【ロリ】ロリババァ創作スレ2【幼女】

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「逃げたら貴様は先ほどの一般人を喰うつもりだろう」
「わしは彼が好きなのじゃ」
 答えになっているかどうかも分からない答えである。
「ところで『きしゃく』というのは名ではなく苗字でのう。字も本当は『木錫』ではない。わしの居
る組織の連中みなみな能力がそのまま名字でな、くされ縁のえろぐろ女医など衛生兵の英語
読みを苗字にしておる。とはいえわしは見ての通りの老体ゆえに横文字には疎い。よってそ
のまま能力を苗字にしたのじゃが、はて困った、みなみなわしが名と苗字を漢字で連ねるたび
に難しくて読めぬという。やはり今日びの若人には漢字は受けんのじゃろうな。よって両方か
たかなにしたのはやんぬるかな。しかし字面で並べるとどうも名より苗字の方が見栄えがよく
てのう、偽名を名乗る際は苗字を名前としておる」
 つらつらと長広舌に及ぶ木錫……いやもはや木錫が偽名と自白した少女に、男は何も手出
しが出来ぬ。そうであろう。自らの能力を既に封殺した相手に一体何ができようか……。
「ところでヌシは錬金術と占星術の関連を知っておるか? ああ、別に答えんでもいい。わしが
いいたいのはそれら総ての知識に比ぶれば砂粒のごとき小さな知識、一言二言ですむのじゃ。
要するにじゃな、木星は錫(すず)と関連が深いのじゃ。錫というのは”ぶりき”やら”ぱいぷお
るがん”の”ぱいぷ”やらに使われとる金属だそうなんじゃが、錬金術やら占星術的にはこれと
木星が関連付けられておるという。そしてわしは『まれふぃっくじゅぴたー』なる役職でな。漢字
で書けば『凶木星』……ま、本来、”ぐれーたー・べねふぃっく(大吉星)”といわれるほどの木
星が凶象意を孕むのも妙な話じゃが、そういう決まりゆえ仕方ない。おと。話が逸れてしもうた
な。まあぼけた老人の長話として笑って許せい」
 まったく隙だらけの少女である。
 男は考えた。いかな術法であれ集中力が途切れたその瞬間にならば解けるのではないか?
「要するにだから木錫なのじゃ。わしの偽名な。役職が『木星』で『錫』がそれに連なる金属ゆ
えに縮めて木錫。なかなか頓知が効いてて面白いじゃろ?」
 少女が優越混じりの息を吐いた瞬間、うねりを上げた鉤手甲が殺到した。
 果たして小さな頭はガリっという音とともに爆ぜ、錫色の髪の毛がばらばらと舞い散った。
(やったか!?)
 そう息をのむ男の前で少女の頭はどろどろと溶けていく……。
 よく観察すると傷によって溶解したのではなく、口から流れる涎のような液体によって顔面全
体が溶けていくようだった。例えるなら地盤沈下を来したビルの如く、下から順に顎、頬、目、
額、最後に頭というように溶けた肉汁が口中へ埋没していくのだ。そしてその肉汁は首を伝っ
て胸を流れ少しずつ少しずつ少女の原型を崩していく──…
「こりん奴よのう。亀の甲より年の功……。年長者の話はじっくりと聴いて損はないというのに」
 だが少女は喋る。動くべき唇も声を発すべき声帯も溶けてなくなっているというのに、どうい
う理屈か声だけは響くのだ。
「仕方ない。退かぬとあらば殺す他なかろうて。仮にも『まれふぃっくじゅぴたー』という要職に
あるわしがここまでされて何もせぬとあらば沽券にかかわろう。といってものう、あまり喰いで
がなさそうな相手ゆえ気乗りせんがのぅ……」
 腹も足もとろけて下に垂れて行き、やがてマンゴー色の飴を溶かしたような水たまりが畳に
溜まっても声は続く。まったく不気味極まりない。
「忍法我喰い(われくらい)もどき」
 細い目つきをカッと剥きながら男は足元を眺めた。少女だった”モノ”はいまやアメーバか何
かのごとく、ズズッ、ズズッと男に向かって這いだしている。不思議な事に畳に染みついた血や
そこらに転がる肉片とは混ざらないらしく、波濤が砂浜をこそぐる様な調子で通りすぎるのだ。
 男は素早くしゃがみ鉤手甲を振り下ろした。もちろん手ごたえなどない。
「愚かじゃのう。液体の類はまず斬れまいよ。わしを従わせるやんどころなき御方なら別じゃが」
 ちなみに彼女の服や下着は先ほど突っ立っていた場所で無造作に転がっている。白いフェレッ
トと赤いマンゴーの飾りのついたかんざしも服の上に落ちている。
「あ、そうそう。わしの能力と本名をまだ紹介しておらんかったの」
 男の背後で少女は再生した。
「まず能力名じゃが『ハッピーアイスクリーム』という。可愛らしいじゃろ? 横文字に疎いわし
がかたかなで発音できるぐらい気に入っておる」