夢を見ていた。
静寂の闇に、ポツンと私一人だけが存在していた。
真っ暗な闇の中、どんなに目を凝らしても何も見えない。辺りを探ってみるが、伸ばした手は空を切る。
淀んだ埃っぽい空気と、裸足の足の裏に伝わる冷たく硬いコンクリートの床の感触から
ここが室内だと見当をつけるが、闇雲にどれだけ歩いても、どこにも壁らしきものにぶち当たらない。
ありえない。これは夢だよね。
私は不安な心を落ち着かせようと、そう何度も自分に言い聞かせる。
大声を上げて、助けを呼んでみようかと考えてみる。
でもこの闇の中に潜む、悪意あるモノを呼び寄せてしまいそうで、臆病な私は躊躇してしまう。
夢なら早く覚めてと願いながら途方にくれていると、どこからか音が聞こえる気がした。
耳を澄ますと微かにベルのような音が聞こえる。
その音を頼りに、音の鳴るほうへ歩いてみる。だんだんはっきりと聞こえてきた。
――ジリリリリリンッ――ジリリリリリンッ
電話の音だ。不自然な状況に恐怖を覚えて足を止めるが、この異常な夢を早く終わらせたい一心で
私は再び歩き出した。あった。
その黒電話は漆黒の闇の中でも、何故だかぼぉっと光っているかのように存在感を醸し出していた。
床に直に置かれていて、線は繋がっていない。しかし呼び出し音は鳴っている。
私は四つん這いになりながら、恐る恐る電話の受話器を耳に当てた。
受話器からは何も聞こえない。沈黙に耐え切れなくなって声を上げた。
「もしもしっ! もしもしっ! 誰か助けてっ!」
途端にザーッと不愉快な雑音が鳴り響いて、私は思わず受話器を耳から遠ざけたが、
その雑音にまぎれて、男か女か分からない低い恨めしそうな声が確かに聞こえたのだった。
「――ダレ……モ、タス……カラ、ナ……イ……」
――誰も助からない?
その言葉にハッとした瞬間、目が覚めた。
暗闇の中、見知った天井が見える。柔らかなベッドの感触に安心する。
やっぱり夢だったんだ。
嫌な夢を見たなぁとうんざりしながら、目覚まし時計を確認すると午前二時二十二分。
私は布団に潜り込んでもう一眠りすることにした。その瞬間、
―ジリリリリリンッ――ジリリリリリンッ
>>598 便乗して書いてみましたが、夢のシーンが長くなったのでここでやめます
ホラーの主人公はやっぱり女の子ですよね。男が怖がっているところは見たくないし、見苦しいと思います。
以上。アク禁だー。長文を書いた後に気付くなんてショックだよ