炎術剣士まなみ 第十七話『一点突破!稲妻の嵐』
次元魔城、玉座の間。次元鬼三姉妹が集まっている。三人とも、表情は暗い。
「剣士どもを倒す手段…もうほとんどないぞ」
「スクリタ…あなた、結局この前も失敗して…」
「そ、それは悪かったわよ!あいつらが予想以上に強くなってくから…」
言い争いの最中に、火柱が発生し、中から女帝フリッデが現れた。
「ふ、フリッデ様…」
「久しいな、三姉妹よ。剣士共はいまだに倒せていないようだな」
「も、申し訳ありません!奴ら、意外と出来る連中でして…」
「言い訳はよい!」
三姉妹が取り持とうとするが、フリッデの一喝で静まり返る。
跪き、震え、顔を上げられない三人。フリッデがベルディスに視線をやる。
「ベルディスよ、例のものは完成しているか?」
「は、はい。あとは調整を行うだけです…」
「よし、早々に仕上げに掛かれ!ウルム、スクリタ。お前たちは今まで剣士共に
倒された次元鬼の細胞をここへ持ってくるのだ」
その威圧感から下手に逆らおうとはせず、命令されたことを黙って実行することに。
「フリッデ様、戦艦スカルローグ、いつでも動けます」
「よろしい。ウルム、スクリタ。それをこちらに置け」
二人は次元鬼の細胞が入ったカプセルを玉座の前へと置く。
「では、はじめよう…」
フリッデが両手を合わせ、気を練っていく。その気が紫色の怪しいオーラを発すると
カプセルが激しく点滅していく。
その光が止むと、カプセルの中の細胞が活性化し、ボコボコと不気味に動く。
「ふふふ…これでよい。ベルディス、このカプセルを持ってスカルローグで
人間界に侵攻せよ!」
「は、はい!仰せのままに」
フリッデは再び、火柱とともに姿を消す。しかし次元鬼三姉妹は緊張が治まらない。
東京は、今日も青空が広がり、その下で伊織は和馬と遊んでいる。
「和馬くん!ほら、そんなに遠くへ行ったらダメだよ〜!」
一人で駆け出した和馬に注意する伊織。だが、和馬は笑顔で叫ぶ。
「大丈夫だって!伊織お姉ちゃんも早く早く〜!」
しょうがないなと思いながらも、和馬を追いかける伊織。
と、その時。二人を巨大な影が包み込む。思わず上空を見上げるとそこには
巨大な戦艦が過ぎ去っていく。
「あれはいったい!?和馬くんは早くお家に帰りなさい」
「伊織お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫!さあ、早く帰って、ジッとしていなさい」
伊織は和馬に逃げるよう促し、戦艦の後を追い、駆け出して行った。
戦艦が広い草原の上空へ到着する。伊織もなんとか追いつく。そこには既に
長い黒髪の少女と水色の短髪で小さな少女の姿が。
「まなみさん!裕奈ちゃん!」
「伊織!あなたもあれを?」
「ええ、あれってやっぱり次元鬼の…きゃあ!」
伊織の台詞を途切らせるほどの轟音が響き、戦艦から黒い球体がいくつも降り注いでくる。
そして戦艦から一瞬、キーン…という音が響く。
「うっ…不快な音…」
「あーあー!マイクのテスト中!…ゴホン、剣士の三人娘!聞こえてる?」
ベルディスの声が辺りに響き渡る。
「剣士ども、今回は我々も本気よ!見てみなさい!」
すると、地に降り注いだ球体は、膨張し、形を成していく。
その姿はだんだんとまなみたちに見覚えのあるものへと変わっていく。
「あれって…今まで倒してきた次元鬼!?」
ずらっと並ぶ再生次元鬼。まなみが初めて戦った爆弾蜘蛛、裕奈や伊織の初陣相手である
岩石熊や獣蛸、怪獣のようなサイズのゴルスジーラに猛毒を振りまくドイズス。
そしてその他諸々が殺意が込まれた視線を三人に向ける。
「ふふ、次元鬼はあなたたちに斬られた恨みは忘れていないようよ…じゃ、頑張ってねー」
そう言うと戦艦は街の方へと向かっていく。
「あー!ベルディスの奴、街を襲う気だよ!」
「伊織、ここは私たちに任せて、あなたはあれを追って!」
「分かりました!まなみさんたちも気をつけて!雷心変幻!!」
剣士姿へ変身すると、光が彼女を包み、戦艦へと飛び去った。
「炎心変幻!」
「水心変幻!」
まなみと裕奈も変身し、刀を構える。その様子は多勢に無勢だが怯みはしない。
「一度。倒した次元鬼なんかに私たちは負けない!」
「そうそう!もう一回、あの世へ送り届けるんだから!」
裕奈がどこか悪役チックな台詞を吐くと同時に二人は次元鬼軍団に飛びかかっていく。
戦艦の看板へと着地する伊織。次の瞬間、防衛システムなのか、機銃が伊織に
向けられ、発砲してくる。それを正面から弾の間を掻い潜り避け機銃を破壊する。
「ふぅ…なるほど、さすがに簡単には通してくれなさそうですね」
さらに攻撃してくる他の機銃も雷神波を放ち、粉砕。内部へと突入する。
戦艦内部の最初の部屋は特に変わった個所は見受けられない。
伊織がキョロキョロしながら先へ進んでいくと、何か踏んだのか、カチッという音がなる。
すると、天井から無数の太い針の付いたブロックが落ちてくる。それは伊織へと
突き刺さる…が、突き刺された伊織は溶けるように消え去る。
「こんなことだろうと思いました…私にそんなものを当てようなんて甘すぎです」
本物の伊織は手裏剣を取り出し、何もないところへ投げつける。
数秒の後、バタリという音とともに、貧相な姿の鬼が倒れ伏した。
部屋を抜けると、吹き抜けた空間が広がり、一斉に再生次元鬼軍団が伊織に
襲いかかる。それを軽々と捌いていく。戦闘中にも関わらず、部屋のスピーカーから
ベルディスの声が発生する。
「伊織、侵入したのはいいけど、あなたの墓場はそこよ…ってもう全滅してる!?」
「こんなのが何体出てこようが私は負けません!ベルディスさん、待ってなさい」
言い放つと、駆け出し、次の部屋へと向かう。
次の部屋には怪しく光るいくつものカプセルがあり、中にはやはり今まで
倒してきた次元鬼の姿が。部屋は広く、中央に巨大モニターが設置されている。
伊織は苦無を取り出し壁へと張り付き、モニターへと目をやる。そのモニターに
表示されているのはワイヤーフレームで表現されているこの戦艦の内部図解であった。
「ベルディスさんはどこ…?見つけて叩き潰す…」
見ると、戦艦内部の一番上の部屋が点滅しているのが分かった。
伊織はそれを頼りに、進むことにし、壁から壁と飛び移りながら、部屋を抜ける。
広い廊下内を駆けていき、途中にあった罠を物ともせず、突き進んでいく。
そしてたどり着いた部屋。伊織は刀で扉を×の字に斬り、蹴破りながら
突入する。中には焦りの表情を浮かべたベルディスの姿が。
「伊織!もうここまで来たというの…!」
「ベルディスさん、この戦艦を止めなさい!あなたには万に一つの勝機もないですよ」
ベルディスが低く笑い、伊織を睨みつける。
「この戦艦、スカルローグは私の傑作よこれで、人間界を征服する。
そのために、伊織…あなたには消えてもらうわ!」
そう言い放つベルディス。すると、次は伊織が不敵に笑い始める。
「伊織…何がおかしい!?」
「次元鬼…そうやって今までどれだけの世界を滅ぼしたかは知りませんけど…
あなたたちに、こんなものは必要ない!私が叩き潰します!」
「くっ…黙れ!」
逆上したベルディスが光線を放つが、伊織は軽々と避け、飛び蹴りを浴びせ、
壁へと叩きつける。
「うぐっ!…伊織、フリッデ様の期待に応えるために、私は負けるわけには
いかない!バルディン!」
突如として空間に歪みが生じ、そこから新たな次元鬼が現れ、伊織に向かって
槍を投げつけてくる。紙一重で避けるが、背後の壁は粉々に砕け散った。
「なんて破壊力…だけど!」
「ふふ、伊織…スカルローグはね、自動で街を襲うわ。あなたがバルディンに
勝てても、ここを止めようとした頃には、街は焼け野原よ!」
言うと、ベルディスは姿を消す。
「次元鬼の思い通りにはさせません!雷神乱れ突き!」
刀に雷の気を纏うと、目にも止まらぬ速さで突きを連続で繰り出し、バルディンの
身体を一瞬のうちに粉々に砕く。完全に砂になった次元鬼を見て、
伊織は戦艦の中心部へと走り出す。
今度は一番下の部屋を目指し、急ぐ。
伊織がたどり着いたそこは、巨大な怪しく緑色に光る巨大な物体が設置されている
部屋であった。これが動力源なのだろうか。
「とにかく、ここさえ破壊すれば…孫六刀!雷鳴大破斬!!」
大技で破壊を試みるが、謎の障壁に阻まれ、弾かれてしまう。
「きゃあ!…うぅ、私だけの力じゃここは壊せないの…」
伊織は何度も攻撃を仕掛けるが、どの技でも破壊は出来ない。
気持ちが折れそうになったその時、爆音とともに壁が破壊される。
「あっ…まなみさん、裕奈ちゃん!」
「遅くなってごめん、伊織!」
「伊織ちゃん、三人でやればなんとかなるよ!」
合流した三人は頷き合い、片腕を動力源に向かって突き出した。
「「「龍陣波動!!」」」
三人の気が交わりあいながら、放射され命中する。障壁を破壊しみるみるうちに
動力源はボロボロになっていく。そして三人同時に飛び上がる。
「「「逆鱗超破斬!!」」」
星型に斬り落とされた動力源は、間もなく閃光を発し、爆発を起こす。
三人は素早く脱出し、火柱があがり、爆発が広がっていく戦艦を見届けた。
戦艦は海へと落ちていき、そこで、最後の爆発を起こしながら海の藻屑と化した。
「まなみさん、裕奈ちゃん、ありがとう、二人が来なかったら、次元鬼の
思い通りになってしまうところでした…」
深々と頭を下げる伊織。それをに対し裕奈は首を振る。
「気にしない気にしない。あたしたちこそ、ごめんね。遅れちゃった」
裕奈に続いて、まなみも言葉を続ける。
「数が多かったら、思いのほか苦戦しちゃってね。とにかく伊織が無事だったから
安心したよ。さあ、みんなで何か食べに行こう」
三人は微笑み合いながら、街へと戻っていく。
そんな三人の姿を見つめる一つの影が…。
「次元鬼、奴らも剣士に対しての対抗策を失ったようなものだな…さてどうするか…」
影は手に持っているボトルを見つめ、不敵に笑みを浮かべた。
次回予告「雷は途切れ、水は干上がり、炎は消えうせる。次回『剣士散華』」
十七話投下完了。だいぶ間が空いてしまいました。
572 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 12:57:09 ID:vfEoRSx/
投下乙。伊織は強いなぁ。
次回がすごく気になる件…
まなみやヤンデレ魔法少女が投下されたとはいえ
やはり4月だからか、みんな忙しいのかな。
574 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 23:24:38 ID:1Xy7x15S
生活環境が変わったりもするし、やっぱ4月は忙しいよ
そうだよなぁ。
今月の終わり辺りからまた人が増えてきたりするだろうかね
このスレの人は、荒らしやってた企画のせいで荒れたらどう思う?
SSゲーム化スレの話?
578 :
魔法少女ユミナ:2009/04/20(月) 16:19:12 ID:yDNDF64r
みなさん、こんにちは。わたしはユミナという魔法少女見習いです。
いわゆる人間界とは別の次元に存在している世界ファルーア王国。
ここで、私は誕生し、成長したある日のことです。
女王様に呼ばれてお城に行くと、こんなことを言われたのです。
「ユミナ、突然ですがあなたを人間界に送ります」
「ふえぇ!?わ、わたし、まだ人間界に行く資格はないはずですよ!?」
現在、私は13歳。そして魔法の腕もまだまだ未熟。ファルーナでは
他世界に行くことが出来るのは、一人前の16歳以上の魔法使い。
どんなに早くてもあと三年は他の世界に行くことなど出来ないのに
いったいどういうことなのでしょう
「つい二日前のことです。ミラクルストーンという国宝をユミナも知っていますね?」
ミラクルストーンというのは、ファルーナ王国の国宝で、国のエネルギー関係のものを
すべて支えているとても大事なものです。
「それがあろうことか、この城に入り込んだ強盗によって誤って割られてしまったのです。
その者は捕まえましたが、これではエネルギーが足りなくなってしまいます。
そのため、国の名だたる魔法使いにミラクルストーンの代わりになるよう、エネルギーを
分け与えてもらいましたが、それでもいつまで持つかどうか…」
ミラクルストーンの力が完全に失われればファルーナは闇に包まれてしまいます!
「女王様!わたしはどうすればよいのですか!?」
「他の魔法使いたちが動けない今、あなたは人間界でミラクルストーンを修復できる
聖羅石というものを探してきてほしいのです」
579 :
魔法少女ユミナ:2009/04/20(月) 16:19:57 ID:yDNDF64r
「聖羅石…?」
初めて聞く名前です。人間界にそのような物があるのでしょうか?
「言い伝えによれば、ミラクルストーンと匹敵するほどの物という話です。
それならば、ミラクルストーンの修復も行えるでしょう」
「わかりました!わたし、頑張って聖羅石を探してきます!」
「ありがとう、ユミナ。では、これを持って行きなさい」
女王様がわたしにくれたものは、スティックでしょうか、柄の部分は黄色くて
先端に星が付いています。天使の羽のような装飾もあります。
「それはレイジングスター。困ったことが起きたらこれを使いなさい。
必ずあなたの力になってくれるでしょう」
「はい!ありがとうございます!」
わたしはレイジングスターを鞄にしまい、女王様に見送ってもらいながら
人間界へと向かいました。女王様の話によると、聖羅石がある可能性があるのは
人間界のニホンなる国だとか。
どきどきしますが、ファルーナのためにも頑張らなきゃ!ユミナいっきま〜す!
580 :
魔法少女ユミナ:2009/04/20(月) 16:21:40 ID:yDNDF64r
初めまして。連載するかもな感じですが作ってみました。
また思いついたら続きを書きます
wktk
王道っぽいな
甘甘のベタベタになりそうwww
今までは変化球ばっかりだったからなw
貴重な王道魔法少女としてユミナには頑張って欲しい
変化球というか魔女っ子より変身ヒロインのが
多かったという感じかな。
ところでそろそろ容量ヤバいし次スレ立てた方がよいのでは?
そうだね。じゃあ、ちょっと立ててくる
587 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:45:07 ID:iABWM07I
もう次スレか
早かったなー
良策揃い乙乙
追いつけてないけどもっと感想ストームしたいスレである
あまりに前の話に感想つけるときは言えなかった感想スレで
書くという手もあるな。最新のはここのがいいだろうけどw
俺も次スレからは感想は出来る限りつけたい。
作者さんのやる気も上がるだろうし
あと
>>586、スレ立て乙です
まとめサイトのチャットが消えとる・・・
591 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 23:24:37 ID:2kXc0Lzt
592 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 18:03:23 ID:FaZUVaHI
なんか、いいネタ出来そうなんだけど、うまく形にならない
なんとか完成したらここに投下したいとは思ってる
ということだけ書き込んでみるw
おお応援してるよ
けど投下は新スレ立ってるんでそっちにね
しかし日頃pinkちゃんねるが住処な俺にはここらへんのスレの進行速度ってこんな遅いもんなの?
いや、まだ20kbも余ってるんだからこっち使いなよ
でも新スレ全く書き込みが無いみたいだし、このままだと落ちちゃわない?
この板のボーダーとかよく知らんのだが
10レス未満で一週間書き込みなかったら落ちる
空気を読まずに投下
一応、変身ヒロイン物です
「よっ。はっ。とぉっ!」
短く借り上げた赤髪の女性は、見るからに熱血系と言わんばかりの風体で、
着ているバイクスーツを上だけはだけ、アーケードゲームに熱中していた。
彼女が夢中になっているのは、対戦専用の格闘ゲーム筐体だ。
『K.O!! PERFECT!!』
「うぎゃーーー!? まさかの完封負けっ!?」
思わず仰け反った彼女 ―― 千里(ちさと)は、勢い余って後方に転倒する。
「いてて……ちぇーっ、1ラウンド目は割りといい感じやったのになぁー」
「千里、あんたは動きに無駄が無さすぎるんだよ。
レースゲーならそれでもいいかもだけど、格ゲーじゃただのカモだよ」
そう言いながら向かいの筐体から立ち上がったのは、
女子高の制服を着た長身長髪の黒髪の美少女だった。
「なるへそー、駆け引きって奴やな。
分かってたことやけど、やっぱ格ゲーじゃ佳奈美には敵わんなぁ」
千里の対戦相手だった黒髪の少女――佳奈美(かなみ)は、
数々の格闘ゲーム大会で優勝している名うての格闘ゲーマーなのだ。
「ま、それはこっちも同じだけどね。
千里、またタイムアタックで世界記録出したんだろ?」
「へっへー、後ちょっとで全コース記録をウチだけで総ナメやで!」
その言葉通り、千里の方もレースゲームでは名が通っており、
某レースゲームのオンラインランキングは彼女の名前で埋め尽くされているのだ。
あまりの辣腕に、チート(不正データ使用)を疑われているぐらいだ。
「よっし、次はレースゲーで勝負――」
(ズダダダダダダンッ!!)
その時、千里の背後から怒涛の銃声があがる。
「……千里……こっちも、付き合ってよ……」
ガヤガヤうるさい店内では聞き逃しそうになるほど小さな声でつぶやいたのは、
紫の髪を頭上で纏めた、大人しそうな少女だった。
服装は短パンにパーカーという洒落っ気の無い格好だ。
少女――亜理紗(ありさ)は、
本来二人プレイ用の二丁の銃を一人で両手に持ち、
画面に現れるテロリストを一瞬のうちに撃退していた。
彼女は、見ての通りシューティングの達人だが、
ジャンル自体が下火な為、他の二人に比べて無名に近い。
「おー亜理紗、いいでー、やろっか!」
亜理紗の呼びかけに答え、千里は隣の筐体に並ぶ。
「もっとも、ウチの腕じゃ足手纏いになるだけやろけどな!」
「……それが、目的……。このゲーム、2Pだと難易度上がるから……」
「なるへそ、納得や。……って、人をダシにすんなっ!」
ぶつくさ言いつつ、千里は筐体にコインを入れようとする。
(ドガシャアアアアアアアアアアーーーーーーーーン!!!)
「こ、今度は何や!?」
振り向く千里達だが、今度はゲームの音では無かった。
ゲーセンの壁に、大きな穴が空いていた。
それは、パワードスーツ?を纏った男が突っ込んできた為である。
当の男は、衝撃で倒れこんで気絶している。
「なんやうるさいなぁ。レコード出そうな時やったら確実にキレとったぞ今の」
「……それは……集中力足りないだけ……」
「じゃかあしいわ!」
「……………………」
異常事態に慌てて逃げ出す他の客をさておき、
怯みもせずに漫才を続ける千里と亜理紗。
一方、佳奈美は倒れた男に近づいていく。
「ちょっとあんた、騒音は迷惑なんだけど」
「うっ!?」
そう言って佳奈美が容赦なく蹴るので、男は目を覚ます。
「……き、きみ達、ここは危険だ!! 早く逃げなさい!!」
男はそれだけ言うと、慌てて外に飛び出していった。
「なんだアイツ?」
「……レイヤー……」
「なんや気になるなぁ。ちょっと見てみよか」
千里達は空いた穴から外をのぞいてみる。
そこには道路から建物まですべからく穴だらけになったビル街と、
三人組のパワードスーツの男達が、謎の生物と戦いを繰り広げる光景があった。
謎の生物は人型ではあったが、人間より一回り大きく、
その全身はぜん動する黒い触手に覆われていた。
銃器らしき物を持った男が謎の生物に向かって光弾を放つが、
謎の生物の動きは素早く、まるで当たらない。
『シューター、何をやっている!! しっかり当てないか!!』
上官らしき者からの通信が飛ぶ。
「し、しかし、敵の動きが早すぎます!! こんな遅い弾では……!!」
確かに彼の言うとおり、
銃から発射される光弾は見てから避けるのも可能な程度のスピードだ。
『ええいっ、ドライバー!!』
「こ、こっちも制御できません!!」
業を煮やした上官は、近未来的なフォルムのバイクに搭乗する男に檄を飛ばすが、
彼もその圧倒的なパワーとスピードを全く制御できず、マシンに振り回されている。
『くっ……ファイター、おまえだけが頼りだ、何とかしろっ!!』
「わ、わかりました!!」
先ほど店に突っ込んできた男だ。
他の二人と違い、彼にはパワードスーツ以外に特殊な装備は見当たらないが、
その分、運動能力は他の二人より大きく強化されているようだ。
「食らえ、正義の鉄拳……うわぁっ!!」
男は謎の生物に格闘戦を挑むが、あえなく反撃に会い、殴り飛ばされてしまう。
「だ、駄目です……奴の動きを見切れません!!」
『泣き言を言うな!! 貴様らが勝てなければ誰が奴らから地球を守るというのだ!!』
「は、はいっ!!」
再び立ち上がり、謎の生物に飛びかかる男。
他の二人も何とか援護しようとふんばってはいるが、
装備を使いこなせていない為、まるで助力になっていない。
このままでは全滅も時間の問題だということは素人目にも分かる。
三人の少女達は、その光景を呆然と眺めていた。
だが、それはこの超常的な出来事がショックだったからでは無い。
「……佳奈美、亜理紗。あれ、どう思う?」
「…………下手すぎ…………」
「あたしらがやれば、20秒で倒せる」
「やっぱ、そう思う?」
そうこう言ってる間に男達は佳奈美達の近くまで吹き飛ばされてくる。
「く、くそぉっ……」
「このままじゃ、地球の未来が……!!」
腕に装着されたブレスレットが吹き飛ばされた為か、パワードスーツは解除され、
今の男達の格好はジャージや作業着だ。
「これが変身装置なのか?」
「……ダサい……」
佳奈美達は勝手にブレスレットを拾い上げる。
「あっ、勝手に触るな!」
「なぁ、どうやって変身するん?」
「腕にハメて、『プレイ・メタモル』って叫べば……」
「教えるなバカ!!」
『『『プレイ・メタモル!!!』』』
そう叫ぶと同時に、三人の身体にパワードスーツが装着される。
佳奈美は格闘重視の『G・ファイター』に。
亜理紗は射撃重視の『G・シューター』に。
千里は操縦重視の『G・ドライバー』に。
それぞれ、その姿を変身させたのだ。
「か、勝手な真似を!! 今すぐ変身を解除して我々に返すんだ!!」
「あいつ、倒せばいいんだろ?」
「バカを言うな!! 我々ですら倒された『アンチャー』に一般人が勝てるわけが……!」
「……あの生物……『アンチャー』って名前なんだ……」
「おっちゃん、時間計っといてや」
「え? う、うん……」
千里が投げ渡したストップウォッチを男が作動させたのを確認すると、
三人は散開して『アンチャー』を取り囲んだ。
「ナンダ……キサマラ……?」
「通りすがりの格ゲーマーだよっ!!」
人語を解したことに驚きもせず、
佳奈美は『アンチャー』に向かって飛び掛っていた。
「バカメ! ニンゲンガニクダンセンデ、ワレワレニカテルトオモッタカ!」
『アンチャー』の腕が佳奈美の顔面を打ち抜く!!
……かと思われたが、佳奈美はあっさり屈んでかわすと同時に、
『アンチャー』を足払いで転倒させていた。
「ナンダト!?」
「おまえの攻撃、遅すぎる。上段見てから足払い余裕でした」
「クッ……」
想定外の事態に驚いた『アンチャー』は翼を展開し、
宙に飛び上がって佳奈美から距離を取る。
「……ムッ!?」
そこに狙い済ましたように光弾が飛来する。
しかし弾速が遅いため、『アンチャー』は軽々と回避する。
弾が飛んできた方向には、片手で銃を構えた亜理紗が居た。
「ザンネンダッタナ! ソンナオソイタマニアタルワケガナイ!」
「……うん……私もそう思う……」
亜理紗は全く動揺した様子も無く、銃の持ち方を変えた。
銃底を左手で支え、右手は人差し指をトリガーに当てるだけ。
……次の瞬間、亜理紗の銃から数え切れないほどの数の光弾が乱射される。
が、その弾幕すらも『アンチャー』はあっさりとかわしてしまう。
「ケケッ! オレヲカズウチャアタルヨウナノロマトオモッタカ!」
「……思ってないけど……思ったとおりのバカだった……」
「ナニッ!? ……グェアッ!?」
『アンチャー』の身体に、瓦礫をジャンプ台にした千里のバイクが突き刺さったのだ。
千里は、先ほどの男が振り回されていたマシンをあっさりと使いこなしていた。
「ドンピシャや! さすがやな、亜理紗!」
「バカナ……コノオレヲ、ユウドウシタトイウノカ……!」
ダメージを受けた『アンチャー』は、地上に墜落していく。
「佳奈美、止めは任せたでっ!」
「分かってる!」
佳奈美は飛び上がると、『アンチャー』の身体を掴む。
「うおおおおおおっ、スクリューパイルッッッ!!」
「グアアアアアアッ!!」
佳奈美は『アンチャー』の頭を下にする形で抱え込むと、
そのまま全体重をかけて地面に叩き付けた。
頭を潰された『アンチャー』の身体は、そのまま消滅した。
「おっちゃん、何秒やった?」
「え!? ……あっ、24秒……」
「かーっ! 4秒もオーバーしとるやんけ、大失敗やな!」
「き、貴様ら、一体何者なんだ!?」
「……ただの……一般人だけど……」
「ただの一般人が『アンチャー』を倒せるわけがあるかっ!!」
「ゲームで慣れてるんだよ、ああいうの」
「……ゲームって……」
キッパリと言い切る佳奈美達に対し、男達は何も言い返せなかった。
『少女達、よくやってくれた!』
「長官!?」
その時、立体映像で現れたのはグラサンをかけた強面のオッサンだった。
『素晴らしい、全く素晴らしいよ!
その戦闘技術はどこで修得したものだね!?』
「……セブン……イレブン……」
「セブンにはワイルドガンマンは置いとらんけどな」
『意味は分からないが、とにかく素晴らしい!』
「で、オッサンは誰なんだい?」
『おお、自己紹介が遅れたな。私は地球防衛軍の長官だ。
ダンディズムの発揮に関しては定評があるぞ!』
長官は両腕を組んでダンディポーズを取ってみせる。
『さて、自己紹介が済んだ所で君達に頼みがある。
明日から、アンチャーを倒して街の平和を守ってくれないか!?』
「いいよ、ヒマだし」
『あっさりだね。事情とか気にならないのか?』
「……裏設定とか……別に興味ない……」
『ス、ストイックだな。いや、助かるが』
「それはそうと長官はん、バイト代はちゃんと出るんやろな?」
『うーむ、一回の出動に付き1万でどうかね?』
「乗った!!」
『他に何か質問は?』
「聞きたいこと出来たらそん時に聞くよ。通信ボタンはコレでいいんだろ?」
『分かった。こちらからも何かあれば連絡する。では……』
長官はコホンと咳払いをすると、大きく息を吸う。
『今から君達は地球の平和を守る戦士・メタモルゲーマーズだ!!』
「イェッサー!!」
力強く敬礼する長官に付き合ったのは、千里だけだった。
「なんやおまえら、ノリ悪いなぁー」
「ごめん、そういうの苦手で」
「……千里が……テンション高すぎるだけ……」
「はぁ!? 地球の平和を守るんやで、燃えシチュやろ!」
「……安っぽい……」
「あたしはシナリオとか気にしないクチだからなぁ」
相変わらず緊張感の無いノリで、あーだこーだと盛り上がる千里と佳奈美と亜理紗。
そんな三人娘を他所に、立体映像の長官は思い出したように倒れている男達に振り返る。
『……あ、お前達はもちろんクビだぞ』
「そ、そんなぁ……」
名前も与えられずにフェードアウトさせられ、ガックリする男達であった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
それから少し後の時間。
謎の暗黒空間で密談をしている謎の集団の下に、
組織の構成員の一人が倒されたという報告が入っていた。
(エリアAのボスが、メタモルゲーマーズと名乗る連中に倒されたようです)
(我らアンチャーを倒すとは、そやつらなかなかやりますな)
(ふん、エリアAのボスなど我らの中で一番の小物)
(そのとおりだ。そのメモタル何たらも所詮は人間、我らの敵ではない)
(我らが同胞を倒した罪、じわじわと思い知らせてやりましょうぞ)
暗闇の中で、何重もの笑い声が、不気味に響いていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌日。
地球の平和を守ることになったゲーマーズ達だが、
今日も飽きずにゲーセンに通っていた。
今は佳奈美と亜理紗が『よぷよぷ』で対戦しているのを、
横で千里が観戦している。
「うっわー、今のごっつい大連鎖やなー!」
「……マグレ……」
「ちぇっ、こっちも後ちょっとで連鎖完成だったのに」
佳奈美はポケットを弄りながら、後ろの千里に振り返る。
「千里、今日はやんないのかい?」
「いやー、実は金欠でなぁ。今日は見るだけで我慢や、わはは」
「亜理紗の奴、今日は妙にツいてるからさー。ちょっと流れ変えてくんない?」
「んー、せやな。じゃあ一回だけ……」
なけなしの100円玉を投入する千里だったが……。
『エマージェンシー! エマージェンシー! 竜王町でアンチャーの出現を確認!』
腕のブレスレットから、緊急コールが鳴り響く。
『メタモルゲーマーズ、出動せよ!』
「ちょ、待ちいな!? 今100円入れたばっかやで!?」
『そんなことを言っている場合ではない! 事態は急を要するのだ!』
「ぐっ……!」
千里はクレジットをカウントしたディスプレイを忌々しげに睨み付けると、
椅子を蹴って荒々しく立ち上がった。
「千里っ、早く!」
「おう長官、今の100円、経費として払って貰うかんなっ!」
『分かったから早く行け!』
「らじゃっ!」
『『『プレイ・メタモル!!!』』』
メタモルゲーマーズの戦いは、始まったばかりである。
投下終わり
続き書くかは謎です
>>605 おお内容的にも容量的にも小気味良い出来でGJ
592の人かな?
ウメ子は魔法少女である。
使命は考え中。
「ちょっとちょっと、どうなってるのよコレぇーーーっ!!?」
開始早々、まん丸メガネが曇りそうなほど頭から湯気を立ち上らせているウメ子。
PCモニターの前に身を乗り出して、吊り上がった目で画面を睨んでいる。
「二ヶ月ぶりの再登場だってのに、一体何の騒ぎだよ……」
ウメ子の絶叫を聞いて、使い魔である子羊のメウたんが現れる。
彼はどーせロクなことじゃないだろうと思いつつ、理由を尋ねてみる。
「前スレは四ヶ月かかったのに二ヶ月で埋まるなんて凄い勢いよねー。
……って、そんな話はいいのよ! この『魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ-まとめ-』を見てよ!」
「へー、スレのまとめサイトできたんだ。ウメ子もちゃんと載ってるじゃん、何が問題なんだ?」
「ここよ、この一文よ!!」
ウメ子はメウたんの前に当該WEBページが印刷された紙を差し出す。
そこはウメ子も収録されている単発系SSのまとめページで、
『魔女っ子&変身ヒロイン創作スレで投下された単発系のSSです』と書いてあった。
それにしても何でわざわざプリントアウトするんだ。
「……やっぱりわかんね。この一文の何が問題なんだ?」
「このバカ羊!! 何が問題って、私がここに分類されてることに決まってるでしょ!!」
「……はぁ?」
「この華麗なるウメ子さまの大活躍が単発SSなんかに分類できる訳が無いでしょう!?
『ウメ子の大冒険』は魔女っ子スレの代表作とも言うべき重厚長大な大作連載なのよ!!」
「いや……あんな今思いついたように書き流された駄文が単発じゃなかったら何が単発になるんだよ。
つーかメウたん的には、本当に次スレで続編が書かれてしまった現実に対して驚きを禁じ得ないんだが……」
「うっさい! こうなったら変身よ!」
ウメ子は外に出て梅の木(隣家のお爺ちゃんが大切に育ててる物)の枝をぶち折ると、
それを天高く掲げて呪文を唱える。
「ショーチクバイショーチクバイ、ウメボシノタネワッテナカミマデクエヤー!」
ウメ子は魔法の光に包まれると、ベレー帽にGペン装備の漫画家ルックに変身する!
トレードマークのまん丸メガネはそのままだが、意外にマッチしている。
「小説家に変身したわ! これでウメ子さま大活躍物語を執筆しまくりよっ!!」
「おい、小説家なら羽ペンだろ! 常識的に考えて!」
「うっさいわね、常識に捕らわれてたら魔法は使えないのよ!」
そう言いつつ、パソコンに向かってキーボードをカタカタ言わせ始めるウメ子。
「Gペンすら使わねーのかよ! 意味あるのかその変身っ!?」
「あんたはコスプレイヤーが意味を求めてコスプレしてるとでも思ってんのっ?」
「コスプ……要は単なる着替えかよ! そんなことにわざわざ魔法使うな!」
何のかんの言いつつ、PCの中でウメ子氏著作の超傑作大作(自称)が完成した。
「さーて、早速印刷して出版社に持ち込みよ!」
「おいィ!? 魔女っ子スレに投下するんじゃないのか!?」
「バカね、先に現物を作っちまった方がいいに決まってるでしょ!
スレに投下するのはその後からでも遅くは無いわ!」
「あっそ……もうなんでもいいよ」
突っ込むのに疲れたメウたんは、ウメ子の好きにさせることにした。
「ボツ」
「ぬわぁんですって〜〜〜!? この私の傑作のドコが駄目だって言うのよ!?」
「文法無視。一定してない人物描写。矛盾したシナリオ。
極めつけはあまりにも多すぎる誤字脱字……。申し訳無いが、門前払いレベルです」
「……あんたじゃ話にならないわ!! 責任者を呼びなさい、責任者を――ぐえっ!?」
憤るウメ子の鳩尾に、メウたんのまん丸角によるタックルが突き刺さる。
「し、失礼したぜ! ゴメンなホント!」
気絶したウメ子を背中に乗っけると、メウたんは慌てて出版社を後にした。
「メウー、参ったなぁ……。このままだとウメ子が目を覚ましたら確実に暴れ出すぞ……」
夜の街をとぼとぼ歩きながら、メウたんは途方にくれていた。
気絶したウメ子を背負ったままだったので人目を引いたが、今はそれどころではない。
その時、向こうから歩いてくる人物と偶然目が合った。
「おや、キミは……」
「あ、あんたは……!」
「ぎゃあああああああああああああっす!!!
おんどりゃああああああああああああっす!!!」
自宅で目を覚ましたウメ子は、荒れに荒れていた。
承認欲求の不満により溜まりまくった鬱憤を、
梅の木(隣家のお爺ちゃんが大切に育ててる物)にぶつけまくっていた。
当然、枝はボキボキのボロボロである。
自宅の家具に奴当たりしない辺りが微妙にセコイ。
「……くぅぅ……どうしてこの私の純文学が理解されないの……。
死後にならないと評価できないほどレベルが高いからかしら……」
その時、何かを持ってやってきたのはメウたんである。
「ウメ子、見ろよコレ!」
メウたんが持ってきたのは、一冊のハードカバー本だったが……。
「こ、これ……私が書いた奴じゃない!? どうして本になってるの!?」
「あの後、出版社の偉い人がたまたまウメ子の原稿を読んで、
これは是非とも出版して世に出すべきだって勅命が下ったらしいぜ」
「ふ……ふふふ……。やっぱり、見る人が見れば分かるのよね、私の才能は!」
すっかり上機嫌になってふんぞり返るウメ子だが、
何かを思いついて、外出の仕度を始める。
「お、おい、どこへいくんだよ!?」
「決まってるじゃない! 本屋に行って買い占めるのよ!」
「いや、今はどこの本屋へ行っても売り切れみたいだぜ。
すごい人気でさ、俺が入手できたのも見本品が送られてきたからだし」
「えっ……ほんとだ、この本にはバーコードも何にもないね」
ウメ子の言う通り、その本は本文以外にはウメ子の名前が書かれているだけで、
他には出版社の名前すら見当たらなかった。
「まぁいいわ、これで私も印税長者の仲間入りっ!!
さぁ、このままどんどん続編を出して、目指すは全100話よっ!!」
ウメ子のおーほっほというセレブ笑いは実に近所迷惑だったが、
彼女の報復を恐れる近隣住民はクレームをつけることは出来なかった。
「ありがとう、オッサン。これでウメ子もしばらくは大人しくなるよ」
「そうか、私なんかが力になれてよかったよ」
メウたんが路地裏でこっそり会っていたのは、例のサイフを無くしたオッサンだ。
「でもオッサンはすごいなぁ。あんな本を簡単に作っちゃうんだから」
「いやいや、大したことじゃないよ。印刷所に知り合いがいてね」
あんな本というのは、もちろんウメ子の本のことだ。
賢明な読者はお気付きだったと思うが、
あれは装丁が上質なだけの単なる自費出版本、つまり同人誌だったのだ。
「でも本当にありがとうオッサン。助かったよ」
「なぁに、困った時はお互い様さ」
「ふっ、そうだよな」
オッサンとメウたんはダンディーに歯を光らせあうと、互いに反対の方向へ去っていった。
印税が届かないことに気付いてウメ子が不機嫌になるのは、もうしばらく後の話である。
メウたんも言ってるが、まさかの再登場
本当に100話続けるためには何十スレが必要なのだろう
ウメコ乙でした
じゃ、また次スレ終わりになw
皆さんお疲れ様でした〜
次スレも盛り上がりますように〜