1 :
1:
某所で結構話題が弾んだので立てました。
「剣客」キャラオンリーのロワです
2 :
参加者候補:2008/12/11(木) 01:53:03 ID:yt8URM98
参加者候補を挙げて、その中から選んで、一定期間内に
速い者勝ちで登場SSを投下してもらいます。
今は参加者候補選考の段階です
今まででた参加者候補
【史実】
上泉信綱:新陰流
柳生宗厳:柳生新陰流
柳生十兵衛:柳生新陰流(江戸)
柳生連也斎:柳生新陰流(尾張)
富田勢源:中条流(富田流)
伊藤一刀斎:一刀流
小野忠明:一刀流
岡田以蔵:一刀流、ならびに鏡心明智流
白井亨:天真伝兵法(元、一刀流)
塚原卜伝:新当流
足利義輝:新当流
北畠具教:新当流
斉藤伝鬼坊:天道流(新当流)
男谷精一郎:直心影流
勝海舟:直心影流
榊原鍵吉:直心影流
斎藤弥九郎:神道無念流
芹沢鴨:神道無念流
近藤勇:天然理心流
土方歳三:天然理心流
沖田総司:天然理心流
林崎甚助:神夢想林崎流
宮本武蔵:二天一流
佐々木小次郎:巌流
辻月丹:無外流
伊庭八郎:心形刀流
東郷重位:示現流
3 :
参加者候補:2008/12/11(木) 01:53:35 ID:yt8URM98
【創作】
岩本虎眼:無双虎眼流
伊良子清玄:無双虎眼流with我流
座波間左衛門:今川流受太刀
屈木頑乃助:がま剣法
緋村剣心:飛天御剣流
志々雄真実:不明(我流?)
鵜堂刃衛:二階堂平法
高嶺響:不明(居合い抜き)
剣桃太郎:無限一刀流、他多数
赤石剛次:一文字流
中村主水:奥山神影流、他多数
椿(桑畑)三十郎:不明(薬丸示顕流の居合いを使用している描写あり)
丹下左膳:北辰一刀流
鞍馬天狗:一刀流
秋山小兵衛:無外流
眠狂四郎:円月殺法
徳川吉宗:不明(田宮流、竹森流、西脇流 (柳生新陰流)、金田流、浅山一傳流、柳剛流のどれかか?)
川添珠姫:不明(アトミックファイアーブレード)
秋月耀次郎:海天藍真流
武田赤音:刈流兵法
伊烏義阿:刈流兵法
坂田銀時:不明(我流)
志村新八:天堂無心流
柳生九兵衛:柳生新陰流?
佐々木小次郎(偽):我流
孔濤羅:戴天流剣法
劉豪軍:戴天流剣法
【見せしめ】
村雨斬:真剣は切れ味がある分あつかいやすいし素人から玄人まで幅広く使われている武士の基本武器。対して研無刀は見た目
なんかは真剣とほとんど変わらねぇがあえて斬れない様に鋭く研がない分硬度と重量をかなり増加させて斬るより破壊
を目的とした玄人好みのあつかいにくすぎる流派
4 :
参加者候補:2008/12/11(木) 01:54:52 ID:yt8URM98
途中追加組
桂言葉@スクイズ
アスカ@風来のシレン
乙橘槇絵@無限の住人
神谷薫@るろ剣
イグニス@塵骸魔京
香坂しぐれ@史上最強の弟子
梅喧@ギルティギア
魂魄妖夢@東方
史実
奥村五百子
千葉さな子
架空
犬塚信乃 犬坂毛野(八犬伝/碧也版)
犬塚信乃 (里見☆八犬伝
石川五ェ門@ルパン三世
5 :
1:2008/12/11(木) 01:56:25 ID:yt8URM98
候補キャラの条件
・日本人、あるいはそれに準ずる者であること
・魔法剣士のようなトンデモ技を使わない、堅実な「剣客」であること
・上記のボーダーラインは「るろ剣」あたりか?(要議論)
あと、主催者候補
・柳生宗矩
・南光坊天海
・果心居士
・徳川忠長
史実剣豪の参考文献
・「剣豪 剣一筋に生きたアウトローたち」(新紀元社)
・「武道の系譜」南條範夫(シグルイの原作者)
6 :
1:2008/12/11(木) 01:57:51 ID:yt8URM98
また、支給品についても議論が必要との意見あり。
以上転載終わり
「こんな糞スレに長くいてられないの、わかる?
だから、皆死んで!約束された勝利の七色光線!」
高嶺響の目から七色の光線が飛び出た!
それを浴びた他の参加者たちと
>>1は溶けていく溶けていく…
「私の七色光線は最大1000人まで捕縛できる!」
高嶺響は無事に生還した
剣客ロワはこうして終わりを告げた
【高嶺響@月華の剣士 優勝】
剣客ロワイアル 完
8 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 18:27:52 ID:ZX0OdYm0
アトミックファイアーブレードって名前からして魔法剣じゃん
糞スレotu
10 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 21:40:33 ID:jbvMMUGF
アトミックファイアーブレードage
支給品は銃火器とか現代の物とかはないようにしてほしいなあ
12 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 22:17:36 ID:jbvMMUGF
同意
ビームサーベルとか光線銃とか支給すべき
13 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 10:31:45 ID:dvD2zIua
どうでもいいけどアトミックファイアーブレードは
劇中劇(特撮番組)のキャラが使う必殺技だぞ
/ ̄ ̄\
/ ─ ─\
| (●)(●)| そうだな・・・常識的に考えて・・・
____. .| (__人__) |
/ \ ` ⌒´ ノ
/ ─ ─\ .}
/ (●) (●) \ よく考えたらこのスレいらないな
| (__人__) | ノ.ヽ
/ ∩ノ ⊃ /∩ノ ⊃| |
( \ / _ノ | |/ _ノ | |
.\ “ /__| | /__| |
\ /___ //___ /
15 :
test:2008/12/20(土) 23:58:44 ID:8CjiOiEV
test
16 :
test:2008/12/21(日) 00:00:17 ID:TBnkrrLY
12時になりました予約開始です
塚原卜伝、宮本武蔵 予約します
伊東甲子太郎、川添珠姫、鵜堂刃衛で予約します
久慈 慎之介、トウカで予約します
場所は漁村を予定
質問なんですが、開始時間って昼間?それとも深夜?
自分は深夜のつもりでした
んじゃ、自分も深夜にいたします。
ところで、こっちにOPは貼らないの?
あと今更だけど、深夜開始ってあんまり剣客同士の斬り合いの開始にはあんま似合わなく無い?
いきなり真っ暗闇で開始するってのは、素人同士の疑心暗鬼や不安を煽るのには適しているけど、
基本素人じゃないわけだし。
満月の下での戦い、とかならかっこよくない?
まあ、自分は屋内の話書いてるからあんまり関係ないから
昼でもいいんだけどね。
在った方がいいよね
OP
「ねぇ・・銀さん・・・起きてくださいよ・・・・銀さん・・・・起きて・・・」
「むにゃーっ・・・・・ふざけんじゃねぇぞ・・・新八・・・・今日は日曜・・・」
「日曜じゃなくてもいっつも寝てるじゃないですか?それより早く起きてさいよ」
「なんだよ・・・うるせぇなぁ・・・・って・・うぉっ、まぶしっ!
つうかめっちゃまぶしい、何だ、どっきりか!?て言うかここ何処だ!?」
「落ち着けよ天然パーマっ!やっと起きたと思えばうるせぇんだよっ!」
江戸歌舞伎町の住人、「万屋銀ちゃん」こと坂田銀時は、突然自分の網膜に入り込んできた
凄まじい日の光に思わずびっくらこいていた。
隣には同居人の一人志村新八がいる。
しかし果たしてこれはどういう訳か。
自分は確か万屋の二階でごろごろ雑魚寝していたのではなかったか。
彼らが今いるのは、一面に白い砂利を敷いたいわゆる「お白州」だ。
広さは、かなりの物だ。七十平米はあるだろう。
周囲は白い土塀で覆われ、門が一つと、垂れ幕で覆われたお座敷が一つある。
今、この「お白州」にいるのは彼らだけでは無かった。
白い砂利の地面を、埋め尽くすように沢山の男が座ったり、寝たり、立っていたりしている。
ほとんどが男であり、僅かに女の姿も見える。
ほとんどが和服を着ていること以外、年齢も体格もバラバラな顔ぶれであったが、
銀時には彼らにはある共通点があることに気が付いた。
おそらくいずれも武芸者。
それもそうとうな腕前の。
「なんだぁ・・・・このおっさんども・・・コ○ケか?コミ○なのかぁ?」
「いや、この顔ぶれで○ミケは無いでしょう。何かみんな強そうですよ」
そう、銀時と新八がひそひそ話をしている時であった。
「控えい」
一つの野太い声が、お白州の中を通り抜けた。
銀時を含めたその場にいた人間全員の視線が声の方へと向けられる。
座敷の垂れ幕が左右に開き、一人の男が出て来るのが彼らには見えた。
初老の裃姿の武士らしき男である。肩衣には「二階笠」の家紋が
染め抜かれている。
年のころは初老といった所か、体格は大きい方ではないが
不思議と独特の威厳がある。
また、目には強い意志の様な物が感じられた。
「これより、御前試合を執り行う」
武士の口からそんな言葉が飛び出した。
「御前試合」
貴人や、それに類する人々の前で行われる武芸者の上覧試合の事である。
それが天皇になると、「天覧試合」となる。
「新八・・・・試合って何だ?俺そんなの聞いてねぇぞ」
「僕も知りませんよ・・・ひょっとすると何処ぞの武芸好きの
金持ちに拉致られたんじゃ・・・」
銀時と新八の間のみならず、所々でざわめきが起きる。
どうやら、誰ひとりとして、試合に出るなど聞いてないらしい。
「ここに集められし、類い稀なる兵法者、××名」
武士がよく通る声で言う。
「その武芸の妙技の悉くを尽くし」
「互いに相戦いて」
「一人になるまで殺し合うべし」
最後の言葉に、ざわめきが止んだ。
殺し合いの御前試合。
狂気の沙汰と言う他ない。
「親父殿」
静まり返った武芸者の中から、一人の男が進み出る。
狩衣姿の、武士と思しき男だ。
総髪を後ろで纏め、顎には不精髭がある。
また、男は右目を瞑っていた。
どうやら隻眼らしい。
装束はお世辞にも綺麗ではないが、何処となく
野生染みた風格のある男だった。
「これは何の冗談ですかな」
男は気軽な調子でそう武士に問いかける。
口調は軽いが、眼には虚偽を許さぬ真剣極まりない
強烈な眼光が宿っている。
「十兵衛か」
しかし武士はその視線を受け流して、
ジロリと狩衣の男に眼を向けた。
「生憎、冗談ではない」
「親父殿は『殺しあえ』と言いましたな」
「言うたな」
「それでも飽くまで本気と言いますかな」
「くどいぞ十兵衛」
「気が違われた親父殿」
武士―父宗矩―の余りにもの物言いに、
狩衣の男、柳生十兵衛は思わずそう漏らした。
「気など違うておらん。
わしは正気そのもの。
その上でそう言うておる」
そう言うと宗矩は武芸者達の方を睨み、
「わしが本気である事を見せてやろう・・・村山斬!村山斬、おるな!?」
「え・・・・は、はい・・・・」
武芸者達の中から現れたその少年は、
風貌、体格、剣気、とどれをとっても
御世辞にも周りの武芸者達と釣り合うとは思えない
青瓢箪であった。
「お主気づかぬか?」
「え、ええと・・・な、何がですか」
「この場に呼び出された武芸者の中で、貴様が一段と劣っているという事、
そして、そんな貴様がここに呼び出されたという意味を」
「え・・・・・ええっ!?」
「こういう意味だ」
宗矩が、戸惑う斬を余所に手をふっと上下に振った。
その時、座敷の奥からパチンと指を鳴らす音が鳴った。
その音が鳴るや否や、
ボンッ
爆音が響き、斬の首が地面に落ちる。
忘れたように立ちっぱなしになっていた胴体が倒れ、
赤い血が池のように地面に広がった。
「オオッ!?」「ムゥッ!?」
武芸者達の間で呻きが広がる。
しかし、人一人死んでこの程度の反応で済むあたり、
ここに集められた人々がやはりただ者でない事を窺わせる。
「見たか十兵衛。わしは本気じゃ。
逆らえばお主と言えどその首をかくの如く吹き飛ばすぞ」
「・・・・・無明に落ち果てしか親父殿」
「左様、わしは無明に落ちた」
十兵衛と宗矩は暫く睨み合っていたが、
宗矩が先に視線を外し、
他の武芸者達へと目を向けた。
「今見たように、お主らに逆らう事は出来ぬ。
これよりお主たちは試合の為に用意された
戦場に行って貰う。
そこで最後の一人になるまで己の剣技をふるい、
殺し合うのだ」
「お主らには、
数日分の食物、水、地図、
そして人別帖が入った行李と、
木太刀が一振り与えられる。
得物は自分で探し出すのだ」
「勝ち上がった者には、
古今東西天下無双の称号を
与え、また如何なる願いとて
聞き届けよう・・・・」
そこまで言い終わって、
宗矩は最後にこう結んだ。
「それでは、始めいっ!」
「親父殿!何故このような・・・!?」
「うぉーっ!?なんじゃこりゃ!?」
「銀さん、銀さんどこですか!?」
驚く武芸者達の驚愕や怒号が煙の中で響いたかと思うと、
不意にその声が聞こえなくなった。
暫くして、煙が晴れると、いかなる妖術か、
あれほど沢山いた武芸者達は一人残らず跡形もなく消えてしまっていた。
ただ残っているのは、宗矩と、首の無い村山斬の躯だけである。
「大した役者でしたな、この天海感服いたした」
座敷の中から手を叩く音と、しゃがれた人を嘲笑うような声が聞こえる。
はたして、宗矩がしかめつらで座敷の方へ振り返ると、一人の老人が顔を出した所であった。
年齢は・・・・解らない。ただ、途方もなく高齢であることだけは察しが付いた。
その体を豪奢な法衣で包んだ容貌魁偉の老僧であった。
彼こそ、知らぬ人となし、天下の怪僧、南光坊天海その人に他ならなぬ。
「いやはや・・・・大納言殿も甚だ感心されたようで」
天海のその言葉と共に、もう一人の人物が座敷の闇から顔を出した。
ひょろりと背の高い、青白い顔をした殿様風の男である。
その背後に、何やら不気味な唐人服の男を従えている。
その視線は、宗矩ではなく、村山斬の死体に注がれていた。
双眸には、驚くべき熱気と、計り知れない残虐な凶気が宿っている。
ああ、大納言。そう彼こそ、かの残酷無残で知られる「駿河城御前試合」の主催者
として知られる、将軍家光が弟、駿河大納言徳川忠長である。
忠長は見つめていた。不気味な微笑みを顔に浮かべながら見つめていた。
白い砂利にしみ込んだ赤い血の池を、頭を失った哀れな斬の死体を、
その首の切断面を、いつまでもいつまでも見つめていた。
登場キャラ
・柳生宗矩
・柳生十兵衛
・坂田銀時
・志村新八
・村山斬(見せしめ)
転載乙。
名簿です
【史実】
上泉信綱:新陰流
柳生宗厳:柳生新陰流
柳生十兵衛:柳生新陰流(江戸)
柳生連也斎:柳生新陰流(尾張)
富田勢源:中条流(富田流)
伊藤一刀斎:一刀流
小野忠明:一刀流
岡田以蔵:一刀流、ならびに鏡心明智流
白井亨:天真伝兵法(元、一刀流)
塚原卜伝:新当流
足利義輝:新当流
北畠具教:新当流
斉藤伝鬼坊:天道流(新当流)
男谷精一郎:直心影流
勝海舟:直心影流
榊原鍵吉:直心影流
斎藤弥九郎:神道無念流
芹沢鴨:神道無念流
近藤勇:天然理心流
土方歳三:天然理心流
沖田総司:天然理心流
林崎甚助:神夢想林崎流
宮本武蔵:二天一流
佐々木小次郎:巌流
辻月丹:無外流
伊庭八郎:心形刀流
東郷重位:示現流
奥村五百子:不明(調べたけどよくわからん)
千葉さな子:北辰一刀流
荒木又右衛門:柳生新陰流
新見錦:神道無念流
山南敬助:小野派一刀流
伊東甲子太郎:北辰一刀流
【創作】
岩本虎眼:無双虎眼流
伊良子清玄:無双虎眼流with我流
座波間左衛門:今川流受太刀
屈木頑乃助:がま剣法
緋村剣心:飛天御剣流
志々雄真実:不明(我流?)
鵜堂刃衛:二階堂平法
高嶺響:不明(居合い抜き)
剣桃太郎:無限一刀流、他多数
赤石剛次:一文字流
中村主水:奥山神影流、他多数
椿(桑畑)三十郎:不明(薬丸示顕流の居合いを使用している描写あり)
丹下左膳:北辰一刀流
鞍馬天狗:一刀流
秋山小兵衛:無外流
眠狂四郎:円月殺法
徳川吉宗:不明(田宮流、竹森流、西脇流 (柳生新陰流)、金田流、浅山一傳流、柳剛流のどれかか?)
川添珠姫:不明(アトミックファイアーブレード)
秋月耀次郎:海天藍真流
武田赤音:刈流兵法
伊烏義阿:刈流兵法
坂田銀時:不明(我流)
志村新八:天堂無心流
柳生九兵衛:柳生新陰流?
佐々木小次郎(偽):我流
孔濤羅:戴天流剣法
劉豪軍:戴天流剣法
乙橘槇絵:無天一流
神谷薫:神谷活心流
イグニス:不明(我流?)
香坂しぐれ:香坂流武器術
梅喧:不明(暗器術?)
魂魄妖夢:不明(二刀流)
犬塚信乃:不明
犬坂毛野:不明
犬塚信乃(里見☆八犬伝):不明
石川五ェ門:示現流?
阿弥陀丸:不明
矢坂平四郎:小野派一刀流
久慈慎之介:示現流
島田勘兵衛:新陰流?
久蔵:不明
菊千代:不明
坂崎磐音:居眠り剣法
青江又八郎:不明
細谷源太夫:不明
佐々木小次郎:巌流
倉間鉄山将軍:一光流
トウカ:不明(居合抜き)
オボロ:弐刀流
桂言葉:不明(居合抜き)
アスカ:我流
ムゲン(無幻):我流
ジン(仁):無住心剣流
以上
予約したいんだが、まだ登場が確定ていない人物の名前が名簿に載っているか
否かの描写をどうすればいいのかわかんないんです><
俺は「信用できるかこんなん!」とチェックを投げさせた
チェックを忘れさせてもいいんじゃない?
35 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 11:12:02 ID:IoEaWbG8
アトミックファイアーブレード!!!!!1111
>>34 ありがとうございます。とりあえず流しておいて、他の人が出したら
wiki(まだ無いけど)収録時書き足しますわ
オボロ、犬坂毛野予約します
>>35 考えたら、禁止エリアとかタイムリミットとか告げてないんだよね<但馬
そこらへんは第一放送でするのかな?
あと、仮したらばのスレURLでも貼ります?
久慈慎之介、トウカ、投下します
(一)
さざ波の子守歌で満ちる村の中に物淋しげな風が舞う。その風に袴の裾を弄ばせながら、一人の浪人がずかずかといった歩調で進んでいく。
久慈慎之介という浪人の纏う着物は墨で染めたかのように真黒だが、果たしてそれが染料によるものか、それとも垢によるものなのかは判断がつかないほどに汚れている。
月代の伸びた頭髪を総髪にして頭の高い位置で括った顔には不精髭が目立つが、風貌そのものは優しい作りの男前だ。されど、その双眸には見た者が気圧されるほどの精気に満ちていた。
腰には一振りの打刀を佩いている。だが、それは彼の愛刀“同太貫”ではなく、無銘の代物だ。刀を評せられるほど目が肥えているわけではないが、そんな慎之介でもこの刀が然して大したものではないと判る。いつもの重みがないせいか、腰回りが酷く物寂しい。
物寂しいといえば、この村もそうだ。
月の冷ややかな光に照らされた家屋の群れは海底に聳え立つ岩礁のようで、開けっ放しの戸口に溜まる闇は地の底まで続いていそうな洞穴の入り口を連想させる。
廃村など珍しくもないが、それとは違い少なくとも此処には最近まで人が居た気配がある。疫病で死滅したばかりの村などがあれば、こんな感じなのかもしれない。
土壁に残る血痕に彼は顔を顰めた。疫病ではないようだが、平和的に人が居なくなったわけではないようだ。
無造作に見えて、その実周囲の様子に気を配りながら、慎之介は自分が置かれた状況について考える。柳生家の紋のついた裃を着ていた男は「御前試合」と言っていた。その言葉が正しければ、これは彼の夢である千石取りの大きな足掛かりとなるはずである。
(正しければ、な)
慎之介は鼻を鳴らした。毎度上手い話に騙されている彼だが、こればかりは嘘だと知れる。
まず、寛永以来途絶えていた御前試合が開催されるなど流言ですら聞いたことがない。本当ならば、耳聡いタコ当たりが騒いでいるはずである。
第二に、悲しいことだが、諸藩から声が掛かるほどの伝は自分にはない。それは大概、彼らの大立ち回りの証人が生きていないためだが。とはいえ、彼ら三人を偽称する輩が現れたこともあるので、絶対にとは言い切れない。
だが、このように強制される謂れはないはずだ。宿で寝ている内に拉致されたのだろうが、それに自分が気付かなかったことが気になる。薬でも使ったか。何にしろ、民家に残る血痕なども鑑みて、この“御前試合”が酷く胡散臭い代物であることには違いない。
そして決定的なのが行李に入っている人別帖である。殿様やタコが参加させられていないか調べようとしたのだが、早々に諦めた。確かに何十名という剣士たちの名前の中に見覚えのあるものはあった。それも幾つもだ。
だが、それは面識があるわけではない、言わば剣客における天上人と言える者たちの名だ。
“剣聖”塚原卜伝、“ニ天一流”宮本武蔵、他、剣に己の命を捧げた武士ならば言葉を交わし、剣を交えることを一度は夢見る錚々たる剣豪の名が並んでいた。だが、言うまでもないが彼らは既に世を去っている。
まさか、死人を蘇らせたなどということはないだろう。剣聖たちの名を騙る不届き者たちの集まりと見るのが自然だ。こんなものでは信用しろという方が無理というものだ。
ふと、慎之介は足を止めた。何者かが近くで自分を見ている。だが、近づいてきた様子はなかった。ずっと隠していた気配を現したのか、単に彼が柄にもなく考え込んでいたせいで気付かなかっただけか。
気付かれぬよう、小さく舌打ちをする。鯉口を切り、相手の出方を待つ。ただ、慎之介へ注がれる視線に不快な感じはなかった。
しばしして、ざと地面を踏みしめる音が後方でした。向き直ろうとするが、動くなと鋭い制止の声が飛んだ。若い女の声である。
「某はトゥスクルの皇(おうろ)ハクオロ殿に仕える、エヴェンクルガのトウカと申す者。貴様に訊く。あの悪漢の言に従い、他者を殺める心積もりか否か、答えよ」
「……さぁな。そういうつもりかもな」
背後を取らせてしまった自身の軽挙と、この御前試合に対する苛立ちへの八つ当たりで慎之介は投げやりに答えた。生真面目そうな女性を少しからかってやりたいという欲求もあったかもしれない。
案の定、背後で刺すような気配が膨れ上がる。
慎之介は女が息を吐くのと同時に身を翻し、刀を抜いた。光芒が弧を描き、月光を撥ねる。先刻まで居た場所から一間ほど距離を取って女に向き直った。間を外された女が小さく目を見張るのが月明かりの中でも分かった。
まだ少女と言ってもいい年齢の、目鼻立ちの整った中々の美人である。
「おのれ……!」
女が悔しげに呻く。それに連動するように、鳥の翼を模した様な耳飾りがぱっと閃く。中々細かい作りの飾りがあるものだと感心する。見たことのない代物だが、江戸で流行っているのかもしれない。
見たことがないといえば、彼女の纏う着物も通常のものとは違うようだ。合わせが右胸の高い位置で止められた、唐人のそれを思わせる服装の上に、上腕の周りが狭い長羽織を着ている。足も草鞋ではなく、獣の皮をなめしたもので作られた足袋のようなものを履いていた。
得物を左で居合いのように構えていることから見て、左利きか。中々様になっている。
彼女の構える得物に目を移し――しばしの逡巡の後、訊ねた。
「んで、そんなもんでどうするつもりだ、嬢ちゃん?」
言いながら、ずかずかと間合いを詰めていく。
慎之介はトウカの間合いの少し内側で足を止め、ダラリと下げた刀も納めた。そして両腕を広げ、やってみろと促してみる。慎之介の行動にトウカが憤怒で頬を染めた。
「そ、某を愚弄しているな!? 悪漢、覚悟!」
踏み込みと共に、トウカの左腕が残影となって奔る。風切り音を纏いながら振り抜かれた――左手だけ。ぽぉーんという間の抜けた音が村の闇に吸い込まれてく。
「……ま、木剣じゃそうなるわなあ」
「そ、某としたことがぁああああああっ!」
左手だけが抜けてしまったのは、おそらく木刀と意識せずに強く右手で握っていたからだろう。
「何がしたいんだ、おまえさん?」
頭を抱えるトウカの傍に屈んで訊くが、彼女はついと顔を背けた。
「……悪漢に応える言葉など持ち合わせてはおらぬ!」
そう吐き捨てる。ふむと慎之介は思案する。少し悪ふざけが過ぎたか。
「桃香、さっきの問いの答えだが、ありゃ嘘だ」
「……うそ?」
「ああ、からかっただけだ。悪かったな」
「…………。その言葉を信じるに足る証は?」
「俺が殺すつもりだったら、おまえさん生きちゃいねえだろ」
「………………」
目と鼻の先にいる慎之介を見つめたままトウカはしばらく沈黙し、また頭を抱えた。ぶつぶつと何か呟いている。
「なぜ、なぜいつも皆は、某を……」
察するに、いつも周囲に似たようなことでからかわれているらしい。
(ようするに騙されやすいんだな)
と、他人事ように思う。立ち上がり、今一度周囲に警戒の目を向ける。立ち直った頃合いを見て、慎之介はトウカに名乗った。
「俺ぁ久慈慎之介だ。だが、千石でいい。そっちのが呼ばれ慣れてる。仕官の口を求めて浪人中の身だ」
心得たと律儀にトウカが言う。
「ではセンゴク殿。再度確認いたすが、貴公はこの試合に乗る気はないのですな?」
「ああ。当然だが、斬りかかってきた連中には容赦するつもりはねえけどな」
「それが女子供であっても?」
トウカの言葉は全ての判断を委ねたような、鋭く重い口調であった。逡巡の後、答える。
「……出来れば斬りたくはねえな」
慎之介の言葉にトウカの表情が緩んだ。幼子のような無邪気な笑みが口元に小さく刻まれている。
「左様か」
「さて、次はおまえさんだ。どうしたいんだ?」
トウカの顔から眼を逸らし、訊く。
「無論あの悪漢どもを見つけ出し、斬る」
決意に満ちたトウカに、慎之介は半眼で呻いた。
「その木剣でか?」
「…………。頑張れば!」
「いや、頑張られても無理なもんは無理だろう」
唸るトウカを無視し、慎之介は己が佩いていた刀をトウカに差し出した。
「交換だ。それをよこしな」
「しかし……」
戸惑った表情のトウカに小さく溜息を吐く。
「真剣じゃねえと、おまえさんの持ち味は活かせねえだろうが。違うか」
奪うようにしてトウカの木刀を取り、刀を押し付ける。
「渡しといて何だが好い代物じゃねえ。それは勘弁してくれ」
抜き、素振りをするトウカに告げる。納刀したトウカが、いやと呟いた。
「かたじけない。有難く貰い受けまする。されど、某が斬りかかるとは考えなかったのですか?」
慎之介を見上げてトウカは疑問を口にする。彼は顎を掻いた。
「俺の経験上、おまえさんみたいな女に悪い奴はいねえよ」
慎之介は咳払いをすると、行李の中から地図を取り出した。広げ、南東の方を示す。
「俺は城下に行ってみようと思う。刀の一本や二本、残っているはずだ。多分、人も集まるだろうしな」
慎之介たちがいる場所は仁七村というらしい。この村の西に伸びる街道を行くのが近道だろう。途中で旅籠があるから、包丁などが手に入るかもしれない。
「ならば、某も同行しましょう。センゴク殿が刀を手に入れるまで、某がお守りいたします」
トウカが厳かに言った。ふと笑い出しそうになるが、そうなれば彼女の機嫌を害するだろう。地図を見つめる振りをして噛み殺す。どうやらトウカは気付かなかったようだ。
「ま、無理はしねえでくれ」
行李を背負い、慎之介は地図を懐に仕舞った。
(二)
二人は村の西の辻に来ていた。草蒸した中で道祖神が無言で佇んでいる。海風に揺れた梢が擦り合う音が静けさを際立たせていた。
これまで慎之介はトウカの身の上を聞いていたのだが、どうにも情報が噛み合わない。藩を聞いてもトゥスクルとしか応えず、また戦が頻発しているのだという。無論、そんなことがあれば国中に知れ渡っていてもおかしくない。
詳しく聞こうと、彼女が仕えているというハクオロなる藩主のことを聞いていたのだが――。
「あんたの主君はそんなに出来た男なのか?」
「勿論です。悪漢ラクシャインという流言に踊らされ、ご家族も同然の方々を手に掛けた某を聖上はお許しになったばかりか、家臣の末席にまで加えてくだされた。あの方こそ、某が一生を掛けてお守りするに値する人物です」
トウカが鼻息荒く宣言する。余程敬服しているらしい。
ラクシャインという人名は慎之介も耳にしたことがある。たしか、随分昔に松前藩と戦った蝦夷の頭だったはずだ。少し前にも松前藩と蝦夷の間に衝突があったそうだし、戦が頻発しているという言葉にも頷ける。
トウカが蝦夷の者ならば、こちらの常識が分からないのも無理はないだろう。蝦夷にとっては英雄のはずのラクシャインを悪漢と評したのは気になるが、蝦夷の間にもいろいろあるに違いない。
「おまえさん、幸せ者だな」
「ええ」
誇らしげに笑うトウカを見、慎之介は肩を竦めた。仕官できない自分を省みて、肩身が狭くなる。暗くなるばかりの思考を振り払うために関係のないことを独りごちた。
「しっかし、蝦夷にゃ変わった耳飾りが流行っているんだなあ」
そのまま、西へ足を踏み出す。
「……え?」
トウカの戸惑いの声は夜風に紛れて慎之介には届かなかった。
【にノ陸/辻/一日目/深夜】
【久慈慎之介】
【状態】:健康、城下町に移動中
【装備】:木刀
【所持品】:支給品一式
【思考】
基本:試合には積極的に乗らない
一:トウカと城下町へ向かう
二:柳生宗矩を見つけたらぶっ殺す
【備考】
※トウカを蝦夷と勘違いしています
※人別帖の内容をまるで信用していません
【トウカ】
【状態】:健康、決意、城下町に移動中
【装備】:打刀
【所持品】:支給品一式
【思考】
基本:主催者と試合に乗った者を斬る
一:センゴク(慎之介)が刀を手に入れるまで守る
【備考】
※うたわれ世界と違うことに気付いていません
※仁七村の家屋には住人のものらしき血痕が残っています。
以上です。
乙ですー
志村ー!それシャクシャイン、シャクシャイン!
いや分かってますよw>ラク――いえ、シャクシャイン
乙!
まあ、うたわれはアイヌ意識してる節があるから、
あながち間違いじゃない
>>46 いや、そうじゃなくて慎之介に突っ込んだのよw
そういやうたわれ世界って紙あったっけ?
普通はみんな木簡使ってたけど。
どうだったかなあ
誰か詳しい人いない?
自分にはわからないな。
それと投下するので支援よろしく
“へノ参”地区。
帆山城が真北に伺える城下町の一角の小さな家屋で、
二人の男が囲炉裏を挟んで対峙していた。
片や、褐色の粗末な着物に身を包んだ大男である。
頭には屋内であるにも関わらず網代笠が乗っかっている。
笠の下の顔は・・・もの凄い。
総髪はぼうぼうに伸び、まるでヤマアラシのようだ。
ほおひげ、顎鬚、口髭、ことごとく伸び、顔を覆っているが、
みすぼらしくなく、むしろ独特の風格がある。
太い眉は、先が跳ね上がり、眼は大きく三角な三白眼、鼻梁は高い。
不動明王、なんとなくそんな言葉を連想する。
手には、隣の床の間に飾られていた打刀が握られている。
もう一方は、中肉中背の老人である。
年齢のほどは、60代以上であろう。
総髪を後ろで一つに纏めているが、その毛は悉く白だ。
頬は引き締まり、鬚が伸びた顎は尖っている。
目つきは鋭く、まるで剃刀のようだ。
鋭いのは目だけではなく身に纏う雰囲気もそうであるし、
仕立ての良い着物の下にある、
老人とは思えぬ鋼の様な筋肉もであった。
囲炉裏の自在鉤に掛けられた南部鉄器の鉄瓶が沸騰するのを
ジロリと見つめていた。
二人は無言で囲炉裏を挟んで対峙している。
不動明王、老人共に胡坐を組んで、
不動明王は老人を、老人は鉄瓶を凄まじい目つきで見つめていた。
部屋には、静かな殺気が充満していた。
不動明王こと、宮本武蔵玄信がこの兵法勝負の場に呼び出されたのは、
47歳、尾州公義直への仕官を失敗した直後である。
戦も望めぬ「元和偃武」以降の世の中で、彼に廻って来た最後のチャンスとも
言える好機を逃し、尾張を去ろうとした正にその時、
気が付けばあの「白州」に横たわっており、
また気が付けば何処とも知れぬ床の間に寝ていたのだ。
身を起こし坐禅を組み、武蔵はこれまでに起こった事を思い出す。
あの男、家紋から察するに柳生の男は、「御前試合」と言った。
そして、この兵法勝負に勝ち残ったものには、天下一の称号を与えるとも。
このご時世に、真剣を用いた武芸上覧。
正気の沙汰とは思われぬが、あれだけの武芸者を集め、
わざわざ人一人殺して見せた以上、本気ではあるようだ。
狂気の沙汰・・・・正しく狂気の沙汰だが、
おもしろい
武蔵はそう思ったのだ。
これはまたとない、恐らく人生最後の好機だと。
武蔵は29までに、佐々木小次郎との勝負を含む60余度の勝負を行い、
そのことごとくを勝ってきた。
しかし、その彼が得たものは・・・名声だけである。
仕官話もあった。剣術指南にならないかと、様々な家から誘いを受けた。
しかし、その給与はせいぜい石高三百石、多くても六百石が限度で、
それは武蔵の自負をとうてい満足しうるものではない。
これは仕方の無いことであろう。所詮、兵法など小手先の技術に過ぎない。
少なくとも、世間はそう考えている。
天下の剣法指南役、小野忠明ですら、最初に召し抱えられた時の石高は
二百石にすぎない。世間の剣法への評価などその程度にすぎないのだ。
されど、武蔵は将に成りたかった。三千石以上、すなわち侍大将になりたかった。
少なくとも、彼は小手先の剣技だけの男で終わるつもりはなかった。
自分の「兵法」は剣を軍配に持ち替えれば、万の敵を切り裂く「剣」になる。
そういう自負があったからこそ、彼は侍大将を望んだ。
しかし、世間はそうは考えない。
あくまで、武蔵を卓越した剣法の「技術者」として扱った。
「技術」で彼を買おうとした。
武蔵には、侍大将として取り立てるべき実績が無かったからだ。
武蔵が戦場に立ったのは生涯三度に過ぎず、
関ヶ原と大阪の陣は負け戦、島原の乱では下らぬことで怪我をし、
手柄を立てる間もなく戦線離脱と、戦果と呼べるものが何一つない。
この場に呼ばれたのは47歳の武蔵だから、
島原の乱を経験していないが、戦果が無いことには変わりない。
彼は生れてくる時代を間違えたのだろう。
もし、戦国の真っただ中に生まれていれば、
山中鹿之助や、真柄十郎左衛門や、真壁氏幹のように、
強力無双の武者として名を馳せていただろうに。
彼は自分の「兵法」を卜伝のように合戦の場で示す機会に恵まれなかった。
だからこそ、だからこそせめて・・・
武蔵は考えるのだ。
将の道が望めぬのならばせめて、
剣では、剣だけはせめて最強でありたい。
そう武蔵が望む事は自然であろう。
武蔵はこの殺し合いに乗った。
最強を示すために。
老人こと、塚原卜伝高幹がこの兵法勝負の場に呼び出されたのは、
彼が三度目の最後の回国修行から故郷鹿島に帰ってきた直後である。
武者修行と言っても、鷹を三羽、馬を三頭、門弟百人余りを引き連れ、
京都に来た際には室町御所に居候し、
細川藤孝、十三代将軍足利義輝に新当流を教授したというから、
もはや新当流地方巡業といった調子である。
そんな悠々自適の旅から意気揚揚と鹿島に帰還したかと思えば、
晴天の霹靂、気が付けば天狗に攫われたがごとく、
あの白州にいたというわけである。
(わしも老いたか・・・・・)
人一倍用心深い自分が気がつく間もなく
このような場所に攫われてしまったとは、
正直情けないにもほどがあるだろう。
そんな事を考えながら、シュンシュンと音を
立てる鉄瓶に眼を向ける。湯が湧くのももう暫くか。
大坂の陣で大坂方について失敗した話、本当のところはよくわからないんだってね
あの煙にのまれた後、卜伝は気が付けば
この囲炉裏の側の茣蓙の上に横たわっていた。
取り敢えず行李の中の物を確認し、
中に木太刀とお茶の葉があったため、
木太刀は傍らに置き、お茶の葉は囲炉裏の自在鉤に
掛けてあった鉄瓶に入れてお茶を沸かしていた。
取り敢えず、天狗に化かされたとしか思えぬ妙な状況の連続から、
茶でも飲んで頭を落ち着けようと思ったのである。
そんな時、
がらっ
奥の障子戸が開き、一人の男が入って来たのだ。
他ならぬ宮本武蔵である。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
双方言葉もなく、凄まじい殺気と沈黙で、
囲炉裏の空気が淀んでいるようにすら見える。
どちらも何気なく座っているように見えるが、
そのくせ一部の隙もないのだ。
若き日の武蔵が卜伝と邂逅したという逸話がある。
宮本武蔵が卜伝の食事中に勝負を挑んで斬り込んだ際、
卜伝が囲炉裏の鍋の蓋を盾にしたとする物だが、
1571年に死んだ卜伝と1584年生まれの武蔵が邂逅出来る筈もなく、
これはあくまで卜伝のすごさを謳う伝説だが、
奇しくも、その伝説とよく似た状況が今、この囲炉裏で再現されていた。
ただ、シュンシュンと、鉄瓶から漏れる小さな音が響くのみの囲炉裏。
ほんの数分に過ぎないにも関わらず、まるで永遠とも思われる淀んだ
時間が過ぎた。
最初に動いたのは卜伝である。
傍らの木刀に、素早く手が伸びる。
しかし武蔵もさるもの、素早く立膝をつくと、
打刀を抜き打ちにしようとするが・・・
「!」
卜伝の木太刀の標的は武蔵でない。
木太刀の切っ先は囲炉裏の自在鉤を叩き、
鉄瓶が、武蔵の方へと跳ね飛んだ。
当然鉄瓶の中には熱湯があるわけで・・・
ドムッ
鉄瓶が武蔵に到達するより早く、今度は武蔵が跳ね飛んだ。
床が抜けんとばかりに床を蹴って飛ぶと、
左足は後ろの障子を突き破り、体は半分ほど床の間に入っている。
右手にはいつの間に抜かれたか、白刃が既に煌めいていた。
鉄瓶が床に落ち、内包物をぶちまける。
その時には、卜伝のほうもいつの間にか立ち上がって、
武蔵の方に木太刀の切っ先を向けている。
囲炉裏を挟んで、両者は再び睨み合った。
しかし、今度はその時間は実に短い物だった。
「若いの、命を粗末にするな」
卜伝は一言そう言うと、木太刀を下し、背を向け、
行李を付属していた背負子で背負うと、
民家を後にしてしまった。
武蔵はこれを黙って見ていた。
否、見ているしかできなかったのだ。
それだけ、卜伝の動きに隙が無かったのだ。
(危うかった・・・・・)
卜伝の背は、びっしりと冷や汗で濡れている。
それだけ、不動明王、武蔵は恐るべき使い手であった。
相手もこちらの事を警戒していたためか、
斬り合いにはならなかったが、果たして勝っていたのはどちらか。
あの様な男がいる事が、先の二階笠の男の言う事の真実性を
否応なく理解させる。
(生き残れるか・・・・今のわしに、この兵法勝負を・・・)
卜伝は顔を歪めてそう、苦悶する。
「卜伝百首奥書」の中で、
十七歳ニシテ洛陽清水寺ニ於イテ真刀仕合ヲシテ利ヲ得シヨリ、
五畿七道ニ遊ビ、真剣ノ仕合十九ケ度、軍ノ場ヲ踏ムコト三十七ケ度、
一度モ不覚ヲ取ラズ、疵一ケ所モ被ラズ、矢疵被ルコト六ケ所ノ外、
一度モ敵ノ兵具ニアタルコトナシ。
凡ソ仕合、軍ノ場トモ、出逢フ所ノ敵ヲ討取ルコト
一分ノ手ニカケテ二百十二人
と謳われた豪傑卜伝だが、もはや年齢は六十を越え、
男の盛りを過ぎてずいぶん経つ。
それでも、肉体は老人の物とは思えぬ強靭なものであるし、
剣の腕も相変わらず凄まじいものではあるが、
それでも、老いは確実に卜伝から力を奪っている。
(だが・・・・・・)
だからと言って尻尾巻いて逃げるか?
否、断じて否。
新当流流祖の名が、剣聖の名が、何より剣の道に生きてきた
自分自身の矜持が、逃亡を許さぬ。
無論、勝つかどうか危うい相手から逃げをうった事が無いわけではない。
危ういと思った相手を言いくるめ、琵琶湖の小島に置き去りにした事もあったが、
これと今とでは状況が違う。
口だけでどうにかなる状況ではない。
合戦のまっただ中に放り込まれたに等しいのだ。
しかしだからなんだと。
今まで合戦で悉く生き延びた自分が若造どもに後れをとる?
ふざけるな、俺は塚原卜伝だ!
この兵法勝負を見ているという何れかの貴人よ。
見ているがいい、老いても尚盛ん。
新当流塚原卜伝、推して参る。
【へノ参 城下町/一日目/深夜】
【塚原卜伝】
【状態】:健康、城下町を移動中
【装備】:木刀
【所持品】:支給品一式
【思考】
1:この兵法勝負で己の強さを示す
2:勝つためにはどんな手も使う
【備考】
※人別帖を見ていません。
卜伝が出て行ってからしばらくの間、
武蔵は右手に白刃を握ったまま、
宙に眼を彷徨わせて上の空の様子であった。
「ふくくくくく」
突然、武蔵の口から声が漏れる。
「くくく、くくく・・・・フハハハハハハハハハッ!」
それは凄まじい哄笑であった。
情けなきかな、宮本武蔵。
あのような爺一人易々と斬り捨てられぬようで
何が最強か、笑わせるにも程がある。
哄笑は自嘲の高笑いであった。
しえんだおっお
そのまましばらく自嘲の哄笑を上げていた武蔵だが、
その哄笑はぴたりと止まった。
武蔵の眼には凄まじい殺気が宿っている。
宮本武蔵、これまで60以上の決闘を戦ってきたが、
勝負をしたのは確実に勝てる相手とだけである。
これは仕方の無い事だ。
帰るべき故郷も、知行も持たない剣一筋の武蔵には、
一度の敗北はそのまま人生の破滅を意味するからだ。
しかし武蔵にはもはや失うものは無い。
ここで死ぬか、さもなくば生き残って最強を証明するか、
取るべき道は一つに二つ。
負けることは絶対に出来ぬが、勝負から逃げる事も許されぬ。
かつてない過酷な道だ。
しかし行かねばならぬ。さもなくば、自分に未来なし。
武蔵は、床の間の行李をひん掴むと、
民家の外へ飛び出した。
足跡を辿り、老人の姿を探す。
いたっ!
武蔵は老人の姿を発見すると、
素早く気配を殺して民家の影に隠れた。
あの老人。名は解らぬが恐るべき使い手である。
平素ならば、挑まずに素通りすべき相手。
しかし、ここではそれは許されぬ。
相手が如何なる使い手とて、己の手で倒さねばならぬ。
あのような爺一人斬り捨てられないで、何が最強か。
さすればこの追跡はかの老人を倒すためのもの。
あの老人の後を追い、あの老人の太刀筋、悉く見切るためのもの。
あの老人の太刀筋を見切り、尚かつ倒せば、
己の剣はさらに高い領域に踏み込めるはず。
武蔵にはそのような確信があった。
そうでなくても、あの老人は自分の手で倒さねばならぬ。
武蔵の誇り高さは、ある種の狂気すら帯びている。
その彼が、あそこまで虚仮にされて、黙ったままでいるはずもない。
月下の城下、奇妙な追跡劇が始まった。
【へノ参 城下町/一日目/深夜】
【宮本武蔵】
【状態】:健康、塚原卜伝を追跡中
【装備】:打刀
【所持品】:不明
【思考】
最強を示す
1:老人(塚原卜伝)を倒す
2:その為に、老人(塚原卜伝)を追跡し、
太刀筋を見切る。
【備考】
※人別帖を見ていません。
紫煙
投下乙ですた
武蔵ストーカー乙w
トウカ終了
両方マーダーにしてみました。
投下乙です
ストーカー武蔵、脳内イメージぴったりだ
どちらも鬱屈してるな
質問。
予約期限ってどのくらい?
わかんにゃい
じゃあ、慣習にのっとって、1週間でどう?
そんでもって投下したばかりですけど、
辻月丹、椿(桑畑)三十郎 予約
おkおk
オボロ・犬坂毛野投下します
「くっ!いったい何がどうなっているのだ!兄者は…皆はどうなったのだ!?」
鬱蒼と茂る森の中で、一人の青年―いや年齢的に言えばまだ少年というべきか―が叫んでいた。
茶色がかった髪に、痩せぎすだが鍛え上げられ引き締まった体躯、凛々しい眉と、
鋭いギラギラとした瞳は彼が相当の達人であるという事、そして熱き心の持ち主だという事を体現していた。
ただ常人と異なる所を挙げるとすれば、その耳は猟犬、あるいは狼のように尖り、
外からそれを確認する事は不可能だったが、袴の下からは尾が生えているという事。
彼こそは今の人の営みが滅びし後、遥か永劫の未来、新たな人の世で、勢力伸張著しい新興国家
「トゥスクル」の主・ハクオロ皇の義兄弟にして、歩兵衆を率いる若き侍大将、名をオボロと言った。
□
つい先ほどまでオボロたち、トゥスクルの軍は我らの敬愛すべき皇・ハクオロとともに、
敵国の皇城にあった。被差別民族シャクコポルの国でありながら、謎の巨兵「アヴ・カムゥ」を擁し、
破竹の勢いでその勢力を拡大した西の強国、クンネカムン。そしてハクオロの盟友だという若き皇・クーヤ。
彼女たちが全土統一の旗を掲げ、近隣諸国に侵攻を開始したのだ。
我が聖上を止めて欲しい―国のため、主君のため、死を賭してトゥスクルへと出奔したクンネカムン建国の大老・
ゲンジマルの要請を受け、ハクオロはクンネカムンの侵攻を受けた諸国と盟約を結び、逆にクンネカムンへと侵攻。
ついに皇城にてクーヤを下したのだ。だが、事態はそれで終わらなかった。クンネカムンの左右大将の造反、
屍を操っていた謎のオンカミヤムカイの男、あまりに目まぐるしく動く自体に困惑している最中に、國師ウルトリィが
突如として空間転移術を展開し、そして―気がついたら、あの場に引き出され、今また見知らぬ森の中にいた。
「俺は夢でも見ているのか…?あの連中は一体。」
あの場にいた連中…多くのものが、確かに自分たちとよく似た服装をしていたがなにかが違った。
自分たちに殺し合いをしろと告げた、あの初老の男のいた建物もどこか自分たちの国とは趣を異にしていた。
耳の形も今までに見たことが―いや、ある。あるどころではなく一番身近にいたではないか。
彼らの耳の形状は兄者―ハクオロのものと同じであるという事を思い出した。
ハクオロは元々、エルルゥたちのいた集落・ヤマユラに迷い込んできた男。その際、それまでの記憶を一切失っており、
氏素性も知れない。一度、その事を巡って大きな―思い出したくも無い忌まわしい戦乱が起きた事があったが、
結局、その正体は解らず仕舞いであった。
火薬―オボロたちのいた世界では禁忌の薬とされ、薬師であるエルルゥとハクオロが一度だけ製造し、
侵攻してきた敵国・シケリペチムの軍の糧秣を焼いて退けたことのある、火神を呼ぶ代物。
少年の首が吹き飛んだ音は、あれの炸裂する音に良く似ていた。が、それらしきものが
しかけられていたようには見えなかった。
殺し合いをしろと告げたあの男―いや、オボロの鋭敏な聴覚は引き戸の奥にいた何者か、
それも複数人の気配と、そのうちの一人が指を鳴らした音をしかと聞き取っていた。何かの術?
オンカミヤムカイの方士ような…。だが、彼らが術を使うに際は呪文の詠唱を必要とする。
指を鳴らすだけで、人一人の首を吹き飛ばすなど聞いたことが無かった。彼らに逆らえば自分たち
もあの少年のようになると言うが―
(くそっ、ますますわけが解らん!こんな時、兄者ならなにかしら閃くのだろうが…)
だが、自分でも重々承知はしているが、オボロは考えるよりも体を動かすのが遥かに得意な気質。
考えれば考えるほど思考は混乱し、オボロはたまらず髪を掻き毟った。ともかくだ、今自分がするべき事は
(俺の身につけた武技は本来、皆を守り、明日を切り開くためのもの。それを殺し合いに使うなど
できようはずもない!そうだろう、兄者!もしも、兄者がこの場にいれば絶対に皆を止めようとするはずだ。)
そうだ。志は人一倍、されど、今思えば、単なるコソ泥にすぎなかった自分に真の力の振るい場所を
与えてくれた男。その全てを捧げて、伴に道を切り開いていきたいと心に誓った男。不治の病で
明日をも知れぬ妹が生まれて初めて、そして唯一女として愛している男。ゲンジマルとともに、
敵陣の只中に残っているであろう義兄・ハクオロをなんとしても助け出さなければならない。
だが、ここで殺戮に走るようなことがあれば、とてもハクオロに顔向けできない。ならばどうするか。
答えは簡単である。あの自分たちに死合を強いたいけすかぬ物共を、この手で叩き伏せるのみ。
(そういえば行李の中に地図と人別帖が入っているといったな。目を通してみるか。)
まずは、今の状況を把握するのが先決。行李を開けて、まず目に入ったのは細身の湾曲した刀が一振り。
鞘から抜いてみるが、切っ先鋭く、同胞・トウカの使っているものとよく似ている。
とりあえず腰にさすが、普段二刀使いのオボロである。どうも落ち着かない。
(…なんというか、やけに腰が軽いな。あの男、得物は自分で見つけ出せと言っていたが…そうするしかないか…。)
次に青竹を切って作った水筒が何本かと、笹の葉を縛った包み。何気なしに開けて見るが…
(…?なんだこれは?モロロ…じゃないよな?食えるのか、これは。)
中から出てきたのは見慣れぬ白い固形物が5つ。試しに齧ってみるが堅いし、味も
旨いとは思えなかった。噛み砕けないこともないが…とても食べる気にはなれなかった。
なにか特別な調理方法でもあるのか?とりあえず歯型がついた『ソレ』は一旦包みなおし、
今度は、地図と人別帖を付属の筆、墨壷と一緒に取り出す。まず地図を広げ、自分のいる位置を見定める。
どうやらここは島らしい。何やら見たことのない文字が並んでいるが不思議と何が描い
てあるのか理解できる。頭の中に直接入り込んでくるような、味わったことの無い感覚
であった。正確な場所はわかりかねるが、どうやら自分は北西の山中にいるらしい。
次に人別帖、こちらに書いてある文字もなにやら複雑怪異だが、やはりすんなりと
頭に入った。
(しかし…聞いた事の無いような名ばかりだな。やはりここはどこかの異国――)
半ばほどまで読み進め、一つの名前に釘付けになる。
(――!!!トウカ!トウカがここにいるのか!?)
トウカ―信義を第一とし、勇敢なことで知られるエヴェンクルガ族の戦士。居合いの達人。
多少(で済むか?)、うっかり者という点は少々不安だが、喧嘩をするほど気心の知れた仲間。
女ながら剣の腕前はおそらく自分を凌いでいるし、素手での殴りあいも相当のもの。
なにせ、自分がしばらく寝込む程の、重傷を負わされた(彼女の大事にしていた人形を
壊してしまったのだ。ただ、いじった途端に壊れた気がしたが…)事もあり実力は身をもって知っている。
最初のあの場にいた時は、その姿を認めることはできなかったので、
彼女もこの場に呼ばれている事に驚きはしたが、達人を集めたというならば不思議ではない。
それに仲間であること以上に、トウカは真面目を絵に描いた裏表の無い好漢。
彼女ならまず信用して間違いない。なんとか見つけ出して合流したい所。
幸か不幸か、他に自分の知る名前を見出すことはできなかったが、
これで当面の指針は決定した。
(ならば善は急げだ!とりあえず里に降りてみるか。)
荷物を詰めなおしたオボロはその並外れた脚力でもって、夜の風を纏い、
木々の間を縫うように駆け抜けて、坂を下っていく。
ふと見上げると、木々の間から見事な満月が顔を出していた。
(待っていてくれ兄者。かならず、かならず俺は戻る!)
月に対して誓いも新たに、視線を正面に戻そうとて―――――――――――――
―その瞬間、彼の思考は頭上からの衝撃とともに中断、代わりに視界いっぱいに
黒土や苔が広がった。
□
いくつもの、木々が繁茂し、静寂が包む山の中腹。そこに一本だけ突出して頭を出す杉の古木。
その中ほどの枝の根元に腰を下ろす、一つの影があった。夜鷹か梟か。はたまた、塒を探す猿猴か。
否、そこに宿るは紛れも無い一人の人間。弓のようにしなやかな手足に、白い薄絹のような肌、
金紗のように赤みがかった頭髪と、柔らかい線を有する紅顔の頬。まるで絵物語から抜け出た
牛若丸か、その姿を見れば生きては帰れぬという山姫か。月明かりを浴びて妖しい魅力を放つ
少年の名は犬坂毛野胤智―怜悧な双眸に、宿るのは静かに燃える怒りの炎である。
犬坂毛野。元は、関東の名門の千葉家の分流・武蔵千葉家の家老を務めた、粟飯原胤度(あいはらたねのり)の
妾腹の末子である。三年間、胎動していたという母の腹の中にいる間、父は悪人の奸策にかかって一族皆殺しと
なり、毛野自身もこの世に生を受ける以前から、何度と無くその命を狙われてきた。
母は自分に女名と女の着物を与え、女として自分を育てた。その母が臨終を迎える際、自らの出生の
秘密を知った彼の心に宿ったのは仇に対する果てしない憎悪―それを晴らす為だけに生き、
ついにその縁者を幼子に至るまで、一人残らず血の海に沈めた。
だが、そんな修羅道を歩んでいた自分に手を差し伸べてくれた兄弟たち―
―そう、こんな自分に最初に気遣ってくれた、犬田小文吾を初めとする里見の六犬士
生まれ出でる以前よりの宿縁で結ばれているという、彼らが自分を仲間に誘ってくれたときは、
一匹狼を気取ってきた手前、態度には表せなかったが、心から嬉しかった。
これからは、人の世と仁義のために刃を振るう。悪くないと思った。
その矢先だった。最後の仇、籠山逸東太頼連を討ち果たし、それと引き換えに
多くのものを失ってしまった鈴繁森での戦い―犬士たちと合流して追っ手から逃げ、
しばらくの間、穂北の地で暮らしを伴にし、自分たちの真の母たる伏姫の法要に
加わるべく結城への旅支度をして――
―そして覚醒と同時に自分はあの趣味の悪い芝居を見せ付けられたのだ。
やはり、貴様は修羅として生きろという事か?それとも、以前小文吾が話してくれた、
自分たちを生み出した根本であり、里見家とその縁者を呪い続ける怨霊・玉梓の
呪いなのか。そんな事は、この際どうでもいい。あの白州の男から突きつけられた
この理不尽な要求に毛野はただただ、怒っていた。ならばする事は決まっている。
(奴等の思惑道理にはさせない…。この馬鹿げた茶番をぶち壊して、あの男を地獄に叩き落す。)
だが、あそこに集められた武芸者たち、少年の首を一撃で落とした邪術、そして気がつくと立っていたこの場所。
彼の鋭敏の頭脳をもってしても、疑問符のつく事象ばかりであったが、毛野はせめて、今いる場所がどこなのか
だけでも確認しようと、辺りを見渡しもっとも背丈のあると思しき杉の木によじ登ったのだ。
太い丈夫そうな枝に腰を下ろし、膝の上に行李を下ろしてあけ、地図を取り出した。
今宵は満月という事もあり、元々夜目の利く毛野は方々を見渡す。
(湖か…。となると、俺がいるのは『は』の弐か参のあたりか。)
場所は大方見当がついた。地図をいつでもひらけるよう懐にしまって――
ここで初めて違和感に気がつく。
(…!?珠が…無い!)
生まれてこの方、肌身離さず持ってきた、『智』の文字が浮き出る水晶の珠
―自分たちを生み出したもう一つの存在・伏姫の霊験が宿る宝玉。他の犬士も皆、
同じ物を持っているという―が無くなっていた。腰の大小が無くなっていた事は
最初から解っていたが、懐や袖にに忍ばせている飛刀も一緒に消えていた。
(落とした…?いや、信乃じゃあるまいしそんな間抜けはするはずがない。
あいつら、いつの間に人の懐を弄ったんだ。気色悪い!)
変わりに行李に入っていたのは、何という事も無い一振りの脇差が一本。
刀身は一尺五、六寸といったところか。間合いの短さは、気にはなるが、
相手の懐に潜り込む事も自分は得意中の得意、扱いに困るというほどではなかった。
(得物をバラバラにして不確定要素を増やす…。そんなところか。
ここまでふざけているともはや腹を立てるのも馬鹿馬鹿しいな。)
腰の大小は自分で見つけろとあの男は言っていた。飛刀に関しては―いざとなれば
石を投げても、十分相手を殺傷できるくらいの投擲技術を毛野は持っていたし問題はなかった。
しかしやはり珠。自分と犬士たちを繋ぐ絆の証。あれだけは、是が非でも取り戻す。
おそらく、刀同様、この島のどこかに隠されているに違いない。伏姫の霊珠が悪人に
使えるとは思えないが、万に一つ、あの不思議な珠が悪用される可能性も否定はできない。
一刻も早く見つけ出さなければ。
それともう一つ、他の参加者との接触を図る。群れて行動するのは好きではなったし、
いざとなれば一人であの屋敷に斬り込む事も覚悟している。
が、奴らの思惑を打ち破るにはそれなりの頭数が必要になってくるだろう。何よりも情報が少なすぎる。
目下、探し出すべき人物は一人―
(あの十兵衛という隻眼の男、白州の男の息子か何かだと言っていた。今度の事は寝耳に水って
感じだったけれど、自分の父親の事を何も知らない筈がないと思う…。あの様子だとたぶん
殺し合いには乗らないだろうし、まず会って話を聞き出さないと。)
それに他にあの連中を知るものがいる可能性も否定はできない。まずは協力者を探す。
やつらの思惑に乗せられた連中は―今までそうしてきたように、修羅となって斬る。
ふたたび、仲間たちの元へと帰り、人の世のため戦うため。
その小柄で華奢な体に、燃える闘志を宿した毛野は、行李を背負いなおすと、するすると
それこそ猿かなにかのように、素早く木を降りていった。
元々、彼は旅芸人一座の中で育ち、軽業の芸を通じて、卓越した身体能力を身につけてい
るのだ。女として育てられ、追われる身であった毛野は武芸の師を持ちえず、その技はほ
ぼ全てが我流であったが、その脅威的な脚力、跳躍力、瞬発力を伴って、達人と言わ
れた者腕の者でさえ、一撃で屠るだけの域に達していた。今まで、毛野の上っていた杉の木も、
並のものでは半ばにも到達できず、よしんば上れてもその高さに肝を潰すだろう。
それを水が戸板をすべるように難なく降り、一丈ほどの高さに達したところから、毛野は表情も変えず
大地へと飛び降りた―が、その瞬間、目下をなにかの影が横切ろうとし――――
□
「むぎゅッ」
―――押し殺すような奇声が聞こえると同時に、毛野は大地とは明らかに感触を異にする
ものの上に尻餅をついていた。目線を地に移すと――――
(…?狐…?山犬か?)
―獣の耳を持った若者が、踏みつけられた蛙の様になって地面にへばりつき伸びていた。
なにせ、犬や猫が人を化かす世界だ。いまさら、何が人に化けても驚きはしないが…
やはり、思わず尋ねてしまう。
「…お前、なんなんだ?」
「……まず…どけ…ろぉ…」
ああ、それもそうか。若者の肩の辺りにに圧し掛かったまま、毛野は一人手を打った。
【ろノ参/麓の森/一日目/深夜】
【オボロ】
【状態】:顎、手足に軽い擦り傷。肩、首に痛み。下敷き。人の集まりそうな場所へ向かう。
【装備】:打刀
【所持品】:支給品一式
【思考】
基本:男(宗矩)たちを討って、ハクオロの元に帰る。試合には乗らない
一:上に乗ってる男(?)をどかす。警戒。
二:トウカを探し出す。
三:刀をもう一本入手したい。
※ゲーム版からの参戦。
※クンネカムン戦・クーヤとの対決の直後からの参戦です。
※会場が未知の異国で、ハクオロの過去と関係があるのではと考えています。
【犬坂毛野】
【状態】:健康。決意。
【装備】:脇差
【所持品】:支給品一式
【思考】
基本:主催者の思惑を潰し、仲間の元に戻る。試合に乗った連中は容赦しない。
一:自分が下に敷いている男からどけ、接触を図る。
二:智の珠を取り戻す。
三:主催者に関する情報を集める。柳生十兵衛との接触を優先。
【備考】
※キャラクター設定は碧也ぴんくの漫画版を準拠
※漫画文庫版第七巻・結城での法要の直前から参加です。
※智の珠は会場のどこかにあると考えています。
※オボロを妖怪変化の類だと認識しています。
※支給されている食料は餅が5個です。燧石が付属で支給されています。
※地図、人別帖に書き込みをするため筆と墨壷が全員に支給されています。
※うたわれ世界の住人にも字が読めるよう、なんらかの術がかけられています。
以上です。
男の信乃と女の信乃
どちらかの参戦が確定すれば
毛野が人別帖を確認するシーンを書き加えたいです。
乙
何かワロタwwww
あと、タイトルは無しかい?
それと、餅は硬いままか。
硬い餅は確かにうまくない
投下乙です
では、自分は犬塚信乃@里見☆八犬伝、赤石剛次を予約します
済みません規制に引っかかってしまいました
タイトルは「犬と狼と」でお願いします。
オボロはともかく、毛野は誰か繋いでくれるだろうか?
だが後悔はしていない!
それと早速、芹沢鴨予約お願いします
あと、地図が消えちゃってるんでどなたか再うpお願いします><
八犬伝だし誰か居るとおもうけどね。
あと予約まとめ
◆/JvwgnbCcs>伊東甲子太郎、川添珠姫、鵜堂刃衛
◆F0cKheEiqE>辻月丹、椿(桑畑)三十郎
◆NIKUcB1AGw>犬塚信乃@里見☆八犬伝、赤石剛次
◆L0v/w0wWP.>芹沢鴨
>>86 うーん、したらばの方に把握テンプレでも載せるかな
あと『三匹が斬る!』ってソフト化されてたかな?
>>82 長期戦も見越してある程度保存が利くほうがいいと思い餅にしますた
どうでもいいが、今日bookoffで八犬伝読んできた。
少女マンガにしては殺陣が良かった
道節や現八あたりも出て良かったかも
犬塚信乃、赤石剛次投下します。
鬱蒼とした林の中に、一人の少女が立っている。
腰まで伸びた青い髪。意志の強さを感じさせる凛とした瞳。引き締まりながらも女らしく丸みを帯びた体つき。
魅力的といって差し支えないその姿の持ち主は、名を犬塚信乃という。
彼女は邪悪を打ち砕き阿波の国を救う八犬士の一人として旅を続けている途中、突如としてこの悪趣味な催しに連れてこられたのだ。
(冗談じゃないぞ、まったく……)
眉間にしわを寄せながら、信乃は心の中で悪態をつく。
彼女が斬るべき存在は、人間に害をもたらす妖怪のみ。同じ人間に向ける剣など持ち合わせてはいない。
(そもそも妖怪でもあるまいし、なぜこんな悪趣味な催しを……ん? ちょっと待て。
ひょっとして、本当に妖怪の仕業か?)
最初にこの催しについて説明していた男は、見たところただの人間であった。
だがそのほとんどが異形の妖怪たちの中にも、人間とほとんど見た目が変わらぬ者もいる。
自分たちにたびたびちょっかいを出しては返り討ちに遭っている、亀篠(かめざさ)と網乾(あぼし)の二人などその典型だ。
あの男も、見た目が限りなく人間に近い妖怪なのかも知れない。あるいは、人間ではあるが妖怪によって操られているという可能性もあるだろう。
この件に妖怪が関わっているという確証はない。
だが自分を気づかぬ内に拉致し、その上一瞬でこの林に飛ばすなど、それこそ妖術でもなければ説明がつかない。
(仮にこの件が妖怪の仕業だとすれば、なんとしても黒幕を成敗しなければ……。
大丈夫、私にはこの村雨が……。って、あれ?)
そこでようやく、彼女は自分の愛刀「村雨」がなくなっていることに気づく。
「ない……。ない。ない! どこ行ったーっ!」
体中をまさぐった後、いつの間にか持たされていた行李の中をあさる信乃。
しかし見つかった刀は、村雨とは似ても似つかぬありふれた物。村雨は影も形もない。
「あの野郎……。盗みやがったなーっ!!」
こめかみに青筋を浮かべ、怒りのままに信乃は叫ぶ。
魔を払う力を持つ村雨は、犬士たちにとっての切り札。そしてそれを妖怪たちの手から守り抜くことが、信乃に与えられた使命なのだ。
その村雨を他人に奪われたとなっては、彼女の面目は丸つぶれ。さらに言えば、存在意義が崩壊しかねない危機である。
(決めた……! もう人間だろうが妖怪だろうが関係ない。
絶対にあのおっさん見つけ出して、思いっきりぶっ飛ばす! そして村雨も取り戻す!)
未だおさまらぬ怒りを胸に押し込めながら、信乃は刀を探す時に放り投げた行李の中身を戻していく。
てきぱきと作業を進めていた彼女だったが、ある物の存在に気づくとその手を止めた。
(人別帖? 要はここに連れてこられた人たちの一覧表か)
信乃はそれを手に取り、目を通していく。そして、ある名前を見て目の色を変えた。
「犬坂毛野」。
それはまさに、彼女の仲間である「智」の犬士の名前であった。
(くそっ、あいつまでこんなばかげた戦いに……)
強い憤りに顔を歪める信乃。だが同時に、疑問が彼女の頭に浮かぶ。
あの男は、「武芸者を集めた」と言っていた。しかし、毛野は身体能力こそ高いが武芸者とは言い難い。
槍使いの荘助や、体術使いの小文吾の方が武芸者と呼ぶにはふさわしいはず。
なぜ彼らではなく、よりによって毛野が?
(まあ、あんないかれた男の考えることなんて、わかるわけがないか)
答えを見つけることを放棄し、信乃は人別帖を行李に戻す。
その直後、彼女は背後から誰かが近づいてくるのに気づいた。
「誰だ!」
振り向きながら、信乃は叫ぶ。そこには、一人の男が立っていた。
筋肉質の巨体。逆立った短髪。太く長い眉。据わった目つき。角張った輪郭。
一言で言えば「男臭い」。男は、そんな容貌をしていた。
「さっきからギャーギャー騒いでたのはお前か?」
「……言い方に不満があるが、多分そうだ」
男のぶしつけな質問に、信乃は若干の苛立ちを覚えながらも答える。
すると、男は鼻で笑って見せた。
「何がおかしいんだよ!」
男の態度にさらに苛立ちを募らせ、信乃はつい荒っぽい口調で叫んでしまう。この少女、元々気の長い方ではないのだ。
「なに、腕の立つ武芸者が集められているというから少しは期待してたんだが……。
あんたみたいなガキも混ざっているとはな。はっきり言って、期待はずれだぜ」
男の言葉は、さらに信乃の神経を逆なでする。もはや、信乃には悪意があってやっているとしか思えない。
「さっきから失礼すぎるだろ、あんた! 好き勝手言うな!
それに私はガキじゃない! 犬塚信乃という名前がちゃんとある!」
「ほう、名前だけは立派みたいだな」
「だからその、ひとを馬鹿にしたしゃべりはやめろ!」
端整な顔立ちを崩し、信乃は地団駄を踏む。
「別に馬鹿にしているわけじゃねえ。思ったことをそのまま言ってるだけだ」
「なお悪いわ!」
「本当にうるさい奴だ……。男のくせに女みたくピーピーと……」
「男の……くせに……?」
男の何気ない一言。それが、信乃に怒りの限界点を超えさせる。
「わーたーしーは女だぁぁぁぁぁ!!」
幼い頃から、両親に男として育てられた信乃。それが不本意であったがゆえに、彼女は男と間違えられることを極度に嫌うのだ。
「女?」
そういわれて、男は信乃をまじまじと見つめる。そのまま、数十秒が経過。
「……なるほど、パッと見は男だが、よく見れば確かに女か。わかりづらいがな」
「よく見ないとわからんのか!」
怒り狂う信乃だが、男のほうはあくまで冷静である。
「女となれば、なおさらどうでもいい。相手にする気はねえから、さっさとどこかに行きな。
俺は俺で、適当に面白そうな相手を捜してくる」
そう吐き捨てると、男は信乃に背を向けて歩き出した。その行動に、信乃は怒りを超えて軽い殺意すら覚える。
強制されているとはいえ、ここは命を奪い合う戦いの場だ。それなのに、他者に対してためらいなく背を向ける。
つまり、今までの言葉は挑発でも軽口でもない。あの男は、心の底から自分を恐れるに足らない弱者だと思っている。
信乃にも、自分がまだ未熟だという自覚はある。だが、同時に侍としての誇りもある。
ここまで見下されて、黙っているわけにはいかない。
「待て」
考えるより先に、信乃はそう口にしていた。
「何だ?」
男は、ゆっくりと振り返る。
「私とて武士の端くれ。ここまで虚仮にされて、黙ってはいられない。ここで私と立ち会え!」
「断る。さっきも言ったが、お前ごときを相手にするつもりはない」
「なら、こっちが一方的にしかけるまでだ」
信乃が刀を鞘から抜き、それを構える。
「仕方ねえな……」
それを見て、男も渋々得物を取り出した。
「それがあんたに配られた武器か?」
「ああ、そうだ」
「ふざけるな、木刀じゃないか! それで真剣とやり合うつもりか!」
そう、男が手にしている物。それは真剣ではなく、木刀だった。
「問題ないだろう。俺とお前の実力差は、この程度では埋まらないだろうからな」
「私を馬鹿にするのも……いいかげんにしろ!!」
咆吼と共に、信乃が駆ける。男は動かない。間合いに入るやいなや、信乃は刀を振るう。
命まで取るつもりはない。ゆえに峰打ちだ。
それに対し男は、信乃を上回る速度で木刀を振るった。
交錯。そして、何かが宙を舞う。
「え……?」
信乃は、我が目を疑った。彼女が握っていた刀は、半ばからきれいに折れていた。
つまり、飛んだのは折れた信乃の刀だ。
(そんな……。弾くならともかく、木刀で真剣を折るだと?)
衝撃的な出来事を目の当たりにし、信乃の顔からは一気に汗が噴き出す。
「この世に斬れぬ物はなし、一文字流斬岩剣! もっとも、さすがに木刀じゃ斬ると言うより叩き壊すという感じだがな……」
信乃の様子など意に介さず、口上を決めて男は改めてその場を去る。
信乃は虚ろな目つきでそれを見つめながら、地面に膝をついた。
「負け……た……」
先程までの威勢が嘘のように、弱々しい声で信乃が呟く。
得物で勝りながら、あっさりとその得物の破壊を許してしまった。
それはまさに、あの男の言うことが真実だと言うこと。自分はあの男にとって、歯牙にもかからぬ存在だったのだ。
以前からあった、自分の強さへの不満。自分は村雨を扱うのにふさわしくないのではないかという思い。
それらが今、無力感となって信乃の心を襲う。
「くそっ……何をやっているんだ私は……。たかが、一度負けただけじゃないか……。
こんな事で挫けてどうする……! 村雨を取り戻すんだろう!」
必死でおのれを鼓舞する信乃。しかし一度折れた心は、そう簡単には戻ってくれそうになかった。
【とノ壱/林/一日目/深夜】
【犬塚信乃(里見☆八犬伝)】
【状態】自信喪失
【装備】折れた打刀
【道具】支給品一式
【思考】
1:主催者をぶっ飛ばし、村雨を取り戻す。
2:毛野と合流したい(自分が知る毛野と別人だとは気づいていない)
※第一部終了後(単行本6巻)からの参戦です。
薄暗い林の中を、男……赤石剛次が歩く。
その顔に、勝利の喜びは見られない。それも当然。彼にとって、先程のやりとりは勝負にすらなっていないのだから。
(さて……どうしたものかな)
彼は、自分の行くべき道を決めかねていた。
どうせ一度死に損ねた身だ。命は惜しくない。
死の寸前にいた自分が、こうして五体満足で立っていることは少々不思議だが……。
男塾ではそう珍しいことでもないので気にしないことにする。
とにかく、赤石は死を恐れていない。後輩たちも立派に成長したし、もう自分がいなくても大丈夫だろう。
塾長奪還の任務も、必ずや達成してくれるはずだ。
ならば、ここで強者との戦いに身を投じ、派手に散るのも一興。そんな思いもある。
だが見ず知らずの男に従うというのも、癪な話だ。
(どうするにせよ、もっと良い刀がほしいな。この木刀じゃさすがに限度がある。
みんながみんな、あんな雑魚ではないだろうからな。腕のある奴とやるなら、それなりの刀を用意する必要がある。
まあ、適当に歩いていればその内、刀がありそうなところも見つかるだろう)
方向もろくに確かめぬまま、おのれの勘だけを頼りに赤石は歩き続ける。その行き先は、神のみぞ知る。
【とノ壱/林/一日目/深夜】
【赤石剛次】
【状態】健康
【装備】木刀
【道具】支給品一式
【思考】
1:積極的に殺し合いをやるかどうかは保留。だが、強い相手とは戦ってみたい。
2:刀を捜す。
※七牙冥界闘・第三の牙で死亡する直前からの参戦です。ただしダメージは完全に回復しています。
以上で投下終了です。
誤字脱字などありましたら、指摘お願いします。
投下します。
「ここ……何処?」
川添珠姫は古い造りの町並みの中を歩いていた。
京都によくありそうな、古風な建物ばかりの町だ。
「……一体何があったのでしょう」
珠姫は状況を正確に把握出来ずに居た。
いきなりわけのわからない場所に連れられ、いきなり目の前で一人の男子が首を爆弾で吹き飛ばされ、いきなり殺し合えだ。
状況の把握など出来ない方が普通なのである。
しかしそれ以外にも珠姫の頭を悩ます事があった。
それがこの人別帳だ。
「先生や先輩方はいらっしゃいませんが………宮本武蔵、柳生十兵衛、他にもいろんな侍の名前ばかりこれは一体?」
珠姫は困惑していた。
自分がタイムスリップしただけとも考えたが、明らかに別の時代を生きた人の名前も多数見受けられる。
それに自分に与えられた食料はパンやおにぎりだった。この時代に白米の重要性やパンが存在していなかった事実を
考えると、自分の知る過去とも異なる事は間違い無かった。
それ故に理解出来ない。
「私はどうしたら……」
近くの大きな石に座り、途方に暮れていたときだ。
一人の男の声が珠姫の耳に届いた。
「見ぃつけた。ずいぶん小さい女だが……試し切りにはちょうどいいか」
「あなた………誰ですか。」
珠姫は慌てて立ち上がり、支給された木刀を中段に構える。
だが男は不敵な表情を崩さずに返す。
「うふふ、鵜堂刃衛だよ。別にお前は名乗らなくて構わんよ。どうせすぐに死ぬのだからな。うふふふふ」
「いいえ。名乗らせてもらいますよ。川添珠姫です。あなた……殺し合いに参加するんですか」
「当たり前だろ。せっかくの楽しい殺し合いだ。だが残念ながらこの刀は俺の得物じゃないのでね。腕慣らしをさせてもらう」
「ぐっ」
刃衛が一歩近づくと、珠姫は不意に後ずさる。
(凄いプレッシャーです。だけど……落ち着いて、落ち着いて)
珠姫は相手の刀の切っ先を見ながらひたすら平常心を取り戻すように努める。
普段の防具と竹刀ではなく、相手が持つ刀は真剣。自分は防具をつけずに制服姿。
一撃でも入れば致命傷。一本取られたらそれが意味する事は死。
珠姫は流れ出る汗をぬぐいもせずにただ刃衛の切っ先を見つめていた。
「うふふ、行かせてもらうよっ!」
始まりは唐突。
刃衛はいきなり驚くべき速さで間合いを詰め、珠姫の頭に刀を振り下ろす。
(早い!だけどよけられない速さじゃない)
珠姫は必死でその初撃を避ける。
そして
「小手ぇっ!」
珠姫は刃衛の手首に木刀を叩きつける。だが
「遅いっ!」
刃衛はすぐに手首を引いて攻撃をかわす。
そしてそのまま流れるように珠姫の首に刀が走る。
(うっ、くっ!)
珠姫はスウェーバッグの要領で必死に間合いのギリギリ外に避難する。
そしてそのまま大きく間合いを外す。
「はあ、はあ、はあ」
珠姫は息を乱しながらも木刀を再び中段に構える。
しかし刃衛はそれを見ながら笑顔を見せる。
「いいねえ、女と思って油断したがそこそこは出来る。だがこれをかわせるかな」
「私は……負けるつもりはありませんっ!」
「うふふ、いいねえ。その目は本当に面白い」
刃衛はその言葉と同時に走る。
必殺の平突きを珠姫へと仕掛ける。
(突き!?だけどそれなら持ち手の方へ避ければ胴が決まる)
珠姫は刃衛に向かい走る。攻撃をかわし、刃衛の胴に木刀の一撃を叩き込む為に。
*******
「どうなっている?」
伊東甲子太郎は悩んでいた。
支給された刀は名刀と名高い太刀銘則重であり、振るうには申し分ないのだが、伊東にとって問題はそこではなかった。
「私は確かに近藤の一派に殺されたはず。何があった?夢幻であったのか?しかしあの感触を確かに覚えている。私は確かに
胸を貫かれ、咄嗟に襲ってきた一人の男を斬ったはず。そしてそのまま…………いけませんね。それをいうなら柳生十兵衛と
いう男があの場に居た事自体が不自然だ。それにまずはこの無意味な殺し合いを止めなければ。天下無双の称号等のために人
を殺めるなどあまりにもバカバカしい。私が感じている疑問の真相など、全てが終わってから考えれば済む話だ」
伊東は言葉に出して考えを纏めると、刀を鞘へ納め立ち上がる。
そして街を歩き始める。
「それにしても綺麗な満月ですね。殺し合いなどせずに、自らの主張があるのならこの月に照らされながら互いが理解できるまで
話し合えばいいと思うのですが」
伊東はため息混じりに呟いた。
そしてしばらく歩き続け、嫌な気配を感じ取る。
「………ん?この感じは……行ってみますか」
伊東は気配の方向へと走り出した。
*******
103 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 00:00:32 ID:73ti3zH1
珠姫と刃衛の戦いは決着を正念場を迎えようとしていた。
(この平突きを避ければ胴を決めて私が勝ちます)
珠姫は必死になって突きをかわしきる。
そしてそのままカウンターの要領で胴の構えを取った。
しかし、
「うふふっ、はあぁっ!」
刃衛はそのまま珠姫の首筋に狙い平突きから派生する横薙ぎを繰り出す。
(なっ、っ!)
珠姫は横っ飛びで横薙ぎをギリギリでかわす。しかし首の皮を僅かに掠り小さな赤い線を作る。
「うっ、くっ」
「ちぃ!やはり刀の間合いが違うと上手くいかないな」
刃衛は刀の腹を撫でながらぽつりと呟く。
珠姫は一度首を撫でると三度、刃衛に向き合う。
「ほう、まだやる気か」
「当たり前です」
(どうしよう。この人……強い)
珠姫は虚勢を張りながらも、目の前の男と自分の実力差は肌で感じ取れた。
先ほどの二度の立会いはどちらも相手が自身の刀の間合いを見誤っていたから助かったが、普通なら既に二度死んでいた。
それを考えると、既に勝機など絶望の闇に隠れてしまっていた。
「うん、その気概いいねえ。だが、もう終わりだよ」
「何を言っ!?」
珠姫は刃衛の言葉に言い返そうとするが途中で言葉が止まる。
身体が急に動かなくなっていたのだ。
「心の一方を掛けた。これで思う存分斬らせてもらうよ。うふふふふ」
刃衛は不敵な笑みを浮かべながら珠姫へと近づいていく。
しかし珠姫は身体が動かない。
「なっ、何をっ!?」
「ほう、泣かないか。俺が切った維新志士の腑抜けどもは泣いて命乞いをしていたのだが………思った以上に気が強い」
「当たり前です!私は……負けません!!」
珠姫は必死で身体を動かす。必死で気迫を見せ、木刀の切っ先を僅かに震わせる。
「うふふ。面白いが……死んでもらうよ」
「うっ」
刃衛は容赦なく刀を振り上げる。
後は死を待つのみ。
そのタイミング。
一つの声が響いた。
「何をしている!」
「んっ!?」
刃衛はその声を刀を一度下ろしてから背後を振り向く。
そこには一人の男が立っていた。
「私は伊東甲子太郎と申します。あなたその少女を殺すつもりですか?」
「当たり前だろう。折角殺し合いの場に集められたんだ。思う存分人を斬れるのに何を躊躇する必要がある」
「確認しますが刀を納める気はありませんか。刀を納めて去るのならこの場は治めますが」
「うふふふふ。何をビビッている。俺が怖いのか。安心しろ。この女を斬ったら次はお前だよ」
そう言いながら刃衛は伊東に向けて剣気を強くぶつける。
だが――
「無駄ですよ。私にその技は通用しません」
――伊東は平然とした顔で刃衛に向き合い銘則重を抜く。
「ほう、心の一方が通じないとは」
「もう一度だけ尋ねますが、この殺し合いを止める気は無いのですか?」
「うふふ、お前の甘い性格……俺が歪ませてやろう」
刃衛は伊東が尋ねるのを無視し、一気に間合いを詰めて切りかかる。
「うふふふふっ!」
「残念です」
だが伊東は初撃を難なく流す。
だが刃衛はさらに二度三度と伊東の首や腕を狙い斬りかかる。
「無駄です。その攻撃では私を倒せません」
「ぐっ!」
伊東が大きく刃衛の刀を撥ね返すと、刃衛は大きく後ろに跳んで間合いを離す。
「どうしました。今なら引き返せます。刀を納めるなら……」
「いいねえ。その腕前。確かに面白い。確かにこのナマクラ刀で相手にするには失礼だ」
刃衛はため息をつくと刀を納め背を向けた。
「伊東甲子太郎といったか。ここは引かせてもらうよ。最もここで俺と決着をつけなかった甘さはお前自身に降りかかるがな」
「構いませんよ。もしあなたが再び戦いを望むのなら、私は戦いましょう。ですがあなたに殺される気などは毛頭ございませんが」
伊東はそういいながら既に珠姫を背に刃衛と向き合う形をとっていた。
「うふふ、心配せずとも今は女を殺しはしないよ。今の刀でお前を相手にするほど愚かでも無い」
そういい残すと刃衛は夜の闇へと消えていった。
「行きましたか。………大丈夫ですか」
「あっ、……はい」
珠姫に掛けられた心の一方は既に解かれていた為に、珠姫は体の力を抜いて答える。
「ありがとうございました。おかげで助かりました」
「いえ、礼は入りませんよ。それより大丈夫ですか。首から血が出ているようですが」
「はい。かすり傷ですから」
「それは良かったです。所でお名前は。私は伊東甲子太郎と申しますが」
「はい。川添珠姫といいます。よろしくお願いします」
「いいお名前ですね。こちらからもよろしくお願いいたします」
伊東は珠姫に手を差し出し、二人は握手を交わした。
【へノ参 城下町 一日目 深夜】
【川添珠姫】
【状態】若干の疲労 首にかすり傷
【装備】木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いには乗らない
一:伊東さんと一緒に行動する
二:ここは何処でしょう
三:歴史上の人物は皆本人?
*登場時期は少なくとも部員全員が入部して以降
【伊東甲子太郎】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いを止める
一:珠姫さんを守る
二:同士を集めこの殺し合いを止める手段を思案する
三:目の前で行われる一方的な殺戮を出来る限り阻止する。
*死後からの参戦です。殺された際の傷などは完治しています。
*人別帳をまだ見ていません
【とノ参 城下町 一日目 深夜】
【鵜堂刃衛】
【状態】健康
【装備】打ち刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この殺し合いを楽しむ
一:もう少しマシな刀を見つける。
二:伊東甲子太郎に再び会えば絶対に殺す。
*登場時期は未定です。
*人別帳をまだ見ていません
投下完了です。
間違えて上げてしまい申し訳ありません。
どちらも投下乙!
剛次強いなやっぱ。
純粋に腕も強いし、何より斬岩剣の使い勝手がいい。
それとタマちゃん助かってよかった。
後、気になったんだけど、
面識があるかないかは微妙だけど、
刃衛は伊東さんのこと知ってそうだと思ったんだけど。
一応元新撰組だし。
後、予約残り
◆F0cKheEiqE>辻月丹、椿(桑畑)三十郎
◆L0v/w0wWP.>芹沢鴨
刃衛は元新撰組粛清されかけてすぐに維新志士側になったので新撰組在隊期間は
短く伊東との面識は無いと思う。
それに伊東は戦闘での実績がほとんど無いので刃衛の目に留まるとは考えにくく特別な反応は
しないと思う
111 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 13:43:29 ID:OZc3n5Vz
タマちゃんは普段から敬語使うような娘じゃなかったと思う
そういうのは東の口調だな
>>111 自分も実はすこし変だと思った。
タマちゃん意外とぶっきらぼうなしゃべり方するしね。
芹沢鴨投下します
ここは島の南端、辺りに人家はおろか人影無く、ただ整然と並ぶ
千本松原の間を簫簫と吹き抜ける風と寄せては返す波の音を除いては
静寂が闇を支配―
「そぅしぃ〜〜ぃ、ひとぉたびさりてぇえ〜〜ぇえ、まぁたあ〜〜〜ああ〜あ、かぇぃらぁずぅ〜♪」
―していたのは、先ほどまでの話。調子外れの詩吟を詠じ、肩をいからせ浜をのし歩くする巨大な影。
彼の詠じている詩句を読んだとされる、唐土は古の刺客・荊軻もかくありしかと言わんばかりの
傍若無人(実際に周囲に人っ子一人いないのだが)ぶりを示す、大兵肥満の男が一人。
彼こそが、京の都にその名を轟かせる、新撰組筆頭局長にして、神道無念流の達人。
自ら「尽忠報国の士」を豪語する男の名は芹沢鴨と言った。
その魁偉な容貌もさることながら、他の参加者と明らかに異なる様相を呈する点がひとつ―
「ぶべぇええいっぐしゅっ!!!ひゅぁああ…いでででで…。うぅぅ…こりゃあ応えるぜぇ。
易水の風もここまで冷たくはなかったろうがなぁ。」
くしゃみとそれに伴う激しい頭痛に苛まれる男は、背負った行李と
腰から下げた褌を除いて身に一糸も纏っていなかった。
□
「ひゅぅぅぅぶるぶる…、おかしいなぁ。昨日は確かに角屋で飲んだ後、また屯所で飲んだだろ…んでその後…
あぁっ、畜生思い出せねぇ!お梅…他の連中もどこいっちまったんだぁ?」
自分がここに来るまでの間の事を思い出すが、昨日は酷く酔っていたらしくさっぱり覚えていない。
いつものとおり、愛用の鉄扇で頭を掻こうとして――それが手元に存在しないことに気がついた。
夢かとも思ったが、この二日酔いによって齎される頭痛と寒さは明らかに本物だし、白州での一連の
出来事もはっきりと意識の中に残っている。長州の連中にでもさらわれた?いや、そんな事をする余裕が
あるなら、酔いつぶれた自分を始末すれば済む事。首を吹き飛ばされた小僧といい…。
「あの親父、御前試合とか言ってやがったな…。」
白州でのあの身分の高そうな侍は確かにそういった。最後の一人まで残れば望むものを与えるとも。
「なるほど、ここにいる連中を、全員始末して戻るというの悪くねぇ…悪くはねぇ、が…
あの上からの物言いは気にくわねぇなぁ。」
とにかく、この芹沢という男は上から押さえつけられるのが大嫌いな奔放な男であった。
これが良くも悪くもこの男の持ち味となっているのだが、それゆえに問題を引き起こすことも多々ある。
この事と出身閥と思想の違いもあってか、同じ新撰組の局長・近藤勇率いる武州派は明らかに
芹沢を危険視するようになっていたのだが、彼は意に介さない。いろいろと考えを巡らせている内に、
松の並木が消え、急に視界がひらけた。
「あっちに見えるのは…天守かぁ?…って、いでででで。くそぅ、どうしようもねえなこりゃ。」
体が冷えているという事と、昨日の酒のせいか、目が覚めてから鴨はずっと頭部に響く鈍痛に苛まれている。
だがこういう時どうすればいいか、彼は経験則から心得ていた。
「へへっ、こういう時は迎え酒に限るぜぇ〜。体も温まるしな。」
だが、鴨の思惑は外れる。行李の中に入っていた口に入りそうなものは水と餅、僅かばかりの茶葉のみであった。
「けぇっ!しけていやがるというか、気が利かねぇというか…人を無理矢理呼び出したんだぁ。酒ぐらい用意するのがなぁ―!」
行李に向かって悪態をつく。と、ここでようやく、行李の中の得物、地図、人別帖が目に入る。
「あぁ〜、そういやもう死合っちまってる連中がいるかもしれんな。今、襲われたら流石の俺でもアブねぇや。」
と、用意された太刀を手にとって―――はて、この柄、鞘、鍔、下げ緒…どこかで見たことがあるような。
鞘から刀身を抜いて、月明かりにおもむろに照らすと。
「ぶっw」
突然、鴨は吹き出した。
「くっ…はっはっはっ…わあはっはっはっはっ!何かと思えばこれは…ひひ…近藤君の虎徹もどきじゃないかぁ。」
腹が捩れそうになるのを堪えながら、鞘に戻したそれは、同志・近藤勇が上洛に際し、
特別にしつらえたという虎徹の銘を持つ刀剣。
何度となく他の隊士に自慢して見せていたが、子飼いの副長・新見錦がいうには
どう見ても真っ赤な贋物という事だった。
まぁ、それを馬鹿正直に信じているのが、百姓あがりの可愛いところ、といったところか
ただ、贋物というわりには、この虎徹は近藤の実力とも相まって、よく斬れた。得物にするには不足はない。
「まぁ、これで、いつどこのどいつが挑んできても心配はあるまい。すまんが、しばらく拝借させてもらうよ、近藤君!
地図と人別帖は……今はあまり、字は見たくねぇなぁ。酒でも煽りながらゆっくり読むか。」
太刀以外のものを行李に仕込んだ芹沢が目指すのは北。
天守があるという事はおそらく城下、どこかしらに酒はあるはずだ。
まずは、これに限る。頭が痛くては、勝てる試合も勝てないからな。後の事はまた考えよう。
「ああ、あと、着るものもなんとか…うぇ…ふぃっ…ぶぅぃぃっくしゅぅ!!!ずずー…見つけねぇとな。
俺の採寸に合うのがあるかなぁ?」
とりあえず目の前にぼんやりと見える街道を道なりに行くか。左手に持った虎徹で肩を叩きながら、鴨は行く。
「えっぐしゅっ!あ〜いでででで…。ふふ、連中、これだけの思いさせてるんだぁ。
上等のモン用意してねぇと、承知しねぇぞぉ!グアハハハハハハハハハッ!」
【とノ肆/街道/一日目/深夜】
【芹沢鴨】
【状態】:頭痛。寒い。褌一丁。一人で上機嫌。道なりに城下に向かう。
【装備】:近藤の贋虎徹
【所持品】:支給品一式
【思考】
基本:まず酒と服、他の事はあとで考える。
一:試合に乗ってもいいが、主催者は気に食わない。
二:目ぼしい得物が手に入った後、虎徹は近藤に返す
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※地図と人別帖は確認していません。
>>111-112 確かにモノローグとか結構ぶっきらぼうだった
目上への話し方とごっちゃになってたから今から修正部分を投下します。
「ここ……何処?」
川添珠姫は古い造りの町並みの中を歩いていた。
京都によくありそうな、古風な建物ばかりの町だ。
「……一体どうしてこんなところに……」
珠姫は状況を正確に把握出来ずに居た。
いきなりわけのわからない場所に連れられ、いきなり目の前で一人の男子が首を爆弾で吹き飛ばされ、いきなり殺し合えだ。
状況の把握など出来ない方が普通なのである。
しかしそれ以外にも珠姫の頭を悩ます事があった。
それがこの人別帳だ。
「先生や先輩方はいないみたいだけど………宮本武蔵とか柳生十兵衛って……他にもいろんな侍の名前ばかりだし……どうして?」
珠姫は困惑していた。
自分がタイムスリップしただけとも考えたが、明らかに別の時代を生きた人の名前も多数見受けられる。
それに自分に与えられた食料はパンやおにぎりだった。この時代に白米の重要性やパンが存在していなかった事実を
考えると、自分の知る過去とも異なる事は間違い無かった。
それ故に理解出来ない。
「私はどうしたら……」
近くの大きな石に座り、途方に暮れていたときだ。
一人の男の声が珠姫の耳に届いた。
「見ぃつけた。ずいぶん小さい女だが……試し切りにはちょうどいいか」
「あなた………誰ですか。」
珠姫は慌てて立ち上がり、支給された木刀を中段に構える。
だが男は不敵な表情を崩さずに返す。
「うふふ、鵜堂刃衛だよ。別にお前は名乗らなくて構わんよ。どうせすぐに死ぬのだからな。うふふふふ」
「いいえ。名乗ります。川添珠姫です。あなた……殺し合いに参加するんですか」
「当たり前だろ。せっかくの楽しい殺し合いだ。だが残念ながらこの刀は俺の得物じゃないのでね。腕慣らしをさせてもらう」
「ぐっ」
刃衛が一歩近づくと、珠姫は不意に後ずさる。
(凄いプレッシャー。だけど……落ち着かなくちゃ。こんな所では死ねない)
珠姫は相手の刀の切っ先を見ながらひたすら平常心を取り戻すように努める。
普段の防具と竹刀ではなく、相手が持つ刀は真剣。自分は防具をつけずに制服姿。
一撃でも入れば致命傷。一本取られたらそれが意味する事は死。
珠姫は流れ出る汗をぬぐいもせずにただ刃衛の切っ先を見つめていた。
珠姫と刃衛の戦いは決着を正念場を迎えようとしていた。
(この平突きを避ければ胴を決めて私の勝ち!)
珠姫は必死になって突きをかわしきる。
そしてそのままカウンターの要領で胴の構えを取った。
しかし、
「うふふっ、はあぁっ!」
刃衛はそのまま珠姫の首筋に狙い平突きから派生する横薙ぎを繰り出す。
(なっ、っ!)
珠姫は横っ飛びで横薙ぎをギリギリでかわす。しかし首の皮を僅かに掠り小さな赤い線を作る。
「うっ、くっ」
「ちぃ!やはり刀の間合いが違うと上手くいかないな」
刃衛は刀の腹を撫でながらぽつりと呟く。
珠姫は一度首を撫でると三度、刃衛に向き合う。
「ほう、まだやる気か」
「当たり前です。絶対に……負けないっ!」
(どうしよう。この人……強い)
珠姫は虚勢を張りながらも、目の前の男と自分の実力差は肌で感じ取れた。
先ほどの二度の立会いはどちらも相手が自身の刀の間合いを見誤っていたから助かったが、普通なら既に二度死んでいた。
それを考えると、既に勝機など絶望の闇に隠れてしまっていた。
「うん、その気概いいねえ。だが、もう終わりだよ」
「何を言っ!?」
珠姫は刃衛の言葉に言い返そうとするが途中で言葉が止まる。
身体が急に動かなくなっていたのだ。
「心の一方を掛けた。これで思う存分斬らせてもらうよ。うふふふふ」
刃衛は不敵な笑みを浮かべながら珠姫へと近づいていく。
しかし珠姫は身体が動かない。
「なっ、何をっ!?」
「ほう、泣かないか。俺が切った維新志士の腑抜けどもは泣いて命乞いをしていたのだが………思った以上に気が強い」
「当たり前です!私は……負けません!!」
珠姫は必死で身体を動かす。必死で気迫を見せ、木刀の切っ先を僅かに震わせる。
「うふふ。面白いが……死んでもらうよ」
「うっ」
刃衛は容赦なく刀を振り上げる。
後は死を待つのみ。
そのタイミング。
修正部分投下しました。
刃衛や伊東との会話部分は作中で珠ちゃんが先生や先輩には丁寧口調で話す事があったので
あえて直さないでおきました。
◆L0v/w0wWP.氏、 ◆/JvwgnbCcs氏ともに乙。
だめだ・・・芹沢鴨、どうにも三谷脚本の新撰組のイメージが強くて
ギャップで笑ってしまうwwwww
昔読んだ手塚治虫の新撰組の漫画だとこんな感じだったけど。
(あの漫画、沖田が美形じゃなかったり、今思うと結構新鮮な漫画だった)
おお、ちょっと見ない間にずいぶん投下されてる。
皆様乙です。
今のところ予約は
◆F0cKheEiqE>辻月丹、椿(桑畑)三十郎で最後かな
ちょっと質問だけど、創作の
徳川吉宗ってどの作品からの出展?
ドラマや漫画やアニメで題材になってるのがあるからどれか分からないのだが
>>122 三谷脚本みたいなストイックなのもいいが、乱暴ものだがお茶目なところもあるって感じで
良くも悪くも子供がそのまま大きくなったような人なんだよな。史書から見え隠れする芹沢は
手塚先生のは芹沢が極悪人で土方が冷酷非情だった気がw
test
辻月丹、椿(桑畑)三十郎、投下します
辻月丹はヘンな剣客である。
どうでもいいが、辻は「都司」と書くのが本来は正しいらしい。
元の名前は兵内で、無外、一法居士とも言った。
大抵、史実で剣豪として著名な人々の活動時期をまとめてみると、
戦国後期から江戸初期、あるいは幕末の二つの時期に固まっている。
しかし、月丹が活躍した時期は元禄期と、元和偃武どころか、
戦国の遺風を残していた寛永の時代からも遥かに遠い。
江戸中期は剣術の衰退期と呼ばれている時期で、
こんな時代に剣を糞真面目に志したという時点で色々変わった男だ。
変わっていると言えば、この男は剣禅一如を糞真面目に
追求したという点でも変わっている。
剣禅一如を最初に唱えたのは、柳生宗矩と沢庵和尚の二人であるが、
これは将軍家剣術指南役としての体面上の問題を解決するための
方便という側面が強い。
他の流派でも、江戸中期になってからやたら高尚な思想と剣術の融合を
謳う傾向が強まるが、これも実戦から離れた剣術が、徐々にその性質を
武士の精神修養の一方法としての物へと変化させ、そのために後付けで上辺だけ
の道徳論や空理空論を継ぎ足した物に過ぎない。
思索的な傾向の強い幕末の剣客達を除けば、剣と禅に本気で向き合った剣客など、
それこそ宮本武蔵とこの辻月丹ぐらいのものではないだろうか。
月丹の禅の修行は本格的な物であり、
江戸麻布吸江寺に参禅すること19年というから半端がない。
月丹45歳の時についに悟りを開き、その際、禅の師匠の神州禅師に、
一法実無外 乾坤得一貞 吸毛方納密 動著則光清
の一喝をもらって「無外流」を興したのだという。
この時、月丹の剣の方の師匠であり、京都を中心に
上方で著名であった山口流流祖、山口卜真斎がたまたま江戸に
出てきていたので勝負したところ、
三度戦って三度とも勝ったという。
また生来無欲な人だったらしく、
弟子から金や物をほとんど受け取らなかったので
困窮し、その容姿はひどいものであったという。
具体的に言うと・・・・
◆
「いノ捌」地区に存在する伊庭寺の本堂の縁側に、
一人の男が腰かけている。
一言で言ってしまうと実に身なり汚い男だ。
髪の毛は伸ばし放題のボサボサで、まるでヨモギだ。
申し訳程度に、“こより”で無理やりまとめてはあるが、
正直言って不格好なことこの上ない。
顔は垢と埃とだらしなく伸びた髭で覆われている。
服装は浪人風の粗末な物で、色ははげ落ち、綿がこぼれ、
裾は擦り切れている。
膝の上に置いた打刀も、身なりと同じように鞘の朱も色が褪せ、
所々塗がはげ落ちている。
乞食、貧乏浪人、侍くずれ、といった風に評するほかない
しかし、ヨモギみたいな髪と、鬚の間に光る二つの瞳は、
非常に澄み切っており、ただ者ならぬ雰囲気を醸し出していた。
男は、ただただ境内に生えた椿の木をぼーっと見つめていると、
何を思ったか突然本堂の縁側から飛び降り、
刀を腰帯に差すと、ふらふらと椿の木に近づいた。
赤く美しい、見事な椿の木である。
そのすぐ傍を、一本の細い人工の川が流れている。
椿の花は散るのではなく、萼(ガク)ごとボトリと落ちる。
落ちた花弁が、その川を流れていくようにという風流な設計である。
今、正に椿の血のように赤い花が落ちようとしていた。
その時である。
男の右手がゆらりと動いたかと思われた次の瞬間には、
その右手には抜き身の刀が握られていた。
ぼとり、と椿が川に落ちる。
果たして、その花弁は、見事に両断されていた。
二つになった椿の花が、川をゆるゆると流れて行く。
神業といっていい、神速の抜き打ちである。
「たいした腕だな」
男の背中に、野太い声がかかる。
男が振り向くと、それまで本堂の中にいたのか、障子戸が開き、
不精髭の男が顔を出していた。
これまた浪人風の男である。
総髪を後ろに“こより”で纏めているが、
油などはつけておらず、
結いそこなった髪が枝葉のように頭の左右から出ている。
服装はくすんだ色の安すそうな羽織に袴であり、
腰にはやや長めの打刀を一本下げている。
着物の内側で両手を組んで、
中身が無い袖を、ぶらぶらと風にそよがせている。
不精髭、太い眉、力のある瞳をした、
男臭い顔のしている。
けっして醜男では無く、むしろ剽悍な印象を受ける
偉丈夫だが、どことなく土臭い顔だ。
浪人男は本堂の階段を下りると、
乞食男に方へと歩いてきて隣に並んだ。
袂から太い腕が伸びてきて、顎の不精鬚を撫でる。
「あんた、名前は?」
浪人男は乞食男に眼を向けると、そうぶっきら棒に聞いた。
乞食男はしばらく黙って椿を見ていたが、
「甲賀の都司兵内・・・・・号は・・・月丹」
と、呟くように言い、浪人男の方へ初めて眼を向けた。
「お前さんは?」
「俺か?・・・・・俺は・・・・」
乞食男、辻月丹の問いに、浪人男は椿の花を眺めながらこう言った。
「・・・・椿、椿三十郎」
「もうすぐ四十郎だ」
そう言って白い歯を見せて笑った。
【いノ捌/ 伊庭寺境内/一日目/深夜】
【辻月丹】
【状態】:健康
【装備】:ややぼろい打刀
【所持品】:支給品一式
【思考】
1:?
【備考】
※行動方針は次の書き手に任せます。
【椿三十郎】
【状態】:健康
【装備】:やや長めの打刀
【所持品】:不明
【思考】
1:乗る気はねぇが、どうしたもんか・・・・
2:使い手の男(月丹)と話す
【備考】
※「椿三十郎」、「用心棒」ともに終了後からの参戦です。
133 :
ツバキ ◆F0cKheEiqE :2008/12/26(金) 21:07:01 ID:WDqDM+DV
投下終了。
取り敢えずこれで今まであった予約の分は終了かな?
取り敢えず今まで参戦した剣客
・柳生十兵衛
・塚原卜伝
・宮本武蔵
・伊東甲子太郎
・芹沢鴨
・辻月丹
・坂田銀時
・志村新八
・久慈慎之介
・トウカ
・オボロ
・犬坂毛野
・犬塚信乃
・赤石剛次
・川添珠姫
・鵜堂刃衛
・椿三十郎
ついでに、
伊藤一刀斎、東郷重位 予約
136 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 00:16:30 ID:tmxOHv2c
お前これ良スレすぎるだろwwww
個人的には史実側の作品最高すぎる
個人的に気にいらない部分があったので、
「ツバキ>辻月丹、椿三十郎」を修正して、
伊藤一刀斎、東郷重位を投下するとき再度投下します
皆様、投下乙です。
質問なんだが、こういう形式の登場話って一話死亡ってやっちゃいけないよな?
>>138 それはちょっと分からない。
まあ出来ればキャラで揃ってから「死合開始」の方が剣客らしいが、基本は自由でいいと思う
あと
新見錦、桂言葉で予約します
>>138 描写やストリーの流れに納得がいく物なら別に構わないとは思う。
ただ殺したいがために殺すみたいなのは遠慮したいけど
ことのは様が剣客ならもう刃物使って戦うならなんでもいいのかw
確かに言葉だけなんか違う気がするな……
というか誠ナシじゃ本領発揮できんしなぁ
自分も言葉はアウトだと思う
言葉は、
・落ちる雫を斬れる居合の腕前
・撃墜スコア1
・女キャラが少ない
って理由でOKになったんじゃなかっけ?
一番問題なのは、かなり荒れやすいキャラだと言う事なんだよね
他のロワで荒らすような人が来るような場所とは思えないし、
別にかまわないと思うけど。
知らんから検索したが、剣…客?>言葉
住人が納得するなら別にいいけど
どんなキャラか、wiki読んでもよう分からんし
>>144 >・落ちる雫を斬れる居合の腕前
剣と無縁ってわけじゃないんだ
バンブーよりは「剣客」に近いのかな?
バンブーのタマちゃん、
スクイズの言葉は貴重な「一般人」枠だし、
正直グレーゾーンだと思うけど個人的にはあり。
あと、貴重な女性キャラだしね
剣客かアレ?
原作にチャンバラ要素皆無だろ
荒れやすい点も考慮して俺としては反対
バンブレの珠姫は剣客ではなく剣士。
剣が人生の大部分を占めてる。
一方の言葉の居合いは習い事レベルで対人用に習得したものではないし、
剣の道に生きてきたわけでもない。
どう考えても場違いな気がするが。
一応自分の意見としては言葉を出すのは反対。
すでに火種になりつつあるし。
女性キャラなら他にふさわしいのがまだ居ると思うが。
創作女性キャラを名簿から抜き出してみた
高嶺響
川添珠姫:登場済み
柳生九兵衛
犬塚信乃(里見☆八犬伝):登場済み
乙橘槇絵
神谷薫
イグニス
香坂しぐれ
梅喧
魂魄妖夢
トウカ:登場済み
桂言葉
アスカ
確かに浮いてるかも
確かに違和感が。
たとえるなら勝海舟の代わりに勝子吉が出てくるような。
剣客としてなら海舟が小吉より格上って感じはしないけど。
OK
変に荒れるのは本意じゃないので桂言葉の予約を破棄します。
そして改めて新見錦を単独で予約します
すばやい対応乙です。
まあ、言葉はテスト板の時も
「違くね」って言われてたししょうがないか
あらら、残念
史実側のキャラって性格とかはそれっぽければおkなんだっけ?
なんか時代小説とか参考にしたほうがいい?
それでいいと思うけど、
どの時代小説を参考にするかは、書く前にちゃんと考えた方がいいと思う。
宮本武蔵とか人によって、例えば吉川英治と直木三十五じゃ書かれ方が180度違うし
るろうに剣心の方の斎藤一ってアリ?
史実の新撰組勢との絡みが面白そう
>>161 >>31、
>>32 の名簿から出すって一応決まってる。
ので斎藤はだめかな。
言葉が抜けたから代わりに入れるって手もあるけど、
皆はどう思う?
個人的に斎藤は好きだから出たら嬉しいけど、
例外なし!ってことで切ったキャラがいるし、なしのがいいんじゃないかな?
斉藤一は面白いけど、それなら蒼紫もキャラが美味しいとかなってくるし……難しいな。
それと史実に坂本龍馬居ないのな。
北辰一刀流免許皆伝(薙刀の説有り)だから実力的には申し分ない気がするのだが
あと作品内での名簿表記ってどうなってる?
>>31-32の全員を記してはいるが、実際には不参加の人も居るって感じ?
それともまだ今後書かれる作品で流動するから、名簿関連の話は控える方が良い?
名簿は時間経過で浮かび上がるってのは?
忍が使ってた特殊な墨って事で
>>165 既存の話で名簿を見て普通に仲間探しをしている物がいくつかあるので、名簿に細工は出来ないと思う
一つ提案なんだけど、
名簿から桂言葉が抜けたわけだし、
安価で五人だけキャラ追加とって後は文句なし、ってのはどう?
徳川吉宗、秋山小兵衛で予約します。
>>167 別にキャラ自体に問題が無いようなら書き手が言葉抜けた分の剣客追加して書いても大丈夫な気がするが
安価だと書き手の意思が尊重されないこともあるしな
>>169 つまり、「後一人だけ早い者勝ち」ってこと?
個人的にはそれでもいいけど、皆さんはどう?
へ〜吉宗も剣やってるのか
>>171 暴れん坊将軍の吉宗だぞ、一応言っておくけど。
あと、史実方はどうかわからん。
紀州家の生まれとはいえ、四男、しかも妾の子だから
果たして他の殿様みたいに武芸を修める余裕があったかどうか
鷹狩りは好きだったらしいけど。
あとどうでもいいがブス専という噂がある。
>四男、しかも妾の子
そこから天下の八代将軍まで出世したんだから豪運だよなあ。
……まさか鼻と顎が尖っデーンデーンデーン
上の兄貴3人が相次いで、他にも将軍になるのに障害になりそうな人物が悉く
病死したからな。
>そこから天下の八代将軍まで出世したんだから豪運だよなあ。
暗殺したんじゃないかって結構後ろ暗い噂もある。
無論単なる偶然だけど。
しかしそう思うと天に愛されてるとしか思えないよな確かに。
やっぱり晩年は吸血麻雀とかし・・・うっ、貴様何奴、ぐぇっ!・・・
突然ながら、投下させていただきます。
月明かりに照らされて、僅かに汗ばんだ肌が闇の中で動く。
虫の音のみが響く、山深いお堂の中。
辺りは鬱蒼として、木々の隙間から幽かな光が漏れるのみだ。
水に湿らせた手ぬぐいが、ひやりとした感触で肌を撫でる。
浅黒く日に焼けた肌は、鍛えられたしなやかさを持っている。
傷が多い。かといってごつごつとした無骨さはない。
首筋、肩口、両椀を拭い、それから二つの乳房を丁寧に清める。
女である。
肥前佐賀鍋島藩の志士、奥村五百子。
幕末期に、男装し尊皇攘夷運動に奔走した。
女だてらに、と揶揄する者もかつては居たが、今は居ない。
口先だけでモノを言う輩は、剣で黙らせたからだ。
その五百子の唇が、幽かに震えた。
臆しているのか…?
五百子は自問する。
初めは見よう見まね。それから近在の老人から居合いと、古流剣術であるタイ捨流の手ほどきを受けた。
以来、毎朝海岸にて三尺の長刀を使い、千本稽古を続けている。
三尺の刀は練習用だ。普段は二尺三寸の普通の長さを指している。
これは、「葉隠」にある逸話からとった鍛錬法だ。
長刀に慣れれば、定寸の刀の扱いは容易になる。
葉隠。後の世では武士の生き様の代表のように語られるが、徳川幕藩下において武家の学問と言えば朱子学である。
佐賀鍋島藩に伝わるこの独特の人生訓は、明治期に至るまでは決して一般的ではなかった。
葉隠を世に広く知らしめたのは、大日本帝国李軍なのだ。
武士道といふ事は死ぬことと見つけたり。
これが、戦国動乱も過ぎ、戦も合戦も過去の話となった太平の時代に、佐賀鍋島で開花した思想だ。
毎朝に?怠無く死す。
朝起きたときにまず死を覚悟する。
それから一日を終え、眠りにつき、翌朝又死を迎える。
それが、鍋島武士の生き方であり、五百子も又その様に生きていた。
その五百子の心の芯に、僅かな震えの余韻がある。
あのとき、あの場、あの場面で。
五百子は確かに震えた。
人を斬ることも、己が斬ることも覚悟はしていた。
常に、そのつもりで剣を携えていた。
そのはずである。
だから、あの震えは別のものだ。
五百子はそう思う。
死ではない。斬り合いにでも無い。
たとえようもない異質さの片鱗。その欠片。未知ではない。知らぬのではなく、考えようもない異質さそのものの息吹に、五百子は震えたのだ。
そう思う。
その、ぬめった震えを洗い清めるかのように、五百子は肌を手ぬぐいで清めた。
黒い袷に灰色袴の装束は闇に溶け、前をはだけた裸身だけが薄暗いお堂の中でゆっくりと動いていた。
>>177 訂正
葉隠を世に広く知らしめたのは、大日本帝国陸軍なのだ。
武士道といふ事は死ぬことと見つけたり。
これが、戦国動乱も過ぎ、戦も合戦も過去の話となった太平の時代に、佐賀鍋島で開花した思想だ。
毎朝に?怠無く死す。
朝起きたときにまず死を覚悟する。
それから一日を終え、眠りにつき、翌朝又死を迎える。
それが、鍋島武士の生き方であり、五百子も又その様に生きていた。
その五百子の心の芯に、僅かな震えの余韻がある。
あのとき、あの場、あの場面で。
五百子は確かに震えた。
人を斬ることも、己が斬ることも覚悟はしていた。
常に、そのつもりで剣を携えていた。
そのはずである。
だから、あの震えは別のものだ。
五百子はそう思う。
死ではない。斬り合いにでも無い。
たとえようもない異質さの片鱗。その欠片。未知ではない。知らぬのではなく、考えようもない異質さそのものの息吹に、五百子は震えたのだ。
そう思う。
その、ぬめった震えを洗い清めるかのように、五百子は肌を手ぬぐいで清めた。
黒い袷に灰色袴の装束は闇に溶け、前をはだけた裸身だけが薄暗いお堂の中でゆっくりと動いていた。
しえん
三度失礼、
>>177訂正。
葉隠を世に広く知らしめたのは、大日本帝国陸軍なのだ。
武士道といふ事は死ぬことと見つけたり。
これが、戦国動乱も過ぎ、戦も合戦も過去の話となった太平の時代に、佐賀鍋島で開花した思想だ。
毎朝起きたときに、まず死を覚悟する。
それから一日を終え、眠りにつき、翌朝又死を迎える。
それが、鍋島武士の生き方であり、五百子も又その様に生きていた。
その五百子の心の芯に、僅かな震えの余韻がある。
あのとき、あの場、あの場面で。
五百子は確かに震えた。
人を斬ることも、己が斬ることも覚悟はしていた。
常に、そのつもりで剣を携えていた。
そのはずである。
だから、あの震えは別のものだ。
五百子はそう思う。
死ではない。斬り合いにでも無い。
たとえようもない異質さの片鱗。その欠片。未知ではない。知らぬのではなく、考えようもない異質さそのものの息吹に、五百子は震えたのだ。
そう思う。
その、ぬめった震えを洗い清めるかのように、五百子は肌を手ぬぐいで清めた。
黒い袷に灰色袴の装束は闇に溶け、前をはだけた裸身だけが薄暗いお堂の中でゆっくりと動いていた。
「入られても構いませんよ」
不意に、手を止めた五百子がそう声を発する。
視線は前方、お堂の入り口へと据えられ、両手は正座した膝の上へと置かれる。
す、と、戸が開くと、初老の男性がひょいと半身を覗かせた。
「すまんな。声のかけどきを掴みかねていた」
軽く頭を垂れるが、さほど悪びれた風もなくそのまま五百子の前にあぐらをかく。
その所作はゆっくりだが隙はなく、また不作法と言うほどでも無い。
ごく自然に、相手の警戒心を解いてしまう。そんな仕草であった。
「失礼して」
五百子はそう言うと、はだけていた袷を戻し、手ぬぐいをたたんで懐へ戻す。
「なに、いいものを見せて貰った」
「お戯れを」
目を細めてそう言うその男に、五百子はやや冷ややかに返す。
「戯れではないよ。かなり鍛えられている、良い体だ。何流をお使いになる?」
僅かに目を見返して、一呼吸の後に返す。
「タイ捨流を少々」
「成る程、身を捨てておられるか」
「体のみならず、全てを」
「捨てられたかな?」
「まだ未熟にて」
「ふむ」
しばしの問答に、男は目を細める。
「こちらの名乗りがまだだったな。
私は神道無念流、斎藤弥九郎と申す」
その名に、五百子は目を見開いた。
「奥村五百子と申します。失礼ながら、練兵館の斎藤先生にあらせられますか」
「如何にも」
幕末期に剣を持ち、その名を知らぬ者は居ない天下無双、斎藤弥九郎その人である。
同時に、水戸斉昭や藤田東湖等と親交を持ち、桂小五郎、高杉晋作、井上聞多等、多くの尊皇攘夷志士らを門下生とし、彼らへの強い影響を持った人物でもある。
剣の上でも、思想の上でも、五百子にとって重要な人物であると言えた。
「先生のご尊名は存じております」
軽く礼をする五百子に、右手を挙げて応じようとしたとき、一閃。
「二度、御免!」
胴凪の剣先が危うく斎藤の肌をかすめる。
殺気の無さが、流石の斎藤の反応を僅かに遅らせた。
それでも、既に半身に構え木刀を構える斎藤弥九郎。
常人であれば絶命していたやも知れぬ居合いの太刀筋を、すんでにかわしている。
「如何なお積もりか?」
狭いお堂の中で、女剣士と天下無双が向き合う。
「それはこちらの科白。かような腕前を持ちながら、何故斎藤先生の名を騙る?」
五百子の目には迷いはなく、鋭く強く見据えている。
「騙り、とな?」
「左様。斎藤先生とはお会いしたことはないが、御年70を越えていると聞き及ぶ。あなた様はどう見てもそこまで老齢ではなか」
端的に述べる五百子の言に、初めて斎藤が悩ましげな表情を見せる。
「成る程、言い分は分かった。しかし、嘘偽り無く本人であると言っても、信じてはくれんのだな?」
支援
「戯れ言をッ!」
再びの胴凪を、斎藤は最小の動きでかわしてのける。
狭く、天井も低いお堂の中では、小手先技をよしとしない剛の剣、神道無念流は勝手が悪い。
さらには、居合いに似た五百子の剣先は、執拗にに斎藤の胴を狙っている。
胴狙いは、神道無念流の弱点と知られる。
それを知ってか知らずか、五百子の剣はこの場このときにおいては分があった。
ここで、斎藤の判断は速い。
剣の戻り際にだんと体ごと戸にぶち当たり、そのまま屋外に出て走り出す。
「五百子殿! おぬしとやり合う気も無いが、誤解を解く術も今はなかろう。縁あらば又遇おう」
叫ぶと、そのまま林の中へと走り去った。
後の桂小五郎も頭を垂れる程の、天下無双にあるまじき逃走である。
五百子は開け放たれたお堂の中から、険しい目つきで闇の奥を見やる。
夜目は利く方だが、こうまで逃げに徹してしまわれては追いつける算段は無い。
仕方なく、五百子はまずはと、打ち破られた戸を拾い、入り口を直すことにした。
二度、御免。
武士とは。武士道とは、毎朝一度死すことである。
二度、とは、既に死している武士に再び死して貰うが故のことである。
五百子の芯は今、静謐であった。
震えは既に消えていた。
程なくして、斎藤は走るのをやめて、一息つく。
追っては来ない。
月を見上げて、「昔を思い出すわ」と、独りごちる。
心に浮かぶのは、朋輩にして同門、伊豆韮山代官の江川太郎左右衛英龍ととの旅。
かつて斎藤は、江川と共に彼の代官地の領内を隠密に歩き回ったりしていた。
言うなれば、お忍び視察のようなもので、勿論重要なのは寮内の視察と治安維持なのだが、それはそれで斎藤にとっては楽しくもある思い出であった。
その江川が、今年死んだ。
お台場の設立に、反射炉の建設。ペリー来航以降の江戸湾防衛の全てをその責務とし、多忙に次ぐ多忙で病に伏せ、そのまま帰らぬ人となった。
病で死ぬ。
剣術修行以来の朋輩のその死は、斎藤にとっては悲痛な悲しみでもあったが、とはいえ当たり前のことである。
不穏な時代とはいえ、未だ江戸は太平の世である。
果たし合いや戦で剣に果てるという事はまずあり得ないと言っても良い。
歩きつ、腰にした木刀に目をやる。
真剣ではないが、斎藤の剛の剣を持ってすれば、骨を砕き臓腑を破り、人を絶命至らしめるは可能であろう。
だが、斎藤はそれをよしとしない。
「これを用うるは止むことを得ざる時なり」
練兵館に掲げる、神道無念流の教えである。
剣を振るうのは、私怨私憤意趣遺恨に寄らず、どうしてもやむないときのみである。
でなくば、それは剣術ではなくただの暴である、と。
先ほどの五百子とのそれは、斎藤にとって決して 「止むことを得ざる時」 とは言えなかった。
五百子に殺される気はないが、五百子を殺す気にもなれない。いや、殺すべきではない。
五百子との間に、齟齬がある。
その正体を考える。
二階笠の家紋。そして、十兵衛。
その二つから連想されるは、柳生家である。
あの場で口上を述べた男を 「親父殿」 と呼んだ若者が、疾うの昔に死んだはずの剣豪、柳生十兵衛三厳を名乗るのだとしたら、それはとんだ騙りである。
そして先ほど、自分自身も又騙りであると、そう言われたのだ。
御年70を超える、と言った。
見た目は壮健だが、斎藤弥九郎は今年で57になる。確かに身体的には最盛期を過ぎたし、そろそろ二代目を長男あたりに継がせても良いかとも思っているが、流石にそんなに生きた記憶はない。
ただの思い違いか何かか。そうも考える。
しかし、どうにも気になるのだ。
改めて、斎藤は人別帖を読む。
見知った名もあるし、かつて生きていた剣豪剣客の名もある。
それら全てが酔狂な騙りと言えるかどうか、今の斎藤には分からない。
分からぬならば ―――。
分かるようにするまでだ。
再び人別帳をしまい込むと、斎藤は顔を上げて再び歩き出す。
鍛え抜かれた健脚は老齢に近いとはいえ衰えを見せず、道無き山野を迷うことなく突き進む。
まずは、あの若者に会ってみるのも良いだろう。
心なしか、斎藤の眼にはかつての輝きが宿っているようにも見えた。
幕末の動乱期を、天下無双と呼ばれながらも、後進を育成する道場主として、或いは為政者としての立場で過ごした斎藤は、ただ一人何も負わぬ剣客として、剣に死する己を夢想する。
その夢想に、斎藤の心の芯は微かに震えていた。
しえん
猿さんかな、支援
支援
【ろノ肆/呂氏神社お堂内/一日目/深夜】
【奥村五百子】
【状態】:健康
【装備】:無銘の刀
【所持品】:支給品一式
【思考】 ひとまず殺し合いに乗る気はない。
1: 斎藤弥九郎を名乗る人物はただの騙りであったのか?
【備考】
※1865年、20歳の頃より参戦。その時期、厳密には斎藤は70を越えていないので、五百子の勘違いと思われる。
【ろノ参/山中/一日目/深夜】
【斎藤弥九郎】
【状態】:健康
【装備】:木刀
【所持品】:支給品一式
【思考】 ひとまず殺し合いに乗る気はない。
1:知っている名の者、柳生十兵衛らしい若者と会う。
【備考】
※1855年、朋輩、江川英龍死去の後より参戦。
以上、投下終了です。
途中の訂正は、いや実はjisコード文字の入力が出来ないことに今気がついたというお粗末。
で、実は奥村五百子を史実女性剣客として推薦した者なのですが、改めて調べると、剣客としてのデータがまるで出てこない。
もっぱら維新後、明治期の婦人運動家としての活動ばかりです。
どうも、僕の知っている奥村五百子の剣客としてのキャラクターは、以前読んだフィクションの中での創作部分が多かったようで。
ですので、今回のもの、もし企画にそぐわないという意見が多ければ、破棄する方向で。
投下乙!
普通に面白かったのでイイと思いますけど。
出来ればちゃんと予約をしてほしかったですね。
それと、そのフィクション(時代小説かな?)の題名などの詳細が分かるなら、
ここに書いてもらえますか。参考にしたいので
あと、最初弥九郎が乗ったのかと思ってひやっとしました。
史実の女性剣客ってびっくりするほど少ないからね
当たり前だけど
でも中に人なんていませんよはちと場違いじゃないか?
それで決定なら仕方ないが
>>194 その人は普通に名簿から消えたよ。
代わりに誰入れるかって話になってる
>>195 代わりは元々が女性少なくて選ばれてたわけだし、女性が良くないかな。
創作で女性剣士なら
外薗綸花@Gift ?ギフト?
土宮神楽@喰霊
諫山黄泉@喰霊
の三人が思い浮かぶ。
綸花は剣道道場の娘で普段から刀を持ち歩いているし、喰霊二人はアニメ版では刀で斬り合いを結んでいる。
少なくとも桂言葉よりは「刀を人生の一部」にしている感がある
剣客商売の佐々木三冬は?
徳川吉宗、秋山小兵衛を投下します。
「む……」
人別帳を読んでいた吉宗は思わず呻き声を上げた。
人別帳に「徳田新之助」の名がなく、代わりに「徳川吉宗」の名があったからだ。
つまり、この御前試合の主催者は彼を征夷大将軍徳川吉宗と知った上でこの場に連れて来たという事だ。
「尾張藩か?」
天下広しと雖も、将軍にここまで真っ向から挑んでくる相手は御三家筆頭の尾張藩しか思い付かない。
それだけで決め付ける事はできぬが、そう考えれば御前試合を宣言した男の二階笠の説明もつくのだ。
この状況で二階笠と言えば誰もが大和柳生藩を想起するであろうが、
柳生藩主柳生備前守俊方は断じてあのような非道な行いをする男ではない。
しかし、あの男と俊方、容貌に関しては瓜二つとは言わないまでも何処か似たところがあった。
後日あの場に居た剣士達を俊方に面通しさせれば似ていると証言する者も居るであろう。
おそらく、それが敵の狙いなのだ。
集められた剣士達がこの場を脱出し、柳生備前守に殺し合いを強制されたと訴えればどうなるか。
それで俊方が追い込まれて切腹でもすれば江戸柳生を憎む尾張柳生の思う壺という訳だ。
無論、尾張藩の狙いは江戸柳生だけではあるまい。
将軍家剣術指南である俊方らしき男が御前試合を開くと言えば、誰もが主催者は将軍だと考えよう。
そして、実際に吉宗を拉致して試合に参加させ、他の参加者と戦わせる。
「将軍吉宗が武芸に興ずる余り、江戸柳生を使って剣客を集め、自らそれと斬り合った」
というのが真の主催者……おそらくは尾張藩が考えた筋書きであろう。
それで吉宗が死ねばそれで良し、生き残っても非道の将軍と噂されて吉宗の権威は地に堕ちる。
なかなかに厄介な陰謀だと言えよう。
「まずはこの仁七村へ行ってみるか」
地図が正しければどうやらこの村には舟があるようだ。
それを使って集められた剣客達が逃げ、将軍に殺し合いを強要されたと言い触らすと厄介だ。
その前に舟を押さえ、逃げる者達にこの御前試合には裏がある筈だと伝えねば。
無論、黒幕が尾張藩だと云うのは推測に過ぎぬし、事実だとしても決して公には出来ぬ事だが。
「仁七村ですか。ではそれがしもご一緒してよろしいですかな」
吉宗が背後からの声に振り向くと、そこには小柄な老人が立っていた。
「貴殿は?」
「それがしは秋山小兵衛と申す者。若い頃は少々剣術を嗜んでおりましたが、老境に入ってからは剣を捨て、
悠々自適の生活をしておりました。それが急にかような所に連れて来られて殺し合えなどと言われ、
困り果てていたところでござる。どうか、貴公と同行させて頂きたい」
「わかりました。仁七村に行けば舟でここから出られるかもしれない。一緒に行きましょう」
「ありがとうございます。……ところで、ご尊名を伺ってもよろしいですかな?」
「……余は徳川吉宗」
吉宗は一瞬迷ったが、ここで身分を隠すと余計な疑いを生むと思い直し、真実を告げる。
それを聞いた小兵衛は慌てた様子で膝を付いて言う。
「はっ、これはこれは、大変なご無礼を……」
「堅苦しいことはやめてくれ。それよりも今は力を合わせてこの状況を何とかする事が肝要だ」
そう言うと、吉宗は小兵衛を立たせ、共に仁七村を目指して歩き始める。
「それにしても、何ゆえ上様がこのような所に」
「わからぬ。おそらく忍びで市中に出た折に浚われたのだと思うが、覚えておらぬのだ」
「それは災難でしたな。ところで、先程の白洲にいた男、あの二階笠の紋、もしや大和柳生藩主柳生俊則様では……」
「俊則?柳生藩主は備前守俊方の筈だが」
「おお、左様でしたか。どうも年を取ってから物忘れがひどくなりましてな。申し訳ござらぬ」
「いや。それより、あの男は備前守とは別人だ。何者かが柳生を貶めようとあのような事をしたのだろう」
「その何者かにお心当たりは?」
「……ない。とにかく、まずは脱出と外との連絡の為の舟を確保したい。黒幕の詮索はその後だ」
「わかり申した。それがしも一臂の力を貸し申そう」
こうして、吉宗と小兵衛は同志となった……少なくとも、表向きは。
(ふむ……どうやらわしの反応を不審に思ってはいないようじゃな)
前を歩く若者の背を見ながら、小兵衛は心の中で呟く。
小兵衛の「反応」とは、言うまでもなくこの若者が徳川吉宗を名乗った時にあっさり信じた事である。
徳川吉宗公と言えばもう三十年も前に死んだ筈の方であり、このような所に居る筈もない。
(もっとも、居る筈もないのはこの御仁だけではないが)
例えば、先程の白洲で言い争っていた、親子らしき二人。
二階笠の紋を付けた男を父と呼び、十兵衛と呼ばれていた隻眼の若者は人別帳にある柳生十兵衛三厳、
その十兵衛に父と呼ばれていた初老の男は柳生但馬守宗矩という事になる。
どちらも小兵衛より優に百才以上は年長の剣客であり、今も生きているなど有り得ぬ事だ。
更に、人別帳には塚原卜伝のような戦国時代の剣豪から小兵衛の師の師である辻月丹まで、
既に死んだはずの者の名が多数記されていた。
無論、死者が甦るなどという事が在る筈もなく、全てはまやかしだと考えるべきなのだろう。
白洲の親子?やこの若者は主催者の手下で過去の剣客を演じて参加者に死者が甦ったと思い込ませる。
そうする事で主催者が超常の力の持ち主だと思わせて剣客達の反抗心を削ごうとしているのだと。
しかし、小兵衛はその合理的な推測に素直に頷けない自分を感じていた。
第一に、あの親子やこの若者はそのようなつまらぬまやかしに加担する男ではないと小兵衛の勘が告げている。
第二に、この御前試合に集められた剣客にあまりに強豪が多すぎる。
小兵衛の見た所、あの白洲にいた剣客達は剣術の廃れた天明の世には天下に十人と居るまい達人ばかり。
それほどの達人を数十人集めるなど、それこそ過去の達人を甦らせでもしなければ不可能だ。
そして最後は、あの時……村山という若者が殺された時に座敷の奥から感じた気配。
人とも獣とも異質なあの気配、天魔や妖怪といった超常の存在だと言われても否定できぬ禍々しさがあった。
もしこの試合の黒幕が死者を甦らせるような超常の存在であったら、一介の剣客に過ぎぬ己に何が出来るのか。
小兵衛の眉間にはいつしか深い憂慮の皺が刻まれていた。
それぞれの推測と思惑を胸に、大男と小男は北へと向かう。
【ほノ陸 街道/一日目/深夜】
【徳川吉宗】
【状態】健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者の陰謀を暴く。
一:仁七村に行って舟を押さえる。
二:小兵衛を守る。
【備考】
※この御前試合が尾張藩と尾張柳生の陰謀だと疑っています。
【秋山小兵衛】
【状態】健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:情報を集める。
一:吉宗を観察して本物か騙りか見極める。
【備考】
※御前試合の参加者が主催者によって甦らされた死者かもしれないと思っています。
※一方で、過去の剣客を名乗る者たちが主催者の手下である可能性も考えています。
ほしゅ
投下終了です。
なお、史実では吉宗の頃には柳生家は時々型を上覧する程度で将軍に指南まではしていなかったようですが、
「暴れん坊将軍」作中では柳生備前守が吉宗に稽古をつけたり吉宗の流派が柳生新陰流と明言されたりしており、
柳生家は剣術指南役を続けている設定のようなので吉宗のモノローグではそのように表記しました。
投下乙です
吉宗の来た世界のフィクション具合が漂ってて良かったです
そして大先生もまさに原作そのもののしたたかさ、今後どうなることやらw
乙!
暴れん坊の吉宗が以外といい味出してますね。
そういや大先生は時代物じゃ珍しい無外流の剣士だったから
月丹のこと知ってるんだ。
ごめん、状態表に実在とか架空なら登場作品名も記入して欲しいんだけど?
興味あるけど詳しくないんだよ
名簿と照らし合わせるぐらいしろよ
>>207 とりあえず
>>202を修正しておきます
【ほノ陸 街道/一日目/深夜】
【徳川吉宗@暴れん坊将軍(テレビドラマ)】
【状態】健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者の陰謀を暴く。
一:仁七村に行って舟を押さえる。
二:小兵衛を守る。
【備考】
※この御前試合が尾張藩と尾張柳生の陰謀だと疑っています。
【秋山小兵衛@剣客商売(小説)】
【状態】健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:情報を集める。
一:吉宗を観察して本物か騙りか見極める。
【備考】
※御前試合の参加者が主催者によって甦らされた死者かもしれないと思っています。
※一方で、過去の剣客を名乗る者たちが主催者の手下である可能性も考えています。
ついでに上泉信綱、岡田以蔵で予約します。
「剣客というよりは剣士」なら死ぬ程思いつくんだけどなあ。個人的に出したいのもいるし…
>>210 思うんだが、剣士と剣客の違いって何だろ。
正直そこを厳密に分けるほど大きな差は無いと思うのだが
212 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/31(水) 00:15:08 ID:UEv1lblI
人殺す気があるか、ないかじゃね?
あくまでイメージだけど
剣士というと剣道、剣客というと剣術って気もするけど
>>212 人殺す気の有無だと史実の剣客でも怪しい(人斬りの経験無し)のいるし、それは無くないか
それに沖田とか天才剣士という風に書かれてるし、剣士と剣客の違いにはあまり拘らないほうがよくない?
個人的には優れた剣士に対する尊称が剣客だと思う
弱い剣士は普通にいそうだけど「弱い剣客」とか「未熟な剣客」ってのは違和感がある
剣客と言うと和風なイメージ、剣士は東西問わずなイメージかな。
まぁ、それほど違いはないと思う。
個人的イメージだと剣士は他人思い剣客は我が道を往くな感じだな
佐々木小次郎(史実)と沖田総司で予約しますね
屈木頑乃助で予約します
W信乃やろうか迷い中
佐々木小次郎と沖田総司トウカします
森の中で2人の剣士がにらみ合っていた。
どちらも容貌の整った美青年あるいは美少年で、ともに傍らに行李を置き、手には片方は打刀、もう片方は木刀を持っている。
打刀を持ったのは佐々木小次郎、木刀を持つのは沖田総司である。
にらみ合っていたのは数瞬か数刻か、小次郎がニタリと笑う。
「いいね、君。この佐々木小次郎がきれいに切り刻んであげよう」
いきなり物騒なことを言い出す小次郎に、沖田は無邪気に返す。
「へえ、あなたがあの佐々木小次郎さんですか。ここにはやっぱり宮本武蔵さんと再戦するためにいらしたんですか?」
「宮本武蔵?誰だい?それは」
「あれ?ご存じないんですか?宮本武蔵さんを」
「知らないよ。打ち倒した有象無象の名前なんていちいち覚えてられないからね」
そう言いつつ小次郎は刀を鞘から抜き放ち、鞘を投げ捨てる。
それを見た沖田は少し考えるそぶりを見せた後で呟く。
「小次郎敗れたり。」
「何!?」
「勝つ身であれば何ゆえ鞘を捨てるか。汝は鞘とともにおのれの天命をも投げ捨てたのだ」
そう言う沖田の口調は大根役者が芝居の台詞をそらんじるかのような棒読み口調であったが、それが小次郎を小馬鹿にしてる
ようにも聞こえ、小次郎を激昂させるに十分な効果を表した。
「よくも言ってくれたね。許さないよ。一瞬で殺してあげよう」
使い慣れない刀に慣れる目的も兼ねて沖田をしばらく殺さずにもてあそんでやろうかとも思っていた小次郎だったが、そんな考え
はキッパリと捨てて必殺の燕返しの構えを取る。
沖田もそれ以上は言葉を重ねようとせず、木刀を構えて突進する。
その速度はまさに超人的と言うべきものであったが、空飛ぶ燕さえ切り落とす小次郎の剣の前では無意味。小次郎は燕返しを繰
り…出せなかった。
小次郎の間合いに入る直前、沖田が地面に這いつくばるような形で伏せ、そのまま間合いの内に飛び込んできたのだ。
燕返しは空を舞う燕を切るために編み出した技。地を這う相手には当たらない。
小次郎の剣が空を切った直後、沖田は地を這う姿勢から跳ね上がるような動きで突きを繰り出してくる。
だが、そんな無理な体勢からの突きで小次郎を捉えることができるはずもない。
小次郎は余裕を持ってその突きをかわし…た瞬間に更に突きが来た。
最初の突きの残像が消える間もなくもうひとつの突きが来たことに驚きながら、小次郎は刀でその突きをどうにか受ける。
それで体勢が崩れたところに更にひと突き…沖田の木刀が小次郎ののどを捉えた。
「ゲホッ!ぐっ、こ、この」
沖田の三度目の突きは、かわしきれぬと悟った小次郎がとっさに後ろに飛んだために当たりは浅かったが、それでも小次郎の喉
に痛手を与えていた。
「あれ、浅かったですか。今のはわりと自信あったんですけど」
そういう沖田の無邪気な様子が肉体の傷以上に小次郎の矜持を傷つける。
今までこれほど小次郎を愚弄した者はいなかった。
剣豪鐘捲自斎の門に入門してから数ヵ月後には兄弟弟子の誰も小次郎の相手にはならなくなり、師の鐘捲自斎もかつて己をたや
すく打ち倒した弟子伊藤一刀斎に優るとも劣らぬ才だと慨嘆した。
師のもとを辞した後も幾人もの高名な剣豪と試合をしたが、誰もが小次郎に得物をかすらせることすらできずに斃れた。
その自分が、使い慣れない定寸の刀を使っているとはいえこうも翻弄されるなど、誇り高い小次郎には決して認めることができ
なかった。
「今度こそ、細切れにしてやるよ!」
小次郎は再び燕返しの構えを取る。
沖田は先程の片手突きを放ってのびきった姿勢からまだ戻りきっておらず、前のように地に伏せてかわすのは間に合わないはず
だ。
「必殺、燕―――――」
しかし、小次郎が燕返しを放つ前に沖田の木刀を持っていない左手が動き、そこから白い物が飛ぶ。
それはあらかじめ行李の中から取り出しておいた人別帖。
折りたたまれたそれは、沖田の手を離れるとまるで意志を持つかのように広がり、頭に血が上っているところへの奇手で反応が
遅れた小次郎の顔に貼りつく。
「し、しまった」
いかに小次郎が天才でも視界が塞がれては存分に剣を振ることはできない。
それでも勘に任せて必死の一撃を放つが、その一刀に肉を切り裂く手ごたえはなく、無防備な小次郎に沖田の木刀の一撃が…
来なかった。
顔に張り付いた人別帖を引き剥がすと、どこにも沖田の姿はなかった。傍においてあったはずの沖田の行李も消えている。
「くっ、よくも小次郎を虚仮にして…」
お前など倒すにも値しないとでも言うつもりか。
「この屈辱、忘れはせぬぞ」
燃え盛る怒りと憎悪を胸に小次郎は歩き始める。立ちふさがるすべての剣客を打ち倒し、おのが最強を証明するために。
【はノ弐 森の中 一日目 深夜】
【佐々木小次郎】
【状態】軽傷(のどに打撲)
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:参加者をすべて倒して最強を示す
一:あの男(沖田総司)は優先的に殺す
*沖田の名前を知りません
*宮本武蔵のことを覚えていないようです
「あ〜あ、せっかく盛り上がってきたとこだったのに」
愚痴りながら沖田は胸のさらしを巻き直していた。
人別帖を使って小次郎の視界を奪ったまでは良かったが、その後の小次郎の決死の一撃にかすられてさらしが解けてしまい、や
むなく退いたのだ。
「まあ、命拾いしたってことなんだろうけどさ」
さきほどの一撃、定寸の刀にかすられたということは、小次郎の手にあったのが本来の長刀であったら間違いなく致命傷を受け
ていたということだ。
命拾いといえば最初の燕返しもそうだ。
あの鋭い一撃、相手が燕返しを得意とする佐々木小次郎だと知っていたからこそかろうじて避けられたが、そうでなければあっ
さりと両断されていてもおかしくなかった。
自分も突きを小次郎に当てることはできたが、それは小次郎が自分を三段突きの沖田総司だと知らなかったからこそ。
「総合すると腕はあの人のほうが上かな」
沖田はあっさりと認める。
周囲には天才剣士ともてはやされてきたが、沖田は自分の腕がまだ天下無双の域には達してないことを知っている。
そしてまた、真剣勝負の勝敗は技量では決まらないことも新撰組の一員としての日々の経験で思い知った。
それゆえ他者が自分より上手だと認めることにこだわりはない。
もちろん、腕の立つ剣士と戦うことに興味がないというわけでは全くないが。
「あの人、多分本物だよね。すると人別帖にのってたほかの人たちも…。人別帖を投げちゃったのは失敗だったかな」
最初に人別帖に佐々木小次郎の名を見たときは、もちろんそれが本物だとは思いもしなかった。
伝説の天才剣士佐々木小次郎にあこがれる誰かがその名前を名乗っているのだろう、程度に考えていた。
だが、実際に佐々木小次郎と名乗る男と話してみるとどうもそうではなさそうだ。
彼は宮本武蔵を知らないといっていた。
名前をもらうほど佐々木小次郎を敬慕している人間が宮本武蔵の名前さえ知らないなどとは考えられない。
かといってたまたま佐々木小次郎と同姓同名の人間が、たまたま本物の佐々木小次郎と同じ燕返しを身に付けたなんて都合の良
すぎる偶然も考えられない。
となると、やはりあの佐々木小次郎は本物の佐々木小次郎だと考えるしかないだろう。
宮本武蔵を知らなかったのは、主催者の故意か蘇生の副作用で記憶の一部が消えたのだと考えられる。
「僕だって死んだ記憶はないのにここにいるし」
そう、人別帳にある多くの有名剣豪が復活した死者だとすれば自分だけが例外だとは考えられない。
ここにいる剣士は、自分も含め全員が何らかの手段で復活させられた剣豪なのだろう。
人別帖には見覚えのない名前もあったが、それは自分が無学で知らないだけか、あるいは自分より未来の剣豪かもしれない。
伝説で知るだけの過去の剣豪、同時代に生きながらついに真剣勝負の機会がなかった剣士たち、そして自分より未来の、未知の
剣を使うものたち。
そうした者たちと戦えると考えると胸が躍る。しかし…
「やっぱりまずは芹沢さんかな」
沖田は一剣士である前に新撰組の隊士だ。
そして、新撰組の歴史上局長を名乗ったものは何人もいるが筆頭局長の役に就いたのは芹沢鴨ただ一人。
人別帖によればその芹沢がこの試合に呼ばれているはずであり、となればまずは芹沢を探して指示を仰ぐのが筋というものだ。
そんなことをいいながら沖田はその芹沢を襲って暗殺した一人だったりするのだが、沖田にとってそれはもう過ぎたことだ。
もしかしたら芹沢はあのことをまだ怒っていていきなり斬りかかられるかもしれないが、それはそれで悪くない。
「しらふの芹沢さんとは一度本気でやりあってみたいと思ってたんだ。また会えるなんて夢みたいだな」
どこまでも気楽に、沖田は歩き始める。
【にノ弐 森のはずれ 一日目 深夜】
【沖田総司】
【状態】健康
【装備】木刀
【所持品】支給品一式(人別帖なし)
【思考】
基本:過去や現在や未来の剣豪たちとの戦いを楽しむ
一:芹沢を探して指示を受ける
*自分を含めた参加者が何らかの手段で復活させられた死者だと考えています
*人別帖をなくしましたが特に有名な剣豪や知り合いの名前は覚えていると思われます
*参戦時期は芹沢暗殺後から死ぬ前のどこかです
佐々木小次郎って本当は爺さんらしいんだけど
投下終了
>>223 若い頃から参戦ってことで
だから武蔵のことも知らない
乙!
史実小次郎のキャラは無双を参考にしてるのかな?
>>223 小次郎は中条流の出身らしいけど、実は師匠が誰かが明確でない。
富田勢源の弟子なら爺さん、
鐘巻自斎の弟子なら恐らく中年、
富田景政以降の富田流の誰かが師匠なら一般イメージ通りの若造だった可能性がある。
後、二天記には小次郎18歳の時に武蔵と戦ったとあるけど、
これは二天記の種本『武公伝』に小次郎が18歳の時に巌流を起こした、
という記述の誤記らしい
>>226 おっとミス
二天記の種本『武公伝』に小次郎が18歳の時に巌流を起こした、
とあるのが二天記で誤記されたらしい。
が、正しい
東郷重位、伊藤一刀斎 投下します。
やや長いので支援お願いします。
あと、「ツバキ(辻月丹、椿三十郎)」を修正するとの事でしたが、
改めて読み直してこのままでいいと思ったので、このままでいきます。
伊藤一刀斎景久と東郷藤兵衛重位。
この二人には、双方ともに卓越した剣客だったいう点以外に共通点というものは無い。
伊藤一刀斎が賤しい身分に生まれ生涯仕官せずにただ剣一筋に生き、
最後は霞のように歴史から消えてしまったのに対し、
東郷重位は生まれながらの武士で島津家の剣術師範を務めるだけでなく、
様々な薩摩藩の職務をも全うし82歳で大往生を遂げたという。
むしろ対照的な生涯を送った二人と言える。
そんな二人が、どういう縁か、この残酷無残な剣法勝負の場で、
奇しくも一つの共通点を持つことになる。
それは、おのおの理由は違うと言えど、
共に己の剣法を封印してしまったという事である。
◆
東郷藤兵衛重位は言うまでもなく薩摩の人である。
島津家家臣、瀬戸口重為の三男だと言われているが、
重為の子東郷重治の子供、すなわち重為の孫とする資料もある。
天正15年に時の主君、島津義久と共に京都にのぼった際に、
常陸の郷士、十瀬与三左衛門長宗が開いた天真正自顕流を
天寧寺の善吉和尚から学んだらしい。
故郷薩摩に帰ってから修行と実戦により工夫を凝らし、
慶長9年、時の主君家久の御前でタイ捨流の達人、
剣術師範、東新之丞に打ち勝った事を切っ掛けに
“自顕”の字を改め“示現”とし、
後の世に名高い示現流を開いたのだという。
その後薩摩藩剣術指南を中心に
上でも述べたように様々な仕事を行った。
ただ剣だけの人ではなく、
諸芸に秀でた教養人でもあったらしく、
薩摩藩密貿易の拠点とも言われた坊泊郷の
地頭を務めたともいうから、
役人としての能力もかなり高かったと思われる。
しかし、彼の職務の中で最も著名なのは「上意打ち」であろう。
彼はひとたび主君の命あれば、たちまちその身を刺客と転じ、
島津に有害な人間を一刀の元に悉く斬り伏せた。
その数は十数人に及ぶと言われている。
了解支援。
普段は克己復礼の人で、門弟、同僚には親切礼儀正しく、
事を荒立てない人だったと言うが、
やはり曲がりなりにも戦国の世を体験した世代であり、
その足跡には血生臭い物がつきまとっている。
その東郷重位が、この剣法勝負の場で最初に目を覚ましたのは、
「へノ漆」の「へろな村」の民家の中での事である。
ガラスも無い格子戸からは月が伺える。
(あの男、柳生であったな)
薩摩の道場から気が付けばあの白州に連れ去られていた
重位は、当初は混乱し夢かとも思ったものの、
白州で死んだ青年の血の臭いを思い出す。
あの血の臭い。
それは確かに戦場や、上意打ちの時に自らの剣で作り出し、
確かに嗅いだ物と同じであった。
あれが夢であろうものか。
(あのような無残な殺し方・・・天下の公儀も無体な事をする)
(しかしそれはさておき)
重位は顎をさすりながら天を仰いだ。
この兵法勝負で自分は如何に動くべきか思考しているのだ。
(御前試合・・・・柳生がいたことから考えれば徳川の者どもの誰かか。
薩摩侍の武芸の冴えを天下に振るうのはやぶさかではないが・・・)
島津が関ヶ原で西軍につきながら領土を安堵されたのは、
あの時、島津義弘が苛烈ともいえる凄まじい撤退戦を演じ、
家康が薩摩武士の戦闘力に恐れをなしたからだと言う。
いつとり潰されるとも知れぬ外様の中の外様、島津の家の命運を
安泰にするためにも、また公儀に改めて薩摩武士の恐ろしさを刻みつける為にも、
この兵法勝負で腕を振るう事はむしろ望むところである。
いや、積極的に勝ちにいかねばならないのだ。
もし自分がここで逃げ腰になったり、不様な醜態、敗北を晒せば
公儀が「島津恐るるに足らず」と、
それまでの薩摩に対する恐怖をぬぐい去り、
早速とり潰しにかからないとも限らないのである。
故国薩摩、島津の現在の状況は、それほどまでに不安定な物なのだ。
(お家の為にも、この兵法勝負には勝ちにいかねばならぬ。しかし・・・)
ここで重位の頭をよぎる一つの懸念がある。
彼が大成し、薩摩のお家流儀となった「示現流」は「御留流」、
すなわち門外不出、藩外教伝禁止の流派に他ならないのである。
その「御留流」の太刀筋を、いくらこのような兵法勝負の場とは言え、
衆目に晒すことは果たして許されることなのか。
合戦であれば構わない。
むしろ戦場で薩摩の武士たちが“蜻蛉”で“猿叫”をあげながら
大地を駆け、敵を斬り伏せていくのは剣術師範として、
また一流の始祖として、はたまた薩摩隼人として本懐であるといえる。
しかしこの兵法勝負、人別帖を見る限り
示現流の使い手は恐らく自分一人。
たとえ勝ち上がったとしても、
それまでに太刀筋は悉く公儀の目に晒されてしまっていることだろう。
それは現代風に言えば軍事機密の漏洩といっても言い。
「御留流」の太刀は秘密はあくまで守り抜かねばならぬ。
自分はこの兵法勝負では必ず勝ち上がらねばならない。
しかし人生を掛けて研鑽してきた示現流の太刀筋は、
あくまで隠し通さねばならない。
相反する両方を為さねばならないのだ。
東郷重位、生涯において恐らく最も過酷な「任務」になるかもしれぬ。
しかし・・・・
「勝つ」
そう短く言うと、
重位は立ち上がって民家を出る。
眼には決意の光が宿っている。
その決意とは・・・・
◆
東郷重位が一つの決意を胸に抱いたのとほとんど同時刻、
「ちノ漆」に存在する「血七夜洞」の中から一人の男が姿を現した。
背の高い初老の老人ある。
髭も、後ろで束ねた髪も残らず白、あるいは灰色をしている。
衣服は粗末でくすんだ帷子しか着ていない。
手にはひと振りの太刀が握られている。
老人はすぐ近くの崖まで歩いて行く。
崖には、波飛沫がうちよせ、白い水の飛沫がとんでいた。
老人は海面をじっと見ていた。
その視線は、何か重苦しい思いを内包した、
硬く冷たい視線であった。
老人はそれからしばらく、顔が飛沫で濡れる事も、
髭や髪が風で掻き乱されるのも気にならないような様子で、
じっと海を見続けた。
老人が動き出したのは突然である。
何を思ったか、この危険極まりない兵法勝負の中においては、
自分の命綱ともいえる太刀を海に投げ捨てたのである。
老人は清々したといった調子で、
太刀が波の中に消えていくのも見送らず、
すぐさま崖に背を向けた。
「俺は斬らない」
老人は洞穴に戻りながら言う。
「俺は斬らない」
もう一度、自分に言い聞かせるように強くそう言いきった。
老人の名前は伊藤一刀斎と言った。
伊藤一刀斎景久、前名、前原弥五郎は生没年はおろか、生地ですら定かでない。
一般には伊豆の人と言うし、一説には江州堅田の人という。
とにかく卑しい生まれである事は確かだ。
伝説によれば幼名を鬼夜叉といい、
その名の如く鬼のような容姿で、近隣住民は恐れて近づかず、
14の時に富田(中条)流の達人、富田一放を一太刀に斬り、
盗賊7人を斬り殺し、最後の一人は大甕に隠れたのを
甕ごと斬り捨てたというから凄まじい。
名人相手に勝負すること33度、
凶敵を倒すこと57人、
木刀で打ち伏せること62人、と実戦を重ね、
その果てに自得する所あって一刀流を開いた。
師匠は富田流系、外他(鐘巻)流の流祖、鐘巻自斎であり、
彼より、小太刀、中太刀を学び、その上で大太刀の使い方を工夫し、
五十本、刃引、相小太刀、正五点などの刀法を考案した。
逸話も多く、“払捨刀”や“無想剣”の故事が著名だろう。
彼の一刀流は、塚原卜伝の新当(神道)流、上泉伊勢守の新陰流
と並んで今日の剣道、剣術の基礎になり、剣術の三大潮流と呼ばれている。
しかし、卜伝、伊勢守が“剣聖”と謳われ、
時の室町将軍の御前で武芸の上覧、はたまた武芸師範を行い、
名誉と敬愛の中で往生を遂げたのに対し、
仕官もせず、名声も求めず、
ただ阿修羅のごとく戦い続けた果てに
杳として姿を消してしまったのである。
正に「一刀斎」の名前の如く、
剣だけに生きて、剣だけに死んでいった男であった。
その一刀斎が、この兵法勝負に連れて来られたのは、
正に弟子、神子上典膳、後の小野忠明に一刀流の後目を譲り、
深山へ分け入って最後の場所を探そうと、
人知れず富士の樹海へと分け入った正にその時であった。
一刀斎は何処とも知れぬ洞穴の中で目が覚めた。
そして先ほどの二階笠の男の言ったこと、
さらには無残に殺された村山という少年の事を思い出した。
その時の一刀斎の表情は、
苦虫を噛み潰したような陰鬱極まりない物であった。
その背中は、彼がその剣で多くの剣士を血の海に沈めてきた男とは
思われぬほどに小さく、憔悴しきっていた。
「俺にまだ人を斬れというのか・・・・・」
一刀斎はねじれた唇から絞り出すようにして言葉をはいた。
そう言うと、行李の中に入っていた太刀を掴み、
ひらりと鞘から抜いた。
白刃が、蝋燭の明かりが仄かに光る洞穴の闇で閃いた。
一刀斎は、その輝きを食い入るように見つめている。
太刀は研ぎ澄まされ、曇りもない綺麗な業物であった。
しかし、一刀斎には、その白刃が真っ赤な血で染まっているように見えた。
否、白刃だけでなく、その両手が、両腕が、いや体中が血まみれであった。
臭うはずもない、噎せ返る様な血臭が鼻をついていた。
伊藤一刀斎が何故、晩年山野の果てに姿を消したのかは、
史料が少なく、彼自身があまり自分を語らなかったが故に判然としない。
世を儚んだとも、
はたまた、後継たる小野善鬼、神子上典膳、
善鬼は性質邪悪、典膳は精神未熟と、
その出来の悪さに失望したためとも言われている。
事実、神子上典膳、後の小野忠明は、
徳川家の剣術指南となり一刀流を世に広めたとは言え、
当人自体は腕は立っても軽率粗暴、天下の剣術指南とは思えぬ
乱暴狼藉が多く、結局生涯柳生の後塵を排し続け、
ついには発狂して死んだと言うから、あながち有り得ぬとも言い切れない。
しかし、一刀斎が隠遁した最大の理由は、
剣の道に疲れ、仏心を起こしたからだと言われている。
伊藤一刀斎という剣の人が度重なる死闘の果てに得たものはなんであったか。
『一刀斎先生剣法書』に斯くの如くある。
『相対者は或は勝、或は負く。これ理の順也。
然るが己が分限を知らず、我れ堅固にて他を害せんと欲す、是れ道に非る也。
勝負の根元は自然の理にして是非全く計り難し、思わざるに勝ち、量らざるに負く。
勝つべきに却って負け、負くべきに全く勝ち、あるいは倶に死し、あるいは倶に生く。
善は善にして善ならず、悪は悪にして悪にあらず。
何に向かって勝つ事を楽しみ、何に向かって負くる所を悲しまんや。
人間無常の習、その得失はただ天道自為の妙理也』
武蔵の生涯の集大成、『五輪書』が如何にして相手に勝つかの理の極致であったのに対し、
一刀斎の剣の極致は、余りにも冷徹な人勝負自体の理であった。
武蔵が、剣を極めた先にある物を、勝ち続けた先にある物を追及し続けたのに対し、
一刀斎は剣そのもの、勝負そのものを追求し続けたように思われる。
そして恐らく100をも超える剣の戦いの果てに、
たどり着いたものが上の宿命観であったのだろう。
しかし、斯くの様な理に行き着いてしまった男が、
その後も勝負を続けることは可能であろうか。
はたして、一刀斎は、凄まじい虚無感を抱きながら、
山野へと消えて行ったのである。
一刀斎は太刀を鞘の中にしまった。
そして、深い溜息をついた。
(無理だ・・・・・)
剣法勝負を続けることがである。
一刀斎は深くそう考える。
生まれおちて60余年。
只管剣に生きてきて、その果てに得たものは果たしてなんであったか。
ただ、自分の背後に連なる屍の山と、
この胸に巣食う果てしない虚無だけである。
全てが嫌になって、
結局一刀斎は典膳に全ての後始末を押し付けて隠遁する事を選んだ。
剣と関わらない、終の地を求めて。
にも関わらず、天は尚俺に剣で人を殺せというのか。
一刀斎は洞穴の奥を見つめた。
そこには、底知れぬ闇が広がっている。
まるで俺の心だ。
一刀斎はそう自嘲した。
無明。
この人生得たものは唯無明。
されど、
その事に気づいた今こそ
一刀斎の目に光が灯った。
◆
東郷重位と伊藤一刀斎。
奇しくも二人は互いに相知らぬ仲であるにもかかわらず、
同じ時に同じ決意をすることになった。
すなわち剣法封印である。
重位はお家の為に剣を封じる。
一刀斎は自分の為に剣を封じる。
決意の理由も対極なれど、至る結論は同じであった。
重位はこの殺し合いに積極的に乗るつもりであった。
是が非でもこの兵法勝負には勝たねばならない。
重位は勝ちに行くつもりである。
しかし、“示現流”は使わない。
彼は、自顕流を知るまで慣れ親しんでいたタイ捨流の太刀筋で戦う積りであったのだ。
重位自身が示現流を興すまで、薩摩で主流の流派はタイ捨流あり、
彼ももちろんこの流派を習得している。いや、こちらでも十分に彼は達人であると言えた。
しかし、示現流を興して早十年以上。
果たして自分のタイ捨流の太刀は、あのお白州の武芸者達に通じるか・・・
(いや、ここが薩摩隼人の見せどころ)
重位は不敵に笑うと、
へろな村の往来に繰り出した。
【へノ漆/へろな村 往来/一日目/深夜】
【東郷重位@史実】
【状態】:健康
【装備】:打刀
【所持品】:支給品一式
【思考】 :この兵法勝負で優勝し、薩摩の武威を示す
1:相手を探す
【備考】
※示現流の太刀筋は封印しました
一方、一刀斎はこの殺し合いに乗る気は全く無かった。
だからこそ彼は、この場における彼の唯一の武器である
太刀を惜しげもなく海に投げ捨てたのだ。
その瞬間、彼には憑きものがとれたようなすがすがしい気持ちになったのだ。
一刀斎はこれを機に、完全に己の剣を封じてしまう積りでいる。
剣の果てが無明なら、残された生を、その無明を晴らすために使う。
それが一刀斎の結論である。
故に剣はいらない。
下手に剣など持つと、襲われた際にうっかり無想剣などを放っしまうだろう。
そうすれば目も当てられない。
故に丸腰。誰かに挑まれれば逃げればいい。
取り敢えず、伊庭寺を目指そう。
一刀斎はそう決めると、月の下、笑顔でその場を後にした。
【ちノ漆//一日目/深夜】
【伊藤一刀斎@史実】
【状態】:健康
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【思考】 :もう剣は振るわない。悟りを開くべく修行する
1:伊庭寺に向かう
2:挑まれれば逃げる
【備考】
※一刀流の太刀筋は封印しました
投下終了
佐々木小次郎とられちゃった。少し残念
所で、空いた1枠に参戦させたい創作剣客キャラがいるんだけども、
書いていいですか?
皆さんあけましておめでとうございます。
それと、
「小野忠明」と『最後の名簿に載ってない新規参戦枠』で「佐々木小次郎@異説剣豪伝奇 武蔵伝」で予約します
自分も執筆時間が出来たので
山南敬助と佐々木小次郎@fateを予約します。
創作の佐々木小次郎は
>>32で佐々木小次郎(偽)となっているのでアサシンの佐々木小次郎であってるよね。
あってると思います。
これで佐々木小次郎が3人。
小次郎大人気だね。
新撰組もこれで四人目か。
現時点でのまとめ
登場済み
・柳生十兵衛
・坂田銀時
・志村新八
・久慈慎之介
・トウカ
・塚原卜伝
・宮本武蔵
・オボロ
・犬坂毛野
・犬塚信乃(里見☆八犬伝)
・赤石剛次
・伊東甲子太郎
・川添珠姫
・鵜堂刃衛
・芹沢鴨
・辻月丹
・椿三十郎
・奥村五百子
・斎藤弥九郎
・徳川吉宗
・秋山小兵衛
・佐々木小次郎
・沖田総司
・東郷重位
・伊藤一刀斎
予約
・新見錦
・屈木頑乃助
・小野忠明
・佐々木小次郎(武蔵伝)
・山南敬助
・佐々木小次郎(偽)
>>244 予約は上泉信綱と岡田以蔵にも入ってる。
それも含めて登場確定した参加者は33人(斬を入れると34人)だね。
屈木頑乃助投下します
暗き水面に映ゆる月を映し出した、湖の南辺。
辺りは、しんと静まり返り鳥の鳴き声、獣の歩みすら聞こえない。
ただ、一つ、そこに佇む獣の影法師。否、それは紛れも無く人の影であった。
されども、その姿形は人と呼ぶには余りに奇怪至極。
その四尺に満たぬ短躯と、そこからおまけのように生える足。
頬はこけ、やややつれてはいるものの頭の鉢は異様に大きく、
血色の悪い青黒い肌、両の眼の間は離れ、つぶれた鼻の下には、厚い唇と広い口角。
身なりも蓬髪乱れ、体は土や枯葉に塗れ、ぼろ布のような着物を纏い、
人と言うよりは野人、いや、地に這う蝦蟇と形容するのが最も相応しい面妖な男。
彼こそ、寛永の駿河城下を震え上がらせた異相の凶漢にして、天稟の剣才の持ち主。
名を屈木頑乃助と言う。
□
頑乃助は行き倒れの浪士の忘れ形見であり、駿河城下に道場を構える
老剣客・舟木一伝斎に拾われ、その家僕として使われていた。
下男という卑しい身分とその異様な面相から、周囲の人間からは蔑まれ
稽古への参加も許されなかったが、門前の小僧習わぬ経を読むとは
よく言ったもの。環境とその天賦の才にて、独学で修練した剣技は
道場でも抜きん出たものとなり、当主・一伝斎も認めるものとなっていた。
そんなこの男が幼少の頃より、恋い慕う女が一人。
他でもない、一伝斎の娘・千加である。身分違いの恋とは心得ていた者の
その恋慕の情と妄執抑えがたく、夜な夜なその居室の下へまさに蝦蟇のように
潜り込み、ついには寛永三年端午の節句、道場の恒例行事ながら、その年は
千加の婿選びも兼ねていると囁かれていた兜投げの儀にも名乗りを上げたのだ。
だが、その前夜に盗み聞いた、千加の口から出た自分に対する罵声と嫌悪。
さらに満座の舞台で、恩義を感じていた一伝斎から浴びせられた恥辱。
これに耐えかね、道場を逐電、富士の樹海に隠遁するうち、彼は
千加への妄執と、その獣心をより一層強くし、さらにそれを発揮するための
手段『がま剣法』と名づけた独自の必殺剣を編み出した。これを使って
千加の夫及び、その候補三人を惨殺し、最後に討った・笹原権八郎の
従兄であり、城下一の槍の名手と名高い・笹原修三郎の挑戦に応じ、
頑乃助は駿河大納言主催の御前試合の場へと向かっていた筈だった。
□
はて、不可思議な事もあるものだと頑乃助はその短く太い首を傾げた。
確かにあの馬で二階笠の男は御前試合と言っていた。だが、自分は
隠れ家としている富士の風穴から、どうやってあの白州の場までやって来た
のか、まるで記憶が無い。さらに自分が、駿河城下へ向かったのは、
まだ日が昇ってすぐのはずであった。それが今はすでに月高く昇り、
草木も静まり返っている。
さらに気になる事が一つ、頑乃助は無学な男ではあったが、
最低限の読み書きならばできるし、自らに果たし状を叩き付けた男の名を
忘れるほど愚かではない。が、与えられた人別帖を何度読み返しても、
笹原修三郎の名は無かった。これらは一体どういうわけなのか、
まったく事態が飲み込めないままであった。
ただ、それらは今の頑乃助にとっては些細な問題であった。
彼の脳裏にはあの二階笠の男が述べた一言が、強烈に植えつけられていた。
『勝ち上がった者には、 古今東西天下無双の称号を 与え、また如何なる願いとて 聞き届けよう・・・・』
如何なる願いとて聞き届ける、男はそう言っていた。
さらに御前試合であると言うからには、この試合、いや死合を主催した者が
相当に高貴なものであるという事は、頑乃助にも見当がついたし
(それが駿河大納言か、そうでないのかは別としても)、
あの童の首を触れずに吹き飛ばして見せた不可思議な力といい―――
――よもや一生叶うまいとも考えていた、自らの積年の願いが
現実になるかもしれない。頑乃助の思考をこの一年が支配していた。
(千加様…しばし、しばしの間お待ち下さりませ。頑乃助めは必ずや参上いたしますぞ…。)
強大な妄執に憑かれた頑乃助は、のそのそと湖を囲む森へと入っていった。
□
頑乃助は這うように森を行きながら考える。ここは、三年余り過ごした富士の樹海と似た雰囲気の
場所である。潜伏するには持って来いだと。ここには古今東西無双の武芸者が集められている
と聞くが、その全員を斃せというわけではない。要は最後の一人まで残れば良いのだ。
愛しの千加を我が物とするためには、より確実に勝ち残る手段を取る必要がある。
彼の強い獣性が自らに告げたその手段、なるべくこの森に潜伏し、強者との戦闘は避ける事。
もっとも、頑乃助には多くの剣術の致命的な欠陥を突いた必殺剣、『がま剣法』―即ち、
振り下ろされた切っ先の殺傷力が最も小さくなる、地上二尺。ここに重心を構える事によって、
対手の斬撃を封じ、精妙な腰の動きによって両脛を薙ぐ、或いは並外れた跳躍によって
その喉笛を切り裂くという、彼だからこそ成し得る奇剣である―これがある限り
『剣』を得物とする相手にはまず敗れぬ自信はあった。
頑乃助愛用の得物(といっても無銘の打ち刀だが)は手に無く、代わりになんという事の無い木刀が
行李に収まっていたが、これでも相手の向こう脛を砕き、額を打ち割るには十分と言える。
しかし、それでも、確実にここから生き残るには細心の注意を払う事が必要であると頑乃助の感が告げる。
さらに時がたては、他の参加者同士の勝負で手傷を負う者、そうでなくとも疲労困憊する者が
次々と現れるはず。そういった連中を見つければこれを襲撃し斃す。頑乃助の考えは
真っ当な剣客としては唾棄すべき卑劣なものであろう。されど、彼は剣客ではない。
卓越した剣技を武器とする、一個の怪物なのだから。
と、思案しながら森を行く頑乃助の優れた五感が何かの気配を察知する。
「人の声…か。そう遠くは無い。」
次の瞬間には頑乃助の体は、声のした方向を目指し走り出していた。
しえん
□
頑乃助の両眼が二つの人影を捉えたのは、一方の男がもう一方に突きを繰り出したその瞬間であった。
そして瞬く間に試合は決し…いや、正確にはどちらかが斃れる前に、片一方―突きを繰り出した方の男―が
逃げ出したのだ。だが、その数瞬の間に頑乃助の慧眼はこの二人に関するいくつもの情報を捕らえていた。
まず一つは、両方とも自分とは正反対の、そして自分が最初に斬った相手・斎田宗之助以上の美男であるという事。
次に、両者の剣の技量が自信にも勝るとも劣らない、下手すればそれ以上の達人であるという事。
最後に、今、この場に残っている方の男。自分はおそらく、彼に負ける事はないという事である。
この場を立ち去ろうとする男の背を、少しばかり離れた茂みから覗きながら頑乃助は思案する。
この男の剣法は大上段から振り下ろす型の斬撃が主であると見た。自信の『がま剣法』の
格好の餌食。事実、もう一方の逃げ出した方の男が繰り出した、低い姿勢からの突きには
対応しきれずにいた。だが、その後の交わし様、及び返しの一撃を見る限り、この男は
相当の達人、おそらく逃げ出した方の男を上回っている。だからこそ…
頑乃助は口角を歪める。男が自身から四、五丈ほど離れ、富士の風穴での生活で鍛え上げられた
頑乃助の夜目をもってしても、それであると確認できるほどになった時、頑乃助は
物音も立てず、その後ろを着いて行く。悠々と歩く男に対し、やや小走りなのはその歩幅の差のためである。
今、この眼前の男をここで打ち斃す事は可能であると頑乃助は考える。が、そうはしない。
この男はおそらくここに集められたうちでも上位の部類に入る実力を持っている。
そして、その一瞬伺った顔色、自身の誇りを傷つけられた憤激に満ちている。
おそらく、この男は自らの剣技を示すため、多くの死合を行うだろう。
この男により多くの使い手を斃してもらい、剣士の大半が斃れた後、疲弊した所を撃つ。
もし、この男が他の剣客に斃されれば、その斃した相手を尾行する。
これが頑乃助の考え出した、最も確実に勝利を手にする方法である。
今、もう既に自分の背後に誰かがいない限りは、この男の後を行くことにより、
不意の襲撃を受ける危険性はほぼ無くなるという事もこの作戦の利点である。
頑乃助の目の前を行く男、佐々木小次郎ほどの達人ならば、おそらくこの程度離れた位置にいても
相手の気配を察する事が出来たであろう。だが、頑乃助が気取られなかった理由はいくつかある。
まず、ひとつは月が出ているとは家、暗く、死角の多い森と言う環境。もうひとつはここが、
頑乃助の慣れ親しんだ環境に近く、また、頑乃助が気配を消し、死角を見つける事に長けた男であるという事。
笹原権八郎を討ち果たした際も、白昼堂々、彼に気取られる事なくその槍持ちを討ち果たして
その得物を封じる事に成功しているのが、その証左である。おそらく、夜が明けても
よほど開けた場所に出ない限りは、小次郎の目を欺きとおす事が出来るだろうと頑乃助は考えた。
仮に見つかっても臨戦態勢を整える、あるいは逃げ出せるだけの距離は取ってある。
そして小次郎が頑乃助の尾行を許してしまった最大の原因は、彼の心が自尊心を傷つけられた
屈辱と先程対峙した、男・沖田総司に対する憤慨に満たされていた事。事実、小次郎が
歩き出す前まで、平常心ならばその存在を察知できたであろう位置に、頑乃助は潜んでいた。
だが、その時の心の乱れは頑乃助の接近を許し、いままた、一定の距離を取る事を許してしまった。
周囲に気を配りながら、夜の森を行く小次郎の後を頑乃助はそれ以上の慎重さで、息を殺し
まさに蝦蟇が地を這うように尾行していく。もしも、小次郎に自分の位置を察知されても
彼を返り討ちにする事は容易いだろう。それは相性だけではない。先程のあの小次郎の憤りようを
察するに、生まれてこの方、汚濁に塗れて生きてきた自分とは正反対の人生を歩んできたのだろう。
そんな心根の相手に自分が敗れるなどという事は万に一つも考えられなかった。だが、今しばらくは
その腕と誇りの高さ、存分に使わせてもらおうではないか。
(どこのどなた様かは存じませぬが、なるほど貴方様はお強い。されど、あなた様の強さ、あなた様のためではなく
私と千加様のために振るっていただきますぞ…。)
【はノ弐 森の中 一日目 深夜】
【屈木頑乃助@駿河御前試合】
【状態】健康
【装備】木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:死合に勝ち残り、勝者の褒美として千加を娶る。手段は選ばない。
一:眼前の侍(佐々木小次郎)と常に一定の距離を取り尾行。出来うる限り
残り人数が減るまで戦わせ、疲弊したところを襲撃し討つ。
二:小次郎が討たれた場合、可能ならば討った相手をさらに尾行。
三:小次郎、或いは他の者にに見つかった場合、状況により戦うか逃げ出す。ただ、返り討ちにする自身はある。
四:なるべく慎重に行動。小次郎だけではなく、周囲も警戒。
※原作試合開始直前からの参戦です。
※総司、小次郎の太刀筋をある程度把握しました。
※小次郎及び総司の名前は知りません。
以上です。
本当は頑乃助が死合に乗り、今後の指針を考えるまでを
描くつもりでしたが、丁度、構想していた出発点が近かったので
『天才剣士二様』とも関らせ、急遽プロットを変更しました。
不都合等あれば修正いたします。
がま剣法キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
数ある創作剣客でも特に特徴的な彼がついに参戦。
原作でも発揮された狡猾さ、不気味さが出てていいです。
これまでに登場した人たちの、現在位置まとめ
いノ捌 辻月丹、椿三十郎
ろノ参 オボロ、犬坂毛野、斎藤弥九郎
ろノ肆 奥村五百子
はノ弐 佐々木小次郎、屈木頑乃助
にノ弐 沖田総司
にノ陸 久慈慎之介、トウカ
ほノ陸 徳川吉宗、秋山小兵衛
へノ参 塚原卜伝、宮本武蔵、川添珠姫、伊東甲子太郎
へノ漆 東郷重位
とノ壱 犬塚信乃、赤石剛次
とノ参 鵜堂刃衛
とノ肆 芹沢鴨
ちノ漆 伊藤一刀斎
そろそろまとめサイトがほしいね。
とりあえず全員で揃ってからかこのスレ使い切る手前くらいでいい気が
それと座波間左衛門、神谷薫予約します
小野忠明、佐々木小次郎@異説剣豪伝奇武蔵伝
投下します
支援よろしく
巌流島の決闘で佐々木小次郎が宮本武蔵に敗れた事は誰でも知っている。
しかしこの決闘の後、
小次郎が暫くの間生きていた可能性がある事は意外と知られていない。
この巌流島の決闘で検分役を務めた男として細川家家老沼田延元がいるが、
彼の残した記録を、彼の子孫が編纂した『沼田家記』に、
巌流島の決闘の様子が記されている。
そこには
延元様門司に被成御座候時 或年宮本武蔵玄信豊前へ罷越 二刀兵法の師を仕候
其比小次郎と申者岩流の兵法を仕是も師を仕候
双方の弟子ども兵法の勝劣を申立 武蔵小次郎兵法之仕相仕候に相究
豊前と長門之間ひく島(後に巌流島と云ふ)に出合
双方共に弟子一人も不参筈に相定 試合を仕候処 小次郎被打殺候
小次郎は如兼弟子一人も不参候
武蔵弟子共参り隠れ居申候
其後に小次郎蘇生致候得共 彼弟子共参合 後にて打殺申候・・・・
とある。
要約して言えば、
武蔵、小次郎双方の弟子が互いに自分の師匠の方が強いと言いあい、
それが切っ掛けに試合をする事になった。
小次郎は一人で来たが、武蔵の方は弟子が何人か付いて来ており、
決闘の場所の付近に隠れていた。
勝負は武蔵が勝ったものの、小次郎は暫くして息を吹き返した。
しかしここで隠れていた武蔵の弟子たちが寄ってたかって滅多打ちにした。
となる。
結局小次郎が死んだことには変わりは無いが、
一般に知られている『二天記』準拠の巌流島の決闘の
雰囲気とはいささか異なるように思われる。
ようするに何が言いたいかと言えば、
巌流島の決闘の後に、佐々木小次郎が生きながらえていた可能性があるかもしれない、
という事である。
無論、例え生き延びたとしても、
この決闘の敗北で小次郎の武芸者としての道は終わったに等しい。
櫂で拵えた木刀で殴られて五体満足とも思えない。
しかし、山口貴由曰く、
失うことから全ては始まる
正気にては大業ならず
武士道とは死狂いなり
すなわち・・・・
◆
小野次郎右衛門忠明は、前名を神子上典膳という。
伊藤一刀斎の弟子であり、一刀流の正統な後継者である。
師匠の命で兄弟子の小野善鬼を斬り、
後継者の地位を得たのは有名な話だ。
善鬼が師匠に切り捨てられたのは、彼が性質邪悪だった為と言われる。
じゃあ、その対抗馬の典膳は品行方正だったのかと言えば、
決してそうではなかった。
いや、はっきりと言ってしまえばあくまで善鬼よりはまし、な程度でしかなかった。
確かに小野忠明は徳川家の剣術指南役となり、一刀流を広く世に広めた。
しかし、同じ徳川家の剣術師範ながら、
柳生が第一位、一刀流はあくまで第二位と、
生涯通じて、柳生一族の後塵を拝し続けることになった。
柳生が一万石二千五百石の大名なのに対し、忠明は六百石、
これでも増えた方で、当初召し抱えられた時など二百石であった。
どちらの家格が上かは一目瞭然で、正に天と地、月とスッポンである。
ただし、本来柳生家が家康に召し抱えられたのは兵法者としてではなく、
武家として軍功があり、政治力が高かったが故であり、
純粋に芸だけで召し抱えられた忠明と比べるのは些か可哀想な気もする。
しかし、純粋に人物として見比べてみても、
忠明は宗矩の足もとにも及ばないのでないだろうか。
確かに忠明は腕は立った。
関ヶ原の時は秀忠の軍に加わり、真田の上田城を攻め、
上田七本槍に数えられる軍功があった。
純粋に剣の腕だけならば宗矩よりも上であった可能性が高い。
しかしその性格は短気で非常に大人げなく、
行状は天下公儀の剣術師範の物とは思われない粗暴なものだ。
例えば、さる大名に招かれて、藩士の中で腕の立つ者との試合を求められると、
「無益で酔狂なことだ。怪我をするのがお気の毒」
と冷笑しながら木刀をわざわざ逆さに構えて立ち合った。
怒った相手の木刀をたたき落し、その上で両腕をぶん殴り、
相手の両腕を叩き折ってしまった。
相手の剣士は生涯腕がきかなくなったという。
また、両国橋の辺りで、剣術無双と看板をかかげ、
飛び入り歓迎の撃剣興行をする男達がいると聞くと、
わざわざ出かけて行って、その場にいた剣士たちを嘲弄し、
怒って試合を求めた剣士の一人の脳天を鉄扇で打って昏倒させた事もある。
これ以外にも乱暴狼藉数多く、遂には蟄居を命じられてしまった。
人殺しのやくざ者を成敗して許されたとはいえ、
将軍の覚えが良くないのもぬべなるかな。
また、自惚れが強く、それ故に柳生流への嫉妬心も凄まじく、
事あるごとに柳生に噛みついた。
無論、宗矩が素知らぬ顔をしたのは言うまでもない。
晩年はついに柳生流を格付けで超えられなかった為に、
苛立ちの余り発狂して悶死したと言う。
(ただし、発狂して死んだのは子の忠常だともいう)
そんな男が、柳生の手により兵法勝負に放り込まれればどうなるか。
果たして、忠明は額に青筋を浮かべて怒り狂っていた。
忠明は「ろノ弐」、呂仁村とかつて呼ばれていた廃村の往来で目を覚ますや否や、
支給品の同田貫を抜いて、盲滅法に白刃をふるい、
目に映るものを悉くぶった斬った。
障子の切れ端がが、木戸の切れ端がが、枝が、藁束が、
頑丈でよく斬れると評判の同田貫の刃が振るわれる度に飛ぶわ飛ぶわ、
はたから見ればキチガイにしか見えぬ暴れっぷりである。
ようやく忠明が落ち着いた時には、
辺りは嵐で来たかと思われるほどに滅茶苦茶に荒らされていた。
しかし落ち着いてきたとはいえ、今だ忠明の怒りは収まる所を知らない。
「宗矩めっ!ふざけた真似をしおって!
何だ、倅まで放り込んで、
我が家の自慢の子息は誰にも負けません、と?
ふざけるなよお座敷剣法の分際で!
面白い、手始めに貴様の倅を斬り殺し、ここにいる他のへなへな剣士どもを
悉く撫で切りにして、最後には貴様の素首を斬りおとしてくれる!」
何が気に食わないかと言えば、
やはり柳生にいいようにされているのが何より気に食わない。
彼の眼からすれば、十兵衛がこの異常な剣法勝負に放り込まれていることすら、
柳生の余裕を示しているようで腹が立つ。
よろしい。
ならば真っ先にぶっ殺して、宗矩の鼻を明かしてやらないと気が済まない。
その上でこの兵法勝負で勝ち上がり、天下一の名を欲しいままにし、
その上で、宗矩と立ち合って、公儀の面前で斬り殺してくれよう。
奴は自分の口で如何なる願いとて聞きとどけると言った。
言った手前、自分が立ち合えと言えば逃げることもできまい。
宗矩の如何にも紳士然とした面を引っぺがす事を夢想し、
忠明は残酷極まりない笑みを浮かべた。
しかし、そうと決まれば、こんな所でうかうかしてもおれまいと、
忠明はようやく落ち着いて廃村の探索を始める。
この兵法勝負、剣の試合と言えども実態は合戦に近い。
だとすると、段平一つじゃいささか心もとない。
そう思って、彼がつい先ほど斬ったばかりの木戸の奥に、
何やら黒い塊が見える。
忠明は眼を凝らして廃屋の中を見ていたが、しばらくして、
「おおっ!」
と叫ぶと喜色満面で廃屋の中へと飛び込んで行った。
暫くして、往来を進む忠明の様相は一変していた。
素肌武者ではなく、その前身は隈なく明珍拵えの立派な当世具足に身を包み、
顔は面頬で覆われている。
背中には、
『日下開山 天下無双 一刀流正伝 小野次郎右衛門忠明』
と自ら書いた昇り旗を差している。
また、立派な栗毛の馬に跨り、
手にはこれ見よがしに同田貫の刃を閃かせている。
これらは全て、廃村の中で発見した物である。
よほど運が良かったのか、
彼が最初に探索した廃屋の中で具足一式と昇り旗と硯一式を、
廃屋のすぐ裏手の馬舎で栗毛の馬を発見したのだ。
(ふふふ、これでこそ天下の剣術指南役に相応しい装束、
見ておれ宗矩、俺の剣の冴え、とくと見せてくれる)
六百石風情では恐らく手に入らないであろう立派な具足に身を包み、
忠明は非常に上機嫌であった。
そのまま、忠明は得意げに胸を反らせ、
肩をいからせながら村の出口へと馬を進めていた。
その時である。
「むっ!?」
村の出口、すなわち村の外から見れば村の入口にあたる場所に、
ふらりとまるで亡霊のように現れた人影がある。
暗くてよく見えないが、背の高い男であろうか。
一人だけで、他に姿は見あたらない。
「くくく・・・調度いい、まずはあの男から」
忠明は、村に入ってきた男をこの兵法勝負、第一の首級とすべく、
同田貫を片手に握りしめて男の方へ馬を進める。
しかし、互いに近づくことによって男の姿が明らかになるにつれて、
まず馬が進むのを止め、それに鞭を入れようとした忠明の動きもまた止まった。
男は背の高い男であった。
その体をやや派手な色彩の陣羽織に包んでいる。
背中には何やら長く、黒い棒状の物を背負っている。
目測するに長さはおよそ三メートル弱で、恐らく槍か何かか。
髪は長く、後ろに結んだ髪を馬の尻尾のようにたらし、
また、前髪立ての様に、長い前髪を立てている。
硬そうな前髪はまるで昆虫の触角だ。
その前髪の後ろにある顔は中々の美丈夫だ。
ちょうど青年から中年の間といった年頃だろうか。
若々しさと、大人の落ち着きが見事に混在している。
優男ながら頬は剃刀のように引き締まり、眼光は鋭い。
いかにも美剣士といった容貌である。
ただし、顔の『左半分』だけは。
「ぬぐっ!?」
それまで闇で見えなかった男の顔の『右半分』を月光が映し出す。
それを見た小野忠明は思わず呻いた。
男の顔の『右半分』は『潰れていた』。
いかなる事をすればこの様になるのか。
男の顔の右半分の殆どは皮膚が抉られた後に出来た瘡蓋が、
そのまま皮膚になったように黒くゴツゴツし、
まるで癩病で顔が崩れたようになっている。
右目は潰れ、半開きになった瞼の間からは、
最早眼球として機能しなくなった水晶体の残骸が覗いている。
頬肉が抉れており、顔の右半分の歯茎と歯がむき出しになっている。
また、顔に空いた穴より見える歯も、何本か抜けたりボロボロになっていた。
まるで腐った死体を思わせる恐るべき形相である。
戦場で数多くの死体や怪我人を見てきた忠明だが、
ここまでひどい物はそうは無いのではないか、と思わざるを得なかった。
また、無傷の左半分が引き締まった美貌であるが故に、
より一層傷ついた右半分が醜く不気味に見えて、
まるで男が、地獄の底から出てきた美剣士の亡霊であるかのように見える。
いや、不気味なのは顔だけではない。
男の体からまるで陽炎のように立ち上る剣気とも、
妖気ともつかぬ不気味な気配が、
より一層男をこの世ならぬ化け物の様に見せいていた。
忠明は人とも物の怪ともつかぬ男の妖気に、
一瞬面食らってしまったもののすぐに気を取り直して、
むしろ驚いてしまった事への憤慨かより一層強気になり、
怯える馬の腹を強く蹴って前へ進ませる。
男の方もこちらを見ている。
潰れた方はともかく、
綺麗な方の顔もまるで彫像のように仏頂面のままで、
こちらにいかなる感情を抱いているかが窺えない。
(ええい、気味の悪い奴!こんな奴に仕掛けるのは少し気が引けるが・・・)
「そこの貴様!俺は上総の住人にして伊藤一刀斎が一番弟子、
そして公儀の武芸師範を務める男、
日下開山、小野次郎右衛門忠明!
見たところ腕に覚えのありそうなやつ、名を名乗れっ!」
忠明の口上が聞こえなかったのであろうか、
男は何も言わずにずんずん忠明の方へ歩を進めるだけである。
「貴様、俺を弄るかっ!面白い、ぶった斬って呉れる!」
男の沈黙を挑発ととったか、
忠明は頭から湯気を出すと、
馬の尻に切っ先を突き刺す。
馬は嘶き棹立ちになると、
土ぼこりをあげながら男へと向かって爆走する。
一方、男の方も、背後の黒い物に手を伸ばした。
今頃得物を抜くかと、忠明は嘲弄するも、
冷笑は、次の一瞬で吹き飛んだ。
男の手が、手品のように閃くと、
果たしてどういう魔法を使ったか、
背後の『鞘』から、男は『それ』を抜き放っていた。
男に右手に握られたモノ、
はたしてそれは一振りの刀であった。
いや、果たしてそれは刀と言えるだろうか。
それは刀と言うには余りにも長すぎた。
全長2.7メートル、刃渡りだけでも2.24メートル、
元身幅5.1p、先幅3.1p、茎の長さは36.8p・・・・
それは刀という物の常識を破る大きさであった。
忠明は知らないが、この刀、驚くべき事に実在する。
実に稀有な存在ではあるが、この冗談のような長刀は、
銘を『直刀 黒漆平文太刀拵』、あるいは『布都御魂剣』と言い、
塚原卜伝の生地、鹿島神宮に現在も神宝として保存されている。
しかし、太刀の長さも驚くべき物だが、
真に驚くべき所はそこではない。
一番驚くべき点、それは、
この男がこの長刀を軽々と『片手』で水平に構えているという点である。
普通、自分の身長と同じ長さ真剣を扱えるかと言えば、答えは否である。
通常、柄、鍔などを含める抜き身の状態で刃渡り1メートル程の刀の重量は、
3キログラム以上あると言われている。
2リッターのペットボトルの重量が大体2キログラムであると考えれば、
それを重心の位置などを考えながら武器として振るう事が、
如何に難しいか分かると思う。
にも関わらずこの不気味で奇怪な容貌の男は、
自分の身長の二倍近い長さの刀を片手で軽々と操縦しているのである!
目前の余りの異常な光景に忠明は瞠目するも、
一度興奮して走り出した馬は止まることが無い。
凄まじいスピードで男へと向けて疾走する。
一方男も、布都御魂剣の切っ先をピンと跳ねると、
瞬く間に自分の頭上に刀身を持っていく。
その上で左手で柄頭を握り、
その体勢のまま、飛ぶような速さで忠明へと向けて駆けだした。
瞬く間に自分の方へ駆け寄って来る男の姿に、
忠明の背中に冷たい物が走った。
その瞬間、同田貫をまるで盾の様に眼前に構え、
身を捻って、左側の空間へ馬上より飛んだ。
人間としては未熟な忠明だが、
その剣の腕は正しく本物。
この剣士の本能が、無意識のうちに忠明にそういう行動をとらせたのだ。
そして、それ故に忠明は命拾いをする事になる。
忠明が転がるように地面に着地した瞬間、
栗毛馬の断末魔があがった。
忠明が目を向けると、胴を真っ二つにされた馬の死骸と、
その腹より飛び出た臓物と大量の血液が転がっているではないか!
見れば、自分が盾として構えた同田貫は、
半ばより斬られて切っ先のある方の刀身は足もとに転がっている。
それだけではない。
明珍拵えの当世具足の胴の部分が、右袈裟にぱっくりと裂け目ができているのだ。
驚くべき剣の鋭さである。
もし、馬から飛び降りるのが一瞬遅ければ、
馬はおろか鎧ごと一太刀に両断されていたに違いない。
余りにも常識はずれな出来事に、忠明は為す術もなく茫然自失であった。
それも仕方が無かろう。
どうして3メートルの長刀を片手で使い、
明珍拵えの鎧を斬り、馬の胴を両断する剣客を前にして驚き恐れぬことがあろうか。
とても人間業ではない、正しく化け物の所業である。
男は血に濡れた大太刀を握ったまま、
しばらく茫然とした忠明を見つめていたが、
興味を失ったのか視線をそらすと、
再び魔法のように手を閃かせると、
瞬く間に布都御魂剣は背中の黒い鞘に納まっていた。
男は忠明に背を向けた。
そうして、まるで何事も無かったかのような
泰然とした態度で、廃村の奥に歩いていき、
遂には闇の中に見えなくなった。
忠明は、その背中をただ見つめる事しか出来なかった。
【ろノ弐/呂氏村址 往来/一日目/深夜】
【小野忠明@史実】
【状態】:呆然自失
【装備】:明珍拵えの当世具足一式(一部破損)、同田貫(斬られて半分)
【所持品】:支給品一式
【思考】 :十兵衛を斬り、他の剣士も斬り、宗矩を斬る。
1:呆然自失
【備考】
※人別帖は見ていません。
よって一刀斎の存在に気付いていません。
男、佐々木小次郎は、忠明との立ち合いの後、
人気の無い村を彷徨っていた。
隙だらけの忠明を斬らなかったのは、
彼にとってあの立ち合いはあくまで相手から仕掛けてきたからであって、
相手の戦意が消えた以上戦う必要が無いと思ったからに過ぎない。
彼がこの兵法勝負の中で、
関心のあるのは唯一人にすぎない。
宮本武蔵
その名前を人別帖に見つけたとき、
佐々木小次郎の体には名状しがたい歓喜とも闘志とも
つかぬ強い感情の波が走った。
巌流島の決闘に敗れてから早何年か、
兵法者としての全てを失いつつも、
小次郎は櫂剣に抉られた顔の傷を癒しながら、
ただ剣の修練だけを続けて来た。
武蔵に再戦せんという、ただ一念のみ胸に狂ったような鍛錬を続けた成果か、
気が付けばその剣の業前は、もはや人体の物理限界を超越していた。
天海僧正のお触れに、武蔵が江戸に向かっていると聞き、
時は今と江戸に来た所でここに連れて来られたが、
果たして、武蔵を再び戦う絶好の機会ではないか。
彼がこの兵法勝負に期待する事はたった一つ、
武蔵との再戦のみである。
今や他の有象無象の兵法者のことなどに、
いかなる興味も抱けない。
「武蔵」
小次郎は小さくそう声を漏らす。
「武蔵」
最早二度と治ることない顔の傷が疼く。
「ムサシィッ!」
阿修羅の様な形相で小次郎は叫んだ。
待っておれ宮本武蔵。
貴様を倒すのはこの小次郎也。
【ろノ弐/呂氏村址 往来/一日目/深夜】
【佐々木小次郎@異説剣豪伝奇 武蔵伝】
【状態】:健康、武蔵への強い敵愾心
【装備】:直刀・黒漆平文太刀拵
【所持品】:支給品一式
【思考】 :武蔵を倒す
1:武蔵を探す
2:立ちふさがる者は全て斬る
【備考】
※人別帖を見ていますが、
武蔵の事しか頭に残っていません
投下終了
世にも珍しい、巌流島の決闘を敗北しつつも生き延びた佐々木小次郎です。
他の佐々木小次郎と区別して、
今度からは佐々木小次郎(傷)と表記します。
外見イメージは、一般イメージの佐々木小次郎の顔を、
「バットマン:ダークナイト」のトゥーフェイスみたいにした感じです。
出典の「異説剣豪伝奇 武蔵伝」はマイナーな作品ですが、
全2巻とまとまりがよく、また筋も他の武蔵物と一味違った
ユニークな伝奇時代劇漫画で、石川賢氏の晩年の傑作です。
武蔵が10人以上出てくる作品なんてこれぐらいだろうなぁ・・・
乙ですが、なんか厨性能すぎるんじゃ…
創作からの参戦だとそういう傾向になりがちなのかもね
しかし佐々木小次郎×3は性格こそ様々だけど、揃って美形キャラなんだなw
武蔵伝のは顔があんなんなってるし、アサ次郎は厳密には佐々木小次郎本人ではないけど
>>269 自分もやや強すぎるかなって?って思ったんですが、
恐らく参戦するであろうシグルイの虎眼先生が、
・一太刀に石灯籠を両断
・脇差で大柄な男を真っ二つ
とかやってるんでこれなら許容範囲かなぁ、と。
保守がてら原典紹介
【 異説剣豪伝奇 武蔵伝 】
【作者】石川賢
【媒体】リイド社SPコミック、全2巻
【あらすじ】
天海僧正が、柳生宗矩を追い落とすために、
柳生に対抗できる剣豪を手に入れんと、全国に出したお触れ、
『宮本武蔵なる者に告ぐ、江戸で御前試合がある 貴様が来るのを待つ』
柳生を破って、天下の剣術指南役の地位を得んと、
出てくるは出てくるは、総勢10人以上の宮本武蔵、
宮本新免武蔵、
宮本武蔵義経、
宮本武蔵玄信、
宮本武蔵征長、
宮本武蔵金成、
宮本武蔵大仏、
宮本武蔵光姫、
宮本武蔵三郎、
宮本武蔵直道、
etc、etc・・・
「俺こそが本当の武蔵だっ!」
こうして始まった「自称、宮本武蔵」達の珍道中。
そして彼らに襲い掛かるのは裏柳生の忍者軍団。
果たして武蔵たちは江戸に無事辿りつけるのか!?
スレの表で一部のキャラは剣客と言うより明らかにSAMURAIだと思うのだけど、いいの?
剣客同士の技量や意地のぶつかり合いがメインのロワなのに
剣劇メインじゃない作品のキャラや普通にスピードが音速突破するようなキャラをだしていいのだろうか?
>>273 うーむ、剣劇メインじゃない作品にも面白い剣客キャラはいるからいいとして、
音速突破は少し問題かも。
それと、
林崎甚助@史実 を予約。
これで9人目なので、彼を書いたら暫く自重します
音速突破って、具体的に誰?
>>274>>275 最初の表の候補に入っていた劉豪軍辺りは確かサイボーグ剣士で音速突破可能なはず。
それに限らず表に候補としてあったエロゲ等の剣客キャラって
SAMURAIキャラばかりのような。
キャラの強弱はあっても剣客ロワなんだし、戦力差がありすぎるのはどうかと思うんだが。
スレの初めの候補者表のうちの創作キャラの欄ね。
それを言うなら史実キャラの東郷重位だって示現流の主張を鵜呑みにすれば剣速はマッハ100とかになるわけで、
音速くらいでそんなに深刻になっても仕方ないと思うんだけど。
戦力差なんて書き手の裁量次第でどうにでもなるんだしさ。
剣速じゃなくて、動くスピードのことじゃないの?
>>279 剣速ではなくて動くスピードのはず。
他にも空間を歪める斬撃を放てるキャラとかもスレの最初の候補者表にはいるのだけど。
あくまで剣の技量が優れたキャラのロワなのに
単純なカタログスペックが高いキャラを出しても意味がないと思う。
実際の剣客もそこら辺のキャラにあわせて強化するならありかもしれないが。
今ググってみたけど、基本サイバーパンク系というか、銃夢チャンバラ版的世界のキャラなのね。
まぁたしかに、これを剣客ロワに入れようというのは、今ウルジャンでやってる 『銃夢』 のサイボーグ格闘
トーナメントのキャラを、格闘家ロワに参戦させようぜ、みたいなもんだわな。
戦力差以前に、僕個人としてはそういうのは面白くはないなぁ。せめて現代までだろうとは思う。
あまりに無体な能力は制限、それほどでもなければ描写を工夫すればどうにかなると思うんだよね。
それで書きにくいと書き手に判断されれば誰にも書かれず不参加になるわけだし。
まあ、いざとなれば伊勢守パワーで全て何とかすればいい。
山風作品の伊勢守なんか剣気だけで忍法、妖術を破るし。
山風はなんだかんだで
近代兵器>大剣豪>忍術だからな
>>283 日本最大最高の剣聖だし、伊勢守なら仕方がないな。
>>284 一部の創作剣客が近代兵器を遥かに凌駕するチートスペックなんだが、いいんだろうか?
>>286 そう言うのは伝奇小説でやたらと人外と戦っていらっしゃる
柳生十兵衛に任せればおk
まあ、でも余りにも場違いなキャラは、
予約しないか、あるいは、
コイツを別のキャラに差し替えて登場SS書きたいんだけど、どう?
みたいなことを書き手が予約の時に言えばいいと思う。
流れ切ってすみませんが、剣桃太郎、坂田銀時予約します。
おお、桃が来たか。
さて、未来の総理大臣は何処までいけるかな?
肉の人きた!!
予約一覧
・新見錦
・山南敬助
・佐々木小次郎(偽)
・上泉信綱
・岡田以蔵
・剣桃太郎
・坂田銀時
アサ次郎は議論もあると思うけど、個人的にはあり。
キャラがちゃんと侍してるし、
「本物」の佐々木小次郎達との絡みも期待できるし。
>>292 すまん、
・座波間左衛門
・神谷薫
が抜けてた。
しかし変態の人もついに来たか。
これはそろそろ虎眼先生もきそうだ
>>292 他のロワでサーヴァントがそうであるように、
霊体化と物理無効を制限すれば問題なさそうだな
戦い方は純粋な剣技だし、燕返しも剣を極めた結果として身に着けた技術だし
気配を消せたり太刀筋が読めなかったりするスキルは、有利かも知れんが特に制限するもんでもないだろう
>>293 神谷薫と座波間左衛門。
美少女と真性ドMかw
これは受け太刀くるかな?
>>294 技量や身体能力をロワの剣客上位と同程度と解釈すれば問題ないのかな?
>>294 どうでもいいけどアサ次郎の燕返しってがま剣法で破れそうだよな。
三方向の太刀筋の範囲外の位置に体をもっていけるし>屈木頑乃助
>>296 それでいいと思う。
あと、予約一覧に、
・林崎甚助
が抜けてた。
自分で予約しておいて書くのわすれるとはorz
>>296 細かいところは演出や展開重視で筆者の裁量だな
原作の描写を突き詰めると超音速で斬りあったりしてるけど
>>297 スキルの「宗和の心得」の効果で小次郎の攻撃は見切られなくなってるから、理論的には可能でも実行は至難だろうな
新見錦を投下します
支援
時は深夜。
風がさざめき、木々を揺らす。
木枯らしが鳴く。
その中を逞しい顔に鋭い眼光をした男。新撰組初代三局長が一人。新見錦は歩いていた。
「死ぬまで戦う御前試合……ねえ。得物を奪い事前の連絡も無く、挙句の果てにこのような駄刀を押し付けて『御前試合』
とは……笑止千万とはこのことか」
新見錦は特に表情を変えるでもなく歩き続ける。
そしておもむろに腰に刺した刀を抜く。
そして深いため息をつきながらぼやく。
「この刀で死合………あの男にはやる気があるのか………無いな。自分を馬鹿にしているのか」
新見が抜いた刀は鋸のようになっていた。
それが新見を深くがっかりさせていた。
愛刀で無いどころか、刀といっていいのかすら怪しい物を支給されたのでは無理も無い。
「ナマクラ刀どころか……鋸。これではやる気も削がれるというものだ。どの道素直に乗る気などないがな。」
新見は刀を鞘に納めると、一度木にもたれ掛かり冷静に思考を巡らせる。
支援
確かにあの場には芹沢さんが居た。それは間違いない。芹沢さんが素直に殺し合いに乗るとは考えにくいが、あの人の性格
を考えると、暴走してしまい周囲に誤解を与えかねない。それでは危険だ。平山も平間も野口も居ない以上、自分しかあの人
の味方になる者はいないだろう。それは不味い。周囲に疑われてはまず間違いなく殺しの標的となり、最後には討ち死にか
割腹の自刃のどちらかの結末しか用意されないだろう。このような狂人のやる事につき合わされて死ぬのは御免こうむる。
そもそも新撰組に芹沢さんと自分が居なくなった後を無事に纏められるような者がいるとは思えん。
そう考えれば余計にこの下らない催しなど早々に中座させて戻らないと不味いな。このような場に長居する事は無い。
自身の行動を纏めると再び足を動かした。
「どちらにせよこの刀では心許ない。どちらにせよ明確な行く先も無い事だ。芹沢さんを探すのと平行して刀を探すか」
行き先の無い旅路。
新見錦の旅路は深夜、森から始まる。
【にノ壱 森の中 一日目 深夜】
【新見錦】
【状態】健康
【装備】無限刃@るろうに剣心
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:早々にこの催しを中座させる。
一:芹沢さんを探しながら刀を探す。
二:まともな刀を手に入れるまでは極力小競り合いを避ける。
*新撰組三局長の頃からの参戦です。
*名簿をしっかりと見ていませんが、OPで芹沢鴨の存在を確認しています。
投下終了です。
乙です
さすが女房役
一方の芹沢は確かに殺し合いには乗ってないがw
乙!
しかし新撰組からの参戦者が、
芹沢、新見、山南、伊東、って面子なのは何か不思議な感じがする。
>>306 沖田も忘れないで><
近藤、土方にも是非出て欲しいが
質問だけど、名簿に載って無くて、没キャラと差し替えて
史実や創作の剣客っている?
まあ、あんまりこう言う事言うときりがなくなるから、
出したいなら自分で登場SS書くって前提の話だけど。
自分は松林蝙也。
ただちょっと書きづらいから出しにくい。
あと、小次郎に合わせて、あと二人ほど武蔵を出したい。
約一名、武蔵とは何の縁もない佐々木小次郎がいるけどなw
しかし、実際に武蔵をあと二人出すとしたら何から出すべきかね?
まー、オーソドックスに行くと「バガボンド」。
少し変化球気味にいけば「魔界転生」。
もはや誰得と言うほど奇をてらえば「石川賢版柳生十兵衛死す」(武蔵が小次郎に負けてる珍しい設定)
他にどんなのがあるだろう?
修羅の刻には剣豪がたくさん出てたな
宮本武蔵をはじめ、宮本伊織とか土方歳三とか坂本竜馬とか
同じ作者の海皇紀にも剣豪キャラがいるけど、どっちからも出てないな、そういえば
>>307 新撰組は永倉がなぜかいないのな。
沖田以上の剣の達人とか、新撰組最強とか言われてるのに。
やっぱキャラ像が曖昧なせいか。
>>308 自分で書くなら烈火の炎の水鏡凍季也
まあ持ち武器が特殊すぎて他キャラに支給されても扱いに困る代物+純粋な剣技が不透明すぎて
剣客といわれると微妙だが
史実組なら師岡一羽とかも出したいけど、
この人逸話少なすぎて正直書くことが・・・・・
弟子の根岸菟角の方が逸話は多いけど、
コイツ所詮三下だしなぁ
史実剣客は名前が有名な割には逸話が少なくて書きにくい奴が多いから困る。
>>311 トゥバン=サノオか。
あの人ジブリロボットとガチバトル出来る逸材だし、
出てもおかしくはないな。
剣桃太郎、坂田銀時投下します
困惑。それが、現在剣桃太郎の抱く感情であった。
自分は七牙冥界闘(バトル・オブ・セブンタスクス)の戦いを終え、黒幕である藤堂兵衛を捕縛して男塾に帰還する途中だったはずだ。
なのに、なぜこんなところにいるのか。
まさか藤堂に一杯食わされ、またしても命を賭けたイベントに参加させられたというのか?
いや、それにしては妙だ。配られた人別帖にあった男塾関係者の名前は、自分と死んだはずの赤石の2人だけ。
塾長である江田島の名前もなければ、伊達やJ、富樫、虎丸といった男塾の中核をなす面々の名前もない。
男塾にただならぬ恨みを持つ藤堂なら、もっと多くの男塾関係者を巻き込もうとするはずだ。
自分を拉致できて、他の連中を拉致できない道理があるとも思えない。
最終的に、彼は今回の件の黒幕は藤堂ではないという結論を導き出した。
ちなみに赤石が生きている件については、またいつものように王大人が蘇生処置を施してくれたのだろうと考えあまり気にしていない。
(さて、どうするか……)
桃は考える。強者と戦えるのは、桃としてもやぶさかではない。
数々の死闘を制してきた彼に、戦いの結果としての殺人を忌避する考えもない。
この殺し合いに真っ向から臨み、最後の一人になるまで戦い続けるのもいいだろう。
だが……。
(気に入らねえ……)
見せしめとして一人の少年を参加者たちの前で殺して見せ、それに使用したものと同じ爆弾入りの首輪で参加者たちを脅す。
そのやり口が、桃は気にくわない。他人を脅して無理矢理言うことを聞かせようとする姿勢が、彼の反骨精神を刺激する。
(そうだな……。戦う意思のない奴にはこちらからしかけない。向こうからしかけてきた時だけ戦う。
まずはこんなところか。出来るならこの面倒な首輪を外してしまいたいが、当てがない……。
参加させられている連中の中には外せる奴もいるかも知れないが、あまり期待しない方がいいか。
まあ、まずは動いてから考えるかな。とりあえず、城にでも行ってみるか)
行李を背負い、桃はとりあえず歩き出す。
まだ漠然とした行動方針しか持たない彼は、他人と接触すれば何かやるべきことが見つかるかも知れないと考えたのだ。
そのために目指すのは城。人の集まりそうな場所だ。
だが城まで行かずとも、ほんの数十秒歩いただけで彼は他の参加者と接触することになる。
「おーい! 誰か! 誰かいないか! 助けてくれー!」
民家の中から聞こえてきたのは、男の声。それは、助けを求めるものだった。
(すでに誰かが戦っているのか? いや、それなら声以外の物音がしないのは妙だ。
それでも、いちおう警戒はしておくか……)
右手に支給された得物を握りしめ、桃は声が聞こえてきた民家に入っていく。
中に入ってみれば、そこはごく普通の日本家屋。特に争ったような形跡はない。
「おーい! 誰か! 誰かいないのー!?」
声が聞こえてくるのは、家の奥からのようだ。警戒を怠らぬまま、桃は奥に進んでいく。
「ここは……厠?」
「おお! 誰かいるのか! 助けてくれ!」
「ああ、ここにいるが……。どうした?」
「紙持ってきてくれ! 足りなくなっちまったんだよ!」
「…………」
まったく予想していなかった展開に、さしもの桃も苦笑いを浮かべるしかなかった。
◇ ◇ ◇
「いやー、助かったぜ。本当にありがとうな。緊張したせいか急に腹が緩くなっちまってな。
とりあえず手持ちの紙使ったのはいいんだけど、拭いた刺激でまた出てきちまって。
あんたが来てくれなかったら冗談抜きであそこから出られなくなるところだったぜ」
数分後、桃は厠から出てきた白髪の男と会話をしていた。
「まったく、たまたま積極的に戦うつもりがない俺が通りかかったからよかったものの……。
声を聞きつけた人によっちゃ、戸の向こうから刀でグサリ、とやられてもおかしくなかったぜ?」
「やべっ、言われてみれば確かにそうだな……。あー、あれだ。人間の自然な欲求ってのは冷静な判断力を失わせるな、うん」
そういいながらボリボリと頭をかく姿は、はっきり言って駄目人間にしか見えない。
だが、桃は彼を見下すどころか一目置いていた。命を賭けた戦場であるこの場で、目の前の男は良くも悪くも自然体だ。
生ぬるい日常を送っていた人間では、こうはいかないだろう。
それにこの男、死んだ魚のような目をしているが、その奥には何か強い志を感じさせるものがある。
「何だよ、人の顔じっと見つめやがって。何かついてるか?」
「ああ、すまない。ちょっとな……。それより、まだ名前を名乗ってなかったな。
俺は剣桃太郎だ。あんたは?」
「俺は万事屋をやってる坂田銀時ってもんだ。銀さんでいいぜ」
「坂田銀時……。昔話の金太郎と一文字違いか……。ははは、こりゃ奇遇だ。桃太郎と金太郎とはな」
「おいおい、人の名前聞いて笑うんじゃねえよ。失礼だぞ、そういうの」
「おっと、そうだな。悪かった」
口元に浮かんだ笑みを消し、桃は真顔になる。
「ところで銀さん、あんたはこの御前試合とやらに乗り気じゃないように見えるが……。実際のところはどうなんだい?」
「ああ、要するに殺し合えって話だろ? 誰がそんなもんやるかっつうんだよ。
俺はバトルマニアとかそういうんじゃないしね。なんで『お前ら殺し合え』って言われて殺し合いやらなきゃいけないんだよ。
そういうのはね、もう人斬りとかそういう奴らだけでやってろと。俺はバトルより自分の家でごろごろしながらジャンプ読んでる方が好きなんだよ。
ああっ! そういや明日はジャンプの発売日じゃねえか! ちくしょう、よりによって日曜日に拉致なんぞしやがってあの親父!
何日も戻れなくて、ジャンプが売り切れてたらどうしてくれるんだー! いや、それ以外の日に拉致されてもそれはそれで困るけど!」
真面目な話だったはずが、徐々におかしな方向に進んでいく銀時の発言。それを聞いていて、桃は思わずその顔に再び笑みを浮かべてしまう。
「銀さん、あんた本当に面白い人だな。今まで俺が会ったことのない類の人間だ」
「おいおい、珍獣扱いですか? 嬉しくないから、そういうこと言われても」
「褒めてるんだよ」
「俺なんか褒めても、何も出ねえぞ? 出るもん全部出した後だしな」
「はいはい、わかったよ」
「だからさー……。なんつうか、その自分は全てを極めた万能系主人公です的な話し方やめろっつうの」
「いや、そんなつもりはないんだがな」
笑みを消さない桃とは対照的に、銀時は仏頂面である。
「そんなことより銀さん、あんたはこれからどうするつもりだい?
俺は積極的に戦うつもりはないんだが、これといった目的がなくて困ってるんだ」
「ん? 俺の目的か……。とりあえずさっさと帰ってジャンプ買いに行きたいんだが……。
何かうちの従業員も連れてこられてるみたいでよ。さすがに置いていくわけにはいかねえから、まずはそいつを捜し出そうと思ってる」
「そうか……。俺もついて行っていいかい?」
「あー、別にいいんじゃねえの? ついてきたいって言ってる奴を断固として断るほど俺も野暮じゃねえよ」
桃の申し入れを、銀時はあっさり快諾する。
「ああ、そうだ。ついてきていいとは言ったが……。お前のほうは探したい相手とかいねえのか?」
「先輩が一人連れて来られてるみたいだが……。俺の助けを必要とするような人じゃないさ。
むしろ前に俺が勝ってるから、この機会に雪辱を果たそうと俺を狙ってるかもな」
「おいおい、どんな物騒な先輩後輩関係だよお前ら」
「まあ、そんなわけでわざわざ探すつもりはない。だからやることが思いつかなくて困ってるんだ。
そんなわけでよろしく頼むよ、銀さん」
「わかったよ、よろしく。ところで剣、あと一つだけ聞かせてもらってもいいか?」
「なんだい?」
「お前がさっきから持ってるそれ、いったいなんだ?」
「ああ、これか。俺の荷物の中には、武器になりそうなものはこれしかなかったんでね」
「いや、武器ってお前……。それ……」
桃が持っていたのは紙を蛇腹状に折り、片側をテープで固定し握りとした物体。
つまり、簡単に言うならば……。
「ハリセンじゃねえかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
【ほノ肆/城下町/一日目/深夜】
【剣桃太郎@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】ハリセン
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者が気に入らないので、積極的に戦うことはしない。
1:銀時に同行する。
2:向こうからしかけてくる相手には容赦しない。
3:赤石のことはあまり気にしない。
4:首輪を外したいが……。
※七牙冥界闘終了直後からの参戦です。
【坂田銀時@銀魂】
【状態】健康
【装備】木刀
【道具】支給品一式(紙類全て無し)
【思考】基本:さっさと帰りたい。
1:新八を探し出す。
※参戦時期は次以降の書き手さんにお任せします。
※人別帖も地図も見ていません。
以上で投下終了です。誤字脱字等ありましたら、指摘お願いします。
桃の気功闘法なら、ハリセンでもまともに戦えるはず……!
乙!
桃太郎と坂田金時か、言われてみればそうだった。
しかし銀さんのノリがちゃんと再現出来てるなぁ。
銀魂のノリは結構文章にするの難しいから、ちゃんと書けるのがうらやましい。
あれ、首輪?
ここの参加者は首輪してるんだっけ?
首輪はしてない気がする
参加者への制裁は果心居士の妖術だからね
言われてみればそうだった。
となると脱出派は果心居士に妖術を破らないといけないのか。
まあ、伊勢守に任せれば機械仕掛けの首輪よりは楽そうだけど。
NIKUcB1AGw氏のは内容的にはほとんど問題ないし、
首輪の所だけ修正してもらえばいいのかな?
上泉信綱と岡田以蔵を投下します。
「ガアアアアッ」「はっ」
森の中に掛け声と鋼の打ち合う音が辺りに響き渡る。
戦っているのはどちらも侍だが、その姿は対照的と言って良かった。
一人は三十前の男で、着物も顔も汚れ切り、浮浪者と区別の付かぬ格好ながら目だけが爛々と光っていた。
男の名を岡田以蔵、人呼んで人斬り以蔵と言う。
対するは六十歳程の身形の良い老人であり、その顔にも所作にも気品が漂っていた。
老人の名は上泉信綱、剣聖と呼ばれた新陰流開祖上泉伊勢守である。
「グアアアアアアアッ」「むっ」
以蔵が真っ向から叩きつけてくる野太刀を信綱が辛うじて受け止めるが、その勢いに押されて体勢が崩れる。
「グウウウウゥ」
以蔵はそのまま体重を掛け、凄まじい強力で刀ごと信綱を圧し切ろうとする。
信綱は手にした刀の頑丈さにも助けられつつそれを凌ぐと、一瞬、以蔵の剣圧の向きを反らし、手首を掴んで投げ飛ばす。
「ギャッ」「くっ」
以蔵は投げられつつも空中から信綱を薙ぎ、信綱は飛び退くが浅く足を切られる。
そして、以蔵は信綱が体勢を立て直す前に宙を転がって地に降り立つと、太刀を構えて突進する。
「ラアアアアアアッ」「やっ……ぐっ」
以蔵の突きを信綱はどうにか逸らすが、太刀の後にやって来た以蔵自身の身体にぶち当たり、跳ね飛ばされる。
上泉伊勢守と言えば日本剣術史上最高の名人との呼び声高い大剣豪である。
無論、岡田以蔵とて相当の達人には違いないが、それでも格に於いては信綱が一段上との見方が一般的だろう。
だが、現実は明らかに以蔵が押し捲り、信綱がやっとしのいでいる有様だ。
剣聖の実力が評判ほどではないのか、あるいは戦国から幕末までの剣術の発展がさしもの剣聖をも追い越したのか。
真実はそのどちらでもない。
剣の道を志し、陰流を始めとする幾つもの剣術流派の奥義を極め尽し、更に工夫を加えて新陰流を興して以来、
天下を巡ってあらゆる奇剣・妖剣、果ては忍術や妖術とも対戦したが、信綱の剣の前に屈さぬ者は一つとして無かった。
以蔵が如何に精妙な術を使おうと、信綱がこうも防戦一方になる事は無かったであろう。
しかし、以蔵は術も技も全く使っていないのだ。
江戸で習い覚えた鏡心明智流も、土佐で師の武市半平太に叩き込まれた一刀流も以蔵の頭からは完全に抜け落ちている。
ただ信綱に向かって真っ直ぐに突き進み、真正面から剣を叩き付ける、ただそれだけだ。
その上、人の心すらも失ったかのように、以蔵は先程から言葉も発せずに獣の如き咆哮を上げ続けている。
敵が技で攻めて来るのならば、その本質を見極め、逆に利用して相手を打ち倒す事が出来よう。
敵に人間らしい精神の働きがあれば、心理戦で動揺させるなり位で押すなりして制圧する手もある。
だが、技も無く心も無く一個の獣と化して向かって来るこの男に対してどう立ち向かえば良いのか。
嘗て剣豪将軍足利義輝に最強の剣を問われた信綱は、
「膂力体格に恵まれた者が大上段から振り下ろすに優る剣は無い」
といった趣旨の答えを返した事がある。
信綱が戦っているのは正にその最強の剣の具現、剣聖の唯一の天敵とも言う可き存在なのである。
苦戦するのも当然と言えよう。
(やむを得ぬか……)
遂に信綱は或る決意を固める。
信綱は新陰流を興すに際して特に陰流をその基としたが、全ての技を忠実に移植した訳ではなく、改変した物もある。
その一つを改変前の、即ち陰流の型で使う事にしたのである。
「はあっ」
気合いと共に信綱は突進して来る以蔵に向けて刀を投げ付ける。
しかし、手元が狂ったのか刀は以蔵の頭上を抜け、後ろの樹に峰を上にして深々と突き刺さる。
そして、信綱は投げた刀の鞘を構えると空に跳んだ、それも一丈余りの高さ迄も。
これこそが陰流奥義猿飛……信綱の師である愛洲移香斎が鵜戸明神より授けられた秘技である。
新陰流にも同名の猿飛と言う型はあるが、これとは全く異なるものに置き換えられている。
それは陰流猿飛の前提となる超人的な跳躍力がた易くは身に付けられないという理由もあるが、
何より信綱が陰流猿飛を使用者を危機に陥れかねない邪剣と判断した為である。
敵が猿の如き跳躍力で周囲を跳び回り、或いは頭上から襲われれば確かに大抵の剣客は動揺し、隙を生ずるだろう。
だが、もしも敵がこちらの動きに惑わされず、冷静さを保ったままであったら……
その危惧が今、実現しようとしていた。
以蔵は信綱の思いがけない動きに驚く事も焦る事も無く、頭上の信綱を得物ごと叩き斬らんと渾身の一撃を叩き込む!
ガキッ!
鈍い音と共に二つになった鞘が弾け飛ぶ。
だが、刃は信綱にまでは届いていない。
もしも信綱の手に有ったのが尋常の鞘や刀であれば信綱自身も諸共に斬られていただろう。
支給された鞘が並外れて頑丈だったからこそ、己が破壊されるのと引き替えに信綱の身を守りきったのだ。
そして、信綱は以蔵の斬撃の勢いを利用して更に跳び、先ほど飛ばした刀の峰の上に着地する。
以蔵も素早く振り向いて樹に刺さった刀を握るが、その前に信綱は更に跳躍を繰り返して木々の中に消えて行った。
「グオオオオオオオッ」
信綱に逃げられた以蔵が苛立ちの余り樹から引き抜いた刀をその樹に叩き付けると、凄まじい音がして樹が倒れる。
切り倒されたのではなく、衝撃によって幹が砕かれたのだ。
如何に以蔵が怪力であってもこの腕力は尋常ではない。
胸の奥で燃え盛る昏い炎が以蔵の潜在能力を解放し、普段の数倍の筋力を発揮させているのだ。
岡田以蔵は土佐の足軽の家に生まれたが、同じく土佐の郷士である武市半平太に出会って運が開けた。
半平太は以蔵の剣才を見込んで引き立て、それから以蔵は剣術修行や尊皇攘夷活動を半平太と共にする。
以蔵はその凄まじい殺人の技で志士達の間で知らぬ者の無い程に名を馳せたが、それは飽くまで人斬りとしての名だ。
志士として恩人半平太を助けているつもりだった以蔵本人と世間との溝は余りにも深かった。
土佐に政変があって捕えられ、厳しい拷問を受けても志士を自認する以蔵は決して口を割らなかったが、
半平太や志士達は以蔵が自白して自分達の身に危難が及ぶのを恐れ、毒殺しようとした。
以蔵の鍛え抜かれた身体は毒にも耐えたが、敬愛する半平太に疑われ殺され掛けたことで以蔵の心は呆気なく壊れた。
その後どうしてこの場に連れて来られたかも、あの男が言っていた御前試合云々の話も、以蔵は殆ど理解してない。
ただ判るのは、自分を此処に連れて来た連中も、自分を尊皇の志士ではなく人斬りとしか見ていないという事だ。
(いいだろう、殺してやる。こうなったら誰も彼も、みんなぶち殺してやる!)
自分に全てを与えてくれた人に裏切られた以蔵は、皆が期待する通りの人斬りになる事を決意していた。
何も考えずに剣を振るい参加者も主催者も、いや、地上の生けとし生ける者を殺し尽してくれようと。
獣は行く、獲物を求めて町へと走る。
【へノ弐 森の外れ/一日目/深夜】
【岡田以蔵@史実】
【状態】狂乱状態
【装備】野太刀、研無刀
【所持品】なし
【思考】
基本:目に付く者は皆殺し。
【備考】
※死亡直前からの参戦です。
※狂乱によって一時的に身体能力が上がってます。
ヘノ弐の森の中に岡田以蔵と上泉信綱の支給品一式が入った行李が放置されています。
sien
(これが兵法天下第一と称された剣客の姿か)
傷を負い、武器を失い、捨てた筈の邪剣を使って漸く逃げ延びた己を信綱は自嘲する。
「あのような者を救えずして、何が活人剣か」
信綱の眼は、以蔵が生まれ乍らの獣ではなく、その胸の奥に強い哀しみと怒りが渦巻いている事を見取っていた。
信綱はそうした強すぎるが為に苦しむ者を弱くしてやり、救う事こそ兵法の意義だと考えている。
それなのに自分はあの苦しみ悶える獣を救ってやる事が出来ず、無様に逃げてしまった……
「だが、このまま放っておく訳にはゆかぬ」
以蔵は己の身体への負担を省みず、持てる力を全開にしていた。
あの調子で暴れ続ければ遠からず身体が耐え切れなくなり、己自身の力によって死に到るだろう。
その前に何とかして止め、救ってやらなければ……それがどんなに困難であっても。
そして、救うべきはどうやらあの男だけではなさそうだ。
あの白洲……この御前試合の参加者が集められた場には強い哀しみ、苦しみ、狂気が渦巻いていた。
それらについても出来る限り晴らしてやりたいと、信綱は考えている。
(これは我が人生でも最も分の悪い勝負になりそうだが……何としても勝ってみせる)
勝負……そう、信綱の最終目標はこの御前試合での勝利、剣聖はこの戦いに乗ったのだ。
と言っても、他の参加者を殺そうと言うのではない。
相手を殺さず、制して負けを認めさせる事を繰り返して優勝しようと言うのだ。
そのような優勝を凄惨な殺戮劇を望んでいるであろう主催者が認めるか……認めさせてみせる。
新陰流が活人剣を標榜している以上、新陰流開祖である信綱が行くべき道はそれ以外に無い。
単純に参加者を皆殺しにして優勝するより、主催者を倒すよりも遙かに険しいこの道を信綱は選んだ。
手に武器は無く、足の傷は無理な跳躍を繰り返したせいでかなり悪化している。
そして何より、今の信綱はたった一人の参加者にすら敵わず、命からがら逃げ出してきた身なのだ。
どう考えても絶望的な戦い……それでも信綱の決意は微塵も揺らがない。
悲壮な決意を胸に、剣聖は再び歩み始める。
【ほノ壱 森の奥/一日目/深夜】
【上泉信綱@史実】
【状態】健康、足に軽傷
【装備】なし
【所持品】なし
【思考】
基本:他の参加者を殺すことなく優勝する。
一:あの男(岡田以蔵)をなるべく早く見付けて救う。
【備考】
※岡田以蔵の名前を知りません。
投下終了です。
乙!
以蔵はバーサーカー状態か。
支給品の研無刀も、今の以蔵が使ったら鎧武者相手にしても
兜ごと砕きそうだな。
それと伊勢守。
敗北してもこのカリスマ、やはり剣聖は格が違った
投下乙です
剣聖を圧倒するとは……以蔵恐るべし
それと首輪の件ですが、てっきりあるものと思いこんでいました
本文中の
>見せしめとして一人の少年を参加者たちの前で殺して見せ、それに使用したものと同じ爆弾入りの首輪で参加者たちを脅す。
を、
>見せしめとして一人の少年を参加者たちの前で殺して見せ、逆らえばお前たちもそうなるのだと参加者たちを脅す。
に訂正。
>出来るならこの面倒な首輪を外してしまいたいが、当てがない……。
>参加させられている連中の中には外せる奴もいるかも知れないが、あまり期待しない方がいいか。
の部分と、状態表の
>4:首輪を外したいが……。
の部分を削除させてもらいます。
334 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 23:03:46 ID:oCacTobb
投下乙
なんという枷を自分に課すのだ!でもそこに痺れる憧れる!!
妖術忍術の当たりでほくそ笑んでしまった。
ところで、登場話の限度というか、最終的な〆切日ってあったっけ?
思ったより投下量が多いから、登場数には一応上限を定めた方がいいかも。
一応〆切は1月末日ってことになってるけど、
それはもっと投下数が少ないと思ってたからだし
個人的には
キャラ上限>70
締切>1月20日まで
を提案してみる
>>336 候補出尽くしても89人だから、上限設ける事無いんじゃないか?
テスト版で締め切りだけ一月末(正月考慮)って決まってたと思うし
まあ、そうかな。
じゃあこれまで通りで行きますか。
所で、現地調達装備で火縄はあり?
近代兵器は論外としても、
種子島、短筒、パーカッションリボルバーあたりは、
1つか2つくらいなら「銃無双にならない」かつ「展開の幅を増やせる」で、
個人的にはありだと思うけど。
拳銃は最後の武器だ!ってどっかの忍者が言ってた
>>339 忍者部隊月光とかwwwww
一体いくつだよwwww
まあ、ロワのコンセプトには反してると思うけど、
シグルイの藤木みたいに史実剣客でもやり方次第じゃ銃使いを倒せない事もないし、
三匹とか普通に火縄使い出てくるし、まだ参戦してないが秋月耀次郎みたいに拳銃使い相手に勝った
奴もいないではないし、ありっちゃありだとは思う。
「貴様、火縄に頼るとは卑怯なっ」
「ふははは、勝てばよいのだ」
ドキューン!
てな展開も出来るし
個人的には銃はやめといた方がいいと思う。
強すぎるとかじゃなくキャラクター間のカタログスペック上の違いを顕在化させる危険がありそうで。
参加(候補)者の中には本編で銃器を一蹴してるキャラもいれば短筒にすら勝てないキャラもいる訳で、
そういうカタログスペック上の格差を誤魔化して互角に戦わせるには銃は無いほうがいいんじゃないかと。
>>341 キャラA>>(銃の壁)>>キャラB
みたいな力関係が顕在化してしまうってことか。
なるほど、それは考え付かなかった。
てかそもそも、江戸以前の火縄銃だとか短筒だとかって、別に決定的な武器でもなかんべ。
命中率も殺傷力もそんなにないし、連射も出来ない。
幕末期からガトリング砲を、とかでもなきゃ。
銃もだけど、弓矢とか槍とか薙刀とかサーベルはどうだろ。
薙刀や槍はある程度の心得がある人もいそうだけど
個人的に薙刀、長巻、槍、十文字槍、弓はありだと思う。
伊勢守、卜伝といった戦国剣豪はたいがい、そっちでも達人級
るろ剣居るからガトリング出てもおかしくはないな
拳銃もありか?現代人がいるし
出したい?
自分の意見としては、銃器を出すとするなら、
・種子島
・短筒
・パーカッションリボルバー
までだと思う。しかもそれぞれ1丁ずつで、
これ以上になると銃無双になりかねないし、
何よりロワの趣旨の反してると思う。
その代り、銃器火器以外の武具は何でも出すって方向でいいんじゃない?
薙刀、野太刀、長巻、槍、十文字槍、鎖鎌、長弓、短弓etc、etc・・・
他ロワで剣客を女子高生が不意打ち射殺であっさり倒しちゃったのを見るとねぇ。
>>349 あれはキャラ自体が荒らしに目をつけられてたみたいだし、
そのせいじゃないかとも思う>剣客を女子高生が不意打ち射殺
それじゃ、火器は無しの方向で行きます?
同意
手裏剣とか吹き針までか?
個人的には火器も飛び道具も無しのほうがいいな。
鎖鎌みたいな鎖モノや縄モノくらいを、武器の間合いの上限にしたいところ
>>352 手裏剣は脇差投げるとの事実上同じだし、良いんじゃない?
弓や弩になるとアウトかもしれんけど
それと質問。
・本業忍者、ただし武蔵の弟子で二天一流の使い手
ってキャラはこのロワ的にあり?
>>347 出したくはないかなあ
なんか、銃っつーと主催戦でってイメージ
>>354 基本、候補の中からじゃなかった?
>>355 いや、創作組で「鬼哭街」の二人分の枠が新たに空いたので
まあ、具体的に言うと、
このキャラを差し替えで出すのはあり?
【名前】筏織右衛門
【出典】忍びの卍
【性別】男
【所属流派】二天一流
【解説】
伊賀忍者。活動時期は寛永期。
武蔵の弟子で、外見も武蔵に酷似している。
作中最強の剣の腕を持つ。
愛妻家。また根は真面目だが意外とお茶目。
忍法「任意車」を使う。
★忍法任意車 - 性交した女性へと織右衛門の精神が憑依する忍法。
憑依対象が死亡した場合、魂が肉体へ戻り元の織右衛門が復活する。
使用者を不死身とする無敵の忍法だが、
憑依中本体が仮死状態となる、
一昼夜を過ぎると媒介となる精子が胎内で死亡するため効果が切れる、
という2つの欠点を持つ。
効果切れの場合は魂が織右衛門の肉体へと戻り、
憑依中の記憶を持たない状態で憑依対象が覚醒する。
もう忍者という肩書きがあるから違う気がする
359 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/04(日) 19:37:26 ID:ziWhINGM
るろ剣斎藤希望
>>358 まあ、そうだよな。
女少ないから任意車も活かしきれないしね。
個人的にはギャルゲロワみたいな女性キャラ多め、恋愛関係多めのロワに
織右衛門を放り込みたい。
誤解フラグ&修羅場量産マーダーになってくれそう。
個人的には把握が大変だから、あんまりガンガン入れ替えられると困るな
それはそれとして、土方歳三、志々雄真実予約します
>>361 まあ、それもですね。
入れ替えるなら史実優先かな、把握も楽だし
史実組はwiki程度の知識でいいのだろうか?
通説とちょっと裏話、フィクション…ぐらいの知識しかなくて二の足踏んでるんだけど
戦国系の剣豪とかはそもそも史料が少ないから、もともとある程度想像で書くしかない。
例えば柳生十兵衛は知名度、時代小説での登場率ともにトップクラスだけど、
実は史料が少なくて実際何をやってたのか、どういう人物なのか、なんて事はほとんど解ってない。
(そもそも本当に隻眼だったのかどうかすら定かでない)
だからぶっちゃけ自分のイメージで書けばいい。
新撰組とか近代の人々は逆に史料が多めだから少し注意がいるかもしれない。
まあ、でもある程度はイメージで書いて問題ないと思う。
>>363 それで十分かと。
斉藤伝鬼坊、石川五ェ門、細谷源太夫で予約します。
まあその新選組、例えば沖田にしても現在通説となっている美剣士というイメージ自体、
司馬遼太郎の小説とその映画から生まれたもので、攘夷派 (体制) マンセーだった戦前
までは、そのほとんどが、 「新選組 = 血に狂った殺人狂」 だったりもするしね。
んで、それら通説にあるフィクションのイメージに染まる以前の新選組研究の沖田はと
言うと、「浅黒くて出っ歯の平目顔」 というのが有力らしいという。
だから、流派とか実際の記録として残っている事実関係とかを大きく逸脱しなければ、
ロワ内で巧く(面白く)使えるイメージで作っていって良いんじゃないかしら。
ああ、イグニス書きてえが時間がねえ…。
日本国籍所持者というぎりぎりの
ボーダーラインなだけに反発もありそうだが。
佐々木小次郎が「前髪立ちの美形の優男」ってのも、
吉川英治の創作だしね。
荒木又右衛門の「三十六人斬り」も講談の創作で、
実際は2人しか斬ってないらしいし。
まあ、でもそんなこと言い出したらきりがないし、
明らかに変じゃないなら面白ければ何でもいいや。
亀だけど
>>310 「YAIBA」に出てくる400歳の二頭身武蔵も面白いんじゃないかな
あと既出以外では「MUSASHI-GUN道-」や「地上最強の男・竜」のイエス(偽)の配下とか
誰得しか思いつかないが
あとは誤解誘いの「龍がごとく」の桐生一馬之介(本名:宮本武蔵)
土方、志々雄、投下します
しえん
ろノ漆。分かれ道に置かれた道祖神の前で、全身に包帯を巻いた異様な風貌の男が月を見上げていた。
「いい月だ……。こんな月の綺麗な夜に酒も煙草も用意してくれねえとは、あの親父も気が効かねえ」
おのれに支給された脇差をもてあそびながら、包帯男は呟く。
「なあ、あんたもそう思わないか?」
ふいに、包帯男は視線を背後に向けた。そこには、一人の男が立っていた。
この場にいる人間の中では珍しいことに、和服ではなく洋装に身を包んでいる。
「確かにそうかもな」
微笑を浮かべながら、洋装の男は相槌を打つ。
「ところで包帯の兄さん、一つ訊きたいんだが……。ここは地獄か?」
「おいおい、藪から棒に何を言い出すんだ?」
「なに、俺はたしか、腹を撃ち抜かれて死んだはずだったんでな。
おまけに人別帖を見てみれば、沖田に芹沢、伊東、新見と俺より先に地獄に行ったはずの連中が名前を連ねてやがる。
それどころか、宮本武蔵だの佐々木小次郎だの大昔の剣豪まで載ってるときた。
ここまできたら、死人の世界としか思えねえだろう」
「なるほど、人別帖とやらはまだ見てねえが、そんな面白いことになってるのか……。
確かに、それならここは地獄かも知れねえな。となると、これは閻魔の御前試合か?」
「だとしたら、閻魔大王も酔狂なこった」
二人の男は、目を合わせて共に笑う。
「さてと、それじゃあ……」
「やるか」
共に、最初から殺し合う気は十分。ゆえに、意思確認も必要ない。
包帯男は脇差を、洋装の男は木刀を構え、名乗りを挙げる。
「元新撰組副長、土方歳三」
「元長州派維新志士、志々雄真実」
しばしの静寂。それを破り、先手を取ったのは土方。
「やっ!」
気合いの雄叫びと共に、土方は突きを繰り出す。鍛え抜かれたその力と技は、木刀であっても十分な殺傷力を持つ。
だが志々雄は、それを紙一重で回避。同時に、自らが手にした脇差を横になぐ。
土方の顔に、刃が迫る。しかし土方もまた、志々雄の一撃を見事にかわして見せた。
一撃目は、共に空振り。すぐさま次の攻撃に移ろうとする土方だが、その眼前で突如志々雄は構えを解く。
「やめだ」
「やめだと? どういうつもりだ!」
眉間にしわを寄せ、土方は荒々しい口調で志々雄を問いつめる。
「今のだけでも、あんたが本気で戦うに値する腕前だってのはわかった。
だからこそ、お互いこんなちゃちな得物でやり合うのは惜しい。
もっと良い刀を手に入れて、また出くわしたら……。その時に改めてやり合おうぜ」
土方の意思を確認することもなく、一方的に告げて志々雄は刃を収める。そして、そのままその場を立ち去った。
土方はそれを追うことなく、黙って見送った。
「面白い……! ここには、あんな奴がごろごろしているのか……!」
やがて志々雄の姿が見えなくなると、土方は狂気じみた笑みを浮かべて呟いた。
刀では近代兵器に勝てぬ。刀の時代は終わってしまったのだ。そう諦めていた。
だがここは、古今東西の剣豪たちが集う場所らしい。すなわち刀こそが力。剣術こそが力。
これこそまさに、土方が憧れた「侍」の世界ではないか。
死人への冥土の土産としては、身に余る光栄と思えるぐらいだ。
「閻魔大王だかあやかしだかわからないが……。俺をここに呼んでくれた奴には感謝させてもらおう。
ここなら俺も……侍として死ねる……!」
かつて鬼の副長と呼ばれた男は、まさに鬼神のごとき表情を浮かべていた。
【ろノ漆/道祖神の前/一日目/深夜】
【土方歳三@史実】
【状態】健康
【装備】木刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:全力で戦い続ける。
1:強者を捜す。
2:刀を手に入れる。
3:志々雄と再会できたら、改めて戦う。
※死亡後からの参戦です。
※この世界を、死者の世界かも知れないと思っています。
一方、土方の元から去った志々雄も、顔に狂気の笑みを浮かべていた。
「新撰組副長、土方か……。噂以上の手練れだな。抜刀斎以外にも、俺が本気を出したくなる剣客がいるとは思わなかったぜ。
おまけに、宮本武蔵や佐々木小次郎だと? そいつらが本当に伝承通りの強さかどうか、この目で確かめられるってわけか。
クククク……。死んだ後は閻魔相手に地獄の国盗りだと思っていたが、これはこれで楽しいじゃねえか!
ハーハッハッハッハッハッハ!!」
誰かに聞かれるかも知れないなどと考えることもなく、志々雄は力一杯笑い続けた。
【ろノ陸/街道/一日目/深夜】
【志々雄真実@るろうに剣心】
【状態】健康
【装備】脇差
【道具】支給品一式
【思考】基本:この殺し合いを楽しむ。
1:刀を手に入れる(出来れば無限刃がほしい)。
2:強者と戦う。
3:土方と再会できたら、改めて戦う。
※死亡後からの参戦です。
※人別帖はまだ見ていません。
短いですが、以上で投下終了です
土方さんはフィクションというか漫画だと荒々しい口調が多いので、そのイメージで書いてみました
乙!
どっちもそれっぽくていいですね
神谷薫、座波間左衛門投下します。
人という生き物はそれが『善』と呼ばれるものであれ、『悪』と呼ばれるものであれ
どちらと線引きする事が難しいものであれ、須く欲望に突き動かされて生きている。
それを以下に制するかが人の道といえども、それに流されるままという者の多い事、多い事。
百八の煩悩という言葉に喩えられるように、その形は人によって千変万化。
人倫に悖ると言われるものも、他者からは到底理解できないものも多々ある。
ここにいる一人の男も、自らの欲望に振り回されて生き、そして死んだ筈の人間である。
彼の抱く欲望は、天下無双の称号を手に入れようなどという事に比べれば些細なものなのかもしれない。
だが、その欲望が人倫からも、常識からも大きく外れたものだったとすれば――――
□
水面に写る月影を万華鏡のように千変万化させ、滔々と流れる川の水面にかかる一本の橋。
架けられてから幾久しいのか、橋面の板が所々腐食し、欄干に塗られていたと思しき、丹も
殆ど剥げ落ちて、僅かに痕跡を残すのみ。この夜の闇ではまったく確認する事はできない。
宇治の橋姫、一条戻り橋などの故事に代表されるように、橋というものは古来から
向こう岸だけではなく、『あの世』と『この世』の接点としても畏れられてきた霊域である。
闇の中、川のせせらぎのみが辺りに響き、この場が酷く不気味に感じられるのは、ここが
凄惨な殺し合いの舞台となっているためというだけではあるまい。
そんな、異界との渡し場に佇む人一人。まだ、年のころはまだ16、7。長く、たおやかな
黒髪を後ろで結い、一見、この暗く寂しい川辺にも、凄惨な殺し合いの場にも似つかわしくない
可憐な少女である。しかし、その佇まいはあくまで『凛』。本来艶やかな着物に包まれている
肢体に、今は道着を纏っている。彼女こそ、明治の東京で『剣術小町』の異名をとる、
神谷活心流師範代、姓は神谷、名は薫という。
「まったく…この文明開化の御時勢に御前試合だなんてなに考えてるのよ、あのおっさん!
しかも剣術を殺し合いの道具に使えだなんて…。許せない!」
いきなりこのような場に連れてこられ、混乱してはいたものの、薫の感情をまず支配したのは怒り。
彼女の父が創始し、彼女が受け継いだ流派・神谷活心流は『人を活かす剣』即ち、活人剣である。
相手を殺すのではなく、制する事が最大の極意。その精神も受け継いだ彼女がこの殺し合いを
受け入れる筈もなかった。それに、あの白州の場で殺害された少年、雰囲気こそまったく異なっては
いたが、彼と自分の門弟であり、家族である少年が重なった。おそらく彼も剣の道を志し、これから
羽ばたこうとする、若き剣士の一人だったのだろう。この事も、さらにあの二階笠の男に対する怒りを強くしていた。
それにしても、江戸幕府が武士とともに滅び、明治の世になって、はや十年。この御前試合とやらも、
あの二階笠の男の身なり、話し方も時代錯誤もはなはだしい代物。しかも、辺りを見渡した際、目に
入った他の参加者も殆どが和装で、曲げまで結っている者が多かった。さらに殺し合いの舞台となっている
広大な土地…、石動雷十太のような復古主義者や、志々雄真実のような危険思想の持ち主がお膳立てした
ものだとしても、政府の目を盗んでこれだけの大事を成し得るものなのか。さらに、これまで自分が
出会ってきた剣士たちや、白州の場にいた顔ぶれの気迫…。二階笠の男は古今無双の武芸者をここに
集めたと言うが、その中にあって明らかに自分は力不足、そんな自分がこの場に放り込まれた訳は…。
「とにかく…今はうだうだいっててもしょうがないわ。もしかしたら…いや、きっと剣心や斎藤なんかもここに呼ばれている筈。」
自分などが参加させられているのだ。恐らく、自分など及びも着かないの実力をの持ち主である
居候であり、仲間であり、想い人・緋村剣心や元新撰組三番組長・斎藤一がいないはずがない。
誰よりも密接な間柄であり、『不殺』の志を掲げる剣心がこの殺し合いに乗るなど、天地がひっくりかえってもありえない。
斎藤一も少々、いやかなりいけ好かない人間ではあるが、性格上、この殺し合いに乗るとは思えない。
一匹狼かつひねくれた彼のな性分ゆえ、協力を得るのは難しいかもしれないが、接触を図って損は無い。
あの二階笠の男たちの下へ殴りこみ、この悪趣味な催しを台無しにする事も可能なはず。
「まずは…うん、剣心を探さないと!確か、行李に人別帖が入ってるって…」
あの男の言う事が真実ならば参加者の名を記した人別帳と、おのおのの武器が行李の中に入っていると聞く。
まず、この二つを確認しなければ。最低限、身を守るための武器ぐらい持たねば、移動もままならない。
「え〜と、…あった!これが地図と、人別帖ね…あと武器は…あれ…?」
「そこな娘御…。」
と、しゃがんで行李を覗き込んでいると、ふいに背後に気配と男の声。
思わず、びくりと肩を震わせ、おそるおそる振り返ると――
「…っ!?」
その場に屹立する男の姿を見て薫は言葉を失った。
年のころは三十にさしかかったあたりと言ったところであろうか、やはり月代を剃って髷を結い、
痩身の体には、百石取り辺りの下級武士の平服を纏い、襷がけ、腰に挿すのはやや厳しい作りの
太刀であろうか。だが、最も目を引くのはその顔。月明かりによく映える色白の肌にまるで
子供が筆でめちゃくちゃに落書きでもしたかのように、大小様々の刀傷が縦横に走ってた。
以前目にした、四乃森蒼紫配下の隠密・式尉のそれよりも更に痛ましい。そして、その男の
自分を見下ろす目――――その瞳にはまるで野生動物が得物を狙うような鋭い光と、
それと相反するどす黒い闇を湛えている。
(殺される!)
体勢が体勢ゆえ、反抗する事も、逃げ出す事も難しい。薫の顔が恐怖で引き攣る。
(…剣心!)
が、男は自分に切りかかろうとはせず、ゆっくりと口を開いた。
「そのようなところでしゃがみ込んでいては、危ないのではないのかな?」
「へ…、え、あ…ありがとう…ございます。」
毒気の無い言葉に思わず拍子抜ける。双眸の危険な色も、先程とは違い見られない。
自分の思い過ごしだったのか?
「申し遅れた。某は、駿河大納言家中、座波間左衛門と申す者。よろしければ名をお聞かせ願いたいのだが…。」
「あ、わ、私は神谷活心流神谷薫と…申します…。」
語り口も温和で紳士的。自分を油断させるつもりなのでは?という懸念もあるが、ここで名を明かすのも渋っても
逆に自分が怪しまれると思い素直に名乗る。それにしても、駿河大納言…とは?旧士族だとしても、たしか
駿府は幕府の天領であり、代々守護代が置かれているだけ、城中に在勤しているのも直参の旗本だ。それに
武家で大納言などという高位に就けるのは、武家でも御三家級の高貴な身分に限られていた筈。果たして、
そんな人物が駿府城代を努めたことがあったか…。
「かみや…かっしん流…?はて、聞かぬ流派だが。」
思案している最中に間左衛門から次の句が飛び出す。貧乏道場の零細流派とは自覚しているが、
こうあからさまに無名あつかいされると流石に気分のいいものではなく、思わず薫の頬がムッと膨れる。
「あ、ああ?これは失敬、失敬…薫殿と申されたか、御無礼の段、お詫び申し上げる」
慌てて間左衛門が、頭を下げた。やはり、そこまでの悪党や戦闘狂の類には思えなかった。
「あ、い、いんです!そんなに気を使わなくても…。実際、門弟二人の貧乏道場ですし…。」
「いやいや、そのような。規模は小さくとも志さえ高ければ剣法に貴賤はござらん。」
間左衛門の気遣いに薫は思う。やはり、この人物は信用していい。
彼の語る素性についてはどうも腑に落ちないところがあるが、身形を見るに
恐らく旧幕臣で、いまだ政府に追われており素性を隠す必要があるのか…
顔の無数の傷も、戦傷によるものというよりは…一度捕縛されて酷い拷問でも受けたのだろうか?
気にはなるが、剣心の十字傷の由来すら知らないのだ。見ず知らずの相手にこのような事を
尋ねるのも失礼と言うもの。今は触れないでおこう。
「ところで薫殿はこの試合に乗るおつもりですかな?」
「!?…とんでもない!私は絶対、こんな狂った事、止めて見せます!活人剣・神谷活心流の名にかけて。」
間左衛門からの質問に、薫は強く答える。それを聞きふむ…と、間左衛門はあごをなでた。
「いや、それを聞いて安心し申した。某もこのような事態、寝耳に水。乗るつもりは毛頭ござらん。」
よかったぁ…―― 一瞬だが、いぶかしむような表情を浮かべた間左衛門に戸惑ったが、やはり彼は乗るつもりは無いらしい。
そうと決まれば話は早い。薫は身を乗り出すようにして間左衛門に尋ねた。
「あの、私、人を探しているんです!」
□
「緋村…?いや、某がここに来てよりお会いしたのは、薫殿がはじめてだが…。」
「…そうですか…。」
がっくりと頭を垂れる少女の顔を間左衛門はまじまじと見つめていた。
やはり美しい。積年の想い人・叔母なお女や従妹きぬのような洗練された艶麗さはないが、
それとは別の、春一斉に萌えいずる若草のようなみずみずしさ、まだ幼さの残る
天真爛漫な表情、その中に垣間見える凛とした雰囲気。そして、想い人が行方が
何一つわからなかった事に対する落胆の表情――――全てが可憐で美しい。
それに伴い間左衛門の心に沸々と湧き上がる感情とともに、再びその瞳が
獣のような鋭さを宿した。
(斬られたい、この娘に…全身、血まみれになるまで…。沈めたい、そしてこの娘を血の海に…。)
□
座波間左衛門は薫が生きる明治の世から遡る事、二百八十年ほど昔、慶長年間の駿府の武家に生を受けた。
故あって故郷を出奔し、天道流の免許皆伝と言う、その剣を腕を持って伊賀藤堂家に仕官したが、
そこも逐電、しばらく流れ流れて生国に戻り、この「死合」の主催者・駿河大納言忠長に仕官した。
彼がこのように波乱万丈の半生を辿る羽目になったのには大きな原因がある。
即ち、彼が齢九つの時、憧れの叔母なお女に折檻されてから目覚めた、男女問わず
美しい者に傷つけられたいと言う欲望。そして、大坂の陣において、紅顔の美少年と
刃を交えた事に端を発する、さらにそれを切り伏せたいという欲望。
本人も何度と無く矯正しようと試みたがついに敵わなかず、あまつさえ、
この欲望を満たすための手段として、今川流受太刀なる奇剣まで学び取った。
その邪悪な欲望はすべての発端となった叔母の生き写しに成長した、幼馴染で従妹のきぬへと向けられる。
彼の夫、久之進を奸計にかけて斬殺し、その仇討ち試合を挑ませ、彼女に斬られ斬られようとしたのだ。
だが、至上の快楽の中、恍惚状態に陥った間左衛門は、衆目の中、きぬの薙刀一閃、己の血と脳漿に塗れ
地に臥し、二度と起き上がる事はなくなった―――――――――はずであった。
支援
規制\(^o^)/
しばらく様子見ます
用事があるんで、四時までに再開できなければ夜になるかと
□
恍惚の極、甘美な陶酔とともに確かに自分は斃れたはずであった。
ここは、六道の巷であろうか?あの二階笠の男の言から察するに修羅道へと堕ちたか。
否、あの二階笠の男は自分もよくその名を知る人物。
(柳生但馬―――か。)
一度だけ、大坂の戦場で、先の征夷大将軍・徳川秀忠とともに、藤堂家の陣屋に巡検に来たのを、
遠めながら間左衛門は目にしていた。あれから十年以上が経ち、だいぶ老け込んではいたが、
顔立ちと紋所、そして未だ衰えぬ剣気、まぎれもなくあれこそ柳生但馬守宗矩。やはり、ここは
まぎれもなく現世なのであろう。だとすると、俺は一体どこでどう罷り間違って、ここへ舞い戻り
こんな死合に参加しているのか。とりあえず行李を開け、かなりの名品と思しき太刀と人別帖を
取り出し、これを月明かりに照らし出して驚いた。塚原卜伝に上泉伊勢守―とうの昔に泉下の住人と
なった剣聖、剣豪の名。普通ならば、騙り者と一笑に臥すだろうが、自分がこうして生きている
以上、おそらく彼らも本物。どういうわけで、自分たちが蘇ったのかは皆目見当がつかない。
ただ、そんな事よりも彼の思考を占める事は一つ。
(今わの際に、あれだけの快楽を味わったのだが―――やはり、煩悩というものは無尽蔵。)
あの白州の場で何人か、際立った容姿の者たちを彼は見つけていた。
変わった髪の色をした、少女のように瀟洒な少年。
女だてらに道場着に身を包んだ、まだ年端のいかない少女。
まだ少年の面影が残る、変わった月代の青年。
但馬の言によれば、彼らは皆、無双の達人だと言う。
きっと、今までとはまた違った興奮を自分に与えてくれるに違いない。
間左衛門の身体が熱を帯び、思わず生唾を飲みこむ。
元より、この試合に勝ち残る事など端から考えていなかった。
彼の思考を支配するのは渦巻くどす黒い欲望。
(彼らに切られ、斬りたい。)
一度死んでまで、歪んだ欲望に忠実な自分に対し、間左衛門はどこか寂しげな自嘲の笑みを浮かべた。
「ああ、そうか――俺はきぬ殿に斬られはしたが、斬ってはいなかったのだな。」
勝者への褒美として、きぬとの再戦を申し入れるのも悪くない。
一人、納得したかのように手を叩くと、目の前の道を西へと歩み始めた。
□
そうして、彼はこの可憐な少女・神谷薫と出会ったわけである。
武器も持たない、彼女にいきなり切り捨てるのは自分の本意ではない。
まずは適当に声をかけ、彼女に自分と立ち合うようしむけねば。
「ところで、そなた、得物はどうなされたのかな?見たところ、何も持たぬようだが。
「え?そ…それが、その…今、行李を覗いたんですけど…これは得物なのかなぁ…と思って。」
そういいながら、彼女が取り出した者を見て、間左衛門は唖然とする。
なんと、行李に入っていたのはなんの変哲も無い扇子が一本だけであった。
護身武器として広くしられる鉄扇ですらない。薫がおもむろに広げてみれば、
白い紙に「正義」の二文字が大書してあった。
「なんと…無体な事をなさるものだ…。」
間左衛門が嘆息する。これでは…これでは、彼女に斬られ、斬るという彼の欲求を満たす事は到底
不可能だ。かといって、このまま放置すればすぐにこの島に蠢いているであろう剣鬼の餌食になる事は明白。
ならば――――
「わかり申した。この、座波間左衛門、武士として女人を丸腰でこのような場所に一人にする訳には参らぬ。
その緋村殿とやらと、薫殿の得物になるようなものが見つかるまで、この剣に誓ってお守り申そう。」
これだけの美少女、さらに剣技にも長けていると言う「逸材」を失うのは惜しい。
是非とも、自分の手で斬りたい。こう考えた間左衛門は、薫に同道を申し出た。
「本当!?あ、ありがとうございます!!」
ころころと表情変わる御仁だ―。
薫は喜色満面に包まれ、何度も間左衛門にお辞儀をする。自分がいずれ殺されるとも知らずに。
薫は完全に自分を信用しきっている様子。不憫だが、これも巡り合わせ。許せよと心の中で間左衛門は呟く。
おそらく彼女の想い人である、緋村剣心という男――この者を見つけ出し、頃合を計って薫の眼前で斬る。
薫がいかな、他者の死合いを望まぬとはいえ、眼前で好いた男を斃されれば、
彼女はきぬと同じように夜叉となって自分に斬りかかって来るだろう。
可愛さあまって憎さ百倍、信頼していた者に裏切られた事とも相まってその時の
憤怒と悲しみは凄まじいものとなるに違いない。そんな悪鬼と化した美少女の
凄絶な剣技を身に受け、そしてそれを破る。考えただけで、間左衛門の身体は歓喜に打ち震えた。
それまではなんとしても、遭遇するであろう剣鬼たちから彼女を守らねば。
それら剣鬼が白州の場で見た『うつくしきもの』たちであればさらに好都合。
薫が活人剣を標榜するからには、自分の凄惨な剣法は絶対認めないかもしれないが、
それで自分を見限り、打ち掛かってくるのであればそれもまた一興。
どうあっても、自分の欲求を満たしてくれる。
「それにしてもよかったぁ…、最初に会ったのが間左衛門さんみたいな優しい方で。」
「はは…それは、買い被りすぎというもの。某、欲と業に塗れた、この面貌と同じ醜い人間にて…。」
疑いを知らぬ薫の言葉に、思わず心情を吐露する。先程の剣に貴賎無しという言葉と同様、
自分はおそらくこの世で最も俗悪な剣を振るう男。自分で言っていて白々しいと、いささか苦笑しつつ。
「…。やっぱり人を斬った事が…?」
「ああ。これまで星の数ほど、自らの下衆な欲望のために。」
下手に言いつくろっても意味は無かろうと、ありのままを吐露する。
自分が相当の修羅場を潜ってきた事は、この顔を見れば容易に想像できるであろうし。
その欲望がいかなるものであるかは伏せてだが。まあ、これで自分から離れるのならば
これも巡り合わせかと考えていたが、薫がこちらにむけてきたのは以外にも優しげな笑みであった。
「大丈夫ですよ!剣心だって…かつては人斬りだったけど、今はその罪と、自分が斬ってきた自分を向き合おうとしている。
間左衛門さんだってきっと変われます!現にこうして見ず知らずの私を守ろうとしてくれてるじゃないですか。」
「………かたじけない……。」
薫の邪心無い言葉に、間左衛門は一瞬たじろいだ。
変わる事ができるか…。彼女が全幅の信頼を置く、緋村という男もかつては修羅の道を歩んだ男だったとは。
だが、自分が背負う業は恐らく、彼のものよりも根深く、黒く穢れている。今日この日まで自分を変える事は終ぞ叶わず、
今また、薫を切りたいという欲求収まらない間左衛門には薫の言葉は綺麗ごとにしか聞こえなかった。
だが、ここのまま薫を斬ってしまえば、自分は本当に、この奇癖を捨て去る機会を無くしてしまうのではいか?
同時にそのような不安も彼の心に芽生えていた。ともかく、今はその緋村という男がいるかどうかを確かめねば。
「まぁ…まずは人別帖に緋村殿の名があるか見定めねば。それにこの死合いを命じた男と
某が目にした、ここにいる幾人かの者の名、多少ひっかかる事がある。」
「!?あの二階笠の男について、何か知っているの?」
「…ああ、一度戦場で目にしたことがな。とりあえずは緋村殿の名を見つける事が先だ。」
「あ、ええ。」
柳生但馬と蘇った剣客たち(もちろん、自分もそのうちの一人である事は伏せて)、この事も彼女に教えておくべきだろう。
いずれ、彼女は殺すつもりであるから別段意味は無いかもしれないが、それまでその身を守る助けにはなる情報だ。
それに彼女自身や流派、緋村剣心という男についても気にかかるところは多い。この情報と引き換えに聞きだせると良いが。
いそいそと薫が人別帖を行李から取り出し、めくり始めた。暗がりのせいか、それを読み進める速度は遅い。
そのあくせくとした姿にも微笑ましいものを感じた間左衛門は、薫にまた声をかける。
「それにしても、はじめ女人が橋の端下で座り込んでいるのを目にしたときは、てっきり狸か狢の類と思ったが――――。」
今は地獄に降り立った地蔵菩薩か、観世音のように思える。これは、本性を知らないにせよ
自分のような邪道の剣客でも変われると声をかけてくれた薫に対する間左衛門の本心であった。
もっとも、その救いの手に彼がすがる可能性は限りなく低いが。
だが、その言葉は間左衛門の口から発せられる事はなかった。
薫の手で丸められた、人別帖がしたたか間左衛門の額を打擲し、闇に心地よい音を響かせていた。
【はノ伍/橋の端下/一日目/深夜】
【神谷薫@るろうに剣心】
【状態】健康
【装備】「正義」の扇子@暴れん坊将軍
【道具】支給品一式
【思考】基本:剣心と合流し、死合を止める。主催者に対する怒り。
1:誰が……狸ですって…!
2:人別帖を確認した後、間左衛門とともに剣心と得物(できれば木刀かそれに類するもの)を探す。
3:協力を仰げる可能性は低いが、斎藤もここにいるのなら探す。
4:人は殺さない。
5:間左衛門の素性、傷は気になるが、詮索する事はしない。
※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。
※人別帖はまだ見ていませんが、剣心、斎藤がこの場にいるのではと考えています。
※間左衛門を信用していますが、彼の語る素性は偽りで、旧幕臣ではと考えています。
※間左衛門や柳生宗矩を同時代の人間と勘違いしています。
【座波間左衛門@駿河御前試合】
【状態】健康 、額に痛み。
【装備】童子切安綱
【道具】支給品一式
【思考】基本:殺し合いの場で快楽を味わい尽くす。優勝してきぬと再戦するも一興。
1:やはりこの娘…強い。
2:薫に切られ斬るため、彼女とともに、彼女の得物と剣心を探す。
剣心は、薫の眼前で斬殺し、自分と死合うよう仕向ける。
3:それ以外でも薫と死合う局面になれば喜んで受ける。
4:薫の目が気になるが、試合に乗り、かつ美しい容貌のものがいればこれにも切られ、斬る。
5:薫に柳生但馬と蘇った死者について伝える。
6:剣心と活人剣についての興味と、薫を斬る事への多少の躊躇と不安。
7:美しく無い相手には興味が無いが、薫を害するつもりなら斬る。
8:もしかしたらこの性癖を捨てられるかも?
※原作死亡後からの参戦です。
※過去の剣豪は自分と同じく本物だと確信しています。
※犬坂毛野、川添珠姫、沖田総司の姿を白州の場で目にしています。
※薫を同時代の人間と勘違いしています。
【童子切安綱(どうじぎりやすつな)】
平安時代の刀工、大原安綱の打った天下五剣の一人。
刀身約二尺七寸の太刀。源頼光が酒呑童子を討つ際に使用したとされ、
この名がつけられた。
投下以上です
予想以上に長くなってしまいこのような醜態をorz
次回以降はもっと文量詰めねば;
そして犬塚信乃(男)、足利義輝予約します
正月休みも終わるし、おそらく、この後はしばらく書けないかな?
投下乙です。
どう転んでも先が楽しみな組み合わせw
さてさて剣心の登場はなるか?
乙!
それと一言
___l___ /、`二//-‐''"´::l|::l l! ';!u ';/:::l ', ';::::::l ';:::::i:::::
ノ l Jヽ レ/::/ /:イ:\/l:l l::l u !. l / ';:::l ', ';:::::l. ';::::l:::::
ノヌ レ /:l l:::::lヽ|l l:l し !/ ';:l,、-‐、::::l ';::::l::::
/ ヽ、_ /::l l:::::l l\l ヽ-' / ';!-ー 、';::ト、';::::l:::
ム ヒ /::::l/l::::lニ‐-、`` / /;;;;;;;;;;;;;ヽ! i::::l:::
月 ヒ /i::/ l::l;;;;;ヽ \ i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l l::l:::
ノ l ヽヽノ /:::l/:l /;;l:!;;;;;;;;;', ';;;;;;;;;;;;;;;;;ノ l:l::
 ̄ ̄ /::::;ィ::l. l;;;;!;;;;;;;;;;;l `‐--‐'´.....:::::::::!l
__|_ ヽヽ /イ//l::l ヽ、;;;;;;;ノ.... し :::::::::::::::::::::ヽ /!リ l
| ー /::::l';!:::::::::::::::::::: u ', i ノ l
| ヽー /イ';::l ’ し u. i l l
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| /,、-'´/ し / ヽ、 u し ,' ,' l
| /l し _,.ノ `フ" ,' ,' ,ィ::/:
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斉藤伝鬼坊、細谷源太夫、石川五ェ門を投下します。
支援!
いきなり見知らぬ場所に連れ去られ、互いに殺し合えと言われ、目の前で人の首を吹き飛ばして見せられ……
同様の仕打ちを受けながら、この御前試合の参加者達の反応は決して一様ではなかった。
己の剣技が天下無双である事を示さんと奮い立つ者、天下の名人達人と立ち合う事をただ楽しまんとする者、
全てを超越して悟りを開かんとする者、参加者の中のただ一人のみを念じて他の者は眼中にも入れぬ者……
時代も立場も様々な剣客達を集めただけあって、このような異常事態への反応もまた多様であった。
そんな中で、この話に登場する三人の剣士が抱いたのは理不尽な状況への怒り、というごく真っ当な感情だった。
しかし、抱いた感情は同じでも、三人が感情に導かれて取った行動には大きな隔たりがあった。
「あいつら勝手な事をしやがって。俺はこれから真壁の奴の鼻っ柱を叩き折ってやる所だってのによ」
そう毒づくのは羽毛で作られた羽織を着た天狗の如き異相の剣客斉藤伝鬼坊勝秀である。
斉藤伝鬼坊は塚原卜伝晩年の弟子であるが、卜伝没後も修行を重ねて遂に天流又は天道流と称する一流を開いた。
その激烈な剣は評判を呼び、天覧に供して官位を授けられるほどの高名を得たという。
故郷の常陸でも天流は非常に隆盛し、同じく卜伝の門下であった真壁暗夜軒の霞流との抗争を生むに到る。
まずは霞流随一の剣客とされる桜井霞之助が伝鬼坊と立ち合うが、伝鬼坊は一撃の下にその命を奪う。
続いて霞之助の父である桜井大隈守が伝鬼坊に挑戦し、試合の期日が迫ってきた頃……気が付いたら此処に居た。
こんな所で愚図愚図してる間に決闘の刻限が過ぎてしまったらどうなるか。
弱い癖に口だけは達者な霞流の連中は、「伝鬼坊は霞流を恐れて逃げた」などと言い触らすに決まっている。
「そんな事させてたまるかよ。さっさと他の連中を皆殺しにして帰ってやる!」
そう決意を固めると、伝鬼坊はまず支給された刀を検める。
「何だ、こりゃ?」
刀を鞘から抜いてみると、現れたのは刃と峰が逆になっている、いわゆる逆刃刀である。
「こんな酔狂な刀、どこのどいつが作りやがったんだ?まあいいか、少なくとも頑丈には出来てるようだしな」
伝鬼坊の類い稀なる膂力を持ってすれば刃などなくとも人間を殴り殺すくらい簡単な事だ。
それよりも天流の強烈な打ち込みに耐え得る耐久力こそが肝要であり、その点では逆刃刀は合格であった。
「あの爺、地図と人別帖があると言ってやがったな。ちょうどいい、そこの蔵で確認しとくか」
伝鬼坊は前方に見えて来た酒蔵に素早く駆け寄ると、行李を置いて入り口から中の様子をそっと伺う。
「ちっ、先客がいやがったか」
酒蔵の中から感じられる人の気配、既に誰かが中に潜んで……いや、潜んではいない。
「おいおい、酒盛りかよ」
そう、どうやら中の人物は酒を飲んでいるらしい。
こんな状況で酒盛りとは、余程の豪傑か、それとも馬鹿か、その人物とは……
「まったく、お上も何という無体な事をなさるのだ!八代様が武芸を奨励しておられるのは聞いておったが、
だからと言って剣客を集めて殺し合えとは、これでは綱吉公よりもよっぽど性質が悪いではないか!」
細谷源太夫は怒っていた。
この御前試合の無法さに、無辜の若者をいきなり殺した残虐さに、そして何より細谷の怒りを掻き立てたのは……
「何故、よりによってこのわしが選ばれねばならんのだ!」
腕に覚えがないとは言わぬ、若い頃は一刀流を修め、腕利きの用心棒として幾多の修羅場を踏んだものだ。
だが、それは十数年も前の事、五十を遠く越え、酒毒に侵された細谷は既にまともに刀を振れなくなっている。
腕の立つ剣士ならいくらでもいように、わざわざ自分を呼んで嬲り殺しにされろとでも言うのか。
そんな憤懣を胸に、源太夫は浴びるように酒を飲み続ける。
剣を使えなくなった源太夫を呼んだのが主催者の悪意なら、彼を酒蔵に飛ばしたのは善意か、それとも悪意か……
「ふん、どんな豪傑が居るかと思えば、ただの馬鹿の方か」
振り向くと、いつの間にか蔵の戸が開けられ、天狗の如き男が剣を握って立っている。
「な、なんじゃお主は!?」
「俺か?俺は天下無双の剣客よ。その手にかかって死ねる事を光栄に思いな!」
「ぬうっ!」
伝鬼坊の剣が振り下ろされる前に武器を抜いて構えることが出来たのは今の細谷にしては上出来だったと言えよう。
だが、幸運もそこまで、ただの一撃で刀は細谷の手から跳ね飛ばされ、細谷は無様に倒れる。
「ま、参った!降参じゃ、許してくれい」
「降参だと?てめえはあの爺の話を聞いてなかったのか?この試合は相手を殺すまで終わらねえんだよ!」
「ひえっ」
「待たれい!」
割って入った声に振り向くと、蔵の入り口に細面の剣士が立っており、鋭い眼で伝鬼坊を睨み付けている。
「既に降参して無抵抗な者を手にかけようとは、武士のなすべき事にあらず!」
「何だ?てめえは」
「拙者は石川五ェ門と申す者」
伝鬼坊は一瞬考え込むが、すぐに蔑むような笑みを顔に浮かべる。
「その名は聞いた事があるぞ。ふん、卑しい盗賊如きが俺に意見しようってのか?」
侮辱されて五ェ門の顔が紅潮し、刀に手をかける。
「おのれ、愚弄すると許さぬぞ!」
「面白え、こそ泥の分際で俺に敵うつもりか?」
そう言いながらも五ェ門を強敵と見て取った伝鬼坊は、細谷を捨てると牽制の一撃を送りつつ蔵の外に走り出る。
外に出たのは狭い蔵の中よりも開けた場所の方が天流の太刀を振るうに適しているからだが、それは五ェ門も同じ事。
「うりゃあっ!」「いやああああああ!」
斉藤伝鬼坊と石川五ェ門、本来なら出会う筈も無い二人の剣がここにぶつかる。
「剣を引け、お主ほどの剣士を斬りたくはない!」
「馬鹿が、心配しなくても俺がてめえなんかに斬られるかよ!」
伝鬼坊はそう言うが、戦いは五ェ門優勢の内に進んでいた。
互いに小技の類は使わぬ真っ向からの斬り合い……となれば第一に物を言うのはやはり速さだ。
そして、剣速ならば、名刀を手にすれば稲妻すらも切り裂く五ェ門の方に一日の長があった。
戦いが進むにつれ、伝鬼坊の頬に、手首に、腕に、掠り傷が増えていく。
そして、遂に五ェ門は伝鬼坊の胴に決定的な隙を見出した。
「御免!」
五ェ門の剣が伝鬼坊の胴をまともに捉える。
だが、斬られた伝鬼坊の顔にしてやったりの笑みが浮かび、次の瞬間、五ェ門の身体を逆刃刀が貫いた!
「ぐう……がはっ」
五ェ門の口から血があふれる。
咄嗟に身をひねって急所は外したものの、相当の重傷には違いない。
膝を付いて動けない五ェ門を見下す伝鬼坊の腹部も裂け血が流れているが、その傷は致命傷には程遠い。
「腕が立つと言っても所詮は盗賊か。自分の得物の状態にすら気付かねえとはな」
「く、不覚……」
五ェ門の手に有る刀は酷く刃こぼれしてボロボロになっている。
いつも五ェ門が使っている斬鉄剣は余程の事がない限りまず刃こぼれなどしない名刀であった。
その為、いつもの癖でつい伝鬼坊の剛剣と真っ向から打ち合ってしまった。
並の打刀でしかなかった五ェ門の刀は逆刃刀との激しい打ち合いに耐えられず、なまくらに成り果てていたのだ。
「さぁて」
五ェ門にとどめを刺すかと見えた伝鬼坊だが身を翻して背後に刀を向ける。
そこには弾かれた刀を拾い、伝鬼坊に切り掛かろうとしていた細谷源太夫の姿があった。
「あ……」
「ふん、下衆が。そんなに酒の匂いをぷんぷんさせやがって、気付かれねえとでも思ったのか?」
「お、お許し下され!」
不意打ちに失敗した源太夫は、先程まで酒で真っ赤だった顔を蒼白にし、恥も外聞も無く土下座して許しを乞う。
「そ、それがしの家には病身の妻が一人でそれがしを待ってござる。それがしが死ねば妻も生きていけませぬ。
どうか、後生でござる。お見逃し下され!」
実際には源太夫の妻は二年も前に病死しているのだが、でまかせを言ってでもどうにか同情を引こうとする。
しかし、そんな事がこの剣鬼に通じる筈も無く伝鬼坊は冷笑すると逆刃刀を振り上げる。
「よせ!」
五ェ門が言うが、傷は深く未だ動けない。
「死んですぐ女房が後を追って来るなんて言う事ねえじゃねえか。ま、てめえの妻じゃどうせつまらねえ女だろうがな。
つまらねえ男とつまらねえ女、あの世でせいぜい慰め合いな!」
そう言うと、伝鬼坊は源太夫の頭を打ち砕かんと逆刃刀を振り下ろし―――
「な、何だと!?」
振り下ろした逆刃刀を凄まじい力で弾き返され、伝鬼坊はたたらを踏んだ。
「つまらぬだと?」
その前に立つのは細谷源太夫、先程まで無様に命乞いをしていた男が剣を握り、その顔は酒ではなく怒りで紅潮している。
「確かに、わしはつまらぬ男じゃ。用心棒でもしくじりばかり、青江や賛之丞の助けがなくば幾度死んでいた事か。
幸運に恵まれてやっと禄にありついても下らぬ意地で喧嘩ばかりし、挙句の果てに上役を殴り付けて浪人に逆戻りじゃ。
まことにわしはつまらぬ、どうしようもない男よ。……じゃが!」
源太夫は剣を八双に構えると、伝鬼坊を正面から睨み付ける。
「妻は違う。こんなどうしようもないわしをずっと支え、子供達を守り育ててくれた、強く、賢い女じゃった。
それをつまらぬ女だなどと……誰にも言わせはせん!!」
源太夫の気迫に伝鬼坊は一瞬たじろぎ、たじろいでしまった事実が伝鬼坊の怒りに火を点けた。
「雑魚の分際で生意気な口を利きやがって、死にやがれ!」
源太夫と打ち合うこと数合、伝鬼坊は正体の知れない違和感を感じ始めていた。
(何だ、こりゃあ?何かがおかしい、何かが……)
違和感の源を確かめねばと思うが、息も継がせずに攻め立てて来る源太夫の剣の前にその暇が無かった。
更に、動揺して動きが鈍った所に源太夫の剣が飛んで来て、手の甲に斬り付けられる。
「てめえ!」
怒った伝鬼坊は、一気に勝負を付けんと天高く飛び上がり、逆刃刀を振りかぶる。
天流秘技天狗落とし……師塚原卜伝の一の太刀にも優ると自負する、幾多の剣豪を葬った伝鬼坊必殺の剣である。
源太夫もそれに合わせて渾身の一撃を送り、両者の剣が空中で交錯する。
「ば、馬鹿な……!」
肩を大きく切り裂かれた伝鬼坊が驚愕の表情で、それでも機敏に後に退がる。
源太夫の剣が伝鬼坊の天狗落としを破ったのだ。
「こいつか!」
伝鬼坊が凄まじい表情で握った刀を……目釘が緩んだ逆刃刀を睨み付ける。
五ェ門との激しい打ち合いで逆刃刀もダメージを受けたのか、或いはまさか源太夫の気迫が逆刃刀に通じたとでも言うのか、
目釘が緩んだ為に伝鬼坊の太刀筋に僅かな狂いが生じ、為に源太夫の剣に後れを取る事になったのだ。
「諦めよ、お主の負けだ」
見ると五ェ門も腹の傷に血止めをして立ち上がろうとしている。
「てめえら……!」
それでも怯まずに伝鬼坊は戦い続けようとするが、その時―――
「そぅしぃ〜〜ぃ、ひとぉたびさりてぇえ〜〜ぇえ……」
「何だ?」
突然聞こえて来た声のする方に注意を向けると、どうやら松林の中から聞こえてくるらしい。
声の聞こえ方からして、誰かが大声で歌いながら近付いて来ているようだ。
あの歌の主も参加者なのだろうか……こんな殺し合いの場であんな大声を上げるとは、余程腕に自信があるのか。
「ちっ」
さすがの伝鬼坊もこれ以上戦う不利を悟ったか、近くに置いてあった五ェ門の行李を素早く取ると駆け去った。
しばらく北に駆けて城下町に入り、すぐに追って来る気配が無いと悟ると伝鬼坊は息を付く。
「この駄刀めが、肝心な所で足を引っ張りやがって」
刀を睨んで憎々しげに言う伝鬼坊。
如何に作りが良いとは言っても、勝負の分かれ目で持ち手を裏切るような刀で闘うなどごめんだ。
叩き折ってやりたい所だが、ここで唯一の得物を失う訳にも行かない。
「何とかしてまともな刀を手に入れねえとな」
早く帰らなければならないのに刀探しなどで時間を取られるとは……
歯軋りしながら、伝鬼坊は今後の行動を考える。
【へノ肆 城下町/一日目/深夜】
【斉藤伝鬼坊@史実】
【状態】肩に軽傷、他に掠り傷多数
【装備】逆刃刀・真打
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:一刻も早く優勝して帰る。
一:まともな刀を探す。
二:刀が見つかるまでなるべく戦闘は避ける。
三:刀が手に入ったら逆刃刀・真打は叩き折る。
【備考】
※参戦時期は桜井大隈守との決闘の直前です。
※石川五ェ門を自分と同時代の盗賊石川五右衛門だと思っています。
「行ったか」
伝鬼坊が走り去ると、源太夫は精魂尽き果てへたり込む。
「お見事でござった。しかし、あの歌の主も先程の男のような危険人物やもしれぬ。疲れてござろうが、身を隠さねば」
五右衛門に声をかけられて、源太夫も気付く。
「うむ。貴殿の傷の手当もせねばならぬし、とりあえずは蔵の中に隠れようか」
「かたじけない」
「何を言う。貴殿が助けてくれねばわしはあの男に無様に殺されていた。このくらいは当然じゃ」
蔵の中で源太夫の応急処置を受けながら、五右衛門は心の中で呟く。
(斬鉄剣さえあれば……)
腕の未熟さを得物のせいにするのは愚かだとわかってはいるが、そう思うのを止められない。
斬鉄剣さえあれば、あの男に容易く敗れる事はなかったであろう。
そして、あのような凶悪な剣士がいるこの御前試合を斬鉄剣なしで生き残れるのか。
ましてや、奇怪な妖術を使う主催者を打ち倒し、彼等の企てを打ち砕くには斬鉄剣が不可欠と思えて来る。
(やはりまずは斬鉄剣を取り返すのが先決か)
沈思する五右衛門の手当をしながら、源太夫もまた考える。
(此度は運良く生き延びれたが、おそらくわしがこの御前試合を最後まで生き残る事は叶うまい)
この石川五ェ門を名乗る男やあの天狗のような男を見る限り、類い稀なる兵法者が集められたというのは本当なのだろう。
そんな中で、自分が勝ち抜いて行く事など出来ようはずもない。
(だが、わしはもう逃げんぞ)
源太夫がここで見苦しい振る舞いに及び、それが公に知られれば、己だけでなく妻まで謗りの的にされかねない。
三十年も苦労を掛け通し、遂に狂死させてしまった妻の名誉までも汚させる訳にはゆかぬ。
また、源太夫が汚名を着れば仕官した息子達や嫁いだ娘にも不利になる事があるやもしれぬ。
だから、死ぬにしても勇敢に戦って恥ずかしくない死に様を見せてやろうと、源太夫は思い定めた。
(細谷源太夫最後の大仕事、見事に務めきって見せようぞ)
【とノ肆 酒蔵の中/一日目/深夜】
【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】打刀(刃こぼれして殆ど切れません)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:斬鉄剣を取り戻す。
【備考】
【細谷源太夫@用心棒日月抄】
【状態】アルコール中毒
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:勇敢に戦って死ぬ。
一:五ェ門に借りを返す。
【備考】
※参戦時期は凶刃開始直前です。
※この御前試合の主催者を江戸幕府(徳川吉宗)だと思っています。
投下終了です。
「壮士呵呵大笑す」とつなげてみましたが、矛盾点などありましたらご指摘ください。
乙です!五右衛門、源太夫ともどもかっこいいですなぁ
吉宗誤解フラグ立った!芹沢来ちゃう!
ただ、エリア同士が1キロ以上離れているから芹沢の声が
聞こえるかは微妙な気がw同じ詩を繰り返し歌っているとすれば
何の問題も無いんですけどね
ああ、座波は一応天道流の使い手だから
あとで伝鬼坊がいる事についての描写もしないと
乙!
伝鬼坊、二重の意味で命拾いしたな。
しかし、五ェ門は何となくあっさり死にそうで不安だねぇ。
もうキャラの追加枠って売り切れ?
保留
今、予約含め何人?
登場済み
・柳生十兵衛
・坂田銀時
・志村新八
・久慈慎之介
・トウカ
・塚原卜伝
・宮本武蔵
・オボロ
・犬坂毛野
・犬塚信乃(里見☆八犬伝)
・赤石剛次
・伊東甲子太郎
・川添珠姫
・鵜堂刃衛
・芹沢鴨
・辻月丹
・椿三十郎
・奥村五百子
・斎藤弥九郎
・徳川吉宗
・秋山小兵衛
・佐々木小次郎
・沖田総司
・東郷重位
・伊藤一刀斎
・新見錦
・屈木頑乃助
・小野忠明
・佐々木小次郎(傷)
・上泉信綱
・岡田以蔵
・剣桃太郎
・土方歳三
・志々雄真実
・神谷薫
・座波間左衛門
・斉藤伝鬼坊
・細谷源太夫
・石川五ェ門
予約
・山南敬助
・佐々木小次郎(偽)
・林崎甚助
・犬塚信乃(男)
・足利義輝
合計44人
えっと、予約ってここでいいんですか?
あと、3日間でしょうか?
このスレに書いてなかったので……質問すみません。
予約はここ、
期間は1週間、
です。
山南と小次郎を投下します
「殺し合い……気は進まないが……どうしたものか?」
一本の村と村を繋ぐ道の脇にある岩に座りながら、端正な顔立ちをした細身の男。
山南敬助は呟いた。
「そもそも私は………昨夜に新撰組を脱走した筈なのだが…………分からない。宿で眠っていたのは間違いないのだがその後は……」
山南はそこで首をかしげる。
どうも脱走した後の記憶が曖昧なのだ。
記憶に靄が掛かっているような不思議な感覚を覚える。
「………駄目だ。どうもはっきりしない。とりあえず刀を調べるか。何かおかしいが」
山南は一度首を軽く振ると腰に差した刀を抜く。
そしてそこで刀の違和感の正体に気付く。
「黄金の剣?それも両刃……これは一体」
一瞬面を食らったような表情を見せる。
だがすぐにいつもの顔に戻る。
「しかし名刀であるのは確かなようですね。手ごたえも充分だ」
その後山南は人別帳に目を移す。
(えっと……沖田君に伊東君。それから……………えっ)
「芹沢鴨!?新見錦!?」
途中で思わず声に出して驚いてしまう。
死んだはずの二人の名が記してあったのだから当然であるが。
(どういうことだ?なぜ芹沢さんに新見がいる?二人とも確かに死んだはず。新見の切腹はこの目で見たのだから生きている筈も無い。
どうして名前がある。何が起こっている)
顎に手を当てながら必死で冷静さを取り戻す事に努める。
しかしそこに一人の侍が現れる。
支援
sienn
「ほう。見たところ一人に椅子に座っているようだが、何をしている?」
「!?」
山南はすぐに立ち上がり声の方に振り向く。
するとそこには右手に木刀を携え、綺麗な紺色の陣羽織を着た侍が立っていた。
「あなたの名前は?」
「アサシンのサーヴァント。佐々木小次郎」
「佐々木小次郎!?」
佐々木小次郎。
それは山南の生きた時代より遥か過去の侍の名前である。
それを聞いた瞬間、山南の脳裏にはある考えが浮かんでいた。
(佐々木小次郎。過去に巌流島で決闘を行った侍と聞きましたが、私とは生きた時代が違うはず。しかし彼の様子から偽りの
雰囲気は感じ取れない。先ほどの村雨斬という少年を葬った手段も考えてみると妖術のようなものだったが、やはりこの戦いを
主催した柳生宗矩は妖術の類の使い手なのかもしれない。それなら何らかの手段を用いて死者を生き返らせる……いや、複数の
時代を跨って移動したのかもしれない。そうだとすれば芹沢さんと新見も生きている事は合点がいく)
山南は自身の中での疑問を氷解させていく。
「どうした?何を惚けておる」
「………すいませんねえ。考え事をしていた物で。私は新撰組総長の山南敬助。何の御用で」
「ふふふ。知れた事。このような殺し合いの場に招かれた剣客同士が出会えたのだ。死合以外の何を望む」
「死合ですか。出来れば避けたかったのですが………」
そこで山南は相手の顔を見つめる。
(邪悪な感じは見受けられませんが、戦いを望む戦士の目をしていますね。ここで引くことは叶わないでしょうね)
「………分かりました受けましょう。しかしあなたの得物はその木刀のようですが、それで戦う気で?」
「ああ。残念ながら愛刀を支給されることは叶わず、代わりにこの木刀が渡された。しかしたかが木刀と侮らぬ事だ。この木刀
なにやら特殊な素材で作られているらしくてな。そなたを斬ることは叶わぬが骨を砕く事は容易に出来る」
「なるほど。では手加減は無用ですね。私も本気でいかせてもらいましょう」
小次郎の言葉に安心し、山南は刀を鞘から抜く。
「ほう。そなたはセイバーの剣を支給されたか。運の良いことだ」
「ええ。セイバーという名は存じませんが、良い刀ではあるみたいですね。何より感触が良い」
小次郎の言葉に山南が返し、しばし沈黙が流れる。
そして一陣の風が吹き、それが合図となる。
「はあっ!」
先に動いたのは山南だ。
一息の後に間合いをつめ、居合いのような鋭い一閃が小次郎に襲い掛かる。
「ふんっ」
しかし小次郎はそれを木刀で受け止め、そのまま流れるように山南の右肩に斬りかかる。
山南は柄でそれを受け止め、逆に小次郎のバランスを崩す。
「ぐっ!」
「甘いっ!」
山南はそこを逃さず、一気に斬りかかる。
しかし小次郎は寸でのところで後退し、切っ先は僅かに左肩を掠める程度だった。
「なるほど。山南といったか。確かにいい腕をしている」
「ええ。ですがあなたも、そしてその木刀も普通ではない。私の真剣での一閃を真っ向から受けきる木刀など始めてみましたよ」
「ああ。それでは次はこちらからいかせてもらおう」
話が切り上がると次は小次郎から仕掛ける。
超高速での無数の斬撃である。
「早いっ!?」
「とおっ」
無数の木と鉄の弾きあう音が響く。
それは無数の音だが、両者の剣速は加速して一つか二つのようにも聞こえる。
(早すぎる。このままでは不味い)
山南は内心では焦っていた。
徐々に自身の限界が近づいていく。
しかし小次郎の剣速は一向に限界が見えない。
(くっ、一か八か)
山南は少しずつ足場の悪い方へ後退していく。
「どうした。そなたはその程度なのか」
小次郎は山南への追撃を緩めようとしない。
(もう少し、もう少し)
山南は慎重に誘導し、遂に目的の場へと辿り着いた。
「っ!?」
(よしっ!?)
それは一瞬。
小次郎の足が小さな岩にかかり、ほんの僅かにだが剣筋が大振りになる。
しかしそれは充分に大きな隙となる。
山南は木刀の軌道と剣の軌道を重ねて大きく外に外す。
「くっ」
「私の勝ちだっ!!」
そのまま一気に間合いを接近する。
大きく木刀の軌道を外したが、切り返しの斬撃を繰り出すには自身の剣も重心がズレてしまっている。
そのため山南は右手を剣から離し拳を握り締め、突進するかのように小次郎の顔面に拳をたたきつけた。
「ぐっ!?」
しかし、小次郎はその刹那、自身で後ろに跳び衝撃を半減させる。
再びしばしの沈黙が訪れる。
山南は息を整え、小次郎は殴られた頬を一度撫でてから山南へ向き直った。
「驚いたぞ。まさか剣ではなく拳が飛んで来るとは」
「ええ。まともな剣道の試合じゃない、死合なのだから拳ぐらいでは卑怯とは言わせませんよ」
「いや、別にそなたを卑怯と罵るつもりなどはない。ただその冷静な状況判断能力とそれを可能にする技量。些かそなたを
甘く見すぎていたようだ」
「お褒めに頂いて感謝しますよ。それでどうします。次は再びこちらから行きましょうか」
(右手が僅かに痛む。すぐに回復するとは思うが……やはり慣れない事はするものじゃないな)
山南は右手を痛みを隠すように不敵な笑みを作る。
しかし小次郎の反応は意外なものだった。
「ここは止めだ。本来の得物以外でそなたとこれ以上戦うのは無粋が過ぎる。それにそなたもそれは慣れぬ剣なのだろ。
そなたとは万全の状態で死合たいものだ」
「……ええ。元々はそちらから仕掛けた勝負。中断する事は一向に構いません」
「ではな」
小次郎は背を向けるとそのまま姿を消していく。
山南も剣の鞘に収めると、ため息をつく。
「疲れました。やはり慣れないことはするものではない」
山南はしばし休み、右手を痛みが引いていくのを感じてから再び立ち上がる。
「まずは村ですね。何か脱出の手がかりがあればいいのですが」
月明かりの中を山南の旅は続く。
【ほノ陸 歩道/一日目/深夜】
【山南敬助】
【状態】若干の疲労 右手に僅かな痛み
【装備】エクスカリバー@Fate/stay night
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この死合からの脱出 現在北上中
一:日本刀を見つける。
二:芹沢や新見が本人か確認したい
【備考】
新撰組脱走〜沖田に捕まる直前からの参加です。
エクスカリバーの鞘はアヴァロンではなく、普通の鞘です。またエクスカリバーの開放は不可能です。
柳生宗矩を妖術使いと思っています。
【佐々木小次郎(偽)@Fate/stay night】
【状態】左頬に軽度の打撲
【装備】妖刀・星砕@銀魂
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:強者と死合 現在南下中
一:物干し竿を見つける。
二:その後山南と再戦に望みたい。
【備考】
登場時期はセイバーと戦った以降です。
どのルートかは不明です。
投下完了です。
感想や誤字などの指摘があればお願いします。
乙!
これで小次郎が三人とも出そろったわけだ。
しかし山南さんとエクスカリバー・・・・似合わねぇwwww
乙の宮。
ただ、ちょいと今回に限らず思うのだけど、「時間や次元を遡って人を集める」 のはパロロワ的な定番で、
実際正解ではあるけれど、ごく自然に当たり前のこととしてそこに行き着いてしまいぎるというのは、ちょっ
とご都合主義的で不自然に感じます。
まして、SF的な発想自体がない江戸時代の剣客が、となるとなおさらに。
投下乙です!
山南さんキター。
なんかエクスカリバーがミスマッチだけどw
一週間ですか、三日間かと思っておりました。
志村新八予約します。
>>429 むしろ江戸時代の人間の方が超常現象受け入れやすいんじゃね
>>431 江戸時代の時間の概念がどうだっかによるんじゃね?
それより死者の蘇生を考える方が自然かもよ
とりあえずオランダの科学力は世界一ィィイイ!!とか、
伴天連の妖術だから仕方ないとかにしておけばいいんじゃね?w
異論も出ているようなので
>>423の
(佐々木小次郎。過去に巌流島で決闘を行った侍と聞きましたが、私とは生きた時代が違うはず。しかし彼の様子から偽りの
雰囲気は感じ取れない。先ほどの村雨斬という少年を葬った手段も考えてみると妖術のようなものだったが、やはりこの戦いを
主催した柳生宗矩は妖術の類の使い手なのかもしれない。それなら何らかの手段を用いて死者を生き返らせる……いや、複数の
時代を跨って移動したのかもしれない。そうだとすれば芹沢さんと新見も生きている事は合点がいく)
山南は自身の中での疑問を氷解させていく。
これを
(佐々木小次郎。過去に巌流島で決闘を行った侍と聞きましたが、私とは生きた時代が違うはず。しかし彼の様子から
偽りの雰囲気は感じ取れない。先ほどの村雨斬という少年を葬った手段も考えてみると妖術のようなものだったが、
やはりこの戦いを主催した柳生宗矩は妖術の類の使い手なのかもしれない。それなら何らかの手段を用いて死者を
生き返らせる……もしくは異国の医療技術で蘇生に成功させたのか………信じられないがそのどちらかだろう。
それにその通りであれば芹沢さんと新見も生きている事は合点はいくのだが……もしくは私の考え及ばない力が
働いているのかもしれない。しかしそうであればこれ以上の思案は無駄という物か)
山南は自身の中での疑問に決着をつけていく。
上記に変更します。
修正乙!
林崎甚助、投下します
その出会いがあったのは、
狂犬と化した「人斬り」岡田以蔵の襲撃から逃れた
剣聖、上泉伊勢守信綱が、
やはり足の傷をそのままにしておくわけにもいかず、
袴の裾を千切って手当てをしようとした、正にその時である。
しゃがんで下を向いていた伊勢守だが、
突如はっと頭を上げると、
暗い夜の森の奥に鋭い視線を向けた。
殺気である。
「出てきなさい」
伊勢守は殺気の飛んでくる方を睨んで、
静かで落ち着いていながら、
筋の通った良く届く声で言った。
「ばれていましたか。並みの方では無いとは思っていましたが・・・」
しばらくして、そう言いながら一人の男が木々の陰から姿を現した。
手足がひょろりと長い、痩身の男である。
年のころはまだ青年といった所か、
黒い総髪を肩まで伸ばしている。
肌は青白くまるで労咳患者だ。
眼は切れ長で、鼻は高く尖っていて、
頬は落ちている。
衣服は紺一色の質素なもので、
腰には一振りの刀を差している。
少し変わった刀で、柄の長さが一尺二寸もある。
俗に「長柄刀」と称される、主に居合使いが好む刀だ。
「試すような事をして申し訳ありません。
しかし、偶然ここで貴方の姿を見つけた時、
一目で達人と解り、つい試しにと殺気を浴びせてしまったのです」
そう言うと、ぺこりと青年は謝った。
あまり善人面とは言い難いが、なかなかどうして、
身に纏う雰囲気はむしろ陽性の礼儀正しい物である。
悪い人間ではない。
その事を悟ると、伊勢守は視線を軟化させ、
かたくなった肩をほぐした。
「自分は、出羽国の住人、林崎甚助と申します。
貴方は相当な使い手とお見受けしますが、
よろしければ名前を伺いたい」
「何、大した者ではない。
自分は新陰流、上泉信綱と申す者」
「ああ、ではあの剣聖の・・・・」
伊勢守の名を聞くと、
青年、林崎甚助は眼を子供に様に輝かせた。
◆
林崎甚助重信、旧名浅野民治丸は出羽国楯山林崎の人である。
彼は所謂、「抜刀術」、「居合」の中興の祖として名高いが、
その生涯は知名度の割にはっきりしない点が多い。
父は浅野数馬といい、最上氏の家臣であったらしい。
数馬もかなりの剣の達人だったと言われている。
甚助六歳の時、数馬は、同僚で、
やはり剣の達人の坂上主膳に暗殺された。
暗殺された理由ははっきりしないが、
政治的ないざこざがあったとも言う。
父を殺された後、仇討すべく八歳から剣の修業を始めるが、
体が弱かったためか、まるで上達しない。
そこで甚助は母子そろって熊野明神に参詣し、
仇討成就、剣の上達を祈願し続けた。
神社への参詣祈願、そして剣の修業を続けること七年、
ついに神に祈りが通じたのか、
甚助一五の時に、夢枕に熊野明神が立ち、
彼に抜刀術の極意を授けたという。
その後、甚助の剣は今までの事が嘘のように上達し、
ついに居合の達人となった。
そして、一八の時に元服し、
名を浅野民治丸から林崎甚助に改め、
仇討の旅に出かけたのだ。
旅をする事、二年。
京都でついに仇の坂上主膳を発見し、
居合の一閃で討ち果たして本懐を遂げた。
彼は意気揚揚と故郷に帰り、
熊野神社に刀を奉納したと言われている。
神夢想林崎流を開いたのもこの時と言うが、
実は甚助は生前、この流名を名乗らかったともいい、
どうにも判然としない。
念願成就の喜びを分かち合う母子であったが、
今までの心労がたたったのか、
一年後、甚助二一歳の時に、母も病気でこの世を去る。
天涯孤独の身となった甚助は、
あてもない武者修行に出かけたと言うが、
彼がこの兵法勝負に呼び出されたのは、
正にこの時であった。
◆
森の中で目を覚ました甚助であるが、
正直何を為すべきかがまるで思いつかなかった。
一剣士として、兵法天下一の称号が欲しくないかと言えば嘘になるが、
人別帖を見れば上泉信綱や塚原卜伝と言った、
出羽のような田舎にまで名前が聞こえて来るような
大兵法者の名前まである。
あの白州で見た面々を思い出せば、見るからに仇であった坂上主膳に
勝るとも劣らぬ達人ばかりであった。
見事仇を討って、意気盛んとも言える甚助だが、
まだ二一の未熟者の自分が、
あの達人の群れの中でそう簡単に勝ち上がれるなどと考えるほど自惚れてもいない。
主膳を倒した自慢の居合も、
主膳との戦いを経ることでかえって未熟な点が浮き彫りになり、
まだまだ技術としては未完成、というのが自分の結論だ。
甚助の少年時代は、仇討の為だけに消費されたと言っていい。
それを後悔はしていないが、本懐を遂げて、
やっと自分自身の人生が始まったばかりというのに、
その命をみすみす捨てるような事はしたくなかった。
死んだ母もそれでは浮かばれないだろう。
それに、主催と思しき男の白州での非道。
あれは自分の仇であった坂上主膳のやり口と、何も変わらない。
そんな男が主宰する兵法勝負で万が一勝ち残っても、
果たして自分の名誉になるであろうか。
そんな事を考えていると、
不意に一つの影が甚助の視界を走った。
それは身に寸鉄帯びぬ老人であった。
しかし、その動きは老人とは思えぬ、
猿(ましら)の様に俊敏で力強い物であった。
ぎょっと驚いて、甚助は木の陰から半身出して、
老人を盗み見た。
見た瞬間、甚助の背中に電流の様な感覚が走った。
強い。ただそれだけが感じられた。
気が付けば、彼が思わず殺気を飛ばしていたのは、
やはり兵法者としてのサガであろう。
こうして、若き居合使いと、老いたる大兵法者は出会った訳である。
◆
伊勢守の足の手当は済んだ。
甚助が手伝ったために、
思いのほか早く丁寧に手当てが終わり、
伊勢守は少しホッとする。
傍らでは甚助が、長い柄に手をやって辺りを警戒している。
「しかし、伊勢守どのほどの使い手に一太刀入れるとは・・・
恐ろしい奴、いったい何者です?」
「解らぬ・・・解らぬが、恐ろしく強い男よ・・・
そして、それ故に苦しんでおる」
「強い故に苦しむ?」
甚助は少し不思議そうな顔で伊勢守を見た。
体が弱く、必死の努力で達人となった甚助には、理解できぬ感情である。
「何、お主にもいつか解るかも知れん」
そう言うと、膝をポンと叩いて立ち上がった。
「では、わしは行かねばならぬ所があって行くが、
お主はどうする?」
伊勢守は、甚助を仰ぎ見て言う。
甚助は少し考えるような仕草をして、
「・・・もし伊勢守どのがよろしければ、
しばしの間お供させて頂きたい」
そんな事を言い出した。
「何?」
「いや、見れば伊勢守どのは身に寸鉄帯びて無い様子。
いかに貴方ほどの達人とは言え、達人ひしめく
この兵法勝負においてはやはり分が悪いと言わざるを得ません。
ですから貴方が何か刀などを見つけるまで、
用心棒の代わりでも出来ればと・・・」
「・・・・・・」
甚助青年の思わぬ申出に、伊勢守も考え込んでしまう。
自分が進もうとしているのは、ある意味修羅道よりも過酷な道。
そのような道行きに、このような未来ある青年を巻き込むような事は・・・
「あ、遠慮はいりません。
自分がやりたくて言っているのですし、
それに・・・・」
言うと、甚助は伊勢守から離れ、切っ先の届かない位置まで移動する。
そこで甚助は長柄刀を垂直に立てて、
鍔を胸の辺りまで持って行く。
そして、右手で一気に刀を引き抜く。
それと同時に左手で一気に鞘を引き戻されると、
常識はずれの速さで、白刃が鞘から飛び出し、上下に振り下ろされたのだ。
よく、居合の太刀の速さを電光と例えるが、
正しく甚助の太刀は電光そのものであった。
甚助が自得した居合の奥義の一つ、
「卍抜け」であった。
流石の伊勢守も、ほぉ、と感心のため息を漏らした。
諸国を廻ってきた伊勢守だが、これは未知の太刀筋である。
「いかが?」
青年は少し得意そうな笑みを顔に浮かべると、
伊勢守の顔を窺う。
伊勢守は少し考えた後、
「よろしい」
と短く答えた。
二人は森を歩いている。
少し前を甚助が歩き、
伊勢守がその後を追う。
伊勢守に同行を許され、
甚助は喜色満面であった。
上泉伊勢守と言えば、奥州ですら知らない者のない大剣豪。
剣を志す者ならば、誰しも憧れる男だ。
その男に同行を許されて喜ばない者がいようか。
それに甚助は、自分が修練した居合の太刀筋を、
もっと伊勢守に見てもらいたいと思っていた。
彼ほどの男に褒められれば純粋に嬉しいし、
もし未熟な所があれば伊勢守に指摘してもられるかもしれない。
そうなれば、自分の技はより高い領域へと行けるはずだ。
そう思うと、甚助の若い心は今にも躍り出しそうであった。
一方、無邪気に喜ぶ甚助を伊勢守は父親の様な目つきで見つめていた。
若く、すぐれた剣士である。
恐らくこのまま修練を積めば、一流を開くに足る人物になるだろう。
しかし、
(それ故にこの青年は危うい)
剣の道とは、一歩間違えれば修羅の道である。
あの野獣のような青年の様に、
この青年がならないとも限らないのである。
優れた剣才は、時にその持ち主を地獄にすら落とすのだ。
(だから)
自分が導かねばならぬ。
それもまた自分の剣の道。
伊勢守は改めて決意を固めた。
【ほノ壱 森の奥/一日目/深夜】
【上泉信綱@史実】
【状態】健康、足に軽傷(治療済み)
【装備】なし
【所持品】なし
【思考】
基本:他の参加者を殺すことなく優勝する。
一:あの男(岡田以蔵)をなるべく早く見付けて救う。
二:甚助を導く
【備考】
※岡田以蔵の名前を知りません。
【林崎甚助@史実】
【状態】健康、少し興奮気味
【装備】長柄刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:とりあえず試合には乗らない。信綱に同行
一:信綱を守る
二:信綱に剣を見てもらいたい
投下終了
伊勢守出したけど、大丈夫ですかね
乙ですが、予約してない人物をここまで絡ませるのはルール違反では?
やっぱりだめですかね?
抗議が多ければ破棄しますが・・・
どう考えてもよろしくないです
リレー企画なので、そのあたりの認識が足りないなら参加すべきでない
投下乙です。
史実出身でここまで素直なキャラだとすごく新鮮な感じがw
予約については、個人的には絶対に必須というわけでもないと思います。
予約なしに書く事でリスクを負うのは本人なんですし。
>>447 それを言い出したら予約の意味がなくなるのでは?
残念だけど、破棄か修正を施した方がいいかと
せめて付け足す旨を事前通告するべきだった
了解。
修正して、再投下します。
お騒がせしました。
とはいえ別に伊勢守に他の予約が入っているわけでもなし、予約をしないと書いてはいけないというルールはなし。
例えば今回の場合、一旦破棄扱いにして再度伊勢守と林崎甚助を再予約して再度投下する、でも済んでしまう。
んで今後、「予約をする場合、SS内で使用する参加者全てを明記する」 事をルール化すれば良いんじゃない?
>>448 予約の意味は、「今書いているSSで優先的に使うから、投下するまで他の人は使わないでね」 ってものでしょ。
その時点で予約されていないキャラはフリーだよ。
予約されていないキャラのSSを書いて、投下する前に他の人に予約されたら破棄する、でいい話だし。
文頭空白の人、ここにきてたのか
まあそれはおいておき、今回は形だけでも修正するべき
>>450 それがいいかもしれませんね。
個人的には予約なしで書くのはリスクを承知の上なら問題ないと思いますが、
登場人物の一部だけを予約するのは予約破棄につながる危険があるので良くないという考えもありえますし。
うーむ。
取り敢えず修正版は投下します。
その上で、元の奴の方がいいという方が多ければ、
一旦破棄して、再度、上泉信綱、林崎甚助、で再予約して投下します。
取り敢えず修正版
「ほノ壱」に広がる森の奥に、
一人の男が立っていた。
何か、考え込むような仕草をしている。
手足がひょろりと長い、痩身の男である。
年のころはまだ青年といった所か、
黒い総髪を肩まで伸ばしている。
肌は青白くまるで労咳患者だ。
眼は切れ長で、鼻は高く尖っていて、
頬は落ちている。
衣服は紺一色の質素なもので、
腰には一振りの刀を差している。
少し変わった刀で、柄の長さが一尺二寸もある。
俗に「長柄刀」と称される、主に居合使いが好む刀だ。
男の名は、林崎甚助と言う。
◆
林崎甚助重信、旧名浅野民治丸は出羽国楯山林崎の人である。
彼は所謂、「抜刀術」、「居合」の中興の祖として名高いが、
その生涯は知名度の割にはっきりしない点が多い。
父は浅野数馬といい、最上氏の家臣であったらしい。
数馬もかなりの剣の達人だったと言われている。
甚助六歳の時、数馬は、同僚で、
やはり剣の達人の坂上主膳に暗殺された。
暗殺された理由ははっきりしないが、
政治的ないざこざがあったとも言う。
父を殺された後、仇討すべく八歳から剣の修業を始めるが、
体が弱かったためか、まるで上達しない。
そこで甚助は母子そろって熊野明神に参詣し、
仇討成就、剣の上達を祈願し続けた。
神社への参詣祈願、そして剣の修業を続けること七年、
ついに神に祈りが通じたのか、
甚助一五の時に、夢枕に熊野明神が立ち、
彼に抜刀術の極意を授けたという。
その後、甚助の剣は今までの事が嘘のように上達し、
ついに居合の達人となった。
そして、一八の時に元服し、
名を浅野民治丸から林崎甚助に改め、
仇討の旅に出かけたのだ。
旅をする事、二年。
京都でついに仇の坂上主膳を発見し、
居合の一閃で討ち果たして本懐を遂げた。
彼は意気揚揚と故郷に帰り、
熊野神社に刀を奉納したと言われている。
神夢想林崎流を開いたのもこの時と言うが、
実は甚助は生前、この流名を名乗らなかったともいい、
どうにも判然としない。
念願成就の喜びを分かち合う母子であったが、
今までの心労がたたったのか、
一年後、甚助二一歳の時に、母も病気でこの世を去る。
天涯孤独の身となった甚助は、
あてもない武者修行に出かけたと言うが、
彼がこの兵法勝負に呼び出されたのは、
正にこの時であった。
◆
森の中で目を覚ました甚助であるが、
正直何を為すべきかがまるで思いつかなかった。
一剣士として、兵法天下一の称号が欲しくないかと言えば嘘になるが、
人別帖を見れば上泉信綱や塚原卜伝と言った、
出羽のような田舎にまで名前が聞こえて来るような
大兵法者の名前まである。
あの白州で見た面々を思い出せば、見るからに仇であった坂上主膳に
勝るとも劣らぬ達人ばかりであった。
見事仇を討って、意気盛んとも言える甚助だが、
まだ二一の未熟者の自分が、
あの達人の群れの中でそう簡単に勝ち上がれるなどと考えるほど自惚れてもいない。
主膳を倒した自慢の居合も、
主膳との戦いを経ることでかえって未熟な点が浮き彫りになり、
まだまだ技術としては未完成、というのが自分の結論だ。
甚助の少年時代は、仇討の為だけに消費されたと言っていい。
それを後悔はしていないが、本懐を遂げて、
やっと自分自身の人生が始まったばかりというのに、
その命をみすみす捨てるような事はしたくなかった。
死んだ母もそれでは浮かばれないだろう。
それに、主催と思しき男の白州での非道。
あれは自分の仇であった坂上主膳のやり口と、何も変わらない。
そんな男が主宰する兵法勝負で万が一勝ち残っても、
果たして自分の名誉になるであろうか。
そんな事を考えていると、
不意に一つの影が甚助の視界を走った。
それは身に寸鉄帯びぬ老人であった。
しかし、その動きは老人とは思えぬ、
猿(ましら)の様に俊敏で力強い物であった。
ぎょっと驚いて、甚助は木の陰から半身出して、
老人を盗み見た。
見た瞬間、甚助の背中に電流の様な感覚が走った。
強い。ただそれだけが感じられた。
老人は、甚助に気がつかなかったのか、
少し足を引きずるようにして森の奥へと消えてしまった。
ぼけっと、老人の消えた方を眺めていた甚助だったが、
突然我に返ったかと思うと、
行李を掴んで老人の後を追い始めた。
何故そのような行動に出たかはわからない。
ただ、追わねばならないと思ったのである。
甚助は、ふらふらと老人を追いかけ始めた。
【ほノ壱 森の奥/一日目/深夜】
【林崎甚助@史実】
【状態】健康、混乱?
【装備】長柄刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:とりあえず試合には乗らない。
一:老人(信綱)を追跡する
二:自分の行動に戸惑い?
以上修正版でした
うーん。個人的には修正前の方が好きです。
行動指針がはっきりしているし。
>>458 自分も修正前でいいと思います
それと
千葉さな子、緋村剣心を予約します。
修正前のほうがいいと思う。
ただ、どちらにしろ急いで方針を決めたほうがいいと思う。
予約のルールを守るための修正なんだろうけど、
予約は書き手が書きやすくするためのルールなんだから、
現状の上泉信綱が予約されているようなあいまいな状態のままズルズル引きずると
他の書き手さんが書きにくくなって、本末転倒。
>>460 さな子さんwwwww
変態の人歓喜wwwww
支給品は必ず一品で、上記で挙げた刀類のみですか?
武器ではなく、殺傷力無しの防具が支給品でも構わないですか?
これから執筆予定のもので、武器の代わりに防具支給したいと思っているのですが…。
(若干外れ気味の)
では、いったん予約を破棄します。
その上で、上泉信綱、林崎甚助、予約します。
投下します
その出会いがあったのは、
狂犬と化した「人斬り」岡田以蔵の襲撃から逃れた
剣聖、上泉伊勢守信綱が、
やはり足の傷をそのままにしておくわけにもいかず、
袴の裾を千切って手当てをしようとした、正にその時である。
しゃがんで下を向いていた伊勢守だが、
突如はっと頭を上げると、
暗い夜の森の奥に鋭い視線を向けた。
殺気である。
「出てきなさい」
伊勢守は殺気の飛んでくる方を睨んで、
静かで落ち着いていながら、
筋の通った良く届く声で言った。
「ばれていましたか。並みの方では無いとは思っていましたが・・・」
しばらくして、そう言いながら一人の男が木々の陰から姿を現した。
手足がひょろりと長い、痩身の男である。
年のころはまだ青年といった所か、
黒い総髪を肩まで伸ばしている。
肌は青白くまるで労咳患者だ。
眼は切れ長で、鼻は高く尖っていて、
頬は落ちている。
こういう言い方は何だが、
えらく悪人面の青年だ。
衣服は紺一色の質素なもので、
腰には一振りの刀を差している。
少し変わった刀で、柄の長さが一尺二寸もある。
俗に「長柄刀」と称される、主に居合使いが好む刀だ。
「試すような事をして申し訳ありません。
しかし、偶然ここで貴方の姿を見つけた時、
一目で達人と解り、つい試しにと殺気を浴びせてしまったのです」
そう言うと、ぺこりと青年は謝った。
あまり善人面とは言い難いが、なかなかどうして、
身に纏う雰囲気はむしろ陽性の礼儀正しい物である。
悪い人間ではない。
その事を悟ると、伊勢守は視線を軟化させ、
かたくなった肩をほぐした。
「自分は、出羽国の住人、林崎甚助と申します。
貴方は相当な使い手とお見受けしますが、
よろしければ名前を伺いたい」
「何、大した者ではない。
自分は新陰流、上泉信綱と申す者」
「ああ、ではあの剣聖の・・・・」
伊勢守の名を聞くと、
青年、林崎甚助は眼を子供に様に輝かせた。
◆
林崎甚助重信、旧名浅野民治丸は出羽国楯山林崎の人である。
彼は所謂、「抜刀術」、「居合」の中興の祖として名高いが、
その生涯は知名度の割にはっきりしない点が多い。
父は浅野数馬といい、最上氏の家臣であったらしい。
数馬もかなりの剣の達人だったと言われている。
甚助六歳の時、数馬は、同僚で、
やはり剣の達人の坂上主膳に暗殺された。
暗殺された理由ははっきりしないが、
政治的ないざこざがあったとも言う。
父を殺された後、仇討すべく八歳から剣の修業を始めるが、
体が弱かったためか、まるで上達しない。
そこで甚助は母子そろって熊野明神に参詣し、
仇討成就、剣の上達を祈願し続けた。
神社への参詣祈願、そして剣の修業を続けること七年、
ついに神に祈りが通じたのか、
甚助一五の時に、夢枕に熊野明神が立ち、
彼に抜刀術の極意を授けたという。
その後、甚助の剣は今までの事が嘘のように上達し、
ついに居合の達人となった。
そして、一八の時に元服し、
名を浅野民治丸から林崎甚助に改め、
仇討の旅に出かけたのだ。
旅をする事、二年。
京都でついに仇の坂上主膳を発見し、
居合の一閃で討ち果たして本懐を遂げた。
彼は意気揚揚と故郷に帰り、
熊野神社に刀を奉納したと言われている。
神夢想林崎流を開いたのもこの時と言うが、
実は甚助は生前、この流名を名乗らなかったともいい、
どうにも判然としない。
念願成就の喜びを分かち合う母子であったが、
今までの心労がたたったのか、
一年後、甚助二一歳の時に、母も病気でこの世を去る。
天涯孤独の身となった甚助は、
あてもない武者修行に出かけたと言うが、
彼がこの兵法勝負に呼び出されたのは、
正にこの時であった。
◆
森の中で目を覚ました甚助であるが、
正直何を為すべきかがまるで思いつかなかった。
一剣士として、兵法天下一の称号が欲しくないかと言えば嘘になるが、
人別帖を見れば上泉信綱や塚原卜伝と言った、
出羽のような田舎にまで名前が聞こえて来るような
大兵法者の名前まである。
あの白州で見た面々を思い出せば、見るからに仇であった坂上主膳に
勝るとも劣らぬ達人ばかりであった。
見事仇を討って、意気盛んとも言える甚助だが、
まだ二一の未熟者の自分が、
あの達人の群れの中でそう簡単に勝ち上がれるなどと考えるほど自惚れてもいない。
主膳を倒した自慢の居合も、
主膳との戦いを経ることでかえって未熟な点が浮き彫りになり、
まだまだ技術としては未完成、というのが自分の結論だ。
甚助の少年時代は、仇討の為だけに消費されたと言っていい。
それを後悔はしていないが、本懐を遂げて、
やっと自分自身の人生が始まったばかりというのに、
その命をみすみす捨てるような事はしたくなかった。
死んだ母もそれでは浮かばれないだろう。
それに、主催と思しき男の白州での非道。
あれは自分の仇であった坂上主膳のやり口と、何も変わらない。
そんな男が主宰する兵法勝負で万が一勝ち残っても、
果たして自分の名誉になるであろうか。
そんな事を考えていると、
不意に一つの影が甚助の視界を走った。
それは身に寸鉄帯びぬ老人であった。
しかし、その動きは老人とは思えぬ、
猿(ましら)の様に俊敏で力強い物であった。
ぎょっと驚いて、甚助は木の陰から半身出して、
老人を盗み見た。
見た瞬間、甚助の背中に電流の様な感覚が走った。
強い。ただそれだけが感じられた。
気が付けば、彼が思わず殺気を飛ばしていたのは、
やはり兵法者としてのサガであろう。
こうして、若き居合使いと、老いたる大兵法者は出会った訳である。
◆
伊勢守の足の手当は済んだ。
甚助が手伝ったために、
思いのほか早く丁寧に手当てが終わり、
伊勢守は少しホッとする。
傍らでは甚助が、長い柄に手をやって辺りを警戒している。
「しかし、伊勢守どのほどの使い手に一太刀入れるとは・・・
恐ろしい奴、いったい何者です?」
「解らぬ・・・解らぬが、恐ろしく強い男よ・・・
そして、それ故に苦しんでおる」
「強い故に苦しむ?」
甚助は少し不思議そうな顔で伊勢守を見た。
体が弱く、必死の努力で達人となった甚助には、理解できぬ感情である。
「何、お主にもいつか解るかも知れん」
そう言うと、膝をポンと叩いて立ち上がった。
「では、わしは行かねばならぬ所があって行くが、
お主はどうする?」
伊勢守は、甚助を仰ぎ見て言う。
甚助は少し考えるような仕草をして、
「・・・もし伊勢守どのがよろしければ、
しばしの間お供させて頂きたい」
そんな事を言い出した。
「何?」
「いや、見れば伊勢守どのは身に寸鉄帯びて無い様子。
いかに貴方ほどの達人とは言え、達人ひしめく
この兵法勝負においてはやはり分が悪いと言わざるを得ません。
ですから貴方が何か刀などを見つけるまで、
用心棒の代わりでも出来ればと・・・」
「・・・・・・」
甚助青年の思わぬ申出に、伊勢守も考え込んでしまう。
自分が進もうとしているのは、ある意味修羅道よりも過酷な道。
そのような道行きに、このような未来ある青年を巻き込むような事は・・・
「あ、遠慮はいりません。
自分がやりたくて言っているのですし、
それに・・・・」
言うと、甚助は伊勢守から離れ、切っ先の届かない位置まで移動する。
そこで甚助は長柄刀を垂直に立てて、
鍔を胸の辺りまで持って行く。
そして、右手で一気に刀を引き抜く。
それと同時に左手で一気に鞘を引き戻されると、
常識はずれの速さで、白刃が鞘から飛び出し、上下に振り下ろされたのだ。
よく、居合の太刀の速さを電光と例えるが、
正しく甚助の太刀は電光そのものであった。
甚助が自得した居合の奥義の一つ、
「卍抜け」であった。
流石の伊勢守も、ほぉ、と感心のため息を漏らした。
諸国を廻ってきた伊勢守だが、これは未知の太刀筋である。
「いかが?」
青年は少し得意そうな笑みを顔に浮かべると、
伊勢守の顔を窺う。
伊勢守は少し考えた後、
「よろしい」
と短く答えた。
こうして二人の珍道中は始まった。
少し前を甚助が歩き、
伊勢守がその後を追う。
伊勢守に同行を許され、
甚助は喜色満面であった。
上泉伊勢守と言えば、奥州ですら知らない者のない大剣豪。
剣を志す者ならば、誰しも憧れる男だ。
その男に同行を許されて喜ばない者がいようか。
それに甚助は、自分が修練した居合の太刀筋を、
もっと伊勢守に見てもらいたいと思っていた。
彼ほどの男に褒められれば純粋に嬉しいし、
もし未熟な所があれば伊勢守に指摘してもられるかもしれない。
そうなれば、自分の技はより高い領域へと行けるはずだ。
そう思うと、甚助の若い心は今にも躍り出しそうであった。
一方、無邪気に喜ぶ甚助を伊勢守は父親の様な目つきで見つめていた。
若く、すぐれた剣士である。
恐らくこのまま修練を積めば、一流を開くに足る人物になるだろう。
しかし、
(それ故にこの青年は危うい)
剣の道とは、一歩間違えれば修羅の道である。
あの野獣のような青年の様に、
この青年がならないとも限らないのである。
優れた剣才は、時にその持ち主を地獄にすら落とすのだ。
(だから)
自分が導かねばならぬ。
それもまた自分の剣の道。
伊勢守は改めて決意を固めた。
【ほノ壱 森の奥/一日目/深夜】
【上泉信綱@史実】
【状態】健康、足に軽傷(治療済み)
【装備】なし
【所持品】なし
【思考】
基本:他の参加者を殺すことなく優勝する。
一:あの男(岡田以蔵)をなるべく早く見付けて救う。
二:甚助を導く
【備考】
※岡田以蔵の名前を知りません。
【林崎甚助@史実】
【状態】健康、少し興奮気味
【装備】長柄刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:とりあえず試合には乗らない。信綱に同行
一:信綱を守る
二:信綱に剣を見てもらいたい
再投下終了。
誤字などを微修正しました。
お騒がせして申し訳ありません。
それと、
伊良子清玄、富田勢源、予約します。
今度は間違いの無いように気をつけます
だったら一週間ぐらい自粛してろ
予約のルールを決めてなかったこっちの責任
予約のルールなんて常識だろ
パロロワに慣れてる人間には常識でも、新しく入ってきた人にはわからんだろ
477 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 18:34:27 ID:oJpepPJ0
追加予約は可だろうがねえ
どのキャラを書いてるかは表明してもらわんとね
犬塚信乃、足利義輝投下します
「どこだ…どこだどこだどこだどこだどこだ、どこだぁっ!」
里見の八犬士の一人、「孝」の犬士である犬塚信乃は、年齢と、すらりと高い身長の割には幼く中性的な顔を歪め
茫々と茂るススキ原を半ば狂乱状態で駆け抜けていた。慎重より高いススキの葉で、手や顔のあちこちに
浅い切り傷が出来ているが、彼の足を止めるには至らない。
「村雨丸…村雨丸が…。」
村雨丸―――鎌倉公方家に伝わる源氏の重宝。殺気をはらんで抜けば、刀身に露を走らせ、霧雨を吹くという妖刀。
永享年間、鎌倉公方家が京の公方家に滅ぼされた一連の戦乱において、祖父・匠作が父に託し、そして父がその身を
呈して守り続け、今際の際に信乃に託した形見。父と、兄弟とも言うべき愛犬ヨシロウを喪った時から必死で守り通してきた
半身。荘助、現八、小文吾、道節ら犬士たちの協力や、房八、ぬい、力次郎、尺八郎、そして自分の無神経な態度のせいで
死に追いやってしまった許婚・浜路の犠牲によって、ついに、古河公方成氏――即ち鎌倉公方家の血筋を引く彼に、
今度こそこの刀を返還するという祖父以来の宿願を果たさんとする晴れの日。その前の晩、こみ上げる様々な
感情からなかなか寝付けずにいた信乃であったが、混濁した意識を落とした途端、あの白州に引き出されていた。
そして次はこの見た事のあるような無いような芒原である。寝巻き姿であったはずが、普段着に着替えさせられていた
ため、夢かとも思ったが、先程の強烈な映像、やはり現実としか思えない。と、ここで初めて村雨丸、さらには
犬士を繋ぐ伏姫の『孝』の珠の喪失に気づいたのだ。
「そんな…!添い寝までしていたのに!」
一度、叔母夫婦の姦策により村雨丸を奪われて以来、信乃は常に肌身離さずこれを持っていたのだ。
唯一、入浴と水練を行う際は刀が傷んでしまうので、信頼のおける荘助などに管理してもらっていたが。
ここで背負った行李の存在を思い出し、中を浚うが、村雨丸どころか武器らしい武器も無く、あるのは
蓋のされた桶のような物だけ、万が一という事もあり開けてみると―――――
「なっ…!」
並々と張られた水と、顔面ほどもあるおおきなこんにゃくがひとつ
「…なんだ…これ…?」
手を入れて触ってみるが、ひんやりした感触といい、弾力といい、確かにこんにゃくである。
蓋と持ち手の間に差し挟んであった神を広げると、筆でこう書かれていた。
『これなるは無双の剣に唯一抗し得る、無双の盾にて候。努々、粗末に扱う事の無きよう心得るべし』
「って、ふざけるなーっ!!!」
桶を叩き壊したい衝動に駆られるが、粗末に扱うなとの注意書き通り、元のように蓋を閉じて
行李に収めるあたり、生来のお人よしの悲しさか。ともかく、彼の脳裏を支配したのは絶望。
「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう…」
蘇るは犬飼現八と出会い、初めて人を斬った芳流閣の悪夢。
あの時、返還しようとした村雨丸は贋物に摩り替えられ、自分は逆に騙り者として追われる羽目になった。
父も、祖父の名誉も一旦はここで泥に塗れてしまったのだ。その二の舞だけは繰り返せない。
これも玉梓の呪い?いや、彼女は確かに伏姫とともに成仏したのだ、考えられない。
「さがさなきゃ…早く、早くしないとまた…。」
どこを、どうやってそんな簡単な事も見当がつかずに信乃はススキ原の中を駆け出したのだった。
先程起こったことも、殺し合いの事も、彼の頭からはすでにすっぽり抜け落ちていた。
□
無我夢中でススキ原を駆け抜けていた信乃だったが、急に視界開け均された場所へと出た。
そしてその勢いあまって、普段なら気にも留めないような、小さな段差につまずき、そして豪快に転んだ。
手足、顔に擦り傷が出来、口の中も切ったらしく、いやな鉄臭い味が広がる。
「あぐ…、こんな事に時間を食ってる場合じゃないのに…」
「そこの者!」
頭上から投げかけられる、よく通る声にびくっと体を震わせる。
頭上を見上げると、道祖神のわきにある大きな石の上に、どっかと腰を下ろし
左手に持った刀を大地に突き立てている。だがその装束はこの死合に呼ばれた者の中では異相。
立烏帽子に水干姿、細面の顔には白粉を塗り、公家のようにも見える。顔立ちは整っており
切れ長の瞳、口元と顎に髭を蓄えているが、まだ若い。三十は出ていないだろう。
「苦しゅうない、名を名乗れい。」
すっくと立ち上がった男の立ち居振る舞いを見て信乃は直感する。
(…!武家か…。)
動きは自然体ながら隙が無い。太刀を構える様も堂に入り、肩幅も広く
おそらく端正な顔に似合わず、鍛え上げられた肉体の持ち主なのであろう。
何より、闇夜でありながら信乃を捕らえる射竦めるような眼光が彼の出自を
物語っている。武家でありながらこの装束とは、おそらく高貴の出。
何者かはしらないが、一応自分から名乗るのが筋だろうか。
「武蔵国の生まれ、安房国里見左近衛尉が家臣、犬塚信乃戍孝!」
一瞬いぶかしむかのような顔をした後、ほう、と男が声を漏らす。
「そうか、かのような遠国から参ったか。申し遅れたな、余は征夷大将軍参議源朝臣義輝!」
□
義輝は男がこの名を聞いて即座に平服してくるものと思い込んでいた。
が、若者―犬塚信乃はは立ち上がると自分をきっとにらみつけこう叫んだ。
「征夷大将軍だと?ふざけるな!この騙り者め!」
疑いの目を向けられる事は覚悟していたが、いきなり真っ向から否定され
さしもの義輝も頬を紅潮させる、がここで争っても益なしと見、一度心を
落ち着かせる。
「ほう、なぜ余を騙りと断ずる?実際に余の姿を目にした事があるわけでもあるまいて。」
この青年が即座に自分を騙り者と断じたことについて、ひとつの可能性を義輝は導き出していた。
(やはりな…。弾正め、随分と回りくどい事をするものよ。)
今回のこの死合を仕組んだ人物を、義輝は三次家の家裁で、自分にとって目の上の瘤
(もっともあちらも自分をそう考えているであろう)、大和信貴山城主・松永弾正忠久秀と断定していた。
足利幕府第十三代の将軍である義輝は、応仁の乱以降、失墜した幕府の権威の復興を目指し、朝廷、
各地の大名との折衝や、武芸の奨励、鉄砲の開発、交易の振興など精力的な活動を行っていた。
そして今年、最大の政敵であった三好長慶が病死した事により、さらに大々的な親政を断行しようとしていた矢先、
突如、この場に連れ出されていたのである。これは、おそらく自分が死ねば一番得をする人物――
―長慶死後、さらに専横を振るわんと目論む、三好家の重臣で、後継・義継以上の権勢を誇る、
三人衆や松永一派の仕業と考えるのが一番適当である。
義輝が事の黒幕を松永弾正とする理由は他にもあった。二階笠の紋を使う家というのはいくつかあるが、
おそらくあれは、大和の柳生、松永弾正の与党の一つである。あの白州の場にいた人物は年齢からして、
(やや若作りと感じるが)現当主家厳、そして白州の場で彼に食って掛かった十兵衛という男は、
先年、剣の師・上泉伊勢守に弟子入りしたというその嫡子宗厳であろう。ただ、彼が隻眼であるとは聞いていなかったが。
さらに、あの童の首を吹き飛ばして見せた妖術。昨今、信貴山城下に果心居士なる怪人が出没していると義輝は
風の便りに耳にしていた。その時は下衆の好みそうな、根も葉もない話と一笑に付していたのだが、
一連の怪異を見る限り、噂は真実であったと認めざるを得ない。おそらく、松永は、その果心居士を
抱き込み、この死合の場を用意したのであろう。
御前試合というからには、おそらく名目上の主催者は自分。長慶も狂死に追い込んだのではと言われるほど、
色々と黒い噂の絶えぬ弾正であるが、直接、将軍である自分を手にかける事は流石に憚られたのが、自分が
剣術にのめり込んでいる事を利用し、自分が東西の武芸者を集めて御前試合を行い、さらにその中に自ら
踊りこんで斬り死にしたとでも筋書きを立てるつもりなのであろう。先程見た人別帖には、上泉伊勢守、塚原卜伝という
自分の師・二人の名を確認、彼らもおそらく拉致されて来たのであろう。他に知る名前は無かったが、
おそらく皆名うての剣客。ただ、全員が全員そうとは思えない。おそらく松永配下の刺客も少なからず
紛れ込んでいるはず。そう、例えば、この自らを騙りと断ずるこの若者などは極めて怪しい。
だが、義輝の若者に関する考察は思いがけないところで外れる事になる。
「当代の公方は権大納言義尚公だ!義輝などという御人の名、聞いた事もない!不届きな奴め!」
□
信乃は元来裏表の無い純粋な性格であり、好きな相手に素直に好意を寄せ、嫌いな相手ははっきりと拒絶する。
また、古河公方や里見家だけではなく、朝廷や権威失墜した足利幕府に対しても未だ並々ならぬ忠心を持っていた。
その名を騙る不届き物が現れたのだ。当然、信乃は激した感情をそのまま表に現した。
まったく、武士ならば子供でも知っているような公方様の名を間違えるなんて、とんだお粗末な紛い物だな。
信乃は呆れながら、目の前の痴れ者に対して事実を告げた。いや、これは確かに信乃にとっては事実であったのだが。
目の前の偽公方はぽかんと口を開けた後、信じられないという顔を作りこう反論したのだ。
「…そなた、何を申しておる?九代義尚公はもう七十年以上も昔にお隠れになっておるのだぞ?」
信乃は絶句した。義尚は七十年も前にこの世の人では無くなっている?
そんなはずはない。それに義尚は自分とは同年代、義尚が五十まで生きたとしても
自分もとっくに死んでいるような年月の経過ではないか。
「ば、馬鹿な事をいうな!そ、そんな事があろうはずが…。」
「嘘でこのような事を言うはずがなかろう。それに余が仮に騙り者として、その騙る相手の名を誤るとでも思うか?」
「そ、それは確かに…」
「ともかく、今、お互いの知っている事を皆話してみようではないか。それでも余を騙りと断ずるならばそれもよかろう。」
半信半疑ではあったが、信乃は一応男・義輝の話聞いてみる事にした。
□
信乃は絶句していた。男はこの七十年の間の事を逐一、話して見せた。
にわかには信じ難い事だらけではあったが―――とてもそれが法螺には聞こえなかった。
でも、やはり…
「信じられない…。」
「余に言わせれば、そなたの言う事の方がよほど信じられぬが…。そもそも里見義成なる者が、
古河公方や両上杉家を打ち破ったなどという話もてんで聞かぬ。村雨なる太刀の事も。」
さらに時の隔たりだけでなく、信乃の語る文明年間の出来事と、義輝が記録で知るそれとがまるで噛み合わない。
さらに世に知られた源氏の重宝・村雨丸を知らぬと言うのだ。もしかしたら七十年の歳月の間に亡失してしまったのかも
しれないが、それでも名前くらいならば伝わっていてもいいはずである。
「やはり、お前騙り者だろう!武家の、源氏の棟梁たる公方が村雨丸を知らないなんて――」
「知らぬものは知らぬのだ。そなた、果心居士が蘇らせた死者かとも思うたが…それにしても合点がいかぬ。」
「だから、俺は死んでなんかいない!」
事態が飲み込めない上、話は噛み合わない。術を無くした二人が寸刻、沈黙が二人の間を支配した。
「…とにかく!俺は村雨丸と孝の珠、それに毛野さんを探す!」
先程読んだ人別帖にあった唯一知る名前の主、腕も立ち、知恵の回る彼ならなにか打開の糸口を見出してくれるかもしれない。
信乃は北へ向かって経とうとしたが――
「探してどうするつもりなのだ?」
義輝が声をかける。
「勿論、その松永弾正なる人物たちを討つ!こんな残忍な事を考える連中が世のため、人のためになるはずがないんだ!」
「…ふ、それを聞いて安心したわ。得物が無くては辛かろう。受け取るがいい。」
そう言って、義輝は手に持った太刀を差し出す。先程は暗がりでよく見えなかったが、近づくと信乃はそれに見覚えがあった。
「これは小篠!」
信乃の無二の義兄弟・「義」の犬士、犬川荘助の佩刀であった。
「これを何処で!?」
「そこの道祖神の前に供えてあったのだ。余に渡されたのは見ての通りの木刀だが…。
戦ならいざ知らず、このように仕組まれた剣法勝負、松永らの思惑には乗らぬ。」
村雨丸だけでなく、小篠も奪われていたなんて!こうなれば、この小篠と対になる小刀・落ち葉や
普段自分が愛用している桐一文字の両刀もここにある可能性が高い。親友・荘助に心の中で許しを得ながら
これを腰に挿す。
「だ、だけど…木刀なんかで、他の連中が切りかかってきたら…。」
「なに、上手く裁いて見せるわ。ここで死んだら余もそれまでの男だったと言う事。
ではな…、余はこれより南に向かう事とするが、御師・塚原卜伝と上泉伊勢守に出会ったら伝えてくれ。
この死合とは別に、立ち合いを望んでいるとな。毛野とやらも見つければ、余から声をかけておこう。」
そういって義輝は立ち去ろうとするも…。
しえん
しえん
規制?
しえん
ksk
496 :
転載:2009/01/07(水) 23:52:25 ID:zropgTq2
「待て!」
今度は信乃が義輝に声をかける。
「お前が公方様だなんて信じられないが…、得物をくれた事には感謝する。ありがとう…。」
ぺこりと信乃が頭を下げた。信乃は未だ、この男が公方であるとは思っていないが…、
たしかに度量広く、意思の強い男である事は認めた。相当腕に自身があるようだが、
やはり木刀一本で歩かせるのは心許ない。むざむざ死なせてしまっては仁義にもとる。
「だから…俺が義輝を守るよ。そっちに殺すつもりが無くても本気の相手が切りかかってくるかもしれないし…。
それで真剣を持っていなかったので死にました…なんてなったら寝覚めが悪いし…。」
どこかバツが悪そうに頬をかく信乃を見て、義輝は笑った。
「…ふっ、よかろう。犬塚信乃よ、大儀である!」
「!言っておくけど、俺はお前の従者になったわけじゃない!あくまで対等だからな!」
「ははは!わかった、わかった、よろしく頼むぞ信乃!ついてくるからには余と師父との勝負も見届けてもらうぞ!」
そういうと義輝は手でついて来いと信乃に促し、南へ歩み始める。
「あ、待って!」
それに伴って信乃もいそいで義輝の脇に並び歩みを進めた。
223 :テストしたらば名無しさん:2009/01/07(水) 23:50:30 ID:hkMNTQTY0
生まれてこの方、これ以上無い程の無礼な扱いを受けたにも関らず
義輝はすこぶる機嫌がよかった。自分を騙り者と呼び、怒りをあらわにする信乃。
将軍の首など、誰にすげかえても構わぬという連中がごろごろするなかで、
このような態度を取るのは、彼が弾正の刺客で無い限りは
裏を返せばそれだけ将軍家への忠誠心が強いという事だ。
信乃の素性はいまだ不可解な点が多いが、これだけは本物であろう。
そして先程、昨今の世相を信乃に話した時の感想。
――七十年、経っても戦乱が収まっていないなんて――。
これは自分の、将軍家の力が足りない事によるところが大きい。
真に不甲斐ないばかりである。信乃や大勢の者をこれ以上嘆かせないためにも
一刻も早く、将軍家の権威を回復し、日の本に安寧を齎さねば。そのために
取るべき行動は一つ。
(待っておれよ、松永弾正。そうそう貴様の思い通りにはさせぬ!)
497 :
転載:2009/01/07(水) 23:53:22 ID:zropgTq2
【にノ参 道祖神前/一日目/深夜】
【犬塚信乃@八犬伝】
【状態】顔、手足に掠り傷、義輝について南へ
【装備】小篠@八犬伝
【所持品】支給品一式、こんにゃく
【思考】
基本:村雨を取り戻し、主催者を倒す。
一:義輝を守る。
二:毛野を探し合流。
三:小篠、桐一文字の太刀、『孝』の珠も探す。
四:義輝と卜伝、信綱が立ち合う局面になれば見届け人になる。
【備考】
※義輝と互いの情報を交換しましたが半信半疑です。また義輝を信用していますが、将軍だとはまだ信じていません。
※果心居士、松永久秀、柳生一族について知りました。
※人別帖に自分の名前が二つある事は確認していますが、犬塚信乃が二人いる事はまったく想定していません。
※玉梓は今回の事件とは無関係と考えています。
【足利義輝@史実】
【状態】健康、信乃を従え南へ
【装備】木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:松永久秀を討つ。死合には乗らず、人も殺さない。
一:卜伝、信綱と立ち合う。また、他に腕が立ち、死合に乗っていない剣士と会えば立ち合う。
二:上記の剣士には松永弾正打倒の協力を促す。
三:信乃の人、物探しを手伝う。
※黒幕を松永久秀、宗矩を柳生家厳、十兵衛を宗厳だと勘違いしています。
※果心居士が今回の事に関与していると考えています。
※信乃と互いの情報を交換しましたが半信半疑です。信乃に対しては好感を持っています。
※人別帖に信乃の名前が二つある事は確認していますが、犬塚信乃が二人いる事はまったく想定していません。
※なお信乃のこんにゃくがはいっている桶の中の水は妖術で固定されています。激しく動かしたり、ひっくりかえしても
中の水はこぼれませんが、掬う、飲む、桶自体が壊れる等すれば、その限りではありません。この事にはまだ
信乃も義輝も気づいていません。
498 :
転載:2009/01/07(水) 23:54:45 ID:zropgTq2
転載終了
それと乙。
義輝カッコいいなぁ。
それとコンニャクwwwww
たしかにアレを防げるwwww
しかアレしか防げない……っ!
ヨッシー、イイカンジのキャラだ。良いコンビになりそう。
殺る気満々の卜伝と、別の道でやる気満々の信綱あたりとどう絡むかも楽しみな。
仮投下ありがとうございます
あと信乃の状態表が間違っていたので修正
後続の書き手さんとwiki収録時はこちらに差し替えてください
【犬塚信乃@八犬伝】
【状態】顔、手足に掠り傷、義輝について南へ
【装備】小篠@八犬伝
【所持品】支給品一式、こんにゃく
【思考】
基本:村雨を取り戻し、主催者を倒す。
一:義輝を守る。
二:毛野を探し合流。
三:落葉、桐一文字の太刀、『孝』の珠も探す。
四:義輝と卜伝、信綱が立ち合う局面になれば見届け人になる。
【備考】
※義輝と互いの情報を交換しましたが半信半疑です。また義輝を信用していますが、将軍だとはまだ信じていません。
※果心居士、松永久秀、柳生一族について知りました。
※人別帖に自分の名前が二つある事は確認していますが、犬塚信乃が二人いる事はまったく想定していません。
※玉梓は今回の事件とは無関係と考えています。
投下乙です。
誤解がもととはいえ果心居士に気付いたか。
そして無双の盾wwww
G
投下乙。
もしかして真相に近付く材料を最も多く持ったコンビかも。
ただ、柳生の二階笠は坂崎出羽守が切腹した時に宗矩が受け継いだもののはずなので、
出羽守より前に死んだ義輝がそこから柳生を連想するのはちょっと無理じゃないかと。
>>502 おk
そのあたりは削除あるいは修正しておきます
>>502の指摘を受け、柳生に関する義輝の推理を
義輝が事の黒幕を松永弾正とする理由は他にもあった。二階笠の紋を使う家というのはいくつかあるが、
おそらくあれは、大和の柳生、松永弾正の与党の一つである。あの白州の場にいた人物は年齢からして、
(やや若作りと感じるが)現当主家厳、そして白州の場で彼に食って掛かった十兵衛という男は、
先年、剣の師・上泉伊勢守に弟子入りしたというその嫡子宗厳であろう。ただ、彼が隻眼であるとは聞いていなかったが。
から
義輝が事の黒幕を松永弾正とする理由は他にもあった。
白州の場で、あの二階笠の男に名を呼ばれ、今また名簿に『柳生十兵衛』と名のある男―――。
おそらくあれは、大和の柳生、松永弾正の与党の一つである。あの白州の場にいた人物は年齢からして、
(やや若作りと感じるが)現当主家厳、そして白州の場で彼に食って掛かった十兵衛という男は、
先年、剣の師・上泉伊勢守に弟子入りしたというその嫡子宗厳であろう。ただ、彼が隻眼であるとは聞いていなかったが。
に差し替えます
宗厳が参戦する事があればさらに修正したいと思います
投下&転載&修正乙です。
ここもまた名コンビの予感、果たして先に待ち受けるものは?
しかしこのロワ誰も彼も一筋縄じゃ行かないやつばっかりで面白すぐるw
書き手の皆さんGJ、超ガンガレ!
506 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 19:03:19 ID:DSwq5AJp
いろいろ乙!
この義輝なら掘られても良い
何だかんだでいい二人だなあ
現在位置表
いノ捌 辻月丹、椿三十郎
ろノ弐 小野忠明、佐々木小次郎(傷)
ろノ参 オボロ、犬坂毛野、斎藤弥九郎
ろノ肆 奥村五百子
ろノ陸 志々雄真実
ろノ漆 土方歳三、
はノ弐 佐々木小次郎、屈木頑乃助
はノ伍 神谷薫、座波間左衛門
にノ壱 新見錦
にノ弐 沖田総司
にノ参 犬塚信乃、足利義輝
にノ陸 久慈慎之介、トウカ
ほノ壱 上泉信綱、林崎甚助
ほノ肆 剣桃太郎、坂田銀時
ほノ陸 徳川吉宗、秋山小兵衛、山南敬助、佐々木小次郎(偽)
へノ弐 岡田以蔵
へノ参 塚原卜伝、宮本武蔵、川添珠姫、伊東甲子太郎
へノ肆 斉藤伝鬼坊
へノ漆 東郷重位
とノ壱 犬塚信乃、赤石剛次
とノ参 鵜堂刃衛
とノ肆 芹沢鴨、石川五ェ門、細谷源太夫
ちノ漆 伊藤一刀斎
富田勢源、伊良子清玄、投下します
中条流という流派がある。
流祖は中条兵庫助長秀(兵庫頭とも)という南北朝時代の人物である。
彼は歌人としても名高く、室町幕府の評定衆を務めたともいうから、
歴史的にも家格的にも非常に由緒ある流派である。
その門下には有名人も多く、
例えば「名人越後」と名高い富田重政、
伊藤一刀斎の師匠として著名な鐘巻自斎、
巌流島の決闘で有名な佐々木小次郎などがおり、
大石内蔵助が使い手だったことで有名な東軍流の流祖、
川崎鑰之助も一説によれば中条流の門下だった言う。
しかし、一般に中条流の使い手として最も有名な人物の名前を挙げれば、
やはりそれは富田勢源であろう。
富田勢源は上記の富田重政の叔父にあたる人物で、
勢源は法名であり、俗名を五郎左衛門と言った。
元は越前朝倉家の家臣であったが、
眼病を患って出仕が難しくなり、
跡目を弟の富田景政に譲って隠居し、
頭を丸めて入道した。
戦国時代の兵法使いらしく、
様々な武芸に長じていたというが、
特に小太刀の名人として知られている。
試合は生涯二度のみ。
故に逸話は少ないが、長さ三尺四、五寸の八角棒を使う梅津という神道流の達人を
皮を巻いた一尺二、三寸の薪で倒したという話はあまりに有名だ。
この兵法勝負には、
上泉伊勢守、塚原卜伝、伊藤一刀斎、斉藤弥九郎、土方歳三と、
古今の著名な剣客たちが呼び出されたが、
勢源もまたその例に漏れることは無かった。
彼が呼び出されたのは、上記の梅津戦後、越前に帰った直後であった。
◆
とノ伍。
稲が青々と茂る水田の傍らを走る道を、
一人の男が歩いている。
柳色の小袖に半袴を着た、坊主頭の中年男である。
撫で肩の猫背で、隠居老人みたいな穏やかで枯れた雰囲気を醸し出している。
背中には行李を背負い、
右手に長刀を鞘に入れたまま持ち、
鞘を前にして、こじりを地面擦れ擦れの場所に置き、
ひゅひゅっと左右に振りながら歩いている。
まるで盲人の杖のような動きだが、
はたして男はほとんど目が見えていなかった。
男の双眸は、どちらも白くにごっている。
眼病であった。
男は悠々と道を進んでいたが、
不意に立ち止まって、
道の真ん中に生えている「枯木」に見えぬ眼をやった。
否、それは枯木ではない。
出現したのか 始めからそこに居たのか。
一人の男が立っていた。
長い艶のある髪をした総髪の男である。
暗い事もあり、その髪に隠された顔は見えない。
白い振袖を着て、道の真ん中で杖をついて静止している
「・・・・・・」
少し歩む速さを緩めながらも、
僧形の男は枯木男へと足を進める。
「・・・・・貴様・・・・“めしい”か?」
枯木が不意に口をきいた。
闇と長い髪に隠された、
顔が月光に照らされる。
美しい顔であった。
市中を歩けば、すれ違う女の十中八九は振り返り溜息をつくであろう稀有の美貌である。
しかし・・・・
「目明きならば使い道もあるが・・・・“めしい”ならば用はない・・・」
男の顔、両の瞼の上に真一文字、
一筋の切り傷がある。
男もまた盲目であった。
「ここで死ね」
そう言うと薄く笑った。
この時僧形の男―富田勢源―は、
初めてある事実に気が付いた。
(杖ではない・・・)
ほとんど見えぬ双眸が、杖から反射する月光を捉えた。
杖が反射?
否、杖にあらず。
抜き身の刀である。
さらに驚くべき事実。
男はただ立っているのではない。
すでにかまえているのだ。
それはおよそ一切の流派に、
聞いた事も見た事もない奇怪な構えであった。
「何者か」
勢源が問うた。
枯木は答えた。
「中山峠の鎌鼬なり」
怪しく笑った男は、名を伊良子清玄と言う。
◆
伊良子清玄という男の来歴はよく解らない。
本人は江戸の裕福な染物屋の子と嘯いていたが事実でない。
恐ろしく賤しい生まれらしく、夜鷹の子とも言う。
掛川の虎眼流道場に彼が初めて姿を現した時には、
その時点でかなりの使い手であったというが、
清玄が何処でどのようにしてそのような剣の腕を身に付けたのかすら、
今となっては解らないのだ。
江戸牛込榎町、由比民部之助正雪の道場に、
伊良子という剣士がいたとも言うが、
それが清玄であるという確証はない。
とにかく彼の来歴が記録に正確に残っているのは、
虎眼流道場に入門してからである。
虎眼流に入門してからの清玄の剣技の上達は目まぐるしく、
あっという間に『一虎双竜』と称せられる
虎眼流上位三剣士に数えられるまでになった。
虎眼流流祖、岩本虎眼の一粒種、三重の覚えも良く、
ゆくゆくは岩本家の跡取りになるとも、
まことしやかに囁かれていた。
彼は野心家であり、
岩本家の頭首を手始めに、
剣才で成り上ろうとも考えていたという。
しかし若き野心故か、彼は触れてはいけない物に触れてしまう。
岩本虎眼が愛妾、いくに手を付けたのだ。
しかもこれがすぐに虎眼に知られてしまったのである。
虎眼の嫉妬深さと、敵対者への徹底した残虐さは常軌を逸していた。
騙されて人気の無い神社に呼び出された清玄は、
虎眼流高弟達によってたかって滅多打ちにされ、
その上で、虎眼自身の奥義「流れ星」にてその双眸を切り裂かれたのだ。
もしこれが清玄でなければ、
剣の人生は終わったも同然だったろう。
しかし清玄は尋常の人ではなかった。
その後如何なる修練を積んだか、
虎眼流を放逐されて三年後、
彼は掛川に帰ってきた。
そして、虎眼流の高弟四人、
そして彼の怨敵、濃尾無双岩本虎眼を凶刃にかけたのである。
彼は、虎眼の「流れ星」すら破った自らの剣技をこう号した。
『無明逆流れ』と。
◆
「おやめなさい」
勢源は清玄に諭すように言った。
恐れ故ではない。
中条流の剣の本質はその流祖中条長秀が述べているように、
『平らかに一生事なきを以って第一とする也。戦を好むは道にあらず。止事(やむこと)を得ず時の太刀の手たるべき也。この教えを知らずして此手(このて)にほこらば命を捨る本たるべし』
である。刀を抜くのは最後の手段なのだ。
「これは異なことを言う。
これは兵法勝負、敵を斬るのに何のためらいあらん」
そう言うと清玄は
う ふ ふ ふ ふ
と、怪しく笑った。
「我が剣は人をすすんで斬るためのものではない。
あくまでその本義は護身である」
勢源は清玄の笑いを意にも介さず、
あくまで静かに諭すように言う。
しかし清玄はそれを聞いても妖しく笑うばかりである。
(止むをえず)
逃がしてくれる相手ではない。
立ち合わねばならぬ。
勢源はそう判断すると、
長太刀に手を掛けた。
しかし勢源が最も得意としたのは小太刀である。
はたして慣れぬ得物ではたしてこの怪剣士に抗し得るか?
勢源は太刀を抜いた。
(ようやく抜いたか・・・)
音より清玄はそう判断した。
ここで、妙な事実に気が付いた。
(鞘走る音が二つ・・・?)
地面に、鞘が落ちる音が響く。
「む、面妖な・・・・」
「左様」
勢源は『両手』に小太刀を構えた。
「左様、小太刀二刀流」
一つの鞘に二つの小太刀。
奇怪な刀である。
御庭番式小太刀二刀流、四乃森蒼紫の愛刀であった。
◆
勢源は撫で肩の脱力姿勢で、
二刀小太刀の切っ先を交差すようにして、
だらんと下げている。
そのままじりじりと清玄に接近する。
対する清玄は、
例の杖を突くような奇怪な構え、
『無明逆流れ』の体勢である。
そのままで、まるで地蔵の様に不動である。
射程内に勢源が入って来るのを待っているのだ。
(来い!来れば、貴様は下から真っ二つ!)
清玄の脳内に、一太刀に上下に斬られた坊主頭の姿がありありと浮かんだ。
静かな死闘であった。
ただ勢源の足が、砂利を踏みしめる音のみが、
暫くの間響いた。
勝負は一瞬であった。
勢源が射程内に入った!
そう判断するや否や、清玄必殺の一撃が下方より発射される。
同時に勢源も動いた。
それまでだらんと下がっていた二つの切っ先が、
電光のように跳ねあがる。
ただ、右の小太刀よりも、左の小太刀の方が高く跳ね上がった。
下方より襲い掛かるは清玄の、電光の如き龍の牙。
上方より迎え撃つのは勢源の、紫電の如き鷹の爪。
二つはガッと組み合い、そして・・
「馬鹿な・・・っ!?」
清玄が呻いた。
濃尾の虎すら屠った清玄の『無明逆流れ』の一撃が、
「そんな馬鹿なっ!?」
鷹の爪に捕獲されていた。
◆
『陰陽交叉』
奇しくもこの時勢源が取った刃の動きは、
この二刀小太刀の本来の使い手、
四乃森蒼紫の上記の技によく似ていた。
本来の『陰陽交叉』は、
1本目の小太刀の峯に2本目の小太刀を直角に叩き付け、
勢いを付けて斬り付ける技である。
しかし、これを勢源は防御に用いた。
清玄の『逆流れ』の一撃と、
勢源の右の小太刀が交差した瞬間、
高くあげられていた左の小太刀が刹那に、
清玄の刀と、勢源の小太刀がちょうど交叉している点へと振りおろされたのだ。
果たして、清玄の刀は、
勢源の二つの小太刀と絡み合うようにして
空中で静止していた。
僅かでもタイミングを誤れば、
小太刀は二つとも跳ね飛ばされ、
勢源の顔は縦に割られていたであろう。
正に神業であった。
「ぐうっ!」
清玄は三度呻くと、
絡みつく二つの小太刀をふりほどいて、
後方へ飛んだ。
そして、来るべき敵の反撃に備えた。
(来い!今度は「流れ」の一閃で仕留めてやる!)
清玄は太刀を担いでいた。
虎眼流必勝の構えである。
しかし・・・・
待てど暮らせど追撃は来ない。
二つの鍔鳴りが鳴った。
勢源が二刀小太刀を鞘に戻したのだ。
「き、貴様ぁっ!」
清玄が叫ぶ。
まさかここまで来て勝負を捨てるつもりかっ!
清玄は言外にそう問うた。
「我が中条流は他流試合を禁じられております」
勢源はそう言うと踵を返して、
「しからば御免」
すたすたその場から立ち去り始めたのである。
「ふ、ふざけるなぁっ!」
清玄は顔を紅潮させながら、
白刃を閃かせ勢源の後を追おうとするが、
「うっ!」
清玄はこの時、巨大な鷹を幻視した。
恐ろしく鋭い爪を、巧みに隠す鷹であった。
結局、清玄は勢源が闇の奥へ消え去るまで、
追いかける事は無かった。
◆
「未熟だ」
勢源は、ようやく垂れてきた額の冷や汗を拭ってそう呟いた。
恐ろしい相手だった。
たまたま支給品がこの二刀小太刀で、
とっさにあの男の奇剣を防ぐ案が浮かんだからいいとしても、
今もこうして生きているのは半分は運だ。
「私が欲する護身剣にはまだ遠い」
彼が殊更、小太刀を好むのも、
彼が中条流の護身の剣を極めんと欲するからである。
事実彼は、
『殿中で烏帽子長袴の礼装をしているときでも、
白刃をもって襲われるかもしれない。
その時は小刀しか帯びておらぬ。
それを抜いて長大な剣と撃ち合い、
打ち勝ってこそ真の武芸者である』
と、言っている。
殿中であの男に襲われれば死んでいただろう。
「これはいい機会かもしれん」
恐らく、ここで自分は様々な剣士に出会うだろう。
それら全てを自ら仕掛けず、仕掛けられれば話術と小太刀をもって制す、
それを全て為し得た時、初めて護身完成と言えるのではないか。
「それにしても、めしいの一人旅とはすこし辛い。
誰か心ある目明きの助けが欲しいものよ」
取り敢えず目明きを求めて、
勢源、夜の道を一人行く。
【とノ陸 道/一日目/深夜】
【富田勢源@史実】
【状態】健康、
【装備】蒼紫の二刀小太刀
【所持品】支給品一式
【思考】:護身剣を完成させる
一:目明きを探す
一方、清玄は、白刃を煌めかせたまま、
しばし呆然としていた。
野心家の清玄は直ちにこの殺し合いに乗ったが、
まさか出鼻で自慢の『無明逆流れ』を破られるとは、
思ってもみなかった事である。
彼が光を失ってから身を捨てるようにして習得した
この秘剣があっさりと・・・・・
その衝撃は計り知れない。
ただの秀才剣士ならここで心が折れて終わりであったろう。
しかし・・・
く ふ ふ ふ ふ ふ ふ ふ
清玄の哄笑が夜に響いた。
これは天才剣士の心の挫折を示す物か?
否、これは産声。
新たなる怪物の産声・・・・・
【とノ伍 道/一日目/深夜】
【伊良子清玄@シグルイ】
【状態】健康、強い復讐心
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】:『無明逆流れ』を進化させ、あの老人(勢源)を斬る
一:とにかく修練する。
投下終了
ウッシーの代わりを勢源にして貰った。
足は壊れてないけど
女の剣客発見。漫画「市 ICHI」の主人公の「市」。
女座頭市。盲目。室内では三味線を弾き、その反響音で部屋の間取りなどを認識したりする。
現在連載中で、しかも自分は一巻をざっと読んだだけなんで、細かい部分は……
もっと詳しいこと分かる人がいたら書き込みして欲しいです。
それなら普通に座頭市出したい
女剣士なら戦国ランスの上杉謙信とかどうだろうか
出典があれだが、まあうたわれもいるし
やっぱり佐々木三冬をだな
でも三冬さんは作中でも一流の剣客には敵わない扱いだからなあ
どうせ追加するならやっぱり強い剣客を出したいところ
>>523 でもそれ言うと神谷薫も実力は微妙なような……
下手すると見せしめの村雨より弱い
本人も疑問に思ってたけど薫が呼ばれたのには何か特別な理由があると見るべきだろうね
参戦決定した剣心を追い込むためとか、呪術的な理由で薫が必要だとか
>>519 最新号付近では新選組絡みの話になってってるな、あれ
追加キャラ談義で盛り上がってる様だけど、
自分も二人ほど、名簿に載ってないキャラで出したい奴がいる。
SSは出来上がってるから、通す、通さないは別にして、
取り敢えずここに投下してもいいですかね?
るろ剣斎藤出したい><
仕事人始まったが中村主水はまだ出てないんだよな……
>>527 他にもあなたが書いた人物を書きたいけど名簿にないから我慢してる人がいるかもしれないわけで、
それをいきなり投下してしまうのは反則じゃないですかね。
追加キャラを出すなら一定のルール(議論して名簿に何人か追加する、書き手ごとに名簿外の人物を○人出せるよにする、など)を決めて、
あらためて予約期間をもうけて予約合戦をするのが筋でしょう。
>>528,530
間を取って子母澤寛準拠の左利き斉藤をですね
>>531 了解。
まあ、おっしゃる通り。
それと岩本虎眼 予約
>>521 ランスの謙信いいかもな、強いし、何よりかわいいし
謙信はあくまで武将だし、剣に特別造詣深いわけじゃないからちょっと微妙じゃね?
>>518 投下乙
二人のセイゲンで上手くかかってますねー
再戦がたのしみです
斎藤一が女な作品があったら斎藤需要と女不足解消を両立できると思って探してみたけど徒労だったぜ!
とりあえず、書く前に揉めないかどうかの確認で念のため質問。
イグニスって一応「日本国籍持ち(実際は日本人どころか人類でさえ無い)」
で最低条件はぎりぎり満たしていると思うけど、書いてOKかな?それともNG?
身体能力は「鍛えた成人女性並」で、ひたすら寿命が長いだけの人間並みの存在だけど。
・剣技に長じている
・剣が人生に大きなウェイトを占めている
を満たしていればいいと思う。
あと、岩本虎眼、予約
540 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/10(土) 20:42:41 ID:Jf25DJen
>>537 萌えよ剣はそうじゃないか?内容知らんが
と思ったが、いなかった
史実版の斉藤一を出したい……。
参戦時期は七十歳くらいの頃からで。
それはそれとして、柳生連也斎と白井亨で予約します。
>>542 女子高の守衛やってるころの斎藤(藤田)かwwwww
しかし柳生連也斎、白井亨とはチョイスが渋い
>>539 ・剣技、剣術といった類には十分すぎるほどに長じている。
それだけで大幅に身体能力を圧倒しているはずの怪物を普通に倒せる。
・剣ではなく「戦い」そのものが人生(?)のウェイトを大きく占めている。
人間の用いる技術としての「剣」を大いに好んではいるだろうが、
別段剣ばかりにこだわるわけじゃない(だからやりくちが色々と陰険)。
…こう書いてみるとこっちも微妙だな。
徹底した合理性もちの卑怯で騙し打ち大好きな女性だし。
>>544 卜伝や武蔵みたいにやり口が汚い(巧妙とも言うが)剣豪は意外と多い。
だから「卑怯で騙し打ち大好き」は別に問題はない。
それに戦国の兵法は普通、剣術以外の武芸も広く取り扱う総合戦闘術だったから、
剣以外も使える事は別に問題じゃない。
具体例だと、香取神道流とかは剣術以外に、槍術、柔術、居合、棒術、手裏剣術、忍術、軍学、築城法を伝えてる。
だから別に問題はないと思う。
正統派剣士ばっかなのもなんだしね。
予約含めて今何人だ?
つーか斎藤はもう出していいんじゃね?
>>544 追記すれば、
・塚原卜伝は戦場経験豊富だが、軍功はほとんど槍によるものだったらしい。
・上泉信綱は槍術、薙刀術でも達人クラス
・富田勢源も槍の達人だったらしい。東軍流流祖川崎鑰之助は、勢源より槍を習った
という伝承がある。
>>547 ありがとう。じゃあちょっと「最も気高き刃のイグニス」で試してみます。
といっても正式に予約するわけじゃないので、他に書きたい人があれば譲ります。
むしろチート杉ると困るんだが
志村新八投下します。
「銀さん!銀さん、どこにいるんですか!?」
月明かりだけが照らす、小道。
そこをまだ10代と思しき少年が、知り合いの名前を呼びながらさまよっていた。
「……どう、しよう……」
少年は意識を取り戻し、この場にたどりついてからすぐ万事家の主たる男、坂田銀時を探し始めていたのだが、5分ほど経過した今も誰にも会う気配がない。
暗闇の中、名前も正体も知らない誰かに声を聞かれるというのは、すなわち存在がばれるということ。
リスクを伴う行為だ、そうは理解していた。しかし少年・志村新八は危険を覚悟の上で、上司を探し回っていたのだ。
「御前試合だなんて……どうすりゃいいんだよっ!」
その腕から、まだ明けてもいないディパックが滑り落ちる。
正直のところ、新八は怯えていた。
死線は何度もくぐってきている。何度死を覚悟し、重症を負ったか分からない。
また、剣を未熟とはいえ学んでいる身としては、討ち死には覚悟もしている。
しかし―――先ほどのあの少年の死に方は?
あまりに理不尽だ。
あの男の言うことによれば、どうやら少年も自分と同じような立場であったらしい。
そんな少年は死んだ。魂に従って生き、闘い殺された、のではない。
いとも簡単で単純で残酷な方法で。
あの謎の力は何なのか、検討こそつかなかったが、新八は似たような力にはいくつか心当たりがあった。
おそらくあれは、天人の能力。あの男は普通の地球人に見えたが、おそらく裏で天人と組んでいたのだろう。
今までそのような奴らはごまんといたのだから。
―――お主気づかぬか?
―――この場に呼び出された武芸者の中で、貴様が一段と劣っているという事に。
あの男は、そう言った。
それが理由で、それだけが理由で、村山という少年は殺されたのだ。
他の者なら、その理由を聞いても聞き流すことができただろう。
弱者なのだから仕方がない、と。
しかし新八は、それが他人ごととは思えなかった。
何故なら―――新八も少年と大差がないように思えてならなかったからだ。
銀時や真選組、姉の幼馴染である九兵衛に比べれば、自分の剣の腕が未熟なのは日の目を見るより明らか。
それに加え、まだ10代半ばということもあり、決して体格もいいとは言えない。
容貌も仲間からさんざんダメガネとからかわれる、冴えないオタク系。
それに納得できるかはともかく、客観的にみてとても強者には見えないだろうことは、新八も理解していた。
だから、思う。
もしかすると、あそこで妙な力で爆発させられたのは、自分だったのでは、と。
―――ただ、僕は、運がよかっただけで―――
もし、あの男と視線を合わせていれば―――
もし、今日の運勢が最低だったなら―――
自分は、既に帰らぬ人だったのかもしれないのだ。
「……いやだっ!」
あんな方法で死ぬのは嫌だ。
新八の思考を一瞬絶望と恐怖が覆う。しかし、この会場に確実にいるであろう知り合いの顔を思い出し、またチャイナ服の少女や、厳しくも優しい姉の顔を思い出し、否定するように首を振る。
そして決意を込めて、ディパックを握り締める。
「……っ、だめだ、こんなことじゃ……銀さんに簡単に会えるわけじゃないことは分かった。……それなら、僕は僕にできることをするべきだ」
天道無心流道場の跡継ぎとして。
剣士として、武士として、何より、男として。
こんなところで死ぬつもりなんて、ない。
もちろん、こんな御前試合に付き合い、殺し合うなどとんでもない。
剣は人を守るものだ―――新八はそう教わって生きてきたのだから。
だから、銀時と共にこの試合から抜け出そう。
そう決めた。
方針が決まったことで少し安心し、息を吐く。
「……ふう、とりあえず落ち着こう。……そう言えば、荷物を見てなかったな。……武器があるなら見ておくべきだよね……あと、人別帖も目を通しておかないと……」
ほどよい大きさの石を見つけ、そこに腰をおろす。
今更遅い気もしたが、辺りを見回す。人影はなく、静かな闇が広がっているだけだ。
きっと、この殺し合いに乗り気な人間もいるはずだ、新八はそう理解していた。
例えば、高杉の部下であった男、岡田似蔵。
紅桜に精神を侵された殺人狂―――あの男のような人物がまぎれているならば、喜んで人を殺して回るに違いない。
だから、用心は怠ってはならない。
まだ未完成故、抜けはあるかもしれないが、できる限りは。
肩がぶるりと震えるが、恐怖を隠すようにわざと大きめの声を出す。
「……さあて何が入ってるかなあーっと……え、この感覚はもしかして……」
ディパックをあさった新八の掌は、細い何かの間隔をとらえていた。
剣ではないか、そう期待し右手を引き抜いた彼の手に握られていたのは―――
「って、木刀かよ!僕は銀さんじゃないから無理だって!こんな武器じゃ木刀と一緒に僕もぽっきり逝っちゃうって!」
何の変哲もない、木刀だった。
殺意はないとはいえ、身を守るためにはある程度の武器が必要。おそらく集められた中では弱者に含まれるであろう新八の武器としてはやや心もとない。
「困ったなあ…………まあ、人を殺すことはない、って前向きに考えるか……はあ……」
そう呑気なことは言ってはいられない状況ではあるが、あきらめるより仕方無い。武器が頼りにならなそうなラバ、尚更知り合いがいるかを確かめなければ。
「……っと、あとは……人別帖は……と」
ディパックをあさり、お目当てのそれを取り出し、捲る。
一つ一つの名前を目で追っていく。
そこにはやはり、自分と、坂田銀時の名前があった。
そして―――新八は、一つの名前に目を止めた。
「……土方さん?」
自分の名前の傍に、土方という姓の人物の名前が書かれていたのである。
「……真選組もここにいるのか……あ、……沖田さんも!?」
更に続けて顔見知りの人間の名前を見つけ、新八は安堵の息を吐く。
真選組の実力者が二人もここにいる、というのは心強い。
彼らは普段こそ敵対し、(特に上司の銀時と副長、年下の夜兎の少女と一番隊隊長の相性は最悪のようだ)因縁もあるが、いざという時には協力してくれるに違いない。
かつて姉が柳生に嫁ごうとした際にも、姉に惚れた局長のためとは言え彼らは手を貸してくれた。
例えトップがストーカーでも、副長がマヨラーでも、一番隊隊長がドSでも、……一応、本当に一応だが、彼らは武装組織だ。
無闇やたらに人を殺すことはしないだろう。……と思う。
……実は考えれば考えるほど協力してくれるのか怪しく思えてくるのだが、少なくとも自分が殺されることはないだろう。
何せ、自分は彼らの上司の想い人の弟なのだから。
まるであの男が姉と結婚することを認めているようで癪だったが、今はそんな縁にもすがった方がいい。
「……近藤さんはいないみたいだけど……」
他にも知り合いの名前がないか、さらに探す新八は、そこでふと思い出した。
「……あれ、そう言えば―――」
あの、謎の部屋にいた中年の男。
その男に、あの隻眼の少年は何と呼ばれていただろうか?
「……十、兵衛?」
そのような響きだった気がする。
それは、一人の知り合いの名前によく似ており、一瞬彼女もいるのではないか、という思考が頭をかすめた。
ここが試合……切り合いだというのなら、紛れ込んでいてもおかしくない。
しえん
「もしかして、九兵衛さんも?」
新八は閉じかけていた人別帖をもう一度開き直し、彼女の名前を探す。そして見つけたのは―――
「……柳生……あった!……ん、……あれ?」
新八は眼鏡を外して目をこする。そして掛けなおしてもう一度見る。
しかし変わらない。
「……何で十兵衛なんだろう?」
誤植、だろうか?
しかし、さっきの男は十兵衛という名前だったはず。では、これはあの男の名前なのか?
「……あの人も柳生って姓なんだ……」
珍しいこともあるものだ。柳生は剣術の名門故、珍しい姓なのだろうという先入観もあったのだろう。
彼女の兄弟、ではないだろう。九兵衛が柳生の唯一の庶子だというのは既に知っていた。それ故に、彼女は男としての生活を余儀なくされたのだから。
やや引っかかることはあるが、きっと同姓の似た名前の別人だろう。
そう思いたかった。
姉の大切な人がここにいるとは思いたくなかったのだ。
「……よし、……こうしている間にも、銀さん達がどこに行くか分からない……。とりあえず、早く誰かと会わないと」
人別帖を閉じ、新八は故意に大きな声をあげて立ち上がった。
それは彼なりの、決意。
「銀さんや土方さんたちにすぐ会えるとは限らない……きっと僕たち以外にもこの殺し合いに反対の人はいるはずだ。その人たちと協力し合おう」
「そして、絶対にここから出るんだ」
実力は劣っているかもしれない。
しかしこの魂だけは、誰にも折らせはしない。
新八は木刀を携え、真っ直ぐに歩きだした。
「……そういえば、土方さんの下の名前ってなんだっけ?……とうじ?としろう?……ま、いいか」
【いノ肆 山麓/一日目/深夜】
【志村新八@銀魂】
【状態】健康、決意
【装備】木刀(少なくとも銀時のものではない)
【所持品】支給品一式
【思考】:銀時や土方、沖田達と合流し、ここから脱出する
一:人殺しは絶対にしない。気を強く持つ。
二:柳生って……?
※土方、沖田を共に銀魂世界の二人と勘違いしています。
※人別帖はすべては目を通していません。
※主催の黒幕に天人が絡んでいるのではないか、と推測しています。
投下終了です。支援感謝。
銀魂っぽい誤解フラグと言えば名前ネタかと思いまして。
投下乙!
新八ひどい勘違いwwww
まあ土方、沖田とくればしょうがないけどさ
投下乙
やべえw
嫌な予感しかしねえ
そして十兵衛は少年なんていう年なのか?w
>>558 あ、青年ですね、すみません。
つい銀魂ネタの方に流れてしまった……
後修正します。
緋村剣心と千葉さな子を投下します。
月明かりのみが照らす薄暗い夜の世界。
そんな世界の片隅で一人のどちらかといえば可愛い系より美人系の顔立ちをした女性、千葉さな子が巧みに剣を振るっている。
千葉さな子は齢二十に満たない若い女性特有の瑞々しい肌に汗をにじませていた。
剣を振るう度に洋風に現せばポニーテールという称する形に結んでいた、腰まで届く長く漆黒の黒髪は大きく揺れている。
その姿はある意味では幻想的な雰囲気すら漂わせていた。
ただ、その振るっている剣を除いては。
「ああもうっ!何ですのこの剣は?いくらわたくしでも、こんなの長すぎますわよ」
思わず文句が出てしまうが、さな子が振るっていた剣は五尺に迫るかという長さなのである。
このアンバランスさが幻想的雰囲気にある程度の違和を覚えさせていた。
彼女自身は道場で長刀の師範をする技量はあるのだが、それでもこの長い日本刀、通称物干し竿は長すぎる。
「………でもこれしきで根を上げるわけには行きませんわね。それに実際にわたくしに渡されたのならば、少なくとも参加者の
誰かはこれを扱えるはずですもの。長刀師範が長刀に振り回されたらただの笑いものですわ……………つぁっ!」
一度息を整えると再び刀を振り回す。
何度か余りの長さに持て余し気味になるが、徐々に剣筋が安定を見せ始める。
そして小一時間ほど振り回していると、ようやく元来に近い剣筋になっていた。
しかしこの飲み込みの速さは普通ではない。
そもそも長刀とは薙刀の別称である。故に薙刀の師範のさな子に長刀など普通では扱えるわけも無い。
だが、小太刀の達人であり、日本刀の心得がある千葉さな子だからこそ、薙刀での長物使いの経験が日本刀に応用され、
この五尺余りの日本刀を思うように操れる事に成功していた。
「………流石のわたくしでも疲れてきましたわね。後は最後の仕上げに………」
そうするとさな子は近くにあった若干太めの木に目を向けて歩き出す。
そして木が刀の間合いとなる距離まで近づくと立ち止まり、しばし目を瞑る。
「……………っ!」
支援
小さな気合の声と同時。
刀は大きな弧を描き、その次には木は切り倒されていた。
「……思ったとおり切れ味は上々。それに斬った際に衝撃も僅か。最初は『何これ?』と思ったけど、慣れたら良い刀ね」
斬った瞬間に僅かに怖い顔を覗かせたが、すぐにほころび元通りの歳相応な表情に戻る。
「…………はあ、流石に疲れましたわね。それに汗を結構……せっかくですし近くの旅籠にでも行きましょう。
誰かに出会う前にこの汗を流してしまいたいですし」
さな子は刀を鞘に納めると旅籠に向かい歩き出した。
そして道中に歩きながら、人別帳を開く。
(そういえば何方がいらっしゃるのかしら。………龍馬さんはいらっしゃらないみたいね。敬助さんや甲子太郎さんはいる
みたいだけど……お父様とお兄様はいないのね。どうしてわたくしだけ呼ばれたのかしら?)
剣道勝負なら自分より相応しい気がする両名が居ないのは流石に疑問を隠せないでいた。
しかしその時ちょうど旅籠が目に入り、すぐに疑問は吹き飛ぶ。
「別に今はどうでもいいわね。そんなことは後であの柳生宗矩って人に聞いたら済むことだし、まずは汗を流しましょう」
と、明るい調子で奥にある脱衣所で着物を籠に入れて、髪を解き、刀を適当な物陰に隠して温泉へ入っていく。
「ふうっ、生き返りますわね。やっぱり温泉はいいですわ」
きめ細かい白い肌が湯を弾く。
細身のスタイルは一糸纏わぬ姿でもやはり引き締まって見える。
「はあ、幸せですわ」
千葉さな子は安心してお湯につかる。
この後に起こる彼女にとっての悲劇など知る由も無い、幸せそうな表情で………
********
「参ったでござるよ」
頬に十字傷を持つ男。緋村剣心は歩きながら難しい顔で考えこんでいた。
右手に一本の刀を持ちながら。
(どうする。この刀は逆刃刀ではない。しかもかなりの切れ味なのは間違いない。これを振るえば間違いなく拙者は人を
斬ることになる。抜刀術以外であれば峰の方を使えば何とか出来るが……やはり逆刃刀を見つけぬと不味いか、この際
木刀でも構わぬが)
剣心は刀を鞘に納め、夜空に輝く月に目を向ける。
「………しかしここでも月は綺麗なのでござるな…………では参るか」
剣心は心を落ち着けてから旅路を急ぐ。
素早く歩き続け、橋を越えると、剣心の目に旅籠が飛び込んできた。
「宿……でござるか。逆刃刀かその代わりの物が見つかるかもしれない。一応入ってみるか」
剣心は旅籠へと入っていく。
そしてすぐ、ある気配を感じ取った。
(っ!誰かいる。何処だ。……風呂場のほうでござるか。敵でなければいいのでござるが……)
剣心は自身の気配を殺しながら、見ず知らぬの相手の気配の方へ向かう。
そして脱衣所に入り、そこを素通りし温泉の扉に手を掛けた。
このとき注意深く行動し、脱衣所を調べれば起こらなかった悲劇を、この時の剣心には知る術は無かった。
「誰でござるっ!」
勢い良く入り、中を見渡す。
するとその場には一人の全裸の女性がちょうど風呂から上がるところだった。
「えっ!?」
「おろっ!?」
女性は突然の事に体が硬直する。
剣心も全く予想外の出来事に思わず目を丸くしてしまう。
sienn
そしてしばしの硬直の末、ようやく両者が動き出す。
「…………見ましたわね」
「いっ、いや拙者はそんな………不可抗力で……悪気があったわけでは……」
「この覗き魔変態助べえ男おおおぉぉぉっっ!!!」
「おっ、おろーーーーーー!!!!!!」
おろおろする剣心には避ける術など無かった。
次の瞬間には無数の風呂桶が剣心の頭部、腹部、胸部、など全身に直撃し、そのまま剣心は意識が遠くなり、深淵の闇へ
と沈んでいった。
そして数十分後。
「うっ、ここは」
剣心は旅籠の一室で目を覚ました。
そして目の前には先ほど剣心が全てを見てしまった女性(最も今では着物を着なおしている)がいた。
「この旅籠の一室よ。わたくしが運んで差し上げたんですから、感謝しなさい」
「そうでござるか。感謝するでござる。それで拙者はどれほど眠っていたでござるか?」
「半刻も寝て無いわよ。わたくしが着物を着て、髪を結んで、あなたをここに運んだらすぐに目を覚ましたのだから」
「そうでござるか」
すると剣心は立ち上がるが、すぐによろけてしまう。
「おろっ!」
「何してるのよ。無茶はやめなさい」
するとさな子は倒れそうな剣心の肩を持つ。
そして一度剣心を床に座らせる。
「まあ流石にわたくしも悪いと思ってるわ。いくらなんでもあれはやりすぎでしたわ」
「いや。それは拙者のほうこそ…………すまぬでござる」
「べっ、別に謝罪なんていらないですわよ」
剣心は深々と頭を下げるが、さな子は僅かに顔を赤くして剣心から顔を背ける。
「おろ?」
しかし剣心はそれを特に気に止めず、別のことに話を振る。
「そういえばおぬし、名前はなんていうでござる。拙者は緋村剣心と申すが」
「えっ、名前?さな子よ。北辰一刀流の千葉さな子」
「おろっ!?」
そこで剣心は顔をしかめた。
いや、動揺を隠せないでいた。
(千葉さな子?確か竜馬殿と婚約をされていた女性。いや、それならもっと年配の女性の筈。こんな薫殿とほとんど同じような
歳のはずが……)
「ちょっと、何を驚いてるの?」
「いっ、いや、別になんでもござらんよ」
さな子の対し剣心は生返事を返す。
しかし明らかに動揺は消えずに居た。
アッー
【はノ伍 旅籠の一室/一日目/深夜】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】健康 全身に軽度の打撲
【装備】斬鉄剣@ルパン三世
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この殺し合いを止め、東京へ帰る。
一:千葉さな子殿?年齢が合わぬが……
二:逆刃刀か木刀がほしい。
【備考】
京都編終了後からの参加です。
京都編での傷は全て完治されています。
【千葉さな子@史実】
【状態】健康
【装備】物干し竿@Fate/stay night
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いはしないけど、腕試しはしたいかも。
一:これからどうしましょう?
二:敬助さんや甲子太郎さんを見つける。
【備考】
二十歳手前頃からの参加です。
投下乙
ウハw剣心wwwwwww
そして、一番不要としている人に斬鉄剣が渡ったw
投下完了っす。
支援感謝します
そういえば薫&変態の人と剣心たちがかなり近い位置にいるが
早々とかち合うかもしれんw
>>570 おーっと!
剣心が橋を越える描写があるぞ!
確実に薫とかち合う事になるんだが
修正しないとまずいんじゃ?
>>572 ごめん見落としてた。
>>564の
剣心は心を落ち着けてから旅路を急ぐ。
素早く歩き続け、橋を越えると、剣心の目に旅籠が飛び込んできた。
を
>剣心は心を落ち着けてから旅路を急ぐ。
>素早く歩き続け、かなりの距離を進むと、剣心の目に旅籠が飛び込んできた。
に変更します。
乙!
斬鉄剣は剣心か。
まあキチガイに刃物じゃなくて良かったね。
あと見て来たけど橋の部分だけは修正がいりそうだね
>>575 乙
座波がどこから橋まで来たかって描写が無いからそれで折り合いはつくね
現時点での参加者・現在位置表
・現在地不明
柳生十兵衛
・現在地判明済み
いノ肆 志村新八
いノ捌 辻月丹、椿三十郎
ろノ弐 小野忠明、佐々木小次郎(傷)
ろノ参 オボロ、犬坂毛野、斎藤弥九郎
ろノ肆 奥村五百子
ろノ陸 志々雄真実
ろノ漆 土方歳三、
はノ弐 佐々木小次郎、屈木頑乃助
はノ伍 神谷薫、座波間左衛門、緋村剣心、千葉さな子
にノ壱 新見錦
にノ弐 沖田総司
にノ参 犬塚信乃、足利義輝
にノ陸 久慈慎之介、トウカ
ほノ壱 上泉信綱、林崎甚助
ほノ肆 剣桃太郎、坂田銀時
ほノ陸 徳川吉宗、秋山小兵衛、山南敬助、佐々木小次郎(偽)
へノ弐 岡田以蔵
へノ参 塚原卜伝、宮本武蔵、川添珠姫、伊東甲子太郎
へノ肆 斉藤伝鬼坊
へノ漆 東郷重位
とノ壱 犬塚信乃、赤石剛次
とノ参 鵜堂刃衛
とノ肆 芹沢鴨、石川五ェ門、細谷源太夫
とノ伍 伊良子清玄
とノ陸 富田勢源
ちノ漆 伊藤一刀斎
・予約
岩本虎眼
柳生連也斎
白井亨
イグニス
以上48人+予約3人+予約予備軍1人
あと6、7人+十兵衛ってところか?
65〜70人ぐらいがイイと思う。
実際始ると序盤でごそっと減りそう。
達人同士の立ち合いって大抵どっちか必ず死ぬし
忍法剣士伝での居合対決見たいな場合もあるけどな
双方抜けず体力尽き…みたいな
忍法剣士伝は地味に傑作だと思う。
山風の自己評価は低いけど。
角川版の佐伯氏の表紙もカッコいいし。
ところで忍法剣士伝で思い出したけど、
新免無二斎って剣客になるのかね?
ちょいと質問。
OPで柳生宗矩が
「得物は各々が探し出すのだ」と言ってるけど、
つまりどっかの建物の中や木の上や河の脇とかにいろんな武器が置いてあると考えていいの?
>>583 それでいい。
現に小野忠明は廃村で、
・明珍当世具足一式
・栗毛馬
を入手してる。
武蔵も民家の床の間で打刀を入手してる
近藤勇と香坂しぐれを予約します
高峰響を予約します
早速投下します
五尺二寸ほど。
黒髪の少女が「とノ漆」の村外れに佇んでいた。
齢は十七。
見かけは幼いが中々どうして器量の良い精悍な顔つきである。
立ち並ぶ民家の裏手。
目の前には深くはない林の奥に闇が広がっていた。
ひどく煌々とした月の下で、少女はその林よりも深いざわめきを感じていた。
無双真伝流。
少女の流派はいわゆる抜刀術である。
しかしそれは表向きの話。
若くして才覚に満ちた彼女は居合いの達人で刀鍛冶の父を持っていた。
彼は非常に高名で、世の名だたる剣士という剣士が彼の元を訪れた。
彼女はといえば、時に彼らの土産話を聞き入り、時に稽古をつけてもらう。
そんなことを幼少より続けてきたのだ。
本流はまさしく電光がような居合いではあるが、徒手での合気にも優れる。
父が亡くなってから、その本懐を果たすことは未だ叶わずとも
剣を磨き、剣に生き、幾多の修羅場を乗り越えてきた一流の剣客である。
ゆえに彼女に支給された刀は、"肌身離さず大事にしたもの"ではないにしろ、手になじむのである。
しかし"違う"のだと、腰元に下げた居合い刀をすらりとした指で撫でる。
「父上・・・」
高嶺響は少女である。
何かをかみ殺しているのか、それとも上ずるような声だった。
泣いているのかと言えばそうではない。
震えているのかと言えば、そうでもなかった。
父は決して手を抜くことはなく彼女に剣を教えた。
そしてある日一本の剣を授けてくれたのだ。
ひどく嬉しい日だった。
一流の剣客、一流の刀匠に認められたのだ。
いや、父だ。
父が自らを認めてくれたのだと、なによりも充足感があった。
その唯一の父の形見が身の側にないことが、目を閉じた彼女を波立たせていた。
しかし高嶺響は剣客である。
始まりは父が打った一本の刀。
それを最後に父は病に伏し、あっけなく生涯を終えた。
依頼をした武芸者を恨んだこともある。
それでも諸国を巡り、人知を超えた修羅を打ち倒す内になにかを知り、
或いは未だ何も知らないことを"知っている"のだ。
彼女は腕試しや武芸自慢などといったものには興味がない。
そんな時期はとうの昔に、望むべくまでもなく過ぎたのだ。
「死を、恐れぬ心也」
さらさらと林道を抜けていく風を、まるで"見えていない"かのように一点を見つめ、高嶺響はつぶやく。
月が照り返しとして瑞々しく跳ねたかと思えば、その頃には一枚の落葉が真っ二つに浮いていた。
目を閉じる。
彼女が過去に刃を交えた剣客の中には、文字通り大地を裂くほどの者や、雷を操る者たちもいた。
そのような者を目にしているからこそ、打ち倒したはずの「宮本武蔵」がいることにも合点がいく。
そもそも自分の戦った武蔵も外法により蘇らせられた存在だったのだから。
凄まじい豪の剣。
凄まじい剣士の性。
そのような者たちが、図らずとも殺し合いをするのだ。
旅に出たその頃から自らが未だ生きているのも、半ば時の運だったともよく理解をしている。
高嶺響。
女といっても彼女の眼光は剣閃がごとく鋭い。
それよりも、そのやわらかな微笑みは純粋で無垢であり、正しく美しくもあった。
二度ほど首を軽く振ると女は襟を正す。
いまその渦中に再びあり、それでもこの下らない争いに身をやつすつもりは、断じてないのだと。
ようやく二つに分かたれた葉が、冷えた土にひたりとついたところだった。
【とノ漆 民家の裏手/一日目/深夜】
【高嶺響@月華の剣士第二幕】
【状態】健康 強い覚悟と意志
【装備】居合い刀(銘は不明)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:享楽的な争いに強い反抗心
一:黒幕を見つけ対抗する。
二:殺し合いに乗った者は何の迷いもなく切り捨てる。
【備考】
エンディング後の参戦
以上です。
乙!
お、地味に人気のある響君じゃないか
これで何気に女キャラは7人目か
ちょっと提案。
名簿に載ってるけど、一度も予約されてないキャラも多いし名簿外だけど参加希望キャラの
募集を行わないか?
当初予定の登場話予約の締め切りが一月末だからとりあえず15日〜17日まで募集して、その後に
登場話が書かれたキャラのみ参加可という形で。
もし追加不可ならそれでもいいけど、一応提案してみる。
個人的には賛成。
596 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 20:56:13 ID:WTQKp0gW
賛成age
候補者リストアップも結構早急だったし、この板移ってから企画を知った人もいるだろうから、
良いんじゃないですかね。
一応賛成だけど条件はまとめたほうが良いと思う
史実の書き手さんが剣客らしいすごく硬派な世界感作ってるし
個人的にそこがすごく好きだから
女キャラ出すぎたり超人とか小次郎とか武蔵が出すぎても・・・とは思う
斎藤希望!
>>598 ・史実優先(把握が楽だし)
・創作は良く考えてから
・女子は少ないからこそ光る
・武蔵自重
・小次郎自重
ってとこかね
>>600 小次郎もう出さない方がいいが、武蔵はまだ一人だし(自重しろ!)は言いすぎじゃね。
どっちかといえば既に出された歴史上の実在人物は出展が史実でも創作でも全般で自重しよう
が正しいと思う
確かに個人的にも、キャラ被りネタは散発させてもあまり面白くないとは思う。
どうせ斎藤だろ、出したいの。
・史実優先(把握が楽だし)
・既出キャラで歴史上の実在人物は史実創作どっちか一方で出ていれば被り禁止
・創作キャラは雰囲気、パワーバランスをよく考えて
・女は少ない方が光る
でどうだろう
>>604 それで皆さんが満足かはともかく私は賛成です。
女は多くても別にかまわないと思うが。
もちろん女を増やす為だけに剣客とも言えないキャラを出すのは論外だけど。
賛成の人も多いっぽいし、
>>594 のルールで追加募集するってことでいいかね?
キャラ被りだと、死んだはずの斬が参戦とか
……駄目か。
宮本武蔵はもう一人ぐらい欲しい気もするなぁ。
GUN道か、龍が如くか、まあいろいろとあり過ぎるし。
いや女の剣客なんて史実に全然出てこないぞ
そんだけ厳しい世界だしそうすると創作から出ることになる
異次元の能力もった奴でコミカルな性格な奴らが
それといくら元ネタがたくさんあろうが小次郎ロワイアルとか
武蔵ロワイアルになるのは勘弁
この武蔵は性格とか能力が違うから〜ってのは
俺の望む展開じゃないから、ってのと根本では同義
純粋に興味ない書き手は困る
知名度実力ともにある剣士が死んだら終わりのゲームにいるからこそ
面白いんであって
近藤勇と香坂しぐれを投下します
「どうなってやがるんだ。俺、死んだはずだろ。なんでここにいるんだ」
近藤勇は一人空を見上げる。
自らの目に映る夜空は生存と何ら変わりはしない。
「うーん、ひょっとして俺死んで無かったのか………でも…………マジで斬首された記憶はあるんだよな……まあいいや。
悩んでも仕方ねーしな」
近藤はあまり悩むことなく、自らに支給された日本刀を抜く。
すると刀身の輝きはかなり鋭く、切っ先からは名刀の雰囲気が感じ取れた。
しかしそれもそのはずである。
近藤が手にした刀は、天下五剣が一つ童子切と並ぶ日本最高と名高い名刀大包平であるのだから。
「おお!良い刀じゃねえか。これなら良い感じにいけそうだ」
すると近藤は近くにあった大木に刀を向ける。
「とあっ!てやっ!せいっ!!」
鋭い三つの剣筋が木に三つの切れ目を作り、そのまま倒れてゆく。
「最高だな。あの爺さんはムカついたが、この刀は上出来だ。これならどんな野郎でも歯向かってくる野郎は
余裕で斬り捨てられるってもんだ」
近藤は若干笑い混じりに呟く。
しかし、その直後。近藤は背後に得体のしれない気配を感じ取った。
「誰だっ!……………女?」
近藤は振り返るが、その姿には思わず呆気に取られる。
しかし、女は小さく独り言のように呟く。
「………お前。殺し合いに乗るつもりか」
「あん。お前だあ?俺は新撰組局長の近藤勇って名前があるんだけどさあ。人を呼ぶなら自分を名乗って、相手にも
名前を聞いてからにしろよ」
「………そうか。それは失礼だった。ボクは香坂しぐれだ。それで近藤…………どうするつもりだ」
「別にどっちでもねえよ。あの爺さんの言う事を聞くつもりはねえが、俺にはむかう奴、邪魔をする奴は斬る。それだけだ」
「………そうか」
しぐれは近藤の返事を聞くと、袋から二本の曲線の形をした刀、通称干将・莫耶を取り出す。
「……どうやらお前は頭を冷やした方が良い」
「あん。ひょっとしてお前。この俺を馬鹿にしてる?」
「………馬鹿になどしていない。ただ思った事を正直に言っただけ」
しぐれは声自体は小さいが、しっかりとした口調で返す。
それが近藤を酷く怒らせる。
「なるほど。つまり俺の邪魔をするわけだ。いいぜいいぜ。掛かって来いよ」
近藤は静かに怒り、しぐれを挑発する。
しかし、しぐれは特に動じた様子も見せずにただ両手に構えた二刀を構える。
「分かった」
その一言が発したと同時。
七メートルは合った間合が一瞬で詰められ、しぐれは近藤の傍まで来ていた。
「なっ!?」
「はっ!」
近藤は咄嗟に後ろにとび左右から跳んでくる攻撃をかわすが、左頬を僅かに切っ先が掠める。
「………ちっ、油断したぜ。だが次からはそうはいかねえ。もう俺は油断するつもりは無い」
「………そう」
「てっ!おいっ!?」
しかし近藤が刀を構えなおすと同時、しぐれはいきなり両の剣を近藤に向け投躑する。
それに驚き近藤は思わず突っ込みを入れる。
だが、決して棒立ちをしているわけではない。
「くそっ!?」
肩を下げ、足を引いて致命傷を避ける。
投げられた二刀は右肩と左足を僅かに切り裂き、背後の木に突き刺さる。
「甘い。だが得物を投げたら……!?」
次に近藤がしぐれを見ると、その手には鎖鎌が握られており、その鎖の方を近藤へ向けて投げる。
「ちっ!」
鎖は正確に近藤の首を捉えていた。
しかし、咄嗟に刀を握っていない左手を首に入れて、縛り首を避ける。
「………どうする。もうボクの勝ちだよ。刀を捨てて………」
「けっ、甘いな。それで俺に勝ったつもりかよ。甘すぎるぜ。伊東や芹沢も甘かったが、お前はそれ以上だ」
「?」
近藤は強気で返すと、しぐれに向かい走り出す。
「こうすりゃいいだろうがっ!!」
「!?」
しぐれはそれにあわせて後ろに引こうとする。
だが不意をつく事に成功した近藤の方が僅かに早い。
そして詰められた間合は鎖の弛みを生む。
近藤はそのたるんだ鎖を腰に差した鞘に引っ掛ける。
そして刀を合わせ……
「おらあっ!!!」
掛け声と共に一気に刀を鞘へ納める。
鎖は刀と鞘に挟まれ、一気に引き千切られる。
「……そんな」
しぐれは近藤の予想外の行動に唖然とする。
けれど近藤はそんなしぐれの隙を逃さない。
「今度はこっちから行くぜ!」
鎖を首から外すと、刀を再度抜いてドンドン間合いをつめていく。
「まだ負けない」
しぐれは残った鎌を近藤へ向けて投げる。
だがそれを近藤は避けずに刀で弾く。
「それで終わりか」
「んっ」
しかし次の瞬間、しぐれは袋から最初に投げたのと寸分違わぬ二刀を取り出していた。
「また同じ刀か。いいぜ、何度でも相手してやるぜっ!!」
近藤は鋭い剣筋がしぐれを襲う。
だが、しぐれはそれを全て両の剣で捌く。
そして今回は両者引かない。
何度も何度も、互いの剣が交差する。
金属の弾きあう音がリズム良く響き渡る。
そしてその剣の交差は五分ほど続いたところで変化が訪れる。
「っ!」
「どうした!押されてるぞ!」
遂に近藤がしぐれを押し始める。
しぐれは激しい近藤の剣撃に、両手に握られた干将・莫耶で何とか防ぐ。
しかし次第にしぐれは後退していく。
「さっきの鎖鎌もそうだが、どっちも確かに凄かったぜ。最初の二刀を操る動きも、鎖を操る動きも、鎌を投げる動きも、
そして今俺の攻撃を防ぐその防御術もなっ!」
近藤は剣速を更に加速させ、しぐれを後退させる。
「だがよう。どれも中途半端なんだよ。所詮お前はさ。あらゆる武器を使いこなしてるつもりで、一つも極めちゃいないんだよ。
それじゃ勝てねえよ。この俺の純粋な剣にはな」
「くっ」
もうしぐれの動きでは完全に捌ききることは出来ない。
既に両腕には無数のかすり傷が出来ている。
「悔しければ極めてみろっ!俺の剣を超えてみろ。それが出来ないならここで死ね!香坂しぐれっ!!!」
そして次の一撃。
気合をこめた一撃が干将・莫耶を砕きしぐれの胴体に叩き込まれる。
「がっ!」
そのまましぐれは後ろに飛ぶように倒れ、下の海へと落ちていった。
近藤は流されてゆくしぐれを見つめながら刀を収める。
「鎖帷子を仕込んでやがったな。まあ死んでるかどうかはあいつ次第か」
近藤は近くの椅子に座り込み、一度息を整える。
「まあ、思ったよりは強かったな。せっかくだ。この際楽しませてもらうぜ。爺さんよ」
一方その頃。
しぐれは海から流れ、何とか浜に辿り着き、陸から上がる。
「つっ、強い」
しぐれは余りの強さに敗北感に、心の中は悔しさで滲んでいた。
支給されたのは四本の中華刀。そして自分の傍には鎌が一本落ちていた。
更に自らの上着の下に着込んでいる鎖帷子はそのままだった。
その武器を全て消化し、防具まで使った上での完敗。
悔しくないはずが無い。
「………ケンイチにはこんな姿、見せられないな」
仰向けに倒れながら、いつも以上に力無い声で、しぐれは呟いた。
【ちノ捌 離れ小島の端/一日目/深夜】
【近藤勇@史実】
【状態】健康 左頬、右肩、左足にかすり傷
【装備】大包平
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この戦いを楽しむ
一:強い奴との戦いを楽しむ (殺すかどうかはその場で決める)
二:土方を探す。
【備考】
死後からの参戦ですがはっきりとした自覚はありません。
【とノ漆 大陸の陸地の端/一日目/深夜】
【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】
【状態】ずぶ濡れ 疲労大 両腕にかすり傷 腹部に打撲
【装備】無し
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いに乗らず、乗った人を無力化させる
一:まず体力を回復させる
二:その後に武器と着替えの服を探す。
三:近藤勇に勝つ方法を探す
【備考】
登場時期は未定です。
ちノ捌の離れ小島の木に干将・莫耶@Fate/stay nightが刺さっています。
ちノ捌の離れ小島に鎖が砕けた鎖鎌(赤松が持っていた分銅付きの物)@るろうに剣心が落ちています。
投下終わりました
618 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 20:42:40 ID:oKmfdf1M
投下乙
がらっぱち系の近藤がらしいw
ところで、鎖帷子は没収したほうがいいのでは?
乙!
近藤強ぇっ!
しかしこの近藤と土方が出会ったら血の雨が降りそうだ
>>618 壊れたみたいだしいいんじゃない?
それと何気に一刀斎と近藤がすぐ近くなのか
15日になったので、
追加希望キャラを挙げてみる
宝蔵院胤栄@史実
師岡一羽@史実
松山主水@史実
新免(宮本)無二斎@史実
高坂甚太郎@神州纐纈城
三合目陶器師@神州纐纈城
じゃあ俺も俺も
覇王丸@サムライスピリッツ
ナコルル@サムライスピリッツ
橘右京@サムライスピリッツ
牙神幻十郎@サムライスピリッツ
サムスピからメインどころを
というか剣客ロワなのにサムスピがいないだなんて……月華はいるのに
波動とか出す奴は勘弁な
斎藤一@るろうに剣心
山崎蒸@史実
上泉信綱@史実
この辺出してみたい
>>623のレスを見てちょっと寂しくなった
やっぱり一般的に格ゲーってのはそういう認識なのね……
>>626 右京さんはアウトじゃない?
飛び道具あるし
>>627 陽炎は使用不可、ってことじゃ無理かなあ……
うん、サムスピで一番好きなキャラだから入れたんだ済まない
ああ宍戸梅軒も希望すればよかった
鎖鎌ないとあれだけど
>>622 はおうまるは極太レーザーのような剣閃
ナコルルは鷹使うし、鷹いないから雑魚化
右京はほっとけば死ぬ
幻十郎は花札が
>>628 気持はわかる。
右京さんいいよね。
労咳病みの居合使い、っていうお約束っぷりもこのロワなら映えそうだし
是非出てほしいけど・・・
山崎や梅軒は剣客じゃないような…
斉藤一@史実
仏生寺弥助@史実
佐々木只三郎@史実
幕末剣客ばかりだけどこの辺り希望。
女性キャラだけど
外薗綸花@Gift ?ギフト?を推薦してみる。
女性だけど、真剣を所持し刀の手入れも自らでやっている。
流派は凰爪流という架空の流派で子供の頃から鍛錬をしている。
実力は複数のチンピラを一瞬で撃退、ナイフを持った引ったくりを竹刀で撃退。
本人が作中でも「自分は剣客です」みたいな発言も数度しているので心構えもOK。
あと坂本龍馬@史実も入れたい
薩長同盟とかの方が有名だけど、北辰一刀流免許皆伝の実力者なので剣の腕もかなりの物と思う。
そして少しマイナーで新撰組ばかり増えるが服部武雄@史実も出来れば。
剣と槍と柔術の使い手で剣の腕は沖田総司を超えるとも言われる達人で伊東側の仲間。
最期の血戦となった油小路では永倉、原田を含む十数人を相手に一人で(藤堂と毛内は早々に討ち死にらしい)
一刻(今で言う一時間)ほど戦い続けて、両手に刀を握ったまま死んだらしい。
しかも永倉や、槍を持った原田も手傷を負ったらしいので、相当凄いと思う
この三人を出来れば候補に……
>>634 そりゃ丸腰とかナイフ相手に振り回せば余裕
見せしめ以下じゃないか?
>>635 一応剣道部では段違いの強さを見せている他、夜の街で謎の化け物と戦っているので、
珠ちゃんのチョイ上(日本刀を自在に扱える事を考慮して)ぐらいの実力はあると思う。
鬼一法眼@伝承と念阿弥慈音@史実参加希望
あとは女不足解消の為に巴御前@平家物語とか源義経@史実とか上杉謙信@史実とか
剣客じゃなくて武将でしょ
藤田五郎(斉藤一)@史実
舩坂弘@史実
中村主水@必殺シリーズ
あと特殊能力のない女剣士なら、月島弥生@斬 がいるじゃあないか
覚醒前の斬よりは多分強いし、一流アイドルをしのぐカワイさで座波間左衛門も大喜び
斬が見せしめになったのは覚醒状態でも参加者中最弱と判断されたからだと思うんだが
斬の潜在能力に気付かず殺しちゃったことにすると果心や宗矩が間抜けすぎないか?
>>639 中村主水は名簿に既に乗ってるぞ。
それと、
>舩坂弘@史実
何さりげなくとんでもないやつの名前挙げてんだよwwwwww
旧陸軍人型決戦兵器じゃねえかwwwww
>>640 それもまた果心の策なんだぜ、きっと。
あと
平山行蔵子竜(子龍)@史実
勝小吉と男谷精一郎の師匠にして江戸後期随一の変人。
この人と小吉が仲良かったってのも不思議な話だ。
あと、女性剣士で日本人なら久沙凪トウ@夜刀姫斬鬼行がお勧めかな。
特殊能力がほとんどなく純粋に鍛練した剣術だけでの強さであるのと、
なにより彼女を出せば主催側にドクター・マーカス@夜刀姫斬鬼行
も追加できるという点もある。首輪や様々な世界からの召喚の理由などの
トリックは、彼一人いれば全て説明がつくから。
行動理由も至極単純で、若本ヴォイスだし。
>>641 舩坂弘って名前がわけわからんかったから検索掛けてwikiで調べてみたが…。
こいつ、リアルの人物だけど首輪で能力制限掛けるべきだろ?
宮本武蔵も佐々木小次郎(偽)も屁でもねえw
リアルでやらかしたように、素のままだと死亡しても息を吹き返しかねん。
>>642 ドクターなんとかは果心居士がいるし、世界観がおかしくなるしいらん
文句ばかり言っているのもあれなんで
松林蝙也斎@史実
市@座頭市物語
速水右近@破れ奉行
久能帯刀@らんま1/2
>>644 エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……古き骸を捨て、蛇は再び甦るべし」
と、魔界転生っぽく
果心居士が言ってても違和感ないし、
別にいいんじゃない?
>>644 いえ、別段文句だなどと欠片も思っちゃいませんのでお気になさらずとも。
正直単に言ってみただけだから、そこまで強く推薦してるわけでもないですから。
むしろこういう反論は速めに言った方がいいですよ。収集つかなくなりますし。
まあ果心居士で役割全部果たせるなら余計なものはあまり入れない方がいいわな。
ていうかそこまでして女いらない
追加募集もそのはずだが
・斬が参加者の中で一段と劣る→斬以下とか同等とか問題外
・目の前で殺されても誰も動揺しなかった→女子供の平和ぼけ問題外
たとえば
>>636とか説明してくれてるけど
>>634の服部とそいつかち当たったら即死じゃん
なんつーか感覚がずれてる
実は現段階で女剣士8人いるんだよな
川添珠姫
犬塚信乃(里美☆八犬伝)
奥村百合子
千葉さな子
神谷薫
トウカ
高嶺響
香坂しぐれ
女出すならあと2、3人ぐらいがちょうどいいと思う。
あと
根岸兎角@史実
岩間小熊@史実
土子泥之助(土呂之介、泥介、泥助とも)@史実
一羽流の人々。
特に根岸兎角はステルスマーダーとかやってくれそうなので期待できる
少なくとも自分が人を殺したり殺されかけたりの経験がないと、
「目の前で人が死んでもあまり動揺しない」ぐらいの肝力は身につかないと思う。
個人的にはガチでの殺し合いが本人の人生の一部(または大半)ぐらいの
レベルでないとダメだと思うのだが。
>>650 でもそれいったら新撰組を除く幕末剣士の大半だめにならないか?
白井亨とか、男谷精一郎とか。
まあ、彼らはいざとなったら人を斬る覚悟はあったと思うけど
特にこのロワは重火器がなくて純粋な剣術勝負だしね
ファンタジーっぽい能力も禁止だし、女が勝てる要素は薄い
きぬだって変態相手じゃなかったら即死
>>650の言うレベルに合致するか
>>649のいうような狡猾さがなかったら場に合わないし
まあ狡猾な奴が活躍すればするほど剣客の無念はつのるだろうがw
>>651 さすがに軍隊入って訓練してる奴と一般人
重火器もって好きに殺しあっていいよってのと同じじゃないか
それなりの腕はあったわけだし
ああ、そうだなぜこの人の名前があがらない?
丸目蔵人@史実
柳生兵庫助@史実
中村半次郎@史実
あと八犬士からもう一人
犬飼現八@八犬伝
高柳又四郎@史実
「音無しの構え」ってかっこいいよね
枠多くてもあれだって話だし結局候補しぼって先着にするの?
候補はどうしぼる?
投票?
取り敢えず出たやつまとめ
宝蔵院胤栄@史実
師岡一羽@史実
松山主水@史実
新免(宮本)無二斎@史実
高坂甚太郎@神州纐纈城
三合目陶器師@神州纐纈城
覇王丸@サムライスピリッツ
ナコルル@サムライスピリッツ
橘右京@サムライスピリッツ
牙神幻十郎@サムライスピリッツ
斎藤一@るろうに剣心
斉藤一@史実
藤田五郎(斉藤一)@史実
山崎蒸@史実
河上彦斎@史実
宍戸梅軒@史実
仏生寺弥助@史実
佐々木只三郎@史実
外薗綸花@Gift−ギフト−
坂本龍馬@史実
服部武雄@史実
鬼一法眼@伝承
念阿弥慈音@史実
巴御前@平家物語
源義経@史実
上杉謙信@史実
舩坂弘@史実
平山行蔵子竜(子龍)@史実
久沙凪トウ@夜刀姫斬鬼行
松林蝙也斎@史実
市@座頭市物語
速水右近@破れ奉行
久能帯刀@らんま1/2
根岸兎角@史実
岩間小熊@史実
土子泥之助(土呂之介、泥介、泥助とも)@史実
丸目蔵人@史実
柳生兵庫助@史実
中村半次郎@史実
高柳又四郎@史実
斉藤一人気杉wwww
あと、別に候補は絞らんでいい気がする。
結局書かれなければそれまでな訳で。
ただ、参加人数の上限はいるかも。
当初が締め切り(1/31)だけ決めて、参加上限を決めなかったのは、
こんなに書き手が集まるとは思わなかったといううれしい誤算だし。
>>658 元々の最高参加者数が89人だったし、キリ良く90人でいいんじゃないか?
現在の確定参加者数が50人(一話未投下の柳生十兵衛含む)+予約四名だから
ある程度余裕を持ったほうがいいと思う
660 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 16:10:42 ID:Gs5V0C61
90は多すぎないか?
70〜80が適当かと
>>660-661 じゃあ70人〜80人を目安にして、その人数分が予約されれば31日前でもキャラ締め切りでOK?
表から八犬伝の現八抜けとる
思ったんだが
斎藤一@るろうに剣心
斉藤一@史実
藤田五郎(斉藤一)@史実
のうち、史実側の藤田五郎と斉藤一は同じじゃないのか?
名前が変わってるだけだし、普通に
斉藤一@るろうに剣心
斉藤一@史実
この二つだけにして、先に予約された方のみ参加可じゃないかな
老後か隊士時代かの違いじゃね?
推したかった人物が既にだいぶん上がっているのだけど、見廻組が佐々木只三郎だけじゃアレなんで、
今井信朗@史実
も推薦。
このロワだと、戊辰戦争で函館まで幕府方としてた戦っているので、その時期以降からなら土方との絡みも面白い。
あとフィクションから、
明楽伊織@明楽と孫蔵
関谷幸四郎@攘夷幕末世界
森田漫画は、技が良いんだ。
『明楽と孫蔵』 には他にも良い悪役が沢山居るけど割愛。
『攘夷幕末世界』 は、かなりのトンデモ幕末物なのだけど、果心居士が裏にいる分むしろアリかもしれない。
ところで、新規推薦枠はいつから投下or予約可にするの? もうOK?
>>667 1/17 0:00から予約解禁で、どうだろう?
今井とかマイナー杉だろwww
>>666 でも、老後にするか隊士時代にするかは書き手が決めるでいいんじゃない?
全くの同一人物を別々に出してもなんだし。
>>668 んでは、それで。
>>669 そんな!
見廻組のノブ&サッキーと言えば、清川暗殺、龍馬暗殺と幕末暗殺史の二大幕臣スターじゃないでスカイ!
あー候補絞らないのかー
じゃあ一応、キャラ重複なしと創作のとんでも性能はなしで頼むよー
枠多すぎると重いロワになるからそれが心配だw
おっとこの人忘れてた
愛洲移香斎@史実
伊勢守の師匠でおます
なんか移香斎出しちゃうと既存の話と兼ね合い無くなりそう
名前出して思ったけど、
愛洲移香斎@史実
鬼一法眼@伝承
念阿弥慈音@史実
この三人はむしろ主催側の方がしっくりくると思った。
そういや忘れてたけど、
清河八郎@史実と
四乃森蒼紫@るろうに剣心
の二人を追加まだ出来る?
清河は新撰組結成のきっかけになった人で北辰一刀流免許皆伝。
野心家で知能派っぽいから、結構面白い存在になれそう。
蒼紫はるろ剣のメインキャラの一人でクールな性格の小太刀二刀流(初期は小太刀一刀流)
なので貴重な定寸刀以外の刀の使い手。
それと予約で確認。
現在斉藤一は二人(三人?)いるけど、同一人物一人迄なら先に予約した方のみ有効で、後の予約は
無効になるという考えでいいの。
例えば最初の人が斉藤一@史実予約で二人目が斉藤@るろ剣予約の場合二人目は無効ってことだけど。
蒼紫は剣客じゃなく隠密だからな
佐々木小次郎とか何人も出てるだろうが、ふざけろ
>>677 あれは同姓同名の別人だぞ>佐々木小次郎
あと、何人もって言うが3人だ
笛の小次郎に至っては同名ですらないしな
680 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 10:40:33 ID:I76hyFpL
岩本虎眼@シグルイ 投下
『覚えず、自分は声を追うて走り出した。
無我夢中で駈けて行く中に、何時しか途は山林に入り、
しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走っていた。
何か身体中に力が充ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。
気が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じているらしい。
少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、
既に虎となっていた・・・・・』
中島敦『山月記』
◆
へノ肆
月下の城下町を一匹の野獣が練り歩いていた。
それは虎であった。
老いてはいるが、なおその体は鬼気と精気に充ち溢れている。
虎は唯の虎では無かった。
恐ろしく長い牙を持っている。
それは、あたかも古代に絶滅した剣歯虎を思わせた。
牙の長さは、恐ろしく長い。
三尺はあるのではないか?
恐ろしく長く、太く頑丈な牙であった。
いや、これは虎にあらず。
人だ。
人であった。
男であった。
その身に纏う、余りにも人間離れしたおぞましい獣気が、
男を虎と見せていたのだ。
年のころは五十以上の老人。
肩まで伸びた白い総髪の、
身なりの良い老武士であった。
容貌魁偉で、
正しく虎を思わせる野生染みた異相である。
右肩には一振りの抜き身の太刀を背負っていた。
三尺一寸二分と、妙に長い太刀である。
佐々木小次郎巌流が愛刀、備前長船「物干竿」であった。
そして、その長刀を掴む右手は、常よりも一指多い。
「あの折 儂が指を伏せたるは 宗矩が指図・・・・」
不意に老人の形相が憤怒の物に変じた。
余りに強く噛み締められた口元からは血が滴っている。
「はかった喃」
「はかったくれた喃!」
虎は無念の涙を流していた。
虎の名は、岩本虎眼と言う。
◆
無双虎眼流流祖、岩本虎眼は激怒していた。
その原因は、あの白州で、柳生宗矩の顔を見たからに他ならない。
お白州に呼ばされた時点では、
虎眼は例の「曖昧」の状態にあったが、
宗矩が現れるや否や、
一瞬にして虎眼は覚醒していた。
覚醒直後でなかったら、
また周りの武芸者達が、
油断ならない使い手でなかったなら、
虎眼はその場で宗矩に襲いかかっていただろう。
人気の無い、月下の城下を歩く虎眼の脳内に、
再びあの忌まわしい記憶が明瞭に再現されていた。
文禄六年、江戸。
この年武者修行中の岩本虎眼は、
まだ若き日の柳生宗矩と道三河岸の柳生屋敷で
立ち合っている。
それは達人同士の恐るべき死闘であった。
多くの立ち合い人の内でこの神速の攻防を目視できたのは、
柳生新陰流高弟、村田与三、木村助九郎の二名のみである。
(異な掴み・・・)
宗矩は、虎眼の六本指の右手を見る。
猫科動物が爪を立てるが如き異様な掴みであった。
(速きうえに伸び来たる・・・あの間合いに踏み入るは危うい)
(狙うべきは拳、我を打たんと伸び来たるその拳を断つ)
宗矩は、虎眼の「流れ」の動きをみて構えた。
柳生新陰流「十文字」の構え。
「左様か」
短くそう言うと、右手の刀身を、
眼前で水平に構え、木刀の切っ先を左手の二指で掴んだのである。
他の剣術には見られない、奇怪な構えである。
「虎眼流、星流れ」
この手を見て宗矩に死相が浮かんだ。
名門柳生の極意を身につけた大剣士の全細胞が、
戦闘を拒否していた。
「参っ・・・!」
「引き分けにござる」
宗矩は驚愕して虎の顔を見た。
虎は笑っていた。
虎眼が宗矩の面目を保ったのは、
魂胆あってのことである。
両名はその夜、茶室にて密会した。
「徳川家に推挙いたそう それだけの腕はあるとお見受けした」
「本望にござる」
当時、徳川家康は領国二百五十万石。
諸大名の上に抜きん出る超大名であり、
秀吉の死後 天下人となることは確実であった。
「ただし」
宗矩はこの時、虎眼にある助言を与えた。
それが虎の運命を狂わせる。
同年、江戸城下 拝領屋敷。
栄達を夢見る武芸者にとって、
徳川家の剣術指南役となることは、
これ以上望むべくもない終着駅といえよう。
「仕官が望みか」
虎眼の面接をしたのは家康の側近、
本多正信の息子正純。
年は若くとも浪人者との身分の開きは天と地ほどに及ぶ。
「なにゆえ指を伏せる?」
「お見苦しきゆえ」
虎眼は、右手に指の一本を、
両側の二本の下に伏せ、隠していた。
宗矩の助言に依る行動である。
しかし・・・・
「無礼者。太閤殿下の御指もその方と同じ数であるぞ。
汝はそれを見苦しいと申すか」
太閤様ハ右之手 親指一ツ多ク
六御座候
信長公 太閤様ヲ異名ニ 六ツメ哉ト
前田利家 「国祖遺言」
虎眼の夢は断たれた。
一方柳生宗矩は慶長六年、
将軍家剣術指南役となっている。
「あの折、儂が指を伏せたるは宗矩が指図・・・」
「はかった喃・・・」
「はかってくれた喃!」
そう言いきるや否や、右肩に担がれた刀身が閃き、
一瞬消失したかと思えば、
瞬く間に右肩に戻っていた。
虎の眼前にぼとりと黒い物が落ちた。
不幸にも虎の間合いに侵入し、
両断された燕であった。
「宗矩ぃ・・・・宗矩ぃぃっ!!」
「はかった喃・・・」
「はかってくれた喃!」
虎は燕の死体を踏みつぶした。
何度も、何度も。
宗矩との予期せぬ再会が呼び起した、
忌まわしき記憶は鮮明であったが、
眼の前の哀れな燕がその一件とは、
無関係であることは明確だろうか?
否。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
人の喉から出たとは思えぬ、
獣の様な絶叫が夜の闇に伸びた。
今宵、一匹の人喰い虎が・・・・
【へノ肆 城下 往来/一日目/深夜】
【岩本虎眼@シグルイ】
【状態】健康、魔神モード
【装備】備前長船「物干竿」@史実
【所持品】支給品一式
【思考】:宗矩を斬る
一:宗矩を斬る
【備考】
※人別帖を見ていません。
※目に映る人間、動物全てが宗矩に見えています。
見れば無差別に襲いかかります。
投下終了
虎にございます
失礼、一か所修正箇所がある。
>それは達人同士の恐るべき死闘であった。
>多くの立ち合い人の内でこの神速の攻防を目視できたのは、
>柳生新陰流高弟、村田与三、木村助九郎の二名のみである。
>(異な掴み・・・)
>宗矩は、虎眼の六本指の右手を見る。
>猫科動物が爪を立てるが如き異様な掴みであった。
を、
>それは達人同士の恐るべき死闘であった。
>多くの立ち合い人の内で、両者の神速の攻防を目視する事ができたのは、
>柳生新陰流高弟、村田与三、木村助九郎の二名のみである。
>(異な掴み・・・)
>数合にわたる神速の打ち合いの後、
>宗矩は改めて、虎眼の六本指の右手を見る。
>猫科動物が爪を立てるが如き異様な掴みであった。
投下乙
先生魔神モードktkr
あと昼行性の燕が夜中に町中を低空で飛んでるって、どう考えても有り得ないですし、演出にしても唐突です
蝙蝠あたりに変えるか、削除するべきかと
意外ッ!それは主催者に偵察を命じられた蝙也ッ!
>>688 了解、wiki収録時(wikiはまだないけど)に修正します。
>>689 『丹波』蝙也斎ですねわかります
(藤木に殺された「不逞の輩」の頭領)
あと、書くか、書かれるかはわからないけど
藤木源之助@シグルイ
牛股権左衛門@シグルイ
新免新蔵武蔵@異説剣豪伝奇 武蔵伝
(中風で再起不能になった、この作品の「本物」の武蔵の弟子で影武者)
宮本武蔵義経@異説剣豪伝奇 武蔵伝
(ニセ武蔵その1。本当は九州出身の示現流の剣士。二刀流は我流。本名不詳)
藤木とウッシーはいいなw
投下乙です。
城下町はかなり危険な事になってますね。
こちらも白井亨、柳生連也斎を投下します。
白井亨が生きた時代は近代剣術の興隆期と重なる。
竹刀と防具の普及によって怪我の心配なく毎日何十、あるいは何百もの試合をする事ができるようになり、
遺恨を残す心配なく他流試合を行えるようにもなって流派間の交流が盛んになった。
これによって剣術の技は大いに発展したが、一方でそれが剣術が本道から外れる端緒となったという批判もある。
剣士達が竹刀の打ち合いを制する事ばかりを考えるようになり、剣術は実戦では通用しないただの競技に堕したと。
そんな中にあって、白井亨は小手先の技に頼らぬ真の剣術を追求した剣客である。
といっても竹刀剣術を軽侮していたわけでは決してない。
むしろ積極的に竹刀稽古を取り入れ、その熱心さはあの千葉周作も驚嘆したほどであった。
その一方で、竹刀剣術を剣法の真理に背くと嫌い心法を重視した寺田宗有に弟子入りして学び、その流儀を継いだ。
他にも小笠原源信斎という剣客が明国の武術を元に開発した「八寸の延金」なる技を復活させるなど、
偏見に囚われる事無く、ただ真摯に剣術の奥義を追求し続けた剣客である。
五尺三寸の長竹刀をもって江戸中の剣客を薙ぎ倒した大石進に唯一人完全な勝利を収めたという事からも、
彼の中で古流の強さと近代剣術の技が互いの持ち味を殺すことなく共存していたことが伺える。
そんな白井であるから、このような異様な事態にも必要以上に慌てたりはしなかった。
「どうやら、私の理解を越えることが起きているようだな」
手も触れずに吹き飛ばされた村山という男の首、煙に包まれたと思ったらいつの間にか橋の上に立っていた己、
そして、行李の中にあった人別帖に記されている遙か昔の剣客達の名前……
「狐狸妖怪の仕業か、或いは神仏が私に課した試練か」
考え込む白井だったが、誰かが近付いてくる気配を感じて顔を上げ、皮肉な巡り合せに思わず苦笑する。
歩いてきた剣客が手にしている得物が、あの大石進が使っていたのと同様の五尺三寸の長竹刀だったからだ。
柳生厳包が白井の存在に気付くのが遅れたのは厳包の感覚が鈍いからでは決してなく、葛藤のさなかにあったせいだ。
(但馬守宗矩、十兵衛三厳……いや、いかん。臣たるもの、己の望みより先に主君の御為を考えねば。
上様御乱心……これは殿にとっては願ってもない好機になるやも知れぬ)
将軍に剣法を上覧せよと言われて来てみればいきなり数十人に一人しか生き残れぬ殺し合いを強要される……
死病に罹った家光が乱心してこのような暴挙に出たと厳包が考えたのも無理のない事であろう。
これが正しければ、将軍に斯様な愚行を許した事実はそれを補佐する幕閣に天下の政を担う資格がない証拠となる。
そして、幕閣の失脚は、厳包の主君徳川光友の天下の権を握らんとする野心を実現する大きな一歩になるだろう。
ならば厳包がこの場でするべき事は一つだ。
この試合の主催者が徳川家光である事をその眼で確かめ、その非道を糾弾し、殺し合いを中止させるよう申し入れる。
もしそれで家光が怒って厳包を討たせようとすれば、斬り抜けた上で藩に報告し、その後の指示を仰ぐ。
危険を伴う方法ではあるが、光友が堂々と将軍や幕閣を糾弾する為には臣である自分が筋を通さねばならぬのだ。
今後の指針は決まった……なのに厳包がすぐに行動に移れなかったのは、尾張を発つ時に聞いたある言葉のせいだった。
『柳生宗冬は父や兄に似ぬ柔弱な男と聞きます。もし試合をする事になっても厳包殿の勝利は疑いありません。
不世出の剣士と謳われた彼の兄が先年亡くなったのは天が厳包殿を援けるものと言えるでしょう』
同僚が、おそらくは善意から発した言葉……しかしその言葉は棘のようにずっと厳包の胸に刺さっていた。
まるで十兵衛が存命なら厳包に勝ち目がなかったとでも言うようなその言葉を、厳包は決して受け入れられない。
尾張柳生は新陰流正統、宗矩だろうが十兵衛だろうが立ち会えば必ず勝てるという自負が厳包にはあった。
無論、宗矩も十兵衛も既に故人であるから立ち会うなど不可能……そう思っていた所に、あの白洲での出来事だ。
宗矩も十兵衛も生きていた……死を偽装した理由はわからないが、それは厳包にはどうでも良い事だ。
それよりも彼等二人の生存は厳包にとっては尾張柳生の江戸柳生に対する優位をはっきりと示す正に好機と言える。
だが、尾張藩士としては今は家光を探す事を第一に考えるべきであり、余計な勝負で危険を冒すのは愚策だ。
臣下としての使命か、剣士としての欲求か、その葛藤に悩まされながら橋を渡る途中、厳包は漸く彼に気付いた。
「私は白井亨と言います。あなたは?」
「柳生厳包と申す。一つ伺うが、貴殿はこの場にて命じられた通り殺し合いをするつもりか?」
厳包の名を聞いて白井は驚いた顔を見せるが、すぐに笑って言う。
「まさか。そのような恐ろしい事に加担するつもりはありません。殺し合いなど、何とかして止めねば。
殺し合いでなければ貴方のような高名な剣士とは是非一手お手合わせを願いたいところなのですがね」
「ならば――」
ならばこの邪悪な企てを叩き潰す為に協力しよう……厳包はそう言うつもりだったのだが、
「ならばまずは一勝負致そうか。幸いな事に貴殿の得物は木刀、こちらもこのように妙な武器だが真剣ではない」
実際に口から出た言葉はそれだった。
己の言葉に戸惑う厳包を他所に、白井は可笑しそうに微笑むと話を進める。
「それは新陰流の袋竹刀を元に、打たれて怪我をする危険を更に小さく改良した割竹刀と申す稽古や試合用の刀です。
確かに私達に渡されたのが共に真剣でなかったのは天の導きかもしれません。では一勝負……どうかされましたか?」
白井が怪訝そうに聞いてくるが、まさかここまで来て言を翻す訳にはいかない。
「いや、この割竹刀とというのは良い出来だと考えていたまで。この場を生きて帰れれば当家にも導入してみようかと。
ただ、これはいかにも長すぎるようだが、これも稽古の為にわざとそうしているのか?」
「いえ、それが特別に長いだけですよ。まあ、特別に長いのはこの木刀も同様ですが」
そう言って白井が掲げる木刀も四尺を越える、舟の櫂のように太く長大なものだ。
「ならば条件はそう変わらぬな。いざ、参ろうか」
二人は行李を置いて武器を構え、しばらく睨み合っていたが、やがて厳包が竹刀を下げて言う。
「どうやら貴殿にはその木刀は少々重過ぎるようだな」
確かに、構えていたのは短い時間だったにもかかわらず、白井の腕は既に疲れを覚えていた。
「お恥ずかしい事です。しかし、気遣いは無用」
「いや、貴殿が実力を発揮できねばせっかく勝負する甲斐がないというもの。よろしければ武器を交換いたそう。
この竹刀なるものは長い割には軽いし、こちらも使い慣れぬ竹刀などよりその木刀の方が都合が良い」
そうまで言われ、白井も素直に武器の交換に応じてついに二人の剣客の勝負が始まった。
「やあっ」
攻勢に立ったのは白井……間合いの優位を活かして竹刀稽古で鍛えた二段打ち・三段打ちの技で厳包を攻め立てる。
小兵の白井には長すぎる竹刀だが、かつて戦った大石進の太刀筋を思い出して徐々に扱い方を掴んで行く。
そして、長竹刀の特性を完全に体得して一気に攻め立てようとした矢先、竹刀が急に軽くなった。
厳包が木刀で竹刀の先二尺余を切り飛ばしたのだ。
「これは……!」
「良い腕だが、貴殿の剣には勢いが欠けているようだな」
真剣を持てば甲冑すら切り裂こうかという厳包の剛剣に、さすがの白井も驚愕して後ずさる。
「今度はこちらから参ろう」
先程までは間合いに於いて白井の一尺余の有利だったのが、竹刀を切断されたせいで今では一尺の不利。
しかも、竹刀を切り飛ばす技を見せられたばかりでは厳包の木刀を迂闊に受ける事もできず、白井は忽ち追い詰められる。
だが、そのまま屈するような白井ではない。
後に跳躍して距離を取ると、厳包の間合いの外から渾身の突きを繰り出す。
もちろん、そのような間合いからの突きが届く筈もないのだが、何という事か、白井の竹刀が伸びて炎の如く厳包に迫る。
しかし……
「ふん!」
厳包がキッと睨むと伸びたかに見えた竹刀の切っ先が消え失せる。
竹刀が伸びたのではなく、あれは剣気……剣気を高める事で剣が伸びたように錯覚させる古流の心法だ。
並の剣士ならば為す術なく剣気に貫かれるか剣気を避けようとして隙を作る所だが、流石に厳包ほどの剣士には通じない。
しかし、白井は怯んだ様子もなくもうひと突き、再び竹刀の切っ先が伸びて厳包に迫る。
「無駄な事を……」
厳包は通じぬと分かっている技を繰り返す白井に鼻白んだ様子を見せると再び白井の剣尖を睨み……今度は剣が消えない。
「何!?」
何故なら今回の白井の剣は実体……切っ先が伸びたと見えたのは白井の踏み込みが厳包の見立てよりも深かったせいだ。
数万試合の竹刀稽古によって磨きぬかれた白井の足捌きが、さしもの厳包の眼力をも凌いだのである。
対処が遅れた厳包の手元にまでつけこんだ切先は輪を描いて厳包の木刀を跳ね飛ばさんとする。
「ぬうっ」
辛うじて木刀が飛ばされるのを防いだ厳包だが、体勢が崩れたところへの白井の袈裟斬りを避けきれずに掠られる。
「惜しい……」
思わず呟いた厳包の言葉の意味を吟味する間もなく白井は更に踏み込んで横面を打ち込み――
「何を!?」
白井の一撃は厳包に防がれた……厳包の腕で。
戸惑って動きが止まった白井の竹刀を厳包が素手で掴む。
普通の試合なら審判が厳包の反則を宣する所だが、この御前試合に審判は……少なくとも真っ当な審判はいない。
厳包は片手で竹刀を掴んだまま突きを繰り出し、白井は何とか腕で受けるが数間も吹き飛び、行李にぶち当たって砕く。
「ぐ……」
白井が何とか顔を上げると厳包が無表情に木刀を構えて近付いてくる……こちらを殺す気なのは明らかだ。
(惜しい腕だが已むを得ぬ)
厳包は苦さと共に白井の殺害を決意する。
新陰流の敗北、或いは卑怯な手を使ったという謗りは尾張藩、そして新陰流四世宗家である先君義直の恥となる。
今の勝負、厳包自信は負けたとも卑怯とも思わぬが、剣を知らぬ世人はそう受け取らないかもしれない。
故に、実に惜しい剣士ではあるがここで白井を殺し、その口を塞いでおかねばならない。
白井は立ち上がってじりじりと下がるが、厳包はどんどんと間合いを詰めていく。
一足一刀の間合いまで近付いて一気に飛びかかろうとしたところで、厳包は風を切って飛んで来た礫を叩き落す。
その後も白井は連続して、地に倒れた折に拾ったのであろう小石を厳包の顔面めがけて投げてくる。
ただの礫ではあるが、白井は手裏剣でも一流を拓いた程の達人、厳包も簡単には近付けない。
そんな中、飛んで来た礫の一つを叩くと、礫が割れて中から真っ黒い液体が吹き出す。
それは行李の中にあった墨壷。
吹き飛ばされて行李にぶつかった時に、白井が咄嗟の早業で拾い上げておいたものだ。
素早く身を翻して墨を浴びずに済んだのは流石は柳生連也斎と讃えられるべき入神の動きだったが、
厳包が眼を離した隙に白井は背を向けて駆け去り、厳包に追う間も与えずに川に身を投じた。
「しまった!」
急いで川を覘くが流れが速く、既に白井の姿は見えない。
(万に一つも生きて帰すわけには行かぬ)
素早く行李を拾うと、厳包は足早に川下目指して進んでいく。
(もはや迷うまい。迷いは剣に澱みを生む)
要は尾張藩士としての使命を妨げない範囲で剣士としての道を全うすれば良いのだ。
戦意のある剣士は打ち倒して尾張柳生の強さを示し、戦意のない者は生かしておいて将軍の非道の証人とする。
江戸柳生にしても、宗矩が死を偽装した上にこのような御前試合に加担した事が知れれば取り潰しは免れまい。
となれば今回の件を明らかにしようとする厳包を江戸柳生は全力で阻止しようとする筈だ。
どうせ敵対する相手ならば、各個撃破できる今の内に主だった者を倒しておくのは理に適っている。
そのように自分の中の葛藤に折り合いをつけると、厳包は修羅の道に踏み出した。
【はノ肆 川沿い/一日目/深夜】
【柳生連也斎@史実】
【状態】健康
【装備】宮本武蔵の木刀(宮本武蔵が巌流島で使用した木刀)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者を確かめ、その非道を糾弾する。
一:白井亨を見つけ出し、口を封じる。
二:戦意のない者は襲わないが、戦意のある者は倒す。
三:江戸柳生は積極的に倒しに行く。
【備考】※この御前試合を乱心した将軍(徳川家光)の仕業だと考えています。
厳包が歩み去ってしばらく後、川の中から這い出す影が一つ……白井だ。
白井は川に飛び込んだ後、下流に流れたと見せて橋脚に必死にしがみ付いてその場に留まっていたのだ。
「私が甘かった……」
やっとの事で岸に上がった白井は呻くように言う。
今まで木刀でも竹刀でも無数の勝負を経験してきたが、それは全て互いに武器を持って向かい合ってから始まり、
一定の規則の元に行われる試合だった。
しかし、この島で行われている試合はそんな生温いものではない。
厳包の言葉を疑いもせずに得物を交換した時点で、剣の腕など関係なく自分は負けていた、白井はそう考える。
二度とこのような失態を犯さぬ為には、常在戦場の心意気を持った真の剣客になる事が絶対に必要だろう。
「やはりこれは神仏が私に与えた試練……いや、機会なのでしょうね。ならばそれをものにするのみ」
白井が剣を学んだのは、人を斬る為では決してない。
しかし、剣士として進歩するのに必要であるのなら、白井はどんな事でもするつもりだ。
厳包が放置していった竹刀を杖に、白井は歩み出す……真の剣士へと向かう茨の道を。
【とノ肆 橋の袂/一日目/深夜】
【白井亨@史実】
【状態】左腕骨折、全身ずぶ濡れ、体力低下
【装備】大石進の竹刀(切断されて長さは三尺程です)
【所持品】なし
【思考】
基本:甘さを捨て、真の剣客になる
一:休息や手当てができる場所を探す。
【備考】※この御前試合を神仏が自分に課した試練だと考えています。
投下終了です。
乙
柳生関係も又カオスになってきたなー。
連也斎にはもっと求道者的イメージがあったけど (とみ新造の影響)、江戸と尾張の
政治的懊悩に揺れる様も良いね。
新規枠より、
中村半次郎@史実
仏生寺弥助@史実
河上彦斎@史実
を、ひとまず予約させていただきます。
もう予約していいの?
いいなら坂本龍馬と外薗綸花で予約します。
佐々木只三郎@史実、斉藤一@史実で予約します
宍戸梅軒@史実
高柳又四郎@史実
予約します
宍戸梅軒って、鎌使いであって剣客じゃねえだろ
そして
中村半次郎@史実
仏生寺弥助@史実
河上彦斎@史実
投下させていただきやす。
薩摩維新志士、精忠組の中心人物であった西郷吉之助、大久保一蔵の二人を、光と影に準える見方がある。
人望に厚く多くの藩士に慕われ、開明的であった先主島津斎彬の覚えも目出度かった西郷を光。
権謀術数に長け、岩倉具視等公家との折衝役を務め、表に出ぬ様々な策を巡らせた大久保を影、と。
この二人は、薩摩維新の両輪であり、どちらが欠けても歴史は変わっていたかも知れない。
その光と影が、維新後に政界の中心に打って出た大久保と、あくまで士として生き、不平士族の中心となって西南戦争で戦死することとなる西郷と、その立場が逆転したのは皮肉めいている。
光が大きければ又影も濃くなる。
西郷にはもう一人、彼の死すときまで傍らを離れることの無かった影がいた。
名を、中村半次郎、或いは桐野利秋という。
しん、と静まりかえっていた。
僅かに、波音が聞こえ、ここが海の近くだと知らせてくれる。
月明かりのみが照らす、雑木林の中。よく見れば民家か漁村らしき影も見える。
その男は憔悴した貌でただ立っている。
偉丈夫であった。
立木を切り落としたかのような精悍な容貌に、血走った目が見開かれている。
冷えた闇夜の空気に、陽炎のような揺らめきが見える。
短く整えられていたはずの頭髪は千々に乱れ、そこかしこに泥と血糊がこびりついていた。
軍装である。
黒衣に金の刺繍の施されたそれも、今はくたびれ薄汚れている。
傍目にも、満身創痍の出で立ちといえた。
その姿が、この闇夜の中にとけ込み、一つの影としてそこに在った。
中村半次郎、いや、大日本帝国陸軍少尉、桐野利秋は困惑していた。
此処がどこで何が起きているのか。
先ほどの白州、そして御前試合なる宣言…。
全てが陶然とした夢物語の中にあるようである。
自分は…。
桐野の最も新しい記憶は、西郷の自刃を見届けた後、岩崎口の土塁の中で最期の応戦に出た事である。
そして、暗転し ―――。
今に至る。
既に半刻ほど、そうしていたのかもしれない。
実際にはもっと少ないかも知れないし、もっと長かったかも知れないが、桐野の意識はほぼ途切れたままそうしていた。
それでいて、そうとは意識せずに足元にあった行李から、一振りの軍刀を取り出し、それを手にしている。
今の桐野にとってその刀は心の碇のようなものであった。
手に伝わる感触が、重さが、唯一この現実へと繋ぎ止める役を果たしている。
維新後、陸軍に入り、そして反乱士族の一員として、彼は名を改め、手にするものもまた、刀から銃へと変わっていた。
軍刀である。
かつての中村半次郎が手にしていたものとは、意匠も作りも異なる。
しかしそれは、やはり桐野利秋にとっては刀であり、かつての中村半次郎としての己を思い起こさせるものであった。
帝国軍人桐野利秋と、薩摩の人斬り半次郎との境界が、今ゆらゆらと揺れている。
その薄膜を、一つの音が切り裂いてきた。
仏生寺弥助。
越中の国仏生寺村の出身の百姓の子として生まれ、江戸に出て同郷の縁から斎藤弥九郎の練兵館で下働きをするが、その後剣の才を認められ正式に入門。
後に神道無念流を脱し、自ら仏生寺流を名乗る。
天才剣士と謳われ、塾頭、桂小五郎を凌ぐ才と言われたが、人品はなはだ悪く素行にも問題があった。
長州藩に新規召し抱えとなるも、金がないため武具馬具を手に入れられず、商家を脅し金品を借り受けるが全て遊行費に使い潰すなどの乱行が祟り、扱いあぐねた長州藩によって薬を盛られ、五条河原にてだまし討ちにされたという。
半次郎が軍刀を抜き打ちにして払ったのは、木刀であった。
闇の中から飛来したそれは、そのまま地面にたたきつけられる。
続いて、闇の中より影が走り寄る。
身体が勝手に蜻蛉に構え、影を見定めるや猿叫を上げ斬りかかる半次郎。
その姿勢が、ゆらり崩れた。
鋭く膝を打つ衝撃に、勢いを殺せずつんのめる。
しかしさすがは半次郎、素早く横転し、右手の軍刀を再度掲げて構えるが、それよりも早く再度の衝撃を腕に受ける。
蹴りであった。
ひょろ長い体躯の男が、半次郎にのしかかるかにして蹴りを放っている。
半次郎もなまなかな鍛え方はしていない。
立木に木刀で打ち掛かること日に八千。終いには近在にまともな樹木は一本もなくなったと言われる程の膂力を持つ。
それでも、体勢が悪かった。
数度の衝撃の後、右腕が地面に踏みつけにされた。
半次郎は残る左手で男の脚に掴みかかる。
強引に引っ張り、男を組み討ちに引き込もうとするが、呼吸が止まった。
鋭く、固い何かが鳩尾を打つ。
瞬間、半次郎の全ての機能が止まり、その数瞬で全てが決した。
軍刀が。
半次郎の手にしていたはずの軍刀が。
ゆっくりと、その刃を肉の内に滑り込ませ。
その命を地面に零させる。
「…吉之助さぁ…」
桐野利秋ではなく、ただ一人中村半次郎として。
「オイも…逝きもす…」
そう漏らした後、半次郎は絶命した。
呼吸が荒くなっていた。
ゆらりと身体が揺れる。
仏生寺弥助は、血に塗れた袷を整えもせず、ただゆっくりと立ち上がり、息を整える。
右手には、軍刀。
懐に戻したのは、鉄扇。
立ち上がり、半次郎の骸を見下ろす。
「薩摩っぽは…がんじょいチャ…きっついが…」
誰にとでも無くそう呟く。
江戸に出て練兵館で修行をしていた時分に越中訛りはかなり減ったが、それでもたまに漏れ出てくる。
弥助は半次郎と面識はない。
しかし示現流の構えと最期の言葉から、薩摩藩士であったであろう事は分かった。
分からぬのは洋装を身にまとっていたことくらいだ。
軍刀の血糊を拭い、数度振り下ろす。
確かに日本刀とは多少作りが違うが、さほどの違和感はない。
これならば、最初に行李に入っていた支給品、鉄扇 ――― 半次郎の鳩尾を強かに打ち、悶絶せしめた ――― よりは遙かに使い勝手が良いと判断する。
木刀は林の中に落ちていたものを拾った。
これは実際にはトウカが久慈慎之介と立ち会った際に誤って投げてしまったものだ。
木刀と鉄扇。
その二つを持ちながら、襲撃に際してまず木刀を投擲したのは、はなから撃ち合いではなく組み討ちに持ち込むつもりだったからだ。
真剣を持つ相手に木刀で撃ち合いにいくよりは、その方が弥助の持ち味が生かせる。
弥助の持ち味、つまりは、その長い足と痩躯による、蹴り。
仏生寺流は流派と言ってもきちんとした形式はない。
ただ、神道無念流を会得した弥助が、弥助なりに考案したより実線向きの剣術であり、その特色は体術、特に蹴りの活用にあった。
不意をついた蹴りにより相手の体勢を崩し、斬りかかる。
ある意味、まさしく弥助らしい剣法であった。
改めて、弥助は己を顧みる。
生きている。
そのことがはっきりと分かった。
酒盛りに誘われて行った先で、どうやら薬を盛られたらしく、かなりの酩酊状態になった。
そこまでは覚えがある。
その後河原で囲まれ、同席していた高部弥三雄と三戸谷一馬らが斬られたのも覚えがある。
自分が斬りかかられ、危ういところであったのも覚えがある。
だが、その後はどうか。
死んだのか、と思ったときには、あの白州にいた。
それから、殺し合えと言われた。
弥助には学がない。徳もない。品位も人格もない。
あるのは、類い希無い剣の才、ただそれだけであった。
故に、孤独であった。
剣だけが、彼の救いであり、剣だけが彼を裏切らぬ全てであった。
河原での事を思い出す。
その中に、敬愛する師、斎藤弥九郎が長子、新太郎の顔があったように思う。
何故?
弥助は懊悩する。
粗野粗暴、無学文盲の弥助ではあるが、師に対する敬意だけは在った。
それは剣のみに生きる弥助にとっては、ある意味崇拝に近いものですらある。
だからこそ、弥助は道場でも新太郎には勝ちを譲っていた。
そのことが新太郎の誇りを傷つけていたやも知れぬとは思いもせずに、だ。
心の機微を読み取ることも、腹芸も出来ぬ弥助にとって、新太郎の心中は分からぬものだった。
だから、弥助は懊悩する。
まさか、と思う。
まさか、自分は売られたのか、と。
厄介払いのため、斎藤弥九郎が仕組んだのか、と。
否、そんなはずはない。そんな事はあり得ない。そう思う。そうは思うが、疑念は晴れない。
ならば何故、あの河原に新太郎が居たのか ――― 。
弥助の懊悩は、結局はそこに行き着いて堂々巡りをする。
足元にあった行李を探り、弥助は食料と水だけを取って、己のそれに移し替え、背負う。
それからまず、天を仰ぎ、月を見て、どこへともなく歩き出した。
弥助は孤独であった。
月を愛でる風流など解することもないが、それでも弥助は、月に己の姿を映し出した。
御前試合なる宣言も、二階笠の男のことも分からぬ。
今起きていること、これからすべきこと。何も分からぬ。
今の弥助に分かるのは、周りにいる者は全て敵だというその事実のみである。
長州藩士も、練兵館の同朋も、あらゆる全てが己の敵であるという事だけである。
ただ一つ。
果たして自分に、恩師、斎藤弥九郎その人を斬れるかどうか。
その答えは、どこにも見あたらぬままである。
弥助は孤独であった。
喩えようもなく孤独であった。
◆
暫くして、残された半次郎の遺体の近くに立つ一つの影があった。
木々から漏れる月明かりに、その小さな影が映し出される。
凡庸な男であった。
凡庸な顔に、いくらか寝ているかにも見える腫れた目。
ふっくらとした頬は、或いは童顔にも見えるが、そう若くはないだろう。
能の小面に似ている、とも言えなくはない。
色白で、小柄。その男が、薄汚れた白い着物を着て、半次郎の死骸の側に立っている。
名を、河上彦斎。肥後熊本藩出身の攘夷派志士である。
彦斎の名を広く知らしめたのは、言うまでもなく佐久間象山暗殺である。
当時彦斎は、長州藩に移り京にいた。(ちなみに、彦斎が長州に移ったのは文久三年八月十八日の政変以降であるため、同年六月に死んだ仏生寺弥助とは面識がない)
その翌年、池田屋事件が起きる。
新選組よる大規模な攘夷派志士の捕縛、粛正により、宮部鼎蔵ら七名が討ち取られた。
宮部は肥後熊本藩にいた頃からの朋輩であり、兵学の師でもあった。
彦斎が長州に移ったのには、宮部の影響もある。
宮部は兵学者として、長州萩の生んだ傑物、吉田松陰とも深い交流があったのだ。
とにかく彦斎は、新選組の蛮行へ強い怒りを感じていた。
まして、学識もあり世を憂う憂国の士。その宮部に不敬、反逆者の汚名を着せ惨殺した新選組のやり口は、決して許されるものではない。
池田屋事件における長州派志士の計画、すなわち京に火を放ち帝を長州に移すというものは、新選組による捏造である。
後世の研究家にも指摘されるその説同様、彦斎もそう信じた。
勤王の志厚い長州藩士、また英明なる憂国の士宮部鼎蔵等が、そのような不敬不忠な愚策を講ずるわけがない。
そのような虚偽により勇士を謀殺し、さらにはその謀に帝の名を使うとは、なんたる不敬、なんたる不忠か。
友を殺された復讐、新選組の邪な計略への義憤。
新選組、許すまじ。会津、許すまじ。徳川、許すまじ。
常から感情を表に出さぬ事の多い彦斎の激しい怒りは、結果として在らぬ方向へと暴発する。
それが、象山暗殺である。
元治元年、象山は一橋慶喜に招かれて入洛し、公武合体論と開国論を説いていた。
その象山を幕府に連なる開国論者として、前田伊右衛門と共謀し暗殺する。
白昼、馬上の象山に駆け寄り、逆袈裟に切り捨てた。
史実剣客多すぎね?
718 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 00:43:45 ID:FEtU1XFY
規制か
もう歴史ロワでもいいな
720 :
転載:2009/01/17(土) 01:59:34 ID:yql4r1Nf
229 : ◆KEN/7mL.JI:2009/01/17(土) 00:54:06 ID:Rs6Dc4ks0
天誅。
これは、不敬不忠にして、洋夷に魂を売り、邪なる専横の為志士達を葬り去る、徳川、会津、新選組への天誅である。
そう信じた。
そう信じた彦斎のその後を襲ったのは、絶望と悔恨である。
宮部鼎三は師であり友である。吉田松陰はその友であり又山鹿流兵学の師でもあった。
その吉田松陰の師。それが、佐久間象山である。
己も又、佐久間象山に連なるものであると、後に知る。
師の仇討ちと称して、その師の師を殺したのである。
何が不敬、何が不忠か。
己こそその最たるものではないか。
象山の来歴を知れば知るほどに、彦斎の上には絶望と後悔がさらに重く大きくのしかかる。
彼は紛れもなく天下の傑物であり、この日本の命運を変えうる士であったのだ。
天誅などではない。大儀もない。
ただ友を失った私憤私情に狂った、己の愚挙である。
私のために、世に有用な士を切り捨てた己は、徳川専横の先駆として志士を謀殺する新選組と何が違うというのか?
取り返しの付かぬ過ちとは、まさにこのことを言う。
その後、彦斎は暗殺を辞めた。
すなわち、"人斬り彦斎" の最期である。
そのとき彦斎は獄舎にいた。
宮部鼎三の死後、佐幕派が実権を握っていた肥後熊本藩に帰藩してからもあくまで勤王攘夷の姿勢を崩さぬ彦斎は、藩から疎まれ大政奉還を初めとする多くの歴史の転換期を、獄舎で過ごしていた。
721 :
転載:2009/01/17(土) 02:00:26 ID:yql4r1Nf
230 : ◆KEN/7mL.JI:2009/01/17(土) 00:56:54 ID:Rs6Dc4ks0
そして明治、新政府になってから、二卿事件への関与の疑い、さらには参議暗殺の嫌疑をかけられ、明治四年十二月に斬首される事となる。
獄舎にて正座した姿勢のまま、ふと気がつけば人の気配がする。
白州である。
二階笠の紋付き袴の男が宣言をする。
「これより、御前試合を執り行う」
そのとき彦斎は、獄舎にいた。
此処も又、獄舎であると、彦斎は知っていた。
幽玄の彼方より、此方へと重なりし、獄舎であると。
彦斎は相変わらず、能面のような無表情の顔をしたまま、誰とも知れぬ男の死体を見ていた。
首の動脈を切られ、臓腑を抉られ、辺りにはまだ乾ききらぬ血がどくどくと広がっている。
血の匂いが咽せるようだった。
確かめるまでもなく絶命している。
だというのに、ただ何をするでもなくその屍を見続ける彦斎は、やはりどことなく心此処に非ずという態だった。
死んだ男の姿が、象山のそれに重なって見える。
この男が洋装であることも又、やはり華美な洋装をしていた象山とだぶらせている。
勿論、この男が象山ではないことは分かっている。
分かってはいるが、彦斎の脳裏からは象山の最期が離れない。
(おいは、死罪になっと)
予感、というよりは確信として、彦斎はそう思っていた。
尊王攘夷は彦斎の支柱であり、その節を曲げることはあり得ない。
肥後熊本藩も、後の新政府も、彦斎に利用価値を感じつつも、結局はその節を曲げぬ姿勢にそれを断念した。
722 :
転載:2009/01/17(土) 02:00:58 ID:yql4r1Nf
231 : ◆KEN/7mL.JI:2009/01/17(土) 00:59:26 ID:Rs6Dc4ks0
結果厄介払いとしての斬首に繋がる。
己の未来がおそらくはそのようなものになると、彦斎は分かっていた。
分かっていて、己の生のみに固執し節を曲げるなど、彦斎には出来なかった。
己の生は、私事でしかない。
私情に踊らされ、義を見失い、愚挙に走った挙げ句の象山暗殺。
であったからこそ、今更になって節を曲げることなど出来ようはずが無い。
私情私憤で取り返しの付かぬ過ちを犯した者が、自らの生に固執して節を曲げるなど、あって良いはずがないのだ。
死罪になるならば、なろう。
嘆くべきは己の死ではなく、守るべきは己の生ではない。
獄舎に繋がれ続けた年月の中、彦斎はそう思い過ごしてきた。
なればこそ。
今此処も又、己の獄舎であるのは間違いない。
だが ―――。
この男は、どうだったのであろうか?
名も知らぬ洋装の男の骸を前に、彦斎はそう自問する。
彦斎斬首より六年の後、西郷の傍らに付き従い、反乱士族として戦死するはずであった男、かつての人斬り半次郎の骸は、その問いには何も返してはくれなかった。
【中村半次郎@史実 死亡】
723 :
転載:2009/01/17(土) 02:01:28 ID:yql4r1Nf
232 : ◆KEN/7mL.JI:2009/01/17(土) 01:01:23 ID:Rs6Dc4ks0
【にノ漆/二七村付近/一日目/深夜】
【仏生寺弥助】
【状態】:健康
【装備】:軍刀
【所持品】:支給品一式(食料二人分)、鉄扇
【思考】 周りは全て敵であると思っている。
1:あてもなく彷徨う。
2:恩師、斎藤弥九郎にどう向き合うべきか分からない。
【備考】
※1862年、だまし討ちに遭って後より参戦。
当時の斎藤弥九郎は64才。この御前試合参戦時の弥九郎の九年後の時期である。
参戦している弥九郎は、既に弥助を門下としていると思われる。
【河上彦斎】
【状態】:健康
【装備】:不明
【所持品】:支給品一式
【思考】 不明
1:自問。
【備考】
※象山暗殺、第二次長州討伐後の後半生、獄中から斬首の何れかの時期より参戦
233 : ◆KEN/7mL.JI:2009/01/17(土) 01:02:54 ID:Rs6Dc4ks0
以上で御座います。
>>699において白井亨の位置が「とノ肆」となっていますが「ろノ肆」の間違いでした。
お詫びして訂正いたします。
皆様投下乙!
それと、
師岡一羽@史実 予約
予約まとめ
坂本龍馬@史実
外薗綸花@Gift−ギフト−
佐々木只三郎@史実
斉藤一@史実
宍戸梅軒@史実
高柳又四郎@史実
師岡一羽@史実
投下乙!
でさぁ、宍戸梅軒は剣客じゃないと思うんだが
・得物が鎖鎌
・野盗
・ついでに、半ば吉川英治の創作人物
これはアウトでしょ
あと、当初史実と創作半々くらいと言っていたがだいぷ史実寄りに偏ってるな
世間的にはマイナーな人物も多いし
投下乙です。
ただ、方言を使うと雰囲気は出ますがリレーの難易度が上がりすぎるような・・・
それと、トウカは別に木刀を投げてはないはずですが
投下乙
歴史ロワだなあ。無論、問題なしですが
方言に関しては参考資料のアドレスでも置いてもらえれば
ぽーんとすっぽ抜けたのは左手だけですね
名簿に挙がった時から言ってるけど宍戸梅軒は剣客に数えていいのか?宝蔵院も怪しいが
予約まで入った以上白黒はっきりさせてくれ、ついでに、宍戸はモデルはいるが吉川英治の創作人物だぞ
師岡一羽@史実
投下します
一人くらいは変わり種が混じっててもいいんじゃない?
鎖鎌なら剣術との親和性も高いし。
ほノ参
帆山城とは堀を隔ててすぐの位置の城下町の一角の事である。
そこには、釣鐘がつけられた物見梯子があったが、
その周囲には、嘔吐を催す悪臭が充満していた。
一体何の臭いであろうか。
ひどく甘酸っぱい、強い酸性の、鼻を突き刺すような劇臭だ。
何か生き物が腐った臭い、それが一番適当な例えだろうか。
臭いの源は何であろう。
梯子の根元に眼を向ければ、
そこには白くて赤い『何か』が蹲っている。
臭いは『それ』から発していた。
『それ』は驚くべき事に人であった。
驚くべき事と言ったのは、その姿形が余りに人間離れしているからだ。
梯子を背にしてもたれかかるようにして座っている。
容貌はまるで解らない。
目だけを僅かに露出させて、
それ以外の部分は白い袈裟頭巾に完全に覆われてしまっているのだ。
僅かな隙間から覗く双眸は、
恐ろしく熱を持っており、充血して真っ赤であった。
また、目の周りの僅かに露出している肌は酷く黄ばんでいて、
良く解らない油のような物で覆われている。
真っ赤な双眸が闇夜に炯々と輝き、
黄色い肌が月光にテラテラと光っている。
顔以外の部分はどうだろう。
肌に着けているのはえらく黄ばんで、
茶色や黄色の良く解らない染みがあちこちに付いた襦袢と、
その上から被せられた血の様に真っ赤な袍一枚のみだ。
そして、その襦袢の外に出ている肌は残らず、
いや、恐らく襦袢の下も全て、
包帯の様な白い布で隈なく覆われ、
まるで木乃伊の様になっている。
そして全身を覆う白布もまた、
黄ばみきっており、茶色と黄色の気味の悪い染みで溢れ返っている。
それが、凄まじい悪臭を放っていた。
白い「人物」は真っ赤な焦点の定まらない瞳で、
ぼうっと宙を見ていた。
その視線は、まるで『病人のように』にひどく熱を持っている。
『病人のように』?
そう、『彼』は病人であった。
恐るべき病、生きながら体が内外より徐々に腐っていく天刑の病。
癩病、現代ではハンセン氏病と呼称される業病に、
彼は全身を侵されているのだ。
「・・・・ぁっ・・・・」
声にならない不気味な呻きが、頭巾の下から零れた。
彼は、深紅の瞳で空を仰ぎ見た。
彼の名は師岡一羽。
天真正伝神道流を修め、次いで卜伝より新当流を学び、
ついには一羽流という一流を起こした剣豪のなれの果てであった。
◆
師岡一羽は常陸国信太庄江戸崎の人である。
名門土岐氏の系譜で、
江戸崎の土岐氏に仕えてきた家系の人だ。
伝承には塚原卜伝に師事し、次いで神道流、飯篠長威斎に師事し、
長じて一羽流を開いたとあるが、これは誤りである。
一羽が生まれる前に長威斎は死んでいる。
故に彼は恐らく卜伝に学んでそのまま一羽流を開いたのだろう。
彼の主君であった土岐氏は、秀吉の小田原征伐の際に佐竹氏に攻め滅ばされ、
一羽は仕官を望まれるも固辞し、浪人し、
すでに開いていた一羽流の道場に専念した。
道場は隆盛しており、
後継者と目される三人の高弟もいた。
すなわち、
根岸兎角、岩間小熊、土子泥之助(土呂之介、泥介、泥助とも)の三名である。
弟子も多く、優秀な後継者候補もおり、
一羽流は大いに栄え、
彼は一流祖としてあるべき静かな余生を送れるかと思われた。
しかし、彼の本来あるべき晩年の姿は、癩病が発症したこで一変する。
全身の皮膚が黄ばみ、崩れ、夥しい斑点と腫瘍が体を覆い、
体毛は抜けおち、神経が侵される。
気が付けば、彼は道場の運営どころか、
日常生活すら満足に行えない体になっていた。
中世、恐るべき伝染病は、多かったが、癩はある意味もっとも恐れられた。
有効な治療法は無く、病状の進行は真綿で首を絞めるように緩やかで、
それでいて醜く体が崩れ、腐っていくのである。
道場から門弟たちは瞬く間に去り、
気が付けば一羽に寄り添う者は、例の高弟三人だけになっていた。
しかも、そのうち、兎角が回復の見込みの無い、
醜く腐っていく師の看病に嫌気がさして逐電してしまった。
一羽は天正二十年に死ぬが、
癩病でもはや立ち上がることすら叶わなくなった上、
困窮極まり、死に立ち会ったのは忠弟二人だけという、
あまりにも寂しく悲惨な最期であった。
そんな一羽が、この殺し合いの場に呼び出されたのは、
死の一年前、兎角が逐電した直後であった。
◆
(何故、今なのだ?)
一羽は宙に視線を漂わせながら、
熱でぼんやりと靄がかかったような頭脳を、
必死にゆり起して思考を繋ぐ。
(兵法勝負・・・是非もなし・・・だが・・・)
(何故、今の俺を呼んだのだ)
一羽の体は、既に癩に侵されつくして、
剣を振るうどころか、寝起きすることすら困難な体なのだ。
そんな自分を呼び出して何とするつもりなのか。
(死ぬのか?)
(俺はここでみじめに野垂れ死ぬのか?)
今の自分は芋虫みたいなものだ。
地を這いまわる事しか出来ない腐った芋虫。
今の自分なら童でも殺せる。
ましてあの白州の達人たちは・・・
(嫌だ)
(そんなのは嫌だ)
(だとすれば俺は何のために・・・)
気が付けば体の自由が利かなくなっていた。
肌が崩れ、できものに溢れていた。
弟子たちはみんな去っていった。
しまいには高弟の兎角にまで逃げられた。
自分にはそれを引きとめる力すらない。
そして、公衆の面前に引き出されて、
惨めに虫みたいに殺されると言うのか。
( イ ヤ ダ )
( ソ レ ダ ケ ハ イ ヤ ダ )
剣に生き、将として生き、
一流を興した俺の末路がこんな物?
そんな事は認めない。
絶対に認めない。
ここで殺されるのが運命なら、
何のために剣を極めたか、
あの修行と闘いの日々は何のためのものであったか。
(死ねない)
(死ねない)
(シネナイ)
(シネナイ)
(シネルワケガナイ!)
一羽の深紅の双眸が一層輝きを増した。
一羽が、不意に両手を前に突き出す。
プルプルと小刻みに震えるそれは、
まるで二本の白い棒きれのようだ。
右手はまだ辛うじて人間の手の形をしているが、
左手に至っては指が三本しかなく、
しかもいずれも鉤のように曲がっていた。
二本は腐って落ち、残る三本も神経を侵され、
猿手になっているのだ。
一羽はそのまま地を這うようにして
傍らの行李に近づき、震える手でそれを開いた。
中には一振りの白木拵えの刀があった。
一羽は凄まじく苦心しながら鞘から刀身を引き抜いた。
白刃が月下の闇に晒され、それが一羽の赤い瞳に映った瞬間、
一羽の体に電流が走った。
『不屈の精神を持った剣士にあってはおのれに、
与えられた過酷なさだめこそ、
かえってそのたましいを揺さぶり、ついには・・・』
三枝伊豆守高昌
手島竹一郎家伝 写本「駿河大納言秘記」
「お・・・・お・・・・」
「おお・・・おお・・・」
「おおおおおおおおおおお」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
呻きとも叫びともとれる声が一羽の喉より迸った。
そしてどうであろう。
もはや立つことすら叶わぬと見えた一羽が、
身体を痙攣させながらも立ちあがったではないか。
白布に包まれた両の足はやせ細り、
しかも右足の方が、左足より短くなっていた。
右の五指はすでに落ちていたのだ。
そして、右手に抜き身の刀をもったまま、
一羽はいずこへと、体をよろめかせながら歩きだしたのである。
「勝つ」
「勝って俺の最後の・・・」
一羽は呻いた。
一羽が手にした白刃は、
『七丁念仏』という銘を持つ妖刀であったが、
その刀身を見た一羽が立ち上がったのは何故であろう。
誰が知ろう。
七丁念仏に映る姿だけは、
かつての剽悍な一羽であったのだ。
赤い袍が、風にばっと閃いた。
まるで火柱があがったようであった。
一羽最後の戦いが始まる。
【ほノ参 城下 往来/一日目/深夜】
【師岡一羽@史実】
【状態】重度のハンセン病が進行中
【装備】七丁念仏@シグルイ
【所持品】なし
【思考】:兵法勝負に勝つ
一:見かけた奴を斬る。
【備考】
※人別帖を見ていません。
※重度のハンセン病で、病状は現在も進行しています。
今は身体を騙して動いていますが、
病状の進行具合では、失明、
あるいは歩行不能の状態に陥る可能性もあります。
※ほノ参に行李が放置されています。
投下終了。
個人的には、宍戸はかまわないと思う。
ゲーム「剣豪」にも普通に出てたし
投下乙です。
何とすさまじい・・・
投下乙
執念がヤバい
だがさ、得物もそうだか宍戸はあくまで野盗だぜ?
野盗だけど武芸者でもあると思うけど。
それを言うなら石川五エ門だって泥棒だし、
他にも将軍とかアイドルオタクとかいる中で取り立てて野盗だけを問題視する必要はないでしょ。
投下乙です
幽鬼染みてるなあ。一羽は山風の剣士伝のイメージしかないんですが、
鳥肌が立ちました。
>>732 宝蔵院はダメじゃないか?
剣術も凄いんだろうけど、やっぱり槍使いってイメージが強いと思う。
個人的には宍戸もロワの趣旨から外れるなあ。
GGのバイケンは刀メインで補助ウェポンが鎖爪だっけか
質問
新免無二斎@史実
三合目陶器師@史実
で予約したいと思うんだけど、
新免無二斎って剣客でいいのかね。
調べると「当理流」の達人で、
十手だけじゃなく、剣の方も達人だったらしいけど、
宝蔵院、宍戸がアウトなら彼もアウトの様な気がするんだもんで聞いてみる
武蔵が出てるから無二齋は出さなくてもいいと思うんだが
あと纐纈城とやらはどう把握するの?
横書き縦書きは完全に慣れの問題
>>730-731 あああ、しまった、読み違えていた!
ちょっと後で該当部分の直しを貼らせていただきます。
方言に関しては迷ったんですが、まるっきし標準語だとどーも違和感があったもので。
仏生寺弥助は、江戸暮らしが長いと言うことで越中訛り(とやま弁) はたまにしか出ない、という事にしました。
参考にしたのはこのサイト。
ttp://www.kbd-p.com/1hogen.htm 熊本弁はwikiを参考にしましたが(と言っても一言しか喋ってないけど)、なんでも 『俺たちのフィールド』 の
タクローが、かなり正確な熊本弁らしいです。そーんよか。
それと、
>>720-724、転載有り難う御座います。
一応予約はしておく
新免無二斎@史実
三合目陶器師@神州纐纈城(小説)
どうも、高柳と宍戸予約している者です
一応執筆を停止して成り行きを見ていましたが
予約した理由を表明しておきます
変わった武器ではあるが達人の域にまで磨き上げた武芸者である
>>658のリストに記載されていた
>>656以降の流れで候補を絞らない=不問とされたと判断
以上です
元々そのまま提出するつもりでしたが
独断により、後に紛糾の種となることは避けたいため書かせて頂きました
参加者リストを参照し、明らかな問題があるとのご指摘がありましたら破棄します
また、私自身は同様の理由で宝蔵院を肯定しています
理由は分かるんだが、ここまで「剣」に拘ってきたからなあ
それこそ、忍者や武術家も参加可になってしまう
前者はフィクションだけどさ
一応予約ってグレーのキャラは予約しないべきだろ
「武芸者」ロワじゃなく「剣客」ロワだしな
少し遅れたけど、服部武雄と久能帯刀@らんまを予約します
759 :
◆ZtCYlxZ4so :2009/01/18(日) 02:47:19 ID:Ogdr3Ufg
就寝前に返答をしておきます
候補を絞るかどうかの指摘に対し
>>658のまとめに"候補は絞らなくて良いと思う"との発言があり
それに対する明確な反対意見を確認していません
よって私が予約した事自体は問題ないと判断しています
このロワでの参加者の定義は
>>5にあります
しかし"剣客"そのものの定義は明記されていません
つまるところそれが短絡的に、"剣"を直接的に使用する武術に精通した者を指すか、
それとも使用武器や参加者との親和性を考慮するのかを確認したいのです
時代により多少の誤差はありますが
剣術といっても居合いや、小太刀、二刀が分けられていますし
剣術を中心に長刀や鎖鎌を含む流派も存在していました
(後者を鑑みれば弓や砲なども肯定することになり
議論があったような使用武器の線引きといった話も内包することになる)
スレッドを立てた方が"石川五ェ門@ルパン三世"を参加者として提示していますから
職業が論点ではないと考えています
破棄は考慮していますが現時点では疑問は解消されていません
まあ、異論があるなら
>>658の名簿が出た時点で言っておくべきで、
予約が入ってからありなしの議論をするってのは問題だな。
少なくとも既に予約が入っている宍戸と無二斎は通すしかないでしょ。
予約が入ったから・投下されたからといって必ず通さなきゃいけないって事はないだろ。
つか
>>1-5って荒らしじゃないのか?
バンブーのタマちゃん通してる時点で説得力ないように傍目には見える
作中で真剣握ったことすらない子だよ
あと、香坂しぐれが既に鎖鎌出してるねw
この人は剣豪ではなくウェポンマスターなのでは?
剣だけの剣客ロワ、では既にないようだがどうなんだろう
宍戸らをハブるには整合性を欠いてないかい?
>>760 自分は名前が出た時点で指摘してたのに、返答がまるでなかったんだが…
自分としては、無二齋はまだありだが、剣、それに準ずるものを扱う描写の無いも宍戸や胤栄は無しだと思う
でも名簿が出た時は何も言わなかったじゃん
自分以外に宍戸参戦を問題視する意見がないから諦めたのかと思ってたよ
それに宝蔵院は剣でも新陰流の印可をもらったほどの達人だし
宍戸だって普通に考えて剣の心得が全くないってことはないだろう
最初、否定も肯定もしなかったのにそれはないだろ
あと胤栄はわかったが宍戸の剣技については憶測だろ
まあ個人的にはあってもいいと思うが、宍戸や無二齋出したいなら
十手術や鎖鎌術の参考資料ぐらいは提示して頂きたい。
剣よりよほど運用がマニアックだし。
小説だが
山田風太郎「忍法剣士伝」>新免無二斎の十手術
鎖鎌は・・・・「剣豪3」とかはどうだろう?
つうかある程度想像でいいんじゃない?
名簿で文句でなかったのは空気読むと思ったからなあ。
胤栄は槍が真骨頂だと思う。剣で個性描けるなら別に。無二斎も同様。
グレーなのに一応予約ってのは変だけどさ。
けれどさ、宍戸は完全に憶測じゃん。メインで剣使う分、甲賀忍法帖の天膳のがまだ主旨にあうぞ?
ここまで拘る理由は何?
鎖鎌描きたいなら何処ぞで誰かに拾わせればいいだろ
正直、鎖鎌はしぐれ一人でお腹一杯だお。
>>769 天ちゃんは天ちゃんで不死身設定が問題だなw
正直、剣の使い手だけにすると後半展開に煮詰まると思うんだよね。
だから、個人的には1、2人変わり種がいてもいいと思う。
そういう意味じゃ天膳はおいしいキャラだが、
こいつ忍者だしなぁ・・・・
武器の個性で行くしかないんじゃない?鉄砲や近代兵器が出てもいいし。
無論、最後まで夢の剣豪対決で押しきってもいい
流石に鉄砲、近代兵器はなしだろう。
無双しかねんぞ
槍や鎖鎌が出ることに異論はないけど、原作でそれしか使う描写がない宍戸を出すのがおかしいと言う話
>>774 ありじゃないか?
あんだけ剣の修練をしても所詮銃火器には〜という、山風作品チックな無情感があって
まあ、序盤からあるのは不味いと思うけどね
中盤以降でアクセントを付けるにはいいと思う
鉄砲や兵器の類は絶対になしにすべき。
このロワは近代兵器相手に無双できる奴と鉄砲に無双される奴が同居してるんだから。
>>776 ここの参加者には剣の修練をした結果、マシンガンの弾すら切れるようになった人がいるじゃん。
近代兵器なんか出すと冷めそうだな。
新免無二斎@史実
三合目陶器師@史実
投下します
暗闇の中、二人の男が相対している。
双方ともに、暗くてよく顔が伺えない。
「お前は人を殺すな?」
一方の男が問うた。
それは問答であった。
「ハイ」
もう一方の男が弱々しく答えた。
「居たたまれないからでございます。必要からでございます」
「活きて行く上の必要からと、こうお前は云うのだな」
「ハイ、左様でございます。心の中に鬼がいて、
それが私を唆して、人を殺させるのでございます」
「もし唆しに応じなかったら?」
「あべこべに私が殺されます」
「ハイ、その心の鬼のために食い殺されるのでございます」
「自滅するのでございます」
「しかし、たとえ、人を殺しても、お前の心は休まらない筈だ」
「ただ、血を見た瞬間だけは…」
「心の休まることもあろう」
「しかし直ぐに二倍となって、不安がお前を襲う筈だ」
「で、また人を殺します」
「すると直ぐ四倍となって、不安がお前を襲う筈だ」
「で、また餌食を猟ります」
「血は復讐する永世輪廻!」
「で、また餌食を猟ります!」
「で、復餌食を猟ります!」
「で、復餌食を猟ります!」
「で、復餌食を…」
「で、復餌食を…」
「 地 獄 だ 、地 獄 だ !」
「 血 の 池 地 獄 !」
「 無 間 地 獄 だ あ 〜 っ !」
絶叫が暗闇に響いた。
◆
ろノ伍、「ろごう茶屋」。
そこの軒先に、一人の男が横たわっていた。
宗匠頭巾を被り、十徳を着て、
白い革足袋と福草履を履いている。
年のころは三十の後半といったところであろうか。
恐ろしく美しい男であった。
しかし同時にひどく不気味な男であった。
鼻高く眼長く、唇薄くその色赤く、眉は秀でて一文字に引かれて、と、
青白い顔は、部分部分は非常に整った物であったが、
総合してみるとひどく不自然であった。
蒼白の額や、げっそりと削げた頬、精気の無い瞳は、
まるで男が生き物で無いかのような印象を人に与える。
仮面。
そう、仮面である。
男の顔は精巧に作られた仮面のように、
不自然に整いすぎているのだ。
男がひどく無表情なのも、その不自然さに拍車をかけていた。
男は横たわったまま、ぼんやりと月を仰ぎ見ている。
頭の傍には枕の様に、朱の鞘の打刀が一振り横たえられていた。
青白い月明かりが、
よりいっそう男を幽霊のように見せている。
男が不意に身体を起こし、
東の方へ眼をやった。
すると、一人の男が歩いてきた。
三度笠を被った牢人風の男だ。
脚絆に草鞋をはき、袴を履かずに、
色の褪せ垢じみた裾の短い黒紋付を着流している。
一見すると乞食に見えない事もない、みすぼらしい風体だが、
何処となくその長身を包む野生染みた風格がある。
刀は差しておらず、背に行李だけを背負っている。
その男が、ろごう茶屋の前を丁度通りかかった時、
十徳の男が、三度笠の男に声を掛けた。
「肋、一本、置いてきなせえ!」
「何?!」
三度笠の男の歩みが止まった。
「肋、一本、置いてきなせえ!」
十徳男がまた言った。
「金を置いて行け」という謎かけである。
三度笠の男はしばらく黙っていたが、
にゅっーと、笠の縁の下から覗く口を三日月型に歪めると、
「無いな」
「何?」
「無い、と言ったんだ、貴様のような奴に渡す物など・・・」
牢人風の男は、三度笠を放り投げた。
「肋は愚か、指一本爪一片とてありはせん」
そう啖呵を切った。
三度笠の下から出て来たのは、
男臭い凄絶な顔であった。
赤茶けた蓬髪、三角形の琥珀色の瞳、
まばらな針みたいな髭をはやした高い頬骨があり、鼻梁は高い。
不動明王を思わせる魁偉な容貌であった。
この殺し合いに参加している、
ある人物とよく似た風貌だが、
単なる偶然であろうか。
「刀もねぇのに、いい度胸だねお前さん」
「貴様なんぞには刀を使うまでもない」
「こりゃ面白え、いい度胸だ。…ひとつ名乗りが聞きてえものだ」
十徳男は立ち上がった。
手にはいつの間に抜かれていたのか、
怪しく光る白刃が閃いている。
男の体から、血の臭いが仄かに香る。
男は人斬りであった。
男が不意に笑った。
不気味な笑いであった。
「ハハ」でもなければ「ヒヒ」でもない。
その中間の、陰性を帯びた幽霊のような笑いであった。
「まあ、言った手前、こっちから名乗らせてもろうか」
「しかし、名前など捨てて久しいが・・・強いて名乗らば」
「青木ヶ原住人、三合目陶器師(すえものし)」
◆
昔、小田原北条氏の家臣に、北条内記という人物がいた。
姓が示すとおり、主君たる北条氏の縁故者で、
大層な勇士であり、主君の覚えも非常に良かった。
彼は侍大将の筆頭だった。
剣の達人でもあり、家中にも彼ほどの使い手はそうはいなかっただろう。
使う流派は一羽流で、師匠は師岡一羽の高弟、土子土呂之介。
片手剣が閃けば、如何なる相手も一刀両断であった。
妻は家中随一の、誰もが羨む美女であった。
ああ、絵に描いたような幸福な生活!
順風満帆な人生!
こうして情報を文字で並べただけならそうである。
しかし、そんなものは『空想』に過ぎない。
彼には一つの欠点があった。
致命的な欠点があった。
ただ一つ、それ故に彼の幸福は上辺だけの『空想』に成らざるを得なかった。
飛び出した額!
扁平の鼻!
左右不揃いの釣り上がった眼!
衣裳の裾のように脹れ上がり前歯をむき出した上下の唇!
左半面ベッタリと色変えている紫色の痣!
何と厭らしい顔だろう
何と浅ましい顔だろう
彼はあまりに醜かった。
それ故に、彼の栄光には、常に人々の悪意が纏わりついていた。
どれだけ功績をあげようとも、
どれだけ武勲を挙げようとも、
称賛の陰には常に蔑みがあった。
妻もまた彼を疎んでいた。
妖艶とすら言えた彼女は、
徐々にこの醜い男から離れつつあった。
彼女は遂に情夫と逐電した。
同情は姦婦姦夫に集まった。
『北条内記の面相なら、連れ添う女房でも厭になろう』
『その女房の園女と来ては、家中一等の美人だからな』
『旨くやったは伴源之丞、あの園女を手中に入れ、他国するとは果報者だ』
『その又伴源之丞と来ては、家中一番の美男だからな。似合いの夫婦というやつさ』
内記は逃げ出すように女仇討ちの旅に出た。
しかしどれだけ探せど見つからない。
終いには青木ヶ原の樹海に迷い込んだ。
彼の心は、羞恥と嫉妬と憎悪の坩堝なった。
その感情の奔流は、日が経つにますます強くなった。
その感情がもはや極限まで来た時、
北条内記という人間は死んだ。
そして新しい怪物が生まれた。
それは殺人鬼。
それは吸血鬼。
青木ヶ原に不幸にも迷い込んだ旅人を悉く斬り捨てる、
剣に淫する物狂い。
その名は、三合目陶器師。
まだ議論中なのに投下するとかなんなの?
◆
「陶器師?賊の分際で数奇者気取りか?」
牢人男は侮蔑的な笑いを込めて言った。
「いやなに、そっちが本業よ」
「富士の三合目あたりで、モノを焼きながら稼ぎをするのよ」
「なるほど、それで三合目陶器師」
「人はみんなそう呼ぶねぇ・・・では、改めて肋を一本置いてきねえ」
「何度も言わすな、鐚一文貴様にやるものは無い」
フ フ フ フ フ
陶器師が不意に笑った。
例の陰性の中音である。
と、陶器師の眉の辺、ピリピリと痙攣したかと思うと、
ゆらり休形斜に流れ、サーッと大きく片手の袈裟掛!
大概の相手はこれで一撃、一刀両断だろう。
しかし・・・
ガッキ!
火花が散り、金属がぶつかり合う音が響いた。
思わぬ衝撃に、陶器師はたたら踏むが、
巧みに力を受け流して、流れるように体勢を戻す。
牢人風の男の両手に、
二つの武器が出現していた。
「・・・妙な武器を使うな」
「まあな。そう言えば名乗ってなかったな」
牢人男は二本の『十手』を構えながら名乗った。
「作州牢人、新免無二斎」
◆
新免無二斎。
またの名を、宮本無二助と言ったこの人物は、
「当理流」なる流派の流祖として、
そして、あの宮本武蔵の父親として著名な人物である。
一説によると、美作国新免氏の家老である平田武仁こそ彼だと言うが、
これは史実であることを証明できない。
また、彼はこの平田氏の血縁であったが、
訳あって牢人したとも言うが、定かでない。
上記のように伝記は必ずしも明らかでないが、
京都の「室町兵法所」吉岡憲法を破ったとも言い、
その実力は確からしい。
武蔵との親子中は最悪で、
武蔵の幼少期の逸話に登場する彼は、
正直心に狂気を帯びているとしか思われない節がある。
上の牢人した話というも、
上意打ちを命ぜられるも、殺し方が汚く、
家中でお味噌な扱いになって憤然として出奔したというから、
少なくとも、清廉潔白な君子で無かったことは確かだろう。
しかし、子の武蔵が有馬喜兵衛を打ち殺したのは一三の時であり、
そのやり口を見れば武蔵もまた、父と同質の狂気を本質的に持っていたと思われる。
この親あって、この子ありと言った所か。
それはさておき、この兵法勝負に、
新免無二斎が呼び出されたのは、
この武蔵がまだ影も形も無かった時期である。
◆
二人の立ち合いはもはや何合目であろうか。
片手剣と二本十手の丁々発止は、
双方の予想を超えて長く続いていた。
まるで、柳の様に身体を左右に揺らめかせながら、
陶器師の凶刃はあらゆる方向から、
緩急自在に無二斎に襲い掛かる。
無二斎は、陶器師の刃が、
自分の十手の射程圏内に入るや否や、
電光のように十手を閃かせ、
凶刃を巧みに受け止め、あるいは弾き飛ばす。
本来ならば、無二斎はここで手首をひねって、
刃を十手の鉤に掛けて、
相手の動きを止めるか刃をへし折るかするのだが、
陶器師はそうなる前に巧みに刃と、体を逃がしてしまうのだ。
こちらから突っ込んで行くことも、
陶器師の太刀筋は許してはくれず、
結果として受け身に回らざるを得ない。
双方の実力は拮抗していた。
((思ったよりもやるな・・・・))
((長引くのは良くない))
((ここらで・・・))
双方ともに思考はこれであった。
陶器師が、八相に構える。
一方無二斎は、撫で肩の脱力した構えである。
それは、奇しくも、肖像画の武蔵の姿によく似ている。
しかも本人の得物がスムーズに渡ってるとか…
趣味のいい茶店前の往来で、
二人の兵法者が対峙する。
片や剣に淫する殺人鬼
片や大豪傑の先代剣士
双方一言も発することなく、
ただ時間だけが過ぎる。
フ フ フ フ フ
例の陰性の中音が笑いとなって、
陶器師の口から飛びだした。
同時に陶器師の体に殺気が充満する。
一方、無二斎の体にも変化が訪れる。
それまで脱力しきっていた全身筋肉に電流が走り、
一気に膨張する。
八相より地面へと向けて、落雷のように白刃が振り落とされ、
二本の十手がそれを巧みに受け止め・・・
「やめた」
・・・とはならなかった。
「何!?」
「やめた、と言った」
言うや否や、陶器師は構えを崩し、
パチンと、刀を鞘に戻してしまう。
呆気にとられる無二斎だったが、
そんな様子を気にするでもなく、
茶店の席に座ってしまう。
「俺と太刀を合わせて斬れない奴は、これで三人目」
「それ以外は、だいたい一太刀でやっつけてきた」
そう言うと、ごろりと赤い布が引いてある長椅子に横たわり、
「しかし、アンタはどうも妙な技を使う。
どうにも調子が狂ってきてる」
「行きなされ、お行きなされ」
「どれ、ひと眠り」
そのまま、こちらに背を向けてしまった。
余りにも人を食ったやり口に、
無二斎はしばし呆然としていたが、
バカにされたこと思って憤然とし、
ツカツカと陶器師に向かっていくが、
(隙がないな)
無造作に雑魚寝しているように見える陶器師だが、
そのくせ一分の隙もない。
こういうのに斬り込むのは少し厄介かもしれない。
無二斎はしばし無言で陶器師の背中を睨みつけていたが、
帯に二本十手を差して、茶屋に背を向けて歩き出した。
「無二斎どの」
不意にその背に陶器師の声が掛った。
「俺は寝がえりを打とうと思う」
それを聞くや否や、
腰帯から十手を引き抜きながら無二斎は振り向く。
そして、無二歳目掛けて飛んできた何かを叩き落した。
「・・・・・・」
叩き落した物は何であろう。
何の事はない、茶店の茶釜に備え付けられていた、
一本の柄杓であった。
「あぶない、あぶない」
「恐ろしいもの剣ばかりではない。こういう不意打こそ恐るべし」
「あぶない、あぶない・・・・」
陶器師はもう、こちらを見ておらず、
こちらに背を向けて横たわっていた。
無二斎は、叩き殺してやろうかと思ったが、
先ほどの立ち合いを思い出して、
何も言わずに立ち去って行った。
茶店には、殺人鬼だけが残った。
◆
「何が調子が狂った・・だ。
調子が狂わされたのはこっちだ」
無二斎は苦虫噛み潰したようなしかめっ面で、
夜の道を一人歩く。
「それにしても、あれはこの兵法勝負の参加者なのか?
もしそうならもう少しマトモな奴を呼んで欲しいもんだ」
室町兵法所にすら勝った無二斎である。
あの白州に突然呼び出された時は流石に少し面食らったが、
こういう趣向は悪くない。
兵法者としての血が騒ぐと言う物だ。
人別帖を見れば、上泉伊勢守、塚原卜伝、師岡一羽、富田勢源など、
当代きっての使い手たちの名前も見える。
故に一層やる気が出ていた所だが、
初っ端からあれでは、少しばかり気がめいりそうだ。
「しかし、参加者だとすれば、
もう一度戦(や)らねばなるまい。
だとすると・・・・」
腰帯から十手を引き抜いた。
「刀が要るな」
あの男を斃すには、十手だけでは間合いと威力が足りない。
それに十手は、無二斎が最も得意とする武器だが、
槍など相手にするには、やはりこれだけだと心もとない。
「取り敢えず城下へ、か」
無二斎は城下へと足を進めた。
【ろノ肆 路上/一日目/深夜】
【新免無二斎@史実】
【状態】健康
【装備】十手×2@史実
【所持品】支給品一式
【思考】:兵法勝負に勝つ
一:城下に向かう
二:刀が欲しい
三:陶器師はいずれ斃す
陶器師は、無二斎が去った後も暫く横たわったままであった。
「強い奴だったな・・・」
陶器師は呟いた。
「また会った時に斬れるかな」
「少しあの武器が厄介だ」
「どうもここのところ妙な奴に会う事が多い気がする」
暫くそんな事をぽつぽつと誰へとでも無く呟いていたが、
不意に突然身体を起こして、
「俺は人が斬りたくなった!」
と叫びだした。
やはりこの男、腕は立っても物狂いである。
支援
さるっちゃったか
おそらくさるさん規制だから、15時過ぎたらまた書けるようになるかもよ >ID:FSdkVrW6さん
「うん、人が斬りたくなった」
「人が斬りたくなった」
「城下町へ行こう!」
「あそこならうんと人が斬れるはずだ」
「うん、そうだなあそこならうんと人が斬れるはずだ」
「行って人を斬ろう」
「存分に斬ろう」
「アハハハハ」
陶器師は立ち上がると、
行李を背負ってふらふらと歩きだした。
【ろノ伍 路上/一日目/深夜】
【三合目陶器師(北条内記)@神州纐纈城】
【状態】健康?
【装備】打刀@史実
【所持品】支給品一式
【思考】:人を斬る
一:城下に向かう
二:人が斬りたい
三:新免無二斎はいずれ斃す
【備考】
※人別帖 を見ていません
投下終了。
個人的には、
山田風太郎の「忍法剣士伝」で、
『剣士』と銘うたれていながら、
胤栄と無二斎が「12人の剣客」のメンバーとして出てたりするから、
宍戸梅軒もありだと思います。
と、言うかそこまでこだわらなくてもいいような気がします。
別に変な萌アニメの何ちゃって剣客キャラ出したいって、言ってるわけじゃなし
とりあえず乙
本人の得物すんなり渡すのはなんだかなー、あと自分は無二斎出場には異論はないけど、議論中のキャラの話投下するのは、既成事実化しようとしてるようにしか思えんよ
あと宍戸
前者二人は剣の腕も立つけど、宍戸は作中一切一切、剣は使わないんだぜ?同列に語るべきじゃないだろ
武器のバリエーションがと言うけど、剣以外の武器の配布すればいい話だし
剣がメインウエポンじゃない奴は駄目だろ
メインじゃないにせよ少なくとも名前を聞いて槍だの鎖鎌だのが先に出るようなキャラはアウトだろ
>>798 フィクションのキャラを出したければ、ご自身で書かれればよろしいのでは?
ここの現在のシステムでは、誰でも候補者から選んで書いて良いのですよ。
そも、史実虚実合わせて候補者から好きに選んで書きましょうという前提です。
喩え貴方が、ご自分の知らぬ史実剣客に感心が無く、ゲームやアニメのキャラばかりの話が読みたくとも、
書く人が付かなければ登場出来ませんし、貴方が他人に命令して、貴方のお好きな虚構キャラを書けという道理は
御座いますまい。
何故貴方は、自分には自分の欲求のためだけに無条件に他人に指図命令する権利をお持ちとお考えなのですか?
ロワに限らず、不特定多数の参加する企画で、「自分好みの展開にならない」 事で騒ぐのは不毛で御座いましょう。
すなわち富田勢源で御座います。ハゲで御座います。
釣り針デカすぎて口に入らねえ
◆F0cK氏
投下乙
陶器師、いいキャラしてるなあ
無二斎の登場はとくに文句ないですが(剣士伝に出てたからかもね)、
ただ、議論最中に投下しちゃうのは問題あると思いますよ
そう焦らずに、納得させてから投下でよかったのでは?
宍戸を出したい人は、本当に心の底から「剣客」と思ってる?
「剣客」と訊かれて、宍戸がすんなり出てくるの?
それともバガボンドの辻風と混同してる?
んでまぁ、所詮イメージの問題でしかないと思うのですが、江戸中期以降を除けば、
武芸者と剣客を分けようとすること自体にはあまり意味がないとは思います。
極端な話、剣術家のみにこだわるべきなら、そこは開始前に詰めておくところ。
宍戸梅軒自体に関しては
>>796 氏と同様には思いますが、上記の理由で、あっても良いと思います。
というか、新規含めリストの中に、話題になってないけど剣客でも武芸者でもないのまだおりますやん。
単純な話、源義経とか巴御前なんか、それはそっちのカテゴリじゃないじゃん! とか思いますし。
(フィクションは知らないキャラのが多いのでなんとも言えないけど)
でも、こういうときに、カテゴリ定義や「在るべき展開」 を、ぎちぎち詰めようとする流れは、結局のところ
ロワ運営上は何の利益にもならないし、ほとんどマイナス要因にしかならないんですよ。たいてい。
ある程度ゆるめに考えないと、行き詰まります。はい。
だから空気読んで書かれていないんだろ
カルラですらテスト板の頃に省いたのに
空気←なぜかよめない
だって書いてないじゃん、先に書かなければ襲われるんだ
ロスでは日常茶飯事だぜ!
>>799 どう突っ込めばいいのやら・・・
なんか人に命令する権利云々とか話すり替わってるし・・・
いつシステムについて言及したよ。
>>801 謙信含めてこいつら違うだろ!と言ったのに無視されたのさ〜
>>799 剣士として逸話よりも他の武具での逸話が有名なキャラの是非を問う流れのなかで、フィクションだの史実だの言ってるのお前だけって気づいてるか?
>>806 馬鹿みたいにズレた論点といい空気の読めなさといい…ただの荒らしだろ
某所見て便乗してきただけな気がする
そうでなくとも煽り口調とか火種煽ったりとか、ロワに害を成す馬鹿だからいない方が良い
>>806 そうですかね?
>>717>>729>>798 の人は、「史実キャラ減らせ、歴史ロワ化するな、史実キャラ増やしたいなら出て行け」
と言っているように思えましたが、そうでは無い、史実キャラが多くても良いに決まっている、というのなら、
僕は何の異論もありませんし、僕の読み取り方が間違っていた、という事で良いのですが。
書きたい方が書けるから書く、というのであれば別に構わないのでは。
書きたいが書けないという方は精進していただくより他ありませんし、書く気がないという方は
詰まるところ「俺が読みたいのはああで、こうで」と仰っているわけで、物書きの企画に
口を挟む筋ではないかと。
で、書きたいものを書く能力はあるが鎖鎌の殺陣は技術的に描写が困難であるという向きは
トリップを出して表明するのが宜しかろうと思います。
無駄な言い争いよりも技術的な情報交換の方が有意義かつ建設的であるかと。
>>801 義経は生き様とか侍の雰囲気あるし、ある意味では武士道然としたイメージあるから
剣客ロワの趣旨に全くそぐわなくは無いと思うのだが。
最初の参加候補者表に勝海舟もあるんだし、政治家的ポジでも剣の達人とかのイメージがあれば
それはそれでいいと思う。
論点ずれてね?
>>810 義経は伝承では京八流の使い手、てなってるから一応「剣客」ではあるんだよな。
個人的には飯篠長威斎、愛洲移香斎、慈恩以前の人間は、
剣がうまくても「剣客」とは呼べないような気もするけど
>811
それは感じるね
剣客ロワなんだからメインウェポンで剣使わないやつは排除すべきってのが一方の論で、
鎖鎌メインで使う武芸者も入れてよってのがもう一方の論なわけで
>>5について縛りを明確化したいなら生き様だなんだって話も出てくるだろうけど、
鎖鎌使いを入れるか否かが当面の論点である以上、本筋ではないような
本音で言わせてもらう。
かなり身勝手な意見だと自分でも思う。
でも、同意してくれる人は結構居ると思う。
剣豪同士の戦いが見たいから、このロワを読んでるんだよ。
そりゃあ、一方がなまくら持ってて、一方が天下の名刀持ってる、とか
ドッチかが怪我してる、とかの有利不利はあるだろうけど、
それでも、剣に命をかけた男たちが文字通り命がけで技量を競うシーンが見たいんだ。
「鎖鎌という武器に対して剣でどう立ち向かうか?」なんてシーンは別に要らない。
>>812 他方、平家物語とかだと、身軽だが、非力で武芸はあまり得意じゃないように描かれてるがな
義経は当時の慣習を無視したある意味卑怯な戦法を使ったから立派な武士っていうイメージは少なかったり。
まあ、京八流って素敵ですよねー。
ただの呟きなのでスルーしてね。
>>815 総重量が20〜30kgの大鎧を着た上で、
八艘飛びとかやっておいて非力って言われても説得力ないけどなww>平家物語の義経
でっ歯で、色ばっか白い不気味な小男なんだよな、平家物語の義経。
>>817 上半身と下半身の筋力がバラバラw
義経って、軍事でも政治でもスタンドプレーばっかやってるKYな奴なんだよな
軍の扱いなら義仲のが上だったりする
義経が悲劇の主人公化したのっていつからなんだろう。
すみません、多忙でしたので連絡が遅れました
私の予約、希望確認事項などは
>>754>>759の通りです
結論から言いますと、今回は高柳、宍戸の予約自体を撤回します
高柳の執筆希望の方がいましたら、拘束し続けたことをお詫びします
様々なご意見をもらえましたが、舵取りはなく個々の主観という状況ですから
極力客観的に参照させてもらいました
結果的に、書き手のルール等と大それたものではなく
全く同じくして、"あくまでも個人的に"破棄を決めました
理由は
>>814の末尾一行です
以上
ご意見ありがとうございました
>>820 英断感謝します
これで当面の問題は解決かな
ところでそろそろスレが埋まるが
取り敢えず予約マトメ
坂本龍馬@史実
外薗綸花@Gift−ギフト−
佐々木只三郎@史実
斉藤一@史実
服部武雄@史実
久能帯刀@らんま
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いノ捌 辻月丹、椿三十郎
ろノ弐 小野忠明、佐々木小次郎(傷)
ろノ参 オボロ、犬坂毛野、斎藤弥九郎
ろノ肆 奥村五百子、白井亨、新免無二斎
ろノ伍 三合目陶器師(北条内記)
ろノ陸 志々雄真実
ろノ漆 土方歳三、
はノ弐 佐々木小次郎、屈木頑乃助
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にノ弐 沖田総司
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にノ陸 久慈慎之介、トウカ
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