獣人総合スレ 4もふもふ

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1創る名無しに見る名無し
獣人ものの一次創作からアニメ、ゲーム等の二次創作までなんでもどうぞ。
ケモキャラ主体のSSや絵、造形物ならなんでもありありです。
なんでもかんでもごった煮なスレ!自重せずどんどん自分の創作物を投下していきましょう!
ただし耳尻尾オンリーは禁止の方向で。
エロはエロの聖地エロパロ板で思う存分に。

獣人スレwiki(自由に編集可能)http://www19.atwiki.jp/jujin
あぷろだ http://www6.uploader.jp/home/sousaku/

【過去スレ】
1:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220293834/
2:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224335168/
3:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227489989/
2創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 18:03:14 ID:42N5VNuA
いちおつっ!
3創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 18:04:43 ID:M3dM4v0m
1もふ!
4創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 18:10:10 ID:lK85w/Uj
       そんな趣味はな・・・な・・・な!ななっ?  、   |\
          i`゙丶.、 |\ ,ヘ, ,、  ,, --┐ ,,,_   ヾ`\ |:::::\∧ , 
           |    <  `´  `´ ゙/    | /|::::`iー┘  ::::::::  V´/_..,  --┐
          i,   ノ し            .|| |、:::: ゙ ....,,;;;;:::::::;;;;,,,,...  ::::::::::::::::::::::| 減るもんじゃないし
           |、  ⌒    ∪       i|ヽ       ::::::       ::::::::::::::::::|  キスくらい良いだろ?
           / <´`\∪       ノ し´ヾソ ヘ   ..,;;:::::;;;,,..   U  ::::::::::::::ノ
        . /  \/   ,;-─--、⌒  | Σ \、 ::   , -─ ´て  :::::::ノ|
        ヾ`//(´●    |、, 一┘    |∠___,,!   /´     Σ    |
       <  .)         ( ●)   U ノ   ● )   \,,,,=-、 ´~´ ,.;;U |
        ゝ /          ////  ´て/         ゙● .)   ,;::;  !
        /|  __    ,、     ヽ´ |  _        /////,;:;  /
       /  \ \/   // ∠-一ソ`゙` ヽ ヽ、 ̄_ =-    、    丶_ゝ
     /     ソ´``ー-.'´//   '     \_,i,´       丿 U  _,>
    /       `゙ー--= ´-´            ソ、_`_ー--_-一´) /`ソ.:.\
   /    、   ``ー- 、, -一 "   、     `ヽ、_`二´ ̄ ´,/ /.:.:.:.:..:..::.:.\
  /      ,⌒)                 /"      |   ̄´ ̄´  /.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:\
 /      /r⌒)     λ      /        |、_____,,/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
/      /   { ⌒)       ー-一/        |.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:::|
5創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 19:25:07 ID:Hs2PtdDc
恒例の。


>>1乙。お前なかなか目端が利くな、鹿馬ロ入るか?」
「GJだよ>>1くん!御褒美にこの“生キャラメル(?)”をあげるよ!」
「やめろよサン……>>1、それ多分ジンギスカンキャラメルだからな。コーヒー置いとくぞ」
>>1さん手際良いっス!怪我したらこの保健委員を呼んで欲しいっス!手厚く看護するっス!」
「中身を見たい生き物がいたら持って来ると良いっス。僕がヤってあげるっス……うふふ」
「白倉先生、保健委員とキャラ被ってますよ」
「……ぼそぼそ(跳月先生こそキャラ立ってなくて埋没してまスよ)」
>>1おつ。おい塚本、お前《馬鹿ロリータ》とかいうチーム作って小学生襲ったらしいな。指導室来い」
「塚本……君はハルウララだと思っていたのに。少年院でも達者でな。僕は祈ってるよ、別名祈り虫だけに」
「お前も馬鹿ロリータの一味だって聞いたぞ鎌田。指導室来い」
「ナ、ナンダッテー>Ω ΩΩ」
>>1おっつー。私がハルカ特製肉じゃが作ったげる」
「……お前マジでおかんみたいだぞ」
「うっさい爬虫類、タバコ食べさせるぞ☆」
6創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:47:51 ID:hxl6Dgcb
もふもふ
7創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 21:54:29 ID:42N5VNuA
mfmf
8創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:04:09 ID:07a0zLIr
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00749.jpg
しまった埋め作業をしようとしたら既に埋まってしまっていた
9創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:08:17 ID:nQFmedzR
遅かったモグラ君w
10創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:13:17 ID:q0ZCt20J
一歩遅かったね、獅子宮先生w

>前スレ
賢治ならもっとケモナー向けな詩があるでしょうに、
なぜその詩
11創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:28:01 ID:5R9d8pwY
>>10

魔王の6巻をさっき読み終えたとこだったから
12創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:38:37 ID:OpUpeMZL
13創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:39:49 ID:nQFmedzR
ちょwwww押し付けたwww
14創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:47:01 ID:07a0zLIr
ちゃっかりしてるぜww
15創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 23:09:24 ID:OpUpeMZL
16創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 23:10:55 ID:nQFmedzR
お嬢様いらっしゃーい
17創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 23:32:48 ID:07a0zLIr
お嬢様も可愛いが執事の人がいい雰囲気出してるww
18見習い ◆zYSTXAtBqk :2009/01/14(水) 00:45:06 ID:6uvCQVIP
19創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 00:47:11 ID:csGm+sY6
いいのういいのう
こういう人形欲しいや
20創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 01:07:31 ID:MTEc7uyD
武器っ娘はジャスティス。ロリッ子に巨大武器とか最高

虫もいるんだから竜だって当然アリさっ!
21創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 23:55:56 ID:wEo2dKDv
22創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 00:15:12 ID:+W825orm
ザッキーwwww
これは面白い!GJすぎる!
23創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 00:16:06 ID:RzSzQ/bW
読んでて『ルルに尻尾が無いぞ…』と思ってしまった。 この先どうなる
のか、楽しみです。

ところで質問。描いてる途中で気付いたんですが、“猪八戒”って「獣人」?
それとも「亜人」? “孫悟空”も。 “沙悟浄”は… 「妖怪」かなぁ?
24創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 01:12:53 ID:/2qZobLS
ザッキーへたれてるなwwwそんな君が好き
職員室マジで賑やかだ。こんな学校で働きたいよ

悟空道読む限りは全部妖怪だ。猪八戒は結構獣人ぽくなるが
25創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 01:16:45 ID:K2eAKKln
絶対これ目撃者わんさかいるだろw
26創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 01:17:59 ID:+W825orm
後ろでサン先生が追いかけっこしてたりいのりんの弁当が微妙にキャラ弁だったり
細かいところにネタがいっぱいあっていいなー
27創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 01:51:44 ID:t8PeksnK
白先生やはづきちを久し振りにみた気がするw
28創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 01:55:16 ID:GbuBlTn9
ルルのいたずらっこさんめ
顎ちゅーは萌えた
29創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 11:15:44 ID:ZsSmZfGw
うひょー!
ドキドキしたぜ
30創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 21:38:49 ID:RzSzQ/bW
31創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 00:54:01 ID:HyZHVYn/
おっかない先生なのかw?
32見習い ◆zYSTXAtBqk :2009/01/16(金) 01:11:47 ID:o0GxhLh0
33創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 02:44:10 ID:hzZ3U8wZ
目欄のがあまり続くととっつき難くなると思うの
34創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 02:50:39 ID:C0zg73hK
>>30
クロのいじめっ子的なキツい目にキュンと来ますた
犬太はちょいバカですねw

>>31
最初の頃に保健室のベッドから突如現れたから、
初等部でだけ怖がられてるんじゃないだろうか

>>32
応援してるよ〜
目欄のメランコリックは狙って誤爆スレで曝露すると良いよ
35創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 10:15:23 ID:7dhMJQ/a
上の子の武器みたいな形は大好物だぜ
36創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 14:52:52 ID:fUna1UEg
>>30
ザッキーはかなり最初からいるけど初登場シーンがあれだもんなw
きっとコレッタから広まっておっかない先生ってことになってるんだね
37創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 15:31:52 ID:qKJJzOHR
今じゃ濃いメンバーが増えてザッキーも常識人の仲間入りだ
泊瀬谷さんにいのりんと並んで振り回されサイドに来ている
38創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 15:36:28 ID:hzZ3U8wZ
常識人のラインが薄くなってきているw
39創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 15:55:09 ID:C0zg73hK
教頭と好調に常識神になってもらうしかない
40創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 17:45:54 ID:HyZHVYn/
でも教頭は角の事考えずに車買っちゃうほどの素でおばかなところがww
41創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 19:22:25 ID:05iQ9Sd2
常識人な教頭の今回の間抜けな行動の裏の理由をば開陳。

最初に教頭を描いたとき、角は後ろ向きの太く短いものでした。が、
“オープンカーに乗せる”事を考えてわざと上に長い角に描き替えた
のでした。 で、その設定をオープンにしておかなかったのと、さっ
さと最初に考えたのを描いておけばよかったのにグダグダやってたら
SSが先に出てしまい、申し訳なかったけど勝手に車を買い戻させて
しまいましたのでした。

という事で、わんこさん、ごめんなさい。
42創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 20:50:29 ID:YzSPJVlJ
気の強いクロと気弱そうだけどお馬鹿で明るい犬太のコンビいいなー
ザッキーは初等部でだけ威厳を保てているのねw
中等部、高等部ではいいようにとれば親しまれてる悪いようにとればなめられてるから
初等部での反応が新鮮だw

>>32
いつも思うけどこのキャラたちはぜひ立体化してほしい
身長10〜20センチぐらいのこのチビキャラがちょこちょこ動いてたら
俺は鼻血を出して死ぬ
43創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:19:24 ID:05iQ9Sd2
44創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:23:38 ID:qKJJzOHR
こうしてみると分かりやすいな。
陸上と大空じゃジャージの仕様が違うのかやはり
45創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:25:48 ID:YzSPJVlJ
飛行用ジャージはなんか飛ぶためにいろいろ工夫してありそうだよね
しかし横と比較すると陸上用ジャージにどうやって羽根がおさまってるのか気になるw
46創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:38:46 ID:HyZHVYn/
そりゃ気合でギュッギュッギュッって…羽が痛いか…
今更ながらちゃんと空を飛ぶ用のジャージになってて感動した
47創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 05:41:44 ID:QzAzu3/p
袖のサイドがジッパーやマジックテープで開放可能になってるとか
振袖みたいなでかい袖口に羽根通してくるくる巻き込んであると想像してみた
48創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 06:43:04 ID:Kn/s7l0/
>>43
見た瞬間鼻血でるかと思った、ヤベェこの2人俺的に鳥ストライク!

>>44-47
飛行姿勢(前傾)の時にジャージがずり上がって背中が露出しない様、後ろ側は尾羽近くまで
すそが延ばしてあったりとか、飛んでる時にジッパータグ(引っに張る時につまむアレね)が
バタバタして余計な空気抵抗にならない様ベルクロのストッパーがついてたりとか。
こういうの考えるの楽しいな、なんだかオラワクワクしてきたぞw

競技会仕様のハイスペックなヤツだと、ハイテク水着のレーザーレーサーみたいに
パッツンパッツンのサイズで表面が鮫肌っぽくザラザラ加工されてたり
バイクの皮ツナギみたいに背中にコブが付いてたりして、空気抵抗を減らす仕組みが
イパーイみたいな。
宮本さんも試合に出る時はそんなの着たりするんでしょうかね?
実は朱美が逃げるのも、それを着るのは絶対嫌だからだったりして。
49創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 09:46:26 ID:4UD0hdhK
※生着替え、パンチラ有り。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00769.jpg
ジャージズボンの方はこんな感じで尾羽根を出すのかな、と考えてました。
50創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 10:34:02 ID:SfG+mwWW
思わずパンチラがどこかを探しちゃったよw
尾羽根穴は尻尾穴より左右に長いんだねー
51創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 11:35:49 ID:BgisYVW4
おおぉぉ伊織さん
ちくしょう尾羽根太いなw
目線はやっぱ康太なんだろな
なんて羨ましい主人公だ
52創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 14:24:55 ID:YmiV7xyl
パンチラ!パンチラ!!
53創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 17:49:11 ID:jXo460CE
こうなると「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」って訳には
いかなくなるw
54創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 18:34:41 ID:jJ/JBnoR
良く考えろ。パンツがあるから恥ずかしいんだよ
多分パンツを脱いだって羽毛に隠れて何にも見えやしない
パンツがあるからエロい雰囲気を醸し出しているんだ
55創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 19:59:46 ID:TNq9tvbU
上着てて下脱いでるとエロい。
どうぶつの森
56創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 20:17:28 ID:jXo460CE
>上着てて下脱いでるとエロい。
図書活動をしている比取くんの事かァァァーーー!!
57創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 22:58:18 ID:AHQs/kCr
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00770.jpg
「恥ずかしいとかどうとかそれ以前の問題ですから」
58創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 23:01:44 ID:4UD0hdhK
59創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 23:03:04 ID:AHQs/kCr
なんてエロいケツだ
60創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 23:07:59 ID:SfG+mwWW
>>57
ひさしぶりの水島先生ww
あいかわらずセクハラだー

>>58
これはいいケツ
61創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 23:13:18 ID:XM/tytxD
>>57
数分後、よりによって獅子宮先生に同じ事を頼み、
結果、髭を根こそぎ引っこ抜かれて床に突っ伏す水島先生の姿が!
62創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 23:15:43 ID:jXo460CE
>>61
ヨハンがわざわざ首つっこんで「女性にはもっとソフトに、かつ
ちょっとねだる様に頼まないとだめですよ」とか言って
同じメに遭ってそうだ。
ていうかやっぱり常識のある教師少ねー!
63わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/17(土) 23:30:02 ID:Pdq8YN/l
流れに間に合ったかな…。殆ど脊髄反射です、ごめんなさい。

>>41
教頭先生のマイペースさが引き出せてておもしろかったっす!
こちらこそありがとうございます。
「一体何があったか、説明してもらおうか…因幡」
何たる不覚。風紀委員長を務めるわたしがこのような形で保健室に運び込まれるとは、末代までの恥。
けっして大怪我をしたわけではない。ただ、足をくじいただけだ。しかし、保健のシロ先生の質問への答えようによっては、
全校中の笑いものになりかねない。横で心配そうに見つめる保健委員と宮元は、答えにのどを詰まらせる。
シロ先生はコーヒー豆の袋を見つめながら、わたしたちを尋問する。

「あの…。因幡さんが…」
やめろ、宮元。わたしのメガネ越しの訴えが分らないのか。
確かに、わたしは宮元に迷惑をかけたかもしれない。これ以上生き恥を描きたくないという乙女心を分ってくれ。
頼むから、『廊下でコケた』ということにしてくれないか。それを宮元と保健委員が目撃した、でいいじゃないか。

しかし、青空の向こうの地平線のように真っ直ぐな性格の宮元は、羽根を震わせながらシロ先生に打ち明けようとしている。
「因幡さんが…、わたしの所に来て…」
「『ぱんつじゃないから恥ずかしくないッス!』って委員長が言ってたッス」
頼むからやめてくれ。今まで築き上げた、わたしの実直で勤勉なイメージが音を立てて崩れてゆく…。

そう。あれは、ほんの出来心だった。
アニメショップのポスターで『若頭』のDVD予約を忘れてしまい、初版特典の「若頭も愛用・日本刀ストラップ」を手に入れなくて
悔恨の情にかられていたときのこと、店内のプロモーション映像でわたしと同い年位の子が空を舞い、銃器を持ち、戦う姿が
凛々と描かれているシーンを見たのだ。それがすべての始まりだったのだ…。

「わたしも空を飛びたいな」

どうしてこんなことを考えたのか、今でも不思議だった。
かつてわたしたちうさぎ族の耳を羽根に見立てて、一羽二羽とわたしたちのことを
空を自由に舞う鳥のように数えていたと言うお話も聞くではないか。
地上で跳ねるうさぎが、月に昇るというお話も聞くではないか。
澄んだ冬の空を巨人オリオンと共に地球を回るというお話も聞くではないか。
こう考えると、うさぎが大空に思いを馳せることは、なんの変哲もないことであるということ。
うさぎが空を飛んで何がおかしい。
御堂から土曜日の午後に大空部の活動があると聞いて、早速わたしはこの思いを大空部部長の宮元巴にぶつけてみた。
返ってきた答えは言うまでもない。
「どうにかなりませんか?」
「どうにもならないね」
当たり前である。しかし、自慢の長い耳で空を飛ぼうと思うほどわたしはバカではない。
ほんのちょっと、ほんのちょっとでもいいのだ。天空の支配者になったつもりで居たいのだ。
あのアニメの少女のように銃器を持って青い空に溶け込みたいのだ。そのためには宮元巴よ、あんたの力が必要なんです。
「出来れば…あの。体験飛行っていう形で、わたしに肩車で乗って…飛んでいただけませんか」
「なんだと?」
「ほら…この空の素晴らしさを知った人が増えたら、大空部に憧れる子たちが一人でも増えて…」
「ゴクリ…」
「体験飛行ってやつですよ!お試し期間、送料無料!」
宮元が毛を逆立てているのは興味を示した証拠。興奮したのか、尾羽が扇のように開きかけている。
もう一押し…。待ってなさいよ、わたしの空。

「そして、この素晴らしさを委員会で生徒会長に伝えたら…きっと大空部の予算もアップ…」
「させていただきます!!」
宮元の気が変わらないうちに、グラウンドへわたしたちは即刻移動。

土曜日と言うことで学校の周りには誰も居ない。
人気のないグラウンドに着いたわたしたち。宮元は朝礼台に立ち、わたしに肩車するフォーメーションを取る。
ところが宮元は不安そうな顔をしてわたしに問いかける。そうもそのはず、わたしは清く正しい制服姿なのだ。
「ぱ、ぱんつじゃないから恥ずかしくないもん!!」
着替えているうちに宮元の気が変わったら元の木阿弥。
実を言うと制服のスカートの下にはブルマを穿いている。制服のまま空を飛べば、純真な男子の注目度もアップ。
『純粋に空を飛びたい』わたしの気持ちが通じ、宮元がわたしの肩に腰掛ける。ぐっと力強い宮元の足を握り締め、いざゆかん。
「い、いくぞ?」
「う、うん!」
ばさっ!ばさっ!!ばさっ!ばさっ!!ばさっ!ばさっ!!

地上に吹き付ける宮元の翼の風が、思いっきりわたしの頭上を叩きつける。髪が乱れる!腕が痛い!寒い!
大空の大嘘つき。風を切る爽快感なんかひとっつもないぞ、という言葉が脳内を駆け巡ろうとしたときのこと。
わたしの目に星が飛び込んだ。そうか、宇宙まで飛んで行ったんだ。やあ、あれがオリオン座かな…。
違う、小石だ。星は星でも地球を間近に見ていたのだ、と言うより地球にぶつかったのだ。
足からわたしは落っこちた。飛行距離、約2メートル。わたしの空への夢は足の痛みという代償を抱えて潰えた。
今頃飛んでいたであろう自由な天空を見上げると、宮元巴が一人で呑気に飛んでいたのであった。

保健室の窓は、いつの間にか赤い夕焼けの日が差し込んできている。さっきまでの青空はわたしを見捨てて消えてしまったのか。
「いまいち、きみたちの言っていることがわからないんだ。パンツがどうしたんだ」
「えっとッスねえ…。宮元さんが言うには『ぱんつじゃないから…』」
「待て、そんなことわたしは言っていないぞ!」
足を抱えて倒れているのをパトロール中の保健委員が見つけ、搬送中にわたしがついこぼした言葉らしい。
女の子だから、わたしもパンツが見えた見えないを気にしていたんですう!ブルマですが。
このままではらちが明かない。シロ先生に最高級のブルーマウンテンを進呈することで、このことは内密にしてもらうことになった。
シロ先生にはコーヒーで黙らせるのが一番、…とサン先生が言っていたっけ。
「よかったッスねえ。『ブルマ』を進呈ッスよ!」
「略すな!!」
シロ先生は夕焼けのように赤くなった。


おしまい。
67わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/17(土) 23:36:50 ID:Pdq8YN/l
今年の初っ端から反省してます。投下おしまいです。
68創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 00:56:34 ID:heS0ONX6
69創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 01:12:41 ID:z3T9RDYb
いま「コンドルは飛んでいく」が脳内BGMで流れたw
70創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 01:45:21 ID:cQ0aarI/
見方によっては補食シーンw
私も体型飛行お願いしたいなぁ

71創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 01:46:43 ID:j7p6TW6w
はてさてこの違いは朱美が凄いのか、因幡さんが重(ry

ブルーマウンテン略してブルマか…今度使うわ
72創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 02:03:27 ID:dnX+zKLN
そういや兎と鷲だったなw
こりゃ捕食だ
73創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 14:19:52 ID:heS0ONX6
大空部、女子エア・ブズカシチーム。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00774.jpg
74創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 17:05:25 ID:RfVuDkhU
ウィキったらすごいスポーツだったw→ブズカシ

教頭がボールなんだろうか
75創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 22:27:55 ID:cBZFdArv
トリさんみんなむきむきww
そうだよなー飛べるぐらいの筋肉なんだから胸筋背筋はんぱないよね
76創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 22:39:38 ID:X1nukonV
鳥さんたちは無駄に脂肪を付けるとお空を飛べなくなるんですよね。

昔、セキセイインコを飼ってたけど梅雨の季節には毛が生え変わるので大変そうだな。
77創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 22:44:47 ID:64CaPC4E
インコちゃん・・・
78創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 00:20:32 ID:jJzzDiW8
>>30
「怖くないよ、全然怖くないよ(多分)」
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00775.jpg


「若頭〜」のスピンオフ風をリオたん向けに描いてたら
自分でもあまりの厨二臭さにオオオアアアアアアアアアアアアッ!
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00776.jpg
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00777.jpg
79創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 00:55:49 ID:3kBXJliM
鳥さんの大胸筋は取り付け方からしてハンパない

胸骨が前方に板状に伸びて、そこから大胸筋がスタートする
人間のボディビルダーなんざ目じゃないぜ
80創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 01:03:57 ID:UhTLsNPN
>>78
今となってはわりと常識人ポジションのザッキーも
初登場時はあんなだったからなぁ…w

あと厨二ってのはど真ん中を突っ走ってなんぼだと思います
81創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 01:45:57 ID:6eSIq81Z
82創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 01:47:31 ID:UhTLsNPN
鼻wwww血wwwww
83創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 02:20:12 ID:GRMUVVUB
アングルのせいか一瞬出血の出所を見誤ってエログロに見えましたw
84創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 02:48:21 ID:jhdSF8w8
>>83
俺と一緒にpinkに行こうか

「ああ、月の・・・って人間以外にはアレって無いんだっけ。
 犬とかが時期に流血するのは興奮による充血で・・・
 兎はやっぱり『元気』な分すごいのか、量が」
とか思った俺は腹を切って血を抜くべきなのかも知れん
85創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 02:56:38 ID:G3IVpGo5
あぁぁあこのスレに突入してから委員長が急激にイロモノキャラに…
いや素質は十分あったけどさ
86創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 09:49:55 ID:rkvZLsiD
不思議とセンター系の話題がなかったな
87創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 12:02:17 ID:GRMUVVUB
センター関係ない初等部とかがフォーカスされちゃったから
88 ◆gRK4xan14w :2009/01/19(月) 15:04:58 ID:gHfymlq3
>>78
構図がいい感じだったので思わず作っちまったぜ マジッ〜ク・ザ・ギャザリィィング!!
ttp://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Animal%20Mates.jpg
89創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 16:10:21 ID:kNL2bGHL
>>87
というか高3のキャラ居たっけ?
90創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 18:52:32 ID:UhTLsNPN
そもそも初、中、高という事以外は学年も分からない
けどそこは分からないくらいにしとく方が逆に良い
91創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 19:19:07 ID:G3IVpGo5
サザエ時空ってことでいいじゃないか
やっぱ小中高は話作り易いし、矛盾は無いにこしたことない
進級するにしても学年は明確にしない方が良い
92創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 19:23:32 ID:jJzzDiW8
>>81
街中で大きな声で呼びかけてくれる人って必ず居るという法則。
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00779.jpg

>>88
おお、どっかで見覚えあると思ったら亜人スレの!印刷して
加工するしかない訳ですね!ホクホク。
93創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 20:32:30 ID:uKcJyPo5
>>92
転んで血がでたときとか
あらあら大丈夫〜ってよってくるおばちゃんに大丈夫だから開放してーって思うw
94創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 22:03:00 ID:6eSIq81Z
そもそも保健委員はなんでそんなに血の臭いに敏感なんだろう?

「たぶん鳥のひとより朱美に頼んだほうが…」って茜に教えてあげた
いと考えてたら、もしかして朱美と宮本先輩の関係ってこういうこと
か?と思い至りました。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00780.jpg
95創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:03:44 ID:MpBzXQcY
おい、ポケモンいぢりのサイトが閉鎖されちゃってるよ
大変だよ
96創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:08:29 ID:xbvU9oDA
ここで言う事じゃないだろう
97創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:20:54 ID:vAmxFUlE
>>94
おおおおすげえ
元ネタ知らんけどデフォルメかわいいなあ
もっと見てみたいな
98通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/19(月) 23:56:08 ID:HYUbGecb
こんな夜分遅くに俺が通りますよ……。

今回は流れに乗ってるような乗ってないようなSSを投下します。
結構長いので支援をお願いします。
99通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/19(月) 23:58:58 ID:HYUbGecb
ひゅん…ひゅん…ひゅんひゅんひゅんひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんんんん………

最初はゆっくりと廻り始めたプロペラは、モーターの唸りと共に次第に回転の早さを増し
モーターの音が風鳴りの様な音になる頃にはプロペラの先端に塗った黄色い塗料が丸く輪郭を成す様に見える様になる。

ランティングギアのブレーキを解除、するとプロペラから生まれる推力によって徐々に機体が加速して行く。
その加速をより早める為、俺は自転車から流用したペダルを強くこぎ始める。
第1加速………第2加速………第3加速………離陸速度に到達!

翼のフラップを動かし、翼への揚力を最大にして、機首を引き起こす!
十分な加速と揚力を得て、機体は風に乗り、
重力のくびきから解き放たれ、今、地上から飛び立つ!

「良しっ!飛んだ――――」

ぼ き ん

直後、何かが折れる嫌な音。

「―――え゛!?」

音の方へ振り向き、右の翼が途中から折れているのをその目で確認する間も無く、

ずがっしゃっあぁぁっざりざりざりがしゃん

――俺、風間 惣一(かざま そういち)を乗せた自作飛行機『ブルースカイ[(エイト)』は土煙を上げて、
河川敷の地面を派手に滑走し、やがて地面に突き出た車止めのコンクリートブロックにぶつかってようやく止まった。

「痛つつ……くっそう……一体何処が悪かったんだ?
ひょっとして翼の強度計算を間違えてたのかな………?」

土煙が収まった後、俺はボロボロになった機体から擦り傷だらけの身体を引きずり出し。
首を傾げてぼやきながら、破損して最早空を飛ぶ事はおろか地上を行く事すら叶わなくなった元飛行機を見やる。
そして早速、工具片手に破損状況を確認しつつ、破損したパーツと無事なパーツを分けるべく分解し始める。

「と、機体の方は………あ〜あ、右の翼のフレームとパネルは完全にオシャカか、これで今月の小遣いパーだな……。
お、ペラ(プロペラの意)とモーターは無事だったか。ああ、良かった良かっ―――」

「全っ全、良くないわよっ!!」

「―――んお?、白頭か? どした、何が良くないんだよ?」

機体の分解中に背に掛かった声に振り向くと、
其処には尾羽を不機嫌に広げたハクトウワシの鳥人の少女の姿。

こいつの名は白頭 空子(はくず くうこ)、俺の住んでいる家と隣同士と言う、ありきたりな幼馴染の関係の少女。
学校内ではクラス委員をしており、勉強もできる上に人当たりも良い為、教師生徒問わずして良い評判がある。
……のだが、如何言う訳かこいつ、俺に対してだけはやる事なす事に一々口うるさく突っかかってくるのだ。
某大国の国鳥の遺伝子を持つ所為か、やたらとプライドが高い上に口が達者で、
下手にこちらが言い返すと、即座に何倍にも言い返される。
見た目は結構可愛い顔しているんだけど、このキツイ性格の所為でいろいろと台無しだ。
100創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:59:23 ID:UhTLsNPN
支援
101通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:06:33 ID:HYUbGecb
彼女は不機嫌そうに翼の両腕、人間で言う掌の部分を腰に当て、ズイッとこちらに詰め寄って言う

「良くないの! ソウイチは自分の身体とそのガラクタのどっちが大事なのよ!?
もう、擦り傷だらけじゃない!」

―――ガラクタ言うな! と言い返したかったが、
余計に彼女の怒りへ油を注ぎそうなのでグッと喉元で堪えて言い返す。

「まあ、自分の身体も大事だけどさ。怪我をしても大人しくしていれば時間と共に治るじゃないか。
けど、機体はそうは行かないぜ? 動物や人と違って直さなきゃ直らないまんまなんだから」
「だからと言ってね! それにも限度ってのがあるでしょ!? 怪我で死んじゃ御終いなのよ!!
こんなガラクタに乗って何度も落っこちたら何時か死ぬわよ、ソウイチ!
良いからソウイチはアタシなんかの為にこんな事繰り返さないで頂戴! 良い迷惑なのよ!」
「別に俺は白頭だけの為にやって居る訳じゃねーよ。これは俺の夢でもあるんだからな! 夢で死ねたら本望だ!!」
「ああっ、もう!! あー言えばこう言う! もう良いわよ! 勝手に墜落して怪我すれば良いのよ!」

売り言葉に買い言葉、こうなるともう止まらない。

「あー言えばこう言うのは白頭も同じだろ!
それに何時も墜ちると決まって居る訳じゃねーだろ! 勝手に決めんなこの白髪頭!」
「ひ、人が気にしている事をよくも言ってくれたわねぇぇぇぇっ!! このチビ助っ!!!」
「だっ、だぁれが芥子粒どチビだぁぁぁぁっ!! こーなったら何度でも言ってやる!
白髪白髪白髪白髪白髪白髪白髪白髪白髪SIRAGA! 如何だっ!」
「い、1秒間に十回も言ったわねぇぇぇぇっ!! もう知らないっ! アタシは帰るわ!!」
「ああもう勝手に帰れっ!!その方が清々する!!」
「フンっ!じゃあねチビ助っ!」

激しい口論の末、白頭が俺に向けて吐き捨てる様に言うと、そのまま歩いてその場を後にする。
ったく、確かに俺は高校生なのに身長が155cmしかないけど、
チビ助はねーだろ! チビ助は! おまけに帰り際にも言いやがって!!

……って、またやっちまった……。
なんで何時も白頭と顔を合わせる度にこうも喧嘩しちまうんだろ……?
本当はもう少し優しい言葉を掛けてやりたいんだけど、
素直じゃない白頭と話している内に何時の間にか売り言葉に買い言葉、
結局、口喧嘩の末に俺か彼女のどちらかが怒って帰っちまうんだよな……。
102創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:07:22 ID:VuBN5qjJ
支援
103創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:08:41 ID:lmlpmLVd
紫煙
104通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:08:58 ID:maw9AFwo
あ、察しの良い奴ならもう分かっていると思うが、今の白頭は鳥人でありながら飛べない、
それは口喧嘩の後に態々”歩いてその場を後に”した事からも分かるだろう。

白頭の奴、昔はしっかりと飛べたんだ。それこそ、見ている俺が羨ましく感じるくらいな?
けど、数年前に起きたある事故が原因で、彼女は飛べなくなった………。

その事故というのが白頭が1人で飛んでいる時、
運悪く突風に煽られて地面に叩き付けられてしまい、腕、いや翼の骨を折る大怪我を負ったんだ。
鳥の獣人にとって、空を飛ぶ為の翼の骨折はそれこそ致命的とも言える怪我だ。
しかし幸いな事に、治療した医者の腕が良かったのか、
白頭の翼の骨折は1ヶ月もしない内に綺麗に治った。

……けど、怪我が治ったにも関わらず、白頭は飛ぶ事が出来なくなっていた。
飛ぼうとすると、立てなくなる程の震えが身体に走って、その場で座りこんでしまうのだ。

医者の話では、飛べない原因はPTSD(心的外傷後ストレス障害)とか、言ってたかな?
白頭は墜落した事による心の傷の所為で、空を飛ぶ事に恐怖心を抱くようになってしまったんだ。

……以降、幾らリハビリを試みようとも、白頭の奴は飛べないままだ。
それ以来、彼女は塞ぎ込みがちになり、時折、空を見上げては寂しげに俯く姿を目にする事が多くなった。
俺も、この身も心も傷ついた幼馴染の事を心配し、何度か励ましてみた物だ。
だが、そのたびに彼女の反発を買い、大喧嘩した末にどちらかが怒って帰ってしまう。それを何度か繰り返した。
その時、彼女は決まってこう言った、

『生まれつき飛べない人間のアンタに、私の苦しみなんて解らないのよ!』

確かに彼女の言っている事は正論だ、だが、だからと言って苦しみが解らない訳では無い。
今まで出来た事が、ある日を境に全く出来なくなる……その苦しみは相当な物だったのだろう。
俺は何とかして、彼女を再び飛べる様にしたいと思った。彼女の苦しみを晴らす為に……。

彼女が飛べない原因は心的な物だ、恐らく墜落した時に感じた恐怖が、彼女の心に深い傷を刻み、
飛ぶ事への恐怖心に繋がっているのだろう。
ならば、飛ぶ事に対しての恐怖を上回る勇気とやる気を与えれば良いのだ!
そして、彼女の家への8度目の訪問をした時
先に言った彼女のお決まりの言葉の後に、俺はこう返した。

『だったら、お前が生まれつき飛べないと言った人間の俺が、自作の飛行機で飛んだ時。
白頭、お前も空を飛べるように努力するんだ! 約束だ!』

ああ、これははっきり言って挑発だった。確実に彼女の頭に血を昇らせると見越した上での言葉だ。
そして、俺の思惑通り、彼女は言った。

『ふん、分かったわ。どうせソウイチには無理だと思うけど、
もし万が一、ソウイチがその自作の飛行機とやらで空を飛ぶ事が出来たんだったら、
アタシも努力して見るわ! 約束ね!』

この時、俺は頭の中でほくそえんだ物だ。
彼女が見事なまでに俺の挑発に乗り、約束を取り付ける事に成功した事に。
105創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:13:07 ID:YL0NWWGu
支援
106創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:14:35 ID:lmlpmLVd
紫煙
107通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:15:20 ID:maw9AFwo
俺のおじいちゃんは昔、戦闘機のパイロットをしていた。
そしてその息子の父さんもまた、国際線の機長をしており、今も何処かの空の上で頑張っている事だろう。
そんな血を受け継いだ俺もまた、小さい頃から自作の飛行機で空を飛ぶのが夢だった。
そう、夢を叶えるついでに傷ついた幼馴染を救えて一挙両得だと俺は目論んでいたのだ。
そして、俺は早速、飛行機同好会を立ち上げ、おじいちゃんが所有する部室兼作業小屋で飛行機製作を開始した。

……だが、ここからが問題だった。
人が乗って飛ぶ飛行機を一から作ると言う事は、プラモデルやラジコンの飛行機を作る事とは全く大違いなのだ。
この時の俺は、何とかして彼女をその気にさせる事に夢中で、その事に全く気付いちゃいなかった。

最初の内の何度かは、飛行機の形をした良く分からない物を作っては、崖から飛び降りてそのまま転落した物だった。
……あの時はよく死ななかった物だと自分自身、感心する。

そうやって、日に日に怪我が増えていく俺の様子を見かねたおじいちゃんから、飛行機の基本原理などを教えてもらい。
それを元にグライダーの様な物を作っては崖から飛び降り(前と変わってない)数メートルほど滑空しては転落した物だ。
この時は良く、崖近くの立ち木に引っ掛かっては母さんにこっ酷く怒られたものだ。

そして更にその後、失敗を続ける俺の様子を見かねたおじいちゃんの要請を受けた父さんのアドバイスで、
飛行機の設計などを勉強し始め。如何言う風に設計すれば、飛行機が問題なく空を飛べるかのイロハを学んだ俺は、
ただ飛ぶだけでは面白くないと思い始めたのだった。
そして、俺が考え付いたのが、翼にソーラーパネルを敷き詰める事で、
空に太陽が輝く限り、半永久的に飛び続ける事の出来るエコロジーな飛行機を作る事だった。

……思えばこの時、やろうとしている事が本来の目的から少しズレ始めている事に、俺は全く気付いていなかった。
その結果、普通に飛行機を作っていたのならとっくの昔に完成していたのを、
より難航させる事になるのに気付いたのは製作を始めてから後の事だった。

……問題は翼に敷き詰めるソーラーパネルにあった。
このソーラーパネルという物、その薄い見た目と裏腹に結構重たく、
モーターに飛行機を推進させるだけの出力を発生させるのに必要な電力を得る為に、
翼に敷き詰めるソーラーパネルの面積がかなり必要となり、バッテリーを含めるとその重量は相当な物となってしまう。
当然、機体の重量が増したら、それ相応の出力を持ったモーターが必要となる訳で、
そしてそのモーターを動かすのに必要な電力を得る為に、もっとソーラーパネルがと大容量のバッテリーが必要となる。
……このジレンマを解消しなければ。何時までたっても飛行機は完成すらしないだろう。

だが、これで俺は投げ出す訳にはいかなかった。自作の飛行機で空を飛ぶ夢を叶える為、
そして、怪我して以来、飛べないままで居る白頭を勇気付ける為、俺は諦められなかった。
108通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:18:24 ID:maw9AFwo
このジレンマを解消する為、俺は無い頭を酷使して飛行の為の計算をすると。
そのために必要な低電力で高出力のモーターと、軽量かつ高発電量のソーラーパネルを求めて東奔西走し
必要な資金などは今まで溜めた小遣いやお年玉で賄い。足りない場合は学校に許可を取りアルバイトをした時もあった。
そして時には、おじいちゃんや父さん、または友人などにも頭を下げて資金援助をしてもらったりもした。

その苦労の甲斐もあって俺の理想に近い部品の全ては集まった。
機体を構成するフレームは、竹を圧縮形成した物を用いて、軽量化とローコスト化を図り
(竹製品の加工販売を行っている知り合いに頼みこんで作ってもらった)
ソーラーパネルはなるべく薄く、そして軽量な物を使用(これが一番、時間と金が掛かった)
必要な性能を満たすモーターやバッテリーはジャンク屋を駆けずり回って見つけ出し。
プロペラもモーターと同じくジャンク屋周りを繰り返し、やっと要望にあった物を見つけ出した。
(オイルまみれになりながら望みのモーターを見つけ出した時、感動の余り涙が出たのを思い出す)
しかし、本当の苦労はここからだった……

何せ翼をソーラーパネルにした飛行機を、一般の高校生が自作したと言う前例は殆ど無く
(NASAが何機かを開発、製造しているなどの例はあるが)
更にその特性ゆえ、設計自体も通常の人力飛行機の物とは殆ど違う物となり。
殆ど前例が無い以上、必然的にトライ&エラーの繰り返しとなる。
結果、俺は冒頭の様な失敗を何度も繰り返す羽目になった訳で。
何度墜落、そして破損させては修理、改修を繰り返したか、はっきり言って憶えていない。
(当然、その度に修理費やその他の経費が嵩み、財布の中身は常に極寒な状態に……。
更にその上、気が付けば我が飛行機同好会は墜落同好会などとと言う不名誉極まるあだ名で呼ばれるように……)

しかし、その苦労のお陰か、着実にその成果は現れ始めている、
今まではジャンプに近い物で飛ぶなんて殆ど出来なかった、だが、今回は5メートルも飛んだのだ!
この差はかなり大きい。もし、翼さえ折れなければもっと遠く、高く飛べた筈だ。

「今回の失敗の原因はずばり翼の強度不足、
それと飛行時に発生するカルマン渦によるフラッター現象もあるな。
だったら強度を上げるついでにカルマン渦を分散させる構造を………」

粗方の考察をして改良点を見つけた俺は
『ブルースカイ[』を分解し、河川敷近くにある部室兼作業小屋へ苦労して持ち帰った後。
早速、『ブルースカイ\』へ改修する為の作業に入ったのだった。
109創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:19:10 ID:lmlpmLVd
支援
110創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:22:46 ID:nA0BSs0o
支援
111創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:26:22 ID:YL0NWWGu
支援
112通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:29:40 ID:maw9AFwo
「ふぅ、修理及び改造完了っと………これなら今度こそ、飛べるかもな………」

粗方の作業が終わった後、
俺は改修された『ブルースカイ\』を前にレンチ片手に一息付ける。
ふと、壁に掛けられた時計を見れば、時刻は何時の間にか夕飯時を過ぎようとしている所だった。
さっきから腹が減ったなと思ったら……集中していると時間が流れるのが早く感じるな。

「……こんな時間までご苦労な事ね、チビ助」
「――誰がミジンコどチビだ……って白頭か、お前こそこんな時間に何の用だ?」

不意に後ろから声を掛けられ、つい、ムッとしながら振り向くと、
作業小屋の入り口に立つ白頭の姿があった。

「用と言うほどの物じゃないわ。
お母さんにね、差し入れでも持っていきなさいと言われて持って来たまでよ。
そうじゃなかったら態々こんな小汚い場所に来ないわよ」

言いながら、白頭は不機嫌そうに作業台の空いたスペースに水筒と何かの入った風呂敷包みを置く。
包みを開けて見ると、中にはアルミホイルに包まれた焼きお握りが数個入っていた。

「焼き御握りか……丁度お腹空いてたんだ。悪いな、白頭」
中を確認するとお茶を片手に焼き御握りを口に入れる。
うん、出来合いの冷凍物じゃ無いなこれ、こんがりと焼いた醤油の風味が良い感じだ。
113創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:30:20 ID:T9C5vAEP
支援
114通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:32:44 ID:maw9AFwo
「結構美味いじゃねえか。………白頭、ありがとな」
「礼ならお母さんに言って頂戴、アタシに礼を言っても困るわ」

俺の感想に、そっぽを向いて応える白頭。
こいつ、相変わらず素直じゃないな………。

「……ねえ、少し聞きたいけど、何でソウイチは何度失敗しても諦めないの?
もういい加減諦めようと思わないの?」

焼御握りを半分程平らげた所で、俺の横で両の翼を後ろに組んだ姿勢の白頭が問い掛ける。
俺は茶の入ったコップを作業台に置き、白頭に向き直ると

「その答は簡単だ、諦めたら其処で終わりだからだよ。
決して出来の良く無い頭を捻って考えて設計して、彼方此方駆けずり回って下げたくない頭下げて
欲しい物を我慢して溜めた小遣いやお年玉をはたいてパーツを買い集めて、
寝不足になるのも構わずに徹夜で飛行機を組み上げては、何度も何度も失敗しては怪我をして、
それでも諦めずに努力してきた事が『もう駄目だ、諦めよう』で全てがお仕舞いになるんだ
俺は……そんな終わりは認めない。 これは俺の夢でもあるんだからな」
「……ソウイチ、アンタはバカよ。本っ当にバカよ! バカもバカの大バカよ!!」

毅然とした俺の答えに、白頭は身体を震わせて怒りを顕わにする。

「何で怪我してまで、辛い思いをしてまでやるのよ、本当に馬鹿じゃないの?
もう良いから止めて! ソウイチが飛行に失敗して怪我するたびにアタシは………」

馬鹿と言われた事に俺がムッと来た所で、白頭は何故か両目に涙を溜めて、言葉を詰まらせる。

「お、おい、なんで泣くんだよ? 俺、お前を泣かせるようなことはしてないぞ?」
「ソ、ソウイチには関係ないわよ! ほっといて!」

心配して声を掛ける俺を振り払うように、彼女が言い放った後、

「……とにかく、もうこんな馬鹿な事は止めて頂戴! アタシが言う事はそれだけ、じゃあね!」

俺が止める間も無く水筒を引っ手繰るように取ると、さっさと作業小屋から去っていった。

「……やっぱり、素直じゃない奴」

そして、俺は残された焼きお握りを眺めながら、一言漏らした。
115通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:38:42 ID:maw9AFwo
「いやぁ、ええもん見せてもろおたわ。
『若い二人の空に賭ける青春』 これで新聞の一面ゲットどすぇ」

そのままやる事もなく、焼きお握りをかじっていた所で
唐突に横合いから掛かった声に、思わず振り向き見れば、
其処には笑顔を浮かべた黒い少女が立っていた。

黒い少女……これは決して揶揄ではない、彼女は本当に黒いのだ、
全身を覆う漆黒の羽毛も、身に着けている黒系の服も。
そして、彼女の常に浮かべている優しげな目の裏に潜む、その本性も。

烏丸 京子(からすま きょうこ)、漆黒の羽毛を持つ烏の鳥人であり、俺の通う学園の新聞部の部長である。
用意周到、暗中飛躍、神出鬼没、傲岸不遜、彼女の事を四字熟語で表せればこの四つが出てくる事だろう。
彼女の前に隠し事は通用せず、知られれば1日もしない内に校内中に知れ渡る。
今まで彼女によって不幸になった人間は数知れず。決して敵に回してはならない存在。
そして番格の不良ですらある意味恐れる存在、それが彼女――烏丸先輩だった。

「……烏丸先輩……何時からここに?」
「ん〜、そうどすなぁ……くうちゃんが『こんな時間まで〜』と言った辺りくらいからやなぁ?」

搾り出す様に言った俺の問い掛けに、烏丸先輩はのほほんと言った感じに応える。
因みに、烏丸先輩の言う「くうちゃん」とは白頭の事である、
しかも如何言う訳か、烏丸先輩は白頭と親友同士の関係だったりする。
……どんな事情で白頭と烏丸先輩が仲良くなったのかは、今だ不明なままである。

「最初からかよ……つか、何処から入ったんだよ?」
「それは聞かないのがお約束どすぇ」
「言えないって事かよ。まあ、良いけど。
――で、わざわざ顔出して何の用だ? 取材だったらノーコメントだぞ」
「あ〜。ちゃうちゃう、取材やとかそ〜言う事や無いどすから安心おし」
「は?」

パタパタと漆黒の羽の手を振る烏丸先輩に、俺は軽く眉をひそめる。

「いやな、惣一はんは、くうちゃんの事をどー思ってんのか気になってなぁ……」
「はぁ?」
「ほら、うち、くうちゃんとは親友やろ? その親友のくうちゃんが何時もあんたさんの事を話すやさかいに。
うちはあんたさん自身はくうちゃんを如何思ってはるんやろな、と気になった訳どす」

……なるほど。そりゃ気になるのも当然だな。
つーか、アイツ……俺の知らない間に何か悪口でも言ってないだろうな?

「どう思ってる、と言われてもな……
アイツは口が達者な上に素直じゃないし、俺のやる事なす事全てに反発して……」
「いやいや、そう言う意味とはちゃうんや」
「へ?」

言いかけた所で違うと言われ、思わず間の抜けた声を漏らす。
そんな俺に構う事無く、烏丸先輩は更に続けて言う。

「うちが言いたいんは、あんたさんはくうちゃんの事は好きか? って事どす」

 ぶ っ !

余りにもストレート過ぎる問いかけに、俺は思わず口に含んでいたご飯粒を噴出した。
116創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:41:21 ID:T9C5vAEP
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117創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:45:24 ID:YL0NWWGu
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118通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:46:02 ID:maw9AFwo
「んもぅ、いきなり噴出すなんてばっちい人やなぁ……」
「な、なななななな、何をいきなり聞いていらっしゃるのですか!? あんたは!」

迷惑そうに翼についたご飯粒を払い落とす烏丸先輩に、俺はどもりまくりながら何処か必死な感じで問い掛ける。

「何を、って聞きはりますけど、うちの言ったのはそのまんまな意味やで?」
「……あ、あのな……」

ご飯粒を粗方払い落とし、首を傾げて不思議そうに聞き返す烏丸先輩に
俺が頭の内から沸きあがった頭痛の様な物を感じながら言い返そうとした矢先。
烏丸先輩は先程ののほほんとした態度から一転、まなざしを真剣な物へ変えて言う。

「惣一はん、あんたさんはなんも知らん様やから言っておくけど、
くうちゃんはずっとあんたさんの事を心配してらっはるんやで?
しかもな、あんたさんが飛行機を飛ばす時にはな、くうちゃんは物陰からあんたさんを見てたんどす。
そう、あんたさんに何かあった時には、何時でも飛び出せる様にな。ほんま……くうちゃんは健気なもんやで。
それを知らんで、あんたは何が『俺の夢』や! 何が『諦めたら終わり』や!
怪我して死んでしもうたらな、夢も何もあったものやないで!」
「……え……?」

烏丸先輩からまくし立てる様に言われた事実に、俺は呆然と声を漏らす。

「良いか、くうちゃんは何時もきつい事言ってるように思っとる様やけどな、あんたはんの事を想って言ってるんどすえ。
あんたがくうちゃんの事を想ってるのと同じ様に、くうちゃんもあんたの事を想ってはるんや! 分かるか!
何も飛行機を飛ばす事を諦めろ、とは言わん。けど、くうちゃんのことを想うんやったら自分の事も大事にしーや!
あんたはんはくうちゃんを悲しませたくないやろ? なあ!」
「…………」

何時しか目に涙を浮かべ始めた烏丸先輩に、俺は何も言い返せなかった。……いや、言い返せる筈もなかった。
俺は……自分のやろうとしている事に夢中になる余り、白頭に心配を掛けさせてしまっていたんだな……
しかも、それに全然気付かないなんて、俺は本当に馬鹿だ。
自分の馬鹿さ加減に一人、後悔の意を抱いている俺を余所に、
一通り言いきった烏丸先輩は一息付いた後、懐から取り出したハンカチで涙を拭いて言う。

「と……うちとした事が、ちょいと熱うなり過ぎたわ。堪忍してや?
惣一はん、多分あんたはんの事やから、また今度も飛ばすつもりやろうと思うけど、これだけは憶えとき。
あんたはんの身体は、あんたはんだけの物やないんやってな? やから、身体は大事にしーや」
「ああ、分かった……俺も、白頭を悲しませたくないしな」
「うん、分かれば良いんどす。……で、本題やけど、あんたはんはくうちゃんの事が好きなんやろ?」

……まだ聞きますか、この人は?

119通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:47:17 ID:maw9AFwo
「白頭の事が好きじゃなかったら……何度も苦労してまでこんな事続けたりしねーよ」

何処か気恥ずかしい物を感じつつ、俺はそっぽを向いて烏丸先輩へ言う。
俺の答えに満足したのか、彼女は何処か安心した様に、

「それを聞いてうちも安心したわ。……実は言うとな、もし、ここで惣一はんが変な事答えておったら、
うち、惣一はんの事で有る事無い事書き立ててやろかと思っとったんやけど……その必要もなさそうどすな」

うん、変な事答えなくて本当によかった……ナイス俺!

「そいじゃ、用も済んだことやし、うちはここでお暇させてもらいますわ。
惣一はん、明後日の飛行、上手く行くとよろしおすな?」

言って、何時もののほほんとした調子に戻った烏丸先輩は作業小屋から去って行く。
そこである事に気付いた俺が、去り行く烏丸先輩へ声を掛けようと振り向いたその時には、
既に彼女の漆黒の羽毛が、ドアの向こうの夜の闇へ完全に溶け込んでしまった後であった。
そして、俺はドアの方を眺めつつ、呆然と漏らす。

「……確かに明後日飛ばす予定だったけど、俺、一言もそんな事言った憶えないのに……?」

……この時ばかりは、俺は平穏無事に卒業したいなら烏丸先輩に逆らわない方が良い、と心に誓うのだった。
120創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 00:49:10 ID:T9C5vAEP
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121通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 00:55:06 ID:maw9AFwo
天気は西高東低、そして風も穏やかで、見上げる空の青さが何処までも心地が良い。
今日は絶好の飛行日和のこの1日。河川敷には今回で18回目を迎える飛行試験を行おうとする飛行服姿の俺が居た。
既に組立ての完了し、充電を行っている『ブルースカイ\』のソーラーパネルが降り注ぐ陽光を照り返しピカピカと輝く。
その様子は、さながら翼を休める渡り鳥の様にも見える。

ふと、周りを見渡してみれば、
暇つぶしで見に来たであろう見物人やら、たまたま遊びに来ていた親子連れ、ジョギングの最中の老人
そして何処からかこの事を聞きつけ、様子を見に来たであろう烏丸先輩の姿が見える。
……他の人達は居たって別に如何でも良いのだが、出来れば4番目の人は帰ってもらいたい物だ。
万が一、これでまた墜落なんて事になったら何を書かれる事やら……。

「…………」

どやどやとざわめく見物人の声が何処か遠くの世界にあるように感じる。
今まであれば、俺は絶対に飛べる、と期待に胸を膨らませている筈だったのだが。
生憎、今日の俺は如何も心の内にもやもやとした物があって、気分が乗らないままでいた。

もやもやの原因は分かっている。
―――それは白頭の事だ。

まさか、アイツにあれだけ心配されているとは思ってもいなかった。
そういえば、飛行に失敗するたびに、俺は何時の間にか来ていた白頭に怒られていたような気がする。
ひょっとすると……アイツは何時も俺の事を見ていたのだろうか?

そう、自分を勇気付ける為に、怪我をしながらも努力を重ねる俺の姿を。

「惣一、今日こそうまく行きそうかな?」
「ああ、行けたら良いな……」

組み立ての手伝い兼見届け人である父さんの言葉に、俺はつい上の空で答えてしまう。
父さんは俺の様子に少し苦笑した後、携帯を使い関係者への最終確認を取り始めた。
……俺はもう一度だけ、視線を巡らせて見なれたハクトウワシの少女の姿を探してみる。
だが、何処を探しても、彼女の姿は見つからないままだった。

「そろそろ時間だぞ、惣一?」
「あ、うん……」

父さんに言われ、俺は『ブルースカイ\』の操縦席(といっても、自転車のサドルなのだが)に座り、風防を閉じる。
機体のフラップの可動を確認、バッテリーをモーターへ接続、そしてブレーキを解除し、ゆっくりとペダルを漕ぎ出す。
その力で機体がゆっくりと動き始め、機体が滑走路であるサイクリング用の道へと差しかかる。

其処で一旦機体を止め、進路がクリアである事を父さんが手旗信号で伝えるのを待ち、
俺はペダルの動力伝達先をランディングギアからプロペラへとレバーでガチャリと切り替え、力強くペダルを漕ぎ始める。
しかし、漕ぐのはプロペラが動き出すまでの間だけ。そう、プロペラの回転自体をモーターの起電力とする為だ。
やがて、モーター自体の力でプロペラが回り始めたのを見計らって、俺はペダルを漕ぐのを止める。

ひゅん…ひゅん…ひゅんひゅんひゅんひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんんんん………

モーターの音が風鳴りの様な音へと変わり、回転するプロペラが丸く黄色い輪郭のみ見える所でブレーキを解除。
機体はプロペラからの推力のみで動き始め、ゆっくりと前進をはじめる。
122通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:00:03 ID:maw9AFwo
「惣一、何かあったときは直ぐに通信するんだぞ」

横を追走する父さんの風防越しの言葉に、
俺は「ああ」と一言だけ頷き、ペダルの動力伝達レバーをプロペラからランディングギアへ切り替える。
力強くペダルを漕ぐ度に、機体は加速を強め、離陸速度へと近づいて行く。
コックピットに据え付けられたバイクの物を改造した速度計を見やりながら、離陸のタイミングをはかる。

V1、まだだ、加速は続行。……VR、フラップを動かし機首引き起こし開始。……V2、よし、離陸!

フラッター現象によって翼が震える音が俺の不安を掻き立てる。その中で俺は目を閉じて必死に祈る。
頼む、ブルースカイよ、今度こそ、今度こそ飛んでくれ! 彼女の為に!!


「…………」

フワリと浮かび上がる感覚と同時に翼が震える音が唐突に止む。
俺はゆっくりと目を開き、辺りを見まわす。ゆっくりと地上が離れていくのが見えた。
そして、俺は呆然と言葉をもらす。

「飛んでる……」

そう、俺は、機体は――空を飛んでいた。

「飛んでるぞ……ふふ、ふはは、やった、いぃぃぃやったぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

胸の内から湧き上がる喜びのままに、俺は叫びを上げてガッツポーズを取る。
頬を撫でる冷たい風が、この時ばかりは心地よく感じる。
白頭と約束をしてから約半年、俺は、ついに約束通り空を飛んでやったのだ!
俺はすぐさま通信機のスイッチを入れ、地上にいる父さんへと繋げる。

「父さん、今、見えるよな? 大空を飛んでいる機体の姿を」
『ああ、しっかりと見えているぞ。ここじゃ大喝采で沸きあがっている所だ』

通信機越しに聞こえるは見物人の上げる喝采の声。
俺に話しかける父さんの声も、何処と無く喜びに満ちている様に感じる。
多分、父さんの聞く俺の声も喜びに満ち溢れている事だろう。
……だがしかし、そんな中で俺は心残りが一つだけあった。

そう、この場に白頭の姿が無い事だ。
本当ならば、彼女へ今の俺の姿を見せて、空へ飛ぶ為の勇気を与える筈だったのだ。
しかし、それが果たせない様では、折角飛んだ喜びも半減してしまう。

……まあ良い、後で飛んだ事を伝えて、それでも疑う様であれば、またこうやって飛んでやるまでの事だ。
それより、先ずは着陸の為にとっとと機体を旋回させて河川敷へと戻らねば……            
「……あれ?」

機体を旋回させるべく操縦桿である自転車のハンドルを動かすが、何故かビクとも動かない。
2度3度同じ事を繰り返し、改めて異常に気付いた俺は、嫌な予感を感じながら方向舵の方へ視線を向ける。
123通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:01:18 ID:maw9AFwo

「ギ、ギアがかんでやがる……」

俺の向けた視線の先には、方向舵を動かす為のギアにがっちりとかみ込んでいる小石があった。
多分、離陸する際に起きたフラッター現象によって機体が揺れた時に、車輪が跳ね上げた小石をかんでしまったのだろう。
クソ、こうなる事だったら外装をケチらなければこういう事には……。

しかし後悔後先立たず、過ぎた事を悔いるより今はこの状況を何とかするしかない。
ならばフラップを左右違い違いに可動させる事で旋回すれば、と一瞬思ったが
そもそもこの『ブルースカイ\』はそれが出来る構造ではなかった事を思い出し、より絶望感を深めるしかなかった。

『如何した、惣一? そのままだと送電線にぶつかってしまうぞ!』
「えっ、送電線?……って、げっ!」

通信機の向こうの父さんの指摘に前を振り向いて見れば、百メートル程先に高圧線があるのが見えた。
……拙い、このままでは高圧線にぶつかってしまう!

「くっ、間に合えよっ!」

無論のこと、俺は即座にフラップを失速ぎりぎりまで可動させ、急上昇する事で高圧線を回避しようとする。
しかし、機体は思ったよりも速度が出ているらしく、このままでは上昇する前に高圧線に当たってしまう!

『そ、惣一っ!? 惣一ぃっ!!』

通信機越しに父さんが叫ぶ声が何処か遠くに聞こえる。
頬を撫でつける風の冷たさも、まるで遠い世界の出来事の様に感じる。
灰色になった世界の中、ゆっくりと、ゆっくりとスローモーションの様に眼前へ迫る高圧線。
あれに当たれば、数千ボルトの高電圧が俺を機体丸ごとこんがりとローストする事だろう。

……俺は、死ぬ?

そして一瞬、最悪の結末が俺の脳裏をよぎる。
124創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 01:02:54 ID:lmlpmLVd
しえん
125通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:06:04 ID:maw9AFwo
「ソウイチ! 今直ぐ飛び降りて!」

――と、その時、俺は聞ける筈の無い声が聞こえた。

……この声が死の間際に聞こえる幻聴だとか何とか考えている暇は無い!
高圧線に当たって確実に死ぬくらいなら、彼女の声を信じて死んだ方がまだマシだ!

「南無三!」

躊躇逡巡なんぞ一切合財かなぐり捨て、俺は叫び一つ上げると機体を捨てて空へとその身を投げ出す!
一瞬だけ、身体に自由落下する独特の感覚を感じ――

がっ

思いっきり上へ引っ張られるような衝撃を腰の辺りに感じると同時に、
地上へまっ逆さまに落ちる筈だった俺の身体は空中に留まった。

「ソウイチ、大丈夫!?」

上から掛かる聞き間違え様のない声に俺が振り向き見れば、其処には翼を大きく広げ羽ばたかせる白頭の姿。
見れば、彼女の頑強な脚が俺の腰のベルトをしっかりと掴み、落ちない様に支えている状態だった。

「白頭……お前、飛べたのか?」
「え?……あ、そう言えば――って、それより、ソウイチ、怪我は無い? 何処か痛い所とか無いわよね!?」
「いや、まあ、強いて言うなら、お前にキャッチされた時に腰を少し……」

一瞬だけ疑問に答えかけて直ぐにまくし立てる様に状態を聞く白頭に、俺は少し冗談めかして答える。
その答えに、白頭は深く安堵の息を漏らし。

「良かった、本当に良かった……結局、あれから気になって様子を見に来たら
ちょうどその時、ソウイチが空を飛んでいる所で、良く見たら何だかソウイチの様子がおかしいのが見えて……
それを見ていたら何だか居ても立っても居られなくなって……気が付いたら、アタシ、空を飛んでいたの」

白頭は笑みを浮かべ、穏やかな調子で言う。

「不思議な物よね、今まで空を飛ぶのが恐かったのに、今、こうやってソウイチを助ける為に空を飛んでいる。
やっぱり、アタシにとってあの日の事故の事とかより、ソウイチを失うのが恐かったのかしら……」
「……ったく、困るよな……」
「……へ?」

俺が不満げに漏らした言葉に、白頭が首を傾げる。

「後で空を飛んでやった事をお前に知らせて、それからビシバシと空を飛ぶ為のリハビリをさせるつもりだったってのに。
お前にこうもあっさりと飛んでしまわれたら、その予定が全てパーじゃねーか」
「ぷっ、あはは、残念だったわね? 思う通りに行かなくて」
「ああ、本当に残念だ……けど、こうやって空を飛んでる白頭を久しぶりに見れて、俺は嬉しいよ」
「……え……あ……?」

思わぬ事を言われた白頭は頭の羽毛をぶわっ、と毛羽立てて嘴をぱくつかせる。
そして、俺はある方向を見ながら、ニヤけた笑みを浮かべて言う。

「お蔭様でナイスアングルが見放題だもんな? ……ふむ、青のストライプか」
「―――――っ!? なっ、何を見てるのよっ! 本気で落とすわよっ!!」
「う、うわわわわっ!? じょ、冗談だって!? だから落とすのだけは勘弁っ!!」

スカートの下を見られて怒り狂う白頭にぶらぶらと揺さぶられ、俺は悲鳴に近い声で謝る。
その横を、無人となった事で上昇が間に合い、あっさりと高圧線を回避した飛行機が何処かへ飛び去ってゆくのだが
その時の俺も白頭も騒ぐのに夢中だった為、それに気付きもしなかったのだった。
126通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:11:41 ID:maw9AFwo
「なあ……白頭? そろそろ降ろして欲しいんだが……」
「ちょっと待って、その前に行きたい場所があるの」

ややあって、そろそろ宙ぶらりんの状態に俺は苦しさを感じ始め、スカートの下を見ない様にしながら白頭へ言うのだが、
どう言う訳か彼女は一向に降りる気配も無く、ある場所へ向けて飛びつづけていた。

「ここよ。 脚を離すから動かないでね」

そろそろ日が落ちようとする頃になり、
俺をぶら下げた白頭はようやく、海と山の中間に聳え立つ崖の中腹にある、棚の様に突出た場所へと辿りつく。
白頭は俺を地面に軟着陸させた後、フワリと舞い上がると同時に脚を離し、俺の横へと降り立った。
そして、俺は立ち上がりながら周囲を見まわし、白頭に問い掛ける。

「ここは……?」
「ん……ここはね、アタシのお気に入りの場所なの。今まで友達どころかパパやママにも教えた事の無い秘密の場所。
今は少し寂しい景色だけど、春になると色取り取りの花が咲き乱れてとっても良い場所なのよ。
それに……ここから見える夕日は他に無いくらいに綺麗なの。
……一応、言っとくけど、アタシがここを教えたのアンタが初めてよ?」
「へぇ……」

白頭の説明に、思わず感嘆の声を漏らす俺。
確かに、落ち行く夕日の照り返しを受けて、海がまるで宝石の様に輝いている様は何処までも美しい。
この光景を前にすると、彼女がここを秘密の場所にしたがるのも無理も無い思えてしまう。

「嫌な事や悲しい事があった時は、アタシは何時もここの夕日を見て気を落ち着かせてきたんだ。
けど、飛べなくなってから、もう2度とここの夕日は見られないかもって思うようになって居たの。
……でも、結果的にソウイチのお陰で、アタシはまたこの場所に来る事が出来た。 
アンタに言うのもちょっと癪だけど、本当に感謝しているわ」

夕日を眺めながら恥かしそうに言う、白頭の不器用ながらも想いの篭った感謝の言葉。
聞いている俺もなんだか恥かしい。
127通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:12:39 ID:maw9AFwo

「所で、ちょっと頼みがあるんだけど、良いかしら?」
「ん? なんだ?」
「私が良いと言うまで目をつぶって欲しいのよ」
「………?」

何やらとってもベタな予感を感じつつ、俺は白頭の言う通りに目をつぶる。
ひょっとしてキスが来る? とか淡い期待を抱きつつ。

ぼふん

――しかし、目をつぶった俺に来たのは、期待に反して両頬を両翼で軽く叩かれる感触だった。
そんな予想外の事に思わず目を開けた俺へ、白頭は悪戯っぽく笑うと、

「ふふ、ひょっとしてキスしてくれると期待してた? バーカ、鳥人の堅い嘴とキスしても面白くないでしょ?」
「あ……い、一杯食わせやがったな! この白髪頭!」
「なによ、このチビ助。勝手に期待しちゃってるアンタの方が悪いんだからね?」

こ、こいつはやっぱり素直じゃない……!
そう思った俺が、更に声を張り上げようと顔を上げた矢先、

もふっ

―――俺の身体は、白頭の両翼にしっかりと抱き寄せられていた。

「アタシ達、鳥人はね? キスの代わりに好きな人とこうやってハグをするのが慣わしなのよ、憶えてて」

突然の事に呆然とする俺の耳元へ言った後、白頭は身体を離し、両翼を後に組んで言う。

「ここでの事はアタシとアンタだけの秘密。 分かったならとっとと帰るわよ? ソウイチ。
アンタの父さんもそろそろ心配している頃だと思うしね?」

そこで初めて浮かべる、白頭の心の底から見せる微笑み。
……彼女がこうやって笑うのを見るのは、本当に久しぶりだった。
ひょっとすると、俺はこれを見るだけの為に色々と苦労を重ねていたのかな? と、つい思ってしまう。

「そうだな、帰ろうか?」

そして、俺も白頭に向けて笑いかけたのだった。
128創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 01:14:41 ID:E0r6xhCk
129創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 01:17:47 ID:E0r6xhCk
130通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:21:27 ID:maw9AFwo
……其処からが大変だった。
白頭にぶら下がる形で帰還を果たした俺に待っていたのは、
目が全然笑ってない笑顔を浮かべる父さん及び学校関係者の皆さんの姿だった。

聞いた話では、俺が乗り捨てた『ブルースカイ\』はまるで乗り捨てられた恨みを晴らす様に無人で飛びまわった挙句、
あろう事か、バッテリー切れによって俺の通う佳望学園の校庭へと不時着したのだ。
しかも、その不時着する際に校長先生の銅像を粉砕したと言う、かなり有り難くないオマケ付きで。

そして、怒りに燃える彼らから俺へ下された判決は、
3週間の部活動停止と学園高等部棟全てのトイレ掃除一ヶ月間。そして小遣い約30%カット3ヶ月。
俺にとって何より痛かったのは小遣いが減る事だったのは、今更言うまでも無い事だろう。

白頭はと言うと、俺の弁明も効して一切のお咎め無しで済んだ。
それ所か、白頭が久しぶりに空を飛べた事で、彼女の両親が人目も憚らず咽び泣いたのは敢えて言うまいか。

さらに、その翌日、一面に俺を抱く白頭の姿の写真が載った俺と白頭の熱愛を報道する校内新聞が張り出され、
白頭と共に慌てて新聞を剥がして周った事は余談である。

まあ、そんな感じで、俺にとって初めての、そして白頭にとって久しぶりの飛行は幕を閉じたのだった。

……そして、今

「今日は良い空だな。 遠くの美山連峰がはっきりと見渡せるよ」
「そうね、こう言う日に飛ぶと本当に気持ちが良いわ」

あれからようやく部活動停止が解かれた俺は、
早速、改良に改良を重ねた『ブルースカイ]』に搭乗し、白頭と共に空の風の一つとなっていた。

部活動停止になってるのに飛行機の改良なんて出来ないんじゃね?、と思う人も居るかもしれないが
そりゃ部活動として飛行機を飛ばす事は出来ないが、家に帰った後で改良点の洗い出しと改造は出来るのだ。
そう、家に帰った後、がミソ。 流石の校則も帰宅後の個人的な、しかも目立たない活動までは口出し出来ない訳で。
まあ、流石に試験飛行が出来ないのは少し辛かったが。今、こうやって飛んでいる限りでは問題はなさそうである。

ちなみに、\から]へのおもな改良点を上げるとすれば、
機体構造の強化、航続距離の延長、そして搭乗定員の増加、である。
一番の目玉は言うまでも無く、搭乗定員の増加であろう。(とはいえ、一名から二名に増えただけなのだが)
俺はそれを生かし、新学期において新入部員獲得の為の体験飛行を行おうと画策しているのだ。
果たして、これが上手く行くと良いのだが……。
131通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:25:19 ID:maw9AFwo
「やあ、白頭、そしてついでに風間、気持ち良く飛んでいるようだな!」
「あれ? 宮元先輩……如何したんですか?」

風鳴り音の鳴り響く中でも大きく聞こえる声に振り向けば、
其処には翼を大きく広げて滑空する飛行用ジャージ姿の大空部部長、宮元先輩の姿。
つか、俺に対して『ついでに』って何だよ? ちょっぴりムカつくぞ?

「白頭が怪我を乗り越え、再び空を飛べる様になったと聞いたからな。早速、我が大空部に勧誘しに来た」
「おいおい、随分と節操無いな、大空部の部長さん」
「仕方ないだろう、最近はスポーツに傾倒してくれる若者が少なくなってしまってな。
そんな状況の中、有能な部員は一人でも多く獲得したいのが本音なのだ」

ジト目を向ける俺に、宮元先輩は何処か申し訳なさそうに言いながら翼をばさりと羽ばたかせる。

「でも、無駄足……じゃなくて無駄羽だったわね? 宮元先輩」
「何? 何が無駄羽だと言うのだ?」

横から割って入った白頭の言葉に、思わず首を傾げる宮元先輩。
そして、白頭は答える様に続けて言う。

「アタシはもう既に飛行機同好会の部員になってるのよ? だから今更先輩が勧誘しに来てももう遅いの」
「ぬ……」

完全に出遅れた事を知り、思わず痛恨のうめきを漏らす宮元先輩。

……そう、あの初飛行の日から数日経った後、白頭は唐突に我が飛行機同好会に入部すると言い出したのだ。
俺がその理由を聞いてみると、彼女は何処か偉そうに胸を張って、

『アンタ一人だけでやらしていたら、また何かの事件を起こしそうだからね。
これから何が起きても良い様に、アタシがきっちりと監視して上げる事にしたの。感謝しなさい』

とか言ってのけてくれたのだ。
……以来、俺が部活動を行う時には、必ずと言って良いほど彼女が付いて周る様になった。
そう、飛行機を飛ばす時だけではなく、部品の買出しの時や整備の時でも、終始付きっきりである。
それで少しは大人しくしてくれれば良いのだが、彼女は相変わらず俺のやる事成す事に口出しして来る訳で。
おかげで白頭が入部してから、俺が落ちついて部活動を出来た日は殆ど無いと言って良い位だ。
……だがしかし、同時にこれも悪く無いと思っている俺もいる訳で……。

「やれやれ、既に白頭が他のクラブへ入部している以上、ここは素直に諦めるしかないな」

ふう、と溜息を付いて宮元先輩が至極残念そうに漏らす。
白頭が「そうよ」と返した所で、宮元先輩は俺と白頭を見やり

「それに、流石にお似合いの二人を引き離せるほど、私は野暮ではないのだ」
「……なっ!? ちょ、それって如何言う……!」
「では、さらばだ!」

白頭が思わず問い質そうとするのを待つ事もせず、宮元先輩は翼を翻して何処かへと飛び去っていった。

「もうっ! 先輩ったら何を勝手な事を!」
「まあまあ、宮元先輩は元来からああ言う人だから仕方ないって」

宮元先輩が飛び去っていった方向を見やりながら憤慨する白頭を、俺は言葉で宥めようとする。
その俺を一瞬だけ睨みつけた後、彼女は「そうね、宮元先輩だもんね」と諦めた様に溜息を漏らした。
132通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:27:24 ID:maw9AFwo

そして、そのまま数分ほど会話も無く飛び続けた後、白頭がふと思い出した様に言う。

「所でさ、前々から聞こうと思ってた事があるんだけど」
「ん? 聞こうと思ってた事ってなんだ?」

オウム返しに問う俺に、白頭は言う。

「その飛行機につけてる『ブルースカイ』って名前、如何言う理由があって付けた名前なのかなって」
「それは……」

俺は思わず答えそうになって、途中で思い止まる、そして……

「悪いけど、もうそろそろ日が落ちそうなんでな、安全の為にさっさと地上に降りるとするよ」
「え? ……ちょ、ちょっと! 質問に何も答えてないじゃない! 名前の由来くらい教えなさいっ!!」
「じゃあな、白頭。 質問に関してはまた明日と言う事で」

俺は言うだけ言うと、抗議の声を上げる白頭を振り切るようにスロットルを引き上げ、機体を加速させる。
多分、明日、学校で会った時にこの事で文句を言われそうだと思うが、その時ものらりくらりと誤魔化すとしよう。

なんだって、今更恥かしくて言える訳無いだろ?
翼を広げて青空を行く白頭の姿を再び見る、と言う願いを込めてつけた名前だなんてな……。
そう、この事は俺の胸の内に仕舞っておくので充分だ。

そう思いつつ眺めた青空は、まるで俺の考えを見透かす様に蒼く、何処までも澄んでいた。

――――――――――――――――――――――了――――――――――――――――――――――
133通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 01:32:26 ID:maw9AFwo
以上です。新年早々長々と書いて申し訳ない。

それと慣れない携帯からの投下でやきもきさせて本当に申し訳ない。
今からひも無しバンジーをしに行ってくる……
134創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 01:43:44 ID:LcLMIIt7
携帯から投下、お疲れ様です。
映画を観ているような感じで、夜中だっていうのに一人ディスプレイの前で興奮してしまった!
何気に個人的に好きな鳥人が沢山出てきて歓喜w
135創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 01:44:35 ID:hKYH8+S0
携帯から大作乙
ああぁ甘酸っぱい
いいなあこういうベタなのもいいなあ
きれいなツンデレでした

鳥さんが豊作で嬉しい
最近宮元先輩よく活躍してるな
烏丸部長はなかなか使いでがありそうだ
136創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 01:52:32 ID:E0r6xhCk
甘酸っぱいねーいいよいいよー
最近鳥人ブームだねー
137創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 05:17:46 ID:Brl2nKte
>>73
なんというたくましいお姉様方!! 最後尾の鳥の人の目が優しげで素敵だ
つか>>74と同じくググって吹いたw 茜がビビってるのはそういう
意味もあるのか、つかスポーツってレベルじゃねぇww

>>94
SD化キタコレ!! しかも朱美の特徴がドンピシャだw
この設定だと>>43みたいに宮元先輩と伊織さんがコンビを組んでそう
中等部時代、同じ部活で先輩後輩の関係だったとか、そんな感じ

>>98-133
ひも無しバンジーらめぇ!!!
深夜に、それも携帯から長文の投下ご苦労様です
ハグのシーン、本気でコンチクショーと思った、主人公羨ましすぎだw
>「まあまあ、宮元先輩は元来からああ言う人だから仕方ないって」
>「そうね、宮元先輩だもんね」
このやり取りは良かったw 宮元先輩愛されすぎw
138創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 11:57:14 ID:hFpZe8pB
>>74,137
とりあえず専用のバッグを取り合うスポーツとして考えてました。
何となくですが「少女ファイト」のバレー部員みたいなイメージにしたくて、少し
荒っぽ目の競技を考えてみました。

>>97,137
70年代の飛行機好き少年は「カウンタックと512BBのどっちが速い」の代わりに
「MiG25とF15はどっちが強い?」なんてので盛り上がっていた居たわけです。
 宮本&伊織に“どら猫男子”辺りを加えますか?

>>133
ひも無しバンジーしても空子が助けてくれるってことですね?

と言うことで、半端に飛行機好きの私が通りますよ。
縦操縦をエレベータじゃなくフラップでやる構造なのかしら?ブルースカイの三舵
がどうなってるのかちょっと気になりました。 あと、割と重くなる複雑なメカ構
造が随所に取り入れられてるのとか(笑) 動力飛行機なので許可とかはどーなる
とかそもそも高圧鉄塔の側で飛ぶの?とか…… なんか、そんなのどうでも良くな
るぐらい青春ですねぇ。

そういえば、今年の「鳥人間コンテスト」は中止だそうで、残念です。
139創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 13:01:49 ID:BPGxmULe
えー、鳥人間中止なの?
毎年結構楽しみにしてたのに
140通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/01/20(火) 13:24:37 ID:maw9AFwo
ちょいと昼休みな俺が通りますよ……。

>>138より疑問が出たのでお答えしようかと。

先ず、ブルースカイの構造に関しての事ですが、殆どの機構は変速機構つき自転車の流用です。
着陸脚は前輪式で前輪はもろ自転車。後輪はジャンク屋で見繕った適当な物。
無論、動力の切り替えは変速機構を流用して機能させています。
まあ、他に関しては完全に自分の知識不足ですが……。

許可云々については、鳥人が平然と飛び回っている世界だから簡単に取れそうかなと思ったり。
そして高圧鉄塔が何であんな所に?とかに関しては完全に演出上の都合です(滝汗)


とにかく、自分の描写不足の所為で?と思わせて本気でスマンorz
141創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 15:44:09 ID:wA+N5B6n
>>140
いえいえ、参考になりました。
#だいたい好きだって言ってる割に、以前描いたアエロバティックの画は“主
 翼に上反角をつけちゃう”という致命的な間違いをしてたりする私です。
それよりも最新型が複座になってるのが良いですね。 複座良いなぁ、うん。
法律云々は納得です。

>>139
数日前のニュースでやってました。経費削減的な理由だそうです。 まぁ最近は琵
琶湖では狭すぎるようになっていたって問題も有るのでしょうけど。
142創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:35:30 ID:lO2obwpD
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00786.jpg
機体デザインがどうしても上手くまとまらず、ちっさくなってしまいました。
143創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:41:57 ID:6d0DZ9XJ
首の位置が・・・
144創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:54:36 ID:E0r6xhCk
195cmもあるのかw
羽根ひろげたらすごい大きさなんだろうなー
145創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:56:55 ID:GaztHho6
夏場は鳥の皆にうちわがわりに扇いで貰う。勿論♀のみ。15分5千円という
サービス付に違いない。
146創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:13:15 ID:lO2obwpD
>>143
そう言うポーズのつもりでしたが、やっぱり変でしたか。
少し修正しました。
147創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:31:56 ID:hKYH8+S0
あっるぇぇえ?
予想外これは予想外
惣一がかわいい
148140:2009/01/20(火) 23:06:27 ID:maw9AFwo
>>142
白頭もそうなんだが、惣一が思った以上に可愛らしかったのに俺はびっくりだ。

このショタっぼさじゃ、何時か甘噛み同好会のお姉さま方にいじられそうな気が……。
149創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:30:56 ID:GaztHho6
今丁度yahooのTOPに
http://dailynews.yahoo.co.jp/photograph/pickup/
この記事きててふいた。か、烏丸さん……
150創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:39:29 ID:E0r6xhCk
なんだこのニュースwwww
151創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 00:52:47 ID:a5JKlW5f
カラスってよく見ると割とかわいいよね
152創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 01:11:10 ID:TEzXVlLl
写真がかっこよすぎるw
153創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 09:49:46 ID:2ZOeE4Dc
>>144
あぁっ!背が高すぎた。 描いたときに惣一をチビにしすぎて、物差しで測って
『あぁ、これだと空子は195cm位の比になるなぁ』って書き込んだ身長線でした。
ハクトウワシは大型ですけど流石に… なので、185cm位ということで。

>>148
蚤の夫婦が好きなんで、ちょっとそんなふうに描いてみました。

ちなみに、烏丸さんは都会的なハシボソ、以前描いたブズカシの子はハシブトです。

>>149
これはハシブトですかね。ハシブトの方が肉食性が強いとか。なので、烏丸さんじゃ
なくって、きっとブズカシの練習中なんですよ(笑)

>>151
ハシボソの方がしゅっとして格好いいんですけど、声はハシブトの方がカーカーと
奇麗なんだそうです。 「ガーガー」鳴いてるのはハシボソだそうで。
154創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 12:19:36 ID:NZJjFM7+
155創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 13:21:12 ID:tvHSIG90
>>154
テラ合成www

烏丸さんの情報収集力、生徒達に及ばず教師達の秘密も握ってそうで怖いなw
うっかりミスした獅子宮先生を見たり、サン先生のイタズラ現場を突きとめたり、
教頭と校長の将棋やらの勝敗数を知っていたり、ザッキーの”甘噛み”現場見てたり、
白先生のカフェイン摂取量を知ってたり、はづきちと白倉先生が準備室で何を
しているのか調べたり。
156創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 13:22:22 ID:EqPoz+Sf
密かに新聞にスクープネタ寄稿してたり隠してたり。
157創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 14:12:48 ID:a5JKlW5f
白倉センセは生物の知識でカラスの生態知ってるから重要な情報は隠してそうだなー
はづきちや委員ちょ、鎌田なんかも鳥に狙われる立場だから、
意外と情報網をかいくぐってるかも知れない
158創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 14:18:52 ID:TEzXVlLl
ぬこw


いやいや用心しててもそれをかいくぐって情報集めてそう
159創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 15:11:25 ID:tvHSIG90
かいくぐりでかいくぐりなかいくぐり戦法!!
160創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:39:41 ID:otCfOP/j
「みてるよみてる」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00788.jpg

※ネタ古過ぎか?
161創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:56:25 ID:a5JKlW5f
わかりません><
162創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 16:12:00 ID:dxEY1Cc/
wikiの過去ログ保存の事なんだけど、保存する時はURLを
〜/l50(最新50表示)ではなく、全部表示のURL保存でして頂けると
助かります……今wikiに保存されている状態だと、1スレ目は読めても
それ以降のスレは50表示のままになってるので全部読めない
状態になってます。
あ、全部のログ表示できる方法があればそれでも構わないんですけどNE
163創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 16:42:28 ID:bLh1Czis
そうなのかー
164創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 17:18:46 ID:oW4l6brZ
>>162
わー、やっちまった…すみません。
どなたか過去ログを閲覧できる人、代わりに保管してくれると助かります。
165創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 00:51:04 ID:mt75u9QG
「何で竹刀持ってんの…?」
「だって子供の一人歩きは危ないでしょう」
というか単にパジャマ描きたかっただけなんですけどね!
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00795.jpg
166創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 01:10:23 ID:9QCibsWw
ミケクロコレッタの三人娘がかわいいよう
167創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 14:38:01 ID:YcCn7wWM
3匹が本当にキャワユイ

狐のヨーコちゃんも仲間に入れたいナー
168創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 16:35:21 ID:mt75u9QG
>>167
あ、すまん。「猫の夜会」なんで猫だけいれました(´・ω・`)SSを元に勝手に妄想して描いたのもので。
169創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 17:05:50 ID:c7+y5y/4
                          _ ∩ ;. ;.,;.;.∵
                       ⊂/   ノ >. ;. ;
                       /KRW/
                       し'⌒∪. ;. ;
 GBP オラオラ   オラオラオラ  CAD オラオラ
   EUR ∧_∧ ∧_∧∧_∧USD
    ∧_∧ω;;(∩( ∩;;ω),つ);ω∧_∧
   ( ω;;(とミ∧_il!|∧lll 彡_∧彡つ);;ω)
    ∧_∧ミ(∩∧_∧彡づ);;∧__∧⊂) オラ
   ( ω(と≡⊂( ・ω・)⊇≡づ);;ω )__ \
   (⊂  と=ど(⊂円 っ)づ=つ≡⊃) \ )
   /ヘ_∧〃∧__i!l|ミヘ_∧ミ_∧ミ∧_∧\オラオラオラ
   ( ω(と彡(ω;;(し ミJ);;ω )つ);ω)ミ⊃);;ω) )
 オラ(っ  つ /    )(    )   \   ⊂)NZD
オラ /   ) `u-u'.オラ∪ ̄∪オラ`u-u'    \オラオラ
  ,( / ̄∪    AUD オラ  オラオラオラ∪ ̄\ )
170創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 17:32:14 ID:9QCibsWw
そう言われてみると猫だらけ!
そっかこれは猫の集会だったんだね
171創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 00:49:15 ID:fNzCZSpx
ヌコってなんであんなに可愛いんだろ
獣人にしようが太ろうが痩せようが老いようが猫なら大抵は可愛いよね

猫……なんて恐ろしい子
172創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 02:07:04 ID://if4kxg
そりゃあまあ寝子と書きますからねえ
173創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 02:14:12 ID:08H+0Dyz
全体的に体が丸っこくて、目もまん丸、吻も犬ほど突き出てない。
この状態が人間の赤子に似ているから親近感を抱くのではないか、という説をどこかで見た。
もっとそれ以上の何かがありそうだけど、何なのかわからんな。
174創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 02:28:04 ID://if4kxg
パピィと呼ばれるくらいの幼年期の動物は
全体的に丸っこいものだとか生物図鑑に書いてあったような。
絵を描くときも等身低く丸く描くと子供っぽく描ける
175創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 03:49:20 ID:fNzCZSpx
心理学の入門で習った気がする
176創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 10:40:04 ID:G2cpCAR6
大人の保護欲に引っかかる容姿で矮小な子供時代を生き延びやすくするとかなんとか
177わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/24(土) 20:53:20 ID:9OTuWvZ4
短いですが投下してみます。
珍しく大雪が降っているこちら、動物さんもさぞ寒かろう。
178しっぽの風紀委員長 ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/24(土) 20:54:21 ID:9OTuWvZ4
「おや、モエさん。その尻尾はちょっとふさふさすぎやしません?」
放課後の教室、モエの不自然すぎる派手な尻尾に、わたしの目が止まった。
こうして生徒の風紀の乱れを許しておくと、わたしの桜の花咲く学校生活が枯れ果ててしまうこと必至。
そう。ここは風紀委員長として注意しなければ、と学園から託された使命を燃やす。
きっと、『若頭は12才(幼女)』のあの名シーン・第29話で、森三一家が相手のシマに乗り込むときの気持ちと同じだろう。
己の信じる道を進むしかない。若頭の持つ刃のように、わたしもモエに正義の刃を振り下ろす。
しかし、モエはひょいと身体を翻し、わたしの風を切るだけの刃をニシシと嘲笑う。

「リオさあ、放課後ぐらいいいじゃんよ。エクステぐらい付けさてよね」
巷ではやりの尻尾のエクステ。彼女のように長い尾を持つ種族には、お誂えのファッションであるが、
わたしのような丸っこい尾を持つウサギにつけると、大変マヌケな姿になってしまう。しかし、規則は規則。
『若頭』の勇気を貰って、再度警告を促す。しかし、モエにはわたしの警鐘が妬みにしか聞こえないのだろう。
そのままふわりと華やか(すぎる)尻尾を揺らして、ハルカと一緒に街に繰り出してしまった。
同い年の女子高生のはずなのに、モエの気持ちを汲み取れないわたしってば。

ふん、わたしだっていっぱしの女の子だぞ。
控えめなボブショートと理知的な銀縁メガネのおかげで、女の子にとって屈辱の言葉『地味』の烙印を押されてはや数年。
趣味もあまり大きな声で言えないもの(わたしが思うには、大変文化的かつ先端的でわたしらの世代にとって、
たいへん誇りのあるものだと思うが)、と言うこともあって人目に付かぬよう、質素に高校生になるまで暮らしていた。
しかしこれじゃあ、折角の女の子が台無し。兎に角、ファッション雑誌に目を通そうと思う。だが、新刊ラッシュを見据えて、
わたしのサイフの紐を締める為に、書店で買わずに我らが佳望学園自慢の図書館まで足を運ぶことを選ぶ。お金は生き物。
179しっぽの風紀委員長 ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/24(土) 20:54:59 ID:9OTuWvZ4
暇を持て余すカウンターには司書の織田さんが座っていた。
織田さんはわたしの顔を見ると、すぐににっこりと笑顔を返してくれた。
そうだ。織田さんに顔を覚えられることは、この空間では勲章を与えられたに等しい。
「あら、因幡さん。いらっしゃい」
「はい…。こんにちは」
織田さんのやさしい声で迎えられたわたしは、軽く会釈をして最新の雑誌が彩る一角へと足を運ぶ。
雑誌コーナーで手に取ったティーン向けのファッション雑誌を手にするだけで、周りに花咲くファッションモデルになった気がする。
初めてアニメを見たとき感じた胸の高まりとはちと違う。期待と大人の背伸びに胸弾ませるわたしを出迎えてきたのは、
わたしたちが生きるこの現代社会をすこぶる明確に表す、デカデカと並んだ文字羅列であった。

『犬っ子女子高生だいすき。即買!ノミ取りシャンプー』
『知らないなんて、超ありえない!なかよし同士で肉球マッサージ』
『つけとかないとヤバイ!ふわかわしっぽエクステ』

そうか…知らなかった。こんなことが流行っているなんて、世の中の大海原は井戸で暮らす小さなうさぎに未知の世界だということを
教えてくれるじゃないか。そうなんだ。わたしは『ヤバイ』んだ。『ありえない』んだ。このアクセサリー、欲しいなって思っていたけど、
顔の見えない巨大なメディアから「ヤバイ」なんて言われると、「今までひっそり生きてきて、ごめんなさい」と、
謝る相手もいないのに頭を下げてしまう。わたしのような地味で質素なケモノには、おしゃれを楽しむ権利はないのかと自問自答を繰りかえす。
まさか、今までの短い人生をこの一冊でひっくり返されるとは思っていなかった。
ただ…わたし、因幡リオは…おしゃれがしたいのです。うさぎ用の尻尾エクステ…それが欲しいのです。それだけです。

しかし、エクステって結構なお値段するんだな。初版限定のDVDとエクステを天秤にかけたら、DVDが勝ってしまうでしょうね。
エクステはいつでも買えるけど、初版限定は…、はあ…。と、泣き言をいっても仕方がない。
はぁ、と溜め息と共に、パタムと華やかなモデルが表紙を飾る雑誌を音もなくたたみ、蔵書だけは豊富な
我らが図書館の雑誌コーナーからそそくさとわたしは立ち去る。きょうは木漏れ日が何となくまぶしい。

「おや…、因幡さん。きょうは?」
カウンターから司書の織田さんが雑誌を捲りながら、アンニュイな雰囲気漂わせて話しかけてきた。
わたしが本を借りもせずに立ち去ることはそうそうない、と思ったのだろう。わたしはすっとぼけて
「借りたい本がなかったんです」とウソ吹く。長い耳がウソツキとわたしを責めているのが分る。ごめんなさい。
「そうなんだ。わたしね、最近の子が読む雑誌をちょっと見てるんだけど…これ、気に入っちゃった」
すっと立ち上がると織田さんの腰の後ろに、尻尾のエクステが付いていた。
180しっぽの風紀委員長 ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/24(土) 20:55:29 ID:9OTuWvZ4
ウチに帰ると、弟のマオがリビングのソファーに腰掛け、雑誌を眺めながら一人悩んでいた。
テレビは相手にされてもいないのに、必至に天気予報を伝えている。きっと明日は今日より寒くなるだろうと。
後ろからマオをコツーンと頭を小突いてやると、わたしの思ったとおりの反応は無く、やや薄いリアクション。ヘンな物でも食べたのか。
マオの顔を見ていると、何か思い悩んでいるようにも見える。なんせ、わたしは彼の姉として十数年歩んでいますからね。
そのくらいのことはお見通しでございやす。ここは、姉として弟の話を聞いてやらなければ、
という使命感溢れるわたしの質問に対して、あどけない顔を見せるマオはいやいや口を開く。
「更紗のさあ、プレゼント…買ってきたいんだけど。いやいやいや!姉ちゃんには聞かないことにしよう!」
「なんでだよ。わたしはあんたのお姉ちゃんだよ」
「だって…姉ちゃん…分かんないだろうし、ファッションのこととか」
なんだと。うら若き乙女のわたしに対して何たる侮辱、お姉ちゃんだって、お姉ちゃんだって…。
立派な女の子ですよ。

弟の恋人のプレゼントのお見立て。冷静に考えれば、お節介な第三者の介入なのだが、ここはひとつ、わたしも女の子代表として
この生意気な少年にご意見進ぜよう。長い耳をかっぽじいて、しかと聞きなさい。
「女の子はね、寒いのが大嫌いなのよ!だから、なにか暖まるものでも買っちゃいなさいよ」
「…例えば?どんなのがいいんだよ」
「う、えっと…『尻尾のエクステ』とかは?」
たった今、仕入れたばかりの付け焼刃をここで使うとは思っていなかった。しかし、付け焼刃でも一応『刃』。
わたしの一刀はマオへと確実に届いているようであった。その証拠にいつもなら返してくる文句をきょうは一つも言わない。
弟は素直に「うん」と頷き、奥へ引っ込んでいく。さて、わたしはそんなことより年度末の新刊ラッシュが気にかかる。
各出版社も決算月なので、待ちに待ったあのコミック、ラノベの新刊が出るんだよね。楽しみだな、しっかり生きよう。
そのためにも、雀の涙の財産を必至に守り抜きますか。でも…わたしも欲しいな…。うさぎ用の尻尾エクステ…。

翌日は私たちの街にとって珍しく雪降る景色であった。その雪は下校の時間が過ぎても地上に散らすことをやめなかった。
それでも空を飛びまわる宮元、背中を丸めるネコの三斑、固まったままの鎌田。久しぶりの冬将軍にひれ伏す者、歯向かう者、人それぞれ。
そしてモエは尻尾にふっさふさの派手なエクステをつけて、街へと繰り出した。
今日も注意を促そうとした矢先、モエの方からの先制パンチを真っ向から受ける。
「ねえ!リオさあ。この尻尾のエクステさあ…タスクったら『ダッセえ…』って言うんだよ。ムカつくよね!」
そう言えば、モエには中等部の弟がいたっけな。タスクくんだ。この間会ったときは、大人しそうだったんだけどなあ。
弟ってやつは何処も同じなのだろうか。ちょっとばかりモエさんの気持ちが分かった、街が白い日だった。


おしまい。
181わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/24(土) 20:57:46 ID:9OTuWvZ4
さむいよお。

>>165
ネコ族が集まるとあったかそう…。ザッキーに泊瀬谷せんせも…。
投下おしまい。
182創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:23:02 ID:eq00BiqU
GJ!!
尻尾のエクステか、どんなんだろうね
183創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 22:41:05 ID:+AFNWwVF
かわいいなー
ケモ界の雑誌の見出しに吹いたww
184創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 00:34:49 ID:O4VV0UPC
ノミ取りシャンプーで思わず笑ってしまったが
やっぱり大変なんだろうな、そういう身の回りの事
185通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/25(日) 00:36:17 ID:CteG0Mbv
――私は何故、こんな所に居るのだろうか?
ふと、胸中で呟きを漏らし、あった事を振り返る。
だが、今更振り返った所で何も変わる事は無いだろう。
しかし、それでも私は考えてしまう。 そう……

「今日も本当に寒いな。こんな日はこたつにコーヒーが最高な取り合わせだ」
「白先生、コーヒーばかり飲んでると胃が悪くなりますよ? せめてミカンにすれば」
「……私はミカンが嫌いなんだ。幼い頃に母親にたらふく食わされて腹を壊してな……以来、オレンジ色を見るのも嫌だ」
「へぇ、白先生ってミカン嫌いなんだ―、初めて知ったニャ」

何故、獅子族である筈の私が、猫の集会なんぞに参加しているのだろうか? と。


そう、その始まりは、ごく他愛のない事だった。
夜、寝る前に一服と行こうとした所で、いつも吸っている煙草がそろそろ切れそうだという事に気付いた私は、
寝間着の上に着なれた皮のコートを羽織って、近くのコンビニに買いに出掛けたのだ。

その時の私は、成人識別ICカード(通称タスポ)の事についていろいろと愚痴を漏らして居た事を憶えている。
何故。煙草を一つ買うだけで一々カードを用意しなければならないのか? とか。
あんな物がある所為で、わざわざ遠くにあるコンビニに買いに行かざるえなくなって面倒だ、とか、
それならば酒にも同じ様な物を作れば良い物を、などと愚にも付かぬ事を云々と漏らしつつ夜道を歩いていたのだ。
そして、私が何時ものコンビニまで後数百メートルの辺りに差し掛かった時だ。

――近くの通りをぞろぞろと連れ立って歩く彼らの姿を目にしたのは。

それを見た私が思わず眉をひそめた理由は、その顔ぶれだった。
その顔ぶれは何れも、私の勤める佳望学園の教師や生徒達、中には小等部の子らも混じっていた。
教師だけならばともかく、生徒達がこんな深夜に何を……?と私が疑問と好奇心を抱くのも当然の事だろう。

思えばこの時、それをあまり深く気にする事無く、素直にコンビニに入っていれば良かったのだ。
だが、その時の私はそうする事を善しとせず、好奇心の赴くままにこっそりと彼らの後を付けてしまった。

それからどれくらい歩き続けただろうか。
蕗の森町にある公園に着いた辺りで、ようやく彼らの足は止まった。
その公園は何て事のない、昼間は子供がかくれんぼ等の遊びをしているような、ごく普通の公園だ。
無論、祭りでも開かれている訳でもなく、かといって他に人が集まるような催しが開かれている訳でもない。
しいて言えば、管理人によって良く手入れされているらしく、綺麗に整備されているのが特徴と言うべきか?

公園には既に先客が居た。
その場に居たのは、大まかに見て十数人と言った所。
顔ぶれは多種多様、老人も居れば小学生位の子もいる、そして男もいれば女もいる。
ただ、その場の彼らに共通している点と言えば、全員ネコ族である事か。

……そう言えば、私が追っていた彼らもまた、全員ネコ族だ。
ひょっとすると、この公園にネコ族にだけ催される何かの集いがあるのだろうか?
そう思い、私は木陰に隠れて暫し動向を伺ってみたのだが、彼らは特に何かをする訳でもなく
その場の誰かと世間話をしていたり、携帯ゲームに熱中していたり、或いはボーっと突っ立っていたり、寝ていたり、
何かを特別な行動を始めようとする様子は一向に見うけられなかった。

しかし、それでも私は辛抱強く、彼らの動向を観察し続けていたのだが
結局、私にとって面白いと言える出来事は何ら起こらないまま、三十分の時間が過ぎてしまった。
186通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/25(日) 00:38:52 ID:CteG0Mbv
そうやって拍子抜けした事もあってか、
いい加減疲れを感じ始めた私が、とっととコンビニに行って煙草を買って帰ろうかと踵を返した矢先。

「あれ? 其処に居るのは獅子宮先生ですか?」

立ち去ろうとする私の背を、泊瀬谷の声が叩いた。
この時、私は泊瀬谷を無視してそのまま立ち去れば良かったのだ。そうすれば面倒な事にならずに済んだのだ。
しかし、私は迂闊な事に、この立ち去る最期のチャンスを、思わず足を止める、と言う形でフイにしてしまった。

「やっぱり獅子宮先生だ。如何したんですか? こんな時間に」

そんな自分の愚かさを胸中で悔いる間も無く、わざわざ私の前に回りこんだ泊瀬谷が問い掛ける。
しかし、私は興味本位で付いてきた、なんぞ恥かしくて当然言える筈もなく、無言で返すしかない。
だが、私の無言の答えを泊瀬谷は変な風に解釈したらしく、明るい笑顔で言う

「あ、ひょっとして獅子宮先生もネコの夜会に参加しに来たんですね?
そういえば獅子族の人もネコ族の遠縁ですからね、獅子宮先生が参加したくなるのも分かるかも」

何を言い出しているのだお前は? 私はそんなのに参加するつもりは毛頭無いぞ?
――と言い出す間すら与える事無く、泊瀬谷は私の手を取って

「ほら、恥かしがってないで先生も参加しましょう?」

とか勝手な事を言いながら、半ば強引に皆の居る方へ引っ張り始めた。
当然、私はただ煙草を買いに出掛けただけで、夜会に参加する気はないと言ったのだが、

「そんなに誤魔化さなくても大丈夫ですよ、獅子宮先生。 皆も先生の事を受け入れてくれますって」

と、私の否定に対して、彼女はなんら聞く耳すらもってくれなかった。

「あれ? 泊瀬谷先生に引かれて来たのは……獅子宮先生だ」
「うわ、ホントだ。 獅子宮先生が来るなんて珍しい…」
「あー、アイパッチの先生だニャ」

そして、泊瀬谷に手を引かれる私の姿に気付いた者達から次々と声が上がる。
……正直言って、これは恥かし過ぎる。 私が一体何をしたと言うのだ? と言うか、これは何の罰ゲームだ?
自然と、顔がかあっと熱くなる感覚を感じる。もし、私が人間であれば熟れた林檎の様に頬を赤く染めている事だろう。
今直ぐ泊瀬谷の手を振り払って逃げ出したいのは山々だが、もう見つかってしまった以上、それも無理である。
ここで下手に逃げ出せば、変な噂が立つなど余計に恥ずかしいことになりかねない。

「おや、これはこれは獅子宮先生では……一体何の用で?」
「ええ、それが獅子宮先生も夜会に参加したいみたいで……」
「ほほう、そう言えば獅子族もネコ族の親戚みたいな物ですからな、来るのも当然と言えば当然ですな」

と、私の心情を無視して話を進める校長と泊瀬谷。
どうやら、彼女らの内では、夜会への私の参加は既に決定事項の様で。
……もうここまでくると、否定するのですら馬鹿らしくなる。

この時の私に出来る事はただ―――運命を受け入れる事くらいだった。
187通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/25(日) 00:42:52 ID:CteG0Mbv

「獅子宮先生、如何したんですか? うかない顔をして……」
「いや、な……少し、運命の無常さについて考えていた」
「はあ…?」

私の言った事の意が汲み取れなかったのか、不思議そうに首を傾げる帆崎。
どうせこいつには、今の私の心情の一欠けらも理解出来やしないだろう。
このリア充め、後で酷い目に遭わせてやろうか?

「先生、聞いた噂によると、昔、この辺りにある剣道道場全てを一人で壊滅に追いやったとか。
……その話って本当ですか?」

何だその根も葉もない勝手な噂話は……?
確かに学生の頃、仲間に怪我をさせた連中が屯(たむろ)する道場を、
私がお礼参りとばかりに一人で壊滅させた事はあったが、
それが如何言う風に尾鰭がつけば、そんな大げさな話になってしまうんだ?

「ねえねえ、獅子宮先生。 夜な夜な悪を打ち倒す正義のヒーローをやってるって本当かニャ?」

……誰だそんな根も葉も無い噂を流した馬鹿は。
見ろ、コレッタの目の輝き具合から見て完全に信じきっているではないか。
恐らく、この噂を流したのは鎌田の仕業と見て良いだろう。 あの正義馬鹿…後で〆る。

「しかし珍しい物だな。こういう事は好きじゃなさそうな怜子がここに来るとは…」

私だって来るつもりは毛頭なかったよ。元はと言えば泊瀬谷が勝手に勘違いしたのが……
と、ここで白の奴に愚痴を漏らした所で何も解決はしないだろう。
無論、泊瀬谷本人に愚痴をぶつけるのもNGだ。 それで変に泣かれる事になったらそれこそ厄介だ。
というか、そろそろホットドリンクの効果が切れてきた。寒い、とっとと煙草買って帰りたい。

「所で獅子宮先生。この前に私が送ったカツオブシ、如何でした?」
「折角送ってもらって悪いが、泊瀬谷。獅子族の私にカツオブシを箱一杯もらっても……」

何気に泊瀬谷に言いかけて、私ははと気付く。
そう、私は今、迂闊な台詞を口にしてしまった事を、
恐る恐る周囲を見てみれば、その場に居るネコ族全員の耳がこちらへと向いていた。

「ほほう、と言う事は泊瀬谷先生が折角送ってくれたカツオブシを無駄にしていると言う訳ですな?」

校長の目が眼鏡越しにギラリ、と輝く。
何時もののほほんとした雰囲気からは想像できない鋭い眼差しが私を貫く。
この校長、前々から只者ではないとは思っていたが……まさか、ここまでとは。

「いけないな、それは……このままでは泊瀬谷先生の親切が無駄になると言う事じゃないか!
獅子宮先生、何故その事を早く言わなかったのですか!?」

何やらやたらと演技の入った調子で私へ詰め寄る帆崎。
奴のその目は明らかなまでに『カツオブシテラホシス』と物語っていた。

何故、彼らがここまで態度を変えるか……それには理由があった、
元来、ネコ族というのは四足で歩いていた遥か昔から、カツオブシと言うものには目が無く、
彼らにとってマタタビ、マグロに並ぶ嗜好品として珍重されている。

そう、私は迂闊にも、それが家に沢山余ってる事を口にしてしまったのだ。
188通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/25(日) 00:44:22 ID:CteG0Mbv
「別にカツオブシが欲しいって訳じゃないんです、
ただ、泊瀬谷先生の折角のお礼を無駄にさせたくないと言う親切心で言っているまでで」
「取りあえず、わしとしては削り節をたっぷりと乗せた冷奴を食べたいのだがな」
「ねーね―、獅子宮先生、私もカツオブシが欲しいニャ―」
「コレッタ、こう言う時は直接言うんじゃなくて遠まわしに欲しいと伝えるんだニャ。
そう言う訳でアイパッチの先生、捨てるならあたしにくれニャ」
「コーヒーばかり飲んでると、偶に別の物を食べたくなる時があってな、特に乾物が恋しくなる時がある」

気が付けば、私は欲望剥き出しのネコ達に周囲をぐるりと取り囲まれていた。
その異常な状況に、私は思わず助けを求める様に泊瀬谷の方へ視線を向けるが、

「………?」

当の彼女は、何故こうなったのかを理解していないらしく。うろたえる私を物珍しそうに眺めていた。
最期の逃げ場すら失い、追い詰められた私は周りを振り払う様に叫ぶ。

「分かった、後でカツオブシを配ってやるから、いい加減私に恥をかかせないでくれ!」


――結局、私が煙草を買い忘れた事に気付くのは、
目をぎらぎらと輝かせたネコ族達を何とか説得し、ほうほうのていで公園から逃げ帰った後の事である。


もし、深夜のとある公園で、ネコ族へカツオブシを配って周る獅子族の女を見たのなら。
その事は誰にも伝えず、心の奥底へそっと仕舞って欲しい。……私からのお願いだ。

―――――――――――――――――おわれ――――――――――――――――――――――
189通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/25(日) 00:47:14 ID:CteG0Mbv
以上です。

美味しい御飯目当てのネコ達の前では、流石の獅子宮先生もたじたじになってしまう物です。
それにしても今日は寒い……今晩は虫人にとって厳しい夜となりそうだ。
190創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 01:46:12 ID:hsgL7nox
尻尾のエクステだなんて素敵な萌えグッズだと!
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00802.jpg

>>189
カツオブシテラホシスふいたwww

デーモン小暮閣下にするか迷ってたという。元ネタは「DMC」
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00803.jpg
191創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 03:26:56 ID:JUVXVKsV
獅子宮先生可愛いねぇ、GJ!!
>>190
白倉先生ww
192創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 08:03:49 ID:GLQBEqdM
いいなぁまさしく猫だな
猫の夜会って近所でたまに見かけるけど奴等本当に何もしないんだよね
わかんねーイベントだ
193創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 08:49:23 ID:kqRWDWXz
                  .,, ,, ,, ,
               ,,wW" " ." ' "w,,
             .vW ...,,,xxxx,,,,,,  ~''w,,
            / ./      `"''・w,, ."w
           ,,/./              \ く
           f/,,xXx,,      ..,,,..   `sト
        rー・'''/ ´ー-x,,     sii!!''""'a,,  .f }
        .V / イ◎ア Y'"`'ヲ’        {  {
         /   ー・''/  .б"'' イ◎ア   う [      
194創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 10:33:38 ID:TDcWPJVl
尻尾のエクステかわいいなー
いかにも獣人っぽいお洒落だよね
195創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 22:17:24 ID:i/Z4YgPv
風邪引いて寝てたら出遅れた。
>>161
そうかー、好きな絵本(児童書?)なんだけど、絶版なのかなぁ?
>>165
そうそう、あのシーンはずーっと気になってた。
>>189
「にーちゃ、にーちゃ。おれら夜会に行っちゃ駄目か?」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00804.jpg
196創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 00:37:20 ID:1erCKNKM
197見習い ◆zYSTXAtBqk :2009/01/26(月) 09:02:36 ID:NQbK+JOS
198創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 14:18:54 ID:c1w6KGq+
絵のぷち投稿ラッシュ?゚+。.(・∀・).。+゚

ヒカル君と織田さんを借りました。
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00809.jpg

ウルフ&ジョー「点数稼ぎアザースwwwwwww」
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00810.jpg
199創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 20:54:43 ID:mqtTWe9m
>>195
虎兄弟かわえええええええええええええええええ
こ、この子ら1人だけでいいんでお持ち帰りしたいよ!

>>196
昔うさぎ飼ってたけど足の裏全体が毛でもさもさなせいで
フローリング地帯ではつるつる滑ってたなー


>>197
なんかいいなー
この動画の作品の詳細知りたいところ

200創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 20:55:27 ID:mqtTWe9m
絵のラッシュで嬉しいな〜

>>198
うちの環境が悪いみたいでうまく絵を見れなくてくやしい;;
201わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/01/26(月) 23:45:00 ID:9kxzMqwe
絵のラッシュに乗って、キャラ描きに挑戦。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00812.jpg

>>196
この間広島へ旅行に行ったとき、瀬戸内海の某島で因幡さんたちに囲まれましたが、くすぐったかったッス。
>>198
何でもな日常だけど「袖触れ合うも他生の縁」なストーリー、お手本にしたいッス。
202 ◆gRK4xan14w :2009/01/27(火) 00:44:33 ID:YTiDk/bi
カード化スレから改めてお願いにまいりました。
このスレに投稿されている絵のうちのいくつかを、カードのイラストとして使わせて頂いてもよろしいでしょうか?

カードの例
http://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Tiger%20Cubs.jpg
http://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Tea%20Break.jpg
http://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Expression%20of%20Yule.jpg
http://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Multifarious%20Mates.jpg
203創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 01:01:23 ID:NtiOup1f
カード化スレってドコー
204通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/27(火) 01:24:27 ID:vidMMd9a
そう言えば登場人物が大分増えたなぁと思いつつ俺が通りますよ。
そんな訳で自分が出したキャラたちの紹介を書いておく。
もし、不都合な点があればウィキ掲載時に変更をお願いします。

・風間 惣一
人間の男子生徒。自作の飛行機で空を飛ぶのが夢だった(叶った為、過去形)飛行機同好会部長。
高校生の割にかなり背が低く(155cm)、その事を気にしている為、背の事を言われると激怒する。
心的外傷の所為で飛べなくなった幼馴染の空子の為に、怪我する事も厭わず努力しつづける一途な面もある。
自作の飛行機を作る所から、手先はかなり器用。

・獅子宮 怜子
右目のアイパッチが特徴の獅子族の女教師。教科は現代社会を担当。
性格はアウトロー気質な上に食わせ者であるが。困っている人を放って置けない一面もある。
かなりのヘビースモーカーで、校内では火は付けないものの学校でも私生活でも咥え煙草は欠かせない。
佳望学園のOBで、学生時代はいのりんも手を焼くほどの不良であった。無論、喧嘩はめっぽう強い。

・甲山 堅吾
黒光りする角がまぶしい兜虫人の男子生徒。
ワンタッチヒーターの異名がつく程に怒りっぽく短絡的で、
尚且つ冬将軍を人物だと思いこむほどの馬鹿であり、それが元で引き起こすトラブルは幼馴染の優の悩みの種である。
虫人の例に漏れず、寒さに弱く、冬の時期は体温保持用のドリンクがないと直ぐに動きが止まってしまう。
しかし、その逆に夏になると非常に活発になり、優の悩みと苦労を増大させる。

・白頭 空子
ハクトウワシ種の鷲人の女子生徒。飛行機同好会の部員。
過去に受けた心的外傷の所為で空を飛べなかったのだが、幼馴染の惣一の努力の甲斐もあって克服する。
素直でない、所謂ツンデレな性格で、惣一の監視の為と言い張って飛行機同好会に入部するなど、
他者への好意を真っ直ぐに伝えられない所がある。

・蜂須賀 優
雀蜂人の女子生徒。性格は冷静かつ理知的であるのだが、
佳望学園では五本の指に入るほどの強面な為、女性として見られない事を深く悩んでいる。
堅吾とは幼稚園の頃からの仲で、堅吾が度々引き起こすトラブルに振り回され続けている。
家には多数の姉妹が居ると思われる。

宮元 巴
鷲人の女子生徒。大空部の部長。
分かりやすいまでの体育会系で、やたらと大きく響くハスキーボイスが特徴。
部員の獲得に余念がなく、有能な生徒に対して執拗に勧誘する為、朱美などの一部の生徒から煙たがられる事もある。
しかし、空子と惣一の関係を見て勧誘をあっさり諦めるなど、意外にも空気を読める一面がある模様。

>>202
良いですよ― と言いたいけど俺が書いた絵はないので何とも……(滝汗
205創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 01:39:56 ID:XGhbal+3
>>198
今更見れた!
なんでだ?
さっきはロダが重かったのかな

こいついいキャラだなー
いろんな物語が裏にありそう

>>201
おおかみとねこのハーフとかあるんだねー

>>204
初めて知った設定がいっぱいw
206通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/01/27(火) 02:01:02 ID:vidMMd9a
烏丸さんが抜けていたぜ! 
そう言う訳でちくわを全身に巻いて烏の群に飛び込みに行ってくる!

・烏丸 京子
烏人の女子生徒。怪しい京都弁が特徴の新聞部の部長。
のほほんとした態度とは裏腹に、抜け目の無い腹黒い性格である。
決定的瞬間を逃す事無く写真に収める所から写真撮影の腕前もかなりの物で、
彼女を知る人間からは、決して敵にまわしてはならない人物として恐れられている。
207携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/01/27(火) 04:24:58 ID:RTw8qC+v
《鎌田@図書館》
 カウンターの織田さんに会釈して、そそくさと向かったのは雑誌コーナー。
ケモ学の夜勤ライダーことカマキリ鎌田は図書館にとある雑誌を探しに来ていた。
 購入に気恥ずかしさが伴う、親に見つかると変に気を使われそうな雑誌……。
 だが、目的の雑誌棚の最寄り──ファッション雑誌棚にイインチョーを発見し、本棚の
影に潜んだ鎌田。
(うあ〜、早く退けよイインチョー!)
 鎌田は棚の影でヤキモキした。
 この図書館はだだっ広いくせに利用者は少ないが、人の全く居ない状
況となると意外と希少なのだ。
 焦れた鎌田は触角を忙しく振って慌て、本棚の角に触角がビシッと当たって起きた物音
に慌て、物音に振り向いたイインチョーの動向に慌てた。
 慌てに慌てた鎌田だったが、イインチョーが鎌田に気付かぬまま雑誌を置いて立ち去っ
たので、なんとか落ち着きを取り戻すことに成功した。
 シッポウィッグかぁ、などと一人ごちながら歩き去るイインチョーを見送り、鎌田は雑
誌棚に滑り込んだ。
 彼の求める雑誌は、一部の嗜好を持つ者しか読まないようなものなので、とても奥まっ
た位置に置かれている。
 あたりを慎重に見回し、鎌田はついにお目当ての雑誌をみつけた。
 雑誌を隠し持ち、雑誌棚を去ろうとした時──
「やぁ鎌田くん、君が読書するなんて意外だなぁ」
「!」
 突如かけられた声に、鎌田は雑誌を取り落としかける。
 この声は“はづきち”こと跳月先生。何故先生がこんなマイナー雑誌棚に。
 跳月先生の手には科学雑誌ニュートンが収まっていた。どマイナー誌だ。
 よくよく棚配置図を考えれば、マイナー雑誌棚の裏は更にマイナーな科学雑誌棚である。
「跳月先生、ムーの既刊あったっスよ! あれ、なんで鎌田が居るの?」
 今度の声は白倉先生。
 次々現れる刺客(?)に、鎌田は雑誌を持ったまま駆け出した。
「おろ? なんで逃げてったんスかね」
「……白倉先生の世紀末メイクのせいですよ、多分」
 ぶっちゃけ白倉先生の顔など鎌田は見ていなかった。
(とにかくこの本を借りて離脱────ぐへぇ?!!」
 鎌田の思考は半ば星屑になって弾け飛び、後半は悲鳴となって口から漏れた。
 何故か超怖い顔をした獅子宮先生に駆ける勢いのままラリアットされたのだ。
 獅子宮先生は吹き飛んだ鎌田の襟首を片腕で掴み起こして言った。
「探したぞ鎌田ぁ……貴様、私が夜にヒーローごっこしてるって触れ回っただろう? シ
メるぞクラァ」
 もうシメている。
 実際に当該情報をリークしたのは烏丸であるが、瀕死の鎌田に弁解の余力は無い。
「まったく、ヒーローごっこしてるのはお前だろうが……ん?」
 鎌田の手から、雑誌が零れ落ちる。
 鎌田が探していたのは、虫人の女性が妖めかしい姿態も露わに身体をくねらせている“
いかがわしいエロ本”。
 ではない。
 公務員セミナーという、公務員試験受験者が読む雑誌だ。
 巻頭特集の見出しになっているのは、警察官2類高卒程度採用試験の傾向分析。
「ふむ。鎌田、貴様は警官志望か」
「げふ、そうで、す……ごほ」
「そうか。ならば今度、現役警官に合わせてやろう。実際に話を聞いておくと面接や小論文に役立つぞ」
「ありが、とう、ございます……ぐはっ」
 ガクッ、と鎌田は意識を失った。
 図書館では静かにして欲しいなぁと思いつつ、先生相手に注意するのは憚られる織田さ
んであった。


208創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 04:30:18 ID:N3yfCmmr
GJ!!
いい警察官になってくれそうだ
209202 ◆gRK4xan14w :2009/01/27(火) 07:30:57 ID:5Y5iuRx3
おっと本拠地のURL忘れてた
マジック・ザ・モナリングin創発板
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230763934/

>>204
絵の選考基準は旨い下手ではなく、色が塗ってあるか、一枚絵であるか、
カード枠(タテ228×ヨコ311の比率)に納まるようトリミングしたときに構図が崩れたり画面内にフキダシや文字が入ってこないか
といった点を基準に採用しております。

よって前に描いたイラストに色(とできれば背景も)をつけて再うpしてもらえれば高確率で採用されます。
>>18とか密かに期待。


個人的に私も獣人は好き(特に猫系が可愛すぎてもうダメ)なのでこのスレは前々からROMらせてもらってました。
私が創発板に流れてきたこと自体が最近の話ですがw
210創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 08:02:17 ID:GLc0q1S1
鎌田・・・( ;∀;)
211創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:16:33 ID:W2Hxitpe
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00816.jpg
ドイツのドーベルマンの血筋の名門ローゼンタール家のひとり息子として育ったリヒター。
厳格な父親の元で何不自由なく育っていたが、ある日メイドとして仕えた若く美しいジャー
マン・シェパードの娘、ハンナに心魅かれ、いつしか恋仲となる。 ハンナは天涯孤独の
身で、当然身分違いとして父親はふたりの結婚を認めるはずもなく、引き離そうとするが、
ふたりの思いは強く、やむなく家を飛びだすこととなる。

リヒターは教師をハンナはお針子をして慎ましく暮らし、ほどなくフリードリヒを授かる。
しかし、慣れない暮らしにリヒターは胸を病み、更には夫と子の為に無理をしたハンナは
産後まもなく倒れかえらぬひととなる。 失意のリヒターは乳飲み子のフリードリヒを抱
えてローゼンタール家に戻るものの病は癒えることはなくこの世を去る。

リヒターの父(フリードリヒからは祖父)はローゼンタール家の直系としての価値でしか
フリードリヒを愛す事はなく、すべては乳母に任せきりでいつしかフリードリヒは父リヒター
の書斎の書を友にして成長する。 乳母は清廉で愛情深かったものの、残念ながら規律を重
んじる性格であったために、子供に対しても厳しくなることが多く、そのために暗く内向的
で無口な性格となり、体格も父母の血にそぐわない小柄なままで成長が止まってしまうこと
となる。 ただ、乳母にはずいぶん懐いたようで、この後祖父の意向でギムナジウムの寄宿
舎に入れられる際には乳母と離れることを嫌がりずいぶん反抗した。

しかしながらギムナジウムで出会った友によって今までの性格は一変し、明るく快活になる。
この時期のフリードリヒはまるで子供時代を取り返すかのように陽気なお調子者で学校中か
ら愛されることとなる。

また、それ以前は文学を好んでいたのだが、担当教官により数学に天賦の才を見いだされる。
跡取りとしての教育を望んでいた祖父は快く思わず反対されるものの、結局数学を専門とし
て大学へと進む。

修士後ローゼンタール家へ戻る約束であったものの、直前にローゼンタール家を従姉妹(ギ
ムナジウム時代の親友と結婚)に任せて出奔。なぜか極東の地に落ち着き、高校の数学教師
に収まり昔の渾名である“サンスーシ”を名乗って現在に至る。
212創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:18:57 ID:W2Hxitpe
って、ずいぶんオールドスタイル少女漫画的プロットになってしまいました。

>>202
虎を描いたものですが、カードに使うことは構いませんですよ。
213創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:27:59 ID:5Ce0PZff
利発そうなお子さんだ。。。
214創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 21:34:44 ID:NtiOup1f
「あ!リオだ!」
「本当だ、何かいつもと雰囲気違うね〜」
「これ雑貨屋で買ったのつけたげるーっ」
「私達これから連峰行くけどリオも一緒に行かない?」
「ていうか、その紙袋の中身なに?」
(らめええええええええええ中身みないでええええ同人とかアニメグッズだからあああ)
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00817.jpg

>>207
イイハナシダナー( ;∀;)

>>209
自分の絵は使っても大丈夫ですー。わくてか。

>>211
!?(  Д )     ゚ ゚
215創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 22:12:00 ID:W2Hxitpe
ビックリさせてごめんなさい(笑) 自分で生み出しておいて、『サンスー
シ先生ってどんなひとなんだろうなぁ』ってずーっと考えていて、資料を手
繰ってるうちに、こんなに不思議な生まれになってしまいました。 英先生
に弱い理由もこの辺です。

一応不整合無いようにしてみましたが、細かいところは御容赦。
216創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 02:05:06 ID:1Y3KMOO8
わー、なんか設定とか絵とかSSとかなんかめっちゃ来てるゥーっ!
皆GJ!

>>202
上から二番目の俺だけどOKだよー
217創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 03:52:00 ID:I6KhqG1O
サン先生にはそんな裏話が…これは意外
218 ◆gRK4xan14w :2009/01/28(水) 05:43:58 ID:y9nlg0On
ルパンスレのほうでもサン先生頑張ってるな。

>>212
おー、ありがとうございます。
できれば背景をつけて再UPしていただければよりカードゲームっぽくなりますよ。

>>214
http://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Socialble%20Bound.jpg
“何気ない日常”をカード化するのって意外と難しい……

>>216
感謝感謝
絵のクオリティのあまりの高さにテンション上がりまくりでした!
219創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 06:36:45 ID:re3SjSx/
>>211
おぉ深いなサン先生
…なんかフリードリヒのほうが大人っぽいぞw
220創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 08:45:55 ID:fy1Ivv0N
>>218
虎のものですけど再度。 画を使うのは構わないけど、「獣人スレの為に描いたも
の」ですから、そこを理解して使ってくださいね。“誰も”が「カード化されるこ
とを目的に」描いている(描こうとしている)わけではない事を、頭の隅っこにで
も置いておいてくだされると有り難いです。
 そちらのスレが楽しいのは判りますが、ホンのちょっとで良いのでお気遣いいた
 だけると嬉しいです。

#小言めいてますが、一寸気になったもので老婆心ながら…
221 ◆gRK4xan14w :2009/01/28(水) 11:07:14 ID:y9nlg0On
ああ、こちらの言動がそのように捉えられてしまったのなら申し訳ございません。

「できれば〜」や「難しい」等の発言は、すべて「“もし積極的に手伝ってくださる方がいるのであれば”このようにしてくださるとありがたいです」といったニュアンスのもので、
無理なお願いや手伝いの強要をするつもりは一切ありませんでした。
 獣スレは私にとっても(交渉相手としてではなく個人的な意味で)大事なスレですので、
 あちらのスレを優先させるあまりこちらのスレの空気を汚してしまったことを深く後悔しております。

では、私は用が済んだので一旦(このスレでは)名無しに戻ります。
このスレにはいつでもいますので気がむいたらまた声をお掛けください。
こんな私でも住人の一人として認めていただければ幸いです。
スレ汚し失礼しましたm(_ _)m
222創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 11:58:15 ID:fy1Ivv0N
ご回答ありがとうございます、ご意向を伺い得心いたしました。

今はまだまだですが、そのうち機会が有ればそれ専用の画を描いてみたいと
思っております。 そのときはよろしくお願いいたします。
223創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 13:59:19 ID:iHQX3ZH3
さすがケモナーのすくつ!
腹がいっぱい(SSや絵で)なら皆とっても温厚だぜ!
224創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 15:05:57 ID:xgF23L2N
>>223
飢えてたら獰猛だという皮肉に聞こえるぞw
225創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 16:19:08 ID:re3SjSx/
スルー対象注意
226創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 16:39:50 ID:qUPKwAzt
チラ裏でwikiを突貫編集してる者です。
過去ログ閲覧出来る様に修正しておきました。
ご迷惑おかけしましたorz
227創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 17:05:14 ID:iHQX3ZH3
>>224
ちがーう!そのような他意は無い!

>>225
ぬ、冷静ですね。
>>226
お疲れ様です!
228創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 17:50:18 ID:re3SjSx/
あぁ悪い
定期的にケモスレに出てくる煽りかと思ってた
229創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 17:55:17 ID:xgF23L2N
>>228
相当毒されてますな…
230創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:23:57 ID:zNHBITaa
随分久しぶりですが、とりあえず正月に向けて書いたのを今さら投下
全部書こうとしてたら2月に入ってしまいそうなのでとりあえず前半を……
231創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:25:12 ID:zNHBITaa
 クリスマスが過ぎて冬休みに突入し、年末も近くなってくると、帰省の時期がやってくる。
 猪田家もやはり年末は地方で過ごすらしく、駅のホームに停車している夜行列車へと、4人で歩いている。
 いや、娘はピンク色の可愛らしいリュックサックを背負って、走り出していた。
「お母さん、早く早く!」
「発射まで時間があるし、急ぐ必要は無いわよ。それに駅のホームで走っちゃ危ないでしょう」
「志穂、急いだって電車の出る時間は変わらないよ。指定席も取ってるんだから大人しくしなさい」
 その後ろを、息子の悠の手を引いて奥さんが歩き、一家の大黒柱であるいのりんは、3人分の着替えと、お土産が入った、大きな旅行鞄を引いて歩いている。
 はしゃぎながら駅のホームを走っていた志穂は、両親に注意されて、ようやく走るのをやめた。
 それでも、列車の旅に心を躍らせているのか、今にも走り出してしまいたい様子で、うずうずしていた。
 だが、少しするとゆっくり歩くのも耐えられなくなったようで、母親の手を掴んで、列車の方へと早歩きを始める。
 母親は「志穂は本当にせっかちさんね」と微笑みながら付いて行き、せっかちな姉に連れ回されるのに慣れている悠は、無言で足を速める。
 3人が数珠繋ぎになって列車の入り口へと辿り着く。地方へと向かうこの列車は、最近の新幹線などとは似ても似つかない、随分古臭いデザインをしていた。
 まず子供たちが入り口から列車へ飛び乗り、次に奥さんが列車に乗り、最後にいのりんが旅行鞄を奥さんへと渡す。正月に我が家で一人お留守番は、毎年恒例になっていた。
「いつも一人で年越しさせてごめんなさいね。行って来るわ」
「先生方にも渡すし、お土産はしっかり頼むよ。母さんと父さんにもよろしく伝えておいて」
「ええ。任せて頂戴」
 笑顔で答える奥さんに頷くと、次にいのりんは懐に手を入れ、中から小さな封筒を2つ取り出した。
 瞬間、子供たちの目が輝く。腰を落として子供たちと視線を合わせると、その封筒を渡した。
「はい、今年もいい子にしてたからね」
「お父さんありがとう……」
「やった! お父さん大好き!!」
 嬉しそうに封筒を持って微笑む弟と、父親に抱きついてはしゃぐ姉。
 抱擁を解いた後、すぐに中身を確かめようとする姉をたしなめながら、いのりんはすくりと立ち上がった。
 腕時計をちらりと見ると、列車の発車までそう時間はなくなってきている。
 夜行列車なので客はすっからかんだが、いつまでも入り口を塞いでいる訳にはいかないだろう。
 子供たちの頭を撫でると、ホームの黄色い線の後ろまで下がり、家族へ向けて「いってらっしゃい」と手を振る。
「「行ってきまーす!」」
「ちゃんと揚げ物と味の濃い食べ物は控えててね」
232創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:25:38 ID:zNHBITaa
 「ああ、気をつけるよ」と返し、列車の奥へと消えていく家族の後姿を見送るが、年末は好きなものを好きなだけ食べるつもりだ。
 年末はどんなに堕落した生活を送るか、今から頭の中に計画を立てつつ、ぼんやりと車両を眺める。
 窓ガラスの向こうには、妻が腕を震わせながら重いトランクを持ち上げ、座席の上の棚に上げているところだ。
 志穂と悠は、二人で座席を回転させて、二つの座席を向き合わせにしている。
 3人が座席に座ると、程なくしてホームの中に列車の発車を告げるアナウンスが鳴り響いた。
 列車が、がたん、ごとん、と動き出す。ゆっくりと遠ざかっていく家族に手を振り、列車が見えなくなってから、ようやく駅を後にした。
 駅の外へ出ると、毛皮があっても肌寒い風に首をすぼめながら、駐車場へ停めた車へと向かう。
 シートベルトを締めてエンジンをふかしながら、今日からしばらく一人だと思うと、やはり少し寂しかった。
 家族向けの広い車に一人乗り、夜道を走るというのも薄ら寒い。
 信号待ちの間にカーナビの電源を入れて、テレビのチャンネルを見ると、大晦日に行われるボクシングのタイトルマッチで、防衛戦を行うチャレンジャーのスパーリングが映っていた。
 スパーリング相手のカンガルーは、素人目にも分かるくらいボコボコにされている。
 やはり大晦日の試合に出るのだから、チャレンジャーも強いのだろうか。
 他にチャンネルを回してみるが、時期が時期なのか、大晦日に行われる番組の宣伝ばかりだ。
 見たい番組もないので、カーナビを地図に切り替えて、いのりんは車を出発させた。
 行き先は家ではない。街の真ん中にある焼肉店だ。今年も一年頑張ったのだから、これぐらいの贅沢はいいだろう。
 どうせ彼は久しく料理などしていない。年末は外食か出前かインスタント食品で乗り切る予定なのだ。そんな状況で血圧だとかカロリーだとか血糖値だとか考えたくは無い。
 生徒の事になると全力を尽くす彼だったか、自分自身のことに関しては、果てしなくおざなりだった。

×××

「ん……」
 背もたれに寄りかかって眠っていた彼女は、窓から差し込む朝日で目を覚ました。
 背伸びをしながら欠伸をして前を見ると、志穂と悠が肩を寄せ合って眠っている。
 悠は恐らく電池切れのDSを抱きかかえ、夜中みんなで食べていたお菓子の袋を手に持ったままだ。
 携帯電話を取り出して時間を確認すると、朝の8時過ぎ。電車の到着は午前9時と聞いている。もうすぐ到着だ。
 窓の外を眺めると、雪に包まれた景色が通り過ぎていく。こんなに深い雪は、彼女の生まれ育った街では見ることの出来ない光景だ。
 毎年夫の故郷へと帰るうち、この分厚い雪を見るたび年末年始の訪れを感じるようになっていた。
 少しだけ寝癖のついたショートヘアーを撫でつけながら、しばらくの間、その景色に見とれてしまう。
 彼女も女性の端くれなのだから、一面の雪景色にロマンティックな気分を感じもする。
 家族全員で見れればとも思うのだが、まあ仕方の無い事だ。
 高血圧や血糖値やメタボリック内臓脂肪その他諸々と戦いながら必死で家計を支えている夫に、文句を言うつもりは無い。
 家内も子供も帰省をするのに、一人だけ健気にも留守番をして、年末の仕事を一人消化していくのだから、本当に涙ぐましい話だ。
 もはや慣例になってしまった今では、涙どころか同情心すら消えかかっているのだが。
 今頃どうしているだろうかと考えながら、彼女は大きな欠伸を一つした。
233創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:26:06 ID:zNHBITaa
「ふ……あぁ……。二人とも、そろそろ起きて」
 そろそろ身支度をさせなければ。二人の子供の肩に手を置いて揺らし、呼びかける。
 電車の振動に音に横になれない座席にで、昨日は夜遅くまで眠れないでいたからか、眠りは深く、起こすには少々の苦労を要した。
 目を覚ますと、まず志穂が列車の窓に映る雪景色に気付き、母の手を掴んで「見て見て! 凄い凄い!」と大はしゃぎだ。雪だるまに雪合戦に、既に頭の中では正月の計画が組み立てられ始めていた。
 一方の悠は、セーブしないまま電池の切れたDSに気付き、静かに肩を落としながら、姉のはしゃぐ様子を見上げた。
 ボスで詰まってしまい、昨日の晩に随分とレベルを上げたのだが、それも今やパーである。楽しそうにはしゃ堪えぐ姉が羨ましい。
 失意のままDSを鞄にしまい、視線を母へと移した。
「ねぇ、後どれくらいで着く?」
「あと1時間くらいよ。メールがあったけどトシ君たちはもう着いてるって」
「ホント? じゃあ皆で雪合戦できるね。お母さんも一緒にやろ!」
「志穂、電車の中で大きな声出しちゃだめよ。
私はお爺ちゃんとお婆ちゃんの手伝いが終わってから、雪合戦混ぜてもらうわ」
「えー、最初からやろうよー」
「無理言わないの。雪合戦なら叔父さんが一緒にやってくれるわ。
叔母さんも一緒に美味しいおせち作るから、今晩は楽しみにしてて」
 「むーっ」と不満そうな表情を見せる志穂へ、「悠は聞き分けよくしてるでしょ」と言い聞かせ、抱き上げて膝の上に乗せる。
 悠が少し羨ましそうな顔をしたので、そっと頭を撫でて、隣へ招きよせた。
「悠はちゃんと我慢できて偉いわね」
「うぅん……。だってお母さんも大変そうだし……」
 そう答えながらにこやかに見上げてくる。弟がこんなにも良い子ぶりを見せ付けるのだから、志穂もわがままを中断して大人しくするしかなかった。
 志穂は明るく活動的だが、何かと我を通そうとして、融通の利かないところが結構ある。
 母からすれば、幼い頃の自分を見ているようで気恥ずかしいような可愛らしいような、複雑な心境だ。
 だが、どうやら息子のメンタル面は父親に似たらしい。弱気で臆病だが、不器用な姉に比べて要領も良く、真面目で優しい。
 しかも年子なものだから、『どっちが年上だったかしら』とよく冗談を言っているものだ。
 その都度志穂が行う、子供の頭で考えた“お姉さんらしい”行動が、これまた愛らしい。
 彼女も幼少の頃は、よく母にからかわれたものだが、自分も親になってみて、ようやく母の気持ちも分かった。
 志穂は母親と弟の顔を交互に見つめ、むっつりした表情を見せながら考え込む。程なくして母の膝から飛び降りると、不意に悠へと抱きつきながら話し出す。
「悠も膝の上に座りたいでしょ? 私おねーさんだから、膝の上に座ってもいいわよ」
「おねーちゃん、お母さん見てるし、きっと重いよ……」
「お母さんに見ててもらうの! それに悠は細いし軽いから平気」
234創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:26:49 ID:zNHBITaa

 困惑した表情で、やんわり不安と恥ずかしさを語る悠だが、姉はそんな彼の意見には耳を貸さない。
 母はというと、口元を押さえて面白そうにクスクス笑いながら、二人のやり取りを見つめるだけだ。
 志穂は悠の手を引いて強引に立ち上がらせ、代わりに自分が座って膝の上へ手招きする。
 悠はまだ困惑した表情を浮かべていたが、言うとおりにしなければ収まりがつかないことは分かっていた。
 いっつもそうだ。活発な姉に振り回されるのだ。そして彼は、父親に似て気が優しく押しに弱い。結局は姉の言いなりになるしかなかった。
「重かったらごめんね……?」
「悠ぐらい楽ちんよ。どーんと座って」
 少しの間迷っていたが、「早くしなさいよー」と急かされ、悠は申し訳無さそうな表情を浮かべ、姉の膝の上へとゆっくり腰を下ろす。
 体つきは、獣人の志穂の方が大きかったし、いざ抱っこしてみると意外に無理も無かった。志穂は「ふふん」と誇らしげに鼻を鳴らして、悠を後ろから抱きしめる。
「どーお? おねーさんの膝は居心地いいでしょ」
「おねーちゃん、恥ずかしいしもう下ろして……」
 周りの座席に人がいなくとも、母親が見ている。そうやってじゃれてる様子を眺められるのは、とても恥ずかしかった。
 それに、姉には悪いが正直そんなに良いものではないというのが、悠の感想だった。
 硬い鼻面が後頭部に当たるし、父の腹や母の胸にもたれかかる時のように、柔らかくもない。
 だが、彼の反応に志穂は不満があるようで、むーっとしかめっ面を浮かべながら、悠の腹に回した腕を解いた。
 悠は「ふぅ」と一息つくと、志穂の正面の座席に座り、「もー、恥ずかしいよぉ」と愚痴をこぼしてみせる。
 無論、彼も頼りになる姉が大好きだったが、我の強さだけは困りものだ。
 志穂は、最初こそ不満そうにしていたが、悠を抱っこした事で一応の目的は果たしたらしく、すぐに笑顔を作って母親に寄りかかっていた。
 猪田夫人は寄りかかる志穂の頭を撫でながら、悠を手招きする。歩み寄ってきた悠を抱きかかえて膝の上に乗せると、一緒に窓の外を眺めた。
 ちらほらと見える民家は、未だに茅葺屋根のものも混ざっている。民家の周りには屋根から落ちた雪が高く積もっていた。
 いつの間にか、志穂が靴を脱いで座席の上に上がり、悠と母親に寄りかかりながら、一緒に外を見始める。
 夜は外の景色など見れなかったから、こうして見ると随分面白い。一時間程度はすぐだった。


続く
235創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:29:07 ID:zNHBITaa
今のところは以上ですー
次回でいのりんの実家と親戚でも書ければと
236創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:47:55 ID:I6KhqG1O
幸せな家族だなー
237創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:34:32 ID:cXlZV139
猪田家キタ!
こういうほのぼの物は好きだなあ。
238創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 22:35:28 ID:YtHl4XmD
>>198
「あー、今日は駐禁一本切ったから、店仕舞いだよ」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00820.jpg

>>235
お金無かったころは急行八甲田で帰省してましたから懐かしくなります。
余裕が出来てからはずーっと飛行機ですが、何だかこう言う旅もまたしてみ
たいです。
239 ◆gRK4xan14w :2009/01/29(木) 09:19:16 ID:CuzxBHHY
※ 都合により再びトリップをつけてお送りします。
>>214
すみません! 昨日UPした分に誤植がありました!
カードの名前がSocialble Boundとなっていましたが、正しくはSociable Boundです。
URLにも影響が出るので下に新URLを貼っておきます。本当に申し訳ありません。
ttp://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Sociable%20Bound.jpg

そして、前スレからもう1枚。勇ましい獅子宮先生です。
ttp://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Shishimiya%20Heroine%20of%20Kemou.jpg

-- 以下、名無しとしてのレス --
>>235
投下お疲れさま。こういう雰囲気の作品、すごく好きです。
私の街や故郷では雪景色が見られないので余計に惹かれます。
240創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 12:02:43 ID:h7EZ0pZy
これはいい獅子宮先生。
241創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 12:28:48 ID:2EuJRWRS
>>239
元の絵が全部見えなくて残念すぎている気がしないでもない
242創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 12:29:24 ID:2EuJRWRS
あ、「全部」じゃなくて「全身」ね…
243創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 13:33:50 ID:/ImjeVbF
まあ元絵は縦長でこれは横長だからな……
244創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 18:22:30 ID:2EuJRWRS
うん、そうなんだけど…
せっかく元の絵が大きくて良いものなんだし、カード絵にして縮小
すると元の良さが見えてないからちょっとなーと、最近思ってしまった。
カードにするのは悪い事じゃないけど、上でレスしてる方も居るように
「カードにするための絵」を描いてる絵師は居ない訳だから、
そこんところを考えて欲しいなと。と、俺は上のレスみたいなすごい絵を
描ける訳じゃないからたいそうな事言えないんだけどさ。
全身、全構図が見えてナンボの絵達だからさ、ほら……
245創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 18:27:08 ID:L8mrAt7h
>>244

('A`)
246創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 18:28:41 ID:2EuJRWRS
>>245
えー。俺なんか悪い事行った?別にカードにすることを批判してる訳じゃ
ないんだが。
ちゅーか、絵師全員がOK出した訳じゃないから気になっただけだよw
247創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 18:46:33 ID:SG79+SBG
プロモ版(ビジュアル面重視のテキスト無し版)置いときますね。
ttp://miacis-joke.hp.infoseek.co.jp/mtm/souhatsu/image/Shishimiya_Promo.jpg


いずれにしろ重要なのは絵師の意見ってことで、絵師さんの書き込みを待ちますか……
248創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 19:00:05 ID:Vozo2Hpa
しかしあれだよな

何度見てもけしからんおっぱいだよな
249創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 19:11:01 ID:NbpTlzHx
上でレスしたものなんで書いておきますね。

上では、ここに出した絵がどういう位置付けなのかってを理解していただい
てるかの確認の為に質問をしました。それに対して理解し尊重してくれてい
る旨の回答が有ったので私は安心し納得しました。

絵がカード化される事に関しては、それに伴ってトリミングや縮小されても
“私の描いたもの”に関しては問題としません。むしろ「カードにする為に
描いたのではない絵」をどのように編集するのかには興味が有ったりします。

カード化して公開したときに元絵の意味合いが変わってしまうかもしれませ
んが、その絵に興味を持ってくれた人のために元の絵へのアクセスする為の
道筋も考慮していただいている様ですので、そこも特に問題無いかと思って
ます。

という事で、あくまで私としては、実はあんまり気にしてないです(むしろ、
余計なことを言ってギスギスさせたかと不安になってます)。

「創発板にはこんな面白いスレが有るんだよ」って知らせるための一助にな
るんなら嬉しいですね。
250創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 19:39:06 ID:2EuJRWRS
>>249
ああー、すまん。俺が気になってたのは、絵師の許可をとれてない内に
この先も続けるのかなーというのも入ってたんで。
万が一にも、全員がOK出すとも限らないだろうなと感じたから。

すてきな絵も素晴らしいSSも書けない自分にゃほとんど意見出せないんだけどさw
251創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 20:03:39 ID:YheKGlrK
ほんと見事にけしからんおっぱいだ
252創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 22:02:57 ID:rLRtXact
おっぱい立ってますな
寒い季節だからかな
253創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 23:01:54 ID:Q51zv52k
テキスト枠半透明にしたら
全身見えるかつテキストも書き込めるんじゃないか
254創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 00:09:29 ID:jhFQ1CQi
255創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 00:25:06 ID:r9/RxTDb
いいなぁ、家族で電車旅。めっちゃ可愛いよ
256創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 00:30:04 ID:rlpOd/NB
外装の色といいボックスシートのふんいきといい旧横須賀線を思い出すんだぜ
窓枠の隅の溶接具合も素敵だ
257創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 01:15:11 ID:JiZrQAS2
258創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 01:15:54 ID:JiZrQAS2
    きゅっ     きゅっ     きゅっ

          ∧_∧
          (・∀・ ) <ニャー★
       γ⌒´‐ − ⌒ヽ
        〉ン、_ `{ __ /`(  )
     (三0_´∧ミ キ )彡ノヽ`ヽ)
       ̄    ノ~ミ~~~~.| 0三)
         / ヽレ´   |   ̄
        /_  へ    \
        \ ̄ィ.  \  ).
         i__ノ    |, ̄/
               ヽ二)
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00828.jpg
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00829.jpg
(257は途中送信してしまったのでスルーで)
259創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 01:30:23 ID:c4GXLcvn
ヨハン先生必死wwwww
そしてルルちゃんはどこへ行っちゃったのか
260創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 01:41:44 ID:u+ZV36LV
羊ちゃんかわゆすぎるw
261創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 03:59:53 ID:k4lZDK01
>>254
うりぼう子かわいいのう

>>258
ルルちゃんどこ言っちゃうん?
まさか放浪の旅についていってしまうとか…
262 ◆gRK4xan14w :2009/01/31(土) 07:26:31 ID:XYbSelzD
>>250
絵師さんは自分がイラストを描いたカードに対する権限を持っています。
もし自分の描いた絵がカードに使われるのが嫌であれば、その旨をいつでもお伝えください。
サイトにアップされている分の、該当するデータを即刻削除します。

またイラストのトリミングの仕方やカードの効果についても、絵師さんの意見をできるだけ尊重したいと思います。
263創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 14:47:09 ID:YqZFputz
カードの図案に加工され、出来たものを公開されてしまってから、
カードに使われるのが嫌なら絵師さんから言って、か…

良い悪いよりも、物事の順番が違うような気がする。

まず、許可があってから、カード用に加工を始める、じゃないかと思うんだけどなぁ。
264創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 15:01:09 ID:rlpOd/NB
随分絡むねw
265創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 15:07:37 ID:5BrokIoM
カード云々の議論はそっちのスレでやらんか
絵師に参加の意思があるならそっちのスレに直接行くだろうし
266 ◆gRK4xan14w :2009/01/31(土) 15:11:03 ID:XYbSelzD
……たびたびスレの空気を悪くしてしまって申し訳ありません。

一旦カードの形にしてから許可を貰っているのは、
そうしないと絵師さんが具体的に自分の絵がどのように加工されるのかが分からず、二の足を踏むのではないかと思ったからです。

言われてみればたしかに順番がおかしいかもしれませんね……以後気をつけます。
267 ◆gRK4xan14w :2009/01/31(土) 15:21:57 ID:XYbSelzD
うわ…自分の書き込みを見直したら言葉遣いがムチャクチャ……
すみません、只今精神的に少々まいっておりますので──ご無礼をお許しください。

駄目だ俺……ちょっと>>231-234読み直して癒されてきます。
268創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 15:45:04 ID:k4lZDK01
とりあえずカードスレでやろうぜksks
269創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 18:57:48 ID:ASQnzlyD
もうカード化して欲しけりゃカードスレに依頼する
それ以外はカード化しないでいいじゃん
270 ◆gRK4xan14w :2009/01/31(土) 22:27:46 ID:XYbSelzD
>>269
了解しました。

でもどうしても使いたいイラストが出てきた場合はこのスレでまたお願いするかもしれません。
(その際は一旦絵師様の了承を得てからカードに加工することにします。)
その時はどうか気を悪くなさらないようお願いいたします。m(_ _)m

それではこれで本当に名無しに戻ります。
私の無駄レスに付き合ってくださってどうもありがとうございました。
271創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 22:30:35 ID:u+ZV36LV
つーか絵師さんとカード屋さんの問題だから外野はやいのやいの言わない方がいいんじゃね
みんなでワイワイ創作できりゃそれで良いじゃない
272創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 22:32:41 ID:rlpOd/NB
んだね
俺はわりと突撃スタイル好きよw
別のスレでだけど、カードにしてもらったのも嬉しかった
273創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:05:28 ID:GYr/BCSs
ぶった切って申し訳ないが、ここって質問してもいいのかな?

獣人の性別ってどう描き分けるのでしょうか?
体つきとか着物(着付とか柄とか帯とか)とかで誤魔化してきたんですが、
顔つきで女性っぽさを出してみたくて。
274創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:09:45 ID:r9/RxTDb
角とか牙のある種族だと有る無しで書き分けられて便利だけどね
275創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:13:01 ID:o6aVVYf2
眉毛とか目つき…とか?
あとは髪の毛か
276創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:37:47 ID:GYr/BCSs
>>274
他にも獅子とか、区別が付き易いのは描き易いんですけどね…

>>275
目つきというと、すらっとした線で丸い感じ…でしょうか
髪の毛というのは考え付かなかったです。
描いてみたのですが、女性に見えますか?
ttp://www.katsakuri.sakura.ne.jp/src/up37778.jpg
277創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:39:47 ID:o6aVVYf2
すげぇ見えるぜ
278創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:42:16 ID:rlpOd/NB
うん、見える見える
まつげと髪型がポイントになってるねえ
あとマズルのすらりとしたところも
279創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:55:38 ID:lcZYHMQF
利里の種族は男女の見分けが簡単そうだな、色が緑で尻尾の形状が違うとかで。
280創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 23:56:59 ID:GYr/BCSs
良かったー。
あとは毛並みをパサパサにしたり、瞼の弛みとかで年齢を出してみようと思います。
ありがとうございました。
281創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:08:03 ID:EVpDWZTv
>>258
ルルの話、もうすぐにでも結末まで読みたいけど、でも終わって欲しくない
気がするよう。 

何だかだんだん、「あずまんが」だけじゃなく「ヒャッコ」のテイストが。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00834.jpg
282創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:11:54 ID:UtOLxrK7
まったくけしからん
283創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:15:15 ID:DznRY++g
これはけしからんのー
284創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:17:42 ID:MzsJIn+G
けしからん
285創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:28:25 ID:iojGgQwW
うむ、まったくもってけしからんな
286創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:28:49 ID:EVpDWZTv
>>280
私も普段はかなり「記号」を使って描いてます。特にケモ学は服も着てるし、
描き分けはかなり楽だと思います。 試しにケモ学用の記号をかなり除去し
て描いてみましたが、これも男女(雄雌?)に見えますかね?
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00835.jpg
287創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:30:19 ID:DznRY++g
>>286
右が女左が男だよね
288創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:33:33 ID:iojGgQwW
うん、ちゃんと見分けつくなぁ
なんとなくパーツの繊細さというかそんなのが違うっぽい
289創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:34:41 ID:DznRY++g
というか女が全体的に色っぽいからわかるw
290創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:38:55 ID:iojGgQwW
そか、口元がコケティッシュねw
291創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:55:32 ID:UtOLxrK7
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00836.jpg
俺もやってみた…が  髪の毛とかつけないと難しいなコレ
いつも描き分けとか全然意識してなかったわ
292創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 00:57:21 ID:DznRY++g
わかるわかる
これはかなりはっきり差が出てると思うな
293創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 01:00:41 ID:iojGgQwW
うん、ちゃんと違いわかるー
視覚認識の実験みたいになってきたなw
丸っこさとゆるさでかわいさが出て女の子らしく見えるという
294創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 01:04:05 ID:DznRY++g
少年と少女っぽさがよくでてる
ボーイミーツガール物にあいそうw
295創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 01:10:27 ID:EVpDWZTv
>>291
おお、かーいー!

というか、私の先の絵は、『抜いた』と言いながらかなり姑息な記号を残し
てますから(雌が垂れ耳でツインテ風にしたり、煽りで描いて目を垂れさせ
たり、肩を落としたり。少し荒く描くだけでデフォルトは雄に見えるし)。

と言う事で、勿体ないので先のに記号を足してみました(笑)
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00837.jpg
296創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 01:12:27 ID:DznRY++g
狼っぽい犬?の男かっこいいな!
297創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 01:14:40 ID:UtOLxrK7
むしろ雌の子が可愛いっ
記号が増えたら更に分かりやすくなったね
すらっとした感じと力強い感じと
298創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 01:20:31 ID:iojGgQwW
おおう
熱血主人公タイプの雄の子と姉系な雌の子ってかんじだw
299創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 02:53:28 ID:AE0buIdI
ふとラルクとシエラを思い出した
300創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:00:46 ID:EVpDWZTv
301創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:03:15 ID:13yZLmFA
なんと悪そうなw
302創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:04:01 ID:UtOLxrK7
なんだかゲームのキャラっぽいぜ
イカしてる
303創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:04:09 ID:ZiCTKxmh
あらよる?
304創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:05:14 ID:DznRY++g
少年漫画っぽいw
305創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:37:48 ID:iojGgQwW
格ゲーチックだw
306創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 00:10:26 ID:Hdl7qU0g
>>300
そういえば前々から思ってたんだが
これはアナログ絵をスキャナで取り込んでるの?
307創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 00:21:50 ID:7qQwivJo
>>306
ここで公開してる物は概ね「紙に鉛筆描きでスキャンしてそれを主線にして
着色」しています(一部異なるものも有りますが)。
308通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/02(月) 00:26:11 ID:C1xaaqje
絵の腕がない所為で話に加われない俺が通りますよ……。

今回はちょっとけしからん内容で投下します。見る人はご注意を。
309通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/02(月) 00:28:12 ID:C1xaaqje
放課後、特に部活の無い生徒達は既に家路に就き、運動系の部活の生徒達は練習に励み始める位の時刻。
職員室にて、獅子宮教師が他の教師達に混じって、咥え煙草をしつつ今日の報告書をPCに打ちこんでいた。
この報告書の製作、ひたすら面倒臭い作業ではあるが。これをやらずにいると英教師に口煩く説教される事になる為、
彼女は半ば嫌々、半ば仕方なしといった感じに報告書を仕上げていた。
――と、そんな時、ばたばたとこちらへ駆け寄る数人分の足音が聞こえた。

「……ん? お前らは……?」

獅子宮教師が何気に振り向いて見ると、其処にいたのは芹沢モエを筆頭とする高等部の女生徒数人。
彼女らが向ける真剣な眼差しに、何事かと獅子宮教師が考える間も無く、1歩前に出た芹沢が声高に言う。

「獅子宮先生! 唐突で悪いですけど、聞きたい事があります」

聞きたい事? 自分に?
突然の問い掛けに対し、獅子宮教師の頭に疑問符が浮かぶ。
しかし、彼女がそれを問い掛ける間も無く、芹沢が更に続けて問い掛ける。

「先生のそのナイスバディはどうやって成しえた物なのですか? 良ければその秘訣を教えてください!」
「…………」

余りにも単刀直入過ぎる問い掛けに、
呆気に取られた獅子宮教師は思わず口から咥え煙草を落としてしまう。
それにあっ、と気付いた時には既に遅く、零れ落ちた煙草は机と机の隙間へ消えていた。
そして、彼女は手を額に当てつつ、後悔混じりにうめく。

「……何てことだ。貴重な煙草をまた、無駄にしてしまった……」

恐らく、今更拾いに行ったとしても埃塗れで酷い有様であろう。 
年末にも同じ失敗をし、反省したにも関わらず、これである。彼女は自分の迂闊さに激しく後悔した。
そして、怒りのやり所を探す様に視線を巡らせた獅子宮教師は、その隻眼の瞳で芹沢達を見る。

「………」

彼女らは獅子宮教師の悔恨なんぞつゆ知らず、
期待の眼差しを獅子宮教師に向け、その返答を今か今かと尻尾を振りながら待っていた。
其処で、彼女らに一杯食わせる手段を思いついた獅子宮教師は、それを迷う事無く実行に移した。

「そうだな……ある事にはあるが、そう簡単には教えたくないな?」
「え? そんなぁ! 其処を何とか!」

すぐさま食い付いた芹沢達を前に、獅子宮教師は内心ほくそ笑む。
そう、『教えたくない』と言ったのは、嘘を真実と思い込ませる為の前段階みたいな物である。
無論、そんな事を芹沢達が知る筈も無く、眼前に手を合わせて懇願する様に言う。

「先生、お願いですからどうか、この可愛い生徒達に秘訣をお教えください!」
「ふふ……其処まで言うなら、少しだけ教えてやっても良いのだがな?」
「え? 本当ですか!?」

同時に、わぁ!――と他の女生徒から歓声を上がる。
獅子宮教師は芹沢達に耳を寄せる様に言った後、小声で言い始める。

「私のこのプロポーションの秘訣はな……ずばり、ノーインナー健康法にあると言って良い」
「ノー…インナー健康法? それって、如何言う……?」
「簡単に言えばそうだな……下着を着けずに過ごす健康法って奴だ」
「な、なるほど……」

芹沢が上げた物なのだろうか、ごくり――と喉を鳴らす音が聞こえる。
既に彼女の尻尾の振りは最高潮だ。振る動きがブルンブルンと回転する動きに変わっている。
310通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/02(月) 00:29:30 ID:C1xaaqje
その様子を前に、その場で笑い出したいのを堪えつつ、獅子宮教師は自分の胸を指差して言う。

「ブラとパンツを着けないでいると、バストとヒップが弛んでしまいそうになるだろ?
だが、それを意識して引き締める事で、シェイプアップと同時にサイズの増大を行う事が出来るのだ」

無論、彼女の言っている事は全くの嘘である。
しかし、そんな獅子宮教師の嘘八百を芹沢は信じたのか、懐から取り出したメモに内容を書き写し、
そして他の女生徒達もまた、獅子宮教師の言葉の一字一句を聞き逃さぬ様、耳を傾けている。

「ああ、それと言っておくが、この健康法を始めたならば最期まで下着を着けずにやり通す事だ。
下手に下着を着けてしまったら最期、やった事が全て無駄に終わるから気を付けろ」

その言葉に、芹沢達女生徒は互いに顔を見合わせ、ひそひそと相談し合う。
どうやら下着を常に着けないでいる事に対して、少なからず抵抗を感じている様だ。
その抵抗を打ち崩すべく、獅子宮教師はもう一押しとばかりに付け加える。

「現に、私は今も下着を着けてはいない。 とまあ、それは見れば分かると思うがな?」

言って、彼女は自分の乳房を両手で軽く持ち上げ、芹沢達に見せつける。
その見せ付けた乳房の頂点の辺り、服の生地越しに浮き出た小さな膨らみを彼女達はじっと見入った後。
どうやら獅子宮教師の嘘を完全に信じこんだらしく、うんうんと頭を頷かせた。

「ま、これを信じるか信じないかは……お前達の自由だ」

そして、獅子宮教師はダメ押しの台詞を言って、にやりと笑って見せた。

「せ、先生、忙しい所をお教え頂き、有り難うございます!」

感極まって、獅子宮教師の手を取ってブンブンと振りつつ言う芹沢。
よほど嬉しかったのだろう。もう彼女の尻尾の動きは飛行機のプロペラの様に凄まじく回転している。 
彼女らに自分の嘘を上手く信じこませた事に、獅子宮教師は心の内で会心の笑みを浮かべた。
嘘をつく事に何ら抵抗はなかった、悪いのはいきなりヘンな事を聞いて煙草を無駄にさせた彼女らの方だ。
彼女がそう考えているとは知らず、芹沢達は職員室からの去り際に頭を下げて言う。

「それでは、先生、忙しい所失礼しました」
「ああ、風邪には気を付けろよ?」

と、白々しいまでに言って見せる獅子宮教師。 
そして、事実を何も知らぬまま嘘を信じこんだ彼女らの背を見送った後。
彼女はついに笑いを堪え切れなくなり、肩を震わせて一人含み笑いを漏らす。

「く…くくくっ、最高だ。 あの様子から見て、あいつら、私の嘘を完全に信じこんでたな…くくっ…。
まあ、せいぜい男子生徒達の目を楽しませてやってくれ、くくっ」

そうやって彼女が一人悦に浸っていた所で、
何時の間にか彼女の後にいたヨハンが、何処か信じられない調子で問いかけてくる。

「下着をつけてないと言う事は……まさか、下もはいて―――」

 ご っ !

その台詞を言い切る間も無く、ヨハンは獅子宮教師が無言で放った裏拳によって沈黙した。


その後、嘘に気付いた芹沢ら女生徒達の手によって獅子宮教師がけしからん事をされるまでの約一週間の間。
佳望学園の教師、生徒を問わず、男性達は皆、世の春を満喫したのであった。

――――――――――――――――――――おわれ―――――――――――――――――――――――
311通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/02(月) 00:32:40 ID:C1xaaqje
以上です。

けしからん内容をかいた事を反省している……と思う。
312創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 01:27:34 ID:7qQwivJo
313創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 01:34:21 ID:o9fwI8aJ
花子先生www

なんかこの花子先生の不思議そうな顔すごく好きw
314創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 01:34:30 ID:cQU2mC79
けしからん先生ばかりで最高な学校だ。
315創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 01:40:48 ID:RUDpHFBd
これはけしからんww
316創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 22:16:58 ID:7qQwivJo
317創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 22:23:26 ID:+QQV2z9U
あんまり小さすぎて花子先生の顔が見えないとな?
318創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 23:24:04 ID:o9fwI8aJ
サン「校長、少しお時間宜しいですか」

校長「おお、どうしたサン君。ワシは何時でも暇じゃよ?」

八木教頭「ちょ、校長、さっき昼食賭けて指したじゃないですか。サン先生の用事の前に奢ってくださいよ」

校長「はて何のことじゃ?聖職者が賭博?ははは、八木ちゃんボケとるんじゃないか」

八木教頭「(こ、この狸ジジイ……)」

校長「して、何の用じゃったかねサン君」

サン「ええ、実は相談があって……竹馬を許可して欲しいなぁ〜、とか」

校長「……竹馬?」

サン「そうなんです。今、生徒の間でノーパンケンコーホーなる物が流行っておりまして、ボクだと身長的にですね……」

校長「なるほど。モエちゃんのスカートは短いからのう」

サン「竹馬、許可もらえますか?」

校長「まぁいいんじゃが、ワシはちと疑問があるんじゃ」

サン「疑問?」

校長「今見ると困った物が見えてしまうから竹馬なんじゃろ?つまり今までは……どうしておったのかのぅ」

サン「…………」

校長「あー将棋したいなぁ〜、将棋に付き合ってくれたらワシは夢中になって忘れてしまうかも知れんなぁ〜」

サン「しょ、将棋やりましょう校長先生!ボク突然将棋やってみたくなりました!」

校長「将棋って勝つと気持ちいいんじゃよねぇ」

サン「ええ、ええ!ボクじゃあ校長には敵いませんとも!きっと負けるだろうなぁくそ(泣)」

八木教頭「サン先生、コレ、私の車の鍵です。将棋のあとに磨いておいてくれたら私も記憶が曖昧になると思います。宜しく」

サン「わかりましたともなんなりとお任せあれコンチクショウ!(涙)」
319創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 23:27:04 ID:RUDpHFBd
上を向いたら露骨過ぎんのかw
320創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 23:27:38 ID:gfp7ghML
え、えっちなのはいけないと思います><
321創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 23:28:06 ID:RUDpHFBd
ってなんか来たwww
普段から見えまくってんのかよサン先生www
322星の屑 ◆mdj2QjZJos :2009/02/02(月) 23:29:33 ID:3LnNTIPJ
>>198
やっぱり起きてしまったorz
今更ですが図書館の人々を紹介します

和賀 甲介(わが こうすけ)
 高等部の亀人の男子生徒。
 他種族の小学生並みの身長の低さで、筆跡で書いた人物が分かる鑑定眼を持つ。
 元々弓道部に所属しており、実力は全国クラス。
 ある理由で、馬術部のピンチヒッターをする事もしばしば。

羽場 大吾(はば だいご)
 中等部の象人の男子生徒。
 鼻を器用に使って本を片付けているが、実は手先も器用で、工作が得意。
 デカイ図体のわりにインドアで、趣味のパソコンで休日をのんびりと過ごしている。

比取 海那(ひとり かいな)
 初等部のペンギン人の男子生徒。
 絵を見たり描いたりするのが好きで、将来は絵画絵師を目指している。
 少々恥ずかしがり屋で、言いたい事があまり言えないのが玉にキズ。

織田 理恵(おd……おりた りえ)
 図書館の司書を務めている人間女性。
 学校唯一の人間女性教師で、眼鏡がチャームポイント。
 面倒見が良いが、多少お節介な所がある。本人に自覚はない。
 獅子宮とは、学生時代クラスメイトだった事がある。

学校の司書は、ある法律で教師扱いなので、織田は教師です。
後、新作投下します
323星の屑 ◆mdj2QjZJos :2009/02/02(月) 23:31:32 ID:3LnNTIPJ
二人の静かな図書館

 それは、何かに例えるとしたら、小鳥の囀りの様な小ささだった。

「大丈夫?」

 心配そうに顔を覗き込んだ織田は、右手を比取のおでこに添え、左手を自分の額に当てた。

「だ、大丈夫です。風邪じゃないです。誰かが噂したんですよ、きっと。」

 頬が赤くなるのを感じながら、比取は慌てて離れ、元気である事を見せようとその場で軽く何度か飛び跳ねた。
 本人が元気と言うのなら深く追求しない織田だが、どうしても比取だけは追求しそうになるのであった。
 当たり前だが、学生はいつも学生服を着ている。比取もちゃんと着ている。ただし、上着だけ。
 尺、と言うより身体の構造上の理由で、ごく一部の生徒は、上着しか着ていない。
 その所為か、織田はそういう生徒を見ると、心配をしてしまうのである。
 本人から見れば少し迷惑な行為になるので、織田は意識にしない様にしていたが、今回の件でとうとうやってしまった。
 一度やってしまうと歯止めが利かなくなるので、織田は長年の疑問を口する事にした。

「比取君。上着だけで寒くないの?」
「え?寒くないですよ。逆にちょっと暑いくらいです。」

 それを聞いて織田は、目からウロコが落ちるかと思った。
 今までの悩みは何だったのかさえ思えてきた。

「比取君は……やっぱり冬が好き?」
「はい、大好きです。逆に夏は苦手です。」

 織田は、改めて種族の違いについて認識をした。
 因みに織田が好きな季節は、秋である。


 それは、何かに例えるとしたら、バイクの空吹かしの様な爆音だった。

「うるさい。」

 所変わって学校門番前。
 和賀は、今すぐにでも逃げ出したいくらい恥ずかしくなっていた。
 その原因は、隣にいた。

「す、すびまべん。」

 言葉にならない様な声で、原因の張本人……羽場は謝った。
 羽場は、正真正銘、風邪を引いていた。
 一応マスクを付けてはいるが、先程のくしゃみではマスクを付けている意味は、あまりない。
 羽場がくしゃみをする度に、近くにいた生徒は離れ、元々遠くにいる生徒は何事かと視線と向けてくる。
 羽場を家まで連れて帰るため離れられない和賀は、二重も三重も恥ずかしい思いをするのであった。

「たく、いつも家でゴロゴロしてるから風邪引くんだよ。少しは運動しろ。」
「ぐ、ぐんどうばずこじ……ぐわっくしょん!」

 また羽場のくしゃみが辺りに響いた。
 翌日、和賀が風邪をうつされるのは言うまでもなかった。
324創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 00:39:44 ID:1kR+Ug1n
あれ?終わりなのかな?
325創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 02:21:51 ID:o/+4asZV
続きは?
326創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 07:56:57 ID:J83Qhedz
比取君って獣人っつーより喋るペンギンだよなw
上着脱いで動物園にいても気付かなそうだ
327創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 18:37:05 ID:o/+4asZV
かわいいからいいじゃないかw
逆にもっと人間に近いペンギンの獣人って難しくね?
328創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:14:29 ID:1kR+Ug1n
そういえば昔サンデーに人間の魂が入ったペンギンの漫画があったような
あれは獣人なんだろうか
329創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:25:38 ID:qvJRAeqh
教室にて「おい、誰かウンコしてるぞ!」

一斉にトイレになだれ込む

  ドッカン
          ドッカン
                  ☆ゴガギーン
        .______
.        |    |    |
     ∩∩  |     |    |  ∩∩
     | | | |  |    |    |  | | | |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    (  ,,)  |     |    | (・x・ )<誰だお前!!
   /  つ━━"....ロ|ロ   . | l   |U \___________
 〜(  /   |    |    |⊂_ |〜
   し'∪  └──┴──┘  ∪

こんな感じだったのか?
330創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:07:32 ID:XtXoyBe2
>>328
ディスガイアのプリニーみたいなものか。
331創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:24:32 ID:1kR+Ug1n
そうそう。ペンギンの一生を過ごさないと人間に戻れないの。
タキシード銀って漫画。
332創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:34:36 ID:mJOV+Fj5
>>331
懐かしすぎるw
当時サンデー独自のアニメCMがまだやってて、それで興味もったなあ
333創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:39:09 ID:a2Gjcs2l
じゃああれか
火の鳥の彫刻師茜丸も獣人か

あいつもミジンコになったり鳥になったりカメになったりしてるが
334創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:41:06 ID:KRzIDOix
可愛いと言えば可愛いかなぁ…  というか、ペンコマですね。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00849.jpg
335創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:45:36 ID:ywKfxLgi
ちょっと怖いなwこわかわいいっつーのかなw
336創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:48:20 ID:KscTdHh+
鳴き声は「てけり・り!」ですねわかります
337創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:51:53 ID:k5KVfzgC
江頭のタイツ姿みたいだなw
338創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 21:57:50 ID:o/+4asZV
足が生々しいw
339創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:16:29 ID:Ya0LGOau
>>336
諸星大二郎の絵柄に変換されちまったでねーかwww
もう静岡の敵キャラにしか見えないww
340創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:17:05 ID:Ya0LGOau
>>336
諸星大二郎の絵柄に変換されちまったでねーかwww
もう静岡の敵キャラにしか見えなくなったしww
341創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:29:05 ID:DskPw7MZ
ボリスは獣人に入るか?
342創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:36:45 ID:mJOV+Fj5
どのボリスかに寄る
343創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 23:37:30 ID:Y1s8ZtJi
ウサビッチ?
344創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 00:21:34 ID:gJIGJ1EH
    ∧_∧
   ( ´∀`)  < おしまい。
   /,   つ
  (_(_, )
    しし'
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00856.jpg
(ファイルサイズ重いので注意)

>>322
ぬ?「起きてしまった」についてkwsk(もしかして名前だったかしら)
台詞内ならいつでも修正できるので、変える所があれば書換えますぞ。
345創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 00:32:14 ID:CoYB55oS
ハッピー…エンドだぁ(;ω;)
帆崎先生よかったお…
346創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 00:33:23 ID:YFnq1s9T
完結乙っ
なんというニヤニヤエンド
347創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 02:00:17 ID:C0gTHoWz
ゴールインですか?そうなんですか?
348通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/04(水) 02:42:23 ID:whgdIofM
私が足元に落ちているそれに気付いたのは、
夜も七時を回り、今日の報告書を英のおばさんへ提出した後、さて帰ろうかと席を立った時の事だ。

「携帯電話か……」

それは床に転がっている携帯電話、
恐らくゲームのキャラの物であろうストラップが付いているのがいやに特徴的だ。
無論、私にとってその携帯は見覚えのある物だった。

「これ、帆崎の携帯だな」
「あ、そうですね……帆崎先生、忘れて帰っちゃったのかしら?」

一応、念の為に隣の席の泊瀬谷に確認を取っておく。
何事も思い込みで行動するのは危うい物だと知っているからだ。
で、改めてこの携帯が帆崎の物だと分かった以上。私がやるべき事は唯一つだ。

「良し、私が奴の家までこれを届けてやるとしよう」
「え? 獅子宮先生、わざわざ届けてあげるんですか?」

酷く意外そうな声で問い掛ける泊瀬谷。

「ああ、奴の住むマンションは私の帰り道にあるからな。帰るついでに届けてやるまでだ」
「へぇ、獅子宮先生、優しいんですね」

優しい? ふん、私がただ親切心だけで携帯を届ける訳が無いだろう?
そう、良い理由なんだよ。奴の家に押しかけて思う存分からかって事が出来ると言う良い理由がな?

「優しくは無いさ、これは単に、同僚としての義務、という奴さ」
「義務、ですか……はぁ……」

とはいえ、私が言った『義務』は違う意味での義務なのだがな、と心の中で付け加えておく。
そうとは知らず感嘆の声を漏らす泊瀬谷を背に、私は尻尾を揺らしながら職員室を後にする。
……帆崎の奴の慌てる顔を心に思い浮かべながら。
349通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/04(水) 02:46:58 ID:whgdIofM
ピンポーン

「はい、どなたですか?」

私がインターフォンを押すこと暫し、ゆっくりとドアを開けて応対に出てくる帆崎。
多分、何かのTVを見ている最中だったのだろうか、奴は気だるそうに耳を弛ませていた。

「私だ」
「……っ!!」

が、突然の来客が私と知るや、奴は全身の体毛を毛羽立て慌ててドアを閉めようとする。
無論、私はお見通しとばかりに即座に閉まりかけたドアの隙間につま先を差しこむ事で、締め出されるのを阻止する。
そして、締め出せない事を悟リ絶望感を顕わにした帆崎に向けて、私は満面の笑顔を浮かべて言う。

「こんばんは、帆崎先生」
「こ、こんな時間に何の用ですか。獅子宮先生」
「いや何、忘れ物を届けてやろうと来てやったまでなんだがな、これ」
「あ、それはっ!」

これ、と私が懐から出した携帯を慌てて取り返しに掛かる帆崎、
無論のこと、直ぐに返す気はない私は、ひょいと奴の手がぎりぎり届かない位置へと離してやる。
それでも帆崎の奴は携帯を取り返そうと、2度3度手を伸ばすが、どうやっても届かないと察したらしく、
何処か諦めた様にジト目を浮かべて言う。

「で、なんで獅子宮先生が”わざわざ”届けに来るんですか……?」
「なぁに、ただの”親切心”で来てやったんだ。安心しろ」
「親切心、って、明らかにからかう気がみえみえじゃないですか!! ちっとも安心できませんよ!」
「馬鹿を言っちゃ行けないな……私は別にからかいに来た訳じゃない」
「じゃあ、何ですか……?」

怪訝な眼差しを向ける帆崎に、私は胸を張って自慢気に、

「お前の彼女とやらを見に来ただけだ」
「帰れっ! 今直ぐ携帯置いて帰れぇぇぇぇぇっ!!」

私の言った事の何が気に入らなかったのか、
帆崎は尻尾を不機嫌に振り回してあらん限りの声で叫ぶ。……全く、短気な男は嫌われるぞ?
と考えた矢先、叫ぶ帆崎の後から走り来る誰かの足音が聞こえ―――

「うるさいっ!」

ご っ す !

怒声と共に後ろの誰か(分かりきっていると思うが)が放った踵落としが、帆崎の脳天へ見事に決まった。

「ぐ、お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!??」
「玄関先で怒鳴らないで頂戴! 近所迷惑よ!……って、お客さん?」

頭を抱えてその場に蹲る帆崎に後ろの誰か――人間の少女は一通り怒鳴った後、
ようやく私の存在に気付き、声を掛ける。私は一瞬だけ呆気に取られたものの、直ぐに気を取り直し、

「ああ、私の名は獅子宮 怜子。こいつの勤務している学校の同僚と言った所だ。
で、私はこいつが忘れた携帯を親切心で届けにきてやったと言うのに、
こいつは礼を言うどころかいきなり怒り出してな、どうした物かと少し難儀していた所なんだ」
「あらあら、それは大変ね。 なら玲子さん、折角だから家に上がらない?」
「ちょ、そいつは止め――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」

私の嘘半分真実半分の言葉を信じてか、彼女が早速、私へ家に上がる様に言う。
その際、後で何やら帆崎の奴が抗議の声を上げかけるが、即座に彼女に尻尾を踏まれ悲鳴を上げていた。
……うーむ、この時点で奴と彼女の力関係が見えて来たな……。
350通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/04(水) 02:51:09 ID:whgdIofM
「はい、粗茶だけど、どうぞ」
「ああ、すまないな」

彼女――ルルがテーブルに出したお茶をすすり、フゥ、と一息つかせる。
結局、帆崎に文句すら言わせぬままに、ルルが私を家の居間へ上げた後の事である。

「早速だが、お前が忘れていた携帯だ。 内容は見ていないから安心しろ」

そして、お茶を飲み終わった後、私は文句有りげな表情の帆崎へ携帯を差し出す。
しかし、私の言った事が信用できなかったのか、奴は携帯を操作して内容をしつこいくらいに確認した後、
見られていないと判断したらしく、安堵の息を漏らして携帯をポケットへ仕舞いこむ。
そして、帆崎は私の向かいに座ると、不機嫌さを顕わにした眼差しを向けながら言う。

「……で、用が済んだならとっとと帰って欲しいんだが?」

どうやら、この態度からすると前に一杯食わせた事をそうとう根に持ってるようだな?

「ふむ、折角、忘れ物を寒い中、家まで届けに来てやったケモノにとっとと帰れとは、酷い奴だな、お前は」
「そーよ? 玲子さんは親切な人じゃない。なのに何で帰れって言うのよ?」

私とルルの反論に、帆崎は言葉にやや焦りを混じらせながら言う。

「いや、それはだな……実は言うと、こいつはとんでもない食わせ者で……」
「だからなんだって言うのよ! 玲子さんが例え食わせ者だとしても、
貴方が学校に忘れた携帯電話をわざわざ届けに来ててくれたのは事実でしょ?
それをうだうだと言って、何も礼をせずにに帰れだなんて貴方って最低よ!」
「い、いや、だ、だが……」

すいっ、とルルに詰め寄られ、尻尾を股の間に隠して思いっきり焦る帆崎。
流石にこれ以上やったら奴が可哀想な事になるなと判断した私は、「まぁまぁ」と片手でルルを制して言う。

「私は別に金銭的な礼を要求するつもりは無いよ。
ただ、私は何処かの誰かさんの忘れた携帯を届けた所為で夕飯を食いそびれてしまってな。
だから御礼の代わりと言っては何だが、ここで何かご馳走してくれればそれで充分だ」
「あら、それくらいなら幾らでも用意してあげるわ」

私の提案に、ルルが声を上げて賛成の意を表明する。
その際、後の方で帆崎が何やら文句を言い掛けたが、直後にルルが放った裏拳によって沈黙させられていた。
どうやら、あの様子では帆崎の奴、完全に尻に敷かれている様だな。

「それじゃ、有り合わせの物で良い?」
「ああ、それで構わん」

私はこれでも勝手に押しかけた身だ。
これであれが良い、これが嫌だなんて指図する程、私は図々しくはない。

「なら、今直ぐ用意するから十分ほど待ってて」

言って、台所の方へと足早に向かうルル。
その背を見送った後、私は床に突っ伏して呻く帆崎へ言う、

「幸せ者だな、お前は」
「……こ、これの何処を見れば、そう思うんですか……?」

まあ、普通ならばそうは思わないだろうな? 完全に尻に敷かれている様だし。
だが、私にとっては、何処までも幸せに見えるんだよ。お前は。
351通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/04(水) 02:55:22 ID:whgdIofM
「私には羨ましいんだよ。お前の様に誰かと何かを分かち合って、肩を寄せ合って生きて行ける生活がな。
……私にとって、それはもう、幾ら望もうとも2度と手に入らない物なんだ」
「え……?」

言葉の端が掴めず、気の抜けた声を漏らす帆崎に構う事無く、
私は咥え煙草を揺らし、遠い、遠い何処かを見ながら話を続ける。

「私にもな、昔、誰かと肩を寄せ合って生きていた時代があったんだ」

何故、私がこんな事を話そうと思ったのかは、私自身、良く分からない。
わかる事といえば、多分、二人の様子が、一瞬だけかつての私とアイツにダブって見えたのだろう。
絶縁に近い形で親元を離れ、行く充ても無く独りでさ迷っていた私を、暖かく受け入れてくれたアイツ。
慣れない事の連続で、失敗ばかり繰り返している私に、心配無いよと微笑みかけながら手伝ってくれたアイツ。
その時の私は幸せだったと思う。アイツと居られるだけでも、アイツと笑い合えるだけでも。

「だけどな、それは私自身がやらかした馬鹿の所為で、壊れて…消えてしまったんだ」

後に残ったのは、深い傷により光を失った右目と、心に深く刻まれた2度と消えぬ喪失感。
もし、お節介にも心配する友人の織田が居なければ、私は自分の命を自ら絶っていたかもしれない。
そんな状態からここまで立ち直るまで、私はどれくらいの時間を費やしたのだろうか?
しかし、それでも私の心の傷は癒えぬまま。そう……

「それ以来、私は恐くなってしまった。そう、誰かと肩を寄せ合って生きる事が。
……そう、私の所為で、また大切な誰かも傷付けてしまうのでは、と考えてしまうんだ。
だから……私にはもう2度と手に入らないんだよ。 自分自身で壊してしまうのが恐くてな」

自嘲気に笑う私の顔を、帆崎は黙って見ていた。
そして、暫しの逡巡の後、ゆっくりとその口を開いた。

「……それは、違うと思う。この世の中、何事も心がけ一つで変わる物だと俺は思ってる。
だから、獅子宮先生も恐がらずに勇気を出していけば、ひょっとすれば……。
あ、いや、これは別に変な意味で言った訳じゃ……」
「ふふ、お前も偶には言うものだな。……ありがとう」
「……え? 今、何て……?」

言葉の全てを聞き取れなかったらしく、
思わず聞き返す帆崎に私は心の中で苦笑した後、そっぽ向いて言ってやる。

「悪いが、もう2度と言わんぞ? 聞き逃す方が悪いんだ」
「えっ!? ちょ、そう言われると余計に気になってしまうって! 獅子宮先生!?」

私の狙ったとおりに、何処か慌てた調子で聞き質す帆崎。
と、そうやっている間に料理を終えたのか、ミートスパゲティを乗せたトレイ片手のルルが戻ってきた。
そして、ルルは私と帆崎の様子に首を傾げ、テーブルへスパゲティを置きつつ問い掛ける。

「さっきから何やってるのよ?」
「ああ、それがな、こいつ、私の格好が不謹慎過ぎるとか文句を言ってきたんだ。
それで、これは私のスタイルだと何度も言っているのにな、こいつは全然聞き入れてもくれん」
「うわ、最っ低! 思いっきりセクハラ発言じゃないのよ、それ!」

冗談のつもりで言った私の発言を真に受けるルル。
無論のこと、帆崎は慌てて弁明しようとするのだが

「ち、違うっ! それはこいつが勝手に――――」
「問答無用っ!!」

 め ご っ !

その間すらも与えず、ルルは帆崎の頭へトレイ式脳天唐竹割りを炸裂させたのだった。
流石にこうなるとは私自身、考えてもなかった……少し反省。
352通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/04(水) 02:56:25 ID:whgdIofM
「忙しい所ご馳走になったな。スパゲティ、美味しかったぞ」
「お褒め頂き感謝の極みってね。 玲子さん、また何かあったら遊びに来て頂戴ね」
「ああ、また帆崎の奴が忘れ物した時に来るとするよ」
「もう2度と忘れ物をするもんか……グスン」

ややあって。帆崎への誤解を一応解いてやった後。スパゲッティをご馳走になり。
ついでになんだかんだでルルと仲良くなった私は、色々な意味での満足感を胸に、帆崎らの住む部屋を後にする。

そして、駐車場に出た私が来客者用スペースに止めていた愛車に跨り。
胸元から取り出したライターで咥え煙草に火を付けつつ、帆崎の部屋の窓の明かりを眺めつつ、物思いにふける。

恐らく――これから彼らが辿る道は決して平坦な物ではないだろう。
だが、それもまた生きる道。所詮は他人である私が口出しするべき問題ではない。
それに、例え茨の道が広がっていたとしても、あの二人なら多分大丈夫な筈だ。
そう、二人のやり取りを見ていれば、自然とそう思えてしまうのだ。

「ふっ、私とした事が……何を考えているのやら」

柄にもない事を考えていた私は自分自身へ苦笑し、
煙草を携帯灰皿に圧しつけた後、ヘルメットをかぶると愛車のZUのエンジンを掛ける。
そして、去り際にもう一度だけ、帆崎らの住む部屋の方を見やり、呟く。

「頑張れよ……お二人さん」

その時の私の目に写る窓の光は、どうやっても手の届かない所で儚げに光る、星々の煌きの様に見えた。

――――――――――――――――――了―――――――――――――――――――――
353通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/04(水) 02:57:54 ID:whgdIofM
ハッピーエンドをみて、思わず衝動的に書き上げてしまった、反省している。

最近、頭の中で獅子宮先生が勝手に動きまくって困っている俺が居る。
354創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 03:34:54 ID:C0gTHoWz
ルルはそんなに暴力的なキャラじゃないような……
なんか獅子宮先生が出て来ると毎回誰かキャラ崩壊してたり愚かになってる
355創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 08:12:54 ID:pXdm0Xkq
おおっと?
獅子宮ティーチャー何があったんだ獅子宮ティーチャー?
5つ年下なのにえらい貫禄あるよな獅子宮ティーチャー
やっぱ猫とライオンだからかな
356創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 08:36:15 ID:g4OgutLP
常識組が壊れるとこ見たいな
357創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 13:28:03 ID:C0gTHoWz
燕尾服ザッキー
純白のドレスルルたそ
チャペル
ささやかな結婚式
ザッキーの両親
いないルルの両親
来賓席に先生方
呼んでないのに来てる生徒達





初y(ry
358創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 18:27:17 ID:pXdm0Xkq
なんか真っ先にバロンが思い浮かんだ
ザッキーは燕尾服ってガラじゃない気がする
359創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 19:58:56 ID:nq9VjY7u
なんというニヤニヤカップルww
360創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:17:10 ID:Cp1JJHRd
式とかやらなそうに思えるけどな
ザッキーがケジメだよ、とか言い訳しながら
写真館で写真撮るとかだと妄想
361創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:31:17 ID:C0gTHoWz
サン先生がルルと結託してザッキーのみ知らないサプライズ結婚式とか企画しそう
362創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:34:44 ID:zi1eelkU
本人たちよりも周囲が黙ってないだろう
さあ、これで独身人口がまた減った。どうする英先生
363創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:37:16 ID:nq9VjY7u
>>361
目に浮かぶw
364創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 22:55:48 ID:GnOwopCQ
>>362
白先生「なんだと。わたしはオスネコに現実を求めないのだ。な、泊瀬谷先生」
泊瀬谷「ええ?は、はい?」
365創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 22:59:07 ID:YFnq1s9T
泊瀬谷先生はオスネコじゃなくてオスイヌに…
366創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 23:12:44 ID:C0gTHoWz
ヒカル「泊瀬谷先生。コレ、あげます」

泊瀬谷「えっ?これって?」

ヒカル「……逆チョコって奴、です」

泊瀬谷「…………(ぽっ)」
367創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 01:03:25 ID:X34quvA9
ヒカル君は自分ひとりじゃ逆チョコとかやろうと思わなそうだな
誰か感謝の気持ちを表すのが〜とか裏で煽ったやつがいそうだ
368創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 01:09:16 ID:yXXDiCvJ
十中八九ヨハン先生だろww
369創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 01:11:14 ID:X34quvA9
確かにw
370創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 10:44:01 ID:/q7ope+S
「このまま歳をとって、それでもふたりとも結婚してなかったなら、小さな家でも借りて
 ミオと暮らすってのも、良いなぁ」
「そう言うのは『魔女達の家』って呼ぶんだったか?ユメミル中学生のする話じゃないな」
「そもそも神楽と暮らしても得するのは神楽ばかりじゃないか?料理も炊事も家事全般が
 壊滅的にダメダメだもの」
「そうかぁ……ミオは私と暮らすのは嫌なのかぁ」
「いや、別段そんなことは言ってない」
「私と居ると、きっと楽しいよぉぉ?」
「そうだろね、多分毎日に飽きることなんか無いだろうな」
「ね?」

「先生?」
生徒の不安そうな目に我に返る。 あぁごめんなさい、一寸考え事していたの。 次の指
示を与えてから全体の調子を見るために少し教室の後ろに下がる。
人生の門出の大事なドレスに手芸部の生徒達が総掛かりで腕を振るう。彼女達にも憧れの
ドレスとあって、真っ白な布と格闘するその頬は心なしか上気し瞳は何時にも増してきら
きらしている。何時か自分が着るときのことを思ってるのだろうか。

では飾りに使うコサージュをひとり3こ作ってきてください。 作業が楽しくてたまらな
いのだろう、名残惜しそうにしていた娘達を追い立てるように帰宅させ、ひとり残った部
室でドレスと向き合う。 あのとぼけた男にしては良いお嬢さんだったな。採寸のために
連れてきて、しどろもどろで紹介していた姿を思い出して少し笑う。

それにしてもあの男は案外生徒に人気が有るようで、これから予定していた『手作りチョ
コ講習会』の集まりが思いの外低調だ。猪田君の様なことはめったに無いのだぞ、娘達よ。
そうだ、講習会に“そのお嬢さん”が来ると公表してやるとどうなるだろう?参加者は増
えるか?それとも…

バレンタインの悲しい思い出は毎年毎年の楽しい記憶でどんどん上書きしてやるんだと誓っ
た日からもうずいぶんになる。棘の上から包帯で押さえても痛いままだと気づいたのは最
近だったな。

明日にはドレスもおおかた完成だろう。 さぁ、帰ろう、私の魔女の家へ。
371創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 10:46:05 ID:/q7ope+S
昨日は呑み会で酔っぱらって描けなかった悲しみを文にしてみた。
英先生は、きっと大丈夫(笑)
372創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 13:02:20 ID:yXXDiCvJ
大丈夫…なのか?
(´・ω・`)先生…
373創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 14:10:37 ID:UtkTWGsg
うほっ…SSキテルー(゚∀゚)
小さな小さな結婚式ネタの絵にしようかと思ってたけれど、
>>360が似合ってるかなーと思いお借りしました。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00861.jpg
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00860.jpg

>>370
あ、やっぱり『手作りチョコ講習会』するんですね。とりあえず100個ほど下さい><
374創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 15:48:21 ID:/q7ope+S
>>373
麦チョコ100粒で良いですか?

実はこんな文も考えてた(縦書きだと思って読んでね。何となく)

 指輪を恐るおそるさしだしながら、三十億のと比べられると流石にみすぼらしいかもし
 れないけれども、これが俺の精いっぱいだよと言うと、彼女は
 「今となってはこの指輪には重さ分のプラチナの価値しかない」
 と笑いながら答えた。どうやらつまり、彼女の戦いとは、そう言うことだったらしい。
 そして、
 「だから、あなたの指輪は、この父の指輪と同じくらいの価値があるわ」
 と、にっこりと泣きながら僕の目の前に左手をさしだした。

#つじつま合わないと不安なので、参考ってことで…

とにかくハッピーエンドおめでとうございます(笑)>ザッキー
多分いちばんショック受けてるヨハンに幸多からんことを(笑)
ちなみに、可愛くてもサン先生はザッキーとそんなに歳かわんないぞ(笑)
375創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 17:23:57 ID:FUXvRmeV
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/05(水) 18:47:14.24 ID:PEebPqjn0
小説「後ろで大きな爆発音がした。俺は驚いて振り返った。」

ケータイ小説「ドカーン!私はふりかえった。死んだ。」

ラノベ「背後から強烈な爆発音がしたので、俺はまためんどうなことになったなぁとか、そういや昼飯も食っていないなぁとか色々な思いを巡らせつつも振り返ることにしたのである。」

山田悠介「後ろで大きな爆発音の音がした。俺はびっくりして驚いた。振り返った。」

村上龍「後ろで爆発音がした、汚い猫が逃げる、乞食の老婆が嘔吐して吐瀉物が足にかかる、俺はその中のトマトを思い切り踏み潰し、振り返った。」

佐藤藍子「最初から爆発すると思ったので振り返りました」

古館伊知郎「仮に爆発があったとしても、何がいけないんですかねぇ?」

柳沢敦「急に爆発が起きたので」

福本伸行「関係ねえ 爆発なんか関係ねえんだよ‥‥‥‥‥!オレだっ‥‥! オレだっ‥‥‥!オレなんだっ‥‥‥! 肝心なのはいつも‥‥!(ざわ‥‥ざわ‥‥)」

久米田康治「爆発・・・・ 爆発ねえ・・・・。この程度で爆発ですか!世の中には、もっと恐ろしい爆発が存在するのです!」

久保帯人「爆発…だと…?」

岸本斉史「これほどの爆発とは…たいした奴だ」

荒木飛呂彦「爆発など無駄無駄無駄無駄ァアアアアアアアア!!URYYYYYYYYY!!」

英語の教科書「Q:この音はガスが爆発したのですか?
           A:いいえ、爆発したのはトムです。」
376創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 17:36:03 ID:hAQ68M9y
>>375
トムwwwww
377創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 17:41:14 ID:hv8bjzVV
英語の教科書最強だな
378創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 17:54:26 ID:UtkTWGsg
トム可愛そうってレベルじゃねーぞw
379携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/05(木) 18:17:11 ID:01jJvefX
 サン先生は思い付きで行動した。
──ガチャ!
「こんにちは帆崎ルルちゃん!ボクはザッキーのマブダチ・サンスーシです!突然ですが
ザッキー・サプライズセレモニーのご相談に上がりました!」
「/////」
 ルルは玄関に飛び込んで来たサン先生を見ず、耳まで赤くしてそっぽを向いた。僅かに
震えている。プルプル。
「あれ?なんで恥ずかしがってるの?」
「ほ、帆崎って呼ばれ慣れてないから、なんかムズムズするの」
「ああ、わかるわかる。ボクも時々本名で呼ばれるとムズ痒いよ」
 サン先生は勝手知ったる何とやら状態で、足の肉球を自前のタオルで拭ってスタコラと
上がり込んだ。
「わー、ザッキーの愛の巣に土足で踏み込んじゃったー」
 イタズラを仕掛けて居る時が何より楽しいサン先生。
 帆崎姓をコールされた羞恥ショックから立ち直ったルルが、楽しげなサン先生をやっと
まともに視認した。そして──またプルプルと震えだす。

──な、何?なんなのこのちっさいモフモフ?犬?犬よね?いや……ぬいぐるみ?

「キ……」
「ん?どうしたのルルちゃん?」
「キャー、可愛いーッ!なにこれ?ぬいぐるみ?」

 ルルはサン先生の中身が青年だとも知らず抱き付いた。まぁ知ってても抱き付いたが。
可愛いから。

「うわ、ちょっ!ルルちゃんダメ!そっちの悪戯は信義則に反します!ボクはカタカナの
イタズラをザッキーに仕掛けたいの!やめ、や、ぐえっ」
 割と強い力で絞められた。

《十五分後》

 可愛いもの抱き締めたいシンドロームの発作が治まり、サン先生とルルはティータイム
真っ最中だった。

「へー、あいつと同じ歳なの?全然見えない」
「うんうん、よく言われる。成人コーナー立ち入りお断りされるもの。ドーベルマン捕ま
えてちっさいから子供扱いだなんて酷いよね」
「あなたドーベルマン?弁護士の枯れおじ様と同じなの?わー全然見えない」
「それもよく言われるんだなぁ。ここだけの話、これでもボク、由緒正しき血統書付きの
御家柄なんだよ?」
「ふーん」
「でも、なんか馬鹿らしくなっちゃって大学卒業してすぐ家出しちゃった!アハハ!」
「……」
「あれ?普段はこんな話しないんだけどなぁ。もしかしてルルちゃん、家出経験ある?」
「え?えと、私は……「ただいま〜」

 ザッキーの声。ルルは反射的にザッキーの出迎えに立上がった。
 あ、サン先生どうしよう。
 ふと思いだしてサン先生の方を振り返ると、窓が開いてカーテンがはためいていた。そ
こから脱出したらしい。
──なんか面白い人(犬?)だったな。
 ルルはザッキーにお帰りを言った。


「鍵と財布、忘れた……」

 サン先生はザッキーとルルの部屋のを見上げ、帰る電車賃もなく途方に暮れた。
380創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 18:21:58 ID:a0prebzn
GJ!!
サン先生もドジするねwww
381創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 18:41:23 ID:1ljErpza
ヨハン先生が買い物をしているようです。

ヨハン先生、レジのお姉さんにも声をかけています。
ヨハン「レジを打つその姿がまぶしい!ああ、太陽のようだ」
レジのお姉さんは内心呆れながら
お姉さん「合計で4854円になります。」
ヨハン「キャインカードで」
お姉さん「ボタン選んで、キャインというまでここにかざしてください。」
カッコつけてカードを取り出したヨハン先生
レジのお姉さんの顔が引きつる
(ジ、ジャンアントパンダカード・・・)
お姉さん「お、あの、お客様・・・、このカードはお使いいただけません」
ヨハン「なぜだい。俺のキャインカードが使えない・・・」
青ざめるヨハン。ヨハンが手にしていたのはアニマルカイザーのカード。
どうやらカード間違えたらしい。
ヨハン「すいません、現金でお願いします。」
ヨハン先生、すっかり意気消沈して帰宅したのでした。

382(1/3)携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/05(木) 19:56:39 ID:01jJvefX
《逆襲のサン@図書館》
 獅子宮先生のちょっとしたイタズラから始まったブームで、校長教頭に弱みを握られ、
将棋に付き合わされたり洗車させられたり踏んだり蹴ったりのサン先生。
 ケモ学のトリックスター・サンスーシがイタズラの借りをイタズラで返すのは至極当然
の事であった。

 図書館に入ったサン先生は真っ先にカウンターへ向かった。ぴょんぴょん、と跳ねてみ
るが、カウンターが高くて全然織田さんに気付いて貰えない。図書委員の三人中一番デカ
い象の子を呼び、鼻を借りる。豆の木を昇るマリオの如く鼻をよじ登り、織田さんに声を
かけた。

「織田さん!お願いしたもの持って来てくれた?」
「あら、サン先生。ちゃんと持ってきましたよ」
「ありがとう!それじゃあしばらくお借りするね」

 サン先生は織田さんから、何かが入った封筒と本のようなものを受け取った。

「ふふ、楽しみにしてます」と織田さん。
「まっかせなさ〜い!」

 サン先生は喜々として鼻の上を滑り降り、渡された物を頭上に掲げてトテトテ走って行
った。

 サン先生が駆け去るのを見届け、図書委員の三人は織田さんに聞く。

「織田さん。サン先生に何渡したんですか?」
「んー? 内緒。ふふふ」
「?」

 織田さんの微妙な反応に、図書委員の三人は顔を見合わせるばかりだった。

《逆襲のサン@警察署》
 サン先生は警察署を訪れた。別に切符を切られたわけではない。

「こんにちは!ウルフとジョー居る?」
「ああ、アイツらなら駐車場で昼飯食ってるんじゃないかな」
「ありがとう!」
 駐車場に行き、メットにずんぐり腰掛けている柄の悪い警官に、元気一杯話しかける。

「やあやあ、ウルフ、ジョー! 今日もカップ麺かい?」
「うっせぇ、交通課のペーペーがランチ食って車のカスタム代払えるか」
「ははは、それもそうだ! 公務員って安月給で困るよね!」

 サン先生は苛立たしげな警官を前にしても全く動じず、なお馴々しく肩に寄り掛かった。

「で、さ。例の物持って来てくれたかな?かな?」
「ああ、持って来たぜ。パトに放りこんである」
「ディード(良し)!!」

 サン先生はいそいそとパトカーに潜り込み、目的の物を手に取った。何か古雑誌らしい。

 パラパラとめくり──ニヤリ。
 警官も──ニヤリ。

「ウルフ&ジョー、ありがとう! 今度美味い飯奢るよ!」
「獅子宮に4649な」
「OK! 夜露死苦言っておくよ!」

 サン先生は古雑誌を抱き締めるように抱え持ち、ニシシとイタズラっ子のような笑顔を
湛えて、警察署を後にした。
383(2/3)携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/05(木) 20:01:32 ID:01jJvefX
《逆襲のサン@物置》

「うわ、ちょ! 見て跳月先生! パソコンが歩いてるっス?! ゆゆゆ、UMA?!」
「……白倉先生、ムーの読み過ぎです」
「重いよ〜!二人共見てないで手伝ってよ〜!」

 サン先生は物置──理系科目担当教師用職員室兼理科準備室に自分のパソコンを持ち込
んだ。UMAでは無いと気付いた白倉先生が、サン先生からPCを受け取って机に置く。
 白倉先生の机には未だ強力磁石(メス付き)ががっつり接着しているので、跳月先生の机に
置いた。

「いつも乗ってる台車使えばよかったじゃないですか」
「? 何言ってんのさ、はづきち先生。浅井カーは乗り物だよ?」
「……」

 冷静なツッコミを、不自然な理由で当然の様に撥ね付けられ、跳月先生は言葉を失った。
 白倉先生が話しかける。

「サン先生、この部屋磁石だらけだからPC置いておくのには向かないっスよ?」
「いやー、ボクもここが磁気嵐の渦中だってのは分かってんだけどね。職員室では出来な
い仕事があるんだ」
「“職員室では出来ない仕事”と言いますと?」と跳月先生。
「見たい?」サン先生はニヤリとほくそ笑み、PCのスイッチを入れた。

 手慣れた様子でマウスを繰り、画像のフォルダをダブルクリック。

「ぶはっ!」「ぷっ!」

 白倉先生と跳月先生、両氏が同時に吹き出す。サン先生が次々画像をクリックし、新た
な画像が開く度に二人は改めて吹き出した。

「ハハハ、これを編集するのは確かに職員室じゃあ無理っスね」
「アハハハ、僕、逆に親近感沸きました」

 二人の反応に満足し、大人の行動力を持ったイタズラっ子の眼鏡がギラギラと輝く。
 サン先生は作業を開始した。
384(3/3)携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/05(木) 20:02:57 ID:01jJvefX
《何も知らない獅子宮先生@翌日の出勤直後》
 獅子宮先生は、くぁ、とひとつ欠伸をして職員室に入った。

「おはよう皆」

 職員室の全視線が獅子宮先生に集まり、そして逸らされた。笑いを堪えているような節
がチラホラ。
 なんだか妙な違和感を覚えた獅子宮先生は、皆と同じく自分から目を逸らしている泊瀬
谷先生に詰め寄った。

「おい、泊瀬谷。皆して何を企んでいるんだ?」
「あ、その、ええっとぉ……」口ごもる泊瀬谷先生。
「クフフ、廊下の掲示板見て来れば分かりますよ」と親指で廊下を示しながら帆崎先生。
「獅子宮先生、ボクは危険な香りのする女性って、カッコいいと思います」と慰めるよう
な調子のヨハン先生。

 獅子宮先生は怪訝に彼らを一瞥し、廊下に駆けた。

 掲示板の前には人だかり。
 だが獅子宮先生が来た途端にワーワーキャーキャー言いながら生徒達が散って行く。残
ったのはコーヒーを飲みながら掲示板を見ていた白先生だけ。

 一体何が……?

 獅子宮先生は掲示板を見て──眼を剥いた。
 掲示板に張り出されて居たのは新聞部主催の週報であり、先生紹介コーナーなるものが
あった。それだけならば問題は無いのだが、そこにズラズラと張り出された写真が問題で
あった。

 獅子宮先生がケモ学学生だった頃の、初等部から高等部までのクラス写真全部と卒業写
真。そして獅子宮先生が特集されている古雑誌の1ページ。

 中学2年あたりから獅子宮先生はグレ始めたらしく、中3からは全て右上(撮影日欠席者
枠)の住人と化している。4枚も縦長の楕円に写っている写真が並ぶと笑うしかない。
 卒業写真だけ中学も高校もちゃんと出席して写っているのがなんだか微笑ましい。
 卒アルに書いた将来の夢もキッチリ載せられている。

 初等部の時の夢:お嫁さん
 中等部の時の夢:バイクレーサー
 高等部の時の夢:天下無双

 もうそれだけで死にそうな獅子宮先生だったが、古雑誌がトドメ級の大ダメージだった。
 特攻服を来てゴテゴテに装飾を付けたバイクに跨がった獅子宮先生が、“チャンプロー
ド”の投稿コーナーにでかでかと掲載されていた。

「まぁ気を落とすな獅子宮。サンの怨みを買ったのが運の尽きだったのさ」

白先生は口からエクトプラズムをはみ出させて放心している獅子宮先生を保健室に搬送した。

385創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:49:32 ID:X34quvA9
なんだこの小ネタ祭りww
いっぱい同時に来すぎて幸せだー

サン先生いろいろやりすぎw
あとヨハンそれあるあるwでもパンダカードかよw
386通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/05(木) 23:22:27 ID:rZRyq8Ur
〈〈静かなる激昂@放課後の職員室〉〉

「あっはははっ、もう最高だったね、あの時の獅子宮先生の顔ったら!」

放課後、サン先生は気分良くコーヒーを啜っていた。
それも無理も無い。自分のやった悪戯が予想以上の成果を見せたのだ。
その時に獅子宮先生が浮かべていた茫然自失な表情を思い出すと、思わず笑いがこぼれてしまう。
今の彼の気分はまさしく最高、所謂ハイな気分であった。無論、尻尾の振りも絶好調である。

「けど、サン先生。 これから暫くの間、姿を隠した方が良いんじゃないですか?」
「へ? なんで? なんで姿を隠す必要があるの?」
「いや、それは……」

そんな気分に水を差すような帆崎先生の問い掛けに、サン先生はちょっとムッとしつつ問い返す。
しかし、何故か帆崎先生は目を逸らし言葉を濁らせるばかりで、何も答えてくれなかった。

「そうですねぇ、ボクも帆崎先生と同意見ですね。
……サン先生、悪い事は言いませんから。自分の身の為を思うなら、
これから暫くの間、学校に近寄らない方が良いと思いますよ?」
「…へ? へ?」

帆崎先生の反応に疑問を感じた矢先、更にヨハン先生にも同じ事を言われ、サン先生は遂に困惑の声を漏らす。
今の今まで、彼が悪戯をした時は、せいぜいその場で叱られる程度、
悪くても数時間ほど説教される程度で済まされてきたのだ。
そんな彼に、帆崎先生とヨハン先生が心配する理由が思い当たらないのも当然といえば当然であった。

「いや、それ以前に今直ぐ帰った方が…ぁ…」

言いかけた所で、帆崎先生はいきなりギョッとした表情を浮かべ硬直する。
見れば、ヨハン先生も泊瀬谷先生も、帆崎先生と同様にギョッとした表情を浮かべて硬直していた。
その急な状況の変化に、サン先生は不安を感じ、思わず周囲を見まわす。

「……安心しろ、骨は拾ってやる」
「え? 骨って……?」

そんな彼に向けて白先生が言った、何処か諦めきった感じの言葉に、
サン先生が思わず問い返そうとした矢先。

ゾワッ!

背中の毛と言う毛が毛羽立つ、寒気にも似た感覚。そして同時に感じる本能的な直感。
そう、それは四足で歩く祖先の獣であった頃から備わる、身に迫った危険を感じ取る防衛本能。
それがサン先生の脳内で声高に叫ぶ。

―――逃げろっ! 今直ぐこの場から! 早く! ハリーハリーハリーッ!!

しかし、この時ばかりは、防衛本能が危険を察するのは少々遅すぎた様だ。

「よう、とっつあんぼうや」

頭上から掛かる声、そして同時に、頭の上に肉球のついた手がポンと置かれる感触。
心なしか、『ドドドドドドドドド』と言う、何処かの漫画的な効果音が聞えるような気がする。
当然、声の方へ振り向ける筈も無かった。 『振り向いたら死ぬ』と言う、直感的な恐怖をひしひしと感じて。

「貴様、ずいぶんと愉快な事をやってくれたじゃないか。 
流石の私も、あそこから立ち直るまで結構な時間が掛かったぞ?」

飽くまで静かな――そう、例えて言うなれば、風一つ無い凪の日の海面のような穏やかな声。
だが、サン先生には分かった。その声の内に秘める、煮え滾るマグマの如き灼熱の怒りを。
そして、たちまち職員室中に満ちる、彼女の放つ圧力にも似たどす黒い気配を。
387通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/05(木) 23:24:42 ID:rZRyq8Ur
「あ、そうだ! 今日は早く帰るとルルと約束してたんだ。だから早く帰らないと!」
「ぼ、ボクもこれからリリーちゃんとデートをする約束をしてたんだよ。彼女が怒り出す前に早く行かないと……!」
「そ、そう言えば私も今日のビデオ予約をし忘れてたんですよね、いけないいけない!」

その空気に耐え切れなくなった帆崎先生とヨハン先生、そして泊瀬谷先生がその場からそそくさと逃げ出す。
その股の間に隠した尻尾の折り曲げ具合から、彼らの感じる恐怖は相当な物だったのだろう。
無論、サン先生はより濃密にその気配を感じていたのだが、今の彼には尻尾を股の間に仕舞う余裕すらなかった。

「まあ、元はと言えば、これは私自身がまいた種だ。何れこう言う目に遭うだろうとは分かっていたさ。
現に、私は昨日しがた、騙した女生徒達からその罰を受けたばかりだったからな」

遂に体を振るわせ始めたサン先生に、彼女は飽くまで静かに語りかける。
しかし、静かだからこそ、その内に秘めた怒りの度合いの凄まじさを感じさせた。

「しかし、だからといって……お前は少々やりすぎだ」

その言葉と共に、置かれた手がぎゅっとサン先生の頭を掴む。
もし、サン先生が人間であれば、額をだらだらと流れる自分の脂汗を感じて居た事だろう。

「まさか、誰にも知られたくなかった過去の恥を、全校生徒の前に晒してくれるとはな……?
さぁて、このお礼は如何言う風にしてやろうか?」

声と共に、徐々に手の掴む力が強まり、みしりみしりと骨が軋む音が聞こえる。
無論、その際に声を上げたくなる位の激痛が走るのだが、サン先生は恐怖で声を上げる事すら出来なかった。
そんな彼に向けて、彼女は何処か楽しげな声で言う。

「そうだな、全身の毛と言う毛を全部ブチ抜くのも悪くない、
……いや、いっその事、生きたまま剥製にするのも面白いかもな?」

ここで、サン先生は自分の足が床に付いてない事に気がついた。
しかし、自分の体が浮いている訳ではない。 そう、彼女に持ち上げられているのだ、頭を掴むその片手で。
そして、掴んでいるサン先生をぶらぶらさせながら、彼女は満面の笑顔で言う。

「なぁに、安心しろ、流石に殺しはしないさ。
その代わり――今日と言う日が2度と忘れられなくなるだろうがな?」
「い…いいいぃぃぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

悲鳴を上げるサン先生を片手にぶら下げたまま、どす黒い空気を纏った彼女が職員室から去って行く。
そして、ぴしゃりと職員室の戸が閉められると同時に、サン先生の悲鳴は聞えなくなった。
その様子を白先生は頬杖を付きながら横目で見送り、ぽつりと漏らす。

「……やはり、何事も程々が一番だな」

しかし、それに耳を傾ける者は生憎、今の職員室には誰も居なかった。


翌日、サン先生は何事も無かったのかの様に、何時もの通りの元気な姿で出勤してきた。
ただ、サン先生にその日にあった事を幾ら聞いても、彼は体を震わすばかりで何も話そうとはしなかったという。

―――――――――――――――――――――終われ―――――――――――――――――――――――
388星の屑 ◆mdj2QjZJos :2009/02/05(木) 23:25:02 ID:wwnzNm41
<静粛に!>
 それは、図書委員恒例の読書会で起こった。
「はぁ、いいなー。羨ましい。」
 読書会の最中、羽場は盛大な溜め息を吐きながら、羨ましげに独り言を呟き始めた。
 折角静かに本を読んでいるのに、それを邪魔されてしまった残りの二人は、冷ややかな視線を浴びせる。
 しかし、羽場は本の世界に入り浸ってしまっているのか、彼らの視線には気付いてはいなかった。
 和賀は、思わず立ち上がり、噛み付く体勢に入りかかったが、何とかそれを押さえ、注意を呼びかける事にした。
「羽場、うるさいぞ。」
「……え?はい?何か用ですか?」
 声をかけられ、漸く現実に引き戻された羽場だが、自分が何をしていたか解ってない様子でこちらを見た。
 流石にこれは、本気で呆れるしかなかった。
「あのな、本の世界に入るのは勝手だがな、独り言は止めろ。」
「す、済みません。」
「大体、何の本を読んでいたんだ?」
 羽場が読んでいる少し分厚い本を引ったくり、中身を簡単に流しながら捲ると、ある挿絵に手が止まった。
 それは、一人の人間男性が巨大なドラゴンの頭を撫でているシーンが描かれていた。
 他のページを適当に読むと、どうやらこの一人と一頭の友情をテーマにした小説の様であることが分かった。
「このペアが、物凄く仲が良いんですよ。」
 嬉々として小説の良さを伝えようとする羽場だが、そろそろ読みかけの本を再開させたい和賀は、本を羽場に押し付けた。
「とにかく、今は静かに読む時間だ。今度やったら……分かってるな?」
 和賀の眼つきが変わったのを見て、羽場は顔を引きつかせながら静かに、そしてゆっくりと頷いた。

 一週間後。
「プッ、クククククククッ……」
 読書会の最中、またもや羽場は、今度は笑い声で和賀達の邪魔をしてしまった。
 一応必死に笑いを堪えている様ではあるが、その努力も空しく、声は漏れていた。
「アハ、アハハハハハッ……」
 とうとう我慢出来なくなったのか、羽場は、腹を抱えて盛大に笑い始めた。
 そこで和賀は、読んでいる本を閉じ、静かに立ち上がった。
 そして、首を左右に何回か捻り、肩を軽く回し、クラウチングスタートの様な姿勢を取った。
 和賀の目は、何かを狩る眼つきをしており、数秒後、羽場の笑い声が悲鳴に変わったのは言うまでもなかった。
「お前は、俺を舐めているのか?」
「い、いえ……滅相も、ござい、ま、せん。」
 死んだ様にうつ伏せに倒れている羽場に、その上に足を組んで座る和賀。
 近くには、羽場が読んでいた本が落ちており、それを比取が拾い上げて、読んで見るが、何の事が書いてあるか解らなかった。
「よく解らないです?」
「どれどれ?えーと……何かしら、これ?」
 様子を見に来た織田が、代わりに読んで上げようとするが、すぐさま怪訝な顔になった。
 その本の目次は、とにかく奇妙奇天烈なタイトルが書いてあり、中身が一体何なのかは予想がつかない。
 織田は、取りあえず最初から読み始めると、漸く本の内容を理解する事が出来た。
「どうやらアニメやゲームにある凄い現象を、科学的に検証してみたって感じの本みたいね。」
「そんなのに笑っていたのか、お前は?」
「検証した結果の部分を、具体的な内容で書いてあるから、そこが面白いみたいね。」
「け、検証してる部分も、お、面白いです、よ。」
「そんな迷惑な本を何て読むな。」
 回復してきたのか、先程よりも流暢に話し出す羽場に、和賀は、頭を叩いた。
 後日、図書館の一画に、『静粛』と書かれた紙が張り出され、騒がしかった読書会は、静かに行われる事となった。
389創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 23:28:40 ID:X34quvA9
またどんどん来るwwww
やっぱりそうなるだろうと思ってたけど仕返しされたか
サン先生、いったいナニをされちゃったんだ?
390星の屑 ◆mdj2QjZJos :2009/02/05(木) 23:30:36 ID:wwnzNm41
>>344
まさに名前の部分なんですが、そのままで大丈夫です
むしろそうして下さると助かります

織田「皆さん、図書館では静かにして下さいね。(鎌田君みたいに)走り回ったり、(玲子みたいに)暴れたりはしないように!」
391創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 23:38:28 ID:X34quvA9
羽場の気持ちわかる…
電車の中で読めない本とかってあるよな
なんとか笑いはこらえるんだけど顔がによによしちゃうのとかさ
392創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 01:10:40 ID:Ttrp/djK
《彼らの恐い物@生徒指導室》
 いのりんはマリアナ海溝くらい深い溜め息を吐いて獅子宮先生に言った。

「獅子宮くん……君とまたこの部屋で話す事になるとは思わなかったよ……」
「……すまん」
「敬語を使いなさい。今、君は教師ではなく、私の生徒としてまたここに叱られに来たんだ」
「ゔ……すみません、でした」

 ククク、と獅子宮先生の隣りに立たされているサン先生が笑った。

「サン先生、何がおかしいのかしら? 子供じゃああるまいし、何故人の機嫌を逆撫でる
ような事をするの?」とサン先生を窘めたのは英先生。
「ご、ごめんなさい……」

 サン先生は尻尾を巻いてシュンとした。
 いのりんと英先生の説教は、獅子宮先生とサン先生が握手して仲直りするまで(9時間)
続いた。


393創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 01:24:33 ID:7SZZGDyP
振り回されてばかりのいのりんもやる時はやるのか
394創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 01:39:54 ID:h+94tbzR
おおおお!すげー伸びてると思ったらすげー投下されてる。
相変わらず一気にくるなこのスレは。

>>370
英先生…英せんせぇえ…
彼女には何か救いがあっていいはずだ。

>>373
ザッキーは洋より和だよね、って思ってたらずばりでびっくりした。
あぁサン先生ぎゅってしたいなぁ

>>379
ルルの気持ちわかるわ
そっちの悪戯ってサン先生何考えてんのさw

>>381
キャインカードwww
判定音やな感じのカードだなww

>>382
復讐内容から細かい動きまでサン先生らしさ爆発だなー。いちいち和むわ。
ってかマジできっつい復讐だなこれは。獅子宮先生の反応もよくわかる。

>>386
やっぱりこうなったかw
死ぬ!サン先生が死ぬうぅぅ!!


>>388
ああいるなあこういうのいるいる。
しかし和賀はちっこいのにおっかないのな。体の大きさにえらい差があるだろあの二人は

>>392
いのりんやるねぇ。英先生もよい
揃ったら最強の年配組じゃないか
395創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 01:56:08 ID:05tt6cQL
なんという連続投下
これはGJと言わざるをえない
396小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:47:24 ID:h+94tbzR
ワッと来たりパッといなくなったりする変わったスレだよね。

さて、やっと完成。英先生に愛の手を。

ってわけでもないけど、>>211 >>215から変な電波を受信してつい書いてしまった。
いつものかわいいサン先生とはちょっと違うので注意。不整合なんて気にしない心構えでよろしく。結構長いです。


『小さな体の深い歴史』


「小さい生徒が真似をして怪我でもしたらどうするおつもりですか!
 生徒の安全を守ってこその教師でしょうに。あなたは教師としての自覚が足りません!」
「はい…はい…まったくもってその通りでございます…」

夜の職員室に、英語教師、英のよく透る声が響き渡る。声を一身に浴びているのは正座で俯く数学教師、サン。
いつもの陽気はどこへやら、今の彼は雨にうたれる子犬のよう。
よくある光景ではあるけれど、今日は特に長引いているようだ。
もう職員室に残っているのはその二人と、資料整理に追われる泊瀬谷教師だけだった。

「聞いているんですか!ですからあなたは!」
「はい…身につまされるお話でございます…」
「お…お先に失礼しまぁす…」

さすがにいたたまれなくなったのか、片付けもそこそこに泊瀬谷教師が逃げるように職員室から出ていった。
残ったのは二人だけ。それからも説教はしばらく続いていた。

「わかりましたね!?」
「はい、それはもう身に染みて…」
「では…ここまでとします」
「…はい」

カツ、カツ、と自分のデスクへ戻っていく彼女を見て、サン教師は安堵の溜息をついた。

帰り支度をしていて、サン教師の様子がおかしいことに気づいた。
先程と同じ姿勢のまま、難しそうな顔で悩んでいる。

「どうしましたサン先生。もう結構ですよ?」
「はは、いやあ、それがですね…やはり正座というものは私の脚には向かないようで。
 お恥ずかしながら、ひどく痺れてしまって。脚の感覚が無いんです。
 動かせず、かと言ってこのままでは何も変わらずどうしたものかな、と」
「動かせずって…全くですか?」
「はい、さっぱりです」

まったくどうしてこうあなたは…
まるでいい大人には見えないサン教師に対して、内心説教を続けながらも
英教師は自分にも責任があることを感じていた。
次からは座布団の一枚くらいは許可してあげようと思う。いや次があっても困るのだけれど。
397小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:50:09 ID:h+94tbzR

「…ふぅ。仕方ありませんね。サン先生、ちょっと持ち上げますよ」
「いやあ、助かります。そちらの椅子に座らせてもらうと嬉しいです」
「はいはい、わかりましたよ」

屈みこんで、脇から手を入れて。女性の英教師でもそれほど負荷なく持ち上がった。
成獣男性とは思えない程軽い。本当に少年のようだ。
近くにあった椅子にトンと座らせ、自分も向かいの椅子に座って一息ついた。

「ありがとうございます。英先生、意外に力がありますね」
「あなたが軽いんですよ。しっかり食事とってますか?」
「ははは、ただの個人差ですよ。ぼくはよく運動もしてますからね」
「運動は良いことですけど、生徒が真似するような危険なことはしないでくださいよ」
「ええそれはまあ…勿論…」
「………」

サン教師のいまひとつ歯切れの悪い返事に若干の諦めを感じながら、英教師は黙って席を立つ。
職員室の一角に常備してある茶道具一式から、テキパキとお茶を入れて席に戻った。
急須から熱い緑茶が二つの茶碗に注がれる。

「どうぞ。少し経てば痺れも治まるでしょう」
「いやいや、これはどうも、何から何までお世話になってしまって」
「大したことじゃありませんよ」

両手でちょこんと茶碗を持ち、眼鏡を白く曇らせながら、ふぅふぅと息を吹きかけるサン教師。
そんな姿を見て、英教師がふと問いかけた。
そう深い意味などなかった。少し聞きたくなった、それだけだ。

「ひとつ、お聞きしてよろしいですか?」
「はい?何でしょう」
「あなたはどうしてそう……若々しくあるんでしょうか」
「…ふふ。子供っぽい、と、そう言ってくれて結構ですよ。自覚はありますから」
「いえそんなつもりは…まあ…そうですね」
「あちゃー、言われちゃいました! 面と向かって言う人なんてまずいないんですけどね」

あなたから言ったことですよ!?と、慌てて答える英教師を見て、サン教師はさも楽しそうに笑った。
398小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:51:01 ID:h+94tbzR

「ははは。まあ、性格のことを聞かれてもねえ。どう答えたものか…どうしてそんなことを?」
「私は…そうですね…。
 私はどうやら、生徒に苦手とされることが多いんです。サン先生は生徒から人気ですよね」
「ええまあ、そうかもしれませんね」
「人気ですよ。生徒に好かれるのも教師として大切なことです。
 私も若い頃に比べて、考えが固くなってしまっていることは自覚しているんです。これからもそうなっていくと思います」
「そうなんですかね」
「ですからサン先生ほどではないにしても、若い心を保つ何かがあるのなら、それを知りたいんです」
「はー。なるほど…」

サン教師は腕を組んで上を向き、少し考える素振りを見せた。
そして、ポツリと出たのは意外な言葉だった。

「子供の頃のぼくは、どちらかというと内向的で無口だったんですけどね」

それはどういうことか、問いかける英教師を静止して、サン教師はもう一度考える。
やがて何かを決心したように、うん、と呟いて前を向いた。

「少し、昔話をしましょうか」

サン教師の意図を察して、英教師は黙って頷いた。


「フリードリヒは…大人しい少年でした」


静まり返った夜の職員室で、サン教師は静かに語り始めた。

399創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:51:05 ID:E66VOUmm
400創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:51:23 ID:DDVNK3eE
しえーん
401小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:51:55 ID:h+94tbzR

フリードリヒは大人しい少年だった。

ドイツのとある名門家のひとり息子である父と、平民の身分であった母との間に生まれたのが彼、フリードリヒだった。
身分違いの恋のこと、障害はあまりにも多く、世間の風は厳しく、両親の心と体を蝕み続けた。
彼が物心ついたときにはもう、彼の両親は存在しなかった。

親に代わり彼を育てたのは、乳母だった。少年時代、ずっとそばにいたのが彼女だった。
彼女は清廉で愛情深かったが、規律を重んじる性格で、子供に対しても厳しくなることが多かった。

「厳しく躾けられたことで内向的に?」
「いえ、確かに乳母の影響ではありますが…それとはちょっと違うんです」
「…?」
「フリードリヒは元々、それほど問題児ってわけじゃないですからね」

彼は、彼女の笑顔が好きだった。彼女はいつも彼を優しく見守っていた。
彼が規律を守っている限り、彼女はいつも優しい笑顔を見せてくれた。

しかし、フリードリヒはまだ子供。規律を破ってしまうこともある。
彼を厳しく叱咤する彼女はあまり見たくなかった。

そしてある夜、より厳しい祖父が彼女を叱咤している場面を目撃する。
彼女は、全て自分が悪いと、フリードリヒを庇っていた。
悪いのは自分なのに、彼女が責められる。そんな理不尽があってはいけないと思った。
しかし幼い彼に、大きな行動はできなかった。
せめて規律を守る良い子でいようと、彼はそう思った。

「活発でやんちゃ盛りな子供時代に、そんなことを考えてたんです。内向的で無口って感じにもなります」
「なんだか…ずいぶんと大人びていたんですね」
「そうですね。フリードリヒはそういう少年だった。ま、そんな話です」

少しぬるくなったお茶を飲み干して、トンと茶碗を置くサン教師。
英教師は慌てて急須からお茶を注ぎなおした。ここで話が終わってしまいそうな雰囲気だったからだ。
そんなことお見通しと言わんばかりに、サン教師がニヤリと笑う。

「おやぁ、どうしました?」
「…いえ、続けてください」
「心配しなくていいですよ。ここまで話したからには最後までお話しします」
「そう…ですか」

英教師はホッと息を吐き、自分の茶碗にもお茶を注ぎなおす。
視界が曇ること嫌ってか、サン教師は眼鏡を外してお茶をすすっていた。
402創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:52:08 ID:E66VOUmm
403小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:53:41 ID:h+94tbzR

「フリードリヒは…本当に彼女のことが好きだったんですね」
「ええ、そうですね」
「本当の母親のように慕っていた」
「……母親…いや…」
「…? どうしました?」
「それもまた…ちょっと違いますね」
「違うとは?」
「彼女は…」

彼女は亡き両親ののことを、特に母親のことをよく語ってくれた。
本来、彼女が母親を知る理由はないのだが、どんな偶然か、彼女と母親は交友関係にあったらしい。
結果的に、幼いフリードリヒを親友に託した、という形になる。

だから、フリードリヒは見たこともない両親のことをよく知っていた。
彼女の話の中の両親は、誇れる父であり、母であった。

彼女は母ではない。母とは別の存在だった。

「そして当時の彼にとって、誰よりも大切な存在で」

そう言って、ふっと遠くを見る彼の横顔は

「あの人の笑顔が好きだった」
「あの人が悲しむ顔は見たくなかった」
「あの人と、ずっと一緒にいたかった」


「あれは、恋だったんだ」


普段の彼とは違う、もう一人の彼の顔だった。

404創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:54:08 ID:E66VOUmm
405小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:55:05 ID:h+94tbzR

静寂の音が聞こえる。そんな静寂を破ったのは彼だった。

「驚きました? まあ、子供の初恋の話です」
「…それで…あなたはどうしたんですか?」
「どうもしませんよ。子供の頃の話です。それに…あの人はもういない」
「えっ? 彼女は」
「話を続けましょう」

数年後、フリードリヒは祖父の意向でギムナジウムの寄宿舎に入れられることになった。
当然、彼女と離れたくない彼は強く反抗した。しかし、祖父の下した決定が覆ることはなかった。

何よりも、彼女がそれを望んでいた。

彼女は、フリードリヒが自分に依存していることを懸念していた。もう自分の存在は、彼の成長の邪魔にしかならない。
彼が自分から離れて、たくさんの人と出会い、広い世界を知ることを望んでいた。

彼女もまた、フリードリヒと離れたくはなかっただろう。
それでも、彼女は彼の将来を思い、いつも通りの優しい笑顔で彼を送り出した。

ねえフリード。寂しがることはありませんよ。
これからあなたは、たくさんの出会いがある。何でも知ることができる。
あなただけの、たった一度の人生なのだから。悲しむよりも楽しみなさい。
私はいつだってここにいる。辛くなったらいつでも帰ってきていいんだから。
さあ、いってらっしゃい。

「別れる直前の、あの人の言葉です。僕はずっと覚えてる」
「彼女とは、それが…」
「ええ、それが最後でした。あの人はもういない」

「僕も気付いてた。もう会えないんだって。
 僕の成長に、自分は邪魔にしかならない。あの人はそう考えたんだ」
「悲しいですね……」
「……」

でも、あの時代もまた、僕にとってかけがえの無い時代だったんですよ。
そう言って、小さく笑う。

僕は恵まれていた。友人に。教師に。

ギムナジウムで出会った友。一生に一人と言っても過言ではない、そんな親友。

孤独な僕に手を差し伸べてくれた。僕の世界を変えてくれた。
彼に倣って彼のように陽気に振る舞った。最初こそ、寂しさを紛らわすための手段だったのかもしれない。
でも彼と長く過ごすうちに、そうあることが自然となり。やがてそれは僕自身になった。

数学を担当した教官。あらゆる場面で気にかけてくれた恩師。

広い教養を持っていた。僕に数学の楽しさ、奥深さを教えてくれた。
それだけではなく、世間知らずだった僕にあらゆる知識を授けてくれた。
広い世界。社会。人の心。教師としては誉められないようなことまで、彼は教えてくれた。
祖父の反対を押し切って、数学を専攻し大学へと進めたのも、彼の力が大きかった。

「遅れてやってきた少年期、とでも言いますかね。サン・スーシは、あの時代に生まれたんだ」
406創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:55:38 ID:DDVNK3eE
 
407創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:55:48 ID:E66VOUmm
408小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:55:55 ID:h+94tbzR

本来、卒業後は家に戻る約束だった。
でも、あの人がいない家に戻って、一生を過ごす。そんなこと考えられなくて。
結局僕は家に戻らなかった。家のことは、親友が引き受けてくれた。

ここではない、どこか遠くへ。しかし行くあてのない僕を、教官が助けてくれた。
彼の紹介でやってきたのが、この国。この学園だった。

親友と教官にはお世話になりっぱなしですよ。
そう言って、彼は微かに笑う。

「逃げるようにやってきた。結局のところ、偶然。今ここにいる僕だけど…」

「この学園で、帆崎先生や白先生、猪田先生や泊瀬谷先生。
 いろんな個性のある、気の合う仲間たちと出会えた」

「中には困った子もいるけど、たくさんのかわいい生徒達と出会えた」

「それに……」

言いかけて、顔を向ける彼の視線と、英教師の視線が重なった。
普段の彼からは考えられないような視線に、トクンと心臓が鳴る。

「…いや」

少し考えて、彼は目を伏せた。そこで考えた何かは、言わないことに決めた。

「僕の話はここまでです」

「そう…ですか。ありがとうございました」

少し残念に思ったものの、それを聞き返すようなことはしなかった。
409小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:58:14 ID:h+94tbzR

「でも…よかったんですか? 人に聞かれて、おいそれと話すような話ではなかったのでは」
「そうですね。この国に来てから、ここまで人に話すのは初めてです」
「…!? ならなおさら私に話すようなことでは」
「いえ、英先生」

少し見上げる彼の瞳が、まっすぐに英教師を見据える。

「あなたには話していい…いや、あなたには知っておいてほしいと。僕はそう思ったんだ」

「え…それは…どういう…」


長い沈黙。

彼の横顔からは、その心を探ることはできない。


「フリードリヒ…あなたは…」

「…いや」

彼が、外していた眼鏡をかけなおす。

「ぼくはサン・スーシ。陽気な数学教師ですよ」

眼鏡の奥の瞳は、いつも通りの陽気なサン教師のそれだった。
410創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 21:59:02 ID:E66VOUmm
  
411小さな体の深い歴史:2009/02/06(金) 21:59:04 ID:h+94tbzR

痺れていた脚の具合を確認し、椅子からトンと飛び降りる。

「やあ、ずいぶん遅くなっちゃいましたね」
「え、ええ、そうですね」
「お茶、おいしかったです、ありがとうございました。遅くまで付きあわせてしまって申し訳ない」
「いえ、こちらが聞いたことですので。こちらこそありがとうございました」
「では英先生、ぼくはお先に失礼します」

帰り支度の済んでいたカバンをひょいと持ったところで、サン教師は動きを止めた。

「そうそう、英先生」
「なんでしょうか」
「今日の話、みんなには内緒ですよ」

口に指を当てて合図するサン教師は、本当に少年のようにしか見えなかった。


離れていく小さな背中。やがてその背中が扉の奥へ消えて、彼女はポツリとつぶやいた。


「サン先生。フリードリヒ」


「本当のあなたは…どっちなんですか…?」


虚空への問いかけに、答えるのは静寂だけだった。


<おわり>
412創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:00:33 ID:E66VOUmm
まさか英先生、似てるのか?
413創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:00:58 ID:h+94tbzR
あ、これ完全に別人だわ。

恐れ多くもケモ学の代表的人物サン先生を根本からいじってみた。
>>211にいろいろ独自解釈を加えたらこんなことに。正直反省している

しかし誰もいないように見えても誰かいるもんだな
支援感謝感謝

ちなみに>>379読んでやられた!出遅れたー!と思ったのはここだけの話。
414創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:04:36 ID:DDVNK3eE
出遅れたっていいじゃない、書けばいいじゃない、シェアワールドじゃない

すごく深いなーと読んでてじんわりしたよー。
色んな角度からキャラが見えてくるのってすごく面白い。
415創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:17:44 ID:05tt6cQL
ほんとサン先生は凄い人だわ
416創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:25:09 ID:Ttrp/djK
GJ!
先は越したけど質で越された!悔しい!でも感じ(ry

サン先生のイメージぴったりでした。
417創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 02:18:43 ID:90+8CYl5
>>413
おおお、あれだけのプロットからここまでちゃんと書いて貰えるとは。
フリードリヒ・“サンスーシ”・ローゼンタールは、割とそんな感じで二面
性を持った感じかなーと思ってました。 こっちに来てから教員免許を取る
ために大学入り直してるんだろうなぁ。そのころに杉本ミナとは出会ってる
のかな。

英先生はたぶんこの後も結婚しません。彼女の想いびとは今も健在です。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00879.jpg
ということで、美王、神楽13歳。隣の県に有る桜女学院中等部2年の頃。
418創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 02:20:33 ID:uMsP5LUF
リスっ娘かわええええええええええええええ
419創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 03:03:16 ID:/ypVmdmm
な、なんだってー
英先生ってそういう嗜好だったのか
甘噛み同好会の顧問をやってもらうしかっ
420創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 07:37:08 ID:JVzVlSLQ
>>417
おぉ可愛い子
尻尾ふさふさしたい。デコをなでくりなでくりしたい

しかしフラグ立てたつもりが根本からポッキリだぜ
いやー早まらなくてよかった
つーか想い人ってえぇ!? 神楽がそーなのか!?
421創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 13:59:49 ID:3TIR8q0V
百合ですか百合ですね
422創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 16:24:50 ID:mztnSxC/
かなりフライング気味ですが、描ける内に描いておこうと…
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00883.jpg

関係ないけど、ケモ学のすごい厨二病な夢をみてこのテンションをどこに
ぶければいいのか解らないのでとりあえず英先生の手作りチョコを下さい!!
423創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 16:25:50 ID:mztnSxC/
×ぶければいいのか
○ぶつければいいのか

/(^o^)\
424創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 18:30:56 ID:TfMHLjAw
やっぱナガレはもてるんだな
寡黙で大人びてて剣道強いもんな
塚本は相変わらず馬鹿でよい

つーか英先生が本気で美しいな
えらい横顔美人じゃないか
425創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 19:11:03 ID:/ypVmdmm
鹿馬ロの馬鹿達がかわいい
426創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:38:15 ID:uMsP5LUF
鹿馬ロはみんなほんといいキャラ
427創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:51:55 ID:CA/nKRda
>>420
ごめんなさいね、せっかくのフラグ(笑)

>>422
塚本、たまらんなぁ(笑)

>>424
そなんだよー、>>422さんが描くとすげー美じんになるんだよう。

と言う事で、只今製作中、ふぉーゆー。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00886.jpg
428創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:58:03 ID:XoNkETVy
英先生の手作りチョコが食べたいです><
429創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:59:15 ID:4vrw8hzy
その手についたチョいえなんでもありません
430創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 01:41:04 ID:wqGY6+oI
英先生ったら、憂えてる風だけど割と人生楽しんでそうだ
良かった良かった
431創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 02:54:06 ID:xCC9jyPf
考えたらケモノで「かわいい」「かっこいい」はよく見かけるけど
純粋に「美人」と感じることは比較的少ない気がする
まあ大人らしさを感じるってことか
その点でも英ティーチャーは貴重だわ
獅子宮ティーチャーは「かっこいい」だしな

自分の思う「美人」なケモノ
フラウ、クリスタル、レナモン、フライヤ…くらい
432創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 14:14:05 ID:CA/nKRda
これは「勘違いフラグ」でいいのかしら?
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00887.jpg
433創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 14:24:27 ID:wqGY6+oI
塚本に春がwwww
434創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 15:48:16 ID:CA/nKRda
>>422を見ていてふと思った。 「集合」って習うの算数だっけ?
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00888.jpg
435創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 15:59:35 ID:LJmrheOD
>>432
また面白そうなフラグが一本w

>>434
数Aだな。Cは鹿馬でカバだな!
436創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 17:21:31 ID:NV6nZyQM
オカm  何でもないです
437創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 19:13:50 ID:wqGY6+oI
鹿馬ロかわゆすw
438創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:21:28 ID:XoNkETVy
>>432
ロリコンフラグwwwwww


>>434
C=馬鹿ですね、わかります
439秘密の英先生:2009/02/09(月) 04:22:07 ID:WCXYqsB5
『秘密の英先生』


「そこをどうにかなりませんか?」
「そう言われましても…」

休み時間の職員室。サン先生と英先生が会話している。今日は説教という雰囲気ではなさそうだが。

「わかりやすい授業、大いに結構です。生徒にも好評です。ですが、もう少し音量をしぼることはできませんか。
 隣の教室で泊瀬谷先生が授業にならないと泣きつかれてしまったんですよ」
「うーん…ぼくとしても迷惑をかけるつもりはないんですが…声が大きくなっちゃうのは無意識なんですよ」
「そこをどうにか意識してもらえませんか?」
「極力努力します…」

これでは結局変わらないんでしょうね…。英先生はふぅと溜息をついた。
声が大きいことは悪いことではない。わかりやすい授業と生徒にも好評だ。彼を責めることはできない。
ここは泊瀬谷先生に頑張ってもらうしか…

顔をしかめるサン先生を見ていて、ふと思いついた。
彼女にしては珍しい、冗談めいた、そして少し悪戯じみた思いつきだった。
しかしそれを試してみる価値はあると思えた。

「あの…もう授業開始時間になるので…」
「ええ、わかりました。でもその前に少しいいですか?」
「はい?」

カチャ

サン先生の眼鏡。あまり度は強くないその眼鏡を外してみた。

「あの…何するんですか…?」
「いえその…それで一度授業をやってみてくれませんか。見えないわけではないでしょう?」
「ええ? いや困りますよ。調子狂っちゃいます」
「ちょっと試しに一度だけですよ。この授業が終わったらお返しします」
「えええ? 試しって何ですか」
「はい、授業が始まりますよ。さあいってらっしゃい、フリードリヒ」
「…あんまりその名前で呼ばないでくださいよ」
「ではいってらっしゃい、フリード」
「……むー…」

彼の背中をポンと押して送り出す。彼は不服そうな顔をしながらも授業へと向かっていった。
さて、どうなりますかね。

英先生はこの時間担当授業はない。職員室で小テストの丸付け、資料の整理をしていた。
やがて午前授業終了、昼休み開始のチャイムが鳴る。それから間もなく慌てて職員室に入ってくる生徒が3人。

「ザッキー! ザッキイィィ!! 助けてザッキイイィィィィ!!」

中等部のお気楽三人組だ。非常識に叫ぶ彼はアキラと言ったか。彼らは先程までサン先生の授業を受けていたはず。

「サン先生が! サン先生がおかしいんだ!!」

あらあら、思った以上に効果が出ていたのね。英先生は一人、クスリと笑った。
440秘密の英先生:2009/02/09(月) 04:23:17 ID:WCXYqsB5

「で? 何、どうしたのよ。サン先生がおかしいって? どんな風に?」

生活指導、帆崎は面倒くさそうにアキラとタスクの話を聞く。ナガレはあまり率先してしゃべらない。

「眼鏡がなかったんだよ!」
「そりゃ珍しい。けど別にそれでどうってわけじゃないだろ」
「それで…なんか性格が違ったんだよ! なんていうかいつもより大人っぽかったんだ!」
「あのなあ、サン先生はあんなにちっこくてもお前らの倍くらいは生きてるれっきとした大人なんだぞ? 
 大人っぽくて何が問題なんだ」
「いやそーかも知れないけど! なんか人が違ったんだよ! どう見ても別人なんだよ!」
「別人て…そんなほいほい人が変わるかよ…」
「変わってたんだってば!!」

二人の必死の訴えを帆崎先生は軽く受け流していた。早く弁当食べたい。
そんなところで、サン先生が職員室に帰ってきた。見ると確かに、眼鏡をかけていない。
いつもならすぐ自分の机に戻るところだが、なぜか奥、英先生の机へ向かっていった。
声は聞こえなかったが、そこで英先生と少し会話しているようだ。
最後に彼女から眼鏡を受け取り、かけなおして戻ってきた。

「あれ? お気楽三人組じゃん、どうしたの? 何かわかんないことあった?」

…あれっ!? 戻ってる!?

「ザッキーの生活指導? お昼休みはちゃんと休んだほうがいいよ!」
「いやサン先生、こいつらが妙なことをふおぅっ!」

ザッキーの言葉を止めた。尻尾だ、ナガレがザッキーの尻尾を掴んでいる。
ギュッと握っているわけではない。一部を持って逆毛方向に撫でている。
ザッキー実に微妙な顔だ。どうやら猫人にしかわからない微妙に気持ち悪いポイント攻撃らしい。
ともかく、ナガレグッジョブ!

「いや、あの、サン先生、その…」
「どーしたタスク?わかんないことあった?」
「いやそれが…その…」

タスクが時間稼ぎになっているか定かではない時間稼ぎをしているうちに、
残った二人は距離をとって打ち合わせ。結果的に帆崎先生も加わっている。

「てめこらナガレ気持ち悪いことすんじゃねえよ」
「いやすいませんて今度ゲーム持っていきますから」
「いやいらないから」
「やっぱ眼鏡だよな。あれ取ると人格が変わるんだよ」
「ああそうだな」
「ザッキー、頼む!ちょっとサン先生の眼鏡取ってみてよ」
「ええ、俺が!?」
「頼むよザッキー!サン先生とは友達だろ」
「今度ルルさんとこにゲーム持っていきますから」
「それはやめてガチでやめて」
「よし決定!」

一応打ち合わせは済んだ。しどろもどろになっているタスクを助けてやらなければ。

「ザッキーよろしく!」
「ああもうわかったよ!」
441秘密の英先生:2009/02/09(月) 04:24:53 ID:WCXYqsB5

「あのサン先生、ちょっといい?」
「なーに、ザッキー?」

カチャ

眼鏡を外した。いたって普通の眼鏡だ。サン先生にも変化はない。

「…ザッキーまで何するのさ」
「いや、何するってわけでもないんだけど…」
「…?」

今度は三人組で打ち合わせ。

「で!? 見た目変わんないけどこの後どうするのさ!?」
「タスク…あれ、やれ」
「ええっあれって! あれ!? 相手がのってこないとさみしいんだけど!?」
「それを試すためにやるんだって」
「えええっやだよ!」
「いいからやれっ!早くしないと眼鏡かけちゃうぞ!」
「ち、ちくしょー」

タスクは覚悟を決めた。

「サ、サン先生!」
「なんだよータスク」


「サン先生! 野球しよーぜー!」(某中島の真似で)

「おう! 今行くー!」(某鰹の真似で)


………。

…返したよ。

ああ、返したな。

いつも通りだね。

うん。


「…で、何? ホントに野球する? いいけど、お昼食べてからね」
「いや…いいです」

「ふーん…で、ザッキー、そろそろ眼鏡返してほしいんだけど」
「あ、うん、ごめん」

サン先生は眼鏡をかけなおした。
しかしそれは、外しても何も変わらない、ごく普通の眼鏡だった。

「で? ホントに何の用なの?」
「いえ…もう解決しました。おつきあいありがとうございました」
「ふーん…。まいいや、じゃ、またね」
442秘密の英先生:2009/02/09(月) 04:25:44 ID:WCXYqsB5

結局目的を達成できず、お気楽三人組はとぼとぼと廊下を歩いていた。

「でもホントに何だったんだろうなー。タスクどう思うよ?」
「うーん、わかんない。眼鏡じゃなかったもんね」
「完全に別人だったもんなー」

はあぁー…

二人の大きな溜息が重なった。

一歩後ろを歩いていたナガレがポツリと呟く。

「英先生…か…」

「!!!??」

二人が驚いて振り向いた。

「そうだ! 何か英先生と話してた!!」
「それから普通に戻ったんだ!!」

「英先生がサン先生をまるで別人に…」
「あの時に何かが…」

「そうだ!つまり英先生は…!」

 Ω Ω<ナ、ナンダッテー!!



それから。少しの期間。

中等部の一部で、ある噂が広まるのだった。

噂の名は


「英先生、魔女説」



<おわり>

フラグが成立しないとわかった以上、二面性設定をギャグ風に使うことになんの躊躇もない!
それが俺のジャスティス!!
443創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 04:49:49 ID:sU6rYsCN
ジャスティスおいしかったです(^p^)
444創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 17:27:25 ID:+M10txBJ
魔女というのを見てイィーヒッヒッとか言ってる英先生が頭に浮かんで吹いた
445創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 19:07:43 ID:9wW6WY+e
>イィーヒッヒッとか
それなんて魔方陣グルグルwww
446創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 19:30:01 ID:iL6TsZSE
ヒィヒィ言ってるだと!?
447創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 19:31:04 ID:7dc92IRr
寝れば寝るほど色が変わって・・・
448創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 20:02:29 ID:fRS+mVeP
いまじゃこのザマよ!
449創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 20:16:07 ID:9wW6WY+e
お前らあまり調子に乗ると説教されるぞ!気をつけろ!!
……ん?こんな時間に誰か来t
450創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 20:23:53 ID:p/ChanqK
>>447
馬い!テーレッテレー♪
451創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:30:46 ID:WCXYqsB5

「………」

「…はっ!?」
「どしたの卓君?」
「今なんか寝てたような…あれ? 今って一月だよな?」
「二月だよ?」
「二がっ!!? ああいや…二月…か…」
「…? 変な卓君」

と、いうわけで。
すでに忘れてる人も多いだろう前スレ終盤『冬の風物詩』の続きです。
実はまだ完結してないんだけどすでに前振りあげてることだし、キリがいいので投下してしまう。
一応ここから本編、なのに導入だけ書いてほったらかし。いろいろ寄り道しすぎた…

朱美と卓が歩いて帰路についてる場面から。結構長いです。

※鳥インフルエンザ…毎年一月から二月あたりに大々的に流行る鳥人限定インフルエンザ。
 朱美はコウモリなので問題ない。ちなみに鷲の宮元先輩にはなぜか効かない。
 
452創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:31:57 ID:sppxbbeO
しえ
453冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:33:03 ID:WCXYqsB5

『冬の風物詩』第2話


この幸せな時間がいつまでも続けばいいのに。そう思っていた。
しかし、その平穏はすぐに終焉を迎えることになる。

不意に周囲の様子が慌しくなる。何かが起こったのか?

「何かあったのかな?」
「ええ、行ってみましょう」
「行くってどっち」
「こっちよ!」

言うなり駆け出す朱美の後を慌てて追う。
どの方向でことが起こったのか、朱美の耳には聞こえているらしい。
その中心に近づくにつれて、だんだんとこの騒ぎの意味が掴めてきた。

想像していたとはいえ、実際にそれを目にしたときはショックだった。
建物が、燃えている。6階建ての中型マンションが。そう、まさしく火事だ。

燃えているのは3階から上。向かって裏側の、非常階段周辺は完全に炎に包まれていた。
上階に行くにつれて炎は大きくなっている。ベランダのある表側にもじきに火がまわるだろう。

そして何よりショックだったのが、そのベランダに子供が取り残されている、という事実だ。
それも二人。6階に園児であろう子が一人。5階に小学校低学年程度と思われる子が一人。

近くにいた中年男性に様子を聞いたところ、既に通報は済んでいる。
しかし空を飛んで直接子供を助けられるレスキュー隊員はすぐには来れないということらしい。
軽く見ていた鳥インフルエンザの影響がこんなところに出ているのだ。

朱美なら…と一瞬頭をよぎったが、すぐにその考えは消えた。この状況では無理だ。
悔しいが、自分には息をのんで見上げることしかできない。
消防車来い早く来い!そう強く念じていた矢先。

バサッ

背後で聞きなれた音を聞く。
振り向くと、翼を広げた朱美が今にも飛び立たんばかりの体勢をとっていた。

「おいっ待て朱美っ!」

慌ててその両肩を下に向けて押さえた。突然かかる抵抗に朱美は驚いた顔を見せる。

「何するのよ!」
「何ってお前どうするつもりだ!」
「あの子たちを助けるのよ!当然じゃない!!」
「やめろ無理だっ!」
「できるわよっ!」

いや、できない。幾度となく朱美と飛んでいる俺だからこそわかる。

「いいか朱美!? 落ち着いて聞け!」
454冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:34:38 ID:WCXYqsB5

まず、持てない。朱美の足と人の体に合った肩パットで固定しなければしっかり運べる保障はない。
無理に運ぼうとして落とすようなことがあれば、よりひどい事態になる。
さらに、飛び立てない。朱美と飛ぶ場合、朱美は一旦下りて肩に乗り、
そこから飛び立つ必要がある。小さい子供相手にそんなことできるか?
もしそれができたとしても、ベランダが低くそのスペースがない。
朱美が上に頭をぶつけるか、子供をおもいきりベランダにぶつけることになる。

すごい技術であることは間違いないのだが、実用技術というよりむしろ曲芸に近い技なのだ。
不安要素が多すぎる。

「わかったか!? 人命救助なんてそうそうできるもんじゃないんだ」
「…でもっ!」
「落ち着いて待ってろ!すぐに消防車が来るから」
「…うー…」
「頼む。今は我慢してくれ…朱美」

悔しそうに呻く朱美。納得はしていないが、すぐに飛び立つようなことはなさそうだ。
どりあえず無理だということをわかるように伝えることはできた。

悔しい気持ちは痛いほどわかる。朱美には実際に空を飛べて人を運べる技術がある。
何よりもその技術を身につけたのは、空を飛び人を救助するレスキュー隊員に憧れてのことなのだ。
特訓していた当時ほどではないにせよ、可能ならば絶対に助けたいところだろう。

下を向いて黙る朱美。諦めてくれた…か?
肩に置いた手を離して下がろうとしたとき、突如その両手を掴まれた。

「お願い!協力して卓君!!」
「ぅええっ!?」

予想外の事態に妙な声を上げてしまった。
455冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:35:14 ID:WCXYqsB5

「きょっ、協力ってなんだ!」
「アレ持ってるでしょ!?」
「 ! いやまあ持ってるけど子供サイズなんかないぞ!?」

朱美飛行用肩パット。小さい頃からの習慣で閃光弾と同様、常に持っている。

「それ付けて一緒に飛んで!」
「ええっ俺が!?」
「一緒に行けば助けられるわ!」

ああなるほど、わかってきた。

「つまりあれか、俺が子供を抱いてそれを朱美が運ぶと」
「う、うん、そういうこと」
「俺がベランダの縁で足がかりになれば飛び立てる、と」
「う…うん…そういうこと…」
「それって…」
「ごめん!! 卓君が危ないのはわかってる! でも…でも…!」

朱美が言い切る前に手を出して制止した。
まったく、いつもながらすごいことを考える。危険なんかお構いなしだ。でも…

「いいアイディアじゃないか」

不安げだった朱美の顔がパッと明るくなる。あ、かわいい。
しかしすぐに不安な顔に戻ってしまう。

「でも…今回は卓君ホントに危なくて…」
「危ないのは朱美だって同じだろ。昔から利里も一緒に危ないことしてきたじゃないか。
 それに、俺だって助けられるなら助けたいしな」
「う、うん。そうだね」
「ただ気になるのが重さなんだよな。朱美、疲れてるのに大丈夫なのか? 俺プラス子供だぞ?」
「だーいじょうぶ! あたしは利里君だって運べるのよ!」

あたしにまかせなさい!と力強くガッツポーズをしてみせた。

そんな朱美を見ながら、ふと不安がよきる。さっきまで、腕を全く動かさないくらいに疲れてなかったか…?
利里を運ぶのを見たのは数年前のこと。さらに利里がでかくなった今は実際どうなんだ…?

「早く準備して! 行くわよ!」

…大丈夫…だよな。

頭を振って不安を振り払い、少しでも軽くなるよう上着を脱いだ。
456冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:36:42 ID:WCXYqsB5

人だかりの外れへ移動して、俺と朱美は手際良く空へと舞い上がった。
気付いた人たちの驚きの声が聞こえるが気にしている場合ではない。
飛行はいつも通り安定している。朱美の疲れはそれほど問題なさそうだ。
マンションがせまってくる。子供は6階と5階に一人ずつ。

「上から行くわよ!」
「わかった!」

6階の方が火の範囲が大きく、子供も小さい。異論はなかった。
5階の子の前を通り過ぎる時に大きく声をかける。

「ごめんなー! すぐ助けるからもうちょっと待っててなー!」

まだ小さな少年が、涙ながらもコクンと頷くのが見えた。うん、いい子だ。

6階、子供のいるベランダの下。朱美は上昇速度を緩める。

「ごめん!これ以上近づけない!」
「行ける!ゆっくり上昇して合図したら離せ!」

上を見上げると、目前にせまる6階ベランダ。羽ばたく朱美。翼がぶつからない本当にぎりぎりのところだ。
可能な限りゆっくり、とはいえ結構な速度で上昇し、十分届く距離でベランダに手足を伸ばす。
ベランダが頑丈なつくりで、外側から足をかけられるデザインだったのは運が良かった。

「掴んだ!離せ!」
「はいっ!」

浮遊感がふっと消え、足場をとらえていた手足にグッと自分の体重がかかった。

「よしっ成功!」
457創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:37:13 ID:tU1djhPW
支援
458冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:37:28 ID:WCXYqsB5

初めての試みだったがうまくいった。今、自分の手足だけで6階ベランダの縁に掴まっているわけだ。
うーん、まるで映画のワンシーンのようだ。まさか自分がなぁ…

おっと、そんな悠長なこと考えてる場合じゃなかった。

急いでベランダを乗り越える。小さな兎の女の子がワッと泣きついてきた。
ああ涙が…鼻水が…ってそんなこと考えてる場合でもなかった。

「大丈夫、兄ちゃんと姉ちゃんが助けにきたからな、もう大丈夫」

その小さな体を抱き上げた。
うわ、やわらかい。ふわふわな耳がこそばゆい。そして軽い。これなら朱美も大丈夫だろう。

「しっかり掴まってくれよ」

この子が下を見ないように、体にその頭をグッと押しつけた。
片手で抱え、ベランダをもう片手で乗り越え……恐い!これは恐い!片手はさすがに恐い!!

「す、卓君大丈夫…? あたし何か手伝える?」
「だ…大丈夫…だ」

朱美の心遣いはありがたいが、他人が手伝える状態じゃない。何よりもここで泣き言を言っては男がすたる。
少し涙目になりながらも、俺はなんとか一人でこの困難なミッションをクリアした。
自分で自分を褒めたくなった。高さに相当慣れている人じゃなければこれは無理だと思う。

「いいぞ朱美、来い!」
「行くよ!」

両肩に朱美の体重がかかる。問題ない。朱美が羽ばたき始め、肩にかかった体重が次第に軽くなっていく。
その体重が無くなったあたりで手を離し足場を蹴った。

一瞬、落下する感覚はあったが朱美はすぐに持ち直した。俺と子供をぶら下げてゆっくり下降していく。
地上数mほどまで降りたところで朱美が掴んでいた肩を離す。
足をクッションに、抱きかかえた子供に大きな衝撃を与えることもなく、うまく着地することができた。

「ふぅ…着地成功」

子供を解放してホッと息をついた瞬間、さらに増えていたギャラリーからワッと歓声が上がった。
間近で響く拍手、褒め称える声。

すごいな!お嬢ちゃん! お姉ちゃんかっこいい!! 大丈夫か姉ちゃん!?

…ああ、朱美ね。そりゃそうだ、すごいのは朱美で、傍から見たら俺はただの重りみたいなもんだからな。
でも俺だって頑張ったんだけどなぁ…
459創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:38:35 ID:sppxbbeO
  
460冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:39:21 ID:WCXYqsB5

「卓君!卓君!!」

朱美が呼ぶ声に顔を向ける。

「次! もう一人!!」

っ!! そうだった!!

少しぼんやりしていた意識が一気に覚醒する。5階にもう一人子供がいるのだ。
炎は着実に広まってきている。のんびりしている時間はない。

俺と朱美は再び空へ舞い上がった。
ギャラリーの応援の声に後押しされるように朱美は力強く上昇していく。
グングンと、2階、3階と…

――ィ――

………?
今…何か…?

おっと、今は目の前のことだ。

さっきと同じ手順で、俺は手際よく4階ベランダに降り立った。

「よく頑張ったな、もう大丈夫だぞ」
「うっ、うんっ、ぼくがんばった」

…本当にいい子だ。絶対に助けないとな。
さっきの子よりふたまわりほど大きい、熊の少年をぎゅっと抱きしめた。

「よしよし、もう大丈夫だからな。よっ……」

…グッ!!!?

重い!? なんだこれすごい重い!?

とりあえず抱き上げはしたが、思わぬ体重に驚いた。さすがは熊といったところか。
461冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:40:36 ID:WCXYqsB5

…朱美は大丈夫なんだろうか。
とは言え、下ろさないわけにもいかないし…

「な、なあ朱美」
「何っ? 早くしないと!」
「この子大きいからさ、肩パットをなんとか固定して…一人で下ろせないかな?」
「ダメよ!絶対ダメ!!」
「でもさっきよりずっと大きくて」
「卓君残して行くなんて絶対ダメ!!」

…かなりジーンときた。

「…朱美…」
「あたしは大丈夫! 早く行くわよ!」

朱美の決意は固い。もういくら言っても変わらないだろう。ここは朱美の力を信じるしかない。

抱えた子供は重いが、さっきの経験のおかげでそれほど労せずベランダを乗り越えることはできた。
朱美が肩に乗る。羽ばたき始め、次第に体重が消えていく。さて、問題はここからだ。

「い、いくぞ!朱美!」
「早くしてっ!」

肩にかかる体重が完全に無くなったところで、俺は手を離し足場を蹴った。

…!!? 落ちっ…!!

いや、落ちない。落下感覚はすぐに消えた。

頭上でいつもより激しく羽ばたく音が響く。見上げれば、非常に苦しそうな表情の朱美。

「あっ、朱美大丈夫かっ!?」
「いっ 今っ 話しかけないでっ」
「ごっごめん!」

必死に羽ばたきながら、なんとか下降していく。飛んでいるというよりは、ゆっくり落ちているに近い。
頑張れ、頑張れ朱美。俺は必死に念じていた。それしかできない自分が歯がゆかった。


――ミィ―――

…!

――ミィ!―――
――ミャオ!――ミャオゥ!―――

…!!!!

3階。3階の部屋の奥。
はっきりと聞こえた。子猫の赤ん坊の鳴き声だった。

嘘だろっ!? 3階に赤ちゃんがいる!!?

信じたくなかったが、炎の音にまぎれて聞こえるそれはまぎれもなく生の声だった。

462冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:41:43 ID:WCXYqsB5

気がつけば地面は目前だった。

「離すよっ卓君っ」
「あっ、ああっ!」

肩が解放される。今回はかなり重いことに気をつけた。
足が痺れたが、なんとか無事に着地することができた。

「よしっ着地成功!!」

ギャラリーからドワッと、さっきよりも大きい歓声が上がる。
拍手喝采。朱美と、俺を褒め称える声。
だが、喜ぶのはまだ早い。

「朱…朱美!!?」

朱美は着地するいなや、力なくその場にへたりこんでしまった。

「朱美っ!! 大丈夫か!?」
「う…うん…平気よ…」

3階の赤ちゃんのことを言い出すか迷った。朱美にこれ以上の無理は…

「3階に…赤ちゃんがいるわ…」

言葉は朱美から出た。やはり朱美にも聞こえてたか…

「でもこれ以上は…」
「いっ、行けるわよ!」

そう言って、朱美は力強く翼を広げてバサバサと羽ばたいてみせる。

これは…行ける…か…?

「さっきはちょっと疲れただけよ。もう行けるわ!」
「…わかった。でも無理はするなよ」

俺も覚悟を決めた。なんとか、後一回だ。
463冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:42:46 ID:WCXYqsB5

周りに少し離れてもらってその場にしゃがみ込み、朱美が肩に飛び乗る。
なんだろう、さっきまでより重い気がする。
バッサバッサと羽ばたく音も、明らかに精彩を欠いている。これ飛べるのかホントに…。
一応それでも朱美の体重は感じなくなってきた。いつもより慎重にタイミングを計る。

あと少し…もう少し…今!

少しでも朱美の力になれるよう、おもいきりジャンプした。
両足は重力に逆らいふわりと空に浮く。よし!飛べた。

バサバサと羽ばたく音がいつもより激しい。振動も激しい。無理矢理飛んでいる感じだ。
朱美の様子は言わずもがな。それでも、少しずつ上昇していく。俺は必死で祈る。

頑張れ!頑張れ朱美!もう少しだ!!

次第に目標のベランダがせまってきて、俺は精一杯手を伸ばす。

もう、ちょっと…あと50センチ…あと20センチ……!

「よし掴んだっ!!」

そう叫んだ瞬間。


朱美が、消えた。

464創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:43:17 ID:tU1djhPW
   
465冬の風物詩:2009/02/09(月) 22:53:02 ID:Nk4D11k1

「…えっ!!?」

羽ばたく音が消えた。肩にかかる感覚も消えた。存在が、消えた。


振り向くと、そこには…

スローモーションのように、頭からゆっくりと落ちていく朱美。





…あれ…?

俺、どうしたんだ?

抱きかかえてるのは、朱美か。

落ちてる…?


ああ、そうか、俺は。

飛び出しちゃったんだ。

馬鹿だなぁ。

せっかく届いたのに。

飛べもしないのに。


俺、死ぬのかな。


死にたくないなぁ。


…死んでほしく…ないなぁ。


………。

466創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 22:53:22 ID:sU6rYsCN
火事〜
467冬の風物詩:2009/02/09(月) 23:02:18 ID:Nk4D11k1


 ドンッ!!!!!


世界が、フラッシュした。
背中に、腰に、脚に。全身に、かつてない衝撃。
肺の空気が一気に飛び出す。息が吸えない。
ダメだ。ヤバい。目の前が白くなってく。

意識を…保…

……っ…





…冷たい…

…水…?


…っかり…て!!

……る…んっ!!

…ぐる君っ!!!!


ぼんやりと、視界が戻ってくる。

「しっかりして!!卓君!!!!」


…ああ、朱美か…

…無事だったんだ…

…よかっ…

………。


再び、視界は白く染まっていき。

やがて、何もわからなくなった。


<つづく>
468創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 23:07:13 ID:Nk4D11k1

ゆっくりした結果がこれだよ!!

今回はここまで。もうちょっとだけ続く。
とりあえず明日から本気出す。

しかし支援あってもさるさん規制って発生するのね。
びっくりしたわ。ID変わったとこからは携帯で無理矢理書いたさ。
変に時間空いて悪かった。
469創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 23:22:47 ID:cfYKp19/
ちょwww卓! 大丈夫か!?

クソ、良い所で切りやがって、早く続きプリーズ!


……さて、俺も本気出さないとな。
470創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 00:08:42 ID:xkT5gMv+
>>468
うむー、朱美がどんどん凄いことになってくなあ、恰好良いなぁ。


魔女っぽいかな? 「発注していた布と、備品が届いた」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00895.jpg
471創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 00:22:37 ID:S8XIEEEn
英先生ったら、かわいらしいポーズw
472創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 01:30:50 ID:H50ELwnZ
>>468
いったいどうなったんだ…!期待

>>470
現代の魔女、ここにっ
473創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 02:57:58 ID:fZhk8E2q
あああああ支援できなかったか
さるさん回避用の支援はだいたい投下されるSSのレス数と同じ量いるんだよね
少なすぎたら意味ないの

朱美かっけぇぇぇぇ
でも落ちちゃった!?この先どうなるの?どうなるの?
こんな場面で先へつづくとは心憎い

>>470
このまま空飛びそうw
474創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 13:14:03 ID:V9apxnso
>>472
後ろから山口勝平の声で「魔女子さ〜ん」と呼びたくなるw
475創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 13:20:07 ID:V9apxnso
うわあー安価ミス。>>470宛です。
476創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 20:48:02 ID:lhjItMtL
いやここはマクゴナガル先生で
477創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 01:29:45 ID:2YCI9GV5
BSの映画見てたらハリポタじゃないのにマクゴナガル先生役の人がほとんどマクゴナガル先生まんまで出ていてびっくりした
というか英先生のイメージに近かったような
478通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/11(水) 01:56:42 ID:A2CjXSGY
……如何して、こんな事になったのだろう?

ヨハン先生は、ふと、胸中でぼんやりと考えた。 
しかし、考えた所で何も代わりはしないし、今の状況の打開策が思い浮かぶ筈も無いだろう。
だが、それでも彼は考えてしまう。何せ……

「うう、私は、私はなんて駄目教師なんだぁぁぁ……」
「ああもう、何時までもめそめそ泣いて見苦しいんだよ、しゃきっとしろよ怜子!」
「一番、帆崎 尚武! 獅子宮先生と泊瀬谷先生の様子を見守ります!」
「あはははははははははははははは、あはははははははははははは」

今、自分の目の前で、ネコ族の同僚達が酔っ払いまくっているのだから。


それは放課後、既に授業を終わらせた教師達が今日の報告書を仕上げている最中、
小さなビンを片手にしたサン先生が尻尾を振りながら職員室に入ってきた所から始まった。
早速、隣の席のヨハン先生がそれに気付き、サン先生へ問いかける。

「あれ? サン先生、その小ビンは何です?」
「ああ、これ? ナイショ♪」

言って、ニシシと笑うサン先生。それは明らかに良い悪巧みを考え付いた顔をしていた。

「……また何かの悪戯に使うんですか? 止めてくださいよ?」
「大丈夫大丈夫、少なくともヨハン先生には影響ないから」

自分へ影響はないと言われても、それでもヨハン先生は少し不安を感じる。
何せ、サン先生のイタズラは偶にイタズラの度を越えた物になる事もあるのだ。
少なくとも彼にとっては、それのとばっちりだけは勘弁したい所であった。

「……で、本当の所は何なんです? 教えてくださいよ、サン先生」
「んー、其処まで聞くならちょっとだけ教えても良いかな?」

小声で問うヨハン先生に、サン先生は何処かもったいぶった感じで話し始める。
どうやら、サン先生は元より話す気満万だった様だ。

「実は言うとね、これは、はづきちに頼んで作ってもらったマタタビの濃縮エキスなんだ。
ボクはこれを布に染み込ませた物を獅子宮先生に嗅がせて、酔っ払った所を映像に残してやろうと企んでるんだよね」
「……この前の復讐、と言った所ですか? サン先生、それは本当に止めた方が良いですよ? 
前の時でもかなり酷い目に遭わされたと言うのに、それで今度は何をされるか……」

無論、ヨハン先生はサン先生を止めるべく説得を始めるが、
その言葉を遮って、サン先生はぱちりとウインク一つして言う。

「あのね、ヨハン先生? ボクにとって、やられっぱなしってのは性に合わないんだよ。
だから、やられた以上はそれ相応のお礼を返すのがボクの流儀なんだ、ヨハン先生は其処を分かって欲しいな?」
「ハァ……」

訳の分からない持論を返され、生返事を返すしかないヨハン先生。
そして、サン先生はビンを手に取り、手の中で弄びながら楽しげに漏らす。

「さぁて、これを嗅がせた時、獅子宮先生は如何言う反応を見せるのかなー?
やっぱり、床に寝っ転がってゴロニャーンとなっちゃ――…あ」

つるっ、カシャーン!

何かの拍子でサン先生の手から零れ落ち、床に落ちてビンが真っ二つに割れ、内容物が床へ飛び散る。
それと同時に、ビンの内容物の物であろう何とも言えない香りが職員室中へ広がる。
479創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 01:59:01 ID:PgksbIkH
480通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/11(水) 02:01:40 ID:A2CjXSGY
「…………」
「…………」

そして、割れたビンを前に、二人の間に気まずい空気が流れる。
そんな気まずい空気を振り払い、先に動いたのはサン先生だった。

「あ、そう言えばボク、これから用事があったんだ! ヨハン先生、後片付けヨロシク!」
「ちょっ!? サン先生!? 僕に全てを押し付けて―――ってなんですか?」

そそくさと逃げ出すサン先生を追おうとした所で、ヨハン先生は不意に肩を叩かれ、思わず足を止める。
振りかえってみてみれば、其処に居たのは如何言う訳か隻眼の瞳に涙を浮かべた獅子宮先生。

「あの、獅子宮先生……ボクに何の用でしょうか?」
「ヨハン先生……私の事、如何思っているのですか?」
「は?……ハァ、先生はワイルドで危ない香りはしますけど、
それがかえって魅力的でカッコイイと、僕は思ってますが……それが、何か?」

彼女にいきなり問い掛けられ、訳の分からぬまま答えるヨハン先生。
しかし、獅子宮先生は如何言う訳かどっと涙を流し始めて言う。

「嘘だ! どうせヨハン先生も私の事を悪ぶっているダメ教師だと思ってるんでしょ?
私は分かってるんです! 皆は私の事を暴力的で生徒の指導もろくに出来ないダメ教師だって!」

言って、彼女は両手で顔を抑えてわぁっ泣き出す。

「もう私はダメダメなんだぁぁぁぁ、うわぁあぁぁぁぁん!」
「え? ちょ、なんで泣き出すんです? 獅子宮先生。 ちょっと、泣き止んで――って、また今度は何?」

何時もの獅子宮先生とは全く違う様子に、ヨハン先生はただ困惑し、慌てるしか出来ない。
と、再び肩を叩かれ、ヨハン先生は思わず振りかえる。

「え? は、泊瀬谷…先生?」

其処に居たのは、つい先ほどまで獅子宮先生の隣の席でPCに掛かりきりだった泊瀬谷先生。
しかし、今の彼女は如何言う訳か思いっきり目が据わっており、かなり恐い。

「おい、ナルシスト……てめぇ、何を怜子を泣かせてやがるンだ?
てめぇは女にモーションを掛けるばかりか泣かせるようになるとはなぁ? 良い根性しているじゃねえか!」
「い、いや、その、あれは僕が泣かせたと言うより、彼女が勝手に泣き出して……」

険悪な表情を浮かべ、巻き舌で詰め寄る泊瀬谷先生に、尻尾を巻いたヨハン先生は身振り手振り弁明する。
しかし、完全に勘違いしまくった泊瀬谷先生はそもそも聞く耳を持っていなかったらしく、

「男がつべこべ言い訳してるんじゃねえ! てめぇのその目障りなさらさらの髪、全部引っこ抜いてやる!」
「ちょ、泊瀬谷先生、髪を引っ張らないで! 髪が痛むっ! セットが乱れる! ぎゃいんぎゃいん!」

自慢のさらさらストレートヘアーを思いっきり引っ張られ、ヨハン先生は悲鳴混じりに声を上げる。
481通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/11(水) 02:04:40 ID:A2CjXSGY
そんな時、其こちらへ近付いて来る帆崎先生の姿が目に入り。
ヨハン先生はすかさず助けを求める。

「ほ、帆崎先生、早く泊瀬谷先生を止めてください! このままだと僕の髪が……」
「一番、帆崎 尚武!」
「……へ?」

助けを求めた所でいきなり名乗り上げられ、訳が分からず思わず目を点にするヨハン先生。
そして、唖然とする彼の前で帆崎先生はやおらその場に座りこみ。

「こっそり泊瀬谷先生を応援します!」
「ちょwwwww! 帆崎先生!? 何やってるんですか!?」

助けるどころかフレーフレーと泊瀬谷先生を応援し始めた帆崎先生に、ヨハン先生は思わず抗議の声を上げる。
無論、こうやってる間にも彼の髪を泊瀬谷先生がブチブチと引っこ抜き続けている。当然、かなり痛い。
ヨハン先生は帆崎先生が助けにならないと痛感し、他に助けてくれそうなケモノが居ないかと視線を巡らせる。
と、其処で職員室の隅でジッと立ち尽くす白先生の姿が目に入った。

「し、白先生! そんな所で見てないで早く僕を助けて……」
「うふふ……」
「……え?」

早速、彼が助けを求めた所で、いきなり笑い出す白先生。
そう言えば、白先生もネコ族だった。……と言う事は、当然、彼女もマタタビの影響を受けて……。

「うふふふふ、あはははははっははははははは、世界が回ってるー! あはははははっ、たーのすぃー!」
「だぁぁぁっ、やっぱりかぁぁぁぁっ!」

馬鹿笑いしながらくるくると回り始めた白先生を前に、ヨハン先生は思わず頭を抱えたくなった。
だが、その抱える頭は今、目の据わった泊瀬谷先生によってブチブチと髪の毛を引っこ抜かれ続けている。
しかし、ヨハン先生がそれを止めようにも、下手に手を出せば余計に酷い事をされそうで何も出来なかった。

そして、話は冒頭へと戻り、

「あーくそ、男の癖にさらさらとした髪しやがって、むかつくんだよ、クソっ! クソっ!」
「うあぁぁぁん! 何時もの優しい泊瀬谷先生じゃないよぉぉぉぉぉ!」
「一番、帆崎 尚武! 事態を机の上で生暖かく見守ります!」
「くるくるまわーる、くるくるまわーる。 あはははははっははははは」
「……な、何でこんな事になったんだろう……」

未だにマタタビの影響が続く中、
ヨハン先生は涙を流しながら自分がネコ族でなかった事を恨み、同時に事態の一刻も早い収拾を願った。
だがしかし、こういう時に限って、事態の収拾ができそうな英先生や佐藤先生、山野先生の姿は職員室には無く、
マタタビによって暴走したネコ達の狂乱はもう暫く続きそうだった。
482通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/11(水) 02:05:18 ID:A2CjXSGY
……それから数分経って、マタタビの影響が完全に抜けきった後。

「あれ……? 俺は何で机の上に座ってるんだ?」
「むぅ、泣いた訳でもないのに何だか目が腫れぼったい……何故だ?」
「あの、何時の間にか私の手に誰かの髪の毛が一杯……何で? 凄く恐いんですけど?」
「……所でヨハン、何故こんな所で倒れてるんだ?」
「……それは、自分の胸に…聞いて、ください……」

酔っ払っていた間の記憶をすっかり無くしたネコ達の横で、
頭髪をヨレヨレにし、ぐったりと床へ横たわるヨハン先生の姿があったという。


尚、この事件の原因となったサン先生は当然、英先生によってみっちりと説教をされる事となり。
以来、校内へのマタタビの持ちこみは禁止になったのは言うまでも無い事だろう。

――――――――――――――――――終われ――――――――――――――――――――――
483創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 02:05:23 ID:PgksbIkH
484創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 02:05:36 ID:PgksbIkH
485通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/11(水) 02:07:41 ID:A2CjXSGY
マタタビはネコ科の動物にとって一種の麻薬です。
ライオンだろうが虎だろうが効果を発揮します。そのくせ、中毒性が無い不思議な性質を持っています。

と言う訳でネコ科の人達をマタタビで酔っ払わせてみた。反省している。
486通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/11(水) 02:09:31 ID:A2CjXSGY
訂正orz

×何かの拍子でサン先生の手から零れ落ち、床に落ちてビンが真っ二つに割れ、内容物が床へ飛び散る。

○何かの拍子でサン先生の手からビンが零れ落ち、床に落ちて真っ二つに割れ、内容物が床へ飛び散る。
487創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 02:11:22 ID:ufJpuApN
怖ぇー!麻薬怖ぇー!
488創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 02:37:25 ID:PgksbIkH
ザッキーの酔いかたがwwww
489創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 04:15:45 ID:s5Ywbl9H
獅子宮先生がwかわいいww

あーやっぱアレ麻薬なんだ
思えば確かに、動きが酔っ払いのそれとは違うもんな
490創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 13:44:18 ID:2YCI9GV5
獅子宮先生だけはずっとマタタビ嗅がせといたら良いんじゃないだろうかw
491創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 13:48:38 ID:cUL6snpS
ウィルライトはそういうのあんま好きじゃないから
492創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 13:52:12 ID:2YCI9GV5
ウィルライトってなに?
493創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 13:53:41 ID:cUL6snpS
誤爆
494創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 13:59:42 ID:ufJpuApN
>ウィル・ライト(Will Wright、1960年1月20日 - )はアメリカのゲームクリエイター。
>シムシリーズの生みの親として知られ、
>斬新な視点でシミュレーションゲームを常に作り出すクリエイターとして世界中にファンが多い。
495創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 14:00:21 ID:2YCI9GV5
ついググッちゃったよw
496創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 16:36:52 ID:H4vD5DNB
497創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 17:07:27 ID:PgksbIkH
なんというwwwww
ヨハン尻尾丸まっちゃってるし
498創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 17:12:10 ID:2YCI9GV5
楽しそうw
499創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 17:14:33 ID:ufJpuApN
宴会だなww
500創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 17:38:58 ID:A2CjXSGY
こうやって絵で見ると本当に皆、楽しげだww

ヨハンにとっては全くの災難だがw
501創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 16:15:28 ID:fzzSepCo
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
         (.___,,,... -ァァフ|  『ハリネズミを2足歩行タイプにして
          |i i|    }! }} //|  描いていたら、いつのまにか別のクリーチャーになっていた』
         |l、{   j} /,,ィ//|  な…何を言ってるのかわからねーと思うが
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ   おれも何をされたのかわからなかった…
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |  頭がどうにかなりそうだった…
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人  ワッフルワッフルだとかハ●モグハ●リ●だとか
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ

ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00906.jpg
502創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 16:52:13 ID:UXdFqyL7
●に入る言葉が分からない

これは良いハリネズミ
503創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 16:57:28 ID:RG2MESny
リーー
ですねわかります
ハリモグラきゅんは上着着れなそうだw
504創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 16:59:18 ID:YudCneqU
>>502
NHKを甘く見るからそうなる

ハリネズミを二足歩行なんて言われると青い超音速ハリネズミが瞼の裏に・・・・

頭身低そうだと思ってクリックしたら予想が背高くて大人びてた。かっけー
505創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 22:19:56 ID:FrxVkiFq
>>501
センザンコウとかも可愛いかも。

「信号渡るの?ねぇ渡るの?」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00907.jpg
506創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 22:21:17 ID:UXdFqyL7
首輪www
507創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 22:24:16 ID:iUP84jij
いぬwwwwww
508創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 00:42:27 ID:6sg8VcwI
ケンちゃんがどんどんハジけたキャラにwww
509創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 00:55:00 ID:Oe4Yr8M6
あーなんかすげー昔飼ってた犬思い出すわ

精神年齢小さいほど獣寄りになる節があるよね、この世界
510創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 19:50:13 ID:6FwIfjO1
>>501
これはいいハリモグラ
確かに上着は着れなさそうだw

>>505
馬鹿犬すぎるwwww
511創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 21:58:26 ID:IU/3LUlm
>>505
服装でも犬猫の差が出てていいなぁw
しっぽカバーとかカワユス。
犬太は裸足www
512創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:18:07 ID:w1/JD9V2
「顔の表情を一切動かさずに大爆笑する人」の動画を見てつい。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00911.jpg
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00912.jpg

いまだにヨハンだけ、帆崎とルルの関係を知らない(というのは次回の漫画で)
513創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:24:02 ID:K6nGTqGa
>アニソンしか歌えない
ありすぎて困るww

ヨwwハwwンwww
514創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:28:25 ID:MXbvi4f4
ヨハンwwwww
ザッキーがリア充すぎて困る
でもやっぱりいらんことしいのヘタレだがw

ヤクザ馬は塚本の親戚か?
515創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:28:50 ID:XVzxZk6b
豆食ぇ!!豆!!に吹いたwwwww
516創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:39:45 ID:w1/JD9V2
あ、因みに「豆食え」の元ネタはこちら
ttp://www.youtube.com/watch?v=F5cBfL-SQZA
517創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:44:48 ID:j9fMyQuz
初投下させていただきます|゚∀゚)
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00913.png
518創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:47:41 ID:MXbvi4f4
まさかのハシビロコウ!?であってるよね
かっこいいなー
でも二人ともこぼしすぎこぼしすぎぃーーー
519創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:48:42 ID:K6nGTqGa
志村ー!こぼれてるこぼれてる!
520創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 01:03:34 ID:hGCZItFs
>>512
そんな疑問持っといて本当にその通りだったらどーする気だったんだザッキイイィィー!!

もしそうだったらあーなってこーなって…いかん。これはいかん。

>>517
おおぅ、完成度高けーなオイ。絵柄の独特な感じがいいね。
521創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 10:03:04 ID:mhxxoItI
522創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 10:19:26 ID:MXbvi4f4
宇宙海賊w
523創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 10:29:19 ID:Fko1vcIz
ゴー☆ジャス
524創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 13:56:44 ID:FJHetJ6V
ハーロック涙目
525わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:01:35 ID:fGztT80F
久しぶりに投下します。
ちょいと長いかもしれません。
526さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:02:38 ID:fGztT80F
「あの、あの…、泊瀬谷センセ!これ…受け取ってください!」
「ええ?」
「センセ!それじゃあ!!」
わたしが仕事を終えて帰宅しようと自転車置き場に向かう途中のことだった。
一人のシロネコの少女がわたしにきれいな包み紙で飾られた小箱を渡して、何処かへすっとんでいった。
金色の腰まで伸びた長い髪、黒のビーニーキャップ、そしてまだまだ寒いというのに薄そうなシャツと
フリルのミニスカートを身にまとっていた少女。ガールズバンドのボーカルかのような雰囲気さえ漂わせる。
彼女の歳はわたしの受け持つ高等部の生徒と同じくらいか。他校の生徒としたら、どうやってここに入ってきたのだろう。
さらに不思議なことに、初対面なのに彼女は私の名前を知っていたのは何故だ。あれこれと頭の中がぐるぐると酔う。

確かに添えられたカードには『泊瀬谷先生へ』と書かれていることからして、わたしへの贈り物と推測は出来る。
もしや、何か思惑があってわたしに贈り物でもしたのだろうか。そういえば、きょうは2月13日の金曜日。
こんな日だからこそ、悪いことが何もなければいいが…、と不安がよぎるわたしは考えすぎなのだろうか。
しかし、考えようによってはあしたバレンタインデーだし、ってなる。いや、獅子宮先生ならまだしも、女の子からチョコレートを貰うほど
わたしは格好よくないぞ。戸惑いながら包み紙を開くとチョコレートでも入れるようなきれいな小箱が現れる。高級そうな包み紙は
口に入れると上品な甘さ広がる海を越えたココアのお菓子がよく似合う。その包みを丁寧に捲り、小箱のふたを開けると中から現れたのは
いちまいの写真と折りたたまれた便箋。ところがその写真を見るやわたしは全ての毛が逆立った。

わたしが生徒たちの下駄箱からきれいな封筒を取り出している写真だ。しかし、その写真の裏側に書かれた文章、
一行足らずのいまどきの女の子が書くような可愛らしい色文字なのに、残酷にもわたしに耳へと茨のように突き刺さる。
『2月14日撮影。泊瀬谷先生が生徒の下駄箱に恋文を入れています』
さらに同じ箱に入っていた手紙には同じように、可愛らしい文字でこのように書かれていた。
『この写真を来週月曜の16日、教頭先生に送りますね。もちろん写真の裏の文章もいっしょにね』

ちがう。天地天命に誓っても違う。わたしは恋文を生徒の下駄箱に入れたことはない。
『2月14日撮影』とわざわざウソを記すところからして、何かの罠に陥れられたのだろうか。
527さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:03:12 ID:fGztT80F
―――2月12日、昨日のこと。
いつものように自転車に乗って帰宅しようと鍵をトートバッグから取り出そうとしたところ、無い。鍵が無い。
そうだ、今朝自転車の施錠を忘れていたことに気付いた。わたしがよくする凡ミスだ。やれやれ、
わたし。しっかりしろ、と自分自身に呆れながら自転車を引っ張ると動かない。

「あれ…、鍵がかかってる?」
確かに鍵をかけた覚えは無い。なのに、自転車の前輪は駄々っ子のようにわたしの言うことを聞いてくれない。
焦るわたしの目に飛び込んだのは前籠に入れてあったピンク色の小さな封筒だった。
『泊瀬谷先生へ』と、小さな文字でプリントされた封筒を手にする。手紙は匿名である。なんだろう、これ。
と、封筒を開くと『自転車の鍵は下駄箱に入れてあります。場所は…』との旨が書かれていた。
やれやれ生徒の悪戯か、と呆れつつ指示された場所に向かった。

場所は高等部の下駄箱。下校時間をとっくに過ぎているので人影は無く、風だけが通り過ぎてゆく。
手紙を手にして、いつもは生徒たちで賑わう下駄箱の周りをうろつきながら、指示された靴入れを探し始める。
「えっと…この列の上から4番目、右から12番目…と」
手紙に指示されるがまま靴入れのふたを開けると、生徒の上履きと共に先ほどと同じようなきれいな封筒が入っていた。
まるで、女の子が恋焦がれる男の子に差し出すような、見ているだけで甘酸っぱくなるブルーの封筒。
その封筒には封はなされず、拾っただけでふたが開く状態で生徒の上履きの上に乗っていた。

と、その瞬間後ろからシャッターを切る無機質な音が聞こえた。
「誰?!」
音の方向に尻尾を回しながら振り向くが、人影は無い。振り向いたと同時に封筒が開き、中からわたしの自転車の鍵がぽんと落ちてきた。
528さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:03:54 ID:fGztT80F
―――わたしは確かに生徒の下駄箱から封筒を取り出したことはあったが、恋文を入れたことは無い。
しかし、写真に写った見方によっては『下駄箱に封筒を入れている』ようにも見える。
裏に書かれた文章を見れば、九分九厘の者は恋文を下駄箱に忍び込ませているように受け取ってしまうだろう。
写真は真実だけを伝える。いや、見たままのことしか伝えることが出来ない、意思の無い刃のようなものだ。
その刃は使い方一つで心強い味方になるか、残忍な仇にもなるということはきょうの贈り物で証明できる。
この『早良なずな』という人物は何を考えて、このような行動を取ったのだろうか…。

このまま家に帰ることに不安を覚え、わたしは職員室に戻った。暖かい職員室では未だ帆崎先生と獅子宮先生が談笑していた。
「わたしはバレンタインなんぞ、軽々しい騒ぎは好まん。巷は揃いも揃いやがってバレンタインと騒ぎやがる」
「はは、獅子宮センセらしいっすね。シロ先生はどうかなあ」
「シロ先生は…、興味ないんじゃないのか?みいちゃんはあちゃんな若いネコとは違うからな」
「あしたがバレンタインっていうのに、何の素振りを見せないシロ先生は仕事熱心ですからね。教師の鑑ですよ」
「ははは。帆崎はさんざん、ルルからチョコレード攻めに遭うのを覚悟するんだな。この果報者が」
帆崎先生は照れながら書類を添えていた。きっとうちに帰るのが楽しみなのだろう。
シロ先生も先ほどまで職員室でコーヒーを飲んでいたのだが、ちょっとやることがあると保健室に閉じこもってしまったのだ。
帆崎先生はわたしが近づく足音に反応して、いつものような明るい声で話しかけてきた。
「おや?泊瀬谷先生、いかがしました?」
「実は…」
ことの話を両先生に話すと、帆崎先生は頷きながらある人物の名前を口にする。
それはわたしも知っている(と言うより、さきほど知った)あの名前。
「アイツか…。早良…」
「ご存知で?」
「ああ、早良なずな。アイツはなぁ、確か中等部に進んでからぱったりここに来なくなったんだ」
帆崎先生の話によると、早良なずなという生徒は佳望学園に在籍し普通に進学していれば、高等部にいるはずの生徒とのこと。
しかし、学費や単位の関係で進級もできず、今では宙ぶらりんの状態で、学園に姿を見せることは滅多に無いと言う。
生活指導の帆崎先生は自由気ままな彼女のことで、今までずいぶんと悩み続けていたのだ。

「面白いヤツだな、早良ってヤツは」
「獅子宮先生!」
煙の立たない咥えタバコをセキレイの尾のように揺らしている獅子宮先生、まるで早良なずなに振り回されるわたしたちを
面白そうに傍観しているようでもある。不安で落ち着かないわたしはスカートの裾を抓りながら呟いた。
「初めに会った、金髪の…」
「ソイツが早良なずなのはずだ」
帆崎先生の目の色が変わる。彼女はまだこの辺りにいるかの可能性があるらしい。兎に角、わたしたちは外に向かった。
529さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:04:40 ID:fGztT80F
小高い丘に建ち、木々に囲まれた佳望学園。その林は沈みかけた日に照らされ、色濃く影として空に浮かび上がる。
「早良を探す時には上を見るんです」
「ええ?」
「アイツは木から木に跳んで逃げ回るんですよ。ネコですから」
彼女のクセを知り尽くしている帆崎先生と一緒に、わたしは早良なずなを探しに校門から延びる長い坂を歩く。
捜索隊は二人っきり。獅子宮先生は「くだらない」と職員室に残ったままだった。
丘の上から見えるのは光が灯り始めた街。まるで宝石のように美しく輝き始めている街だが、そんな景色を楽しむ余裕は一寸も無い。

夕方と夜の間ぐらいの時刻。わたしたちが早良なずなを探すのに夢中になっていると、坂の上から小さな灯火が下りてくる。
その灯火は金属が軋む音を立てながら、すっとわたしたちの前に止まった。
「どうしたんですか」
「ヒカルくん?」
「犬上くん。遅くまでどうした?とっくに下校時間は過ぎてるぞ」
マフラーをした下校途中のヒカルはわたしたちを不思議そうに見ていた。
わたしと帆崎先生がヒカルを囲むと、自転車からすっと降りて呟く。
「図書館から追い出されたんです…」
本を読むのに夢中になって、すっかり下校の鐘が頭をすり抜け、司書の織田さんから促されて帰宅する途中だった。
「追い出されたって…。こんな時間まで気付かないなんて犬上も変わったヤツだな」
「帆崎先生、すいません」

当然のようにヒカルはわたしたちの今の状況を尋ねる。「なんでもないの」とこの場をさらりと流したい。
ヒカルが早くここから立ち去って欲しい、と心の底で切に願う。何故なら…、
昨日、わたしが下駄箱の写真を撮られたときに開けたのはヒカルの下駄箱だったからだ。場所からしてはっきりと写真で分る。
もちろん、ヒカルの下駄箱でなくてもヒカルには知られたくはない。おそらく、ヒカルの下駄箱だからだって慌てふためいているのは
世界中でわたしだけであろう。名もなき街に一人取り残された気がしてきた。周りは平然としているのに、わたしだけが不安になっている。
きっと、早良なずなはわたしがヒカルの下駄箱に恋文を入れたように言いまわるだろう。ヒカルには迷惑はかけたくない。
ヒカルの白い毛並みを汚す者は許さない。そうだ、痛い思いをするのはわたしひとりだけでいい。
530さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:05:11 ID:fGztT80F
「いたっ!」
わたしの耳に小さな固まりがぶつかり激痛が走った。反射的にかがんだわたしに、ヒカルと帆崎先生は慌てて振り向く。
足元には折れた小枝が転がっていた。人の手でへし折られた小枝が上から飛んできたことはまちがいない。
「上の方から…、上の方から何かが…」
と、わたしが痛む耳を押さえながら上を向くと、枝だけが伸びる桜の木の枝に、小枝を持ったネコ少女が腰掛けていたのだ。
自転車置き場で小箱を渡してきた少女、正しく彼女だ。そして、正しく彼女が早良なずなであった。

「オトナをからかうと面白いね、泊瀬谷センセ」
彼女はわたしたち三人を見下ろしながら、ケラケラと笑うネコ少女。片手で折れた小枝をバトンのようにくるくると投げては掴み遊んでいる。
帆崎先生が何かを言おうとした刹那、彼女はぴょーんと両手両脚を伸ばし、短いスカートを翻しながら宙を舞った、
と思いきや隣の桜の木に飛び移り、木の幹に手を添えながら春を待ち続ける枝に両脚で立っていた。
「あたしの方からセンセのところに行こうと思ってたけど、センセの方から来るなんてサービス行き届いてるね」
若いネコはすばしっこい。地上で追い駆けまわる帆崎先生を嘲笑うかのごとく、彼女は次々に桜の木から木へと飛び回る。
帆崎先生もネコ、脚力には自信がある…はず…が、

「いたたた!」
「ん?あたしは木の枝なんか投げてないよ」
帆崎先生が膝を付く。坂道を駆け上った為、脚をつってしまったようだ。悔しそうな帆崎先生は
自分の年がもうウン才若ければと痛む足を庇いながら、校門へと続く坂道に倒れこんだ。
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ」とわたしが帆崎先生に駆け寄ると、その光景を見ていた早良なずなは欠伸をしていた。
「ねえ?見た?見たでしょ?わたしのぱんつ!」
「いてて…」
短いスカートで自分のパンツを庇いながら、脚をバタバタさせる早良なずなはわたしたちを挑発する。
坂のはるか上に逃げている早良なずなを捕まえようと、ヒカルも坂を駆け上ってきた。
やめて!ヒカルくん!この子には関わらないで。
531さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:05:51 ID:fGztT80F
「ヒカルくん!帆崎先生を保健室に!」
「は、はいっ」
わたしにしては転機の効いたことを口に出来た。確かシロ先生は保健室にいるはずだ。
ヒカルは自分の自転車のサドルに帆崎先生を腰掛けさせて、帆崎先生の背中を押したがこの身体、なかなか重い。
帆崎先生は自ら自転車から降りてヒカルに命ずる。その光景を冷たい目で早良なずなは見下ろしていた。
天上界に潜む神が、地上で玩ばれている人々を冷酷に見つめているようにも見える。
「お、俺はいいから…犬上くん。きみが走ってシロ先生を呼んでくれ」
「はいっ」
ヒカルは自転車でおりたばかりの坂道を駆け登っていった。

わたしはやっとのことで早良なずなに追いつく。ヒカルが校門に辿り付いたところが遠くに見える。
「あの写真のことさあ、黙っておくなら黙っててもいいよ…。お金さえ出してくれたら」
「え?お金?」
木の幹に頭を擦りつけながら、後姿の早良なずなはある提案をわたしに持ち駆けてきた。帆崎先生は未だ脚をつったままもがいている。
のるかそるかはわたし次第。帆崎先生もこれ以上早良なずなを刺激するのは危ういことと分って、何も言わない。

「えっとね、1万円でこの写真の権利を買ってくれたら、あたし黙ってあげる。あたし、そんなに悪い子じゃないから。
もし、1円でも足りなかったら…知らないからねっ!あはははは!オトナをからかうと面白いね!」
「やめて!早良さん」
「うるさいな!お金はわたしの味方なんだからね」
振り向く早良なずなの瞳は鋭く光っていた。ネコだからである。
532さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:06:21 ID:fGztT80F
彼女には両親がいない。いや、もちろんいたのだが今は二人とも離れ離れになり、事実上早良なずなは一人暮らしをしているのだ。
彼女の両親はネコとオオカミ、お互いそりが合わなくなり彼女を残して消えてしまったと言う。
学校にも顔を出さず、お金に執着を始めたのは一人暮らしを始めてからだと帆崎先生は言っていた。
「あたしね、中等部に入った頃はね、犬上と同じクラスだったんだよ。でね、お家の都合で一人暮らしを始めた頃から、
だんだんクラスメイトが遠くに感じてきたんだ。言うんだよ、クラスのヤツが『お前は銭と結婚しろ』なんてね。あはは!」
「ヒカルくんはそんなこと言わない!」
「うん。犬上のヤツはわたしのことを気にもしないし、構いもしないヤツだったからそんなわたしの爪を光らせるようなことは
一切言わなかった。変わったヤツだったよなあ…犬上ヒカルは。いつも誰それと群れることなく一人で何かしていたっけ。
犬上ってずっとそんなヤツだったんだよね。それが印象深くてね、イヌのくせにネコみたいなヤツだなって。
そして、わたしの中の記憶は犬上だけ残った。イヤーな思いは記憶の底から消し去っちゃったのね。自己防御ってヤツかな、
白倉が言ってたっけ。生きる為にはそんな記憶が邪魔なんだよね。クラスのヤツラのことなんかみーんな忘れちゃった。
みんな、みんな消えちゃえ…ってね。そして、誰も彼も消えていった。…犬上は違ったの。でもその犬上からも…」

だんだんと声が小さくなる早良なずなの話はさらに続く。
「学校に行かなくなって、と言うか…行けなくなった。わたしの元からお金が逃げるのが怖かったから。
でも…ここのことが気になってね…高等部に進むはずの歳になってね…この学校を覗いてみたら…。犬上と…あんたと…。
犬上でさえもわたしを置き去りにしちゃうのかな、…自分勝手でごめんなさいね。好意が憎悪に変わることもあるんだ。
でもさ、なんだかあたしね…どうかしてたんじゃないかと思った。泊瀬谷センセとのことを知ったときは悔しかったもん」
「……早良さん」
「ごめんなさい、泊瀬谷センセ。ネコってどうしても執念深いんですよ。泊瀬谷センセもネコだからお分かりでしょ?ね?
それにわたしにはオオカミの血が流れている。片方の親がオオカミだからね。この血のお陰で一人でも平気なんだ。
そしてさ…狙った獲物には容赦しないから覚悟なさいね、泊瀬谷スズナ。逃げられるとは思うなよ。さ、あたしに…」
と、早良なずなが木の枝に立ち上がった瞬間爆音と共に強い光が早良なずなを差した。
目を眩ました彼女はバランスを崩し、桜の枝から宙返りしながら道の脇の草むらに落っこちた。
533さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:06:52 ID:fGztT80F
「さ、早良さん!?大丈夫??」
爆音の主は獅子宮先生の愛車。獅子宮先生は坂の上からウィリーをしながら降りてきたのだ。上を向いたヘッドライトの光はそのまま
木の上の早良なずなに直撃。わたしは音でしか獅子宮先生のことに気付かなかった。

「話は犬上少年から聞いた。それまでだ」
バイクから降りた獅子宮先生が早良なずなを追い駆ける。獅子からすればネコなんて赤子同然だ。
獅子宮先生の迫力に負けて早良なずなは抵抗する間もなく、襟首を掴まれた観念したようだった。
そして、獅子宮先生にお姫様抱っこをされながら、わたしの元に戻ってきたのだ。
ここであった一部始終を帆崎先生は獅子宮先生に話す。黙って話を聞いている獅子宮先生のシルエットは神話の勇者に見えた。
いつの間にか夜に飲み込まれた坂道に止まるバイク、そのライトがわたしたちを明々と続けている。
一方、抱きかかえられた早良なずなは獅子宮先生の胸の中で、まるでお子さまのようにわめいていた。
すとっ、と地上に下ろされた早良なずなに獅子宮先生はある提案を持ちかけてきた。帆崎先生の話を受けて…。

「ところで、早良少女よ。その写真、わたしが10万で買おう」
「!!!!!」
「10万じゃ足りんか?30万でどうだ」
「は、はい」
「そのかわりだ。わたしの言うことは絶対に聞くんだ。いいな。これが資本主義ってやつだ」
獅子宮先生の言うこととは
一、 泊瀬谷スズナに謝ること。そして、今後一切迷惑をかけないこと。
一、30万円は大切に使うこと。
というたった二つだけの条件だった。断るすべの無い早良なずなはこの提案をのみ、獅子宮先生のサイフから現れた
現金30万円の束を大事そうに抱えて、深々とわたしたちに頭を下げ、誰も待たない自宅へと消えていったのだ。
その後姿を見ながら、獅子宮先生はタバコを咥えセキレイの尾のように揺らしている。

「ところで…獅子宮先生。いいんですか?」
「ダメなヤツを見るとついつい手を差し伸べたくなってな」
「はあ」
「実にくだらんな」
そんな言葉を残して獅子宮先生は愛車に跨り、爆音と共に坂を下っていった。取り残されたわたしと帆先先生は校舎へ向かった。
シロ先生とヒカルが来るのが待ちきれず…。
534さよなら、早良なずな ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:07:16 ID:fGztT80F
しかし、そのあと校門の前でシロ先生にばったり出会うことになる。
「シロ先生!」
「すまん。遅くなった」
少し着崩れた白衣をふらふらとはためかせ、シロ先生は申し訳なさそうに頭を下げた。
ちょっとした作業をしていて部屋を出るのに遅れたそうだ。どおりで髪も乱れたまま、めがねもずれたままなのか。
しかし、ヒカルの姿が無いのが気になった。話によると、獅子宮先生とヒカルは職員室前の廊下でばったり出会ってそれ以降…。
しかし、シロ先生は謝ることで精一杯な様子であった。
「一生の不覚、すまん。本当にスマン!」
「い、いんですよ。ほら、ぼくだって脚も治りましたしね」
と、子どものように飛び跳ねる帆崎先生。ところが…。

「うっ!!」
完璧に治りきっていなかったせいで、再び同じ苦痛を味わうこととなってしまった。
その光景を見ていたシロ先生は、いつものように
「まったく…ばかだなあ。ほら、保健室に行くぞ」
とは言わずに、この場で帆崎先生の脚を診ていた。
おかしい、なにかがおかしい。

「うーむ、カーゼが足りないな…。ちょっと待ってくれ、取ってくる。泊瀬谷先生ここで…」
「わ、わたしが取ってきますから、シロ先生はここに」
「待て、泊瀬谷。わたしが!!」
「いてててててててて!!!」
「ガーゼですね!ガーゼ!!取ってきます!!」
苦痛に顔を歪める帆崎先生を助けたい一心でシロ先生を押しのけて、わたしは保健室に駆けた。
このくらいのことなら、わたしだってできる。

息を切らして保健室に駆けたわたしに飛び込んだのは、チョコレートの甘い香りと処置台に散らかった料理道具。
さらに不釣合いなことに、きれいな千代紙が折り重なってシロ先生の机に置いてある。
湯気の立つ耐熱ボールがぷかぷかとつい先ほどまでチョコレートを湯煎にかけていたと物語っている。
しかし、何故ここで。まさか、シロ先生がここで…?
「いてててててててて!!!」
と、ベッドから声がする。何だか苦しそうな声。こんな時間に生徒がいるはずはないのでは?いや…一人いた。あの子だ。
がらっとカーテンを捲ると指と口がチョコレートまみれのヒカルが、おなかを押さえながら寝転んでいたのだ。


おしまい。
535わんこ@携帯 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/14(土) 16:15:46 ID:z8k2gis5
>>521>>512
塚本親戚&ケモハーロック、かっちょいい

投下おしまい。
536創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 17:23:09 ID:w0uwj+GL
馬だけに、名前はバーロックというところかな。
537創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 17:27:00 ID:FJHetJ6V
獅子宮先生が厨的万能キャラになって来てるw
シロ先生の姐御キャラの立場あやうしw
538創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 17:57:32 ID:PF6r8dwU
ドラえもんの学習漫画に馬の宇宙海賊がいたような……
539創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 18:58:29 ID:f2jOWW02
ザッキー駄目だなあ
つーかヒカル何やってんだヒカル
540創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 20:00:14 ID:K6nGTqGa
白先生はチョコを誰にあげるつもりだったんだろう
しかし30万がサイフからスッと出てくるとはなんて人だ獅子宮先生は
541創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 20:08:12 ID:FJHetJ6V
みんなでやってるから誰のせいってわけでもないけど、
だいぶんメアリースーってきちゃったよね
542創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 21:15:27 ID:mhxxoItI
>>541
その言葉を知らなかったのでwikipediaを引いてみたのだが、やはり今ひと
つ私には理解出来なかったです。ただ、どうも否定的な意味があり、世の
中的にはあまり歓迎されない事らしいという雰囲気は掴めました。

もしがて、そう言う行為は止めたほうが良いのですしょうか。
個人的にはあまり単独では作品を作れない(描けない)ヘタレなので、辛
いところですが、なるべくこれからは他の方の作品には関与しないよう自
重したいと思います。
543創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 21:28:40 ID:XVzxZk6b
必ずしもメアリー・スーが悪い事でもないんだがね
投下してくれる人は大好きだし
544創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 21:39:27 ID:FJHetJ6V
最近のSSで獅子宮先生がバランス崩壊キャラになってるのが気になっただけで、
絵師さんには何も責任はないよ。
545創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 22:17:36 ID:hGCZItFs
>>542
それほど気にすることないと思うよ。あんまり気にしてたら書けなくなる。
実際自分は一切キャラ作れないけどフリードリヒとか朱美とか書いてる。
まあメアリー・スー言われると否定できない部分はあるけどさ。

もとある作品をよく読んでキャラを熟知した上で書くようにはしてる。
それをしっかり心がけとけばいいんじゃないかな。と思う。
546創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 22:47:14 ID:mhxxoItI
先に自重すると書きましたが、「他人の絵やら話しやらを元にボケたりふ
ざけたりする」のが私のスタイルなので、そこを止められると窒息してし
まいます。 なるたけ行き過ぎないようにしたいと思いますので、今まで
のスタイルで描くことを容認していただければ嬉しいです(最近でも亜人
スレで一寸やり過ぎてしまった気がして…)。
 いじられて不快であればおっしゃっていただければ直ぐに止めます。

ただ、ひとつだけ。 最初に「誰のせいでもないけどメアリースーってき
ちゃった」と難しく言わずに、「ちょっと獅子宮先生が『寺生まれのTさ
ん』みたいになってきたね」って言っていただいたほうが、もう少し判り
易かったのではないかな?と思いました。
※責任云々でいうと、世界観を共有している私にも有るわけで…

とまれ、またひとつ新しい言葉を覚えました。ありがとうございます。
547創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 22:51:17 ID:K6nGTqGa
>寺生まれのTさん
余計に分からんwwwwwwww
548創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 22:51:30 ID:w1/JD9V2
>>546
自分のキャラがいじられるとキュンッ!となるから、むしろ(自分は)もっと見たいです><
というのはわがままなのかもしれんけどw
549創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:06:57 ID:LfFE40Q6
常識人チーム(帆崎・猪田・泊瀬谷)はもっと弄られるべき
550創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:21:49 ID:MXbvi4f4
寺生まれのTさんってなあに?
551創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:31:45 ID:FJHetJ6V
ホント、気にしないでね

俺もマリーアントワネットとプリンとか書いたもん
552創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:52:59 ID:K6nGTqGa
寺生まれのTさん調べた
クソワロタwwwwwwwwwwwなんだこのチート性能wwww
553創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:58:09 ID:XVzxZk6b
>>550
やっぱり寺生まれは凄い
554創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:04:12 ID:mhxxoItI
自重すると言ってる裏でこんなの描いてる。駄目だ、俺。
>>517
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00922.jpg
555創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:05:12 ID:i4v9CTWV
そのノリの良さにシビれるあこがれるぅ!
556創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:20:14 ID:6QQaVIiS
メイドさんかわえええええええええええええええええええええええ

つまり、1人のキャラがチート性能になり続けるのがダメなのね
シェアでキャラや背景設定をみんなで成長させていくのはいいこと!
557創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:34:44 ID:6jCeuehD
能力のインフレと過度な付加設定、キャラ・世界観のブレには気をつけないとね
設定が勝ちすぎると百鬼夜翔みたいにgdgdになっちゃいそう
558創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:35:56 ID:kEac9lhs
初めて獅子宮センセを使ってSSを投下して、飲み会から帰ったら「寺生まれの…」とやらの騒ぎになっていたとは…。
どうも、自分の力不足でチート性能を装備させてしまいすぎました。反省点ですね、がんばります。

>>554
それでも無表情の鳥さんにシビレル!
559創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:52:24 ID:UMRuffNA
まあ、範馬勇次郎のような位置づけのキャラとして唯一無二の頂点においておけば問題あるまいよ
560創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 02:12:24 ID:f17JyjMP
561創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 02:14:52 ID:6QQaVIiS
チョコありがとうございます><
562創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 02:16:48 ID:i4v9CTWV
ありがとうございます!ありがとうございます!!
563通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/15(日) 02:49:21 ID:gZGcNT3d
二月十三日。バレンタインデーの前日となるこの日、
しかし、バレンタインデー当日は週休二日の為、佳望学園の生徒達は前倒しでバレンタインデーのイベントを送っていた。

モテる男子は大量のチョコレートを前に、1ヶ月後のホワイトデーの事を考えて深い溜息を漏らし。
その逆にモテない男子はチョコレートが貰えない事を悔やみ、モテる男子へ怨嗟の眼差しを送った。

無論、卓も利里も一介の男子としてそのイベントに乗るのも当然で。
その日の放課後、二人は屋上の一角のベンチに座り、お互いのこの日の成果を確認しあっていた。

「なあ、利里……今日の成果は如何だった?」
「あー、俺は朱美からの義理が一個だったなー」
「そうか、俺も朱美のお義理だけだったな……」

言って、ほぼ同時に日本海溝よりも深い溜息を漏らす二人。
二人の手にあるのはどう見ても既製品の、しかも特売で買ってきた物としか思えないチョコレートがひとつ。
恐らく、この後でチョコレートを貰えるとしても家族からの物が精々であろう。
そう思うと、卓も利里もなんだか悲しい気分を感じて仕方がなかった。

「今年もこんな調子か……利里、お互いにモテない男子ってのは辛いよな」
「そうだなー。俺、この顔だから朱美以外の女子に話しかけられた事、殆どないんだー」
「そうかそうか、俺もどっちかといえば地味な方だからな、普通の人間なだけあって殆ど目立ちやしねぇ」

と、お互いに愚痴を並べあう二人。
卓は目に涙を滲ませながらぐっと手を握り締め、利里は尻尾を苛立たしげに床へ叩きつけている。
その様子には、モテない男達の悲哀を感じさせた。

「卓、俺達の友情は永遠だよな―!」
「ああ、そうだな、利里! 俺達の友情は何よりも堅い!」

そして、友情を確かめ合う様に握手する卓と利里。
チョコレートが貰えない事に対して粗方愚痴を言った後、お互いに友情を確認しあう。
それは二人にとって、毎年のバレンタインデー恒例の行事みたいな物であった。

だが、今年に限っては……ほんの少しだけ様子が違っていた。

「あの……すみません」

うっかりしていると聞き逃してしまいそうな小さな声に気付き、卓が振り向いて見れば、
其処にいたのは頭のフリルのついたリボンが目立つ、同じ高等部と思しき兎の少女の姿。
何時の間に直ぐ後まで来ていたのだろうか、卓は全く気付けなかった。
というか、ドアを開ける音すらしなかったのは気の所為か?それ以前に、クラスにこんな子居たっけ?
と、色々な疑問を考えながらも、卓は彼女へ問いかける、

「えっと……なにか?」
「その……あの……えっと……」
「……?」

だがしかし、兎の少女は鼻をヒクヒクと動かして恥かしそうにもじもじとするばかりで、卓は首を傾げるしか他がない。
この時、卓が彼女の長い耳に注目していれば、少しは彼女がもじもじしている理由が分かった筈である。
何せ、この時の彼女の耳は恥かしさの余り、人間が頬を赤く染める様に真っ赤に染まっていたのだから。
……と、其処でようやく利里も兎の少女の存在に気付き、声を掛ける。

「んー? 俺達に何か用なのかー?」
「あの、利里さん、これっ!」
「へ? ……ちょっと?」

其処へ間髪入れず、兎の少女が利里へ銀色の包み紙に包まれた小箱を渡す。
そして、受け取った利里が何かを言おうとする間すら与えず、
彼女は文字通り脱兎の如く、屋上から走り去っていった。
564通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/15(日) 02:51:52 ID:gZGcNT3d

「…………」
「…………」

後に残されたのは小箱を片手に呆然とする利里と、少女の去っていった方を呆然と眺める卓の二人。
そして、利里は何も言う事なく、貰った小箱の包み紙を開けてみる。
中に入っていたのは、手作りの物と思われるトリュフチョコが数個。
その思わぬ贈り物に、ビクンと利里の尻尾が震えたのは当然というべきか?

「なあ、卓! 俺、チョコレートを貰えたぞー!」
「ああ、そうだな、良かったな……」

チョコがもらえた事に凄く嬉しそうな利里に対して、卓は何処か冷めた様子で答える。
もうその冷めっぷりは冷蔵庫に一晩寝かせたブリの煮付くらいに冷めきっていた。
そして、卓は冷めた目のままやおら立ちあがると、すたすたとその場から立ち去ろうとする。

「あれ? 卓、何処に行くんだ―?」
「俺……世の中の無情さと言うものに気付いたんだ」
「は? な、何の事を言ってるのか良く分からないぞ―?」

慌てて立ちあがりつつ問いかける利里へ、卓は意味不明な台詞を言いつつ昇降口に向かう。
利里には判らなかったのだが、この時、卓の目には涙が滲んでいた。
そして、卓は追おうとする利里へ一度だけ振り向いて、涙ながらに叫ぶ

「利里、今日だけは俺に話しかけるな! つか、その浮かれた顔を見せるんじゃねぇ!」
「ちょ、卓!? 何で泣いてるんだ!? ちょっと待ってくれよ―!?」
「うるせぇっ! そんなの自分の胸に聞いてみろ、どちくしょう!」

涙を流しながら走り出す卓を追って、利里も訳が分からぬまま走り出す。
その様子を見守っていたのは、山々の間に沈み行く夕日だけであった。

……結局、その日の間、卓は決して利里へ話す事はなかったという。

固く結ばれた筈の二人の友情に、ホンの少しだけ亀裂が入ったほろ苦い1日だった。

―――――――――――――――――――終われ!(涙)――――――――――――――――――――
565通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/15(日) 02:55:36 ID:gZGcNT3d
以上です。
以前、イメージアップ作戦?の後に描いてくれた利里を想う兎の子を引っ張り出してみた。
一応、無口で恥かしがりやで尚且つ影が薄い、という設定を考えたり考えてなかったり。

>>560
ありがたく頂戴致します、ええ。

そう言えば、今年も家族からしか貰えなかったな……(涙)
566創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 02:56:21 ID:6QQaVIiS
まさかの利里にチョコ!?
チョコをあげたウサギの女の子は一体誰だろう
567創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 03:56:06 ID:gZGcNT3d
568創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 03:58:18 ID:6QQaVIiS
おおおおぉぉー
この子か! 利里よかったねぇ
569通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/15(日) 14:49:46 ID:gZGcNT3d
よくよく見てみたら大きな間違いが……場の勢いで書いたのが行けなかったか。

×其処にいたのは頭のフリルのついたリボンが目立つ、同じ高等部と思しき兎の少女の姿。

○其処にいたのは頭のレースのついたリボンが目立つ、同じ高等部と思しき兎の少女の姿。

そう言う訳で、保管庫に入れる際は訂正をお願いしますorz
570初心者の罠(1/2) ◆mdj2QjZJos :2009/02/15(日) 15:03:57 ID:eIM6JUFh
 少しずつ利用者が増えてくると、常連とそうではない者がハッキリと分かってしまう。
 それがどうしたと問われたら、織田は今日に限ってこう言うだろう。
 それが災いの元になる、と……

「す、すみませーん。」
「はーい、ちょっと待って……あら?」
 カウンターから呼ぶ声が聞こえたので、織田は、作業中の資料整理を止めて慌ててカウンターの方へと向かおうとしたが、動きを止めてしまった。
 そこには誰もいなかった。………いや、よく見れば小さな手の様なものが、カウンターにしがみついているのが何とか見えた。
 少し離れた所からカウンター越しに覗いて見ると、そこにはナマケモノ人の男子生徒が、プレーリードッグ人の女子生徒を肩車してバランスを取っていた。
 しかし、彼にとって彼女は少々重すぎる様で、彼の足取りは、少し危ない状態であった。
「ちょっと樹、しっかり支えなさいよ!危ないじゃないの!」
「紅葉……重い……。」
「何ですって!?アンタ、女の子に向かってなんて事言うのよ!」
 彼、樹の言葉に憤慨した彼女、紅葉は、肩車されているにも関わらず樹の頭を何度も叩き始めた。
 突然の襲撃のお陰で更にバランスを崩した樹は、今にでも倒れそうに右へ左へとふらついた。
「あ、危ない!」
 このままでは怪我をしてしまう。そう思った織田は、慌てて走り出し、二人の体を後ろからを支える様に掴まえた。
 しかし、織田の力では、二人を完全に支える事は僅かながら足りなかった様で、二人の体重を受けながら後ろへと倒れ込み、図書館に小さな地震を起こしてしまった。

「ご、ごめんなさいごめんなさい!」
「気にしないで。もし、間に合わなかったたら、あなた達の方が怪我するかもしれなかったしね。」
 元々怒ろうなどと露ほど思ってなかったので、何度も頭を下げて一所懸命謝る紅葉に、少々困惑しながらも、愛想笑いする。
 しかし、お尻辺りを強く打ったので、二人の見えない様にこっそりと痛みが酷い部分を擦った。
「済みません……」
「そうよ!アンタがバランス崩したからこの人が怪我したのよ!もっと誠意を込めて謝りなさいよ!」
「でも……それ、もみ………」
「人の所為にしなーい!悪いのはアンタなの!」
 指を突きつけて有無を言わさない紅葉に対し、樹は言いかけた言葉を止めて暫く硬直していたが、やがてゆっくりと頷いた。
 それに満足した紅葉は、何も言わず腕を組んで鼻高々になって頷いた。
 少し居心地が悪くなった織田は、空気を換えようと紅葉に話しかけた。
「ね、ねえ。さっき呼んだのは、何だったのかしら?」
「あ、そうだった。本がどこにあるのか教えて欲しかったんです。」
「何の本かしら?」
「お菓子作りの本です。」
 話の流れを変えれた事に安心し、まだ少し痛むのを我慢しながら立ち上がって、近くにある少し前に作った検索用の簿冊を手に取った。
 一応、パソコンで検索出来るようにもなってはいるが、まだ最近入れた本しか入力は終わってないので、いざという時はこちらの方が役に立つ。
 本の配置図も載っているので、説明もしやすい。
「料理関係は、Mの棚に置いてあるから……ここね。」
「ありがとうございます!ほら、樹。行くわよ。」
 樹の手を掴み、引きずる様に連れて行くその姿は、まるで嵐の様だった。
571初心者の罠(2/2) ◆mdj2QjZJos :2009/02/15(日) 15:04:25 ID:eIM6JUFh
 十分後。司書室に戻って作業を続けていると、戸を叩く音が響いた。
 何事だろうかと思いながら戸を開けるが、目の前には誰も居らず、今度は視線を下へ向けると、樹が立っていた。
「あら?どうしたの?」
「本……高い……。」
「本?高い?」
 何が言いたいのかサッパリな織田は、オウム返しに聞いてしまった。
 樹も何を言えばいいのか考えているようではあるだが、ゆっくりとした動作と線目で表情が読めない所為で、織田にはそれが伝わらない。
 織田がどうしたらいいものかと考えていると、樹が唐突に、しかしゆっくりと両手を挙げ、バンザイのポーズを取った。
 突然の出来事に少し驚きはするものの、何か始まるのだろうかと思うが、それ以上は何も起きない。
「え?え?」
 何か意味があるのだろうと理解は出来るが、それが何を意味しているのかは分からなかった。
 次第に、もしかして試されている?とすら思えてきた。
「やっぱり。遅いと思って来て見たら案の定だったわ。」
 溜め息を吐きながら現れた紅葉に、天の助けだとつい安心してしまい、心の中で樹に謝った。
「本は見つかった?」
「見つかったんですけど、ちょっと高い所にあって、アタシ達じゃ届かないんです。」
 それを聞いて、漸く樹の行動が理解出来た。
 でも、それでは彼は、彼女がいなければまともな会話は成立しないじゃないか、と樹の将来について不安を感じてしまった。
 それはともかく、今は織田一人だけなので、カウンターから離れるのは余り好ましくない。
 しかし、先程の様に肩車で本を取ろうとして、その結果、大惨事を起こされてしまってはこちらとしても困る。
 ここは代わりに取った方が良さそうと判断し、その事を告げると、紅葉は素直に喜んだ。

「あの本です。」
 紅葉が指を差した本は、確かに高い所にあり、織田でも背伸びをしないと届かない位置にあった。
「ちょっと待っててね。」
 近くにある50cm程の台座を持って来て置き、簡単に本を取り出した。
 それは、3ヶ月ほど前に出た一流パティシエが監修した、様々な洋菓子の本であった。
「じゃあ、受付を済ませましょう。」
 その時、近くで何かを叩いた様な音が聞こえた。
 音がした方へ振り向いてみると、樹が振り向き様に本棚に手をぶつけた様で、その状態で固まっていた。
 そして、今度は反対側から音が聞こえたので振り向いてみると、本が一冊落ちていた。
 それを見て嫌な予感しかしなかった。しかし、向かざる得ない衝動に駆られ、上を向いてみる。
 目の前には、大量の本が落ちてくる光景しかなかった。

「はい、一週間以内に返却するようにね。」
「だ、大丈夫ですか?」
 額に貼られた小さな絆創膏姿の織田を見て、紅葉は思わず聞いてしまった。
 織田は、ただ苦笑するように笑った。
 二人が帰った後、三日分の仕事を一気にやったような気がして、疲れが襲った。
 悪いと思いながらも、後片付けは羽場君に頼もう、そう思いながらカウンターに突っ伏してしまった。
572星の屑 ◆mdj2QjZJos :2009/02/15(日) 15:06:56 ID:eIM6JUFh
何でだろう……虎か犀辺りの新キャラ出そうと思ってたら、小動物キャラが出来てました
573創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 15:28:13 ID:6QQaVIiS
織田君よりさらに小さいのかw
これはまたかわいいちみっこカップルだ
574星の屑 ◆mdj2QjZJos :2009/02/15(日) 16:06:22 ID:eIM6JUFh
修正

× 織田は、ただ苦笑するように笑った。
○ 織田は、何も言わずに苦笑にしか見えない笑顔を返した。

いつも最後の最後で詰めが甘いです
575創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 20:29:09 ID:uCFLPCyq
お茶くださーい。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00929.jpg


ノロケっぽくなってしまったので一応注意。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00928.jpg
576創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 20:36:54 ID:edzIGFJV
斬っぽい
577創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 21:10:43 ID:+QuRzV/q
>>518
あってますハシビロさんです(*゚∀゚)

>>554
メイドさぁぁぁああん!!
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00930.jpg
頼んだ時点で死亡フラグだぜ
578創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 21:56:09 ID:f17JyjMP
>>563
卓は自分で朱美を甘味所に誘えばいいのになぁ。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00931.jpg
リザードマンの肌の色がわかんなくてグレースケール塗り。 それにし
ても3ヶ月強の間に自分の絵がずいぶん変わったのにビックリ。

>>576
なんつーか、最近だんだんヨハンが可愛く思えてきた。 でもリアルに
近くに居たら30分毎に舌打ちしそう(笑)

>>577
勝手にキャラで遊んでごめんなさいねー。
それにしても、バトラーって万能だと思ってたのに(笑) これでは
「汚名挽回」になっちゃってますねぇ。
579創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 21:58:02 ID:f17JyjMP
あ、アンカーミスだ。 578の576指定は575です。 って余計判り難いか(笑)
580創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 22:08:56 ID:f17JyjMP
連投ごめんなさい。>>575の「お茶くださ〜い」を見ていて思ったんですが、
これってもしかして、「若頭は12才」の連載中の雑誌に「鳥執事」の新連載
を知らせる告知カットかなにかなのかな(笑)?

581創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 22:16:48 ID:gZGcNT3d
>>578
利里の鱗の色はモンハンに出てくる飛竜のリオレウスを想像していただければ分かるかと。
ちなみに利里の父親はリオレウス亜種のイメージ。

……って、モンハンやってなかったら分からないか(´・ω・`)
582創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 22:23:53 ID:uCFLPCyq
>>580
あ、ただの思いつきで描いたものですwサーセン
人様のネタに絡めまくるクセで……
583創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 23:47:35 ID:6QQaVIiS
おおおおお!なんかいっぱい来てる!投下ラッシュだ!
いやもふっしゅだ!

ヨハンwww
ザッキーとルルはもう誰も入り込めないほどラブラブだなぁ
この2人のアクの強いかけあいがなんともいえないw

バトラーさんはハシビロさんであってたか!やった!
ハシビロコウいいよねーあの哲学者のようなまなざしがよいよい

利里はお幸せにw
もういっそ付き合っちゃえ
584創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 00:22:02 ID:EAQVfvWf
585創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 00:33:06 ID:yZYz5ZjZ
>>584
ナマケモノとプレーリーかわええええ
でもその体勢だとそのまま転ぶぞw

そして、次号から連載開始wwww
586創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 00:37:55 ID:6GLhwgPT
なんなんだこの投下ラッシュwww
東方もビックリの弾幕www
587創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 15:04:33 ID:cwihlGCY
                             EEEEEE
                            / )EE
                    ∧_∧    / /
                   ミ( ´Д`)  / /
             と二二二二、ミ三彡__二ノ
                   /    /
                     /    ∧_∧ ハァハァ・・・
⌒⌒⌒::'''""""'''""""'''""'O'"/   ( ´Д`)""'''""""'''""""'''""" ⌒⌒⌒ ⌒⌒::⌒⌒ ''""""'''""
           -=≡ /⌒( ヽ/⌒ヽ/\      ""  ''⌒⌒::..:⌒⌒    ⌒⌒⌒⌒
    -=≡ ./⌒ヽ,  /    \ \ \\ ヽ/⌒ヽ,
   -=≡  /   |_/__i.ノ ,へ _  / )/ \\/  .| /ii 
   -=≡ ノ⌒二__ノ__ノ  ̄ | / i / .\ヽ  |./ |i 
  -=≡ ()二二)― ||二)    ./ / / / ()二 し二)―||二)^Y`
  -=≡ し|  | \.||     ( ヽ_(_つ  |   |\ ||
   -=≡  i  .|  ii      ヽ、つ       i   |  ii
    -=≡ ゙、_ ノ               ゙、 _ノ    



ttp://us-p.vclart.net/vcl/Artists/Wolfie/escapees_sketch.jpg
588創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 16:46:54 ID:YDHFaWBI
若干エロ入ってる?
589創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 17:35:43 ID:72asui7D
>>587
個人サイトから引っ張ってきてるみたいだけど、絵師本人…?
590創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 17:37:26 ID:yZYz5ZjZ
キメラ?
591創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 17:49:19 ID:vuw94Z7A
FFVIに下のヤツみたいな敵がいたな
592創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 21:08:53 ID:61j+vgRC
>vcl
593創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 23:06:10 ID:EAQVfvWf
594創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 23:14:33 ID:ZZDrZm3f
>>593
ちょwww獅子宮先生、またwwww
595創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 23:16:51 ID:72asui7D
逆にカロリー半端無くて体重を気にせざるを得なくwww
596創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 00:12:31 ID:s+8kxcs2
好奇心でカロリー調べて吹いた
597創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 08:08:50 ID:qHf4W5T1
カロリーたけぇww
598創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 08:35:48 ID:W6+tObyx
・・・まあ、むっちり系ぽっちゃり系もそれはそれで好きだぜ。俺
599創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 17:48:52 ID:T4tD7d9Z
近所のコンビニで激しい争奪戦が起きそうだ
600ロールちゃん ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/17(火) 20:02:09 ID:o4Uv32TG
>>593
ググって、ヤ○ザキの公式HPを見てたら、つい…。


「あの…、跳月先生。これ見て下さい」
「なんだね。因幡くんがわたしに質問とは珍しいね。どうしたかね、PCの画面を見つめて」
「この、ヤ○ザキのロールちゃんスペシャルサイトなんですけど」
「ほほう、なにやら楽しげなサイトじゃないか」
理科準備室にはPC画面をしげしげと見つめるうさぎの風紀委員長・因幡リオ、その横の机では
お気に入りのこぶし大の重い磁石を付けたり離したりしながら、物理遊びに耽る同じくうさぎの物理教師・跳月十五の二人がいた。
因幡リオはロールちゃんを齧りながら、画面の明かりで自分のメガネを光らせていた。

最近、学園内で流行のヤ○ザキのロールちゃん。うさぎの耳のように長くそして雪のような柔らかな食感が女生徒を中心に人気を博している。
なんでも学園下のコンビニでは放課後の時間になると『ロールちゃん争奪戦』が女生徒たちで繰り広げているということらしい。
特に『濃厚ミルククリーム』は発育に有効なミルクが豊富に含まれているということで、少年のような胸の女生徒には
飛び抜けての人気を誇るというから驚きだ。彼女らの魅力的な身体への追求心はロールちゃんをも巻き込む。
この噂はとある現社教師の一言がきっかけで広まっていったのこと。そして、この因幡リオも例外ではなかった。
「タダで長時間PCが使える」ということと「人目につかないから」という理由で、因幡リオは
理科準備室のPCをネットに繋ぎ、熱心にロールちゃんの製品情報を見ていたのだ。
呆れた跳月十五は「PC教室で見れば?」と話しかけたが、因幡リオは「うるさい」と突き返した。
ところが、PC画面を見ながらマウスのホイールを転がす因幡リオはそのサイトで、どうしても気になることが出来てしまった。

「見てください。わたし…考え出したら気になってしょうがないんです!!」
「え?どこがだい。ホイップにイチゴに濃厚ミルククリーム…、疲労を吹き飛ばすには最適な甘味類は世の女性たちに人気だ。
そう言えば獅子宮先生も気に入っていたようだけどな。男勝りとは言えやはり獅子宮先生も女の子だな。ははは」
「何言っているんですか、跳月先生。ほら…下の方に画面を動かすと…」
製品情報サイトの画面下には二人仲良く並んで縄跳びをする、うさぎのキャラクターが描かれている。
彼らは「クロールちゃん」「シロールちゃん」という双子のうさぎ、彼らはロールちゃんのように長い耳を持つ。
その耳は彼らの身の丈よりもはるかに長く、因幡リオや跳月十五の耳と比べると比較にならないほどの長さであった。
また二人が持つ縄跳びも耳が縄を潜り抜けることが出来るように、我々が普段使う縄跳びの縄と言うより、長縄跳びのものと同じくらいであった。
双子ということもあって、ジャンプの息もピッタリ。「クロールちゃん」と「シロールちゃん」は楽しげに縄跳びに興じる。
しかし、因幡リオのメガネはこの何でもない光景が引っかかると言うのだ。
601ロールちゃん ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/17(火) 20:03:18 ID:o4Uv32TG
「ほら…縄がちょうど頭上に来ているところじゃないですか。で、このあと縄は慣性の法則に従ってくるりと二人の前方へ回ります」
「そうだね。それは自然の法則に実に正しい。で、どうしたんだ?」
「ここからが問題なんです!彼らの前方に回った縄はこのままだと縄の大部分を地面に打ち付けてしまうんです」
「なるほど、縄の回転軸の高さから考えるとその仮設は正しいね。しかし、それじゃあ縄跳びとは言えないね。
縄跳びとは継続して飛び続けてこそ『縄跳び』と言うんだ。きみもやったことがあるだろう。それで?」
「そうなんです!跳び続けるには縄の頂点を足の下を通過させて、一回以上縄を回転させ続け、背後を経由して元の頭上に戻す必要があります。
しかし、彼らの持つ長さの縄をあの回転軸の高さで一回転以上させることは不可能です。ところが…、
そんなことお構いなしに笑ってる二人の顔を見てください!実は…彼らはわたしたちの想像を超える縄跳びを見せるのです」
「なんだって…」
跳月十五は手にしていた磁石を机のふちに置き、因幡リオの話に垂れた耳を傾けていた。

「そうです!二人そろって物凄い跳躍を見せるんですよ!その高さは彼らの身長以上に跳びあがるんです!!」
「まさか…そんなことできるわけないだろっ」
「まさかじゃないです!でなければ、継続して縄を回転させることが出来ないじゃないですか!物理的に!!
しかも、彼らは普通に跳び続けて顔をけっして崩すことはありません!御覧なさい、この無邪気な顔を!」
「う…。確かにこの顔は何の苦痛も疲労も感じているように見えないな。乳酸は彼らの脚に溜まっているのだろうか?」
「さらに驚いたことに、何度も何度も金メダル級のジャンプを子どもの頃から繰り返しているんですよ!」
因幡リオはロールちゃんを握り締めたまま話を続ける。
「彼らの暮らす村のうさぎは皆、同じような耳を持ちます。このことはこのサイトで確認することが出来ます。
ということは…彼らは代々あのような超人的ジャンプを軽々とこなす。そう、かれらは神の領域を超えたうさぎ…」
「なんだと、そんな…ばかな!」
跳月十五が立ち上がったはずみで、机のふちに置かれていた重い磁石が跳月の足に落ちた。
が、クロールちゃんたちのような跳躍をすることは出来なかった。


おしまい。
602わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/17(火) 20:04:59 ID:o4Uv32TG
ごめんなさい、と言うしか…。反省します。投下終わり
(別にヤ○ザキの回し者じゃありません)
603創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 20:08:01 ID:qHf4W5T1
なんだこのキバヤシ理論w
604創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 21:24:03 ID:KBZf7JA4
「ちょっと、ふたり、これを着てくれまいか? いや、なに、ちょっと
 したことだ。 うむ『かくかく』と『みるくろーる』だ、いやいや、
 恥ずかしくないぞ、なかなか似合っているぞ、うんうん」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00952.jpg

うさ+うしというパッケージの妙な凶悪さにやられて思わず描いてしまっ
たのでした。 かなり甘くて一本で満足です。
605通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:46:06 ID:S9CiZPdN
ヤマザキロールちゃんを一人占めしようとして喉を詰まらせかけた俺が通りますよ……。

今回はBlue sky 〜この青い空に春を呼ぶ〜 の後日談的な話を投下します。
結構長いので、暇な方は出来れば支援をお願いします。
606通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:47:07 ID:S9CiZPdN
「たーのもー!」

とうとつに戸の向こうから響いた声に、
俺と白頭は思わず議論を中断し、声の方へ振り向いた。

我が飛行機同好会の部室兼作業小屋、
何時もの通り、俺と白頭が新入生の勧誘方針の事について言い合いしていた時の事である。

お互いに無言で顔を見合わせた後、俺は白頭に「お前が応対しろよ」と目配せをする。
しかし、彼女から帰ってきたのは「嫌よ。アンタが行きなさい」と言う目配せ一つ。
そのまま暫く無言で睨み合った後、先に折れたのは俺の方であった。

「はいはい、どなたですか……?」

かなり面倒臭い気分を感じつつ、席を立った俺は戸の前に立つ。

ここ、部室兼作業小屋を使い始めてから、時折、こう言う風な客がやって来る事がある。
……そう、何を如何言う風に勘違いしたのか、ここを何かしらの武術の道場と思いこんでくる客が。
そう言う客がくる度に、俺は一々ここが道場で無い事の説明に追われる事となる。

酷い時となると、勘違いしたのは相手の方だというのに、
あろう事か「こんな所に如何(いか)にもな建物を建ててるのが悪いんだ」と逆ギレする人も居るのだ。
この前なんか、空手道場と勘違いした犀の道場破りが逆ギレした挙句、作業小屋で暴れる直前まで行った事があった。
あの時、たまたま通りかかった警官二人が止めて居なければ、今の作業小屋は跡形もなく壊滅していた事だろう。
その時の白頭が言った「勘違いした挙句逆ギレって……何処の子供よ?」と言う言葉が妙に印象に残っている。

……一応、そんな勘違いを防ぐ為に玄関先に「飛行機同好会部室&作業小屋」と言う大きな看板を掛けているのだが。
それでもここを武術道場と勘違いして道場破りに訪れる人が、未だ後を絶たないでいる。

やっぱり、ここがかつてはじいちゃんの道場だった事の影響なのだろうか……?
武術家としてはそんなに有名じゃない筈なんだけどな、俺のじいちゃん。

まあ、それは兎に角。
さっきの掛け声からして、今回も勘違いした何やらかんたら流の格闘家の人であるのは間違い無いだろう。
後ろを振り向いて見れば、白頭は既に「面倒はゴメン」とばかりに作業小屋の奥の機材の影に引っ込んでいる。
機材の陰から見える、時折揺れる彼女の尾羽が恨めしいと感じるのは俺だけではない筈だ。

さて、今回は逆ギレをされない様に上手く言いくるめないとな……。
そう頭の中で溜息混じりに思いつつ、俺は戸を開ける。
607通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:48:14 ID:S9CiZPdN

「………?」

戸を開けて最初に見えたのは、壁だった。
良く見ればそれが壁ではなく、ジャージの布地だと分かった俺はその正体を確認するべく、ゆっくりと視線を上へと向ける。
しかし、向けた目線の先にあったのは、ジャージの壁から突出る横に二つ連なった丸みのある大きな出っ張り。
はて? 何だろうか、これは……?

「ここは飛行機同好会の部室と聞いたが、それで正しいか?」

唐突に上から降ってくるやたらと澄んだ声。
壁が喋った!……じゃなくて、目の前にあるのはとてつもなく大きな人か!?
それに気付いた俺が2、3歩後へ下がって、ようやく部室の玄関先に立つ人の姿を確認できた。

着ている陸上用ジャージから見て、恐らくは俺と同じ佳望学園の高等部であろう。
肩くらいの長さの金髪をゴムか何かで後に縛った、大まかに見て身長2m以上はあろうかと言う白虎の女性(!)
それが部室の玄関先で、腰に手を当てながら仁王立ちしていたのだ。
そんな彼女の問いかけに対して、俺が無言で首をカクカクと縦に振るしか出来なかったのも当然であろう。

「そうか、ならば良かった。 では、早速であるが本題に入るが、良いかな?」
「あ、ああ……」

驚きの余り、震えた声しか出せない俺の返答を彼女は肯定と取ったのか、
如何言う訳か大きく胸を張って言う。

「この私、虎宮山 鈴鹿(こみやま すずか)を飛行機同好会へ入部させてもらいたい!」

…………。

「……はぁ?」

ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
『とてつもなく大きな白虎の女性が我が飛行機同好会に入部を申し入れてきた』
な…何を言っているのか良く分からねーとは思うが、俺も何が起きたのか分からなかった。頭がどうにかなりそうだった…
勘違いした道場破りだとか、腹黒な新聞部部長だとか、そんなチャチな物じゃ断じてねぇ!
もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ…!

「ちょっと、ソウイチ、何をボッと突っ立ってるのよ!? 新入部…員……じゃ……?」

呆然とする俺への白頭の叱咤の声が、言葉の途中で細まり、消えてゆく。
多分、白頭も部室の玄関先に立つ彼女を見て、本気でビックリしたのだろう。
後ろを振り向いてみれば、アホみたいに目をかっ開いた白頭が嘴をぱくつかせている所であった。
608創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 01:48:51 ID:116gn95k
支援
609創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 01:49:26 ID:116gn95k
  
610通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:50:45 ID:S9CiZPdN

「えっと、粗茶だけど……」

それから数分後、未知との遭遇(違う)からようやく平静を取り戻した白頭が、
テーブルの席に付いた鈴鹿さんへ来客用のお茶を差し出す。

「ああ、有難う……えっと」
「アタシの名は白頭 空子。 適当に空子と呼んでも構わないわよ」
「なら空子先輩、お茶、有難く頂くよ」
「せ、先輩…ね?……はは……」

自分よりも大きな女性に先輩と呼ばれ、白頭は思わず苦笑い。
まあ、白頭自身も結構背が高いのだが、その白頭と比べてみても虎宮山さんは10cm以上も背が高いのだ。

……ちなみに、このテーブルは作業用にも使われる結構大きな物なのだが。
鈴鹿さんが前に座ると、どう見ても3畳半の部屋に置かれているような折り畳み式の座卓の様にしか見えない。
う〜む、とんでもないくらいにビックな新人さんが来たもんである。さて、如何するべきか……?
ま、とりあえず、先ずは入部すると考えるに至った理由を聞いてみるとしよう。

「あの、鈴鹿さん……」
「他人行儀に振舞わなくても良い、鈴鹿と呼び捨てにしてもらっても私は構わん」
「なら、鈴鹿…さん。 最初に、ここ飛行機同好会に入部したいと思った、その理由を聞かせてくれませんか?」

俺からさん付けされた事に対して一瞬だけ微妙そうな表情を浮かべた後。

「理由と言うと…そうだな、これだ」

鈴鹿さんは肩に下げたスポーツバッグから、
四つ折に折り畳まれた新聞と思しき紙を取り出し、意外と丁寧な手つきでテーブルの上に広げる。
……俺と白頭は何気にそれを覗き込み、

ぴ っ し !

――心の内から何かが砕ける音を立てて、その場で硬直した。

「少し前にこの新聞を見てな、私は甚く感動を覚えたのだ」

言って、鈴鹿さんが指差すテーブルの上に広げられた新聞。
それは2週間ほど前に発行された、俺を抱き寄せる白頭が写った写真が一面にでかでかと載っている学園週報!
発行された当時、他の生徒の目に入る前に俺と白頭が手分けして全て剥がして周った筈のそれである。

「それにしても、烏丸と言う上級生はなかなか良い人だな。
今までやっていたクラブをある事情で辞めた後、次にどのクラブに入ろうかと迷っていた私へ、
彼女はこの新聞を見せながら飛行機同好会に入部するように勧めてくれたのだ」

か、烏丸先輩の仕業か……。
道理で、俺と白頭が全部処分した筈の新聞が今、ここにある訳だ。
ったく、烏丸先輩は一体何のつもりで…………いや、考えるのは止めておこう。
どうせ、考えた所で頭痛がわき上がるだけで、納得できる結論なんて出そうになさそうだし。
無論、納得できる結論が出たとして、それで如何しろと言われると……何も出来ないだろうな、確実に。
611創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 01:52:20 ID:116gn95k
支援
612通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:53:31 ID:S9CiZPdN

「私は本当に感動した! 心の傷によって空を飛べなくなった幼馴染を助ける為。
あらゆる努力を惜しまず、更に怪我する事すらも厭わず、遂には幼馴染の心の傷を克服させ、
再び空へ飛べるようにした風間部長に!」

一通り叫んだ後、鈴鹿さんはふと、周囲を見まわして言う。

「……所でだ、その風間部長なのだが、今は何処に居るのだ?
君達部員の様子からすれば、直ぐ近くに居るのは間違い無いようだが……」

……おい?
いや、まあ、そりゃ確かに今、テーブルに広げられてる新聞の写真じゃ、
俺の顔は白頭の身体で隠れて見えないけどさ……。

「なあ、私の前に居る中等部の君、風間部長の居る場所を教えてくれないか?」
「…………」

ひききっ、と引きつる俺の顔、同時に後ろの方で「ぶっ」と白頭が噴出す声が聞こえる。
……ここだよここ、今、アンタが話し掛けてる中等部の人間がその風間部長だよ! つか、白頭、笑うんじゃねぇ!
前々からクラスメイトから、白頭と俺の様子を『蚤の夫婦』とからかわれる事が多かったけど、
遂には全然部長として見られなくなるまで来たか! こん畜生! つか、豆チビで悪かったな!(←言ってない)

――と、今すぐ怒鳴り散らしたい気分を必死に押さえつつ、
俺は飽くまで平静を装い、未だにきょときょとと『風間部長』を探しつづける鈴鹿さんへ言う。

「あの……俺が、その部長の風間 惣一なんだけど……?」
「何……?」

なんだ、その凄く信じられない物を見るような眼差しは! 瞳孔を細めてまで驚くなよ!
くっそー、何だか俺の後ろの方で白頭が必死に笑いを堪えているみたいだし。完全に赤っ恥じゃねえか!

「君が、その風間 惣一なのか?」
「ああ、そうだよ。……どう見ても中等部にしか見えないけど、これでも俺は立派な高等部だよ」

問い返す鈴鹿さんに、俺は険悪な物を混じらせた眼差しを向けつつ答える。
すると、やおら鈴鹿さんは席から立ち上がり……

「そうか、君だったのか! 会いたかった!」
「――へっ? ちょ、止めっ…く、苦しい……ぐえぇぇっ!?」

――いきなり両腕で俺を抱き寄せた。
彼女の毛皮の感触と顔面に押し付けられた大きな乳房の柔らかさを味わったのはホンの一瞬だけ。
その次の瞬間には、俺は酸欠&全身の骨が奏でるミシミシメキメキと言う大合唱を味わう事になった。
つか、マジで……シヌルっ!?
613通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:54:26 ID:S9CiZPdN

「あ、ちょっと羨ま…じゃなくて、ソウイチが苦しがってるじゃない! 早く離して!」
「……あ、済まん。つい」

そのまま俺の意識がお花畑へ旅立つ寸前。
ようやく事態を飲み込めた白頭の制止によって、俺の身体は無事に鈴鹿さんの両腕から開放された。
そして、暫くの間、肩でゼヒゼヒと深呼吸した後、

「お……おんどぅるぇあいぎなりなにしゃがりゅんでぃすか!」
「ちょっと、オンドゥルが入ってるわよ! 落ちついて、ソウイチ!」

がばぁっ、と立ちあがり鈴鹿さんに食って掛かる俺へ、白頭が慌てて止めに入る。

「いや、その……本当に済まない」

そんな怒れる俺の迫力に圧されたのか、
鈴鹿さんは申し訳なさそうにしゅんと身体を縮み込ませて謝罪する。

「……私は感極まると誰彼構わず抱き締める癖があってな……。
実は言うと、今日の昼頃にも。音楽の授業で親切にしてくれたヨハン先生を保健室送りにしたばかりなのだ。
……私としては、この癖を為るべく治したいと思っているのだがな……」

……何と言うか、男性にとって嬉しいと言うか迷惑というか訳の分からん癖だな……。
つーか、ヨハン先生、あんたって人は……教師として色々な意味でダメだろ?

「……こんな私だが、どうか、どうか君達の飛行機同好会に入部させて欲しい!
力仕事だろうが汚れ仕事だろうが、頼まれれば私は何だってやる、だからこの通りだ!」
「いや、あの…鈴鹿さん? 土下座してまで頼まなくても……ねぇ、如何する、ソウイチ?」
「如何するって言われても……」

床に頭を摩り付けながら頼み込む鈴鹿さんを前に、
俺と白頭が色々な意味で困惑しつつ顔を見合わせた矢先、

「鈴鹿! ここに居るのは分かっているぞ!」

――外からの誰かの大声が、部室内に響き渡った。
614通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:57:49 ID:S9CiZPdN

「あの声は……まさか!」
「あ、ちょっと、鈴鹿さん!? 何処行くのよ!」
「おいおい、一体何なんだよ……ったく!」

声を聞くや鈴鹿さんはいきなり立ちあがり、外へと走り出す!
無論、何が起きているのかが気になった俺も白頭もその後に続き、部室兼作業小屋から出る。

「ふん、やっと出てきたか……」

部室前に腕組みして仁王立ちで立っていたのは、
髪形こそショートヘアと違うが、鈴鹿さんとほぼうりふたつの姿をした白虎の女性の姿!
彼女は出てきた鈴鹿さんの姿を確認するなり、びっ、と指差して言う。

「ずいぶんと探したぞ、鈴鹿!」
「やはり、貴方だったか……」

それに応える様に、鈴鹿さんは不機嫌に尻尾を揺らし、ぎりりと奥歯を鳴らして呟く。

「姉さん!」

……って、姉さん?

「あの人って……?」
「虎宮山 鈴華(こみやま、れいか)……私の双子の姉。
そして、中等部の頃から女子プロレス部の部長をやっている実力者だ」

俺と同じ疑問を感じたらしい白頭の問いに、何処か忌々しげに言う鈴鹿さん。
なるほど、彼女の姿が鈴鹿さんとほぼうりふたつなのは双子だからか。
まあ、人間の俺の目からでは、同じ種のケモノの見分けなんて殆どつかないんだけどな……。
鈴華さんは1歩ずいと進み出て、鈴鹿さんを睨み据えるように言う。

「鈴鹿……突然、我が女子プロレス部を辞めるだけに留まらず、
まるであてつけの様にこんな端っ葉な弱小文科系クラブに入るとは……一体、如何言うつもりだ?」

くぉら! 弱小文科系クラブで悪かったな! そりゃ部員は俺含めてたったの二人だけどな!

「それは前も話したはずだ。 鈴華姉さんは今まで自分の影武者の様に私を扱ってきた。
しかし、私はもうそんな生活は懲り懲りだ。 そう、私は私自身で決めた道を行くと決意したんだ!」

対する鈴鹿さんも負けじと、鈴華さんを睨み返して声を張り上げる。

「それに私は知っているぞ! 私が姉さんの代わりに必死に戦っている間、
姉さんはあろう事か、『連峰』で期間数量限定スイーツを食べていたそうじゃないか!」
「ち……ばれていたか。 ……だが、それだけで辞めるとは。鈴鹿、お前は其処まで器量が小さくなったか!」
「をいをい、それは充分に辞められても文句が言えないレベルなんだが……?」
「それ以前に、器量云々とか言う問題じゃないでしょ……?」

呆れ混じりにツッコミを入れる俺と白頭。
しかし、俺と白頭のツッコミが聞こえているのか聞こえていないのか、鈴華は更に言葉を続ける。
(もう、この時点で鈴華に対してさん付けは止めた)
615創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 01:59:49 ID:pneIUTqM
616通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 01:59:50 ID:S9CiZPdN

「まあ良いさ、お前が飽くまで他のクラブに逃げると言うならば、私は強硬手段に訴え出るまでだ!」
「強硬手段……何をする気だ、姉さん!」
「ふん、決まっているだろう!」

鈴鹿さんの問いかけに、鈴華さんは大きく胸を張って、

「お前が入部するクラブというクラブの部室の入り口の前で、私がずうっと爪研ぎをしつづけてやる!」
「くっ……なんて恐ろしい強硬手段を……!」
「ヲイ。 そりゃ確かにある意味じゃ恐ろしい強硬手段だけど……それって虚しくないか?」
「というか、鈴鹿さんもまともに恐ろしがらないでよ……って言ってももう二人とも聞いてなさそうだけど」

やっぱり二人ともツッコミを聞いてなかったらしく、鈴鹿さんは決意を秘めた眼差しを鈴華へむけて言う。

「しかし、それでも私はプロレス部に戻らないと決意したんだ! だからもう私に指図しないでくれ、姉さん!」
「ふん、どうやら交渉は決裂、と言った所か……仕方あるまい」

言って、鈴華はやおら右手を上げてぱちりと爪を鳴らす。
それを合図に、周囲の茂みから鈴華と同じジャージ姿の熊やら牛やら蜥蜴やらの女性達がゾロゾロと出てくる。
彼女らはみな、女子プロレス部に所属しているのか、いずれも身長が俺より30cm以上も大きかったりする。

「こうなれば、無理やりにでも連れ戻さなければならん。覚悟は良いな、鈴鹿!」
「ちっ、やはりそう来たか。……風間部長! 空子先輩! 危ないから下がっててください!」
「言われなくても」
「分かってるわよ」

鈴鹿さんに言われるまでもなく、俺は白頭の翼によって作業小屋の屋上へ退避済みである。
何せ、部室から出た時点で、茂みに隠れているつもりの身体を丸めた女子プロレス部員達の姿がモロに見えてたし……。
多分、こうなるだろうなぁとは思ってたけど、案の定だったよ……。

少し薄情な気もするが、所詮は文科系の俺と白頭が戦いに加わった所で、逆に鈴鹿さんの足手まといになりかねない。
下手すれば人質にされかねないし、それ以前に白頭が怪我するような事があったら目も当てられない。
まあ、そう言う考えもあって、俺と白頭はさっさと退避させてもらった訳である。

俺達の退避を確認した鈴鹿さんは前へ向き直り、

「姉さん。言っておくが、私を力で捻じ伏せようとしても簡単には行かんぞ!
今まで姉さんの影武者として戦ってきた分、私自身の実力も折り紙付きと言う事になるからな」
「ふん、その減らず口が何時まで持つかな?……掛かれっ!」

鈴華の号令と共に、部員達が鈴鹿さんへ殺到する!
―――そして、乱戦は始まった。
617創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:00:09 ID:pneIUTqM
618創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:00:13 ID:116gn95k
  
619創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:00:25 ID:pneIUTqM
620創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:00:40 ID:pneIUTqM
621創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:00:54 ID:pneIUTqM
622創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:01:42 ID:pneIUTqM
623通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:02:09 ID:S9CiZPdN

ずがしゃぁぁぁああん!

大きな人影が子供に投げられた玩具の人形の様にぽぉんと宙を舞い、凄まじい音を立てて植え込みへ落下する。
鈴鹿さんの投げっぱなしジャーマンによってブン投げられた、名もなき熊の女子プロレス部員の辿った末路である。

戦いが始まった当初。
俺も白頭も、相手の数が数だし、鈴鹿さんも流石に持たないだろうと思っていた。
無論、それでもしもの事があれば直ぐにでも誰かに連絡が取れるように。それぞれ携帯を用意していた、
のだが……それははっきり言って必要なかった。

「うぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

鈴鹿さんは強かった。――いや、訂正しよう。鈴鹿さんは凄まじく強かった。
もうそれこそ、並み居る敵をちぎっては投げちぎっては投げの獅子奮迅の大活躍。(まあ、鈴鹿さんは虎人だが)
俺よりも、いや、下手すると空子よりも背の高いケモノが、まるで玩具のようにぽんぽんと宙を舞って行くのだ。
無論、鈴鹿さんのプロレス技によって、である。

しかし、敵もさる者引っかく物で、対する女子プロレス部員達は何度もプロレス技を食らって投げ飛ばされても。
すぐさま不屈の闘志と根性で立ちあがり、負けるかとばかりに果敢に鈴鹿さんへと挑みかかって行く。

……こんな調子で、鈴鹿さんVS女子プロレス部員一同の戦いは約30分近くに渡って続いていた。

「ねえ、この戦いは何時終わるのかしら……?」
「さあな? どっちかがヘトヘトになるまで続くんじゃないか?」
「んー、なら、アタシは一時間後に100円と言った所かしら」
「じゃあ、俺は30分後に50円で」

もう、この時となると俺と白頭は観戦するのも飽きてしまい、何時戦いが終わるかの賭けを始めていたりする。
……あ、また一人、ジャイアントスゥイングで投げ飛ばされた。尻尾が長い蜥蜴人だから投げやすかったのかなぁ?

「ねえ……ソウイチ? 今、気付いたんだけど……」
「ん? なんだ、白頭?」
「何だか……だんだん闘いの場所が、この部室兼作業小屋に近づいているみたいなんだけど……」
「……げ、ホントだ」

白頭に言われて見下ろした先には、乱戦が作業小屋のもう直ぐ近くにまで迫ってきている所だった。
をいをい、このままだと下手すれば作業小屋が闘いの舞台になりかねないぞ?
いや、それ以前に、外に飛び出した時、作業小屋のドアを開けっぱなしにしてたんだ。
多分、このまま戦いが続けば、確実に作業小屋の中が闘いの舞台となるだろう。
もし、そうなれば、作業小屋に置かれている『ブルースカイ]』が大変な事に……!

「拙い……早く止めないと!」

そう考えると、俺は居ても立っても居られなくなり、部室兼作業小屋の屋根から下りようとする!

「ちょっと、ソウイチ、何をする気なの!? 危ないから降りるのはやめて!」
「止めるな、白頭! このままだとブルースカイが!」

がしゃぁぁぁぁぁん……。

白頭の翼手の羽毛に顔面を塞がれる形で俺が足を止めた矢先。
部室兼作業小屋の中から、俺にとってもっとも聞きたくない音が響き渡った。
624創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:02:16 ID:116gn95k
  
625創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:04:41 ID:116gn95k
  
626通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:04:44 ID:S9CiZPdN

「あの音って……」
「まさか……まさか!」

その音に動きを止めた白頭の一瞬の隙を突いて、
俺は彼女の翼手を振り払うと、呟きに焦りを入り混じらせつつ屋根を蹴って、地上へと降り立つ。

「うう……部長、酷すぎっス……」
「……あたし達、こんな役目で終わり……?」
「まさに……かませ犬、ね……」

俺が屋根から飛び降りた時には、既に粗方の戦いは終わっていたらしく、
女子部員達が木に引っ掛かっていたり、茂みに上半身を突っ込ませたりと思い思いの姿でうめいていた。
しかし、俺はそれを一瞥する余裕すらなく、ドアが開きっぱなしの部室兼作業小屋へ突入する!

「くっ……」

俺が中に入った時、部室兼作業小屋を舞台にした戦いは既に佳境を迎えていた。
部室の奥のほうでガクリと膝を付き、疲労を隠せず荒い息を漏らすのは鈴鹿さん。

「最初から、これが狙いだったか、鈴華姉さん!」
「ふん、その通りだ。 流石の私でも、実力がほぼ同じなお前相手では、こちらが負ける可能性があるからな。
それを避ける為、予め我が女子プロレス部員全十二名を先にぶつけてお前の疲労を誘い、
こちらにとって有利な状況に持ち込んだ訳だ」

鈴鹿さんの怒りの声に、その前に立つ鈴華はしてやったりな笑みを浮かべて言い放つ。
……体育会系な人の割に悪知恵は働く様である。

「だが、私はそれでも、姉さんの思い通りににはならない!」

牙を剥き出しにして咆哮を上げ、鈴鹿さんは疲労に侵された身体を奮い立たせる!
と、其処でようやく、俺は鈴鹿さんの向こうにある物を目にする事が出来た。

それは、胴体の半ばでへし折れた『ブルースカイ]』の哀れな姿。
多分、鈴華によって鈴鹿さんが投げ飛ばされたその際、それの巻き添えを食ってしまったのだろう。

ぶちむ

……その時、俺の心の中の何かが、決定的な音を立てて切れた。

「まだ減らず口を叩ける余裕があるようだな。鈴鹿。
我が妹ながら中々の根性だよ。部員達にも見習わせたいくらいだ」
「その部員達を…捨て駒にした者が言う台詞か! 姉さん!」
「捨て駒ではない、部の為に懸命に戦ってくれた勇士達、だ……まあ、物は言い様だな?」
「くっ、何処までも卑劣な……」

何やら勝手に作業小屋の中でドラマを作り出している姉妹を余所に、俺は静かにその準備を整える。
これを繋げて、更に変圧器にかませて、コンデンサー接続、動作チェックもOK……。
627通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:06:14 ID:S9CiZPdN

「さて、お喋りもここまでだ、鈴鹿」

勝利を確信しているのか、鈴華は余裕綽々とばかりに悠然と構えをとるー―
と、その時。

ばちばちばちばちっ!!

「そろそろ勝負をはびゃばばばばばばばばっばばばっ!?」
「……!? 姉…さん?」

突然、何かが弾ける様な音が鳴り響き、鈴華は台詞の途中から奇声に変えて身体をびくびくと痙攣させる。
無論のこと、鈴鹿さんは何が起きたのかも分からず、目を丸くして呆然と呟く。

「……ったく、姉妹喧嘩なら余所でやってくれ」

やがて、頭から煙を上げながらばったりと倒れ伏し、
そのまま気を失った鈴華の向こうに立っていたのは、不機嫌な表情を浮かべる俺の姿。
その絶縁手袋をはめた手に持つのは、様々な機器を介して伸びる電気工事用に使われる赤と黒のプラグ。

「風間部長、何時の間に!? それに、姉さんに一体何を?」
「あんたらが自分に酔ってる間に、軽く高電圧をかましてやっただけだ」

プラグの間でバチバチと放電させつつ、俺は鈴鹿さんの質問に答える。
――俺は姉妹が自分に酔っている間、『ブルースカイ』に使われている大容量バッテリーに変圧器をかませ、
更にその回路へコンデンサーを加えて瞬間電力を増大、その上でこっそりと鈴華の後へ周りこみ
彼女の死角からその尻尾へ高電圧の流れるプラグを押し当ててやったまでである。

その場の怒りに任せて回路を組んだから、プラグ間に何ボルト発生するかとか一切考えていなかったのだが。
このプラグの間の放電具合から見て、発生している電圧は軽く数千ボルトは越えているみたいである。
……まあ、彼女はガタイが大きいし、押し当てたのもホンの数秒だから死にはしないだろう……多分。

「済まない、風間部長……危ない所を助けていただいて」
「助けるつもりなんてねーよ。 俺は単に、飛行機が壊された事に腹を立ててやっただけだ」

申し訳なさそうに礼を述べる鈴鹿さんに、
俺は未だに気を失っている鈴華(流石に数千ボルトはちょっとマズかったか。数千ボルトは)を見下ろし、
ごく当然とばかりに返す。

「ソウイチ! 何かさっき凄い音がしたみたいだけど、大丈…夫…?」

と、其処でようやく部室へ入ってきた白頭が、頭からぴすぴすと煙を上げて気絶する鈴華を見て絶句する。
俺は、ふぅ、と大きく溜息を漏らし。鈴華を指差しつつ呆然と立ち尽くす白頭へ言った。

「白頭、ちょうど良い所に来た。 取りあえずこの人を縛り上げるの手伝ってくれ」
628創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:06:24 ID:i6Dt6hEW
しえん
629創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:07:15 ID:116gn95k
支援
630通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:08:31 ID:S9CiZPdN
                        ※   ※   ※

「……う…う……ん……はっ!?」

暫く後、意識を取り戻したのか、やたらと乙女チックな呻き声を上げてうっすらと目を開ける鈴華。
慌てて視界を巡らせて周囲を囲む俺達を確認し、自分が縛られている事に気付くと、彼女はがっくりと項垂れた。
無論、女子プロレス部員達も俺の後の方で正座し、顔を項垂れさせている。

「私とした事が……目の前の勝利に気を取られて不覚を取ったか、だが……」
「姉さん……もう良いだろう? 私なんかの為に、これ以上誰かに迷惑をかけるのは姉さんにとっても良くない筈だ」
「ふん、お前には分からないだろうな、鈴鹿。 信頼していた自分の妹に逃げられた姉の気持ちなんか」
「いや、あの……最初に妹の信頼を裏切ったのはあんたの方だろ?」

即座にツッコミを入れる俺、だが、どうやら俺の話は耳に入ってないらしく、鈴華はさらに続ける。

「お前が女子プロレス部を辞めると言い出した時は、正直、私は愕然としたよ。
今まで、同道を歩んできた自分の分身と言うべき妹の心が、何時の間にか私の元から離れていた事に」
「姉さん……」
「笑うが良いさ。 結局、私は失うのが恐かったのだ。 そう、自分の片割れである妹をな?
だからこそ、無理やりにでもお前を連れ戻そうとした」

言って、鈴華は色々な思いを吐き出す様に、ふう、と深い溜息を漏らし。

「そしてその結果、こうやって見事なまでに失敗した。 情け無いな、私は」
「…………」

自嘲気に笑う鈴華を、鈴鹿さんは只、黙って見詰める。
この姉妹の間に如何言う確執があったのかは俺には分からない。
だが、ほんの少しだけ、そう、ほんの少しだけこの姉妹の気持ちも分かる気もする。

姉とは違う道を歩みたいと願う鈴鹿。
血肉を分けた分身と言うべき妹を失いたくないと願う鈴華。

俺の中にも、幼馴染である白頭を失いたくないと思っている自分がおり。
その一方で、そろそろ白頭から自立しておくべきかと考える自分もいる。
果たして、それのどっちが正しいかはまだ分からない。
……だが、何れは俺の目の前の姉妹のように、その結論を嫌でも下さなければならない日がくるだろう。
その時、俺はどちらを選択するだろうか……?

「だが、私はまだ諦めはしないぞ! 鈴鹿!
お前が女子プロレス部に戻ってくるその時まで、私は何度でも連れ戻しにくるぞ!

そんな俺のしんみりとした気分をブチ壊したのは。何処までも諦めの悪い鈴華の叫びだった。

「ま、まだ諦めてなかったのね……?」
「当たり前だ! 私はネバーギブアップ精神を何よりも大事にしているのでな!」
「ね、姉さん……」

呆れ果てる白頭にごく当然とばかりに返す鈴華、そしてそんな姉を前に鈴鹿さんは余りの情け無さで涙を流す。
ふ……ふふふふふ……そうくるなら俺にだって考えがあるぞ?
631通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:09:56 ID:S9CiZPdN

「ちょっと、鈴鹿さんのお姉さん?」
「なんだ? お前も私に諦めろというつもりか?」

おもむろにポンと肩を叩いて言う俺に対して、鈴華は牙を剥き出しにして威嚇する。

「言っておくが、私は誰に言われようとも、簡単には諦め……」
「良 い か ら と っ と と 諦 め ろ !」
「…………」

が、すぐさま、俺に全く目の笑ってない笑顔で詰め寄られ、鈴華は耳を伏せて身体を引かせる。
ちなみに、俺の両手にはバチバチと放電するプラグを持っていたりする。

「イや、その、まあ、其処まで言うなら諦めてやっても良いかな―とか思ったり?」
「良し、分かれば宜しい」

よほど必殺エレクトリッククラッシャー(今、命名)を食らうのが嫌だったのか、鈴華はあっさりと態度を翻した。
良く見ると、既に彼女の尻尾は股の間に隠れていたりする。(やはり、ちょっとやり過ぎたかな?)

「んでもって、あんたら女子プロレス部員一同!」
『…………っ!』

いきなり呼ばれて、まともに身体をびくつかせる一同。

「あんたらもプロレスをやってるならば、部長の暴挙を力ずくで止めるぐらいの気概を見せろ!」
『は、はいっス!』
「分かったなら、とっととこの分からず屋の部長を連れて帰った!」
『りょ、了解っス!』

吼えるような俺の啖呵に、部員達は一様に尻尾を丸め怯えた表情を浮かべた後。
慌てて縛られた鈴華を担ぎ上げると、そそくさと部室兼作業小屋を後にしていった。

「全く、これだから融通の聞かない人ってのは困るもんだよな……」
「あ、うん……ソウイチって、実は怒ると恐いのね……?」

プラグを片付けた後、彼等の去っていった方を眺めながらぼやく俺に、白頭は僅かに声を引き攣らせながら問う。

「人が折角苦労して組み上げた物を理不尽に壊されたら、誰だってそうなるさ」
「それでも、強者揃いの女子プロレス部員を一喝して怯えさせるなんて……凄いと思うけど……?」
「いや、実際言うと、これで俺の啖呵が効かなかったら如何しようかなー?とか思ってた訳で……」
「なぁんだ、って事はあれはその場の勢いに任せたハッタリだった訳ね?」
「そう言う訳…我ながら情け無い話さ」

言って、恥かしそうに頭を掻く俺に、白頭は何処か楽しそうに笑う。
さて、これで一つの問題は終わった、と。次は……
632創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:10:05 ID:i6Dt6hEW
  
633創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:11:44 ID:116gn95k
  
634通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:12:26 ID:S9CiZPdN
「その……私の姉の所為で、風間部長と空子先輩には多大な迷惑をかけてしまった……本当に済まない」

俺と白頭が振り向いた先には、申し訳なさそうに身体を縮み込ませて正座し、謝罪する鈴鹿さんの姿。
彼女の大きな身体は、この時ばかりは俺よりも大分小さく見えるような気がした。
そんな彼女の前へ、俺は腕組みしながら歩み寄り、

「謝るんだったら、先ずはその誠意って奴を見せてもらいたいもんだな?」
「……誠意、とは? まさか、壊した飛行機の修理代か? しかし、私にそんな金は……」
「違うな。 俺に見せて欲しい誠意ってのは金なんかじゃない」

鈴鹿さんの言葉を遮って、俺は壊れた『ブルースカイ]』を指差し。

「誠意ってのは、金とかそう言うものじゃなくて、先ずは行動で示す物なんだ」
「……え?」

俺の言っている意味が分からず、疑問符を漏らす鈴鹿さん。
だが、その彼女を放って、俺は飛行機の方を向きながら白頭へ話しかける。

「しっかし、胴体フレームがこうも見事にへし折られちゃあ、修理に結構手間が掛かりそうだな……?」
「? そ、そうね……?」

最初こそ、白頭は俺が言いたい事が分かっていなかった様だが、
暫く俺の顔を見てようやくその意を汲み取ったらしく、俺と同じく飛行機の方を見やり、翼手を腰に当てて話を続ける。

「これくらい壊れたらさ、直すのって結構力仕事じゃない? 胴体のパーツには結構大きな物もあるみたいだし」
「そうなんだよな。俺って身体が小さい分、力もそれ相応しかないだろ?
だから、大きな物をえっちらおっちらと運ぶのは結構大変なんだよ」
「私も、重量物を手で持つには不慣れな鳥人だからね、これを直すとなると本当に大変そう……」

一通り話し合うと、お互いに深い溜息を漏らす。
そして、俺と白頭はやおら鈴鹿さんの方を見やると、声をハモらせて言う。

『こう言う時、力自慢の人が居たらなぁ……?』

鈴鹿さんは最初こそ、ぽかんとした表情を浮かべていた物の、
やがて俺と白頭が言いたい事に気が付いたらしく、がばぁっ、と元気に立ちあがり、叫ぶ。

「力自慢ならここに居るぞ! この私ならば重い部品だろうが何だろうがへっちゃらだ!」
「おお、そうか。ならば百人力じゃないか!」
「良かったじゃない、ソウイチ。 これで『ブルースカイ]』も早く直せそうね?」
「ああ、本当だな、白頭」

白頭と手を取り合って喜んだ後、俺は鈴鹿さんの方へ向き直り、

「そう言う訳だ、鈴鹿さん。入部届、あの姉さんに邪魔される前に直ぐに出してくるんだぞ?」
「あ、あ、あ、あ…」

俺の言葉に、鈴鹿さんは喜びの表情のままぶるぶると身体を震わせ始める。
……なにかすっごく嫌な予感。 と言うか、それ以前に白頭がそそくさと俺から離れて……。

「ちょ…す、鈴鹿さん…抱き締めるのは止め―――」
「有難うっ! 風間部長っ!」
「―――ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

そして、案の定と言うべきかなんというか、
鈴鹿さんにフルパワーで抱き締められた俺の悲鳴が作業小屋中に木霊したのだった。
635創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:14:20 ID:116gn95k
  
636通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:16:04 ID:S9CiZPdN
                       *   *   *

「この部品はここで良いのだな? 風間部長」
「ああ、其処に置いててくれ、鈴鹿さん。また何かあったら頼むよ」
「うむ、任された!」
「ちょっと、鈴鹿さん? このバッテリーを作業台まで運んで欲しいんだけど」
「了解した! 空子先輩」

……それから1週間経って。
晴れて正式に我が飛行機同好会の部員となった虎宮山 鈴鹿はその力を遺憾なく発揮していた。
彼女が来てからと言う物、今まで俺と白頭だけでは1週間以上も掛かっていた作業が三日未満に短縮出来るようになり。
我が飛行機同好会の活動は円滑に進められるようになった。

最初の数日こそ、まだ諦め切れてない姉の鈴華が鈴鹿さんを連れ戻すべく何度か訪れた物の、
あの時の俺の一括が効いていたのか、部員達が身を張って鈴華を説得し、あるいは力ずくで止めるようになり、
四日も過ぎようとする頃には、鈴華が訪れる事はなくなっていた。

しかし、それでもまだ諦め切れてないらしく、時折、鈴鹿さんと顔を合わせた時は言い争う事もあるそうで。
……まあ、その問題もいずれは時間が解決する事だろう。と、俺は思っている。

でも、その代わり、新たな問題が俺達に訪れていた。それは……

「風間さん。本日も手伝いに来ました!」
「我々に出来る事なら何なりと言ってくださいっス!」
「もう力仕事から部員の勧誘、果てやあんな事やこんな事も何だってします!」

唐突に俺の背に掛かった声に振り向けば、其処に居たのはガタイの良いジャージ姿のケモノの女性達数人。
そう、如何言う訳か女子プロレス部の一部の部員達が、我が飛行機同好会の手伝いに来るようになったと言う事だ。
一度、白頭が如何して手伝いに来るのかと、彼女達へ訳を聞いてみたそうだが。
その白頭の話によると、

『あの時の惣一さんの啖呵にはしびれたっス!』
『あたしよりも凄く小さな身体で部長をひるませたあの迫力! 本当に尊敬します!』
『一瞬で部長を倒す強さがありながら、あの可愛らしさ! もうたまらないです!』

と、変な意味で俺を慕っているのだそうだ……。
そんな彼女達に、俺は引きつった笑顔を向けながら言う。

「え、えっと……じゃあ、部室の周りの雑草を取っててくれないかな?」
『了解っス! 惣一さん!』

元気の良い返答と共に、彼女たちは雑草取りをしに外へと出ていった。
多分、1時間もしないうちに、この部室作業小屋の周りの雑草は根こそぎなくなる事だろう。

俺は少しだけ恐れている。何時か彼女達の想いが暴走して、俺へ”何か”しないだろうか? と。
まあ、その”何か”については詳しくは言うつもりはないのだが。
637通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:17:15 ID:S9CiZPdN

「何だか、本当に騒がしくなっちゃったわね……?」
「そうだな……本当に騒がしくなったな」
「如何したの? 何だか凄く残念そうな顔をして……」
「……いや、何でもねーよ。……ちょっとションベン行ってくる」
「ちょ、ソウイチ!? まだ話は終わってな……!!」

不思議そうに首を傾げる白頭へ言いかけて、思い止まった俺は誤魔化しついでに外へと歩き出す。
なにやら後の方で白頭が喚いているようだが、ここは暫く無視を決め込むとしよう。
どうせ、素直に言った所で、恥ずかしいし、また馬鹿にされそうだからな。

二人で居る時間がだいぶ減ってしまって残念だ、

……なんて。ヨハン先生じゃあるまいに言える筈ないだろう?

そう思いつつ見上げた空は、素直じゃない俺を優しく見守る様に、黄昏色に輝いていた。

―――――――――――――――――――了――――――――――――――――――――――
638通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 02:19:40 ID:S9CiZPdN
以上です。
かくて、部員二人だけだった飛行機同好会に新たな仲間が加わりました。

尚、今回は発案から完成まで僅か二日余りの作品。
早いときは早い。でも行き詰まるととことんまで遅いのが俺の悪癖……。
639創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:32:04 ID:pneIUTqM
>>604微妙な表情w
640創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:33:24 ID:pneIUTqM
>>638

部長すっげえ
部室の前でつめとぎしてやる攻撃にはワラタw
それ地味にすげー嫌だ
641創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 05:33:08 ID:7qz3Ku1q
(0w0)ウェイ 惣一、そこはエレクトリックサンダーだろうjk…って年寄りネタを振ってみるw
642創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 10:31:44 ID:/wHLQYXO
わしぐらいの歳だとサンダーブレークになってしまうがのう、ふがふが。
643通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/18(水) 14:18:31 ID:S9CiZPdN
後々読んでみたらまたも訂正するべき所が……orz

「あの、鈴鹿さん……」
「他人行儀に振舞わなくても良い、鈴鹿と呼び捨てにしてもらっても私は構わん」
「なら、鈴鹿…さん。 最初に、ここ飛行機同好会に入部したいと思った、その理由を聞かせてくれませんか?」

↑の文の、一番上の行「あの、鈴鹿さん……」 を「あの、虎宮山さん……?」 にして下さい。
見れば分かると思いますが、流れ的に変すぎるので。

それともう一つ。

×多分、1時間もしないうちに、この部室作業小屋の周りの雑草は根こそぎなくなる事だろう。

○多分、1時間もしないうちに、この部室兼作業小屋の周りの雑草は根こそぎなくなる事だろう。

投下前に読み直しているのに間違えが絶えない俺ウボァー('A`)
644創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 15:27:29 ID:i6Dt6hEW
wikiの表示(というかリンクの表示かな)変わった?
前の方が見やすかったなぁ……なんて。変にいじると悪いので何もできませんがw
645創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 17:34:57 ID:PwO5blw6
SS投下お疲れ様です
私にもコレくらいの文章力が欲しいもんです。

>>644
やっぱり見難いですか。
後ほど修正しときます。
それと私は管理者じゃないですが、wikiは色々な人がいじってよくなる物だと思ってるので、
個人的には色んな人にいじくって欲しいなー、と思ってます(私も楽になるんでw)
646創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 22:27:02 ID:6XTpBiaT
647創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 22:52:06 ID:i6Dt6hEW
乳!乳!
と思って気づいたら金髪がないようなw
648創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 22:56:47 ID:6XTpBiaT
ありゃ、ほんとだ、重要な描写を見落としてました。 うわー(悩)
649創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 22:57:48 ID:6nsFuZXU
描き足して誤魔化せばなんの問題もない
650創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 23:23:16 ID:S9CiZPdN
失敗は誰にだってあるさ。
俺だって、SSを投下した後で「げっ、やっちまった!」と今更気付く事が多々あるしw
要はそれを踏み台に1歩前進出来るか否かだ。だから余り気にしない!

絵師さんの絵は何時も楽しみにしているよ。
651創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 23:58:06 ID:pneIUTqM
>>645
いつもありがとうございます
お疲れ様〜


652創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 23:58:45 ID:pneIUTqM
>>646

おっぱい!おっぱい!
653創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 00:27:07 ID:qKiliyPm
654創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 01:20:05 ID:uUU43GDW
やっぱり髪の毛が有るのと無いのとでは雰囲気に差が出てくるなぁ。
絵師さん、GJです。


それと、さり気に間違い探しっぽくなっているのは俺の気の所為?w
655創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 04:24:38 ID:41LjtUtn
おおー髪の毛があると艶っぽくなるねぇ
656創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 15:42:36 ID:+FmTVOq8
虫人でシリアスでめっちゃ長くても(文庫260P)いいの?(´・ω・`)
657創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 16:19:51 ID:G7CJwRR4
>>656
早くアップする作業に戻るんだ
658創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 16:21:37 ID:41LjtUtn
さあ早く読ませるんだ
きりがいいところで区切りつつ連載とかしてくれると嬉しい
659創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 18:51:24 ID:uUU43GDW
>>656
投下を期待しています。

それと、ちょいと試験的に各作者のページにコメント欄をつけてみようと思うんだが。
その事についての賛否の意見があればよろしく頼む。
660創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 19:13:07 ID:41LjtUtn
コメント欄いいんじゃないかな
そこに感想が来たら書き手さんたちのモチベーションも上がりそうだし
661創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 20:23:37 ID:vDLPwzNW
コメ欄、大賛成です。
SSを後から知って、何かコメント残したくてもコメ欄があったらカキコできるしね。
ぜひ、おねえげえします(wikiの編集の仕方わからねえorz)。
662携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/19(木) 21:03:13 ID:/epJk7Ue
コメ欄面白そうだなぁ

流れと関係ない私事で申し訳ないんですが、
名無しで投下したSSを分類し直してくれませんか?

1スレ目の91-95、299、802
2スレ目の324、453、569、592、803、909-912、925
3スレ目の251
4スレ目の318

です。
よろしくお願いしますm(_ _)m
663通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/19(木) 21:03:37 ID:uUU43GDW
コメント欄の設置完了。
それとついでに先日投下した自分の作品で気になった所を修正しました。

報告は以上、投下があるまで名無しに戻ります。
664創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 21:17:14 ID:G7CJwRR4
どこにコメント欄が設置されてるのかわからん……(´・ω・`)
665創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 21:19:35 ID:buRKk3y/
666創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 21:34:14 ID:uUU43GDW
>>662
分類完了! 
一仕事の後のコーラが美味い!

>>665
ウィキの作者別の各作者のページの下に設置してます
一言抜けていた所為で混乱を招いてすまん(´・ω・`)
667創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 21:54:31 ID:G7CJwRR4
>>666
おお、なるほどそっちのページでしたか。さんくす。

>>665
いやwikiの存在の意じゃなくw
668創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 21:57:13 ID:/epJk7Ue
>>666さんありがとう!!
コーラに入れるメントスあげる

つ。
669創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 22:15:49 ID:1EhOSkSj
ラムネもいいよ!
670創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 23:36:49 ID:qKiliyPm
671創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 23:45:46 ID:zk+K58Na
おっぱい!おっぱい!
672創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 01:13:35 ID:t1hXpzE5
673創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 02:13:21 ID:Vm5cpXf9
その後どうなるかわかるだろうに…
タスクはホントにMだなw

コメ欄つくなら絵師さんとか名無しSSとか、名無し投稿作品にもどこかしら
コメントつけられるとこがあったらいいかもしんないね。
難しいか…? どうすればいいだろうか。
674創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 02:18:57 ID:QyKpLwSE
そしてまた騙される無限ループですね分かります
675通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/20(金) 02:40:27 ID:ZMfl3gfY
「これも、駄目か……」

晴天に輝く太陽の日差しに、ほんのりと春の到来を予感させる休日。
とある店先にて、虎宮山 鈴鹿は大きな背を丸めて溜息を漏らしていた。

彼女のその手に持っているのは、最近流行りのカジュアルなデザインをした洋服。
値札に書かれている服のサイズはLLLと通常よりもかなり大きい物であったが、
服に付いたタグに記載される寸法を見れば、彼女が着るにはこの服は少し小さい事は明白であった。

「どれもこれも、私が良いと思ったものは皆、着るには少し小さいな……」

そう、鈴鹿が溜息を漏らすその理由は、自分のサイズに合ったお洒落な服が無いと言う事だった。
身体が幾ら大きかろうとも、力がそこいらの男子よりも数段上だったとしても、彼女はお洒落を楽しみたい女性なのだ。
だからこそ、休日である今日、彼女は自分が着れるお洒落な服を探すべく町内中の洋服店巡りを行ったのだが、
その結果は余り芳しくないのが彼女の現実であった。

「姉さんはジャージで充分だと言うけど、私だって一応はお洒落をしたい年頃の女の子なんだ。
流行の服を着たいし、流行の尻尾アクセを付けてみたいと思う、けど………」

鈴鹿は独り言を漏らした後、視線を落とし、自分の身体を見やる。
身長2メートルを超える彼女のその恵まれた体格は、彼女の望む流行りのファッションを一切拒んでいるのだ。
彼女が思わず溜息を付きたくなるのも無理も無い話である。

「私は一生、お洒落には無縁なのかな……?」

言って、一際深い溜息を漏らした彼女が店を後にしようとした矢先。

「あれ?其処に居るのは鈴鹿ちゃん?」
「あ……飛澤さん……」

背に掛かった声に鈴鹿が振り向いて見れば、同級生の朱美の姿があった。
買い物の最中なのだろうか、彼女は両手にパンパンに膨れ上がった洋裁店のビニール袋を持っていた。
朱美は場にそぐわない人に会ったのがよほど珍しかったのだろう、不思議そうに首を傾げながら言う

「ずいぶんと珍しい所で会うものね、鈴鹿ちゃん。 何か買いたい物でもあるの?」
「いや、その、私は只……」

恥かしくて本当の事が言えず、思わず口篭もる鈴鹿。
その心を表してか、彼女の尻尾が悶える様にグネグネと動く。
それを敏感に察した朱美は、口の端を笑みの形に歪めて言う。

「ひょっとして、自分が着れるサイズのお洒落な服を探してたんでしょ?」
「……っ!!」

余りにもズバリと言い当てられてしまい、鈴鹿は思わず尻尾をピンと跳ねさせて絶句する。
その反応に自分の予想があたった事を確信した朱美は、うんうんと頷きながら、

「まあ、鈴鹿ちゃんもあたしと同じ年頃の女の子だもんね。お洒落をしたい気持ちは充分に分かるわ。
でも、その様子からすると、どれもこれも小さすぎて駄目だった、って所ね?」
「ぐっ……そ、その通りだ……」
「やっぱり、だろうと思ったわ」

2度も言い当てられてしまい、鈴鹿は遂にがっくりと項垂れて自白した。
それを前に、朱美は翼手を人間が腕組みをするように組んで満足げに頷いて見せた。
676通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/20(金) 02:41:43 ID:ZMfl3gfY

(何てことだ、よりによって口の軽い飛澤に知られてしまった……)

多分、明日辺りにはクラス中の笑い者になるだろうな……、と考えた鈴鹿の心は暗い気持ちで一杯になる。
今の自分の気持ちを天気にすれば、黒雲に覆われた今にも空が泣き出しそうな曇り空。
だが、そんな彼女の心の黒雲を吹き飛ばす様に、朱美は太陽のような明るい笑みを浮かべ、

「そう言う時こそ、この朱美にお任せってね♪
今日は良い生地を見つけた所だし、折角だから鈴鹿ちゃんの服を作ってあげるわよ?」
「え、いや、だが……」

いきなりの朱美の提案に、思わず不安を顕わにする鈴鹿。
その不安を紛らわす様に、朱美は右の翼手の人間で言う親指に当たる部分をサムズアップさせて言う。

「心配しなくても大丈夫! 心配ナッシングよ! こう見えてあたし、裁縫はかなり得意なのよ。
実は言うと、今、あたしが着ているこの服もあたしの手作りだったりするのよ? 凄いでしょ」
「あ、ああ……凄いな……」

自慢気に語る朱美に、鈴鹿はうめく様に答える。
言われて見てみれば、朱美の着ている服は今まで見て周ったどの洋服店にも置かれていない服である。
そう言えば、コウモリ族である彼女もまた、その腰まで広がった翼膜の所為で服の選択肢がかなり少ない事だろう。
恐らく、朱美はその選択肢の狭さを自作と言う形で補い、そして広げていったのだ。それもあの翼手で。
そう考えると、暗雲立ち込めていた鈴鹿の心にほんの少し、希望の光が差し込んできたような気がした。

「なあ、って事は、飛澤さんは私の体格に合ったお洒落な服も作れる、と言う訳か?」
「そりゃ勿論よ! 寸法をキチンと測って、それの相応の面積の生地があれば何でも出来るわよ?」
「ほ、本当か!?……な、なら、その……飛澤さん、私に似合った服を作ってくれ、頼む」
「OK! 他ならぬ鈴鹿ちゃんの頼みだもんね。 バッチリジャストサイズな服を作ってあげるわよ!」

言葉に恥かしさを混じらせた鈴鹿の頼みに、再びサムズアップして答える朱美。
そして、朱美はおもむろに鈴鹿の手を取って、店内へ引っ張りつつにこやかに言う。

「んじゃ、先ずは鈴鹿ちゃんの採寸を取らないとね。 そう言う訳で、早速更衣室へレッツGO!」
「な、ちょっと、飛澤さん? まさかここでやるのか!? いや、そう言うのは家に帰った後でも良いだろう? なあ?」

突然すぎる朱美の行動に、鈴鹿は思わず慌てて足でブレーキをかけようとする。
しかし、彼女が幾ら足を踏ん張ろうとも、自分よりも大分小さい筈の朱美の力はそれ以上に強く、
成す術無く引き摺られるしかない。

「鈴鹿ちゃんは大きいからねぇ、腕がなるわよー!」
「ひ、人の話を聞けぇぇぇっ!」

必死の叫びも虚しく、鈴鹿はそのまま更衣室へ連行されて行くのだった。
677通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/20(金) 02:43:43 ID:ZMfl3gfY
                  ※    ※    ※


数日後。

「う〜ん。本当に似合うわよ、鈴鹿ちゃん!」
「…………」

朱美の家にて、何処までも嬉しそうな朱美を前に、鈴鹿は何処までも微妙な気分を隠せずにいた。
確かにこれは今、流行りのファッションだ。……そう、有る意味では。

「なあ、飛澤さん。 何故、この服にしようと考えたんだ? 其処が聞きたいのだが」
「ん? 可愛いでしょ、ゴスロリファッション」

そう、今、鈴鹿が着ているのは裾などの彼方此方にフリフリのフリルが付いたドレスという。
何処か中世の貴婦人を思わせるような幻想的な装いのゴシック・アンド・ロリータ、
所謂、ゴスロリファッションと呼ばれる服装をしていた。
さり気に尻尾にレースの付いたリボンを巻いた辺り、有る意味徹底している。

もし、万が一、この格好を他の者に見られる事があったらと思うと、鈴鹿は自然と頬がカアッと熱くなる感覚を感じた。

「それにしても、我ながらに感心する出来映えね」
「…………」

自作の服の出来栄えにご満悦な朱美を前に、鈴鹿は独り思った。
……ひょっとすると、朱美の頼むのはかなり間違っていたのではないか? と。
そして、同時に思った。 次から頼むときは、デザインを指定した上で頼む事にしよう、と。

……彼女が純粋にお洒落を楽しめるその日は、まだまだ遠い。

――――――――――――――――――――終われ――――――――――――――――――――
678通りすがり ◆/zsiCmwdl. :2009/02/20(金) 02:46:53 ID:ZMfl3gfY
大きい人には大きい人の悩みがあるかなぁ? とか考えていたら、
何時の間にかネタが出来あがっていたので書いて見た。

尚、朱美は一応、普通の服だって作れます。……あの翼手で。
679創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 05:14:24 ID:qCqGZHdr
2メートルでゴスロリワラタ、牛沢先生がライバル視しそうだw
規格外にデカい人はシンプルにシャツとジーンズが無難です。
靴もヤバいです、30cm以上はスニーカーかサンダルのみ、規格品は全滅です。
オシャレしたくとも履けるブーツがレスリングブーツだけじゃヘコみますねー。

>元気の良い返答と共に、彼女たちは雑草取りをしに外へと出ていった。
>多分、1時間もしないうちに、この部室兼作業小屋の周りの雑草は根こそぎなくなる事だろう。
奇麗になった隣に女子プロレス部が部室ごと引っ越してくるヨカーン
680創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 11:32:24 ID:JereSOdY
やっぱりロールちゃん食べると太るよなwww

体にあった服がなかなかない問題は結構多くのキャラが抱えてそう
逆に小さくても困りそうだし
681創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 12:36:20 ID:4sKth/gp
そして出勤してくるいのいんの体型を見て、
自らの未来を思い浮かべ恐怖する女性陣
682創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 14:05:55 ID:LfyJO1SU
Googleで「日本ユニセフ」とキーワード入力すると
親切なGoogle Suggestが以下のリストを出してくれます

日本ユニセフ協会 詐欺
日本ユニセフ協会の謎
日本ユニセフ協会 怪しい
日本ユニセフ協会 黒柳徹子
日本ユニセフ協会 ピンハネ


素敵なGoogle
683創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 17:38:14 ID:Zpl+qPS/
>>681
血管詰まる危険まで冒して生徒たちの反面教師も演じるとは、いのりん教師の鑑だな
684創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 20:16:34 ID:qbgUwn7w
徹子は違うだろ…
685創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 20:39:46 ID:qVYn7mUI
ネギが嫌いな人はどれだけいるのか
犬・猫・狐・ネズミはアウトだよね
686創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 21:03:07 ID:7DhAqQIr
>>684
徹子「ほら!面白い話があるんですって?学園の不良をバッタバッタと倒した武勇伝が!」
獅子宮先生「……(話しにくいなあ)」
687創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 21:48:37 ID:8FzINmYG
>>685
ネギ中毒は動物全般に言えたような…
確か進んで食べるのは人間だけ

そもそもネギ中毒って、ネギやタマネギに含まれるアリシンっていう物質が血液中のヘモグロビンを分解してしまって接種した動物が貧血を引き起こすもののことなんだよね、確か。
人間でも生で5個以上食えばなる人もいるみたい

しかもアリシンって煮ても焼いても分解しないから、タマネギ入りカレーやハヤシライスなんかもペットには御法度みたい…と、犬と暮らす俺がマジレス


因みにアリシンはニラやニンニクなどにも多量に含まれてます

688創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 22:19:27 ID:JereSOdY
アリシンってかわいい名前だね
689創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 22:57:31 ID:DtieZkJk
まあそんなこと言っていたらバレンタインとかとんでもない
イベントになってしまうわけで……。

中毒っていうよりは好き嫌い程度でいいのではなかろうか。
もちろん強制するわけではないですよ。
690創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:04:46 ID:/urMOIzx
みかん好きな猫先生とかもいるしなw
691創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:10:38 ID:JereSOdY
きっと人もサルだった頃には食べれなかった香辛料を逆に好んで食べるようになったように
獣人たちも進化してるのさ
692創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:28:47 ID:nZUoyTOO
アリシン(硫化アリル(タマネギ)や硫化アリルプロピル(ニラやニンニク)は水に溶けるから
一度大まかに切って茹でこぼしておけば大丈夫じゃね?

あと体重の3%以上が危険とされてるけど、これって人間でも中毒起こしかねない量なんだよな
つまるところタマネギだけとかで出さずに普通の食事に混ぜる程度の量ならチョコもネギも大丈夫らしい、
とペットを飼ったことが無い俺のリサーチ結果を提出します
693創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:48:12 ID:7Wpzw1tj
694創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:51:08 ID:Zpl+qPS/
これは……揚げ物解禁フラグ?
695創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:52:03 ID:QyKpLwSE
そしてまたいつものいのりんへですね分かります
696創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:55:02 ID:JereSOdY
ダイエット弁当じゃなくなるのかな、かな?
697創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 00:53:56 ID:w7YtXIbt
698創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 00:55:52 ID:GNuwsaAW
年齢上がってるwww
怖いよサン先生w
699創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 00:56:45 ID:IJ4q969N
成功しても説教だろwwww
700創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 01:07:16 ID:dE8+W0jW
吹いたww
デスノネタはこれだから止められないw
701創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 01:35:22 ID:iyl0Y0Yn
http://www.ne.jp/asahi/come/across/sub14.html

タマネギの「毒性」は煮ても焼いても無効化しない
味噌汁やハンバーガーだって、犬猫にとっては本当はヤバイ
702創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 01:53:08 ID:qV24/88P
こうリアルに描かれると恐えなwww
703創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 06:35:31 ID:jvw3gR5Y
>ネギ中毒
きっと獣人世界にはアリシンが殆ど含まれない品種が存在するんだよ……!
704創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 08:10:34 ID:Ujd+4WhP
むしろ食べていい・食べたら駄目の種族間のギャップが面白いのではないか
705創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 11:04:02 ID:Gu/RcYAk
成分表示の下に”この製品には、玉葱等が含まれています”とか、
否対応種族とか書かれてんのな…
「何だよ!全滅じゃん!」
706創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 15:45:02 ID:GNuwsaAW
アレルギー用の表示みたいな感じかな
707創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 16:33:29 ID:64tr/zJ2
英先生の英語授業

Susan「Is it Jerry that exploded?
Jerry「No, it is Tom that exploded.」

「塚本君、これを日本語に訳しなさい」
 塚本君、起きてるの!」

「うーn、うっせーなあもうすこしねかせろーよ」
すかさず英先生がチョークを飛ばす
寝ぼけ眼の塚本の額に命中。ユニコーンみたいにツノが生えてる

どよめく生徒たち
「おーすげー」
「ちょーこええー」

英先生、別の生徒を指名した

「しょうがないわね。犬上君答えてちょうだい。」
「はい」

Q:爆発したのはジェリーですか?
A:いいえ、トムです。

「よくできました」
「それでは最後に宿題を出します。以下の英文に続くものを選ぶ問題です。これはテストに出します」

There is an amusement park that is called "MOMOTARO LAND".
It is in the city named OKAYAMA in Japan that is the metropolis,
and if it is Japanese, everyone is a known famous amusement park.

Even 10 billion dollars cannot be bought now though it was a
price of 50 million dollars 20 years ago.

However, the amusement park cannot be bought, and doesn't exist.
Q:

A:
@ It ruined because of the attack of the U.S. Army.
A It exists in a Japanese people's mind.
B The person who had started on a journey to the search discovered Gandhara.
C Chapter 11 was applied for, and it went bankrupt in fact.

竜崎
「うわー。わからんぞー」
飛澤
「先生!難しすぎです!」
塚本
「てか先生よー!これ抜けないんだけどー」

英先生
「がんばってね。それでは授業を終わります」

おわり
708創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 17:03:59 ID:tRLWLslx
>>707
I choose A with much effort
709創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 23:24:47 ID:fhgjqv6o
>>707
I'm sorry,I'm a Jpanese.But I don't know "MOMOTARO LAND"
710創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 03:42:36 ID:YMqcnr7B
教科書変えたほうが良いんじゃなかろうかwww
711創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 23:00:34 ID:IfzzdpkN
今日は猫の日だがあと一時間しかないぜ!
712創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 23:02:34 ID:CmOT0HMm
にゃんにゃんにゃん!!にゃんにゃんにゃん!!
そういえばケモ学の猫比率高いよね!
713創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 00:28:13 ID:DSvkqIxk
自分の身の回り見てみても猫が一番多いからな
714へぼ山 ◆oywuHEBORA :2009/02/23(月) 01:05:04 ID:W6YQPueL
 ほかとコで描いたけどうしの人。
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp00983.jpg
 うっしっし。
715創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 01:12:42 ID:bcwLIv7f
初期の初期はぬこ小学生だったからな
コレッタ、白先生、ザッキー辺りが初メンバー
716創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 01:19:49 ID:PRDDrMOc
その後は
豚キャラって少ないよね→いのりん
泊瀬谷先生&ヒカル君
ってかんじだっけ
717創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 01:25:22 ID:ZbTAImnx
>>714
飛び込みたいおっぱい

サン先生、校長、アキラ達 も初期組かなー
あとクロ・ミケ
718創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 02:31:12 ID:JANH7v2Q
>>714
おっぱいおっぱい
719創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 03:03:16 ID:hRoYJn7E
そういえば最初は猫しかいなかったんだっけ

>>714
おっぱい!おっぱい!
720わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:03:24 ID:DZu9AsKm
昨日のうちに投下したかったけど、諸事情でry

>>714
おっぱい!おっぱい!おっぱい!
牛山せんせの今後に期待!!
721夜会 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:04:46 ID:DZu9AsKm
街中のケモノの誰もが眠りを貪る深夜2時。街から外れた蕗の森の公園に、幾人かのネコ族がぞろぞろと静かに集まりだした。
老いも若きも、男も女も、みな長い尻尾を揺らしてぶるるっと毛を膨らましながら、各々落ち着く空間を選び
これからの一時をのんびりと過ごそうとしている。かつては蕗が一面あたりに群生していた蕗の森町、
現在はその面影はもう無く、静かな毎日を重ねる住宅と活気溢れる街を見渡す丘、そして土地の名だけが残っている。
その蕗の森の一角に彼らは集まる。

いち早く公園に着ていた中学生の刻城ナガレが学園の教師・帆崎を見つける。同じく学園の教師・泊瀬谷スズナも一緒である。
「あ、ザッキーだ」
「帆崎先生!こんばんは」
「おや、泊瀬谷先生もお早いですね。ナガレ、今夜は特別だからな」
「そうですね帆崎先生、ナガレくん。せっかくの夜会だもん、楽しくやろうね」
そう、今宵は『夜会』が開かれるのだ。
半纏を羽織り、いつものトートバッグを肩にかけた泊瀬谷と、手になじんだ竹刀を一振り携えたナガレ、
そしてGパンにブルゾンというおきらく姿の帆崎。共にネコ族の彼らもこの夜のためにやって来た。
竹刀を持つと気が引き締まるとナガレは話すが、偉そうによく言うよと帆崎はケラケラ笑っている。
ナガレはまだまだ未成年のネコだが、帆崎の言うとおりに『特別』な夜ということで、夜更かしもOKと言う訳だ。
それは『夜会』だからって?いやいや、『夜会』は『夜会』でも、今宵は彼らにとって特別な『夜会』なのだから…。

「おれ、今夜のために昼寝してきたんですからね」
「自慢にならんぞ、ナガレ」
自慢気なナガレといつものように生徒指導の顔をした帆崎の話をニコニコと聞きながら、
泊瀬谷は保温式の水筒を除かせたトートバッグを肩から揺らしていた。
722夜会 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:05:30 ID:DZu9AsKm
程なくして高等部のクロネコ男子:香取透が、iPodで聴いていた音楽を漏らしながら、パタパタとスニーカーを鳴らして到着。
彼は去年の文化祭にバンドを組んでステージに立ってから、一躍学園の有名人になった…が、
マイペースを好む彼の性格のせいもあってのんびり、まったりと平穏な毎日を暮らしてきていた。
派手なことより真面目を好む香取らしいと言えばそうなのだ。そんな彼も今夜は特別だからと蕗の森まで駆けつけて来た。
イヤホンを外し、帆崎たちに合流すると深々とお辞儀をした。
「香取くん、一人?」
「はい。父さんに車で送ってくれたんです。帰りには迎えに来てくれるんです」
実家は楽器店である香取、両親は「明日も商売があるから」と言って今夜は出てこなかったとのこと。
iPodの電源を切り忘れたのか、ちょっと昔の洋楽がイヤホンから漏れて蕗の森に響いていた。
「せっかくの夜なのにね」
「しょうがないよ。ネコだもん」
「ネコですからね」
「そうね」
と、泊瀬谷が耳を揺らす。ネコは気まぐれ、ネコは気分屋、ネコは風まかせ。

「ふう、遅れたかな」
「シロ先生!おや、となりの方は」
「初めまして、時計川ミミと申します」
ミミと名乗るネコの女性は軽く会釈をした。シロとは違う空気を漂わせる大人のネコ。
学園の保健のシロと、同級生のミミ。かつて同じ学園で席を共にした二人、卒業後シロは保健医へ、
ミミは北の方の都会へと自分の道を歩んでいったのだが、都会の波に飲み込まれて何時しか心折れ
そして今年ミミは生まれ育ったこの街に帰ってきたのだった。街はミミを好意的に迎えてくれた。
これからこれから、とミミは語る。一方シロはそんなミミを優しく見守っていた。
「街のバイク屋の事務で働くことになったんです。なんでも、シロと同じ学校のサン先生の同級生だった杉本さんっていうネコの…」
「ああ、名前は聞いたことあるな、杉本ミナ。彼女も連れて来れば良かったのに」
「なんでも旅に出ちゃったらしいの。変わってるね」
「ネコだからな」
「ネコだもんね」
ミミは伸ばし始めたと分る髪をふわりとなびかせ、花の香りを深夜の公園に振りまいた。
723夜会 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:06:16 ID:DZu9AsKm
「帆崎先生、泊瀬谷先生。夜分恐れ入ります」
「おお、佐村井か。妹さんは?」
「公園の入り口まで一緒に来ました。もうすぐ、お友達と一緒にやってきますよ」
クロネコ女子の佐村井御琴がダウンジャケットを着込んで現れた。
この日、特別運行で遅くまで運転をしている市電に乗って、初等部の三人娘と一緒にここまでやって来たのだ。
背の高い佐村井御琴は『甘噛み同好会』の一員として、ちょっとした学園の有名人。
高等部の生徒ながら、オトナの雰囲気漂わせる彼女。そのスレンダーな身体は既に集まっている男子諸君の目を釘付けにしている。
ところが、彼女はそんな男子にはまるで興味無し。その理由は親友以上、恋人未満の同志の女の子・大場狗音が来ていないかららしい。
大場はイヌ族なので、今宵はこの会に出席できない。それは仕方が無いのだが、それとは別に妹のクロこと玄子、その親友のミケこと三斑恵、
そして意地悪友達のコレッタのかわいいトリプル百合ップルを堪能できるとあって、御琴はそれを糧にここまでやって来たのだ。
しかし、そのことについてはまわりのみんなは誰も知らない。それでも男子諸君は御琴に心奪われている。

「女の子は甘いお砂糖とちょっとのスパイスで出来てるんだって、マザーグースのお話にも出てきますからねっ。
ふふふ、今夜は甘―いお菓子が楽しみですわ。クロにミケにコレッタちゃん…早くおいで」
御琴は大きな独り言で、自分を納得させていた。が、泊瀬谷はそれを聞き逃さない。
余計なお世話と言ってはそれまでなのだが、御琴は泊瀬谷のご好意を頂戴する。

「さ、佐村井さん…。とりあえず、これでもどうぞ!イヌハッカのハーブティですっ!」
イヌハッカ。別名「キャットニップ」。またたびと並んで、ネコ族の舌を唸らせる味を持つこのハーブ。
これを煎じたお茶を泊瀬谷は自宅から持ってきて、準備してきた紙コップに注ぎ皆に振舞う。泊瀬谷の水筒からの湯気が白く天に昇る。
まだまだ身を切る風吹く如月の夜。星空の元、イヌハッカの香りに包まれ一同、心地よい早すぎる春風気分を感じてしまうのだ。
香取は自分のメガネを曇らし、ナガレは竹刀を足元に寝かせ、帆崎はあまねく天に広がる星を眺めていた。
シロもいつものコーヒーと違う味に顔を緩める。

温度はネコが飲むものだけあって、ネコ肌程度。彼らは皆ネコ舌だから。
「なんだか、いい感じだね。泊瀬谷先生、ありがとう」
「狗音さんにも教えてあげたいな」
「名前は『イヌハッカ』でも、ネコ向けの香りなんですよ。コレ」
一同が冬の寒空を忘れかけた頃、小さな甲高い声が彼らに届いた。
誰も知らない真夜中に不釣合いな子どもの声も、今夜は特別。如月のこの日だけは…。
724夜会 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:07:04 ID:DZu9AsKm
「あー!姉ちゃんずるい!クロにもちょうだい」
「ミケが先だよ!コレッタを待ってたんだからね」
「ま、待ってニャ…。ミケもクロも置いて行くなんてずるっこニャ。
ミケもちょっとしか待ってなかったクセに、いばりいんぼう屋さんだニャ!」
クロ、ミケ、コレッタの三人娘が賑やかにやって来た。蕗の森は一気に華やぐ。
クロはコレッタのおトイレを待っていたから遅れたんだとコレッタを責める。お月さまが許してくれたもん、とコレッタが反撃した。
しかし、「これこれ、女の子がみっともないよ」と姉の御琴の言葉が彼女らを優しく包む。
もっとも、御琴にとってはこの三人娘の掛け合いをいつまでも楽しんでいたいところだが、今宵は特別。
「せっかくのお祭りだよ。楽しくやろうね」
「はーい」
三人娘は泊瀬谷から注いでもらったイヌハッカのハーブティの香りと味を楽しんでいた。

「ところで、尻尾堂のおやじは?」
帆崎が思い出したように皆に尋ねる。しかし、答えが無い問いかけなので誰もがその答えを返すことは出来ない。
夜会には毎回顔を出すので、この場にいないということは何故だと帆崎は頭をひねる。
この付近に古くから住む尻尾堂のおやじ。古本屋を営む彼を知らぬネコは居ない筈だが、変わり者で有名なおやじのこと。
「ネコだもんね」
「ネコですものね」
「ネコですから」
「ネコですからね」
「そう!ネコだからニャ!」
きっと、どこかに隠れているのだろうと、誰もが結論付けてしまった。しかし、帆崎はそれでも不安げにハーブティを口にする。

「帆崎先生、おミカンどうぞ」
「ああ、ありがと」
泊瀬谷は帆崎に熟れたミカンをトートバッグから差し出す。柑橘の香り漂わせながらミカンの皮を剥き、一房、二房と口にする。
どうやら帆崎はこの手の果物は苦手のようだが、折角のことだと三分の一ぐらいミカンを平らげる。
「もうすぐなのになあ…。おれ、尻尾堂のおやじ…探してくる」
「でも、時間ですよ…。えっと、あと10分ほどで」
「それまでには戻ります」
帆崎は目をしばしばさせながら、彼らから離れていった。
725夜会 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:07:42 ID:DZu9AsKm
彼らから遠ざかった林の中、月明かりに照らされた尻尾堂のおやじが一人で切り株に座っているのを帆崎が見付けた。
カップ酒を横に、タバコを燻らせながら一人恍惚にふけている姿は正しく世捨て人。同じように世から捨てられた椅子が転がっている。
ケモノの生き方が大河ならば、河原に取り残された水溜りのようなのがおやじなのだろうか。
マフラーにニット帽からはみ出した白髪だらけの髪。着古されたコートはくすんでいた。
「おやじ、もう集まってますよ」
「ああ、わかっとる」
おやじがぷわあっと口から吐く煙と、先程嗅いだばかりのイヌハッカの香りが重なって帆崎に届いた。
帆崎はおやじの脇に転がっていた朽ちた椅子を置き、それに腰掛けてもらったミカンをおやじに差し出す。

「わしはいい。最近の若いもんはおかしなものを食いやがるな」
「ははっ、おれも少し苦手ですから」
「わしはミカンだかカボスだか、酸味が目に突き刺さる食い物が好かん」
ちびちびとカップ酒を口に含みながら、タバコを吹かし続けるおやじはゆらゆらと酒の匂いをさせている。
なんでも、イヌハッカのタバコを吸いながらの酒は格別なものになるらしい。酔いがただの酒以上にまわるのだ。
おやじは帆崎にタバコを勧めたが、同居人がタバコのにおいを嫌うと言うので丁重に断りを入れた。
「おやじも身体に気をつけろよ。おれさあ、おやじの店の本で育ったもんだんからおやじのことさ、ホントのおやじみたいに思ってるんだぜ」
「尚武はいつからお世辞を言うようになったんだ。それにわしは来年、この街に居らんかも知れんぞ」
「寂しいこと言うなよ」
「好き勝手させてくれ。老いぼれの言うことだ」
先程よりも大きな煙をぼやきと共におやじは吐いた。

そのころ、泊瀬谷は帆崎の帰りをヤキモキしながら待っていた。
シロはミミと思い出話しに花咲かせていた。
ナガレは眠気覚ましに素振りをしていた。
香取はエアキーボードを演じながらちょっと昔の洋楽を奏でていた。
コレッタは眠い目を擦りその歌に合わせて揺れながらクロに突っ込まれていた。
ミケはコレッタの尻尾を引っ張りながら目を擦っていた。
御琴は彼女ら三人娘をニマニマしながら眺めていた。
726夜会 ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:08:36 ID:DZu9AsKm
ふと、時計を見た泊瀬谷は声を上げる。
「あっ!あと…10、9、8…」
一同、声を合わせる。
「なな!」
「ろく!」
「ご!」

「おやじ、タバコは何本目だ?」
「よん…」

「さん!」
「に!」
「いち!」

「2月22日午前2時22分22秒!!」
「わー!おめでとう!ネコの日!!」
「おめでとう!」
「おめでとうニャ!!」
蕗の森にネコたちの声が響く。そう、今宵はネコの日のお祝い。
ここ蕗の森だけでなく、各地でこの時間を共有しようとネコたちが集い、楽しみ、ネコの日を祝っている。
喝采の中、泊瀬谷の携帯にメールが届く。送り主は弟のハルキ。
『件名:無題   姉ちゃん、ネコおめ』
僅かな言葉が泊瀬谷を優しく包んだ。ハルキも起きてたのか、みんな元気かな、と泊瀬谷は家族を思い出す。
『件名:Re無題   ハルキもネコおめ』
かじかむ手を紙コップのハーブティで温めながら、泊瀬谷は遠い街の弟へ返信した。
ナガレにはタスク、アキラからの写メールで無口なナガレを笑わせようとしている。
ミミの携帯にも旅先の杉本ミナから『星空が眩い』とぶっきらぼうな文が届いていた。
香取の携帯にも学園祭でのバンド仲間・星野りんごから同じく…。
シロも、御琴も、クロも、ミケも、コレッタも皆この時を祝福していた。

その時から遅れて十数分後。帆崎とおやじはイヌハッカのタバコの煙に巻かれていた。帆崎の携帯が鳴る。ルルからのメールだ。
『件名:ネコおめ   ネコの日おめでとう。みんなによろしくね』
帆崎の携帯はメールの規制に巻き込まれ、午前2時22分22秒に間に合わなかったらしい。
しかも、みんなと一緒に時間を共有することが出来ず、何の因果で老いぼれたおやじとこの瞬間を過ごしたのか、
と少々後悔をする帆崎であったが、おやじは何の気にはしてはいない。
「来年はみんなで祝いたいな…おやじよう」
「ふう、しょうがねえな。じゃあ、尚武の為に頑張って来年まで生きてやるか」
「来年もソレ言うんだろ。どうせ」
五本目のタバコに火をつけながら、おやじは頭を抱える帆崎を眺めていた。


おしまい。
727わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/23(月) 21:11:20 ID:DZu9AsKm
今までのネコさんたちに感謝!
そういえば、大島弓子のマンガに影響されているかも…?

おしまいです
728創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 22:14:05 ID:+WBEvd++
大島弓子の「綿の国星」とは時代的にホンの少し後になるけれども、
猫十字社の「小さなお茶会」の雰囲気に似ている気がしました。
 もっぷとぷりんの夫婦は、今でも私の憧れですな。
729創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 22:24:29 ID:ocwnug01
俺は自演乙応援してるよ
730創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 22:25:53 ID:ocwnug01
ナンテコッタイ/(^o^)\誤爆してしまったよ
しかもドクターストップ・・・
731創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 23:23:52 ID:v9KjYnrS
>>727
大晦日みたいでなんかいいなぁ
犬達の中にも11月1日にも同じような集会があったりして
 
 
大島弓子さんの漫画は絵がなんか暖かいんですよね
ぬこの大半が擬人化なのが如何せん惜しまれるが…
732創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 00:08:10 ID:Y9UrFPVt
クロの姉ちゃんw百合ップルwww

そういえばラノベの新刊で、
甘がみなんちゃらって甘噛み癖のある少女がヒロインの百合小説が売ってて吹いた
733創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 00:30:56 ID:5VxLU5Q8
懐かしい人達が出て来て所々でおもわずニヤリ
734創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 02:39:55 ID:MBCROusT
激しく和んだ
いい空気だなあ
735創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 03:44:01 ID:z337iVOh
好きだ
736創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 05:54:43 ID:fo7Pckir
午後10時22分22秒には2次会やんのかな
店開いたら久しぶりにイヌハッカのタバコ買ってこよう
737創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 13:25:38 ID:lo0z4zSx
ハルカたんと校長先生は欠席だったのかしらー
素敵なSSごちでした!
738創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 14:37:23 ID:oDuil0rN
そう言えば、剣道部の部長はどうなるのでしょう? 彼は何ミックスなの
だろう?
 あ、そう言えば、あと描いた猫ひととしては、巨大スイーツの店の店員の
 女の子も 居たなぁ、と。

それにしても登場じんぶつも増えましたね。 そのうち坂下のコンビニの
店長とかも出てくるのかしらん(笑)?
739創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 18:46:04 ID:K4nTDWh/
つーか猛はどうなったんだ
退学?
740創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 18:59:38 ID:lo0z4zSx
退学らめえぇ!!
741創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 19:46:04 ID:Y9UrFPVt
反省文書いて春休みまで停学してました

でいいんじゃね
742創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 21:07:12 ID:DEbrnCRk
そして卒業の季節
743創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 22:47:24 ID:Y9UrFPVt
10人くらい社会人になってしまう><

あ、でも社会人になったらなったで世界広がるし高等部の枠に新キャラの余地増えるか
744創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 22:52:29 ID:5VxLU5Q8
卒業はしない
だが入学・進級はアリの方が世界が広がるぜ!
でも学年とか詳細は分からんからこの辺は置いとこうぜ
745創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 22:53:43 ID:W5VeVQgO
よしよし、つまり63歳で未だ高校生というファンタジイ設定ができるんだな
746創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 23:09:26 ID:2FKVUELC
サザエ時空か
747創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 23:17:57 ID:W5VeVQgO
いうなればこち亀かも。部長の子供と両さんみたいな
748創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 23:20:27 ID:DEbrnCRk
可逆的ストーリーってやつだな長寿アニメによくある
749創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 23:59:23 ID:dXleZ7Qf
750創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 00:27:37 ID:/q4cb5MH
誰でも良いから一匹持ち帰って猫戯らしタイムしたい
751創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 00:29:48 ID:LnUXztr2
おやじシブいよおやじ
752創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 00:36:45 ID:JEgtp/ZA
749見て、猫専の学校もあるのかなと思ったりした
753創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 11:54:55 ID:d95HqRQ2
うわぁ〜猫がいっぱいだー
754創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 12:12:17 ID:F7A+c1HG
実は、「ウォーリー(保険委員)を探せ」になってたりして…
755創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:10:08 ID:q5SHNitE
どうも最近筆が遅くて、投稿がちょいと久しぶりです
何だかんだで続きが書けたんで投稿させていただきます。
ギャルゲーはペルソナ3とサクラ大戦しか経験無いので、少し変かもしれませんが。
自分の中のギャルゲーのステレオタイプなキャラが、考え無しに増えてます
756創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:11:03 ID:q5SHNitE
 俺はあんまり夢を見ない方だ。そもそも、伊織さんのトレーニングで毎日くたくたになっている俺に、夢を見れるほど浅い眠りが訪れる事など、滅多に無い。
 だから、小さな体で幼稚園の中を駆けずり回りながら、それが夢だと理解するのには少々の時間を要した。
 幼い頃の記憶を頼りにした夢だからか、色々と場面が飛び飛びで、周りの園児や先生の顔も、靄が掛かっているようでよく見えない。
 鬼ごっこしたり、お遊戯で歌を歌ったり、かくれんぼをしたり、色々と場面が飛んで行き、俺が最後に辿り着いた場所は、遊具のトンネルの下だった。
 色々と記憶が曖昧になっている幼稚園時代だが、『秘密基地』と称して、一番の友達と二人で遊んだその場所は、今もよく覚えていた。
 気付けば、白い色をした虎の女の子が、目の前で笑っている。
『ねぇこうたぁ……』
 子供らしい舌足らずな口調で何かを話す女の子を見ながら、この子がいつも一緒に居た子だったなぁ、と何となく思い出す。
 会わなくなったのはいつ頃からだっけ。両親が離婚して引っ越してからだったろうか。
 色々考えているうちに、女の子が俺の方に擦り寄ってくる。毛皮の感触が妙にリアルだ。
『ねぇこうたぁ……』
 また話しかけられる。名前はなんだっけ。女の子は幼稚園から持ち出したクレヨンで、いつも持ち歩いていたスケッチブックに何か文字を書いている。
 覗き込むと、少し照れた様子で俺に寄りかかりながらそれを渡してきた。

『けっこン せー約しょ』

 幼稚園生じゃ珍しくも無い若気の至りの結晶が、俺の目に映った。女の子の名前だけ擦れていて読めない。
 彼女をなんと呼んでいたかは分かる。他の園児も、彼女の母親も、みんなが『なっちゃん』などというありふれたあだ名で彼女を呼んでいたはずだ。
 なっちゃんは俺へとその結婚誓約書を押し付けてくる。
 幼少時の俺は何を思ったか、その名前の隣に自分の名前を書き入れる。ぐにゃぐにゃヘロヘロの子供っぽい文字で『康太』。
 あの頃の俺は、年中組で唯一自分の名前を漢字で書けるのと、ピーマンを食べられる事が自慢だったと思う。
 俺の一連の動作を見ていた女の子は、嬉しそうに髭を揺らして微笑むと、頬擦りをしてくる。
 だが、何かがおかしい。俺はズルズルと押し出されている。トンネルの外へ締め出されそうだ。
 出口へと近づきながら、俺は何が起こったのだと、軽く混乱をし始める。いや、この訳の分からなさが夢の夢たる所以だろうか。
 まあ、ともかく俺は白虎の女の子に頬擦りをされながら、どんどん押し出されているわけだ。いつの間にか高校生に戻っている。
 トンネルから落とされる間際、女の子の姿も大きくなった気がした。ちらりと確認できた。わぁ、結構美人に成長してる。
 そんな邪念が頭を掠めた間際――ドテッ!! と激しい音が鳴って、頭がジンジンと痛み始める。
 夢の事などあっと言う間に頭から締め出され、急速に覚醒を始めた意識が現状認識を開始する。
 フローリングの床に体を投げ出し、足はまだベッドの上。布団は俺と一緒に床の上。ああ、ベッドから落ちたのか。
757創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:11:41 ID:q5SHNitE
 ようやく何が起こったか理解し終えた俺は、ベッドに戻って二度寝をしようと立ち上がる。
 布団を抱えて持ち上げ、ベッドにそれを投げ出し、さて寝るぞと再度寝転がり、ついでに時間も確認しておこうかと、舞の勉強机に置かれた目覚まし時計へと目を向ける。
 時刻は8時過ぎをまわっていた。液晶の左上を見ると、アラームをセットしている際に点灯する筈のランプは消えている。
「やべえええええええええ!!」

 ×××


「ああああ、やばいやばいやばい!」
 パジャマ姿のまま、慌しく階段を駆け下りながら、俺が再度叫ぶ。足をもつれさせて階段から転げ落ちそうになりながらも、なんとか体勢を立て直して、リビングへとダッシュした。
 いつも起こしてくれる舞は、昨日から学校の友達数人で他所へお泊り会。姉さんは月曜日は講義が午後からなので、少なくとも10時までは布団から出ようとしない。
 俺が頼み込んだお陰で月曜の朝練は勘弁して貰っているので、伊織さんは先に学校へ行ってしまっている。
 土日の部活動で体力を使い果たした俺が、二度寝の欲求に逆らえる筈もなく、登校時間を大幅、起床を迎えたわけだ。
 朝のショートホームルームが始まるのが、大体8時半ごろ。自転車で向かえば、何とか間に合わなくは無い。
 だが、その自転車が現在パンク中なのだ。いや、一ヶ月ぐらい前からずっと。登下校はほとんどジョギングだし、休日も出来る限り室内で過ごすことにしている俺は、自転車をあまり使わない。
 わざわざ直しに行くのも面倒だからと、後回しにしていた結果が、今日の不運の日だ。
 俺はダッシュで顔を洗い終えると、トースターでパンを焼きつつ、制服へと着替え始める。
 片手間にテレビをつけると、丁度占いがやっていて、しかも俺の星座が一位を取っている場面にピンポイントなのが、非常にいやみったらしい。
 『止まっていた事が動き出すかも』だなんてキャスターが言っているけど、こっちは時間ギリギリまでベッドの上から動き出す事が出来ないでいたんだぞ。
 焼けあがったトーストに流れるような動きでバターを塗りたくると、食器をほっぽり出してトーストを咥えたまま玄関へと向かう。
 そしてドアノブに手をかけ、今まさに出発しようとしたところで、慌てるあまり鞄をリビングに置き去りにしている事に気付いた。
「あぁもう、ほへのばふぁっ」
 トーストを咥えたままアホみたいな声を出すと、リビングへ戻って鞄を抱えて玄関まで戻ってくる。
 ドアを開けて玄関を出て、鍵を閉めると、鬼コーチ伊織さんに鍛えられた、陸上部の脚を活かして、学校へと走り始める。
 いつもは伊織さんに禁じられているような近道を使い、最短距離で学校へと疾走した。
 咥えたトーストを半分ほど食い終える頃には、俺と同じく遅刻しかけている生徒たちが、全力で自転車を扱ぐ姿をちらほら確認できるようになった。
 こうなれば、学校までそう遠くは無い。少し先の方に見える角を曲がれば、後は学校まで一直線だった筈だ。
758創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:12:45 ID:q5SHNitE
 俺はスパートをかけ、近づいてきた曲がり角を鋭角的な動きで突き抜けようとする。……のだが
「おごっ」
「きゃっ」
 角を曲がった瞬間、白い縞々模様の毛皮が視界に入り、避ける暇もなく、気がついたときにはその相手と正面衝突していた。
 俺より一回り背の高い虎の女の子のマズルが、丁度俺の額にぶつかり、一瞬だが、おでこにキスのようなロマンチックな構図になった。
 だが、次の瞬間には互いに尻餅つき、俺は額を彼女は鼻面を手で押さえ、「あいたた……」と声をハモらせる。
 額を擦りながら再度相手を見ると、思ったとおり虎の女の子が、痛そうに鼻面を擦っていた。
 毛並みは艶やかで、けれどもネコ科の猛獣特有の勝気な印象と同時に、制服だろう紺色のセーラー服のお陰で、清楚なイメージも何処となく受ける。
 制服を着ていて、俺と同年代に見えるし、多分高校生なんだろう。俺の学校の制服はブレザーだから、何処か別の学校だろうか。
 俺は素早く立ち上がると、鞄からポケットティッシュを取り出して、彼女へと差し出した。
「ごめん。急いでたんだ。鼻は大丈夫だよな。血ぃ出てたら使ってくれ」
「あ、大丈夫よ。私頑丈だから。……こっちこそぶつかってごめん」
 彼女が鼻面から手をどけると、言った通り血は出ていないようだった。
 俺の差し出したポケットティッシュではなく、差し出した手首を掴むと、ゆっくりと立ち上がり、俺へ向かって軽く会釈をして微笑んだ。
 最初の印象とは違って、随分と礼儀正しい性格のようだ。俺は微笑み返しながら、彼女の顔をじっと見つめる。
 何となくだが、どうにも既視感を感じる顔立ちだ。
 地面に落ちた鞄を拾うと、彼女に「じゃあ俺、遅刻寸前だから」と声をかけて走り出した。いくら可愛い子が居ても、のんびり話しこんでいる余裕は無い。
「ねぇ、何処かで会った事……!」
「ごめん! 俺の担任厳しい人なの!」
 走りつつポケットから携帯を取り出して、液晶画面に浮かぶ時間を確認すると、ホームルームまで10分を切ってる。
 陸上部の顧問であり俺のクラスの担任である牛沢先生は、うちの学校じゃ結構厳しい部類に入る先生だ。遅刻したくは無い。
 大丈夫。まだ間に合う。全力疾走すれば行ける! 俺は額の汗を拭うと、残った体力全てを走ることに向けた。
 後ろでさっきの女の子から呼び止められた気もしたが、今はそれどころじゃなかったんだ。

 ×××

「うおおお!」
 叫びながら学校の玄関に走りこむと、その勢いを殺さずに靴箱まで滑るように移動する。
 俺の出席番号が貼られた場所から上靴を取り、地面に投げ捨てると、足だけでそれを履きながら、靴を投げ込む。
 走り出しながら肩にかけた鞄を背負い直し、階段の方へとダッシュする。一年の教室は残念な事に4階だ。俺は2段飛ばしで階段を駆け上がる。
 4階まで到達すると、D組の教室へと再ダッシュ。A・B・Cの教室を通り過ぎ、D組の教室のドアに差し掛かる手前で急ブレーキをかけ、ガタン! と音を立ててドアを開け、ジャンプするように教室へ飛び込む。
759創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:13:26 ID:q5SHNitE
「ギリギリセー……!!」
「アウトー」
 高らかとセーフ宣言をしながら教室の敷居を跨いだ瞬間、アウト宣言の無常な声と共に、額へと振り下ろされる竹刀。
 ほとんど力を込めていない筈なのに、バシィッ! と派手な音が教室の中へと響いた。本当は大して痛くはないのに、思わず叫んでしまう。
「いったい! 超痛い!」
 瞬間、クラスの一同からどっと笑いが起こる。みんなは“明日は我が身”という諺を知らないんだろうか。
「どうした。お前が遅刻なんて珍しいぞ」
 微妙に赤くなっている額を右手で押さえながら、こちらを見下ろしながら話しかける牛沢先生を見上げた。
 ジャージ姿に竹刀を持ったいつもの格好に、大柄な体躯もあって結構威圧的……。
 とても目覚ましをセットし忘れたとか、妹が友達の家でお泊り会だったから、起こしてもらえなかったとか、そんな事を言える気持ちにはならない。
「あの、弟が丁度夜泣きの酷い時期なんですよ。ほら、両親が再婚してから出来た子なんでまだ1歳にもなってないんですよ」
「そうか。まあ、そういう事なら……、さっきの一撃くらいで勘弁してやるか
だけど、次からはちゃんと両親に育児させろよ」
 俺は「どうも」と言いながら牛沢先生に会釈し、窓際前から2番目の俺の席へと向かう。
 未だに俺を見ながらクスクス笑いしている奴が何人かいる。なんだよ。人が牛沢先生からの制裁を受けるのがそんなに楽しいのか。人の不幸でメシウマか。
 周りから見ても不機嫌に見えるだろう仕草で、少し乱暴に椅子を引き、腰を下ろす。
「あはは。佐倉君が遅刻なんて本当に珍しいよね」
「正直お前まで笑うとは思わなかったよ」
 俺が気だるく振り返ると、茶色い毛玉もとい肉団子もとい、気の良さそうな熊、中学以来からの友人である雅人が口元を抑えて笑っている。
 何がおかしいのか分からん。特にこいつは結構出来た性格だから、笑わずにいてくれると思ったのに。俺は赤くなった額を再度擦った。
「大丈夫? 結構赤くなってるけど」
「音だけで大した事ないよ。さすが牛沢先生だな。
剣道部より竹刀の使い方が上手いんじゃないのか」
「なんせ牛沢先生だからねぇ」
 熊の巨体に似合わない子供っぽい口調で話しながら、雅人はまたクスクスと笑った。
 笑うたびに大柄な体が小さく振るえ、細かい動きも全身に纏った脂肪と細かいラインのせいで随分と目立つ。
 俺はやってられないとジェスチャーして見せながら、牛沢先生の方を向く。何やら黒板に書き込んでいるところだ。
 人の名前だ。“立花 夏樹”と書いてある。女の子のようだ。横に下っ手くそな虎の絵が描いてある。
 虎の女の子か。そう言えば、今朝ぶつかった女の子も虎だ。白い虎。彼女の姿を思い浮かべながら、“夏樹”と言う名前が頭の中を駆け巡る。
 牛沢先生は片手で黒板を叩きながら、高らかと宣言した。
「喜べ男子。今日は女子の転校生が来るぞ。
道に迷って遅刻しそうだって電話があったが、まぁ一時間目の前には着くだろう」
 クラスの男子たちが歓声を上げる。何故このクラスのみんなはここまでノリが良いのか。
760創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:14:06 ID:q5SHNitE
 静かにしてるのは、元々大声を上げているところすら見たことのない雅人と、先生のド下手な絵を見ながら物思いにふける俺ぐらいだ。
 穴の開くほどその絵を睨みつけてみるが、頭の片隅に引っかかっているはずの記憶は引きずり出せない。
 思い出せそうで思い出せない、なんともむず痒い感覚だ。まあ、あんな下手な絵を見て何かを思い出そうと言う方が無理だ。
 俺は諦めて携帯を取り出すと、一時間目が始まるまでの猶予をRPGを使って潰し始める。月額315円で旧ハードの名作を楽しめるのは中々お得な気がするし、近頃よくやってる。
 旧作ゆえのヒント不足で謎解きに困ったりしても、帆崎先生に聞けば一発だ。近頃のぬるゲーに染まった俺でもストレスを感じずにプレイできる。
 俺の後ろでは、雅人が鞄から何か小説を取り出して読み始めていた。こいつはクラスの図書委員もやってるし、結構な読書家らしい。
 以前なんとかという推理小説を大層薦められた記憶がある。漫画と教科書ぐらいしか本を読まない俺は、挿絵が一ページもない活字だらけの小説なんて読む気がしなかったんで、丁重にお断りしたわけだが。
 ピコピコとゲームをやっているうちに、時間はジリジリと過ぎていき、結局転校生は姿を現さないまま、一時間目が開始されてしまう。
 転校初日から道に迷って遅刻とは、結構な方向音痴だな。
 チャイムが鳴るのと同時に、いのりんが日本史の教科書を抱えて、「おはようございます」と丁寧な挨拶をしながら教室へと入ってくる。
 みんなが「おはよー!」と返すと、いのりんは笑って頷き、開いたままの扉から、廊下のほうへと手招きをした。
 誰だろうかと考える暇もなく、今朝俺と正面衝突した白虎の女の子が、会釈をしながら入室する。
 いのりんは彼女を教壇まで連れて行くと、クラス一同を見回しながら説明した。
「彼女が転校生の立花さんだ。さっき丁度職員室に着いたところでね。
せっかくだから僕がD組まで案内したんだ」
 いのりんの横で、彼女は「立花夏樹です。これからよろしくお願いします」と当たり障りのない自己紹介をして、クラス一同へとお辞儀をした。
「さてと、じゃあ立花さんにはどの席に座ってもらおうか……」
 自己紹介を終えた立花さんに、いのりんが思案顔で話しかける。
 立花さんは、足元で尻尾をゆらゆらさせながら、ゆっくりと教室の中を見回した。
 その様子を眺めていると、不意に彼女と視線が合わさった。
「……っ」
 彼女は少し驚いたように息を呑むと、俺の方へと歩いてくる。
 空いてる席は、俺の前と教壇の正面ど真ん中と、廊下側の最後尾。どうやら立花さんは窓際を選んだようだ。
 他の空いてる席の隣に座ってる男ども、俺をそんな恨みがましい目つきで見るなよ。誰だよ「また康太かよ」って呟いて舌打ちした奴。
 彼女は俺の前までやってくると、俺へと微笑みかけながら、さもおかしそうに話す。
「同じクラスだったんだ。今日からよろしくね」
「制服違うから別の学校の子かと思ってたよ。今朝はホントごめんね」
 話しながら、気を利かせて目の前の椅子を引くと、立花さんは「気にしないでいいよ」と言いながら座った。
 雅人が後ろから「知り合い?」と不思議そうに訪ねてくるんで、今朝曲がり角でぶつかったと答えると、雅人は心底納得した様子で「康太らしいなぁ」と感心していた。
761創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:14:42 ID:q5SHNitE

 そんな偶然の出来事の何処が俺らしいのか。少しむかついたんで、雅人を無視して視線を立花さんの方へと向ける。
 ホワイトタイガー、結構珍しい種族だったと記憶している。俺の知り合いには誰もいなかったと思う。いや、いたかもしれない。どっちだろうか。
 鞄を机のフックにかけている、立花さんの横顔を見ながら考え込む。やはり、その顔に強烈な既視感を覚えた。
 何処で見たのだろうか。今朝、起きる前だと気がついたのは、数秒後の事だった。夢の内容は思い出せない。
 だが、大きくなった幼稚園のクラスメイトだけは、頭の中に鮮明にフラッシュバックした。今、目の前にいる立花さんと寸分違わぬ姿が。
「なっちゃん……?」
 ぼそりと、それこそ呟くように漏らしていた。この呼びかけに覚えがなければ、立花さんだって自分への呼びかけとは気付かずに、スルーするだろう。
 何年も前の友達を急に思い出した朝、いきなり同じ学校に転向してくるだなんて、どうせあり得ないような話だし、返事も何も期待した呼びかけではなかった。
 だけど俺の見立てはどうやら正解していたらしい。立花さんの猫科にしては丸っこい耳が、ピクりと震え、驚いている様子も、すぐに表情へと現われた。
 立花さんは確認するように、俺の目や鼻や、顔立ちをマジマジと見つめる。よせやい、恥ずかしいぞ、と言ってしまいたかったが、予想外彼女の表情は真剣で、おどける隙はなかった。
「うそ、康太……?」
 仕上げに確認するように問いかけてくる。俺は黙って一つ頷いた。まさか、こんな偶然があるとは思ってもみなかった。
 俺が頷いた瞬間、立花さんが勢いよく立ち上がり、椅子が机とぶつかってガタッと激しい音が発せられる。
 そのまま振り返って俺の机に両手を置き、詰め寄るような姿勢となる。心なしか目つきも険しくなった気がした。
 事実、立花さんの口調は明らかに怒気を含んだものだった。
「康太、何で挨拶も無しに勝手に行っちゃうのよ!
あの時私がどれだけ勇気を振り絞って約束したって思ってんの!?
次の日から幼稚園来なくなって、私のせいかもって、あの後しばらく悩み続けたのよ!!」
 な、何の話だ。生憎と俺は幼稚園時代の記憶など、それこそおぼろげにしか思い出すことは出来ない。
 それに周囲の目も痛かった。『いきなり何をやらかしたんだ?』と、後期の視線が俺と立花さんに突き刺さる。もっとも彼女は気にしていないようだったが。
 俺が「あーっと…」とか「えーと……」とか、適当なことを呟き、何か具体的な事を思い出すまでの時間稼ぎをしていると、立花さんはさらに語気を荒げ、問い詰めてくる。
「あの後康太が家の都合で引っ越しちゃったって聞いたけど、手紙の一つもくれないし、何でよもう!
康太に嫌われたんじゃないかって、本当に悩んでたんだから!」
 幼稚園の時、確かに急に引っ越した記憶はある。だが、もう久しくその時のことは思い出していない。
 と言うか、今考えると自分からそのときの記憶から目を逸らしていたんだろうかと、思い至った。
 その頃って確か、俺の父親が死んでしまった頃ではないだろうか。確かローンが払えなくなって新築の家を売り払い、母の実家へと移り住んでいた。
762創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:15:32 ID:q5SHNitE
 肉親の死去に塞ぎ込み、そういえば誰にも別れの挨拶をしていなかったっけ。
 今じゃ全然覚えていないし、今さら思い出しても悲しくなんてならないが、、あの当時はショックだったはずだ。
「ほら、立花さん、落ち着いて落ち着いて。佐倉君だって何か理由があるよ。
彼の話も本の少しで良いから聞いてあげてよ」
 真相を話すタイミングを捉えあぐねていると、雅人が後ろから立花さんへ言い聞かせるように援護射撃してくれた。
 困っている時は、必ず助けてくれるのがこいつのいいところだ。
 それに、おっとりしてて体も大きい雅人と話すと、熱くなっている時もいくらか落ち着きを取り戻せる。
 人前でこんな話をしなきゃならないのも辛いが、今を逃したら、ずっと立花さんの機嫌を損ねたままになりそうだ。
 いのりんが困った顔で、こちらを向いているのも、あえて無視し、彼女へと話しかける。
「仲の良い友達だったのに、何も言わないで引っ越しちゃったのは謝るよ。
あの時さ、父親が事故で死んじゃったんだよ。俺まだ子供だったしさ、塞ぎ込んじゃったらしくて。
その、ごめんな。立花さんに嫌な思いさせちゃったよな」
 どうにも面と向かって謝罪と言うのは気恥ずかしい。ギャラリーつきでは尚更だ。
 ちらりといのりんの方を見やると、雅人がなにやら説明してくれている。
 親族の死とか話の内容の重さもあって、どうやら説得には成功したらしく、いのりんは黙って教壇へ戻り、授業を開始してくれた。
 立花さんは、何か言おうとしたが言葉が見つからなかったらしく、黙って席に戻り、普通に授業を受けていた。
 どうにも気まずい雰囲気だ。結局、午前の授業が全部終わっても、一言も言葉を交わすことが出来なかった。
 目の前に座っているのに、見えない壁に阻まれているようで、酷く居心地が悪い。
 休み時間になっても俺の方など見向きもせず、午前中最後の授業が終わり、昼休みに突入したところで、ようやく俺に声をかけてくれた。
 こちらを向いて、まだ表情は硬いまま、とにかく何か会話をしようとしている様子だった。
「ねぇ、康太。私今日弁当持ってきてないからさ、購買部まで案内してくれない?」
「だったら俺と雅人の分けるよ? 今から行ってもコッペパンぐらいしか残ってないだろうし」
 一年の教室から購買へ走ったところで、人気の商品は売り切れている。
 俺はそう言って弁当箱を取り出し、雅人へアイコンタクトを送った。
 弁当を分け合ったり手料理を振舞ったり、気まずい状態を解決するにはこれに限る。
 だが、雅人は『分かってないねぇ』とでも言いた気に、巨体を小さく動かして、溜め息をすると、俺の背中を押した。
「僕が席取っとくよ。ゆっくり案内したしてあげなって」
「あ、おう。分かったけど、悪いな雅人」
「決まりね。行きましょ」
 立花さんがそう言いながら立ち上がり、俺の手首を掴んで引っ張る。
 姉さんに舞に伊織さんに、立花さんまで、どうも俺の周りの女性は、俺を振り回したり引っ張りまわすのが好きだ。
 立花さんに連れられて教室を出ると、生徒でごった返す廊下を並んで歩き、購買部
へと向かう。
 彼女の頼みで、道中遠回りしながら、校舎内を軽く案内していった。
 流石に理科室ぐらいまで行くと、昼休みに利用する人も少ないようで、さっきまで絶えず聞こえていた、ワイワイガヤガヤという雑踏もなくなった。
763創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:16:47 ID:q5SHNitE
 理科準備室から怪しげな笑い声が聞こえるが、ここは突っ込んではいけないところだった筈だ。
「ん、ねぇ康太」
「どうしたの?」
 理科室を過ぎて、いざ購買部へ続く廊下へと出ようとしたところで、不意に立花さんが足を止め、俺を呼び止める。
「さっきはごめんね。康太のお父さんが死んでるなんて知らなかった。
塞ぎこんで当然だよね。それに苗字も変わってるし、やっぱり色々あったんだ」
「気にしなくてもいいさ。俺だってもう父親ほとんど覚えてないんだし。
トラウマはずっと昔に克服済み! 6人家族を満喫してるよ」
 そう言いながら立花さんに向けて右手の親指を立てて見せると、彼女は楽しそうに笑ってくれた。
 10年ぶりに再会した幼馴染との気まずい状態も、ようやく解消されたようだ。
 立ち止まって思い出話をしながら、しばらくの時間を過ごした。
 雅人を待たせっぱなしで悪いなと思った頃、立花さんが白い毛皮を微かに朱に染めながら尋ねてくる。
「ねぇ、康太はさ……」
「ん?」
「康太は私との約束、覚えてる?」
「へ?」
 自分で言うのもなんだが、この一言で場の空気が凍った気がした。
 仕方ないだろう? なんせ10年も前の事だし、あの頃は色々大変だったんだ。子供同士の約束なんて覚えていられない。
 立花さんが右手を振り上げるのを、俺はぽかんと眺めていた。
――バチンッ!
 手の肉球が、ぷにっと頬に当てられることなんてのはなく、派手な音を立てて激しいビンタを食らわせられる。
「もう! 康太のぉ……バカぁぁぁぁあ!!」
 バランスを崩して仰向けに倒れる俺をよそに、立花さんは怒りを表しているかのように尻尾を立てながら、歩き去っていった。
 俺は頬を擦りながらゆっくり起き上がる。伊織さんほどじゃないが、強烈なビンタだ。何か運動部に入っていたのだろうか。
 後姿を追おうとも思ったが、明らかに怒っている様子で、鼻息荒く帰っていく立花さんに、声をかけることは出来なかった。
 その場で棒立ちになり、深く溜め息を吐いた。女心は分からない。

×××

「今日勉強したところはテストにも出ますからね。
家に帰った後にも予習をして、しっかりと理解してください」
 授業の終了を告げるチャイムが鳴り響くと、英先生は教科書を閉じ、黒板に書かれた内容を示しながら話す。
 どうやって立花さんの機嫌を元に戻すか、考えあぐねた結果、気付けば今日最後の授業も終わっていた。
 結局、一日中立花さんは口を利いてくれなかった。最後の授業が終わっても、フンッ、と鼻を鳴らして帰っていく。
764創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:17:22 ID:q5SHNitE
 謝ろうにも、今日は取り付く島も与えてくれなかった。立花さんの後姿を見送りながら、今日何度目か分からない溜め息を吐く。
 がっくりと落とされた俺の肩を、後ろからポン、と叩かれる。雅人だ。
「珍しいね。佐倉君が女の子の機嫌損ねちゃうのって」
「そうかぁ? 女の子って何考えて生きてるのか丸っきり分からない」
 俺が机に突っ伏し、「うー」とか「あー」とか唸りながら、頭を掻くと、雅人が楽しそうにクスクスと笑った。
 こっちにとっちゃ笑い事じゃない。目の前に座る相手と仲が最悪では、気が散って授業も頭に入らないし、幼馴染と喧嘩別れなんて、普通に考えて修繕すべき事態だろう。
「だからってなぁ、どうするか……」
「佐倉君なら、普通に話していればその内どうにかなりそうな気もするけど。
まあ、何はともあれ、まずはこれをお願い」
 話しながら雅人の差し出してきたものは、分厚い本だ。何となく見覚えがあるなと思っていたら、近頃映画化したと、テレビで引き合いに出されていた推理小説だった。
 それを読めと言うのか。
「まぁ、所々でおどろおどろしくい雰囲気が滲み出してて、まるでホラーのような作風も、予想の全くつかないトリックも良かったし、
語り手の適度に無知で人間味溢れる性格描写も好きだったし、種明かしの時のカタルシスって奴はもう、凄く面白かったのは確かだけどね。
でも挿絵が一枚も無い小説なんて、佐倉君は好きじゃないでしょ。
次のバス乗らないと塾に送れちゃうからさ、代わりに図書室に返しといて欲しいんだよ」
 両手を額の前で合わせて「お願い」と頭を下げてくる。
 時計を見ると、部活の開始時間までには、まだしばらくある。図書館で時間を潰しても、伊織さんに怒られはしない筈だ。
 今朝は雅人に取り繕ってもらった恩もある。俺は本を受け取って、ゆっくりと立ち上がった。
「次からは自分で返せよー」
「ありがとう佐倉君。じゃ、またね」
 雅人が鞄を掴んで席を立つ。俺も一緒に立ち上がって歩き出した。廊下に出たところで逆方向へと歩き出し、雅人に向けて小さく手を振り、図書室へと向かった。
 思えば、場所は知っていても、利用した事は一度も無いかもしれない。
 何せ、普段は読書と言えば漫画ぐらいしか読まないし、勉強のために図書館を利用するほど、俺は真面目でもない。
 今から帰ろうという生徒たちとすれ違いながら、図書室まで向かった。
 扉を開いて、図書室へと入ってから思うが、どうにも静か過ぎて落ち着かない。
 こういう物静かな場所も嫌いじゃないが、何処を見ても、放課後まで図書室で勉強したり読書したりしている、真面目で大人しそうな人たちばかりいる空間は、なんとも俺が場違いに感じられた。
 だが、図書室をじっくり見物する機会も、これが初めてだ。今さらだが、少し物珍しくも感じられた。
 他の学校の図書館を知らないので、なんとも言えないが、うちの学校の図書館は結構広い。
 ライトノベル、参考書、日本文学、海外文学、歴史、サイエンス、様々にジャンル訳された棚を、何をするでもなく眺めながら、ぐるりと図書館の中を散策する。
 分厚い辞典がギッシリと並べられたコーナーへとやって来たところで、ふと小さな女の子が目についた。茶色い毛皮に、長く垂れた耳。可愛らしいロップイヤーウサギだ。
 見たところ中等部、下手すれば初等部の生徒に見えるのだが、その歳であんなに難しそうな辞典ばかりのコーナーにいるとは、大した子だと言いたくなる。
765創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:21:17 ID:Z2hZCurr
さるさんキター
766創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:22:03 ID:kFUg6GPC
支援
767創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:22:24 ID:kFUg6GPC
遅かったorz
768続きは携帯から:2009/02/25(水) 21:24:04 ID:Z2hZCurr
 彼女は高いところにある辞典を取りたいようだが、壊れているのかぐらつく脚立を前に、困り顔で右往左往していた。舞よりも一回り小さな身長では、図書室は大変だろう。
 学校の先輩の役目として、ここはお手伝いしてあげた方が良いかな。女の子の近くまで行って、出来るだけ優しく声をかける。
「脚立がぐらついて困ってるんだろ? 俺が代わりにとろうか?」
「……あっ…」
 女の子は、垂れた耳をピクッと小さく動かしながら、俺の方を見つめ返す。
 口下手なのか、俺を見ながら、口をパクパクと動かし、前歯をちらちら覗かせている。
 少しの間、そうやって口を動かした後、胸に抱え込むように持った鞄を握り締め、とても緊張した声でで返事をしてくれた。
「あ、…あの、…っ、ありがとうございます……」
「どういたしましいて。で、どれをとればいいかな?」
 俺が本棚を指差して言うと、彼女は小さな手で本棚の一番上の所を指差した。
 『類語辞典』と書かれた、ひときわ分厚い辞典が、そこに立てかけられている。
「あの…、脚立を支えてくれれば……。いつもは、一人でとってますし」
「それだけでいいの?」
「は、はい…。その、困り果ててる所だったんです。……あ、ありがとうございます」
 俺が脚立に登ってとるよと言っても、そこまでしてもらうのは悪いと、恐縮した様子で首を振る。
 初等部でこれほど出来た性格になるとは思い難い。やはり、中等部らしかった。
 俺は小さく頷いて、ぐらつく脚立を両手で支え、彼女がその脚立に登って、本棚の一番上の段へと手を伸ばす。
 脚立に登っているのに、それでも精一杯背伸びしなくては、届かないようだった。
 本の角に指を引っ掛けて、斜めに引き出し、そのまま掴んで引っ張る。重い辞典が、ずずっと動き、彼女の手の中に納まった。
 だが、小さな体ではその慣性を殺しきれなかったのか、彼女の体が大きくぐらつく。
 類語辞典を頭上に掲げながら、ふらふらと狭い足場の上で、酔っ払ったバレリーナのような動きでバランスを取ろうとしていた
「ひゃっ、ど、どうしよ……、ぉ…!?」
 そしてついにバランスを崩し、脚立から落下する間際、初めて彼女が人並みの大きさの声を出した。
 それに感心するのも束の間、彼女を受止めようと走り出す。こういう事故の時は、全てがスローモーションに見えると言うが、間違ってはいなかった。
 彼女の持った類語辞典が、まるでコマ送りのように、俺へとまっすぐ落ちてくる。
 良ければ、彼女が怪我をするかもしれない、だが、避けなければ俺が痛い思いをする。
 男なら、迷わず彼女を受止めるべきなのだろうが、一瞬迷ってしまった俺には、中途半端に体勢を整えるしか出来ない。
――ガツンッ
 額への強烈な一撃。そのまま体勢を崩し、今度は後ろの本棚で頭をぶつけ、胸の上にあの子を乗せたまま、ズルズルと尻餅をついた。
 視界がぼやける。目を開けても、あの子の顔がよく見えない。
「あ、ご、ごめ……ごめん、なさい……、私……!」
 慌てふためく声をぼんやりと聞いたが、最後まで聞き終える前に、すうっと意識を失ってしまった。

×××
769創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:24:20 ID:CMiyc9G+
ほああああ支援まにあわなかったあああ
770創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:25:02 ID:kFUg6GPC
771創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:26:08 ID:Z2hZCurr
 目を開けると、カーテンで区切られた保健室のベッドで横になっていた。
 未だに鈍痛のする額を右手で擦ると、大きな絆創膏が貼ってある。
 どうやら角をぶつけられたらしい。絆創膏の上からむにっと押してみると、酷く痛かった。
 ベッドの横のハンガーには、俺のブレザーがかけられている。ブレザーのポケットに手を突っ込んで携帯を取り出し、時間を見ると、もう部活の始まっている時間だ。
「やばっ……」
 思わず口に出して呟く。それに答える声が、カーテンの向こうから聞こえた。
「心配ないよ。牛沢先生には、佐倉は今日部活を休むと伝えておいた。
まあ、心配ないだろうが、今日一日運動は避けておけ」」
 カーテンが、ざっと音を立てて開く。白先生が俺の目の前に立っている。
 それに、あの図書館の女の子が、「生まれてきてごめんなさい」とでも言いたげな表情で、ちょこんと椅子に座っていた。
 白先生が、そのこの方へ振り向きながら話した。
「な? 佐々野。おまえは心配してたけど、軽い脳震盪だよ。
マイナス思考も大概にしておけ。さっきまで、それこそこの世の終わりみたいな顔をしてたぞ」
「……すみません。でも、佐倉さんが無事で、本当に良かったです……」
 彼女は、幾分か安堵した様子で、表情も少しだけ柔らかくなった。だが、まだその表情に陰りが残っていることに変わりは無い。
 白先生の言うとおり、元々マイナス思考の強い子なのだろう。俺は右手の親指を立てて、彼女へと向けて見せながら、にっこりと笑ってみせる。
「本当にもう平気だよ。心配してくれてありがとうな。嬉しいよ」
 彼女は少しだけ照れた様子で、カァーッと頬の毛皮を朱に染めて俯いた。胸には、俺の額を強打した辞典を、未だに抱えている。
「あの、本当にすみませんでした……、私……」
「いいって、いいって。俺の方こそ、手伝うつもりで、返って手間かけさせちゃってごめん。
妹と同じくらいに見えたからさ、ちょっと頼もしいところ見せたくなっちゃってな」
 俺が苦笑しながら頭を掻いて言うと、話を聞いていた白先生が、もう我慢できないと言った様子で、クスクスと笑い出す。
 一体どうしたのか、俺がそちらへ視線を送ると、口元を片手で押さえながら、「すまん、つい…ククッ…」と、返す。
 何がそんなにおかしいのか。首を傾げていると、白先生が使われる、その理由を教えてくれた。
「なあ佐倉、先輩相手に、その態度はないんじゃないのか?」
「せ、先輩……?」
 まさか、俺と同じ年代のウサギの女の子だって、もっと大人びた姿の筈なのだが。
 俺があのこの方を向くと、彼女は恥ずかしそうに頷いて、自己紹介をしてくれた。
「あ、私、高等部3-Cの、佐々野静香っていいます……」
「あちゃぁ、すみません。何だか年下相手にするみたいな話し方しちゃって」
「そんな、あの、私……、敬語なんて使ってもらえるようなのじゃ、その……、ないですし……
で、出来れば…、さっきまでみたいに……、話してください……」
「そうか。じゃあ、今日はごめんな。佐々野さん」
 俺が笑顔で返事をすると佐々野さんは、また恥ずかしそうに頷いた。
 白先生が、そんな彼女の頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫で付けながら話す。
772創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:26:31 ID:kFUg6GPC
773創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:27:45 ID:Z2hZCurr
「まあ、見ての通り内気な奴で、こんな引っ込み思案だからな。友達も少ないんだよ。
こいつ文芸部の部室か図書館に篭ってばかりだから、たまに話し相手になってやれ」
「せ、先生……!」
「フフッ、悪い悪い。これでも、おまえが友達一つ作らず卒業してしまうのが嫌なんだよ。
まあ引っ込み思案で根暗な所もあるけど、優しくて良い奴なんだ。
佐倉、これも何かの縁だと思って、友達になってやってくれ」
 佐々山先輩は、これ以上ないほど身を縮こまらせて、垂れた耳をプルプル震わせている。
 白先生にも、その姿はとても可愛らしく映るようだ。本当に、年上とは思えない。舞と話しているような気分だ。
 俺は、ベッドから降りて、ハンガーにかけられたブレザーを羽織ると、白先生に会釈して、佐々山先輩の所まで歩いていく。
 目の前で中腰に屈みながら、右手を差し出した。
「じゃあ、よろしく佐々山先輩」
「よ、よろしく……。佐倉君……」
 佐々山さんが、恥ずかしそうに返事をしながら、俺の手を握り返してくれた。とても小さい手だ。
 彼女の方を見ると、口をもごもご動かして、何かを口篭りながら、手を引いた。
 そして椅子から立ち上がり、白先生と俺へ、丁寧にお辞儀をする。
「じゃ……あの、私……部室行かなきゃ……」
「何か部活してんの?」
「あ、その……文芸部に…。さ、佐倉君も、気が向いたら……遊びに来て……」
「文芸部かぁ。読書好きな友達いるし、そいつ連れて遊びに行くよ」
 佐々山さんは、「失礼しました」と、扉を閉めるときも丁寧にお辞儀をし、保健室から去っていった。
 俺も、今日は早めに帰って、少し手の込んだ晩御飯でも作ろうか。事故とは言え部活も休んでしまったし、部活帰りの伊織さんへの差し入れもおいた方がいいかもしれない。
 そう思うと、俺だってあまりゆっくりしている時間は無い。だけど、佐々山さんの事を少し聞いていく時間ぐらいはある。
「白先生、佐々山さんと仲が良いんですか? 随分親しげでしたよね」
「まぁ、何だ。佐々山は去年まで、ほとんど不登校でな。
何とか保健室登校まで扱ぎ付けて、最近やっと授業にも出てくれるようになった。
よくあいつの相談に乗ったりしてたが、そのお陰かな。私の事をとても尊敬して、慕ってくれてるんだ。
そりゃ、愛着も湧くさ。……それに、可愛かっただろう?」
 白先生が、意味ありげにそう尋ねてくる。それは、当然佐々山さんは可愛いが、何でそれをわざわざ尋ねるのか。
 書類の詰まれたデスクの上にある、冷めたコーヒーを啜ると、白先生はまた話し出す。
「だけど、あいつには友達もいないし、私だっていつも、いつまでも、助けてやる事は出来ない。
正直、今日のは本当に何かの縁じゃないかって思う。おまえなら人当たりも良いし、良い友達になってやれる。
おまえを通じて交友の輪が広がれば御の字だ」
「何だか、計算高いんですね……」
「生徒のためを思えばの、合理的な考えだよ。
これでも保険医なんだ。悩みを抱える生徒は山ほど見てる」
 白先生は何か憂うような、何処か寂しそうな表情を浮かべた後、取り繕うようにに笑った。俺も笑い返す。他の反応がどうにも思い浮かばなかった。
「あまり白先生と話したことありませんでしたけど、やっぱりこの学校の先生は、良い人たちばかりです」
「迂闊に褒めるなよ。いくら良い先生でも、図に乗る奴も結構いるからな」
 サン先生の顔が頭に浮かび、俺は思わず苦笑した。
「そうします。じゃあ、お疲れ様」
「ああ、お大事にな」
 俺は会釈をして保健室を後にする。今日は色々な事があった。少し疲れたな。晩飯はスタミナ系にするか。


続く?
774創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:28:14 ID:kFUg6GPC
  
775創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:31:05 ID:Z2hZCurr
今回は以上です。途中から携帯にメール→本文コピー→投下の手順に以降
個人的に王道ヒロインはバカバカ主人公罵ったりビンタ食らわせるイメージが強いです
776創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 21:45:17 ID:kFUg6GPC
投下乙
777創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 22:52:59 ID:cgO8ca/0
甘ああああい!
 
いいねぇ青春だねぇ


しかし、こう何個もフラグを立ててくれちゃう康太には些かジェラシーを感ぜざるおえないな
778創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 00:16:05 ID:wgy6LRHQ
王道青春ストーリー、いいねえ。
779創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 00:26:56 ID:QjVBaA5+
年上ロリっていいね
俺がこのギャルゲやったら佐々山先輩ルートで行くわ
780創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 00:42:44 ID:lpgA7sGk
なら俺は巨乳ルートを選ぶぜ!!!
781創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 01:03:23 ID:wgy6LRHQ
伊織先輩に牛沢センセ、ほしのりんごたんにうしやまセンセ。
おっぱいがいっぱい!
782創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 01:40:00 ID:gsX80bNS
>>781
朱美ちゃんや白頭空子に宮元先輩、そして虎宮山姉妹が抜けているぜ?
彼女らも負けず劣らず良いおっぱいを持っているぜ!
783創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 02:55:27 ID:DiN/aHEp
くそ…っ!なんだこのハーレムは…っ!ヒロインが更に増えるなど…っ!!
784創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 05:34:31 ID:DiN/aHEp
785創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 05:42:23 ID:ivhpJEHc
か、、、、かわええ!!
786創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 09:04:59 ID:jOd0XVTB
なんという小動物感www
かわいすぐるwww
787創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 21:40:47 ID:QjVBaA5+
>>784
抱きついてモフモフしたいけど迂闊にそんな事したら確実に泣かれるよなぁー
788創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 22:35:57 ID:AGUJE6c2
虎ひと4にん目でしかもその内3にんがホワイトタイガーってのも、なかなか凄い
学校ですね。
>>758辺り。セーラー服着せると微妙に一寸前の不良に見えなくも…
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01008.jpg

>>784
かーいー!
789創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 22:52:28 ID:mtaHGCy+
ホワイトタイガーは虎ノ中ではRH-端子ぐらいの珍しさと予想

俺は機関銃の似合いそうなセーラー服姿の姉ちゃんは大好きです
790創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 23:16:55 ID:DiN/aHEp
凛々しいぜ!
791創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 11:01:27 ID:G0zgbmFF
>>789
機関銃よりも鉄製ヨーヨーの方が似合いそうな凛々しさだ
792創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 13:44:47 ID:idLzOhGh
そういえば確かにホワイトタイガー多いな
まぁ遺伝するもんだと思うし、ホワイトタイガー一族が近くに住んでるんだよ
793創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 20:16:37 ID:1fFNRaGL
>>738
何だか半端にケモ耳にしかならなかったので使いきりでいいかな〜とか
思ってたんですが、シマハイエナのミックスだとアホの子になりそう
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01018.jpg
794創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 20:37:25 ID:idLzOhGh
あほの子w
795創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 20:39:24 ID:WsbLs+84
2代目以降は完全に特徴が消えそうだなー
796創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 22:40:04 ID:CccFNrwP
アフォの子だったのか…ww
797わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/28(土) 03:47:48 ID:P1SsO7aY
阿呆の子、イイヨイイヨ。
短いの投下します。
798ヤマネコ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/28(土) 03:48:20 ID:P1SsO7aY
わたしの目の前で、市電が走り去ってしまった。
いつも何かに取り残されてばかりだと悔しい思いをかみ締めて、ぎゅっと拳を握り締めながら停留所で一人たたずむ。
「ったく…、ついてないな。ロードワークついでにひとっ走りするか」
爪を引っ込めてメガネのつるを摘み、ジムまでひと汗覚悟で駆けて行く準備。
すたっと横断歩道を駆け抜けて、制服のスカートを翻しながら一雨ごとに暖かくなる街の風を切る。
手を握り締めると、不思議と何かに燃えてくるので不思議だ。拳はわたしの宝物なのだろう。
ただでさえ少ない種属・イリオモテヤマネコ族なのに、男の子のようなショートヘアと内気な性格のおかげで
他の子たちからからかわれてきたわたしが出来ること。それは、おのれの拳で語ることだけだ。

拳は正直者。相手がトラであっても、オオカミであっても理屈を捏ねることなく白黒はっきりさせてくれる正直者だ。
しかし、規律正しい学園の中で暮らしてゆくには拳は正直者に『バカ』がついてしまう厄介者となるだろう。
そんなオトナの顔をした学園であった話。
「鎌田!起きろ!もうすぐ啓蟄だぞ」
「……まだまだ2月じゃないか。2月はGTがあったかな…、3月は中山…」
「ヒーローが縮こまってどうする!正義の拳を振りかざせ!」
ウマの塚本とシカの来栖が半纏に包まった「ライダー」こと鎌田を囲み、奮い立たせようとしている。
鎌田も鎌田でまだまだ寒いからと一向に動く気配も無い。ここまで登校することが出来たことが奇跡だ。
関わらないようにと、わたしはクラスの子たちと一緒に鎌田のことで笑っていた。
「ヒーローごっこなんてやっぱ男子ってバカタレだよね、りんご」
「そ、そうだよね、リオ。はやみもそう思う?」
「そうね…あはは」
正直者の仮面を捨てて、上っ面のウソをつく。

ヒーローなんているのか。ヒーローなんてわたしたちの幻想ではないのか。
幼い子には映っても、大人になればなるほど薄っすらと消えてゆくヒーローに思いを馳せているなんて、
鎌田もわたしも同類なのかもしれない。事実わたしがヒーローになれるかも…なんて思ってもいなかったし。
「とお!!」
ヒーローのような掛け声で、ジムにわたたしは駆け込む。スカートがふわりと風にのっても下はスパッツだから気にしない!
799ヤマネコ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/28(土) 03:48:58 ID:P1SsO7aY
「きょうは早かったな、瀬戸はやみ」
「へへ、勢家さん。きょうは走ってきたんですよ。遅刻なんてもうしません」
わたしが挨拶をするまで、オニのような顔をしていたトレーナーがニッとジムに似合わない笑顔を見せ、わたしを出迎えてきた。
カンガルーである彼はそんな雑談はさておきと顔を元の真面目な顔に戻し、わたしに着替えて、ウォーミングアップの要求をする。
スパーリングの音が響くジムをわたしはスカートを翻しながら横切る。

きっかけは些細なことだった。
ヒーローになりたかった。
ただそれだけ。
ものごとは始める理由なんて、たったそれ程度でも十分な言い訳になるはず。
Tシャツに着替え、ジャージを履けばわたしが何者だろうが拳だけを信じる一人っきりのヒーローだ。
「着替えてきましたあ!」
「お前、メガネを取ると大分印象が変わるな。いつものことだけど」
あれは伊達メガネ。ボクシングをしていると顔にパンチが当って悲しい顔になってしまうことが多々あるから、
普段はこうしておしゃれで隠してるんですよ。わかりますか?トレーナー。

きっと、クラスのみんなはわたしがボクシングをやっているなんて知らないだろう。
むしろ、わたしにとってはみんなに知られないほうがいいかもしれない。それは、人知れずヒーローになることが
わたしにとっては拳を握る原動力になるからだ。身体を温めながら、先輩たちがリングの上で拳を交える姿を見る。

このジムで身体を動かす女の子はわたしだけ。
人数も少ないし、チャンピオン育成どころかやる気があるのかどうかわからないここのジム。
カンガルーのトレーナーやヤマネコの会長の人徳だけで続いているようなものだ。
そんな『対馬野ジム』に通うようになったのは一人のヤマネコのおかげ。同じ血が流れるもの同士わかるのだろうか。
わたしが、いじいじと毎日暮らしていたのを公園で見て、拾ってくれたのが会長の一人娘、対馬野はな。
わたしと同じヤマネコだったからか、はなは自分にわたしを重ねて一人ベンチでたたずむわたしに
「あなただったら、大丈夫」と根拠の無い激励をしてくれたことを忘れない。
800ヤマネコ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/28(土) 03:49:38 ID:P1SsO7aY
2年前のあの日、わたしは一人だった。何もかも終わればいいと思っていた。
生まれながら正直なのが災して、損ばかりしていたわたしは何もかもがわたしを苦しめるものに見えた。
わたしが座っているブランコでさえ、嘘っぱちの固まりに見えてくるからその日のわたしはおかしかったのかもしれない。
わたしだけに見える刃こぼれのした剣を振り回して、わたしを苛める何もかもを斬り倒したい。
例え誰かを斬り倒しても、許されるんじゃないかと、自分勝手な解釈を始めるわたしは末期症状。
「バカー!!」
石を蹴り上げ、街に叛旗を翻したぞ、という中学生男子のような過剰なえらぶりっ子をしていると、
一人のネコにこつんと当った。しまった、わたしはそこまで悪い子じゃない。
「ごめんなさい!!」
「わたしは大丈夫」
大人びたネコ…ヤマネコが髪をなびかせ、わたしを許してくれた。

わたしと違って髪も長く、大人の香りのする彼女は理由も無くわたしの味方をしてくれたのだ。
わたしは彼女と話しをした。ここ最近、これ以上お喋りしたことなんかないと思うぐらい、彼女に自分のことを話した。
「わたしもね、ツシマヤマネコって言う種族だから、はやみちゃんもことがとっても分かるの」
「お姉さんも…わかるんですね。ヤマネコの辛さを」
「そうね。そうそう…興味があったら、ここにおいで。あなただったら…大丈夫…」
名刺を渡してそういい残すと、せきをしながら彼女は正直者の街に消えて行った。
対馬野はなは全てを敵に見ていたわたしの持つ剣を優しく握り締め、鞘にそっと収めてくれた。

彼女に引かれて、ここの門を叩いたのは言うまでも無いこと。
初めてはめたグローブも、今じゃすっかり手に馴染み、これさえつければ何でも出来るんじゃないかと勘違いするようになった。
初めはすぐにばててしまったロードワークも、自分を苛めるが快く感じることさえなってきた。

「さて、はやみ。ロードワークにでも行ってこいよ…」
「ええ?わたし、さっき走ったばかりですよ」
「バカタレ、たったそれしきで体が出来たと思うなよ。それじゃあ、おれは病院からはなちゃんを迎えに行くかな」
「勢家さんのバカー!」
素直にトレーナーの言うことを聞きながら、リングに上がる時間を待ち望み、春風が控える街に駆け出る。

わたしだって、ヒーローになれる…かな。
もうすぐ、春。鎌田はそろそろ起き出すけれども、わたしはとても今、眠い。


おしまい。
801わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2009/02/28(土) 03:51:19 ID:P1SsO7aY
運動系は初挑戦です、SSじゃ何も始まってないけど。
投下終了。
802創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 11:08:52 ID:vSBfJNDM
カンガルーのトレーナー…まさか1スレめのあのボクサー?
803創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 16:43:31 ID:Qfm+9w6s
武道家なおんにゃのこktkr
804創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 20:40:43 ID:j3BOHyXm
あくまで個人的にはやはりそこは逞しい男性獣人がよかったなぁ。

だが全然イケる!これからの展開に激しく期待します。
805創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 22:40:45 ID:r216H5sy
>スパッツだから気にしない!
萌 え た
806創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 02:01:32 ID:yoRpf8ec
リアル猫パンチは以外と威力あるから侮れないぜ。
猫族の動体視力とスピードを活かしたファイティングスタイルだと想像。

>もうすぐ、春。鎌田はそろそろ起き出すけれども
鎌田生きてたw
807創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 02:24:18 ID:xXZsoTZA
刃牙で読んだ。人間と猫とでは、人間が日本刀を装備して初めて対等だそうだ
808創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 04:43:12 ID:ky4NDjjf
それはさすがに猫買い被り過ぎだろw
809創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 08:43:36 ID:jro5dovc
でも強い猫はマジ強いぜ?
弱いのももちろんいるけど
810創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 09:12:29 ID:Ze+rzblC
猫パンチ食らって目玉が取れかけた人の話は聞いたことある
811創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:49:09 ID:0c/G7rxg
812創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:49:31 ID:k4w17wzr
ぬええこzさあああああああああああああん
813創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:52:17 ID:XneDl4Un
はなさん可愛いよはなさん
814創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 23:03:06 ID:DypLgfxP
おしとやかな虎…これはいいな!
815創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 00:58:36 ID:4EOomVK3
ごきげんよう... という挨拶が聞こえた
816創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 05:58:59 ID:BhilcgFS
>811
山猫だ、Lynxだ、wildcatだ!!
普通のネコ族の人とは雰囲気がちょっと違う感じなのが絵だとよくわかるね
毛並がとってもエキゾチックだ〜
817創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 18:14:57 ID:1qxvEjZ1
818創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 20:49:36 ID:pLPrvca8
今、唐突に「日めくりケモ学カレンダー」って言葉が思い浮かんだ。
ただそれだけ。
819創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 22:00:39 ID:7DlnE1Gp
日めくりとまではいかなくても、月ごとのカレンダー合作とかは
ある意味楽しそう。
820創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 22:13:11 ID:ln2wL6RQ
やるなら参加しちゃうぜ?
821創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 22:52:43 ID:BKYt3WfN
じゃ、三月。
っていうか、丁度描いていたところだったです。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01060.jpg
822創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:34:39 ID:laoJOIc2
別嬪さんだ
823創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:39:50 ID:ZHdTHhDN
ケモ雛さますげぇ!
824創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:40:43 ID:g+9F+Xib
このお雛様欲しいよ!
825創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:46:52 ID:ln2wL6RQ
これはやっぱり手作りかな
英先生さすがだぜ
826創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:54:07 ID:ZHdTHhDN
いやいや先祖代々伝わる由緒あるお品という可能性も
827創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 12:02:27 ID:yqOmBM+h
英先生なんで結婚できないのか不思議なぐらいだ
828創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 12:31:30 ID:bGPkgXer
実は未亡人
829創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 12:40:58 ID:UNKERSdR
あまりにも完璧すぎて高嶺の花なんです><
830創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 17:20:22 ID:HC9E+Jre
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831創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 17:23:17 ID:tgblekmv
素敵なスク水と浴衣をありがとう
832創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 17:26:37 ID:UNKERSdR
夏だ!プールだ!スク水だ!
浴衣色っぽいよう、花火綺麗だよう
833創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 17:29:18 ID:IvoYJlcd
きゃあ!これは可愛いニィでござる!
834創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 00:41:33 ID:fML3Hjxd
835創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 00:45:36 ID:qC5gnN3g
イースターだ!
836創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 00:56:47 ID:4s7KcFV4
>>830
やっぱ夏っていいよなァーッ
早く来ないかな

>>834
何の事かとググったらなるほど
こんなのあったのかー
837創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 01:14:50 ID:rfFPyZPm
>>834
イースターのシンボルの「イースター・ラビット」。4月は「卯月」。
そして、りんごたん。凝ってるなあ。
838創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 11:13:54 ID:nQbGx0Mj
>>834
イースターわあい
839創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 05:16:51 ID:41OKCHUD
鎌田起きてる?
840創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 05:23:26 ID:QtfwlhiE
啓蟄すぎたしそろそろおきるんじゃね
841創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 16:11:13 ID:9vHQpN+9
よし、そろそろ起こそう
842創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 16:23:50 ID:Bv3XAEH1
♀カマキリが♂カマキリ喰ってる場面は、見る度にぞくぞくするよね
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01093.jpg
843創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 16:38:02 ID:QtfwlhiE
起きたww
844創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 16:46:36 ID:/bxKa/pu
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01095.jpg
なんたらの秋

>>842
獣人になっても♂カマキリは喰われる運命なのかww
845創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 16:57:19 ID:QtfwlhiE
運動ね秋! 読書の秋! 食欲の秋!
846創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 18:48:10 ID:liq4jRkB
綺麗なぬりだなぁ
847創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 19:15:54 ID:e32YBChs
>>844
クオリティ高ええぇ!
ああもうかわいいなあもう!
848創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:39:12 ID:EckjA1f5
みんなかわええ。カレンダーたまらん。

もう「4もふもふ」も残り50kbか。
849創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:46:37 ID:QtfwlhiE
うお、もうそんなになってるか
こりゃ次スレ移行も近いね
850創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 21:42:23 ID:tHgK08CK
5月
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01103.jpg

そうか、容量制限でもスレッドがいっぱいになってしまうんですね。
851創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 21:44:44 ID:tHgK08CK
書き忘れました、連投すみません。 4月の曜日の文字に間違いが有ったので
修正しました。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01104.jpg
852創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 21:50:30 ID:JsIRTmbx
なんという子供の日w

>>851
修正乙ですー
しかし卵綺麗だなぁ
853創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 22:02:41 ID:45a5jtrw
どちらも乙です
854創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 22:13:46 ID:tHgK08CK
ついでなので、前のもののカレンダー化してみました。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01105.jpg
855創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 22:17:13 ID:JsIRTmbx
お美しい…
856創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 04:13:29 ID:3Jl1t1Pw
このスレに来てから私に熟女の属性が付加されたのは
先生のせいですからね。
857創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 21:47:05 ID:COGw97P7
>>850
初等部の子と並んでも違和感がなさ過ぎるサン先生が流石すぎるw
858創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 23:43:37 ID:ee7s4I+d
859創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 23:47:45 ID:BRGXKRBP
毎朝この子に叩き起こされてるのに色んなところでフラグ立ててるのか
殺意が湧いてくる
860創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 23:51:57 ID:COGw97P7
ギギギ…くやしいのう…くやしいのう
康太に嫉妬
861創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 23:53:20 ID:cJiv2WOZ
逆に考えるんだ…色々なフラグをたてても1本も消化できてない
ということはつまり……アッー!
862創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 00:01:54 ID:6SBlp3t0
ギャルゲ主人公め…
863創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 00:02:58 ID:8W4/74i6
あんまりフラグ立てまくってるとタイトルがケモガクデイズに変わるぞ
864創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 00:07:39 ID:F2555VIc
おー、きゅーてぃー
865創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 00:28:08 ID:JvWlC5XZ
>>863
OP早々「康太死ね」の弾幕流れまくるじゃないかwww
866創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 00:46:27 ID:J7klAZXD
卓「俺は康太じゃないぞ!!!!」
里「スマン、似てる…」
867創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 00:50:29 ID:raTkPhE8
>>866
見分け方は前髪か
868お受験1/3:2009/03/10(火) 14:17:18 ID:f9RBa4cO
獣人の獣人による獣人のための学校、佳望学園。

ゆえにこの学園の人間生徒は、希少な種類の獣人生徒よりも少ない。
それでも毎年、必ず数名の「人間」が入学試験を受ける。
獣人間の交流や異種間コミュニケーションに興味を持つ「人間」が増加の傾向にある今、この時代。
こちらの道にすすむなら今が一番ラクだと踏んで、人間の少女は中等部を受験する。


「算数は余裕だったね、次の社会が山場かねぇ」
「あ、あの試験官、いつも山登ってるオバサンじゃね?」
「しらない。 私の予知夢が確かなら次の試験でリアス式海岸が出る」
「リアルで出そうだから困るし」
「ああもう、落ち着け、この試験さえ通過すればいいのよ、そうすればあとは高校までは安泰よ、美千代は出来る子」
「ミッチーがまた自己暗示にかかってるし……受験はヒトを変えるってつくづく思い知らされるよ」

美千代の後ろの席のリス獣人、大(ひろし)が溜息をついた。
美千代は椅子ごとガガガと振り返り、大(ひろし)を小突く。

「チビ男はいいよねぇ、勉強しなくても頭良くてさー」
「ミッチーのほうが遥かに成績いいだろーが。もはやイヤミにしか聞こえないし、チビ男じゃないし」
「しっかし、まさかチビ男が私とおんなじところ志望してたなんてね」
「だーからチビ男いうなっての」
「こうやって一緒にテストうけるの、運命感じるわ」
「小指見てるし、繋がってないから、赤いモノなんて絶対」
「ああ、もうすこし身長が高ければ」
「……」


チャイムが鳴った11時50分。もっともハングリーな時間帯。
前では早くも熊獣人の女教師が、手馴れた手つきで問題用紙を配る。
ちらっと等高線の問題が見えた。

静寂に包まれた教室で、美千代の席からズドドドと光速で答案用紙を埋める音が聞こえる。
がめついし。尾の無い背中が怖いし。

(絶対合格しなきゃ)
リスは集中できなかった。

(リアス式海岸とは何か3文字以内で説明せよ、だと?)
(……ミッチーの予想当たってる、だが、これは難問だし)
(3文字、「海岸!」とかか?  ……「ぎざぎざ」ダメだ4文字だし ……)
(これはワナだ、罠だから、ここを間違えたら即刻失格になるかもしれないし!! 解かねば)
(だめだ、あたまが、あついし、死ぬし)



「先生!」
869お受験2/3:2009/03/10(火) 14:17:59 ID:f9RBa4cO

突然、目の前で美千代が手を上げた。
受験生の視線を集めながら熊獣人の先生が静かに歩み寄る。
「なにかしら?」
「このDの問題、まちがってませんか?」
「あらぁ? やーねーごめんなさい」


熊獣人の先生は、黒板まで戻り、Dの問題の修正を書き出した。
これは、今まさに大(ひろし)を苦しめる、リアス式海岸。

「3→30」

簡潔で明快。分からないところがすべて分かったかのような爽快感につつまれた。
これなら解ける。
これほどの幸せを感じたことがあっただろうか。
これほど、目の前の尾の無い背中が天使に見えたことがあっただろうか。


束の間の幸福は、試験終了を告げるチャイムで掻き消された。
リスは焦りを隠せない。
未練のある答案用紙は、目の前の天使によってふんだくられていった。


〜〜〜〜


佳望学園の中等部合格発表は、試験当日その日に出される。
美千代は余裕しゃくしゃくだが、大は胃が痛い。

やがて模様のおかしいパンダと小学生みたいな先生が、
合格番号がずらっと書かれた紙を丁寧に壁に貼り付けていく。
高いところに画鋲が刺せない小さな先生。それを傍観しニヤリと笑うパンダ。


「チビ男が暗い顔してる」
「な、なんでもないし。     あ、俺はチビ男じゃないし」
「私は受かった、余裕よこんなの、あんたは?」
「まだ見つからない」
「おちろ、おちろ、おちろ、おちろ、おち」
「やめい!」


やがて、小学生先生がこちらを指差して、パンダ先生が猫背でこちらを見る。
二人ともメガネの光り方が怖い。
楽しそうな小学生先生、愉しそうなパンダ先生。

「いた! いたいた!」
870お受験3/3:2009/03/10(火) 14:18:42 ID:f9RBa4cO
「板? この子? この子がどうしたんスか?」
「丸谷大くんだよ、中等部のクラス3の一番後ろの窓際二列目の席で受験してた」
「すんげぇ記憶力っスね、あいかわらず」
「だって、人間の子の後ろだったから、すっごく印象に残ってるの。 ボクと同じぐらいの背丈だし」
「先生の方が小さ、いや、なんでもないっス」


小学生先生がポケットから小さく折りたたまれた紙をとり出した。
この紙は、大の未練がましい社会の解答用紙。

「ひろしくん、名前欄も埋めてね」
「え!?」
「ほら、いま書いちゃえ! 内緒にするから」

小学生先生が微笑む。パンダもニヤリと笑う。

「ここだけの話、名前書き忘れの常習犯は学園内にもいるからね」
「いまスからねぇ、サンタクロース先生」
「へへへぇ〜」
「むふふう〜」

「チビ男、おまえ名前書き忘れたのかよ?」
「うっさい   チビ男じゃないし」
「以後きをつけるように」
「シカみたいにならないように、むふっ!」

ほのぼのとした空気の中で、大は赤面していた。
大急ぎで鉛筆をとりだし名前欄を埋めた。
するとすぐに小学生先生が大から突然鉛筆を奪い、合格発表の一番最後に番号を書き足した。

「じゃあ、入学式で」
「シカみたいにならないようにお会いしましょう、くふっ」
明るく笑う先生と、陰湿に笑う先生。 光と影。


きっと学園生活は素晴らしいものだろう、と大は思った。
こんなに楽しい先生がいる、そして幼馴染とまた一緒。



「チビ男さ」
「チビ男じゃないし」
「もーさ、中学生にもなってチビ男じゃかわいそうだからさ、リス男にする」
「それも嫌だ」
「じゃあリスカ」
「もっと嫌だし! ……ミッチー、昔みたいに『ひろし』って呼んでよ」
「わかった、じゃあねチビ男!」
「……」


今日は良い一日だった。
871創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 14:47:17 ID:CWA+CHZw
GJ!
白倉センセが模様のおかしいパンダ呼ばわりでワロタw
872創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 14:51:23 ID:lDLGLEQ3
この仲が良いようで悪いようでやっぱり良い関係って良いな
873創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 15:27:15 ID:tNMaGTFx
リアス式海岸3文字
きっと北陸!だな
874創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 16:17:10 ID:f9RBa4cO
あ、


白倉先生はメガネじゃなかった。
メガネは、はづきちの方だ。
875創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 17:27:29 ID:A8BY5Sgw
三陸!

かな…
876創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 18:19:26 ID:tNMaGTFx
たしかに北陸じゃねえw三陸だw
なんかおかしいなと思ったんだよ俺orz
877創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 20:28:01 ID:uVaz3LB9
そういえば仮面ライダーに鎌田いたな
878創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 00:09:33 ID:zkIkb+Dl
879創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 00:38:23 ID:xBQchRdB
>>878
何という身長差萌え、大かわいいよ、大

〜〜以下チラ裏〜〜
ここんとこ、wikiが更新されてなかったようなので、初めてながらやってみたら
ページ名間違えて作ってしまった/(^o^)\ナンテコッタイ
これはどうしたら良いでしょうか……
880創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 08:18:26 ID:lbwX5nkq
見上げ方がかわいいのう

wikiは正しいページつくって間違いのページは管理人さんに削除してもらえばいいと思うよ
881牙スレより出張:2009/03/11(水) 08:22:16 ID:ETrB095+
ちょっと失礼します。


現在、同人板の獣コミュニティスレ(ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/doujin/1235491194/l50
にて獣系のリレー小説が始まっており、
同スレ民により、ここ創作発表板の獣人スレへの移動が提案されました。
むこうのスレは煽り合いの激しく殺伐とした雰囲気があり
話し合いが困難なため、こちらで相談いたします。

小説内容は戦争を扱うため、若干血生臭く、人によってはグロともとれる流れです。
また、こちらに小説を移動した場合むこうのスレの悪い雰囲気がこちらに流れ込んで来る可能性もあり、
私自身、こちらに移動することに少しばかり抵抗があります。

そこで、アンケートにご協力下さい。

1、リレー小説をここ獣人スレに移動する
2、リレー小説をここ獣人スレに移動することは見合わせる


ご意見の方、よろしくお願いします。
882創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 09:57:13 ID:lbwX5nkq
こっちが何かいうようなことじゃないと思う
そっちのスレ住民で決めたらいいと思うよ
なんかグロ?とかが気になるなら自治スレに相談にいけばいい
883創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:03:20 ID:AZK77Vfb
最近「(呑まないかぎり)一日一枚」が目標になっています。
舞いを描いていたときに『そー言えば登場“人”物って卓と康太といのりんの奥さん
ぐらいだっけ?女の子がいないなぁ』と思っていたので美千代は渡りに船でした。
が、人の顔の描き方をしっかり忘れてましたね(笑) リスの模様も図鑑を見たら記
憶していたのとずいぶん違っていて勉強になりました。

>>875-876
私は「宮城県」じゃないか、と思いましたですよ。もしくは「凸凹岸」とか。

>>879
この時期は女子の方が先に身長が伸びますからねぇ。 でもこのまま成長して180cm
超のリスってのは… あれ?格好いいかも…

>>881
「ゆっくり」が多少揺れつつも案外とソフトにランディングできたのを見ると、こち
らにくいらっしゃるのも大丈夫かとも思いますが、個人的にはご勘弁いただきたいと
思ってしまいました。 あちらを一寸見てきただけの感想ですが…
884創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:07:58 ID:lbwX5nkq
180cmのリスw
すらっと八頭身でもそのままのバランスで巨大もふもふでも
どっちでも意外といいかもwww
885創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:16:55 ID:tR1+ySs3
>>881
>>883
書き手の一人ですが、やっぱり穏やかなここにあれを放り込むのはまずい気がします
どうでもいい獣八禁を省いたとしても、やっぱり空気が違うような……
どこまでも鬼子なようです
886創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:22:38 ID:lbwX5nkq
あ、もしかしてこのスレへの移動なの?
新スレじゃなくて?
だったらこのスレの問題か
887創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:22:55 ID:YelWYsaE
>>881
個人的意見ですが、そちらのスレを見た限りではそちらの空気とこちらの空気は少々合わない気が…

そちらの煽りは酷すぎて目も当てられないものばかり。
もしこちらもその被害を受けて今作品を作っている人達が、消えていった絵師達のように潰されてはかないません

ですから、出来れば他の所を当たって頂きたいというのが正直な見解です

なんか偉そうなこと言ってすみません…
888創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:40:27 ID:2ytKaIjZ
>>881

向こうでリレー小説移動を反対した者です。
わたしも書き手ですが、やっぱり小説内容がちょっと…
このスレとは合わないと思います。

それに私は、牙スレでネタとして文を投下した節があって
正直このスレに移動されると、ちょっと恥ずかしいです



>>868

いじられリス! チビで大ひろし! もふりてぇ!
そういえば人間の女子生徒っていなかったんだな。 あれ、いたっけ?
名前書き忘れのネタをひきずられるシカ(来栖さん?)もご愁傷様。 
889創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 10:56:25 ID:lbwX5nkq
そもそもなんでこのスレに移動なの?
スレ保持数余りまくってるんだから新規スレ立てたらいいのに
創作発表板の仲間が増える分には歓迎さー
890創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 11:04:18 ID:8bTvuDGF
それはここが獣人総合スレだからじゃないのか
重複で削除とかが怖いんだろう
別に同じ題材のスレが複数あっても叩かれるような板じゃないけどね

ちょうど次スレの季節だし、次スレは獣学園スレにでもしちゃうかい?w
まぁ実質そうだしな、このスレw
891創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 11:14:15 ID:gsXCs9Q+
>>881
正直、同人板の雰囲気とかをこっちに流れ込ませて人減らされても
困るからやめてほしい。あっちはあっちでかなり殺伐してるし、
こっちに影響あったらたまったものじゃないので。

>>883
ルルとか織田さんもいるよ!よ!

>>890
なんか分けちゃったら「獣総合」の方が過疎りまくる気がするし、
このままでも良い気がするよw
実際その方が見やすいというか使いやすいかなぁ。なんて。
892創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 11:17:11 ID:2ytKaIjZ
>>890

まだ完結してないフォーマットや難解日常も実は楽しみだし
たまにちらっっと投下される単発も地味に好き。
個人的には獣人総合のままがいいな。
893創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 12:06:32 ID:wxMb+YEX
普段ここROMってるだけの人だけど、リレー移転は別でスレ立ててやって欲しいかな。やっぱり
894創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 12:28:28 ID:AZK77Vfb
>>891「ルルとか織田さん」
ああっ、そうか、居ました。自分が描いてないから失念していました。申し訳な
いです>ルル&織田さん
895創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 12:55:05 ID:gsXCs9Q+
>>894
これを機に絵師さんのルル&織田さんが見たくなってきたじゃないか!
というか以前に織田さん描いてませんでしたっけ?
896牙スレより出張:2009/03/11(水) 13:07:36 ID:RlUJDtC9
アンケートご協力&丁寧なご意見ありがとうございました。

・小説の雰囲気がこのスレに合わないこと。
・殺伐とした空気がこのスレに流れるべきではないこと。
・リレー小説を創作発表板に移すなら、別スレを立てること。

この内容で、もう一度話し合ってみることにします。



別板の問題に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。
それでは、失礼いたします。


>>895
一番最初にSSの織田氏を描いたのは・・・
脳内イメージと絵が一致しすぎて、ものっすごく驚いた思い出が〜
897創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 13:42:32 ID:VSQf55YO
まるでパレスチナ問題だな統合は上手くいかんだろう
898創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 17:35:09 ID:dEyb6XBf
>>883>>891>>894
惣一「完全に忘れられている俺……チビだからなのか!? そうなのか!?」
空子「ちょっ、ソウイチ、落ち着いて!?」
899創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 18:17:52 ID:45V4eMr0
人間キャラは恋愛フラグの一つ二つ立てなければ生きて行けないと
康太大先生がおっしゃっています

康太とヨハンの絡みが見てみたいな
先天的才能で戦う奴とと後天的技術で戦う奴のぶつかり合いか
少年漫画の王道だな
900創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 18:18:35 ID:mlhpTzI4
なんの戦いだよwww
901創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 18:28:15 ID:6dKQ6cJB
主人公補正による因果律の操作は凶悪だな
狙いすましたように曲がり角で女の子と正面衝突。母の再婚相手の連れ子は美人姉妹。
お隣さんは巨乳な先輩。初めての図書室でロリ先輩とピンポイント遭遇&密着。この世の事象を味方につけてる

これにヨハンは経験と技術でどう対抗するか気になるところだな。あの先生ならチート相手でも戦えそうに思える
902創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 22:04:03 ID:zkIkb+Dl
惣一をまるっきり失念していたぁ。 けっこう描いたのに…

織田さんは、わんこさんの描いたので私の中では確定スイッチが入ってしまっ
たので、私の描いたのは申し訳ない、取り下げで。

と言う事で、先日良い絵本を買ったときに下書きまでしていて忘れていたもの
です、織田さん付きです。
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01124.jpg
903創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 22:36:59 ID:45V4eMr0
かわゆいライオンさんだ。図書館常駐組みにまた一人加わったかな
904創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 22:54:09 ID:wxMb+YEX
こういう日常のシーンいいなぁ
としょかんライオンは俺も好き。ほんとに素敵な絵本だよー
905創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 14:13:52 ID:/rirJbho
おとなしそうなライオン君だなぁ
本好き仲間が増えたね!
906創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 15:08:51 ID:jUlHpLCN
>>896
雰囲気が違いすぎて引く
ここの名無しさんが巻き添えを食って潰されたらかなわん
複数スレは削除の対象になる

VIPか牙スレでおながいします
907創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 15:16:18 ID:JupCxHcN
>>906
こっちに来ることはなくなったみたいな流れになってるので大丈夫かと。
908創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 15:24:09 ID:FKNy7F9B
お、そろそろ容量やばいかな?
909創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 15:25:04 ID:/rirJbho
次スレの季節か
910創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 17:19:22 ID:nKQJSPC/
あと30kb、まったり雑談タイム突入だ〜
911創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 17:48:47 ID:dDxyCMiA
すげっ! 次で5!
912創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 17:53:39 ID:Lc5UeMzG
よくわからんが次で4!
913創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 17:53:42 ID:nKQJSPC/
あ、ところで今気づいたんだけど、数スレ前に誰かが作ってくれたコレ↓

>>1乙。お前なかなか目端が利くな、鹿馬ロ入るか?」
「GJだよ>>1くん!御褒美にこの“生キャラメル(?)”をあげるよ!」
「やめろよサン……>>1、それ多分ジンギスカンキャラメルだからな。コーヒー置いとくぞ」
>>1さん手際良いっス!怪我したらこの保健委員を呼んで欲しいっス!手厚く看護するっス!」
「中身を見たい生き物がいたら持って来ると良いっス。僕がヤってあげるっス……うふふ」
「白倉先生、保健委員とキャラ被ってますよ」
「……ぼそぼそ(跳月先生こそキャラ立ってなくて埋没してまスよ)」
>>1おつ。おい塚本、お前《馬鹿ロリータ》とかいうチーム作って小学生襲ったらしいな。指導室来い」
「塚本……君はハルウララだと思っていたのに。少年院でも達者でな。僕は祈ってるよ、別名祈り虫だけに」
「お前も馬鹿ロリータの一味だって聞いたぞ鎌田。指導室来い」
「ナ、ナンダッテー>Ω ΩΩ」
>>1おっつー。私がハルカ特製肉じゃが作ったげる」
「……お前マジでおかんみたいだぞ」
「うっさい爬虫類、タバコ食べさせるぞ☆」

これの、もっと新しく増えたキャラとかの分も読んでみたくなったよ。
もちろんケモ学とかじゃなくても読みたいし。
914創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 18:21:09 ID:xP2JO4EE
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01133.jpg
「新しく体のパーツを創作する事など造作も無い」
915創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 18:28:12 ID:fv5w5QF8
おい、かわいすぎだろ
萌え殺す気か
紀伊店のか
916創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 18:28:37 ID:EhOo7jXE
獣人というよりコスプレに見えるなぁ。
917創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 18:37:47 ID:wIx4nhAI
スレの最初の方で出てきたお嬢様
また出番がきましたよー

918創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 20:25:27 ID:RVo2YY3s
919創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 20:26:55 ID:+7Mzj8Hv
これはスレ立てした奴をお嬢様が労ってくれる展開か
920創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:03:06 ID:RVo2YY3s
921創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:09:57 ID:nKQJSPC/
ふと思い出したけど、かなり前のスレでスレ終了間際の投稿ラッシュがあると
wiki編集するのが大変だって書き込みあったような気がするんだけど、大丈夫かな
922創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:13:42 ID:4gN2HtL6
妹様可愛いいいい
923創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:41:00 ID:RVo2YY3s
924創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:42:13 ID:+7Mzj8Hv
執事wwww
925創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:44:10 ID:4gN2HtL6
やっぱり執事が良いキャラしてるw
926創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 23:21:50 ID:/rirJbho
これはスレを立てねば
927創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 23:29:23 ID:RVo2YY3s
928創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 23:34:27 ID:EhOo7jXE
妹君さすがw
そして執事wwwww
929通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/03/13(金) 02:11:24 ID:NbiFbpev
昨日までインフルエンザで寝込んでいた俺が通りますよ……。

今回、投下するのは寝込む前に書き上げた物です。
その為、少しだけ時期がずれていますがそこは御了承ください。
930通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/03/13(金) 02:17:05 ID:NbiFbpev
「うー寒寒。名残雪にしても降り過ぎだろ、コレ」

春も目前に控えたとある休日、俺は文字通り凍えるような寒さに身を震わせながら独り呟きを漏らした。
もう啓蟄を過ぎた時期だと言うのに、冬の最後っ屁の様に雪が降り続いている。
この調子だと周囲が雪景色に変わるまでそう時間は掛からないだろう。

こんな雪の日となれば、イヌ族や白熊族のケモノ達はさぞかし喜び勇んで外へ飛び出して行くことだろう。
しかし、毛皮の無い人間である俺にとしては、こう言う日は自分の家でコタツに入りながら携帯ゲームと行きたい所である。
だが生憎、今の俺にはこのくそ寒い中、外へ繰り出さなければならない理由があった。

「ったく、利里の奴、何処へ行ったんだ?」

そう、TVニュースで啓蟄が過ぎた事を知った利里が外へと(それも雪が降る中)遊びに出てしまい。
利里が冬眠し出す前に探し出して欲しいと利里の両親から頼まれたのだ。

……本来なら、ここは利里の両親が捜索に出るべきなのだろうが、
この寒さの中だ、爬虫類の人がヘタに外に出れば親子共々冬眠する羽目になるだろう。
其処で、冬でも平気な人間であり、それで居て利里と一番親しい俺の出番となった訳で。
俺は最後っ屁の雪が降り続く中、恐らく冬眠しているであろう親友の捜索に出たのだ。

「しっかし、こうもじゃんじゃん降られると本気で周りが見えないな……」

多分、ここに居るだろうと適当に検討をつけた中央公園に到着した頃には、雪の降りは絶好調になっていた。
むろん、降り続く雪の所為で視界は最悪だ。殆ど白ばっかりで数メートル先の物ですらはっきりと判別できない。
コレが所謂、雪山で一番恐れられていると言うホワイトアウトと言う現象なのだろうか。まさかここで体験するとは……。
この調子だと、利里の捜索はかなり難航しそうだ。 

「ん? アレは……?」

それでもめげずに捜索を続けて数分経った頃、俺は降り続ける雪の中に動く物を視界に捉えた。
何だか黒っぽいもこもことした怪しい物体。それに対する最初の第一印象はこれだった。
取りあえず、それが妙に気になった俺は正体を確かめようと近づいてみる。

「うわっ、怪し!」

近づいて見ても怪しい物体は怪しい物体でしかなかった。
――いや、物体と言うより人、の方が近いかもしれない。パッと見た目はフードを目深にかぶった人、
なのだが、分厚いフード付きコートを何枚も着込んだのだろう、そのシルエットは完全に丸に近い形をしている。
コレに近い物の例を挙げろと言われたら、多分雪ダルマか太った熊族が近いかと思う。或いは歩くダルマストーブ。
当然と言うべきか、着こんだ生地の厚さの所為で両脇が完全に締められないらしく、両腕を始終ぶらぶらとさせていた。
そして下半身の方もズボンを何枚も着こんでいるのか、かなり歩き辛そうによちよちと歩いていた。
何と言う怪しい人、これは間違い無く通報される……。と、俺が思わず思ったのも無理も無いだろう。
当然、俺は余り係わり合いにならない方が良いと賢明な判断を下し、
そそくさとその場から立ち去ろうとした矢先。

「あれ? 其処に居るのは……」

背に掛かる何処か篭ったような声に、俺は思わず足を止めてしまった。
しまった! このまま無視してさっさと立ち去れば良かったんだ。なのに何で足を止めちゃうかな? 俺。
仕方なく、俺はその声を掛けてきた怪しい人の方へ振り向く。
931創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 02:19:31 ID:QBQIH5TU
おおっと容量やばいかも
今PCつけてスレ立てるからちょっと待って
932通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/03/13(金) 02:22:16 ID:NbiFbpev
「あ、やっぱり、御堂君だ。 如何したの? こんな寒い時に……」

そんな俺に向けて、よちよち歩きで歩み寄りながらやたらと親しげに話しかけてくる怪しい人
なんだかずいぶんと馴れ馴れしい奴だ。と言うか、こいつは何で俺の名前を知ってるんだ?
と、どうやらその思考が表情に出ていたらしく、怪しい人が何処か慌てた感じで言う。

「や、ちょっと。私だって、隣のクラスの蜂須賀だよ。
だからそんな『何だこいつ?』と言いたげな眼差しは止めて」
「へ……?」

思わぬ名に思わず間の抜けた声を漏らす俺。それをどうやら信じていない物と取ったのか、
怪しい人は声にむっとした物を混じらせ、目深にかぶったフードを捲り上げて見せた。
「仕方ないな、如何しても信じないなら……ほら!」

フードの奥から出てきたのはオレンジ色の般若…じゃなくて見間違え様もない蜂須賀さんの顔だった。
ここで同じ顔をした彼女の姉妹と言う可能性もあるが、ここで俺を騙した所で意味はないだろう。
……にしても、彼女の顔は何時見ても心臓に悪い。一瞬、驚きの声をあげそうになったし。

「いや、疑って悪かった。……で、所で蜂須賀さんは何でこんな寒い日にこんな所に居るんだ?」
「ああ、それはね……実は言うと今、堅吾のバカを探している所なんだ。 ここら辺で見なかった?」

なんだ、彼女も人探しの最中だったのか。こんな寒い中をご苦労様である。
んで、堅吾と言うと、あのワンタッチヒーターの異名を持つカブト虫人か……。
こんな寒い中を出歩くなんて、本当に考え無しなんだな。利里もそうだけど。

「残念だが、堅吾の奴は見なかったな。 と言うか、俺も利里の奴を探している所なんだが」
「あれ? 奇遇だね? 卓君も人探しの最中なんだ」

フードを被り直した蜂須賀さんが触角をピンと跳ね上げて聞き返す。

「ああ、そうなんだよ。利里の奴、啓蟄が来たとか何とか言って、このクソ寒い中を飛び出してってな。薄着で」
「うわぁ。 こっちもこっちで堅吾のバカ、我が春が来たとか喜び勇んで止めるのも聞かずに飛び出してね。薄着で」
「……お互いに考え無しな友人を持つと、本気で苦労するな」
「そうだね。フォローするこちらの苦労を、一度くらいは考えて欲しいもんだよね……」

言うだけ言って、俺も蜂須賀さんも深い溜息を漏らす。
どうやら、彼女も俺と同じ立場だった様で……

「じゃあ、二人で手分けして探すとするか? 一人で探し続けるより二人で探した方が見つかるかもしれないし」
「その方が良いね。このまま寒い中うろついてると私も生命の危機に直面しそうだし」
「そういや、蜂須賀さんも虫人だから寒さに弱かったんだよな……」
「そうだよ。 私達虫人は卓君の様な哺乳類種の人とは違って、体温の調節が出来ないからね。 
こんな寒い日はこんなダルマストーブみたいな格好じゃ無いと割と本気で死ねるし」

言って、着膨れした自分の脇腹(人間で言えば)の部分をパンパンと叩く蜂須賀さん。
……そう言えば、鎌田の奴は元気なのだろうか?
利里や堅吾みたいに啓蟄と聞いて外に飛び出していなければ良いのだが……。

「それじゃ、俺は公園の南門の方を探してくるから、蜂須賀さんは北門の方を頼む」
「うん。利里君を見つけたら直ぐに知らせるよ。 その代わり堅吾を見つけた時は頼んだよ?」
「ああ、それは分かってる。んじゃ、1時間後にこの場所で」
「りょーかい」

一通りやる事を決めた後、俺と蜂須賀さんは二手に分かれて捜索を再開する。
早く見つけてとっとと家に帰ってコタツでぬくもりたい、とか何とか考えながら。
933創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 02:26:30 ID:QBQIH5TU
934通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/03/13(金) 02:26:32 ID:NbiFbpev
「卓君、堅吾は見つかった?」
「駄目だ、影も形もない。 そっちは如何だった?」
「こっちも駄目。尻尾の先すらも見つからなかったよ」

そして1時間の時間が流れ、周囲が完全に雪景色に変わった頃。
俺と蜂須賀さんは約束した場所で合流し、お互いの成果を報告した。
寒いのを我慢して探し回ったにも関わらず、お互いに成果は芳しくない様で……。

「ったく、利里の奴、本当に何処行ったんだ? この公園じゃない…なら……」

苛立ち紛れに頭をぼりぼりと掻きながらぼやこうとした俺のその言葉が途中で細まり、消えて行く。
何故なら、俺の視線の先には、ベンチの上に二つ並ぶとても大きな雪ダルマがあったからだ。
ま、まさかとは思うが……?

「ね、ねえ……ひょっとするとひょっとして……」
「言うな。 俺だって『ひょっとしてあの雪ダルマがそうじゃないのか』とは考えたくないんだ」
「け、けど、だからといって確かめない訳には……」
「…………」

暫し無言で蜂須賀さんと顔を見合わせた後。
意を決した俺はゆっくりと雪ダルマへ歩み寄り、その表面の雪を払い落として見る。
どうか、ただの雪ダルマでありますように、と心の奥で祈りながら。
―――だが、

「うわぁぁっ! やっぱりか!」

祈りも虚しく、雪の下にはカチンコチンに凍りついた利里の顔があった。
それに俺が驚いた拍子に、隣の雪ダルマも表面の雪が崩れ落ち、同じく凍りついた堅吾の姿を露わにした!

「案の定とは思ってたけど、こうも見事に凍り付いてるとは……!」
「た、多分、たまたま堅吾と利里君がここで出会って、そのまま話をしている内に凍っちゃったって所かな?
……って、冷静に分析している場合じゃなくて、早く蘇生しないと完全にアウトだって!」
「ああ、そうだった! 早くお湯を用意……って、何処から持ってくれば(ry」
「そんなの私に聞かれても(ry」

むろんの事、如何すれば良いのカ分からず、パニックに陥る俺と蜂須賀さん。
だが、そんな俺達を余所にして、冬の最後っ屁である大雪はまだ尚もしんしんと降り続けるのだった。
……どうやら、この雪が解けきるまで、まだまだ春は訪れそうになさそうである。

追記、凍りついた二人をお湯に浸したらあっさりと蘇生した。単純にも程があるだろ……

―――――――――――――――――――終われ―――――――――――――――――――
935創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 02:29:17 ID:QBQIH5TU
 
936通りすがり@携帯 ◆/zsiCmwdl. :2009/03/13(金) 02:32:05 ID:NbiFbpev
以上です。

まさかインフルエンザで寝込んでいた間に規制されているとは……。
運営さん、何してくれてんの……orz

支援をしてくれた方、有難うございます。
それと>>933大変に乙です。
937創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 02:37:17 ID:QBQIH5TU
投下おっつー
啓蟄こええww
虫やトカゲは喜び外駆け回っちゃダメだろw
938創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 03:01:44 ID:i97NXMn5
犬太駆け回ってそうw
939創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 05:07:52 ID:jD0rRryv
猛 「だれも聞かないから答えるが、俺は元気だ」
940創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 11:18:49 ID:1A5+wx28
941創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 11:42:36 ID:ODmGxEpL
942創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 11:58:17 ID:zQ/mtr81
943創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 11:59:34 ID:MCeq+pml
どうせ埋めるなら好きな動物を語ればいいじゃない

アメリカバイソン
944創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 12:13:52 ID:mAWb3d3I
猫ー
945創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 12:28:09 ID:xt44swNl
タッカラプト ポッポルンガ プピリット パロ
946創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 12:48:35 ID:i97NXMn5
ポルンガ「まずドラゴンボールを集めろ」
947創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 12:50:17 ID:uNWKnzBz
アルマジロが好き、デザインが格好良い
948創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 12:52:50 ID:Uiz+e79X
>>939
猛はハルカたんとにゃんにゃんしていれば良いと思います><
949創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 14:00:31 ID:QBQIH5TU
ハシビロコウいかす
950創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 14:18:43 ID:i97NXMn5
初等部達が可愛くて大好き。
951創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 14:22:45 ID:zQ/mtr81
初等部だけど胸の大きな娘がいたな…
952創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 14:49:12 ID:Uiz+e79X
おっぱいおっぱい!
    〃〃∩  _, ,_
    ((⊂⌒(* ゚∀゚) =3 
バタバタバタ`ヽ_つ ⊂ノ バタバタバタバタ
953創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 14:59:55 ID:124NbIZS
二葉ちゃんだっけか。
きょにうはいいぞ だがな…重いんだよ。
特に走るときなんか地獄。サラシ必須
954創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 15:25:19 ID:Jvnns3Yt
伊織先輩も部活前にサラシを・・・胸がむにゅっとなって・・・
誰か陸上部の更衣室の覗き見スポット知らないか?
955創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 18:24:32 ID:Uiz+e79X
アキラがあの特攻で爆走して更衣室の入口から飛び込んでしまって
逆におっぱいのお姉さま方にもみくちゃにいじられる所まで想像した
956創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 18:29:27 ID:i97NXMn5
アキラじゃぼっこぼこにされそうだw
957創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 19:44:28 ID:OqmEvsCX
てす
958創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 20:29:36 ID:reULoo7F
ナガレが作戦を練って、アキラが特攻。
そしてタスクは見張り。

「タスク!後ろ後ろ!」
959創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 20:34:04 ID:Zjmp+SBU
>>934
おばか二人の頭には既に春が訪れているようだなw

>>954
サラシ装備であのサイズだと…バカな……
960創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 23:01:07 ID:QBQIH5TU
なんという…ゴクリ…
961創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 00:35:04 ID:19GB/ujv
作品が沢山、皆さんお疲れ様です。

>>933 スレ立てお疲れ様です。

途中のカレンダーの話を目にして、勝手にこんなページ作っちゃいました。
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/583.html
そんなに企画っぽいページでもないですが、興味があればどうぞ。
962創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 01:56:22 ID:R/Lul4tg
まとめおつおつ
963創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 10:30:06 ID:NPal7I1c
#昨晩は途中まで描いて寝てしまった…
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01145.jpg
964創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 17:02:21 ID:bnIpseiK
母性を感じる
965創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 17:46:55 ID:jXhSTSYZ
なんという胸。伊織さんエロ過ぎるよ
966創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 18:49:55 ID:R/Lul4tg
なんとけしからん
967創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 20:45:38 ID:3hvJXPLd
横乳えろ〜
968創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 02:06:42 ID:dp8q96f7
「皆、何処に行きましたの?」
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01156.jpg
#一寸大きくてすみません。
969創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 02:07:53 ID:gcETPvvZ
ペーパークラフトお嬢様だwww
970創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 02:08:56 ID:PQhezmjm
ペーパークラフトとな!?
971創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 02:21:46 ID:3YwY89Xe
切って貼るのか!!
972創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 02:50:37 ID:lJRcNfmO
ペーパークラフト!立体お嬢様だと…!?
973創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 17:15:10 ID:lnWeWj/W
さすが5スレ目に突入するだけある
絵や文だけでなく、動画、音楽、そして立体作品まで作られるとは
974創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 17:20:37 ID:3YwY89Xe
そういえば立体スレでフェルトの獣人作ってた人がいたな
975創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 20:24:11 ID:dp8q96f7
976創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 20:34:53 ID:3YwY89Xe
お嬢様よかったねぇ
977創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 22:22:17 ID:05msrofY
大浦シュートがなんかツボったw
見つめてごらんよ〜貴女の中の宝石箱を〜
978創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 22:58:29 ID:PQhezmjm
いじけてるお嬢様可愛いよお嬢様
979創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 05:05:33 ID:jSBiUw82
お嬢様達の独壇場キタコレ! 執事さんの名前もいいわぁw
声を出さず読んでいたのに「変にトぶ」の部分で我慢出来ずにフイタwww

妹君の名前は読めたけど、姉様の名前が読めません……
壇馬院椎蘭で下の名前なんて読めばいい?
980創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 09:59:09 ID:GjTeSfSD
お嬢様の登板が早すぎてこのスレなかなか消化しきれないものだから責任持ってお嬢
様にはスレを埋めてもらわないと、と。
 あ、それならば画一枚毎にレス一個にすればよかった…

>>979
壇馬院(だんばいん)家の長女「椎蘭(しいら)」、次女「茶夢(ちゃむ)」。
壇馬院家執事の大浦力(おおうら・ちから)。
 きっとメイドで江入富依乃(えいる・ふいの)ってのも居るはずだ。


ちなみに、スレの残容量ってどうやって調べるのでしょう?
981創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 11:37:25 ID:+b93X64E
>>980
専ブラじゃないなら左下に赤文字でありません?今490KBです
専ブラなら↓のスレ名の横に
982創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 11:44:08 ID:GjTeSfSD
>>981
おお、本当だ。いつも見てたのに全然気にしてなかったです。
注意力が足りないなぁ。  ご教示ありがとうございます。
ふむふむ、あと10KByte/20レスですか。
983創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 11:58:38 ID:BP+CUwnA
AA貼ったらあっという間だよw
984創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 12:18:20 ID:GjTeSfSD
消費のための消費は一寸もったいないかな、と(笑)

手前味噌では有りますが、今回は早めにお嬢様が出てきて逆に早すぎて抑えるっての
が有ったおかげで、「扉の向こう→部屋で分かれる→紙工作」って感じでスレ切り替
えタイミングで遊ばせていただけました。 5の終わりはどうしようかなぁ…って言
うとハードル上がって辛いですけれども、こういうの考えるのって、楽しいですよね。
985創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 12:23:48 ID:dSOS1AEn
これって考えてて楽しいんだろうなぁ、ってのは作品からも伝わってきたよw
俺も行ったりきたりがとても楽しかったwお嬢様と執事はこのスレでもかなり好きなキャラです
986創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 15:51:21 ID:OKlwHUCK
ずいぶん懐かしいネタ持ってくるなw
大浦なんて奴いたっけ…? って一瞬思ったが成る程、オーラ力か
987創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 16:50:31 ID:q3jhdQfc
             ,、
             /,\                /ヽ、
            //ヽ.\           ,//´ヽヽ
              /,/  ヽ, ヽ         //   ヽ\
             亠------┘          ゙‐'―---┴┘
            ,-―┬ー¬'''''''ー―ァ―----、___
           i´   レヘ   ∧ ノ          `!
          /       ヽ / V             |
         !゙        V                  |
           !     ノ         i \           │
          l゙  ,,..´● ,!         ! ● ` 、_, .       |
          ハ ̄   丿       ヽ    ` ゙'''''ナ   │
        |. `ー-ー ´ ,,-ー‐''''''''‐‐、 \,_    _,,ノ      | 
         |     ,/  .r'⌒ヽ、  `'、ヽ `゙゙`       ゙l-‐,っ
    r--―┘    /´   〈   °)   ヽ. \         ,∠__
    `丶、     /     `ー''′   │. \           _,,,ニゝ
  <''''"´     |      |      |   ヽ          =二,,,___
    `,ゝ       l     八      │               __,,,,-‐´
    '''ヘ,,_      `、,,,,,,...ノ'⌒ヽ、,,,,,,,,,...ノ'            ゙'ー、
       `"'ー-,,,,,,,,,,,ヽ--ー‐‐----'´    _,,,,,,,,--ー'''"゛ ̄ ̄~
             ''|''ー――--t―t-七''''''ヾ
         .,,,,,,,__,,,-―'弋○ ○ .|ぅ.‖ ,》.__,,|シ、,,,,_     _,,-ヘ
  _,,,,,,-,ー'''"゛        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     `゙'''ー--'".ィニイーフ ,
  ゙'''‐,i、         _,,―¬''''"゙"'''''''''ー-、、               /
  <、       /"`           `ヽ          ,二ニ=:
   ∠、     /                ゙ヽ        ,ゝ

988創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 19:42:36 ID:D6W9GdJr
そろそろ本格的に容量少ないから埋めちゃおうかね
989創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 19:50:56 ID:BP+CUwnA
耳がww
990創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 19:58:52 ID:DYy5oLbW
耳、離れてるんだよな…
気づいたときには妙に残念な気持ちになった…
991創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:00:43 ID:D6W9GdJr
表情にもつっこんでやれよww
992創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:10:09 ID:rdAWTMX+
993創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:15:59 ID:BP+CUwnA
ごきげんよう〜
994創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:23:05 ID:rdAWTMX+
995創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:24:19 ID:BP+CUwnA
ちょwwwww
996創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:27:40 ID:D6W9GdJr
残さず食うんだ!!
997創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:28:28 ID:ggykpZM8
ガイさん何やってんすかww
998創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:40:23 ID:q3jhdQfc
999創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:41:12 ID:BP+CUwnA
耳浮いてるww
1000創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:43:21 ID:D6W9GdJr
1000!!
10011001
             /■\
             (_´∀`)_     創る阿呆に見る阿呆!
           /,/-_-_-_-_-_\     同じ阿呆なら
    ( (   /,, /― ((神輿))―\    創らにゃソンソン!! //
        (。'。、。@,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。@  ) )
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