>>449 マサフミのおばかっぷりを見ていて、悩んでいた俺が馬鹿だったのだな、と思った。
そうだ、もっと馬鹿になっていいんだ。そう思った。
そのけたたましい呼び出し音で、その“戦士”は目覚めた。
エルダー
一族の“長老”様直々のお呼び出しである。
久々の休暇も台無しというものだが、特に愚痴る気はなかった。
寝台から飛び出した小柄な戦士は、長く伸びた髪を結わえ、小さな身体の上に保温性に優れる網状の下着をまとう。
紅蓮の炎を思わせる赤い礼装と、鏡のように磨き上げられた銀色の儀礼甲冑に身を包む。
素早く身支度を整え、戦士は長老の待つ“対面の間”へと向かった。
対面の間に入り、戦士は仮面を外して長老へ敬意を示した。
戦利品の数々を眺めていた長老は振り返り、戦士の挨拶に応じて軽く頭を下げる。
狩猟者達を率いる長老の髪は老化により青味掛かっており、顔に刻み込まれた深い皺からもその高齢が覗える。
しかし、幾ら老いたとは言え、往年の風格は全く失われていなかった。
さらに長い間の闘いで身につけた知性が加わり、長老からはある種の覇気が感じられる。
威風堂々とは、まさにこの事である。
今、かの長老の表情は曇っていた。あまり良い話ではないらしい。
長老の説明は、至極簡潔であった。
“蟲狩りの儀式”から帰還する途中だった青年戦士の小型艇が、“蟲”を載せたまま行方を晦ましてしまったという。
大方、狩りの興奮をそのままに、次なる獲物を求めて旅立ったのだろう。
掟破りではあったが、血気盛んな若者達を縛りつける方が酷というものである。
そのうち帰ってくる事だろう。当初は長老自身も楽観視していた。
昨夜になって、母星の同胞が小型艇の信号を受信した。
詳細は不明だが、救難信号の類いだったらしい。信号は、遠方の惑星から発信されていた。
選りにも選って、その惑星は“地球人”が進出している惑星だった。
地球人自体は大した脅威ではない。高度な文明を持つ狩猟者達からすれば単なる獲物の一種に過ぎなかった。
過去には地球に蟲狩りの神殿も設置されていた事もあり、地球人狩りを専門にする戦士も多い。
問題は、“狩猟者”の技術が流出する惧れがある事だ。
かつてある戦士の失態により、狩猟者の技術が地球人へ流出した事があった。
後に全てが贖われたものの、その過程において多くの同胞の命が失われた。
あの惨劇の再来だけは避けたい、というのが長老の意向であった。
この長老との付き合いは古く、それだけに義理もあった。
長老に選ばれたという自負もあった。仕事に対する報酬も、実に魅力的であった。
そして何よりも、戦士は自身の生業を心から愛していた。
他にこの任務を行え得る者はおらず、長老の望みを果たす事が出来るのは自分しかいないのだ。
長老の依頼に対し、戦士は承諾した。
戦士の名は“掃除屋”。その仕事は狩猟者の後始末。
自室へ帰還した戦士は、早速仕事道具を準備し始めた。
胸当、腰当、左肩に背負う電源装置、両腕にはめる戦闘手甲、両脚を護る安全靴などの防具を順にとりつけてゆく。
儀礼甲冑とは異なり、愛用してきたこれらの防具達は瑕だらけでお世辞にも端麗とは言い難かった。
戦士には白銀の儀礼甲冑よりも、共に歴戦を乗り越えてきた装具の方が美しいと思える。
これら通常の装備に加え、肩にかける弾薬帯、“鞭”、左腕を覆う特殊鋼の甲冑、そして右肩から提げる“清掃箱”を身につける。
特に、検査装置と装備収納容器が一体となったこの“清掃箱”を持つ者は、母星でも殆どいない。
数多いる戦士の中でも、この“掃除屋”は特別なのだ。
最後に、素顔を隠す鋼鉄の仮面をはめる。
電源装置に附属した大気変換装置が作動し、戦士の身体へ気体を送り込む。
特別調合された大気は戦士の体内を循環し、狩猟者の運動能力を最大限に引き出す。
出発準備完了。清掃艇へと乗り込み、発進させる掃除屋。
すべき事は済ませた。あとは到着まで眠るのみだった。
何しろ、休暇をとっていたところを叩き起こされたのだ。
これからの激務を考えれば到着まで何をしようと勝手だろう。何人たりとも責めまい。
そんな暢気な事を考えながら、掃除屋は眠りに就いた。
今日はここまで。。。
>>454 投下乙です、お待ちしてました。
このssは未来の話ってことだな。
>454
乙です
設定も細かく、読ませる文章ですね
楽しみが1つ増えました
今ホットのマサフミフィギュア見てて思ったんだが・・・
腰に下げてる木炭みたいなのは何だ?
非常食
マサフミ「炭うめぇwwwwwww」
って、そんな馬鹿なwwwww
460 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 20:41:21 ID:l/XVqbnV
リボルテックでプレデターが出るのはいつになるのだろう。。。
↓また投下
数日にわたる航海の末、その小型艇は目的地へと到着した。
“清掃艇”本船から射出された揚陸艇は弾丸の如き速さで着弾し、錆びついた砂漠の砂塵を舞い上げた。
出来うる限り静謐な着陸をしたかったのだが、どうも無理らしい。
もっとも、その着陸とて、昨日からの砂嵐で全く目立たなかったのだけれど。
赤錆びで染められた赤の世界の中、その影は姿を現した。
掃除屋だ。その姿は“光学迷彩”の機能で光の歪みの中に紛れていた。
掃除屋は左腕の“操作盤”を叩き、装備の微調整を行う。
仮面に内蔵された視覚設定が切り替わり、着陸前に撮影した衛星画像を映し出す。
掃除屋は小型艇からの信号を辿りながら、衛星画像を地図代わりに足早に歩き始めた。
衛星軌道上の“清掃艇”は完璧に隠匿しており、揚陸艇も万一の際は自己消去するように設定してある。
掃除屋の侵入が発覚する惧れはまず無いと言っていい。
今案ずるべきは、惑星への汚染の度合いだった。
同胞による最新の調査では、地球人が入植しているらしい事が判明している。
掃除屋は長年の経験で、地球人というものがひ弱な種族である事、そして非常に強欲な事を知っていた。
あの種族が蟲と遭遇すれば最悪の事態も想定される。
狩猟者達には護らねばならない掟がある。
狩猟者の不始末の為に、他の種族へ無用な損害を与えてはならない。
他の種族の中に狩人の技術を流出させてはならない。
蟲と狩猟者達との出会いは何時の事なのかは誰にもわからない。
伝説によれば二種族の争いは拡大し、ともども絶滅寸前へと追い詰められかけたという。
そんな二種族の争いにおいて、ある妥協が図られた。
狩猟者達は蟲を狩る事で若い戦士の力量を測り、蟲は狩猟者に飼われる事で種の存続を図る。
寄らず離れずという絶妙な均衡を保ちながら、狩る者狩られる者の関係を長い間続けてきた。
だが、稀に均衡が崩れる事もある。
たとえば、本来狩り尽くされるはずの蟲が儀式から脱獄した場合。
若い戦士達が敗北し、さらに自爆をもってしても蟲どもを殲滅出来なかった場合。
狩猟者の技術が他の種族へと流出する恐れがある場合。
そのような時“掃除屋”に招集がかかる。
Bad bloods BLOODED
“悪血の餓鬼ども”、“ヒヨっ子ども”には勤まらない過酷な任務。
HORNOURED
派遣されるのは“名誉職”のみ。
培われた経験を基にありとあらゆる手を用い、隠密のうちに蟲どもを殲滅する。
築き上げられた輝かしい実績は生きた伝説として語られ、若い戦士達の尊敬を受ける事もある。
しかし、そんな事はどうでもよかった。
蟲との闘いこそが至上の悦びであった。蟲こそが好敵手であった。蟲こそが人生の友であった。
掃除屋の仕事。それは一族の不祥事の後始末。
小型艇の信号は、あの建物の中から発信されているらしい。
不時着した惑星からこの星まで運び込んだのだろう。
地球人にしてはやたら仕事が速い。いや、こちらが遅すぎたのか。
高圧電流の流れる金網、深い濠、そして施設全体を包み込む鋼鉄の壁の三重構造で守られているその施設は、この惑星における地球人の最重要拠点らしい。
橋が掛かっていなかったが、狩猟者の脚力を以ってすれば、この程度の溝を飛び越えるなど造作もない。
金網をすり抜け、濠を飛び越し、掃除屋は門の前に立った。
今宵はここまで。。。
>>455-456 読んでくれてありがとう。
しばらくのお付き合いよろしくお願いします
>>465 おおっ、乙です。
面白くなってきたぜ〜
いいよー掃除屋いいよー。
頑張って頼むぜ!
最後、半球状の壁だけが残った。
要塞へ入るにはこの鋼鉄の扉を通過する必要があるらしい。掃除屋は立ち止まる。
小型の機関砲が2基設置されていた。
狩猟者でなければ見逃してしまいそうな位置にある。
なるほど。掃除屋は理解した。“歩哨”というわけか。
下手に接近すれば体に風穴を空けられてしまう。
監視装置で門を通過する者の姿を確認し、歩哨を解除して門を開く仕組みなのだろう。
掃除屋は機関砲から距離を置き、電磁砲を起動した。
左肩の銃身が首をもたげ、掃除屋の視線の先にある地球人の兵器へと照準を合わせ、火を噴く。
銃口から放たれた雷の矢が機関砲の基部を射抜き、機能を停止させる。
続けて、もう1基の機関砲も撃ち抜く。火花を散らし首を垂れる機関砲。
2基の歩哨は破壊された。
歩哨砲は2基だけのようだが、他にどのような障害が仕掛けられているかわからない。
殊に、かの掃除屋は思慮深く、狡猾で、慎重だった。
門を通過した後、光学迷彩を展開しながら掃除屋は侵入口を探した。
開いている通気口を見つけ出し、掃除屋はその小柄な身体を滑り込ませた。
侵入した基地内で掃除屋がまず見たのは、地球人の屍骸であった。
表の歩哨や城壁は殆ど役に立たなかったらしい。大量の血痕や破壊痕など、殺戮の痕跡が見受けられた。
蟲の体液による腐食痕も見受けられる。
蟲を幾らか消耗させたようだが、所詮は地球人。蟲どもを殲滅できるはずがない。
あるものは胴体を裂かれ、あるものは額を打ち砕かれ、またあるものは首をもぎとられて死んでいた。
どう考えてもこれは幼虫の殺し方ではない。“汚染”は既に開始してしまったというわけだ。
それもまた、望むところだ。これから待ち受ける狩りの喜びに、掃除屋の心は震えた。
今宵はここまで。。。
>>471 今日も乙です。いよいよ戦闘開始か・・・!?
乙です。
クリーナーが小柄なのは自分で体型を変えるからなのだろうか。
見つけた。
地球人のそれよりも遥かに進んだその小型艇は、基地内の倉庫の一つに安置されていた。
墜落の際に岩山にでも接触したのだろう。推進装置の一部が欠損し、小型艇の流線型は見事に崩れていた。
地球人どもはそれらの部品を一つ残らず回収していたらしい。脇には、分解した推進装置の残骸が山に積まれている。
小型艇のハッチは開き放たれていた。墜落の衝撃で開いたのか、地球人どもが強引にこじ開けたのかは判らない。
掃除屋は艇内へと潜り込み、現場検証を開始した。
ウルフは隻眼、大柄、細身、中年、
パワータイプじゃなくて技巧派という設定だったから、
違うクリーナーなんでしょ
検証するまでも無かったようだ。
保管されていたありとあらゆる装置が散乱し、蟲を捕らえていたはずの水槽の幾つかは既に運び出されていた。
各所に焼け焦げがあるのは、乗組員達が電磁砲を乱射した為だろうか。
そこに地球人どもの原始的な研究機材も運び込まれ、何が何やらよく判りづらい状態になっている。
これでは乗組員の命も絶望的だ。苦痛なく死んでいればよいのだけれど。
航海記録を確認したところ、乗組員は儀式を終えたばかりの青年ばかりだった。
長老から聞かされた乗組員の数は3人だったが、内1人が儀式の途中で自決した為、墜落時は2人しか乗っていなかったようである。
迂闊にも蟲の成虫の侵入を許してしまったのだろうか。それならば、防疫装置が作動しないはずがないのだが。
あるいは、蟲の“女王”を捕らえ、小型艇で持ち帰ろうとしていたのかも知れない。
無論そのような事は御法度だが、若い戦士はしばしば掟を無視し過ちを犯す。
掃除屋は自らの苦い経験を思い出した。あまりいい話ではない。
艇内を暫し探査したものの、結局青年戦士の遺体を発見できなかった。
貪欲な地球人どもが運び出してしまったのだろう。
青年戦士の操作盤の信号を追うのは簡単だが、このままでは蟲どもの掃討は不可能だ。
ここから先は“追跡装置”が必要か。
掃除屋は“清掃箱”を起動し、破壊された培養槽装置から蟲どもの粘液を採取した。
蟲の粘液に含まれる成分は各個体によって異なり、詳しく分析する事で蟲の個体情報から成長形態、健康状態までも調べる事が出来る。
掃除屋の追跡装置はこの粘液の性質を応用したものである。
粘液の個体情報を操作盤に記録することで、視覚補正装置を内蔵した仮面が蟲どもの姿を光点として映し出す。
すなわち、逃亡した女王や蟲の幼虫どもを地の果てまで追う事が可能だという事だ。
続いて、掃除屋は弾薬帯から“殺虫剤”を1つだけ外した。
隠滅しにくい巨大な証拠を完全に抹消する為の小型爆弾。
完璧主義者たる掃除屋の仕事道具の1つである。
右手の中の殺虫剤は、液晶を点滅させながら持主からの命令を待っていた。
現場検証を終えた以上、ここにはもう用は無かった。
殺虫剤の起爆時刻を設定し、掃除屋は小型艇をあとにした。
数分後、小型艇に設置された殺虫剤が光り輝き、小さな火の玉へと変貌した。
小さかった火の玉は徐々に膨らみ、やがて小型艇とその周辺を飲み込んだ。
倉庫内の空気が熱膨張を起こし、圧力と高温に耐えられなくなった倉庫はやがて破裂した。
破裂音の後、膨れ上がった火の玉はやがて収束し、徐々に消滅してゆく。
倉庫に異星人の痕跡は何一つ残らなかった。
半径数メートルに渡って床を半球状に抉る、巨大な焼け痕を除いて。
今宵はここまで。。。
>>475 ウルフを参考にはしていますが、全くの別人です。
>>479 乙です。
このクリーナー、案外ワタナベの将来だったりして
乙です。
ワタナベの将来かw
成長したもんだw
今シグルイの原作小説を読んでいるんだけど、真剣試合が凄まじい。
二人の刃と刃が打つかって刀は折れてしまうのだけれど、そのまま肩からぶつかり合って折れた刀を腹に根元まで刺し込み、両剣士立ったまま絶命。とか。
綺麗な人に傷つけられる事で快感を得てしまう顔から脚まで傷だらけな剣士とか
482 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 11:24:12 ID:dooCOr3b
規制長いよ、誰よ馬鹿やったの。
ともあれ、乙。
ろくに乙も出来ない状況だけど、楽しみにしてるよ。
地球人は強欲な種族である。
連中が青年戦士の遺体を発見したなら、彼らの装具も回収しているはず。
掃除屋は青年戦士の操作盤からの信号を追跡する事にした。
途中、またもや地球人の屍骸を見つけた。
それも単なる屍骸ではない。蟲どもが苗床として利用したわけでもない。
その屍骸は逆さに吊り下げられ、全身の皮膚が剥ぎとられていた。
散々打ちのめされて動けなくなったところを、生きたまま剥ぎ取られたのだ。
宙吊りにされた肢体から滴った鮮血は酸化して黒く濁り、この惑星の大地を思わせる色へ変色していた。
到着前に小型艇が発見される事は予想していたが、地球人の皮剥ぎ屍骸に出くわすとは想定の範囲外であった。
確かに皮剥ぎの儀式は狩猟者達の慣習ではあるが、製作者は艇内にいた青年達ではないだろう。
その足を固定している樹脂状の分泌物(掃除屋はこの分泌物を“蟲脂”と呼んでいる)が何よりの証拠である。
艇内に潜んでいた蟲の成虫の仕業に違いなかった。
ひたすら蟲を狩り続けてきた掃除屋だったが、蟲も皮剥ぎの儀式を行うとは知らなかった。
精密作業が苦手と云われる蟲にしては、これまた見事な出来映えだ。
しかし、何の為に?
掃除屋は、蟲の仕事に見とれている自分に気がついた。
鑑賞する前にすべき事がある。
我に帰った掃除屋は信号の発信源を求め、地球の言語で“研究棟B棟”と書かれた部屋へと入った。
ここは、地球人どもが珍しいものを弄繰り回す為の施設らしい。
蟲の幼虫を保存しておく為の培養水槽にも似た、硝子で出来た管状の装置がいくつもある。
几帳面に陳列された装置の中には、何かの生き物の奇形のようなものが浮かんでいる。
机が並び、その上には切り刻まれた生き物の骸やら手術器具やらがそのまま放置されていた。
生体兵器か。地球人には過ぎたオモチャだ。
火遊びも過ぎれば火傷するばかりだというのが理解出来ていないらしい。
狩猟者達の儀式にも用いられる蟲の源流は、ある野心的な種族が惑星間戦争の為に作り出した兵器だった、と云われている。
“云われている”というのは、今現在正確なところを知る者がいないという事だ。
伝承が真実なら、全宇宙に覇権を誇ったかの種族は滅亡し、完全生命体誕生の秘密は葬り去られた。
それは自身の栄華に驕りたかぶり、生命を玩んだ報いだったのだろう。
管の行列は途中から破壊されていた。
いずれも凄まじい力で叩き壊されており、まるで何かが内側から突き破ったかのようであった。
その内の1本の前で掃除屋は足を止めた。破壊された硝子管から垂れている液体に右手で触れ、調べる。
液体には粘性があり、この惑星の乾いた空気に触れて少し乾燥し始めていた。
視覚装置を切り替え、小型艇で採取した蟲のDNAと照合する掃除屋。
思った通りだ。薄まっているものの、あの“女王”の系統に間違いない。
硝子管で捕らえていたのは、あの出来損ないばかりではなかったようだ。
地球人どもめ、蟲にまで手をつけるとは。
予想してはいた事とは言え、言い知れぬ嫌悪感に胸を突かれた。
狩猟者達ですら蟲に対して一定以上の改造は施さないというのに。
掃除屋は地球人の罪業に目を背け、再び歩き出した。
その扉には、地球人の言語で“処置室”と書かれていた。
青年戦士の救難信号はここから発信されている。
最初は何を意味するのかわからなかったが、先程の切り刻まれた生物の屍骸や、硝子の管を思い出した。
掃除屋は扉を蹴破り、室内へと突入した。
それは、掃除屋の想像を遥かに超えていた惨状であった。
部屋は意外と広く、手前には手術台が置かれ、奥には巨大な硝子管が立っている。
何気なく硝子管を覗き込む掃除屋。
濁った液体の中、見覚えのあるものが現れた。
青年戦士の顔だった。表情は苦痛に歪んでいる。
その目が見ているものは死の直前の恐怖か、あるいは生き地獄だろうか。
戦士の遺体は無惨にも、全身の皮を剥ぎとられていた。
今際の際に操作盤で救いの手を求めたのだろう。
遺体の傍らに並べられた装具の山の中で、彼のものと思しき操作盤がむなしく救難信号を発信し続けていた。
今宵はここまで。
乙です。
処置室の皮剥ぎ遺体は”何か”がやって
硝子管の頭は人間がやったってのであってるよね?
掃除屋は装具の山から破損著しい仮面をとり、水槽から引きずり出した青年戦士の顔へと返却した。
鮮血の頃は蛍光色を帯びている狩猟者の血も酸化し、濁った緑色に変わっている。
青年達の亡骸の状態からして、かなり時間が経過しているらしい。
墜落後に生きたまま皮を剥がれたというより、墜落時には既に死亡していたと考える方が妥当だ。
加害者は先ほどの見事な造形品の作者に他ならなかった。地球人はただ回収しただけだろう。
儀式を迎えたばかりの自信過剰な青年達とはいえ、名誉ある死を迎えるべきであった。
それは決して、このような惨たらしい死に様ではないはずだ。
掃除屋は遺体の前に跪き、怒りに打ち震えた。
必ず、仇はとってやる。
掃除屋は死者に、いや、自身の誇りに誓った。
掃除屋は青年の装具から、いくつかの装備を借り受ける事にした。
まずは“電磁砲”。砲身自体に照準装置が内蔵された最新型である。
自身の右肩装具の回路をつなぎ替え、操作盤の設定を書き換え、右肩の装具に電磁砲を増設する。
両肩の電磁砲は掃除屋の意のままに動き、赤い三点の照準光は狙った獲物を逃さない。
腕に取り付ける“三日月刀”は、左腕の装具に接続し、刃が伸縮する事を確認した。
業物と見た。蟲どもの外殻も軽々と引き裂けるに違いない。
“矛”と“手裏剣”は……やめておこう。経験上、紛失する事が多い装具だ。
“矛”はともかく、“手裏剣”の技術は地球人にはまだ早い。回収される可能性は出来うる限り排除したかった。
各種装備を追加した掃除屋は、全身に武器を備えた最強兵器と化した。
さて、掃除に取り掛かろう。
掃除屋は、さっきまで救命信号を挙げ続けていた青年戦士の遺品に眼をやった。
救難信号発信機構が動作するのなら、自爆機能も生きているかもしれない。
掃除屋としては、可能ならば“殺虫剤”の消費は最小限に抑えたいところである。
それに青年達も、掃除屋の消去爆弾などではなく自身の装具で消滅したいと望むだろう。
狩るべき獲物に命を奪われるならいっそ自ら命を絶つ。それが狩猟者の流儀であり誇りなのだから。
掃除屋が左腕の装具と青年戦士の操作盤を接続した。
すると、救命信号の悲鳴を挙げる以外の機能を停止していた操作盤の液晶が甦った。
他の装備と同様、掃除屋の操作盤もまた特別製である。他者の操作盤に干渉し、自爆装置を展開させる事が出来るのだ。
今や持ち主の亡い操作盤の自爆装置は、電子音で消滅までの残り時間を唄い始めた。
掃除屋は“処置室”から脱出し、爆風圏外へと全速力で疾走した。
その背後で閃光が迸り、忌まわしき死者達を納めた鋼鉄の棺桶は完全に消滅した。
蟲どもの生態は複雑怪奇である。
卵にも似た楕円形の“種子”が発生し、内部に幼虫を作り出す。
種子の中の“幼虫”は大気の流動に反応して覚醒、獲物の体内に胎児を植えつける。
植えつけられた蟲の“胎児”は頃合を見計らって宿主の肉を食い破り、成虫へと変化を遂げる。
“成虫”はさらに数回の脱皮を経て成熟し、殺戮と寄生を繰り返しながら増殖してゆく。
一定の数になると相変異を起こし、獲物を捕らえる為に効率のよい巣を作り始める。
巣は元からある構造物や地形を利用して作り上げられ、“蟲脂”で補強、そして宿主で飾りつけて完成。
問題は雑兵ではない。今回は“女王”がいる。
巣の奥深くで種子を量産し、蟲の頂点に君臨する強大な個体。それが女王だ。
群れの統率者たる女王を護る為であれば、蟲の成虫どもはどんな犠牲でも払う。
1体ずつ始末していたのでは手が足りない。何しろ蟲どもは女王がいる限り幾らでも殖えるのだ。
掃除屋には経験で、誕生したての蟲の成虫どもがどのような行動をとるか手に取るように判る。
奴らはその細長い脳に詰め込まれた命令に従って、女王の潜むところへと向かっていくだろう。
そこが狙い目だ。女王がいる場所に蟲どもは集まる。
“戦場にようこそ!”
掃除屋はふと昔の事を思い出し、苦笑した。そう、今度は戦争だ。
今宵はここまで。。。
乙です!
なんか要所要所にエイリアンの小ネタも絡んでて、見ててゾクゾクしてきたww
今度は戦争ダー!!\(^O^)/
蟲どもの巣穴は、瓦礫や鉄材を利用してかなり巧妙に偽装されていた。
蟲どもにしては上出来な知恵だが、“掃除屋”の慣れた目を誤魔化す事は出来ない。
掃除屋は巣の入口を破り、堂々と巣穴へ侵入する。
小細工は無用だ。蟲どもは外敵が巣へ接近している事実を既に察しているに違いない。
もとは地球人達の下水道だったそれは、かつてないほどの大改築を施されていた。
壁や天井の至る所が蟲脂による奇怪な彫刻で覆われ、さらに地球人の宿主が飾られている。
どれもこれも人体構造を全く無視した斬新な飾り付けだが、その表情が苦悶に歪み、内側から胸郭を破られている事だけは共通していた。
過度に暗く、過度に湿って、過度に暑い。いかにも蟲どもが好みそうな場所だった。
至るところを流れる汚水の為、光学迷彩は使えない。元より使う気もなかった。
異様な臭気と熱気の中、掃除屋は姿を現したまま進んでいく。
巣の侵入者をまず出迎えたのは、2体の蟲の成虫であった。
細長い頭部、蒸気を吐く二対の背角、黒光りする外骨格、長い四肢、のたくる尾とその先端に備わる鋭い毒針。
全身から透き通った粘液を滴らせ、目のない顔を掃除屋へと向ける蟲ども。
地球人を宿主とした場合の平均的な蟲の成虫である。
粘液と汚水に塗れた蟲どもの額に、赤い三点の光が走った。
狙いを定めた両肩の電磁砲が吼え、左の蟲の頭部と、右の蟲の胴をほぼ同時に消し飛ばす。
電磁砲は蟲の外殻だろうが人間の歩哨砲であろうが、狙ったものは必ず爆砕する。
まさに必殺の兵器。
続いて天井に潜んでいた蟲の幼虫が迫った。
掃除屋は即座に“三日月刀”を展開した。
左腕の装具から1枚の長い刃が擦過音とともに飛び出し、青年戦士の刃が煌いた。
左右4本の指を持つ幼虫の胴に長い刃が斬り込み、粘液と体液を撒き散らしながら真っ二つに切り殺した。
蟲の“酸の血液”が壁を犯し、混凝土の肉を冒して黒い鉄骨をむき出しにする。
もう1体の蟲が水中から飛び出した。
掃除屋は左手でそいつの喉笛を抑え、壁に押し付ける。
粘性のある涎を吐きかけながら、掃除屋の左腕に爪を立てる蟲。
突然、蟲の顎から鋼鉄をも射抜く一撃が発射された。
蟲の“舌”。蟲の第2の口吻が仮面の頬を削り取り、鋭い牙が空を噛んだ。
まともに食らえば狩猟者の顔面とて無事では済まない。
暴れる蟲の額を赤い照準光が舐め、左肩の電磁砲が強烈な閃光をお見舞いした。
首から上を失った蟲の体は崩れ落ち、汚水の中へと沈む。
鮮やかで馴れた手並みだ。先を急ぎながら、だが確実に仕留めてゆく。
掃除屋はついに奥の院へと到着した。
今日はここまで。。。
502 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/23(月) 16:59:55 ID:7B5nFhqq
そうだageてみよう。
乙です。掃除屋スマートだな。
これはAVP2のパラレルワールドって感じか?
遺伝子改造が施された蟲の成長はすこぶる早い。
背丈は既に数メートルに達しているはずであったが、その巨体は狭い通路の中で綺麗に収まっていた。
部屋の隙間を埋める巨大な卵嚢が脈を打ちながら床一面に蟲の種子を産み続ける。
鋭い爪を備えた4本の腕と、体を支える為の強靭な2本の脚は、産卵管と胴体の隙間に折り畳まれている。
岩をも砕き、鋼鉄をも貫く凶暴な尾は産卵管の上に収納されているらしい。
3対の背角が蟲脂による支柱に接続され、その巨体を天井へと固定していた。
その身体は蟲脂の装飾と混ざり合い、生体と巣の区分がわからぬ生体機械の様相を醸している。
平坦に広がる巨大な頭冠から顎が滑り出で、厳つい牙の隙間から身の毛もよだつ唸り声が漏れた。
“女王”の目覚めだ。
4本の腕を伸ばし、尾の毒針を構え、迎撃の態勢をとる女王。
巨大な生体機械の女王は掃除屋を敵と認識していた。
”種子”の1つが嫌らしい音を立てて花弁を開いた。
中で眠っていた蟲の幼虫が覚醒し、新たなる生贄に飛びかからんと指の屈伸を始める。
掃除屋の仕事が始まった。両肩の電磁砲が火を噴く。
放たれた雷光は掃除屋に飛びかかろうとした幼虫を射抜き、焼き殺した。
火の玉と化した幼虫はのた打ち回り、陳列されていた種子の群れへと飛びこんだ。
可燃性の種子に引火し、女王の王室は一瞬にして火の海と化す。
炎が広がり、本能的に火を畏れる蟲の女王は絶叫した。
続けてその下半身から伸びた巨大な体外子宮へ電磁砲を放つ掃除屋。
膨れ上がった女王の産卵管で雷光が炸裂し、その傷口から猛毒の羊水や未成熟の種子が溢れ出た。
我が子が殺された怒りと火炎への恐怖で狂乱し、4本の腕を振り回す女王。
しかし玉座の拘束は女王に怒号を挙げる事しか許さない。
止めの一撃を与えようと、女王へと照準をあわせた時だった。
掃除屋の背後で水飛沫が撥ねた。
一撃を背部に受け、そして掃除屋は壁に叩きつけられた。
咄嗟に受身を取らなければ掃除屋とて即死していただろう、強力な尾の一撃だった。
電磁砲の照準が僅かにずれ、放たれた雷光は女王ではなく、女王を固定していた玉座を射抜く事になった。
激突した衝撃で壁が砕け、掃除屋は壁の向こう側の通路へと叩き込まれた。
いつの間に背後へ廻られたのだろう。
いや、そもそも蟲の雑兵に分厚い混凝土を粉砕する力は無いはずだ。
蟲どもの奥の院で何かが崩落する音が響く。
それは、女王が玉座の拘束から解き放たれ、天井を打ち砕いた音だった。
外敵のことなど意にも介さず、蟲の兵隊達は女王の後を追って脱出し始める。
巣を棄てるつもりなのだ。
たった一撃で形勢を逆転されてしまった。
蟲の群れを追跡しようとした掃除屋は、自身が“巨大な影”と向き合っている事に気がついた。
目を凝らさなければ決して見えない僅かな光の歪み。
電磁砲も視覚装置も反応しないが、眼前に何かがいる。
銀色の牙を持つそいつは不敵に笑い、女王が砕いた天井の穴から這い逃げた。
逃がしてなるか!
掃除屋の左手が変形し、肘の部分から高圧の蒸気を噴射した。
掃除屋の身体が抑え込まれたばねのように跳ね、穿孔器状に変形した左腕が天井を突き上げる。
蒸気の噴射が跳躍力を補強し、分厚い混凝土の障壁を粉砕、掃除屋の身軽な身体は地上へと躍り出た。
地球人の居住区へと上がった掃除屋だったが、素早い蟲どもの多くは既に姿を晦ましていた。
視界を望遠に切り替える事でかろうじて蟲どもの姿を捉えたものの、この距離では流石の電磁砲でも射程範囲外である。
獲物に逃げられた屈辱と、僅かな隙を突かれた己への怒り。
激怒のあまり、掃除屋は吼えた。
今宵はここまで。
>>503 パラレルワールドというより、まんま焼き直しです。
細部が違うだけで、全く同じ展開になります。
本作は他の方の日記とは直接のつながりはありません。
この“掃除屋”はタケダクランとは別のクランの依頼で動いている、タケダクラン外のプレデターです。
タケダクランとは縁も所縁も無い赤の他人。
年代設定は『エイリアン4』のちょっと前ぐらい、舞台も惑星アケロンに似ているだけで何の関係も無い惑星です。
先に書いておくべきだったのですが、書かんでもわかるだろうと自分の筆力に自惚れておりました。ごめんなさい。
あと、なんだか酷く期待を裏切ってしまったようでごめんなさい。
ダメだったらダメと仰ってください。貼るの辞めます。
そういうことは言っちゃいかんよ。堂々と書きな。
「オマイラの期待裏切ったるぜぇ!良い方向にな!」位に行っちゃえ!
そうだそうだ。
どんな作品書こうとその人の自由なんだからさ。
俺は楽しませてもらってるよ。
漏れも見ててすっごい楽しいよー\(^O^)/
早く続きが読みたい!
一晩空けて
>>509読み返したらますます自己嫌悪
こんなところで構って光線ぶっ放してどうするんだ
バカか俺は
>>510-512 ありがとう
俺頑張るよ
というわけで今日も懲りずに貼ります↓
獲り逃した蟲どもを追跡していた掃除屋は、不意の物音を聞いた。
すぐさま追跡を中断し、素早く身を隠す。足音から判断するに、数は6体。
蟲にしては聊か不用心過ぎる。恐らく地球人だろう。
消すべきか、否か。掃除屋は慎重に観察する。
6体の地球人は、四方に目を配りながら進んでいた。
蟲どもの襲撃を目の当たりにし、逃走経路を探して彷徨している最中のようだ。
戦意の無い者の邪魔をするつもりはなかった。
それに、無用な殺戮でこちらの正体が露見するのは好ましくない。
掃除屋は地球人達の通過を待った。
が、地球人の1体がポケットから取り出した物を見て、掃除屋は目を見開いた。
ただ逃げるだけでなく、あろう事か狩猟者の装具を持ち出すつもりだったらしい。
それは青年戦士のものだ。お前達盗人が気軽に触って良いものではない!
掃除屋は激昂し、発砲した。
青年戦士の装具を弄んでいた地球人の1体の頭が爆裂し、赤い液を撒き散らした。
他の2体が銃を抜こうとするが、より早く掃除屋が接近し、1体を“鉄爪”で突き上げる。
右手甲から飛び出した鋼鉄の爪がその胸を刺し貫き、地球人の胴体が宙に浮き上がった。
何が起こったのか理解出来ない地球人は、口から赤い泡を噴きながら絶命した。
だらしなく手足をぶら下げた地球人の身体を放り捨て、残る1体へと歩み寄る掃除屋。
残された1体は自棄を起こし、意味の判らない事を喚きたてながら拳銃を撃った。
眼前の姿のはっきりしない怪物の恐怖を前に、拳銃を持つ手が震え、その狙いは全く定まっていない。
ついにまぐれの一発が掃除屋の左肩に命中、迷彩に干渉した。
身体の表面に青白い光が走り、掃除屋の身体が一瞬現れる。
これだから光学迷彩という奴は。
怪物の姿を目にしてしまった地球人は恐怖の余り発狂し、ひたすら拳銃を撃ち続けた。
素早く接近した掃除屋は地球人の手から拳銃をもぎ取り、その握力で握り潰した。
身を竦めた地球人の喉を掴み上げ、掃除屋は掌に力を込める。
首の骨が加圧に耐えきれずに砕けた。
掃除屋は落ちていた青年戦士の装具、“手裏剣”を回収した。
便利な武器だが、以前使っていたものを紛失して以来持ち歩いた事はなかった。
試しに片手で一振りすると、丸い本体から6枚の金属製の刃が飛び出す。
どうやら使用に堪える状態らしい。
軽く動作確認を終え、掃除屋はその強力な新兵器を腰帯に下げる。
3体ばかり逃したようだが、戦闘意欲のない獲物を深追いするつもりはない。
あとは貪欲な蟲どもが片をつけてくれるだろう。
今宵はここまで。
お言葉に甘えまして、もうしばしのお付き合いをお願いいたします。
>>517 乙です。続き貼ってくれて嬉しいぜいっ
最後まで楽しませてもらうよ
人間の交尾シーンははずせんな・・・
>>518 ありがとう。
もう逃げません。
>>519 その、なんかすいません
漢は黙って(ry ↓
521 :
今宵は少々長めなので、 ◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:24:24 ID:pWvo9/9q
蟲どもの行動の意図を汲みかねていた掃除屋は納得した。
地球人どもの匂いを嗅ぎつけた蟲どもは、新たな肉を求めてここまで遠征してきたのだろう。
無論予想外の事態ではあったが、これを利用しない手は無い。
殺戮の痕を“洗浄”し終え、掃除屋は“蜘蛛の巣”を仕掛ける事にした。
右肩から降ろした清掃箱を開き、内蔵されていた機構を操作すると、“清掃箱”の脇から左右4対の鋼鉄の鉤爪が飛び出した。
甲殻生物の足にも似た8本の鉤爪は、天井の梁へとがっちり食い込み、その本体を固定する。
餌は地球人。先ほど首をへし折った屍骸を使用する事にした。
細かい刃のついた鋼線を巻き付け、その一端を“蜘蛛”に接続し、吊り上げる。
掃除屋は左腕の装具で遠隔操作し、発射角と鋼線の長さ、感度を調節した。
御馳走にありつこうと蟲が餌にしゃぶりついた途端、速乾性の強力な粘着液が噴射される仕掛けだ。
並の蟲であれば、ほぼ一撃で行動不能に出来る。
522 :
詰まったら温かいご支援を ◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:25:09 ID:pWvo9/9q
建物の内部を蠢く蟲どもの微かな爪音を聞き取った。
すぐさま光学迷彩を起動し物陰へと潜む掃除屋。
相手は2体だと視覚装置は告げている。
しかし、狩猟者の研ぎ澄まされた勘は敏感に、そ い つ を感知していた。
もう1体いる。それも一回りも二回りも巨大な奴が。
蟲の三下達が偉大なものに対して臣下の礼をとり、引き下がる。
己の主へ好物の一口目を譲ろうというのだろうか。その姿は掃除屋の視覚には映らない。
視覚装置を切り替えてみても、あの2体の蟲以外に何も検知できないようだ。
掃除屋は下水道で出会ったあの黒い影を思い出していた。
523 :
よろしくお願いします ◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:26:39 ID:pWvo9/9q
張り詰めた空気の中、やがて黒い影が餌に食らいつく。
吊り下げられた地球人の屍骸が引き千切れ、赤い体液を撒き散らした。
掛かった!
鉄線の過負荷を感じ取った“蜘蛛の巣”が標的へ粘着液を噴射し始める。
黒い影は慌てて逃れようとするが、餌に巻きつけてあった鋼線の細かい刃が身体に絡みつく。
粘着液塗れになった黒い影はのた打ち回り、その巨体を床へ横たえた。速乾性の粘液が巨獣の動きを封じ込めてゆく。
黒い影が粘着液と格闘している間に、掃除屋は2匹の蟲どもに狙いを定めた。
電磁砲に射抜かれた1匹の蟲の胴が破裂し、猛毒の体液で駆動していた内臓が弾け飛んだ。
掃除屋は天井から飛び、もう1匹の眼前へと降りた。
怒りに燃える蟲が吼え、眼前の敵に食らいつこうと飛び掛る。
掃除屋は腰の“手裏剣”を抜き、蟲へ目掛けて投げ放った。
本体から刃が展開し、高速回転しながら宙を舞う手裏剣。
不運にも蟲は円盤を胴で受けた。蟲の胴が真っ二つに裂け、掃除屋の目の前に墜落した。
蟲を両断した手裏剣は、掃除屋の元へ返ろうとしたが、反転しきれずに柱へと突き刺さる。
524 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:27:42 ID:pWvo9/9q
掃除屋は手裏剣の事など構わず、上半身だけでもがく蟲を安全靴で踏みつけ、左手でその首を掴み、力任せにもぎ取った。
酸が吹き零れ、床を溶かして有毒な蒸気を生み出した。
粘着液が完全に固まる頃には、既に掃除屋の狩りは終わっていた。
あとはこいつだけだ。掃除屋は迷彩を解き、拘束されているその巨獣の前へと立った。
姿も見えず、得体も知れぬ不気味な変異体。
全身を粘着液に包み込まれているにも関わらず、怪物は微かに蠢いていた。
鉄爪で切り刻もうか。電磁砲で撃つのもよい。が、果たしてそれだけで死ぬだろうか。
急所がわからぬ以上、迂闊に手を出すべきではないだろう。
掃除屋は歯を鳴らしながら、慎重にこの怪物の処刑法を吟味していた。
525 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:29:38 ID:pWvo9/9q
数秒の思案の末、“洗浄薬”を流し込むのが最も確実な方法だろう、と結論した。
弾薬帯の腰の部分から、蒼い液体で満たされた強化硝子の容器を抜きとる。
洗浄薬の威力は凄まじい。
“消去薬”の異名を持つこの液体は、使い手の皮膚すら冒す強力な有機物分解剤である。
少量降りかけるだけで、蟲どもや狩猟者の殺戮の痕を完全に分解、跡形も無く消し去る洗浄薬。
洗浄薬は掃除屋という職を象徴する装具だ。
洗浄薬を持つ事が許されるのは掃除屋だけ、という事からもそれは明らかである。
掃除屋は三日月刀を展開し、洗浄薬の栓に指をかけた。
526 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:31:16 ID:pWvo9/9q
その時、予期していなかった事が起こった。
掃除屋は、粘着液の隙間から漏れていた僅かな湯気に気づかなかった。
粘着液が怪物の皮を薄く剥き取り、傷口から血が染み出していた。
体液は体表を伝って合金製の床板を溶かし、粘着液との接着面にも作用した。
もがいていた怪物は力任せに身体を突き上げ、脆くなった床板から粘着液を剥ぎ取った。
固まりきった粘着液の繭の表面が割れ、怪物は立ち上がった。
破片が辺りに飛散し、完璧だったはずの“蜘蛛の巣”が破られた。
あまりの事に、掃除屋は身を竦めた。
無理も無かった。数々の戦歴の中でも、“蜘蛛の巣”から逃れた蟲は1体もいなかったのだから。
蟲の進化に追いぬかれた、掃除屋の敗北であった。
527 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:33:26 ID:pWvo9/9q
身の毛もよだつ咆哮で掃除屋は我に帰ったが、少し出遅れた。
気づいた頃には、怪物が掃除屋へ突進していた。掃除屋は咄嗟に左へ飛び退く。
洗浄薬の容器が掃除屋の手から弾き飛ばされ、部屋の隅へと転がっていった。
頭突きをかわされ、怪物は掃除屋に2度目の頭突きを加えた。
今度は掃除屋も打たれるばかりではなかった。
掃除屋は怪物の巨大な頭部に左腕の三日月刀を突き立て、組み付く。
三日月刀の傷口から酸の体液が飛び散ったが、怪物は怯まなかった。
傷は浅い上に急所を逸れており、致命傷には全く及んでいなかった。
黒い影は掃除屋を振り落とそうと頭を振り回し、壁に打ちつけ始めた。
その間掃除屋は右手の鉄爪を打ち付けていたが、相手の硬い外殻にまるで刃が立たない。
なんという石頭であろうか。
飛び散る強酸に壁が腐食され、配電装置が露出した。漏電が発生し、火花の雨を降らす。
火を検知した室内の消火装置が作動し、消火用の薬剤を散布した。
相手の頭部に突き立てた左腕が不穏な感触を受けた。
不穏な感触はやがて金属の悲鳴に変わった。嫌な予感がした。
528 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:35:18 ID:pWvo9/9q
幾度も強烈な衝撃を受けた三日月刀がへし折れた。
固定を失い、部屋の隅へと投げ出される掃除屋。
度重なる衝撃で、壁に埋め込まれた管が破裂し、天井の割れ目から大量の水が噴き出した。
透き通る水と白い消火剤が混ざり合い、濁った幕が掃除屋を覆う。
薄白い水の幕の合間から、巨大な敵は掃除屋を見つめていた。
顔を染め上げる粘着液が燐光を放っていたが、細かな造詣ははっきりしない。
掃除屋は怪物の額を撃ち抜こうとして、初めて両肩の電磁砲が破損している事に気づいた。
黒い影の攻撃で疲弊し、噴き出しつづける水が、とうとう電磁砲に止めをさしてしまったらしい。
くそったれめ。
しえん
530 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 22:50:41 ID:pWvo9/9q
……見えていない?
どうしたというのだろう。
好機にも関わらず、敵は掃除屋の顔を睨むばかりで攻撃しようとしない。
怪物の頭部から伸びた触手が周囲を探るように部屋中を嗅ぎまわっているものの、掃除屋に対しては触れようともしない。
531 :
ありがとー ◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 23:03:19 ID:pWvo9/9q
狩猟者達の視覚には、ある種の波長の光しか見えないという弱点がある。
体温のある獲物を狩るという点では長所にもなるが、獲物の体温を検知しづらい特殊な環境では命取りだ。
その弱点も、やがては経験による慣れや、仮面の視覚補正機能によって補われるものの、若年ではまだ熱を感じ取る事しか出来ない。
また、熟練であっても、その弱点が克服できずに命を落とす戦士もいる。
今噴射している薬剤が何なのかはわからないが、もしやそうした光を遮断する類いのものなのではなかろうか。
掃除屋の脳裏にある考えが閃いた。
囚われていたはずの女王の脱走。青年戦士のむごたらしい死。皮を剥がれた地球人。見えない敵。
しかしそのような馬鹿な事があるはずがない。
いくら未熟な青年戦士とは言え、小型艇の防疫装置が何らかの警報を発さないはずがない。
いくら蟲どもが思いも寄らぬところへ潜む事を得手とするとはいえ、他の惑星に接近するまで艇内に潜む事など出来るはずがない。
532 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 23:06:15 ID:pWvo9/9q
だが実際はどうであろう。掃除屋は眼前の現実に目をやった。
“黒い影”は眼前の獲物に気づかず、威嚇の声を漏らすばかりであった。
獲物の臭いを探っているのかもしれないが、距離が近過ぎる上に密室である為、正確な位置が上手く把握できないのだろうか。
ついには苛立ったのか、巨大な尾で盲滅法に突き始めた。
一発一発は強力だったが、狙いがまるで出鱈目である為掃除屋にはかすりもしない。
壁が爆ぜ、砕けた石片が飛散した。
533 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/26(木) 23:08:29 ID:pWvo9/9q
怪物の動きが変わったのは唐突だった。
巨大な燐光の塊は、何か危険なものから慌てて逃れるかのように、暗闇の彼方へと姿を晦ましてゆく。
突然逃走を始めた怪物を見ながら、掃除屋は初めて部屋の異臭に気づいた。
激しい闘いで、壁に埋め込まれていた管が断裂し、そこから可燃性の気体が漏れている。
さらに同じく切断され、壁から飛び出した電線から噴き出ている火花。
そこから導き出される答えはただ一つ。
爆発だ!
咄嗟に掃除屋は身を屈めた。直後、部屋とその中の物が猛火に包み込まれた。
今宵はここまで。。。
ご支援いただきありがとうございました。。。
>>534 大量投下乙でした。
ウギャアアアア!掃除屋ピンチ
乙です!
緊張感のある戦闘描写がたまんないッス!!
乙
あ〜、青汁スプリンクラーに混ぜてみて〜
乙です。
戦闘がやばいぜ!
青汁スプリンクラーとか鬼畜すぎるw
青汁を噴射する武器とかどうなんだろ。
危なすぎるか
昔のイタリア軍になりかねないから止めた方が良いな
『青汁』って聞くと、「う〜んマズイ!もう一杯!!」のCMが浮かんでしまって困る
では投下↓
環境への適応力や攻撃性はすこぶる高い蟲だが、その増殖には有機生命体の宿主が欠かせない。
“種子”は長期生存には適しているが、可燃性で非常に燃え易いという致命的な弱点を持つ。
“幼虫”は宿主に取り憑く事のみに特化した形態であり、特性を知っていれば駆除はさほど難しくはない。
宿主から脱皮した直後の“新生児”は脆弱で、外敵に対しあまりに無防備だ。
このように巣の外における蟲の生存率は低く、成熟したとしても“女王”以外の個体は全て使い捨ての雑兵に過ぎない。
蟲どもの平均寿命は短い。長期生存する例は稀だ。
しかし孤立した環境である場合や、女王に選ばれた特別な個体では、これに限らない。
かくして長期生存を果たした個体には“α化”と呼ばれる現象が起こり、体内へ幾つかの化学物質が分泌される。
α化により蟲の身体は更なる変態を促され、新たなる“女王”へと変態を遂げる。
これが“女王”の発生の仕組みである。
女王への変態過程にある“α個体”は、他の蟲どもとは比較にならないほど強靭だ。
他の蟲の成虫どもを率いて、高度な集団作戦を展開出来る知恵もある。
成熟した女王ほどではないものの、なかなか厄介な存在である。
体液が点々と零れ、鮮緑色の光る道が出来ていた。
地球人と比較すれば脅威的な身体能力を誇る狩猟者の一族ではあるが、不死身というわけではない。
負傷すれば出血もするし、酷い時は死に至る場合すらある。
闘いをこよなく愛する狩猟者達にとって、闘いの中で死ぬ事はもっとも誉れ高い事とされている。
それは選ばれた戦士である“掃除屋”とて同じ事だ。
いざとなれば、左腕の操作盤に内蔵された核爆弾と、弾薬帯に満載した殺虫剤で、蟲ども諸共果てる覚悟である。
しかし狩りの途中で死ぬわけにはいかなかった。まだ掃除屋は生きていた。
爆発地点に近い空き部屋へと潜り込み、腰を落ち着けて大きく息をつく。
掃除屋は、固く握り締めていた右手の拳を開いた。
それは、闘いの最中、あの巨大な蟲からもぎ取った“標本”であった。
そして、それは全ての疑問の答えであった。
やはりか。
ある程度予測していたとはいえ、清掃箱の返答に対し掃除屋は驚愕した。
命がけで得た標本から、欠けていた情報の断片が補完され今回の事件の全貌が明らかとなった。
黒い影の正体はやはり“α個体”だったのだ。しかもただのα個体ではない。
狩猟者の一族は、その痕跡を抹消し、誇りを保ったまま果てる為に幾度となく“核の火”を用いてきた。
多くの場合、核の火は一帯の生態系を抹消させる事ができる。
しかし、核が生み出す膨大なエネルギーが、稀に有機生命体の細胞に変異をもたらす例もないわけではなかった。
もしも、蟲の幼虫が核の火の洗礼を受けたとしたらどうであろう。
狩猟者達の目ですらくぐりぬけるように変態を遂げたとしても、なんら不思議ではない。
今回の儀式で青年戦士の一人が自爆していたという事実もそれを裏付けている。
小型艇の航海記録を調べた際には気にも留めなかった事実。
掃除屋は自身の迂闊さを悔やんだ。
青年戦士は 蟲 に 寄 生 さ れ て い た 。だからこそ、自爆したのだ。
爆風からまんまと逃げおおせた蟲は小型艇の防疫装置をすり抜けて忍び込み、そして……。
何よりも、“ヤツ”はどこかに潜んでいる。
これまで闘ってきたどの蟲よりも手ごわい強敵だ。
百戦錬磨のこの掃除屋に、タネのバレた手品はもう通用しない。
粘着液で染色されている今ならば、ヤツの姿は裸眼でも捉えられるはずだ。
念の為、掃除屋は清掃箱を操作し、ヤツの変異した遺伝情報を視覚装置に記憶させる。
これでもう逃すまい。
次に、傷ついた身体の治療にとりかかる。
大した負傷ではないが、この惑星の穢れた大気や汚水が掃除屋の体に何らかの害を成さないとも限らない。
腰につけた治療器具を展開し、応急処置を始めた。
幾つかの薬品を加熱し混ぜ合わせ、出来上がった青い軟膏を匙で傷口へ塗りこむ。
辺りに肉の溶ける匂いが漂い、思わず唸り声が漏れた。
傷口周辺の細胞を活性化させ一瞬で傷を塞ぐ優れ物だが、凄まじい痛みを伴うという欠点がある。
毎回の事とは言え、この麻酔無しの荒療治には相変わらず慣れない。
痛みに悶える手で治療用注射器を取り出し、鎮痛作用も併せ持つ精力剤を腹部へ射ち込む。
これでしばらくは保つはずだ。
傷が塞がった事を確認した掃除屋は、蟲の酸から身を守る為の中和剤を頭頂から振りかけた。
ルパンVSバーローが気になって仕方が無いので、今宵はここまで。
>>546 今日も乙でした。
プレデター軟膏登場に感激wwww
ルパンVSバーロー、黒歴史になるかと思いましたが、面白かったです
打ち止めするだけの価値はありました
,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
人./ノ_ら~ | ・・・と見せかけて!
从 iヽ_)// ∠ 再 開 !!
.(:():)ノ::// \____
、_):::::://( (ひゞ
)::::/∠Λ てノし)' ,.-―-、 _
______人/ :/´Д`):: ( _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
|__|__|__( (/:∴:::( .n,.-っ⌒ ( ノlll゚∀゚) .(゚Д゚llソ |
|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r' ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
||__| (::()ノ∴:・/|::| ./:/ /  ̄/__ヽ__/
|_|_| 从.从从:/ |__|::レ:/ ___/ヽ、_/
|__|| 从人人从 ..|__L_/ .( ヽ |
|_|_|///ヽヾ\ .|_|_ /⌒二L_ |
──────── ー' >ー--'
傷を癒した掃除屋は装備の再点検に取り掛かった。
左腕の“三日月刀”がへし折れ、“光学迷彩”の擬態能力が少々落ちていたが、他の装備の多くはまだ使用可能らしい。
問題はつい先ほど破損した電磁砲である。
左肩の電磁砲は捕捉機能が破損し、右肩の電磁砲は集電機能を損なっていた。
一対一でなら負ける気はしないが、電磁砲なしで蟲の巣へ乗り込むのは自殺行為に等しい。
何しろ万全な状態ではないのだ。手札は多ければ多いほどよい。
改修が必要だ。掃除屋は判断した。
両肩の装具に爪をかけ、掃除屋は左右の電磁砲の砲身をもぎ取った。
他の装備に漏れず掃除屋が独自の改造を加えている特別製の電磁砲は、拳銃の形へと変形を遂げる。
続いて清掃箱を開き、幾つかの部品を選び出した。
それは、片手に収まる銃床、銃身を接続する機関部、引き金、そして銃身からなる地球産の組立式銃器だった。
かつて母星の同胞の1人が地球で入手し、さらにそれを掃除屋が譲り受けたものである。
狩猟の戦利品であったその品は、掃除屋やその同胞達の手によって、実用品へと大改造が施されていた。
青年戦士の遺品にそれらの部品を取り付け、配線を繋ぎ変える。
銃は持ち主の異なる電磁砲を認識し、2つの文明が組み合わさった異形の電磁砲へと姿を変えた。
掃除屋は弾薬帯から予備の“電磁薬莢”を取り出して装填し、増設された液晶に光が灯った事を確認する。
砲身に備わっていた照準装置が作動し、三点の赤い照準光が壁を嘗めた。
これで使えるはずだが、いざという時暴発されてはかなわない。
念の為に試射が必要かもしれない。
掃除屋が装備を調整している背後の暗闇で、1体のエイリアンが蠢いた。
兵士役のエイリアンは慎重に、目の前でよくわからない作業をしている生き物を観察する。
これまで多くの命を奪ってきたエイリアンでも、このような生き物を目にするのは初めてだ。
頭部に生えた無数の触手や、無数の斑点を持った皮膚、平坦な額など、どことなく彼のリーダーに似通っているように思えた。
ひょっとするとその仮面の下にはあの大顎も備わっているのだろうか。
エイリアンにはわからなかった。
ただ、目の前の生き物が今まで捕らえてきた生き物よりもずっと宿主として優秀だろう、という事は確実に思えた。
もし上手く捕らえればきっと“女王”はお喜びになるであろう。
そして生まれた子は一族に繁栄をもたらすに違いない。
以上の思考を終えた蟲は、目の前の獲物に音もなく忍び寄り、そして背後からt
一帯に轟音が鳴り響いた。
頭部が弾け飛んだ蟲の屍骸を見て、掃除屋は満足した。試射は成功だ。
掃除屋は試し撃ちの終わった2丁の電磁砲を鞘におさめた。
新しい巣穴の場所は見当がついている。
追跡装置は、掃除屋が次に向かうべき場所を指し示していた。
狩 り の 時 間 だ 。
掃除屋は闇の彼方へ姿を消した。
今宵はここまで。。。
スピーシーズVSプレデターってないの?
古代海洋生物で巨大なワニ的なやつがいたらしいんだけど、そいつの名前をプレデターXってつけたらしいね
>>554 2に出てくるパトリックにいやんがプレデリっぽいのは狙ってたんでしょうか
>>555 そういえば、エイリアンXっていう映画ありましたね
本日の投下がまいります、白線の内側まで下がっておまちくだしあ ↓
この短時間でよくここまで巣を作り上げたものだ。
あるいは、拠点の一つを拡張したのかもしれない。
前の巣との相違点を挙げれば、宿主が少ない事や、構造がより複雑になった事だろう。
蟲どもも学習するというわけか。
“掃除屋”は巣の入口を前にして、光学迷彩を解いた。
水を浴びて損傷を受けたせいか、どうも調子が悪い。
もっとも、掃除屋の任務はもはや隠密に済む段階ではなくなっている。
機能が低下していようがいまいが、ここから先の戦闘では光学迷彩など不要だろう。
掃除屋は仮面の視覚補正装置を切り替え、巣の内部を透視した。
再建された巣では“蟲”が犇いていた。蟲どもの仕事ぶりに改めて感嘆する掃除屋。
健気さすら感じたが、といって手を抜くつもりは一切無かった。
背中には“清掃箱”、腰には2丁の“電磁砲”と“鞭”、肩には“殺虫剤”と“洗浄薬”を搭載した弾薬帯。
各種装具を携えて、掃除屋は蒸し暑い巣の中を奥へ奥へと歩み始めた。
目指すは女王。今度こそ確実に仕留める。
背後の壁に潜んでいた蟲が掃除屋に迫った。
左腕でそいつの喉を押さえつけ、さらに反対方向から飛び出してきた蟲を右手の電磁砲で撃ちぬく。
蟲の下半身が破裂し、均衡を失調した蟲は掃除屋の眼前に墜落した。
間髪いれず、捕らえていた蟲の口腔へ電磁砲を突っ込み、鼻面を爆砕。
拳銃型に変形した電磁砲は、照準を失った為命中率が落ちてはいるが、接近戦ではまだまだ使用に堪える。
下半身の吹っ飛んだにも関わらず蟲は襲いかかるが、掃除屋は攻撃の隙をも与えぬままその長い頭へ蹴りを叩き込んだ。
一撃で首がへし折れ、蟲の頭蓋の割れ目から噴き出した強酸が壁を溶かす。
酸を撒き散らしながらのたうちまわる蟲の頭へ、電磁砲で“恵みの一撃”を与える掃除屋。
通路の蟲どもを蹴散らした掃除屋は一つの部屋へと入った。
壁には蟲脂による奇妙な彫刻がなされ、その上に腐敗し始めた地球人の屍骸が塗り込まれている。
蟲どもの罠によって捕らえられ、宿主として利用された兵士達のなれの果てである。
床には蟲どもの種子が所狭しと根を張り巡らせており、部屋はほとんど原型を留めていない。
蟲どもの“養殖室”である。
室内で種子の世話をしていた蟲の成虫が外敵に気づき、掃除屋に飛びついた。
掃除屋は左手で蟲を受け止め、蟲は御馳走にありつこうと涎を撒き散らしながら大口を開ける。
自由な右手で弾薬帯の殺虫剤を抜き、掃除屋は取り出した殺虫剤を蟲の咥内へぶち込んだ。
殺虫剤の保安ピンに指をかけ、悲鳴にならない悲鳴を挙げる蟲を室内へと蹴り込む。
保安ピンが外れたのを確認し、掃除屋は室外へ飛び出した。
その直後、部屋の中でピンを抜かれていた殺虫剤が起爆。
内側から膨れ上がる光熱の為、蟲の頭は破裂した。
殺虫剤の火が種子の山を焼き払い、爆風で飛ばされた蟲脂や地球人の破片が散った。
炭化した幼虫の屍骸を踏み潰し、安全が確保された養殖室へと侵入する掃除屋。
向こう側の通路から更なる蟲の成虫が姿を現し、掃除屋へ襲い掛かる。
掃除屋は素早く反応し、甲冑で覆われた左拳を蟲の胴にぶち込む。
焼け焦げた壁に衝突し弱った蟲を、掃除屋は容赦なく叩きのめした。
潰れた胴から流れ出る酸が合金製の床を腐食し、大穴をあけた。
蟲は必死に暴れたものの、身体中の外殻が砕け、やがて動かなくなった。
騒動を訊きつけ、奥から続々と蟲どもが姿をあらわした。
掃除屋は左手でもう1丁の電磁砲を構え、発砲した。青年戦士の電磁砲は、行列を組んでいた蟲の成虫どもをまるごと消し飛ばす。
左手の電磁砲が集電する間に迫る蟲を、右手の電磁砲で素早く爆殺する掃除屋。
掃除屋は2丁の電磁砲で的確に蟲どもを吹き飛ばしてゆく。
血に餓えた蟲どもは、ここにきてようやく電磁砲の危険性を理解したらしい。
狭い室内で一定の距離を取りながら、蟲どもの群れは掃除屋を包囲した。
巣の外敵を威嚇する蟲どもは、鉄をも裂く爪と毒針を打ち鳴らし耳障りな音をたてた。
蟲どもの群れの奥で甲高い咆哮が響いた。
まるでそれが合図であったかのように蟲どもは掃除屋から離れ、道を空ける。
頭目のお出ましというわけか。ただの蟲ではなさそうだ。
今宵はここまで。
すいません、ちょっと調子に乗ってました。
564 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:20:47 ID:nvYe0FTt
やはり“α個体”だった。
蟲との経験が豊かな掃除屋の観察眼は、目の前の蟲と従来のα個体との差異を見て取った。
ただのα個体ではなかった。宿主が地球人ではないのだろう。
生殖に特化した女王に対し、こちらは戦闘に特化したのだろうか。
這いつくばっていた巨大な蟲は立ち上がり、両手の指先から爪を伸ばした。
掃除屋の“鉄爪”にも似た、鋭く長いカミソリのような爪である。
こいつはその剃刀のような爪で何体もの外敵を仕留めてきたのだろうか。
長く伸びた尾には毒針の代わりに、ちょうど狩猟者達の武具にも似た“刃”が備わっている。
通常の蟲のように突く為でなく、獲物を薙ぐように特化したのだろう。
鋭利な刃は地球人の赤い体液に染め上げられ、赤黒く変色していた。
全身に向かい傷があり、中でも額に刻み込まれた爪痕と銃創が目立つ。
群れの中で内部抗争でもあったのだろうか。
常に先頭で外敵と立ち向かい、手傷を受けながらもそれら全てを排除してきたという事かも知れぬ。
いずれにせよ、易々と倒せる相手ではないだろう。
外敵に対し“α個体”は長い尾を打ち鳴らし、威嚇の咆哮を挙げた。
好戦的なリーダーの命令を受け、下っ端の蟲どもが引き退がった。
一対一でやるつもりか。掃除屋はα個体に迫る。
掃除屋の心は狩りへの喜びに満ち溢れていた。
565 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:21:34 ID:nvYe0FTt
身軽に後転し、壁へとへばり付く“α個体”。
巨体のわりに、なかなかすばしこい奴だ。
青年戦士の電磁砲から照準光が放たれ、α個体の胴体へ狙いを定める。
しかしα個体は素早く照準を外し、電磁砲の雷光は壁に焼け穴を作るばかりであった。
室内を軽やかに舞うα個体の姿は、まるで掃除屋を嘲笑っているかのようである。
電力の無駄だな。掃除屋は電磁砲を降ろした。
隙を覗っていたα個体は途端に間合いを詰め、その獰猛な爪と尾の刃を振りかざした。
566 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:22:19 ID:nvYe0FTt
もう一歩踏み込んでいれば、首を刎ねてやったところだ。
額に新しい傷が増え、自慢の尾が中程のところで落ちた。
鼻面から血液を噴出しながら悲鳴を挙げ、掃除屋から離れる“α個体”。
掃除屋は右手の“鞭”を床にうちつけ、付着した酸を払った。
切れ味は掃除屋の手首の加減次第。
細かい刃が満載された鞭の前では、蟲の外殻など何の防御にもならない。
いきなりの攻撃に一度は怯んだ“α個体”だったが、まだ爪がある。
素早く意気を盛り返して掃除屋へと突進し、飛び掛った。
α個体は掃除屋と縺れ合い、両者は壁に激突した。
567 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:23:09 ID:nvYe0FTt
α個体は鋭い爪を振るった。
掃除屋の左手から電磁砲が吹き飛ばされ、蟲の酸が開けた穴から階下へと落ちてゆく。
鋭く長い爪が掃除屋の顔面を引っ掻き、仮面に新たな瑕が増えた。
外見の細身と比べてかなりの腕力である。とても引き剥がせそうになかった。
掃除屋はα個体の喉笛を抑えつけると、思いきり壁に叩きつけた。
反動で両者の身体は離れる。尻餅を突く掃除屋。
頭蓋がひび割れ、悲鳴と酸を撒き散らすα個体。
通常の蟲であれば即死しているはずの衝撃であるが、α個体にとっては大した痛手ではなかった。
勇猛果敢なα個体は、再び爪をかまえた。
568 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:24:52 ID:nvYe0FTt
しかし、その爪が振るわれる事はなかった。
眼前の敵に飛びかかろうとしたα個体だったが、動けなかった。
下半身から噴き出す体液を見て、α個体は自身に何が起こったのか理解した。
α個体の右腿に深々と“手裏剣”が突き刺さっていた。
掃除屋が地球人達の手から取り返した、青年戦士の武器だった。
蟲の外殻をも裂く6枚の刃が、α個体の体と壁をしっかりと接着していた。
脚をばたつかせるα個体だが、手裏剣の固定は外れそうにない。
酸の血液が、床板や手裏剣の合金と反応し、有毒な気体と蒸気を発生させ始める。
α個体は苦痛にうめいた。掃除屋の狙い通りだった。
569 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:25:48 ID:nvYe0FTt
止めを刺そうとα個体へ迫る掃除屋に、闘いの背後で控えていた蟲の1体が襲い掛かった。
掃除屋は“鞭”を振るう。鞭が鼻面を撫で、蟲の頭部が斜に弾け飛ぶ。
続けてもう1体が飛びかかる。蟲の胴に鞭が巻き付き、掃除屋は持つ腕を引いた。
空中で拘束された蟲は落下し、床に叩きつけられた。
痙攣する2つの屍骸を蹴り飛ばし、掃除屋は蟲どもを睨みつけた。
対峙する蟲どもも負けじと、金属音のような甲高い声で吼え返す。
掃除屋のα個体に対する興味は消えていた。抵抗出来ない獲物を仕留めても何の興もない。
それよりも蟲の群れの方が魅力的であり、また集団戦は掃除屋の最も得意とするところでもある。
燃え上がる闘争心に従い、掃除屋は鞭を振るって通路に立ち塞がる蟲の群れへと切り込んだ。
地球人の宇宙船ドックだった場所で、掃除屋の咆哮と蟲の絶叫が混ざり合い、木霊した。
目指すは最上階。地球人の宇宙船の格納施設があり、追跡装置が指し示す女王の居場所である。
570 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/29(日) 20:26:51 ID:nvYe0FTt
今宵はここまで。。。
>>562 うおぅ…痛過ぎる……
乙です。
掃除屋、後ろ後ろ!
になりそうで怖ひ…。
鞭で暴れる掃除屋かっこいいわぁ。
骨を切るとか半端ないよな…
573 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 19:57:47 ID:NoRitW0V
乙〜。
しかし参ったな、規制が解けん。今んとこ、解除の可能性ゼロっぽい。乙するのも一苦労だわ。
巻き込まれた書き手さんも、多いかねぇ。
574 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/30(月) 20:23:12 ID:mxNFEYYO
今、掃除屋は女王と対峙している。追い焦がれた、私の恋人!
恋人は、恐ろしい外敵の侵入が不服らしかった。
息子達を殺され、大事な巣を1度ならず2度までも破壊されかけた女王の唸り声は、外敵への憎悪に満ち溢れていた。
執念深さではひけをとらない追跡者である掃除屋は吼え、眼前に立ちはだかる“女王”を挑発する。
どちらが勝っても人類に未来は無い。
575 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/30(月) 20:24:19 ID:mxNFEYYO
再会した女王は巣を守らんと、掃除屋に尾の毒針を向ける。
掃除屋は“鞭”を展開し、女王の毒針を半ばのところで切り落とす。
先代の掃除屋から譲り受けたこの“鞭”は、蟲の外殻から職人達が丹念に削りだした特別製である。
本体には細かい刃が満載されており、これまで何体もの蟲を切り刻んできたが、未だに刃毀れ一つ無かった。
酸を払い、鋭い刃を巻き取ると、鞭は1本の柄へ収納された。
尾を切除された女王は歯を剥き出しにして唸り、涎を撒き散らしている。
掃除屋は左手で電磁砲を抜き、女王を牽制する。扱いやすく、接近戦向きである掃除屋の電磁砲。
電磁砲の危険を知っている女王は後退し、吼えた。
女王の背後から衛兵役の蟲どもが掃除屋へ次々と襲いかかった。
どうやら数で攻めようという魂胆らしい。単純な策だが、相手が蟲どもなら話は別だ。
このような時、前進しようとすれば危険である。
左手の電磁砲で蟲を次々と爆殺し、鞭で接近を警戒しながら少しずつ掃除屋は後退していく。
576 :
ナズェバレタンディス!? ◆AvP.enmOzE :2009/03/30(月) 20:29:54 ID:mxNFEYYO
突然背後に殺気を感じ、掃除屋は振り返った。
背後の壁の装飾の隙間から物凄い爪が迫る。
先程の“α個体”だ。死んだと思ったが、まさか生きていたとは。
片足が無く、新たに増えた傷口から酸が噴き出していた。怪力で右脚を自ら引き千切ったのである。
片足のみで壁から跳躍し、掃除屋に掴みかかる“α個体”。
掃除屋は安全靴でα個体の胸を蹴り上げ、間合いをとる。
満身創痍の身体でまだ闘うつもりらしい。
勇ましく吼えながら掃除屋に向かってゆくα個体。
掃除屋は腕を伸ばして鞭を振るい、思いきり振り下ろした。
遠心力を味方につけた鞭がα個体の身体へと巻きつき、食い込んだ。
掃除屋の鞭は、α個体の身体を締め上げ全身の骨と肉とを裂いてゆく。
身体中から猛毒の体液が噴き出し、α個体の断末魔が挙がる。
さらに掃除屋は鞭を思いきり振り上げ、α個体だった肉塊を群れの中へ放り込んだ。
肉塊は空中分解し、飛び散った酸や肉が蟲の群れに降り掛かった。
リーダーの返り血と内臓を浴び、蟲達は激怒した。
577 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/30(月) 20:43:29 ID:mxNFEYYO
これではきりが無い。奥の手の出番だ。
掃除屋は鞭を収納した左手で弾薬帯をまさぐり、“洗浄薬”の容器を抜きとる。
青い液体で満たされたその容器を空中へ放り投げ、掃除屋は右手で電磁砲をかまえた。
電磁砲の閃光が、宙を舞う洗浄薬の容器を射抜いた。
洗浄薬は、ちょうど蟲どもの群れの真上で破裂した。
空中へ解き放たれた溶解液の雨が蟲どもに降り注ぎ、蟲どもの皮膚を、外殻を、そして内臓を冒してゆく。
蟲どもが誇る強固な外殻はおろか、猛毒の体液すら分解し無害化してゆく。
洗浄薬の分解力は凄まじい。
掃除屋を追い詰めていた蟲どもの大群は、一瞬にして消去された。
不意に何かが背を打ち、衝撃で電磁砲が手元から吹き飛ばされた。
女王だ。掃除屋が洗浄薬の飛沫を避けている隙に、女王は接近していた。
怒り狂ったエイリアンの母親が、掃除屋に襲い掛かった。
578 :
◆AvP.enmOzE :2009/03/30(月) 20:46:05 ID:mxNFEYYO
今宵はここまで。。。
>>573 ケータイ規制は一部解除されたっぽいんですけどねぇ
俺が書き込み始めてから日記の投下が一切無いのは、決してお寒い文章垂れ流している俺のせいじゃなくて規制のせい…だと信じたいこの日頃。
>>578 毎日乙です。
掃除屋、クイーンには必ず止めをさすのだぞ!
最近他のスレでも「規制に巻き込まれた」って書き込みを沢山見かけるな。
幸い俺は大丈夫だけどまったく迷惑なことだよな・・・。
580 :
タカハシ日記:2009/03/30(月) 23:48:31 ID:qUxsngA7
!月‘日
任務で遠出していたが昨日ようやくクランに帰ってきたので日記をつけるのも久しぶりだ。
本当ならマサフミも同行するはずだったが、あいつは腹痛を起こしたとかで今回は見送ることになったのだが、そこで問題が・・・
今晩は久々に宇宙SASUKEがあったんで、見ていたらなんとマサフミが出場していた。
しかも収録日は惑星PKの調査の期間に行われていたという。
人が真面目に仕事をしているときにアイツはなにをしているんだ!
・・・とりあえずあいつに制裁を加えるべくリストブレードを研いでる所だ。
念のためキャノンのメンテもしておいた方が良いかもしれない。
ちなみにマサフミは1次予選の序盤で足を滑らせて池に転がり落ちて失格になってた。
体力バカのあいつでも珍しいことがあるものだ。
>>578>>580 お二方とも日記乙です!
なんか緊迫したシリアスな
>>578と対照的な
>>580にワロタww
サスケ漏れも見てたよー。実に惜しかった!宇宙サスケのオールスターズは威圧感すごそうだよね…
マサフミはタコ親父的な位置付けだなwww嫌いじゃない、むしろそんなマサフミが大好きだ!!
掃除屋も女王に負けるなー!!
二人とも乙です。
女王に飛び乗る掃除屋に期待。
宇宙SASUKEとか難易度やばそうだw
583 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 00:37:26 ID:9UqVLjXS
女王の凄まじい鉤爪が掃除屋の背後の壁に食い込み、建材を引き剥がした。
紙一重で回避した掃除屋に、女王の強力な顎が迫る。
掃除屋は咄嗟に身を低くして女王の懐に潜り込み、右手から飛び出した鋼鉄の爪で咽喉を切り裂いた。
女王は手で咽喉を押さえ、苦痛にのたうちまわりながら掃除屋へ巨大な鉤爪の攻撃を加える。
掃除屋は立ちあがり、襲い掛かってきた女王の左腕に鞭を絡み付け、渾身の力で轢き千切った。
女王の左肘先が破裂し、大量の体液が噴き出して床に大穴を開ける。
怯む事無く女王は切断された手首を振り回し、掃除屋へ酸の飛沫を浴びせかける。
条件反射で、掃除屋は身を引いた。
584 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 00:40:44 ID:9UqVLjXS
猛毒の体液をかわしていた掃除屋の胴に何かが巻きつき、凄まじい力で身体を拘束した。
女王の尾だ。
先端を失っているとは言え、掃除屋を絞め殺すのであれば事足りる長さである。
掃除屋は女王の足元に己の電磁砲が転がっているのを確認したが、しかし尾の拘束が強すぎた。
これでは鞭で絡めとる事も叶わない。
女王は、捕らえた獲物に顔を近づける。
痛覚などもはや超越していた。
歯の隙間から血反吐が漏れ出て、切断された左腕の傷は蟲特有の再生能力で徐々に塞がりつつあった。
もし女王に眼があったならば、それはきっと息子達を殺された怒りで燃え上がっていた事だろう。
掃除屋には女王が微笑みかけているように見えた。
死神の微笑み。掃除屋は覚悟した。
585 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 00:43:57 ID:9UqVLjXS
今宵はここまで。。。
>>580 宇宙SASUKEw
そういえばもうそんな季節だったっけな
難易度高すぎてステージ2で全滅したりとか、実況がやたらアツかったりするんだろうか
>>585 おお、今夜はもう投下無いものと諦めて寝ようとしてたら・・・
乙です。
いい所で区切ってからwwwww
クイーンコエー
ステージから落下したらそこは池ではなくエイリアン地獄
588 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 18:45:11 ID:9UqVLjXS
女王が掃除屋に止めを刺そうとしたその時だった。
大きな物音がした。
目の前の獲物に齧り付こうとしていた女王の獰猛な歯列が音のする方向へ向けられた。
巨大な隔壁が蟲脂の彫刻を引きちぎり、ゆっくりと開いてゆく。
掃除屋は信じられないものを目にした。
589 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 18:46:14 ID:9UqVLjXS
隔壁の向こうにいたのは地球人だった。
女王に気を取られていた為全く気づかなかったが、何時の間にかこの戦場に到達していたらしい。
蟲との闘いの中で活路を見出そうとしたのだろう、その体は満身創痍である。
そしてどこで拾ったものか、青年戦士の電磁砲をかまえていた。
女王の尾の拘束が緩んだ。
わずかな隙だったが、百戦錬磨の掃除屋にとってはそれで充分である。
右腕の鉄爪を展開し、巻き付いていた女王の尾を切り払う。酸の飛沫をまともに受けたが、かまうものか。
足元に転がっていた電磁砲を鞭で絡めとり、左手でそれを構える。
直後、女王が掃除屋の左腕に食らいつく。
鼓膜を突き裂く雷鳴が轟き、女王の大顎が頭冠ごと爆裂した。
頭部を失った巨体は数歩よろめき、崩れ果てた。
590 :
超がつくほどのご都合展開サーセン ◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 18:47:22 ID:9UqVLjXS
宇宙船ドックに到着したと思ったら異形生物と異星人が闘っていて、異形生物の頭が吹っ飛んだ?
何が起こったのかわからず、地球人はただぼんやりと立っていた。
突然視界が歪んだかと思うと、腹部に強烈な一撃が飛んできた。
彼の身体が吹っ飛び、壁に背中を強打。肺の中の空気が搾り出され、呼吸困難にうめく。
やっと呼吸が回復し顔を上に向けると、目の前に異星人が立っていた。
591 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 18:48:21 ID:9UqVLjXS
両手で抱えていたはずのプラズマ銃は、いつのまにか異星人の手に収まっていた。
異星人は腰のホルスターにプラズマ銃を格納すると、彼の胸倉を掴み上げ壁に押しつけた。
自身の身体に電気的な何かが走るのを感じた。体内を走査しているのだろうか。
小型艇から回収した異星人の死体を見た事はあるが、生きたものを見たのは初めてだ。
刺激しないよう、異星人のされるがままにされながら異星人を観察した。
人間よりもやや大きな身体をした異星人は全身を鎧のようなもので覆っており、頭からは触手が伸びている。
触手のようなその器官は頭髪のようにも見えるのだが、実際は何なのだろうか。
そのよくわからない細長い器官は腰の辺りまで長く伸び、後頭部にバレッタに似た金属製の髪留めで抑えている。
実用性皆無であるバレッタをつけているところからすると、案外身形に気を使っているのかもしれない。
デザインセンスはいまいち地球人離れしているが、まぁ悪くはない。
顔には無表情な金属製のヘルメットを嵌め、その下からカチカチという音を発している。
損傷が激しかった為、小型艇の屍骸からはどのような相貌をしていたかわからなかったが、少なくとも人間がそんな音を出す事はない。
鎧の間隙からところどころ露出している肌は、まるで爬虫類か両生類のそれである。
地球生物学には疎い彼から見ても、この異星人が哺乳類と呼べない事は判る。
ヘルメットの下には、地球人には想像も及ばない壮絶な素顔が隠れているに違いない。
また、何らかの薬品を使っているのかそれとも体臭なのかわからないけれど、全身から異臭を漂わせている。
体臭だろうか。または、あの怪物の酸を防御する為に薬品を利用しているのかもしれない。
非常用照明が刺激臭を伴う湯気に反射し、異星人の輪郭を浮かび上がらせていた。
突然、異星人が手を離した。
あまりに突然の事であった為、彼はしこたま床に尻を打ちつけてしまった。
地球人に興味を失ったらしい異星人は踵を返し、やがて姿を消した。
592 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/01(水) 18:54:05 ID:9UqVLjXS
今宵はここまで。。。
人間視点が書けなかったせいで、ご都合展開になってしまいました。
ほんともうね、アボガド。バナナかと。
>>587 そのうち参加者0になるんじゃないでしょうか
>>587 みんなステージクリアそっちのけでエイリアン地獄に向かっていくだろw
>>592 乙です。
地球人に素顔お披露目してやってネ、掃除屋。
乙でぃす。
髪長いのかぁ。かっちょえー。
プレってなかなかお洒落でいいよね。
プレのファッション誌とかめちゃ欲しいんだが。
>>593 なんかかっこいいぞw
褌一丁で台から台へ飛び移りそのままエイリアンの海に飛び込んで行くみたいなw
ファイナルステージはクイーンとの一騎打ちだろうな
まともにクリアしても、腰抜け扱いされるんですね。わかります
597 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:30:23 ID:nSUaoI7W
掃除屋には地球での戦闘経験もあったが、偶然とはいえ地球人に救われたのは初めてである。
地球人といえば、臆病で強欲、そして間違いばかり冒す愚者だとばかり思っていたが、どうやら認識を改めねばならないらしい。
何故地球に儀式用の神殿が設置されていたのか長年の疑問であったが、何となく理解できたように思えた。
女王の腹部へ強烈な一撃をぶち込んだ地球人が戦場から離脱してゆくのを、掃除屋は眺めていた。
使用された電磁砲は先ほど回収した。技術流出の心配は無いだろう。
念の為に透視機能であの地球人の体内を走査したが、汚染されている様子もなかった。
あれだけの乱戦だ。恐らく戦闘の様子もよく見ていなかったに違いない。
掃除屋の規範からして、あの地球人を妨害する理由は無い。
見逃すのではない。感謝を込めて見送るのだ。
その時、掃除屋は掃除屋ではなかった。一人の戦士として、あの地球人に敬意を払った。
598 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:32:00 ID:nSUaoI7W
地球人の宇宙船が遠くなり星の海へと消えていった頃、戦士は掃除屋に戻った。
掃除屋は全身に撥ねた女王の返り血を拭い払う。
全身に塗られた中和剤が蟲の毒液と反応し、仄白い蒸気を漂わせている。
酸を無力化しきれずにところどころの皮膚が焼けてしまっていたが、この充実感の前では苦痛ですらない。
掃除屋は、最後の大掃除に取り掛かった。
599 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:33:32 ID:nSUaoI7W
数分後、1体のエイリアンが戻って来た。
何ということだろうか。斥候に出ていたエイリアンは、巣に襲来した外敵と入れ違いになっていた。
勇猛果敢な兄弟達は皆息絶え、繭や幼虫は1つ残らず焼かれていた。
尊敬すべき女王はその堂々たる頭冠を失って崩御していた。彼のリーダーである“混血種”も姿が見えない。
エイリアンは、守るべきだったもの全てが失われた事を悟った。
あとに残されたのは使い物にならない巣の残骸だけだ。
足元に妙な物が落ちていた。
何かで固定されていたようだが、エイリアンの怪力がそれを難なく引き剥がす。
エイリアンがそれを拾い上げると同時に、落ちていたそれが凄まじい光を放った。
辺り一帯が高熱を伴った光に飲み込まれ、全てが一瞬にして消滅した。
600 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:35:19 ID:nSUaoI7W
最大限に破壊力を高められた“殺虫剤”は大気変換装置の核融合炉を誘爆し、核爆発を起こした。
衝撃の波が起こり、人間達の建造物が枯葉のように舞い上がる。
続いて、眼をも焼く閃光が半径数十キロの範囲にあるものを全て飲み込んでゆく。
巨大な“核の火”は、怪物達の宮殿も地球人の文明も有機生物の屍骸も何もかも、平等に焼き消していった。
601 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:38:26 ID:nSUaoI7W
爆風圏外にある崖から、掃除屋は地球人の拠点だったものを見下ろしていた。
大気の穢れを清めようという惑星自身の自浄作用によるものか、それとも単なる熱膨張現象の結果なのか。
いつからか濃い雷雲がたちこめ、黒い雨が降り出している。
地球人の要塞も、蟲どもが築き上げた宮殿も核の火は分け隔てなく焼き滅ぼし、巨大な痕のみを残していた。
核の火という絶対的な消滅の力の前では、何者も儚く思える。
偉大な勇者も、青年戦士も、強い戦士も、弱い地球人どもも、あの不死身に思える蟲にも、等しく滅びは訪れる。
勿論掃除屋自身にも。
だが、死ぬにはまだ少しばかり早い。
衛星軌道上を周回している無人の清掃艇に連絡を取り、掃除屋は揚陸艇へ帰る事にした。
602 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:41:32 ID:nSUaoI7W
その時だった。
強烈な殺気を感じ取った掃除屋は、咄嗟に横へと跳んだ。
直後、掃除屋のいた場所の岩が割れ、掃除屋を食い千切ろうと巨大な顎が飛び出した。
間一髪で攻撃を回避した掃除屋は振り返った。
土砂を飛び散らし、染色された巨大なそいつが姿を現した。
手傷を負ったエイリアンは、その巨体のところどころから酸の血液を撒き散らしている。
核の火から地中へと逃れ、自身の一族の復讐の為にここまで追ってきたのだ。
よりにもよって“ヤツ”が残っていたとは。
掃除屋の闘いはまだ終わっていなかった。
603 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/02(木) 18:47:07 ID:nSUaoI7W
乙です。
この掃除屋、何時もの様にウッカリしてくれそうだなー
強いのに肝心なところでウッカリしてる掃除屋に萌え・・・
606 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/03(金) 23:07:57 ID:Pv9QM9gB
まず目に付くのはその巨大さだった。
女王ほどではないが、華奢な通常の成虫などとは比較にならない。
それどころか、蟲の成虫を軽く蹴散らす狩猟者達よりも一回り大きい。
しかもただ巨大なだけでなく、堅固な外殻と膨れ上がった筋肉の鎧が全身を覆っている。
この巨体が繰り出す怪力ならば、蜘蛛の巣の捕縛から逃れたのも無理からぬ事だった。
女王にも似た、刺々しい頭冠の周囲に生え揃う、“頭髪”も異様である。
蟲の尾にも似た突起器官が何本も生え揃い、内3本だけが特に長い。
いや、元は左右2対だったのだが、3本に減ったというのが正解だろうか。
先端には髪飾りのような鋭い毒針が光り、時折脈打っては刃を打ち鳴らしている。
さらにご丁寧にも“外顎”まで備わっている。
何に使うのかわからないが、牙に地球人の血液が付着しているところから判断すると、既に何らかの用途を見出したらしい。
強力な指と鉤爪と、それを支える強靭な腱が走る太く逞しい“四肢”。
背中を護るように鋭角に伸びる三対の“背角”。
骨質の棘が生え揃い、端部が棍棒のように肥えてより戦闘に特化された“尾”。
狩猟者の形質を取り込む事で、蟲はより凶暴に、より戦闘的に、よりおぞましく進化していた。
なんて醜い野郎だ。
なまじ自身と似ていることがさらに醜さを引き立てている。
狩猟者の血を受け継ぎ、核の火の洗礼により変異を遂げた蟲の“混血種”。
体の底から湧き上がる嫌悪感。
掃除屋は不快感を隠せなかった。忌まわしい。
607 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/03(金) 23:09:03 ID:Pv9QM9gB
今回の掃除屋の任務は、脱走した“女王”の討伐と、一族の不祥事を隠滅する事。
それらを終えた今、掃除屋は本来なら清掃艇で母星へ帰還すべきであった。
掃除屋としての仕事は終わっている。
激戦の果てに、掃除屋自身も疲労困憊の極みにあった。
もし母星の同胞が見れば、引き退がるべきだと言うだろう。
これ以上の戦闘は生命に関わる。
608 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/03(金) 23:10:36 ID:Pv9QM9gB
という事は、ここから先は掃除屋の“私闘”だということだ。
掃除屋は襷にかけた弾薬帯をもぎ取ると、隅へと放り投げた。
続いて、清掃箱、2丁の電磁砲を収納した鞘などを次々と脱ぎ捨て、“ヤツ”との距離を詰めてゆく。
目標を追跡する為の清掃箱も、蟲を捕らえる“蜘蛛”も、一撃必殺の“電磁砲”も、もう必要ない。
必要なのは己の身体と、闘う為の武器だけだ。
最低限の防具と愛用の“鞭”のみを残した掃除屋は立ち止まり、仮面のコードを引き抜いた。
仮面の視覚補正機能が停止し、仮面の内側の気密が破れる。惑星の濁った大気が混ざり、途端に息苦しくなる。
掃除屋は、決闘の流儀に則り、自身の顔を覆う仮面を剥ぎ取った。
609 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/03(金) 23:11:53 ID:Pv9QM9gB
仮面の下の素顔が外気に触れ、顔の大半を覆う痛ましい火傷の痕がうずく。
4本の牙を備えているはずの外顎も3本しか残っておらず、丸く広がった額も、鼻のない顔も、その火傷の為に酷く崩れている。
この左側頭部から始まる著しい顔面崩壊は、左眼を覆う金属の部品に終結している。
火傷の中心である左の眼窩には、生きた眼球ではなく、完全に機械化された義眼が納まっていた。
無論、瞳の色も狩猟者特有の燃え上がるような赤ではない。
狙った獲物を貫き射抜く、凍てつくような青である。
さぁ蟲よ、かかってこい。この私が相手だ。
普段は狡猾で慎重な掃除屋も、湧き上がる戦闘本能には逆らえなかった。
掃除屋は両手を広げ、至高の獲物へと挑発の咆哮を挙げた。
汚れた雨が降る崖で、“掃除屋”と“混血種”の死闘が始まった。
610 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/03(金) 23:14:30 ID:Pv9QM9gB
>>610 乙です。
いよいよクライマックスだな・・・生還してくれよぉ!
俺はあの顔・あの強さで毎回大真面目に大ボケかましてくれる
プレたちが大好きだ。
まったく…、強いのにウッカリとか天然さんだなぁ
狩猟者萌えですか。新しいな。
機械化した義眼とかかっこよすぎるぜ。
勝ってくれ掃除約屋…!
>>596 じゃあ池は青汁で満たそう
日記乙です。まだまだ終わりじゃないんだな…!
615 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/05(日) 01:33:35 ID:DQRhswhW
対戦相手たるその混血のエイリアンは、掃除屋の挑発に応じて吼えた。
他の蟲とは異なる、狩猟者達のそれにもよく似た、雄雄しい獣の咆哮。
掃除屋は今まで闘ってきた敵の素顔を眺めながら鞭をふるい、相手を牽制した。
巨大な“混血種”もその危険性を察知し、後ろへと間合いを取る。
ヤツの頭冠の触手と尾が脈動し、計4本の毒針が掃除屋に向けて放たれる。
掃除屋は身軽に回避し、岩に突き刺さった1本の毒針を踏みつけ引きちぎる。
さらに掃除屋はしなやかに鞭を振るって、もう1本の先端も切り刎ねた。
のたうちまわる触手の先端から飛散した酸は、黒い雨に混じり赤の大地を焼いてゆく。
頭髪が切り落とされ武器を失った混血のエイリアンは、続けざまに巨大な毒爪をふりかざした。
掃除屋の鞭が風を切り、振り上げられたエイリアンの右手首を鞭で絡めとる。
巻き付いた手首が切れ、傷口から酸が零れた。少しでも力を加えれば女王同様混血種の手首は刎ね飛ばされるはずだ。
しかし、予想外なことに、逆に混血種は思い切り腕を引き上げた。
桁外れの腕力によって“鞭”が掃除屋の手から奪い取られ、宙を舞い、崖の彼方へと堕ちてゆく。
616 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/05(日) 01:35:15 ID:DQRhswhW
好機とばかりに混血種は掃除屋に向かって猛烈な突進をくわえた。
小さなプレデターの筋肉が躍動し、巨大なエイリアンの一撃を全身で受け止める。
両足にはめた安全靴が錆びついた大地に沈み込み、地面を滑った。凄まじい力だ。
闘いの衝撃に堪え切れなくなった崖がついに崩落した。
混血種としては掃除屋のみが落下する計算だったのだろうが、そういうわけにはいかない。
掃除屋は混血種の腕を抱え込み、共に奈落の底へと引きずり込んだ。
落ちる直前、混血種の“舌”が掃除屋の額を狙い、寸でのところで空を噛む。
2人の戦士がもつれ合いながら、赤茶色の崖を滑り落ちてゆく。
617 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/05(日) 01:37:48 ID:DQRhswhW
崖を滑走しながら掃除屋は体勢を立て直し、混血種の胴を蹴り飛ばして間合いを築く。
不意に強烈な蹴りを受けた混血種は姿勢を崩し、各所に突出していた岩で全身を傷つけた。
蛍光色を帯びた酸の染みが岩肌に点々と残る。
底が見えてきた。
掃除屋は受身の姿勢をとり、身体が傷つかないよう着地する。
墜落の衝撃を受けたはずの混血種は、通常のエイリアンを遥かに凌駕するその驚異的な生命力で持ち堪えた。
その雄叫びには、弱々しさや恐怖など微塵もない。興奮の余り、痛覚が麻痺しているのだ。
掃除屋の間合いへねじりこむ混血種に、右手の鉤爪を伸ばし応戦する掃除屋。
凄まじい速度の打ち合い。力と技の衝突である。
618 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/05(日) 01:49:44 ID:DQRhswhW
今宵はここまで。
>>614 終わりそうに見えるだろ?
実はコレ、まだ終わらないんだぜ……?
『第一部:完!』とか言えば良いのかい?
いやそこは、「俺はようやく登り始めたばかりだからな・・・」と言うべきでは。
「未完」かいw
続きwktk
∈月∽日
またカネダが新しい武器を買った。
こいつの武器オタクは今に始まったことではないし、そのオタクな知識に助けられたこともあるわけではあるが、やっぱりちょっとだけ呆れてしまう。
今度購入したのは、ギベオニウム製のリストブレイドだった。ギベオニウムは少し前に発見された新種の鉱物で、ちょっと特殊な文様が浮かび出て
格好いい。
強度も相当な物で、エイリアンの酸の血に浸しても十分耐えきれるそうだ。
まあリスト・ブレイドだし、他の新しい種類の武器みたいに使いこなせないってことはないだろうけど、こいつ今までにリストブレイドだけでいくつ持って
んだろうか。ケンジ先輩もリスト・ブレイドコレクターだけど、こいつのも半端じゃない数のはずだよなあ。
新しいリスト・ブレイドを囲んで三人でワイワイやっていたら、スカーフェイスさんが「随分賑やかだな」と近づいてきた。
見た目ほどおっかない人ではないし、気さくな人なんだけど、やっぱり声をかけられると俺たち下っ端は緊張してしまう。
「ほう、新しいリスト・ブレイドか。またカネダが買ったのか?」
笑いながら言われ、カネダは流石にちょっと恥ずかしそうだった。
「まあ、若いうちは目移りもするだろうし、色々と試してみるのも必要だが」
スカーフェイスさんはそう言って、腕につけているリスト・ブレイドを撫でた。
「自身の一部のように、いついかなる場所でも傍らにある武器があるというのも、良いものだぞ」
スカーフェイスさんがいつも装着しているリストブレイドは、相当古く使い込まれた物(カネダ曰く「ほとんど、ヴィンテージ物」)だ。
あのリストブレイドは、ご本人が仰ったようにいつでも、どこでも、スカーフェイスさんの傍らにあったんだろう。
他の誰も知らないような、孤独な厳しい闘いも、あのリストブレイドは知って居るのだろうか。
「ところで、せっかく新しい武器を手に入れたんだ。少し手合わせしてみるか?」
にこにこと笑いながら、スカーフェイスさんはとんでもないことを言った。
いや、とてもありがたいことなんだけど。そうなんだけど・・・!!
「す、すみません!俺たち、任務があるんで、もうそろそろ準備しないと!」
「そうか。お前たちも忙しくなったんだな。気をつけて行ってこいよ」
そう言ってそこで別れたけど、なんだかちょっぴり寂しそうだった。
嘘ついてごめんなさい、スカーフェイスさん・・・・。
掃除屋日記、キノシタ日記乙です。
黒い雨の中で闘う二匹の鬼…!かっこよすぎるぜ!
スカーフェイスはナイスキャラだなぁ
キノシタの日記は久しぶりだなあ。
スカフェカワイソス・・・。
ワタナベ「スカーフェイスさんの稽古を断るなんて・・・もったいないなァ」
626 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 00:37:26 ID:QqkHKEVn
闘いの中で、“混血種”は勝利を確信していた。
確かに相手の攻撃は巧みだが、蓄積していた疲労が徐々に一撃の威力を削いでいくのがわかる。
かたや満身創痍、かたや疲れを知らぬ帝王。
決闘の勝敗など最初から決していた。
闘いの中で、“掃除屋”は敗北を予想していた。
相手の攻撃を巧みにしのいでいるが、蓄積していた疲労が掃除屋から徐々に力を奪っているのがわかる。
かたや満身創痍、かたや疲れを知らぬ最強の蟲。
決闘の勝敗など最初から決していた。
627 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 00:38:34 ID:QqkHKEVn
ついに混血種の鉤爪が、掃除屋の髪を捕らえ、獲物を掴み挙げた。
混血種の怪物染みた握力と、掃除屋自身の自重に堪えかね、髪留めが弾け飛ぶ。
掃除屋の指がかかるものの、その爪も敵の装甲のような外殻を前にあまりに無力であった。
続けて胴に入った強烈な蹴りで、掃除屋の身体は宙を舞い、岩壁に叩きつけられた。
肋骨が折れたようだ。内臓が損傷し、掃除屋は鮮緑色の血を吐き出す。
間髪入れず、混血種の尾の毒針が掃除屋の胸当てを刺し貫く。
628 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 00:40:18 ID:QqkHKEVn
捕まえた!
怪力で獲物の身体を壁に押しつけると、まず両手で張り手を食らわせた。
胸郭が圧迫され、牙の隙間から鮮緑色の血が吹き出た。
“混血種”の心中は怒りと殺戮への欲求に煮え繰り返っていた。
ただ殺すだけでは飽き足らなかった。
殴りつけ、蹴り上げ、叩きつけ、引っ掻き、噛みつき、細心の注意を払いながら、彼は獲物を嬲った。
殺す前に、出来る限りの苦痛を味合わせてやらなければ。
獲物の身体から力が抜けてゆくのを感じ取る。
が、対照的に、獲物の身体から発散されている戦意は微塵も失われていなかった。
これまでの獲物なら戦意を失うどころか、とっくに死んでいるはずなのに。
帝王の矜持に傷がついた。ついにかの怒りは絶頂に達した。
生きたまま皮を剥ぎとろう。その悲鳴が無意味になるほどの苦痛を与えてやる。
混血種は大顎を広げた。
629 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 00:51:00 ID:QqkHKEVn
“必要なのは獲物を逃さぬように確実に捕らえる事。”
敵の猛攻に耐えながら、掃除屋は頭脳を働かせ続けていた。
蟲の身体の中で最も脆い急所、それは顎の下だ。
変異体とはいえ、ヤツも同様に違いない。
痛みを堪え、掃除屋は蟲の頭部へ左手を叩き込んだ。
削岩機へと変形した鋭い手刀が、無防備な怪物の大顎に深々と突き刺さり、混血種の頭蓋を刺し貫いた。
630 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 00:51:43 ID:QqkHKEVn
混血種は、掃除屋の腕力の直撃を受けた顎で自身の“舌”を噛み切った。
飛び出した牙が岩へと突き刺さり、砕けた顎の隙間から血が混じった猛毒の涎を噴き出す巨大な蟲。
掃除屋の左腕は混血種の頭部を貫通し、衝撃で頭部全体に裂傷が走った。
巨大なエイリアンは即死していた。しかし、その膨れ上がった脳はそれを拒絶した。
混血種の頭部から辛うじて残っていた触手が巻きつき、掃除屋の左腕を締め上げた。
それでも掃除屋は手を緩めない。いや、むしろ、腕を思いきり突き上げて敵の頭部を苛んでいる。
一方、混血種もまた、掃除屋を抑え付ける尾の毒針を抜こうとはせず、より力を込めて押し込んだ。
濁った豪雨の中で戦士と戦士が絡み合い、互いの命を燃やし尽くそうとしていた。
完全なる生物『エイリアン』と宇宙の狩猟者『プレデター』は互いに一歩も譲らない。
631 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 01:08:51 ID:QqkHKEVn
今宵はここまで。
ラストスパートあと2回。。。
>>623 日記乙です。三人組いいなぁ。
リストブレードにもブランドとか色々あるんでしょうか。
幻のコテツとか、呪われたムラマサとかw
>>631 日記乙です
混乱を司るブレード「マサフミ」とかw
>>631 乙〜。ゴール目指して頑張れ。
そう言えば、少し前に出た三日月宗近。ちょうど今国立博物館で展示
してるんだよな。阿修羅展のついでに見てきたわ。
>>631 深夜に投下乙です。
タケダの爺様がご褒美用意して、フィナーレを待ってるよ。
刀コレクターのプレいそうだな。
635 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/08(水) 23:23:10 ID:QqkHKEVn
薄れゆく意識の中で“混血種”は、様々な“事”が零れ落ちてゆくのを感じた。
兄弟達を次々と葬り、女王をも殺した敵に対する憎悪。
自身の成し遂げた事への誇り。
女王を解放する為にその身を犠牲にした兄弟に対する悲しみ。
兄弟達への親愛。
忠実な息子にして優秀な指揮官だったアルファエイリアン。
種の繁栄のために自らの身を捧げた女王の慈愛。
生まれて初めて行った狩りの充実感。
愛すべき家族が2度も滅ぼされた時の怒り。
誕生する時の苦しみ。
混血種の脳内から、ありとあらゆる事柄が順に消えてゆく。
脱皮した時や頭髪を失った時などとは異なり、苦痛は然程感じなかった。
死は、彼が考えていたよりもずっと優しかった。でも、このまま全てを失う事は苦しかった。
初めて経験する“死”というものに対して、混血種はひたすら抵抗し続けた。
エイリアン種の強靭な生命力を以ってしても、死は避けられない。
例え脳が拒絶しても、死は着実に迫ってきた。
死はとても優しかったけれど、同時にとても残酷であった。
爪を突立てている敵の腕が、混血種の頭部をさらに突き上げる。
傷口から酸の体液が噴き出し、雨と共に全てが流れ、消え去った。
種の繁栄の欲求、自身の事、そして女王のことも。
最後に混血種に残されたもの。それは眼前の敵を殺す事だけだ。
敵を捉えたエイリアンの尾に、ますます力がこもった。
一呼吸する度、血が体外へ流れ出てゆくのを感じる。
“ヤツ”の頭部から酸が零れ、雨に洗われた素肌を焼き始めていた。
その頭蓋に突きたてた左腕は酸に冒され、怪力でひき潰され、もはや用を足さないだろう。
幸いにして毒針は肉体に到達していないものの、負わされた内臓の損傷も決して軽くは無い。
この緊張状態が長時間続けば確実に死ぬだろう。
しかし掃除屋、いや、プレデターはそれでも満足だった。
負傷などどうでもよい。死がなんだというのだ。もはや苦痛すら感じていなかった。
至高の獲物に巡り会えた喜び。最高の狩りへの興奮。
『戦場にようこそ!』
こんな時に師匠の事を思い出すとは、なんとも妙な事である。
あるいは、死に瀕した者が見るという、走馬灯とかいう奴かもしれない。
プレデターは回想する。
突然の襲撃だった。
血族は皆殺しにされ、多くの戦士達が散った。
ただ一人生き残ったプレデターも深い傷を負い、他の群れの中で最下層へと墜ちた。
最下層のさらなる底辺という地獄を、プレデターは味わった。
運命は全てを奪っていった代わりに、幼いプレデターに生きる術を与えた。
師からありとあらゆる狩りの技術を叩きこまれ、多くの事を学んだプレデターは生まれ変わる。
蟲を生涯の友とし、ただ粛々と同胞の後始末をする孤高の掃除屋へと。
命などくれてやる。不本意ではあるが、引き分けだ。
掃除屋は左腕をますます突き上げ、眼前の敵を殺す事だけに専念した。
例えこの命果てようとも、誇りだけは捨てるものか。
両者が絡み合ったその頭上で、大爆発が起こった。
時間切れだ。崖の上に『仕掛けられていた』殺虫剤がついに爆発した。
雨と、闘いの反動で緩くなっていた岩盤がさらなる衝撃を受け、崖を滑り落ちる。
凄まじい量の土砂の波が2人の戦士を飲み込んでいった。
あ、やべ、話数計算ミスった ><
とりあえず今宵はここまで。。。
意外と抜け目無いw
どちらも良いぜ。掃除屋も、エイリアンも。
うちの近くの桜も散り始めた。
なんとなく、プレと桜って合うかもしれない。
その昔、アメリカ合衆国ロサンゼルスに一人の凶戦士が降り立った。
数々の兵器を手に凶戦士は“善良なる”ロス市民達を虐殺。
ロス市警マイク・ハリガン警部補の捨て身の攻撃により凶戦士は倒されたものの、その圧倒的な技術力と戦力を前に地球人は無力であった。
これを機に異星人対策機関設立の動きが活発化、アメリカ合衆国国防総省内部に対異星人特務機関“A.V.P.”が設立される。
十数年後、異形生物達を乗せた船が地球アメリカ合衆国の田舎町ガニソンへと墜落。
無秩序に殺戮を繰り返す異形生物達を抹消せんと、異星人達は一人の掃除屋を地球へと派遣。
が、予想以上の進化を遂げた異形生物達を前に掃除屋は苦戦、激戦の末に惨敗を喫した。
かねてより異星人、コードネーム『PREDATOR』への研究を進めていたアメリカ合衆国特務機関“A.V.P.”はガニソンに残されていた異星技術を回収。
研究成果はのちの宇宙進出に生かされ、さらに恒星間軍事企業“ウェイランド・湯谷社”へと引き継がれる事となる。
その昔、恒星間軍事企業“ウェイランド・湯谷社”の所有する輸送船が惑星Lv426へと降り立った。
当時、ウェイランド・湯谷社は全社員に対し
『知的生命体の存在の可能性を示す組織的な送信は、いかなるものもこれを調査せねばならない』
と規定しており、異星の知的生命探索に余念がなかったのである。
社の規定に従った輸送船の乗組員達は、巨大な異星人の宇宙船へと乗り込み、そして異形生物と接触した。
乗組員の身体に寄生し、まんまと輸送船へと侵入した異形生物は乗組員達を次々と殺害。
輸送船の乗組員5名の生命と大型貨物船4200万ドルを失う大惨事となった。
その後、Lv426の植民地開発が進められ、植民地住人達が異形生物と接触。
植民地海兵隊によって掃討作戦が行われたが、大気変換施設の爆発によって異形生物の痕跡は跡形もなく消失。
以来、ウェイランド・湯谷社は異形生物を数十年に渡って追跡し続けたものの、結局徒労に終わる。
それらの出来事から長い年月が流れた。
2世紀という長大な時間の中で、多くの物が消え、多くの物が現れた。
地球で覇を唱えた湯谷社も倒産、人々の記憶から異形生物や異星人の事は完全に忘れ去られた。
あの異星人の小型艇が発見されるまでは。
この事件でただ1人生き残った地球人こと、“彼”は、そんな歴史秘話に興味は無かった。
これらの歴史は単に、過去の人間達の無能さ加減を表しているだけに過ぎない。
純粋なる知的探求の徒である彼にとって、名誉だの地位だの人道主義だのは二の次である。
ただ好奇心のみが彼を突き動かしていた。
戯曲ファウストで、主人公が全てを知る為に大悪魔と契約したように、彼は自身の好奇心を満足させる為なら悪魔とでも手を結ぶつもりでいた。
彼にとっての最重要事項は、目の前のものを研究する事だけだ。
この異星文明から学べる事は実に多い。一生かかっても学びきれないかもしれなかった。
その全てが、彼の手のひらの中のメモリーディスクに収められている。
異星人のテクノロジーの現物も異形生物の標本も何一つ得られなかったが、これ1枚あれば十分再現は可能だ。
じきに、より多くの研究標本が手に入る歓喜に、彼は狂わんばかりであった。
とはいえ、いつまでもこのメモリーディスクと睨めっこしているわけにもいかない。
ディスクの真価は、より本格的な施設や充実した設備あってこそなのだ。
本音を言えばいくつかの研究標本も欲しかったのだが、贅沢は言っていられない。
このディスクが残っただけでも奇跡だと思わなくては。
さて、そろそろ寝る事としよう。さよなら荒野惑星、おはようございます地球の都会。
服を脱ぎ、宇宙船を自動操縦に切り替えると、彼は冷凍睡眠装置の中へと入っていった。
今宵はここまで。。。
ここら辺は、人間視点で書こうとして挫折した名残だったりします。
乙
言い回しがアレだけど、テンション上がってるだろうからしょうがないか。もっとヒャッハーしてもおかしくないしな
>>649 乙です。
げげっ、プレの技術が人間の手に・・・!!
あれからどれほどの時間が経ったのだろうか。
暗闇の中でふと 彼女 は目を覚ました。
崩れた土砂の山を打ち砕き、闘いの勝者は起き上がる。
653 :
最終回なので ◆AvP.enmOzE :2009/04/10(金) 21:17:34 ID:FSRhbrYi
自身の身体を覆うように相手を引き倒したのが幸いした。
敵の巨体と頑強な骨格が土砂の直撃を受け流し、それ以上の身体の負傷を最小限に抑えていた。
受けた傷は決して軽くはないが、揚陸艇が直に迎えに来るだろう。
清掃艇に備え付けた治療装置を使用すれば少なくとも母星まではもつ。
自身の状態を確認した戦士は、素肌が晒されている事に気がつく。
刺し貫かれた“胸当て”と、左腕を覆う“戦闘手甲”がなくなっている。
決闘の前に放り捨てた装具達と同様、あの土砂に埋まってしまったのだろう。
今、身体を覆うものは何もなかった。数々の闘いの中で鍛え抜かれ、引き締まった肢体が露わになる。
構わず、戦士は土砂を突き崩し立ち上がった。
654 :
ちょっぴり長めになるかも ◆AvP.enmOzE :2009/04/10(金) 21:19:56 ID:FSRhbrYi
装甲が剥ぎ取られた左腕から、鮮緑色の血液の代わりに火花と白い潤滑液が吹き出た。
その左腕が操作盤と一体化した特別製の義手である事を知る者は、母星の同胞の間でもごく僅かだ。
強力な腕力と強度で持ち主を補助する頼もしき相棒だが、激戦の末に故障してしまったらしい。
母星に帰ったら早速修理する事としよう。
腰当などの各種防具はもとより、“清掃箱”や“仮面”も多少の爆発や衝撃には耐える仕様である。
回収は可能だ。他のものはどうでもよかった。
肝心のものはすぐに見つかった。
幸運にも、岩肌に絡みついていた“鞭”は爆風に煽られ、落盤の範囲から逃れていた。
彼女は、落下の衝撃で愛用の武器が破損していなかった事に安堵する。
尊敬する師匠から受け継いだ唯一の武器だった。
これだけは代用品が無い。かけがえのないもう一人の相棒である。
生き残った勇者は、自身の装具を鍛えた母星の職人達に感謝した。
右手には、闘いの結末として“混血種”の頭部が下がっている。
この狩りを思い返しながら、次なる仕事への意欲を燃やす為の首級。
これまでの狩りで仕留めてきた獲物達と同様、こいつもよい首級になるだろう。
655 :
詰まったら支援をお願いします ◆AvP.enmOzE :2009/04/10(金) 21:21:13 ID:FSRhbrYi
“掃除屋”は勝利の咆哮を挙げた。
雨はあがっていた。
656 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/10(金) 21:23:38 ID:FSRhbrYi
物音一つしないはずの船内で、何かが動いていた。
そいつは機械ではなかった。
いや、ただ一つの目的を持って生まれたという点において、そいつはある種の機械とも言えなくも無い。
言えなくも無いのだが、機械というには そいつ はあまりに異形過ぎた。
乗員の安全を保ち目的地へ帰還するという一つの目標の為に動作している機械達にとってみれば、それは異物以外の何者でもない。
そいつは強靭でしなやかな尾と、繊細かつ強力な指を持っている、世にも優雅な異形であった。
目も耳も鼻も無いそいつは、文字通り手探りで獲物を探している。
殺虫剤の爆発からただ一匹生き残ったそいつ、“エイリアン・フェイスハガー”は、繁殖の欲求に突き動かされ、自身の任務を果たさんと、鋼鉄の密室の中を徘徊していた。
掃除屋、女だったのかぁぁあああ!
しえーん!
658 :
◆AvP.enmOzE :2009/04/10(金) 21:25:56 ID:FSRhbrYi
見つけた!ついに見つけたぞ!
生まれ持った超感覚で目的地へと行き当たり、人間の手にも似たエイリアンの幼生は歓喜に打ち震えた。
冷凍睡眠装置へと鋭い爪がかかり、長い尾が気密シールに纏わりつく。
障壁があるな。指でまさぐる。
ここで諦めてなるものか。自身の任務に忠実なそいつは腹部の口腔から液を分泌した。
猛毒の液に睡眠装置内の気密が侵され、船内に強烈な刺激臭が漂い始める。
揮発性の有毒なガスだが、深い睡眠に捕らわれている部屋の主は目覚める気配も無い。
警報は作動しなかった。衝撃や火災には対応出来ても、薬品を利用した異形生物の侵入は防げなかった。
焼け穴は徐々に拡大していき、やがて侵入できる程度の大きさになるや否や、そいつは指を滑り込ませる。
万力のような怪力で穴を押し広げ、そいつはやっと冷凍睡眠装置内部へと侵入した。
8本の指が生えた巨大な掌が、眠る地球人の顔面を包み込んでゆく……。
地球へ向かう宇宙船の中、誰にも聞こえない悲鳴がこだました。
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◆AvP.enmOzE :2009/04/10(金) 21:29:57 ID:FSRhbrYi
これでおしまいです。
お付き合いいただき、ありがとうございました。