>>186 時は戦国の世。
特に何もすることもない俺は、ボーっとテレビを見ていた。
戦国時代なのにテレビあるのかよっ。とか、突っ込んではいけない。
そのあたりは、世の中は実に都合よくできているのだ。いろいろと。
「今回ご紹介するのは、この一品!」
どうやらショッピング番組をやっているらしかった。
時代背景を完全に無視し、黒いスーツをパリッと着こなした司会の男性が商品を紹介する。
『棺鎧!』
S・M・L・LLサイズがあるらしい。
「鎧は自分の体を守るもの。そんなのはきょうび当たり前。当社はそれに加え、戦場に、他人に配慮できる優しさを提供します!」
男性が、息を切り、間をためる。
同時にダダダ、と太鼓の音が鳴った。
司会の男性は、
「従来の鎧を装備していた侍の方が、万が一戦死してしまったとき。近隣住民による戦後処理は非常に不便なものでした」
非常に気の毒そうに言葉をつむぐ。
「まず、路傍の死体を片付ける。死体を鎧から脱がし、棺へと運び込む。これがまた腰にくる!」
と、ここで初老の男性へと絵が変わった。
キャプションには、近隣の農民・近藤義彦さん(68)と表示されていた。
「ええ、でもこの仕事を断るとお上の印象も悪くなりますでしょ。何より死体があったままだと畑仕事に支障が出ますしね」
元の画面に切り替わる。
「そこで、当社とNASAの共同開発により実現した棺鎧の出番です。これは、なんと装着者が戦死してしまっても、腰のここ、このボタ
ンひとつで棺に変形できるという優れもの!」
※単四電池四本が必要、とのこと。
「これにより、さっきまで来ていた鎧が、あっという間に装着者の棺に早変わり!」
「わーすごいですねー」
男性司会者の隣にいた、ないすばでぃの女性が、うそ臭い驚きの言葉を口にする。
「近隣住民の仕事の負担が劇的に減らせるという画期的な商品です!」
「こういう、にくいところでのちょっとしたやさしさを持ったお侍さんって、素敵ですよね」
「また、お試し保障一年がついてこのお値段!」
198万円ポッキリ! との表示。
「保障期間内なら、万が一おきにいらなかった際、返品時に料金をお返しいたします!」
「すごい! これなら私もほしくなっちゃう」
「今回はこれに加え、なんと干飯ダイエットタイプ半年分もお付けしてのご提供です!」
「メタボが気になるお侍さんにもぴったりですね」
おまちしーてーいまーすー。
俺はテレビをぶん投げた。
>>187その、なんだ。シリアスの後にこんなんでスマン。