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278 ◆c6PZzYalbM
【アバンタイトル】

視界の総てを覆い尽くさんとする黒煙。断続的につづく爆発音。立ち上る真紅の炎。
それらはさっきまで“みんな”がいた学校から立ち上がっていた。
「な、何てこった……連邦軍の輸送機が学校に墜落してやがる…。こ、これじゃ、ブリット達は……! ち、ちきしょおッ!」
兜甲児にはわかっていた。戦場に立つ者、戦士としての本能が告げていた。
あの時、あの場所にいた人たちは死んだ、と。
操縦桿を握りしめる。自分のせいかと心が締め付けられる。またなのか、祖父を守れなかった時のように……!
「案ずるな、兜甲児よ。直に貴様も同じ運命をたどらせてやる……」
あしゅら男爵の笑い声はしかし、甲児の闘志に火をつけた。
「くっ、こんなところで、やられてたまるかよぉッ!!」
燃えさかる街の空に、ホバーパイルダーが舞う。
そして、
「い、今の内にクスハを捜さなきゃ…!!」
今、一人の少年の運命の歯車が動き出そうとしていた。

──大丈夫だ。何かあっても俺が守ってやるよ。
そう言ったのに、そう約束したのに。
──あ、危ない! ブリット君!!
守られたのは自分の方だった。守れなかった、約束を、クスハを守れなかった!
『違う!』
吹き飛びそうな心を必死に手繰り寄せる。今はまだ折れるわけにはいかない。クスハは無事だ、彼女を捜して、今度こそ!
「返事を……、クスハァーッ!! 返事をしてくれぇーっ!」
答える声はない。爆発音と、黒煙と、瓦礫だけがブリットの瞳に映る総て。
「お願いだ……、返事をしてくれ……」

『来やがれ、あしゅら男爵! こうなったら相打ち覚悟で勘弁してやらあ!!』

それは突然脳裏に浮かんだ。
「か、兜が……あいつが今、死を覚悟した…!? な、何で俺は……何でそんなことがわかるんだ!?」
言葉ではなかった。それはまるで魂に響いたようなヴィジョンだった。そして、ブリットにはそれが気のせいでも心の迷いでもなく、事実だということだけがわかっていた。
極限状態がブリットにそれを疑わせなかったのか、信じさせたのか? 分からない。ただ、ブリットはそれが事実であると納得した。
だから、
「見たことがない機体……あいつが俺を呼んでいた?」
煙が引き、炎が消え、そこに現れた輸送機の残骸、そこに鎮座する鋼の超人にブリットは躊躇うことなく駆け寄ったのだった。

「俺だ、ブリットだ」
鋼の機体は思うがままに動いた。
その玉座はまるでしつらえたように馴染んだ。
卸したての車のような操縦席の匂いはなぜか郷愁を感じさせた。
「兜! 俺もこのグルンガスト弐式で戦う!」

スーパーロボット大戦α 第一話 『 鋼 の コ ッ ク ピ ッ ト 』