215 :
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投下
「矢田さ〜ん。まだやるんすかぁ〜」
「やりたくないさ。でも止まんない。」
「あ〜もう。コーチに叱られても知りませんよ〜」
矢田はブルペンに居た。
宗田相手に、フォークに変わる武器の開発に精力を注いでいたのだ。
「‥‥なぁ。俺のカーブってどう?」
「カーブぅ?あんなのションベン臭くて捕る気もしないっす」
「ひでぇ」
「自分でも解ってたから投げてなかったんでしょ。チェンジアップ磨いたらどうです?」
「あーダメダメ。性に合わないアレ。スライダーでいいや」
「全然球質違うじゃないですか‥‥‥。じゃあどうするんです?」
「うーん‥‥。アレ‥‥‥試してみようかな?」
「アレ?」
「まぁいいから座ってな」
宗田はそう言われ渋々座り、ミットを構えた。矢田は不器用な男だ。持ち球は多くない。思いつきで投げられる投手では無いのだ。
「何投げるんですか?」
「大昔に流行った球さ」
矢田は振りかぶり、ゆっくりと重心をホームベースへ移動させる。
足が地面へ付き、腰が、胸が投球方向へと斬り返す。
その胸の張りや腕の振りは、宗田にはストレートと同じに見えた。
実際に投じられたボールもストレートとほぼ同じ起動だ。だが‥‥
「うわっと!」
「お?うまく行ったか?」
矢田が投じたストレートのはずのボールは、ミット手前で鋭く下へ変化した。
フォークのようなキレと変化量こそないが、真っ直ぐの球速で変化するボールに宗田は対応しそこねた。
「矢田さん!今のは!?」
「ああ、スピットボール」
「はぁあ!!?違反投球じゃないですか!!」
「ワセリン使えばな」
「!!?」
「なんだその顔?いいか要するにだ。もしストレートと全く同じ投球で、意図的に回転を殺せたら?もちろん指にゃ何も付けない。チェンジアップみたいに球速まで殺さずに、回転だけころすんだ」