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「な、な、なんとッ。浅沼美羽からの提案は、ドキッ! 女だらけの野球拳大会だッ!」
司会者の男のセンスは、少し古かった。
だが、最前列のファン達は、「おおっ」と湧きあがる。
「馬鹿馬鹿しい……やってられないわ。どうしてそんな事……」
大咲さくらがその提案を即座に却下する。
「あれあれー? 敵前逃亡ですかぁー? 日本一の球団が聞いてあきれますぅ〜」
「なんやて? 誰が逃げる言うたんや」
浅沼美羽の挑発にあっさり乗ってしまう御堂あづさ……。
「じゃあ、決まりですねっ☆」
「よっしゃ、ほんなら行くで! 準備はええな、奈美!」
「なーっ、なんで私なんスか!」
「ヴィーナスの切り込み隊長といえばお前しかおらんやろ」
「それもそうっスね……ってマジっスかぁー」
奈美の叫び声が、春の空に虚しく響いた。
「それでは参りましょうッ! 青龍の方角ッ! 平成の蒼い稲妻ッ、小宮奈美ッ!」
名前を読み上げられた奈美はしぶしぶとステージの中央に足を進める。
「白虎の方角ッ! 歌って踊れる速球派アイドルッ、浅沼美羽ッ!」
とびっきりの営業用スマイル(¥0)で手を振りながら美羽も中央へ。
ミウミウ! ミウミウ! ミウミウ!
鳴り止まぬミウミウコール。会場は、完全に美羽寄りだ。対する奈美はいきなり劣勢を
強いられる事になった。
そんな奈美に、三上英子がそっと近づいてアドバイスを送る。
「奈美っち、野球拳は強い者が勝つんじゃない、勝った者が強いんだ」
「み、三上センパイっ、テキトーな事言わないで下さいっス!」
「うふふっ。すでに勝負アリですねっ☆」
美羽は白い歯を見せて余裕綽々といった表情だ。
「プレイボールッ!」
わー。わー。ついに開幕の前哨戦となる(?)野球拳大会の火蓋が切られた。
第一戦、東京・小宮奈美対横浜・浅沼美羽。
「野球するならッ、こういう具合にやらさんせッ。投げたらッ、こう打ってッ。打った
ならッ、こう受けてッ。ランナーになったらッ、えっさっさッ。アウトッ! セーフッ!
よよいのよいッ!」
……これ、長いな。つーか、歌ってるのか?