安価でキャラ集めてバイオハザードしてみる

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177鉛色の目覚め:2009/10/21(水) 22:59:29 ID:QG3yvGcy
…扉の向こうの居間には誰の姿も無かった。
期待していた相手も。
あるいは期待していなかった相手も。
(…期待していた相手?私はいったい誰に会えることを期待していたんだろう?)
そのとき、戸惑う私の耳にまたあの声が飛び込んできた。

『……戸締りをゲン………て、決して外には……』

途切れがちのその声は、テレビの上に置かれたラジオからのものだった。
…戸締りを厳重にして決して外には出ないでください…
意味が通るように解釈するならそういうことになるだろう。
つい先ほど目にしたばかりの、ドアノブの下に突っ込まれた帽子掛けのつっかい棒を、私は思い出した。
外にいるであろう何かを恐れて、それが家の中に入ってこないよう、私もドアにつっかえ棒をしたのだろうか?
(…でも、私はそれが何なのか、全く覚えていない。いったい私は何を恐れて、この家の中に立て篭もったんだろう?……それに……おや?あれは……)
足を引きずってテレビの前まで行くと、私はラジオの横に立てられた小さなパネルを手に取った。
それは…中年にさしかかった男と同年輩の女性、そして少年と少女の四人を写した写真だった。
顔は、写真が古いせいなのか?靄がかかったようで判然としないが、背景だけは容易に見分けがついた。
いま私がいるまさにこの部屋で撮られた写真だ。
私は気がついた。
この部屋のドアを開けたとき、会えることを期待していた相手は誰だったのかということを。
私が探すべき人を。
(この女性は私の妻、少年と少女は私の子供たち、これは…私の家族の写真だ)
彼らはこの家にはいない。
…と、いうことは…。

私は決意した。
この家に篭って、正体の判らない恐怖に震えているときではなかった。
万が一、家族の誰かが戻って来たとき行き違いになるといけないので、これまでのことを
ここに記しておくことにする。
私は行くかねばならない。
ドアを開き、外の、鉛色に染まった世界へと。

178復活の町:2009/10/21(水) 23:01:55 ID:QG3yvGcy
ワシントン州西部のその地方都市は「アンカータウン」という本来の名前よりも、リライブ(復活)というあだ名の方でよく知られた存在だった。
この地に最初に定住したのは、アメリカ・インディアンのハイエク族だったという。
19世紀のアンドリュー・ジャクソン大統領の時代に、農業には適さぬこの辺りが、インディアン居留地として指定されたのである。
しかしそのわずか数年後、インディアンたちはこの不毛の地から忽然として姿を消した。いわく「疫病が流行った」、いわく「部族内対立で殺しあった」等々、様々な説が口の端に上がったが、そのいずれも風説の域を出ず、真相は未だ闇の中である。
 居留地のインディアンたちが姿を消してから15年後、この地に住み着いたのは、食い詰め白人の毛皮業者たちだった。今も町の北を流れるナラガンセット川を足場に、毛皮目当てのビーバー狩りが行われたのだ。
しかしこのビーバー狩人たちの町は、はっきりした名前すらつかないうちに、わずか数年の命を終えたることとなる。伝わるところによれば、この地に定住していた数家族のうちの一人が突然発狂。住民の大半を猟銃で殺戮した挙句、姿をくらませたのだという。

 最初の破滅はインディアンだったが、二度目の破滅は白人であったため、町が二度目の復活を遂げるには、二つの大きな力が必要だった。
ひとつは30年という時間。そしてもう一つは、「欲望」である。
かつてビーバー狩人たちが上り下りしたナラガンセット川の上流で、銅の鉱脈が発見されたのだ。町は、欲に駆られた人々の人いきれの中、三たび蘇った。
辺境の地であるにも関わらず、いや、辺境の地であるが故にか、窃盗、恐喝、強盗、横領そして殺人が、大都ニューヨークにも負けないほど横行したが、それでも町の人口は増え続けた。
町の人口が減少に転じるのは、銅鉱脈が掘り尽くされた7年後である。そのとき世界は新世紀を迎えようとしていた。

179創る名無しに見る名無し:2009/10/22(木) 12:22:52 ID:+Mq/5bto
死んだスレをリアニメートしようと思ったら、マップだのなんだのが全部見られなくなっていた。
基本的な事項も決まっていないに近いと感じたから、町をゼロから立ち上げることに…。
名前はスレタイの「安価で…」にちなんでアンカータウンとした。
死者が甦る原因も、「バイオハザード」や「REC」みたいなウイルスから、「ペットセマタリー」みたいな呪いものまで広範囲に対応できるように町の歴史を設定。
そして死者が歩き出す…と。
問題は走らせるキャラだなぁ。
上の方で上がってる名前は誰も知らん。
とりあえずは、これまでのゾンビ映画に登場したキャラを使い、5〜6スレかけて町の住民や来訪者を設定する予定。
名無しのゴンベエなゾンビばかりより、背景のあるゾンビが混ざってた方がいいだろう。
180復活の町:2009/10/23(金) 00:09:53 ID:IkC0JmvE
銅の枯渇によって急速に死を迎えつつあった町を救ったのは、皮肉にももっと巨大な死であった。
バルカン半島で巻き起こった死の嵐はたちまちのうちに旧大陸全土を巻き込む死の嵐となった。
しかし国土を戦火にさらさなかったアメリカには特需景気をもたらし、それまで国全体を覆っていた恐慌の黒い影を、完全に消し飛ばしてしまったのである。
辺境の町は、戦争末期に荒れ狂ったスペイン風邪の猛威も何故か免れると、やがて来るであろう対日戦争の備えの一つとして国策により港湾施設が整備される。
かつての鉱山の町は造船・港湾の町へと変貌した。現在のアンカータウンという名前も、このころにつけられたものである。
郷土史家は、町の経済的なピークをおそらくこのころであったと考えている。だが、こんどの繁栄も、やはり無限にはつづかなかった。
 ナチと日本帝国の破滅後にやって来た東西冷戦の時代は、巨大原子力空母や原子力潜水艦の時代であった。
そしてそうした超兵器を運営するためには、それなりの巨大な施設が必要になる。
だが、アンカータウンはそこまでのキャパシティーをもっていなかった。
三度蘇った町は、四度目の死へと向かって、坂をゆっくりと転げ落ち始め……そして、五度目の復活を遂げるのである。

 死へと続く坂道を着実に転がっていたはずの町に転機が訪れたのは、いまから32年前の1977年のことだった。
PTSDで頭のいかれたベトナム帰還兵が、警官を殺して付近の山へと逃げ込んだのだ。
これを捕えるため警官と地元住民に加え、どこの馬の骨ともつかない野次馬ハンターまで参加しての一大山狩り作戦が決行。
その一部部始終が、同行したテレビクルーによって全国中継されたのだ。
お祭り騒ぎの果てに、犯人はめでたく逮捕。事件がめでたしめでたしの大団円を迎えたとき、かつての港湾都市アンカータウンは、ハンターとサバイバリストたちの一大遊園地への切符を手にしていた。

四度死に、そして五たび生き返った町アンカータウンは、その朝、六度目の復活の日を迎えようとしていた。誰も望まないような種類の「復活の日」を。
181橋の上で:2009/10/23(金) 23:44:12 ID:IkC0JmvE
橋の欄干越しにファインダーを覗くアレックスの後ろで、南から走って来た車が静かに止まった。振り返らなくともそれが誰かは判っている。
「おはようジェイスン。なにかニュースはあるかい?」
「なーんもないっスよ。アフガンでまた兵士が戦死したってこと以外はね」
気さくな声はねやはりジェイスン・クリードだった。
朝の4時半に、町と外とを繋ぐ唯一の通り道であるゲートブリッジを南から通るのは、ジェイスン以外にあり得ない。
彼の仕事は、隣町のミルズから全国紙の朝刊早刷りをアンカータウンに運んでくることなのだ。
「ところでアレックスさん」
ドアが開いてジェイスンが車を降りてきた。
「今朝はこんなところで何撮ろうってんですか?」
「マサイアス市長直々の依頼でね。市のHPに載せる朝日の写真を狙ってるところさ」
「ああなるほど…」
ジェイスンはアレックスの隣で橋の欄干にもたれかかった。
「ここからフック岬ごしに上る朝日は、とびっきりっスからね」
「おいジェイスン、こんなところで道草食ってていいのか?配達が遅れると支配人のダリオにどやされるんじゃないのかい?」
「そんなら心配ないっスよ。今ホテルの客は、イギリス人の爺さん一人だけっスから。」
「そなれらいいが」
「それに…なんつったって今は……」
今はシーズンオフだから…とジェイソンが言いかけた時だった。
町の方から無灯火の乗用車が猛スピードで走ってきたかと思うと、なにかにハンドルをとられたように突然歩道に乗り上げてきた!
「危ないっ!」
若いだけにジェイソンの反応は機敏だった。
車は歩車道の段差で大きくバウンドすると、ジェイソンと、ジェイスンに突き飛ばされたアレックスの体をかすめながら歩道上で二度三度と横転。
そのまま欄干を突き破ると、行がけの駄賃とばかりに、橋の横を走る電話ケーブルを引き千切ってナラガンセット川の流れへと転げ落ちていった。

182橋の上で:2009/10/24(土) 23:40:20 ID:zzu7SAXv
「よーし、そのままそのまま、ゆっくり、ゆっくりだ」
アレックスの携帯からの通報で、事故の数分後には市警のT・ケーヒル署長と部下たちが到着。十数分後には引き上げ作業を機敏に始めていた。
「…で、アレックス」
T・ケーヒル署長は、夜明け間近の薄闇の中ですら、トレードマークのレイバンを外していなかった。
「あの車は…」
署長の指さす先で、グレイのバンが、大量の水を溢れさせながらナラガンセット川の中から吊り上がりかかっている。
「…いきなり向きを変えて、キミたちの方に突っ込んで来たってわけなんだな?」
「そうだよトム」
アレックスは署長をファミリーネームの「ケーヒル」でなく、パーソナルネームで「トム」と呼ぶ。まだハイスクールに通っていたころの署長に、写真の手ほどきをして以来だ。
「とんでもないスピードでやって来たかと思うと、突然向きを変えたんだ」
ジェイスンもアレックスの肩越しにうなづいて言った。
「まるで、急に犬のフンでも見つけて、踏まないよう避けたみたいだったスよ」
署長の口の右端が微妙にさがって、ジェイスンに何か言おうと口を開きかけたとき……部下のクレイグ巡査が大声で叫んだ。
「署長!ちょっと来てください!!」
「どうしたクレイグ!?」
クレイグは引き攣った顔で吊り上がったばかりの車の中を覗き込んでいた。
「こ、これを見てください」
引き攣った顔でクレイグが場所を譲ると、署長にも車の中が見えるようになった。
……いつのまにか署長の後ろに立っていた部下の一人が呻くように漏らす。
「な……なんてこった。」
車内には、二つの遺体が残されていた。
助手席の遺体はシートベルトをしていなかったらしく、首から上がフロンドガラスを突き破って外に飛び出している。
そのため、首はほとんど取れかかり、皮一枚でかろうじて胴体と繋がっている状態だった。
 首の取れかかった遺体というのは、素人にとってたしかに凄惨なものだろう。だが、交通事故の現場では、あり得ぬ光景というわけではない。クレイグ巡査が署長を呼んだのは、運転席の遺体の状態によるものだったのだ。
運転席の遺体=運転手は、喉をギザギザに掻き裂かれていた。
赤い血は川の水でほとんど洗い流されてるが、そのためかえって傷口のむごたらしさが露わになっている。
「まさか…こんな状態でこいつはこの車を運転してたんでしょうか?」
そう言いながら、クレイグは事故者のサイドウィンドウに手をかけた。
すると突然!
喉を切り裂かれた死体がカッと目を見開くなり、窓にかかったクレイグの手のひらに噛みついた。
183イーグルネスト:2009/10/25(日) 20:10:31 ID:hyyTbB4W
 ゲートブリッジで「事故」が起こっていたのと同じころ。

町の北東側丘陵地帯ブラックフォレストに建つホテル「イーグルネスト」従業員フランシーンは、二階正面のバルコニーに立ち町を見下ろす人影に気がついた。
シーズンにはわずかに早いこの時期。ネストの宿泊客はイギリス人男性一人しかいない。
フランは、手早く髪を整えると笑みを浮かべて声をかけた。
「おはようございます。よくお眠りにはなられませんでしたか?」
「ああ、いや、そういうわけではないんだがね」
にっこり笑って振り返ったのは、やはりあの外国人の旅行者だった。
髪は両側だけを残してすっかり禿げ上がり、残った髪はきれいな銀髪になっている。口髭もまた銀。鼻柱に乗った金縁メガネともあいまって、その風采は大学教授か小説家のようだ。
「君のような若い女性には判らないだろうが、年をとると…ね」
老イギリス人は苦笑いしてつづけた。
「ところで、この町には私のような外国人が泊れる場所は他にあるのかな?」
「そうですねえ…」
フランはイギリス人とならぶと、バスガイドのように、あなたかなたへと手を差し伸べ言った。
「アンカータウンの町は大雑把に言って、三つの地区からなっているんです。
バルコニー右手が、むかしの銅山景気で栄えた『オールド』地区です。あそこにはたしか行商人が泊る宿があったように思いますけど、今もやっているかどうかは…。それから…」
こんどはフランはバルコニー左手て手を差し伸べた。
「クレッセント湖を挟んで左手、より海に近い地区が港湾地区。通称『ベイ』です。」
「たしかこの前の大戦以降栄えた、比較的新しい地区だったね?」
ニッコリ笑ってフランは頷いた。
「はい、そうです。いまでもこの町には不似合いなほど大きな荷揚げ用のクレーンやドックが、錆だらけになって残ってますわ。」
「そこに外国人が宿泊できるような施設は?」
「無いと思います。もともとが港湾労働者の町でしたから」
そして最後に、フランはホテル周辺を一渡り示して言った。
「このホテルを含むこの辺一帯が、町で一番新しいエリア、『ニュータウン』です。外国の方が宿をとるならこの辺りですね」
「でもこのホテルにいま泊っているのは…」
「お客様だけですわ。でもホテル以外にももっと山手の方にはコテージがありますし、逆に紙も手にはキャンピングカーのパーキングエリアもありますから」
顎鬚を按なしぐさをしながらイギリス人はしばらく考え事をしている風だったが、改めてフランに尋ねた。
「コテージよりも上手に、もう町は無いのかな?たしかロビーの地図には……」
「ああ、『イツトリ』ですね。でもあそこは…」
フランは、それまでとは違う種類の笑みを浮かべた。
「…あそこは消え去ったインディアンたちの居留地あとなんです。ですから人なんか住んでいませんわ。あそこに住んでいるのは……」
そして思い出したようにフランは言い足した。
「あそこに住んでいるのは、死人だけですわ。」
184イーグルネスト:2009/10/25(日) 22:23:05 ID:hyyTbB4W
イギリス人の客は、フランから町の成り立ちについての説明を受けたあと、ロビー見つけた観光パンフレット手に部屋へと引き上げていた。
(「イツトリ…インディアンの言語。意味は不明」か。屁の役にも立たんな…)
部屋の明かりも点けぬまま、イギリス人はノートパソコンを立ち上げると、「イツトリ」と打ち込んで検索にかけてみた。言葉はすぐに見つかった。
(「イツトリ…死の神テスカトリポカに使える9柱の夜の神の一柱。生贄の儀式に用いる黒曜石のナイフを司る」。だが……)
テスカトリポカはメキシコ神話の神、ここはカナダと国境を接する北の地だ。場所的にあまりにかけ離れすぎている。
それに民族学的にも、モンゴロイドの移動経路はベーリング海峡を突破してからはひたすら南を目指してきた事実がある。つまりテスカトリポカの伝承がアンカータウンに伝わるには、民族移動とは逆のルートになってしまうのだ。
(しかし…)
彼の長年にわたる職業上の感が、なにかを告げていた。それにフランシーンという女性従業員の最後の言葉も気にかかる。

「あそこに住んでいるのは、死人だけですわ。」

 彼女ら町の住民にとって、「イツトリ」と「死人」は、何らかの要素で繋がっているのではないか?
彼にはそんな気がしてならなかった。それに……
(「亡霊」には、死人の町こそふさわしい)
奴は必ずいる。ここに。この町のどこかに。
イギリス人は、パソコンをシャットダウンすると、窓のカーテンを開け放った。
(どこだ!?どこにいるんだ!?)
丘陵から見渡せるのは、薄暮のなかまどろむ町。
そこで何が始まっているのか、彼が気づくわけもなかった。

185創る名無しに見る名無し:2009/10/25(日) 22:25:23 ID:hyyTbB4W
さてと、だんだん調子がでてきてテンポも上がってきた。
この時点で町は、唯一の道路に「歩く死者」が出現。
これに噛まれた警官もゾンビ化したため、住民は袋のネズミ状態になってしまう。
しかし、同時に電話線も切断されてしまったため、ネットや携帯もふくめ外部との連絡は一切とれない状況になっていた。
一方、「ベイ」や「オールド」地区からも次々ゾンビが出現。町の住民に加え、バンガローやトレーラーハウスの人間、住民の個人宅の訪問者などが、町中を逃げ惑う展開になる予定。

 ゾンビ発生の原因は…
1. インディアンを皆殺しにしたウィルス
2. イギリス人の探し求める相手が、ある目的で作り出したウィルス
3. インディアンか魔女の呪い
4. 名前も忘れさられた古い死の神
5. 純然たるSF(この板で使ったら、下手すると誰もついてこれない)ネタ
6. 説明放棄(笑)
大雑把にいって、このへんのどれかになる予定。ただし、7番目も考えてないわけではない。

 我もと思う方。
話のスジを私から引っ手繰って書いてみてくれ。
どんなに無茶な展開でも、対応してみせるぞ(笑)。
186創る名無しに見る名無し:2009/10/26(月) 12:55:46 ID:m1DVdRb+
調子が出てきたのはいいが、例によって誤変換も出始めた。
「下手(しもて)」が「紙も手」なんて、書いた自分でも意味判らんかった。
だが、この手の駄文は勢いが命だから…。
もっともっとピッチを上げて行こう。
だれか、代わって書いてくれる人が出てくるまで。
187ジョン・セワード:2009/10/27(火) 23:14:36 ID:HeYjudwZ
 オールド地区に住むハイスクール教員ジョン・セワードは、けたたましいパトカーのサイレンに眠りを破られた。
顔をしかめて時計を眺めると、蛍光塗料を塗られた針はまだ4時40分であることを示している。
(いったいなんだっていうんだ?こんな時間に騒々しい…)
そう思っていると、警察署の方角からまた一台。こんどは特徴的な低いエンジン音からディーゼルエンジンのトラックだと判る。
市警の車でそれに該当するのは、大型ウインチと小型クレーン装備のトラック一台だけだ。
車の走り去った方角には町の唯一の出入り口、ゲートブリッジがある。
(事故か?…それならきっとでかいぞ)
眠くはあったかが、好奇心と野次馬根性には勝てなかった。
セワードが起き上ると、前夜から「具合が悪い」と言って早くから眠っていた彼の妻が何か不平を言ったように聞こえた。
「ごめん。ちょっと見てくる。事故があったのが『橋』なら厄介だからな」
言い訳のようにそう言い置くと、暗い中手早く身づくろいを済ませ、セワードは夜明けの町へと踏み出した。
「橋」は、彼の家から徒歩でも10分とかからない。ましてや今は午前5時にもなっていない時刻だ。信号を無視したとしても彼を轢くような車は走っていないはずだ。ランニング好きのセワードは「橋」への所要時間を無意識に6分と計算していたのだが…。
いざ明け方の町に出てみると、戸外に出ている人の意外な多さにセワードは驚かされた。
(こんな時間に、こんなに人が外に出ているのか?……そうか、みんな私と同じに…)
「橋」まで事故を確かめに行くに違いない……一度はそう思ったのだが、それにしては町ゆく人々の足取りが妙に重い。
それに歩く方向もまちまちで、中には明らかに「橋」とは逆の方向に向かっている者すらいる。不審に思ったセワードが足を止めると、近くをうろついていた者の一人が彼の方へと向きを変えた。
「なんだルスブンか、いったいこんな時間に外で何やってるんだ?」
知り合いの男―ルスブンは、セワードの問いに答えぬまま、ゆっくりこちらにやってくる。
口をぽかんと開けたまま、表情筋のすっかり弛緩しきったような顔で。
「おい、どうしたんだルスブン、どこか具合でも悪いのか?」
やはり相手は答えない。
彼の目がまるで玉のように何の感情も宿していない……セワードがそのことに気付いたとき、もう「ルスブンだったもの」は、手を伸ばせば届く距離まで近づいてしまっていた。
188ジョン・セワード:2009/10/28(水) 22:53:55 ID:WRFAkTlu
ガラス玉のようだったルスブンの目に、突然何かの「色」が沸き上がった瞬間、セワードの心の中で何かが(逃げろ!!)と叫んだ。
この声に従うか否かが生と死の分かれ目だった。
知り合いだったはずの男が、狒狒のように歯をむき出し掴み掛ってきたとき、セワードはすでに躊躇することなく身を翻していた。
(殺される!?)と感じたのも本能の為せる技だろう。
だが、身を翻した瞬間、セワードは彼に向って来るのがルスブン一人ではないことに気づいた。後ろからも二人、妙な具合に右に傾いた男と、そのすぐ後ろに髪を振り乱した老婆がやって来ていた。
「お、おい、いったいどうしたっていうんだ?私が何かしたとでも…」
そこまで言いかけたとき、「右に傾いた男」が虚ろな声で吠えた!
同時にそれまでセワードに気付いていないふうだった人影までが、いっせいにセワードの方を向くとよろよろと向かってくる。
「…シット!」
教師らしからぬ捨て台詞を残し、セワードはもと来た自宅の玄関へと逃げんだ。
すばやく鍵をかけるのとほとんど同時に、ドアが激しく叩かれ始めた。
震える指で激しく振動するドアにチェーンをかけると、セワードは寝室へと駆け込んだ。
あの様子では、ドアが破られるのも時間の問題とみえた。
それに彼の自宅は古い平屋なので、窓に回られたら防ぎようがない。
だからセワードは、眠っている妻をたたき起して、裏口から逃げだそうと考えたのだ。
「ルーシー!起きるんだ!!早く……ん!?!?」
だが、大声で妻の名を呼びながら寝室に飛び込んだところで、セワードは思わず言葉を飲み込んだ。
…ベッドに眠っているとばかり思っていた妻の姿が、ベッドに無い……。
いったいどこに……と思った瞬間。
ついさっき戸外で聞いたばかりの、あの「虚ろな声」が、またも耳に飛び込んできた。
ただしこんどの声は、家の中からだった。

振り返ると、寝室の入り口を塞ぐような形で、妻が仁王立ちになっていた。
ガラス玉のような目で、セワードをじっと凝視しながら。

189創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 22:46:30 ID:+pCK+6Sa
規制中?
190ふたたび橋の上で:2009/11/16(月) 22:48:56 ID:+pCK+6Sa
「い、痛ててててててて!」
クレイグ巡査の手に真っ赤な血が、一本の太い線となって走った!
運転席の男は喉を噛み裂かれていて、どう見ても死んでいるはずだった。
それが突然動きだすとサイドウィンドウにかかったクレイグの手に噛みついたのだ。
予想外の展開にケーヒル署長以下仲間の警官たちが誰一人動けないなか、果断に飛び出したのはジェイソンだった。
「放セ!このサイコ野郎!!」
ジェイソンの履くカウボーイブーツの踵が鼻柱にめり込むと、どす黒い血の尾を曳きながら、運転手は助手席側にひっくり返った。
自由になった手を押さえてよろめくクレイグ!
手を貸してそれを支えるジェイソン!
遅ればせながらケーヒル署長も駆け寄って来た。
「クレイグ大丈夫か?」
まず部下の負傷を気遣うと、次に署長はジェイソンに向き直り語気荒く叱責した。
「怪我人になんてことをするんだジェイソン!」
「でもヤツは、あんたの部下を噛んだんスよ!?」
「事故のショックで錯乱してただけだ」
「錯乱ぐらいで警官に噛みつくんスか!?」
「相手はただでさえ酷い傷を負っているんだぞ!それをオマエは…」
そのとき、後ろで見ていたアレックスが叫んだ。
「トム!ジェイソン!車から離れるんだ!」
二人のすぐ横でギギッという軋み音とともに車のドアが開き、冷たいナラガンセット川の水がザアッとこぼれ出た。
「…う、嘘だろ!?」
掌の痛みも忘れ、クレイグが呟く。
川の水とともに車内から降り立ったのは、もはや到底「人間」とは見えない姿だった。
さっきまでは喉をギザギザに切り裂かれていただけだったが、今はその上に鼻梁が顔の中に完全に陥没してしまっているのだ。
相手のあまりに異様な姿を目の当たりにして、署長の顔に更なる緊迫感が走る!
「下がれクレイグ!ジェイスン!キミもだ!!」
部下と民間人を下がらせ、自らは二人の盾となりながら、同時に署長はホルスターのフラップを素早く外した。
腰の拳銃はベレッタM92の旧型モデル。
セイフティが解除し難いスライドではなくレシーバーにあるモデルだ。
ハンマーを起こした状態でなければセイフティを掛けられないが、その代わりに即応性が高く、9ミリパラベラムのホローポイント弾を通常モデルより一瞬早く相手に見舞うことができる。
「止まれ!止まるんだ!!」
ケーヒル署長はいったん相手の顔に銃口を突き付けたが、それでも止まらないと見ると、相手の足に銃口を向けなおし、それ以上躊躇することなく素早く二回引き金を引いた。
バン!バンッ!!
手の中でベレッタが小さく二回踊り、異相の男は尻もちをつくように崩れ落ちた。
左右の大腿部に銃弾を撃ち込まれれば、普通の人間は痛みのためまず立つことはできない。
だが異相の男は、署長が身柄を拘束しようと手錠を取り出しかけたときには、すでに立ち上がり始めていた。
191ふたたび橋の上で:2009/11/16(月) 22:52:11 ID:+pCK+6Sa
9ミリ弾二発で膝を砕かれたはずの男は、痛みを感じるそぶりも見せず、ゆっくり立ち上がった。
(薬中か?!)の言葉がケーヒル署長の頭をかすめた。
エンジェルダストは強い幻覚作用をもち痛みを遮断する。またブルーサンシャインは少女の腕にプロレスラー以上の怪力を与えて恐怖の殺人鬼を作り出す。
(まさか山の手のバンガローで寝起きするサバイバルゲーマーあたりが、町に持ち込んだのか?もしそうなら…)
…もしそうならば威嚇射撃などしているヒマはない。
署長が相手の胴体に照準を改めると、負傷しているクレイグも含む部下の警官たちも、一斉に拳銃を抜き放った。
…うおおおおおおおおお…
異相の男が虚ろに吠えたのを合図に、警官たちが一斉にトリガーを引き絞った!
バン!バン!ババン!バン!
弾丸が命中するとその部位が、見えない棒でこずかれたように、後ろに弾けさがる。
異相の男が背後の車にぶつかってもなお、警官たちは射撃を止めない!
ついに何人かの銃が弾を撃ち尽くし、ホールドオープンすることで攻撃はついに止まった。
異相の男の体は文字通りのハチの巣状態となって、川水の滴る車の傍らに、ぼろ雑巾のように崩れ落ちている。
こうなれば、いかなる薬品が作用していようと、人間が生きて動けるはずはない。
だが…。
「…ふう…」
警官の一人が、やれやれというように息をついた瞬間だった。
ハチの巣状態の体が、ピクリと動いたかと思うと、ゆっくりと立ち上がったのだ。
誰もがある映画のタイトルを思い出した。
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」
最初のゾンビ映画。
「ち、畜生!それならこいつだ!」
ジャキーンという特有の操作音がして、クレイグがショットガンを手に駆け戻ってきた!
だが同時に署長は、周囲に広がった水の面に虹色の被膜が広がっているのに気がついた。
(ガソリンタンクが漏れ出している!)
「くたばれ!このゾンビ野郎!」「待てクレイグ!撃つんじゃ…」
クレイグが吠え、署長が叫びそして…
バゴン!というショットガンの発射音は、直後のドカーンという爆発音に完全にかき消された。
192ふたたび橋の上で:2009/11/16(月) 22:54:50 ID:+pCK+6Sa
「ジェイスン!しっかりするんだ!」
激しく両肩を揺さぶられてジェイスン・クリードは意識を取り戻した。
目を開くと上からアレックスが覗き込んでいる。
「おお、気がついたか」「ア、アレックス…ボクはいったい?」
このときになって、ジェイソンは自分の顔に何かチラチラと揺れる光が当たっているのに気がついた。
はっとして光の来る方に目をやると…。
ゲートブリッジの全車線を完全に塞ぐように三台の車が転がっており、そのうちの二台が黒煙を放ち燃え上っている!
ショットガンのマズルブラストが引き起こした事故車の爆発は、後ろのトラックをも吹き飛ばし、さらにそのわきに止まっていたパトカーまで巻き込んだのだ。
爆発でもげたドアの下敷きになって燃えているのは、あの「ゾンビ野郎」だろう。
さすがにもう動いてはいない。
「う……うう…」
うめき声を上げながら警官たちも立ち上がりはじめた。
「みんな怪我はないか?」
こめかみのあたりに血を滲ませながら、ケーヒル署長が皆に尋ねると、部下の警官たちが次々応じる。
「しょ、署長!」そのとき部下の一人が叫んだ。「…ク、クレイグが…」
巡査の一人が、燃える車から数メートル離れたところで仰向けになっている仲間を助け起こしていた。
倒れているのは…たぶんクレイグだろう。爆風と熱で顔がメチャメチャになっているが、傍らにショットガンが落ちていなかったら判らないところだった。
「クレイグ!しっかりしろ!」
すると、問いかけに答えるようにクレイグの腕がゆっくり持ち上がった。
「よかった、署長!生きてます。クレイグは死んでは…」
署長に告げるため巡査の視線がクレイグから署長に移った。同時に、クレイグの腕の動きが急に早くなる。
「あぶない!」
ジェイソンが叫んだときには、もう遅かった。
クレイグは同僚巡査の肩口に手をかけ引き寄せると、相手の首筋に、獣のように噛みついた。
橋の上に悲鳴が響き渡って皆の視線がクレイグと犠牲者に集中すると、今度は背後でガランという金属音が聞こえた。
音の方に振り返ったジェイソンが思わず呟いた。
「…マジッスか?」
今度こそ死んだと思っていた異相の男が、ぶすぶすと煙を上げる体で、体に載ったドアを撥ね退け立ち上がろうとしていた。
「この×××の××野郎め!」
教会の牧師が耳にしたら間違いなく顔をしかめるような悪態をつくと、ケーヒル署長は大声で部下に命じた。
「態勢を立て直す!いったん退却だ!!」
署長も含めほぼ全員が1マガジン(=弾倉、ベレッタM92は15発)を使い切っていながら、バケモノ?の数は1人から2人に増えているのだ。退却の判断もやむを得ない。
残ったパトカーを用いて橋を町側で封鎖、バケモノの市街への侵入を防ぎつつ、外部のミルズや州警とも連携をとって事態を収拾するというのは、妥当な判断だろう。
だが…2人のバケモノ、交互に銃口を移動させながらジリジリ後退を始めた警官たちの背中で、こんどはアレックスが叫んだ。
「トム!ジェスソン!町の方を見てみるんだ!」
声に振り返ったジェイスンと署長は思わず息を飲んだ。
橋の町側からギクシャク動く人影が、次々現れるところだった。

193マルコム・バーニー:2009/11/16(月) 22:57:45 ID:+pCK+6Sa
ドオーーーンという爆発音に、バーニーは二日酔いの眠りを破られた。
「なにが、あったんてんだ?朝っぱらから、畜生め!」
悪態をつきながら薄汚れたガラス越しに町を見渡すと、爆発の地点は一目で判った。
「ゲイトブリッジで爆発だとぉ?こぉりゃ厄介だぁな」

彼の住居は町の海側、通称「ベイ」にある大型クレーンの高さ25メートルにあるオペレイター室だ。
「ホテルの連中はテラスからの眺めが町一番の眺望だとぬかしてやがるが、そんななぁ大間違いよ」というのがバーニーの口癖である。
海軍関係の仕事が無くなって以来、港の整備費用も大幅に削られて浚渫作業もままならず、係留されていた廃船の幾隻かは港の中で着底してしまっており、大型船の使用には適さない状態だった。
クレーンを所有していた会社もとっくに倒産してしまっており、それ以後、かつての「仕事場」がバーニーの「住居」になってしまっていた。

「『橋』が糞詰まりになっちまったら大事(おおごと)だぜ」
見れば「オールド」地区の住民たちも大勢「橋」へと集まり始めているようで、あちこちの街角や路地に、うごめく人影が見える。
…もっと明るくなっていれば、バーニーも「住民たち」の動きにどこか奇妙なところのあるのに気づいただろう。しかし東に山と森林を背負う町はいまだ薄闇の中に沈んでおり、「住民たち」の真の姿をバーニーの目から隠しおおせていた。
「こりゃこうしちゃいられねえや」
バーニーはウイスキーのポケット瓶を尻ポケットに捻じ込むと、さっさと「下界への扉」を引き開けた。「下界への扉」とはオペレイター・ルームの床にあるハッチだ。
これを開くと、まずは梯子で垂直に15メートル。そこから下は1メートルほどの足場を挟み、位置をずらした上でさらに10メートル降りて地上に足が着く。
梯子の周囲はフレームで囲まれているため落ちる心配こそないが、風吹きすさび雨叩きつける「道」であることは変わりない。
50の坂を越えた身にきつくないと言ったらウソになる。だがバーニーは狭い昇降口へと器用に体を滑りこませた。
梯子を下りている間は、その行為だけに専念するのが、バーニーの掟である。
だがこの朝ばかりは、梯子下りだけに専念させてはもらえなかった。
(…?なんだこの音は?)
西の海の向こうから、鋭いモーター音がやって来たのだ。
(こんな朝早くに、いったい誰が?)
バーニーがそう考えている間にも、素晴らしいスピードでその船は現れた。
194マルコム・バーニー:2009/11/16(月) 23:01:19 ID:+pCK+6Sa
それは薄闇にも眩いばかりの純白のクルーザーで、遠目からでもふんだんに金のかかっていることが一目で見てとれる。
その豪華クルーザーが、止まる気配を全く見せず、真一文字に港に向かって突っ込んで来た!
「バ、バカ野郎!他の船に衝突するぞ!?」
だがクルーザーは、ほとんど動物的な動きで巧みに廃船の間を滑り抜けた。
そしてコンクリートの岸壁手前で横滑りしながらターンすると、そのまま舷側から岸壁へとぶち当たった!
ガーーーン!
船体とコンクリートの岸壁、双方の壊れる音、そして衝突のショックがバーニーを襲った。
「うわっ!?」
振り落とされそうになり必死に梯子にしがみつくバーニー。
そのとき、彼は不思議な光景を目にした。
岸壁との衝突で火災でも起こしたか、煙の立ちのぼるキャビンの中から、黒い小猿のような生き物が身軽に飛び出したのだ。
「小猿」は素早く辺りを見まわすと、小動物の素早さで街角へと姿を消してしまった。
「こ、こりゃあモタモタしちゃおれんぞ!」
気を取り直したバーニーが梯子の最後の三段を残して飛び降りたのも、そして煙立ち昇るクルーザーへと脱兎の如く走ったのも、「火事の消火」などという殊勝な目的によるものではない。
彼が急いだ理由は金。
見るからに金のかかったクルーザーなのだから、金目のものだってたぁんとあるに違いない。つまりバーニーは、火事は火事でも「火事場どろぼう」目的で船へと急いだのだ。
(おまわりが来る前に済ませねえとよ…)
だが、彼が船のぶつかった岸壁に辿り着いたとき、キャビンのドアがはじけ飛び中から一人の男が、激しく咳き込みながら転げ出て来た!
アメリカでなら中肉中背で通るバーニーより頭一つほど背が低く見える。
その代わりまくりあげた袖口から突き出た腕はゴリラのように太く、ゴリラのように黒い剛毛が生えていた。
それを見たバーニーは、少年のころ呼んだ小説「モログ街の殺人」を、そして次にエストニア生まれだった曾祖母から聞かされた古い言い伝えを思い出した。

「よく覚えておおき。左右の眉が繋がってる人がいたら、気をつけるんだよ。繋がった眉はね、狼人間の徴なのさ。」

(そういえば、さっき妙な動物が船から…)
説明の出来ない黒い胸騒ぎにバーニーの動きが止まったときだった。
甲に黒い剛毛の生えた手がバーニーの足首をがっきと掴み、そして男が顔を上げた。
男は東洋人で…四角く刈り込まれた髪の下では、フランクフルトソーセージほどの太さの眉が、見事に一本に繋がっていた。
195創る名無しに見る名無し:2009/11/16(月) 23:04:06 ID:+pCK+6Sa
登場人物たちのバックグラウンド(登場順)

アレックス
日本で最初に劇場公開されたゾンビ映画「悪魔の墓場」に登場する最初の犠牲者で、職業?はカメラマン。
ジェイソン・クリード
ゾンビ映画の生みの親、ロメロ監督の「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」の撮影者。
フランシーン
ロメロ監督の「ゾンビ」の女主人公。劇中ではフランと略称で呼ばれている。
イギリス人
当面の隠し玉。正体のヒントは一応書いてあります。
トム・ケーヒル署長
ザック・スナイダーのリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」で、映画の中で流されるニュースの登場人物。演じるはトム・サビーニ。
クレイグ巡査
日本で最初に劇場公開されたゾンビ映画「悪魔の墓場」に登場する巡査で、日本で最初に生きたまま内臓を食われた被害者(笑)。
ジョン・セワード
ゾンビ映画の源流は吸血鬼…というわけで、ブラム・ストーカー作「ドラキュラ」に登場する医師。ヴァン・へルシング率いるドラキュラ・ハンターの一人。
ルスブン
世界最初の吸血鬼小説、ジョン・ポリドリ作「吸血鬼」に登場する吸血鬼。モデルは詩人のバイロンだと言われている。
ルーシー
「ドラキュラ」に登場する、イギリスで最初に犠牲となる女性。
バーニー
ドラキュラ以前に書かれた作者不詳の吸血鬼小説「吸血鬼バーニー、あるいは血の饗宴」の主人公。作者の正体は、以前はトマス・プレスケット・ペレストだというのが一般だったが、現在はジェイムズ・マルコム・ライマーだというのが通説か?

基本的に元ネタが吸血鬼やゾンビである人は、こっちでもゾンビになっとります(笑)。
196過去の亡霊:2009/11/21(土) 23:50:08 ID:S7c+Wx5S
(…爆発か!?)
イギリス人がパソコンのディスプレイ画面から顔を上げた。
ゲイトブリッジでの爆発は、山の手に建ち森で遮られてもいるイーグルネストまでも伝わっていた。
(まさか奴が何か…)
イギリス人は携帯電話を取り出し、古いアメリカ人の友人に電話をかけようとした。
(…………つながらない?そうか、確かこの町は…)
イギリス人は昨日ゲイトブリッジをレンタカーで渡ったとき、橋のすぐ横に太いケーブルが走っていたのを思い出した。
アンカータウンは深い山と森によって外部と切り離されており、携帯電話も外部の基地局を直接利用することはできない。固定電話であろうと携帯電話であろうと、一度はゲイトブリッジ横を走る有線ケーブルを通過する。
だからもしゲイトブリッジで大きな事故が起こり、それによってケーブルも切断されてしまえば…。
人やものの移動はおろか通信的にもアンカータウンは外部と孤絶してしまうのだ。
再びパソコンを立ち上げてみたが、予想通りネットには繋がらない。
イギリス人は再び携帯電話を手に取ると市内の番号をプッシュした。
……呼び出し音がしている。
市内通話は生きているのが判った。
(市内の電話局で事故があったのなら、市内電話も不通になるはずだ。…ということは、やはりあの橋か)
しばらく携帯を耳に当て、相手が出るのを待っていたイギリス人だったが、とうとう電話には誰も出てこなかった。
携帯を切ると、イギリス人はそっと目を閉じた。
(まさかと思っていたが……やはりそうなのか?)
過去の世界から亡霊が、死者が蘇り、この薄闇に包まれた町を闊歩しているのだろうか。
しばしの沈黙のあと、再び開かれたイギリス人の目には、暗い決意の光が宿っていた。


197過去の亡霊:2009/11/22(日) 10:01:21 ID:zTkyv7sH
フランが受付で、ミルズから全国紙を届けに来るはずのジェイソンを待っていると、あのイギリス人が自室から再び降りてきた。
「すまんが、住所へはどう行けばいいのかな?」
「ああ、この場所なら前の道をまっすぐ下って…」
イギリス人が見せたメモに書かれていたのは、オールド地区の住宅街のものだった。
「何か判り易い目印はありませんか?」
「間違えっこありませんわ。この家って3階建のアパートなんです。オールド地区って古い町ですから、アパートはこれと隣の棟の2棟しかないんです」

礼を言って戸外に去るイギリス人を見送ると、奥の支配人室から支配人のダリオが顔を出してフランを呼んだ。
「フラン、ちょっと来てくれ」
「なんでしょうかダリオさん?」
「急いでドアをロックするんだ。ワシがいいと言うまで誰も入れちゃならんぞ」
「でもジェイソンがまだ来ていませんわ。それにたった今お客様が…」
「いいからワシの言うとおりにするんだ」
鋭く言い置くと、理由も説明せずにダリオはまた支配人室へと引っ込んでしまった。
「…わかりました」
カチッと錠を下ろす音に向かって短く答えると、やむなくフランは内線電話で警備室のウォリーを呼びだした。
「ウォリー、ダリオさんの命令よ。ネストの出入をロックして」

ドアの錠を下ろしただけでなく窓のシャッターも下ろすと、ダリオは支配人室奥のドアをくぐり、更にその奥にあるプライベイトエリアへと向かった。
プライベイトエリアの一番奥。
主のいない「子供部屋」に立つと、ダリオは壁に描かれた青いアイリスに手をかけた。
カチリ…
小さな音をたて、壁に描かれていると見えたアイリスが右に回る。
…するとその横の壁に四角い出入り口が忽然と現れた。
奥からかすかに甘い香りが漂って来る。
ダリオの姿が中に消え、その背後で入口も消えるそのとき、中からダリオの声が聞えてきた。
「言われたように命じてきました。お母さん」

198過去の亡霊:2009/11/22(日) 21:56:18 ID:zTkyv7sH
イギリス人の運転するレンタカーは、海へと向かう道を滑り下りていた。
ナラガンセット川の支流のひとつが、短い橋を渡りあるいはトンネルを抜けるたび、道の右になり左になりする。
川の走っていない側は、鬱蒼と茂る暗い森。市の設置した街灯も、森の奥には殆ど届かない。
そんな道を、土地の者にも負けないスピードで、イギリス人は車を駆っていった。
カーブに差し掛かると、レンタカーの頼りないヘッドライトが、川向うの岩肌や木々のあいだを猛スピードで舐めてゆく。
(まさか…まさか本当にヤツが…!?)
イギリスの友人からその噂を耳にした時は、彼も半信半疑というより殆ど本気にはしていなかった。
アメリカ人の友人から同じ話を聞かされたときでさえ、そんな話は、クリスマスに炉端で語られる怪談話の類だと思っていた。
だが、ロンドンでは怪談話にすぎないと思われたその噂は、この北の町で血肉を帯びた信憑性を持ち始めている。
…亡霊の復活。蘇る死者。
(…まさか本当にヤツが)
目指すアパートは、そのアメリカ人の友人が住んでいるはずなのだ。
彼の身にも何か起こったのだろうか?
昨夜町に着いたときね時刻はもう遅くなっていたので、家族もある相手に遠慮して、訪問を翌日に延ばすことにしてしまった。
その決断が悔やまれる。
(昔の私なら、消してこんなことは…)
そんなことを考えながらイギリス人が、幾つめかのトンネル出口でハンドルを大きく右に切った瞬間だった!
木々のあいだを舐めたヘッドライトが、樹木ではないいくつもの影を浮かび上がらせた!
「なにっ!?」
咄嗟に覗くドアミラーに、飛びすぎた森の中でオレンジ色のせん光が幾つも瞬くのが見えた。
一瞬遅れてバンバンという金属音!
そして車が大きく右にガクンと傾いた!
(右後輪をやられた!)
失われかけた車のコントロールをハンドル操作で必死に立て直そうとするが、それもむなしい努力だった。
イギリス人の載ったレンタカーは、唸りを上げる夜の川へと、激しくスピンしながら飛び込んで行った。

199マイ・ネーム・イズ…:2009/11/23(月) 22:05:53 ID:zOC4KIcl
「騒ぐな!抵抗しないで黙って警察までついて来い!」
「だからぁ!オレもさっきからその警察に連れてけって言ってんだろうが!」
「うるさい!黙れ!」
「おいこら、そんなに引っ張るなよ!」
白いクルーザーから飛び出してきた「まゆ毛の繋がった男」と揉み合いながら、バーニーは「ベイ」地区にある警察の分署へと向かっていた。
ナラガンセット川が大きく蛇行していたころの名残であるクレッセント湖によって、アンカータウンは二つに区切られてしまっている。
もともと警察署は、古い「オールド地区」にあったのだが、その後湖の海寄りの「ベイ地区」が発展したため、「分署」が設置されることとなった。
二人が向かっているのは、この分署の方だった。
「だから引っ張るなって!」
「こら!大人しくしろ!…ほら見ろ、あそこが警察の…」
まだ暗い町なかで、しっかりと明かりが灯っているのがベイ地区の分署だ。
「おーい」と声を上げかけたところで、バーニーの声が止まった。
まゆ毛の繋がった男の声が続く。
「……誰もいないじゃないかよ」
分署はまるで無人と見えた。
「ついさっきまでは誰かいたみたいだな」
「まゆ毛の繋がった男」は灰皿でくすぶっていたタバコをつまみ上げそう言うと、次に事務所奥のロッカーを指さした。
「あれはガンロッカーだろ?開けっ放しの上に、中が空っぽってこたぁ…」
「全員出動したってことか。でもどこに…」
そう言いかけたところで、バーニーは思い出した。
「…そういゃあさっき船から爆発が見えたが」
「そうだ、そうだった。ゲイトブリッジで爆発があったんだった。きっとオマワリどもはみんな…」
そのとき、カウンターの後ろで電話機がけたたましい叫びを上げた!
「うわっ!」っと驚くバーニーを尻目に、慣れた様子で受話器をとったのは「まゆ毛の繋がった男」の方だった。
「もしもし?こちら警察ですが」
…受話器を耳に当てた「まゆ毛の繋がった男」の眉間のしわが深くなった。
「…もしもし?ハロハロ??………」
「おい、何を言って来たんだ?」「…まあ自分で聞いてみてくれ」
「まゆ毛の繋がった男」は受話器をバーニーに手渡した。
「意味のあることはなんにも。ただヒューヒューいう音とゴボコボいう音しか聞こえねえ」
「まゆ毛の繋がった男」の言うとおりだった。
いくら耳を澄ましても、受話器からはなんの言葉も聞こえてこない。
ただ、途切れ途切れのヒューヒューという音が、4年前に喘息で死んだ息子の、臨終の吐息にそっくりだった。
強張った顔でバーニーが受話器を戻すと、「まゆ毛の繋がった男」はどこかで見つけてきた野球のバットの握り具合を確かめているところだった。
「おいオマエ、そんなもの持って何しようってんだ?」
「決まってんだろ。そのゲイトなんとかいう橋に行くんだよ。」
「行って何をしようってんだ?」
「判んねえよ。そんなもん行ってみなきゃあな。でもなにか事件が起こってる。それだけは間違いねえ。」
そして、「まゆ毛の繋がった男」はバットのグリップ部分に唾をペッペと吐きかけてからさらに言った。
「事件が起こってるんなら、行かねえわけにゃならねえんだ。オレも日本じゃ警察官だからな。」
「なんだって?テメエも警察官?!」
「ああ、警視庁巡査、名前はええと……マイ・ネーム・イズ・カンキチ・リョーツ」
200マイ・ネーム・イズ…:2009/11/28(土) 00:15:12 ID:pTp4knUM
黒人副署長のピーター率いる、ベイ地区の分署チームは、ケーヒル署長のオールド地区本署チームの無線呼び出しにより車でゲイトブリッジへと急いでいた。
署長からの連絡は、ピーターには到底信じがたいものだった。
『ゲイトブリッジで、まるで映画のゾンビみたいな連中の襲撃を受けている。重火器を持って応援頼む!』
(重火器だと?)
パトカーの助手席でピーターは署長の指示を反芻していた。
(本署のパトカーにもショットガンは積んであったはずだ。それじゃあ足りないとでも言うのか?)
今ピーターが手にしているのも、銃床がメタル製の折りたたみ式である点と銃身がやや短めである点を除いては、ありふれた同じショットガンだ。
アンカータウン市警は例のベトナム帰還兵の事件以来、町の規模には不似合いなほどの重装備を保持している。
しかし、それでも所詮は警察なので、ロケットランチャーや重機関銃などのようなバケモノは当然保持していない。
運転席でハンドルを握るロジャーが足元に立て掛けているのは古いアサルトライフルの一種、AR10だが、フルオート機能は除かれたコマーシャル仕様だ。
(署長の言う「ゾンビみたいな連中」とは何者なんだ?)
ベトナム帰還兵?
それがどうした?ベトナム帰りなんて掃いて捨てるほどいるぜ。
ギャング?
アル・カポネだろうが、ボニーとクライドだろうが相手になってやるよ。
アラブのテロリストだろうが、人食いの変態殺人鬼だろうが、ピーターは怖くなかった。
だが、「正体不明」はいけない。
(何者なんだ?その「ゾンビみたいな連中」ってのは?)
…掌が汗ばむのを感じたピーターは、そっとズボンで拭き取った。
彼が考え込んでいるうちに、パトカーはクレッセント湖へと差し掛かっていた。
(なにものなんだ?その「ゾンビみたいな…」…)
そのとき突然、運転席でロジャーが叫んだ!
「なんなんだ?あいつらは!?」
201マイ・ネーム・イズ…:2009/11/28(土) 00:16:41 ID:pTp4knUM
「クレッセント湖は…北に向いた弓みたいな形をしてるんだ」
「つまり向こう側の…えーと…」
「…オールド地区」
「おう、そのオールド地区は弓のへこんだ側にあるってこったな?」
ピーター副署長が彼の疑問の答えと遭遇していたころ…。
いつのまにかバーニーとリョーツ=両津の関係は、捕縛者と捕囚の関係から、探検家とガイドのような関係に置き換わっていた。
「湖を回りこんで向こう側に行くルートは?」
「西を回りこむルートが近いぜ。副署長のピーターたちもそのルートを行ったはずだ」
「遠いのか?」
「たいしたこたぁねえよ。アンタの国とこの国の距離にくらべりゃあな」
質問は、もうそれでお終いだった。
固いバットを雑巾でも絞るような仕草でしごくと、不敵な面構えで両津は言った。
「そんじゃオレをそこまで案内してくれよ」
「判った、ついて来てくれ」
「おう、頼むわ」
口笛でも吹くように、軽く口を尖らせ、両津勘吉は歩き出した。
両津とバーニーの二人が警察署を出ると、わずかな時間だったにもかかわらず、既にさっきよりもかなり明るくなっていた。
あと一時間もすれば、大勢の住民が戸外に出てくるだろう。
それがどんな住民なのかは、保障の限りではないのだが…。
202マイ・ネーム・イズ…:2009/11/28(土) 23:46:57 ID:pTp4knUM
ブレーキのスキール音とともに、つんのめるように二台のパトカーが次々止まった。
「…なんなんだアイツらは?」
運転席のロジャーが見つめるパトカーの行く手、ヘッドライトがギリギリ届かない距離の路上に一固まりの人影があった。
一見、倒れている誰かを他の者たちが救護しているような形だが…何か変だ。
人影の回りが、雨の降ったわけでもないのに濡れて光って見える。
相手に覆いかぶさるようなその姿勢は、ぱっと見、怪我人の胸に耳を当てている姿勢のように見える。
だが…相手の胸に耳を当てているのなら、首や上体は斜めになるはずだ。
いま目の前にしているように、顔をべったりと相手の体につけたりはしない。
途切れ途切れにロジャーが呟く。
「ピーター…あの、奴らのやっているのは……まさか…」
ピーターは屋根のスポットライトのスイッチに手を伸ばした。
…カチッ!
これまでのピーターの人生で何万回耳にしたか判らない、それほど日常的な音に続いて薄闇の中浮かび上がったのは、これまで一度も目にしたことのない光景だった。
(何が「ゾンビみたいな連中」だ。あれは…)
それはまさに、「ゾンビそのもの」だった。
路上に丸く広がった血だまりの中、四人の男女が「食事の真っ最中」だった。
自分を照らし出すライトにすら気付かず、一心不乱に真っ赤な肉片に口をつけ、血を啜っている。
「なんてこった!」
自動ライフルを手にロジャーが車外に出ると、「ゾンビ」の一体にポイントを合わせ叫んだ。
「アンカータウン市警察だ!おまえたち全員…」
ロジャーがこのとき、「ゾンビたち全員」をどうするつもりだったのかは、結局判らぬまま終わった。
ロジャーとピーターの背後で、部下の悲鳴があがったからだ!
「うあーーーーっ!?」
いつのまにか二台めのパトカーに近寄っていた「ゾンビ」の一体が、サイドウインドウから顔を出して前方の成り行きを見守っていた若い警官に噛みついたのだ。
悲鳴があがったことで、食事に熱中していたゾンビも、遅まきながら新たな食材の存在に気がついた。
(…しまった)
ピーターのこめかみに汗の玉が浮かんだ。
ピーターたち分署のチームは、ゾンビに挟み撃ちされるかっこうになっていた。
203創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 23:52:54 ID:pTp4knUM
さてと、レス数が本スレに追いついたか。
本スレの方に出てる両津勘吉も出せたし。
本スレに出てるキャラでこっちにも登場したのは、これで三人目。
もうじき四人目も登場予定。
しっかし、他に書いてくれそうな人はおらんのか?
構成が悪くて話が面白くないからかな?
…だったらしょうがないが。
204マイ:2009/12/04(金) 23:27:10 ID:bTKQaWXf
バムッ!
ロジャーのAR10が小さく弾むと、警官の首に噛みついていた「ゾンビ」の頭部がはじけ飛んだ。
バム!バム!バムッ!!
前に向きなおると今度は素早く三連射!
前方から迫ってきた三体の「ゾンビ」がもんどりうって打ち倒された。
「おい、大丈夫か?」
ショットガンを片手に車を降りると、ピーターは二台目のパトカーに駆け寄った。
噛まれた警官は、水道の蛇口のように血の吹き出る傷口を必死に両手で押さえながら、ウ運転席で硬直状態になっている。
「しっかりするんだ」
ピーターは止血のため、傷口から相手の手を退かさせようどかさせようとするが、その言葉も耳に入っている様子はない。
バムッ!バムッ!
「このクソったれ!!」
前で更に二発の銃声が響き、ロジャーのあくたいが聞える。
車の後方からは新たな人影が数名。よろめきながら現れた。
「畜生め!」
ピーターは車のドアを開け、負傷した部下を引きずり出しながら、助手席で茫然となっているもう一人の部下にも命じた。
「コイツをオレの車に移す!このパトはお前が運転するんだ!」
「は、はい」
血まみれの部下を抱きかかえるようにしてピーターが自分のパトカーに戻ると、青い顔でロジャーが言った。
「こいつら…撃っても死なないぞ。倒れはするが、すぐ起き上ってくる!」
「なんだと!?」
そう言うピーターの見ている前で、路上に倒れていたゾンビがゆっくり立ちあがった。
胸には、7.62ミリNATO弾の命中痕が幾つも口を開けている!
命中箇所からして、どの一発でも致命傷になるはずだ!
(…まさか本当にゾンビだとでも!?)
そのときピーターは、ロジャーが最初に撃った「ゾンビ」だけは立ち上がってこなかったことを、思い出した。
「ロジャー!頭だ!頭を狙え!!」

205マイ・ネーム・イズ…:2009/12/13(日) 22:54:08 ID:F94xjtoa
バン!バン!バン!
前に後ろにと向きを変えながらロジャーの放つ7.62ミリNATO弾が、ゾンビの頭部を立て続けに弾け飛ばす!
その射線の下を、血塗れの部下を肩に担いだピーターが前のパトカーへと走り寄る!
部下を後部シートに押し込むと、ピーターはロジャーに叫んだ。
「ここは一旦退却だ!」
「しかし署長はゲイトブリッジに…」
「そんなことは判ってる!だが、見ろ!あれを!!」
次第にスミレ色に変わり始めた空の下、ピーターの指さす方では、無数の人影が、足を引きずり、呻き声を上げながらうごめいているのが見えた。
「あの中を突破してゲイトブリッジまで行くのは不可能だ」
「…わ、わかった」
行がけの駄賃とばかりにもう二体のゾンビの頭部をぶち抜くと、ロジャーも助手席に飛び込み、ドアをロックした。
セレクトレバーをRに入れ後ろを振り返ると、後ろのバトカーはまだ動きだしていない。
「なにをやってるんだ!?さっさと動け!」
バックするには後ろのパトが邪魔になる。
しかし方向転換するには道幅が狭いので何度かハンドルを切り返さねばならず、そのあいだにゾンビの集団に取り囲まれてしまいかねない。
若い巡査は明らかに恐慌状態に陥っており、ハンドル・コラムのあたりに手をやって必死に何かやっている。
「畜生め!エンストしやがったな!?」
やはり後ろを振り向いたロジャーが呻くように言った。
「こうなったらオレが…」
「待て!今から言ってももう遅い!」
ピーターたちのパトカーの前、数メートルあたりまで新手のゾンビがやって来ていた。
その数およそ十数体!
さらに新たに後ろから迫ってきたゾンビは、もう二台目のパトカーのすぐ後ろまで来ている。
窓ガラスを叩く音に気付いた若い巡査が、車の中で悲鳴を上げた。
あっというまにぐるりをゾンビに取り囲まれ、押され、叩かれパトカーが地震にでもあったように揺れている。
運転席の巡査が何か喚きながら腰の拳銃をガラス越しに突き付けた!
「バ、バカ!止めろ!撃つんじゃ…」
バコン!という銃声とガラスの割れる音がした次の瞬間、砕けたガラスの穴からゾンビの腕が先を争うように車内へと突っ込まれた。
206マイ・ネーム・イズ…:2009/12/25(金) 17:14:09 ID:waM/mB/q
割れたサイドウインドウから、皮膚が切れるのもかまわずに残りのガラスを押し退け、ゾンビの群れはパトカーの車内に押し入った!
怒号!
悲鳴!
銃声!!
フロントウィンドウに赤い血がぶちまけられて車内の騒動が見えなくなるのと同時に、ピーターの隣で動物じみた唸り声があがってロジャーが車外に飛び出した!
「待て!ロジャー!!」
ピーターの制止も聞かずロジャーは、アサルトライフルの弾を嵐のような勢いでパトカーに群がるゾンビへと浴びせかける!
着弾のショックで一体、二体と弾き跳ばされるゾンビ。
だが、そのピーターのがら空きの背中から別のゾンビが迫って来る。
「くそっ!」
がら空きになった部下の背後を守るため、ピーターもパトカーの外に飛び出した。
バン!バン!
ショットガンの鋭い2連射でロジャーの一番近くに迫っていたゾンビを仕留めると、ピーターはパトカーの前を素早く回りこんでロジャーの背後についた。
「落ち着け!ロジャー!」低い声で唸るようにピーターが言った。「このままじゃオレたち全員ここでお陀仏だぞ」
「しかし、後ろのパトが動かなけりゃ…」
…ピーターとロジャーのパトカーも動けない。
「…圧すか?ピーター??」
「パトを2人でか?そのあいだゾンビどもには休憩でもしててもらうのか??」
食事を終えたのか後ろのパトカーから離れたゾンビが、ゆらゆらとピーターたちの方にやって来る。
弾が無くなったらしいアサルトライフルを投げ捨て、ロジャーは腰のホルスターから古いコルトガバメントを抜き出した。
「どうするピーター?」「…突撃さ」
ピーターの顔に凄惨な笑みが浮かぶ。
死を覚悟した男の笑みだ。
「よし……いくぞ!!」
だが運命の女神は、まだピーターとロジャーを見捨てていないらしかった。
「うおりゃああああああああっ!!」
2人がゾンビの群れに突撃を敢行するより僅かに早く、ゾンビの背後に飛び出した人影が、棍棒を振り回しながらゾンビの群れに襲い掛かったのだ!
207訂正…:2009/12/25(金) 17:17:13 ID:waM/mB/q
12行目、「だが、そのピーターのがら空きの背中から」とあるのは、「だがそのロジャーのがら空きの…」が正解。
お粗末な攻勢ミスでした。
208マイ・ネーム・イズ…:2009/12/25(金) 23:45:32 ID:cne4scG4
(なんだ?あいつらは!?)
棍棒を振り回しているのは東洋人で、背はピーターから見ればずっと低いし手足も短いが、その代わりえらくガッシリした体つきをしていた。太短い腕に棍棒を持ち、まるでブルドーザーのようにゾンビを押し込んで、次々と頭をカチ割っていく!
不意にピーターは、東洋人の手にしている「棍棒」が野球のバット、それも彼がついさっき後にしてきたばかりの警察署に置かれていたバットであることに気がついた。
(…それじゃコイツは、もしかして援軍なのか?)
そのとき、東洋人の後ろから見知った顔がひょいと現れた。
(…ん!?アイツは)
たしか倒産して放棄された荷降ろし用クレーンに寝泊まりしているバーニーとかいうヤツだ。
おどろくピーターとロジャーに向かって、バーニーが叫んだ。
「ピーター!ロジャー!Mrリョーツがバケモノどもの相手をしてるうちに、その邪魔なパトカーを退かすんだ!!」
返事の必要はなかったし、そのヒマもない。
両津がゾンビを排除したエリアを駆け抜け、2人の警官は後ろのパトカーに駆け寄った。
「よし!押すぞ!!」「いや、待てロジャー!」
ピーターはガラスの割れた窓から中を覗き込んだ。
車内は……洋風に言うならば「屠殺場」。和風に言うならば、「アンコウの吊るし切り」でもやったようなありさまだ。とうてい車として使えるような状態ではない。
この二台目のパトカーで逃げるのを諦めると、ピーターはゾンビどもの「食い残し」をなるべく見ないようにしながら、セレクトレバーのポジションを確認した。
彼の思った通り、ボジションはドライブに入ったままだ。
エンジンをかけるには、セレクトレバーをパークボジションにしなければならない。
だが、食われた警官は、動顛のあまりレバーをドライブポジションのままでエンジンをかけようとしていたのだ。
ハンドブレーキはかかっていなかったので、セレクトレバーのポジションをニュートラルにするとピーターはロジャーに言った。
「よし!もういいぞ!押せ!!」
白人と黒人。2人の警官が力を込めると、パトカーはゆるゆると動きだした。
「OK!ここまで動けばもう大丈夫背だ。ロジャー!オレたちの車に戻るぞ!」
前から来るゾンビを銃撃しながら自分たちの車に戻ると、ロジャーは車の向きはそのままに猛スピードでバックさせた。そして後ろのパトの横を擦り抜けた直後、ハンドル操作とプレーキングで巧みに車をスピンさせ向きを180度反転させた。
「助かったぞ。さあ、あんたらも乗るんだ!」
「言われるまでもねえよ。」とバーニー。
「三十六計なんとやらだ」と両津も後部座席に飛び込んだ。
運転席に白人のロジャー。
助手席に黒人副署長のピーター。
そして後席左に東洋人の両津勘吉、右に白人のバーニー、そして中央に瀕死の警官を乗せたパトカーは、脱兎のごとく元来た道を戻って行った。
209マイ・ネーム・イズ…:2009/12/28(月) 16:01:34 ID:4oaqJH8F
「…どうやらこの騒ぎはベイでは起こってないみたいだな」
クレッセント湖の西岸を回り込み、ベイ地区に乗り入れたところでロジャーは車を止め、じっとあたりを見回した。
同じく様子を伺っていたピーターが言った。
「…どうやらこの騒ぎはベイでは起こってないみたいだな」
ダッシュボードの時計を見るとまだ朝の5時半にもなっておらず、ベイ地区はしんと静まり返っている。
「ああ、そうみたいだ」声とともに後部ドアが開いた「オレたちはアンタらを徒歩で追いかけたんだが、途中奴らにゃあ出くわさなかったからな」
「おいMrリョーツ!車の外に出たら危ない…」
慌てるバーニーを手で制すると、あたりの空気の臭いをかいでから、両津はターミナルに止めてあるバスを指差した。
「おし、アレを使おう!」
「使うって?…あのバスをいったい何に??」
「…なるほどな」
両津の考えていることをまず理解したのは、バーニーではなく両津と同じ警官のロジャーだった。
ロジャーはバスに駆け寄ると、銃のグリップをハンマー代わりにしてドアガラスを破って運転席に駆け上った。
「あれで道に栓をしようってわけだな」
いつのまにか両津の横に大男のピーターが立っていた。
「ゾンビ騒ぎが、えーと……」
「…オールド地区」
「おう!そのオールド地区だけで起こってるんなら、ゾンビどもがこっち側に来ないようにしなきゃなんねえ。」
「なーるほど!」
いまさらながら、バーニーにもやっと両津の考えが飲み込めたらしかった。
「クレッセント湖と太平洋に挟まれて一番細くなってるトコをあのバスで塞いじまおうって寸法だな」
「そうすりゃ、こっち側の地区をゾンビどもかに守ることができる。ただ…」
「……うむ、そうだ。」
両津とピーターの表情が曇った。
「オールド地区にもまだ普通の住民がいるんだろ?ピーターさんよ?」
「全ての住民か1人残らずゾンビになったとは思えん。現にゾンビに食われている者もいるからな」
両津はピーターの腕時計を指差して言った。
「この辺じゃ、住民は何時ごろから外に出てくるんだ?」
「…もうすぐ5時半。あと30分ってところだろう。そうなれば……」
何も知らない住民が、ゾンビでいっぱいの町に出て行くのだ。
「おい。なんとかして普通の住人たちに、家から外に出るなって指示するこたぁできねえのか?」
両津に言われる前から、ピーターもそれを考えていた。
いちいち電話をかけるのなど論外だ。皆まだ眠っている時刻だし、第一人数が多すぎる。
住民に一斉に指示を出す方法は…ピーターの知りる限りたったひとつしかない。
ただそれには……。
「…なるほどな」
ピーターの顔を下から見上げていた両津が、得心したように言った。
「…方法はあるけど、恐ろしくヤバイってわけだな」
相手の腹を見透かしたような両津の言葉に、一瞬驚きの顔を見せたピーターだったが、すぐに諦めたような顔に変わった。
「市役所の防災放送だ。あれを使えばオールドとベイ、両方の地区に一気に現状を伝えることができる。」
「…わかった、ピーター」
手にしたバットをバトントワラーのようにクルクルッと回すと、「晩飯のオカズは何か?」とでも言うような口調で、両津はピーターに尋ねた。
「…場所を教えてくれ。市役所はオールド地区のどの辺にあるんだ?」

210創る名無しに見る名無し:2009/12/28(月) 22:28:44 ID:GVqTqBNV
…さてと、これより両津勘吉氏はゾンビが徘徊するオールド地区のど真ん中、市役所へと潜入いたします。
道案内はバーニー氏。下水や裏路地、柵の穴。町の裏道・横道を知り尽くしたバーニー氏の導きで、両津勘吉氏は無事市役所へと辿り着けるのでありましょうか?
そして市役所への道々、両津勘吉氏が語るは世にも奇妙な物語。
本駄文の計5本ある大枝のその一本。
いよいよ姿を、表しまする…。
211両津勘吉のはなし:2009/12/30(水) 23:48:02 ID:aMimmI+X
 ロジャーの運転するバスが、古いディゼル車特有のもうもうたる黒煙を吐きながら、今戻って来たばかりの道へと走り出した。今回は、クレッセント湖周回路西回りコース閉塞が目的なので、さほど走る必要も無い。
200メートルも走れば、西を波打ちつける岩場に、東を切り立った護岸とに挟まれた箇所が15メートルばかり続いている。その護岸にバスをぶつけて停止させ、道路を封鎖してしまえばいい。
一方、ピーターのパトカーは港に隣接したコンクリートの建物横に両津とバーニーを下ろすと、ロジャーと合流するため戻って行った。

「おーい」
バーニーが手を振って両津を呼び寄せた
「ここだ。ここだ」
「あったのか?!」
「見ろよほら、あれだ、あれ」
バーニーが指さしたのは、件の体もの横にあるマンホールだった。
「これを行きゃあ、ゾンビの群れに気付かれずに市役所近くまで行けるんだな?」
「間違えねえよ。地元っ子を信じろって」
両津に向かってバーニーは胸を張った。
「ちょっと前まで、オールド地区じゃは下水をナラガンセット川に垂れ流してたんだ」
「環境問題なんてうるさく言われてなかったころの話だな」
「もちろんさ。だが、イーグルネストができたりして観光客が来るようになると、さすがに垂れ流しってわけにゃいかねえわな」
「それでこの…」横の建物を見上げてから両津は言葉をつづけた「…この下水処理施設を造ったってわけだな?それでこの下水道がオールド地区まで続いてるってわけだ」
「ロジャーが糞詰まらせに行ってる周回道路の下を、下水管が走ってるって寸法さ」
「よしわかった。そんじゃオレに道を…お、おい、アンタいったい何やってんだ?!」
ピーターのパトカーに積んであったバールを使ってマンホールの蓋をこじ開けると、バーニーはさっさと下に降り始めた。
「アンタはここまでって話じゃ…」
「なに寝言ほざいてんだよMrリョーツ!アンタ一人でオールドに行ったって、右も左もわかんねえじゃねえか」
「だからったって…一般人を危険な目に合わせるわけにゃ…」
「でもMrリョーツ。アンタが警察官なのはアンタの国での話だろ?ここじゃアンタだってオレと同じ一般人だぁな」
「…ま、そりゃそうだが…」
「そんじゃ文句はあんめぇ。オレがガイドになっいてやるから…遅れないようについて来な」
212両津勘吉のはなし:2009/12/31(木) 18:22:57 ID:grYqjxCa
先を急ぐ2人分の足音がコンクリート製の壁にこだまし、懐中電灯の光が闇に踊る。
沈黙を破って両津が尋ねた。
「いまはどの辺だ?」
バーニーが答えた。
「たぶん…ロジャーがバスで塞いだとこの下あたりじゃねえかな?」
両津の手にした懐中電灯が足元から壁、天井部分をぐるりと照らした。
下水道の内部は意外に乾いていた。
ネズミも…いない。
「このへんには余所から流れ込んでくる支流は無いからな。」
両津の疑問に先回りしてバーニーが言った。
「学校の先生に言わせると、クレッセント湖はもともとナラガンセット川の一部だったんだそうな」
海岸近くで大きく蛇行した部分が有史以前の大洪水で本流から切り離され、湖として残った。それがクレッセント湖である。
「だからクレッセント湖は、太平洋ギリギリのとこまで近づいてるんだ。一番海に迫ってるトコだと、幅は50メートルもねえ」
「なるほどな。それだけ狭きゃ人は住めないか。」
「人が住んでないおかげで、下水道のこの辺は乾いてて比較的清潔なんだ」
「なるほど」と両津が相槌をうち、それから数分ほとは無言の行軍が続いたが…再び沈黙を破ったのは、今度はバーニーだった。
「ところでMrリョーツ。あんた元々は警察署に行きたかったんだよな?」
「ああ、そう言やそうだったな」
「いったいなんで警察署に行きたかったんだ?」
「道を聞きたかったのさ」
「道を?いったい何処への道だ?」
「…それがな…」
ちょと言い淀んでから、改めて両津は言った。
「なあバーニー。この町に椅子取りゲームやってる会場はねえのか?」
「椅子取りゲームだぁ?」
裏返りかかったような声で、バーニーが言った。
「そんなの、いまどき幼稚園でだってやらねえぞ。」
「そうか……そうだろうな」
そんなバーニーの答えを、両津は予期していたようだった。
「オレだって、そんな場所があるとは思ってねえんだ。オレだってな……あんなことが無ければよ」
213両津勘吉のはなし:2010/01/01(金) 00:31:31 ID:U4jJnWuk
「上司が命より大事にしてた家宝の壺をふとしたはずみで割っちまってな」と、両津は話し始めた。
「以前も、オレのことを猟銃や日本刀持って追っかけてきたことのある上司だ。
そのまじゃ命がいくつあっても足りゃしねえってんで、オレはほとぼりの冷めるまで外国で過ごすことにしたってわけだ。
ただ問題は外国に高跳びする方法だ。飛行機は速いし簡単だが、部長に見張られてるかもしれねえ。
それでオレは中川って同僚に頼みこんで、そいつの自家用クルーザーで太平洋横断と洒落こんだワケだ。
幸い台風シーズンは終わってたし、おまけに中川のクルーザーってのがまたものすごい代物でな。まるで五つ星ホテルのスイートルームがまるごと移動してるみたいな感じときた。そんなわけで太平洋の一人旅も全然苦にならない。
昼間は日光浴と釣り、夜は見慣れぬ空に星座を探しながら、鼻歌交じりにオレは太平洋を横断した。
ところがだ。
もう間もなく、アメリカの岸が目に入ろうってところまで来たときのことだ。
オレは船倉の奥から、人の声がするのに気がついたんだ。」
「人の声?」
「ああ…か細い声が聞えて来るんだ『そっちに行っちゃダメだよ』とか『ダメだよ。死んじゃうよ』とか…。」
「さっきのイスとりゲームってのは?」
「そのとき聞えた言葉の一つさ。『イスとり』それから『幽霊と死神のゲーム』…」
「おいおい、幽霊と死神が椅子取りゲームをするってのか?」
「意味なんかオレにも判んねえよ。ただ、その小僧がそう言ってたんだ」
「小僧!?そうか!密航者だ!子供が密航してたんだな??」
「ああ、理屈で言えばそういうことになるな。だがオレは、太平洋を横断しているあいだ、船倉には何度も入ってるんだ。けれどもオレはそれまで誰にも会わなかった。子供にも、大人にもだ」
「どっかの荷物の影にでも隠れてたんだよ。そうにちげえねえ」
「もしアンタがいうような話なら、ネズミか猿なみに小さなヤツじゃなきゃならないな」
両津は明らかにバーニーの説に納得していなかった。
「どうやって隠れてたのかは別にしてだ。ともかくその小僧はいた。アンタが言ったように荷物の後ろに丸くなってな。苦しそうに寝返り打ちながら、寝言を繰り返してるんだ『そっちちに行っちゃだめだよ』『危ないよ死んじゃうよ』って、苦しそうに、何度も何度もな」

214両津勘吉のはなし:2010/01/03(日) 23:21:14 ID:4+tzS+b9
ていよく整理された収納ボックスの裏に、手足を縮めて、その小僧は転がっていやがった。
小僧の体に手をかけ、大声でオレは小僧に呼びかけた。
『お…おい小僧!おまえ此処でいったい何してる?いや、それより前に、いままで何処に隠れてたんだ!?』
けれど…よっほど深く眠っていたんだろう。小僧はなかなか目を覚まさない。
苦しそうに体をよじりながら、まだ「だめだよ」「死んじゃうよ」って言い続けるんだ。
それがあんまり苦しそうだったんでな…オレは収納ボックスを押しのけると、狭い隙間から小僧を抱き上げてよ。
それで頬っぺたをピシャピシャ叩いてもう一度叫んだ。
「起きろ!起きろ小僧!!夢だ!オマエは夢を見てるだけなんだ!!」
するってえと…ようやく小僧はうっすら目を開けやがってよ。そんでもってオレに向かって言いやがったんだ。
『……おっちゃん、幼児虐待は犯罪だよぉ』
思わずオレは叫んだ。
『幼児虐待だと!?』
幼児と言われてみればそのガキ…いや、その小僧は、背格好から見てたぶん幼稚園か、よくて小学一年生ってとこだろう。
しもぶくれ気味の顔に、いまどき珍しいイガグリ頭。服装はユニクロで買った……悪りぃバーニー、アメリカ人のアンタにゃユニクロって言っても判んねえよな。…ま、とにかくありふれた安物を着てたってことさ。
いよいよオレは判んなくなった。
だってよ、船が港に泊ってるあいだに、近所のガキが忍び込む…なんてことは、そりゃあるだろう。
けどよ、その時船は、日本を離れてから一週間以上たってたんだ。そのあいだ、小僧はいったい何処に隠れて、何を飲み食いしてたんだ?
オレがそんなこと考えてると…急に甲板の方で小僧の声がした。
『おおっとぉ、あぁれこそは目指す新大陸、アメリカだぁ!』
はっと気がつくと、オレの腕の中はもぬけの空だ。
いつの間に抜けだしやがったんだと、小僧を追いかけてオレも甲板に駆けあがった。
甲板に上がると…水平線が黒く見えた。
空と海以外のものが水平線にある。小僧の言うようにアメリカ大陸だ。
舳先で飛び跳ねてる小僧の襟首を捕まえて、オレは言った。
『おい小僧!喜んでるとこ悪いが、アメリカに着いたらオマエのことは警察に届けなきゃならん。このままじゃオレが誘拐犯になっちまうからな』
ところがだ。
小僧は、警察には行きたくない、自分にはしなきゃならないことがあるからって、こう言うんだ。
相手の都合はどうだろうと、オレは警官だし、見ず知らずの幼児を連れ歩くわけにもいかねえ。
それで、いや、どうしても警察に引き渡さなきゃならんって言うとよ、小僧のヤツ、オレの横すり抜けて逃げ出しやがったんだ。
それからもう大変さ。船中を舞台にした一大鬼ごっこのはじまりよ。
しかもオレは追いかけて捕まえるだけだが、向こうは違う。
物は飛んでくるわ。捕まったら噛みつくわ。
鍋はひっくりかえる。ガラスは割れる。
ドタバタ騒ぎの最中に、きっと小僧が船の操縦装置に触ったに違いないんだ。
オレが気がついたら、船でいっぱいの港がもう目と鼻の先よ。
他の船にぶつかんないようにするのが精いっぱいさ。

「あとはバーニー、アンタの知ってるとおりだよ」と、両津は話を終えた。
「ところでMrリョーツ。」
足を止めず、後ろも振り返らずにバーニーは言った。
「…アンタさっきからその子供のことを小僧、小僧って呼んでるが、ちゃんと名前は聞かなかったのか?」
「おっといけねえや…」
足の指みたいな太さの手の指で、頭をゴリゴリ描きながら両津は応えた。
「もちろん名前も聞いたさ。たしか……『のはら・しんのすけ』とか言ってたな…」

215浜に真砂の…:2010/01/06(水) 16:40:56 ID:Q5d8rrjq
英国人の運転する車がならガンセット川の流れに飲まれたころ……。
イーグルネスト近くの樹上から一つの影が音もなく地上へと滑り降りると、地上で待っていたもう一つの影と合流した。
「…間違いない。人の気配が近づいて来る」
「人数は?」
「たぶん一個小隊ってとこだろうな」
「一個小隊か…」
2人の武器はワルサーP38とスミス・アンド・ウェッソンM19コンバットマグナムの各一丁。もっとも普通の兵士一個小隊程度なら、2人にとって別段怖い相手ではなかった。
木から下りた影はルパン三世。
下で待っていたのは次元大介。
世に知られた「大泥棒」の2人組である。
彼等2人は、ヨーロッパのさる王族の依頼により、このホテルに秘匿されているという「深淵のためいき」を盗み出そうとやって来たのだった。
216浜に真砂の…:2010/01/06(水) 16:41:47 ID:Q5d8rrjq
「なあルパン、止さないか?このヤマ、オレにはなんだか嫌な予感がしてならねえんだ」
また同じ話題を蒸し返す次元に対し、黙殺をもってルパンは答えた。
だが、次元に話を止めるつもりはなさそうだった。
「あの飛行機にしても、それからさっきあのテラスに立ってた爺さんにしてもだ」

今を遡ること1時間半。
イーグルネストに接近する2人の頭上でほんの一瞬夜空の星が見え隠れしたのを、2人は見逃さなかった。
何かが、夜空を横切ったのだ。
「あれは確かに飛行機だったぜ」
辺りの様子に気を配りながら、次元は言葉を続けた。
「…それもエンジンをかけず、航行灯もつけないで飛んでやがった。隠密行動中ってわけさ。それから…」
帽子のツバの影で、次元の目が鋭く光った。
「…それからあの臭い。それからさっきの音だ」
音というのは、銃撃された英国人の車が川に落ちたときのもので、もちろんルパンも気づいていた。
だが、「臭い」に関してはさすがのルパンも気づかなかった。
銃器のプロである次元ならではの嗅覚だ。
「銃声は聞こえなかったのに、風にかすかな硝煙の臭いが混じってきた。この近くにサプレッサー(=減音器)つきの銃を使ったヤツがいやがる」
夜間に航行灯を点けず、エンジンも止めて滑空する飛行機。
そしてサウンドサプレッサー付き火器の発砲。
二つの意味するものは明らかだ。
「どっかの特殊部隊が展開してやがる。標的は…何だ?」
「安心しろ次元。オレたちじゃねえことだけは間違いねえさ」
次元に言いたいだけ言わせてから、ルパンはおもむろに口を開いた。
「あのイーグルネストかオレたちが標的だってんなら、輸送機の飛んでた方角が合わねえ。ヤツラの標的は別に在る。たぶんそれは、もっとこの山の上手にあるはずだ」
「だったらヤツらはなんでこっちにやって来やがるんだ?」
そのとき、ルパンが無言で次元を制した。
感情を殺した怪盗の目が、ネストの下手の端に茂る一叢の潅木に注がれる…。
ルパンは、我々にも見たり感じたりできる何かを見ているのではない。
彼の見ていたのは…、何も無い「虚」の空間だった。
生き物のいるところ、呼吸・足音・心拍や足音・身じろぎの気配といった、生き物が放つ「動」が必ず存在する。
だが、ルパンの見つめるところには何も無かった。
ルパンの視線は、何も感じられない「虚」の空間を追い、潅木の茂みから隣接するあずまや、藤棚、遊歩道と移って、ネストの東の翼で止まった。
間違いなかった。
ルパンや次元と同等か?あるいはそれ以上に危険な相手が、イーグルネストに侵入したのだ。
217創る名無しに見る名無し:2010/01/06(水) 22:23:40 ID:Pzlm4miZ
いやはや、作業を急ぐとろくなことはないな。
「足音」をダブらせてる。
とりあえずここまでで、ルパン三世と次元大介も登場。
特殊部隊のメンバーとしてあの女とあの男を出せば、一通りのメンツが揃う。
あとはお話を転がすだけ…。
218創る名無しに見る名無し:2010/01/07(木) 09:53:54 ID:AtheBCNf
誰も続きを書いてくれないな(苦笑)。
ぼかして書いたんで書き難いか?
…それではというわけで、ネタを公開しましょう。

「英国人」
もうお判りとは思うが、引退した007。
「エルンスト・ブロフェルドを見た」という古い仲間からの連絡を受け、アンカータウンにやって来た。
ちなみに「亡霊」とか「幽霊」と表現されているのは「スペクター(「幽霊」の意味。ブロフェルドが率いていた犯罪組織の名)。
のはらしんのすけの寝言に出てくる「幽霊と死神」とは、幽霊がブロフェルド、死神は「殺しのライセンス」を持つ007のこと。

ブロフェルド
007との度重なる対決で車椅子から離れらぬ体となり、瞳の色を変える手術の失敗により失明もしていた。
しかし、アンブレラ社から奪取したTウィルスにより歩行能力と視力を取り戻す。
彼は、Tウィルスといえども自らの意思と知力、そして科学技術により制御できると考えていたが…。

「闇のなか降下した特殊部隊」
アンブレラ社が送り込んだTウィルス奪還部隊。
ただし、その中でアンブレラ社の人間はニコライ(「バイオハザード3/ラストエスケープ」)のみ。他は今回のミッション限りの契約で、彼らを率いるのはバラライカ。
スペクターの秘密施設を攻撃すべく降下したが、付近の樹木は漏洩したTウィルスによって怪物化しており、その攻撃を受け止む無く退却。
森からの脱出中、パニックった兵が「英国人」の車を銃撃。更にイーグルネストでルパン三世らと遭遇する。

椅子とりゲーム
アンカータウンより更に山奥にあるインディアンの廃村「イストリ」のこと。

のはらしんのすけの目的
昨年死亡した「クレヨンしんちゃん」の作者を復活させること。つまり、のはらしんのすけは人間ではない。両津のクルーザー内で、何もないところから出現した。

219創る名無しに見る名無し:2010/01/07(木) 09:54:58 ID:AtheBCNf
上のつづき…

両津の「上司」
もちろん大原部長のこと。お話の中盤、ゾンビの大群に包囲され絶体絶命となったグループの上空にパラシュート降下する予定。
「両津はどこだああああ!?」と、ロケットランチャは撃つは、砲弾は炸裂するは、のいわゆる「無双」状態(マンガでよく見るエンディングの状態)になり、結果としてグループを救う。ちなみに「無双状態」になるのはこの一回限り。
さらに終盤では、タイラントと対決する両津にロケットランチャーの最後の一発を投げてよこす。

「深淵のためいき」
トマス・ド・クインシーの詩「深き深淵よりのためいき」が元ネタ。この詩にいわゆる「三人の母」、涙の聖母(「サスペリア・テルザ、最後の魔女」)、ため息の聖母(「サスペリア」)、闇の聖母(「インフェルノ」)が登場する。
イーグルネストの支配人ダリオの母が所持している強力な魔力を持つ「闇の賢者の石」。
アンカータウンの町にブロフェルドやゾンビ、アンブレラなど様々な悪を呼び集める核となっている。
かつてカリオストロ王家に莫大な富をもたらしたが、同時に伯爵家という闇の存在も生み出した。そのため、クラリス(「カリオストロの城」)がルパン三世に「この世から消す」ことを依頼した。

「G」
Tウィルスとともに持ち出された、別種のスーパーウィルス。
スペクター科学者陣(リーダーはDrノウ)の実験によりトカゲとカメ、ミミズに接種実験が行われ……出現した生物にも「G」で始まる名前がつけられる。

「グ」ラボイズ
例のあれではなく、スペクターがミミズにG細胞を植え付け作り出した。
サバイバリストたちのテント村に出現し、ガンマー(「トレマーズ」)と対決する。

「ゴ」ジラと「ガ」メラ
例のあれではなく(笑)、スペクターがイグアナとカミツキガメにGウィルスを植え付け作り出した。
二匹の掟破りの対決により、アンカータウンは壊滅する。

謎の隕石
アンカータウン東の山林に落ちたはず…。しかし、衝撃や爆発は起こらず、落下の痕跡も見当たらない。
一体隕石はどこに消えたのか??
実は、隕石は一つの世界の平面ではなく、平行する複数の世界を貫いて落下していた。
そのため、「深淵のため息」の魔力との相乗で、隕石が貫いた複数の世界とのあいだに風穴ができ、その全てで死者が甦ってしまっている。

セント・マデ……
「隕石」と「深淵のため息」により繋がってしまい、死者も甦ってしまった別の世界。
220浜に真砂の…:2010/01/13(水) 15:43:46 ID:KQoH2KyW
イーグルネストの女子従業員デブラは、ダリオの指示で人の出入りがロックされた後、通用口の前で密かに気を揉んでいた。
(どうしたのかしら?いつもならもうそろそろ…)
いつもならこのぐらいの時刻にジェイスンが、隣町のミルズから全国紙の早刷り第一版を届けにやって来る。
デブラはそれを待っているのだ。
だが今日に限って、通用口の前にジェイソンの車は現われない。
近くに飛行場や鉄道など騒音を放つ施設があるわけでもないのに、イーグルネストはなぜか完璧と言える防音を誇っていた。
故に、この薄闇のなかジェイソンの車がエンジンを喘がせながら山道を登っていたとしても、その音はデブラの耳には入らない。
しびれを切らしたデブラは通用口の前を離れ、2階テラスへと向かった。
もちろんそこも閉鎖され、テラスには出られなくなっているはずだが、窓からでもネストへと続く山道を見下ろすことができる。
ジェイスンの車がやって来ても、通用口で待つよりかなり早く、それに気づくことができるだろう。
厨房の前を横切り、ロビーでなにか話しているフランシーンと警備員のウォリーに軽く会釈して通り過ぎ、辺りに人の気配が無くなると、デブラの足は自然と速くなった。
まだジェイスンの車は山道を登っているのか?
それともデブラと入れ違いに通用口前に着いてしまい、閉鎖されたドアを前に途方に暮れているのではないのか?
だが…、2階テラスへと続く廊下の途中で、デブラは急に立ち止まった。
…頬に冷たい外気が触れた。
(窓が開いてる?)
防犯上の理由から、夜間ネストは全ての窓を閉め、警報装置をセットすることになっている。
(…いやだ、閉め忘れたのね。こんなに寒くなってるのに…)
一度はそう思いかけたが、すぐにデブラは思い出した。
ついさっきウォリーが建物を封鎖する際、警報装置で戸口や窓の封鎖を確認したはずなのだ。
そのときもし窓が開いていたなら、警報装置はセットできない。
また警報装置をロックした後で窓が開かれたなら、警報装置が発報するはずだ。
(それじゃさっきの風は?)
しかし、立ち止まった彼女の頬にもう風は感じられない。
気のせいだったのか?
……いや、そうではなかった。
それが証拠に、デブラの背後には痩せた人影が立っており、その手には鈍く輝くナイフが握られていた。
221デッドリー・ミッション:2010/01/16(土) 14:17:12 ID:FYYMFWxi
カツカツという靴音に素早く身を隠すと、若い女性従業員が小走りに二階へと上がって来た。様子から見て、侵入者に気付いて上がって来たのではなさそうだ。あのニコライとかいうヤツの警報解除の腕はどうやら本物らしい。
だが…ほっとしたのもつかの間、女性従業員は急に足を止めた。
(…しまった!)
とばした視線の先で、進入路の窓が細く開いていた。夜風に気付かれたのだ。
(どうする!?…殺るか!?)
だが、彼女が動くより一瞬早く、「仲間」の一人、テッドが女性従業員の後ろに立った。
女性従業員は全く気付いていない。
無表情のまま、ステーキナイフでも握るような手つきでテッドはナイフを取り出した。
(殺るか…)
ファッションモデルのようなテッドの顔に、あるか無きかの笑みが浮かぶ。
その笑みが、彼女の気を変えさせた!
「きゃあっ!?」
物陰から飛び出すと、稲妻の速さでテッドの手首を捕える!
同時に、彼女の顔を見た女性従業員が「あっ!」とその場に崩れ落ちた。
お楽しみを邪魔されたテッドが、低く、しかしよく通る声で彼女に向かって囁いた。
「ボクの邪魔するのか?バラライカ?」

222デッドリー・ミッション:2010/01/16(土) 14:18:30 ID:FYYMFWxi
バラライカは…最初からこの依頼に乗り気ではなかった。
普段の仲間とではなく、今回限りのユニットというのがその理由だったが…。
実際のメンツを前にして、その思いがさらに大きく膨れ上がるのを、彼女は抑えられなかった。
テッド…IQq160超の天才という触れ込みだが、明らかに歪んだ性衝動を抱えた変質者だ。
ホイットマン…海兵隊崩れの狙撃の名手。バラライカもこの男ほどの狙撃手を知らない。
それだけならいいのだが、家族と隣人を含む17人を射殺して逃亡した、大量殺人者である。
エディ…バラライカにもこの男の正体は判らない。いつもは兵士とは見えない内向的な男だが、戦闘中に突然性格が一変した。
ジェフ…テッド同様、暗殺者だが。テッドとの違いは、同性愛者であるという点と、相手にしばしば咬みつくという点である。
ユナ…爆破のプロだと、ニコライには告げられている。実際に民間人を中心として何十人も殺しているらしい。
そして最後に、今回のミッションの依頼主が送り込んで来た男、ニコライ。
今回のミッションでは雇い主の代理人として、バラライカの唯一の上司ということになる。
バラライカ同様、アフガンでの参戦経験があり、その意味ではいわば「戦友」である。
だが、バラライカは初対面のときから不快感を押さえるのが精いっぱいだった。
 深夜バラライカらとともにパラシュート降下したときには、今いる連中に比べれば多少はマシなクズが他に9人いた。
だが彼らは、降下後1時間と生きてはいられなかった。
223デッドリー・ミッション:2010/01/16(土) 14:49:22 ID:FYYMFWxi
登場人物たちのバックグラウンド

ピーター
映画「ゾンビ」の主人公である黒人SWAT隊員。
ロジャー
映画「ゾンビ」の主人公である白人SWAT隊員。
テッド
テッド・バンディ。超有名連続殺人犯で、映画「羊たちの沈黙」に登場するレクター博士のモデルの一人。
連続殺人世界チャンピオンのヘンリー・ルーカスとどっちにしようかと思ったが、メジャー指数とキャラ立ちの良さでバンディを採用(笑)。
ホイットマン
チャールズ・ホイットマン。テキサスタワーの狙撃犯であり、もちろん「パニック・イン・テキサスタワー」の主人公でもある。死後の解剖では脳腫瘍が見つかったという話もあるが、凶行との因果関係は明らかではない。
エディ
エド・ゲイン。ヒッチコックの「サイコ」の主人公、ノーマン・ベイツ、そして「羊たちの沈黙」のバッファロー・ビルのモデルでもある。
特技は死体の皮を剥いでの着ぐるみ製作と、「母さん」との同居…。
ジェフ
ジェフリー・ダーマー。
数ある変態殺人鬼群の中でも、トップクラスに気持ち悪いヤツ。なんでも捕まったとき、鍋で人間煮てスープ作ってる最中だったとか。
ユナ
ユナ・ボマー。
主に大学や空港を狙って爆弾テロをしかけたので、マスコミによりユニバーシティとエアポートの合成語でユナ・ボマーと名付けられた。
ニコライ・ジノビエフ
ゲーム「バイオハザード3・ラストエスケープ」の登場キャラ。

224デッドリー・ミツション:2010/01/21(木) 15:14:55 ID:pJUgqxuN
「…しかしなんだってダリオさんはネストをロックしろなどと…」
バラライカらが2階から悠然と姿を現したとき、警備員のウォリーはまだ女子従業員のフランと話しこんでいた。
「いったい何がネストに入ってくるって……あぁ!?なんだオマエたちは?」
分厚い胸を聳やかし、軽く小首をかしげた姿勢で、ウォリーは2階から現われた一行を睨みつけた。
「おい!聞いてるのか!?さっさと答えろ!」
答えがないと見ると、ウォリーは侵入者一行の先頭にいた白人男性に詰め寄り、ナイフかなにかのように太い指を突きつけてきた。
「…もう一度聞くぞ!貴様らどこから…」
突きつけられたウォリーの指をニコライがひょいと掴み……そして妙な具合にその手首を返した。
ゴキッ…
白系ロシア人の手の中から嫌な音が漏れ、ほぼ同時にウォリーの顔中から脂汗が噴出した。
「ぐぅあぁ…」「ウォリー!?」
ウォリーに駆け寄ろうとしたフランの前に、一人の女が立ち塞がった。
「騒ぐな。おとなしくしていれば、手荒なマネはしない」
先の男と同じく冷たい顔。ロシア系の顔立ちだ。
美しいといえる顔立ち。
顔や首筋の酷い火傷の痕を気にしなければ…いや、火傷があってもなお、この女は美しいと、フランは思った。
極地の冷たさを思わせる顔を彩る傷跡は火傷の痕などではなく、彼女の内面の炎が噴出した結果なのではないか?
…そんなことを考えていると、火傷女のすこし後ろにいた侵入者の一人が、抱き抱えていた人間をロビーのソファーの上にそっと下ろした。
(…デブラだわ!)
デブラを抱えていた男も間違いなく美男と呼ばれる部類の男だった。
ただしモデルといっても、スーパーに貼られた「安売り下着」の公告モデルだ。
(この女の言うこと、信じても大丈夫なのかしら…)
一瞬躊躇したフランだったが、(考えても仕方が無いわ)と思い直した。
いずれにしろフランには選択権はない。
フランが大人しくしなければ、強制的に大人しくさせようとするだけだろう。
それはフランにとっても好ましい展開ではない。
腹が決まると、フランは火傷女の顔を真正面に捉えて言った。
「…判りました。騒ぎませんから、アナタ方もこれ以上は乱暴しないでください」
225創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 15:50:54 ID:ZGrEJEjm
他に書こうという奇特な人がいるといけないから、間をあけてみたが…。
他の住人という存在自体が、実は私の心の中にだけ存在するとか。

いちおう書き易いように「ホテル・イーグル・ネスト」の設定をバラしてみよう。
ネストはオーナーであるダリオの「母」が主催するサバト(魔女集会)の隠れ蓑で、従業員、特に女性従業員はみな「魔女」。
つまりは映画「サスペリア」の舞台であるフライブルクのバレー学校みたいなもの。
怪物化した植物に追われてネストに逃げ込んだバラライカらだったが、内部も外部とどっこうどっこいの魔所だったというわけ。
ここにジェイソン・クリードが逃げ込んでくるが…。
ゲイトブリッジにいるはずのジェイソンがなんでネストに来れるのかというと、実はルパン一味の変装だから。
もともとルパンらは、毎早朝に新聞を届けに来るジェイソンと入れ替わってネストに侵入しようと企てていた。
しかしルパンらは、ホテルの若い女性従業員であるデブラが、ジェイソンの恋人であることを侵入後に知ることとなる。
顔見知り程度の相手なら騙しきれるが、恋人を騙しきれるはずがない…困ったことになった。
一方のデブラはというと、自分を殺そうとしたのはバラライカで、テッドが自分を助けてくれたと勘違いしている。
ここで変質者の殺人鬼テッド、実はニセモノのジェイソン、ホントは下っ端魔女のデブラという歪んだ三角関係が成立(笑)

怪奇植物に包囲されたネストの内部で、やがて殺人が発生。
バラライカ対フランシーン。
ニコライ対バラライカ。
次元対パラライカ。
最後は、「生きて歩き回る死」が徘徊するネストに怪奇植物までなだれ込み、「母」対ルパン+バラライカの対決…になる予定。

226創る名無しに見る名無し
バイオハザード2の表面・裏面の関係や、3のザッピングを意識して、本スレの裏面としてこのスレを利用していたが…。
本スレとクロスさせる前に、本スレの方が死んだっぽい。
…う〜ん、さて、どうするか?
本スレ乗っ取って並列処理してもあまり意味無いしなぁ。