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303盲導ロボット
学校から帰ってくると、ちょうど母さんは買い物に出かけていた。
食材は配達で賄っているし雑貨はだいたい通販だから、きっとまた服でも買いに
行ったのだろう。
だとすると、夕暮れ時にならないと帰ってこない。パソコンを使うチャンス。

居間にあるパソコンで検索サイトを呼び出し、『盲導犬』を検索した。
盲導犬の役割は、この前父さんに聞いたものも入っていたが、もっといろいろな
仕事をしていた。犬でもこんなことが出来るのか、と感心するほどだ。
でも、肝心の値段についてはちっとも出てこない。
ページをめくっているとき、玄関にタクシーが止まる音がした。
――母さんが帰ってきた! やばい、もう閉じないと!
僕は慌ててログアウトして、居間でジュースを飲んでいるところを取り繕った。
「ただいま。あんた、いたの。表で遊びなさい、っていつも言ってるでしょう」
「今から行くとこだよ。ジュースくらい飲んだっていいじゃん」
そう言いながらロボットを連れて外に出た。
「逆上がりの練習、やってんでしょうね?」
「やってるよ、いつも公園で練習してるもん」
玄関に向かって怒鳴り、僕とロボットは公園へ駆け出した。

公園に、あのお姉さんがいた。おばさんの押す車いすに乗って、公園を散歩していた。

僕はいろいろなことを考えながら、お姉さんの姿を見ていた。
そしてふと、傍らのロボットをみて、閃いた。
――こいつを、盲導犬の代わりにできないかな?
少なくとも犬と同じくらいには、人の手を引いたり止めたりできる。
信号も交通ルールも認識している。一緒に遊んで動作確認済みだ。
なにより、主人に危険があった時に守ることが出来る。抱きかかえたり、支えたり。
おんぶして走れるのも確認済みだ。

ロボットを手放すのは惜しいけど、お姉さんの側にいるほうがこいつは役に立てる気がする。
――いいぞ、我ながらグッドアイデアだ。

「いいか、ロボット。これからお前は、目の見えない人を守る役だぞ。
僕を守るんじゃなくて、あのお姉さんを守るんだ。いいな」
僕はロボットに言い聞かせた。どこまで理解できるのか分からないが、
ロボットは僕の話を聞いたのち、ゆっくりとスコープをお姉さんに向け、
じっと見つめていた。

僕は勇気を出して、お姉さんとおばさんの前に出た。
「あら、こないだの……」おばさんは不思議そうに僕らを見た。
「フリスビーの子?」お姉さんは僕とロボットに聞いた。
「はい、そうです。こないだはすみませんでした」
「そんな、いいんですよ」
お姉さんとおばさんは笑った。
――よし、言えそうだ。
「あの、お話しがあるんです」