学園島戦争 開始26年目

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1創る名無しに見る名無し
てす
2創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:20:16 ID:NmH4i9pF
今立てようとしてたのに!ムキー!悔しい!
3創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:21:35 ID:Bvqh4N3q
ここはWWU+魔法+学園というテーマでSSを書くスレです。
上記の縛りさえ守れば、世界観は職人の自由裁量にお任せます。仮想世界(ネットゲーム設定も可)や劇中劇、歴史スペクタクルでも構いません。
貴方も新たな歴史を書き連ねてみませんか?

1 SSは要項抜粋の短編、小説型長編のどちらでも可。内容はシリアスでもギャグでも大歓迎です。 
2 心無いレスは控えましょう。
  職人方々がやる気を無くし、スレの雰囲気が悪くなります。
3 作者叩きは、禁止。
  何か意見等があれば「○○の部分が、□□のようにおかしい」 「△△のような書き方は気をつけた方がいいと思う」 等、
  言いたいところをできるだけ丁寧に書いてレスして下さい。 より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
  「面白い」という意見も、ただ「乙」など一言でも結構ですが、
  「××がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、 職人方々にとっては何よりの応援になります。
  荒れそうな議論、突っ込みがあった場合は避難所の考察スレをご使用願います。

  避難所考察スレ
  http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5513/1146160497/

4 荒らしに反応する人も荒らしです。徹底スルーでお願いします。
  反応すると被害が拡大するどころか、削除依頼等が通りにくくなるので注意しましょう。

5 SS職人、絵師の皆様は常時募集中。
  設定などでわからないことがあったら、遠慮なく質問してください。
  軍事初心者でも大歓迎。
 
まとめサイト
http://www36.atwiki.jp/gakuenisland/pages/12.html

前スレ
学園島戦争 開始25年目
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1229175678/
4創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:22:35 ID:Bvqh4N3q
>>1
スレ立てに感謝!
5創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:23:40 ID:rwRdNvoz
前スレの流れ

458 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/26(水) 16:10:47 ID:???
同じトリップだからタイフーン本人だと思うが
ノベルゲームつくるってスレで自殺宣言してまとめ役放棄していなくなったんだけど
こいつって今までも自殺するとか言ってたりした?


460 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 15:13:17 ID:???
>>459
もう1ヶ月くらいたつけど自殺宣言してから一度も来なくなっちゃったんだよね
それまでは毎日来ていたのに


462 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 18:31:10 ID:???
今のタイフーンのトリップでぐぐったらすぐ出てくる
「魔法少女VS現代科学のノベルゲーム」ってところ

最初のころはタイフーンと名乗って書き込みしてたこともあったけど
基本的には1084飛行隊って名乗ってた

9月からやってたんだけど12月のはじめに自殺宣言したかと思うと
避難所のログ全部消してリセットしてったんだよね
だから記録も12月より前のはほとんど残ってないんだ
6創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:24:39 ID:rwRdNvoz
465 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 22:03:55 ID:???
外部掲示板のデータ消していなくなったんだったらそっちのトリバレどころかパスワードも知ってるってことだから
企画を向こうに立てた最初からずっとトリバレしていたか、それともやっぱり本人かのどっちかだろうけど
ぐぐってみた先の向こうのやつがSSとか見る限り本人っぽくも見えるんだよなぁ

本人が現れないことにはどうしようもないけど
なんか向こうに遺書とか書き残して消えたらしいね


466 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 22:35:57 ID:???
避難所のデータ消したってことは自殺宣言したのがタイフーン本人なのは間違いないな
VIPで活動してるとは言ってたし
その避難所作ったのがタイフーン本人だもの


474 名前:名無し三等兵 投稿日:2008/01/04(金) 03:12:13 ID:???
調べてみた。自殺騒動ってこれのことだね。1084=タイフーンというのは間違いないみたい

【絵師】魔法少女VS現代兵器のノベルゲームを作る【募集】
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1196514330/

472 名前: 1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM 投稿日: 2007/12/02(日) 23:00:05.80 ID:63d4sYe10
みんなごめんなさい。
責任取って自殺してきます。

481 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/12/02(日) 23:07:37.58 ID:RiZhRRERO
避難所に行ってきた
あのバカ、あれで遺書のつもりか!


--------
避難所に遺書を書き残し、その後、避難所の掲示板をリセットしたようで。
遺書の内容もどっかにコピペされてるんじゃないかな
なんかVIPで専用スレまで建ったりしたみたいだし荒れたみたいだね

1が自殺したようですwwwwww
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1196641506/


ま、どうしたものだか
7創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:25:34 ID:rwRdNvoz
VIPでタイフーンに協力していた絵師の意見を引用

やめた身だけど、意見させてくれ。見流す程度でいい。反応も求めない。あ、mfmtだ。
自分がやめたのは、こういう流れを見て主催の力量を見てしまったから。

>>1よ、なんでこの企画をうちだしたんだ?
思うに、ポッと思い浮かんだストーリーが頭の中でドンドン展開して
一人で感動してそれを形にしたいと思ったからなんだろ?
でも自分じゃプログラムも、絵も、話も作り出しきれない。
だから誰かにやってもらおうって気持ちから生まれたってとこだろ。違うか?

>>1にとって、所詮脚本家やプログラマや絵師は駒にすぎないって
どっかで思ってる節あるだろ。自分の世界観を壊されたくないと言ったな。
それって皆で作るって言えないんだよ。作らせてるって言うんだよ。
それなのに>>1は、皆が知りたがってることを納得するまで説明できない。
一部曖昧な部分に関しては練ろうともしない(ように見える)。
そのくせ駒ばかり集めようとするわ、少しでも世界観に手が出されようものなら
全力で排除しようとするわ

現状はどうだ。もう自分から丸投げじゃないか。
話もよくわからないゲームに、興味持って集まったのに意見は通されないわ、
あげくもういい帰れと言われてだれがついてきてくれる?

私生活のゴタゴタとかこっちには毛ほども関係ないんだよ。
やるのかやらないのかどっちかだ。
やらないなら早いうちにやめたほうがいい。厳しいこというようだけど。

一介のヘタレ絵描きが口を挟んだ
8創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:26:38 ID:rwRdNvoz
161 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:50:04.79 ID:63d4sYe10
>>159
無線と混線してるって設定にしてる。

つーか、俺一人で設定考えるのは無理だから誰か協力してくれるとありがたいです。


162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:50:12.22 ID:yIG2+HPz0
>>150
今からでも遅くないからとりあえず魔法がどういうものであるかだけは、
しっかり、それこそごり押しでも決めないと話がまるで進まないんじゃないかな
とりあえずは「様々なかたちで引き起こされる現象」とあるけど、
「最強魔法使い、地球を爆発させる魔法を使える上に毎日使う、主人公のマブダチでヒロインとも親しく〜」
みたいな滅茶苦茶な設定がきたらどうすんの?ってことになるだろ


163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:50:15.64 ID:ttS2DrOv0
すぐ熱くなって当り散らすのが悪い癖だな
人も寄り付かなくなるぞ


>>160
お前なんか俺の知り合いに似てるな
言えばいいって言っておきながらいざ言われたら後でブツブツ文句いうんだろ


165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:51:01.54 ID:p3US1jmj0
>>160
悪口っていうか事実


166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:51:39.69 ID:lkEDeYSn0
作品書き上げた事あるのに設定やプロット一人で考えるのは無理って、それはないだろ。
自分一人でもできるけど皆で考えよう、ってのなら別だけど


167 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:51:52.28 ID:63d4sYe10
>>163
ごめん、実生活で我慢することが多いからこっちだとファビョりやすくなってるみたい。


168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:52:37.04 ID:p3US1jmj0
>>161
見る限り現行のプロットじゃむりぽって意見が多くね


169 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:54:36.28 ID:63d4sYe10
>>162>>166
できないんです・・・できないんですよ・・・助けてください。
9創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:27:09 ID:KKDg3sub
>>1
乙さん乙なのだわ!
10創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:27:36 ID:rwRdNvoz
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:44:23.86 ID:p3US1jmj0
>>153
文ならそれじゃぜんぜん足らない

>>154
あるある。働き手はほしいけど仲間はいらないって感じ


159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:48:54.45 ID:eYX8UdyT0
あとさ、プロットを見る限りさ、主人公と魔女っ子が戦いながら会話してるっぽいんだけど、
会話方法ってなんなの? 
あと、ここらへんの知識が無いからよう分からんが、コクピット内って説得できるほど長時間会話できるものなの?


160 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:49:17.28 ID:63d4sYe10
>>158
どうぞ、好きなように私の悪口を書けばいいでしょう。
そのためにここに来てるんでしょ?
わざわざ空気悪くするために!
11創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:28:36 ID:rwRdNvoz
475 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/01/04(金) 22:34:38 ID:???
ただねえ、軍板にいた頃はこういうことするような方では無い感じだったので
にわかには信じがたいのも確かなんですよね。
前にもちょいちょいトリップ割られたことありましたし。

476 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/04(金) 22:56:04 ID:???
確かにちょっと無茶がすぎるというか
行動が突飛すぎる気がするんだよなぁ。

おさらいでもしながら待つかい?

477 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/01/04(金) 23:26:54 ID:???
>>476
件のスレ読まずにこういうこと言うのもなんなんですが、
>>474の当該書き込みが何の経緯も無しにいきなりあったものだとしたら
何か突拍子過ぎるんですよね。



481 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/06(日) 01:22:49 ID:???
>>477
人としてどうかって行動を取ってもおかしくないのが
張り付いてたから、トリ割ってそれくらいのことはやりかねんのよねぇ。
厨も沸いてるし、もう少し静観やね。

490 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/01/06(日) 23:09:44 ID:???
>>481
ただ、今のにしてから2年くらいは割れて無かったんでねえ。
そこらへんは本人に聞かないとなんとも言えないんですが。
とりあえず、待ちましょう。(何時まで? 来ないならどうする? という問題はありますが)
491 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/07(月) 11:31:08 ID:???
トリバレしてるとするなら、
避難所でタイフーンがVIPでやりはじめたと報告している去年の9月の時点ですでに中の人がちがうのだろう

さすがに、トリバレの上、
あの企画でタイフーンが独自で借りていた外部掲示板のパスワードまで
同時に割れるということはありえんし

すでにVIPのほうの企画スレとやらも見かけないし
もはや行方不明者だな
ひょっこり戻ってくるのかもしれんが
12創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:29:31 ID:urM/zqRy
>>1
13創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:29:34 ID:nW0Eph3s
>>1乙ー
14創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:29:50 ID:rwRdNvoz
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:30:18.30 ID:03a6/8MxO
わかりやすく言えばリンク先のゲーム製作スレで住人を駒扱いして妄想作品作ろうとした精神病患者がスレ住人から袋叩きにされて自殺


それでスレ住人大喜び


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:31:10.85 ID:03a6/8MxO
このスイーツ(笑)なスレ住人のこと

【絵師】魔法少女VS現代兵器のノベルゲームを作る【募集】
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1196514330/


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:33:18.81 ID:tqNW6O4e0
うわぁ……見てて胃が痛くなる……
もろに職場じゃねえか……


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:33:19.18 ID:03a6/8MxO
たかがゲーム製作で自殺する奴はバカにされて当然


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:36:28.57 ID:03a6/8MxO
>>21
嫌われ者の1084飛行隊が追い込まれていくさまは痛快だけど


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:37:13.93 ID:tqNW6O4e0
気分がいいもんじゃねーよやっぱりさぁ……。
嫌われ者のプロマネがちょうどこんな感じでさぁ……うわぁ……。
15創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:31:02 ID:rwRdNvoz
505 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/15(火) 12:00:20 ID:???
トリバレとか中の人が違う関連に関して私見

なりきりチャットというジャンルのサイトでは時々
自分の登録キャラクター(オリジナルであることが多い)の設定を全部コピペして
別のサイトに登録し、なりすまされるという「キャラ盗用」という行為が発生する。
それどころか、サイトのHTML構成をまるごとパクって殆ど類似か本物と
全く同名のサイトを立ち上げて、本物のサイトの管理人になりすますという
行為さえする人間が存在する。
本物のブログを「このブログ私が書いているから」と盗用サイトにリンクする事もある。

基本的に精神的にあまりにもアレ、異常な人がそうした行為をするわけだが
ちょうどタイフーン氏に粘着して何度かトリ割っていた「彼」ともかなり行動パターンは近い。
まあそういう部類の人間なんだろうけど。

自殺宣言したというタイフーン氏がなりすまされていたというには根拠が弱いが、
ネットストーカーの「彼」(ついでに「彼」の同一人物説も流れてる某コテ)の存在を考えると
黒に近い灰色な疑いになりそうな気がしてならない。
16創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:32:57 ID:rwRdNvoz
>>1
17魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/12(月) 20:45:09 ID:KKDg3sub
第九話『気高き信念』
1/2
「ウェーハハハハッ! ワシらユダヤの怒りはトイチでっせぇぇぇぇぇぇっ! 利子と元金、耳を揃えてオンドレのタマで払って貰いまっせぇぇぇぇぇぇっ!」

 あらあらあら。高利貸しのユダヤ人風情が頑張っています。

 そんな訳で第三帝国軍を奇襲していたりします。
 メンバーは私、アンさん、そしてユダヤ人のシャイロックさんです。
 なぜユダヤ人と馴れ合うような真似をしているのかというと、長年放浪――と言うよりは浮浪を続けているユダヤ人がどうにもこうにも可哀想なので、世界に冠たる大英帝国が救いの手を差し伸べたからです。
 ですが、勿論タダと言うわけではありません。第三帝国を倒させてあげるのです。ユダヤ復興の場所を適当に確保させてあげるのです。
 ちょっと違うような気がしますが、気にしません。気にしたら敗けです。

「ウェーハハハハッ! ワシのゴーレムは強いでぇぇぇぇぇっ!? よろしゅうおまっ! 金の代わりにタマぁで払いやぁぁぁぁぁぁっ! おおきに!」

 凄いですね、シャイロックさん。目をギラギラと輝かせての大活躍です。もっとも、活躍しているのはシャイロックさんの魔法のゴーレム君です。
 赤い一つ眼、丸い頭にピョコンと立っているツノがアクセントとなってユダヤの精神を現しているそうです。
 ザク、ザク、という足音はジオニズムの響きですね。
 申し訳ありません。只今不適切な表現がありました。正確にはシオニズムです。
 まあ、ちょっとした間違えですし、意味なんてわかりませんので些細な事です。
 正直な話、ユダヤなんてどうでも良かったりますので。
 なんにせよ、ユダヤを敵視したシェークスピアを考えると、どうでもいいという考えは物凄い進歩です。人類の革新です。
 これで私も立派な国際文化人の仲間入りです。
 さておき。
 シャイロックさん+ゴーレム君の頑張りは私とアンさんの活躍を強奪しますので、私達は応援する事しか出来ません。

「頑張るのだわ!」

「頑張ってくださーい」

 黄色い声援のせいなのか、シャイロックさんは更にノリノリで活躍しています。
 お洒落戦車や大変ご立派な大砲を載せたお洒落電車があっという間に鉄屑です。
 ちょっと勿体ない気がしないでもないのですが、仕方ありません。
 戦争に私情を挟むのは駄目なのです。教官さんがそう言ってました。
 なので。色々と我慢する事が必要なのです。

18創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:46:02 ID:nW0Eph3s
直球ユダヤ人ktkr
19魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/12(月) 20:46:08 ID:KKDg3sub
2/2

「我々――崇高なアーリア人種がユダヤ等という下等人種に負ける訳にはいかぬのだ!」

 あらあらあら。魔法兵っぽい殿方がシャイロックさんを方に乗せたゴーレム君の前に立ちはだかりました。

「なんやてぇぇぇぇぇぇぇっ? ワシもユダヤの帝王と言われたシャイロックやぁぁぁぁぁぁっ! その言葉ぁ……あきませんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 両者共に激しく相手を威嚇しています。視線で殺し合っています。

「貴様にはわかるまい……我が第三帝国の崇高なる理念をっ!」

「世の中は金でっせぇぇぇぇぇぇっ!」

 殿方――後で聞いたのですが、お名前はゴッチさんというそうです――の身体が膨張と言うよりは、巨大化しました。
 身長18m程度のゴーレム君と同じくらいですね。

「なんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 突然の出来事に身の危険を感じ過ぎたのか、ゴーレム君とシャイロックは時間が止まったみたいに動かなくなりました。

「――スピリットはマネーでは買えない。オンリー・トレーニングだ(意訳)」

ゴッチさんは素早くゴーレム君のバックを取ってすかさずにクラッチし、後ろへと反り投げました。

轟音を立てながらゴーレム君は危険な角度で地面に突き刺さります。
 ですが、見るべきはそんな物ではありません。
 ゴッチさん筋骨隆々な肉体が描くロンドン橋よりも美麗な人間橋。
 その名は――。

「ジャーマン・スープレックスホールド!」

 かくして奇襲作戦は失敗。ゴーレム君は木っ端微塵に砕け散り、シャイロックさんは未帰還となりました。
 ですが、第三帝国軍に大損害を与えたので私達二人は偉い人に褒められました。

 それにしてもスゴいですね、ゴッチさん。本当の真剣勝負を見せて貰いました。
 そのお陰で持病の男性恐怖症がちょっぴり快復に向かいましたが、まだまだ安心は出来ません。

 それにしても、大変ご立派な大砲を載せたお洒落電車は素敵でした。お土産に欲しかったです。


――To be continued on the next time.

わたしによるキャラクター紹介

シャイロックさん
ユダヤの帝王を自称する高利貸しです。
アーメン。

ゴッチさん
第三帝国の頑固魔法兵です。
魔法お姉さん情報によると趣味はトレーニングだとか。魔法で巨大化するみたいです。
ゴーレム君
シャイロックさんが神の名の元に鋳造した魔法です。
推定無罪だとか。

20魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/12(月) 20:47:03 ID:KKDg3sub
以上、魔法少女軍事系第九話投下終了。
21創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:47:48 ID:Bvqh4N3q
うーい乙ー
22創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:49:52 ID:MXe1dcYE
やっぱいいなあw
23創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:50:24 ID:nW0Eph3s
往年の名選手wwwwwすげえ肉弾派魔法兵だ
エーリヒこの人と組めばよくね?
24創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:52:25 ID:u8g33BLS
乙です
25創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:56:22 ID:Bvqh4N3q
魔法少女軍事系の世界には狼の名を関する関節技の鬼や、氷の皇帝と呼ばれる無敗の格闘家がいるのかな。

26創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:58:50 ID:sTtFldIw
リングス知ってるとか何歳だよ
27創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:59:21 ID:KKDg3sub
>>25
鉄人とか銀髪鬼とか人間発電所ならいるかも知れない
28創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:02:59 ID:Bvqh4N3q
プロレスに詳しい人もいるのかここw
じゃあロシアからレッドブル軍団来襲ですね!
29創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:05:52 ID:zn9X2fuK
赤きサイクロン…サーセン
30創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:06:18 ID:KKDg3sub
ソ連は北国です。
31魔法少女孤独系1-1/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/12(月) 21:13:14 ID:MXe1dcYE
 ボートから降りて膝まで水に浸しながら、私は白く輝く砂浜に向かって足を進めた。
 浜辺の林から天空まで延びる青のグラデーション。感性の鈍い私でも開放感を持て余し
てしまうほどの自由――。

「こっち側は随分平和なんだ……」
 焼けた香りを漂わせる白砂達が一度は足に纏わりつくものの、強い日差しを浴びてぱら
ぱらとこぼれ始める。
 私はそれを乱暴にはたき落とした後、腰のあたりまで水を吸ってしまったマントの裾を
絞った。濁ったような灰色の水が、ぼとぼと音をたてて砂浜を黒く染める。
 そんな一連の流れが今までの学園生活を表しているように思えて、唇を噛んだ。

「もう、どこに行っても同じなのかな。私」
 林の陰まで入り、ゆっくりと流れる雲を目で追いながら腰を落とす。
 少し休んだら行こう。別に変わりたくてここに来た訳じゃないのだから。
 目を閉じると聞こえる波の音、のんきな鳥の鳴き声。見えなくても感じられる美しさは
好きだ。私には――

「見てましたよ。驚くべきことです、こんな所にわざわざ一人でやってくる人がいるとは」
 突然聞こえた声に振り返り、咄嗟にマントで顔を覆う。

「大変怪しい身なりとは思えますが、今のところあなたから敵意は感じられません。どこ
の学園の生徒かは存じませんが、念のため警告しておきますと、ここは戦闘区域です」
「あ、あの」
 見ると身なりの良さそうな細身な少女がまっすぐに私を見つめていた。
「女性なのですね?」
「う……」

 人に話しかけられるのが久しぶりだったもので、何をどうしたらいいのかすっかり動揺
してしまっている。情けないけどしょうがない。
「そんな格好をしていては。誰に殺されても文句は言えないです」
「も、もう行くから……」
「はやとちりは人生縮めますよ。誰も立ち去れとは言っていないのです」

 見え透いた優しさなど私には必要なかった。心配されることなんて何もない。
 汚れたバッグを掴んで少女に背を向ける。進む方向は今決まった。この少女とは逆に
向かって行くことにしよう。美しいものは敵だ。
32魔法少女孤独系1-2/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/12(月) 21:16:14 ID:MXe1dcYE
「私、現在ストライキ中でしてね」
「は?」
「楽しみにしていた紅茶をいただけなかったのです、酷い話だと思いません?」
「何が言いたいの?」
「あなたを今ここで処分する道理はない、そう言いたいのです。ですから教えていただけ
ないかしら、あなたは一体――」
「うるさいな!」

 あまりにしつこいので私は言葉を遮り、隠していた顔を彼女に向けて曝け出した。
 一瞬目を見開いた彼女の表情は、私が何度も目にしてきたものと同じだった。まるで汚い
ゴミでも見るかのように、恐ろしい悪魔でも見るかのように。
 そして、次にくるのは決まって哀れみと同情なのだ。偽善――

「酷い痣ですね。この世のものとは思えません」
「な……」

 予想外だった。
 こそこそと陰で言われ続けてきたことを面と向かって言われ、腹が立つよりも先に頭の
中が真っ白になってしまった。

「とは言ってもその様な表情は中々に魅力的ですよ、少なくとも私の友人の中では」
 続けられた言葉に力が抜け、思わず吹き出した。私のこの顔をみて魅力的とは、冗談でも
言えるものではない。つまるところこの少女はよっぽどの人格者か、人を見る目がないかの
どちらかだ。
 久しぶりに声をだして笑った後、私はバッグを落ろした。
「ごめんね。人と話すのって苦手で」
「お気になさらず。私、こう見えても正直物ですので」

 面白い少女だ。こういう人が私の学園にもいたのなら、少しは違った人生になっていた
のかもしれない。
「私は……」

 相槌の代わりに柔らかい笑顔。不思議と心が落ち着くのはどことなく母親に似ている輪郭
のせいだろうか。いや、それすらもう定かではないのだが。

「この辺りに私と同じ能力を持った人がいるって聞いて、ここに来たの」
「同じ能力……魔法のことですか? 興味深いですね」
「出ておいで、ラグ」
 胸元をくすぐる動きが次第に襟まで近づいてくる。私にとってこの感触は掛け替えのない、
大切な愛そのもの。
33創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:17:00 ID:Bvqh4N3q
支援
34魔法少女孤独系1-3/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/12(月) 21:17:59 ID:MXe1dcYE
「よいしょっと」
 襟から飛び出したラグは、肩までよじ登ると少女に向かって挨拶をした。
「はじめまして! ラグナナでーす」
 私を蔑んだ全ての人間に反し、この羽の生えた小さな女の子――ラグナナだけはいつも
私の味方だった。

 ラグを見た少女は、私の素顔を見たときよりも驚いた様子だった。当然だと思う。
「まあ、これは可愛らしい。妖精さん……」
「妖精だったらいいんだけどね、正直わかんない。私が一人ぼっちになったとき、ラグは
私の前に現れたの」

 少女は眉をひそめて難しい顔をした後、穏やかな目を私に向ける。
「その人を探してどうするつもりなのです?」
「それもわかんない、とりあえずお喋りでもしてみたいな。それにラグの友達ができたら
私は嬉しい」
「それだけの理由でこんなところへ?」
「うん」

 嘘ではないけど、本当にここに来た理由は違う。それは誰かに話してもしょうがないこと。
夢見がちな少女がそんなことで戦場に来たなんて、話したところで笑われてしまうに決まっている。

 ――それは私達の学園に広まっていた噂のひとつだった。
 学園島のどこかにあるマナ密集区。その場所は不思議な力で満ち溢れていて、辿り着けば
必ず願いが叶うという、ありふれたロマンチックなもの。
 真実かどうかなんて分からないし、どこにあるかも知らない。それでもラグ以外に失う
ものを無くした私にとっては確かめてみる価値のある、最後の希望であり目的だった。
 それに、どこで何があろうと、少なくともあの学園よりは……

 会話は途切れ、再び波の音が私達を包む。ゆったりした時間の流れはそれほど悪いもの
ではなかった。でもずっとこうしている訳にもいかない。
「ありがと、それじゃ私行くね」
「お待ちなさい。あなたが探している人というのは――」

 その時、突然大きな破裂音が鳴り響いた。かと思うと頬に感じる鋭い痛み。一瞬何が
起きたのか分からなかったが、少女の目つきが鋭いものに変わったのを見て、私はここが
戦場であることを思い出した。
「伏せなさい」
「……え?」
「早く!」

 押さえつけられ砂に顔を埋める。瞬間、私達の頭上を無数の弾丸が掠めていった。
 戦場――それは私が思っていたよりも遥かに危険で、死に近い場所。私はそれだけの
覚悟をしてここに来たのだろうか? 小さな疑問が頭をよぎる。

 考えるまでもない。当然だ。
35創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:18:57 ID:MXe1dcYE
とりあえず1話投下おわり

5話ぐらいでおわると思うけど、遅筆なのできまぐれに。
あと諸般の事情により中断ありwww
36創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:21:30 ID:KKDg3sub
GJ!
37創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:21:58 ID:Bvqh4N3q
投下おつー

さて、じゃあ俺もそろそろ投下するか
38 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:24:47 ID:C0I4CfZH
遅まきながら乙
39創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:26:20 ID:Bvqh4N3q
1000 :創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:24:48 ID:g28jUOif
1000なら皆パンツじゃないから恥ずかしくない

どういうことなの・・・
40創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:29:23 ID:MXe1dcYE
俺にもよくわからなかたw
41創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:34:38 ID:XLkSy/v6
なんでストライクウィッチーズ
42創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:42:21 ID:hxl6Dgcb
新スレおめおめ
43創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:58:12 ID:Bvqh4N3q
妖精さんとエーリヒが見ている幻影の女の子は同じ存在だったりしてね
44創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 22:09:19 ID:sTtFldIw
学園島風物詩か
45創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 23:52:54 ID:Bvqh4N3q
学園島での戦いは何をもって終わりになるのか、考えている人はいる?
46創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 23:53:22 ID:yaaZFDCm
>>31-34
乙で
戦場に出たことのないような感じですな
さしずめ学園で純粋培養されてでもいたんでしょうか

脱走みたいですけど、なんか冒険しに来たような感じが
ボートをせっせと漕いでやっと島に着いた、上陸したという感じ
達成感に気をとられて敵中にいることを忘れたんですかねえ
47創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 23:55:17 ID:/+5MYio8
■「韓国侮辱」日本アニメ『ヘタリア』 … ネチズン怒り爆発
今月24日から放映される日本の新作アニメ「ヘタリア」に対する(韓国)国内ネチズンたちの怒りが
拡大している。一部のネチズンたちは、このマンガの韓国への侮辱ぶりは「国際紛争ものだ」と まで主張している。
「ヘタリア」は世界各国を「擬人化」した、第二次世界大戦を素材とするギャグマンガで、
戦争の主犯国であるイタリア・ドイツ・日本のほかイギリス・フランス・ロシア・リトアニア・スイス・ 中国・韓国など約20ヶ国が登場する。
このマンガは該当の国家を象徴する各人物の特徴を設定しているが、

問題になっている部分は「韓国」として登場する人物の特徴だ。
http://imgnews.naver.com/image/143/2009/01/12/090112min03.jpg

このマンガでの「韓国」の特徴は、
△日章旗が大好きで、いつも持ち歩いている、
△アメリカにすぐ依存しようとする、
△日本の真似をする、
△中国を「お兄さん」と呼ぶ、
△いつも「ウリナラマンセー(我が国万歳)」を叫ぶ、
△何でも「ウリナラの物」と言い張る、
△何かあれば日本の胸を触ろうとする、
などだ。

アメリカ・中国・日本との国際関係において我が国を屈辱的な位置に転落させていることが
誰でも一目で分かる特徴だ。特に、日本の胸を触ろうと思う変態的気質と、
何でも「ウリナラの物」と言い張るという点に対しては、「独島領有権問題と関連があるようだ」との
主張まで出ており、ネチズンたちを激昂させている。
そのうえ、このマンガは日本の子供向けチャンネル(キッズステーション)で放映される予定だ。
そのほかにも、在日韓国人3世の声優・朴ロミさんが「スイス」役で
このマンガに参加するという事実は、怒りとともに虚脱感さえ抱かせている。
このマンガは一時、放映が中止されるという噂も出たが、現在公式ホームページには24日から
放映されると出ている。

ネチズンらの怒りは今や頂点に達している。現在ポータルサイトで「ヘタリア」で検索すると、
「日本の新しい蛮行だ」「呆れた」「放映を阻止すべき」「国際紛争ものだ」など、
ネチズンの怒りが綴られたブログや投稿文が並んでいる。

「ヘタリア」は、「らんま1/2」「逮捕しちゃうぞ」など1980年代から現在まで相当数のヒット作を製作した
スタジオディーンの製作だ。浪川大輔、杉山紀彰、釘宮理恵など超豪華声優陣がキャスティングされて
おり、相当の人気を呼ぶと予想されている。

「韓国」を担当する声優はまだ決まっておらず、もう一つの
関心事として浮上している。

▽ソース:国民日報KUKINEWS(韓国語)(2009-01-12 11:15)
http://www.kukinews.com/news/article/view.asp?
page=1&gCode=soc&arcid=0921157406&cp=nv
http://news.naver.com/main/read.nhn?
mode=LSD&mid=sec&sid1=102&oid=143&aid=0001974066

▽別ソース:DCニュース(韓国語)(2009-01-11 17:46)
http://www.dcnews.in/news_list.php?
code=ahh&id=364623&curPage=&s_title=&s_body=&s_name=&s_que=
48創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 00:01:22 ID:vjixWfwc
WWUの時代には韓国なんて国は存在すらしていないんだがな
49創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 00:18:42 ID:FBYRqdyd
学園島戦争は余韻を残した終わり方でいいでないかい
50創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 13:37:38 ID:BnQM4UkB
魔法少女軍事系WWWWWWWWWW
51 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:23:56 ID:68J6cNSm
支援
52創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:34:59 ID:Ya9+IQZY
学園島の戦争の終わり方は人それぞれだと思うよ。
書き手の自由で良いっしょ。
では投下開始。
53魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/13(火) 20:36:18 ID:Ya9+IQZY
第十話『覚醒』
1/2
「逃げろ! 敵襲だ!」

「イギリスだ! 逃げろ!」

 わーわーわー。

 一言で言えば呆気なく。語る気も起きないほど簡単に戦闘は終わりました。
 理由は簡単、私達大英帝国が強過ぎるからです。
 すみません、嘘をついておりました。
 敵がイタリアだからです。
 イタリア軍が弱いという噂を聞いていたのですが、それは本当だったみたいです。 私とアンさんのか弱い乙女コンビだけでで快勝です。
 ですが。

「フェアリー・テール! 其所に誰がが隠れているのだわ!」

「――みたいですね」

 やっぱりいますね、逃げ遅れた人。
 魔法兵である私は一般人に比べて気配を察知する能力が高いです。
 乙女の勘センサーがビンビン反応しています。
 10m程前にある段ボールが不自然にガタガタと動いています。
 窮鼠猫を噛む(意訳)という言葉があります。いくらイタリア人といっても追い詰められると何をしでかすのかわかりません。
 緊張が走ります。やけに喉が渇きます。
「きゃあっ!」

静かにゆっくりと近付こうとしたのですが重苦しい空気が苦手なので転んでしまいました。

 刹那、段ボール箱から何かが飛び出して来ました。

「やあキミ大丈夫かいボクが来たからには安心だよ良く見ると可愛いねぇキミの瞳はまるで宝石みたいだよとりあえずボクとシェスタしない良い店知ってるんだ」

 やっぱり何かはイタリア人でした。しかも、チビッコです。更には魔法兵っぽいです。
 大袈裟な身振り手振りでマシンガンみたいな話術を披露してます。

 私とアンさんは呆気に取られてしまいました。

「おやおやもう一人キュートな彼女がいるじゃないか嬉しいなボクは幸せだよキミタチみたいな女の子に会えるなんてこれはもう神様の思し召しだねああっ神様っありがとう」

 ペラペラ喋っているイタリア人を尻目に、私は立ち上がります。
 アンさんはと言えば、微妙な顔をしています。

「フェアリー・テール、何を言ってるのか分かる?」

「いいえ、ちんぷんかんぷんです」

 まあ、わかる筈ないですよね、イタリア人の与太話だなんて。

「なになにもう安心さ大丈夫さ悪いイギリス軍はボクが追い払ったからねお礼なんていらないよキミタチの笑顔がなによりの報酬さ」

54魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/13(火) 20:37:35 ID:Ya9+IQZY
2/2
 あ。今のはちょっとわかりました。

「あのう、すみませんが……」

「私達がイギリス軍なのだわ!」

 私達の言葉にイタリア人は――。

「えっマジやめてよ痛いの嫌い戦争反対平和大好き虐めないで殺さないで許してマジ勘弁して頼むよお願いです助けて犬とお呼びくださいお嬢様」

 無様で卑しい犬っコロみたいな服従ポーズで泣きながら命乞いをしていたりします。

「……いいのだわ……ゾクゾク……するのだわ……」

 アンさんはサディスティックな笑みを浮かべて身体をくねらせながら悶えてしいます。
 ハッキリ言って眼が怖いです。
 ですが、その気持ちわかります。
 あどけない少年――というより幼児が、恐怖に顔を歪めてガクガクブルブルと震えているのです。
 理由は良く解りませんが――イイ感じにヘンな気分になります。
 ならない方がおかしいです。

「――犬。命が惜しければ――解っていますよね?」

 自分で自分にビックリです。優雅で麗しい乙女の私が冷酷な声で喋っています。

「勿論ですボクは憐れで賎しい犬っコロです命令には絶対服従します靴だって舐めますだから痛くしないで助けてくださいお願いしますご主人様」

 そんな訳で。
 奴隷――ではなくて――お土産でもなくて――敵兵一名お持ち帰りです。

 しかし、良いですね、コレ。
 透き通るような金髪はサラサラで、空みたいに青い瞳はまるで人形。
 幼児体型だけど、肌は綺麗でつやつや。
 理由は言えませんが――なんか良いです。

 アンさんとの協議の結果、人道的な配慮で捕虜にはせずに二人でペットとして飼う事にしました。

 取り敢えず私のお古を着せて遊ぼうと思います。


――To be continued on the next time.

わたしによるキャラクター紹介

ペット
元イタリア軍の魔法兵です。
今はペットですが名前はまだありません。そのうち付けます。
55魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/13(火) 20:38:42 ID:Ya9+IQZY
以上、魔法少女軍事系第十話投下終了。
この物語はどこに行くんだろう……
56 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:38:43 ID:68J6cNSm
まったく人道的じゃねえwww
57創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:40:54 ID:Ennug3G6
お疲れ様、楽しませてもらってますよん
58創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:45:06 ID:nVyRDpm1
乙っす。

カオスだなぁw
59創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:03:20 ID:nQFmedzR
いいなーこのわたしのゆるい一人称いいなー
妖精さんが出てこなくてさびしいです><
60創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:08:11 ID:pQ7//sf8
妖精さんにとってペットはどんな位置になるのかな
61創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:10:42 ID:nVyRDpm1
21:45から投下いきますよー
62創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:13:41 ID:Ya9+IQZY
支援するよー
通し番号を入れてくれると嬉しいな
63創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:15:05 ID:nQFmedzR
>>60
んーこの話の妖精さんはいつもいるわけじゃないからなー
だけどなにせペットだし神様な人間さんとはみなされないかもなw

>>61
はいよー
64創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:17:46 ID:nVyRDpm1
>>62
ういー
6575 ◆kkZO9WMBek :2009/01/13(火) 21:46:13 ID:nVyRDpm1
そんじゃ始めるんだぜ
661/29:2009/01/13(火) 21:47:55 ID:nVyRDpm1
学園島戦記譚 第二部 -死闘編-

プロローグ 

 それは雪の降る、寒い寒い日だった。
 少年はその日、初めて金髪の少女と出会った。
「はじめまして」 
 髪を撫でてくれた少女の手は暖かかった。 
「はじめ……まして」
 少年は心の奥に暖かいものを覚える。
 何故だろう?
 少女は微笑み、身を屈めた。
 僅かに揺れる金色の髪が、とても綺麗だった。
「あっ……」
 頬に唇が触れる感覚。
 少年が顔を真っ赤にして顔を上げると、少女も同じぐらい顔を赤くしていた。
 少し気恥ずかしそうに笑う金髪の少女を前にして、少年の胸は大きく高鳴る。
 顔が熱の塊になったようだった。 
 これが恋なのか――少年はこの時、そのことを知った。
67創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:48:28 ID:nQFmedzR
68 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:48:47 ID:68J6cNSm
加速
69創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:49:05 ID:Ya9+IQZY
C
702/29:2009/01/13(火) 21:49:05 ID:nVyRDpm1
第一章

 時計の針が午前二時を指す。
 隻眼の少年はシートから身を起こし、背筋を伸ばした。
「んー……」
 西方条約軍エーリヒ・シュヴァンクマイエル中佐は濃い茶色の髪を掻く。
 彼は優しげな顔立ちをした少年は十七歳で、風貌は男子よりもボーイッシュな女性に近い。
 左目は黒い眼帯で覆われ、顔の左側は額から頬にかけて火傷の跡が走っていた。 
「アルベルトいるかい?」
 エーリヒが唯一残った視覚器官である右目を何度も擦りながら聞く。
「ここにおります。中佐殿」
 老け顔の将校は頷いた。
 アルベルト・ゲルトバウアー大尉はエーリヒを補佐する副官だ。
「全部隊、いつでも出撃可能です」
「はいはーい」
 ここ学園島では、西方条約軍とヴォルクグラード人民学園軍の二大勢力が泥沼の戦いを繰り広げている。
 地球を学園島に見立て、『学園』を国家として、その生徒たちを『兵』として戦争が行われていた。
「しかし、司令部も無理も言います」
「連中が無理じゃないことを言ったことが、今まであったか?」
 そう言ってエーリヒは木々の間から覗く月を見上げた。
 今回彼らが与えられた任務は、ヴォルク軍のヒューナースベルグ要塞を攻略することだった。
 ヒューナースベルグ要塞は元々西方条約軍の要塞だったが、先日の戦いでヴォルク軍に奪われてしまった。
 要塞が存在することで、条約軍は西側領土へのヴォルク軍侵攻を未然に阻止し続けてきた。
 この難攻不落の要塞を、エーリヒは今から攻略する。
「さて、どうなるかな」
 エーリヒは両軍の戦力を脳内で比較する。 
 まず自軍――エーリヒ戦闘団の戦力はこうだ。
 突撃砲三十両。
 装甲擲弾兵五百名。
 八十八ミリ高射砲八門、一個中隊。
 三.七センチ自走高射砲十門、一個中隊。
 二センチ自走高射砲一個中隊。
 自走榴弾砲三個中隊。
 十五.五センチ重カノン砲一個中隊。
 各種支援部隊。
 兵員合計、千二百名。
71創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:50:12 ID:nQFmedzR
723/29:2009/01/13(火) 21:50:25 ID:nVyRDpm1
「贅沢は言えないけど……せめてあと二倍は欲しいなぁ」
 ヴォルク軍はエーリヒ戦闘団に比べて二倍から三倍の兵力を誇っているはずだ。
 それは増えても、決して減らない。
 ヴォルクグラード人民学園に校力で大きな差をつけられている西方条約諸校は、常に劣勢の戦いを強いられていた。
「まぁ、なんとかしなきゃね」
 やれと言われた以上、やらねばならない。
 勝算の無い戦いをするぐらいなら、自分の足に拳銃の引き金を引いた方がまだマシだ。 
 名誉の戦死や崇高な犠牲といった単語は、エーリヒが世の中で最も嫌いな部類に入る。
「微力を尽くしますかね」
 エーリヒは母親お手製のベレー帽を被り直す。
 まずは第一段階だ。
 全部隊へ向けて通信を送るため、無線機を取る。
「これよ……」
 電源が入っていない。
 スイッチを入れ直して、もう一度。
「これより"ドンネルシュラーク"(雷撃)作戦を開始する。みんな、死なない程度に頑張ろう」
 気の抜けたことを言っている自覚はあった。
 だがいくら大きな声で味方を鼓舞しても負ける時は負けるのだ。
 戦う前に無駄な体力は使いたくない。
 戦場にはドラマは存在しない。
 淡々とした生と死が行き交っているだけだ。
 勝って、生きて帰る。
 これだけを把握していれば、後は何の問題もない。 
73創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:51:20 ID:JXKcfi2H
支援
744/29:2009/01/13(火) 21:51:35 ID:nVyRDpm1


 ヒューナースベルグ要塞の"現在の"持ち主であるヴォルク軍の司令官はマイコ・パステルナーク大佐だ。
「しかし、要塞守備隊というものは退屈なものだ……」
 長めの髪は濃紺。
 琥珀色の瞳が印象的な顔立ちは端正だった。
 彼女は魔道兵だった。
 魔道兵とは地球を落下させた隕石に含有されていたマナ・クリスタルを使用することで常人ならざる能力を手に入れた兵士の総称で、ヴォルク軍の花形である。
 マイコが若くして大佐まで成り上がったのも、魔道兵として活躍したことが大きい。
「大佐。そこまでです」
 彼女の言葉を遮ったのは、副官の嗜めだった。
「重要な任務は退屈なものなのです。そのような言動はお控え下さい」
 そんなことはわかっていると反論して、マイコは口をへの字に曲げた。
「もう……」
 エレナ・ヴィレンスカヤ大尉は『柔』という言葉が誰よりも似合う。
 艶のある金髪。
 柔和な横顔。
 時々マイコは純白の頬を意味も無く引っ張りたくなる。
 彼女も魔道兵であり、マイコの副官を勤めていた。 
「この要塞があるからこそ、ヴォルクは条約軍に対して優位に立てるのです」
 エレナはそう言う。
 要塞があると、西側への交通路が確保される。
 西側は戦力を割かなくてはならず、ただでさえ少ない兵力を釘付けにしておかなければならない。
「だがエレナ、私は軍内部での地位を求めているのではない。ヴォルクそのものを……」
「静かにする」
 マイコの唇に、エレナの人差し指が当てられた。 
「大佐、話す際は時と場所をわきまえて下さい。兵達にいらぬ動揺を与えます」
「本当はお前自身が動揺するからだろう」
「何とでも」
 二人は見合う。
 マイコは、エレナの青い蒼茫を。
 エレナは、マイコの琥珀色の瞳を。
「パステルナーク大佐!」
 通信手の声が二人の間に張り詰めた空気を打ち消す。 
「どうした?」
「妙な通信が条約軍の無線に流れています」
「読んでくれ」
75 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:51:58 ID:68J6cNSm
ksks
76創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:52:19 ID:nQFmedzR
775/29:2009/01/13(火) 21:53:03 ID:nVyRDpm1
 通信手は紙に記した通信の一部始終を話す。
 秋の日の、ヴィオロンの、ためいきの……。
「なんだそれは?」
 マイコは足を組み、顎に手を当てて考え込む。
「ポール・ヴェルレーヌの『秋の歌』、前半一節ですね」
 先に答えを出したのはエレナだった。
「お前は詩人だったんだな」
「大佐が無教養なだけです」 
 マイコは眉間に皺を寄せ、顔をしかめた。
「すみません。気分を害されましたか?」
「いいや……」
 より強力な不快感がマイコの中に生まれていた。
 詩を戦場で流す。
 こんなふざけたことをする奴は、学園島に一人しかいない。
「いるな、奴が」
「大佐、まさか」
「奴だ。エーリヒ・シュヴァンクマイエルだ。わかる、私にはわかる」
 エレナの顔が驚愕と緊張で染め抜かれた。
「あの人が……」
 エーリヒ・シュヴァンクマイエル――その名前は二人の心に深く刻まれている。
 西方条約軍の天才的な戦術家であり、不可能を可能に変え、圧倒的な戦力差でさえ覆す存在。
 一騎当千の魔道兵でさえ、彼の前では玩具に過ぎない。
「確かな確証はありません。考えすぎではありませんか」
「確かにいるという確証はない。だが、いないという確証もないのだぞ」
 マイコは苦々しく言い放つ。
 今、要塞はヴォルク軍のものだ。
 だが明日の今頃には、条約軍のものに変わっているかもしれない。
 エーリヒ・シュヴァンクマイエルにしてみれば、要塞の一つを攻略することなど造作も無かろう。
 立ち上がり、マイコは命令を下す。
「偵察を厳にせよ。ヒューナースベルグ要塞は、只今より即応待機体勢に入る!」
78 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:53:18 ID:68J6cNSm
ksks
796/29:2009/01/13(火) 21:54:37 ID:nVyRDpm1


 月明かりに照らされた夜を、人口の光が切り裂く。
 ヒューナースベルグ要塞からサーチライトが空に向けて照射された光景は、要塞から離れた場所にいるエーリヒにも見て取れた。
「なんとまぁ」
「わかりやすい反応ですな」
 指揮用ハーフトラックの車上に立つエーリヒとアルベルトは双眼鏡を下ろす。
「敵の存在を察知するなり即応体勢。悪くない。敵の指揮官は有能だね」
「無能であった方がありがたくはありますが……」
「そりゃまあ、そうだけどさ」
 エーリヒはウィンクして、椅子に腰掛ける。
 ぬるいコーヒーを飲む彼の瞳には、怪しい光が宿っていた。
「優秀な人の方が、その分足元を掬いやすかったりもする」
 戦争という行為自体が、エーリヒは嫌いだ。
 だがその過程にある知略のぶつかり合いをどこかで楽しんでいる自分がいることも、また事実だった。
 そんな自分を嫌いつつも、戦場で部隊を率い敵を倒す自分が好きな面があった。
 所謂二面性というやつだ――とエーリヒは自己完結していた。
「少佐、詩の後半はいつ流しますか?」
 アルベルトが問う。
 音を立ててコーヒーを飲み、エーリヒは返答した。
「まだ流さなくていい。暫くは前半だけ流してくれ」
「わかりました。それと中佐、少し早いかもしれませんが、兵士達に食事を取らせては如何でしょうか」
「ああ、そうしてくれ。野戦炊事班を呼ぼう」
「敵に発見される可能性がありますが……」
「最後のメシになるかもしれないんだ。暖かいものを食っても、バチあたらないだろう」
「わかりました。手配します」
「よろしく」
 アルベルトがハーフトラックを降りた後、エーリヒは胸ポケットから一枚の写真を出す。
80創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:54:52 ID:Ennug3G6
 
817/29:2009/01/13(火) 21:55:56 ID:nVyRDpm1
 写真の中で仲の良さそうな姉弟が笑いあっている。 
 先日の戦い――条約軍がヒューナースベルグ要塞を奪われた戦いで、エーリヒを襲撃した魔道兵が落としたものだった。
 敵にも守るものがある。
 エーリヒが家族や友人を守るため戦うように、ヴォルク軍も同じような理由があるのだ。
 戦争が完全に悪と善に分かたれたものだったらやりやすいのに……とエーリヒは思う。
 善と善、正義と正義がぶつかり合うからこそ、戦争は度し難いのだ。
 エーリヒの中にも度し難いものは存在する。
 戦争という行為を嫌いながら、戦うことで家族や友人を守る自分を誇りに思う感情は、確かに存在していた。
「やめだやめだ。何を考えているんだ俺は」
 首を何度も横に振り、エーリヒは写真をポケットに戻す。
 稚拙な戦争哲学なんてものは、生きて帰ってからすればいい。
「さあ、飯にしよう」
 ハーフトラックを降り、エーリヒは食事を受け取る長い行列に並んだ。
 士官でも食べ物が欲しい時は順番を守る。
 エーリヒのポリシーの一つだった。
 列の向こうに、大きな煙突が立ち、美味そうな匂いを漂わせている。 
 シチュー砲――野戦炊事車だ。
 一度の二百名以上のシチューを調理し、同時に大量のコーヒーを温めることもできる。
 どうやら、白インゲンと牛肉をデミグラスソースで煮込んでいるようだ。
 エーリヒは口の中に湧き出してきた涎を飲み込まずにはいられなかった。
82 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:56:14 ID:68J6cNSm
ksks
838/29:2009/01/13(火) 21:56:23 ID:nVyRDpm1


 ヒューナースベルグ要塞の自室で、マイコは思考の海に浸っていた。
「詩の後半は『ひたぶるにうら悲し』か……」
 マイコは詩の後半部分を口に出す。
 これは一体、何を意味しているだろう? 
 条約軍はただひたすら、詩の前半部分を流し続けている。
 そこから算出されることは――。
「後半が来たら危ないと見るべきだろうな」
 詩や歌のフレーズが作戦開始の暗号として使われたことは何度かあった。
 それを踏まえて考えると、詩の後半が作戦開始のサインになる可能性が高いと思われた。
「だが……」
 マイコは思い止まる。
 相手はエーリヒ・シュヴァンクマイエルだ。
 敵は常識外れの作戦を立て、成功させる魔法使いなのだ。
 少なくともエーリヒは自分よりも高い戦術家の才能を有している……と、マイコは素直にそう思う。 
「私でさえ想像できることを、奴はするのだろうか? するわけがない……」
 ドアをノックする音が聞こえた。
 マイコは意識を思考の海から現実世界へと引き戻した。 
「失礼します」
「ベリエフか。入れ」 
 マイコの副官であるセルゲイ・ベリエフ中佐が入室してきた。
 もう四十歳になる中佐は、マイコにとって頼れる大人だった。
「ベリエフ、出撃の時期だが……」
「詩の後半部分が流れてからですね」
84 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:57:12 ID:68J6cNSm
ksks
858/29:2009/01/13(火) 21:57:49 ID:nVyRDpm1
「いいや。前半部分のうちに、敵は攻撃を仕掛けてくるだろう」
「何故です?」
「私程度に思いつくことだ。敵の指揮官が思いつかないはずがない」
「小官は反対です。敵は、大佐がそう考えることまで予測して行動している可能性があります」
「確かに、そうとも取れないことはないが……」
「私ならばそうするでしょう」
 マイコは床に視線を落とす。
「貴官なら、どうする?」 
 ベリエフは答える。
 次に詩の"前半"が流れたら、半数の戦力で迎撃に向かう。
 もしもに備えて残りは要塞に残しておく。
 無難な方法だが、一番確実とも言えた。
「では、その旨を良しとする。ありがとう」
 ベリエフが退室した後、マイコは卓上の写真を取った。
 写真の中にはマイコと、マイコを幼くしたような少年が抱き合っている。
 少年はユーリ・パステルナーク。
 マイコの弟だった。
「ユーリ、まもなく戦いが始まる。私を守ってくれ」
 そう言って、マイコは軽く写真にキスをした。
 再び詩の前半が流れたのは、その直後だった。
8610/29:2009/01/13(火) 21:58:19 ID:nVyRDpm1


 通算で二十八回目となる「秋の日の、ヴィオロンの、ためいきの……」が流れ終えて、偵察機から報告を受けるまでの時間は永遠に感じられた。
「偵察機より入電! 敵戦車部隊の出撃を確認!」
 エーリヒはふぅ……と安堵の溜め息を吐き、シートに背中を預けた。
 どうやら敵の司令官は深読みし過ぎたようだ。
 裏をかかれることを警戒して、裏の裏をかかれた。
 エーリヒは詩の前半を何度も流してヴォルク軍に「条約軍は詩の後半が流れた時に攻勢を仕掛けてくるに違いない」という固定観念を植え付け、思考を硬直化させた。
 そしてヴォルク軍は「条約軍は後半が流れる時に攻撃開始を行うように見せかけ、実は詩の前半の段階で攻撃を仕掛けようとしているのだ」と考える。
 優秀な指揮官だからこそ、このような策にほいほいと引っかかるものだとエーリヒはよく知っていた。
「敵の守備隊を引き離す。詐欺をやるぞ」
 エーリヒの指示を受けて、偽装戦車隊が行動を開始した。
 トラックに木の板を貼り付けて戦車に偽装させた車両の群れは、横一列に広がって要塞を目指す。
 車体後部に積んだドラム缶から排気炎を装った姿は、遠目から見れば本物の戦車にしか見えない。
「敵部隊、偽装戦車隊に向けて前進中!」
 通信手はリアルタイムで報告する。
「数はどれぐらいだ?」
「偵察班からの報告によりますと、およそ要塞守備隊の半数が出撃しているようです」
「半数か……何とか勝負になるな。アルベルト、ここじゃ戦況がわかりにくい。移動するぞ」
「ハッ。ですがハーフトラックでは危険です」
 戦車を用意するとアルベルトは提案したが、エーリヒは丁重に断った。
 確かに安全と言えば安全だ。
 だが……。
 戦場でエーリヒが突撃砲や戦車に乗りたがらない理由はある。
 一度戦車で前線指揮を執った時、戦車の内部に対戦車ライフルの銃弾が入り込んで乗員を"ミンチよりひどい"状態に変えた。
 戦車は乗員を変えて再出撃したが、車内は血や臓物で酷いことになっており、エーリヒは腐臭の中で発狂しそうになった。
 挙句の果てに座り過ぎが原因で坐骨神経痛で入院する羽目に陥った。
 大体戦車は一般に思われているほど良いものではない。
 車内で小便をして、空薬莢に入れて捨てたり、ひたすらエアフィルターを掃除するだけで一日が終わるのだ。
 すぐに壊れる上に乗り心地は最悪、手動でギアが入らないので、ハンマーで殴って入れたこともあった。
 エーリヒは戦車兵や整備兵に対して尊敬の念を抱いているが、自分でそれをやろうとは思わなかった。
「というわけで、俺はハーフトラックでいいよ。ごめんね」
8711/29:2009/01/13(火) 21:58:47 ID:nVyRDpm1


 一斉にエーリヒ戦闘団の本隊が行動を開始した。
 森の中で偽装網や樹木を実に纏っていた鋼鉄の獣達は、一斉に動き始める。
 最も数の多い三号突撃砲は動く鉄の怪物に見えた。
 突撃砲は戦車と違って砲塔を持たず、安価で大量生産が可能であった。
 砲塔を持たない代わりに強力な砲を搭載することができる。
 本来は待ち伏せや歩兵支援に用いられる兵器だが、戦車不足のため代用品として戦闘団に配備されていた。
 低い車体は増加装甲代わりの予備キャタピラや偽装用の樹木で覆われ、まるで鉄と草の塊だった。
 草の中で時折光るのは、ハッチに取り付けられた対空機銃から垂れ下がる真鍮の弾帯だ。
「俺は前の戦いで要塞にいたんだ。酷い目にあったよ……今でも夢に見る。今度は、絶対に勝とう」
 迷彩服を着た装甲擲弾兵は自動小銃や携帯用対戦車火器を手に、車体に座り込んでいた。
 若者の誰もが戦意旺盛で、高い士気が顔つきから見て取れた。 
「俺たちの指揮官は、要塞を正面から攻めるつもりは無いみたいだな」
「シュヴァンクマイエル中佐は美学や騎士道って言葉が大嫌いなんだよ。中佐は勝てない戦いはしない」
「随分入れ込んでるんだな、お前。負けるときは負けるぞ」
「戦う前から負けることを考える奴がいるかよ!」
 エーリヒは要塞を正面から攻める愚を冒さなかった。
 一翼包囲をエーリヒは狙う。
 偽装戦車隊で要塞防衛部隊を要塞から引き離し、その隙に大きく迂回した部隊が要塞に殺到する。
 この部隊はエーリヒ戦闘団の持てる機甲兵力を全て結集したものであり、文字通り乾坤一擲の一撃を加えることを目的にしていた。
<<アドラーよりグリュンヘルツYへ、撃ち方始め>>
 突撃砲部隊の前進と前後して、条約軍の砲門が一斉に火を噴いた。
 地平線が真っ赤に彩られ、炎と鉄の暴風がヒューナースベルグ目掛けて解き放たれた。
 戦線を破るために――ヴォルク軍の戦力を少しでも削り、戦意を粉砕するための盛大な花火大会が始まった。
 図太い砲身が引っ切り無しに上下し続け、砲弾を吐き出す。
 血の色に変わる東の空に黒い要塞が浮かび上がる。
「俺達はあそこに行くんだ……」 
 条約軍兵士の多くが、人間の作り出した煉獄に魅惑されていた。
「前進! 要塞を取り戻す!」
 準備砲撃は終わらないうちに、機甲部隊の指揮官であるベルガー・シュミット大尉がインカム越しに言い放った。
 突撃砲のハッチから身を乗り出した彼は先頭を切って要塞へと突き進む。
「行くぞ前線豚ども。戦争の時間だ」
 装甲擲弾兵の兵士達は塹壕を出で、突撃砲の後を進む。
 硝煙の匂いが戦場全体に充満し、焦げ臭い煙が兵士達の鼻腔を突いた。
 彼らの頭上を騒音に近いパルスジェットの音を響かせながら、閃光が通過していく。
「あれはなんです?」
 新米兵士の問いに、古参軍曹が答えた。
「テクノロジーの塊さ」
88創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:58:48 ID:Ennug3G6
 
8912/29:2009/01/13(火) 21:59:18 ID:nVyRDpm1


 要塞へ条約軍が殺到している!
 自分の失態を、マイコは要塞防衛部隊の旗艦である陸上戦艦『クロンシュタット』の艦橋で知った。
「やってくれたな。エーリヒ・シュヴァンクマイエル……!」
 詩の後半は欺瞞でも何でもなく、純粋な攻撃開始の合図だったのだ。
 相手の裏をかくどころか、逆にこちらが手玉に取られた!
「正面の敵は囮です!」
「偵察班より入電! あれは――!」
 最悪の報告が積み重なり、最悪の事態へと加速していく。 
 既にヴォルク軍は要塞正面――西側から迫ってくる条約軍を迎え撃つ体勢を整えていた。
 陸上戦艦と戦車隊、歩兵、砲兵。
 それらは形ばかりの囮を叩くためだけに、要塞から引き離されたのだ。
「急速反転!」
 今はすぐにでも要塞に戻らなければならない。
 条約軍は全ての機甲兵力を投入して要塞に殺到するだろう。
 局地的な数の有利で要塞を制圧されれば、全てが終わる。
「敵機接近!」
「違う! あれは……ロケット!?」
 耳に響く断続的なジェットエンジンの騒音。
 宇宙人の作り上げたような、奇形のフォルム。
 光跡を残して誘導弾が艦橋目掛けて突っ込んでくる。
「対空戦闘! 撃ち方始め!」
 マイコよりもベリエフが早く対応した。
 クロンシュタットの機関砲や高格砲が一斉に火を噴き、空に弾幕をめぐらせた。
 弾丸の波に捉えられた誘導弾が爆発すると、巨大な火の球体が出現した。
 クロンシュタットの船体は、真っ赤に染められた。
90 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 21:59:34 ID:68J6cNSm
加速
91創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:00:29 ID:nQFmedzR
9213/29:2009/01/13(火) 22:00:35 ID:nVyRDpm1
「一発撃ち漏らしたぞ!」
 球体の中から誘導弾が飛び出す。
「敵誘導弾、弾幕を突破!」
 誘導弾の先端から艦橋への距離は、もう十メートルを切っていた。
「大佐!」
 ベリエフが前へと出で、マイコを庇おうとする。 
 誘導弾が迫ってくる一瞬が、永遠に思えた。
「死ぬ……ッ!」
 走馬灯も何も無い。
 純粋な『死』が、すぐ側まで迫っていた。
 金色の閃光が瞬く。
 両断された誘導弾の爆発に、白と緑のローブが映し出された。
「……エレナ!」
 身の丈ほどの大剣。
 艶かかな金髪。
 柔和な顔立ち。
 マイコの心に安堵の光が差した。
「ベリエフ、要塞へ向けて最大戦速! 救援に向かう!」
「ハッ!」
 無線機を取り、マイコは呼びかけた。
「エレナ、一足早く要塞へ向かい、時間を稼いでくれ」
 金髪の少女は了承し、飛び去っていく。
 マイコは汗ばんだ髪を払う。
「やってくれたじゃないか……」
 噛み締めた唇から、血が滴った。
9314/29:2009/01/13(火) 22:01:02 ID:nVyRDpm1


 朝の太陽が輝きを増していく。
 周囲が明るくなるにつれて、戦場はその残虐性をひけらかし始めた。
 森から鳥の群れが一斉に飛び立つ下で、ヒューナースベルグ要塞の周囲で若い命の奪い合いが続く。
<<照準良し装填良し!>>
<<撃て!>>
 三号突撃砲が砲撃する。
 反動で車体が上下に揺れ、車体にこびり付いていた泥や偽装用の草木が浮かび上がり、落ちていく。
 煙が流れていく先で、土の柱が空へ舞い上がる。
<<外した!>>
<<次弾装填。突っ込んでくるぞ急げ!>>
 ヴォルク軍のロジーナ戦車が土煙の中から飛び出す。
 それも一台ではない。
 三台……五台……もっといた。
<<戦車相手では分が悪い。スモーク!>> 
 突撃砲は煙幕を張って後退する。
 戦車と違って旋回する砲塔を持たない突撃砲は、機動性のある敵に対応できないからだ。
<<落ち着け。フェンリアよりヘルギムスへ、ポイントBまで後退>>
 突撃砲は後退し、他の突撃砲と合流する。
 煙の中でロジーナ戦車が発砲、飛翔する砲弾の激しい擦過音が空気を切り裂く。
 黒と白の爆煙の中から砲弾が飛び出し、土砂を飛び散らせた。
<<出てきたぞ……今だ>>
 煙幕を突破したロジーナ戦車に向けて、突撃砲部隊は火力を集中した。
 一台のロジーナにつき二台から三台の突撃砲が発砲する。
<<命中!>>
 白い閃光。 
 爆発と共にロジーナ戦車の部品や破片が四散した。
 突撃砲の放った砲弾は一発弾かれたものの、もう一発はキャタピラを破壊する。
 生き残ったロジーナ戦車はあわてて後退したが、泥に足を取られた。
 自らの重みで泥にはまり込み、横に傾く。
<<奴ら逃げるぞ>>
 砲塔の車体のハッチが同時に開き、二人の戦車兵が飛び出した。
 戦車兵は負傷したらしい仲間を担いで逃げていく。
<<撃ちますか?>>
<<放っておけ。今は要塞に取り付くのが先だ>>
 撃破されたロジーナ戦車から噴き出した黒煙は、低い鉛色の空を流れていく。
 突撃砲部隊はその横を通過し、ヒューナースベルグ要塞へと前進した。
94 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:01:57 ID:68J6cNSm
ksks
95創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:02:21 ID:nQFmedzR
96創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:02:47 ID:Ya9+IQZY
支援
9715/29:2009/01/13(火) 22:02:50 ID:nVyRDpm1
☆  
 
 地平線から、数え切れないほどのヴォルク兵が要塞へと逃げていく。
 短時間だが強烈な砲撃は彼らの戦意を完全に打ち砕いてしまっていた。
「逃げるな! 戦え!」
 政治将校は拳銃の引き金を空に向けて引き絞る。
 だが、誰も彼の怒声に耳を貸そうとはしなかった。
「戦えだって? お前一人でやれ!」
「無茶苦茶言いやがって! 魔女の婆さんに食われちまえ!」  
 ヴォルク兵は口々に政治将校を罵りながら通り過ぎていく。
「おい! 母校防衛の使命を果たせ!」
「黙れチェキストめ!」
 罵りあう同校生徒の頭上を、両軍のロケット弾が行き交う。
 ヴォルク軍のカチューシャロケット。
 条約軍のネーベルヴェルファー。
 お互いに幾千もの死を撒き散らすロケット弾の激しい撃ち合いは、砲声が交じり合って区別がつけられなくなりつつあった。
「ええい、あそこに渇を入れてやれ!」
 マキシム重機関銃は敵にではなく、味方へ向けて威力を発揮した。
 要塞へと逃げようとするヴォルク兵は撃たれ、傷つき、倒れていく。
「あの野郎、ぶち殺してやる!」
「チェキストの豚野郎め!」
 ヴォルク兵たちは敗北の屈辱と怒りを、理不尽な行為を続ける政治将校へとぶつけた。
98 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:03:56 ID:68J6cNSm
    
99創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:04:43 ID:07a0zLIr
支援
10016/29:2009/01/13(火) 22:04:54 ID:nVyRDpm1
 手ぶらの兵士は近くの死体から銃を取り、敵よりも憎い味方のいる陣地へ突っ込んだ。 
「う、撃て!」
 再びマキシム機関銃が音を立てる。
 しかし、機関銃の殺せる人数よりも、突っ込んでくる兵士の方が多かった。
「クソッ!」
 逃げようとした政治将校は足を滑らせて、その場に転んだ。
 泥まみれになった顔を上げると、殺意を前面に押し出した兵士達が自分を見ていることに気付く。
「ち、違う! 私は命令に従ってやったんだ!」
 政治将校の自己弁護は、結果的に自分の死刑宣告にサインをすることになった。
「黙れボルシェビキのクソッたれ。モスクワは涙を信じねぇとよ」
 ppsh短機関銃の軽快な連射音。
 崩れ落ちた政治将校に、別の兵士がナイフを持って襲い掛かる。
 喉を刺す。
 胸を刺す。
 眼球を刺す。
 鮮血の噴水を上げながら、政治将校は絶命した。
10117/29:2009/01/13(火) 22:05:17 ID:nVyRDpm1


 エーリヒ戦闘団はヒューナースベルグ要塞へ突入を果たした。
 巨大な強化コンクリートの城砦目掛けて、ありとあらゆる兵器の砲火が叩き込まれた。
 七十五ミリ戦車砲が、八十八ミリ高射砲が、二十ミリ機関砲が――。
 トドメはエーリヒお得意の重宝による直接照準射撃だった。
「撃て!」
 ハーフトラックの車上でエーリヒが右手を前に倒すと同時に、百五十五ミリ重榴弾砲の砲列が一斉に火を噴く。
 甚大なダメージを受けていた壁を、過分すぎる鉄と火の暴力が襲う。
 それでも壁は崩れない。
 亀裂や弾痕だらけになりながらも、巨大な障壁は以前条約軍兵士の前に立ちはだかっていた。
「中佐、工兵隊に爆破させますか?」
 アルベルトの提案にも一理あった。
 だが今は時間がない。
「もう一度だ!」
 再び重榴弾砲が大地を激しく揺らすと、壁は崩落した。
「敵が反転してくるまでが勝負だ。急げ!」
 エーリヒは自分でも珍しいと思うほど焦っていた。
「中佐、敵魔道兵が出現しました。迎撃に向かいますか?」
「先に要塞を陥とす! 奴らはそれからだ!」
 要塞に残されていたヴォルク軍守備隊とエーリヒ戦闘団なら味方が上回っているが、敵が合流すれば二倍の兵力となる。
 早い段階で要塞守備隊を無力化しなければ挟み撃ちにされ、物量で押しつぶされるのだ。
<<敵が侵入してきたぞ!>>
<<阻止部隊を編成して叩き出せ! パステルナーク大佐が戻ってくるまで時間を稼げ!>>
<<魔女なんてアテにできるか!>> 
10218/29:2009/01/13(火) 22:05:42 ID:nVyRDpm1
 崩落した壁の向こうには要塞内部へと通じるゲートがあった。
 ゲートを守るためにヴォルクの守備隊が集結し、火力を集中して条約軍の侵入を防ごうと奮戦する。
 瓦礫を乗り越えて侵入を試みた突撃砲が薄い車体底部に直撃を食らい、撃破された。
「敵は狭い空間に火力を集中し、味方の前進を阻んでいます」
「やるじゃない……」  
 エーリヒは非常手段に出ることにした。
「ゲート目掛けて、残ったV-1改を全弾撃ち込め」
「いいのですか?」
「構わない。最優先でやってくれ」
 間も無く、奇怪な飛行音と共に六発の誘導弾が上空を掠めた。
「三……二……一……弾着、今!」
 閃光が立て続けに起きた。
 ひしゃげたゲートの中に誘導弾が入り込み、内部で炸裂を起こす。
 要塞の一部から火柱が上がり、一角が崩落した。
 恐らく修復が完全に行われていなかったのだろう。
 この要塞はまだ奪われてから日が浅い。
「よし、撃て!」
 エーリヒの命令と同時に、三度戦闘団の全火力が要塞に注ぎ込まれた。 
 炎と爆発の壁が作り出され、天を切り裂く轟音が鳴り響いた。
 エーリヒも兵士達も、閃光に思わず首をすくめた。
 砲撃の後、要塞の表面は黒ずんだ擂鉢状の穴が何十にも開いていた。
 車体が大きく裂けた戦車の残骸の周囲に、黒こげになって手足の捻じ曲がった死体が幾つも転がっている。
 周囲に漂う硝煙と死臭は更に強烈さを増し、戦場慣れしているエーリヒですら吐き気を催した。    
「中佐、要塞司令官より連絡。我、降伏すとのことです」
「そうか……早かったな」
 エーリヒは大きく息を吐いた。
 まさか敵も、飛行爆弾を直接内部にぶち込まれるとは思っていなかったのだろう。
 何はともあれ、これで時間の問題は解決した。
 敵が戦意を失わず要塞に立てこもったら、エーリヒは犠牲の大きい掃討戦を強いられたかもしれない。
「敵兵の武装解除を擲弾兵に行わせてくれ。捕虜への暴行、虐待、略奪は全面的に禁止だ。破った奴は無条件で銃殺にする。徹底させろ」
「了解しました」
 さて次は――と、エーリヒは息を吐く。
 まだ戦いは完全に終わってはいない。 
103創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:06:06 ID:07a0zLIr
  
104創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:06:51 ID:PZ1sTDUM
  
105創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:07:12 ID:nQFmedzR
10619/29:2009/01/13(火) 22:07:48 ID:nVyRDpm1


 マナ・バスターソードが条約兵の胸板をぶち抜く。
 兵士の絶叫に近い悲鳴を聞きながらバスターソードを抜くと、エレナは全身に返り血を浴びた。
「化け物だ……化け物がいるぞ!」
「集中射撃! 殺せないわけじゃない!」
 背部と脚部のブースターから青い粒子を噴射して、エレナは迫り来る銃弾の雨を回避する。
 感覚が異常なまでに研ぎ澄まされていた。
 全身に、戦場における高揚と恐怖、緊張が混ざり合った不思議な感覚があった。
「パンツァーファウスト!」 
 轟音と白煙。
 条約兵の持った筒から弾頭が撃ち出される。
 エレナは弾頭から三枚の安定フィンが飛び出すところが、スローモーションで視認できた。
 数発の弾頭がエレナ目掛けて飛来する。
「だが……」
 エレナはバスターソードを捨て、飛び上がる。
 成形炸薬弾が剣に穴を開け、高圧ガスが刃の反対側から噴き出す頃――。
「魔女が後ろにいるぞ!」
「何!?」
 もう遅い。
 エレナは胸中で呟きつつ、将校と思われる条約兵の頭を掴む。
 そして体内のマナ・エネルギーを解放する。
 青白い光がローブから放出され、輝いた。
 掴まれた兵士の顔が恐怖で歪む。
 ごめん。
 またエレナは胸中で呟く。
 マナ・ブレイク。
 体内に濃縮されたマナ・エネルギーを解放させることで、対象を崩壊に追い込む。
 指揮官の爆散と同時に、他の兵士達も爆発で肉塊へと変わった。
 残ったのは血の霧と、地面に転がる衣服や肉の破片だけだった。
 条約軍の攻撃は続いた。
107創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:08:11 ID:PZ1sTDUM
  
108創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:08:20 ID:Ya9+IQZY
しえん
10920/29:2009/01/13(火) 22:09:05 ID:nVyRDpm1
 反射的に危険を察知したエレナは結界を展開し、飛来した砲弾を弾き飛ばす。
「どこだ!?」
 青い双眸が敵を求めて動き回る。
 あそこだ――!
 高地の天辺にある森の中から、自走砲が砲撃してきている。
「任せろ!」
 エレナが対応する前に、声が聞こえた。
 黒と赤のローブを着た魔道兵が高地へ突入し、爆発の中から飛び出すまで、十秒とかからなかった。
「申し訳ありません、大佐」
 気にするなと言いながら、マイコ・パステルナークは地面に足をつけた。
 先ほどまで二人は別々に戦い、今合流したところだ。 
「戦況はどうだ?」
 エレナは首を横に振る。
「先ほど、ヒューナースベルグ要塞より戦闘停止命令が出ました」
「そうか……」
 戦闘停止命令。
 事実上、要塞が無効化されたということだ。
 要塞司令官のマイコが前線に出ているため完全に戦域内のヴォルク軍が制圧されたわけではない。
 だがヴォルク軍は要塞を失い、条約軍は要塞を手に入れた。
「要塞が陥ちたか。これで私の経歴にまた一つ、傷がついたな」
 ヒューナースベルグ要塞が陥落した報告を受けて、マイコは自嘲の笑みを浮かべた。
「これで来年度の予算はゼロですね」
「来年度があれば、の話だ」
 マイコはウィンクする。
「それは……まあ……」
 こういう時、一体どう反応すればいいのだろう?
 エレナは答えられないまま、再び空の人となった。 
110創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:09:22 ID:nQFmedzR
111創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:09:26 ID:PZ1sTDUM
    
112 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:09:36 ID:68J6cNSm
    
113創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:09:52 ID:07a0zLIr
  
11421/29:2009/01/13(火) 22:09:56 ID:nVyRDpm1


 エーリヒ戦闘団はヒューナースベルグ要塞を奪還した。
 戦闘団は今、要塞の一角に集まっている。
 だがヴォルク軍は残っている。
 エーリヒの仕掛けた偽装戦車隊に引き寄せられたヴォルク軍守備隊の半数は、要塞へと引き返している。
「まずいな」
 エーリヒは悩んだ。
 ヴォルク軍はまだ十分に戦力を残し、恐らく窮鼠と化して要塞に攻め入ってくるに違いない。
 対して条約軍はどうか?
 エーリヒはハーフトラックの上から味方の兵士達を見る。
 少なくない数の負傷者が出ている。
 衛生兵は絶えず負傷兵を手当てし、後方へと移送し続けている。
 弾薬箱やドラム缶に寄り掛かる少年達の顔は疲労一色だった。
 迷彩服は泥で汚れ、まるで死体のように首をだらんとして俯いている。
 何かを話している兵士も襟は垢染み、硝煙や泥が目の下に溜まって隈取りを描いていた。
「中佐、敵部隊は正面突破を行うようです」
 アルベルトの告げた言葉は、エーリヒが今最も聞きたくないものだった。
「全てを受け止める戦力は、こっちにはない」
 条約軍の戦力は十分ではない。
 突破しようとする敵は、ありったけの力で線を突き破ろうとする……。
 勢いがある……。
 エーリヒの脳裏に光景が浮かぶ。
 流れる川。
 水流。
 岩にぶち当たる水。
 端的な情景の数々が脳内で繋ぎ合わされた。
「アルベルト、使用可能な全ての砲兵戦力を要塞左翼に移動させるんだ。急げ!」
 エーリヒは続けた。
「戦車と突撃砲は右翼に配置。指揮はベルガーに任せる」
 何をするつもりなんですと聞くアルベルトに、エーリヒはこう答えた。
「流れを変えるのさ」
11522/29:2009/01/13(火) 22:10:21 ID:nVyRDpm1


 陸上戦艦クロンシュタットは全速力で戦域を進んでいた。
 引っ切り無しに飛来する条約軍のV-1改飛行爆弾が、今のところ一番の脅威だった。
<<もったいぶるな! 命に比べりゃ、弾の値段なんて安いもんだ!>>
 クロンシュタットは主砲や福砲だけでなく、高角砲や対空砲まで総動員して弾幕を展開する。
 マイコとエレナは艦からケーブルでマナ・エネルギーを補充しつつ、防御火網の形成した。
「十一時方向に飛行爆弾!」
「落とすだけだ!」
 マイコが腰溜めに構えたマナ・ランチャーから、青いエネルギーの柱が伸びる。
 飛行爆弾がエネルギーの潮流に巻き込まれて爆発を起こし、他の飛行爆弾も巻き添えにした。
「何発落とした?」
 マイコのマナ・ランチャーから巨大なカートリッジが煙を残して飛行甲板に落ちる。
「十発以上は……!」
 バスターソードにエネルギーを縮退寸前まで溜めたエレナが、大きく腰を横回しに振った。
 剣から青い刃が解き放たれ、音速のスピードで飛行爆弾を両断する。
「数えていません!」
「わかった!」
「次、効力射来ます!」
 二人は同じ方角の空を見る。
 飛行爆弾ではない。
 ロケット砲の音が聞こえた。
 方向は――東!
 つまりヒューナースベルグ要塞からだ!
「そぉい!」
 マイコは膝立ちになって、マナ・ランチャーを放つ。
 圧倒的なエネルギーの反動で、足が甲板にめり込こませながら、銃身を右へと振る。
 空に炎の球体が帯となって出現、暗い空を照らした。
 マナ・ランチャーの銃身から蒸気が噴き出す。
「オーバーロードか!」
 あまり短時間で使い過ぎたため、ランチャーにかかる負担は限度を超えてしまった。
「次、来ます!」
「ええい!」
 マイコは砲撃の中にパルスジェットの飛行音が混じっていることに気付く。
 ランチャーの冷却は間に合わない。
「ならば!」
 マイコは背部ブースターを噴射して空へ飛び上がる。
「一番熱量の大きいやつだ……」
 マナ・ライフルを構え、狙いを定める。
 ひんやりと冴えた感覚。 
「当たれッ!」
116 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:10:29 ID:68J6cNSm
   
117創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:11:26 ID:Ya9+IQZY
C
118 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:11:31 ID:68J6cNSm
     
11922/29:2009/01/13(火) 22:12:05 ID:nVyRDpm1
 マイコの一射が、空を切り裂く。
 連鎖反応的に爆発が置き、ロケット弾が空中で炸裂した。
 だが、まだパルスジェットの音は聞こえる。
 真下で――!
「あれが本命か!」
 マイコは左腕を上げ、その内側に右手を通してライフルを撃つ。
 銃口の先で爆発が起き、クロンシュタットを照らし出した。
「やるなエーリヒ!」
 まだ砲撃は終わらない。
<<V-1改、全弾撃墜を確認!>>
<<やったぞ!>>
<<ところがぎっちょん!>>
 今度は要塞左翼から、大小様々な口径の砲弾が降り注いだ。
 ロケット弾ではなく通常の砲弾であるため、迎撃は困難だった。
 クロンシュタットの甲板にも砲弾は着弾し、船体が損傷する。
 揺れた甲板から艦載機のIL-2が零れ落ちていく。
「ああっ! クロンシュタットが!」
 エレナの悲痛な叫びを聞きながら、マイコはインカムに叫んだ。
「ベリエフ、左翼からの突破は無理だ! 右翼から突破する!」
 マイコは部隊を右翼から突破させることにした。
 エーリヒは左翼から敵が突破すると予想して強固な防衛線を敷いていたらしい。
 幸いだったのは敵が十分にヴォルク軍を引き寄せず、攻撃に出たことだろう。
 右翼には恐らく、微弱な敵兵力が配置されているに過ぎないはずだった。
 マイコとエレナは離艦する。
「大佐、様子がおかしい」
「ザルすぎる!」
 エレナの言うとおりだった。
 飛翔しながら要塞右翼を進む二人の前には、如何なる障害も存在しなかった。
「まさか!」
 マイコはエーリヒが得意とする戦法を思い出す。
 敵を拍子抜けさせたと見せかけての、大規模なトラップ――。
 マイコ自身が身をもって味わった恐怖だ。
「止まれ! 止まるんだ!」
 刹那、大地が光と炎で埋め尽くされる。
 大地そのものが爆発したかのようだった。
120創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:12:21 ID:nQFmedzR
12123/29:2009/01/13(火) 22:12:34 ID:nVyRDpm1


 地雷原の爆発は、時を置いてエーリヒ戦闘団のいる陣地へも届いた。
 強烈な爆風で戦車の車体後部の木製物入れがバラバラになり、軽車両が横転する。
「わあっ!」
 ハーフトラックに座乗していたエーリヒは爆風で椅子から転げ落ちた。
「中佐!」
「あいてててて……大丈夫。生きてるよ」
 アルベルトに身を起こされながら、エーリヒは手で自身の無事を伝えた。
 ベレー帽を被り直して、エーリヒは双眼鏡で地雷原の方を見やる。
「なんだこの爆発は……たまげたなぁ」
 エーリヒが利用したのは、かつて条約軍が敷設した地雷原だった。
 対人、対戦車地雷だけでなく、対魔道兵用の強力な地雷も埋設してある。
 何でも航空機用の爆弾や巡洋艦の主砲を地雷に改造したらしい。
 もはや魔道兵というより怪獣でも相手にした方がいいんじゃないかとエーリヒは初見で思ったほどだ。
「やはり全部爆発させたのは失敗だったな……よし。ベルガー隊に連絡、攻撃開始だ」
「了解」
 エーリヒは仕上げに入った。
 砲撃で敵を誘導して地雷原に誘い込み、絶え間ない消耗を与えた後は、虎の子の機甲部隊でトドメを刺す。
 それで終わる。
 この戦いは終わる。
「終わらせる……!」
122 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:12:55 ID:68J6cNSm
ksks
123創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:12:58 ID:07a0zLIr
  
124創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:13:28 ID:nQFmedzR
12525/29:2009/01/13(火) 22:13:44 ID:nVyRDpm1


 砲撃と地雷原の連鎖爆発で大損害を受けつつも、クロンシュタットはまだ前進を続けていた。
 飛行甲板は砲撃で穴だらけになり、船体はあちこちへこんで酷い有様だ。
 それでも艦としての機能を失っていないのはベリエフの手腕と、艦そのもののタフさに要因がある。
「大佐、前方に敵戦車部隊」
「やはりいたか……」
 マイコは作戦を立てる。
 自分とエレナが先行して突入する。
 エレナが敵を抑えている間、マイコは敵の指揮官車を撃破する。
 敵の指揮系統に混乱が生じている隙に、クロンシュタットと魔道兵は離脱する。
「行くぞエレナ!」
「御意!」
「生き残ることが!」
「勝つこと!」
 青い粒子を残して二人は突入する。
 瞬く間に濃密な対空砲火が空を埋め尽くした。
「なんて砲火だ!」
「当たらなければどうということはない!」
 条約軍は対魔道兵用の布陣を敷いていた。
 偽装網で装甲車両を隠匿して低空での攻撃を強要するだけでなく、弾幕を展開してその中へと突入せざるを得ない状況を作っていた。
<<十時から来るぞ!>>
<<このヴィルヴェルヴィントの弾幕から逃れられるものかよ!>>
<<フリーガーファウスト、赤外線誘導良し! 発射!>>
 銃弾の波を掻い潜ったかと思えば、白煙を残して誘導弾が猛追してくる。
 二人はサーカスのような空戦機動で振り切ろうとするが、まるで磁石で吸い寄せられているかのように誘導弾は迫ってくる。
「大佐、このロケットは我々のマナ・エネルギーに反応しているようです!」
「いや違う! これは……熱だ! 熱誘導だぞ!」
 マイコはある言葉を思い出す。
 進みすぎた科学は、魔法と同じだと。
「ならば!」
 エレナは剣を振るい、マナ・エネルギーの一撃を森へと打ち込む。
 森林で火が燃え盛り、すぐに広まって森全体を焼く。
 誘導弾はより強い熱源を求めて森に着弾する。
「アヴィリオン脅威のメカニズムと言ったところか……エレナ、時間を稼いでくれ。私は頭を叩く!」
126 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:13:49 ID:68J6cNSm
    
127創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:14:07 ID:07a0zLIr
  
12826/29:2009/01/13(火) 22:14:12 ID:nVyRDpm1
「了解!」
 急降下しながら、マイコはローブのリミッターを解除する。
 魔道兵にとって、最大の禁忌とされている行為だ。
 背部のマナ・ユニットがせり上がり、右肩へと移動する。 
 同時にマナ・ライフルは消失し、右手に携えたマナ・ソードの刃は長く太いものへと変わる。
 ブースターから流れる青い粒子は血の色に似た赤へと変質した。
「これで十年、また命が削れる!」
 ソードを振るい、マイコは条約軍の地上部隊に襲い掛かった。
<<敵魔道兵一体がこちらに……なんだ!? 速い!>>
<<通常の三倍だと!? 確認し直せ!>>
 砲火を掻い潜りながら、マイコは突撃砲に取り付く。
 ソードを逆手に持ち替えて、車体に突き刺す。
 刺された戦車が爆発する前に別な突撃砲へと襲い掛かる。
「そんな攻撃が当たるものか!」
 マイコは迫り来る砲弾を両断する。
「今の私は……」
 正面から擦れ違い、突撃砲を真っ二つにした。
「愛の戦士だ!」
 マイコは弟ユーリのために戦っている。
 負けるわけにはいかない。
 負けるということは即ち死!
12927/29:2009/01/13(火) 22:14:35 ID:nVyRDpm1
 恥を晒しても生き残ることが勝利なのだ!
「あれか!」
 アンテナの伸びた突撃砲が後退していく。
 逃がさない!
 私はお前を殺す。
 ソードから爆発寸前にまで濃縮されたエネルギーが振り払われ、敵指揮官車を押し潰した。
<<指揮官車が!>>
<<指揮権を確認しろ! 急げ!>>
 指揮系統に乱れを生じさせた条約軍は僅かな時間、行動を停止する。
 クロンシュタットとマイコ、エレナはその隙に戦場を離脱した。
 脱出を完了したマイコは傷だらけとなったクロンシュタットの甲板に身を下ろすなり、大量の血を吐いた。
 全身の間接が悲鳴を上げ、激痛が絶え間なく肢体を走る。
 リミッター解除は身体への不満が極めて大きい。
 あと一ヶ月はまともに生活できないだろうとマイコは確信を抱いていた。
「大佐!」
 駆け寄ったエレナの手を、マイコは払う。
「優しい言葉なんて……いらない」
 口から血を吐き、芋虫のように這うマイコの顔が歪む。
「私は……最低の屑だ!」
 エレナは何も言わず、ただその場所で衛生兵が来るまで、その場に座っていただけだった。
 マイコは嬉しかった。
 もし慰めの言葉をかけられたら、声を上げて泣いてしまいそうだったから……。
130 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:14:45 ID:68J6cNSm
    
131創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:14:53 ID:nQFmedzR
  
132 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:15:41 ID:68J6cNSm
      
133創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:16:03 ID:nQFmedzR
13428/29:2009/01/13(火) 22:16:20 ID:nVyRDpm1
 投降したヴォルク軍の兵士達は一箇所に集められ、武装解除を受けていた。
 要塞守備隊のヴォルク軍司令官は、エーリヒを見るなり驚きの表情を浮かべる。
 ヴォルク軍司令官は"大人"であった。
(もし俺が大人で、敵の指揮官が子供だったら、そりゃ驚くだろうな……)
 エーリヒが敬礼すると、司令官も毅然として敬礼した。
「西方条約軍中佐、エーリヒ・シュヴァンクマイエルです」
「ヴォルクグラード軍大佐、イリューヒン・ウスティノフだ。随分若いが、今は幾つだね?」
 まるで俺が降伏した側だなと思いつつも、エーリヒは素直に答えた。
「十七歳です」
「そうか。私の息子も生きていたら、今年で十七歳だ」
 ウスティノフ大佐はホルスターから拳銃を抜き、年若い指揮官に渡そうとした。
 その手をエーリヒは自らの手で制した。
「護身用として、お持ち下さい」
 ウスティノフはどこか満足げに頷き、駐機してある八十八ミリ高射砲を指差した。
「高射砲で戦車を撃つなんて卑怯じゃないかね」
「いいえ。高射砲でしか壊せない戦車を使うほうが、よっぽど卑怯ですよ」
「確かにそうだ」
 二人はしばし談笑した後、敬礼して別れた。
 エーリヒは敗軍の将に対して敬意を覚えずにはいられなかった。
 勝った自分よりも、負けたウスティノフの方が勝者に相応しい器量や人格の持ち主であった。
「中佐! 大変です!」
 次に入ってきた伝令の報告は、エーリヒに衝撃を与えた。
 機甲部隊を指揮していたベルガー・シュミット大尉の戦死――。
 エーリヒ以上にショックを受けたのはアルベルトだった。
 彼はベルガー同期であり、親友であったのだ。
 アルベルトはその場に座り込み、頭を抱えた。
「アルベルト、何と言葉をかけていいのか……すまない」
「謝らないで下さい。謝って奴が帰ってくるものでもないでしょう。ただ、一つ許可を頂きたい」
「なんだろうか」
「飲酒を許可願えませんか?」
13529/29:2009/01/13(火) 22:16:43 ID:nVyRDpm1
「ああ……わかった。大隊長命令で許可する」
「感謝します。それでは」
 アルベルトがその場を去った後、エーリヒは一人ハーフトラックの影で項垂れる。
 悲しさとむ空しさが複雑に交じり合った感じが心にある。
 エーリヒはそれが大嫌いだった。
 今日、自分は多くの部下を死なせた。
 人の親友を死なせた。
 アルベルトだけではない。
 多くの部下に友人や恋人がいた。
 その事実がエーリヒを苦しめる。
 どんな汚名でも着るつもりだし、如何なる処分も甘んじて受ける。
 だが自分を責めて、それで許された気でいてはならない。
 彼らが犠牲になったからこそ、エーリヒは勝利し、生き残れたのだ。
 そうでも考えないと、心の安定を崩してしまいそうだった。
「ねぇねぇ」
 視界の隅に、また幻影の女の子が現れた。
「また死なせちゃったんだね。ご愁傷さま♪」
「黙れ! お前に、お前に何がわかっていうんだ! いつも笑って、人のことなんで考えずに笑いやがって!」
 エーリヒは拳銃を少女に向けた。
 でも少女はどこにもいなかった。
「クソッ……」
 エーリヒは椅子に背中を預けた。
 そして泣いた。
 自分が泣ける事実に、安堵した。
136創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:17:37 ID:07a0zLIr
  
13775 ◆kkZO9WMBek :2009/01/13(火) 22:17:37 ID:nVyRDpm1
支援に感謝。
第一章はここまでなり。
138創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:18:07 ID:nQFmedzR
139創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:18:09 ID:PZ1sTDUM
乙です、少ししか支援できなくてごめんなさい
140創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:18:34 ID:Ya9+IQZY
乙なのだわ
後でゆっくり読むのだわ
141創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:21:43 ID:Ennug3G6
おつかれさまー
142創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:23:05 ID:nVyRDpm1
あと通し番号間違ってごめん
143創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:24:01 ID:07a0zLIr
乙andGJ
144創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:27:06 ID:Ya9+IQZY
確認したいんだけど、縛りは学園+魔法+WWUだけだよね?
隕石落下とか学園島の広さや位置は書き手の自由裁量で良いんだよね?
145創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:30:41 ID:nVyRDpm1
>>144
そう
縛り守れば好き勝手やっておk
146創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:33:52 ID:wWGj9MyK
>>54
         、          , ヘ
      /l  | _\       / ,, l
     ,'   l  l! ミヽ\、、,ィ 〈ミ j
    i   |   ,ヾ-"´       \
    !   l  /       うるふ  ヽ
    \  lr/      、      ノ !
       >.ノ     /:::::ヽ、    ノ:ヽ`.、  
     l 'ミ    (::::::・::ノ  ー― 、・:::).彡   今更だけどいいなあ、俺も飼われたいなあ・・・
     |  ` 、     ̄     ▼j  =´
     }     `ー、     (_,人_)/
     ミ       ` ー――‐ ''´l
      '、    ト、    i^i    /
       `ー― ' ヽ   l l _ノ
             `ー-"
147創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:35:22 ID:Ya9+IQZY
把握
前スレの話だと隕石落下は共通認識っぽかったから気になってたんだ
Thanx
148創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 23:34:00 ID:FBYRqdyd
マイコって兵士としては優秀だけど指揮官としては残念な人だな。
単にエーリヒがチートなだけかもしれんが。
149創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 00:28:39 ID:FxsQJAxD
乙です

要塞、要所の奪い合い
重要な戦いで奪回困難なのは火を見るよりも明らかなのに
手持ちの兵力だけでやらざるをえない苦難

シュミット大尉は、部下としてサブキャラ陣の一端を担うかと思ったんだが
150創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 00:43:45 ID:FxsQJAxD
出遅れ誤爆

>>53-54
乙乙
イタリ―は子供でもこんな調子で
これがそのまま大人になって大きくなっていくとは…うわぁ

人道的に着せ替えですかwそれにあんたもうとっくに影響されてるよ!
客観的に自分を見れねーのかって感じですね、片棒担いでますし
あとあの人は、そっちのアレまであったんですかw
151創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 00:44:39 ID:FxsQJAxD
間違えた、これじゃ自爆だな畜生め
152創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 00:50:54 ID:7Mykwxpj
>>70
>八十八ミリ高射砲
>三.七センチ自走高射砲
単位は統一すること

>>86
>「偵察機より入電! 敵戦車部隊の出撃を確認!」
時刻と位置と数の報告が足りない

>「西方条約軍中佐、エーリヒ・シュヴァンクマイエルです」
>「ヴォルクグラード軍大佐、イリューヒン・ウスティノフだ。随分若いが、今は幾つだね?」
> まるで俺が降伏した側だなと思いつつも、エーリヒは素直に答えた。
何語で会話しているか不明

>ドンネルシュラーク"(雷撃)作戦
>ポイントBまで後退
会話がドイツ語と英語のちゃんぽんで見苦しい、学園島らしさを殺している

V-1改は技術的根拠が不明で説得力が無い
新兵器をただ出せばいいというものではない
改良前の兵器に対応されたから改造したといった裏づけが必用

高射砲は移動したあと砲架を地面に据えつけなければ運用できない
自走砲と同時に運用するとか意味不明
役割分担ができていない変な混成部隊である

距離とタイムスケジュールの組み立てはまだまだできないようだ
地形の認識も足りない


今回の話で最悪の癌は突然出てきた新兵器だろう
既製品と人の知恵で理不尽な敵に対抗しようという命題が否定されている
勝って当たり前なら感動も無い
153創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 01:20:00 ID:FxsQJAxD
別に言語については気にするところではないが

エーリヒが「まずいな…」と言った箇所で
え…?って思った、今まで二手三手計算している奴だと思ってたのに
154創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 08:55:33 ID:7DFutVzK
そりゃ想定外の事態ぐらい起きるだろ
155 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/14(水) 13:09:43 ID:XyiDNhe2

三.七センチ自走高射砲は3.7cm FlaK43
二センチ自走高射砲は2cm Flak38
をそれぞれ車両搭載したものかな(半装軌に積んだ奴ね)
あるいは4号対空戦車?

88ミリの方は8.8 cm FlaK18なのかあるいは8.8 cm FlaK 41か8.8 cm PaK 43なのか
不明だな…
細かい事だけどね
ちなみにFlak18を元にしたのがティーガーTの砲で、 PaK 43の車載型がエレファントやティーガーIIの主砲
だから、混用しないように注意してね



でも単位の統一って言っても、88ミリ高射砲は一般には「ミリ」の表記の方が多く、
他の兵器はセンチ表記のが多いという(88をミリとして、一緒に載ってる文献では他の砲も統一されてるけど)
微妙な混乱があったりするwikiペでも、編集者がそれぞれ違うと同じページ内なのに単位バラバラとかある

なもんで「88はミリで表記するけど他はセンチ表記なの?」って混乱する初心者は多いから仕方ないよ
日本軍の兵器でも、粍(ミリ)と糎(センチ)が統一されてない命名表記とかあるし
こっちはそれで制式な名前だからややこしい…



あと混用についてなんだが、別にできるっちゃできる
自走高射砲に高射砲は追従できないけど、逆は可能なんで(する意味は…高射砲がたりないけど自走高射砲は余ってるとかか?)
でもこの場合、両者の性能と目的から考えて88は陸自の高射科でいう短SAM、Flakvierling38とかは
近SAMか40ミリ高射機関砲みたいな位置づけで分担できてるんじゃないかと思うんだけどなあ…
エーリヒ戦闘団の編成と装備の振り分けが不明だからなんとも言えないけどね
http://ja.wikipedia.org/wiki/8.8_cm_FlaK_18/36/37
http://ja.wikipedia.org/wiki/2cm_Flakvierling38

まさかと思うがエーリヒ戦闘団では高射砲は野戦砲も兼ねてる、高射隊と砲兵隊の共用装備
(高射部隊の正式な装備は自走高射砲の方)だとかいうのは流石に無いよな…
156創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 19:39:22 ID:YIs9Ftwe
難しい事は解らないけど『ところがぎっちょん』にワラタw
157創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 19:41:35 ID:26OwKpmm
俺も兵器とかはわかんないけど「そぉい!」で吹いたのは仕様かもしれない。
158魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/14(水) 19:44:53 ID:YIs9Ftwe
十一話『権利主張』
1/2
「君達は何を考えているのかね? 神をも恐れぬ所業じゃないか、コレは!」

 かわいそうな事に、偉い人にコレ扱いされてしまったペットがシクシクと泣いています。

 チラリと横目でアンさんを見ると、鎖を握り締めた手がプルプルと震えています。当然の事ながら鎖はペットの首輪に繋がっています。
 ですので、引っ張られたせいなのかそれに合わせてペットも鳴き声を上げます。

「なんとか言いたまえ! 弁解があるなら聞いてやる」

 偉い人は見かけ倒しの安物のテーブルを叩いて怒っています。

「何が悪いのですか?」

「私は悪い事はしていないのだわ!」

「やめてボクのせいでケンカしないでこう見えてもボク幸せだよ綺麗なお姉さん大好きだしご飯不味いの我慢するし痛いの嫌いだから怒らないで」

「いい加減にしたまえ!」

 堪忍袋が切れてしまった偉い人のお小言が始まりました。
 その長さは大昔のフランスとの戦争ぐらい長いという噂ですので、げんなりしてしまいます。
 アンさんはペットと戯れ始め、私はこの閉鎖された空間から逃避する為に窓の外の景色を見ます。
 果てしなく広がる青空、綿みたいに白い雲、輝くお日様が私を手招きしています。
 耳を澄ませば聞こえる、小川のせせらぎやそよぐ風の音、小鳥の啼き声が私を自由へと誘うのです。
 素晴らしいですね、自由。私、憧れてしまいます。

「――君、私の話は退屈かね? アメリカにでも行って自由を満喫してくるか?」

「滅相も御座いません」

 流石ですね、偉い人は飾りじゃありません。人心掌握を心得ているのか、痛い所を的確に危険な角度で攻めてきました。
 自由には憧れがあるのですが、アメリカは生意気で嫌いです。
 コーヒーの臭いも無駄にカラフルなお菓子も何もかもが大嫌いです。

「――アン、君はソ連にでも行くかね? 彼処は男同士でもキスをする習慣があるそうだ。 君にはピッタリだろう」

「冗談じゃないのだわ! 雪男は趣味じゃないのだわ! あんな原始時代以前の国なんてお断りなのだわ!」

 余程ソ連が嫌いなのか、アンさんはオーバーアクション気味に取り乱します。
 その結果。

「ねえちょっと苦しいから止めてよ首輪ついてるじゃん鎖を引っ張らないでよ暴力反対平和賛成でもね痛いの嫌いだけどクセになりそうちょっと良いかも」

159魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/14(水) 19:46:03 ID:YIs9Ftwe
2/2
 アンさんが鎖を持っているので、引っ張られたペットが吠えますが――嬉しそうなのがちょっと気掛かりです。

「さて、君達の処分は後回しにするとして、このイタリア人をどうするかだが……」
 偉い人は立ち上がるとペットに近付きます。
 私のお古のドレスを着ておめかししたペットの顔が恐怖に歪みます。

「やめて痛いの嫌いやめて撃たないで叩かないで暴力反対ボクたち友達じゃないか――」
 ペットは鳴き叫びますが、ゆっくりと近付いてくる偉い人に観念して黙ります。

「安心したまえ。人道的見地に乗っ取って君を捕虜として待遇する事を約束する」

 捕虜待遇だなんて可哀想ですね、ペット。こんなに可愛いのに捕虜だなんて偉い人は鬼です。悪魔です。
 ですが、ペットの顔が怖くなりました。なんと言えば良いのやら、兎に角恐い顔です。

「――ボクは戦争弱いけど――犯罪行為は得意なんだ。イタリアはシチリア島名産のマフィアだからね」

 泣き叫んでいたのが嘘みたいです。冗談抜きで怖いです。

「――血は血を求める、名誉の為に。義の人は義に生き、義に死す。誇りを汚す者には死を」

 なんと言うことでしょう。ペットはマフィアだったのです!
 ナポリのカモッラでもなければカラーブリアのンドランゲタでもなくて、本場シチリア島のマフィアです。

 結論から申しますと、ペットの名前はマフィアに決まりました。
 それだけです。
 ペットはペットのままです。
 偉い人は「命あっての物種だ」とお墨付をくれましたので一安心です。

 兎に角。
 マフィアは幸福と言うよりも恍惚な顔でアンさんの椅子になっています。
 アンさんはマフィアに腰を掛けて優雅に読書をしています。ちょっと羨ましいですね。
 因みに。
 アンさんによれば座り心地はバズビーズチェアぐらいには良いそうです。

 取り敢えず、私はマフィアの為に明日のお洋服を選ぼうと思うのですが、夜なべになりそうです。
 嫌ですね、夜なべ。お肌が荒れてしまいますし。
 でも、マフィアを可愛くする為に頑張ろうと思います。

――To be continued on the next time.
160魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/14(水) 19:47:33 ID:YIs9Ftwe
魔法少女軍事系第十一話投下終了。
スレが盛り上がる企画があれば良いですね。
161創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 19:49:41 ID:26OwKpmm
内容はカオスだけどキャラは立ち気味なのがよいと思うのですわ。
162創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:08:26 ID:7DFutVzK


お題出して書くのはどう?
163創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:14:30 ID:YIs9Ftwe
>>162
新規の読者を開拓出来るような感じの企画が良いなぁ。
お題だと書き手は面白いけど読者が楽しいか微妙な感じ。
164創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:16:02 ID:7DFutVzK
読者層がお題を出すのはどうかな
165創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:18:13 ID:YIs9Ftwe
ムチャ振りされるとアンニュイな気分になるけど面白そうな気がしないわけでもない。
166創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:25:44 ID:T06IYYRE
まず読者から三つのお題を出してもらう。
書き手はお題に合わせて書く。

もしくは読者側が小ネタを提供して、書き手がそれを文にするとか。
例:魔道兵or魔法兵の日常
とか。
167創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:31:35 ID:YIs9Ftwe
三題噺なら此処じゃなくて三題スレで書くがなw
読者が小ネタ提供ねぇ。書きたい小ネタが出てくれば書く気になるかも。
シリアスな戦闘を望まれたら書けないのが悩みの種かも。
168創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:37:22 ID:T06IYYRE
読者がどういう話を求めているのか聞いてみたいね
169創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:38:59 ID:YIs9Ftwe
>>168
あ、それはあるかもね。
出来るだけ読者のニーズには合わせたいと思うし。
170創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:56:53 ID:csGm+sY6
>>161
投下乙です!
これは意外な展開w
マフィアってwwペットがまさかこんなキャラだっとはねー
カモッラとヌドランゲタという名前はバッカーノ以外で始めて聞いたかも
さすがイタリアーン
171創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 21:07:48 ID:T06IYYRE
マフィアと聞いてゴッドファーザーを思い出した。
学園島戦争で生き残った英雄がみんなから忘れられて、半世紀後にひっそりと死ぬ展開もいいな。
172魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/14(水) 21:17:04 ID:YIs9Ftwe
第十二話話『奪回と独立』

「自由、平等、博愛! 灯火を消すな!」

「ハプスブルグの子らよ、誇りを持って立ち上がりなさい!」

 わーい今日は外国からお客様が来ました。
 フランスのレジスタンスのシャルロットさんとオーストリアでドイツ嫌いのフリードリッヒさんです。
 お二方とも魔法兵でして、第三帝国に並々ならぬ恨みがおありのようです。
 少しばかり説明いたしますと、シャルロットさんは男装の麗人で涙ボクロがチャームポイントでフリードリッヒさんは穏やかな物腰が印象的な殿方です。

「紅茶をどうぞ。スコーンもご一緒にいかがです?」

 良いですねぇ、アフタヌーンティー。
 中庭にテーブルセットを出して自然の中でお茶会です。間違ってもボストン茶会ではありません。
 お客様をおもてなしする私の器量が問われますので、とっておきのダージリンと妖精さんには大好評の特製のスコーンをお出しします。

「――聖処女を殺した恨みは一先ず忘れよう!」

「――わたしは味に五月蝿い人間だ」

 どこか棘のある物言いが引っ掛かりますが、カオスなヨーロッパの歴史の賜物としてスルーします。

 大人の対応が国際交流には必須なのです。
 偉いぞ、私。頑張れ、私と自分で自分を励まします。

「――なんだこのスコーンの味は! 祖国に対する侮辱か? 拷問には屈しないぞ! 自由、平等、博愛! 灯火を消しすな!」

 シャルロットさんは味が気にいらないのかスコーンを吐き出してしまいました。

「――素晴らしい! このスコーンの味に質素倹約粗食を美徳とした不死鳥ことフランツ・ヨーゼフ一世を見た!」

 フリードリッヒさんは感涙を流しながら咽び泣いています。

 まあ、なんと言われようが我慢です。私は悲劇のヒロイン属性ですので耐える事には慣れているのでこんな事はへいちゃらです。
 ですが。

「気取っている貴女には粗食の素晴らしさが解らないようだな。まあ、マリー・アントワネットを殺害する革命万歳でナポレオンな国だから仕方あるまいが」

「貴様っ! ナポレオン様を侮辱する気か? それにマリー・アントワネットみたいな売女を押し付けられてフランス国民は迷惑したんだっ! 自由、平等、博愛!」

 なんと言うことでしょう!
 と言うよりも仲が悪過ぎですね、このお二人。
 やはりヨーロッパの歴史は複雑過ぎるにも程があります。

173魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/14(水) 21:18:04 ID:YIs9Ftwe
 こんな時に頼りになって欲しいアンさんはマフィアと一緒に出張です。
 ハッキリ言って全然頼りになりません。
「まあまあ。お茶を飲んで落ち着いたらいかかですか?」

 私はやんちゃなきかんぼうをあやすようにお二方に声を掛けたのですが、あっさりと罵倒されました。

「五月蝿いっ! 文句があるなら素直にフランスを合併吸収すれば良かったんだっ! 自由、平等、博愛!」

「ドーバー海峡があるという余裕か? 世が世なら我がオーストリアのハプスブルグ家がヨーロッパを支配していたのだぞ?」

「まあ、なんてひどいおっしゃりよう。世界に冠たる大英帝国の威信を見せなければならないようですね」

 今まで我慢に我慢を重ねていたのですが、限界を超えました。
 最早お茶の鎮静作用でも私の感情を止められません。

「私は願う! 自由、平等、博愛の精神! “暗殺天使”!」

「その力を世界に示せ!“高貴なる血脈”」

 シャルロットさんは暗殺天使なる魔法のナイフを取り出して身構えます。
 フリードリッヒさんは魔法で歴代のハプスブルグ家の人間を呼び出します。

「妖精さーん」

「やっとでばんきた」「ひさしぶりですなー」「おかしたべてい?」「にんげんさんおっはー」「なんかふえてるやんけ」「ぼくらをおいしくいただくです?」

 対抗して妖精を呼び出した私ですが、妖精さんはやっぱり妖精さんでした。
 お気楽極楽メルヘン属性はあいかわらずで、シャルロットさんとフリードリッヒさんの魔法にはちょっと見劣りしてしまいます。

 ですが。

「これは可愛い……。自由、平等、博愛!」

「い、癒しされる……」

 結論から申し上げますと、妖精さんの癒し効果で皆仲良くなりました。一言で言うとマブダチです。
 今度お二人が私に料理を教えてくれるそうなのですが、理由は私が味音痴だからだそうです。
 悔しいですね、ええ、悔しいですとも。
 私、泣いてしまいそうです。


――To be continued on the next time.

174魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/14(水) 21:19:10 ID:YIs9Ftwe
魔法少女軍事系第十二話ぐらい投下終了。
何を書いてるんだろう、自分。
175創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 21:23:20 ID:csGm+sY6
ヨーロッパの複雑な歴史w
いろんな国の人が集まればいろんなことがありますなー
なんかヘタリアを思い出しちゃったよ

そ し て、 待望の妖精さんキター!!!!
ああもうかわいいよう大好きだよう
176創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 21:23:53 ID:26OwKpmm
いや、なんか上手くいえないけど面白いww
批評とか感想にもならずごめんw
177創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 21:24:34 ID:YWpGragY
お、2話分もきてる
いいねいいねーこのわたしのそこはかとなく黒い自分を甘やかす性格がいいね
悲劇のヒロイン属性に笑ったw
178創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 21:56:50 ID:bM+AiV0B
乙!
魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus氏はキャラ立てが上手いですな。
連続ドラマ小説ニホンちゃんを思い出す。
179創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 22:21:21 ID:26OwKpmm
10時半ぐらいから投下予定
180魔法少女孤独系2-1/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/14(水) 22:31:44 ID:26OwKpmm
「魔法兵なのかと思って安心していれば、とんでもないおっちょこちょいさんですね」
「私、魔法兵じゃないもん」
「まあ、使い魔を呼べたところで、魔法兵になれるのはまた別の素質ですからね」

 なりたくてもなれなかった。私の能力はとても汚らわしいものだから。醜い容姿にお似
合いの、捻じ曲がった性格にぴったりな、嫌われ者には当然の。

「でも戦うことぐらいはできるよ」
「あの小さな子で? とてもそうは見えません。お菓子屋の前でキャンディでもねだって
泣いている方がお似合いです。あんなにフリルのついたお人形用のドレスを――」
「こら、お前っ!」
 胸元で威勢の良い声が響いた。ラグのくるくるした髪の毛が喉をくすぐる。

「人間ってのはすぐに見た目で判断しようとするんだから! ほんとにもう!」
「あら、これは失礼いたしました。ともかく今は逃げるか、潜んだ敵を倒さなければ、あ
なたの望む人とのお喋りは叶いませんよ」
 そんなこと言われなくても分かっている。なるべく体を動かさず見える範囲だけでも敵
を探す。しかしどこにも見えない。

 それにしても、この少女の余裕の表情は何?

「あの大きな木の陰に5人、そこからずっと左、だいぶ離れた岩陰に2人。不本意ながら
少しだけ興味が湧いてしまったので、見物させて貰うことにします」

 この自信に満ちた言い方は何?

「ありがとう。木陰の5人お願い、ラグ」

 なのに、嫌悪感が湧かないのは何故――

「あいあい! まかせといて!」
 地面に突っ伏した私達の前にぴょんと飛び降りたラグが、少女に向かって指をさした。
「やい! 私達の力、よーっく見とけよ!」
「ええ、期待しております」
「ふんっ!」
 ラグの背中の羽が大きく開く。黒く冷たく光を反射するそれは、まるで鋼鉄のように無
機質で機械的。細やかな振動がその幅を広げると、やがて半透明に変わった。
 周囲の砂を巻き上げ、小さな身体を覆ったかと思うと強烈な羽音と共にラグは姿を消す。

「ずいぶんお転婆な使い魔さんですね」
 呆れた顔をしながらは立ち上がった少女が、スカートについた砂を上品に払った。
「うん、おかげで随分助かってるけどね」
 その視線の先、大きな木の陰では鳴り響く銃声と悲鳴の中で、血飛沫が舞っている。

「ラグは人を食べるの」

「お下品な使い魔さんに訂正します」
「私も最初はびっくりしちゃった」
「でも、あんなに遠くに飛ばして、あなたは岩陰の狙撃兵から身を守れるのですか?」
「当然。ついでに守ってあげるから心配しないで」
「なんだかワクワクしてきましたよ、私」
181創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 22:33:24 ID:T06IYYRE
支援
182魔法少女孤独系2-2/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/14(水) 22:34:04 ID:26OwKpmm
 さっきとは違う重い発砲音。と同時に金属を弾いた音が後ろへ伸びる。次も、またその
次も。銃弾は私達の前で逸れて行く。
「不思議。別の使い魔さんでもいらっしゃるのかし――」
 言葉が止まった。驚いているのだろう、見なくても分かる。私が異形と言われる能力の
所以。目を背けたいのなら、そうすればいい。

「……あなた、一体」
「気持ち悪いでしょ。別にこっち見なくてもいいよ」

 背中に湧き出した無数の甲蟲が私のマントを押し上げ、膨れ上がっていくのが分かる。
 圧し掛かる重みに耐えきれず膝を付きながら、なんとか左手を岩場に向けた。
 首筋を通り腕に走る激痛を、裾から一気に放出する。巨大化した腕のような蟲の群れが、
凄まじい速度で岩場へ伸び、兵士の身体を後ろの壁面に叩き付け、飲み込んだ。

「私も人を食べるの」

「一緒にテーブルマナーのセミナーを受けたほうが良いのでは?」
「もう一人いるんだっけ」
 おぞましく伸び続ける黒い腕を地面や岩に何度もぶつけながら、傍でへたり込んでいる
兵士に狙いを定めた。そして僅かに聞こえた悲鳴を押し潰し、握り、飲む。

「……見事とはいいたくありませんが、あちらも片付いたようですね」
「おーい、ちゃんと見てたのか! お前!」
 びっしょりと身体を赤く染めたラグがとことこ歩いて来る。無事でよかった。
「ええ、見直しましたよ。ラグさんも」
「わはははー!」

 ――安堵の中でくすぶる恐怖の予感。返事をする余裕がない。
「どうしました?」
「も、戻さないと……」
 伸びきって脈動し続ける黒い腕が、ずるりと一度波打つ。それは蟲たちの帰巣合図であ
り、飲み込んだ兵士たちの驚き、悲しみ、痛み、恐怖、血と肉。増幅するの羽音の群れが
全て身体の中に。

 ――私は自分の叫び声を聞いた後、全ての感覚が消失した。



「気が付いたみたいですね。大丈夫ですか?」
「あ、私また……」
 自分の能力に耐えられないとは。本当に情けない。
 ふと周りを見回せば、空はすでに薄く赤く染まり始めていた。
183魔法少女孤独系2-3/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/14(水) 22:35:23 ID:26OwKpmm
「ずっと居てくれたの?」
「全くにしてあなたは何といいますか。とてもユニークな方であられるんですね」
「顔からつま先までね。おかしいなら笑えば?」
「見た目がユニーク。などという言葉自体、既にそれではありません」
 じんじんと痛む背中を悟られないように、ゆっくりと起きる。
 少女はといえば、ゆったりとした動きで私の周りを歩きながら空を見上げていた。その
姿はどことなく高貴な英国貴族を思わせるものがある。

「魔法兵でないと言っては平気で人を殺せる精神力を持ち、それを越えるような力を見せ
付けては気絶してしまう。分かることといえば、あの小さな子が大量の蟲を統治している
事ぐらい」
「すごいね、わかるんだ。そんなこと」
「ええ、思ったより優しい子でしたよ。蟲たちを誘導してましたから。それよりあなた一
体何者ですか?」
「わかんない。ねえ、あなたは魔法兵なんでしょ?」
「ええ」
 やっぱりそうだ。何かおかしいと思ってた。

「私みたいな能力。その、妖精みたいな使い魔が使える人、他に知ってたりしないかな」
「さあ? あんな汚らわしい使い魔は存じません」
「そっか」
 それでもこの人は、私を心配してここに居てくれたんだ。私を見て逃げたりもしない、
優しい人なんだ。そうだ、それよりも――

「そ、それじゃあさ。マナのたくさん集まってる場所、知らないかな?」
「聞いてどうするのです」
「そこに行くとね、なんでも願いが叶うって言うの」
「知りません、そんな場所。聞いたことも無いです」
「そう……」

 また波の音が私達を包む。私のちょっとした、久しぶりだった会話が終わってしまった。
 しょうがない、寂しいけどもう行こう。嫌われないうちに別れてしまえば、なら良い思い
出になるかも。

「ありがとう。ごめんね、いろいろ心配させちゃって」
「ここから先は夜のほうが警戒が厳しくなります。今夜はそのへんの洞穴にでも隠れて、
人探しなら明日からにした方が良いです」
「わかった」
「いいですか。必ずそのへんの洞窟で、ですよ?」
「え? う、うん。そうするよ」
「では、私もそろそろ夕食なので」
 そう言い残して、少女はゆっくりと振り返り、さくさくと音を立てながら歩き出した。

「また会えるといいな」
 少し離れてからそっと小声で答える。あの子に届いたかは分からなかったけど。
184創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 22:36:14 ID:26OwKpmm
以上暴走系邪気眼少女 2話目おわり
185創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 22:37:19 ID:7DFutVzK

職人みんな頑張ってていい感じだ
186創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 23:49:28 ID:ZhWxf5hs
乙で
自分の力というか能力が使いこなせず
またまだそんな能力や自分を毛嫌いしているそんな自分がいる所がいいですね

そんな能力や自分を自分のものと認めるまで
相当かかるような感じはあるし、その過程もまた成長でしょうなあ
ただいくら成長していくといっても、人食となると手放しで賛美できませんがw
187創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 15:18:14 ID:5juZLkc1
各学園で生徒の補充はどうなってるんだろう?
188創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 15:30:37 ID:5juZLkc1
あとエーリヒがどうして高い戦術家の実力があるかわからん。元々は軍事史研究科だったりしたのかな。
189 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 15:41:49 ID:zujfIKXi
エ―リヒは元ブエノス・ゾンデ……ん?
「ちょりーす!」
おっと誰か来たようだ
190創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 15:47:19 ID:LEm/fcec
学園島にスイス領があったらおかしいだろうか?
191創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 16:25:29 ID:ORpP4jaI
不利に陥った学園に颯爽と支援に現れる中国人留学生集団「墨家」とかw
192創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 18:18:25 ID:LbqBtQVX
かの時代だったら
口先と能力で巧みに相手に取り入る外交人
縦横家が好きだな、雇われるかだが

留学生はいままでなかった気がする
該当しそうな奴はいるが
193魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/15(木) 18:44:03 ID:LEm/fcec
第十三話『中立の足音』
1/2
「オメ、こったらとこでなにしてっだ?」
「んだんだ。ここはオラたつの地所だど」
 なんと言うことでしょう!
 道に迷ってスイス領に入ってしまいました。
 手に様々な武器を持った羊飼いとかそんな感じの殿方がわらわらと湧いてきました。

 迫り来る殿方に持病の男性恐怖症が発祥してしまって吐き気とか頭痛とか目眩や間接痛に苛まれますが、ぐっと堪えます。

「申し訳ありません。道に迷ってしまいまして」

 スイスの殿方は互いに顔を見合わせてます。どうやら話し合いをしているようなのですが。

「そりゃあえれえ災難だったな。この道まっつぐ行ぐと森を抜けられっど」

「道に迷っだならしがだね。次がらは迷わいようにすんだど」

「折角来だんだ。オメ、オラが作ったチーズさ持ってげ。美味くて頬っぺたさ落ちっど」

「オラっちの鶏が生んだ玉子食うけ?」

「オメたつ、いい加減にしど! 娘さん困ってっど」

 なんでしょうね。意味が判らないんですが、どうやら私を歓迎してくれているみたいです。
 全体的にもっさりとした風体なのですが、皆さんの優しさが辛い軍隊生活に疲れた私の心を解き解します。
 嬉しさのあまり絶句してプルプル震えていますと、スイスの殿方たちは何やら整列を始めます。
 一番左端の人がビックリする程長い角笛を吹きますと。

「よーでるよーでるよーでるひっひあほ〜」
 響く歌声はヨーデルでした。澄んだ声は山々に木霊して、大自然を感じさせます。
 わー、ぱちぱち。

 私は感動のあまり拍手歓声の雨あられです。スイスの皆様方は、顔を真っ赤にして照れてますが、何だか可愛いです。
 牧歌的て平和な一時を満喫してしまいます。
 ですが。
 いるんですよね、空気が読めない人。
 具体的に言えばチョビヒゲダンディズムの信奉者――第三帝国の人です。

 キャタピラの音をキュラキュラ立てて、お洒落戦車を戦闘に攻めてきました。

「オメら、オラたつの地所さ攻めて来だだな!」

「オラたつ舐めんじゃねっど!」

「切り刻んで肥料にすっど!」

 皆さんてんでに突撃しちゃいました。

 残ってるのは角笛の人だけです。

「あのー、お手伝いしましょうか?」

「いんね。オラたつの国はオラたつで守るだ」

194魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/15(木) 18:45:23 ID:LEm/fcec
2/2
 お洒落戦車に押されている感じで心配なのですが、皆さんの心は折れていません。
 眼が輝いています。オーラが身体から滲んでいます。

「アイツら結構強いど」

「泣き言さいってるでねぇ。アルムのオジイにどやされっど」

「だどもありゃ強えど」

「魔法しかなかんべ」

「んだんだ。魔法さ使うだ」

「オメら、準備えーが。笛吹くど」

 ボェェェェェェェェェッと角笛の音が響きますと、時空の裂け目から巨大な真っ赤なお顔のゴブリンさんの登場です。

「悪いごはいねがーっ!」

 ゴブリンさんは、あっという間に手にした物騒なナイフでお洒落戦車を三枚におろしてしまいました。
 頼みの綱の切り札を破壊された第三帝国の皆さんは逃げ出してしまいますが、ただ一人そうでない人がいます。
 遠目で見るだけでもわかりますね。ゴッチさんでした。
 魔法で巨大化して、ゴブリンさんとガッチリ組み合います。

「技術がない者はレスラーではない。ただのショーマンだ(意訳)」

 大迫力の戦闘が始まりました。雲を呼び嵐を招き、龍虎相撃つ死闘です。
 リアルファイトって言うんでしょうね、こういうの。ちょっぴり退屈だったりします。

「私は妥協しないのではない。他の連中がショーマンシップに走っているだけだ(意訳)」

「悪いごはいねがーっ!」

 なんと申せば良いのでしょうか、ゴッチさんとゴブリンさんは互いの強さを認めあって熱い抱擁を交わしています。
 一言で申しますと、感動です。感涙です。

 その結果、スイスの皆さんは第三帝国の侵略を防ぐ事が出来ました。
 私はお土産をどっさりと貰いました。
 中立なお国柄のスイスの皆さんとちょっぴり仲良くなれました。
 すったもんだがありまして、作戦に遅刻してしまった私ですが、スイスの皆さんと仲良くなった事を偉い人に評価して頂きましてお咎めなしでした。

 ですが。
 美味しいチーズを取り上げられてしまいました。
 ゴッチさんにサインを貰うのを忘れてしまいました。

 馬鹿馬鹿私の馬鹿。

 食べたかったですねぇ、美味しいチーズ。欲しかったですねぇ、ゴッチさんのサイン。

 悔しいのでマフィアにパルメザンチーズを作らせようとしたのですが、私のミルクが欲しいと言われたのでお尻を蹴ってあげました。

 仕方ないので今度アンさんと一緒に遊びに行こうと思います。


続く。
195創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 18:46:54 ID:/aMUQi5K
         、          , ヘ
      /l  | _\       / ,, l
     ,'   l  l! ミヽ\、、,ィ 〈ミ j
    i   |   ,ヾ-"´       \
    !   l  /       うるふ  ヽ
    \  lr/      、      ノ !
       >.ノ     /:::::ヽ、    ノ:ヽ`.、  
     l 'ミ    (::::::・::ノ  ー― 、・:::).彡   疾風の乙!
     |  ` 、     ̄     ▼j  =´
     }     `ー、     (_,人_)/
     ミ       ` ー――‐ ''´l
      '、    ト、    i^i    /
       `ー― ' ヽ   l l _ノ
             `ー-"
196魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/15(木) 18:47:44 ID:LEm/fcec
魔法少女軍事系第十三話投下終了。
ではまたそのうち。
197創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 18:49:01 ID:TNyGOV25
なまはげじゃねえかwww
198創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 19:29:15 ID:oFFbUzS5


>>192
外国人傭兵部隊を留学生として登場させられるんじゃね?
199創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 19:52:59 ID:ORpP4jaI
お洒落戦車が毎度毎度ほんと雑魚だなwwwww
200創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 19:55:22 ID:TNyGOV25
戦車すらキャラが確立されつつあるという事実に驚愕
持ち上げすぎ?と思いつつも素直に感想
201創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 20:33:05 ID:LEm/fcec
まとめのQ&Aはもっと解りやすくした方が良いと思うんだけどどうだろう
202創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 20:42:54 ID:oFFbUzS5
>>201
考察系レスまとめみたいに、魔法関連とか学園関連とかに分けた方いいかな。
203創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 20:48:17 ID:LEm/fcec
縛りと注意点とかに絞った方が良いかもね。
今のだと世界観は書き手の自由裁量って事が解りにくいと思うよ。
204創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 21:47:19 ID:oFFbUzS5
>>203
おk、その二つに焦点を当てて作り直すわ
205創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 22:22:19 ID:TNyGOV25
あ、もしかしたら遅かったかもしれないけど、俺がまとめみてて思ったこと。

学園島スレとしてのルール設定なのか、個人ssの設定なのかどっちか分からない
ところが結構あるように思えて、ちょっと迷ってしまった(対話FAQ?っぽいやつとか)

怪しい部分はぼかしたり、触れなければ平気ってこともあるんだろうけど、
どうして欲しいといえば縛りと注意点なのかな、、、

あと軍事系の設定が「WW2実在のもの」なのか「だいたい(←重要)WW2相当(←重要)」なのか。
後者だと自分としては多少やりやすいところもあるので、聞いてみたいな。

ごめんよ、こんなことしか書けなくて。
参加者が増えてくれる事を祈って。
206創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 22:48:49 ID:oFFbUzS5
今日は編集しないんで大丈夫
207創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 22:51:49 ID:TNyGOV25
ほいw

かげながら応援してるんで頑張ってね、書き手の皆様。
208創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 01:19:30 ID:2bG422Tl
75さんの作品ってどんな評価なんだい?
209 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 01:22:25 ID:7dhMJQ/a
結構高い評価じゃないかなぁ
210創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 01:26:04 ID:2bG422Tl
結構辛口な批評されてるけど
211 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 01:28:46 ID:7dhMJQ/a
元が軍板からだから兵器関連には厳しい突っ込みは多いやね
212創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 01:32:02 ID:RiXLV8Nr
単純に量だけ見てもかなりの頑張り屋さんだからねー
文章って、ある程度のレベルまでは書けば書くほど上手くなるものだと思うから、いつかとんでもない化け方をするかもしれないぜ
まぁ俺は兵器関連はわからんのだけどねー
213創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 10:34:37 ID:zioDHWr1
>>201
キャラの掛け合いみたいなのがいいな。フェアリー・テールたんとエーリヒとかwww

>>208
そこそこ面白いけどキャラが弱い
214創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 16:11:13 ID:IZbcZvYo
>>213
面白そうだw
見たいっていうか、やってみたいw
215超適当謎短編 ◆NN1orQGDus :2009/01/16(金) 17:41:12 ID:IZbcZvYo
“plead for mylife”


「何か言う事はあるか?」
 どう見ても俺より若いファシストのドイツ野郎が勝ち誇って俺を見下している。
 唾を吐き付けてやりたいが、がんじがらめに縛られた俺は自由が効かず、それが出来ない。
「間抜けな上司を持った中間管理職の辛さ、アンタにわかるかい?」
 俺に出来るのは、精々を吐く事だけだ。「素直に武装放棄に応じていれば、貴様も捕虜として扱ってやったのだがな」
 顔色を変えないこの若造の面の皮は、あの忌々しい新型戦車の装甲並みに厚いのかも知れない。
 そんな事を考えると、やけに笑える。
「何が可笑しい? ソ連のコミュニスト」
 皮肉には反応しないが、笑いには反応する。余程プライドが高いのだろう。
「勘違いするな。俺はコミュニストじゃねえ。世が世なら貴族様さ」
「――減らず口を」
 一発、二発と蹴り飛ばされる。鼻を折れたのか、脳天がキナ臭くて涙か止まらずに息苦しい。
「大したハンサムじゃないか。まあ、悲鳴を出さないのは誉めてやる」
 嗜虐の色が混じった笑みは――爬虫類、特に蛇を彷彿される。
「意外と優しいんだな、ブルスト野郎。党の粛正はこんなものじゃない」
「そうか。なら、手っ取り早く処理してやる」
 今度は憤怒の形相で、拳銃を抜いて額に突き付ける。
「これが最後だ。――言い残す事はあるか?」
「お前さんは無能な上司になるなよ。部下が可哀想だからな」
 カチリ、と撃鉄が上げられる。
「何故、貴様は投降しなかった? 何故、命乞いをしない? 後学の為に聞いておく」
 冷たい視線が突き刺さるが、シベリアの冬に比べればまだ暖かい。
「意地って奴だ。自分の経歴が大事なお偉さんや自分の命が大事な腰抜けにゃわからねぇ、下っぱの意地さ」
「そうか、意地か。――その言葉、覚えておこう」
 最後に交わした言葉は短く、残したい事も特にない。
 気掛かりと言えば、故郷に残したお袋だけだ。親不孝な俺だけど、死んだら悲しんでくれるだろうか。
 ――それだけが気掛かりだ。

 了。
216超適当謎短編 ◆NN1orQGDus :2009/01/16(金) 17:42:16 ID:IZbcZvYo
超適当謎短編投下終了。
深い意味は無いけどたまにはシリアスなのを書こう。
217創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 18:52:56 ID:vRucqVUi
>>208
キャラがどーのというのは感じるかも

特にエーリヒは
これといった部下や友人も出てこないので
それらから見たエーリヒ像というのが見れない
あったのは敵意ある人物ぐらいからだろう
218創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 19:02:27 ID:IZbcZvYo
>>208
戦史を意識してるみたいな控え目の描写が良い感じだとド素人が言ってみる
219創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 19:14:18 ID:ay2DPD5O
>208
色々言われてるけど、正直に言えば俺より遥かに描写が上手くて言葉を知ってる。
比べたら自分のが絵本みたいだ。

内容と量が人を選ぶのは否めないかもしれない。
220創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 19:46:49 ID:YzSPJVlJ
>>194
投下乙です!
スイスのみなさんが田舎物ww
こんなみなさんなら男性恐怖症気味のわたしでも仲良くなれるな
そのうちまた遊びに行ってチーズをどっさりもらってきてほしい
楽園の魔女たちの虹の谷のみんなを思い出したよ
しかし俺いつもラノベを思い出してばっかいるな

221創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 19:51:03 ID:VbvNA8BX
>>216
O2

http://www36.atwiki.jp/gakuenisland/pages/67.html
FAQを修正。
昨日言われた箇所を重点的にまとめてみた。
222創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 20:21:26 ID:IZbcZvYo
>>221
わかりやすいと思うよ。

>>213の意見の
>キャラの掛け合いみたいなのがいいな
を組み込むべきかは悩む所だけど。
223創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:51:56 ID:VbvNA8BX
キャラ同士の掛け合いかぁ。
ちょいと作ってみようかな。
224創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:54:36 ID:VbvNA8BX
明日は27時間アイマステレビを某ニコニコでやるそうだけど、いずれは学園島スレもそういうことやりたいね。
みんなで合同誌を作るとか。
225創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:14:57 ID:IZbcZvYo
ペットと妖精さんの掛け合いで書いてみたら意味不明な物に……orz

合同誌ってまとめに掲載されてる作品を使うの?
226創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:20:40 ID:VbvNA8BX
>>225
どうだろう?
せっかく出すんだから新規書き下ろしかなと言ってみるw
227創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:22:10 ID:YzSPJVlJ
>>225
そのかけあいめちゃくちゃ読みたい俺がいる
228創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:23:41 ID:IZbcZvYo
書き手の人次第だろうねえ。
自分には新規書き下ろしはキツいし。
まあ、夢ですな。
229創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:25:09 ID:VbvNA8BX
いつかは・・・いつかは、ね。
230創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:30:37 ID:IZbcZvYo
>>227
内輪ネタ過ぎるというか自分の作品のネタ過ぎるので自重しないと危険w
231創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:33:43 ID:IZbcZvYo
>>229
まずはこのスレを盛り上げよう
夢はそのうち見れば良いじゃない?
232創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:35:52 ID:YzSPJVlJ
内輪ネタ楽しいです^^
自分の作品ネタいいじゃない
233創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:38:17 ID:VbvNA8BX
>>231
そうだね。
学園での銃後の暮らしというか、戦争の中での学園生活ってどうなんだろう。
前線から帰ってきた生徒がクラスに居場所なくなってたり、好きだった子が別の男とくっついていたりするのかな。
234創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 22:44:25 ID:IZbcZvYo
>学園生活
優雅にアフタヌーンティーを楽しんだり男性恐怖症を悪化させたり戦友同士で仲良くしてるのを見て禁断の妄想をしたりペットに餌をやったりペットを椅子にしたり(以下略)
235創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:03:10 ID:VbvNA8BX
>>234
801と百合の需要と供給は凄いんだろうなぁ・・・
236創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:14:37 ID:IZbcZvYo
繊細で傷付きやすい年頃の少年少女が戦争という過酷な現実に放り込まれたら、互いの傷を舐め合うように寄り添うのは当然の事なのだわ!って某キャラクターが頭の中で暴れてます。
237創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:22:26 ID:VbvNA8BX
まあ何があろうとマイコとエレナとユーリには破滅以外の道なんて残されてないんだけどな
238創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:34:14 ID:IZbcZvYo
実はネタが尽きてしまった
239創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:49:07 ID:VbvNA8BX
>>238
そういう時のためのスレと住人じゃね?
240創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:54:46 ID:IZbcZvYo
いや、住人からネタを求めるとそこでネタバレになるじゃない?
ネタは自分で考えないと面白くないし。
241創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 00:15:36 ID:SfG+mwWW
住人の雑談からネタを思いつくなんてよくある話だろ
242創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 00:21:45 ID:UGckt4D3
んー、それもまたスタイルだろな
雑音いらないって人もいるし、ごちゃごちゃやってるうちにできてくる人もいる
243創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 01:21:21 ID:Gc7LsjKt
1時半ぐらいから投下予告。
支援は無くても大丈夫です。
244魔法少女孤独系3-1/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/17(土) 01:32:41 ID:Gc7LsjKt
「ねえ。本当にここに泊まるの? 大勢連れて戻ってきたりするんじゃない? あいつ」
「別にいいじゃん。なんとかなるよ」

 あの子が言った通り、岩場に着くといくつかの洞穴が口を開けていた。数箇所まわって
みたがどれも休む場所とは言い難いごつごつした岩の穴ばかり。
 そうしているうちに海も空もすっかり紺色に染まり、仕方なく浜辺に打ち上げられてい
る板切れを何枚か持って、一番深かった洞穴へと入る。

「はい、ベッドもできました」
「これがベッドに見えるとは、いよいよ人間離れしてきたか」

 ばら撒いた板は腰をかけるとカタカタと揺れ、私はバランスを崩して手をついた。
「もう、文句ばっかり言わないでよ。ラグは服の中で寝るんだから関係ないでしょ」
「ひっくりこけて潰さないでよね」

 月明かりが洞窟の入り口に光の境界を作る。私達は闇の中、何も見えない闇の中。

「ねえ、ミルカ」
 ラグのよく通る声は姿さえ見えなければ、まるでそこに普通の人が居るよう。
 きっとそれは私も同じなんだと思う。
「あいつのこと、気になる?」
「気にならないって言ったら嘘になっちゃうかな。ちゃんと私を見ながら話してくれる人
なんて今まで居なかったもん」
「ふーん、なんか妬いちゃうな……」

 そんな事を言いながら、もぞもぞと胸に入ってくる温もりを、そっと優しく撫でる。
 静かな寝息が聞こえてくるまで――私はずっとそうしていた。
 大勢の人に蔑まれてきた私でも、他人に優しくすることはできる。自分がして欲しい
ことや、言われたいこと。山ほどあるそれをしてあげればいいだけ。
 ラグが居てくれたから私は生きてる。ラグが居るからここまでこれた。だからそんなに
心配しなくてもいいんだよ。

 穏やかな潮騒に包まれてようやく眠りにつきはじめた頃、突然ラグが動いた。

「ミルカ、誰か来る!」

 暴れ出そうになったラグを抑え耳を澄ます。と――足音、一人じゃない。もしかして、
本当に罠だった? 嘘でしょ?
「離してよ! 殺らなきゃ殺られちゃう。戦場なんだよ!」
「待って、違うよ。きっと違うから」
「何が違うの? 騙されたんだよ、あいつに!」
「お願いだから静かにして」

 砂を踏む音が近づく。心臓の鼓動が早まる。
 一筋の光が私達の暗闇を貫き、眩しさに目を閉じた。瞬間、ラグが私の手を強引に抜け、
光に向かって飛び出した。
「殺ってやる!」
「ラグ! だめ!」

「んきゃあっ!」
 間を置かずして聞こえた悲鳴、それは意外にもラグのものだった。
「な、何だ、今の……あっ、お前!」

「せっかくの訪問客にいきなりこの仕打ちとはご挨拶ですね」
 この声は――

「ちょっと、なんですの! このちっこいの!」
 もう一つは、知らない声――
245魔法少女孤独系3-2/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/17(土) 01:34:48 ID:Gc7LsjKt
「こんばんは、お嬢さん。遊びに来ましたよ」
「これがばれたらエライ事なのだわ!」

 ああ、なんてこと。

「お嬢さんと呼ぶのもなんですね。あなた、お名前は?」

 明るさに慣れてきた視界が滲むのは、眩しかったせいじゃない。まさか来てくれるなん
て、思ってもみなかった。

「私は……私の名前はミルカ」
「素敵なお名前。何でもまろやかにしてしまいそうです。さて、あまり長い時間居ることは
できませんが、何かお喋りでもいたしましょう」
「あら、この子泣いてるのだわ」

 金髪の少女の言葉に、はっとして組んだ腕に顔を埋める。泣いてくしゃくしゃになった
私の顔なんて見せられたものじゃない。

「ミルカは優しくされるのに慣れてないんだよ。おちょくるな、このスットコドッコイ!」
 肩に感じる小さな感触。
「まあ、スットコドッコイとは心外なのだわ!」

 なんだろう? なんだろう、この感じ。

「ミルカさんがあまりに酷い格好だったので持ってきたんですよ。これ」
「あのいけすかないポワポワ頭からひったくって来てやったのだわ!」

 嬉しい? 楽しい? 身体が浮いちゃいそう。

「ほら、ご覧になって」
 そっと顔を上げると、目の前には白いマントが差し出されていた。
 驚いて手に取り、それを見る。今までに触ったこともないつるつるした手触りで、裾の方
には何だか良く分からないけど綺麗な刺繍が入っていた。

「くれるの? ……で、でも誰かのだったんでしょ?」
「何にしても支給品ですからお気になさらず」
 澄ました口調、なのに優しそうな目で私にそう言ってくれた。また歪みそうになる顔を
貰ったマントで隠すと、とても甘い香りがした。
「ありがとう……」
「何だお前ら、いい奴か!」
「当たり前なのだわ! ちんちくりん!」
「何だと! トーヘンボク!」

 それからずっと4人でお喋りをしていた。クラスの子たちがしていたみたいに笑ったり、
驚いたり。この子たちと居ると自分の辛いと思っていたことが馬鹿馬鹿しく思えて、それに
夢中になった私はついつい自分のことばかり話してしまう。
 生まれた時から付いていた痣のことや優しかったお母さんのこと、それに学校のこと――

 私達の学校は分校で生徒数も少なく、魔法兵も居なかった。
 教師代わりに来ている本校の先輩たちも厳しくて「素質がないなら体力を作って国のた
めに死ね」なんて言う。
 もともと落ちこぼれみたいな生徒が集まる学校だったから、同じ国とは言え学校の中も
敵ばかり、特異な外見の私は生徒全員の標的にされる。
 何もできないくせに、プライドばかり高い人間の集まり。本当に酷いものだった。死んで
しまおうと何度も思ったけど、やっぱり怖くて結局冷たい嫌がらせに耐える毎日。

 思い出すのもイヤなのにどんどん言葉がでてくるのが不思議だったけど、その都度「前
時代的」だとか「ありえません」だとか言ってくれるので、胸がすっとする。
246魔法少女孤独系3-3/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/17(土) 01:36:16 ID:Gc7LsjKt
 ラグはといえば元気な金髪の少女と妙に気が合うらしく、時折言葉を止めては顔を見合
わせ、下品な笑い声を立てていた。何を話しているのか分からなかったけど、そんな二人
を見ると、私も少しやきもちをやいてしまう。でも、それでも楽しい。

「さて、そろそろ行かないと」
「うん、本当にありがとう。これ大事にするね」
 傍に置いていたマントをもう一度取って、ぎゅっと抱きしめる。

「それよりも明日、慰問コンサートがあるんです。よかったらいらっしゃいませんか」
「私たちが歌って踊ることになってるのだわ!」

 行きたいのはやまやまだけど、色々問題あるんじゃないのかな? さすがにこれは簡単
に返事をできない。それに私達にはちゃんと目的が。そう、目的が……

「で、でも」
「無理にとは申しません。気が向いたらあの子でも飛ばしてよこしてください」
「私は伝書鳩か!」
「それでは。あなたの進むべき道は自分で決めてください」
「きっとくるのだわ!」

 言って去る二人の背中を見て、寂しさよりも先に思い出すものがあった。
 そうだ、お礼しないと。何か、何かあげるものは……そうだ、バッグの中に!

「ねえ、待って!」
 小走りで二人を追う。

「こ……これ、あげるよ」
 小さな頃に拾った、晴れた空みたいに青く透き通った石。
 お母さんにはただのガラスだと笑われてしまったけど、ずっと大事にしてきた宝石。
貰ったマントはきっとこれよりも高価だと思う。でも今の私にはこれが精一杯。

 二人はそれを月明かりにかざしたり、指でこすったりした後、声をそろえて「ありがと
う」と言ってくれた。何だか本当に友達が出来たみたいで、その余韻は二人が去った後も
しばらく私を穏やかな気持ちにさせてくれた。



 学園島なんて無くなってしまえばいい。

 どんな願いも叶うなら、と考えていた復讐じみた稚拙な夢は、たった数十分、たった二
人の少女のせいで、あっという間に崩れてなくなってしまった。その隙間からもう一つの
夢が顔をのぞかせる。抑えつけていた私の夢。

 私は変わりたい、もっと人に愛されたい。
247創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 01:37:17 ID:Gc7LsjKt
第3話投下おわり
空気読めてないとか言わないで!ギャフン!
248創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 01:39:21 ID:PIBzN7RQ
おつかれちゃーん

この出会いは良い方向に傾くのか、それとも…
24975 ◆kkZO9WMBek :2009/01/17(土) 16:37:54 ID:PIBzN7RQ
ちょりーす。
第二章投下するよー。
2501/24:2009/01/17(土) 16:38:40 ID:PIBzN7RQ
学園島戦記譚 -死闘編- 第二章



 苦痛や屈辱ならば、マイコ・パステルナークはいくらでも耐えられる。
 だが今の状況に比べたら、虫や蛇を食らって山を彷徨っていた方が、一兆倍はマシだ。
(酷い腐臭だ。権力というものは、ここまで人を腐らせるものなのか)
 匂いの無い臭気が暗い部屋に立ち込めていた。
 ヴォルクグラード人民学園の最奥部にある生徒会室にマイコはいた。
 四方にある台にはそれぞれマトリョーシカ人形が置かれ、マイコはその中央でライトアップされていた。
「これより査問会を始める」
 一つのマトリョーシカ人形が揺れる。
 ヴォルクを動かしている人民生徒会の役員達は決して表舞台に現れることはない。
 安全な場所に隠れて権力を欲しいままにする――それが彼らだ。
「大佐、君は先月の戦いでヒューナースベルグを条約軍に奪還された。事実かね?」
 違いますと言ってやろうかと思ったが、マイコは立ち上がって素直に答えた。
「事実です。弁解の余地はありません」 
 査問会の議題はヒューナースベルグ奪還の責任――つまり要塞防衛部隊の司令官だったマイコの責任追及である。
 査問は淡々と続いた。
 作戦を行う上でミスは無かったのか?
 敵の戦力はどれぐらいだったのか?
 どれだけの兵力を失ったのか?
 マイコはそれら一つ一つに答える。
 自分の犯した過ちであり、どんな弁解と終わった後では言い訳にしかならない。
「ふむ。これで質問事項は以上だ」
「小官は如何なる処罰も覚悟しております。弁解のしようもありません」
 マイコは背筋を伸ばして言う。
 ミスはどうあっても帳消しにはできない。
「だが大佐、君は敵に甚大な損害を与え、自らも重症を負った。その犠牲的精神は素晴らしいものだ」
 役員は猫撫で声でマイコを称える。
「君の責任は問わない」
 驚愕で、琥珀色の目が大きく見開かれた。
 確かに前回の戦いでマイコはローブのリミッターを解除し、悪鬼羅刹の勢いで撤退する味方を援護した。
 帰還語マイコは入院を余儀なくされ、一ヶ月以上ベッドから離れられなかった。
 だがそれだけのことで、戦略的に価値のある要塞を陥落させた責任を不問に伏す……だと?
 おかしい。
 何か裏がある。
2512/24:2009/01/17(土) 16:39:12 ID:PIBzN7RQ
「しかし大佐、君は副官に対して必要以上の便宜を図っているようだ。我々としては、聊か看過できない話だな」
 マイコの予感は最悪の的中した。
 生徒会役員がこれから言おうとする言葉が、凄まじいスピードで脳内を駆け抜けていく。
「私はエレナ・ヴィレンスカヤ大尉に対して何ら特別扱いはしていないつもりですが」
 自分でもわかるほど声が震えていた。
 役員たちはきっと、どこか自分の様子を楽しんでいるのだろう。
 マイコは不快感を胸に抱きながらも、どうすることもできない。 
「大佐、レンズというものは使う個人によって歪むものだ」
「仰る意味がわかりません」
「わかろうとしないだけではないのか?」
 最奥にあるマトリョーシカ人形が震えた。
 一際大きい人形はヴォルクグラード人民学園生徒会書記長(生徒会長)であるディミトリ・カローニンのものだ。
 マイコが世界で最も嫌っている男だ。
「君とヴィレンスカヤ大尉が親友以上の仲であることは、我々も承知している。だが個人の感情を任務に持ち込まれては、互いの足を引っ張り合う以外に道は無い」
「私の答えは一つです、生徒会長。私はヴィレンスカヤ大尉を贔屓などしておりません」
「なるほど、議論は平行線らしい。このまま話しても答えは出まい」
 生徒会長は切り出す。
「我々は、君が大尉を特別扱いしていない証拠が欲しい。君は自分が大尉を特別扱いなどしていない確証を我々に与えたい。違うかね?」
「同感です」
「ならば話は早い。ヴィレンスカヤ"中佐"を、ヒューナースベルグ再奪取作戦の指揮官に任命する」
「なっ……」
 マイコは理解に苦しむ。
 何故エレナは二階級特進している!?
「どうしたのかね? ただの部下ならば、別に驚くこともなかろう。その仕草はまるで恋人を死地に送り込むようだ……」
「贔屓していないはずでは?」
「何か含むところがあるなら、遠慮なく言いたまえ。人民には自由を欲し手に入れる権利があるのだよ」
「君の副官は有能だ。きっと勝つに違いない」
 生徒会役員達の言葉には悪意が満ち満ちていた。
 マイコは歯軋りをして、自分への怒りを堪える。
 こんなことになったのは全部自分の責任だ。
 いっそ銃殺してくれた方が、よほどマシだ――!
2523/24:2009/01/17(土) 16:39:48 ID:PIBzN7RQ


 今月の粛清計画と反乱分子の処理経過を議論し終えた生徒会役員達は、チャイムが鳴るまでの間雑談を始めた。
 マトリョーシカ人形が共鳴する。
「そういえばブランスキーは発狂したそうだぞ」
「一年も木を数えていれば気も狂うだろう。かつての猛将も形無しだな」
 彼らは権力闘争と言う名のゲームをしている。
 自らの権力基盤を脅かす存在を早期に駆除し、より強い権力を各個たるものとすることをこの上ない楽しみとしていた。
「しかし同志書記長、パステルナーク大佐の件、上手くいきますかな」
「この程度の障壁で砕け散る絆ならば、それまでということだ」
 ディミトリの口調には何かを楽しむ余裕があった。
 軍内部でシンパを増やしつつあるマイコ・パステルナークの軍閥は脅威だったが、その脅威すらディミトリは利用する気でいた。
「考えてみろ。巨大な"悪の"テロリストを倒す"正義"の我ら生徒会。これほどわかりやすい対比はない」
「次の作戦でエレナ・ヴィレンスカヤが死ねば、確実にマイコは我らに対し反旗を翻すでしょう」
「報道関係への根回しは?」
「完了しております。同志書記長」
「хорошо(素晴らしい)」
 満足げな役員達の感情は、乾いた拍手によって遮られた。
「いやはやいやはや。よく出来た子供たちだ。感動で涙が出てしまいそうだよ」
 言葉には一分子の感動も含まれていなかった。
 生徒会室に、一つだけ人形以外の影があった。
 人間――それも大人の影だ。
「要するに自分らの啜る甘い汁を横取りされたくないだけだろう。人の友愛に付け込むとは、あまり関心はしないな」
 ウラジミール・ニーホフだ。
 今年で還暦を迎える老将軍は、学園島で最も長い軍歴を有している。
 隕石落下によって始まった戦争に始まり、学園島での長い戦いを経て、今はヴォルク生徒会のオブザーバーとして籍を置いている。
 生徒会が暴走しない最大の要因は、ニーホフの良識にあると言われている。
「作戦に失敗した場合、一体どれだけの犠牲が出るかわかっているのか? それだけでなく多くの物資や人員が割かれることになる。たった一大佐のために、何を考えている」
 静かな怒りが込められた言葉に対して、役員は反論できない。
2534/24:2009/01/17(土) 16:40:15 ID:PIBzN7RQ
 役員達は自分より弱い人間には尊大だが、自分よりも強い人間には卑屈だった。
「閣下、我々は総意に基づいて行動しているのです。それを勘違いされては困ります」
 唯一反論したのはディミトリだったが、ニーホフの言葉の波は止まらない。
「勘違いしているのは貴官の方だ。総意などというものは存在しない。現に私は反対だ。馬鹿馬鹿しいことこの上ないからな」
「巨大なシステムが運営されていくには、犠牲もまた必要なのです」
「ほう。では聞くが、その犠牲者の中に君の家族や兄弟、友人がいたことは一度でもあったのかね?」 
 流石にディミトリも口を閉じる。
 対照的にニーホフは続けた。
「多数が生き残るためには少数を切り捨てると権力者はよく言うものだ」
「我々が、喜んで人民を切り捨てたと言うのですか!?」
「切り捨てる側は良い。泣いて悲劇の主人公を演じればいいのだからな。だが切られた側からすれば、単なる自己陶酔に過ぎん」
 一人の役員が震える口調で反論したが、あっけなくまた沈黙を与えられた。
「我々は閣下の経歴や人格を尊敬しております」
 ディミトリは自分の言葉に絶対の自信を持っていた。
「権力はどうやって手に入れたかは重要ではありません。どう使うかが問題なのです……」
 ニーホフはもう何も言わなかった。
 何を言ったところで、権力に蝕まれた若者を救うことはできない。
 だが、ニーホフは今の立場から離れようとはしない。
 異を唱える大人がいなくなれば、権力という玩具を手にした子供は何をしでかすかわからないからだ。
25475 ◆kkZO9WMBek :2009/01/17(土) 16:40:50 ID:PIBzN7RQ
今日はここまで。
書き溜まっているので数日間は毎日投下できそう。
255創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 17:50:45 ID:TM50OuBq
せっかく査問会というイベントを書いたんだから、学園や作品世界の詳しいデータも出して欲しかったな
256創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 18:04:26 ID:g9/mLOLx
投稿乙
>虫や蛇を食らって山を彷徨っていた方が
こんな一文がありますが、隕石落下の爆心地で、しかも海洋で隔離された学園島の自然環境は
どのように再生されたのでしょうか。

現在の学園島の気候や生物相などの自然は、どのように設定していますか?
257創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 18:18:58 ID:R3e/GQJ3
魔道兵を”責任者”に就けているのは、魔道兵が一般人と差別されていないからなのか
その魔道兵個人が非常に有能だったからか、どちらだろう?

戦場では組織や戦術、戦略を理解せずに命令を無視する馬鹿が多い設定なんだよね。
258創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 18:57:32 ID:0FNT/p+S
エレナ死亡フラグ立ってないかこれ
259創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 19:15:52 ID:TM50OuBq
>>256
75氏の設定では学園島はバルト海にあるそうだが、あのあたりは40km以上の厚さがあるユーラシアプレートの上にあるので
並みの隕石では島を作るような造山運動を起こせないのではないかと思う
もし地殻を貫通するような隕石だったならヨーロッパは完全に壊滅していそうだ

こんな議論がかなり昔に過去スレであった気がするな
260適当に書いた変なネタ:2009/01/17(土) 19:33:12 ID:NRGlxZlc
 序

 これから述べる話は、全て真実である。
 学園島戦争を、そしてそれを生き抜いてきた、或いは生命を散らさざるを得なかった若者たちの姿を、可能な限り正確に再現したいと考え、私は手を尽くした。
 私の努力――否、かの戦争の生存者及び遺族の方々の御協力のお陰で、手元に貴重な資料並びに史料が山と築かれた。
 その量足るや、ヒマラヤ山脈もかくやと云う程である。
 その中の殆どは名も無き兵士の一人一人が想いを吐露した日記であり、手紙である。これ等が書かれた状況を考えると、記述された情報量は実に驚くべきものである。
 言うまでもない事ではあるが、これ等は本著よりも遥かな、莫大な、情報を含んでいるのである。
 実に多彩かつ個性的な文書ばかりだ。
 焼却は免れたものの焼け焦げたもの、水――或いは涙で濡れて文字が滲んでしまっているもの、そして、インクが不足していたのか、血で書かれたもの。
 その全てが、影に隠された学園島戦争の真実を物語っていて、中には今までの認識を覆すものもあった。
 しかし、その様な事は戦史の流れの中では些細な事でしかないのも実情だ。
 個人の認識と後世の認識の中に齟齬があるのは現在までの歴史が雄弁に、懇切丁寧に語っているのは読者諸兄の方がご存知であろうと私はりかい、認識している。

 本著は、学園島戦争の史料ではなく、学園島戦争を実際に戦った若者の記憶を留めるものであるという事を御理解して頂けるだろうか。
 詳細な戦史は今までの多くの研究会が出版しているし、学園島戦争を題材にしたシネマ、コミック、アニメーション、果てはゲームが多数存在している。
 それ等は大局的な視点で描かれたものが大多数である事は読者諸兄もご存知であろう。
 しかし、私は、学園島戦争を戦った若者を父母として持つ人間として、今まで打ち捨てられていた真実を後の世代に語り継ぐべきであると、不肖ながらも考えるのである。
 それは、私の、否、我々の義務であり責務ではなかろうか。

 最後に、学園島戦争で失われた幾多の人々の冥福を祈り、序にかえさせて頂きたい。

 本著の収益は全て遺族会に寄付させて頂く事を此処に表す。

 
261適当に書いた変なネタ:2009/01/17(土) 19:33:42 ID:NRGlxZlc
第一章

『最後の船を見送る。今は後の事は考えたくない。考えても無駄だ。どうせ、俺は死ぬ』

 これは学園島戦争でも激戦で知られるトローリンゲン攻防戦直前にドイツ兵に氏よって書かれた日記の抜粋である。
 諸兄も知っての通り、トローリンゲン攻防戦は学園島においてドイツの最後の拠点であるトローリンゲン港湾基地を巡る戦いである。
 本国に半ば見捨てられたドイツの残存兵力が終結し、イギリス、アメリカ、ロシア連合軍に対して一矢報いる以上の戦いを見せたのは、史家も認める所である。
 だが、この日記を見ると、ドイツ軍には厭戦気分が漂っているのが解る。
 基地司令官であるグスタブ・カールス少将ですら

『悲しい事に士気は上がらない。此処にいるのは精強無類と謳われたドイツ軍の残滓だ』

 と手記に残している。
 では、何故トローリンゲン攻防戦は激戦足り得たのか。
 手元の資料によれば、それはドイツ系の兵士ではなく、オーストリア、ハンガリーと云った非ドイツ系兵士に依る所が大きい事が解る。

『せめて最後はドイツの為ではなく、オーストリアとハンガリーの為に戦おう。それがハプスブルグ家を終焉させた償いだ』

『ハンガリー万歳! オーストリア万歳! 二度と故郷の血を踏めないが、それだからこそ最後は(以後欠損の為に解読不可)』

 驚くべき事に、死を覚悟した非ドイツ系ドイツ兵は最後にナショナリズムに目覚めていたのだ。
 しかも、その求心力となったのはかつての第帝国ハプスブルグ王朝に対する帰属意識だったのである。
 複雑怪奇なヨーロッパ史の説明は省くが、ファシズム――ナチス・ドイツの否定材料としてハプスブルグ家の遺名が使われた事に、私は驚愕を禁じ得ない。
 そして、ナショナリズムに目覚めた若者の帰結点が、戦場で華々しく散ると云うヒロイズムとなった事に同情の念を露にしてしまう。

 結果として、捕虜となったドイツ兵の殆どがドイツ系であり、非ドイツ系兵は過酷な戦闘で擂り潰される様に散っていったのだ。
 それは、アメリカの記録としても残っている。

『降伏してきた奴等は丸々と太ったドイツ人ばかりだ。死んでいるやせっぽちな奴等はオーストリラア人だそうだ。図体ばかりでかくて役に立たない奴をドイツ人と辞書に載せた方がいい(原文ママ)』

 以下略。

262適当に書いた変なネタ:2009/01/17(土) 19:35:07 ID:NRGlxZlc
第五章

『ボロを来た乞食みたいな日本兵が近付いて来た時、私は身構えたが、彼等が弱々しく口ずさんでいた歌を聞いた時――私は、神の存在を確信した』

 これは、ある従軍神父の日記の一文である。
 日本軍には戦陣訓という常軌を逸脱した降伏よりも死を選ぶと云う教えが蔓延していたのは諸兄の知っての通りである。
 多くの証言が示す様に、日本軍は貧窮すると直ぐに“バンザイアタック”を敢行し、射的の的を当てる事よりも容易く殺されていったのだが、この神父は奇跡とも云える出来事に遭遇したのである。
 それは、日本兵の降伏ではなく、隠れキリシタン――或いは潜伏キリシタンと呼ばれるキリスト教徒の発見であった。

『私にとって馴染み深い言葉を歌にした声は、非常に悲しく、非常に沈痛に聞こえた。私が首に下げた十字架を振って見せると、彼等は懺悔を乞う様に跪いた』

 日本兵が歌ったのは彼らの言葉でオラショと呼ばれる聖書の一節であると、神父は後に述懐している。

 そして幸いな事に、この日本兵のうち一人が未だ壮健であり、インタビューが出来たのでそれを合わせて記しておく。

『あの時は無我夢中だっだ。食べるものはないし、武器弾薬の類いもなかった。あるのは竹槍だけだった。竹槍じゃあ絶対に勝てっこないんだけど、上官は勝てると盲信してた。
 だから逃げたんだよ。国に対する忠誠? そんなものはない。国にはキリスト教を信じてるからって弾圧されてきたんだ。先祖代々ずっとな。そんな国なんてこっちから願い下げだ。
 だからアメリカに降伏して、アメリカに帰化できて幸せだと思う。
 二度とあの国の土は踏みたくないね。懐かしくないのかって言われると困るけど、自由のないあの国には未練はない』

 彼が語る事は、彼の信仰――先祖から彼に至るまでの迫害の歴史が深く関わっているのだろう。
 日本に伝わったキリスト教の歴史は非常に興味深いのだが、その為に割く紙面が無いので割愛するが、非常に壮絶なものであると云う事を彼は語った。
 私が思うに、日本土着の現人神信仰は国家を纏めるに足らぬものと理解せざるを得ない。
 故に、日本軍は蛮行若しくは愚行、或いはその両方を行ったのではないかと此処に提言する。

(以下略)

263適当に書いた変なネタ:2009/01/17(土) 19:35:57 ID:NRGlxZlc
書いてて自分の頭の悪さに笑ってしまったw
間違いなく続かない
264創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 19:46:04 ID:0FNT/p+S
投下乙なんというディスカバリーチャンネル
265創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 19:47:16 ID:Gc7LsjKt
バキの花山スペック戦を思い出したw
こういう切り口もアリだよなーって。
266創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 19:51:41 ID:g9/mLOLx
投下乙です
267創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 00:20:20 ID:3qzjIW26
つか人民生徒会腐敗しすぎだろ・・・ぞっとするような連中だ
268創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 00:48:09 ID:8wHsZHNQ
75 ◆kkZO9WMBek氏の話には「学園」島らしさを感じないんだよなぁ

生徒会規約とか、校則とか、停学処分や退学処分とか、「学園」成分が足りない
269創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 01:00:20 ID:z3T9RDYb
え、そもそも「学園島」って単語そのものが大きな隠喩なんだとおもったけど、違うのん?
少年兵を使って戦争をやらせてることのエクスキューズで「学園」なわけだしょ
270創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 01:03:45 ID:TiCFQph+
学園島戦闘規則第1条!クリスタルを破壊された者は失格となるッ!
27175 ◆kkZO9WMBek :2009/01/18(日) 12:37:15 ID:J4u9lyVd
新しい人きてれぅー
乙っす

>>256
考えてなかった。
隕石落ちて、生物が普通に生きていけるようになるまでどれぐらいかかるんだろう・・・。

>現在の学園島の気候や生物相などの自然は、どのように設定していますか?

とりあえず生物や気候は通常と同じと考えてる。
あとは島のあちこちにクレーターがあるぐらいしか考えてない。

>>257
魔道兵=変に実力のある特権階級ってイメージが俺の中にある。
個人レベルの兵士では優秀だけど、組織を動かすのは苦手みたいな・・・。
上手く説明できなくてごめんね。

で、続き投下。
2725/24 :2009/01/18(日) 12:38:18 ID:J4u9lyVd

 
 ヴォルクグラード人民学園の校舎内は、前線とはまるで別世界だった。
 廊下で擦れ違う生徒達の表情は明るく、純粋に学生として『今』を楽しんでいた。
(彼らは、自分たちの平和が何の上に成り立っているのか、本当に理解しているのだろうか?)
 エレナ・ヴィレンスカヤの中には二つの感情がある。
 一つ目は生徒達の安全を守り、一時とはいえ平和を作った誇り。
 二つ目は血と犠牲の上に成り立つ平和を享受し、その事実から目を背け平然としている生徒達への疑問。
(いけない……いけない)
 自分は危険な考えをしていると思い、エレナは小さく首を振った。
 軍に入り、魔道兵として戦うと決めた時に覚悟していたことだ。
 今更疑念を抱くのは卑怯な話だ。
「あっ、あの、エレナ・ヴィレンスカヤ中佐殿ですか?」
 自分を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、中等部の女子生徒が緊張した面持ちで立っていた。
「私は大尉だよ」
「あっ……すみません。大尉殿」
 女子生徒が心底申し訳なさそうに頭を下げたので、エレナは後悔した。
 一体自分は何をやっているんだ?
「何かご用ですか?」
 できる限りの笑顔を作ってエレナが聞くと、女子生徒は震える声を出した。
「あっ、あの……握手してもらえませんか?」
「いいですよ」
 エレナは差し出された手を握る。
 その後、女子生徒の頬をさらりと撫でた。
 髪がふわりと払われると同時に、顔が赤一色になった。
「あ、ありがとうございました!」
 手を離すなり、女子生徒は慌てて走り去っていった。
 笑顔で手を振り、その背中を見送りながら、エレナは胸中に不穏なものを覚えた。
 どうにも変だった。
 校内の様子がおかしい。
 本校に戻ってきてから、エレナの所属する第七独立混成旅団は休暇を与えられた。
2736/24 :2009/01/18(日) 12:39:36 ID:J4u9lyVd
 処罰を与えられるものと覚悟していたが、兵士達の多くが一切のお咎めなく本校で学生としての生活を送っている。
 指揮官であるマイコ・パステルナーク大佐は査問会にかけられたそうだが、処罰が行われるという情報は入っていない。
(ヒューナースベルグ要塞が陥落したというのに、校内はいつもと同じ……どうなっている?)
 ヒューナースベルグ要塞がヴォルクの手に落ちた時は、全校上げての盛大な祝賀会が開かれたものだ。
 エレナとマイコは一ヶ月近く、横になって眠った記憶がない。
 掲示板に貼られた校内新聞にもそれらしい記事は見受けられない。
 いつも通り吐き気のする政治宣伝が一面を飾っているだけだった。
「情報統制か……」
 何らかの理由で報道委員――いや生徒会は事実を隠匿している。
 恐らく多くの生徒の中で、ヒューナースベルグは今だヴォルク軍のものとなっているだろう。
 もしエレナが真実を語っても、誰も信じはしない。
 本校にいる生徒達が真実を知ることなどできないのだから。
「お疲れ様です中佐」
 擦れ違う生徒は口々にエレナの階級を中佐と呼ぶ。
 いつの間に自分は二階級特進を果たしたのだろうか?
 色々なことを考えているうちに、エレナはマイコの執務室へ到着した。 
 話したいことがあると呼ばれていたのだ。
「失礼します」
 エレナが隊に割り当てられた部屋に入るなり、紺色の髪が部屋の奥で動く。
「た、大佐!?」
 マイコ・パステルナークは部屋の奥で四つんばいになり、床に頭をつけた。
「すまない。許してくれ、すまない」
「そんな……何を!?」
 エレナはドアに鍵をかけた後、マイコに駆け寄る。
「顔を上げてください大佐。一体何があったんです?」
「私は……私はとんでもない大馬鹿だ!」
 マイコは全てを話す。
2747/24 :2009/01/18(日) 12:40:07 ID:J4u9lyVd
 自分とエレナの関係が疑われていること。
 それを潔白するため、エレナをヒューナースベルグ奪還作戦の指揮官に任命すること。
 任務は成功の確率がほとんどないということ。
 この問題を引き起こしたのはマイコ・パステルナーク自身だということ。
「すまない……」
 頭の下げ通しになっているマイコに対して、エレナはやめてくださいと言った。
 ひざ立ちになり、マイコの頬に触れる。
「大丈夫です、大佐。大丈夫……」
 人差し指で涙を拭う。
 なぜヒューナースベルグ陥落の報道が行われていないのか?
 なぜマイコや自分、他の兵士達の責任が問われないのか?
 なぜ自分は中佐になっているのか?
 エレナの中で多くの疑問符が回答と繋がり、消えていく。
 そんなことはどうでも良かった。
「私は……とんでもない無能だ。最低の女だ」
「何も言わないで。大丈夫だから」
 エレナはマイコのためなら命を捧げても構わなかった。
 誰のために生きているかと聞かれれば、間違いなくマイコのためと答える
 マイコの理想、つまり彼女の弟であるユーリの未来を守れれば、自分の体が業火に焼かれても構わない。
「私は貴方のために生きている。だから、貴方のために死んでも構わない。私はエレナ・ヴィレンスカヤです」
 まだ何かをマイコは言おうとしたが、その前にエレナは唇を塞いだ。
 自分の唇で。
275創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 12:41:14 ID:3qzjIW26
支援
2768/24 :2009/01/18(日) 12:41:42 ID:J4u9lyVd


 姉の帰宅が深夜だったので、ユーリ・パステルナークはドアの開く音が聞こえるなり、走って出迎えた。
「おかえりなさい、姉さん」
「ただいま」
 ユーリは姉の姿に違和感を覚えずにはいられなかった。
 いつも深夜に帰ってくる時は、いつも浴びるほどウォッカを飲んだ後だ。
 家に入るなり快活に笑い、抱きついて酒臭い息を浴びせてくるはずなのに、今日は重い足取りでマイコは部屋の中へ入っていった。
 鎮痛な面持ちには、アルコールの臭気など全く漂っていない。
「ご飯にする? それともシャワー浴びてくる?」
 ユーリに声をかけられて、マイコは唖然としていた。
 大きく目を見開き、口をぽかんと開けている。
「姉さん?」
 ユーリは自分と同じ琥珀色の瞳の前で手を動かす。
 はっとして、マイコは首を横に振る。
「今日は疲れた。夜まで軍の仕事があってな……悪いが寝る」
「どうしたの?」
「いや、別になんでもない……なんでもないんだ」
 マイコが目を逸らしたので、ユーリの胸中で不安が広がっていく。
 姉がなんでもないと言ったときには、必ず何かあった。
 単位が危うくなって補習を受ける羽目になった、エレナと喧嘩をした――などと。
「じゃあ、寝るから……」
「待って姉さん。体の具合でも悪いの? 姉さん!」
「うるさい!」
 ユーリが腕を掴むと、姉の怒鳴り声が部屋中に響き渡った。
 端正な顔は怒りに歪み、切れ長の目がユーリを睨み付ける。
 ごめんなさいと謝ったユーリは去ろうとしたが、今度はマイコが弟の腕を掴んだ。
「ごめんユーリ。私としたことが……ごめん。許してくれ」
「大丈夫。なんとも……思ってないから」
 泣いてはいけないと思いつつも、ユーリは目尻に溜まった涙を拭った。
2779/24 :2009/01/18(日) 12:42:14 ID:J4u9lyVd
 マイコは何も言わず、そっとユーリを抱き締める。 
「大きな声をあげてすまない」
 背中に回された姉の腕は暖かい。
 いつだって優しく、強い姉の腕だった。
 ぽんぽんとマイコは背中を叩く。
「もう……大丈夫だから」
 ゆったりとした動作でマイコを離し、ユーリは話題を変えた。
 姉は多分、軍務で嫌なことがあったのだろう。
 内側に溜め込みやすい性格だから、家にまでそれを持ち込んでしまっただけのことだ。
 きっとそうだ……。 
 そうであってほしかった。
「ホットレモン作るよ。今日は早く休んだ方がいいと思うから」
「ああ。すまない」
 寝室のドアを開けたマイコは、背中をユーリに向けたまま言う。
「なぁユーリ、お前はエレナのこと好きか?」
「好きだよ」
 マイコが向き直ると、ユーリは頬を朱に染めて視線を逸らした。
「恋人とかそういうのじゃなくて、人間として好きなんだ。上手く言えないけど……」
「そうか……ごめんな」
「どうしたの?」
 マイコは何かを言いたげだった。
 だが何も言わず、そのまま寝室に入っていった。
27875 ◆kkZO9WMBek :2009/01/18(日) 12:42:42 ID:J4u9lyVd
今日はここまで
279 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 13:33:06 ID:WSgwpQZh
280創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 13:58:30 ID:Mchr9131
乙〜ん
いつも楽しみにしてるのですよ
281創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 14:06:54 ID:3qzjIW26
マイコとユーリがnice boat一直線な件について
282魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 14:47:42 ID:Mchr9131
第十四話『勉強』
1/3
「少年老い易く学成り難し。ガリガリ勉強しとけ!」

 学生の本分は勉強です。戦争中であってもそれは変わりません。大英帝国の人として教養は必要なのです。
 知識人はいらないなんていう戯言はお茶の産地と北国だけで充分なのです。

「古きを温めて新しきを知る。ガリガリ勉強しとけ!」

 因みに。
 含蓄のありそうな言葉を連発しているのはお茶の産地香港から来た教師です。
 年齢はどうみても私より若いというか幼いのですが、歴とした大人だそうです。
 この前年齢を尋ねたところ、

「ゲルマン民族の大移動は吾が引き起こしたから感謝しとけ!」

 と言われました。
 兎に角。
 孝廉や九品官人法で推挙されたり科挙に合格した自称スーパーエリートさん兼仙人兵――お茶の産地の魔法兵――だそうです。
 因みに。
 お名前をパトリックちゃんといいます。正式な名前は非常に長くて舌を噛みそうなので略してパトリックちゃんにしたそうです。
 余談ながら。
 英語でTHは舌を噛んで発音したりします。
 深い意味は御座いませんのであしからず。

 話が脱線したので戻します。

「パトリックちゃん、ちょっとよく解らないのですが……」

 私語の少ない教室に、私のか弱い声がひっそりと響きます。算数の知識があやふやな私にとって、数学は難しいのです。

「全員注目しとけ! これが知る事だって理解しとけ!」

 パトリックちゃんは含蓄のありそうな有難い言葉をペラペーラと語りますが、本性が出たのか広東語になっているので誰にも解りません。

「二人の人間が支え合ってるから人って字になるって理解しとけ!」

 黒板にでかでかと『人』という字を書いてパトリックちゃんは満足そうなのですが、誰一人として理解できません。
 私たちにとって人は『human』です。
 悲しい事にお茶の産地の人と私達には文化の相違という溝があるのです。
 私達の悲しみを知ってか知らずか、パトリックちゃんはキラキラと輝いています。
 その輝き具合たるや、食べちゃいたい程です。むしろ食べられたい感じです。
 そんな事はありません。
 全てはパトリックちゃんのオリエンタルな雰囲気が悪いのです。サラサラな黒髪や何を考えているのか解らないミステリアスな笑顔が悪いのです。

283魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 14:48:07 ID:Mchr9131
2/3
 可愛い洋服を着せてペットと一緒に並べて飾っておきたいとは思ってないのです。決してお人形遊びをしたい訳ではないのです。
 可愛い物が好きなのは乙女として当然な事なのです!
 それはさておき。
 私達は兵隊である前に学生なのですが、学生である前に兵隊だったりします。
 矛盾しているようですが、世の中の仕組みがそうなっているのです。人間が作り出した社会のシステムなんて矛盾していて当然なのです。

 そんな訳で、普通の勉強の後は軍事の勉強とか訓練です。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず。お前ら、ガンガン勉強しとけ!」

 パトリックちゃんは教師だというのに蛍を集めて遊んでいます。後で話を伺うと、蛍の光を照明にして経費削減するそうです。
 兎に角。
 軍事の勉強は難しいです。
 教科書に使用している『孫子』は言っている事が抽象的過ぎて良く解らないのです。

「私は戦いなんて野蛮な事をしないで優雅に勝ちたいのです!」

 申し訳ありません。ついつい乙女の本音が漏れてしまいました。
 回りの人は冷たい視線で『空気読んどけ』って感じで私を見ます。
 ですが、パトリックちゃんはぷるぷる震えながら私を見ます。

「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。お前ら、兵法の基本だから覚えとけ!」

 パトリックちゃんは嬉しそうに私の頭をなでなでします。
 その距離足るや手が届くほど。
 柔らかそうな首をキュッと抱き締めてそのまま部屋に連行したくなる欲求にかられてしまいます。

「君子は冠を正しゅうして……死ぬ。 お前、手を離しとけ!」

 おやおやまあまあ。
 魔がさしてしまって気付かぬうちについつい実行していました。

「――すみません、パトリックちゃん」

 名残惜しいのですが手を離しますと、パトリックちゃんがゴホゴホ咳き込んでいるので介抱してあげます。
 呼吸を楽にする為に服を脱がそうとしたら、パトリックちゃんは

「危急存亡の秋! 危急存亡の秋! 後は自習しとけ!」

 真っ赤になって職員室に戻ってしまいました。

 何故でしょうね。懇切丁寧に介抱してあげようとしていたのですが。
 良く解らないのですが、自習となりました。

 自習になると不向きで退屈な事よりも、自分の得意分野を伸ばしたいのが人情です。

284魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 14:48:45 ID:Mchr9131
3/3
 此処からはちょっとした説明です。

 たとえば、ばアンさんやゴッチさんの魔法は対人戦闘に向いていたりします。
 魔法のランクとしては、円卓の主従を召喚するアンさんの方が巨大化するだけのゴッチさんより遥かに上です。
 ですが、戦いとなればゴッチさんの魔法の方が完成している為に圧倒的に強いです。
 なので、アンさんは妄想力を高めて魔法の完成度を高める事にウェイトをおいて訓練します。
 つまり、アンさんは円卓の主従の絆を揺るがない物にする為に、口では言えない色々な事を妄想しては妖しげな笑顔をふりまきます。

 これがアンさんなりの魔法兵としての正しい訓練となります。

 私の場合は、それなりに汎用性は高かったりするのですが、所詮はメルヘンな妖精さん使いです。
 どうなるのか、どうにか出来るのか解らない一か八かのギャンブルに近いです。
 とりあえず、量で質をカバー出来ると言うか、質を求めるならば量が必要っぽいので、呼び出せる妖精さんの量を増やす訓練が必要となります。
 もっとも、妖精さんはその場が楽しい感じだと勝手に増えるのでその場を楽しい感じにする事が訓練となります。
 楽しい事と言えばアフタヌーンティーです。アフタヌーンティーはとても楽しいのです。
 つまり、アフタヌーンティーをする事が私にとって正しい訓練であると言えます。
 そんな上手い話があるはずありません。
 隣のクラスからいつもの教官さんが来て、身体を鍛える為に長距離走をする事になりました。

 嫌ですね、長距離走。足が太くなってしまいます。
 私、悲しくてないてしまいそうです。

――To be continued on the next time.

パトリックちゃん
香港から来た本名不明な学舎の教師です。
可愛い外見ですが、歴とした大人ですが、年齢は覚えていないそうです。
項羽さんに間違った道を教えたのと袁術さんに水をあげなかったのとが自慢だそうです。
285魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 14:50:49 ID:Mchr9131
魔法少女軍事系第十四話投下量終了。
286創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 15:16:17 ID:0KLMS+75
蛍吹いたw
経費削減とかじゃねーからwww
287創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 15:49:05 ID:8wHsZHNQ
ゲルマンwwww
なんていい人外キャラだww
288創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 16:09:12 ID:z3T9RDYb
>君子は冠を正しゅうして……死ぬ。
子路だ、子路がいるwwww
289魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 20:00:44 ID:Mchr9131
第十五話『捲土重来』
1/2
「う……嘘なの……だわ……」

 嘘では御座いません。信じられないのですが本当です。
 日本の魔法兵と戦っていたのですが、アンさんが負けてしまいました。

「おおっと、ネエちゃん……女にしちゃあヤル方だが……相手が悪かったなぁ」

 如何にもサムライみたいな和装の殿方がニヒルな感じで笑っています。
 足元には、アンさん自慢の円卓カップルが死屍累々と転がっていたりします。

「俺の愛刀は……妖刀だぁ……抜いたら血を見なきゃ収まんねえ……」

 血走った目が怖いですが、それ以上に両手に持った二本の日本刀が恐いです。
 ハッキリ言って粗相しそうです。

「アーサー王、ランスロット卿! 立って戦うのだわ!」

 アンさんの叫びが虚しく響きますが、二人の騎士はうんともすんとも言いません。

「無駄だゼェ……西洋サムライ風情じゃぁ……河童に習った俺の太刀捌きにゃあ、歯が立たねぇ……」

 アヒャヒャと狂ったみたいに笑うのは恐いです。反則です。

「さぁて……どっちのネエちゃんから……あの世にイキてえよ……」

 イキたくなんかありません。イキたくないです。
 私も妖精さんを呼び出して応戦したいのですが、楽しくないので妖精さんが来てくれません。

「そうさなぁ……洗濯板みてぇなネエちゃんが先だなぁ……向こうのボインちゃんはゆっくりと楽しみながらあの世にイカせてやんよぉ……」

 ギラギラと紅く光る双眸が私を縫い止めます。駄目です。逃げたいのですが、腰が抜けて動けません。
 冗談抜きで2、3滴ほど粗相しそうです。

「言い残す事はぁ……あるかい……?」

 言い残す事なんてありません。その前に死にたくありません。今までの人生が走馬灯みたいに頭の中でリフレインして叫んでいます。
 どうしてどうして出会ってしまったのでしょう。こんな人とは出会いたくなかったです。

 兎に角。
 なんでもいいから時間稼ぎしないと殺されてしまいます。
 頑張れ、私、頑張れ、私!

「せめて、死ぬ前にお名前等を……」

 名前なんて聞いてどうするんでしょうね、私。
 馬鹿馬鹿馬鹿、私の馬鹿。

「よくぞ聞いてくれたぁ……乞われて名乗るも烏滸がましいがぁ……天下御免は二刀流……伊庭心太ってなぁ……俺の事よぉ……」

「ええと、良く聞こえなかったのでもう一度お願い出来ます?」

290魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 20:02:51 ID:Mchr9131
2/2
「二度は言わねぇ……耳ぃ、かっぽじって良く聞けぇ……。二刀振るえば鬼も哭く!
 天下一の色男ぉ……伊庭心太サマでぇ……心が太いから心太ぁ……トコロテンと呼んだら容赦はしねぇ……」

 二本の日本刀が妖しく煌めきます。しかもそれを伊庭さんは美味しそうに舐めてます。
 ホラーです。ミステリィです。サスペンスです。
 あまりにも恐すぎて、私は目を閉じました。
 生きた心地がしません。死んだ心地もしません。したくないです。
 ですが。
 終わりなんでしょうね、私。

――To be contin

「リバで両刀でトコロテン!? うふふ……うふふなのだわ……っ!」

 目を開けたら凄い事になっています。
 伊庭さん以上に目を血走せたアンさんが伊庭さんを妖しい感じに圧倒しています。
「受けも攻めも出来るリバーシブルで両刀使いで尚且つトコロテン……最高なのだわ!」

 虫の息だったアンさんご自慢の円卓カップルが光輝きながら甲冑を脱ぎ捨ててメタモルフォーゼしていきます。

「トコロテンとか言われたら……おしめぇなワケよぉ……」

 伊庭さんは二本の日本刀の両刀で、円卓カップルニューバージョンに襲いかかります。
 ですが、重い甲冑を脱ぎ捨てた円卓カップルの敵ではありませんでした。
 その戦いの凄まじさたるや、ちょっと言葉にしたら駄目っぽいです。

「ちょ……コイツは危険だぜぇ……。俺は薔薇の香りは嫌えだし……菊の御門は死守するぜぇ……」

 訳の解らない捨て台詞を残して伊庭さんは退きました。

 今回は本当に危険でした。足元に水溜まりを作らなかったのが奇跡です。

 因みに。
 後でパトリックちゃんに聞いたのですが、日本ではアンさん好みの性癖が一般的な風習だったらしく、アンさんは親日家を通り越して日本キラーになってしまいました。

 素晴らしいですね、腐純真乙女の妄想の暴走。

 とりあえず命が助かったけど怖かったので、泣いてしまいそうです、私。


――To be continued on the next time.

伊庭心太さん
魔法の妖刀で両刀使いの二刀流を操る危険人物です。
河童に剣術を習ったせいかネジが外れてる感じの危険なお方です。


トコロテン
アンさん用語で後ろから突くと前から出る(出す?)事だそうです。
考察や追求をしてはいけません。汚れてしまいます。心が。
291魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/18(日) 20:03:50 ID:Mchr9131
魔法少女軍事系第十五話投下終了。
既になにがなんだかわからんちん。
292創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 20:05:58 ID:z3T9RDYb
やな両刀使いが出てきたwwww
293創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 20:09:33 ID:u3WtWXso
トコロテン……実在の用語なのか……?
294創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 20:14:00 ID:z3T9RDYb
うん、にゅるっとな
295創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 20:16:24 ID:u3WtWXso
「トコロテン」でググったらトップにきやがった……
世界って広いなぁ
296創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 20:23:00 ID:z3T9RDYb
ジョリッ、ジョリッとか検索結果の時点でセクハラですググル先生><
297創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 20:48:58 ID:8wHsZHNQ
また変なやつがキターww
もう聖杯戦争でも始めちまえよwwww
298創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 22:20:05 ID:cBZFdArv
どんどん新キャラが来るwww
ああなんてみんないいキャラたちなんだ
299創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 16:45:48 ID:Ongaqq2q
魔法少女軍事系と学園島戦記譚の大きな違いはキャラの掘り下げ、もしくは動かし方じゃないのかな?

75さんの作品は小説よりも戦記ものに近い気がするよ。
淡々とした描写は好きだけどね。
30075 ◆kkZO9WMBek :2009/01/19(月) 21:40:47 ID:XqKuPkmB
まとめサイト更新

アイマス新年会見て思いついたネタを一つ。

仮面騎士エレナ

戦争が起こらなかった平和な時代。
ヴォルクグラード学園に通うごく普通の学生エレナ・ヴィレンスカヤは、密かに想いを寄せている少年ユーリ・パステルナークが謎の怪人に襲われているところを目撃する。
エレナはユーリを守ろうとして怪人に宇宙空間へと放り出されてしまう。
その時、不思議なことが起こった!
宇宙空間へと放り出されたエレナはマナ・クリスタルの力を借りて仮面騎士エレナへと変身する。
ここに最強の戦士が誕生した!

登場人物

エレナ・ヴィレンスカヤ

金髪と柔和な美貌を持った優しい少女。
成績優秀、抜群の運動神経、誠実な性格のため男子生徒だけでなく女子生徒からも人気が高い。
本人は中等部のユーリ・パステルナークに恋心を寄せているが、想いを告げられないでいる。
マナ・クリスタルの力で変身すると、太陽の破壊する二百倍の威力を誇る『マナ・バスターソード』を使い、怪人を容赦なく叩き切る戦士『仮面騎士エレナ』となる。
なお「なんで正体がばれないの?」と突っ込んではいけない。

ユーリ・パステルナーク

ヴォルクグラード中等部に通う少年。
本作のヒロイン。
大人しい性格だが、時には芯の強さを見せる。

マイコ・パステルナーク

ユーリの姉であり、エレナの親友。

エーリヒ・シュヴァンクマイエル

ヴォルクグラード学園の近くにあるアヴィリオン学園の生徒。
気の抜けた性格をしており、遅刻の常習犯。
左目はいつも眼帯で覆われている。

暗黒大帝 

世界征服を目論む悪の集団『ヒューナースベルグ』の首領。
左目に殺人レーザー砲を仕込んでいる。
構成員には破壊魔人アルベルト、装甲超人ベルガーがいる。
部下の失敗には比較的寛大。
自ら現場に赴くことをモットーとしている。
なおエーリヒ・シュヴァンクマイエルとは別人。
エーリヒ・シュヴァンクマイエルとは別人。

登場兵器

鋼鉄戦士ロジーナロボ

全高70メートル、重量35000トン
鋳造製。
一撃必殺のレーザー砲『ロジーナ・キャノン』を装備する。
平均戦闘時間は十五秒。
30175 ◆kkZO9WMBek :2009/01/19(月) 21:42:07 ID:XqKuPkmB
というわけで、続き投下。
30210/24:2009/01/19(月) 21:42:36 ID:XqKuPkmB
☆ 

 体育の授業が終わった後、シャワー室は賑わいの頂点にあった。
 汗まみれになった女子生徒たちは生まれたままの姿で湯気と熱湯に包まれた。
「聞いたかオルガ、生徒会がエレナの件でパステルナーク大佐を査問にかけたそうだ」
 ヴォルク魔道軍中尉、高等部二年のセルフィナ・フェドセンコの刃を思わせるしなやかな肉体を湯が這い、排水溝へと流れていった。
 彼女は『怜悧』という言葉が何よりも似合う。
「査問? この間の敗北の件じゃないのか?」
 同じくヴォルク魔道軍中尉で高等部二年のオルガ・グラズノフがセルフィナの隣にいた。
 彼女は長身で、一見すると華奢だが、腕や大腿の筋肉は盛り上がりがある。
 腹筋は割れ、まるで蛇腹のようだった。
「ああ。知っての通り、ヒューナースベルグが奪還されたことを誰も知らない」
「緘口令は出てないのにな」
「百人のうち九十九人が嘘を本当と思えば、真実を訴える一人は馬鹿呼ばわりされる。そういうものだ」
「同感だ」
 オルガは熱い流れに顔を晒し、汗を洗い流す。
 二人はマイコ・パステルナークのシンパだった。
 表向きは彼女に従っていた。
 本来の目的はヴォルク人民生徒会の打倒であったが、そのためには強大な力――軍内部で勢力を拡大するマイコの傘下に入ることが、最大の近道であった。
「確かにエレナは特別扱いされている。だが、それ相応の実力と功績を残しているだろう」
「だからこそ気に入らないのだろう、生徒会は。ただでさえ強力な魔道兵二人だ。決裂してくれるならそれに越したことはないと思っているはずだ」
「決裂ねぇ……」
 エレナ・ヴィレンスカヤはマイコにとって腹心以上の存在だと二人は知っている。
 だがそれを非難したり、不快感を感じてはいない。
 エレナは戦場において鬼神の如き実力を誇る魔道兵であり、マイコを補佐する有能な参謀でもある。
 それでいて誠実、温厚だから人望もあった。
 二人は彼女を最も危険な人物と認識していたが、同時に最も信頼できる人物という評価は一致していた。
「噂だが、エレナはヒューナースベルグ攻略戦の指揮を執るらしい」
「パステルナーク大佐じゃないのか?」
「ああ。そしてエレナは"中佐"になった」
「二階級特進……!? それじゃあ……」
30311/24:2009/01/19(月) 21:42:58 ID:XqKuPkmB
 絶句するオルガに代わって、セルフィナが言葉を繋いだ。
「生徒会はエレナを殺すつもりだ。要塞を守っているのは恐らく、エーリヒ・シュヴァンクマイエル――どう逆立ちしてもエレナが勝てる相手じゃない」
「畜生、生徒会の奴ら、やりたい放題かよ」
 オルガの拳がシャワー室の壁にめり込んだ。
 裂けた皮膚の間から流れた血が、湯と共に流れていく。
 まだエレナに死なれては困るのだ。
 マイコは有能だが、それはエレナという存在に支えられてのことであり、単体では不安定極まりない。
 もしマイコが失敗すれば、オルガもセルフィナも生徒会を打倒することはできないのだ。
 だからこそ、今エレナに死なれては困る。
 いずれ死んでもらうにしても――。
 シャワー室を出るなり、二人の前に内務委員の生徒が立ちはだかった。
「何の用だ?」
 委員は慇懃な口調で答えた。
「お二人の安全をお守りします」
「理由は?」
「一切お答えできません。我々の許可あるまで、お二人には寮にいて頂きます」
 兵士達は銃を手にしている。
 セルフィナは舌打し、オルガはにやりと笑って頷いた。
「わかった。だがその前に……」
「その前に?」
 オルガは内務委員の股間目掛けて、思い切り膝を叩き込む。
 悶絶してその場に崩れ落ちる内務委員に対して、オルガはウインクした。
「ストレスを発散させてもらったぜ」
30412/24:2009/01/19(月) 21:43:21 ID:XqKuPkmB


 ユーリ・パステルナークが図書館の本棚を整理している時、視界の隅に金色が光を放った気がした。
 脚立を降り、本棚の壁を抜けると、エレナ・ヴィレンスカヤが何かを探しているようだった。
 首が左右に振られるたび、艶のある金髪が揺れた。
「エレナさん、どうしたんです?」
 ユーリが声をかけると、エレナは目に見えて動揺した。
「別に何かあったというわけではないのですが……。ユーリ君に会いたくなったんです。ただ、なんとなく……」
 ユーリはエレナの異変に気付いた。
 エレナが「ただ」や「なんとなく」で行動する人間でないことを、ユーリはよく知っていた。
 温厚さの中に強い芯を持ち、それは決して折れない。
「明日、前線に行くことになりました」
 一呼吸置いて、エレナは言う。
「えっ、でも姉さんは……」
「大佐は関係ありません。行くのは私だけです」
「エレナさん……だけ?」
 ユーリは、姉がなぜ情緒不安定になっていたか理解する。
 エレナが関係していたのだ。
 一番望んでいなかった、最悪の事実だった。
「私と大佐が喧嘩したとか、そういうことじゃないんです。その……」
 エレナは上手く説明できないようだった。
 気まずい時間だけが過ぎていく。
 図書館に差し込んだ日差しが飛び立っていくカラスによって遮られた。
「帰れないかもしれません。だから……」
「帰れない……?」
 エレナがそんなことを言うのは初めてだった。
 心配するユーリに対して、おっとりと「大丈夫です」、「心配しないで」と言うことはあった。
 だが今回は違う。
 彼女はは真剣な表情で告げた。
 ユーリは知る。
 この人は今から死にに行くんだ――と。
305 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 21:43:50 ID:VXpdAnRs
   
30613/24:2009/01/19(月) 21:43:57 ID:XqKuPkmB
「それじゃあ、さようなら」
 その"さようなら"がどういう意味を含んでいるのか、ユーリにははっきりとわかった。
 行かせてはいけない!
 足早に図書館を去ろうとするエレナの腕を掴む。
 エレナは振り向かなかった。
 ただ、雫が顔から床に落ちた。
「僕は、エレナさんとまた会いたい……!」
 ユーリは勇気を振り絞った。
 想いを伝えたい。 
「だからさようならなんて言わないで。帰ってきて。僕、待っているから」
「ユーリ君……」
 エレナは振り返らない。
 ただ声は震えていた。
「人の生は何を成したかで決まります。大佐は今、成そうとしている。ご立派です。なら私は、その助力をするまで」
 エレナがどんな顔をしているのか、ユーリにはわからない。
 でも一つ確かなことがあった。
 エレナは死ぬ。
 今から死にに行く。
「生きて……」
 崩れ落ちたユーリは、去っていくエレナの背中を見つめ続けた。
 今はそれしかできなかった。
 ユーリの中で黒い感情が芽生え始めていく。 
 怒りと悲しみ、愛情と憎悪が複雑に絡み合う。
「姉さん、貴方は何をやってるんです……自分の理想のためなら、一番大切な人を死なせてもいいのかよ……?」
 噛み締めた唇の間から血が滴り、床に落ちた。
30714/24:2009/01/19(月) 21:44:42 ID:XqKuPkmB


 マイコの前に一人の男が立っている。
 常に笑みを絶やさないメガネの男は、報道委員長だった。
 "第四の権力"と呼ばれ、ヴォルクにおける生徒会の政治基盤を各個たるものにしている委員会だ。
「我々に、何の御用でしょうかな」
 報道委員長は、自分から話を切り出した。
 胸に手を当て、まるで舞台俳優のように優雅な動作だった。
 マイコは生理的な不快感を覚えながらも自分の意思を伝える。
「率直に言おう。クーデターを起こすから手伝え」
「これはこれは……随分と強烈なジョークを飛ばす方だ」
「君らは存在そのものがジョークじゃないか。ええ?」
「我々は知る権利を公平に行使する正義の使者なのです。我らの存在あるからこそ、人民生徒会もまた不変でいられるのです」
 足を組んで言うマイコに、報道委員長は平然と言い放つ。
 なんという厚顔無恥。
 なんという傲慢。
 なんという偽善。
 心底こいつはクズで天才だとマイコは思う。
「せっかくの会談だ。お互い、仮面をかぶるのはよそうじゃないか」
「なるほど……正義の騎士を自称する者としては、淑女の礼節に応えなければいけませんね」
 眼鏡の奥で死んだ魚の目が僅かな光を湛えた。
「大佐、クーデターを起こすとして、成功確立は?」
「百%だ。君らが協力してくれればの話だがな」
「そして何を求めます?」
「革命……いや、改革だ。悪の生徒会を倒し、正義を遂行する」
「詳しくお話をお聞きしましょう。パステルナーク大佐」
 委員長は身を乗り出す。
「悪を倒すのは正義の役目。私はさしずめ、魔女の騎士ですな」
308 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 21:44:46 ID:VXpdAnRs
遅かったか……支援
30915/24:2009/01/19(月) 21:45:20 ID:XqKuPkmB


 報道委員長と入れ違いになるようにして、見慣れた姿がマイコの自室に現れた。
 弟のユーリ・パステルナークだった。
「珍しいなユーリ。どうしたんだ?」
「姉さんに話があって来たんだ」
「そうか……まあ座れ」
 マイコはユーリの目を正視できなかった。
 弟が何を考えているのか、何を言いにここに来たのか、マイコにはわかっていた。
 机の上に置かれた紅茶のカップに口をつけた後、ユーリは言う。
「姉さん、エレナさんと何があったの?」
 マイコは別に何もないと答えた。
 今まで浴びたどんな砲撃よりもユーリの視線は強烈なものだった。
 顔を上げることができず、マイコの視線はカップの中で波打つ紅茶から離れない。
「姉さん、真面目に聞いて」
「何も無いのに何があったかなんて、答えられるものではあるまい……」
「おかしいよ。この間から姉さんも、エレナさんもおかしいよ」
 ユーリの口調は少しずつ荒く、激しいものへと変わっていた。
 怖かった。
 マイコは背中に悪寒を覚え、自分の心拍数が高まっていく音を聞いた。
「任務に関わることだ。いちいち言っていられるか」
310 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 21:45:36 ID:VXpdAnRs
        
31116/24:2009/01/19(月) 21:45:59 ID:XqKuPkmB
「姉さん!」
 机を叩く音で、マイコの体はびくんと動く。
 顔を上げると、今まで見たことも無いユーリの顔があった。
 これがあの大人しい弟の顔なのか……?
「僕は姉さんを愛してる。大切な人だと思ってる。姉さんが僕のために戦ってくれていることも知ってる。でも、エレナさんを利用するようなことは……」
「黙れ!」
 マイコは怒鳴り、ユーリの襟首を掴んだ。
 自分の中で大切にしていたものに亀裂が入った。
 亀裂は大きくなり、修復できないほど大きくなっていく。
「私がいつ、お前に! エレナことについて相談した? 答えろ!」
「し、していない……してないよ……」
「そうだよな。ユーリ、お前は私が守る。だから、普通の学生として生きろ。私やエレナのことは気にするな。お前は、お前の人生を送るんだ」
 マイコが手を離すと、ユーリは咳き込んだ。
「エレナもそれを望んでいる。お前が普通の人生を送ることを……」
「だから死なせるんだね。エレナさんを。わかったよ姉さん。それが姉さんのやり方なんだね」
 ユーリは部屋を出て行く。
 マイコは椅子に座り直し、脂汗でびっしょりになった額に手をあてた。
「今は仕方ない。だが、いつかはわかってくれる」
 ユーリはきっとわかってくれる。
 わかってくれるにだろう。
 わかってくれるに違いない。
 マイコは都合の良い希望に縋った。
 縋りたかった。
31275 ◆kkZO9WMBek :2009/01/19(月) 21:46:26 ID:XqKuPkmB
今日はここまで。

支援に感謝します。
313 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 21:47:50 ID:VXpdAnRs
  
314 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 21:50:15 ID:VXpdAnRs
乙ー
315創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 22:09:37 ID:Ef5oSg7M
お疲れ様です、展開たのしみですねー

と、自分も気落ちしながら、頃合いを見計らって投下予定
規制のバカー
316創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 22:18:20 ID:kzOPZwLU
乙〜ん。
マイコが良い味出してますなあ。幸せになって欲しいですねぇ。

今日は投下見合わせて明日投下するですよ。
317創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 22:37:03 ID:Ongaqq2q
マイコさん、希望的観測は敗北フラグですよ敗北フラグ
318創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 22:50:07 ID:Ef5oSg7M
ではでは0時付近に投下予告です
魔法少女孤独系4話目、3レス分
319魔法少女孤独系4-1/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/19(月) 23:52:55 ID:Ef5oSg7M
「もー、そろそろ起きてよー。コンサート始まっちゃう」

 随分と眠っていたらしく、私は珍しくラグの騒々しい声で目を覚ました。
 差し込んでくる日差しはとても眩しくて瞼を閉じたまま言葉を返す。

「行かないよ」

 昨日喋りすぎたせいで、枯れていた喉がちくちくと痛い。
「え? え、なんで? 楽しそうじゃん」
 そんなこと分かってる。あの子たちと一緒なら何だって楽しい。だからこそ――

「ねえラグ。願いごと、叶えに行こう」
「なーんだ、せっかくあんな奴らに会えたのに、まだこの島を壊したいんだ」
「ううん、違うの」

 私は昨日思ったこと、考え直したことを正直に話した。
 ラグは最初落ち着かない様子で黙って聞いていたけど、話し終える頃には寂しそうに俯
いてしまい、何か冷たい雰囲気を私たちの間に作り出していた。

「そっか……ミルカは綺麗になってからあいつらと友達になりたいってわけ」
 どことなく突き放すような言い方は、望みが叶ってしまったら今度は自分が一人になって
しまうという不安なのかもしれない。勿論そんなつもりはないけれど、だけど。

「分かった。私も決めた」
 長い沈黙の後、ラグが背を向けて肩を落とし、ため息交じりに言い捨てる。

「私も同じ仲間なんて見つけなくていい。行こう、願いが叶う場所を探しに。そうしたら
私も人間にして貰って、4人で遊ぶの!」
「ラグ……」

 そうだよ。そうすればいいんだよ!

 ちょっとした思い過ごしと、浮かびかけていた涙を振り払うように洞穴から外へ走ると、
空気の澄んだ、爽やかな青空が広がっていた。
 それはまるで昨日、あの子たちに渡した石みたいな――

「あ、そうだ。私、手紙書いておくね」
「まー、したいようにしな! 顔洗ってくるから」

 バッグから紙とペンを取り出し、まずはコンサートへ行けないことへの謝罪。それから
学校へ戻って頑張ってみる。と嘘を書いた。他人に気を使わせないように生きてきた私は、
後を追わせない嘘を知っている。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったけど。

 最後は、いつか必ず戻ってくるからその時はまた一緒に遊んで欲しいと結び「親愛なる
友人たちへ」と書き添えてから、飛んでいってしまわないように小石を置く。
 あの子たちから貰ったマントは、丁寧に畳んでからバッグに入れた。

「ねー! 終わったらミルカもおいでよ!」
「うん、今いくから」

 もしも――考えたくはないけれど、もしも、あの噂が嘘だったのなら。ひょっとしたら
もうここへは戻ってこれないかもしれない。
 決して償いきれないであろう罪を背負った私が、都合良く幸せを得られるとも思えない。
いや、得てはいけないのかもしれない。

 ――だから、その場所を探す事自体が自分自身への「裁き」なのだと考えた。

 結果こそ断罪であれ、人喰いミルカ。

 私は学校のみんなを殺してまでも、ここへ来たのだから。
320魔法少女孤独系4-2/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/19(月) 23:55:57 ID:Ef5oSg7M
 それから私達は浜辺を後にし、身を隠せる場所を選びながら何日もかけて色々な場所を
巡ってきた。
 学校からは見ることのなかった自然に心を緩ませては、時折見かける朽ちたトラックや
人のなれ果てた姿に、ここが戦場であることを思い出しながら。

 逃げ切れる敵からはなるべく逃げ、避けられる戦いは避け続けてきた。
 蟲たちを使って人間を食べることはやめ、拾った携帯食料などを口にするようにしてい
たし、ぶつぶつ文句を言うラグにもそうさせていた。戦場とは便利なもので、なかなかに
そういうものは事足りてしまうのだ。

 そんな中、体調の変化に気付いたのは、つい2日ほど前からだった。



「ねえ、ミルカ。顔色悪いよ……」
「ううん、大丈夫。でも今日はこのへんにしておこうか」

 夕暮れ、深い森の中で、私達はとても大きな木に開いた、広い洞に身を隠した。
 苔むした幹の内側に腰を落ち着かせても、お腹と胸がきりきりと痛み、歯を食いしばる。

「どうしちゃったの?」

 答えられなかった。
 私はいつからか、普通の人が口にするようなまともな食料では空腹を満たす事ができな
くなっていたのだ。

「なんでもない。もう寝よう、ラグ」
「う、うん。なんかあったら何でも言ってよ……」

 いつしか降り出した雨は、やがて轟々と唸りを上げ、私は眠れないのを音のせいにして
強く瞼を閉じる。

「御免」

 だから、最初はその声は自分の作り出した幻か何かかと思った。気を張っていればこそ
近づく者の気配は感じるものの、ここまで接近を許してしまうとは。
321魔法少女孤独系4-3/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/19(月) 23:57:09 ID:Ef5oSg7M
「ここの洞はとても広い。主たちが許すなら拙僧にも雨を凌がせては貰えぬだろうか」

 その人影は教科書で見たような東洋の僧衣をまとい、輪のついた鉄の棒を持った、私よ
りもいくつか年下にも見える少年だった。

「決して危害を加えるつもりはない、構わぬか」
「私と居て不快でなければ、どうぞ」

 身を強張らせていた私にそう言わしめたのは、この少年の持つ雰囲気が浜辺で出会った
あの二人の少女と似たものがあったから。
 魔法を使う人だ、この人は。

「不快とは不思議なことを言う」
「私を見ても怖くないの?」

 少年の目はこちらを向いていたが、その瞳は白く濁っていた。

「拙僧、目が利かぬ故。主たちが不快とは思えぬ。むしろ今のこの島に生きる輩とはかけ
離れた、清らかな心の輝きを得んとしているのではないか」

 私は息を呑む。ラグもようやく気付き、襟から顔を覗かせた。
「なんだこいつ……」
「大丈夫、悪い人じゃなさそう」

「すまぬな小さき者。雨を凌がせてくれるだけで良いところ、詮索してしまうとは。他意
は無い。これにて眠らせて貰う」
 少年はぼさぼさに伸びた黒髪を掻き毟り、私たちとの間に棒を突き刺すと、どさりと腰
掛け、あっという間に寝てしまった。

「ほんとに大丈夫なの?」
「平気だよ、分かるもん。起きたら色々聞いてみようよ、何か知ってるかも」
「ま、まあミルカがそう言うなら……いいけど」

 再び雨の音が小さな空間を包み込み、過ぎていく時間は眠れない私の中に不思議な高揚
感を生みだし始める。

 私を拒まない男性が、こんなにそばに居るなんて。

 細めた目に映るのは、揺れる月明かりに照らされた少年の綺麗な顔、白い肌と湿った髪。
そっと手を伸ばせば触れてしまいそうになる、柔らかそうな唇――

 瞳が潤み、高鳴る胸と荒ぶり始めた呼吸を抑えられない。



 ――この少年は、一体どんな味をしているのだろう?
322創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:58:33 ID:Ef5oSg7M
というわけで4話目終了です。
読んでいただける方がいれば幸い。
323創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:03:30 ID:Ongaqq2q


ミルカもマイコも見てて辛いな・・・胃がキリキリしてくるよ。
二人とも良い結末を迎えられるのかな。
324創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 14:09:10 ID:ygy7T+oP
ここ初めて見るけど面白いの?
325創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 14:11:33 ID:DM5K3USh
面白いよ!
326魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/20(火) 16:32:06 ID:a1vESFLw
第七話『亀裂』

「フェアリー・テール! アナタは間違っているのだわ!」

「いいえ、間違っているのはアンさんだと思いますが」

 あんなに一緒だったのに、不揃いな二人の心はすれ違うばかりです。見える夕暮れは違う色なのです。
 簡単に言うと違いますね、音楽性。
 魔法のアイドルデュオに抜擢された私達なのですが、音楽性の違いでいきなり解散の危機です。
 かいつまんで説明いたしますと、アンさんは一山いくらで売られていそうな俗物乙女趣味、私は退廃的で耽美的な芸術が趣味です。
 根底から不倶戴天の敵なのです。
 空気が不穏で張り詰めています。

「不思議ちゃんなフェアリー・テールのクセに生意気だわ!」

「まあ、ひどいおっしゃりよう。お耽美なアンさんにそう言われるのは心外です」

 お互いに譲り合って譲歩するつもりがない私達は真っ向から対立してしまって互角に拮抗の膠着状態です。

「謝るなら今のうちなのだわ! 今なら寛大な心で許すのだわ!」

「ドーバー海峡より狭いクセに」

 凍りついていた空気がパリンと砕け散りました。

「アンタなんて●●なのだわ! ●●! ●●!」

「な、なんですって!? アンさんは■■で▲▲じゃないですか!」

 ●●とか■■やら▲▲などといったお聞かせする事が出来ない不適切な言葉が飛び交います。
 ですが、言葉という銃弾の応酬をしても、直接的な暴力を振るわないのが大英帝国の淑女です。
 もっとも、その分だけ陰湿なのかもしれませんが。

「●●!●●!」

「■■で▲▲!」

 ボキャブラリーを総動員した決戦は雲を呼び嵐を招き龍虎相打つ様相を呈していましたが。

「ひ、ひどいのだわ……。親友だと思っていたのに……」

 アンさんは子供みたいにわーんわーんと泣き出してしまいました。
 どうやら私の勝ちです。正義は勝つのです。
 ガッツポーズをして喜びましたところ、教官さんがやって来て私にカミナリを落としました。

 そんな訳で結論を申しますと、偉い人の一声でアンさんの趣味を採用して陳腐なアイドルポップを歌う羽目になりました。
 こじれてしまったアンさんとの仲は、コンサートをノリノリで大成功させた為に修復できました。
 その凄さは本国でも話題だったそうです。
 色々な意味で凄すぎてしまい他言出来ないのが非常に残念です。


――To be continued on the next time.
327魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/20(火) 16:33:48 ID:a1vESFLw
魔法少女軍事系第七話投下終了。
キャラの暴走が止まらなくて大変だったり。
328創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 18:25:22 ID:Texx/MMt
GJ!
下ネタか!? 下ネタなのか!!
変な期待が膨らんでしまうww
329創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 19:01:44 ID:IR+6qd4S
あれ、歌楽しみにしてたのにw

何だかんだで長く続けられてますよね、うらやましい。
これからも楽しませて欲しいです。
330創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 20:00:15 ID:WQZX8gAm
ドーバー海峡より狭い心www
331創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 20:10:39 ID:E0r6xhCk
お耽美な少女趣味と不思議ちゃんな退廃的耽美趣味?
趣味を台詞がねじれてる予感がするワン



俺もドーバー海峡よりも狭い心で吹いたw
332魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/20(火) 21:45:35 ID:a1vESFLw
第十六話『補充兵、来たる』
1/3
 戦争をやっておりますと、当然の事ながら人が死にます。
 人が死んだら困ります。困ると大変なので代わりの人を呼ばなければなりません。
 つまり、兵員の補充ですね。
 そんな訳で、今日は本国から補充兵――つまり、転入生が来る日です。
 転入生の殆どは一般生徒なのですが、僅かながら魔法生徒もいます。
 因みに。
 学舎は学校ですが軍隊でもあります。
 実にややこしいのですが、兵隊と呼ぶ時は一般兵と魔法兵、生徒と呼ぶ時は一般生徒と魔法生徒とかにになります。
 意味は同じなのですが、そういう不便極まりない決まりがあったりします。
 全く関係ない話なのですが、私とアンさんに限ってのみ『逸般兵』とか『逸般生徒』と呼ばれる事があるとか。
 話が横道に逸れてしまいましたので元に戻します。
 今回の補充では魔法兵の補充もあります。
 魔法兵は一般兵とは別に専用の寮があります。そして、寮は二人一部屋です。
 転入生は古参の生徒と一緒の部屋にならなけれはならないという規則がありまして、最近ルームメイトが名誉の戦死を遂げてしまった私が転入生を受け入れる事となりました。
 勿論、異性と相部屋になるのは問題があるので、同性同士が相部屋です。
 まあ、当然な話ですね。
 なんにせよ、転入生は本国である程度の教育を受けていても、実際の戦場を知らないネンネちゃんですので、色々なフォローが必要だったりします。
 つまり、先輩として責任重大なのです。
 まあ、気負っても仕方ないので普通の平常心なのですよ。
 この前の伊庭さんの件で精神的にタフになりましたので余裕だったりします。
 その証拠に。
 窓辺に陣取って窓から外の景色を眺めてサナトリウム文学風の薄幸可憐な美少女を演出しております。

 ――コンコン。

 ノックの音が遠慮がちに響きました。

「どうぞ?」

「――失礼」

 駄目です。転校生に度胆を抜かれてしまいました。

 長い手足にはすっぱな光を孕んだ大きな瞳、凛々しいけれど無愛想な面立ちで短い髪。

「あの、女性ですよね?」

「ああ、勿論だとも。ぼくはビター。未だ咲かぬ蕾を守る為に遣わされた百合の騎士だ」

 なんと言いますか、立ち振舞いがそこら辺の殿方――具体例を挙げるとシャイロックさんや伊庭さん――よりも男前です。

333魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/20(火) 21:46:05 ID:a1vESFLw
2/3
 ちょっと個人的なツボにフィットしているので見惚れてしまいます。

「ビターさんですか。私は――」

「いや、結構。きみは本国でも有名だからね、妖精と戯れる乙女君」

 お会いできて光栄だよ、と跪かれて手を差し伸べられた私は、吸い込まれるようにそっと手を取ります。
 ひんやりと冷たいくて、そのきめ細かさはガラス細工みたいです。
 兎に角。
 本国ではどの様に有名なのか尋ねたかったのですが、いたって自然な動作で手に口付けをされてしまい、思考回路がパンクしました。
 キスですよキス。女同士なのに手の甲にキス。まるで騎士物語のワンシーンなのですよ。
 自称百合の騎士というのもさもありなんです。

「――悲しいな。きみの瞳には絶望の影がある。孤独に苛まされた魂の姿が見える」

 なんなんでしょうね、この人。私の全てが見透かされてるみたいです。

「解るのですか、貴女に」

「愚問だね。――瞳の奥には魂がある。その色を読み取れずして騎士と言えようか。否、言えまい。ぼくの瞳はそれを見逃しはしないんだ」

 なんなんでしょうね、この展開。ビターさんのケレン味溢れる演劇染みた立ち振舞い――実に好みです。
 アンさんとは別の禁断の扉を開けてしまいそうです。

「鎧戸を開ければ自由な世界が広がっている。だのに、籠の中の小鳥は広がる世界に怯える――それはきみだ。ならばぼくは翼に力を与える風となろう」

 なんと言いますか、ビターさんにはあがらい難い不思議な魅力がありますね。やはり時代は百合なのでしょう。

「いいえ、私は世界を知る為の道標。貴女を誘う為に燃えるただの蝋燭。ですが、広がる世界は戦火に包まれ――やがて全てを焼き尽くすでしょう」

 駄目です。純情乙女として、気持ち良い感じにビターさんに毒されてしまいました。

 私とビターさんの視線が絡み合うように交わり、仄かに頬を赤らめてしまいます。

「ぼくときみ。二人ならば世界を美しく塗り替えられる。そう、それは即ち愛という名の希望の光。愛ゆえに希望は甘美なる美酒としてぼくたちを酩酊のうちに狂わせる――」

 あ。駄目です。ビターさんの唇か近付いてきます。どうしましょう。
 このまま禁断の扉を開けちゃおうかしら。
334魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/20(火) 21:47:06 ID:a1vESFLw
3/3
 兎に角。
 瞳を閉じて流されてしまいましょう。そうすれば幸せになれると思いましょう。

「フェアリー・テール、遊びに来たのだわ!」

 だわだわ星人がペットを連れ立って二人だけの空間をぶち壊しやがりました。

「おや? きみは……?」

 ビターさんは闖入者に振り返って騎士風の会釈をします。しなくても良いのに。

「私はアンなのだわ! よろしくなのだわ!」

「アン? するときみが噂の腐った悪女……」

「発音が違うのだわ! 私はAnnではなくてAnneなのだわ! eが大事なのだわ!」

 まだ発音とか綴りこだわっていたんですね、アンさん。私はとうの昔に忘れていましたよ。
 しかも、腐った悪女呼ばわりは完全にスルーです。本国でも有名な腐純真悪女として大変ご立派です。

「それはいったい……」

 まあ、私は見慣れてますが、鎖を繋いだペットのマフィアに驚きますよね、普通の人ならば。

「やあ初めましてボクはペットのマフィアだよキミみたいな女の子実に好みだよそうだ今度お茶しない今でも良いんだけど今散歩中で忙しいんだとりあえずキミの名前教えてよ」

 マフィアは相変わらずマフィアです。何故かはわかりませんが後で躾なければなりません。そんな感じがします。

 ビターさんはマフィアを見て、真っ青になってぷるぷる震えてます。どうしたのでしょうか。ちょっと心配です。

「男……男……イヤァァァァァァァァッ!

 結論から申しますと、ビターさんは私を輪にかけての男性恐怖症でした。
 どれくらいかと言うと、絶叫で学舎の全ての窓ガラスを割ってしまう程です。
 道理で私とウマが合い過ぎる筈ですね。
 この騒ぎの元凶のビターさんは男性恐怖症をこじらせて寝込んでいまい、後片付けは私とアンさんの仕事になりまして、
 悲しいのですねぇ、悲しいのですとも。
 禁断の扉を開けられなかったのが残念です。
 本当に残念ですねぇ。
 なんと言えば良いのやら、コメントしようがありません。
 いったいどうなる事でしょう。

――To be continued on the next time.

ビターさん
自称百合の騎士の転入生です。
男前で騎士道大好き女の子で、何故かアンさんの妄想円卓カップルが許せないそうです。
男性恐怖症の重症患者で、女の子が好きっぽくて悲鳴が目茶苦茶大きいです。
魔法は魔法の剣でチャンバラだとか。

335魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/20(火) 21:48:37 ID:a1vESFLw
魔法少女軍事系第十六話投下終了。
答えは二人ともお耽美。
336創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:54:36 ID:WQZX8gAm
ビターさんかっけぇw
337創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:02:24 ID:PIu67mfa
まあ全裸で首輪でマシンガントークなら、俺だったら美少年でも引く
338創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:46:48 ID:rVGClK1R
>逸般生徒
フヒヒ……英語で言ってみろよォ、フェアリー・テールさんよォ
33975 ◆kkZO9WMBek :2009/01/20(火) 22:49:02 ID:WQZX8gAm
ちょりーす。
投下いくぞいー。
34017/24 :2009/01/20(火) 22:50:06 ID:WQZX8gAm


 空は鉛の一色で、低く立ち込めていた。
 ヴォルク軍陸上戦艦『クロンシュタット』は繋留を解かれ、再び東部戦線へと向かっていく。
 多くの兵士達が帽子を振り、敬礼して巨艦を見送った。
(私は帰ってこれるのだろうか)
 艦橋でエレナは敬礼し、見送りの人々の応えた。
 マイコ・パステルナーク大佐の第七独立混成旅団から抽出された少数の戦力と、敗残兵の寄せ集め部隊がエレナに与えられた兵力だ。
(大佐……)
 見送りの中にマイコの姿があった。
 心なしかやつれたような様子が、遠目にも見て取れた。
 マイコとユーリの間に何かが起きた。
 恐らくは、私のことだろう――自惚れかもしれないが、エレナは奇妙な確信を抱いていた。
 エレナは向き直り、前だけを見据える。
(西の空が暗い。まるで……)
 自分は今から絶望の淵へと行進していく。
 十中八九、生きては帰れない。 
 だがエレナは一%の可能性に賭けることにした。
 エレナの心に死への恐怖はない。
 ただ、覚悟があるだけだった。
 これから戦うであろうエーリヒ・シュヴァンクマイエルは今頃、何をしているのだろうか?
 若き英雄は美女に囲まれて戦勝パーティーか、それともアルコールに溺れているのか。
 エレナは首を横に振り、雑念を捨てた。
 そして告げた。
「全部隊、目標は西方条約軍、ヒューナースベルグ要塞」
34118/24 :2009/01/20(火) 22:50:30 ID:WQZX8gAm


 西方条約軍の中核はドイツ系のアヴィリオン学園である。
 レンガ作りの町並みを抜けた先にある校舎に向けて、エーリヒ・シュヴァンクマイエルは自転車を走らせていた。
「今度の土曜日♪三日しかない♪とにかくダイエット♪無理は承知で♪グロスを塗って アヒルの練習♪」
 ご機嫌に唄いながらエーリヒはペダルを漕ぐ。
 将校――それも中佐になると迎えの車を呼べないわけでもないが、エーリヒは自分が学生だという自覚があった。
 それに自分と同い年の上官が車で送り迎えされていたら、あまり言い気分ではない。
「おはようエーリヒ!」
「よぅ!」 
 校門近くの駐輪場で降りるなり、二人の男女がエーリヒに声をかけた。
 女子生徒はソフィ・メルドープ。
 男子生徒はフランツ・ベルクへーデンだ。
 軍服ではなく学生服に身を包んだ二人はエーリヒの友人だった。
「自転車通学とは、良くも悪くも庶民的だよなぁ、お前」
「普通エリートさんはあんな感じなんだけどね」
 フランツは苦笑いし、ソフィは校門前に停まった黒塗りの高級車を指差す。
 開いたドアから空軍の戦闘機パイロット達が降りると、集まっていた女子生徒達が黄色い歓声を上げた。
「いいご身分だよなぁ」
「いいのは顔だけよ」
 ソフィとフランツは揃ってエーリヒを見た。
 そして溜め息を吐いた。
「健康的な体じゃないか。体は資本だぞ」
「体育会系は嫌いじゃなかったのかよ」
「使い分けってやつだ。どんなものにもいいところや悪いところはある」
「エーリヒの場合は都合によって、でしょ」
 ソフィに痛いところを突かれて、エーリヒは苦笑いする。
「あ、そうだ」
 エーリヒはフランツの肩を掴み、ソフィから離した。
「なんだおい!」
34219/24 :2009/01/20(火) 22:51:12 ID:WQZX8gAm
「俺がいない間に進展あったか?」
「し、進展ってなんだよ!」
 フランツは真っ赤になる。
 実際のところフランツはソフィと恋仲なのだが、その進展は鈍い。
 もう付き合い始めて数年が経つが、未だに手を繋いだ以上のことはしていないらしい。
「わかってるだろ? 戦況だ」
「前進した。前進したぞ」
「詳しく」
「あんたたち何の話してんのよ! こら!」
「わあ!」
 最後まで話し終える前に、ソフィの頭が突っ込んできた。
 エーリヒは右目でフランツに目配せする。
「あー……」
「今後の戦況について、色々と」
「なーにが戦況よ。ろくでもないことばっかり考えてる癖に! ほら、遅刻するわよ!」
 ソフィは二人の耳を引っ張り、校舎へと連れて行く。
「い、痛いんだよ! 放せ馬鹿!」
「いかん危ない危ない危ない!」
 自分でも、しょうもないことをやっている自覚があった。
 だが、この時間が何よりも大切だと、エーリヒは心の底から思っていた。
34320/24 :2009/01/20(火) 22:51:48 ID:WQZX8gAm


 授業が終わり、昼休みが始まる。
 ある生徒は昼食を購買部へ買いに教室を出、別の生徒は持参したランチを広げた。
「なぁフランツ、何かあったのか?」
 エーリヒは母親から持たされたサンドイッチを頬張りながらフランツに聞く。
「クラスの再編成だよ。何でも八十七組の奴らが全滅したそうだ」
 へぇ……と、エーリヒはコーヒー牛乳で口内のサンドイッチを流し込んだ。
 珍しい話ではない。
 クラスが丸ごと一つ無くなっただけでなく、一フロアの生徒のうち八割が戦死したこともある。
「でさエーリヒ、いいもの持ってきたんだぜ!」
「当ててやるよ。エロ本だ」
「ご名答!」
 エーリヒはフランツから本を受けると、体を女子生徒達に対して反対側に向けた。
 流石に女性の前で卑猥な雑誌を読めるほど太い神経を持ち合わせてはいない。
「どうだ?」
「上手く言葉では表せない。ただその……下から包むようにして、そう触るマシュマロ。だがそれは質感がある。そう……質量を持った残像」
「言いたいことは伝わったよエーリヒ。つまりおっぱい触りたいんだろ?」
「そうだ」
 エーリヒとフランツは笑いあい、拳を突き合わせた。
 まだ俺にも年頃の餓鬼らしい心があったのか――。
 気恥ずかしくはあったが、エーリヒは妙な安心感を抱いた。
 少なくともまだ自分は人間らしい。
「さて……」
 更にページを捲ろうとした時、教室に備え付けられたテレビから校内放送が流れ始めた。
 調子の良い音楽が教室中に鳴り響く。
 ブラウン管の中で壮大な喜劇が始まる。
 行軍する兵士達。
 これでもかと新型戦車の性能を誇示するレポーター。
 大勝利を喧伝するナレーション。
34421/24 :2009/01/20(火) 22:52:10 ID:WQZX8gAm
「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ」
 エーリヒはうわ言のように言葉を並べ始めた。
「どした?」
 フランツの声に耳を貸さず、エーリヒは続ける。
「平和という成果だけをしっかりと受け取っておきながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方に過ぎないことを忘れる。いや、忘れた振りをし続ける。そんな欺瞞を続けていれば、いずれは大きな罰が下される」
「罰ってなんだ? 誰が下すんだ。神様か?」
 顔を上げ、エーリヒは気の抜けた表情でフランツの顔を見た。
「俺、今何か言ってたか……?」
 頷いた後、フランツは心底心配した表情になった。
「エーリヒ、お前少し……いや、かなり疲れてるぞ。午後は休んだ方がいい」
 フランツの言う通りだった。
 変則的に頭痛が襲い、体も酷い倦怠感に包まれている。
 急に環境が変わったからだろうか?
「送ろうか?」
「大丈夫だ。歩けるから」
 教室を出たエーリヒは廊下を進む。
 窓ガラスから飛び立っていくカラスの群れが見えた。
「欺瞞に満ちた平和と真実としての戦争……」
 エーリヒの中で二つの考えが交錯する。
 偽りの平和と、今そこにある戦争は、どちらが正しい存在なのか?
 だがこの島の平和が偽物だとするなら、この島の戦争もまた偽物に過ぎないのかもしれない。
 この島はリアルな戦争には狭すぎるのかもしれない。
 だが戦争はいつだって非現実的なものなのかもしれない。
 戦争が現実的であったことなど、ただの一度もありはしないのかもしれない。
 では何故、俺はここにいる?
「まずいぞ。かなりまずい」
 エーリヒは家にではなく、保健室へ足を運んだ。
 このままでは、無意識のうちに何かとんでもないことをやらかす確信があったからだ。
34575 ◆kkZO9WMBek :2009/01/20(火) 22:52:55 ID:WQZX8gAm
今日はここまで
346創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:58:44 ID:DM5K3USh
病んでるなエーリヒ
347創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:01:09 ID:PIu67mfa
エーリヒにもついに妖星さんが……
348創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:08:12 ID:1ihOB//f
だわだわ星人

特徴:うるちい しよつかく
好きなもの:はっぱ あへん
口癖:だわ だわ
349創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:13:53 ID:1U1JQ4yd
>>344
>戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ

パトレイバーから一言一句違わないセリフ盗作乙
死ねやクズ
350創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:23:42 ID:DM5K3USh
この台詞には元ネタというか、引用元があるんだがな。
351 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:27:05 ID:4Fw9l0cT
っていうかパトレイバー言う前にggれやw
無知は罪だな
352創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:37:11 ID:mmcPANsr
盗作(とうさく)とは、他人の著作物にある表現、その他独自性・独創性のあるアイディア・企画等を盗用し
それを独自に考え出したものとして公衆に提示する反倫理的な行為全般を指す。「剽窃(ひょうせつ)」とも呼ばれる。

オマージュ、パロディとは区別される。


出典: フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)
353創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:45:47 ID:Ym5KPWSz
俺、盗作ばっかりだ……
354創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:47:19 ID:E0r6xhCk
>>335
百合騎士さんかっけぇww
なるほど、どっちもお耽美だったのねー
355創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:55:49 ID:mmcPANsr
>虐殺の場から遠ざかると、楽観主義が現実にとってかわる。
>最高の意思決定のレベルでは、往々にして現実が無視される。
>戦争に負けているときは、とくにその傾向が強い。

>ジェイムズ・F・ダニガン『新・戦争のテクノロジー』(1992)河出書房新社 p.353


これが原典なら押井監督は丸写しするような愚は犯さなかったのですな。
75 ◆kkZO9WMBekが商業作品キャラクターの台詞を利用して、自分の創作したキャラクターに付加価値を与えようとしたことは明白。


盗作部分:成果だけをしっかりと受け取っておきながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方に過ぎないことを忘れる。いや、忘れた振りをし続ける。  そんな欺瞞を続けていれば、いずれは大きな罰が下される
原典   :成果だけはしっかり 受け取ってい ながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の    後方であることを   忘れ、  いや 忘れたふりをし続ける・・・そんな欺瞞を続け   れば、いずれは大きな罰が下される

こっちにはどんな言い訳しますか?
356創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:58:12 ID:PIu67mfa
きちんと書籍読み漁った軍オタだと思ってたのに、パトレイバーが先に出てくる奴が何吠えてもなあ
357創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 03:28:04 ID:DWkfgrHY
以後スルーでよかろ
358創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 07:48:45 ID:DFdONWGr
以後スルーで
359 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 08:00:39 ID:RCHeBJ60
スル―了解
360創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 10:04:31 ID:dAAjIKRa
串子のスルーはあてにならんwww
ところで学園島で一番強いのって誰だろうな
361創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 10:23:46 ID:DWkfgrHY
個人レベルなら魔法少女孤独系の主人公 か魔法少女軍事系のアン。
指揮官というか戦術レベルなら学園島戦記譚のエーリヒ。
362創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 10:45:21 ID:xwcPIto0
ゴッチさん以外にありえないだろ
363創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 17:44:15 ID:04fgRTeC
誰が強い誰が弱いって一概には言えないんじゃないか?
周囲の条件とか環境、兵力とか色々加味されるんだろうし。
エーリヒだったら戦わないか、確実に勝てる状況を作ってから勝負を挑むんじゃないかな。
見も蓋も無い話だけどねw
364創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 18:01:26 ID:RYT1oKi6
>>363に同意かなー
ましてや書き手さんも違うわけだし。
ただ、アンとゴッチさんでは戦えば後者が強いって書いてあった。
365創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 18:19:06 ID:lSD+w6vB
組織人だからなあ
366創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 18:32:43 ID:oSziaeUq
魔法少女軍事系だと、
設定上だとパトリックちゃんが一番強いけど、回りに足を引っ張られるから事実上ゴッチさんが最強。


ゴッチさん    千お洒落戦車
伊庭さん     九百お洒落戦車
アンさん     八百お洒落戦車
ビターさん    七百五十お洒落戦車
シャイロックさん 七百お洒落戦車
忍者お姉さん 一万イタリア兵
魔法お姉さん 六百イギリス戦車
スイスの方々 アルプス一万尺
マフィア     0.1エリオット・ネス
わたし 1000F

※パトリックちゃんは千五百お洒落戦車だけどあの二人に足を引っ張られるので±0お洒落戦車

基本的には>>363に同意だけど、自分の中ではエーリヒが一番強そうな感じ。
367創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 18:45:08 ID:RYT1oKi6
パトリックちゃん最強だったとは、、、萌えざるおえない
368創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:20:08 ID:+YTfV4Ii
盗作は排除する
369 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:21:23 ID:RCHeBJ60
する―
370創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:26:17 ID:RYT1oKi6
軍事系の設定でたから自分も便乗

ミルカ+ラグナナ 五十お洒落戦車

かなり弱いです。虫が嫌いな人には強いかも。
371創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:47:20 ID:+YTfV4Ii
>>369
乙です
372創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:48:02 ID:V0Lw0j1g
単純に思ったんだけど、島なら戦車で地の理を得るより
戦闘機飛ばして制空権得た方がいいよね
各国入り混じって戦ってるなら、輸送任務はかなり重要な位置づけかも知れぬ
373 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:52:28 ID:RCHeBJ60
その辺りって条約?に違反しないのかな?
戦争法規みたいなのなかったっけ
374創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 19:58:02 ID:V0Lw0j1g
なんか条約云々は自分は見てないなー、
まとめにもそれらしきものはないし
「若造、ここは戦場だ」てな感じで無常に奪われていくのか
「軍師、相手の木牛流馬を手に入れました」
「よし、わが陣地に運べ」
「こ、これは……動きません! まさか、魔法?」
てな感じで
375創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:00:23 ID:oSziaeUq
>>374
そのネタは……orz
376 [―{}@{}@{}-] 過去ログみてきた:2009/01/21(水) 20:03:14 ID:RCHeBJ60
Q 輸送路を襲っては駄目なの?

A 職人の判断に任せる

64 名前:75 投稿日:2008/12/14(日) 20:16:43 ID:Fc1j92sz
>>59
軍事板にいた頃は「輸送路を封じたら戦争が成り立たない」ということでご法度にしていた。
地上ルートの補給路はともかく、海路と空路は不可侵に近いかも。



こんな感じだから職人の裁量なのかね
377創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:08:00 ID:V0Lw0j1g
>地上ルートの補給路はともかく、海路と空路は不可侵に近いかも。

わざわざ探してくれて有難う
なるほど、一応島外部からの補給は確保されているわけだね
まあそんな事いっても、うっかり誤射で焼夷弾投下しちゃったりするのも戦争だから仕方ないよね
378魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 20:10:44 ID:oSziaeUq
十七話『騎士道VS武士道』
1/4
 現在大英帝国には目の上のたんこぶが二つあります。
 一つは学園島で最強の名高い第三帝国の魔法兵――巨大化魔法『ゴッチイズム』のゴッチさん。
 もう一つは学園島最凶の座をアンさんと争っている大日本帝国の魔法兵――『妖刀二刀流』の伊庭さんです。
 お二方共にたった一人で戦局をひっくり返す程の強者です。
 焚書坑儒を生き残ったのが自慢のパトリックちゃんですら、あの二人と戦うのは嫌だそうてす。
 勝負事に『たら・れば』はいけない事なのですが、お二人が夢のコラボレーションタッグを組んだら戦争の帰趨が枢軸側に大きく傾くそうです。
 これは危険ですね。
 そんな訳でお二人を排除する作戦となります。
 ゴッチさんにはアンさんを始めとする学舎の保有する戦力の半分を投入し、伊庭さんには似たような魔法を使うビターさんを中心にした精鋭部隊をあてます。
 因みに。
 私は精鋭部隊の方です。
 厳正な審査で選りすぐり過ぎたせいで、ビターさん、パトリックちゃん、私の三人しかいません。
 ちょっと心配ですが、多分大丈夫でしょう。
 第三帝国にはお洒落戦車がありますが、大日本帝国にはありません。だから、多分へいちゃらです。
 それに、私がいますし。私が本気を出したら凄いんです。

「めいろつくるです?」「いやむしろだんじょんかと」「おとしあなほりほり」「とらっぷってくうきよなぬよね」「たこつぼろうどういやー」「ぼくひとばしらになるです」

 迷路作りは楽しいので妖精さんが沢山あ集まりまして、突貫作業です。
 そんな訳で、パトリックちゃんが設計をした巨大迷路『石陣八陣』の完成です。
 パトリックちゃんがおっしゃるには、奇門遁甲とか八卦のなんたらを応用したこの迷路はそうは簡単に破れないそうです。
 迷路攻略で疲れはてた伊庭さんを紅茶を飲みながら待つ。これを専門用語で以逸待労の計というそうです。
 ビターさんは初陣の為か緊張していますが、私の為に頑張ってくれるそうです。
 後詰めには黄巾の乱で活躍したのが自慢のパトリックちゃんが控えているので心配無用です。
 問題は伊庭さんがこの迷路に入って来るかどうかなのですが、伊庭さんには乙女の匂いに惹かれる習性があるらしいので、『黙っていれば可愛い』と評判の私が餌になるから大丈夫な感じです。

379魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 20:11:16 ID:oSziaeUq
2/4
 これを専門用語で撒き餌の策と言います。
 兎に角。
 ただ待っているのは退屈です。
 退屈すぎて男性恐怖症の重症患者のビターさがパトリックちゃんに慣れてしまいました。
 治療に一歩前進です。
 妖精さんだって並んでダンスをしています。
 ですか。

「どくでんぱきた」「でんぱあびるとうつになるよね」「やるきぬけるです」「ちくちくするです」「にげにげするです」

 妖精さんがどんどん少なくなっています。何故でしょうね。
 心当たりは一つ。ちょっと心配です。

「今日はぁ……獲物がぁ……たくさんだぁ……」

「な、なんて出鱈目なんでしょう」

「お、男イヤァァァァァァァァァァッ!」
「機に応じて変に臨む。お前ら、気合い入れて戦っとけ!」

 やっぱり毒電波の発信源は卑怯な事に一直線に迷路を破壊しての登場の伊庭さんでした。
 。

「……男イヤァ……男イヤァ……」

 あまりにも突然でしたので、ビターさんはテンパってます。

「な、内憂外患……。お前、手を離しとけ!」

 パトリックちゃんはパニクった私に首を締められて悶絶しています。

 これではお話になりません。作戦失敗です。

「そこのお前からぁ……楽しませてぇ……貰うぜぇ……」

 伊庭さんの血走った目が私を捉えます。こうなるとパトリックちゃんを盾にするしかありません。

「だ、誰か……たしゅけて」

 恐怖の為にかんでしまいます。

「へへへ……そのツラァ、その啼き声ぇ……そそるぜぇ……」

 伊庭さんの妖刀二刀が妖しげな光を帯びます。
 紅茶を飲みすぎた事と恐怖のせいで生理現象が起きてしまいそうです。
 盾にしていたパトリックちゃんは私の拘束から逃れて、お返しとばかりに私を盾にします。
 もう駄目ですね。終わりですね。全てを諦めた時――。

「――男は全ての乙女の天敵。――人の世の生き血をすする――不埒な悪行三昧――醜い浮き世の鬼よ! それ以上は百合の騎士たるこのぼくが許さん!」

 ビターさんが復活しました!
 男性が苦手から、男性を殺したくなる程嫌いにランクアップした感がありますが、兎に角復活しました。

「……面白れぇ……その生意気な口でぇ……俺の(妖刀)を……しゃぶらせてやんよぉ……」

 お二人の距離は10m程、ビターさんは魔法のレイピアを前に突き出すように構え、伊庭さんは妖刀二刀流で十字を作る様に構えます。

380魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 20:11:52 ID:oSziaeUq
3/4
「――名を聞こうか、黙示録の獣よ」

「……俺はぁ……剣を振るえばぁ……泣く子も黙るぅ……人斬り伊庭心……伊庭心太ぁ……」

「蕾を守る為に神が遣わした騎士にして――愛でるべき花を散らす、愚かなる風たるきみを打ち倒す者――愛ある限り戦かおう。百合の騎士たるビターとはぼくの事だ!」

 お二人はチャンチャンバラバラと斬り合いますが、妖刀二刀両刀使いの伊庭さんが次第に押し始めます。

「女にしちゃぁ……ヤル方だけどぉ……どうせヤルなら……楽しみてぇなぁ……!」
「くっ! このぼくが押されているだと! だが! ぼくは神と愛の名の元に戦うぼくは! いずれきみを打ち倒すだろう!」

「……ナマ言ってんじゃねえ……!」

 伊庭さんの狂気と殺気を帯びた刀がビターさんに襲いかかります。

「くっ、まだだ!」

 すんでの所で避けたビターさんですが、服を切り裂かれて見えそうで見えないチラリズムで悩殺ファッションになってしまいます。

 きゃーきゃーきゃー。

「かっこいいぜぇ? ……騎士さんよぉ……次は全裸にしちゃるけん……」

「――下衆が。ぼくの剣は残酷な神の意思――慈悲は無く、深淵なる闇の檻にきみは閉ざされる。――助けを求めても煉極の焔は四方を閉ざし、救済の言葉は君を拒絶する」

 ビターさんはの瞳には闘志の炎が静かに宿り、ヒンヤリとした空気がこの場を包みます。

「減らず口ぃ……叩けねぇ……ように……俺の(妖刀)でぇ……鬱いでやるぜぇ……」

 兎に角。
 さっきから注釈を付け足すのがかったるいですね。いい加減にして欲しい物です。

「ならばぼくは全力をもってきみを打ち倒そう。――さらばだ、堕ちた武士道の男よ」

 二人は互いに気を溜めて必殺の一撃を出そうと構えます。
 相手の隙を見逃さないように一挙一動集中します。それに呼応したのか、場の空気が凍りつきます。見てるこちらも緊張します。
 そして、私は緊張した空気が嫌いです。胃がキリキリと痛みます。
 それだけではありません。
 パトリックちゃんは何処で拾ったのか解りませんが、棒っ切れを私に手渡してとニコニコしています。
381魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 20:12:21 ID:oSziaeUq
4/4
 ああ、成る程。
 固まった空気がパリンと割れました。
 そうです、私が割りました。
 結論から申しますと、隙だらけの伊庭さんに後ろからガツンと一撃を浴びせました。
 トドメはビターさんが刺しました。

「兵は欺道なり。お前ら良くやった!」

 パトリックちゃんはご機嫌です。
 正々堂々の騎士道精神満載なビターさんは微妙な感じでしたが、二人の初めての共同作業だと言い含めて納得して貰いました。

 とりあえず大勝利です。
 目の上のたんこぶの一人が消えました。 ですが。
 もう一人の方は失敗したそうです。
 包帯グルグル巻きのアンさんが全てを物語っています。

「許さないのだわ! 次こそはギッタンギッタンにやっつけるのだわ!」

 意訳しますと、円卓の騎士を総動員してもゴッチさんには勝てなかったそうです。
 妥協しないゴッチさんはとても凄かったらしく、間接を極める為に眼に指を突っ込むは急所を潰すは、兎に角穴に指を突っ込まれたそうです。
 妥協しないゴッチイズムとアンさんの妄想とでは格が違うといった事なのでしょう。
 兎に角。
 負けて大怪我したわりにはアンさんが元気そうでなによりです。

 それよりも。
 アンさんが負けたのは別に良いんですが、アンさんの円卓の騎士が持っていた聖杯と聖剣が奪われたそうです。
 聖遺物とか伝説とはあまり関係無さそうですが、妄想の産物としてどんな威力を秘めているのか誰にもわかりません。
 本人ですらわかりません。
 つまり、危険です。
 いわゆる一つの聖杯争奪戦の勃発です。略すと聖杯戦争です。

 そんな訳で、話は次回に続きます。

 すみません。私、嘘をついておりました。
 アンさんは聖杯とか聖剣を奪われたのは事実ですが、アンさんが魔法を使うのをやめればそんなもの消えちゃいます。

 兎に角。
 今回は伊庭さんを倒したのでめでたしめでたしです。
 ゴッチさんは目の前のたんこぶのままですが、とりあえず放置です。
 楚の人に盾を矛で突いてみろと言ったのが自慢のパトリックちゃんになにやら策があるそうです。

 楽しみですね。どんな策があるのでしょうか。
 長生きしてるのが伊達では無い事を教えて欲しいものです。

――To be continued on the next time.
382魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 20:13:33 ID:oSziaeUq
以上、魔法少女軍事系第十七話投下終了。全力で変な方に爆走しています。
383創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:16:12 ID:V0Lw0j1g

ゴッチさんの話も読んでみたかったw
384創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:16:49 ID:RYT1oKi6
伊庭殿が……
385 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:18:55 ID:RCHeBJ60
妖刀が敗れた…だと
386創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:22:40 ID:+YTfV4Ii
乙です
期待の対決が実現した!!(いい意味で?)
いやぁ、オチもいい。
ガチで戦争するキャラじゃないので上手く空気抜いたww
ゴッチさんもマイペースだw
387創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 20:23:50 ID:+YTfV4Ii
75 ◆kkZO9WMBekの過去の発言を参照するかぎりでは、劇場版パトレイバーのキャラクターである
「後藤隊長」の存在を認識していることから、意識的に盗作を行った可能性はきわめて高い。
自分の作品の価値を高めて賞賛を得るために他人の著作物を利用した、盗作の中でも悪質な部類に入る行為である。



444 名前:創る名無しに見る名無し 投稿日:2008/12/02(火) 20:55:42 ID:gqpo9CxS
よくみれば確かに外人とか他校な感じもしないでもないw
むしろそっちが合ってるか

現地の再三の要求にも関わらず、なかなか改善されず
本国当局ののろまぶりに怒りの声をあげる中堅将校というイメージ


445 名前:75 投稿日:2008/12/02(火) 21:04:50 ID:WcJzj7qF
ttp://jp.youtube.com/watch?v=vZ00wpjAhVs&feature=related
これはドイツ軍に所属して戦ったロシア人部隊の映像。

この人たちはソ連軍に降伏した後処刑されたり、米軍に降伏→ソ連へ強制送還→処刑という悲惨な末路を辿ったりしている。
あと英軍のグルカ人部隊は結構有名やね

>>444
それを聞いて、なんか映画版の後藤隊長を思い出したw
388創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:20:15 ID:DWkfgrHY
伊庭「今日の私は阿修羅をも凌駕する存在だ!」
389創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:39:55 ID:1g5LZe2p
75 ◆kkZO9WMBek氏が盗作していようと関係ないよ。
このスレのメイン職人は魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus氏なんだからさ。
面白さが圧倒的に段違いだよ。
魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus氏には盗作職人に負けずに頑張って欲しい。
頑張らなくても 魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus氏は盗作職人に勝ってるけどな。
390創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:39:56 ID:oSziaeUq
あれ?伊庭さんて人気あった?
391創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:42:27 ID:1g5LZe2p
>>390
盗作職人75 ◆kkZO9WMBekより伊庭さんの方が人気あるだろJK
392創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:48:41 ID:7wmzkrxZ
魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus氏は読者の期待に応えるスキルが高いな
予想外の想像以上をやってくれる!
393創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:50:20 ID:DWkfgrHY
わかってるだろうけど触っちゃ駄目よみんな
39475 ◆kkZO9WMBek :2009/01/21(水) 21:54:53 ID:04fgRTeC
ちょりーす。
第二章最後までいくよー。
39522/24:2009/01/21(水) 21:55:39 ID:04fgRTeC


 ぼんやりとしか世界があった。
 エーリヒは大河の中で足を踏み入れる。
 水は冷たくなかった。
 川は流れていたが、足を持っていかれることはなかった。
「こっちだよー! こっちー!」
 少女が対岸で手を振っている。
 何故だろう……エーリヒは、少女のところへ行きたかった。
 引き寄せられるようにして川の流れに逆らい、前へと進む。
 声が聞こえた。
 自分を引きとめようとする声だ。
「行っちゃ駄目!」
「行くな! 行くなエーリヒ!」
 対岸ソフィとフランツがいた。
 なんで二人とも、あんなに必死に叫んでいるんだ?
 エーリヒは首を傾げて、少女の方へと進む。
 少女の姿はどんどん大きくなる。
 近づいているのだ。
「エーリヒ! エーリヒ!」
「行くんじゃない! 戻ってくるんだ!」
 聞きなれた声。
 安心する声。
 暖かい声。
 エーリヒは足を止めて、後ろを見る。
 両親の姿があった。
 なんで?
 そもそも、俺はなんで川に入っているんだ?
 母がが川へと飛び込む。
 腕を掴んで、エーリヒを岸辺を連れて行く……。
39622/24:2009/01/21(水) 21:56:07 ID:04fgRTeC


 エーリヒが目を覚ますと、天井の色は見慣れた自宅のものだった。
 川などどこにもない。 
「母さん?」
 頭を動かすと、母エメリアの姿があった。
「良かった。酷くうなされていたのよ」
「家に帰ってきてたのか、俺……」
 エーリヒはベッドから上体を起こす。
 酷く体がだるい。
 全身に溶けた鉛を注入され、固まった後のようだった。
「大丈夫?」
「頭が痛い。目が霞む。左耳から小便が出ない……」
 エメリアは微笑んで、エーリヒの額の汗を拭った。
「じゃあ大丈夫ね。エーリヒ、本校警備のために貴方の部隊が移動するようだわ。〇三〇〇時までに集合とのことよ」
 〇三〇〇時と聞いて、エーリヒは窓を開けた。
 ガラスの向こうは一面の漆黒だった。
「行きたくないなぁ。まだ休暇始まって九時間だよ……」
「私だって帰ってきた子供をそのまま送り出したくは無いわ。でもエーリヒ、貴方は軍人なのよ?」
 毛布を被り、エーリヒは姿を隠した。
「今は学生だよ……俺、行かないよ。風邪引いたとでも言ってくれよ」
「結構。じゃあ好きになさい」
 冷たく言い放ってエメリアは部屋を出た。
 エーリヒは気まずくなり、毛布から頭を出す。
 パジャマ姿、乱れた髪のまま台所へと歩いていく。
「母さん?」
 キッチンに頭を突っ込んで、エーリヒは引きつった笑みを浮かべた。
「気が変わったよ。今……変わった」
39723/24:2009/01/21(水) 21:56:30 ID:04fgRTeC


 本校までは父であるブルーノ・シュヴァンクマイエルが送ってくれた。
「……前線か?」
「……ごめん」
 エーリヒは答えない。
 答えることはできたが、応えられなかった。
「いいんだ。聞いた父さんが悪かったよ」
 車は夜道を進む。
 街灯の光が車体を舐め、過ぎていく。
「ごめん父さん」
「お前は何も悪いことなんてしてないさ」
 エーリヒの頭を撫でながら、ブルーノは苦々しく言う。
「お前みたいな優しい子が戦争に行かなきゃならないなんて。増して英雄呼ばわりされるなんて、酷い話だ」
「でも僕は『今』を変えようとは思わないよ。僕は今、幸せだから」
「そうか。父さんも母さんも、お前がいてくれて良かったと思ってる。心から」
 本校の前で停まると、エーリヒは車を降りた。
「じゃあ、気をつけてな」
「父さんも」
 軽く窓越しに二人は抱き合う。
「エーリヒ、一つだけ覚えておきなさい」
 父が何を言おうとしておるのか、エーリヒにはわかっておた。
「大きな力には、同じぐらい大きな責任が伴う」
「そうだ。絶対に忘れるな」
 遠くなっていく車のテールライトを見ながらエーリヒは呟く。
「友人に……家族か」
 今、自分は結構幸せかもしれない。
 それはエーリヒの本心だった。
 やがて突撃砲や重砲を載せたキャリアーが列を成して現ると、エーリヒは先頭車両に乗り、夜の闇へと消えていった。
 彼らの向かう先は東部戦線――ヒューナースベルグ要塞。
39823/24:2009/01/21(水) 21:57:56 ID:04fgRTeC
ここまで。
配置ミスで24ではなく23で終わり。

じゃ名無しに戻る。
399 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:58:14 ID:RCHeBJ60

支援準備オーライ
40075 ◆kkZO9WMBek :2009/01/21(水) 21:58:18 ID:04fgRTeC
失礼、名前がそのままだった
401 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:59:09 ID:RCHeBJ60
と思いきや短っ!
出遅れたw
402創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:01:57 ID:1g5LZe2p
>>394
盗作に関しての謝罪はないんですか?
403創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:02:53 ID:04fgRTeC
>>401
第二章はここで終わりなんだぜ。
第三章書き終わるまで時間かかるかも。
404創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:04:19 ID:RYT1oKi6
>>403
了解
その間を縫って厨二っぽいやつも投下していきますん。
405 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:04:34 ID:RCHeBJ60
りょーかい
無理せず頑張れー
406創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:04:43 ID:1g5LZe2p
>>403
盗作に関しての謝罪弁明はないのですか?
非常に残念です。
407創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:05:22 ID:oSziaeUq
>>397
乙〜ん。

408魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 22:32:31 ID:oSziaeUq
第十八話『決戦』

 最近のパトリックちゃんは忙しそうです。
 ゴッチさんに女物の服をプレゼントしたり、お手紙を送っています。更には、キャンプフャイヤーをして妖しげなお祈りをしています。
 アンさんは敗戦のショックで暴れまわっています。
 私とビターさんはとても仲良しになりました。
 すったもんだがありまして、パトリックちゃんプロデュースのゴッチさん討伐戦の始まりです。
 とりあえず、お手紙の返事が来て決戦の場所が決まったみたいです。
 まあ、今その場所にいるんですけど。
 よりによって夜なので怖いです。一応灯りとして篝火を焚いているのですが、何だか怖いです。

「パトリックちゃん……本当に大丈夫なんですか?」

「ゲルマン民族の大移動を引き起こしたのは吾だから安心しとけ!」

 パトリックちゃんは自信ありげなのですが、用意してある棺桶はなんなんでしょうか。
 自分が入る為なのかもしれません。律儀な事です。
 因みに。
 今日のメンバーはパトリックちゃんと私だけなのでとても心配です。

「私は間接をフック出来ない者をレスラーとは認めない(意訳)」

 ゴッチさんは男らしく一人で登場です。流石ですね。
 パトリックちゃんは手持ちの鐘をカラカラ鳴らして遊んでいます。

「私はプロである。プロは戦いに全力を尽くすのが仕事だ(意訳)」

 ゴッチさんは容赦無くパトリックちゃんに襲いかかるのですが――。

「来来! キョンシー!」

 件の棺桶から変な人がが飛び出してきました。
 よく見るとこの前死んだ伊庭さんですね。死んでもコキ使われるとは墜ちるところまで堕ちたものです。

「私の武器は肉体と技術だけだ。それ以外は信用しない(意訳)」

 ゴッチさんは動じないで伊庭さんをねじ伏せようとしますが、死んだ人の相手は勝手が違うようで、戸惑っています。
 それよりなにより、四方からドイツの歌が聞こえてきます。
 更には――アンさんとビターさんが第三帝国の偉そうな人を連れてやって来ました。

「ゴッチ君。――我々の敗けだ」

 偉そうな人が疲れた表情でゴッチさんを見つめます。

「――閣下。第三帝国に敗北の言葉はありません」

「我々の敗けなんだよ、ゴッチ君」

 ゴッチさんの闘う意思は健在みたいなのですが、偉そうな人に諭されて降伏しました。

409魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 22:32:52 ID:oSziaeUq
 結論から申しますと、私達がゴッチさんを誘き寄せておいて、その隙に第三帝国の学校を制圧したそうです。
 卑怯ですね。ええ、とても卑怯ですとも。
ですが、パトリックちゃんはご機嫌で鐘をカラカラ鳴らして遊んでいます。

「四面楚歌! 囲魏救趙! 中国四千年の歴史よく見とけ!」

 そんな訳で。
 第三帝国の戦力を大幅に削る事が出来ました。
 ゴッチさんは敵ながら天晴れなのでパトリックちゃんが三回頭を下げて仲間になって貰いました。

 ですが、パトリックちゃんが調子に乗っていてムカつくから後ろからキュッと首を抱き締めてやりたいです。
 優しいゴッチさんが効果的なやり方をおしえてくれました。流石、紳士は違いますね。

 ですが、そうは喜んでもいられません。
 第三帝国は威信回復の為に新型お洒落戦車や新しい魔法兵を投入するそうです。
 大日本帝国は満州国から兵隊ヤクザとお茶の産地の魔法兵を呼び寄せるそうです。
 イタリアは生ハムとパルミジャーノ・レッジャーノを搬入してだらしないイタリア男の代わりに女性を投入するそうです。
 北国がなにやら妖しげな動きを見せています。
 これは由々しき事態です。
 まだまだ戦いは続きそうです。
 束の間の平和を楽しむ時間もありません。

 未来はまだまだお先真っ暗です。
 そんな訳で話は次回に続きます。


――To be continued on the next time.
410 ◆NN1orQGDus :2009/01/21(水) 22:33:50 ID:oSziaeUq
魔法少女軍事系第十八話投下終了。
迷走しています。
411創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:36:21 ID:RYT1oKi6
伊庭さんが……救われた?
412創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:55:07 ID:xwcPIto0
パトリックちゃんやってることが三国時代まんまwwwww
413 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:21:12 ID:+wHsLDEY
盗作盗作っていうけどさあ…

原文って日本語じゃないならどう訳そうと、訳する人間によって異なる上に
解釈の違いでまた変わってくる
パトレイバーから持ってこようとも何であろうとも、原点が存在するものに
パクリというのはちょっと…というかむしろおかしいと思わないの?

それをパクリだというんならパトレイバー第1作目なんて聖書から思いっきりパクってる事になってしまうしね
自分の作品の価値を高めて賞賛を得るために他人の著作物を利用した、盗作の中でも悪質な部類に入る行為だよ
何しろ「聖書という権威」を利用したんだから



それより自分は小林源文の方が許せない
あの先生がゼークト論を作品内で歪曲して引用してしまったおかげで、
ゼークトを間違って解釈してしまってる軍オタはすげー多い
原点では将校・指揮官の資質についての話なのに、兵隊全部に適用される事になってしまってるし、
「連絡将校ぐらいの使い道はある」程度でしかない無能な怠け者が「兵士に最適」とか言われてしまってる
全ての障害を打ち倒すなんて過剰修飾もいい所だ
無能な怠け者は自分で考えないで、上官の命令を求め従うから兵士に使えるのであって
積極的に戦うわけじゃない
414創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:29:43 ID:TEzXVlLl
>>382
ああ妖精さんが楽しそうだなぁ
迷路つくってたのしたんでちゅねー
そして緊迫した勝負で後ろから棒で殴る私www
卑怯にもほどがあるだろwww

>>410
ゴッチさんがあっさりなかまにw
相変わらず英国はいい性格の作戦を立てますなぁ
415創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:32:09 ID:oSziaeUq
>>413
ゼークト論ってなあに?
416 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:33:47 ID:+wHsLDEY
ついでにいうと…パクリってのは「全て自分が作ったオリジナルで引用も借用もしてない」
って言った時点でパクリ
そして、パクリと「パロディ」の区別っていうのはその一点

オリジナルって言い張らなきゃパクリにも盗用にもならないんだよ
ただパロディも「これはパロディである」「パロディが入っている」って後書きなり前置きなりに
提示しておく必要があるんだけどね
あと、元ネタを指摘されたら「そうです、見つけてくれましたね」って言うとなおよい

ただしそれには指摘する側も「パロディですね?」っていう形で言わないと成立しない
ネタやユーモアでやってるものを盗用だ!と騒ぎ立てる奴に何を言っても無駄だから
そういう奴は空気読めてない間抜けか、盗用を見つけたと主張することこそ正義だと信じて
場を白けさせるだけだからだ

そんあアホの前で、「これはネタの類なんですが…」って言っても虚しいだけだね
そういう奴がいるから、SSにネタを散りばめるのが馬鹿らしくなってくる
417 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:36:00 ID:+wHsLDEY
>>415
一般にハンス・フォン・ゼークトが提唱したといわれる「組織論」
だが、彼の著作物にそういう記述があったという事は確認されてない
でも、彼が言いそう、その思想に合致するというんで、彼の発言または著述だと
一般的には認識され流布されている
(「組織論」という著作物もまた、存在しない)
418創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:37:18 ID:oSziaeUq
>>417
答えてくれてありがとねえ。
419創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:38:56 ID:xwcPIto0
原典がないのなら、自営業先生も歪曲して広めてることにはならないよねw
流布されてる説を面白く脚色しただけでしょ
420創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:42:31 ID:9Y6VTnQd
魔法少女軍事系乙
ゴッチ対パトリック、魅惑の対決キター!!
と思ったらひん曲がったwwチクショー中華め
大陸打通すんぞ

>>413
あれは原典が聖書だって作中で明言してるからセーフでは?
源文がゼークト論を語ったというのは知らないが、佐藤中村のお約束は何度もやる価値ないと思う
421 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:43:30 ID:+wHsLDEY
>>419
はっきりした原点は無いけど、説の元になってる文章という原典はちゃんとあるんだなあ、これが
まあそれも訳し方で色々論争になってるんだけどね
422創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:44:52 ID:xwcPIto0
ふーん
彼の著作物にそういう記述があったという事は確認されてない
ってのは信じちゃいけなかったんだね
まあいいや
423創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:50:47 ID:oSziaeUq
軍事に詳しい人に質問

WW2の時代でも孫子とか兵法三十六計って役に立ってたの?
424 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:51:14 ID:+wHsLDEY
>>420
本当に厳密にするなら、聖書の版番号とかその訳者とかも提示しないと
著作権的にいろいろグレーなんだけどね
細かすぎて誰も気にしないけど


それと、源文先生の書いたゼークトは「ユギオ2」で見られる



佐藤と中村って言えば、軍板時代に創作関連スレで佐藤と中村ネタを使ったSSが3つぐらいのスレで
それぞれ2作品以上は見られた記憶があるんだけど、それは一度もパクリだ盗作だ
と言われなかったのは何でだろうね?(自分もやった事あるし)
源文作品からの引用はパロディとしてわかりやすくて、パトレイバーの方が、
パロディだと認識されないほどマイナーだってこと?

ま、盗作騒ぎを言い出した人は、難癖が付けたいだけなんだろうけど

425創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:53:41 ID:QHaZXX7g
75 ◆kkZO9WMBekは盗作を行ったことについて謝罪してください
426 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:54:57 ID:+wHsLDEY
>>423
役に立つも何も、軍略政略の基本中の基本

でも、時代ごとの兵器性能とか補給概念とかの移り変わりに合わせて、
修正を入れたり応用したりしないと、孫子そのままに適用できるってわけでもないけどね

例:「孫子いわく兵站は現地調達すべし なぜなら兵站は国力に負担掛けすぎる、
極力本国から兵站輸送を送らないといけない戦争はするべきでない」

→日本軍「よし、南方は食料が豊富に取れそうな気がするし、実際兵站を維持する余力ないから
現地調達に頼ろう!!」

→結果…失敗
427創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:55:33 ID:rgrhr4Ut
『何を言っても無駄で、難癖を付けたいだけ』な人に、
◆XdgIHnFrK.さんはそこまで長文を返す意味があったんでしょうか。
他の人はおおむねスルーしていたと思うんですが。
むしろあなたが火を広げてる気がするんですが。
428 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:56:26 ID:+wHsLDEY
>>422
本などの記述は無いけど、定型の文章だけがゼークトの発言もしくは主張として
一人歩きしてるわけよ
429創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:59:13 ID:xwcPIto0
うん、だからね、独り歩きのそれをいまさら歪めたからって自営業許せないになるのがイミフw
430 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/21(水) 23:59:32 ID:+wHsLDEY
>>427
すまん

でも軍板時代に自分も(別スレだったけど)殆ど似たような論理で全く同じように
盗作盗作難癖つけられたことがあったんで人事に思えなかった
431 ◆XdgIHnFrK. :2009/01/22(木) 00:01:00 ID:+wHsLDEY
>>429
その歪められたのを信じきったアホの所為で間違ってないのに自分が間違ってる事にされた事がある…
根に持つ方が大人気ないのはわかってるんだけどね
432創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:03:28 ID:S2JFweNF
そりゃ逆恨みだねえ
作家は面白く曲解するのも仕事のひとつっしょ
「ゲイツ」で黒人の神様出したからってマジギレするかい? って話だw
433創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:04:04 ID:xwcPIto0
ああ、「ゲイツ」じゃなかったっけな、あれ
よく覚えてないw
434創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:11:03 ID:KNDjVHgf
きな臭い話はこの辺にしといて、学園島における補給事情について話そうぜ。

やっぱりトラックや輸送機はどんな兵器よりも有力な存在?
435創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:13:39 ID:S2JFweNF
お船もかも

敵宛の郵便を書き換える魔法兵とかいたら最凶だね!
「いつまでもあなたのことを待ってます」

「わたし結婚しました(^^)」
436創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:15:04 ID:iB76YMNw
ウォトカ吹いたw
437創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:15:29 ID:D9n7L1cJ
書き換える暇あるなら船便奪えよw
438創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:17:41 ID:KNDjVHgf
士気がた落ちだろうな
439創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:56:08 ID:KNDjVHgf
エーリヒって家族や友人に恵まれてるからこそ強いんだろうか?
学園島で家族持ちキャラは少なくね?
440創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 08:59:52 ID:0kqpadKg
>>439
支えてくれる人がいる、というのは大きいかもしれない。
相談とかもしてるだろうから心の余裕もあるだろうし。
441創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 13:53:40 ID:KNDjVHgf
>>440
いろんな人に支えられてるエーリヒとは逆にマイコは破滅へ一直線ですね。
442魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/22(木) 20:12:58 ID:o2rmw30f
第十九話『新たなる学舎』
1/2
 柔らかな風が頬を撫でるのは大変気持ち良いです。
 穏やかな日差しが眩しいですが、それは生命を実感させてくれる素晴らしいものです。
 労働は辛いのですが、疲労感が心地よく私を包みます。

「妖精さーん、そこはそうじゃありませ―ん」

「よしきた」「ぼくにおまかせ」

「そっちはそのままでお願いしま―す」

「よかたて」「やるときはやるです」

 何をしているのかと言いますと、占領した第三帝国の基地を大英帝国の学舎分校とする為に改修工事をしているのです。
 声を張り上げて頑張った為に、完成まであと少しです。
 此処まで辿り着くまでの私の努力は言葉では語ることができません。
 いつもならば語らない所なのですが、語らずにはいられないので無理をして語ろうと思います。
 そもそも。
 始まりはパトリックちゃんでした。
 目の上のたんこぶ掃討戦は成功したのですが、損害も大きくて我が学舎は学力――国で言えば国力を疲弊させてしまいました。
 『戦争で勝っても財政難で共倒れ』という持病持ちの大英帝国ですが、共倒れだけはいただけません。
 経費削減に努める必要があるのです。
 そこで私が出てきます。
 妖精さんが持つ類い稀なる土木建築作業能力に眼を付けられてしまいました。
 とどのつまり。
 経費削減の為に私一人で改修工事を担当する事になったのです。
 勿論私は反対しました。
 ですが、この事態を見越して蛍の光を照明代わりにするという画期的な経費削減をしていたパトリックちゃんに強引に決定されてしまいました。
 ひどい話です。
 あまりにもひどい話なので私の反骨精神が目覚めてしまいました。
 私の趣味で改修してしまいました。
 自分ながら満足出来る立派な出来栄えだったのですが、偉い人に怒られてしまいました。
 学舎はダンスホールではないと言われました。宮殿ではないとも言われました。匠の業なんてもっての他だと言われました。
 私の努力が全否定されました。
 一切の弁解も聞いてくれず、ひたすら怒られました。
 最後には設計書を渡されて、図面の通りに作れと言われました。
 本当にひどい話です。
 腹立たしい事この上ないので、私の部屋だけ私の趣味で仕上げました。
 ついついざまあ見ろと思ってしまいます。
443魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/22(木) 20:13:23 ID:o2rmw30f
2/2
 脱線した話を戻す前に。
 新しい学舎は私の力で建てたのです。
 資材だって妖精さんの超技術で作り出しましたし、実際に作業したのも妖精さんです。
 妖精さんは私の魔法ですので、全ては わ た し の努力の賜物だという事をわかって頂きたい。
 特に偉い人達は私に感謝して然るべきなのです!

 脱線しすぎた話を元に戻します。
 一週間続いた補修工事も残す所は庭だけです。
 庭は図面には記載されていませんでしたので、私の好きにして良い筈なのです。
 やっぱり噴水とか泉は必要ですし、恋人が語り合うベンチだってなければお話になりません。
 凝ろうと思ったら次々と欲しいものが出てきてチョイスするのが大変です。

「――君。何をしているのかね」

 誰でしょうか。肩を叩かれますが、忙しすぎるので対応なんてしてられません。

「もう完成しているんじゃないかね?」

 一生懸命にやっている所に水をさされるとちょっとムカつきます。
 これは一言ガツンと言ってやらなければなりません。

「今忙しいって……あれえ?」

 偉い人でした。
 冷たい視線がチクチクします。

「もう完成していると考えてもいいのかな?」

 笑顔が怖いです。
 ガツンと言うどころではありません。

「いいえ、あと……噴水とかベンチとか……」

「完成だな?」

 ゴニョゴニョと直訴した意見はバッサリと斬り捨てられました。まるで伊庭さんです。
 余談ですが。
 伊庭さんは腐敗が進んだので埋葬しました。
 この場合の埋葬とは二度と復活復活しないように燃やして灰にして海に流した事を言います。
 余談終わり。

「せ、せめて噴水だけは! 噴水には心を癒す成分が……」

「考えておこう」

 結論から申しますと、噴水は認められませんでしたが、貯水地として池を作る事は認められました。
 凝ろうと思っていた植木は家庭菜園で我慢する事となりました。
 犬とか猫みたいな愛玩動物を飼いたかったのですが、牛や豚の家畜になりました。
 勿論、歌の上手いカナリアの代わりはコケコッコーの鶏です。

 悲しいですね。ええ、とても悲しいですとも。
 私、泣いてしまいそうです。

――To be continued on the next time.
444魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/22(木) 20:14:40 ID:o2rmw30f
魔法少女軍事系第十九話投下終了。
次回からは本編はちょっと一休みして番外編が続く予定。
445創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 20:21:41 ID:bLh1Czis
楽しくないのによく妖精さん働いてくれたねぇ
場の楽しい度が盛り下がったりしなかったのか気になるところ

446創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 20:56:48 ID:Ge4DYoTb
>>394-398
盗作が悪いことだって自覚しないで続きを書いてしまう馬鹿な人ですね。
自分から謝るまで教育し続けましょう。

魔法少女軍事系乙です
インフラ魔法すごいな!
資材をゼロから作るなんて反則級じゃないか!
447創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 21:18:34 ID:0kqpadKg
おつかれー
番外編楽しみにしてる

あとまとめサイト更新のお知らせ
http://www36.atwiki.jp/gakuenisland/
448創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 21:25:35 ID:lYUmTTUK
番外編楽しみw
そしてまとめサイトの更新もお疲れ様でした。

自分も23時ぐらいから投下したいと思います。
449創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 22:00:26 ID:o2rmw30f
番外編書いてたら良い子が見たら駄目な感じになったんだぜ
450創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 22:16:28 ID:bLh1Czis
それを聞くとさらに見たくなってきたんだぜ
451創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 22:17:44 ID:lYUmTTUK
きっと伊庭さんが死後の世界であんなことやこんなことを……
452創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 22:28:05 ID:0kqpadKg
伊庭さんが仮面を被って・・・
453魔法少女孤独系5-1/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/22(木) 22:56:10 ID:lYUmTTUK
 ラグが寝ているときは蟲を上手く操ることが出来ない。しかし次々と湧き出した蟲たち
は背中と壁の隙間を徐々に埋め、はみ出し、洞中を覆い尽くしていく。
 この子たちもお腹を空かせているのだ。

「ちょ、ちょっとミルカ何してんのよ!」
 声が聞こえるより速く、首から腕へ駆け抜ける蟲――それは限りなく痛みに近い快感を
伴って、一瞬のうちに少年を包み込んだ。

「言ってることとやってることが違うじゃない!」
「うるさいな! ラグだって本当はしたいんでしょ!」
「ミルカ……」
 腕は今までにないほど膨れ上がり、轟音と共に幹を突き破る。途端に激しさを増す雨の
音。その勢いに任せ、ゆっくりと力を込める。

 おかしい、飲み込めない。

 やがて蠢く拳から一本の棒が伸び、消えると同時に強い金属音が響き渡った。
 同時にばらばらと崩れる手のひら、その中では無傷の少年が服を払っていた。

「迂闊。腹を空かせていたことは察していたが、まさか人を喰らおうとは」
 動きを止め、私を見る。
「破戒した身にて、殺生に躊躇いは無いぞ」

 雨に混ざって、嫌な感覚が身体を走った。
 そうだ。この人は魔法を使えるんだ、最初に感じていたはずなのに、防御用の甲蟲さえ
飛ばしていない。四散した蟲たちと意思疎通もできない。あの棒はいったい――
「ミルカ!」
 額を弾かれた痛みに思わず目を閉じた。地面に落ちる軽い音。
 これは木の実?

「解せぬ。何という儚き意志」
 聞こえた声に顔を上げると、目の前に少年の手が迫っていた。
 掴まれた肌着は脆くも引き裂かれ、零れ落ちたラグを少年が掴み捕る。

「貴様が元凶か、娘に寄生する蟲の姫よ」

 私は勢いで後ろに倒れ、そのあまりの恐怖と圧倒的な力の前に身体を動かす事もできず
にいた。
 こんな人を食べようだなんて、私はどうかしてた。

 暴れるラグを幹に叩きつけ、そのまま抑えるように力を込める。
 そんな光景を目の当たりにしても声が出ず、歯はかちかちと音を立て始めていた。

「いや、これは楔か」

 既に少年の言葉は私にとって意味をなさなかった。一瞥する濁った瞳。

「面白い。話を聞かせろ、如何によっては力にもなれる」

 少年はそう言って、ラグをそっと地面に置いた――
454魔法少女孤独系5-2/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/22(木) 22:57:43 ID:lYUmTTUK
 気が付けば雨は上がり、白み始めた空が私たちの色彩を取り戻す。
 あれほど激しかった空腹感も気付けば不思議と消えてなくなり、感じていたはずの恐怖
も、いつしか自分を責める羞恥の感情へと変わっていた。

 そして、全てを話し終えた時。

「夢叶う場所などこの世にはない。あればこれ程の戦起きておらん」

 どうしようもなく現実的なその言葉に、私たちの夢もまた儚く消えていった。



「気を落とすな。人は元より不平等。しかし幸せとは平等に訪れるもの」
 顔を緩め、それでも真剣な少年の言葉に、私は眉を寄せた。
「でもきっと、私は幸せになれないよ」
「それは主が決めた事。自分で裁かれに来たのなら世話は無い」

「それはそうだよ。でもあなたが言うみたいに夢の叶う場所が無いなら幸せにはなれない
じゃない! 平等になんて訪れないじゃない!」

 ぐっと手を結ぶと、馬鹿にされたような感情が身体中を駆け巡る。

「裁かれる為に夢を求め、辿り着いたのは虚空という事実。しかしそれはまた一つの結果」

 少年が立ち上がり、私の顔に濁った目を向けた。

「それでもなお、こうして生きている。何故だ」
「許されないってことでしょ。永遠にこの姿と罪を背負って生きろってことでしょ!」

「違う。自分は達成した、だからこそ許されたと。何故自分でそう思わぬのだ」

 自分で? 自分を許す?

「醜いと蔑まれるも、何故自身を受け入れず、他人と並びたがる。幸せ、不幸せなど所詮
貴様が決めた勝手な境界であろう。それを変えろ、変えてこそ感じるものは、みな平等な
幸せではないか。人を妬むな、それこそ醜いぞ」

 そう、私は変わりたい。

「また器の小さなと笑われることもあろう。ならば笑ってやれ、それでも自分は幸せなの
だと」

 ずっと心配そうな顔をしていたラグに、少年が笑いながら手を伸ばした。

「なーんつってね。ま『ものは考え様』って事だよ」

「――え?」
455魔法少女孤独系5-3/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/22(木) 22:58:39 ID:lYUmTTUK
 急に言葉遣いを変えた少年に一瞬戸惑い、唖然とした。だってそれはあまりにも……

「偉そうに聞こえただろ?」

 差し出された手を思い切りはたくラグを見て、思わず笑いがこぼれる。
 不思議な瞬間だった。
 たったそれだけのやりとりが、私たちの辿り着いた空しい結果を変えてしまった。

「ねえ、教えて。私はどうすれば――」
「そうだ。もう一つ面白い事を教えてやるよ」

 出掛かった言葉を止める。

「お前らが会った女ってのは魔法兵だろ。多分お前よりも沢山人殺してるぜ? そうし
たらそいつらのこと嫌いになるのかい?」

 答えは出た。
 戻ろう、あの浜辺へ。どうなるかはわからないけど。
 許そう、自分を。どれだけ醜くても、それでも。
 
 立ち上がり、薄汚れたバッグからぴかぴかのマントを取り出して首に回す。

「綺麗だな」
 少年が顔を上げた。
「あれ、見えるの?」
「見えねえさ。でも分かるよ、お前は綺麗だ」

 その微笑に小さく跳ねた胸を、風が撫でる。
 森の木々をさらさらと吹き抜け、一瞬の甘い気持ちを連れて、それはどこか遠くへ。

「生きてりゃまたどっかで会うかもな。まあ気をつけて行けよ」

 少年は笑いながらそう言うと、なにやら歌いながら森の奥へと消えていった。

 それからしばらくの時間を置いて、私たちもまた希望へと向かって。

「ラグ、行こう」
「おう!」



***



 まだ雨露を湛える茂みの隙間に、二人の若い兵士が身を潜める。

「おい、あれ。見ろよ」
「ありゃ大英の……」

 若さに似合わない煙草を、手馴れた風に地面に押し付け、銃を握った。

「こっちに気付いてねえな」
「ああ」



 ここは学園島。希望と狂気を孕んだ、若者達の悪夢――
456創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 22:59:42 ID:lYUmTTUK
魔法少女孤独系5話目おわり、6で終わります。
やっちゃってる感は否めないけど! でも全部書くのって大事よね!
457創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:11:21 ID:CxPA84E2
乙です
学園島は軍人になりきれない等身大の人間が苦悩する場所なんですな
この雰囲気は好きだ
458創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 23:12:25 ID:0kqpadKg
欝エンドの香りがプンプンするぜぇ!
459創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 10:13:40 ID:vCHm2eFv
このスレのSSのメインキャラの中で一番階級が上なのってやっぱエーリヒ?
460創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 11:48:52 ID:9JsNTQyb
メインキャラだとエーリヒ(中佐)だね
461創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 14:56:52 ID:YrcLRxgl
フェアリー・テールさんはお祖父様が子爵なので上流階級
ビターさんはお父様がコーンウォールの大地主だからジェントリー
アンさんは義理のお父様がインドで一山当てたダイヤモンドプリンセスだからミドルアッパー
偉い人は労働者階級
ゴッチさんはヘビー級
パトリックちゃんは元士大夫階級
伊庭さんは先祖代々小作人の平民

こんな感じでしかコメント出来ないねぇ。
462創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 15:15:27 ID:ZiwX7DUK
エーリヒは盗作に使ったキャラだから三階級落として考えなきゃだめだよ
463創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 16:10:18 ID:9JsNTQyb
>>461
ビターさんも結構上なんだな。
叩き上げかと思ってたわ。
464創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 16:34:56 ID:3648ln12
75 ◆kkZO9WMBekはなぜ盗作で自分の作品を汚そうと思ったのか謎だ
465創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 16:48:50 ID:6yoPOnsV
>>464
バカだから
あと調子に乗ってたから
それと、>>351みたいに擁護するバカもいるから
>>351の理屈では、盗作した作品はさらに盗作しても悪くないらしい
466魔法少女番外編 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 17:59:25 ID:YrcLRxgl
ビター/憂鬱
1/2
 気にならないけれど、気になる。好きなのに嫌い。
 二律背反する感情が、恋というものだ。
「――会いたいけれど、会いたくない」
 ぼくの中の誰かがつぶやく。
 彼女は不思議な人だ。
 いつも笑顔を絶やさないけれど、瞳の中に暗い影が垣間見える。
 微笑みは人を惹き付けるけれど瞳の影は人を拒絶している。
 それは――孤独ではないだろうか。
 故に、ぼくは彼女の歌声に心惹かれ、彼女の姿に心を奪われた。
 即ち、恋に落ちた。
 彼女の光はぼくの心を照らすけれど、闇を強く浮かび上がらせる。
 光が強く強くなるほど、闇は光を覆うように強くなる。
 つまり、彼女の全てが欲しくなる。
 長い髪、淡い青の瞳、透き通ったソプラノの声、触れたら消えてなくなってしまうような儚さ。
 彼女はぼくの持っていないものをもっている。
 欲張りなぼくは、持っていないものほど欲しくて、奪いたくなる。
 本心を知れば、多分彼女は離れていくだろう。
 それが怖い。怖いからこそ近付けない。
 ――一線を越える事ができない。

「ビターさん、お加減はどうですか?」

 彼女は体調不良で寝込んでいるぼくを心配するように、瞳を覗き込んでくる。

「平気さ。ちょっと重いだけだからね」

 月に一度訪れる体調不良は、ぼくを月の支配下に置く。
 戦場の空気に周期を乱されて、いつもよりも激しい下腹部の鈍痛に苛まされている。
 だけど、その辛さを口には出さない。
 出したら最後、月の支配は更に強まって身体を蹂躙するだろう。
 それが怖い。痛みだけならば耐えれるけれども、月の魔力は欲深なぼくの背中を押して、欲望を解き放つだろう。

「なにか欲しいものはあります?」

 柔らかな髪の匂いが鼻孔をくすぐる。清潔な石鹸の香りが心地良い。

「いや、特にはない。しいて言えば――」

 きみが欲しい。
 そう言いかけてやめた。
 彼女は優しいからぼくの望みに答えてくれるかも知れないという打算が働いたからだ。
 ぼくはそんな卑怯な事をしたくはないし、それよりなにより彼女に拒絶されるのが怖い。

「冷たい水が欲しいかな」

「水ですか?」

467魔法少女番外編 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 18:00:15 ID:YrcLRxgl
2/2
 流れるような所作で、水差しから彼女の私物のティーカップに水を注ぐ。
 彼女の祖父は子爵だそうで、それに見合った趣味の良い物を私物として使っている。
 上半身を起こすと痛みが一際激しくなり、僅かに呻いてしまった。
 それを聞き逃さなかった、彼女は心配そうな面持ちで此方を見つめる。
 ぼくは安心させる為にお道化て笑ってみせた。

「本当に大丈夫ですか?」

「ああ、勿論だとも。この程度で泣き言を言っていたら、此処には――戦場にはいられない」

「それもそうですね」

 ティーカップを受けとると一息に飲み干して、彼女に返す。
 不思議なもので、一度起き上がると横たわる事が億劫になる。
 ならばと、ついでに手を開いては閉じて、身体がどの程度鈍ってしまったのか確認する。
 些細であっても変化を見逃してしまえば、戦場で遅れをとってしまうかも知れない。

「他には何かあります?」

 何か含みのある声が、耳に木霊する。

「いや、もう大丈夫だ。少しは落ち着いたからね」

「そうですか。パトリックちゃんに痛み止めを作って貰ったのですが」

 ――パトリックちゃん。本名、年齢共に不詳。
 謎の逸話が先行するものの、その知識は底が見えない奇人だ。
 だが、奇人でありながらも一人の人物である。
 男性恐怖症を悪化させて男性嫌悪症になってしまったぼくであっても、その見識は認めざるを得ない。

「じゃあ、それを貰おうか。もう一杯水を――」

 頼む、と続けたかったけれども、彼女が満面の笑みを浮かべて取り出した鎮痛剤がそれを遮った。

「大丈夫ですよ。だって、座薬ですから」

「はいい!?」

「御自分でやるのは難しいでしょうから、私がやって差し上げます」

 え、ちょっと待って。どういう事? 座薬ってなにさ? 笑顔が怖すぎないか?

「暴れたら駄目ですよ? 大丈夫です、痛くしませんから」

 冗談抜きで座薬はまずいっ! キャラだって崩れてるし! セーラー服を脱がさないで!

「あら、意外と可愛い●●」

 だから! ●●じゃなくて! 可愛いのは嬉しいけど意外じゃなくて! 耳年増……じゃなくて■■!

「怖いんですか? 優しくしてるつもりなのですが」

 ――怖くないけどクセになりそうな自分が怖い。

――To be continued on the next time.
468魔法少女番外編 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 18:01:23 ID:YrcLRxgl
魔法少女番外編ビターさん投下終了。
百合って良いですね。
469創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 18:16:47 ID:c5l15FjU
ボクっ子が生理とか、萌え殺すつもりかww
脱がして●●が可愛いって、●●は下半身か!? 下半身にあるのか!!
470創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 18:18:59 ID:g374a0sU
落ち着けww

まあ俺は伊庭さんファンな訳で。
471創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 19:38:05 ID:9QCibsWw
何が! 何がかわいいんだぁぁぁ!!
472創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 19:43:17 ID:fghIxp1s
恐ろしすぎる展開だ><
473創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 19:55:10 ID:eGOsombA
わあ…想像以上にかなり面白くってハマった
このワクテカ感は新鮮です…
474魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 20:07:19 ID:YrcLRxgl
二十話『恐い兄妹』
1/3
 うーうーうー。
 ティータイムだというのに無粋な非常ベルが鳴り響きます。
 リンゴを剥いていた私は、ついつい手元を滑らせて人差し指をちょっぴり切ってしまいました。
 人体は不思議なもので、ちょっとした傷でも血が出てきます。流血沙汰です。

「嗚呼、なんという事だ! 血潮は夕陽に似たり。大地を濡らす葡萄酒にして甘美なる蜜、豊穣の証――」

 ビターさんは眉をひそめて芝居染みた所作で私の手を取り、そっと傷ついた指を口に含みました。
 口の中で艶かしく動く温かい舌に流れた血を舐め取られます。
 傷口がジンジンと痛いのですが、温かさと柔らかさに包まれて――溶けてしまいそうです。
「らひいひょふぶらひ? (訳:大丈夫かい?)」

 濡れたように潤んだ瞳で見つめられて、頭がクラクラします。
 なんと申せば良いのでしょうか、妖しげな気分になってしまいます。
 傷口に舌が触れるたびに、快感の混じった痛みが私を貫き、思わず身体がビクビクと痙攣してしまいます。

「ああ……そこは……優しく……」

 上気した顔は薄紅に染まり、吐く息も絶え絶えになりました。

「……何をしているんだね、君達は。緊急事態だぞ」

 偉い人って空気読みませんね。
 もう少し楽しんでかったのですが、緊急事態なのでそうもいきません。
 因みに。
 負傷してしまった事を申告したら『唾でもつけとけ』と言われました。
 流石ですね。労働者階級出身は伊達じゃありません。

 冗談は丸めてゴミ箱にポイして、兎に角。
 緊急事態です。
 大日本帝国軍が此方に向かっているそうです。総員一人――魔法兵です。
 魔法兵には魔法兵という事で、わたしとアンさんとビターさんで出撃です。

 余談ですが。
 今までの手柄が認められたので、制服もイメージカラーを意識した特注になりました。
 私は清楚な白。
 アンさんは情熱の赤。
 ビターさんは――魔法の性質上返り血を浴びやすいので、汚れの目立ちにくい黒になりました。
 余談終わり。

 丘の上に陣取って日本軍の魔法兵を待ちます。
 太陽が西の空に傾き始めたせいか、風が冷たくなります。
 一際強い悪戯な風がスカートをまくるように吹いたので乙女の花園を守る為にスカートを押さえていますと、声が聞こえて来ました。

「……殺す……殺す……殺す……」

 
475魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 20:08:04 ID:YrcLRxgl
2/3
 緊張が走ります。
 アンさんとビターさんは戦闘準備をしますが、戦闘手段のない私は指をくわえて見てるだけしか出来ません。
 勿論、先程怪我した指をくわえるのです。
 つまり、ビターさんと間接キッスなのです。きゃー。

「来たのだわ!」

「百合の騎士の名にかけて! ぼくは敵を打ち倒そう!」

 やって来たのは私達と然程年が変わらない少女でした。
 オリエンタルな長い黒髪がセクシーです。服装は――和装で上が白で下が赤です。短い白のソックスに藁のサンダル履きです。

「……お兄様のカタキ……エゲレス人……殺す……」

 血走った赤い眼とこの口調。何処かにいましたね、そんな人。

「……私は伊庭さなこ……お兄様の……カタキ……殺す……」

 なんという事でしょう!  伊庭さんの妹さんの登場です。
 お兄さん譲りなのでしょうか、煌めく妖刀を引っ提げています。

「……お兄様……大好きだったのに……私が殺す筈だったのに……許せない……」

 うわぁ。妹さんは見た目が可愛いくせに怖いです。伊庭さん以上に病んでます。
 眼の怖さがとんでもないです。

「わ、私は違うのだわ! この二人なのだわ!」

 ヘタレのアンさんは私達のせいだと言わんばかりに指差しました。逃げる準備もしています。

「彼にトドメをさしたのはこのぼくだ! でも、ガツンとフルスイングしたのは彼女だ! 故に! ぼくが相手しよう。百合の騎士の誇りに賭けて!」

 ビターさんは流石です。ミス・騎士道は伊達じゃありません。
 私を護るように立ち、中世の騎士に習って礼をします。
 ですが。

「……アンタ……邪魔……」

 あっさりとあしらわれました。さなこさんたらカワイイ顔して強いです。お兄さんよりも。

「……ガツンとフルスイング……やりたかった……あなた、許さないわ……」

「は、はひ」

 駄目です。この人怖過ぎです。
 アンさんは死んだ振りをしていますし、ビターさんは目をぐるぐるうずまきにしてバタンキューです。

「た、たしゅけてくだちゃい」

 怖さのあまりにかんでしまいます。そればかりかチビりそうです。

「……今は殺さない……死にたくなるくらいの酷い事……してあげる……」

 歪に歪んだ口で髪の毛をくわえているのが怖いです!
 妙に色っぽいのが怖いです。
 兎に角怖いです!

476魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 20:08:43 ID:YrcLRxgl
3/3
「……覚えたわ……顔……」

 さなこさんは言うだけ言って踵を返してくれました。
 腰を抜かした私は安堵の溜め息を吐きますが、それだけではありません。
 昔と比べて成長した私は、後ろから石をガツンと当てて丘の下までゴロゴロ落としてあげようと思うのです。
 手頃な石を拾って振りかぶります。
 狙いは後頭部です。
 ですか。

「……あなたの事……呪うわ……」

 前を向いていたさなこさんの首が180度回って後ろの正面の私をじいっと睨みます。
 もう駄目です。阻止限界点突破です。恐怖が堰を切って大放出です。


 結論から申しますと、気付いた時には学舎分校の自室のベッドの上でした。
 死んだ振りをして一部始終を見ていたアンさんの話ですと、さなこさんは何もせずに帰ったそうです。
 ビターさんは気絶した私をお姫様抱っこしてくれたそうです。
 そんな事よりハッキリ言って惨敗でした。
 一難去ってまた一難です。
 最凶だった伊庭さんの妹のさなこさんは最恐でした。
 これは由々しき事態です。
 平和にはまだまた遠いみたいです。

――To be continued on the next time.
【わたしによるキャラクター紹介】

さなこさん
伊庭さんの妹さんです。
お兄さんには似ておらず可愛いのですが、お兄さんを輪にかけて怖いです。
お兄さんを殺したい程好きだったみたいだったらしく、ガツンとフルスイングした私を目の敵にしています。
魔法は妖刀みたいですが、よく解りません。

伊庭さん
故人です。
以後の出番は回想シーンだけです。

477魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/23(金) 20:10:06 ID:YrcLRxgl
魔法少女軍事系第二十話投下終了。
伊庭さんにはセイフティシャッターがついてないので復活しないよん。
478創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:11:19 ID:g374a0sU
くそう! くそう! 俺の心をもてあそびやがって!
ゆるさないんだから!

バカバカ!
479創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:18:31 ID:Awj/Dpap
2ndシーズンで仮面被って再登場ですね、わかります
480創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:25:15 ID:croh+kLP
伊庭め、激ブラコンな妹がいるって……勝ち組だったのか……
481創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:29:02 ID:YrcLRxgl
>>471
●●が可愛いんですよ
482創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:37:39 ID:qK9jExQz
>●●
これキン●マか黒乳首だと思った
483創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:02:47 ID:9JsNTQyb
ビターさんいいなぁ
484創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:38:24 ID:A6nfcPwn
75 ◆kkZO9WMBekが商業作品から台詞を盗用したのは、ついうっかり自覚しないでやった結果にも見えるんだが
作品の修正や謝罪しないで続きを投稿しているところを見ると、悪いことしたって自覚していない可能性もあるのか……
485創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:44:21 ID:9QCibsWw
伊庭妹こええええええええ
きっと生前は楽しく殺し合いをする兄弟だったに違いない
486 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:47:11 ID:QPx0AHUK
最初さなこさんをきなこさんと見間違えたのは俺だけでいい
487創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:50:41 ID:fghIxp1s
きなこwwww
488創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 22:17:55 ID:Kubrw74F
妹可愛がる時だけ真人間かつ常識的だったりとかな
489創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 22:21:12 ID:2b+lrCE7
>>484
荒らしに餌をやりたくないだけでしょ。
490創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 23:51:55 ID:qY4b+yRB
学園島…それは地球最後の秘境
491創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 23:57:15 ID:Awj/Dpap
エーリヒの飲む学園島のコーヒーは苦い
492創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 00:07:41 ID:nvYIGkk9
だがまあ敵さんの飲んでるのよりかは
少しはましかもしれん…
493創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 00:35:59 ID:xjpQUjwA
む  せ  る
494創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 00:38:13 ID:nPLfSKAw
コーヒーがないなら覚醒剤を打てばいいじゃない

あるんだろ?
>アメリカやドイツやイギリスなども、兵士たちにペルビチン錠などを配布していた
495創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 01:09:15 ID:15LpHBEA
知らんがな
496創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 08:04:39 ID:XADSq9fe
コーヒーがないなら紅茶を飲めば良いじゃない
497創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 08:53:48 ID:kLqnqA55
覚醒剤は戦前のヒロポンとか
広告とかも出てたけど吹いたw今と昔じゃ相当違うらしい
東條首相の算術ぐらい破壊力がw
コラとかの類じゃねえんだもんなあ…

まあコーヒーが無くなったら
コーラでも飲もう
498創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 10:18:06 ID:x3XX4SXG
紅茶が無ければウォッカを(ry

>>497
これかw ヒロポンの広告って
ttp://www.warbirds.jp/heiki/42000.htm

きっとアメリカ系学園は前線のどこでもアイスクリームとコーラが手に入るんだろうなぁ。
499魔法少女孤独系6-1/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/24(土) 12:51:28 ID:v14sIwGv
「のう、心雁。何故ワシの教えをあのような軽い言葉で抑した」
 緩やかな丘の上。錫杖を携え、黒い僧衣を纏った少年がぽつりと呟いた。
「お前の台詞は古臭えんだよ」

 不思議なことに、返事をしたのもまた同じ少年だった。周りに人影もなく、ただ一人で
ぶつぶつと言葉を交わしている姿は、傍から見れば気狂いのようにも受け取れる。

 振り向き、見下ろす景色はまさに壮観。新緑の森が広がり、遠くには山々を望む。空は
青く晴れ渡り、薄い雲が穏やかに形を変えていく。
 視力を失った少年――心雁にとっても、それは心を落ち着かせる時間の流れだった。

「まあよい。あの娘の心救えるならばどちらも同じか」
 心雁は錫杖を地面に突き刺すと、両手を高く上げ伸びをした。
「そう言うこった」

 しばらくの間その丘の斜面に寝そべり、ただぼんやりと空を仰ぐ。
「さあて、次はどこに行くかな」
「気の向くままでよかろう。ワシらの旅は道こそが目的、歩むことこそが答え」
「目的ねえ……」

 心雁があくびをしようと口を開きかけたとき――森が揺れた。
 鳥の群れが一瞬にして沸き立ち、僅かな間をおいて一発の銃声が空気を震わせた。

「ま、人間ごとき何人いたところで、あの姉ちゃんなら。な……」
 顔をほころばせた心雁の胸は、言葉と裏腹に少しだけ不安を伴っていた。

「心揺れるのは年の頃としても未熟すぎる。行かんでよいのか」
「ああ? 何でだよ。惚れた訳じゃねえぞ」

「貴様のことではない。折れたぞ、あの楔」

「――なんだと!」
 言うなり立ち上がって、数歩走ってはまた口を開く。
「おい、ワシを置いていくな」
「くそっ」
 焦りに顔を歪め、戻って錫杖を引き抜くと、心雁は森へ向かって丘を走り下った。
 途中何度も銃声が鳴り響き、返るこだまが無限の余韻を生み出す。
 心雁の耳には、それが昨晩出会った少女の叫び声のようにも聞こえていた。



 ようやく森まで達して息を整えていると、その奥から一人の少年兵がこちらに向かって
走って来ていることに気がついた。
 その顔は恐怖で紅潮し、銃を握ったまま震える声を上げる。
「バケモノだ! 助けてくれ!」
 まるで子供のように怯える少年兵を前に、心雁の濁った目が冷たく細く閉じた。

「お前かい、楔を折ったのは」

 つかつかと歩み寄り、少年兵の胸倉を掴む。
「な、何すんだよ! 早く逃げねえとお前も飲み込まれちまうぞ!」
「愚かなり。自ら犯した罪に気づかぬは、もっとも重い罪ぞ」
 少年兵は怪訝な顔をする。
「何だ……てめえ」
「ひらったく言やあ、胸糞悪いから死ねってことだ」

 心雁はにやりと笑い、錫杖を構えると躊躇なく少年兵の胸へと突き立てた。
「お前にゃ成仏はさせねえよ?」
 あまりの唐突さに少年兵は叫ぶことも出来ず、やがて目を見開いたまま動きを止めた。
500魔法少女孤独系6-2/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/24(土) 12:53:15 ID:v14sIwGv
「あの娘め、探すまでもない。来たぞ」
 異変を感じ取った心雁は乱暴に少年兵を投げ下ろし、再び森の奥に顔を向ける。
「……おいおい、冗談きついぜ。これがあの姉ちゃんか」

 ――押し寄せる巨大な闇。
 めきめきと周りの木を侵食しながら大きさを広げ、そのさらに奥から姿を現したのは、
人とも獣とも呼べない、醜悪な巨大な塊。
 木漏れ日を受けぎらぎらと光るその身体は、大量の蟲が作り成すおぞましい奔流だった。

(お願い…… 一人にしないで……)

 一瞬聞こえた細い声を、無数の羽音が覆い隠す。心雁はそれに気づいて数歩後ずさった。
「おい、何か言ったか」
「ワシではない、あの娘よ」

(ラグが…… お人形さんみたいに……)

「哀れな。念の力が己の欲するものなれば、こやつ人に飢え人を喰らうようになったか。
それにしても何という力の渦。心雁、飲まれるな。喰われるぞ」
「分かってるがよ」
 ざわざわと足元まで近づいた蟲の群れに、大きく飛び退く。

(お顔が……とれちゃった……)

「あの姉ちゃん、救えるかい?」
「それは叶わん、あれはすでに事切れておる。逃げるならそれもまたよし」
「そりゃあ無理な話だ」
 大きく息を吸い込み、向き直った心雁の足に蟲が喰い付いた。

(抱いて……誰でもいいから……)

「物好きなことよ。しかしそれはワシとて同じ。魂だけならば救えようか」
「頼む。目え借りるぜ」
 一度目を閉じ、次に見開かれた瞳に濁りはなく、そこには深く紅い色を宿していた。
 しかし、既に下半身を覆いつくした蟲の群れは速度を落とさず、心雁を飲み込み始める。

(私と……一緒になって……)

「すまなかったな、姉ちゃん。おいら達もまだまだ未熟」
「狂気に満ちたこの島にて、人を救うは遠き道なり」
 全身を蟲で包まれながら、錫杖を真っ直ぐに闇へ向ける。

「ならばせめて、人間として――」
「旅立て、穢れ無き若い魂よ――」

 心雁は金色に輝き始めた錫杖を奔流の中へと放った。それは森の色を一瞬奪うほど眩い、
光の筋を帯びて黒い闇を貫く。
 錫杖はそのまま背後の木へと突き刺さり、頭部についた遊環が大きな音を鳴らした。

 心雁の身体から蟲が退き始め、黒い塊もまた徐々に色を薄めていく。

 長い時間をかけてその中から現れたものは、もはや人とは言い難い、蟲に喰い破られた
少女の成れ果てた姿だった。

「なんてこった……」
「己が悲しみに打ち勝てなんだか、悲しきことよ。心雁、この姿心に焼き付けておけ」

 顔が歪みそうになるのを堪え、強く目を閉じると一筋の涙が頬を伝う。
 心雁の瞳は再び白く濁っていた。
501魔法少女孤独系6-3/3 ◆GQ6LnF3kwg :2009/01/24(土) 12:54:33 ID:v14sIwGv
「しかし情に流されては、この先も人は救えんぞ」
「おいらにゃ向いてねえのかもしんねえ」
 声を震わせながら錫杖を引き抜くと、やがて首の取れた大きな甲蟲を探し出し、それを
亡骸の上にそっと乗せる。

「これで一人じゃねえよ」

 心雁はその日、夜が明けるまでそこに座り続けた。それは少女の為でもあり、また自分
への戒めでもあったのかもしれない。

 朝日を浴びて立ち上り、力なく、またどこへともなく歩きはじめる。

「守れ権現 夜明けよ霧よ――」

 静まり返った森の中に、心雁の声が染み渡った。
 
「山は命の禊場所――」



***



 澄んだ青い色がどこまでも続く世界。
 消ええかかっていた私の身体を光の布が包む。

「ミルカ……どこに居るの?」

「ラグ? 居るよ、私。ここに居るよ!」

 視界に映っていたものは、なんだか分からない白いおぼろげな影。
 でも分かる、これはきっとラグだ。

「え? ミルカなの?」

 答えず、私はその影へと心を近づけた。
 穏やかな攪拌が私たちを一つにする

「ラグ……」
「ミルカ、これからはずっと一緒に……」

 私の醜かった身体は消えてなくなり、青く溶けて薄れる意識の中。
 あの浜辺で出会った少女達の、賑やかで楽しそうな声が――

 私には聞こえた気がした。



魔法少女軍事系 勝手に外伝
「魔法少女孤独系 人喰いミルカの罪償い」
おわり
502創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 12:56:37 ID:v14sIwGv
というわけで終わりです。
稚拙な文と物語でしたが、レスをくれた方、読んでくれた方
ありがとうございました。
503創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 13:18:16 ID:15LpHBEA
スレ初の完結おつううううう
504創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 13:45:24 ID:x3XX4SXG
二人はヴァルハラに行ってしまったのか…
完結お疲れ様です。
505創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 13:54:10 ID:v14sIwGv
あれ、完結ってスレ初だったのか……
気が向いたら挿絵でも書いてみよう。
506創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 17:50:29 ID:XADSq9fe
乙〜ん。
切ないねえ。切なさが良いねえ。
GJ!
507創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:51:01 ID:v14sIwGv
求められてるかどうかなんて知らねえ! 作ったから投下するんじゃい!


魔法少女孤独系 ありがちな設定集

☆ミルカ
身体中に斑の痣を持つ少女。
人に嫌われるが故に人を求め、蟲を使って人を食べる力を持つ。
落ちこぼれの集まる分校で初めての能力者となるが、汚らわしさのため認められず
学校の人間を皆殺しにした。
学園島を消し去るために、噂されていた「夢が叶う場所」を求めて戦闘区域へ辿り着く。

物語の中で少しずつ人間らしく成長していくが、そのため七つの大罪※を犯してしまい
自分の能力に飲み込まれ死んでしまう。

※全部は書ききれませんでしたが設定ということで。サーセンwww


☆ラグナナ
もともとはミルカの操る蟲の中の一匹だったが、自己嫌悪で発狂しかけたミルカによって
具現化した手のひらサイズの人型精霊。
超高速で移動できるが、短めの距離を直線的な動きでしか飛べない。
やっぱり人を食べる。
大量の蟲を統制する司令塔で、眠っている時は蟲を制御できない。
死ぬと蟲が暴走したりするのは厨二仕様。名も無い少年兵に狙撃され死亡する。
心雁には「楔(くさび)」と呼ばれる。

☆心雁(しんがん)
なんか色々あって破戒した少年僧侶。
学園島で悩める人を救いながら旅をしているが、本人はわりと無鉄砲。
二つの人格を同時に持ち、一人で二人分喋る。
錫杖が喋っているようにに見えるのは、本人の勝手な想像。
あと俺の描写が未熟なため。
穢れた心を清める能力を持っている。
邪気眼付き。
モデルはNN1さんの「捨身仏」に出てくるなんかかっこええ人(即身仏?)

☆青い石
ミルカがずっと大切にしていたガラス玉。
魔力を持つミルカがもっていたために不思議な力を持つ。
死んだ二人の魂は最後はここに入る。

☆長身の少女と金髪の少女
某軍事系の方々。Fさんが金髪だったらごめんなさいとしか言えない。
読み返してみると饒舌すぎてなんか違うとおもた今日このごろ。



という訳で最後まで本当にありがとうございましたどうみても(ry
508創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 22:12:35 ID:71ON6i9o

設定だけでおなかいっぱいになりそうだが、きれいに完結した。
命令に従っただけの少年兵でも罪はあるのかな?
救いの無い世界観だな。でもそこがいい。
509創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 19:11:15 ID:ZBxA0aij
まとめwiki更新
http://www36.atwiki.jp/gakuenisland/pages/1.html

本日21:00より投下予定
510創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 19:57:00 ID:g+UCK8WX
>>509
まとめお疲れ様でした。そして多謝。

wikiに載ったものは修正とかできないです?
511創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 20:28:03 ID:g+UCK8WX
あ、上の質問はいつでもいいので、誤字とかぐらいだし別にそのままでも。
とりあえず支援準備。
512創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 20:36:57 ID:nejB6axV
ウィキだから誰でも編集可能ぽいよ
513創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 20:50:18 ID:ZBxA0aij
>>510
誰でも編集可能なので、おかしいと思ったら直してくれて構いません。
誤字の部分だけ教えてくれればこっちで編集します。
514創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 20:51:51 ID:g+UCK8WX
ありがとう。
試したらできたので、今度まとめて直しておきますう。
51575 ◆kkZO9WMBek :2009/01/25(日) 21:00:17 ID:ZBxA0aij
おーしいくぞー
5161/34:2009/01/25(日) 21:01:10 ID:ZBxA0aij
学園島戦記譚 -死闘編- 第三章



 東部戦線の空は低い。
 鉛色の雲の下に広がる泥の大地を、一台のキューベルワーゲンが泥を跳ね上げて進んでいる。
 キューベルワーゲンは時折停車し、西方条約軍中佐であり、アヴィリオン学園高等部二年生のエーリヒ・シュヴァンクマイエルはその車上から、双眼鏡で戦場を見回す。
 レンズの中には泥化した大地と、枯れ木がところどころに伸びている以外は何もなかった。
「ここじゃ戦車よりUボート(潜水艦)が必要だな……」
 エーリヒは水筒を開けると、コップに茶色い液体を浸した。
 鼻腔を刺激する香りに、ヴォルク軍から悪鬼の如く恐れられる指揮官は右半分だけの優しげな表情を緩ませた。
 だが顔の左側には、人間らしさが微塵も無い。
 左目から頬にかけて、無残な火傷の跡が残っている。
 左目があるべき場所は黒い眼帯で覆われていた。
 引きつった火傷に覆われた顔の左半分は、もはやどのような喜怒哀楽を見せることは無い。
「眠れなくなりそうだ」
 口をつける。
 戦場で飲むコーヒーは苦い。
「行こう」
「了解です中佐」
 副官のアルベルトはギアを入れ、アクセルを踏み込む。
 うんざりするような泥の海をキューベルワーゲンは疾走していく。
「一人で旅立つハンス坊や、世界の旅へと出発だ……」
 エーリヒは幼い頃、母親が歌ってくれた童謡のフレーズを口ずさんだ。
 エンジン音に歌がかき消されていく。
 東部戦線は陰鬱さという言葉が一番よく似合う。
 上には灰色の空が低く立ち込め、下では湿った枯葉が泥と混ざり合っている。
「次はどこを回るんだっけ?」
「砲兵隊の陣地です」
「はい、よぅ」
 極めて短い休暇を終え、ヒューナースベルグへと戻ってきたエーリヒは今、前線視察を兼ねて兵達の激励にやってきていた。
 激励と言っても暖かいコーヒーや甘いものを手土産に雑談したり、作業を手伝ったりするだけだが、やらないよりは数十倍マシだ。
517創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:01:33 ID:g+UCK8WX
 
5182/34:2009/01/25(日) 21:01:45 ID:ZBxA0aij
 エーリヒはいつでも、自分がしてほしいことを部下にしてきた。
 自分が部下だったら、上官に何をしてほしいのか?
 自分が部下だったら、上官に何をしてほしくないのか?
 それをよく考えて、実行する。
 他人に尽くして欲しければ、まず自分から尽くしなさいと、エーリヒは軍人として大先輩にあたる父から教わった。
 一通り要塞周辺の陣地を見回った後、エーリヒは異変に気付く。
「あれ?」
 エーリヒとアルベルトは声を合わせた。
 白い下地に赤い十字――医療所を示すマークが貼られたテントが並んでいた。
「野戦医療所? こんな所にあったか?」
 エーリヒは地図を取り出して見てみたが、今自分のいる場所に該当する医療所は存在していない。
 やがて明らかに条約軍のものとは違う軍服を着た兵士がテントから現れると、運転していた副官のアルベルトは急激に青白くなっていった。
「ヴォルク軍のようです……中佐」
「ああ、そうらしい。そ、そうらしいな」
 エーリヒは額の汗を拭う。
 まずいことになった。
 どうするか考えて、エーリヒは運転席のアルベルトの肩を叩いた。
「占領したように振舞うんだ。堂々と、慎ましく。一周したらここに戻ってきてくれ」
 もう一度アルベルトの肩を叩いた後、エーリヒはベレー帽を被り直し、車から降りる。
 エーリヒはテントへと歩を進めた。
「誰だありゃ」
「条約軍だ……なんでここに? たった一人で来たのか?」
 医療所にいたヴォルク兵の誰もが、突如現れた条約軍の将校に驚きを隠せない。
 エーリヒは堂々とした足取りで進む。
519創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:01:59 ID:g+UCK8WX
 
520 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:02:11 ID:JQx63IrA
  
5213/34:2009/01/25(日) 21:02:16 ID:ZBxA0aij
「ご苦労様です」
 ヴォルク兵達は銃を立て、背筋を伸ばして敵将を迎え入れてくれた。 
 内心でかなり怯えていたが、どうやら外面には出ていないらしい。
 エーリヒも敬礼を返して兵と話していると、やがて医療所を預かっている将校が現れた。
 敬礼の後にエーリヒが将校に対して医師はいるかと聞くと、言われた方はテントの中へ走っていった。
 すぐに"大人の"医師"が現れた。
 両手やマスクに血液が付着し、白衣は濃い赤の部分の方が多かった。
「医薬品や食料は十分にありますか? 足りないものは無いでしょうか?」
「包帯が足りない。君らのせいでな」
「すぐに届けさせます」
 車が戻ってくるなり、エーリヒは後部座席に手を突っ込んだ。
「中佐、早く行きましょう」
 アルベルトは明らかに焦りの口調で言うが、それを制止しつつ、エーリヒはありったけの医療キットをヴォルク兵に手渡した。
「いいんですか?」
「撃ち殺すわけにもいかないよ。そういうのは趣味じゃない」
 エーリヒは肩をすくめた。
「どんな軍人にも人道を守る心はある。人それを矛盾という」
 敵将が去るとき、ヴォルク兵達は見えなくなるまで敬礼していた。
 車上で敬礼を返しながらエーリヒは呟く。
「こんな近くに敵がいる……ヴォルク軍はまた攻勢に出るつもりか?」
 シートに背を預けたエーリヒの顔は戦場の人道主義者から、条約軍の猛将へ変わっていた。
「杖と帽子が良く似合う、大喜びのハンス坊や……」
 とりあえず、エーリヒは童謡の続きを歌い始めた。
522創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:02:18 ID:z9GFOfDr
盗作職人支援age
「羞恥心」と云う言葉を存じ上げていますか?
523創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:02:42 ID:g+UCK8WX
 
524 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:03:04 ID:JQx63IrA
     
5254/34:2009/01/25(日) 21:03:04 ID:ZBxA0aij


 ヒューナースベルグ要塞に戻るなり、エーリヒは指揮官達を集めた。
 彼らが集まったのは、近いうちに起きるであろうヴォルク軍の攻勢にどう対処するかを議論するためだ。
 戦闘団の指揮官兼要塞守備隊司令官代理であるエーリヒ・シュヴァンクマイエル中佐。
 副官のアルベルト・ゲルトバウアー大尉。
 戦死したベルガー・シュミット大尉の代わりに新任したオットー・ワイトリンク少佐。
「今回の会議はみんなの忌憚ない意見を聞きたい。遠慮なく言ってくれ。じゃ、始めようか」
 エーリヒが合図すると、部屋が暗転した。
 映写機が動き始める、エーリヒの作った作戦案がスクリーンに映し出される。
「まずはこれを見てもらいたい」
 作戦案はこうだ。
 まずヒューナースベルグ要塞に至る道程で"快速部隊"と呼ばれる軽車両中心の部隊で侵攻してくるヴォルク軍の補給線を攻撃、撹乱する。
 その時点でヴォルク軍が引き返してくれれば万々歳だが、恐らく可能性は少ないと思われた。
 ヴォルク軍は「要塞を無力化する」ことで戦略的な勝利を得られるため、そのまま要塞に来る可能性の方が高い。
 要塞にヴォルク軍が到達したら、温存しておいた主力機甲部隊で疲弊した敵を叩き潰す。
 これがエーリヒの基本計画だった。
「中佐、意見具申を許可願いたい」
 まず最初にそう言ったのはワイトリンクだった。
 今年で五十歳を数える軍人で、エーリヒの十倍近い年数を軍で過ごしている。
 エーリヒにとっては良い先輩であり、信頼できる大人だった。
「お願いします」
 エーリヒは礼節をもって対応する。
 確かに階級はワイトリンクよりエーリヒの方が上だが、経験と人間の器では到底適わない。
 大体、子供が大人に命令するのもおかしい話ではないか。
「快速部隊の有効性は確かですが、一度補足されれば殲滅するのは容易いこと。戦力を無益に消耗する可能性があります」
 ワイトリンクはそう指摘した。
 快速部隊は機動性に優れた部隊だが、攻撃力はあまり高くない。
 重装備を持つヴォルク軍が戦車や魔道兵で反撃すれば、瞬く間に撃破されてしまうだろうと。
526創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:03:15 ID:g+UCK8WX
 
5275/34:2009/01/25(日) 21:03:32 ID:ZBxA0aij
「ただ、ヴォルク軍にとっての勝利は要塞そのものの無力化という点は、私も中佐と同じ考えです」
「ありがとう少佐」
 ワイトリンクに感謝の言葉を述べつつも、エーリヒは素直に作戦の穴を認めた。
 第三者の視点からは、一人では見えないものが見える。
「作戦は修正する。遠慮なく意見を言ってくれ」
 熱い議論が始まった。
 コーヒーのサイフォンは二十八回も補填され、会議室は濃厚なカフェインの臭気に包まれた。
 二時間後、指揮官達は修正を加えた作戦の骨組みを作り上げた。
 侵攻してくるヴォルク軍への攻撃は行わず、要塞前面ギリギリまで引き込む。
 要塞守備隊――エーリヒ戦闘団は三つに分けられ、要塞前面に配置される。
 これらの部隊はわざとらしい間隔を空けて配置され、ヴォルク軍は明らかに怪しい部隊を訝しく思う。
 恐らく各個撃破を装った半包囲攻撃を仕掛けるのでは――と。
 そう思ってくれれば、あとはこちらの思う壺だ。
 敵の指揮官が困惑している間に小部隊が潰走を装って、ヴォルク軍を要塞前面へと引き込む。 
 その間に再結集した戦闘団は要塞前面まで引き込まれたヴォルク軍と反対の道を通り、後方拠点を叩き、その後包囲殲滅する。
 もし作戦が空振りに終わっても、ヴォルク軍が『要塞を無力化する』という固定観念に縛られているのなら、いくらでも付け込む隙はある。
 エーリヒはそう考えていた。
 更に修正を加えた後、作戦を了承した指揮官達は席を立ち、各々の部隊へと戻っていった。
 会議が終わった後、エーリヒは一人天井を見上げる。
「この時期に攻勢か……」
 休暇は十時間も経たずに中断してしまった。
 どうにも自分は貧乏くじを引いてしまったらしい。
 机の上に足を上げ、ベレー帽を顔に被せ、エーリヒは少し眠ることにした。
 今回無くなった休暇は、次回の休暇にプラスされるんだろうか……? 
528創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:03:49 ID:nejB6axV
/34か、多いなw
529創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:03:50 ID:g+UCK8WX
 
530 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:03:54 ID:JQx63IrA
     
5316/34:2009/01/25(日) 21:04:10 ID:ZBxA0aij


 ヴォルク軍はヒューナースベルグから程近い森林地帯に身を隠していた。
 戦車や野砲は偽装網で覆われ、森の中で兵士達は出撃の時を待っている。
「やはり……」
 エレナ・ヴィレンスカヤの、形の良い眉が僅かに歪んだ。
 ヒューナースベルグ要塞を攻略する任務を与えられた彼女は今、ヴォルク軍の移動司令部でもある陸上戦艦『クロンシュタット』の自室にいた。
 机上には戦場写真や報告書が慄然として置かれている。
「敵の指揮官はエーリヒ・シュヴァンクマイエルか……」
 エレナは言葉に何の感情も込めてはいなかった。
 つい先日、エーリヒはヴォルク軍の野戦医療所に迷い込んだという。
 そこでの彼は礼節を持った人間として振る舞い、ありったけの医療品を渡して去っていったという。
 そもそもこの医療所自体、エーリヒを誘い出すための罠に近いものだった。
 敵の指揮官がエーリヒ・シュヴァンクマイエルであることを確認すると同時に、攻勢が近いことをエーリヒに悟らせ、行動の自由を奪うことが目的だ。
「面白い人だ」
 エレナはつくづくそう思う。
 悪鬼の如く恐れられる条約軍の猛将は、英雄であると同時に人道主義者でもあったらしい。
 エーリヒ・シュヴァンクマイエルはかつて文学青年だった、芸術家志望だった……等の噂をよく聞く。
「きっと、人間的に見れば私よりよっぽど素晴らしい人かもしれない」
 そこまで考えて、エレナは大きく息を吸った。
 いけないいけない――。
 甘美な想像の世界から現実に意識を戻したエレナは、現在の戦況を把握する。
 机上に、戦場の地図が広げられた。
 エレナがこれから攻略するヒューナースベルグ要塞の前面に、三つの赤い四角が配置されていた。
「敵は守備隊を三つに分けて配置している。これは……?」
 偵察部隊からの報告によると、条約軍は分散して展開しているという。
「通常なら、ここで各個撃破するだけだ」
 分散した兵力は再結集する前に、それよりも多い兵力で叩く。
 エレナに与えられた部隊の総数は単純計算で条約軍の二倍だ。
 条約軍も増強もしくは再編成を行っているだろうが、そこまで大きな兵力移動が行われたという報告は入っていない。 
「だが……」
 エレナは思い留まる。
 エーリヒ・シュヴァンクマイエルほどの指揮官が、わざわざ初歩的なミスを犯すのだろうか?
 答えはNoだ。
「敵は、こちらが各個撃破戦法を行うよう、仕向けているに違いない。」
532創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:04:28 ID:g+UCK8WX
 
533 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:04:46 ID:JQx63IrA
    
5347/34:2009/01/25(日) 21:04:46 ID:ZBxA0aij
 エレナは思案する。
 数の多いヴォルク軍。
 分散配置された、三つの条約軍。
 各個撃破戦法に対する、効果的な防御策は何か?
 エレナはヴォルク軍の青いブロックを進ませ、その前に赤いブロックを三方に配置する。
 青いブロックが赤いブロックの三方の右側、左側、中央を順々に突く。
 赤いブロックの一つ一つは青いブロック一つに劣る。
 だが、青いブロックは常に一つのブロックしか攻撃することはできない。
「ならばこうか?」
 各個撃破を誘って突出したヴォルク軍に対して、条約軍は右、中央、左のどれか一つにヴォルク軍の攻撃を集中させる。
 その間に、残りの条約軍部隊は左右から攻撃もしくは、後方を寸断する。
 恐らくはエーリヒはこのパターンで来る可能性が高いとエレナは考えた。
 エレナはあまり考えすぎないことにしている。
 相手の先を読もうとすれば読もうとするほど、エーリヒ・シュヴァンクマイエルの罠に引きずり込まれる。
 ある程度の見切りは必要だった。 
「大佐は負けた。だが、私は負けない。負けられない」
 エレナは今回、戦力二分の愚を犯さず、行動する際は全兵力を投入することにしていた。
「とにかく要塞さえ無力化していませば、この戦いは勝ちだ」
 正直エレナは、エーリヒに対して戦術的勝利もしくは敗北したとしても、要塞さえ手に入れたら戦略的勝利に繋がると考えていた。
 要するに要塞さえ手に入れれば、条約軍は拠点を失って後退せざるを得ない。
 それでもエレナは複雑な感情を抱かずにはいられない。
 意識してはいけないと思えば思うほど、心の中でエーリヒ・シュヴァンクマイエルの存在は大きくなっていった。
535創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:04:57 ID:1OzLAqTY
こんどは盗作しないでくださいね
53675 ◆kkZO9WMBek :2009/01/25(日) 21:05:31 ID:ZBxA0aij
今日はここまで!
支援に感謝しつつ名無しモードへ移行!
537 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:05:41 ID:JQx63IrA
     
538創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:05:57 ID:1OzLAqTY
以前の盗作について釈明と反省をしてください
539 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:06:32 ID:JQx63IrA
540創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:07:57 ID:g+UCK8WX
 
541創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:09:08 ID:nejB6axV
乙カレー
542創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:11:07 ID:2Xi32fd9
おつー
543創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:12:15 ID:AGPutVV6
質問です
75 ◆kkZO9WMBek氏はなぜ盗作したんですか?
544創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:12:40 ID:z9GFOfDr
>>538
盗作職人は多分キムチの国の人なんだよ。
キムチの国の人って物事の起源は全て自分達にあると考えているから、
きっと盗作職人もあれが自分のオリジナルだと思っているんだよ。

盗作職人の辞書には「厚顔無知」って言葉はなさそうだね。
盗作職人は恨の文化の人だから仕方ないよ。
545創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:13:13 ID:nejB6axV
今回のような内線作戦対外線作戦のキモは、攻撃正面がどの程度の広さ取れるかだよね
外線側が大きく兵力を迂回させなければいけないような状況を作り出すのが内線の名手
ナポレオンとかやね
546創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:17:05 ID:AGPutVV6
商業作品から盗作したことについて75 ◆kkZO9WMBek氏本人のコメントが聞きたいです
返答お願いします
547創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:17:32 ID:2Xi32fd9
エーリヒに勝ちたい時は緻密な作戦立てるより、勢いでいった方がいいかもね。
548創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:19:23 ID:z9GFOfDr
盗作職人のせいでスレの雰囲気が悪くなってきたな
盗作職人はきちんと謝罪すべきだろう
549創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:21:42 ID:AGPutVV6
75 ◆kkZO9WMBek氏
エーリヒの台詞にパトレイバーの後藤隊長の台詞を盗んで使ったのはなぜですか?
550創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:24:20 ID:nejB6axV
>>547
そう、単純に大兵力で圧倒して押し出すのがよさげ
突き押し相撲だw
551創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:25:10 ID:9OYpRhHu
乙ですた
552創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:28:46 ID:z9GFOfDr
75 ◆kkZO9WMBek氏の態度をみていると「盗っ人猛々しい」と云う言葉を思い出します

真面目にSSを投下している職人諸氏を侮辱していると思います

空気を読んで下さい
553創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:43:52 ID:2Xi32fd9
>>550
パットンみたいなタイプが一番苦手だろうね。
入念に準備してきた猪突猛進タイプが。
554創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 21:52:29 ID:nejB6axV
んだねw
555創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 22:01:42 ID:JKHJw0zr
乙でした
556創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 22:37:22 ID:cZniOMDB
75 ◆kkZO9WMBek氏が盗作した理由について考えてみたんだが
盗作元の作品が他の人物の文章をまねしたから自分も同じように盗作していいと思って実行したとしたら
それは、人間的にあさましい行為だと思う。
557創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 07:26:52 ID:LAKGWUwb
なんかエレナ死にそうじゃね?
55875 ◆kkZO9WMBek :2009/01/26(月) 22:01:43 ID:7p/w+LrX
続きいくよー
5598/34:2009/01/26(月) 22:02:13 ID:7p/w+LrX
☆ 
 
 深海の青で染まっていた世界が、朝の訪れと共に白みを増していった。
 鳥たちが群れを成して飛んでいく下で、ディーゼルエンジンの唸りが共鳴する。
<<赤い星より各車、作戦開始だ>>
<<予定通りだ。時刻合わせ>>
 ヴォルク軍の通信量は増していく明るさと共に高頻度になっていった。
 乗員が偽装網を外すと、夥しい数のT-34――ロジーナ戦車が水平線に現れた。
 車体後部のマフラーから立ち上る排気煙が、明るさを増す空へと流れていく。
<<赤い星1より各車、前進開始!>>
 戦車の群れが動き出す。
 濃緑一色に塗られた鋳造製の車体には歩兵が、まるで蓑のように取り付いていた。
「矢は放たれた……か」
 その光景をエレナは移動司令部でもある陸上戦艦クロンシュタットの艦橋から、双眼鏡越しに眺めていた。
 艦橋には張り詰めた空気が漂い、クルーの誰もが緊張に顔を引きつらせていた。
「ヴィレンスカヤ中佐、本当に準備砲撃を行わなくて大丈夫なのですか?」
「不要です」
 副官の問いに、エレナは首を横に振る。
「私は三度、エーリヒ・シュヴァンクマイエルと戦った。だが一度として、我が軍の準備砲火はエーリヒに対しさしたる効果を与えることはできなかった」
 今回、エレナは学園島で最も激しいと言われるヴォルク軍砲兵をあえて封印した。
 ヴォルク軍は砲兵を戦場の神と崇め、常に戦場で集中投入してきた。
5609/34:2009/01/26(月) 22:02:41 ID:7p/w+LrX
 だからこそ――。
 エレナは部隊の進む前に、必ず砲兵火力を注ぎ込まなければならないという固定観念を捨てた。
 多くの戦いでエーリヒ率いる条約軍部隊に大量の砲弾を注ぎ込んできたが、それが功を奏したことは一度も無い。
 むしろ有利に働いているのではないかと、エレナは勘ぐらずにはいられなかった。
 恐らく今頃、エーリヒはヴォルク軍砲兵隊の射程距離外に部隊を待機させているはずだ。
 自分が無謀なことをやっている自覚がエレナににはあった。
 だがエーリヒは通常の戦法で倒すことはできない。
「大佐……」
 シートに腰掛けたエレナは自分の右手が震えていることに気付いた。
 見えないように右手を隠し、横を見る。
 いつも自信に満ち溢れた端正な横顔が、今はどこにもなかった。
 エレナは今、一人ぼっちだった。
56110/34:2009/01/26(月) 22:03:05 ID:7p/w+LrX

 
 夜が明ける頃、エーリヒは遅めの夕食をありついていた。
「夜明けに食うメシって朝食なのかな、それとも夕食なのかな」
 一人自室でエーリヒは呟く。
 メニューはライ麦の粉で作った粉末の代用マーマレードと代用バターを塗った黒パン。
 そして麦芽で作った代用コーヒーだ。
 暴力としか言いようの無い、酷い味だった。
 こんなものを考え付いた人間は焼けた鉄板の上で土下座し、兵士に謝るべきだとエーリヒは思う。
「でもまあ……食い物に文句を言えるなら、まだ大丈夫だな」
 ヴォルク軍が前進を開始したという報告を受けたのは。エーリヒが口内の黒パンをコーヒーで流し込んだ時だった。
 エーリヒは突然の報告に驚きはしたが、驚いただけだった。
 黒パンを二口、三口頬張った後、エーリヒはアルベルトと共に要塞司令部へと向かった。 
「敵が行動を開始しただと?」
 足早に通路進みながらエーリヒは問う。
 アルベルトは淡々と報告した。
 ヴォルク軍は夜間を利用して秘密裏に移動、準備砲撃を一切行わず、猛烈な勢いで要塞に前進していると。
「なんてこったい。一本取られたな」
 ヴォルク軍がお得意の入念な準備砲撃を行わなかった事実は、エーリヒにとって予想外だった。
「若くして中佐だの英雄だの、これじゃ無能だろうが」
 後ろ手で頭を掻き、エーリヒは顔を歪めた。
 ヴォルク軍が準備砲撃を行うことを前提で部隊を後退させておき、その後、温存した部隊での反撃がエーリヒの常套手段だった。
 だが今回、敵は準備砲撃を行わずに攻勢に出た。
 いつも自分が利用している人間の『硬直化した固定観念』が自分自身の中にもあったらしい。
「先手を打たれたか。あまり良い気分じゃないね」
 司令官の椅子の手すりに尻を預け、エーリヒは腕を組んだ。
 作戦において、常に先手を打つほうが勝つものだ。
 受け手に回った側は敵がヘマをやらかさない限り、延々と向こうのペースに乗せられてしまう。
56211/34:2009/01/26(月) 22:03:34 ID:7p/w+LrX
 相手が物量で勝るのなら尚更の話だ。
 今までエーリヒが守勢に置かれても主導権を握ろうとしてきたのは、まさにこういった状況を作らないためだった。
「前線で指揮を取る。アルベルト、準備をしてくれ」
「了解です中佐。整備が終わり次第、ご連絡します」
 シートに腰掛けたエーリヒは、デスクの上にコップが置かれていることに気付いた。
 湯気が立ち上り、良い香りがしている。
「紅茶か……」
 誰の配慮かわからなかったが、ありがたかった。
 エーリヒは胸に忍ばせていたボトルを静かに取り出し、紅茶の中に垂らした。
 少し多いだろうか――?
 そう思ったが、エーリヒは構わずコップに口をつけた。
 微量のアルコールが乱れた心の波を鎮めていく。
 父親の真似で始めた行為は、今やエーリヒにとって精神安定剤の役割を果たしている。
 いつかブランデー入り紅茶が紅茶入りブランデーにならないようにと祈っていると、ふと視線を感じた。
 紅い瞳が二つ、自分を見ているではないか。
「こんにちは♪」
「女の声……」
 エーリヒは紅茶をもう一飲みして、コップを置いた。
 右目の先に少女がいる。
 幻影の少女だ。
「やっほぅ♪」
 机上に四つんばいになって少女はウインクする。
 エーリヒは何も答えず、椅子の背もたれに寄り掛かった。
「誰も気付いていない?」
 火傷と眼帯で覆われた右目の視界も含めて、エーリヒは左目で周囲を見回す。
56312/34:2009/01/26(月) 22:04:07 ID:7p/w+LrX
 司令部にいる誰もが少女の姿を視認できていないらしい。
 誰もが作業に没頭していた。
「みんなには見えないよ。私はどこにでもいて、どこにもいない。意味わかる?」
 少女はコップを取り、中の紅茶を飲んだ。
「未成年が飲酒、いけないんだー」
「心配してくれてありがとう」
「ういっ」
 再び置かれたコップの中の紅茶は確かに減っていた。
 口の部分には雫が残っている。
 エーリヒの背中に悪寒が走る。
 この少女は現に存在している。
 だが、どうして誰にも見えない!?
「ねぇねぇ、どうして自分で先頭に立とうとするの? 死にたいの?」
「俺は、俺を信頼してくれた人やついてきてくれる人に応える義務がある」
 エーリヒは目を合わせないようにして、答える。
「自己満足だよね。そういうのって」
「それは君だって同じだろう」
 少女の手がエーリヒの頬に触れた。
 まるで氷を直接当てられたような、冷たい感触。
「人間って、ホントに面白いね」
 少女の瞳に、エーリヒは幾つかの感情を見た。
 悲哀。
 愉悦。
 羨望。
「じゃあ見せ付けてあげようよ、敵に」
 火傷の跡を手の平が撫でた。
「本当の……英雄の戦いを」
 エーリヒが手を振り払った時、少女の姿はどこにも無かった。
 もう紅茶から湯気は立ち上っていなかった。
564創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:04:30 ID:4olBVH5T
NNさんの投下が止まったんだぜ
誰のせいなんだぜ
56513/34:2009/01/26(月) 22:04:31 ID:7p/w+LrX


 有刺鉄線の防壁を、ロジーナ戦車のキャタピラが引き千切る。
 条約軍の防衛線に空いた幾つかの穴から、ヴォルク兵は人の波となった雪崩れ込んだ。
<<敵の第一線を破ったぞ!>>
<<よし、このまま一気に浸透していけ!>>
 ヴォルク軍は要塞右翼から突入を図った。
 圧倒的な数の戦車と歩兵は、殆ど抵抗を受けずに前へ前へと進む。
<<おい……なんだかおかしいぞ>>
 ヴォルク軍の兵士達は要塞に接近するにつれ、徐々に不安感を増していった。
<<敵の姿がない>>
<<ここまで無防備だなんて……気味が悪いな>>
 クロンシュタットにいるエレナにも前線からの報告が入ってきていた。
「敵の姿がどこにもない!?」
 エレナは思案する。
 敵は要塞の正面に部隊を配置していなかった。
 恐らく移動したのだろうが、一体どこへ行ったんだ!?
 まさか要塞を放棄するつもりで撤退したのか?
 いや、それならばもっと効率の良いやり方はある。
566創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:04:59 ID:OYsto+N3
支援
56714/34 今日はここまで:2009/01/26(月) 22:05:02 ID:7p/w+LrX
 エレナの中で様々な疑問が噴出した。
「ヴィレンスカヤ中佐、各部隊が指示を求めています」
 通信手にエレナは応える。
「そのまま前進を続けるよう伝えてください」
 条約軍とヴォルク軍は勝利条件が異なる。
 条約軍は侵攻してきたヴォルク軍部隊を撃退しなければならないが、ヴォルク軍は要塞そのものを制圧してしまえば勝利になるのだ。
 要塞が無くなれば、条約軍部隊は拠点を失って大幅な後退を余儀なくされる。
「だが……いや、大丈夫だ」
 エレナの心には迷いと不安がある。
「エーリヒ・シュヴァンクマイエルは、一体何を考えている……?」
56875 ◆kkZO9WMBek :2009/01/26(月) 22:05:39 ID:7p/w+LrX
今日はここまで。
支援に感謝。
569 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:05:41 ID:0yPwbYa3
  
570創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:06:17 ID:1/ipgcA+
しえん
571 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:06:40 ID:0yPwbYa3
いつも手遅れな串に萌える
氏ねばいいのにw
吊ってくるお
572創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:09:53 ID:EvSXIAeJ
>>571
きれいに終わった直後に入れてるなw
573創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:17:55 ID:7p/w+LrX
そういやエーリヒが創発のロワ系スレに参加したらどうなるんだろうと考えたが、部隊指揮官だから単体だと弱いことに気付いた。
574創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:29:25 ID:1/ipgcA+
流暢なドイツ語を喋るドイツ人と思われる男性で
条約軍なる組織の指揮官などと述べている男、E中佐
575創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 22:33:16 ID:LAKGWUwb
エーリヒは自分が確実に勝てる条件じゃないと戦わないんじゃないか?

だが組織戦やらせたら創発キャラじゃ一番かもしれん
576 ◆gRK4xan14w :2009/01/26(月) 23:18:45 ID:bEbx2d7S
カード化スレでSSを作る時に組織戦ネタは使わせてもらうかも。
まあまだ作るかどうか自体決まっていませんが。

強大な魔術師“プレインズウォーカー”の力により異世界へと飛ばさてしまった学園島……
アヴィリオンの“火消し”エーリヒ・シュヴァンクマイエルが、“プレインズウォーカー”の野望を打ち砕くため
学園島連合軍を従え──今、立ち上がる!!

みたいな感じでw
577創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 00:11:12 ID:dVnVnR8S
商業作品から盗作したことについて75 ◆kkZO9WMBek氏本人のコメントはまだですか?
返答お願いします
578創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 00:19:24 ID:mg6vBch8
75 ◆kkZO9WMBekは恥知らずで頭がおかしいな
579創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 07:27:45 ID:hluxR4CB
このスレには盗作したことを自覚をできない人がいますね
580創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 09:29:49 ID:TcoC6Ei9
なんかエレナが考えれば考えるほど、エーリヒの策にはまっている気がする。
相手に先読みもしくは疑念を抱かせて正常は判断力を奪い、戦う前から自分に有利な場の空気を作ってるんだろうな。

だけどエーリヒは予想外の事態に対する対処力は未知数だから続きが気になる。
58175 ◆kkZO9WMBek :2009/01/27(火) 21:01:14 ID:VssRPAif
はい、こんばんは!
続きいくぞー!
58215/34:2009/01/27(火) 21:01:43 ID:VssRPAif

 
 エーリヒ戦闘団の主力は、森の中で最後の準備を終えつつあった。
 突撃砲や対空戦車は既にいつでも移動可能な状態となり、兵士達も武器や装備を完全な状態に整えていた。
 一丁で一個分隊の火力に匹敵する自動小銃Stg44を全員が携え、数名の兵士はグレネードランチャー付きのものを装備していた。
「モタモタしてる奴は湖に叩き込むぞ!」
 年老いた今なお壮健な整備班長が指示を出す横で、甲高い声の整備主任が車両の間を走り回る。
「足回りのチェックを怠るなよ! 足が無くなりゃ、人間も戦車もどん詰まりだ!」
「シュルツェンが足りない? だったら予備キャタピラを持って来い! 余った奴は全部だ!」
 加速するカオスの中で、指揮官のエーリヒは部下達と最後の打ち合わせを行っていた。
 木箱の上に胡坐をかいた隻眼の中佐を囲んでいるのは、戦車隊や砲兵隊を任される将校達だ。
 誰もが皆、貴重な人材だった。
「足回りは確実に潰れます。無理をするなと言っても聞かないでしょうが」
 作戦に関して一通りの議論が終わった後、油のこびり付いた作業服を纏った整備兵が発言した。
「君らには下げる頭もない。お礼は精神的なもので返すよ」
「壊れたもんなら、何でも直しますよ。それでは!」
「ああ!」
 打ち合わせを済ませた後、エーリヒはハーフトラックで最前線に躍り出た。
58316/34:2009/01/27(火) 21:02:14 ID:VssRPAif
 兵士達は歓声をもって彼を出迎えた。
 例え指揮官であろうとも、自分達と肩を揃えて戦ってくれる――問題のある行動だが、少なくとも兵士達の士気は上がった。
「ワイトリンク少佐に連絡してくれ。そろそろ始めようと」
「ハッ」
 エーリヒは暑さのせいではない汗を拭う。
「敵は要塞から離れる気配は無いか?」
「はい。進路をそのままに、前進を続けています」
「よし…・・・いいぞ」
 真剣な眼差しを、エーリヒは森から覗く戦場へと向けた。
「初等部の頃、好きな女の子の縦笛を盗んだことがある」
「はっ?」
「行くまでは良かった。だが、いざ手に入れた後は怖くてたまらなかった」
「なるほど。ところで中佐、その笛はどうしたのですか?」
「使った」
 会話はそれ以上続かなかった。
 一度エーリヒの顔を伺った後、アルベルトは毅然とした動作で無線機越しに命令を各部隊に通達した。
「砲撃を開始せよ」
58417/34:2009/01/27(火) 21:02:39 ID:VssRPAif


 後ろの空いた陣地に身を隠した条約軍戦車隊が、ヒューナースベルグ要塞前面へと接近してくるヴォルク軍に対し砲火を放った。
 ロジーナ戦車の正面装甲に命中した砲弾が重苦しい金属音と共に弾かれ、土煙を上げて地面へと突き刺さる。
<<弾かれた!>>
<<落ち着け。撃破するのが目的じゃない>>
 敵の存在に気付いたヴォルク軍が反撃すると、条約軍部隊は陣地を出で後退し始めた。
 バックしたまま後退する条約軍部隊は、鹵獲したヴォルク軍の戦車を使用している。
 角ばった砲塔の重戦車はPz.Kpfw.KW-1:753(v)mit7.5Kw.K:L/43――ヴォルク軍のKV-1重戦車を改造したものだ。
 ハッチを条約軍用のものに変え、車体側面や砲塔に増加装甲を施したPzKpfw:T-34:747(v)――鹵獲されたロジーナ戦車だ。
 これらの戦車はヒューナースベルグ要塞が陥落した際に、遺棄されたものを修理、再利用したものだ。
<<俺達の戦車を勝手に使いやがって! 盗人め!>>
<<恥知らずのファシストを追い込め!>>
 ヴォルク軍は猛追する。
 条約軍部隊は殆ど反撃しないまま、後退を重ねていった。
「敵を誘い込むのが目的だ。こちらの意図を気付かれてはならん」
 練達の老兵オットー・ワイトリンク少佐に率いられた部隊はヴォルク軍の鼻先を掴んだまま、要塞近くへと引きずり込んでいく。
 ヴォルク軍は誘いに乗り、敗走を装って後退する条約軍を追い続けた。
 指揮用ハーフトラックに乗車したワイトリンクもまた、エーリヒと同じく最前線で指揮を執っている。
「一度火がつくと、冷静な判断を取り戻すのは難しくなる。願わくば、このままご同道願いたいものだ」
「しかし少佐、子供に指揮されるのはあまり良い気分ではありませんね」
 副官のマイヤードレス中尉が一抹の苦味を含ませて言う。
 彼もまた"大人"の軍人だった。 
「あの年でよくやっている。純粋で誠実だからこそ、権力による人格の腐敗とも無縁なのだろう」
「それは確かですが……」
「ただ若さ故に脆い部分もある。大人が支えねばな」
 ワイトリンクもマイヤードレスも、自分より数十歳若い指揮官の才能と人柄を素直に認めていた。
 だが二人は、無条件でエーリヒを認めてはいない。
58518/34:2009/01/27(火) 21:03:26 ID:VssRPAif
 エーリヒが行う機動戦は大胆で魔術的である反面、自らの足場をも切り崩して行うことが多い。
 地味だが堅実に任務を遂行するワイトリンクがエーリヒの補佐に選ばれたのは、至極当然のことだった。
「少佐、敵はなおも食いついてきます!」
 通信兵の報告に対し、ワイトリンクは淡々とした口調で答えた。
「適度に反撃を加えつつ後退するぞ」
「ハッ!」
 頷いた後、ワイトリンクは再び口を噤んだ。
 戦場で軽口を叩いたり冗談を言うのは、あまり好きではないからだ。 
<<照準良し! 装填良し!>>
<<戦車は同じでも、中身はダンチなんだよ!>>
 条約軍のロジーナ戦車が、同じロジーナ戦車に発砲する。
 ヴォルク側の戦車はあわててバックし、塹壕へと車体を沈め、横に傾いた。
 砲塔と車体のハッチが同時に開き、戦車兵が二人、道路に転がり出る横を別のヴォルク軍戦車や歩兵が通過していく。
 ヴォルク兵のppsh短機関銃と条約兵のStg44自動小銃の銃声が混じり合い、手榴弾があちこちで炸裂した。
<<このまま押し返せ!>>
 撃破されたヴォルク軍戦車から白い煙が立ち昇り、次第に量を増やし、黒に変色して流れていく。
 戦場をのたうつ大きな黒塊から、ヴォルク兵のぞっとするような叫びが聞こえた。
 煙の壁を破り歩兵と戦車が群れを成して突撃する。
 ウラーの叫び声が戦場全体に木霊した。
<<お客さんをご案内する。各車、後退>>
 条約軍は敗走を装って敵を引き寄せる。
 要塞への道程は、ヴォルク軍の破滅へのそれと同義だった――。
58619/34:2009/01/27(火) 21:03:56 ID:VssRPAif


 ようやく反撃してきた条約軍は、要塞へ後退していく。
 あまりにも微弱な抵抗に、エレナの中で考えが変わりつつあった。
「条約軍の戦力は、今だ回復していないのではないか……?」
 前回の攻勢から日も浅い。
 条約軍とヴォルク軍では、装備や人員の補充能力に大きな差があった。
 兵器も人間も、金を出せば作るものではない。
 特に人間は時間と労力を多大にかけてようやく半人前の代物が出来上がるのだ。
 おいそれと補充できるものではない。
「このまま数で押し切れば……」
「あと少しで要塞に到達する。そうすりゃ、こっちの勝ちだ」
 艦内や部隊には楽観的な空気が流れ始めている。
 作戦前は緊張の面持ちを浮かべていたクルー達が、ぎこちなくも談笑できるようになっていた。
「考えすぎだった……のか」  
 エレナも僅かに気を緩めた。
 もしかしたらエーリヒ・シュヴァンクマイエルは要塞にいなかったのかもしれない。
 こんなにも軟弱で細微な抵抗しか見せない現状は、エレナにそうした幻想を抱かせるに十分だった。
<<奴ら、もう勝った気でいやがる>>
<<ああ。では教育してやるか>>
 混線した無線通信が艦橋に響いた。
 条約軍の通信だった。
587創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:04:23 ID:wKeSoaPh
 
58820/34 今日はここまで:2009/01/27(火) 21:04:41 ID:VssRPAif
 緩んでいた空気が、一気に張り詰めたものへと変わる。
 刹那、前線から離れた場所――ヴォルク軍の後方で巨大な火の柱が何本も上がった。
 爆煙と土砂がキノコ雲を作り出し、鉛色の雲の間から差していた太陽光が完全に遮られる。
「何だ!?」
 エレナの問いに、通信手は目を大きく見開いて答えた。
「て、敵の機甲部隊です! 後方部隊との交信途絶!」
「要塞に動きあり!」
 要塞が光に包まれた。
 いや、違う。
「あれは……砲撃の光だ……!」
 遠雷にも似た砲声が戦場全体に轟いた。 
 数千発のロケット弾がクロンシュタットを飛び越えていく。
「弾着予測地点は!?」
「我が軍の後方! 補給部隊及び砲兵隊です!」
 やられた――!
 エレナは顔を歪め、手すりに拳を叩きつけた。
58975 ◆kkZO9WMBek :2009/01/27(火) 21:05:15 ID:VssRPAif
終わりッ!
今日はここまでッ!
590創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:05:45 ID:wKeSoaPh
お疲れ様〜 って支援いらなかったかw
591創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:17:30 ID:UN+Jtw0K
◆NN1orQGDus氏の投下がなくなったのは盗作職人75 ◆kkZO9WMBekがスレの雰囲気を悪くしているからじゃないかな?
盗作に対して謝罪も弁明もせずに駄文垂れ流してるんだもん。
まるで汚物だね。このスレも終わりだね。悲しいね。
592創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:20:38 ID:lxvN0qW+
               _,......,,,_
               ,、:'":::::::::::::::::``:...、
           /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
          i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
            !::::::::::::::::::::::;‐、:::::::::_::::::_::::';
         |::::::::::::::::::::::|  :: ̄      ``!
         r''ヾ'::::::::::/  ::          |
         l r‐、\::/  _,,、ii_;;_、    _,,,l、
         ヽヾ〈    ::= -r:;;j_;、`/ :;'ィ;7
          !:!_,、    :: ` ー  : |: `´/
         ,./ヽ |  、_  ::  ,: 'r' :i |:  /
       ,../ `ヽ;_  i | '"、_:::__`:'‐'. /
        / ``'ー 、_\  ! `::` ̄''`チ`シ
    /ー 、_    `\:、_ :: ` ̄/   なんか毎日駄文タイプして必死でしょ。
   /     ``ヽ、   ヽ`'7‐--'゛
  /          `ヽ、 `/         盗作家75 ◆kkZO9WMBekwwwww
. /      _,;:::::::::::;;_   ``\
/     ,、:'゛      ``ヽ、  `i
 / //           \i ヽ
593創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:59:43 ID:TfrS7Yb1

594創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 22:07:03 ID:fhOop2xB
盗作指摘を無視するのに必死の75 ◆kkZO9WMBek
自分に都合の悪いレスには文盲になる
595創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 22:09:20 ID:kqbfqwhT
同じく乙でした
596創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 22:14:27 ID:AwgCJPED
乙乙
597創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 22:18:10 ID:da6cl+Cn
(つまらない話を投下してくれて感想書く気も起こりませんが)乙です
598創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 23:29:15 ID:TcoC6Ei9
ワイトリンクさんいいキャラしてるなぁ。エーリヒに対して無条件マンセーでないところがいい。
599魔法少女ゴミ箱行き ◆NN1orQGDus :2009/01/27(火) 23:51:53 ID:oS0cRqKO
1/2
『喉元に突き付けられた刃』

 驚いてしまいました。ええ、口をあんぐりと開けて驚いてしまいました。
 いつの間にやら、学舎分校の目と花の先に立派なお城が出来ていたのです。
 屋根の上で気持ち良さそうに泳いでいるお魚から察しますに、どうやら大日本帝国のお城みたいです。
 ハッキリ言って邪魔です。
 あんな近く――2、3マイルぐらい近さにあると、のうのうと勉強なんてしていられません。
 そんな訳で、今日は城攻めです。

 第三帝国からぶんどった――専門用語だと鹵獲した――お洒落戦車が先陣を切ってキュラキュラ進みます。
 恐れをなしたのか、お城からは攻撃らしい攻撃がありません。

「今日は楽勝みたいですね」

「私が出張る幕がないのだわ!」

「嗚呼! 絶望に包まれた彼らは自らの命を絶った……。其処には神の慈悲はないのに、何故、彼らは蝋燭の様に死を急ぐのか……」

 魔法兵として後方に詰めている私達は退屈です。
 退屈だけならよいのですが、砂ぼこりをもろに被ってしまうのには辟易としてしまいます。
 そんな訳で、私達はだらけてしまいます。
 仕方ないですよね?
 今日は圧勝みたいですし。

「深謀遠慮……。お前ら、気合い入れとけ!」

 だらけている私達に、パトリックちゃんの鋭い声が飛んできました。
 不穏な空気でも感じたのか、お城の方を見てプルプル震えています。
 つられて私も見てみますと、誰かが門の前に威風堂々と立っています。

「誰かいますね。逃げ遅れたのでしょうか」

「あんなちんちくりんでは萌えないのだわ」

「――ぼくは男は嫌いだ」

 アンさんはいつもと同じなのでどうでも良いのですが、ビターさんのすねた顔って結構可愛いかも。

「まさか……まさか……」

 何が怖いのかわかりませんが、パトリックちゃんはガタガタ震え始めてしまいました。
 その時。
 門の前に立っていた人が大きな巻き貝をブオーっと吹きました。
 後ろの此処からではよくわからないのですが、お洒落戦車が凪ぎ払われているみたいです。

「げぇ、空城の計!」

 あまりの展開についていけないのか、パトリックちゃんはアワワと泡を噴いてしまいました。

「大日本が帝国の魔法兵は八人衆! 揃って踏めば見栄を切る!」

 なんでしょう、コレ。
 知らぬ間に変な集団に取り囲まれてます。

600魔法少女ゴミ箱行き ◆NN1orQGDus :2009/01/27(火) 23:52:35 ID:oS0cRqKO
2/2
「――石蔓子? 罠だ! 石蔓子の罠だ!」

 パトリックちゃんは何だか微妙な展開の衝撃のあまり血を吐いて倒れしまい二度と動くことはありません。
 展開についていけた私達は、三人背中合わせで死角を消します。

 伏兵は七人。たった七人で学舎本校のコーチになったゴッチさん以外の降伏してきた旧第三帝国の方々が全滅してしまいました。
 背中に冷たい物を感じてしまいます。
 そんな中、変な人達は思い思いのポーズで名乗りを上げます。

「望みとあらば名乗りを挙げるぞ一夜城! 立身出世のヒデヨシだがや!」

「目指すは独身貴族が太政大臣! まろは満月のミチナガでおじゃる」

「痺れる電気は神鳴るチカラ! 火花も飛び散る色男、ゲンナイ・ザ・エレキテルたあ俺らの事でえ!!」

「御簾を上げれば香炉峰――風流を抱き締めて――清らなるショウナゴン――征きますえ?!」

「鰹節とはいわさぬぞ! 誰が呼んだか吉良キラー! 逆切れのタクミノカミ、推して参る!」

「屏風の虎すら拙僧を恐れる! 落とし種は伊達では御座らん! 烙印の一休に候う!」

「泣かぬならドキュンと泣かすぞホトトギス! 終わりのノブナガだぜ!」

「我ら、大日本帝国魔法八人衆!」

 揃った大声は思いのほか強くて、キンキンと耳が痛くなります。
 頭の悪そうな決めポーズには頭が痛くなります。
 ビターさんは男だらけでどうにもならないのかテンパっていて使い物になりそうにありません。


「七人なのに八人衆はおかしいのだわ!」

 アンさんは一人気を吐いて強がってます。

「盟友、妖刀の伊庭のカタキ――簡単には取らないでおじゃるよ」

「てやんでぇ! ガタガタ抜かすと鰻食わせるぞ!」

「一休み一休み」

「おのれ、積年の恨み晴らしてくれるわ!」

「貴女の顔って――いとをかし」

「人生をドキュンと終わらせてやるんだぜ」

「ねーちゃん胸はにゃーけどいいケツしとるがや」

 皆さん口々に訳の解らないな事を言っていますが、一つだけ共通点があります。
 私に殺気を向けています。
 自信過剰な訳じゃないのですが、それだけは解ります。

 ――駄目です。頭が痛くてどうかしてしまいそうです。

 ええ。どうにもなる筈がありません。
 ネタが続かないのでこの話は廃棄です。
601魔法少女ゴミ箱行き ◆NN1orQGDus :2009/01/27(火) 23:54:46 ID:oS0cRqKO
書いていたら暴走したのをあえて投下。
どうしようもない馬鹿SSだからまとめに載せなくて良いです。
602創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 23:57:20 ID:wKeSoaPh
だめだ、やっぱり伊庭さんで吹いてしまうw
面白そうなので、なんか思いついたら続き書いてくださいねえ

お疲れ様でしたー
603創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 00:08:03 ID:sYLtbmKA
うはw一夜城すげえ
伊庭がまともに見える面子とか笑わせてもらった
あいかわらずネタの詰め込み加減が半端ないですな
604創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 00:22:35 ID:NmQ7c5eR
ジャーンジャーンジャーン
げぇっ シーマンズー!
605創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 00:30:59 ID:XU0Whixa
グッジョブ!!
石蔓子がなんだかわからなかったのでググってみたら朝鮮出兵ネタだとわかった
これはパトリックちゃんもガクブルするわ
今回も内容が濃すぎるww
606創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 09:48:15 ID:I6KhqG1O
この面子の中だったら伊庭さんがまともに見えるw
607創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 12:41:40 ID:Yn2QVMkV
>>75さん
盗作がどうの言ってますが、相手にすることはないと
でも自分は悪かったと思えば、謝罪すればいい話ですそれは個人の判断だと
自分ははっきり言って、こんなあれをまともに取り合って問題化するつもりもないです

であるからこのレスもスルーということでwお願いしたい
創作し続けてもらえればいいと思います
608創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:09:13 ID:HVdx+d70
ところで、要塞奪い合ってるようだけど
ここって交通の要所とかそんなのなのか?
60975 ◆kkZO9WMBek :2009/01/28(水) 21:25:00 ID:5U6SAR0Z
>>608
・交通の要所。
・西側へと通じる"門"
・補給拠点のため、ここを奪われると戦線が大きく後退を余儀なくされる。

というわけで続きいくよー
61021/34:2009/01/28(水) 21:25:45 ID:5U6SAR0Z

  
 エーリヒ戦闘団の本隊は一方的な攻撃を続けていた。
 無防備になったヴォルク軍の後方部隊及び砲兵隊に対して、三号突撃砲は悪魔にも等しい存在だった。
 輸送用トラックを砲撃で破壊し、塹壕を乗り越えてヴォルク兵を蹴散らす。
 ヴォルク軍砲兵は対戦車砲で突撃砲を仕留めようとするが、その前にメキメキと押し潰された。
<<降車!>>
 やがて迷彩服を着た条約軍の擲弾兵は突撃砲の上から飛び降り、硝煙の中に散開した。
 彼らとは別に、突撃砲の車体の陰に隠れた擲弾兵は機関銃の連射で突撃する兵士を援護する。
<<撃ち返せ! 反撃しろ!>>
<<愛校者の義務を果たせ!>>
 ヴォルク兵も負けじと、手持ちのありとあらゆる銃火器で応戦した。
 血の霧を噴いて条約兵が撃ち倒される。
 閃光、砲声、悲鳴、着弾音、爆発音が複雑に重なり合って、何度も何度も連続して響いた。
<<イワンを挽肉に変えてやれ!>>
<<任せろ!>>
 最も凶悪な働きをしたのはハーフトラックに載せられた二十ミリ四連装対空機関砲だった。
 四つの砲口から撒き散らされる弾幕はヴォルク兵を挽肉に変え、『肉切り包丁』の名を欲しいままにした。
 ヴォルク兵が肉の塊か臓器の集合体になったことを確認すると、条約兵は頭を上げ、銃を構え、真っ白い爆炎と粉塵のベールに頭から突入していった。
「敵が態勢を整える前に潰す」  
 エーリヒは自らも前線に出で、指揮用ハーフトラックに乗車していた。
 右手を肩の線にまで上げ、エーリヒは息を吸い込んだ。
「撃て!」
 右手が下ろされ、再び突撃砲は一斉に発砲する。
 集積されていた物資が巨大な火球に変じ、枯葉の積もった大地に火の粉を撒いた。
 周囲には硝煙と血の匂いが混ざり合った臭気が立ち込め、絶えず戦闘騒音と悲鳴が響く。
61122/34:2009/01/28(水) 21:26:10 ID:5U6SAR0Z
「なんとか上手くいったな」
 エーリヒは小さく息を吐く。
 まずワイトリンクの部隊はヴォルク軍を条約軍にとって都合の良い場所、つまり要塞近辺まで引き寄せる。
 次に長距離砲撃で進撃してくるヴォルク軍の後方を叩く。
 エーリヒの本隊はショックの抜け切らないヴォルク軍後方に殺到し、叩き潰す。
 ヴォルク軍の物量に対抗する方法として考え出された『ディープ・アタック(縦深攻撃)』と『エアランド・バトル(空地統合戦)』に、エーリヒが独自の解釈を加えた戦法だった。
「撃て!」
 エーリヒが手を倒すと同時に、一列に並んだ突撃砲部隊が砲火を放つ。
 砲口の先にあった、燃料や弾薬を満載したトラックが火焔の塊となって吹き飛んだ。
 外れた砲弾は唸りを上げて空高く跳ね上がり、あるいは土煙を上げて地面に食い込む。
「よし行くぞ! 前進!」
 擲弾兵は銃剣を付け、叫びながら突撃砲の影から躍り出た。
 MG42が電気鋸よろしく唸り、負けじと対空機関砲と殺戮を撒き散らした。
 一時間の戦いでヴォルク軍の後方部隊と砲兵部隊は壊滅し、全ての兵士が死ぬか捕虜となった。
「敵兵の武装解除はどうしますか?
「擲弾兵一個中隊を残す。アルベルト、急ごう。正面の部隊にも連絡してくれ」
 エーリヒはベレー帽を被り直し、大きく息を吐いた。
 今や火災の黒煙と粉塵で、空からは一抹の光すら差し込んではいない。
 太陽に至っては、鈍い輝きを放つ緋色の塊でしかなかった。
612創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:26:21 ID:azi1Cs+g
               _,......,,,_
               ,、:'":::::::::::::::::``:...、
           /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
          i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
            !::::::::::::::::::::::;‐、:::::::::_::::::_::::';
         |::::::::::::::::::::::|  :: ̄      ``!
         r''ヾ'::::::::::/  ::          |
         l r‐、\::/  _,,、ii_;;_、    _,,,l、
         ヽヾ〈    ::= -r:;;j_;、`/ :;'ィ;7
          !:!_,、    :: ` ー  : |: `´/
         ,./ヽ |  、_  ::  ,: 'r' :i |:  /
       ,../ `ヽ;_  i | '"、_:::__`:'‐'. /
        / ``'ー 、_\  ! `::` ̄''`チ`シ
    /ー 、_    `\:、_ :: ` ̄/   なんか毎日駄文タイプして必死でしょ。
   /     ``ヽ、   ヽ`'7‐--'゛
  /          `ヽ、 `/         盗作家75 ◆kkZO9WMBekwwwww
. /      _,;:::::::::::;;_   ``\
/     ,、:'゛      ``ヽ、  `i
 / //           \i ヽ
61323/34:2009/01/28(水) 21:26:51 ID:5U6SAR0Z


 ヴォルク軍に叩き込まれた条約軍の砲弾は総計で九千三百九十三発に達していた。
 条約軍は強烈な一撃を加えられたヴォルク軍が立ち直る前に、全部隊を包囲しようとした。
 前方はオットー・ワイトリンクの戦車部隊。
 後方はエーリヒ・シュヴァンクマイエルの主力部隊。
 二つの部隊はヴォルク軍を中心にして大きく横に広がり、二つの半包囲陣形を――つまり包囲陣を敷こうとする。
<<包囲されるぞ!>>
 ヴォルク軍は円周防御の陣を敷いた。
 後方を遮断された以上、もはや長期戦はできない。
 ならばここで条約軍を打ち倒すしかない――!
 生き残った戦車や自走砲、歩兵は陸上戦艦クロンシュタットを中心に円陣を組んだ。
<<自分で退路を断つとは、馬鹿な奴らだ>>
<<ワイトリンク隊の戦車は敵からの分捕り品だ。誤射しないよう気をつけろよ>>
 やがて条約軍は包囲を完了した。
 四方からヴォルク軍目掛けて火力が集中される。
 条約軍の全ての火力が狭い空間に叩き込まれた。
 解き放たれた殺戮と破壊の嵐は包囲網に閉じ込められたヴォルク軍を食い破り、各所で破断させた。
<<畜生! どこを向いても敵だらけだ!>>
<<諦めるな!>>
<<絶望的だぞ! 嫌だ! 死にたくない!>>
61424/34:2009/01/28(水) 21:27:22 ID:5U6SAR0Z
 絶対的に不利な戦況にも関わらずヴォルク軍は奮戦した。
 包囲網さえ突破すれば――。
<<今助ける! 待っていろ!>>
 猛攻を生き延びたヴォルク後方部隊の残余が外側から包囲網を食い破ろうと突進する。
 僅かに生き残ったロジーナ戦車が、随伴歩兵も無しで攻撃を仕掛けた。
 だが、彼らを待っていたのは八十八ミリ高射砲の精密な射撃だった。
 数少ない救援部隊の戦車は一台、また一台を撃破されていく。
 条約軍は最終的に二重包囲を完成させた。 
 単純な一重の包囲は、包囲側の全ての部隊が包囲された敵に向かって展開することになる。
 必然的に、敵の予備隊や後続部隊が救援に駆けつけた場合、背後を突かれることになりやすい。
 包囲しているのとは別の部隊を使ってこれを防ぐのが「二重包囲」だ。
 つまり、予測される外部からの敵の反撃経路(包囲下の部隊にとっては脱出経路)を遮断し、友軍包囲部隊の背後を防護する。
<<畜生! もう駄目だ!>>
<<諦めるな!>>
 もはやヴォルク軍は八方塞がりの状況に叩き込まれていた。
 四方を敵に囲まれ、救援部隊も近づけない。
 ヴォルク軍の士気は戦力の減少と共に、急激な勢いで低下していった。
61525/34:2009/01/28(水) 21:28:00 ID:5U6SAR0Z

 
 絶え間ない炸裂音と激震がクロンシュタットを襲い続けていた。
 艦橋に入ってくる無線や報告は絶望的なものばかりだった。
 第二戦車中隊、残存二両。
 第五狙撃兵大隊、損耗率八十六%。
 敵の砲撃は苛烈さを増している。
「これがエーリヒ・シュヴァンクマイエル……」
 完全な敗北だった。
 今、ヴォルク軍は四方を条約軍に囲まれ、成すがままにされている。
「中佐……既に我が隊の半数が失われております。作戦の遂行は不可能です」
 エレナは立ち上がり、副官に告げた。
「副長、私が時間を稼ぎます。残存部隊をまとめて撤退を」
「中佐はどうするのです!?」
 首を振り、エレナは言う。
「私は敵要塞の後方に侵入、敵の指揮官を直接排除する。それしか方法はない」
「ですが……」
「少なくとも後方に魔道兵が現れれば、敵は動揺し包囲網を解くはず。それぐらい、無能な私でもわかる。少なくとも撤退のチャンスぐらいは作るつもりだ」
 誰もエレナを止めなかった。
 司令室からデッキへの道程で、エレナは呟く。
「今から私は死ぬ。だが、一人では逝かない……!」
61626/34:2009/01/28(水) 21:28:28 ID:5U6SAR0Z


 条約軍のロケット砲は絶えず唸り続けている。
 ネーベルヴェルファーは華麗さとか、流麗という言葉と縁が無い。  
 強引かつ単純に言えば鉄パイプが六本束ねられたランチャーに車輪が付いているだけだ。
 ロケット弾の威力は高いが精密射撃などは期待できない。
 使用するのは一定の地域に対する集中射撃であり、今、包囲されているヴォルク軍に対して遠慮無くその真価を発揮していた。
 緊急の報を抱えたシュトルヒ(連絡機)がエーリヒのいるハーフトラックの近くに着陸したのは、撃ち終えたロケット弾の補充が始まった頃だった。
「中佐、司令部からです」
 アルベルトから紙を受け取ったエーリヒは新たな命令通達書に目を通した。
「可能なら敵魔道兵を捕縛すべし……ね。アルベルト?」
「ハッ」
「この紙、尻を拭くには硬すぎるかな」
「手よりはマシでしょう」
「そだね」
 エーリヒは紙を折りたたむと、胸ポケットに入れた。
 後で"捕縛のための努力を試みた"とでも報告書に書いておけばいいだろう。
「面倒をこれ以上増やせるか。敵の増援は?」
「付近には確認できていません」
 エーリヒが包囲されたヴォルク軍に対して降伏勧告を出そうとした時、また新たな報告が入った。
「中佐、敵の司令官より通信です」
「通してくれ」
617創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:28:56 ID:HVdx+d70
しえん
61827/34:2009/01/28(水) 21:29:07 ID:5U6SAR0Z
「よろしいのですか、中佐」
「ああ。敵が何をしようとしているのかわかった」
 エーリヒは先ほどの紙の裏側にペンを走らせ、アルベルトに渡した。
「……ッ!」
「急いでくれアルベルト」
「ハッ!」
 通信が開くと、若い女性の声が無線機越しに響く。
「エーリヒ・シュヴァンクマイエル中佐へ。私はヴォルクグラード人民学園軍中佐、エレナ・ヴィレンスカヤです」
 ずれかけた眼帯を直しながら、エーリヒは話を聞く。
「私は貴方のことを良く知らない。でも、尊敬できる人間だと思っています。できることなら、平和な時代にお会いしたかったものです……」
 もういいや――とエーリヒは通信手に言い、通信を切らせた。
「戦場でマスターベーションやられても……な。映画じゃない。本当のことさ」
 戦場においてエーリヒは怒りや悲しみといった感情を抱かない。
 必要ないからだ。
 今、ヴォルク軍のエレナという指揮官は奇跡を起こそうとした。
 だが戦場で勇気や奇跡が勝利をもたらすことは有り得ない。
 エーリヒは勝つべくして勝ち、ヴォルク軍は負けるべくして負けた。
「包囲下にあるヴォルク軍の残存戦力は?」 
「六十%の撃破を確認」
「以後はワイトリンク少佐に任せる。本隊は要塞後方へ回るぞ」
 エーリヒはベレー帽を被り直す。
「戦場で生の感情を剥き出しにする、か」
 普段は優しい光を宿らせた右の瞳が、絶対零度の輝きを放った。
「だから負けるんだよ。お嬢さん」
619創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:29:21 ID:azi1Cs+g
       ____
     /  75  \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \  ほんとは盗作が悪いことだって知ってるお…
  |     (__人__)    |
  \     ` ⌒´     /


       ____
     /  75  \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \  でも自分のキャラはスカスカでつまらないお…
  |     (__人__)    |
  \     ` ⌒´     /


       ____
     /⌒ 75⌒\
   /( ●)  (●)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   だから盗作するお
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'´     /
62075 ◆kkZO9WMBek :2009/01/28(水) 21:29:33 ID:5U6SAR0Z
今日はここまで。
そんじゃまた。
621創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:30:48 ID:bj6CXc2i
激しく乙!めげずに頑張ってくれ
622創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:32:26 ID:azi1Cs+g
>・交通の要所。
>・西側へと通じる"門"
>・補給拠点のため、ここを奪われると戦線が大きく後退を余儀なくされる。

脳内設定語ってんなカス
本編の描写で説明しろよ
623創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:39:24 ID:l3uUMJdZ
>>608-609
このやりとりで75 ◆kkZO9WMBekの書く話は人に読ませるレベルに達していない出来損ないだって証明されましたね
妄想を並べているだけで、読者に伝える努力をする気が無いようです
自慰はほどほどにしておきなさいね
624創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:44:25 ID:NmQ7c5eR
ぼちぼちコテ叩きは最悪板で願います
2chでの規制対象なので、あなた通報されたら書き込みできなくなるよん
625創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:04:03 ID:xuA9mZQf
>>624
君凄いね

>32 :創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 20:59:40 ID:NmQ7c5eR
>わたしのIDは53万個存在します
626創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:07:50 ID:NmQ7c5eR
すごいよ、だって神ですから><
627創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:09:15 ID:zSlX83IZ
フリーザ様乙
628創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:15:16 ID:kBcuU7HQ
>>626
グッジョブ!!
ドラゴンボールは面白い、次も期待しています
629創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:30:07 ID:I6KhqG1O
神!こんなところにおられたのですね!
630創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:33:14 ID:ZPy/4Wao
           ___ ,、,、,、,、,、,、,、
          l|匚) 巛|}三三三三)》
            ̄ ̄ ̄^^^^^^^^^
チェンソー置いておきますね
631創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:34:53 ID:HVdx+d70
乙で
久しぶりに読んだらなんかエーリヒのキャラが分からないw
最近ジョーク?らしき会話を部下と話してますが
電波とまではいきませんがw

最後エレナは前任者と同じ作戦をしかけようとしてるんだと思いましたが
状況はこの前とはまったく違うけれど
それで以前の要塞戦の経験から必ず相手は動揺するだろうと見込んで
そういうわけで単独でしかけたのか
632創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:56:44 ID:wWp3miOl
>>624
明らかに公序良俗に反する他人の著作物の無断使用を指摘しても一言も反応がない以上
納得できる返答があるまで働きかけ続けることは正しい行いです
63375 ◆kkZO9WMBek :2009/01/29(木) 21:58:01 ID:pEEt03Cz
はーい続きいくよー。
63428/34:2009/01/29(木) 21:58:24 ID:pEEt03Cz


 魔道兵出現!
 その報を聞いた時、ヒューナースベルグ要塞の条約軍兵士達は恐怖に慄いた。
 彼らを戦える状態まで回復させたのは、従軍牧師でもあるバッハ少佐であった。
「みんな落ち着くんだ。まだ慌てる時間ではない」
「牧師様!」
「死を恐れない者はいない。キリストでさえ十字架に貼り付けられ、死を嘆いた」
 バッハの言葉は意味を理解せずとも、混乱していた兵士達を落ち着かせるには十分だった。
 焦燥していた若者達は配置へと戻り、再び戦う者へと戻る。
 最初に砲火の口火を切ったのは、ルフトファウストだ。
 赤外線誘導方式の誘導弾は伸びる白煙と共に空へ舞い上がる。
 だが魔道兵は斬撃で誘導弾を切り裂く。
 青い粒子が駆け、誘導弾が吸い込まれる。
 そして消え行く粒子の中で爆発が連鎖した。
<<撃墜した!? 弾速は音より早いんだぞ!>>
<<落ち着け。敵の予想進路に弾幕を張るんだ>>
 条約軍――エーリヒは要塞内部へと繋がる後部ゲートの前面に、一切の部隊を配置していなかった。
 誘導弾による攻撃を嫌った魔道兵は超低空でゲートへ突入しようとする。
63529/34:2009/01/29(木) 21:58:52 ID:pEEt03Cz
<<撃て!>>
 ゲートの左右に設営された陣地から、殺人的な砲火が突入する魔道兵へ向けられた。
 砲火は交錯し、十字砲火となった。
<<第一線、突破されました!>>
<<落とせ!>>
 だが、彼らの奮闘も空しく魔道兵は要塞へと突っ込んでいく。
<<駄目だ! 撃墜できない!>>
<<なんだこれは……血か?>>
 一人の兵士は焼け付いた対空砲の銃身に付着した血液が蒸発し、酷い悪臭を放っていることに気付いた。
<<俺達のやったことは無駄じゃない>>
<<どういう意味だ?>>
 別の兵士が地面に落ちていた腕を取った。
 細い女の腕だった。
63630/34:2009/01/29(木) 21:59:15 ID:pEEt03Cz


「腕などくれてやる!」
 エレナは背部マナ・ブースターを最大噴射して要塞へと突進した。
 左腕は失われ、体の数箇所に銃創を負っていた。
 全身から流れ出る血液を撒き散らしながら、エレナは前へ前へと飛び続けた。
「エーリヒさえ倒してしまえば!」
 エレナは布石を打った。
 エーリヒに対して録音した通信文を流す。
 当然、エーリヒはそれを無視する。
 そしてエーリヒはこう考える――この戦況でヴォルク軍が一発逆転を狙うのなら、要塞内部を破壊すると。
「一人で逝くものか!」
 エレナはもう、要塞の攻略を諦めていた。
 目標はエーリヒ・シュヴァンクマイエルただ一人。
 奴を残すわけにはいかない。
「大佐やユーリ君の未来に、奴を残しておくわけには!」
 敵の"頭"を潰してしまえば、後はどうにでもなる。
 絶え間なく砲弾の擦過音が耳に入った。
 視界がどんどん暗くなり、意識が遠のいていく。
 自分の中で命が消えていくことをエレナは認識していた。
「まだだ……まだ死ねない!」
 目から、口から大量の血が流れる。
「リミッター解除!」
 ローブの間接部分が金色へと変わり、流れ出る粒子が青から赤へと変化した。
 出血は一時的に止まる。
63731/34:2009/01/29(木) 21:59:39 ID:pEEt03Cz
「まだ行ける!」
 次々と撃ち込まれる高射砲弾を身の丈ほどもあるマナ・バスターソードで切り裂いていく。
 右手だけで振るう剣にバランスを崩しながら、エレナは進む。
<<撃て! 撃て! 撃て!>>
<<なんなんだよあいつは! 畜生! こっちへ来るな! 来るなァ!>>
 次に吹き飛んだのは左足だった。
「まだ一本、足が無くなっただけだ!」
 発狂しそうな激痛に耐えながら、エレナはまだ前に進んだ。
「ここで勝たないと……私は大佐にも、ユーリ君にも、サーシャにも……!」
 エレナは昔、守れなかった弟の名前を口にした。
 空っぽになった心を満たすために、エレナはかつての自分と同じ境遇のマイコに心を重ねた。
 自分は守ると決めた弟を守れなかった。
 だから私は、あの人の弟を守る!
 右手が千切れ飛んだ。
 骨と筋肉の繊維が四散し、バスターソードが彼方へ飛んでいった。
「まだだ……まだ……」
 芋虫のようにエレナは這い、要塞へと向かう。
 足が無くなった?
 手が無くなった?
 じゃあ噛み付いてやる!
「まだ……まだ終われない……こんな……ところで……」
 駄目だった。
 いくら戦意があっても、もはや前に進む足も手も、エネルギーも無いのだ。
63832/34:2009/01/29(木) 22:00:02 ID:pEEt03Cz
 エレナは泥の大地へと叩きつけられる。
 体内のマナ・エネルギーが底を尽いたのだ。 
「ここまで……か」
 花畑エレナの周囲に広がっていた。
 流れ出た血の赤が、白い花を染めていく。
「サーシャ……ごめんね……」
 もう、空を仰ぐ両手もなかった。
「許してもらえるわけない……こんなことをしても、私の罪は……」
 自己満足に過ぎない。
 生きた人間が死んだ人間を利用して、生きる価値を自分に見出しただけだ。
「でも……大佐や……ユーリ君の明日は……」
 木に止まっていたカラスの群れが飛び立っていく。
「大佐……生きてまた会うことはできないようです。別の世界があるのなら、そこでお会いしましょう……」
 花が赤から白へと戻っていく。
 エレナは願った。
 もし死後の世界で再会するとしても、その日がとてもとても遠い日でありますように……。 
「先に逝く私を……許さなくても……」
 いいからと言えたのか言えなかったのか、エレナにはわからなかった。
 そして、命の炎が消えた。
63933/34:2009/01/29(木) 22:00:27 ID:pEEt03Cz

 
 降伏したヴォルク兵が西へ、西へと長い列を作って進む。
 蛇だ。
 生け捕りにされて傷ついた者の、長い長い蛇だった。
 地平線に向かって一列に進む捕虜は、一体どこか先頭なのかわからなかった。
 列の後ろの方に、道に倒れて動けなくなった政治将校がいた。
 政治商工は狼のような声で泣き叫んでいた。
 待ってくれ同志、見捨てないでくれっ。
 同志と呼ばれたヴォルク兵は、誰も振り返らず、肩を竦めて歩いていった。
 エーリヒはハーフトラックに乗って捕虜と擦れ違う。
 一体何と言えばいいのだろうか。
 手を上げて喜ぶのか?
 それとも、可哀想だと涙を流すのか?
 どちらも吐き気のする行為だ。
 エーリヒは顔色一つ変えず、起伏する地面に揺られた。
「勝ちはしましたが、どうもしっくりときませんな」
「ああ……」
 右目の視界の端に何かが見えた。
 何かの周囲で蝿が舞っている。
 草むらの中に白い手が見える。
 それも一本ではなかった。
 力なく突き出されているたくさんの腕、不自然に曲がった足――かつて人間だったのもだ。
 その周囲には黒い水溜りが点在している。
 文字通りの血の池だった。
 エーリヒはもう、何の反応もしなかった。
 ここはこういう場所なのだ。
「敵の損害は過大で味方は過小。良い形で勝てたんだ。そういうことを言うものじゃない」 
 嫌味にならないよう注意しながら、エーリヒはアルベルトに答えた。
64034/34:2009/01/29(木) 22:00:54 ID:pEEt03Cz
 焦げ付いた、青白い煙はハーフトラックを横切る。
 時折、糞尿や嘔吐物、食物が腐ってゆくときの悪臭が立ち込め、エーリヒの鼻腔を突いた。
「しかし……腑に落ちないのは俺も同じだ。どうにも理解できない点が多すぎる」
 ヴォルク軍に対する疑問を、エーリヒは脳内で考察してみた。
 分析の結果はこうだ。
 どうして再度の攻略戦を仕掛けてきたのか?
 どうして魔道兵の数がごく少数だったのか?
 疑問はそれ以外にもあった。
 敵だってやたらめったら行動しているわけではないだろうし、それ相応の理由があって行動しているのだろう。
 だが、答えを出すのは難しかった。
「はい。敵は、まるで負けるために戦っているようでした」
「まさか……」
 アルベルトの言葉にはある程度のリアリティがあった。
 ヴォルク軍は負けるための戦いを仕向けたのではないか――?
「そんなわけないな」
 敵も味方も全力で戦った結果がこれなのだ。
 そうでなければ死んだ人間も生き残った人間も、一体何のために戦ったのかわからないではないか。
 それでも、エーリヒの心には妙なしこりが暫く残った。
 エーリヒはまたコーヒーを飲む。
 戦場で飲むコーヒーは苦かった。
64175 ◆kkZO9WMBek :2009/01/29(木) 22:02:36 ID:pEEt03Cz
これで第三章終わり。
第四章書き終わるまでちょっと待っててね。

>>631
第一部と第二部終わったら、一通り見直して加筆修正を加えるつもり。

>最後エレナは前任者と同じ作戦をしかけようとしてるんだと思いましたが
状況はこの前とはまったく違うけれど
それで以前の要塞戦の経験から必ず相手は動揺するだろうと見込んで
そういうわけで単独でしかけたのか

この質問への回答は本文見てくれればわかる・・・だろうか?
642創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:05:27 ID:A+jKtDDQ


ところで学園島で知将と言えば誰だろうか
俺はパトリックちゃんを押す
643創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:11:39 ID:JsKW/uXI
>>641
盗作部分の修正と謝罪コメントもお願いします
644創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:14:08 ID:AcidRE6q
乙!
次の話でエレナを生き返らせてください
645創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:17:29 ID:GHanSblP
生き返るまで最短で2時間だっけ?
最長でも次の学期末には復活したと思う
646創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:19:25 ID:kp0c3Zci
あいかわらずオーバーテクノロジーの類は読んでて嫌になるな
647創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:23:24 ID:AZhxWw3g
死んでる間は授業に出られないけど卒業はできるんだよね?
捕虜にするのが一番残酷って話は珍しいw
648創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:25:04 ID:5lFv1SW/
>>642

俺もパトリックちゃんに1票
649創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:35:06 ID:Zav9iFPn
エレナアホスww
一発逆転を狙うなら敵の本校を狙うだろww
文で説明されてもわからんから地図で描いてくださいww
距離や方角が正確なやつでお願いしますww
650創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:45:51 ID:IQqK8C/r
イチローと室伏の参戦はまだですか?
朝青龍はすぐサボるから今回は抜きでやろうぜ
651創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 22:56:55 ID:y5dO/C/G
これ、作者本人の自演くさいんだけど、本当のところどうよ?
>>304が投下された時点でID:5U6SAR0Z=75 ◆kkZO9WMBekが特定できる情報あったか?


303 名前:創る名無しに見る名無し 投稿日:2009/01/28(水) 06:36:23 ID:5U6SAR0Z
まあなんだ
そんなに投下をやめさせたかったら、ネットでキャンキャン吼えてないで直接俺を始末すればいいのにな
それぐらいのことはやってみせろよ


304 名前:創る名無しに見る名無し 投稿日:2009/01/28(水) 09:19:31 ID:px8CV4RZ
>>303
叩かれるのが嫌なら盗作をやめろ。
盗作でないと言い張るなら万人が納得する理由を創作の中で提示してみせろ。

創作者ならば言い訳でなく創作で語れ。
論破完了。
652創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 00:16:19 ID:HV7C6MO3
乙で
別にそういうわけではなかったのかエレナは、でも捕縛命令がw
なんかガンダム0080の「ミンチよりひでぇ」という言葉を思い出しました
ひどいですけど

そういやあのクロンシュタットだかは無事に逃げおおせたんだろうか
たぶん上司を置いていったから辛そうだ
653創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 14:41:04 ID:HaVo5BOF
そういや今まで平地で戦ってきたみたいだが
山地とか川とかあんのかな
654魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/30(金) 20:36:49 ID:7GLypM/v
第二十一話『幸福なる降伏』
1/2
 黒い雲が空一面を覆うと、遠くで稲妻が光りました。少し遅れて、轟音が轟きます。
 お腹に響くゴロゴロという音はいつになってもなれないぐらいに不気味で、頭を抱えて机の下に逃げたくなります。
 ですが、何事においても優雅でありたい私はそんな衝動を我慢します。
 窓の外は雨のカーテンが降りていて、大好きな風景が見えないので悲しかったりします。
 こんな憂鬱な時はアフタヌーンティーに限ります。
 久しぶりに腕によりを掛けてアフタヌーンティーを楽しむのが義務であり責務なのです。
 駄目です。現実逃避は大概にしないと偉い人に怒られるのです。
 気を取り直して、偉い人の話に耳を傾けます。
 そうです。
 偉い人に呼び出されて長い長い話を聞かされていたので、自己防衛本能が働いて夢の世界で遊んでいたのです。

「そこで、だ。君に彼女達の面倒を見てほしいのだよ」

「え、そんな話聞いていませんが」

「勿論だ。重要機密だから今言ったんだ。前に聞いていたら君をスパイ容疑で銃殺出来たのだが」

「全力でお断りします」

「そうかね? 非常に残念だ」

 最近の偉い人のブラックジョークは切れ味鋭いです。穏やかな顔でさらっと言うのがかなり憎たらしいです。
 繊細な私のハートがブロークンで涙が出てしまいそうです。
 でも我慢です。
 今年のテーマは大人の階段をステップアップです。
 蕾から花へ、蛹から蝶へ華麗なる変身なのです。

「とにかく、君には彼女達の面倒を見て貰いたい」

「彼女達とはどちら様で?」

「――パトリックちゃんの所にいる」

「大丈夫なんですか? 危険な匂いがするのですが」

「彼女達はパトリックちゃんが保護したから平気だろう」

「そうじゃなくて、パトリックちゃんの首ってキュッと抱き締めやすい位置にあるじゃないですか」

「――早く行きまたえ」

 そんな訳でパトリックちゃんの所です。
 私よりも歳が下っぽい女の子が二人ばかりいます。
 お一人はエキゾチックな民族衣装っぽい格好で、もう一人は昨夜の悪夢に出て来たさなこさんっぽい格好です。

「少年老い易く学成り難し。お前、急いどけ!」

655魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/30(金) 20:37:16 ID:7GLypM/v
2/2
 パトリックちゃんは急がせますが、私はゆっくり歩きます。
 廊下だけでなく校内で走ってはいけないのです。
 その事は万国共通だと思っていたのですが、パトリックちゃんに言わせると小者っぽく小走りしないと駄目らしいです。
 流石はお茶の産地です。人智を超越した風習があります。

「良禽は良木をを選ぶ。お前、面倒見とけ!」

 ゆっくり歩いた私に腹を立てたのか、パトリックちゃんはプンスカしながら行ってしまいました。
 そうなると、残されたのは私と見ず知らずのお二方だけになります。

「えーと、貴女方は?」

「シャモがキライだから此処に来たシャクシャイン大酋長言います」

「戊辰戦争の恨みを晴らす為に此処に来た朝敵のアイズと申します」

 お行儀良く挨拶をされると、貴族な私の闘争心に火が着きます。

「わたくしは――」

「コロボックルさんでしょ」

「コロボックル殿――ですね? パトリック氏から話は聞いております。ご指導ご鞭撻の程をお願いします」

「コ、コロボックル?」

 訳の解らない固有名詞で呼ばれてしまうと困惑してしまいます。

 ですが、それを見せないのが淑女のたしなみです。見せてしまいましたが。

「パトリックちゃん、そう言ってた」

「蝦夷地では貴殿が操る妖精の事をコロボックルと言うのであります」

「そ、そうですか」

 多種多様な呼び方に世界の広さを実感してしまいます。

 お二人の話をかいつまむと、大日本帝国の人なのですが、日本人と官軍(?)に先祖代々からの恨みがあるので大英帝国に移籍したそうです。
 ご両人とも魔法兵だそうで、我が学舎も戦力アップです。

「まあ、こんな所で立ち話もなんですから、アフタヌーンティーでも如何ですか? 紹介したい人もいますし」

 紅茶にスコーンは仲良しの魔法です。
 相互理解の為の必需品です。
 ですが。
 アイズさんたっての願いで日本風のアフタヌーンティーになったのですが、地獄を見ました。
 生まれて初めて正座と言うものをしたのですが、足が言うことを聞いてくれません。

 だわだわ星人はだわだわ五月蝿いですし、ビターさんはお茶の苦さに卒倒してしまいました。

 大日本帝国の風習恐るべし。
 足が痺れてしまって、私、泣いてしまいそうです。


――To be continued on the next time.
656魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/30(金) 20:38:01 ID:7GLypM/v
以上、投下終了。

シャクシャイン大酋長
エキゾチックな民族衣装を着た女の子です。
コロボックルというあだ名を私に名付けてくれました。


朝敵のアイズ
白装束を着た女の子です。
お祖父様が会津藩出身ですがご本人は蝦夷地出身らしいです。
薩摩の芋侍や土佐の鰹武士が大嫌いだそうです。
657創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 21:32:33 ID:gWrV5Hxi
乙です

移籍したとは…なんという輩
658創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 21:47:44 ID:lFN9GNCO
乙!
新キャラがどんな術を使うか楽しみです
659創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 21:55:50 ID:0gWvg3FG
自分から朝敵言うのはどうなんだwwww
660創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 13:23:28 ID:JuzCut+5
やっぱり歴史ネタはおもしろいな
661創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 15:13:03 ID:iX89mO3E
あれは朝敵征伐せよとの錦の御旗じゃ知らないか♪ 
トコトンヤレ〜トンヤレナ〜♪
662創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 15:17:19 ID:rlpOd/NB
つ抜刀隊
663創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 17:02:29 ID:k4lZDK01
コロボックルという呼称で川原泉を思い出したw
664創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 21:54:34 ID:cB23C+3j
学園島の戦いは潜水艦による封鎖作戦やっちゃえばいいと思うんだけど、もしかして禁じ手?
665魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/31(土) 22:37:06 ID:Pk+u0PMy
第二十二話『襲撃』
1/4
「敵だ! 大日本帝国の特攻だ!」

「逃げろ! 魔法兵だ! バンザイアタックだ!」

 わーわーわー。

 警備の隙を突いて大日本帝国の魔法兵が白昼堂々攻めてきました。
 白刃の唸りと悲鳴――そして、鉄臭い血の匂いが学舎分校を支配します。
「裏切り者は何処! 刀の錆にしてくれん!」
 刀を振り回して暴れる様はまるで目立ちたがり屋になった切り裂きジャックです。
 兎に角。
 敵は一人、刀を使うとあればビターさんの出番です。
 私達――私とアンさんとビターさんとアイズさんは急いで現場に駆けつけました。
 因みに。
シャクシャインさんは山に狩りに出掛けてしまって留守です。
「白昼の狂気――それは揺らぐ蜃気楼。
 せめて安らかに眠りまたえ。
 永久に、儚く――」
 ビターさんは真剣な顔で戦闘モードになって神剣で不逞の輩を指差します。
「――痴れ者が戯れ言を。御前である、頭が高いわ」
 互いに好敵手を見つけたのでしょうか。二人の世界に入ってしまいました。
「ぼくの名はビター――蕾たる乙女を護る百合の騎士!」
「――知らんな。余は下郎に名乗る名は持ち合わせておらぬ」
 名乗らないから名無しの権兵衛さん(仮名)は女性なので、ビターさんも本気を出せそうで安心です。
 ですが。
 アイズさんは何故か土下座しています。
「あの、アイズさん?」
「いや、自分……頭が高いと言われると条件反射で平伏してしまうのであります」
「それはそれは御愁傷様です」
「いやあ、それほどでも」
 私達の噛み合わない会話と敵が女性なのでモチベーションが上がらないアンさんは帰ってしまいました。
 そんな事より。
 戦っているお二人です。
 打倒さなこさんに燃えて特訓をしたビターさんの剣は凄まじく、名無しの権兵衛さん(仮名)を追い込んでいきます。
 偉そうなわりには口ほどにも無さそうなので、私は妖精さんを呼び出して応援です。横一列に並んで立ったり座ったりです。
 専門用語でいうとウェーブです。
「隙ありっ!」
 ビターさんの強烈な一撃で名無しの権兵衛さんの刀が折れてしまいました。
 ハッキリ言って勝負ありみたいです。
「――ぼくの勝ちだ。素直に敗けを認めるんだ。ぼくの剣は弱者を傷付けはしない」
666魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/31(土) 22:37:34 ID:Pk+u0PMy
2/4
 呆気ない終わりに妖精さんたちはダンスを始めました。
 私はアフタヌーンティーの準備をしようと思います。

「まだだ。刀を一本折った程度で調子に乗るとは――笑止」

 名無しの権兵衛さん(仮名)は諦めが悪いらしくて終わってないみたいです。

「諦めが悪いですね、あの人」

「あのお方はまだ魔法を使っていないのであります」

「え? あの刀が魔法ではないのですか?」

「まさか。あのお方をあんなナマクラで戦うとは思えないのであります」

「あのお方とと言うことはお強いのですか?」

「それは、もう。話にならないくらい強いのであります」

 私達の会話が聞こえたのか、ビターさんは憂いを含んだ表情です。

「きみたち! そういう事は早く言ってくれたまえ!」

 名無しの権兵衛さん(仮名)は唇を歪めて大胆不敵不敵な笑みを浮かべています。

「戯れ事は終いだ。余の力を――冥土の閻魔に語って聞かせるがよいわ」

 ――刹那。
 場の空気が――いいえ、世界が変わっていきます。


“――五月雨は 露か涙か 不如帰
 我が名をあげよ 雲の上まで――”

 ――呪文詠唱。
 一字一句が世界を塗り潰し――いいえ、世界を侵食していきます。
 学舎分校の中庭の一角は日本風の庭園となり、真昼だったのが夜中になり、周囲には篝火が焚かれています。
 火の粉舞い散る中心には、大地に突き刺さった無数の刀――。

「これが余――ヨシテルの魔法――“無限の剣聖”なり!」

 名無しの権兵衛さん改めヨシテルさんの高笑いが世界を支配しました。
 ですが。
 今日のビターさんはヘタレないで凛々しいです。

「刀が沢山あったとしても――負けない。ぼくの剣は愛で鍛えた不敗の神の剣。
 勝利を掴む唯一にして無二の剣」

 再び二人の世界に入って戦い始めました。

 門外漢になってしまった私達はお喋りするしか能が無かったりするのが困ります。

「私は戦闘職種ではないので無理なのですが、アイズさんは助太刀をなされないのでしょうか?」

「互いの誇りを懸けた決闘に助太刀は無粋なのであります」

667魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/31(土) 22:38:42 ID:Pk+u0PMy
3/4
 二対一なら勝てそうなのになにを言ってるんでしょうね、この人。本当に移籍したのでしょうか。
 門外漢は門外漢らしく見物をしてろと言うのでしょうか。
 兎に角。
 ビターさんは戦いの勝手が違うのか押されています。ハッキリ言ってピンチっぽいです。
 だわだわ星人がいれば良かったのにと思ってしまいます。

「――犬畜生にも劣る朝敵風情が武士道を語るとは――片腹痛いわ」

 ヨシテルさんは余裕なのか私達の会話を聞いているみたいです。
 癪ですね。

「きみの相手はこのぼくだ! ぼくを見てくれ!」

 ビターさんも気に入らないっぽいですが、ハッキリ言って簡単にあしらわれている感じです。

「ヨシテル殿! 私は薩匪長賊に弓を引いているのであります! 君側の奸を取り除く為に朝敵の汚名を着たのであります!」
「――笑止。恥を知らぬ犬畜生にも程があるわ。武士道を語るなら腹を切って詫びよ」

「また犬畜生と言われたのであります! 訂正をお願いするのであります!」

「――黙れ。余は犬畜生に語る舌を持ち合わせてはおらぬ」

「また言った! 堪忍袋の緒が切れたのであります!」

 アイズさんは地団駄を踏みまくっています。
 ビターさんと言えば、片手間で相手をされているわりには劣勢です。
 ピンチですね。
 ヨシテルさんは伊庭さんみたいに隙がないので後ろからガツンと出来ないので私にはどうしようもありません。
 つまり。
 見てるだけです。
 足を滑らせたビターさんにヨシテルさんの刀が振り降ろされます。
 さようならビターさん。貴女の事は決して忘れません。いつまでも心の中で生きていて下さい。
 諦めたその時――。

「お前、いい加減にしとけ!」

 必殺の刃をカコンと受け止めたのは――小さいので今まで存在を忘れていたパトリックちゃんでした。

「な、余の刀を止めるとは!」

 ヨシテルさんは刀をどんどん代えてパトリックちゃんに切りかかりますが、全ての攻撃がカコンと跳ね返されます。

「南蛮名物トウコウは矢弾はおろか刀剣を通さず! お前、苛めてやるから覚悟しとけ!」

 流石は焚書坑儒を生き延びたのが自慢のパトリックちゃんです。形勢が逆転しました。

「くっ、これで勝ったと思うなよ!」

 ヨシテルさんは逃走します。追撃のチャンスなのですが、パトリックちゃんは追いません。

「帰帥は追わず。お前ら、負傷者を助けとけ!」

668魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/31(土) 22:39:09 ID:Pk+u0PMy
4/4
 パトリックちゃんの指示により負傷者の収容、被害状況の確認をする事になりました。
 結論を申すまでもなく今回は完敗です。学舎分校の戦力が30%程削られてしまいました。
 己の不甲斐なさを確認したビターさんはアウトドア派のシャクシャインさんと一緒に山籠りに行ってしまいました。
 アンさんはパトリックちゃんとアイズさんと何やら妖しい相談をしています。
 私は学舎分校の補修作業に従事する事となりました。
 偉い人は危機管理がなっていないのをもっと偉い人に怒られて始末書を書いています。

 とりあえず。
 本気を出した大日本帝国は侮れないのが判りました。それは凄い収穫です。
 凄い収穫は良いのですが、混乱のせいで私のとっておきのオレンジ・ペコーが駄目になってしまいました。
 大損害です。大ショックです。
 これは許せませんね。ええ、許せませんとも。
 この恨み晴らさでおくべきかです。

 そんな訳で話は次回に続きます。

――To be continued on the next time.

ヨシテルさん
世界を侵食して自分のステージを作り上げる魔法『無限の剣聖』の使い手です。
偉そうな女の方です。
“剣聖将軍”の二つ名を持つ大日本帝国でも有数の剣の使い手だそうです。
強さは
ヨシテルさん>>>(身分の壁)>>>さなこさん>>(三途の川)>>伊庭さん
との事です。

669魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/01/31(土) 22:40:05 ID:Pk+u0PMy
以上、投下終了。
もはやWWUじゃないですねw
670創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 22:41:43 ID:rlpOd/NB
うん、なんだかわらかんけどBUSHIDOHだけは伝わったw
671創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 22:55:06 ID:zTP1fMof
ヨシテル?足利の剣豪将軍?
672創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 22:58:20 ID:BCPIhI97
乙です
今回はシャクシャインさん役立たず!
そのうち野戦で本領発揮かな
673創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:00:32 ID:yUKsvX30
まてまて、伊庭さん基準でそれってことは相当つええんじゃねえかw
674創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:03:38 ID:Pk+u0PMy
今の伊庭さんは賽の河原で石を積み上げるだけの人です。
675創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:11:17 ID:yUKsvX30
そっか、もうランク外扱いだったのね、、、
安らかに成仏してください伊庭さん。
676創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 10:00:40 ID:inH5LmLU
学園島の空の戦いがどうなっているのか気になる俺。
本校への戦略爆撃ってNGなん?
北爆やってた米軍みたく本国の介入を招くから禁じ手で攻撃できないとか?
677創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 11:12:58 ID:pzCcNnOI
飛行機よりも魔法の箒に乗った魔女とか魔法の絨毯に乗った魔法兵の方が強いから・・・
678創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 11:44:13 ID:AXW8qSlo
鉱山資源確保が先にあり、目的で奪い合っていると思うから
本校を直接攻撃するというのは筋としては、その目的でないと思う

敵本国から介入されるのではないかというリスクを踏まえて、その撃鉄は固く何かで抑えておくとか
そんな感じの不文律が各校で暗黙の了解として生きていたりするからしないとか

まあ絶対ないということはないんだろうが
679創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 12:02:27 ID:inH5LmLU
>>677
魔女の戦力ってどんな感じなんだろうね。
SS読んでいると単体で最強、でも組織戦には不向きなように見えるけど。
そもそも規格外の兵器を通常の軍隊組織に組み込むことが無理なのかもしれない。

>>678
負けそうになったら自作自演で本校攻撃をでっち上げて介入を招くことも最終手段としてはアリだろうな。
680創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 12:13:46 ID:AXW8qSlo
ありうるっちゃああるかもしれないけど
面倒でしょそんなの書くの、そもそも本校とか本国自体…
681創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 12:31:40 ID:pzCcNnOI
>>679
魔女の戦力は魔法次第でピンキリだと思うよ。
682創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 12:51:32 ID:NDoKUgYL
本国はほのめかす程度でやめておいた方が良さそうだね
683魔法のDQN☆ノブナガ ◆NN1orQGDus :2009/02/01(日) 13:49:54 ID:pzCcNnOI
1/2

 空は快晴で雲一つない。
 日本晴れにつられてメリケンの爆撃機――通称“ケンメリ”がやって来た。
 うーうーうー。
 空襲警報のサイレンがやたらと喧しい。
「ノブナガ様! 竹槍の準備が整いました!」

「ノブナガ様! 投石の準備が整いました!」

 迎撃の準備が整った事を、伝令が慌ただしく伝える。

「大義なんだぜ! 湯漬けを持ってくるんだぜ!」

 労いの言葉を掛けつつ、食事の支度をさせる。
 昔から腹が減っては戦が出来ないと言う。
 空きっ腹ではやる気が起きないのは永遠の真理だ。

「ノブナガ様! 敵機が見えました!」

 しかし、敵は此方に余裕を与える事なくブンブン飛んできているみたいだ。

「仕方ないんだぜ! 出陣するんだぜ!」
 下知を下したが、既に出陣の準備が整っていた。

 竜の子太郎、大天狗太郎坊、久留米の仙人――飛行能力を持つ魔法兵が雁首並べて揃っている。

「――ご苦労なんだぜ!」

「飛行機部隊は如何なされますか?」

「飛行機部隊は燃料が勿体無いからいらないんだぜ!」

 量を質で補うのが大日本帝国だ。
 優れた魔法兵がいれば近代兵器は必要ないのだ。

「今日は俺が戦うんだぜ!」

684魔法のDQN☆ノブナガ ◆NN1orQGDus :2009/02/01(日) 13:51:17 ID:pzCcNnOI
2/2

 俺の言葉に一同が歓声をあげる。

「おお! 流石はノブナガ様!」

「うつけは伊達ではありませぬな!」

「天下布武! 天下布武!」

 そんな事をやっていると、ケンメリの大群か肉眼でハッキリ見える距離までやって来た。

「――終わりのノブナガの魔法! 超兵器クニクズシ・タネガシマ!」

 虚空から魔法の超兵器が現れる。

「――魔力充填百二十割! クニクズシ・タネガシマァァァァァ! ドキュンと発射なんだぜぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 クニクズシ・タネガシマの内部で物質化寸前まで圧縮された魔力が解放され――光の奔流となってケンメリの大群を包み込む。
 塵芥すら残さずに敵ケンメリは消失。
 破壊の惨禍は大日本帝国軍の勝利の讃歌に等しい。
 即ち、俺の力で圧倒的な大勝利。

「勝鬨を上げるんだぜ!」

 えいえいおー。

 高らかな勝鬨が勝利の美酒となり、ドクロで作った杯を満たす。
 空を見上げると目に染みるほど青く、お天道様が眩しいくらいに光っている。

 兎に角。
 天下布武で天下を席巻するまではまだまだなんだぜ!

――To be continued on the next time?
685魔法のDQN☆ノブナガ ◆NN1orQGDus :2009/02/01(日) 13:52:00 ID:pzCcNnOI
空の戦いを書こうとしたらこうなったw
686創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 13:55:16 ID:iojGgQwW
キャーノブナガ様ー
燃料とかなくても精神力で勝利! 正しい皇軍の在り方です><
687 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 13:59:41 ID:/UN2z5So
ケンメリが…S20最強の名車なのに…w
688創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 14:19:34 ID:dn329JCU
魔力充填百二十割とか響きはかっこいいけど多すぎだろwwww
689 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 14:21:03 ID:/UN2z5So
百十割ほど多いなw
690創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 14:34:21 ID:pzCcNnOI
メリケンの飛行機はカタいから百二十割じゃないと駄目なんです
決して一割=10%を忘れていた訳じゃないんです
百二十厘よりも百二十割の方がカッコ良さそうなのが悪いんです
そうあう設定なんです
691創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 14:44:34 ID:dn329JCU
ノブナガ様なら百二十割でも納得です
692創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 19:57:24 ID:inH5LmLU
もし学生がクーデター起こして学園の実権を握った場合、教員もしくは大人はどうするんだろうな。
そもそも学園島の戦いに大人がどう関与するかよくわからん。
考えてる人いたら教えてーな。
693創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 20:14:58 ID:HuY9SP6o
先生は基本的に戦闘自体には
余程のことがない限り参加しないだろうという見解があったはず
確か教導するという重要な立場上だからだそうだ

クーデターは知る所じゃないけど
何に対するクーデターかというのもあるし
694創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 20:21:01 ID:iojGgQwW
理由なき反逆があってもいいじゃない、子供だもの
まんま紅衛兵になりそうだけどねw
695創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 20:27:35 ID:inH5LmLU
>>694
もしくは学園島でクメール・ルージュをやる奴が出ないかと心配だ。
学園島を制圧した勢力が豊富な魔法技術を使って疲弊した世界に戦いを挑む。
その理由は理想的な共産主義世界を作るためとか。
696創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 20:37:33 ID:pzCcNnOI
クーデターを起こすと物資の供給が止まりアフタヌーンティーが楽しめなくなります
おまけに朝敵の汚名を着せられます
だから、基本的にはしません。

大人は魔法物質から出る毒電波に弱いのです
茶筒みたいな防護服を着なければならないので一部の例外を抜かしてマトモに戦えません

21:00頃から投下予定。
697創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 20:44:56 ID:inH5LmLU
>>696
>物資の供給が止まりアフタヌーンティーが楽しめなくなります

確かにw

投下待ってますー
698魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/02/01(日) 20:55:07 ID:pzCcNnOI
第二十三話『大決戦』
1/2
 今日は大日本帝国軍が攻めてきたので野戦です。
 野戦となると経験豊富なパトリックちゃんが頑張ってくれるので結構楽だったりします。

「お前ら、敵は鋒矢の陣だから鶴翼の陣を敷いとけ!」

 簡単に図で説明しますと、

 (大日本帝国軍) ↓

 (大英帝国軍)  V

 こんな感じになります。

 ↓の形で突っ込んで来る大日本帝国軍をVの形で受け止めて包囲殲滅するのが今日の予定だそうです。
 Vの字の下の頂点にある本陣に敵が集中するので、私も妖精さんを総動員して柵を作ったりと大忙しだったりします。
 野原で何かを作るのは楽しいので、妖精さんも頑張ってくれたので作業はあっという間に終わりました。
 だけど、一つ問題があります。
 私は本陣の人です。
 本陣に敵が集中する為に、戦闘という血腥い行為が似合わない清楚で可憐な乙女である私も戦闘に巻き込まれてしまう可能性大です。
 パトリックちゃんに言わせると、敵が本陣に到達する前に戦いを終わらせる秘策があるそうです。
 秘策とやらに期待せざるを得ません。

 わーわーわー。どんどんばんばんばきゅーんばきゅーん。

 戦闘の火蓋が切られました。
 戦端が開きました。
 大事な事なので同じ様な事を言いました。

 パトリックちゃんは楽しそうに銅鑼をジャーンジャーン叩いて遊んでいます。
 アンさんは望遠鏡で戦況を見つつ、
「あの人は受けで向こうの人は攻めなのだわ!」
 と妄想カップリングをしてモチベーションを高めています。
 シャクシャインさんとビターさんは山籠りから帰ってきません。
 アイズさんは、
「……戊辰の恨みを晴らすであります……」
 と静かに闘志を燃やしています。

 妄想カップリングに勤しんでいるアンさんが流す断片的な情報によりますと、包囲が完成して大英帝国が圧倒的に有利だそうです。

 駄菓子菓子。ではなくて、だがしかし。
 数少なくなった大日本帝国軍が白旗ではなくて○に+の旗を上げるとパトリックちゃんの様子が変わりました。

「あれは! まさか……まさか……」

 真っ青になってガクガクブルブル震えています。

「あれは……轡十文字! ならば薩摩の芋侍!」

 アイズさんはメラメラと瞳の炎を燃やしています。

699魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/02/01(日) 20:55:40 ID:pzCcNnOI
2/2
 お二人とも並々ならぬ事情があるみたいです。

「こっちに来るのだわ!」

 アンさんの短い悲鳴が響きます。

「負けそうなのに逃げないで此方来るなんてお馬鹿さんですね」

「違うのであります。あれは退却する為に中央突破するという習性……島津の退き口なのであります」

「……島津……シマズ……石曼子だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 げえ、石曼子! と悲鳴を上げてパトリックちゃんはひっくり返ってアワワと泡を噴いてしまいました。

 頼みの綱のパトリックちゃんが弊れてしまいました。
 ですが。
 戦闘はそんな事を気にしないで続行中です。

「戊辰の恨みを今こそ晴らすであります!」

 アイズさんはがおーっ! と敵陣に突入してしまいました。

「私は新しいペットを探しに行くのだわ!」

 アンさんはうふふぅと敵陣に突入してしまいました。

 これはピンチです。逆境でもあります。

 結論から申しますと、中央突破の退却戦などという血迷い事が成功する筈もなく、めでたく大英帝国の大勝利で終わりました。

 アンさんは人道的な配慮として新しいペットを一人拾って来ました。
 返り血で真っ赤に染まったアイズさんは恨みを晴らせたのがよほど嬉しいのか、あられもない格好でニコニコと笑っています。

「ええと、アイズさん……お召し物は……」

「それは魔法のせいで……兎に角! 秘密なのであります!」

 秘密を深く追求するのは宜しくないので、追求はしません。
 ただ、お召し物がなくなってしまったのは色々と危険なので、そこらへんに落ちていた白旗を纏って貰いました。

「武家の棟梁たる源氏の旗を私が……。光栄なのであります!」

 ミロのヴィーナスみたいで少々はしたないのですが、気にしないで下さい。
 
 パトリックちゃんは――服が汚れてしまって私が気を効かせて私のお古の洋服を着せてあげました。
 良く似合っているので飾っておきたいです。

 そんな訳で大勝利の一日でした。
 帰ったらアフタヌーンティーを楽しもうと思います。

――To be continued on the next time.
700魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/02/01(日) 20:56:57 ID:pzCcNnOI
以上、投下終了。
戦闘シーンて難しいですねw
701創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 21:08:00 ID:+s1ziict
>武家の棟梁たる源氏の旗を私が……
グッジョブww
なんて想像させやがるww
702創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 21:10:56 ID:NwIFNtdK
いやいや、軍事系の戦闘ってこういう方がしっくりくると思うよ。
おもしろいですw
703創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 21:47:56 ID:zurBz+2+
軍事系も次回で2クール終わるわけか・・・
704創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 15:43:12 ID:UGSqcJRT
スーパー学園島大戦やろうぜ
705創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 16:49:17 ID:/hL7ddY/
スーパーってなんだよwていうかまた戦かw
706創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 17:32:25 ID:UGSqcJRT
>>705
仮面ライダーの映画みたいに二つの世界のコラボレーションでもいいかな。

なんかの手違いで違う書き手同士の世界が繋がってしまったりね。
707創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 17:57:31 ID:FkNcWEnA
独眼竜エーリヒ対パトリックちゃんですねわかります
708創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:10:43 ID:aEhOaPRQ
まとめサイト更新
ノブナガ様の話が魔法少女軍事系の外伝扱いでいいのかな?
聞いてから編集するつもり。

で、西方条約軍の編成表みたいなもんを作ってみた。
多分突っ込みどころ満載w
709創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:11:14 ID:aEhOaPRQ
アヴィリオン空軍(Luftwaffe)

戦術空軍

・襲撃飛行隊
 ・Fw190F×6個飛行隊108機
 ・Ju87D×4個飛行隊60機
 ・Me262×30機
・要撃飛行隊
 ・Bf109G×4個飛行隊60機
・偵察飛行隊
 ・Ar234D×4個飛行隊60機
・作戦転換部隊×1
 ・Fw190D×18機,Ar234電子戦機×7機
・八十八ミリ高射砲×7個中隊
・対空連隊×3
 ・各2個大隊―各4個中隊
・警戒管制連隊×4

輸送空軍

・重輸送飛行隊
・Me 323×4個飛行隊86機
・軽輸送飛行隊
 ・Ju52×5個飛行隊114機
・特殊作戦航空団×1

 ※その他支援部隊等
710創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:11:46 ID:aEhOaPRQ
アヴィリオン陸軍(Bundeswehr)

・軍管区×3
 ・南部軍管区
 ・中央軍管区
 ・北部軍管区
・戦車師団×2
・装甲擲弾兵師団×4
・砲兵旅団×2
・ロケット砲連隊×2
・高射砲連隊×2
・防空連隊×2
・通信連隊×3
・工兵連隊×3
・鉄道建設連隊×1
・対戦車大隊×2
・空挺大隊×1

・兵器

 ・AFV

  ・MBT(主力戦車)

   ・Panzerkampfwagen IV×600

 ・突撃砲

   ・Sturmgesch?tz III×?

 ・装甲車

   ・Sd.Kfz.251×1000
   ・Sd Kfz 234×500 
   ・Sd Kfz 234/4×?

 ・自走砲/榴弾砲/ロケット/対地/対戦車ミサイル

   ・15cm sFH 18×400
  ・17cm K 18×72
   ・10.5cm leFH 18/40×108
   ・155mm ML-20×54
   ・Nebelwerfer多連装ロケットランチャー×70
   ・Kz8cm短迫撃砲GrW42×250
   ・75mm対戦車砲×120

・高射兵器
 ・2cm Flakvierling38×96
 ・8.8 cm FlaK 18×?
711創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:12:14 ID:aEhOaPRQ
アヴィリオン海軍(Deutsche Marine)

・海上兵力

 ・フリゲート×4
 ・コルベット×9
 ・魚雷艇×45
 ・大型哨戒艦×6
 ・掃海艇×45
 ・戦車揚陸艦×12
 ・情報収集艦×2
 ・補給支援艦×4
 ・給油艦×5
 ・軽輸送艦×2

・潜水艦隊

 ・Uボート×35
 ・ネガー、モルヒ、ビーバー×?
712創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:13:31 ID:aEhOaPRQ
糸冬
713魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/02/02(月) 20:48:01 ID:FkNcWEnA
第二十四話『攻めの対義語』
1/2
 先日アメリカの航空部隊が全滅したそうです。
 日本の学舎(アイズさんに聞いたのですが寺子屋と言うそうです)を爆撃しようとしたら見事返り打ちにされたそうです。
 駄目ですね、アメリカ。
 御自慢の魔法のアメリカン・ヒーローを投入すれ良かったのにと思ってしまいます。
 まあ、風邪の噂によりますと魔法のアメリカン・ヒーローさん達は国技である訴訟に勤しんでいるそうなので投入は無理っぽいのですが。
 兎に角。
 大日本帝国軍に強力な魔法兵がいると困りますので、私達が排除する事になりました。
 敵は本能と言うよりは煩悩の塊の魔法兵、終わりのノブナガさんだそうです。
 移籍してきた人がいると話が早くて助かる事この上ないです。
 今回のメンバーは私とアンさんとアイズさんです。
 パトリックちゃんは学舎分校の防衛で、ビターさんとシャクシャインさんはまだ山籠りです。
 そろそろ帰って来て欲しいのですが、パワーアップの為に頑張っているみたいなので期待せざるを得ません。

 兎に角。
 今回の主力はアンさんです。
 アイズさんの情報によるとアンさんと非常に相性が良いらしいのでそうなりました。
 作戦もアンさんが立てたそうです。
 パトリックちゃんは時々役に立たなくたるのでアンさんの手腕に期待です。

 今回はピクニック気分で良いと言うお達しなので、進軍中なのですが野外でアフタヌーンティーをする事にしました。
 自然を満喫しながら飲む紅茶は格別です。日頃の疲れが癒されます。

 アンさんはうふふと笑いながらモチベーションを高めています。
 アイズさんは美味しい紅茶の飲み方が解らずに悪戦苦闘していたので、教えて差し上げました。
 下々の人に優しくするのは可憐で清楚な乙女の義務であり責務なのです。
 そんな事をやっていると、誰かが来ました。
 着流し姿に上半身を諸肌脱ぎで、柿をかじっている露出狂な人です。

「お前らが俺を呼び出したんだぜ!」

「私が呼び出したのだわ!」

「良い度胸なんだぜ!」

 アンさんはすっくと立ち上がり、露出狂な人と対峙します。

「誰ですか、あのお方」

「あのお方は終わりのノブナガ殿であります」

「俺の名前を知らない奴はドキュンと殺すぜホトトギスなんだぜ!」

 なんて申しましょうか、だわだわ星人とだぜだぜ星人とでは確かに相性が良さそうです。

714魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/02/02(月) 20:49:35 ID:FkNcWEnA
2/2
「あの人はどの様なお人で?」

「誠に言いにくいのですが……男も女もどちらもイケる性癖なのであります」

 あ。なるほど。アンさんと非常に馬が合いそうですね。
 その証拠に二人の世界に入っています。

「――尊大にして傲慢。気性は荒く、激しい。普通なら攻めと考えるのが普通――
 だけど、それは違うのだわ!
 アナタは素の自分を晒け出すのを恐がっている臆病者なんだわ!
 その偉そうな態度、口調――全てが雄弁に物語っているのだわ!
 巧妙に隠していてもこの私には解るのだわ!
 男らしさを過剰に演出する事で臆病で総受けな自分を偽っているのだわ!
 仮面を被るのをやめて、本来の自分に戻るのだわ!」

「な、何を言ってるんだぜ?」

「――アナタは攻めの皮を被った受けなのだわ!
 つまり、皮被りなのだわ!
 アナタは受けにおいて輝く総受けキャラなのだわ!」

 わーい。だわだわ星人がだぜだぜ星人が妖しげな大論戦です。
 言ってる事が良く解りませんが、解らない方が幸せになれそうなので、理解する努力はしません。
 アイズさんは、ちょっと気になるのか、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして聞き耳を立てています。

「な、なんで俺が総受けなんだぜ?」

「――その方が萌えるからなのだわ!
 誘い受け漢受け姫受け鬼畜受け――。
 全世界がそれを望んでいるのだわ」

「……なんだぜ……?」

 腐純真乙女理論で論破された感じのノブナガさんは、ショックでヘたり込んでしまいました。

「攻めれない世の中に絶望したんだぜ……。――是非もないんだぜ。終わりのノブナガ、此処で終わるんだぜ」

 ノブナガさんは懐から扇子とかいうものを取り出してクルクルと踊り始めました。
「――人間十五年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり――」

 結論から申しますと、ノブナガさんはアンさんの説得を受けて総受けとして新たな人生を歩む事となりました。
 獅子身中の虫として大日本帝国を内部から攻撃してくれるそうです。
 もっとも、アンさんに言わせるとノブナガさんは皮被りでウザ受けのケがあるらしいので信用ならないそうです。
 逃がさなくても良いのにと思うのですが、アンさんがノブナガさんに特別なシンパシーを感じてしまったので仕方ありません。

 とりあえずピクニックが楽しかったので今日の所はこれで良しとしましょう。

715魔法少女軍事系 ◆NN1orQGDus :2009/02/02(月) 20:52:14 ID:FkNcWEnA
以上、投下終了。
ひょっとしたらノブナガ様の話は魔法少女軍事系のスピンオフです
多分番外編です
716創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:53:04 ID:96zemM5t
         、          , ヘ
      /l  | _\       / ,, l
     ,'   l  l! ミヽ\、、,ィ 〈ミ j
    i   |   ,ヾ-"´       \
    !   l  /       うるふ  ヽ
    \  lr/      、      ノ !
       >.ノ     /:::::ヽ、    ノ:ヽ`.、  
     l 'ミ    (::::::・::ノ  ー― 、・:::).彡   乙!
     |  ` 、     ̄     ▼j  =´
     }     `ー、     (_,人_)/
     ミ       ` ー――‐ ''´l
      '、    ト、    i^i    /
       `ー― ' ヽ   l l _ノ
             `ー-"
717創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:58:42 ID:HgI+GRRb
グッジョブ!!
アメリカン・ヒーローありかよww
大日本帝国のキャラが楽しみになるじゃないかww
718創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:59:00 ID:b3ORedDX
乙でした
719創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 21:01:03 ID:t3cZi6G6
流れが読めてない、と言われても言わせてくれ。

俺の心は山に篭りっぱなしのシャクシャインさんに向かっている。
720創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 21:26:49 ID:Xt+ARy+U
ノブナガさんなら色々裏切ってくれる気がする
721創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 21:27:42 ID:aEhOaPRQ
乙ー

>>715
では、一応番外編という形で収録しますね。
何かあったら言ってください。
722創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 01:10:29 ID:Sjgp1bZx
人間十五年ってノブナガ様、ショタに全てを捧げる気かww
723創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 03:55:03 ID:o/+4asZV
ノブナガ様の暗躍で大混乱に陥るだろう日本がどうなるか見たいw
724創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 10:20:07 ID:rZkiw260
75氏のせいで◆NN1orQGDus氏が商業作品を盗用した
双方の謝罪を要求する。
725創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 11:20:52 ID:VD8ciG03
大人キャラの扱いって難しいなぁ。

指揮官とか将軍クラスの役割なんだろうか?
726 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 11:50:11 ID:vrSGJ5lS
前線に出られない扱いだからね
とはいえ、限られてくるだろうな
後方指揮か教育専門か
青少年をメインで動かす魔法軍事ものであるために、
ってことで魔法資源がどうのこうの設定してあるんでしょ?
727創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 13:33:29 ID:2MjlLdqQ
わざわざ大人キャラを書く必要はないだろjk
728創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 14:42:11 ID:KscTdHh+
子供を子供らしく演出するためには大人が必要かも
729創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 14:56:11 ID:VD8ciG03
行き詰まった時や悩んでいる時に解決策を示したり相談役になってくれる役割としても大人は必要なんじゃないかな

あと、ちゃんと叱ってくれる大人
730創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 15:47:29 ID:yNIE8rby
大人ねぇw
必要があれば出すし必要がなければ出さない
書き手次第でしょ
731創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 18:54:45 ID:DSNtg+o9
まとめサイト更新。
私は20:45分から投下します。
732創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:58:32 ID:CJIpSf+d
大人はなくても、子供らしさは遊びたい気持ちを抑えるような描写で表現できるしなぁ
73375 ◆kkZO9WMBek :2009/02/03(火) 20:45:59 ID:DSNtg+o9
>>732
童貞で死にたくない!という生々しい人もいたりして。

んじゃ投下いきまっせー。
734創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:46:31 ID:yNIE8rby
支援
7351/20:2009/02/03(火) 20:46:45 ID:DSNtg+o9
学園島戦記譚 第二部 -死闘編- 第三章



 久しぶりに寮へ戻ったマイコは最初、ここは本当に自分の部屋なのかどうか疑ってしまった。
 乱雑に脱ぎ捨てられた服。
 汚れ、蠅の集った食器が積み重なったテーブル。
 常に清潔だった部屋が、今では別人のもののようだった。
 リビングに入ると、うっすらとした明かりが部屋を照らしていた。
「ユーリ……」
 砂嵐の流れるテレビの前で、弟が座っている。
「あっ、姉さん。帰ってたんだ」
 振り向いた弟――ユーリ・パステルナークの目には大きなクマができ、マイコと同じ琥珀色の瞳には生気がまるで無かった。
「ご飯作ろうか?」
「い、いや。食べてきたら大丈夫だ」
「そう……」
 マイコはユーリに何と声をかけたらいいか、わからなかった。
「姉さんは明日から暫く戻れない。お前を一人にすることになる。何かあったら……」
「聞いたよ姉さん。エレナさん、死んだんだってね」
「ああ。お前にも、何と言ったらいいのか……」
 弾かれたようにユーリは立ち上がり、マイコの正面に立った。
 温和でからかわれるだけだった弟の顔はどこにもない。
 明確な『憎しみ』がそこにあった。
7362/20:2009/02/03(火) 20:47:25 ID:DSNtg+o9
「姉さん! 貴方って人は、どこまで汚い人なんだ!」
 強烈な平手打ちを浴びせた後、ユーリはマイコの襟を掴んだ。
「自分のために人の気持ちを利用するなんて……それは、それは、人間が絶対にやっちゃいけないことなんだ!」
 マイコは腕を振り払う。
 自分でも気付かないうちに泣いていた。 
「必要だったことだ。お前の未来のためには!」
「偉そうなことを!」
 ユーリの、小ぶりな拳がマイコの頬を抉った。
 マイコは本棚に叩きつけられ、本の雨を浴びた。
「何が僕の未来のためだ。そうやって姉さんは自分を正当化して、エレナさんを利用して! おかしいよ!」
 図星以外の何物でもなかった。
 マイコはユーリの未来を守るとして自己正当化を行い、ありとあらゆる暴虐を尽くしてきたのだ。
「今はわかってもらえんだろう。だが、いずれわかってくれる」
「人でなしの気持ちなんてわかりたくもない! わかってたまるかよ!」
 唾を吐き捨てて、ユーリは寮から出て行った。
 マイコはその背中を追いかけられなかった。
「私だって、好きでこんなことをしてるわけじゃない……」
 泣く権利など自分にはないと、マイコは知っていた。
 だが、泣かないと発狂してしまいそうだった。
737創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:47:57 ID:ZRSPI5fY
支援
7383/20:2009/02/03(火) 20:48:37 ID:DSNtg+o9


 通路は暗く、長かった。
 僅かな光を灯すランプに蛾が何匹も引き寄せられ、舞っている。
 マイコ・パステルナークは廊下を進む中で、見えない重圧と罪の意識に押し潰されそうになった。
 私はこのドアを開ける資格があるのか――?
 戦死者が眠る安置室のドアが、マイコにはまるで地獄へと通じる扉に思えた。
 だが開けなければならない。
 自分の犯した過ちと向き合い、現実を直視しなければならない。
 重く冷たい扉を開けると、数名の軍医が現れた少女の姿を見て、部屋を去った。
 マイコはそれがありがたかった。
「エレナ……」
 台の上に置かれた遺体は布に覆われ、隙間からは金色の髪が覗いていた。
 マイコは遺体の側で崩れ落ちる。
 両手が無い。
 足も、片方が無くなっているじゃないか……。
7394/20:2009/02/03(火) 20:49:08 ID:DSNtg+o9
「痛かっただろう。苦しかっただろう」
 今更偽善的な言葉を吐く自分に腹が立った。
 エレナを死地に送って惨たらしく死なせておきながら、自分はのうのうと生き、悲しんでいる。
 なんと自分は厚顔無恥なのだろうか?
 エレナは後の世まで語られる。
 無謀な攻撃で部隊を全滅させた愚将と。
 自分の力量を弁えることのできなかった無能と。
 死してなお、鞭を打たれ続けるのだ。 
「さよなら、エレナ」
 悲しい再会は十分も経たずに終わった。 
 再びマイコは暗く長い廊下を進む。
 エレナの死によって自分が変わりつつあることを、マイコは自覚していた。
「私は半身を失った。だから私は、阿修羅の半身を身に纏う」 
 琥珀色の両眼には狂気に似た炎が宿っていた。
 破滅への階段に一歩踏み出した自覚がマイコの中で広がっていった。
7405/20:2009/02/03(火) 20:50:20 ID:DSNtg+o9


 ヴォルクグラード本校近くに喫茶店『紅い眼鏡』はある。
 店内の一番奥の席で、オルガ・グラズノフとセルフィナ・フェドセンコは二人、コーヒーと時間を共有していた。
「エレナが死んだ……か」
 男性的な印象を他者に与える、オルガの端麗な顔が歪んだ。
 口調も外見も男じみたオルガだが、外見には不思議と女性の美しさも兼ね備えられていた。  
「内心で喜んでいるくせに」
 蝙蝠の耳でしか聞こえないほど小さな声でセルフィナが言う。
 彼女は『怜悧』という言葉を、そのまま人間にした姿をしていた。
「てめぇなぁ。仮にも一緒に戦った仲間なんだぜ? その言い方は無いだろう」
「お前が優しいのは私だけでいい」
「俺は自分以外の人間に優しくするつもりは無い」
 口でそうは言ったが、オルガはエレナの死に酷く気落ちしていた。
「あいつは、俺たちみんなのために死んだ。それは確かだ」
「ああ」
「正直な話、あいつに死なれたのは俺達にとって痛手だ。大佐は有能だが、それはエレナの補佐あってのことだ」
「大佐は魔道兵としての才覚に長けてはいるが、指導者としての才能は危ういものがある。だからこそ、今回付け込まれた」
「だが、こんなことをされて大佐が黙っているわけがない。こりゃ、近々何かあるぞ」
 そこに呼び出しが来る。
「何の用だ?」
「"ポチョムキンではパンが足りない"です」
 セルフィナはオルガに目配せし、共に頷いた。
 ついに始まったのだ。
 二人が長い間望んでいた、怨敵の凋落が。 
741創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:50:41 ID:yNIE8rby
しえん
7426/20:2009/02/03(火) 20:51:01 ID:DSNtg+o9


 その日はいつもと変わらない朝だった。
 鉛色の空。
 重苦しい雲。
 ヴォルク軍の医療用護送列車は鉄道の交差ポイントの横で止まっていた。
 薄汚い列車の中には東部戦線で心身共に傷ついた若者達が、許容量を遥かにオーバーした列車の中に詰め込まれていた。
 彼らの顔には生還の喜びよりも、体の芯にまで染み込んだ恐怖と絶望の方が大きかった。
 線路のすぐ横に走る歩道をヴォルクグラード人民学園の生徒達が進む。
「今度の期末考査、全然勉強してないよ。どうしよう……」
「特に数学だよ。あんなものわかる人間は、頭の中が計算機でできてるんだ」
「違うよ。お前ば馬鹿なだけだ」
 朝の通学路を進むの生徒達の話題は、次の期末考査で持ちきりだった。
 兵士達は自分らと多少の相違しかない年齢の生徒達を、重苦しい眼差しで見つめていた。
「おい……」
「目を合わせるな。行こう」
7437/20:2009/02/03(火) 20:52:13 ID:DSNtg+o9
 視線に気付いた生徒達は足場にその場を去っていくと、列車のあちこちから重い溜め息が流れた。
 疲弊しきった兵士達には、もう怒るだけの力も残されてはいなかった。
「おい、飛行機だぞ」
 空から聞こえた爆音に、一人の兵士が気付いた。
「やけに低く飛んでる。危ないなぁ……」
 顔を包帯で覆った別の兵士は、赤黒い包帯の間から視界のスペースを指で開き、空を見た。
 旧式の複葉機が一機、飛んでくる。
 複葉機は高度を落とし、やがて開けた場所に着陸した。
 操縦席から白い鳩が飛び立った後、『Peace』と書かれた旗を振りながら、一人の青年が大地に降り立った。
「やあ。ヴォルクグラードの人民諸君! 私はディエゴ・マルチネス。東西の対立を解消し平和をもたらす為、ここに降り立った!」
 呆然とする生徒達の前で、マルチネスは奇怪なポーズを取る。
「ラブ&ピース! 人類は皆兄弟!」
7448/20:2009/02/03(火) 20:52:44 ID:DSNtg+o9


「本校の防空体制は一体どうなっていたんだ!」
「高官達の責任問題は免れないぞ!」
「馬鹿な! 予算を十分によこさなかった貴様らの責任だ!」
 いつものマトリョーシカ人形ではなく、今日彼らは全員が直接テーブルを挟んで向き合っていた。
 それだけ、赤の広場――本校の鼻の先に所属不明機の侵入を許した事態は、ヴォルクグラード人民生徒会にとって衝撃的な出来事だったのだ。
「やめないか。見苦しいぞ」
 人民生徒会のトップであるディミトリ・カローニンが発言すると、形骸化した議論を続けていた生徒会役員達は押し黙る。
「我々は足場を切り崩されつつある。見ろ」
 ディミトリが言うと、生徒会室のスクリーンが光を帯びた。
 画面に映ったのは、赤の広場に着陸した複葉機の前に立つ報道委員が、今回の事件は全て生徒会の失態であると唾を飛ばしながら話している。
「こ……これはどういうことです!」
「報道委員が裏切ったというのか!」
 報道委員は潤沢な予算と権利を保障される代わりに、人民生徒会に対するありとあらゆる情報を操作してきた。
 事件を捏造し、英雄を反逆者に仕立て上げる――大多数が白と言っても、報道委員が伝える『総意』こそが常に真実だった。
7459/20:2009/02/03(火) 20:53:11 ID:DSNtg+o9
「なんてことだ……」
 今まで自分達の権力を守ってきたマスメディアが、自分達を追い込んでいる。
「奴だ! パステルナーク大佐だ!」
「そうだ! そうに違いない!」
 役員達は口々に憎たらしい人間の名前を口にする。
 自分達のしてきたことは善行であり、それを邪魔したり阻む人間は敵だ!
 なぜなら自分達は生徒によって"民主的"かつ"平和的"に選ばれた代表なのだ!
 人民が選ばれた代表に反旗を翻すのか!
 何もかも、パステルナーク大佐が悪い!
「あー……諸君」
 ディミトリは呆れた口調で言ったが、もはや役員達は被害妄想に近い感情を、汚い言葉で吐き出すことに夢中だった。 
「諸君?」
 額を掻きながら、もう一度言う。 
 役員達は聞く耳を持たず、仲間同士で言い合いを始めた。
 ディミトリは一人、静かに会議室を出た。
「是非も無し、か」
 罵りあいの聞こえる部屋から離れ、時計の脇にある小さなスイッチをディミトリは押した。
746創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:53:46 ID:ZRSPI5fY
私怨
747創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:53:58 ID:yNIE8rby
支援
748創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:57:28 ID:CJIpSf+d
支援
74910/20:2009/02/03(火) 21:00:02 ID:DSNtg+o9


 翌日、ヴォルク校内新聞の一面を『人民生徒会、原因不明の爆死!』という文字が飾った。
 生徒会書記長ディミトリ・カローニン以外の役員全てが生徒会室の爆発で死亡したのだ。
 報道の後、生徒達の間でこんなジョークが飛び交った。
「人民生徒会はみんな死んだ。だがカローニンは生きている」
「逆のほうが良かったなぁ」
750創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:00:35 ID:yNIE8rby
紫煙
751創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:00:39 ID:ZRSPI5fY
しえん
75275 ◆kkZO9WMBek :2009/02/03(火) 21:00:40 ID:DSNtg+o9
途中でさるさん食らってしもた。
支援に心から感謝。

んでは名無しに戻ります。
753創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:02:19 ID:yNIE8rby


所でこのスレで人気キャラと言えば誰だろう
754創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:02:46 ID:DSNtg+o9
>>753
ゴッチさん
755創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:04:02 ID:CJIpSf+d
756創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:06:04 ID:VD8ciG03


エレナの存在は予想外に大きかったみたいだな
757創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:07:07 ID:yNIE8rby
>>754
ゴッチさんは強すぎてパワーバランスが崩れます><
758創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:11:42 ID:DSNtg+o9
>>756
正直エレナがどんな人間、どんなキャラとして読者に受け入れられているかかなり気になる。
俺のSSはキャラが弱いと言われてるからなぁ。
改善はしてるつもりなんだが。

>>757
それでも単体での強さならなんとかなるはず・・・w
759創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:25:03 ID:yNIE8rby
>>758
エレナは大剣をブンブン振り回すソードインパルスってイメージ?
760創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:29:37 ID:DSNtg+o9
>>759
そうだね。
エレナの武器が剣だけっていうのは寂しくないかと、死なせた今になって後悔してるw

あとマイコはガンダムで言うと・・・オーバーフラッグに近いかなぁ。
761創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:33:43 ID:yNIE8rby
>>760
エレナは伊庭さんよりも死に様がカッコいいから安心しる!
762創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:40:26 ID:DSNtg+o9
>>761
ありがとう。

いつかはマイコやエーリヒとハルトシュラーさんが戦うところを見てみたいなぁw
というわけで今日は落ちます。
763創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:32:36 ID:cYwAoXyt
               _,......,,,_
               ,、:'":::::::::::::::::``:...、
           /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
          i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
            !::::::::::::::::::::::;‐、:::::::::_::::::_::::';
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         r''ヾ'::::::::::/  ::          |
         l r‐、\::/  _,,、ii_;;_、    _,,,l、
         ヽヾ〈    ::= -r:;;j_;、`/ :;'ィ;7
          !:!_,、    :: ` ー  : |: `´/
         ,./ヽ |  、_  ::  ,: 'r' :i |:  /
       ,../ `ヽ;_  i | '"、_:::__`:'‐'. /
        / ``'ー 、_\  ! `::` ̄''`チ`シ
    /ー 、_    `\:、_ :: ` ̄/   なんか支援頼んで必死でしょ。
   /     ``ヽ、   ヽ`'7‐--'゛
  /          `ヽ、 `/         盗作家75 ◆kkZO9WMBekwwwww
. /      _,;:::::::::::;;_   ``\
/     ,、:'゛      ``ヽ、  `i
 / //           \i ヽ
764創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:38:38 ID:PwubrCm6
気持ち悪い事やっておいて、その自覚が無い反応がさらに気持ち悪いなこの作者。
765創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 04:04:28 ID:YNi2zZG4
乙です
赤の広場に民間機はアレか…昭和末期か、感慨深いな

生徒会幹部をマトリョーシカ人形にたとえたのはいいたとえですね
彼らがそういう性質を持つからこそ粛清の中生き残り、あたかもマトリョーシカの如くなるとも言えますが
良い参考になりました
766創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 10:13:59 ID:/h2gvfZ6
75氏のSSは面白いけどキャラが立ってないから二次創作はムズイな
NN氏のキャラが立ちすぎてるからそう見えるだけかも試練が
767創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 12:07:17 ID:hedw4mGq
エレナはドイツ軍だったら生き残れたかもな
あのまま捕虜になって、腕は機械、腹には機関砲、顔にはレーザーが付けられ…
性格はZZの強化された後のマシュマーみたいな感じで変貌とかww
768創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 12:19:11 ID:axZkBwTy
>>767
エレナ「おはようございました」

エレナ「我がヴォルク軍の技術力は世界一ィィィィ!」

エレナ「頭がいてぇんだよ〜」
769創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 12:29:23 ID:hedw4mGq
>>768
一行目wオレンジ!オレンジじゃないか!
そういや改造キャラは奴を忘れてた

アヴィリオンがわざわざ捕虜にしようとしたのは
その能力を見込んでエレナを第二のシュトロハイムにだなしようとして…
770創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 13:08:57 ID:axZkBwTy
エレナがシュトロハイム化よりユーリがダース・ベイダー化する可能性の方が高くはないか
771創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 15:35:17 ID:HK36XAY6
エーリヒが蒼天航路風惇兄になる日の方が近い!
訳ないかw
772創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 17:32:43 ID:d4gUsGdS
失望と憎しみ
ユーリはどこへ向かうのか
773創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 18:31:11 ID:9Zr5sXx7
かわいそう。絶対踏み台にされるよ彼。
774創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 18:33:02 ID:HhS308NU
エアーウルフとか懐かしいな。
775創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 18:37:24 ID:m9SUCNir
都合が悪くなると八つ当たりして逃亡するのは基本だな。
最大限の努力は尽くした、だから俺は悪くない、と思っているところも。
776魔法の歌姫に纏わる物語 ◆QpuCA.Wo6g :2009/02/04(水) 19:03:26 ID:i3EziWMS
ねえ、みんな。
魔法少女って知ってる?
素敵な力で戦う女の子の事よ。
子供じゃないの。
女の子。
なんでも出来る。
女の子。

実はね。
私。
魔法少女。
秘密だよ?
だって。
恥ずかしいじゃない。
私の名前はね。
ディアンヌって言うの。
生まれは。
ドーバー海峡の底。
そこには人魚の国があるの。
私。
お姫様ナノダ。
今はフランス所属。
レジスタンス魔法少女よ。
えっ?
何故イギリスじゃないかって?
だって。
フランスの方がオシャレ。
退屈な英国紳士より。
小粋なパリジャンね。
その方が素敵。

私の任務はね。
歌姫なの。
尚且つ。
諜報部員よ。
素敵でしょ?

折角だから。
歌を歌うわね。
タイトルは。

『パペピプペポパポパリジェ〜ンヌ』
777魔法の歌姫に纏わる物語 ◆QpuCA.Wo6g :2009/02/04(水) 19:04:10 ID:i3EziWMS
『パペピプペポパポパリジェ〜ンヌ』

煌めくシャンゼリゼ 歩いていると
みんなが私に振り向くの
至極当然 当たり前だわ
艶やかな髪 薔薇色の頬
シャインリップ ビビデバビデブー
リップって言っても e判定ルッツじゃないわ
潤う口唇 プルルンル〜ん

パペピプペポパポパリジェ〜ンヌ
憧れの的 ケセラセラセラ
ラリルリレリロリロマンティ〜ック
見上げれば凱旋門
熱いベーゼ 百万フランで夜露死苦ネ


私の歌。
どうだった?
次回は私の友達を。
紹介するわね。
778創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 19:11:47 ID:EPrd1XrA
唐突すぎてめちゃめちゃわろたw

分からないけど超期待www
779創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 19:21:28 ID:Lrmdz1m+
この展開…何が始まるんです?
780創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 19:21:51 ID:d4gUsGdS
なんかあれな歌姫だなw
人魚の世界は一体…
781魔法の歌姫に纏わる物語 ◆QpuCA.Wo6g :2009/02/04(水) 20:04:52 ID:i3EziWMS
ねえ、みんな。
私の事。
覚えてる?
忘れられてたら。
泣いちゃうゾ。
そう。
正解。
魔法の歌姫ラディカルディアンヌよ。
今日はね。
私のお友達を紹介するわ。
魔法のディーヴァロジカルロザリーちゃん。
彼女はね。
高貴な血を引く。
フランス貴族のお嬢様よ。
血統は。
私には負けるけど。
私はソプラノ。
彼女はメゾ。
例えるなら。
叙情的な私。
荘厳な彼女。
比べる事なんて。
出来るわけないの。
言えるのは。
女の子は。
ちょこっと隙がある方が。
可愛いの。
そう思わない?

それじゃ。
彼女の歌を。
楽しんで?
782魔法の歌姫に纏わる物語 ◆QpuCA.Wo6g :2009/02/04(水) 20:05:43 ID:i3EziWMS
『キミに虜☆ロール』

高鳴る胸 シトワイヤン
行こう 約束の場所
パンなんていらない お菓子だけ
キミの甘い瞳に釘付け
スイートスイートスイート
ほろ苦ロマンス そんなのいらない
ノワールノワールノワール
暗い未来 トリコロールで塗り潰せ!

キミに虜☆ロール! セッシボン! セッシボン!
熱い視線を浴びて 輝くわ
ワタシ虜☆ロール! ボンジュール! ボンボヤージュ!
熱き血潮 感じて旅立つ
君とランデブー

彼女の歌。
どうだった?
彼女の事も。
夜露死苦ネ。
歌の感想。
聞かせてネ?
783創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 20:46:58 ID:7RITeWhf
横文字好きでいらっしゃるか…荘厳
784創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 20:50:32 ID:nq9VjY7u
なんかあれを思い出した、あたし彼女
もしかして狙って書いてるのかな
785創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 20:56:30 ID:Lrmdz1m+
新規さんきてれぅ

21:45分から投下しますです
786創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 20:57:14 ID:HK36XAY6
どちらかと言えば折原みとではなかろうか。
兎に角乙。
腹が捩れてマトモな感想が書けんw
787創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:05:43 ID:CoYB55oS
やべえなんかニヤニヤするwwww
78875 ◆kkZO9WMBek :2009/02/04(水) 21:45:16 ID:Lrmdz1m+
続きいくよー
78911/20:2009/02/04(水) 21:46:06 ID:Lrmdz1m+

 
 生徒会室爆破の一件以来、ヴォルクグラードの校内はちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
 各委員会から選別された代表によって成立した暫定生徒会の統治は決して適切ではなかったが、前が悪ければ自然と後に出るものは良く見える。
「ビバ・デモクラシー!」
「くたばれディミトリ・カローニン!」
 昼休みになると、生徒たちはこぞって自由への喜びを口にした。
 生徒会や体制への不満を口にできる。
 強烈な抑圧と統制は、たったそれだけのことで至福の一時を生徒達に与えた。
 ただ一人――ユーリ・パステルナークだけは喜べないでいた。
 悪辣な旧生徒会を倒した美しき戦乙女、マイコ・パステルナークの弟……。
 レッテル貼りにも等しい賛美がユーリに降りかかった。
「あんたの姉さんのおかげだ! ありがとよ!」
 廊下に出れば、男子生徒が集まって彼を賛美する。
「貴方にキスを送っても良いですか?」  
 食堂に行けば、女子生徒が集まって彼を賛美する。
 ユーリはいつも引きつった笑いと控えめの言葉だけを残した。
 素直に喜べないのだ。
 確かに旧生徒会が無くなったのは嬉しい。
 だが、今の状況はエレナの死と引き換えに手に入られたものだし、何よりユーリは単にマイコの弟であるだけなのだ。
 それにユーリは姉に対して複雑な感情を抱かずにはいられない。
「僕は、姉さんにただの姉でいてほしかった。英雄なんかじゃなく、だらしない姉さんでいてほしかった」
 ある時、ユーリは校庭に人だかりができていることに気付いた。
790創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:46:38 ID:CoYB55oS
のび太「ドラえもん!どうしてイスラム教は西洋に敵視されるの?」
79112/20:2009/02/04(水) 21:46:59 ID:Lrmdz1m+
 どうしたんですと聞くと、生徒は笑いながら見せてくれた。
 数名の女子生徒が殴られ、蹴られ、髪を鋏で切られている。
「……ッ」
 ユーリは言葉を失う。
 一体、ここで、何をやっているんだ――!?
 泣き叫ぶ女子生徒の頭は丸坊主にされ、僅かに残った髪がより悲惨さを現していた。
「この人達が、何をしたっていうんです!」
「内務委員と寝たんだ」
 生徒達は笑いながら、禿頭になった女子生徒を蹴飛ばす。
 雌犬、雌犬と叫び、暴虐は続いた。
 ユーリは耐えられなくなって、その場を走り出した。
 こんなことのためにエレナは死んだのか!?
 こんなことのために姉さんは戦ってきたのか!?
 こんなことのために僕は――。
 ユーリは決意する。
 今のままではいけない。
 今を変えるため、自分も変わらなければならないと。
79213/20:2009/02/04(水) 21:47:29 ID:Lrmdz1m+


 ヴォルクグラード郊外の空港には、脱出を図る生徒会の関係者が押し寄せていた。
 輸送機へと続く長い列。
 内務委員。
 各委員会の重役。
 友達や恋人を頼って来た一般生徒もいた。
 誰もが恐怖に顔を引きつらせていた。
 生徒会の崩壊後、今まで自分達が他人に与えてきた無意識の悪意が、そのままの形となって返ってきた。
「こいつは?」
 地獄からの出口――輸送機の入り口の前に立つ壮年の男性教師が担架に乗せられた生徒の制服を捲った。
 膿と血で腹部は一色だった。
「こりゃ自分でやった傷だな。除外」
「ハッ」
 教師が小さく手を払うと、負傷した生徒は担架ごと兵士に連れて行かれた。
 兵士は火炎放射器で焼かれる死体の山に向けて、生徒を担架から乱雑に叩き落した。
「待ってくれ! やめてくれ!」
 防護服を着た兵士が火炎放射器のノズルを向け、生徒を消し炭に変えた。
 "除外"、"不適格"、の烙印を押された生徒は容赦なく捨てられた。
 頭を拳銃で撃ち抜かれ、燃え盛る死体の山に投げられる。
「美化委員長の知り合いなんだ! 身分証もある! 乗せてくれ!」
「ここに残ったら殺されてしまう! まだ死にたくない!」
「もう自分のクラスに戻れないんだよ!」
 悲壮な形相で輸送機に迫る生徒達を、内務委員や憲兵隊は空への発砲で防いだ。
793創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:47:33 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 それはイエス・キリストについての認識が異なるからだよ
    /   /⌒ i'⌒iヽ、
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ どうゆうことさ?
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
                    ``''''''``'''''´
794創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:47:43 ID:7RITeWhf
しえん
795創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:48:03 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 それについて説明する前に、まずはイスラム教の外観について話そう。
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 そもそもイスラム教はキリスト教と同じくユダヤ教を母胎とする
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ 宗教なんだ。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ えっ!?それは本当なの?
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
                    ``''''''``'''''´
79614/20:2009/02/04(水) 21:48:23 ID:Lrmdz1m+
「内務委員が優先だ!」
「何が優先だ! お前らのせいだ! お前らのせいでこんなことになったんだぞ!」
「そうだそうだ! 人民を守ると言っておきながら、我先に逃げるのか!」
「我々が生き延びねばヴォルクグラードは失われる!」
「ふざけるな! 命惜しいだけだろうが!」
 数の暴力は恐怖の増大と共に、大きなうねりに変わった。
 人でできた地面が動き出す。
 窮状に陥った生徒達は銃口を怖いと思わなくなっていた。
 報復への恐怖、怒り、自暴自棄の感情が混ざり合い、怒涛となって内務委員や憲兵を押し潰した。
「是非も無し……か」
 傷一つ無い制服を着たディミトリ・カローニンは魔道兵と重装備の兵士達に守られながら輸送機へと収まった。
<<今、ヴォルクグラードは絶望の淵にある! 私は諸君らに問う。人民生徒会の支配していた頃のヴォルクグラードは、一体どこにいたか?>>
 自分を権力の座から叩き落した女の声が飛行場全体に響き渡った。
 ディミトリはマイコ・パステルナークが次に言う言葉を知っていた。
<<あえて言おう。絶望の淵から、一歩進んだ場所にいたと!>>
 アネクドートにしては微妙だなと思いつつ、ディミトリは輸送機のシートに腰を下ろした。
 飾り気の無い席だが、贅沢は言えない。
「予想外に大佐のシンパは多かったようだな」
「ハッ。軍内部だけでなく、各委員会も切り崩されていたようです」
「想定の範囲内だ。すまないがレコードを持ってきてくれないか? マーラーの交響曲第一番が聞きたい」
「畏まりました。同志書記長閣下」
 副官が去った後、ディミトリは窓の外を見た。
 夜が近づきつつある。
 長い夜になりそうだった。
797創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:48:38 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 ほんとうさ。両者は共に預言者アブラハムやモーセらが神と契約した
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 「旧約聖書」を教義の内容にしている。だからイスラム教もキリスト教も
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ 根っ子の部分は本来は同じなんだ。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ 根っ子が同じなのになんでこんなに
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ         争うことになるのさ?
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
                    ``''''''``'''''´
798創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:49:08 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 それこそが「イエスの認識」という問題があるからなんだ。
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 これはどうゆうことかと言うと、キリスト教では神の言葉を
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ 伝えていたナザレのイエスがいつの間にか神になってしまったんだ。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ確かイエスは人であり、精霊でもあり、
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ        神でもあるとする三位一体説のことだよね…
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
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 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
                    ``''''''``'''''´
799創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:49:44 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 そう、キリスト教は預言者イエスを神にしてしまったんだ。では、
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 イスラム教ではイエスはどのような扱いかと言うと、彼は
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ 神の言葉を伝える一介の預言者に過ぎないという考えなんだ。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽつまりイスラム教ではイエスは
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ        ただの人間…
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
                    ``''''''``'''''´
80015/20:2009/02/04(水) 21:49:49 ID:Lrmdz1m+
☆ 

 大勢の人間の前で大言壮語を吐くことは、なかなか恥辱心を煽られるものだった。
 美術部が総力を結集して作った自分の自画像の前でマイコは演説する。
 体育館に詰め掛けた多くの生徒達の視線が、一つ残らず自分を見ている――そう考えると、なかなかに複雑な心境だった。
「この学園、ヴォルクグラードは、生徒主導の名の下に生徒会独裁政権を敷く、極めて不安定なものである。
しかも生徒会の行う施策は自分らの利益と権力維持と拡張にのみ行われ、彼らは生徒を死地に送り、自らは安全と平和を享楽していたのだ。
多くの生徒が生徒会に異を唱えた時、彼らは生徒会に暗殺された。そして生徒会は条約軍と戦った」
  マイコは芝居めいた動作で大きく腕を広げた。
「結果は諸君らも知っての通り、ヴォルクの惨敗で終わった。
その後戦争は泥沼化し、犠牲は増大し、ディミトリ・カローニンのような独裁者を生み、正義を気取る内務委員の跳梁ともなった。これが、ヴォルクグラードの歩んできた歴史である。ここに至って私は、ヴォルクを内部から変えるべきだと確信したのである。
それが、今回のクーデターの真の目的である。これによって、ヴォルク腐敗の原因である、人民生徒会を粛清する!」
 マイコは生徒達から、大歓声によって報われた。
 堂々とした歩みで舞台裏に姿を消す最中、マイコは内心で安堵していた。 
「これでは道化だな……」
「わかりやすいシンボルが必要なのです。みんな喜んでいますよ」
 舞台裏で報道委員はタオルをマイコに手渡す。
801創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:50:17 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 だからやっかいなんだよ。キリスト教では「イエス=神」であるのに対し、
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 イスラム教では「イエス=預言者(人)」なんだ。つまり両者の主張は
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ まったくの正反対。ここに争いが起きないはずがないだろ?
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ 確かにそうだね…宗教で一番肝心なのは
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ        教義だからね。その教義が誤っているとなると
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ     熱くなってしまうね…
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
                    ``''''''``'''''´
80216/20:2009/02/04(水) 21:50:18 ID:Lrmdz1m+
 マイコはそれを受け取り、額に浮いた大粒の汗を拭いた。
 額だけでなく、全身の肌が汗で下着と張り付いて気持ち悪かった。
「ところで、例のプランは進行しているか?」
「はい。生徒会の主権移譲及び、革命生徒会の全権を保障させる旨は既に伝えてあります」
「ならいい。本国はどうか?」
「傍観の姿勢です。エージェントを通じて、今回のクーデターに対する無干渉を通告してきました」
「所詮は子供の戯言だ。大人から見れば笑いものだろう」
 報道委員長が何か言おうとした矢先、別の報道委員が彼に耳打ちした。
「大佐、爆弾テロです」
「場所は?」
「本校、第七校舎」 
「なんだと!?」
 マイコの顔が驚愕に引きつった。 
「第七校舎は……ユーリのいる場所じゃないか!」
 考えるより早く、マイコは走り出していた。
80317/20:2009/02/04(水) 21:50:47 ID:Lrmdz1m+


 山中に降りるなり、オルガ・グラズノフとセルフィナ・フェドセンコはローブを解除した。
 木々の間からは、黒煙の立ち上る校舎が見える。
 ヴォルクグラード人民学園、第七校舎――別名図書校舎とも言われている。
 校舎そのものが図書館なのだ。
「"目標"は完全に殺せただろうか?」
「どっちでもいい。できれば上半身と下半身が分かれてることを祈っている」
「お前は歪んだな。オルガ」 
「今更、誰が善人面できるかよ」
 セルフィナは押し黙った。
 二人が殺そうとしたのはユーリ・パステルナークだった。 
「これで大佐と生徒会は最後まで戦うことになるぜ。どちらかが滅びるまで」
 オルガは言う。
 マイコは誰よりも弟を溺愛していた。
 その弟が生命の危機に瀕したのなら、まず間違いなく感情論に走るに違いない。
 マイコは兵士としても指導者としても有能だが、感情を制御できない一面があった。
 今まではエレナがいたが、今はもう死んだ。
 そして、自らを正義の騎士と名乗る報道委員長はマイコに真実を伝えない。
 穏便な解決ではなく、血と暴力による革命を誰もが望んでいたのだ。
804創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:50:53 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 そう思うだろ。けどね、この場合、イスラム教が熱くなる必要はないんだ。
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 というよりイスラム教はまったくどうでもいいと思ってるはずなんだよ
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽえっ!!それはどうゆうことなの!
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
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 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
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80518/20:2009/02/04(水) 21:51:22 ID:Lrmdz1m+
「どうした?」
「俺たちは今……多くの生徒を殺した。あいつらは何もしていない」
「生徒会を潰すとお前は言った。手を汚さずにそれができるわけがない。お前だってわかっているはずだ」
 オルガもまた、複雑な感情を消すことができない。
 ユーリだけではなく、他の生徒も爆発の現場にはいたのだ。
「オルガ、これは必要な犠牲なんだ」
「わかってる。わかってるけどよ……」 
 病巣は完全に切除しなければならない。
 残しておけば、何度でも何十度でも同じことが繰り返される。
「これで最後にするんだ。いいな? こんなことは、これで、終わりだ」
 セルフィナはオルガの肩を掴む。
 二人は良心の呵責に苦しんでいた。
 病巣の切除には命と言う名の痛みが伴う。
「わかった。わかってるよ、相棒」
「行こう。まだ終わったわけじゃないからな」
「……ああ」
 二人は再びローブを纏うと、再びマナ・エネルギーの光を残し、空へと消えていった。
806創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:51:28 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、 つまりイスラム教にとってイエスは預言者であるとコーランに規定されているから
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 キリスト教が「イエス=神」と謳っても鼻で一蹴できるんだ。つまり宗派が
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ 異なるんだね、という大人の対応ができる。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ そうか!分かったぞ!キリスト教では
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ         神性に触れちゃうから熱くなるんだ!
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
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80719/20:2009/02/04(水) 21:51:52 ID:Lrmdz1m+


 生存者のリストを何度も、何度も見た。
 死者のリストを何度も、何度も見た。
「何故だ……・何故なんだ」
 マイコは胸が張り裂けそうだった。
 何故、ユーリの名前が生存者のリストに無い?
 何故、ユーリの名前が死者のリストにある?
「嗚呼……神よ……」
 何かを手に入れれば、必ず代償を支払わなければならない。
 生前エレナはそう言っていた。
 マイコはヴォルクを手に入れ、ユーリを失った。
 失った……。
「いや、違う。生きているかもしれない」
 現実が嘘であってほしいと逃避したくなったことは少ない。
 現実は受け入れるだけだった。
 だが今は、嘘であってほしかった。 
「どうも。顔色が悪いようですね」
 紙袋を携えて、報道委員長がマイコの自室に入ってきた。
「いっそ殺してくれ。死んだほうがマシだ」
 震えるマイコの声を報道委員長は無視した。   
「あー。生存者リストに名前はありませんでした。残念ですね」 
「黙れ下種!」
「あー。すみません発言が不適当でした。謝罪します」
 立ち上がったマイコに拳銃を突きつけられた報道委員は、銃口を両手で覆った。
 このまま引き金を引いて指を吹き飛ばしてやろうかとマイコは考えたが、やめた。
 荒い呼吸のまま椅子に腰掛け、汗で額に張り付いた髪を払う。
808創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:52:03 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、その通り。キリスト教では「イエス=神」としているからイスラムにこれを
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 否定されてしまえば、イエスの神性が揺らぎ、ついには教義そのものが崩壊してしまうんだ。
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ だから彼らは何度も宗教会議を行ってイエスの神性を確かなものにしたんだ。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽなるほど、ところが7世紀頃にイスラム教が
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ        登場してきて、イエスの神性を脅かすように
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ     なったんだね…
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
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80920/20:2009/02/04(水) 21:52:21 ID:Lrmdz1m+
「何の用だ」
「今回テロは人民生徒会残党によるものです」
 マイコは明確は敵が今のところ存在することに感謝した。
 少なくとも僅かな時間だけは、心に空いた穴を埋めることができるからだ。 
「どうしますか?」
「奴らに"死"以外の道があると思うか?」
「思いません。ただどういったその……方法を用いるのか疑問です」
「会談の用意があると伝えろ」
「応じるとは思えません」
「全面降伏でも何でもいい。とにかく、私と奴を同じ椅子に座らせろ! 手段は問わん。やれ!」
 いつも通りの軽い足取りは報道委員長が部屋を出て行った後、マイコは机上にある写真立てを倒した。
 写真はユーリとマイコが共に写ったものだった。 
 もう二度と、マイコは写真を見ない。
 見れない。
「ユーリ!」
 語尾を延ばして弟の名前を叫びながら、マイコは自分の手の甲にナイフを突き立てた。
 激痛と出血。
「足りない! 足りないぞ!」
 自分が味わうべき苦痛はもっと強烈なものでなければならない。
 マイコは口で荒い息をした。 
「ユーリ。お前が味わった痛みはこんなものではなかったはずだ。だが今は、これで許してくれ……」
810創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:52:35 ID:rlQrepMW
支援
811創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:52:38 ID:CoYB55oS
     ,. -──- 、イスラム自体はキリスト教を潰そうという意識はなかったけど、しかし、
    /   /⌒ i'⌒iヽ、 すでに西洋世界では政治とキリスト教が合致していた。だから彼らは
   /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ イスラム教を恐れて「十字軍」などの過剰反応をしてしまったんだ。
   i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....、ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::} ノ`     ,.i'・ ノ `,!::::::::::::ヽ なるほど…そんな事情があったんだ…
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
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81275 ◆kkZO9WMBek :2009/02/04(水) 21:52:52 ID:Lrmdz1m+
今日はここまで。
次回から第五章に入ります。
813創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:54:10 ID:b4PytTlC

それなら仲直りさせるいい方法があるよ!           どんな方法だい?

       / ____ヽ           /  ̄   ̄ \
       |  | /, −、, -、l           /、          ヽ
       | _| -|  ・|< ||           |・ |―-、       |
   , ―-、 (6  _ー っ-´、}         q -´ 二 ヽ      |
   | -⊂) \ ヽ_  ̄ ̄ノノ          ノ_ ー  |     |
    | ̄ ̄|/ (_ ∧ ̄ / 、 \        \. ̄`  |      /
    ヽ  ` ,.|     ̄  |  |         O===== |
      `− ´ |       | _|        /          |
         |       (t  )       /    /      
814創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:56:31 ID:b4PytTlC
         ___                
       / ____ヽ          
       |  | /, −、, -、l          
       | _| -|○ | ○||   お笑い芸人になればいいんだよ!  
   , ―-、 (6  _ー っ-´、}        
   | -⊂) \ ヽ_  ̄ ̄ノノ         
    | ̄ ̄|/ (_ ∪ ̄ / 、 \       
    ヽ  ` ,.|     ̄  |  |      
      `− ´ |       | _|   
815創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:57:11 ID:b4PytTlC

                     _,.>
                   r "
     なぜそうなる!!?       \    _
                    r-''ニl::::/,ニ二 ーー-- __
                 .,/: :// o l !/ /o l.}: : : : : : :`:ヽ 、
                  /:,.-ーl { ゙-"ノノl l. ゙ ‐゙ノノ,,,_: : : : : : : : : :ヽ、
              ゝ、,,ヽ /;;;;;;;;;;リ゙‐'ー=" _゛ =、: : : : : : : :ヽ、
              /  _________`゙ `'-- ヾ_____--⌒     `-: : : : : : : :
...-''"│    ∧  .ヽ.  ________   /   ____ ---‐‐‐ーー    \: : : : :
    !   /   .ヽ  ゙,ゝ、      /  ________rー''" ̄''ー、    `、: : :
    .l./     V   `'''ー-、__/__r-‐''"゛     ̄ ̄   \   ゙l: : :
                   l     .,.. -、、 _ ‐''''''''-、    l   !: :
                  |   /    .| .!     `'、  |   l: :
                      l   |     .l,,ノ     |  !   !: :
                       / '゙‐'''''ヽ、 .,,,.. -''''''''^^'''-、/  l   !: :
             r―- ..__l___    `´            l   /   /: :
                \      `゙^''''''―- ..______/_/   /: : :
816創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:57:33 ID:rlQrepMW
乙でした
817創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:58:06 ID:7RITeWhf
同じく
818創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:59:12 ID:nq9VjY7u
なぜにドラえもん
819創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 22:02:22 ID:HK36XAY6
終わったから投下
みたいな
820あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:03:16 ID:HK36XAY6
アタシ
悲劇のヒロイン
だからさ
ねぇ
マンセーしてよ
・・・

アタシ
エレナ
歳?
15
まぁ数え年で16
彼氏?
まぁ
当たり前に
いない
てか
いる訳ないぢゃん
みたいな
魔道兵だし
普通
てか
アタシに釣り合う男
いない
みたいな
やっぱり
アタシ
ぱねぇし
ねぇ
アタシの性格
変わった?
当たり前
馬鹿は死ななきゃ
直らない
言うし
馬鹿言うな(笑)
821あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:03:44 ID:HK36XAY6
だけど
気になる男はいる
ソイツの名前
伊庭?
歳?
不明
多分
顔?
ちょいワル
人より頭はイカれてるかな?
性格?
ぱねぇ
アタシが
普通な男を
気にする訳ないし
みたいな
つか伊庭!
マヂキモいんですけど
残念!
みたいな
伊庭ー侍
なんかアタシ
滑ってなくない?
やっぱ
アタシ
ぱねぇ
822あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:04:49 ID:HK36XAY6
なんか
アタシ戦争してたんだけど
飽きた
みたいな
だから死んだ
まぁ
あの世に行ってさ
あのよ〜
みたいな
三途の川
泳げるし
鮎も釣れるし
バーベキQ
うめぇ
まぁ
アタシにしたら
崔の河原
リゾート
てか
アタシ
釣り下手
なんですけど
あんま
面白くないし
当たり前
男釣る方が
面白い
みたいな
823あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:05:16 ID:HK36XAY6
とりあえず
ヒマ
伊庭の野郎
鬼をみんな
殺しちゃったし
アタシ
殺る事ないし
アタシの分
残しとけっつ〜の
空気読め
伊庭(笑)
みたいな
つか
マヂヒマ
マヂムカつくし
祟ろうかな
エーリヒ
片目だし
調子
乗り過ぎ
手伝えよ
伊庭!
みたいな
だからアタシ
黄泉返るし
つか
ドラゴンボール
集めろよ
マイコ!
みたいな(笑)

つか
マヂで
生き返ったんですけど
・・・

824あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:06:53 ID:HK36XAY6
ココドコ?
何ロワ?
つかロワ違うし
箱庭?
ゴメン
アタシ
記憶嫌いだし
マヂキメェ
とりあえず
生き返ったし
串カツ?
スルーすんな

みたいな(笑)
つかエーリヒ
ドコよ
ビビってないで
前線出てこいよ
マヂチキン
ビターさん見習え
だから
片目なんだっつ〜の
今日のアタシ
凌駕するし
阿修羅?
マヂぱねぇよ?
そんな事より
肩揉めよ伊庭!
気をきかせろっつ〜の
だから
童貞なんだよ
マイコ
やるから
言う事聞けよ
マヂぱねぇ
つかシャクシャイン
山から降りろ
気になる
お土産は鮭
ソルベで
ヨロシク
みたいな
825創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 22:06:53 ID:7RITeWhf
ドラゴンボール集めろワロタww
826あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:07:28 ID:HK36XAY6
そんな事より
大佐
連れてきたし
誰?
セルゲイ・スミルノフ
知らない?
この前死んだ
ダンディオヤヂ
マヂイカす
軍人万歳!
みたいな
だから
エレナ無双
エレナBASARA
開始
倒すよ
ビグ・ザムと呂布?
実は
アタシ
アクション
苦手なんですけど
だからクリアしとけ
伊庭!
みたいな

つか続きは
次回
みたいな

だから
感想書いてよ
読み手様(笑)
・・・
827あたしエレナ ◆XK.9fcIh/2 :2009/02/04(水) 22:09:04 ID:HK36XAY6
今日は
ここまで
二次創作だから
謝罪とか釈明
しない
みたいな
828創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 22:10:48 ID:Lrmdz1m+
フリーダムすぐるwwwww
829創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 22:18:03 ID:tSdywr2J
何ロワ? とか言うのやめれwwwwwww
830創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 23:43:28 ID:axZkBwTy
なんかユーリに離反フラグが立ちまくりなんですが
831創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 20:16:15 ID:dzffURmq
21:45から投下やります
83275 ◆kkZO9WMBek :2009/02/05(木) 20:45:19 ID:dzffURmq
投下いくよー
8331/29:2009/02/05(木) 20:46:58 ID:dzffURmq
学園島戦記譚 第二部 -死闘編- 第五章



 生徒会派の集結した基地には、配備されたばかりの兵器群が集結していた。
 長砲身のIS-2重戦車や、猛獣殺しの異名を持つJSU-152が一列に並んでいる。
 その他にも、まだ塗装すら終わっていない新兵器が続々と運ばれてきていた。
「圧倒的じゃないか。我が軍は」
 ディミトリは兵士達を謁見しながら、誇らしげに呟いた。
 現在、ヴォルク軍はニ分割されている。
 魔道兵の多くはマイコ・パステルナークの反乱軍に加わり、通常戦力はディミトリの正規軍の配下にあった。 
「閣下、同校の生徒同士で殺しあうというのですか。お考え直しを」
「もし国土が戦争になれば、その傷は深く手痛いものとなりましょう。あえて全面戦争の愚を犯す必要はありません」
 基地司令部に戻ると、部下達が口を揃えて進言する。
 ディミトリはそれら慎重論を間違っていない、むしろ正論だと思いつつも、あえて却下した。
「ヴォルク内部には病巣や膿が溜まっている。今回は、それを取り出す良い機会だ。健康な肉体の前には病原菌も抵抗を諦める」
「ですが……」
 ディミトリ達がいる窓の向こうでは、飛行場の収容しきれなかった輸送機が叢に退去させられ、朽ち果てている。
 突然の伝令が入ったのはそんな時だった。
「書記長閣下、反乱軍のマイコ・パステルナークより通信文が入りました。我、交渉の用意ありと」
 ディミトリは即答する。
8342/29:2009/02/05(木) 20:48:08 ID:dzffURmq
「行こう。飛行機を準備してくれ」
「閣下!」
「交渉で済むのなら、それに越したことはない。病巣はいつでも切除できる」
 マイコは以下のような提案をしてきた。
 一、反乱軍の全面的な武装解除。
 二、停戦と名付けられた、事実上の無条件降伏。
 三、各地に駐留した反乱軍部隊への戦闘中止命令。
「会長、やはり単独で赴かれるのは危険です」
「ご令嬢が一人で来ると言っているんだ。こちらも礼儀を尽くさねばな」
「ですが……」
「和平への可能性があるとしたら、私は何だってやる。私は非道な男だが、誰よりも学園を愛している」
 部下達の進言は報われなかった。
 ディミトリを乗せた輸送機が護衛機を連れて飛び立った後、居残った役員達は口々に呟いた。 
「罠だな」
「ああ」
「だがここで書記長が死んだ方が、最終的な犠牲は少なくて済む」
「最終的な犠牲か……人の命を数で考える――俺達も書記長と対して変わらん。権力の犬だよ」
8353/29:2009/02/05(木) 20:50:05 ID:dzffURmq

  
 マイコ・パステルナークが部屋に入るなり、重なり合った驚きの声が聞こえた。
「大佐みずから……」
 反乱軍司令部のあるロートリンゲン基地の会議室には反乱軍と正規軍、双方の高官達が集まっていた。
「今日の交渉は、我々が生徒会に礼を尽くす場。当然でしょう」
 優美な動作でマイコは腰掛けるなり、話を始めた。
「それで私も安心してお話ができる。喜ばしいことです」
 ディミトリもまた笑顔を浮かべる。
 それが本心なのかどうか、マイコにはわからなかった。
「ところで調印書はお持ちですか?」 
 会談が中盤に差し掛かった頃、マイコは重要な議題を取り上げた。
 今回の会談は、このことを話し合うためのものと言っても良い。
「勿論です。反乱軍に属した生徒の権利回復、復学手続きにつきまして、公の効力を持つものをご用意いたしました」
「当方の条件を承認していただければ、我々は"ヴォエヴォーダ"を生徒会に譲渡いたします」
 ヴォエヴォーダ――ロシア語で戦士を意味する――を聞いた時、ディミトリの目の色が変わった。
「わかりました」
「それと、もう一つお願いしたい。ヴォエヴォーダを本校まで運搬する任務は、我が軍にやらせたいのです」
「なぜです?」
「その……言いにくいことなのですが、反乱軍に入って何もさせないのかと言う者たちもおりまして……恥ずかしい話です」
「わかりました。正規軍への再登録を考慮しましょう」
「ありがとうございます。書記長閣下」
「では、サインをお願いします」
 報道言委員長がペンと紙を机の反対側に差し出す。
8364/29:2009/02/05(木) 20:50:36 ID:dzffURmq
「ところで同志書記長、机の下では何を握っているんです?」
 ディミトリの額に大粒の汗が浮かんだ。 
 マイコは露骨に焦り始めた男の腕を掴み、その甲にペンを突き刺した。
 反射的にテーブルの下から上がったディミトリの腕には拳銃が握られていた。
「な、何をする!」
「単純なことだ!」
 机を飛び越えたマイコはディミトリの腕を蹴って拳銃を吹き飛ばし、背後へと回り込んだ。
 その勢いのままに、ワイヤーを首へとかける。
「悪く思っても構わん」
 腕に刺さったペンのせいで動けないディミトリの首を絞めながら、マイコは耳元で囁いた。
「苦しいか? 怖いか? 感想を聞きたい」
「雌犬め……」
「黙れ雄犬め。貴様一人の命、砂粒一つにも劣る」
 ディミトリの首の折れる音が部屋に響き渡った。
 こいつは自分が死んだことを理解できたのだろうか?
 正直、どうでも良かった。
8375/29:2009/02/05(木) 20:51:32 ID:dzffURmq


 生徒会書記長ディミトリ・カローニンが死んだ!
 学園島全土に報道された事実は、全ての学園に衝撃と驚きを与えるに十分だった。
 最もショックを受けたのは正規軍……生徒会派の生徒達であった。
 報道委員はテレビ、ラジオ、宣伝ビラ、ありとあらゆる方法で情報を撒き散らした。 
「これはデマだ! プロパガンダに決まっている!」
「馬鹿な! お前だって、あの写真を見ただろう!」
 だが、精肉場の生肉のように逆さ吊りにされたディミトリの死体の写真や映像は、逃れられない現実を生徒会派に突きつけていた。
「対話の道は断たれた……これからどうすれば良いんだ?」
「戦うに決まっているだろう! 書記長の仇を取るぞ!」
「ああ!」
 生徒達は司令官を代行しているウラジミール・ニーホフの元へと走った。
 書記長無き今、最も信頼できる"大人"を頼るのは至極当然であった。
「閣下、我々に復讐戦の機会を!」
「あの恥知らずの売校奴を叩き潰してやります!」
「このまま座して敗北を待つのですか!」
 生徒達の脅迫めいた言動に対して、ニーホフはならんと怒鳴りつけた。
 司令室の空気が緊張で張り詰める。
「今は状況を確認することが先決だ。無用な出撃は許可しない。各指揮官は各々の部隊に戻り、待機せよ」
 ニーホフの二言目は落ち着き払ったものだった。
8386/29:2009/02/05(木) 20:52:19 ID:dzffURmq
「早とちりをするな。今我々が動けば、向こうの思う壺だ」
 謝罪の言葉を口にして、生徒達は部屋を出て行った。
 擦れ違いに入ってきたのは、肩に交差した杖の徽章――魔道兵であった。
「将軍、やはり生徒会長の死亡は事実と思われます。本校に残留している部隊からも同様の報告が入っています」
 リディア・チェルノスキー中尉は敬礼した後、ニーホフに新たな情報を伝えた。
 彼女は生徒会派に加わった数少ない魔道兵のうち一人だった。
「これで我々は大儀を失ったわけだ。もっとも、大儀なぞ無いほうが戦争はしやすくはあるがな」
「将軍、戦うおつもりですか?」
「大人が始めたことだ。子供が事態を悪化させたとはいえ、大人がケリをつけねばな」
「対話による道は……」
 リディアが言った時、司令室に流れていた報道画面がジャックされた。
 砂嵐の中からマイコ・パステルナークの姿が現れる。
 表情を崩さないニーホフとは対照的に、リディアは舌打ちした。
「たった今、断たれたようだな」
 マイコは宣戦布告を声高々に叫んだ。
 ニーホフとリディアの中で絶望が広がっていく。
 ヴォルクグラードの終焉が始まったのかもしれない……と。
83975 ◆kkZO9WMBek :2009/02/05(木) 20:52:50 ID:dzffURmq
今日はここまで。
んじゃまた。
840創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 20:57:16 ID:Wwcd6X1o
悪いけどもう書かないでくれる?
841創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:03:54 ID:Re8sRC/0
>>839-840
なんだよそのコントはwwwwwwwwww腹いてぇwwwwww
842創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:09:58 ID:HzmHvs1R
新作来てたのねw誰かラブ米書ける香具師(屮゚Д゚)屮 カモーン
843創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:11:51 ID:+32S0XOl
そーいやマイコは最初男だったんですよね…
844創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:13:34 ID:zPfNgR6n
オモロイです。池沼テラカワイソスww
そして逃亡する二人にロマンスは芽生えるのか……。
芽生えたらそれはそれはロリコンになってしまうのか?
845創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:16:37 ID:MX9Wlm/6
バレンタインに浮かれる魔道兵を蹴散らす王虎の群れに期待
846創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:21:10 ID:LTwWH8go
投下乙

さて、寒いからフェアリー・テールちゃんと一緒に風呂に入ろうか…
847創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:26:31 ID:HSjbjRwf
75氏に質問なのですが、シャクシャインさんはどんなキャラクターなのでしょうか?
848創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:31:38 ID:GZGdsGQk
マイコとエレナの百合展開にwktk
849創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:36:19 ID:xaFclfWZ
マイコ大佐、地上部隊を攻撃しながら

「見ろ!人がゴミのようだ!」
850創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:46:58 ID:U78olwgE
              /:::::,r'´      ヽ:::::::::l,
             l:::::::l_,,_    _,,-‐-: :'l:::::::::l
              ゝ::iィ'"`゙`t‐l´ ̄~゙i、:.l:::::::::l
               ゙ビ'--‐i  ゙'‐-‐'': :`'´ i丿
               ゙i    ``     : : : リノ     「はっは! 見ろっ!!人がゴミのようだ!!」
                 ゙i  r--‐ーッ : :r、ノ
                 ゙i ``''''"´ : :/::l'"
               . ゙i、,___/: :l_
               _,,(F-、, _,,-‐''''""´ !、,_
          _,,,..-‐/''´::l゙`-、-V_,,,、、-‐'''"ノ;;;;;;;`゙`'‐ 、,_
    ,,-‐'""´ ̄:::::::::/:::::::,rレ'´  i、ヽ--‐ 丿::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;`゙`'‐-- 、
  ,ィ'::::::::::::::::::::::::::::/_/     i : ヽ ,ィ':::::::::::::::::::l:::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ヽ
 r':::::::::::::::::::::::::::::::::::::,r       i : : l:::::::<⌒ ̄:::::::::::::::::::,i::::::::::::::;;;;;;;;;;ヽ
_l;::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::i          :l::::::::::::::>::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::;;;;;;;;;l
::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::ゝこヽ       :l::_,,,..-‐''´:::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;l、
::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::/:::::::ゝ    ,,ィ''´::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;ヽ

    マイコ・パロ・ウル・パステルナーク大佐
851創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:03:18 ID:7fzAxJdN
今回のは継続戦争が元ネタか
852holiday in the sun ◆NN1orQGDus :2009/02/05(木) 22:05:36 ID:NALY7zVQ
scene-01

学園島――サウスリバー沿い。
広がる殺風景で悪趣味な荒野/ひび割れた大地――銃と刀を交える二人の怪物=少女×2。
少女A=一挺の回転式拳銃に命を賭けるギャンブラー。――小悪魔染みた容貌。
異名=“カラミティ”/本名=ジェーン。
少女B=一振りの刀に命を懸けるサムライガール。――人形染みた美貌。
異名=“不惜身命六文銭”/本名=真田ユキ。
ジェーン――眼に見えぬ浮力で地表を滑空。豊満な肉体を揺らしで。
ユキ――疾風の疾走。ポニーテールを揺らして。
刹那の交錯を何度も繰り返す/逸脱した常軌が描く高速戦闘。
ジェーンが引き金を振り絞り放たれる銃弾/魔法兵装/大地を焦がす乾坤一擲=残弾0。
ユキの刀の軌跡=奇跡の剣技。薙ぎ払う大地は瘡蓋のように捲れる。
(いたい、のぉ!)吹き飛ぶジェーン=まるで木っ端/理路整然リローデッド。
(浅い?)間合いを詰めるユキ=まるで颱風/斬撃一閃懺悔する間なし。
解き放たれた魔力が解放されて――飛び散る火花は線香花火に似ている。
「ジャップ風情がぁっ!」ジェーンは苛立つ/敵の強さ。
「やるな、久方ぶりだ――」ユキは愉しむ/敵の強さ。
濛濛たる土煙――鈍色の空、低い軌道の太陽が照らす。
諍う二人の怪物は埃に塗れた誇りを抱き、敵影を探す。
「出てきなジャップ、対マン勝負だ」はすっぱなジェーンのお喋りは撃鉄を上げる。
「毛唐が、分際知らずにも程がある」猛るユキの舌打ちに刀身は耀る。
殺気/殺意――濃密な密度で空間に散布。
行き詰まる息詰まる凝固した時の無言の応酬。
互いに敵影発見/動き出す時間――カウントダウン。
ジェーン=滑空再開/災害を振り撒き縦断する銃弾。
ユキ=疾走再開/災害を狩り取る一線を画する一閃。
銃撃襲撃×斬撃惨劇。
じゃりじゃりとした砂利が跳ね上がり――切ない刹那の交錯倒錯が統帥する陶酔/戦闘終了。
上がる筈の軍配は真っ二つに切り裂かれて上がらず――ユキの元へ。
ジェーン=右腕を損失。溢れる血飛沫は血溜まりを作成。
ユキ=右頬に一条の痕。零れる血潮は口紅よりも赤い。
「Fxxkin' Fxxkers Fxxked!」ジェーンの負け惜しみは勝ちを逃した価値。
「それで終いですか、毛唐」ユキの勝ち名乗りは嘲笑する挑発。
ジェーンは美貌を屈辱に歪めて逃走。眼にも止まらぬ速さをの速度。
ユキは美貌を愉悦に歪めて勝鬨を上げる。言葉は戦闘終了を告げた。

853holiday in the sun ◆NN1orQGDus :2009/02/05(木) 22:06:37 ID:NALY7zVQ
学園島戦争。
常軌を逸脱した常識が近代兵器を否定/その所業=無情の響き。
異能の能力=“魔法”が支配する戦争。
理由詳細不明。不名誉な大人には理解不能。
若者は涙と汗を流す。異能を保有しなければ命すら流す/黄泉の川に。
割拠する群雄列強。
アメリカ合衆国。ドイツ第三帝国。大英帝国。ソビエト連邦。中国。
思考=施行される至高の嗜好/学園島統一。
紡がれる物語は遥かなる理想の追求の記録。産み出される負荷は不可にして不可思議。

――耐えること。黙ること。
決められたことを決められた通りにやること。
つまり、死ぬこと。
兵隊の返答はいつも『イエッサー!』
『ノー、サー!』?
いいえ、否定や弁解の余地はありません。
死に場所は既に満員で、死ぬも生きるも何処かに置き忘れ。
ぼさっと死んだ奴らはツイてなかったということで。
そうでなきゃ誰かが踏んだドジのせいで。
何処迄も続く泥濘を、延々と列は続き。
足は滑り、足場は流れ、気は消沈し、雨が振る。
下士官の罵声はもたつく兵士を打ちのめし、響く。
まるで無限の兵隊、隊列は坂を上る。
青息吐息虫の息、列は終わることなく。
この艱難の報いは、また明日始まる辛苦に等しい。
少年の恋人は瞼の裏、目を開ければ握り拳、女を知らずに。
少女は――言わぬが花。

それが、学園島の戦争。
それが、学園島の物語。

《See you next time!》
854holiday in the sun ◆NN1orQGDus :2009/02/05(木) 22:08:43 ID:NALY7zVQ
新しいシリーズ投下終了。変なのを書きたくなったから暴走中。だけど飽きたら即中止
ラブコメはそのうち書くかもね。
ではそのうち。
855創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:12:31 ID:kHEAEUxS
久しぶりにあんたのラブコメが読みたいぜ
856創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:16:54 ID:SnryJ0dM
お、なんかこういうの新しいなあ。
面白いかも。
857創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:17:45 ID:xoMacPe9
乙です
サムライ!! サムライ!!
近代兵器の銃に剣が勝ったのか
858創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:19:00 ID:X34quvA9
なんだっけ、この文体の名前
なんかかっこよさげなカタカナのやつ
859創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:23:01 ID:FRe0Ggor
冲方的ななにか
860創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:30:48 ID:IeTtiZlY
GJ!
カッコイイ戦闘だな〜
ジェーンは名前がまさしく人間台風だと思った
でも弾がいらない魔法銃とか用意しなくちゃ勝てないなw
861創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:33:02 ID:Mq5Hn1cM
エルロイもしくはクランチ文体だな
無茶しやがって……
862創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 22:51:39 ID:oX6J1tzu
さらばベルリンの陽!
NNさんはアレだな、色々なモンが書けてすげぇな
それも早い。しかも高い
863創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 23:04:11 ID:NALY7zVQ
>>862
良くわかったねぇ。
>さらばベルリンの陽

深い意味はないけど。

>>854
気が向いたらこのスレのSSのキャラを使ったラブコメを書くかもしれない。
許可が出ればね。

みんな感想ありがとねぇ。
864holiday in the sun ◆NN1orQGDus :2009/02/06(金) 20:42:01 ID:EOXRnbUQ
scene-02

――アメリカ軍における理想の兵士
軍服の一部になること
アメリカ軍の兵士の理想
とるにたらない負傷で本国に送還されること
そうでなければトーキョー・ローズに蠱惑的な声で自分の名前を囁かれること
理想は現実によって
チョコバーやキャンディバーみたいに
噛み砕かれて。
お気の毒としか言うよりない――

片腕になったジェーンは、勇ましく戦い続ける癇癪玉染みて。
何処に弾けるか判らずに、災厄を振り撒く。
喪失した右腕の痛みが、彼女の苛立ちを加速させる。
“ダグアウト・ダグ”=アメリカ軍司令官の行進の前ですら横切る。

学園島南部――森林地帯。
ユキとジェーンの戦闘の二週間後。
鬱蒼と繁る茂みはジャングル――緑萌える世界。
響く銃声/硝煙の匂い/バラ撒かれる災厄。暴力行使に陶酔するジェーン。
暗緑色の軍服は汗に濡れて肌に張り付き――扇情的なボディラインを見せつける。
戦化粧のルージュは紅く/戦乙女よりは女戦士。
舌舐めずりをして哀れな獲物=ジャップを探すハンター
得物の魔法兵装/回転式拳銃=カラミティを左手で優しく握る指使いは妖しいくて。
息を潜め、出来るだけ息を潜め、可能な限り集中。
猫目石色の眼は猫染みた鋭さ/ブレンドは冷淡、憎悪/レシピ=50:50。
ゴルゴン染みた威圧感を秘めて。
短い癖っ毛の金髪は、汗で額にへばり付く。
(焦るな、アタシ)
狙う処か狙われている違和感。感情を包み込む/材質はオブラートは破れる寸前。
万が一にも、感情を馬鹿正直に爆発させてはならなかった。
今、この時だけでも。
ジャップを殺すまでは。
右腕の痛み/高い授業料――返さなければならない、ジャップに/利子をつけて。
気配は感じる。ゾクゾクするスリルは続々と、ジェーンの柔らかい領を撫で上げる/愛撫。
リアルな感覚/悦楽に濡れる瞳を戒めるのは、右腕の幻肢痛。
(早く姿をみせな、ジャップ……アタシを早くイカせろ、アンタの断末魔で……)
焦れて焦らされ、感覚が鈍る/巌のように、硬く。
発見。余りにも遅すぎて/黄昏は過ぎつつある――夕暮れ。
滲む輪郭、曖昧な敵影/逸る心は流行りのポップスみたいで/リズミカル。
狙いを定める左手の震えは、ウォール街すら激震させる激しさ。
銃声二回、苦い二連射――だけど、命中。
獲物ではなく、木に。
865holiday in the sun ◆NN1orQGDus :2009/02/06(金) 20:43:14 ID:EOXRnbUQ
戦果=0の戦火の戦禍に驚愕。
身動きは不可/背後から喉元に突きつけられる/黒光りする――刃を。
「残念だったな、ヤンキー」男の声は冷徹に耳を泳ぐ。
「Fxxkin' shit!」後悔後に立たず、背後に存在/ジェーン――歯噛み、臍噛み。
迫り来る死の恐怖は、酸のように、ジェーンを侵食して。だけど、気丈に振る舞う。
「――? お主、おなごか?」男――“忍ぶ影”イガは、瞳を略奪に燃やす。
伸びる手→ジェーンのふくよかな肉体/まさぐり楽しむ。
身体を這い回る手に、ジェーンの美貌は嫌悪と羞恥のミックスジュース/味はパッション。
ジェーンの吐息は荒く――そのうち甘く。突きつける刃は一本増えて。
「nn――,no――」漏れる声、濡れる瞳。熱く火照る肉体は導火線に似ている。
柔らかいジェーンの肢体にイガは我を忘れ/拘束を緩める/日本の学園――寺子屋の校則違反。
「そこまでさ、ジャップ」銃声一回。ジェーンは好きだらけのイガの急所を射抜く。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」イガの叫び/まるでケダモノ。
うっとりした顔で/白煙硝煙熱い銃身/ジェーンは舐める。
「アンタにはテクがない。それじゃあ駄目さ」ジェーン――銃撃は脳髄を蕩かし、反動に身を突かれて。
「む、無念――」イガ――黒い刃で喉を貫き――貫けない。
刃を持った腕を射抜れ千切られ/ジェーンの銃弾によるもの。
「Bye-bye,Jap」愉悦に歪めた美貌、放つのは死の宣告。
再度銃声――。イガ、眉間を射抜かれ、ムシケラ染みた屍を晒し/御陀仏。
「a-ha,アンタのテクは最低。でも、――死に様は満更じゃない――イケたよ」
狂気染みた凶器の狂喜/後は野となり蟻が山と集るだけ。


――兵隊はうんざり、戦争は続く
みんなうんざり、もし明日死のうとも
恐怖は居座る
毒々しい馴れ馴れしさで
べったりと軍服に染みを作る
それは何百万のうちの一つ
若くして死んだ彼らの
微々たる汚れ
気まぐれな風に吹かれた
木の葉舞い散る姿を晒し
時を経て、大勢の中から
俺を探す?
でなけりゃ飽きる。救済は遅い――
大勢の中の一人の独り言戯言
ゴトゴト揺れるしゃれこうべ。

《See you next time!》
866holiday in the sun ◆NN1orQGDus :2009/02/06(金) 20:43:48 ID:EOXRnbUQ
投下終了。大絶賛暴走中。
867創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 20:57:33 ID:rd2o4ev8
乙です
文体がスゲェ熱い
868創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:12:06 ID:nWd/SGr8
投下おつー

21:45からこっちも投下やります
869創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:13:39 ID:oPgOdHxI
カッコいいよねー、俺もこんなの書けるようになりてえよ、、、
870創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:18:15 ID:EOXRnbUQ
はっはっは
このスレのSSキャラ使って二次SS書いちったorz
871創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:36:01 ID:rd2o4ev8
>>870
いいぞ、SSを投稿する作業に入るんだ
87275 ◆kkZO9WMBek :2009/02/06(金) 21:45:18 ID:nWd/SGr8
投下いくよー
8737/29:2009/02/06(金) 21:46:06 ID:nWd/SGr8


 陸上戦艦『クロンシュタット』の甲板にマイコはいた。
 ライトアップされた彼女は、両手を広げて演説を始めた。
「諸君、私は平和が好きだ。諸君、私は平和が好きだ。諸君、私は平和が大好きだ」
 本心だった。
 誰も戦いを望む者などいない。
 自分は何を守りたかったのだ?
 マイコは自らに問い、答えた。
「怠惰な日常が好きだ。級友との馬鹿騒ぎが好きだ。退屈な授業が好きだ。夏休みの補習が好きだ。冬休みの補習が好きだ。春休みの補習が好きだ」
 だが、守れなかった。
「教室で。図書館で。学生寮で。更衣室で。体育館で。学生食堂で」
 大きく両手を広げる。
「この世界に存在する、ありとあらゆる平和が大好きだ――」
 平和。
 もはや、マイコが一生触れることができない存在。 
 甲板に居並んだ兵士達に向き直り、マイコは問う。
「諸君、私は平和を 天国の様な平和を望んでいる。諸君、私に付き従う革命同志諸君。君達は一体 何を望んでいる?」
 右手を振るい、生徒一人一人の顔を見やる。
「永久的な平和を望むか? 怠惰極まりない 糞の様な平和を望むか? 鉄風雷火の限りを尽くし 社会主義の亡者を封ずる 鉛の様な平和を望むか?」
 数え切れないほどの腕が空に掲げられた。
 平和!
 平和!
 平和!
874創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:46:31 ID:Wzc6gYcj
乙であります!
忍者が意外に軟弱ですな。
8758/29:2009/02/06(金) 21:46:52 ID:nWd/SGr8
 彼らは一つになっていた。
 若いエネルギーは狂気の集合体となり、恐るべき団結を生んでいた。
 少し間を置き、マイコは言う。
「よろしい――ならば平和だ」
 自分の顔は今、どうなっているのだろう?
 悪魔の顔か? 
 それとも罪人の顔か?
「我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする金色の槌と鎌だ。だがこの暗い泥の海で長い間、堪え続けてきた我々に……ただの平和ではもはや足りない!」
 完全な平和を作る方法が何なのか、マイコは知っている。
 恐怖による抑制だ。 
「恒久平和を! 永続極まる平和な時代を!」
 マイコは世界を一度『ゼロ』へと戻す。
 ヴォルクグラードを完全制圧したら、次は条約軍を粉砕する。
「我らはわずかに一個艦隊。一万に満たぬ敗残兵にすぎない」
 学園島を制圧し、次は世界に宣戦を布告する。
 そして世界を変える。
 資本家、技術者、知識人などの知識階級から一切の財産と身分を剥奪し、農村に移住させ農業に従事させる。
 学校、病院、工場、銀行も閉鎖する。
 貨幣や通貨を廃止する。
 宗教も禁止する。
 近代科学の全てを封印し、魔法能力を有する『新人民』が世界を統治する。
 疑いようのない平和な世界だ。 
「だが諸君は、無限の力を持つ古強者だと私は信仰している。ならば我らは、諸君と私で総兵力無限大の国家軍となる」
 子供は親から引き離し、集団生活をさせる。
 幼い頃から労働や軍務を強いるのだ。
8769/29:2009/02/06(金) 21:47:22 ID:nWd/SGr8
「我々を暗黒の彼方へと追いやり、眠りこけている連中を叩き起こそう」
 新しい世界が始まる。
 理想郷とも言えるだろう。
 新世界には学校も病院も、貨幣もいらない。
 新しく生まれた――いや、"作られた"子供達はたとえ親であっても、社会の毒と思えば微笑んで殺す。
「髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう」
 新世界に『過去』は存在しない。
「連中に恐怖の味を思い出させてやる」
 新世界において、泣くことは禁じられている。
 何故か?
 泣くのは今の生活を嫌がっているからだ。
「連中に我々の魔女の恐ろしさを思い出させてやる」
 新世界において、笑うことは禁じられている。
 何故か?
 笑うのは昔の生活を懐かしんでいるからだ。
「戦争と平和のはざまには 奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる」
 誰も止めてはくれない。
 マイコは自分の意思で破滅へと突き進むことを自覚していた。
 過去はもう変えられない。
 だが、未来は変えることができる。
「魔女の軍隊で世界を燃やし尽くしてやる」
 罰は受けるつもりだった。
 大悪人マイコ・パステルナークは死ななければならない。
 世界に存在する悪意の全てを自分に集中させる。
 マイコは願う。
87710/29:2009/02/06(金) 21:49:14 ID:nWd/SGr8
 自分が歪んだ世界の毒薬となり、その浄化作用として平和が訪れることを。
「自由革命軍、最高司令官より全陸上艦隊へ」
 平和を享受する者達が問題に対して無関心を装ってきた流れが、様々なものを悪化させてきた。
 そして、誰にも悪意など存在してはいない。
「ペレストロイカ――"再構築"作戦 状況を開始せよ」
 だから、目を覚まさせなければならない。
 巨大な悪の暴力によって、嫌でも目を向けさせる。
 それがマイコにできる唯一の贖罪だった。
「征くぞ。諸君」
 演説を終えたマイコは、魔道兵達の列の前を通過していく。
 誰もがエース級のベテラン揃いだった。
 だが、マイコが最も祝福してほしい人間がいない……。
 ユーリも、エレナも、もうこの世にはいないのだ。
 オルガとセルフィナの前で足を止める。
 二人が何をしたのか、マイコは知っていた。
「私は、お前達に感謝している。お前達が私の一番大切なものを奪ってくれたおかげで、私は修羅になれた」
 明確な驚愕がオルガに浮かぶ。
 マイコは微笑んでセルフィナの頬を撫でた後、向き直って告げた。
「我々はこれより、ディミトリ・カローニンの名を騙る反乱軍を殲滅する。同校の生徒と言えど、躊躇、温情、一切不要だ。全て破壊して殺し尽くせ。以上」
87811/29:2009/02/06(金) 21:49:41 ID:nWd/SGr8


 戦争が起きても、人間は食べていかなくてはならない。
 ヴォルクグラード人民学園海軍の水兵達は食堂で配膳の順番を待ちながら、空腹に耐え続けていた。 
「これからどうなるんだろうな」
「どうなるって、何が?」
「内乱だよ。ったく、お前は食うことしか頭に無いのか?」
「腹が減っては何とやらだろ。第一、相手は同じヴォルクの人間じゃないか」
「じゃあ黙って殺されろと言うのか?」
 水兵達は配膳係から、食事を受け取る。
 スパム……。
 スパム……。
 スパム……。 
「今日は豪勢だな」
 水兵が皮肉交じりに言うと、配膳係は肩を竦めた。
「戦争が近いからな」
「戦争? 一体、どこと戦うっていうんだ?」
「……列がつかえてる。さっさと行け」
 配膳係が手を払って水兵を席に追いやろうとした時、食堂は轟音によって激震した。
 零れたスープまみれになりながら、水兵達は悪態をつく。
「何だってんだよ!」
「空軍の奴らか!? 高度規定違反だ! 役立たずどもめ!」 
 だが轟音は鳴り止まない。
 水兵達が窓から軍港を望むと、巨体を浮かべていた戦艦『マラート』が炎に包まれていた。
 戦艦の周囲には少女達が青い粒子を残して乱舞している。
「ま、魔道兵がいる!」
「畜生! マイコに先手を打たれたぞ!」
 水兵達は食堂から飛び出していく。
<<これは演習ではない。繰り返す、これは演習ではない>>
 放送に対して、水兵の一人が叫んだ。
「見りゃわかるぞ! 馬鹿野朗!」
879創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:49:47 ID:q0c6EhmH
マ○コは自らに問い、答えた。
なんてなwww
88012/29:2009/02/06(金) 21:50:06 ID:nWd/SGr8
☆ 

 朝の訪れで青白く輝き始めた空を、サーチライトに光が切り裂いた。
「私はここにいますと自分で露呈しやがった。嬉しいねぇ。感涙もんだぜ」
 超低空で森の上を飛行するオルガ・グラズノフは舌を唇に這わせた。
 やがて森を抜けると、滑走路にずらりと並んだ航空機の群れが視界を覆い尽くした。
 ありとあらゆる種類の航空機が地上で鋼鉄の翼を休めていた。
「へへっ。殺す阿呆に殺される阿呆。だったら、殺さなきゃ損な話だ!」
 オルガは背部マナ・ブースターをスライドさせ、地上へと降下する。
 飛行場を叩くことがオルガ達に与えられた任務だった。
「オルガ、まず第一滑走路を叩く。雑魚には目をくれるな」
 セルフィナ・フェドセンコは自分と同じぐらいの大きさを誇るミスリル・ライフルを抱えて急降下する。 
「当たり前だ! 生きて帰るぜ!」
 対空砲火は強烈で、尚且つ正確なものだった。
 結界越しの空で爆発が起き、高射砲弾の破片がひっきりなしにマナ・エネルギーの壁を叩いた。
「無理もねぇ。魔道兵への対抗策が練られてないわけがない」
 敵は魔道兵に比較的無知な条約軍ではなく、魔道兵と共に戦ってきたヴォルク軍なのだ。 
「派手に歓迎してくれちゃってェ!」
 オルガは一列に並んだ航空機の上をフライパスしながら、一気にマナ・バスターアックスで両断する。
 胴体と翼を切り離された飛行機が姿勢を崩すと同時に、連鎖的な爆発が視界の隅で起きた。
「一機も空に上げるな。全て地上で破壊しろ」
 セルフィナは浮遊しながら、ミスリル・ライフルの銃口を巨大な燃料タンクへと合わせた。
「この距離で外すなど――有り得ない」
88113/29:2009/02/06(金) 21:51:05 ID:nWd/SGr8
 猛烈な対空砲火を受けて激しく揺れる結界の中で、セルフィナは首を鳴らした。
 頭部のバイザーが降り、魔方陣を模した照準機の中央にタンクが収まる。
 銃口の先に紅いエネルギーが収束していく。
「狙い撃つ!」
 引き金が引き絞られると同時に、銃口で放出を今か今かと待ちわびていたエネルギーが一気に放出された。
 光の一閃がタンクを貫き、一瞬の沈黙の後に爆発が起きた。
 白と黒の爆煙がきのこ雲を作り出し、空を覆った。
「いいぞ相棒! 腕は錆びちゃいないぜ!」
「右に一度ずれた……問題だな」
「銃なんざ、当たりゃ文句ないってなぁ!」
 着陸するなり、早くも銃声が重なって響き渡った。
 敵はあらゆる方向から撃って来た。
 そして、オルガとセルフィナは破壊の限りを尽くした。
 燃え盛る燃料タンクに照らされながら、殺戮は続いた。
 一時間もすると、砲火を絶え間なく吐き続けていた対空陣地には黒煙と残骸だけしか見当たらなくなっていた。
 肉の焼ける臭いの先には、黒々とした塊が幾つも転がっていた。
 かつて人間だったものだ。
 セルフィナのミスリル・ライフルの銃撃を浴びた兵士は蒸発し、後には熱で溶けた奇妙な塊だけが残された。
「クソッたれ。あいつら、どれだけ用意したんだ?」
 だが圧倒的な暴力を二人が行使し続けても、滑走路に並ぶ航空機は一向に減らなかった。
 予想外に航空機の数が多かったのだ。
「作戦変更だ。滑走路そのものを潰す」 
「できるのか?」
「お前のエネルギーを貸せ」
「あいあい!」 
 オルガはローブの腕部からケーブルを出し、セルフィナの背中に指す。
「マナ・エネルギー充填率……六十二%」
 地上からは対空砲火が二人を襲う。
 周囲で爆発が起こるたび、またも結界が激しく揺れた。
 今や"敵"となったヴォルク軍は二人が何をしようとしているのか知っているのだろう。
882創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:51:21 ID:HGkWhVUT
乙です!
大変面白かった…また新しいSSを期待してます。敬礼!
88314/29:2009/02/06(金) 21:51:32 ID:nWd/SGr8
「まだか!」
「百%!」
「よっしゃあ行くぜ!」
 オルガの叫びと同時に、セルフィナの手にしたミスリル・ライフルから光が迸った。
 図太いエネルギーの潮流は進路上の酸素すら爆発させて、滑走路をS字状に溶解させた。
 これでいくら飛行機を揃えようと空には飛べない。
 空軍の無力化に成功したのだ。
「やったぜ!」
「撤退するぞオルガ!」
 二人は向き直って離脱を図る。
 そして、動きを止めた。
「なんだ……あれは」
 何が起きようと決して表情を変えないセルフィナの顔が、露骨な驚きに引きつった。
 青白い空に、十体の影が浮かんでいた。
 黒いローブ。
 右手に携えられた大型火器。
 十体全てが同じ装備だった。
「まさか……」
「こいつら……」
 オルガもセルフィナも、共に言葉を失う。
 量産型の魔道兵だと――!?
884創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:52:49 ID:IwJNoNwm
75 ◆kkZO9WMBek氏、乙でした。面白かったです
これからもよろしくお願いします
885創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:58:51 ID:DQTwsQ+p
オチをあえて読まずマイコでヌキマスタ
いや、純粋にSSとしてもこれからの展開が楽しみ。
GJ!!
88675 ◆kkZO9WMBek :2009/02/06(金) 22:00:07 ID:nWd/SGr8
はい、今日はここまで。
んじゃまた。
887創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:01:57 ID:f305Wn3h
75さんお疲れでした。

戦後二人がどうなったか凄まじく気になるんですが。

しかし後を任せようとしないパイロットが多いとは……
888創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:02:55 ID:R0BeEjUA
さあ、次の職人さんカモーンカモーン
889創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:05:42 ID:ZvTM0pp4
犬猿の仲と呼ばれる二大ヒロイン。
ひょんなことから協力してこんなやりとりが

エレナ「あんたを誤解してたわ。やるじゃない」
マイコ「友達になんてならないわよ、勘違いしないで。・・・でも、ありがとね」
890エーリヒしっかりしなさい ◆NN1orQGDus :2009/02/06(金) 22:14:34 ID:EOXRnbUQ
寂しい。非常に寂しい。
俺はエーリヒ・シュヴァンクマイエル(仮名)。弱小劇団の劇団員だ。
大人気ドラマ「学園島戦記譚」の主役を張っているけれど、街を歩いても誰も気付いてくれない。
何故ならば。
プライベートだと片目が潰れた特殊メイクをしていないから。
名前が全国区になったのに……。
でも、人気はある。
熱烈なファンからのファンレターを沢山貰ってる。
弱小劇団員で貧乏な俺の為にファンは剃刀を送ってくれる。
最初は慣れずに指を切ったけど、今では慣れたもので指を切らずにファンレターの封を開けれる程だ。
兎に角。
目指すは。というよりも今日の仕事は――。

とぅーるる、とぅるるるーるる〜♪

「どうもこんにちは串柳串子です“串子の部屋”今日の御客様はドラマでも活躍中で劇団員でもいらっしゃる長くてちょっと噛みそうな名前のエーリヒ・シュヴァンクマイエルさんです」
「ど、どうも、エーリヒ・シュ……」
「今日はエーリヒさんは片目ではいらっしゃらない? やっぱり特殊メイクでいらっしゃる?」
「え、ええ……一応特殊メイクで……」
駄目だ。
お昼の人気番組『串子の部屋』は、新人の鬼門だ。
串子さんのペースについていけない。
「そう言えばあなた劇団員でいらっしゃる?」
「ええ、まあ」
「マヨネーズライスが大好物なんですってね?」
「あ、はい。もっぱら主食で」
「マヨネーズって酢と玉子で出来ているって知ってらした?」
「え、マジっすか?」
「そう言えば特殊メイクの割には眼がお綺麗でカメラさんアップで映してくださる?」
「ちょ! 押し付けないで下さいよ! 痛いじゃないっすか!」
「所であなたが出演してるドラマなんて言うタイトルでしたっけ?」
「あ、はい。“学園島戦記譚”です」
ピシリ。今まで喋り続けてた串子さんが止まった。何処と無くオーラが変わった?
「それでは皆さんまた明日ごきげんよう〜」

とぅーるる、とぅるるるーるる〜♪

え、まだ時間残ってるような――。

後で聞いた話だと、串子さんは戦争がお嫌いらしい。
兎に角。
恐るべし串子さん。
裏番組に出てる伊庭さん(役名)ですら轟沈した火力は、列車砲と同じくらいかもしれない。
怖いね、芸能界。


続くかどうかはわからない。
891創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:15:40 ID:EOXRnbUQ
やっつけ仕事だけど投下終了。
75氏ごめんね。
892創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:20:05 ID:M26B6kYE
乙ww
串子でエーリヒの全存在が喰われちまったじゃねーかww
伊庭轟沈ww串子すげえww
893創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:34:33 ID:rd2o4ev8
小ネタ乙です
エーリヒめ、弱小劇団員のくせに人気ドラマ主役とか生意気な
今のガッカリな仮面ライダーにでも出演しとけw
ネタ的に串子の自伝は「クッコちゃん」になるのかなw
894創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:42:25 ID:HkI1ZYsx
こいつは地上で作られたものでは無い。結晶なのか、高粘度流体なのか。それすら我々の科学力ではわからないんだ。

                   ,r‐‐--、,             ,,,-‐‐'''" ̄ ̄``‐- 、、
            ,r‐‐---‐''´     `ヽ、       , ィ'´:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ、、
           /      ,     :::::::::ヽ     /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:::::::::ヽ、
          ,ノ       i      ::::::::i:::`i   ,/´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::ノ`ヾ:::ヽ
       ,r‐'´        i ...............::::::::::::i:::::::!  /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::;;;:::::::::/  : : ヽ:::ヽ
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    ,r'       !    :::::::ヽ::::::::::::::::::::::::i:::::::ヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/  _            : : : :!::::::!
   /   、     !   ..:::::::::::i:::::::::::::::::::::::::!,:::::::`>、_:.:.:.:.:.:/   _,r‐‐-=、_        : : : !::::::i
   !    i     !__,;;::::::::::::::!::::::::::::::::::::::::`i'´⌒`ニ  ̄`ヾレィ"´|| г‐ェ、`i,__ _,_,--‐: : !:::::ノ
   !,    i   ::::ヽ:::::::::::::::::::::::!::::::::::::::::::::::::|:::::::::!:::::i::::.....   |   ヽ、二__,ノ´  ||,ィ=``ヽ、ノ;/
   ヽ,、   i   :::::::ヽ:::::::::::::::::::ヽ;:::;;;;;;;::::::::::::!,::::::::!,;;ノ:::::::::::::::|            |ヾ=ニ_〈ノ"
    |ヽ、  ヽ  ::::::::::ヽ::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::!,、::::::::::::::::::::::::ノ            !    : :!
     ! i  ..:ヽ,...::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヽ,r‐‐‐-、ノ||`ー‐-っ'''´            ´ '   : : : !
   ,イ´ソ, ヽ、::;;;;:ヽ,-‐::::::::::::ヽ;::r‐::::::::::::;`、___,ィ' ||::::::::::/`t'!,       、、_       : : :/
  /;;;;;| |ヽ:::`-=ニ='`ー‐--‐'´ヽ、__;;;ィ'´`y::::::::::::||:;,/{,:.:.:.:! ヽ       `‐ニー-、  : : /
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/;;;;;;;;;;| ヽ:::::::`-、___, -‐'´   ~7T'´i.     ||    |   ヽ           : : :/
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            マナ・クリスタルを持つマイコ・パロ・ウル・パステルナーク大佐
895創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:50:40 ID:6R/DlDcB
「その時、奇跡が起こった!」でこれまで死んだ人間が全員復活する展開キボン
896創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:55:47 ID:fFtWk2/o
マイコ死ねば良いのに。
ほんと、死ねば良いのに。
キチガイな演説するなら自分の国でやってみろよって感じだ。
897創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 23:09:53 ID:9RUKdiR8
串子ってこいつかよw
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1233324243/383
>混成魔王 串子

いつのまにこんな設定がww
898 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 23:12:15 ID:QvzsPV0Z
へえー
知らなかったよ
899創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 10:11:57 ID:qK3cRVMv
マイコが完全に壊れた件

やってることがポル・ポトじゃねーかwwwww
90075 ◆kkZO9WMBek :2009/02/07(土) 21:46:56 ID:SOvmWgvl
>>899
壊れてますよー
エレナとユーリに死なれて暴走モードやね

んじゃ続きいくよー
90115/29:2009/02/07(土) 21:48:10 ID:SOvmWgvl
☆ 

 間借りしている飛行場脇の基地司令部で、ニーホフは指揮を執っていた。
 管制塔の窓越しに、対峙する魔道兵が見える。 
「敵は二体。第一世代の魔道兵と思われます」
 狙撃用の銃器を持った魔道兵と、近接戦用の斧を持った魔道兵がニーホフの倒すべき敵だった。
「一芸に優れているが、総合的な能力ではな。リディアに連絡しろ。攻撃開始だ」
「了解!」
 通信兵が伝えると同時に、リディア・チェルノスキー率いる魔道兵部隊は攻撃を開始した。 
 全員が手にしたマナ・ライフルが閃光の弾幕を撒き散らした。
 反乱軍の魔道兵は二人。
 リディア隊は十人。
 個々の性能で反乱軍魔道兵が上回っていても、数の面では絶対的に不利だ。
「これが量産型魔道兵……」
 司令部にいる人間の多くが感嘆の言葉を漏らした。
「皮肉な話だ。第二世代魔道兵は、第一世代をベースにして作られたというのに。母殺しということか」
 マイコ・パステルナークを始めとした魔道兵は第一世代と呼ばれ、言わば始祖である。
 リディア達第二世代は第一世代に培われた魔法技術によって、『均一化された能力』を与えられた魔道兵だ。
 つまり純然たる兵器に限りなく近い魔道兵と言える。
「敵を地上へ追い込め。四方から攻撃するんだ」
 ニーホフが命令した通り、リディア隊は天頂で円陣を組み、反乱軍魔道兵に砲火を浴びせた。
 反乱軍魔道兵も反撃するが、放たれる攻撃の量は桁違いだった。
「敵魔道兵、地上に落着!」
「砲撃を開始しろ」
 反乱軍魔道兵が地面に落着するなり、四方から砲撃が始まった。
 重砲ではなく、配備されたばかりのIS-2重戦車だった。
 百二十二ミリ戦車砲は『貫く』よりも『叩き割る』と形容した方が正しい。
 反乱軍魔道兵は結界で防御するが、そう長くは持たないだろう。
「砲撃で敵を抑えつつ、左右両翼から包囲攻撃を仕掛ける」
 上を抑えられたら、次はどうするか?
 右と左に逃げるとニーホフは読んでいた。
90216/29:2009/02/07(土) 21:48:37 ID:SOvmWgvl
「よし、右翼部隊を前進させろ」
 右翼の戦車隊は砲撃を中止して前進を始める。
 明らかに戦車隊の激しく、悪く言えば無駄が多かった。
 なぜなら、右翼部隊は陽動だからである。
 反乱軍の魔道兵は右翼部隊から距離を取ろうと移動した。
「左翼部隊、前進開始」
 今度は別の戦車隊が左翼から反乱軍魔道兵を攻撃する。
 魔道兵は上、右、左と、動きを完全に封じられた。
「魔道兵単体で何ができる」
 ニーホフが用いた戦術は両翼包囲だ。
 両翼包囲は敵正面を味方の助攻チームが拘束している間に主攻チームが敵側面に機動する戦術である。
 まず助攻チームが支援・制圧射撃を行う。
 次に陽動チームのあからさまな行動によって敵の注意を陽動チームに引き付ける。
 そして、敵の援護チーム又は主力が味方陽動チームに向かう。
 最後に主攻チームによる敵側面及び後背への攻撃を行うのだ。
「敵、後退します」
 反乱軍魔道兵は砲撃と砲撃の合間にできた瞬間を縫って、一気に戦域を離脱した。
「無理に追うな」
「よろしいのですか?」
「戦いはまだ続く。無駄な損害を出すことは無い」
 ニーホフは大きく溜め息を吐いた。
「なんと空しい勝利だ。だが、負けるよりはマシかもしれん」
903 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 21:48:49 ID:CetzBG/J
   
90417/29:2009/02/07(土) 21:49:06 ID:SOvmWgvl


 船体に大穴を空けられた艦船が沈んでいく。
 大きく傾いた船から兵士達が飛び降り、人で埋め尽くされた海へと落下する。
 反乱軍の魔道兵は空に浮遊しながら、ガソリンを海へと大量に流し入れた。
「一人たりとも生かすな。焼き殺せ」
 合図と同時に火が放たれ、海面は焼却場と化した。
 悲鳴と絶叫が爆発音に混ざり合い、共鳴する。
 地獄から逃げ出そうとする水兵は一人残らず魔道兵に抹殺された。
 マイコ・パステルナークはマストの頂点に立ちながら、続く大量虐殺の光景を眺めていた。
「大佐! これでは虐殺です!」
 一人の魔道兵が訴えた。
「安心しろ。私には自覚がある」
 マイコは魔道兵の肩を撫でてやる。
「私は偽善の名の下に大量殺人を犯す女ではない。必要なことを、必要と思ってやっているのだ」
「これが必要だと、貴方はそう言うんですか!」
「ああ。必要なことだ」
「何にです!」
「いずれわかる」
「こんなことって……おかしいですよ!」
 魔道兵はそう言って、マイコから離れた。
 まだ人間らしい感情が残っている彼女が、マイコは素直に羨ましかった。
 死体だらけの海を見ながらマイコは思う。
 必要なことなのだ――。  
 マイコ・パステルナークが巨悪になるためには、この程度で満足してはならない。
 更に悪逆なことを、更に下劣なことをやってのける必要がある。
90518/29:2009/02/07(土) 21:49:34 ID:SOvmWgvl
<<何人殺した?>>
<<七十人以上は数えてないわ。気が狂いそう……>>
<<それだけのことをあいつらはしたのよ。そういやアンタ、本校に彼氏が待っているそうじゃない>>
<<うん。帰ったら、プロポーズしようと……>>
 光の筋が、一人の魔道兵の頭を弾け飛ばした。
 脳漿と粉砕された頭蓋骨が血の霧と混じって流れ、頭を失った肢体が海へ落下した。
<<戦場でなァ! 恋人や女房の名前を口にする時と言うのはなァ!>>
 敵の姿を求めた振り向いた魔道兵の上半身が綺麗に消え、下半身が落ちていく。 
<<瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよ!>>
 マイコは琥珀色の瞳を空に向けた。
 十個の影がこちらに向かってくる。
<<大量虐殺のツケを支払わせる。白薔薇1より各員、奴らを生かして返すな! 一人たりとも!>>
 噂にあった量産型か――とマイコは戦闘態勢に入った。
 右手にマナ・ライフル、左手にマナ・ソードを持ち、編隊を組んで接近してくる魔道兵部隊に突っ込んだ。
「貴様らにいいことを教えてやろう。今の私は、阿修羅すら凌駕する存在だ!」
906 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 21:49:43 ID:CetzBG/J
   
90775 ◆kkZO9WMBek :2009/02/07(土) 21:50:32 ID:SOvmWgvl
今日はここまで。
小刻みに分けた方が良いとのレスをもらったので、暫く短めの投下でいきます。
支援に感謝。

串子さんが学園島戦争のラスボスなんだろうなぁ・・・
908 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 21:50:37 ID:CetzBG/J
    
909創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 21:51:13 ID:phA5Dfb1
串の支援が間に合わないのも恒例になってきたなw
910創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 21:51:33 ID:2GYXrKRs
 
911創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:10:00 ID:5tAHgNFZ
 __/\__
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912創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:11:23 ID:K3+nUVkE
>>907
読み切りに出てきたハインケル・ウーフーみないなキャラ出ないかな
913創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:15:27 ID:DX3aYHXi
たかが学生のくせにポルポトもどきの演説とか、もうアホかと。
マジで死んでほしいわマイコ。
そんなに戦争やめさせたかったら、全人類を直接始末してみろよ。
914創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:18:40 ID:wAkr4v03
エレナとマイコは中学時代の友人だったりして…
二人で「偉大なる国家」を誓い合うもエレナの弟に手を出して疎遠になったりw
915創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:22:43 ID:Reeds6ZY
ユーリ×マイコが読みたい!!
916創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:28:03 ID:3kC+/QeR
マイコは近眼だと思う
そしてメガネっ娘になるんだ
917創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:31:50 ID:s8RgubOv
                 ,..-‐−- 、、
                 ,ィ":::::::::::::::::::;;;;;:ii>;,、
        ,.--、   /:::::::::::::::;;;;;;;;iii彡" :ヤi、    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        _/   、:  i::::::::::::;:"~ ̄     ::i||li    | 私の水着は似合うかね?
      |      |:::::::::j'_,.ィ^' ‐、 _,,. ::iii》   <
      |      |:::i´`  `‐-‐"^{" `リ"      \_______________
      |      ヾ;Y     ,.,li`~~i
       ヽ      `i、   ・=-_、, .:/
        ヽ       ヽ    ''  .:/
         ヽ     \ ` ‐- 、、ノ
             ヘ      ヽ_|    |、
             ヽ ノ   ヽ/ __ ∠ ` ヽ
.             〉‐- 、_/ ` /     へ "
              /─ -- 二´‐-- 、      ヽ
            {         ̄ ヽ \  、    \
           |          \ yへ、   ヽ
.             l            〉′  \.    ヽ
            j            /       ヽ   〉
             /             l     /  /
          ` ̄「`〜〜、_,〜、__」     /  /
           /  ,       ヽ.  _/   /
             /           V´  ,/
          r'v、____      ヽ (ヽ)
           ヽノニ       ̄ ̄(`‐'´)、`_ぅ
            |\         _ >くl
          l   \    ,/     |
.            l     `ーr ´      |
             l       l         l
           l     l         l


  水着姿のマイコ・パロ・ウル・パステルナーク大佐
918創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:35:49 ID:OKPClF/4
学生なら学生らしい服着ろよ
919創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:40:55 ID:rxUrGJPn
               /´      ̄`ヽ,
              /        ,,,,,,ii>;,、
              / 〃  _ ,,,,,,,,iii彡":ヤi、
             li    ,,"~ ̄  // ::i||li
             l     j'_,.ィ^' ‐、 _,,. ::iii》
             l   i´`  `‐-‐"^{" `リ"
             lヤヽリ     ,.,li`~~i 
             l_ 」∂    ・=-_、,.:/ 
            丿j i i ヽ    ''  :/
              ,r=─--、rノ`''‐- 、、ノ :::i l
           /⌒ヽヽ、 \__ `7ニ´-n::i l
        /:|    \\ `<⌒|   ||\l
       く.: : :|   ー-、_.〉'´\_\|,..='」. |
        \_|      |   _``「_)´ _) |
          ト、    .|\i_,..'´<\__.〉.|
          / l.      |  / / | `ー-、. |
            `>.|   \ | く   ト、  .>|
            〈 .|   \〉 .\/ >ー'´ .〉
          \|     \‐--‐'´〈.  /
             ├l     ├‐<7 ̄  l
          / ∧     l: : :|    |
            / /./ ∧.      |: :|     〉
        / / .l | |.     | :|    /
        /./ l  |. \,..-‐〈 〈,.-‐、/
      /| l  l  |.  |,.-‐、| :|,.-‐,|\
     /.// l .|   |   |_  \丿  \ 、\
    く // .l  .|   | .r'´ |_l_.l_.l 〉^〉//l.〉 \`>
    / ./ l  |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄li
    \/  l.  |  li ̄ヽ、: : :__: : : : __: : : : __ : :`li
     \.|   |  `li: : :li`==ヘ.v==∧ ∨==ヘ.v==`li
       `ー-、L___,li: :`li: : : :\>: : : ̄: : : : :\>: :`li
             l   `li: :.`li: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :`li
             l   `li: : :〉‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐〉
              l   `li /三三三三三三三三三三/
           l    `'r‐‐‐‐:r‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐'
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            l     |   |
                 l    _l   _」.
             l-‐'´ `r‐'´ |
                l    |   |
              |  ,.  | :-‐-〉
                  |/____,|  ̄\
                 X二二ニk'二ニ`ニ==-、
                 |_,.-‐‐‐┤ ̄_,..::::: __,!
                └‐---‐‐'---‐‐‐

   セーラー服のマイコ・パロ・ウル・パステルナーク大佐
920創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:41:56 ID:phA5Dfb1
そろそろ容量埋まりそうだぜ
921創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:45:15 ID:SOvmWgvl
>>920
次スレ立ててくるね
922 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:45:31 ID:CetzBG/J
そうだね
あのテンプレ(笑)をまた見なくてはいけないのか

>>919
かわいいな、ちょっとこっちにおいで
923創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:46:18 ID:SOvmWgvl
924創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:49:19 ID:phA5Dfb1
>>923
あっちでもやったけど乙なのぜ
925創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:49:45 ID:SOvmWgvl
>>922
単発IDやけに多いのは何故なんでしょうね(笑)
同じIDが二度と現れないというw

これだけ人がたくさんいればすぐ埋まると思うので、我々は次スレに行きましょうか。
926創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:52:10 ID:phA5Dfb1
>>925
それだけ見てる人が多いってことじゃないカナ? じゃないカナ?
927創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:55:32 ID:SOvmWgvl
>>926
そうかーすごく嬉しいぞー(棒
過去ログからコピペしかできない人生って悲しいですよね。
誰のこととは言いませんけどw
928創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:57:21 ID:SOvmWgvl
台詞まるまる引用してる商業作品がある現状を知らないんだろうか?
絶望先生とかハヤテ見たら発狂しそうだなw
929 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:58:42 ID:CetzBG/J
俺も悪かったな、スルースルー

500kbならこのスレのスルースキル(主に串が下げている)が上がる
930創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:01:10 ID:SOvmWgvl
>>929
おっとまだ早い

ここ荒らしてる人とスカイプで話をしてみたいと思う俺。
931創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:02:14 ID:bz/5ywVA
その実況中継を見たい俺ガイル
やっぱあんまり見たくないなw
932 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:05:20 ID:CetzBG/J
ホントは全員のレスからそいつにかかわる部分全部削除したいところだな
↑の流れの様に構ってもらえるからあのようにつけ上がる
933創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:07:07 ID:SOvmWgvl
失礼した。
自重する。

ネタ振りなんだが、マイコの壊れっぷりは読んでいる側に伝っているのかな。
伝わってなかったら俺の方がかなり問題なんだぜ。
934 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:10:08 ID:CetzBG/J
壊れるのがある意味正常な動きでは
935創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:11:50 ID:SOvmWgvl
>>934
なら安心。
936創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:12:36 ID:2GYXrKRs
>>933
すごく落ち着いてるようにも見えるので、何か考えがあってのことかな?
って風に読み取ってる自分。

冷静に見えても、服や髪は乱れてる描写とか入れると壊れてるっぽさがでるかもしれない。
なんてのは俺のアレなのでなんともかんとも。
937創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:12:50 ID:bz/5ywVA
ああマイコが、マイコが……って言いながら読んでたw
でも、もっとキャラを掘り下げると良いだろうな。なかなか難しいだろうが……
938創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:16:48 ID:SOvmWgvl
>>936
後半部分の案は使うぜ。
前半部分は最期まで読み終わってから答えを出して欲しかったりする。
そこで駄目だったら俺のミスだ。

>>937
キャラは俺の弱点なんでもっと良くなるよう努力する次第。
939創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:19:09 ID:2GYXrKRs
うん、ともかく75氏の頑張りっぷりは見てて心地よいので
頑張って欲しいと思うのであった。
940創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:22:45 ID:SOvmWgvl
>>939
おうよ!
とりあえず今のところはPixivで学園島タグを調べると、ゴロゴロとプロ級のイラストが出てくるようにすることだぜ!
941創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:25:59 ID:jktlylUX
マイコがマナ板とか言われてた頃とは性格が少し違ってておじいちゃんちょっと悲しい
942創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:28:59 ID:SOvmWgvl
>>941
変わってしまった・・・んだろうね>マイコ
愛する弟と盟友に囲まれてた頃は貧乳で涙目になってたけど、全てを失った今は涙も出ないと。
序盤にラブコメ展開とか楽しい日常を入れれば、今の欝展開を強烈にできたんじゃないかと後悔してる。

あとエーリヒのキャラはどうなのか聞いてみたい。
943創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:37:32 ID:jktlylUX
ユーリ本当に死んだの!?
意味深な決意あったからまだ生きてると思ってた・・・


エーリヒはそれなりに好きなんだが、あまり日常での姿が見えないからなあ
いい奴だとは思うけど物事の考え方が淡白な奴に感じる
944創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:42:29 ID:SOvmWgvl
>>943
>ユーリ

ノーコメントでw

やっぱりエーリヒは軍人としての面が強調されて見えているみたいやね。
軍人としての冷淡さと学生としての明るさの二面性を表したかったんだ。
ここも修正がいるな。
945創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:56:43 ID:SOvmWgvl
うめ
946創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:57:57 ID:SOvmWgvl
うめ
947創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:59:12 ID:bz/5ywVA
埋めるか
948創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:01:31 ID:EnZpVPEc
おー
949創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:02:36 ID:SOvmWgvl
おー
950 [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
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