【ロリ】ロリババァ創作スレ2【幼女】

このエントリーをはてなブックマークに追加
415創る名無しに見る名無し
「仮にも魔王の欠片ぞ。妾のような人畜無害ならともかく、大抵はこのように
邪悪の塊。下手をすると取り憑かれて、さっきの若者みたいになってしまう」
「……つ、つまりこの黒いのは」
 三人の死体から噴き上がった黒い霧は一つに固まり、やがて見上げるほど大
きな人型をした霞へと変わった。
 その魔王の左手が家の石壁に触れると、そこがじゅうと音を立てて溶けてし
まう。
 顔の目に当たる部分だけが二つ、赤い光を放っていた。
「だから、魔王じゃ。妾と同じな。さあ、戦うか逃げるか、どちらか選べ」
 正面の魔王から感じる圧力と殺気は、相当なモノだ。
 少年は、頬を伝う汗を拭った。
 背中を見せたら、その瞬間に敵の手が伸びるだろう。背中にでも触れられた
ら、それだけで大火傷を負いそうだ。
「た、戦うって……どうやって。武器も溶けるような相手に……素手だと取り
憑かれるんだろう?」
「うむ、今は手がない」
「じゃあ、逃げるしかない……」
「だな」
 そう、それが正解。
 だが、少年はそこで踏みとどまった。
「でも、逃げたらコイツ、人を襲うよな」
「うむ」
 路地の左右に視線をやる。
 スラムには、どうしようもない大人も多いが、少年の友人知人も沢山いるの
だ。
「だったら、一択しかないじゃねえか」
 少年は半分溶けたショートソードを構えた。
 そして、握っていた小さな魔王も解放してやる。
 彼女はそのままま、少年の肩に乗っかって心配そうに囁いてくる。
「……よいのか? このまま逃げて、ついでに妾も逃がせば、もうお前の人生
には魔王なぞ、まず今後一生関わりなくなるぞ」
「見損なうな。仮にも目標は正義の味方。この程度の困難で逃げてちゃ一生そ
んなモンにはなれねーよ」
「そうか。それで何か妙案はないか」
「ある」
 一度、少年に倒されたせいか、巨人と化しても魔王は慎重だ。
 少年は、ジリジリと間合いを計りながら、肩の小魔王と会話を続ける。
「ほう、聞こうか」
「お前は魔王だという」
「うむ」
「アイツも魔王なんだよな」
「その通り。だが妾は見ての通りか弱い存在。とても奴相手には戦えんぞ?」
「アイツは、倒れてる奴に取り憑いたんだろう? それぐらい、お前にだって
出来るんじゃないか?」
「待て、それはつまり」
 少年はショートソードを捨て、拳を構えた。
「俺に取り憑け魔王。そうすりゃ、少なくとも互角の勝負にはなる」
「……妾がお主を乗っ取るとは思わんのか」
「それをやる気だったなら、とっくにやってるだろ。出来るのか出来ないのか」
 霧状の黒魔王の身体がジワリと揺れる。