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173創る名無しに見る名無し
「あぁ、その時の告白は失敗だった」
「えぇ〜! で、でも、えっ? パパとママ結婚したじゃない」
「まぁまぁ、落ち着きなさい、由美。父さんを舐めちゃいけない。父さんがたった一回く
らいで諦めると思うか?」
「うっ、確かに」
「父さんはしつこくアタックして、十七回目の告白でようやく母さんの首を縦に振らせた
んだ」
「十七回って……ホントにパパすごいね」
「あぁ、さすがの父さんも挫けそうになったぞ。最後の告白にな、造花なんだけど、ヒマ
ワリの花を差し出したんだ。『ヒマワリの花のように美しいあなたのことが好きです』っ
てな。そしたら母さん、ぽろぽろ泣きだして、泣くほどに嫌いなのかと思ったら『私もあ
なたのヒマワリのように明るい心を見せてもらいました。こんな私でよかったら付き合っ
て下さい』って、言ってくれたんだ」
 全然ダメダメなこんなパパとなんでママが結婚したのって、ママに一度聞いたことがあ
る。その時ママは『パパがね、ヒマワリみたいに澄んだ明るい心の持ち主だからよ』って
答えてくれた。今はなんとなくわかるかもしれない。
「それから父さんと母さんはずーっと仲良しで、そのままめでたく結婚したんだよ。由美っ
ていう自慢の娘も授かったしな。父さんも母さんも幸せすぎたんだよ」
 パパの横顔に一瞬暗い影がよぎった。それをすぐに吹き飛ばし、また笑顔になる。
「そうだ、知ってるか、ヒマワリの園って言うところがあってなぁ。…………」
 パパは、もうなにもかも忘れて嬉しそうに語っている。
 すーっと椅子を近づけて、パパの肩に寄り掛かる。
「ねぇ、パパ」
「ん? どうした、由美? 今のところもう一回繰り返してほしいのか?」
「それはいいの! ……あのね、パパ、ありがとう」
「……あ、ああ」
 よく呑み込めてないみたいで呆然としている。
「パパは優しいね」
「……ああ」
「パパはカッコいいね」
「う〜ん、それはどうだろ」
「パパ……ごめんなさい」
「どうしたんだ?」
「本当はパパの弁当嫌いなんかじゃないよ。そりゃあまずかったけど、でも愛情がいっぱ
い詰まってたの。あんなこと言わなきゃよかったって何度も思ってたんだ。それに今日の
ことも。パパにいっぱい迷惑かけたね」
「バカ。子供が親に迷惑かけてなにが悪い」
「うん。でも明日からどうしよう。あんなことしちゃったし……」
「由美、見てごらん」
 パパは目の前のヒマワリを指さす。
「こいつは昨日まではまだ花を咲かせていなかったんだ。それが今日はこうして立派に花
を咲かせている。明日は今日とはまるきり違うことが起こるんだ。明日に綺麗な花を咲か
せることだってできるんだぞ」
「……うん。ありがとうパパ。パパ、本当はずっとパパのこと、大好きだったよ」
「ああ、知ってる」
「パパはずっと私の味方だね」
「……ああ、もちろんだ」