1乙
そういえば題名を言ってなかった
【19年前の歌声の日】
って感じでよろしくお願いします。
参加者リスト
【主人公】
○博麗 霊夢 ○霧雨 魔理沙
【紅魔郷】
○大妖精 ○小悪魔 ○ルーミア ○チルノ ○紅 美鈴 ○パチュリー・ノーレッジ ○十六夜 咲夜 ○レミリア・スカーレット ○フランドール・スカーレット
【妖々夢】
○レティ・ホワイトロック ○橙 ○アリス・マーガトロイド ○リリー・ホワイト ○ルナサ・プリズムリバー ○メルラン・プリズムリバー ○リリカ・プリズムリバー ○魂魄 妖夢 ○西行寺 幽々子 ○八雲 藍 ○八雲 紫
【永夜抄】
○リグル・ナイトバグ ○ミスティア・ローレライ ○上白沢 慧音 ○因幡 てゐ ○鈴仙・優曇華院・イナバ ○八意 永琳 ○蓬莱山 輝夜 ○藤原 妹紅
【花映塚】
○射命丸 文 ○メディスン・メランコリー ○風見 幽香 ○小野塚 小町 ○四季映姫・ヤマザナドゥ
【風神録】
○秋 静葉 ○秋 穣子 ○鍵山 雛 ○河城 にとり ○犬走 椛 ○東風谷 早苗 ○八坂 神奈子 ○洩矢 諏訪子
【地霊殿】
○キスメ ○黒谷 ヤマメ ○水橋 パルスィ ○星熊 勇儀 ○古明地 さとり ○火焔猫 燐 ○霊烏路 空 ○古明地 こいし
【萃夢想】
○伊吹 萃香
【緋想天】
○永江 衣玖 ○比那名居 天子
【その他】
○森近 霧之助 ○稗田 阿求
【基本ルール】
参加者同士による殺し合いを行い、最後まで残った一人のみ生還する。
参加者同士のやりとりは基本的に自由
ゲーム開始時、各参加者はMAP上にランダムに配置される
参加者が全滅した場合、勝者なしとして処理
【主催者】
ZUNを主催者と定める。
主催者は以下に記された行動を主に行う
・バトルロワイアルの開催、および進行
・首輪による現在地探査、盗聴、及び必要に応じて参加者の抹殺
・6時間ごとの定時放送による禁止エリアの制定、及び死亡者の発表
【スタート時の持ち物】
各参加者が装備していた持ち物は全て没収される。
(例:ミニ八卦炉、人形各種、白楼剣等)
例外として、本人の身体と一体化している場合は没収されない
なお、スペルカードだけはその限りではない
【ステータス】
作品を投下する時、登場参加者の状態を簡略にまとめたステータス表を記すこと。
テンプレは以下のように
【地名/**日目・時間】
【参加者名】
基本行動方針:皆殺し・脱出・人探しなど現時点での行動方針
[状態]:ダメージの具合や精神状態について
[装備]:所持している武器及び防具について
[道具]:所持しているもののうち、[装備]に入らないもの全て
[思考・状況] より細かい行動方針についての記述ほか。
優先順位の高い順に番号をふり箇条書きにする。
(このほか特筆すべきことはこの下に付け加える)
【首輪】
全参加者にZUNによって取り付けられた首輪がある。
首輪には以下の3つの能力がある
・条件に応じて爆発する程度の能力
・生死と現在位置をZUNに伝える程度の能力
・盗聴する程度の能力
一つ目の能力は以下の時発動する
・放送で指定された禁止エリア内に進入した場合自動で発動
・首輪を無理矢理はずそうとした場合自動で発動
・24時間の間死亡者が0だった場合全員の首輪が自動で発動
・参加者がZUNに対し不利益な行動をとった時ZUNにより手動で発動
【能力制限】
全ての参加者はダメージを受け、また状況により死亡する。(不死の参加者はいない)
回復速度は本人の身体能力に依存するが、著しく低下する。(人間<妖精<妖怪<月人他)
弾幕生成・能力使用など霊力を消費するものは、同時に体力も消費する。
霊力の回復速度は数時間まで低下。(無駄撃ちや安易な空中移動を防ぐため)
各弾幕及び能力は有効射程距離を著しく低く設定(弾幕は拳銃の射程距離程度、能力はもの次第)
【支給品】
以下の物を一人に一つずつセットで支給
・スキマ(なんでも入る。ただし盾としては使用不可。使用した場合ペナルティがつく)
・食料、飲料水(常識的な一人において三日分)
・懐中電灯、時計、地図、コンパス、名簿、筆記具(以上を基本支給品とする)
・ランダムアイテム一つ〜三つ
・「空のスペルカード(説明書つき)」一つ
【ランダムアイテム】
「作中に登場するアイテム」「日用品」「現実世界の武器or防具」から支給。
玄翁など(可能ならば)生きている支給品も可。
【定時放送】
ZUNはゲーム開始後6時間毎に定時放送を行う。
定時放送では以下の情報が提供される。
・時報
・前回放送終了後から今放送時までの死亡者の名前(首輪の情報に準拠する)
・3時間毎に制定される禁止エリアの発表
・先に発表した情報、及びその他諸々の情報を元にするZUNによる補足他
【禁止エリア】
ゲーム開始後9時間(第一次放送から3時間後)から3時間ごとに一つ設定。
設定済みの禁止エリアに進入し、30秒間の間に退出しない参加者は首輪が自動で爆発する。
また、ゲーム開催区域外全域は禁止エリアとして処理する。
ZUNは定時放送のときこの禁止エリアを発表する。
【予約】
・書きたいキャラを明示し、それを宣言する。
これをせずとも投下は出来るが、その場合すでに予約されていないかよく注意すること。また、トリップは忘れずに
・期間は3日。何らかの事情で完成が遅れる場合、最大四日間まで期限を延長することができる。
【投下宣言】
他の書き手と被らないように、投下する時はそれを宣言する。
宣言後被っていないのを確認してから投下を開始すること
【参加する上での注意事項】
・今回「二次設定」の使用は禁止されている。
よって、カップリングの使用や参加者の性格他の改変は認められない。
書き手は一次設定のみで勝負せよ。読み手も文句言わない。
どうしても、という時は使いどころを考えよ。
支給品とかならセーフになるかもしれない。
・ここはあくまでも「バトルロワイアル」を行う場である。
当然死ぬやつもいれば狂うやつもでる。
だが、ここはそれを許容するもののスレッドである。
参加するなら、キャラが死んでも壊れても、
泣かない、暴れない、騒がない、ホラーイしない。
あと、sage進行厳守。あくまでもここはアングラな場所なのを忘れずに。
>>3からテンプレのコピペ完了
テンプレ作成者乙!
予約期間テンプレのとおりだと一人予約切れになるが
大妖精と小悪魔って入ってたっけ?
名簿だと入っているな
まぁこの二人くらいなら書けるだろう
大妖精と小悪魔は公式設定がほとんどないから除外されたはず
あと、空のスペカってどう使うの?
おお、面白そうだな……と思ったらなんかもう作品4つぐらいある?
OPはまだしもスレ立て時点で作品あるとかどうよ?
15 :
◆MajJuRU0cM :2009/02/25(水) 00:04:17 ID:ci2x/aZC
テンプレ作った者です。証明になるかは微妙ですが鳥出しときます。
テンプレの支給品項目『「空のスペルカード(説明書つき)」一つ』
はミスって出しちゃいました。消しといて下さい。
…重ねて言いますが、これはあくまで個人的な『仮テンプレ』で、これまでの案の問題ありそうなのをいくつか黙殺させてもらっています。
私はあまり頻繁に覗けない立場にあるので、勝手とは思いますがこのテンプレの変更や修正は皆様で議論し合って決めて下さい。
【作中での時間表記】(1日目は午前0時より開始)
子の刻;23時〜1時
丑の刻;1時〜3時
寅の刻;3時〜5時
卯の刻;5時〜7時
辰の刻:7時〜9時
巳の刻:9時〜11時
午の刻;11時〜13時
未の刻;13時〜15時
申の刻;15時〜17時
酉の刻:17時〜19時
戌の刻;19時〜21時
亥の刻:21時〜23時
時間表記忘れてたorz
すいません。これもお願いします
見る限り、テストしたらばからこっちに来たってことでいいのかな。他板からロワスレが移転して来たようなものか
OPと既に投下された話を見ると
・スペカは原作でスペカを持ってる人にのみ一枚支給されてる
・スペカの使いどころは考えた方がいい→一回使うと無くなるor使えなくなる
・能力の制限の度合いは書き手任せ、使うと体力が減る
って感じなのかな。
テンプレだと、体力は減るが空を飛ぶのもアリ?
飛べるか飛べないかで結構違うと思うんだけど。
飛行はおkだった気が
体力は減るけどね
スペルカードは時間で回復にしてほしいものだが
飛行おkか、了解。形に出来るかは別として、妄想膨らむなー。
スペカは一種しか使えないってのもなんだし、テンプレの「空のスペカ」を導入して
・放送ごとに別のスペカに書き換えられて再使用可能になる。
とかどうだろうか。放送ごとじゃなくても、使ってからX時間でもいいけど
「空(うつほ)スペルカード」かと思った
書きたいキャラがもう死んでる件について
>>22 リリーホワイトとミスティア・ローレライは追悼の意を上げなければならないが早苗さんならまだ可能性があるぞ
修正中らしいからね
ー。<
,'´ ,,.ヽ
....,,,,___i''´ ・ >
! 、ー‐- !
゙、ヽ ノ
゛'' 'ェ-ェ"´
ご愁傷様です
>>20 >スペカ
まあ今から議論してgdgdしても仕方ないから、今回は我慢すれ。
おおー、いつの間に見事なテンプレが
スペカ、飛行移動とかに関しては後で書き手が設定すればいいんじゃないですか?もちろん、ゲームバランスが壊れない程度に
自分の場合は参加者は基本的に飛行移動不可(吸血鬼、夜雀、烏、妖精などの翼があるキャラは種族特有能力として少しだけ可能)
スペカは拳銃よりもたくさんの弾を出すが、弾速が遅い。戦闘以外でも使えるかも
てな感じ
あと、魔理沙とお空を書くと言ってましたが、あれは『ベツレノムの星』と関わりのある内容を考えていたので
それの修正版がまだ来ないみたいなので、一旦、魔理沙とお空の予約を破棄します。この二人を書きたかった方々には申し訳ありません
代わりに、他のキャラを書きたいと考えてますが・・・誰にしようかな。そろそろ主人公キャラの霊夢あたりもよさそうですけど
突然ですが、穣子、雛、こいしを書いてます。
今日中に出せそう・・・かな?
>>26 遅筆で申し訳ありません。
「ベツレヘムの星」修正版完成しましたので、
推敲の終了次第投下させて頂きます。
今日中には投下できますのでどうかご容赦下さい。
予約期間…覚悟はしてたが短いな…これからどうしよう…
推敲完了しましたので投下させていただきます。
「ベツレヘムの星」
目の前に一人の少女がいる。
私は彼女を殺すつもりだった。
そのために掲げた銃は、彼女を捕らえられない。
手も足も、全身が打ち震え、彼女に銃を向けるのを拒む。
直視することさえできない神々しさをまとって彼女が近づいてきた時、
私は自らの命を守る気力さえ消え失せた。
「殺し合いをしてもらいます」
永遠亭の主の懐刀といっても良い実力者、八意永琳の一言を聞いてから
既に10分(実の所途中記憶が明瞭でない所があり釈然としないのだが)経っただろうか。
一人の半妖、上白沢 慧音は森の中を歩いていた。
手には先ほどスキマの中から取り出した一本の短刀。
白楼剣と呼ばれるそれは、過去彼女自身が戦った相手の獲物の一つだが、今はこの通り彼女の手の中にある。
地図によればここはF−4、魔法の森の中。
必ずしも広くはないそのエリアには、拠点として使用可能な建物が三つ存在する。
一つ、香霖堂。二つ、マーガトロイド邸。そして三つ目が彼女の向かう先、魔理沙邸。
既にそれは視界に現れ、彼女の足を速めさせる。
「…失礼します」
思っていたよりも若干小さい建物の中に入ってみると、先客がいたらしく部屋の外に雑多な物が積まれている。
近づいて一見するとそれはバリケードのように見えなくも無いが、強そうでもない。
例えばそう、こんな風に一押しすれば、
グラリ
…一押し、すれば…
このように崩れ落ちるだろう。と、言うより現に崩れ落ちた。
しばし呆然と佇む慧音の耳に異質な音が流れ込む。
それは…誰かが咳き込む声。
「だ、大丈夫…じゃぁ、無さ、そうだが・・」
慌てて慧音が近寄ったそこには、舞い上がった埃と雑多なわけの分からないものと、
苦しそうに咳き込む一人の少女がいた。
慧音が一人の少女と遭遇した少し東、G−4、博霊神社。
因幡 てゐはここで出会った一人の参加者、東風谷 早苗の話を半ばうんざりしながら聞いていた。
始めは情報交換のつもりだったのだがお互いこの場所で会った参加者は互いが始めて。
支給品の情報(無論武器は隠し通した、スキマはこういう時便利だ)以外は有益な情報は無く、
無理に知り合いの話を聞こうとした結果いつのまにか
「どうやってみんなで生きて帰るか」という講談が始まった。
(何ていってるんだろう…)
なにぶん話が長い上に全く興味が持てない。
別に早苗の話し方が悪いのではない。てゐが優勝することしか考えていないためである。
いや、それでは正確ではない。
彼女の脳内で導き出された結論はこうだ。
まず、何をどうやっても月人が死ぬことは有り得ない。
故に「参加者」として数えられている輝夜、なぜか名簿に名前が載った「主催者」永琳は実際には参加者ではない。
この場所では通常の参加者のごとく行動するであろうが、唯の参加者がこの二人にかかっていって起きる事態は一つだけ。
返り討ちである。
故にこの殺し合いは、輝夜、永琳、もう一人の月人(妹紅とか言う名前だった)と「優勝者」、計四人が生存することになる。
ならば状況は簡単。
早いうちに二人のどちらかと会い、その庇護を得るだけでよい。
優曇華のことが一瞬頭に浮かんだが、主催者が永琳なら「彼女には」優遇があるのかもしれない。
だからこそそれを持たない自分は、「自力で」生き延びる。
最悪逃げ切ることさえできれば生還は叶う。一刻も早く逃げ出したいのである。
現実にはそれは叶わず、いまだ聞いてもいない話に相槌を打つばかりだが。
「この殺し合いから抜け出す…手伝いをしてほしいと?」
「あぁ。そういうことになる」
場所は魔理沙邸前。慧音と先ほどの咳き込んだ少女…パチュリー・ノーレッジは語り合っていた。
呼吸器の強くないパチュリーを抱え家から出てきてしばらく。
ようやっと落ち着いたパチュリーに向けて慧音はある提案を持ちかけた。
殺し合いからの脱出経路を探す、という提案である。
「私に得なことがある?危険しかないんだったら…出直してきてくれるかしら」
「生憎優勝を狙うより遥かに得だと思う。もっと言うなら、優勝狙いでは生き残れないと思っている。」
慧音は優勝は端から狙えないと諦めていた。
理由は参加者の中にあった三人の月人。
月人は死ぬことが無い。それが三人いれば、「一人以外皆殺しにして優勝」は絶対に不可能なのは自明の理。
優勝が不可能なら戦えども戦えども死から逃れることは出来ない。順当に戦うならば。
「従えば犬死には免れない。従えないなら抗ってみるのも悪くはないと思うが」
「抗って勝てる見込みはあるの?」
「今のところは分からないが…」
慧音はスキマから一つの箱を取り出す。その中には何かの道具が整頓されて詰められていた。
「少なくとも、殺し合わせる側は、私たちに抗う権利をくれるらしい。…妙な話だが。」
その箱は明らかに、工具箱であった。
話をまるで聞かずに今後の計画等を一人でつらつらと考えていると、目の前に早苗がいないことに気がついた。
傍にはスキマが二つあったため近くにいることは分かったが、
ふと思い立ち中を覗くと、てゐが一番気にしていた支給品を彼女が持っていったことに気がついた。
「制限解除装置」。
説明書の但し書きが正確ならば、「参加者一人の首輪による制限を10分間無効化する」という無骨な金属の塊。
1度使うと24時間使用不能になるが、本来の実力を短い時間にせよ発揮できるのは非常に魅力的だった。
しかし…それは早苗が持ち去った。
出来れば自身の手で持っておきたいと思ったそれを最初「考えがあるから」と言う彼女に返したのを思い出す。
考えとは何だ、と思う間もなく鳥居の前に彼女を見つけ、
そして彼女の考えを知る事となる。
…最もてゐにとってその考えとは、決して支持出来ないものであったのだが。
「体調はどうだ?」
「だいぶ楽にはなったけど…調子がいいとは言えないわね」
「全力で戦わせたいなら万全の体調の時に連れてきてくれればいいものを…
わざと弱らせて何を考えているんだ」
「…あなたも調子が悪いの?」
「どうも頭痛がするんだ。ひょっとすると永琳の言っていた『全力を出せないようにする措置』なのかもしれない。
それともう一つ気になるんだが…今日の月は満月だったか?」
「いやに赤いけれど満月なのは確かよ。でも…不自然ね」
「あぁ、日にちに合わない。それに『ねぇ、あれ…なにかしら』うん?」
二人が見上げた空には怪しく赤く光る満月と…
月をも凌ぐ光を放つ、一つの星。
早苗は自身の制限を解き、空に星を映し出した。
星の輝きは神社の上で神々しく瞬き、彼女がその場所にいることを空に印した。
しかしそれは、てゐにとっては芳しくない事態であった。
恐らく彼女は自身の力の証を出すことで自身の知人に場所を伝え、合流を図ろうとしたのだろう。
だがしかし、それはあまりにも分の悪い賭け。
仲間が空を何らかの理由により見上げてやってきて、自分たちの代わりに戦ってくれるならてゐも拒絶はしない。
問題はそれがあまりにも望み薄なこと。
仲間の誰も星を見つけられなかったら?やってこようとして殺されてしまったら?
私は魔力の尽きた早苗と二人で永遠に来ない仲間を待ちつづけねばならないではないか!
その間にやって来る「仲間じゃない者」を全員私一人で対処しろというのか?
ふとてゐはスキマの中に隠しておいた自身の支給品を思い出す。
それは「トンプソン M1A1」という名前らしい一丁の銃。
優曇華が使っている銃に比べて大きすぎると思って説明書を読んでみたら、
先のルール説明で使われていた「拳銃」のような弾を何十発と撃ち込めるようになっているらしいと分かった。
幸先がいいととって置いたこれをスキマからゆっくりと引っ張り出す。
早苗を殺してしまおう。
今のところまだ仲間が来る気配はない。ならばここで殺してしまって、さっさと逃げるのが得策ではないか?
いつ来るか分からない彼女の仲間を待つよりは、ここで彼女を殺して支給品を奪い取り、全力で逃げるほうがまだ見込みがある。
そうだ、殺してしまおう。解除装置はしばらく使い物にならないだろうがしかたがない。
後ろから近づいて・・・銃口を向ければ・・・
彼女が不意に、振り向いた。
「向かうのはいいけれど…呼んでいるのが『殺して廻る側』だったらどうするの?」
「おそらくその可能性は薄いだろう。仮にそうだとしてあの方法では妖力を消費しすぎる。
集まった者を即刻殺すつもりなら、もっと別な方法を探ったほうがよい。
武器があるにしろないにしろ、妖力の有無が重要なことに変わりはないだろうしな」
「集まる側はどうかしら?」
「おそらくむこうで星を出した者たちもそれは考えていたはずだ。
『星の光』なら空を見上げなければ気付くことはない。そして、殺す相手を探すのに空を見るのは無駄だと大抵の者が考えているだろう。
現に我々は飛べなくなっている訳だしな」
二人は仲間を求める星の光に導かれ、先ほどまで歩いてきた。
少し前に星の光は掻き消えたが、尚二人はその輝きのあった場所へと進む。
「ところで、あの家で積んであったあれは?」
「…散らかってたから片付けたのよ。ご存知の通り体はあまり強くないから。
あんなに埃が立つとは思わなかったけど」
「その、なんだ、…済まない」
私は慧音の話を完全に信じるつもりはない。
慧音が突然脱出を持ちかけた時、私が気にしたのは「首輪が爆発しないか」ということだった。
永琳…というらしいあの女はルール説明の時あの死んだ少女の動きをずっと映し出していた。
あれを私たち全員に行っていたとしてもおかしくはない。
そして首輪の爆弾は逃げようとするものを容赦なく爆破する。
だとすれば首輪を外して逃げようとするものは当然、外れる前に爆破されると考えていい。
…だが慧音の首も私の首も木っ端微塵になることはなく、現にこうして語り合っている。
考えられるのは二つ、「外れるはずがないと高をくくっている」か「外そうとするのを待っている」か。
わざわざ外す為の工具箱を渡しておいて、前者はありえないだろう。
…と、なればやっぱり…
「どうかしたかパチュリー、急に黙り込んで」
「…なんでもないわ」
慧音とパチュリー。
二人の聡明な少女が、ゆっくりとこの異変の渦中に飲まれていく。
【一日目 丑の刻】
【F−4 魔理沙邸東】
【東方の二賢者】
基本行動方針:この殺し合いから脱出できないか模索する
【上白沢 慧音】
基本行動方針:優勝は望み薄なので脱出を狙う
[状態]:軽い頭痛 人間状態
[装備]:白楼剣
[道具]:基本支給品 にとりの工具箱 スペルカード1枚 +α?
[思考・状況]
一:「星」を放った者に会いに神社に行く
二:パチュリーとともに行動
三:工具箱の持ち主に会えると良いのだが…
四:可能なら妹紅に会いたい
※ハクタク化はおそらくなんらかの制限がかかっていると思われます。
※参加者に含まれる月人3人が不死だと信じています。
※魔法の森の瘴気により体調に影響が出ているようです。
本人は「制限」のせいではないかと考えています。
【パチュリー・ノーレッジ】
基本行動方針:逆らっても得がないので脱出に協力してみる、が…
[状態]:喘息の調子は一応落ち着いてる 後は良好
[装備]:特に無し
[道具]:基本支給品 ランダム支給品×? スペルカード1枚
[思考・状況]
一:慧音について神社へ向かう
二:可能なら紅魔館の者達の消息が知りたい
三:…最悪優勝狙いも考慮する
※喘息の発作を一度起こしました。現在は治まっています。
※慧音により、月人三人は殺せないと吹き込まれました。
※何らかの形により永琳に監視されていると考えています。
まだ慧音にこのことは話していません。
※魔理沙邸の一室に物が散乱しています。
どのような物があったのかは確認されていません。
ふと後ろに気配を感じ振り返ると、そこにいたのはてゐさんでした。
…銃を持っていたのは予想外でしたが。
「武器は持っていない」と言っていたのは嘘だと分かりショックでしたが、
撃たれたくはないので念のため持っておいたスペルカードで迎え撃とうとした途端、
彼女は崩れ落ちてしまいました。
その目はあきらかに私を恐れていました。
…どういうことでしょう?
振り向いた彼女と目が合ったとたん、その視線に凍りついた。
彼女がスペルカードを掲げるのが見える。
手が震え、銃口が彼女を捕らえられない。
足がもつれ、その場にひざまずく。
彼女の無垢な瞳が私を捉える。
枷をはめられた一匹の兎でしかないこの自分を、圧倒的な霊力が押しつぶす。
やめて、見ないで、それ以上近づかないで・・・
制限の外れた「現人神」の力を全身で感じたてゐは最早こみ上げる恐れ…いや畏れと言うべきか…に抗うことが出来ない。
てゐに降りかかる神の力が消えるまで、後、8分。
【ラッキーガールズ】
基本行動方針:決裂中
【因幡 てゐ】
基本行動方針:優勝し、生き残る
[状態]:「現人神」への畏れ
[装備]:トンプソンM1A1(弾数不明)
[道具]:基本支給品 トンプソンM1A1用弾倉(個数不明)
ランダム支給品×? スペルカード1枚
[思考・状況]
一:早苗こわいこわいこわい
(二:永琳か輝夜の庇護を得たい)
※月人は不死と考えています。
またこれにより、月人は「偽の参加者」だと考えています。
※早苗と情報交換を行いました。
彼女の仲間の情報、支給品の情報は把握済みです。
【東風谷 早苗】
基本行動方針:皆揃って生きて帰る
[状態]:現人神(制限解除) 若干のショック
[装備]:制限解除装置(使用中・残り8分) スペルカード1枚
[道具]:基本支給品 ランダム支給品×?
[思考・状況]
一:どうしたんでしょう…
二:てゐさんは…初めから裏切るつもりだったのでしょうか…
※てゐと情報交換を行いましたが、武器に関しての情報は隠されました。
目の前のトンプソン以外にてゐに武器があるかどうかは全く分かりません。
※制限解除装置に関して
・一度使うと10分間首輪による制限を解除する。
・10分経過した場合、以後24時間使用不能
・同時に二人以上が使用することは出来ない
・使用中に対象の者が死亡した場合、その時点で効果を無くし、以後24時間使用不能
・首輪を無効化する能力への制限、及び不死に対しての制限は解除されない。
・「制限」以外の首輪の各機能には影響しない。(爆弾・位置捕捉・盗聴機能は正常通り)
※博霊神社上空に明るい星が瞬きました。
東に空が見えれば視認出来たでしょうが、音がないので空を見ていなければ気付かない可能性があります。
投下終了しました。
一応前回指摘された問題点は全て改善したつもりですが…
毎度毎度遅筆でご迷惑をお掛けしたこと深くお詫び申し上げます。
何となくこのロワが盛況になった暁には
私が「なにかとすぐ謝る人」としてwikiにのってそうな気がしたのは
気のせいだと信じたい
親から禁止令出されてるにも関わらずこのロワの行く末が気になって頻繁に覗く俺は異常
スペルカードは特に制限はなしという話だった筈。ほとんど全員が使えるし、制限の意味があまりない。
阿求とかは……まぁ、頑張れとしか…。
>>13 ちょっと読み返してみたが、そんな話出てたか? いつの間にか不参加って扱いになってるみたいなんだけど…
公式設定が少ないってのは確かに痛いが、キャラ把握ということならセリフなしのキスメもどっこいなんだし書いてみたいんだけどなぁ
あと、れーむ、まりさ、リグル予約。
ワープロなしでも、小説は書けるんだぜ…?
けーね先生いつからそこまで思考回路がポンコツになったんだ……
殺して回る奴らが空を見ないってそりゃねぇだろ
弱いキャラはズガンされるのか…はぁ…
>>40 魔理沙って予約されてなかった?
修正乙です。弾幕を空に放って居場所を知らせるのはいい発想だなー。
>>42 魔理沙の予約は
>>26で破棄されてるよ。
こーりんとゆかりんを予約します
予約3日って辛くない?もうちょっと増やさないか?
修正乙です
ちょっと気にになったことがあるので
>>34 >私は魔力の尽きた早苗と
早苗さんの力って魔力なのか?あんまり知らなくてすまん
>>42 また頭がHなのとか春ですよーな奴がズガンされそう
>>39 自分も
>>41と同意見。「殺して回る奴らが空を見るわけがない」という論が成り立つなら、
「仲間を捜す奴らが空を見るわけがない」という論も成り立つ。
それとさ、あんたは投下後の発言に気をつけたほうがいいよ。
前回のときも思ったけど自分で「情けない」とか言うな。
読んでる側も情けないもの読まされているのかっていう気分になるから。
思っても口には出すな。
>私が「なにかとすぐ謝る人」としてwikiにのってそうな気がしたのは
こんなものステータスでも何でもない。もっと他に考えることがあるだろ。
>>44 あなたが前に書いたのは面白かったから期待いています。
しかしわりと初期のほうからいたと思ったけど何で今ごろスペカのことで意見出しているの?
なんだか、大妖精や小悪魔は名前が無いから不参加になったように思えるんだけど・・・
まぁ、どうしても参加するのだったら支給品にするとかですかね?生き物の支給品が増えるのもアレですが
そして、修正乙!
早苗とてゐはこれからどうなるんでしょうかねぇ。
二人とも何らかの形で頑張ってほしいところです。
あと、作品が完成したので投下します。
題名は「少女団結」で
神様は様々な人々から信仰を得ている。
人々の役に立つ、身を保障する、美の象徴・・・。神は様々な行為を経て信仰を得る。
それが人々にとって大いにありがたいことであり、それが神への信仰に繋がるのだ。
幻想郷の数多の神はその信仰を得ることを生きがいとしている。つまり、人々のためにあらゆる善意を尽くすこと。それが神の生きがいなのだ。
そんな気持ちを持つ神々がこんな馬鹿げたゲームになど乗る気にならない。
誰もがそう思っているのではないだろうか。
豊穣を司る神、秋穣子は途方に暮れたかのような足取りで歩いていた。
山の神の中では活発な性格の彼女だが、今の状態ではそう思えないだろう。
そして
「どうすればいいのよ・・・」
真っ先に思ったのがそれだ。
まず姉である静葉を探したい。理由は簡単、心配だからだ。
だが、それだけでは殺し合いを止めることは出来ない。姉と合流できても、ゲームに乗った妖怪たちに出会ったら殺されかねない。
それに、主催者のあの医者に対抗する手口が思いつかない。いかんせん、自分には力がないのだ。
―――少女捜索中
「「あ!」」
しばらく歩いていると、顔見知りと出会った。
最初は誰だと思いお互いびっくりして思わず引いたが、その相手は
「雛じゃない!」
「穣子・・・?いきなり会えるなんて驚いたわぁ」
穣子と同じ山の神である鍵山雛だった。
雛は穣子と同じく、同じ理由で悩んでいた。
特に、彼女は人々の厄を受け取るのが信仰を得る手段である。
厄はあらゆる不運の種となる厄介な存在である。逆に言えば、厄が無くなれば人々は幸せになれるようなものだ。
だから、厄を取り除く神である雛は、人一倍様々な人々を想う心があるといえよう。
だが、それだけだ。今は気持ちでそう思っていても意味がない。雛もまた、殺し合いの対抗手段が思いつかないのだ。
しかも、今日は何故か周りに溜め込んだ厄が無くなっている。これじゃ、ただの雛人形だ。
支援
>>46 空のスペルカードルールが採用されていないと思ってたのが一つ。
後意見してもスルーされてしまっていたてのが一つ。
もう投下され始めたから流される気持ちで書いていこうと思ってる
支援
お互い、信用できる仲間に出会った二人は一旦、そこらにある空家で休むことにした。
「ねぇ、雛。これからどうするつもりなの?」
「うーん、さっぱり分からないわ。なんせ、今の状態じゃねぇ」
「う、やっぱりあんたも私と同じか・・・」
お互いは自分の考えや今後の方針といった情報交換を行う。
「だいたい、私たちには力が足りないと思うのよ。何のための神様なのやら」
「そうそう。こんな厄い状況こそ私の出番だってのにねぇ」
二人とも思ったことは、人々を助けるための力が無いこと。
はっきり言わせてもらうと、神の面目丸つぶれだ。信仰低下間違いなしだろう。
「正直、こんなところで引きこもるだけで悔しいってのに」
「しょうがないわよ。お外は真っ暗だし。もう、全てが厄の塊のようだわ」
「あんたが言うと、洒落にならないよ!」
どれだけ時間が経っただろう。
いつの間にか会話は冗談じみたような軽い内容になっていた。
おそらく二人とも殺し合いにふさわしくない笑顔を浮かべていることだろう。
その時
「あのー?ごめんくださーい」
「「うひゃあああ!?」」
突然、横からの声を聞き、二人は驚いて飛びのいた。
そして、シンクロするかのように声の発生源を見る。
「だ、誰よ、あんた!?」
明らかに知らない顔だ。
しかも、戦闘のことを全く考えていなかった。
更に言うなら、支給品の確認すら行っていない。ていうか、支給品の入った袋は自分たちから離れている。
なんだかヤバイ?そんな状況になってしまった。
(えーっと・・・何が駄目だったのかなぁ?)
もしかして、自分は空気を呼んでいないのかな?
だって相手の気持ちがよく分からないんだもん、すっかり忘れちゃった。
もっとも、それが全て読み取れるのも辛いことなんだけどね。
心を閉ざした妖怪、古明地こいしはそう思った。
『お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます』
あのお医者さんみたいな人は何を考えているんだろう。
まぁ、そんなの、お姉ちゃんにはバレバレだよね。
そう思い、姉である古明地さとりを捜し、見つけた。
でも、お姉ちゃんは何やら困った表情をしていた。
傍から見れば、あのお医者さんの考えに驚いているように思えるかもしれないけど、お姉ちゃんは何故かあのお医者さんと自分の第三の赤い眼を交互に見ていた。
・・・まるで、あのお医者さんの心が読めてないような感じに。
私の予感が的中しているとすれば、お姉ちゃんの身が危ない。
『心が読める事が弱点で、それを補う為に眼を閉じた?
それじゃあ、ただの妹妖怪じゃないの。楽勝ね!』
以前、守屋神社で紅白さんにこう言われた。
今更だが、正直痛いことを突かれたと思う。
自分は長年、第三の眼を閉じていたからかいつの間にか無意識に行動できる術を身につけてしまった。
これのおかげで警備が厳しい妖怪の山を平然と登ったこともある。
でも、お姉ちゃんはどうだろう。
自分と違って眼は開けていても、それで心が読めなきゃそれこそただの姉妖怪。ぶっちゃけ、無能と言ったっていい。
そんなんで大丈夫だろうか。心を閉じているのに、とても心配だった。
心が読めなくなっただなんて、ただの勘違いだと思いたい。そう祈りたいこいしだった。
それに、姉だけじゃない。参加名簿によるとお燐とお空も参加している。この二人(二匹)もどうなんだろう。
二匹のことも想っていたこいし。
ふと、
「・・・そうだ!」
古明地姉妹のペットである火焔猫燐と霊烏路空。この名を挙げて、あることを思いついた。
・・・それが今、こいしが穣子と雛に話しかけた理由でもある。
「な、何のつもりよ!動かないで!」
穣子は突然の訪問者に戸惑っていた。それは雛も同じ。
「動かないでって言われても、こっちも困るんだけど・・・」
ただ話しかけただけなのに、そんなことを言われても困る。こいしはそう思った。
相手は何も持っていないとはいえ、スペルカードによる弾幕攻撃のことがあり、油断できない。
正直、こいしにとっては目の前の穣子と雛が危なく思える。
自分の思っていることがお互いに伝わってくれればこうならないだろうに。そう考えると、心を読むこともいいかもしれない。
とりあえず、自分が思っていることを説明することにした。
だが、
「ねぇねぇ。あなたたちって、神様でしょ?」
まず、こいしは尋ねる。
「・・・そうだけど?」
「神様だからなんだってのよ!?」
二人はそう応えた。
「わぁ、やっぱり!
・・・あ、それでお願いがあるんだけど」
「な、なにが目的よ!」
まだ警戒しているようだが、かまわないでそのまま続ける。
「えーと、何て言えばいいのかなぁ。
あーでもないし、こーでもないし・・・うーん」
(なんなのあの子?急に考え始めて・・・)
(さぁ?でも、襲うような姿勢じゃなさそうだし・・・)
こいしがうーうー悩んでいる時、穣子と雛はこいしを見て戸惑っていた。
どうも敵意がないような雰囲気だ。
もしかして、ゲームには乗ってないのか?そう思い、少し落ち着きを取り戻しつつあった。
「あのね・・・」
雛は口を開いた。なんとなくだが、話し合えば分かり合えそうな気がしたからだ。
「あ、そうそう!」
突如、こいしが雛の呼び声から割り込んだ。何て言うのかを思いついたのだろうか?
「あのね、うちのペットは突然、パワーアップしてたことがあったの」
「「は?」」
パワーアップ?何が言いたいのか。
「それでね、お空が言うには神様を食べたからだって言うんだって!」
・・・今の発言で気圧が下がったような気がする。
「・・・神様を」
「食べる・・・?」
まさか・・・?
二人は、特に穣子は自分の体を見ながら疑問に思った。
「だから私もパワーアップするために、あなたたt・・・」
その瞬間、二人は無意識に
「「このっ・・・ケダモノおぉぉーーーー!!!」」
拳骨をこいしの脳天にぶちこんだ。
「うう〜、あたまが痛い・・・」
「なんていうか、その。ごめんね・・・」
殴られたこいしは泣き顔になりながら頭部を押さえていた。
そして、殴った穣子と雛は気まずい表情で謝っていた。
ようするに、ただの誤解だった。
こいしたちのペットの一匹である霊烏路空はヤタガラスの力を飲み込むことでパワーアップした。
そして、そのヤタガラスの力を与えたのが守屋神社の神様とのこと。
そこで、こいしは閃いた。こういうときこそ、自分も神様から何か力をもらってパワーアップしよう、と。
そして、その力で姉やペットたちを助けたいとのこと。
だから、こいしは偶然見つけた穣子や雛に話しかけたのだ。
実に子供じみた単純な考えだが、その姿勢には好感が持てる。特にこいしと同じく姉がいる穣子にはよく伝わったようだ。
だが、
「ふーん、そういうことかぁ。残念だけど・・・」
「私たちはそんな、誰かに力を与えるようなことなんて出来ないわよ」
二人とも、答えはNOだった。
誰かに力を与えるなんて、元々そんなことなんて出来ない。
その力を与えたという守屋の神々とは違うのだ。
「そっかー、残念」
とはいえ、こいし自身も無理だろうと思っていたのか、落胆するような様子はない。
「・・・で、こいしちゃんだっけ。あなたはこれからどうするの?」
「うーん、みんなを捜したいけど・・・。当てはないし、今は真っ暗で何も分からないからなぁ。
あなたたちはここで休むんでしょ?私も入れていい?」
ジッとするのは性分に合わないが、何せ今は真夜中。視界が悪すぎて捜すのが大変だ。
それに、今まで一人だったのが心底、不安だったというのもある。
「もちろん!仲間は多いほうがいいしね」
一人では大した力は無い。だが、それが何人も集まれば非常に心強い。
三人とも力が欲しかった。ゆえに、これは願ってもない事だろう。
こうして、三人は共に行動することになった。
しかし、少女たちがやらされているのは一人になるまで続ける殺し合いというゲーム。
チームを組んだところで生き残れるのはただ一人。
守りたい人が居ても生き残れるのはただ一人。
それらを解決するには、力を得るだけではどうしようもない。
そんな中・・・少女たちに何が出来るのだろうか。
【C‐4 民家の中・一日目 丑の刻】
【秋穣子】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム
[思考・状況]姉を捜したい。ゲームに反対
【鍵山雛】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム
[思考・状況]ゲームに反対
[備考]集めたはずの厄が無くなっている。能力制限?
【古明地こいし】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム
[思考・状況]姉、お燐、お空を捜したい。神様の力が欲しい。ゲームに反対
[備考]姉の心を読む能力がなくなったのではと思ってます
なんとか終了ーっと。
題名考えるのに一時間くらい時間を食ったような気がするのだが
とりあえず、支援に感謝
連レスって何回までOKなのやら・・・
投下乙です
この神様コンビいいなーロワなのに見ててなごむ
そしてこいしちゃんさっそく誤解w
投下乙!
こういうほのぼのしたムードはなんかいいな。
投下乙
まさかの補食展開ー!?と思ったらのほほんムードになって2度びっくりしたw
これは応援したくなるチーム
すいません。専用したらば欲しいんですが
そっちで予約した方が分かりやすそうだし
藤原妹紅、橙 予約します
現在の予約まとめ。
2/25(水)15:55:09 ◆MajJuRU0cM 霊夢、魔理沙、リグル
2/25(水)21:30:57 ◆27ZYfcW1SM こーりん、ゆかりん
2/26(木)00:16:30 ◆5wsAzI.7vk 藤原妹紅、橙
ほとんど出来た。
でも…なんだがえらく長くなってしまったよ。
実際、序盤から5500字弱ってどうよ? まぁ、まだ推敲してないんで多少変動するけど
内容も結構きわどいとこあるし、リレーしづらい…かも。
予約が急に増え始めましたね。
早速ですが、今度はアリスと衣玖を予約します。
悲しき盲目の信頼を多少修正しました。
行間増やしただけだけど、一応報告
比那名居 天子、十六夜 咲夜を予約します
完成したので投下します。
結局6000字くらいになってしまった…orz
───ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます
鬱蒼と茂る林の中、この遊戯が始まってもう数十分が経とうというのにリグル・ナイトバグの耳からその言葉が離れることはなかった。
突然の強制召集。突然のルール説明。突然の…
リグルは自身に巻かれた首輪にそっと手を触れた。
先程行われた凄惨な光景がフラッシュバックのように脳裏をかすめる。
(この首輪が爆発すれば、私も…)
背中に汗が伝うのを感じる。ぐしょぐしょに濡れて、その感触が気持ち悪かった。寒くもないのに手が震え、暑くもないのに汗が流れ出る。妖怪である彼女は人を襲いこそすれ、襲われた経験など皆無に等しい。
だから、リグルにとってこれは未知の恐怖だった。いつ襲われるか分からない。いや、襲われるかもしれないという考え自体、彼女は生まれて初めて抱いたのだ。
そんなリグルをあざ笑うかのように風が舞い、木々がざわめき、ただそれだけで彼女はびくついた。
(な、何を驚いてるの…。ただの風じゃない)
彼女にとって得体の知れない感情は、時間を増すごとにどんどんエスカレートしていた。
ここで一つ例え話をしよう。
例えば、もしもこの場面を誰かに見られていたら、その人物はどう思うだろうか?
妖怪という存在が恐れなどという極めて人間らしい感情を持っているはずがないと考える人間は、この状況をどう見るだろうか?
あるいは
「何だお前、そんなにおどおどして。泥棒でもしたのか?」
悪事を働いていた。などと考える人間もいるかもしれない。
確かに突然声をかけた。だがそれにしたって驚きすぎだと魔理沙は思った。
こちらを向き、あんぐりと口を開け、声なき声をかすかに発する様は明らかに異常だ。
(ビビってる、ってんじゃまだしもなぁ)
これが妖怪ではなく、人間であったなら魔理沙もまだ合点はいった。だが相手は妖怪。人を襲い、ある時は喰らい、長命で、常に余裕を持て余す妖怪という種族だ。
魔理沙は色々な異変を解決してきた。その際に出会った(もとい、退治した)妖怪は少なくない。その誰もが皆、何かしらの余裕ないしは威厳を持って接してきた。
だから思ってしまう。幻想郷に深く慣れ親しんだ彼女だからこそ、死への恐怖に震える妖怪というものを想像できなかった。
そしてそれ以上に、魔理沙がこの状況をあまり重要視していなかったということが極端に視野を狭くさせていた。
確かに殺し合いは嫌だ。人死にも初めて見た。この首輪だってうっとうしくて仕方がない。だが、この馬鹿げた遊戯を仕込んだのはあの永琳だ。そう、“不老不死”のあの宇宙人。
生死に関しての誤魔化しくらい出来ても不思議じゃない。しかも名簿を見れば何故かその永琳自身も参加しているときた。こんな馬鹿な話はない。本気で殺し合いをさせると考える方がどうかしてる。
そして、この殺し合いが虚言だと思える最大の根拠。それは、“そんなことをする理由がない”だ。
殺し合わせる理由がない。参加者の中には紫や霊夢だっている。二人が死ねば幻想郷は確実に崩壊する。せっかく手に入れた月からの隠れ家を自分で壊す馬鹿などいない。
遊戯内容と会場、袋の性質や最初に連れてこられた方法などを総合的に鑑みて、紫辺りと組んで妙な悪巧みをしてるとしか思えなかった。
それは言ってみれば至極当然の考えで、目先に捉われない冷静な分析の結果。存外に頭が回る魔理沙だからこそ至った結論だ。結局のところ魔理沙は、この遊戯も弾幕ごっこの延長程度にしか考えていなかった。
片やいつも通りの軽い気持ちで異変解決を目指す人間。片や長年生きてきた経験か、この状況の異常を感知し恐れる妖怪。彼女達がすれ違うのはむしろ必然といえた。
そしてそのすれ違いはすぐに始まった。
「おい、お前……うわっと!」
魔理沙は少し近づこうとしただけ。だがそれだけでリグルが攻撃を仕掛けるには十分過ぎる理由があった。それは生物が誰しも持っている、生への執着。
リグルは必死に弾幕を精製し、射出する。だがそれは一向に当たる気配を見せなかった。それも当然。弾幕ごっこなら魔理沙に一日の長がある。
「お前、この御遊戯に乗るつもりだな? だったら容赦しないぜ」
この言は魔理沙にとって、弾幕ごっこを開始する宣言にすぎない。
怪しいと思ったら即叩きのめす。それが彼女のスタイルだ。そして、魔理沙から見たリグルは、まさに怪しすぎた。いきなり攻撃してきた行動も、悪事を働いていたかのように第三者の介入に慌てる様子も。
だがリグルにとっては本気の殺し合いを明言されたのと同じだ。
「い、嫌だ。死ぬのは…嫌だ…!!」
感情が爆発し、美しさの欠片もない弾幕が辺り構わず散りばめられる。
それを軽々と避けながら、リグルの様子に魔理沙も怪訝に思い始めた。しかし生きる為にひたすら必死に弾幕を張り続けるリグルが、そんな魔理沙の些細な心境の変化に気を止められるわけもない。彼女の頭にあるのはどうしたら魔理沙を倒せるか。ただそれだけだ。
(当たらない当たらない当たらない当たらな……!!!)
───武器を、支給させて頂きます
「っ!!」
思い出した。何故忘れていたんだろう。あの女が言っていたではないか。
リグルは弾幕を緩ませることなく、近くに転がってあった袋から中身も見ずに“武器”を取り出した。
「あっ!! あたしの八卦炉!」
「えっ?」
そう。それは確かに魔理沙の愛用する武器、八卦炉だった。
「返せよ! それはあたしのだ!」
リグルに会う前、探せど探せど見つからない八卦炉に若干の苛立ちを感じていた魔理沙にとって願ってもないことだった。
そして、そんな僅かな逸りがリグルに対する怪訝を押しのけ、いらぬことを口走ってしまった。
「って、すんなり返すわけないか。泥棒が簡単に盗んだ物返すわけないもんな。知ってるか? 泥棒相手に物奪っても、それは善行であって悪行じゃないんだぜ。だから…奪って取り戻す!!」
「っ!!!」
そもそもこの袋を用意したのが紫だと考える魔理沙がこのようなことをリグルに言う方がおかしい。言いがかりもいいところだ。これは、ふと出てしまった魔理沙の悪い癖。魔理沙にとって、いわば言葉遊びのつもりだった。
しかし、リグルはそう思わない。リグルにとってここは殺し合いの場。だから、魔理沙の言葉を言葉尻以上に解釈してしまった。お前には恨みがある。だから殺して奪い取ろう。そう、解釈してしまった。
相手はやる気満々。八卦炉の使い方も分からない。弾幕はかわされる。肝心の蟲を操る程度の能力も、何故か使うことができない。
追い詰められたリグルは、ほぼ本能的に動いた。
「あ、逃げた!」
魔理沙に背を向け、全力で走る。いや、正確には全力ではない。何故か体力がいやに消耗しており、最早全力など出せない。それでも懸命に走る。
走って走って走って走って
もうすぐ林を出るだろうというところで、ふと外に人影を見つけた。魔理沙という自分を狙う殺人鬼を後ろに控えるリグルには、この人影に頼る以外現状を打破する方法を持ち合わせてはいなかった。だから林を出て、そこにいる誰かに開口一番こう叫んだ。
「助けて! 殺される!!」
支援支援……と
まったく、何でこう面倒なことになるんだ。
魔理沙は走りながら一人愚痴った。
弾幕ごっこの最中に逃げる奴なんて見たことない。
しかも私の八卦炉も返してもらってない。見失うわけにはいかなかった。
(それにしても鬱陶しい林だな。魔法の森といい勝負だ)
そんなことを思って、ふと疑問を感じた。
(…この会場、結局“どこ”なんだ?)
魔理沙はこの会場も紫が用意した演出の一部だと思っていた。だが、よくよく考えれば妙な話だ。
先程確認した地図は、まるで幻想郷を縮小したかのような所だった。博霊神社もあるし、なにより自分の家が明記されていた。つまり、ただ適当な場所へ移動させただけではなく、それらの建物まで作りだしたということだ。
何の為にそんな手間を? 嘘にせよ、殺し合いをするに至ってそんな手間は必要ない筈だ。
いや、そもそも殺し合いという虚偽を流す理由は何だ?
それがミニ幻想郷を作ることと何か関係してるのか?
悪戯にしてはあまりにも懲りすぎている。考えれば考えるほどおかしな点は湧き出てきた。
殺し合いを否定する要素は山ほどある。だがそれと同じくらい殺し合いを肯定する要素もあることに魔理沙はようやく気づいた。
追いかけるリグルの背中をちらと見つめた。
あの妖怪の挙動不審は異常だった。少なくとも、あの妖怪はこの殺し合いを信じてるってことか? だとしたら……あいつは本気で怯えてたってこと、か?
自身の考えが一辺倒だと周りの考え方が見えなくなる。まさにそれを体験した魔理沙は今更ながら少し後悔した。
「…ちょっと、調子に乗りすぎたかな……」
どんどん離されている現状から考えて、すぐに見失うだろう。
しかし諦める気になれなかった。八卦炉のことも確かにある。だが今はそれ以上に、リグルに対する罪悪感が多少なりとも募っていた。追いかけることが彼女にとって苦痛であるとわかっていながらも、魔理沙は足を止められないでいた。
もう豆粒ほどにしか見えなくなったところで、林を抜けだしたリグルはふと立ち止った。
そのことに対してラッキーだと考えるよりも先に不信感が募った。
(あれだけ怯えてたのに…? いや、やっぱ勘違いだったのか? もしかしたらさっきの応答も全部、紫達が仕込んだ新手の悪戯かもしれない)
次々と立ち止まる理由を考えるが、そのことに結論を出す前に魔理沙はリグルに追いついていた。
林を抜けだし、前にいるリグルに声をかけようとした瞬間
ボンッ
リグルの頭が宙を舞った。
支援
なにッ!支援
「……は?」
我ながら素っ頓狂な声だと思う。だが、それを発せざるを得なかった。この現状を、理解できなかった。
倒れ伏し、血溜りを作る“リグルだった物”を呆然と眺め、そして、ゆっくりと、前を見た。
「お、前……何、してんだよ………?」
そこには、一番いて欲しくない相手がいた。
「あんたこそ、こんな雑魚相手に何やってるの?」
死体には目も暮れず、博霊霊夢は淡々と言い放った。
真っ赤に染まった右手。それを見て、いや見なくとも分かる。リグルを殺したのは、親友である霊夢なのだと。
「質問に答えろよ!! お前、何してんだ!」
「何って……妖怪退治?」
「っ!」
あっけらかんと言い切る霊夢に、魔理沙はとっさに言葉がうまく出てこなかった。
「……お前、永琳の言いなりになる気か!? いつものお前なら、異変解決の為に動くだろ!? どうしたんだよ。一体どうしたんだよ霊夢!!」
先程まで否定していた殺し合い。一番否定したい時に限って、出てくる言葉はそれを肯定する言葉ばかり。そのことがたまらなく腹が立った。
「…永琳ねぇ」
意味ありげにそう呟き、霊夢は笑った。その顔は今まで見たこともない笑顔で、どうしようもなく背筋が寒くなった。
「確かにいつもの私なら、そうでしょうね。でも、今回は“いつも”じゃないの。今回は」
気づいた時には既に霊夢は目の前に陣取り
「“特別”なの」
魔理沙の華奢な首を掴みそのまま一気に地面へと叩きつけた。
「うぐっ! ……が…あ……」
すぐに引き離そうと試みるが、霊夢の腕はビクともしない。
(こいつ……こんなに…力強かったのか……)
締め上げられる首。
息がし辛い。
苦しい。
死への恐怖が魔理沙を除々に包み込んでいく。
「魔理沙。あんたは何も分かってないのよ。なぁ〜んにも」
「…れ……いむ」
「私達はね。殺し合いに乗るしかないの。それ以外に生きる道なんてないの」
魔理沙は霊夢の瞳を見た。その瞳は何色でもなかった。濁っているわけでもなく、澄んでいるわけでもない。その瞳には、何の影も映していなかった。
「…私はあの場所で確信した。これは仕組みなんだって。幻想郷が、この世界が、殺し合いを求めているの。私の言ってること分かる?」
霊夢はそう言い、魔理沙に顔を近づけた。
「ねぇ、分かる?」
見開いた瞳がたまらなく怖い。いつも一緒にいた筈の人間が、たまらなく怖い。そんな気持ちを奮起させるためにも、魔理沙は途切れ途切れに反論した。
「……わかん…ねぇ……よ」
鼻と鼻とがくっつくかと思われる程の距離。魔理沙の吐息を感じ取り、霊夢は薄く笑った。
「…ねぇ魔理沙。あんたは殺さないであげる。私、あんたとなら別にいいのよ」
魔理沙も霊夢の吐息が感じられた。だがそれは無償に気持ち悪くて、吸い込む度に吐き気がした。
「組まないかって言ってるの。私と一緒に、邪魔者を殺すの。あんたとならきっとうまくやっていける。ねぇ、そうしない? そっちの方があんたにとっても都合が良いでしょ?」
魔理沙は最早、霊夢の腕を払い退けることを諦めていた。それぐらい力の差がある。だが、だからといって何もしないわけにはいかない。魔理沙だってリグルと同じだ。
(あたしだって、死にたくないんだ…!)
必死になって手を伸ばす。その先は、リグルの持っていた袋。
「魔理沙。あんただって馬鹿じゃない。この状況を分かりなさいよ。分かろうとしなさい。そしたらきっと見えてくる。この殺し合いの裏に“誰が”いるかを」
「………じゃ……ない」
「は?」
「…お前は……霊夢じゃ……ない」
「……じゃあ、私は誰かしら?」
魔理沙は、目当ての物を探り当てた。
「………人でなしの、クソ野郎だ!!!」
熱と光の塊が霊夢を包みこんだ。
全力で逃げながら、ようやく理解した。
これは、遊戯なんかじゃない。これは、憎悪と悲哀を生むだけの、ただの殺し合いだ。
こんなものに意味なんてない。世界が求める姿なわけがない。
「ごめん、リグル。ホントに…ごめん……」
魔理沙は頬を伝う涙を無視して全力で走る。
目的地があるわけでもなく、ただ走る。だがその胸には確かに“目的”が刻みつけられていた。
霊夢を止める。何が何でも全力で。そして、この腐りきった殺し合いを絶対に潰す。
しかし魔理沙にできることは少ない。首輪をどうにかする手段も思いつかないし、なにより霊夢に勝てる気がしない。それらを成し得る方法は只一つ。
「仲間を。信頼できる仲間を探す。まずはそれ」
できれば、紫や幽々子、にとり辺りが望ましい。
彼女達に会い、殺し合いを破綻させ、絶対に生き残る。それがリグルにしてやれる唯一のことだと信じ、少女はただ走る。
【C-6 1日目・子の刻】
【霧雨 魔理沙】
[状態]多少の疲労
[装備]ミニ八卦炉
[道具]支給品 ランダムアイテム1〜3個
[思考・状況]基本方針;この殺し合いをぶっ潰す!
1. まずは仲間探し…
2. 霊夢を止める
3. リグルに対する罪悪感
※殺し合いが本当であると理解しました
※主催者が永琳でない可能性も考慮し始めてます
※逃げる際に帽子を落しました。
しえん
支援だ
「…逃げたか」
霊夢は特に惜しむでもなく、ただそう呟いた。
恋符・マスタースパーク
魔理沙が最後に放った魔法。あれは、咄嗟に避けた霊夢に掠りすらせず、夜空へと消えていった。その隙に生じて魔理沙は逃げだしたわけだ。
しかし、そもそも霊夢には魔理沙が何か仕出かそうとしていることに気づいていた。なのに結局何の対処もせず、逃げるままに逃がした。ただの気まぐれか、興が逸れただけなのか、それとも…。
この行動がどういう意味を持つのか。それは誰にもわからない。
魔理沙が落としていった帽子を拾い上げ、呟いた。
「…さて、楽しい楽しい御遊戯の時間よ。勝つ為でもない、美しくある為でもない、ルールがあるわけでもない。生き残る為の、ただそれだけの遊戯の時間」
そうして鬼よりも鬼らしい人間は歩きだす。ただ生き残る為に。
【D-6 一日目・子の刻】
【博霊 霊夢】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品×2 ランダムアイテム1〜3個(使える武器はないようです) リグルのランダムアイテム1〜2個(まだ確認していません) 魔理沙の帽子
[思考・状況]基本方針;殺し合いに乗り、優勝する
1. できるだけ手間をかけず、迅速に敵を排除する
※ZUNの存在に感づいています。
※リグルの支給品は霊夢が回収しました
備考
※D-6にリグルの死体が放置されています。
【リグル・ナイトバグ 死亡】
遊戯は始まったばかり。
これは序章にすぎず、まだまだEasyな第1ステージ……。
では皆様。更なる狂気、Lunaticを堪能する為に、次のページを御捲り下さいませ。
追加支援
投下終了です。
……リグル。すまん
何かすっげぇ長くなってしまったけどよかった…のか?
投下乙です
……リグルご愁傷様。
霊夢はマーダーとなったか。少し予想外。
これからの展開に期待します
投下乙
バカルテットが順調に消えていく……
投下乙です。
マーダー霊夢の今後に激しく期待w
長さはこれくらいなら問題無いと思いますよ。
腋巫女やべぇーーーーーー
>>68 常に襲われてるイメージしかないけどな、リグルw
乙ー
この長さでも問題ないかと
しかし霊夢がマーダーとは予想外
感想ありがとうございます。以外と酷評は少ないみたいで、ちょっと安心しました。
さっそくですがレミリア、キスメ予約
それと、素人ながらしたらば作ってみました。
鳥出しといた方が何かと都合が良いかと思って敢えて晒しときます
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12456/ 問題あるようなら言って下さい。…良い背景見つかんねぇよ……
現在の予約まとめ。
2/25(水)21:30:57 ◆27ZYfcW1SM こーりん、ゆかりん
2/26(木)00:16:30 ◆5wsAzI.7vk 藤原妹紅、橙
2/26(木)07:39:15 ◆30RBj585Is アリス、衣玖
2/26(木)16:29:35 ◆TEF4Xfcvis 天子、咲夜さん
2/27(金)02:29:03 ◆MajJuRU0cM レミリア、キスメ
>>88 乙
わざわざまとめんの大変そうだったんで、したらばに予約スレ作ってみたぜ。
というわけで、次から予約する人はそちらをどうぞ。
,. -- 、
/ ()
_,./-──-- 、..,,_ ,. '"`ヽ.
,. :''"´:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ヽ、 () __l__ 、、
/:.:.:.:.:.:;: '-‐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:'-.:、:.:.:.':., ,.!-/、
/:.:.:.:.:.:/:.:.:./:.:.:./::.:.:.!:.:.:.:.:!:.:.:.:〉ヽ,.:.:':, (_,X _ノ
,':.:.:.:.:./:.:.:.:.:./!__/」,:ィ./i:.:.:.:/!、_;:'i:.:.:.';:.:.:i
!:.:.:.:.:;':.:.:.:.:.;'´レ'__」__/ !:.:/ |_/_`!:.:.:.i:.:.:! あ゛ 少
!:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.i,'ァ'´ , -.、` !/ '´,.-、ヽ.!:.;ハ/ -、 女
';:.:.:.:.:!:.:.:.:.:| ! i. l l i i l.l | i/:.i __,,.ノ 追
':;.:.:.:.'.;.:.:.:.:!ゝひー-' ....:::... `ーJノ !:.:.! __ノ 悼
(,__ ';.:.:.:.:ヽ、_;ゝ'"'" ,. - 、.,_,,..、 "'"ハ:.:! 中
` ー !:.:.:.:.:.:.:.:ト.、, l.,________ノ ,.イ:.:.レ' あ゛ ・
レ^ヽ!:.:.:.';.:.:i`ニ=r -r.ァ'"´i:.:!ン ぁ゛ ・
ノへ:.:i;:イ::::::::ヽr-イ^ヽ,.イ .・ ・
/´ ,ヽ_,.::、::/ム:::/ヽ._,,.、
,:' _/´/ /‐;!シ /´/ /'、
ぁ゛ /, :'''"i7´〉 ー-_r' io ,'、 ー-/、
ノ i i、_ __,.つ ! !、 `つ_ノ
あ゛ ,.:'"/::::::ヽ、.,__ゝ二ン io ヽ二ニンヽ.
/:.:.:.:!::::::::::::::;K ! ,.!:::::::::::::ハ
i:.:.:.:.:';::::::::::;:'::::`''ァ'ー-'-r-┼''"::::ハ::::::::/:.:.!
ちょww
霊夢のキャラいきなり変わってるしw
これじゃあ霊夢じゃなくて鬼巫女だ
今更だが『ベツレヘムの月』を見ててちょいと思ったことが。
満月なのにけーねは人間のままってことは、ロワ中ずっと人間ってこと?
別にいいんだけど、なんだかなぁ…
あと魔法の森の瘴気についてだが、ただでさえ弱い人間キャラが入りづらいってのも…
無駄に書き辛くなるだけじゃないかと思うわけだ。
迷いの森とかも完全にてゐの独壇場だし、そういうフィールドの特性はなくした方がいいんじゃないか?
そうですかね?
戦闘において地の利や環境を利用することも大事だと思いますよ。
例えば、
慧音や早苗を魔法の森におびき寄せて弱らせたところを狙う
レミリアやフランが日中に外に出られないのを利用して追い詰める
敵を紅魔館におびき寄せてスナイプする咲夜
・・・など
殺し合いはパワーだけでなくブレインだって重要な要素があります。
そういった意味でフィールド特性とかは別に問題ないと自分は思います。
まぁ、あまりにも自分のテリトリーに閉じこもるような輩には天罰を食らいますよ。主に禁止エリア的な意味で
>>92 そもそも魔法の森には『妖怪すら近寄ろうとしない』という設定があるから
殆どのキャラは、魔法の森一帯をないものとして扱うと思うよ
特別な理由がない限り、足を踏み入れることはないんじゃないかな
けーねの特性である変身が見れないのがもったいなすぎるってのがあれなわけだよ
夜だはハクタクでいいんじゃないか?
私もそっちがいいと思うね。生かせる特性は生かすべきだよ
読み直しが終わり次第投下します。
>>93 むむ。確かにその通りだ。むしろそういう設定があった方が戦略を練りやすいわけか
少し考え足らずだったな。すまん
>>95 支援は任せろ!
では投下します。ちょっと思うところがあるので投下後意見を聞こうと思います。
題名は【強化プラスチックの悪魔】で
木の根が今にも飲み込まんとしようとしている苔が生えかけた石の上に腰掛けた。
「はぁ……面倒な」
愚痴ならいくらでも吐くことが出来る。しかし、愚痴を聞く相手もいないし、何より、言った所で何かが変わるわけでもない。
だから、一言だけ声に出して言う。
「なんで僕まで……」
そういいながら頭を2,3回掻いた。
森近霖之助
このゲームの只一人の男性がここにいた。
彼は遊戯に呼ばれたものの中では特別に異色を放つ人物だろう。なぜなら、紅い霧異変、遅れる春異変、永夜ノ異変、花ノ、山ノ、地底ノ……すべてに関して中立もとい、誰も異変の関係者と接触していない。
すべての関係者の中心である博麗の巫女、博麗霊夢と、おまけの霧雨魔理沙はしょっちゅう会うが、町の酒店のほうが僕よりよっぽど会っているだろう。三度のガラクタより一杯の酒だ。一杯じゃなくて一樽かな?
関係者じゃないとすれば、幻想郷の強さかと考える。
八雲紫に風見幽香などなど、幻想郷の強い妖怪、人間を上から順に取っていけばこの集団になるのでは?
だとしたら買いかぶりすぎだ。弾幕もスペルカードも所持していない只の半妖の僕だ。人里で剣道に精通している人間のほうがよっぽど強い。もっとも、自分のことを考える前に稗田阿求が参加している時点でこの仮説は否定されていたのだが……
支援
……そういえば、異変に巻き込まれるのは初めてかな?
ある意味では吸血鬼の異変とかで巻き込まれはしたが、異常気象と同じようなものだった。こんなんで巻き込まれた! とでも騒いでいたら、毎回解決に動いている巫女に鼻で笑われてしまう。
だが、今回は正真正銘巻き込まれていると断言できよう。
なぜなら……
「何かしようとするなら……殺しますわ」
なにやらちょっと変な丁寧語で話す女の子が、僕の後ろからごつっとした金属棒を向けているのだから。
僕は声も出さなかった。
殺される! とも震えもしなかった。
殺気が後ろから流れてくるが、僕の取った行動は只一つ。
一回のため息をつくことだけだった。
その態度が女の子にとって不満だったのだろう。少し、声を荒げて言った。
「聞こえてるの?」
「聞こえてるさ。で、僕をどうするのかな?」
「それは私が決めますわ」
「そうか、出来れば早くしてもらいたいものだね」
後ろからカチンって音がした。たぶん二回なったと思う。比喩と本当の音が1回づつ。
「こっちを向きなさい」
「動いていいのかい?」
「いいわよ」
何を怒っているのだろう? そんなことを頭の端っこで考えつつ振り向いた。首だけで。
「ああ、君だったのか」
「……私だったら態度でも変えるのかしら?」
「そんなことするわけないだろう」
居たのは隙間妖怪八雲紫。にこやかに笑いつつ、その笑顔には青筋が入っている。
知ったことではない。
さて、状況は芳しくないな。なにせ僕はこの紫が苦手なのだ。
以前、ストーブの燃料をもらったことがあったが、そのとき突然現れるわ、いつの間にか燃料を入れているわ……行動が奇妙奇天烈だった。里で大道芸でもやったら儲かりそうだ。内容は想像は出来ないが。
その紫は僕を殺そうとしているのか銃を持っている。種子島式火縄銃とは比べることも出来ないくらい精巧なつくりで、重量感と圧倒的な破壊力を持ってそうな銃だ。
種子島ですらこの距離では僕は死んでしまうだろうに、あんな銃で撃たれれば弱い妖怪なら一撃で死んでしまうだろう。もちろん僕も死んでしまうことも言っておく。
ここにきてやっと死に直面したと言えよう。下腹部がスーと高いところから落ちたように感覚が麻痺した。
「それで、僕に何か用があるのかい?」
「ええ、もちろんよ。殺し合いのゲームなんですもの。他者を殺してこそゲームの真髄ですわ」
「つまり、僕を殺すと」
「そういうことになりますわ」
「冗談じゃない」
「フフフ……どうするの?」
「足掻かせてもらうよ。君くらいの妖怪だったら抵抗するのも愚かなのかもしれないけどね」
「では、もし逃げられたらどうするつもり?」
「さぁ、どうだろう? 誰かが異変を解決するまで逃げ回るかな」
「そう……なら……」
ドカン! ――
支援
「冗談よ」
「そのようだね」
花畑の方向から小さな爆音が聞こえてきた。
そんなことはさておき、紫は銃をおろした。一言ああ、疲れる。とつぶやいて。
「逃げ回るくらいなら私についてきなさい。悪くはしないわ」
「具体的にはどんな待遇だい?」
「……細かいわね」
「商人だから当然さ」
「まぁいいわ。そうね……
戦闘になったら私が戦うわ。
この銃をあげるわ。
貴方は私の力になりなさい。
私の言うことを信じなさい。
――で、どうかしら?」
「だめだ」
僕の一言に紫はきょとんとした。そして堰を切ったように「何で?」といった。
しえん
支援だ!
「『この異変が解決するまで』これを条件に入れないと」
紫はああ、なるほどといった感じで手を叩いた。
この条件を入れないと異変が終った後も僕は紫の下僕になってしまう。
「分かったわ。解決するまで絶対よ」
「よし、その提案を呑もうじゃないか」
こうして僕に紫という大妖怪がついた。いいのか悪いのか……
「約束どおり、この銃をあげるわ」
「上手に使えるかは分からないけどね」
「貴方の能力は未知のアイテムの名称と用途がわかる程度の能力でしょ?」
「確かにね。だけど今は見ただけでは分からないんだ」
そのとおり、銃とは知っていても、なんて名前か分からない。ぼんやりと薄い膜がかかったようだ。
「集中すれば少しは見れるかもしれない。やってみるよ」
膜を破くように目をつぶって銃の存在を感じる。
「っ……はぁ……まるで100個のアイテムを見たみたいだ」
「それで分かったの? 私だって流石に銃だとくわしい知識はないわ」
取扱説明書というのも銃と一緒にもらったが、弾の入れ方とか発射方法とかしか書いてはいなかった。
どういう風に弾が飛び、どういう状況で有効的に使えるのかまで知る必要があるというのに……
しかし、僕の体力を消費して鑑定した結果。それらに繋がる知識を得ることが出来た。
しえん
「銃本体の正式名称はフランキ SPAS12、散弾を発射する程度の機能がみたいだ。
そして、この弾にも種類があるみたいで、支給されたのはバードショットとバックショットの2種みたいだ。
バードショットは小型の動物を狩る能力があるみたいだね。そしてバックショットは中型の動物や対人用に使われるみたいだ」
「なるほど……銃の扱いは貴方に一任するわ。弾の種類は貴方が決めていいわよ」
「そうさせてもらうさ……ところで紫」
「何? ……」
「この首輪……おかしいよ。僕の能力が通用しないんだ」
「解析は出来ないって事ね……だめね、使えないわこいつ」
そういいながら紫は僕の肩をとんとんと叩いた。
何かあるって事か……紫……
「もういいわ。行きましょう。こんな雨ざらしな場所では落ち着いて眠ることも出来ないわ」
「そうだね」
僕はバードショットとバックショットを交互につめた銃を持って立ち上がった。
「そういえば、君は殺し合いに乗っているのかい?」
「はぁ? なんで? 私が愛する幻想郷でこんなことをして……死ぬのは只一人、アイツだけで十分です」
「アイツ? 八意永琳かい?」
「フフ……フフフフフフ……」
紫は僕の問いに黒い笑いで返した。
支援
支援ー
【A‐7 一本の木のそば・一日目 丑の刻】
【森近霖之助】
[状態]ちょっとした疲れ
[装備]SPAS12 装弾数(7/7)バードショット・バックショットの順に交互に入れてある
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)、バードショット(8発)、バックショット(9発)
[思考・状況]契約どおり、紫についていく
【八雲紫】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(0〜2)武器は無かったと思われる
[思考・状況]主催者をスキマ送りにする
[備考]主催者に何かを感じているようです。
投下完了です。途中退席してすみません。もやしが……
銃を出しすぎているな……そろそろ自重しなければ……
各自の能力ですが、テンプレートでは使ったら体力を消費するとありましたがこんなものでいいのでしょか?
投下乙!
やっぱ紫はこれくらい余裕ないとなw
俺の見たところ特に問題はないと思うよ。
感想も待たずに出すのはあれなんですが
失礼を承知で今から投下したいと思います。
…書きたい奴いっぱいいて取られるんじゃないかと気が気でないんだ……
いきなり妙な場所に飛ばされ、レミリア・スカーレットは多少の憤りを感じていた。
こんなところにいたんじゃ紅茶も飲めないし、ケーキも食べれない。おまけに日光を防ぐ日傘もなし。毎日の娯楽と昼に歩きまわる術を奪われて、レミリアが何も思わないわけがなかった。
「…殺し合い、ねぇ」
はっきり言って趣味じゃない。それにあの宇宙人の思い通りに事を運ぶのも癪に障る。
(乗らない、というのが一番なんだろうけど…)
ふと考えるのは咲夜や霊夢のことだ。
(パチェやフランは特に心配はないでしょうけど、なんたって人間だからねぇ)
死なせたくない、という気持ちがレミリアにはあった。死なれるより生きててもらった方が都合が良いし、話相手が減るのも何だか嫌だ。
この遊戯に乗る危険性は誰にでもある。もしあの二人を確実に生かそうと考えるのなら出会った奴らを片っ端から殺していくのもありといえばありだ。
(さて、どうしたものか…)
その時、レミリアは自身に支給品が配られていたことを思い出した。
「…ま、たいして興味はないけれど」
一応調べておくか。
そう思い、袋から取り出したもの。
それはあの会場でデモンストレーションされた物、魔力もなしに相当の威力を発揮する黒光りした拳銃だった。
「…………」
拳銃が支給された。言ってみればただそれだけのこと。だが、そんな些細なことがこの幼き吸血鬼のプライドに傷をつけた。
「…吸血鬼であるこのレミリア・スカーレットが、こんな物なしでは生きられないとでも言いたいわけね」
メキメキと音をたてて拳銃はひしゃげ、瞬く間に粉々に砕け散った。
「いいわ、宇宙人。そのふざけた面を二眼と見れないように変えてやる。不老不死というのなら極上の苦しみを味あわせてやる。この私を侮辱することがどういうことか、はっきりと教えてやる」
レミリアは立ち上がり、暗闇を歩く。
支給品がランダムに配られているということを知らず。
本当の主催者が八意永琳ではないということを知らず。
八意永琳が何も知らずこの遊戯に参加していることも知らず。
ただ、その幼き体に宿したプライドに従い、夜の女王はただ道を往く……ところで、ふと何か気配を感じた。
「…おい、隠れてないで出てきたらどうだ?」
レミリアの言に従い、少女が確かに出てきた。……茂みに体を隠し、顔だけをひょこっと覗かせて。
「…それは喧嘩を売ってるとみなしていいのかしら?」
少女はぶんぶんと首を振る。かわいらしいツインテールが顔を動かす度に弧を描いた。
「じゃあさっさと出てきなさい。失礼でしょ」
少女はしばらく、う〜と唸って、またぶんぶんと首を振った。
さすがのレミリアも、機嫌を損ねる前にため息をついてしまった。
「変な妖怪ね。……私はレミリア・スカーレット。誇り高き吸血鬼よ。あなたも名前くらい名乗れるでしょ?」
そう言われ、しばらく黙っていたものの
「……キスメ」
それだけ答えた。
「あ〜、何? つまりあなたは、この会場に来てからずっとそこに隠れていたわけ?」
こくりとキスメは頷いた。
「その理由が、誰かに自分の体を見られるのが恥ずかしかったから。そうなのね?」
キスメはまたも、こくりと頷いた。
レミリアは再度溜息をついた。
こんな内気な妖怪は初めて見た。このままここにいてもどうせ誰かに殺されるのがおちだろうに、おそらくそんなことも分からないのだろう。
このまま放っておく方がレミリアにとっては都合が良かった。連れて行ったところで足手まといにしかならないし、何よりそんなことをする理由がない。
「…とにかくそこを出なさい。あんたの言ってた…桶だっけ? 一緒に探してあげるから」
しかし、レミリアは吸血鬼。いつも我儘放題とはいえ、基本は紳士的な種族なのだ。
その言葉でキスメの顔に、ぱあっと明るい笑顔が咲き、こくこくと何度も頷いた。
(上下左右にと、よくも大仰に顔を動かすものね)
おどおどと茂みから出てくるキスメを見つめながらレミリアは思った。
「ほら、じゃあ行くわよ」
「……おんぶ」
「はぁ?」
「…おんぶ」
「…………」
結局、おんぶすることになった。
(何で私がこんなことを…)
三度目の溜息をついて、それでもなおキスメを放りださないのは、一度言ったことを蔑ろにするのは吸血鬼のプライドに反すると思ったからだ。
ザアアァァ
木の葉が風で擦れ、爽やかな音色が辺りを包んだ。
「あら、いい風ね。……って、痛たたたた!!!」
だがキスメはいい風だと感じず、むしろ誰か怖い人が現れたのではないかと思ったのだろう。無意識的にレミリアを頼ろうとして、髪を思いっきり引っ張ったのだ。
「イタ、痛いって! 風! ただの風だから!!」
それを聞いて、ようやくキスメはレミリアの髪を離した。
(こ、こいつ……! 本気で放っぽり出してやろうか…!!)
ヒクヒクと頬を歪ませるレミリアにまったく気づかないキスメは、安心したとでも言うかのようにレミリアに覆いかぶさった。
「っとと。…あんまり引っ付かないで。歩きにくいから」
「…ごめんなさい。レミお姉ちゃん」
「……レミお姉ちゃんって?」
「? レミお姉ちゃんはレミお姉ちゃん」
「……まぁ、いいけど」
姉。その言葉を聞いて、自身の妹であるフランドール・スカーレットを思い出した。狂気に歪んだ妹。495年間、ずっと閉じ込めていた妹。…彼女を、こんなふうにおぶってやったことなどあっただろうか?
(…私らしくないわね)
いらぬ妄想を振り払い、レミリアは小さな幼子を背負ってせっせと歩いた。
その様は、端から見れば姉妹のように映ったかもしれない。
「…あとキスメ。いくら失礼なことをしたといっても、あんまり簡単に謝っちゃ駄目よ。妖怪は威厳をもたないといけないの」
「いげん?」
「えっと……まぁ、堂々としてろってことよ。どんな時でも、何があってもね」
「…うん、わかった! いげんする!」
「……言葉の使い方が違うわよ」
【B-3 一日目・子の刻】
【レミリア・スカーレット】
[状態]健康 多少の気疲れ
[装備]なし
[道具]支給品
[思考・状況]基本方針;永琳を痛めつける
1. 何してんだろ、私…
2. 永琳の言いなりになる気はない。
3. とりあえず…紅魔館にでも行こうかな
4. フランを探して隔離する
5. 上記の行動の妨げにならない程度に桶を探す
※名簿を確認していません
【キスメ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品 ランダムアイテム1〜3個(確認していません)
[思考・状況]基本方針;桶を探す
1. レミお姉ちゃんに付いて行く
2. レミお姉ちゃんみたいにいげんする
3. レミお姉ちゃんはおんぶしてくれるから好き
※殺し合いが行われていることを理解していません
終了です
かぶるような形になって申し訳ありません
やばい、キスメに萌えてしまった
レミリアのお姉ちゃんっぷりもナイス
そして、ゆかりんはゆかりんですねぇ
幻想郷一頼れる対主催派になれそうです
アリスと衣玖さんの話ですが、午前中に後悔できると思います
ただ今、推敲中・・・
紫がいかにもそれっぽいうさん臭さと頼りがいのあるキャラだな
なんかいい感じ
レミお姉ちゃんw
キスメ萌え
やっぱ吸血鬼としての驚異的な身体能力はそのままなんだな
それともそれもあまり多用すると体力がどんどん落ちるのかな?
いろいろあって遅くなってしまった。
それでは投下します。
タイトルは「ブレインエイジア」です。
あの日、私はいつものように人形作りに専念していた。
そのはずが、殺し合いというわけの分からないゲームに巻き込まれていた。
殺し合えだって?冗談じゃない。
私はまだ死ぬわけにはいかないのに。あの女が作ったという蓬莱の薬を求めているくらいなのに。
「何かいい手立ては無いのかしら・・・。私の人形も無いし」
あの女、八意永琳は最後の一人になるまで殺し合いをしろと言った。戦い続けて最後まで生き残れということか?
しかし、相手となる参加者には吸血鬼、鬼、天狗、蓬莱人といった一対一でも厳しい相手が非常に多い。
しかも、自分の武器となる人形は手持ちに無い。支給品とやらにも入っていなかった。
これでは人形使いとしての戦いが出来ない。今の自分は普通の魔法使いと言ってもよく、生き残るのはまず無理といってもいい。
そんな自分に与えられた唯一の武器は・・・闇夜を切り裂くような輝きを放つ銀色の光。
これで、今の自分に何が出来るのか・・・。
弾幕はブレインこと、アリス・マーガトロイドは動き出す。
そういえば、ここは紅魔館近くに位置する霧の湖だろうか。もっとも、今の自分の位置は湖の南側らしく、紅魔館とは離れているのだが。
紅魔館を拠点に出来れば何かと有利になれるだろう。それに、自分は体力に自身があるとは言えないし、そろそろ休みたい。
だが、紅魔館は吸血鬼の住処だ。あそこでそいつらと戦うことになれば、地の利は向こうにある。それを利用されると勝てる見込みはほとんどないだろう。
それに、今は真夜中。その吸血鬼が猛威を奮う時間でもあり、そのためか、闇にそびえ立つ紅魔館は何だか近づきたくない。
別に今、そこにいく必要はないだろう。だから、今は近くにありそうな民家で休もうと思った。
その時
ガサガサッ
「!・・・誰なのよ」
一瞬驚いたが、それを表に出したら負けだ。冷静な口調で音源を威嚇する。
すると、その音源は意外にもすぐに姿を現した。
「あ、驚かせてすみませんでした。私は竜宮の遣い、永江衣玖といいます」
「・・・知ってるわよ。あの地震の時以来ね」
こいつとは戦ったことがある。なかなか手強い印象をもった。
「それで何?やる気なの?」
アリスはすぐに身構えた。戦って勝てない相手ではないだろうが、今の自分は参加者の中では弱い部類だ。手は抜けない。
それに・・・
衣玖が手にしているモノが気になった。
あれは銃だろうか?支給品として配られた拳銃とやらのようなイメージがある。もっとも、それよりも大きくて強そうなものなのだが。
アリスは警戒心を強めた。かつ、それでも相手の隙をうかがい、奇襲のタイミングを図っている。
そのつもりだった。それなのに、目の前の衣玖がとった行動は
「・・・ひょっとして、これが気になってますか?」
衣玖はひょいと手にしていた銃を見せた。
銃の動きにアリスは警戒する。
だが、その銃口はアリスではなく明後日の方向に向いていた。
一瞬、何を考えてるんだと思った。自分が攻撃されることを考えていないのか?それとも、何か裏が・・・?
「当たり前よ。なんだか、とっても危険そうだし」
それでも警戒は緩めない。銃口なんていつでもこっちに向けられる。少なくとも、自分が攻撃を仕掛けるよりも速いだろう。
そう考えていた。・・・はずだったが
「私は貴方と話したいことがあったので近づいたのですが・・・
こんな態度ではよくありませんね」
全くもってその通り。
だが、それはある意味当然の行動ともいえる。自分でもそうする。誰だってそうするだろう。
無防備に敵か味方か分からない相手に近づくなんて愚の骨頂だ。
・・・と思っていたのだが
「・・・先ほどの無礼、申し訳ありませんでした。これなら文句は無いでしょう?」
衣玖はなんと、持っていた銃をスキマ袋に片付けてしまった。
思いもせぬ行動に、アリスは違う意味で驚いてしまう。もっとも、それも表に出すようなことはしない。あくまでも平常を保つ。
「もしかして、あなたは・・・?」
「私はただ、貴方と話し合いたいと思っているだけですよ」
永江衣玖は、少なくともアリスが出会った人物の中では最も誰に対しても礼儀正しいという印象があった。
それだけでなく、他の人達も彼女に対する評価は似たようなものだった。
「私はこのくだらないゲームに従うつもりはありません。
殺し合いなんて、何の得にもなりませんからね」
おそらく、今言っていることは彼女のまぎれもない本心だ。
何て言えばいいか分からないが、彼女は嘘をつけるような性格ではないような気がする。
「・・・じゃあ、どうすればいいっていうの?」
なんとなく興味がわいた。殺し合いをせずに生き延びる方法があるというのだろうか。
「それは分かりません」
・・・話にならなかった。
殺し合いをしたくないと言った理由がこれなのか?ただの綺麗事ではないか。
馬鹿馬鹿しい。こんな奴の話に付き合っても意味が無い。
そう思った時
「ですが、私達と同じ考えの方々は居ると思いますよ。
そういった方々は戦うことなく同盟を結んでいると思います。
もうすでに、一つや二つは出来ているのではないでしょうか?」
何故だろう、無意識に反応してしまった。
「本気でそう思ってるの?」
確かにありえなくはない。
だが、そんなことをしても生き残れるのは一人だけ。仲間を組んでもその場しのぎにしかならない。
仮にそのチーム以外が全滅したらそのチームはどうなるのか、結末は想像するまでもないだろう。
衣玖はそのことを考えているのか?
そう思い、彼女の返答を待つ。
「思ってますよ。それに、貴方も薄々、そう感じているのでは?」
「まぁ、ね。でも・・・」
確かにそうだ。でも、自分が聞きたいのはそんなんじゃない。
「仲間を作ったところで、生き残るのは一人なのよ?その点はどう考えてるっていうのよ」
「・・・貴方は質問の仕方が間違っています。
私は仲間を組んで殺し合うと言った覚えはありません。
私はただ、私達と同じ考えを持つ方々がいるということを言いたかっただけです。
まぁ、あえて貴方が聞きたいことを私なりに解釈してそれを答えるとするならば、私の答えは・・・」
「もういいわ。大体想像がつくから」
アリスは衣玖の返答を、待ったをかけるように手で遮った。その態度は普段のように素っ気無く、諦めかけているような感じだ。
「・・・そうですか」
衣玖はなんだか申し訳なさそうな感じで会話をやめた。
だが、その表情は安堵が混じっていた。おそらく、自分と同じ考えの者と会えたからなのだろう。
「じゃあ、もう話すことは無いわね。これからどうするの?」
アリスは地面に置いていたスキマ袋を持ち上げると、今後の方針を尋ねた。
「私としては、もっと仲間を増やしたいと考えていますね。出来れば、すでにチームを作っているところが好ましいですが・・・」
「それもそうね。じゃ、行きましょ」
アリスは衣玖に駆け寄るように近づいた。ずっと身構えるように立ったままだったためか、その足取りはやや不安定だ。
「ええ。では、これからよろしくお願いします。
ええと、済みませんが、お名前は・・・」
「アリス・マーガトロイドよ。よろしく」
「分かりました。それではアリスさん、出発しましょう」
衣玖はアリスににこやかな笑顔をつくる。
その後、くるっと背を向け、進行方向へと歩き出した。
その後ろ姿をアリスはやれやれというような足取りで見守るように、前にいる衣玖と共に歩き出した。
・・・その瞬間、銀色の閃光が
ドカッ
───衣玖の喉を貫いた。
突然、喉が焼けるような痛みを感じた。
「な・・・が・・・?」
自分に何が起こったのか?衣玖は痛みの発生源を見ようとする。
だが、今度は全身の力が抜けるような感覚に襲われ思わず膝を付く。
その後
ザクッ
首から鮮血がほとばしる。
しかし、衣玖はその一部始終を感じることの叶わぬまま、意識を手放し前のめりに倒れた。
・・・ポタッ、ポタッ
血の雫を落とす銀のナイフ。
それを手にしているのは、衣玖の後ろに立っていたアリスだった。
「いきなり後ろから襲って、ごめんなさいね」
しかし、その声には罪悪感の欠片もなかった。
まるで下賎な者共を見下すような目で、もう動くことのない衣玖を見下ろしていた。
「でも、最初からあなたと付いていく気は無かったから。悪く思わないことね」
衣玖を葬ったナイフを手にしながらアリスはつぶやいた。
まずは喉に目掛けて一刺し、そして頚動脈を切り裂く追撃。これらに対する返り血を浴びないように背後から襲った。
案の定、服には返り血は無い。余った左手で顔や髪をなでるが、それでも血が付いた様子も無い。どうやら奇襲は成功したようだ。
もちろんナイフを持った右手には血が付いているが、それはすぐそばにある湖の水で洗い落とせばよい。
アリスは最初から、衣玖と行動することなど考えていなかった。
確かに、このまま彼女と行動するという手もあったかもしれない。
だが、アリスはあえて彼女を殺した。それにはちゃんとした理由がある。
衣玖が最初に自分に会った時、彼女は自分と話し合いたいといった。
おそらく、これからも仲間を得るためにこのような方法をとるのだろう。
それだけならば特に問題は無い。いや、本当はあるのだが、彼女の性格を考えるとかろうじて目をつぶって許せる範囲内だ。
問題はその後。衣玖は自身を信用してもらうために、わざわざ武器を片付けてまで自分は無害だということを主張したというところだ。
もちろん衣玖も、あからさまに危険な相手にはああいう風に接することはしないだろう。
だが、衣玖に会う前の自分のように殺し合いに乗っていないと思われる者、あるいは危険なものを持っていないような者を相手にするとどうだろうか。
本当に殺し合いに乗っていないならばそれでいい。
だが、本当は殺し合いに乗っていて、それを隠している相手だったらどうだろうか。
おそらく隙を突かれて・・・いや、話しかけた瞬間に殺されかねない。
そんな仲間のおろかな行動で共倒れはごめんだ。
現に、自分に不意に襲われた衣玖は死んでしまったではないか。これでは全く話にならない。
どうやら、衣玖には相手に対する警戒心というのが不足している。
アリスはそう思えてならなかった。
「さようなら、竜宮の遣いさん。あなたと会えて良かったわ」
言葉ではそういうものの、その行動はまるで地面の小石を蹴転がすような扱いで衣玖の遺体を蹴飛ばしそばにあった湖へと蹴落とすという、酷いものだ。
ドバァン、と大きな音を立て湖に落ちた衣玖を見た後、アリスは彼女が持っていたスキマ袋を担ぐ。
「・・・これも、もう要らないわね」
そう言うと、血にまみれた銀のナイフも湖へ投げ捨てた。今度はポチャン、と小さな音が響く。
もったいないとは思っていない。実は銀のナイフはまだ9本もある。
こんなにもあるのは咲夜のように投げて使えということだろう。
だが、咲夜のようにナイフを投げて扱うようなことの出来ない自分には、これだけある意味が無いのだ。
「じゃあ、あなたの言うとおり、仲間を見つけられるよう頑張らないとね」
言っていることと先ほどの行為とが矛盾しているのではないかと思われるが、そうではない。
確かに仲間は作る。しかし、そいつらは自分が生き残るための道具のようなものだ。
そいつらと協力すれば吸血鬼だろうが鬼だろうが誰だって仕留めることが出来るかもしれない。
だが、あくまでも可能性だ。無理そうなら逃げる。
用は自分が死なないよう、そして狙われるようなことが無いように振舞えばいい。
そのために仲間という名の人形を・・・いや、それ以下の存在の者共を有効に利用する。
アリスが生き残るための手段、その答えがそれだ。
そう考えると、自分の仲間だった衣玖を自らの手で殺し、一人になったことを少しだけ後悔する。
だが、あくまで使えない奴を始末しただけに過ぎない。
これからはあらゆる者共を利用するだろう。その方法は自分で考える。
殺し合いはパワーでない。
―――ブレインなのだ。
【C‐3 霧の湖(南側)・一日目 丑の刻】
【アリス・マーガトロイド】
[状態]健康
[装備]銀のナイフ×9、強そうな銃(S&Wとは比べ物にならない?)
[道具]支給品一式×2、不明アイテム(0〜2)
[思考・状況]どんな手を使ってでも優勝する(主に仲間という名の人形を利用する)
[行動方針]そろそろ休みたい。夜の紅魔館には近づきたくない
[備考]仲間でも、使える奴は利用する。使えない奴は(怪しまれないよう)始末する。
殺し合いはブレイン。常識よ。
【永江衣玖 死亡】
【残り 50人】
投下完了です
この場合、アリスはステルスマーダーということになるんでしょうか?
支援が無いから恐かった・・・
まぁ、投下時間を指定しない自分が悪いだけですけど
連レスって10回までOKなのかな?
アリスひでぇw
でも確かにマーダーがいないと物語にならないからな
衣玖さんカワイソス
うーん……これだと、アリスが衣玖を殺す必要が殆どないかも
衣玖の殺し合いに対する態度が危なっかしいというなら
仲間にならないとハッキリ言って、衣玖から遠ざかれば良いんだし
優勝狙いだから少しでも邪魔なやつを殺しとこうと思ったんじゃね?
支給品の銃も欲しかっただろうし。
藤原妹紅、橙
投下します
木々に覆われた林の中。
枝の隙間から差し込む月明かりに照らされ、少女の長い銀髪が煌めく。
少女の名は、藤原妹紅。
この理不尽な殺し合いに参加させられた一人である。
しかし妹紅には死ぬ気なんてなかった。
いや、正確には死など有り得なかった。
妹紅は不死の存在である。
蓬莱の薬を飲んだことによって、老いることも死ぬこともない体になった。
だからこそ、妹紅は考える。
なぜ自分がこの殺し合いに参加させられたのかを。
『最後の一人になるまで互いに殺しあっていただき、その結果残った一人が生きたまま解放される』
確かにそう言っていた。
だが、説明が行われている時に輝夜の姿を確認した以上、『最後の一人になる』ことは不可能だろう。
輝夜も妹紅と同じく、死ぬことはないのだから。
主催者は八意永琳。
あの女のことだ。
何か大きな考えがあってのことに違いない。
または、本当の黒幕は別にいるとか――
どちらにせよ、こんなくだらない殺し合いにのるつもりはない。
妹紅は決意する。
このゲームを破壊し、主催者を殺すことを。
……まあ永琳も不老不死なので、それは不可能なのだが。
とりあえず気が済むまで痛めつけてやろう。
ふと、首の冷たい感覚に気付く。
すっかり忘れていたが、まずは首輪を外さなければならないのだった。
先程これが爆発し、簡単に一人死んでしまった。
自分もただでは済まないだろうと、妹紅は思う。
とりあえず、首輪を外せそうな人を探しに行くことにした。
が、その時。
妹紅の赤い瞳が真っ直ぐに、草の陰に隠れた何者かを捉えた。
「出てきなさいよ」
そうはっきりと告げる。
相手には確実に聞こえているだろう。
しかし、反応がない。
辺りが沈黙に支配される。
次の瞬間。
「動かないで!」
妹紅の真後ろ、草陰から何者かが飛び出してきた。
幼い少女のものらしき、舌っ足らずな声。
「私は銃を持っているんです。……動いたら撃ちます」
少女の声は震えている。
こいつに撃つ気はないと、妹紅は確信した。
第一、銃を持っているならば闇討ちだってできたはず。
それをしなかったということは、少女は殺し合いのっていないということだ。
そんな少女を襲うなんて大人げないことをする気にはならなかった。
「あなた……殺し合いにのってるんですか?」
少女が尋ねてくる。
自分から誰かを襲うつもりはない。
ただ、相手がその気なら話は別。
躊躇いなんてない。容赦なく殺す。
そう考える妹紅は、はっきりと「いいえ」とは答えなかった。
「そうだと言ったら?」
「……ここで止めます」
『止める』か。あくまでも『殺す』ではないんだな。
もし相手が殺人鬼でも、少女はそうするのだろうか。
だとしたら甘過ぎる。
そう思った。
妹紅は少女の方へ振り返る。
「ああ!動かないでって言ったのに!」
当然、少女は慌てふためく。
少女はまるで捨てられた子猫のようだった。
恐怖で押し潰されそうなのに、自分を守る為に戦おうとする。
弱々しい声で必死に鳴き、手を差し延べようとすると引っ掻いてくる。
そんな感じ。
「体震えてるじゃない」
「ふ、震えてないですっ!」
少女なりの精一杯の強がりだった。
しかし手は震えて、銃口の位置が定まらない。
「こんな玩具で何ができる?」
それを妹紅は少女の手から取り上げ、じっくり見てみる。
何とそれは、本当にただの玩具だった。
引き金を引くと水が出てくる仕掛けになっている。
「あっ……か、返して!」
少女はそれを取り返そうと、必死に跳びはねている。
が、高く持ち上げている為届かない。
わざとらしく玩具をちらつかせて見せると、悔しそうに顔を真っ赤にさせた。
その様子を見て、妹紅はつい吹き出してしまう。
「〜〜〜!!ッ何が可笑しいっ」
「あはははははは!!」
「……!?」
急に笑い出した妹紅を不審な目で見つめ、少女は一歩後ずさる。
そしてそのまま踵を返し、走り去ってしまった。
「あ、ちょっと!」
呼び止めようとするが、少女の姿はすぐに見えなくなってしまう。
「参ったわね……」
少女は、他の参加者達に自分のことを言い触らすだろう。
『殺し合いにのっている奴がいて、さっき私を殺そうとした』
そんな風にあのか弱そうな少女に言われれば、誰だって信じざるを得ない。
そうすれば、自分を殺しに人が集まって来るかもしれない。
死ぬ気はないが、そうなれば面倒だ。
早めに誤解を解いた方がいいだろう。
そう考えた妹紅は、少女が向かったと思われる方向に歩き出した。
少女――橙が置いていった玩具の銃をしまって。
【A-4 一日目・子の刻】
【藤原 妹紅】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3個(未確認)、水鉄砲(元は橙の支給品です)
[思考・状況]基本方針:ゲームの破壊
1. 殺し合いにはのらず、ゲームを破壊する。主催者は痛めつけてやる。
2.自分からは襲わないが、相手がその気なら容赦なく殺す。
3.少女の誤解を解く。
4.首輪を外せる者を探す。
※自分が不老不死のままだと信じています。
※黒幕の存在を少しだけ疑っています。
【A-4 一日目・子の刻】
【橙】
[状態]健康、恐怖
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2個(使える武器はないようです)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに反対
1. 妹紅から逃げる。
2.誰も殺したくない。
3.死にたくない。
※東の方へ逃げていきました。
※お互いに姿を確認しましたが、名前は知りません。
タイトルは「玩具箱の銃」です
思ったより短かったな…
140 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 17:40:51 ID:L27gXpPc
>>122 ステルスキターーー!!!
アリスの冷酷さがマーダーっぽくていいね
>>134 ちぇんの必死さに惚れた。
何か頑張って欲しいキャラだな。
sage忘れてた……orz
すまん
142 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 20:34:52 ID:gnOh1zdL
投下いきます……と言いたいのですが、
規制に引っ掛かってPCから本スレに投下出来ません……
したらばの管理人様、よろしければ仮投下スレの作成をお願いできないでしょうか?
作っといたぜ。
俺はちょいと時間がないから、本スレへのコピーは誰かに任せる。
代理投下いきま〜す
風が吹きさらし、無限に連なる星と夜天が見下ろす草原に、ひとつの影が立っていた。
背の丈は子供ほど。しかしその半分はあろうかという角が彼女がただの童ではないということを表している。
伊吹萃香。それが彼女の名前であり、幻想郷最強の種族とも言われる『鬼』という存在でもあった。
だが、しかし。本来なら常に陽気で騒がしいはずの萃香もじっと押し黙ったままで、頭をうな垂れている。
いつも酔っ払っているはずの顔はどことなく青褪め、瞳の色は途方に暮れていた。
こんなことになってしまったのが未だに信じられず、
けれどもそれを証明するかのような自身の変調とがない交ぜになって生み出されたものだった。
殺し合いをしてもらう。
心中で反芻するたびに言葉が重く圧し掛かり、絞殺するかのように絞めつける。
お祭り騒ぎや催しは好きだけど……こんなのってないよ。
確かに自分は鬼で、妖怪の一種だ。人間を襲い、攫い、畏れられていることもあった。
だが意味も無く命を奪ったりすることもなければ、増して友や同胞を殺したりすることなんて出来ない。
そもそも鬼という種族自体が他者との関わり合いなくしては生きられないようなものだ。
古くから自分達鬼は人間の生活を脅かす一方、力を持った人間に懲らしめられて大人しくなり、
時が経てば性懲りも無くまた荒らしては退治される、そうして信頼関係を築いてきたのであり、
間違っても憎しみや怨みで戦いあってはこなかった。
これは違う。何の意味もなく、理由もなく殺しあうのは獣と何ら変わりない。
スペルカードルールという公正な戦いでもなければ、何かを得るための戦いでもない。
誠実にして実直、それに優しい萃香にしてみればこんなものは言語道断。受け入れられるはずがない。
だが現実問題として自分の力はほぼ完膚なきまでに封じられている。
密と疎を操る力。物理的なものから意識、無意識に至るまで操作を可能にするはずの力が全く引き出せない。
息をするように扱えるはずだった自分の疎密化ですら行えないのだ。
妖力の行使はどうにか行えるようだが、用途がかなり限定されてしまっている。
すなわち、他者に対する攻撃という形でしか力を扱えなくなっているのだ。
なるほど確かに自らが霧状になれたりすれば首輪は意味を持たないし、萃めて巨大になっても話は同じだ。
殺し合いを抜け出せるようなことは出来ないのだと自覚させられるだけだった。
いったいどんな術を使えばこんなことが出来るのだろうか。
思いのままに力を封じ込め、殺し合わせるという形に整えられていることにゾッとする。
それは萃香という鬼が抱いた、初めての恐怖という感情だった。
今はまだここに来る直前まで飲んでいた酒の酔いが残っていて、
まだどうにか平静を保ててはいるが、裏を返せば酔いが醒めてしまえば今以上の恐怖に蝕まれるということ。
そうなると冷静でいられるのかという焦りと不安が過ぎる。
これも感じたことのないものだ。常に強者であり、余裕を保てていた者が立場をひっくり返された状況に既に参りかけている。
こんなに脆かったのかと自嘲したくなるほど萃香は心細く感じていた。
無論こんな状況に陥っているのは自分だけではない。
友人の八雲紫だって境界を操る力は封じられているだろうし、鬼仲間の星熊勇儀だってあの怪力は大幅に力を削がれているはず。
勇儀はともかく紫ですら簡単にどうにかできるようなものではない。
だとするなら、結局殺し合いからは逃れられない。そういうことなのか?
先程頭に浮かべた勇儀や紫、さらには霊夢や見知った面々が殺しあっている様を思い描いてしまう。
一度想像してしまうとそれは留まるところを知らず加速を続ける。
ひょっとすると、一部の妖怪連中は既にやりあっているのではないだろうか。
強者に対して復讐できる状況だと思い至った人間が虎視眈々と殺す機会を狙っているのではないか。
いや、殺して優勝さえすれば生きて帰れるのが保障されるのなら寧ろ乗り気な連中の方が多いのではないだろうか。
自分も元々はかなり強い力の持ち主だとはいえここまで弱体化していては、
本気でやったことはないが例えば紫、勇儀のような同族、または大妖怪連中ともし戦う羽目になれば無事では済まない。
最悪なことに己の能力はほぼ使えなくなっているのだから。
もしかすると、殺し合いなんて意味がない、やりあう必要がないなんて思っているのは自分だけで、他は全員既に……
「……っ!」
友を裏切るような想像をしてしまった自分を強く恥じるように萃香は激しく首を振り、その想像をかき消す。
どうやら酒の酔いも急速に薄れているようだと思い、いつも携帯している瓢箪筆の酒を呷りたくなったが、
それも没収されてしまっていることに気付く。今の自分は酔っぱらう権利さえ奪われたらしいと知覚し、
萃香は乾いた笑いを吐き出す以外になかった。
こんなの鬼じゃない、自分じゃないと思いながらも弱気に駆られる己を止められる術はなかった。
殺せないわけじゃない。ただこんな意味もない殺しなんてしたくはないだけなのに。
何もかもが嫌になってくる。
酔わなければ平静を保てない己の脆弱さも、この状況に無策でしかいられない自分の力も。
「どこかに酒でもあればいいんだろうけどね」
言ったところで、ふと萃香は足元にあるスキマ袋のことを思い出した。
話半分ほどにしか聞いていなかったが、確かアイテムが各々に配られているというのは覚えている。
基本的に武器が入っているらしいが、萃香は使う気など元よりなかったし、
使わなくとも持ち前の怪力でそれなりの妖怪くらいならどうにでもなる。
あくまでもそれなりの妖怪くらいなら、だが。
萃香が確認したかったのは配られたものの中に自分の瓢箪筆が入っているかどうかだった。
無限に酒が湧き出してくる萃香の愛用品。これがあれば少しは元気を取り戻せるだろう。
たとえそれがただの逃避的な行動だったとしても、呑まずにはいられない。
初めて感じた恐怖をこれ以上知りたくないという気持ちがあった。
ほんの僅かな期待を込めてスキマ袋に手を入れてみたが、出てきたのは微妙に期待はずれのものだった。
「……いやがらせかなぁ」
盃。それなりに大きなサイズの盃が出てきたのだった。
が、肝心の酒はなく、何かないかと探っても出てきたのはいかにも美味しくなさそうなパンと水、
他には地図やら方針儀、電気提灯といったものばかりだった。
酔い覚ましにしかならないと思った萃香は失笑を通り越して落胆するしかなかった。
「とりあえず、お酒でも探そう……」
それと出来るなら、紫や霊夢のような知り合いにも会っておきたい。
自分ひとりではどうにも出来ない。だが彼女たちなら……そんな思いも含みながら。
大丈夫。きっと大丈夫。
すぐにこんな事件は終わって、また元ののんびりとした暮らしが始まる。
そうしたら、今度は自分の好きな宴会だってやれる。
「やだね、本当に、もう……しっかりしないと……」
それでも拭い去ることの出来ない不安を胸の内に抱えたまま、萃香は歩き出した。
小さな百鬼夜行の過酷な宴会が、始まろうとしていた――
【E-5 平原・一日目 深夜】
【伊吹萃香】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式 盃
[思考・状況]基本方針:意味のない殺し合いはしない
1.お酒を探しに行く
2.紫や霊夢などの異変を解決してくれそうな知り合いに助力を頼む
3.能力を封じ込めた連中に対して若干恐怖、弱気
※酔いが醒めかけているようです
◆Ok1sMSayUQ さんの作品でタイトルは『小さな鬼の不安』でした。
さっそく感想を
う、うまー!
萃香の複雑な心境が明確かつわかりやすく書かれてて滅茶苦茶よかった。
友達想いの萃香がどうなるのか。今後の展開に期待だな。
乙すぎる!!
俺の出したキャラはまさに想像通りだったぜ。
これで随分と把握が楽になったよ。
乙です
過疎ってんなぁw
投下乙です。
萃香が弱気になってるところがたまらんです。
回転速いな……
代理投下お疲れ様です。
萃香はなんだかんだといって今の幻想郷が好きだったからね。
鬼の思考回路が見えたような気がしていい感じでした。
なんか一人でバトルものばっかり書いているような気がしない。
フランと妖夢を推敲が終わり次第投下します。
支援は任せろ
「いい月ね……ほんっとうにきれい……」
「ええ……いい夜だわ……」
久しぶりに吸い込んだ外の空気は肺が痛むほどに冷たく、清んでいた。
フランドール・スカーレットは空を仰ぎ、月をうっとりとした瞳で眺めていた。
血の雫を垂らしたように、月は赤みがかっている。
こんな夜は何年ぶりだっただろうか? 100年? いや400年くらいだろうか? ひょっとしたら初めてかもしれない。
こんな月夜の散歩は、何かいいことがあると……思った。
しかし、目的の無い散歩は帰るべき家があってこそ、成り立つというものだ。
今、家に帰って何があるだろうか? 禁止エリアとかよく分からない(理解するのがめんどくさいだけだけど)システムのために、どうせ帰っても追い出されてしまうだろう。
それならいっそ、最初から出ていたほうが気分がいい。こんな月夜だ。いいことがあるだろう。
目的が無い散歩で楽しめないのなら、目的がある散歩のほうで楽しもう。
目的を作るのは簡単だ。なんていったって今はゲーム中なんだから。
ゲーム攻略するのも目的だろう。
だけど、忘れている。
私の能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』
ゲームを破壊するのもまた趣があるというものだ。
さて、どうしたものか。
こういうときに一番楽なのが、他人に流されることだ。
自分を殺そうとする者が現れたなら返り討ちにし、自分を仲間に入れようとする者が現れたなら、仲間になろう。
自分を見て逃げた者がいたのなら追い詰めて八つ裂きにし、命乞いをしてくる者がいるとしたら見逃してやろう。
とっさの自分の気分で行動を決める。気まぐれもたまにはいいものだ。
といっても、気まぐれにつき物なのが暇である。
気まぐれに行動しているからいやなことから逃げてしまう。逃げた先には暇が待っているのだ。
既に暇になってきた。
だが、暇をつぶせるものがここにある。
主催者が用意したスキマである。
これも中身をすべて見たならまた暇に逆戻りだが、見ている間は暇をつぶせるだろう。
フランドールはスキマの中身を覗き込んだ。
一番最初に目に入ったのは、大きな板だった。
只の板だ。
その板をどかしたときだった。
「………なにこれ?」
こういうときに一番楽なのが、他人に流されることだ。
自分を殺そうとする者が現れたなら返り討ちにし、自分を仲間に入れようとする者が現れたなら、仲間になろう。
自分を見て逃げた者がいたのなら追い詰めて八つ裂きにし、命乞いをしてくる者がいるとしたら見逃してやろう。
とっさの自分の気分で行動を決める。気まぐれもたまにはいいものだ。
といっても、気まぐれにつき物なのが暇である。
気まぐれに行動しているからいやなことから逃げてしまう。逃げた先には暇が待っているのだ。
既に暇になってきた。
だが、暇をつぶせるものがここにある。
主催者が用意したスキマである。
これも中身をすべて見たならまた暇に逆戻りだが、見ている間は暇をつぶせるだろう。
フランドールはスキマの中身を覗き込んだ。
一番最初に目に入ったのは、大きな板だった。
只の板だ。
その板をどかしたときだった。
「………なにこれ?」
支援
こういうときに一番楽なのが、他人に流されることだ。
自分を殺そうとする者が現れたなら返り討ちにし、自分を仲間に入れようとする者が現れたなら、仲間になろう。
自分を見て逃げた者がいたのなら追い詰めて八つ裂きにし、命乞いをしてくる者がいるとしたら見逃してやろう。
とっさの自分の気分で行動を決める。気まぐれもたまにはいいものだ。
といっても、気まぐれにつき物なのが暇である。
気まぐれに行動しているからいやなことから逃げてしまう。逃げた先には暇が待っているのだ。
既に暇になってきた。
だが、暇をつぶせるものがここにある。
主催者が用意したスキマである。
これも中身をすべて見たならまた暇に逆戻りだが、見ている間は暇をつぶせるだろう。
フランドールはスキマの中身を覗き込んだ。
一番最初に目に入ったのは、大きな板だった。
只の板だ。
その板をどかしたときだった。
「………なにこれ?」
板の下からは、大きな袋。大変興味深い。
スキマから取り出して地面に置く。そして袋の封をスルスルと解くと、一匹の妖精がでてきた。
青いリボンに黒い髪、青い服の妖精だ。
「妖……精……?」
「……………ッ!」
袋から出した時は何か覚悟を決めたような顔をしていたのに、私の顔を見た瞬間顔がゆがんで何かを言いたそうな顔になった。
「どうしたの?」
「……! ……!」
言いたそうというよりはむしろ、言っているのに聞こえないって風だ。これで不審に思わないわけは無い。
ふと、妖精が出てきた袋に一枚の上白紙が張り付いていることに気がついた。
それをぴっと袋から取り、じーっと読む。
「なるほどね、貴女しゃべりたくてもしゃべれないのね」
と、妖精に話しかけると、コクコクとうなずいた。
「えーっと……このボタンかな?」
ボタンを押すと妖精は「あ……話せる……」とつぶやいた。
「貴女のお名前は?」
「私はスターサファイア。お久しぶりね」
「あれ? 会ったことあったかな?」
フランドールが頭の上に疑問符を浮かべると、今度はスターサファイアが頭に疑問符を浮かべた。
「そういえばイメチェンした?」
「してない……と思うけど?」
「そう、でもこの前会った時は髪の色が青っぽかったと思うけど……」
それは、アイツじゃない……え? 私ってそんなにアイツと似てるっけ? 確かに姉妹だけど羽とか違うじゃない……
第一に、アイツと勘違いされていることが気に食わない。
この妖精に私とアイツの違いをじっくり教えてあげよう……そう思い口を開いたときだった。
「後ろ!」
スターサファイアは鋭い声を上げた。
一瞬でその意味を理解し、行動を起こす。
ガアアアアアアアアン!
直後に響く轟音、一人が手に持った得物でフランドールに殴りかかりかかったのだ。
その者と、フランドールの間には『板』があった。
この大きな音の原因はこの板だ。
超々ジュラルミン製の機動隊が使う盾である。
スターサファイアと同時に支給されたもう一つのフランドールの武器であった。
「ち……」
あからさまな舌打ちが聞こえてきた。いきなり襲われるて、さらに攻撃をされて舌打ちをされればむっとするのは人間として当然だろう。吸血鬼ならなおさらだ。
初激が防がれたため、殴りかかってきた相手はバックステップを2歩踏み、フランから間合いを取る。
このとき、ようやくフランは相手の顔を見たのだった。
顔も名前も知らない奴だった。どこかでちらっと見たことはあったかもしれないが、そんなあいまいな記憶など、とうの昔に忘れている。
ボブカットの白い髪、緑の服をまとい、その手に一本の傘を握っている。魂魄妖夢がここにいた。
襲われた理由など知る由が無い。そして、知ったところで襲うことをやめるとは考えにくい。
ならば
「ふふふ……私とあそびたいの?」
ジュラルミン製の盾を片手に持ち、傘を持った少女に真っ向から対立した。
ならば……あそんであげましょう。あそんであそんで壊れるまで。
矛を持った魂魄妖夢、盾をもったフランドール。次に攻めてくる相手は決まっていた。
魂魄妖夢が間合いに踏み込んだ。
彼女の特技もとい能力。剣術を扱う程度の能力。
八雲紫や西行寺幽々子の能力が生まれ持っての才能だとしたら、彼女の能力は才能プラス技術。
能力が消されたとしても、技術は残っていた。
だから、八雲紫が使っていた傘であっても、十分な凶器となる。
ガァァアン!
妖夢が全力で振りかぶって殴る傘だ。弱体化した肉体で受ければ骨にヒビは免れない。
そんな打撃を受け止めるのが盾だ。相当の力で殴られているのにもかかわらず、少々へこむ程度で、防御力は一向に落ちる様子は無い。
何より、人間にとっては重いであろう大盾なのに、次々叩き込まれる打撃を片手もった盾で、ですいすいと防御しているフランドールも流石と言えよう。
「バァン!」
盾は何も守るだけではない。硬い板はそれだけで打撃武器だ。
「がはっ!」
フランは盾を持つ手を思いっきり前に突き出す。
盾の正面には妖夢の顔あった。金属が妖夢の鼻先とおでこにヒットすることとなった。
突然の反撃でひるむ妖夢、フランの盾を持ってないほうの手は鋭くとがった爪が生えている。
勝負は決まった。
「あーあー。逃げちゃったか」
妖夢の逃亡という形で……
【E‐5 平野・一日目 丑の刻】
【フランドール・スカーレット】
[状態]健康
[装備]機動隊の盾(少々のへこみ)
[道具]支給品一式、不明アイテム(0〜1)、スターサファイア
[思考・状況]妖夢を追うか、それとも違うことをするか……
スターに自己紹介する。
【スターサファイア】
[状態]健康
[装備]なし
しくじった……
ぽたぽたと数滴の血液が足元の雑草を覆った。
胸元から腰辺りにかけて服がバックリと破けていた。服の裂け目から見える白い肌と、赤々とした血を噴出させる裂傷が痛々しい。だが、傷はそれほど深くは無い。
武器が弱かったなど単なる言い訳にしかならない。
こうしている間にも幽々子様の命の危険にさらされているというのに……
手短に不確定様相を排除して、すばやく幽々子様の元に駆けつける。これが行動方針だというのに。
「不覚っ……」
打った鼻と、斬られた胸を押さえつつ、妖夢は北へと向かった。
【E‐5 平野北部・一日目 丑の刻】
【魂魄妖夢】
[状態]おでこと鼻を打撲
[装備]八雲紫の傘
[道具]支給品一式、不明アイテム(0〜2)
[思考・状況]危害を加えそうな人物を排除しつつ、幽々子様の探索。相手が悪ければ引くことを辞さない。
投下終了
フランちゃんは意外に常識がある子だと思う
レミリアとはカリスマのベクトルが違うって意味で
乙
フランいい子だなぁ
妖夢がマーダーとは意外だったよw
鈴仙・優曇華院・イナバ 投下します
突然すみません
私、鈴仙・優曇華院・イナバは今、木の陰で縮こまったまま動けないでいる。
正直、まだこの状況を理解し切れていない。殺し合いをしろ、なんて突然言われても困る。
訓練を受けたにしても、私はただの兎に過ぎないのだ。
生き残るなんて無理。
しかしそれよりも私が動揺しているのは、主催者が私の師匠、八意永琳だということ。
確かに怒ると怖いけど、師匠はこんなことをする人じゃなかったはず。
長い時間を共に過ごしてきたのだから、それくらいは分かっているつもりだ。
だから私は師匠を信じなければならない。
それなのに――先程の冷徹な姿を思い出すと、途端に信じられなくなってしまう。
師匠の考えていることが分からない。
私はどうすればいい?一体何を信じればいいの?
ただ、一つだけ確かなことがあるとすれば
「死にたくない……」
それだけだった。
怖い。手が震える。
だって、今すぐにでも誰かに殺されるかも知れないのよ?
絶対に嫌だ。そんなの。
「誰か助けて……」
そう呟いてみても、誰も助けてはくれない。
分かっている。分かってはいるけれど、何かに頼らずにはいられなかったのだ。
「あ……」
その時、指に何かが触れた。
それは先程説明された、支給品の入った袋。
「そういえばまだ支給品を確認していなかったわね」
袋を開け、中を覗いてみる。
暗く、深い。底が見えないほどだ。
とりあえず、入っていたものを一つ一つ取り出してみることにした。
が。
「どうしろっていうのよ……」
スペルカードが一枚。
それ以外に使えそうな武器はなかった。
「力のない奴はさっさと死ねっていうの?」
そんなのお断りだ。
でもこのままじゃ……
溜め息をつきつつ、取り出した支給品をまた袋に戻していく。
ふと、小さな瓶が目に入った。
片方の手の平に隠れてしまいそうなサイズだ。
説明書か何かだろうか、紙が添付してある。
さっきは武器のことばかりを考えていて、よく見ていなかったみたい。
少し反省。
その瓶の中には、透明の液体が入っている。
師匠が用意した薬か何かだろうか。
そう思い、開けてみようと蓋を見る。
「……っ!」
私は息を飲んだ。
蓋の上には、赤と黒でマークが描かれている。
それは、ドクロだった。
明らかに危険物だということを表すもの。それくらい私にも分かる。
私は液体が零れないよう、慎重に蓋を開けた。
特に何も起こらない。
酸素に反応して変化するというわけではないようだ。
そっと鼻を近付け、匂いを確かめてみる。
何も匂わない。
言うならば、ただの水のようだった。
「何だろ、これ」
私は、添付されていた紙を見る。
『これは毒薬です!取り扱いにはご注意下さい。
数滴服用すると、数分ほどでほぼ確実に死に至ります』
書かれているのはそれだけだった。
だが、その文字達は私の頭の中でぐるぐると巡る。
まさかこんなものが支給されるなんて。
人を殺すなんて、できることならしたくない。
でもこれを使えば、確実に殺せる。ほんの数滴飲ませるだけでいいのだ。
仲間になるふりをして近づいて、食料に混ぜるだけでいい。それなら危険も伴わない。
弱い私でも、生き残れる――
「……やるしかないわ」
しっかりと蓋を閉めて、それを袋にしまう。
多分、液体は数回分しかない。使いどころを考えなくては。
私は袋を担ぎ、立ち上がった。
私は死ぬのが怖い。
でも戦闘になれば、間違いなく死ぬ。
だから私は戦わずして勝つ。
安全に、確実に。
それが私のやり方だ。
卑怯?臆病?
仕方ないじゃない。
私にはこうするしかないんだから。
死なない為に、私は生きるのよ。
【E-3・一日目 丑の刻】
【鈴仙・優曇華院・イナバ】
[状態]健康、不安
[装備]なし
[道具]基本支給品、毒薬、スペルカード1枚、不明アイテム(0〜1)
[思考・状況]基本方針:絶対死にたくない。
1.絶対死にたくない。何よりも生きること優先。
2.仲間になるふりをして近付き、暗殺する。
3.直接戦闘はしない。逃げる。
4.師匠の考えていることが分からない……
※どこへ向かうかは次の書き手にお任せします。
終了
タイトルは「Coward Rabbit」です
そのまんまですけど
今から投下しますぜ
「……どこかしら、ここは」
八意永琳は眠りから覚めて開口一番に呟いた。
「永遠亭で寝ていた筈なんだけど。……夢遊病かしら? 嫌だわ、もしかしたらボケたのかもしれない」
などと一人で語ってみても誰もいない。本人はつまらなそうだが、それがどれほど幸運なことか。ここが殺し合いの場だということを知らない永琳に察しろという方が無理な話だ。
「…さっさと帰って寝直したいわね。夜更かしは肌に悪いというのに」
呟きは止めず、何を思ったのかふいにかがみ込むと地面の土を少しばかり摘んだ。
手で擦り合わせ、匂いをかぐ。
「……変ね」
今度は近くに会った木々を手で擦った。この葉の数を数えるように、細かく綿密に枝の端から根元までをつぶさに観察した。
「……やっぱり変だわ」
永琳が最初に感じた違和感。それは“音”だ。無視のせせらぎ、野鳥の囀り。幻想郷に来てから途絶えることのなかった自然の声がまったく聞こえない。
少し調べてわかったが、土に含まれる微生物、気や葉に掴まって眠る虫達、その一切を確認することができなかった。
世界は様々な生き物と自然とが均衡を保ち、循環を繰り返し維持される。その循環を断ち切られてなお乱れることのないこの場所はあまりにも不条理な所だった。
なまじ安定している場所だからこそ、これなら妖精の類でもこの異常には気づかないだろう。
ふと、永琳は夜空を見上げた。月、そして周りに点々と連なる星々。それらは永琳の知る夜空ではなかった。
「…誰が黒幕かは知らないけれど、星の位置が滅茶苦茶よ? せめて北極星くらいはでっち上げなさい」
永琳は敢えて黒幕の不出来を口にしてみせた。
「あの月も偽物みたいだし。…もしかして、わざと“私達”に教えてるのかしら。だとしたらよほどの自信家ね。愚かな程に」
自身に付けられた妙な首輪と、不自然な筈なのに不思議と崩壊もせずにパワーバランスが安定してるこの地。それだけで月の頭脳は自分が何か役割を担っていること、そしてそれをこの地で強要されていることを看破していた。
それも永琳にとっては単純なこと。
身体に常に密着され取り外しの効かない首輪の設計から考えて、おそらくはここから抜け出さないようにする保険。
能力制限と生殺与奪、そして“モルモット”を観察するための盗聴、この三つの要素はまず確実に備わっているだろう。
一番の問題は黒幕の正体だが……さすがに見当がつかなかった。いや、それを考えるのはもう少し先でいい。まだ一番貴重な情報源を調べていない。
近くに置いてあった袋に手をのばし、中身を一つ一つ取り出した。
二三日はある食糧、光を照らす道具、地図、名簿。
「随分と出てくるわね。…スキマ妖怪の面目丸潰れよ? 紫」
ここにはいない、しかし今現在最もこの状況を打破する道に近いであろう紫の存在は是が非でも出会いたいものだと永琳は考えていた。
「さて…、これらが示す黒幕の意図、私達の役割、繋ぎ合わさせてもらうわよ」
出てきた道具、その全てを完全に脳にインプットし、永琳は黒幕の思考を読み取るために思慮の海へとダイブした。
サバイバル用品のような用意周到な道具、地図に刻まれるエリア、想像以上に多いモルモット達、一つ一つのピースを当てはめこれらが意味することを読み取っていく。
(…まったく面倒ね。何も言われずに放り込まれたのは多分私だけみたいだし。いいなぁ、皆)
横道に逸れた事を考えながらも、月の頭脳は絶え間なく働き除々にその輪郭を見せ始める。数千、数万もの仮説が思考の波となって波紋を描き……
「……最悪」
そう、まさに最悪の仮設に思い至った。彼女の導き出した結論によれば、それが現実である可能性が多くの仮説の中で一番高い。
(この仮説が真実なら、こんな悠長にはしてられない。けど…)
可能性が高いとはいえ、そうである確率は数パーセント以下。さらに、それを前提に動いたとして、その行動が裏目に出る可能性も同じくらいにある。結局どう動くかは賭けにしかならない。
(どうしようかしら…)
頭が良すぎるのも困りものとは贅沢な悩みだと思い、苦笑する。
そこでふと、まだ確認していない紙が荷物の間に挟まっていたのに気づいた。
それを見て、永琳は何となく嫌な感じを受けた。そこに思考というものはない。いうならば、長年生きてきた者の勘とでもいうのだろうか。
永琳はゆっくりとそれを拾い上げ、中を見た。それは、ある人物からの自分へ向けての極めて不快な手紙だった。
『やあやあ初めまして、八意永琳君。
君のことだからあらかた状況を理解していることと思う。
いくつもの可能性の中で君が最悪だと考える状況。それがまさに今君が置かれている状況だよ。
今回のような参加者への介入はできるだけ避けたい事象ではあるのだが、ルール説明もなしに君だけを放り出したのではフェアじゃないからね。
こうして事の重大さを教えるに至るわけだよ。
君には色々と感謝してるんだ。だから今回は特別サービス。嬉しい情報を教えてあげよう。君にとっていちばん大切なあのお姫様のことだよ。
彼女はちょっとした勘違いから君を救うために殺し合いに乗ってしまったんだ。まったくもって残念な話だよ。
すぐに止めてあげないと、いずれは身を滅ぼすかもしれないね。
どうだい? 最高に嬉しい情報だっただろ? 私は恩を仇で返すような極悪人とは違うのだよ。はっはっは。
では、適度な健闘を祈っているよ。“主催者”さん
───楽園の素敵な神主より───』
「……やってくれたわね」
髪を握りつぶし、地獄の業火に耐えるようにか細い声をあげた。
腸が煮え繰り返るとはこのことを言うのだと、長年生きてきて初めて思った。
(落ち着け。落ち着け私。…確かに状況は最悪だった。思ってた以上に最悪だった。でも、まだ挽回はできる)
この自称神主の言を信じれば、まだ姫は誰も殺していない。誰かと既に接触した可能性は否めないが、それでもまだ引き返せるレベルだ。
一刻も早く姫を探し出して止める。ただそれを成す為には少々突撃思考にならざるを得ない。
そして、この殺し合いでそんな思考は愚の骨頂だということも理解してる。特に永琳は参加者全員から恨みを買っているのだ。
説得して仲間になってもらうというだけでも相当骨が折れそうだし、何より参加者との下手な接触はとても危険だ。自分にとっても相手にとっても。
人手は欲しい。だが相手は選ばなければならない。
そこが永琳にとってもどかしい所だった。
ふと、夜空に何かが打ち上がった。
「あれは…弾幕かしら?」
妙なことをしたものだ。危険を冒してでも仲間を集めようと思ったのか、はたまた光に群がった虫達を駆逐しようとでも思ったのか。
向かうか向かわないか決めかねていた時、同じ方角から光の束が射出されたのが見えた。
「…魔理沙ね」
あの魔法は見たことがある。戦闘中のようだが、少なくともあの近くに霧雨魔理沙はいる。
(あの娘は意外と常識があるし、殺し合いに乗ってない確率でいえばこの中ではダントツね)
人間であるという要素は痛いが、それなりに強いしそこらの妖怪よりある意味頑丈だ。仲間にするのはもってこいともいえた。
永琳はそれ以上迷うことはなかった。
殺し合いに乗った人間は十中八九近くにいるが、臆していてはそれこそどうやって姫を救い出すというのだ。
素早く支給品を袋に詰め込む。
早々に破り捨てたい衝動に駆られながらも、手紙も一緒に袋に押し込んだ。
(こんなものでも、交渉の足しにはなる。ここは感情で動くところではないわ)
まるで言い訳するかのように自分に言い聞かせながら永琳は走った。
「…この私をいいように使ってくれたこと、必ず後悔させてやる」
確かに永琳は冷静だった。姫への愛に比べ、こんな状況に陥りながらも永琳は冷静だった。
だが、やはりそこには渦巻く憎悪の念と焦燥感があり、それらがたった一つの事実を永琳から削ぎ落していた。
この手紙。殺し合いが始まる前から渡されていたこの手紙。それに何故ゲーム中に起きた出来事が書いてあったのか。そこから導かれることは何なのか。
月の頭脳と呼ばれる永琳なら容易に辿り着く疑念。それを怒りから失念していた。
あるいはそれも、楽園の神主が仕向けたことなのかもしれない。
くしゃくしゃになった紙。その中に書かれた文字が人知れず消えていった。
【B-7 一日目・子の刻】
【八意永琳】
[状態]激しい怒りと焦燥感
[装備]なし
[道具]支給品 ランダムアイテム1〜3個(武器は入ってません) 神主からの手紙
[思考・状況]基本方針;輝夜を止めて、ここから脱出
1. 光の束へと向かう
2. 魔理沙と接触し、誤解を解いてから仲間になってもらう(ただしそれに執着する気はありません)
※この場所が幻想郷ではないと考えています
※自分の置かれた状況を理解しました。
【備考】
※手紙は白紙になりました。また、なんらかの仕掛けが施されている可能性があります
※この会場内には極端に生物がいません。
投下終了。
あまりOPを活かせなかったのが心残りだ。
ま、月の頭脳だしwww
投下乙です。
さすが月の頭脳、でもこれからが大変そう。
あと誤字見つけたので
>>179 >髪を握りつぶし となっていますが。
「うー……どうしましょう……」
とぼとぼと森を歩きながら紅魔館の門番こと紅美鈴は自分の主人や同僚のメイド長、他の紅魔館の面々のことを考えていた。
殺し合い……弾幕ごっこのようなものならともかく、本気でやるのだとしたらとてもじゃないが参加する気になんてなれない。
実際美鈴も最初に『棄権する者はいるか』と尋ねられたときに手を上げたのだが、運が良かったのか悪かったのか指名はされず、自分の首が弾け飛ぶことはなかった。
その事実に安心する一方、未だ己は悪夢の渦中にいるのだと思いもする。
首筋で冷たく光っている金属の感触。触るたびにこれは夢ではないのだと認識させられる。
最後の一人になるまで血で血を洗って……
腕に覚えがない、というと嘘になるが弾幕以前の実力勝負でも、どう足掻いたって紅魔館の主であり、自分の主人でもあるレミリア・スカーレットには勝てないし、そもそも勝負する気も起こらない。
というより、紅魔館の面子で勝てるような相手がいるかどうか……少し考えて、美鈴の口から出たのは諦めを含んだため息が一つだった。
無理だ。一秒ではじき出した結論を噛み締め、ならば殺し合いに乗ることなく生きて帰るにはどうすればいいのかと考える。
一番手っ取り早いのは実力があり、尚且つ頭の切れる人間(か妖怪)にくっついて行動することだ。
「……お嬢様ですね」
異変を解決している紅白の巫女とはそんなに親しいわけではないし、大体紅魔館の門番である美鈴は知らない連中の方が多いのだ。
結局はレミリアに集約するということか。まあお嬢様なら大丈夫だろうと思いかけて、ふと考える。
……レミリアは本当に自分を必要としているだろうか?
確かにレミリアとはそれなりに長い付き合いであるとはいえ、つまるところ主人と従者の関係でしかないし、専ら身辺の雑事は十六夜咲夜に任せている。戦力的にも自分はそこそこ強い程度にしか思われてないだろうし、実際そうであるという自覚は悲しいことに、ある。
人間の里では腕比べに丁度いい妖怪、なんて噂が立っていたのを苦笑して聞き流していたのを思い出す。
しかも何でも華麗かつ瀟洒にこなせる咲夜だけではなく、知識の本とも言えるパチュリー・ノーレッジや全てを破壊する能力の持ち主であるフランドール・スカーレットという最強、いや最凶の矛がいる。
こうしてみるとなんで自分が紅魔館にいられるのだろうと思うくらいのプロフェッショナル集団である。
果たしてこの面子に比べて、自分の重要度は如何ほどだろうか。考えてみて、美鈴は泣きたくなってきた。
いてもいなくても差し障り無い程度の実力……物語で言えば敵陣に突撃して帰ってこない将兵の一というところだろうか。
実際、主人のレミリアは我侭かつ尊大だ。言わば帝王的存在の彼女が自分のために命を張ってくれるか、と聞かれると……
「いけませんいけません! 何考えてるんですか私は! 使い捨ての駒にされるだけだなんてこれっぽっちも……あー、でも……」
最近自分との会話も少なくなってきたし、あんまり名前で呼ばれてない気がするし(おい、とかお前、くらい)。
最初の説明の時だって自分が手を上げていたのを尻目にレミリアは終始冷静な様子で手も上げなかった。つまりレミリアは何か嫌な雰囲気を感じ取っていたわけで、それも見抜けなかった自分はとんでもない間抜けということで……
暗澹たる思いが立ち込め、美鈴の頭を暗く閉ざす。考えれば考えるほど見捨てる要素が増えていくのだ。
主人のことが信じられないというわけではないが、疑う要素は無視できる量ではないのもれっきとした事実だった。
かといって、他に無条件で仲間に入れてくれそうな友人などがいるはずもなく、美鈴は己の狭い交友関係に愕然とした。
戦うも地獄、逃げるも地獄。
将棋で言う『詰み』の状態なのだと認識した美鈴は走馬灯のように昔に思いを馳せることにした。いわゆる現実逃避である。
庭の手入れ、最近真面目にやってなかったなあ。もう少し綺麗にしておけばよかった……
お昼寝の回数を減らしてちょっとでも新しい武術を身につけておきたかったなあ。
その他、あれが食べたいあの本を読んでおけばよかった休暇を取って旅行にいきたかったなど願望を連ねてみるが、それにしても自分には心残りなことが少ないのかと呆れるだけだった。
こんなのだから自分は紅魔館でも一番下の立場なのかもしれないと嘆息して、こうなったら人目のつかない場所で隠れつつ寝ようかと半ば自棄になってきたときだった。
「穣子ー! み〜の〜り〜こ〜! どこー!?」
いきなり聞こえてきた大声に美鈴の心臓が大きく脈打った。恐らくは知り合いか誰かを探しているらしい声は留まるところを知らない。
お姉ちゃんだから出てきなさい、とか食べ物あるから出てきなさい、とか幼児の母親のような口ぶりで叫び続ける。本人は必死なのだろう。
それにしても無警戒に過ぎる。殺し合えと言われ、殺さなければ殺されるという状況で自分の居場所を知らせているようなものだ。
現に自分は彼女の存在を感知し、さっそく声の元に辿り着く事ができた。
紅葉の模様をあしらえた赤い色の服と、頭にアクセントのように添えられた紅葉の飾り。
美鈴が知っている人物ではない。見たこともない。人間なのか妖怪なのかすら分からない。
だが唯一分かることは、このまま彼女を放置しておくのは危険だということだ。自分は戦意がないから良かったようなものの、もし凶悪な妖怪にでも見つかったら間違いなく襲われるだろう。
しばらく考えた末、美鈴は警告の意味も含めて彼女の前に出て行くことにする。放っておいてもよかったのだが、
もし次の瞬間にでも襲撃されて死のうものなら美鈴としても気分が悪くなるだけだったし、初めて遭遇した人物だ。
世間話くらいはできるだろうと踏んでのことだった。無論、美鈴自身のお人好しな部分が一枚噛んでいたのもあるのだが。
「あの〜……別人ですみませんが……」
「穣子ー! じゃなかった……せっかく頑張って声出したのに……」
がさがさと現れた美鈴に明らかに落胆し、肩を落とした彼女には若干の心労が見て取れた。『頑張った』なんて言うあたり普段は大人しいのかもしれない。
なんとなく話が合うかもと考えた美鈴は礼儀正しく、ぺこりと一礼してから話を始めた。
「ええと、こんばんは……ですか? 紅美鈴、『くれない』に、美しい鈴って書いて美鈴です」
「あ、ご丁寧にどうも……秋静葉、『あき』に静かな葉っぱで静葉。名前の通り秋の神様なんだけど……そういえばその名前、聞いたことがあるわね。紅魔館ってところの門番さんだったかしら?」
意外なことに目の前の人物、ではなく神様は自分のことを知っているらしい。神様は幻想郷でも珍しくはない存在だが、紅魔館、しかもその門番のことまで知っているのは驚きだった。
はい、と頷いた美鈴に、静葉は微かに笑って続ける。
「人間の里にはよく行ったりするから。秋限定だけどね。もっとも、お喋りしてるのは妹の穣子の方なんだけど」
ああ、と美鈴は納得する。人間の里に行くのなら紅魔館の門番の噂を聞いていてもおかしくない。やたら世間話が好きな妖怪だ、と。
人間とよく話していることが思わぬ形で役に立ったのに感謝しつつ、美鈴は「妹さんを探しているみたいですね」と話の本題に入る。
「ああ、やっぱり聞かれてたか……恥ずかしい……うん、穣子って妹がいるんだけど、全然見つからなくて」
「まあそうですよね。なんだかここ、凄く広そうですし」
「美鈴さんも誰か探してるの?」
「え? 私……私は」
はっきりとは言い出せず、もごもごと口ごもってしまう。何しろ先程まで主人や同僚が自分をどう扱うかについて考察し、不安を感じる結果になってしまっただけになってしまっていたのだから。
逆に美鈴はあることを尋ねてみる。
「あの、変な質問で申し訳ないですが、どうして妹さんを探そうと?」
「? 本当に変な質問ね。妹だからに決まってるじゃない。あの子明るくて人懐っこいけど、こんな状況だもの。早く会って安心させてあげなくちゃ」
そう言う静葉の目には、自身もどうしていいか分からないという怯えを含みながらも姉としての責任を果たそうという決意の色が窺えた。
当たり前すぎる言葉と行動だったが、美鈴の心を直撃するには十分過ぎるものだった。
姉妹という家族関係ではないにしても、自分はといえば同僚も主人も信じきれず、役立たずと捨てられるのが怖くなり挙句逃げ出そうとしている。
神様ですらどうしていいか分からないという状況でありながら、それでもやるだけのことをやろうとしているのに。
恥ずかしいと思いながらも、それでも不安は拭いきれない。静葉のように何が何でも合流しようという気持ちにはまだなれない。
だがそれでも、このまま自棄になって何もかもを投げ出してしまおうという選択肢は消え失せていた。
妥協案に過ぎないかもしれなかったが、今はこうしようと内心に決意して、美鈴は話を持ちかける。
「あの、もしよろしければ静葉さんのお手伝いをさせてもらえませんか?」
「え? 一緒に探してくれるの……? それはいいんだけど、どうして?」
「あはは……私の同僚や主はなんというか、とても強いので、探さなくてもいいかなって思いまして……だから今困ってる静葉さんの手助けをしたいだけです。いけませんか?」
苦笑しながら理由を述べる。もちろん今語ったことの全てが本心というわけではない。まだ自分は逃げているだけなのかもしれない。
それでも協力者が現れたことに喜びの表情を見せた静葉の顔色を見れば、決して間違ってはいないという思いを抱かせた。
「ありがとう、助かるわ。まだどうしたらいいのか分からない状況だけど……よろしくね、美鈴さん」
「ええ、こちらこそ。静葉さん。……それと、あんまり大声出しながら歩くのはどうかと……状況が状況ですし」
「あれは……その、全然誰もいないものだから、なんというか……ううん、そうね、気をつけるわ」
己のミスに気付き、迂闊さに失笑しながらも自分に向けて差し出された手をしっかりと握る美鈴。
この手から伝わる温かさが、希望の道標となりますように……そう願いながら。
【F-1 北部の森・一日目 深夜】
【紅美鈴】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式 不明支給品(1〜3)
[思考・状況]基本方針:とりあえず戦いたくはない
1.静葉と一緒に穣子を探す
2.紅魔館メンバーを探すかどうかは保留
【F-1北部の森・一日目?深夜】
【秋静葉】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式 不明支給品(1〜3)
[思考・状況]基本方針:妹を探す。後のことはまだ分からない
1.穣子を美鈴と一緒に探す
感想はまとめて後で。
一文が長すぎるとの理由で途中投下できなかった部分があったので適当なところで改行しておきました。
何かあれば仰って下さい
◆MajJuRU0cM氏の代理投下開始します
殺し合いの地。
様々な参加者が少なからずの緊張を持ってこの遊戯に参加する中、霊烏路 空はのほほんと歩いていた。
「良く分からないけど、私の力を試す絶好のチャンスだわ!」
…つまりはそういうことだ。
殺し合いのルール説明。あれを空はまったく理解していなかった。というよりちゃんと聞いていなかった。
主催者のことも、何か偉そうな奴が喋ってるな〜、ぐらいにしか思っていなかったものだからこの状況の重要性など分かる筈もない。
だから会場にいた大勢の参加者のことしか、空の興味を惹くものはなかった。
「よ〜し! あの時は巫女やら何やらに色々邪魔されたけど、今回こそ私の力で『警告します。禁止区域に抵触しています。30秒以内に退去して下さい』うおうっ!!!」
突然の声に驚き一歩退く。
…それ以上待っても聞こえない。
「何よ誰よ驚かそうとするの『警告します。禁止区域に抵触しています。30秒以内に退去しなければ爆発します』わあっっ!!!」
一歩踏み出し、また一歩退く。
端から見れば、それはとても奇怪な行動だった。
何度かそんなことを繰り返し、空はようやく理解した。
「なるほど。ここに入ると首輪が爆発、か」
地図を見て、首輪を触って、ふんふんと頷きながら空は理解した。
そして唐突に疑問に思った。
「あれ? 何であそこは入れないんだろ?」
それは禁止エリアの丁度中央に位置する建物。
それをじっと見つめて、ふいに空は思った。
あの建物に行きたい
その気持ちは別に何か考えがあってのことではない。ただあの建物が気になる。それだけだ。
だがそれだけで空が動く理由には事足りた。そして、それができないことに不満を覚えるにも事足りた。
その時、妙案を閃いた。
(そうだ。私の力であの建物を吹き飛ばしちゃおう。あれがなくなれば行きたいとも思わないし。さすがは私、頭いいな〜)
それは別に妙案でも何でもなく、単なる憂さ晴らし。だが前述したように、空は気まぐれで動くのだ。
「よ〜し、見てなさいよ」
宙へと躍り出て、目標の建物を見下ろす。
何だか空を飛ぶだけで体力が消耗してるような気がするが、そんなことも気にしない。
今気にするのは、あの建物を壊して自分の力を誇示することだけ。
空の右手に光る砲台の射出口から、みるみる内に真っ赤なエネルギーが湧き出てきて
「核融合の力で、吹き飛びなさい!!」
それを建物目掛け、発射した。
何度かそんなことを繰り返し、空はようやく理解した。
「なるほど。ここに入ると首輪が爆発、か」
地図を見て、首輪を触って、ふんふんと頷きながら空は理解した。
そして唐突に疑問に思った。
「あれ? 何であそこは入れないんだろ?」
それは禁止エリアの丁度中央に位置する建物。
それをじっと見つめて、ふいに空は思った。
あの建物に行きたい
その気持ちは別に何か考えがあってのことではない。ただあの建物が気になる。それだけだ。
だがそれだけで空が動く理由には事足りた。そして、それができないことに不満を覚えるにも事足りた。
その時、妙案を閃いた。
(そうだ。私の力であの建物を吹き飛ばしちゃおう。あれがなくなれば行きたいとも思わないし。さすがは私、頭いいな〜)
それは別に妙案でも何でもなく、単なる憂さ晴らし。だが前述したように、空は気まぐれで動くのだ。
「よ〜し、見てなさいよ」
宙へと躍り出て、目標の建物を見下ろす。
何だか空を飛ぶだけで体力が消耗してるような気がするが、そんなことも気にしない。
今気にするのは、あの建物を壊して自分の力を誇示することだけ。
空の右手に光る砲台の射出口から、みるみる内に真っ赤なエネルギーが湧き出てきて
「核融合の力で、吹き飛びなさい!!」
それを建物目掛け、発射した。
「……あれ?」
命中したはずだ。なのに建物はまるきり無傷だった。
まるで球場の見えない壁に覆われているかのように、建物の周りに地面を抉る穴が円上に広がっていた。
「おっかしいな〜。ちゃんと当たった筈なのになぁ」
腕を組み、考える。どうしてあの建物は壊せないのか。これでは自分の力を示せないではないか。
あの建物を壊すにはどうするか。考えて考えて、答えが出た。
「そっか。なら、もっともっと強〜い力をぶち当てたらいいんだ!」
空らしい単純な発想。
その発想が正しいと信じて疑わない空は得意気な顔で第二射を放つべく力を溜めた。
「うぅおおおおぉ!!!! 八咫烏様に感謝を!!! 究極の核融合にてフュージョンをおおおぉ!!!」
気合を込める叫びと共に、さらに射出口から真っ赤なエネルギーが姿を現す。だがそれは先程とは全く違う淡く光る小さな太陽。
「ニュークリア………」
右手を掲げ、そこから巨大な恒星を生み出し、空は叫ぶ。
「フュージョン!!!!!!」
その太陽は、建物目掛けて一直線に放たれた。
「……ぜぇ……ぜぇ……」
正真正銘全力全開の一撃。
周りの木々は倒れ伏し、山々を穿ち、しかし、建物だけは無傷だった。
「……も……いい」
力を示すことがこんなに疲れるものだとは思わなかった。
空はくたくたになりながら地面へと舞い戻り……地団駄を踏んだ。
「むきーーー!!! 悔しい悔しい悔しいーーー!!!!」
普段なら何てこともない行動だが、今は体力が限界に近い。たったそれだけでくらりとバランスを崩し倒れ伏した。
「……ちょっと……寝よ。……んでから……また……挑戦…………」
空は言いながら、襲ってくる睡魔と闘うこともなく完敗した。
何故ここが禁止エリアに指定されているのか。何故あの城に攻撃が届かないのか。空は疑問にすら思わない。
主催者も殺し合いに参加している現状で、どうしてここを禁止エリアにする必要があるのか。どうしてここを守る必要があるのか。
空は、疑問にすら思わない。
【E-2 一日目・子の刻】
【霊烏路 空】
[状態]疲労(大)
[装備]なし
[道具]支給品 ランダムアイテム1〜3個(確認してません)
[思考・状況]基本方針;自分の力を試す
1. Zzz……
2. まずはあの建物をぶっ壊す!
※現状をよく理解してません
【備考】
※ZUNの城には結界が敷かれてあります
※周囲5マスに爆音が響きました。
代理投下終了。
>>189はミスです。
それと◆Ok1sMSayUQ氏の作品のタイトルは『紅の門番と紅い神様と』だそうです。
入れ忘れました、すいません。
皆さん投下乙です
>>月の頭脳の苦渋 ◆MajJuRU0cM氏
マイナススタートからここまで推理できるとは流石月の頭脳
だが主催者認定されている状況でどこまで頑張れるのか…
楽園の素敵な神主は吹いたw
>>紅の門番と紅い神様と ◆Ok1sMSayUQ氏
美鈴は清涼剤だなあw
ほんと和むw
紅い二人は目的の人物に会うことが出来るのか…
>>夜空に輝く太陽 ◇MajJuRU0cM氏
空つええええええええ
流石核融合
流石馬鹿
それと提案があります
wikiやこのスレ見るに時間表記が皆さん、子の刻や深夜などでバラバラのようです。
なのでどちらかに統一した方がいいと思うのです。
個人的には、子の刻などでは、
一目見て即何時なのかわかる人はそんなにいないだろうという理由から深夜などの方を押します。
作中でキャラが使うならまだしも状態表で一目見てわかりにくいというのはどうかと思うので。
どちらのほうがいいのか意見が欲しいです。
状態表記は、書き手及び読み手にわかりやすい表記がいいというのは賛成ですね。
物語上で使用するのは不自然もなくてよろしいかと。
コピペですが、深夜などの表記をするならば下記のように表すべきでしょうかね。
深夜:0時〜2時
黎明:2時〜4時
早朝:4時〜6時
朝 :6時〜8時
午前:8時〜10時
昼 :10時〜12時
真昼:12時〜14時
午後:14時〜16時
夕方:16時〜18時
夜 :18時〜20時
夜中:20時〜22時
真夜中:22時〜24時
>>192-193 あー……本当は統一表記はちゃんとあるんだけどね
テンプレから一寸離れてるから気付きにくいだろうけど、これがそう
>>16
諏訪子、ルナサ、阿求を投下します。
予約してからだいぶ遅くなってしまって申し訳ありません。
題名は「ケロちゃん殺し合いに負けず」です。
ドゴオォン!!
どこからともなく轟音が鳴り響いた。どこかで戦いが起きているのだろうか?
なんとなくだが、禁止エリアとなっている所から聞こえたような気がするのだが・・・
「うーん。まさか、こんなことになるなんて・・・」
月明かりが照らす夜の大通りを、とぼとぼと歩く一人の少女がいた。
ただし、それはただの少女ではない。見た目とは裏腹に強大な力を持つ守屋の二柱神の一人、その名を洩矢諏訪子という。
諏訪子はこの殺し合いに巻き込まれたことについて、やれやれという様な反応だ。
殺し合いならば大昔に国と信仰の防衛で神奈子とやりあったことがあるが、ある意味そんなものよりもたちが悪いだろう。
『お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます』
最初に聞いたときは、まさに「あーうー」と言いたくなった。
…そういえば、自分たちが元々いた世界、ここでいう外の世界で似たようなことがあったような気がする。
それは・・・いや、おそらく関係ないだろう。おそらくは。
そう思い、諏訪子は特にこれといった目的地を考えずに歩いていた。
いや、本当は守屋神社に行きたかったのだが、飛行移動を封じられている上に現在地は守屋神社とは反対方向なので行くにも行けない状況である。
それに、早苗と神奈子も見つけたい。特に早苗は人間だし、命を賭けるような戦いの経験がない分、危険だ。なんとしても捜さなければならない。
「・・・さぁて、と」
大通りが二手に分かれる場所まで着いたところで諏訪子は足を止めた。そして、
「誰かいるのかしら?」
そう言うと誰かがいそうな岩陰に注目し、スキマ袋から武器を取り出した。
「・・・・・・」
返事がない。だが、かまわずに岩陰を威嚇する。
「私はこちらからやりあうつもりはないよ。そっちもそうだったら、大人しく出てきてくれない?」
そう言って、打器として使えそうなトランペットを強く握り締めた。
我ながらかっこいい事を言ったと思う。もっとも、これは演技ではなく、マジなのだが。
(私が様子を見てくるわ。あなたはしばらく隠れてて)
(大丈夫でしょうか・・・?相手はあなたとは格が違う気が・・・)
(向こうは敵意がないなら、と言っていた。ならば可能性はあるよ)
諏訪子が目を向けた岩陰には本当に誰かがいた。
そのうちの一人が
「お、やっぱりいたんだね。名前は?」
「ルナサ・プリズムリバーよ。
…本当にやりあうつもりはないの?」
騒霊三姉妹の長女、ルナサ・プリズムリバーが現れた。
「スペルカードが2枚?一人一枚のはずだけど・・・まさか!」
ルナサと名乗る女性はこれといった目立った武器は持っていないが、一人一枚の支給品であるはずのスペルカードを何故か2枚持っている。
ここで諏訪子は揺さぶりを掛けてみた。
もっとも、これは相手がゲームに乗っていない可能性が高いと思ってのことだ。
「・・・違うよ。これは・・・」
ここでルナサは何て答えればよいか、詰まってしまった。
本当のことを言うべきか?ただ、それでは・・・
そう考えていると、諏訪子は言った。
「うーん、じゃあ誰かと一緒にいるってこと?見た感じ、殺し合いに乗っている訳でもなさそうだし」
見抜かれてしまった。こうも的確に。
見た感じはリリカより幼く感じても、やはり言われた通り、自分とは格が違う。
思わず、
「・・・よく分かるんだね」
そう正直に答えるしかなかった。
諏訪子とルナサたちはお互いに敵意が無いことを確認し、行動を共にすることになった。
…なんだか、ルナサは自分が負けた様な気がするらしいが。
「へぇ〜、この世界の事を書き続けている家系なんだ」
諏訪子はもう一人の岩陰に隠れていた人物を感心するかのように見つめる。
「はい。それが代々伝わる稗田の宿命ですから」
稗田阿求は誇らしそうな表情で応えた。
話によると、阿求は人里に保管してある幻想郷縁記でこの殺し合いについて調べようと、人里へ向かう途中だという。
道中で阿求と出会ったルナサはゲームに乗る気は全くなく、むしろゲームを潰したいと思っていたようだ。
稗田家は、千年近くにわたる知識の蔵書を書き、管理している。それは先代から始まり今に至っているという。
その蔵書は幻想郷のあらゆる事柄が記されており、外の世界すなわち諏訪子が元々いた世界についての資料もあるらしい。
そこで阿求は思った。もしかしたら、幻想郷縁記にこのようなゲームについて何か書いてあるかもしれない、と。
「つまり、その幻想郷縁記ってのでこのゲームについて調べようと思ったわけ?」
諏訪子はすぐさまそう思った。だが、
「・・・そのつもりなんですが、可能性はゼロに近いですね・・・。
私は一応、全ての書物に目を通しています。その中でこのようなゲームに関する事は記入されていませんでした」
「いやいや、書物を全部読んだくらいでその全てを覚えられないでしょ」
そんなことが出来たら人間じゃない。そう思っていた諏訪子だったが
「阿求さんは見たものを一生忘れない能力があるらしいよ。
先代から引き継がれてきた能力らしいけど・・・こう言えば納得できるかしら」
ルナサは諏訪子からもらったトランペットをいじりながら割り込むように答えた。
「ああ、なるほどね。妙に納得できるわ」
なんとなくだが、その言葉に思わず納得せざるを得ない。
「うーん。そうだとすると、書物でゲームの事を調べられる可能性は確かに低いかもね」
諏訪子は腕を組みうんうんと頷く。
「そうですね・・・。せめて、外の世界でも似たようなことがあったって言うのなら話が早いんですが。
まぁ、そんなのあるわけないですね」
阿求は諏訪子に尋ねてみた。
諏訪子は外の世界に長年にわたって存在していた神だけに、何か知っているかどうかをだ。
もっとも、その表情はすでに諦めかけているような感じなのだが。
「うーん、少なくとも私は知らないね。
そもそも、こんなハイテクな首輪なんて今の外の世界で作れるかどうか怪しいくらいだし。
ま、機械についてはあまり詳しいことは言えないけどね」
当然のことのように言い放つ諏訪子。
その様子に、阿求とルナサは何とも言えない雰囲気に包まれる。
だが、ここで諏訪子は気がかりなことがあった。
(首輪、爆発、殺し合い・・・。ってことは?)
まさか・・・と思ったのか、諏訪子の表情が変わった。当然、それを阿求たちが見逃すわけがない。
「あの、どうしたんですか?」
あからさまに分かる諏訪子の態度の変わり様に、思わず尋ねた。
「いや、どうでもいいことかもしれないけどね」
最初に断っておく、そんなつもりで前振りを言う。
「・・・・・・」
諏訪子の言葉に思わず黙り込む二人。何を言いたいのか、そう思っていると
「このゲームと似たような話、思い当たる節はあるよ。ここでいう外の世界で、ごく最近に」
諏訪子にとってはどうでもよさそうな事だった。
だが、二人にとっては聞き逃せるわけがない。
「そ、それは本当のことですか!?」
「外の世界でそんなことが最近になって起こっているなんて・・・」
当然のごとく、二人は食らい付く。
「い、いや、全然関係無いと思うから!そんな反応しなくても・・・」
二人の反応に、諏訪子は思わず両手を目の前で振りながら落ち着かせた。
「・・・んもう、しょうがないね。一応話すけどさ」
やれやれという表情をしながら
「実は・・・」
その時
「!?あれは一体・・・」
「弾幕・・・ですかね」
諏訪子は二人に話そうとしたが、当の本人たちは自分の背側の空を見上げていた。
「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」
人が話そうとしているのに・・・。そう思っていたが
「いいえ、空に浮かぶ星型に並べた弾幕が気になったのよ」
「星型の・・・弾幕・・・?」
今度は諏訪子が聞き逃せない言葉を聞いた。
「まさか!?」
思わず後ろを振り向く。
暗黒の空に浮かぶのは月明かりに負けないほどの輝きを放つ星型に並べた弾幕。
こんな弾幕を使う人物は一人しかいない。いや、沢山いたとしても一目で分かる。
「早苗・・・」
自分を含む守屋の二柱神を祀る風祝、東風谷早苗のものだ。まさか、こんな形で見つけられるとは思わなかった。
空さえ見ていれば、明らかに目立つ。自分の存在を知らせ、仲間を集めるためにあんな大掛かりなことをしたのだろうか?
だとすれば・・・
「あンの、おバカ・・・」
諏訪子は怒った口調でつぶやいた。
それを見て気づくのは自分だけでない。仲間になりそうな奴だけでもない。危険な奴まで呼びかねない。
しかも、あれだけの力を放出すれば、早苗自身も負担がかかる。それらのことを考えているのだろうか?いいや、考えていないだろう。
「ごめん!ちょっとあそこに行ってくる!」
諏訪子はそう言うなり、ルナサのスキマ袋から大きな物体を取り出した。
「ちょっ・・・どうしたの!?」
急な出来事にルナサは止めに入るが、諏訪子はそれを振り払い、大きな物体に乗って全速力で走っていってしまう。
「ごめんねー!理由は後で話すからー!先に人里で待っててねー!」
そう言った彼女は、走るよりも速いスピードであっという間にこの場からいなくなってしまった。
「・・・何があったんでしょうか?」
阿求はあっけらかんな表情で諏訪子が走っていった道を見つめた。
「さぁ・・・。でも、必死だったのは確かね」
「あの話のことについて聞きたかったのですが・・・」
「また今度、ということになるのかしら。人里で待つように言っていたし、そのときに聞くしかなさそうね」
確か、誰かの名前をつぶやいていた。おそらくその人と関係があることだろう。
自分も、もし妹達の事に関係があるならばそのままにするわけにはいかない。
諏訪子もそうなのだろう。
「諏訪子さんは無事に帰れるんでしょうか」
「分からない。今は無事を祈るしかないと思う。それに・・・」
そう言うと、ルナサは諏訪子からもらったトランペットを構えた。欲を言えばバイオリンのほうがいいのだが、贅沢は言わないでおく。
普通の人たちにとってはただの楽器だが、騒霊にとっては立派な武器になる。魔法使いが魔法書を持つような感じだろう。
「武器はもらったし、私達の方も生き残らないと」
「・・・そうですね」
「私じゃ頼りないかもしれないけど・・・あなたの事、守らせてもらうよ」
「ありがとうございます。でも、無茶はしないように・・・」
「まぁ、それなりにね」
そう言って、残された二人はもう目と鼻の先にある人里へ向けて歩き出した。
【E‐4 一日目 黎明】
【洩矢諏訪子】
[状態]健康
[装備]折りたたみ自転車
[道具]支給品一式、不明アイテム0〜2(武器になりそうな物はない)
[思考・状況]星型弾幕の発生源へ向かう(早苗と合流する)
[行動方針]早苗と合流後、人里へ向かう。神奈子を捜す。
【D‐4 一日目 黎明】
【ルナサ・プリズムリバー】
[状態]健康
[装備]メルランのトランペット
[道具]支給品一式
[思考・状況]諏訪子が心配&言おうとしたことが気になる
[行動方針]人里にある阿求の家に行く。
【稗田阿求】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(空スペカはルナサに渡しました)、アイテム不明
[思考・状況]諏訪子が心配&言おうとしたことが気になる
[行動方針]人里にある自分の家に行く。
投下完了。
諏訪子が言おうとしたことは、勘のいい人なら分かるかもしれません
でも、こういうのっていいのかな・・・?
最近、忙しくなってきました。もしかしたら創作に支障をきたすかも・・・
まぁ、阿求の言うとおり、無茶せずに頑張っていきます。
投下乙です。
神社が序盤の山場になりそうだなー。
諏訪子様は間に合うのか。
あれは本家バトロワですかね。
原作バトロワの知識あってもそこまで有利になるわけではないしありかと。
スペカは今は一緒でも離れるかもしれないしルナサの持ち物にも書いたほうがいいのでは?
幽香と勇儀投下します。
「おや?」
「ん?」
鬱蒼と生い茂る竹林の間をなんとはなしに闊歩していると、大柄な女性が横合いから竹を掻き分けて姿を現した。
風見幽香は突然の邂逅にも慌てることなく、舐め付けるようにジロリと女性を眺め見る。
柔らかそうな亜麻色の髪を背中まで流し、身を包むは白のシャツと紅色のラインを備えた青のスカートという飾り気のない軽装だ。だが、注目すべきは手足の首元に繋がれた拘束具と、天を貫かんとする程の鋭利な頭角だろう。
――鬼か……。
幽香は人目で看破する。
軽減されているとはいえ溢れ出る豪快な妖気と、木っ端妖怪とは比べくもない立派で力強い角がそれを物語っていると言えよう。彼女とは初見だが、顔見知りの鬼幼女と装いが似通っていたという理由もあるが。
幽香は口元を綻ばせ、女性に向けてニコリと微笑する。
「ごきげんよう。今日はいい日ね」
「それも快晴が見込める夜空さ。もっとも、あいにくの日和でもあるがね」
これでは天気も台無しだと、肩を竦めながらもニカリと人懐っこい笑みを対面の女性は浮かべた。
そして何の警戒心を浮かばせぬかのような軽快さで幽香の傍に歩み寄る。種族特有の豪胆さが窺えたが、単に彼女の気質からくる気安さなのかもしれない。
この状況にも、これといった焦燥感や危機感を感じていない模様ではあるが、単に馬鹿というわけではあるまい。
――力に余程の自信があると見える。
「いやはや、お互い面倒なことになったねぇ」
「ええ。野暮ったいことに」
二人揃って肩を並べ、少しだけ遠くを眺めて呟いた。
――両者に漂う空気からは、緊張感や気負いも感じられない。まるで縁側で茶飲み話に興じるかのような有り様である。
張りも刺激もない今しばらくの沈黙の後、その雰囲気にそぐう柔らかな口調で初めに口を開いたのは幽香であった。
「ところで貴女、この後のご予定は?」
口許を優雅に隠して問い掛けるその上品な仕草と視線は、まるで良家の令嬢が社交場で舞踏にでも誘うかのような艶やかな色を孕んでいた。
対して問い掛けられた方は、姉御肌な下町女のように歯を見せながら豪快な笑みを浮かべる。
「おっと、それは誘っているのかい? 実は手持ち無沙汰でねぇ、ちょうど相手を探していた所だったのさ」
「あら、丁度いいですわ。ならエスコートしてくださる?」
「喜んで」
幽香は白魚のような手をそっと差し出し、女性は躊躇うことなくそれを握り取る。
――瞬間、女性の顔面に拳が突き刺さり、群立する竹林目掛けて吹き飛んだ。吹き飛ぶ勢いそのままに居並ぶ竹を薙ぎ倒すかに思えたが、なんと竹のしなりを利用して女性が跳ね返ってきた。
「――はっ!」
腕を振りかぶりながら肉薄する女性の様子に、幽香は上体だけを反らす。その鼻先を、凄まじい豪腕が駆け抜けた。次いで、その勢いを生かして懐に潜り込んできた女性が固定砲台さながらの体勢で拳を放つと、身体を半歩開きながらその一撃に手を添えて背後に流すのは幽香。
「よく流した!」
「よく帰ってきたわね」
零れるのは賞賛の言葉。一方が純粋で、もう一方が皮肉の響きではあったが。
しかし、軽口の合間も互いの手足は休まらない。拳を振り抜いたが故に無防備を晒してしまった女性の鳩尾目掛け、幽香が突き上げの膝撃ちを繰り出す。
的中すれば悶絶必至の威力過多な膝撃ちである。だが、女性は唯一控えた左手一本で、微塵も揺らぐことなく押さえ込んだ。
それと僅か同時、女性の側頭部目掛けて幽香の追撃が時間差で迫る。片足立ちから浅く飛び、腰の捻りを加えた回転蹴りがその正体である。
これも妖怪が繰り出すだけに、直撃すればただではすまない。加えて、対象相手は懐の膝撃ちを防いだことで視線が下がり気味だ。視えていなければ女性にとっては危うい一撃になると思われたのも束の間、迫った脚部を視えていなくとも難なく掴み取る。
「そらっ!!」
幽香の足首を掴んだまま円形を描くように振り回し――当の彼女を遠心力にて大きく投げ飛ばした。
代わり映えのしない風景が凄まじい勢いで通過する中空にいても尚、幽香の動悸は平時となんら変わることはない。
風を切るその身を強引に捻って体勢を整え、背後に迫る一本の竹を都合良しとばかりに引っ掴む。勢いで幹が折れぬ様身体を折り曲げた後、竹の木を軸として身体を数回転ほど旋回させる。
回転力が弱まったと感じると否や竹の節間部位を蹴り飛ばし、余裕の笑みを浮かべながら地上へと華麗に着地した。
女性ははやすかのように口笛を吹き鳴らす。
「やるね! 弾幕戦も楽しいけど、肉弾戦もたまには良い。けれど、不意打ちは頂けないねぇ」
「不意を付かれた様に見えないから、あれは不意打ちとは言えないわ」
「それは違いない」
今度ばかりは距離を開いての会話であるが、共に笑みを浮かべているのは先と変わりない。
――否、その笑顔の質だけは際立っていた。人懐っこい顔は犬歯を剥き出しにした獰猛な笑みに歪み変わり、対するは嗜虐心が見て取れる笑顔で舌舐めずりをする始末。
「私は『力』の勇戯だ。お前さんは?」
「『花』の幽香よ。お初にお目にかかりますわ、鬼の勇儀さん」
「ふむ。最強の種族だと分かっていても真っ向勝負とは、見上げた根性だ! 気に入ったよ幽香」
「余所で何かしているようだけれど……そんなことより今は最強種族様に興味があって仕方なかったの」
好戦的な女性――勇儀の様子を歓迎してか、幽香は隠すことなく口許を吊り上げる。
――風見幽香は今回の催しに“乗る”つもりは一切ない。
開催者にどんな思惑が在ろうが無かろうが、加えて能力や行動に制限が設けられようとも大して関係はない。殺し合いのみならず、それがどんな企画だったとしても、風見幽香という妖怪が素直に従うことはないだろう。
彼女は指図されるのが心底嫌いなのだ。殺し合い云々では決してない。させられるという行為自体が自身の美学に反する。ただそれだけの話であった。
従って、尊大にも己に命令をしてしまった哀れな輩には、無論のことだが報復をする。決定事項だ。しかし、企画の趣旨に反した殺し合い放棄を、彼女は“我慢”するつもりも毛頭ない。
退かず、媚びず、省みず。環境に依存しない行動原理を持つ己が今更どんな事態に陥ったとしても、行うことにぶれなど生じない。
――癪に触りさえしなければ、木っ端種族な弱者に用はない。興味があるのは強者のみだ。闘争においては、それが彼女の基本スタンスである。
さらには、弾幕ごっこにて勝敗を決するというルールも、“やむなく”ここでは適用されない。
弾幕のみに頼みを置く人妖は、今頃右往左往していることは想像に難しくなかった。これが嬉しい誤算であると感じることができるのは、果たして此度の参加者の内で何人含まれることか。
「この状況で、この奔放さ。あはは! 真の意味で自分の事しか考えない利己主義者だ。――いいね〜、お前さん……本当に好みだよ」
「野花の種子が在るべきところに根を張れば、次にすべくは開花のみ。――場所は選びませんわ」
少なくとも、幽香が含まれると見て間違いはない。
能天気で不真面目な博麗の巫女や隙間妖怪やらが本気になって出張ってくる可能性のある現在の環境も、普段やる気のない強者と本気で遊べるまたとないチャンスとも言えた。
かと言って、血眼になって索敵する必要はない。いつもの如く群生する草花目指して練り歩き、のんびりと花々を愛でる片隅に下級妖怪らも弄り回しつつ、ゆったりと気長に敵を探せばいいのである。
気負いも気構えも幽香に取ってみれば無縁の産物なのだ。
そういった気休めの中で仕掛けた先の奇襲も、運良く遭遇した鬼を期待しての一撃だ。沈めばそれまで、健在ならば儲けもの。事実、勇儀は幽香のお眼鏡にさっそく適ったという訳である。相手によっては、あまり嬉しくない判別方法ではあったが。
まぁ、争いに応じた所を鑑みれば、この勇儀という鬼の基本方針も幽香とさほど違いはないのだろう。
そして重要な戦力面に関していえば、勇儀との僅か数合の攻防の中でも、確かに身体能力の弱体化は顕著であった。が、条件は皆同じ。
――元から私は強いのだ。力関係に変動などある筈もない。
自身の強さを微塵も疑わぬその屈強な精神こそが、風見幽香を幻想郷最高クラスの妖怪と称す由縁でもあるのだろう。
状況がどうあれ、今は眼前の鬼との決闘だ。弾幕や不可思議なアイテムなどといった野暮なものは、この際どうでもよい。 己が肉体のみで勝負を断ずるのは、どうやら対面の鬼も異存どころか大歓迎のようである。
「いずれにしろ、初見が鬼で幸先いいわね。ねぇ貴女、種族最強とかいう看板は未だに偽りはない? 下ろしてあげた方がいいのかしら?」
嘯く幽香が笑みを一層と深めれば、不適に笑って鼻を鳴らすのは鬼の勇儀だ。
「証明しろってかい? 安心しなよ。エスコートは確約したし、その疑心も解決させてあげるさ。――ただし、口先だけの奴はここで死ぬ!」
「それは致せり尽くせりね」
拳と大地を打ち踏み鳴らして構える強敵を前にして、幽香しばし熟考した後、ぼそりと呟いた。
「百日紅ね」
「ん?」
「――貴方に合いそうな花を想像していたの」
「ほほぉ。果たしてそれに見合っているのか否か――実際にご賞味あれ!」
夜も更けた竹林の奥で、戦力過剰な二体の物の怪がぶつかった。
【F‐7 迷いの竹林・一日目 深夜】
【風見幽香】
[状態]良好
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダムアイテム(1〜3)、スペルカード×1
[思考・状況]基本方針:普段通り、花々を目指しながら敵を生死問わずに蹴散らしていく。
1:まずは勇儀とガチバトル。
2:好き勝手行動しつつ、主催者側の殲滅も敢行。
【F‐7 迷いの竹林・一日目 深夜】
【星熊勇儀】
[状態]良好
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダムアイテム(1〜3)、スペルカード×1
[思考・状況]基本方針:不明
1:まずは幽香とガチバトル。
2:不明
以上です。
支援ありがとうございました。
投下乙です
二人ともやばいくらいかっけえ。
言葉周しが凄いな…。
結果が楽しみです。
投下乙です。
何という自分勝手な二人w ……と、一瞬思いましたが、幻想郷ではこの自分勝手さこそが常識でしたな
殺し合いなんてどうでも良いというスタンスのキャラは、この後もどんどん出てくるんだろうと再認識しました
八雲紫、森近霖之助、メディスン・メランコリー投下します。
何の因果か、僕はこの派手な服装をした不吉な笑顔の妖怪少女と契約し、
この娘と行動を共にする破目になってしまった。
「僕達は、どこに向かおうとしているんだい?」
「このようなところにきて、まずやるべきことをする、とだけ」
この八雲紫の名を持つ妖怪少女は、
頭がよく、知識も豊富で、数々の偉業を成し遂げた妖怪の賢者である。
僕も外の世界の道具であるストーブの燃料調達など色々世話になっていたりする。
紫とは数年来の知り合いなのだが、
いまだに一緒にいる時の心を見透かされるような雰囲気には慣れない。
この戦場は制限があるらしいのだが、それでも紫の雰囲気に一片の衰えもない。
いつものように紫が近くに居ると、非常に居心地が悪くなってしまう。
まったく……、気の利かない制限だ。
しかし、今のやり取りで、
紫と共に居るというデメリットを遥かに超えるメリットがある、という事を理解した。
そのメリットとは、
僕が前々から知りたかった外の世界の式、『コンピューター』の使い方が分かるかもしれない、という事だ。
僕の考えはこうだ。
古今東西、戦と名のつくものではなにより情報が大切である。
この永き刻を生きる妖怪少女が、それを知らないはずがない。
そうなれば、外の世界の知識が深い紫が使役者の命令どおりに動き、
瞬時に情報を収集する程度の能力を持つ、式『コンピューター』に思考が至る、と予測することは容易い。
もちろんこれだけでは足りない。
紫の式を探す可能性などもある。
だが紫も式の場所はわからないだろう。
他者の位置、それも確実な味方の位置がわかる能力など僕なら確実に制限する。
そうなると居場所の分からない動く式より、居場所の分かる動かない式を優先するはずだ。
運命次第では会えるかもしれない、と考えている程度だろう。
紫の家で合流するという可能性も現在の進行方向と地図から考えて、それらしい建物は見つからない。
その他の可能性も色々考えられるが、これらでは僕の予測には敵わない。
なぜなら、紫の目的は『コンピューター』である、という選択肢を選ぶもう一つ理由があるのだ。
【Fとは15を示す】
【全てがFになった時に最大の値を持つ】
ということを『非ノイマン型計算機の未来』という外の世界の本で、学んだ事が始まりだった。
古くからこの国では、15は完全を意味している。
十五夜を満月と呼ぶのも、同じ理由だ。
ここから僕の中に『コンピューター』は、
東洋の思想と、月の魔術を利用した式なのではないか、という説が生まれた。
そして霊夢から譲り受け、魔理沙が順番に並べた、
『非ノイマン型計算機の未来』の13,14,15巻を見た時、
この説を固める重要な閃きをもたらしてくれたのだ。
13巻、14巻、15巻、この数字を揃えると『131415』、頭の1を取れば……。
そう、驚くべきことに直線を円に変える数値である『3,1415』となるのだ。
これも満月を示しているといえる。
このようにして誕生した『コンピューター』は月を利用した式である、という説がそのもう一つの理由だ。
紫は情報を求めている。
『コンピューター』は月の力を利用した瞬時に情報を収集する程度の能力を持つ式である。
そして暗き天を見上げれば、幻想郷とは異なる並びの星座と、夜の主役である青白い満月が誘うように浮かんでいる。
この三つの事柄を繋ぐ事によって、紫はコンピュータを目指している、という予測は完全となった。
煌々と闇の中で照る向日葵の群れを横目に、そんな事を考えつつ東方を目指し歩んでいた。
行き先は教えてもらえなかったが、僕には分かる。
紫は僕の店である香霖堂に行くつもりなのだ。
紫の家にも『コンピューター』がある、という可能性もあるが、
地図を見る限り、それらしい建物は、謎の家という所しかない。
進行方向を見るに謎の家には向かわないようなので、考慮する必要はないだろう。
後は紫に『コンピューター』を自在に操っているところを見せてもらえるのか、
香霖堂に僕が生きて辿り付けるのか、という懸念だけだ。
既に僕の脳裏では、紫がキーボードを片手に命令を出し、
四角い箱型の式『コンピューター』が、情報を集めるために凄いスピードで飛行していくところが再生されている。
「ニヤニヤして何を考えているのかしら?」
後ろを見ずに表情をあてるのは、僕が驚くからやめてほしい。
どうやら紫の思考を捉えた事に浸ってしまい、顔に出ていたようだ。
「い、いや。支給品とやらを確認するのをすっかり忘れていたな、と思ってね」
紫の思考を捉えるなどという大それたことをしたことが露見したら、
これからストーブの燃料を持ってきてもらえなくなるかもしれない。
人類の偉大なる英知の結晶であるストーブを使えない冬を過ごす破目にはなりたくない。
「そうでしたか。――私にも見せてくださらない?」
音も無く振り向き、心なしか目が鋭くして催促する紫。
紫の聡明さと性格を考慮に入れると、これはただの軽い悪戯のようなものだろうが、
万が一、叛意を持っていると誤解されるよりは、いつものように心を見透かされたほうがよっぽどマシだ。
特に断る理由も無い事だし、ここは従おう。
「もちろん、かまわないよ」
足を止め、スキマを開け、中を探る。
食料、飲料水、僕に食事の必要は無い。
名簿、地図、既に覚えた。
時計、コンパス、紫が確認している。
懐中電灯、満月の今夜は使う必要がない、なにより目立つ。
筆記具、これも今使う必要はない。
スペルカード、魂符「幽明の苦輪」、
説明を見る限り、以前香霖堂に尋ねてきた半人前少女、魂魄妖夢のものらしい。
要約すると妖夢と同じ姿に変身した半霊を出す事が出来る、という事が書いてある。
魂魄妖夢について記憶の糸を手繰り寄せてみる。
その結果、
雪の山に埋もれ片足と二本の刀だけを雪の外に出している妖夢、
ストーブの前で心底幸せそうな顔をしている妖夢、
凍えながらストーブに手をかざしている妖夢、などが引っ張り出された。
……変身せず通常の半霊のままの方が、役に立つのではないだろうか?
とても心許ないが配られた以上はとりあえず持っておこう……。
次に出てきたのは文字が書かれた紙束。
右上には僕の能力を使うまでもない、とでも言うように、この紙束の名前が書いてある。
まぁ、僕はこれの購読者なのでそれすらいらないのだが。
「射命丸文の書いた新聞のようですね」
「そうだね、これは日付を見るに今日、いや、昨日完成した新聞のようだ。
しかし、こんなところにまできて購読者に新聞が配られるとはね」
これも彼女の記者魂とやらの成果なのだろうか。
僕も紫もやれやれといったポーズをとっている。
この新聞は、内容はともかく、
知恵をつけるためにはいい新聞なので購読しているのだが、流石に今の状況では読む気にはなれない。
お守りにはなるかな、と考えスペルカードと共に懐に忍ばせておく。
気を取り直し作業を再開すると、また一つ新しいものが見える。
これは煙草のようだ。
大きい箱の中に小さな箱が十二個あり一つ一つの箱に煙草が詰まっている。
そういえば、この小さい箱と同じものを、外来人の無縁仏を供養した際、服に入っていたことがあったな。
あれは実にうまい煙草だった……。
ご丁寧に、火を点ける程度の能力を持つライターも入っている。
以前、見つけたライターはすぐに使えなくなってしまったが、これは大丈夫なのだろうか。
「サービスがいいのね。いい銘柄が揃ってますわ」
「君がそういうのならこれはいいものなんだろう。
できれば香霖堂でゆっくりと吸いたいものだ」
紫は恐らく幻想郷中で一番外の世界に詳しい妖怪だ。
この煙草がいいものというのは真実であろう。
また何かが見える。
この大きい箱で最後だろう。
中にはラベルが貼られた瓶が沢山並び、瓶の中には液体が詰まっている。
「あらあら。新聞に煙草にお酒なんて。
これは随分現世を楽しめそうですわね」
「まったくだ。末期の酒。いや、煙草と新聞も併せて末期の潤い、と言ったところかな」
もし紫が居なかったら、僕は新聞と煙草と酒で戦場を闊歩していた、というわけか……。
僕は苦笑いをしてみた。とても掠れた苦笑いだった。
支援
「外の世界で醸された酒、幻想郷で醸された酒、霊夢の醸した酒まであるわ。
……霊夢は今頃どうしてるのでしょう?」
「さぁね。霊夢は君とは別の意味で予想がつかない。魔理沙辺りなら考えるまでもないんだが」
きっと魔理沙は今もどこかで大暴れしていることだろう。
「心配はあまりしていないのかしら?」
「していない、というわけじゃあないけどね。いなくなれば寂しい、悲しいとも思う。
――だが人も妖怪も霊も神もいつかはいなくなるものだ。
僕や君、霊夢や魔理沙もいつかはね」
霊夢や魔理沙が永遠に来ることがない、僕一人だけがただ黙々と本を読んでいる香霖堂か……。
彼女達と次に会える時が来ないかもしれない、という嫌な予感を頭の隅に押しのける。
「そう、生と死の境界は万物に存在します。
寿命が長い存在は忘れがちですが、それは忘れてはいけない大切な事なのですよ」
蓬莱人は別ですけれどこのような場所ではどうかしらね、と付け加える紫。
「まぁ、君が死ぬところだけは想像がつかないよ」
バラバラに引き裂かれても、何食わぬ顔で僕の背後から突然現れる紫が容易に想像できる。
「あら、私だって、いつかは他の皆のように死ぬのよ。
――でも今はいけないの。
私が居なくても幻想郷を維持できるようになるまで、私は生きなくてはならないのだから」
紫の決意には一片の曇りも見えない。
本当に心の底から幻想郷を愛しているのだろう。
それは僕にも利がある話だし……そうだ、こうしよう。
「そうなると僕も嬉しいね。
ふむ、ではこうしてみよう」
紫が怪訝そうに目を開いて僕を見る。
それを無視し、筆記具をスキマから取り出し、手帳の最後のページを開く。
そして右下隅に、
こうして、幻想郷に平和が戻りました。
【めでたしめでたし】
という文を綴る。
「この手帳を最初の数ページを除き、この戦の歴史書とする事にした。
これから、僕は暇を見てこれを完成させていこうと思う。
だが、先程僕が綴った文により、この歴史書は手帳に逆戻りしてしまったようだ。
未来の不確定な事象や、偽りの出来事を記された書物が、歴史書という名前になる事は決してないからね。
もし、君がその事に同情してくれるというのなら、
君が頑張って歴史通りに幻想郷に平和を取り戻し、この手帳と歴史書の境界線を引き直してやってくれ」
もし帰れたとしても、この手帳が出版されることは無いだろう。
だが、書き残すこと自体に意味があるのだ。
僕の言葉を聞き紫は、
向日葵の大輪を背景に、絹のカーテンのように艶やかに輝く黄金の髪を優雅な仕草でかきあげ
「うふふ。貴方らしいまわりくどい誘導ですわね。
いいでしょう。
――八雲紫の名において『手帳と歴史書の境界線を引き直す』ことを約束いたしますわ」
優しく穏やかな声と、超然とした不吉な笑顔でそう言った。
その姿は雲の加減で青白い月光のラインを浮かび上がらせ、オーロラに彩られたように見える。
「期待して待っているよ」
これで紫は、よりいっそう異変の解決に尽力することだろう。
目的が同じならば、理由は多いほうが良い。
妖怪とは、精神が存在を左右する生物である。
強大な妖怪に、自信過剰な輩が多いのはそのためだ。
妖怪の力はその想いが大きく、重く、多く、輝くほど強くなる。
その上、僕は紫と約束と言う名の契約までした。
契約とは、和洋問わず古来より力を得るのに有効な手段とされている。
丸腰で戦場を歩く破目にならなかった代金としては、釣り合うだろう。
僕は古道具屋『香霖堂』の店主として、霊夢や魔理沙のようにツケるという事はしない。
「あら。ちょっと足りないようなのでお酒を一本頂けるかしら?」
あぁ、これだから僕は紫が苦手なのだ。
◇ ◇ ◇
太陽の畑を通り過ぎてから、進路を南に変え、道に入り随分歩いた。
どうやら予想の一部は外れていたようで、地図に謎の家と示された所が見えてくる。
ここは恐らく紫の家なのだろう。
直線で結ばず道を経由したのは、自宅を知る人に会う可能性を高めるためといったところだろうか。
僕としては、『コンピューター』を使うところを見ることさえ出来れば、目的地がどこであろうとどうでもいい。
紫の式に会える可能性がある分、こちらの方が得かもしれない。
ここまで考えたところで突然、紫が立ち止まった。
「お静かに」
思考を中断し、紫が見つめるものを、僕も確認する。
月光に照らされた二階の窓に一瞬何かが映る。
「さあ、往きましょう」
面倒なことになってきた。
僕は今すぐにでも『コンピューター』が動くところを見たいというのに。
どうやら龍神はそれを許してくれないらしい。
【B−7 謎の家前・一日目 黎明】
【森近霖之助】
[状態]ちょっとした疲れ
[装備]SPAS12 装弾数(7/7)バードショット・バックショットの順に交互に入れてある
魂符「幽明の苦輪」、文々。新聞
[道具]支給品一式(筆記具抜き)、バードショット(8発)、バックショット(9発)
色々な煙草(12箱)、ライター、箱に詰められた色々な酒(29本)、手帳
[思考・状況]契約とコンピューターのため、紫についていく。
【八雲紫】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(0〜2)武器は無かったと思われる、スペルカード1枚、酒1本
[思考・状況]主催者をスキマ送りにして契約を果たす。
[備考]主催者に何かを感じているようです。
◇ ◇ ◇
背中に白い大きな帯のような飾りを備えた紅と黒のドレス、
少女の頭を包み込むような大きなリボンと少女の胸元を可憐に飾る小さなリボン、
そしてそれらに身を包まれる鮮やかな軽いウェーブをかけた金髪の幼く美しい少女がいました。
少女は毒林檎を食べてしまった白雪姫のように静かに眠ったまま、
謎の家と地図に示されている家の二階の部屋のベッドに送られ、それからずっと変化する様子を見せずに寝転んでいます。
◇ ◇ ◇
そろそろ起床の時間なのか少女はパチっと目を開けました。
大事な友達と一緒に眠っていると思っていた少女は、覚醒すると共に困惑の表情を見せていきます。
「スーさんはどこにいったの?
いなくなっちゃったの?そんなのやだよ……」
隣で寝ていたはずの大切な友人であるスーさんが、今はいません。
それどころか周りを見回したところ、ここは彼女の住んでいる所でもないようです。
その事に少女が気づくと、おろおろ、きょろききょろと紅いリボンを揺らしながらうろたえています。
「もしかしたら、これは現実じゃあないのかもしれないわ……」
夢だと考え頬を抓っていますが、それでも夢から醒めません。
逆に寝てみようとしてみても、スーさんがいない場所では寝る気が起きないようです。
月明かりだけが差し込む薄暗闇の中、廊下に出て次々と扉を開けていきます。
部屋の中は薄暗く、何があるかよくわからないと思いますが、
少女にはスーさんだけは常闇の中でも見つけることが出来る自信があるみたいです。
二階の扉を全て開けた後、急いで階段を降り一階の全ての扉を開けていきます。
「スーさーん!どこにいるのー!いたら返事してー!」
しかし何度叫んでも返事は静寂。
寂しそうに藁をも掴む思いで最初の部屋に戻ったところで、初めて袋の存在に気づいたようです。
スーさんがいないかと手を入れごそごそと色々な物を取り出しては投げ出して行く少女。
残念ながらスーさんは入っていなかったようですが、
頭を悩ませながら、地図とコンパス、窓から見える太陽の畑、
それらを何回か交互に確認し、なんとか現在地と目的地を把握できたようです。
そうとなればこんな所に留まる理由はありません。
愛しのスーさんがすぐ近くにいるということがわかったのですから。
これが夢の世界であっても、そうでなくても、どうでもいいといった感じです。
「スーさん、離れちゃってごめんね!今行くからー!」
少女は先程までとは違う凛々しい笑顔を見せ、
急いで巻き散らかした物を袋に入れ、懐中電灯だけを手に取ります。
その後はスーさん以外は障害物とでもいうように、
乱暴に扉を開き、懐中電灯を点け、階段を駆け降りていきました。
支援
駆け降りる最中、メディスンの持つ懐中電灯のおかげで、
粒子のような物が飛び散っているのがうっすらと見え、メディスンは眼を輝かせます。
それはメディスンとスーさんとの絆だから。
いつも自分を見守ってくれる優しい優しいスーさんとの愛の結晶だから。
その粒子は毒。
どうやらスーさんがいない事で寂しくなり無意識の内に体から出していたようです。
少女の正体は持ち主に捨てられた人形が鈴蘭の毒によって蘇った、人間に憎悪を抱く恐ろしい妖怪人形。
名前はメディスン・メランコリー。
スーさんとは少女の大好きな鈴蘭、人形の目的地、無名の丘は鈴蘭の群生地として有名な場所です。
メディスン・メランコリーは無名の丘の鈴蘭の海で生まれ、
外出時以外はずっと鈴蘭の毒と共に過ごしていました。
生まれたからまだ数年という妖怪としては若輩もいいところなのですが、
人形の持つの毒を操る程度の能力は、体に触るだけで肉が爛れ、
妖怪すら怯む毒を放出するほどの力を持っています
当然、そんなはた迷惑な人形が毒を振りまきつつ走り回ったら、
この謎の家もあっという間に毒の家に変わってしまいます。
幸いスーさんがいないので、毒性もいつもほど脅威というわけでもないですし、
ある程度は換気されているおかげで、いつになるかはわかりませんが謎の家に戻る事ができそうです。
おてんば毒人形が出口の扉の裏に居る隙間妖怪と古道具屋に遭遇するまで後数秒……。
【B−7 謎の家一階 一日目・黎明】
【メディスン・メランコリー】
[状態]健康
[装備]懐中電灯
[道具]支給品一式(懐中電灯抜き) ランダムアイテム1〜3個、スペルカード1枚
[思考・状況]無名の丘を目指しスーさんに会いにいく
※主催者の説明を完全に聞き逃しています。
※謎の家の中にしばらくの間スーさんがいない程度のメディスンの毒が撒き散らされました。
投下乙!
やはり物語のキーとなる頭脳派コンビは活躍が期待できるねぇ。
メディも可愛いけど、警戒心強そうだから和解なり闘争なりが楽しめそうだ。
投下乙
霖之助のスペカの内容は霊撃or回復or白紙だと思ってたんだけど
まさか他人のスペカが支給され、しかも霖之助の手元にあるのにスペカの内容に変化がないということは
相手のスペカを奪ってもスペルのパターンは変化せず、使えるスペルの数は今後一切増えないということか
………ちょっと残念な仕様だな
霖之助と紫、二人のやりとりはとても原作らしさが出ていて良かったです
メディスンの毒は、本調子の場合でも数分程度は耐えられる筈だけど、さて、制限がどこまで響くか
代理投下いきます
なぜ私にこれほどの力が……この力が力なき者に与えられていたとしたら……
その者は延命出来たかも知れないというのに……
なぜ私にこれほどの技術が……この技術にふさわしい者に与えられていたとしたら……
私よりも効率よく行動できたかも知れないというのに……
私はこのゲームが始まって運が強く働きすぎている。
私自身が恐怖を感じるほどに……
私が目覚めたところはなんと紅魔館であった。
私、四季映姫・ヤマザナドゥは紅魔館の図書館の中で目覚めたのだ。
これだけでも十分強運といえよう。
建物の中は行動が限定され、そして何より隠れる場所が多い。
殺人鬼が現れたとしても、逃げ切れる可能性が高い。広い館なのだ。なおさらである。
この利点はまだ序の口、まだ利点はある。
部屋の中にある本、冷めた紅茶、ベッド、イス……
備品が沢山だ。得物を奪われ、力を制限され、さらにはわずかな食料や水、道具しかない私たちにとって、豊富な飲食料、家具や道具は重要度が高い。
持っているだけで他者より一歩先に出ることが出来る。
長所ばかりで短所が殆ど無い場所なのだ。
私は沢山の本棚の影に隠れる。悔しいが、自分の身長が低めなので、影に逃げ込んでしまえばカモフラージュ率は相当高い。
道具の入った袋……スキマを開と……
第二の強運が始まった。
『ランダム武器』と言われていた道具は3つ入っていた。しかも、そのすべてが金属製。
金は古代より武器に使われてきた。それを意味するはすべてがすべて、武器なのだ。
そのうちの一つ、銃といわれる鉄の筒をスキマから『引きずり出す』
そう、引きずり出すほど巨大な銃だ。
小町なら多少格好にはなるだろうが、自分にはあまりにも大きすぎる銃。
説明書によれば MINIMI軽機関銃 というらしい。
機関銃くらい知っている。弾薬を自動的に発射し続ける銃のことだ。
弾幕勝負ではなく戦争の道具だ。この種類の銃で命を落とした人物など沢山知っている。
銃は確かに強い武器だ。
そして、銃の中でも強い種類は存在する。
詳しくは知らないが、単発式の銃より連射式のほうが強い。
小さな弾を飛ばす銃より、大きなライフル弾を飛ばす銃のほうが強い。
だったら、この銃は最強ではないか?
銃の中に伸びるベルト状のライフル弾の列、そして機関銃の連射力。
この銃に敵う銃など存在するのだろうか?
……しかし、重い。
閻魔の私だから持てるだろうが、この重さは10kg位だろうか。
片手で扱おうものなら腕が肩からぶちきれて落としてしまいそうだ。流石に冗談ですよ。
ぎりぎり扱える銃を付属のベルトで肩に掛け図書館から出る。
紅魔館はシンとしていた。うわさで聞いていた妖精メイドたちは残らず姿を消し、当主も妹も魔法使いもメイドもいない。
ただ、真紅の絨毯が廊下を一線走っている。
少し歩くと、扉があった。中に入ると其処はキッチン
キッチンの癖に、調理道具は少ない。食料は1に紅茶、2に紅茶……殆どが紅茶で埋め尽くされていた。
7くらいにようやく小麦を見つけることが出来た。
以前から変わった家だとは思っていたが、やはり予想は正しかったようだ。
変わり者でも一応は使えるから目をつぶることにする。
さらに廊下を先に進むと其処はエントランスが広がっていた。
私がエントランスについた瞬間、第3の強運が始まった。
ところ変わって、ダイニングルーム。
私の前には妖怪と騒霊がいた。
私がエントランスについた瞬間外への扉が開いた。
入ってきたのはこの2……人。
リリカ・プリズムリバーと黒谷ヤマメ。
いち早く気がついた私は机を蹴っ飛ばし、それを盾にミニミを扉に向けた。
机を蹴っ飛ばした音に反応した2人は銃を構える私に気がつく。
「うわぁ! わ、私たちはこのゲームに反対なのよ!」
「そうそう! 反対反対!!」
と、二人は両手を挙げながら震える声で言った。銃の知識は幻想郷では乏しいはずなのに……銃は向けられると強制的に腕を上げる能力でもあるのだろうか。
そして、現在に戻る。
本当にゲームに乗っていないようなので、一応は信用することにした。
「まったく、困ったことをしてくれるわ。今日はお昼から友達と遊ぶ予定だったのに」
「それなら私もだよ。明日の夜はライブだったのに」
「私は仕事が現在進行形で溜まっているのですけどね」
乾いた笑いしか出ずたはははと笑う。
するとヤマメがやれやれと肩をすくめながら
「まぁ、それも運命だとしてあきらめるしかないんじゃない?」
とぼやく。リリカも
「そうだよ。どうせなら早く異変を解決して明日に間に合わせればいいじゃん」
と、どうも二人は前向きな性格のようだ。
「ちょっと、だったら今日の昼に間に合わせてよ」
それは流石に無理じゃない?
「兎に角、お二人の異変を解決したいという気持ちは分かりました。
私もそう願っています。しかし、方法が分かりません。
何をするにもとりあえずこの首輪を外さない事には私たちの勝利はありえないでしょうから」
「そうだよね。あの人みたいにボンッって爆発したらひとたまりもないもの」
「あの音ははじめて聞いたよ」
「そうです。今ここにいる私たちでは首輪をはずすことは無理。それでも幻想郷全土から萃められたこの面子です。誰か一人くらいならはずすことが可能かもしれません」
「大方、あの河童だけだけどね」
「あのミサイルを撃ってくる奴?」
「アレは魔理沙……のオプション。ミサイルじゃなくて魚雷らしいよ」
「河童の保護ですか……難しいでしょう。どこにいるかも分からない。ゲームに乗らないとも限らない。
協力してくれるとも限らない……はぁ……」
あの性格の河童だ。自分からゲームに乗る可能性は0じゃないし、協力してくれない可能性も0じゃない。
最悪、既に殺されている可能性もあったりする。
「さぁ、どうするんだい? 閻魔さん。私はあまり頭の回転が速くないから、あんたが行動方針ってのをきめてくれる?」
「……私が言うことが絶対だと、絶対に思わないでください。
そして、私が出した命令を拒否する権限が貴方たちにはあります。
自分が違和感を感じた命令はそむいてくれて結構です。
異議も許可します。理由を求めることも許可します。
それをしっかり理解した上で私の話を聞いてほしい」
「なんだか難しい話ね。まあいいわ自分の考えは大切にってことでしょ」
「そうです。分かってくれたなら言います。
私たちはこの紅魔館に篭城します。」
『篭城!?』
二人は異口同音に声を上げた。
「そうです。時に……なぜ、禁止エリアというものがルールにあるか分かりますか?」
ヤマメは顎に手を添えて「そうねぇ……参加者を追い詰めるため?」と疑問系で答えた。
「そのとおりです。もっと言うなら参加者を歩かせるためです」
リリカはぽんと腕を叩き
「なるほど、かくれんぼで見つからないようにするには動かないこと。だって動いたら鬼に見つかっちゃうもん」
「またまた正解。例えば一つの壁をはさんで二人の人間がいたとします。二人が人形のように一歩も動かなければ、仮に1mも近くにいたとしても気がつかないでしょう」
リリカが映姫の考えを代わりに言葉にする。
「だけど動く、つまり音を奏でると壁の向こうの人間は音を聞いて壁の向こうの存在を認識する」
「そう、では一人だけ動いていた場合はどうなる?」
「簡単、動かなかったほうは向こうが動いていることを認識できるけど、動いたほうが認識できないわ」
「先に攻撃が出来るってわけね……」
「攻撃だけではなく、防御、逃走……なんでも対応できるわ」
「しかし、不利な点もいくつかあります。一つにここが紅魔館であるということ」
「主人の帰りね」
「あー。あの吸血鬼が帰ってきたら面倒だな」
「それだけでなく、貴方たちみたに訪れる者が多いって事です」
せっかくエンカウント率が下がったというのに場所自体のエンカウント率が高かったら意味が無い。
「だから、あえて他人との遭遇率の高さは無視します。訪れるものは片っ端から裁判に掛けましょう」
「そんなこと出来るの?」
「ええ、出来ますよ。今までの話はこのまま動かなかった場合。これからは篭城の話です」
紅魔館一階
本来ならメイドが掃除しつくし、ごみ一つ落ちていない真紅の絨毯が敷かれているはずである。
しかし、今はその面影が無かった。
外へと続く扉には巨大なテーブルやベッド、クローゼットが子供が作った積み木のお城のように積まれている。
「あーあー本当に聞こえるのかな? こちらヤマメ。異常ないわ」
「了解、一度戻ってきてください」
「了解ーっと」
廊下をヤマメが歩く。手にはMINIMI軽機関銃、そしてスカートのポケットには携帯電話が入っている。
「おっと、確かこっちは罠が張ってあるんだったな」
廊下のT路地を曲がろうとして足を止める。
よく目を凝らさないと見えないが、テグスが蜘蛛の巣のように張ってある。
細く鋭いテグスなので、走って蜘蛛の巣に突っ込もうものなら、その肉体は16分割されてしまうだろう。
「ただいまー。結構疲れるね」
「お疲れ様です。では次は私が見張りに行きます」
映姫はイスから立ち上がるとヤマメに手を出す。ヤマメはMINIMI軽機関銃と携帯電話を渡した。
その2つを受け取ると、映姫は廊下を歩いていった。
つまり、篭城とはこういうことである。
1階の出入り口はすべてバリケードで封鎖。そして、私たちがいる2階は1人が外に沿って巡回、哨戒。
1人が休憩をとり、1人が正門のあたりを監視。
このサイクルを一コマ30分。
この状況をサッカーで例えるならディフェンスが8、ミッドフィルダーが1、フォワードが1の超フルディフェンスな陣だ。
守りを固めることによって相手は動きを制限される。相手とは紅魔館を訪れるすべての者を指す。
相手がゲームに乗っているなら、迎撃。乗ってなかったとしても、足止めをすることによって相手が本当に乗っていないのか判断することが出来る。
そして、何より、この要塞化はマーダー避けにもなる優れものの布陣だった。
マーダーの基本的な考えは多くの者を殺したいであろう。
だったら篭城=人がいるという方程式が成り立ち、狙われるのではないか?
それは安直な考えだ。マーダーは殺したいという欲求のほかに、自分は死にたくないという殺人衝動を越える欲求を持っている。
マーダーはこの要塞を見てこう考えるだろう。
「この要塞を落とすには手がかかりそうだ」
たとえ要塞を落とすことが出来るほどの力を持っていたとしても、簡単にはいかない。下手をしたら手傷を負うかも知れ無い。
自分が傷つくくらいなら、もっと他の簡単に殺せる参加者を探したほうが安全だ。他のマーダーに任せればいい。
抑止力が働くのだ。
ハリボテの要塞だが、これでしばらくは持ってくれる。果報は寝て待てだ。
今交代したばかり、私は休憩、リリカは監視、映姫さんは哨戒。
私たちの篭城は始まったばかりだ。
【C‐2 紅魔館F2・一日目 黎明 】
【四季映姫・ヤマザナドゥ】
[状態]健康
[装備]MINIMI軽機関銃 残弾(200/200)、携帯電話
[道具]支給品一式、不明アイテム(金属製の武器)
[思考・状況]紅魔館に篭城。哨戒中
【リリカ・プリズムリバー】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)
[思考・状況]紅魔館に篭城、正門監視中
【黒谷ヤマメ】
[状態]健康
[装備]携帯電話
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)
[思考・状況]紅魔館に篭城、休憩中
※紅魔館1階の出入り口はすべてバリケードが張られています。
※紅魔館2階にはブービートラップが張られています。
映姫に支給されたのはMINIMIと携帯電話2つと不明1です。
携帯電話は電波が立っていて、通常機能のほかに、2台を1ボタンで通話可能に出来る機能がついている特殊仕様です。
代理投下終了。
乙です。感想を
映姫さまに機関銃とかw いったい何が始まるんです?
あと喜べ冴月、話題に上がったぞ
投下乙です
通常なら一つの場所にに籠もるのはそれなりの手段だけど、ここはロワだからなあw
しかもお嬢様や咲夜さんに知られたら怖いぞーw
投下乙です
籠城は死亡フラグですぜ映姫様
防衛を強化し過ぎて、逆にマーダーが潜んでいると取られなきゃ良いけど
それと一応、気になったところを指摘
映姫様の身長に関しては諸説あるから、明言は避けるのが吉と思う
花映塚では小町の次に背が高く、求聞史紀では優曇華よりも背が低い。それが映姫様
携帯電話は幻想郷に無い物である以上、多少なりと説明がいるような気もする
トラップとして仕掛けたテグスも、誰かの支給品だったのか、紅魔館で見つけた物なのか知らんけど
どこから手に入れた物なのかということは、説明しておいた方が良いと思う
まぁ……普通、釣り糸として使われるようなテグスでは、指先は切れても身体を切断するなんて不可能だけどね
後、ヤマメのスカートにポケットがあるというのは知らなかったけど、ソースはどこから?
投下乙です。
<幽×勇>
そういえば、弾幕なんかに頼る必要のない人もいるんですよね。
この二人が何をするか、とても楽しみです。
<紫チーム>
こーりんったら最強ね!
非戦闘キャラでも、武器を持たせれば活躍が見込めますね
唯一の男性キャラだけに、何かを起こしてくれ!
映姫チームは修正中ということで、感想はまた今度ということで。
12時になったら作品を投下します。
8000字くらいあるので、支援が必要です。
誰か助けて・・・
時間になったので、投下します。
題名は「奇跡のダークサイド」で
方角的に博麗神社から発せられたと思われる星の弾幕。発生からまだ1分も経っていないといったところか。
それに向かって二人の女性が歩き出している。
「さてパチュリー。あそこに行くことに、お前も同意することはありがたいが・・・
あそこまで行くのに体力がもつのか?」
慧音はやや心配そうな表情をパチュリーに向ける。
偏見的な考えで悪いが、どうも彼女には遠くまで歩けるほどの体力すら無いように思える。
紅魔館の者たちは人里に来ることが(一部人物を除いて)無いに等しいことから、噂や人民のイメージでしか彼女たちの人物像を組み立てられないのだ。
現に、パチュリーは
「そうね・・・正直、階段を登るだけでも辛いかも」
と、まるで当たり前であるかのように言い返してくる。
いくらなんでも軟弱すぎないか?
そう思った慧音だが、言葉にはしないでおく。
「やれやれ、仕方が無いな。なんならお前を担いでいくか、それともここで待っているか」
貧弱な体力の持ち主のパチュリーに無理をさせるわけにはいかない。
そう考えた上で目的地に行く手段を練る慧音だったが、
「気遣いはいいわ。それに、私も空のアレには興味があるから」
パチュリーには何か思うところがあるのだろうか。行動方針を変えようとはしない。
「そうか。ならばお前を担いででもあそこまで行かないとな。
だとすると、せいぜい何分くらい掛かるか・・・」
自分ひとりでもこの森を移動するには骨が折れる。その上で体調不良および人一人を担ぐとなると、かなり厳しい。
これには体力には自身のある慧音でも、諦めたくなる。
だが、パチュリーは言う。
「そうね、大体7〜8分くらいってところかしら」
「はぁ?」
それはひょっとして本気で言っているのだろうか?
何も無い平原ならともかく、この悪条件ではその10倍くらいは確実に食う。
「いくら何でもそれは・・・ん?」
慧音はパチュリーに抗議しようとするが、その彼女はスキマから何か細長いものを取り出した。
「それは・・・」
「これがあれば空を飛んでいけるはずよ」
パチュリーがスキマ袋から取り出したのは一本の箒。
一見、ただの箒に見えるが、魔理沙の影響でそう思えない。しかも、ご丁寧に持ち手部分にはその彼女の名前が書かれている。
パチュリーが箒にまたがると、その身体がふわっと宙に浮いた。
「じゃ、行くわよ。早く乗って」
「うむ、分かった」
慧音はそう言われると、パチュリーの後ろに座るように乗った。すると、徐々に空に向かって加速していく。
―少女(1名除く)飛行中
「まさか、こうして空を飛ぶことになるとはな。なんだか懐かしく感じるよ」
「気持ちは分かるわ。けど・・・」
バサバサッ
「へぶっ!?」
「横から生える木の枝には気をつけて・・・って、もう遅かったわね」
木の高さよりも高度が低いため、木の枝が思ったより邪魔だ。
小柄なパチュリーには当たらなくても、そうでない慧音には頭から当たることもある。
「あ、ああ・・・次からは気をつける」
「もうちょっと高く飛べるかもしれないけど、狙撃されたら困るし、我慢してちょうだい」
「分かっている」
その頃、二人の目的地である星の発生場所である博麗神社では
「あのー・・・その黒くて硬いモノ、しまってくれません・・・か?」
早苗は今、目の前にいる妖怪兎に銃を向けられようとしている。
外の世界ではテレビやマンガなどで当たり前のように登場する銃が、まさかこの世界で自分に向けられるとは今まで思ってなかった。
銃は容易く撃たれた者の命を奪う。弾幕とは威力およびスピードが桁違いだ。
今、まさに自分は撃たれようとしている。正直、怖い。それなのに、何のんきな事を言っているのだろう。
しかし、恐怖を感じているのはてゐも一緒だった。
長年生きているからこそ敏感に感じる自分の妖力の低下。それに対し、向こうは枷が無くなった人間の形をしている神。
どう考えても勝ち目が無い。現に今、早苗の頭上には先ほど合図のために使われた今はもう輝きの失せた弾幕の残りカスが浮いている。
彼女がスペルカードを手にした今、頭上の弾幕が自分を押しつぶすのは時間の問題だった。そう、時間の問題だ。大事なことなので、2回表現しておく。
(時間の・・・問題・・・?)
こんな時でも知恵が回る自分の頭脳に、初めて感謝する。
早苗の神の力が無くなるまで6〜7分といったところ。その瞬間、彼女は再び枷をはめられる。付け入るならばそこしかない。
制御装置の効果が失っても弾幕が消えるかどうかは分からないが、術者が死ぬもしくは戦闘不能になれば強制的に消えるはず。
時間が過ぎるのを待つのは気に食わないが、あの星を見てすぐに駆けつけたとしても空を飛ばない限り、森を抜けここに来るのに10分やそこらで辿り着けるわけがない。逃げる時間はあるはずだ。
つまり、てゐの作戦は簡単に言うとこうだ。時間が過ぎるまで待ち、早苗が枷をはめられた瞬間に彼女を銃殺する。
非常にシンプルだが、しかたがない。枷の無い彼女を正面から殺すのは諦めた。
鈴仙が弾幕ごっこで、殺る気がないのに平然と銃を相手に向けてぶっ放すことから、どうも正面から枷のない神を銃弾程度で殺せる気がしないからである。
てゐに降りかかる神の力が消えるまで、後5分。
しかし、てゐの予想に反し、空を飛んで向かっている者たちがいた。
「これがあるならば簡単に飛行できるということか。ミニ八卦炉といい、魔理沙は本当にすごいのを持っていたものだ」
女性の中は体格が大きい自分まで同乗してもびくともしないのは、流石は魔理沙のアイテムといったところか。
と、思ったが
「いいえ、ミニ八卦炉がすごいアイテムだということは認めるけど、箒は大したものじゃないわ」
「どういうことだ?」
違うのか。慧音は怪訝そうな声で尋ねる。
「あなたはこれがあれば誰でも空を飛べると思っているわね。でも違うの。
この箒は飛行移動に使う力を増強させるだけのもの。
飛べない人が使ってもただの箒でしかならない。魔法の使えない人に魔法書を持たせても無意味なのと一緒よ。
所詮、ゼロに何を掛けてもゼロ。あなたの寺子屋の子供たちにこれで飛べといっても無理でしょうね」
「確かに事実かもしれんが、将来有能になる子供たちを馬鹿にするな。
第一、私達も何を掛けてもゼロになるというゼロの状態じゃないのか?
お前が言う箒の理屈がそうだとしたら、矛盾しているぞ」
パチュリーの返答に対してムッと思った慧音が食らい付く。
「ゼロだったら、ね。じゃあ、0.1だったらどうだと思う?」
まるで、慧音がそう尋ねるだろうと予想していたかのように言い返した。
「それは・・・まさか、そういうことか?」
「私達の飛行能力は完全に無くなったわけではない。ほとんどゼロになっただけ。
私なら完全にゼロに出来る呪いを作れるだけに、この首輪の性能も高が知れてるわね」
この魔女、恐ろしい。噂以上の人物だ。
だが、それだけに味方になればこれほど頼りになる者もそうはいない。
慧音は凄まじい人力を得たと思う。それに、あの星で仲間がさらに集まるだろう。これにより更に良い人材も集まると思われる。
少しずつだが、脱出の鍵が見えてきた。そう思うと、希望が沸いてくる。
ただ、慧音が慢心な気分になっている傍らで、パチュリーはいまいち腑に落ちない気分に浸っていた。
(どうも納得いかない・・・。あの月の頭脳にしては甘すぎる気がするわ)
もちろん、パチュリーは永琳のことはレミリアや咲夜からちらっと聞いた程度で、詳しくは知らなかった。
ただ、慧音から得た情報でようやく分かった。あらゆる薬を作る技術と頭脳を持ち、年季も自分とは桁違いだという。
自分とは明らかに格が違う。でも、やっていることは正直、甘い。誰もが厳しいと思っている制限だと思う中でパチュリーは思った。
魔法書の中で生きていたとはいえ、100年ぽっちしか生きていない自分でさえ首輪による制限よりももっと厳しくする自身がある。
それなのに、永琳が設けた制限は年季の割にはあの程度のもの。月の頭脳はそんなものか、この年増が。
いや、それ以前に力を制限するのに機械を使うこと自体が永琳らしくない。彼女ならば薬を使うはずだ。
外の世界の奴じゃあるまいし、機械を使うなんて明らかに変だ。
永琳が機械に関する知識もずば抜けていると考えたが、それも無い。そうだったら妖怪の山の河童たちは守屋の神様よりもそっちを頼るはず。
それに、パチュリーも首輪が厄介だと思っている以上、過小評価はしない。
機械には無頓着な自分だが、それでも本当にこの首輪は良くできていると思う。
ここまで来ると、あの永琳が本物なのかどうかが疑いたくなる。
機械に関しては外の世界の住民に助力を頼めばよいが、それで永琳が何もしないのはおかしい。
第一、永琳の主人であるはずの輝夜まで巻き込まれている。助力どころか反抗するだろう。
だとすると・・・
(あれは本当に永琳という人かしら?まるで、外の世界の奴みたい・・・)
このことを念のため、慧音に言っておくか?
そう思っていると
「もうすぐ着くようだな」
「ん、もう?意外に早いのね」
どうやら、考え込んでいるうちに目的地である博麗神社付近に辿り着いたようだ。
今まで考えていたことは後で言うことにしよう。
「うーん、今の私だとこれ以上高度を上げることは出来ないみたい。
このままだと、石段の上で着陸するしかないようね」
高度を上げようと思ったが限界があるようだ。高い魔力を持つ自分でも森の木の高さを飛ぶのでせいぜいといったところか。
しかたがない。そう思い、言ったとおりに石段で着陸した。とはいえ、神社まですぐそこだ。
「それじゃ、上りましょ」
「そこまで体力は持つのか?」
「・・・あなた、私を何だと思ってるの?」
「い、いや・・・何でもない」
ギンと横目で慧音を睨みながら石段を登っていく。
慧音はそれに付いて行く。・・・が、数秒もせぬうちに慧音のほうが前になっていた。
やはり体力には難ありといったところか。
「だから、あなたが怖かったからなんだってばぁ・・・」
「理由になってませんよ!何回言わせるつもりですか!?」
早苗の枷が再び掛かるまで、てゐは話し合いで時間を潰していた。
の、はずだが、今の状況は早苗が怒り、てゐはそれに更におびえて涙目になっている図だった。
「私は最初からゲームに乗る気はありません!だったらあの装置をこんな形で使ったりしませんよ!」
「ひっ!?」
口を開くたびに怒りの表情に変わっていく早苗を前に、てゐは怯えるばかり。
肝心の銃も床に落としてしまっている。銃口を向けられなくなったからか、早苗は強気になっているだろう。
もはや、てゐは絶望的な状況下にある。誰が見てもそれは明らかだ。
「うう〜・・・」
泣きたくなってきた。というか、もう目が涙で潤んでいた。
「もう嫌だ・・・嫌だよぉ・・・」
そして、仕舞いには泣き崩れてしまった。
(こ、これって、私が悪かったのかな・・・?)
てゐが泣いている様を見て、早苗は思わず良心が傷んだ。
これでは自分が子供をいじめている様にしか見えない。
命を狙われた以上はもっと怒ってもいいのだが、相手がこうなっては流石にきつい。
(やりすぎ・・・だよね。てゐさんも謝っているし、仲直りした方がいいかな)
早苗がそう思った時
ピーーーーーッ!!
「えっ、何ですか!?」
突然の音に早苗は戸惑った。慌てて周囲や自分の首輪を見てしまう。
しかし、てゐはそれが何か分かっていた。制限解除の時間が切れた音だ。
「よっしゃ!」
計算どおり。しかも、突然の音に早苗はこちらへの警戒を一瞬解いた。殺すならば今だ。
今まで弱腰だったのが演技であるかのように途端に強気になり、目の前に落ちている銃を拾う。
「10分経ったってこと・・・?
はっ!てゐさんは・・・!?」
早苗が一瞬てゐから目を放した隙に、当の彼女は落とした銃を握っていた。
「しまった!」
撃たれる!そう思った早苗は反射的に頭上にあるグレイソーマタージの弾幕を発動した。
だが、もう遅い。今更弾幕で攻撃しようが、それよりも銃による攻撃のほうが速いのだ。
「勝ったッ!東方星蓮船完!」
後は銃口を早苗に向けてぶっ放す。弾幕が襲う前に息の根を止めてしまえば避ける必要はない。
この時点でてゐは己の勝利を確信した。何もかも計算どおり。ここまで気分がいいのは久しぶりだ。
だが、それだけに
「どうしたんだ?やけに騒がしいような・・・」
(え・・・、こんな時に誰かが来て・・・?)
勝気だったてゐの表情は急に冷め、冷や汗がどばっと吹き出した。
てゐは、ここまでに誰かが来ることはないと思っていただけに、突然の来訪者の声に敏感に反応してしまった。
例えそいつが殺し合いに乗っていない可能性があったとしても、
「あ、あ、あ・・・殺される、殺される、殺され・・・」
と思ってしまう。
あまりにも計画通りにいくと、それが突然崩れたとき、
「うわあああああああ!!」
このようにパニックになるだろう。それが生死をかけた事柄だけになおさらだ。
早苗に向けるはずの銃口は思わず、声がした方向へと向けてしまった。
石段を登っていく途中、ついに博麗神社の屋根が見えた。
そして、それと同時に弾幕が不自然な形で停止しているのも確認できる。あれが合図に使った弾幕なのだろう。
「もうすぐだな。あそこに行けば休めるだろう。仲間もいそうだしな」
慧音は我先に、というような駆け足で階段を上る。先に行って様子を見に行くという意味もこめてだった。
「そうね。・・・ん?」
慧音を見送るように上を見たパチュリーは異変を感じた。それはあの弾幕からだった。
最初に見たときは止まっている風に感じ取れたが、突然それが変わった。今、あの弾幕の動きは・・・
「今のは・・・まさか!」
パチュリーは嫌な予感がし、全力で慧音を追った。
あと数段登れば階段は終わりだ。
その時、慧音は何だか騒がしさを感じた。何があったのか。気になるところだ。
「どうしたんだ?やけに騒がしいような・・・」
「うわあああああああ!!」
「慧音!上を見て!・・・・・・なっ!?」
突然、前にいる兎妖怪が悲鳴を上げた。その後、パチュリーが来て叫ぶ。
なんだこれは?慧音はただ事ではないと思った。
「・・・!!?」
そんな彼女たちの様子に思わず言われたとおりに上を見た。
すると・・・
「な、弾幕が襲ってくる・・・だと!?」
慧音が上を見ながら叫んだ。
「はっ!?やめて!止まってー!!」
再度命を狙われたとはいえ、早苗はつい、てゐを攻撃してしまった。
しかも、彼女の近くに他の人が二人もいる。特に、大きな方の人は弾幕の射程範囲内にいる。
このままでは大惨事になる。早苗は慌てて弾幕を解除した。
「ああああああ・・・」
「くっ!」
ドガガガガガガガ!!!
轟音が神社とその周辺を包む。
どうやら、解除のタイミングが遅かったため何発かは地面や鳥居に衝突した。
「だ、大丈夫ですか!?」
やってしまった。早苗は思わず二人の下に駆けつける。
射程内にいたてゐと慧音は・・・
「く・・・一発もらったか・・・。おい、大丈夫か!」
慧音はてゐを抱え、無事を確認した。てゐもコクコクと涙目になりながら頷く。
てゐは慧音の救助のおかげで無傷だった。慧音は肩に一発かすったが、せいぜい金属バットで殴られた程度のダメージで、命に別状はない。
だが、慧音は思った。
(あの弾幕は罠だったのか・・・!人間がこんなことを・・・
それに、力を制限されているにも関わらず、これほどの力を持っているとは・・・危険すぎる!)
あの弾幕をまともに食らっていたら、と思うと恐ろしい。
本当は枷のない状態のときに撃ったものなのだが、そんなことを知らない慧音はそう思わざるを得ない。
慧音はちらっとパチュリーの方を見る。弾幕の硝煙のせいでよく見えなかったが、気絶しているように見えた。
このままでは3人とも殺される。逃げるしかない。そう思った。
「・・・くそっ!」
慧音はてゐを連れ、パチュリーの元に駆けつけた。
「逃げるぞ、パチュリー!」
そう言って、慧音は落ちていた箒とスキマ袋を持ち、パチュリーを抱え、箒にまたがった。
パチュリーの返事が無かったが、かまわずに逃げる算段をする。
「お前もこっちに来い!」
「え、ちょっ」
慧音はてゐの腕を引張り、彼女も箒に乗せる。
そして、3人を乗せたその箒はあっという間にこの場から去っていった。
「あっ、待ってください!さっきのは違うんです!誤解なんですよー!!」
このままじゃ誤解される。
そう思った早苗は慧音たちを引きとめようとしたが、まさか空を飛んで逃げるとは思わなかった。
追ってももう無駄だと分かっていても、止まらずにいられなかった早苗は3人を追おうとした。
ズルッ!
「ひゃん!?」
そのとき、何かを踏んで滑ってうつ伏せに転んでしまった。
その拍子で、自分の服や身体にベットリと何かが付く。
「いたた・・・」
…そういえば、こんなところに転ばせるものなんてあっただろうか?しかも、なんだか液体のような踏み応えだった気がする。
恐る恐る地面を確認する。すると・・・
「いやああぁぁ!ち、血が!?何で!!?」
早苗が倒れた地面には赤い血がこぼれていた。その血は彼女の服に、身体にベットリと付着する。
「ど、どうしよう・・・。これじゃ、思いっきり人殺しに・・・」
そもそも、なんでこんなところに・・・
そう思ったとき、コロンコロンと何かが転がった。
「これって・・・銃弾?」
早苗は銃弾が何個か転がっているのを見つけた。しかも、熱を持っていることから撃ったばかりのものだと思われる。
あの時、銃を持っていた人は・・・
あの時、ここにいた人は・・・
【G‐4 博麗神社・一日目 黎明】
【東風谷早苗】
[状態]疲労・精神的疲労
[装備]グレイソーマタージ
[道具]支給品一式、制限解除装置(現在使用不可)、不明アイテム1〜3
[思考・状況]このままじゃ、人殺しに・・・。
[行動方針]誤解を解く。
[備考]早苗の服に血(自分のではない)が付着しています。
火事場の馬鹿力とはこういうときに言うものだろうか。3人を乗せた状態でも慧音は空を飛んで逃げることが出来た。
そして今、博麗神社のすぐ北西の森にいる。まさに危機一髪だった。
いや、そうでない者が・・・一人いた。
「パチュリー?おい、パチュリー!目を開けろ!」
慧音は動かないパチュリーを揺さぶり、呼びかけていた。
だが、彼女は目を開けることは無かった。
あの弾幕にやられたのだろう。心臓の辺りを何発も撃たれて出血している。生きているわけがない。
「嘘だろう・・・?お前が死ぬだなんて・・・」
慧音は自分を責めた。自分があんなところに行こうと言わなければ彼女はこうはならなかっただろうに。
「すまない、パチュリー・・・!」
自分が許せない。
自分の安易な考えが彼女を死に追いやったとも言える。守ってやることすら出来なかった。これは自分のミスだ。
「あの人間め・・・。ただでは済まさんぞ」
だが、それ以上にあの人間が許せない。
ギロッと、あの人間がいた方向を睨みつける。
「次に会ったときは、覚悟しておけ。私がたっぷりと教育してやる・・・」
殺気のこもった声でつぶやくと、あの人間からは一旦逃げるために、この場を去った。
慧音が早苗のいた方向を睨みつけるのを見て、てゐは思った。
どうやら、慧音はあの出来事の一部始終を勘違いしている、と。
彼女は早苗がゲームに乗っていて、パチュリー(とかいう魔女)を弾幕で撃ち殺したと思っているようだ。
だが、本当はそうじゃない。
パチュリーを殺したのは自分なのだ。恐怖に駆られ、あの銃で撃ち殺してしまったのだ。おそらく即死だろう。
そのときは慧音は早苗の弾幕に気をとられていたために、あれに気づかなかったのだろう。
だとすると、あの状況から逃げ出せたのはラッキーだといったところか。
これから自分はどうするか、考えた。
今一緒にいる慧音は疲労しているものの、あの状況から自分を助けてくれたのだ。少なくとも、早苗といるよりは安心できる。
それに、自分の銃とスキマ袋は向こうに置いていってしまったため身を守る手段がない。とりあえず、今は一人でいるよりはいいだろう。
だが、早苗がゲームに乗っていないこととパチュリーを殺したのが自分だとバレたらやばいため、そこはなんとか誤魔化そう。
そう思い、慧音の後を付いていった。
【G‐3 一日目 黎明】
【上白沢慧音】
[状態]疲労大
[装備]白楼剣、魔理沙の箒
[道具]支給品一式×2、にとりの工具箱、スペルカード×1
[思考・状況]ここから逃げ出す。
[備考]早苗がゲームに乗り、パチュリーを殺したと思ってます。
【因幡てゐ】
[状態]やや疲労
[装備]スペルカード×1
[道具]無し
[思考・状況]慧音に付いていく。最終的に永琳か輝夜の庇護を得る。
[備考]早苗の情報と、置いてきたスキマ袋の中身を知っています。
※てゐが持っていた銃とスキマ袋は博麗神社にあります。
【パチュリー・ノーレッジ 死亡】
【残り49人】
代理投下終了
投下乙です。
作戦自体は失敗したけど結果的に上手いこと動けたなー、てゐw
新たな保護者を利用しつつどこまでいけるか……。
早苗さんはケロちゃんが向かってるとはいえ、
このままじゃ人格者慧音の証言&てゐのあることないこと吹き込む話術で今後がやばいw
パチュリー……。
投下乙
パチュリーの殺害カウントはてゐで大丈夫なのかな
待っても反応が無いので◆27ZYfcW1SM氏の修正版代理投下します。
なぜ私にこれほどの力が……この力が力なき者に与えられていたとしたら……
その者は延命出来たかも知れないというのに……
なぜ私にこれほどの技術が……この技術にふさわしい者に与えられていたとしたら……
私よりも効率よく行動できたかも知れないというのに……
私はこのゲームが始まって運が強く働きすぎている。
私自身が恐怖を感じるほどに……
私が目覚めたところはなんと紅魔館であった。
私、四季映姫・ヤマザナドゥは紅魔館の図書館の中で目覚めたのだ。
これだけでも十分強運といえよう。
建物の中は行動が限定され、そして何より隠れる場所が多い。
殺人者が現れたとしても、逃げ切れる可能性が高い。広い館なのだ。なおさらである。
この利点はまだ序の口、まだ利点はある。
部屋の中にある本、冷めた紅茶、ベッド、イス……
備品が沢山だ。得物を奪われ、力を制限され、さらにはわずかな食料や水、道具しかない私たちにとって、豊富な飲食料、家具や道具は重要度が高い。
持っているだけで他者より一歩先に出ることが出来る。
長所ばかりで短所が殆ど無い場所なのだ。
私は沢山の本棚の影に隠れる。深い緑色と紺色の服なので、影に逃げ込んでしまえばカモフラージュ率は相当高い。
道具の入った袋……スキマを開と……
第二の強運が始まった。
『武器』と思われる道具は3つ入っていた。しかも、そのすべてが金属製。
金は古代より武器に使われてきた。それを意味するはすべてがすべて、武器なのだ。
そのうちの一つ、銃といわれる鉄の筒をスキマから『引きずり出す』
そう、引きずり出すほど巨大な銃だ。
小町なら多少格好にはなるだろうが、自分にはあまりにも大きすぎる銃。
説明書によれば MINIMI軽機関銃 というらしい。
機関銃くらい知っている。弾薬を自動的に発射し続ける銃のことだ。
弾幕勝負ではなく戦争の道具だ。この種類の銃で命を落とした人物など沢山知っている。
銃は確かに強い武器だ。
そして、銃の中でも強い種類は存在する。
詳しくは知らないが、単発式の銃より連射式のほうが強い。
小さな弾を飛ばす銃より、大きなライフル弾を飛ばす銃のほうが強い。
だったら、この銃は最強ではないか?
銃の中に伸びるベルト状のライフル弾の列、そして機関銃の連射力。
この銃に敵う銃など存在するのだろうか?
……しかし、重い。
閻魔の私だから持てるだろうが、この重さは10kg位だろうか。
片手で扱おうものなら腕が肩からぶちきれて落としてしまいそうだ。流石に冗談ですよ。
もう一つ出てきたのは金属製のケース。真鍮かブリキ、ジュラルミンあたりの素材だ。
中を開けると白と黒の2つの小型の機械が入っていた。白い衝撃吸収剤に包まれて入っているので精密機械だろう。
蓋の裏に取扱説明書が貼り付けてあったので、はがして読む。
携帯電話 取扱説明書
このたびは、我社の携帯電話をお買い上げいただき、まことにありがとうございます。
【こんな使い方は絶対NG!】
クルマの運転中、飛行機や病院、指定品以外の使用
充電端子を接触させない、水や海水につけない/ぬらさない
分解/改造しない(ここにボールペンで横線が引いてある)
加熱しない。
【ココがすごい 新しい】
高性能大型液晶、高性能カメラ(5.2メガオートフォーカス)
自分の位置情報をしっかりキャッチ! GPSナビ
長時間バッテリー
1ボタン通話(なぜかここだけ手書きで書かれている)
・ ・ ・
このようなことがずらずらと書かれてある。説明書の癖に一冊の六法全書みたいだ。
一応図が載ってあり、簡単な基本操作はある程度分かった。
カコ、カコともう一台と通話が出来るようになるボタンを押す。1ボタンといいつつ実は2回だった。
『ちゃらららら〜ちゃらららら〜♪』
びくっ! っと思わず飛び跳ねてしまった。
この曲は「六十年目の東方裁判 〜 Fate of Sixty Years」
それも結構な音量だ。もともとの曲がそうであるように……
それより、音を出すほうが問題だ。すぐに白いほうの携帯電話を取り、通話ボタンを押す。
「も、もしもし……」
『――も、もしもし……』
……無言で通話終了ボタンを押した。マナーモードはどうやるんだっけ?
ぎりぎり扱える銃を付属のベルトで肩に掛け図書館から出る。
紅魔館はシンとしていた。うわさで聞いていた妖精メイドたちは残らず姿を消し、当主も妹も魔法使いもメイドもいない。
ただ、真紅の絨毯が廊下を一線走っている。
少し歩くと、扉があった。中に入ると其処はキッチン
キッチンの癖に、調理道具は少ない。食料は1に紅茶、2に紅茶……殆どが紅茶で埋め尽くされていた。
7くらいにようやく小麦を見つけることが出来た。
以前から変わった家だとは思っていたが、やはり予想は正しかったようだ。
変わり者でも一応は使えるから目をつぶることにする。
さらに廊下を先に進むと其処はエントランスが広がっていた。
私がエントランスについた瞬間、第3の強運が始まった。
ところ変わって、ダイニングルーム。
私の前には妖怪と騒霊がいた。
私がエントランスについた瞬間外への扉が開いた。
入ってきたのはこの2……人。
リリカ・プリズムリバーと黒谷ヤマメ。
いち早く気がついた私は机を蹴っ飛ばし、それを盾にミニミを扉に向けた。
机を蹴っ飛ばした音に反応した2人は銃を構える私に気がつく。
「うわぁ! わ、私たちはこのゲームに反対なのよ!」
「そうそう! 反対反対!!」
と、二人は両手を挙げながら震える声で言った。銃の知識は幻想郷では乏しいはずなのに……銃は向けられると強制的に腕を上げる能力でもあるのだろうか。
そして、現在に戻る。
本当にゲームに乗っていないようなので、一応は信用することにした。
「まったく、困ったことをしてくれるわ。今日はお昼から友達と遊ぶ予定だったのに」
「それなら私もだよ。明日の夜はライブだったのに」
「私は仕事が現在進行形で溜まっているのですけどね」
乾いた笑いしか出ずたはははと笑う。
するとヤマメがやれやれと肩をすくめながら
「まぁ、それも運命だとしてあきらめるしかないんじゃない?」
とぼやく。リリカも
「そうだよ。どうせなら早く異変を解決して明日に間に合わせればいいじゃん」
と、どうも二人は前向きな性格のようだ。
「ちょっと、だったら今日の昼に間に合わせてよ」
それは流石に無理じゃない?
「兎に角、お二人の異変を解決したいという気持ちは分かりました。
私もそう願っています。しかし、方法が分かりません。
何をするにもとりあえずこの首輪を外さない事には私たちの勝利はありえないでしょうから」
「そうだよね。あの人みたいにボンッって爆発したらひとたまりもないもの」
「あの音ははじめて聞いたよ」
「そうです。今ここにいる私たちでは首輪をはずすことは無理。それでも幻想郷全土から萃められたこの面子です。誰か一人くらいならはずすことが可能かもしれません」
「大方、あの河童だけだけどね」
「あのミサイルを撃ってくる奴?」
「アレは魔理沙……のオプション。ミサイルじゃなくて魚雷らしいよ」
「河童の保護ですか……難しいでしょう。どこにいるかも分からない。ゲームに乗らないとも限らない。
協力してくれるとも限らない……はぁ……」
あの性格の河童だ。自分からゲームに乗る可能性は0じゃないし、協力してくれない可能性も0じゃない。
最悪、既に殺されている可能性もあったりする。
「さぁ、どうするんだい? 閻魔さん。私はあまり頭の回転が速くないから、あんたが行動方針ってのをきめてくれる?」
「……私が言うことが絶対だと、絶対に思わないでください。
そして、私が出した命令を拒否する権限が貴方たちにはあります。
自分が違和感を感じた命令はそむいてくれて結構です。
異議も許可します。理由を求めることも許可します。
それをしっかり理解した上で私の話を聞いてほしい」
「なんだか難しい話ね。まあいいわ自分の考えは大切にってことでしょ」
「そうです。分かってくれたなら言います。
私たちはこの紅魔館に篭城します。」
『篭城!?』
二人は異口同音に声を上げた。
「そうです。時に……なぜ、禁止エリアというものがルールにあるか分かりますか?」
ヤマメは顎に手を添えて「そうねぇ……参加者を追い詰めるため?」と疑問系で答えた。
「そのとおりです。もっと言うなら参加者を歩かせるためです」
リリカはぽんと腕を叩き
「なるほど、かくれんぼで見つからないようにするには動かないこと。だって動いたら鬼に見つかっちゃうもん」
「またまた正解。例えば一つの壁をはさんで二人の人間がいたとします。二人が人形のように一歩も動かなければ、仮に1mも近くにいたとしても気がつかないでしょう」
リリカが映姫の考えを代わりに言葉にする。
「だけど動く、つまり音を奏でると壁の向こうの人間は音を聞いて壁の向こうの存在を認識する」
「そう、では一人だけ動いていた場合はどうなる?」
「簡単、動かなかったほうは向こうが動いていることを認識できるけど、動いたほうが認識できないわ」
「先に攻撃が出来るってわけね……」
「攻撃だけではなく、防御、逃走……なんでも対応できるわ」
「しかし、不利な点もいくつかあります。一つにここが紅魔館であるということ」
「主人の帰りね」
「あー。あの吸血鬼が帰ってきたら面倒だな」
「それだけでなく、貴方たちみたに訪れる者が多いって事です」
せっかくエンカウント率が下がったというのに場所自体のエンカウント率が高かったら意味が無い。
「だから、あえて他人との遭遇率の高さは無視します。訪れるものは片っ端から裁判に掛けましょう」
「そんなこと出来るの?」
「ええ、出来ますよ。今までの話はこのまま動かなかった場合。これからは篭城の話です」
紅魔館一階
本来ならメイドが掃除しつくし、ごみ一つ落ちていない真紅の絨毯が敷かれているはずである。
しかし、今はその面影が無かった。
外へと続く扉には巨大なテーブルやベッド、クローゼットが子供が作った積み木のお城のように積まれている。
「あーあー本当に聞こえるのかな? こちらヤマメ。異常ないわ」
「了解、一度戻ってきてください」
「了解ーっと」
廊下をヤマメが歩く。手にはMINIMI軽機関銃、そしてスカートのポケットには携帯電話が入っている。
「おっと、確かこっちは罠が張ってあるんだったな」
廊下のT路地を曲がろうとして足を止める。
よく目を凝らさないと見えないが、ピアノ線が最初に首の辺りの高さに……
あとは蜘蛛の巣のように張ってある。実際何のワイヤーかは知らないが、倉庫のほうに置いてあったものだ。
細く鋭いピアノ線なので、走って蜘蛛の巣に突っ込もうものなら、その肉体は16分割されてしまうだろう。
まぁ、実際になるのは首が刎ねられるだけどね……
後に続くピアノ線は、行く手を妨害するためだ。ここを突破されてしまっては私たちが待機している部屋へとすぐに到達されてしまう。
「ただいまー。結構疲れるね」
「お疲れ様です。では次は私が見張りに行きます」
映姫はイスから立ち上がるとヤマメに手を出す。ヤマメはMINIMI軽機関銃と携帯電話を渡した。
その2つを受け取ると、映姫は廊下を歩いていった。
つまり、篭城とはこういうことである。
1階の出入り口はすべてバリケードで封鎖。そして、私たちがいる2階は1人が外に沿って巡回、哨戒。
1人が休憩をとり、1人が正門のあたりを監視。
このサイクルを一コマ30分。
この状況をサッカーで例えるならディフェンスが8、ミッドフィルダーが1、フォワードが1の超フルディフェンスな陣だ。
守りを固めることによって相手は動きを制限される。相手とは紅魔館を訪れるすべての者を指す。
相手がゲームに乗っているなら、迎撃。乗ってなかったとしても、足止めをすることによって相手が本当に乗っていないのか判断することが出来る。
そして、何より、この要塞化はマーダー避けにもなる優れものの布陣だった。
マーダーの基本的な考えは多くの者を殺したいであろう。
だったら篭城=人がいるという方程式が成り立ち、狙われるのではないか?
それは安直な考えだ。マーダーは殺したいという欲求のほかに、自分は死にたくないという殺人衝動を越える欲求を持っている。
マーダーはこの要塞を見てこう考えるだろう。
「この要塞を落とすには手がかかりそうだ」
たとえ要塞を落とすことが出来るほどの力を持っていたとしても、簡単にはいかない。下手をしたら手傷を負うかも知れ無い。
自分が傷つくくらいなら、もっと他の簡単に殺せる参加者を探したほうが安全だ。他のマーダーに任せればいい。
抑止力が働くのだ。
ハリボテの要塞だが、これでしばらくは持ってくれる。果報は寝て待てだ。
今交代したばかり、私は休憩、リリカは監視、映姫さんは哨戒。
私たちの篭城は始まったばかりだ。
【C‐2 紅魔館F2・一日目 黎明 】
【四季映姫・ヤマザナドゥ】
[状態]健康
[装備]MINIMI軽機関銃 残弾(200/200)、携帯電話
[道具]支給品一式
[思考・状況]紅魔館に篭城。哨戒中
【リリカ・プリズムリバー】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)
[思考・状況]紅魔館に篭城、正門監視中
【黒谷ヤマメ】
[状態]健康
[装備]携帯電話、MINIMI用マガジン30発(空)、5.56mm NATO弾(100発)
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)、不明アイテム(金属製の武器)
[思考・状況]紅魔館に篭城、休憩中
※紅魔館1階の出入り口はすべてバリケードが張られています。
※紅魔館2階にはブービートラップが張られています。
映姫に支給されたのはMINIMIと携帯電話2つと不明1です。
携帯電話は電波が立っていて、通常機能のほかに、2台を1ボタンで通話可能に出来る機能がついている特殊仕様です。
哨戒に必要ない荷物は休憩中の者が預かっています。
修正版代理投下終了。
◆27ZYfcW1SM 氏の作品タイトルは同じく「となりのリリカと紅魔館事件」
おわび
行数とか文字数の関係で変なところで改行してます。
修正の方すみません
仮投下乙です。
これはいいさとりと、いい誤解フラグですね。
今度も楽しみだ。
ルーミアは人間があんまりいないこのロワじゃきつそうだなーw
主催者のシーンは個人的にはありかな。
投下しますー
ふんふんふ〜ん、と暢気に鼻歌を口ずさみながら石段を登る白い少女、というか幽霊がいた。
メルラン・プリズムリバー。プリズムリバー楽団のトランペット担当で、三姉妹の次女である。
表情は晴れやかで、見ている方もつられて笑ってしまいそうなくらいのニコニコとした笑顔である。
殺し合いという大変な状況なのにどうしてこのような顔をしていられるのか、というとそれは彼女がメルランだから、としか言いようがない。
メルランは落ち込むことを知らない。悲しみや恐怖というものを知っているのかどうかも怪しい。それくらいいつも陽気だ。
ここに放り出されたときもメルランは異変が起こっているのだと感じ取ってはいたが、まあ何とかなるだろうと根拠もなく思っていた。良く言えばポジティブ、悪く言えば能天気というところか。
むしろそんなことは彼女にとってはどうでもよく、気を引いたのは皆の暗く沈みこんだ様子だった。
メルランにしてみればいきなりこんなわけの分からない事態になって混乱するのは分かるが、別にそれでどうにかなるというわけでもないのだし、だったら笑っていればいいというのが彼女の論理であった。笑う門には福来たる。
ということで、出会った連中を片っ端から笑顔にしていってやろうというのがメルランの立てた目標だった。後、ついでに姉のルナサと妹のリリカも探す。あくまでもついでに。
「笑顔でハッピー♪ みんなでハッピー♪ らんらんら〜ん♪」
ちなみに歌っているのは彼女の持ち楽器であるトランペットが奪われているからである。彼女の象徴とも言うべきそれを奪われたのは好ましいことではない。
しかも登っている最中に気付いたのだが、普段なら楽器がなくても演奏出来るはずなのに何故か今は全く音が出せないのだ。
歌くらいなら歌えるし、リズムの取り方にも特に変調はないことから楽器があれば大丈夫だろうとは思ったものの、演奏できないのには変わりない。
これについても最初は文句を言っていたメルランだったが、例の如く「まあいいか」で済まして道中どこかで楽器を見つければいいだろうという結論にした。彼女はどこまでも陽気なのであった。
「らんらん♪ らんらん♪ らんらんるー……っと」
石段を登りきったメルランはそこで一息入れた。普段ならばこんな石段など楽に飛んでこれるはずなのだがどうも体が重く上手く飛べない。きっと調子が悪いのだろうという一言で済ませて、逆に「リズムを取りつつ階段登りも楽しいはず」と考えて歩いてきたのだ。
実際彼女にとっては思いのほか楽しかったようで、軽く息を弾ませながらもニコニコとした笑みが満開の花を咲かせていた。
くるりと振り向き、我が身が歩いてきたこれまでの道標を振り返る。
「おーおー、意外と高いのねここ。妖怪の山もよく見えるわ」
メルランが来たのは妖怪の山にある守矢神社。普段は絶対に行かない場所のうえ、神社で騒ぎ立てていると巫女に怒られるので近づきもしないのだが、今の彼女にはみんなをハッピーにするという崇高な使命があるのだ。
こんな高いところなら楽器の音だってよく聞こえるはず。これまた根拠のない考えだが彼女は上手くいくと信じて疑わない。
問題は楽器がないことだ。歌っても良かったが、自分の本領は演奏だ。聞いているだけで楽しくなれる躁の音色を聞かせることこそ最善の手段なのである。どうせなら歌姫でもいればいいと思ったが、生憎ここまでにミスティア・ローレライは見つけることが出来なかった。
まあいつかは見つかるだろうと思って、すぐに楽器をどうするかという思考へと戻す。
「んーんー、神社なら楽器のひとつでもあるのかしら。三味線とか、琴とか。まあ行けば分かるわよね。あんまり和楽器は得意じゃないけどちょっと練習すれば何とかなるわ。だって私は騒霊だもの」
こればかりは根拠もない言葉ではなく、メルランの自信に裏打ちされた言葉だった。
大抵の楽器なら使いこなせる。能力ばかりに頼っているのではなく、ちゃんとした楽器の使い方も知っている。
仮に全く見たことのない楽器だとしても使いこなせるという自負がメルランにはあった。プリズムリバー三姉妹中で彼女の魔法を行使する力は最強だ。魔法の力を使えばどうとでもなる。
「さて、それじゃ神社の中を」
「どうする気かしら、騒霊のお嬢さん?」
いきなり頭上からかかってきた声にわっと驚いてその場から飛びずさるメルラン。
見上げると、鳥居の上に悠然として腰掛けている神様がいた。
八坂神奈子である。元からいたのか、それともいつの間に移動してきたのかメルランには分からなかった。
神奈子はひらりと飛び降り、ふわりと神をたなびかせながらメルランの元へと歩いてくる。
「参拝客……にしては少々間抜けな面構えね。興味本位でやってきた、ってところかしら」
じろじろと量るように顔を見回す神奈子に、メルランは意味もなく「そうよ!」と胸を張った。
間抜け面というのは気に入らなかったが、こうして出迎えてくれたということは自分の演奏を聞きに来たのだろうと解釈したのである。
「私の演奏を聞いて、あなたもハッピーになるのね! でも残念ながら楽器はないの。もうちょっと待ってくれないかしら」
「いや別にそういうのはどうでもいいのよ。それよりさ……酒、呑まないかい?」
ニッ、と笑ってメルランの肩に手をかける神奈子。だが雰囲気は辞退することを許さない強いものがあった。
一瞬たじろいだメルランだったが別に飲酒は出来ないわけではないし、酔いながらの演奏というのも、また楽しいもののように思えた。
お酒と音楽でダブルハッピー! 自らの素晴らしいアイデアに神奈子と一緒にはっはっはと笑う。
「そういうことだから、さ、入った入った。楽器は器を箸で叩いてればいいわ」
「ああ! 新しい発想だわ! それは面白そう!」
何も音は楽器だけから出るものではない。斬新な考えにメルランの心はさらに躍る。
思わずステップ。一緒に歩く神奈子の歩調も心なしかリズムのいいように思える。
「そういえばあなたなんて名前なの? ここの神様?」
「おや、私の名前を知らないとは……守矢神社の神様、八坂神奈子とは私のこと。この際だから信仰もしてみない?」
「ふーん。まあ考えておくわ。あんまり演奏とは関係なさそうだし」
そう、と返した神奈子の様子は、落胆した様子もなく平然としたものだった。騒霊であるメルランにとってみれば信仰の力よりも魔法の力の方が信じられるものだったし、特に必要もないと考えていた。それを神奈子も分かっていたのかもしれないとメルランは思った。
「さ、それよりも早く呑みましょうか。神社の中にはたくさんあるから」
「はーい。うん、楽しい宴会になりそうね!」
神社の中へと向けて楽しげな調子で歩いていく二人。
それは、とても殺し合いに参加しているとは思えない風景だった。
* * *
守矢神社の本殿から離れた、普段東風谷早苗や洩矢諏訪子、そして八坂神奈子が暮らしている場所、いわゆる居住区にて二人は大いに盛り上がっていた。
元々あったのだろう酒瓶は既に何本も空になっていて、酒臭い匂いが部屋中に充満している。
にもかかわらず神奈子はまるで酔ったそぶりもなく、まだまだ素面という様子で新しい酒瓶に手をつけ始めている。
対照的にメルランは普段呑むことのない酒を大量に呑んでいたためすっかり酔ってしまっており、顔が真っ赤になっている。
流石神様は酒豪だなあと酔った頭で考えながら、メルランは神奈子の話に耳を傾けていた。
「……ま、気が付いたらここの神社に飛ばされてきたってこと。見知った場所だったから助かったわ。幻想郷って、正直知らないところも多いからね」
へぇ、と答えながら盃をチンチンと箸で叩くメルラン。しっかりと演奏の形になっているのは騒霊の為せる業というところか。
神奈子は言う合間にも酒をぐいと口に入れ、ふぅとため息を漏らした。
「ところで、東風谷早苗っていう巫女を見なかったか? 蛙と蛇の飾りをつけた、それはもう可愛い子なんだけど」
「ううん。私はまだあなたにしか会っていないわ。でも大丈夫、すぐに見つけてその子もハッピー、あなたもハッピーになるのよ」
そりゃ素晴らしい事ね、と神奈子は笑う。そうなって欲しいという願いが顔から滲み出ていた。
きっとこの神社の巫女で、神奈子に仕えているのだろうとメルランは想像する。なるほど心配だということか。
でもそんなの関係ない。だって私がいるのだもの。私は楽しい騒霊のメルラン。心配も不安もすぐに吹き飛ぶわ。
お得意の『躁』の音色を響かせるように盃を叩き続ける。えへへ、とメルラン本人も笑いながら。
「それがお前さんのやろうとしていることなの? 出会う奴全員を楽しくさせる……」
「ええ。本当ならルナサ姉さんやリリカがいればもっといい音になるのよ。プリズムリバー楽団の演奏はこんなもんじゃないんだから」
もっとも、一番演奏が上手いのはこの私なんだけど、と付け加えて。
そういえばルナサやリリカもどこかで演奏しているのだろうか、と思う。しかしルナサは暗い性格だし、きっとどこかでしょんぼりしているだろう。リリカもリリカで姉達がいないのをいいことに好き勝手遊んでいるかもしれない。
早いうちに合流したほうがいいかも、とメルランは考え始める。やはり三姉妹揃ってのプリズムリバーだ。三人がいればどんなところでも演奏の音色が届くはず。そうしたら聞く人も増えてハッピーがいっぱい。そう思った。
「なるほど、家族、か。家族は大事?」
不意に、神奈子がそんなことを尋ねてきた。酒を呷りつつもその口調はどこか神妙だった。
こくりとメルランは頷く。お互いに対抗意識を燃やしてはいるし、反りが合わなかったりすることもある。
それでも揃ってこその自分達であることは各々が十分に理解していたし、もう腐れ縁を超えた深い絆がある。
家族にして、自分の一部にも等しい存在なのだと、舌が回らなくなっているのを自覚しながらもそういう意味合いを神奈子に伝えた。
これにも神奈子は、そう、と返答しただけだった。良く伝わってなかったのかと思い、もう一度言い直そうとしたメルランだったが、呑みすぎたせいか、急に眠気が回ってくる。これから皆をハッピーにしにいかなければならないのに。
舟を漕ぎ始めたメルランに気付いたらしい神奈子は「眠いの?」と尋ねてくる。
「大丈夫よ、これくらい……」
そう答えて立ち上がろうとしたが、足がもつれてこけそうになったところを神奈子に支えられる始末だった。
「悪かったわね、ちょっと深酒させすぎたかしら……しばらく寝てなさい。時間が経ったら起こしてあげる」
「う〜ん……うん……」
神奈子に座らせられると、更に眠気が増してくる。
楽しくさせなければと思いながらもこの衝動にはさしものメルランも打ち勝てなかった。
こくりと頷き、横になる。神奈子は離れてどこかへと向かうようだった。
皆に演奏を聞かせるのは後にしよう。そう思って、瞼を閉じようとしたメルランに、再び神奈子の姿が映った。
「そう、そのままゆっくりと休みなさい。……永遠に、ね」
何故か神奈子の手には緋色の剣が握られていて、どこか艶然とした、しかし暗い笑みを浮かべていた。
ああ、こんな笑い、なんか嫌ね……ぼんやりと考えたメルランの思考は、そこまでだった。
ずしん、という重い感触が体の中心から直に伝わり、彼女の命をぷっつりと断ち切った。
「悪いわね……でも、私にも家族がいる……娘同然の子がいるのよ」
呟いたのは、メルランの胸に緋想の剣を突き刺した神奈子だった。
酔ったままの表情で、メルランの体はぴくりとも動かない。完全に死んだと判断した神奈子は緋想の剣を引き抜く。
ずるりという嫌な感触と共に剣が引き抜かれ、赤い刀身からぽたぽたと同じ色の雫が垂れ落ちる。
まさに今の自分にお似合いだ、と神奈子は低く嘲笑を漏らした。
「こんなやり方、私の好みじゃないんだけどね。
でも油断は大敵、戦に望まんとすればまず己を知れ。
私の乾を創造する力は殆ど失われた。
精々が小手先の弾幕を撃ち出す程度、後は多少岩を破壊するくらいの力があるくらい。
幻想郷に来る前のことを思い出すわ。
だから、手段は選んでいられない」
神奈子の目には強い決意と、どんな行動をも辞さない獰猛さとがあった。
それはまさに荒ぶる神。戦に臨む姿そのものである。
今の神奈子はこの程度でしかない。こんなことしか出来ない。だがそれでも、早苗のためにやれることはなんでもやろうと思った。
これが、その結果だ。
「待ってなさい。早苗だけは私が、必ず」
そのために、再び諏訪子と争うことになろうとも……
勝ってみせる。それがミシャグジ様すら下した大和の神々が一、八坂神奈子だ。
【メルラン・プリズムリバー 死亡】
【残り48人】
【A-3 守矢神社・一日目 深夜】
【八坂神奈子】
[状態]健康、少々酔っている(行動に支障はなし)
[装備]緋想の剣
[道具]支給品一式 不明支給品(0〜2)
[思考・状況]基本方針:東風谷早苗のために全てを駆逐する
1.殺しには手段を問わない
2.諏訪子と戦うことになっても構わない
※メルランの支給品は死体の側に放置されています(中身は未開封)
295 :
転載:2009/03/13(金) 22:38:25 ID:9wSe3CMK
79 名前: ◆Ok1sMSayUQ 投稿日: 2009/03/13(金) 22:32:27
最後にさるってしまったのでこちらで……
以上で投下終了です。タイトルは『家族が笑うとき』です
指摘等ありましたら宜しくお願いしますー
会場で目を覚ました時、最初に彼女、古明地さとりが感じたのは違和感だった。
例えば、吸った息が吐けないような。
目の前に存在しているものに触れられないような。
目を開いているのに景色が見えないような。
そんな言いようのない異物感。
やがて始まった主催者と思わしき少女の話の間もその違和感は取れない。
むしろその話の間にも違和感は膨れ上がっていく。
ボンッという無機質な音が会場に響き、辺りが静寂に包まれたところで彼女は違和感の正体に気が付いた。
読めないのだ。目の前の少女の心が。
あわててその事象を否定しようとするが、いくら集中してもその思考の欠片すら見えてこない。
彼女の焦りとは裏腹に無駄な時間だけが過ぎていく。
そして、説明も佳境に入りそろそろゲーム開始かというところで彼女の努力が実ってか、はたまた主催者の気まぐれか。
ひとつの映像が第三の目を通して彼女の脳裏に映し出された。
白い空間。
そこに一つの黒い点が落とされる。
その点は何かを目指すように線へと変化し、線は円、円は別の図形へと変貌を遂げていく。
図形はまるで意思を持つように変化消滅を繰り返し、ある一つのものを完成させた。
それは、裸体の少女。
点の動きは止まらない。点は次の線を生み出し、変化させていく。
その点は服となり、次は靴、次は、次は、次は…
最後に髪飾りが付け加えられ、純白の空間の中に一人の少女が生み出された。
「君の名前は…そうだなぁ」
続くひょうひょうとした男の声。
「…決めた。さとりだ。怨霊も恐れ怯む少女、古明地さとり」
男の声に反応したように空間に生み出された少女は目を開く。
見間違いようがない。自分がそこに立っていた。
生み出された自分が何かを話そうとした瞬間、彼女は目を覚ました。
どうやらもうゲームは始まっているらしい。
最初同様気が付いたら見覚えの無い場所にいるのだからそういうことなのだろう。
(夢…?)
さとりは体を起こし、先ほどの映像に思いをめぐらせる。
もしかしたら、夢だったのかもしれない。
普通の人間や妖怪ならこの時点で夢と割り切れただろう。
しかし、彼女は違った。
(自分は主催者の心を読んでいた筈。ということはあれが主催者の思考?)
その考えにいたると彼女の肩が自然と震えだした。どうやら表面で否定しても無理らしい。
彼女は自身の能力を信じている。長年連れ添ってきたのだ。短所も長所もわかっているし特性も理解している。
だからわかる。あの映像は自分の第三の目が映し出した主催者の心。
あそこまで非現実的な内容にも関わらずに、だ。
汗が頬をつたう。呼吸が荒くなる。
ということは主催の少女が無の状態から自分を造り上げたということなのか。
信じられないがそういうことなのだろう。
手が震える。膝が笑う。
それじゃあまるで神じゃないか。妖怪を作り出すなんてありえない。
その上、自分の能力で読めるのは思考だけ。
映像が映し出されるなんてことは無かったのにそれを捻じ曲げた。
つまり、他人の能力をも操ることができるというのか。
肩が震える。悪寒が走る。
ただ思い出しているだけなのに、この恐怖。
(いけない、落ち着かなきゃ)
目を閉じ、必死で呼吸を整える。
心を読む力は心の強さに比例する、恐怖に負けていてはその力を発揮することはできない。
深呼吸を繰り返すと幾分かましになったが、これ以上例の映像について考えれば結果は一緒だろう。
彼女はとりあえず、置かれた状況を把握することにした。
汗をぬぐい、周りを見渡してみる。
木をくりぬかれて作られたであろう家。空間の大きさからいってその一室といった所だ。
ただ普通の家と違う場所があるとすれば調度品が全体的に小さいということだろうか。
そういえば上の世界には妖精が住むなんて話を聞いたことがある。
妖精は妖怪や人間よりも体躯が小さいと聞くし、もしかしたらここはそういった存在の家なのかもしれない。
さとりはその場にあった椅子を引き寄せ腰掛ける。
断片的にしか覚えていないがどうやら自分を含む人間妖怪が殺し合いをしなければならないようだ。
そしてスキマが一人一つ支給され、その中には武器となるものが入っている、とか。
(スキマ、ということはこの前の妖怪が?)
そっと空間に手を伸ばすと、意せずして伸ばした手が彼女に支給されたであろうスキマに触れた。
主催者の説明どおりならこのスキマが罠ということはない。
(…)
意を決してスキマに指先を埋めてみる。
指先は何事もなくスキマの奥まで入り込んでいった。
(嘘ではない、という事は殺し合わせるというのが事実…ですか)
震える指でスキマの内を探りながら、さとりは考えを巡らせていた。
地霊殿の事、ペットたちの事、参加者の事。そして、先ほどの映像の事。
(あの映像を少女の能力としてどうしてあれを…?)
主催者の思考はわからないことばかりだ。
特に男の声。
自分の記憶に間違いがなければ会場には男はいなかった筈だ。
ならば、なぜ?
いけない。
さとりは自分の妄執を払うために隙間の中に入れてある手のほうに意識を向ける。
どうやら思ったよりもたくさん入っているようだ。
とりあえず出してみたほうがよさそうだろう。
ざっと支給品を改めてみる。まずは基本支給品であろう名簿やコンパス。
名簿には案の定彼女の妹とペットの名前が記されていた。
(信じられるのは彼女たち、それにこいしくらいでしょうか…)
彼女はこの狂ったゲームに乗る気はさらさら無い。
優勝するにしても彼女には知り合いを殺す勇気はないし、だからといって死ぬのは真っ平だ。
しかし自分一人で主催者に反逆するには分が悪すぎる。首輪しかり、戦闘力しかり。
ならばどうするか。
簡単だ。信頼できる仲間とともに反逆するのだ。
仲間を求め名簿を眺めていた彼女の目が、ひとつの名前で留まる。
(森近霖之助。男の名前が他にないところを見るとこの男が声の主?)
これについては何も言えない。グレーゾーンだ。
主催者自身が参加している点を見れば限りなく黒に近いグレーだが。
そしてランダムアイテム。こちらは戦闘に使えそうなものはない。
「ケーキ三つに西洋人形で、他の妖怪と戦えと?」
土台無理な話だ。確かに自分も妖怪だがそれでも高位の妖怪や鬼には敵わない。
会場のときのように能力が使えないのならなおさら。
この場で強い妖怪に襲われればそれこそ終わりだ。
ちょうどその時、遠くでドアの開く音がした。
ぎしぎしという床の軋みの音が聞こえてくる。
この家の主だろうか。しかしそれにしては歩みが遅い。
まるで何かを探しているようだ。
そう、たとえば、肉食獣が獲物を探すときのよう。
心臓が早鐘を鳴らす。足音はだんだんと大きくなっている。
(出入り口は足音のほうのドア、それと窓)
今ならば気づかれずに逃げることもできるだろう。
しかし彼女は動かなかった。
見極める必要があったのだ、謎の侵入者を。もっといえば謎の侵入者の思考を読む自分の能力を。
このゲームでは自分の能力は反則クラスの強さを持っている。
それは主催者も知っているのだ。何らかの制限がかかっていると考えるのが当然だ。
しかし、最初に主催の考えが読めた点を見ると第三の目は完全にはふさがれてはいないのだろう。
自分の能力がどの程度使えるのかによって生存率は大きく変わる。
すぐに逃げられる状況だからこそ、この場は留まるのだ。
さとりは窓を空け、それを背で隠すようにしてドアのほうを見つめる。
これでいつ入ってきても逃げ出すことはできるだろう。
ある瞬間、足音が止まった。
「誰かいますかー?」
かわりに能天気な声が聞こえてくる。彼女の知り合いではない。
答えるべきなのか、彼女が迷っていると答えを待つことなく声の主は部屋に入ってきた。
さとりはドアの前の少女を見つめた。
入ってきた少女は部屋の中に人がいたのに驚いたのか、口を半開きにして彼女のほうを見ている。
(やはりいつものように無制限で使える、というわけではないようですね)
能力に制限があるだろうと思ってはいたのでさほど驚きはしない。
問題はどの程度抑えられているかだ。
さとりは眉間に皺を寄せ、目の前の少女を睨みつける。
別に威嚇しているわけではない。少女の思考を読もうと集中しているだけだ。
少女は首をかしげる。
たっぷり十秒は睨み合いが続いただろうか。
だんだんとだが彼女の頭に少女の思考が流れ込んできた。
それはもっとも単純で直線的な感情。
「あなたは食べられる人類?」
食欲。
もしただの食欲なら彼女も驚かなかっただろう。
もし冷静な状況なら彼女は軽く対処できたはずだ。
しかし少女の思考にこびりついたカニバリズムは今の状況の彼女には最悪すぎた。
さとりはスキマに手を突っ込み自身への支給品であるケーキを掴み、少女に投げつける。
それが口をあけたままの少女の顔にあたったのも確認せず、さとりは窓から飛び出しす。
幸い飛行能力は失われていないようで脱出は容易にできた。
しかし、賢明な少女は飛行能力の使用を地面への着陸だけにとどめる。
(今は少しでも力を温存しておきたい…)
その考えはこのゲームにおいて定石とも言えるだろう。
足が地面に付いたのを確認すると、少女は駆け出した。
しばらく走った後、さとりは息を整えるついでに立ち止まって地図を広げた。
もし、会場の中に彼女の知り合いの知っている場所があれば知り合いはその場所に向かうだろう。
しかし、見覚えのある地名は無い。
仕方の無いことだ。ここは地上なのだから。
少女は地図を閉じようとしてふと、ひとつのことを思い出した。
(あの時、確か…)
急いで地図を開きなおし、それを確認する。
「あった…!」
彼女の脳裏をよぎったのは支給武器である人形のこと。
見覚えがあるはずだ。自分がひどい目に合わされたのだから。
「霧雨魔理沙で間違いは無かったはずよね」
名簿を見る。すぐにお目当ての名前は見つかった。
間違いではない。
昔これによく似た人形で自分と弾幕ごっこをした人間、霧雨魔理沙。
数分間しか会話をしていないが、彼女のような性格の者がこんなくだらないゲームに乗るはずが無い。
戦力として申し分ない上、向かう場所も予測できる。
地図に載っているのだ、魔理沙の家は。
「とりあえず、目指す価値はあるでしょう」
【G-5・三月精の家付近/一日目・黎明】
【古明地さとり】
[状態]:健康 軽い混乱状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 咲夜のケーキ×2 上海人形
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない
1.侵入者(ルーミア)から逃げる
2.魔理沙の家(F-4)を目指す
3.空、燐、こいしを探して共闘する
4.魔理沙を探し、乗っていないようなら上海人形を渡して共闘する
[備考]
※ルールをあまりよく聞いていません
※主催者(八意永琳)の能力を『幻想郷の生物を作り出し、能力を与える程度の能力』ではないかと思い込んでいます
※主催者(八意永琳)に違和感を覚えています
※主催者(八意永琳)と声の男に恐怖を覚えています
※森近霖之助を主催者側の人間ではないかと疑っています
ルーミアは面食らっていた。
気がつくと知らない場所にいて誰かが死んだ。
その後気がつくといつものようにいつものようにくらい森の中にいた。
ただいつもと違ったのは空を飛ぶとおなかが減るということくらいだろうか。
「どうしておなかが減るのかな?」
空腹を我慢しながら空を飛んで見つけた家。
その家の持ち主だろう人に食べ物が無いかと聞いたらいきなりケーキをぶつけられたのだ。
顔に付着したクリームをなめながらルーミアは考える。
「ご馳走様って言ってない」
殺し合いの中でも彼女は彼女だった。
【G-5・三月精の家・サニーの部屋/一日目・黎明】
【ルーミア】
[状態]:空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダムアイテム(本人未確認)
[思考・状況] 1.食べられる人類を探す
2.ケーキをくれた人(さとり)に追いついてお礼を言う
[備考]
※殺し合いについて把握していないのかもしれません
代理投下終了。
感想は既に神奈子&メルランとさとり&ルーミア両方に書いたので無し。
「はぁ……やれやれ、だわ」
眼下に広がるは等間隔に置かれた石。石の下には人間だったもの……
死者の骨が眠っている。
ここは無縁塚。幻想郷に迷い込んだ名のとおり、親族者のいない無縁の者たちの墓場だ。
そんなところをスタート地点に指定されれば、気分が萎えるのも肯ける気がする。
今背中を預けている桜の木にはもう、今か今かと春を待っているように紫色のつぼみを膨らませている。
この様子じゃ満開は近いだろう。
もっとも、この紫色の桜を見て騒ごうと思う者は幻想郷には居ないのかもしれないが。
「支給品もこんなのだし……」
それは長くて、重い、もともとの道具なら草を刈るための道具、小野塚小町が持っていた死神の鎌だった。
スローイングナイフを好んで使用している彼女にとっては、この鎌は接近戦特化であり、腕に負担のかけるほど重い。だからあまりうれしくなかった。それでも、ちゃんとした武器に出会えたことは幸運であろう。
墓地で大鎌を持った自分。
傍から見たら死神に見えるかも知れない。
「それはそれでカッコいいかもしれないけど……」
ぐっ、と鎌を持ち上げた。
「今は、面倒ね!」
自身の体をコンパスのように回転させ、大鎌を墓の一つに向かって投げた。
グオングオンと禍々しいほどの風切り音を発しながら大鎌は中を滑る。向かう先には一つの墓石があった。その墓石には『なぜか』薄い氷の膜のような羽が生えている。
墓石が劣化していたのか、はたまたこの鎌の切れ味が異常なのか、その墓石は砕け散った。
墓石の向こう側から出てきたのは淡い青の髪。頭だけが墓石から覗いている。
咲夜はだるそうに反作用でこちら側に戻ってきた鎌を地面から抜いた。
「出てきたらどう? 頭が丸見えよ。頭隠して尻隠さずって言葉あるけど頭すら隠してないあなたは馬鹿?」
するとあわてたように頭が引っ込んだ。
「……頭かくして馬鹿丸出し」
「馬鹿っていうな!」
「馬鹿隠して姿丸出し」
咲夜は相変わらずの冷めた目線で砕け散った墓石の上に立つ妖精を眺めた。
墓石の上に立つ妖精は胸を張ってずらずらと言葉を並べた。
「ふん! このまま何も喋らなかったら見逃してあげたって言うのに、あんたって本当にば……」
「さてと」
再びコンパス運動、もちろん手には先ほど拾った大鎌が握られている。いや、今放された。
「なななななな!」
突然飛んできた鎌に驚いたチルノはバランスを崩し、墓石の上を転げ落ちる。
結果的には鎌をかわすことが出来た。
鎌は相変わらずグオングオンと音を立ててチルノの居た場所を通過して、奥の桜の木に刺さった。
「な、なにするのさ!」
「決まってるじゃない。見逃してくれなさそうだから力でねじ伏せようかと思って」
「そ、そんな……いや、まてよ」
チルノは考えた。相手は人間だ。そしてあの凶悪な鎌は今投げて手元に無い。
「ふふん! それなら私にも考えがあるわ。全力でやっつけてやる」
「あらあら? 今までは全力じゃなかったのかしら?」
「ふん、ふん! 今からはLunaticよ」
記憶の奥底に眠っていた情報だが、咲夜は時を止める能力以外特別な能力は無い。
だから白黒みたいに通常ショットが魔法ではなく、ナイフなのだ。
時を止める能力は驚異的だが、自分の能力と同じく殆ど封印されているとしたら、素手の人間相手に自分が負ける要素が無かった。
だけど、咲夜は冷静にこう返した。
「なら私はLunaticシューターになるわ」
「ああ、もう! 怒ったぞ! 喰らえ、氷符「アイシクルフォール」」
小さな氷柱型の弾幕が咲夜を包み込むように展開される。
自称Lunaticの弾幕で放った氷符はEasyに比べれば密度は濃い、しかし、Lunaticと称するには少ないだろう。
おまけに咲夜の体力は満タンだ。すいすいと避けられてしまう。
「だー! 避けるな」
「避けるものでしょうに……あ! 言い忘れてたわ」
避けながら咲夜はチルノに話しかける。チルノはこいつ集中しろよと思ったが「なにさ!」と返した。
咲夜はとても申し訳なさそうに言った。
「ナイフがないから弾幕張れないの」
「え?」
弾幕が張れない? ということはノーショット?
こちらは弾幕を張るのに体力を消費するため、時間制限がある。
ならば避け続けるほうが楽か?
実を言うと答えは楽ではない。
本当の弾幕ごっこなら空中を飛ぶため、避けるのは比較的楽であり、弾幕を張るほうが負けてしまう。
しかし、今は地上戦だ。
足を回せばそれだけ息が切れるし、カロリーの消費も激しい。
空を飛ぶ場合は全方向に逃げ場があるのに対し、地上は水平360度以内と行動が制限されるから、避けることも難しくなる。
チルノは思った。この勝負……勝てる!
っと思ったのが浅はかだったのは言うまでも無い。
「だからしっかり避けてね」
咲夜が何かを投げた。最初は石ころだと思った。しかし自分に当てるにはあまりにも力が無い。ほら、足元に落ちてしまった。
「やーい、はずしてるよー!」
「だから避けなさいって」
「え? それどうい……」
次の瞬間、その投げたものが爆発した。
「へぇ、思った以上の効果ね」
咲夜は倒れたチルノを見ながら呟いた。
そのチルノはというと、目をまわしている。
突然五感のうちの2つをつぶされて混乱しているようだ。
フラッシュバン。
またはスタン・グレネードと呼ばれる武器。
強烈な閃光と大音量で敵を無力化させる装置である。
破片手榴弾と違って、殺傷能力は殆ど無い。
「あんまり強い相手に喧嘩売るとひどい目にあうわよ。氷精さん」
警告ともアドバイスとも取れる事を一言残し、咲夜は木に刺さった鎌を抜いた。
「まぁ、この氷精に負けるほどお嬢様たちは弱くないでしょう。ああ、早く見つけなければ」
咲夜はチルノを横目に紅魔館へと足を向けた。
【E-5 平原・一日目 深夜】
【十六夜咲夜】
[状態]健康
[装備]死神の鎌
[道具]支給品一式、不明アイテム(0〜1)、フラッシュバン(残り2個)
[思考・状況]さて、どこに行きましょうか?
【チルノ】
[状態]気絶
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)
[思考・状況]気絶中
「あやややややや、さすが紅魔館のメイド長。あっという間に倒してしまいましたよ」
無縁塚から少し離れた木の上。幻想郷のブン屋、射命丸文は一部始終を観測していた。
名簿のマージンに『咲夜:鎌、爆弾』と書かれた。その下に『チルノ: 』と書かれてある。
そのデータを見てうんと呟く射命丸。
「殺さなかったところを見るとこのゲームには参加していないか……? 氷精はどうでもいいや」
射命丸はふっと微笑んだ。
このゲームはいわば戦争。
私は殺して回る積極的な参加者と考えよう。
そして、私以外にも積極的な参加者がいることは事実だ。
戦争行為をするには経済力が必要だ。
一発銃を撃つのに一発の銃弾の値段だけ、一発のミサイルに何千万円と……
戦争に勝つには戦力、戦略、運。
運はどうしようもない。個人戦なので戦力の増強も難しい。しかし、戦略ならいくらでも編み出すことが出来る。
戦争=このゲームなら、戦力=個人の能力・武器、そして経済力=体力だ。
わざわざいずれ減る参加者に無駄な戦争を吹っかけて、経済力を削る位なら、情報を集めて軍備増強をし、最後の敵国を打ち破るほうが効率も成功率も高い。
待っているだけで利益を得られる。さらに動いたらもっと利益が得られる。
私は動く。情報操作だ。
戦争は情報戦が主だ。
その情報に間違いが含まれたら戦場は混乱する。
嘘の情報は百発の銃弾よりも強力だ。
たとえ話だが、あのメイドが私みたいな積極的な参加者という嘘情報をばら撒けば、チームを作るような消極的な参加者はあのメイドを警戒、うまくいけば殺してくれるだろう。
ほら簡単、私の手を汚さずにメイドを殺せましたとさ。
積極的な参加者が優勝を手に入れたいならば、私は戦場を手に入れたい。優勝はそのおまけだ。
「さてさて、もっと情報を手に入れますか」
射命丸は次の観測地点を目指して跳躍した。
【射命丸文】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム(1〜3)
[思考・状況]情報収集&情報操作に徹する
殺し合いには乗るがまだ時期ではない
代理投下終了。
乙です。
チルノだめだめだw愛らしいというかw
ステルス文はこの情報戦を制することが出来るのかに期待。
◆30RBj585Is氏のも後で代理投下するつもりですがこれ以上やるとさるりそうなのでもう少し後にまた投下します。
別の人がやってくれるならそれでもおkです。
「妬ましいわ。あんな力を持っているなんて・・・」
地下に住む妖怪、水橋パルスィは森の中を走っていた。
大抵の妖怪すら近づかぬ魔法の森の中を走っていくのは非常に困難であろう。
それなのに、特にこれといった目的を持たない彼女が何故走らなければならないのか?
その理由は・・・
「くっ、肩が痛いわ・・・」
パルスィは血が流れる左肩を押さえながら呟いた。
そう、彼女は何者かに攻撃されたのだ。
走っているうちに、あの女からだいぶ距離を離しただろうか。周りを見渡しても姿は見えないし音も聞こえない。
「そろそろ反撃といこうかしら」
そう言うと、近くの岩陰に身を潜め、息を殺す。
そして、すぐさまスキマ袋から武器を取り出した。後はあの女を待ち伏せるだけ。
ここまでの行動はあの女には見られていないはず。そう思い、パルスィは支給品であるアサルトライフルを構えた。
銃の扱いはよく分からないが、とにかく引き金を引けば攻撃できるのだろう。
そう思い、武器を両手で強く握り締めた。
待ち伏せをしてどのくらい経っただろうか。
岩陰からチラっと覗いても、相手の姿は見当たらない。
だが、
「もうすぐ来るわ・・・もうすぐ・・・」
それでもパルスィは相手が近づいていることが分かっていた。
特にこれといった根拠はない。だがこれまでの経験から、妬んだ相手が近くにいるとその嫉妬心が無意識に強くなるのだ。
今の彼女はまさにその状態だった。
その嫉妬心は徐々に徐々に強くなり・・・
そして
ビ、ビ、ビ、ビ、ビビビビビ・・・
「妬ましいわ!」
パルスィのスペルカード、グリーンアイドモンスターが発動した。
こんなに屈辱的なのは初めてだ。妬ましいにも程がある。
普段の彼女は意外にも温厚で、殺し合いに乗るような妖怪ではない。
そのため、攻撃される前は特にこれといった目的を持たずにさ迷っていた。
あえて目的を挙げるならば、この薄気味悪い森から出ること。それに、このゲームの主催者であるあの女が妬ましいから制裁を与えたい。
といったところ。
その道中での出来事だった。
何気なく横を見ると、そこには何者かがいた。それは、黒髪の高貴な着物を着た女性だった。
誰だろう。そう思っていたとき、その女性がいきなり黒い塊を向けた。
その瞬間、パルスィの左肩が破壊された。
何が起こったのかが分からなかった。せいぜい、女性が持っていた黒い塊が一瞬光ったことくらい。それを知覚する前に攻撃を受けたように感じたのだ。
「あの女、ただじゃおかないわ」
パルスィは走りながらそう言うと、ジッと緑眼で後ろを睨みつけた。
だが、その彼女の眼は逃げ一方な負け犬の眼ではない。獲物を狩る猛禽の眼だった。
正体不明の攻撃を前にすると、普通はこのように逃げるのがよいだろう。
だが、緑眼の橋姫は一度妬んだ相手をただで済ませるつもりはない。
そのため、圧倒的に不利な状況でもパルスィはこのまま逃げる・・・いや、逃がすつもりはない。
妬ましい輩には、死あるのみだ。
ビ、ビ、ビ、ビ、ビビビビビ・・・
緑色の弾幕はヘビのような形をしながら進んでいく。
本来、パルスィには相手がどこにいるかは分かっていない。
だが、緑色の弾幕グリーンアイドモンスターは自分が妬んだ相手を自動的に追跡する。
その速度は遅いものの、弾幕の形に変化が表われれば相手が近くにいるということ。
そして、弾幕の形が不自然な形を描くとき、相手はその弾幕に追われているということになる。
「・・・いたわ。妬ましい」
弾幕の後を目で追っていくと、何やら人影が見えた。
月明かりを遮断する木々で姿は見えないものの、弾幕に追われているように動くその影は妬ましい相手で間違いない。
「後は狙い撃つだけ・・・。弾幕はもう要らないわ」
そう言い、一旦スペルを解除する。
実を言うと、森の中を怪我を押してまで走ったときの疲労が溜まった状態で、これ以上の弾幕を撃つのが辛かった。
とはいえ、だいたいの位置さえ分かれば後はそこから目と耳を傾ければそいつを見失うことはない。
そのため、サーチのために使ったスペルはもう必要ないだろう。
そう思い、目と耳、そして湧き出る嫉妬心に集中して、相手が姿を見せるのを待つ。
そして姿を確認した瞬間、この銃で相手を撃ち殺す。
これであの妬ましい相手に死の制裁を与えることが出来る・・・
はずだったが・・・
「おかしい・・・。あの女から音が聞こえないわ」
実は、あの女と遭遇したときからずっと気になることがあった。
それは、あの女から発せられるはずの音が一切聞こえないことである。足音も、枝を折る音も、草を払う音も、何もかもだ。
別にパルスィは音に頼って生きている妖怪ではない。
ただ、こう暗い空間内で相手を捜すのは目だけでは難しい。全方位から認知することができる音が必要なのだ。
しかも、相手は正体不明の攻撃を行うため、こちらの居場所がばれたら危なすぎる。
それなのに
「く・・・見失ってしまったわ」
どこにいるのかが分からなくなってしまった。これによりチャンスが一転して大ピンチになった気がする。
だが、狂いそうなほどの嫉妬心が芽生えていることから、相手が近くにいることは分かる。
詳しい場所を知るため、もう一度グリーンアイドモンスターを発動させるか?
そう思い、スペルカードの準備をする。
その時・・・
バスッ!
「・・・!ヅアアァ!?」
今度は右腕が破壊された。
「クッ・・・!」
まただ、また原因不明の一撃を受けた。その拍子に銃を落としてしまう。
どうやら、とうとう逆にこちらの居場所がばれてしまったようだ。
だが、嫉妬パワーが全開のパルスィはこの程度では怯まない。構わずに、辺りをキョロキョロと見渡す。
すると、明らかに誰かが自分に何かを向けているのが視界に映った。
今なら分かる。自分が今持っているものと同類の銃とやらである。
「よくもやったわね・・・!」
これに完全に怒ったパルスィは、相手に向けて弾幕を発射する。
それはドカンドカンと木に命中するものの、相手はこれに怯んだだけで当たった様子はない。
だが、あくまでもこれはけん制だ。その隙に先ほどの攻撃を受けて落としてしまった銃を握り締める。
「そこまでよ、覚悟しなさい!」
パルスィが持つ銃、アサルトライフルは相手が持つ銃よりも大型だ。威力も高いに違いない。
これで攻撃すれば、あの妬ましい女は無残な肉塊と化すだろう。
そう思い、パルスィはアサルトライフルの引き金を引いた。
ドン!!
あの女が撃った銃とは違い、大きな銃声が鳴り響いた。
「うあ・・・あ、ッ!?」
パルスィは相手に向けて銃を撃ったはず。
しかし、当の彼女は右腕を押さえて悶えていた。
本人には何が起こったのかは分からないだろうが、この結末は当然とも言える。
銃を撃つと、そこから強い反動が発生するものである。特にライフル銃は拳銃に比べて高威力なため、発生する反動も激しいものだ。
そんな銃を、反動のことを考えずにしかも負傷した腕でまともに扱うことはほぼ不可能だ。
当然、銃弾は狙いとは明後日の方向に飛んでしまう。その証拠に、相手は非情にも無傷である。
「まだ・・・終わらせるものか。
何があっても・・・あなたを妬んでやるわ・・・!」
こんなことになっても嫉妬心は失せない。
が、今のは大きすぎる隙となった。
そんな彼女に・・・相手は容赦のないとどめの一撃を食らわせる。
その一撃は腹部を貫く。その瞬間、意識も嫉妬心も完全に途切れてしまった。
「危なかったわ・・・。なんてしつこい妖怪なのかしら」
硝煙の昇る銃を右手に持った蓬莱山輝夜はそう言い、ため息をついた。
初めての獲物は、逃げたと思ったら弾幕による奇襲を仕掛けるわ、先手を打ってもしつこく反撃するわで大変だった。
特に、パルスィが銃を撃ったときはどうなるかと思った。
が、結果として、何とか一人目を殺すことに成功した。どうやらツキはこちらにあったようだ。
血を流して倒れたパルスィがもう動かないことを確認し、彼女のそばに落ちていたスキマ袋とアサルトライフルを拾う。
すぐに新しく手に入ったスキマ袋を覗くが、どうやらもうランダムアイテムはないようだ。
「はぁ・・・収穫はこれだけか。まぁ、いいけどね」
あれだけ苦労した割には、手に入ったのはもう一人分のスキマ袋と銃だけ。何だか物足りない。
だが、所詮参加者の一人を殺しただけにすぎない。
これからも参加者を殺せば有利になるものが手に入るはずだ。
それに、脅されているであろう永琳を助けるためにも、まだまだ殺人を続けなければならない。
自分や永琳、そして先ほど殺した妖怪を除いても50人くらいの人数が全滅するまでとなると気が遠くなるが・・・
「まだ戦いは始まったばかり。この勢いを永遠に続けないとね。
そのためにも・・・」
これからはもっと辛い戦いになるだろう、気合を入れた輝夜は大きな袋を見つめる。
実は、その大きな袋は輝夜がパルスィを攻撃したときからずっと抱えていたものだ。
今は、これまでの酷使やパルスィの弾幕によって一部が割け、中身が露出している。
その中身は・・・
「協力してもらうわ。月の妖精さん?
特に・・・あなたの妖力が蓄積される、月の出ている夜の間はね。
まぁ、あの月は偽物みたいだけど・・・関係ないか」
輝夜は袋の中身にそう言った。
袋の中にいたのは月の妖精こと、ルナチャイルド。
彼女は周囲の音を消す能力を持つ。
パルスィが、輝夜から発生するはずの移動音そして銃声を認知できなかったのはそれによるものである。
このことから分かるよう、音の無い者は肉眼でなければ存在を認知できず、銃撃を食らうまでは攻撃したことにも気づかれない。
これが消音の恐ろしさだ。
(この人、怖い・・・!)
殺人の道具として使われたルナチャイルドは、輝夜の言葉と表情にただ恐怖するしかなかった。
私達三月精は、いつもどおりにイタズラの計画を3人で練っていたはずだった。
そのはずが、目を覚ますとそこは暗くて狭い空間。しかも、身動きが取れなければ喋ることも出来ない。
そこをスターサファイアみたいな奴に出してもらったかと思ったら、また袋の中に詰められてしまうという、酷い扱いを受ける。
そして、使いたくないのに何故か勝手に発動してしまう消音の能力。
ついには、再び袋の外が見えたと思ったら、血を流して倒れた妖怪がいるという・・・。
もう、何が何だか分からない。
ただ、分かることは・・・
自分がとてつもない大異変に巻き込まれていることと、スターみたいな人が怖いということだった。
【F‐4 一日目 黎明】
【蓬莱山輝夜】
[状態]やや疲労
[装備]ウェルロッド(2/5)、アサルトライフルFN SCAR(19/20)
[道具]支給品一式×2、ルナチャイルド、予備の弾あり
[思考・状況]優勝して永琳を助ける。鈴仙たちには出来れば会いたくない。
[行動方針]人の集まりそうなところに行き、参加者を殺す。
※ルナチャイルドはサニーミルクと違い、月の光で充電できます。他は三月精と同じ機能です。
※今のルナチャイルドは動きと口を封じられ、能力を強制発動させられています。
【水橋パルスィ 死亡】
【残り47人】
代理投下終了。
乙です。
こういう戦闘はいいですねー。
輝夜は消音をどこまで活かせるか……。
ルナチャとパルスィカワイソス。
それと代理投下した後で気づいたのですが、◆27ZYfcW1SM氏の作品の位置修正するの忘れてた。
収録する際か収録された時にでも修正しときます。
二人とも投下乙
あややは場を上手くかき乱してくれそうだな。なんだかんだ言って口は上手いしw
チルノ……まあ、Hだから仕方ないかw
パルスィはここで落ちたのが意外だったな。もっと妬ましさを撒いてくれるかと思ったけど
独断ですがルールに?があっては見る人が困りそうなので、
wikiのルール(主にスペルカードや弾幕、能力制限について、その他も少し)に修正入れました。
よければ意見をどうぞ。
入ってる予約楽しみだなー。
名無しと名乗ったものです。
wikiのルール修正ありがとうございます迷惑をおかけしてすみません。
スペルカードのところは無しとなっていたのに普通に持っていたキャラが居たのでああ云う風にしました。
弾幕、能力制限についてはそれでいいと思います。
火焔猫燐、投下します
「うっひょー!」
とりあえず興奮したね。
灼熱地獄跡地で業務に従事していたところ、気が付けばいきなり殺し合いだなんてビックリだ!
なにがビックリかと言うと、やはり今回参加させられたそうそうたる顔触れが一番ビックリだね。あたいら妖怪を始め、人間妖精亡霊閻魔と何でもござれ。あたいと同じく、強制された口だろうか? 志願でも違和感なさそうだけど。
いずれにしても、出揃った連中は強力無比と言える規格外な人妖が多いと思う。
鬼のような分かり易いものもいれば、不気味な迫力を漂わせる意味解らん生物もいる。お空のようなお馬鹿もいれば、賢さを滲ませる人妖各種も様々だ。そうそう! やたら強い地上のお姉さん達もいるんだなこれが。
こんな所でマジになった連中と会ってしまったが最後、凡夫妖怪ならばあっさり挽き肉にされるんじゃなかろうか。あたいはそこそこだから、大丈夫だけどねっ。多分。
強くて危害がなければ尻尾を振って、危ない奴なら尻尾を巻こう。
お気楽思考で暗所の道中も危なげなくステップを踏んでいると、湖の畔であれを発見してしまったのさ。
目を凝らさなくても分かる。スンスンと鼻を鳴らすと、空気中に漂う芳香が我が全身を満たした。傍から見れば、あたいは頬を高潮させながら満面の笑みを浮かべていることだろう。
だってあたいの眼前に! なんと芳醇で新鮮っぽいアレがあったのさ!
気色ばんで駆け出した。お預けをくらった大好物を、遂にくらえることができる心情だね。
だって、それはそうだろう。あたいにとっての大好物が間近に転がっているのだから!
「おぉ……」
近くに辿り着き、ペタリと膝を地につけた。じっくりと水面を視線で舐め回すと、期待通りのものだと改めて確信できる。
「いい死体だ!」
――水死体。あたいが喜びに打ち震えさせるものこそが、無造作に打ち捨てられたこの死体って訳だ。
ただ、畔とはいえ死体が水に沈んでいるのは確か。猫だけに濡れるのは嫌だったけど、これを捨て置くのはもっと嫌だ。
という訳で、水際より死体をサルページしよう。こう、その辺に転がっていた木の棒でチョイチョイって感じでね。上手く死体の襟元に引っ掛け、ほいっと力任せに引き摺り上げた。
ここが浅瀬で幸運だったねこりゃ。死体を見つけるあたいの嗅覚は並じゃないけど、時間の経過と共に流されて深層に沈んでいたら手も出せなかった。
そもそも死体は沈むものだけど、極端に深くなければ何れは腐って浮いてくるものさ。腐敗ガスがパンパンに溜まった風船死体も嫌いじゃないけど、やはり現物そのままが好ましいね。
新鮮の範疇――つまり、死んで間もない体だとなお嬉しいってこと。
「よっと」
死体を水際に打ち上げて、注意深く観察する。
開いているとも閉じているとも言えない半開きな眼があたいを見ているけれど、構わず死体の状態をまさぐる様に確かめる。肉付きや肌触り、容貌に風貌と様々ね。
そしてこの死体、一番損傷しているのは首の中腹だ。
「鋭利なもので頚動脈を一刺し! ってところかねぇ」
厚い筋肉を突き破っての一刺しだ。故意と見るのが妥当かも。
まぁ、当の本人に少しばかり聞いてみようかね。
――そうして何時もの様に死体に“話し”かけたのだけれど。
「んん?」
うまく聞こえないわ。
あっれーー。おっかしいなぁ……。
普段ならば死体や霊との会話はお手の物なんだけど、どうしてか聞き取りずらい。
確かに聞こえはする。聞こえはするんだけど、酷く曖昧で断片的だ。感じ取ったことは、この死体から僅か困惑の念が伝わってくる程度。しかも一方通行で、こちらの意思は伝わりもしないし操れもしない。
諦観絶望怨嗟愁嘆と様々な甘美たる感情が伝わり、そこそこの意思疎通ができる筈だったんだけどねぇ。まぁ逐一取り合うのも面倒だから、暇じゃない限りは無視してるけどね。どちらかと言えば、あたいは聞き上手なのさ!
だけど、今回はその限りで済ませられないわけで。
……とにかく。感じ取った困惑念からして、訳も知らずに殺されたってことかな? 大方闇討ちか騙し討ちでもされたのかもね。ただの推測だけど。
しかし残念。
「話せれば詳しい状況も聞けたのになぁ……」
そこで思い至る。
そういや制限って……もしかしてこれだろうか?
確かに、死体と好き勝手会話して、誰が殺した殺されただの聞き出すのはフェアじゃない。そういうことかいな。
「…………」
――めんどくさいなぁ……。
まぁ、現在の目的に支障をきたすわけでもないから別にいいか。
とりあえず! 今はさっそく手に入れた死体を運ばなくてはね!
―――……。
あ。
「じゅ、重要なことに気が付いてしまったっ」
ね、猫車! 猫車はいずこに!? 完全に忘れていた!
今の今まで気が付かなかったとは、まるでお空並のお馬鹿ではないか!
そ、そうだ荷物。荷物の中に紛れていないだろうかっ。
背負っていたバックを引っくり返して、中身をそのまま地面にぶちまけた。
――これは水、これは食料。地図と……時計? に書き物と……なんだこの丸っこいのは?
丸っこいのには説明書があったから呼んでみる。
「えむ67破片手榴弾? ピンを抜けば爆発するのか……」
爆弾かい。
他には……植物? これなんだっけなぁ……あ! そうそう、たらの芽だ! 天ぷらにすると美味いんだ。
んじゃぁ、この容器に入っているドロドロしたのは油かぁ。天ぷらでも作れってか? 鍋と衣はどうしたのさ!!
……うん。まぁぶちまけてから一目で確信してたけど……愛用のマイカーなんぞ視線の片隅にすらない。
うあああぁぁ。こりゃ困ったねぇ。現状、死体運びは一苦労じゃないか。
さらに考えてみれば、死体の運搬先である灼熱地獄跡地まで戻れるのかどうかも疑わしい。
が! だからといってあたいが死体集めをやめる理由もないわけで。
戻れたときを想定して、あたいだけの死体を出来るだけ集めておくのも悪くはない。
だって極論を言えば、別に自分は灼熱地獄がなくても困りはしないのだ。あたいにとって重要なのは死体を運ぶという過程であって、目的地に死体を持っていくという結果ではないのさ。
実際死体を灼熱地獄跡地に持っていかないとさとり様に怒られるだろうから持って行くだけで、欲求に従うなら一日中でも死体を連れ回したい所だよ。
あたいの猫車に沢山の死体を積んで、数多の恨みつらみが荷を引くあたいの背に押し寄せるあの恍惚感が堪らないのさ!!
そ・し・て、今回はこんな特殊な場所にいるんだ。自由に死体集めてもバレやしないだろう。今は休職扱いでも構いませんよねさとり様!
ってことで、あたいの猫車、あるいは死体運びに最適な道具を速攻で確保する必要があるね。何が何でも手に入れよう!
よって、名残惜しいけどこの死体は一時的にその辺に隠しておこう。
死体自体は上物だ。損傷具合も首を除けば問題はないし、単なる雑魚妖怪の風袋でもなさそう。だから、これを諦めるつもりは毛ほどもない。
むごたらしい死体も壮絶な最後を想像できて非常にそそるけど、今回のような綺麗な死体は保管兼観賞用に適しているといえるね!
ひとまず死体は誰かに見つからないよう木の根元に押し込み、小枝や葉っぱを豪快に被せておいた。ついでに地図を開いて湖を見つけ、そこに死体安置場所だと分かり易く書き込んでおく。
仮に車より先に他の死体を発見してしまった場合は、このようにその場所を書き込むことにする。車が手に入ったら回収しなきゃならないし。
死体を持ち運びたい気持ちは堪らなくあるけれど、他の人に遭遇して勘違いされるのは勘弁だしね。殺されるのもっと勘弁だけど。
支援まに合うかッ
――さてさて。それじゃ車探しに出発だ!
懐へ先の爆弾を二つ程用心にと忍ばせつつ、他の荷物は全てバックに放り込む。
とりあえず、まずは近いから人里にでも言ってみようかな。道具とか何かありそうなイメージだし。
あんまり生きている人には会いたくないから、目と耳と鼻だけを澄まして慎重に進むべき。殺されたら死体運びも出来なくなっちゃうしね。君子危きに近寄らず! これに限るわ。
「そっれにしても、変なもんに巻き込まれたものさ」
殺し合いかぁ……。正直気は進まない。
だって死体は好きだけど、自分は死体になりたくないし。
――でもこれってさぁ、大好きな死体が選り取り見取り……なんじゃないの?
あたいが手を加えなくても勝手に死体が量産され、普段手の届かない死体も労力要らずで手に入る。
「……いいかもしれない」
一般妖怪や妖精は勿論のこと、あの強力な鬼とかも手に入るかもしれない。
するとすると! 地上のお姉さん達も棚からぼた餅的に手に入るってこと!?
なんかワクワクしてきた。
「いい! とてもいいかも!!」
――え、でもちょっと持って。
その考えでいくと……もしやお空やさとり様のも?
「――――」
グビリと喉が鳴った。
お空は友達。さとり様はご主人様。普段なら想像さえあり得ない――二人の死体。
この場では、それが何故かとてつもなく現実味を帯びた気がした。
もう一度生唾を飲み込んだところで、あたしは大きくかぶりを振った。
ま、まぁとにかく今は車。車探しだね!
誤魔化す様に内心で呟いてから、人里方面へ向けて歩みを進めた。
第一目的は猫車探し! 道中も死体は出来るだけ確保!
お、お空やさとり様、こいし様とかとも……うん。とりあえず合流、かな。
心配であるのは確かだしね。うん。見つけたらそうしよう。
――目的を、それこそ自己弁護のように一心不乱に反芻させながら歩く、自由気ままな火焔猫燐。
だがそこにいたのは、瞳孔を拡大させて唇を舐める――好物を目前にした獣同然の少女だけであった。
【C‐3 霧の湖近く・一日目 黎明】
【火焔猫燐】
[状態]良好
[装備]M67破片手榴弾×2
[道具]支給品一式、M67破片手榴弾×4、大量のたらの芽、食用油(1L)
[思考・状況]基本方針:死体集め
1:自身の猫車、もしくはそれに類似するものを見つける。そのため、まずは人里へ向かう。
2:死体があれば率先して確保。その後、地図に場所を明記の上、人目が付かぬよう隠す。
3:地霊殿の住人達との合流。
[備考]
曖昧な感情表現ならば、死体や霊であってもお燐は聞き取ることが可能です。
言葉は一切伝わりません。怒っていることや悲しんでいることが断片的に分かる程度です。
永江衣玖の遺体が湖から木陰に移動しました。
以上で投下終了です
投下乙です
お燐は早速ロワを満喫してるな。死体ならまだたくさん有るぞw
>不気味な迫力を漂わせる意味解らん生物
多すぎて誰の事かわからんw
投下乙です。
この危うげでハイテンションなお燐いいですねぇ。
ロワはお燐の仕事とぴったりあうなw持って帰れるかはわからないけどw
環境が環境だからアレだけど、危機意識ない奴多いなぁw
不安と紙一重なお燐だが、果てさてどうなるやら。死体集め自体が誤解フラグになりかねないしw
投下します。
紅魔館の廊下、数少ない窓の前でアームチェアに腰掛け、四季映姫は熟考する。
この災厄とも呼べる異例事態におけるルールは、生きるという当然の事を選択するだけで、罪が湯水の如く沸く黒の法。
人妖に善行を積ませる事を生業とする私が支持するはずもありません。
この黒の法には、更にもう一つ認めるわけにはいかないルールがあるのです。
開催された地での少女の死を目撃した際に、理解できたルール。
彼女の霊はこの地に留まり、永遠に彷徨い続ける。
人妖は死後、霊となり、死神の案内で三途の川を渡ります。
その後、私が生前の罪を咎め、その判決次第で行き先を与えるのです。
ですが、この地の死者にそれは許されない。
永遠にただ彷徨うことしかできないのです。
裁判による輪廻転生は昨日という日が死に、今日が生まれるように継続されるのが世の理。
輪廻の輪を止めるのは生前の罪、そして閻魔を否定すると同義。
地獄とは最初から生者に罪を負わせない為にあるのです。
そして私は生者にそれを気付かせる為にいる。
白と黒、生と死を司る存在として。
罪を生み出し、罪を否定するこの黒の法を撤廃し、この地の全ての魂を解放し裁く。
私の提唱した篭城の目的は、敵を避ける用途よりも、異変の解決策を練る時間を獲得するのが主な目的。
篭城とは完全なる守備の策。
例え最後まで誰一人もこの館に進入を許さずにいても、運良く禁止エリアに選ばれずにいても、それだけではただの時間の浪費。
いずれは紅魔館のあるエリアだけになり、その三時間後には破滅が訪れるだけでしかない。
本来、篭城とは援軍による戦力増強や、冬の到来による敵軍の撤退など、何らかの方法で解決できる事を前提としなければ成立しない策なのです。
まず、援軍には期待できません。
私の知る限り、この地に外部から侵入が可能な人妖は、全て名簿に記載済み。
リリカとヤマメからも、そのような人物がいないかは、既に確認済み。
時間による解決は禁止エリア、首輪という二重の束縛により封殺。
困難への挑戦と、無意味な挑戦は似て異なります。
ならば、ありもしない救いの蜘蛛の糸をただ待ち望むなどという選択肢を取れるわけがない。
私は釈迦ではないですが、この地で蜘蛛の糸を垂らせるようにならなければいけないのです。
しかし……現実問題、意気込みだけでは、遅々として解決へは進みません……。
主催者を出し抜く……その一手の糸口までにも一向に辿り着けない。
こうしている間にも、どこかで命が潰えているというのに……
『――ららら〜ちゃらららら〜♪』
白い携帯電話が歌を奏でる。
右手を差し出し、ボタンを押し、耳に備える。
まだ交代の時間には遠いはずですが、まさか二人になにかが……。
『映姫、ちょっと話があるんだけどいいかな?』
ホッとして胸を撫で下ろす。
第三者の声が流れてくるという最悪の予想は外れたようですね。
『ええ。遠慮せずにどうぞ』
『私達さー、まだ館の中を全部見てないんだよねぇ。もしかしたら、誰かいるかもしれない。
地下から軽くだけど音がしたんだよね。一回だけで、それからは聞こえなくなったんだけど。
気のせいじゃないことは、騒霊として保障するよー。それで僕とヤマメで地下を見に行こうかなと』
なるほど……。
確かにそれは重大な問題ですね。
実は私は二人と出会い篭城を決めた時点で、既に白黒はっきりつける程度の能力を使用していました。
議題はWこの紅魔館に現在いる参加者は三人であるかW
その時の判決は白。私達以外の参加者はいない。
最初から内側に敵がいては、主に外部を警戒する篭城作戦は意味を成しませんからね。
つまり音が聞こえたというのなら、その後に誰かが侵入したという事になります。
『ええ。分かりました。
念のため、地下だけでなく、この館全部を回っておいた方がいいでしょう。
私も行こうと思いますので、監視を交代してくれませんか?』
監視のため誰か一人が残らなくはいけませんが、私である必要はない。
戦力ならば、あの二人より上と自負しています。
もし侵入者がいるというのならば、私を探索に含めるのがベストのはずです。
もう一度能力を使えば解決する話なのですが、能力の使用は消耗が激しく乱用するわけにはいきません。
本当に必要であるという場合以外の使用は、控えるようにしなくてはいけないのです……。
更に抑制を感じるこの身では、提案できる議題はかなり限定された内容のみ。
特に主催者、ルール、参加者、この三つに直接関与するのは厳しいのが現状となっています。
二人には、私の能力を話していません。
この地において、私の能力だけを頼り、自ら白黒を判断できないようになれば、自立性の喪失を迎えてしまう。
精神が存在を左右する妖怪が、自立性を失えば、死人に等しい存在に堕ちてしまう。
それは避けねばならない。
それにしても、この制限というものは、一体どのような仕組みなのでしょうか……。
それさえわかれば、一筋の希望を見出すことが出来るのというのに。
『監視も哨戒も休憩も暇なんだよねー。ヤマメも同じ意見でさぁ。映姫はそのまま正門の監視を任せたよー』
『暇だからといって、気を抜くのは場合によって罪に繋がる事を忘れないように。それとその言葉では返事になってませ――」
ブツッ
連絡を切った音が響く。
仕方がありません……。ここを離れては篭城が成り立たないわけですし、不安は残りますが、あの二人に任せる事にしましょう……。
これは探索が終わったら、説教が必要ですね。
◇ ◇ ◇
紅魔館二階の数少ない窓から夜景を眺めつつ、映姫は思考を継続する。
夜景に、いまだ異常は訪れない。
少し前に映姫に入った連絡によると、リリカとヤマメによる地下の探索は無事終了。
地下の物音は老朽化により、家具が倒れた音だったらしく、現在は部屋を中心に探索しているとのことだ。
連絡より十分ほど経過した頃、映姫は正門に小さな影を目撃する。
映姫と小さな影は初対面だが、それでも一目で理解できた。
小柄な体躯。風にたゆたう帽子。澄んだ青髪。薄い紅を基調としたドレス。漆黒の蝙蝠の羽。
占拠された紅魔館、その最初のお客様は持ち主の吸血鬼。
映姫が以前出会ったナイフのように冷たいメイドの主に相応しい雰囲気。
子供にしか見えない外見にも関わらずの圧倒的な存在感。
赤い血管がのたうつような不吉な紅い花が揺れる花壇と、紅い満月に先導されるように。
妖艶に微笑むレミリア・スカーレットが正門に手をかけ、もう一つの手で幼い誰かと手を結んでいる。
ここまで早い邂逅は、映姫の予想外ではあった。
それでも臆さず冷静に、レミリアが誰かと手を繋いでいるという部分に注目する。
それを善行を積む意思が多少なりともあると判断し、すぐ近くの部屋にいる仲間と連絡を繋げる映姫。
・レミリア・スカーレットが訪れた。
・彼女には同行者が存在する。
・交渉の為、私一人で接触を図る。
・二人には交渉中、他の誰かの訪問を防ぐ為に、正門を監視してもらいたい。
・なにかあれば連絡を。
この旨を携帯電話越しに一方的に伝え、返事を待たずに、すぐさま二階の窓から離れ、廊下を疾走し、階段へと駆け寄る。
紅魔館一階には、静けさが満ちていた。
血のような赤絨毯が、どこまでも伸びるように敷かれている。
数少ない窓はビロードのカーテンによって阻まれ、天井近くの壁灯だけが揺らめく。
妖精に磨きこまれ配置されていた家具は、痕跡だけを残し、無造作に扉に積まれている。
少々時間が経過し、事態は動き始める。
一階ホールに降り立った映姫。
その眼に、早くも開幕の合図が映る。
家具の壁により閉ざされた玄関。
そこに音もなく、一筋、斜線状の境界線が刻まれる。
壁の上半分が重力に従い、境界線に沿って斜めにずり下っていく。
扉も含めた積み木のお城は、逆袈裟に和紙の如く切り裂かれ、轟音を残し自然に崩壊した。
奥に見えるは人影と月。
聳えるは、朱の吸血鬼。紅魔館の王。永遠に紅い幼き月。
「なかなかいい剣じゃない。
それで。私の城を玩具にしてくれたのは貴方?
もし、そうであるのならば、この紅魔館の主として誠心誠意、礼をしてあげなくてはね」
残骸に片足を乗せ、鈍く輝く剣を水平に構え、不適に微笑むレミリア・スカーレットが、そこに、いた。
レミリアが掲げるは、壇ノ浦より幻想郷へ流れ着きて、霧雨の名を授かった剣。
真名を草薙の剣。別名を天叢雲剣。
三種の神器の一にして武力の象徴。
天下を取る程度の能力を保有し、剣に主と認められた者は天下統一できると伝えられている。
その材質は、決して性質が変化することがない最高の金属、緋々色金(オリハルコン)。
吸血鬼の膂力に霧雨の剣が合わされば、斬れぬものなど在り得ない。
閻魔と吸血鬼は赤き絨毯を踏みしめ、五間(10m)ほどの空間を境に対峙する。
映姫に気遅れする様子はない。
目的は、レミリアとの交戦を避け、できれば協力関係を取り付ける事。
それを前提に、物腰を柔らかに、静かに声を紡ぐ。
「貴方の言葉通り、あのバリケードを築いたのは、私です。
四季映姫。幻想郷の閻魔の役割を果たしています。
貴方の噂は、かねがね聞いていますよ」
その言葉にレミリアはなるほど、と思慮深げに声を漏らし。
「――レミリア・スカーレット。
紅魔館の主人。そして吸血鬼を嗜んでいる。
私も貴方の事は、咲夜から説教好きの閻魔、と聞いているわ。
しかし、閻魔が不法占拠なんて、地獄も世の末になっちゃったのね」
敵意を添えて返すレミリア。
「あの侍従はいまだに悔い改めていない様ですね……。
紅魔館の事は、貴方もわかっているはずでしょう。この館は、主催者の造り出した偽者の紅魔館。
故に、参加者全てに使う権利が与えられているのです。それなのに、貴方は所有権を主張する。そう、貴方は少し傲慢が過ぎる」
想定済みとでも言うように、言葉を交わす映姫。
映姫は篭城前に能力を使い、紅魔館の権利について白黒はっきりつけていた。
判決は白。
この紅魔館に、レミリア・スカーレットの所有権は存在しない。
だからこそ、映姫は篭城を選んだ。
善行を積ませる閻魔が、悪行をしては沽券に関わる。
「言ってくれるじゃない。
そう。ここは偽者の紅魔館WだったW」
レミリアの語気に、ほんの小さな変化が生じる。
不思議な説得力を持つ言葉に、訝しげに眉をひそめる映姫。
閻魔としての感覚が、ここにいてはならないと騒ぎ始める。
閻魔の本能に逆らえず、嫌な胸騒ぎを解消する為に、レミリアの宣言を否決する為に、映姫は紅魔館に能力を使用。
議題W四季映姫に不法占拠の罪はあるかW
――判決は黒。
驚愕の色が溢れる映姫を見て、にんまりするレミリア。
「誰にも所有権はなかったし、誰にでも使用できた。
でもね。W紅魔館が本物であるWと証明するのに一番必要な要素は私。
紅魔館の主である私が立ち入った時点で、この紅魔館はW本物Wになったんだよ」
嘲るように、言葉を吐き捨てる。
絶対なる自信と共に、迷い無く突きつけられた絶対なる紅き真実。
偽者という概念は、本物という運命に塗りつぶされる。
閻魔の職業意識に決して抗えぬ映姫にとって、紅魔館の主としての正当性を認められた事は、敗北を意味する。
「不法占拠については謝罪します。
改めて、この館の使用許可を頂きたい。これは善行に値する行為でもあるのです。
代価は私のできる範囲であれば支払います」
必死に気を取り直し、非を認め、その上でレミリアに許可を求める。
「吸血鬼が死後を気にするとでも?
善行なんて私に意味を為すものか。
――けれどもね、私としても今はちょっとした重りもいることだし、実は貴方の誘いに乗るのもやぶさかではないの。
タダじゃあ、ダメだけれどね。
吸血鬼に畏怖する村人ならば、やはり貢物を捧げるのが相場だもの」
映姫は呻きはしても反論はしない。
心の中で自らの不甲斐なさを仲間に謝罪し、軽く頷き、決断を下した。
「――では条件を提示する。
貴方の持っている情報全ての提供。貴方の仲間の紹介。
私の日傘。小さな桶。人間の血液。着替え用の服を数種類適当に。以上を紅魔館で捜索。
この扉の片付け。紅魔館で他に何か弄った物があればその撤去。
残りはまた別の機会にでも請求するとしましょう」
余裕と嘲笑を浮かべ、レミリアは満足する。
「情報、紹介、日傘、桶、衣服、血液、扉、撤去。全て私個人で引き受けます」
篭城を提唱した責任として、全てを一人で受け入れる。
幸いにも、代償は、思考の片手間でできるものが多い。
「その決断の早さは、流石閻魔といったところか。
残念ね。返事を遅らせたら、舌でも抜いてやろうと思っていたのに」
「やれやれ。いつか貴方の罪を咎める時の為に、その言葉は記憶の片隅に留めて置く事にしましょう」
苦笑しつつ、映姫は言葉を紡ぐ。
「そんなもの永久に来やしないさ」
――交渉終了。
◇ ◇ ◇
交渉が落ち着き、映姫はとりあえず自分の持っている情報をレミリアに話した。
「それで……私の仲間の存在を知っていることについては、窓から見えたというところでしょうか」
そして次に映姫は、交渉中に気になった事象を話題に上げる。
差し出すばかりではなく、貰うことも出来る関係を築く為に必要な第一歩は会話。
いずれはあちらからも情報を貰う関係を成立させるために、映姫は話を振る。
「それはね。二階の窓から頭を出して、愚かにも私を見下す騒霊がいたのよ。
ちょっと視線を合わせて、ぎゃおー!って感じで威嚇したら、すぐ引っ込んじゃったけどね。
――キスメ。そろそろ出てきなさい」
意地の悪そうな笑顔で我侭かつ尊大に答えるレミリア。
その言葉の直後、扉の残骸からレミリアと手を繋いでいた少女が顔を出す。
礼儀正しく、映姫に向けてぺこりと一礼。
その後、ツインテールを揺らしつつ、レミリアに駆け寄り、太陽のように眩しい満面の笑みを浮かべつつ抱きつく。
「レミお姉ちゃん、いげんすごかったね!」
「威厳とはこういうものよ。覚えておきなさい」
キスメを優雅に受け止め、威厳たっぷりに自慢する上機嫌なレミリア。
目を閉じ、溜息を一つ吐く映姫。
雰囲気も和やかに、三人の邂逅は終わりを迎える。
【C‐2 紅魔館一階ホール・一日目 黎明 】
【四季映姫・ヤマザナドゥ】
[状態]やや疲労
[装備]携帯電話
[道具]支給品一式
[思考・状況]紅魔館に篭城し、解決策を練る。
1.レミリアに従っていい範囲までは従う
【レミリア・スカーレット】
[状態]やや疲労
[装備]霧雨の剣
[道具]支給品
[思考・状況]基本方針;永琳を痛めつける
1. 映姫に雑用を任せる。
2. 永琳の言いなりになる気はない。
3. 霊夢と咲夜を見つけて保護する
4. フランを探して隔離する
5.上記の行動の妨げにならない程度に桶を探す
※名簿を確認していません
※霧雨の剣による天下統一は封印されています。
【キスメ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品 ランダムアイテム0〜2個(レミリアが確認済み)
[思考・状況]基本方針;桶を探す
1. レミお姉ちゃんに付いて行く
2. レミお姉ちゃんみたいにいげんする
※殺し合いが行われていることを理解していません
◇ ◇ ◇
時間を少々遡る。
コツン……コツン……。
懐中電灯を右手に、王冠のような赤い楽士の帽子をショートカットの茶髪に乗せた赤い服装の少女。
その隣には軽機関銃を構える漆黒の大きいリボンで金髪をポニーテールに纏めた茶色の服装の少女。
リリカ・プリズムリバーと黒谷ヤマメは、四季映姫に地下へ行くことを連絡し、闇が待ち受ける階段を下り続けていた。
階段の前までは陽気に満ち溢れていたリリカも、不安そうに瞳を曇らせて、口数も少なくなっている。
不安と好奇心から発案した探索を、うすうす後悔しているようだ。
ヤマメは性質上、暗闇には慣れているが、それでも侵入者に対する不安が顔に出ている。
階段自体は、そう長いものではない。
しかし緊張と恐怖により、体感時間はその数倍にも感じていた。
時間だけがただ過ぎ去り……重厚な扉へと到達する。
静謐な静寂に包まれた空間で、音を発するものはリリカとヤマメだけ。
ゴクリと唾を飲み、覚悟を決め、警戒し、扉を少しずつ開く……。
ヤマメは何かが出た時に備えリリカの横で軽機関銃を構え続けている。
ギイイイイイ
古ぼけた扉のせいか多少動かすだけでも地下に音が響き渡る。
ひんやりとした空気が二人を撫でる。
リリカはそれに怯えつつも、扉の隙間から闇の中に光を射す。
真赤な絨毯、豪奢な家具が所々に見受けられる。
地下室は予想以上に広く、懐中電灯の光ではとても覆いきれない。
一歩、一歩、進む度に、キョロキョロと視線を揺らす度に、闇に魂を刈り取られるように憔悴していく。
「……なんにも……いないね……」
「……そうだねぇ……」
「……」
「……」
時間が経過し、簡単な会話すらしなくなった時、二人は音の原因と思われるものを発見する。
床に倒れ、硝子の破片が飛び散っているスタンドタイプの橙色の電灯。
見る限り床が老朽化し、その影響で倒れたのだろう。
原因が判明した二人は緊張の糸を切り、安堵の息を漏らす。
「あー。まさかこんなオチだなんてねー」
「よかったじゃないか。誰かがいるよりはずっとましだろう」
「そうだね〜。パパッと終わらせて帰ろうか!」
「そうこなくっちゃ!」
お互いを奮い立たせるよう励ましあう二人。
完全に恐怖は抜けていないのか、二人は無意識のうちに手抜きを混ぜ、忙しなく見回った後、地上への扉へ向かう……。
ギイイイイイ
地上への扉は閉ざされ、地下は一寸の光すら割りこまぬ真黒に戻る。
一階へ到着し、深呼吸し気持ちを落ち着かせ、二人は廊下に座り込み、四季映姫に連絡を入れる。
『映姫。地下の探索は終わったよー』
『お二人ともご無事な様でなによりです。音の原因はつかめましたか?』
『床がちょっと崩れて家具が倒れただけ。いやーなにもなくて拍子抜けだったなぁ』
リリカは要点を簡潔に伝え、二階の部屋を探索すると残し携帯電話を切る。
◇ ◇ ◇
「この部屋もこんなものでいいかな」
「そうだねぇ。この辺でいいんじゃない」
既に二部屋を探索した二人。
三部屋目も障害も収穫、共に無く、飽き飽きといった表情をしている。
たまに軽い口振りで言葉を交わしつつ、慣れた様子で四つ目の部屋へ向かう二人。
そんな中、リリカはふとある思考に行きつく。
「しかしさぁ、ヤマメ……」
「なんだい?」
リリカは抱いた疑問をヤマメの聴覚に訴える。
「……この殺し合いって……本当に死ぬのかなぁ」
言った本人も半信半疑の戯言。
その言葉を聞き、ヤマメは悩むような、納得したような表情を見せる。
「う〜ん、そうだねぇ。最初は驚いてけど……もしかすると一種のお祭りなのかもね……」
悩みつつも同意の意思を示すヤマメ。
同意を受けリリカの表情がパッと明るくなる。
「だよねー。最初は驚いたけど、あれからなーんにも起きないし」
「最初に死んだあの子だって、本当に死んでるのかどうか怪しいものさ」
「冥界の住人や閻魔だって参加してるくらいだからねー。むしろ死んだって大丈夫なのかもしれないよ」
二人は心の底の本心を晒すにつれ、はにかんだような笑顔が零れ、恐怖が自然と薄らいでいく
「どっちだっていいけどね。そうなると私達がしていたことって……」
「ただの間抜け……。もしかしたら今もどこかで、私達見て裏方の妖怪が笑ってるのかも」
「地下に落とされた妖怪もいまや見世物。時代の流れって奴かね」
もはや二人の表情に恐怖の色は見えない。
「ただのゲームならこんなとこで待たずに、姉さん達と合流して、精一杯騒々しくしてた方が正解だったかなー」
「ま。ゲームでも、どうせなら優勝しちゃうじゃないか。篭城が有効な事は証明されてるんだし」
「一度決めたことでもあるしね、映姫の作戦のままでいいか」
恐怖から逃れる事が出来る希望の道標を見出した二人は余裕の笑みを浮かべている。
完全に弛緩した空気の中、携帯電話が歌を奏でる。
リリカは落ち着いた仕草で携帯電話を取りボタンを押す。
『今から言うことをよく聞いてください。
レミリア・スカーレットが訪れました……。
彼女には友好関係を持つ同行者が一人いるようです。
交渉のため私一人で対応しますので、お二人には探索を中止し私の代理として正門の監視を頼みたいのです。
もし彼女達以外に誰かが見えたら連絡を入れてください』
『えらい慌ててるねー。りょう――』
ブツッ
支援
「あれ。映姫ー」
「何だったんだい?」
「この館の持ち主とあと誰か一人がきたんだってさ。交渉するから正門の監視変わってくれって」
「こんなゲームにまで一生懸命とは、映姫も真面目だねえ」
「まぁ、優勝のためにも、負けず嫌いの閻魔に協力しようよ」
死を認める者と認めない者。すれ違うのは必然。
恐怖を味わった後に、安全を堪能すると、麻薬のような快楽を産む。
生死をかけた事柄だけになおさらだ。
快楽に飲まれた二人に映姫の言葉は届くはずもない。
無邪気に勝ち誇りつつ、リリカ達は、バリケードにレミリアが到達すると同時に監視地点に辿り着く。
窓越しに外を覗くが、既に扉の前にいるレミリア達は角度的に見る事はできない。
二人の元にレミリア達が発する音が流れ込む。
「さて……この邪魔をどうしようか。
自宅相手に汚れるのも馬鹿馬鹿しい。
扉以外から入る気が起きるはずもない。
――キスメ。袋を貸しなさい」
「これ?はい!」
リリカは好奇心を抑えきれずに窓を開け、吸血鬼の取り出すものを見るために、地を見下ろす。
目撃したものは月夜の中、怪しく光る瞳。
リリカはその視線に凍りついた。
窓の開閉音に反応し、空を仰いだ吸血鬼の紅の魔眼に捉われる。
視界が赤の染まるかのような感覚。
血の池のように深く深く、底があるのかもわからない暗く紅い双眸。
安全に浸っていた矢先、血も凍る殺気を浴びせられたリリカは畏怖に蝕まれる。
危険の後の安全は極楽。
これはその逆も成立する。
吸血鬼への畏怖により、安全を瞬く間に砕け散らされたリリカは、地獄に堕ちた。
立場をひっくり返されたリリカは声にならない悲鳴をあげ、硬直する。
背骨に氷水を流し込まれたような悪寒。
数秒の時を経て、正気をかろうじて取り戻し、窓を力強く閉める。
動悸は収まらない。熱くもないのに汗が流れ出る。
危なっかしく足がもつれ、その場にひざまずく。
幻影の吸血鬼、恐怖の波、渦巻く焦燥感が消えない木霊のように駆け巡り、リリカの冷静さと理性を削ぎ落とす。
「お、おいおい、どうしたんだい」
突然の狂気じみたリリカの行動にヤマメは、戸惑いながらも心配そうに声を紡ぐ。
「……ヤマメ……。その銃貸して!」
窓を覗く前の緩んだ表情とは正反対の焦った必死な表情でにじり寄る。
恐怖の克服のために、リリカは力を欲するという手段を選ぶ。
「銃?これは映姫に貸してもらった物だしねえ。安心しなよ。ゲームの終了までちゃんと守ってあげるから」
突然の要求にうろたえつつも、リリカを落ち着かせようとするヤマメ。
「もうなにがなんだかわからないのよ……本当にゲームなのか違うのか……姉さん……」
リリカは乾いた笑いと共にか細い声を吐き出す。
瞳にはみるみる涙が溜まってきている。
「ゲームだよ。こんな悪趣味なことを実際にする奴は幻想郷にはいないって。
それより、さっきキスメって聞こえなかったかい?そいつ、私の友達なんだよ。」
このままリリカの話に付き合っては泥沼と判断しヤマメは話を逸らそうとする。
「そんなことより銃を貸してってば!」
そんな思いを無碍にするように、無理に声を張り上げ、ヤマメに詰め寄る。
「あ〜。今のあんたにこれを持たせるのは不安だから、こっちで我慢しておくれ」
仕方なくというように、ヤマメは映姫の最後の支給品である金属製のナイフを差し出して見せた。
「こんなんじゃ、あの吸血鬼には……せめて銀じゃないと……あれ?」
受け取ったナイフを力強く握り締め、不満を漏らしたその時、ナイフの形に疑問を抱く。
深く観察するとグリップ部分に色々な仕掛けを発見し、リリカは一時でも恐怖を忘れたいがために、細く繊細な指で、一心不乱に弄りはじめる。
「どうしたんだい?」
これ幸いにと、ヤマメはリリカの話の波に同調しようとする。
「このナイフ、なにか変わったものがついてるんだよ。ほら」
必死にナイフのグリップ部分を弄り、カチャカチャと音を立てつつ、ヤマメに見やすいように腕を差し出す。
「へぇ。どれどれ……」
眼を寄せ、ナイフを興味深く観察するヤマメ。
その時。
カチャリ――!
リリカのナイフを持つ手に唐突に微量の振動が走る。
――そして
ピチャ。
――リリカの頬と髪に液体がかかる。
ドサッ。
――大きな物が倒れたような音が響く。
仰向けに倒れ臥したのは、ヤマメ。
起きる気配は感じられず、鮮血をただ眼孔から垂れ流している。
転げ落ちた眼球はリリカの姿をただじっと映している。
「え……」
ナイフの正体は特殊部隊の使用する特殊なzW銃zW。
正式名称『NRSナイフ型消音拳銃』。
用途はナイフと見せ掛け油断を誘い、グリップのスイッチを発射キーとし、刃の逆方向へと消音性を有す弾丸を発射する事。
リリカはナイフを不用意に弄った結果、セーフティレバーを解除し、図らずも引き金であるスイッチを押してしまった。
その結果、銃弾は、螺旋の回転を帯び、音も無く、ヤマメの眼球を弾き飛ばし、眼孔を通過し、脳に到達。
息を吹きかけるだけで消えてしまう命の灯。
儚く、非情な、現実を把握しきれずに、リリカはただ呆然と佇む……。
【C‐2 紅魔館二階廊下・一日目 黎明 】
【リリカ・プリズムリバー】
[状態]健康
[装備]携帯電話、NRS ナイフ型消音拳銃(0/1)
[道具]支給品一式、不明アイテム(0〜3)
[思考・状況]????
※すぐ近くにヤマメの死体とMINIMI軽機関銃(200/200)、MINIMI用マガジン30発(空)
5.56mm NATO弾(100発) スキマ袋(支給品一式、NRS ナイフ型消音拳銃予備弾薬20、不明アイテム0〜3)が落ちています。
【黒谷ヤマメ 死亡】
【残り46人】
投下終了。
支援ありがとうございました。
乙です
ヤマメうわあああああああああ
そしてレミリアかっこいい!
では、遅れましたが私も投下します
闇が薄れ、空が段々と白み始める。しかし、月の明かりは未だ途絶えることなく草木を照らしている。
草原に立つ紅白の少女――博麗霊夢は、特に目標もなく歩いていた。
殺し合いに乗る事を決めたはいいものの、どこへ行くか決め兼ねていたのだった。
「さて、これからどこへ行こうかしら」
無意識に呟いた、その時。
見覚えのある者がこちらに向かってくるのが見えた。
相手も霊夢の姿に気付いたようで、青い髪を揺らしながら寄ってくる。
そして自分の姿を見るなり首を傾げた。
「あれ、霊夢?」
「今晩は、にとり」
少女――河城にとりはああ、と思い出したように挨拶を返す。
「それにしても驚いたよ。こっちからは頭しか見えなかったから、てっきり魔理沙かと思った」
霊夢が被っている、お馴染みの黒い帽子を指差してにとりは言う。
「で、これ。どうしたのさ?まさか支給品ってこともないだろう?」
まあ、私もロクな物が入ってなかったから人の事は言えないけどね。と、にとりは笑った。
つられて、霊夢もくすくすと笑う。しかし目は笑っていない。
「帽子は……貰ったのよ。魔理沙にね。支給品は別にあるわ」
そう言うと、霊夢は持っていた楼観剣を構えて見せる。
「へえ……刀か。いい物が当たったね」
「そうでしょう?」
そしてそのまま、刃をにとりの首元へ向けた。
「い、いや……もう分かったから。それ、仕舞ってよ。危ないからさ。ね?」
にとりは、目に見えて動揺し始める。笑顔は引き攣り、声は震える。
霊夢の様子がいつもと違う事にようやく気付いたようだ。
逃げなければ――
体中がそう警告するも、足が棒になったかのように動かない。
そんな彼女を余所に、霊夢は能面を被ったように表情を崩さずじりじりと迫ってくる。
刀の切っ先はもう、にとりのすぐ目の前にあった。
遂には足が縺れ、尻餅をついてしまう。
「いや……いやだ……」
立ち上がる事もできず、ただ後退るしかない。
力は制限され、弾幕の威力もかなり抑えられている。
武器もない。道具もない。逃げてもきっとすぐに捕まってしまう。
にとりにはもう、成す術がなかった。
心を、絶望が支配する。
「それじゃあね、にとり」
霊夢が刀を振り下ろした。にとりは固く目を閉じる。
ああ。私、死んだ。
しかし、いつまで経っても刀がにとりの体を切り裂く事はなかった。
もしかして、痛みを感じる間もなく死んでしまったのだろうかとも思う。
目の前があの世でないことを祈りながら、にとりはゆっくりと瞼を開けた。
そこには、
「何やってんだよ……霊夢」
小さな鬼が立っていた。
彼女は霊夢の腕を掴み、刀を止めている。
「あら、萃香。何って……殺し合いよ?」
それをさも何でもない事のように、霊夢は調子を崩さずに言った。
萃香と呼ばれた鬼は一瞬困惑した表情を見せたが、すぐに眉間に皺を寄せて不快な表情を浮かべる。
「冗談はやめろ」
「冗談なんかじゃないわ。私は本気よ」
怒りをあらわにする萃香に、冷たく霊夢は言った。
「霊夢……お前、おかしいぞ」
「おかしい?何が?」
「お前はそんな奴じゃなかっただろ!?」
鬼は吠える。
何だかんだで、今までよく一緒に過ごしてきた二人だ。
基本的にドライな性格の霊夢だが、本当は優しい心を持っている事も萃香は分かっている。
だが、今目の前の彼女には優しさなんて微塵も感じられなかった。
「……あんたはこれからどうする気なの?」
萃香とは対象的に、余裕の表情を浮かべて霊夢は尋ねる。
「こんな無益な殺し合い、乗るわけがない」
当然だ、とでも言うように萃香は即答する。
霊夢はふーん……とつまらなそうに呟くと、
「おかしいのはあんたの方じゃない?」
そう、はっきりと告げた。
「何だと!?」
萃香は激昂する。今すぐ噛み付いてやろうかという勢いで。
しかし霊夢は、それすらも捩伏せるような威圧感を纏っていた。
少なくとも、未だにとりは何も出来ずに萃香の後ろでただ震えている。
「このまま何もしなければ、ただ死ぬだけなのよ?それとも、何?死にたいの?」
肩を竦め、呆れたように言う霊夢。
死にたいわけじゃない。
ただ、仲間を殺してまで生きるなんて、そんなのは嫌だ。萃香はそう考える。
だからこそ、この問題を解決できそうな仲間を探していたのだ。
そして、最初に出会えたのが霊夢だった。
自分は幸運だと思った。いきなり信頼できる者と出会えるなんて。
だけど――出会わなければよかったのかも知れない。
「私達は逆らえないのよ」
霊夢は淡々と話す。
「事実、私達は力を制限されている。あんたも分かってるでしょう?
そして首輪。この殺し合いから逃れる事ができないって証拠よ」
首元に金属質な冷たさを感じ、萃香は改めて実感する。
人間だろうが妖怪だろうが、簡単に命を奪う事ができる首輪。
確かにそれは主催者への反抗が無駄だという事を示す物であり、霊夢の言う事に反論はできない。
だが、それでも――
「生きる為に戦う。それっていけない事?」
萃香には理解できなかった。
「お前、誰だ」
抑えた声。
だがそこには確かに怒りという感情が込められていた。
それを聞いた霊夢は、意味が分からないというように嘲笑う。
恐怖でおかしくなってしまったのではないか、という風に。
「はぁ?博霊神社の巫女、霊夢よ?何言ってるの?そんな分かり切ったこと……」
「お前は私の知ってる霊夢じゃない!!」
萃香は、言葉を遮るように怒鳴り付けた。
一瞬目を見開くと、霊夢は顔を伏せ、
「そう……あんたも同じこと言うのね」
自分にしか聞こえないような声で呟く。
萃香は、少し後悔した。
今は殺し合いという異常な事態であり、混乱しているだけかも知れないのだ。説得すれば分かってもらえる可能性もある。
それなのに勢いに任せてあんな事を言ってしまうなんて。
しかし、
「ごめんなさいね。あんたの知ってる私じゃなくて」
そう言い終わるか否かの内に、霊夢は萃香の腕を振り解くと大量の弾幕を放った。
制限の為、当たったとしても致命傷には至らないだろうことは分かっていたが、相手の視界を遮るのにはそれで十分だった。
「っ……!!」
突然のことに怯み、動けないでいる萃香の懐に飛び込み、そのまま構え直した刀を突き立てる。
しかし、その感触は軽い。
運悪く、刀は萃香の担いでいたスキマに刺さっていた。
「……」
霊夢は顔色一つ変えずそれを引き抜き、今度は横に凪ぐ。
萃香はギリギリのところで後ろに跳んで回避する。弾幕が少し掠ったが、立ち止まっている余裕はなかった。
次の攻撃が来る。
それをまたギリギリで避ける。
反撃しなくては。
そう思うのに、上手く体が動かない。
制限によるものか、それとも迷いから来るものか。それは萃香自身にも分からなかった。
「油断大敵よ」
突然、霊夢が萃香の足を払った。
刀の動きに気を取られていた萃香は、にとりを巻き込んで後ろに倒れる。
霊夢がそれを見逃すはずはない。二人との距離を一気に詰め、刀の切っ先を向けた。
月の明かりに照らされて、刃が鋭く輝く。
「甘い……甘いのよ、萃香。
それににとり。あんたは臆病ね。強い者の後ろに隠れて生き延びて……それで満足?」
感情のない瞳で、霊夢は後退る二人を見下ろす。
しかし追い詰められてなお、萃香の瞳は霊夢を睨み付けて離さなかった。
霊夢は大きく刀を振り上げ、告げる。
「さようなら」
その瞬間。
萃香の視界の端を、何かが通り過ぎた。
それは木の塊のような物。
にとりが咄嗟にスキマから取り出して投げたのだった。
「お、臆病者で悪かったな!」
そう捨て台詞を吐くと、にとりは震える足を無理矢理に動かして、萃香の手を引いて引きずるように走り去った。
緩やかな放物線を描いて、木の塊は霊夢の顔面に思い切りぶつかる。
ゴツ、という鈍い音。
「痛ぁ……」
霊夢が俯くと、地面には赤い雫が滴り落ちた。
鼻を摩ると、ヌル、という感触。
手を見る。血が出ていた。
「……」
袖で血を拭い、顔を上げる。
しかし、時既に遅し。二人の姿はなかった。
▽
「ここまで来れば……」
しばらく走り続け、霊夢の姿が完全に見えなくなったところで、にとりと萃香は足を止めた。
振り返っても、追ってくる気配はない。
息を切らしながらも、とりあえずは安心した様子でにとりは萃香に手を差し出す。
「助けてくれてありがとう。えっと……萃香、だっけ?私は河童のにとり。よろしく」
「いや、私こそ……」
萃香はその手を握り返す。お互い、手は汗で湿っていた。
「あんたが来てくれなかったら確実に死んでたね、私。
鬼って、どいつもこいつも凶暴な奴らなんだと思ってたけど考えを改めなくちゃ。あんたみたいな、優しい鬼もいるんだし」
そう言って、にとりは笑った。
鬼という種族は、妖怪の世界で頂点に立つ強さを持っている。
その為、河童のにとりは鬼である萃香に恐怖感を抱いていた。
まさか、その鬼に助けられる事になるとは。
「私も殺し合いには反対だよ。だからさ、一緒に行かないか?」
萃香は強い。
先程は、相手が相手だけあって躊躇していたのだろう。
今回は運良く生き延びたが、一人では襲われたら一たまりもない。一緒に行動し、守ってもらおう。
そう思うにとりだったが、
「私、霊夢を止めにいく」
萃香は、今来た道を戻ろうとしていた。
「馬鹿!死ぬ気か!?勝てるわけないだろ!さっきもお前、押されっぱなしだったし!」
服の裾を捕まえ、にとりは行かせまいと必死になる。
「でも……!」
だが萃香も同じように焦っていた。
それをどうにか宥めようとにとりは萃香の小さな体を揺する。
「ちょっと落ち着けよ!霊夢の奴……本気だった。今の私達じゃ、勝てないよ」
にとりは正直、もう霊夢には会いたくないというのが本音だった。
だが、自分を助けてくれた恩人を見殺しにするのはもっと嫌だった。
「止めるにしても何にしても、今のままじゃ無理。それこそ無駄死にだ」
だからにとりは提案する。
「仲間を集めよう。霊夢はああ言ってたけど、殺し合いに反対の奴は他にもいるはずだ。
それに、私達には武器もない。形勢を立て直してから、もう一度始めるんだ。止めに行くのはそれから。それに……」
にとりは自分に付けられた首輪を指差す。
「これの解除の仕方も、調べてみたいしね」
技術に対する関心が高い河童の性分であった。
▽
いけない。少し落ち着かなくては。
私は大きく深呼吸する。
にとりの言う通りだ。
ここはまず、戦略的撤退。
そして、今度こそ霊夢の目を覚まさせてやろうと誓う。
それにしても、あの帽子。
あれは明らかに魔理沙の物だった。
まさか……既に魔理沙は霊夢に殺されたということ?
信じたくはないけれど否定はできない。
だが生きているならば、きっと力になってくれるはず。
それにしても……殺し合いはしたくないなんて、私は甘いのだろうか。
何も失いたくないなんて、傲慢だろうか。
いつか、大切な人を殺さなくてはならない時が来るかも知れない。
その時、私はどうしたらいいのだろう。
霊夢の言葉が、頭の中をぐるぐると巡る。
運命は人を容易く変える。
だが、人は運命を変えられないのだろうか。
小さな鬼は、大きな不安を抱えたままゆっくりと歩き出す。
人間が好きな、優しい河童と共に。
【E-6 一日目・黎明】
【伊吹萃香】
[状態]かすり傷、精神疲労(小)
[装備]なし
[道具]支給品一式 盃
[思考・状況]基本方針:意味のない殺し合いはしない
1.仲間を探して霊夢の目を覚まさせてやる
2.お酒を探しに行く
3.能力を封じ込めた連中に対して若干恐怖、弱気
※酔いはほとんど醒めています
【河城にとり】
[状態]精神疲労(小)
[装備]なし
[道具]支給品一式 ランダムアイテム1〜2個
[思考・状況]
1.仲間や武器を探す
2.首輪を調べる
3.できれば霊夢にはもう会いたくない
4.戦闘になったら萃香に守ってもらおう…
▽
「また逃げられちゃった」
霊夢は小さな溜め息をつく。
二人は恐らく、まだ遠くには行っていないだろう。周りには、隠れる場所もほとんどない。
今すぐに追いかけて殺しておこうかとも思った。
しかし鼻血が止まっていない為、諦める。
無理をしなくても、遊戯はまだ始まったばかりだ。一先ず休息を取ろう。
だがその前に。
霊夢は、先程自分を襲った木の塊を拾い上げる。
それは桶だった。
どこかで見覚えがある気がしたが、思い出せないので考えるのを止めてスキマに仕舞う。
「さて、これからどこへ行こうかしら」
長い夜が、終わろうとしていた。
【D-6 一日目・黎明】
【博麗 霊夢】
[状態]顔面を強打(鼻血が出てますが、しばらくすれば止まると思われます)
[装備]楼観剣
[道具]支給品×2 ランダムアイテム1〜3個(使える武器はないようです) リグルのランダムアイテム1〜2個(まだ確認していません) 魔理沙の帽子 キスメの桶
[思考・状況]基本方針;殺し合いに乗り、優勝する
1. できるだけ手間をかけず、迅速に敵を排除する
2.少し休憩
※ZUNの存在に感づいています。
101 名前: ◆5wsAzI.7vk[sage] 投稿日:2009/03/19(木) 22:48:36
終わりです
支援ありがとうございました
タイトルは「長い夜の終わり」です
仮投下スレから転載。
投下乙です。
二人は何とか逃れたか……。
霊夢こえーなー。
二人とも投下乙
なんという誤殺、キスメは知り合いが死ぬし、レミリアと映姫には不穏な空気が漂ってるし、早くもメッキが剥がれてきてる……
萃香もにとりもとりあえず死なずには済んだけど萃香はメンタル面に問題あるし、にとりは臆病だし、不安が残るなぁ
こんな調子で大丈夫なんだろうかw
なぁ・・・リリカが「僕」って言っているような気がするんだ。
俺たぶん寝不足なんだとおもう
僕っ子…だと!?
すいません、ミスです。
私って書いてるところもあるので、許してくださいorz
収録の際にでも直しておきます。
「殺し合いをしてもらいます・・・か。
まさか、こんなことになるとは思わなかったわ」
比那名居天子は暗い夜の山の中を歩きながら呟いた。その表情は、何が何だか訳が分からないと言いたげな感じだ。
彼女は天界に住む天人である。そして、以前に発生した地震および異常気象を起こした張本人でもある。
その動機はというと・・・
簡単に言えば、異変を起こしたかった。そして、それを解決する者と戦いたかった。ただそれだけ。
地震や異常気象から何かを得ようとしたわけではない。博麗神社を自分の住処として建て直そうとしたことはあったが、あれはもののついでの事。
本当に、異変を起こすことだけが目的だったのだ。
そもそも、こんな考えに至った理由は、天界がとても平和で退屈だったからである。
毎日が歌やら酒やら踊りやらとかの繰り返し。傍から見れば羨ましいかもしれないが、本人にしてみれば、毎日同じことの繰り返しで嫌だっただけ。
そんな中、幻想郷の人妖が異変を起こす、解決するといったやり取りを見て天子は思った。自分も異変を起こしてみたい、と。
そんな自分が、まさか異変に巻き込まれる側になってしまうとは思わなかった。
さすがは幻想郷といったところ。ちょっと干渉しただけですぐにこういう目に遭うとは。天界の常識に囚われてはいけないということか。
この状況で、天子はどう思うのだろうか?
その答えは、すぐに彼女の口から出た。
「ふふふ、面白いじゃない!
生を勝ち取るためのイスの奪い合い、いつ来るか分からない死との戦い・・・。死神なんかと戦うよりもよっぽど良いわ!
目指すはもちろん優勝ね!」
天子はどう思うのか、その答えは考えるまでもないようだ。
天子は興奮していた。
初めて異変に巻き込まれたということもあるが、それ以上にこの殺伐とした雰囲気が快感だった。
本来、天子の楽しみといえば、定期的に来る死神との戦いだ。更に言えば、戦うことが楽しみといえる。
といっても、弱い奴と戦うのは好きじゃない。戦いの最中の緊張感がまるで無いから、勝ったときの達成感も得られないのだ。
だが、少なくとも死神は自分を死なせるつもりで本気で向かってくる。負ければ死ぬし、相手もそうさせるつもりなだけに、緊張感がある。これがいい。
そして、あの女が言った殺し合いとやらは、最後の一人になるまで殺し合うと言った。
当然、全員は生き残るために必死なはず。正直、死神なんかよりも危険で手ごたえがあると思われる。
そんな奴らと立て続けに戦えることを考えると、笑いが抑え・・・
「うふ、うふ、うふふふふふふふ・・・
おっとっと、いけないいけない。まだ戦ってもないのにこんなんじゃあ、よくないわね。
さっさと相手を見つけないと・・・」
危うく変な幻想に惑わされるところだった。そんな自分に喝を入れ、戦う相手を探すために再び歩き始めた。
「・・・あら?」
もう少しで山を下るというところで、その先は崖になっていた。とはいえ、高さはないため、そのまま飛び降りても問題はないだろう。
そして、その崖を見下ろすと、誰かが木陰で休んでいた。
その誰かはキョロキョロと辺りを、特に西側を意識するように見渡している。
まぁ、天子にとってはそんなことはどうでもいい。それよりも・・・
「さてと、一人目発見ね。攻撃と行こうかしら。武器は・・・」
そういえば、スキマ袋には武器があるらしい。せっかくだから何かを使いたいところだ。
だが、
「スキマ袋か・・・。あのおばさんを思い浮かぶわね・・・。名前は確か、八雲紫。
あいつも参加しているらしいけど・・・」
八雲紫。あの女とは博麗神社で戦ったことがある。
その時の彼女は非常に怒っていた。触れた者を即殺してしまいそうな迫力だった。
天子の行ったことは幻想郷を滅ぼしかねない行為だったから当たり前とはいえ、当の本人はそんな自覚は全く無い為、なぜあんなに怒るのかが分からなかった。
そんな相手と戦った結果は・・・見事な惨敗だった。
負けた後、すぐに逃げたかった。命乞いをしたいとも思った。
その時だろうか、初めて死ぬほどの恐怖と屈辱を味わった気がする。
「どうも、あのおばさんはいけ好かないわ。何とかならないかしら」
天子は怒りを覚えながら、スキマ袋に手を突っ込んで武器になりそうなものを探す。
水、食料、時計といったそういえば説明のときに言ってたものの他に、説明には無かったものがある。それは
「おお、弓矢か。他の天人様が使っているのを見たなぁ・・・。デサインは違うけど」
弓と束になってまとまった矢と
「・・・何、これ。傘のつもり?ダサっ!?赤くて細長いの付いてるし・・・
これは役には立たなさそうね。・・・捨てちゃおうかなぁ」
誰の物か分からない、悪趣味な傘だった。
持ち物をスキマ袋に戻し、再度ターゲットの方を見る。
「まぁ、いいわ。いざとなったら素手でもやってやる。
だから、まずは・・・」
そう言い、弓を構え矢をセットする。
ギリギリと弓の弦がうなり、弓と矢の先端がきしむ。
そして・・・
「戦闘開始よ!」
天子は言うと同時に、矢を発射した。
「・・・あの人は追ってこないの?」
妹紅から逃げ切り、木陰で休んでいた橙は今もなお周囲を見渡す。
もうすでに体の疲労が無くなっていても、いつあの人間に襲われるのかが分からないといった不安が彼女の心を疲労させる。
しかも、あの人間に武器(になりそうな物)を奪われ、身を守るための道具は無くなった。
猫特有の動きを活かした戦いなら出来るが、それが通用するのはせいぜい雑魚妖怪程度。
しかも、その雑魚妖怪すら何をするのかが分からない。もし、相手が強力な武器を持っていたら・・・
とてもではないが、生き残れるとは思えない。
今度、誰かに見つかったら・・・
そう思っていたときだった。
ビスッ!
「わぁ!?」
突然、何かが刺さった音がした。
音がした方向を見ると、そこには矢が地面に突き刺さっていたのが分かる。
ついさっきまでこんなものは無かったはず。
まさか・・・
「誰?誰なの!?」
橙はとっさに立ち、周囲を見渡す。
だが、矢を射抜いたのだから、すぐ分かる位置にはいないことは分かる。
だから、矢の方向を睨みつける。
「そこのお前!姿を見せろ!居るんでしょ!?」
橙が見た方向は、背の高い草が生い茂っている。
だから、攻撃した奴はそこに隠れているに違いない。
そう思っていたとき、
「上から来るぞ!気をつけろー!」
「・・・えっ?」
上から何者かの声が聞こえて・・・その声の主であろう者が空中で矢を構えているのが見えた。
避けなきゃ・・・。橙はそう思った。
だが、そう思ったと同時に、空中にいる何者かは矢をこちらに向けて発射した。
ドスッ!
「うあっ!?」
橙はとっさに回避しようとした。
だが、遅かったのか。何かに当たった音と同時に強烈な痛みを腹部から感じた。
その部分を見ると・・・
「う・・・あ、あ、あああああぁぁぁぁ・・・」
矢が深々と、橙の胸元に突き刺さっていた。
「おお、まさか当てられるとは思わなかったわ。私ったらラッキーね!」
崖から飛び降りながら矢を射た後、すたんと地面に着地した天子は獲物に矢が当たったことを確認する。
だが、獲物の正体を見て、天子は不機嫌な顔になる。
(こいつ、八雲の式か・・・。いきなり出くわすとはね)
自分をボロボロに負かした奴の式だ。それだけで紫のことを思い浮かぶのも無理はない。
だが、それだけにやりがいがあるというもの。
いきなり紫と戦えと言われても勝てる気がしないが、式ならば充分に勝算はあると同時に手強い印象もある。
だから、相手にとっては矢一本くらい食らったところでどうってことはないだろう。
当然あの化け猫は何かを仕掛けてくる。
そう思い、天子は身構えて目の前の橙を警戒する。
「ふふふ、覚悟しなさい。八雲の式の一匹目よ。
あなたを倒して・・・八雲紫への恐怖を乗り越えてやるわ!」
こうして、天子から見れば強敵との戦いが始まった。
…が、
「って・・・あれ?」
おかしい、何もしてこない。
このことに疑問を感じた天子は、怪訝そうに橙を見つめる。
よく見ると、彼女は腹部から、そして口から血を出しながら倒れていて動く気配がない。
「おかしいわね。八雲の式だから強いはずなのに・・・」
不思議に思えた天子は、悪趣味な傘で橙の体をつんつんと突っついてみたりぺしぺしと叩いてみたりする。
が、それでも反応はない。力尽きてしまったようだ。
あの八雲の式が、こうもあっさりと死んでしまうとは。
どうやら、悪ふざけでやった奇襲が違う意味で仇になったようだ。
うん、そうだと思いたい。八雲の式は強いはずなんだ。
今更どうこう思っていても仕方がないので、天子は今後の方針を考えることにした。
だが、彼女は単純な思考ゆえに、すぐに決まった。
「んー、まぁいいか。八雲の式はもう一匹いたはず。
八雲紫への恐怖の改善は、そいつで我慢しようか。
それに、対戦相手は八雲だけじゃないからね。そいつらとも戦わないと」
だとすると・・・
天子は西側にある森を睨みつける。
そこは、橙が休憩中にやたら見つめていたところだ。
まるで、そこから誰かが来るのではと思っているような振る舞いに、頭の回転があまり良くない天子でも気になるところ。
「もしかしたら、あそこに誰かがいるかもしれないわね。
よしっ。それじゃ、あの森に行ってみようか」
そう思い、西側の森を見つめる。
「ふふふ。楽しいゲームは今度こそ、これからよ!」
そして、次なる獲物にわくわくしながら天子は歩き出した。
【B−4 山の崖下付近・一日目 黎明】
【比那名居天子】
[状態]正常
[装備]永琳の弓、矢18本(残り2本は橙と地面に刺さっている)
[道具]支給品一式、悪趣味な傘
[思考・状況]ゲームを楽しみ、優勝する。八雲紫とその式は自分の手で倒したい。
【橙 死亡】
【残り45人】
代理投下終了。
乙です。
天子邪悪すぎるww
橙……。
こりゃ藍様がやばいなぁ。
ちぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!
天子、無邪気な故に恐いな…
天子はHダーマーか…
まぁ天子自体がフラグだが
>上から来るぞ! は有頂天だからかぁ?
今、目の前の少女はなんと言った?
「聞き取れなかったんならもう一度いいますよ」
聞き取れなかったわけではない。意味がうまく把握できなかっただけだ。
「アンタの従者……魂魄妖夢、ですっけ」
そうだ、自分の従者である魂魄妖夢の話を彼女が自分に振ったのだ。
そして、
「あの子はこの異変に乗ってると思いますよ」
聞き間違いではないらしい。
それじゃあ、どういうこと?
何で目の前の少女はそんなことを言うの?
わからない。
目の前の少女、小野塚小町は信頼に足る人物だ、現に彼女はこの異変の重大な秘密に気づいていた。
でも今、目の前で自分の一番信頼できる者を否定している。
うるさかった木々のざわめきが一気に聞こえなくなり、視界には少女しか移らなくなった。
まるで世界が自分と少女以外のすべてを消してしまったように。
気が付けば先ほどまであんなに近かったはずの少女はどこか遠く、異質な何かのようにも思え。
思考はかき混ぜられた絵の具のようにぐちゃぐちゃになっていた。
「どうして、そんなことをいうの?」
自分のどろどろになった思考とは裏腹に単純な言葉だけが口から紡がれる。
少女は右手で頭を掻き、少し申し訳なさそうにこう言った。
「あー……それはその、なんだ。あたいの勘なんだけどね」
勘?
勘だけで、目の前の少女はあの子を否定しようとしているのか。
「あなたに」「へ?」
「あなたにあの子の何がわかるの?」
流石にこれには呆れるしかない。
彼女は知らないのだ。自分の信頼している少女がどんな半人なのかを。
「こんなくだらない異変にどうしてあの子が乗る必要があるの?
貴女にはわからないかもしれない、でも私は知ってるわ。あの子は素直で優しいの。貴女と違ってね」
『妖夢が異変に乗っている』……確かに可能性は否定できないわ。
でも、あの子なら大丈夫よ、きっと今頃私の心配をしながら走り回ってるんじゃないかしら?
だから、勘でだろうとそんなことは言ってもらいたくないわ。
あの子の頭が恐怖でうまく働かないようになるとでも思ってるんなら、大丈夫よ。
あの子は見た目以上に強いからね」
少女は動かずに、じっと彼女の言葉を聴き続ける。
そして
「だから、さ」
「アンタは従者を大切にしてるし、大切に思ってる。
同じように従者がアンタを大切にしてるんなら、従者は乗るさ。この殺し合いに」
少女の言葉をきっかけに、途絶えていたざわめきがまた流れ始めた。
小野塚小町が彼女とであったのは偶然であった。
平和な世を残すためにあえて修羅の道にその身を落とし、最後の一人に賢者を残すために殺してまわる。
それが彼女の基本行動方針であったが、残念なことに、その目標は開始から数時間と経たないうちに暗礁に乗り上げた。
広すぎるのだ、この会場は。
「さて、どうしたもんかねぇ」
現在地を把握するために地図を広げてみる。
「今山岳地帯を抜けて森に出た、そして奥には山が見えるから…
F-1、もしくはG-2かな?」
参加者は全部で54、いや自分を抜けば53人か。
それに対してフィールドは7×7の49マス、単純計算で一マスに一人という事になる。
先ほどは運よく一人殺すことができたが、逆に考えればあれは愚考だったかもしれない。
あのまま黙って尾行していればあの二人は間違いなく他の勢力と接触していただろう。
そこで戦闘するなりなんなりのアクションをあいつらが取った後に行動を起こせばあいつらと接触したグループともども一網打尽じゃないか。
「……やっぱり、慣れないことはするもんじゃあないってことか」
とにかく、今は次の獲物を探すのが先決。
そう割り切って歩き出そうとしたときだった。
「慣れない事って何かしら?」
しまったと彼女が思った時にはもう遅い。
背後を取られるという事はこのゲームにおいてどれ程のアドバンテージを襲撃者に与えるか、簡単に想像が付く。
(やられた……ッ!!)
下手に動けば命は無い、いや、今の時点で気づかないうちに自分は銃口を突きつけられているのかもしれない。
小町は必死で策を巡らせた。
なんとかこの状況を打破し、自分が銃口を突きつける側に回らなければ。
しかしそんな小町の策の逡巡も結局意をなすことは無かった。
「御機嫌よう、良い夜ね。えっと…三途の船頭さんだったかしら?」
銃弾の変わりに飛んできたのはまるで道端でであったときのような間の抜けた挨拶。
「……こんな殺し合いの中でなきゃあ、船の上で酒でも飲んでるところだろうね」
「ええ、まったく」
聞き覚えのある声だった。
もっと言えばこのゲームで会いたくない部類に入る女性の声。
「一人で歩き回ってると乗っている人間に襲われますよ?」
振り返ってみると、やはりそこには例の女性が立っていた。
銃声で耳がおかしくなった訳ではないらしい、残念なことに。
「西行寺のお姫様」
目の前の女性、西行寺幽々子は彼女の表情から何かを感じ取ったのか、ニコリと笑って
「だいぶお疲れのようね。無理もないわ、こんな状況ですもの」
と言った。
幽々子を見る限りでは乗っている危険性はなさそうだ、というのが小町の彼女に対する第一印象だった。
しかし油断はできない。
この狂ったゲームで絶対の信頼を置ける人物なんているだろうか?
(NO。たとえ四季様だってあたいの行動について知れば迷わず切り捨てるだろうね)
結局、このゲームでは頼れるのはいつも自分だけなのだ。
「ところで、こんなところで何してるんです?」
幽々子は答えない。
その代わり、と言うべきか。天を指差し、にっこりと笑った。
何かあるのだろうか、と彼女も指の指す側に目をやる。
果たしてそこには星があった。
星。
ただの星ならなんと言うこともなかっただろうが今回は違う。
大きいのだ。周りに存在するそれと比べても、彼女の記憶に存在するそれと比べても、あんなに大きい星はなかったはずだ。
それに、ほかよりも地面に近いように見える。
いや、地面に近いと言うよりは何かの上に星が人為的に作り出されたと言ったところだろうか?
「方角や距離から見ると、博霊神社の上って所かしら」
小町の思考を読み取ったように幽々子が語りだす。
「あなたと出会う少し前に見つけたの。行く当てもなかったし、あれなら見失わないでしょう?」
つまり、あれを目指して移動していたというわけか。
確かにあれならわかり易い。
それに(これはあくまで彼女の予想でしかないが)あの星を作り出したのはこのゲームに乗らない者なのだろう。
なぜそういえるか?
簡単だ。目立った動きをすればその分だけ人は集まる。あの星のサイズから言えばきっと十人くらいは集まるだろう。
それだけの人を集めて何をするか。
殺し合いという線はまず消える。殺すのならば手っ取り早く自分で動いた方が遭遇率は上がるし、力は有限、人集めのために馬鹿打ちすれば逆に殺されるリスクもある。
集団自殺、これも違うだろう。幻想郷においてあれだけの力を有しながらこのゲームで自分の悲運を嘆くような人物は自分の知っている範囲では存在しない。
つまり、あの星の元で天を仰いでいるだろう人物は強い力を持っていて対主催、もしくは知り合いを呼び込もうとしている人物になるわけだ。
まぁ、ゲームに乗るにしろ乗らないにしろ、あの星のもとに行けば楽に他人に会える。
そうと分かっていながら動かない参加者はいないだろう。
しかし、とここで小町は考える。
(あれだけの大きな星、制限された力でどうやって出せるんだ?
制限されてあれだとすると、制限されていなければどれほど…
いや、制限されていない人間が出場しているって考えたほうが妥当かな)
なんにせよ、その『誰か』が本気で動き出せば自分や他の乗っている参加者は間違いなく一捻りだ。
(となると、しばらくの間は博霊神社には近寄らないほうがよさそうだね)
だが、天の意思というものは時に人の意思とは相反してしまうものだ。
「ちょうどよかったわ。あなた、暇なら一緒にあそこに向かわない?」
「はいぃぃいい!?」
小町は耳を疑った。よもやこの狂った舞台の上で、出会って数分しかたっていないのに同行しようと言われるとは。
その上彼女はこれから間違いなく博霊神社に向かうはずだ。もしそこで自分が乗っているとばれてしまったら…
(じょじょじょ冗談じゃない!!なんとかしなきゃ……)
なんとか幽々子の誘いを断ろうと策をめぐらせるが
「旅は道連れ。早く進みましょう」
「きゃん!!わ、わかったから首根っこを掴まないで!!」
結局、逆らうことができずに付いていくことになった。
「あーあ、やっぱりあたいツいてないな……」
隣を歩く幽々子に気づかれないように小町は静かに呟いた。
ここに連れて来られてからというもの、全然思い通りに事が進まない。
唯一良い事があったとすれば銃の支給くらいか。
もしかすると、あそこで運を使い果たしてしまったのかもしれない。
今の自分は最悪だ。
歩き回っても最初の鳥以外の参加者を殺害できていない。
死地であろう神社へと自分の足で向かっている。
おまけに
「何か言ったかしら?」「いいえ、何にも」
守るべき賢者と同行(場合によっては彼女を庇って死ぬなんてことも考えられる、場合によればだが)。
彼女の話を聞くところによれば、やはり彼女は乗っていないようだ。
そんな人間の前ではたとえ過失であろうと参加者は殺せない。
つまり他の人間から襲われた時くらいにしか参加者との戦闘は許されない。
銃というものは難儀なもので、急襲には向いているが迎撃には向いていない。
今自分と同じような思考の人間に出会えば無傷では済まないだろうし、最悪の場合二人揃ってリタイアというのも考えられる。
なんとか幽々子と別れなければ、何か良い方法はないものか。
そこまで考えて、彼女は考えるのをいったん中断した、
どうやら幽々子が自分に話しかけていたようだ。
「聞いてるかしら?」
「すんません、聞いてませんでした」
幽々子は「あらそう」と感慨無げに答え、今度は小町の目を見ながら話し始めた。
「この異変について、どう思うかしら?」
異変?と首を傾げそうになったが「この」が付いているなら今話題に上るなりなんなりしているはず。。
という事は彼女はこのゲームを異変としてみているという事か。
まぁその見解もあながち間違いではないだろう。
主催者が人為的に起こしているという点では紅い霧、初夏の雪、満月その他と共通しているし。
「最初は永遠亭のおふざけかとも思ったけど……どうも違うみたいなのよねぇ。
その理由にほら、永遠亭の住人の名前も書いてあるし」
永遠亭という言葉に小町は若干聴き覚えがあった。
確かあれは。
「うさぎの?」
「ええ、うさぎの」
なるほど。つまりこのゲーム(異変のほうが耳障りはいいか)の主催者の少女はいつかのうさぎの上司って所だろう。
一人合点する小町を余所目に幽々子は淡々と自分の考えを述べていく。
「この事件ね、私は何か別の目的があるんじゃないかと思うの」
「別の目的、ですか?」
「ええ、そうじゃなきゃ不死人や幽霊が参加するわけがないでしょ?
たぶん実験か何かだと思う。でもそれにしては方法が雑だし」
ただ、と幽々子はいったん口を噤む。
その表情は出会った時、先ほどのどちらよりも真剣であり、どこか重々しい雰囲気を醸し出していた。
「おかしいのよ」
「はい?」
小町は再び耳を疑った。
おかしいのは今更言われなくてもわかっている。なのにどうして今更改めて言う必要があるのか。
「見てもらえるかしら?」
彼女の疑念を他所に幽々子は手をすっと彼女に見えるように突き出した。
わけも分からずにただ憮然とした表情でその手を見つめる。
すぐに彼女の言いたいことは分かった。
幽霊は死の先に存在するものだ。
一般的に死んだら魂だけになり、閻魔の審判を受け、極楽浄土か地獄へ向かうといわれている。
そんな中で何らかの理由から魂が現世に留まった場合、その魂が不鮮明ながらも実体を持ち、幽霊と呼ばれるものへと変わる。
幽霊とは半実体。専門の武器や道具を使わなければ傷つけることはできない。
「うっすら血が滲んでるでしょ?」
幽々子が見せたかったもの。
それはきっと手の甲に残っている小さな引っかき傷だろう。
見たところはいかにも『木の枝で引っかきました』といった感じの傷だ。
「これもあなたと出会う前に気づいたんだけど、どうも私、実体になってるみたいなの。
あなたならわかるかもしれないけど、幽霊に死の概念なんて存在しない。
でも、もし肉体が存在しているなら話は別。幽霊だって死ぬわ」
幽霊が死ぬ。普通なら聞いただけで嘲笑するだろうが状況が状況。
この異変の中では不死人だろうと幽霊だろうと簡単に傷つけられ、簡単に死ぬだろう。
「つまり、これはたちの悪い実験じゃない、と?」
「……認めたくないけど、ね」
彼女の言いたいことは理解できた。しかしそんなこと、とっくに小町は気づいている。
「となると西行寺のお嬢様はこの異変らしからぬ異変、どう動くんです?」
小町がけだるげにそう問うと、幽々子は目を伏せて歩き出した。
「一番いいのはこの異変を解決する事だろうけど、それには厄介なことがいくつかあるのよね〜」
確かに、この異変は今までとはまるで勝手が違う。
これまでの異変は逃げ場があったし命の保障もあった。
しかし。
今小町の感じている息苦しさが、幽々子の喉元でにび色に光りを放つ輪が突きつけるのはそんな甘い希望を打ち砕く現実。
逃げれば死ぬ。負けても死ぬ。生き残れるのは最後の一人だけだ。
「……癪だけど、主催者の思惑通りに動かなきゃならないんでしょうねぇ。
あたいたちにできるのは……適当な人を残すってところでしょうか」
小町はそれとなく、本当に今思いついた風を装いながら自分の考えをボソリと呟いてみる。
「……」
幽々子は答えない。
それを同意と見たのか、小町はさらに言葉を続けた。
「そりゃあまあ、反逆するなんて道もあるでしょうけどそれで全滅した日にゃあ笑い事じゃあ済まされないし。
その点を考えれば得策は小さな損で大きな利を取るっていう考えかなぁ、っと」
そこで小町は言葉を止めた。先ほどから隣を歩いている幽々子の足音が聞こえないのだ。
「あなた、本気でそう思ってるの?」
振り返ろうとした小町の耳にいやに冷めた声が聞こえてくる。
「つまりあなたは、この異変『殺す側』に乗る……そういうことかしら?」
(しまった、この話は時期尚早だったか……!?)
後悔してももう遅い。一度火のついた導火線は燃えていくだけだ。
今自分への不信感を彼女が消化しきれなければ今この場を乗り切っても後々に大きな傷跡を残す。
(考えろあたい、考えるんだ小野塚小町……この『不信感』、払拭しなけりゃあ『詰み』だ!!)
二人の間に沈黙が流れる。
しばらくお互いに見つめあった後、小町の頭に妙案が浮かんだ。
先ほどの発言を慌てて否定してもそれはさらに不信感をたきつけるだけだ。
それならば得策は一つ。
『先ほどの発言にそれらしい理由をもたせる』だ。
それらしい理由。
たとえば、その話をしなければ主催者に消される、といった理由。
(待てよ、主催者に消される、主催者……首輪……そうか!!)
人間は追い詰められるとその真価を発揮するといわれている。
小町の真価がそうあったのか、はたまた言い訳癖が極まったのかはわからない。
(できた……こじつけに近いが、理由が)
後は幽々子がその理由を信じるかどうか。
小町はすぐに地図と基本支給品の鉛筆を取り出し、裏に文字を殴り書きする。
「だってそうでしょ、戦ったのは良いけど勝ち残ったのが低級妖怪でした。
そんな結末だったら幻想郷には崩壊の道しか残されていないじゃないですか」
幽々子が答える前に地図を突き出す。
『首輪 主催者 盗み聞き 爆発』
単純に四つの単語を書き連ねただけだが、聡明な彼女ならきっとわかってくれるはずだ。
いや、勘違いしてくれるはず。
幽々子は目を丸くしている。当然だ。こんな情報、普通知っているはずがない。
ただ。
小町は再び紙に鉛筆を走らせ、次の文字を書き加える。
『似たような境遇 三途の川』
そう、自分は三途の水先案内人。
閻魔様と同じくらいに他人の人生を見つめてきた。それは目の前の幽々子も知っているだろう。
そんな自分だからこそできる偽り。
どうやら引っかかってくれたらしく、幽々子も地図と筆記具を取り出し、いそいそと何かを書き始めた。
『本当に?』
それは単純な疑問。
(ここで嘘で〜す!!なんて口が裂けても言えないよ)
「『あたいは、そう考えるのが妥当なんじゃないかなって思いますよ』」
今度は紙を使わずに口頭で答える。
「主催者は幻想郷の崩壊が狙いかもしれません。
だから武器をランダムに支給した。生存意欲の強い者が賢人を殺せるように。
今言えるのは『支給品は使わないに越した事はない』って事でしょうね」
小町の言葉を聞き、何かを書こうとしていた幽々子が紙面から視線をずらし、彼女のほうを見上げた。
「『どうして?』」
(いい感じだ。完全に信じてきてる…あと少し…)
小町は息を下ろしそうになるのを堪えて彼女の視線に自分の視線を重ねた。
「『最初の方で使い切っちまうと本当に必要な時に使えない』でしょ。
あたいはこの異変に乗る、賢人を、幻想郷を残さなきゃあなんないしね。
でも乗るのは参加者が減ってからで良い。参加者がだいぶ減った後に残った参加者を万全の状態で討つ。それがたぶん一番良い手だ」
「『そう……かもしれないわね』」
幽々子が大きくうなずくのを見て、小町はようやく胸を撫で下ろした。
後のほうは自身の行動方針を言っているだけになったが、とりあえず彼女を騙せたからよしとしよう。
「でも私はあなたの考えにはあくまで反対よ」「へ?」
「一応脱出の方法は探す。もし方法があるならそれにかけてみないとね。
そうね、『第二回放送までは一緒に脱出の方法を探す』なんてどう?
乗るのはそれからでも遅くないんじゃないかしら?」
幽々子があからさまに語調を強めたのは一番伝えたいのがそこだからだろう。
しかし、と小町は唾を飲み込む。
一緒にではいけないのだ。ここで何とか彼女と別れなければ嘘をついた意味がない。
「一緒には……流石にまずいと思います」
「あらどうして?」
小町の頭の中を先ほどと同じく策がめぐっていく。
彼女は自分がこの異変の何らかの有利な情報を握っていると思ってるのだ。
それならば、彼女はちょっとやそっと自分が拒否したところで無理やり付いてこようとするだろう。
(つまり、何かそのメリットを覆せるほどの要因がいるわけだ)
しかしやはりと言うべきか、今度はいい策は思い浮かんでこない。
「えーっと、その、あの、ですね」
幽々子は首をかしげて小町のほうを見つめている。
小町は考えた。
さきほどよりも、深く深く。それはもう、頭から煙が出るくらいに。
そして……
「そ、そうだ!従者!!あんたの従者がこの異変に乗って殺して回ってるかもしれない!!」
小町の考えはある点で収束した。人を動かすのは、やはり人。
自分の大事な人が危ない状況に陥っていると知れば、きっと動かずにはいられない。
それが、自分の意思に反した状況ならばなおさら。
(頼む、引っ掛かってくれ……!!)
そして場面は冒頭部に戻る。
「つまり、どういうことかしら?」
幽々子は小町のほうをじっと見つめ、聞きなおした。
確かに自分は魂魄妖夢を大切に思っているし、たぶん向こうも大切に思っているだろう。
しかしそれがなぜ、妖夢の殺す原因となりえるのか?
「あたいのこの異変でどう動こうとしてるか、覚えてますか?」
小町が先ほどと同じくらいに真面目な顔をしてこちらに問いかけてくる。
「確か……『最後の一人に賢人を残す』だったかしら?」
幽々子がそう言うと小町は大げさなくらい大きく頷いた。その額にはうっすらとだが汗が滲んでいるのがわかる。
それほどまでに、必死なのだろうか?
ということは何か裏付けがあって妖夢の話をしているということか。
幽々子は自分の体を嫌な汗が伝うのを感じた。
(そんなはずはない。妖夢には乗る理由がない、大丈夫)
しかしそんな彼女の思いは次の小町の言葉であっさりと砕かれてしまう。
「あたいは職業上客観的に死を見つめることを最優先されてきた。
良いも悪いも判断の仕方は人それぞれ、それを法の下へ導くのも船頭の役目だしね。
だから最後の一人に『賢人』を選べる。
でも、判断をする人物が客観的な判断を下せない、忠義を重んじるタイプの奴だったら?
簡単だ、自分の大事な人を生き残らせようとするさ」
幽々子は絶句した。
つまり、妖夢は
「つまりあんたの従者は、あんたを生き残らせるためにこの異変に乗っている可能性があるんだよ」
小町の言葉は続く。
「この異変であんたの従者がおかれているだろう状況は三つ考えられる。
一つ目は乗っている奴に襲われてもう死んでいる可能性。
これについてはあの子の強さを考えればほとんど0に近いから説明はいらないね。
二つ目は狂って参加者を殺しまわっている可能性。
これについても彼女をよく知ってるあんたが「あの子は壊れない」っていうくらいだしほぼ0だろう。
そして三つ目の可能性。これが一番高い。
それが、あんたの事を考えて殺しに走る場合だ」
「たとえば、だ。あんたの従者が誰かに襲われたとする。
まぁ彼女は強い。そんな襲撃者すぐにのしちまうだろう」
「ただ、あんたはどうだ?確かにあんたも強いが、ぬるい。
さっきもあたいが乗っているかどうか確認せずに話しかけてきただろ。
もしあたいが乗っていて、何らかの武器を持っていたならあの瞬間にあんたは死んでた」
「従者も伊達に長年連れ添ってきたわけじゃないから、当然そのことについて考えるさ。
もしあんたが不意を突かれて傷付けられるようなことがあったら。
もしあんたが敵に変な情けをかけてその結果追い込まれるようなことがあったら。
もしあんたが『自分が情けをかけて見逃した敵に、殺されてしまったら』」
「そこまでくればもう後は下り坂さ。疑心が疑心を生み、親愛は狂気と化す。
目に映るすべてが自分の大事な人を狙う敵に見える、耳に聞こえる言葉がすべて自分の大事な人を騙す悪言に聞こえる」
小町の言葉が終わるよりも早く、幽々子は地図を広げた。
小町は唖然としているだろうが、そんなこと今は関係ない。
探すのだ、地図上で自分と妖夢の知っている場所を。彼女の性格上、自分との合流を第一に考えるはずだ。
自分が他人を待つなら、自分のよく知った場所を目指す。そのほうが知人との遭遇率は上がるからだ。
自分をよく知る妖夢ならその考えにたどり着く。
ならば、どこで待つ?
地図をざっと浚って見るが自分や自分の友人八雲紫に関連する場所はない。
博霊神社、永遠亭、三途の川。考えられるとするならばこの三つだが、どれも方角的には別々の位置。
もし自分が判断を間違えばニアミスを起こしてしまう。
そうなると妖夢は命の危険に晒される事になる。
「何処、何処へ向かうのよ……?」
食い入るように見つめていた地図に影が広がる。
「あたいがあんたなら、博霊神社に向かうだろうね」
なんと言うことはない、小町が地図を覗き込んでいただけだ。
「現にあんたは神社に向かおうとしていた、違うかい?」
確かに彼女は博霊神社に向かっていた。しかしそれは星に目を引かれたからだ。
あの星を上げたのが誰にせよ、乗っている人間はあんなに派手なアクションは取らないだろうから。
「そしてあたいが妖夢なら、博霊神社には向かわない」
小町が博霊神社を指差し、そこから直線を描き指先を人里へ移した。
これにもやはり幽々子は首を傾げるしかできない。
「私が向かうのは博霊神社、なのにどうして、妖夢は向かわないと?」
「簡単なことさ。神社なら安全だからだ。
星を見ていようがいまいが、神社といえば博霊の巫女。あいつは強いし頼りになる。
それにあそこには何故か強い妖怪が集まるからね。
なら従者にとっての問題はあんたが博霊神社にいない場合、従者はどこを探すかだ」
小町が地図をとんとんと叩く。
この地図が本当なら会場は間を走る山によって大きく三つに分断されている。
三途地域。人間の里地域。そして永遠亭地域。
「一番下はまず無い。敵の本拠地の近くを通るなんて正気の人間はしないさ。君子危うきに近付かずってやつだ。
残るは上、真ん中の二つでしょ?
なら一緒に探すよりも二手に分かれたほうが、ね?」
「それは、そうだけど……でも」
心が張り裂けそうだった。
最初の嘘はまだよかったが、今度の嘘は流石に罪悪感を覚えざるを得ない。
(まさかここまで食いつくとは、予想外だったよ)
もしかしたらこれが本当の主従のあり方なのかもしれないと考え、小町は少し悔しくなった。
自分の上司である四季映姫は何よりも異変解決を目標に動き回るだろう。個を捨て全を取る、そんな人だ。
そんな四季映姫が自分の心配をする余裕があるのか。やはり答えはNOだ。
(あたいが不遇なのか、西行寺のお姫様が過保護なのか……)
小町は大きく息を吐き、もう一度自分の境遇を呪った。
(やっぱりあたいってツいてないのかもなぁ……)
【G-2 森の中/一日目・黎明】
【西行寺幽々子】
基本行動方針:脱出方法を探す
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品 ランダムアイテム1〜3
[思考・状況] 1、小町の言った最悪の状況(妖夢が殺し合いに乗る)を阻止するために妖夢を探す
2、できることなら小町と一緒に行動したい。
3、紫に会いたい
4、皆で生きて帰る
[備考]
※小町の嘘情報(首輪の盗聴機能)を信じきっています
【小野塚小町】
基本行動方針:最後の一人に賢者を残す
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品 ランダムアイテム0〜2 64式小銃狙撃仕様(15/20) 64式小銃用弾倉×2
[思考・状況] 1、なんとか幽々子と別れたい
2、生き残るべきではない人物を排除する。
3、脱出……ねぇ……
[備考]
※盗聴機能については大嘘で本当に付いているとは考えていません
※妖夢が乗っているというのもほとんど口からの出任せです
こまっちゃん、いい役所だなぁ…!
どんどんかき回していってほしいね
犬走椛、繋ぎ投下します。
朝焼けの三角地帯を、犬走椛が急き立てられたかのように疾走する。
どれほど走ったのかも分からなければ、どれほど自問自答したのかも分からない。
周囲を見渡し警戒し、察知すれば迷わず遁走する。何も考えず、とにかくだ。
無我夢中はいい。余計な物事を考えずにすむからだ。その時ばかりは、この境遇や仕打ち、仕出かした所業さえも全て忘れることが出来る。
だから、ひとたび足を止めると考えずにはいられない。
――それは陽気な笑顔が一瞬で苦痛に歪む様や、哀願する双眸と共に血溜まりに沈む姿であったり。
その度に振り払う。仕方ない? 自分は悪くないって?
……それすらも判断できない。
不甲斐無さを何かに転嫁出来るなら、一体どれほど気が楽になれるか。
少なくとも、嫌に生真面目な犬走椛には出来ぬ芸当だ。
彼女は哨戒天狗。
幻想郷パワーバランスの一角を担う妖怪の山が、彼女達下級天狗の哨戒場所だ。
椛は下された命令に違反したこともなければ、定めれた規律を破ったことも一切ない。
誤魔化せる失敗や不備があっても、馬鹿正直に申し出てはお叱りを受けるほど潔い天狗なのだ。
堅実な部分で一部上司や仲間に煙たがられることもあるが、協調性が良いことで比較的好かれやすい人格をしている。
少なくとも、暇を持て余す長寿の妖怪の中では、日々を忠実且つ正直に過ごしていると言えた。
そんな実直で勤勉なところを美点の一つに数えてもいいものだが――この展開では邪魔でしかないのかもしれない。
苦悩を割り切れずに不調を来たす気質など、この殺し合いの最中では正に足枷なのだから。
だから彼女は遮二無二走る。陰鬱になる気分を、無理やりとは云え一時的にでも払えることを期待して。
椛のそれは、果たして目的地を定めぬ向こう見ずな行動なのか。……一見するとそう見えるだろう。
だが、それは闇雲ではない。実は、“誰とも”遭遇しないよう正確な道順を辿っているのだ。
事実、あの出会いを除けば深夜から早朝にかけて誰とも遭遇していない。
――何故か?
これは運の良し悪しでもなく、視力や嗅覚が特別優れているからでもない。
それ以上に頼りになるものを――彼女が持っていたからだ。
「……反応なし。こっちだ」
面を俯かせながら一度足を止めていた椛は、弾かれた様に再び走り出す。
彼女が握るのはフィールドマップ。そして、もう一方に長方形の小箱のようなもの。
――長方形の平たい小箱。当初は椛も単なる変わった装飾の小箱だと思っていた。ところが、付随された説明書の内容には目を見張ったものだ。
曰く、各々に取り付けられた首輪を探知する道具だそうだ。
正面に備わったプレートの中央には緑の光点が一つ。恐らく自身の首輪を認識しているのだろう。彼女が移動すれば画面ごとずれることから、そう解釈しても間違いはない。
現在の光点は一つだが、近くに別の首輪があると光点が増えるのだ。実際に何者かがその方角に存在したことで、それは実証済みである。
一介の哨戒天狗に過ぎない椛でも、大将棋仲間で機械弄りが好きな者との接点から、機械装置という便利な道具が確かに存在していることは認識している。
そしてこの箱が、その便利アイテムに該当するということもだ。
――即ち、この長方形の小箱は首輪探知機。大雑把に此度の参加者の位置を割り出す優れものだ。
縋るべく藁を見つけた時、椛は柄にもなく声まで出して喜んだ。
仲間を早期に発見できるからではない。敵の居場所が容易に掴めるからでもない。
――誰彼との接触を安全に回避できると思ったからだ。
顔見知りもいる。上司だっている。
だが、少しでも向けられる危害から遠ざかりたいがために、彼女達とも極力会いたくはない。
どんな悪意が自身に降り掛かるともいえない状況で、何者かと迂闊に接触するのを椛は恐れていた。
親しかった友が突然裏切ったら? 上司にあっさりと切り捨てられたら?
例え再開したとしても、脳裏を掠めるのはこのような懐疑的なことばかりなのだ。
傍にいるだけで神経を注がなければ心の安定が保たれないこと請け負いであり、こんなことにまで哨戒の時のような緊張感と向かい合って精神をすり減らしたくはない。
端的に言って、信用できないのだ。凡そ意思を持つ存在の全てが。
椛が疑心暗鬼に陥った理由はこうだ。
――仕事柄で責任感が強いと思っていた自分でさえ、己の命のためならば他人を簡単に見捨てることが出来ると理解したから。
実感のある椛には、他人が裏切るのも止むを得ないと納得していた。
事実、必至に伸ばされた懇願の手を、自分可愛さに椛は振り払ったのだ。
勝手に見切りをつけ、コイツはもう駄目だと、コイツはきっと助からないに違いないと自分勝手に諦めた。
――充満するのは罪悪感。吐き出すことも叶わず、しこりという汚濁がいつまでも椛を苦しめる。
それを転嫁できないのだ。何時までも付き合うしか方法もない。
従って、彼女が考え付く限りで最適だと思ったことは、症状を今以上に悪化させぬために行動することなのだ。行き着いたのが、人付き合いの断絶であった。
要は不安材料である馴れ合いという前提を、始めから失くしてしまえばいい。
無論、それは問答無用で殺し回るということではない。
椛にそのような度胸もなければ、圧倒しうるだけの戦力もないのだ。
よって、彼女が取るべき手段はただ一つ。
――徹底的に逃げ回る!
腐っても哨戒天狗。いまいち精度が優れないとはいえ、非凡な眼力――千里眼だってある。
極め付けが首輪探知機だ。
これだけ逃走に便利な要素が揃っていて、逃げ切れないはずがない。
フィールド中を駆け回りながら引き篭もってやる。そう言わんばかりに、椛はこの幻想郷を逃げ回ることに決めたのだ。
殺し合いに賛同する妖怪を阻止するだの、主催者に歯向かってゲームを台無しにしようなどという崇高な使命なんぞ及びも付かない。
所詮組織では下っ端妖怪に過ぎない椛には、大物妖怪のような開き直る厚かましなど備わってはいないのだ。
できることなど高が知れている。
知れているほど些細なら、いなくとも惜しまれやしない。
なら、雑魚は雑魚なりに誰にも気づかれない様細々と、この殺し合いが終わるまで雲隠れだ。
最終的なことは後回し。死なないことだけを、生き延びることだけを今はひたすら考える。
「……っ」
――目の前のことだけを考えている内は、少しは罪悪感の存在も忘れることが出来るだろうか。
肩に担いだ二つ目のデイバックに視線を寄せる。苛む負い目からか、それはまったくの手付かずである。
妖怪なら楽に運べるそのデイバックが、何故だかやけに重たい気がした。
【D‐2 山間地帯・一日目 早朝】
【犬走椛】
[状態]良好
[装備]首輪探知機
[道具]支給品一式×2、ランダムアイテム×(2〜5)
[思考・状況]基本方針:誰とも遭遇しないよう逃げ回る。
1:探知機を駆使して、とにかく逃げる。
[備考]
首輪探知機の効果について:
有効範囲は半径200メートルです。範囲内に首輪の反応があれば、画面上に光点が表示されます。
画面はグリッド線が引かれた程度の大雑把なものであり、位置の方角が分かる程度です。
死んだ者の首輪には反応しません。
支援
投下終了です。
>>387 >>事実、必至に伸ばされた懇願の手を……
必至→必死でした。
転載した際に修正します。
>>388 支援感謝です
投下乙です。疑心暗鬼に陥りまくる椛……さてどこまで逃げられるやら。
こちらも妹紅投下します。
空には大きなお月様一つ。
幾度となく自分を見下ろしてきた月だ。最も気に入らないもののひとつだ。
見るだけで奴の存在を、蓬莱山輝夜のことを思い出すから。
この呪われた不死の身体を自覚するからだ。
人でありながら人と交わることを許されない、化け物の身体。
だからといって憎んでどうにでもなるものでもないし、これから先どうしたところで変わりはしないのだろう。
悟ったといえば聞こえはいいのかもしれないが、実際のところは諦めているだけだ。
出会いも、別れもしょうがないものだと断じて拘ることもしなくなった、感情のないひとがた。
人付き合いが苦手なのではなく、意味を見出せなくなった人形でしかない。
それでも、先程のように笑えたり出来るのは妙に人懐っこい人妖のお陰には違いない。
上白沢慧音。誰しも気味悪く思うはずの身体を、永遠不変を受け入れてくれた親友だ。
慧音と過ごした時間は不死を生きるようになった時間に比べればほんの僅かな間でしかない。
だが妹紅にとっては幾千、幾万の時を経たとて覚えていたい思い出の詰まっている時間。
茫漠とした価値しか持たない過去など取るに足らないくらい大切な時間だった。
いつか別れが訪れるのだとしても、それまでの間を、今を楽しく過ごせると思わせてくれた。
それが藤原妹紅にとっての、上白沢慧音に対する評価だった。
まあ、つまり、自分は……慧音を探してみようか、という気分だということだ。
自分は死にはしないが、慧音は命ある存在。致命傷を受ければ死んでしまう。
先程の化け猫少女のような可愛げのある妖怪ならまだしも、意地の悪い妖怪に絡まれれば怪我をするかもしれないし、危険だ。
ワーハクタクになっているならそれなりに強いが、人間の姿をとっている慧音はそこまで力を持たない。
保護……という言い方は彼女が怒るだろうから、合流してやったほうがいいだろう。
それに慧音は頭もいい。戦うことくらいしか能のない自分だが、慧音ならこの忌々しい首輪だって何とかする知恵を持つかもしれない。
……ついでに、さっきの化け猫も見つけたら誤解を解いてやろう。
自分はどうでもいいが、自分のせいで慧音にまで迷惑をかけるのは心苦しい。
意外と友人思いらしい己の思考に妹紅は苦笑する。或いは自分のことを考えられないだけなのかもしれないが。
問題は、ここがどこで、慧音がどこにいるか、ということだった。
幻想郷に来てからというもの、迷いの竹林で生活の大半を過ごしてきた妹紅はイマイチ地理に疎かった。
最近は人間の里にもちょくちょく顔を出したりしていたものの、行動範囲は狭いものだった。
いま自分がいるここだってどういうところなのか全く分からない。地図と見比べてはみるものの目立つ街道があるわけでもなく。
全く、さっき引き止めておかなかったのは失敗だったわね、と妹紅は眉根を寄せて嘆息するしかなかった。
嘆いていても仕方ない。気の向くままに歩いてみて誰かと会ったら道を聞いてみようと考え、歩き出す。
くるくると手に持った水鉄砲を弄びながら、これは一体何だったかと思案する。
慧音だか誰かだかが言っていたが、世の中には筒から火薬を用いて鉛を高速で射出する武器があるという噂を聞いた。
幻想郷の外ではよく用いられている武器なのだという。だとするなら、これはその武器を模したものか。
威嚇交じりに化け猫少女が向けてきたのもそれが理由のはず。中身は水だったが。
周りを観察してみても特別な仕掛けは何ら見当たらない。
本当に精巧なだけの玩具らしいという結論に至った妹紅だったが、別に捨てる気は起こらなかった。
脅かすにはぴったりの代物だ。慧音に使ってみればさぞかし面白いだろう。
それに玩具で遊んだことはなかったから。
貴族の家に生まれたものの隠された存在であった妹紅は玩具で遊ぶ機会はなかったし、そもそも遊んだ記憶を持たない。
殺すでもなく、生かすでもなく、ただ忌避するように育てられただけ。
そういう意味では生まれたときから既に自分は不変の中にいたのかもしれない。
退屈しのぎにこの事件を解決したとして、少しは何かが変わるのだろうか。
慧音たちと元の時間を過ごすにしても己の内面は変化を起こすのだろうか。
呪われた身体を何も思うことなく、諦めきった自分が変われるのか――
水鉄砲を見ながら物思いに耽っていたせいか、妹紅は足元への注意を怠っていた。
よく気を配っていれば分かる、拳より少々大きな岩。足を取られ、妹紅は派手にこけた。
「いたたた……もう、不死の身体なのにどうして痛覚は残っているのかしら……」
咄嗟に腕で庇ったので肘や手のあたりを擦りむいただけで済んだが、ひりひりとした痛みが残っている。
まあいい。どうせこの程度の傷、ものの数秒もあれば治るはず……
「……あれ?」
だった。普段なら塞がっているはずの傷は未だ痛みを残し、傷口は治るどころかじんわりと血の色を広げていた。
妖力の行使に好調不調の差はあるけれども、再生能力は変わらず、こんなに傷の治りが遅いなんてことは一度もなかった。
不死は体質のはず。制限がどうこう言っていた永琳もこればかりは手の出しようがないはずのものなのに。
不死を治す薬でも開発したというのか?
そんな馬鹿なと思う一方、僅かに溢れ出した血が手を伝い細い川を作った。
ぽたりと落ちる赤い雫を見て、妹紅は思った。
「私は……死ねるの?」
ふと口に出した言葉が、あまりにも恐ろしいもののように思ってしまう。
まだ分からない。手首でも切れば死ねるかどうかは証明されるだろう。だがもし死ねるのだとしたら、妹紅の命はそれまでだ。
それは命を賭けるということ。今まで経験したこともない、無と有の狭間。
自分は、そこに放り込まれたのだ。
今までの自分があっけなく崩れる感覚。千年以上も感じてこなかった生の感覚が内奥を巡り、息苦しくなる。
ぽたり。
ぽたり。
雫は垂れ続けている。
ぽたり。
ぽたり。
藤原妹紅の瞳は揺れている。
ぽたり。
ぽたり。
彼女には何も分からなかった。
己が生きたいのか、死にたいのかさえ――
ぽたり。
ぽたり。
流れ落ちるは、彼女の命。
生まれ、そして死んでゆく、命だった。
【B-4・西部 一日目・黎明】
【藤原 妹紅】
[状態]健康
[装備]水鉄砲(元は橙の支給品です)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3個(未確認)
[思考・状況]基本方針:ゲームの破壊及び主催者を懲らしめる
1.自分が不老不死の力を失っているのかと疑いを持つ。
2.自分からは襲わないが、相手がその気なら殺す。
3.慧音を探す。
4.少女の誤解を解く。
5.首輪を外せる者を探す。
※黒幕の存在を少しだけ疑っています。
※再生能力は弱体化しています
投下は以上です。
タイトルは『零れ落ちるモノ』です
>>◆Ok1sMSayUQ
投下乙です。
不死に胡坐をかいた妹紅が、果たしてここからどういう変化を遂げるのか楽しみです。
臆病な妹紅ってのも想像しずらいなw
「はっ!」
あたいはいつの間にか大の字になって寝ていた。
なんかぴかーっとしてきーんてなってどかーんとか、そんな感じの音がして夢の中にいい旅夢気分。
もう! もう少しで美味しいアレを食べられたのに!
ん、何か忘れてる気がする、何だっけ……ってあー!
「ききき来なさい人間! 今度こそあたいのルナティックをもちょーえつしたミラクルルナティック級の弾幕を……」
最近お昼寝が趣味の門番から学んだけんぽーの構えを取りつつメイドっぽい人間を探す。
が、周りには誰もなくどこまで見ても薄気味悪い墓石の群れがズラリ。
どうやら見逃し……あたいに恐れをなして逃げ出したらしい。
ふぅ、これもあたいのかります、ん、かりすまだったっけ? まぁとにかくあたいったら最強ねってことで。
「ふ、ふん。人間ごときにスペシャルルナティック弾幕を披露する手間が省けたってもんよ。あれ、ウルトラルナティックだったかな?」
面倒なので最強ルナティックということにしよう。最強だし。
まあ人間のことなんて今はどうでもいい。それよりもあたいにとって重大かつ重要な問題がある。それは……
「どこなのよ、ここ……やだなぁ、なんか陰気くさいし。寒いって言ってもなんか体の中が震える感じだし、気味悪いよ」
霧の湖の近くでもこんな場所は知らない。というかこんなところ妖精のいる場所じゃない。
とっとと戻ってカエルを凍らせる遊びでもしたいところなのだけど、どこをどう行けばいいのか分かんない。
べ、別にヤな雰囲気だったからビビって隠れてたわけじゃないのよ!
ついでに迷子でもないんだからね! ベソなんてかいてないやいっ!
誰もいないけど取り合えず言い訳。けどこうしてたって湖に戻れるわけじゃないし……
「どうしよう……そうだ、空よ! 空を飛べばいいんだわ! あたいったら天才ね!」
ここがどこか分からないなら空を飛べばいいじゃない。上から見下ろせばきっと霧の湖も見えるはず。
我ながらナイスアイデアだ。さっそく実行すべしすべし。
ぱたぱたと背中の羽をはばたかせ、いざ空へー! ……あれ?
いつもならふわりと宙に浮くはずの体が全然持ち上がらない。いや持ち上がるけど。ちょっとだけ。体半分くらい。
ななななんで!? あ、あたいいつの間に飛べなくなったの?
太った!? メタボ!? 飛べない妖精はただのブタ!?
思わず腰周りの肉を掴んでみる。よ、よし。掴めない掴めない。太ったわけではなさそうだ。
さっすがあたい、スレンダーさも最強ね、って違う。いや違わないけど。空を飛ばないと。
「こうなったら、もう一度あたいのルナティック最強を見せないとダメみたいね……!」
なんか違う気もするけど、この際特に気にしないことにする。
大きく息を吸い込み気合を入れる。見てなさいよ、このチルノが本気を出したらどうなるかを。
大サービスなんだかんね。滅多に見られないんだぞ。あたいのマジに惚れちまいな。
「てりゃー!」
膝を折り曲げ屈伸。そこから大ジャンプと共に羽を全力で動かす。
体はぐんぐんと上がり、体は空高くへ。見よこの推進力。よーしこのままもっと高く……
ぴたっ。
ひゅー。
びたーん!
「あうっ、い、いたい……」
さっきよりは高く飛べたものの一時的なものでしかなかったらしく高さを維持することも出来ずに地面に落下。
あたい涙目。な、泣いてないもん! ぐすん。
もー! なんで飛べないのよー! 太ってないのに!
ここがどこなのかロクに確認も出来なかった。だって体五つぶんくらいしか上がらなかったもん。
むむむ。なんで飛べないんだろう……体はどこもヘンじゃないのに。
そういえばあたいのアイシクルフォールも簡単に……じゃないけど避けられてたし、なんかいつもの調子じゃない。
体はヘンじゃないんだけど、なんかヘン。
「知るかっ!」
むつかしいことはキライなので取り合えず怒る。主にあのメイドとかに。
でもどうしよう。誰もいないから道も尋ねられないし……そうだ!
あたいは走って石の裏に隠しておいた袋を取りに戻る。
最強のあたいに武器なんていらないけど、それ以外にも何かあるかもしれない。
武器じゃないものもあるってあのおばさん言ってたもんね。
あたいがヘンな理由は分からないけど、空を飛べるアイテムがあれば話は別。
白黒魔法使いみたいにやってやろうじゃないの。
「……あ」
袋を取りに戻ったはいいけど、肝心の袋はメイドが壊した石に埋もれていた。
あたい涙目。泣いてなんかないやいっ! くすん。
仕方がないのでひとつひとつ石をどかして袋を取り出すことに。
弾幕を使うと袋を凍らせかねないので力作業。もう、どうしてこんなことしなきゃいけないのよ……
うんせほいせと石をどかすこと何回か。ようやく袋を見つけたあたいは喜び勇んで引っ張り出した。
見てなさいよ。今度こそ空を飛んでやるんだから。あいきゃんふらい!
鼻息荒くがさごそと袋の中を漁る。でてこいでてこい。
ん。何コレ。あー見たことある。なんだっけ、ヴァイ、ヴァイ……ヴァイオレンだっけ?
ギコギコすると音が出るんだよね。楽しそう。持ち帰って遊ぼう。
「違うわっ!」
空だよ、空! 空が飛べるアイテムー! こんなのどうでもいいんじゃい! いや持って帰るけどさ。
袋の中に入れなおして更に漁る。どきどき。
お? おお! これだこれ! あたいが求めてたのはこれだったのよ!
出てきたのは白黒の魔法使い愛用の箒だ。これで空もバビューンって飛べるもんよ。
ええと確か白黒はこうやって乗ってたわね。柄を跨いで……と。
さあ飛べ。いざ飛べ。わくわく。
………………
…………
……
「飛ばないじゃない! どうなってるのよこれ!」
べちんと勢い良く地面へと叩き付ける。なによ、あの白黒じゃないと乗れないっての!?
地団駄踏んで踏みつけてやっていたところ、箒の掃く部分に一枚の紙が挟まっていた。
なんだろうと思って取り、読んでみる。
『は・ず・れ・☆ 神社の普通の箒です。飛べませんよ?』
「ふざけんなー!」
紙をびりびりっと破り箒をだんだんだんだんだんだんだんと踏みつける。
後半はよく読めなかったけどはずれってことは騙されたってわけだ。
ちくしょう、あたいを馬鹿にして! いいかげんあたいだって泣いちゃうぞ!
こ、こんなはずればかりだなんて思わなかったわ。
きっとあたいが最強だからこんな仕打ちを……許せない! 氷漬けにしてやるんだから!
はずれ箒を袋の中に突っ込み、更に漁る。
食べ物だ! 後でおやつに食べよう。
水だ! 後で凍らせて遊ぼう。
時計だ! どこかに飾ろう。
ヘンな紙だ! なにこれ? なんかごちゃごちゃ書いてるけど。ヘンな絵ね。
ヘンな棒だ! 叩くのかしら。なんか出っ張りがある。押してみよう。おおっ光が! おもしろーい! 後で遊ぼう。
……うえ、また漢字がいっぱいの紙。あたいこういうのキライ。あ、あたいの名前がある。ルーミアとかもいる。
サニーやルナ、スターたちはいないみたい。やーい悔しいだろー! ……何の紙なのか分からないけどさ。
あ、なんか丸っこいのが出てきた。なにこれ? 針みたいなのが動いてる。ふしぎ。……むつかしい。いいや。
お、えんぴつだ。さっきの紙のところにでも落書き出来そうね。取り合えず書いとこう。『メイドにんげんのバーカ』。
よしすっきり。……いや、アイテムは!? なによ全然役に立たないものばっかりじゃない!
ぐぬぬぬっ、こうなったら意地でもなにか見つけてやるんだから……
でてこーい。出てこないと英吉利牛と一緒に冷凍保存してやるわ!
お。なんか未知の手触り。これは当たりの予感。よっしゃ出でよなんちゃら!
「……って、え?」
* * *
「ん……ふぁ〜、っと……おはようございます……?」
私は大きく欠伸をして目を覚ます。はて、何でこんなところで寝てたんだっけ。
っていうかまだ夜じゃない。なんか妙にだるいし。ねむねむ……朝まで寝ようかしら。
ぼんやりと見える城に対抗意識っぽいものを感じるが、今はそれより眠さの方が先立っている。
寝る子は育つ。うん、まあ今まで何をしていたかは起きてから考えましょ。
ということでこんにちはドリームワールド、さよならお月様。
ぱたりと横になり再び目を閉じる。程なくして心地よい睡魔が襲ってくる。
ぐー、ぐー……
「だーれーかー! こ、これ止めてよー!」
すぅ、すぅ、むにゃむにゃ……うるさいなー。
なによこの音、ごごごごごとかいってるし、近づいてきてるし。
……近づいてる?
「あ、ちょ、そこのアンタなんとかしてー! って寝てるし! 起きろバカー! バカガラスー!」
む、バカですって。気に入らないなぁ。ちょっとぶっ飛ばしてやろうかしら。
私の安らかな睡眠も妨害してくれちゃったことだし。
核融合の力、存分に見せ付けてあげるわ!
「私の眠りを妨げるものは何人たりとも……は?」
不機嫌を演出しつつ音のする方に起き上がり、見てみた私の目に映ったものは……でっかい筒だった。
ちょ!? ななな何よこれ! ていうかてっぺんにちっこいのいる!
しかもでっかい筒は私目掛けて一直線。このままだと正面衝突して吹っ飛ばされてしまうだろう。
だが窮地はこれ即ち好機でもある。ふふん、たかがその程度で私の力を止められると思わないことね!
ちっこいのには悪いけど吹っ飛んでもらうわ! 私の核融合を見ながら慄くがいい!
「うおおおおおおお! ニュークリアフュージョンッ!」
sien
……しーん。
あれ? 不発? そんな馬鹿な。
僅かな熱さえ出ない私の手のひらを見ながらちょっと考える。なにかあったような……
あー! 思い出した! あのクソ忌々しい城を吹っ飛ばすために滅茶苦茶力を使ったんだった!
妙にだるいのもそのせいだ。いっぱい休憩しないとプチフレアも出せない状況なのだ。
やばい。でっかい筒はどんどん私に近づいてくる。
ダラダラと冷や汗が流れる。どうすればいいんだ。ちっこいのは相変わらずぎゃーぎゃー喚いている。
ええいうるさい黙れ。こ、こうなったらアレしかないわ。昔の偉い人が言ってたアレ。なんだっけ。
「さ、三十六計逃げるに如かずっ! そこのチビっ子! 飛び降りなさい!」
必死に回避するルートを取りつつ上にいるチビっ子に呼びかける。
よくよく見てみればベソをかいていたらしいそいつは涙声で言い返してくる。
「た、高いよここー! 飛び降りたら痛いだろバカー!」
「バ、バカって何よ! バカ言う方がバカなのよ、バーカ!」
「なんですってー! バカバカバカ! お前だってバカって言ったろバーカ!」
むきー! ムカつく! 助けてあげようってのにその言い草はないんじゃないの!?
いっそ見捨ててやろうかと思った私だが、一瞬の閃きが私の中で核融合。
「私が受け止めてあげるから飛び降りなさい」
↓
飛ぶチビっ子
↓
カッコよく受け止める私
↓
キャーお空さんステキー!
↓
そして見直すチビっ子。私はアイアムヒーロー!
完璧すぎる。やっぱ私ってば天才ね!
自らの計画のパーフェクトさに恐ろしさすら覚えながら、バカと言いたいのを我慢してチビっ子に叫ぶ。
「いいから早く! 私が受け止めてあげるから、ほら!」
ぶんぶんと手を振って降りてくるように説得する。それにこの先は禁止エリア。
急がないとあのチビっ子爆発しちゃうしね。今思い出したことだし、別にあまり私には関係ないんだけど。
人情ってぇやつでさぁ。ん、私烏だから烏情とでも言ったほうがいいのかな?
「うう、わ、わかったよー! わーーーーーー!」
などと考え事をしている間に覚悟を決めたらしいチビっ子は奇声を張り上げて飛び降りる。
……頭から。
あー、あれですか。いわゆるスピアーってやつですか。それともフライングヘッドバットかしら。
しかも何をトチ狂ったかこのチビっ子、物凄いスピードで突っ込んできた。
はっ! これは私に対する挑戦ね! ドサクサ紛れに味なことをしてくれるじゃない。
たかがひと一人、私で押し返してみせる! いや、押し返さないけど。
「わぁああぁぁぁっ!」
「さあ来なさい!」
私の勇気がチビっ子を救うと信じて! ご愛読、ありがとうございました!
【E-1?一日目・黎明】?
【霊烏路?空】?
[状態]疲労(大)?
[装備]なし?
[道具]支給品?ランダムアイテム1〜3個(確認してません)?
[思考・状況]基本方針:自分の力を試す?
1.さあ来いチビっ子!
2.後であの建物をぶっ壊す!?
※現状をよく理解してません?
【チルノ】
[状態]うおおおおお!
[装備]なし
[道具]支給品一式、ヴァイオリン、博麗神社の箒
[思考・状況]おくう先生の次回作にご期待ください!
結論から言おう。
失敗だった。よく考えたら私の腕は『第三の足』だからものは掴めない。
片腕で受け止めるなんて到底無理な話なわけで。
私の鳩尾に突き刺さったチビっ子もろとも吹き飛ばされてごろごろ。超痛い……
痛すぎて文句も言えなかった。だが幸いにしてチビっ子は無事なようだった。
よ、よし。私の計画に支障はない。計画通り。
ごほごほと咳き込みながらも私は半べそをかいていたチビっ子に改めて話しかける。
「危ないところだったわね。もう少しであなた、エライ目に遭うところだったのよ」
「もうエライ目に遭ってるよ!」
そりゃそうか。でもどうしてあんなことをしていたのだろう。
私が訊いてみると、チビっ子は身振り手振りを交えながら説明を始める。
「あたいは空を飛びたかったの。でも何でか調子が悪くってさー、全然高く飛べないし。
だから空を飛べるアイテムを探してこの袋の中を見てたの。
そしたら最後に、あのでっかいやつがにゅーっと出てきて、勝手に動き出したの。
出てくるときに押し上げられて降りられなくなっちゃうしさー。
後はアンタの見たとおりよ。あ、それとあたいの名前はチルノだからね!
チビっ子なんかじゃないわよ! あたいは最強なの!」
えへん、と何故か偉そうに胸を反らす自称最強のチルノを横目にしながら、
禁止エリアに突っ込んでいって途中で止まった筒を見る。あれじゃあもう取りにはいけないだろう。
それにしてもかなりでかい。私の数倍の高さはある。
動力源も何の道具なのかも分からないが、一種の砲弾のようなものだと考えることにした。
あんなものがこの袋に入っていたことも驚きだが、なかなか手の込んだ悪戯だとも感心する。
下手すれば押し潰されるか、動き出したアレに轢き殺される。全くゾクゾクさせてくれるじゃない。
これを考案したのがあの偉そうな奴の仕業だとすれば、戦い甲斐のある相手だ。
『ふっ飛ばしたい奴リスト』にそいつを加えて私は不敵に笑った。
「ふん、面白くなってきたじゃない。あいつもあの城も、私が全部壊してあげる。
地上征服は失敗しちゃったけど今度こそ私の力を思い知らせてあげるんだから。
チルノとか言ったっけ? 助けてあげたんだから私についてきなさい」
「えー。やだよ。バカのくせに」
「バカじゃない! 霊烏路空っていう名前があるわ。お空様とでも呼ぶがいいわ」
「ねーねーおくう。霧の湖ってどっちにあるか知らない?」
聞いてない。しかもなんか馴れ馴れしい呼び方だし。さっきまで半べそかいてたくせに。
全く、私は神の力をも取り込んだ最強の地獄烏なのよ。少しは恐れろ。
核融合のひとつでも見せてやればビビるのだろうけど、生憎今の私は疲労困憊。もうちょっと休まないと。
「そこは知らないわ。もう疲れたし、朝まで休まない? 朝になったら一緒に探してあげてもいいわ。
どうせあの偉そうな奴も探し出さないといけないし。感謝しなさいよね」
「むー。まあいいや、どうせあたいもすることないし……じゃああたいもちょっと休むよ」
感謝しろって言ってるのに! ああ私の英雄伝説……ま、いいか。
なんだかんだでついてくるみたいだし。これも私の人望がなせるわざね!
ごろんと横になったチルノに続いて私も横になった。
空にはまだまだお星様が見える。地上の星ってなんか、金平糖みたいよね。
さとり様やこいし様もお燐も見てるのかなぁ……
そんなことを考えながら、私は柔らかい草の感触を楽しんでいた。
【E-1 一日目・黎明】
【霊烏路 空】
[状態]疲労(大)
[装備]なし
[道具]支給品&ランダムアイテム1〜3個(確認してません)
[思考・状況]基本方針:自分の力を試し、力を見せ付ける
1.偉そうな奴(永琳)を叩きのめす。その前に朝まで休憩
2.後であの建物をぶっ壊す!
※現状をよく理解してません
【チルノ】
[状態]精神的にちょっと疲労
[装備]なし
[道具]支給品一式、ヴァイオリン、博麗神社の箒
[思考・状況]
1.霧の湖に帰って遊びたい
2.とりあえず休んで、おくうについていく
※現状をよく理解してません
※ロケットはE-2禁止エリア内にて放置されています。どうなっているかは不明
代理投下終了。
乙です。
この二人の未来がまったく見えねえw
混沌すぎるww
投下&代理投下乙
まさかのHコンビ結成ww
これからどうなるかすごい気になるw
すいません、なぜか
>>404が文字化けの影響か?が乱立してるのに今気づきました。
収録の際に、直しておきます。
高草郡
この竹林の名前である。
もっとも、現在の名称は迷いの竹林であるが……
では、なぜ竹林の名前が変わったか?
答えはこの竹林で迷った人物が腐るほどいるからだ。
人名でも、本名よりもあだ名のほうが有名になってしまうことはよくあることだ。
きっと、迷った人物が「高草郡は迷いの竹林だ」と言ったのだろう。
そして高草郡=迷いの竹林となり、迷いの竹林のあだ名が一般名として定着したのだろう。
それほど迷いやすい竹林だ。近づく人物など草々いない。
だから……二人を邪魔するものなど……
激しく笹の葉が散る。
それは風が笹の葉を凪いでいるからだ。しかし、今夜の風は笹の葉を吹き飛ばすほど強くは無い。
それでも笹の葉は散る。なぜなら、この風は人為的に起こされた風だから。
「オラァァアアアアア!」
「はぁぁぁあああああ!」
二人の拳がお互いのボディに向けて撃たれる。
一人は首をそらして拳を回避、一人はもう一つの手で拳を受け止める。
「やるな」
「そっちこそ」
手と手が使えない今、二人は目で争っていた。
どちらが先にくたばるか? 手が互角なら足で、足が互角なら頭で、頭も互角なら精神で……
コンマ01をも争う戦いならば、コンマ001を奪い取る。
勝ちと負けの2つに一つ、その違いはまさに天国と地獄。
近づいただけで肌が焦げるほどの殺気。
一度始まってしまった二人の戦いを止められるものなど幻想郷には居ないだろう。
風見幽香の拳を首を傾け避けた星熊勇儀はニッと笑う。
弾幕勝負ではないこの殴り合いでは弾幕勝負における「ボム」は防御手段だ。
風見幽香は勇儀の一撃を防御するために既に1ボム使用している。手だ。
1ボム同士をぶつけ合っている、1ボムは攻撃に使用していたが、完全に回避されている。
風見幽香のボムは0だ。そしてこっちには1ボム残っている。
「追撃!」
「ぐぶっ!」
力をこめた左手が幽香の腹部を殴りあげた。ボディブロー。
いくら妖怪でも、体重は人間と大差は無い。物理学上、エネルギーを受けた物体の質量で割って加速度が決まる。
体重が軽い幽香に巨大なエネルギーはあまり吸収されず、そのまま加速度に変換された。
斜め60度上空に吹き飛ばされる幽香、腹部に強打を受けて、内臓が痙攣する。痙攣は衝撃となって思考能力を磨耗させる。一瞬の気絶、目を覚ました時に幽香が見たものは遊戯の足だった。
「もう一発!」
大鎌の一撃のような回し蹴りを側頭部に叩き込む。
体の重心は骨盤内の仙骨のやや前方、頭部の衝撃はモーメントによって大きな回転力が生まれる。
幽香の体はくるくると回転しながら地面に叩きつけられた。
先に散っていた枯れて薄茶色くなった笹の葉がぱさっと舞い上がる。
「来なよ、これじゃあたしが先走ってしまったみたいじゃないか? まさかこの程度で疲れたぁ〜とかじゃないよな」
「――ああ、効いたわ。なかなか激しいエスコートね。今まで戦った子たちはみんな温くてね。欲求不満だったのよ。久しぶりに激しくて……これなら十二分にイけそうだわ」
「そうかい、なら甘い言葉だけじゃなくて体で示してもらおうかね?」
「そう焦らないで、まずは私からのプレゼントよ」
舞い上がった笹の葉、その合間から強い緑色の物体。今よく見てるアレだ。
竹。
「うわっと!」
3本の竹槍がこちらに向かって投擲される。
竹槍と表現するにはあまりにも荒い出来の槍だった。
槍の先端は拳で殴り落としたように割れていて、槍の全長は約15メートル。
人間の使う陳腐な槍とは根本から違う。
1本、2本……体をそらせ回避、しかし、風に乗った笹の葉は剃刀のよう。
遊戯の頬をかすった葉は血にぬれていた。
勇儀の頬に一筋の赤い線が走る。
「てめえ」
「お返しだ」
3本目の槍を掴む、そのまま勢いを殺さず、あえて生かす。
竹の勢いを遠心力に変え、バットのようにフルスイング。
竹林だけあって、そこらじゅうに竹が生えていたが、そのすべてを竹のバットによってなぎ倒される。
「あらあら、環境破壊はよくなくてよ」
「3本へし折っている時点で同罪だ」
「もうすぐ枯れそうだったからそれを選んだのよ」
「その割にはなかなか硬度の高い竹だな。同族同士をぶつけたって言うのに折れてない」
遊戯は改めて竹のバットを見上げる。細かい傷があるものの、先端までしっかりと延びている。
根っこはないけど。
「竹に浮気されてしまったわ。どうしましょう」
「こいつの嫉妬は深そうだからな。なかなかあたしを放してくれなさそうだ」
「なら殺してでも」
幽香が踏み込む、同時に勇儀は竹を上に放り捨てる。舞い上がる竹、そして構える幽香。
(腹っ!)
攻撃地点を判断してボム、もとい、防御の手を構える。
ガンッ!
鉄と鉄をぶつけたような重音、幽香の攻撃の第二劇。
(顔か)
一発をくれてやる訳にはいかない。防御の手を伸ばす。
が、
「がはっ」
「初ヒットー!」
顔への攻撃は防げた。だが、足を忘れていた。
幽香の膝蹴りが下腹部にめり込んでいた。
「2ヒット!」
ダメージで防御が揺らいだ。顔面に握られた拳が突き刺さる。
「3、4、5、6」
肘打ち、撃ち、打ち、打ち。全部顔面に。
軽い脳震盪に襲われ、地面に倒れる。
「はい、最後」
倒れた勇儀に顔面トーキック。
音が消える。激しい戦いの音が……
「最後までエスコート楽しかったわ。また遊んでね」
血で染まった靴を勇儀の顔面から引き抜いた。
さて、次はどこに行こう?
そう、思ったときだった。幽香の体は影に包まれた。
何だ? と思い、上を見上げる。その正体はすぐに分かった。
最初に勇儀が投げた竹の土産。鋭い面を下にしてまっすぐ落ちてくる。
幽香は焦らなかった。この程度の竹、普段の弾幕のほうがよっぽど避けにくい。
タン、と一歩下がる。とん、と一歩前に押される。
「え?」
落ちてきた竹は幽香の頭部真上10cm。
バキバキバキッ!
竹が大きく裂ける。
幽香の背中には真っ赤な血の手形が残されている。
「あーあー、女性のエスコートは難しいねぇ。最後まで付き合ってもらえず帰られてしまったよ」
手と鼻、鼻の頭から真っ赤な血をダラダラと流しながら勇儀はつぶやいた。
勇儀は幽香の蹴りを顔面ぎりぎりで止めていた。
勇儀の髪が長く、偶然にも顔にかかっていたため、手で止めていたことを幽香は気づけなかった。
最初に受けた勇儀の連激で頭がふらふらしていたことも要因の一つであろう。
「……だめ……よ、こんな終わりは……認め……」
「流石に死んだかと思ったよ。意外に丈夫な体なんだな」
勇儀は後ろを振り返る。頭が砕ける瞬間をしっかりと見た。
あの状態では息があることがまずありえないことだ。
生きていたとしても数分もしないうちに死ぬ。
勇儀の見たとおり、幽香は頭部から大量の血を流していた。
勇儀はさらに驚いたが、幽香は立ち上がっていた。まだ動けたとはな……
「楽しいひと時も終わりが来るものさ。さぁ、地獄なり天国なり行くがいいさ」
「……ええ……そ……そう……ね」
勇儀は振りかぶる。全力でこの瀕死の女を殴れば命の糸は切れるだろう。
そう、全力全開で、殴る。
後悔したのは数秒後だ。幽香はあれほどふらふらしていた。
にもかかわらず、驚くべきスピードであるものを勇儀の拳と自身の頭の間に入れてきた。
ガラスのビンだ。
コルクの代わりに布が巻いてある。そしてちりちりと小さな火が灯っていた。
「火炎瓶!」
「はい。残念」
全力全開だ。止めるに止められない。そう、まるで自分の体じゃないかのように。
腕はとまらないのに、目だけは動く。幽香の足元には銀色のなにやら容器が転がっている。
そしてツンとする臭いがいまさらになって鼻につく。遅すぎだ! 馬鹿!
銀色の容器、これは香霖堂のストーブ。それの燃料タンクだ。
そして幽香の持つ火炎瓶。これはもともと支給されたものだ。
勇儀の拳は止まらずガラス瓶を砕く。
液体が腕にまとわりつくのを感じた。
「あっちでもエスコートしてね。鬼さん」
「い、いやなこった……」
砕けたガラス瓶についていた火種は液体に触れる。
液体は蛇のような炎を発し、その炎は下に広がっていたストーブの燃料にも引火する。
竹は油を持つ植物だ。とてもよく燃える。
竹林一面に広がっていた笹の葉。乾燥していてよく燃える。
二人は怪我をしていた。うまく歩けないほどに。
火の回りは異常といえるほど速く、二人を飲み込むまでにそう時間はかからなかった。
【星熊勇儀】
【風見幽香】 死亡 【残り43人】
代理終了
お二人とも乙です
>>Ok1sMSayUQ氏
こいつら緊迫感がなさすぎるw
ロケットとか何考えて支給したんだ主催者はwww
いろんなネタ仕込んであって面白かったです
>>27ZYfcW1SM氏
二人の対決はまさかの相討ちか
これは予想外の結末
殺し合いもどんどん加速してくなー
今、私の内側には異常が奔っている。
命の危険に晒された影響で、動悸は必要以上に高鳴り続けて、治まることを知らない。
目の前で殺されたリグルと、豹変した霊夢を記憶に入れた頭だって、オーバーヒート中で碌にものを考えられやしない。
外側だって酷いもんだ。
帽子も無しに、地面に叩きつけられたせいで、私のウェーブがかった金髪も台無しにされちまった。
白と黒で構成されたエプロンドレスだって、土が所々にこびりついて汚れが目立ってる。
差し詰め、私は今、さぞや酷い顔と格好をしていることだろうよ……。
そんな私、霧雨魔理沙は、他者との接触を避け、休息を取るために近場の森林へと足を運んでいた。
薄暗い道なき道。
周囲には鬱蒼とした木々が、密集している。
視界を遮り、光を遮り、風を遮る。
暗い空は星も消え、暗く重苦しく陰っていた。
空に懸かる満月も、綿雲によって隠されていく。
辺りは見ているだけで、吸い込まれそうな、そんな不吉な暗さになっていった。
背筋を大きく逸らした伸びをし、月が姿を見せるまで、と大木の袂に腰を落ち着ける。
――ここまで闇が広がっちゃ、しばらくは誰とも会わないだろ。
針が落ちる音ですら、木霊しそうな静寂。
瞳を閉じ、しばし休息を取る。
考える余裕が出来た私の脳裏に浮かぶのは――博麗霊夢。
異変の解決と妖怪の退治を生業としている博麗神社の巫女。
なぜか脇の部分が露出している紅白の巫女服を、冬でも愛用している。
いつだって、どこだって、限りなく、果てしなくマイペース。
ただ通りすがっただけの妖怪を、襲撃し、持ち物を奪うなんて日常茶飯事だ。
自己中心的というよりは、あいつの価値観が一般常識とかけ離れている、と言った方が正しいだろう。
要は、変わった奴という一言に尽きるぜ。
霊夢と知り合ったのは数年前。
その時には既に巫女さんをやっていた。
私達は出会いから一緒に遊ぶようになるまで、さほど時間は要らなかった。
同年代だからか、相性がよかったのか、理由なんて、わからない。
ただ、時が過ぎるたびに、あいつと一緒にいる時間が、自然に増えていった。
それだけは確かだ。
――赤味噌と白味噌の優劣を弾幕ごっこで決めたり。
――私が神社の賽銭箱にそこらの葉っぱを大量に入れたり。
――言い争いがヒートアップして、もはや屁理屈だけで構成された不毛な口喧嘩をしたり。
いつだってくだらないことで大騒ぎしたなぁ。
永遠の親友であり、永遠のライバルでもある
私とあいつの関係は、このあたりが、ぴったりと当て嵌まるだろうか。
いつしか、霊夢のいない日常なんて考えられなくなっていた。
霊夢と離れ離れになるなんて、これっぽっちも考えた事は無かった。
――博麗霊夢とは、そんな一緒にいて、とても楽しい奴だというのに。
現在の私の脳裏には。
右手には、血の雫を跳ね返す白刃を下げ。
自らが行った凶行に、何の感慨も持たず。
恐怖に引き攣るリグルの首が無残に転がる中でも、笑顔を崩さず。
しんと静まり返った落ち着いた声で、淡々と一方的な宣誓を告げる霊夢。
なぜか、そんな、刃よりも冷たく鋭い情景が焼きついている。
知り合ってから今まで……あいつのあんな笑顔……見たこともなかった……。
隠していただけで、実は霊夢は元からあんな奴だったのか……?
いや、そんなはずはない!
そりゃ、あいつは風変わりで、こいつは私とは違う景色を見てるんじゃあないか、って気分になった事だって多々あったさ。
でも、あの瞳は違う。
何色でもない。濁っているわけでもなく、澄んでいるわけでもない。ただ何の影も映していない瞳。
霊夢は、あんな冷たい瞳が出来る奴じゃないんだ!
多分……ここにあって幻想郷には無い何かが……霊夢の心に影響をもたらしているんだ。
それがどういうものかなんてまだわからない……。
……でも、きっとそうなんだ!
そうとでも思わなきゃあ……。
私達の関係が……こんな馬鹿げた所に放り込まれただけで、壊れてしまう脆い関係だったなんて……そんなの悲しすぎるじゃないかっ!!
だらだら過ごすだけの普通の日常っていうのは、限りなくかけがえの無い、奇跡的で大切なものだったんだな……。
今と比べりゃ、あの日常は本当に夢物語のようなもんだ。
その事に気づかせてくれたのは。
目の前で声を漏らす間もなく首を刎ねられ。
地面に血の池を作りながら、虚ろな瞳で天を仰ぐリグル。
あいつが死んだのは私のせいだ。私があの時――。
――突如、内なる声が、私に囁きかけてくる。
もし、あの時霊夢≠殺せばリグル≠ェ助かるとしたら……。
私は霊夢≠――殺せるんだろうか?
普段の私なら、即座に二人とも助ける、と胸を張って答えただろう。
しかし、既にリグルの死は変えようの無い事実として、私の脳裏に残っている。
なら……私の天秤の行く末は――
――必ず霊夢≠掴み取る。
顔見知りが殺されるのに。私もその原因を担ってるのに。霊夢は加害者なのに。
リグルを助ける為に霊夢を殺す、リグルの仇を取る為に霊夢を殺すなんて事、欠片も考えられない。
私自身にもこの結果は、随分と衝撃的だった。
どうやら私の血潮は、ずいぶんと冷たかったらしい。
霊夢の凶行を許すわけじゃない。リグルに罪悪感を抱いていないわけじゃない
それでも――霊夢≠殺す≠フだけは――。
――刹那、内なる声が再度、私の背筋を這うように過ぎて行く。
リグル≠ナはなく、霊夢≠ニ同じぐらい大事な人≠セったとしたら――。
現実味のある想像が重荷となって心を圧迫する。
心臓が大きく跳ねた。
そんな苦渋の決断を強いられたら。
――私は――どうする――?
頭の中に残る、重いものを引き摺るような感覚を振り払おうとする。
それでも釈然としない心の蟠りは剥がれようとしない。
様々な感情の影響で、私の心が、逃げてしまいたいと叫んでいる。
私は不安の渦に揉まれ、静寂の中に黙り込んだ。
…………。
憂鬱な気分を無理矢理にでも変える為、ふと瞼を開くと、何時の間にか、視界に映る景色は変化していた。
雲は薄れ、煌々たる月はその姿を天に映し、光を振りまいている。
満月か……。
狂ってる奴は大抵、月が原因だ。
萃香の月割芸みたいに、あの満月を私の魔砲で壊したら、霊夢が元に戻ったりしないかなぁ。
ま、今じゃ私の魔力も貴重品だし、実際に試す気はない。
そもそもミニ八卦路自体、どこか壊れてるのか、そこまでの出力は無理そうだ。
こいつ、メンテが必要かもな……。
ひとりごちながらスカートの中にごそごそと手をいれ。
取り出した、ゴツゴツとした小さな八角形の炉をコンコンと叩いてみる。
ミニ八卦炉。
人を惹きつける光を放出する能力。
他にも風を放つ、空気を綺麗にするなど色々な機能を併せ持つ。
そして私にとっては、能力以外にも特別な意味を持つ、私の最高の宝物であり相棒。
親のようでもあり、兄のようでもあり、幼馴染のようでもあり。
でも、そのどれにも当て嵌まらない。
私にとって、そんな感じの、もう一人の私の日常にいるのが当たり前の奴からプレゼントされた、魔法使いの霧雨魔理沙≠フ原典。
放たれた流れ星のような極光が空を切り開くのを見届けるのは、いつまでたっても飽きる事は無い。
色々な実験、異変の解決、霊夢との弾幕ごっこ。
長年の付き合いでの、毎日のように酷使し続けた。その使用回数なんて数え切れるもんじゃない。
魔法使いを始めてからの大事な大事な思い出が、全てこいつに詰め込まれていると言ってもいい。
ミニ八卦路をジッと見つめ、ぎゅうっと抱きしめる。
そのまま、瞳を閉じ、柄にも合わない郷愁に耽る……。
――思い出せば、何時でも明瞭にあの日々は頭を巡る。
経験した事の一つ一つが、この瞬間に経験しているかのような錯覚に囚われる。
今となってはただの儚い夢でしかない光景が、脳裏を延々と流転していく。
回廊を辿り、夢を記憶にしっかりと刻み続ける。
これは何の答えも出せない、現実逃避に近い方法だって事は分かってる……。
それでも時間は有限なんだ。
今だって、どこかで何かが起こっているのだろう。
なら……無理矢理にでも……前を向かなきゃな。
……………………。
私を覆う恐怖と混乱が、自然と薄らいでいく。
あれほど騒いでいた心臓も何時の間にか落ち着いていた。
瞳を開けた私に自然と安堵の溜息が漏れ出る。
やれやれ……やっと落ち着けたぜ……ありがとな。
さて……気を取り直したところで、霊夢の親友として、やるべきことをやるか。
考えるべきことは、霊夢の言葉。
霊夢をなんとかするならなら、まずあの霊夢に歩み寄らなきゃならない。
あの時を思い出せ。
なんて言っていた?
あいつの言葉を並べていくんだ。
――私達はね。殺し合いに乗るしかないの。それ以外に生きる道なんてないの。
妖怪、亡霊、月人、閻魔、神をいとも容易く攫う実力、科せられた首輪と制限。
確かに、逆らうなんて馬鹿げてるといっても、過言じゃないほど絶望的だ。
しかし、これだけで、あのマイペースな霊夢が、即座に諦めるとは、とても思えん。
この言葉は、生きる道さえ示せれば、霊夢はそちらを選ぶかもしれないということでもある。
まぁ、その生きる道が、てんで思いつかないから、こうして困っているわけだが。
――私はあの場所で確信した。これは仕組みなんだって。
あいつはどうやって確信したんだ?
お得意の勘か?
たしか……世界の方が霊夢の思考に沿って動く……って昔、自慢げに原理を披露してたな。
しかし、勘だけで、躊躇無く知人を殺せるほどの覚悟を決めることなんて出来るのだろうか?
これは霊夢本人の感覚じゃないとわからないか。
他の手段は――。
ああ、こう考えたらどうだ。
もしかすると、霊夢はルール説明の場にいなかったんじゃないか?
唐突に生きるために人を殺せといわれて、今までの知人を躊躇無く殺せるようになるには、並大抵の覚悟じゃあ無理だ。
霊夢だけは別の場所に送られて、能天気なあいつでも絶望してしまうような……従わざるを得ないような何かがあった。
内容はとにかく、そこで紆余曲折を経て、皆殺しの覚悟を決めたとか。
これも想像に過ぎない。
ただ、この想像の場合、主催者にとって利点がある。
霊夢はそこにいるだけで希望っていうか、何かを期待させてくれるというか、そーいう一緒にいて楽しい奴だ。
そんな霊夢を私達から奪い、味方につける、ということは、それだけで価値がある。
もう一つは殺し合い自体の加速。
名簿の中で私とあいつの知り合いじゃない奴なんていない。
異変解決のエキスパートである霊夢と会えば、皆は心に余裕を与えるだろう。
その信用を逆手に取れば、簡単に背中からグサリ……だ。
親友である私だって……あいつが、リグルをいきなり殺さずに、いつもと同じように接されたら多分……気づけなかった……。
勘か、主催者の干渉か、どちらでもないか。
どれにしろ、この話題は霊夢に直接聞かないと、如何せんどうしようもないな。
――幻想郷≠ェ、この世界≠ェ、殺し合いを求めているの。
馬鹿馬鹿しい。
幻想郷は妖怪と人のバランスによって保たれている。
そんな事、今時誰だって知ってる。
幻想郷≠ノ道連れ自殺の願望でもあるってのか?
というか、あいつはなんで、平然と幻想郷≠ニ意思疎通しているような口振りしてるんだ?
以前、霊夢から自信満々に神様と会話できる、とか教えてもらった覚えはある。
そんな感じで幻想郷≠ニも会話できるというのだろうか?
次だ、次。
これは私じゃ無理だ。
――この殺し合いの裏に誰が≠「るかを。
この誰か≠ェ問題だ。
会話の流れからして永琳や幻想郷じゃあない事は分かる。
誰か≠ヘこの会場のどこかに隠れているんだろうか?
それとも、名簿に載ってる中に誰か≠ェいるんだろうか?
霊夢の知り合いで、こんなことできそうなのは紫ぐらいだ。
だけど、紫は、幻想郷の運営に最も力を注いでいると言ってもいい。
あいつが、幻想郷を危機に陥らせる行為をするとは、とても思えん。
………………………。
分かろうとすれば見えてくるとか言ってたが、こんなもん無理に決まってるだろ! 霊夢の阿呆!
あ〜、もう!
あいつは、魔法の知識ぐらいしかない私に一体何を求めてるんだ!
博麗神社や幻想郷の歴史に詳しい奴が必要だな……。
幻想郷には長命の奴なんざ腐るほどいるが、その中で幻想郷の歴史に興味のありそうな奴なんて一握りしかいない。
即座に思い浮かぶのは紫、藍、阿求、香霖、慧音、文、閻魔。このあたりか。
霊夢がああなっちまった今、どいつにだって、もしかしたらという可能性は拭えない。
それでも、まず会わなきゃ何も始まらないからな。
当面の目標は仲間集めだ。
誰が≠ノ対抗するにしろ、霊夢を止めるにしろ、幻想郷の歴史を探るにしろ、まずは人がいなきゃどうしようもない。
飛行が出来ない現状、行動範囲は限定される。
地図で見ると数字でいう3。いや、妖怪の山の左の道を組み合わせると9の形だろうか。
こんな形の場合、人が集まる所は一目瞭然だ。
大雑把に見て、この会場は山によって上段、中段、下段の横三列に分断されている。
その三列が交差する魔法の森付近は、交通の要所だ。
なにより、博麗神社がある。
あそこは、異変解決の専門家の住処だ。
それに、宴会でもなんでも集合場所として馴染みの妖怪神社でもある。
ほっといても、勝手に人が寄ってくることだろう。
私の家である霧雨魔法店にも、誰か来てるかもな。
霊夢ほどじゃないが、私も幻想郷では知名度があるほうだ。
残りの魔法の森の物件は……客の来ない古道具屋、さもしい一人芝居を得意とする人形遣いの家、悪戯三昧の妖精の住処。
……このへんを目指すやつは、持ち主か泥棒だな。まず間違いない。
どうやら、この場所を作った奴は、魔法の森を中心としたいらしい。
参加者が出会えば出会うほど、殺し合いは加速する。
それを望んでの事だろうな。
……でもそれだけか?
こんな規模のでかい会場をわざわざ用意したからには、他にもなにか理由があるんじゃないだろうか?
例えば……人が集まる部分をつくったってことは、逆に他の部分には人がそこまでいないってことだ。
特に、泳いで渡ることだって出来ない三途の川の向こう側なんて、誰も行かないだろう。
山脈の内部だって、実際に上から見てみなけりゃ、わかりゃしない。
それを踏まえて考えると。
施設の場所と名前が明記してあるこの地図は、目的地を指定させる事で、移動経路を制限させる誘導のためにも見えてくる。
おっと、横道に逸れすぎたな。
これを考えたところで、空を飛べない現状では関係ない。
今のとこ、人探しなら魔法の森が一番か。
しかし……霊夢に会う可能性も一番高い。
心情的に会いたくないというのもあるが、私の霊夢との弾幕ごっこでの勝率は四割程度というのも問題だ。
霊夢を殺せない私と、私を殺しにかかる霊夢じゃ、実際にやるまでもなく結果は見えてるぜ……。
その点では、人里や紅魔館といったところの方が安全ではあるが、魔法の森より確実に人は少ないだろう。
さて、どうする?
その刹那。
静寂が木霊している空間に。
軽く音がしたかしないかという程度に、何かが擦れる音が響いた。
私は、すかさず音源の元を見る。
迫り来る来訪者の気配は、鮮明に訪れた。
どうやら逃げ隠れするつもりはないらしい。
その姿を晒す。
引き締まった知性を感じさせる物静かな佇まい。
その美貌には、柔和な笑みが浮かんでいる。
ポニーテールのように腰まで垂らした、一本の煌びやかな銀の縦ロール。
中央に赤十字が描かれた群青色の看護帽。
身に纏うは、赤と群青のが中心を境に左右に分かれる看護服。
看護帽と看護服に刺繍された星座の配列が、常闇によって殊更明瞭に映えている。
両の手には何も構えておらず、一見したところでは敵意は見えない。
そいつの名前は八意永琳。
現在の暫定、主催者。
本当にこいつが、この殺し合いを仕組んだのかは、わからない。
だが、仕組んでなかったにしても、疑うに越したことはない相手。
それほど、こいつの頭はいい。
「こんばんは。狂ってしまいそうなほど、いい満月の夜ね」
平生の如く振舞い接して来る。
「――両手を開いて私に見せろ。そして動くな」
私は言葉も碌に聞かぬまま、内心の微かな動揺を抑えつつ、ミニ八卦路を構え、警告を放つ。
「あらあら、痛いのは嫌だわ。
しかし、真っ先に撃たずに警告してくれるなんて、やはり貴方を選んだのは正解だったわね」
私の要求を素直に聞き、永琳はその通りに行動し、五間(10m)程度の位置で立ち止まる。
「おお? 私は慎ましいからな。
で、私に言いたいことはあるか?」
「蛍の光に惹かれただけよ、真夜中にあんな魔法を使っちゃ当然ね」
私の魔法を蛍の光に例えられ、二重の意味でカチンとくる。
「何言ってるんだ? 魔法は真夜中に思いっきり使うもんだぜ?
あと、ここに来た理由より、殺し合いを開催した理由を教えな」
一見、和やかに話しながらも、警戒は解かない。
全身の神経を鋭敏にし、永琳のみならず、周囲にも警戒を配る。
背後から草音がするだけでも、引き金を引いてしまうぐらい敏感に。
これくらいで丁度いい。
永琳が本当に主催者ならそれでよし。
もし、間違ったとしても、永琳はそう簡単に死ぬような奴じゃない。
「――簡潔に言えば、皆は何者かが生み出した幻像の私に騙されているだけで、私自身は何もしていない」
一拍の間を置き。
永琳が告げた真実は白。
「へぇ。他には?」
「意外と驚かないのね」
既に霊夢からその可能性を貰ってた私にとっちゃ驚くようなことでもない。
本当かどうかは別としてな。
「既に殺し合いなんかより予想外の体験をしたんでな。並大抵の事じゃ驚かないぜ。
かといって信じるって訳じゃない。とりあえず、勝者の権利として知ってる事は洗い浚い吐いて貰うぜ」
「私がいつ負けたのよ。
まぁいいわ。
でも、私には何時の間にか、ここに来ていた、という記憶しか残っていないわ。
確実に貴方の持っていない情報なんて、本当の主催者≠ノ貰った手紙ぐらい。
後は、博麗神社のあたりで、恐らく人を集めるための目立つ弾幕を確認しただけ」
――本当の主催者
聞き逃せない言葉が、永琳の口から発せられた。
霊夢の言う誰か≠チてのは、その本当の主催者≠ニ同一人物か?
「私からよーく見える場所で手紙を出しな」
紙じゃない物を取り出せば、即座に撃ってやる。
永琳は月光に照らされた場所で袋を開き、右手を差し込み、予告通り紙を取り出した。
「この催しを仕組んだ楽園の素敵な神主≠チて人からの手紙だったんだけどね。
残念ながら、文字が消える仕掛けになってたみたいで、今は白紙」
手に持つ紙をひらひら揺らしながら、そう答える。
文字が消えているというのは気になるが、もし永琳が私を騙したいのなら、事前に書いておけば済む話だ。
わざわざ無駄に不信感を煽る様な事をする意味は無い。
恐らく本当に文字は消えたんだろう。
――楽園の素敵な神主
今のとこ、霊夢の言う誰か≠ノ当てはまる、最も有力な呼称だな。
神主という事は、博麗神社の関係者なのだろうか。
しっかしなぁ……自分に素敵って……趣味が悪いとしか言い様が無い。
「続けろ」
「内容は姫がこの殺し合いに積極的に参加していると」
「輝夜が……」
あいつが殺しねぇ。
傍迷惑な奴だ。
「それもどうやら私の為にね。
貴方に頼みたいのは姫への伝言と配達」
窺い知れないほどの感情を込めた、疲れた声。
憂いの雲が懸かるのが、眼に見える。
過保護の永琳に、こんな手紙を送りゃ当然か。
「聞く限り、輝夜の前に出るには命を懸ける必要がありそうなんだが。
それに私から話しても、素直に聞いてくれるとも限らないぜ」
輝夜とも永琳とも、それほど親しいわけじゃない私には、命を賭ける義務も義理もありはしない。
「ああ、出来る限りでいいのよ。そこまで期待はしてないし。
ただ――もし貴方が姫を殺して、それが私の耳に入ったら……――私は霊夢≠殺すわ」
威嚇交じりに永琳は警告する。
隣り合い、互いに支えあっている。
片方が崩れれば、もう片方も滅びが始まる。
私はそんな感想を抱いた。
「……過保護も何時も通りか。いーぜ。私からも同条件だ。」
可能性は低いとはいえ、霊夢≠殺すなんて言われたんだ。
ちょっとでも仕返ししとかないと、私の気がすまん。
「貴方は自ら進んで人殺しになれる器じゃない。脅しにはならないわ。
安心しなさい。私には霊夢を殺す理由なんて存在しない」
可笑しそうに笑う永琳。
「……ちっ。でもな、永琳。ここでは何が起こってもおかしくないんだぜ。
なんせ、その霊夢が殺し合いに積極的になってるぐらいだからな」
永琳の瞳が、驚愕も露わに見開かれた。
こんな表情が見えるなんてレアイベントだぞ。
流石だな、霊夢。
「冗談……じゃないようね」
「私にとっても残念ながらな。
霊夢が言うには幻想郷≠ェ殺し合いを求めてるから、私達を皆殺しにするんだそうだ。
しかも、あいつは既に、黒幕が誰か≠知っているらしいぜ。
永琳、お前はこれを聞いて、何か思い当たる節はないか?」
こいつは月の頭脳とか呼ばれるほどの天才、そして若く見えても年齢なんて数え切れないほどらしい。
年の功ということで、何か打開策の一つでも授けてくれないだろうか。
「私は幻想郷自体には、さほど詳しいわけじゃない。恐らく貴方とたいして結果は変わらないわ。
薬物の線は思い浮かんだけど、霊夢に会ってみないと、どうしようもないわね」
「ああ?期待外れだな」
寿命が長ければ、何でも知っているなんていう幻想は、どうやらただの空想のようだった。
私の寿命が延びる時が来たとしても、日々研鑽は怠らないようにしよう。
「何時もの事とはいえ、勝手に話しておいて文句を言うなんて理不尽ね」
心外な。
私ほど、いい性格をしているって言われた奴、そうはいないぜ。
「ああ、そうそう。一つ言っとくことがあった。
――危険人物を殺しにかかろうとするような奴に、霊夢の事を話すなよ」
「私と会話したがるような人妖自体限られているし、心配は無用よ。
――ところで魔理沙。その言葉は、霊夢を殺そうとする奴は死んでも構わない、という意味なのを、貴方は理解しているのかしら?」
わかっちゃいるさ……。
だけどな。
霊夢は私の日常には欠かせないんだ。
そして他の私の日常に欠かせない奴だって、絶対に霊夢を殺したりなんてしない。
……だから、霊夢を殺すような奴は犠牲にしたって私は……構わない……。
「――ああ。既に全てを救うなんて英雄の資格は、私にはもう残ってないんだ。
勘違いはするなよ。霊夢一人の為に全てを投げ打つとか、自暴自棄になったってわけじゃあない」
「そう。それがわかってるならいいわ
最後にもし目的を保護したか、情報を入手した場合の為に待ち合わせをしない?
半日後(午後14時〜16時)に、G-5の右下あたりでどうかしら?」
「別にかまわないが、禁止エリアも考慮すると、後いくつか候補がほしいところだな」
半日後までの禁止エリアは三箇所。
確率は低いとはいえ、万が一は十分ありえる。
「禁止エリア?」
そういや、こいつはルールを聞かされていないんだったか。
「ああ? 知らないんだったな。禁止エリアっていうのは――」
私は永琳にルールを説明する。
禁止エリア以外にも放送、支給品など基本的なルールも含める。
「要は時間制限ってわけね。
ならG-5の右下、G-6の右上の森、G-7の森、順番どおりに。全て指定された場合は永遠亭で。
どちらかが来なかった場合、待つのも去るのも自由」
「こそこそするのは性に合わないんだがな。まぁ、それでいいぜ」
人目を避けたいのかほとんどが僻地だ。
永琳に指定されたというのは気になるが、今のところ特に避ける理由も見当たらない。
「時間と場所を忘れないようにね。
ところで、実は今、丸腰なのよ。何か武器になるものを頂けないかしら?」
「図々しい奴だな。悪いが、まだ信用したわけじゃない。これで我慢しな」
――私の渡した武器で、誰かが死ぬ。
そう考えてしまうと、信用の置ける奴以外に人を殺せる武器を渡す事は出来ない。
私は支給品の一つであるケース入りのダーツセットを取り出す。
ケースからいくつかダーツを抜き、スカートの小物入れに隠し、残り全てのダーツをケースごと投げ渡す。
流石にこれで人を殺すのは難しいだろう。
しっかし……誰かが助かるじゃなくて誰かが死ぬ……か。
こんな事考えるなんざ、私もとんだネガティブ少女になったもんだ。
きっと私は今、苦笑と自嘲を混ぜた表情をしていることだろう。
「これで十分。軽々しく殺傷力のある武器を渡さなかったのは正しい事よ。
死を経て、貴方も少しは成長したということかしら」
褒められてはいるようだが、耳が痛い。
できれば、別の事で成長したかったぜ。
「そろそろ話は終わりね。
姫への手紙を置いておくわ、手紙を手渡すのか言葉で伝えるのかは貴方の自由。
私と貴方の願いがぶつかる時が来ない事を祈ってるわ。じゃあね」
微笑みながらそう言い残すと、地面に手紙を置く。
そして振り返り、そのまま一切こちらを見ずに、森の向こうへと歩き去っていった。
永琳が見えなくなったあたりで、置いていった物を警戒しつつ拾い上げる。
恐らく……永琳は黒幕じゃないな。
霊夢の言動と合わせると、限りなく白に天秤が揺らぐ。
実は全部永琳の筋書き通りだったとしても、そこまで不思議でもない気にさせられるのが困り者だが。
それでも、永琳はこんな無駄なことはしないだろう、多分……。
永琳に関しての情報は、信用の置ける奴以外には、話さないようにした方がいいだろう。
下手に話しても、不信と混乱を生み出すだけだ。
こうして私と永琳の邂逅は終わりを告げた。
永琳が去り、静寂が響き渡る森の中。
私はふと、木々の隙間から空を仰ぎ見る。
空には、散りばめられた星と一つの満月が輝いている。
本来、いつでもどこにでも、不可視の暗闇ばかりが広がっているはずだ。
それでも、こうして私が前に進めるのは、空から降り注ぐ光が暗闇を切り開いているからである。
当たり前の事だ。
だけど、よくよく考えると不思議な情景に見えてくるぜ。
私もいつかは夜空に流れ輝く星となって、幻想郷、そして霊夢の闇夜を、切り開けるようになれるのだろうか。
そして楽園の神主≠ノ盗まれた、日常って名前の夢≠ヘ帰ってくるんだろうか。
疑問を呈したが、答えを求める気は欠片もない。
今はただ、目標へ到達することを信じて、精一杯、笑顔を絶やさずに、ひたすら前へと進むだけだ。
そうすりゃ、いつかは答えが見えてくるはずだからな。
【C-5 山の南側 1日目・黎明】
【霧雨 魔理沙】
[状態]健康
[装備]ミニ八卦炉、ダーツ(5本)
[道具]支給品 ランダムアイテム0〜2個、永琳から輝夜宛の手紙(内容は御自由に)ダーツボード
[思考・状況]基本方針:日常を取り返す
1. まずは仲間探し…
2. 霊夢、輝夜を止める
3. 真昼(12時〜14時)に約束の場所へと向かう。
4. リグルに対する罪悪感
※主催者が永琳でない可能性が限りなく高いと思っています(完全ではありません)
※霊夢から逃げる際に帽子を落しました。
【八意永琳】
[状態]怒りと焦燥感
[装備]ダーツ(25本)
[道具]支給品 ランダムアイテム1〜3個(武器は入ってません) 神主からの手紙(現在白紙)
[思考・状況]基本方針:輝夜を止めて、ここから脱出
1. 光の束へと行くか、どこか別の場所へと行くか、どうしようかしら。
2. 真昼(12時〜14時)に約束の場所へと向かう。
※この場所が幻想郷ではないと考えています
※自分の置かれた状況を理解しました。
◇ ◇ ◇
「今のって……」
「永琳って……あの女だよね……」
「魔理沙と永琳。二人の関係がどんなものかは私は知らないわ。だけど……」
「険悪そうには見えなかったね……」
魔理沙達とは少し離れた森の中、レティ達は茂みに身を隠し、魔理沙と永琳の邂逅を傍観していた。
冬の化身、レティ・ホワイトロックと日の光の妖精、サニーミルク。
二人が太陽の畑を抜けた、その時、魔理沙の放ったマスタースパークの光を目撃していた。
霧雨魔理沙は、異変解決において有名人だ。
レティ・ホワイトロックも過去の異変の際、弾幕ごっこを繰り広げ面識を持っている。
戦力としても期待できるが、なにより重要なのは、いつでも楽しさに満ち溢れている屈託の無い笑顔。
近くにいるだけで安心感をもたらせてくれる存在だ。
そんな魔理沙を知っているのなら目指さない筈は無い。
怪我をした足を庇いながら、放たれたマスタースパークを灯台の光ようにを頼りにし、希望に惹かれるように進みだすレティ。
だが、その途中で主催者である永琳を一方的に目撃してしまう。
殺し合いを現実と認識した今、自分達だけで勝てるなどという慢心をする事はない。
かといって、永琳を叩きのめし、早急に殺し合いを終了させるという、千載一遇のチャンスからみすみす逃げることはしたくない。
そんなレティは魔理沙を探す事を一旦諦め、永琳の隙を伺うために尾行という選択肢を選んだ。
本来なら碌に障害物も無い平地での素人の尾行。
怪しまれた場合は、サニーミルクの能力により姿を隠す事により回避しようという作戦だった。
しかし、怒りと焦燥感に憑かれ、魔理沙という目標に集中していた永琳は、周囲への警戒を甘くし、不覚にも完璧な尾行を許してしまう。
やがて、鬱蒼とした森林に突入。
生い茂る木々によって視界が狭まるが。
サニーミルクの能力による擬似的な透視により、距離は更に離されたが見失うことは無く、尾行は継続される。
そして、魔理沙と接触したのを遠目で確認。
魔理沙なら、絶対に永琳に喧嘩を売るわよねぇ。
そうしたら、私が颯爽と援護してあげるわ。
こんな殺し合い、さっさと終わらせて幻想郷に帰らなくっちゃ。
そう考え、胸をドキドキさせながら、準備をしていたレティ。
だが、残念な事に、いつまでたっても、変化は到来しない。
レティには、永遠とも思える長い時間。
内容は聞こえないが、魔理沙と永琳はずっと会話を続けている。
時間の経過と共に、レティとサニーミルクの表情は、徐々に翳りで埋まっていく。
やがて永琳が離れ、残るは魔理沙ただ一人。
だが、レティは魔理沙に一向に近づかない。
いや、近づけないのだ。
――灯台の光≠ヘ悪魔火≠ナあるのかもしれない。
残酷な偽報を、期せずして受け取ったレティは、不安の足枷により移動を封じられた。
レティという雪≠ェ魔理沙という灯台≠ノ到着した場合、溶けて消えてしまうのか。光を受けて照らされるのか。
その判断をする事が出来ない。
レティ・ホワイトロックは、希望という名の夢≠盗まれた。
躊躇している間にも、魔理沙もどこかへと歩いていく。
魔理沙が去る事により、不安の足枷は薄れたが、どこにいっていいのかがわからない。
永琳や魔理沙が、どの方向に行ったのかすら、頭には残っていない。
サニーが慰める中、レティはただ苦悩する。
【D-5 森・一日目 黎明】
【レティ・ホワイトロック】
[状態]健康(足に軽いケガ)
[装備]なし
[道具]支給品一式×2(リリーの分含む)、不明アイテム×1(リリーの分)、サニーミルク
[思考・状況]殺し合いに乗る気は無い。魔理沙は主催者である永琳の味方?
投下終了です。
投下乙!
えーりんと魔理沙の駆け引きがスムーズですごく良かった
この誤解がどう展開を転ばせるのか楽しみだ
遅ればせながら、投下お疲れ様です。
色々キーマンになりそうな魔理沙とえーりんが接触…。
でも、レティがこの後どう動くかによって二人も危なくなりそうだなぁ。
人里に近づいてきたからか、周りを見渡すとぽつぽつと民家が建っている。
その中を鈴仙は周囲を見渡しながら歩いていた。
「誰も・・・いないのね」
人間たちの住処に入ったというのに、参加者はおろか人間すら一人も見当たらない。
何となく思っていたことだが、どうもこの世界は幻想郷とは違う。それは幻想郷には10年くらいしか過ごしたことのない自分でも分かる。
「明け方なのに人間もいない、鳥の鳴き声も聞こえない、犬小屋があって中に犬がいない。
やっぱり、ここは偽物の世界ということ・・・?こんな手の込んだことまでする師匠も変よ・・・」
ますます師匠の考えが分からない。
だが、少なくとも師匠は本気だ。それだけは間違いない。
鈴仙が師匠と慕う人物、それが主催者である八意永琳だ。
彼女は、幻想郷と月の道を閉ざすために満月を隠したことがある。これを関係者は満月の異変と呼んでいる。
もちろん、ただ月を隠すだけでは誰からでも怪しまれる。その代わりに偽物の月を設置したのだ。やることが大胆すぎる。
こんなことが当たり前のように出来る彼女だ。このような偽の幻想郷を創ることくらい出来るはず。
そして、それを実際にやっていることから、何か重要なことであるに違いない。
とはいえ、周囲を見たところ幻想郷の細部までそっくりに仕上げるような面倒なこともやっている。
このことから、満月の異変以上に本気だと考えられるのだ。
だが、鈴仙の頭では考えられるのはここまで。それ以上は考える気にもなれない。
それよりも今は生きることを考えなければならない。それに、生き続ければ師匠が考えていることも分かるはず。
そのためには・・・手段なんて選んでいられない。無意識にポケットの中のモノを強く握り締める。
ポケットの中に入っているのは毒薬。それは、数滴の量で死に至らしめる強力なもの。
こっそりと相手の食料なり傷口なりに潜ませれば音も無く殺せるはず。
正直、こんなやり方は好きじゃないが、他に方法がないんだから仕方がない。つまらないプライドなんか二の次だ。
せめて自分にまともな武器、特に得意な銃があれば・・・
そう思い、深くため息を吐いた。
人里に入ると、民家が多くなり倉庫もちらほらと建っている。広場があったり小さな畑があったりと、なかなか快適そうな場所だ。
「う〜。猫車、猫車・・・」
難なく人里に辿り着いた燐は、猫車もしくはそれに代わる物を探していた。
その理由はただ一つ。死体を運びたいからである。これは火車の本能とも言えるだろう。
そんなわけでキョロキョロと辺りを見ながら人里を探索している。
「猫車〜♪猫車ぁ〜♪返事をしてちょうだいな〜」
だが、予想外なことに自分の探し物が見つからない。
家の中や倉庫の中を物色しても、それらしいものが見当たらないのだ。
「おかしいなぁ・・・。もしかして置いてないの?
大きな力を使わずに重いものを運ぶ、あんな便利なモノが人里に無いなんて・・・
人間ってこんなお馬鹿さんだったっけ?」
まだ手の指で数えられるくらいしか家を調べていないのだが、便利なものなのだから一家にひとつぐらいあったっていいような気もする。
こうなると、流石に物色するのも飽きてくる。
燐はしばらく休もうと思い、積んであった土のうの上に座って一息ついた。
「ん?」
突然、燐の動きが止まり、とある部分に視線が釘付けになった。
そんな彼女が見つめた先には・・・
「なんだこりゃ?」
青いビニールシートが山のように盛り上がる形をしながら何かにかぶさっている。
この異様な色合いと形はなんとなく気になった。
好奇心が沸いた燐は、その青いシートをめくってみる。
「おお、いい車!」
シートをめくって見えたのは、猫車を大きくしたような二輪の車だった。
その大きさからすると、人間の死体なら3〜4人くらいはいけるだろう。
これは俗に言うリヤカーというものだが、燐には詳しくは知らないし正直そんなことはどうでもいい。
それよりもついに見つけることが出来た。思わず歓声を上げるほどのいい車が見つかったのだ。
「あとはこの土のうを退かせれば・・・」
ただ、そのリヤカーには土のうが詰まれており、それらを退かさないといけない。
人間3、4人分の容積に詰まれた無数の土のう・・・。全て撤去するのにどれだけの体力を費やすか分からない。
ついさっきの水死体を引き上げたときといい、どうも苦労が絶えない。
ただ、こいつさえ手に入れてしまえば死体運びは楽になる。そう思うとこのまま放っておけない。
「ううー・・・辛いけど頑張るよ!
あたいの底力を見せてやるんだから!」
こうして、荷物の撤去作業が始まった。
―――少女作業中
「・・・何?あの猫妖怪は・・・。何を考えているのかしら」
人里に来た鈴仙が見たのは、リヤカーに詰まれた土のうをぽいぽいと投げ捨てている黒猫。
その光景を見て、殺し合いという場に置かれていながら何をやっていると言いたくなった。
あんなことをしても、ただ無駄に疲れるだけ。
現に・・・リヤカーから土のうを投げ捨てるペースがだんだん下がっていって、黒猫の表情も苦痛に歪んでいく。
「ほら見なさい。猫ごときがそんな重労働に耐えられるわけがないでしょ?」
この分だと、最後まではもたないだろう。本当に何をやっているんだか。
あまりにも馬鹿馬鹿しい光景に、鈴仙は呆れた声を出した。
だが、ここはある意味チャンスかもしれない。
大体、あの黒猫が殺し合いに乗っているかどうか?
正直、体力を戦いにではなくあんな形で消費するような奴に戦意があるとは考えにくい。
ここで、自分も戦意がないことを主張すれば、ホイホイと仲間になってくれそうだ。
もし戦意があったとしても、相手は疲労しているしあの程度の労働で根を上げるようでは大したことはないだろう。
そう思った鈴仙は、警戒をしながら
「あんた・・・何やってんの?」
疲労で倒れた黒猫に話しかけた。
「うにゃー!こんなはずじゃなかったのにぃ〜!」
声が出せても、体が疲労で付いていけない。
そんな状態の燐は、リヤカーに残った土のうを枕にするように大の字で寝そべっていた。
猫妖怪ゆえに、他の妖怪に比べて腕力や持久力には自信がない。
ただ、いつも死体を長時間運んでいるから普通の猫妖怪に比べれば頭一つ飛びぬけているはずなのに。
なんだか、いつもより身体能力が鈍っているような気さえする。これも制限とやらか?
そう思いながら休憩をとろうとしたところ・・・
『あんた・・・何やってんの?』
「うわわわわわ!だ、誰!?」
突然の声に過剰に反応した燐は思わず飛びのいた。
「そんな驚かなくても・・・。いや、しょうがないかな」
鈴仙も燐の反応に一瞬驚いたが、あちらの方がもっと驚いていると思うと、何故か冷静になれた。
ただ、それでも燐への警戒はそのまま。腐っても元軍人、臆病になっても多少の心構えは出来ているはずだ。
「くぅ〜、あたいに不意を突くなんて!お姉さん、やる気だね!?」
「ちょっと待って!私にやる気はないから!」
だが、燐が飛びのくと同時に鈴仙が待ったをかける。
「え。そうなの?」
「それはそうでしょ。もしやる気だったら、貴方・・・今頃終わってたわよ?」
「あー、それもそっか」
鈴仙の言葉に、燐はおもわず納得。手をぽんと叩いた。
支援
敵意がないことを悟った二人は、とりあえず情報交換を行うことにした。
そのために鈴仙は民家に入ろうと提案したが、燐は・・・
「あのさー、ちょっとお願いがあるんだけど」
何かお願いすることがあるようだ。だが、
「何?土のうの処理なら手伝わないわよ」
「げ!?なんでそれを」
「いや、誰だって想像はつくでしょ」
鈴仙は予想した上できっぱりと断る。
「だって、やる意味がないわよ」
「な、失礼な!意味はちゃんとあるよっ!」
燐は反射的に突っかかるが、同時にしまったと口を手に当てる。
こんなこと言ったら、次に飛ぶ質問は決まっている。
「じゃ、なんのために?」
「それは・・・えーと、そのぉ」
死体を運びたいからなんて、口が裂けても言えない。
相手が自分のことを知っているならまだしも、そうでない者に死体を運ぶなんて言ったら何て思われるか堪ったものじゃない。
なんて言えばいいかしばらく考えるが
「うにゅ・・・」
言葉に詰まり、うずくまってしまった。
「あー、もういいわ。それじゃ、民家に入って情報交換を・・・」
そんな燐を見て、鈴仙はリヤカーから離れようとする。
「そんなこと言わずに手伝って!ねっ?」
それを引き止めた燐は、懸命におねだりする。
その上目使いな表情がなんだか可愛らしい。
「う・・・」
正直、そんな目で見つめられると対処に困る。
鈴仙自身にお人よしな部分があるとはいえ、こんなことをされると堪えられるかどうか。
こうなると、鈴仙の場合・・・
「あーもう、分かったわよ。手伝ってあげるから」
こう答えざるを得なかった。
「はぁ〜。なんで私がこんなことを・・・」
鈴仙は愚痴をこぼしつつも、ついさっき燐が行っていたようにリヤカーの土のうを処理する。
自身の疲労は無く、土のうの量もそれほど残っていないためすぐに終わるだろうが、どうも腑に落ちない。
大体、自分は殺し合いに乗っていないわけじゃないのに。
確かに積極的に殺して回るわけじゃない。
あくまでも自身の保身のために、どんな手段でも用いる。それが殺人でも・・・
という意味である。自分さえよければいいんだ。少なくとも、今のところは。
そのため、こんな何の徳にもならないことをしている自分が馬鹿馬鹿しく思える。
自身の保身を最優先にしているつもりなのに、こんなお人よしな部分がある自分に矛盾を覚えた。
「はい、土のうの処理終わり!
全く、これに何の意味が・・・」
やる気のなさそうな表情をしながらも仕事をやり終え、手をぱんぱんと叩く。
そして、これでどうだと言わんばかりに燐の方を見るが・・・
「あ、こら!何やってんのよ!?」
当の彼女は自分から振った仕事を手伝いもせず、鈴仙のスキマ袋を物色していた。
「え?だって、あたいは最初っから疲れてたし・・・
それに、お姉さんのアイテムも気になるしね!仲間なんだから、それくらいいいじゃん!」
「あんたねぇ・・・」
呆れて怒る気にもなれない。
人懐っこくてお調子者。この手の性格にはもう慣れている。
それは永遠亭の妖怪兎、因幡てゐと同じもの。もっとも、燐には裏の顔がない分、てゐよりも格段にマシだろうが。
自分のスキマ袋には怪しいものは入っていない。毒薬は自分のポケットの中だ。
とはいえ、自分の荷物をごそごそと荒らされるのは気分がよくない。
そのため、燐からスキマ袋を取り上げようとするが・・・
「おお。いいもの持ってるじゃん!」
「は?」
『いいもの』だって?
少なくとも、自分にとってはいいものなんて入っていなかったはず。
確か、中に入っていたのは・・・
「これだよ、これ!名前は・・・えーっとぉ」
「天ぷら粉ね。こんなもの、何に使うの?」
「もちろん、食べるためさ!」
当たり前のように言い放つ燐だが、はっきりいって笑えない。
どう突っ込むべきなのやら。そう思っていると
「むー、お姉さん。今、あたいを馬鹿だと思ったでしょ?
いいよ。こうなったら、あたいのアイテムも見せてあげるから!
きっと、おいしいものだよ!」
そう言った燐は、対抗心を燃やさんばかりにスキマ袋の中に手を突っ込む。
「じゃじゃーん。これがそうだよ!」
「へぇ、破片手榴弾ってやつね。いいもの持ってるじゃない」
確かにおいしいもの。意味は違うが。
「って、間違えちゃった・・・。こっちだよ」
燐が手榴弾を片付け、代わりに取り出したのは、自分の支給品である大量のタラの芽と食用油。
タラの芽、食用油、天ぷら粉・・・。この3つを並べられると、思いつくのは?
「ああ、タラの芽の天ぷら・・・って訳ね。なるほど」
「そのとーり!てことで、早速食べよっ!
働いた後はお腹を満たすのが一番ってね!」
「はいはい。分かったから落ち着くの。まさに猫ねぇ」
鈴仙は思った。
この猫は、何かあったら次から次へと言葉をかけてくる。それも、満身な笑顔でだ。
これを見ると、こいつは殺し合いというものを理解しているのかどうか・・・
いや、何となくだが、むしろ楽しんでいるかのようにも思える。
不覚にも、おかげで自分まで緊張感が薄れてしまう。これじゃいけない。
かといって、こんな頭の悪そうな猫に殺し合いを理解しろと言っても無駄だと思う。
いや、もうそんなことはどうでもいい。
燐の荷物に強力な武器そして食料が出てきたとき、これらを欲しいと思った。
そのためには・・・可哀想だけど、こいつとはお別れだ。
燐のアイテムは欲しい。でも、彼女とこのまま一緒にいると殺し合いという現状を忘れてしまいそうで嫌な予感がする。
ゆえに、その考えに至った。
これから燐はタラの芽を食べたいといった。
ならば、それにこの毒薬を含ませれば、コロリと死ぬはず。
こうなれば一件落着。あとは、それを実際に行えば・・・
ズキッ
何故か、胸が痛む。
これを比喩で表すならば、自分の心臓にナイフが突き刺さったような感じだろうか。
思えば、いつから自分はこんなに落ち着きを取り戻せたのだろうか。それも、逆に自分から落ち着けと注意するほどまでに。
少なくとも、独りの時に比べると気分はよい。ということは、仲間が出来たからか?
いや、そうじゃない。もし、その仲間が以前の自分みたいな臆病者だったらこうはならない。むしろ、更に気を悪くする。
だとすると、今自分が落ち着いていられるのは・・・この猫の性格のおかげなのか?
あながち否定できない気がする。そう考えると・・・
バァン!と自分の頬を叩き、考えを中断した。
(もう、しっかりしなさい私!今更何を迷っているのよ!)
ここまできたんだ。やるしかない。これも、自分のためなんだ。
だから・・・
「ん。どうしたの?」
いきなり自分の頬を叩くという変な行為を見ていた燐がこちらを見て尋ねてきた。
だから、そういう笑顔で見つめるのはやめてほしい。
「な、なんでもないわ。それよりも、私の顔を・・・というより、目線を合わすのをやめてくれない?」
「えぇー。意味わかんないよ」
「いや、何て言えばいいか・・・。私の眼って赤いでしょ?
その眼は、見た者を狂わせる性質があるからよ。だから、あまり見ちゃ駄目よ」
「うわー、すごい能力を持っているんだねぇ」
半分嘘で半分本当のこと。能力が無くなったわけではないが、使おうと思わなければ問題はない。
ああ言ったのは、ただ単に燐の顔を見たくなかったから。
あんな笑顔を見せられると、無意識に殺しをためらってしまいそうだ。
こんな中途半端な気持ちで、この先やっていけるのだろうか・・・
こうして
(はぁ〜、こんなんじゃ駄目だわ。どうしちゃったのよ、私・・・)
別の方向で、不安になってきた鈴仙と
「らんらん♪ららん♪ららら♪ららら♪」
常にマイペースな燐という、真逆の心を持った妖怪たちが動き出した。
【D‐3 人間の里(辺境にあたる)・一日目 早朝】
【鈴仙・優曇華院・イナバ】
[状態]やや不安定な気持ち
[装備]毒薬
[道具]支給品一式、天ぷら粉
[思考・状況]この猫(燐)を始末したい・・・と思っているのだが
[行動方針]自分の保身が最優先。戦闘は避けたいところ
【火焔猫燐】
[状態]疲労(回復中)
[装備]M67破片手榴弾×2
[道具]支給品一式、M67破片手榴弾×4、大量のタラの芽、食用油(1L)
[思考・状況]死体を運ぶ道具が手に入って大喜び
[行動方針]死体集め
1.死体があれば確保する
2.死体を運びたいことを(変に思われないよう)鈴仙に伝える
3.地霊殿の住民たちと合流
※リヤカー(中身は空)が二人の近くにあります
代理投下終了
◆30RBj585Is氏も支援をくださった方も乙です。
猫車の次は天ぷらかw
うどんげと会わせるとお燐のマイペースぶりが際立つなw
さて、うどんげはどう判断を下すのか
27氏の修正版も一応きてるがこちらも代理投下頼む
高草郡
この竹林の名前である。
もっとも、現在の名称は迷いの竹林であるが……
では、なぜ竹林の名前が変わったか?
答えはこの竹林で迷った人物が腐るほどいるからだ。
人名でも、本名よりもあだ名のほうが有名になってしまうことはよくあることだ。
きっと、迷った人物が「高草郡は迷いの竹林だ」と言ったのだろう。
そして高草郡=迷いの竹林となり、迷いの竹林のあだ名が一般名として定着したのだろう。
それほど迷いやすい竹林だ。近づく人物など草々いない。
だから……二人を邪魔するものなど……
激しく笹の葉が散る。
それは風が笹の葉を凪いでいるからだ。しかし、今夜の風は笹の葉を吹き飛ばすほど強くは無い。
それでも笹の葉は散る。なぜなら、この風は人為的に起こされた風だから。
「オラァァアアアアア!」
「はぁぁぁあああああ!」
二人の拳がお互いのボディに向けて撃たれる。
一人は首をそらして拳を回避、一人はもう一つの手で拳を受け止める。
「やるな」
「そっちこそ」
手と手が使えない今、二人は目で争っていた。
どちらが先にくたばるか? 手が互角なら足で、足が互角なら頭で、頭も互角なら精神で……
コンマ01をも争う戦いならば、コンマ001を奪い取る。
勝ちと負けの2つに一つ、その違いはまさに天国と地獄。
近づいただけで肌が焦げるほどの殺気。
一度始まってしまった二人の戦いを止められるものなど幻想郷には居ないだろう。
風見幽香の拳を首を傾け避けた星熊勇儀はニッと笑う。
弾幕勝負ではないこの殴り合いでは弾幕勝負における「ボム」は防御手段だ。
風見幽香は勇儀の一撃を防御するために既に1ボム使用している。手だ。
1ボム同士をぶつけ合っている、1ボムは攻撃に使用していたが、完全に回避されている。
風見幽香のボムは0だ。そしてこっちには1ボム残っている。
「一歩!」
「ぐぶっ!」
力をこめた左手が幽香の腹部を殴りあげた。ボディブロー。
いくら妖怪でも、体重は人間と大差は無い。物理学上、エネルギーを受けた物体の質量で割って加速度が決まる。
体重が軽い幽香に巨大なエネルギーはあまり吸収されず、そのまま加速度に変換された。
斜め60度上空に吹き飛ばされる幽香、腹部に強打を受けて、内臓が痙攣する。痙攣は衝撃となって思考能力を磨耗させる。一瞬の気絶、目を覚ました時に幽香が見たものは勇儀の足だった。
「二歩!」
大鎌の一撃のような回し蹴りを側頭部に叩き込む。
体の重心は骨盤内の仙骨のやや前方、頭部の衝撃はモーメントによって大きな回転力が生まれる。
幽香の体はくるくると回転しながら地面に叩きつけられた。
「四天王奥義「三歩必殺」」
幽香の落下地点に吸い込まれるように勇儀が蹴りを繰り出しながら落ちる。
その様子はまるで対地ミサイル。幽香が叩きつけれれてへこんでいた地面がさらに深さを増す。
先に散っていた枯れて薄茶色くなった笹の葉がぱさっと舞い上がる。
勇儀は後ろに跳んで一度距離をとった。
「来なよ、これじゃあたしが先走ってしまったみたいじゃないか? それともこれで終わりかい?」
「――ああ、効いたわ。なかなか激しいエスコートね。今まで戦った子たちはみんな温くてね。欲求不満だったのよ。久しぶりに激しくて……これなら十二分にイけそうだわ。」
「そうかい、なら甘い言葉だけじゃなくて体で示してもらおうかね?」
「そう焦らないで、まずは私からのプレゼントよ」
舞い上がった笹の葉、その合間から強い緑色の物体。今よく見てるアレだ。
竹。
「うわっと!」
3本の竹槍がこちらに向かって投擲される。
竹槍と表現するにはあまりにも荒い出来の槍だった。
槍の先端は拳で殴り落としたように割れていて、槍の全長は約15メートル。
人間の使う陳腐な槍とは根本から違う。
1本、2本……体をそらせ回避、しかし、風に乗った笹の葉は剃刀のよう。
遊戯の頬をかすった葉は血にぬれていた。
勇儀の頬に一筋の赤い線が走る。
「大層なプレゼントありがとう。ならお返しをしないとね」
「ほら! これがお返しだ」
3本目の槍を掴む、そのまま勢いを殺さず、あえて生かす。
竹の勢いを遠心力に変え、バットのようにフルスイング。
竹林だけあって、そこらじゅうに竹が生えていたが、そのすべてを竹のバットによってなぎ倒される。
「あらあら、環境破壊はよくなくてよ」
「3本へし折っている時点で同罪だ」
「もうすぐ枯れそうだったからそれを選んだのよ」
「せっかくのプレゼントなんだから新品をおくれよ。でも、それにしてはいい竹だね」
遊戯は改めて竹のバットを見上げる。細かい傷があるものの、先端までしっかりと延びている。
根っこはないけど。
「送る物を間違えてしまったかしら?」
「いいや、こいつで結構。上等品だ」
「あらそう、うれしいわ。でもお返しがちょっと品が無いわ。もっと頂戴」
「悪いがこれで精一杯。でも、品が無いのならいくらでも」
勇儀は持っている竹を再びスイング、幽香はしゃがんでそれを避ける。
「まだまだ」
スイングを斜め方向へ、そのまままっすぐ上へ……さらに方向を逆に
竹を振り下ろす。
「残念」
「これを受け止めるか、やるね!」
幽香は竹を素手で受け止める。手のひらからは薄く血が滲んでいた。
「それ」
「なっ」
幽香はさらに竹をひねる。当然持っていた勇儀の体も竹の回転に合わせて回った。
(まずい)
竹を中心に回ったから地面までは約1m。空中で飛べる体とは言っても、頭を下にしていきなり飛べといわれたら、それは無理だ。
「ぐっ」
地面に落ちる。その間に見えたのはこちらに向かって走ってくる幽香の姿だ。
ガードのボムも間に合わず、幽香の攻撃が直撃した。
走ることによる助走、助走の勢いを乗せた蹴りが勇儀の顔面に突き刺さる。
いくら鬼とはいえ、顔面は急所であり、普通の人間なら頭と胴体が分離するほどの蹴りだ。
サッカーボールのように飛んだ体を起こすも平衡感覚が麻痺し、まっすぐ立つことが出来なかった。
「っは……たった一発なのに良く効くね……私はもうふらふらだよ」
「あら、もうおしまい? エスコートはキャンセル?」
「もうデートは終盤さ。クライマックスと行こうか」
「そう……残念ね」
再び幽香が接近を試みる。
対する勇儀はまだダメージが残っていて、防戦に回らざるを得ない。
幽香は肩を回し、殴りの構えを作る。
そして射程に入った瞬間に構えを放つ。
攻撃するほうと守るほうとでは一般的には攻撃するほうが有利だ。
そして攻撃と防御のバランスがほぼつりあっていたなら、防御はいずれ崩れる。
幽香の連続攻撃を防御するが、腕で防御しているため、腕の皮膚は焼け、血が滲む。
「はぁっ!」
そこに、幽香の回し蹴りが来た。
今までの攻撃が弓兵の矢なら、バリスタの城壁破壊の矢のようなものだ。
これをまともにガードしたなら腕は折れる。
バリスタは強力だ。だが、弓兵が持つ弓よりははるかに発射に時間がかかる。
勇儀はとっさに背中に回していた袋を思い出した。
バリスタの到達時刻までにはまだ余裕がある。
一瞬ペナルティの話が頭をよぎったが、今の状況で最悪のペナルティが腕を失うことだ。
背中の袋を勇儀と幽香の間に滑り込ませる。
「あら?」
さすが、勇儀を認めさせた巫女と一緒に居た妖怪を模して作った袋だ。
幽香の回し蹴りを腕が折れない程度までに引き下げてくれた。変わりに妙な音が聞こえたが。
防げたとしても、これは只の1波だ。2波はすぐそこまで迫っていた。
勇儀の頬に拳が当たり、体はコマのように回った。そのまま竹のポールに叩きつけられる。
「お別れの言葉を述べるわ。ありがとう」
ははは、どういたしまして……
でも、油断しないでほしいな。そのパンチ……電話掛けてるよ。
幽香は捕らえたと思っただろう。しかし、勇儀の動作は速かった。
幽香の手は勇儀を捕らえることなく、後ろの竹に命中する。
勇儀はというと、身を沈め、頭の上を拳が通過する形になっていた。
「っ!」
幽香はすぐに手を引こうとする。だが、それを勇儀が見逃さない。
肩と首の間に手を引き込む。片方の手は幽香の関節にあて、もう一方は手首を固定する。
何をしようとしたのか理解した幽香は顔色を変える。そのときには既に遅い。
「ああああああああ!」
ごきっと鈍い音とともに幽香の右腕が奇妙な方向に曲がっていた。
ふらふらとよろめく幽香を殴り飛ばす。
「貴方……しぶといわね」
「これだけ面白い戦いなんだ。どうせなら勝ちたいさ」
「それは私も同じ」
「でも、引き分けになりそうな気がするよ」
「偶然ね……私もそう思っていたわ。貴方は腕折れてないのにね」
「使えなければ腕も折れたと同じさ。鬼に挑んだ割には良くやったよ」
「ふふふ、種族最強じゃなくて種族最強レベルになったけどね」
「おやおや、それは聞き捨てなら無い。まだ種族最強レベル(仮)だろう」
「そうね、貴方が勝った場合は仮が付かなくて、引き分けか私が勝った場合は仮をつけさせてもらうわ」
「分の悪い賭けだ。だが、嫌いじゃないよ」
二人は同時に構える。
「勝つか負けるか1発勝負、恨みっこ無し」
「いいわよ。貴方の好きな正々堂々で挑んであげるわ」
二人は同時に走り出し、腕を引いた。
目でお互いを牽制しつつ、間をつめる。
「おらぁああああああ」
「はぁあああああああ」
二つの影が交わる。
「で、どうするよこの状況……」
「竹って燃えるとすごくいい香りがするのね。燃やしたこと無かったから初めて知ったわ」
「そうかい、ならそのまま焼け死ね」
「そっくりそのまま返すわ。その台詞……」
幽香は霞む視界を勇儀が持っていたスキマを眺めていた。
激しく燃えている。
そしてそのスキマから炎の道が走っている。
「あれ……何が入ってたの?」
「火炎放射器さ」
「な、何ですって?」
「まさか壊れて燃料が漏れ出してたなんては想像もしてなかった。素直に謝るよ。悪かった」
「ああ、ペナルティってこのことだったのかしら?」
袋を盾にしても、袋の中にダメージは伝わる。
下手にスキマでガードをすれば中のものは壊れる。
他にもペナルティはいくつかあるが、このことはスキマの1つのペナルティだ。
漏れ出したM2火炎放射器の28kgもの燃料が気化し、静電気により着火。爆発。
爆発そのものは屋外であったため小規模であったが、二人にわずかに残っていた体力と気力を限りなく0にすることは容易であった。まさに満身創痍の状態。
「悲しいわ。植物が燃える様子は……」
「そうかい? 壮大な風景だと思うけどね」
「そう思うのは貴方の勝手だと思うけど、出来れば消化してくれない?」
「無理だ。立つことすら無理そうだ。」
「あらら……私も眺めてるだけなんてね……悔しいわ」
「私もこんなところで死ぬとはね……二人とも負けだったわけだ」
「そうねぇ……」
もう手のつけられないほどに大きくなった炎は竹を燃やし、中の空気が膨張して竹を割る。
パチパチと竹の破裂する音が、悲しく、激しく鳴り響いていた。
【星熊勇儀】
【風見幽香】 死亡 【残り43人】
※迷いの竹林【F−7】は火事です。
※二人の荷物はF−7に放置してあります。
投下終了です
◇30RBj585Is氏
お燐振り回されるうどんげいいね!
うどんげにとっては大きなチャンス到来ですが…これからどうなるか楽しみです
てんぷらうめえw
◇27ZYfcW1SM氏
修正乙でした
この二人が第一放送前に死ぬとは意外でしたが、こういうのもアリだと思いますよ
ロワ序盤にしていきなり熱い戦いが見れてよかったです
やくいわ
妖怪が人を襲うのに御誂え向きの佳い夜。
人間の手が加えられていない、どこか妖しい雰囲気の街道。
街道の夜を覆う静謐な静寂に、雑音が混じり始める。
砂利は忙しなく音を立て始め、落ち葉は吹き散らされていく。
その原因は人間を逸脱した身体能力を以って、息一つ切らさずに加速を続ける少女。
人間換算では十代前半といった幼い体躯。
肩の辺りで切り揃えられた、闇の中でも尚輝く銀髪。
銀髪を彩る漆黒のリボン付きのカチューシャ。
透徹な海の色の双眸は決して下を向かず、前へ、未来へと進む意思を籠めている。
少女の傍らには、ふよふよと漂いながら、少女のスピードに離されずに同行している青白い人魂。
この幽霊は会場に生息している訳ではなく、さりとて少女の支給品でも無ければ、参加者の成れの果てでもない。
幽霊の名は、少女と同じく魂魄妖夢。
魂魄家は、代々が人間と幽霊のハーフという特殊な家系なのである。
半人半霊と名付けられた魂魄妖夢の種族は、人間部分だけでも幽霊部分だけでも不完全。
両方が備わって、初めて魂魄妖夢という一つの存在を構成している。
妖夢は、道中幾度となく視界を左右に揺らし、主である西行寺幽々子を見つける為、遮二無二に疾走している。
時折、西行寺幽々子の名前を零し、言葉は白い息となって消えていく。
居場所に見当を付けられれば良いのだが、目安になりそうな西行寺家の住居は地図に載っていない。
性格から居場所を判断しようにも、雲のように掴み所の無い西行寺幽々子の心中は、長年を共に過ごした妖夢ですら読み取れた試しは無い。
人との遭遇を望んで駆け回り、逢えた人が幽々子様ならばそれでよし。
友好的な他者ならば幽々子様の居場所を尋ね、敵対的な他者ならば切り捨てる。
必然的に、妖夢はこのような運分天分に任せた方針に落ち着いた。
逢う人によってしか行動を決められない妖夢にとって、人がいそうな所ならば、何処に行った所で同じ事。
そして何処に行っても構わぬのなら、利がありそうな目的地を定めるのが道理。
しばしの刻を経て、一時的な目的地である香霖堂を視界に捉える。
妖夢は以前、此処に捜し物の情報を尋ねる為に立ち寄った事がある。
今回の用事も同じく捜し物を求めての訪問だ。
魂魄妖夢が捜し求めるものは西行寺幽々子を除けば二個。
どちらも先程の戦いが原因だ。
相手の名はフランドール・スカーレット。
幻想郷でのパワーバランスの一角を担うスカーレット家の次女。
彼女を知っている参加者に名簿を見せ、この中で誰が一番凶悪かをアンケートすれば、確実に上位に入るであろう悪魔。
妖夢が彼女を躊躇せず不意討ちしたのも、そのアンケートに彼女を挙げるほどの悪印象を持っていたからだ。
そして妖夢は、そのフランドールに不意討ちしたにも関わらず敗北した。
襲撃は悟られ、怪我一つ負わせられず、反撃を貰うという醜態を晒す。
戦況が悪化する前に離脱し、怪我を今後に影響は無い程度に抑えたとはいえ、惨敗した事にはなんら変わりは無い。
実力が劣っていることを再認識した妖夢が香霖堂へ求める物の一つは刀剣類。
西行寺幽々子の捜索が最優先目標ということに変わりは無い。
しかし、捜索の邪魔にならない程度には、剣士としての本領発揮を求める必要がある。
魂魄妖夢は、冥界にある西行寺家の専属庭師と西行寺幽々子の警護役の二代目を勤めている。
だが、警護の役目を勤めるには、非常に心苦しい問題があった。
それは……西行寺幽々子が警護である妖夢よりも強いということだ。
死を操るという幻想郷でも屈指の能力を持ち、能力を抜きにしても折り紙付きの実力である。
西行寺家の警護といっても、実質は露払いとなんら変わりない。
生真面目で愚直な妖夢は、常々、其の事を悔やみ、今は何処かへと去った師匠の教えに従い、未熟を克服しようと日々習熟していた。
要は……西行寺幽々子よりも弱い妖夢が、傘一本で勝てるような相手を斬り捨てたとしても、西行寺幽々子にとって意味は薄いのだ。
例え弱くとも、害を為す者を見逃すつもりは無い。
しかし、その程度の者を斬った所で、幽々子様の助けになっていると胸を張れるものか!
この地で、幽々子様に仇なす輩を斬り潰し、皆と共に、幻想郷へと帰還してこそ魂魄家の責務を果たせる!
幼き体に宿したプライドに従い、魂魄妖夢はそう考えている。
そして妖夢は刀剣類の入手方法に考えを巡らせ。
参加者の持ち物が没収されていたとしても。施設に置いてある物はその限りでは無い可能性に思い至る。
その可能性から、地図の施設での刀剣類の記憶を探り、地理的にも近い香霖堂に思考が行き着いたのである。
香霖堂へと訪れた、二つ目の理由は…………吸血鬼の爪に裂かれた事が原因である。
胸から腰まで縦一閃。
怪我自体は浅く、出血も既に止まり、然程の問題では無い。
日々の全てを仕事と鍛錬に費やしている妖夢は、この程度では支障が出る柔な鍛え方はしていない。
問題は斬られたという事象。
人体の中心線を縦に浅く切り裂かれ、被害が肉体だけというのは在り得ない。
五本の鋭い爪を備えた右手を翳し、胸から腰まで、振り下ろしたのだ。
――当然、その軌跡には、布が有る。
胸元に黒く可憐なリボンが付いた半袖のYシャツ。
Yシャツの上に羽織られた、エメラルドグリーンのベスト。
細い身体の輪郭を膝まで包む、少女の証である緑のスカート。
暴虐の爪の軌跡に巻き込まれたこの三点からはビリビリッと、いう小気味良い音が流れ。
上着は左右にだらりと花弁を開き、なだらかな起伏が見受けられる白雪の肌を覗かせ。
スカートの上端が破られ、最後の砦を秘する為のドロワーズが少々露出し。
清潔感ある柔らかな生地のドロワーズは、血液の細い川により純白の一部を朱に濡らしてしまった。
年頃の女性が胸部に使用する必需品は、必要性が未だに見受けられないのか、元から身に付けていない。
もし身に着けていたら、双丘を支える部分を繋げるラインの戒めを解かれ、上着と同様に用を成さなくなっていた事だろう。
妖夢は生来から、物事の影響を受けやすいという、利点にも欠点にも成りえる強力な感受性を持っている。
そんな妖夢にとって、眩いばかりの肌が覗くこの状況は非常によろしくなかった。
耳まで真っ赤に染め、露になった胸元に、細い指を磁石のように圧力を籠め、露出を防ぐ為に這わせている。
必死な努力ではあるが、それでも時折、透き通るような白さの柔肌をひんやりとした空気が撫ぜていく。
危険を察知すれば、流石に指も離れるだろうが……妖夢としては、余り想像したくない事態に違いない。
参加者は一人を除いて女性だけとはいえ、年頃の乙女として、この様な格好を誰かに見られるのは堪えるだろう。
精神衛生的にも危ないが、過度の肌の露出は戦闘にも悪影響をもたらす。
若く半人前である妖夢の精神統一は、いまだ未熟。
意識の一部だけを思考の外に押し出すなどという器用な真似は望めない。
幽々子様を守る為ならば、と必死に堪えて戦う事ならば出来る。
しかし、堪える為に思考を分散しては、戦力の低下を招いてしまう。
軽視できる事態ではない。
妖夢が香霖堂へと訪れた二つ目の理由は衣服。
家屋ならば、衣服は確実に有るという至極当然の考えからである。
余談だが現在、妖夢の瞳が前だけを見ているのは、目線を下に向けたくないという意思も少々混じっている。
――で、今に至る。
静けさの響き渡る闇夜。
一般家屋に比べて、かなりの大きさを誇る。
洋風とも和風とも判別できない不思議な建築様式の屋敷。
人間と妖怪の境界である魔法の森の入り口に存在する、古道具屋、香霖堂。
枝の隙間から差し込む幽かな月光が、その全貌を明かしている。
玄関の近くには塵の様に積み重なっている、信楽焼きの狸や壷、箱、など様々な道具。
野外に置いてあるという事は、恐らく不良在庫なのだろう。
周囲には魔法の森の木々が、牢獄の鉄格子のように立ち並び。
裏には鍵の付けられた倉と、漂白されたように白い花弁の桜が聳えている。
思いもよらぬ運命に巻き込まれ、見知らぬ土地へと送られた。
そんな妖夢にとって、見覚えのある光景を肉眼で確認した事は感慨を抱かせた。
安心感からか、寂しさからか、幽かに笑みを漏らす。
妖夢は一通り視線を巡らせ、周囲の気配を探ったが、異常は感知できない。
音を発するものは時たま吹く風だけである。
最後に屋根の上をチラリと確認し。
礼儀正しいという印象を他者へ与える立ち振る舞いで、扉に手を掛け、足を踏み入れる。
扉に細工がされているのか、カランカランとその場に深く、重くベルが鳴り響いた。
闇夜の静寂に響くその音色は、聞く者に不安と恐怖を感じさせる
(お邪魔しますね)
心の中で一礼し、硝子の窓から差し込む月光を頼りに、悠然と眼下に広がる光景を見回す。
店主の座る為の椅子。
春だというのに片付けていないストーブ。
大きい壷や机などの家具。
他には商品として、御菓子や茶などの嗜好品、種々雑多な道具類。
調査の結果、辺りの空間からは妖夢と道具以外の気配を感じない。
妖夢は奥へと歩みを進める。
(たしか、玄関の商品群を抜けた居間に――)
妖夢は、店の玄関を抜けたすぐ先の居間までは上がったことがある。
その際に飾り棚に置いてる剣を目撃していた。
美しく鍛え上げられた白刃。
人を害する為に生み出された道具とは思えない神々しさ。
香霖堂へ剣の入手へ向かうという案には、一度この剣を扱ってみたい、という思考も一端も担っている。
妖夢は居間へと繋ぐ障子を開き、飾り棚へと目をきらきらさせた期待の眼差しを向ける。
夢に想いを馳せる子供のような顔だ。
しかし、妖夢の瞳に、剣の姿は、影も形も映らない。
其処に有るべき筈の霧雨の剣はすっぽりと失われていた。
表情が寸秒、凍てつく。
自らの希望が裏切られたことに気づいたのだろう。
脱力感に見舞われた妖夢は、その場にぺたりと座り込み。
(うー……幽々子様のお役に立つには必要なのに……)
施設に置いてあっても没収されるのか、先客がいたのか、運悪く店主が所持していたのか。
唯、此処での入手が不可能であるという事実だけが残っていた。
(私の剣がぁ……。何処へいったんだろう……)
恨めしげに、虚空に理由を問うも答えは返ってこず。
むむ、と苦虫を噛み潰し、未練がましく飾り棚を一瞥した後、暗然たる心持ちで別の部屋へと赴く。
目的は台所の包丁。
出来れば刃渡りの長い物が好ましい。
数度しか訪れたことは無く、構造に詳しいわけではない。
必死に記憶の糸を手繰り寄せ、店主が餅や茶を運んでいた方向を頼りに、暗い廊下を進み台所へと辿り着く。
釜戸に、鍋に、まな板。
幻想郷における一般家庭となんら変わらない風景。
西行寺家の台所を預かる者として、包丁の在処に素早く的確に目星を付ける。
二度ほど、戸棚を開く音が響いた後に、牛刀と中華包丁を手の内に収める妖夢。
拝借し、慣れた様子ですらりと鞘から抜き、刀身を凝視する。
(手入れは……十分かな。一応は古物屋ということね)
中華包丁をスキマへと放り込み。
刃渡り30cm程の牛刀は鞘に収め、腰の背中側に結び、取り回しのきくようにする。
包丁の中では長いといえるが、短刀の代用品にはなっても長刀の代用品には及ばない。
妖夢の愛用していた楼観剣は、使い手の身長に匹敵するという、並の武芸者では扱えない程の長刀なのだ。
心許ないが、長刀の代用品にはリーチの有る傘を継続して使うほか無い。
妖夢は近場の布巾を水に濡らし傷口付近の血をしっかりと拭きとる。
(このドロワーズもなんとかならないかな……)
血に濡れたドロワーズも腹部の血と同じように拭き取りたい。
しかし、吸水性に優れている素材を使われたドロワーズは水分を逃がさずに吸収している。
乾かす時間も予備の下着も無い今、脱いで水洗いする訳にはいかない。
妖夢はドロワーズを物憂げに見つめ、染みを多少薄めようと、乾いた布巾で少々拭き取り、それで我慢する事にした。
台所での用事を済ませた妖夢は、第二の目的である衣服の捜索に移る。
居間へと戻り、片っ端から箪笥を開けると、早々に妖夢の知り合いである博麗霊夢の巫女服が鎮座していた。
(何故、霊夢の服が香霖堂の箪笥にあるんでしょうか……)
二人の関係を詳しく知らない妖夢の脳裏に、当然の疑問と店主の歪んだ人格が浮かびあがり、視線が冷ややかになるが。
幸いにして、近くに置いてあった作り掛けの巫女服と裁縫道具により、評価を今一度正された。
その後も妖夢は居間の箪笥捜索を続け。
箪笥には女性の衣服が二種類、男性の服が一種類の計三種類の衣服が全て複数詰められている事が判明した。
一つ目は先程の紅白巫女服。
一見すると全てが同じように見えるが、リボンの色や細かいデザイン等に変更点が垣間見える。
ただ、腋の露出と色彩が紅白で構成されている事だけは、全てに共通していた。
次に霧雨魔理沙の黒白エプロンドレス。
霊夢の巫女服と比べれば、変化が見られるが、やはりこれも似たような物が多い。
最後に店主の着物。
青と黒の境界が所々に配置された彩り。
上半身はインナーの上に、和風とも中国風とも取れないだけの着物、下半身はズボンという構造の衣服。
腰から前と左右に一つずつ垂れている細い前掛けが、目を惹く。
大体は妖夢ではぶかぶかになるサイズだったが、幼少時の物と見受けられる小さいサイズも少しだけ混じっていた。
それでも男女の差か、サイズは妖夢より多少大きい。
下着は残念ながら見つからなかった。
女性の衣服があっても女性の下着まであるとは限らない。
万が一あったとしても、別の部屋なのだろう。
悠長に贅沢を言える状況ではない妖夢は、時間を惜しみ、泣く泣く下着を諦める。
沈黙。そして少しの思案。
内容はどの衣服を選ぶか。
(ましなのは……これかなぁ)
妖夢は今日何度目かも分からぬ溜息をつき、店主の着物を選ぶ。
決め手はスカートの有無。
スカートでは、派手なアクションをとる際、躊躇を招く危険性がある。
幻想郷には女性が多いというのも相まって、普段ならスカートでもなんら支障は無い。
しかし……今の血に濡れたドロワーズでは否が応にも注意を惹き付ける。
もし誰かに見られたとしたら――散々口汚く罵られるか、盛大に呆れられるか、遠い眼で下手な同情をされるか。
見られる覚悟があっても、妖夢の精神に傷が付くのは想像に難くない。
当然だが、ドロワーズを脱ぐのは論外である。
衣服も決定し、全てが静止した空間の中、脱衣を始める妖夢。
早めに済ませよう、と破れたベストに手を掛け袖から右腕……左腕と順番に抜いていく。
闇の中に、乾いた衣擦れの音だけが響き……四色で構成された上半身から緑色は失われた。
次いで、Yシャツ。
中央の布が無くなったYシャツはベストと同じ要領で容易に脱ぐことが出来る。
指を掛け、柔らかな二の腕を歪ませながら、袖から腕を抜きさる。
まだ温もりが抜け切っていないYシャツが、ふぁさっ、とベストの上へと舞い降りる。
防衛線も解かれ、肢体が余す所なく晒された。
妖夢は少し落ち着かなさそうに、視線をあちらこちらへ彷徨わせる。
純白の雪原には、微かに震える、穏やかな初々しい丘陵。
すっとした綺麗な首のラインが魅力的な曲線を見せる。
呼吸に合わせ上下するお腹は、小さく上品な臍のくぼみを中心に程よく締まっている。
盗品を着用する後ろめたさと、少々の緊張により、雪のように白い肌に汗のヴェールを浮かせている。
妖夢は励起の少ない控えめな上半身に視線を落とし、真っ白なお腹に残る傷を視界に入れる。
傷を細い指の先で、軽く、ごく軽く、肌を馴染ませるようにゆるりと撫でる。
くすぐったさを感じながら、切なげに眉を寄せた。
刹那、うっすらと汗で濡れた白雪の表面を、冷たい風がさらりと撫でていく。
…………っ……ぁ。
蛇が背を舐めるが如く不快な感覚は、背筋を駆け上って本能に警告を与え。
隙間風であることを瞬時に理解していても、体に動作を強制させる。
びくりと双肩が跳ねる、と同時に、優しく包み込む様な感覚が胸元を覆った。
刀を精妙に扱える指を絡め合い、母性の象徴の麓から頂までを、護るように重ねている。
心臓がドクンドクンと脈打っているのを手で感じ、びくり、と身体を一瞬すくませた。
内心の微かな動揺を抑えつつ、ほう、と切ない息を漏らす。
その姿は女の子独特の甘い芳香が漂ってくるかのような錯覚すら感じさせ、やたら妖しく見えた。
若干の心の余裕を取り戻した妖夢は、肌を這いよるように指を動かし、下半身を守る留め具へと到達させる。
手の動きに合わせて視線は動き、泳ぎ、ちらちらと見つめている。
一瞬逡巡、そして留め具を抓み、外す。
儚い抵抗を見せたスカートは、やがて、するりと滑り。
小さく、とても小さく聞こえる、ぱさりと布切れが落ちる音。
足指にスカートが絡まり、下肢がびくりと震える。
生まれたままの姿から靴下とドロワーズの二糸を隔てた、無垢な乙女の肢体。
裸身を守る無防備に晒されたドロワーズ。
真っ白なそれの一部が、ぐじゅりと、濡れている。
肌寒さを覚えた妖夢は、いとけない仕草で、内股気味に寄った太ももをもじもじと擦り合わせる。
血液の冷たい違和感が恥ずかしいのだろう。
空気が漏れるようなかすかな音が喉から漏れた後、脚を曲げ、素早くスカートを抜き取った。
脱衣を終わらせた妖夢。
着衣を始める為に、怯ず怯ずと替えのズボンを手に取り、下半身の前に合わせる。
張りのある、ほどよく肉付きのいい脚を、差し出し、片脚ずつズボンの内側に収めていく。
次は、手の甲手前まで袖の丈がある漆黒のインナー。
インナーは妖夢の肌にぴったりとフィットし、体の線をくっきりと浮かび上がらせている。
次は着物。
複雑な構造に戸惑いながらも、両袖を通し、環にした紐を肩口に通し、帯を締め。
最後に、多少のサイズの差を修正する為、着物の袖とズボンの裾を折り曲げ、調整する。
互いの熱が平衡化していくにつれ、肌に馴染んでいき、妖夢の青味を含んだ白い頬が綻んだ。
何事も無く終わった事に安堵の溜め息をついて胸を撫で下ろす。
全ての用事を済ませた妖夢は表情を引き締め、踵を返し玄関から外に出る。
心残りは衣服と包丁の代価。
生真面目な妖夢はその事に、少々の後悔と一抹の不安を覚える
(ここの店主に貸しを作ると、碌な目に遭わないのですよね……)
素直に代価を払っていく、という案は実行できない。
なにしろ、西行寺家の庭師兼警護の仕事は、無給かつ無休という厳しい労働環境。
当然そこに勤めている妖夢は、お使いなどを除けば基本的に無一文なのだ。
店主への謝罪の言葉を心中に創り出しながら。
入店時と同じく、扉をカランカランと鳴らし、星の瞬くその世界の下へと足を踏み出す。
香霖堂から去る前に、裏の桜を眼に映す。
花弁が雪のように白い、妖艶な雰囲気を醸す妖怪桜。
妖夢はこの異常な桜を見て、西行寺家の住居である白玉楼を連想させる。
(幽々子様。必ずや、私は貴方のお役に立ってみせます)
傍らの半霊がその言葉に応えるように、くるり、と回った。
【F-4 香霖堂前・一日目 黎明】
【魂魄妖夢】
[状態]胸から腰にかけての軽い裂傷
[装備]八雲紫の傘、牛刀、香霖堂店主の衣服
[道具]支給品一式、中華包丁、魂魄妖夢の衣服(破損)、博麗霊夢の衣服一着、霧雨魔理沙の衣服一着、不明アイテム(0〜2)
[思考・状況]他者への聞き込みと足での捜索による幽々子様の発見、そして護衛。
危害を加えそうな人物の排除。相手が悪ければ引くことを辞さない。
支援
投下終了です。
なんというエロス
この書き手は間違いなく賢者
でもどうせなら霊夢の衣装にして腋を(ピチューン
投下乙!
これはいい紳士の嗜み
GJです!
なんという
これはまさに・・・・いや・・・言わなくともいいな・・・
GJ
エロイなあ…エロエロですな
GJ
>妖夢は励起の少ない
は隆起じゃない?
残り18kbとそろそろ容量がやばいので、新スレ建てようと思うのですが。
死亡者に●、残り43名、前スレとしたらばとパロロワテストのスレのURL。
これだけつけて後はwikiのルールをコピペでいいですか?
何か書き足したいとか、これはいれた方がいいとか希望あれば、どうぞ。
今日の夜にでも、意見が纏まってたら建てるつもりなので。
この容量ならまだ投下しても平気かな……
射命丸文投下します
空はどこまでも暗い。
夜はそんなに好きではない。理由は簡単、ネタを見つけにくいからだ。
射命丸文はむすっとした面持ちで大木の枝に腰を下ろし、
茫漠として見えぬ世界を眺めていた。
いかに幻想郷最速を自称する文でも視力が飛びぬけているわけでもない。
故に『哨戒天狗』がいるのだ。
寧ろそんなに目が良かったらそこまで最速に拘らなかっただろう。
文はため息をつき、風に揺れる黒髪をかき上げた。
意外にさらさらな感触の心地良さは自分でも気に入っているところだ。
まあ、仕方がない。
殺し合いはまだ始まったばかりなのだ。
早々ネタが見つかるとも考えにくい。
こんな早急に行動を決め、実行に移している自分こそが珍しい存在なのかもしれない。
そうなのだろうと苦笑する。
自分が冷静でいられるのは組織に属しているという経験があればこそ、だった。
組織は己の分を理解させ、わきまえ、
相応の仕事をこなさせるために存在する。
どんなに強い者だって単体で出来ることはたかが知れている。
いつの時代も場を制するのは多数を擁する側。
引いてはそこに属し、集団が欲する目的に沿って行動することこそが正しい道なのだ。
何が言いたいか?
つまり自分は、殺し合いという『組織』が求めるものに従い、
己に最適な仕事をこなせばいい。そういうことだ。
最大の勢力、殺し合いの頂点に立つ者に反抗するということは最も厄介な者と敵対するという意味。
ならばそこに勝機など見えるはずもない。
歯向かったところで小規模な爆発に過ぎず、被害を与えられはしても壊滅など程遠い話だ。
そう、どんなにこの私――射命丸文が強いのだとしても。
だから今も、こうして情報を求め、歩き回っている。
得意とするところを武器とし、手を汚さず人数を減らすために動いている。
たとえそれでかつての仲間を陥れることになったとしても。
指先で髪を弄っていた、動きが止まる。
頭の中には幻想郷で付き合ってきた連中の姿があった。
正直なところ、連中とそれほど親しいわけではない。
取材する者とされる者、程度の関係がほぼ全てであるし、
プライベートでも親友などという間柄と呼べる者は皆無だ。
当然だ。自分は天狗。
力が半端に強いばかりに弱者からは嫌われ、強者からはいびられる。
だからこそ組織に属し、その中でやっていかなければ生きられなかったというのもあるが。
文は失笑を漏らす。
全ては我が身を守るためだ。
媚びへつらうと言われようが自分の身を守るための行動だ。
そのためなら今まで付き合ってきた連中とも縁を切る。
何が悪いというのか?
くくっ、と低い声が唇の間から出る。
少しばかり迷っていたことに対してだ。
同僚の犬走椛や異変での付き合いもある博麗霊夢などを切り捨てられるのだろうかなどと、なぜ思っていたのだろう。
どうやら幻想郷の緩い空気に毒されてしまっていたようだと結論した文は今一度、彼女らの存在を忘れようと決めた。
自分に仲間などいらない。
必要なのは生きていくための己が使命と組織の存在だ。
生きるためには仕方がない、のだから。
「ふむ、どうやらじっとしてても始まらないようだし、さっさと移動しようかな」
ふわりと体を浮かせ、すとんと地面に降り立つ文。
本当は空を飛んでいきたかったし、その方が早いのだが夜間とはいえ飛行は見つかりやすい。
自分はあくまでも傍観者にして掻き回す者なのだ。
おいそれと見つけられるわけにはいかない。
まあ、見つかったとしても目をくらまして逃げることなど朝飯前なのだが。
力は出さず、温存しておくというのは天狗の特性だった。
というよりは、身を守るための習性でもある。
滅茶苦茶に力を使いまわして本当の危機が訪れたときに限界というのでは話にならない。
この言葉も年長の天狗から聞いたものである。
それにいつ組織が力を必要とするか分からないからな、とも言っていた。
実際、突然博麗霊夢や霧雨魔理沙が妖怪の山に侵入してきたのを迎え撃った経験があるだけに頷ける話だった。
「あの時は適当に報告できる程度に手加減はしたけどね。
でもあいつら本気でやってきたからなぁ。
……本気を出せと言ったのは私だけど」
どこか言い訳がましく文は口に出した。
最初のうちこそ手加減はしていたが最後の方は本気寸前だった。
容赦がなさ過ぎるのだ。
もしも言いつけを守らず、普段から力を浪費するような生活をして人間に惨敗したとあればもう妖怪の山にはいられなかっただろう。
とにかく、経験則としてなるべく戦わないに越したことはない。
自分は情報を集めて利用するだけでいい。
「……ふむ。やっぱり、アレがないと手が寂しいわね」
情報を利用するにあたって、最も信用性のあるものは映像だ。
文章や口頭による情報とは違い、誤魔化しがきかない上に改竄もしにくく、
例えば先の十六夜咲夜を映していれば動かぬ証拠となりうる。
その現場を捉えた瞬間を映し出すカメラ。
文の手元にいつもあるはずのそれが、今はない。
それだけではなく風を巻き起こす天狗の団扇もないのであるが……大方、没収されたのだろう。
二つとも自分にとっては重要な武器であるだけにショックは大きい。
スキマ袋の中に戻されてはいないだろうかと思ってもみたが、
探しても出てきたのは大量の小銭と短刀の二種類のみ。
その他ざっくばらんに色々なものが入っていたが、
いずれも元の持ち物ではなく文は落胆するばかりだった。
特に小銭。
小野塚小町の所持品であることは容易に想像ができたが、一体どうしろというのか。
ばら撒いて気を逸らせと?
ここにおいて金銭はなんら価値を持たないというのに。
しかしスキマ袋の中に戻すのも癪なのでそのままいくらか胸ポケットの中に仕舞い込んでおく。
残りは素直に袋の中に。
短刀は腰のベルトに差す。
少々頼りないがスピードを武器にする文にしてみれば重たく扱い辛い大刀よりはマシ。
しかし特別これといった特徴もない短刀なので護身用に、としたほうがいいだろう。
自分の立場から言っても。
「後はカメラの回収かな。団扇は別に回収できなくてもいいか」
団扇は力を振るうのに最適というだけでなくとも風を操ることは容易い。
無論ないよりはあったほうがいいが、なくてもどうにかなるというレベルではある。
それよりもカメラだ。
あれがあれば誤解や誤報をより確実に撒けるようになる。
文のとる戦術においては必須の道具といってもいい。
この先誰かが持っていれば交渉して取り返す。
頑なに拒むようであれば……実力行使だ。
鬼だとかスキマ妖怪だとかでもない限りは一対一として、確実には勝てる。
何がなんでも取り返さなくてはならない。
拘りすぎだろうか、と考えて、いや自分の判断は正しいと思い直す。
必須の道具なのだからそれを手に入れたいと考えるのは当然。
私情ではあるまい、文はそう考える。
だが、ひょっとすると心の奥底では……
戯れにやっていただけの新聞記者の魂が疼いているのかもしれない、と、そんなことを思った。
「バカバカしいわね」
鼻で笑い、文は歩き出した。
多数に属するものとして。
組織の構成員として。
射命丸文は歯車のひとつとなる――
【D-2 一日目 黎明】
【射命丸文】
[状態]健康
[装備]短刀・胸ポケットに小銭をいくつか
[道具]支給品一式、小銭たくさん
[思考・状況]情報収集&情報操作に徹する
殺し合いには乗るがまだ時期ではない
以上で投下終了です
タイトルは『歯車であること』です
投下乙です。
天狗の組織人としての特性がうまく説明されてますね。
この文なら、この殺し合いでもクールに任務をこなしてくれそうだ。
僅かながらにも新聞記者としての職業意識が混じっているっぽいが今後どうでるか。
埋め
冴月「よし。さっさと埋めるぞ」
すまん、やってみたかったんだ。
475 :
埋め:2009/04/13(月) 14:49:55 ID:isrMTaYm
476 :
埋め:2009/04/13(月) 14:54:58 ID:isrMTaYm
477 :
埋め:2009/04/13(月) 14:57:40 ID:isrMTaYm
/  ̄ ' !:.`ー,r '´:.i
r‐/ ,, - 、! ̄ ,, -、__,i_
. ノ:._>- 、,! __,, ____i;/__ ヽニ' ‐ 、_
┌‐' ´| ヽir'´,r '/- 、_::ヽ'´ ヾ`''ヾ\ `ヽ、
i __∠--'ー'´__,/::: :.:.:.:.:.:`ヽ ' ´ー'ヽ`ヽ,ヽ__,, >
/:.:.:.:.:>- 、/:.:.:.:.:.:.!:.:.:.:.:.:.'、:.:.:.:.:.:.:.:!:.'、:.:.)__
/,、:.:.:/:.:.:.:.:.:.:!:.:.:::.:.:.:.|、:!、:::::::::!:::::::::::::!::::.:!'_ ',
. /l `!:.::::.:.:|:.::::!、:::::::::::| `! \::::!'!:::::::/_._:.:.:!`'77'i!!
/ |_, -i:.!.:::::::!ii'、::!::\::::::! / `' ! ',::/ /i! 'i::|、ヽ‐''
ノ '´/ !ii.::::::i -.、'__ `'. / ' 〉'´ ノi '、ヽ、
´ , ⌒, / i::::!::'! /  ̄ ̄⊂⊃ r‐'´:.i , ! '
( ,)/i' !:::::'、 _,,, -─ l ノ:i !:::/ /i '!
`´) ./i:.:::.:.:.:⊂⊃ '、::::: ノ ,/、::!'´`!〈 ( !
,,, -─'─- 、:i、i` ー.='┬.!´!´::::!i_ !└-! |
_/,,r'´‐' _,, -'´ !:i`::::.:.:._,/!ー'-'-r'´ .ヽ`ニ! !
( !ヽ (ヽ ̄ /:::.'、::r'´/ l ○.r'´ ̄` ヽ、 ',`ヾ 、
'i ! '、 'i /、:::::/ i:.:`´::::::::::〉─- 、_ |i '!
.\` 'ヽ `ヾ !`! !:::::::::::::::::(、_ !:| :: '、
` ー,、、__,,ノ`!!,ヽ!::::::::○::::::ヽ_  ̄ ̄ ノノ!::::
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`.、:::::::::::::::::::::::::'、
| .// /__| |_}- ト、 \::::::::::::::::::::::::',
| ,.,,-'' √/ .| /.} ./ ',`! 、 ヽ::::::::::::::::::丿
|´// / /. '⌒| / |/´ ,ヽ! ヽ l:::::::::::/
|/ / / .|/ / ム____,,_| i /-‐''´
|___,,∠___二 ,/| / ,イ::心 / | /レi´
|‖fi:::::心 ` j,/ 辷ノ "/| ./| l
|\弋二ノ. { .!イ ',.ノ
| ヽ .|. | ヽ
| 丿 .|\ `.,
| ._ , //l. |,イヽ. ヽ
|:.\  ̄ / / | レ ' !\ ヽ
|\_:\ _ ,イ`iヽ/ | | '、 ヽ \ ヽ
|_.. ̄`` ┬-、"イ .| |ノ /i j ヽ、 \ ヽ
| `─-、/__, ヽ、ヽゝ´`ソ. レ'\l ソ ヽノレV´ヽ|
| 卩儿 i´_
|`> /`'ゝ\ ゝ.ヽ
| `i___/ !___/´'、_,ゝ、
| ノ / ノ / ヽ、ヽ