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507 ◆c6PZzYalbM
「ようするに坂本竜馬の財宝というのは」
これよ、と彼女は生徒会長にコロンと何かを放り投げた。
「もっと丁寧にあつかってほしいものだね」
「こりゃまた失敬」
それは黄色い石……トパーズをあしらったブローチだ。
「11月15日は満月。そんでもって当の本人、坂本竜馬の誕生日で、七五三でもあるわけよね」
彼女が説明を始める。

旧暦の15日、二十八宿の鬼宿ってのは吉事を意味する言葉よね。鬼が出歩かない日。この日なら何をやっても上手くいくって日のことよ。
そしてこの日は竜馬の誕生日。きっと何かの記念日なのね。それって多分竜馬への誕生日のプレゼントよ。洒落者で新しい物好きな彼に誰かが贈ったものなのね。
もしかしたら取引先の商人かもしれないし、同志の誰かからのものなのかもしれない。
隠してある場所があそこっていうのはすぐわかったわ。だって巻物に出てくる単語は全部七五三の関係のものなんだもの。

「じゃあ最後の千歳の──あめってのは」
千歳飴のことなんじゃないのと彼女は言った。
「あの池にはむかーし御祓い所があったそうなの。千歳飴って作った後に御祓いして清めてから売るものだから」
「で、僕を池に突き落とした理由はなんなんです?」
「だって──」
「だって?」
「あの池、底は浅いけど踏み台がなかったら靴が濡れちゃうじゃない?」
「僕は踏み台ですか……」
返事は聞くまでもないと言いたべな満面の笑みだった。
「木々を縫って満月の光が降りるのは池の中ほどの中洲のところだったわ。なら後はかんたんね」
やれやれ。まぁ役に立ったのならいいかと自分を慰めよう。でもまだ一つわからないことがある。
「なぁに? おねーさんに質問?」
やれやれ。またまた考えていることを読まれてしまったらしい。
「なんでこのトパーズのブローチの名前が『探し求めるもの』だったんですか?」
彼女は心底呆れたような顔をする。
「あんたそんなことも知らないの?」
「ぜひ低脳なこの僕に知性の光を与えてくださいませ」
フムンと鼻をならし、彼女は言った。
「トパーズの名前の語源が『探し求めるもの』なのよ」
じゃあそれともう一つと僕は彼女に向かって一歩前にでる。
「なぜ先輩は、これは坂本竜馬の誕生日のプレゼントだと断言したんですか?」
その時僕はあまりにも傲慢でありながら、あまりにも華やかな、輝く笑顔を目にすることとなった。
彼女曰く。

──覚えておきなさい。トパーズはね、11月の誕生石、なのよ? ちなみにわたしも同じ11月生まれ♪


何にせよ──生徒会第一級指令0018号──任務完了。
この日得た知識は坂本竜馬についての知識。そして二度と忘れることの出来なさそうな、ある女性についての秘密について、であった。