「昔は、そういう趣味嗜好はなかったのか?」
「今の世とは、おぬしの言葉を借りれば価値観が違うからの……例えば、
わしの生まれた頃は、貴族は皆『ろりこん』じゃったから」
「源氏物語とかかぁ……まあ、確かにロリコンだよな、今からすると」
「わしとて、求婚された事はあるのじゃぞ?」
「うそ、マジで!? ……凄いなぁ、昔の人」
こいつの外見年齢からすると……確かに、どう考えても、言い訳しようが無い
くらいにロリコンだ、その人。まあ、結婚が儀礼的、政治的意味を失ってる
今みたいな時代だから、そう思ってしまうのだろうけど。
「そう考えると、こやつらも『ろりこん』なのじゃろうか?」
「あ……うん、多分そうなんじゃない?」
チラシを指し示しながらそういう彼女に、俺は曖昧な頷きを返した。
「しかし、『ろり』を嗜好する意味合いはわかるが、そこに年嵩を加える事に
どのような意味があるのじゃろうか……」
「見た目と中身のギャップとか、そういう感じじゃないかな」
「ふむ……では、お主もか?」
「ぶっ!?」
思わぬ攻撃だ。俺は思わず視線を彷徨わせた。
「……それとも、わしの事は遊びという事なのかのぅ……」
「べ、別にロリコンってわけじゃ……単に、その、お前がたまたまろりぃな
外見だったってだけで……えっと……」
「ほっほっほっほ、冗談じゃ、慌てんでもよい」
……からかわれた、のか。ガッデム。
「さて、そろそろ昼餉の時間じゃ。今日はうちで食うのじゃろ?」
「あ、ああ、そのつもり……って、まさか!?」
「おぬしの分もたんと作ってあるから、しっかり食べるんじゃぞ」
「お前が作ったの? いいって言ってるのに……」
「遠慮せんでもよい。さあ、たんとお食べ」
「……お前が作ると、何でも甘くてお菓子な感じになるからなぁ。美味いけど」
「美味いのなら問題は無いじゃろう。さあ、食え食え」
嬉しそうに笑いながら、彼女は俺を食卓へと引っ張っていく。
……ま、いっか。確かに味は美味いしな。
「そうじゃ」
不意に、彼女は立ち止まり、俺の方を見た。
「先の言葉……嬉しかったぞ」
そして、とびきりの笑顔を浮かべて、そう言った。
「………………」
「だから、大盛りサービスじゃ……っと、なんじゃ? 顔を真っ赤にして?」
「……もう駄目。お腹いっぱい胸いっぱい」
はあ……まったく、貴方たちの気持ちがよくわかりますよロバ研の皆さん……。
「まあ、そう言うな。まだまだ成長期じゃろう、おぬしも。たんと食えたんと」
「はいはい、たんと食わせていただきますよ。お腹が破裂する程にね」
まったくもって……最高だよな、ロリババア。そんなロリババアが、一番大切な
人だなんて……俺の人生も最高かも。
そんな事を思うと、自然と俺の顔には笑みが浮かんでいた。
願わくば……こんな日々がずっと続きますように……そんな願いと、想いをこめた笑みが。
終わり