【ロリ】ロリババァ創作スレ2【幼女】

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「……いやじゃ!」
「いやってお前」
「さっきもいうたじゃろ。わしとヌシが一緒にいれば襲われても何とかなる!」
「そういうけどお前。大体、誰かが不法侵入したと決まった訳じゃ──…」
 言葉と同時に尖十郎の視線が一点に止まった。
 それは階段に向かう廊下の部分。灰色にくすんだ異様な模様が刻まれている。
(靴跡……!?)
「やっぱり!!」
 尖十郎と同じ物を見た木錫が一目散に階段目がけて走りだした。
「待て! やっぱりって何だよオイ!」
 小動物のような速度で遠ざかるかんざし付きの後ろ髪に怒鳴りながら尖十郎も走りだした。
 その頃にはもう木錫、階段を五段ほど飛ばして駆けあがっている。その差を何とかコンパス
の差で埋める頃には両者とも二階に上がっていた。
 不意の無酸素運動に尖十郎は膝へ手を付き荒い息をついた。この時ほど帰宅部特有のな
よっちい体力を痛感した事はない。
「やっぱりってどういう事だよ。何か心当たりでも」
「静かに」
 息も絶え絶えの質問を鋭く遮った木錫は、閉じた木戸の前を指差した。
 暗くてよく分からなかったが、茫洋とした灰色の模様が浮かんでいる。靴跡だとすれば何者
かが侵入したという可能性はますます否めない。
 引き返そう。その言葉はしかし紡ぐべき時期を逸していた。
 放胆にも木錫は木戸を開けた。自動ドアというよりSF映画に出てくる宇宙船のドア。そんな
形容がぴったりな速度で開いた扉の向こうに……果たして木錫の両親は居た。
 布団の上でもつれ合うように倒れている姿から尖十郎が目を背けたのは痴態を想像しての
事ではない。
 彼らは確かに体を重ねていた。部分によっては絡み合っていもした。
 下にいるのが木錫の母親だと尖十郎がかろうじて分かったのは、破れたセーターの肩胸か
ら白い膨らみがまろび出ていたためである。それが木錫の父親の左肩に押しつぶされ、更に
彼の左大腿部の影に黒く焙られている。と見えたのは木錫が扉を開けると同時に部屋の電灯
のスイッチを入れたせいであろう。おかげで全体像がよく見えた。部屋の全体像がよく見えた。
 前述の通り木錫母の胸は夫の左肩に潰され、その上にある右大腿部の影を浴びている。し
かしそれは本来おかしいのだ。一体どうして左肩に右大腿部が乗っいるのだろうか?
 結論からいえばそれは非常に簡単である。酸鼻なる光景を直視できれば、だが。
 生のフライドチキンのように無造作に斬られた木錫の父の大腿部が彼の肩に乗っている。
 肩は付け根から斬られ、腕らしい肉塊が骨を覗かせながら散乱している。腹も首もなくした
木錫の母親の胸は内臓の断面を尖十郎に赤々と見せつけ、腹らしい物体が新鮮な色の臓物
(ハラワタ)をブチ撒けながら首の付け根のあたりに転がってもいた。畳にはそろそろ黒ずみつ
つある血液がべっとりとこびりつき、その上に目を剥き苦悶の表情の生首が二つ転がっても居
た。指がばらばらと零れ実にバリエーション豊かに切断された手や足の破片は十や二十に収
まらない。
 ……さて、描くと長いが尖十郎はその総てを確認したワケではない。
 ただ木錫の両親がバラバラになっていると認識するや、部屋に籠っていた臓腑の生々しい
匂いに吐気を催しかけた。嗅覚は初見以上の情報を掴み、視覚は初見以上の情報を拒んだ。
 にも関わらず咄嗟に彼が木錫の前に立ちはだかり、踵を返し、彼女を抱え込むようにしゃが
んだのは、黒い疾風のような物が飛び込んできたのを察知したからだ。
 後で思えばどうやら影は押入れのドアを破ってきたらしい。
 とにかく彼は木錫をかばうと同時に背中で異様な熱気が通り過ぎるのを感じた。
「尖十郎!」
 絹を裂くような悲鳴を胸の中に籠らせる青年は声にならぬ悲痛な叫びで激痛を表現した。
 背中が斬られている。
 傷の灼熱感、そして汗よりも粘っこく背筋を流れていく生暖かい液体。人生始めて直面する
異常な事態に脂汗を流し歯を食いしばる尖十郎を木錫は沈痛の面持ちで見上げた。
「かばったか」
 ひどく粛然とした静かな声に遅れて、ひゅっと風を切る音がした。
 振り返り、血の流れる背中の後ろに木錫をやりながら尖十郎は相手の姿を眺めた。
 年の頃は30半ばというところか。丸々としたいがぐり頭の下で酷薄そうな目を更に細めてい
る。鼻の頭にはあばたともイボとも思えるブツブツが浮き出ていかにも見苦しい。頬はこけ肌
の色はどこかの内臓の病気を疑いたくなるほど黄味がかっている。