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506 ◆c6PZzYalbM
「あ、七五三ね。ほら見てよ! あの子可愛いじゃない」
「今日は11月の15日ですものね。おまけに日曜日ですから絶好の七五三日和なんじゃないですか?」
自分で言っておいて思う。絶好の七五三日和ってなんのこったい、と。
お寺には七五三のお参りにやってきた家族連れの姿がちらほらと見られる。学校の敷地内ではあるものの、歴史ある由緒正しいお寺だとかで、近隣住民の皆さんに開放されているのだそうだ。
「うっわ、あの子もかわいー! 連れて帰っちゃダメかしらね」
「それ、犯罪ですからね」
わかってるわよと言うその口調がやけに残念そうなのはきっと気のせいだと思う。そう思いたいのだから仕方ない。
「まずは住職さんにお話を聞いてみますか?」そう言う僕に彼女はうぅんと頭を振った。
「どうせあの狸な会長のことだから話は通してあるでしょ。このまんま裏の林に行くわよ」
なんで裏の林なんだろう。
クルリと振り返って僕の顔を見る。
「なんで裏の林なんだろうって思ったでしょ?」
「思いました」
思わず正直に答えてしまう僕。
「勘よ」
そして彼女はさっさと先へ駆け出してしまうのだ。
裏の林の場所、知ってるのかな? 
知ってるんだろうから走りだしたんだろうな。そう自分で自分を納得させて、僕は「待ってよ!」と一声あげて、追いかけるべく駆け出すのだった。

巻物に書かれていた謎かけ歌をかいつまんで言うとこんな感じだった。
『探し求めるもの』は満月の────。──二十八宿の鬼宿────十三詣り────。千歳────あめ。
こうして見ると全然歌じゃない──意味不明な単語の羅列じゃないかという優しさのないツッコミはなしの方向で。
「この鬼の宿とかってなんなんですかね? ホラーとかオカルト? そういう系列の意味なんでしょうかね」
返事はない。
「財宝は満月の……なんなんですかね? 満月の下に埋まっているとか?」
唐突に立ち止まる。
「うわっ、ごめんなさい!」
「なに謝ってるのよ」
彼女は振り返りもせずに言う。
「ほら、ついたわよ」
そこは池だった。
「お寺の裏の林にこんな池があったんですね」と僕。「あったのよ。昔からね」と彼女。
静かな場所だ。騒がしい学園の中にこんな場所があっただなんて、僕は全然知らなかった。
「本ばっか読んでて、出歩かないからよ」
……なんでこの人は僕が考えてることがわかるんだろう。そう思って彼女に聞こうとした時だった。
ドン
僕は池の中に突き飛ばされてしまったのだ。
当然のようにあがる水しぶきの音。その後につづく冷たさ。そして──!
「見〜つけたっ!」
彼女の声を、僕は聞いた。