ウェスタンな創作!

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1創る名無しに見る名無し
正統派西部劇からスキヤキ・ウェスタンまで。
夕陽とか荒野とか決闘とか。
それっぽいものをそれっぽく作ったり発表したり見たり感想つけたりしてみましょう。
2創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 00:01:50 ID:haxDK0tF
ウェスタン…あんまり作品が思い浮かばないな
3創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 00:02:54 ID:xvQXZCYS
カウガールのウエスたん
4創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 00:08:05 ID:pWnQxDi4
不沈艦スタン・ハンセンはウェスタンですよね?
5創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 01:27:57 ID:tT0FgcLM
ジャンゴは嫌いじゃ無かったよ。
無茶苦茶だったけど、突き抜けてればいいかな? って感じ。

何ヶ月か前に、某新人賞応募用の変身ヒーロー+ガンアクションってのを、
文芸書籍サロンの晒しスレで批評してもらった事があるわ。

ガンアクションって、日本人には馴染み薄いと思うんだけど、面白いよね。
6創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 02:30:45 ID:y5NSeauW
 羽冠(ウォー・ボンネット)をはためかせ、目淵を朱の顔料で塗り染めたスー族の男は、方
々から向けられる銃にも全く動じなかった。
「おらぁよぉ、テメェら白人が大嫌いなんだ。だが親切で忠告してやらぁ。そんなチャチ
なオモチャじゃあ、おらぁ殺せやしねぇぜ?」
 片言……というよりナメきった口調はそのままに、スー族の男は、自らを取り囲む馬上
のガンマン達を睨み付けた。
 微塵の焦りも無く、スー族の男はナイフの納められた革の鞘に手を掛けた。
 痺れを切らしたガンマンの指が、トリガーを牽引し、撃鉄のテンションを解放する──
銃声。
 弾丸は見事スー族の男に当り、“跳ね返って”、発砲したガンマン自身の額に赤い丸印
を付けた。脱出する弾に合せて後頭部を爆散させ、馬上のガンマンは地べたの肉塊に変わ
り果てる。
 落馬した男だった肉塊を見て、ガンマン達の馬がどよめく。今し方死んだ男の乗ってい
た馬は嘶きながら駆け去った。
 スー族の男は弾丸をはじいたナイフを陽光に翳し、顔をしかめた。
「……ナイフに傷がついちまった。お前ら、これ、どうしてくれんだ?」


 結局、スー族の男は、八人のガンマンを皆殺しにした。ナイフ一本で。
 のちに語り継がれるスー族の蜘蛛男・イクトミ。彼の最初の殺戮は、実に鮮やかに執り行われた。
7創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 04:46:47 ID:0tPuDXdd
オリハルコンナイフか
8創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 12:17:20 ID:ZCuazrNG
「お前など煮込みにしてやる!」
マカロニ・ウェスたんが叫んで愛銃を抜いた。

「うるさいれす!おまえなど、くびれす!ウエストなだけに!」
マカロニ・グラたんは負けずに叫び、"鍋"を構える。

ママママカロニ・・・
PerfumeのBGMがどこからともなく流れ始め、二人は死のダンスを踊り出した。

「あれ、ゴリラは〜?ゴリラは〜?」
俺は涙を流しながら叫び続ける。

そこで目が覚めた。
9創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 19:44:13 ID:ViD6s226
勇者の羽が 荒野になびく
夕暮れせまる

サウスダコタ
10創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 19:53:30 ID:y5NSeauW
ありがとう
ロリコン共
稼がせてもらいました

ダコタ・ファニング
11創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 22:12:52 ID:1ufIX4Gu
青い瞳のガンマンが 海を渡って武者修行
極めし銃と刀にて この世に無用の悪を断つ
12創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 23:06:11 ID:KVAqSnF5
ウエスタンと言えば・・・?
・西部開拓時代
・酒場
・ギャング
・カウボーイ
・保安官
・さすらいのガンマン
・決闘
・馬
・サボテン
・風が吹いてゴロゴロ転がる奴(名前なんだっけ)
13創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 23:31:00 ID:CE+DHlvo
>風が吹いてゴロゴロ転がる奴(名前なんだっけ)
タンブルウィードじゃなかったかな 根無し草でもいいと思う
14創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 08:24:31 ID:M/1KYALG
日本人だしウェスタンというとまずマカロニだな
現原住民のインディアンだのが絡んでくるといろいろややこしいし
なんであと思いつくのは…

・賞金稼ぎ(とDEADorALIVEのちらし)
・ギャンブラー(ハリウッド製だと女のギャンブラーも)
・白壁の家、白い服、ポンチョとソンブレロ、浅黒い肌の農民
・豆料理を木のスプーンで救って食べる
・葉巻、パイプ、ロウマッチ
・手動ガトリングガン、その他珍妙なてっぽう
・床屋が髭剃りをなんか革で研いでる
・鉄道、機関車
・南北戦争では南軍の兵隊だった
・神父
・導火線に火つけるダイナマイト
・写真屋が黒い布かぶってマグネシウムばしゃって焚いて撮る(ファインダーからは逆さ)
・お互いに帽子を撃ち飛ばして実力を測りあう
・保安官は悪者(ハリウッドだと基本的にはヒーロー)
・無精髭

ハリウッド型も考えると…

・酒場(サルーン)には初老のオルガン弾き
・酒場中で殴りあい(マカロニだとよく早撃ちでシーンとなる)
・ショットグラスでラベルのないボトルのウィスキーを飲む
・駅馬車、ポニーエクスプレス、電報
・悪党は兄弟や親戚同士で構成されている
・ゴールドラッシュ
・自動車が出始めでめずらしい
・二丁拳銃は厨二扱い
・散弾銃は銃身横二列のやつ(おじいちゃんが持ってることが多く、結構強い)
・おっぱいでけー女が向こうから寄って来る(時には遠くから汽車で追っかけてきたりする)

・砂埃の舞う荒野がどこまでも続いているが、砂漠は意外と無い(マカロニでは湿った泥も多用)
・褐色のロングコートは大体悪者が着る
・イカス男とヤな男とダメ男(はイカス奴になる)といい女はいるが、クソ女は基本的にいない
15 ◆Ym5L5fdXww :2008/12/16(火) 16:43:10 ID:gSAYpOTb
ちょっとプロット練ってくる
16創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 00:36:38 ID:L7pmXCgq
>>6
鬼強いインディアン萌えるよハァハァ
ぜひ鬼強いガンマンと腕比べしてほしいね
17創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 00:59:40 ID:9uReG+7Z
REDを思い出す
あれは熱いウェスタンだった
アッパーズで終われていたらもっと素晴らしかった
18創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 10:23:38 ID:L7pmXCgq
マカロニでかっこいい保安官だと、テキサス無頼のフランコ・ネロとかいるね
兄弟コンビかつ保安官なのにヒーロー役って実は珍しい役だったのだろうか

あと怒りの荒野には保安官になったばかりに殺された元凄腕の老ガンマンがいたな
19創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 18:20:18 ID:QvVu56G3
マカロニでも殴り合いはするよ
どっちかっていうとリンチになるけど

「拳も弾と同じだ。数え間違えたら死ぬ」って言ってたな、タルビー…
20創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:06:21 ID:3QzHSw9c
書きもしないのに枠組み狭めたって人が減るだけだバカ
21創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:09:51 ID:eb+xEO56
マカロニというとパスタのあれしか思い浮かばない・・・
22創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:44:15 ID:Xv9TgcmV
>>21
そのとおりパスタのマカロニでしょ?イタリアだから
23創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:47:17 ID:eb+xEO56
え、マジでそれだったの?
24創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:53:58 ID:9uReG+7Z
うんうん
イタリア製の西部劇映画ね
クリント・イーストウッドなんかそっち方面出身だったっけ
25創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 01:39:25 ID:xfV7xH0y
最初は『スパゲッティ・ウェスタン』って言ってたらしいよ
ひょろ長くて頼りない感じがしてかっこわるいからってなんか有名な人が変えたらしい
26【夜明けの口笛吹き】 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:21:52 ID:x2tT9U+x
マカロニ気味なオレウェスタン話を投下します。
全部で15レスくらいになる予定です。
今回は6レスまでです。
ちょっとだけ不愉快な性描写・暴力表現を含むので、苦手な方はNG指定をお願いします。
27【夜明けの口笛吹き】1/6 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:22:37 ID:x2tT9U+x
 痩せた騾馬の嘶きが、煉瓦の色をした荒野に響く。
 砂埃をたっぷり含んだ風が、騾馬を引く若者の背を叩き、頬を撫で、ハットに収まりきらない豊かな金髪をざらりと撫でて吹きすぎてゆく。
 アルパカ毛織の褐色のポンチョが、風をはらんで膨らみ、またしぼむ。
 若者は伏せていた目を、ゆっくりと上げた。
 はっとするほど青い瞳をした、白い肌の若者だった。
 塗料のように鮮やかな青が、砂塵に汚れた瞼の間にひっそりと輝く。
 薄い唇がわずかに尖り、かすれるような口笛を吹き鳴らした。
 ただの、口笛だ。
 まったく原始的で、単調な、短いメロディの繰り返し。
 新月のように陰気な挽歌が、風の音にまぎれる。
 荒野の果てで、夕陽が沈む。
 偉大なる山脈の岩肌をねぶりながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。
 夕闇と斜陽の境に立ち、若者は歩みを止めた。 
 手綱に絞められた騾馬が、濁った声をあげて蹄を鳴らす。
 口笛はまた、幾度目かの同じメロディをなぞる。
 青い瞳が、夕陽を受けて、刃のように閃いた。
 ポンチョの裾が乱暴に跳ねあげられ、ぼろぼろの房飾りがざらりと鳴る。
 乏しい光にきらめく、灰みがかった鉄の色。
 幾重にも重なった銃声が、風の止まった荒野を震わせた。
 硝煙。
 衝撃。
 呻き声。
 ――そして、口笛は続く。
 砂袋を倒したような不格好な音を立てて、岩陰のものが倒れた。
 牛革のズボンに木綿のシャツの、いかにもな無頼の男。
 硝煙をたなびかせるリボルバーが、節くれだった手に握られていた。
 日に焼けた男の肌に、ゆっくりと死の陰りが浮き出ていく。
 若者の目は、最後までそれを映さなかった。
 敵のなれの果てにはもはや注意さえ払わず、右手に収まった銃をガンベルトにすとんと落とす。
 跳ね上がったポンチョの裾を払いのけて、不機嫌な騾馬の手綱を前に引く。
 風が吹き始める。若者の背を押して、太陽の沈む方に向かって。
 騾馬が嘶く。黒く輝く愚鈍な瞳に、はるか西の果てを映して。
 若者の口笛は、途切れない。
 途切れないまま、地平線の彼方へ消えた。

*****
28【夜明けの口笛吹き】2/6 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:23:24 ID:x2tT9U+x
 ランプに、灯りを灯させた。
 見慣れた乳房が、幼い肌に濃い谷間を作っている。
 下手な化粧を落とさせもせず、バロッコは娘の細い手首を引き寄せた。
「えへへ」
 影のように濃い体毛に覆われたバロッコの胸へ、白く滑らかな頬を当て、娘は朗らかに笑う。
「来てくれたんだね、お兄ちゃん」
 何も答えず、娘を抱き上げて寝台へ転がす。はしゃぐような笑い声を立てて、娘は身をよじった。
 ――うすのろのヘレン。
 サルーンの連中は、みな娘のことをそう呼んでいる。
 頭の足りない娘だった。
 ちょっとした計算もできず、物を覚えることも甚だ苦手で、まっとうな受け答えもできない。
 そのことでからかわれ、気味悪がられ、怒鳴られても、笑顔を歪めることさえしない。
 ヘレンの料金は、格安だった。
 それでも一応、サルーンの店主が勘定をしてくれているとかで、生活はできているようだ。
「くすぐったいよ、お兄ちゃん――」
 ヘレンは客の名を覚えない。
 客の顔も覚えない。
 どんな客であっても、ヘレンは「お兄ちゃん(Bro)」と呼ぶ。
 バロッコはヘレンの細い腰をまたぐようにして、粗末な寝台にどっかと膝をついた。
 娼婦の幼い顔を、のぞき込む。
 ガラス球のように軽薄な輝きを宿した青い瞳が、バロッコの武骨な髭面をゆらゆらと映す。
「ヘレン、にらめっこ大好きよ」
「俺は嫌いだ」
 軋むように一言吐き捨てて、バロッコは巨大なてのひらでヘレンの顎を掴んだ。
 髭に囲まれた分厚い唇が、桃色の小さな唇に吸いつく。靴ベラのような舌が、狭い口腔をぬちゃぬちゃと探る。
 ゆっくりと目を細めるヘレンを抱きよせて、肩までの金髪を乱暴にまさぐる。
 唾液の糸が細い顎を滴って、蛞蝓のように垂れた。

*****

 曇った空に、月はない。
 新たな旅立ちを歌った流行歌が、明るい窓から響き続けている。
 街の入り口に至って、若者はようやく口笛をやめた。
 マッチを取り出し、靴のかかとで擦って掲げる。
 わずかに灯った小さな光が、乾いた風に掻き消された。
 若者は目を細め、脳裏に残る看板の文字を小さな声で読み上げる。
「Dawn……」
 それが、町の名だった。
 かつて西の果てにあった開拓村が、フロンティアに取り残されてできた町。
 古い朝陽が昇る町。
 新しい夕陽を見送る町。
 皮肉に頬をゆがめもせず、若者は騾馬を看板の下につないだ。

*****

29【夜明けの口笛吹き】3/6 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:26:01 ID:x2tT9U+x
 揃ったカードが、さらりと卓に投げ出された。
 苦い顔をする連中を尻目に、ベルデはぐしゃぐしゃに潰れた紙幣をかき集めた。
「今日はツイてる」
 胴元が苦い顔をして鼻を鳴らし、次々にテーブルに投げ捨てられるカードを手元に集め、整える。
 安い歌手の歌う旅立ちの歌に、いかにも優しげな小声で合唱しながら、ベルデは神経質な手つきで紙幣の皺を伸ばす。
「明日もツイてる。明後日もな」
「つまりイカサマか、ええ?」
 笑いに紛らわせた剣呑な声で、一人が詰問してくる。
 ベルデはポケットから手を引っこ抜いて、場違いな黒いベルベットのカーディガンが嫌味なほど似あう薄い肩をすくめた。
「まさか」
 女のように赤い唇の端を、にいと吊り上げる。
「いいカモを見つけたってだけの話だ」
 黒い巻き毛の下の、成金趣味のアクセサリーのようにやたら大きくきらきらと輝く緑色の瞳が、仏頂面の男たちを映した。
 耳の揃った紙幣の端をぴん、と長く滑らかな爪で弾き、懐に差し入れる。
 ふん、と漏れた鼻息のあとに、聞えよがしの声が続いた。
「ナメた口ききやがるじゃあねえか、オカマ野郎が」
 ぴたりと、ベルデの動きが止まった。
 あどけなさを残した横顔に浮かぶ表情がじわじわと温度を失い、エメラルド色の目が陰険に細められる。
 狭いテーブルに、鈍い沈黙が降りた。
 幼い唇が、険悪に歪む。
 痰のように、言葉を吐き捨てる。
「オカマ野郎に仕事をとられてケツの穴が寂しいのかい、ドン・バロッコの元用心棒さん」
がたん。
 にやけた顔のあらくれ男が、椅子を真後ろに蹴って立ち上が.る。
 太い腰へ斜めに下がったガンベルトが、わずかに揺れる。サルーンの白々しい照明に、青黒い銃把がちらりと光った。
 ただならぬ雰囲気に、クライマックスにさしかかりかけていた演奏がぴたりと止んだ。
 騒いでいた女たちがまゆをひそめ、そそくさとテーブルの周りを離れていく。
「……」
 据わった目のまま、ベルデは腰を上げようとした。
「座ってな、オカマ野郎」
 男の鋭い声が、それを制する。
「立ったら抜くぜ」
「抜いたら死ぬぜ」
 ひと呼吸も挟まず、ベルデは澄んだ声で言い返した。
「――てめえがな」
「どうかな」
 互いに、口を閉ざす。
 あらくれ者の黒い目と、ベルデの緑色の瞳が、真っ向から視線の刺し合いをする。
 店内に緊迫した空気が流れ、陽気な流行歌に代わって不穏なざわめきが満ちる。
 連れと何かをささやきあっていた中年の男が、不意に顔を歪めた。
 その頭がゆらゆらと揺れ、だらしなく開いた口が幾度か痙攣する。
「へ、へっ、ふぇっ……」
 ベルデは動かない。
 男も動かない。
 そして、それは響いた。
「ぶえっくしッ!」
 耳を聾せんばかりの、中年男のくしゃみ。
 きっかけとしては、あまりにも十分すぎた。
ごっ。
 鈍い打撃音が、響いた。
 硬いものを硬い爪先で蹴飛ばした音。
 ベルデと男の間を隔てる丸テーブルが、真上に飛んだ。
 中途半端に揃えられたままの山札が、ばさばさと飛び散った。
「このっ!」
 男が銃を抜いた。
 乾いた爆音が、立て続けに響き渡る。
 熱い銃声だけが、その瞬間を支配する。
 数秒。
 白く灼けた瞬間がゆっくりと熱を失い、荒野の町のぬるい風がまたゆっくりと流れ始める。
30【夜明けの口笛吹き】4/6 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:26:36 ID:x2tT9U+x
 ベルデは、まだ座っていた。
 男は、まだ立っていた。
 激しい音を立てて、テーブルがトランプの散らばる床に叩きつけられた。
「――の」
 間抜けた声が、分厚い唇から漏れだす。
「ま、やろ……」
 男の体がかしいだ。前のめりに倒れ、テーブルの足に額を叩きつけて、首を真後ろにひしゃげさせ――
 そのまま、動かなくなる。
 男の手に握られたままの拳銃と、テーブルのあちこちに空いた焦げ穴から、曇ったような細い煙がたなびいた。
「まだ言うかい」
 低い声で呟いて、ベルデはふらり、と立ち上がった。
 少年のように細い脚が、仰向けに倒れたテーブルを踏み越える。
「……もう、言えないか」
 ウェスタン・ブーツの鉛色の爪先が、男の顎をそっとこづいた。中途半端な姿勢で仰向けに転がる男の顔を、腰を折って覗き込む。
 繊細そうな白い指先が、男の喉元に伸びた。
 その骨ばった喉からいかにも唐突に生えている真鍮色の細長い棒に、ベルデの指が絡みつく。
 ずッ――と、男の喉から銀色の刃が引き抜かれた。深い穴から血がどろりと溢れ出し、サルーンの床に黒い染みを広げていく。
 ベルデは悠然と手近なテーブルのナプキンをひったくり、スローイング・ナイフにべっとりと貼りついた赤い汚れを拭き取った。
 白い人差し指をぴん、と立ててひらひらと揺らし、三歩ほど離れた場所に立っている給仕娘に目くばせする。
「え、……ハイ」
 氷の上を歩くようにそろそろとした足取りで、娘が近くにやってくる。
 ベルデの指が、躊躇なく給仕娘のブラウスの胸元に差し込まれた。
 ぷちん、とボタンが一つはじけ飛び、見た目より豊かな乳房の谷間が顔を覗かせる。
「これ、下げて」
 その谷間に、べっとりと血の染みた白巾が突っ込まれた。
 青ざめる娘の顔を覗き込み、こともなげに言う。
「見てたろ? 俺が後だった」
「あ、あ……」
「あいつが抜いたのが先で、俺の方があとだった」
 緑色の瞳が、わななく娘の唇をねっとりと注視する。
 白い手が、ひらめいた。
 握られたままの細長いナイフが、十数秒前まで男の喉の血管を裂いていた凶器が、音もなく、まったく音もなく、娘の胸元に吸い込まれる。
「ひぁっ?!」
 言葉にならない悲痛な悲鳴が、サルーンを震わせた。
 銀色の刃が、深々と給仕娘の胸元に飲み込まれる。
 ――血まみれのナプキンだけを、きれいに刺し貫いて。
 いまにも卒倒せんばかりに青ざめ、震える娘の、瞳孔の開ききった目を、ナイフ使いの大きな瞳が覗きこんだ。
「誰が見ても、俺の正当防衛だ。神と聖母マリアと自由と平等と独立とそのほかもろもろに誓って」
 ひといきに言って、目くばせする。
「そうだね?」
「あ……う、うう」
 うめき声をあげながら、娘は必死に首を縦に振った。
 ベルデはにっこりと笑い、ナイフをまた引き抜いた。血まみれのナプキンを胸の谷間に残されたまま、娘はふらつく足取りで奥に引っ込んでいく。
 薄手の上着をぺらりとめくって凶器を素早くしまい込み、ベルデは周囲を見回した。
「ほら、早く」
 笑顔のまま、先刻まで同じテーブルを囲んでいた連中に一人ずつ視線を送る。
「卓につきなよ、次のゲームだ。今日の俺はツイてる」
 誰もそれには応えなかった。ある者は苦笑いを浮かべ、ある者はあからさまな嫌悪を露わにして、次々にきびすを返していく。
 最後の一人を面白がるような顔つきで見送って、ベルデはわざとらしくかぶりを振った。
「しけてるな……お開きか」
 入口に背を向けて、カウンタ席の高い椅子に腰を下ろす。
 張りつめた沈黙の中に、次第にざわめきが復活する。
 ベルデの反応がないのを探って、ざわめきはすぐに喧騒へと変わる。
 死体を避けるようにして女たちが広がり、男が群れ、酒がまた振る舞われ、音楽が奏でられ――
 足音が、響いた。
 暗闇の中から抜け出した影が、砂をかぶったスイングドアの前に立つ。
 蝶つがいにわずかな軋みを立てさせながら、その若者はドアをくぐった。
31【夜明けの口笛吹き】5/6 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:27:17 ID:x2tT9U+x
 豊かな金髪をした、長身の若者だった。
 毛織のポンチョに肩を隠し、ソンブレロに似たつば広の帽子を目深にかぶっている。
 帽子の縁が、節くれだった長い指でついと上げられる。青く深い瞳が、流行歌の鳴り響く、異郷のサルーンを見渡した。
 誰も若者に注意を払おうとしない。若者もだれかに興味を示すことはない。
 大股に歩いて、カウンターに座る。
 二つほど席をへだてたところに小柄な男が座っているのが見えたが、べつだん気にはしない。
「酒かい」
 疲れた顔の店主が、尋ねた。
 若者は口をつぐんだ。彫刻のように整った顔をわずかにうつむけて、囁くように答える。
「話だ」
「酒だな」
 つまり、そうなるということなのだろう。何も言わずに、ぞんざいに注がれたウィスキーをあおる。
 店内には新しい血のにおいが立ち込めていた。視線をわざわざやらなくても、店の隅に何かが倒れているのが目に入った。
「何が聞きたい」
 空になったグラスにまた容赦なく液体を注ぎ入れながら、店主が尋ねる。
「俺は」
 かすれた声で、若者は言う。
「ややこしいときに、来ちまったのか?」
「ややこしいのは済んだよ。棺桶屋と墓掘りに話をしなきゃならんがな」
 不機嫌な口調で答えて、店主はまた新たに満たされたグラスを若者の目の前に置いた。
「誰が誰をやったんだ?」
「客が客をやったのさ。だからうちのせいじゃあない」
 一息に、飲み下す。
 生ぬるい液体が、脇腹をかっと焼いた。
「……あと、ひとつ」
 青い目がわずかに潤み、焦点を失うが、若者の声はまったく変わらない。
 変わらない声で、音量だけをぎりぎりまで抑えて、若者はその名を口にした。
「バロッコ」
 店主の横顔が、さっと色味を失う――
「バロッコだ。賞金首の――この町にいる」
「さあね」
 丸い目が泳ぐ。しきりに何かを気にしている。若者はますます声をひそめ、言った。
「探してる」
「知らんね」
 にべもない。
 言葉を継ぐには、その横顔はあまりにも頑なだ。
 若者は、口を閉ざした。
 いささか乱暴にグラスを伏せて立ち上がり、腰の財布に手をやったとき、不意に涼やかな声が響く。
「待ちなよ」
 先ほどの小柄な男が、席を立っていた。
 華奢な体つきだ。腿など若者の半分もないだろう。くりくりとよく輝く緑色の瞳が、面白がるように若者の顔を映している。
 若者と視線がぶつかるのを待って、緑の瞳をした男は大仰な身振りで片腕を振った。
 綿のブラウスにベルベットのボレロを重ねた袖が、ふるりと揺れる。
 少し苛立つほど、場違いな格好だった。
「あんた、よそ者だろ?」
 答えない若者の顔を、あどけない顔がのぞき込む。
「そうじゃなきゃおかしいね、俺をほったらかしてひそひそ話なんざ。俺を見たら会釈くらいするもんだ」
「誰だ?」
 一言、冷たく尋ねる。男は赤くつややかな唇をにいっと笑ませ、言った。
「俺はベルデ」
 歌うように、澄んだ声は続く。
「ドン・バロッコの用心棒さ」
 かしゃん、と音がした。
 店主の姿がカウンターの陰に消える。
 足元に散らばったガラスの破片を、拾い集めているのだろう。
 若者の目が、鷹のように見張られた。
 幼い顔を、病気の獣のような笑みが醜く歪めていた。
32【夜明けの口笛吹き】6/6 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:27:54 ID:x2tT9U+x
「帽子をとる気になったかい?」
 ベルデの笑みを、青い目が見つめる。
 若者の日焼けした手の甲がゆっくりとかざされ、ハットに触れた。
 わずかに下りたつばが、若者の目を真横に隠す。
「……」
 一瞬の沈黙をはさんで、帽子が外された。
 もつれた金髪が、生地から引きはがされてぱらぱらと乱れる。
「賢明だね」
 満足そうに、男は言った。
 帽子を胸もとに当て、若者はわずかに俯く。
 こぼれた金髪が、若者の眼もとを隠した。
 かさついた唇がわずかに開き、軋むように呟く。
「――ドン・バロッコ」
 ベルデの赤い唇に、歪んだ笑みが浮かんだ。
「やっぱり、ブルっちまうかい?」
「……用心棒が、要るのか? あいつに」
 注意深く投げかけられた問いに、ベルデは我が意を得たりとばかりに勢い込む。
「ドン・バロッコは確かに強いが、寝首を掻きたがってる奴なんてごろごろいるのさ」
「憎まれてるんだな」
「強いってことは殺してるってことさ」
 凄むように、顎を引く。
「殺さなきゃ、強くなれない。殺したら、恨まれる。ガキだってわかることだぜ」
 不穏な囁きが、耳朶を打った。
 ふと周りを見回す。
 いつの間にか音楽が止んでいた。
 いくらかうんざりした顔の人々が、二人を遠巻きに見守っている。
 若者と――なにより、ベルデの動きをだ。
 視線をわずかにずらして先刻の死体を見やり、若者は呟いた。
「そうか」
 小銭を、カウンターに置く。
「慣れてる奴には、よくわかるんだろうさ」
 沈黙は、続かない。
 笑い声が、静まり返った店内に響く。
 笑っていた。
 驚くほど陽気に、苛立つほどあっけらかんとした声を立てて、用心棒は。
 笑っていた。
 若者は帽子をかぶり直した。ちらりと横に走った青い目は静まり返り、波立ちを出さない。
 湖面のような瞳に、ベルデの歪んだ顔が映る。
 しっかりと、刻みつけるかのように、映される。
 停滞した空気の中で、幅広のポンチョがわずかに風を孕んだ。
 出入り口に向けて大股に歩きだした若者の背を、緑色の瞳が見つめていた。

*****

33【夜明けの口笛吹き】 ◆16Rf2BBdUE :2008/12/19(金) 18:28:41 ID:x2tT9U+x
今回はここまでです。
ウェスタンらしさって難しい…
34創る名無しに見る名無し:2008/12/19(金) 18:37:27 ID:4P3DeKIQ
いかにもな感じがよく出てるな!
これまだまだ続くの?
ぜひ続きも読みたい
35創る名無しに見る名無し:2008/12/20(土) 23:31:15 ID:rWw1zy0H
期待age
36創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 14:45:39 ID:+LbIAMF4
てst
37創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 20:54:45 ID:0PWk7enm
続きは?
38創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 21:54:11 ID:Bs7ioEq5
つ づ き は ?
39創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 21:55:39 ID:egwpaS/a
>>38
おまいさんが書くんだよ
40創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 01:43:58 ID:ZhgKAyWI
あげとこ
41創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 03:03:43 ID:Y4DyaS9X
パチもんのことをバッタもんと言わないでください
パチもん→コピー商品
バッタもん→倒産した会社から安く買い叩いた正規品
42創る名無しに見る名無し:2009/07/27(月) 19:14:37 ID:OCk5GZcp
オススメ映画!
「怪盗ブラックタイガー」(タイ)
君もトムヤンウェスタンの魅力にハマろう!
43創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 18:16:20 ID:6V6B2Z4B
元祖スキヤキウェスタンと言えば「幽霊島の掟」だよな。
44創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 19:02:05 ID:4Utbs4DC
警部マクロードは現代のアメリカにカウボーイと言うミスマッチがかなり良い。

45創る名無しに見る名無し:2010/05/12(水) 18:45:20 ID:VN8yy/uO
小林旭の渡り鳥シリーズ。
46創る名無しに見る名無し
トライガン最高!