【ロリ】ロリババァ創作スレ2【幼女】

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90スターダスト ◆C.B5VSJlKU
タイトル:広がる宇宙の中、小さな地球(ほし)の話をしよう

「のう、あれ喰うて良いか?」
 ある夕方のメインストリート。何かを指差す少女が傍らの青年を見上げた。
「ダメ」
 腹部に寄り添って目を輝かす少女を呆れたように見下しながら、紺のブレザー姿の青年は
嘆息した。一方の少女はやや紫かかった黒髪の果てでポニーテールを揺らしながら「え?」と
息を呑んだ。「ダメ」という答えが心外だったらしい。平素は活発そうに吊りあがった大きな瞳
は言葉の意味を理解すると同時に悲しみにくしゃくしゃと歪み始めた。
「なんでいつもお前は人の喰ってる物欲しがるんだ?」
「だってわし、食べ物持っとる人みるとお腹がすいてしまうのじゃ。ええのう、自由に喰えてえ
えのう、手軽に満腹になれてええのう……とな」
 少女の指の遥か先では、クレープを食べながらにこやかに会話する女子高生の一団がいた。
青年としてはクレープよりもミニスカートから覗く白い足に注視したいところだが、しきりに「喰い
たい喰いたい」と地団太踏み始めた少女が傍にいてはそれもできない。光の加減だろうか。忸
怩たる思いの青年の眼下で少女の髪が錫製の酒器のごとく蒼く濡れ輝いている。錫色の髪。
彼は不覚にもぼうと一瞬見とれかけたが、耳に響く笑い声のハーモニーにすぐさま現実に立ち
返った。
 見れば女子高生軍団がくすくす笑いながら青年と少女を眺めている。ワガママな妹を持て余
す兄。そう思っているのが微笑ましい表情から見て取れた。
(違う! こいつはただ隣に住んでるだけで)
 内心慌てて弁解しつつ少女の肩を抑えると、一段と大きな笑い声を残しながら女子高生軍団
が視界の中から消えていく。
「ああっ! 行ってしもうた……。喰いたかったのうあれ」
 指していた指を物欲しげにしゃぶりながら、少女は黒珊瑚の色した大きな瞳を涙にうるうると
潤ませた。
「尖十郎が許可をよこさんから、尖十郎が許可をよこさんからわしはまた腹ぺこじゃ……」
「俺のせいにすんな! だいたいさっき特盛チャーハン十杯も平らげたのはどこのどいつだよ!」
「ここのわしじゃ! 恐れ入ったか!」
 薄い胸を誇らしげにそっくり返す少女に、尖十郎と呼ばれた青年の頬がみるみる怒りに歪んだ。
「フザけんな! あれ一杯で五合分ぐらいの米使ってんだぞ! 歩きながら計算したけど十杯
だいたい大体16.5kgぐらいの米がお前の体内に入った計算だ!」
「ほう。我ながら凄いのう。確か”すーぱー”で売っとる一番でっかい米袋でも15kgじゃったか」
「それのだいたい一割増しを平らげといてなんでまだ喰いたがるんだ! だいたいそんなちっこ
い体のどこにさっきの喰い物が収まってるんだよ! そもそも学校帰りに飲食店で堂々と買い
食いすんな!!」
 後半は半ば悲鳴である。さもあらん、少女の身長は青年の腹ほど……130cmあるかない
かという位の小柄なのだ。これ位の身長の小学生女子の平均体重がおよそ27〜30kgであ
り、大食漢で知られるラッコでさえ一日に食べる量は己の体重の三分の一ほどである事を考
えると、一食で体重の半分以上を食べてなお空腹を覚える少女というものはいかがなものか。
「さあのう。普通に考えれば胃袋あたりなのじゃが……この点わしにもとんと皆目がつかん」
 少女は困ったように眉を潜めて腕を組んだ。
 衣装は今日びの小学生には珍しい黒ブレザーにネズミ色のミニスカート
「実をいうとあれの数倍ある代物を喰ったとてあまり腹持ちせんのじゃ。科学の神秘じゃのう」
「生物だろ」
「まあ生物学の範疇でもあるじゃろな」
 うむうむと頷く少女の名は木錫(きしゃく)という。
「しかしいつも思うけど変わった名前だな」
「これでも結構簡単にした方じゃぞ。わし自身の”ぱーそなりてぃー”とやらを表すために」
 彼女は横文字が不得手らしく、発音するときはいつも舌ッ足らずである。
 ちなみに先ほどから少女に悩まされている紺ブレザーで短髪している以外あまり特徴のない
青年の名は坪錐尖十郎(つぼきりせんじゅうろう)といい、少女との間柄を分かりやすくいえば
「お隣さん」である。