒なら、 これからどんなに辛い事や苦しい事があっても、俺は笑って乗り越えていけると思ってます。 血の繋がらない俺の事を、実の子の様に育ててくれている御堂夫婦。 少しそそっかしい所があるけど、何時もにこやかな笑顔で時には優しく時には厳しく俺に接してくれる利枝義母さん。 言葉数が少なく、感情を表に出さないけど俺の事を優しく見守り、時にはそっと手助けをしてくれる謙太郎義父さん。 俺はこの二人の深い愛情を常に感じ、本当に幸せだと思っています。 つい先日の母の日、俺はその愛情に何かで返してあげようと利枝義母さんにカーネーションの花を贈りました。 花を受け取った利枝義母さんは余程嬉しかったのか、 しばらく小躍りをした後、終始嬉しそうに尻尾を揺らしながら花の匂いを嗅いでいました。 今頃は花瓶に生けたその花を自分の枕元に飾って、宝物の様に眺めている事だろうと思います。 少しだけ遅れましたが、そちらへもカーネーションを贈ります。 俺が初めてアルバイトして溜めた金で買う花です。 まあ、利枝さんにはバイトした事は内緒していますが…。 最後に、俺を生んでくれてありがとう。 母へ 息子の卓より』 「……こんな物で良いか」 そう、ポツリと漏らした後、卓は自ら綴った手紙を封筒へ入れ、ベランダへと出る。 そして、ベランダに出た卓は何を思ったか、ライターでその手紙を燃やし始めた。 「こうやれば天国へ手紙が届くって聞いたけど……本当かな?」 たなびく煙を見上げながら、卓は誰に向けるまでも無く独り呟く。 その視線の先、空高く上ってゆく煙は満天の星空へ吸い込まれる様に消えていった。 それはまるで、煙と言う形になった手紙が、遥か遠くの天国まで届いてゆくかのように。 「さて、と。明日は義母さん親父と一緒に花屋行った後で墓参りに行かないとな」 手紙が燃え尽きるまで見届けた後、卓は燃え滓を片付けて自分の部屋へと戻る。 その後姿を、空に輝く無限の星々が優しく見守っていた。 ――――――――――――――――短いけど了――――――――――――――――――――
翌日 花屋の店先にて。 謙太郎「……」 利枝「あら…あなた、如何したの? さっきからきょろきょろと……」 謙太郎「……変な視線を感じる」 利枝「あらあら、ひょっとしてあなたのファンなのかしら? だったらサインを書く準備をしてあげないと……」 ??「……(パイプを咥えた枯れ枯れの狼のオジさん。 あのハードボイルドな雰囲気、落ち着いた物腰……ああ、何てダンディなの! あれが妻帯者じゃなければもっと良かったのに!)」 卓「……(多分、その変な視線の主はあの人間の女店員なんだろうけど……。 何処かで見た憶えはあるんだけどな? う〜ん、全然思い出せないや……)」 こんなワンシーンがあったとかなかったとか。
>>646 を見てああ、そろそろそう言う日だったんだと気付いて書いて見た。
反省していない←(ヲイ
こっちも天国の母への贈り物か せつないのう
ライダーの携帯にメールが届いた。 怖い叔父を持つ馬男、塚本からだった。 『母の日に贈るハナって何だか知ってっか?芥子だっけ』 ボケているのだろうか。 ライダーは『コスモスだよ』と簡単に返信し、そういえば母の日だったな、と思った。 警官を目指す鎌田は体力試験に備えてジョギングを日課としている。 その日課のついでに、文字通り、通り一遍の儀式として、母親にカーネーションを買う事にした。 母の日に花を贈るなんていつぶりだろう。 花屋の店先に並んだ綺麗なウェーブを持つカーネーションを見て、鎌田は思った。 (狩り難そう) カーネーションはコロネーション(戴冠式)をもじった名だと言われるくらい、花が先端に突出している。 花が突出していていると言う事は、カマキリが待ち構え擬態化するべき茎や葉から花が遠いことを意味する。 野生のカーネーションは葉が柔らかいためアブラムシもたかり易く、蟻が多数護衛に付いているだろう事は想像に難くない。 きっとこの花を狩り場に選んだカマキリは相当苦労するに違いない。 夜の街灯に居て蛾でも捕まえたほうがよほど効率がいい。 もっと花が下葉に近い位置で咲くほうが狩りはしやすいだろう。 「何本お包みしますか」 「え? あ、はい、じゃあ五本くらい」 花屋の店員に話しかけられ、鎌田は頭のお花畑でのサバイバルをやめた。 「はい。母の日だから花、買って来たよ」 「あらあら」 鎌田がお母さんに花を渡すと、お母さんは笑顔満面に。 「……」 ならなかった。 母の微妙な表情を見て、鎌田は聞いた。 「あれ?母さんて花嫌い?」 「そんなわけでもないけど」 鎌田の母は言った。 「親戚にそっくりで。花カマキリの」 母の顔は、微妙な、から、明らかに苦り切った表情へ。 「すっごいナルシストで、嫌な奴でねぇ」 「……ふーん」 こののち、鎌田家で2〜3日飾られた花は誰に愛でられるでも無く早々に処分された。 鎌田は母の日に花を贈らなくなった理由を再認識したのだった。 GW明けの学校にて。 塚本が鎌田に話しかけた。 「母ちゃんにコスモス買ったらよー、花屋に微妙な顔されたんだぜ? 花屋っつーのは母の日も知らねーんだな。マジ馬鹿だ」 「……へー」 マジ馬鹿はどっちだよ、とは言えない鎌田だった。 終
カーネーションにそっくりな花カマキリ人見てみたいww
>>659 おお卓も粋なことするなあ
義母さんかわいいよ義母さん
そういや彼は枯れた感じの中年だったな
>>661 脳内妄想おもろいなw
どこまでカマキリなんだよ彼は
塚本は愛すべき馬鹿だな
>『コスモスだよ』 嘘教えるなよwwww
あ、そうだ。雑談スレでもあぷろだの話出てるので参考までに。
利枝さん可愛すぎだろ常考…
これはなんという美人さん
花屋さんは何も悪くない 悪いのは塚本の頭です
来栖「コスモス贈ったんだ、やるな」
塚本「おうよ。なんか母ちゃん微妙な顔してたけどな」
鎌田「…」
ぱらぱらと辞書をめくる来栖
来栖「へぇ、コスモスって、『秋の桜』って書くんだな」
塚本「秋の桜か。 ふうん… 秋の…」
塚本「!」
鎌田(秋の花を春に贈る不自然さにやっと気が付いたかな?)
塚本「なんだ桜か、そんなら秋にも花見が出来るんだな。知らなかったよ」
鎌田(! 出来ないよ! そもそもコスモスはキク科、桜はバラ科で全然
関係ないし、草と木でまるっきり違うよ!)
塚本「んじゃ春のは『ぼたもち』で秋のは『おはぎ』って言うけど、
秋の『桜餅』は『コスモス餅』って呼ぶのか?」
鎌田(知らないよ!と言うか秋の桜餅って何だよ?桜餅は桜餅だよ!)
来栖「『どうみょうじ』じゃないのか?」
塚本「それだ!」
鎌田(どれだよ!)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=11&img=11.jpg
突然皆殺しフラグ
ピンクのアフロwwwww
馬の人気に嫉妬
塚本wwwww競走馬になったのかw
トンフル陰性でようございました ていうか体温計どこに挟んでたんですか><
( ゚∀゚)o彡゜
( ゚∀゚)o彡゜
いやこれははだけた胸部分からわきに挟んだんだよ 谷間で図ったようにしか見えませんが><
谷間じゃ正確性は期待できんだろうなw
豚と鶏とヒトがそろって保健室で「熱っぽいんです」とか さすがに不謹慎ですよね
性的な意味で不謹慎だと思ってしまった俺はもう駄目かもしれない。
あんまり腕振らないであげてください(笑) 犬猫では最近鼓膜の赤外線を測 るタイプの体温計が使われているようですね。 この子豚ちゃんもSSとか書いて貰えるように釣り書きをば。 名前は伊部淑子(いべ・としこ)。身長低めのトランジスタグラマ。小学生 の授業で自分の名前をカタカナで書いたとき、点が重なって「トシコ」と書 いたものが「トンコ」と読めてしまい、それ以来渾名が「トン子」になる。 本にんはあんまりこの呼び名を好いてはいない。 母とふたりの母子家庭 (ちなみに母の名は梨子)で、小さいころから受け持っていたために家事全 般は得意中の得意。 手芸部所属だけれども、どちらかというと料理(特に 御菓子作り)をやりたがる。 割と内向的、ひと見知り。 容姿にコンプレ ックスが有るので写真に撮られるのを嫌がる。 こんな辺りまでは妄想できました。 そう言えば数年前に「馬インフルエンザ」で競馬が中止になった事が有ったの を思いだしました。
そんな俺はお茶を持ってきた(ビシッ)
かるかんたら、しっかり馴染んでるw
ナガレの家めちゃくちゃ風流なんだなw すごい豪邸の和風家屋に住んでそう
婆ちゃんがいたりしそうだな。 礼儀とか厳しそうな。
華道の家元とかそんな感じのばあちゃんがいそうだ
今おもったけど茶道家の流れの母親ってやっぱ猫だよな 猫舌の茶道家…ぬるいお茶だされそう
多分真剣とか使える
なぎなたを扱えるばあちゃんがいい。ハチマキとか巻いててさ
こちかめの夏春都みたいだ はると!?
うわすげぇしっとり夫婦 ナガレとおちゃんそっくりw
しとやかだけど泣きほくろがセクシーだなぁ
調子に乗るなよぃwww 奥さんに惚れそうになるから困るw
もう既に惚れてる俺に隙は無い
既にライバル多数かッ!
おれも参戦するぜ!
この隙に誰も注目していない利枝さんは俺が頂きますね?
706 :
創る名無しに見る名無し :2009/05/09(土) 23:40:01 ID:sZDTfLVq
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1241626059/l50 ここは創作発表板の荒らし”天候制御の人”に関するスレです
天候制御の人◆zpwRGXQQBs
HNはたびたび変わるがトリは一緒である。
主なHN=バセンジー、羽島士朗、天候制御、千秋、シヴァイン(´゜゜)
もともと同人板で活動、後に活動場所を創作発表板に移す。
音屋として某ゲー作成スレでBGM担当をする。
作曲速度が早い(11曲/スレ発足後一週間)。
作り溜めていたものを出してきた可能性あり→失踪したスレ主と同一人物の可能性。
属性はケモホモ。いわゆるオス同士の獣姦。
※ゲー作成スレは獣姦物ではない普通のものである
詳しくはググれ。
みんながナガレかあちゃんにときめいている隙に白先生を嫁にいたたく
ナガレ本人は俺が(ry
リオレウスw 俺もモンハン囓った程度だからよくわかんないけど、 雌の火竜は緑色でリオレイアって言うそうですよ
>>709 利里「おー、俺の色付きのイラストだー。凄くかっけぇぞー。
けど、妹は緑色だった筈だぞー?」
リオレウス! 投下します。
「因幡くんじゃないか?奇遇だね。きっと神様からのぼくへのご褒美じゃないのかな?」 「しっかり屋さんとはいつもと違う、ポップでキュートな格好の因幡くんもいいじゃないか。このヨハンが言うんだからね!」 「風紀委員・因幡くんもいいけど、やっぱり女の子してる因幡くんがいちばんだよ!そう思わないか?」 軽薄。勘違い。そして、ご機嫌取り。 人を悲しい気持ちにさせる為だけの言葉のような男が因幡リオの目の前に居る。ヨハンだ。 リオは日曜日を利用してちょっとした旅行も兼ね、よその街で開かれた同人即売会『こみけっと』に出かけていた。その帰り道のこと。 人の波にもまれてどっと疲れているときに、リオがいちばん会いたくないヤツに出会ってしまったのだ。 のんきに愛車の窓から顔を出して、家路を急ぐ人が溢れる駅前通りにてキャリーカートを引きずりながら とぼとぼと歩くリオをヨハンは発見したのだ。カートの中の『こみけっと』での戦利品の山が、巌のようにリオの腕にのしかかる。 いつものメガネからコンタクトに変えて、髪型も明るい外はねにし、ぱっと見に『因幡リオ』だと分からないようにしていたのに、 ひっそりと生きる乙女の苦労を踏みにじり、一発で見抜いてしまうヨハンの嗅覚をリオは恨めしく思う。 悪気のないヨハンの台詞がリオの耳に突き刺さる。一刻も早くここから立ち去りたい一方、 相手はああ見えても学校の教師なので、いくらめげないヨハンでも邪険には扱えない。八方美人のいい子ちゃんを 今まで続けてきたリオも、ヨハンのことで今まで積み重ねたものを崩したくはなかった。わが身がかわいいのは誰も一緒。 この日一日を共にしたキャリーカートが、先ほどまでよりもいっそう重く感じた。 「折角だから、ぼくのシトロエンできみの家まで送ってあげようか?」 「ええ?ヨハン先生…悪いですよ。ウチ、そんなに遠くないし」 教師と生徒との会話だ、と言えば「送ってもらえば良いのに」とお思いだろうが、その教師がヨハンという人物を知っているならリオの返事も頷ける。 無論、ヨハンも一秒でも長く女の子と一緒に居たいという『男子の純粋な気持ち』と、重い荷物を引きずる リオを哀れんでという親心から、リオを車に誘っているのだ。しかし、ヨハンの親切心はマヨネーズ嫌いの者が食べようとするサラダに 「美味しいから!」とたっぷりマヨネーズをかけるようなもの。強く断ると悪いから、やんわりたしなめても、相手は図に乗って ぎゅっとマヨネーズを搾り出す。リオもリオで、きっと旅行先のことを根掘り葉掘り聞かれるんじゃないかと、冷や汗をかいている。 「困っている子を見ると、ついついぼくは救いの手を差し伸べたくなるんだよね」 「困ってません!」 ヨハンと目が合うのを避けながら、眉を吊り上げてリオは反論した。 「今日はねえ、かれこれ3時間ばかりここに居たんだけどさ。待ち合わせの時間に遅れてるのかなあ、あの子」 「先生。たぶん、すっぽかされたんでしょう」 「おやおや。そんなこと言うなんて因幡くん、どいひー」 『どいひー』なのはお前の脳みそだぞ。尻尾ばっかり振っていると薄っぺらく見えるから、少しは自重しろ。 と言ったつもりでリオは堪えていると、一人の女性のイヌが近寄ってきた。 「あの…すいません!十字街まではどうやって行くんですか?」 「えっと、わたしも同じ方向に行くのでご一緒に!!」 何か叫ぶヨハンを振り切り、リオは女性のイヌと共にその場を去った。 彼女は純白な毛並みを光らせ、腰まで伸びたウェーブがかった髪を風で揺らし、リオと同じようなキャリーカートを引っ張っていた。 落ち着いた色のスーツから甘い香りが放たれ、磨かれたパンプスで街の石畳を鳴らす彼女の姿はリオにはまだまだ遠い大人の女性だ。 駅前の電停に止まる市電に、キャリーカートを転がしながら二人揃って飛ぶように駆け込む。
リオはしっかりキャリーカートの取っ手を握り締め、イヌの女性に一言でもいいから何かを伝えようとしていた。 「あのー、何ていうのか…ありがとうございます」 「久々に帰国したら、イヌの男も軟弱になったもんだね」 疲れているのか、イヌの女性はつり革を頼りにうな垂れ、息を切らしながら嘆いた。 続けて、「あんなヤツは無視しておきなさい」とリオに一言物申すものも、リオは「あれはウチの学校の先生なんです」と…言えなかった。 車内の窓ガラスには背の高いイヌの女性と肩をすぼめるリオの姿が並んで映っている。 満員とは言えないながらも混雑している市電の車中。市電はうなるような声を上げながら電停を出発すると、 車中の一同は慣性の法則よろしく、後ろへよろけそうになる。軌道の上を重い車体を左右に揺らし、一路繁華街へと進んでゆく。 「お嬢ちゃんも旅行?」 「は、はい」 気だるい声でイヌの女性はリオのキャリーカートを見て問いかける。こんな大荷物を持っていれば、旅行と思われるのも当然。 中身は何であれ、旅行は旅行。家に帰れば思いっきり読書にふけることが出来る。その楽しみだけにきょうは疲れに出かけたのだ。 「あのー、お姉さんも旅行ですか」 「そうよ。旅行してるの。世界中のいろんな人と会いに…。ビジネスだけどね」 「楽しいですか」 「楽しいよ」 イヌの女性はリオには見慣れた風景を懐かしむように眺めている。リオにとってどうでもいいような街路樹や喫茶店も、イヌの女性にとっては 久しぶりに開いたフォトアルバムのように見えているのだろうか。そういう目を彼女はしていた。 「次は十字街です。お降りの方は…」 車内のアナウンスが目的地である土地の名を叫ぶ。が、彼女は降車ボタンを押す気配を一向に見せない。 市電の速度が遅くなるにつれ、リオは一種の焦りのようなものを感じ始めた。それでも、市電はモーターの音を抑え始める。 「あの…」 「……」 市電の扉が開く。リオの勇気を絞った一言をあえて流すかのように、イヌの女性は沈黙を通しつつ、つり革につかまる。 イヌの女性は目をつぶって、尻尾をうな垂れているだけであった。リオはゆっくり流れ降りる人々の背中を見つめている。 やがて、乗客の乗り降りが終わると運転手の合図で扉が閉まる。信号を確認した運転士はレバーを緩ませると、 市電は車輪をきしませ、急カーブをよたよた曲がりながら十字街を過ぎていった。 「過ぎましたよ!?」 「…ああでもインチキをしないと、お嬢ちゃんさ、逃げられなかったでしょ」 十字街を遠くに見ながら彼女はつぶやいた。 「ビジネスにはインチキも必要。ふう…」 「そう、なんですね」 気の抜けた返事しかできないリオは自分が恥ずかしくなった。鏡に映した文字のように正反対のタイプの人だったからだ。 「そうそう、わたしも外国で駅前の男みたいなヤツに呼び止められたことあるんだよね」 「……」 「こういうときに上手く切り返せないとね、悪いケモノに騙されちゃうから…。その経験が役に立ったかな」 わたしはこの人が辿って来たであろう道をけっして辿ることはできない。わたしなんかは今、隣で外を眺める、 髪の長いイヌの女性みたいになれるわけがない。と、リオは自分自身を見下す。同じように車内の窓ガラスには並んで リオとイヌの女性の姿が映っているはずのに、リオは自分だけが窓ガラスに映っていないような気がした。 まじめのまー子だけで生きているリオにとって、インチキで相手をあざけり返すという発想ができなかった。 そして普段、趣味のことで負い目に思っていることが多いリオはこのイヌの女性に、一種の憧れが芽生えた。
すっかり暗くなった車窓を眺めていたイヌの女性はリオに耳打ちする。 「次の電停の近くに、おいしいメロンパン屋さんがあるから、ごちそうするね」 「いいんですか?」 軽く女性のイヌは頷くと、降車ボタンをチンと押した。 リオは旅人のようでもあるが、何故かこの街に詳しいことに彼女をいぶかしんだ。しかし、白い毛並みが何故かそのことを掻き消す。 再び市電は車輪を軋ませながら、途中の電停で一休みした。中から幾人かの乗客を吐き出す。 市電から下車し、二人して程なく歩くと古いワゴン車を店舗とした、小さなメロンパンの店が目に入ってくる。 この界隈では知らない者はいないという、小さなメロンパン屋。長きにわたって、クマのおやじはこの街を見守ってきたと女性は言う。 甘い香りがリオとイヌの女性を包む。店主のクマのおやじはリオの隣に居る女性を見て会釈していた。 「おお、鈴ちゃん。帰ってきたかい?」 「この歳で『鈴ちゃん』はないですよ。高校生の子供が居るんですよ」 リオの長い耳は伊達ではない。鈴という隣の女性の毛並みと、高校生の子供という情報を聞き逃さない。 思い当たる節があるのだが、ここは黙っておくことにした。口で災いを起こすのはヨハンだけでいい。 しかし、この毛並みで自分と同じ歳ほどの子どもがいると知ると、リオは目を丸くする他なかった。 メロンパンが出来上がる間、鈴はリオの足元を見ている。 「お嬢ちゃんの靴、かわいいね。どこで買ったの?」 「湊通りのお店です。友達と買いに行きました!あ…わかりませんね、湊通り…」 「知ってるよ。あのお店ね」 リオは気に入っている白いストラップのパンプスを誉めてくれて、少し誇り気であった。 やがて、クマのおやじから出来立てのメロンパンが二人に差し出される。 リオは鼻をヒクヒクさせると、名物なだけあって香りだけでも人気の秘訣が分かる気がした。 「はい。どうぞ」 「い、いただきます」 あつあつのメロンパンを二人でかじりながら、静かな人気のない公園に向かう。少しお行儀悪いけど、 風紀委員のリオは隣の女性と一緒なら、とそのことはさほど問題にはしていなかった。 子どもたちから解き放たれて、暇を持て余す夕暮れの公園。黄昏た遊具はイヌとウサギを静かに迎え入れる。 ベンチに腰掛け、日中の旅の疲れを癒しながらリオと鈴は甘いパンを味わった。 「ふう、やっぱりこの国はいいよね。落ち着くし」 「外国って…どうなんですか?せかせかしてるとか…」 「いろいろ。国が違うと、ケモノも違うからね。ましてや種族も違うと尚更ね」
律儀なイヌの性格の鈴が言うことにはネコの思考回路が分からないと言う。 仕事で海の向こうの国に渡ることが多く、「よその国のネコってさあ、時間に無頓着っていうか… 平気で待ち合わせに3時間ぐらい遅れて来ることがあるんだよね…。ふう」と語る。 「そうなんですか?3時間も待たせるんだ!!」 「うーん、全てがそうだと一概には言えないけどね。なんだかのんびりしているところはトコトンそうみたいだよ。 この間仕事で会った、イタリアのある島出身のネコが遅刻してきた理由が『昼寝の時間だったから』だってさ」 「…時計の回り方が違うんですね」 「そうね。大事なビジネスパートナーだから、仲良くしなきゃいけないんだけどね」 もしかして鈴はネコたちのことを内心苦手にしているんじゃないか、とリオは勝手に推測するが、 器用に身をこなす鈴にもこんな苦手なものがあるんだ、と知ると少しほっとした気がする。 そんなに楽天的な土地があるのなら、いっそのことヨハンを移住させしまおうか、とも思った。 「ビジネス抜きなら、ネコもイイヤツだよ…」 メロンパンを口にくわえたまま、鈴の呟きを聞いたリオ。 もしかして鈴はネコに対して別の意味、憧れのようなものを持っているのかもしれない、とリオは察した。 旅の疲れも癒されて、メロンパンは残り一口。 せーので残りを二人一緒に口に放り投げ、顔を見合わせると旧知の友人同士のように、ニコッと一緒に笑った。 「さあ、ウチの人が待ってるから『ねこまんま』でも食べに帰るかな」 「ねこまんま!」 「わたし、好きなの」 茶碗を片手に、さらさらと掻き込むような格好を見せる鈴。ご飯に味噌汁があればないもいらない、と言う。 『汁かけご飯』、またの名を『ねこまんま』。 「そう言えば、他の県の人にねこまんまのことを言ったら、鰹節かけたご飯のことって言ってた。 やっぱり、ねこまんまは味噌汁をかけた熱々のご飯じゃなきゃね。ウチの息子に連絡しなきゃ。味噌汁作っとけって」 ねこまんまを食べにだけに鈴が帰ってきたように見えて、リオは少し笑った。そんな鈴が可愛らしいじゃないか、と。 鈴はカチカチと携帯電話を打ちながら、自宅に連絡をしていた。リオは歳よりも若く見える鈴の母親の顔を見た気になる。 ここまで付き合ってくれてありがとうと鈴はリオに深々とお辞儀をし、一路家族の待つ家に向かって消えた。 リオは家に帰る前に、日中に飼ってきた同人誌を人気のいない公園で少し眺めることにした。 自分ちの母親と比べてもしょうがない。このまま真っ直ぐ帰宅することに少しながらの抵抗を感じたからだ。 一冊の同人誌を手に取ると、くんくんとインクの香りを楽しんだ。
―――翌日、目を真っ赤にしたヨハンが一人で音楽室のピアノを奏でていた。 「昨日のときめきはきっと白昼夢だったんだよねー。あはははは!」 昨日デートをすっぽかされたヨハン。一度は聴いたことのあるオールディーズを何度も何度も音楽室に響かせていた。 音楽室の入り口ではリオをはじめ、授業にやって来た生徒たちが、ヨハンを冷ややかに見つめていた。そう、もうすぐ授業開始の鐘が鳴る。 昨日のことを思い出させないように、リオはそっとヨハンに授業を促すことにした。 「あの、先生。音楽の授業は…」 「…よし!このヨハン。これから仕事に生きることにする!!見てなさい、この男の瞳を!」 「先生。涙目です」 生徒一同の答えは全員一致しているのは言うまでもない。 (この人は仕事に生きることなんか出来るもんか)と、生徒たちの頭上に吹き出しが浮かんでいた。 一時間後、つつがなく授業は終わり、学園はお昼休みに入る。もっとも、音楽の授業はヨハンの独唱会になってしまったのだが、 音楽教師だけに歌声は流石に上手い。尻尾をリズムに合わせて振るヨハンは心なしか、やけっぱちのようにも見えた。 生徒一同、この人は音楽がなければどうなっていたのか、と考えたに違いない。 一時間分の授業を儲けたと、生徒たちはクスクスと笑いながら学食に向かう者、購買部でパンを買うもの、弁当を広げるもの、と散った。 「ねえ、リオはお弁当?」 「うん」 「じゃあ、中庭で食べようよー」 モエとハルカに誘われて、リオは一緒に中庭に出ようとしていたときのこと。 クラスの隅で一人、魔法瓶と弁当箱を机に並べるイヌの生徒がいるのをリオは発見した。彼は白い尻尾をゆっくり振り、他の生徒のように 騒ぐことなく暖かそうな白いご飯を弁当箱から見せ、湯気の立つ味噌汁を魔法瓶から注いでいた。 モエとハルカが自分の弁当箱を抱えて、尻尾を揺らす犬上ヒカルを見つめていた。 「あれ?ヒカルくん。きょうはお弁当?」 「ちょー家庭の手作り系って感じだ!ハルカも割烹着着て作ってるんでしょ?でしょ?」 「着てないよ!」 味噌汁の香りがふんわりと広がり、懐かしくも温かい空気に包み込まれる。 しかし、リオは購買部でパンばかり食べているヒカルが、弁当を持ってくることを珍しく思っていると、ヒカルが口を開いた。 「昨日、母さんがいきなり帰ってきて『ねこまんま』を食べたいって…」 「ねこまんま!」 「そのときの、残りの味噌汁…持ってきたんだ」 その頃、犬上家ではヒカルへの置き手紙をテーブルの上に残した犬上鈴が、次の旅への準備を始めていた。 おしまい。
719 :
支援 :2009/05/10(日) 22:03:07 ID:pBPt0vIk
支援のみなさん、ありがとうございます! 母の日に間に合いました。GWの母の日ラッシュに投下したかったけど、 帰省中でPCが使えなかった…。 投下終了です。
うわぁ、そうなのか雄雌で違うものなのですね… わざわざ1600円もする攻略
本を買ってみたものの、画は小さいし解像度低いし見るページは1頁しかない
し、なのにちゃんと判ってなかったって… 無駄だったー(泣)
ということで、描き直してみました。 色だけじゃなく、尻尾とかの形も違う
のですね。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=24&img=24.jpg 秋葉で投げ売りだったデジタルフォトフレームを買ったので、獣人スレの画を
全部投げ込んで表示させています。 なかなか面白いです。 問題は漫画が縦
に長いので縮小表示されるとほとんど只の白い縦線になってしまうことです。
>>720 あーやっぱり母さんだったか
なんとも気持ちのいい人だ
マヨネーズの例えがやたら適切で驚いた
なんかに使えそうだ
>>721 ギャグ風のイラストが多くてすっかり忘れてたが…
真面目にしてると利里怖ぇw
ヒカルの母ちゃんかっけえなー
>>720 父が出たからにゃ出るだろうと思ってたら出てきましたかヒカル君の母。
海外を飛び回っている事だから、経験は豊富なんだろうなぁ。
それにしてもヨハン哀れ過ぎw
>>721 ( ゚∀゚)o彡゜リオレウス! リオレウス!
と、奇遇と言うか何と言うか、今回は利里君を主人公にした話を投下します。
ちょいと長いのでお暇な方は支援をお願いします。
唐突であるが、俺は追われていた。 しかも状況はかなり危ない状況だ、足止めたら最期な所まできている。 道行く生徒たちが、必死に走る俺の形相を見て、一様にギョッとした表情を浮かべてその場から飛び退く。 その方が返って助かる。ここで他の生徒を俺の逃亡の巻き添えにしたらまたザッキーに叱られかねないぞ。 ザッキーはああ見えて意外と説教が長いのだ。前みたいに足が痺れて立てなくなるまでの説教は勘弁したい。 「待つんだニャっ!」 気が付くと、奴の声と足音が俺の直ぐ後まで迫ってきていた。 どうやら、余計な事を考えている内に追いつかれてしまった様だ。これはかなり拙いぞ。 俺はそいつから逃れる為、駆ける足を更に速める。 壁にしつこい位に貼られている『廊下を走るな』の標語の張り紙なんて、今は知った物か。 そりゃ、標語を守りたいのも山々だけど、今は守っていられる状況じゃない。ゴメンよ、ザッキー。 「うわ、しまった、行き止まりだー!」 曲がり角を曲がった所でどん詰まりの壁に阻まれた俺は、驚きつつ足の爪をブレーキにして何とか足を止める。 危ない危ない、止まりきれずに壁と正面衝突する所だった。 意外と痛いんだよな、壁とのキス。 「その隙、いただきだニャっ!」 足を止めると同時に、背後から掛かる声。 背中に冷たい物を感じた俺は、咄嗟に横に飛び退いた。 ず こ ん ! ――その瞬間、俺の直ぐ横を何かが凄い勢いで振り下ろされ、俺がいた辺りの廊下の床を割り砕く。 それは剣だった。しかし、それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた。 大きくぶ厚く重く、そして大雑把すぎた。 それはまさに鉄塊だった。 とか、何か何処かで聞いたような言い回しが思わず浮かぶ位の代物が、俺の直ぐ横に振り下ろされていたのだ。 もし、あの時、咄嗟に横へ避けなかったら、多分、保健室送りは確実だっただろう。 危ない危ない。 「こ、こら、避けたら駄目ニャ! この剣、ゲームと違って一度振り下ろしたら重くて簡単に持ちあがらないんだニャ! 今直ぐ剣を引き抜くから、其処を動かないで待ってるんだニャ!」 声の方へ振り向く。 其処に居たのは,身長は俺の半分ほど、蒼と黒を配したごてごてとした鎧姿の中等部と思わしきキジトラのネコの少女。 おまけにその鎧は俺にとってかなり見慣れた物。そう、今俺がハマっているゲームに出てくる装備品その物だった。 彼女は廊下のコンクリートの床に食いこんだ大剣を、尻尾をくねらせながら必死に引き抜こうともがいている所だった。 そう、この少女こそ、さっきから俺をしつこく追い掛け回す奴だった。 そして、俺を追い掛け回すその理由は…… 「ボクがこの剣を引き抜いたら、直ぐにお前を討伐してやるニャ! リオレウス」 如何言う訳か、俺をゲームに出てくる某飛竜と勘違い?して狩猟しようとしているのだ。 そりゃ、その飛竜に似ていると卓から良く言われていたけど、まさかこういう事になるとは思ってもいなかった。
……俺がこう言う状況に陥ったのは、昼休みになって直ぐの事。 俺は何時もの屋上のベンチで、サン先生に用事を頼まれた事で来るのが遅れている親友の卓を待ちつつ、 携帯ゲームで古龍の大宝玉Get大作戦inナヅチマラソン第四回を行っている所だった。 「ようやく見つけたニャ!」 声に振り向いて見ると、其処に居たのは鎧姿に大剣を背負った中等部と思しきネコの少女の姿。 そんな妙な客人を前に、俺の頭の上に「?」が浮かぶのは当然だっただろう。 しかし、俺の不思議な物を見る様な視線を気にする事無く、少女は更に続ける。 「この時間、お前はここに居るという事を、高等部のヒト達から聞き出すのに結構苦労したニャ! おまけに、違う棟の屋上と行き間違えてえらく遠回りさせられたニャ! 全く腹が立つニャ!」 「……??」 一人勝手に憤慨する少女を前に、俺が更に困惑するのは当然だった。 そして、少女はやおら背負った大剣を両手に持つと、 剣の先でびっ、と俺を指すつもりだったのか、大剣をよたよたふらふらと揺らしながら言った。 「数週間前に友達の琉璃(るり)ちゃんを食おうとしたお前を、このボク、美弥家 加奈(みやけ かな)が討伐するニャ! だから覚悟するニャ! リオレウス!」 最初、俺は少女の言っている意味が分からなかった。 そりゃ泊瀬谷先生や佐藤先生から、利里君は語解力が足りないとか良く言われるけど、 流石に彼女の言っている事を直ぐに理解しろと言われると、あのヒカル君でも無理だろうと思うぞ? だから、取りあえずゲームを一時中断させた俺は如何言う事か少女に聞く事にしたんだ。 「えっと、俺、リオレウスじゃないぞ? それに、俺はこう言う顔だけど他のヒトを食うなんて恐ろしい事はしないぞー? それで、君の言う琉璃ちゃんは何を如何言う風に勘違いして、俺に食われると思ったんだー?」 「嘘を言うニャ! リオレウス! ついさっき、琉璃ちゃんから聞いたニャ! 2ヶ月ほど前、通学中の琉璃ちゃんをお前が後から大きな口を開けてガオーと襲おうとしたって」 ……2ヶ月ほど前?……エーと、その時何があったんだっけ? ああ、そうだ、その時、確か俺はザッキーに滅茶苦茶怒られた事はあったな? それで、俺が意外に怖がられてる事を初めて知ったんだっけ? あれはショックだったよなー。 ……って、それ以前に何かあったような……?
「お前はハンカチを拾った様に見せかけて、琉璃ちゃんを油断させようとしたみたいだけど、 そうは上手く行かないニャ! そうはブタ屋が降ろさないって奴ニャ!」←(ブタ屋じゃなくて問屋です) ああーっ! そうだったそうだった! 確か、ネコの子がハンカチを落としたのに気付いた俺が、親切心でそれを拾ってネコの子に渡そうとしたんだっけ。 そしたら、ネコの子は俺の顔を見るなり「食われちゃうニャー!」とか言って逃げ出して……、 うう、何だか思い出したら凄く悲しくなってきたぞ……。 「だから、お前が次も同じ事を繰り返す前に、ここでボクが討伐してやるニャ!」 その言葉に、俺が「へ?」と思う間も無く。 「ちぇぇすとぉぉぉぉぉっ! だニャ」 少女が叫び声を上げながら大剣を振り上げる! べ き こ ん ! 咄嗟に俺が飛び退いたその横に剣が振り下ろされ、先ほどまで俺が座っていたベンチを真っ二つに破壊した。 この時、俺はようやく、少女の持つ大剣が玩具ではなく、紛れも無い本物だと言う事を理解した。 そして、同時に少女に対する説得は不可能に近い事も理解した。 「あ、避けるニャ! 大人しく討伐されるニャ!」 「何だか良く分からないけど、討伐されるのはゴメンだぞ!」 当然、俺は半ば状況が理解できぬまま、その場から逃げ出さざるえなかったのだった。
※ ※ ※ 「あともう少し、あともう少しで抜けるんだニャ。それまで待ってるんだニャ!」 と、俺が物思いに耽っている内に、少女が廊下に食い込んでいる剣を後もう少しで引き抜こうとしていた。 むろん、それを呑気に見ている程、俺はおバカじゃない。とっとと逃げさせてもらうぞ。 「アッ、こらっ! 尻尾巻いて逃げるのかニャッ! 本当にヘタレウスだニャ!」 ちょ、流石にヘタレウスは心外だぞ! 分からない人に教えておくが、ヘタレウスとは某飛竜が余りにも良く飛んで逃げる事から付けられた蔑称だ。 言っておくが、俺は某飛竜みたいに火球を吐く事も無ければ、ましてや朱美の様に空を飛ぶ事なんて出来ないぞ。 其処をあの少女には分かって欲しいな。……あれ? 突っ込む所が違う? 細かい事は気にしないぞ。 と、それより、早く逃げないと……。 そう、俺が踵を返そうとしたその時! 「やっと見つけたぞ、利里。 何時もの屋上にいないと思ったら、こんな所で何やってるんだ?」 掛かった声に振り向けば、其処に居たのは小等部以来の俺の親友である卓の姿。 多分、何時もの場所に一向に現れない俺を探してここまで来たのだろう。 「卓、今はここで話している場合じゃないんだー! 今直ぐここから逃げ出さないと……」 「フギャッ! やっと剣が抜けたニャ」 何とかこの場から逃れたい一心で、俺が卓へ説明をしようとした矢先。 床に食い込んだ剣を尻餅をつく形で引き抜いた少女が、大剣を重そうに引き摺りながら尻尾の先で俺を指して言う。 「……さあ、いい加減覚悟するんだニャ、リオレウス!」 「……リオレウス?」 そんな少女の横入りに、卓は一瞬だけきょとんとした表情を浮かべた後。 「ぶっ、お前、前々から似てる似てるとか言ってたけどさ。ぷぷっ、遂に他の奴にまで言われる様になったか。 しかもハンターごっこの討伐対象役にさせられるとはな? くくっ、こいつは傑作だ!」 腹を抱えて笑い出した卓に、俺は尻尾の先を床に叩きつけながら必死になって言う。 「卓、笑っている場合じゃないぞ! この子は結構ヤバイんだー! あの持ってる武器はコンクリートの床を簡単に割り砕くような代物なんだぞー!」 「はっはっは、中々本格的じゃないか。 見た所、あの子の持っている大剣は封龍剣【真滅一門】って所かな? んで、着ている装備はリオソウルZシリーズか。結構良く出来たコスプレだな」 言いながら、卓は大剣を背中へ納刀しようとしている少女へ歩み寄る。 そして、卓は諭す様に少女の肩を軽く叩きながら 「言っておくけどな、お嬢ちゃん。あいつはあんなナリだけど俺の親友で、人畜無害な良い奴なんだ。 だから、そんなリアルモンハンごっこに巻きこむのは止めて……」 「五月蝿いニャッ! これでも食らえニャ!」 不機嫌に叫びながら、少女がポーチから取り出した物を卓へ投げつける。
それを何気に両手でぱしっと受け止めた卓は、感心した様にそれを眺め 「へぇ、何かと思えば小タル爆弾だよ。 これも中々良く出来――」 ど ぐ わ っ ! 「――てべしっ!?」 閃光、爆発、コゲながら吹き飛ぶ卓。 まさか爆発物まで持っているとは、本気でやばいぞこの子は……と言うか、それはオトモアイルーの攻撃だ。 って、それより卓は大丈夫なのか!? 「ああっ、大きな音がすると見に来て見たら、爆弾テロに巻き込まれた人が居るじゃないか!? この様子だと全身骨折に内臓破裂が考えられるぞ! 早く救護しないと」 「つつ……いや、爆発の割に対した事はなかったし、大丈夫……」 「重傷の患者と言うのは怪我した直後は最初にそう言うんだ。そう、自分の怪我の度合いを把握していないからな! だから何かある前に、早く保健室へ連れていって救護処置を行わないと。こうしている間にも時間が惜しい!」 「ちょ、だから連れていくのは止めてぇぇええぇぇぇぇ……」 あ、通りすがりの保険委員の人に連れていかれた。 引き摺られながらも騒ぐ卓の様子から見て、本当に爆発の割に大した事無かったみたいだな。良かった良か…… 「邪魔者は消えたニャ。これで心置きなくお前の討伐が出来るニャ」 ―――ちっとも良くなかったぞぉぉぉぉぉっ!? これは早く逃げないと、本気でこの少女に討伐されかねないぞ! 「と、討伐されるのは本当にゴメンだぞっ!」 「あ、待つんだニャっ!」 少女へ叫ぶと、踵を返した俺は全速力でその場から逃げ出すのだった。 ――卓、巻き込んで本当にゴメンよ―― などと心の内で謝りながら。
「フゥ……ここまで逃げれば大丈夫かなー?」 それから暫く経って、何とか少女を振り切った後。 俺は高等部のある1号棟と小等部・中等部のある2号棟の間にあるテニスコートほどの広さの中庭で、 持っていたパック牛乳を飲みつつ一息付いて。周囲を見やりながら一人、呟きを漏らした。 「全く。本当に酷い目にあったぞ……。 それより、卓は大丈夫かなぁ? 白先生にオキシドールをぶっ掛けられてなければ良いけど」 中庭に据え付けられたベンチにどっかと座り、更に独り言を漏らす。 白先生、普段は優しいんだけど、不機嫌な時となると軽症のヒトにオキシドールをぶっ掛ける事があるからなぁ。 でも、何で不機嫌な時があるんだろ? 朱美に聞いたら「セーリだからね」とか言ってたけど……セーリって何だ? 「本当に卓が心配だぞ……」 「ヒトの心配をする前に自分の身の心配をするのニャ」 「……っ!?」 横から掛かった声に驚きつつ振り向けば、其処には振り切った筈の少女の姿。 ここの場所は校舎と校舎の間の入り組んだ場所だから、そう簡単に見つからない筈だと思ってたのに!? そんな俺の驚きを、尻尾の動きで見て取ったのか、ネコの少女は自慢気に胸を反らし、 「どうやら、お前はボクから逃げ切った気になっていた様だけど、 お前の尻尾に付けたペイントの匂いを追って行けば直ぐ見つけられるニャ! 残念だったニャ!」 言われて見れば、確かに尻尾の先にピンク色の粘性の液体が貼りついていた。 ペイントボールまで持っているのか、この子。 卓が言うように中々本格的だぞ……って、感心している場合じゃない! 「さあ、今度こそお前を討伐してやるのニャ! リオレウス、覚悟するのニャ!」 叫んで、少女が剣を振り上げて俺へ襲い掛かる! ―――マズい、避けきれない! かん――ず ば き ん 「……!?」 しかし、振り下ろされた大剣は俺に当たる直前にいきなり横に逸れ、ベンチを叩き割るだけで終わった。 ……今さっき、横から飛んできた何かが大剣に当たってた様に見えたけど……俺の気の所為かな? 当然、少女の方も当たらなかった事に対して不思議そうに首を傾げ、 「あ、あれ? しっかり狙った筈なのに……って、ああ! またベンチを壊しちゃったニャ! お前の所為ニャ!」 「ちょww如何見ても完全に君の所為だろー!?(ガビーン)」 ベンチを壊したのを俺の所為にされ、堪らず抗議の声を上げる俺。 だが、少女はもとより俺の言葉を聞くつもりはないらしく、 「剣が当たらないならば、これなら如何ニャ!」 言って懐から取り出し、両手で頭上に掲げたのは、 小さなポーチの何処に入ってたのだろうか、少女の身体程はあろうかと言う大きい樽。 まさかとは思うが、アレは……!
「この大タル爆弾で死なば諸共ニャ! 特攻だニャ!」 その言葉と同時に、タルからシュンシュンと上がる火花。 や、やっぱり、思った通り、アレは大タル爆弾だったか! と言うか、それもオトモアイルーの技だ! ……となると、卓を吹き飛ばしたアレよりも爆発がかなり強烈になるぞ!? 「リオレウス、ボクと一緒に死ぬのニャ!」 「ちょwww、おまwwww」 驚きうろたえる俺へ、少女が大樽特攻で迫ろうとしたその矢先! 「其処までだ」 唐突に、横から俺と少女の間に人影が割って入る! 恐らく、この辺りで煙草を吸っていたであろうその人影は、俺にとって良く見知った上に、とても頼もしいヒトだった。 「獅子宮先生!」 「大丈夫か? 利里少年」 俺の上げた声に、獅子宮先生は俺の方へ軽く振り向きながら、咥え煙草をセキレイの尾羽の様に揺らして言う。 ピンチの時に現れた先生の後姿は、かつて聞いた噂の通りのヒーローその物だった。かっこいいぞ、先生! 獅子宮先生はそのまま数秒ほど俺を見た後、俺が大丈夫だと確認したのか、ふむ、と呟いた後、 尻尾を揺らしながら少女へ向き直り、 「さて、如何言う事情でこんな事をやっているかは私には分からんが。 今、加奈少女が利里少年へやっている事は流石に教師として見過ごしては置けない行為なのでな。 加奈少女には悪いが、ここは実力行使で止めさせてもらうぞ?」 「ちょ、ちょっと、邪魔したら駄目だニャ、巻き込んじゃうニャ!」 「……?」 獅子宮先生が1歩踏み出した所で、妙に慌て始める少女。 その態度の急変に、先生は一瞬だけ怪訝な表情を浮かべた後。 「そう言えば、さっきから気になっているが、君の持っているこのタルみたいな物は何だ? 火花が出ている所から見ると花火の様だが……」 「ああっ! 叩いたら駄目ニャ! 爆発――」 不思議そうに首を傾げながら、何気に少女の掲げているタル爆弾をこつんと軽く叩いた。 ちょ、先生、それは一番ヤバ―― ド ワ ォ ッ ! ! 次の瞬間、叩かれた衝撃で起爆したタル爆弾の爆発と閃光が、俺の意識を光の彼方へ吹き飛ばした――
* * * 「―――ぉぃ……おい、おきろって。起きろよ利里」 「……う……?」 あれからどれくらい時間が経ったのだろうか? 俺は誰かに揺り動かされた事で目が覚めた。 視線を動かし辺りを確認してみると、少女は俺より少し離れた場所で身体からぴすぴすと煙を上げて気絶しており、 それで用は終わったとこの場から立ち去ったのか、獅子宮先生の姿はこの場には無かった。 校舎につけられた時計を見やると、時間は昼休みが終わる十分ほど前だった。 「利里、大丈夫か?」 「……お、卓かー?」 声の方に目を向けると、俺を揺り起こした人は先ほど保健室送りにされたはずの卓だった。 しかし、今の卓は如何言う訳か、頭から水をぶっ掛けられた様にずぶ濡れだった。 「卓ー、怪我は大丈夫だったのかー?」 「当たり前だろ? 利里。マンションの三階から落ちた事もある俺からすれば、小タル爆弾ぐらい何て事ねーっての。 それを保険委員の奴が大げさに騒いだだけだよ」 卓は答えた後、頭についた水分を振り払う様に頭を軽く振って、更に続ける。 「……しっかし、マジで最悪だったぜ。 俺が保健室に運びこまれた時、白先生は如何言う訳かえらく不機嫌だったらしくてな。 俺の怪我の度合いを見るなり、『この程度ならこれで充分だ』って、おもむろにオキシドールぶっ掛けて来るんだよ。 それで、慌てて白先生から逃げまわっていたら、その様子をたまたま保健室に居てた朱美に指差して笑われてしまうし、 しかもそれを通りすがりの烏丸先輩に写真に撮られるし……」 どうやら卓も卓で俺の知らない所で大変な目にあってたんだなぁ……。 道理で、頭からずぶ濡れなのは白先生にオキシドールをぶっ掛けられたからなんだな。 しかし、不機嫌な時は本当にオキシドールをぶっ掛けてくるんだなぁ、白先生。 次から保健室行く時は、こっそりと白先生の機嫌を伺ってからにしよう。 「取りあえず、利里、そろそろ昼休みも終わりそうだし、とっとと昼飯を食って――」 しかし、卓の言葉はそれ以上続かなかった。 背後から伸びた、白の毛皮に覆われた手にその頭をむんずと捕まれた事によって。 卓の頭を掴む手の主は、不機嫌オーラ全開に尻尾を振りたくる白先生。 先生は卓の頭を掴んだまま、怒気混じりに言う。 「御堂……私が折角治療してやっていると言うのに、その途中で逃げ出すとは良い度胸だな?」 「……え、えっと、だから、怪我は大した事は無いんだし。それに、そもそもこれで充分だと言ったのは先生じゃ――」 「問答無用だ! とにかく来い! お前の様な奴は治療が終わるまで保健室から出してやらんから覚悟しろ!」 「ちょ、だから先生、俺の話を聞いて、つか、爪が頭に食い込んで痛い痛い痛いぃぃぃぃ……」 そしてそのまま、卓はドップラー何とかで悲鳴を残して先生に引き摺られて行った。 それを前に、俺には如何する事も出来なかった。そう、ここで迂闊に手を出せば俺もとばっちりを食らいそうだったから。 ……すまん、卓、不甲斐ない親友の俺を許してくれー!
「なんだか良く分からないけど、気絶しているうちに邪魔者が消えたニャ。これでもう邪魔は入らないニャ!」 背に掛かった声に思わずびくりと震える俺の尻尾。 恐る恐る振り返ってみれば、其処には鎧の所々を焦げつかせた少女の姿。 どうやら、俺が卓と先生に気を取られている間にきっちりと復活を遂げていた様だ! 「さあ、ここがテングの納め時ニャ、リオレウス! 今度こそ覚悟ニャ!」←(テングじゃなくて年貢です) 大剣を頭上高く振り上げる少女。 対する俺は座った体勢の所為で飛び退く事も出来ず、ただ、振り下ろされる大剣を見上げる事しか出来ない! ――ああ、せめて討伐じゃなくて捕獲ですませて欲しいなー、と俺が心の内で諦めかけたその時! 「お兄ちゃんをいじめるなぁぁぁぁぁぁっっ!!」 ど っ ご し ! 「―――へぶし?!」 ―――叫び声と共に、横合いから凄まじい勢いと早さでやって来た小さな影のぶちかましによって、 少女は大剣を振り上げたポーズのまま思いっきり吹っ飛ばされ、土煙を上げながらごろごろと地面を転がった。 寸での所で俺を助けたその小さな影は、俺が良く見知った子だった。 「奈緒!?」 「お兄ちゃん!」 そう、その子こそ、俺の命より大事な妹の奈緒ちゃんその人だっ! 皆は小等部ではコレッタが一番可愛いとか言っているが、俺にとっては奈緒こそ小等部で一番可愛いと思っているぞ。 奈緒は俺が余程心配だったのか、捲くし立てる様に聞いてくる。 「お兄ちゃん、お怪我は無い? 痛い所は無い? 尻尾は斬られなかった?」 「おう、ちょっぴり焦げたけど俺は大丈夫だぞー」 「よかった、お兄ちゃんが大きな剣を持ってる人にいじめられてるってコレッタちゃんから聞いた時、 あたし、本当にお兄ちゃんの事が心配だったんだー」 俺が無事と知るや、直ぐ様喜びの声を上げて俺の胸へ飛びつく奈緒。 こんな不甲斐ないお兄ちゃんのピンチを救いに来てくれるなんて、奈緒は何て良い子なんだろうかー! 余りの良い子っぷりに思わず頭を撫でてやりたくなってくるぞ。 「く、く…まさか…最小金冠のレイアまで現れるなんて予想外だったニャ。 け、けど、しかしだニャ。勇猛なハンターたるボクはこの程度の事でリタイアはしないニャ!」 兄妹で喜んでいたその横で、ゆらりっ、と根性で立ち上がる少女。 何と言うガッツ! 多分、そのリオソウルZにはド根性珠を付けているに違いないぞ!
「駄目! お兄ちゃんをいじめさせないよ!」 「フギャ! 一度ならず2度も邪魔する気かニャ!」 小さな両手を一杯に広げて少女の前に立ちふさがる奈緒。 対して大剣を振り上げ尻尾をくねらせながら不機嫌に叫ぶ少女。 ああ、何てお兄ちゃん想いな良い妹なんだろうか。けど、危ない事は駄目だ! こんな不甲斐ないお兄ちゃんの為に、お前を危険に晒したくは無いぞ! 「俺の為に奈緒を傷付けさせはしないぞ! ぎゃおー!」 「お兄ちゃん!?」 「こ、こら! 兄妹愛を見せつけるのは良いけど、庇うのか庇われるのかどっちかにするのニャ!」 両手を広げて少女の前に立ちふさがった俺の行動に、奈緒は驚き、少女はごもっともなツッコミを入れる。 確かに言いたい事は分かるけど、俺は自分が傷つくのはイヤだけど、それより奈緒が傷つく方がもっとイヤなのだ。 さあ、来い! 自称ハンターの少女! 幾ら部位破壊されようとも妹には指一本触れさせやしないぞ! と、俺が覚悟を決めた所で、気を取り直した少女が大剣を振り上げて、 「ま、まあいいニャ、こうなれば二人まとめて狩ry―――はうん」 ――ぱむ、と乾いた音が響くと同時に妙な声を上げ、大剣を振り上げたポーズのままぶっ倒れた。 やがて周囲に聞こえ始めたのは、すぴーすぴーと言う何とも気の抜けた少女の寝息。 見れば、少女の後首には飾り羽のついた注射器のような物が突き立っていた。 ……コレは一体……? 「……」 ふと、こちらに向けられた視線に気付き、寝ている少女へ向けていた視線をその方へと向けると、 其処に立っていたのはこれもまたモンハンに出てくる装備品を身に纏った、俺と同級生と思しき兎の少女の姿。 彼女と俺を討伐しようとしていた少女との違いを挙げるとすれば、 その身に纏っている装備品は映画に出る様な踊り子を思わせる全身に、顔の下半分を隠す布製の覆面。 (俺の当てにならない記憶がたしかならば、これはブランゴZシリーズのガンナー用だった筈) そして手にしているのが、擦ったら何か出てきそうな薄紫色のランプ型ライトボウガン。 (たしか、これはマジンノランプだったかな? それもロングバレルの) 恐らく、彼女はこのライトボウガンの麻酔弾で俺を討伐しようとした少女を眠らせたのだろうか? そしてもう一つ言うなら、俺の頭に大剣が当たる直前で逸らしたのも、彼女がやったのだろうか? 「…えっと…その……後輩が…迷惑をかけました……」 「え? あの、ちょっと?」 俺達が礼を言う間すら与えず、彼女は何処か恥かしそうに長い耳を揺らしてぺこりと頭を下げると、 おもむろに眠っている少女の後首を掴み、そのまま凄い勢いで走り去っていった。 ……少女をずりずりと引き摺りながら。 しかも少女をコンクリートの出っ張りとか石とかにガン、ゴンとぶつけながら。 おまけに何かぶつかる度に、少女から「ぐえっ」とか「みぎゃっ」とか悲鳴のような声が聞えた気もする。 まあ、それは気の所為にしておくとしよう。俺は深い事は気にしない性質なんだ。
「な、何だったんだろうね?……あの人達」 「さ、さぁ……?」 呆然と漏らす奈緒の言葉に、同じく呆然としている俺は生返事を返すしか出来ない。 多分、あの兎の人と猫の子はモンハン好きが高じてコスプレまでする様になった人達、なのだろう。 モンハンが好きなのは俺も同じなのだが、流石にコスプレをしてリアルでモンハンごっこをする程ではない。 世の中は広い、と親友の卓が偶に言う事があるが、今回ほどその言葉を深く理解した事はなかったぞ。 あんな人達が校内に居るなんて、世界は本当に広いんだなぁ……。 ……あ、そういえば、俺達を助けてくれた彼女の頭のレースのリボン、何処で見たような……。 そう、あれはたしか、二月の中頃に――― 「ねぇ、お兄ちゃん。所でさ…何か重要な事を忘れている気がしない?」 しかし、半分ほど開き掛けた記憶のタンスは、奈緒の何気ない問い掛けによって再びピシャリと閉じられてしまった。 まあ、無理して思い出すほどの物じゃないのだろうなー……多分。 「何か重要な事って……何だったかなー? 思い出せないや。 奈緒は分かるかー?」 「うーん、それがあたしも思い出せないんだよねー。何だったかなー?」 トゲトゲの尻尾をゆらゆらと揺らしながら考える俺と奈緒。 そしてしばらく考えた後。は、と二人同時にその『重要な事』を思い出し、尻尾を跳ね上げて叫ぶ。 「「あぁっ! 昼御飯食うの忘れてたぁっ!!」」 しかし無情にも、それと同時に俺達へ昼飯のお預けを告げる昼休み終了のチャイムが鳴り響いたのだった。 竜崎兄妹が慌てて校舎へ戻ったその頃。 「……所で、私は何時までこうやっていれば良いんだ……?」 大タル爆弾の爆発によって吹き飛ばされて中庭の木の枝に引っ掛かり、 そのままの状態で忘れ去られた獅子宮先生がすっかり不貞腐れていたという。 ――――――――――――――――――――了――――――――――――――――――――
なんというモンハンワールドwwwww トカゲの兄弟愛はほほえましいなぁ
巨大スイカバー振り回す加奈を想像してほほえましくなったww
結構ざっくり胸元開いてるな セクシーな鎧だ
ちょいと修正点をorz ×其処に居たのは,身長は俺の半分ほど、蒼と黒を配したごてごてとした鎧姿の中等部と思わしきキジトラのネコの少女。 ○其処に居たのは俺より頭二つ分小さい身長の、 蒼と黒を配したごてごてとした鎧姿をした中等部と思わしきキジトラのネコの少女。 ×「数週間前に友達の琉璃(るり)ちゃんを食おうとしたお前を、このボク、美弥家 加奈(みやけ かな)が討伐するニャ! ○「二ヶ月ほど前に友達の琉璃(るり)ちゃんを食おうとしたお前を、このボク、美弥家 加奈(みやけ かな)が討伐するニャ! 因みに、加奈にはスイーツショップ『連峰』で働く姉がいます。 話中では一切書かれていませんが……。
ハンターっつーよりオトモアイルーだなwいや必死なのはわかるけどもw 奈緒は健気でかわいいな 久々に登場の白先生ひっでぇw 朱美「セーリだからね」 あんの!?
このスレって単なる犬耳とか猫耳は大丈夫なんだろうか
これは失礼した
>>720 く、くそう…ねこまんま食べたくなってきた…!
耳で思ったんだが この世界のTDL的な所では耳のアクセサリー売ってるんだろうか
人間耳萌えーとか
獣人が人間耳の飾りつけてたら笑うの通り越して怖いわw
でも俺たち人間のケモノ萌えみたいに 獣人達の間でそういう趣味があるかもしれないぞ いや、ネッ広を考慮すれば無いはずが無い
いやああああああああああ
流石に「人間耳萌え」には至らねえええw
猫の人たちの猫耳に対する反応もきっとこんな感じだと思う
「風間部長! 一つお願いしたい事があるのだが……良いか?」 ある日の放課後。我が飛行機同好会部室兼作業小屋で、 部品の買出しに出かけた白頭を待ちながら、俺が機器のハンダ付けをしていた時の事。 向かいの席で何やら考え事をしていた鈴鹿さんが、唐突に此方へ向き直り妙に改まった様子で話しかけて来た。 お願い……はて? 彼女は俺に一体何をお願いしようとしているのだろうか? 飛行機に乗せて欲しい……ってな訳ではないだろう。そんな事、わざわざ改まってお願いする程でもない筈だ。 何せ、彼女は重量物の運搬試験と言う名目で、今の今まで何度も飛行機に搭乗しているからだ。 (女性を荷物役にするのはちと酷いような気もするのだが、それは彼女自身が荷物役を名乗り出てきたからである) なら、誰か知り合いを乗せて欲しい、とでも言うのだろうか?……いやいや、それも有り得ない話だ。 と言うのも、我が飛行機同好会は今、部員募集を兼ねた体験飛行希望者を募集中である。 用紙に氏名とクラスを記入して予約すれば誰にでも体験飛行が味わえる、 飛行機同好会だからこそ出来るサービスがあるのだ。 (ただし、体重と体格、そして体質によってはご希望に添えない場合がありますのでご了承ください) よって、わざわざ誰かを乗せて欲しいと俺に頼む必要もない筈だ。申し込めば済む話だし。 ならば、鈴鹿さんは俺に何を頼むつもりなのだろうか……? 様々な想像が脳内をグルグルと渦巻くが、結局納得できる結論が思い浮かぶ筈もなく。 俺は仕方なしに鈴鹿さんに聞く事にした。 「俺にお願いしたい事って……何さ? 内容によっては出来る事と出来ない事があるぞ?」 「いやいや、風間部長、勘違いしないで欲しい。 私の言うお願いと言うのは、部長に何かをして欲しいという意味でのお願いではないのだ」 「……?」 鈴鹿さんの否定に、俺の頭に思わず浮かぶ疑問符。 そんな俺の様子に気に掛ける事無く、鈴鹿さんは何処か恥かしそうに、そっと俺へ耳打ちをする。 「…私の頼みと言うのはな…その…部長の、耳を触らせて欲しいんだ」 …………。 「……は?」 余りの意味不明なお願いに一瞬思考停止してしまった。ひょっとすると目が点になっていたのかもしれない。 んで、俺の聴覚が確かなら、鈴鹿さんは耳を触らせて欲しいって言ったよな? ……何で? 何故に? 如何して? 理由が全然思い当たらない。 「いや、そのな、少し小耳に挟んだ話なのだが、 人間の耳朶と言うものは、何も他のケモノには無い至高の触り心地だと言う話があるのだ。 それで、その…その話に私は興味を持ってしまってな…そう、その触り心地は如何言う感じなのかなって…」 「あー…そうなんだ…」 なるほど、要するに鈴鹿さんは人間である俺の耳の触り心地を、その手で確かめてみたいんだな。 まあ、言ってしまえば俺達人間種がケモノの肉球や尻尾を触りたがるのと同じって訳かな?……多分。 「いや、まあ、部長が嫌だと言うなら私は無理には頼まない。 流石にこれは余りにも身勝手なお願いだからな、部長に断られるのも……」 「良いぜ」 「――え? 本当か!?」 勝手に遠慮して話を切り上げようとした所で出た俺の許可に、 驚きの余り、思わず耳と尻尾をピンと立てて聞き返す鈴鹿さん。
「ま、なんだかんだ言って、鈴鹿さんには作業の手伝いとかの形で色々と部に貢献してもらっているからな。 それを考えて見りゃ、俺の耳を触らせる事くらいなんてお安いご用だよ」 「ぶ、部長……ありがt」 俺の言葉に感極まってか、思わず立ちあがって両手を広げた鈴鹿さんを俺は片手で制し、 「おっと、抱き締めるのはストップだ。これで俺が気絶しよう物なら耳を触る所じゃないだろ?」 「う、済まん……つい感極まってやってしまいそうになった」 ……危ない危ない、止めるのが一瞬でも遅れていたら保健室送り間違い無しだった。 乳房の柔かさを味わう天国と全身を締めつけられる地獄を一瞬で味わうのはあの時だけで充分だ。 「ほらよ、爪とか立てたりしないでくれよ?」 「じゃ、じゃあ、失礼して……」 早速、席を立った俺が鈴鹿さんの側に立ち、少し冗談めかしつつ頭を傾けて片耳を差し出す。 鈴鹿さんは緊張に虎縞の体毛を逆立てながら、大きな身体を丸めてそっと俺の耳朶へ手を伸ばす。 初めて人間の耳を触れる行為に余程緊張しているのだろう、彼女の鼻息がここまで感じ取れる。 「……何と……これは……」 興奮混じりにぶつぶつと呟きながら、一心不乱に俺の耳朶を触りつづける鈴鹿さん。 他人に耳を触られる経験がない所為か(まあ、それも当然だが)、なんだかこそばゆくて堪らない。 だが、折角の鈴鹿さんのお願いだ。ここはひたすら我慢の子だ。 「…柔かい、けど、ただ柔かいだけではなくこの適度なぷにぷにとした弾力、程よいぽってりとした肉厚。 そして、このひんやりとしている様で何処か暖かいという不思議な体温。 更に、毛皮の無い肌特有の指の肉球に吸いつくようで、滑らかな触り心地…… 素晴らしい。噂は本当だったんだ……」 ……興奮しきりなのは良いんだが、さり気に俺の身体に密着してくるのはどうかと。 興奮して荒くなった彼女の鼻息が、俺の頬に思いっきり当たってかなりこそばゆいし。 おまけに肩に乳房がぐいぐいと圧し付けられてて嬉しいやら苦しいやらな気分だし。 それにもし、万が一この様子を白頭に見られたら彼女に何を言われるか……。 と、そうやっていい加減恥かしくなってきた事もあって、 そろそろ耳を触るのを止めてもらおうと、尚も一心不乱に耳を揉みつづける鈴鹿さんへ一言いおうとしたその矢先。 「あー―――――――――っ!!」 部室兼作業小屋入り口からの素っ頓狂な叫び声が、俺の鼓膜を盛大に震わせまくった! 驚きつつ声の方に振り向いて見れば、其処には今しがた買出しから帰ったであろう買い物袋片手の白頭の姿!
「な、何やってるのよ……」 硬直する俺と鈴鹿さんの方へ、声と肩を震わせながらつかつかと迫ってくる白頭! ああ、何てこった。この調子からすると俺、怒りのアイアンクローで保健室直行コースかな? などと俺が頭の中でこれからの事を悲観し始めた所で、不機嫌の尾羽を広げた白頭が更に叫ぶ。 「鈴鹿さん、アンタは何を勝手にソウイチの耳朶を触っちゃってるのよ!! 何時かはアタシが思う存分触ってやろうと思ってたのに!!」 …………。 「……へ? あの……怒る所は、それ?」 「あったりまえじゃない! アタシはずっと前から狙ってたのよ! この触り心地の良さそうなソウイチの福耳を! でも、それをあろう事かちょっと目を離した隙に鈴鹿さんに先を越されちゃうなんて、悔しいじゃないのよ!!」 今度こそ完全に目が点になった俺の問い掛けに、白頭は翼をばたつかせて地団駄踏んで独り憤慨する。 えーっと、って事は、白頭も俺の耳を触りたかったって事か? しかも、ずっと前から? しかも、俺は福耳だったのか? 比較対象が少ないから良く分からん。 「す、済まない。もう空子先輩は触った後だとばかり思って……」 「そ、そんな事出来るならずっと触り続けているわよ! つか、そんなの恥かしくてソウイチに頼める訳が……、 ――って、それより! いい加減ソウイチの耳から手を離しなさい!!」 「あ…ああ! 空子先輩、本当に済まない! 余りにも触り心地が良くて手を離すのを忘れてしまったのだ!」 尾羽どころか頭の羽毛まで逆立てて怒る白頭に、尻尾を股の間に折り曲げてひたすら謝り続ける鈴鹿さん。 そんな二人の間で俺はと言うと、ただ呆然とそのやり取りを眺める事しか出来ない。 いや、と言うか、この状況の中で眺める事以外に何が出来るというのだろうか? 「そ、そうだ、ならばこうしよう。これを機会に空子先輩も部長の耳を味わってみると言うのは如何だ?」 余程追い込まれたのだろうか、鈴鹿さんが苦し紛れとばかりにとんでもない提案を言ってのけた。 いや、幾らなんでも怒り狂った白頭がンなアホな提案飲む訳が…… 「そ、それも、良さそうね……」 って、おぉぉぉい?! 何を素直に乗っちゃってるんですかこの幼馴染は!? しかも、なんだか白頭の奴、もう既に俺の耳に『ロックオン☆』しちゃっているみたいだし!? そんなに俺の耳朶って良いの!? 俺には全然分からないんですけど!? 「じゃ、じゃあ、アタシは右の方を頂くわ。それで良いわね?」 「あ、ああ。片方を譲ってくれるだけでも私としては充分過ぎる程だ」 と、俺が混乱している内に、何だか勝手にどっちの方を触るか決めちゃってるんですけど!? つーか、そもそも俺に拒否権は無いのか!? いや、まあ、拒否権云々を聞いても無駄だと分かってるけどさ。 「あー…何と言う素晴らしい触り心地だ…このぽってりとした肉厚、まさに触り心地に於ける究極だ」 「本当よね…この福耳の感触を味わってると、アタシはこの為だけに卵から孵ったと思えてくるわ……」 「…………」 この時点で、俺は二人のされるがままになっていた。 俺が思う事は、ただ一つ。『もう、好きにしてください』 と言う、諦めの言葉だけ。 ……結局、満足した二人が俺の耳を解放したのは、それから約三時間後の事。 部室を出た俺は沈みゆく夕日を眺めつつ、この世の中には色々な嗜好がある事を実感したのだった。
うわ! ―――了―――を書くの忘れてた! と言う訳でこれで以上です。 「人間耳萌え」とはこういうのでは、と思って書いて見た。 福耳の触り心地は同じ人間でも良いと思える物なのです。
そう言えば、セキセイインコとかを肩に乗せるとずーっと耳たぶを甘齧ってますねぇ。
「なあルル。ひとつ頼みがあるんだが」 「な…なによあらたまって…」 帆崎の真剣な表情に内心どきりとしながら、ルルは平静を装って答えた。 「耳を…触らせてくれないか」 「……へ?」 意外な申し出に頓狂な声を上げてしまった。 「なにそれ?」 「いや、あのな。人間の耳の触り心地がいいらしいって少し話題が出てさ」 「へー…」 人間が自分にはない肉球や尻尾を触ってみたいのと同じようなものらしい。 ルルは少し考えてから、答えた。 「…いいけど。でもセンセも肉球触らせてね。片手でいいでしょ」 「あー、わかった」 「じゃあちょっと失礼」 ぷに 「へー…」 ぷにぷに 「柔っこいな。冷たいような温かいような…」 ぴろぴろ 「なあルル。この下のは何の意味があるんだ?」 「…ピアス付けるためじゃないの?」 「ふーん…」 ぷにぷに ぷにぷにぷに 「…ね、ねえセンセそろそろ…」 ぷにぷにぷに… ぴろぴろぴろ… かぷ 「…あっ…」 「…え…?」 バコーン!! 翌日。 頭にいくつもコブを作りさめざめと泣く帆崎の姿があった。 「その頭取り替えなきゃ駄目か」 コーヒーを片手に白は冷たく言い放つのだった。 おわり
これはエロいww そうか人間耳萌えってこういうのかw
ありだな
エチー(*・∀・*)
「いててて!あんまり触るんじゃない!」 「手負いウサギがあんまり騒ぐんじゃないッス。大人しくぼくの手厚い看護を受けるのが賢明ッスよ!」 一度聞いたら忘れることの出来ない保健委員の独特な言葉遣いと、どこか薄ら黒い風紀委員・因幡リオの断末魔が保健室に響いた。 委員会が本日はお開きになった後、上の空になっていたのかリオは不注意で階段を踏み外し、足をくじいてしまった。 幸か不幸か、同じく委員会に出席していた保健委員に目撃されて、リオの「頼むから騒がないでくれ」という、乙女の祈りも通じず、 純白の救急車宜しくぎゃあぎゃあと一人でけたたましい声を上げながら、保健室に緊急搬送されたのだ。 あいにく、白先生は在室しておらず保健委員一人での看護となった。しかし、熱意は白先生以上のものの技術についてはまだまだ。 医療に関することに無知な者でも、その光景を見て思わず保健委員の肩を叩きたくなるような有様であった。 ほとんど無理やりベッドに座らせて、リオのニーソックスを脱がせ、患部の手当てを始める保健委員。 柔らかな手で腫れた部分を触ると、スカートを押さえながらリオはのどを搾り出すように奇声を上げる。 「ふう。とりあえず、湿布を貼っておいたからひとまず安心ッス。なるべく安静にしておかないといけないから、 白先生が帰ってくるまでベッドで寝ておくのが全快への第一歩ッスよ。何か飲み物でも買ってくるから、因幡さんは大人しくするッスね」 「するか!」 リオの言葉など無きものにし、落ち着いて寝られるようにベッドを衝立で隠すと、保健委員は部屋から飛び出してしまった。 大人しくしたいのは山々だが、リオはリオで悩みの種を抱えていた。それは委員会室に大事な忘れ物をしていたからだ。 『保健委員に届けてきてもらえばいいじゃん』という言葉をリオに献上しても、このときのリオはドラゴンのような顔をして牙をむくだろう。 もっとも、ウサギであるリオにはそんな牙は持ち合わせていないが、牙のないドラゴンというのはそれはそれで恐ろしい。 「うわああ、この足で三階まで上がるのかぁ…。さいあくだ」 くじいた足を引き換えにしてまで戻らなければならないものが、委員会室に静かに忘れ去られている。 ソイツはおしゃれな紙袋…の中に入っている持ち歩く場所によっては似合い、そして場違いな紙袋の中のブツだ。 厚さは薄っぺらいが、作者の情熱は百科事典以上にあつく、そして生産量、販売箇所、そして読者層が非常に限定されるコミック本。 あらやだ、忘れ物だよ。誰のかしらねえ?そういえばここにはリオが座っていたっけ?それにしてもなんだろうな、これ。 あらら、落っことしちゃった。なんだ?出てきた本は…ちょ…!ナニコレ??やだー!もしかして、因幡さんってヲタ…。 どうして、わたしの耳は長いんだろう。嫌なことばかり聞いているから、嫌なシナリオばかり考えるんだ。ちくしょう。 と、最悪なストーリーが溢れかえるくらい出てくるリオはつくづく自分が嫌になった。しかし、風紀委員の名誉を守るには走らなければならない。 風紀委員(本当は自分自身)の誇りをかけて、ニーソックスを再び履いて、足をかばいながら保健室をこっそり抜け出すリオであった。
空気だけが支配する保健室。主の帰りを待ち続けて部屋があくびをし始めた頃、白先生が戻ってきた。 「まあ、コーヒーでも飲んでいきなさいよ」 「ありがとうございます」 若い女性の声も一緒に入ってくる。 初めて入るこの部屋のにおいをくんかくんかと嗅ぎながら、懐かしいねと丸椅子に座る人間の女性はルルという。 長い髪をふわりと揺らし、甘いお年頃の香りを漂わせる彼女。本当は古文の帆崎に用があり、わざわざここまで訪ねてきたのだが、 帆崎は別の用件で職員室には居なかった。それを見ていた白先生が、じゃあ保健室でコーヒーでも?とここに案内してきたのだ。 「帆崎と暮らし始めてどのくらいかな…」 「えっと、せんせとは…いつだったかなあ」 丸椅子に座ったままくるくると髪をなびかせ回転するルル。白先生はおきにのコーヒーメーカーを覗き込んで、ぽたぽた落ちる茶色のしずくを眺めている。 消毒のにおいだけだった保健室が一転して隠れ家的カフェにさま変わり。お茶請けのお菓子の袋をごそごそと取り出しながら、 白先生はルルに家での帆崎のことを聞いてみた。好奇心はなによりも大事だと自分自身で言い訳しながら。 「ネコの男と暮らすって、どう?やっぱり、悩みとかあるんじゃないの?」 「わたしはせんせのこと、好きだから毎日楽しいですね。それに分かりやすいんですよ、ウソつくと尻尾で分かるんです」 「そうなんだ。ところで二人は結構、歳が離れていたっけ…」 その言葉を最後に、白先生はルルと自分の分のコーヒーをマグカップに注ぐ。 うつむいてスカートを摘むルルの姿は白先生にはどのように写っただろうか。 ルルがはいはいを始めたとき、白先生は初恋をした。 ルルが九々を覚え始めたとき、白先生は初めての失恋を経験した。 ルルが思春期を迎えたとき、白先生は仕事と戦い始めていた。 ルルが初恋をしたとき、白先生は…。 「帆崎ってさ…ねえ。枯れてるよね?」 「枯れ果てた人って、素敵だと思います!」 気の強そうなルルの瞳にはまっすぐに白先生の顔が映ったが、ルルの持つマグカップの湯気にかき消されてしまった。 白先生から見れば帆崎はまだまだ青っ鼻の弟なのかもしれないが、ルルからすれば青っ鼻を垂らしたオヤジなのだろう。 「ルルさんね。わたしが見るにはさあ、きっと良い『帆崎使い』になれると思うよ」 「『帆崎使い』かあ。いいなあ、ソレ」 「それじゃあ、簡単な操縦法を教えよう。わたしのあごをさすってごらん」 「こ、こうですか?」 白く長いルルの指先。冷たいような、暖かいような人間の指先は白先生の柔らかいのど下を滑らかにさする。
いつもは研がれたメスのように鋭い白先生の目。今は傷口を優しく包む綿花のよう。 ぴん、とあごまで指先を進めたルルはグーにして手を自分の胸元に戻す。 「基本的に男って奴は甘えん坊屋さん。ましてやネコの男なんか、あごを許せば手のひらの上の子ネコ同然」 「ネコの男の人ってそうなんですか?」 「うーん、でもわたしもネコだから半分は当たっているかも」 あえて続きを聞くことをルルはしなかった。そういえば、初めて帆崎にルルの小さな身体を包み込んでもらったときのこと、 ルルのすべてを守るように帆崎の腕の温かみを感じた同時に、何かにすがっているようにも感じられた。 「あと、耳を触ってごらん。そう、あー、上手い上手い」 「なんだか、ネコの耳って不思議な触り心地ですね」 「帆崎にこれをやってごらんなさい。ああ…上手い上手い」 大きな白先生の耳、その付け根をルルの指が揉み解すと同時に、白衣のネコはいつもの男勝りな顔を忘れていた。 白先生は別にルルのほしいままにされるのが嬉しいのではなく、ネコの本能として『上手い』と言っているのだ。 ボブショートに揃えている白先生の髪がルルの手と同時に揺れる。 窓からの陽気もあいまって、ネコの本能が今までより二割り増しに増幅されている。 晴れの日のネコほど気分のいいケモノはいない。お日様の恵みに感謝。 「あ!いけない。コーヒーが冷めたくなっちゃった…」 ルルがマグカップを摘むと同時に、保健室の扉が前触れもなく音を立てる。 そして、あのけたたましい声が部屋中にこだました。 「因幡さん!飲み物買ってきたッスよ!冷たいコーヒーでよかったッスか?」 どこで買ってきたのか、1リットルのペットボトルのアイスコーヒーをビニル袋にぶら下げて、保健委員が帰ってきた。 同時にマグカップを机に叩きつける音がした。ルルと白先生の目はマグカップのように丸かった。 「因幡さんの手当てをして下さったッスね!さすが白先生。大人しく衝立の向こうで寝てるじゃないッスか」 「因幡…?知らんぞ。わたしは」 「じゃあ…向こうで寝たまま…?ッスよね。あれ」 いままでネコの男はどうやらとか、帆崎はなんたらと講釈をたれていた白先生。しかもルルの実演つきだ。 リオに聞かれてしまったのか?ヤツの耳は長いぞ。何でも聞き逃すことはないぞ。白先生の目線が泳ぎだす。 「と、とにかく因幡のことは…知らん!」 「だ、だって!確かにここに連れて来て、湿布を貼ったッスよお」 状況のわからないルルは不思議な格好の保健委員の姿をじっと見つめている。 というより、この子が保健委員ということだと理解しているかどうかは不明だ。 白先生が衝立を動かそうとしたとき、保健室の入り口で聞いたこともない程情けないうめき声が聞こえた。 「くー…。いたたたた、いたっ」 「あ!因幡さんッス!どこに行ってたッスか?心配で心配でぼくの涙腺が崩壊しそうになったッスよ!」 おしゃれな紙袋を抱えたまま、満身創痍のウサギが飛び込んできた。安堵の表情と共に、やりきれない何かが白先生を包み込む。 「い、因幡!人騒がせだぞ!!勝手に抜け出すんじゃない!」 ルルは白先生の尻尾を見て、ウソをついているなと確信した。 おしまい。
耳祭り? お話は、おしまいです。
白先生とルルの実演シーンが、桃色でゆりりりり〜んな花園イメージにみえたw
いい雰囲気だ。白先生は大人だねぇ いつも思ってるが氏はケモノらしさを出すのが本当に上手い。尊敬するわ
比べるべきではないかも知れんけど、わんこ氏のSSが一番好き 緩くて優しい雰囲気がとても心地良い
>>777-780 顎の下撫でられると、やっぱり無意識のうちにゴロゴロと喉を鳴らしちゃうんでしょうか
>>768-771 俺、いつか飛行機同好会に入部して2人に耳をたぷたぷしてもらうんだ…
これから帆崎はルルに耳とあごさすさすしてもらえんのか…
耳攻めだと!?
>>787 こ、これは、エロ過ぎる……
ええぃ!惣一、今直ぐ俺と代われ!
って、思っきし啄ばむのは止めくぁwせdrftgyふじこlp;
何というエロさww
>>786 浅川の能天気さの裏側には…、そうだったのか。
>>786 なんという鬱\(^o^)/
いつか救われるよな…?そうだよな?
全裸で寝てるのかそうか。
久々にWiki編集しようとしたら
>>617 のアナログマーシャ保存し忘れているのに気づいた・・・
作者様、もしもよろしければ再度アップロードのほうをお願いしてもよろしいでしょうか?
お手数ですが、お願いします・・・。
>>794 ありがとうございます!
こまめに更新やらないと取りこぼしがありそうで怖い…。
そういや、絵になってない登場人物が何人かいるなぁと思ったり思わなかったり。
>>796 今すぐ自分の手を使って絵におこす作業に戻るんだ
>>794 雅人は結構良い奴な雰囲気が出てるよなぁ
俺なら康太の友達続けられる自信ないし
いやいや康太自身は悪いやつじゃないだろw 奴はギャルゲ主人公という運命に殉じてるだけだ
801 :
創る名無しに見る名無し :2009/05/15(金) 09:34:22 ID:Jfo/N4T2
一度文をかいていつか書こうと思っているうちに大分時間が経過してしまう… 頭の中ではいろいろ妄想してるのに、いざ文に起こそうとするとやる気がなくなってしまう
>>800 今携帯だから見れないけど
カマキリダンスではないかとエスパー
当たってたのかよwww いや俺も数日前にランキング入ってたときカマキリに釣られてホイホイクリックしちまったもんで 内容?素晴らしかったよ
サラマンダーってリオレウスっぽい
レオリウスを一発で仕留める獅子宮先生という電波を受信した
獅子宮先生の鉄拳=大タル爆弾G×10
リオレウスを仮○ライダー自転車で追いかける鎌田という電波を受信した。
>>806-808 利里「なあ、卓……ついさっきさー。
いきなり獅子宮先生にぶん殴られたと思ったら、その後で変な自転車に乗った鎌田に追いかけられたぞ……。
俺、皆に恨まれるような事したおぼえは無いぞ―?」
卓「う〜ん、」そりゃアレだ。お前の顔が似ているからに決まってるじゃないか。リオレウスに」
朱美「うん、それなら納得出来るわね♪」
利里「や、やっぱりかー! と言うか全然納得出来ないぞ―!?(ガビーン)」
ウィキの更新は一先ず完了、 ちょっとページ名をミスった所があったけどな……orz
うおう超乙だよう いつもありがとう
wiki更新お疲れ様です。お茶でもどうぞ! つ 旦旦旦旦毒旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦毛旦旦旦
毒を引き当てるのはいのりんか帆崎先生だろうな あの二人は貧乏くじを引き当てる才能がありそうだ
しかし毒を飲んで気絶したところに口移しで薬を与えられるような 最後の最後で倍返し役得 …だといいですね。でないと苦労の割に報われなくて可哀想ですブワッ ああでも美人妻子持ちだったり同居中だったりと、 既に勝ち組気味ではあるのか
毒(味的な)を仕込んで飲ませたところに自分は毛を引き当てるのがサン先生クオリティ
817 :
811 :2009/05/17(日) 17:25:54 ID:EX+oOeaC
やりやがったwww
ちょww無茶しやがってw
なんと艶かしい…っ
うわぁいい兄弟だ リアルのウイルスにも気をつけようね! 関西じゃなくてもインフル流行ってるからねー (てか兵庫と大阪以外PCR検査してないから各地で流行ってるインフルも新型インフルかもね)
ねーちゃん(ノд`)
モエさんみたいな姉が欲しいッス! ああ、タスクきゅんも守ってあげたいな。リア厨はお姉さん大好きだからな。 佳望学園は一姫二太郎が多いのね。 芹沢家、猪田家、泊瀬谷家と…あとは…。
因幡家、大場家もそうだな 両方性別不明の保健委員もあるいは…? 単純に見る限りでは男の子っぽいけどな保健委員。女の子でも通る。何より僕っ娘は萌える ソウルイーターのクロナみたいなやつだな
ブタとヒトは内臓器官が似ているからウィルス発症も共有できるんだよね トリインフルエンザも一度ブタ経由しないと人間に感染しないし
ケモノな学級では、鳥人>イノシシ/豚人>人間 インフルの高速キラーパスが炸裂するのか
獣人の免疫系まで考察しちゃうこのスレが好きです
いや獣人はみんな人に近い内臓もってそうだし カマキリインフルとかネコインフルとかもありそうだ
カマキリに体温あるのか?
>>822 寝ているタスクに胸がキュンとしました
世界観とか考察するのも割と楽しいよね
おもしろい設定出てきたらssのネタにもなるし
過去作品でも読もうとウィキを良く見たらとんでもないミスが発覚…… そう言う訳で直しておきました。俺の大馬鹿者orz
虫の人はそういう病気には縁ないんだけど 黴びたりキノコ生えたりして大変だとかなんとか
風邪っ子カビっ子が増えてきたら白先生の出番ですな
>>835 汚物は消毒だ!(AA略 ですね? 分かります。
梅雨の間は「寝癖ついてるぞ」のノリで「カビ生えてるぞ」とか「キノコ生えてんぞ」ってなるわけか
虫人の萌え要素じゃね? きのこが生えてるってかわいい
・・・いわゆる冬虫夏草菌類は、体表につく皮膚病の類とちがって 体の中身から食われて子実体が出てくる時点でもう死んでる事に
堅吾「なあ、優よ。何だか最近、何もしていないのに妙に疲れるのだが……」 優「へぇ、疲れ知らずの君にしては珍し――って、背中に何か生えてるー!?」
May 19, 2009 やと ねつ ひいた も とてもかゆい
狐人は毎年、エキノコックスの予防接種が…。 葉狐「あかん!うちは注射が納豆の次に嫌いやねん」 白先生「お前はまだ子どもだから、エキノコックスに感染する前に予防するんだ」 大稲荷先生「ああ…わたしも白先生にお仕置きの注射をされたいザマス」 保健委員「大稲荷先生には、ぼくが注射をしてあげるッスよ!」 大稲荷先生「うはっ、や、やめるザマス!うわ!白せんせー!!!!」
悠(大稲荷先生ってストレートだったんだ)
GENOウイルスチェッカーで、wikiの危険度22%だったんだけど大丈夫かな? 「100%程度が出ても現状ではたぶん大丈夫です。(05/19 20:45現在) 」らしいのだけど。
>>844 ソースでチェックしようね。
</head>と<body>の間に怪しいjavascriptのコードが入ってるか確認してみたけどないから平気だよ。
すっかりjavaの存在忘れてたわwwさんくす
エヒノコックスの予防だと、最終宿主(犬狐猫辺り)は注射よりも駆虫薬を飲 んでもらうって事になると思いますよ(腸壁に寄生してるので)。 が、中間宿主(人猿、豚鼠その他多数)は対策が無いそうです(寄生部位の外 科的切除しか…)ので、あまりこっちの方向に考えるとどんどんブルーな気分 になりますから、とりあえずエヒノコックスは考えないほうが平和かと(笑)
じゃあとりあえず換毛期の話でもしようぜ!そこいら中に毛玉が飛び交うぜ!
猫エイズも狂犬病も冬虫夏草もハリガネムシもヤコブ病も狂牛病も口蹄疫も全部必殺だもんね
セミ人にくっついて育つセミヤドリガ人 その居候先のほとんどがヒグラシの♀ ちなみにセミヤドリガも処女生殖で卵を産むが仔はほぼすべて♀ 体が重くなることを除けば、命を奪われたり生殖能力に影響が生じたり するような致命的なダメージは与えないと言われる。 仔には体液を吸う構造が無く、どこからどうやって養分を得ているのか 未だよく分かっていない。 ・・・ えーと、セミ娘のダイエットサポート担当?
ヒトの場合毛が伸びるのは頭だけだけど、獣人の場合はどうなんだろう。 どう考えてもエロゲな展開にしかならんのだけど。
換毛期にのみ生え変わるんじゃね
>>851 風呂上がりの姉と妹を康太がブラッシングと申したか
ばっかお前人間だって足の毛とか脇の毛とかホニャララな毛も 伸びるだろうが!!
マジレスすると毛にも寿命ってもんがあって、一定以上の長さまで成長すると自然に抜け落ちます。 換毛期に犬とか猫のブラッシングするとえらいことになるぜ。ケアも結構な労働になりそう。 ふっさふさななのは特に。ヒカル君とか苦労してそう。父の仕事場にはきっと毛玉が舞ってる。 他には、ほら来なさいよってタスクにブラッシングしてやるモエとか。 毛玉残ってて、仕方ない人ですねってブラッシングしてあげる英先生と やめてください恥ずかしいですよって言いながらまんざらでもない(むしろ嬉しい)サン先生とか。 換毛期ネタっていろいろ想像が浮かぶ。
全部言われたので描く所が無い(笑)>換毛期ネタ
ええぇーなんだとぅ!? 見てえよマジで見てえよ
キリストはこう言っておる 「神は自らをたすくものをタスク」 つまり良い作品を創出し皆に分かてば換毛期のタスクをブラッシングする権利が与えられるのだ 「ひいい」とか言って逃げ回るタスクを「よいではないかよいではないか」とブラシ片手に追い詰める快感っ
でもブラッシングを怠ると毛玉がすげーことになるよ たぶん実家の猫は今頃すごいことになってると思う
早えGJ! 案の定なんかエロいなw
「へっくし!」 それに気付いたのは、鼻にむず痒さを感じてくしゃみをした時。 目の端にゆらゆらと動く物、よく見ればそれは誰かの毛玉だった。くしゃみの原因はこれか。 この毛玉は義母さんの物ではない、黒豹の義母さんの物ならば黒っぽい色をしている。 となると、我が家に居る抜け毛の出そうなケモノは一人しか思い浮かばない。 「おい、親父……頭に毛玉が付いているぞ」 「……ん?」 俺の一言に、ソファに寝そべってTVを見ていた親父が振り向く。 その際にフワリと舞い飛ぶのは、親父の物と思しき抜け毛……やっぱり、案の定か。 それに義母さんも気付き、少し困った様に尻尾をくねらせて俺に言う。 「あらあら、もうこの時期なのね……卓ちゃん、準備してて頂戴」 「あいよ、分かった」 義母さんに言われるまでもなく、俺はグルーミング用ブラシやら何やらを用意し始める。 ここ数ヶ月間使っていなかったから、ブラシはうっすらと埃を被っている。 よく見ると既に抜け毛も被っているようだが……。 「ほら親父。俺が呼んだら風呂にくるんだぞ?」 「……」 振り向き様に親父に向けて言うが、親父はチラリと俺を一瞥すると、若干嫌そうに耳を伏せた。 まあ、親父が耳を伏せて嫌がるのも分からないでもない。 ……なにせ、親父はこれから拷問のような目に合うのだから。 身体の殆どを毛皮に覆われたケモノに春と秋の二度訪れるちょっとした試練。 その名は換毛期。夏と冬の気温の変化に対応する為に全身の毛が抜け変わると言う、 ケモノが二本足で立ち上がり、その身に衣服を纏い始めるそれ以前から備わっている生理的機能である。 全身を毛皮に覆われていない人間の俺には、換毛期と言う物がいまいちピンと来ないのだが。 同級生のイヌのヒカル曰く、とにかく全身がむず痒くて舞い散る毛玉がひたすら鬱陶しい、との事だそうだ。 当然、親父も義母さんも全身を毛皮で覆われたケモノである以上、換毛期は必ず訪れる。 義母さんの場合、換毛期が訪れると早々に風呂場で自分自身をブラッシングする事で 毛の抜け変わりを手短に終わらせてしまう。そのお陰で親父や俺が義母さんの抜け毛で困った事はない。 が、対する親父はと言うと、生来の不精者な物だから幾ら毛が抜けようがお構いなし。 身体の彼方此方に毛玉が纏わり付き、自室を大量の抜け毛がふわふわと舞おうとも全然気にしない。 結果、気が付けば親父の抜け毛が我が家の彼方此方を我が物顔で舞い飛ぶのである。 無論、義母さんはその度に親父へ再三注意しているのだが、 それが聞き入れられているかどうかは、この現状を見れば何となく察する事が出来るであろう。 ま、そんな訳で、この季節、親父に換毛期が訪れた時には、風呂場で徹底的にブラッシングを行う事になる。 そして、それをやるのは俺の役目だったりする。 ……本来ならば、こう言うのは妻である義母さんがやるべきなのだろうけど。 義母さんがやろうとすると、親父は『恥かしい』と言って逃げまわるのだそうだ。 ヘンな所で恥かしがり屋と言うか何と言うか……難しい親父である。
※ ※ ※ 「ったく、親父、来るのが遅いな……」 場所は変わって我が家のさほど広くない風呂場。 俺はTシャツに単パン、片手にブラシと言う姿で未だに来ない親父を待っていた。 まあ、親父の事だ、恐らく今頃は面倒臭がって部屋に逃げこんだ所で、 笑顔の義母さんに無理やり連れ戻されているのだろう。 「……」 と、噂すれば曹操の影ありというか、毛並みを若干ヨレヨレにした親父がタオル一丁の姿で風呂場に入ってきた。 その尻尾がやや股の間へ曲がっている辺り、どうやら俺の想像通りだったというべきか……? 「さて、先ずは軽くざっとやるぞ。覚悟は良いな? 親父」 「……うむ」 先ずは親父を椅子に座らせ、背後へと周る。 そしてグルーミング用ブラシでその背中の毛皮を軽くざっとひと掻き。 余程くすぐったいのかびくりと震える親父の身体、ブラシを見ると親父の灰色の体毛がびっしり。 相変わらず大量に抜ける、ちょっと軽く掻いただけでこれとは……こりゃ苦労しそうだ。 「親父、悪いけど動かないでくれよ……」 「……うぅむ……」 取りあえず、ブラシで掻くたびにびくりと動かれてはやり辛いので、 変に動かない様に親父の頭を押さえ、目立つ所をブラシでザシザシと掻き始める。 ブラシ一杯に毛がついた所でビニール袋へ放り入れ、その後はまたザシザシとブラシで抜け毛を掻き取る。 幼稚園の頃は灰色の大平原の様に見えた親父の背中も、高校生の今ではこんな物かと思えるほどに小さい。 これも時の流れと言うべきか……。 ……そう言えば、俺がまだ何も分かっちゃいないガキの頃、 一緒に風呂に入っている親父の毛むくじゃらの身体を見て、 『何で、僕は頭にしか毛が生えていないの?』と、親父へ質問した事がある。 しかし、その質問に対して親父は只、押し黙るばかりで俺に何も答えてはくれなかった。 多分、幼い俺へ言い辛かったのだろう、自分達が本当の両親では無いと言う事を。 その時に俺に向けていた親父の悲しそうな目は、一生忘れられない。 ……あの後、義母さんに同じ質問をぶつけた俺は、 悲しい表情を浮べる義母さんから本当の事を知らされたのだ……。 っと、いかんな。ついつい感傷に浸ってしまった。 こんな事考えているより、とっととやるべき事を済ましてしまおう。 「取りあえず、背中側はこんな物だな……次は前の方をやるぞ?」 「……」 背中側と両足、そして尻尾の抜け毛を粗方処理した所で、俺は此方へ向く様に親父に言う。 だがしかし、親父はぷいとそっぽを向くだけで振り向こうともしない。 こ、この親父は……!
「あ、あのなぁ……親父、同じ男同士なんだから別に恥かしがる事ないだろ? ……それとも、俺じゃなくて利枝さんに無理やりやってもらいたいか? 親父は嫌だろ?」 「……むぅ」 「そう、ここで恥かしがってても、状況は余計に悪くなるだけなんだ。親父も分かるだろ? それだったら、状況が悪くならない今の内にとっとと済ませてしまおう。な?」 「……」 俺の説得が通じたのか、親父はようやくこちらへと身体を向けた。 全く、世話の焼ける親父である……。 「んじゃ、顔を上に向けてくれよ……そうそう、そんな感じ」 「……」 顔を上へ向けさせた状態でマズルの下辺りを片手で押さえ、喉元からお腹の辺りまでをザシザシと掻き取る。 こちらの方は背中に比べ、体毛がそう多くは無いのか思ったよりブラシに毛が絡み付いては来ない。 しかし、それは飽くまで背中に比べての話。2、3掻きもすればブラシ一杯に毛が絡み付いてくる事に変わりは無い。 やれやれ、こうも大量の毛を掻き取っていると、そろそろ腕が疲れてくる……。 「――ひぅっ!?」 「うぉっ!? 如何したんだ親父!?」 「…………」 いきなり呻き声を上げて大きく身体をびくつかせた親父に、俺は驚きつつも何事かと声をかける。 親父は一瞬だけ恨みがましい目を俺へ向けると、何か言いた気に自分の下腹部へゆっくりと目を移した。 ……どうやら、ブラシが男性にとって大切な所へ当たってしまった様で……。 「す、済まん……ちょっと考え事してたんだ」 「…………」 謝っているより早くやれ、と言わんばかりの親父の眼差しが俺を射抜く。 ハイハイ、分かりましたよ……とっとと終わらせちゃいましょうか、こんな事。 そろそろ、何が悲しゅうて男のケモノのグルーミングなんてやってるんだ、と言う気持ちも出始めた事だしな。 「さてと、ブラッシングはこれで終了……後は……」 粗方ブラシで掻き終えた所で、俺はこっそりと壁に掛けられているある物へと手を伸ばす。 それは本来ならばシャワーとして使われているホースなのだが、 その先端に付いている物は通常のシャワーヘッドとは異なっていた。 「……ぬっ!?」 親父もそれに気付いたらしく、尻尾を股の間に折り曲げ、 そして慌てて椅子を蹴って立ちあがり、風呂場から逃げ出そうとする。――だがもう遅い! 「くらえっ、ハイドロジェット!」 俺の掛け声と共に、親父の背中へ浴びせられる強烈なお湯のジェット水流! そう、シャワーヘッドの代わりに取り付けられていたのは、水流を収束させて水の勢いを増させる洗車用の物。 それによって凄まじい勢いで水流が親父の毛皮に叩き付けられ、弾け飛ぶ水飛沫、 水飛沫と共に吹き飛ぶブラシでは掻き取り切れなかった少量の抜け毛。 「…………」 「うん、これぞ水も滴る良い狼って所だな?」 そうやって三十秒もしない内に、親父はお湯でグショグショの濡れ鼠と化した。 何時もながら思うが、ぐっしょりと濡れたケモノほど情け無い物は無いと思うのは俺だけだろうか?
「……やるなら言ってくれ」 「言ったら親父は嫌がって逃げるだろ?」 「……」 俺へ恨みがましい眼差しを向ける、水も滴る良い狼状態となった親父。 しかし、俺は全然気にしない。そう、これも毎回換毛期にやっている恒例行事みたいな物である。 こうやる事で、ブラシで掻き取りきれなかった抜け毛を一網打尽にする効率的な方法なのだ。 今までは一言言った所為で逃げ回られて苦労していたので、今回は不意打ちとさせてもらった。 「……」 「……? なんだよ?」 ――と、俺が一人勝ち誇っていた矢先、不意にすたすたと俺の前に歩み寄る親父。 その妙な行動に、俺が心の内で嫌な物を感じたその矢先。 ぶるぶるぶるっ!! 「――う、うわぁぁぁぁぁぁっ!?」 ――いきなり親父が全身を思いっきり震わせ、毛皮に付いた水滴を飛ばしてきやがった!! 当然、この突然の反撃に、驚いて尻餅を付いてしまった俺は敢え無く全身を水に濡らす事となった。 そして、親父は尻餅を付いた体勢の俺を見下ろし、勝ち誇った様に 「おかえし」 「ほ、ほほぉう、そう言うお返しできましたか……」 言って、ゆらりっ、と立ちあがる俺。 親父はまだ気付いていない、俺の手にはまだアレが在ると言う事を…… 「くらぇっ!! ハイドロジェット第二段!!」 「……ぬぅっ!?」 再び親父へ炸裂する強烈なお湯のジェット水流! それに対して、ずぶ濡れになった親父は身体をぶるぶるっと震わせ全身の水滴を飛ばして対抗する! 「こ、このっ! いきなり抱き付くのは反則だろっ! 親父!!」 「これも作戦の内」 「だったら必殺、風呂桶ボンバーだっ!!」 「ぬ、ぬうっ!?」 ばしゃばしゃと水飛沫が飛び散る音が鳴り響き、誰の物とも付かぬ怒号が飛び交う。 かくて、風呂場はある種の戦場と化して行く…… 「あらあら、二人とも仲が良いわねぇ……」 その頃、利枝は未だに風呂場で繰り広げられている春秋恒例父子のお湯掛け大会を微笑ましく感じつつ、 恐らく疲れ切っているであろう父子を労う為、冷たいコーヒー牛乳を用意して待っているのであった。 ―――――――――――――――――――終われ―――――――――――――――――――
以上です。
>>860 卓「……康太が凄く羨ましいです」
利枝「あら、なら卓ちゃん、私のグルーミングを手伝ってくれるの?」
卓「ちょww、そう言う意味で言った訳では(///」
利枝「あらあら、顔を赤くしちゃって、可愛いわね」
親父www ダンディーでかっこいい人でもプライベートだと案外駄目大人だったりするよなw
>「――ひぅっ!?」 ニヤけた
うん、グルーミングは重要なコミュニケーション手段だw
おぉ、主人公2人が対称的でおもしろい
>>860 康太死n…じゃなくてそこ代わってくださいお願いします
>>866 なにが悲しくて駄目な中年に萌えなきゃなんねえんだw
あんまり喋らず目で訴えてくる親父はホント犬っぽいな
しかしよく考えると換毛期なんて獣人には無さそうかも 頭髪の長さが説明つかなくなるし、衣服着てるから寒暖を毛皮で調節する必要ないし
夢の無い事言うなよ…
むむ、スレ止まりだったから話のタネにでもと思ったのだが まぁ夢は無いな
むしろ獣人に人間の特徴を 九州男児な黒犬のおっちゃんが白髪交じりになってきた、とか 頭髪にあたる頭部の長い毛がはgはじめて、だんだん後頭部に生え際が移動してくるとか
>>875 スレ止まりと言うには、まだこのスレは良い方だよw
獣人の特徴とは全然違うんだけど、地方の訛りとか口調使ってたら
ちょっと萌えるかも
そうだとすると、ザッキーは坊主にあたる髪型なんだろうか まさかハg
方言といえばヨーコちゃんカワユイよね
適度に人間の特徴入れたりはあるよね 自分も年配の獣人の描写は「毛皮はいくらか色褪せ〜」とか、ライオンなら「そのたてがみには、ちらほらと白髪が混じり〜」とか書くし
>>878 そんな事言ったら教員・生徒合わせて♀もハgに加わるのが多くなるぞ!!
ハgてない!
しまつた! マーシャもはg(このコメントは削除されました
頭髪とか骨格とかは人の血の濃さうんぬんとか妄想してる 例えば由緒正しい家柄のサン先生とか、他の誰よりも犬っぽい気がする 何代か人と混ざるうちにケモ脚じゃはなくなったり頭髪生えてきたり…なんてね まあ細かいことなんか気にせず個人差ってことでいいんだろう 絵師さんの描き方ひとつだからな あー畜生絵のスキル欲しいなーもー
畜生絵…… せめてケモ絵とか言った方が
ちくしょう 絵のスキル欲しいな だろうw
山○夜羽の画かと思いました(笑)>畜生絵 私はあんまり髪の毛の処理が上手く出来ないので、短毛の生き物だとどうして も似たような容姿になってしまうです。 マーシャはまぁ“ショートカット” 的なスタイルだと思っていただければ。 ちなみに、サンスーシの血についてはwikipediaの「ドーベル・シェパード」 の項をご覧くだされば、爺さんが結婚を許さなかった一因も判るかと。 紙を変えたら今まで使っていたシャープペンシルの芯、及び消しゴムとのマッ チングが悪くなって描きにくいことこの上なくなりました。 紙を戻すかマッ チングの良い芯と消しゴムを探すか悩み中です。
今はとりあえず紙を戻して 描きながら、紙に合う道具を探すのがいいんじゃね?
畜生絵ワロタw
ちょwwwマーシャwww
癒される
成る程、見事に別種になっちゃうのな。考えてんなー いつも素晴らしい絵をありがとう 筆早くて器用で(朱美とかよく描けるもんだ)設定作りも上手い氏は超尊敬してる
アナログからのスキャンでもそれをかんじさせない綺麗さよね
紙に描いてスキャンして、さぁこれから、ってところでパソコン壊れました。 昨日午後から深夜まで作業してとりあえずデータは死んでないことを確認。 それだけでもホッとしましたが、代替機が古いために自宅ではネットにはほぼ 接続できず(ソフマップで検索したらNetscape4.7がフリーズとか…)。 せっかくネタ画だったのに、時期外れになっても笑わないで(いや、笑って欲 しいのか)くださいましな。
Win95SR2とかWin98ぐらいの頃ですかの そんぐらい古ければいまどきのウィルスやワームにはかえって感染しないかもw
俺のMEたんなんかウイルスが感染したってどうということはないんだぜ!
節子…MEたんはあほの子や……
いまどきwin98を愛用している俺が通りますよ……。
古いもんだからネット動画を見ようとしたりすると時折IEが強制終了するんだぜ(´・ω・`)
それはさて置き、今回は
>>862-865 の後日談的な物を投下します。
「ぶぇっくしっ!」 鼻に堪らないむず痒さを感じてくしゃみ一発、視界の端に舞いあがったのは誰かの抜け毛。 ……おかしい、数日前に親父のグルーミングを徹底的にやった筈、もう抜け毛や毛玉は出てこない筈だが? ふと、視界の端にゆらゆらと舞い飛ぶ毛玉を見つけ、それを吹き飛ばさない様に上手くキャッチする。 その毛玉は、親父の物とは違って黒っぽい色をしていた。この毛色からすると…… 「……義母さん?」 「あら、もうこんな時期なのね……もう、いやんなっちゃうわ」 俺の手にある毛玉に気付いたのか、居間で本を読んでいた義母さんは恥かしそうに尻尾をくねらせた。 ……妙だ、義母さんにしては妙過ぎる。 何時もの義母さんならば、換毛期が来た時は直ぐに自分自身でグルーミングをして抜け毛が出ない様にする筈だ。 にも関わらず、毛玉が家の中を舞い飛ぶまで放置しているなんて……明らかにおかしい。 そんな俺の訝しげな眼差しに気付いたのか、義母さんはちょっと申し訳なさそうに 「実は言うとね、先週から腕が肩から上に上がらなくなっちゃってね、 如何してかなと思って昨日、お医者さんに行って診てもらったら、四十肩だって言われちゃったのよ……」 四十肩……加齢に伴う組織の変性が原因となって痛みを発生する事で、 運動を制限するためにさらに拘縮が進み、次第に痛みが強くなる悪循環を伴う症状である。 肩関節周囲炎・凍結肩・疼痛性肩関節制動症等に分けられる。軽度のものは温熱療法、運動療法が効果的である。 治癒まで約1年から1年半程度かかるが、自然に完治するという特徴がある。 かつては、この四十肩は人間族でしか発症しない病気だと言う迷信が信じられていたが、 人間と同じく二本足で歩き前足を手として使うケモノでも、ある程度の歳になれば普通に発症する。 無論、腰痛、ぎっくり腰も同様である。(聞く所によると、帆崎先生も一度、ぎっくり腰を発症した事があるそうだ) ……と、親父から貰った本に書かれていた説明をつらづらと並べてみたのだが、 つまり簡単に言ってしまえば、四十肩は老化で肩が上がらなくなる一過性の病気だと思えば良い。 まあ、義母さんも外見や行動は若々しいとは言え、一応はそれなりの歳なのだ。発症しても何らおかしくは無い。 「だから、自分でグルーミングをするにしても、身体の前の辺りだったら出来るのよ。 けど、背中とか後腰とかは肩が痛くて痛くて上手く出来なくてね……。 本当、肩が痛くなければもうとっくの内に終わらせちゃってるんだけど……」 言って、困った様に耳を伏せて溜息を付く義母さん。 道理で、何時もならばとっととグルーミングを終わらせてしまう義母さんがやらずにいた訳である。 いや、やらずにいたと言うより、この場合、やろうと思っても肩が痛くてやれなかった、と言った所か。 となると、このままでは義母さんは肩が治るまで自分でグルーミングが上手く出来ないとなる訳だが……。 「けど、あの人に頼むとしてもね。あの人、ああ見えて恥かしがり屋でしょ? 私が頼んだとしても、あの人は何やかんやと理由をつけて逃げるのが目に見えてるのよ……」 「ああ、確かに……」 うん、親父なら有り得る話だな……。 何せ、同じ男同士である息子相手にですら恥かしがってた位だからな。 そんな親父に義母さんのグルーミングが出来るかと言うと……うん、親父なら逃げるな、確実に。 そうなると、必然的に義母さんのグルーミングが出来る人は限られてくる訳で……。 ふと、俺はこちらへ期待の眼差しを向ける尻尾を上機嫌に立てた義母さんに気付いた。 心の中で凄く嫌な物を感じながら、「俺がやるの?」と自分を指差してみると、 義母さんはにっこりと満面の笑顔を浮べ、大きく頷く。 「やっぱり、そうなるよな……」 そんな余りにも予想通りの展開に、俺は心の中でがっくりと項垂れた。
「……はぁ、何でこうなるのかな……」 場所は変わって、味気も素っ気も無いシステムバスな我が家の風呂場。 俺は親父のグルーミングをした時と同じ格好で義母さんを待ちつつ、世の無常さに対して愚痴を漏らした。 それにしても、親父も来るのが大分遅かったけど、義母さんも来るのが遅いな……? 恥かしがって逃げまわった親父じゃあるまいに、一体何をやってるんだ? 「卓ちゃん、待たせちゃってゴメンナサイね」 と、俺が心の中で愚痴っていた所で義母さんが来た様だ。 やれやれ、恥かしがって部屋に逃げ込んだ親父じゃああるまいに、義母さんは一体何を…… 「……義母さん? なにそのカッコ」 「似合ってるかしら? 新しく買った水着。今年の夏に使う予定なの」 「……」 シンプルなデザインの白のビキニ姿でポーズを取る義母さんを前に、俺は呆気に取られた。 道理で、来るのが遅いと思ったら……わざわざ水着に着替えていたのか、義母さん。 つか、義母さん……仮にも英先生と同い年だと言うのに、その水着は無いだろ……? いや、似合ってる似合っていない以前の問題として。 「あのな……義母さん、ふざけているの?」 「いやねぇ、卓ちゃん。私は別にふざけていないわよ? 私は、この格好の方が卓ちゃんにとってやりやすいだろうと思っただけなのよ」 「いや、それにしても……」 「それとも、卓ちゃんはお母さんの産まれたままの姿を見たかった訳?」 「――う゛……わ、分かったよ……」 こう言われてしまうと男の立場と言うのは悲しくなる程弱い。 そう、それが例え義理の母親と息子の関係だとしても、何ら変わる事は無い。 よって、俺は半ば嫌々ながらも、水着姿の義母さんのグルーミングをする事となった……。 「義母さん。最初は背中をやるから椅子に座って」 「はいはい、分かってるわよ」 取りあえず、何時までもげんなりとしている訳にも行かないのでとっとと始める事に。 椅子に座らせた母さんの背後へ回り、先ずは水着の紐に当てない様に背中の毛皮を軽くブラシでひと掻きしてみる。 「…んぁん♪」 なんか妙に艶っぽい声をあげていた様だが、ここは聞かなかった事にしてブラシを掻く。 親父の時とは違い、義母さんは抜け毛が少ないのかブラシに絡み付く毛はそう多くは無い。 その上、毛質も親父に比べて柔かいのか、ブラシを掻いた時の手応えはそう感じなかった。 この分だと、親父の時とは違ってそう苦労はしないな。 ただ、別の意味で苦労しそうだけど……。
「悪いけど義母さん、ブラシを掻く時に変な声を上げたりしないでくれよ?」 「あら、ごめんなさいね? ちょっと気持ちよかったからつい……」 俺の指摘に、ペろっと舌先を出して照れ笑いをする義母さん。 何処かで聞いた話だったか、ケモノによっちゃブラッシングの感触が気持ち良いと感じると言うが。 よもや義母さんがそうだったのか……。こりゃ、親父の時とは別の意味で苦労しそうだな。おもに煩悩的な意味で。 「義母さん、これから始めるから、幾ら気持ち良くても声を上げたりしないでくれよ?」 「はいはい、言われなくても分かっているわよ?」 如何も適当な義母さんの返答に激しく不安をおぼえつつも、 俺は動かない様に義母さんの首元を軽く抑え、目立つ所をザシザシとブラシで掻き始める。 「はぁん」 ……。 「あふぅん♪」 …………。 「ぁひゃあん♪」 …………………。 「義母さん、取りあえず黙ってて!」 「ご、ごめんなさい……」 いい加減、ブラシを掻くたびに義母さんが上げる変な声が 別の意味で気になってきたので強く注意すると、義母さんはしょんぼりと耳を伏せさせた。 ったく、この義母さんは……。これじゃ落ちついてブラッシングが出来やしない。 と言うか、ブラッシング出来る出来ない以前に俺の煩悩が如何にかなりそうだ……。 一応、血は繋がってないし種族も違うけど相手は母親なんだぞー、落ちつけ俺の煩悩。 「んじゃ、気を取りなおして…」 ようやく煩悩が落ち着いてくれた所で、俺はブラッシングを再開する。 注意が効いたのか、ブラシを掻いても義母さんは小さく声を漏らすだけで、変な声を上げなくなっていた。 これでようやく落ち付いてブラッシングに集中できる。……何だかこの時点で精神的な疲れを感じてきたな……。
「こんな感じで良いのか?」 「うん、それくらいで……」 気を取りなおして、義母さんに具合を聞きつつ毛並みに沿ってブラッシングを行う。 そういや、今の今まで俺がこうやって義母さんにブラッシングしたりとか肩を揉んでやったりとかした事が無かったな。 一応、義母さんの誕生日の時も、そして母の日の時も、日ごろの感謝を込めて物を贈ったりはとかはしてはいたけど、 いざ行動となると、何処かこっ恥かしいというかむず痒いというか、そんな気持ちが出てしまって出来なかったんだよな。 う〜ん、そう考えてみると俺は何と言う親不孝物なのだろうか……? 「どうしたの? 卓ちゃん。手が止まってるわよ?」 「―――あ、ごめん、ちょっと考え事してた」 いけないいけない、つい物思いに耽って手が止まっていたようだ。 数日前の親父の時はうっかりヘンな所を掻きそうになったし、俺は如何も考え事に夢中になってしまうらしい。 こう言うのは何とか治しておかないとな……。 「もう、卓ちゃん。考えるのは良いけどそれでボケっとしちゃ駄目でしょ? しっかりしなちゃ」 「はいはい。分かりましたよ……っと、こんな感じかい?」 「……ん、そこ、良い感じよ……」 義母さんの注意を聞き流しながら、俺はブラッシングを再開。 俺のブラッシングが余程心地良いのか、義母さんからぐるぐると喉を鳴らす声が聞える。 こう言う所を見ると、やっぱり義母さんのような豹族もネコ族の近縁なんだなぁと思ってしまう。 とは言え、その体付きはネコ族の人と違ってやや筋肉質でがっしりとしているし(獅子族には劣るが)。 また、その黒の単色に見える毛皮を良く見れば、微妙な黒色の濃淡による独特の豹柄模様が入っている。 ……そう言えば、豹柄模様を見て思い出したけど、 確か、俺が小学生の頃だったか、義母さんと一緒に風呂に入った時。 何気に義母さんの毛皮の豹紋を数え始めたのは良いけど、それでついつい数えるのに夢中になってしまい。 結局、125を数えた辺りで俺は湯当りを起こして倒れて、義母さんにえらく心配させた事があったんだよな……。 若気の至りとは言え、何ともまあ間抜けな話で……。 それから中学に上がる頃には、クラスの連中にからかわれるのが嫌で一緒に風呂に入る事が無くなったから、 こうやって義母さんの体をまじまじと観察する事もなくなったんだよな……。 にしても、義母さんの毛皮は歳の割に美しく、艶かしい――って、何考えてるんだ俺は。落ちつけ俺の煩悩。 「また手が止まってるわよ、卓ちゃん? さっきから如何したの?」 「あ、いや、何でもないから気にしないで」 「そう? なら気にしないで置くわね?」 まるで俺の思考を見透かしたかの様に、クスリ、と笑う義母さん。 途端に恥かしさを感じ、頬がカアッと熱くなるのを感じる。多分、今の俺の顔は熟れた苺の様に赤くなっている事だろう。 クールダウン、クールダウンだ俺。相手は母親なんだって、何を意識しちゃってるんだよ……馬鹿か俺は。
「義母さん、終わったよ……」 そんなこんなで自分の煩悩と戦いながら約1時間後。 俺はようやく、義母さんの背中の毛皮のブラッシングを終了させた。 何と言うか、親父のグルーミングをやった時の数倍疲れた気がする。特に精神的な意味で。 ひょっとしたら、義母さんの四十肩が治るまでずっとこれをやる訳か……? 「ご苦労様。卓ちゃん。やっぱり、グルーミングした後は何となく気分がスッキリするわね?」 「ああ、そうだな……」 肉体的と精神的の両方の意味でかなり疲れた気分を感じている俺に対し、 義母さんはと言うとかなり気分良さそうに「ん〜っ」と背伸びをして―――……背伸びをして? 「それじゃあ、卓ちゃん。今度は腰の方を……」 「なあ、義母さん?」 「ん? な、何かしら?」 俺へ次の指示を言おうとした所で、義母さんはその背に向けられた俺のジト目にようやく気付いた。 そして、恐る恐る振り向く義母さんに向けて、俺はごく冷静淡々と気付いた事を指摘する。 「四十肩なのに、何で腕を思いっきり上げた背伸びが出来るんだ?」 「……っ!?」 ここで義母さんは自分の犯した過ちに気付いたらしく、全身の毛を思いっきり逆立てて硬直する。 そして、まるで風船の中の空気が抜けていくかの様に、その耳がゆっくりと伏せられ、尻尾が下に垂れて行く。 多分、もし義母さんが俺と同じ人間だったなら、その額にはびっしりと脂汗が浮かんでいる事だろう。 「え、えっと……その、あのね? 卓ちゃん……」 しばらく気まずい空気が場を流れた後、耳を伏せた義母さんが、おずおずと言った感じで話始める。 その際、しきりに片手で顔を洗う仕草をしている所から、義母さんは相当緊張しているのだろう。 「その……数日前に、卓ちゃんがあの人のグルーミングをしてくれてたでしょ? それで、その時のあの人がずいぶんと楽しそうだったから……その、私もして貰いたいなって思っちゃって……」 成る程、義母さんがわざわざ仮病を使ってまで、俺にグルーミングをさせたのはそう言う理由か。 確かに、この義母は昔っから息子とのスキンシップ(無論、健康的な意味で)に飢えているからなぁ。 恐らく義母さんは、俺が親父と楽しそうにグルーミングをやっているのを見て(?)、心底羨ましくなったのだろう。 「けど、今まで自分で全部やってたグルーミングを、 今更、卓ちゃんに手伝う様に頼むなんて如何も恥かしくなっちゃってね。それで、その……」 「四十肩で肩が痛くて上がらない、とか俺に嘘をついた訳だな?」 「……う、ゴメンナサイ」 尚もジト目な俺の言葉に、義母さんは遂にシュンと身体を縮こまらせた。 全く、面倒臭がりな親父といい、このサムコンな義母さんといい、俺の家族は如何も困った人揃いである。 しかもおまけに、夫婦共々なんら悪意が無いのが更に困り者である。 さて、この場合は如何した物か……良し、あれで行くかな。
「えっと、その、卓ちゃん……私はね、別に卓ちゃんを困らせようとかそう言う事は考えてなかったのよ? 只、本当にあの人が羨ましかったから、私もして欲しいなって……」 何やら一人で弁明をしている義母さんを余所に、俺はそっと壁に掛けられたある物を手に取る。 「だから、その、怒らないで欲しいn――ハブラビシュ!?」 尚も話を続けようとした義母さんの顔面目掛けて、シャワーホースによる必殺ハイドロジェットを一発! お湯のジェット水流を受けた義母さんは、豆鉄砲を食らったハト人のように暫し濡れた顔でキョトンとした後、 プルプルと顔を振って水気を飛ばし、震えた声で問い掛ける。 「す、卓ちゃん、いきなり何をするの……?」 「ん? グルーミングをした後の恒例の奴だよ。 義母さんは知らないの?」 「それは知ってるけど……いきなりh――ヒョベバァ!?」 義母さんが言いきる間も与えず、再び顔面へお湯のジェット水流をお見舞いする俺。 再度プルプルと顔を振って水気を払っている義母さんへ、俺は満面の笑顔を浮べて言う。 「義母さん? 一応、事情があったとは言え嘘は嘘だからな……取りあえず、覚悟は良いかな?」 言いながらじりじりと迫る俺の様子にヤバイ物を感じたらしく、 尻尾を巻いて立ちあがった義母さんはゆっくりと後退りしつつ、引き攣った笑顔を浮かべて俺へ言う。 「え、えっと……優しくしてね?」 「ごめん、無理♪」 無論、んな懇願聞く耳持たない俺は、義母さんに向けて容赦なくハイドロジェットの引き金を引いた。 ……そしてその頃。 『きゃーきゃー! 卓ちゃん、お願いだから優しくして頂戴!』 『うわ、そう言いながら尻尾でお湯を掛け返すなって義母さん!』 『せめてもの反撃よ、卓ちゃn――って、きゃー!』 『くぉら! にげるなぁぁぁっ! 黒豹なだけあって素早いなぁ、クソ!』 バシャーンバシャーン 「……楽しそうだな」 謙太郎は自室の真下にある風呂場から聞えてくる、妻と息子の何処までも楽しそうな声と水音を耳にしながら、 数日前にあった息子とのエピソードを面白可笑しく改変し、新たな作品に書き加えてゆくのであった。 ―――――――――――――――――――――終われ―――――――――――――――――――――
以上です。 そろそろアイスが恋しい季節になりますな……。
っぐあぁぁーてめえもか卓ぅ!! 羨ましいんだよ馬鹿野郎! あーもーかわいいな義母さんちくしょうめっ
やらしいなさすが義母さんやらしい
せんせー! 義母は攻略対象に入りますかー?
>>910 くっ、卓もギャルゲ主人公への道を歩もうというのか……!
ザッキーおいw あぁーいいなあー 山野先生にくっつきてー
ときおり現れて噴出す校長w
はづきちw そしてザッキーw 俺は冬の時期に山野先生にくっつきたいぜ!
ママンいいなぁママン
>>917 復活オメ! 絵師の絵は好きだから嬉しい限り。
オードリーならぬ尾踊ワロたww
尾踊うまいなw ツッコミを尻尾でやったりとかするんだろうかw
そういえば気になったんだけど、ケモ学の委員会の担当教師って 誰がやってるんだろうなぁ。 保健委員は白先生とか風紀委員はザッキーとか?
尾踊ww 粕牙の犬種のチョイスが秀逸www
『禿げに見える犬ってブルテリアだよなぁ、猫はスフィンクスがそのままだなぁ」って
並べて落描きしてたらオードリーに見えてきたのでそのまま描きましたですよ。
尾踊ワカバヤシはこんなに目が大きくないほうが良かったのだけど(笑)
昨晩は『もうすぐ「グイン」の新作が読めなくなるんだ』と思うと悲しくて呑んで寝ち
ゃったけれども… 俺、帰ったら義母さんを描くんだ(死亡フラグ)。
>>920 ずいぶん昔なので忘れましたが、他にどんな委員会が有りましたっけ? 図書委員とか
美化委員とかぐらい?
実は以前描いた「甘噛同好会」の男子が生徒会長と会計だって設定は、有り(笑)?
オードリーの春日って保毛田保毛男に似てるよね
>>917 新ジャンルに噴いたw
久しぶりに投下します。
グルーミング祭りの頃から案を練ってたら、遅くなってしまった。
遅筆ですいません。
『初夏の夜の夢』
「そろそろ換毛の季節となりました。生徒の皆さんは毛づくろいをこまめにして、身だしなみに気を付けましょう。
あと、鳥類の生徒の皆さん、他の生徒が怪我しないように、落ちた毛は自分できちんと処分しましょう。風紀委員からでした」
朝礼台の上では、風紀委員・因幡リオが生徒たちに『今月の注意事項』を伝えている。
小・中・高一貫の佳望学園での朝の一こま。初夏の風がリオのスカートを揺らす。
生徒たちはみな並んで、光を受けながら朝礼に臨んでいた。
初等部の子どもたちは、落ち着きない子もいれば、真面目に聞いている子もいる。
中・高等部の生徒たちは、眠そうな顔をしている生徒も。うつらうつらとしているのは、朝の弱い種族。
特にネコの生徒たちにとっては、睡魔との闘いの時間であった。
いや、生徒とは限ったことではないようでもある。
「以上、風紀委員から。他に連絡事項は…?」
朝礼の進行をする帆崎は、きょろきょろと見回して会を締めようとしていた、が。
「ふぁあ!は、はい?」
凪のように静まり返った生徒たちは素っ頓狂な声でみな、目を覚ましてしまった。
生徒の列から飛んできた声ではない。おまけに張本人は、尻尾を丸めて自分が隠れるための穴を探している。
「では…、泊瀬谷先生からどうぞ」
「いまのは、違いますっ!」
寝ぼけ眼を擦りながら、どっと沸きかえる生徒たちと視線を合わせようとしない泊瀬谷は、
「雨が降り始める季節のネコは、眠い日が多いのだ」と、勝手に自分で自分を納得させていた。
「では、校歌斉唱で朝礼を終わります」
『命を抱くー 太平洋にー 浸し洗うはー 心のうつわー…』
曇天の空が包み込むグラウンドに生徒たちの歌声が響く。
―――もう、朝のことは忘れようかな…。
その日一日は、曇り空のような気分だ。いっそのこと、土砂降りでもなればいいのに。でも、お仕事なのでそうはいかない。
朝礼での出来事がちらつき、梅雨の合間の晴れのようなすっきりした気分を取り戻せなかった泊瀬谷は、
職員室で小テストの採点に勤しんでいた。今回はちょっと意地悪をして、難易度を上げてみたものの、
泊瀬谷の期待とは裏腹になかなかの高得点を生徒たちははじき出していた。
教師としては嬉しい限りであることだが、少し悔しい気持ちもあることは否めない。
「まる、まる、まる…うーん…。さんか…いや、まる、まる」
いんちきな呪文のように一人で記号を口ずさみながら、生徒たちのいない夜の職員室を帆崎とサン・スーシの三人で過ごす。
帆崎は買ってきた缶コーヒーのホットをちびちび飲みながら、教育委員会からの書類に目を通している。
サン・スーシは自慢のダブルモニターを駆使して資料作り…の傍ら、お絵描きチャットに没頭している。
「今月の『コミック・モッフ』の打ち切りマンガ、夢落ちとはアレだよねー」と、リオレウスの絵で返事が来ると、サン・スーシは
手元のタブレットを滑らせながら「それより、来月からの新連載が気になるね」とイヌの絵をささっと描きあげる。
一方、眠気覚まし、眠気覚ましと言い訳しながら、泊瀬谷は赤ペンで解答用紙の上に丸を描きあげる。
採点に集中している泊瀬谷をよそに、帆崎はすっくと携帯電話を持って立ち上がり、廊下に向かって歩き出した。
「なんだ、ルル?あの泊瀬谷先生、ちょっと失礼します」
帆崎はルルとの話し声で邪魔にならないように自ら廊下に出たが、それどころではない泊瀬谷のネコミミは、帆崎の声は通り抜ける。
バタンと閉まる職員室の扉の前には、帆崎の尻尾から飛んだ毛玉がふわりと舞い落ちた。
しばらく、泊瀬谷の赤ペンとサン・スーシのタブレットの走る音だけが続く。 それにしても、帆崎の缶コーヒーがとっくに冷めているのに、帆崎は戻ってこない。 単調作業にこんをつめたせいか、泊瀬谷には朝礼のときのように起きることを邪魔する何かが舞い降りていた。 「うーん…。もう、9時かぁ」 いつもなら自宅でのんびりとくつろいでいる時間。窓の外は雲が邪魔して星空が見えない。 それどころか泣きべそのひとつでもかきそうな、情けない顔の夜空でもある。 体の毛並みにまとわり付くような、湿気た匂いが泊瀬谷をよけい心地よい睡眠へと誘う。 「ちょっとだけ…寝ようかな」 理論で言えば、ごく僅かな睡眠をとることによって睡眠欲を大量消費し、そのあと飛躍的な作業効率を生み出すことが出来る。 感覚で言えば、ただ眠いだけ。 学園にはわたしと帆崎先生、そしてサン先生だけ。校長先生や生徒たちもいないから…と、 赤ペンのキャップを閉め、ハンドタオルを枕に泊瀬谷は少しばかり寝かせていただくことにした。 自然と手と背中が丸くなり、子ネコのころに戻った感覚に陥る。 ―――しばらく寝ていた泊瀬谷は、眠気も覚めてやがて起き上がり、伸びをしながら大あくびをする。 誰も見ていないから、と緩んだ気分が泊瀬谷を和ませたが、冷酷な時は泊瀬谷の毛を逆出せる。 「ええ?あーん!!もうこんな時間?」 抗議を申し立てられた方の時計からしたら、迷惑千万なお話。時計は真面目な顔をして草木も眠る時間を示していた。 一人取り残された職員室。帆崎の姿はなく、落っこちた毛玉だけがふわりと隅に転がっていた。 びっくりしたことにサン・スーシの姿もそこにはいなかった。おいていかれたのか?ひどい! 採点どころじゃない、テストの返却はまた今度。自転車は置いて、今夜はタクシーでも呼んで帰ろう。 荷物をまとめ、宿直の用務のタヌキのおじさんに連絡して、ロッカーに向かい帰り支度をしようかな…と思ったときのこと。 ふと、帆崎の机を見ると寝る前のまま教育委員会からの書類と、冷め切った缶コーヒーがそのままにされていた。 「帆崎先生…まだいるんだ」 泊瀬谷は帆崎がルルからの電話に出たことに気付いていない。 さらに、サン・スーシの机のPCも明々と灯が点いたままなのに気付いた。画面にはいまだ、リオレウスとイヌの絵が残されていた。 「サン先生もいるんだ。どこにいったんだろう」 サン先生のことだから、きっといたずらを仕掛けているに違いない。サン先生はそんな人だから。 引っかかったら、どんなリアクションをとってあげようなか…と、どうしょうもない考えで廊下に出てあたりを見渡すが、 細い帆崎と小さなサン・スーシの姿は見当たらない。ひんやりとした空気が泊瀬谷を縮みこませる。
「ほさきせんせーい!サンせんせーい!」 暗い廊下に向かって二人を呼ぶが、泊瀬谷は梨のつぶてと言う言葉を身をもって体験する。 どうしよう、みんな帰っちゃったのかな…と散歩先で雨に遭遇したネコが軒先で座っているかのよう不安げにしていると、 職員室から笑い声が聞こえてきた。帆崎先生?サン先生?いや、大人の声ではない。どう聞いても、幼い声。 クスクス…クスクス…。 泊瀬谷が声のする方に駆け寄ると、初等部の制服を着た白いイヌの少年が泊瀬谷の机に座っていた。 少し伸ばした髪に、たわわな穂のような尻尾。初めてあったのに、どこかで…いや、毎日会っているような。 その少年はニコリと笑い、尻尾を振って机上のハンドタオルとテスト用紙を散らしていた。 「きみは?」 クスクス…クスクス…。 「初等部の子でしょ?だめだぞー!こんな所にいちゃ」 クスクス…クスクス…。 少年は、ぴょんっと焼き栗のように跳ねると、職員室から駆け出して、尻尾から毛を少しばかり落としていた。 泊瀬谷は夢中で少年を追いかける。夜の校舎の静寂は、二人の足音でかき消される。 誰もいないはずの学園に、どうして子どもがいるのだろう。そんなことを考える暇もなく、 泊瀬谷は少年の駆けて行く方に付いて行くと、階段を駆け上り、渡り廊下を走り、少年は高等部の教室棟へと飛び込んだ。 不思議なことに、少年は行ったことのないはずである、高等部の校舎の中を知っているかのように教室棟を味方にしていた。 モエやハルカのはしゃぐ声もしない。 利里のゲームで叫ぶ声も聞こえない。 サン・スーシの乗る台車の音も響かない。 誰も知らない夜の学び舎を小さなイヌと若いネコが駆け抜ける。 春風にしては遅すぎて、梅雨の雨音にしては早すぎる。 季節外れのふたつの風は、夜のしじまを吹き抜ける。 「その教室?」 クスクス…クスクス…。 泊瀬谷の担当するクラスの教室に、少年が入っていったことに泊瀬谷は目を丸くした。 生徒たちの声のしない教室には、泊瀬谷にとってネコミミを折りたたませる雰囲気があったが、 そんな空気は白いイヌの少年が吹き飛ばす。薄暗い教室の中、少年は教壇の机に腰掛けていた。 「初等部の子でしょ?どうして、まだ学校にいるの?お家の人が心配してるぞー」 少年は尻尾をくるりと回して触っていた。泊瀬谷はその姿をじっと見つめ、名前を尋ねてみた。 「ぼくは、ヒカルだよ」 「…ヒカルくん?」 「うん。いぬがみヒカルだよ」 犬上ヒカル? 「せんせー。ぼく、よるが好きだな。だって、だれもいないんだもん」 足をぶらつかせながら、ヒカルは毛並みを揺らしていた。
もちろん、泊瀬谷が担当する犬上ヒカルはもちろん高等部の生徒だ。 教室の入り口で泊瀬谷は、どこか胸を締め付けられるような思いをしていた。 毛並みも白いし、尻尾もたわわ。それにしても、同じ名前にしても姿が似すぎているではないか。 「せんせー、しっぽ。しっぽが」 手の爪に毛を引っ掛けている困った顔のイヌの少年は、ネコのような声で泊瀬谷を呼ぶ。爪には白い毛がまとわり付いて、 少年はそれを取るのに難儀をしている。換毛の季節、風紀委員の因幡も身だしなみに気をつけるように、 と朝礼で言っていたっけ。泊瀬谷は少年の尻尾を気にするが、それ以上に気になったのが窓の外。 ぐずりかけていた曇り空はどこに行ったのか、甘い菓子のような星空が学園を飲み込んでいた。 さらに、黒板に残されていた日にち。日直が消し忘れたのか「5月28日 金曜日」と殴り書きされたまま。 確か、28日は木曜日のはず…。泊瀬谷の不思議そうな顔をよそに少年は体を丸めて、尻尾の手入れをしようとしていた。 「あぶないよ」 机から落ちそうになる少年の肩を掴んで、体を支えると少年の髪のにおいがした。 初めてヒカルに自転車に乗せてもらって、学校の坂を下ったときのこと。 そのときと同じにおいがしたような気がする。少年の尻尾が泊瀬谷の脚をパタパタと叩いた。 毛玉がふわりと宙を舞う。よくよく見ると少年の尻尾は乱れている。 「…ちゃんと身だしなみをしないと、だめだぞ」 「うん」 「…先生が、といてあげよっか?」 どうしてこんなことを言ったのだろう。 だって、風紀委員の因幡が換毛の季節だからって。 だって、自分の生徒が困っているからって。 泊瀬谷はけっして自分は悪くないぞ、わたしは先生だ、と言い聞かせながら職員室まで自分の櫛を取りに行った。 職員室はいまだ、帆崎、サン両先生は帰っていない。缶コーヒーも、PCも泊瀬谷が職員室を出たままの姿を保っている。 (みんな、どこにいったんだろう) バックから櫛を取り出し、誰もいない職員室をあとにして ヒカルの待つ自分の教室に泊瀬谷はパタパタと駆けて行く。窓の外は星の空。空に瞬く星粒をつまみ食いしてもいいんじゃないのか。 星をひとつ摘めば、甘い砂糖の味がするのではないのか。手を伸ばせば星なんかわたしにだって…。 そう考えているうちに教室に着くと、ヒカルが机の下でしくしくと涙をこぼしているのが見えた。 お尻をさすっているところからして、誤って机から落っこちたらしい。幸い怪我はない様子。 「大丈夫!?」 「う、うん…。痛いよお」 お尻を痛そうにさするヒカルを泊瀬谷は抱きかかえ、頭を撫でてなぐさめる。 目を離した間にこんな痛い目にあわせてしまって、泊瀬谷は後悔の念にかられた。 ヒカルは片手で涙をぬぐい、もう片手で泊瀬谷のスカートを掴む。
「ほら…。先生が尻尾をといてあげるから、ね。もう、泣くのはおしまい」 「うん」 泊瀬谷は生徒の机に腰掛けて、自分の膝の上にヒカルを座らせる。柔らかそうな尻尾をブンと上げて泊瀬谷に差し出すと、 櫛は尻尾に深く入り込み、落ちかけた毛を引っ掛けながらといてやる。ふわりと舞う毛は泊瀬谷の服にまとわり付くが、 そんなことは気にしない。何故なら、ヒカルの温もりとにおいを感じることが出来たのだから。 時計の針は休まず回るということを忘れるぐらい、泊瀬谷はヒカルの白い毛並みをといている。 「ヒカルくんの毛って、柔らかいね」 「へへへ。くすぐったいよ」 「爪の間もちゃんととかなきゃいけないよ」 小さなヒカルの手を泊瀬谷が握ると、といたばかりの尻尾をぶんぶんっと振るヒカル。 とかれたばかりの尻尾は、自慢げに薄暗い教室で光っているようにも見えた。 「ほら。うなじの所もちゃんととかなきゃいけないよ」 襟首から覗く白い毛並み。櫛でといてあげる前に、泊瀬谷はその中に渦盛りたい衝動にかられる。 背後からやさしくぎゅうっと腕を回して、泊瀬谷はヒカルを抱きしめたい気持ちにかられる。 この子の親でも姉でもなんでもないのに、泊瀬谷は白いイヌの少年と一緒にいることに胸を躍らせた。 が、ヒカルのか弱い声でそんな衝動は消え去った。 「もうすぐ、夜が逃げちゃうよ…」 「夜?」 「うん。夜が逃げちゃう前に、さよならしなきゃ…」 「どこに行くの?」 「…どこだろう」 しばらく二人の間に夜が消える空気が流れた。 泊瀬谷は襟首の毛並みをときながらヒカルに話しかけると、ヒカルはイヌミミをくるりと泊瀬谷の方に向けて、静かに聞いた。 「先生の言うことを聞いてくれる?わたしね…ヒカルくんが大きくなったら、ヒカルくんの先生になるの」 「先生に?」 「そう。だから、ヒカルくんの先生になるまで、ヒカルくんはもっと強い子になろうね。先生からの宿題だよ」 「うん。がんばる」 櫛がだんだん白くなるにつれて、窓の外も東の空が白くなり始めてくる。星も街から忘れ去られそうになる。 それに気付いたのか、はたまた本能なのかヒカルは尻尾を立てて窓のほうを向いた。 「夜が消えちゃうよ!」 「ほんとだね。夜が逃げちゃう…」 「消えちゃうよ…、逃げちゃう…」 窓辺に駆け寄り、起きつつある街をヒカルは悲しげに眺めていた。 泊瀬谷もヒカルの側に立ち、ぽんと肩を叩く。 「先生…また、会おうね」 「うん。約束だぞ」 「……うん」 「泣いちゃダメよ」 ヒカルは泊瀬谷の腰に抱きつき、ブラウスを濡らしていた。 「そしたら、先生が飴玉あげるからここで待っててね」 「うん」 泊瀬谷は自分の机に忍ばせている飴玉を取りに職員室に向かった。 しかし、泊瀬谷が教室に戻って来たときにはヒカルは既に姿を消していた。窓の外がさき程より明るくなっていた。
―――「はせやせんせー。先生、朝ですよ」 「夜が消えちゃうよお…むにゃむにゃぁ…。明るくなっちゃう…」 「ははっ。うっそでーす、まだ夜ですよ」 泊瀬谷が机から起き上がると帆崎、サン・スーシが両脇に立っていた。 はっと尻尾を跳ね上げた泊瀬谷は職員室の時計を慌てて見るが、彼が指す時は9時25分。 きょろきょろと首を振り、目をこすりながら泊瀬谷は声を絞り出す。 「あれ…、教室は?ヒカルくんは?」 「気持ちよさそうに寝てましたね。ヒカルくんってか、ここに生徒がいる訳ないですよ」 「ですよね…。あれ…?教室は?」 どっと笑う帆崎、サン・スーシ。採点をやりかけているテスト用紙を前に泊瀬谷は少し恥ずかしくなった。 「そうそう、泊瀬谷先生。ヒカルくんと言えばですね、この間、ヒカルくんは奇妙な夢を見たそうでして」 「ほう、サン先生。気になりますな」 「なんでも、ヒカルくんが学校に来ると初等部の制服を着た泊瀬谷先生が教室に居てですね…」 「面白そうな話じゃないですか。それじゃ、この続きは食事でもしながら…」 帆崎は泊瀬谷の肩を叩き、ニコニコと笑う。サン・スーシの尻尾は振り切れんばかりであった。 なんでも帆崎は、ルルから「おいしいレストランを見つけたからみんなで一緒に」という電話を受けてこれから向かうところだったのだ。 外では雨音が聞こえ始めている。今夜は自転車での帰宅は無理であろう。 タクシーを呼んでいるし、ルルも喜ぶからせっかくなら泊瀬谷先生もご一緒に、とのこと。 サン・スーシはお絵描きチャットを終えて、PCをシャットダウンする準備に取り掛かっている。 「それじゃ…、ご一緒させて頂こうかな。サン先生の奢りで」 「サン先生!ゴチになります!!」 「ええ?は、はは。端から端までのメニュー全部!…て?あはは」 明日できることは明日しようと、仕事を切り上げ三人揃って食事に行くことにした。 レストランで既に『またたび酒』をルルが勝手に注文して待っていた。 おしまい。
このあと、レストランで泊瀬谷先生たちがどうなったかは、聞いていません…。 投下おしまいです。
>>930 梅雨の空がみせた不思議な出来事って感じですな。
にしても、泊瀬谷先生とヒカル君がさり気なく夢でリンクするとは……これも進展のうち?(違
>>931 尻尾立てて挑発とは、何と言うエロい黒豹義母。
これは卓でなくとも悶々とした気分を感じてしまう……(^o^)
>>930 なんとファンタジックな世界観。繊細な文章によくあってる。こういうのもいいなあ。
…最初ホラーかと思った
うわー、大好きだこういう少女耽美ホラーちっくな雰囲気 日曜日のアイスクリームが溶けるまでみたいな
>>931 ええ、誘ってますね完璧に。なんという悪い義母…! 悶々々。
>>930 好きだわこういう話。いい雰囲気だ。
5/28(金)は1999年か2004年と。勝手に10年前で想像してたが
初等部ヒカル君はすごくかわいいんだろうな。
しっかしなぁ
>季節外れのふたつの風は、夜のしじまを吹き抜ける。
>甘い菓子のような星空が学園を飲み込んでいた。
何をどうやったらこういう繊細な文章がぽんぽん出てくるのか。
尊敬するわ。そのスキルが心底うらやましい。
泊瀬谷先生俺だーー!結婚してくれーーー!!
>>930 ヒカル、タイムリープしてね? ごめんなさい言いたかったの。
こういう幻想的な展開好きです
>>931 開 眼 ! ! 人 妻 属 性 ! ! !
黒豹で人妻で義母さんとかどんだけ萌え属性の塊なんですか
>>860 を見てつい書いた。書きながら康太が憎たらしいです。俺も血の繋がらない妹にブラッシングしたいお……
最近全然投下できなくてごめんなさい。誰か一日を30時間にして……
「おぉーにぃーちゃーん!」 半ば突っ伏すように勉強机へと向かい、やたら重く感じるペンを動かして宿題と奮闘していると、下の階から舞の声が響く。 用があるならば部屋までくればいいものを、誰に似たのか不精な所の有る舞は、俺を呼ぶときはいつもこうして一階から叫ぶのだ。 半分も済んでいない宿題と、舞の声が響く廊下を交互に見つめながら、俺はしばしの間考え込む。 俺を呼ぶ舞の声は、「は〜や〜くぅ〜っ!」とか「ねーえっ!」とか、少しずつ不機嫌そうな声色になり始めた。 呼ばれたからって、はいそうですかと即応できる訳でもないんだから、そんなせっかちな態度でいられても困る。 だが、可愛い妹のお呼びだ。宿題なら、明日の朝雅人に見せてもらえば事足りるだろう。 俺は椅子を引いて、背伸びをしながら立ち上がると、宿題の参考書を閉じて鞄に投げ入れた。。 「いーまーいーくー!」 「お兄ちゃん、おっそーい!」 階段を駆け下りていくと、風呂上りの湿った毛皮から湯気を立てる舞が、俺を待ち構えていた。 手にはブラシが握られ、期待するように俺を見つめながら、尻尾をパタパタと振っている。 少し離れたソファでは、父さんと母さんが、目の前に置いたベビーベッドを、ゆっくりと揺らしているところだ。 母さんはともかく、前の奥さんが家事を全くしてくれない人だったようで、父さんの方は夫婦で子育てと言うのはこれが初体験だと言っていた。そのせいか、家にいるときは夫婦で赤ちゃんにべったりである。 何だか微笑ましくて、何となく笑ってしまい、舞がけげんな表情を浮かべた。何となく照れくさくて、俺は舞の意識を逸らそうと、思い出したような口調で尋ねる。 「あれ、そう言えば姉さんは?」 「お姉ちゃんね、今日美容院でブラッシングしてもらうって。 雑誌に載ってたお店なんだって。『いいでしょー?』って自慢するんだよ。 いーもん。私なんて毎年お兄ちゃんにブラッシングしてもらってるもん」 舞は少し悔しそうに答えた。そう言えば、姉さんが雑誌を片手に『一段と綺麗になってくるから、康太も楽しみにしてて』と笑っていたのを覚えている。 換毛期のブラッシングは手間も掛かるし、全身をブラッシングするなら同性でないと、と言う問題もあるので、結構割高だ。 姉さんはバイトもしているし、雑誌に載るような美容院で頼めるのだろう。 中学生の舞にはそんなお金もなく、かといって自分でやるには不器用で、中学生にもなって親にブラッシングしてもらうのも何だか気恥ずかしいらしい。 そこで、我が家の雑用係である俺へと出番が回ってくるわけだ。とは言っても、俺の役目は最後の仕上げ。
不器用な舞でも、大方は入浴時に自分で済ませてくれる。舞から手渡しでブラシを受け取り、そのブラシで軽く頭を撫でてやると、舞は気持ち良さそうに目を細めた。 「やっぱお兄ちゃんはブラッシング上手いよね」 「舞と姉さんが来てから毎年やってるからなぁ。最初の頃は雑誌とか読んで勉強したし。 舞は女の子なんだし、母さんが父さんにやるみたいに、適当にワシャワシャって済ませる訳にも行かないし」 「あはは、確かにお母さんはブラシ下手だよね。 毛が絡まっても気にしないでやっちゃうから、ブラッシングの時お父さん悲鳴上げてるもん」 父さんが灰色の毛皮に包まれた狼の顔を縦に振り、舞の言葉に対して「まったくだ」と相槌を打った。 あーあ、そんな事言ったら、と俺が注意する前に、母さんが立ち上がり、父さんの首根っこを引っ掴んで風呂場へと連行していく。 父さんも換毛期のブラッシングをまだ済ませていなかったし、家族全員今日済ませる事になりそうだ。 舞と一緒に、売られていく子羊の目をした父さんへと、笑顔を向けて手を振り、談笑しながらリビングへと向かう。 俺と舞の部屋はカーペットになっているので、ブラッシングして毛を飛ばそうものなら、大変な事になってしまうが、リビングはフローリングだから、ブラッシングしてもまとめてモップでもかければ問題ない。 舞は早速、ひんやりしたフローリングの上に胡坐をかいて座り、俺へと背を向ける。俺はその後ろでしゃがんで、舞のTシャツの背中側をたくし上げた。 (相変わらず雑だなぁ……) ノーブラだなぁ、とか、薄っすら湿ってて背筋のラインが色っぽいなぁ、とか思うよりも、まずそんな思考が頭をよぎる。 抜けかけの体毛がボサボサになっていて、自分でやった手入れの雑さが伝わってくる。 まあ、背中は自分じゃやり難いし、当然と言えば当然かもしれないんだけど。 背中の真ん中辺りにブラシを沿えて、湿った毛皮を解すように、スッとブラシをかけていく。 「あーっ、さいこー……」 「俺には分かんないなぁ」 最初のうちは、背中全体を掃くように軽い力で表面についた抜け毛を取り去っていく。 それが終われば、今度は少しだけ力を込めて、絡み合った体毛を梳かしていく。 舞は気持ち良さそうに息を吐き、顔を紅潮させている。毛皮を持った獣人の種族は、こういう風に毛皮を撫でられたり梳かされるのが好きな人が多い。 猫の人なんかは、撫でられる内に不可抗力の眠気に教われる者までいるそうだ。 毛皮の無い俺には、それがどんな気持ちかよく分からないが、こんな風に満足してもらえるようなら、気分もいい。 「結構取れたなー。舞、首やるから寝転がって」 「はーい」
俺が床に座ると、舞は俺の太股に頭を乗せて、仰向けに寝転がる。所謂膝枕だ。イヌ科の長い顎から喉までをブラシで梳かしていく。 舞は気持ち良さそうに目を細めながら、うつらうつらとし始める。舞の鼻先を人差し指で突っついて起こし、引っくり返るように支持した。 今度は俺の太股に顎を乗せてうつ伏せに寝転がる。額から首の裏側へとブラシを動かす。 ふさふさの尻尾はゆっくりと左右に振れて、とても心地良さそうだ。手入れが終わる頃には、舞は俺の脚に顎を乗せたまま寝息を立てていた。 「寝顔は姉さんみたいにお淑やかなのになー……」 いつも活発で元気に溢れていて、悪く言えば落ち着きの無い舞だが、寝顔だけは静かで素直に綺麗だ。 この寝顔を見ていたら、いつだったか言っていた、『滑り止め発言』も、まんざらではなく思えてくるから困る。 真顔でそんな思考をしてしまうほど、舞の寝顔は可愛らしかった。Tシャツと女物のトランクス一枚と言うのもあって、歳不相応な色気を感じさせてくれる。 「はぁ……」 思わず魅入りそうになってしまうが、俺は溜め息をひとつ吐くと、舞の頭に手を乗せて、ワシャワシャと頭を撫でてやる。 乱暴な手つきに、舞が大きな欠伸をしながら目を覚ました。 「終わったぞ」 「ん……気持ち良くて寝ちゃった。じゃ、どんな仕上がりか鏡でチェックしてこよっかな」 「無償奉仕にあんま期待すんなよー」 舞は狼のくせに猫みたいな背伸びをして立ち上がると、ブラッシングでいくらか小さく見えるようになった尻尾を振りながら、洗面所の方へと向かっていく。 その後姿を見送ると、さっきまで両親の座っていたソファへと向かい、ベビーベッドでスヤスヤと眠る、可愛い弟の顔を見つめながら座った。 何をするでもなくボーッとしていると、しばらくしてから嬉しそうに笑う舞が戻ってきて、もうしばらくすると、気まずそうに苦笑する母さんと、頭の毛皮に一箇所だけ小さなハゲを作り、目を潤ませている父さんが、寝間着姿で風呂場から戻ってくる。 そのまま4人で談笑しながらテレビを見ていると、玄関のチャイムが鳴った。俺が出迎えると、随分とさっぱりした様子の姉さんが、毛並みを自慢するようなしたり顔で、玄関にいた。 ダイニングへ連れて行くと、俺だって気付かない振りをしていた、父さんの頭に出来たハゲを見つけて大爆笑を始め、舞まで飛び火する。 実の娘達から浴びせられる容赦の無い嘲りに、父さんは再度瞳を潤ませて、寝室へと姿を消した。原因を作った張本人である母さんも、困ったような顔をしながらそれに続く。 あの人一倍傷つき易い父さんが、こんな癖の強い娘達を、十年以上もの間男手ひとつで育てていたと言うのだから凄い。 30分もすると、ハゲを隠すようにナイトキャップを被った父さんが戻ってきて、姉さんがまたそれを笑って、父さんを寝室へと逆戻りさせた。 笑っちゃダメだと分かっているのに、俺も雰囲気に乗せられて笑ってしまい、父さんのガラスの心にまた一つ傷を刻み付けてしまったようだった。 父さんがまた寝室へと消えると、母さんも呆れ顔でそれを追い、俺と姉さんと舞はクスクスと笑いあった。 新しい家族が出来てからというもの、毎日がこんな調子の、慌しくも楽しい毎日だ。 終
こんな感じです。 ここの作品読みながら、そういや佐倉家の両親も出してなかったなと思い出して混ぜてみました そして書きながらこの世界の美容院はやる事が多くて大変そうだと思いました
ぐあぁぁぁ羨ましいぜちくしょー!その場所代われやー!舞の顎の下ブラッシングしてぇー!! しかし実にいい家族だな。憧れるわこういうの。 父さんがwwかわいいwww
家族揃って萌えキャラか
………。(血涙)
そういえば過去スレとかの欄で気づいたんだけど、スレの
>>1 があまり長いと
あれだから、「過去スレは
>>2 」とかじゃなくても平気そうかね
>>946 多分、普通のレスを書き込む時と同じで大丈夫だったかと。
もしそれで弾かれたなら、その時はその時で変えれば済む話だし。
おぉ…換毛期ネタがすごい盛り上がってる
他にはない獣人ならではの要素だからテンション上がるぜ
絵もSSも素晴らしい。そして言い出しっぺの
>>848 もGJだ
めんどくさいと言いながらも、みんななんだかんだで楽しんでる風なのがいいな
ハルカ「ワイワイ」
りんご「ガヤガヤ」
モエ「キャッキャッ」
朱美「…いいなぁ」
なんて場面ありそう。
猛と利里兄妹とヘビくんの爬虫類脱皮組はちょっと居ずらそう 虫人達は中学あたりまでに脱皮する時期は済んでるんだろうなぁ
>>950 堅吾「おお、懐かしいな。俺の昔の頃の写真がでてきたぞ」
優「へえ、どれどれ、ちょっと見せて」
出産数日の写真:保育器の中にバスケットボール大の卵が一つ。
幼稚園時代から小学生にかけて:ころころと丸まった幼虫姿の堅吾がボールと戯れてる。以後、サイズは違うが中学一年初旬の頃まで同じ姿
中学生の頃:母親が重そうに抱えている恐らく堅吾と思われる蛹。多分初夏の頃の撮影と思われる。
堅吾「うむ、懐かしいなぁ……(しみじみ」
優「そうだね……特に小学生の頃の堅吾は可愛かったよねぇ……(しみじみ」
卓「……何だか突っ込み所がありすぎて、何処から突っ込めば良いのか分からなくなってきた……」←(端から見ていた
虫人パねえwww 子供サイズの幼虫とか怖えよwwww
よくよく考えたら人間サイズの虫ってだけでも虫が苦手な俺からすれば気絶モノだ
俺の脳内堅吾はポケモンのヘラクロス 適当にデフォルメされた虫って感じだ しかし優は想像がムズいぜ スピアーはほぼ完全に蜂だしビークインは特殊だしな ヴァンパイアハンターのキュービィは人間らしすぎる
>>954 俺はドラえもん映画に出てきたハチ人間でイメージしてる
ミナシゴハッチだと亜人スレ向けになりそうだしな
お嬢さま?出番ですよ。
>>958 お嬢、寝ぼけている場合じゃないですよっ!? このままだとまた置いてかれますよ!?
だが待て。置いてきぼりで寂しがってる姿は非常に可愛い ここはトラップを設置して時間稼ぎをすべきだ! つ【新スレへの曲がり角直前を走る康太】
>>960 馬鹿やろう! 何さり気に恋愛フラグを立てさせようとしてるんだ!
そんな事しているよりも早くお嬢を……
>>961 って、あああああぁっ!? もう夢の中に落ちちゃってるぅっ!?
クマさんのぬいぐるみ抱いて寝ている場合じゃないですよぉっ!?
ちっ、こうなれば……最後の手段!
つ【お嬢の口の中へ利里汁スポイト一滴分】
流石にスポイト一滴なら気絶する事は無いだろう……たぶん
>>962 いいんだ。俺はお嬢様の寝顔をゆっくり観察して目蓋に焼き付けるんだ
俺、現スレ埋め立てたら……お嬢様に……いや、何でもない
執事さんGJと言わざる得ない
さすが執事さんそこにシビれるあこがれるぅ!
執事、大浦……フラグゲッターの康太をフラグを粉砕するなんて只者じゃないな!
やだやだやだぁー! お嬢様がいいの! お嬢様がいいんだもん!
>>968 いや、良いです。大浦さんは無理しなくても結構です
それはさて置き、取りあえずお嬢を起こすのは一旦諦める事にして
先ずは獅子宮先生と一緒に埋め作業の準備を始めるか……
大浦さんの我が身を犠牲にした優しさに俺が泣いた。 ……さて、俺も寝るか。 SS書いてる途中だけど、明日出来る事は明日やれば良いんだし……。
新ジャンル「怖可愛い」
しぐさかわいいのに顔こわいw
>>976 やっべぇかつてないほどキュンときた
いいなぁいいシーンだなぁかわいいよヒカル君
>>976 何と言う美しいシーン。これは激しく羨ましい……
>>978 ちょwwww 若頭コワスwww
そして委員長、よりによって実名で応募するなよ!?w
981 :
創る名無しに見る名無し :2009/06/01(月) 00:29:12 ID:MAwkMy2M
蜂人の絵が某氏の絵柄にそっくり。 荒らすつもりなのかな
物騒な事をアゲながら言うなよ
>>980 小学生の泊瀬谷先生カワユス……思わず顎の下を撫でてやりたくなった。
>>981 ……気の所為だろ?
そう言うのは心に思っても口に出さないレスしないのが大事なんだぜ!
そんな事より、そろそろ埋め作業の時間なんだが……
獅子宮先生、土井君、出番ですよー!
>>982-983 某メンヘラスレに書き込んでる人っぽいから、そういうのは総スルーでいこうぜ
埋め作業で気づいたんだが、もぐらは埋めるってより掘る
方じゃないのか?w
>>984 そういやそうだったなw 土井君スマン
けど、獅子宮先生なら埋めるのがずいぶんと似合ってそう。
特に敵対した相手への処刑的な意味で……ってスコップは止めt(西瓜が割れる様な音
獅子宮先生は多分、ぶちのめした相手にスコップを渡して穴を掘らせるんだよ。 先生が手ずからやるのは埋めたてだけ。
>>980 ぶるぁぁぁぁ!
ちっこいはせやんかわいーなちくしょー!
まずは服を着なさいっ!
そうかそうか、何も埋めていないのか。それは分かった。 ああ! なんだか急に私は穴を掘りたくなったぞ? そう、その先程掘り返したばかりに見える柔かそうな地面を掘ってみたくなった。 その地面ならばさぞ掘り返しやすそうだ、其処に入ればひんやりとして気持ち良いだろうし ひょっとしたら何か宝物が出てくるやもしれん。 私もお前と同じイヌだからな、沸き立つ本能には逆らえない。 って何で涙目で私を止めようとする? お前は何も埋めていないのだろう? と、意地悪をする友達のイヌとのやり取りを妄想してしまった。
埋め埋めェエ!
埋め埋めェ!
>>992 行ってらっしゃい、お嬢様ノシ
良し、俺も埋めるぜッ!
995埋めェ!
埋めるぞッ!
997埋めぇ!
998
999
1000ならもふもふする!
1001 :
1001 :
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(_´∀`)_ 創る阿呆に見る阿呆!
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( ( /,, /― ((神輿))―\ 創らにゃソンソン!! //
(。'。、。@,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。@ ) )
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