【参加作品/キャラクター】
6/6【涼宮ハルヒの憂鬱】
○キョン/○涼宮ハルヒ /○朝倉涼子/○朝比奈みくる/○古泉一樹/○長門有希
6/6【とある魔術の禁書目録】
○上条当麻/○インデックス/○白井黒子/○御坂美琴/○ステイル=マグヌス/○土御門元春
6/6【フルメタル・パニック!】
○千鳥かなめ/○相良宗介/○ガウルン/○クルツ・ウェーバー/○テレサ・テスタロッサ/○メリッサ・マオ
5/5【イリヤの空、UFOの夏】
○浅羽直之/○伊里野加奈 /○榎本/○水前寺邦博/○須藤晶穂
5/5【空の境界
○両儀式/○黒桐幹也/○浅上藤乃/○黒桐鮮花/○白純里緒
5/5【甲賀忍法帖】
○甲賀弦之介/○朧/○薬師寺天膳/○筑摩小四郎/○如月左衛門
5/5【灼眼のシャナ】
○坂井悠二/○シャナ/○吉田一美/○ヴィルヘルミナ・カルメル/○フリアグネ
5/5【とらドラ!】
○高須竜児/○逢坂大河/○櫛枝実乃梨/○川嶋亜美/○北村祐作
5/5【バカとテストと召喚獣】
○吉井明久/○姫路瑞希/○島田美波/○木下秀吉/○土屋康太
4/4【キノの旅 -the Beautiful World-】
○キノ/○シズ/○師匠/○ティー
4/4【戯言シリーズ】
○いーちゃん/○玖渚友/○零崎人識/○紫木一姫
4/4【リリアとトレイズ】
○リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ/○トレイズ/○トラヴァス/○アリソン・ウィッティングトン・シュルツ
[60/60人]
※地図
http://www24.atwiki.jp/ln_alter2/?plugin=ref&serial=2
【バトルロワイアルのルール】
1.とある場所に参加者60名を放り込み、世界の終わりまでに生き残る一人を決める。
2.状況は午前0時より始まり、72時間(3日)後に終了。
開始より2時間経つ度に、6x6に区切られたエリアの左上から時計回り順にエリアが消失してゆく。
全エリアが消失するまでに最後の一人が決まっていなければゲームオーバーとして参加者は全滅する。
3.生き残りの最中。6時間毎に放送が流され、そこで直前で脱落した人物の名前が読み上げられる。
4.参加者にはそれぞれ支給品が与えられる。内容は以下の通り。
【デイパック】
容量無限の黒い鞄。
【基本支給品一式】
地図、名簿(※)、筆記用具、メモ帳、方位磁石、腕時計、懐中電灯、お風呂歯磨きセット、タオル数枚
応急手当キット、成人男子1日分の食料、500mlのペットボトルの水4本。
(※名簿には60人中、50名の名前しか記されていません)
【武器】(内容が明らかになるまでは「不明支給品」)
一つの鞄につき、1つから3つまでの中で何か武器になるもの(?)が入っている。
※以下の10人の名前は名簿に記されていません。
【北村祐作@とらドラ!】【如月左衛門@甲賀忍法帖】【白純里緒@空の境界】【フリアグネ@灼眼のシャナ】
【メリッサ・マオ@フルメタル・パニック!】【零崎人識@戯言シリーズ】【紫木一姫@戯言シリーズ】
【木下秀吉@バカとテストと召喚獣】【島田美波@バカとテストと召喚獣】【土屋康太@バカとテストと召喚獣】
※バトルロワイアルのルールは本編中の描写により追加、変更されたりする場合もある。
また上に記されてない細かい事柄やルールの解釈は書く方の裁量に委ねられる。
【状態表テンプレ】
状態が正しく伝達されるために、作品の最後に登場したキャラクターの状態表を付け加えてください。
【(エリア名)/(具体的な場所名)/(日数)-(時間帯名)】
【(キャラクター名)@(登場元となる作品名)】
[状態]:(肉体的、精神的なキャラクターの状態)
[装備]:(キャラクターが携帯している物の名前)
[道具]:(キャラクターがデイパックの中に仕舞っている物の名前)
[思考・状況]
基本:(基本的な方針、または最終的な目的)
1:(現在、優先したいと思っている方針/目的)
2:(1よりも優先順位の低い方針/目的)
3:(2よりも優先順位の低い方針/目的)
[備考]
※(上記のテンプレには当てはまらない事柄)
方針/行動の数は不定です。1つでも10まであっても構いません。
備考欄は書くことがなければ省略してください。
時間帯名は、以下のものを参照してそこに当てはめてください。
[00:00-01:59 >深夜] [02:00-03:59 >黎明] [04:00-05:59 >早朝]
[06:00-07:59 >朝] [08:00-09:59 >午前] [10:00-11:59 >昼]
[12:00-13:59 >日中] [14:00-15:59 >午後] [16:00-17:59 >夕方]
[18:00-19:59 >夜] [20:00-21:59 >夜中] [22:00-23:59 >真夜中]
スレ立て乙
O V E R M A N
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K I N G G A I N E R
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ヽ `ー'´ \ _⊥.. -‐¬´ __, -‐′
r:、rJヘ ', ヽ 、 _,. -‐'´
\ ヽ._,, -- 、 j } ヽ く._
}ノ-―…‥‐- { ノ `ー .._ ′ 、__  ̄`¨¨  ̄)
} } __ / ヘ. ,. -‐'´  ̄⌒~¨¨´
亅/´_ ヽ / _,. -―`ー'´
h/´ ヽ ', _, -'´ _,,.-‐'´
|/ i ヘ ,.-'´ _,. -‐'"´
/ ! \ _,.. -'´,. -'´
/、 __ ', -ー--一…''´ ̄_,. -一'´
iーぇ. {、∠-tッ`、 , -‐一' ´ ̄
| `7 ` ̄¨´ ', イ
!〈 .. } j いかん!ここまでがキーンキーン♪テンプレだ!
、 マ ̄ヽ 、 / ./ 俺が食い止めてるうちにキングゲーイナー♪
>>1乙だ!
ヽ }こブ ' / / 俺のことはメタルーオーバーマン♪構うな!
`ー=ニ -‐'´ さぁ、キーングゲイナー♪早く
>>1乙だ!
お待たせしました。
朝比奈みくる、土屋康太、投下します。
「生き残れ」という人類最悪の言葉を受けた朝比奈みくるは混乱していた。
複雑なルール、そしてたった一つシンプルで簡潔な「生き残れ」という言葉。
その言葉を目の前にして正常な判断力を保つことは寛恕にとっては難しいことであろう。
そこは責めるべきではないし、そもそも誰にもそんな事は出来ないだろう。
だというのに、朝比奈みくるは更にその「混乱」が「大混乱」へと変貌する状況へと追い込まれてしまった。
さて、彼女はいったいどうなってしまうのか! 朝比奈みくる大ピンチ!
◇ ◇ ◇
というわけで、何故朝比奈みくるが大ピンチなのか。
特に引っ張る話題でもないので種明かしをしておこう。
「ふえええええん! ここ、ここっ! ここどこなんですかぁ〜〜〜!」
答え:地図曰く「D-5」
「な、なんでこんなっ! こんな、高っ……ふえええええん!」
答え:電波塔登りかけ、みたいな感じのところにいるから
「どうしてこんな目にいいいいいいっ!」
答え:そこに飛ばされたから
支援
上記の通り朝比奈みくるは、現在電波塔の上にいた。否、上というと語弊がある。
電波塔の途中、丁度「二階建ての民家、その屋根の上」に相当する高さの場所に位置している形だ。
人類最悪とやらにこんな過酷な場所に飛ばされ、現状に気がついた瞬間にどうにか瞬時に行動できたのは小さな幸運。
どうにかこうにか鉄の柱の一つにしがみ付きながら、幅の狭い平均台のような場所に立っているのである。
あまりにも不条理な現状にみくるは怒りを覚えるが、そんな事を考えている暇は無い。
華奢な自分ではこの高さからの落下でも大怪我必至だ。それに少し高い場所にいるせいなのか風が強いのもまた都合が悪い。
メイド服は風の抵抗を受けており、大量旗かカーテンかと言うばかりにはためいている。
これは辛い。決して力持ちではないみくるにとって、この状況は非常によろしくなかった。
何せスカートをこれ程翻させる風だ。今も体が風に持っていかれそうになってしまっている。
上へ上へと伸びている鉄柱の上にしがみ付いているのが精一杯。現状、何も出来ない。
助けを呼ぼうにも目印になるものは無く、かといって下手に動くとまっ逆さまだ。
せめて風さえなければ、ゆっくりとゆっくりと時間をかけて降りていくことも出来たかもしれない。
だが現実は甘くない。ほら、今でも自分の体をスカートごと宙へ持ち上げようとしている。
スカート、ごと?
みくるは考えた。混乱しっぱなしでオーバーヒート中の頭で必死に考えた。
さて、今はスカートがびらびらと動いている。見れば自分の頼りない脚が半分以上露になっていた。
そして今、自分は高いところにいるわけで。"高い"ということは、同時に"低い"があるわけで。
低いところから見たら、今自分はまさに――――そこまで考えて、みくるは反射的にスカートを抑えた。片手で。
だが、それは完全に裏目であり墓穴。みくるには最大のピンチが訪れる。
「ひっ、ひやぁあああぁぁあぁぁあぁあああ!!」
スカートの自分は下から下着を見られるかもしれない。そんな恐怖の解消を選んだのがまずかった。
迫り来る風の勢いを、一瞬であろうと片腕で受け止めきれなくなった彼女は足を滑らせてしまった。
何か別の物を掴もうにも、もう自分は落下を始めており無駄だ。このままでは地面に激突してしまう。
だがこんな状況で彼女に希望の一手が秘められているわけでもなく。
ドスン、という音と共に下半身から衝撃が走った。
◇ ◇ ◇
さて、結論から言おう。
朝比奈みくるは、無事だった。
支援
電波塔の下はコンクリートであるという認識は間違いだったのだろうか? とみくるは疑問を抱いた。
まず衝突時の音からして変だった。地面を押してみてもコンクリートには思えない程柔らかい。
そう、まるで生き物の上に乗っかっているかのような感触。
「ふぇ……?」
明らかな違和感。
無事安全に着地した事実と落下の恐怖が入り混じって呆けてしまっていたが、やっとそれを覚える。
上空を指していた視線を自分が座っている場所へゆっくりと下ろし、現状を確認した。
さっきまで暴れ倒していたスカートはすっかりと落ち着き、大きな花が咲いたかのように広がっている。
だがその下から微かに呻き声が聞こえている。後ろを振り向けば、誰かの下半身が伸びているのが確認できた。
間違いない。これはもうどう考えても"誰かを敷いている"。だが突然の事にみくるは動けないでいた。
呻き声は徐々に小さくなっている。まるで蝋燭の火が消えかかっているようだ。
それと同時に、自分の足の付け根辺りに――――否、違う。臀部に妙な感触がある。
広げられているスカートを、ぴらりっとたくし上げてみた。そこには、Mの字を描くように広げられた自分の下半身がある。
その丁度中央、恥部付近。そんな危うい場所から、眼鏡をかけた少年の顔が半分見えていた。
「ひ……っ、い、あ……!」
嫁入り前の自分が起こした突然の逆セクハラに、みくる自身も驚きすぎて声が出なかった。
そして襲い掛かる羞恥心により、彼女の顔は耳まで真っ赤に染まり上がる。まるで湯掻いた蟹だ。
急いで立ち上がろうとするが、腰が抜けて巧く動けない。精神面だけでなく、落下による物理的な衝撃も響いているようだ。
それでもみくるは「ひっ、やぁっ、ひゃうぅ……」という保護欲をそそる声を上げながらどうにか立とうと努力する。
しかしその動きは謀らずも、自分の恥部で少年の頭部を撫で回すかの様な事態に発展し、事態は泥沼化の一途。
少年は顔に受けた衝撃のせいなのか知らないが鼻から激しく流血しており、その所為で不幸にも下着は命の色に染まっていく。
「うっ……ううっ……」
みくるは遂に泣き出しながら、それでもどうにか立ち上がった。
最悪だ、恥ずかしい、死んでしまいたい、あんまりだ、最低。
さまざまな感情が巡り巡って逃げてしまいたいと思うが、どうにか理性で踏みとどまる。
そう、自分の失態に巻き込まれた眼鏡の少年が心配だったのだ。
「だ、だだだいじょぶですかぁ……?」
羞恥心と責任感を天秤にかけ、後者を選んだみくるは急いで少年の容態を確認する。
少年といったが、よく見れば同じくらいの年齢に思える。滲み出る雰囲気がそれを感じさせないのだろうか。
意識を失っているわけではないようで、視線をこちらに向けている。鼻からは相変わらず赤い液体が流れっぱなしだが。
鼻を強く打ってしまったのだろう。間違いない、頭で全体重を受け止めたのだから、こうなっても仕方が無い。
とにかく、彼に謝罪を礼をしなくては。骨折なんかされていた日には、申し訳無さで死にそうになる。
たとえ偶然でも下敷きになって自分を助けてくれた彼を見逃すなんて事は出来ない。
血液のヌメヌメとした感触が股から襲い来るのを我慢しながら介抱を始めるみくる。
それに気づいたのか、相手はゆっくりと立ち上がった。依然鼻血を出しながらだが、その動きに異常は見られない。
体は大丈夫なのだろうか。
「……大丈夫。問題ない」
「ほ、本当ですか……?」
「……本当」
なんとも無い、という事を示しているつもりだろうか。相手はラジオ体操のような動きを始めていた。
その表情からは痛みのシグナルが感じられない。どうも互いの体は無事らしい。
「よ、よよよよ良かったですぅ!」
被害者である彼の無事が確認された事が本当に嬉しいらしく、彼女は反射的に相手に抱きついた。
そして大粒の涙を流しながら、謝罪の言葉と礼を口にしてぎゅうっと抱きしめ続ける。
突然の事に対応できなかったのだろう、相手はみくるのされるがままになっている。
そして、二度目の流血沙汰に発展した。
支援
◇ ◇ ◇
さて、それから時間は少しばかり経過。
二人は既に電波塔周辺から移動し、近くにあった何の変哲も無い民家に入っていた。
幸運かつ無用心なことに施錠されておらず、先客もいなかった為堂々と上がりこむ。
理由は単純。みくるが血みどろの下着を何とかしたかったからだ。
電波塔の近くは丁度市街地だ。建物は沢山並んでおり、着替えなどどこでも出来る。
そして二人は近くにあったこの家を発見し、居座っていたということだ。
「……終わるまで外で見張ってる」
デイパックから取り出した代わりのものを渡してくれた相手は、そう呟いて部屋から去っていった。
部屋には代わりのもの――彼の支給品だったらしい女性用スクール水着――を大事に受け取ったみくるだけが残された。
代わりの下着が無いのは不幸だが仕方が無い。他に何か無かったのかとは思うが、この水着でどうにかするしかあるまい。
長い時間待たせるのも申し訳ないので早く着替えることにした。
まず、柔らかな生地で作られた清潔感あるメイド服を慣れた手つきで脱いでいく。
服の上からでも存在感をアピールしていた彼女の豊満な胸が露になった。
血みどろのパンツはもう穿けないし、ブラジャーの上から水着を着けるのも慣れないので両方を手早く外す。
部屋の中で独り、生まれたままの姿になる。違和感を通り越してシュールだ。一体何をしているんだろう、自分は。
そうだ、自分はどうしてこんな事に巻き込まれてしまったんだろう。どうしてここでこんな事をする羽目になったんだろう。
人類最悪なんて単語に覚えは無い。一体、何故。怖い。今いる世界が、とても怖い。
また、泣いてしまいそうだ。
「あ……」
べそをかきながらふとある方角に目をやると、近くの小さな棚がある事に気づいた。
そしてその上で、彼が先程までつけていたはずのあの眼鏡がこちらをじっと見つめていた。
「ひくっ」としゃくり上げつつ、ついつい置き忘れてしまったのかと考えながらそれを手に取る。
何の変哲も無い、ただの眼鏡としか思えない。だが何故だかみくるはそれから目を離す事が出来なかった。
着替えの最中である事も忘れているかの様に、ただただそれを眺める。
頭に浮かべるのは、自分と行動を共にし始めてくれた彼のことだ。
ここに来る前に行った自己紹介で「土屋康太」と名乗った、同じ歳の男の子。
いきなりとんでもない事故を起こしたにも関わらず、彼は何事も無かったかのように振舞ってくれた。
鼻から出た赤い液体から察するに、どこかに重大な怪我を負っていてもおかしくないはずなのに。
それでも彼は文句一つ言わず、最悪の出会いの事を責めないでいてくれていた。
これが仮に出会った相手が彼ではなく冷たい人物だったなら、と考えるとぞっとする。
散々口汚く罵られるか、もしくは盛大に呆れられるか。とにかくどちらに回っても、その後ろくな事にならなかったかもしれない。
というより、そもそも下に人がいなかったら自分は固い地面に激突して怪我をしていたのは想像に難くないわけで。
そんな彼女にとって、土屋康太との出会いは幸運だった。
支援
「土屋君で、良かった……」
彼はとても優しかった。彼はとても親切だった。彼はとても頼もしかった。
自分が着替えたいと言えばスペースを捜索してくれたし、今も外で見張りとして立っていてくれている。
しっかりしているようなのに、こうして部屋に眼鏡を置き忘れてしまうのもなんだか可愛く見えて好印象だ。
最初に出会えたのが彼で良かったと本当にそう思う。勿論、SOS団の皆に出会えるのが一番だったのだが。
「……はっ!」
思わず物思いに耽り過ぎた、とみくるは正気に戻った。あまり待たせては悪いと思っていたばかりなのに。
それに他人のものを勝手に触ってしまった。何だか申し訳なくなったので、元あった位置に眼鏡を置いた。
変わらずレンズはこちらを向いており、これなら手に取られたとは思われまい。
別にやましいことをしていたわけではないものの、少しだけ残る罪悪感。
着替えが終わったら、ちゃんと返そう。
スクール水着を急いで着け、更にその上から元のメイド服を着る。
これで、一見ただのメイドさん、だが下はスクール水着を着用した奇妙な女の子が完成した。
血みどろになった下着の片割れを近くにあったゴミ箱に捨て、ブラジャーをデイパックに突っ込む。
そして最後に眼鏡を取り、急いで部屋のドアを開いた。
支援
◇ ◇ ◇
結論から言おう。土屋康太は見張りなどしていなかった。
「……This world is "Heaven".」
何故か英語でそう呟きながら彼はある一点に視線を集中させていた。
その対象はただ一つ――――部屋の中で独り無防備に着替えをしている朝比奈みくるである。
カーテンとカーテンの間、その微かな隙間から彼は少女の裸体を凝視していたのだ。
ばれないように気配と身を隠し、顔だけを窓に近づけながら俗に言うガン見と呼ばれる行動を取るその姿は完全に変態のそれだ。
否、ただの変態ではない。彼は極上物の"ムッツリーニ(むっつりスケベ)"である。
何せ、まず彼の学生生活からセクハラが切り離されることは無かった。
女の子(主に姫路瑞希や島田美波)や秀吉(主に木下秀吉)のイケナイ姿を眺めるために、彼は全力を注ぎ続けた。
そしてその変態的行動が時にバレバレであっても、そしてどんなに指摘を受けようとも真っ向から否定する。
そう、だからこそ彼は真のむっつりスケベ"ムッツリーニ"なのだ。
「……ばれて、ないか」
一糸纏わぬみくるが部屋の眼鏡を手に取った瞬間、土屋は少しだけ焦りを覚えた。
眼鏡。そう、土屋康太の過去の勇姿をご存知の諸君ならこのワードが気になっていただろう。
別に彼は普段から眼鏡をかけている訳ではない。学校でもプライベートでも常に裸眼での生活だ。
それなのに彼がここでずっと着用しているのには、一つの重大な理由がある。
まずあの眼鏡は支給品であり、スクール水着と共に土屋に支給されたアイテムである。
何の変哲も無い眼鏡。だが勘のいい人ならば、その特殊構造に気付くであろう。
あの眼鏡には、小型カメラが仕込まれているのだ。
本来はある国で 犯 罪 抑 止 の 為 に 作られたのだが、よりによって彼に行き渡ったのは何の因果か。
サービスで充電器までセットにされており、手に入れた瞬間は小躍りする思いだったろう。最高かつ最強の宝物だ。
こんな物は使わないわけにはいかない。今も実際に彼は、その小型カメラ付き眼鏡による盗撮大作戦を決行している最中である。
そう、まるで"ついつい置き忘れた"かのように思わせたのはブラフ。
今まさにカメラと自身の両眼でみくるのイケナイ姿を凝視しているのだ。
カメラによる盗撮を行いながら、彼女の無防備な姿を自分の目でも堪能する。
これぞ究極の挟み撃ち。"前門のカメラ、後門のムッツリーニ"と言うべきか。
いや、それだけではない。彼は既にみくるのパンチラや下着超アップ動画までも収録済みであった。
みくるが落下した際に彼女と衝突したのも、あくまでみくるのパンチラ目当てに不用意に真下へ移動した所為なのだ。
勿論彼女の身を案じていたし、自分にぶつかることで助かったのはとても良い事であったとは本人も感じている。
彼は別にエロいだけで薄情な人間ではないから、そこは擁護しておこう。
だが、エロいハプニングが起こることを期待していたのは事実だ。
パンチラを覗き、同時にそれを動画として記録していたのも事実である。
そして彼女の尻に敷かれていた状態が彼にとっては天国だったのもまた事実。
おかげで彼女のM字開脚を盗撮することに成功し、喜びに満ち溢れていたのも事実。
そして今、朝比奈みくるの着替えシーンを無事平穏にカメラに収めきったのも事実なのだ。
眼鏡を手に取り、部屋を出て行くみくるの姿を確認する康太は窓から飛び退いた。
そして再び引き起こされた鼻からの流血を自分の手で塞き止める最中、ドアの開く音がした
赤い絵の具のようにだばだばと流れ出る血液を出来るだけ隠し、何事も無かったかのように振舞おうと準備をする。
すると丁度その時、中からみくるが飛び出して来た。
「ごめんなさいっ、お待たせしちゃって……って、大丈夫ですかぁ!?
ま、まままさかやっぱり怪我してるんですか!? ど、どどどうしたら……!」
溢れる鼻血はバレバレだった。当然、みくるは驚きの声を上げる。
それに対し康太は首をブンブンと横に振ることで否定した。
怪我などしていない。本人に伝えるつもりは一切無いが、この流血はただの興奮の所為だ。
「それならいいですけど……あ、それとこれっ、忘れてましたよ」
首を振る康太にみくるはそう答え、それから眼鏡を渡してくれた。
その細く繊細な指から眼鏡を回収し、康太は再び着け直す。これでミッション・コンプリートである。
無事に戻ってきて何よりだ。これが無くては始まらないのだから。
◇ ◇ ◇
さて、それから彼らは再び電波塔の近くへと来ていた。
二人の出会いの場には、相変わらず他の人間が見当たらない。
「……誰もいない」
「ですねぇ」
二人はSOS団のメンバーを探す為にここに戻ってきたのだが、収穫が無いことにがっかりしていた。
何故こんな事をしているかというと、みくるから涼宮ハルヒや長門有希の事を聞いた康太が、捜索を手伝いたいと申し出たのだ。
懸命な諸君らならば、その理由の中に"エロ目的"が含まれている事など容易く察することが出来よう。
しかしみくるは彼の言葉が善意十割であると思い込み、「そんな、悪いですよぅ……」と断っていた。
だが康太の更なる押しの言葉(なんか「Fクラスの皆は大丈夫さ。それより今は君の仲間が心配なんだ」みたいな感じだった)は続く。
勿論彼女はその言葉をありがたいと感じていたし、自身にとっても大きなプラスだと理解している。単純に、彼の駄目功績を知らないだけで。
だがそれでも、心優しいみくるは「じゃあ土屋君のお友達も一緒に……」と逆に名乗り出る事で双方が納得する道を指し示すことにした。
そうしてしばらく問答が続きながら、結局互いの仲間を探しながら仲良く行動するという方針に落ち着いたのだった。
で、今に至る。
康太は「……死んでたまるか」と改めて決意を固めた。
そう、自分は今絶対盗撮中。まさかのヘヴン状態にある。
人類最悪が何を言おうが関係ない。自分はこの世界で仲間と共に生き残ってみせる。
そして、出会う女性達のその素晴らしい姿――イケナイ姿とも言う――を収め続け、無事家に持って帰るのだ。
失敗は許されない。朝比奈みくる共々、自分は決して死んではならない。
今この世界で、思い出(女の子のイケナイ姿)を刻み続ける(盗撮する)為に。
【D-5/電波塔周辺/一日目・深夜】
【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱、スクール水着
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品(1〜3)、ブラジャー
[思考・状況]
基本:互いの仲間を捜索する。
1:土屋康太と同行。
【土屋康太@バカとテストと召還獣】
[状態]:健康
[装備]:「悪いことは出来ない国」の眼鏡@キノの旅
[道具]:デイパック、支給品一式、カメラの充電器、不明支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本:女の子のイケナイ姿をビデオカメラに記録しながら生き残る。
1:朝比奈みくると同行し、彼女の仲間を探す。
投下終了。犯罪ダメ、ゼッタイ。
ご意見ご感想をお待ちしております。
やっぱムッツリーニはこんなときでもエロくてかっこよくてエロくて優しくてエロいやつだ。
GJ! と言いたいところだけど一つ間違いが。
ムッツリーニの「…」は四つが基本ですよ。
変態!ド変態!de変態!変態大人!
失礼、投下乙ですw
なにこのムッツリーニにとってのユートピアw
予約の段階でネタバレ気味な二人だったけど予想通りかつ期待通りのやつが来たよw
地の分のテンポの良さも相まって実に馬鹿馬鹿しいw
バカテス三人称にしたらこんな感じなのかもしれんw
>>31 失礼しました。Wiki編集時に直しておきます。指摘感謝。
投下乙
にげてー みくるにげてー
あと確かそこはマーダー軍団のど真ん中……にげてー 超にげてー
お待たせしました投下を始めます。
支援
―――生き残れ。
それは即ち。
―――殺しあえと言う事。
ミスリル作戦部西太平洋戦隊陸戦ユニットSRT所属、相良宗介軍曹がそういうものだと肯定するまでにさほど時間はかからなかった。
ここまで気付かない内に拉致された事を悔やみながらも宗介は草原の中現状把握に徹していた。
狐面の男による開幕の合図。
色々と喋っていたが結論としては60人での生き残りゲームを行えと言うものとそのルール説明。
そして一人になるまでゲームは続く。逆にいつまでも一人にならなければゲームーオーバー。
どうやったら一人になるか。
答えが結びつくのは簡単だった。
即ち殺し合いを行えと言う事。
幼い頃宗介がゲリラとして活動していた頃、生き残る為には殺さなければならなかった。
そういった事のずっと幼い頃から宗介は殺してきた、生き残る為に。
ミスリルといった傭兵組織に入った後もそうであった。
そして、その任務で陣代高校という高校で学生になった時も、そう。
宗介の身の回りには殺し合いなど常であった。
故にこれが殺し合いと即判断することが出来た。
宗介は黙ってデイバックから一丁の拳銃を出す。
黒光りするが頬の大きなX字の傷を持つ宗介の顔を映していた。
宗介はそのナイフをの刃を見ながらただ思考に溺れていた。
まずは脱出の出来る可能性を考えていた。
しかし、宗介は即その可能性を否定する。
まず、拉致の時点で可笑しいのだ。
宗介は連れてこられる直前陣代高校で授業を受けていた。苦手な古文を。
現に今も陣代高校の黒の制服である。
悪戦苦闘しつつ問題を解いていた時、ふと気がつけばあの狐面の男の前に連れてこられた。
瞬く間に拉致をした相手に脱出などできるのか。
いや、出来はしないだろう。精々また拉致されてしまう。
それに、60人ほどの人数を拉致して騒がれないのも可笑しいし同じように60人も拉致する事なんて並大抵な事ではない。
外部との連絡もきっと出来ないだろう、多分邪魔されない為に何か妨害をしてるに違いない。
つまり外部の接触も不可に限りなく近いだろう。
要するに自力での脱出は不可。
宗介はそう肯定して次に殺し合いにどう自分は向き合うかを考え始める。
普通ならばそのまま59人を殺戮し優勝するのも手だろう。
自分には護るべき対象、千鳥かなめが居るのだから。
しかし困った事がある。
(千鳥……)
その千鳥かなめもこの殺し合いに巻き込まれているのだ。
そして、自分の上官でテレサ・テスタロッサも巻き込まれている。
彼女たちは絶対に死なせてはならない。
テッサは上官であり、ミスリルのとって無くてはならない存在だ。
かなめは……兎に角護らなければならない。絶対に。
二人ともここで死なせてはならない。
そう宗介は思う。
他にもクルツ・ウェーバーという同僚も巻き込まれていた。
何故か死んだガウルンの名前があったかがこの際気にしない。
別人かもしれないと宗介は思って。
そんな事よりも宗介はもっと考えなければならない。
(どうする……?)
この殺し合いでどうするべきかを。
この殺し合いでかなめとテッサが巻き込まれている現状、優勝を狙うつもりは宗介は無い。
ならば2人が生還できるように脱出の術を探すべきか、いやそんな事している間に殺されるかもしれない。
二人とも戦闘能力は皆無に等しいのだ。
ならばどうする……?
どうする……?
思考の渦に飲み込まれていく宗介。
そして編み出される苦し紛れの一手。
(2人……どちらかでも優勝させる。その為に俺が人を殺す……?)
千鳥かなめかテッサ・テスタロッサ。
この2名が両方とも助かる可能性は極めて少ない。
しかし……力の無い彼女達を生かす為に宗介が出来る事。
それは片方しか生還できないのならば……それならば。
どちらかでも優勝させると言う事。
その為に人を殺すという事。
つまりは彼女達の為に殺し合いに乗るということ。
自らの命を捨てる覚悟はとうにできている。
だから、彼女達を生還させるために。
ミスリルの軍人として。
相良宗介として。
殺し合いに乗ろうと。
そう思ったのだ。
しかし
(一般人が居たのならそれを殺す……?……それに千鳥は……彼女達は喜ぶのだろか?……それにこれが正しい事なのか?)
未だに迷っていた。
ただの感傷なのかもしれない。
それでも迷っていた。
罪も無い一般人を殺すという事。
それに彼女達はこれを望むのだろうかと考えてしまう。
これが正しい事かと。
学園生活してそう思ってしまう。
もし、残りの10人にクラスメートがいたらと考えてしまう。
そんな迷いの中だった。
宗介が長い栗色の髪を持った少女を見つけたのは。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
わたしの名前はリリア・シュルツ。リリアが与えられた名前で、シュルツが名字。
いつも誰からもリリアと呼ばれるけど、正式な本名はこれが呆れるほど長くて、リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツになる。
これだけ長いとめったに使うことない。半年に一度あるかないか。
まぁ今はそんな事はどうでもよかった。
「何なのよ……生き残れって」
ぶつくさ呟きながら私は草原を唯歩いていた。
あの男の人が言った意味を未だに良く理解できていない。
気がついたら一人草原にぽつんと立っていて。
良く解らなかったから唯歩いている。
それにこの良く分からないものにわたしのママ――アリソン・シュルツも巻き込まれているらしい。
何故だか。
でも、あのママの事だから飛行機に乗り回す空軍大尉のように上手くやってると思う、多分。
取りあえずママと合流したい。
それとママの彼氏である英雄さん――トラヴァス――も居た。
得体の知れない所もあるけど信頼できる、うん。
それと……トレイズ。
私の……んーなんだろ?
上手くやってるかな、あいつ。
……妙にへたれてるし、詰めが甘いし。
とりあえず真っ先に合流してやろう。
トレイズ一人では心配だ。
何を失敗するか分からないし。
うん。
そうしよう。
しかし今回の事は本当によくわからない。
今までトレイズと一緒に飛行機を運転する羽目になったり、テロリストの篭城事件に関わったり、列車で殺人事件に巻き込まれたりと色んな事件に遭遇したけど今回はよく分からない。
何かしら事件に巻き込まれる体質なんだろうか?
命の危険も人の死も何回も見てきたし。
そういうのは余り見たくもないし体験もしたくないけど。
今回は何がしたいんだが全く。
そう思って腕を組んで歩いていた時だった。
「止まれ」
銃を背に突きつけられ低い声が聞こえてきたのは。
そう、もう何回目か分からない命の危険だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「止まれ」
宗介の制止の声が草原に静かに響いた。
宗介はリリアの姿を確認した後近くの茂みに隠れ静かに移動しリリアの背後を取ったのだ。
「な、何?」
リリアの驚きと恐怖の声が響いた。
リリアとしては唐突に訪れた死の危険に唯驚くばかり。
「もう、何なのよ……生き残れって言われてそれで命の危険……訳わかんないわよ」
「これは殺し合いだ。生き残りたかったら殺して生き残らなければならない」
「……え?」
宗介の言葉にようやくリリアは趣旨を理解し始めている
生き残れと言われた言葉の意味、それは殺しあえという事。
リリアのディバックに入っていた武器のサバイバルナイフ。
リリアは理解できなかったがそれで人を殺して生き延びれという事。
それをようやくだが理解し始めていたのだ。
「まあいい。貴様に聞きたい事がある」
「何よ、わたしには名前があるのよ」
「……何だ?」
「リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツよ」
「……は?」
「だからリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツよ。馬鹿みたいに長いけど本名なの」
リリアの名前に粟くらいつつも宗介は続ける。
「そ、それで貴様に聞きたい事がある」
「……わたしを殺すの?」
「……それは貴様の返答次第だ」
「……ちゃんと本名で言わないと嫌だ。答えない」
「……ちっ。ええとリリアーヌ・アイカシア……なんだ?」
宗介はリリアの名前を答えられず途中で止まる。
そんな宗介にリリアは鼻を鳴らしてもう一度早口で言う。
「リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツよ」
「……すまない。聞き取れなかったのだが」
宗介は聞き取れずもう一度聞き返すも
「駄目。一度しか言わない」
「……リリアーヌ・アイカシア・コラソン……続きは?」
「さあ?」
宗介は顔を歪める。
かなめとテッサの事を聴こうと思ったのだがいい加減殺しても言いかと思えてきた。
しかし、リリアが一般人である事とかなめとテッサの情報を持ってるかもしれない淡い期待が浮かび未だに続けている。
まだ抵抗があった。
自分の通ってる高校生と同じような子を殺すのは。
「……リリアーヌ・アイ……ええと……カシア・コラソン・ウィ……ふむ………………ッティング・シュルツ」
「残念、何か抜けているわよ」
「……馬鹿な……っ……リリア……」
しえん
もう一度言い直そうと記憶を呼びもどうそうとリリアから顔を背けた時だった。
一般人だからという宗介の慢心もあったのかも知れない。
まだ殺す抵抗があったのかもしれない。
それは分からないが一瞬の隙ができたのだ。
リリアはその隙を狙い
「リリア肘打ち」
「……ぐっ!?」
宗介の鳩尾に肘をを入れる。
宗介は苦悶し、すかさず撃とうとするが
(千鳥……!?)
一瞬。
一瞬だが。
リリアのその活発な姿がかなめにかぶって。
宗介はトリガーを引けなかった。
そんな事を露も知らないリリアは
「でええい!」
「ぐぇ!?」
想いっきり蹴った。金的を。
流石の宗介もこれには悶絶し銃を離す。
それをリリアはすかさず奪って宗介に向ける。
「はぁ……はぁ……怖かった……もう、ビックリしたんだから……それでアンタ私を殺そうとしたんでしょ」
「……肯定だ」
リリアの問いに宗介は重々しく答える。
状況が逆転したのだからこの場は従うしかない。
「ばっかじゃない!? なんで!?」
「……俺には護りたい人達が居る。その為には彼女達を優勝させようと思った」
本来ならこんな少女の問いに答える義理は無い。
拷問されても宗介は答えないと言えた。
しかし今はまるで懺悔するように答えている。
それは未だに迷っているせいか。
ただ、かなめに被った少女のせいか。
誰にも分からないけど。
それでも宗介は思った。
「はぁ……?……そんな事してその人達喜ぶの? 私は似たような事トレイズにやられたら問答無用で殴るわよ……そんなの正しい訳ないじゃない」
「しかし助かる可能性なんて少ないんだぞ!」
「少ないなくてもあるならいいじゃん。少しでもあるならそれに賭ければいいじゃないの」
正しくない。
たとえ少ない可能性だとしてもそれに賭ければいい。
そう、誰かに言ってほしかったのかもしれないと。
結局の所、宗介は未だ修羅にはなれないかもしれない。
それは学園生活のせいか。
宗介自身の成長ゆえか。
それは誰も分からないけど。
ただ、今この瞬間は。
「……ああそうかも……しれんな。肯定だ」
かなめに似た少女の出した結論に肯定した。
肯定したい。
そう、宗介は思ったから。
リリアは屈託無く笑い腕を組み偉そうにこう言った。
「うむ、よろしい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それで、宗介は千鳥かなめさん、テッサ・テスタロッサさんを探してるのね」
「肯定だ」
「よし、じゃあいこー」
草原をリリアと宗介が共に歩き始めていた。
あの後情報交換し共に行動する事を決めた。
宗介はとりあえずかなめとテッサと合流を目指す事にした。
殺し合いに乗るかは保留にしてまずは脱出の可能性を最後まで模索する事にして。
しかし、もし、脱出が本当に否定されたのだったら。
そして、もし、かなめとテッサの為に殺し合いに乗らないといけないことがあったのなら。
(俺はもう一度、彼女に銃を向けるかもしれない……)
そんな事を想いながら前を進むリリアの背を見つめていた。
そんな時不意にリリアが振り向き宗介に何かを手渡す。
「あ、そうだ……これ、渡しておく。私上手く使えないし」
「……いいのか?」
「うまくつかえるのでしょ?」
「肯定だ」
「なら、渡しておく」
そうやって渡されたのはリリアに支給されたサバイバルナイフ。
リリア自身扱いはできない。
なら、軍隊出身である宗介に渡した方がいいとリリアは判断したのだ。
リリアは屈託無く笑いもう再び前を歩き始める。
宗介はその後ろについていくように歩き始めた。
(これで……いいんだ)
……胸に未だ迷いを残しながら。
そんな二人の間を風が優しく。
優しく吹いていた。
【A-5 草原 一日目 深夜】
【リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康、
[装備]: なし
[道具]:デイパック、支給品一式(ランダム支給品0〜2個所持)
[思考・状況]
1:宗介と行動。
2:トレイズが心配
3:アリソン、トレイズ、トラヴァスと合流
【相良宗介@フルメタルパニック!】
[状態]:健康、やや迷い
[装備]:サバイバルナイフ、IMI ジェリコ941 (17/16+1)
[道具]:デイパック、支給品一式、予備マガジン×4(確認済みランダム支給品0〜2個所持)
[思考・状況]
1:リリアと行動
2:かなめとテッサとの合流最優先。
3:これでいいのか……?
支援
投下終了しました。
支援有難うございます
ご意見ご感想をお待ちしております。
投下乙です。
相良軍曹の暴走はとりあえず収まったようでw
やはり相良には強気ツッコミ役がいるとさえますね。
この二人をコンビにしたのはいい判断だと思いました。
リリアのキャラを知らないのですが、充分面白く描かれていると思います。
GJ!
しえん
投下GJ! 宗介は迷いを引きずっているな……。
リリアに引っ張られてるうちは良いが、微かな不安がなんとも不吉。
人間らしさが実に良く描かれた作品だったかと。
金的は……拙い……w
ちょいと質問。
>宗介は黙ってデイバックから一丁の拳銃を出す。
>黒光りするが頬の大きなX字の傷を持つ宗介の顔を映していた。
>宗介はそのナイフをの刃を見ながらただ思考に溺れていた。
このナイフどっから出てきたの? サバイバルナイフはリリアの所持品の様だけど。
と銃のミスです。
ウィキ収録後に修正します。
お二方投下乙です!
とりあえずムッツリーニwwwwww
こんな事になっても全くいつもと変わってないじゃないかww
流石と言うべきか何と言うべきかww
そして宗介は不安だなぁ
現状は大丈夫みたいだが、テッサか千鳥が死んだら…
うん、不安だ
金的は痛いwwwww
投下乙!
>みくるムッツリーニ
ムッツリーニ自重www ってかよりにもよってその支給品www
しかし決意は固いが一般人に近い2人……さあこれからどうなる。
>リリア宗介
まさかリリア肘打ちがキマるとはw ってか長い名前を使って身を守るなw
でもそれも迷いがあったからこそ、だろうなぁ……上手い。
投下乙!
みくるとムッツリーニのコンビはなんか和むなぁw
この雰囲気のまま進んで欲しい
リリアと宗介はちと今後に不安の種が残るなぁ
宗介の迷いがどうなるのか…
本当に乙です!
規制でPCから書き込めん(汗
雑談スレの件、予約延長期間をフルに使って回復するメドが立つのならいいのだけど。
他に予約希望の書き手さんいるのかな?
姫路瑞希、筑摩小四郎 投下します
姫路瑞希は普通の女の子である。
無論彼女は、画期的実験校、文月学園において学力実質学園2位という秀才であり、
尚かつある種の小動物を思わせる可憐さを持った美少女で、
さらに無意識の殺人料理の使い手と、
些か「普通」と呼ぶのが躊躇われるような逸材ではある。
しかし、あらゆる意味おいて人外の怪物達が蠢くこの殺し合いの場においては、
彼女はあまりにも普通の少女であった。
ごく当たり前に、平和な日本で、少しばかり変わった、
しかし日常の領域を出ることの無い緩やかな生活を送る、
何処にでもいそうな少女であったのだ。
で、ここで質問である。
Q:意味不明、見ず知らずの殺し合いの場で、何もない夜の草原を一人歩いていたら、
突然、すごい怖い顔をした猛禽類に襲われた場合、姫路瑞希はどうなる?
A:ビビる
凄くビビる
ムッチャビビる
むちゃんこビビる
何やら風切り音と、甲高い鳴き声が頭上から聞こえて来るかと思い、
おずおずと上空を見上げた、夜の草原を一人彷徨う瑞希であったが、
すると、本当に頭上ぎりぎりの所を、
一羽の鷹が凄いスピードで飛び去って行ったのである。
「きゃっ」
と、可愛らしい声で思わず両手で頭を押さえながら、
彼女は思わず尻餅をついてしまう。
見上げれば、鷹は自分のすぐ上空で、ぐるぐると宙を旋回している。
正直すごく怖い。
訳もわからず、この草原一人誰にも会うことなく彷徨っていたが、
最初に邂逅した存在は、よりにもよって一羽の猛禽類とは…
彼女は涙目で暫く何故か自分の頭上でただ旋回を続ける猛禽を眺めていたが、
「娘っ子…」
突如背後から聞こえてきた声に、背筋が凍りついた。
上空に意識を取られていたのは認めよう。
しかし、こんな何も無い草原で自分に近づいて来るものがいれば、
ある程度の距離ならば夜でも音や気配で容易に接近に気がつける。
にも拘らず、その声はあまりにも唐突であった。
それは確かに自分の背後から聞こえていた。
つい先ほどまで、周囲には人影一つ見えなかったと言うのに。
日常の場でも、暗闇で突然背後で見知らぬ人に立たれたら人は相当驚くだろう。
そして、ここは、自分以外に生き残ることが許されぬ殺し合いの場である。
そんな場所で、突然背後に人に立たれた、姫路瑞希の心情は容易に想像がつくだろう。
聞こえてくる自身の心臓の動悸を聞きながら、
今にも恐怖心で泣き出してしまいそうな自分の心を無理やり押し殺して、
彼女は恐る恐る背後を振り返った。
さて、ここで第二の質問。
Q:ただでさえ、恐怖で心が破裂しそうな状況で、
いつの間にか赤の他人に背後に立たれていて、
しかもソイツが妙な格好をした、
顔面包帯グルグル巻きの不気味な男が奴だったらどうなる?
A:死ぬほどビビる
背後に立っていたのは、妙な黒いシミのついた包帯の様な物で、
顔の上半分を目まで覆った、スプラッター映画の殺人鬼の様な格好の、
背の高いあまりにも不気味な男であった。
しかも左手に、黒く大きい『ナニカ』を下げている
こんな奴、たとえ殺し合いの場でなくとも、夜道でばったり出くわせば普通ビビる。
ましてやここは、常軌を逸する悪趣味な殺人遊戯の会場だ。
人間と言う生き物は、本気で恐怖を感じてしまった場合、
叫ぶことすらままならないらしい。
「…!」
気を失った姫路瑞希は、叫び声すら上げることなく、
静かにコテンっと地面に倒れ臥した。
■
ざざーっ、ざざーっと何処からか、寄せては返す波の様な音が、
何処からともなく耳に響く。
鼻をくすぐるこの匂いはなんだろう?
ああ、波の音が聞こえるんだから、きっと潮の匂いに違いない。
頭に冷たい感触を感じる。
恐らく、濡れた手拭いか何かだろう。
風邪を引いて熱が出た時の様に、おでこの冷たさは心地よかった。
一つ不満があるとすれば、この手拭い、ひどく磯臭い。
波の音から判断するに、海水で濡らして来たのだろうか?
そんな事を漫然と考えていて、
ふとある思考に行きつく。
『誰』が自分のおでこに濡れ手拭いを乗せてくれたのだろう?
いや、そもそも何で自分は寝ているんだっけ?
確か、目眩がしたかと思えば、
気が付くと変な所にいて、狐のお面を被った変な人に殺し合いをしろと言われて、
また気が付くと夜の誰もいない草原の真ん中にいて、
鷹に襲われて、怖い人に…
思考がここに至った時、姫路瑞希は覚醒した。
ガバっと、目を白黒させながら跳ね起きた。
おでこから、ボトッと海水に濡れた濃紺色の布切れが、
瑞希のスカートの上に落ちた。
「気が付きなされたか」
自分のすぐ隣から聞こえてきた声に、
瑞希は恐る恐る目を自分の右側に向けた。
やはりと言うべきか、
瑞希のすぐ隣で、例の包帯男が胡坐をかいている。
その右肩には、最初に襲いかかってきた鷹がとまり、
その鋭い目で瑞希の事を見ていた。
思わず叫び出しそうになる瑞希だったが、
それをゴクリと無理やり喉の奥にのみ込んだ。
男の次の言葉を聞いたからだ。
「驚かせてしもうたようで・・・申し訳ござらん」
明らかに自分を心配している口調だった。
瑞希は叫びをのみ込むと、改めて目の前の男を見た。
前述の通り、顔の鼻と口もとを除く全てを白い布でぐるぐる巻きにしているが、
よくよく見ればただの包帯のようだし、黒い染みは恐らく乾いた血液だ。
顔に怪我をしたのだろうか、何となく酷い怪我である事が察せられた。
右肩には、一羽の鷹がとまっていたが、
先ほど襲い掛かって来た事が嘘のように、静かにこちらを見ている。
文字通りの鷹の眼は、鋭く、ただ見ているだけで睨みつけてくるようで怖いが、
別に何かをしてくるでもない。
ひょっとすると、襲われたと思ったのは自分の勘違いで、
ただ単に、人影を見つけたからと、自分に近づいてきただけなのではないか。
二人の周りには他に人影は見えない。
自分と、目の前の包帯男だけだ。
だとすれば、突然倒れた自分を介抱してくれたのは誰なのか。
その事を考えると、瑞希は恥ずかしくなって、
顔を赤らめながら俯いた。
ひょっとすると自分はすごく失礼な事をしてしまったのではないか。
確かに目の前の男は少し不気味だが、何の事はない、
要は顔に包帯を巻いているだけだ。
しかも、勝手に気絶した自分を介抱して、
こうして隣で起きるまで待っていてくれたようではないか。
そんな親切な相手に、人の顔を見るなり気絶してしまうなど、
失礼にもほどがあるだろう。
「あの…」
瑞希はおずおずと包帯男に話しかける。
「これは…その…」
スカートの上に落ちていた布切れを拾い上げる。
「ああ、辺りに水場が海しかなかった故…申し訳ござらん」
男は、何を思ったか、そんな事を言いながらペコリと頭を下げた。
「え!?いえっ、むしろ謝るのはこちらの方でっ…その…わざわざ介抱して頂いて…」
「いや、不用意に貴方様を驚かせてしもうた俺が悪う御座います…
しかし、あなた様の様なやんごとなきお方が何故この様な所をお一人で…」
(え?…やんごとなき?)
【止ん事無い(やんごと―な・い)】
[形][文]やんごとな・し『ク』
≪「止む事無し」が一語化したもの≫
1:家柄や身分がひじょうに高い。高貴である。
2:そのまま捨てておけない。なおざりにできない。のっぴきならない。
3:なみなみでない。特別である。
4:貴重である。
出典『大辞泉』
「いえ!あの別に…私…!?」
「いえ、皆まで言う必要は御座らん。あなた様の様なお方が、
かような所を一人でいるのは何か抜き差しならぬ…」
「 あ の っ ! 」
「!?」
このままだと話が妙な方向へ行ってしまいそうで、
瑞希は無理やり話しに割り込むと、
「あの…私は姫路瑞希と言います!その…貴方のお名前は?」
「…」
包帯男はしばし黙っていたが、
「伊賀鍔隠れ郷士、薬師寺天膳さまが用人、筑摩小四郎にござる」
そう名乗った。
■
筑摩小四郎が姫路瑞希を介抱した理由は、
一言で言ってしまうと勘違いである。
最初に『足音』を聞いた時は、その『うるささ』に、
直ぐに甲賀者でも、天膳でもないと知れたが、
ではこんな所に、いったい一人で何をしているのだろうと、
接触を図ったがいいが、いきなり気絶されてしまって、
非常に焦ったのは筑摩小四郎である。
柔らかく、芳香のする絹糸の様な髪、
穢れを知らぬ柔らかい指に肌、
触ったことも無い感触の、柔らかな衣服、
生産性の低かった江戸初期という時代の出身者の筑摩小四郎の常識では、
かような条件を備えた女人と言えば、相当高貴な家格の姫君か、奥方か、
たとえそうでなくとも、そういった人々のお付きの女中に違いあるまい。
故に、気絶してしまった姫路瑞希の周りで一通りうろたえた後、
小四郎は彼女を背負って急いで海に向かったのだ。
装束の右袖を、ビィッーと千切り、手拭いを作ると、
急いで海水に浸して、草原の上に寝かせた瑞希のおでこにのせる。
本当は淡水の方が良かったが、辺りに他の水場も見当たらないので仕様があるまい。
(本当は黒鞄の中に水の入ったペットボトルがあったのだが、
盲目の小四郎にそれを知る術はない)
息はしているようだし、暫くすれば目覚めるだろう、と、
瑞希の傍らに腰を下ろした小四郎は、周囲を警戒しつつも、
彼女が起き上がるのを唯待っていた。
そして今に至る訳である。
■
「・・・ィングトン・シュルツ。これで全部ですね」
「・・・」
「?小四郎さん、どうかしました?」
「いや・・・なんでも御座らん。所で瑞希どの、そなたの見知った方は、
吉田明久なるご仁一人なのか?」
「はい…でも何で…」
「よりよって…」と小さく呟く瑞希の顔は、心なしか少し青ざめている。
思い人の名前を、この忌まわしき選手名簿見つけた事は、
瑞希にとって少しばかり心強くもあったが、それよりも不安感が今は勝っていた。
当初、情報交換をしていた二人だったが、
どうにもこうにも話がかみ合わず、また、双方ともに、
この奇怪な状況について考えを巡らすための材料を持っていない事に気づき、
取り敢えず、目の見えない小四郎の支給品の確認と、
名簿の確認をする事になったのである。
名簿に名前があったのは50名。
さらに、名簿に記されざる10人がいるらしい。
この選手名簿の中で、姫路瑞希の見知った名前は一つ。
吉田明久、彼女の心優しい思い人の名前であった。
「小四郎さんは誰か知ってる人はいましたか?」
「…」
小四郎は何故か少しの間黙っていたが、
「朧さまと、薬師寺天膳さま…」
「はい」
瑞希が名簿に眼を落せば、確かにその名前がある。
「どちらも俺の主でござる」
「あるじ?」
そう言えば、筑摩小四郎は自分の事を「用人」と言っていた。
「用人」とは使用人の事だろう。
やたら自分に対して腰が低いのもそのせいなのだろうか?
「瑞希どの」
小四郎が少しかすれた声で、見えぬ眼をこちらに向けながら問うてくる。
「そなたはいかがなされまする?」
「いかがなされまする」とは些か唐突な問いだが、
瑞希には小四郎の言わんとする事がすぐに解った。
「私は…吉井君を探します」
「左様か」
兎にも角にも、まず為さねばならぬ事はそれだろう。
正直、こんな意味のわからない所に突然一人放り込まれ、
不安と恐怖で胸がいっぱいだったが、彼と一緒ならば…
如何なる困難も、そのひたむきさで乗り越える、
吉井明久への姫路瑞希の信頼は絶対的だった。
「瑞希どの…」
小四郎が再びかすれた声で言う。
「俺が助太刀し申す」
「えっ!?」
「吉井殿を探すのに、俺が助太刀し申す」
「でも…」
悪くはないか、それに貴方は目が…と瑞希が言う間もなく、
「その代わり…俺に御助力くだされ」
と、言うや否や、小四郎は頭を下げた。
「朧さま、天膳さまを探すのを手伝ってくだされ」
と。
■
人気の無い夜の草原を、二つの人影が歩く。
可憐な少女と、盲目の伊賀者という奇妙な組み合わせは、
二人連れ沿うように夜を行く。
互いの探し人を協力して探す為に、二人は歩く。
現状を理解するために、情報を集めるべく、二人は歩く。
筑摩小四郎は、黒いデイパックを背負い、
右肩に鷹を乗せ、左手には一本の棒を握っている。
姫路瑞希の支給品は、奇しくも小四郎と同じ伊賀組十人衆が一人、
棒術の達人、蓑念鬼愛用の樫の棒であった。
小四郎は別に棒術に通じているわけではないが、武器としては十分だろう。
一方小四郎の支給品は何の変哲もないフライパンであり、
それは瑞希の手の中に納まっている。
昔、「フライパン殺人」なるカルト映画があったが、
一見外れの様に見えるフライパンだが、鈍器としては中々優秀で、
コイツで相手の頭をカーンと叩けば、結構なダメージになるだろう。
取り敢えず北上し、市街地に入るべく、
二人は黙々と歩く。
忍びである小四郎は一日二十里を走る健脚であり、
一人で走ればもっと早く着く事が出来るのだろうが、
あまり体力の無い瑞希に合わせて、小四郎の歩調はゆっくりだ。
小四郎が自分と同行したい理由は、自分は目が見えず先導役が必要だから、であるが、
「…」
何の危なげさも無く夜道を歩く小四郎を横目に見ながら、
瑞希はついつい「本当にこの人目が見えてないんだろうか?」などと思ってしまう。
本人曰く「ある程度は心眼で見える」との事だが、そういうものでもないと思うのだが。
しかし、姫路瑞希は確かに見たのだ、あの白布の下の凄まじい傷跡を。
デイパックに応急救急キットがある事に気が付いた瑞希が、
明らかに衛生的によろしくなさそうな小四郎な染みだらけの包帯を取換えようとしたのだ。
当初、拒んでいた小四郎だったが、
瑞希にうまく言いくるめられて、結局取り換える事となった。
当然の事ながら、瑞希はその過程で白布の下にあった小四郎の素顔を見たわけだが、
それを見た時は、思わず叫びそうになるのをこらえなければならなかった。
一体全体、何がどうなればあれほど酷い怪我になるのか。
小四郎の顔面に刻まれた傷痕は、
小四郎が以降の生涯を死ぬまで光なき世界の住人であらしめるのに
十分すぎる物だったのだ。
あの傷跡を思い出すと、瑞希は思わず顔面に痛みを感じてしまう。
しかし…
(あんな怪我なのに…)
自身も怪我人であるにも関わらず、
わざわざ自分を介抱してくれた小四郎はきっと優しい人なのだろう。
ふと、彼女は、誰よりも優しい思い人の姿を、脳裏に描く。
支援
支援いれまくるのでお待ちを
正直に言えば、彼女は小四郎の同行の申し出に、内心ほっとしていた。
目の見えない小四郎を一人でこんな所に置いて行くのは心苦しく、
何より、この得体の知れない場所を一人で歩くのは心細かったのだ。
ただ隣にいると言うだけで、心が落ち着き、ありがたかった。
(吉井君…待ってて、すぐに行くから!)
彼女は賢く、それ故に、あの「人類最悪」の言った内容が、
「殺し合い」を意味する事をたちどころに理解していた。
しかし、小四郎と会うまで誰にも会わず、
最初に遭遇した小四郎が「穏健」だった事もあり、
その事実に実感を持てないでいた。
だからこそ、彼女は楽観していた。
きっとスグに吉井君に会える、
彼とならきっと、何とか出来る、と。
彼女はまだ楽観していられた。
今はまだ…
■
筑摩小四郎は、見えぬ眼を隣を歩く可憐な少女に向け、
再び進行方向へと視線を戻す。
目が見えないにも関わらず、そうしてしまうのは、見えていた時のなごりか。
筑摩小四郎が彼女との同行を望んだのには、主に3つの理由があった。
1つ目は、やはり彼が盲目であり、先導役が必要だと思ったからだ。
本当の事を言えば、彼は必ずしも先導役が必要な訳ではない。
彼の「忍法」は、視覚が無くとも、相手の大まかな位置さえ補足できれば、
十分にその恐るべき効力を発揮する。
伊賀者としての優れた聴覚と、「レーダー」である「お幻の鷹」があれば、
彼は十分に単独行動が可能だったのだ。
ただし、それは「徐々に狭まって行く」この会場でなければの話である。
盲目故に、地図を見ることのできない小四郎には、これは余りにも不利に働く要素だった。
だからこそ、行動の迅速さが失われる事を知りつつも、
彼は誰か先導役と同行せざるを得ないのだ。
支援
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正直に言えば、彼女は小四郎の同行の申し出に、内心ほっとしていた。
目の見えない小四郎を一人でこんな所に置いて行くのは心苦しく、
何より、この得体の知れない場所を一人で歩くのは心細かったのだ。
ただ隣にいると言うだけで、心が落ち着き、ありがたかった。
(吉井君…待ってて、すぐに行くから!)
彼女は賢く、それ故に、あの「人類最悪」の言った内容が、
「殺し合い」を意味する事をたちどころに理解していた。
しかし、小四郎と会うまで誰にも会わず、
最初に遭遇した小四郎が「穏健」だった事もあり、
その事実に実感を持てないでいた。
だからこそ、彼女は楽観していた。
きっとスグに吉井君に会える、
彼とならきっと、何とか出来る、と。
彼女はまだ楽観していられた。
今はまだ…
■
筑摩小四郎は、見えぬ眼を隣を歩く可憐な少女に向け、
再び進行方向へと視線を戻す。
目が見えないにも関わらず、そうしてしまうのは、見えていた時のなごりか。
筑摩小四郎が彼女との同行を望んだのには、主に3つの理由があった。
1つ目は、やはり彼が盲目であり、先導役が必要だと思ったからだ。
本当の事を言えば、彼は必ずしも先導役が必要な訳ではない。
彼の「忍法」は、視覚が無くとも、相手の大まかな位置さえ補足できれば、
十分にその恐るべき効力を発揮する。
伊賀者としての優れた聴覚と、「レーダー」である「お幻の鷹」があれば、
彼は十分に単独行動が可能だったのだ。
ただし、それは「徐々に狭まって行く」この会場でなければの話である。
盲目故に、地図を見ることのできない小四郎には、これは余りにも不利に働く要素だった。
だからこそ、行動の迅速さが失われる事を知りつつも、
彼は誰か先導役と同行せざるを得ないのだ。
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>>85はミス
二つ目は、小四郎が姫路瑞希を、
今だ何処ぞの大名、公家の子女、あるいはその関係者だと思いこんでいたからである。
本人は否定したが、彼女の気品は、
土臭さと田舎臭さが漂う小四郎の纏う空気とは余りにも隔絶した物であり、
ひょっとすると、お忍びか何かで、身分を隠しているのではと小四郎は推測していた。
また、無意識のうちに、瑞希と自分の主たる朧を重ね合わせていた小四郎は、
彼女を置いて行く事に心苦しさを感じていた。
故に、この様な貴人の娘を手助けする事は、伊賀鍔隠れ衆にとってプラスにこそなれ、
マイナスにはなるまいと、彼はそう理屈付けて自分を正当化していた。
そして三つ目、それは名簿に記されていた彼の知る人々の名前が、
朧、薬師寺天膳、そして甲賀弦之介であったからだった。
彼らの存在が、ともすれば無謀ですらある小四郎の闘争心を抑え、
普段なら目が見えずとも一人でも突っ込んでいくであろう彼の行動力を自制させていた。
もし仮に名簿に記されていた名前が、朧、あるいは天膳のどちらか一方だけであったなら、
彼は速やかに他の参加者を皆殺しにし、一刻も早く朧、天膳を生還させようとしただろう。
しかし、名簿に記されていたのは両方の名前であった。
朧、天膳は筑摩小四郎にとって両方共に命に代えても守らねばならぬ主である。
しかしこの殺し合いの場より生き延びられるのは一人のみ。
どちらか一方を選ぶなど小四郎には出来るわけがない。
彼の行動は慎重に成らざるを得なかった。
そして、甲賀弦之介の存在。
筑摩小四郎が姫路瑞希にこの男の事を知っているのを告げ無かったのは、
忍法勝負の事を余人に洩らすのをよしとしなかったからであるが、
弦之介の存在は鍔隠れ衆随一の闘争心の持ち主である小四郎が、
慎重になっている最大の原因であった。
筑摩小四郎の顔面を破壊してのは他ならぬ甲賀弦之介であったのだ。
(あの時…おれは奴から眼を離せなんだ…)
小四郎は、光を失う直前に見た、甲賀弦之介の黄金の魔眼を思い出していた。
(俺は、あの眼に負けていた…)
自分の忍法に絶対の自信を持つ筑摩小四郎であったが、
あの魔眼を前にしては彼の忍法ですら…
(人か…魔か…)
小四郎は背骨に氷水を流し込まれたような悪寒を覚える。
両眼を失ってもなお、小四郎が忍法勝負の前線に留まり続けたのは、
彼の生来の高い闘争心と、甲賀に対する深い復讐欲があったからだが、
その火の玉の様な彼の心ですら焼き尽くす事が出来ぬ恐怖心を、
弦之介の「瞳術」は小四郎の心に刻みつけていた。
支援
「小四郎さん?どうかしましたか?」
小四郎の様子がおかしい事に気が付いた瑞希が、
心配そうに彼に眼を向ける。
「な、何でも御座らん、瑞希どの。心配は無用」
肌で、視線を感じ、小四郎は無理やり弦之介の幻影を脳裏から追いやる。
この血気盛んな若い伊賀者は、年相応の普通の青年と同じように、
この可憐な少女の前で醜態をさらす事を良しとしなかった。
伊賀者とは奇妙な人種で、
主、使命の為には自分の命すら平然と捨てる絶対的忠誠心と、
「天正伊賀の乱」の時の如く、時の最高権力者にすら命がけで反逆する反骨心を、
心の中に同時に兼ね備えるのだが、
今の筑摩小四郎の場合、反骨心の方が勝っているようだ。
(ふざけおって…伊賀者を舐めるとどういう目に逢うか…見せてくれる)
見えずとも解る可憐な少女が隣にいる故か、小四郎の闘志はより一層燃え上がった。
■
姫路瑞希と筑摩小四郎。
本来ならば決して出会うはずもない二人が夜を歩く。
彼らの行く末に幸いあれ。
【F-4/草原の北端近く/一日目 深夜(黎明近く)】
【姫路瑞希@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康
[装備]:フライパン@現実
[道具]: デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本: 吉井明久、朧、薬師寺天膳を探し、脱出する。
1:情報収集しつつ、吉井君と小四郎の主人二人を探す。
2:小四郎と一緒に行動する。
【筑摩小四郎@甲賀忍法帖】
[状態]:健康、盲目
[装備]:蓑念鬼の棒@甲賀忍法帖、お幻の鷹@甲賀忍法帖
[道具]: デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本: 吉井明久、朧、薬師寺天膳を探し、脱出する。
1:情報収集しつつ、主二人と、吉井殿を探す。
2:瑞希殿と一緒に行動する。
3:とりあえず今は瑞希さんを守る。
4:甲賀弦之介は殺してやりたいが、今は後廻し
[備考]
※姫路瑞希を、高貴な家柄の子女、あるいはその関係者だと思い込んでいます。
支援
支援
投下終了。
支援感謝。
乙です!
トラブル解消されて何よりでした。投下乙。
消失長門のように姫路さんがあっさりとリタイアしてしまう展開を思い浮べていたが、こういう展開もあるのか…。
投下乙です!
姫路さんがどうなる事やら不安だったが…
生きていたようで何よりだ
ただ、料理しようとか言い出さなければ良いがww
投下乙!!!
成る程…これはいい勘違い
姫路さんは毒物精製スキルがあるから期待だなw
投下乙です。
明久を「吉井君」と呼んでいるということは参戦時期は文化祭の前ということですね?
投下乙。
瑞希は運良く命拾いしたみたいだね。
今後、手料理イベントでも発動したら小四郎のほうがピンチかもしれんね。
同作支給品を持たせるのは相変わらずのようで……。
予約が二つ……楽しみだw
wktkwktk
106 :
代理投下:2009/03/08(日) 20:52:28 ID:DKR2tojF
◆hwBWaEuSDo、浅羽直之
代理投下します
107 :
代理投下:2009/03/08(日) 20:53:45 ID:DKR2tojF
あの夏は終わらない ◆hwBWaEuSDo:2009/03/08(日) 18:30:53 ID:P/CJ3AB.0
宇宙人の仕業だ。
きっとあの狐のお面を被った奴は宇宙人の手先かなんかなのだ。
そして、地球人の中から優秀な人種を選別するためにこんなことを仕出かしたんだ。
最後まで残ったら、あの男は恐らくヘリウムを飲んだ後みたいな声で「キミヲワレワレノナカマニシヨウ」とかなんとか言ってUFOで連れて行くに違いない。
そんなこと、どうでも良かった。
周りでは森がざわざわ、と揺れていてまるでひとつの生き物のようだ。
深夜であることも相まってか、その場はとても不気味な様子をかもし出している。
どうして自分がこんな所にいるのか見当も付かなかったが、それもどうでもいい。
この現象が宇宙人の仕業だろうと、悪の秘密結社の野望だろうと、大魔術師召喚のための大いなる儀式だろうと何だって構わなかった。
全てがどうでもいいのだ。
そんな果てしない虚無を感じながらぼく――浅羽直之は絶望して、地面に膝をついた。
思う。さっきまでぼくはあの島にいた。
あの夏の終わらない南の島で、ぼくは伊里野に会っていた。
そして、世界を犠牲にしてでも伊里野を助ける、そうぼくは宣言した。
(……なのに、伊里野は行ってしまったんだ)
ぼくのせいだ、と深く後悔する。
あの伊里野に対する告白。
あんなことしなければ彼女は行かなかった。
ぼくのことなんかを守りには行かなかった。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
感情を暴走させ、隣にあったデイパックを地面にたたき付ける。
バシン、という音を立てながらデイパックが土の上に転がった。
108 :
代理投下:2009/03/08(日) 20:54:34 ID:DKR2tojF
ぼくはただ泣き続ける。
恥も外聞も無く、伊里野が行ってしまったことがただただ悲しくて、ひたすら泣き続けた。
あの五月蝿さかった蝉の音が、今はとても恋しい。
〇
しばらく泣いていると大分落ち着いてきた。
それでも周りが静かな為、ぼくのむせび泣く声が周りに響いた。
(……どうしようか?)
はぁはぁと息を整えた後、ぼくは涙を流しながらもこれからのことについて考える。
さっきの空間のことに対して、ぼくはぐちゃぐちゃになってしまった頭を頑張って働かせた。
(生き残れ、とか言っていたけど一体何をすればいいんだろう?)
さっきのあのお面の男が言っていたことをよく聞かなかったのは痛かったと思う。
とりあえずやることが無かったし、ぼくは先程地面に叩きつけたデイパックを拾いあげた。
結構丈夫な造りになっているらしく多少汚れてはいたが、どこも破れてはいなかった。
(そういえば、これ何が入っているんだろう?
お面の男がなんか言っていた気がするけど……)
ぼくは何となく気になってデイパックを開けてみることにした。
「うわっ」
最初に出て来たのは銃だった。
あの島でぶっ放した物とは違う奴だったが、黒光りしていて、重く、紛れも無く本物の銃だということは分かった。
マシンガンとかいう奴だろうか。
(こんなものを渡して生き残れって、つまり……殺し合えってこと?)
殺し合い。
ぼくはその言葉に恐怖を感じつつ、中から別に名簿と書かれた冊子を取り出す。
そこである名前を見つけた時、ぼくは驚愕した。
伊里野加奈。
そう記されてあったのだ。
何度も読み直したが間違いなくそこにはその名前が記されていた。
同姓同名の別人だろうか、と思ったがそこで気付く。
109 :
代理投下:2009/03/08(日) 20:55:56 ID:DKR2tojF
(さっきまでぼくはあの島にいたんだ。
それが今は何故か此処にいる。
そんなことが出来るのなら、行ってしまった伊里野を呼び出すこともできるんじゃ
ないか?
もしそうなら……伊里野を行かせるのを阻止することができるんじゃ……)
そう思った途端、ぼくの心臓が鼓動を早めた。
伊里野を生きさせることができる。
これは今のぼくにとって余りにも魅力的な言葉だった。
ちら、とさっき取り出した銃に目をやる。
あれがあれば人を殺すことが出来るだろう。
あんな物を渡して生き残れということは、要するにあれで皆を殺せってことらしい。
勿論ぼくはそんなことはしたくはない。
(でも、ぼくは……伊里野の為なら世界だって敵に回してみせる!
ぼくは伊里野を生き残らせるんだ!
あの夏を、UFOの夏を終わらせなんかしない!)
ぼくは涙を拭って銃を持ち上げ動き出した。
銃は先程より不思議と軽く感じる。
夏用の制服が少しだけ寒かった。
【A-2/山の中/一日目・深夜】
【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:精神高揚。
[装備]: ミニミ軽機関銃@現実。
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1〜2個所持)。
[思考・状況]
0:伊里野を生き残らせる。
1:伊里野以外は殺す。
[備考]
※参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。
支援
111 :
代理投下:2009/03/08(日) 20:56:53 ID:DKR2tojF
以上で代理投下終了です。
◆hwBWaEuSDo氏、乙でした
代理投下乙。
結末しか知らん作品だけど主人公が奉仕型マーダーになるのは分かる気がする。
投下乙!!!
また奉仕マーダーが一人…
マーダードンくらいいるんだ?w
物騒すぎるぜ…
みんなマーダーになぁーれ
都合によりガウルンと朧の予約をキャンセル致します。
トリこっちでした。
投下乙ー
ちょww
また危険人物増えたw
一体どこまで増えるのか…ゴクリ
フリアグネ、トラヴァス、投下します。
“それは汚い仕事だ。故に紳士にしか務まらない”
僕はそう教えられ、そう信じてきた。
たくさんの人を裏切り、時に見捨ててきた。
たくさんの人を悲しませ、時に殺してきた。
僕は祖国を愛し、もう1つの祖国も愛してきた。
僕は祖国に尽くし、もう1つの祖国にも尽くしてきた。
僕は2つの祖国を愛す。2つの祖国が愛してくれなくても。
僕は2つの祖国に尽くす。2つの祖国がそれに応えてくれなくても。
しかし――なぜこうなる?
どうして――こんなことになる?
運命の女神よ。
このとびきりの阿婆擦れよ。
僕は負けない。
どのような手段をとってでも。
さあ考えろ。
考えろ。
考えろ。
やがて銃声は鳴る。
* * *
――眼鏡をかけた30代半ばの男性が、川を挟んで建つビルの屋上から、全てを見ていた。
向こうから感づかれないよう身を伏せ、長細い筒を片目に当て、一連の事態を全て見ていた。
路上で無防備に食事を始めようとする少女。
その少女に銃を向けた男。
その2人の間に割って入ったメイド服の女性。
「これは、分かりやすい構図だね」
その男・トラヴァス少佐は、まるで街中でカップルの痴話喧嘩を目撃した程度の、何でもない口調で呟いた。
何やら言葉を交わした後、男が再び銃を女たちに向け、下ろし、そして男は空中に飛び上がる。
まるで重力を無視したその動きに、トラヴァス少佐はしかし、少し芝居がかかった驚きの声を上げたのみで、
「ほう……。
あれは“魔法遣い”、なのかな。
僕と違って“名前だけ”じゃないようだけども」
そのまま観察を続ける。
路地に残された女性が、何やら箱のようなものを少女の前に置く。
視線を移せば、襲撃しようとした男はそのまま市街地の上空を飛んでいく。
その影が百貨店の屋上に着地したのを見届けて、
「最初の“ターゲット”は、あちらにするか。“魔法遣い”なら、“これ”も使えるかもしれないしね」
トラヴァス少佐は手元に置かれたデイパックを、ぽん、と叩く。
普段どおりの軽い微笑を浮かべたまま、トラヴァス少佐は動き出した。
* * *
商業施設の集まる市街地の一角に、その百貨店は建っていた。
屋上には、少し時代に取り残された感のある遊戯設備の数々が並ぶ。
ワンコインで動くパンダや象の遊具がある。色褪せたぬいぐるみたちを抱え込んだUFOキャッチャーがある。
広い屋上の一角は柵と古タイヤに囲まれて、ささやかなゴーカート用のコースとなっていた。
暗がりの中に不気味な影を落とすそれらを眺め回し、純白の衣装に身を包んだ男は奇妙な韻で呟いた。
「“あの街”で拠点を構えたのも、こんな場所だったね、マリアンヌ……」
口にしてからようやく、普段の“相方”の不在に気づいたらしい。
彼はハッとした表情を一瞬だけ浮かべ、軽く首を振る。
1人でもやるのだ、そんな決意を笑みで覆い隠し、フリアグネは確認するように言葉を紡ぐ。
「うふふ、こういう場所ならば、マネキンや人形には事欠かないからね。
数多の自在法が封じられた今、大した“燐子”も作れまい。
“燐子”を爆弾と化す『ダンスパーティ』のない今、さほどの戦力にもなるまい。
それでも『万条の仕手』ほどの者を相手にせねばならぬ現状では、兵隊は多いに越したことはないからね」
ただ無闇に危険から逃れてきただけではない、と言わんばかりの笑顔で両手を広げた彼は、次の瞬間、
微かな風切り音を、聞いた。
聞こえた時には、その美しく整った顔の右頬に、浅い傷が生まれていた。
* * *
「……損害確認。初弾はクリーンヒットせず。
しかしこれで、この銃のクセは分かった。サイレンサーも高性能だし、いい銃だ。
“フルート”とか言ったかな? できれば持ち帰って、皆にも撃たせてやりたいものだね」
先ほどまで望遠鏡代わりにしていた狙撃用スコープ越しに 白い男を眺めながら、トラヴァス少佐は呟く。
その手に構えた組み立て式のライフル(正確にはパースエイダー)の銃口から、うっすら煙が上がっている。
何が起こったのか咄嗟には理解できない様子の男を、なおも射程に収めたまま、彼は再び集中力を高める。
「先ほどの着弾のズレを補正してやると、狙いはこんなところ、か……。
頼むぞ。次の一発が勝負だ」
そして、彼は再びその引き金を引いた。
* * *
「……狙撃、だと?!
“気配”はなかったはず……っは!?」
一言呟いて、フリアグネは己の勘違い、心得違いを理解する。
そうだ。フリアグネたちにとって普段感じている気配は、『この場』:においては極めて限定されたモノなのだ。
通常、“紅世の徒”やフレイムヘイズは、互いの気配を感じながら戦う。
“紅世”に関わる者同士の、共感覚にも近い感覚。世界にとって異質なモノが混じった、違和感に近い感触。
いかに気配遮断の自在法をかけていても、近距離では“徒”もフレイムヘイズもその“気配”を隠しきれない。
そしてその“気配”に含まれる、僅かな動きの予兆や、“存在の力”の集中の様子をいかに捉えるか。
“気配”に含まれる“殺し”の流れをいかに捉えるか。
そういった感覚こそが、“徒”やフレイムヘイズにとって最も重要な技術であり、強さなのだった。
けれどもそれは、基本的に対“徒”、あるいは、対フレイムヘイズ用の技術。
相手が『万条の仕手』でもない限り、人間、それも遠距離の相手を前に頼れる感覚ではない!
もちろん常であれば、ただの人間・ただの銃など“紅世の徒”の敵ではない。
破壊力の面から言っても脅威ではないし、封絶を張ってしまえば一瞬で勝利が確定する。
だが、今のこの状況では――数多の自在法が封じられた、常ならざる今は――!
「……っ!」
しかし実際には、そんなことを考えている余裕すら、本当は無いのだった。
驚愕と思索に費やしたほんの数秒の間に、再びの風切り音。
音とほぼ同じ速度で飛んでくるライフルの弾丸は、音を認識してから反応していては間に合いはしない。
それでも、
「き」
刹那の間に身をよじろうとして、だがそれさえも遅かったことを嫌でも悟らざるをえず、
「っ」
銃弾が、そんな彼の肩を掠めるように飛び去っていった。
肩にかけていたデイパック、その肩紐が片方、はじけ飛ぶ。
――それだけだ。
それだけ、だった。
「……っははは!!」
2発目も外れた。
フリアグネの回避の結果ではない、純粋に狙撃手側の要因によって、当たらなかった。
おそらくは一方的な狙撃が出来る最後の機会にも、“敵”の弾は彼の身体を捉えられなかったことになる。
慣れない銃のせいか、それとも緊張のせいなのか。
この絶好の機会に、“敵”は、当てることができなかったのだ。
その意味を理解し、フリアグネは緊張の面持ちから一転、哄笑を上げる。
笑いながらも落下しかけたデイパックを掴み、拳銃を片手に跳躍する。いや飛翔する。
1発目の時には、どこから撃たれていたのかも分からなかった。
しかし2発も撃たれれば流石に分かる。発射音が聞こえなくても分かる。
百貨店の屋上を飛び出し、眼下に広がる深夜の市街地。
百貨店と大通りを挟んでそびえる、商業ビルの屋上。
……いた。
ライフルを構えた男が、そこにいた。
「“気配”などに頼らずともね……見えてさえいれば、人間如きに負けはしないのだよ!」
調律が狂ったような独特の口調で、フリアグネは嘲笑う。拳銃を片手に哂う。
脆弱な人間に対する絶対の勝算をもって、そのままの勢いで上空から襲い掛かろうとして、
* * *
「……ここまで計算通りだと、申し訳なくなってくるな」
トラヴァス少佐は眼鏡の奥の目を軽く細めながら、一見無造作にも見える動きで銃口を動かした。
先ほどの狙撃とは一転、ほとんど狙いをつける間もない状況だったが、しかしその狙いは実に正確だった。
軽く引き金が引かれる。
消音器を駆け抜けた弾丸が気の抜けたような音を立てる。
そしてその弾丸は、トラヴァス少佐の狙い通りの軌道を描き、飛んでいった。
空中から今まさに襲い掛からんとしていた純白のスーツの男は、間の抜けたような表情で、
「……っは?!」
反撃のタイミングを逸し、そのままトラヴァス少佐の居るビルの屋上に、落下した。
* * *
「……うふふ。これはどういうつもりなのかな?」
「おそらく、貴方が思っている通りの意味ですよ」
3発目の銃弾が放たれ、フリアグネが着地してから、たっぷり5秒ほどの沈黙の後。
奇妙な韻に僅かに苛立ちと怒りを滲ませた問いに、どこか慇懃無礼な響きのある答えが返された。
あの瞬間――空中にあったフリアグネが、撃たれたか、と思ったあの瞬間。
一瞬、被弾すら覚悟したその弾丸は、彼の肩を掠めて飛び去ったのだった。
3発続けての、命中弾なし。
普通に考えれば、狙撃手の技量不足としか思えない結果だ。
そう、ただ外しただけであったのなら、こんな質問などする間も置かず、襲い掛かって殺していただろう。
しかし。
3発目の軌道は、しかし、相互の位置関係が大きく変化していたにも関わらず。
2発目と全く同じ、フリアグネの右肩を軽く掠める“だけ”の位置を、貫いていたのだった。
フリアグネの右肩を掠めるように疾走った、2発の弾丸。
純白のスーツに残されたのは、綺麗に重なり1本にしか見えない、破れた筋。
銃器の扱いには疎いフリアグネにも、その意味ははっきり分かる。
目の前の男は……この、優男と評しても良さそうな容貌の、眼鏡をかけた男は。
「お気づきの通り、同じ場所をあえて狙ったのですよ。
あえて、貴方の身体に当てなかったのですよ。
もし私がその気なら、どちらも貴方の頭の中心に当てることが可能でした。
1発目はまだ銃のクセを掴みきれていなかったので、少し逸れてしまいましたが」
大したことでもないかのように淡々と語るが、しかし、冷静に考えれば、その意味する所はとんでもない。
ぶつけ本番で、たった1発の試射だけで、この精密射撃。
そしてその1発目さえも、決して直接当てず、さりとて、無視できないあたりを掠めるように撃ち抜いている。
内心の微かな動揺を抑えつつ、フリアグネはこの男の技量を賞賛する。
「なるほど、この私を相手に、やるものだね。ただの人間のくせに」
「ええ、ただの人間の、確かな技術です。
そういう貴方は、やはり“ただの人間”ではないようですね。童話などに登場する“魔法遣い”か何かですか?
……あ、申し遅れました。私はトラヴァス、少佐の階級を持つ軍人です」
「魔法使いか。
うふふ、人の世ではそのように呼ばれていた時代もあったね。
“紅世の徒”、それが“紅世”から渡り来た“我ら”の名。
“紅世の王”、それが“徒”の中でも特に強き者に贈られる名。
そして“フリアグネ”、それが“紅世の王”として知られる私の名だ」
「フリアグネ、ですか。
いえ、まがりなりにも王であらせられる以上、“フリアグネ様”、とお呼びした方が良いのでしょうかね」
尊大さを隠そうともしないフリアグネの言葉に、トラヴァス少佐、と名乗った男は嫌な顔1つしない。
それどころか、真顔でフリアグネを立てるかのような言葉遣いをしてくる。
これには流石のフリアグネもその整った顔をしかめて、
「うふふ、おべんちゃらなら、いらないよ。
それよりも、私の聞きたいことの半分しか答えて貰っていないのだけどね」
「と、おっしゃいますと?」
「君は、わざと外したと言ったね。
それが君の技量に裏打ちされたものだ、というのも、まあ理解した。
けれども、その背景……“なぜ、そんなことをしたのか”。これを答えてくれていないよ」
「ああ、そんなことですか」
言わねば殺す。つまらぬことを言っても殺す。
そんな殺気を柳と流し、トラヴァス少佐は軽く微笑みすら浮かべ、静かな口調で“答え合わせ”に応じた。
「ではお答えしましょう、フリアグネ様。
全てはこうして、交渉する余地を作るため。
そしてあわよくば、この私と“共闘”して頂けないだろうか、と思ってのことです。
現にこうして、私の話を聞いて頂けてますしね」
* * *
「これは、幸運もあったのですが……
私はここから、フリアグネ様が他の参加者と接触している様子を、目撃していたのです。
ええ。法衣らしきものを着た少女と、メイド服を着たあの女性です。
流石にこの距離です。声も聞こえませんし唇も読めませんでしたが、しかし十分でした。
貴方が“優勝”を目指していると、十分に理解できました。
そして貴方が慎重な性格で、興味さえ惹ければ会話は可能だ、ということも」
「マリアンヌ? なるほど、そのお方のために最後の1人の座を得たい、ということですか。
お気持ちはよく分かりますよ。私にも、この命に替えてでも生きて帰したい、愛する者がいますから。
私の場合、私自身の生き残りではなく、その“愛する者”の生き残りを図ることになります。
……ああ、名前はまだ勘弁して下さい。
フリアグネ様と共同戦線を張りたいとは思っていますが、しかし人質などにされたらたまらないので」
「しかし、その“マリアンヌ”嬢は、この殺し合いの場には本当にいらっしゃらないのでしょうか?
……もし居れば“紅世の徒”の感覚で分かるはず? 自分が作った“燐子”だから?
詳しい理屈は私には分かりませんが、しかしそれも、“常ならば”、でしょう?
フリアグネ様ご自身が“名簿に名のない10人”の1人だったように、可能性はあると思いますよ」
「話が逸れました。フリアグネ様の姿を見かけた所から、でしたね。
ええ、本当に驚きましたよ。
あのメイドがリボンで銃弾を止めたかと思ったら、フリアグネ様は空を飛んだのです。
正直言って、私も、私の愛する者も、とても正攻法で勝てるような相手ではない、と思いました」
「しかし、そんな“魔法遣い”2人が、膠着状態に陥ってしまっている。
片方が一時退却を選ばざるを得ないような状況に陥ってしまっている。
これは、チャンスだと思いましたよ。
膠着状態を崩したいのなら、戦力を増強するしかないですからね。
そして戦力増強を図るなら、他者を襲って武器を強奪するか、他者と図って一時的に手を組むか。
普通に考えて、取りうる選択肢はこの2つです。
興味を惹けるだけの“価値”を提示できれば、同盟受諾の可能性は見出せる。そう判断しました」
「見たところ、フリアグネ様はこの銃程度なら勝てるおつもりのようですね。
……いえ、違いますか。
“普段通りの実力が発揮できるなら”勝負すら成立させずに一方的な勝ちを収める自信がある、と。
けれども“普段通りの実力が封じられている”今、銃の脅威をどう評価すべきか、計りかねている。
私がもっと攻撃的な態度を取れば危険を冒してでも強攻策を取るけれど、話が通じるなら無理は避けたい。
……どうでしょう? こんなところでは?」
「いえいえ、私は“ただの人間”ですから。
“心を読む自在法”? そんなもの、もちろん使えませんよ。貴方の行動や表情から推理しただけです」
「ええ。銃口を向けられた時の貴方の態度は、実に分かりやすかった。
“これは本気で対応すべきなのか? それとも黙殺してもいいのか?”――そんな迷いが見えましたから。
いくら空を飛べる身とはいえ、あんなに無防備に飛び掛ってきたのもヒントになりました。
戦闘経験は浅くない様子なのに、銃器に対して慣れていない様子を示す……
ここまで読めれば、あとはすぐに分かりますよね」
支援
「それで、本題です。
私は、“愛すべき者”を最後まで生き残らせたい。
そのために他の参加者、特に強く危険な者を優先的に消していきたい。
しかし、えーっと、確かフレイムヘイズ……でしたか?
銃弾を止めてしまえるような力を持つ者を、単独で倒せる自信はありません。
そんな“敵”に対抗しうる力を持つ“紅世の王”のお力を借りられるのなら、それに越したことはない」
「そして貴方は、自身が生き残りたい。
そのために、さっきのメイドの女性のような強い者を倒す戦力が欲しい。均衡を崩す戦力が欲しい。
私の射撃の腕前は、フリアグネ様も既にご理解なされたと思います。
その他にも、私は軍でも特殊な部隊に所属しておりましてね。人間心理には人よりも通じているつもりです。
作戦立案や部隊の指揮なども、それなりには。
様々な面で、フリアグネ様のお役に立てると思います」
「もちろん、いつまでも仲良く手を取ってはいられないでしょう。
いつか私と貴方の願いがぶつかる時がくる。
けれど、それまでは。
共闘、しませんか」
「……ありがとうございます。
ええ、信用しきっていないのは、こちらも同じですよ。お互い背中には気をつけることとしましょう」
「ところで、フリアグネ様。
話は代わりますが……“これ”、フリアグネ様になら使えるでしょうか?
『吸血鬼(ブルートザオガー)』という名の剣だそうですが。
私には重すぎて、まともに持ち上げることすらできませんでした」
「おっと、タダでお渡しするわけには参りませんよ。いくら“狩人”とはいえ。
我々はあくまで、互いに利用しあう関係であることをお忘れなく。
そうですね、その拳銃と交換、ということではどうでしょうか。
私としても、使える武器は多いに越したことはありませんから」
「……はい、では確かに受け取りました。
そんなに軽々と振り回されるとは、流石ですね。
“紅世の王”とは改めて凄いものです。つくづく敵に回したくない存在だ」
「それでは、ひとまず――これからどこを目指しましょうか。
百貨店? ええ、構いませんよ。では参りましょうか――“フリアグネ様”」
* * *
支援
【C-5/百貨店の隣に建つビル・屋上/一日目・黎明】
【フリアグネ@灼眼のシャナ】
[状態]:健康。
[装備]:吸血鬼(ブルートザオガー)@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック(肩紐片方破損)、支給品一式、不明支給品1〜2個
[思考・状況]
基本:『愛しのマリアンヌ』のため、生き残りを目指す。
1:当面、トラヴァスと組んで他の参加者を減らしていく。ただし、トラヴァスにも警戒。
2:百貨店のマネキンなどを素材に、“燐子”を作れるかどうか試しておきたい。
3:他の参加者が(吸血鬼のような)未知の宝具を持っていたら蒐集したい。
4:他の「名簿で名前を伏せられた9人」の中に『愛しのマリアンヌ』がいるかどうか不安。いたらどうする?
[備考]
※坂井悠二を攫う直前より参加。
※封絶使用不可能。
※頬と右肩のかすり傷は、傷とも呼べないレベルです。
【吸血鬼(ブルートザオガー)@灼眼のシャナ】
“紅世の徒”の1人、“愛染自”ソラトが所持していた大剣の宝具。
“存在の力”を扱えない者には、持ち上げることすら難しい重さを持つ。
しかし“存在の力”を込めれば軽々と振るえるようになる。その際、刃には血色の波紋が揺らいで見える。
ただの剣としても優れた武器だが、
“存在の力”を込めることで、この剣に直接・間接に触れている者の身体を傷つけることが出来る。
傷は込められた“存在の力”の量に拠る。
そのため、この剣と鍔迫り合いなどをするのは非常に危険。
(なお、アニメ版では両手持ち可能だが、小説版では柄が短く、片手で持つのが精一杯とされている。注意。)
* * *
“それは汚い仕事だ。故に紳士にしか務まらない”
この僕・トラヴァス少佐は、“アイカシア学校”でそう教えられ、そう信じてきた。
ロクシェ首都の大使館勤務の駐在武官、トラヴァス少佐は、平たく言えば、スー・ベー・イルのスパイだ。
惑星にたった1つだけある、ジャガイモを横倒しにしたような形の大陸に、その2つの巨大国家は存在する。
東半分が、ロクシアーヌク連邦。通称ロクシェ。
西半分が、ベゼル・イルトア王国連合。通称スー・ベー・イル。
その両者を、北半分は大河ルトニ川が、南半分は険峻な中央山脈が分断している。
長年に渡って憎しみあい、争っていた東西の両陣営は、しかし近年になって融和の方向に向かっている。
僕は東側で生まれ、紆余曲折の末に僕は西側の貴族と縁を得て、大学卒業後に留学し、養子となった。
そしてそこで、尊敬する“ある人”に従い、その人と同じ道を選んだ。
“トラヴァス少佐”となり、ロクシェの首都に赴任したのだ。
そしてスパイとして武官として、東西が再び戦争に陥ることのないよう、“汚い仕事”に精を出している。
さて、そんな折に、この突飛なイベントだ。
状況は未だに把握しきれていないけれども、こうなると僕のやることは1つしかない。
つまり――普段通り、スパイとしての仕事をするだけだ。
多分アリソンやリリアは、この残酷な椅子取りゲームを否定しようとするだろう。
彼女たちの性格なら、間違いない。きっとトレイズ殿下も同様だ。
他にも同じように、「椅子取りゲームの構図自体を否定する者」は数多く現れるだろう……
そう、フリアグネから少女を守った、あのメイドのように。
だが同時に、この椅子取りゲームに積極的に乗る者も、また同じく現れる。
このフリアグネなどがいい例だ。
「愛しのマリアンヌのため」などと言っていたが、言動の端々に他人を害することに慣れている様子が伺える。
おそらく“紅世の徒”にとっては、“ただの人間”を殺すことも日常茶飯事なのだろう。
他にも“紅世の徒”の同類がいる可能性はあるし、“ただの人間”でも危険な思想の持ち主はいるだろう。
さて、そうなると……。
参加者は、大きく分けて“椅子取りゲーム否定派”と、“椅子取りゲーム肯定派”に分類できるわけだ。
そして“ゲーム否定派”のまとめ役などは、アリソンやまだ見ぬ善良な人々を信頼して任せてしまうとしても。
ゲーム肯定派の側にも“誰か”が居て暗躍できるようにしておいた方が、色々と都合がいい。
ならば――それは、僕の仕事だろう。
この残酷な椅子取りゲームに積極的な連中も、全てが自らの力だけを頼みにするわけではないだろう。
理性的に確実な勝利を目指すのなら、裏切りの危険も計算に入れた上で、“同盟”に走る者は出る。
僕のような“モグラ”が潜り込む余地も、あるというものだ。
“ゲーム肯定派”であるかのように振る舞い、“ゲーム肯定派”の行動をある程度コントロールする。
さりげなく“ゲーム肯定派”同士がぶつかるように誘導し、“ゲーム否定派”への被害を最小限に抑える。
一歩間違えば“ゲーム否定派”からも命を狙われることになるが、それでも、やる価値はある。
支援
支援
もちろん、これだけでは単なる時間稼ぎにしかならない。最後は時間切れで、全員終わりだ。
けれども……僕は、少し疑いを持っている。
そして、その疑いに微かな希望を見出している。
つまり、「この状況を作り上げた者は、果たしてそんな結末で満足するだろうか?」ということだ。
あの、獣を抽象化したような仮面の男……『人類最悪』と名乗った人物は、この状況を作った者ではない。
本人も否定していたし、その言葉を疑う材料は今のところない。
この状況を作った存在は、あの男の背後にいる。
個人か組織かはまだ分からないけれど、仮にここでは、“主催者”とでも呼称することにしよう。
さてその“主催者”は、これだけのお膳立てをしておいて、『時間切れ』なんて結末を喜ぶだろうか。
“主催者”の顔が直接は見えてないこともあって、その真意を推測することも難しい。
難しいが……よほどの理由が無い限り、「それは勿体無い」と思うはずだ。
これだけの準備を整えるのに、費用も手間もかかったはずだ。
フリアグネを上回る“魔法遣い”のような存在なら、あるいはコストの概念も違うのかもしれない。
それでも、きっと容易なことではなかったはずだ。
そしてその手間もコストもかかった会場で、全員に武器を渡し、たった1人の生き残りを目指せと言う。
“主催者”は、明らかに「殺し合い」の発生と、その果ての「優勝者」の発生を望んでいる。
さて、そんな状況下で“ゲーム肯定派”が減っていったら、“主催者”はどうするか。
1つの可能性として、“ゲーム肯定派”の支援に踏み切る展開が考えられる。
情報の提供、武器弾薬の補充、あるいは、“主催者”側の息のかかった参加者の追加。
もしかしたら、最初から参加者の中には“主催者”側のスパイ、とでも呼ぶべき者がいるかもしれない。
少なくとも――僕がこの悪趣味なゲームの管理運営を命じられたら、そういった仕掛けを仕込むところだ。
そして。
そうやって“主催者”が、“ゲーム肯定派”に接触する可能性が僅かでもあるのなら――
その接触の瞬間は、“ゲーム否定派”にとっては、絶好の機会となる。
絶好の反撃の糸口になる。
だが“主催者”が接触を図るのは“ゲーム肯定派”であって、“ゲーム否定派”ではない……。
希望は細く、望みは薄いが、現時点ではこれ以外の手がかりは見出せないし思いつかない。
ならば、そのためにも、僕は“ゲーム肯定派”の中に潜入しておこう。
「愛する者を優勝させたいから」という嘘を抱え、“ゲーム肯定派”であるかのように振舞おう。
アリソンにリリア、トレイズ殿下と、守りたい者が3人もいる時点で、それは本来ありえないのだけどね。
しかしどう考えても、これは“汚い仕事”だ。
まあ、いざという時に恨まれる者は、少ないに越したことはない。
まずは、臣下なき王様・フリアグネを利用させて貰うことにしよう。
口調や態度は王族やお偉いさんたちを相手にする時の要領で良いだろうか?
いまいちまだ“紅世の王”という存在が分からないのが、不安要素と言えば不安要素かな。
* * *
【C-5/百貨店の隣に建つビル・屋上/一日目・深夜】
【トラヴァス@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:ワルサーP38(7/8、消音機付き)、フルート@キノの旅(残弾6/9、消音器つき)
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品0〜1個、フルートの予備マガジン×3
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗っている風を装いつつ、殺し合いに乗っている者を減らしコントロールする。
1:当面、フリアグネと『同盟』を組んだフリをし、彼の行動をさりげなくコントロールする。
2:殺し合いに乗っている者を見つけたら『同盟』に組み込むことを検討する。無理なようなら戦って倒す。
3:殺し合いに乗っていない者を見つけたら、上手く戦闘を避ける。最悪でもトドメは刺さないようにして去る。
4:ダメで元々だが、主催者側からの接触を待つ。あるいは、主催者側から送り込まれた者と接触する。
【フルート@キノの旅】
キノが旅の途中で入手した、自動式ライフルタイプのパースエイダー。
作られた国での正式名称は、『五ニ式国民ライフル分解型』。『フルート』はキノが名付けた愛称。
簡単に分解・組み立てが可能なため、運搬の際にかさ張らないのが特徴。
狙撃用のスコープ、円筒形の消音器、分解して収納するためケースもついている。
弾倉は9発入り。なお今回、予備の弾倉(9発入り)が3つ、同時に支給されている。
支援
以上、投下終了。支援感謝です。
問題点等ありましたら、指摘お願いします。
トウカ乙です。
トラヴァスがカッコイイ……w
スパイとしていきそしてここでもスパイになるかぁ……
トラヴァスが選んだ道、彼の生き様が良く解りました。
GJです!
投下乙!
ヴィル・・・立派になったもんだぜ。
トラヴァス少佐としての活躍に期待だ。
投下乙です。
なんというか新しいタイプのステルス? なのかな。
投下乙!
なるほど。
ステルスマーダーならぬステルス対主催か。確かに滅茶苦茶珍しいタイプだ
投下乙!
これも覚悟の形か…ステルスの今後に期待!
お、ついに式と悠二に予約入ったか。
投下させていただきます。
突然だが、島田美波は迷いを抱えながら走っていた。
あの殺人犯となる決意をした男から逃げて、彼の危険性を誰かに伝えたい。
その事には何の問題も無い。レーダーだって持っているから、誰かと遭遇するのは幾分容易だろう。
だがその"他人との邂逅に有利である"という事実が、存外迷いを生む結果となってしまっていた。
簡単に言えば、信用できるか否かという問題だ。
この街に来て最初に見つけた人間が殺人を表明した所為で、彼女は周りに対する不信感を覚えてしまったのである。
初めて出会ったのが瑞希や秀吉といった仲間や、その他の信頼に足る人間であったならそうはならなかっただろう。
しかしどれほど運が悪かったのか、この椅子取りゲームで過激に大暴れしてやろうという人間を目撃してしまった。
明らかに強い悪意を見せられてしまっては、流石の島田美波でも参ってしまっただろう。その事に罪は無い。
さて、そこでレーダーである。
現在島田はレーダーの光点に注目することにより、ある程度は相手の居場所を特定することが出来る。
故に前述の通り"他人と遭遇しやすくなるし、他人の目からの回避も容易になる"という有利を抱えている。
しかし他人に対する不信感に飲まれている今の彼女にとっては、複雑な思いを抱かせる有り難味の無いものだ。
何せ人に簡単に出会えるからこそ、逆に"果たして相手は信頼に値するのか"と深く考え込んでしまうのだ。
他人との遭遇の前にワンクッションを置く事が出来るからこそ起こる、どうしようもない迷いだ。
最初に見かけた人間が危険人物だった所為で、自分の"人を見る目"というものがいまいち信頼出来ないのである。
さて、学校からある程度離れたことを確認し、遂に「はぁっ……」とため息をついて立ち止まった。
どれくらい走っただろうか。というより、自分は結局どこに向かって走っていたのだろうか。
今自分がどこにいるのかわからない。相変わらず街中にいるのは確かなのだが。
後先を考えずに行動してしまった事に、少々の後悔と一抹の不安を覚える。
安心感欲しさにレーダーを見てみた。"近すぎず遠すぎず"という辺りに光点がある。
立ち止まっているのか、動く気配は無い。このまままっすぐ行けばぶつかるだろう。
この微妙な距離感に、島田はどうするか迷っていた。
と、その時だ。停止していたはずの光点が突如こちらに向かってきた。
しかもかなりのスピードだ。直線的な動きは止まる様子が無い。
まるで何かに乗っているかのようなそんな速さだ。まさか。
「車!?」
向かってきたのはバギーだ。凄いスピードでこちらに向かってきている。
"まさか轢き殺そうとかいう魂胆!?"といった不吉さを覚えた為、島田は無意識に回避の体勢に移行する。
だがもう遅い。超スピードで鉄の塊が自分の体に衝突――――したかと見紛うかのような寸止めで、バギーは急速停止をした。
ついついへたり込む島田。それを心配したのか、ドアを開いて男が出てきた。銀縁の眼鏡が光っている。
えらく高身長なその男は自分よりも年上に思えた。こちらが座り込んでいる所為で、巨大な姿が更に際立つ。
何者だ。やはり自分を狙ってきたとんでもない人間なんだろうか。
「失礼、大丈夫かね? ああ、いや怪しいものではないぞ?」
「怪しくなかったら……どうして車でウチに突っ込んでくるわけ……?」
「いや、近辺を調査していたのだが何も収穫が無かったからな。移動しようとしたら……ご覧の有様だよ」
「調査?」
調査、という言葉が少し引っかかった。まさか怪しげな事をしているのだろうか。
恐る恐る尋ねてみる。すると案外と普通な答えが返ってきた。
「ここが園原……つまり自分の住んでいる場所かどうか、他にも覚えのある街がどうかを調べていたのだ」
なるほど、そして収穫が無かったと。確かにそれなら車でかっ飛ばしたくもなるだろう。
「ところで、あー……」
「島田。島田美波」
「ああ、では島田クン。この場所に心当たりは?」
「無いかな……うん」
こうやって会話を続けている分には、怪しい人間ではないように思える。
こちらの言葉にも反応し、返答を返している。信頼が出来ない相手ではなさそうだ。
sien
「ねぇアンタ……名前は?」
「ああ、申し遅れた。名は水前寺邦博! 園原電波新聞部長、水前寺邦博だ! 宜しく島田クン」
よし、名前も名乗ってくれた。
正直この自己紹介から彼の濃さが少し漏れ出しているようで危険な香りを感じるが、今はそうは言ってられない。
今はとにかく自分がやるべき事を為さねばなるまい。相手の性格との多少の不一致に文句を言っている暇は無い。
「ウチ、今人を殺そうとしてる人を見つけたの!」
信じてくれるかどうかはわからない。とりあえず伝えるべき事だけは、伝えたかった。
ただそれだけだったが――――それを伝えた途端、水前寺の目の色が変わった。しまった、地雷だったのか。
水前寺は島田の両肩を掴んでぶるんぶるんと前後に振りながら「本当かね!?」と叫ぶ。
「本当! 本当! 逢坂と川嶋ってのと、あと……櫛枝、だったかな?」
「素晴らしい! まさかこんな場所で早速何かしらの情報をゲットするとは!
実に素早く的確な良い働きだぞ島田クン! いや、島田特派員と呼ぶべきか!」
「……は?」
テンションがいっそう上がったこの水前寺は勢い良く言葉を並べていく。
その流れが急激であり高速である為、島田は置いてけぼりを食らってしまった。
このままでは飲み込まれるは必至。何とか食らいつこうと努力を試みる。
故に島田は
「何よ特派員って! ウチをどうしようっていうの!?」
という旨の質問をぶつける事にした。
すると水前寺は高揚感に身を任せるかのように「よくぞ訊いてくれた! 答えよう!」と叫び、回答を述べた。
「良いか島田特派員、"一回しか言わないからよく聞け"とまでは言わないがよく聞いてくれたまえ!
おれは今からこの世界から園崎へと帰り、園崎新聞部にこの出来事を持ち帰る為の計画を実行する!」
演説をするかの様に堂々と言葉を並べていく。
自分に酔っているのかそれともこれが素なのか。島田にはそれがよくわからない。
「その為に必要なのは力を持った組織! つまりは平和的に帰還する為に作る、所謂"秘密組織"というものだ!
そして組織を作るには人材が必要……そこで! 現場で効率良く大胆に行動出来る特派員が必要となるのだよ!」
秘密組織。そして特派員。
まさか自分がそんなものの一員になる事に決定したというのだろうか。
冗談じゃない。ここまでふざけた組織はFクラスだけで十分だ。
こちとらアキや瑞希達にも会いたいというのに。大体、秘密組織ってアンタ。
濃い。なんて濃いキャラなんだろう。出会ってしまったことに軽く後悔した。
島田の頭の中に拒否と嫌悪の言葉が浮かんでくる。相手に放つにも躊躇してしまう程に。
それを知っては知らずか「何、心配ない」と水前寺は声をかけてきた。何が心配ないのか。
「名前は既に決まっている。今ここで発表しよう」
そういう問題ではない、というありきたりなツッコミをする気すら失せた島田。
生暖かい目で水前寺を見守ることにした。正直疲れているのだ。
Fクラスの住人を相手にしているときのように、"いちいちツッコミを入れる"という行動を取るのはしばらく遠慮したい。
島田は切にそう願い、そう考えていた。いたのだが。
「名前は解り易い方が良い! 何故なら人は第一印象にある程度は左右されるからだ!
かつ、出来るなら呼びやすいほうが良い! 名前が長くなれば略すのは当然の流れ!
さぁではこれを踏まえて名乗らせてもらおう……我々が属する秘密組織、その名は!
"水前寺邦博と特派員諸氏が 大手を振って帰還する為に 総力を結集する団" だ!」
頭が痛い。なんだこのネーミングセンスは。だがそれだけでは終わらない。
水前寺が更に「略して!」と続けやがったからだ。ここまで来るともう既に辟易の極みである。
略して何よ、略して何なのよ。もうツッコまないから言ってみなさい。
「"SOS団"!」
思わず「馬鹿じゃないの」とツッコんでしまった。
ツッコまないと決意したばかりだというのに。
「なん……だと……? 素晴らしい名前だろう! 最早二番煎じが生まれそうなクオリティではないか!」
「本気!? アンタみたいなネーミングセンス持ってる奴なんていないわよ! 絶対ありえないから!
いたら裸で校庭を十周してやるわよ! "緑色の火星人が追いかけてくるー!"って叫びながら十周!」
「ぐぅッ! あの浅羽特派員の妹を髣髴とさせる強気……それでこそ出会ったかいがあるというものだ島田特派員!」
「だから特派員言うな! Halten Sie den Mund!(黙って!)」
「Sie reden vielleicht in Japanisch!(日本語で構わん!)」
もう嫌ださっさと帰りたい、と島田は心底そう思った。
支援
支援
しえん
◇ ◇ ◇
さて、すったもんだで島田は水前寺と同行するはめになってしまった。
遺憾の意と彼女は言う。だが別行動を取りたいといったところで相応の言い訳が思いつけないので別れるのは無理だ。
何しろ「自衛の為の武器も持っていない特派員の単独行動を許すわけにはいかない。危険だ」と真剣な表情で言われてしまったのだ。
事実、しかもまさに痛いところを直接突かれてしまっては反論出来ない。指図を受ける義理は無いが、正直自分の命は惜しい。
それを理由にしぶしぶ乗車したもののテンション駄々下がりだ。対して水前寺のテンションは下がる事を知らない。
「とりあえず園原新聞部の活動は一時休止。作戦に集中するため、SOS団の活動に専念する。
島田特派員の力添え、そしてチャンスを逃さぬ行動力があれば全ては上手く行くとおれは確信しているからな。
さぁ行くぞSOS団、さぁ行くぞ島田特派員。我々ジャーナリストは巨大な悪意に屈するわけには行かないのだからな!」
そう言いながら運転席でハンドルを捌く相手に対し、助手席に座った島田はもう返答すらしなかった。
何せ相手のテンションは全速力。少なくとも今はそれに着いていくだけで精一杯なのだ。
そもそもこんな風に一緒に行動しているだけでもげんなりものなのだが仕方が無い。
ちなみに
「で、どこに向かうつもりなの?」
「学校だ」
「学校、って……ウチの話聞いてた!? 危険なんだってば!」
「だが実際のところ島田特派員の情報は主観的かつ不明確な部分も多い。少なくとも誤解を招きかねないほどにはな。
島田特派員の情報の真偽を確かめなければ今後の行動に支障を来すかもしれない。我々には"真実を掴む義務"があるのだ」
「う……それはまぁ、そうだけど……わかったわよ。でもウチは"Vorsicht"……は日本語で、えっと」
「"警告"?」
「そうそれ! 警告はしたからね!?」
「Jawohl!(了解!) では納得してくれたところで、急いで真実を掴むぞ島田特派員」
といった会話を経て、現在は学校へと向かっている。
"急いで学校へ行き、真実を確かめる事が重要である"と説く水前寺に流されるような形で島田は同行している状態だ。
だが島田も水前寺の論には納得出来る部分があるとは思ったし、そういう部分は頼りになるとは思う。
問題はその他の部分が駄目過ぎる事であって。
と、そんなことを考えていた彼女は唐突に違和感を覚えた。
水前寺曰く"シズという人の持ち物"だというバギーは、彼の意に反して進む速度が微妙なのだ。
流石に自転車の方が速いとまでは言わないが、急いでいるのならば明らかに不都合極まりない。
先程自分に突っ込んできた時とは悪い意味で段違いだ。一体何故なのだろうか。この男の行動には疑問が付き物過ぎる。
支援
しえん
支援
「しっかし遅いわね。急ぎたいならなんでもっとスピード出さないの?」
「出さないのではない、出せないのだ。こういった種の車の運転など初めてだから加減を誤ると先程のようになるからな。
……だが島田特派員の言う事は尤もだな。今重視すべきは速さである事は明白だ……よし、すっ飛ばすから気をつけたまえ!」
「え……? え、いいいい今なんて!?」
景色が流れる速度が徐々に速くなっていく中、不安要素がたった今生まれた事を島田は見逃しも聞き逃しもしなかった。
まさかとは思うが、もしもの為に一応訊き返してみよう。戦慄しながら「今、なんて言った?」と訊ねてみる。
「いや、だから飛ばすので気をつけろとな。何せこんな本格的なバギーをこれ程までにすっ飛ばすなんぞ今日が初めてだ。
後四年もすれば法的に免許も取れるのだがな……まぁ今はこんな事をぼやいても仕方がない。残念だがそれが現実だよ」
やっぱりだ。彼は今、"こんな車は初めて運転する"と言った。確かに今そう言った。
これは不幸にも幻聴ではないと自分は理解している。二度も聞いてしまっては、もうそれは現実だ。
つまり彼は無免許運転であって、そして危険な行動を現在進行形で起こしているわけで。
そしてその危険な行動につき合わされている自分は実際に助手席に乗せられているわけで。
更にバギーの速度は着々と増しており、もう降りるに降りられない状況になっているわけで。
「そうじゃない! バギーをを運転したこと無いって……そもそも無免許運転って……どういう事なのよこの鬼畜眼鏡!」
「便利だと思ったから乗っているだけであって、特に悪意を抱いているわけではないぞ? 心配するな、反省点は活かしている」
ピー、ピー、ピー。島田の脳内にて警告ランプ発令開始。
Evakuieren Sie bitte.(撤退せよ) Evakuieren Sie bitte.(撤退せよ) Evakuieren Sie bitte.(撤退せよ)
これは演習ではない。繰り返す、これは演習ではない。
「いやあああああっ! やだっ、やだやだやだあ! 降ろしてっ! 助けてアキぃーっ!」
「落ち着け島田特派員! SOS団の誇りを忘れるな! 君は素晴らしき特派員なのだぞ!
なぁに、必要な運転スキルは軽トラとそう変わらんさ…………た ぶ ん な ! !」
「Helfen Sie mir! Helfen Sie mir!(助けてっ! 助けてえっ!)」
島田特派員、大号泣。
【E-3/路上/深夜】
【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、シズのバギーを運転中
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、シズのバギー@キノの旅、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本:島田特派員と共に精一杯情報を集め、平和的に園原へと帰還する。
1:学校へ移動中。高須竜児の一連の真偽を確かめる。
【島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康、シズのバギーの助手席に搭乗中
[装備]:レーダー(電力消費小)
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:水前寺邦博と嫌々ながら行動。吉井明久、姫路瑞希の二人に会いたい。
1:誰 か 助 け て 。
2:高須竜児が逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の三人を狙っていた事を伝えるのは保留。
しえん
投下完了。支援感謝です。
ちょwwwww
ミナミどんまいだww
つか鬼畜眼鏡wwwww
投下乙。
SOS団www なんというネーミングセンスwww
あとお前ら独語で言い争うなww 無免許バギーで暴走すなww
美波はすっかり元気になったなーw
おっと、投下乙なのです!
投下乙!
こりゃまた濃い人が来たもんだwwww
しかしSOS団とはwwwwハルヒが聞いたら怒るぞwwwww
投下乙ですー
まさかのSOS団w
これをハルヒが聞いたらどうなるのやら…w
美並は…うん、頑張れ
しまった
美並→美波だorz
乙&GJです。
「名前は解り易い方が良い」の時点で予感がしたけど、やはりそう来たか。
なんだか事態をややこしくしそうなフラグ?
そして美波は頑張れ、強く生きろ。
あとドイツからの帰国子女設定も生かされていて良かったと思います。
もう二周目の予約って解禁になってたっけ?
ところでビリビリの予約はどうする?
延長とかの連絡も無いけど、今日一日ぐらい待った方が良いのか?
何も連絡しないような期待してもしようがない。
予約破棄と見なしていいかと。
あと上条と北村予約してる人は未登場キャラも一緒に予約した方がいい。
二周目禁止にはなってなかったけど空気は読むべき。
前半は同意だけど後半は的外れ
二週目も別に構わないだろ
とりあえず美琴のは破棄って事でいいのかな?
途中で切れた。
まぁ喧嘩腰は良くないから控えるべき。俺も同じことだがな。頭冷やしてくる。
まぁビリビリは予約破棄扱いだろう
期限切れでコメント無いなら仕方ないかと
>>190 書き手なんだからもうちょっと考えて発言しろよ。
詫びてない事に気付いた。
つい言い過ぎて申し訳ない。
先日は言い訳出来ぬ無礼を働き申し訳ありませんでした。
その場の勢いのみで言葉を投げかけるのは控えます。
伊里野加奈、投下します。
白い灯台が、灯りを遠くまで照らしている。
私はその巨大な"それ"に寄りかかりながら、星を見ていた。
ここはどこ? と訊いたけど、星は何も答えてくれない。
私はそれでも良いと思った。訊いても何にもならないのは知っているから。
浅羽なら解るかな? 私が、ここにいる理由。そして、私がここで生きる理由。
星の瞬くその世界には"敵"がいたはず。
だから私は基地にいた。そして浅羽が来てくれた。だから"あれ"に乗った。
生きる理由も死ぬ理由も見失っていた頃とは違う。私は自分の意思で、あれに乗った。
髪にまだ色があって長かった頃とはもう、違う。
浅羽の為なら全部大丈夫だって思った。
だから私は"敵を倒しに行った"のに。
ブラックマンタに乗って空へと還っていったはずの私は、何故だかここにいる。
どうして、私はこんな所にいるの? 浅羽なら解るかな? ねぇ、浅羽は知ってる?
ああ、そっか。ごめん浅羽、変なこと聞いて……私、今やっと解った。
ねえ浅羽。私、決めた。私、やる。
武器だってあるから。銃と刃物が一つずつ、ちゃんとある。
これならきっと浅羽の為に頑張った後、死ねるから。
私はこれから浅羽の為に精一杯生きて、精一杯死ぬ。
だって結局、私の命は浅羽の為にあるんだから。それはここがどんな場所だったとしても変わらない。
榎本の為の命じゃない。地球の為の命じゃない。私の命は浅羽の為だけにある。
だから今から私はこの命を――――"浅羽を生かす為"に使う。
私ね、浅羽があの時「世界がどうなってもいい」って言ってくれたのが嬉しかった。
知ってるよ。"自分がやられて嫌な事を他人にしない"っていうのは常識だって。
だったらそう、"ギャクモシカリ"だよね。
世界なんて要らない。命なんていらない。
浅羽が生きて帰れれば、もうそれで良いから。
浅羽が死んでしまうなんて嫌、世界から消えてしまうなんて絶対嫌。
あの戦争の時と今いるこの世界のルールは違う。
この世界は、最後は一人しか生き残れない。
たくさんの人がいる中で、たった一人だけ……だから。
――――浅羽はきっと、私を褒めてくれないよね。
「浅羽以外の人間を殺す」なんて言ったら怒るよね。
「浅羽を最後の一人にする為なら何でもする」なんて言ったら嫌いになるよね。
でも、浅羽が生きていてくれれば良い。もうそれで良いから。
私は他に望まない。私は他に求めない。私は他に頼まない。
星がただ光るだけの毎日を送るように、私はここで浅羽の為に手を汚す毎日を送る。
あの日プールで出会った頃に戻れなくなっても、構わない。
私はそれでも構わないから、この銃と刃物で浅羽を最後の一人にしてみせる。
そうじゃないと、そうしないと今の私の命の意味が消えてしまうから。
だから「解って」とは言わない。「許して」とも言わない。
ただ、いつか私が人を殺そうとしている事を知った時……私の為に何かしないでいて欲しい。
浅羽は優しいから……そんな浅羽を見たら、私きっとどうすればいいか解らなくなるから。
ごめんね。
たくさんの星が瞬くその下で、私は静かに服を着替えた。
渡された袋の中に入っていた、水色と白のセーラー服とスカートを身に着けたらもう完了。
寄せ書きでいっぱいのパイロットスーツなんてもう着ていられない。もう捨てた。
だってもう私はブラックマンタのパイロットじゃないから。今日から"さつじんはんのイリヤカナ"だから。
……そろそろ行かなくちゃ。あの日からはもうさようならをしなくちゃ。
――――そうだ、最後に一つだけ。ねえ浅羽。ねえ、よく聞いて。
わたし、あさばがすき。
◇ ◇ ◇
その少女の名前は伊里野加奈。齢十五。職業は学生かつ軍人。
いつだったろう。地球人と宇宙人の果て無き争いの中で、彼女は特殊戦闘機「ブラックマンタ」のパイロットとなった。
人類の切り札。そんな役目を、彼女は幾人かの仲間と共に担っていた。
けれど、彼女はたった"それだけ"の為の存在だった。
故に時が経つにつれ、彼女は生きる意味も死ぬ意味も失い、戦いへと向かう意思も失っていた。
それは訓練中に死んでいく仲間を、自分達を取り巻く現実を目にした結果。残酷な世界を知った結果。
何もかもが、嫌だった。
だがそんなとき、彼女は出会った。浅羽という少年と出会った。
――――好きになった。戦う理由が出来た。
紆余曲折を経て、彼女は闘争と悪意の嵐と化した宇宙へと再び飛び立った。
地球の為ではない。"浅羽を守る為に死にに行った"のだ。
それから彼女は、どういう事かここに呼ばれた。結局宇宙での戦いがどうなったのかは彼女の記憶の中にも存在しない。
ただ、それでも彼女はここにいて、人を殺す為に今歩き出した。
彼女は再び、好きな人を護る為にたった独りで"全てと戦い始める"のだ。
【F-6/灯台/深夜】
【伊里野加奈@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康
[装備]:トカレフTT-33(8/8)+予備弾薬(弾数残り100%)、刺身包丁、北高のセーラー服@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:浅羽以外皆殺し。浅羽を最後の一人にした後自害する。
1:他の人間を探す。
投下終了です。何がありましたらどうぞ。
投下乙
互いを生かす為に、か…
何故か真逆の筈の「愛する者よ死に候え」を思い出した。
しかし本当にマーダーが多い
投下乙です。
奉仕タイプのマーダーは決して珍しくないとはいえ、
互いに互いを生き残らせるためというのは悲しいすれ違いですね。
……だが、それがいい!
あと、灯台にはパイロットスーツが放置されているということでいいですか?
>>200 失礼、表記するべきでした。
確かにパイロットスーツは灯台に放置されています。
Wiki収録時に
【備考】
F-6灯台に伊里野加奈のパイロットスーツが放置されています
と追記しておきます。
互いが互いの為に奉仕マーダーになったか
果たしてどうなるやら…
そしてまたマーダー増えおったw
なんという、殺伐空間
すいません、予約期限を勘違いしておりました。
一旦予約は破棄させて頂いて、その後予約が入らない様でしたら明朝投下しても宜しいでしょうか?
取りあえず延長してもいいんじゃない?
延長しても未だ一日あいてるよ
>>205 む、期限切れで自動的に破棄と思っておりました。
では延長ということにしてみます。
えーと、予約スレのほうで何かルールに抵触したかもなので、一応仮投下スレに投下します。
何が問題だったんだろう……。
それは兎も角、状態表のマージョリーはヴィルヘルミナの間違いではないでしょうか?
ギリギリになってすみません、晶穂、大河投下します
「きゃあっ!」
エリアを一つ移動して、エリアA-2。
小さな段差を踏み外して、悲鳴を上げながら逢坂大河は転倒する。
もう何度目かはわからない、元より誰も数えていない地面との接触。
膝小僧からも、とっさについた手の平からも血が滲み、
高須竜児の手によって常に新品同様に保たれている制服は泥にまみれて、ところどころ破けている。
無惨、と言うにふさわしい状態だったが、それでも彼女は立ち上がり、再び夜の森を駆け始める。
大河自身、その行動が暴挙であるとは理解していたが――けれども、走りを止めるわけにはいかなかった。
大河の小さな体躯を突き動かしているものは、恐怖。
平凡、とまでは言えずとも、それでも平穏ではあった日常を過ごしてきた少女が、初めて遭遇した非日常。
生まれながらの殺人鬼、殺人鬼と殺人鬼のハイブリット。人間失格、零崎人識。
立ち止まったらあいつに追いつかれるかもしれない、今度は右手だけじゃすまないかもしれない。
今度こそ――殺されるかもしれない。
そんな恐怖に支配されながら、終わりの見えない転倒と逃亡を繰り返しす大河。
「誰か……誰か、助けて! みのりん、竜児、北村くん、ばかちー!」
耐えがたい恐怖に怯えながら、大河は無意識のうちに友人達の名を叫ぶ。
けれど、どれだけ彼女が泣き叫ぼうとも、その声は彼らの元に届きはしない。
たとえどんなに強固な絆に結ばれていようと――数エリアの距離は、あまりに遠すぎた。
そんな大河を、見下ろす影が一つあった。
◇
バトルロワイアルが開始した直後、エリアA-2の森の中でのこと。
当然のことながら、あたしは困惑していた。
だって、しょうがないじゃない。気づいたら変な箱の中に詰められていたと思ったら、
センスの微妙なお面を被った男が現れて、よくわからない説明をしだして。
それで、男の話が終わったと思ったら、今度はぽつんと一人で山の中に立っていた。
こんな状況で落ち着いていられる人間なんて、部長位のものだ。
……いや、部長ならむしろ落ち着くどころか、これはUFOの仕業だ! とか言って、いつも以上におおはしゃぎするか。まあいいや。
けれど、今回ばかりは流石に、あたしとしてもUFOやら宇宙人の仕業だというのも吝かではない。
そうでも考えないと、理解できないようなことが多すぎるからだ。
「どう考えても……この量は入らないわよね……」
いつの間にか手に持っていた黒いデイバッグと、地図やら懐中電灯やら、そのデイバッグから出てきた品物を地面に置いて見比べながら、あたしは呟く。
まだ出しただけで、一つ一つを細かく見てみただけではないけれど、少なくとも通常この大きさのデイバッグに入る量で無いことは一目瞭然。
ドラえもんの四次元ポケットのようなもの。男はそう例えていたけれど、中々的確な例えだった。
「でも、武器も入っているって言ってたから少し期待してたのに、よりによってこれなのね……」
あたしは今、ヘルメットを被っていた。
それも、ただのヘルメットでは無く、自分がよく見慣れたもの。
非常事態の際に学校から被って通学することが義務付けられる、学校指定の黄色いヘルメットだ。
重い、暑い、恥ずかしいの三拍子揃った生徒皆の嫌われものを何故あたしが被っているかといえば、このデイバッグから出てきたからに他ならない。
たしかに非常事態ではあるからとりあえず被ってはみたのだけれど、まさかこんな場所まで来てこのヘルメットを被ることになるとは想像だにしてなかった。
ついでに言えば、デイバッグを何度探してもこれ以外に武器の類のものは見つからず、
あたしは今、自分自身の運の無さをこの上無く実感していた。
「いや、こんな事件に巻き込まれる時点でもう相当に運は無いのか……」
懐中電灯の明かりを頼りに、名簿を眺めながらあたしは呟く。
そこには、あたし同様に運の無い三人の知り合いの名前も書かれていた。
浅羽直之と、伊里谷加奈と、水前寺邦博。
頼りになるとは言い難いけれど、とりあえず知り合いの名前が書かれているのを見て、
あたしは巻き込まれたのが自分一人だけではないということに少しだけ安堵して――
『そして、生き残ることができるのは一人だけ。
蜘蛛の糸の話を知っているものはその顛末も知っているよな?
欲をかくなよ。一人だけという条件は絶対に覆らない』
男のそんな説明を思い出して、一気にブルーになった。
生き残れるのは一人、つまりその一人以外の五十九人は……死ぬのだ。
あたしが、伊里谷が、部長が、浅羽が、四人揃って生きて園原に帰れる、ということは無いのだ。
一人だけ生き残るか、四人揃ってここで死ぬか、選択肢はその二つしか存在しないのだ。
「……どうしよう」
制服のスカートが汚れるのも構わずにあたしは地べたに座りこんで、頭を抱える。
もちろん絶対に死にたくなんか無いけれど――誰かを殺して、一人だけ園原に帰ったとして、それでどうするの、という感じだ。
というか、どうしようもないじゃないこんなの。
「皆は……どうするのかな」
自然と、そんな言葉が口から溢れ出ていた。
自分と同じような問題に直面しているだろう、伊里谷は、部長は、浅羽は、
どんなことを考えて、どんな選択肢を選ぶのだろう。
「伊里谷は……多分、浅羽を探すんだろうな」
多分というか、これに関しては間違い無く言える。
目標以外には目もくれないで、浅羽を探して回ることだろう。
基地に住んでいるのだから、非常時の対応も知っているだろうし、こんな状況の中ならあたしよりもよっぽどうまくやるはずだ。
「部長は……ダメだ、想像つかない」
この状況に興奮していることだけは容易に想像できるけれど、それ以上のことはわからない。
それ以前に、部長の行動を予測できる人間が、この世界にいるのだろうか。
とりあえず自分にはできないことだけは確かなので、部長についてこれ以上考えるのは止めておく。
「浅羽は……」
浅羽は、どうするのだろうか。
……わからない。
普通に考えれば、伊里谷や部長よりも余程わかりやすい思考をしているはずの浅羽の考えが、今のあたしには全然わからない。
なぜか? そんなのは決まっている。伊里谷が――伊里谷加奈が、絡んでいるからだ。
いつもは冴えないただの男子中学生のはずの浅羽が、突然予想もつかない動きをするときは、いつだって伊里谷が絡んでいた。
少なくとも、ここ最近はそうだ。シェルターの時も、つい先日の、旭日祭の時も。
浅羽はいつも――伊里谷ばかり見ていた。
「はあ……こんな状況で、何考えてるんだろうあたし。他にも色々、やるべきことはあるはずなのに」
溜め息を吐いて、のろのろとした動作で出した物を再びデイバッグの中にしまう。
全て問題無く入り、最初と同じ状態となったデイバッグを背負って、あたしは立ち上がる。
色々思う所はあるけれど、ひとまず浅羽達を探そう。
時計を見れば、すでに零時三十分を回っている。
最初にあの男が言っていた、二時間毎に世界が『切り取られる』という話。
『切り取られる』というのが、具体的にどういった意味を持つのかはわからないけれど、
とりあえず、その切り取られる場所に居てはまずい、と言うのは間違い無いはずだ。
「今あたしが居るのは山で……山の頂きが大分西の方に見えるから、多分A-2辺りよね……」
A-2が『切り取られる』のは午前四時。猶予は三時間以上ある。
地図に一エリアの大きさが書かれていないのが痛かったけれど、今更そんなことに文句を言っても仕方ない。
やるしかない。ここに居たら、死ぬだけなのだから。
『まぁ、精々……頑張って、生き残ることだ』
男の言葉が、脳内でリフレインする。
あの男は、自分があたし達と同じ状況にあると言っていた。
その言葉を信じるならば、あの男の上に、この状況を作り上げた誰かがいるのだろう。
そいつはもしかしたら宇宙人で、あたし達がポップコーンを食べながら映画を見るような気楽さで、
UFOからあたし達が必死に生きようとする様を、面白おかしく見ているのかもしれない。
上等だ。
精一杯、あがいてあがいて、宇宙人達の腹筋を崩壊させて、笑い過ぎで顎を外して病院に送らせてやる。
そんなことを考えながら、あたしは山を歩き始めた。
◇
……どうしよう。
地面に倒れたまま足を押さえて唸っている少女を物陰から見ながら、あたしは考える。
あたしが、あの女の子を発見したのはまったくの偶然だった。
右の靴紐がほどけたので、その場で足を止めて直していたら、微かな泣き声が聞こえたのだ。
声の方へと向かってみれば、案の定あの女の子が倒れていた。
どうやら何度も転んだようで制服はボロボロだし、体のあちこちから血を流している。
すぐにでも側に行って治療してあげたかったけれど――あたしの理性がストップをかけた。
自分は今、山を下りている。
急いで下りなければ、『切り取られる』。
そんな状況で、あんな見るからに足手まといになりそうな女の子を、助けている余裕があるのだろうか?
そんな声が、自分の中から聞こえてくる。
たしかに、その通りなのだ。山道に苦しんだせいで、二時を過ぎたというのに大して距離を稼げていない。
少しずつタイムリミットが迫り来るこの状況であの女の子を助けても、共倒れになるだけかもしれない。
けれど、ここで女の子を放っていけば、女の子は確実にここでA-2とともに『切り取られる』。
共倒れになるリスクを承知で、女の子を助けるか、それとも、見捨てるか――。
あまりにも突然過ぎる選択肢を前に、あたしは動けず、ただ女の子が苦しむ様を見ているしかなかった――
【A-2/一日目・深夜】
【逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:恐慌状態、右手欠損(止血処置済み)、全身に傷(行動に影響あり)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式(未確認ランダム支給品1〜2個所持)
[思考・状況]
1:実乃梨、竜児助けて!
[備考]
※原作3〜4巻まだ北村>竜児の時期からの参戦です。
【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
1:女の子を助けるか、それとも――
[備考]
※原作二巻終了後からの参戦
【園山中指定ヘルメット@イリヤの空、UFOの夏】
学校指定のヘルメット。
中身は米軍の使用しているものと同一なのでとても優秀な品であるものの、
カバーが幼稚園の通学帽のごとき黄色なため、生徒からの人気は低い。
投下終了です
タイトルは「須藤晶穂の憂鬱」でお願いします
投下乙です。
さて、大河は序盤退場になってしまうのか、それとも……
で、須藤さんの支給品一式は確認済みで、数は一〜二個、
なおかつ(少なくとも見た目は)武器ではない、ということで宜しいでしょうか?
>>216 晶穂のランダム支給品はヘルメットのみで、デイバッグにはもうランダム支給品は入っていない、としたつもりだったのですが、
やはり明確に武器と呼べるものが入っていないと問題があるでしょうか?
投下乙!
いきなり選択の時って、晶穂もついてねぇなぁ……w
そしてまた鉄人定食をご一緒してないときとは、これもまたついてないw
大河も大河で大丈夫かお前。いや、大丈夫ではないけども。
こいつもついてないなぁ……サバイバルさせられて今更言うことでもないがw
投下乙です。
いきなり難しい状況に放り込まれましたね。
よく考えると見捨てるという選択肢はあんまり視たことないかも。
>>209 と、その通りですね、何故間違えたのだろう?
該当箇所を修正せておきます。
と、失敬、トリ間違え。
>>217 ああ、そういうことでしたか。
文章を見る限り他にも武器になりそうにないランダム支給品があるともとれましたので。
ランダム支給品が一つだけということ事態は問題ないと思います。
そろそろ2週目キャラだけというのもOKでいいかな?
223 :
代理投下:2009/03/18(水) 20:24:47 ID:lyNnZF+P
◆EA1tgeYbP.氏、
榎本、アリソン・ウィッティングトン・シュルツ、
代理投下します
エリアB-5の飛行場。
夜間飛行に備えるためか、深夜という時間帯にもかかわらず明るいその場所に、一人の男が座り込んでいる。
頭をがしがしと掻きつつ、紙を、参加者名簿を見ている男の名前は榎本。……いや、この言い方は正確ではない。
正しくは、男は今のところ榎本と呼ばれているとでも言うべきだろう。
――閑話休題。
彼はある任務に向かう途中、ちょっとした仮眠から目覚めるとこの状況下に投げ込まれていた。
たいていの人間にとってはどれほどの混乱を引き起こすかわからないこの状況、彼も外見はともかく内心はかなり激しく動揺していた。
――最もその理由は普通の人間のようにパニックによる物ではなかったが。
――突然の拉致。
――次の瞬間には、自分の命が奪われていてもおかしくはない状況。
これらに関しては実は男の動揺を誘うとまではいかないものだ。
彼の日常からすれば、これらの問題は非日常的なものではなく、普通に日常の延長線ともいえるもの、
「厄介なことになった」という感想を抱きこそすれ、それ以上の感想を抱くことなどはない。
だが、今はその例外といえる状況となっていた。
その理由は二つ。
名簿に載っている都合3つの名前のせいだ。
「……何をやってるんだ、木村のあほは」
理由の一つ、水前寺邦広。
……正直なところ榎本にとっての水前寺とはあくまでも年齢の割りには頭が切れる、
まあ、そんじょそこらのマスコミなんぞよりはよほど警戒するに値するレベルのガキ、という程度の存在であって、それ以上でも以下でもない。
普段ならば彼の名前が乗っていようと榎本を動揺させるには至らない。
……そう、普段ならばだ。
今、水前寺が置かれている状況、いや、置かれていた状況。そこから彼が連れてこられたと考えると、
自分が拉致された以上に園原基地――ひいてはディーン機関やブラックマンタといったトップシークレットにかかわってくるセキュリティの問題だ。
断じて見過ごせる事態ではない。
――だが、今はそれ以上に彼にとって見過ごせない名前が名簿に載せられていた。
浅羽直之。
伊里野加奈。
少し前までならばともかく、今となっては彼や水前寺が拉致されたことと比べると、彼ら二人が攫われた事、それ自体は驚くには値しない。
――しかし。
「何をやっていやがる、浅羽のあほが」
窺い知れないほどの感情を込めた疲れた声で榎本はふう、とため息と共に呟いた。
……伊里野加奈には世界の命運がかかっている。
冗談のような、これはどうしようもない事実でもある。はじめからたった五人しかいなかった、今となってはただ一人きりのブラックマンタのパイロット。地球の、人類の未来を守る最後の希望。
彼女はその特殊な資質ゆえに普通の生活とは程遠い生活を、否応無しに歩むこととなり、四人の仲間を全て失った結果、守るものさえなくなった。
……そんな彼女に守るべきものを与え、それを奪われないように彼女に戦意を呼び起こす。正式名称ではなく俗称「子犬作戦」と呼ばれるそれを考えたのは他でもない榎本だ。
彼、あるいは彼らの目論見どおり伊里野は与えられた子犬……浅羽直之を大事に思い、彼を守るために戦おうというようにその気持ちを変えていき、……当たり前のように人間としては壊れていった。
――そんな伊里野を守るために、浅羽が伊里野と共に逃亡したのが少し前。
……榎本としては無理に彼らを連れ戻すつもりはなかった。
確かに伊里野がいなければ世界が破滅するかもしれない。
しかしだ、榎本に言わせれば世界の危機なんてダイエット商品とさほど変わらない。
元々五人いた子供達の内の、生き残ったたった一人がいなければ滅んでしまう世界など、
たとえ無理やり伊里野を連れ戻して戦わせて、先延ばしをしたところで、滅びてしまうのは時間の問題だ。
ならばせめて彼らの好きにさせてやろう、そんなつもりだったのだ。
――だというのに。
「浅羽のあほが……」
もう一度榎本はため息をつく。
状況は極めて悪かった。彼の立場からすれば何が何でも伊里野を生き残らせる、それが正しい。
……だが、それは最終的には浅羽を殺すということと同義である。あそこまで浅羽に入れ込んでいる伊里野が浅羽を犠牲にして生き残ったとしても、
はたしてその後まで世界を死んでも守ろうという意思を持つことができるだろうか?
……正直最後まで生き残っていた伊里野の仲間、エリカが死んだ時以上にひどい精神状態になっているところしか榎本には想像できない。
「……ってことはこれはない」
極めてあっさりと、榎本は伊里野優勝案を破棄する。
……それにできればこんなくだらないゲームなんかで彼自身も死にたくはない。
そうなると残る手段はただ一つ。何とかしてこの会場から脱出を目指すしかない。
自分と伊里野、浅羽が脱出することそれが最低目標だ。
ただ問題として、ある程度の裏事情を浅羽が知っている今となっては、浅羽が簡単に自分が信用されるとは思えない。
何せ自分は無理やり伊里野を戦わせていた人間の一人だ。
「やはり、ある程度の人間か……それかできれば水前寺あたりを上手く味方につけれりゃあ何とかなるか」
どの道、水前寺も記憶を消すつもりでいたわけだし、ある程度の事情、トップシークレットの一つ、ブラックマンタのことなどを奴は知っている。
そこにもう少し教えてやったところで不都合はない。いざとなれば水前寺の奴をこちらに取り込んだって構わない。
榎本はそう判断する。
「――基本的にはこんなとこか」
そう言うと、榎本は立ち上がり視線を少し先にある格納庫へと向ける。小さな音だったが間違いはない。先程確かにあの中から物音が聞こえた。
この施設の名称が飛行場である以上、おそらくあそこには飛行機やヘリなどが並んでいることだろう。
仮にそれらが使用可能なら脱出派、優勝狙い派のどちらにとっても極めて有用な道具となりうる。
――だが、榎本は格納庫内にあるであろう飛行機の類は使うことはできないだろうと踏んでいた。
あの狐面がこちらに期待しているのはあくまでも「殺し合い」だ。
例え優勝狙いの奴が飛行機を手にしたところで、行われるのは反撃することさえ許されない一方的な「虐殺」であって「殺し合い」ではない。
「さて、できれば乗ってないやつなら良いが」
そう気楽に呟くと榎本はそちらに歩みを進める。
できれば殺したくはない、それはまったくの本心だ。向かう先にいる相手がどんな相手かはわからないが、殺さずに話し合いで仲間になるならそのほうがはるかに良い。
そもそも、浅羽や伊里野が今どういう相手と行動しているかさえわかった物ではないのだ。
例えば榎本が誰かを殺し、そいつの知人が伊里野と同行中。放送で知人の死を知ったそいつがトチ狂って皆殺しを企て、真っ先に同行相手だった伊里野を殺害。
……そんなことにでもなったら目も当てられない。
……まあ、仮にこれから向かう先の相手が殺し合いに乗っていても負けるとは彼は思っていなかったが。
手には何も持たぬまま、油断も慢心もなく男は格納庫へと歩みだす。
……数分後。
「……おいおい」
気の抜けた溜息を榎本は漏らしていた。
――ステルスやらゼロ戦やら飛行機であるという一点を除けば共通項がほとんどない無作為に飛行機が並ぶ格納庫。
少し調べてみたが、榎本の予想通りそれらには一切、燃料などは入っておらず動かすことはままならない。
そんな動かぬ内の一機のコックピットの中にその女性はいた。
……もう少し正確に言おう、少し前まではコックピットの中でデイパックを抱き枕のように抱きしめて口からは涎さえ流して寝こけている女性がいた。
今も女性は寝こけているが、デイパックは抜き取られている。
無論、抜いたのは榎本だ。そしてそこまでされても女性は一向に起きようという気配は見せない。
「……おーい、起きろ」
デイパックを抜き取って、不意打ちに備え後部からぺちぺちと女性の顔をたたくが。
「……むぅ、うーん。大丈夫だってばぁ……」
こんな調子である。ちなみにこれで三回目。
一向に起きる様子がない女性を見下ろし榎本はもう一度溜息をついた。
「……本当に殺し合いがおきてんのか?」
思わず榎本は愚痴り
「……大丈夫だってば。リリアぁ」
……女性の返答とも聞こえる寝言に榎本はもう一度大きく息を吐き出した。
【B-5/飛行場内/一日目・深夜】
【榎本@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック×2、支給品一式(未確認ランダム支給品2〜6個所持)
[思考・状況]
0:とりあえず目の前の相手が起きるのを待つ。
1:浅羽、伊里野との合流。
2:水前寺を見つけたらある程度裏の事情をばらして仲間に引き込む。
(いざとなれば記憶はごまかせばいい、と考えているためにかなり深い事情までばらしてしまう可能性があります)
3:できるだけ殺しはしない方向で
[備考]
※原作4巻からの参戦です。
※浅羽がこちらの話を聞かない可能性も考慮しています。
【アリソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康 睡眠中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:Zzz……。
[備考]
※一応、西東天の説明は聞いていました。ただ、会場内で目を覚ましていないだけです。
※格納庫の中に数台の飛行機がありますが、全て燃料がまったく入っていないために動かすことはできません。
以上代理投下終了
投下乙でした
投下乙。
アリソン、寝ぼけてんじゃねぇwww
>>222 流石にそろそろいいんじゃない?
未登場で書けるキャラがいたら、出来るだけ書いて欲しいけど。
投下乙です。
……ただ、少し気になったのは、アリソンのいる飛行場のすぐ近くに、リリアがいるんですよね。A−5に。
アリソンがすぐには動けない状態、それもリリアが興味を惹かれるに決まっている飛行場の格納庫、で始まると、
次の展開がかなり決まってしまう気がしますが……。
リリアの位置に、気づかれていたでしょうか?
いえ、リリアの位置に気づいた上で、あえてこの展開を選んだというなら、特にこれ以上言うことはないのですが。
四人予約が入っていて、そのうち二人は割りと危険。
……これは波乱の予感。
残り未予約は二人か
慌てて配置する必要もないけどな。>未予約2人
下手な配置されると先の展開が難しくなったり無駄に縛られたりするから。
確かにこれだと次の展開しばっちゃうな……リリアの。
あんまりいいことじゃないなー出落ちに近いし
予約していた 如月左衛門、 投下します。
―――――――――――――――――――――――
(一)
おおむね平坦な土地に、町並みがならぶばかりのこの箱庭には、ただひとつだけ険峻な山がそびえている。
山頂近くに天文台をもつその山は、そのおおきく広げた裾野に、いまだ人の手の入らぬ豊かな自然をかかえていた。
ふかい森がある。まばらな林がある。岩肌のむきだした荒い崖がある。
そして、背のたかい草のおいしげる、草原がある。
その、月さえ雲にかくされ、月明かりすら乏しき草の原を、音もなくかけぬける影があった。
そう。音も無く、である。
常人ならば、これほど密生した草原を進めば、いかに気をつけたところで草摺れの音をたてずにはおれぬであろう。
つま先すら見えぬかような闇夜ともなれば、尚更である。
しかしてこの影は、その避けえぬはずの音すらたてることなく、まさしく風のように草原を走っていたのである。
はてこれは幻か、それとも幽霊や妖怪変化のたぐいであろうか。
否。
幽霊にあらず、妖怪にあらず。幻にもあらず、しかしある意味において、それらさえも凌ぐ、不可思議なるものたち――
忍び、であった。
世に知られた忍びの修行のひとつに、しとどに濡らしたうすい和紙の上を、破かぬように歩く、というものがある。
言葉にすれば簡単なようだが、さてこれが実際にやるとなれば、なかなか容易なことではない。
人はただ歩くだけでも足裏の重心を動かさずにはおられぬゆえ、思わぬところで濡れ紙を引きつらせてしまうのである。
しかもこの歩法の鍛錬、歩いた次には走る、走った次には飛びはねる、と次々に要求は過酷になってゆく。
熟達のものともなると、濡れ紙の上でおおいに剣舞を演じて皺ひとつ生じぬ、というのだから尋常ではない。
そうして磨き上げられた歩みは、薄紙すら破かぬのだから静謐にして確固たるもの。
これをきわめれば、足音ひとつ、草摺れの音ひとつたてることなくかけとおす、ということも可能になる道理である。
いまこうして草原をかけている男も、そうした凄まじき技を身につけた忍びのひとりであった。
名を、如月左衛門と言う。
甲賀の国は卍谷に封ぜられし、忍びの一員である。
いや、かの谷の忍びの衆においは、このていどの児戯を技と呼んでは失笑をかうこと間違いあるまい。
あたりまえのように無音の疾走をつづけながら、彼は、その平凡すぎるほどに平凡な顔をひくつかせ、ふとひとりごちた。
「血のにおいが濃くなってきた。さては、屍もちかいか」
そう。この男、さきほどから何をあてにかけているかといえば、死臭を求めていたのである。
無論、如月左衛門に猟犬がごとき異常嗅覚がそなわっているわけではない。
あるいは甲賀伊賀の異形の忍びの中には、かような魔技を誇るものもいるのやもしれぬ。
が、少なくとも彼には、そんな心得はない。
とはいえ忍びにとっては、死は常に背中合わせ。生半可な武芸者や荒くれ者よりも、死に親しいところに生きている。
そのぶん、他のものよりその気配に勘づくのもはやかったという次第である。
如月左衛門は考える。
神社より始まりし自分は、その場においては誰とも出会うことがなかった。これは幸運である。
しかし六十名の中には、開始早々にして他の参加者と出会ってしまったものたちも、いたはずである。
そうして出会ってしまえば、そのいくらかは相争うことになったはずで、中にはすでに屍を晒しているものもいるはずだ。
――甲賀卍谷の忍び、如月左衛門は、その屍にこそ用がある。
如月左衛門がその自慢の変形(へんぎょう)の忍法を使うには、まず型となる他者の顔がなければならぬ。
術理だけを考えれば死人でなくとも良いはずだが、しかし実際、相手が協力的でもなければ、生者の面は取れぬだろう。
そしてこの殺しあいの場において、己が顔を泥中に伏してくれるほどの協力者は、まず得られまい。
ゆえに、如月左衛門はてっとり早く。戦いやぶれてうち捨てられた、敗者の骸を探さんとしたのであった。
十の名が伏せられた人別帖に、如月左衛門の名はない。
伊賀組にたいするこの利をいかすには、姿さえもいつわるのが最善、と判断してのことである。
はたしてどれほどの間、走った頃だったろうか。
如月左衛門は視界の隅に赤黒いものをみとめ、はたと立ちどまった。
「――やや、ここか。危うく通りすぎるところであった」
人の死体を探しにきてそれに気づかぬなど、本来であれば失態ではあったが、しかしこの場合は致し方あるまい。
なにしろ、薄闇に半ば沈みしその骸は、尋常なる人の形を留めてはいなかったのだから。
その惨状を理解した如月左衛門の眉が、おもわずゆがむ。
忍びとして様々な悲惨を見聞きしてきた彼ではあるが、その彼をして動揺せしめるほどの異状が、そこにあった。
両の足は、そのなかばからよじれ、まがり、そしてちぎれて飛んでいる。
傷口より噴きだし飛びちった血痕は、それがまだ犠牲者に息のあるうちに行われた蛮行であることを示していた。
腕もまた、ほぼ同様の有様。
ねじ切られた時に弾けたのであろう、死体からやや離れた所に転がっている。
さきほど彼が視野の片隅に収めた赤黒きものとは、実にこの、犠牲者の血にまみれし腕の断端であったのだ。
そして何より奇怪千万なのは、その首さえもがぐるりと半回転し、まるきり背中の方をむいてしまっていることである。
はたして、いかなる神秘の術によるものか。
それとも、ただただ剛力によりて強引にひねり、ねじ切ったものなのか。
かくなりては未知の殺人者の手掛かりも得ておこうかと、よりくわしく検分すべく、その死体に歩みよった如月左衛門は、
「――ああ!」
おもわず嗚咽のような声を漏らし、絶句した。
まさにその刹那、まるで彼の声にあわせたかのように、さあっ、と音もなく雲が流れ、煌々たる月があたりをてらしだす。
凄惨なる地獄絵図が、ひかりのなかに浮かびあがる。
信じられぬ、いや、信じたくもないものを目のあたりにした如月左衛門が、愕然のままにがくり、と膝をついた。
そこで絶命していたのは、誰あろう。
「ばかな……まさか、弦之介さまが……」
そう、さかさに向いた顔に、驚愕と無念の表情をうかべ、こと切れていたのは。
如月左衛門が、己の命を賭してでも救いださんと願っていた、
そして、その強さを絶対と信じてうたがうことのなかった、甲賀の若君、甲賀弦之介であった。――
―――――――――――――――――――――――
(二)
甲賀弦之介は、ひらたくいえば甲賀卍谷を率いる主家の跡つぎ、つまり次期頭首である。
否、弦之介の祖父たる甲賀弾正が斃れたいま、すでに彼はその若さで卍谷の首領の座にあるといってもよい。
そしてその身に流れる血統のみならず、その才覚、その技量ともに盟主たるに相応しい器の持ち主でもある。
当然にして伊賀との争闘に選ばれし十の精鋭にも含まれており、また、その中でも特に期待の戦力でもあったのだ。
何よりも甲賀弦之介を彼たらしめていたのは、その瞳術である。
もとは配下の盲目の忍者、室賀豹馬の技であったものを、師をも越える習熟を見せたものであった。
ただその目で敵を見すえただけで、瞳は金色の光を発し、敵が向けてきた害意をその敵自身に返してしまう。
かくして敵はその武器や術で自らを傷つけ、あるいは同士討ちを果たして倒れ伏すこととなる。
あらゆる攻撃を無効化し、それどころか、その攻撃が鋭ければ鋭いほど強烈な反撃となる、おそるべき魔眼!
かの瞳術を知るものが弦之介の無敵を信じたとしても、無理のないことであったろう。
しかしその、無敵の瞳術を持つはずの弦之介が――死んだ!
それも、この殺しあいが始まってほんの間もない、こんなにもはやい段階で!
戦いが長きに渡っていれば、あるいは弦之介といえども疲労を覚えるやもしれぬ。隙も生じるやもしれぬ。
ゆえに例えば、戦場が消滅せんとする三昼夜の果てに弦之介が討ち果たされる可能性は、考えなかったわけでもない。
むしろそのような展開を危惧すればこそ、如月左衛門も己が命を投げうってこれを助ける必要を感じたのであった。
しかし、これは。まさかこのような所で、このような結末に至ろうとは――!
「かくなる上は――」
もはや、ぴくり、とも動かぬ弦之介の死体を見おろし、如月左衛門はひび割れた声を漏らした。
如月左衛門が掲げた誓いは、はや脆くも崩れさった。
当初に思いえがいた方針は、もはや何の意味もなく、屑芥のごとき無価値な代物になりはてた。
そも、こんなにも近くに居たのである。
荷物をあらためる間すら惜しみ、弦之介を探して奔走していれば、あるいは合流できていたやもしれぬ。
いや、出会えたかもしれぬ、というだけに留まらない。
出会えていれば、弦之介に対する凶行を、防ぎえたのかもしれないし――
最悪、その身を盾に弦之介の身代わりとなり、弦之介を守りぬけたやもしれぬのだ。
如月左衛門の心中に吹きあれる後悔の嵐、その思いはいかほどか。
果たして彼は、ねじまがった弦之介の頭部を本来あるべき姿へと戻すと、血を吐くような自責の声を上げたのであった。
「かくなる上は――この如月左衛門、ひとり生きていても甲斐はなし。――」
流れる雲がふたたび月を隠し、沈鬱なる如月左衛門の表情も、もはや陰となりて見えない。
ただ、感情の色なき声のみが、茫洋たる草原にかすかに響く。
「主君と定めた者すら守れなかった、この如月左衛門は、ここにてその命に、幕を引こう。――」
自らの破滅を望む声を挙げたかと思うと、彼は草原の中、泥土の中にその顔面からひれふした。
血こそ出ていないようすではあったが、すでに何らかの形で自らを害した後だったのか。
それとも、自らの罪を責めるあまり、泥土にての窒息という、苦痛に満ちた死をあえて望んだものか。
そのまま如月左衛門の身体は、その動きをすっかり止めてしまっていた。
風がやんだ。
あたりはぶきみなまでに静まりかえっている。
やがて、数分、いや、十数分ほども過ぎた頃であったろうか。
月を隠した雲はゆっくりと通り過ぎ、ただ静けさにみちた草原に、燦(さん)、と月光がさす。
と――
もはや二度と動かぬものとも見えた、ふたつの身体のうち、片方がムクリ、と起きあがったではないか!
悠然と周囲を見まわすその顔、その姿は、決して平々凡々たる如月左衛門のものではない。
長い睫毛が憂愁の色を醸し出す、瑞々しい若さあふれる美青年。
その姿、その体格、その髪型は、そう、まさしくは。
「ここにて果てしは、甲賀弦之介にあらず。甲賀弦之介の代わりに命を捧げし忠臣、如月左衛門なり。
我、甲賀弦之介は、かくて健在なり。――」
甲賀弦之介そのものの容姿の人物は、甲賀弦之介そのものの声色にて、確かめるかのようにつぶやいた。
その身には腕も足も綺麗にそろっており、もちろん頸の骨が折れているようなこともない。
五体満足そのものの姿で、甲賀弦之介は、ふたたびこの地に立ちあがったのだ。
生者と死者を、入れ替える!
人ひとりを生贄に、人ひとりを黄泉路より引き戻し、さらにはその身に刻まれし傷すら、跡形もなく癒す!
これが如月左衛門の忍法だとでもいうのか。
世には何度死しても蘇る、不死鳥がごとき忍者もいるが、それとてあくまで、己ひとりの身についてのこと。
ここまでくると、もはや忍法の域すら超え、奇跡にすら等しい所業である。
果たしてそのようなこと、さしもの異形の忍びたちにも、できうるものであろうか――?
―――――――――――――――――――――――
(三)
もちろん、左様なことはできるはずもない。
が、しかし、ある意味においては、まさにそのとおりのことを、この男はなしとげたのであった。
生きて立っている甲賀弦之介の足元には、いまだ倒れたまま起きあがらぬ、もう1つの肉体がころがっている。
腕も足も欠けたその青年は、こちらもまた、間違いなく甲賀弦之介。
ここにいたはずの如月左衛門は霞のごとくきえうせて、かわりに、生者と死者、ふたりの甲賀弦之介がそこにある。
手足の欠損と折れた頸以外、全て寸分たがわぬ同じ肉体が、そこにある。
そう、ここに立っているのは、実に如月左衛門その人であり。
これこそが如月左衛門の忍法、おどろくべきメーキャップ術である。
ならした泥中に死人の顔をうずめ、型をとり、その型にこんどは己の顔をはめこむ。
そうして数分もすれば、如月左衛門の顔は、まさに型をとられたものの容貌と化しているのだ。
同時に髪型から体型から、すべてその人物とおなじ姿となるというのだから、これはもう変装の域を踏みこえている。
そしてこれに卓越した声帯模写の技をくみあわせることによって、如月左衛門はまさに他人そのものに身を転じるのだ。
とはいえ、通常この技、騙し欺くために使うもの。
捕らえ、もしくは倒した敵の姿に扮し、敵地に潜入し、あるいは敵の不意を突く。それが本来の用途であり目的である。
だから敵対者、あるいは無関係の他者になりすますことこそあれど、身内に姿をいつわることなどまずありえない。
ではなぜ、如月左衛門はかような真似をしたのか――?
「こちら側における果しあい、そしてあちら側に戻りてよりの両門争闘。
伊賀方に弦之介さまの罷(まか)りしことを悟られるのは、いかにもまずいよってな」
それは、やはり本来の意義通り、騙し欺くためのものであった。ただし、常とは違うかたちで。
つまりは、一番の宿敵とさだめし伊賀鍔隠れ衆との、死闘を見こしての深慮遠謀である。
甲賀弦之介のおそるべき瞳術は、すでに伊賀方にもひろく知れわたっている。敵方も最大の警戒をおいている風がある。
弦之介の存在そのものが、伊賀の攻勢を封じる抑止力となっていたのだ。
この先の戦いをいかに進めるとしても、この甲賀弦之介の名がもつ威圧はすてがたい。
たとえハッタリに過ぎずとも、「甲賀弦之介いまだ健在なり」と思い込ませることができれば、有利に事をすすめられる。
おそらくそれは、如月左衛門の変幻自在の変装術と引き換えにするだけの価値さえも孕んでいるのだ。
そう――すでに彼が口にしたとおり。
如月左衛門は、ここに、自らの存在を殺したのである。
ここに散りしは甲賀弦之介にあらず。ここで敗れしは甲賀弦之介にあらず。
甲賀弦之介の姿をいつわっていた影武者、如月左衛門なり。
主催たる狐面の男たちをも見事に欺きとおし、自分こそ甲賀弦之介だと思い込ませることに成功した、如月左衛門なり。
――かような嘘を、さいごまで貫き通さん、ときめたのである。
かくして如月左衛門のこれよりの道行は、かつての目的を廃し、新たなる目標を得たことになる。
すなわち、甲賀弦之介の姿かたちを保ったままでの、生存。
そしてたった一本垂らされし蜘蛛の糸を掴んでの、生還である。
みごと甲賀卍谷の衆の所に帰りついた暁には、同志たちに苦い真相を語らざるを得なくなるであろうが――
その針のむしろがごとき報告も、また己の責務と信じ、如月左衛門は、あえて最後のひとりを目指すことを選んだのだ。
無論、この虚飾は次の日の出とともに最初の危機を迎えることになる。
つまり日に四度、大音声で読みあげられるという、狐面の男による脱落者の発表である。
おそらくここで、甲賀弦之介の名は呼ばれてしまう。伊賀方に、彼の死を知られてしまう。
――が、しかしそれもまた構うまい、とも彼は思う。
甲賀弦之介が死んだと思えばこそ、伊賀の者どもの気も緩むであろう。
その後に死んだはずの甲賀弦之介が平然と歩いておれば、驚愕もするであろう。
そして忍びと忍びの果しあいにおいて、その一瞬の隙は敵を討ち取る絶好の好機となる。
仮にその好機を活かせぬ状況になりても、改めて先に考えた偽りの筋書きを語り、弦之介として威圧してやればよい。
そしてありもせぬ瞳術に怯えさせ、自縄自縛に陥ったところを討ち取ってみせよう。
「それにこの姿でいれば、弦之介さまを討った仇もまた見抜けようというものよ。
じぶんが殺したはずの死人と再度あいまみえて、動揺せぬものもおらぬであろうし、な」
改めて弦之介の死体を仔細に検分してみれば、その身に刻まれた傷痕はなんとも不可解なものであった。
たんに剛力でもってねじり切ったのであれば、おなじく剛力によりて掴まれた手の型が残されておるはず。
そう思ってみたのだが、しかしそのような跡はまったく見あたらないのだ。
一切触れずしてねじまげた、そのように判断するほかない。
ゆえに如月左衛門は、これを未知の、不可解の術による超常の技とあたりをつけた。
しかして、かようなる絶技の持ち主は、伊賀方の十人の選手の中にも断じていなかった。
彼我のおかれた状況をかんがみれば、伊賀鍔隠れ衆とて、手持ちの強者を温存する余裕はなかったろう。
もちろん、甲賀卍谷の中にも、このような術の遣い手は思いあたらない。
「つまりは、このいまのおれの顔を見てしっている、甲賀でも伊賀でもなき者こそ、弦之介さまの仇というわけだ」
伊賀との骨肉相食む争いとはまた別に、甲賀弦之介の仇は取らねばならぬ。報復は、なされねばならぬ。
なのにここには、その手掛かりひとつないのであったが、いま、かすかな道筋が敷かれたのであった。
すなわち、甲賀伊賀の忍び以外で、弦之介に扮する如月左衛門を見て、驚きを滲ませたもの――、
あるいは、その名を言いあてたもの――、さもなくば、既知のものに遭遇したような反応をみせたもの――、
それこそが、甲賀弦之介を殺めし敵である。
すみやかに、討ち果たさねばなるまい。
246 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:28:28 ID:oZU/nHGh
もっとも、これが容易ならざる道であることは、左衛門自身もよく分かっている。
如月左衛門の忍法では、対象の容姿は写せても、その忍法までは写し取れない。無敵の瞳術は、演じられない。
これより先は、弦之介の瞳術もなく、また自慢の変形もなく、ただ己の腕ひとつで生き延びていく必要がある。
もとより闘争向きの忍法をそなえていない分、剣術や体術には長けていた彼ではある。
それでも、不安を覚えずにはいられない。
なんとなれば、忍法を封じたその状態で伊賀の忍びのみならず、弦之介をも倒せし凶手をも屠らねばならないのである。
かの瞳術をも打ち破ったような相手に、いかにすれば勝ちを収められるのか。未だ妙案はない。
「その意味では、ここに背嚢が残されていたのは幸いであった。
最初に与えられたまきびしのみでは、打てる手も限られるでな」
惨劇の現場に残された荷物はふたつ。
片方は弦之介のものであろうと推測して、はて、さらにひとつここにあるのは、どういったいきさつによるものか。
あるいは弦之介の瞳術は不完全ながらも効果を発揮して、手傷を負った敵はほうほうのていで逃げ出したのやもしれぬ。
いささか真相からは外れていたものの、如月左衛門はそんな風に考えた。
ふたつのうち片方は、水筒や地図といった共通支給の品々のほかには、ただ説明書が一枚あるきりであった。
白金の腕輪、というから、これは弦之介の背嚢に相違あるまい。形状外見ともに、死体の傍にあった腕輪と一致する。
血をぬぐった腕輪を己の腕にしかとはめると、彼は続いてもうひとつの荷物から抜き出した武器を手にとる。
「ふむ――これはまた、よき刀だ」
それは、すらりと鞘から抜けば、一目でそれと知れる、ひと振りの名刀であった。
さぞかし名のある匠の手によるものであろうが、しかし忍びにとって大事なのは骨董的価値ではなく実用性である。
いささか時代は古いものと見えたが、手入れは行きとどいており、これからの戦いにおいても十分に助けとなるであろう。
その妖しげなる刃紋の輝きに、己の変装すら切り裂き破かれるような錯覚を覚え、彼は慌ててその刀身を鞘へと戻す。
片腕には、白金の腕輪。
懐には、投げれば飛び道具、撒けば足止めともなる、まきびし。
そして腰には、このすばらしき名刀。
背嚢内のほかの荷物もひととおり調べあげると、ひとつにまとめて肩にかついだ。
瞳術もない。不可思議の忍法もない。
頼れるものは己の身のこなしと、これらの武器。
そしてこればかりは泥の死仮面とは別個に身につけた、千変万化の声帯模写術。
決して楽な道行とはいえぬが、しかし絶望にも自暴自棄にもまだはやかろう。十分に勝算はある。
そう信じる彼が、この期におよんで、なおもおそれるものは、たったひとつ。
「……しかしこうなってしまうと、伊賀の朧姫にだけは出くわすわけにはゆかぬであろうな。
弦之介さまのこの顔が、いっしゅんにて崩れてしまうがゆえ」
何としても持ち帰らねばならぬ弦之介の顔を、ひとめ見ただけで崩してしまうであろう、おそるべきもうひとつの魔眼。
怨敵たる、そして甲賀弦之介の許婚たる、伊賀鍔隠れ衆が頭目、朧の破幻の術ばかりであった。――
【C-1/草原/一日目・黎明】
【如月左衛門@甲賀忍法帖】
[状態]:健康。甲賀弦之介の顔。
[装備]:古刀@空の境界、マキビシ(20/20)@甲賀忍法帖、白金の腕輪@バカとテストと召喚獣
[道具]:デイパック、支給品一式×3、不明支給品0〜2(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:自らを甲賀弦之介と偽り、甲賀弦之介の顔のまま生還する。同時に、弦之介の仇を討つ。
1:朧と遭遇してしまわないよう注意しつつ、最後の1人を目指して生き残りを図る。
2:弦之介の仇に警戒&復讐心。甲賀・伊賀の忍び以外で「弦之介の顔」を見知っている者がいたら要注意。
[備考]:
深夜の時間帯には甲賀弦之介の死体の所に居た浅上藤乃は、
少なくとも黎明のこの時間帯には、ここから見える範囲には居ないようです。
浅上藤乃が残していったデイパックは、如月左衛門が回収しました。
【古刀@空の境界】
『空の境界』の『矛盾螺旋』の章において、両儀式が手に入れ使用した、重要文化財クラスの古い日本刀。
銘はなく、「兼定であるらしい」というが、はっきりした由来は分からない。
空の境界の世界観では、歴史を積み重ねてきた武器は、それだけで魔術に抗する強い神秘になりうるという。
そのため、500年を経たこの古刀は、ある程度異能や魔術に対する対抗力となる可能性がある。
もちろん、ただの刀として見ても十分過ぎるほどの名刀である。
投下終了。支援感謝です。
ちょっと気になるところでは、
直接は登場していない浅上藤乃を、「ここからは見えない位置に移動した」と決めてしまいました。
ただまあ、時間枠が1つ違っていますし、前の話で藤乃は「街の方に行く」という行動方針になっています。
問題はさほど生じないと思いますが、異論が多いようならば対応も考えます。
ほかにも異論、指摘等ありましたら、よろしくお願いします。
おお、なんたる恐ろしきこと!
究極の幻想の六つ目にて現る、あの物真似師にもおとらぬ術がいまここに――
投下GJです!
まさかこんな方法で来るとは……如月らしさも出てるし、凄い。
ただ本人の自覚通り、放送が鬼門ぞな。どうなる、というかどうする如月左衛門?
藤乃に関しては、自分は問題ないとは思います。
前作の行動方針から考えるに不思議なことではないかと。
エロイムエッサイム 古き骸を捨て、蛇はここに蘇るべし…
忍法魔界転生…!
では無く偽りの弦之介復活!
果たして兄さまは何処まで嘘をつき通せるのか、今後に期待
GJ!!
しかしこれは弦之介の死体をバックに入れて持ち運べば朧に会っても問題無くなるのでは?
>>253 ええ、ぶっちゃけてしまうと、それが効率追求においては最善手ではあります。いつでも型を取れますからね。
私も一度はその方法を考えました。
ただ、支給品以外のモノの収納・運搬に四次元デイパックを使う、という発想は、
はじめてロワに参加する参加者視点では、咄嗟に出てこなくても責められない発想かな、とも思っています。
四次元デイパックの機能だけでなく、死体を運搬する、という発想の方も同様でしょう。
そのため、今回の話の中においては、「あえて」彼に思いつかせませんでした。
そこに思い至らない方が、彼の道行きの厳しさは増しますし、
それだけ決意の強さも際立つ、という効果も期待できましたから。
とはいえ、次以降の話でそれに気づくことがあってもいいとは思っています。
この辺りの判断は、後続の書き手さんにお任せします。
ふむ、本投下するのを忘れておりました、申し訳ありません。
今から投下しますー。
『人間考察』
「お前…・・・『何だ?』」
橙色の着物に、赤いジャンバーというミスマッチな格好をした女の人の声が、僕に投げかけられる。
その酷く冷静な声は、僕が何度も繰り返してきた自問を、再び思い起こさせた。
……僕は、何なんだろう?
この世には、『紅世の徒』という、名の歩いて行くことのできない隣の世界、『紅世』からの来訪者達が居る。
彼らは、人間や徒が存在するのに必要なエネルギー『存在の力』を求めてこちらの世界にやって来る。 そして、存在の力を求めて……人を食らう。
いや、ある意味ではもっと酷い、彼らが食べるのは、肉体ではなくて、文字通り存在するための力であり、その力を食われた人間は、この世から『欠落』する。
彼らは元々そこに居なかった事になり、家族の居ない子供や、住む人の痕跡すら無い空家といった歪んだ欠落のみを残して消え、その事を誰一人気にも留めない。
この世からの完全なる喪失、それが紅世の徒に食われた人間の、末路。
ただ、彼ら徒も、こちらの世界で好き勝手に人を食らえるという訳では無い。
彼らの住む紅世と、僕たちの世界は、隣り合い互いに支えあっている二つの家のようなものらしく、片方が崩れれば、もう片方も滅び行く、という構図らしい。
その事に気がついた徒たちは、こちらの世界に現れた徒たちに、存在の力の乱獲を止めるように忠告した、けれどこちらの世界で自遊気ままに力を振るうことを覚えた徒たちは、その言葉には従わなかった。
そうして、世界のバランスに思い悩む徒たちは、ある決断をする。
自分たちも世界を渡り、自遊に力を振るう徒たちを討滅する、という苦肉の決断を。
ただし、弱い徒が世界を渡っても意味が無い、行くならば徒の中でも『王』と称される強い徒が行かなければならない。
だが、強いという事は相応に大量の存在の力を必要とする事であり、それは結局は世界のバランスを崩してしまう。
そこで生み出されたのが、彼ら王が人間の内に宿る、という方式だ。
人間が、自らの全ての可能性たる存在の力を捧げ、王がその人間の器に宿る。
王自身は紅世にあり、彼らと契約した人間が、自身の存在の力を消費してその力を借り受け、徒を討滅する。
人と徒の間のゆらぎのような存在『フレイムヘイズ』の誕生であった。
フレイムヘイズは徒が存在の力を食らえば、その反応たる世界の歪みを感知出来る。
存在し、力を振るうには人を食わねばならず、食えば敵を呼び寄せる、そこで、徒たちは一つの方法を編み出す。
食らった人間の一部、『トーチ』という食いカスのようなものを残すのだ。
トーチは残されたわずかな力しかなく、当然遠からず消滅するが、元々そこにあったものが緩やかに消滅するというプロセルを経る為、世界に大きな歪みを生み出しにくい。
無論大量に食らえばその限りではないが、それでも世界の歪みを感知するフレイムヘイズには感知され難い。
そして僕、坂井悠二は……そのトーチだ。
世界の真実など知らず、己が食われた事にも気がつかず、遠からず消滅していくだけだった筈の存在。
そうあの日、全てが静止した空間の中で、彼女、フレイムヘイズ、『炎髪灼眼の討ち手』に出会うまでは。
名前はシャナ……僕が、名づけた。
あの静止した空間、フレイムヘイズと紅世の徒が、自分たちの存在を世界から隠す為に展開する結界、『封絶』の中で、僕は消えかけていた。
正確に言うなら、その時すでに僕という存在自体は食われ、トーチが残されていただけのだけど、その僕の中に、ある『秘宝』が転移してきたのだ。
秘宝とは紅世の関係者など、存在の力を操ることの出来る者が作り出す、力を持つ道具の事で、それらの内幾つかは持ち主が奪われそうになったときに、とっさにトーチの中に隠される事がある。
そのトーチが自然消滅した時にはまた何処か別のトーチの中に、と延々と流転していくという仕組みで、僕が食われた時に、その一つが偶然、僕の中に転移してきたという訳だ。
そうして、封絶の事を認識できるようになった僕だけど、その時にはまた別に危機が迫っていた。
何しろ、封絶の中で動く存在という異常故に、僕を食べた怪物、『とある紅世の王』が作った僕に、再び食われそうになり、そこをシャナに助けられた。
その後は僕の中にある秘宝を放っておく訳にはいかないという事で、僕の事を食べた王を討滅するまでの間、シャナと彼女に力を貸している『王』、アラストールに保護(?)される形になって、そして僕は紅世に関する事実を知った。
そうして、紆余曲折の末、その王はシャナとアラストールに討滅され、僕はその時の戦いで残り少ない存在の力を消費して、消え去る……とはならなかった。
僕に宿った秘宝は『零時迷子』という名前で、その能力は『午前零時に前の日の午前零時の状態にまで存在の力を回復する』というもので、その力によって僕は未だにこの世界に存在し続けている。
その後にも色々な出来事があったのだけど、その中で僕は自問する事になる。
僕は、人間か、否か。
零時迷子は、確かに僕を消滅の危機から救ってはくれたけど、同時にもう一つの問題を残していた。
つまり、僕の身体は、永遠に同じ一日を繰り返している状態、わかりやすく言うと、不老の存在になったのだ。 紅世の徒や、フレイムヘイズと同じ。
僕は、短時間の消滅に怯える事は無くなった代わりに、いつかは人の世界では暮らしていけなくなる存在になった。
だから、僕は少しずつだけど、シャナ達と同じような存在のような自覚を得始めていた。
でも、ある時クラスメイトの一人、吉田さんは、僕の事をが好きだと、人間だと言ってくれた。
いや、吉田さんだけじゃなくて、ひょんな事から紅世に関わった佐藤や田中も、僕の事を坂井悠二だと受け入れてくれた。
いずれ捨てなければならない筈の、当たり前の生活、それを捨てなくてもいいんじゃないかと、そういう考えも、浮かんできた。
だから、僕は悩む。
僕は人間か、否か。
◇
人一人居ない街。
居心地の良さを感じなくもない空間の中で出会ったそいつは、最初何なのか判らなかった。
死体に宿った悪霊というものを昔に見たが、それに近い『人の姿をした壊れやすい何か』であり、それでいて間違いなく生きた人間。
中身が普通じゃないモノは色々見てきたけど、外見からして異常極まりない、生きた普通の人間、というのは初めてお眼に掛かった。
「へえ、トーチにミステス、か」
そいつ、外見に特に特徴のない、坂井悠二というヤツの話はまあ面白かった。
微妙に信じにくい話ではあるのだが、目の前に実物がいるのだから本当なのだろう。
何となくだが、興味を引かれる。 紅世の徒というのは、『この世界』の存在ではないという事だ。
前にトウコはこの世界には外があり、そこを目指すのが全ての魔術師の目的だと言っていたが、あるいはソコからの来訪者、という事なのかもしれない。
「君は、紅世の関係者じゃないの?」
「さあな、少なくともオレにはその存在の炎とやらは見えない。
判るのは、お前の見た目が普通の人間とは違うという事くらいだ」
悠二が色々と聞いてくるが、オレはその紅世とやらとは関係無い。
オレはただ、『見える』だけだ。
トウコ曰く、根源と繋がっているとかいうこの目は、あらゆるものの『線』を見通す。
それが人であれ、物であれ、形無い物であれ、そこにあるものなら何でも『壊せる線』
この世に誕生した時から内包しているという『死』そのものを見ているとか、まあ理屈はどうでもいい。
ようは、この目はあらゆる存在の死が見える。
「けど、そういう風に見えるって事は、やっぱりここにいる僕は幽霊みたいなものなのかな」
「幽霊? そんなものはそこいらじゅうに居るがお前とは違う。
連中には、生きているものに介入する力なんて無い。 何故って死んでいるんだからな。
お前はこうして現実に生きて喋っている、だからお前は幽霊とは違う」
オレの見た坂井悠二像に、コイツはこんな感想を返して来た。
人間のようで、壊れやすいのだから意味的には近いが、近いだけだ。
『死んだ』モノは、もう『生きている』モノに戻る事は無い。
たまに間違えて動き出したり、死んだまま存在しているモノが居たりはするが、それは断じて『生きた』人間では無い。
「けど、僕は運よくこうしていられるけど、元々はそのまま消滅する筈だったモノで」
「別に世の中余命何ヶ月なんてヤツは山ほどいる。
寿命が何年あろうが事故で死ぬヤツはもっと山ほどいる、それだけの話だろ」
「違うよ、全然違う、トーチの最期は死じゃなくて消滅なんだって。
誰の……紅世の関係者以外の記憶に残らずに、この世から零れ落ちるんだ」
「奇特なヤツだなお前、自分が死んだ後に他人にどう思われるか何てどうでもいいだろ」
「……え?」
「死んだ後に自分がどう思われるか何て、『そんな事』確認仕様も無い。
なら、別に死ぬのも消滅するのも本人からすれば一緒だろう」
そう、死というのモノは二度と戻れない、捕まれば這い上がる事も出来ずに引きずり込まれる。
ああ、あれに捕まる事を思えば、生きているというのはどれだけ光溢れていることだろう。
生を失うという点では、死だろうが消滅だろうが、本人からすれば何一つ変わらない事象でしかない。
そういう意味でいうなら、悠二は間違いなく今ここに存在している。
「え、いやそれはそう……だけど。
でも、自分の事を誰も覚えていてくれないと言うのは、怖いと思わない?」
「さあな、悪名だけ残すよりはむしろマシな死に方かもしれないぞ?
どちらにしろ、おまえ自身にはどうしようも無い事だろ、なら考えても仕方が無い」
「…………」
悠二が呆然とした感じでオレの事を見てくる。
けど、そもそもオレは普通の人間て訳じゃない。
オレの中はとうに伽藍堂で、人間としてどうのこうの何てモノは存在していない。
人間として壊れてるヤツに人間的な感覚を問うなんて間違いだ。
「ああ、確かにお前という器は人間では無い別の何かだ、だけどそれが何だって言うんだ?
肉体的にはヒトでなくても、人間として生きているヤツだっているし、人間の姿形をしたまま、人間を止めるヤツだって山ほどいる。
結局、普通の人間というのは生物でなくてあり方なんだよ。
他者を何十人と殺せば、殺人鬼と、あたかも人間とは違うものとして扱われる、肉体自体がどうとか関係無くな。
そういう連中に比べれば、トーチだとかは関係なくお前は普通の人間だ」
そして、違うものとして扱われるオレから言わせれば、悠二はどこまでも普通の人間だ。
何かしらの人間には無い力くらいは持っていそうではあるが、それだけ。
殺しても面白くない、普通で無い身体の、普通の人間でしかない。
「……僕は、人間でいて、いいのかな?」
「わからない奴だな。
お前は人間としての生を詰め込んで来て、そうして周りの人間も、お前を人間と、同胞として扱っている。
ならそれでいいだろう。 トーチだとかそんなものは、それとは全く別の事柄でしか無いんだよ。
お前が考えるべきなのは人間で『いていいのか』じゃなくて、人間で『いたいか』どうかだ」
だから、悠二というかミステス、いやトーチか、が人間か何て、決めるのは本人以外の何者でもない。
魔術師なんていう胡散臭い連中が人間として折り合い付けて普通に暮らしているし、どこまでも普通の人間が、どこかネジが外れて人間をやめたりする。
入れ物がどうとかじゃなくて、決めるのは本人の心持ちだ。
……そして、コイツは多分そんな事はとっくに理解している、理解して、それで答えに迷っている。
その答えによっては、オレはコイツを殺したくなるのかもしれない。
◇
もう用は無いと思ったが、向こうはそうでは無いらしい。
そして、そういえば名乗ってもいなかった事を思い出す。
「オレは式だ、両儀式」
「そう、両儀さん、僕はさっきも名乗ったけど坂井悠二」
「式でいい」
悠二の方が年下なんだろうが、それで呼び名を変える理由も無い。
多分悠二はオレの事同じくらいの年だと思っているだろうが、訂正する必要も無い。
「そう、式さん。
式さんはこれから、どうするつもりなの?」
「オレの目的? そんなの決まっている、あの変なのを殺す」
ああ、オレの目的なんて、最初から決まっている。
トウコのところで割と長い間仕事を手伝わされてきたが、実際に人を殺せたのは数えるほど。
元々相手が人間でなかったり、殺したいと思える相手がいなかったりと満足できない状態だった。
そして、今回のあれは、今までに無いくらい殺したい相手だ。
だから、アレはオレが殺す。
「えーと、何か心当たりでもあるの?」
「そんな物ある筈無いだろ。
オレは視る事しか出来ない、なら視て周る以外にする事なんて無い」
「力技だなぁ……」
「そうだな」
別に何時もの事だ。
オレの役割は視ることで、捜したり考えたりするのは別のヤツの仕事だ。
「オレの知り合いに、黒桐幹也っていうフランスの詩人みたいな名前の奴が居る。
あいつは探し物に関してだけは一流だから何とかなるだろ」
そうか、そうなるとまず幹也を捜さないといけない。
そういうときに頼りになるのはトウコの奴なんだが、果たしてアイツはいるのか。
後は鮮花は出来れば会いたいとして、浅神藤乃は……今更興味は無い。
……それはそれとして、だ。
「お前、まだオレに何か用か?」
「用って訳じゃないけど、目的としては一致しているのだし、一緒に行動しても良いんじゃないかな……?」
目的の一致、か。
悠二の言う、フレイムヘイズ達もアレを倒したいと思うのは間違い無いそうだが。
ただ、オレは殺したいから殺す、悠二達は世界のバランスを守る為に殺すと、手段は同じだが目的には大きな開きがある。
まあそのくらいは別に大した違いでも無い。
ただ、そのフレイムヘイズという連中が殺したいと思える相手だとすると困るが。
「僕を力づくで止める?」
「いや、別に好きにしたらいい。 一緒にいて特に不快になるわけでも無いしな」
言いながら、先ほど悠二が告げたように、オレも鮮花と幹也の特徴を告げる。
シスター服を除いても鮮花は基本的に人目を引く。
対して、幹也は黒い眼鏡で多分黒い服を着ている事くらいしか特徴の無い奴だ。
まあ悠二もどこかの制服くらいしか特徴の無い奴ではあるが。
「……ああ、そうか」
要するに、悠二も幹也並みに普通な、変な奴だ。
そう考えると、オレについて来ようとするのも変では無いのか。
【B-6/一日目・深夜】
【両儀式@空の境界】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品1〜3個
[思考・状況]
基本:主催者とやらを殺す。
1:黒桐幹也、黒桐鮮花を捜す。
2:坂井悠二が付いてくるなら好きにさせる。
3:フレイムヘイズというのに興味、殺せるならば……?
◇
「決めるのは僕……か」
いや、それは判っていた事かもしれない。
ただ、選べなかった、選びたくなかったんだ。
シャナと一緒に戦うか、吉田さんを守るか、
自分自身でも情けなくなるほどに、僕は決めかねていた。
……けど、そう遠くない、僕はその選択をしなければいけない。
【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康。
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品1〜3個
[思考・状況]
基本:シャナ、吉田一美、ヴェルヘルミナを捜す。
1:当面は他の参加者と接触しつつ、情報を集める。
※清秋祭〜クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻〜14巻の間)
以上です、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
投下乙!
遅刻投下乙w
悪意ないミスだと思いますが、気をつけて下さいよー。
しかし、式と悠二の会話、深いなぁ……。上手い。
ブルルルルルルルルルルルルルルルル――
軽快なエンジン音が街に響く。
水前寺はバギーの運転のコツを掴んだらしく、運転の速度は初期と比べて大分上がっていた。
だが、周りが暗い為速度変わっても景色の見え方は特に代わり映えしない。
「落ち着いたかね、島田特派員?」。
「……一応」
水前寺の問いに対し彼の同行者―――島田美波は不機嫌にそう答える。
先程から降ろして、と暴れていた島田も水前寺を説得するのは不可能だと悟ったのか、もはや何も言わなくなっていた。
しかし、不安はまだ残っているようでバギーが少し揺れる度に島田はビクッと肩を震わせている。
そんな彼女の様子を意に介さず、水前寺は先程から上機嫌そうに運転を続けていた。
その様子を見た島田は思わず不満を漏らす。
「はぁ、何でこんな奴にこんな物を支給したのかしら?」
水前寺本人が無免許で運転して事故るのならば自業自得もいい所だが、それに自分が巻き込まれるのは迷惑以外の何者でもないと彼女は思う。
「ん?島田特派員、何か言ったかね」
小声だったのにも関わらず水前寺は彼女の呟きを聞き漏らさなかったようで、そう島田に尋ねてきた。
このneugierige Ohren(地獄耳)め、と彼女は内心で思ったがそれを言うとまた何か変なことを言い出す気がしたので何も言わないでおいた。
「いや、なんでアンタにこんな物が支給されたのかなぁって思って」
「ふむ、それは俺も分からないな。完全にランダムなのか、はたまた何か意図があるのか。
まぁ、俺にバギーとライターなんぞ支給するのに意味があるとは思えんがな」
「ライター?」
「ん?ああ、俺のもう一つの支給品だ。使い道がなかったからデイパックにしまってあるがな」
「ふぅん」
(……ライターねぇ)
島田は何か脱力感に見舞われる。
あのお面の男が言うにもっと銃とか剣みたいな武器が支給されると彼女は思っていた。だが、出てきたのはバギーにレーダーにライター。
当りに分類されるとは思うが、ちょっと殺し合いの装備として配るにはイマイチ迫力に欠けると思う。
「島田特派員の支給品は確かレーダーだったな」
「そうだけど」
水前寺はそれを聞くと何かを必死に考えているらしく、今までの饒舌が嘘のように黙ってしまった。
島田は今までに無いリアクションだな、と感じた。
彼女の周りには基本的に物事を深く考えない人が多いため、水前寺のこの反応は彼女にとって新鮮だった。
「ん?」
島田がレーダーを確認すると自分と水前寺以外に反応があった。
「ねぇ近くに誰かいる」
もしかしたら高須かもしれないと思い、島田はそれを水前寺に伝える。
「おお、そうかね。早速接触して……おぅわ!」
「え……きゃあ!」
二人は突然悲鳴を上げる。
何故なら、突如バギーに向かって赤い球が飛来して来たからだった。
次の瞬間、そこは爆炎に包まれた。
@
「やりましたか?」
赤い球を放った張本人―――古泉一樹は半壊状態のバギーを眺め、そう呟いた。
学校で青年と別れた後、彼は行く当てもないのでとりあえず西に向かうことにしていた。
その際、途中で水前寺達のバギーを見かけて攻撃を仕掛けたのだ。
(相手が移動していて少し外した可能性がありますね。大丈夫だとは思いますが、一応確認しておきましょう)
例え生き残っていても無傷という訳ではないだろうと判断し、古泉は念の為近づいてみることにした。
@
「痛ててて」
「大丈夫かね、島田特派員?」
「なんとか……」
水前寺と島田は無事だった。
二人は傷こそ負ってはいるが五体満足であり行動にはそれ程支障はないだろう。
古泉の攻撃が命中する際、水前寺は咄嗟にハンドルを切り直撃を免れていたのだ。
そして煙に包まれながら二人はバギーを脱出し、近くの建物の陰に隠れ今に至る。
「何よ、アレ?」
島田は膝に負った傷を触りながらそう言葉を漏らした。
アレ、とは先程古泉が放った超能力のことだ。
無論、彼女がそのようなことを知る由も無く彼女にとって全く未知の攻撃だった。
「さぁ分からん」
水前寺は堂々と答える。
当たり前だが彼にとっても先程の攻撃は未知の物だった。
「どうすんのよ、逃げる?」
「いや、それは止した方がいいな。レーダーで敵の動きは大体予測できるが相手が遠距離から攻撃する手段を持っている以上、少しでも視界に入れば狙い撃ちされるだろう。
しかも我々は手負いだ。追いつかれる可能性が高い」
島田の提案に水前寺は冷静にそう答える。
この危機的状況下においても彼は自分のペースを崩すことは無かった。
「じゃあ、どうすんのよ!?」
しかし、当然のことだが島田はとても水前寺のように落ち着くことが出来なかった。
昨日まで平和な日常を送っていた者が急に訪れた命の危機に対応できる訳がないのだ。
むしろ水前寺のように冷静に対処できる方が異常なのだ。
「まぁ待ちたまえ、島田特派員。今、作戦を練る」
「待てって……」
(今から考えたって間に合う訳がないじゃない!)
島田はそう心の中で悲鳴を上げた。
レーダーを見ると敵は爆発したバギーに向かって来ていた。
彼女は不安になりそちらを向く。
そこには半壊したバギーが倒れており、燃料が漏れ出していた。
「島田特派員!」
「なっ何?」
水前寺の突然の呼び出しに島田は驚きつつもそれを聞く。
「まず、君に囮をやってもらう」
水前寺はそう切り出した。
@
「これは……」
古泉は残されたバギーを見て、困惑しながらそう呟いた。
バギーは能力の着弾点とは微妙にずれた位置にあり、運転席を覗き込むとそこには何も無かった。
(どうやら逃げられたようですね。とはいえ相手も完全に無傷ではないでしょうし、近くを探せばすぐに見つかる筈……)
古泉は冷静に状況を判断していく。
彼も伊達に閉鎖空間で神人と命がけの戦いをしている訳ではないのだ。
ガサッ!
(!?)
突然、何かが擦れる音が響いた。
古泉は驚き、音源の元を見る。
そこにはポニーテールの一人の少女がいた。
「こっ……こっちよ!」
少女―――島田美波は古泉の姿を確認するなり、突然そんなことを言い出した。
無論、古泉はそのような言葉に惑わされる訳も無く、彼女の行動の真意を落ち着いて探る。
(これは……恐らく彼女は囮ですね。あの車にはもう一人乗っていた筈。
となれば次に相手が取る行動は……)
次の瞬間、
「うぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!」
そんな雄たけびと共に後ろから大男――水前寺が古泉に向かって飛び出してきた。
(やはり奇襲攻撃ですか!
ですが、その程度の戦法では……)
古泉は咄嗟に超能力を使い小さな赤い球を形成し、水前寺に向かって放り投げた。
赤球は直撃し、水前寺は吹き飛ばされる。
しかし、その顔にはニヤリ、と怪しげな微笑が浮かんでいた。
それを見た瞬間、古泉はとてつもない嫌な予感がした。
「今だ、島田特派員!」
「分かってるわよ!」
(一体何を……?)
古泉は急いで先程の少女の方を向く。
そこには火が点いたライターを放っている島田の姿があった。
ライターは軌道を描きながら古泉の方へ向かって来る!
(この程度!)
古泉は身を捻ってライターを回避する。
しかし、彼の後ろには半壊のバギーがあり――――――――――
(しまった、まさか彼らの狙いは!)
――次の瞬間ライターの火がバギーの漏れ出していた燃料に引火し、バギーは爆発した。
「なっ!」
古泉は爆炎に包まれた。
@
「やった……の?」
島田は爆発したバギーを呆然と見ながら、そう呟いた。
バギーは未だに燃え盛っており、モクモクと煙を上げている。
「ああ」
水前寺は島田の問いにそう静かに唱えた。
その顔には先程までとは打って変わって真剣な表情が浮かんでいる。
「すごいじゃない!
あんな化け物みたいな奴を倒したのよ!」
島田は水前寺に賞賛の言葉を掛ける。
とてもじゃないが自分一人ではあの男を倒せなかっただろう。
(変な奴だけど頭の良さは本物ね)
水前寺の作戦はこうだ。
まず島田が敵の気を引き付ける。つまりは囮だ。
次に水前寺が奇襲を掛ける。
出来ればこれで仕留めたいが、大した武器を持っていない水前寺では大したダメージは与えられないだろうし、最悪奇襲に気付かれる可能性もあった。
実際、古泉は水前寺の奇襲を気付き、咄嗟に超能力で迎撃をしてきた。
そこで奇襲が失敗した場合には最後に島田がライターでバギーを爆破する。
水前寺も巻き込まれる可能性があったが、本人は「その程度のリスクは犯さなければ勝てない」と延べ作戦を決行した。
作戦は成功し、古泉はバギーの爆発に巻き込まれた。
二人の危機は去ったのだ。
しかし、水前寺の顔に喜びの色は無かった。
島田がそれに気付き、不思議そうに尋ねる。
「どうしたの?成功したのに喜ばないの?」
「いや、確かに助かったが人間を殺すのはやはりあまり……な」
「あっ……」
そう言われて島田は気付く。
さっきまでは無我夢中で相手のことなんか考えもしなかったが、相手の容姿は普通の人間だった。
変な力を持っていたが、あれは紛れも無く人間だったの
そう言われて島田は気付く。
さっきまでは無我夢中で相手のことなんか考えもしなかったが、相手の容姿は普通の人間だった。
変な力を持っていたが、あれは紛れも無く人間だったのだ。
(そうか……ウチ、人殺したこと喜んでたんか)
そう思うとさっきまでの自分が島田は恥ずかしく思われた。
「何、気にすることはないぞ、島田特派員。あれは紛れも無く正当防衛だった」
「でっでも、ウチ……」
「とにかく生き残ることには成功したんだ。それを喜ぶことは何も間違ってはいないさ」
水前寺は島田が落ち込んでいるのを見てそう語りかけた。
彼なりの励ましなのだろう。
「さて、島田特派員。早くこの場を離れるぞ。
これだけの爆発だ。周りの参加者が集まってくるぞ。
武器がほとんどない我々がこの場に留まるのは危険だ」
「わ、分かったわ」
そう言って二人はその場を後にした。
バギーは未だ燃えていた。
【E-2/路上/黎明】
【島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:全身が少し煤で汚れている。軽傷(行動に支障なし)。
[装備]:レーダー(電力消費小)
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:水前寺邦博と嫌々ながら行動。吉井明久、姫路瑞希の二人に会いたい。
1:この場から離れる。
2:高須竜児が逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の三人を狙っていた事を伝えるのは保留。
3:水前寺のことを少し信頼。
[備考]
※E-2の路上に爆音が響きました。近くの参加者は気付くかもしれません。また、バギーから煙が上がっていて目の良い参加者なら視認できるかもしれません。
「……ふぅ」
水前寺は島田に気付かれないように静かに息をつく。
その声には疲労の色が見えていた。
(あの赤い球の直撃……あれは流石にキツかったか)
水前寺は腹部をさすりながらそう思う。
彼の脳裏にあるのは先程受けた古泉の超能力。
(あれ程の爆発を引き起こす程の威力だ。恐らく、もう少し相手に力を溜めることのできる時間があれば危なかった)
また、水前寺の知らぬことだが古泉の能力には大幅には制限掛けられており、彼は受けるダメージがかなり少なく済んでいたのだ。
しかし、元々神人と呼ばれる異形の存在を狩るための力。
一つに一つにかなりの威力があり生身の人間には十分な脅威となっていた。
(下手をすれば骨までやってしまったかもしれんな。どこかで手当てをしたい所だが……)
水前寺をそう考えながら隣にいる島田を見た。
正確には彼女の持っている支給品のレーダーを。
(今、我々にある装備はあれだけ。ある程度は他の参加者との遭遇を避けられるが、先程のように遠距離から攻撃されれば我々などひとたまりもないだろう。
どこか拠点となりえる場所を探す必要があるな。
しかし、あのレーダー一体何を感知しているのだろうか?)
水前寺が先程考えていたのはそれだった。
レーダーというからには何かを感知して位置を表示している筈なのだ。
しかし、水前寺の持ち物はここに来る直前と完全に同じであり、何か特殊な物など持っていない。
(となるとやはり我々は何かを埋め込まれていると見ていい……だとすると脱出が難しくなるな。うっ!)
水前寺が考えを巡らせていると腹部に鈍痛が走る。
(どうやらダメージが予想以上に大きいらしいな。とりあえずどこかで休もう)
彼は腹部を抑えながらも歩き続けた。
【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:全身が少し煤で汚れている。腹部に怪我。
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、
[思考・状況]
基本:島田特派員と共に精一杯情報を集め、平和的に園原へと帰還する。
1:この場を離れ、どこかで休む。
2:その後、学校へ移動。高須竜児の一連の真偽を確かめる。
3:何か武器が欲しい。
[備考]
※水前寺の怪我の程度は後の書き手さんにおまかせします。
そして、その場には誰も居なくなった。
そこでは相変わらずバギーが燃え盛っており、その存在を主張していた。
「ハァハァ」
否、そこにはまだ人間が残っていた。
その存在は全身が焼け焦がれており、苦しそうに息を吐いている。
(……失敗しましたね)
古泉は生きていた。
あの爆発の中、超能力を咄嗟に全身に展開することで即死を免れたのだ。
とはいえ超能力は著しく制限されており、完全に防ぎきることは出来ず、彼は全身に火傷を負ってまさに満身創痍だった。
(まだ……死ぬ訳にはいきません…….
彼女を、涼宮さんを絶望させるまでは……)
古泉はノロノロと地面を這い回る。
その目には強い決意があった。
「流石に今回はハードですね……」
(けれども、諦める訳にはいきません……)
古泉はそう決意を固めて、立ち上がった。
そして、
【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱 死亡】
そして、次の瞬間古泉の身体は弾丸で貫かれた。
古泉はそのまま倒れ、もう動かなくなった。
(殺したな)
古泉を殺した男――高須竜児は古泉が確かに死んだことを確認した。
彼は古泉と同じく殺す相手を追い求めて学校から出た。
途中、爆音を聞いてその場に行ってみると瀕死の古泉がおり、トドメを刺したのだった。
(さぁ、次の参加者を探そう)
もう古泉に興味の無くなった高須は燃え盛るバギーを後にした。
そして、バギーの周りには誰も居なくなり、そこには哀れな超能力者の屍が残された。
【高須竜児@とらドラ!】
[状態]:健康
[装備]:グロッグ26(10/11)
[道具]:デイパック、支給品一式、
[思考・状況]
1.逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の誰か一人を最後の一人にするために他の人間を殺す。
[備考]原作7巻終了後入院中からの参戦です。
※壊れたシズのバギーの近くに古泉の死体とデイパックがあります。
投下&代理投下乙!
ちょ…古泉ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
まさか爆発&不意打ちのコンボ食らうとは…流石に厳しいよな
殺人に全く反応示さない竜児怖いよお…
転載中にさるったw
投下乙。代理の代理の方も乙。
GJ、と言いたいところですが……ちょっと、爆発とそれを使った策が納得いかないかなぁ。
二枚立ての策が策として成立するには、バギーを破壊したほどの弾を1回は生身で受ける覚悟が必要だし……
バギー大破の時には爆発しなくて、ライター投げたら瞬時に古泉だけ巻き込んで爆発するのは、ちょっとご都合的、かなぁ……。
ましてや、それを水前寺側は完全に先読みしてて、古泉側が想像だにしないとなると。
や、バトルの組み立てが大変だったのは分かるんですが。
お二人方投下乙です。
>>式たち
おお、式が淡々としかし確信付く事を。
とても式らしさが出ていました。
ゆうじも悩む時期から参戦か……
式と一緒に居る事によって何かを掴む事をできるか……
二人の歩みに期待。
GJです。
>>学校周り。
古泉が逝ったか……
爆発を使ったバトル、とても派手でした。
みなみも水前寺を信頼してきてどうなるか。
高須は何か怖いなぁ……w
普通の学生なのに淡々としているのが……
と、少し指摘ですが
>>276氏と一緒の意見なのですが少し爆発に関して不自然に思えました。
バギーを破壊できるには爆発したのライターだけで古泉のみ巻き込んでって……のは不自然に思えます。
古泉がそこまで頭が回らないと想いませんし。水前寺も危険性を解っているはずです。
そこら辺が不自然だとおもいます。
転載
27 名前: ◆hwBWaEuSDo 投稿日: 2009/03/23(月) 20:30:11 ID:JHz/1zC60
昨日私が投下した作品に指摘があったので修正しようと思っていましたが、リアル事情によりしばらくPCに触れなくなってしまったので破棄することにします
どうもすみませんでした
残念だけど、次頑張って。復帰待ってます
先日投下した『忍法 魔界転生(にんぽう しにびとがえし)』にて、支給品被りが起きていたことに気がつきました。
私が『古刀』の名で出した支給品が、既に『九字兼定』の名で登場していたようです。
すぐに支給品の差し替え、該当部分の本文修正を(wiki上にて)行う予定です。
当方の不注意にてご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。
◆hwBWaEuSDo氏
残念です。あなたの復帰を待ってます。
避難所の修正スレにて、2レス分の差し替えを行いました。
一言で言えば、「古刀」を「フランベルジェ@とある禁書の魔術目録」に差し替えたものです。
それ以外には、展開の変更等はありません。
Wikiの色々な更新乙と、こちらで言ってみる
283 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 15:18:17 ID:T5eijCKM
予約スレを見たから叫ばせてくれ
逃げてビリビリ逃げて
規制解除されたと聞いて飛んできました。
ようやく感想書けるぜ…。
>>283 単純な戦闘能力でいえば寧ろガウルン逃げて零崎逃げてなんだろうけど、
美琴は殺人に関して積極的にはならんだろうし、
ぶっちゃけマーダーが序盤で退場なんて普通ないしな……
286 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 07:23:45 ID:y6M1SDrB
ガウルンと言えば某スパロワではっちゃけてるけど
ここでの彼はどうなるんだろうか?
本投下行きます
―――気がつくと辺りは真っ暗だった。自分が目覚めたところも、いつもの寮のベッドの上ではなく、砂利混じりの草の上。きょろきょろと周りを見
渡した御坂美琴が目覚めて最初にやったこと、それは自分の頬をつねってみることだった。
うにーと、伸びたほっぺたからはピリッとした痛みがかえってくる。
「……夢じゃない……みたいね」
はあ、と彼女は溜息をつく。なんだかひどい厄介事に巻き込まれたらしいということだけは、まだ目覚めきっていない、多少寝ぼけた彼女の頭でもな
んとか理解できた。そのままのろのろとデイパックの中身を探り―――そして、そこで完全に彼女の目は覚めることとなる。
超能力開発機関『学園都市』でも五本の指に入る名門・常盤台中学のエースにして、学園都市でもたった七人しかいない『超能力者(レベル5)』、
百万を超える学生たちの中において三番目の能力の持ち主、『超電磁砲(レールガン)』こと御坂美琴。
この殺し合いの舞台における彼女の物語はここから始まる。
「ちょっと! どういうことよ、これ」
デイパックの中から、最初に彼女が取り出した物。それは参加者名簿だった。……まあ、それ自体には何の問題もない。問題はそこに書かれていた
彼女の知り合い達の名前である。
美琴と同じ常盤台中学の後輩にして、空間移動の能力をもつ、大能力者(レベル4)―――白井黒子。
ほんの数回、「アイツ」と一緒にいるところで出会ったことがあるシスター―――インデックス。
……そして、彼女や妹達(シスターズ)の命を助けてくれた少年。無能力者(レベル0)にも関わらず、彼女の一撃を平然と防ぎきるツンツン頭の少年。
そして彼女にとって最も大事な存在である少年―――上条当麻。
「何でこんなに……?」
そもそも彼女達が暮らす学園都市は、世界の最先端技術の集まる場所だ。外の世界と比べると、その技術力は数世代は先を行っている。そのため、
学内の技術を流出させないために何重にも防御策はたてられている。
まして、彼女達能力者は学園の技術の最上位に位置する。生徒達が自主的に学園外に出ることさえ難しいというのに、生徒の学園外への誘拐、それも
複数ともなれば一体どんな組織が関与すれば実行可能となるのか、想像さえつかない。
―――だが、それがどうした?
想像もつかないほどの組織が関与している。だからおとなしく彼らの言うことに従って、たった一人の生き残り、この場所に集められた名簿に名前が
載っている彼女以外の49名と。名簿外の10名。彼ら彼女らを殺して生き残る?
……そんなのはごめんだ。
目指すは脱出。倒すべきはあの狐面の男とそのバックにいる黒幕。
まずやるべきことは、脱出を目指す仲間の保護と、殺し合いに乗ることを決めた者達へのちょっときつめのお仕置き。
(……その前に少し試しておかないとね)
現在彼女がいる場所は、まず間違いなくBの1もしくは2。そのわかりやすい目印である天文台、学園都市にあるものに比べると、
時代遅れな巨大な望遠鏡の見える方向へと彼女は歩き出した。
◇ ◇ ◇
歩くことしばし、美琴は目的地―――天文台のやや先、この舞台の果てへとたどり着いていた。
彼女の前には漆黒の闇が広がっている。上を見ても、右を向いても、左を見てもそこから先には「黒」以外に何もないのだ。
「さーてと」
軽く呟くと美琴は普段のように彼女の「能力」を使う。
―――学園都市第3位、『超電磁砲(レールガン)』 彼女の能力は学園最強の電撃使いである。10億ボルトにも達するその
膨大な電撃は―――漆黒の壁に音もなく吸い込まれ、消えた。
「あちゃあー、やっぱりダメか」
自身の一撃がそれほど効果を上げなかったにも関わらず、彼女の声に落胆の色はない。彼女としても自身の力が普通に使用できた時点で
単純な物理攻撃でこの「壁」が突破できないことは予想できていた。仮にも、自分をさらえるような組織だ。それがこの力で破れるような障壁で自分を閉じ込めるはずがない。
―――だとすると。
ぶんぶんと、頭を振って美琴は思いついた考えを吹き飛ばす。
(……そんなことあるわけないじゃない! もう樹形図の設計者(ツリーダイアグラム) もないのに、あんなバカげた実験おこせるわけない!)
彼女が思い起こしたのは少し前まで学園都市内で秘密裏に行われていたある実験だ。
絶対能力進化(レベル6シフト) 計画。……たった一人の能力者のレベルを上げる、ただそのためだけに二万もの命を犠牲にした悪夢のような計画。
―――そのためだけに彼女のクローンが一万人以上殺された計画。
その実験自体は、とあるツンツン頭の少年と彼女のクローン「妹達(シスターズ)」によって阻止され、実験をはじめるために必要不可欠だった機械もすでにない。
だから今のこの事態とは何の関係もない、はずだけど。
「ああー! もうやめやめ! ここを調べるのは黒子達と合流してからでも遅くないわね」
そう言うと美琴は「壁」に背を向ける。
きっとこんな黒い物を見続けているから暗い考えばかりが浮かんでくるのだ。自分の力ではどうにもならないここも
空間移動の能力を持つ黒子や、自分の雷撃、いや学園最強の能力者さえ打ち倒したアイツの力があればきっと打開策も見えてくる。
それに時計回りに世界が消滅する、ということは、なるべく参加者を内側に閉じ込めておきたい、ということではないだろうか?
だとしたらあの「壁」は案外薄いのかもしれない。まあ、それらは彼らと合流してからの話。今は―――。
「……それまでは私にできることをしなくちゃね」
そうして彼女は天文台へと向かって歩き出す。
今の彼女が優先するべきなのは戦う力を持たないもの―――例えばあの銀髪ちびっこシスターのような―――を守ること。
そのためには人が集まりそうな施設を見ていくのが手っ取り早い。
まずは手近な場所から回って、それから街の方へ……そんなことを考えながら彼女は歩き出す。
◇ ◇ ◇
一度は通り過ぎた天文台へと、戻ってくるのにはそれほど時間はかからなかった。
「……さてと」
ドアの前に立って軽く一息。美琴はドアを大きく開ける。
「誰かいますか? 私は御坂美琴といいます。殺し合いにはのってまっ―――!」
しゅっ、と言葉の途中に紛れ込んだ風斬り音。
美琴の胴体めがけて飛んできたそれは彼女に当たる直前、何かに弾かれるように大きくその軌道を変えて地面に当たり、
からからと金属音を奏でる。
地面に転がるそれは銛。返しが付いた一度刺さると抜けなくなる凶器。それを撃ってきた相手は暗がりから月明かりの下へ出て来ると、にたにたとした笑顔で美琴に向かって声をかける。
「いやあ、すまなかったねぇ、お嬢ちゃん。怪我がないようで何よりだ、っとまずは自己紹介のほうを先にするべきかな?
俺の名前はガウルンという。くっくっく、いやあ今のは完全にこっちが悪い。俺はこう見えても気が弱くてねえ、誰か来た! と思ったらついついこいつをぶっ放しちまった」
そう言うと男は美琴にもよく見えるように、つい今しがた銛を放った武器、アンカーガンを動かす。
男は年はおそらく40歳前後だろうか。まず目に付くのが、額のあたりに刻まれた傷と首周りに残る火傷の跡。だが、そんな物より男を特徴付けているのが―――。
「―――嘘よね?」
まだ、何か喋ろうとする男に向かって、美琴は固い声で告げる。
「……ほう? どうしてそう思うのかな? み・こ・と・ちゃーん」
「理由は色々あるわ。まず、あなたは私がドアを開ける前からその銃を構えていた」
美琴の言葉を聞いて、男が浮かべる笑みはいっそう深いものとなる。
「それから? それから?」
「事故で撃ったって言うなら、その銃にもう次の銛が装着されているのもおかしいわよね?」
「うんうん、そうだねえ」
「そして―――」
「ほう! まだ何かあるのかい?」
「人を撃っといて、そんなにたにた笑っていられるような奴が、事故とか言っても信じられるわけないでしょう!」
「ぎゃははははっ! そりゃあもっともだ! 大正解だぜ! 美琴ちゃん! オレは! 実は! 殺し合い乗っている! いや、楽しんでいるんだぜえぇぇぇぇっ!」
彼の最大の特徴。見るものを不快にさせるような笑みを満面に浮かべ、ガウルンは目の前の少女に向かってアンカーガンを放つ―――その直前。
「―――遅いわよ」
ハイテンションなガウルンとは対照的に冷めた美琴の声が響いた。
「っ!?」
しょせん相手の武器は銛。その程度の武器なんかじゃあ学園都市第3位の能力の前では、素手と大して変わりはしない。
嫌な予感を感じたのか、ガウルンは慌てて大きく跳び、先ほどまで彼がいた巨大な望遠鏡の影へと戻ろうとする。
―――だが、雷の前ではその動きは遅すぎる。
それでもさすがというべきか、ガウルンの胴体めがけて放たれた美琴の一撃。
雷撃の矢は大きく跳んだガウルンの胴体からは逸れ、しかしさすがにかわしきる事はできずに、彼の足に直撃する。
「〜〜〜〜っ!?」
そしてその一撃で十分だった。
人の筋肉は電気刺激によって動かされる。従って強力な電気ショックを受けた人間は、そのショックが消えるまで自分が思うように体を動かすことができなくなる。
相手を一瞬で無力化する一撃。
それさえも彼女、御坂美琴にとってはその力の一部分でしかない。
「残念だったわね」
吹き飛ばされ、びくびくと動くガウルンに近付きながら余裕の表情で美琴は言う。
そもそもこの勝負、始めからガウルンに勝ち目はなかったのだ。
仮に美琴の一撃よりも早くガウルンが銛を放っていたところで、彼女に傷をつけることは敵わなかった。あの武器では先の不意打ちの時でさえ、彼女の能力で張られていた電磁波によるバリアーを突破することは敵わなかったのだ。
始めから明確に勝者と敗者が分けられていた、争いと言うのもはばかられる勝負が終わる。
「さてと、少し痛い目にあってもらうわよ」
ガウルンに近付く美琴の手で電撃が弾ける。
……最も彼女にガウルンを殺すつもりはない。
もう一度至近距離から電撃を叩き込み、完全に相手の戦闘能力を奪ってから、ロープか何か、とりあえず天文台なら最低でもあるであろう消化ホース等で身柄を拘束する。
それが彼女のプランだった。
―――3歩。
―――2歩。
―――1?
ばしゃ。
「……え?」
全身に広がる冷たい刺激。
ガウルンまで後一歩というところだった。美琴がその地点まで近付いたその途端、電撃のショックで動けないはずだったガウルンが素早く身を起こすと懐から何かを投げつけてきたのだ。
(……え? な、何? ……水!?)
予想外の反撃に慌てながらも、美琴は間合いを離し電撃を放とうとし、自分にぶつかった何かの正体に思い至り―――攻撃を思いとどまる。
……確かに彼女は電気を操ることが可能だ。だが、それはあくまでも操れるのであって、彼女が電気を浴びても平気というわけではない。
今の彼女は全身ずぶ濡れ。今投げつけられた液体がただの水ではなく、何らかの通電性の高い液体の可能性もある。そのままいつものように電気を放てば、最悪彼女自身も感電する。―――彼女が普通の能力者なら。
(甘いわよ!)
超能力(レベル5)は伊達ではない。
彼女は電気を「操れる」能力者であって「放てる」だけの能力者ではないのだ。
そして彼女は狙いをかえて、やや上空から、まさしく稲妻のように雷撃をガウルンのいる地点へと落とす!
「……え?」
その直前、まるで一切電気なんて浴びてはいないかのような素早い動きで、ガウルンは美琴の目前まで迫っていた。
「あ、ま〜いぜ。み・こ・とちゃん!」
「がふっ!」
ガウルンの嘲りの言葉が聞こえたそのときにはすでに、美琴の胴体にはガウルンの拳が叩き込まれた後だった。
叩き込まれた衝撃に美琴は数メートルは吹っ飛ばされる。
―――皮肉にも、まさしく稲妻に打たれたかのような衝撃に、美琴は指一本動かせなくなっていた。
ただ、攻撃を受けた胸だけが燃えるように痛む。
「……な、ん」
「あ? ああ、なるほど! なるほど! 何で? って聞きたいんだね、美琴ちゃんはぁ! 不思議なわけだ。
電気ショックで指一本まともに動かせないはずのこの俺が! どうして美琴ちゃんにこーんな簡単に反撃できたのかぁ!」
ぎゃはは、と笑いながらガウルンが近付いてくる。
間近に死を感じながらも、ガウルンの言葉は、まさしく今一番美琴が知りたかったことでもあった。
「いいぜぇ、やさしいやさしいこのガウルン様が教えてやるよ」
そして、美琴の前まで近付いてきたガウルンは美琴のそばまで近寄ると
「じゃーん」
と、ふざけた口調で自分の足を外してみせ、再び付け直す。
―――それが答え。
もちろん、受けた場所が義足だったからといって、美琴が全力で雷撃を放っていれば、その衝撃でガウルンを行動不能に陥らせることは十分に可能だった。
だが、美琴にガウルンを殺す気はなく普通に肉体に当たっていれば、十分に人を行動不能にするレベルの、完全に手加減されていた電撃は、その力をガウルンへと完全に届かせることは敵わなかった。
「だめだぜ〜。誰が見てるかわからないんだから、うかつに自分の武器や情報を見せちゃあ」
そして美琴が犯していた最大の2つの失策。
一つは、実験のつもりで「壁」に向かって放っていた電撃。その一撃はすぐ近くにあったここ、天文台からも見えていた。ガウルンにとっては戦う前から相手の手の内が見えていた。
相手の主武装が電気攻撃とわかれば、その裏をかく方法なんか幾つだって思いつく。美琴の一撃を一瞬遅らせた水の一投などは、まさに相手の攻撃がわかっていればこそのものだ。
そしてさらに、自身の目的。殺し合いに乗る気がないということをあっさりばらしたのも、彼女のミス。ただでさえ、殺気がない攻撃に殺す気はないという甘すぎる発言。
ガウルンは自身の安全を完全に確認した上で、この戦いに挑んだのだ。
「わかったかい? それじゃあ……」
にたにたとした笑みはそのまま、ガウルンの目、いや彼の放つ空気が変わる。そして―――
「死ね」
(う……そ)
決して外れることがない至近距離からの銛の一撃が、美琴へと打ち込まれる―――ことはなかった。
「誰だ?」
ガウルンは銛を数メートル先の開け放たれたままの出入り口へとむける。
一体いつの間にそこにいたのかにやにやと笑い顔を浮かべて、彼はいた。
人間失格、零崎人識。殺人鬼がそこにいた。
「おいおい、おっさんお前何よ? 俺みたいなんに訊かれたくないかもしれないけどさ。これって犯罪だぜ? 暴行傷害殺人未遂。
理解してるか? やっていいこと悪いこと」
笑みを浮かべつつ、呆れた声で人識は言う。
それを聞き、ガウルンは狙いは逸らさずに、空いていた手でぴしゃ、と自分の顔をたたいて言う。
「あー、そうだなあ。うん、そりゃもっともだ。けど、お前も言われたことはないか?」
「ん? 何を?」
「人の嫌な事をしちゃいけないって、な」
「うんうん、確かに」
「つまり……人が楽しんでる最中に水を差すんじゃねえ!」
言うなり、ガウルンは素早く人識に向かって銛を撃つ。
だが、そんな見え見えの一撃が殺人鬼に当たるはずもなく、人識はあっさり身をかわすとそのままガウルンのところへ襲い掛かろうとして―――彼は見た。
いつのまにか、ガウルンがまるで手品のように、もう片方の手に銛撃ち銃ではない、本物の拳銃を持っているところを。
「死ねよ、ばーか」
気付いた時にはもう遅い。銃弾が人識へと放たれる。
(え? じゃ、じゃあ……)
それを見ていた美琴は知る。自分はあの男に遊ばれていたことを。
あるいは最初からガウルンがここまで腕のたつ危険な相手だとわかっていたら、彼女も不用意に倒れた彼へと近付かなかったかも知れない。
平然と殺気や敵意を撒き散らす殺人狂と思えばこそ、油断したのだ。
そして、彼が誘導したそのままに美琴は引っかかり、助けに来てくれたらしいもう一人も今、この男のせいで命を落とす。
絶望に落ちる美琴の視界に、銃で撃たれた人識の姿が……。
ひょい。
「「え?」」
「おいおい、どいつもこいつもあぶねえなあ。ここにゃあ俺以外危険人物しかいないのかね?」
あっさりと銃をかわした人識はそのままぶつぶつと文句を呟く。
―――殺人鬼集団零崎一賊。
誰よりも殺意の塊である彼らは、当たり前のように殺気を「視る」
故に、撃たれる前から殺気によって軌道がわかる銃撃は、それがどんなに優れた不意打ちであっても彼らには通じない。
「てめえ……」
「で? どうするよおっさん。逃げるんだったら今の内だぜ? そんな武器で俺に勝とうなんざ十年遅い。こっから先は容赦しねーぞ」
「ちっ」
確かに悔しいが、このまま真っ向勝負でこの餓鬼とやりあうのは分が悪い。ガウルンは冷静に判断する。
ただでさえ手ごわそうな相手であることに加え、時間がたてばもう一人電撃使いが復活するのだ。
……ここで自分をあっさり逃がすような甘い相手だ、後々殺す機会はいくらでも回ってくる。
「くっ! 覚えていやがれ!」
「ちょ、ちょっと……っ!」
あっさりと相手を逃がす人識に、文句を言おうとして胸の痛みに美琴はうめく。
―――それがガウルンの命を救った。
「おいおい、大丈夫か? しっかりしろよ」
「!?」
すぐそばで聞こえた人識の声にびくりとガウルンは身を震わせる。
逃走に意識を向けたその一瞬。言い換えればガウルンの注意が人識から外れたそのわずかな時間の間に、いつのまにか人識はガウルンのすぐそばにまで近寄ってきていたのだ。
「てめえ!」
「おいおい、おっさん。あますぎだっつーの。逃がしてやるなんざ戯言に決まってんだろ。この俺に銃を向けた相手を許してやるほど、このおれはあまくねーぞ」
「おもしれえ……やってや……」
「と言いたいとこだけど、なんかアイツが」
と人識はガウルンの言葉をさえぎって、倒れてうめく美琴を指す。
「アイツがやばそうだから、戯言抜きに逃がしてやんよ。運が良いじゃん」
ぎり、と完全になめられた口調にガウルンは歯軋りした。
「貴様は……殺す!」
「ほいほい」
殺意を込めた視線で今度こそ、人識をその視界におさめながら、ガウルンは天文台からその姿を消す。
ガウルンの気配がいなくなったことを確認し、人識はきょろきょろと天文台のあちこち、とりわけ高所へと視線を向ける。
「んー。どう見ても蒼はここにいそうにねえなあ」
さすがにここから先は手がかりがない。
次はどこをあたろうか?
っとその前に。
倒れたままの美琴へと人識は歩く。
「ま、まずはあの子犬みてえな雰囲気の姉ちゃんの治療かね」
【B-1 天文台 一日目 深夜】
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】肋骨数本骨折
【装備】なし
【所持品】支給品一式 確認済支給品1〜3
【思考】
基本:この世界からの脱出、弱者の保護
1:知り合い(白井黒子、インデックス、上条当麻)との合流
2:当面は基本方針優先。B-1消滅の半日前ぐらいには黒子、当麻との合流を優先する。
3:助けてくれた相手(人識)と行動する?
【備考】
マップ端の境界線は単純な物理攻撃では破れないと考えています。
この殺し合いが勝者の能力を上げる為の絶対能力進化計画と似たような物であるかも知れないと考えていますが、当面のところ誰かに言う気はありません。
【零崎人識@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、礼園のナイフ9本@空の境界、七閃用鋼糸6/7@とある魔術の禁書目録、少女趣味@戯言シリーズ
[思考・状況]
1:《死線の蒼》はいそうにねえなあ
2:ぶらつきながら《死線の蒼》といーちゃんを探す。
3:子犬っぽい姉ちゃん(美琴)を治療する。頼まれたら一緒に行動しても良い?
4:両儀式に興味。
[備考]
とある約束のために自分から誰かを殺そうというつもりはありません。ただし相手から襲ってきた場合にまで約束を守るつもりはないようです。
ナイフが一本使い物にならなくなっています。
「くくっ、ははははっ! カシム以外にもあんな面白い奴がいるとはなあ! 楽しくなってきたぜ!」
月明かりの下、男は笑う。
男の喉、その左からはべっとりと血が流れ出している。
―――先の一瞬。人識が刃を止めていなければ間違いなくガウルンの頚動脈は断ち切られていた。
「主食がカシム! デザートにあのガキ! まだまだほかに面白い奴がいるかもなあ!」
どうせ自分は長くない。
地獄への道連れはなるべく多く、派手なほうが良い。
悪意の塊のような男は闇へと消える。
闇の中でもなお薫る血と死の匂いを漂わせ。
【B-1とC-1の境界 一日目 深夜】
【ガウルン@フルメタル・パニック!】 】
[状態]:膵臓癌 首から浅い出血
[装備]:銛撃ち銃(残り銛数3/5) IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾8/8+1)
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
1:どいつもこいつも皆殺し
2:カシム(宗介)とガキ(人識)は絶対に自分が殺す
3:かなめは半殺しにしてカシムの目の前で殺す
[備考]
癌の痛みは行動に影響を及ぼすことはありません。
2巻から3巻の間ぐらいからの出典です。
以上。
投下乙!
美琴助かったかー
しかしまさかよりにもよって殺人鬼に救われるとは
ガウルンもノリノリだし、ほんと乙でした
投下乙!
美琴…スペック的には強い筈なのに、やっぱまだ甘いなぁ
ガウルンはやっぱ見事だ
つか、人識やっぱ強いなw
予約の時点で「前門のガウルン、後門の零崎」といった美琴逃げてー!的な
展開を想像していてすまんかったw
スペックを見ると三者ともかなり強力だけど、経験と才能が優劣を決めたかな。
典型的マーダーなガウルンは今後どんな騒乱を撒き散らすやら。
投下乙でした。
肋骨骨折か……
再会して感極まった黒子に抱きつかれたら骨が内臓に刺さって死ぬかな?
リアルにそうなったら不幸過ぎるww
すいません少しオーバーしてしまいましたがアリソン、シズ、榎本とうかします。
「………………起きねぇ……」
深い溜め息と共にそう男が呟いた。
男の名前は榎本。
榎本は髪を掻きながら目の前に眠りこけている女を見つめる。
「……眠り姫か、あんたは」
榎本は忌々しく呟く。
その金髪の女は飛行機のコクピットで深い眠りに落ちていた。
とりあえずこの生き残りゲームから脱出を考えた榎本は脱出する手立てを見つける為にこの眠り姫から情報を聞き出そうとしたのだ。
だが、一向に起きる気配が無い。
榎本も起こす為に色々やったのだ。
体を揺すったり、耳元で叫んだり。
が、返ってくるのは寝言だけ。
それを榎本はかれこれ30分ぐらいはやった気がした。
「……いい加減、時間が勿体無いな」
舌打ちをしながら頭を抑える榎本。
一向に成果が出ないこの行動に段々苛立ってきたのだ。
30分近くの時間の無駄使いが腹立たしくもなってきており地面を蹴る。
こんな所で悠長に時間を潰している余裕など無いのだ。
早急に伊里野と浅羽を見つけ合流しなければならない。
今、こうしている間にも危険が彼らに迫っているかもしれないのだ。
そういった焦りが苛立ちをよび榎本を片手で頭を抑える。
「……どうする?」
目の前には未だに目を醒まさない眠り姫。
彼女がおきるのを待って何かしらの情報が得て、それが脱出にプラスになるようならそれでいい。
しかし、もし大した事もない情報だったら単なる時間潰ししかならない。
彼女が有能かどうかの判断は……見れば解っている。
こんな所で眠りこける様なら先が知れていると冷酷に榎本は判断し考える。
彼女が起きるのを待つか、それとも置いてここから立ち去るか。
こんな所に一人で寝ている女を置いていたらどうなるだろうと榎本は考える。
だが、榎本は自身の周囲をぐるっと一周、考えながらゆっくりと回って
「悪いな」
そして決断をした。
それは彼女を置いておく事。
本人も気付かない焦りからの選び取った選択だった。
時間が無い。
そう思ってしまったから。
榎本はやや気を悪くしながらも眠り姫のデイバックを彼女の前に置く。
それが最低限の榎本の妥協。
放置する彼女に出来る事だった。
何もないよりましだろうと思って。
しかしちゃっかりと支給された武器を貰っていったのだが。
大きな収穫と言えばベレッタM92とカノンという名のリボルバー。
カノンの方は寝ている彼女のものだったのだが。
後は榎本がそれなりに役に立ちそうなのと思ったものがはいっていた。
一つだけお笑い芸人が使うような白い大きなハリセンが入ってそれは彼女のデイバックにいれたままだった。
役にも立たないと榎本が判断したからだ。
「じゃあ……すまん」
そう、未だに眠りこけている彼女に呟き榎本は出口に向かって歩き出す。
仕方ない、そう呟きながら。
そう、仕方ないのだ。
ゆっくりしてる暇がない。
今は何よりも伊里野達を優先べきなのだ。
そう思いつつ、ただ歩く。
だが。
「………………おれのあほが」
立ち止まり、彼女に支給されていた拳銃、カノンとその予備弾が入っている袋を彼女が寝ている先に向かって投げる。
その直後、鈍く重たい音が響いた。
榎本は振り返らずそのまま出口に向かって走り出す。
榎本が銃を投げた理由。
気まぐれか、それとも罪悪感が。
それは誰にも分からないけど。
走り出した榎本の顔は何処かはれていた。
格納庫から出て榎本は空を見る。
未だ暗く先が見えない。
そして探すべき人達を思い出し大きく溜め息をつく。
こうしなければいけなかった元凶に対して文句を言うように。
「浅羽のあほが……」
そう、ごちる。
そんな彼の上でただ、星が輝いていた。
UFOも見えない空で。
星だけが輝いていた。
【B-6/西部/一日目・深夜】
【榎本@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタ M92(16/15+1)
[道具]:デイパック×2、べレッタの予備マガジン×4支給品一式ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:浅羽、伊里野との合流。
2:水前寺を見つけたらある程度裏の事情をばらして仲間に引き込む。
(いざとなれば記憶はごまかせばいい、と考えているためにかなり深い事情までばらしてしまう可能性があります)
3:できるだけ殺しはしない方向で
[備考]
※原作4巻からの参戦です。
※浅羽がこちらの話を聞かない可能性も考慮しています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間は少し遡り榎本が銃を投げた時の事。
その銃の袋のはそれなりのスピードを保ちながら眠っている女に向かっていく。
「………………っ!?」
それは鈍い音と共に彼女の眠る飛行機のコクピットに。
そして暫くの静寂。
だが榎本が完全去った後むくりと冬眠から醒めた熊の起き出す彼女。
何故か額を抑えながら不審げに辺りを見回し、そして
「………………………………うー」
低い呻き声。
生気の無い顔でもう一度当たりを見回して長い金髪を無造作に掻いて天井をみる。
「知らない……天井だ」
そう呟きもう一度コクピットの所で寝ようとする。
が、
「………………うー…………うー?………………あー」
低い呻き声を出し何かを思い出したように顎に手を当てた。
思い出すのはあの男の言葉。
そして、それを思い出した瞬間彼女の顔に急速に生気が溢れ始める。
「って……なんでぐっすり寝てるの!? 私!?……あーもう」
スイッチが入り、彼女――アリソン・シュルツ――は目覚めた。
コクピットから飛び起き地面に降りる。
迂闊。
ただ彼女はそれだけを思っていた。
あの男が言ったことは全て覚えている。
それなのに寝過ごしていた。
迂闊としかいえなかった。
「一応……軍人なんだけどなぁ」
アリソンは苦笑いを浮かべつつ近くに置いてあったデイバックとコクピットにおいてあったカノンを回収した。
彼女の頭の中には同じく苦笑いを浮かべている最愛の人と愛娘。
はぁとわざとらしく大きな溜め息を付き赤い軍服であるジャケットを羽織りなおす。
アリソン・シュルツは軍人であった。
彼女の世界で東側と呼ばれる「ロクシェ連邦」の新型飛行機のテストパイロットであり階級は大尉であった。
軍規なども割と破ったりもするが腐っても軍人である。
この異常事態に寝過ごすとは本人しては不覚であった。
だが、直ぐにあの男が言った言葉を吟味しアリソンはこの状況について一旦結論付ける。
「生き残れ……銃と一人しか生き残れない時点で……一人しか生き残れないサバイバルか」
そう、殺し合いであるということを結論づけたのだ。
アリソンはそれを悪趣味と吐き捨てるように言って不快感を露わにする。
元よりアリソンにこれに乗るなど考えることは無かった。
自身は人を守る軍人であり……何より。
「リリア……ヴィル……王子様もか」
自分の最愛の娘、リリア。
自分が生涯愛すと誓った男、ヴィルがいたのだから。
最もヴィルは偽名であるトラヴァスであったが。
そして、縁が深いイクストーヴァの王子、トレイズ。
この三名が居る時点で殺し合いに乗るという選択肢は有り得ない。
そう、アリソンは母親だったのだから。
そうには見えないほどの美貌だが35歳である。
「やれやれ……まさか娘まで」
アリソンはまた大きな溜め息を付く。
まさか自身の娘までとは思っていなかった。
リリアは何度も厄介ごとに巻き込まれていることは承知であったが、それでも心配でならない。
しかも今回はリリアにとっての王子様は傍にいるかは分からないのだから。
だが
「……まぁ、あの子なら大丈夫……きっと大丈夫。信じてる」
そう呟き、近くの飛行機を物色し始める。
リリアは持ち前の豪胆さで今まで乗り切っていった。
きっと今回もそうしている。
そう、アリソンは信じて。
「凄いわね……どんな技術が使われてるのかしら……しかし燃料切れ……か」
飛行機は物色する中でアリソンの世界ではありえないような技術の飛行機が何台もあった。
アリソンはそれに驚くも燃料切れである事にまた溜め息を付く。
どんなに凄くても乗れなければ意味が無いのだから。
そして全部の飛行機が燃料切れであるのを確認する。
「ちぇ……全部使えないか……残念ー」
そう悔しそうに言う。
これほどの飛行機、アリソンにとっては興味深々だった。
彼女は空を飛ぶのが好きだったから。
そしてそれは
「リリアもきっとここに来るかしら……?」
娘であるリリアにまで受け継がれている。
だから、リリアはここに来る。
そう、アリソンは何故だが確信できた。
それならば彼女はここで待っているというのも手だったが……
「リリアが危険な目にあってるかも知れないのに……動かない訳は無いわよ」
リリア達を率先的に探す。
そう決めたのだから。
娘が今も危険に巻き込まれてるかもしれないのにのうのうとまっていることなどできない。
元々待っているなんてじれったいだけだとアリソンは呟く。
彼女はそう、強い『母親』だった。
「それなら……」
アリソンは思いついたかのようにペンとメモを出しあえて『西側』であるベゼル語で文を書き出す。
それは、リリアとトレイズとヴィルに当てた手紙だった。
もし、ここにきたら彼女達に伝わるようにと。
彼女達なら東側の言葉も通じると知っていたからだ。
「これでよし……っと」
手早く手紙を仕上げ、それを何故かあったロクシェ軍の戦闘機のコクピットにおいていた。
これで自身が居たことを証明できるだろうと思って。
アリソンは大きく伸びをして
「よっし、いきますか」
声を張り上げ格納庫から出て行く。
その姿はしっかりとしており。
かっこいい『軍人』に見え。
そして、
たくましい『母親』のようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………」
暗い街をグリーンのセーターを着た20代前半ぐらいの男が歩いていた。
その男はシズと言った。
取りあえず生き残る事を前提に動いていた。
彼の目的は一つ。
帰って復讐を成し遂げるという事。
自身の父親を殺す。
ただ、それだけを決めていた男が歩いている。
シズは何も思わず空を見上げていた。
思うのは自身に従っていた陸という喋るの犬の事だけ。
彼は何をしているのだろうかと。
自分がいなくなって何をしているのか。
そう思ったときシズは苦笑いを浮かべる。
陸の事だ、きっと大丈夫だろうと思って。
それに、復讐を成し遂げたら陸は元々独りになる。
それなら変わりもしないか……そう一人呟いてまた歩き出す。
何もなかった。
ただ、復讐を成し遂げればよかった。
それしか……残されてないだから。
そうシズは思い自嘲気味に笑った時前を歩いている女の人を見つける。
シズが剣に手をかけたと同時に女の人も気付いた様子で近づいてきた。
シズはその彼女に遠くから話しかける。
「……貴方はこの生き残りに……」
「ううん、脱出したいだけよ。殺さずに、皆とね……貴方は?」
「……俺は生き残る、絶対に。最も殺しには乗らないけどね」
お互いに殺し合いに乗ってない事を確認すると安心したかのように互いに近づいてきた。
そしてシズは彼女に笑みを持って話しかける。
「俺はシズ……貴方は?」
「アリソンよ、よろしく」
そう、朗らかに笑うアリソンに何処か懐かしいのを感じながらもシズは握手をした。
アリソンは変わらず笑っていて。
シズは何故だがその笑みが眩しかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「取りあえず、互いに脱出の手がかりは……なしか」
「そうだね」
あれからシズとアリソンは情報交換を始めた。
最も互いに大した情報も持ってないのでアリソンが自身の娘達の事を話しただけなのだが。
互いに情報も大した事を持ってない事を確認し、やがてシズは
「なら、もう行くよ」
そう言った。
特に情報も無いなら留まっている必要はない。
シズはそう判断したから。
彼の心には復讐しかないのだから。
だが
「ちょーっと、待って」
「?」
「なんで生き残りたいの?」
アリソンはシズを引き止める。
簡単な質問だけを簡素に伝えて。
シズは至極真っ当に言う。
「生き残りたいと思うのは……普通だろう」
そういって。
胸に秘める復讐心を隠しながら。
だが、アリソンは
「嘘つきね」
冷たくそう言って直後乾いた音が響いた。
「なっ!? それはどこから!?」
シズは驚いたように頭を抑える。
アリソンに叩かれたのだ、ハリセンで、全力で。
アリソンはそれでも目は冷たくシズを睨んでいた。
「どこからでもいいのよ。シズ。嘘ついてるでしょ?」
「そんなわけない」
「……貴方生きたいといってる割には目が死んでるわよ?」
アリソンにそういわれてシズは思わず顔を手で抑える。
目が死んでいる。
何故かその言葉が心を見透かされている様で。
途轍もなく嫌だった。
「何が……俺は別に」
「何か隠してるでしょ……いいなさい」
「べつ……いたっ!? 叩く……いたっ!?」
有無を言わさずハリセンで叩くアリソン。
シズはそのアリソンの横暴に思わず退きながらも
「帰って……復讐したいだけだ……その先なんて知らないさ」
そう告げた。
告げるつもりなど無かったのだが。
シズは思ったのだ。
アリソンの眼差しが何処か懐かしいものに見えて。
それは昔……『母親』に見られているような暖かいような眼差しに感じて。
つい、言ってしまった。
「ふぅん……」
アリソンはそう呟き考える様に腕を組んで。
やがて
「寂しいかもよ? 復讐なんて。私が最近体験した中では結局何も残らず失っただけ……そんなものよ?」
諭すように優しく言った。
あやす様に。
正す様に。
そう、静かに。
シズは面食らうもやがて
「……それがどうした? 俺は元々何も残ってない」
「……そうかしら? そうには見えないけど?」
「…………」
反論するもアリソンがじっと見つめてくる。
その眼差しがシズにはどうにも苦手で直視はできない。
自身には何も残っていない。
そう思い続けているのだったから。
それを覆させられるような気がして。
堪らなく嫌だった。
だから。
「俺はもう行くよ……」
そのまま振り返って歩き出す。
これ以上アリソンを見てられなかった。
母性溢れるあの目が。
苦手で苦手で堪らなかったから。
「なら、私は勝手についていくわ。心配だから」
「ついてくるな」
「どうするも私の勝手よ。それこそ私の前を歩かないでちょうだい」
「……くっ」
シズはそう突き放したはずなのにアリソンが付いてくる。
どんなに言っても付いてくるであろう。
諦めたようにシズは歩き出す。
それをアリソンは後ろから付いていく様に歩き出した。
アリソンがシズを見て思った事。
それは何処か戻れない所に無理して向かっていくようなそんな様子だった。
アリソンはそんなシズを止めたいと思った。
何故か、それはアリソンにも判っていなかったけど。
彼女にある母性がそうさせたかもしれない。
答えは解らないけど。
でも、今アリソンはシズの後ろを静かに歩いている。
そのシズを見つめるアリソンの目は。
確かに
『母親』の様だった。
【B-4/南部/一日目・黎明】
【シズ@キノの旅―the beautiful world―】
【状態】健康
【装備】贄殿遮那@灼眼のシャナ
【道具】デイパック、支給品一式、不明支給品(0~2個)
【思考】
0: 生き残る。
1: 一先ずは脱出を目指す。
2: それが不可能ならば殺し合いに乗る。
3:アリソンは気にしない
〔備考〕
※ 参戦時期は6巻『祝福のつもり』より前です。
※ 殺し合いをどこかの国の富豪の開いた悪趣味な催しだと考えています。
【アリソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:カノン(6/6)@キノの旅―the beautiful world― かなめのハリセン@フルメタルパニック!
[道具]:デイパック、支給品一式、カノン予備弾24
[思考・状況]
1:シズが心配だから付いていく。
2:リリア達と合流。
[備考]
※一応、西東天の説明は聞いていました。ただ、会場内で目を覚ましていないだけです。
※格納庫の中にリリア、トレイズ、トラヴァスにあてた手紙が残っています。
【カノン@キノの旅―the beautiful world―】
先込め式44口径のリボルバー型パースエイダー。
キノが師匠から受け継いだパースエイダーの一つ。
現実世界のコルトM1851がモデルと思われる。
【かなめのハリセン@フルメタルパニック!】
かなめが宗介相手に突っ込む時に使うハリセン。
形状は普通の白い大きな普通のハリセン。
かなめ何処からだすかは永久の謎である。
投下終了しました。
このたびは遅れてしまい失礼しました。
支援有難うございました。
投下GJ! そうか、保護者か。
だがアリソンは母親に似た立場に立ち、榎本は保護者の立場に立たず。
こいつら全員がどんな行動を取るかはなんか読めんな。どうなるやら。
そして遂にやっとようやくカノンが来たかw
投下お疲れ様です。
危うい立場にいたシズだが、正確に難ありだが保護者が同伴することで落ち着く……かも?
移動することで結局リリア達とは入れ違いになりそうか。アリソンが残した文字は言語に
関する考察にまで発展するかも?
一つ気になった点が。榎本氏のデイパックの数ですが、「1」の間違いでしょうか?
投下乙です。
アリソンという保護者を得たシズが、多少落ち着くかどうか楽しみです。
あとはどっかに行った榎本もw
後、アリソンの備考欄1、西東天の説明云々はもう消去していいのでは?
投下乙です。
アリソンとシズがいいコンビになりそう
そしてお願いというか許可を得たいのですが、この度某所でロワを開催いたす事になりました。
ですが、現時点ではマップ職人が不在で困っております。
ですのでよろしければ、今ロワの前身に当たるラノロワオルタナティブで使用された地図を借りても
よろしいでしょうか?
よろしければ了承をお願い申し上げます。
それはあんたが決めていいもんじゃないんじゃないの?
原作バトロワの地図使えばいいと思うよ。
地図職人がいない幾つかのパロロワがそうしてるみたいだし。
感想有難うございます。
指摘の箇所はウィキ登録後に修正したいと思います。
してきありがとうございました
最近動きがなくてしょぼーん。
……とか思ってたけど、前回の投下からまだ一週間経過してないじゃないか。
どういうことか説明してちょうだい!
規制だな
絶賛把握作業中かと思われ。
元々、それぞれの書き手の把握範囲が狭い様子はあったから。
自由な組み合わせが作れる登場話はサクサク書けても、2話目のハードルは高そうだ。
始まってから把握するって言っても、十数巻越えの作品がゴロゴロあるしな。
あと、「読んだことがある」と「書ける」の間のギャップが大きそうな作品がけっこうある。
把握作業に時間がかかるのは、仕方ないかと。
といってる間に予約キター!
出遅れた……
今回予約とまったく同じメンバーで構想練っていたのに……
コマンドーネタで返そうと思った異端が通りますよ。
旧ラノロワオルタwikiページ、予定通り自沈しました。
関係者の皆様方、お疲れ様でした。
旧wikiで掲載されていたファイルは、現wiki保管庫にzip形式で
保存しておりますので、そちらからの参照をお願いします。
予約少ない理由の一つに動かしにくさもあると思うぜ。
特にマップの下半分。
第一放送前に三分の一ぐらい死亡者が出ても不思議じゃねえw
危険地帯すぐるwwwww
予約していた 浅羽、晶穂、大河、 投下します。
――浅羽直之が我にかえったのは、その少女が転んであげた、悲鳴とも呻き声ともつかぬ音のせいだった。
園山基地の裏山で過ごした夏休みのせいで、自分でも気づかないうちに山歩きには慣れていたのかもしれない。
でも確かにこれ、普通の女の子には厳しい道かもな。
この下り斜面とか、岩が作る足元の段差だとか、木の根っこだとか。色々あるし。
頼りの月明かりだって、ときどき雲に隠れたりしているし、うん、そんな所で走ったらそりゃ転ぶよな。
浅羽は、ぼんやりとそんなことを考えた。
木々の隙間の向こう側には、震えながらも立ちあがろうとしている少女の姿が見える。さっきの声の主だ。
遠目に見ても、身長は150センチにも届かないだろう。
体格からすると小学生とさえ思えてしまうが、しかしあの制服だ。私立の中学か何か、なのだろうか。
よくよく闇の中に目を凝らすと、少女には右手がない。すっぱりと失われている。
片手がないせいで転んだ時にも咄嗟に手がつけず、だから膝のあたりも相当擦り剥けてしまっている。
既に誰かに襲われ、必死で逃げてきた所なのだろうか。
見るからに痛々しいその姿に、思わず浅羽の顔もしかめられる。
それで――これから何をするんだっけ?
当初の目的も忘れかけ、浅羽は自問自答する。
そうだ。
あの子を、「やっつける」んだ。
あの子を手始めとして、みんな、全員、「やっつける」んだ。
この場に集められた他の58人を蹴落として、伊里野加奈ただ1人を残らせる。
そんなシンプルな決意を決め、浅羽が歩き出して小一時間ほど。
まさかこんな山の中に、他の参加者がのんびりしているはずはない。
根拠もなくそう考え、漫然と山を下っていた所で、思いがけずも遠くで転ぶ少女を「見つけてしまった」のだった。
なんであんなに急いでいるんだろう、と首を傾げて、初めて「エリアの切り取り」のことを思いだす始末だ。
つまりはその少女を発見しなければ、浅羽はこの「A−2エリア」と共に切り取られていたのかもしれない。
自分が脱落する理由にすら気づかぬまま、最も間抜けな「終わり」を迎えていたのかもしれない。
九死に一生を得ていたことにすら思い至らず、木々の向こうに見える少女が命の恩人であることすら考えず。
浅羽は、担いでいた銃を抱きかかえるように持ち直した。すぐにでも撃てるよう、身構えた。
これをあの子に向けて、引き金を引く――あの子に銃弾を浴びせかけて、バラバラにする。
ちょっと想像しただけで、手が震えた。心が揺れた。
「……ちょっと木が邪魔だな」
誰に聞かせるわけでもなく、浅羽は声に出して呟いた。
山と言っても、この山は禿山ではない。
視線を遮る木々はけっこうな密度で生えているし、だからこそ少女はまだ、浅羽に気づいていないのだ。
だけど、ただの中学生に過ぎない浅羽には、木々の隙間を縫っての狙撃なんてできっこない。
この地形この距離では、この銃は使えない。
どこか言い訳がましい思考で自分を納得させながら、浅羽は1人うなずいた。
もう少し、襲撃に適した場所に出るまで、あの子の後を静かに追いかけよう。
どうせ、あの子はまだ、こっちに気づいていないようだし――。
いつでも襲えるのなら、もっとこう、確実な状況で――。
そんな風に考える浅羽には、それが「問題の先送り」でしかないことなど、もちろん自覚できてはいなかった。
◇
――確かにその小柄な少女・逢坂大河は、その時点では、浅羽直之の存在に気づいていなかった。
いつもの彼女らしくもなく怯え、恐怖し、あてもなく逃げる大河には、確かにそんな余裕はなかったのだ。
けれども――浅羽がもう少し周囲に気を配っていれば、きっと気がつけたはずだ。
その少女に注目していた、もう1対の目の存在に。
少女のみならず浅羽をも発見してしまい、まん丸に見開かれた2つの瞳に。
彼女の被っていた黄色いヘルメットは、闇夜の中でも、見落とすことの方がむしろ難しい。
「浅羽……なの?」
その第三の人物、須藤晶穂は、呆然と呟いた。
呟いてから、声に出してしまったことを後悔した。
何かの見間違いだった、とでも思い込んで、さっさと逃げてしまえば良かったのだ。
きっとその方が何倍も良かったはずだ。
でも、こうしてはっきり名前を口にしてしまえば、もうそれもできない。
視界の隅で、あの少女が立ちあがり、再び駆けだす。
木々の向こう側で、浅羽もそれを追って走りだす。
もう見間違いようもないその横顔には、どこか必死な、思いつめたような表情。
その腕に抱えられていたのは、かなりの長さと重さがありそうな、立派な銃。
晶穂もまた、慌てて2人の後を追って走りだした。目立つ黄色の頭を、精一杯低く下げて。
実のところ、少女との接触に迷い、行動を起こせなかったのは晶穂も同じだった。
女の子を助けよう――そう決めたその瞬間、晶穂もまた、少女の右手の欠損に気がついてしまったのだ。
え、何あれ。怪我してるの? でも、血は出てないようだし、痛くないのかな……?
……などじっくり考える間もなく、小柄な少女は再び立ちあがり、逃走を再開したのだ。
タイミングを逸してしまった晶穂は、中途半端な距離を開けたまま、ただその背を追うしかなかった。
そんな奇妙な追跡劇を始めてすぐに、晶穂は少女が進路を南東に向けていることに気がついた。
いや、南東というよりも……南の方角。
もちろん地形の関係上、谷もある。峰もある。まっすぐ進めはしない。だから進路はやや東の方にズレる。
それでも彼女は、今いるA−2から東のA−3に抜けるのではなく、南のB−2を目指しているのだと気がついた。
なるほど、A−3エリアに逃げ込んでも、また2時間後にはそこが「削り取られる」。ゆっくり休むこともできない。
その点、B−2に入ることが出来れば、たっぷり時間の余裕が得られるわけだ。この違いは大きい。
それに南の方なら、「川」という明確な目印がある。
山の中にエリアを分ける線が引かれているわけではないけれど、川が見えたらまず一安心、と言ったところか。
パニック状態であろう頭で、しかしそこまで考えが及ぶ少女のことを、晶穂はほんの少しだけ再評価した。
ひょっとしたらこの子は、本当は自分がわざわざ助けるまでもない、凄く強い女の子なんじゃないのか――?
ちょうどそんなことを思った、その時だった。
晶穂の脳裏に浮かんだ考えを嘲笑うように、少女はまたしても転んでしまって――
溜息をつきつつ、何の気なしに周囲を見回した晶穂の目に、飛び込んできたのだった。
凶悪な銃を構え、必死の形相で少女を追う、少年の姿が。
同じクラス・同じ新聞部で毎日顔を合わせていた、あの少年の姿が。
――浅羽、あんた何考えてんの!?
2人から微妙な距離を置いて走りながら、晶穂は思わず叫びたくなった。問い詰めたくなった。
けれど実際にそうする勇気も湧かなくて、ごくりと唾と一緒に声を飲み込む。飲み込んでただ走る。
そう。
晶穂は、浅羽の考えを知りたい、という以上に、知るのが怖い、と思ってしまったのだ。
「あの」浅羽が、ケンカなどほとんどしたこともないような「あの」浅羽が、怪我をした少女を追いかけている。
今まで晶穂が見たこともないような怖い目をして、ゴツい銃を握り締めて、一心不乱に追跡している。
その銃でいったい、あの子に何をする気なのか。
声もかけずに追いかけて、どうするつもりなのか。
撃つのか。傷つけるのか。殺すのか。
一体何のために。
いや、一体「誰の」ために?
そこまで考えて――晶穂は、「答えを聞きたくない」と思ってしまった。
かなりの確信を持って答えが予想できてしまって、でも、その答えを確かめたくない。そう思ってしまったのだ。
密かに彼に心を寄せる乙女だからこそ理解できてしまったし、だからこそ、最悪の答えに直面するのが怖かった。
これは罰かもしれない。ふと晶穂はそう思った。
愛犬・十兵衛の死に泣き崩れる清美の姿が、今でも鮮明に脳裏に浮かぶ。
あの時に自覚してしまった、あまりに醜悪な自分の姿。
自分は傷ついたクラスメイトを慰めるつもりなんて、本当はなかったのかもしれない。
ただ他人の心の傷を覗き込んで暴き立てて、醜悪な好奇心を満足させていただけなのかもしれない。
……そんな耐え難い罪悪感と同質な痛みが、またも晶穂の心を苛んでいた。
果たして自分は、本当にあの少女を助ける気があったのだろうか。
いや、声をかけようと思ったのは本当だ。それは間違いなく本当だ。
右手の欠落に息を呑んでさえいなければ、きっとそのまま声をかけていたのだろう。
だけど。
傷つきボロボロになった少女に、上っ面だけの優しい声をかけ、保護し、助け起こして――それから?
それから自分は、どうするつもりだったのだ?
それほどの怪我を負った経緯、必死に逃げることになった経緯を、ただ暴きたかっただけではないのか?
信じがたい悪趣味、最低最悪の覗き趣味を、またもや発揮しようとしていたのではないか?
なら、きっとこれは――
こんな所で、見たくもない浅羽の姿に出くわしてしまったのは、そんな罪に対する、罰だ。
晶穂は、そう思った。
右手のない少女が、藪を掻き分け、木々の隙間をすり抜け、またひとつ山の稜線を越える。
一瞬彼女の姿を見失いながらも、浅羽と晶穂も続いて稜線を越える。
まだ浅羽は晶穂の存在に気づかない。
こんなにも目立つ黄色のヘルメットに、未だ気づいてくれない。
そして――山の峰を越えたその場所で、晶穂は思わず立ち止まった。
そこは谷だった。
目の前にはかなりの急勾配の下り坂。
斜面が厳しいせいか、木々はまばらで岩肌があちこちで剥きだしになっている。
大きな岩があちこちに転がっている。中には直径が人の背丈ほどもある岩もある。
そして――谷底近くまで来た所で斜面はやや緩やかになっていて、そこに確かに、河原になっていた。
地図に描かれていたのはコレだろう、と確信させるほどの太さを持った、川が流れていた。
先ほどの少女も、相変わらずの危なっかしい足取りで、その斜面を下っていく。
距離を目測して想像するに、既に地図の上ではA−2エリアを脱し、B−2エリアに入っているあたりだろうか。
なんとなく、どっと疲れを感じ、その場にへたり込みそうになった晶穂は、
闇夜を切り裂く連続する銃声に、思わず腰を抜かした。
◇
浅羽直之は、そしてその場に無様にひっくり返った。
眼下、斜面の途中には、驚きに目を見開き振り向いた、小柄な少女。
絶好の不意打ちの機会に、しかし仕留め損ねた最初の獲物。
初めて正面から見たその顔は、思っていたよりも可愛らしい。
ミルク色の頬。不思議な色合いの長い髪。花びらのように可憐な唇に、小柄で華奢な身体のライン。
陳腐なたとえになるが、まるでお人形さんのようだ、と思った。
こんな場で出会っていなければ、ひょっとしたら見とれてしまっていたかもしれない。
だが、今の浅羽にとっては、それどころではなかった。
そもそも少女の顔を見ることもないはずだったのだ。
気持ちが揺らいでしまうその前に、さっさと後ろから撃ち殺し、そのまま立ち去る予定だったのだ。
とうとう待ち望んでいた「開けた場所」に出てしまって、自己欺瞞の言葉も尽き果てて、
それで、仕方なく覚悟を決めて飛び出したはずだったのだ。
なのに、何故。
何故、こんなにも当たらないのだろう。
何故自分は、呆けた顔で尻餅なんてついているのだろう。
銃ならついこの前、あの南の島で撃ったばかりだ。なのに。
説明書に「軽」機関銃とあったから、大きいのは外見だけで、自分にも扱えるモノだろうとタカをくくっていたのに。
手の中のミニミ軽機関銃は、トリガーを引いた途端に激しく暴れだし、浅羽を仰向けに押し倒したのだ。
大量にばら撒かれた弾丸は全て少女の頭の上を越えて虚空に飛び去り、1発だって当たりはしなかった。
それほどの、反動だった。
全く予想外の、反動だった。
浅羽直之は、別に軍事マニアというわけではない。
UFO研究の余禄として、航空機などについてはそれなりに知識はあった。
園原基地の近くに住む一般市民として、軍人の階級やら何やらも自然と知ってはいた。
が、しかしそれだけだ。
だから「サブマシンガン」と「マシンガン」の詳しい違いについても、当然、知らない。
なまじタイコンデロガで最新鋭のサブマシンガンを手にした経験が、災いした。
「その程度の反動」しか想像していなかった浅羽の身体は、だから、衝撃に耐え切れるはずがなかったのだ。
「サブマシンガン」と、「ライトマシンガン」。
日本語に訳せば、「短機関銃」と「軽機関銃」。
どちらも個人が携行することを想定して作られた銃器ではある。
どちらも連射性能を重視し、狙って当てるより弾幕を張ることを主眼に置いた兵器ではある。
だが「サブマシンガン」の弾丸が拳銃弾であるのに対し、「サブ」のつかない「マシンガン」の弾丸はライフル弾。
射程も、威力も、反動も、全てにおいて大きな違いがあるのだ。
特性も運用思想も、全く異なる代物なのだ。
「軽」機関銃と名づけられていても、それは陣地や車両に据え置かないと使えない「重」機関銃と対比しての名前。
あくまで「個人で運搬することもできる」、という程度の意味しかない。
決して「軽い」武器では、ない。
銃身の下に標準装備されたバイポット(二脚)は、伊達やファッションではなく。
それを伸ばし大地に伏せて、反動を抑えながら使うことが大前提となっているのだ。
さもなくば、正しい姿勢で肩に銃床を押し付け両手で構え、全身で衝撃を吸収するか、である。
これが園原基地の近くでも見かけた、プロレスラーのような巨漢の米兵とかなら、また違ったのかもしれない。
だが、訓練も受けていない「ただの中学生」が、不十分な腰溜めの格好で乱射しようというのは、無謀に過ぎた。
映画などでもお馴染みのその体勢は、あくまで「サブマシンガンを撃つ時の」姿勢である。
「……くそっ!」
悪態をつきながらも、浅羽はそれでも立ちあがる。
立ち上がって、少女に向けて引き金を引いて――またひっくり返る。当然のようにひっくり返る。
また1発も当たらなかった。面白いくらいに当たらなかった。
あたりに盛大に空薬莢が撒き散らされる。闇夜に軽い金属音が響き渡る。
空に向けて無駄に2、3秒ほども弾丸をばら撒いて、ようやく引き金から指が離れる。
ここには無知な少年に正しい射撃方法を教えてくれる教官はおらず、だから彼は何も学習することが出来ない。
失敗から、何も学べない。
二度目の射撃に小柄な少女の金縛りも解け、慌てた様子で手近な大岩の影に飛び込んでしまう。
浅羽の見落としていた遮蔽物。生い茂る木々などよりよっぽど頑丈な盾。
それを浅羽は、みすみす見ていることしかできない。
視界の隅にその姿を収めながら、彼女を正しく照準に捉えることができない。
「ああもう、何なんだよこの銃は! 見かけばかりでかくて、ちっとも役に立たないじゃないか!」
ここまでの不始末の責任を全て銃に押し付けて、浅羽は苛立った声をあげる。
両手にかかる10kg近い重量が、いまさらながらに重たく感じられる。
こんな暴れ馬、どうやって扱えというのか。こんなもの、扱える奴なんているのか。
それでもひょっとしたら、接近して撃てば当たるかもしれない。
至近距離からなら、ひっくり返る前に1発くらいは当たってくれるかもしれない。
そう考え直し、少女に近づこうと斜面を滑り降りかけた浅羽は、
「……あんた、何してんの、よ……」
「あ…………」
背後から、聞きたくもなかった声を、聞いた。
◇
「何、してんの、よ……」
ほんとうは、声をかけるつもりはなかった。声をあげるつもりはなかった。
けれど、気がついた時には、隠れていた物陰から1歩踏み出し、須藤晶穂は掠れた言葉を吐いていた。
その発砲がパニックでも混乱でもなく、確固たる殺意に基づいてるのだと分かってしまって、思わず動いていた。
抜けたはずの腰に、いつの間に力が蘇っていて、いつの間にか立ちあがっていた。
斜面の下の方には、長い髪のあの少女が隠れた岩。
その手前に、悪戯を見つかった子供のような表情の、浅羽直之。
そしてさらにそれより上方、高いところから、晶穂はその両者を見下ろしていた。
どんな顔をして彼と向き合うべきなのかずっと悩んでいたが、実際に向き合ってしまって晶穂はその答えを知る。
こんな時、どうやら人間は表情を忘れてしまうものらしい。
一切の電気信号をシャットアウトされた表情筋は、仮面のような無表情を浅羽に向けているはずだ。
怒りも、悲しみも、笑いも、呆れさえも浮かばない。
園原中学校でも不評な真っ黄色のヘルメットが少しズレて、晶穂の目元に影を落とす。
感情のない顔のまま、同じく感情のない声で、淡々と言葉だけが零れていく。
「答えてよ、浅羽……こたえて、よ……」
「晶穂……これは、その、」
「何て言うの、それ。
……まあ銃の名前なんて何でもいいけどさ、そんなモノ人に向けたら、危ないじゃない。
怪我とかしたら、どうするの。ねえ。浅羽ってば、」
叱り付けるような言葉を平坦なトーンで吐きながら、我ながら的外れなことを言っているな、と晶穂は思う。
危ないからこそ、人を殺せるからこそ、銃を向けてたんじゃないか。それくらい、自分にだって分かってる。
目の前で浅羽の表情がコロコロと変わっていく。
焦ったような顔。泣き出す寸前のような情けない顔。ふて腐れたような顔。神妙な顔。苛立ち混じりの顔。
コロコロと、コロコロと、まるで百面相のように入れ替わって。
でも、一言も発しない。
何も言ってくれない。
沈黙に耐え切れなくなったのは、晶穂の方だった。
胃の腑をねじ切られるような間に耐え切れず、思わず、言ってしまった。一足飛びに言ってしまった。
「あんた、まさか……みんな、こ、ころ、殺す気、なの?
本気で?
あたしや、部長も、みんなみんな……殺す、っていうの?」
「…………」
「じゃあ……伊里野も、殺す、の?」
ギリッ。
そして晶穂は、見た。聞いた。
「その名前」を出した瞬間、彼の表情が大きく歪むのを。
彼の口元が、自分を、晶穂を殺すのか、と問うた時にも発しなかった歯軋りを、確かに立てたのを。
学園祭。ファイアーストーム。探しても見つからなかった浅羽。学園祭の最中ずっと姿を見せなかった伊里野。
クラスの中でも浮いていた転校生の伊里野加奈。たった1人その伊里野に構っていた浅羽。
ヒントは山ほど与えられていて、そしてその上で、この反応だ。
答えは、既に口に出されているようなものだった。
「……仕方ない、じゃないか……。いや、違う……違うんだ!」
「何が違うのよっ!」
反射的に怒鳴った晶穂は、そして次の瞬間、自分の感情が休息に冷えていくのを自覚した。
――銃口が、向けられていた。
さっきあれだけ撃ってそれでも少女に1発も当たらなかったあの機関銃を、こちらに向けていた。
そして、一言。
「伊里野は、殺さない。……伊里野だけは、殺させない!」
足元が音を立てて崩れていくような錯覚を覚えた。
きっと、これは罰だ。
無神経で覗き屋で醜悪な好奇心丸出しな自分に対する、罰なのだ。
晶穂はぼんやりと、そんなことを思っていた。
浅羽に銃口を向けられて、しかし、逃げる気にも避ける気にも、なれなかった。
銃声が響き、比喩ではなく文字通り、足元が崩れた。
浅羽が姿勢を崩しながら撃ち放った弾丸は、またしても標的を捉えられなかった。
暴力的な弾丸の嵐が晶穂の足元近くを舐めるように通り過ぎ、土が穿たれ岩が砕ける。
足場を失い、バランスを崩して、さっきの女の子のように無様に転んで、そのまま斜面に投げ出される。
そのままゴロゴロと斜面を転がり落ちてしまう。
銃声が一旦途切れ、浅羽が転がる晶穂に銃口を向け直しているのが見える。
再び、一続きの銃声。そして、弾丸が追ってくる。着弾点が少しずつ近づいてくる。
1発でも当たれば無事では済まないであろう圧倒的な破壊が、やってくる。
土くれを撒き散らしながら、浅羽の拒絶が迫ってくる。
そんな様子をきちんと認識していながら、晶穂は、泣くことすらできずに思った。
……もう、いいや。
やっぱり浅羽は、伊里野のために「そんな決断」をしてしまって、そして、晶穂にさえ銃口を向けてきたのだ。
なら……もう、いいや。
何もかも、もう、いいや。
心が折れる音が聞こえた気がした。
あまりに手酷い失恋に、全てを投げ出したくなった。
普段の彼女らしくもなく諦めかけた晶穂は、そして、次の瞬間、
岩陰からぬっ、と伸びてきた腕に、いきなり掴まれて引っ張られた。
どこにそんな力があったのか、あまりに細く弱々しい「左腕」1本で、転がる晶穂の進路が強引に曲げられる。
弾丸の嵐がほんの1秒前まで晶穂の身体のあった所を通り過ぎていく。
引きずり込まれた遮蔽物、人の背丈ほどもある岩の縁を弾丸が掠め、耳障りな音が響く。
……助けられたのだ。
たっぷり2呼吸ほどの間をおいて、晶穂はようやく自分の身に起こった事態を理解する。
誰に? 決まっている。
この場にいた、もう1人の登場人物。
晶穂と浅羽の問答の間、すっかり蚊帳の外に置かれていた人物。
名前も知らない、小柄で髪の長い、右手がすっぱり斬りおとされた女の子。
浅羽より高い位置にいたはずの晶穂は、斜面を転がるうちに浅羽の傍を通り過ぎていたのだろう。
通り過ぎて、そして、より低い位置にいたはずの少女のすぐ傍まで転がってきて……逆に助けられた、のだろう。
ようやくそこまで思考が追いついた晶穂は、咄嗟にお礼の言葉を言おうとして、顔をあげて、
「……ふざけてんじゃ……ないわよっ……!」
そこに、怒りに震える、小さくも獰猛な猛獣の姿を、認めた。
◇
そう。
その少女、逢坂大河は、怒り狂っていた。
山頂近くで零崎人識に殴りかかった時のような、底の浅い怒りではない。
もっと魂の奥深い所から、本気で、真剣に、怒っていた。
なんで、こんな目に会わねばならないのか。
なんで、あんだけ必死に逃げ惑わねばならないのか。
なんで、右手やら膝やら、こんな怪我をしなきゃならないのか。
なんで、この自分が北村や、実乃梨や、竜児や、ばかちーなどに助けを求めなければならないのか。
なんで、こんな中学生くらいのガキの振り回す無駄に五月蝿いだけの銃に怯えて隠れてなければならないのか。
……もちろん、それらの理由も、怒りの一部を占めてはいた。
それらの理由が、怒りの発端ではあった。
零崎人識との遭遇の混乱を過ぎ、エリア切り取りの恐怖を脱し、眼前の機関銃にも一息つける岩陰を得て。
恐慌状態が過ぎれば、その後に湧きあがるのは当然、怒りしかない。
これまでの鬱憤の分、感情は反転する。
でもきっと、それだけではここまで本気の怒りには至らない。
逢坂大河という人間は自分のことでも怒るが、それ以上に、他人のためにこそ、その怒りを爆発させる。
大河は、浅羽、と呼ばれたあの少年の言い分に、我慢がならなかった。
事情はさっぱり分からない。
晶穂、と呼ばれた少女との会話は断片的で、彼らを取り巻く人間関係なんてまるで想像も出来ない。
けれど……それでも、容易に分かってしまったことはある。
浅羽は、伊里野とかいう奴のために、それ以外の全員をこの舞台から蹴落とそうとしているのだ。
おそらくは親友と言ってもいいであろう距離に居た、晶穂もろとも。
伊里野という名前には、かすかに覚えがある。
伊里野加奈。確か名簿に載っていた。あまり見ない苗字だから、記憶の片隅に残っていた。
名前からして、きっと女の子。
浅羽という男の子は、その彼女のことが好きなのだろうか?
……たぶん、好きなのだろう。
あの年頃の男の子が、自分さえも犠牲にして救いたい、女の子を助けたい、と考える理由としては、
恋愛感情以外には、ちょっと思いつかない。
それが何かの勘違いであったとしても、恋とか愛とか呼ぶには青すぎるものであったとしても、だ。
そこまで考えて――大河は、猛烈に腹が立ったのだ。
「『好き』って気持ちは、『そんなこと』の『言い訳』に使っていいようなもんじゃ、ないっ……!」
大河自身も、恋する乙女だ。
ままならない心と身体を持て余し、何をやっても上手くいかなくて、1人身悶えする日々だ。
だから分かる。
だから言い切れる。
いや、実は自信なんて大してありはしないが、それでもあえて言い切ってしまう。
あのガキは、『そんな理由』で1人救い出されてしまう彼女の気持ちを、少しでも考えたのだろうか。
仮に全てが上手くいったとして、その後、その大事な彼女がどんな気持ちを抱くのか、理解してるのだろうか。
何が「伊里野は殺さない」だ、「伊里野だけは殺させない」だ。
そんなの、単に自分に酔って罪悪感を誤魔化してるだけの、弱虫の台詞だ。
浅羽は「伊里野のため」と言いつつ、実のところ、「伊里野のせい」にして責任を逃れようとしているだけなのだ。
自分以外の誰かのために必死になること自体は、尊いことだとも思う。……が、これは、違う。
こいつは、違う。
たぶんきっと、浅羽自身も、後で後悔する。
大河はそう思う。大した根拠もないままに、そう確信する。
すぐ隣で晶穂とかいう少女が、呆然とした表情でこっちを見ている。こっちも見たところ、中学生くらいか。
さっき助けたのも、実は深く考えての行動ではない。でも見捨てられるはずもなかった。
少なくとも、あんな浅羽の、逆ギレにも近い凶弾で殺されていい子ではない。
ちゃんと他人のことを心配できる、浅羽の何倍もマトモなこの子が、こんな所で死んでいいはずがない。
そう考えたら、改めて腹が立ってきた。
もちろん最初から腹は立っていたが、さらにさらに怒りが増してきた。
「……ぶっ飛ばす。あいつは絶対、ぶっ飛ばす!」
「ちょ、ちょっと!? あ、あんた浅羽に何する気?!」
「ああ、心配しないで。殺しはしない。
あんな奴に、わざわざ殺してやるだけの価値すらないから。
ま、みっともなく泣いて『どうかいっそ殺して下さい』と言いたくなるくらいの目には、会わせてやるつもりだけど」
沸騰する感情と、対照的に冷め切った頭とで、大河は作戦を練る。デイパックの中を左手1本で漁る。
浅羽の気配はさっきの場所から動いていない。
たぶん動く勇気が湧かないのだろう。大河は独断と偏見でもって断ずる。
圧倒的に有利な所から勢い任せに乱射することは出来ても、危険を冒して1歩を踏み出すことは出来ないのだ。
しかし……あの銃は、危険だ。
彼我の位置関係もマズい。向こうが高い位置に陣取り、この岩以外にロクな遮蔽物が無いのはキツい。
右手という、高すぎる授業料を払わされたことを忘れてはならない。敵を甘く見て痛い目に会うのは、もう十分だ。
許せないからこそ、怒り狂っているからこそ、冷静に、確実に、張り倒す。
そのために必要なのは、あの機関銃を一時的にでも封じて接近するための、『武器』だ。
大河は荷物をざっと確認する。手持ちの支給品をすばやく再確認する。
「あの変なマラカスは落としてきちゃったし、あと残り2種類、か。
『こっち』はこんな怪我してると有難いけど、今すぐどうにかできるモンでもなさそうだし……
やっぱ『コレ』使うしかないか。消耗品だし、あんなバカ相手に浪費したくないんだけど……」
「あ、あの……『それ』で、どうするの?」
「アンタはここで待ってて、すぐに終わらせてくるから。あ、荷物お願い」
晶穂の問いには答えず、必要なものだけ取り出して、そして邪魔になるデイパックを晶穂の腕に押し付ける。
荷物だけ持ち逃げされるかもしれない、なんてことは微塵も考えなかった。
浅羽のことは、晶穂も当事者だ。
ここで背を向けて逃げるような子なら、あんなに浅羽の言葉にショックを受けたりしない。だから大丈夫。
いや、大河自身はそこまで理屈で考えたわけではなく、直感的にただ「大丈夫」と思っただけであったが。
身を隠していた大きな岩の陰で、大河は静かに立ちあがる。
斜面の上方、荒い息遣いだけが聞こえる浅羽の方に飛び出すべく、その身に力を溜める。
「あ、あのっ!」
「……あぁん?」
「な、名前! わ、わたし、須藤晶穂。
新聞部で、その、あっちにいる浅羽も同じ、新聞部で、それで、あんたは、」
大河の怪訝そうな視線に射竦められ、晶穂が慌てたように支離滅裂な言葉を放つ。
よりにもよって、こんなタイミングで自己紹介のつもりらしい。
新聞部所属、なんてプロフィール、誰も聞いてはいないというのに。
ひょっとして、この自分が、あそこにいる浅羽なんて奴に殺されるとでも思ってるのだろうか?
ここで聞いておかないと名前を聞くチャンスも無くなるだろうから、その前に確認しておこう、とでも?
……馬鹿にするな。
大河の顔に、獰猛な笑みが浮かぶ。
でも、どうやら年下らしい女の子に「あんた」呼ばわりされるのは不快なので、答えてやることにした。
「……大河。
逢坂、大河よ。こう見えても高校2年生、たぶんあんたより年上だから。
じゃ、いってくる」
それだけ言い残し、大河は岩陰から猛然と飛び出した。
後ろを振り返ることもなく、左手に握り締めた『武器』のピンを口で抜きながら、大河は浅羽への突進を敢行した。
背後で晶穂が漏らした小さな声も、彼女の耳には届かない。
「たいが……タイガー? 虎?
って、高校2年生って……えええっ?!」
◇
浅羽直之は、迷っていた。
だから、咄嗟の反応が出来なかった。
しっかり浅羽の顔を見ることのできなかった晶穂は、気づけなかった。でも大河の予想通りだった。
浅羽が晶穂に銃口を向けたのは、半ばヤケクソの発作的な反応でしかなかった。
伊里野を守りたい――その気持ちは嘘ではない。
けれど実のところ、浅羽は晶穂と出会ってしまうまで、すっかり忘れていたのだ。
愚かなことに、そんなことにさえ、全く考えが及んでいなかったのだ。
伊里野1人を生き残らせる、ということは、晶穂も水前寺も犠牲にすることを意味するのだ、ということを。
そんな当たり前の事実を突きつけられ、逆切れ半分で撃った弾丸も晶穂を捉えきれず。
浅羽は本当に今更ながらに、恐怖に震えるのだった。
伊里野は殺さない。伊里野だけは殺させない。そこまではいい。そこまでは本気も本気だ。
でも――本当に、晶穂を殺せるのか?
本当に、あの水前寺部長を殺せるのか?
そこまでする覚悟が、果たして、自分にあるのか?!
今さっき覚悟も決めきらぬままに晶穂を殺しかけて、こんなに震えてしまっている自分に!?
そんな、とっくに済ませておくべき自問自答に捕らわれ、答えを出せずにいた浅羽は、だから、反応できなかった。
岩陰から「獲物」が飛び出したら、即座に引き金を引くつもりだったのに、引けなかった。
晶穂ではない方、最初に銃を向けた方の少女が飛び出してくるのを、みすみす許してしまった。
それでも慌てて機関銃を構え直し、またあの例の無茶な腰溜めの姿勢で、眼下の少女を撃とうとして……。
少女と、目が合ってしまった。
「――――ッ!!」
瞬間、浅羽の脳裏によぎったのは、あまりに危険な肉食獣のイメージ。
視線で人が殺せるのだとしたら、この少女の瞳から放たれた殺気は、まさにそれだけの威力を持っている。
まるで見えないハンマーで殴られたような衝撃だった。質量を感じるほどの、それは「暴力」だった。
浅羽はぺたん、と情けなくその場に尻餅をつく。
つい先ほどまで彼女らを圧倒していたミニミ軽機関銃も、心なしか軽くなってしまったような気がする。
その頼りない重量は、本物の恐怖を前にして、浅羽を支える何物にもなってくれはしなかった。
「っしゃぁーーっ!
このバカガキがそこを動くな逃げるな口答えするな、いやたとえ逃げても逃げきれると思うなっ!
ぶっ殺してやるっ! 絶対にぶっ殺してやるぅっ!」
「ええっ、さっきあんなにはっきり、殺さないって、」
「知るかバカ晶穂っ! あいつは殺すくらいはしないと分かりゃしないのよっ! 絶対この手で、ぶっ飛ばす!」
「ひ……ひいっ!」
凶眼をギラつかせながら、少女がこちらに突進してくる。
ネコ科の猛獣を思わせる動きで、傾斜のきつい斜面を駆けあがってくる。
背後から呼び止める晶穂の声も振り切って、浅羽の喉笛を引き裂こうとやってくる。
浅羽は直感した。
――アレにここまで登ってこられたら、きっと自分は、死ぬ。確実に殺される。
「う……うわあああああああああああああああっ!」
地面に腰を落とした姿勢のまま、浅羽は恐怖の叫びと共に引き金を引いた。
ミニミ軽機関銃が再び獰猛な叫びを上げ、猛烈な勢いで弾丸を吐き出す。
もう伊里野のため、なんて頭の片隅にも浮かばない。
ただただ恐怖に駆られ、ただただ死にたくないとだけ思って、引き金を引く。
斜面に腰掛けた格好で、いい具合に銃床が地面に固定され、思いもがけず銃口が安定する。
これなら当たる。これならあのケダモノを遠ざけられる。
そう思って揺れる銃口を少女に向けようとしたが、しかし……少し、遅かった。
相手の眼光に呑まれた分、間に合わなかった。
「……おらぁっ!」
少女が何かを投げあげて――浅羽の視界は、真っ白に塗り潰された。
スタングレネード。閃光手榴弾。
浅羽の知る限りでは、真正面から北軍と戦う準備をしている自衛軍より、むしろ警察の特殊部隊の装備だ。
北の工作員やテロリストと戦うための装備だ。
破片や爆風で敵を直接殺傷するための手投げ弾ではなく、閃光と轟音で敵を無力化するための武器。
思わず身を丸めてしまって、銃口がブレる。
引き金を引いた指は咄嗟に離れてくれず、貴重な弾丸をまたしても数秒分浪費する。
ようやく最初の恐慌が過ぎ、そして顔を上げても視力はすぐには回復しない。
白くぼやけた世界の中、あの虎のような少女が迫ってくる足音だけが聞こえる。
「わ……わあああああああああ!」
見えない分だけ恐怖はつのり、浅羽はあてずっぽうでトリガーを引く。
ちゃんと「敵」に向けて弾丸が飛んでいるのかどうかも分からない。
それでも、何もせずに足音の接近を待つことに耐えられず、浅羽は真っ白な世界に向けて射撃を続ける。
相手との距離も、相手の方向も分からぬまま、ただひたすらに弾丸をバラ撒き続ける。
頼む、1発でいいんだ。
殺せるなんて期待してない。手足に当たって足止めしてくれるだけでいい。
ただあの小さな恐怖をこっちに近づけさえしなければ、それでいいんだ。
だから頼むよ、お願いだから、当たってくれよ――!
嵐のような銃声は、必死に祈る浅羽を嘲笑うように、ぷつり、と途切れた。
「え? ええ? あ……あ?」
間抜けな声をあげ、浅羽は何度もトリガーを引きなおす。
恐ろしいほどの静寂の中、かちり、かちりと虚しい音だけが響く。
弾切れだった。
弁当箱のように不恰好なミニミ軽機関銃の弾倉は、標準で200発の5.56mmNATO弾を抱え込んでいる。
数字だけ見れば多いようにも思えるが、しかし、弾倉使用時の弾丸発射速度は毎分1000発。
引き金を引きっぱなしにすれば、つまり、たった12秒ほどで全て空っぽになる計算である。
あれだけ無駄弾を撃っていれば、当然の結末だった。
機関銃が軽い、と思ったのは、決して浅羽の錯覚ではなかったのだ。
そして、機関銃の具体的なスペックまでは知らなかったにせよ、残りの弾数までは把握してなかったにせよ。
それこそが、あの飢えた獣のような少女の狙いだったのだろう。
ようやく僅かに回復した、それでも白さが残る視界に飛び込んできたのは。
歯を剥き出しにした、世にも恐ろしい顔をした少女の顔の、どアップだった。
機関銃の弾は、1発だって少女の身体を捉えてはいなかった。
そこから先は、もうグチャグチャだった。
掴みかかられた。
咄嗟に弾切れの機関銃を振り回したが、十分に振り切れずに逆に自分がバランスを崩した。
揉み合ったまま、2人そろって斜面を滑り落ちた。転がり落ちた。
巴投げのように空中に蹴りあげられ、落下して背中を強打する。息が詰まる。それでも敵はその手を離さない。
相手は左手1本しかないのに、右手は手首から先がないのに、離れない。また覆い被さってくる。
その手首のない右腕による肘打ちが、顔面に振ってきた。防御も間に合わず、鼻血が噴き出す。
ほぼ同時に、みぞおちに膝蹴りが入る。おもわず胃液がこみあげ、すんでの所で吐きそうになるのをこらえる。
転がりながら上になり下になり、浅羽も必死で反撃を試みる。
まだよく見えない目のまま、がむしゃらな反撃を試みる。
なにしろこっちは両手が自由に使えるのだ。……自由? そう、自由だった。
いつの間にかミニミ機関銃は手から離れていて、そうしてフリーになった両手でなんとか状況の打開を試みる。
相手の襟首を捕まえて、たぶん顔があるであろう辺りに拳を叩き込もうとして、首の動きだけで避けられた。
避けられたどころか、突き出した無防備な腕に思いっきり噛みつかれた。
必死に振り払ってもすぐにまた別の所に噛みつかれる。何度も何度も牙を立てられる。
このままじゃ、きっと噛み殺される。
2人で1つの団子のようになって斜面を転がりながら、浅羽の心にそんな恐怖が芽生える。
小柄な少女相手に本気のケンカをして全く歯が立たないことへの情けなさなど、感じている余裕はなかった。
時計塔で殴りあった椎名真由美と同等の、いや、迫力だけならそれすらも上回るかもしれない、強敵だった。
1発1発の攻撃の重さなら、椎名真由美の方が上だった。
でも、攻撃の数やスピードは、小柄な分、勝っているような気がした。小回りが利いて手がつけられなかった。
唐突に、地面の傾きが無くなった。夢中で相手を蹴り飛ばしたら、ようやく離れた。
そこは谷の底だった。
ちょっとした河原になっていて、すぐ傍にはそれなりの深さがありそうな川が、かなりの勢いで流れている。
なんとかそれくらいのことが分かる程度には、視力は回復していた。
必死で立ち上がったら、膝がガクガクと震えていた。
あれだけの距離、岩の転がる斜面を受身も取れないままに転がってきたのだ。全身が痛いのも当然だった。
顔を上げる。数メートル先で、長い髪の少女もまた、立ちあがっていた。
あちこちから血を流しながらも、しっかりと立っていた。
向こうも痛いだろうに、未だ戦意も衰えず、丸い石の転がる河原を、こちらに向かって駆けだしてきていた。
大丈夫。浅羽は必死に自分を奮い立たせる。
さっきみたいに捕まってしまわなければ、いくらでもやりようはあるんだ。
警戒しなければならないのは、相手の左手。あれにもう一度捕まれたらおしまいなんだ。
集中しろ。どんなフェイントをかけられようと、あの左手にだけは、捕まらないように、
浅羽の顔面に、小細工も何もない、綺麗な「右」ストレートが突き刺さった。
吹っ飛ばされた。予告どおりに文字通りにぶっ飛ばされた。
まさかそれはあり得ないだろう、と思い込んでいた、完全ノーマークの「ない方の手」で、思いっきり殴られた。
拳ですらない、腕の断端を叩きつけるような攻撃だった。
硬い骨が当たって、ちゃんと痛かった。
全身のバネを使った、身長差を埋めるためのジャンプさえ加わった、強烈な一撃だった。
左手だけに注意を払っていた浅羽は、だから当然、踏みとどまることもできず。
2、3歩よろめいた後、どうしようもなく冷たい川の中に、落下した。
悲鳴を上げる余裕すら、なかった。
◇
――須藤晶穂が慌てて斜面を駆け下りて、谷底に辿り着いた時には、全てが終わっていた。
そこに立っていたのは、高校2年生を自称する、晶穂より小柄なあの少女1人。
浅羽直之の姿は、どこにも見当たらなかった。
「た、大河、さん……? あの、浅羽は、どこに……」
「別に溺れて死んだりはしないでしょ。ちょっと頭冷やした方がいいのよ、あんな奴」
逢坂大河は、自身もボロボロの姿ながらも律儀に晶穂の問いに答え、フン、と軽く鼻を鳴らした。
どうやら浅羽は川に叩き落され、下流に流されてしまったようだ。
どう反応したものやら言葉を失う晶穂の手から、大河は預けていた荷物をひったくる。
「……おー、痛てて。
やっぱ、『手』がないとダメね。思いっきり殴れない。てか、ちゃんと殴った気がしないわ。
一度どっかに腰おちつけて、『この義手』をちゃんとつけとかないと」
逢坂大河がデイパックの中から無造作に取り出したのは、どこか優美な印象のある「手」のオブジェだった。
人形の腕のようにも見えるし、篭手のようにも見える。金属製なのは間違いない。
義手、とか言っていただろうか? なるほど、片手のない彼女には丁度良さそうな代物だ。
あんなものがあるなら最初から使えば良かったのに、と晶穂は思うが、すぐに考え直す。
たぶん、使わなかったのではなく使えなかったのだ。取り付け作業に時間がかかるとか、きっとそんな理由で。
そして、その義手を再びしまい込んでデイパックを担ぎ、空を見上げると。
ボロボロで傷だらけな満身創痍の姿のまま、それでも涙1つ見せることなく、逢坂大河ははっきりと言い切った。
「……決めた。
私はこれから、さっきの浅羽みたいな奴を、見つけ次第片っ端からぶっ飛ばす。何としても、ぶっ飛ばす」
それは、宣言だった。
自分の弱さも限界も全て理解した上で、それでもこの理不尽な箱庭世界に対して叩きつける、挑戦状だった。
「自分のためだろうと、誰かのためだろうと関係ない。
とにかく、他人を蹴落とそうとする奴。蹴落として平然としてる奴。
そーゆーのを見つけたら、片っ端からブン殴ってやる。バカなこと考える気が失せるまで、ボコボコにしてやる。
竜児とか実乃梨とかを探すのは、そのついででいい」
ぶっ飛ばして、その後どうする? ということは、あえて考えていないのだろう。
逃避としての思考停止ではなく、代案が出せずとも人の道を外れることは黙視できない、という正義感の発露。
でも殺してしまったらその馬鹿と一緒になってしまう。だからブン殴る。心変わりするまで袋叩きにする。
それは誰かの反論も反発も全て予想した上で、それでもあえて選ぶ道、なのだろう。
少なくとも、晶穂の目にはそう映った。
遠い空を見上げ、1つきりしかない拳を握り締めるその横顔を、晶穂はふと、綺麗だなと思った。
生まれ持ったその造形美ではない、その瞳に宿る意思の光の輝きを、ちょっと羨ましいな、と思った。
あと3年後、彼女と同い年になったその頃には、自分も同じような顔が出来るのだろうか。
醜悪な自分の心に振り回され、自分の行動1つ思うようにならない、この自分にも。
……そんなことを考えていたら、不意に、大河がこちらに振り向いた。
「で、晶穂とか言ったっけ? あんたはこれから、どうするの?」
「わたしは……」
大きな目でまっすぐに見つめられ、晶穂は言葉を失ってしまう。
自分は、何をしたいのだろう。
浅羽は伊里野のためにこの馬鹿げた殺し合いのゲームに乗ってしまって、
それはつまり、晶穂が抱いていたほのかな恋心には、もう何の希望も残されていないことを意味していて。
それを認識した上で、自分は、何をしたいのだろう――?
川に流されてしまった浅羽を追う?
大河についていって、助けてもらった恩を少しでも返す?
大河と一緒に行動して、大河と一緒にどうしようもない連中をドツいて回る?
それとも何も決められないまま、ただここでボケーッと突っ立って死ぬのを待つ?
即答できずにしばし固まる晶穂の耳に、今更ながら、さわやかな川の水音が聞こえてくる。
音を失っていた世界に、あたりまえの音がやっと戻ってくる。
ああ、ここはB−2だ。地図の上で言えば、B−2に当たる場所なのだ。晶穂は改めてその事実を意識する。
そろそろさっきまで居たA−2は「切り取られる」頃で、でもここが「切り取られる」まで、まだたっぷり時間があって。
だから今はもう、慌てて答えを出す必要はない……時間制限さえも、言い訳に使えないのだった。
【B-2/川辺/一日目・黎明】
【逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:右手欠損(止血処置済み)、全身に細かく傷(軽い打撲や裂傷)、怒りと強い意志
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、フラッシュグレネード×2@現実、
無桐伊織の義手(左右セット)@戯言シリーズ
[思考・状況]
1:他人を蹴落とそうなんて考えるバカは、ぶっとばす! もちろん返り討ちに会わないよう頭は使うけどね!
2:そのためにも、どこかに腰を落ち着けて、この義手をしっかりと取り付けておきたい。
3:で……晶穂とか言ったっけ。あんたはどうすんの? ついてくるなら別に構わないけど?
[備考]
※原作3〜4巻のあたりからの参戦です。
【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康。呆然自失。
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
1:浅羽……本気なの?
2:……どうしよう。
[備考]
※原作二巻終了後からの参戦
※2人のすぐ傍に、弾切れのミニミ軽機関銃(残り弾数 0/200)@現実 が落ちています。
◇
冷たい水が、体中に刻まれた傷に沁みた。
水の中に叩き込まれた直後は、溺れる、としばしパニックに陥ったものだった。
水着姿ならともかく、あるいは、短パン一丁ならともかく、服を着たまま泳ぐというのは容易なことではない。
それでも必死に水中で体勢を立て直し、支給品の中にあった「あるもの」の存在を思い出し。
何度も水を飲みながらも、なんとか「それら」を取り出すことに成功したのだった。
必死にビート板にしがみつきながら、浅羽はゆっくりと流されていく。
周囲には、浅羽に寄り添うようにして浮かび流れる、無数の浮き輪やビーチボール。
嫌でも視界の隅をかすめる、無駄に華やかな色彩が、かえってみじめな気分を掻き立てる。
支給品・『ビート板や浮き輪のセット』……こんなもの、役に立つとは思っていなかったのだが。
とりあえずありったけぶちまけて手近なモノに捕まって、ようやく一息ついたところだった。
体重を預けたビート板からは、ほんのりと塩素の香りがした。
こうしていると、あの「夏休み最後の日」を思い出してしまう。
伊里野と初めて出会った、あの夜のプールを思い出してしまう。
ビート板を手に、下手なバタ足で15mまでなら進めるようになった、あの夜の伊里野。
いや、あの時点では、まだ彼女の名前は知らなかったのだっけ。
「伊里野……いり、や……」
浅羽は泣いた。
力なく川面を流されながら、己の情けなさに泣いた。
伊里野を守りたい、何を差し置いても彼女を生き残らせたい。その想いに嘘はないと今でも思う。
だけど……どうすればいいのだろう?
どうすれば、伊里野を守りきれるのだろう?
支給品なら、あと1つ残っている。抱えたデイパックの中に、まだ残されている。
けれど……果たしてそれで、戦い抜くことが出来るのだろうか?
あれだけ威力ある機関銃があっても、あれだけの弾をつぎ込んでも、女の子1人殺すこともできなかったのに?
こんな調子で、本当に晶穂も部長も殺して、伊里野だけを生き残らせるなんてことが出来るのだろうか?
答えは出ない。出ないまま、浅羽の身体は流されていく。
夜の川を、静かに流されていく。
今はただ、傷ついた身体に染み入る水の冷たさだけが、心地よかった――。
【B-3/川の中/一日目・黎明】
【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:自信喪失。全身に打撲・裂傷・歯形。全身ずぶ濡れ。川に流されている最中。
[装備]:ビート板@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1個所持)
[思考・状況]
0:伊里野を生き残らせる。
1:伊里野以外は、殺す? 本当に殺せるのか?
[備考]
※参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。
※浅羽の回りには、大量の浮き輪やビーチボールなど(@とらドラ!)が浮かんでおり、一緒に流されています。
※B−3で川は2つに分かれていますが、浅羽がどちらに流れていったかは次の書き手さんにお任せします。
【ミニミ軽機関銃@現実】(補足説明)
ベルギーの国営銃器メーカーFN社が開発した分隊支援火器。小銃用の5.56mmNATO弾を使用する。
広く各国でライセンス生産されており、それぞれ形式番号は異なる。
本体重量6.9kg、200発入り弾倉を装填すると総重量10kg。バイポッド(二脚)が標準装備されている。
給弾は200発入りの弾倉か、ベルト式の装填かを選べる。緊急時にはM16ライフルのマガジンなども使用可能。
発射速度は、ベルトによる給弾で毎分750発、弾倉による給弾で毎分1000発。
今回支給されたものは、200発入りの弾倉を装備していた。予備の弾倉はない。
【ビート板+大量の浮き輪等のセット@とらドラ!】
『とらドラ!』3巻ラストの水泳勝負において、逢坂大河が持ち込んだ大量の水泳補助具の山。
ビート板はもちろん、複数の浮き輪やビーチボール、マットなどが含まれている。
小柄とはいえ大河の身体を「ほとんど肌も見えないほどに覆い隠す」ほどだから、その量は推して知るべし。
(偽乳パッド入りの水着を除く)装備一式全てひっくるめて「支給品1つ」という扱いで支給された。
(なお、浅羽の状態表に記された「ビート板」はその一部である。)
【フラッシュグレネード(3個セット)】
閃光を発し敵を無力化する、警察や特殊部隊が用いる閃光手榴弾。
爆風や破片は少なく、ただ光と音だけが大きい。
3個セットで支給された。
【無桐伊織の義手(左右セット)@戯言シリーズ】
罪口商会の罪口積雪が零崎人識の依頼で用意した、無桐伊織(=零崎舞織)のための義手。
出展は『少女趣味』同様、戯言シリーズ外伝・人間シリーズ3巻『零崎曲識の人間人間』。
とある経緯で両手首を切断された伊織のために用意されたもので、左右の手で1セット。
とはいえ、片手ずつでも十分使用に耐えうるものだと思われる。
鋼鉄製で金属剥きだし、生身の腕を模してはいない。またその素材ゆえに、それ自体が十分に武器となる。
義手に神経や筋肉を正確に接続してやることで、緻密な動きを可能にする。
なお、その接続方法の関係上、任意の着脱は不可能。一旦接続したら、外すのは激痛を伴う大手術となる。
今回の支給に当たって、腕への接続方法を詳細に記した解説書もセットでついている。
が、医療などの心得のない素人では、接続作業は相当に手間取るものと思われる。
以上、投下完了。支援感謝です。
wiki収録の際には容量的に1ページに収まりきらないと思うので、前後編での収録をお願いします。
投下乙!
なんという超☆大作
何か切なくなるな…
改めて、乙でした!
投下乙!
大河立ち直ったか、晶穂とのコンビに期待
それとは対照的に浅羽は悲惨だ……
大作本当に乙でした!
投下乙です!
大河復活!
大河の怒りが実にいいwかっこよかったです。
晶穂は失恋……なのかな?
原作にない感じでどうなるか楽しみw
浅羽が悲惨で失敗なのは……まぁ原作どうりかw
GJでした!
そして新しい予約きたーw
っとすいませんが新しい予約でちょっと気になっているのですが吉田さん達が同エリアのステイルの拡声器のイベントがあるのに白純と接触するのはいささか不自然な気がします
不思議じゃないと思うぜ
白純先輩はあのエリアのすぐ南にいるし逃げる方向次第で二人と会うだろ
投下乙
手乗りタイガー復活!
やっぱ大河格好いいなぁ
今の竜児にあったらぼこぼこにしそうだwww
それと浅羽、お前もう少し頑張れwww
感想をつけたと思い込んでいた……失礼、投下GJです!
手乗りタイガー復ッ活! 手乗りタイガー復ッ活! 手乗りタ(ry
浅羽の浅はかさ、大河の大きな決意、晶穂の悲しみ、
それらが一気に伝わってくる……なんという恐ろしい手腕!
そしてまたこの洗練されてない「喧嘩臭」を洗練された文章力で表現しきるとは。
大河の方針も巧く固まったし、素晴らしい作品だった! 改めてGJ!
したらばのトップが可愛くなってるww
これアニメ版アリソンのカットインかww
投下開始します
コンクリートの密林を一体のケモノが飛び回る。
林立するビルからビルへと飛び移るケモノの名前は白純里緒という。
右に、左に縦横無尽に飛び回り、彼が今行っているのは彼の縄張り、自らが目覚めた場所の地形の把握である。
確かに彼が今、最も優先するべき目的はただ一つ。
両儀式。
黒桐幹也。
この両者の探索である。
――特別であるが故に外れてしまった存在である自分。だが、自分しかいないということは、特別性の証明であるのと同時に――孤独だ。
だから、彼は二人を求める。
世間から外れた殺人鬼である自分と同じ、いやそれ以上の殺人鬼である少女、両儀式。
外れたはずの自分さえ受け入れてくれる青年、黒桐幹也。
彼にはこのどちらかが必要だった。さもなければきっと、一人きりの異常者(しらずみりお)を自分自身が受け入れられない。
だが黒桐幹也はともかく、両儀式とは出会う前に下準備が必要だった。
両儀式はある意味、彼などよりもはるかに優れた人殺しだ。そんな彼女の前にのこのこと姿を見せるのは、あまりにも危険だ。
……ならば、どうするべきか。
その答えこそ、今彼のおこなっている行為、地形の把握だ。
この密林の街を知り尽くし、彼の庭と変えたなら――これから先はそこに潜み姿を隠すのも、そこに迷い込んだ獲物を探し出し、狩るのも彼の思いのままだ。
「……ん?」
そして、しばしの時が過ぎ。
手当たり次第に壁を伝い、地を駆けていた彼の動きがふと、止まる。
一般人であっても何とか聞き取れるであろう「声」を、ケモノの鋭敏な感覚を備える彼の聴覚がうるさいほどに感じ取ったのだ。
『……達のような愚か者は先の言葉全ては覚えきれないか。簡潔に伝えてやろう。
優勝したいと願うような愚か者はエリアD-4ホールへ来て己が愚劣さをあの世で後悔せよ!』
……北のほうから聞こえてきたその声に白純里緒は笑みを浮かべる。
どうやらここに殺人鬼がいるということも知らずに、誰彼構わず戦いを挑む、そんな大馬鹿がすぐ北のエリアにいるらしい。
「ははは! 良いじゃないか」
ちょうどいい、一人目の獲物にはふさわしい馬鹿だ。貴様の望みどおり、自分が生き残ると考えている殺人鬼が貴様の元に行ってやろう。
彼は一路北へと向かう。
……が程なくして、彼の動きは再び止まる。
とあるビルの屋上から見下ろすその下に、最も会いたいと願っていた相手の一人。黒桐幹也の姿を眼下に収め。
◇ ◇ ◇
「はぁ……はぁ」
一歩走るそのたびに、両足の膝の裏がじくりと痛む。
そこは少し前に僕がちょっとした事件に巻き込まれた際に大怪我をしたところだ。ふだんはそれほど痛みはないけれど、今のように走ったり、激しく動かしたりすると痛んだりする。
……けれど困ったことに、今はそんな泣き言が言える状況ではなかったりする。
「はぁ……大……丈夫?」
苦しいのを我慢して後ろを振り向き、僕の少し後を一人の少女がついてきているのを確認する。
僕の少し後ろを走る少女、吉田さんは少し苦しそうな表情でかなり息を切らしながらも、こくんと確かに頷く。
――そろそろ休まないとダメかな。
そんな彼女を見ながら僕はそう判断を下した。きっと彼女はまだ走れるとか言うかもしれないが、いくら走れても、それ以外の余力がなくなるのは問題だ。
少し前方にある細い通路、少しずつ走る速さを落としながらそこに入ると僕はそこで立ち止る。はあ、と一度大きく息をつくと、今更のように額からじっとりとした汗が浮き出してきた。
「……えっと……はぁ、ここで……大……丈夫なんでしょうか」
少し遅れて通路に入ってきた吉田さんの問いかけに、僕は正直にわからないと答える。
そもそも今までの逃走自体、意味があるものかどうかはわからないのだ。
――いきなり僕達がこんな全力疾走をやらされる羽目になったのは、とりあえず僕のことを信用してくれたらしい吉田さんとお互いの探し人を求めて、それまでいた場所から出た少し後、さっき出てきたばかりのホールから行われた「宣言」のせいだった。
その宣言の内容をまとめると
「自分はいまD-4にあるホールにいるから、殺し合いに乗った参加者はここに来い。そうじゃない脱出を願う参加者は、彼の大事な人が他の参加者に殺されてしまう前になんとしても脱出する方法を見つけ出せ」
ということになる。
……彼の発言内容からすると、そこまで危険な人物ではなかったかもしれないし、大事な人のために自分のいるところへ積極的に他者を害そうとする危険人物を集めようとする気持ちには、正直一部共感できるところもある。
でも、僕らのいた場所でそんな物騒な発言をしたことに関しては文句を言いたい。
マイクか何かを使ったあの宣言がどこまで聞こえたかはわからないけど、最低でも周囲にある八エリアには聞こえたことだろう。そして、確か参加者が全部で六十人いてエリアが全部で三十六。
――つまり、数字の上での計算だと最低でも七人から八人、全部海のエリアがあったり、端の方より真ん中のほうに多く人が集められていると仮定すると、それ以上の参加者があの宣言を聞いたことになる。
あの宣言を聞いた参加者全員が僕らのように他人を傷つけたくはないと思ってくれていればいいけど、それは正直言って高望みもいいところだろう。
だからとりあえず、開けた場所が多い西のほうよりも姿を隠せそうなビルが立ち並ぶ南へと向かい、ビルの影で休んでいるというのが今の状況。
このままここでもう少し息を整えて、それからビルの影を縫うように隣のエリアに移動。
少なくともあの宣言を聞いた戦闘を好まない参加者達がきっと同じように下した決断だと信じて、ホールの周囲のエリアから離脱する。
そんな僕の考えはものの数分で瓦解した。
かつかつ
不意に聞こえてきた人の足音に僕と吉田さんは緊張する。
足音の主は真っ直ぐに僕らのいるビルの近くまで向かってくると、不意に立ち止る。
「…………」
「…………」
待つことしばし。すぐ近くにいる誰かはまるで動く気配を見せないけれど、いつまでもこうして「誰か」が立ち去ってくれるのを待っていられない。僕は小さく息を吐くと吉田さんに隠れているように無言で指図し、ビル影からできるだけこっそりと辺りの様子をうかがった。
「――――」
そこにいた人影を見つけたとき、驚きのあまり一瞬息もできなかった。
そこにいた「彼」は、まるで式そのものだった。
女物のスカートと、赤い皮製のジャンパー。肩口で切りそろえたバラバラの髪と、中性的な顔立ち。
ただ髪は金色で、瞳はカラーコンタクトでも入れているのか兎みたいに真っ赤だった。
いつからこちらに気がついていたのか、彼は僕が覗き込んだ途端にこちらと視線を合わせてやあ、と気軽な調子で声をかけると近付いてきた。
「久しぶり、三年ぶりかな黒桐君」
「えと、お知り会いなんですか?」
「……吉田さん」
彼の敵意のなさそうな様子に緊張がほぐれたらしく、顔を出してきた吉田さんに僕は声をかけるのと同時に、デイパックを彼女へと差し出す。
「吉田さん、今すぐにこれをもって逃げるんだ。あの人が南のほうから来たから多分、そっちのエリアは今のところ危険は少ないと思う」
「……え? 黒桐さん!?」
驚いた吉田さんがバッグを受け取るのも待たずに地面に落とすと、唯一バッグから抜き取った道具、あの不必要に大きい刀をさやに収めたまま不恰好ながらも構え、彼の目から吉田さんの姿を隠すように立った。
そんな僕を見た彼は残念そうに肩をすくめる。
「…………その様子じゃ、色々わかっているみたいだね。ふむ、しかし僕は何かヘマでもしたかな? 君と最後に話したファミレス以来、痕跡は全て絶っていた筈なんだけど」
彼の問いかけに僕はそうですね、と頷いた。
「……貴方にミスはなかったと思います。ただ、ヒントはありました。十一月にあるマンションが取り壊されたことは知っているでしょう? その直前にマンションの住人を調べる機会があったんです。
そのとき、貴方の苗字を見つけました。僕はそれがずっと気になっていた。だってあのマンションは普通じゃなかった。あそこに居た以上、貴方は何らかの形で式に関わっていることになるんです」
金色の髪をかきあげて、先輩――白純里緒は、ああ、と頷いた。
「なるほど、マンションの名簿とはね。荒耶さんもつまらない小細工をしてくれたものだ」
そう言うと先輩は困ったふうに笑った。
その雰囲気は、僕の知る昔の先輩とかわっていない。
「……先輩、貴方は」
……この人は本当は変わっていないんじゃあ? そんなわずかな期待を込めて、僕は彼に殺し合いに乗る気はないのか尋ねようとする。
そんな僕を見て、先輩は寂しそうに笑う。
「……本当は近い将来、キミに再会することを僕は予想していたんだ。だからそのときに備えて、いろいろと準備をしてきたんだけど……全部無駄になってしまった。まあいいさ。そうだね、ついでだから後ろにいる彼女も聞いていくといい、たわいもない昔話なんだけどね」
――そして白純里緒は僕と、動くタイミングを逸していた吉田さんへと告白をはじめた。
……それは四年前に起こった事故のような殺人事件の話であり
……それは彼が黒い魔術師と出会い、人間を捨てた物語であり
――そして、それ以降重ねられ続けてきた彼の罪と、その原因、彼の起源の物語だった。
最初は物静かに語っていた彼の様子は、話が進むにつれて、息は荒くなり、肩は震え始め、内側からこみ上げてくる激しい感情を無理矢理に押さえつけるものへと変化していく。
「……先輩」
その様子があまりにも痛々しく、辛そうだったから僕は思わず彼へと近付いた。
その途端、だん、と強い力で僕は壁へと押さえつけられて、あっさりと手にしていた刀を取り落とした。
「黒桐さん!」
「……い、いいから行って」
僕は先輩に壁に押さえつけられた姿勢のままで、もう一度吉田さんに逃げるように指示を出す。
それでもまだ彼女は逃げるのを渋っていたけど、僕を押さえつけたまま小さく震えつづける先輩をみて、僕の再度の促しにようやく逃げ出してくれた。
「……あ、その……無事でいてください」
最後にそう言い残した彼女の姿は、すぐに路地裏を曲がって見えなくなる。
白純里緒はそんな彼女には目をくれることもなく、うつむいたまま震えている。僕を押さえつける力はとても強いままだったけれど、僕にはそれが恐ろしいものだとは思えなかった。
その力の大きさは彼が抱える絶望の大きさだ。……僕にはそれを振りほどくことはできなかった。
「――助けてくれ、幹也」
聞こえないぐらいの小声で先輩が呟く。僕はそれにも答えられなかった。
……一体どのくらいそうしていたのだろう。
長いのか短いのかよくわからない時間が過ぎ去ったその後、不意に彼は力を緩めると後ろ向きに大きく下がり、大通りまで後退した。
「――けほっ、……せ、先輩?」
「ごめん…………黒桐君。ずいぶん無駄な時間を使わせてしまったね。キミはもう行くといい。……そして二度と僕の前に現れないでくれ。次に会う時は僕は君を殺すことになるかもしれない」
「そんな!」
「もう無理なんだよ、黒桐君。ここには荒耶さんも蒼崎橙子もいない。いや、仮にいたとしてもきっと俺は手遅れさ。だったら……行ける所まで行ってやるさ」
そう言い捨てると、彼はオリンピックの金メダリストのような凄い速さで道を北のほうへと走り去っていった。
後に残された僕は自分の無力さを嫌というほどにかみ締めていた。
……それでもやらなくちゃいけないことはいくらでも残っている。僕はのろのろと落ちていた刀を拾うと、路地裏を歩き出す。
また一人増えてしまった探し人。まず間違いなく一番近くにいる、さっき別れた少女の姿を探して僕は歩き出した。
◇ ◇ ◇
それほどの距離も稼がずに立ち止まると、白純里緒は慎重に周囲の物音を探った。
こちらのほうへと向かう足音は一切ない。
「そう、それが正解だぜ、幹也」
先ほどまで見せていた気弱な表情はどこへやら、白純里緒は一転してにやりとした笑みを浮かべる。
――起源に覚醒したものは確かに自己の人格を失ってしまう。だが、その人格が二重人格のように分かたれてしまうことはない。
「人殺しを好まない白純里緒」という人格が残っていたのであれば、彼は起源という衝動には負けずに、人を殺してしまうということもなかった。
……彼がつい先ほど告白した四年間の罪とは、起源など関係がない、紛れもない白純里緒が自らの意思で他者を殺し、食べてきたという証明に他ならない。
ならば何故、彼は先ほどのようなつまらない演技をしたのであろうか。
その理由は簡単だ。
白純里緒は黒桐幹也に対しては、同じ外れた殺人鬼である両儀式に対する場合とは異なり、自分を受け入れてくれる仲間としての役割を求めている。
そのためにも平気で他者を傷つける自分のような存在になってもらっては困るし、あっさりと他の誰かに殺されてしまっても困る。
のこのこと自分から危険に向かって突き進むようでは、たった一つの生き残りをかけたこの舞台、命が幾つあっても足りない。
だからこその演技、不安定な面を見せる危険かもしれない人物を演じてみせたというわけだ。
危ないことからは逃げ出す。黒桐のような一般人にこれ以上の護身策などありはしない。
「……でも、あいつは邪魔だな」
当面危険からは逃げるという判断をするであろう黒桐幹也。ただ、その彼も先ほどのように自分よりも弱い人間を逃がすため、囮となって自分から危険へと立ち向かうかもしれない。
――そんなこと許せるはずもない。
白純里緒は手近なビルの屋上へと一気に駆け上がる。その運動能力は先ほど黒桐幹也の前で見せていたそれとは比較にならない。
駆け上がった屋上から周囲を見渡し、動く影を追う。見渡す限り動いている影は一つ。もう一つあるはずの影は今の彼のいるところからは見える位置にはいなかった。だが、そんなことは些細なこと。
このコンクリートの森の中、例え黒桐幹也でさえも、モノを見つける速度は自分に劣る。彼は音もなくビルからビルへと飛び回り、一人の少女の姿を追い求め始める。
――そしてほどなく、先の路地からはやや離れたビルのビルの一室、そこに隠れる少女の姿を白純里緒は見つけ出す。
移動した距離と時間を考慮すれば上手く隠れた、と吉田一美は誉められるべきであろう。少なくとも下から見上げて探す限りではほぼ死角となるように、そして彼女の位置からは多少は外が見えるような位置取り。
だが、それも上から探す白純里緒にとっては意味のないこと。
……そしてケモノは迷うことなく、その部屋へと音もなく飛び込んだ。
「声は出すな」
「……!」
進入するや否や、彼は吉田一美の口を押さえ、そのまま壁へと押さえつける。
思考が現状に追いついていないのか、呆然とした目でこちらを見つめる吉田一美を見て、白純里緒の心にふと、悪戯心がわいた。
……どの道、この女を殺すことは確定の上、すぐにでも殺すことは可能だ。だったら、わずかな時間とはいえ、黒桐幹也を危険な目に遭わせたかもしれないこの少女には罰を受けてもらうとしよう。
支援
431 :
(代理投下):2009/04/09(木) 22:14:04 ID:FwyT3D6E
八つ当たりとしかいえない身勝手な感情と共に、白純里緒は吉田一美に対して嘲るような笑顔を見せる。
「久しぶり、とでも言えばいいかな? ん、ああそうか。ぼくがここにいるということは黒桐君に何かあったんじゃないのかと心配しているのかい?
くっ、ははははははっ、ははははははっ。いや、本当キミはおめでたいねえ。少し考えればわかるだろ? 僕がこんなにも早くここに、キミがいるところに来れたのはちゃんとした理由があるってことぐらいはさあ」
「…………」
「ああ、そうさ。君は幹也に売られたのさ。君がいなくなったすぐあとに幹也が僕に言ったのさ。君と君に渡したにもつは全部差し出すからどうか、僕の命は助けてくださいってね。
何? 幹也がキミなんかのために命がけで僕をくい止めてくれたとか思っちゃったの? 見ず知らずの存在だったキミを助けるために命をかける馬鹿なんていないさ。何をいい気になってるんだか。本当自意識過剰もいいところだよ、あははははっ」
そうして白純里緒は返答できない吉田一美を一方的に嘲笑う。
この虚言には何の意味もない。ただ、白純里緒は吉田一美を許せなかったのだ。
――たとえこれから死に逝く相手だとしても、彼女の記憶に黒桐幹也が彼女のことを守ったという事実が残ることさえ許せないというだけ。嫉妬を晴らす、ただそのためだけに彼は彼女の心を踏みにじる。
「はははははっ! あー、笑った笑った。さて、ここまで笑わせてくれたお礼だ。死ぬ前に他の知り合いに伝えたいメッセージがあるって言うなら聞いてやるぜ。ああ、あとはもちろん幹也の奴への恨み言でも構わないけどな。
とはいえ、幹也の奴を殺してくれとかそういうのは無理だぜ」
そして最後に彼は告げる。あえて幹也への敵愾心をあおる言葉を言うことで、最期に彼女がどのような恨み言を残していくのか、それを想像してこっそりと白純里緒は笑みを浮かべる。
もちろん、彼女の死に際の言葉は一字一句残さず幹也へと伝えてやる。彼の懐には支給品のひとつ、ボイスレコーダーがある。
きっと幹也はもう少し後になって、この場所をを突き止めてやってくる。そして彼は発見するのだ。すでに事切れた吉田一美と、その死体の傍らに転がるボイスレコーダーを。そして自らに向けられた少女の理不尽な悪意を知ることになることになるのだ。
そのときの彼の様子は想像するだけで身震いするほど素晴らしいものとなるだろう。
「――――」
「……え?」
そんな想像に集中しすぎたせいか、白純里緒は最初少女が何といったのか聞き漏らした。
「…………シャナちゃん、坂井君、……黒桐さん。生きて、絶対に死なないで。それと、ありがとう」
「…………は?」
それだけを少し震える声で言うと吉田一美は言うべきことは全て語ったというかのごとく口を閉ざした。
432 :
(代理投下):2009/04/09(木) 22:14:50 ID:FwyT3D6E
だが、それで収まらないのは里緒のほうだ。
「おかしいだろ! 何で、何でお前を裏切った黒桐への恨み言が出てこないんだ!?」
「――恨んでなんていませんから。裏切ってもいない人を恨むなんてできません」
だん、と壁に押さえつけて問い詰める白純里緒に、少女は痛みに顔をしかめながらも静かに答える。
「おかしい、おかしいってば! ついさっきであったばかりの他人なんだぞ! 何でそんなに簡単に信じられるんだ! 普通は……!」
「信じたんです、だから」
彼女の返答が白純里緒を激昂させる。
「黙れ……! お前なんかに黒桐のことがわかるわけがないだろう! 訂正しろ、謝れ、何でもいいから恨み言の一つでも言って見せろよ!」
「……っ!」
白純里緒の叫びに吉田一美は答えない。いや、もう答える事ができなかった。白純里緒に激情のまま振り回される彼女は、何とか自分の意識を保つことで精一杯だったのだ。
しかしそんな状況にも関わらず、彼女の心は奇妙なまでの落ち着きと安心感があった。……あるいはそれは避ける事のできない死を目前とした諦念が生み出した物であったのかもしれない。
(……やっぱり、嘘だった)
目の前の彼の激昂ぶり振りを見ればもう、疑いようはない。出会ったばかりの彼のことを信じぬく以上のことしかできなかったとはいえ、信じ抜いたのはやっぱり間違いなんかじゃなかったのだ。そんなことがただただ、嬉しいことと思える。
「聞こえないのか! 黙ってないで何とか言え! 言えよオオおおおおおっ!」
激怒した白純里緒が爪を振りかざすのを彼女はただ見つめる。
(――悠二君、死なないで)
「え?」
首から血を流し、倒れたまま動かない吉田一美を白純里緒は呆然と見下ろした。
「なんだよ、それ。ふざけるな! あそこまで好き勝手に言ったくせに何でこんなにあっさり……!」
だが、ピクリとも動かない目の前の少女は誰がどう見たところで死んでいる。
433 :
(代理投下):2009/04/09(木) 22:16:14 ID:FwyT3D6E
……たっ
少し先のほうから響いた足音に、せめてもの腹いせに少女の遺体を無残に喰い散らかそうとした白純里緒の動きが止まる。足音は少しずつ、だが確実にこのビルへと近付いてきている。今、ここに近付いてくる人物は一人しかいない。
「……くそっ」
今はまだ、幹也には自分が喜んで人を殺しまわっていることを知られるわけには行かない。
そうしてケモノはビルの影へと身を躍らせる。
(幹也、きちんと生き延びろよ?)
今はまだ、彼を自分のそばに置くことはできない。だが自分がここへ連れて来られた以上、そのために必要な道具、ブラッドチップもきっとこの舞台のどこかにあるはずだ。
だから今は一人でも多く殺そう、食べよう。
今度こそ彼は北へと向かう。まずは身の程知らずの愚か者をこの爪と牙で引き裂くために。
【E-4/雑居ビルの一つ/一日目・黎明】
【白純里緒@空の境界】
[状態]:健康 、強い苛立ち
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品(未確認支給品0〜2個所持。名簿は破棄)
[思考・状況]
1:両儀式を探す
2:黒桐を特別な存在にするためにブラッドチップを入手する
3:拡声器で呼びかけを行った馬鹿を殺しに行く
4:それ以外は殺したくなったら殺し、多少残して食べる
[備考]
※殺人考察(後)時点、左腕を失う前からの参戦
※名簿の内容は両儀式と黒桐幹也の名前以外見ていません
※全身に返り血が付着しています
※ブラッドチップ@空の境界
荒耶宗蓮特製の大麻を白純里緒の血液で栽培した強力な麻薬。
本編中では自分の意思で人間を捨てる覚悟と共にこれを摂取すれば起源覚醒者に変えることができると白純里緒は思っていたが、黒桐幹也はこれを拒否したためにその真偽は不明。
434 :
(代理投下):2009/04/09(木) 22:17:52 ID:FwyT3D6E
「……今の声は」
近くのビルから聞こえてきた聞き覚えのある声に、僕は言い知れぬ不安を感じた。
そんなわけはない。確かに先輩は人を殺す側に立っているのかもしれない。けど、あの人は確かに北に向かって走っていったはずなんだ。
必死になって自分にそう言い聞かせながら、僕は吉田さんの痕跡を追ってたどり着いたビルの前で立ち止まった。
「……吉田さん?」
小声で呼びかけるも返答はない。
ここにはいないのかもしれない、そんな気持ちとは裏腹に僕の足は吸い込まれるようにビルの内部へと向かう。
「吉田さん、返事をしてくれるかい?」
階段を上る僕はいつか感じたことのある匂いを感じ取っていた。
――鉄っぽい、むせ返るような匂い。
知らず、動悸が激しくなる。
吉田さんの返事はない。
「ここにはいないの?」
うっすらと埃が積もったビルの中、小さな足跡はその一室へと消えている。……出た痕はどこにもない。
「……吉田さん」
一瞬気が遠くなる。
首から部屋を真っ赤に染めるぐらい血を失った彼女はどう見ても生きてはいない。
不意に胃の中に、塊のような異物感を感じた。
口の中いっぱいに、みるみるうちに嫌な味がする唾液が広がっていく。
「……!」
胃がすくみ上がるように動き、内にこもる物を一気に押し上げようとする。
喉元まで上がってくる嘔吐感。
……それでも、いつかのようにもどさずには済んだのはきっと彼女を汚しちゃいけないという……意地と罪悪感のせいだと思う。
「う……!」
ごろりと動く胃を何とかなだめる。
「……ごめん、吉田さん」
君を探し人と再会させてあげられなくて。
きみのそばにいてあげられなくて。
君を守ってあげられなくて。
435 :
(代理投下):2009/04/09(木) 22:18:38 ID:FwyT3D6E
荒い息をつきながら、それでも何とかそれだけを搾り出す。そして血の海となった部屋に入ると、むせ返るような匂いに再びこみあがってきた吐き気をおさえながら、すぐそばに転がっていた血に染まったデイパックを拾い上げる。
「……ん? これは……」
その時、影になるように転がっていた何かに気が付く。それは黒い小型のボイスレコーダーだった。
――あるいはこの中には彼女の遺言が入っているかもしれない。僕は覚悟と共に再生ボタンを押した。
――――――
落ちた時の衝撃か、それとも血がおかしなところにまで染み込んだせいなのか機械は沈黙を保ったままだった。……あるいは聞けなかったのは幸いだったのかもしれない。彼女を守れなかった僕に、これを聞く資格はないだろうから。
けど、これを届けなくちゃいけない相手がいることもわかっている。
「……さよなら、そしてごめん」
僕は、最後に、そう言い残して部屋を後にした。
【黒桐幹也@空の境界】
[状態]:健康 、罪悪感、強い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:デイパック、血に染まったデイパック、基本支給品×2、壊れたボイスレコーダー(メモリつき)@現実、七天七刀@とある魔術の禁書目録、不明支給品1〜3個
[思考・状況]
基本:式、鮮花を探す。
1:吉田さんの知り合いを見つけ、謝罪とレコーダーを渡す
2:浅上藤乃は……現状では保留
3:先輩ともう一度話をする
[備考]
※吉田一美の殺害犯として白純里緒を疑っています
※白純里緒が積極的に殺し合いに乗っていることに気がついています
【吉田一美@灼眼のシャナ 死亡】
代理投下終了です。
「長すぎる行があります」の書き込みエラーが頻発したので勝手に切った行があります、ごめんなさい。
あと、タイトル未定とのことですが、タイトル未定だとwiki収録できません。
ご自分で収録なさるか、早めに報告するか、どちらかお願いします。
投下乙でした。
白純の[ピー]野郎、よくも吉田さんを追い詰めたな畜生め。
吉田さんよりも黒桐くんに死亡フラグ立ってた気がするが、変な具合にスライドしてしまったなぁ。
白純里緒はやはりブラッドチップを求めるか。麻薬として使われることに期待しているのだが。
>>436 代理投下乙。ページ名は後から変更できるんだぜ。
ただの原作再現だけ
つまらん
……いちおう、乙です。
真っ先に苦言で申し訳ないですが、タイトルまでちゃんとつけてから投下して欲しかったです。
タイトルも作品の一部ですし、タイトルつけること自体に馴染みのない初心者というわけでもないでしょうし。
延長したから、期限はあと1日ありましたよね?
で、感想ですが……
里緒は、この先厳しいなあ。
吉田さん相手に精神的には完全敗北で、存在の有無すら怪しいアイテムが行動方針の軸となると……。
原作考えると手に入れたところでどの程度のものか、ってのもあるし……。
幹也も、この先厳しい。
結果論として吉田さん1人すら守りきれず、最期の言葉すら聞けず、か……。
いちおう再戦フラグ、再会フラグは立ってはいる、けど……どっちもまた会うつもり、だけど……。
会ってどうなるか、というと……。
吉田さんの遺言も、ちゃんと届いたとしても、なあ……。届けて実際聞くまでのハードルも激しく高いしなぁ……。
歯切れ悪くて申し訳ない。
難しいキャラと状況だとは分かるのですが、心からGJとは、残念ながら言えない感じです。
矛盾も何もないとは思いますし、どれもキャラ解釈の幅としてアリな範囲だとは思うのですが。
投下乙です
うーん、陰鬱……
何一つとして事態が好転する要素が見当たらない
奉仕マーダーの大量発生といい、このロワは欝方向に猛ダッシュしてる感があるなぁ
投下乙です
此方も苦言で申し訳ないですがタイトルが未定なままの未完成品をだしたのはちょっとどうかと想います。
期限ぎりぎりな仕方ありませんがもう一日期限が残っているだけにしっかりとして欲しかったです
展開は今無理にこの二人を合わせる必要性はあったのか正直疑問に残ります。
正直余りかみ合ってるようには見えないで残念です
GJっす
みんな一体何が不満なんだ?
吉田だからなのか?
タイトルがどうこうでうだうだ言うことはないと思うけどねえ。
内容云々はおいといて、とりあえずタイトルは早めに付けて欲しいな
タイトル未定ってことは未完成ってことだろ
そりゃあ印象悪いよ
無題の作品だってあるんだ。せめて内容で語ろうよ。
それに、延期最終日に投下できない事情もあったのかもしれないし。
その内容がなぁ……
まあ
>>439みたいに思ってる人が多いと思われ
こういう、一つの作品のキャラの因縁のために他の作品のキャラが淘汰される展開は好きじゃないな
ここ、別に空の境界SSスレってわけじゃないんだから
ロワでなに言ってんのかね。
悪いとは言わんよ。単純に好みの問題だと思うの。乙。
「タイトルが内容を表す」とタイトルにこだわりを持つ人もいるし、書き上げた後「決めてないがどうするか」とタイトルはおまけ程度の人もいる。
どっちの人もいるから第三者がタイトルのありなしで未完成か否かなんて無意味。完全に個人の主観でしかない。
言った奴は言葉は悪いが馬鹿としか。思うのはいいが自分の価値観100%を口にだして勝手に欠点扱いするなよ……目茶苦茶過ぎる。
投下後にタイトルを決めるなんて結構あるよ。
タイトルは無いなら無いで構わないさ
この場合作者が無いって宣言すれば
他に言える事はこの作品は現状評判が悪いって事だ
展開が気に入らないとかってのは単なるわがままでしょ。
読み手がタイトルがどうこうなんて、ナンセンスにも程があるよ。
それでも本当に問題だと思う人はしたらばで発議してみたら?
そもそも出来が悪いのに無理して未完成品を出すかって話なんじゃないか?
なぜ未完成とわかる?
まさかタイトルがないからとは言わないよな?
すごいな、エスパーか
いや多分ゼゼーナンはともかくユーゼスとあったら殺されるだろミストさんw
ユーゼスはウルトラマンとか超越者が一方的に施しを与えて甘やかせたり、強者の傲慢な立場押しつけるのが嫌いなんだから、
多分上から目線全開でグダグダ抜かしたら速効消されるのが関の山だと思うぞwww
ゼゼーナン→完璧な我々が支配してやるぞ!
ミストさん→ 完璧な俺の星と違うこの星なんて守る価値ない!=俺たちと同じような星になれ!
ユーゼス→ 自分で歩け! 自分で切り開け! そのかわり俺が押し付け気味に手を貸してやる。
みんな価値観押し付けてるけど、ユーゼスとミストさんはちょっとベクトル違うぜ。
やっちまった、誤爆www
スイマセンorz
期限に余裕があるのにタイトルも決めず焦って投下するようじゃなぁ
出来も悪いし
なんか論点がずれていないか
とりあえずタイトルの有無は最重要点ではないと思う
内容の方に不味い所があるんだろ
最初ら辺に感想の中で批判した奴はともかく、愉快犯が紛れてるな
こんな流れで破棄になったりすれば書き手も読み手も皆アレだし
タイトルも決めずに放り出したSSなんて前代未聞だからじゃないの。
中身がよければまた評価も違ったんだろうけど。
俺の知っているロワには投下のたびにタイトルを付け忘れる書き手がいる・・・
タイトルって、そんなに重要か?
収録されるまでに決まってれば問題ないだろう
タイトル無しは時々あるぞ
なくてあとから付け足すケースを合わせれば結構な量がある
とりあえず、作品に何か言いたいのなら、作品のどこに問題があるのかを明確にした上で、したらばにある議論スレで言いなよ。
これ以上本スレで文句を言っても空気を悪くするだけだから。
実際の所、修正要求が出てるわけでもないし、これ以上騒ぎ立てる必要もないと思うけどね。
古いロワ見ると結構あるな>タイトルなし
オレの知っているロワではタイトルを募集してたぞ
内容はそんなにひどいもんじゃないだろ。むしろ面白い方だと思うぞ。
あと一つの作品のキャラの因縁のために他のキャラが淘汰される展開が嫌いで騒いでるようならこのロワ奉仕マーダー多いから見ない方がいいぞ
安い原作再現であんまり……
同じ原作同士の因縁なんて元々あるしな
まぁこれを糧にして書き手氏が上手くなってくれるんだったら別にいいけど
471 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/11(土) 00:34:42 ID:MGrTuQpO
別に矛盾もないし何が問題なのかも分からん
「数年ぶりの再会がロワの序盤で起きたことが気になった」という認識でおk?
前話の現在位置も含め、リレーされた結果なのだし、問題ないでしょ。
1つ1つなら許容範囲に収まる問題が複数重なったね、という認識した方がいい。
たった1つに問題集約しようとすると見誤る
一つも問題がないのに愉快犯が騒ぎたててるが正解
複数の問題点か。幾つかの意見から抜き出してみたが・・・
>存在するかどうかわからないブラッドチップ
登場人物に縁のあるアイテムな上、パロロワにおいて麻薬に分類されるアイテムは
薬物中毒における人格変貌に一役買っているので、斜め上の展開構築に役立つかも?
少なくとも後続の書き手の裁量次第なので、読み手が心配するほどではない。
>再生不能なボイスレコーダーと遺言の行方
「メモリ付き」と記述があるので、PC対応? しかしそれでも、他の人が言ってる通り
ハードルが高い。他のロワでは解析ツールとして使われるはずであるパソコンが、
首輪に該当する制限がないので登場の兆しすらみせない。
大きな施設にはあるかもしれんが、使い方も含め、これも後続の書き手次第。
>原作再現云々
>>472で記述済み。
>タイトル
「第○○話」というタイトルだけの作品も他ロワではあるし、後で命名するらしいので問題なし。
>延期で一日残ってる、未完成云々
延期無しで書き上げた人は、延期してでも文章を推古しろと言っているのか?
三日で書き上げて、推古のために延期したのかもしれないじゃないか。
「こうだ!」という完成形を例に挙げないと、何をして未完成なのかもわからんので、
3行で説明してくれ。
・・・こんなものか?
作内、作外で他に何か問題があるのなら、その部分を明確にしてくれ。俺以外の暇な人が
肯定、否定意見のどちらかでレスしてくれるだろ。と投げっ放しジャーマン。
なんか反論する気も失せるけど、1つだけ言うと、
後続の書き手の裁量って、そこを書き手として具体的に考えればこそ欝になるんだよ……。
安い原作再現?
んなこと気にしてたら、スパロボはできないよ
別に、フラグを全て生かせと言われてるわけじゃないし、リレー小説の序盤なんだから、鬱にならんでも。
某ロワなんかは異様なまでにフラグにこだわってる人もいるけど、リレーである以上全て活かすの無理だしね。
ブラッドチップが支給品に含まれてないかもしれんし、遺言は日の目を見ないかもしれん。
それもまた、書いてる人らの裁量であり、自由な判断だろ。
…後の展開に影響を与えたフラグは全フラグの内三割程度と、漫画家か小説家の誰かが言ってた気がする。
ブラッドチップはすげーだし辛いぞー傍から見ても
普通なら毒吐きにぽいちょして終わり、な意見が多いだけだけどここ毒吐きないから
感想変わりに本音が飛び出すくらい双方共に覚悟の上よ
修正とか破棄とか言い出す奴がいたらそこで冷静に誘導すればええ
タイトル云々はなんかなー、このロワの厳格な雰囲気のなせる技なのかしら
リスタート前はwiki勝手にいじっただけで騒動になったりしたね
>>462 俺の知ってるロワはwikiに収録するまで
タイトルがないことに気付かず、未だにタイトルがないままだ
しかも、書き捨てと言うわけでもなく、
今もそのロワで主力SS書き手という
タイトルという問題じゃないと思うな、これは。
原作再現、その因縁付けは兎も角その処理かなぁ。
麻薬に関してはすでに出ていないというのは結構厳しい。
出した時点で里緒との因縁を意識せざる終えないしまた遭遇した話で出すとなるとそれもご都合に近い
そういった意味では非常に扱いづらいかなぁ
レコーダーに関してはすごく難易度が高いかなぁ
きかしたところでそれに見合う価値があるか問いわれると微妙だ
ただ、欠点はあるものの少し手を加えれればよくなる類の問題だと思う
誰も議論スレに書かないんだなwww
うーん、色々と厳しいご意見ありがとうございます。
タイトル未定に関しては言い訳にしかならないのですが、昨日は私事のためにPCに
触る事ができない環境にあり、投下した時点でギリギリの時間だったのです。
その他のご意見(ブラッドチップ、ボイスレコーダー、原作再現)に関しては、正直反論の言葉がないです。
このまま無理に通してスレの雰囲気を悪くするという結果を避けるのが一番と考えていますので、一応破棄も考えてはいるのですが
できれば皆さんのご意見をいただけたらな、と思います。
最後に仮にこの作品が通せた場合のタイトルですが「勝者なき舞台」でお願いします。
追記、拙作「吉井明久の間違いやすい英語講座」タイトル変更します
ってなんで変更タイトル入れ忘れるかな、自分orz……
吉井明久の間違いやすい英語講座→明久のパーフェクトえいご教室
への変更お願いします
別に破棄までしなくてもいいと思いますよ。
破棄レベルの矛盾もないわけですし
破棄をするなら、たとえ本人でも議論スレに提起してから。
強要はできないけど、自主的な部分修正がなされれば、それが一番皆が幸せになれる選択じゃないかな?
全ての指摘に対応しなくてもいいから。
傍目に見たところ、指摘された問題群の中にも、直しやすそうな部分と直しにくそうな部分とがある。
また、多少の問題があると分かってても、ここはあえて通したいって部分もあると思う。
矛盾というほどの矛盾もないし、全部通したいんだ、って言ったら止められないけれど……。
破棄か全通しか、All or Nothingの極端な二択じゃなくて、直せるところ・直したいところだけ直すのがいいのでは。
一部の問題だけでも、部分的にでも改善されるだけでだいぶ違うかと。
だからここで言うな
>>490 それは「最低でも一部は直せ」と強要してるも同然だぞ
破棄は勿体無いしでも多数意見出ているので一部修正がいいかも
多少問題が有るべき場所を治せる所を治せるだけ治すほうがいいとおもいます。
それだけでも随分変わると思うので
それを本スレでいう理由は?
>>493はID:E/ZFmc1Xだろ
いい加減にしろ
とりあえず議論の続きをするのならしたらばへGoだ
いや、本スレで意見を求められたから本スレで書いたのだけど……
じゃあ議論スレにかくよ
議論スレに投下。すまん、意見変えた。
現在地の画像を編集してる方に要望。
何話までの状況を反映してるか書いてくれると助かります。
ごちゃごちゃごちゃごちゃと……
ロワなんてただのお遊びだろうになにムキになってるんだよ
本当に読み手様が多いな
何がいけないか、と議論スレで指摘してくれる読み手様なら歓迎。
荒らしは問題点すら出さずに文句言うし、以前は本スレでグタグダやってただけだから、進歩じゃないか。
修正版、仮投下スレにキタ!
修正乙です。
いい感じだと思います。最小限の修正で最大の効果を上げた感じがします。
本当にご苦労様でした。
って、これアッチで言った方がいいのかな?
とりあえずこちらで
修正乙です。
修正内容もすばらしく仕上がっているとおもいます。
修正お疲れ様でした
予約ラッシュキター!
一気に二つも予約がきたーーー!!!
かなめ登場で、これで全員顔見せ終わりだよね?
いや、3つだぜw
兎も角全員登場だな
一つ見落としてた。恥ずかしーw
かなめやっと登場か……
参戦時期次第ではかなりの危険人物になるな
ちなみにかなめが危険人物だった場合
初期危険人物は驚きの二十人
全参加者の内三分の一が危険人物
そして上条さん逃げてーということになるw
>三分の一が危険人物
普通じゃね?
むしろ常識人ばっかだと話が進まなくて、誰かが発狂したりキャラ改変されたりするので丁度いい
予約増えたーw
>>508 かなめが危険人物はパーセンテージだと低いが、危険人物の場合上条さんにとって相性最悪なのも確かだな
魔法や超能力持ちなら上条さんが相性最高だが、一般人の場合攻撃は銃火器や刃物、鈍器という最悪の相手
上条さん夢の二桁到達は果たして……
512 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 15:09:33 ID:timltTah
上条さんの能力に制限ってないの?
能力が制限されてるってんなら、まずはその幻想をぶち壊す!
そんなにチート能力でもないし、いいんじゃね
何をやっても死なないとかなら制限しなきゃいかんが、ファンタジー能力が効かないだけだし
しかも右手限定
予約分、投下します。
「ちょっと一人にさせてもらっていいか?」
「構いませんが……彼女は?」
「お前に任せる。悪いな、陸」
「いえ。ではキョンさん、ごゆっくり」
「突然すまんな」
さて。
陸とのそんな会話を経て、俺が今どうしているかというとだな。
先人が敵襲に備えて昇り辛くなるように加工した急な階段を慎重に降り、下の階へ移動していた。
別に観光がしたかったわけじゃない。こんな状況で暢気にそんなことは言ってられないのは流石にわかっている。
俺はただ、一人で考える時間が欲しかっただけなのだ。
さて。
何の変哲も無い正にコッテコテな城っぷりを発揮した"間"。それが今俺の居る場所だ。
天守閣といい、この"間"といい、全く以って立派なお城だと思う。どっから持ってきたんだ。
これもハルヒの所為って言うのか? ハルヒの所為に出来るのか? ハルヒの所為にするのか?
……そう。俺が考えたかったのは、まさにそういう旨の話。今のこの状況のことなのだ。
本人達には大変申し訳ないことなのだが、一度酔っ払いも犬も居ないところで考えておきたかった。
混乱に次ぐ混乱により我慢弱くもあらぶっている脳を、誰も居ない場所で整理したかったのだ。
さて。
過去を回想してみれば、俺の行動パターンはもう決まっているも同然だった。
何かあればハルヒの所為だと考えていたし、実際そうだった事例ばかりだった。
俺は常々長門に協力を仰ぎ、朝比奈さんに癒されながら、古泉の解説を聞く。
ハルヒは常に蚊帳の外。親玉にばれないように事件をこっそりと解決し、俺はそれを眺め続ける。
もう、普遍だ。「パターン入った!」ってくらいのお約束だ。
さて。
では現状、俺はどうするべきだろうか。
ここに来たばかりのときは、マオさんに陸という奇妙な取り合わせに気圧されて正常な判断が出来なかった。
故に俺はこの状況に対して特に何も考えず、目の前の対処――主にマオさんの――に必死になったわけだが……。
だがそんな中で俺はふと、この状況をハルヒの所為にするには些かおかしなことが多いのではないだろうかと気づいたのだ。
何の拍子にだったかは解らない。とにかく俺は、自分の脳内にて警鐘を慣らすことが出来たのだ。
だから今ここにいるわけで。って、いやそうじゃない。俺の考えた"些かおかしいなこと"とは……最初に俺に語りかけてきた男の話だ。
「ハルヒが……こんなこと望むか?」
そう、何せあの人類最悪とやら曰く「最後の一人になるまで生き残れ」だ。
いつも非日常的なワクワクを求めているあいつだが、自分が厄介な目に遭うことは望んではいないはず。
閉鎖空間に丸ごと閉じ込められたときには高揚していたが……今回とは事情が全く違う。
ならば長門のところのボス? 未来人の仕業? 古泉の"機関"?
……さっぱり、わからん。
さて。
じゃあどうすればいい?
正直今、俺は地味に恐怖している。さっきからしつこいだろうが、何もかもをハルヒの所為にして逃げてしまいたい。
冷静に状況を整理すればする程、恐ろしい事態であると俺も確信しているからだ。
だがそもそもこれがハルヒやらの仕業じゃなかったら? 長門や古泉のテリトリーでは無い事件だとしたら?
それは考えたくもない仮定だ。だが、目を逸らして良い問題じゃない。
もしも今までからは考えられないケースだったとしたら、俺は本当に"どうすればいい"?
さて。
思い返せば、俺は今この瞬間に至るまでずっと"楽天的だった"と言わざるを得ない。
何せ場に流されたとはいえ、途中までは"またハルヒの仕業か"と思考停止を図ったわけだからな。
いや、その事自体はいいだろう。ハルヒの所為にしてしまったのは仕方が無い。まぁ仕方が無い。そこは。
やってしまったものは仕方が無いというじゃないか。って、俺は誰に言い訳をしているんだ。
……げふんげふん。いいか、俺。よく考えろ。
今、俺の隣には、SOS団の連中はいない。
そう、誰もいない。俺の事情を知らないマオさんと陸がいるだけだ。
長門もいない、朝比奈さんもいない、古泉もいない。そして、ハルヒもいない。
探せば見つかるかもしれん。ああ、見つかるかもしれんさ。
だが少なくともこんな大変な状況下で、俺が頼りにしてたメンツは誰一人として近くにいないわけだ。
隣にもし長門がいたなら、俺はただただその力を頼りにしただろう。
隣にもし朝比奈さんがいたら、俺はこの世界の手がかりを少しでも掴んでくれるよう願っただろう。
隣にもし古泉がいたら、俺は安心感欲しさに様々な仮説やら仮定論やらを説いてくれるよう頼んだだろう。
だが、今はそれを望むことが出来ない。
「一人、か……」
SOS団のメンバーの中で、唯一と言ってももいいだろう……俺は一人じゃあ何も出来ない人間だ。
だから常に隣に誰かいて、そのおかげで現実離れした事象も跳ね除けることが出来たんだ。
マオさんと陸がいたところで、正に一般人丸出しな俺が何をどうすればいいのか。
「ちょっと甘かったな……」
最初は長門たちと出会えばまぁ大丈夫か、なんて軽い気持ちだったが……こうなると会うまでが大変だ。
天守閣から見た景色がとても広かったところから察するに難儀な作業に違いない。
ハルヒの仕業にしても、そうでない場合にしても、都合よく俺が皆と再会出来るという保証は無い。
こうなるともう、本気で人生設計を立てるくらいのレベルで物事を考えていくしかないな。
未来を見据えて、一手先を考えて……ええい。
「やるしか、ないだろうよ」
いいだろう。上等だ。人類最悪とやら、お前の言うとおり最後まで生き残ってやろうじゃないか。
見知った奴らが近場にいなけりゃ、俺が俺自身の力でなんとかしてやる。なんとかしてみせる。
そしてハルヒ達SOS団と合流して、マオさんも陸も一緒のままでここから帰ってやる。
そうするしかないならやってやる、やってやるぞ。長門達頼りないつもの俺は封印だこの野郎。
と、そう決意すると抱いていたはずの恐怖やら不安やらが少し冷めた。ふむ、ここに来て随分と麻痺してしまったようだ。
俺も来るところまで来たということか。ちょっと格好良いじゃないか自分め。
というか、肝が据わってきたのかもしれないな。
さて。
ここで豆知識だが、城にはところどころで三角や四角や円形の穴が開いている箇所がある。
これは矢座間(やざま)、または鉄砲狭間(てっぽうざま)と呼ばれるものだ。
その小さなスペースはどんな用途を想定して作られたかというと、それは早い話弓矢や鉄砲を使用する為だ。
昔の人たちはこの小さな穴を使い、外にいる敵達を城内部から狙撃していたわけなのである。う〜ん、凄過ぎる。
で、だ。突然それの話をしてどうしたかって言うと。
『――この舞台に呼ばれた者達よ、聞こえるか? 我が名は『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』とでも記憶しておけ』
突然、その狭間から声が聞こえてきやがったのだ。
少し離れた場所で誰かが叫んでいる。狭間がなければ天守閣にでもいない限り聞こえてこなかっただろう。
一体何なんだ、と狭間から俺は外を覗き込む。当然だが、壁を隔てた向こう側に人がいるわけではなかった。
これは……そうか、何か機械を使うことで声量を増幅させているのだろうな。
声の主は誰だ? あ、いや、名乗ってたな。誰だっけ。"鰐が最小で……なんたら"、さん?
『この声が聞こえた者もそうでない者も関係無しに僕は貴様達に対して宣言する。貴様達のような愚かな者たちにその名を聞かせるのも憚られる為に、あえて名前までは伝えることはしないが、この僕が命に代えても守り抜くべき存在もこの舞台へと呼ばれている』
マジでか。お互い大変だな。
◇ ◇ ◇
さて。
俺はあれから、狭間越しに話を聞いていたわけだが……まずいことになった。
『よって僕はここに宣言する! 万が一この先彼女の名前が呼ばれるようなことがあれば僕は貴様達を一人残らず地獄へと叩き落そうと! 』
『脱出を願う多少は賢明なる者達よ、貴様達の奮闘を僕は期待しよう。貴様達が一刻も早くそして一人でも多くこの舞台から脱出できる方法を見つけ出せることを』
『タイムリミットはかの存在の命が尽きるまで、貴様達が戦う意思があろうとなかろうと関係ない。そのときがきたのなら僕は貴様達が無抵抗であろうがなかろうが、区別無しに殺す』
『そしてあの男程度の口車に乗せられて殺し合いを肯定してしまった愚劣極まりない矮小な微生物にも劣る存在たちよ。正直この瞬間にも貴様達と同じ空気を吸っていると思うことすら耐えがたい』
『すぐにここに来い! 僕のこの言葉が身の程知らずな大言壮語ではないことを、貴様達の苦痛と絶叫と死をもって証明してやろう』
『僕の所在地はD-4のホールだ』
『繰り返…いや、貴様達のような愚か者は先の言葉全ては覚えきれないか。簡潔に伝えてやろう』
『優勝したいと願うような愚か者はエリアD-4ホールへ来て己が愚劣さをあの世で後悔せよ!』
まずい。まずいって、いや、本当まずい。一つ一つ分けて並べるとよく解るこの絶望感。
何がまずいってこの危険思考だ。荒れ狂うベーリング海すら大人しくさせるであろう殺気。
見える、見えるぞ。声の主の目がギラギラしているのがよくわかる。俺ってエスパー?
こんなのに近くにいられては、俺は俺なりに頑張る暇もなく何かに巻き込まれて死ぬ。死んじゃう。
……よーし、よしよし、よし。よし、こうなったら今からやることは決まったぞ!
俺は元居た場所へと戻る為、急いで階段を昇った。
こうしている間にも、周りで同じようにあの声を聞いた人間が何かアクションを起こしているだろう。
好戦的な奴にとって、あの挑発は極上の餌が付いた釣り針そのものだ。
声の主も嬉々として所謂一つの「フィーッシュ!」ってやつだろうよ!
鰐が最小なんたらさんめ! グラ○ダー○蔵じゃないんだから! って俺何言ってんの!?
ああもう! 階段がこんなに登り辛いから! そんなことだから! そんなことだから!
よし到着!
「おや、キョンさん……もしや」
「ああそうだよそのもやしだよ!」
「いえ、モヤシではなく」
既に事情も察しているのであろう陸が律儀に俺に話しかけている。冷静だなお前。
律儀で結構。それに俺よりも冷静なようでありがたいが、今は長々と話に付き合っている暇は無い。後でな!
マオさんなんか「おかえり〜」と楽しそうに手を振ってくる! あー、笑顔。超笑顔。
律儀で結構。それに俺よりも暢気なようでありがたいが、今は長々とその手に応えている暇は無い。後でな!
「今すぐ逃げましょう! 多分ここ、戦場になります!」
今は、これが先決だ。場に流されてる気はあるけどな。
そんなこんなで息も絶え絶えに叫ぶ俺の姿は、なんだか格好悪かった。
だがそれでも良いさ。俺は俺なりに頑張ってやる!
【C-3/天守閣前/一日目・深夜】
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:陸@キノの旅
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1〜2個所持)
[思考・状況]
1:城から逃げたい。
2:SOS団との合流し、脱出する。
[備考]
※陸の思考
1:キョンたちについていく。
2:シズとの合流
【メリッサ・マオ@フルメタルパニック!】
[状態]:健康、やや酒に酔っている
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1〜3個所持)
[思考・状況]
1:キョンを守る
2:仲間達と合流
3:自身の名前が無い事に疑問
投下終了。支援感謝です。
投下乙。
おお、キョンが違和感を持ったw ある意味でハルヒ対策のスペシャリストならではの自覚。
離れて分かる仲間の大切さが重いな。
キョンは逃げる気マンマンだが、果たしてどうなることやら。
キョンがんば。
こちらでもパシリなんてことにならなければいいが。
投下乙!
いいねー、一般人なりに頑張っていこうとする姿にグッとくる
つか鰐が最小なんたらさんめ!じゃねーよww
投下乙
キョンの頑張りに期待
それともやしwwww
投下乙です
キョンがいきいきしてるなぁw
キョンらしいw
これから戦場になるけどどうなるかw
キョンに期待w
GJでした
お待たせしました。上条当麻、千鳥かなめ、北村佑作とうかします
「……ふぅー」
湯煙が立ち上る所に溜め息が一つ零れた。
その溜め息は疲労と苦悩がまじったもの。
「……はぁ」
思わず出た声がタイル張りの部屋に響く。
そう、ここは大浴場だった。
大人が10人ほど入れるほどの大きな温泉。
その温泉につかる蒼く長い髪をポニーテールにした少女が出した声だった。
「……うーん」
温泉に浸かりながら少女が背伸びをする。
浮かべる表情は苦悩。
そして目を瞑り呆けていた。
温泉によって疲れを癒すように。
が。
「……って、何でやああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
咆哮。
少女らしからぬ絶叫がタイル張りの部屋に反響した。
少女は立ち上がり表情は憤怒。
そして次に継げる言葉は
「何が好き好んで制服で風呂に入らないといけないんだぁあああ! あたしは!」
その少女は一糸纏わぬ姿ではなく真っ白い色制服で胸元には大きな赤いリボン。
つまり彼女は温泉なのに服を着たまま入浴していた。
少女は水にぬれた服が体に張り付いて凄く気持ちが悪かった。
それがさらに彼女を苛立たせ怒りを増幅させていく。
右手をわなわなと震わせ
「生き残れって……訳分からないこと言って……なんでいきなり風呂……全く意味がわかんないっつーの!」
この場に居ない狐面の男に文句をぶつける。
少女の怒りのボルテージはどんどん上がっていき苛々するばかり。
そして少女は思う。
こんな事をしたあの男に。
いきなりスタート地点を風呂の中にした男に。
極めて個人的な怒りを
「ぜっっっっっったい! ゆるすかぁああああああああ! 見てなさいよ、あたしを怒らしたら……どうなるか……首を洗ってまってなさいよ!」
ぶつける事を決意した。
その少女の名は千鳥かなめ。
都立陣代高校2年4組また同高校生徒会副会長。
そしてまたの名を「恋人にしたくない贈呈品イーター」
かなめは天に拳を掲げそう強く宣言した。
「はぁ……はぁ……何だか疲れた」
そしてその直後に大きな溜め息を付き疲労感を露わにする。
かなめはあの男に怒りを宣言はしたがいいが無駄な徒労感を感じ額に手を当てる。
そして下を見ると未だに湯気を醸している温泉。
かなめは暫し考え
「………………まぁ折角……ここに飛ばされたんだから……疲労回復もかねて……入りますか」
結局入浴する事にした。
今度はしっかりと服を脱いで。
結局の所。
かなめはこんなものに巻き込まれた理不尽さを何かにぶつけたかったもしれない。
その真相は誰にもわからず。
ただ、湯煙の中に消えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……んまぁ……こんな所か」
「そうだな……お互いに開始してから直ぐにあった訳だしな」
場所は変わって温泉旅館のある客間。
その和室に二人の少年がちゃぶ台をはさんで向かい合い話をしていた。
ツンツンした短めの黒髪をした一見普通の少年、『幻想殺し』上条当麻。
髪を綺麗に切りそろえ眼鏡をした「まるお」という表現がぴったりな少年、『生徒会長』北村佑作。
この生き残りゲームで偶然出会った二人は緑茶を啜りながらのんびりとしていた。
一先ずは情報交換。
そう考えた上でゆったりしながら話し合っていた。
とは言いながらも互いに持ちえる情報は互いの知り合い程度でしかない。
それを事細かに伝えただけで情報交換といえるものは終わってしまった。
その後は特に二人して会話続かずただ生温い緑茶を啜るのみ。
「あー……なんかゆったりだなぁ」
「そうだなぁ……」
何だかゆったりとした時間が二人の間を流れていた。
完全にリラックスしてお茶を啜り続けている。
まるでこれが生き残りゲームとは思えないぐらいに。
(いやいや……何やってるよ俺! こんなのんびりしてる暇じゃないだろ! 誰かを蹴落とそう考えてる奴だって居るかもしれないんだ)
突如上条は頭を振るって自分に活を入れる。
何だか北村に流され自身もゆったりしたが本来はこんな事をしている場合ではないのだ。
これは1人しか生き残れない。
つまりそれは上条の仲間も死んでしまうかもしれないのだ。
インデックスも御坂も土御門も黒子もステイルもだ。
(そんな事……そんな事やらせるかよ!)
そんなふざけた事は絶対やらせない。
上条はそう心に誓う。
その為にも。
「北村。この後はどうするんだ?」
行動を起こそうと。
留まってのんびりしている暇は無い。
このふざけたも催しをぶっ壊す為にも。
上条は動こうと。
そう思ったから。
『幻想殺し』上条当麻は行動を開始した。
「……そうだな」
北村がその真剣な上条の視線を感じてか同じく目を細め考え始める。
顎に手を添え、どうすればいいか考え始めていた時の事だった。
「きゃぁああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?」
「な、なんだ!?」
旅館の奥から甲高い女の子の悲鳴が聞こえたのは。
その悲鳴に二人は一斉に立ち上がり聞こえてきた方を向いた。
そして上条は
「ちっ……もうなのかよっ! 北村、俺が見てくる!」
「あ、あぁ……だが」
「だがも糞もあるか! 誰が襲われてるんだ! 黙って見てられるかよ!」
北村を客室に置いて駆け出し始めた。
上条の頭にはあるのは誰も犠牲を出したくない事しかなかった。
絶対に犠牲なんか出したくなかった。
本心からそう願って。
「くそっ、間に合え! 間に合えよ! 絶対助けてやっから!」
走る足をもっと早く動かす。
上条はただ助けたい。
それだけを考えて。
後先を考えず走る。
「―――ああ……も―――」
「……っ、ここか!」
全力疾走中、ある部屋からの女の子声が聞こえてきたの確認をし上条は急ブレーキをしそのまま戸を開ける。
そして戸をあけた先にもう一つの扉があったのを確認しそのままを突入をした。
が。
「ここか!……今たすけ――――はっ?」
「…………………………………………え?」
上条が見つけたのは襲われた女の子ではなく。
「な、なんで……裸?」
湯煙の先に見えた全裸の少女、千鳥かなめ。
かなめは唖然と上条を見つめ、ただ信じられないという感じに。
暫しの無言空間。
「え、えーとなんで裸なんでございましょうか……?」
部屋を見れば解りきっている事をわざわざ改めて聞く上条。
襲われたと勘違いしたのは解りきっている筈なのに。
かなめはポカンとした表情を段々憤怒の表情に変えていく。
それは正しく般若。
そして
「見れば―――解るでしょうがああああああああああああああ!!!!!!!」
怒りに任せそのまま手元にあった風呂桶を全力でオーバースローで投げる。
それは真っ直ぐ
「――――ぐぇ!?」
上条の頭に直撃にしそのまま仰け反る。
痛みは直ぐにやってきて頭がくらくらする。
上条の浮かぶのはただ、ひとつ。
「ふ、不幸だ……」
「不幸は……こっちだあ!……こぉおんの……変態がぁ!!!!!!!」
もう一撃飛んでくる風呂桶と言う名の凶器。
上条がほぼ意識を手放すと同時。
「このまま、ねかせるもんですか!」
近づいてきたかなめの鉄拳。
正しくそこにはいるのは怒りに身を任せた修羅悪鬼。
そして、修羅悪鬼の鉄拳制裁が始まった。
「や、やっぱり……不幸だ……ごふっ?!」
ちなみに。
かなめの叫び声の悲鳴。
それは単純にシャワーが予想外に冷水だったからという何とも言えない理由であった。
「……ふ、不幸……ぐ……ふ」
「この、変態! 変態!」
ただ上条の断末魔が響いて湯煙の中に消えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ああ、お帰り上条。凄い顔だな」
「……お、おう……ただ……いま」
「……ふん」
「えーっと始めましてかな? 俺は北村佑作」
「……千鳥かなめ」
「まぁ大変だと思うけどお茶をどうぞ」
「……どうも」
温泉での一騒ぎが終わってかなめを連れて北村の元に戻ってきた上条。
ただし、たんこぶと顔面ぼこぼこで。
かなめは濡れた制服を変え支給品にあった真っ赤な制服に着替えていた。
北村は何故か状況を知っているように落ち着いてお茶を飲んでいた。
そんな北村を不審がった上条は北村に尋ねた。
「何でお前……」
「上条が飛び出した後追いかけたんだ。そして漏れる声で害は無いと判断したまでさ」
「……さいですか」
「ラッキーだったな」
「不幸だよ……」
上条は大きな溜め息を付きちゃぶ台の前に座った。
そしてちゃぶ台には3人の人間が囲っている。
顔面がひどい事になっている上条。
未だにぶすっとしているかなめ。
やれやれという表情を浮かべている北村。
三者三様だった。
「それで上条と千鳥は自己紹介は……」
「終わったわよ。最悪な出会いだったけど」
じとっと上条を睨むかなめ。
上条は気まずそうにお茶を飲むだけ。
北村は苦笑いを浮かべ会話を続ける。
「それで千鳥は俺と同じ学校出身なのか? その制服は……」
「あ、あー違うわよ。あたしは何故か温泉の中から開始だったから元の制服がびしょ濡れだっただけよ。最悪だわ」
「そうか……それで千鳥は知り合いでも」
「あーちょっと待って、確認するから」
そういってかなめはデイバックをあけ名簿を確認する。
そしたら露骨に顔を歪めながらも
「まぁぼちぼちいるわ……えっと本当に知り合い程度と……戦争馬鹿のAS乗りの朴念仁のろくでなしの相良宗介って奴」
「なんだそいつは……」
「そのなの通りの馬鹿よ」
そのかなめの言動に北村が苦笑いを浮かべていた。
だが黙って聞いていた上条がある単語に注目した。
「AS……?」
「アームスレイブ。知らない?」
「さっぱりなんですけど」
「俺もだ」
「えっ……? いやまぁ簡単に言うと軍用の大型ロボット見たいな奴? あー簡単に言えばガンダ○みたいなもの」
「……はっ? そんなの……本当にあるのか?」
北村が唖然とした声を上げる。
流石に冗談を言っているかと思ったがかなめが真剣な顔しているので事実なんだろうと思った。
しかし、それでも北村には信じられない。
北村の世界にはそんなもの存在しないのだから。
上条も同じく信じられないふうに言う。
「いや流石に……学園都市でもそんな発展したロボットは無いぜ……?」
「学園都市……? 大学みたいのか?」
「いや……東京の半分覆ってる学園都市だよ。なんだよ、知らないのか?」
「いや、そんなの知らないわよ」
「同じくだ」
今度はかなめと北村が唖然とする時だった。
かなめの時と同じく常識のように言う上条がが信じられなかったから。
上条は信じられない風に
「おいおい……東京を占領するかのように広がっていて他と違って科学が一定以上進んでるあの街だぞ? 能力を開発する為に発展した科学の街を……本当に知らないのか?」
「知らないわよ……能力って何よ」
「おい……読心能力やら発火能力の事……人が本来持ち合わせないものを使えるようにするんだ……本当に知らないのか?」
「しっらないわよ。そんな超能力ある訳ないじゃない」
「……そんな。俺だってASなんて信じられないぜ」
「俺は両方とも知らないよ」
「そんな……」
上条が常識のように言う学園都市、だがかなめは知らない。
かなめが常識のように言うAS、だが上条は知らない。
北村はその両方を知らない。
3人が黙りその事を深く考え始める。
互いの常識、非常識。
謎が謎を呼び混乱していく中で場は膠着していく。
そんな時北村が一声をあげた。
「兎も角……どうやら、この催し。俺らには想像付かない事が起きているらしい」
「そのようね」
「そうだな」
取りあえず考えても仕方がない。
そう判断したのだ。
誰もが常識と思って嘘を言っていないなら否定する事は出来ない。
何より否定できるものは存在してない。
そしてそれを引き起こしたこの催しは予想以上にでかい事。
それを3人は理解した。
「だけど……今これを考えてもしかたない。いいな上条? 千鳥?」
「いいぜ」
「いいよ」
「なら……次に俺達がする事を決めようじゃないか」
そういって地図を広げる北村。
二人は肯定しその地図を見つめる。
「まず多分俺達がいるのはここ、温泉だろう」
「そうだな」
「なら……気になる事がある」
「何が?」
かなめの疑問に北村がある一点をさす。
そこは
「端っこ……?」
「そうだ」
示すはE-1の地点。
「ここがどうなってるか気にならないか? 脱出が出来ない……そうあの男は言ってたはずだ。ならばその端っこはどうなっている?」
「そういえば……そうだな」
北村はそのまま眼鏡を上げ上条に言う。
「つまりここに何かあるかもしれない……だから上条。ここは一旦別れて上条はそこに向かってもらえるか?」
「いいけど……なんで別れるんだ?」
「俺はここを拠点に知りあいやお前達の仲間を探すよ。3人で纏めていく必要もないだろう? お前ならそういう非常識を知っていそうだ」
「……それもそうだけど」
「頼む」
「……解ったよ」
北村の真剣な眼差しに上条は肯定するしかなかった。
そこに確固たる意志を感じてしまったから。
「あたしは……どうすればいい?」
「そうだな、上条についてもらっていいかな?」
「うーん、この覗き魔と?」
「おい……」
「……まぁいいわ。わかったわ。他にいくところも無いしね」
かなめは一度ジトッと上条を睨むと肯定した。
北村はそれに一度頷き立ち上がる。
宣言する為に。
「よし、じゃあ第2回から4回までここでまた落ち合おう。皆死ぬんじゃないぞ」
「解った、お前もな」
「ええ」
3人は肯定し立ち上がる。
北村は見回し右手を突き上げ宣言する。
「よし! じゃあ俺達は皆と一緒にかえる! そう宣言する!」
上条もそのまま『幻想殺し』の右手を掲げ言う。
「ああ! 俺もこんなくっされたもの……ぶっ壊してみせる!」
かなめもそれに同調し
「ええ、あたしは帰る。日常に。帰るんだ!」
3人は右手にを掲げる。
宣言が一室に反響し続ける。
それは絶対に屈しない者達の
力強い、強い宣言だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
真っ暗い夜に月がただ照らしている。
そこを歩いてるのは二人。
上条当麻と千鳥かなめの二人だった。
二人は無言でただもくもくと道を歩いている。
そんな時だった。
「ねえ、当麻」
「なんだ?」
かなめがそう声をかけたのは。
かなめはただ月を見上げながら上条の方を向かずに話しかける。
「何であの時焦ってきたの?」
「……ああ。単純だよ」
「覗きたいから?」
「阿呆か! 何を言ってやがりますか!」
ジトッとした声で言うかなめに必死に否定する上条。
そして頭をかきながら言う。
「悲鳴だったから……助けなきゃっと思った。誰かを助けるのに……理由はいらないだろ?」
「…………そうね」
単純だった。
誰かを助けたい。
それだけ。
純粋なそれでも強い思い故の事。
とっても解りやすく単純で……強い思いだった。
かなめは笑いそのままわざとふざけて言う。
「本当……単純だわ。それで覗くなんてラッキーよね。この変態」
「……なっ、ちょ!? そ、それはないでしょう!? ないでしょうか!? ないにちがいない!?」
「あははは……変なの」
かなめが笑いながら駆ける。
上条が慌てながらも追っかけて。
月が優しく照らしていた。
そんな二人を。
ただ、照らしていた。
【E-2/西部/黎明】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】:健康
【装備】:無し
【道具】:デイパック 不明支給品1〜2 吉井明久の答案用紙数枚@バカとテストと召喚獣
【思考・状況】
1:このふざけた世界から全員で脱出する。殺しはしない
2:インデックスを最優先に御坂と黒子を探す。土御門とステイルは後回し
3:西部の端に行きどうなっているか確認する。
4:かなめと行動。
5:第二回〜第4回までに北村と落ち合う
【千鳥かなめ@フルメタル・パニック!】
【状態】:健康
【装備】:とらドラの制服@とらドラ!
【道具】:デイパック 不明支給品1〜2、陣代高校の制服@フルメタル・パニック!
【思考・状況】
1:脱出をする。殺しはしない
2:知り合いは探したい
3:西部の端に行きどうなっているか確認する。
4;当麻と行動。
5:第二回〜第4回までに北村と落ち合う
【備考】
※2巻〜3巻から参戦。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いったか……騒がしかったな」
北村が出発をした二人について一言を言うと溜め息をつく。
北村は無事をいのりそして自身の目的を思い出す。
「会長……いないといいのですが」
思うのは慕っていた元生徒会長狩野すみれ。
北村が恋した女性。
それは叶わなかったものの慕っていたのは変わらない。
彼女がもしかしたらここに居る可能性。
それを思いついてしまったのだ。
北村が名簿にのっていない状況彼女が居ないなんて断言は出来ないのだから。
「彼女を探そう。皆と一緒になんとしても」
そして探そうと心に決めた。
それが上条達と別れた真の理由。
1人で納得が出来るまで探したい。
そう思ったから。
それは紛れも無い北村本心からの。
強い想いからだった。
「無事でいてください……会長」
そして北村も出発する。
すみれの無事を祈って。
その姿は生徒会長でもあり。
1人の男の姿だった。
【E-3/温泉/深夜】
【北村祐作@とらドラ!】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック 不明支給品1〜3
[思考・状況]
1:すみれを優先的に探す
2;高須竜児、逢坂大河、櫛枝実乃梨、川嶋亜美の四人を探す。
3;危険な人物に襲われた際の対処は特に考えてない。
4:第二回〜第4回までに上条、かなめと落ち合う
【備考】
上条、かなめの知人の外見の特徴を知ってます。
北村の参戦時期は少なくとも生徒会長就任以降です
以上投下終了です。
支援有難うございます。
不明点がありましたら指摘の程よろしくお願いします
投下乙です。
おお、世界観のズレにいち早く気付いたか!
しかし判断保留。いやこれ意外とできない良判断かも。特に一般人には。
上条かなめ組はラッキースケベからどう転がるか、だな……
そして北村。会長はコッチに来てないぞ!?w
しかし名簿の一部が伏せられてるからその判断もつかないのか。さてどうなるか
投下GJ!
上条さんはFF9の主人公乙w
ふむ、一応事態は丸く収まったものの現状まだ全ての解決には程遠い、と。
生き残りをかけたゲーム内で、この三人がどう動くか……これからの動向が気になりますね。
頑張れ、負けんな。
投下乙です。
上条さんは相変わらずですな。
……かなめの鉄拳制裁で退場という可能性もあるんじゃね? とか考えてごめんなさい。
投下乙でした。
>CHALLENGER
キョンが確変モードに入りましたw 知人が周囲に誰にもいないからこそ、
自分が何とかするしかないと思う姿は、主人公してるなぁと思うばかり。
んで、位置的にD-4への通り道への一つで、そして真中に位置する天守閣。
一般人からすれば今すぐ逃げたいだろうが…酔っ払いが現実を認識するまで大変そうだ。
>ハローグッバイ
上条さん第二話への到達おめ。相変わらずラッキースケベだwww
世界観のズレに気付いたけど、一旦は棚上げし、行動する三者だけど…
確か温泉って怖いのが二人ほど向かってなかったか? 逃げて北村早く逃げてー。
ところで、北村だけ行動終了時の時間帯が「深夜」になっていますが、誤字でしょうか?
それと
>>557の一文について。
>北村が名簿にのっていない状況彼女が居ないなんて断言は出来ないのだから。
言ってる意味は通じるんだけど、幾つか文字が抜けているような…?
投下乙!
ちょ…相変わらずの上条さんw
不幸とか言いながら滅茶苦茶ラッキーじゃねぇかwww
そして祝☆二話
まだ予約追加だと…?(ごくり
ラッキースケベが多いなw
感想指摘有難うございます。
北村の時間帯については黎明の間違いです。
下の一文は言葉足らずでしたね。
どちらもウィキ収録の後に修正したいと思います。
遅くなりましたが、予約していた分、投下します。
――それは2度目の交渉だけあって、前よりもスムーズなものとなった。
薄暗い校舎の中、制服姿の青年2人は静かに向き合っていた。
片方の手には、物騒な光を放つ拳銃。
そして片方の手には――赤く輝く、光の球が載せられていた。
「……というわけで、僕の第一の希望は、彼女に首尾よく『絶望してもらう』ことです。
そうすれば、『全てが無かったこと』にできる可能性も出てくるでしょう。
何しろ彼女には、本人も気付いていない『神』の如き『能力』があるのですから」
「俺には、お前の言ってることの半分も理解できねぇよ……」
目の前の青年は、気の弱い者ならそれだけで腰を抜かしてしまいそうな鋭い眼光で睨みつけてくる。
鋭くつり上がった三白眼。威圧するようなキツい視線。
きっと地元では、さぞかし名のある不良少年だったに違いあるまい(と、古泉は判断している)。
確か、高須竜児、とか名乗っていただろうか。名前からして勇ましいものだ。
しかしそんな眼光に射られてもなお、古泉一樹の微笑みは揺らがない。
相手の視線が『武器』ならば、この微笑は古泉の『鎧』だ。そう簡単に破られたり崩されたりしない自信はある。
それに、踏んできた場数の種類が違う。
相手は百戦錬磨のヤンキー(であろう、と古泉は考えている)だとしても、所詮は街のケンカレベル。
対する古泉は、日々世界を守るため、《神人》との負けられない戦いを重ねてきた超能力戦士だ。
威圧だけで8割方の問題を解決できてしまうヤクザや不良とは、立っている世界そのものが違うのだ。
しかし世界が違うからこそ、助け舟を出してやる必要もあるだろう、とも思う。
やや芝居が掛かったオーバーリアクションで、古泉は軽く肩をすくめて見せ、説明を続ける。
「僕も流石に、いきなり全てを信じてもらえるとは思ってません。
そこで、第二の希望です。ま、次善策とも言いますが」
「次善策?」
「ええ。つまり、僕自身を犠牲にしてでも全てを殺して『涼宮ハルヒ』を『優勝』させ、彼女を元の生活に帰す。
彼女が『最後の1人』になるよう、他の残る全参加者を排除する。
彼女さえ生き残ってくれれば、希望は繋がりますから。
……彼女の『能力』について納得できずとも、こちらは理解できるでしょう?」
古泉はそこで一旦言葉を切り、高須竜児の顔を覗き込んだ。
「なぜなら、貴方も同じ考えの持ち主なのですから」
「…………!!」
「えーっと、『逢坂大河』『川嶋亜美』『櫛枝実乃梨』――でしたっけ?
ああ、盗み聞きする格好になってしまったことは謝ります。そんなつもりは無かったのですけどね。
しかし、3名とは。
涼宮さんの『能力』をアテにしている僕が言うのも何ですけど、貴方も相当な欲張りだ」
古泉の軽い挑発に、高須の拳銃が僅かに揺れる。怒りとも憤りとも取れる表情が浮かぶ。
とはいえ、無闇に発砲してきたりはしない。古泉の手元に浮かぶ光球への警戒は忘れていない。
その程度の理性は残している。
古泉の計算通り、暴走しないくらいのレベルで、動揺してくれている。ゆえに畳み掛ける。
「というわけで、どうでしょう。当面のところ、互いの利害は一致していると思うのですが。
僕も貴方も、互いの大事な人を避けて参加者を減らしていく。
その過程で涼宮さんが上手く絶望し、その『能力』でもって全てを『リセット』してくれれば、それが最善。
僕も、貴方も、貴方の大事な3人のお嬢さんも、全て元の生活に帰ることができます」
「……全員……助かる……?」
「でも、なかなか涼宮さんが『能力』を発現してくれないようなら、僕も次善策を取らざるを得ません。
つまり、彼女の『優勝』のために、残る全てを排除するわけです。
その時に貴方が『誰』を選ぼうとするのか、大変興味がありますが……
もしかしたら、その時には互いに敵同士になるのかもしれませんね。
でも逆に言えば、そこまでは我々の道は交わりません。互いに協力することが可能です」
古泉が持ちかけるのは、つまりは『相互不可侵協定』とでも呼ぶべき代物だった。
当面の間、古泉は高須が守りたい3人を攻撃しない。高須もまた、涼宮ハルヒを攻撃しない。
そんな約束の下に、それぞれ勝手に「それ以外の参加者」を減らしていく。
そうすれば、途中までは互いが互いの助けになる。
最初に屋上で遭遇した彼(そういえば名前も聞きそびれてしまった)の時より、1歩踏み込んだ内容だった。
果たして高須竜児は、少し悩んだ素振りを見せた後に、
「……1つ、質問いいか?」
「どうぞ」
「互いの『守りたい人』が生きている間は、それでもいいだろう。でも、もしも、だ。
その『涼宮ハルヒ』って奴が、どこか知らない所で誰かに殺されたりしたら、お前はどうすんだ?」
ズバリ、聞いてきた。
それは古泉の策にとって、急所とも言える所。
高須竜児という男、どうやらただのチンピラでもないらしい。見かけよりも頭が回る。
しかし、古泉はその動揺を表に出さなかった。全く変わらぬ嘘臭いほどの完璧な笑みのまま、言い放った。
「考えていませんでした」
「か……考えていないって、おい、」
「そうですね、涼宮さんが亡くなってなおこの世界が残っているようであれば、『報復』でもしますか」
古泉一樹は、己の持つ整った容姿と、そこに浮かべる作り物めいた微笑の効果を良く知っている。
あざといほどに、理解している。
凄んでみせるばかりが脅しの手段ではないのだ。笑顔には、こういう使い方もあるのだ。
いつも通りの、淡々とした、穏やかさすら孕んだ声のまま、彼は噛んで含めるように丁寧に言葉を紡ぐ。
「涼宮さんを殺した犯人を、殺します。
涼宮さんの重要性を聞いておきながら結果的に守れなかった高須くんを、殺します。
高須くんが大事に思い守ろうとしていた3人も、高須くんへの罰として優先的に確実に無惨に殺します。
そうやって全部殺した後は……その時点でまだ僕が生きているようなら、そのまま優勝してしまいましょうか。
あまり気が進みませんが、僕の失態も含めた一部始終を、『機関』にも報告しなければならないでしょうから」
「…………ッ」
「そう考えるとこの『最悪のケース』でも、やることはほとんど変わりませんね。
他の参加者を探して、排除する。ただその対象が無差別になるというだけ。
最善・次善・最悪の3プランのどれでも、似たような仕事が必要になるわけです。
そして『最悪』の事態に陥らない限り、高須くんの目的にとっても助けになるはずですよ。
そちらとしても、殺さずに済ませたい人間が3人から4人に増えるだけ。大した差ではないでしょう?
……それで、お返事の方は、いかがなものでしょうか」
あえて明るく朗らかに、古泉一樹は高須竜児を誘惑する。
呼称もサラリと『貴方』から『高須くん』へ。
自然な形で距離を詰められた相手は、しばし迷った後に、結局は頷いたのだった。
◇
――惨劇の図書館を後にした狂戦士《ジグザグ》は、少しの逡巡の後、その進路を南へと向けた。
身を守り想いを果たすには、『武器』が必要だ。
質・量共に満たす『武器』は望むべくもないが、せめてそのどちらか一方だけでも満たしておきたい。
妥協にして妥当な要請。
堅実にして確実な希望。
『あの学園』ほどでなくても、『学校』であれば何かしら見つかることだろう。
◇
――慣れない車の運転も、しばらく続ければ上手くもなる。
会話をする余地も、生まれてくる。
当初のようなアクセルべた踏みではなく、徐行運転に移っていれば尚更のことだった。
「島田特派員。レーダーの反応は変わりないかね」
「まあ、変わらないわね。
相変わらず学校の中に、『高須竜児』と『古泉一樹』。
で、『むらさきなんとか』って子がゆっくり学校に近づいている。……この子の名前、何て読むのかしら」
「苗字は『ゆかりき』だろうな。下の名前は『いちひめ』か『かずき』か。紫木一姫。前者の可能性が高いな。
ふむ、しかし両者はいまだ接触していないと見るべきか。相当慎重な性格らしい」
バギーを運転しながら、水前寺邦博は小さく頷く。
彼は先ほどから学校の周囲を探るように車を走らせている。ちょうどレーダーの有効範囲ギリギリのあたりだ。
走り出した時の勢いのままに突入するのか、と思っていた島田美波は、この慎重さにはやや面食らう。
けれど、それを直接言ったら相手を褒める形になってしまいそうで、彼女は強いて話題を逸らせてみた。
「……ところでさ。このレーダー、どういう仕組みなのかしら」
「うん? どういうことかな?」
「近くの参加者の名前と位置が分かるって、いったい何を感知してるのよ、これ」
「まあ、発信機でも仕込まれているんだろう。全参加者に」
「仕込むって……どこによ。服? それとも、このデイパック?」
何気なく発した問いが意外とシリアスな方面に向かいそうになって、美波はブルッと身を震わせた。
発信機。なるほど、言われてみればそうかもしれない。
彼女の学校にも、そういった機械に強い生徒は何人かいる。
そして、高校生にも扱えるレベルの機器でさえ、意外と小型化が可能だということも、知っている。
であれば、本職のプロであれば、素人が想像もつかないサイズに全機能を縮めてみせることだろう。
全員に与えられたデイパックとか、元から着ていた服の一部だとかに仕込まれていてもおかしくない。
……と、美波の想像力では、せいぜいそこまでに留まっていたのであるが。
「甘いな、島田特派員。その程度の仕掛けでは、服を脱がれたり荷物を捨てられたりしたら見失ってしまう。
準備に時間が限られている状況ならそのような妥協もありえるが、この現状においては不適切だ」
「じゃ、どうするっていうのよ」
「外科手術で身体に埋め込む」
水前寺はあっさりした口調で、実に恐るべきことを言い出した。
ギョッとする美波をよそに、ハンドルを握ったまま彼は淡々と言葉を続ける。
「UFOによるアブダクション事件において、しばしばインプランテーションの存在が報告されている。
何者かに誘拐されて、気がついた時には身体に奇妙な金属片が埋め込まれていた、といった話だな。
UFOを追う研究者の間でもその真偽は意見が分かれているが、報告はかなりの数に上っている」
「あ、あぶだくしょん? いんぷらんてーしょん?」
「島田特派員は英語は苦手かね? 何故か日本ではこの手の単語はカタカナ英語からの流用が多い。
『アブダクション』は日本語なら誘拐、独語では Entfuhrung、だったかな? ウムラウトがついたかもしれん。
インプランテーションは――」
「それなら最初のuはウムラウトよ……ってウチが言ってるのはそうじゃなくって」
思わず律儀にツッコミかけて、島田美波は激しく頭を振った。
UFO? UFOって、空飛ぶ円盤のあの?
馬鹿馬鹿しい。
『試召戦争にも応用されているオカルトならばともかく』、今どきUFOだなんて阿呆らしいにも程がある。
美波はそう思ったが、しかし水前寺邦博は真顔だった。
「我々がこの『悪趣味な催し』に連れてこられた状況は、実にアブダクション事件と類似している。
誘拐前後の記憶の曖昧さ。おそらくは圧倒的な距離の移動。開始時点の状況。
明らかに常識を超えたレベルの『技術』が随所に使われていることは、島田特派員も理解しているはずだ。
個人的に今までアブダクション事例はさほど重視していなかったのだが、こうなると勉強不足が悔やまれる」
「勉強不足、って……」
「それでも記憶にある限りでは、埋め込まれた物体が摘出された例もあったはずだ。
ほとんどの場合、その素性は不明。おそらくは単体では何の意味もない装置あるいは物体なのだろう。
機能としては、何らかの発信機であるという仮説が最も有力視されている。
人間もよくやるだろう。研究のためとか言って、捕まえた動物に発信機を付けてまた放す、ということを。
狙いはアレと同じだと言うんだな」
「…………」
「あの狐面の男の『上司』が地球外生命体だ、と断言する気はない。現時点ではそこまでの判断材料はない。
ただ、今言ったような発想の下に、似たような技術が使われている可能性は高いだろうと思う。
この競争を『管理』する者たちにとっても、念のため参加者の状況を把握する手段は用意したいだろうしな。
……とはいえその目的を考えれば、発見も除去も容易なことではないはずだ。実に頭の痛い話だな」
きっとその探知機は、監視用の情報を転用した副産物だ。そんな感じのことを水前寺は言い加えた。
美波は想像してしまう。
嫌というほどリアルに想像してしまう。
黒尽くめの男たち(メン・イン・ブラック)に誘拐される自分。
意識を失い、町外れに着陸した銀色の円盤に連れ込まれる自分。
服を剥がれて手術台に乗せられ、怪しげな金属片を埋め込まれる自分。
そうして何事もなかったかのように服を着せ直しながら、黒尽くめの男たちはこう呟くのだ――
こいつ、ほんと胸ないな、と。
「――貧相で悪かったわねっ!」
「どうした島田特派員、唐突に叫んだりして」
どうやらリアルに想像しすぎたあまり、妄想が根深いコンプレックスの方向に大暴走してしまったらしい。
美波は赤面しつつも咳払い。改めて周囲を見回す。
見覚えのある街並みだった。学校の周りを一周して、また同じ所に戻ってきたようだ。
「にしても、あんた、何でドイツ語分かるのよ。ウチみたいに帰国子女ってわけでもないんでしょ?」
「大して分かりはしないぞ? 語彙も貧弱だし、文法も怪しいものだ。
ドイツ語独特のウムラウトの発音もスムーズにはできん。
それでも辞書さえ手元にあれば、大概なんとかなりそうではあるがね」
「ふつーの人は、辞書だけあったって何ともならないわよ」
謙遜とは程遠い水前寺の言葉に、美波は頬を膨らませる。
真面目な話、日本におけるドイツ語普及率の低さは、彼女にとっては深刻な問題である。
センター試験ではドイツ語も選べるというのに、学校で取れる外国語は実質英語のみ。
日本語も苦手、英語もダメな彼女にとっては、世の人全てが水前寺並みなら言うことないのだが。
「大抵の海外文献や動画は英語さえ押さえていれば理解できるが、たまに他の言語を要するものがある。
他人の翻訳を通していたのでは、重要な見落としが発生する恐れもあるからな。自分で調べた方がいい。
UFOの目撃事件は大半は英語圏での出来事だが、ドイツ語文化圏で発生した事例もないわけではない。
そういったものを調べているうちに、あれくらいは自然に、な」
「またUFO? ……ってか、その程度であんなに喋れるようになる奴なんていないってば」
「インド・ヨーロッパ語族の言語など、どれも大して変わらん。基本さえ押さえれば大意は伝わる。
それにな、英語とドイツ語が分かれば、周辺地域の他の言語も大抵分かるようになる。オランダ語とかな」
「嘘よ。そんな簡単なもんじゃないって」
「いいや、簡単だとも。
例えば『ありがとう』は、英語だと『サンキュー(Thank you)』、ドイツ語では『ダンケシェーン(Danke schon)』。
そしてオランダ語では『ダンキュー(Dank u)』だ。ほら、両方知ってればほとんど分かる」
「……人を馬鹿にしてるわね、それ」
溜息を吐きつつ、美波はようやくにして理解する。
この水前寺邦博という男、桁違いに『優秀』なのだ。おそろしい程に『優秀』なのだ。
一を聞けば十を知るその優秀さゆえに、かえって『普通の人』の感覚が理解できない。
彼にとっては「あたりまえ」過ぎて、「なぜ他の人には出来ないのか」が理解できない。
きっと学校の成績も良いのだろう。何をやらせてもそつなくこなしてしまうのだろう。
この異常なハイテンションも、ナンセンス極まりないUFO趣味も、そうして有り余ったエネルギーの暴走なのだ。
そういえば彼女の通う、成績でクラス分けされたあの高校でも、F組に次いで奇人変人が多いのはA組だった。
最高成績を誇る、A組だった。
彼女は少しだけ、彼の才能に嫉妬する。
せめて彼の能力の半分でもあれば、成績最下位のF組なんて屈辱は免れられただろうに――
ああでも、もしそうだったら、あのバカな『彼』と同じクラスには居れなかったか。なかなか難しいところだ。
「島田特派員。ところでレーダーの様子はどうかね」
「相変わらずよ。……あ、『紫なんとか』が学校の敷地に入ったわね。こっちとは反対側の、裏門の方から」
「そうか。未だ動きがないとなると……ここは1つ、正面から行ってみるしかないか」
「だ、大丈夫なの?」
水前寺がハンドルを切る。バギーの進路を、学校の正門へと向ける。
慎重に様子を窺っていたかと思えば、この急な真っ向勝負だ。美波でなくとも不安になるところだが。
「リスクはある。だがそこに踏み込まなければ得られない真実もある。
ジャーナリストの端くれとして、それくらいは弁えておきたまえ島田特派員」
「だから、ジャーナリストじゃないって……もう……」
呆れはしても、結局のところ水前寺邦博の行動力にはかなわないのだった。
◇
――狂戦士《ジグザグ》は静かに侵入を果たしていた。
狂戦士に隠密行動のスキルはない。なにせ『たった1つの特技』の他は、全くの落ちこぼれだったのだ。
けれどだからこそ、自分の限界は弁えている。
けれどだからこそ、真の意味で慎重に振舞うことが出来る。
狂戦士が『師匠』と慕う青年が聞いたら、喜ぶか呆れるかしそうな逆接と逆説。
無能であればこそ有能。
才無きゆえの才覚。
それはおそらく、策士あるいは策師たちにこそ最も効果的な、盲点であった。
◇
「で、さっきから聞こえていた車の音が、とうとうこちらにやってきたわけですが……どうしましょうかね」
「乗っているのは2人か。……予め言っておこう、見える範囲には俺の知り合いはいない」
「こちらもです。片方は女の子のようですが、少なくとも涼宮さんではないようですね」
学校の敷地内に入ってくるバギーの動きは、古泉一樹と高須竜児も捉えていた。
何しろ相手はエンジン音を立てずにはおられない大型の乗り物である。速度が出る分、隠密性は劣る。
「我々のように『ヤる気』になった者同士が組んでいる可能性はゼロではありませんが、まあ考えにくいですね。
となると、僕たちと『同盟』あるいは『相互不可侵協定』を結べるような相手ではないでしょう」
「……どうするんだ?」
「僕たちがバラバラに襲い掛かったら2対1ですが、一緒に襲い掛かれば2対2です。
ここはひとまず、2人で力を合わせて『排除』するのが賢いやり方でしょうね」
迷う高須竜児に、古泉一樹は無駄にさわやかに微笑んで見せた。
その笑みがかえって警戒心を煽るだろうことは理解していたが、しかし答えは既に決まっていたようなものだ。
「まあいいか。それでいこう。で、作戦は?」
「そうですね。高須くんがその怖い顔を活かして囮役。彼らの真正面に立って注意を惹きつける。
そして僕が本命としてこっそり忍び寄って、背後から3人もろともに攻撃する、というのでどうでしょう?」
「ふざけるな」
◇
水前寺邦博の行動は、実に堂々としたものだった。
バギーのまま正門からまっすぐ入っていって、そのままドリフト気味に正面玄関に横付けする。
素早くエンジンを切り、キーを抜いて迷うことなく校舎の中に。
島田美波も慌ててその後を追う。
明かりの灯っていない深夜の学校は不気味な影を落としていたが、躊躇っている余裕はなかった。
「島田特派員、レーダーを見せてくれたまえ」
「あ、うん」
水前寺の言葉に、美波は手の中の端末を掲げてみせる。
表示画面の中では、いつの間にか2人の男性名を示す光点が2手に分かれて動き出していた。
第三の人物、『紫木一姫』の名前も、彼らとは別個の動きを見せている。
水前寺は正面玄関入り口近くに掲示されていた校内の案内図を見上げ、小さく頷く。
「ふむ。大体分かった。ということは……コイツが要るかもしれんな」
周囲を見回し、廊下の片隅にあった「あるもの」を担ぎ上げる水前寺。
どうするのだろう、と思って見ていると、なんとも無造作にデイパックの中に放り込んでしまった。
なるほど確かに、このカバンに入れれば持ち運べるのだろうが……意図を図りかねた美波は首を傾げる。
「それ、何につかう気よ?」
「ちょっとした保険だ。相手方の性格が読みきれない分、出たとこ勝負になるのは致し方ない。
が……それでも手札は多いに越したことはないからな」
「意味が分からないんだけど」
美波の文句も、水前寺の耳には届いていないようだった。
何度か彼女の手元のレーダーと校内案内図とを見比べた後に、確固たる足取りで歩き出す。
「ではまず、その島田特派員が見たという『高須竜児』君との接触といこうか。
幸い、と言っていいのかどうか、今現在彼は1人きりだ。
……ああ、こちらの読みでは、出会った途端に襲われるようなことはあるまい。
とはいえ、何があるかは分からんからな。最悪の場合、君も自分の身は自分で守る心構えはしておきたまえ」
◇
――狂戦士《ジグザグ》は校内の気配を探っていた。
落ちこぼれの狂戦士にその手のセンスはあまり無かったが、しかし実のところセンスなど不要なのだった。
何しろ、どいつもこいつも素人臭い。
元から校舎にいた2人の男たちは、それぞれに足音を忍ばせている「つもり」のようだ。
けれど彼らが警戒しているのは車で乗り付けてきた2人組に対してだけで、狂戦士には背中が丸見えだ。
その車で来た2人組の方は、もう気配を消す意思すらない。2人で五月蝿く喋りながら歩いている。
そもそも大きな音を立てるバギーに乗ってきた時点で、「見つけて下さい」と大声で言っているようなものだ。
……もう少し狂戦士に他のスキルがあれば、他に気付いたこともあったろう。
車でいきなり玄関に横付けした意味とか。学校周囲を何周もした意味とか。大胆かつ迅速な侵入の意味とか。
一定以上のスピードで動く目標を狙撃するのは、腕のいいプロでもなかなか難しい。
降車の際に生じる僅かな隙は、「直接バギーをつけられる」広い玄関の真正面に停車することでフォロー。
必要になるかもしれない逃走経路は、周囲を回って入念に観察し、既にいくつかアタリをつけている。
そしてイニシアチブを取って一気に動くことで、相手方にトラップ等を用意する時間を与えない。
――こういった侵入者側の狙いを、狂戦士は読みきれなかった。襲撃に対する警戒を、理解できなかった。
けれども。
結果から言えば、そんなことは別に読みきる必要すらないものだった。
狂戦士は自らの進路上に他の人物が居ないことだけを確認し、校内を進む。
そして辿り着く。狂戦士《ジグザグ》にとっての『武器庫』に。病蜘蛛《ジグザグ》にとってのみの『武器庫』に。
部屋の扉の上には、そっけない字体で、『家庭科実習室』とのみ掲示されていた。
◇
結局、古泉の立てた作戦に従うことになった。
「――動くなよ。変な動きをしたら、撃つ」
けれど遭遇は、古泉一樹の想定よりも遥かに早かった。
2人で予定していた待ち伏せポイントに着くよりも前に、標的の方から近づいてきてしまったのだ。
あの口先だけの優男め。何が「僕を信じてください」だ。高須竜児は心の中で舌打ちする。
右手には、試し撃ちすらする余裕のなかった拳銃・グロック26。
左手には、ここに来る前に給湯室を覗いて、手に入れてきたばかりの包丁。
1人で2人の動きを抑えるにはいささか頼りない装備だったが、泣き言を言っても仕方ない。
彼は1階の廊下の真ん中に立つ2人に、精一杯の殺気を込めた凶眼を向ける。
そこにいたのは、男と女の2人組だった。
どちらも学生なのか、制服姿。竜児の視線に怯える少女を、背の高い眼鏡の男が庇うように立っている。
どちらも、少なくとも見える範囲には武装はない。
女の子の方は、何かよく分からない箱のようなものを手にしているが、武器のようには見えない。
と、前に立つ男の方が、口を開いた。
「動いたら撃つ、か。
しかし君は、たとえ動かなくとも撃つ気でいるのではないのかね?
ならば我々としては、せめてもの抵抗をしたくなる所なのだが」
「……これから少し質問をする。その返答次第では、撃たないでもない……ぞ」
慣れない脅迫に、竜児は声がひっくり返りそうになるのを苦労して押さえ込む。
そう。こんなことは実は彼のガラではないのだ。
生まれ持った目つきの悪さで誤解されやすいし、実際、古泉一樹はすっかり勘違いしていたようではある。
けれど実際には、高須竜児という人物は、暴力や脅迫とは無縁の生活を送ってきたのだ。
あくまで真面目な学生として、品行公正な高校生として日々を送ってきたのだ。
だから、こういう時に何をどう言えば効果的なのか、全く分からない。
結局、ストレートな質問しかできない。
「質問、ね。
よかろう、言うだけ言ってみたまえ」
「次に挙げる名前で、会ったことのある者はいるか?
川嶋亜美。櫛枝実乃梨。逢坂……大河」
ビクリ、と少女の肩が震える。眼の奥に動揺の色が浮かぶ。
明らかに「知っている名前」と直面した者の反応。しかし彼女を庇う男の方は、動じない。
「どれも我々はまだ『会っていない』名前だな」
「……嘘は許さねえぞ……?」
「本当だとも。とはいえ、真偽を確認する手段は君にもないと思うがね。
参加者の名前を知る方法は、直接出会うばかりではない……とだけ言っておこうか」
あまり使いたくない神からのギフト、その凶悪な面相で必死に凄んで見せても、眼鏡の男は動じない。
まるで古泉一樹と会話していた時のような、手ごたえの無さ。
このままでは場の主導権を奪われる――そう感じた竜児は、慌てて次の問いに移る。
別行動中の古泉は……まだ到着する様子はない。もう少し時間稼ぎを続ける必要があるようだ。
「じゃ、じゃあ次の質問だ。これも嘘なら許さねえから」
「余計な前置きはいらんよ」
「お前たちは……この『椅子取りゲーム』、積極的に頑張るつもりなのか? それとも……」
少し言葉に迷ってしまった。
『殺し合い』とはっきり言うのは気が引けた。『殺して回る気か』、と問うのも躊躇われた。
少し語尾が震えてしまったかもしれない。そうして精一杯の強がりで銃口を向ける竜児に対し、眼鏡の男は、
「そういう『君たち』は、『積極的に頑張る』つもりのようだな。まったく、嫌な予感ばかり当たるものだ」
「……!?」
「出てきたまえ。そこに隠れているのは分かっている」
竜児から視線を外し、背後を振り返った。
暗い廊下の向こう側。2人のいる向こう側。
悪戯を見つかった子供のような表情で頭を掻く、一見頼りなさそうな印象の青年が、そこにいた。
「いやぁ、参りましたね。どうしてバレたのでしょう。」
「何、これだけ露骨に時間稼ぎをされては、誰にでも分かろうというものだよ。
我々が近づくのに合わせて2手に分かれ、別々の方向から接近……挟撃狙いというところか。
これはとても、平和裏に交渉しようという態度ではないよ。
先ほどまでの彼のように、銃を向けるだけに留めておけば『疑心暗鬼の末の用心』で済ませられたものを」
「ちょっ、水前寺、アンタそこまで分かってて!?」
「そうでない可能性を期待していたのだがな。しかし、期待と予想は違うものだ。
『リスクはある』と予め言っておいたはずだぞ、島田特派員?」
水前寺、と呼ばれた眼鏡の男と、島田、と呼ばれた少女が古泉の前で言い合っている。
そういやあの子、背丈は人並みなのに胸は大河級の哀れ乳だな、ってそんなことを考えている場合ではなく。
ふと気がつけば、すっかり竜児は蚊帳の外だ。
そして、そんな状況に少しだけホッとしている自分に気付き、彼はブンブンと頭を振る。
何を安心しているんだ。「あの3人」のためにそれ以外全てを蹴落とすと決めたんじゃないか。
そんな竜児の葛藤を知ってか知らずか、目の前の険悪な会話は続いていく。
「ふむ、水前寺邦博さんと、島田さんですか。島田さんは『名簿に名前のない10人』の中のお1人ですね。
見たところ『ここに来る前からの知り合い』というわけでもなさそうですが、だいぶ仲がよろしいようで」
「ちょっ、誰がコイツなんかと!」
「なるほど、名簿の名前を全て覚えているのか。それに制服が違えばまず違う学校と見て良いだろう。
どうやらこちらは、それなりに優秀な軍師殿のようだな」
「隠しても仕方ありませんし、自己紹介でもさせて頂きましょう。
そちらに居るのは、高須竜児くん。見ての通り数々の伝説を持つ、恐るべきヤンキー青年です。
そして、この僕は――」
ひとに勝手なプロフィール付け加えてんじゃねえよ、てか名前を明かしちゃっていいのかよ――
と、つっこみかけて、すぐに竜児は気がつく。あの嫌みったらしい笑顔と語りには、覚えがある。
そうだ、古泉は場の主導権を取り戻そうとしているのだ。
この水前寺という男から。自分と最初に遭遇した時のように。
果たして古泉は、不穏なまでに温和な笑みを浮かべたまま、その左手に赤い光球を出現させながら、
「僕は、古泉一樹。見ての通り、『超能力者』です」
あまりに突飛な一言と、あまりに突飛な光球の出現。
夜の廊下に下りる、一瞬の沈黙。
思考停止に陥るこの数秒の間こそが古泉一樹の狙いだったのだろう。攻勢に転じるチャンスなのだろう。
そう判断した竜児は、この機にすぐさま襲い掛かろうとして、
「 お っ く れ っ て る ぅ ――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――― っ ! ! 」
次の瞬間に耳朶を打った、鼓膜が破れそうなほどの大声に、思わずたたらを踏んだ。
深夜の廊下に、反響がいつまでも木霊する。三半規管まで激しく揺すられている気がする。
誰もが唖然とする中、水前寺ひとり、マシンガンのようにまくしたてる。
「遅いぞ遅すぎるぞ遅刻にも程があるぞ古泉一樹! 超能力だと!? 今どき超能力者だと!? ハッ!!
登場が半年ほど遅いぞ今どきそんなことを言っても常識が疑われるだけだぞぶっちゃけ阿呆丸出しだぞ!
まさかその手の上にあるチンケなモノが『僕の自慢の超能力』だとか何とか言い出す気ではあるまいな?
百歩譲って異星人の超技術までは要求しないから、せめて『心霊現象です』くらいの言い訳はしてみたまえ!
ああいやだいやだいやだ、大体君たちは超能力についてどの程度のことを知っているというのだ? ええ?」
「なっ……!?」
「日本語では大抵一緒くたに『超能力』の一言だが、1900年代前半には既にESPとPKとに大別されている。
テレパスや未来視など超感覚を意味するESPと、念動力など物理現象を伴うサイコキノ(PK)だ。
君のその『手品』は、もし万が一にも『本物』だとすればおそらくPKの一種ということになるのか?!
が、しかし! PKに関する報告はESPのそれと比べても圧倒的に信頼性が低く胡散臭いものばかり!
はっきり言ってその9割以上は単なるイカサマ! 種も仕掛けもある悪質な詐欺師の手品に過ぎない!
つまるところ古泉一樹くん、君のその名乗りもほとんど『私はペテン師です』という自白に近いものなのだ!
その無駄に光っている物が何なのか興味が無いわけではないがね、下らん『手品』はもううんざりなのだよ」
「ぼ、僕が、ペテン師ですって……?」
ぎりっ。歯軋りの音が聞こえる。高須竜児は2人の敵の向こうに信じ難いものを見る。
……古泉一樹の、あの余裕たっぷりの笑顔が、崩れかけていた。
よほど大事な「何か」を侮辱されたのだろうか、半笑いの顔の奥に、確かに本気の怒りが覗いていた。
そのまま古泉は叫ぶ。彼らしくもなく上ずった声で、竜児を叱り付けるように叫ぶ。
「高須くん! やりますよ、合わせて下さい!」
「お、おう!」
「ああ、それから2人とも」
古泉が赤い光球を振りかぶる。竜児も慌てて右手の拳銃を構え直す。
前後から明確な殺気をぶつけられて、怯えて震える少女を傍にして、しかし水前寺1人は悠々と。
「古泉くんも高須くんも、挟み撃ちで攻撃する際には、互いの射線上に立たないよう気をつけたまえ。
そもそも挟撃なんて手段を選ばざるをえなかったのは、背中から討たれる可能性を潰すためだろうに。
信頼しきれぬパートナーを前にして、無用心にも程がある」
「「!!」」
間に標的を挟んだまま、思わず2人の視線が交錯する。
即席タッグゆえの不信と疑心暗鬼に火種を放り込まれ、思考が停止する。
ハッ、と気付いた時には、もう遅い。
水前寺の腕はいつの間にかそのデイパックの中に突っ込まれており、
真っ赤に塗られた金属光沢放つ円筒形の物体が出現しており、慌てて銃を構え直した時にはすでに、
「島田特派員! ××××××!」
「え? ×××? ××××!!」
学校のどこかで確保してきたのであろう、消火器から吹き出した消火剤が、視界を真っ白に染め上げていた。
むせ返るような霧の中、英語でも日本語でもない言葉で、2人が何か怒鳴りあっている。
重たいモノが窓ガラスに叩き付けられる音がする。
そうだ、ここは1階。廊下の両端から挟んでいても、窓の外に逃げ道があるのだ。
舌打ちと共に、赤い光が弾ける。古泉が闇雲に『超能力』を投げたのか、白い霧が微かに晴れる。
上がる悲鳴。窓の外を走り去っていく挑発的な笑い声。古泉が窓を開け、飛び出して追っていく気配……。
その全てを、高須竜児は黙って見送ることしかできなかった。
ゆっくりと晴れていく視界の中、いつの間にかじっとりと湿っていた手に包丁と拳銃を握り直し、問いかける。
「……で、お前は逃げないのか?」
「ひっ……」
尻餅をついた格好で、島田と呼ばれていた少女が尻餅をついていた。
高須竜児は、ゆっくりと彼女に歩み寄る。
手にしていた拳銃を腰のベルトに挟み込み、包丁を逆手に握り直す。
少女1人が相手なら、モデルガンを手にしたことすらない拳銃に頼るより、コッチの方が確実だ。
「悪いな。俺も、必死なんだ」
◇
――手に入った『武器』は、狂戦士《ジグザグ》にとってやや不満の残る代物だった。
量こそ豊富にあったが、ケプラーもアラミド繊維も無い。鋼線もない。ピアノ線すらない。
さらにマイナーな特注品、まさに「そのため」だけに作られた強化繊維の類については語るまでもない。
一言で言えば、ありふれた裁縫用の糸しか見つからなかったのだ。
糸だけでなく、『プロのプレイヤーレベルで』使いものになる手袋なども見当たらない――ま、当然ではある。
ここは『ただの学校』なのだ。『首吊学園』ではないのだ。そんなものがある方がどうにかしている。
剣士が日本刀を探していたら、木刀しか手に入らなかった。
狙撃手が狙撃用ライフルを探していたら、小型拳銃しか見つからなかった。
分かりやすく例えるなら、それくらいの失望感である。
けれども――。
木刀で殴っても人は死ぬ。拳銃で撃っても人は死ぬ。
結果だけならどれも等価で等値。そして持てる技術も無駄にはなっていない。
同じように、木綿の糸を振るっても、ひとは、死ぬ。
それが曲弦糸《きょくげんし》というものだ。
それが曲弦師《きょくげんし》というものだ。
曲芸じみた極限の糸。極限まで鍛えられた綾取りの技。
それはオカルトでも、超能力でも、ましてや異星人の技術でもない、伝統ある戦闘技術の1つである。
当面の得物を手にした狂戦士は、そしてゆっくり歩き出す。
どうやら一連の騒ぎは、それぞれに優れた策士あるいは策師同士のぶつかり合いであったようだ。
まあ好きにすればいいと思う。好きにできるのなら、だが。
どうせ、策師《サク》では狂戦士《ジグザグ》を止められはしないのだ。
◇
水前寺邦博は駆けていた。
校舎の傍、窓の外を駆けながら、追っ手がしっかりついてきていることを確認する。
……いる。あの古泉一樹とかいう奴だ。
高須竜児と呼ばれていたもう1人は、島田美波と共にさっきの場所に残っているらしい。
窓から飛び出す際、ついてこい、とドイツ語で叫んだのだが、あるいは腰でも抜かしてしまったか。
彼女のことが心配でないと言ったら嘘になるが……しかし、きっとどうにかなるだろう。
見たところ高須竜児には躊躇いがあるし、美波はああ見えて芯は強い。手元にはレーダーもある。
多少の時間なら、きっと持ちこたえてくれる。
それより今は、より重大な脅威――背後の『自称・超能力者』をなんとかする方が先だ。
「ふははは、どうしたどうした、エセ超能力者クン! テレポートは出来ないのか? 空中浮遊は?
電撃を放っておれの足を止めることは? まさかスプーンくらいは曲げられるのだろうな!?
そんな使い物にならない一芸だけでは、TVのイカサマ特番からもお呼びがかからないぞ!」
「う……うるさいですよっ!」
背後から光の弾が飛んでくる。コンクリートの地面の上、前転するように転がって避ける。
標的を捉え損ねた破壊の光は、そのまま傍にあった花壇に突っ込み、それなりの規模の爆発を起こした。
土が吹き飛ぶ。咲き乱れる花々が宙を舞う。柵代わりに置かれていたレンガが砕け散る。
とてもではないが、生身で受けてみたくなる威力ではない。
けれども水前寺は怯えることなく、前転から流れるような動きで身を起こし、また走りだしながら挑発を続ける。
「ははは、当たらなければどうということはないのだよ、古泉クン!
このおれを倒したいというのなら、もう少し強烈なモノを撃ってきたまえ! 出来るのならば、だがね!」
背中の方から鋭い舌打ちが聞こえる。猛然と追撃してくる気配を感じる。
言葉とは裏腹に、水前寺はあの『謎の光球』を軽視してはいなかった。
むしろ危険だと思っていればこそ、こうして挑発しながらの逃走、という危険な手段を採っている。
かつて水前寺は、超能力の研究にハマっていたことがある。
今現在UFOに注いでいるのとほぼ同等の情熱でもって、徹底的な調査をしていた時期がある。
だから分かる。
いや、「分からない」ということがはっきりと「分かる」。
PKについてはESP以上に不明な点が多く、ゆえに古泉に何が出来て何が出来ないのか判断がつかない。
あんな『能力』は過去に調べたどんな事例にも当てはまらず、仮に『手品』だとしても種も仕掛けも分からない。
そして判断材料が無いから、希望的観測に身を委ねることもできない。
本当にあの光球しか撃てないのか? 他の技は? 連射性能は? 射程距離は? 疲労などはあるのか?
……分からない。ほとんど何も、分からない。
これは正直、かなりの恐怖である。特に水前寺のように、見かけ以上に理詰めで動いている人間にとっては。
そして、だからこその挑発だ。
相手の冷静さを奪い、選択の余地を奪う。あの光球を貶め、あの光球の使用に執着させる。
必死に逃げているように見せかけ、「なんとか後を追える程度の速度」で引っ張り続ける。
ここまでで既に「こちらはただ逃げるだけ」、という刷り込みはほぼ完了している。
それを逆手に取って、次の校舎の角を曲がったところで反転。反撃する算段に移る。
使用する武器は支給品の1つ、電気銃。射程5メートルの射出式スタンガン。
普通に撃てば古泉の『超能力』の方が遠くまで届くのだ、間合いに誘い込むにはこれくらいの策は要る。
ギリギリの綱渡りのような心理戦。
古泉もバカというわけではないし、水前寺の能力をもってしても、これは容易な戦いではなかった。
だから、水前寺もまた、この学校内にいる『もう1人』の存在を忘れていた。
すっかり、忘れていた。
出方が分からない以上は当面放置、と決めていた、スタンス不明・目的不明の少女のことを忘れていた。
名簿に載っていなかった『紫木一姫』という名を、失念していた。
彼らしくもない、ミスであった。
校舎の角が見えてくる。反転・逆襲しようと考えていたポイントが迫ってくる。
迷うことなくその影に飛び込んだ水前寺邦博は、そして、
◇
「……悪いな。俺も必死なんだ」
大事なことなので2回言いました。
……などといった野暮な突っ込みをするだけの余裕は、島田美波には無かった。
恐ろしい目つきをした男が、包丁を片手に近づいてくる。
既に人を10人くらい殺していそうな凶悪な面相の青年が、迫ってくる。
尻餅をついた格好の美波は、消火剤で汚れた床をそのまま後じさりすることしかできない。
普段の日常でこそ強気で勝気な美波だが、こんな『本当の殺し合い』など初めてのことなのだ。
所詮は召喚獣で殴り合っているだけの『試召戦争』の経験など、こんな時には何の役にも立ちはしない。
「い、いや、来ないで、ちょっと」
「命乞いを聞いてる余裕は、俺にもねえんだ……! 殺れる時に、殺っとかねえと、な……!」
高須竜児の唇から漏れた声は、地獄の底から響く悪鬼の呻きのよう。
ギラギラと輝く三白眼は、人間のものとは思えぬ邪悪さだ。
あまりの迫力に、完全に美波は呑まれてしまっていた。
逃げ出すことすら思いつかず、抵抗する術すら考えつかず、
「済まないが、あいつらを……あの3人を生き残らせるために、死んでくれ」
「…………はい?」
包丁を振りかぶりながら、青年が口にした言葉。
島田美波の思考は、一瞬停止して――
次の瞬間、反転し、爆発した。
自分目掛けて振り下ろされた包丁を、手にした探知機で反射的に振り払う。
手の中からレーダーがすっぽ抜け、同時に弾き飛ばされた包丁が、やかましい音を立てて落下する。
そのまま美波は流れるような動作で敵の手首を取り、『明久いじめ』で熟達してしまった関節技に繋げる。
やや入りが甘い。手首の腱を少しばかり痛めつけたところで、振り払うように抜けられてしまった。
思わぬ反撃を食らった高須竜児は、驚いた様子で飛びずさる。
「な、何すんだおい! もう少しで手首がありえない方に曲がるとこだったぞ!?」
「それはウチのセリフよ! 何よその理由! そんな、そんな……!」
動揺する竜児に叫び返しながら、美波は肩を震わせる。
恐怖、ではない。怒り、だった。
島田美波にも、大切な人はいる。
バカの吉井明久にはどういう因果か完璧に惚れてしまっているし、恋敵の姫路瑞希は大事な親友だ。
それ以外のF組の仲間たちにも、この2人ほどではないにしても、共感と友情を感じている。
だから、高須竜児の気持ちは、ある意味で分からなくもない。
彼が挙げていた3つの名前が、殺したい相手でなく守りたい相手であったことは、今なら正しく理解できる。
残酷な椅子取りゲームを強いられて、「せめて誰か1人だけでも」と思いたくなるのも分かってしまう。
自分の保身を一切考えぬその献身には、尊敬の念すら抱いてしまう。美波にはとてもできないことだ。
けれど。
「なんでそこで、諦めちゃってるのよ!
助けたい人は、1人じゃないんでしょ! 何やってんのよアンタは! もっとしっかりしなさいよ!」
そう。
その諦めの早さが、美波には納得行かないのだった。
狐面の男たちが、圧倒的な力を持っているから?
狐面の男が、「1人しか助からない」と言ったから?
なるほど、確かに彼らに逆らうのは難しかろう。
現時点では、彼らの言葉を疑う理由もないだろう。
けれど、そこで「はいそうですか」とあっさり殺し合いに乗るのは、物分りが良すぎるのではないか。
せめてもうちょっと、ジタバタする時間があってもいいはずだ。
少しくらい「みんなで幸せなハッピーエンド」を夢見てみても、バチは当たらないはずだ。
それを、なんでそんな所で妥協しようとしているのだ。なんでそんなに早く諦めてしまっているのだ。
島田美波は思う。
高須竜児、お前はバカだ。
救いようのないバカだ。F組の誰よりもバカだ。
少なくともF組の連中なら、易々と『諦める』ことだけはしなかった!
どんなに絶望的な状況でも、どんなにつまらない矜持でも、どんなにバカげた理由でも!
みっともなく足掻いて、足掻いて、悪あがきして、決して最後まで『諦め』ようとはしなかった!
「仕方ないだろ! 俺はもう生きてたってしょうがないし、他に方法なんてねえんだから!」
糾弾を振り払うように、高須竜児が叫ぶ。
その釣りあがった目でこちらを睨みながら、腰に差していた拳銃を構える。
けれど何故だろう、もう美波にはちっとも怖くはなかった。
彼の目つきも、手にした凶器も、全く恐ろしいとは思えなかった。
逃げも隠れもせず堂々と、その薄い胸を張って相手に詰め寄る。
「誰が決めたのよ、そんなこと!」
「俺だよ! 俺自身がもう、あいつらに会わせる顔がねえんだよ!
俺自身が、あいつらのためなら何でもするって決めたんだよ!」
高須竜児は駄々を捏ねるように叫ぶ。
いや、それはまさに駄々でしかなかったのかもしれない。
彼とその3人の少女たちとの間に、何があったのか美波は知らない。知りたいとも思わない。
けれども、彼の置かれたその状況が、普段は選ばない『諦める』という選択肢を強いていたのは明らかだった。
美波の姿すら眼に入っていない様子で、彼は叫ぶ。贖罪を求めるかのように叫び続ける。
「そりゃ俺だって、3人一緒に助かって欲しいよ! でも、だからこそなんじゃねえか!
古泉が言ってた『涼宮ハルヒ』の話が本当で、『全部救う』ことが出来るとしても、一緒じゃねえか!
それ以外の全部を、片っ端から殺していかなきゃ、その話だって…………って、ああ?!」
「??」
唐突に、声のトーンが変わる。美波は首を傾げる。
高須竜児の顔に浮かぶのは……驚き? 発見? 歓喜? 自嘲? 自責? 安堵?
最初はただひたすら怖いだけに思えた彼の顔から、ちゃんと表情が読み取れる。
そして彼は、頭を抱えて叫んだ。
「……あるじゃねえか、『みんな一緒に助かる可能性』が!
なんで『古泉の案』だけに縛られてたんだよ! 何で思いつかなかったんだ俺は!」
「え、えーっと……高須、くん?
その、言ってることの意味、よく分からないんだけど……ウチにも分かるように、説明してくれる?」
「そうだよ! 『涼宮ハルヒ』の『能力』が本当なら、いくらでもアプローチの方法はあるはずじゃねえか!
他にもやり方があるはずじゃねえか!
なのに何で俺は包丁なんて握って人を襲おうとしてたんだよ。
そもそも包丁は人を刺す道具じゃねえだろ、大河と泰子に美味いメシ作ってやるための道具だろ!
ああしかしあいつどっかで腹減らしてるんじゃねえだろうな、畜生心配だ早くなんとかしてやらねえと……」
「……ええい話を聞けーーっ!」
ごすっ。
相手が拳銃を持っていることも、ついさっきまで命を狙っていたことも忘れ、思わず美波は鉄拳を叩き込む。
完全に油断していたのか、みぞおちにいい感じで突き刺さった。高須竜児は身体をくの字に折って咳き込む。
「ひ、ひでえっ……ぐふっ……。
しょ、初対面の相手に、この仕打ち……。『手乗りタイガー』でもここまではしねえぞオイ!」
「フン。人を殺そうとしてた奴がよく言うわ。
で? ちょっとは冷静になった?
まだウチと『やりあう』つもり? もしそうなら、あと何発でも殴ってあげるけど?」
腰に手を当てて言い放った美波の言葉に、ようやく正気に返った竜児は苦笑を浮かべてみせる。
もうそんな意思はない。両手を挙げてそんなアピールをする。
美波の顔にも、つられたような微笑みが浮かぶ。
コイツにはまだまだ言い足りないことがあるし、殴り足りないし、まだ骨の1本も折っていない。
けれどまあ、この辺で許してやろうか、という気にもなってしまった。
そういえば、まともに名乗ってもいなかったっけ。まずはそこから、やり直しだ。
「じゃ、改めて、『はじめまして』。
ウチは島田美波。名簿に名前は載ってなかったけど、本名よ」
「あ……『はじめまして』。高須、竜児だ」
「名前なら知ってるわよ。それで高須、今の話もうちょっと聞かせなさいよ。何よ『涼宮ハルヒの能力』って。
ホントに『みんなが助かる方法』ってのがあるなら有難いけど、話が見えないってば」
「ああ、それはな――」
◇
――それは、高須竜児が口を開こうとした、その瞬間だった。
『ひうんひうんひうん』――と。
唸るような音が、廊下の空気を切り裂くように聞こえてきて――
『何か』が、視界の片隅で踊る。
廊下に撒き散らされたままの消火剤を巻き上げ、闇の中に無数の線《ライン》が踊る。
島田美波が事態を把握するまえに、咄嗟の判断で高須竜児が彼女の身体を突き飛ばし、そして、
「――そんなものは、ないですよ」
ぶつん
と、突き出されたままの高須竜児の右手首が、宙を舞った。
◇
かくして狂戦士《ジグザグ》は舞台に上がる。
開演は終幕の始まり。
希望は絶望の母。
とりあえず目につくもの何もかも、ぜんぶジグザグにバラバラに切り刻んでおきましょう。
◇
「ダメですよ無駄ですよ意味ないですよ。信じる者は足元を掬われるですよ」
聞こえてきたのは、幼い声だった。
聞こえてきたのは、言い間違いなのかそうでないのか微妙に判断に迷う、そんな戯言だった。
咄嗟に振り返った高須竜児と島田美波は、声の印象にたがわぬ小柄な人影を見る。
小学生とも見間違いそうな体躯を、不思議な印象の黒い制服で包んでいる。
ひうんひうんひうん――とまた同じような音がして、少女の手元に『何か』が回収される。
いや、今度こそはっきり見えた。
それは、糸《ライン》だ。
何の変哲もない、ただの糸だ。
それが、高須竜児の右手首を切り落としたした凶器の正体。
ただの糸で人間の肉体を切断する――まるで漫画か何かのような超絶技を見せておきながら、
その少女は、柔らかく可憐に無邪気に微笑んだ。
「そんな素人がパッと思いつく『誰もが助かる方法』に、何の対策もされてないとでも思ってるんですか?
これだけ入念な下準備を整えやがった『イベントの開催者』たちが、まるで想定もしていないとでも?
下手な考え休んで煮たりです。
グツグツのグダグダのドロドロです。希望的観測にも程があります。希望的過ぎて絶望的です」
竜児の腕の断面から、ボタボタと血液が流れる。とてもではないが、律儀にツッッコんでいる余裕はない。
咄嗟に左手で押さえても、まったく止まらない。
素人判断ながら、深刻な怪我であることを理解する。このまま失血死もありうることを覚悟する。
あるいはあの超絶技巧をもってキツく縛ったりしてくれれば、一瞬で止血もできるのかもしれないが……
少なくとも、目の前の少女はそんなつもりはないようだった。それどころか。
「それでもまあ、姫ちゃんは反論くらいはあるのかなーと期待してたんですが……本気でがっかりです。
ここで何も言い返せなくなっちゃうようなら、そのプランに見込みなしです。期待値ゼロです。死ぬべきです」
ひうん。
ぶつり。
再度同じような唸りが響き、今度は竜児の左手首が落ちる。
怪我の数が倍になる。出血の速度が倍になる。あまりに簡単な数学の問題。
もう止血どころではない拳銃で反撃どころではない何も持つことができない。
左右対称、正確に鏡写しのようなダメージに、竜児は嫌でも理解する――これは実験台にされているな、と。
きっと多分、糸使いの少女は今すぐにでも自分をバラバラに出来るのだ。
自分の目を覚まさせてくれた島田という少女もろとも、一瞬で決着をつけることが出来るのだ。
それでもこうして小刻みに技を振るっているのは、彼女の練習を兼ねているのだろう。
糸を使った奇怪な殺人技の、微調整の的にされているのだろう。
普段使っているものとは違う糸だったとか、そんな理由で。
……ふざけるな。
そこまで考えて、竜児の心の奥に、怒りが灯る。
せっかく自分の過ちに気づいたというのに、こんな所でただ殺されてたまるか。
こんな所で、意味もなく死んでたまるか。
そんな殺され方、してたまるか。
大体、両手が無くなっっちゃったら、掃除も料理もできねえじゃねえか。
お前に責任が取れるのか。ここまで血を撒き散らして汚しまくっておいて、お前にちゃんと掃除できるのか。
ああくそっ、そういえば消火器をぶっ放した馬鹿もいたんだった。綺麗にすんの大変だぞ、これ。
既にだいぶ血を流してしまったのかもしれない。
頭がクラクラする。思考が纏まらない。意味のないことを考えている気がする。
でも、だから、だったのかもしれない。
不意に竜児は気がついた。
ああ、なんかどっかで見た気がしたと思ったら、島田美波の雰囲気は、逢坂大河に似ていたんだ。
ぺったんこの胸だけでなく、怒った時に見せる素顔の雰囲気が、ほんのちょっとだけ似ていたんだ。
そう思って見ないと気付かない程だし、似てないところの方が遥かに多いし、でも、だから。
彼はチラリと背後を振り返る。
ポニーテールの彼女は蒼白な顔のまま、そこにへたり込んでいた。
竜児は、心を決める。
「……おい、島田。立てるか」
「立てるか、って……そりゃ、なんとか動ける、けど、でもアンタ、いっぱい血が出て、」
「お前は、逃げろ。
古泉と、水前寺って奴があれからどうなったかわからねえ。
けど、お前だけでも、ここを脱出しろ。脱出して、先に繋げ。お前まで諦めんな」
「……逃がすと思うんですか? というか、逃げられるとでも?
この《ジグザグ》から? 武器もないのに? 両手もなくなってるのに? 笑わせないで下さいです」
ひうん。
威嚇するように、また糸が鳴る。
いや、それは威嚇ではなく予備動作。
よく見ればいつの間にか、糸が竜児を十重二十重に取り巻いている。
少女のほんの指先1つで、自分が無数の輪切りにされることを正確に理解する。
抵抗する手段はほとんど存在せず、ジタバタする時間すら残されていない。
高須竜児にとっての椅子取りゲーム、悪趣味極まりない『バトルロワイヤル』は、きっともうここで終わりだ。
無念だ。悔しい。諦めたくない。
まだ大河にも実乃梨にも亜美にも会ってない。
遺していくことになる泰子とインコちゃんも心配だ。自分が居なくなったら誰があいつらのメシを用意するのだ。
想いばかりが次から次へと溢れだしてきて、でも竜児はどこまでも無力で、思わず泣きだしそうになる。
だけど。
まだ、『武器』はある。
まだ、『何もかも諦める』には早い。
望まずにして生まれ持ってしまった、最後の武器。
残酷な神様からの、嫌がらせじみた強烈なギフト。
高須竜児の根深いコンプレックスの源であり、恨みこそすれ感謝などしたことのない、自らの身体的特徴。
過去にも何度か『利用』したことはあったが、しかし、福男レースや生徒会選挙の時の比ではない真剣さで。
彼は今、生まれて初めて心の底から願う。
名前も生死も分からない、ヤクザ丸出しな親父よ、俺に力を貸してくれ、と。
一生にたった一度でいい、アンタから受け継いでしまったこの『目』に、想いを通す力を与えてくれ、と。
そして彼は、文字通り手も足も出ない状況の中。
「俺の『目』を……見ろおおおおおおっ!!」
――ただ視線だけで相手を呪い殺さん、とばかりに、両目に渾身の気合を込め、敵を睨みつける!
「ひっ……!
り……竜……!?」
その『目』を直視してしまった糸使いの少女が、見えない手に押されたかのように尻餅をつく。
百戦錬磨の『本物の殺人者』が、『ただ目つきの悪いだけの高校生』に気圧される。圧倒される。
竜、という呟きは、果たして幻でも見たものか。それとも、その迫力を評したものか。
生み出せたのは一瞬の隙。
竜児の気迫に背を押されるように、弾かれるように美波が立ち上がり、駆け出していく。
既に破られていた窓から、そのまま飛び出していく。
折りしも近づいてくる、バギーのエンジン音。まるで美波を迎えに来たかのようなタイミング。
そちらを振り向きもせず、竜児は叫んだ。
「いけぇ! 島田ぁ! 大河を、みんなを、頼…………!!」
そこから先は、言葉にならなかった。
我に返った少女が慌てて糸を『引いた』のだろう、身体がバラバラに崩れていくのを感じる。
ジグザグに、視界が崩れていく。
喉が、首が、胸が、全てジグザグに引き裂かれて、声が声にならない。
赤い飛沫を撒き散らしながら、細切れの肉片に成り果てながら、
それでも彼は、最後の最期に、竜となったのだった。
◇
――水前寺邦博の挑発に散々掻き回された挙句、電気銃によるショックで一時はKOされた古泉一樹が、
なんとか歩ける程度にまで回復し、元の廊下まで戻ってきた時には、全てが終わっていた。
「これは……高須くん、ですか……」
無惨な血溜まりと化した『かつての同盟相手』を見下ろしながら、古泉一樹は溜息をついた。
まあ、彼はやはりこの程度だったのだろう。
最初っから、さほどの期待はなかった。そこまで使える相手とも思っていなかった。
だから大して惜しくもないのだが、しかしこうなってしまうと、一抹の哀れみを覚えずにはいられない。
ご苦労様でした、とねぎらいの言葉をかけ、彼は改めて向き直る。
高須竜児の屍の向こうに、見知らぬ少女が立っていた。
小学生ほどにも見える、しかし制服姿の少女だった。その手になにやら箱のようなものを持っている。
そういえばあの箱は、島田とかいう女の子が持っていたものではなかったか。
逃げる際に落としていったものを、先に拾われたらしい。
「さて……それで、彼を殺したのは、貴方ですね?」
「ええ。姫ちゃんがやりました。
なんだか『みんなを救うんだ』とか何とか、ヌルいことを言ってたんで。思わず切り刻んじゃったです。
最後の一睨みには、驚いちゃいましたけどね。
どっかの『呪い名』とかに所属しててもおかしくないレベルの『邪眼』ですよ、あれ」
小柄な少女はつまらなそうに言い捨てる。
その口調、その表情から、古泉は事の次第を理解する。
なるほど。僕の与えた『涼宮さんの情報』から、高須くんは『そちらの希望』に流されてしまいましたか。
ここに居たはずの『もう1人の女の子』の影響でもあったのでしょうか。
最後に『何か』をして、島田とかいう女の子は上手く逃がしたけれど、彼自身は討たれてしまった。
古泉一樹は、そんな風に推測する。
「で……その『姫ちゃん』は、この僕のことはどうするおつもりでしょう?
何をどうやったのかは見当もつきませんが、高須くんのように切り刻むおつもりですか? それとも?」
「そうですね。そうしてもいいかなーとは思ってますよ。
そこの彼のように、期待と希望を取り違えるような困ったちゃんならば、ですけど」
なるほど。古泉は内心呟く。
狂戦士であっても戦闘狂ではなく、策師でなくとも策は弄する。そんな少女だと彼は判断する。
ならば、交渉は可能だ。ならば、こちらの言葉も通じる。
「ヌルいと言われそうですが、僕もまた、皆が共に救われる『かもしれない』可能性を1つ知っています。
ただし、それが現実問題として厳しいことも、理解しています。
なので僕の狙いは、現時点では両天秤。途中までは道筋は一緒ですから、進路がブレる恐れもありません」
「両天秤、ですか」
「どちらのケースでも、『とある1人の参加者』を守ることが僕の前提条件となります。
ですから、『とある1人の参加者』を除いた、他の者たちを殺していくのが一番手っ取り早い」
「姫ちゃんもですよ。
師匠――あ、名簿に『師匠』って書いてある人じゃないですけど――を守りたいだけです」
「ならば簡単ですね。
僕たちには、『同盟』の余地があります。『相互不可侵協定』を結ぶ余地があります。
たとえ貴方の『能力』……いや、『技術』ですか? それが圧倒的だとしても、得るものはあるはずです」
――それは3度目の交渉だけあって、実に滑らかなものだった。
スラスラとスムーズに、同盟交渉まで持ちかけてから、彼は大事な一言を忘れていたことに気がついた。
改めて胡散臭いほどにさわやかな笑みを浮かべ、恭しく腰を曲げて、こう言い加えた。
「あ、申し遅れました。
僕の名前は古泉一樹。しがない『超能力者』、です」
【高須竜児@とらドラ! 死亡】
【E-2/学校/黎明】
【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:疲労(小)、電撃による軽い痺れ(いずれ回復する)
[装備]:
[道具]:デイパック、不明支給品1〜3
[思考]:
1.涼宮ハルヒを絶望させ、彼女の力を作動させる。手段は問わない。
2.仮に会場内でハルヒの能力が発動しないとしても、彼女だけでも優勝させて帰す。
3.万が一ハルヒが死亡した場合、全ての参加者に『報復』し、『組織』への報告のために優勝・帰還する。
4.目の前の少女(紫木一姫)と、少なくとも「相互不可侵協定」は結びたい。同行も考える?
[備考]
カマドウマ空間の時のように能力は使えますが、威力が大分抑えられているようです。
【紫木一姫@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:澄百合学園の制服@戯言シリーズ、裁縫用の糸(大量)@現地調達、レーダー(電力消費小)
[道具]:デイパック、支給品一式、シュヴァルツの水鉄砲@キノの旅、ナイフピストル@キノの旅(4/4発)
[思考・状況]
1:いーちゃんを生き残りにするため、他の参加者を殺してゆく。
2:目の前にいる古泉一樹との交渉に乗る? 古泉一樹も殺しておく? 逃げた連中を追って始末する?
[備考]
登場時期はヒトクイマジカル開始直前より。
現地調達の「裁縫用の糸」は、曲弦糸の技を使うにあたって多少の不備があるようです。
[備考]
高須竜児の死体の傍に、
デイパック、支給品一式、グロック26(10+1/10)、包丁@現地調達
がそれぞれ転がっています。
【裁縫用の糸(大量)@現地調達】
学校の家庭科実習室で紫木一姫が確保した、ごくありふれた裁縫用の糸。
色や太さは様々だが、いずれも本来は戦闘への応用を想定していないため、曲弦糸の技にはやや不向き。
量だけはたっぷり余裕をもって確保している。
【包丁@現地調達】
何の変哲もない包丁。
学校の職員用の給湯室にあったものを、高須竜児が確保した。
◇
――1台のバギーが、学校から逃げるように飛び出していた。
運転手は予め目星をつけておいた道を通って、進路を北へ。
地図の上には記されていない、幹線道路を離れたやや細めの道である。
ハンドルを握る水前寺邦博は、無言だった。
助手席に座る島田美波も、無言だった。
……あれからのことを、少し確認しよう。
古泉一樹を引きつけ、上手いこと電気銃で無力化した水前寺は、そのまま停車したバギーの所に向かった。
痺れて倒れた古泉は、その場に放置。縛ったりしているヒマはなかったし、何よりも時間が大事だった。
バギーもデイパックに入れて持ってきておけばよかった、と気付いたのはその時になってのこと。
それでも急いでエンジンをかけ、校舎の外を大回りして、元いた廊下の傍へと戻ってみれば、あのザマである。
窓越しに高須竜児がバラバラになる姿を見ていながら、島田美波を回収して逃げるのが精一杯だった。
そして今、こうして追撃を恐れ、少しでも距離を置こうと逃げている。ただ、逃げている。
水前寺は悔やむ。
何よりも痛恨のミスは、『紫木一姫』という危険人物の存在を軽視したことだ。
情報は少なかった。判断材料は乏しかった。
けれど、レーダーで捉えたその動きから、きっと慎重な人物なのだろう、と決め付けてしまっていたのだ。
しかし生き延びた島田美波の証言によれば、彼女が振るった武器は、なんと『糸』。
そう思ってレーダー上の彼女の動きと校内案内図を(記憶の中で)照らし合わせてみれば、
確かに家庭科実習室のある辺りを目指して動いていた。確固たる足取りで、家庭科実習室を目指していた。
なんてことはない。
それまでの慎重さは、『武器』の確保を優先していたという、ただそれだけの意味しかなかったのだ。
だから『武器』さえ入手すれば、行動パターンは変わる。劇的なまでに変化する。
そこから先の変化は、水前寺にも読みきれるものではない。
「……あいつ……高須はさ」
何の前置きもなく、ぼそり、と美波は呟いた。
街頭も乏しい暗い道、伏せられたその表情は窺えない。水前寺は無言で彼女の言葉の続きを待つ。
「ウチが名前を聞いた3人を、殺そうとしてたんじゃなくて……守ろうとしてた」
「そうか」
「自分はどうなってもいいから、って。間違ってはいたけど、真剣だった」
「そうか」
「でも、ウチが叱り付けたら、ちゃんと分かってくれた。最後にはちゃんと、目を覚ましてくれた」
「そうか」
「ウチは……でも、何もできないで……ただ、見てる、ことしかっ……ウチ、はっ……!」
「そうか」
少しの沈黙。
バギーのエンジン音に、美波がしゃくりあげる小さな泣き声が重なる。
たっぷりの時間を置いて、今度は水前寺から口を開く。
「それで……島田特派員はどうしたいのかね。これから、どうするつもりかね」
「それ、は……」
泣きたい時に泣いておくことは大事なことだ。無理に溜め込めば心が折れる。
けれど、いつまでもただ泣いてばかりはいられない。
そっけなくも前向きなその問いに、美波は顔を上げる。涙を溜めた眼に、決意の光が灯る。
「ウチは、高須が言った『あの3人』を探したい」
「探してどうする」
「ごめんなさい、って謝る。そして、ありがとう、って。
高須は最期に、『大河を、みんなを頼む』って言ったのよ。だから」
逢坂大河。櫛枝実乃梨。川嶋亜美。
彼女たちと高須竜児がどんな関係にあったのか、推測することは難しい。
彼が言い残した『頼む』という一言も、あまりに曖昧過ぎて何を意図していたのかよく分からない。
けれど。
彼女たちにも、せめて高須竜児の最期の様子くらいは、知る権利があるはずだ。
「いいだろう。島田特派員がそう望むのならば、このおれも少しは付き合おう」
「いいの?」
「どの道、他にアテもない。他に何か『やるべきこと』が見つかるまでは、人探しというのもいいだろう。
それにその高須という奴、我がSOS団の特派員を守ってくれたのなら、おれにとっても恩人だ。
『よかった探し表』に『よかったマーク』を10枚ほど貼り付けてやりたいところだが、今はそれもできんしな」
ぶっきらぼうな物言いだし最後は意味不明だったが、それは水前寺独特の感謝の仕方だったのかもしれない。
ただ『SOS団』、というふざけた呼称に再度抗議しようとして、美波はふと、まったく関係のないことを思い出す。
どういう弾みか、もう1つ、重要なことを思い出す。
「ああ、それから」
「ん? まだ何かあるのかね?」
「高須が言い残したことで、気になることがあるの。
こっちについても、できれば調べる……いや、探しておきたい、かな?
元は古泉の言ってたことらしいし、あの紫木って子は、『無駄だ』って決め付けてたけど」
そこで言葉を切って、島田美波は夜空を見上げる。
高須竜児が最後に見出した希望。最期に託した希望。その名は。
「『涼宮ハルヒ』。『みんなが揃って助かる方法』の、カギになるかもしれない存在、だって」
【D-2/市街地/黎明】
【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、シズのバギーを運転中
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式、シズのバギー@キノの旅、不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本:島田特派員と共に精一杯情報を集め、平和的に園原へと帰還する。
1:学校から退避。危険人物『紫木一姫』からひとまず距離を置く。
2:当面は島田美波に付き合って、人探し。
3:間接的な情報ながら、『涼宮ハルヒ』に興味。
【島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康、服が消火剤で汚れている、涙、シズのバギーの助手席に搭乗中
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:水前寺邦博と行動。吉井明久、姫路瑞希、逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨と合流したい。
1:逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の三人を探して高須竜児の最期の様子を伝え、感謝と謝罪をする。
2:竜児の言葉を信じ、「全員を救えるかもしれない涼宮ハルヒ」を探す?
[備考]
『涼宮ハルヒ』の存在がどういう形で『全員を救う』ことに繋がるのか、一切の情報を持っていません。
【電気銃@フルメタル・パニック!】
『フルメタル・パニック!』長編5巻にて、千鳥かなめが使用した護身用の武器。
拳銃のような形とサイズの、中近距離用のスタンガン。
引き金を引くとコードのついた電極が射出され、標的に刺さると同時に高圧電流を流し込む仕組み。
射程は5メートル。2発まで撃てるが、再装填は出来ない使い捨ての品である。
この種の非殺傷兵器としてはテーザー社のものが有名だが、具体的なメーカー名までは明言されていない。
以上、投下終了。延長すいませんでした。支援に感謝です。
また前後編になってしまいましたが、ご容赦を。では。
大作、投下乙です。
おおぅ竜児がここで退場……
最後はその死線で一姫ちゃんを睨ませたか……最初に選んだ手段は兎も角最後は立派だった……
そして水前寺自重してねぇwwww
ノリノリすぎるww
古泉もノリノリだし水前寺に指摘熱くなったりとw
一姫ちゃんは怖いのぅ……
糸も専用ではないもの手に入って……恐ろしい。
美波は竜児の意志をついで……どうなるか。
そしてじみに重要人物になっていくハルヒw
改めて大作投下乙です!
全員がいきいきしていて素晴らしかったです。
GJでした
投下乙。
読み終わった後でタイトルを眺め、思わず溜息。竜児乙。
水前寺と小泉のやり取りがなかな楽しめたけど、姫ちゃんが全てを持っていったな…。
美波はとらドラ勢にハルヒと、他作品のヒロインにフラグが立ったようだし、今後が楽しみ。
投下GJ!
お見事としか言いようがないぐらい見事な内容でした。
特に前半部分あの古泉さえ手玉に取った水前寺の話術と4人全員を圧倒した
姫ちゃんの無敵感。
しかし……本当にとらドラキャラは戯言シリーズと相性が悪いなw
大河といい、竜児といい曲弦糸でまず右手が・・・・・・
戯言キャラこえーw
木綿糸でこれかよ
>>630 甘い甘い。姫ちゃんの登場話なんか、もっと怖いぞ?w
投下GJ!
高須ー! 高須竜児ー! お前はゆっくり休め、お疲れ様……。
水前寺の台詞の数々がたまらんなぁw テンションたけーw
あの饒舌な古泉が戸惑うとは……美波ともどもなんという災難w
だが全員が凄くらしい。凄くらしくて感動する。
そして姫ちゃんはやってくれるぜ。なんというオニ。
またも彼女は一つ白星を獲得したわけだが、これからどう行動してくれるか。
美波は高須の遺言を受け取り、古泉の言葉も受け取り、
そうやってどんどんどんどん繋がっていくのも素晴らしい。
これからのSOS団の動きにも期待だ。両方的な意味で!
姫ちゃんは条件さえ揃えば哀川潤に匹敵する程だからなw
一般人では太刀打ちできないだろう。
零崎よりもさらに強いと言っても過言ではないw
>>629 最初大河と対の義手装着で生き残る道もあるかなと思ったけど無理だったね
>>633 秋せつらよりつおい?
635 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 23:35:44 ID:nvOXY0pY
おいおい、竜児が死じまった
まずい、それやばいぞ
恐れていたことが、起こったぞ
大河が、るるる化フラッグたったぞ
大河はまだ竜児あんまり大事じゃない状態じゃなかったか
>>634 最初に切り飛ばされたのが大河と同じ側の手だからなぁ。
逆だったなら、義手装着の目もあったかもしれんが。
>>635 「今日の私は阿修羅すら凌駕する存在よ!」
ということですね? …すげぇぜ大河。
>>636 だな。たしか状態表に北村>竜児の状態とか書いていたはず。
……とはいえその北村のいるところもマーダーの目的地になっているという笑えない状況だがw
>>637 ロワ後半で本名不詳の仮面の女が現れるんですね
仮面に義手の、謎の少女、ミス・タイガー・・・誰なんだ一体。
次スレの季節も近そうなのでwikiにあるテンプレ弄ってみた。
何か五人予約の所が追加で八人になってるが大丈夫なのだろうか。
それもそうだが、上条さんが盛大にやらかしそうだ。
さて、性別:秀吉は果たして上条さんのフラグ能力の対象になるのだろうか?
既に想い人がいたら上条さんの能力は発動しないもんだと思ってる
ふと思い出した。
ラ板の「もしもライトノベルのキャラが一つの学校にいたら」のまとめより
ラノベ校校則第209条2項
『上条当麻は他作品ヒロインおよびサブヒロインへのフラグ立てを禁ずる』
・・・・・・なるほど、男なら万事OK、と
本投下開始します
「KILL YOU!」
暗闇の中響く声。
そして、辺りは沈黙に包まれた。
……
…………
………………
……あ、あれ? おかしいな?
思いもしなかった沈黙に、僕こと吉井明久は内心首をかしげた。
「KILL YOU」
つまりは「あなたは殺し合いに乗っているのですか?」という僕の問いかけに目の前の美少女は、一切返事をしてくれなかったのだ。
僕の予想だと、もちろん、こんなにも可愛い女の子が殺し合いに乗っているわけはないし、僕の問いかけに、にっこり笑って「そんなわけないですよ」と英語で返事をしてくれるはず……。
……ん?
なんだかどうしようもなく嫌な予感を僕は感じた。なんと言えばいいのか、さながら怒っている美波を前にしたときのように、冷や汗がだらだらと流れ出す。
えーと……英語で「そんなわけない」って…………どうだったっけ?
いやいや! それよりもこの子が英語で話し掛けてきたら僕はどう答えればいいんだ!?
僕は大いに焦り、同時にふと、あることに気が付いた。
あ、でもひょっとしたら目の前の女の子も同じ理由で黙っているのかもしれないね。
つまり、どう見ても日本人の僕が英語で話し掛けてきたもんだから、そのまま英語で返せばいいのか、それともうろ覚えの日本語で返せばいいのか迷っているのかもしれない。
そうだ、きっとそうに違いないよ。
だけどそうとわかれば話は早い。
「えーと……」
ぜひ日本語でお願いします。けれど僕はたったそれだけの台詞を言い切ることができなかった。
……一体どうしてなのだろう。女の子のふいんき(なぜか変換できない)はいつのまにかこちらを敵視するような物に変わっていた。そして僕を突き刺すような冷たい目つきでにらんでいる。
「…………」
思いもよらなかった反応に、いつもの癖で僕が思わず身構えるのとほとんど同じタイミングで、女の子が何かを取り出した。
―――いや何かというのは間違いだろう。僕はそれが何なのか、月明かりもあってすぐにわかってしまったのだから。
―――月の光を反射して、鈍い輝きを放つそれは一丁の拳銃だった。
女の子は言葉を無くす僕へとその拳銃を突きつける。
―――うん、落ち着け僕。ここで落ち着いて状況をよく整理してみよう。
まず、僕の目の前にはものすごい美少女がいます。
彼女は僕が「君は殺し合いに乗っているの」とたずねると、僕を敵視してきました。
そして彼女は僕に銃を突きつけています。
これらのことから考えられる女の子の目的は一体なんでしょう?
なーんてはははは、いくら僕でもこんな簡単な問題は間違えないよ。
つまり……
「う、うわわわ」
この女の子は……
「うわわわわわわわわ」
殺し合いに乗っていて……
「わああああああああぁぁぁ!」
見事な推理で正体を見破ったこの僕を殺そうとしているってことだね!
「人殺しいいいいいいぃぃぃぃぃぃいい!」
そう大声で叫ぶと同時に、すぐに全力で森の中へと僕は逃げ込んだ。ほとんど真っ暗だし、木の枝や何かがばしばし顔に当たったりもするけれど、そんな細かいことを気にするだけの余裕もなく、僕はただひたすらに走りつづける。
とりあえず、銃声は聞こえてはこないけど安心することはできない。だってあの女の子が僕を追ってくるのかもしれないんだから。
「追いつかれて、たまるかああぁぁぁぁああ!」
自分を元気付ける為にも、大声で叫びながら僕は闇の森の中を全力で走りつづけた。
◇ ◇ ◇
―――ここで時間を少しだけ戻そう。
(……どうすれば)
内心の動揺を気取られないように注意しながら、テレサ・テスタロッサは気丈に目の前の少年をにらみつける。
動揺する心とは裏腹に彼女の思考は現状を整理して、最善の手段を、目の前にいるいきなり「お前を殺す」と言い放った殺し合いに乗ってしまった危険な少年に対処する方法を模索する。
少年、といっても見た感じではテッサと同じ日本の高校生ぐらいの年頃だろうか。かなり整った顔つきをしてはいるものの……その、こんな殺し
合いに乗ったというのが信じられないぐらいに、間の抜けた雰囲気をかもし出している。とはいえ、外見だけで判断するのは危険だ。
……少なくともこんな序盤から殺し合いに乗ってしまったということは、彼の知り合いでもない限り説得は難しいと考えていいだろう。
また、彼が少し前に聞こえた叫び声をあげた側なのか、それともあげさせた側なのかはわからないが、どちらにせよ今この場に立っているのが
彼一人ということと考え合わせると、おそらくそこそこ戦闘技能は持ち合わせていると判断して構わないだろう。
……つまり、お世辞にも運動神経がいいとは言えない自分には、この少年相手に逃走という手段さえ取りえないということを意味している。
―――救いなのは彼の手に武器がないことだ。支給品の引きが悪かったのか、それとも彼が苦手とする種類の道具を支給されたのか、
はたまた自分ぐらいの非力な少女相手に武器を使うまではないという判断を下したのか、どの考えが正しいかまではわからないけれど、当面、彼が武器を手にすることはないと見ていい。
少なくとも相手が自分を侮りがたし、と判断するまでは相手のリーチは手足の長さに限られる。
―――以上の状況から判断される最善手。……それは先手必勝。
……もちろん、「必勝」と言ってもよほどの運が絡まなければ、彼女に相手を殺すことなどはできないだろうし、そもそも必ず勝てるという保証さえない。
それでも相手が最も他人と同盟関係を組みやすい最序盤から交渉の余地なく襲い掛かってきたということは、最期まで一人で戦い抜くつもりだと考えていいはずだ。
だからこそ、こんな早期で手傷を負うことこそ彼が最も嫌がることのはず。
―――迷っている暇はない。
テッサは彼女の支給品、S&W M500を取り出すと、両手でしっかりと狙いをつける。
手先に感じるずしり、とした重み。
そもそもこのS&W M500という拳銃はその威力に比例するように反動もひどいのだ。
……彼女の力だとおそらくは2、3発。多く見積もっても5発も撃てば手がしびれて、銃を撃つのはおろか、字を書いたりする程度のことさえ、まともにはこなせなくなるだろう。
―――故に、外すことは許されない。なんとしても目の前の少年に最低でも手傷を負わせる。そんな覚悟と共にテッサは引き金に指を掛け……その引き金は引かれることはなく、彼女は呆然と森の中へ逃げ込んだ少年を見送った。
「人殺しいいいいいいぃぃぃぃぃぃいい!」
「……え? え?」
―――助かった、のだろうか? 少しの間緊張しながらも少年が姿を消した森から距離を取り、それでも少年が姿を見せる気配がないことを確認して、テッサはふう、と安堵の溜息を吐くと同時に、ぺたん、と地面に腰をおろす。
思っていた以上に少年の思い切りが良かったのだろうか。
だが、よくわからないのは少年が去り際に残していった台詞の意味だ。最初に襲ってきたのは少年の方なのだ。それがどうして、銃をむけられた途端に、あそこまでの態度の変遷を見せたのだろう。
少しの間テッサは悩み、そしてある考えに思い至る。
(もしかすると……)
そう、ひょっとしたらあの少年は……
この殺し合いに銃器などの飛び道具が含まれているとまでは予想していなかったのではないだろうか? おそらくは彼の支給品にも、そしてすでにどこかへ去ってしまったらしい彼の最初の戦闘相手も、銃器の類を持ってはいなかったせいでそんな誤解をしたのかもしれない。
よくよく考えてみれば、日本では外国と比べると銃器は入手しにくい。だとすれば、どう見ても日本人のようだった彼がそんな誤解をしたことも一応の説明はつく。
(……これで考え直してくれるといいのだけれど)
もしこの考えが正しかったのだとしたら、彼も単純に腕っ節が強いだけでは勝ち抜けないことを知って、脱出狙いになってくれればいい、テッサは素直にそう思う。
「―――それにしても、やっぱり一人じゃ不安ですね」
テッサは呟いた。
実際、先ほど戦闘を回避できたのはただ運が良かっただけだろう。
それこそ宗介やクルツ程とまではいかなくとも、普通の傭兵クラスの技量を持った殺人者と出会ってしまえば、彼女程度では一巻の終わりだ。
もちろん襲われている人がいたら助けにいく、と言う基本方針を変えるつもりはないけれど、これからは他人と出会う時はもっと慎重になるべきかもしれない。
できればすでに集団を組んだ相手との接触ができればいいだろう。
そして彼女は歩き出す。―――こんなところでのんびりしている暇はない。
【B-3/一日目・黎明】
【テレサ・テスタロッサ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:S&W M500 残弾数5/5
[道具]:デイパック、支給品一式(未確認ランダム支給品1〜2個所持)
[思考・状況]
1:宗介、かなめ、ウェーバーとの合流。
2: なるべく早く殺し合いに乗っていない参加者と会いたい(できればチームを組んでいる人達と)
3:ガウルンにたいして強い警戒。
[備考]
吉井明久(テッサは外見のみで名前は知らない)は殺し合いに乗っていると判断しましたが、彼が方針転換したかもしれないとも思っています。
◇ ◇ ◇
「ぜひぃ……はぁ……ぅううううわぁあ!」
一体どのくらい走ったのだろう。
怒った鉄人にしばらく追い掛け回された時のように体力を消耗した僕は、森の中から飛び出すのと同時に、バランスを崩して盛大にすっ転んだ。
「いたたた……」
「―――動かないでもらえますか?」
「え?」
こういう全力疾走には慣れていたせいか、ほとんど傷もなく起き上がって再び走り出そうとした僕に突然、横のほうから声が掛けられた。びくり、と僕は固まる。
う、嘘だろ……? ひょっとしてもう追いつかれた?
恐怖のあまり震える僕に声はさらに命令する。
「ゆっくりと両手を挙げてから振り返ってもらえますか?」
……少なくとも従っている間は撃たれることはないだろう。僕はそう判断すると声に言われるがままゆっくりと両手を挙げると、そのまま声が聞こえるほうへと振り返る。
……そこに立っていたのは黒い短い髪に大きな瞳が特徴的なかなりの美少年だった。ただし、やっぱり彼も銃を僕に突きつけている。
……どうして僕が出会う相手ってこんな人ばっかりなんだろう。そんなふうに内心泣きながらも、僕はあることに気が付く。
そこに立っているのは彼一人だけで、少なくともさっき僕に銃を突きつけてきた美少女はどこにもいない。……ってことはひょっとしたら彼は気が付いていないのかな?
「そうですね、まず……」
「そ、そんなこと言っている場合じゃないよ! 近くに銃を持った危険な女の子がいるんだから!」
だから僕は何か言おうとした彼の言葉をさえぎって大声で叫んだ。もちろん両手は挙げたままで。僕の言葉を聞いた彼は、僕に銃を突きつけたままじっと静かに耳を澄ます。
そんなふうに待つこと少し
「少なくともこの近辺にはボクとあなた以外には誰もいないみたいですけど?」
「ほ、本当? 良かったぁぁ……って」
安心のあまり座り込もうとした僕は今はそんな場合じゃないことに気が付く。
「あ……あの、君は……」
「ボクはキノといいます。えっと、あなたはこの殺し合いに乗っていますか?」
「あ、僕の名前は吉井明久……って殺し合いなんかに乗るはずないよ! 姫路さんもいるのにさ!」
「ふむ、なら脱出するアテでもあるんですか?」
「え……?」
目の前にいる彼、えっと確か木野君だったかな、彼の問いかけに僕は咄嗟には答えられなかった。
「脱出の方法……」
「殺し合いに乗る気はない、けれど脱出の手段もない……それだとあの人の話からすると死ぬしかないですよ」
「で、でも……!」
「でも? なんですか」
「確かに僕じゃあそんな方法は思いつかないけど、姫路さんみたいな頭のいい人や、みんなでいろいろ考えたらきっといい方法が見つかるはずだよ!
ほら昔から言うでしょ、えーと……ほら、「船頭多くして船山に登る」って。みんなで力を合わせれば不可能なことなんてない筈だよ!」
※注 船頭多くして船山に登るの意味―――指図するものが多すぎるとまとまりがつかず、 かえってうまくいかないものだということ
「はぁ……」
木野君はなんだか呆れたような目で僕を見る。あ、あれ? 僕は何かおかしな事を言ったかな? あの諺の意味って、船頭さんが大勢いたら水の上しか進めないはずの船だって山に登れるってことだったよね?
「まあ、頑張ってください。脱出の方法が見つかったらボクにも教えてくださいね」
「え? ちょ、ちょっと待ってよ」
「? まだ他に何か」
「木野君は一緒に来てはくれないのかい」
そのまま立ち去ろうとした木野君を僕は慌てて呼び止める。
確かに木野君はいきなり銃を突きつけてきた怖い人だけど殺し合いに乗っているわけじゃあないみたいだし、それにとっても強そうだ。いっしょに行動してくれたら心強いのは間違いない。
「はあ……」
「えーと…………そうだ、一緒に来てくれたら僕の支給品を何かあげるよ」
なんだか気乗りしない様子の木野君の気をひくために思いついた考えを僕は彼に伝える。
「支給品……ですか、何があるんです?」
何があるって……そういえばすぐに襲われたから中身は全然見てなかったや。僕はデイパックの中から中身を取り出す。
「えーっと……もずくでしょ、それからこんにゃくゼリーにダイエットコーラ……この3つは凄くたくさんあるよ。
それからどこかの地図、名簿、筆記用具、メモ帳、方位磁石、腕時計、懐中電灯、お風呂歯磨きセット、タオル数枚に応急手当キット、それから500mlのペットボトル……えーと中身は水が4本だね」
「……他には」
「他には……あ、こんなのはどうかな」
そう言って僕はデイパックの中からもう一個カバンを取り出した。中には何が入っているのかな? 僕はそのカバンを開けようとするけど、かちん、と言う音がする。
どうやら鍵がかかっているらしくそのカバンは開かなかった。
「……開かないんですか?」
「え、ちょ、ちょっと待ってね」
何かヒントは無いのかな。焦る僕はカバンに何かメモがついているのを発見する。
「なになに……」
そのメモにはこんなことが書いてあった。
―――師匠、これは銀貨434枚分もしたんですから高く売ってくださいよ。あと、俺の所持品もさしあげますよ。好きに使ってください。
……これは
「ノーヒントで開錠しろって事か……!」
「ええっ!?」
何故か木野君は驚いたようにこちらを見る。
「……あの、これは暗証番号が434って事なんじゃあ……」
「……はっ! そういうことだったのか」
言われて僕はカバンのダイヤルを434に合わせる。―――果たしてカバンはあっさりと開いた。
「―――凄いや! 木野君」
「…………………………中には何が?」
「えっと……」
カバンの中に入っていたのはペンやカプセル、ナイフと糸かな? 後はよくわからない機械と以前ムッツリーニが持っているのをみたことがある、確か……夜間暗視装置だ。
「へえ……」
「き、木野君……どうかなこれは気に入った?」
「うん、いいでしょう。このケースの中身を貰う代わりにしばらくの間―――そうですねあなたが探している姫路さんに再会するか、考えたくないかもしれませんが放送で名前を呼ばれるまでは君の護衛を引き受けましょう。それでいいですか?」
「あ、ありがとう! ……あれ、でも僕が姫路さんと再会した後、君はどうするの?」
「そうですね、その人に脱出のプランがあるのでしたらそのまま護衛は引き受けます。……それ以外の場合はその時でいいでしょう」
「う、うん……」
僕は頷いた。……あれ? でも木野君あのカバンで引き受けてくれたって事は他の支給品はいらないのかな?
カバンの中には他にもまだ何か入っているみたいなんだけど……。僕はカバンの中から別の支給品をとりだした。
……ってこれはどうやってカバンの中に入れていたんだろう。そう疑問に思うぐらい大きい物だった。
「木野君、これはいらない?」
「…………なんですか、それは……」
たっぷり1分近く黙った後、木野君は僕に尋ねてくる。
「えーっと……ボン太くんっていうらしいよ」
それについているタグにかかれていた名前を僕は読み上げる。
見た目は緑色の帽子を被っており、赤い蝶ネクタイを締めている犬だかネズミだかよく分からない茶色の生き物、といえばいいだろうか。―――結構愛らしい見た目だね。
「よくわからないけど、何か便利な改造が施されているらしいけど」
「……結構です」
なぜか強い口調できっぱりと断られる。 どうしてだろう。なんとかセンサーとか色々付いているらしいのに。
そう思った僕はふと、思いついてそのボン太くんの中に入ってみる。
……おお、これは凄い。辺りはまだ暗いままだというのに木野君の姿ははっきり見えるし、小さな音まではっきり聞こえるよ。
「ふもっふ(へえ、これは)」
……あれ?
「何をやっているんですか。そろそろ行きますよ」
「ふも、ふもっふ(ちょ、ちょっと待って)」
なぜか僕の言葉はふもふもと変換される。驚いた僕はボン太くんから出ようとして気が付いた。
―――で、出られない?
中に入るときはあんなに簡単だったのに、出ようとするとかちっ、と音がして出られない。
慌てた僕はその音がした辺りに手を回すと、出入り口が何かでロックされていた。すぐに外そうとして、僕はさらに重大なあることに気が付く。
―――着ぐるみの手じゃあ、これ外せない?
「ふも! ふもう!(木野君、これを外して!)」
「ひょっとして、それ気に入っちゃたんですか?」
呆れたような口調の木野君に僕はぶんぶんと首を振る。
「……まあ、いいですけどね。いいかげん時間を無駄にするのももったいないし、さっさと姫路さんとやらを探しにいきましょう」
「ふもっふ!(違うよ〜!)
さっさと歩き出した木野君の背中を僕は慌てて追いかける。
辺りに響いた僕の声は自分でもはっきりわかるぐらいに情けないものだった……。
【A-3とB-3の境目付近/一日目・黎明】
【キノ@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:エンフィールドNo2(5/6)@現実、九字兼定@空の境界
[道具]:デイパック、支給品一式×2 暗殺用グッズ一式@キノの旅
[思考・状況]
基本:生き残る 。手段は問わない。
1: ひとまず明久と行動。貰った道具分ぐらいは彼を護衛する。
2:「姫路さん」が脱出の鍵を持っていないようなら、彼らを見捨てることも厭わない。
3:エルメスの奴、一応探してあげようかな?
4:……ボン太くんか、ちょっとだけ欲しかったんだけどなあ
[備考]
※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
※「師匠」の事を、自分の「師匠」の事だとは思っていません。
※シズの事は覚えていません。
【暗殺用グッズ一式@キノの旅】
師匠のお弟子さんが持っていた道具。
中に入っているのは夜間暗視装置、22口径パースエイダー用のサイレンサー、暗殺用のプラスティックナイフ、暗殺用のワイヤー、
病死に見せかけられる暗殺用カプセル、カプセルを仕込める暗殺用ペンなどの暗殺用グッズてんこ盛り一式。
【吉井明久@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康
[装備]:ボン太くん改造型@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式(未確認ランダム支給品0〜1個所持)
[思考・状況]
1:ふもっふ!(姫路さんは僕が守る!)
2:ふも、ふもう、ふもっふ(木野君と行動する)
3:ふもっふふもっふ……(木野君これ脱がしてくれないかなあ……)
[備考]
※西東天の言ったルールを一部理解していません。少なくとも名簿に名前が載っていない参加者がいることは覚えていません。
※「KILLYOU」の意味が「あなたは殺し合いに乗っているか?」で正しいと思ってしまいました。
※テッサ(明久は名前を知りません)が殺し合いに乗ったと思っています。
※キノが男の子で、木野と言う苗字だと勘違いしています。
【ボン太くん改造型@フルメタルパニック】
ボン太くんランドのマスコットキャラクター、ボン太くんの着ぐるみ。
相良宗介の手によって改造が加えられており、指向性マイク・サーマルセンサー・暗視システムなどを組み込む等している。
本来は外装にも手が加えられていたが、このボン太くんの防御力は普通の着ぐるみと何らかわりない。
後、この着ぐるみを着用中はボイスチェンジャーのために喋る言葉は常に「ふもっふ」もしくはそれに準ずる言葉になる。
投下完了。
投下直後に言うのも変な話ですがやはりWiki収録の際には題名を
「バカと誤解とボン太くん」で収録してください
馬鹿の末路にふさわしい牢獄というか・・・w<ボン太くん
投下乙でしたー。
バカは命拾いしたか・・・
相手がテッサで本当に良かったなwwww
それとボン太くんwwww
キノはこれと縁があるらしいwww
おっと、言い忘れてた、投下乙
投下乙。
バカは助かった……のか?w キノが護衛ってなんか余計に危険な気がw
テッサはさてこれからどーなるのやら
投下乙
バカのハイテンションとキノのクールっぷりが見てて楽しいW
キノはけっこう義理がたいやつだし優しい所もあるから大丈夫だと信じたい
それにしてもバカは本当にバカだなあWW
投下乙です。
バカwwwwww
テッサが相手でよかったなw
テッサの今後が気になるけど……どうなる。
キノは一旦とバカと行動か
しかし……ボン太君wwww
何ツー組み合わせだw
GJでしたw
バカと誤解と改造着ぐるみのほうが最後のオチでそういうことかよwと笑えるから良くね?
そういやラノロワではキノに支給されていたんだな>ボン太くん
orz
連絡
Wikiにおいて他ロワでもよくある死亡者紹介を入れてみました。
今のところ完全に独断で文章を入れているのですが、他のロワのようにまず仮投下等で
下書きしておいたほうが良いでしょうか?
まあね。
おお、GJです!
必要ないかとおもいますが一応あったほうがいいのかな
と、追記。
今回はあれで問題ないとおもいます。
予約していた薬師寺天膳、投下致します。
死んでも死なぬ忍、薬師寺天膳。
彼は思う。
此は何事、と。
◇ ◇ ◇
さて、謎の短筒使いに殺されてしまった天膳。
彼はさほど時間もかけず復活し、既に下山を完了させていた。
短筒使いを追いかけるという手も是ではあっただろうが、何しろ自分は簡単に殺された身である。
いくら自分が忍と言えど油断は出来ない。元々知らぬ土地かつしかも森の中だ。
そんな中での追跡戦は正しく無謀。何が自分を待っているのか予想をつけ辛い状況なのだ。
罠が仕掛けられていても、そしてなおかつそれに律儀に引っかかっても、何の文句も言えぬ。
故に、彼は暗い闇を駆ける事はひとまず避け、山を下っていったのである。
――――だが、後悔した。
「此は……何事……?」
天膳本人としては、それこそ人里にふらりと下る程度の考えであった。
仕方あるまい。彼の生きた時代が時代だ。仕方があるまい。
だが。
「俺は、何を見ている……?」
だが。だが、だが!
その様な綿埃程度の軽い気持ちで下山に当たったのは失敗であったと、天膳は確信せざるを得ない!
「此処は何処なのだ……!」
いや、その質問は愚であろう。正しくは"こう"だ。
「"此処は何"だ!?」
死んでも死なぬ忍、薬師寺天膳。
その彼の目の前には、所謂"都会"の光景が広がっていた。
◇ ◇ ◇
「ふぅ……」
さて、先程はああして忍にはあるまじき声量で疑問をぶちまけていた天膳。
本人も一時はどうなることかと思ったものだが、しばらくそうした後には逆に静かになっていた。
何も面妖なことではない。単純に絶頂点は既に過ぎ去っただけの事だ。山は登りきれば後は下るのみ。
俗っぽい言い方――つまり天膳の知らぬ言葉――で表現するならば、"テンションが下がった"という事である。
だからといって完全に落ち着きを取り戻したわけではないのだが。
「……さて」
整理する。
天膳の目の前に広がるは、謎の物質で出来た数々の箱、箱、箱(ちなみにそれは、現代語訳すれば「ビル」という)。
参った。これを見た他の者に「天膳よ、これは何ぞ?」と問われようとも、彼は答えを示すことは出来ないだろう。
この巨大な体。規則正しく並べられた、四角く大きな矢狭間らしきもの。木材では有り得ぬ程の硬度。
隠れ里の――――否、幕府の人間を全て使役しようともこの様な面妖な物体は作る事など到底不可能だ。
ではその様なモノがぞろぞろと列を成しているこのセカイは一体"何"なのだ。全く説明が付かないではないか。
自分は今まさに恐ろしい体験をしている。それを実感した天膳は、このセカイ自体に対して驚愕するばかりだった。
「俺が言うのも可笑しな話だが……最早有り得ぬな」
だがこのセカイで語るべきものはその巨大な箱のみでは無い事には、天膳も薄々感付いていた。
何せまず大地が硬い。更にその自然では有り得ぬ程の硬さからは、生命の息吹の一切が感じられないと来た。
それだけは無い。鍛えられた視力を活かして遠く向こうを眺めれば、見慣れぬものも沢山見つかる。
まず発見したのは橋だ。通常、川を渡る為に設置されている"あの"橋だ。
だがそれも木材を使用した物ではないが故に、最早天膳の見知った形状ではない。
橋というには異常すぎる程に太く、大きく、硬かったのだから。
とりあえず、辺りを警戒しながら素早く渡ってみた。
無事渡りきった。何も異常は無い。揺れもせずに雄々しいままだ。
脚より伝わる感触は普段渡っている橋と全く違っているが、その分丈夫なのか。
ともかく、この里の橋と大地はそういうモノであるらしい。
そうしていると、天膳の眼前に再び巨大な箱(以下、ビルと呼称)が姿を現した。
そのビルは先程と同じように数多く立ち並んでおり、圧迫感がえらく激しい。
一応存外背が高くない事も"先程と同じ"である為、この先に待つ大都会程の騒ぎではないのだが。
しかしそんな事を今の天膳は知る由も無い。
「……ふむ」
ビルを触診し、樹木よりも遥かに硬いことをもう一度確認する天膳。
夜空に居座る月が発する光と街灯からの人工的な光が、そんな彼の姿を照らす。
ここでその光を頼りにした何者かが天膳の姿を目撃すれば、皆「何をしているのだろう」と不審がるだろう。
何故ならば、天膳は黒い暗い空を呆ける様に眺めていたのだ。
そして。
「ッッ!」
突如天膳は常人の眼では到底捕らえられぬで速度で跳んだ!
そうすれば後はコンクリートの大地とはおさらば。用があるのはビルの壁のみである。
たん、たん、たん、と向かい同士になったビルの壁を蹴りながら上昇していく。
三角跳びの応酬。天膳は月にのみその曲芸を惜しみなく見せ、そのまま彼はビルの屋上へと華麗に着地した。
「ほう。これは……いやはや、なかなかに捨てたものではないな」
天膳は屋上から元いた大地を見下ろしながら、感嘆の意を込めて呟いた。
彼の視界に、数多くの街灯や電光板等で彩られた街の姿が映し出されていたが故にだ。
色鮮やかなそれらは、例えるならば地上に降りた星のようにも思える。宝石と言っても問題あるまい。
少しどぎついのが難だが、里では決して見られぬようなこの光景には正直惹かれるものがある。
この様な摩訶不思議で面妖で明るく美しい世界に、朧は、そして他の忍も紛れ込んでいるのだろう。
「この様な煌びやかな里、我々忍には全く似合わないというに」。天膳はそう言って微かに嗤う。
闇夜に解けるべき存在が、何故この様な場所に呼ばれたのか。そもそも何故自分はこんな場所にいるのやら。
疑問は尽きない。だがこの様な光り輝くセカイを見下ろしている自分がなんだか面白く思えて。
死んでも死なぬ忍、薬師寺天膳は再び"笑"った。
◇ ◇ ◇
ビルの屋上から屋上へ。あれから天膳は跳躍に跳躍を重ねて街を移動していた。
地図が無いままに異形の里を動き回っているので、現在地はおろか方角すらも危ういのだが、本人はそれを気にしてはいない。
その事自体には今や文句の一つも言わずに、煌びやかな大地を見下ろしながら闇夜を跳び、駆けるだけだ。
その理由は二つ。まず一つは朧を探しながら脱出の糸口を探し当てるという、自分の使命を全うする為。
そして二つ目は、ただの"興味"。
初めて見る人里。大地に散らばる宝石。それをもっと見たくなった。
そんな可笑しな自己満足だ。
最初はただのカルチャーショックであった。
"ただの"と言うには少々刺激も衝撃も強すぎたものであったが、最初はその一点だけであった。
ここに来る前には絶対に見ることは無かったであろう、この人里。このセカイ。
それらに対峙した彼が多大なショックを受けたまでの事だ。
だがそのショックは、今はある種の快感へと変わっていた。
隠れ里では正しく自分はほぼ最強であった。自分に勝利する者など、あの朧を除いては存在しないだろうと確信している。
故に自分の世界は、既に頂点から見下ろし尽くし、全てを見通してしまっていた。
勿論四季折々で様々な一面を見せてくれるその世界に飽き飽きしたというわけではない。ない、のだが。
今までで知り尽くした世界とは全く違うこの面妖なセカイに触れたその刹那、何とも言えぬ"何か"が体中を巡ったのだ。
言葉にする事は難儀。これを他人に伝えるには若干の時間を要する事は必至。
だがとにかく、自分の心に新たな感情が生まれ、産声を上げたのは確かなのである。
何故なのだろう。脱出が最優先だというのに、寄り道などしている筈は無いというに。
だがそれでもこう思う。似合わぬ程の煌びやかさ、望むところと!
「旅行者でもあるまいに……我ながら暢気な事よ」
理性を具現化させるように口を開いてみるが、やはり自分はそれでも止まりそうにはない。
やはり自分の欲は誤魔化せそうに無い。他人を騙した事は何度もあると言うのに、だらしの無い話だ。
ならば、良いだろう、こうなったら欲のままに動いてやろうではないか。
"朧を護る"。"セカイに触れる"。"脱出する"。これら全てを成し遂げてみせる。
決意を新たに「人類最悪とやらよ、私を焚きつけた事を後悔するが良い」と呟き、天膳は再び何度目かの跳躍を敢行した。
目指すは遠くに見える白い建物。赤い十字が目印の、これまた奇妙な建物へ。
跳ぶ、跳ぶ。忍は跳ぶ。
笑う、笑う。忍は笑う。
このセカイの全てを知り尽くすには、きっと命が一つだけでは足りないのだろう。
【B-4/建物の屋上を飛び移って移動中/一日目・黎明】
【薬師寺天膳@甲賀忍法帖】
[状態]:健康、高揚感
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:朧を護り、脱出。道中このセカイに触れる。
1:病院を目指す。
2:朧を探しつつ、情報収集。
[備考]
※室賀豹馬に『殺害』される前後よりの参戦。
投下完了。支援感謝です。
投下乙。
天膳、楽しそうだなwww
そしてニンジャの体術とビル群の相性ヤバい……!
装備丸ごと奪われた時にはどうなることかと思ったけど、これなら今後に期待できる!
投下乙です。
おお、天膳様がかっこいい。忍者に有利なフィールドで今後の活躍期待してます。
しかし投下完了のそのときまで、うっかり墜落して死ぬんじゃないかなーとか思ったのは内緒だw
投下乙
天膳殿が死んでおらぬ!
投下乙
天膳ノリノリwwwww
しかしあんまりノリノリだと、うっかり油断してどっかで死ぬぞwww
乙
天膳には残機99のスペランカーポジションを期待している
それビルから降りるだけで残機なくならね
予約キター!
691 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/02(土) 19:23:53 ID:JtT1AdQb
初心者な発言してスマンが、これ誰でも書いていいの?
もちろん
ルールと空気を読んでいれば誰でも
スレの容量、478KBなんだが次スレ建ててきた方がいいかな?
>>691 テンプレと前の話にあったリレーやキャラが可笑しくなければどうぞ
>>693 そろそろたてたほうがいいかな?
EA氏の投下で埋まりそうだし
ギコナビでは479KBだけど、IEでは480KBで表示されてるね。
>>694 では言い出しっぺなので建ててきます。
乙なのですw
スレ建て乙
スレ建て乙
そして投下で埋め
「……っと、ステイルの能力はこんなものかにゃー」
「3000度の動き回る炎の巨人に、ある程度自由に爆発させることができる炎の剣ねえ……。
話を聞いただけだとマジかよ、ぐらいしか言えねえけど、そいつがその、禁書目録とか言う奴を生き残らせるために殺し合いに乗るかも知れないと聞くと笑ってもいられないよな」
「マジもマジ。一欠けらも嘘をふくまない本当のことだぜい。
……まあ、イノケンティウスのほうは、ある程度ルーンをばら撒いた範囲内でしか使えないのは救いだがにゃー。」
土御門元春、クルツ・ウェーバー、二人は手近な民家を見つけるとその中に進入し、そこで改めてお互いの持つ情報、
お互いの知り合いがどういう人物で、またどういうことができるのかや、どんなところから攫われてきたのかということに関しての情報を交換していた。
「次はこっちの番か。
……そうだな、とりあえずこっちも知り合いの中で殺し合いに乗るかもしれない奴は宗介ぐらいだろうな。
奴の能力ねえ…………狙撃専門の俺とは違って、万能タイプ。格闘、射撃なんでもそつなくこなす。あとはまあAS(アームスレイブ)の操縦技術が高いぐらいだろうなあ。
とりあえず、こっちの世界にはお前んとこみたいな超能力やら魔術やらはないからな」
――土御門にせよ、クルツにせよ元々の知り合いほどに相手を信用しているわけではない。だからこそこの情報交換は必要なものであった。
彼らの思考は基本的に似ている。つまり、この舞台からの脱出後のことも考えれば、できる限り知り合い達にも生き残っていて欲しいし、それ以外の参加者はできる限り利用するという点だ。
そして、彼らはそれをお互いに理解している。
だからこそ、お互いの知り合いの情報を交換するのだ。もしも仮に自分が相手を裏切ったら、確実に知り合いの情報が不利な形で流出する。
それを防ぐ最も簡単な方法が相手を裏切らないことなのだから。
――もちろん、裏切る際に確実に相手の息の根を止めるという方法もある。だが、それはリスクが高い。土御門に近距離戦では技量に劣るクルツでさえも、反撃を諦めて防御に徹すればそれなりに時間を稼ぐことは可能だし、周囲に異常を知らせることだってできる。
その結果やってくるのがこのゲームをぶち壊すことを考える正義漢でも、優勝狙いのマーダーであっても、現状より、不利になりこそすれ有利になることはない。
だからこそ、この情報交換という儀式には意味があるのだ。
「後は殺し合いには乗りそうにない知り合い二人……まあ、テッサ、テレサ・テスタロッサは運動音痴だが、頭は切れる。
うちの部隊のトップって事でどのくらい切れるのかは察してくれ。
かなめちゃんは宗介とは今のところは友達以上恋人未満な関係の素人にしちゃあ動ける女子高生だな。まあ、かなめちゃんには他になんかあるらしいんだが……機密レベルが高くて俺にはわかんねえ」
クルツの言葉にうんうんと土御門は頷く。この程度の量の情報にいちいちメモはとったりはしない。
「そうそう、一ついい忘れていたが……」
「ん? なにをだにゃー」
「二人とも――極上の美少女だ」
「……ほう」
「……だからといって手は出すんじゃあねえぞ」
「心配するな。俺は妹萌えだぜい」
「…………」
一瞬、二人の間に冷たい空気が通り抜けた。
「…………さ、さてと、俺のほうのゲームに乗りそうにない知り合いはかみやん、上条当麻と禁書目録の二名だにゃー。
っと、かみやんの能力にせよ禁書目録の能力にせよ、オカルト関係だからクルツには関係ないと思うぜい」
「んー。ざっとでいいから説明してくんねい?」
「めんどくさいにゃー。かみやんの能力は幻想殺し、魔術や超能力を問答無用で打ち消す力だぜい。禁書目録は十万三千冊の魔道書を暗記している完全記憶能力者だが、自分で魔術は使えないってところだな」
「魔術書?」
「あー……とりあえず魔術師以外には意味がないもんだと思ってくれて構わないにゃ―」
「……なあ土御門」
「なんだ?」
「二つばかり聞きたいことがあるんだが」
「何をだ?」
「一つ、方法さえ理解したら俺でも魔術は使えるのか? でもう一つは魔術による死者の復活って言うのは可能なのか?」
「うーん……最初の質問だが、答えはノーだ。
話を聞く限りだと俺とクルツの世界って言うのは微妙に違っている。
で、魔術っていうのは簡単にいうと世界の法則を決まった形式で一時的に書き換える方法だ。その書き換える法則それ自体がほんのわずかでもずれていたら魔術は上手く発動しない。
……最悪、術者自体に何らかの反作用が起きる」
「そっか……ってあれ? だとしたらおまえ達も今魔術が使えないんじゃないのか?」
「その可能性はないわけじゃないが……正直低いだろうな」
「どうしてなんだ」
「ステイルの奴が呼ばれていて、主催者サマは殺し合いをお望みだからな。
ぶっちゃけステイルのやつは魔術と引き換えに体術とかは素人レベルだ。それをわざわざ手間隙かけて攫った以上はこの世界では魔術は使えると思っていいと思うぜい」
「なるほどな……」
土御門の断言にクルツは頷く。
「で、二つ目の質問だが、不可能ではないな。禁書目録の中にある魔道書全ての知識を完全に使いこなせればそのくらいはできてもおかしくはないにゃー」
「そうなのか……」
「けど、どうしてそんなこと聞くんだにゃー?」
「さっきの名簿の中にな、とっくにくたばったはずの名前があった。……ガウルンってクソ野郎の名前がな」
「どんな奴なんだ……って、その表情を見る限りだと親しいわけじゃなさそうだ」
「……最悪さ。そのくせ腕前だけは超一級品だ」
「にゃー……あんまりお知り合いにはなりたくないタイプみたいだにゃー」
――そして静かに土御門は考える。
同姓同名……っと名前だけだから同名の他人って可能性は低いだろうな。
そうすると主催陣の持つ技術として考えられるのは、まずはクローン。ただ、この可能性は低いと考えていいだろう。何故ならばこの舞台で求められているのは殺し合いだ。
……主催者の意図まではわからないが単価10万ちょいで作れる人形をわざわざもぐりこませるだけ意味はおそらくない。
そうなると、他の可能性としてはまずは蘇生の魔術。あるいは俺やクルツのことを考えると並行世界に干渉する魔術なんてのもあるかもしれない。
それともあるいは時間操作なんてのもあるか。
いずれにせよ、上手くやれば全部「なかったこと」にできそうな能力であることは間違いない。
……やれやれ、有能スパイ土御門さんがまたがんばらないといけないことになりそうだにゃー。
とそういうふうに土御門が考えていたそのときだった。
「……おい、土御門。何か聞こえないか」
「何か? ……って本当だにゃー。マイクか何かか?」
「はあ? まだ二時間たってもいないんだぞ。何で放送があるんだ」
「……いや、どっかのバカが呼びかけでもしてるんだろうぜい…………ってだめだ。家の中にいたんじゃあよく聞こえないにゃー」
少し目を閉じて耳を済ませてみた土御門は首を振る。
そして二人は外に出た。
――――数分後。
「……おーい大丈夫か」
「ステイル……あのバカは何を考えているんだ」
がっくりと顔に手を当てている土御門の背中をぽんぽんとクルツはたたく。
「気にすることはないだろ。どうせ元々殺し合いに乗るかもしれない相手だったんだろ?」
「確かにそうだが……ここまで考えなしのことを、いや、考えた末のことかも知れんが、バカな真似をしでかすとは思わなかったぜい……」
音につられて外に出た土御門とクルツの耳に飛び込んできたのは『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』(土御門曰く「あーこりゃステイルの事だぜい」)の行った、
インデックスの命が失われることを期限とする無差別殺害宣言だった。
ステイルの能力や性格を知る土御門にしてみればその選択も理解できないわけではない。
だが、その選択はステイルの存在をこちらの戦力としては数えられなくなることと同じ意味を持つ。
……考えてもみればいい。
一度そんな危険発言を行った人間を誰が信頼することができるだろうか。
こちらで彼の大事な存在、禁書目録を保護したとしても何かあったらという不安は常に付きまとう。
彼女の身に何かあればすぐに背中を撃たれるかもしれない危険性を持つ相手。だからといって、彼の排除もまた難しい。
防衛戦にかけては彼はエキスパートだ。そして土御門のことも、この会場内では他の誰よりも熟知している彼の不意をつける機会は限られる。。
そんな彼をどうするべきか――。
「唯一の救いは……ステイルの奴は自分の名前を出していないことだにゃー。
せいぜい利用させてもらった後であのバカをとめるしかないぜい」
「利用……あ、なるほど」
土御門の呟きにクルツは少し考え込み、少ししてから納得したように頷いた。
「さてと。じゃあ土御門、北から行くか? それとも南からにするか」
「おー、お見事だにゃー」
クルツの言葉に今度は土御門が感心したようにぱちぱちと手をたたく。
つまり彼らはこう考えたのだ。
ステイルの宣言を聞いて、自信がある参加者は彼のもとに向かうだろう。
……では自信がないものはどうするのか?
当然、宣言のあったエリアD-4からは離れるに決まっている。
……それはつまり、こう言い換えることもできるだろう。あの宣言を聞いて、ホールに向かう参加者は強い。ホールから逃げる参加者は弱い、と。
ならばそれを利用する。
これからD-4の周りのエリアを北からか南から調べていき、ホールに向かうものは要警戒。ステイルがしとめてくれることを期待して放置する。
逆に離れていく参加者は……彼らにとって獲物となる。
せいぜい半周。温泉の辺りにつく頃には逃げる者も挑む者も、その動きに一段落つくだろう。
ステイルのところへ向かうのはそうなってからでも遅くはない。
そして彼がこちらを襲う可能性はまず無いと言っていいだろう。何せ彼らはステイルが守りたい少女の情報をもっている。そして防衛戦ならばともかく、追撃戦ならステイルに付け入る隙は十分にある。
そしてそのことはステイルも十分にわかっているだろう。
「なら行くか。逃げてくるのが可愛い子とかだったらいいねえ」
「にゃー、まったくもって同感だぜい」
進む彼らに気負いはない。
彼らにとってはこの戦場もまた日常の一場面に過ぎないのだから
【D-5/一日目・黎明】
【クルツ・ウェーバー@フルメタル・パニック!】
【状態】左腕に若干のダメージ
【装備】エアガン(12/12)
【道具】デイパック、支給品一式、缶ジュース×20(学園都市製)@とある魔術の禁書目録、BB弾3袋。
【思考】
1:宗介、かなめ、テッサ、当麻、インデックス、ステイルとの合流を目指す。
2:可愛いい女の子か使える人間と会えば仲間に引き入れる
3:その他の人間と会えば殺して装備を奪う
4:知り合いが全滅すれば優勝を目指すという選択肢もあり。
5:ひとまず北周りか南回りでE-3へその後、E-4ホールに向かう。
6:ガウルンに対して警戒。
【備考】
※土御門と情報交換を行い“とある魔術の禁書目録”の世界についてある程度情報を得ました。
※ステイル・マグヌスの能力の詳細を知りました
※上条当麻、禁書目録について簡単な説明を聞きました
【土御門元春 @とある魔術の禁書目録】
【状態】額に少しだけあざが残っている
【装備】
【道具】デイパック、不明支給品1〜3
【思考】
1:生き残りを優先する。
2:宗介、かなめ、テッサ、当麻、インデックス、ステイルとの合流を目指す。
3:可愛いい女の子か使える人間と会えば仲間に引き入れる(ただし御坂美琴に関しては単独行動していたら接触しない)
4:その他の人間と会えば殺して装備を奪う
5:ひとまず北周りか南回りでE-3へその後、E-4ホールに向かう。
6:最悪最後の一人になるのを目指すことも考慮しておく。
【備考】
※クルツと情報交換を行い“フルメタル・パニック!”の世界についてある程度情報を得ました。
※宗介の戦闘技能についてクルツに教えられました
※千鳥かなめ、テレサ・テスタロッサに関する簡単な説明をうけました
※主催陣は死者の復活、並行世界の移動、時間移動のいずれかの能力を持っていると予想しましたが、誰かに伝えるつもりはありません。
投下完了です
埋め立てには少々足りず……
707 :
埋め:2009/05/03(日) 00:11:00 ID:k3rKWqK3
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708 :
埋め:2009/05/03(日) 00:12:33 ID:k3rKWqK3
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埋め:2009/05/03(日) 00:13:15 ID:k3rKWqK3
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埋め:2009/05/03(日) 00:14:21 ID:k3rKWqK3
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引き続き、ラノロワ・オルタレイションをお楽しみ下さい。
ラノロワ・オルタレイション part3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241265098/l50
711 :
埋め:
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