スポーツをテーマにした小説を書くスレ

このエントリーをはてなブックマークに追加
1創る名無しに見る名無し
スポーツチームのオーナーとなり
クラブやチームを経営する小説も良し
一人の選手に視点をあて物語を書くも良し。

キャラ設定等は
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220305473/
を見習って考えていきましょう。

2創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 19:51:43 ID:o+8e5cA2


早速なんか考えてみる
3創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 20:28:50 ID:4SIw3k2L
スポコン物は書くの難しいからなぁ
4タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/14(金) 21:38:02 ID:o+8e5cA2
とりあえず架空のプロ野球リーグを舞台に書こうと思います
選手とか設定とかはみんなで考えていく形でいいのかな

とりあえずあらすじ的なもの↓
 主人公は甲子園優勝投手でプロ入り後もエースとして何度も日本一に輝いた大投手。
しかし怪我や衰えには勝てず、ついに戦力外通告を受ける。一度は引退も考えたが
かつての恩師から誘われて弱小球団へ移籍・・・その後チームを率い、優勝争いへ。
5創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 21:42:25 ID:feuxTQLl
ほうほう
6創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 21:46:11 ID:yInroIWe
それは期待
7創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 21:48:49 ID:4SIw3k2L
引退間近の投手が奮起した程度では、弱小球団が優勝争いは無理ぽじゃね?
今で例えるなら、横浜の工藤が楽天に移籍して選手会長になって
「お前ら頑張れよ!」と選手の尻叩くようなものだ
古田みたいに監督も兼任するなら可能性はあるかもだけどね

それよりは、まだ捕手を主人公に据えた方がリアリティが出ると思う
老いてもリードは健在だし、グラウンドから選手に指示するのも捕手
8タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/14(金) 22:00:06 ID:o+8e5cA2
>引退間近の投手が奮起した程度では、弱小球団が優勝争いは無理ぽじゃね?
はははwですよねーw

主人公がプロ入りした時の監督(隠居してた)を三顧の礼で迎えたって事で
若手の隠れた才能を引き出す監督って感じでいこうかなと思ってます

たしかに捕手視点も面白いですね
91 ◆wbETQ5TQAA :2008/11/14(金) 22:32:18 ID:jA0TDG+9
お…!レスがこんなについている。
8さんが野球で書くなら。

そしたら僕はサッカーチームで考えてみようかな。
新人選手の視点から僕は書いてみようかな。

とりあえずあらすじ的なもの↓
高校2年の夏休みに主人公を
プロサッカーチームのスカウトが尋ねて来る。
最初は下部リーグで経験を積んでもらうが、いずれはTOPチームで活躍して欲しいとのことであった。
半信半疑ながら名刺を受け取った主人公は驚く。
なんとヨーロッパリーグのスカウトであった。
初めての一人暮らし…初めての外国…
両親や彼女の反対に会いながらもチームメートの後押しもあり
退学し即プロ入りの決意をした主人公は空港へと向かった。
101 ◆wbETQ5TQAA :2008/11/14(金) 22:43:16 ID:jA0TDG+9
小説内クラブ リアルクラブ名 資金 方針 移籍 クラブの格 攻撃 防御 総合
マルセイユFC マルセイユ  中  将来 積極的 優勝候補クラブ B B B
リヨンFC   リヨン    中 能力 消極的 優勝候補クラブ B B B
モナコAC モナコ      中 将来 標準的 上位クラス B B B
SCパリ PSG       低 能力 標準的 上位クラス B B B
ナントSC ナント      低 将来 標準的 上位クラス B B B
ランスFC ランス      低 能力 標準的 中位クラス B B B
ボルドーSC ボルドー    低 能力 標準的 中位クラス B C B
モンブリアールSC ソショー 低 能力 消極的 中位クラス B C B
オセールAC オセール    低 将来 標準的 中位クラス B C B
ギャンガンAC ギャンガン  低 将来 標準的 中位クラス C B B
FCリール リール      低 将来 標準的 中位クラス C B B
SCレンヌ レンヌ      低 能力 標準的 中位クラス B C C
バスティアFC バスティア  低 将来 標準的 中位クラス C C C
FCモンペリエ モンペリエ  低 将来 消極的 下位クラス C C C
ニースFC ニース      低 能力 標準的 下位クラス C C C
ASル・アブール ル・アーブル 低 将来 消極的 下位クラス C C C
セダンFC スダン       低 能力 標準的 下位クラス C C C
メツSC メス        低 将来 標準的 下位クラス C C C

ドイツ
バイエルンSC バイエルン・M 高 能力 消極的 ビッグクラブ A A A
ドルトムントFC ドルトムント 高 能力 標準的 優勝候補クラス B B A
レバークーゼンFC レバークーゼン 中 能力 標準的 上位クラス B B A
ベルリンFC ヘルタ・ベルリン 高 能力 標準的 上位クラス B B B
シャルケSC シャルケ04   中 能力 消極的 中位クラス B B B
シュツットガルトFC シュツットガルト 中 能力 消極的 中位クラス B B B
カイザースラウテンSC カイザースラウテン 中 能力 消極的 中位クラス B B B
SCハンブルグ ハンブルガーSV 中 能力 標準的 中位クラス B C B
ミュンヘンSC 1860ミュンヘン 低 実績 消極的 中位クラス B B B
ボルフスブルグFC ヴォルフスブルグ 低 実績 標準的 中位クラス B B B
ケルンSC 1FCケルン       低 能力 消極的 下位クラス C B B
メンヘングラバッハFC ボルシアMG 低 能力 消極的 下位クラス C C B
ブレーメンSC ブレーメン      低 将来 標準的 下位クラス C C B
ニュルンベルグSC ニュルンベルグ  中 能力 消極的 下位クラス C B C
コトブスSC コトブス        低 能力 標準的 下位クラス C B C
フライブルクFC フライブルク    低 能力 消極的 下位クラス C C C
FCハノーバー ハノーヴァー96   低 能力 標準的 下位クラス C C C
フランクフルトFC フランクフルト  低 能力 標準的 下位クラス C C C
111 ◆wbETQ5TQAA :2008/11/14(金) 22:43:59 ID:jA0TDG+9
イングランド
SCマンチェスター マンチェスター・U 高 能力 標準的 ビッグクラブ A A A
SCロンドン アーセナル        高 実績 積極的 ビッグクラブ A B A
SCチェルシー チェルシー       高 能力 積極的 上位クラス A B A
SCリバプール リバプール       高 将来 標準的 上位クラス B A A
SCニューカッスル ニューカッスル   中 将来 標準的 中位クラス A B B
SCブラックバーン ブラックバーン   中 実績 積極的 中位クラス B B B
SCマージーサイド エバートン     中 能力 標準的 中位クラス B B B
SCリーズ リーズ           中 能力 標準的 中位クラス B B B
SCウェストミッランズ アウトンヴィラ 中 能力 標準的 中位クラス B B B
SCポーツマス ポーツマス       中 将来 積極的 中位クラス B C B
SCランカシャー マンチェスター・C  中 能力 積極的 中位クラス B C B
SCウェストハム ウェストハム     低 実績 標準的 中位クラス B B B
SCフルハム フルハム         低 将来 標準的 中位クラス C B B
SCボルトン ボルトン         低 実績 積極的 中位クラス B C B
SCバーミンガム バーミンガム     中 能力 積極的 下位クラス B B C
SCサウザンプトン サウサンプトン   低 能力 標準的 下位クラス C B B
SCミドルスブラ ミドルスブラ     低 能力 積極的 下位クラス C B C
SCレスター レスター         低 実績 標準的 下位クラス C B C
SCウォルバハンプトン ウォルヴァーハンプトン 低 能力 標準的 下位クラス C C C
SCサンダーランド サンダーランド   低 能力 積極的 下位クラス C C C

イタリア
SCピエモンテ ユベントス   高 実績 標準的 ビッグクラブ A A A
ロンバルティアAS ACミラン 高 能力 積極的 ビッグクラブ A A A
SCミラノ インテル      高 能力 積極的 ビッグクラブ A B A
ローマAC ASローマ     高 能力 標準的 優勝候補クラス B A A
ラツィオSC ラツィオ     中 能力 積極的 上位クラス A B A
パルマAS パルマ       中 能力 積極的 中位クラス B A B
SCボローニャ ボローニャ   中 実績 標準的 中位クラス B A B
ペルージャAS ペルージャ   中 能力 標準的 中位クラス B C B
フィレンツェAS フィオレンティーナ 中 能力 標準的 中位クラス A C B
FCウディネ ウディネーゼ   低 将来 標準的 中位クラス B B B
FCブレシア ブレシア     低 能力 標準的 中位クラス B B B
ASベネト キエーボ      低 能力 標準的 中位クラス B B B
FCベルガモ アタランタ    低 将来 消極的 中位クラス B B B
リグーリアFC サンプドリア  低 能力 標準的 中位クラス B C B
FCピアチェンツァ ピアチェンツァ 低 実績 標準的 下位クラス C B C
FCレッチェ レッチェ     低 将来 消極的 下位クラス C B C
FCアンコナ アンコーナ    低 実績 標準的 下位クラス C C C
FCコモ コモ         低 実績 標準的 下位クラス C C C

こんな感じでどうだろう?
サッカーライフって架空名とか頂いたんだけど
12創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 22:46:13 ID:feuxTQLl
おお、いい感じに設定先行だな
そlの意気やよし
13タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/14(金) 22:47:16 ID:o+8e5cA2
確かに「優勝チームに名捕手あり(by野村克也)」と言われます。
それこそダイエー時代の工藤と城島みたいな感じで未熟な若手捕手を鍛えて育てていく
ほうがチームの将来の為にも良いのでは、とも思うんですよね。 

とりあえず架空のリーグ名、チーム名、共に募集します。
14タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/14(金) 23:26:11 ID:o+8e5cA2
※あくまで暫定です。「俺の地元に球団を!」等の意見あれば変更します。

2リーグ16球団制を予定しています
リーグ甲(セリーグがモデル?)
 札幌 新潟 東京 横浜 名古屋 京都 広島 宮崎
リーグ乙(パリーグがモデル?)
 仙台 さいたま 東京 千葉 大阪 神戸 松山 福岡
151 ◆wbETQ5TQAA :2008/11/14(金) 23:35:06 ID:jA0TDG+9
ちなみに主人公には自チームと他チームにライバルを作りたいんですが…
スポーツって特徴を文章にするのが難しいっすね
16創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 19:18:35 ID:mKRpujxt
劣化したドカベンとキャプ翼か
17創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 20:04:09 ID:QMX6RUoU
>>13
うーん?
引退間近で経験豊かな投手といえど、コーチ経験すらない人が
いきなり監督兼任して若手の捕手を育てても
チームを優勝に導くのはちょっと不可能な気が

ヤクルトの古田の場合は、捕手というポジションで
コーチと同じような指導者的な立場を長年経験した上で
監督を兼任したからこそ、いきなりでも上手くいったのかと

通常、プロ野球で監督になる場合は、最低でもコーチ、
もしくは二軍監督等をどこかで経験した上でなります
全くの指導者未経験の投手がいきなり監督になるのはまずありえないから、
たとえ創作といえど、リアリティがなくなるんじゃないかなーと
18タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/15(土) 20:35:15 ID:jp5iiBxV
・・・人集まって欲しいなあ

>>17
レスしてくれた皆さんのアイデアにより変更しますが、自分の中の構想としては
監督の設定は>>8にあるとおりです。仰木監督みたいなタイプですかね。

たしかにリアリティは大事ですね、気をつけます。
19タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/16(日) 00:32:52 ID:GIovqk7n
もうちょっと構想をぶちまけるか・・・

【球団名】東京エンペラーズ【略称】E
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:日本一)
【本拠地】エンペラースタジアム(東京都文京区)
【親会社】帝皇新聞社
【オーナー】鍋島綱吉
【球団社長】竹鼻卓郎
【監督】藤森昌司
 人気実力ともに国内ナンバーワンの老舗球団。モデルは読売ジャイアンツとか
ニューヨークヤンキース。主人公の元所属球団でもある。

【球団名】京都パンサーズ【略称】P
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:8位)
【本拠地】嵐山スタジアム(京都府京都市)
【親会社】関西電鉄
【オーナー】久田俊一郎
【球団社長】野坂和義
【監督】吉松義三
 地元関西では抜群の人気を誇るが順位はここ数年低迷を続ける。エンペラーズに
との対戦は「伝統の一戦」と呼ばれている。モデルは暗黒時代の阪神タイガース。
20創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 10:18:05 ID:+l/l1Q64
弱小球団ってことで『チキンズ』って感じのはどうよ
211 ◆wbETQ5TQAA :2008/11/16(日) 11:43:55 ID:ukYrUBmK
ライバル選手一覧
『ブラジル』
FWペリ→ペレ
『アルゼンチン』
FWマラゴーナ→マラドーナ
『オランダ』
FWダン・バステン→ファンバステン
FWフレット→フリット
MFヨナン・クレイフ→ヨハン・クライフ
MFニールケンス→ニースケンス
DFライカースト→ライカールト
『スペイン』
FWディスケファロ→ディ・ステファノ
『ドイツ』
FWゲルゾ・ミュナー→ゲルト・ミュラー
FWR.フェレー→ルディ・フェラー
DFベッセンガウヤー→ベッケンバウアー
DFマケルス→マテウス
DFフォフス→フォクツ
DFコールー→コーラー
DFザバー→ザマー
DFシュメレンガー→シュネリンガー

『フランス』
FWカントバ→カントナ
MFプラシィミ→プラティニ
MF A.ジリス→アラン・ジレス
『イングランド』
FWリネラー→ガリー・リネカー

最初は弱小からのし上がるか・名門で頑張るかどっちがお好み?
22タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/16(日) 23:35:15 ID:GIovqk7n
>>21
弱小はこっち(野球)でやるんで名門のほうがいいかな
海外サッカー詳しくないですが・・・

【球団名】名古屋デンジャラス【略称】D
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:2位)
【本拠地】シャチホコドーム(愛知県名古屋市)
【親会社】トミタ自動車
【オーナー】白川文夫
【球団社長】西澤順一郎
【監督】落田博美
 投手王国を形成し甲(仮)リーグではエンペラーズに継ぐ
実力を誇る。モデルは中日ドラゴンズ。

【球団名】広島レッドウォリアーズ【略称】RW
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度実績:3位)
【本拠地】広島平和球場(広島県広島市)
【親会社】なし(独立採算)
【オーナー】松元始
【球団社長】河南順三
【監督】マット=ブライン
 16球団で唯一親会社を持たず独立採算の球団。叩き上げの
純国産オーダーでAクラスを保持。


リーグの名前どうしようか・・・セとパのほうがわかりやすくていいかなぁ
23創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 03:05:44 ID:hsvF2qiH
サクセスストーリーじゃないスポーツ物なんて稲中と地獄甲子園ぐらいだな
24タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/18(火) 09:14:15 ID:OMAMq5pC
選手考えてみた。チーム名は未定。

・藤木真介(ふじき しんすけ) 39歳
投手 左投げ左打ち 東京都出身 背番号0
 本編の主人公。帝邦学園高校で甲子園春夏優勝、その後ドラフト一位で
東京エンペラーズに入団。19年間で193勝を挙げたが晩年は怪我に苦しみ、
若手の台頭もあり戦力外通告を受ける。

・高倉茂道(たかくら しげみち) 65歳
監督 岐阜県出身 背番号60
 東京エンペラーズで5年連続日本一など輝かしい実績を残した名将。引退を
考えていた藤木をチームに呼び寄せる。

・松村豊彦(まつむら とよひこ) 28歳
投手 右投げ右打ち 神奈川県出身 背番号11
 球団のエース。昨季は最優秀防御率のタイトルを獲得するも13勝14敗と
負け越すなど勝ち星には恵まれず、今季FA権を取得しその動向が注目される。

・柳沢健治(やなぎさわ けんじ) 26歳
捕手 右投げ右打ち 福岡県出身 背番号22
 強肩とキャッチングは上手いがリードが単調ゆえに投手の評判はあまり良く
はない。球団からは将来の幹部候補として期待されている。

・西原幸人(にしはら ゆきと) 27歳
三塁手 右投げ右打ち 千葉県出身 背番号3
 登録名YUKITO。チーム一の人気選手。身体能力は高いが、気分が乗らないと
働かない。また、副業として音楽活動をしている。

・大谷清広(おおたに きよひろ) 41歳
二塁手 右投げ右打ち 兵庫県出身 背番号1
 チーム最年長。前所属球団で優勝経験のある大ベテラン打者。

・河田一樹(かわだ かずき) 32歳
外野手 右投げ左打ち 宮城県出身 背番号5
 生え抜きの4番打者。過去に打点王を獲得した実績もある。

・相原駿一(あいはら しゅんいち) 21歳
外野手 右投げ左打ち 静岡県出身 背番号31
 代走要因だったが、レギュラーに抜擢される。足はやたら速い。

・結城智樹(ゆうき ともき) 25歳
遊撃手 右投げ右打ち 兵庫県出身 背番号23
 元甲子園のスター選手で期待されて入団も成績はイマイチ。だが
プライドは高い。
25タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/23(日) 01:10:28 ID:hnzw+NUh
甲(仮)リーグ残り

【球団名】新潟アストロズ【略称】A
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:4位)
【本拠地】新潟アイビススタジアム(新潟県新潟市)
【親会社】米田製菓
【オーナー】上杉謙一
【球団社長】井出川潤三
【監督】野島敦志
 新潟に移転して3年目。地元民に愛されるチームに成長した。
強力なリリーフ陣は球界でも屈指。

【球団名】札幌ホワイトベアーズ【略称】WB
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:5位)
【本拠地】ホッカイドーム(北海道札幌市)
【親会社】キタグニビール
【オーナー】巻田大地
【球団社長】間宮伸三
【監督】ドン=クラーク
 待望のドーム球場が完成。メジャーでも実績のあるクラーク監督
のもと上位進出を狙う。

【球団名】横浜ブラスターズ【略称】B
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:6位)
【本拠地】みなとみらいスタジアム(神奈川県横浜市)
【親会社】YBS
【オーナー】若本清和
【球団社長】佐々木勝弘
【監督】山上大治郎
 若手中心の強力打線は健在。数年来の課題である投手陣さえ整えば
優勝も狙えるか。

【球団名】宮崎サラマンダーズ【略称】Sa
【所属】甲(仮)リーグ(昨年度成績:7位)
【本拠地】宮崎サンシャインスタジアム(宮崎県宮崎市)
【親会社】ブランチソフトウェア
【オーナー】東原英之
【集団社長】青島重史
【監督】御神貞博
 世界に誇るホームランバッター御神監督が目指すのは打って打って
打ちまくる豪快野球だ。
26タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/25(火) 20:02:37 ID:Vj+2wW/d
【球団名】神戸ハーキュリーズ【略称】H
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:リーグ優勝)
【本拠地】神戸ポートピアスタジアム(兵庫県神戸市)
【親会社】ミヤックスグループ
【オーナー】宮口義人
【球団社長】梶谷健介
【監督】植村良治
 投打ともに圧倒的な戦力で、3年連続リーグ優勝を果たした強豪。
モデルは阪急ブレーブス+オリックスブルーウェーブ。

【球団名】博多アイアンズ【略称】I
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:2位)
【本拠地】博多どんたくドーム(福岡県福岡市)
【親会社】タイセーマート
【オーナー】山内功治
【球団社長】瀬戸川隆夫
【監督】杉原陸夫
 絶対的なエースと強力なクリーンナップを擁する"野武士軍団"。
モデルは西鉄ライオンズ。

【球団名】さいたまレイダース【略称】R
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:3位)
【本拠地】埼玉ビッグドーム(埼玉県さいたま市)
【親会社】西園寺ホールディングス
【オーナー】西園寺義彦
【集団社長】津久見達朗
【監督】田端秀光
 投打のバランスの取れた完成度の高いチーム。小技を絡め1点を
争う野球を得意とする。モデルは西武ライオンズ。

【球団名】千葉メトロポリタンズ【略称】M
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:4位)
【本拠地】幕張シーサイドスタジアム(千葉県千葉市)
【親会社】鹿鳴製菓
【オーナー】重本武史
【球団社長】江尻昭博
【監督】ジョニー=エクスタイン
 熱狂的なファンに支えられる人気球団。ローテ三本柱と30本塁打
越えの3、4番コンビがチームを引っ張る。モデルは千葉ロッテ。
27タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/26(水) 00:33:49 ID:IZ4hrIVY
誰もいないようだがそんなこと気にしないぜ

【球団名】仙台グリーンリーブス【略称】GL
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:5位)
【本拠地】杜の都スタジアム(宮城県仙台市)
【親会社】楽宴グループ
【オーナー】御木本浩哉
【球団社長】伊達雅守
【監督】大河原仙吉
 他球団出身のベテランで構成された平均年齢の高いチーム。百戦錬磨の
大河原監督を迎えて二年目。

【球団名】難波シャークス【略称】Sh
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:6位)
【本拠地】なにわドーム(大阪府大阪市)
【親会社】南洋電鉄
【オーナー】鶴ヶ丘一夫
【球団社長】蔭山陽介
【監督】福山勝男
 プレイングマネージャー福山が中心のチーム。守りは堅いが打撃は
イマイチ。打線の奮起がカギか。

【球団名】松山サンダーボルツ【略称】TB
【所属】乙(仮)リーグ(昨年度成績:7位)
【本拠地】松山オレンジスタジアム(愛媛県松山市)
【親会社】夏目飲料
【オーナー】夏目新之助
【球団社長】村上平治
【監督】四之宮誠市
 四国出身選手が多数在籍する地域密着型球団。全体的に若手の多い
チーム構成になっている。足を絡めた攻撃が得意。
28タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/27(木) 00:17:34 ID:CVbLWMPF
女子スポーツ物とか好きです。誰か書いてくれないかな・・・
29タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/11/27(木) 02:12:52 ID:CVbLWMPF
ライバル球団の選手たち。ダラダラと考えております。

○神戸ハーキュリーズ
・梶原春樹(かじわら はるき) 39歳
外野手 左投げ左打ち 佐賀県出身 背番号42
 藤木とは甲子園で対戦した事もある。パンサーズでは4番にも座った強打者。
デッドボールの後遺症からインコースが打てなくなり、不振に陥る。その後、
トライアウトで藤木から豪快なホームランを放ち神戸ハーキュリーズと契約。

・矢尻佐助(やじり さすけ) 22歳
外野手 左投げ左打ち 大阪府出身 背番号97
 ドラフト10位と目立たぬ入団ながら、あれよあれよと一軍レギュラーに上り詰め
不動の一番センターに。モデルは福本豊。

・デイヴィッド=ルイス 32歳
外野手 左投げ左打ち アメリカ出身 背番号25
 来日5年目で200本塁打、400打点を越えるスラッガー。不動の4番打者で
昨シーズンは打点王に輝いた。

・高見泰雄(たかみ やすお) 27歳
捕手 右投げ右打ち 岐阜県出身 背番号27
 強肩で盗塁阻止率は昨年度リーグNo.1。さらにインサイドワークにも定評があり、
球界を代表する名捕手。

・大路幸伸(おおじ ゆきのぶ) 31歳
投手 左投げ左打ち 北海道出身 背番号18
 10年連続二桁勝利を挙げたハーキュリーズのエース。直球こそ130km/hに満たない
もののスローカーブを武器に見事な投球術で打ち取っていく。モデルは星野伸之。

・坂口康広(さかぐち やすひろ) 26歳
投手 右投げ右打ち 兵庫県出身 背番号21
 ハーキュリーズの誇るダブルストッパーの一人。重い速球と打者の手元で落ちるフォーク
で三振の山を築きあげる。

・エディ=ルーカス 29歳
投手 左投げ左打ち アメリカ出身 背番号12
 ハーキュリーズの誇るダブルストッパーの一人。キレの良い速球とカットボールが武器。

・長原充宏(ながはら みつひろ) 36歳
投手 右投げ右打ち 秋田県出身 背番号17
 ベテラン投手。アンダースローでシンカーを武器とする。モデルは山田久志。

・冨永博樹(とみなが ひろき) 28歳
三塁手 右投げ両打ち 福岡県出身 背番号8
 主に三番を打つ。走攻守三拍子揃ったスイッチヒッター。モデルは松永浩美。

・大原孝義(おおはら たかよし) 27歳
二塁手 右投げ右打ち 岡山県出身 背番号23
 二番打者。バントやエンドランなど小技に長けたいぶし銀タイプ。一番打者の矢尻と
アイコンタクトでチャンスを広げる。

・大木高志(おおき たかし) 25歳
外野手 右投げ右打ち 神奈川県出身 背番号55
 代打の切り札で、ときおりDHでスタメン出場する。194cmの長身が特徴で、
バットに当たれば打球がピンポン球のように飛んでいくパワーが持ち味。モデルは
高橋智。
30 ◆MATdmc66EY :2008/11/27(木) 21:27:08 ID:wgxlDq1x
設定だけ投下されてるのも間抜けだからSS投下する
31 ◆MATdmc66EY :2008/11/27(木) 21:28:45 ID:wgxlDq1x
「佐藤君。君に電話です。至急職員室まで来てください」
 授業が終わりかけた時だった。佐藤一郎は呼び出された。周囲の生徒、そして教師が色めきだっていたが、それとは裏腹に佐藤の表情は暗く陰った。
 佐藤は夏の甲子園でで活躍したピッチャーである。ベスト4までチームを牽引し、超高校級左腕としてならした。
 折しも今日はドラフト会議が開かれており、その結果上位指名された事は容易に想像できた。
 しかし、佐藤の職員室へと向かう足取りは鉛の様に重かった。一歩一歩職員室に向かう度に頭痛すらもする。
 理由は至って簡単な物である。佐藤にはプロ野球に飛び込む自信がないのだ。
 過酷な試合日程、連投に継ぐ連投により酷使された左腕は、肘が真っ直ぐに伸びない。
 それだけでなく、精神論による常軌を逸脱した練習で身体のあちこちにガタがきている。
 なによりも高校球児の目指す夢の舞台、甲子園に立った事により、心身共に消耗――野球というものに情熱を持てなくなっていたのだ。
 職員室のドアを開けると、校長を始めとした教師の面々は顔を綻ばせ出迎える。
 促されるままに受話器を取り、耳に押し当てた。
「もしもし、電話代わりました」
「ああ、私は東京シャイアンズの者ですが、実は今日のドラフト会議で、君を一位指名させて貰いました」
 佐藤は、え!?と絶句した。
 まさか球団の盟主を謳う名門球団が一位指名するとは思っていなかったのだ。
 他球団のスカウトの事前の接触は幾多もあったのだが、シャイアンズのスカウトは接触して来なかった。
 だのに、何故。一瞬思考が空白になる。
「うちのスカウトがすぐに伺うと思いますが、ひとつよろしくお願いします」
 佐藤は相手にハァ、と頭を下げる事しか出来なかった。
 突然の出来事に、佐藤はただただ困惑するしかなかった。
「君、どうだったね!」
「ハァ、シャイアンズが一位指名してくれたそうです」
「凄いぞ! わが校からプロ野球選手の誕生だ!」
 勝手に盛り上がっている教師達とは裏腹に、気分がしずむ。そして、不快感が沸き起こる。何を自分の意思に反して喜んでいるんだ、と怒りすら現れる。
「すみません、家族と相談しないと……」
32 ◆MATdmc66EY :2008/11/27(木) 21:30:55 ID:wgxlDq1x
「記者会見の準備をしないとな!」
 沸き立つ職員室を静かに後にして、佐藤は人知れず屋上に向かった。
 秋の空にぽっかりと浮かぶ鰯雲をぼんやりと眺める。
 自分の力をプロで試したい気持ちが無いわけでもない。
 しかし、自分には大学に進学して指導者として野球に携わりたいという仄かな夢がある。
 選手として自分は野球に情熱が持てない。しかし、指導者として自分みたいな高校野球で燃え尽きてしまう球児を無くしたい、その願いがある。
 相反する葛藤は、高校生にとって過分すぎる物だ。
 プロ入りか進学か。簡単に決められる物ではない。
 不意に佐藤の脳裏に過去の事件が過った。
 過去に期待されてシャイアンズに入団し、結果を残せずそれに苦悩した果てに永眠した選手の事を。
 確か当時の監督はその選手に費やした大金を損した、という旨の談話を残した。
 自分がそうならないという可能性はない。
 ならば、結論は一つだ。

 校内に準備された記者会見上に立った佐藤は悩みを吹っ切った清々しい顔で頭を下げた。
 集まったマスコミの放つ目が眩まんばかりのフラッシュに晒される。
「――申し訳ありませんが、自分の進路はプロではなく大学進学です」
 その言葉に、集まった面々の顔がひきつる。しかし、佐藤は続けた。
「自分の実力ではプロでやっていけないと思います。一位指名していただいたシャイアンズには申し訳ありませんが、お話は無かった事にして下さい」
 短く早口に告げると、背を向けてその場を後にする。
 マスコミが追いすがって来るが無視をする。
 学校職員が怒りを、或いは落胆しているが無視をした。
 ただ、佐藤は自分の決断に間違いはないと思い胸を張って夢へと歩き出していた。

終わり
33 ◆MATdmc66EY :2008/11/27(木) 21:32:06 ID:wgxlDq1x
投下終了。一応スポーツ物だw
34創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 15:24:18 ID:ghVp/csQ
俺は転校生が野球部のピッチャーになる話を考えたんだが。
その転校生は、以上に運動神経が発達してて、どうして転校して来たかというと、
実はサーカス団長の息子だったから。
曲芸的なプレイが得意で、ゴロを足でトラップしてキャッチ、送球。
のようなマジ有り得ない個人技を見せる。
一つ浮かんでいるネタは1アウトランナー1,3塁の時、牽制球を1塁に投げ、
それが暴投になり、1、3塁ランナー共にスタート。
しかし彼が投げたのは球ではなく・・・石灰のロージン。
玉は手元にあり、飛び出したランナーを二重殺。
まあ公式じゃ認められないルールだろうから、練習試合でやるネタだな。
35創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 15:27:04 ID:2LdDxKOv
>>34
わたるがぴゅんですね
36創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 19:59:47 ID:hr7c6gV6
>>31>>32
これは良い作品だ。
短い中でもきちんと人物が描かれてるし、文章も変な癖がなくて読みやすい。
完成度高いな、見習いたい。
37創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:26:10 ID:AjnU5Mrl
後頭部が異常発達したスラッガーの話なんてどうだろう
38創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:27:54 ID:qOFdTnNj
なんだそりゃ
39創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:28:15 ID:W1u5KLdt
頭がたっちゅうなスラッガーの捕手なんてどうだろう
40創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:29:19 ID:t3kjxSqb
アイスラッガーと言いたいのかも
41創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:30:45 ID:W1u5KLdt
沖縄番長を知らないのか
42創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:49:35 ID:2tt69+pa
なにそれ
43創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 18:05:07 ID:W1u5KLdt
ガッパイの事だ
44タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/12/02(火) 22:14:47 ID:4US4KJfb
今年のオフはやけに静かだな・・・

○千葉メトロポリタンズ
・伴藤竜太(ばんどう りゅうた) 23歳
一塁手 左投げ左打ち 神奈川県出身 背番号50
 日本人離れした体格を誇りるスラッガー。お粗末な守備と三振も多いのが
玉にキズ。若いに似ず物怖じしない性格。バートン、バトラーとともに
頭文字のBをとって"スリーB"と呼ばれる(監督が命名)。

・マイク=バートン 38歳
一塁手(DH) 右投げ左打ち アメリカ出身 背番号44
 かつてパンサーズ在籍中に三冠王にも輝いた大物助っ人外国人。
モデルはR.バース。

・エイブラハム=バトラー 32歳
外野手 右投げ右打ち アメリカ出身 背番号15
 メジャー時代にエクスタイン監督の下でプレーした事もある。大田原、
バートンに続く5番打者として強力なクリーンナップを形成。本塁打より
打点を稼ぐバッティングを心がける。

・小清水尚弘(こしみず なおひろ) 30歳
投手 右投げ右打ち 京都府出身 背番号18
 チームのエース。5年連続で規定投球回数&2桁勝利継続中。速球と多彩な
変化球で打ち取る本格派の投手。モデルは清水直行。

・小湊哲史(こみなと さとし) 36歳
投手 右投げ右打ち 千葉県出身 背番号17
 "投げる精密機械"と呼ばれる正確なコントロールとゴーグルが武器。千葉で
プロのキャリアをスタートし、横浜ブラスターズ、メジャーリーグを経験し、
古巣に復帰した。モデルは小宮山悟。

・山野辺俊彦(やまのべ としひこ) 29歳
投手 右投げ右打ち 栃木県出身 背番号13
 マウンドから5cmのところからリリースされるアンダースロー投手。打者は
タイミングが合わせづらくて打ちにくいらしい。モデルは渡辺俊介。
45タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/12/08(月) 01:03:54 ID:yDRenS4A
○博多アイアンズ
・三好清道(みよし きよみち) 25歳
三塁手 右投げ右打ち 香川県出身 背番号6
 アイアンズの主砲。三年連続30本塁打越えのパワーヒッター。モデルは中西太。

・青田浩志(あおた ひろし) 32歳
外野手 左投げ左打ち 兵庫県出身 背番号3
 アイアンズの4番打者。酒豪で若手達の良い兄貴分でもある。モデルは大下弘。

・豊永光(とよなが ひかる) 24歳
遊撃手 右投げ右打ち 茨城県出身 背番号7
 2番打者だが強打で打線の口火を切る役割を担う。モデルは豊田泰光。

・別府功(べっぷ いさお) 24歳
投手 右投げ右打ち 大分県出身 背番号24
 先発リリーフ両方こなす絶対的エース。スライダーとシュートが武器。モデルは稲尾和久。

・山根和巳(やまね かずみ) 23歳
投手 左投げ左打ち 島根県出身 背番号21
 新人のサウスポー投手。独特な投球フォームで打者を幻惑する。モデルは和田毅。

・与那城剛(よなしろ ごう) 26歳
投手 右投げ右打ち 沖縄県出身 背番号18
 日本人最速の記録(158km/h)をもつ剛速球投手。高校時代から素行が悪いとの評判で
マスコミ嫌いで有名。モデルは伊良部秀輝。
46タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/12/10(水) 00:38:50 ID:FIwaScXN
○さいたまレイダーズ
・秋原清人(あきはら きよひと) 22歳
三塁手 右投げ右打ち 大阪府出身 背番号3
 甲子園でも活躍しプロでも一流への階段を一歩ずつ進んでいる若き4番。ここぞの場面で
の勝負強いバッティングで監督からの信頼も厚い。モデルは清原和博。

・青野準一(あおの じゅんいち) 25歳
外野手 右投げ左打ち 熊本県出身 背番号1
 一発もある一番打者として不動の地位を確立。身体能力に優れるアスリートタイプ。モデル
は秋山幸二+佐々木誠

・アルフォンゾ=アルバレス 34歳
一塁手 右投げ右打ち ベネズエラ出身 背番号4
 5番打者。本塁打55本の日本タイ記録を持つパワーヒッター。モデルはA.カブレラ。

・尾藤治朗(びとう じろう) 36歳
投手 右投げ右打ち 和歌山県出身 背番号21
 ベテラン投手。インハイへの直球を中心にピッチングを組み立てる。モデルは東尾修。

・松倉太一(まつくら たいち) 23歳
投手 右投げ右打ち 東京都出身 背番号18
 若手の勝ち頭。高校時代からズバ抜けた投手として鳴り物入りでプロ入りし、順調に勝ち星を
増やしている。武器は高速スライダー。モデルは松坂大輔。

・松倉賢二(まつくら けんじ) 21歳
遊撃手 右投げ右打ち 東京都出身 背番号54
 松倉太一の弟。話題性でのドラフト指名かと言われたが、三年目にして一軍昇格しレギュラー
を奪取。モデルは松坂恭平+中島裕之。
47タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2008/12/16(火) 01:09:50 ID:TE7Dar+Z
そろそろ書き始めるか・・・

○難波シャークス
・福山勝男(ふくやま かつお) 41歳
捕手兼監督 右投げ右打ち 京都府出身 背番号27
 プレイングマネージャー。全盛期は球界を代表する捕手だった。メガネが
トレードマーク。モデルは野村克也+古田敦也。

・花田秀光(はなだ ひでみつ) 40歳
外野手(DH) 右投げ左打ち 岡山県出身 背番号44
 アキレス腱断裂を乗り越え復活した"不惑の大砲"。モデルは門田博光。

・江嶋忍(えじま しのぶ) 31歳
投手 左投げ左打ち 大阪府出身 背番号28
 球界を代表するリリーフエース。卓越した投球術でピンチを切り抜ける。
モデルは江夏豊。

○仙台グリーンリーブス
・増本晶(ますもと あきら) 42歳
投手 左投げ左打ち 神奈川県出身 背番号34
 円熟味を増した投球術で魅了するベテラン左腕。元名古屋デンジャラス。
モデルは山本昌。

・島尾武司(しまお たけし) 36歳
外野手 左投げ左打ち 大阪府出身 背番号8
 数球団を渡り歩いたベテラン選手。若い頃から"安打製造機"として活躍。
一番打者としてチームを牽引。モデルは田尾安志。

・フェルナンド=ボッシュ 32歳
一塁手 左投げ左打ち ドミニカ共和国出身 背番号7
 4番打者。守備は下手だが長打力が魅力。変な日本語を話す。

○松山サンダーボルツ
・飯尾紳一(いいお しんいち) 35歳
投手 右投げ右打ち 徳島県出身 背番号18
 かつてエンペラーズで藤木と供にローテーションを張っていたベテラン投手。
年齢以上の貫禄を漂わせる。

・真鍋明博(まなべ あきひろ) 23歳
二塁手 右投げ左打ち 愛媛県出身 背番号1
 一番打者としてレギュラーに定着。地元出身として大きな期待を背負う。モデルは
岩村明憲。
48タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2009/01/03(土) 15:43:13 ID:O5Wtg7fK
保守。
他の人も投下してくださいよー
49創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 15:50:13 ID:U6Ya/dOd
よくわかんないんだけど、チームや選手の設定を溜めるスレなの?
こんなにあっても到底使い切れそうにないんだけど…
50タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2009/01/03(土) 16:00:29 ID:O5Wtg7fK
設定は保守代わりに並べてるだけなので・・・
アイデアを募るつもりだったのですが結局一人で考えてます。
書きたい人は自由に書いてオッケーですよ。
51タイトル未定 ◆smnN9MIlWU :2009/01/08(木) 23:44:29 ID:26e3D5pO
保守っと。
52LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/01/21(水) 21:33:49 ID:LyzKimAg
◆1
 それは一瞬だった。藤木真介が十九年間の現役生活で積み重ねた勝ち星は193。さらに
胴上げ投手になること2回。日本シリーズでMVP1回。最多勝7回。最優秀防御率5回。
最多奪三振4回。プロ野球選手として歴史に残る大投手の一人に挙げられる左腕に厳しい
現実がつきつけられた。ここ数年は度重なる怪我で戦列を離れる事も多く、今シーズンも
一軍での登板は無かった。八月に入りようやく二軍で登板し、一軍復帰を目指していた矢先
の戦力外通告であった。「来期の戦力構想には入っていない」ただそう告げられた。

 10月27日。東京都文京区。エンペラースタジアム。ジャパンシリーズ第4戦。ここまで
3勝のエンペラーズが4−1とリードして迎えた九回表。2アウト、ランナー無し。マウンド
にはエンペラーズのクローザー大島。打席には対戦相手ハーキュリーズの4番ルイス。
 今シーズン広島レッドウォリアーズからFA移籍してきた大島恭兵。不動のクローザー
として36セーブを挙げ移籍一年目からチームの優勝に貢献した。
 初球から打者の懐に速球を投げ込む。かつて広島の町を熱く燃えさせた豪快なピッチング
フォームはユニフォームが変わっても健在だ。

 ツーストライクと追い込めば後は伝家の宝刀、高速スライダーが唸りをあげる。無数の打球
をスタンドに叩き込んだ強打者のバットが空を切る。二月一日のキャンプインから全ての球団、
監督、選手、スタッフ、そしてファンが目指した日本一の栄冠は長い長いペナントレースの末、
東京エンペラーズが掴み取った。藤森監督が前任の高倉監督からチームを受け継いで3年連続
の日本一奪取。特に今シーズンは生え抜き、補強選手、助っ人外国人が上手くかみ合い、一年
を通じて危なげなく独走した。「これは過大評価でもないんでも無い。史上最高のチームだ。
私はただベンチで見ているだけ」とは藤森監督の談。エースの鷲尾雄介の17勝を筆頭にロー
テーション投手のうち5人が二桁勝利。新潟アストロズから移籍の3番ペドリックが本塁打、
打点の二冠王。4番のパイソンが打率3位、本塁打3位、打点2位。5番の松岡が本塁打2位、
打点3位と打撃タイトル上位に名を連ねた。

 藤森監督を先頭にシーズンを戦ったエンペラーズのナイン達がグラウンドを一周し360度を
囲んだファンからの歓声に応える。その中に往年のエース藤木の姿は無かった。

 その頃。東京エンペラーズの二軍が練習する多摩川スタジアムでは一人の選手が黙々とラン
ニングを続けていた。今シーズン戦力外を受けた選手達が集まる合同トライアウトに向けて静か
に闘志を燃やし続ける男……かつてエンペラーズ不動のエースと呼ばれた藤木真介である。
53LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/01/21(水) 21:34:44 ID:LyzKimAg
◆2
 11月7日。東京都大田区。多摩川スタジアム。各球団から戦力外通告を受けた73人の選手
が集まる合同トライアウトが行われる。今年のトライアウトは例年に比べ報道陣の数が心なしか
多いようだ。それもそのはずである。通算193勝を挙げた元エンペラーズエース、藤木真介が
参加するというのだ。三十九歳の再挑戦<リベンジ>。そういったタイトルで特番も組まれる事
が決まったという。

 一回り若い選手もいる中に混じってのストレッチを終え、マウンドに上がる順番を待つ。ほど
なくエンペラーズの背番号18がマウンドに上がると、いっせいにカメラが向けられる。高々と
グラブを上げ、下げると同時に足を振り上げ、さらにテイクバックを大きく取り、頭の上から
左腕を振り下ろす豪快な投球フォーム。189cmの恵まれた体格を最大限に発揮する。いや、
した。と過去形で語るべきか。若い頃は強打者をバッタバッタとなぎ倒したストレートも今では
鳴りを潜め……時の流れは残酷である。

 最初のバッターは高校通算54本塁打の実績を引っさげてプロ入りも一軍出場の無いまま8年
目で自由契約となった元・宮崎サラマンダーズの浅川。初球を見逃して2球目を打って強烈な
センターライナー。結果は投手の勝ちだが、昔の藤木ならバットにかすらせもしなかっただろう。

 トライアウトの規定により投手1人に対し打者3人まで。2人目は元・札幌ホワイトベアーズ
の白瀧。主に守備固めで11年、3球団でプロ生活を過ごした35歳の外野手だ。バッティング
については通算で100本にも満たない。この打者に対しストレートで攻める。追い込んでから
インハイのストレートを叩いてレフトフライ。本来なら三振を狙って投じられた一球を外野まで
運ばれた。球場に陣取る各球団の監督、コーチやスカウトたちの表情も曇っていく。

 そして……今回のトライアウトでもう一人の注目選手が打席に立った。京都パンサーズ一筋で
17年の梶原春樹。10年前、パンサーズが優勝した時の4番打者として同球団のファンからの
人気は依然高い。5年前の頭部へのデッドボールで右目の視力を失った。本人はその事を言い訳
にはしないが、若手の台頭もあり徐々に出場試合数も減る。このオフ、本人の希望により自由
契約となった。

 藤木と梶原。共に東西を代表する人気球団のエースと主砲として超満員の観客が固唾を呑んだ
両雄の激突。まさかこの地で、この場面でその対戦が見られようとは。グラウンドに緊張が走る。
左投手と左打者。セオリー通りならば投手が有利と言われる。梶原が最も多くの三振を喫した
投手が藤木であり、また藤木が最も多くのホームランを打たれた打者が梶原である。共に因縁の
相手。しかしそこにはかつてのライバルと勝負を楽しむ余裕は、無かった。
54LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/01/21(水) 21:35:55 ID:LyzKimAg
とりあえずここまで。
一応ageとこか。
55創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 20:37:06 ID:TaOLJhNP
個人競技もの読みたい
陸上のフィールド競技とかスピードスケートとか
56LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/01/22(木) 20:57:51 ID:WzSKpFFN
そんな・・・ひどい・・・
57創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 02:56:10 ID:U5Za00+p
架空のスポーツだけど書いてみた\(^o^)/

私立聖セントライト学院。
一昨年共学になったばかりのカトリック系の私立高校。
最初に言っておく。
僕がこの男子と女子のバランスが破綻している高校を選んだのは、そこにハーレムを求めたからではない。

騎士道部―。

正式には西洋騎士道総合武術部、昨今では西洋剣道とかエクストリーム・チャンバラなどと呼ばれているこの競技。
比較的生まれてから浅いマイナーなスポーツではあるが、本物と見紛う騎士の甲冑を身につけた選手達の試合は目を見張る物がある。
だが、この小さな街にそんなマイナーな部を持つ学校は皆無に等しく、奇跡的にこのセントライト学院にのみあったという訳だ。
騎士道部と馬術部が兼用して使用している馬場からは何とも言えないあの牧場のような臭いが立ち込めていた。
僕は鼻を摘みながらその向こうにある騎士道場の門の前に至った。


架空のスポーツだけど
「こんにちはーっ」
勢いよく城門のような木の扉を開いた。
まず、圧倒された。
その先に広がるのは畳と板が張り巡らされた和風の、ごく普通の柔剣道場だった。
だが流石騎士道部、その内装はいかにもな西洋テイスト漂う物で埋め尽くされていた。
専用スタンドに設置され並ばれた各部員の甲冑、
槍が剣が鎚が、切っ先を揃えて壁にかけられている。
そして、道場中央には立派な白い旗。
十字架の真ん中に構えた向かい合う獅子と一角獣。
慈愛と知恵と勇気を意味するセントライト学院の校旗だ。
だが、この場所ではどう見ても騎士のエンブレム、旗印にしか見えない。
ここが一介の私立高校の部室だと忘れさせられる光景だった。

そして、その中心に、この場には似合わない真白な袴を着た一人の少女が座禅を組み瞑想に耽っていた。
漆黒とも言うべき長髪がコントラストを織りなし美しさを際立たせている。
「来たか・・・」
彼女は透き通った高い声でそれだけ静かに呟くとゆっくり顔を上げた。
59創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 03:16:48 ID:GsP2HxKO
エクストリーム・チャンバラwww
60創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:18:24 ID:0fVfzB6w
穏やかな春の日差しの下。
あとは毛虫の湧くに任せるしか能の無い、花のすっかり散りきった桜の木の下。
怒号と悲鳴と歓声とその他もろもろが飛び交う阿鼻叫喚の地獄絵図の渦中から少し外れた場所に。
額に入れられた色褪せたモノクロの写真のように隔絶されて、そのひとは居たんだ。
彼女は「求む! 進入部員」と書かれた垂れ幕を提げた折りたたみテーブルの上に超然と肘をついて、砂煙と
乾ききった桜の花びらが舞い飛ぶ周囲に目もくれず、ただただ呆然としたふうに虚空を見据えていた。

「あの、ここは何の部活ですか?」

人ダンゴからやっとの思いで抜け出し、そう声を発したところで、僕はしまった、と確かに思った。
近づけどなお遠ざかるような、そんな浮世離れした彼女は実は幻で、声をかけてしまったことではかなく
消え去ってしまう――そんな妄想が頭の中に駆け巡ったんだ。

「!? 入部希望っ!?」

でも。
そのひとは消え去るどころか、逆に飛び出す絵本のごとく僕に向かって身を乗り出して来た。
「入部希望!? 入部希望なのね!?」
「え、ああ、はあ、まあ……」
あなたに興味があるだけ、とは言えずしどろもどろの僕の手をガッと握ると、回り込むのももどかしい様子で
彼女は行儀悪く机を乗り越え、僕の前に降り立った。
恥ずかしながら、生まれて初めて母以外の女性に手を握られてどぎまぎしている僕の耳に、
ばたーん
とそのひとが今の今まで座っていたパイプ椅子がけたたましい音を発てて倒れるのと、
「ねっ?」
手を握ったまま念を押すように彼女が言った言葉が同時に聞こえたのだった。

「はーい! 一名様、ごあんな〜い☆」
ツアーガイドかSSかといった風情で右腕を高々と掲げたまま、左手で僕の手首を(凄い握力で)掴んで、その
ひとは僕をいずこかへと引きずっていく。
「あっ」
ふと、彼女が僕を振り向く。
その時。
辛うじて今日まで萼に張り付いていた数少ない根性のある花びらがついに根負けして自由落下を開始し、
はらり
その途上にあった、彼女の即頭部にしつらえられた「おだんご」の上に着地した。

「あたし、2年の串子=スリージー。きみは?」

おだんごに花びらを乗せたまま、彼女は僕に微笑んだ。


――こうして、僕、三木 蓮(みき・れん)と、串子先輩は出会ってしまったのだ。
折は四月。
てきとーに乱立されたあまたの同好会が部員獲得に狂奔する、騒乱のここ創発学園校庭で。
引きずられて、引きずられて。校庭の喧騒はどんどん遠ざかっていく。
人気のない、校舎裏のほうへと引きずられていく中、僕はまず串子先輩がまだ僕の手(首)を握って
いること、次いでそこにあるはずのブレザーの袖がないこと気付いた。
「あ」
「?」
「袖……」
「ああ」
唐突に声をあげた僕に、串子先輩は向き直ると、すぐに得心いったようで、
「新入生の通過儀礼ね。よっぽど要領よくないと、あの騒ぎでひっちゃぶかれちゃうのよねー」
しみじみと言った。なるほど、経験者は語る。

「まずは……ようこそ、創発学園へ! ってとこかな」

僕、三木 蓮と串子先輩は、こうして、出会ってしまったのだ。
61創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:19:13 ID:0fVfzB6w
〜@〜

「ほら、早く脱いで……ね? 恥ずかしがらなくていいよ……?」

案内されたのは実験棟裏にある別棟、体育部の部室がずらり軒を連ねる、通称:部室長屋。
その内の一室に通され、先輩の勧めてくれたパイプ椅子に座るやいなや……前述の言葉である。
わたくし、三木蓮、恥ずかしながら童貞真っ只中!
お近づきになりたい下心? ええありましたとも。童貞マインド100%の妄想? もちろんしましたとも!
……だけど、いきなりこの状況は、ねえ?

「ふふ……緊張してるのね……誰にでも”はじめて”はあるものよ? ほら、力抜いて……」

先輩の左手は僕の両太ももに。先輩の右手は僕の左肩に。
串子先輩はしなだれかかるように僕に体重を預けてくるので、僕は椅子に座ったまま精一杯のけぞり、
密着を阻止する。
彼女の左手がすす、と上がり、僕のシャツの裾に手を掛けたところで、
「ちょ、ちょちょ、タンマ!」
たまりかねて僕は大声を出してしまった。

「なによー」
先輩は不満そうに、頬を膨らませて言った。

この時、僕の脳裏に浮かんでいたのは、ピンク色の背景でもなく、H2Oの歌声でもなく。
――『あじしおのビンに入ってる粒を数える同好会』だよー! はいりんしゃーい!
――『みんなで( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!するだけ同好会』だよー!( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!
――『まとも同好会』ですー! まともな人いませんかー? まともグッズやまとも踊りありまーす!
狂騒の校庭で聞いた、聞くからにろくでもない同好会たちの名前だった。
畢竟。
ここもろくでもない同好会に違いないのだ。
その時、僕が想定した最悪の同好会は……美人局同好会。

「あ、あの、ここが何の同好会か、まだ聞いてないんですけ、どっっ!!」

未だ肩に置かれたままの彼女の手を振り払うべく、僕は電気ショックを受けた人間のように身体を揺すった。
――手で邪険に払い落とすことは、その時の僕には出来なかったのだ。
串子先輩の手は僕の肩に掛かったままではあるが、傾けられていた彼女の体重は去った。
まずは成功。
「えー? どっか他に入りたいトコでもあんの?」
見下ろすようにして、彼女が僕に訊いてくる。
「え、ああ、ココがあんまりロクでもないとこだったらまとも同好会にでも」
意外にトゲのある言葉を発してしまった事に動揺し、ついつい適当な会名を挙げてしまう。
それが逆効果。先輩はぱっ、と顔を輝かせると、
「まとも部入りたいの? あたしあそこも掛け持ちしてんの! ね、ほら、まともカードあげるよ?」
と、懐からなにやらクレジットカード大のモノを取り出し、顔の前でぴらぴらさせた。
「いやそれがそのあのえっと、……とにかく、ここは何の同好会なんですか!」
まともカードとやらが何なのか知りたくもない僕は、それを自慢げにかざしている先輩に慌てて言う。
串子先輩の動きが止まり、一瞬の間が空く。
ぎぎぎ、と重い音を発てるかのごとく、ぎこちない動きで再度僕を見下ろした彼女の顔に浮かんでいた表情は

――苦笑い。

そして静寂。肩に食い込んだ先輩の爪が、痛い。
62創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:20:04 ID:0fVfzB6w
バァァン
「その質問には、僕が答えようッ!」

静寂を打ち破ったのは、部室のドアが開くけたたましい音と、次いで発せられた声。
「やあ串子、会員獲得は上手く行ったようだね!」
玲瓏たる、とでも言うのか。やたらと涼やかで、よく通る美声の持ち主が、この場の第三の登場人物として、
戸口から動くことなく串子先輩に声を掛けた。
入り口は僕の背後側にある。串子先輩の浮かべている、非常に微妙な表情が気になって仕方のない僕は、
振り向くことができず、よって、第三の人物の姿を確認することが、できない。

「ああ、アタルちん。まーねー、上手くいったと、言えるのか、な?」
「なんだい串子? いやに歯切れが悪いじゃないか」
「んん〜〜、まあねえ……」
「おいおい、何か問題でもあるのかい?」
「ん、ちーっとね。……あんまり人来ないからさあ、その、外しちゃったんだわ。看板」
「百聞は一見に如かず、さ。キミと響きあう感性の持ち主だろう? 自分の眼をを信じたまえよ」
「ごーいんに引っ張ってきたんだけどねー」
「それよりも、いつになったら折角の入部希望者に挨拶させてくれるんだい? 礼儀知らずと思われてはたまらないよ」
「んー、そうねえ」

僕の頭ごしの会話で何か僕にとって恐るべきことが決定されたようだ。
串子先輩の手が、僕の座っている椅子の背もたれに掛かる。
その際。

「いい? 心の準備、してね?」

先輩は僕に小声で囁くと、ぐるりと椅子を半回転させた。
振り向かされた視界の先には。

彫りは深く、目元は涼やか。眉は黒々と形よく、明らかに天然のものと解るキューティクルつやつやの明るい栗色の髪と
好対照を成しており、血色のよい唇には笑み。長身――180はゆうに超えているだろうか。一見細身に見える身体は
その実、鋼線を束ねたような剛さとしなやかさの筋肉で鎧われている――を僅かに折り、一部の揺らぎもない堂々たる
姿勢と、深い知性と自制を湛えた瞳で視線を逸らすことなく僕を見下ろしている。
思わず、文才のない僕が脳をフル回転させて描写してしまうほどの、彫像のような青年が立っていた。
彼の唇が僅かに開き、深山の滝壺を渡る風のような涼やかさで

「やあ、ぼくは2年の金良洲 中(かならず・あたる)だ。今日はゆっくり見学していってくれたまえ!」

言い、深々と一礼したあと、彼はその右手を僕へと差し出してきた。



全裸で。


63創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:21:09 ID:0fVfzB6w
いや。
厳密に言えば、全裸ではない。
まず彼は靴下を履いている。その時点で全裸とは呼べまい。
そして更に。更にだ。
両の乳首に、気高く、かぐわしく咲き誇る真紅の薔薇!

――人を超え、全裸を超え、変態以上の何かに到達した姿が、そこにはあった。

背後で空気の揺れる気配がする。
串子先輩が僕の反応をうかがっているのだろう。
期待に応えるべく、僕は行動を起こす。

「変態!  変態!!  変態!!!」

しかしそんな僕の衷心からの叫びも、

「何だ何だーっ!? 綾瀬さとみもヘンに有名になったなーっ!」

という遠心分離機にかけられたドナルドダックのような大声にかき消されてしまったのだった。
「それよりまだかーっ!? 変態どもーっ!!」
ひょこり、と戸口から顔をのぞかせた遠心分離機にかけられたドナルドダックの正体は、意外にも、小柄な可愛らしい女性だった。
「あ、ああ済まないよし子。今、挨拶を済ませたところだ。すぐ行くよ」
「早くしろーっ? お前らいないとあたしのトコも始まんねーっ! てかお前らんトコ入る物好き居たのかーっ!?」
「ぼくの見たところ……逸材だね」
胸元の薔薇に届くか届かないかくらいの背丈の相手の大声に身を反らせながら、変た……アタル先輩が気になることを言う。
「え、あ?」
「ああ、紹介しよう。彼女はよし田よし子。会員5名を誇る”驚き屋研究会”の会長さんだよ」
「よろしくなーっ! ツッコみ同好会の会長もやってるーっ! お前も入れーっ?」
「あたしがツバつけたんだもん。よし子なんかに渡さないよーだ」
「え、いや、あの僕が言いたいのはその人のことじゃなくてさっき先輩逸材とか何とか」
「まあなんでもいいーっ。とにかく早く来いよーっ!」
「ああ、すぐに行くとも」
ああ。それなのに怒涛の如くの無意味な会話に流され、僕の発した疑問は虚空へと消えた。

「さ、行こう。準備したまえ」

――アタル先輩が僕に向けた手を更に差し出す。その仕種があまりにも自然だったので。

「え? 行くってどこに? それにさっきの人……驚き屋? そもそもここ、何の同好会なんですかってば!」

――僕はつい、その手を握ってしまっていた。

「競技室さ」

――立ち上がりながら、アタル先輩の手に、力がこもるのを感じる。

「よし子はね、驚き屋なの。付き物でしょ? 格闘技には。『ゲェーーあの技はーー!?』とか『知っているのか雷電!』とか」

――串子先輩が、ロッカーを漁りながら言う。

「格闘技? 全裸で?」
「そ。格闘技」
「世界一、危険なスポーツだよ」

――目当てのものが出てきたらしく、こちらに向き直って、串子先輩は手に持ったそれを一振りした。

「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったね」
「れんれんだよ。三木 蓮くん」
「いい名前だ。よろしく。ともに紳士の道を究めようじゃないか!」
「え? ちょ、……紳士?」
64創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:22:10 ID:0fVfzB6w

――ひゅん、と風斬り音がした。先輩の手に握られているもの。針のようなシルエットの。

「そう。紳士さ。この格好も、紳士を極めるための必然」

――フェンシングの、剣。

「「ようこそ! ヌードフェンシング同好会へ!」」

こうして、僕は、半ばなしくずし的に、ヌードフェンシング同好会に籍を置くことになったのだった。


ヌードフェンサーREN 第一話 終




え、何ですか串子先輩? 読め? 何ですかこれ……次回予告!?
うぇ……ええと?
かくして! 新たなメンバーを加えた創発学園ヌードフェンシング同好会は、強豪・聖ハルトシュラーとの練習試合に
望むこととなった……ってマジすか!? いきなり!?
厳しい練習の最中突如暴かれる、ヌードフェンシングにまつわる串子の悲しい過去! ってもう過去話!?
ライバル登場! その名もアジョ中! 魚かよ!? よし子が課した驚き屋特訓の意味とは!? あの人意味あったの!?
そんなこんなで次回! ヌードフェンサーREN第二話に……あの? 先輩? これ本当に言わなきゃならないんですか?


次回! ヌードフェンサーREN第二話に、アンガルド! フレーーーーシュっっ!!
……決め台詞まであんのかよ……('A`)
65創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 21:31:00 ID:fghIxp1s
('∀`)ワァ
66創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 00:44:10 ID:dAEWtl2u
これは凄すぎてコメントに困るww
「あのっ一年I組の二階堂紘一です!騎士道部に入部させて頂く来ました!」
「私の名前は世良渚砂、この騎士道部の騎士団長をさせてもらっている。」
握手を求められそれを返すと、ドカドカと後ろから他の部員達が入ってきた。
二人の女子、青いスカートにネクタイ。二年生の学年色だ。
「新入部員ですか世良部長。」
ショートカットの女子が僕の顔を覗き込んだ。
可愛い。
「珍しい、男子ですか。」
もう一人のハーフだろうか、金髪青目の女生徒がメガネを押さえながら真っ赤に火照った僕の顔をまじまじと見た。
恥ずかしい・・・。
「良かったですね、部長。これで部長も団体戦に出れます。」
金髪の女生徒ははメガネをクイッと上げた。
「そうだよ、アマリア。これは僥倖だ。
これで私も仲間と共に団体戦をやり合える・・・」
世良部長が腕を組み大きく頷いた。
「あの・・・僕の他に男子部員いるんですか?」

意外だった。
ただでさえ男子生徒が少ないこの学校。
数少ない男子もその殆どはハーレム生活を求めて入ったチャラ男ばかり。
文化部ならともかく運動部のそれもマイナーな部に僕と同じ男子生徒がいることはそれだけで幸運だった。
ようやく友達ができるかも・・・
女子が苦手なのにも関わらずこの男女の比率が1:9の学園に入った僕は未だに友達も話し相手もゼロだ。
これほど嬉しいことはなかった。

「何言ってんの?」
怪訝そうに眉をひそめられるショートカットの先輩。
今一飲み込めない状況に僕の頭上に?が浮かんだ。

「男子の団体戦は三人。バンガード・ソードマン・バトルコマンド。
ソードマン専用の剣道部員は・・・まあ性格に難ありだけど二年に一人。
剣道部員だけど大会時のみ徴用する確約をしてる。
残りはあなた一人、大会には出れるから安心なさい。」
金髪の女生徒はメガネを外しケースに入れた。
「じゃあ、あとの一人って・・・もしかして?」
「アマリアの言うこと聞いてなかったの?もう・・・世良部長に決まってんじゃん。」
「二人だけで相変わらず肩身が狭い男子騎士道部だが、共に頑張ろう。」

「ええええええ〜!!!!!」
男子騎士道部部長世良渚砂。
この黒髪の長髪が美しい先輩が男だと知った僕の悲鳴は、道場中に響き渡った。
69創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 02:49:40 ID:PtKyyXnm
一応キャラクター

二階堂紘一(にかいどうこういち) AB型 15歳 一年I組
私立聖セントライト学院の数少ない男子生徒の一人。
小さい頃に見た騎士映画に憧れ騎士道部が存在するセントライト学院に女子に苦手な身でありながら入学する。
騎士道部史上二人目の男子部員。
武器はショートソード&盾

世良渚砂(せらなぎさ) O型 17歳 3年C組
紘一が初見時、女子生徒と信じて疑わなかった程に美しい黒の長髪を持つ美青年。
寡黙で口調が古めかしく部内では常に和服。
どう見ても騎士道部に置いてその趣を意にする存在ではあるが、男子団体のバトルコマンド(大将)と男女騎士道部の部長を兼任している。
好きな飲み物は生姜湯、試合での武器は白い木で作られた木刀「えくすかりばぁ」
(選手層拡大の為高校生の騎士道大会では木刀も認められている)
70創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 02:50:26 ID:PtKyyXnm
篠宮桔梗(しのみやききょう) A型 16歳 二年F組
騎士道部の女子部員でボーイッシュなショートカット。
面倒見がよく一年には妹がいる。
武器はクレイモア(もちろん軟質素材)だが弓もそこそこ上手く、弓術部門でも出場している


アマリア・モンマルトル A型 17歳 二年B組
フランスからの留学生の金髪青目の美少女。
成績も優秀で英仏日の3か国語を話せる。
普段はメガネをかけているが伊達メガネ。
武器は騎槍。
幼少時から馬術を嗜み、通常の個人団体種目だけでなく馬を用いた馬上槍試合にもエントリーしている。

周防騎士(すおうないと) B型 17歳 二年I組
数少ない男子生徒の一人で桔梗の幼なじみ。
剣道部員であるが騎士道部の団体戦にかり出されるという契約を(強制的に)結ばされている。
武器はロングソードまたは木刀。
普段はチャラチャラしておりサボり魔だが根はいい奴らしい。
71創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 03:41:35 ID:fNzCZSpx
>>64
内容はぶっ飛んでるのに妙に書き慣れてるっぽい文章でワロタw
普通に面白いw

>>70
キャラ設定はSS内で自然に紹介すべきと思うのです
72創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 00:37:48 ID:lnnZ9j1b
ひ〜ん
出直してくる
73創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 02:23:41 ID:nEdympIg
Last Pitchの白瀧がすげえ気になる…
通算100安打行かずに35歳とかどんだけ守備巧いんだよ
ポジションも外野だから足も速そうだし、確実に試合数>>打席数タイプだよなw

>>72
どれの作者さんか知らないけど、全部読んでるし気になってるから続き書いて欲しいんだぜ?
74創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 20:31:28 ID:sjsGwCFq
そういやここって二次創作ありなの?
もしありならがんばってキャプテン翼の二次創作を書いてみたいんだけど…
75 ◆smnN9MIlWU :2009/02/02(月) 21:31:04 ID:1qC/PYOQ
別にアリだと思いますよー
76創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 01:15:31 ID:e6nhRTmb
全然アリだと思う
キャプ翼の二次? 読みてえ〜ww
77創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 20:31:38 ID:vsy17w9d
とりあえず予告っぽいものを書いてみた
小説書くのはなれてません、ごめんなさい

キャプテン翼・ワールドユース編・激突!クラブ選抜ユース大会

俺の名前は葵新伍
イタリアの名門・インテルユースに所属するサッカー選手だ
俺は明日行われるイタリアの大会、クラブ選抜ユース大会に向けて練習をしている
俺がランニングをかねてグラウンドに行くともう練習している奴がいる
「あっ、新伍!」
「ジノ!」
こいつはジノ・ヘルナンデス
JRユースではあの翼さんと戦ったんだ
パーフェクトゴールキーパーの異名は伊達じゃなく
今年のイタリアクラブユーストーナメントでも全くの無失点
初めて出会った頃は凄く嫌な奴だったけどジノはちょっと上昇志向があるだけなんだ
俺がインテルいられるのもジノが推してくれたからだ
足向けて寝られないね、これは
「ところでジノ、他の皆は?」
「俺と新伍以外は皆休みさ」
「ええ!?」
俺は驚いた、だって明日は大会なんだぜ!?
「良いのかよ?休んでて」
俺が不安そうな顔をしているとジノは俺の肩を叩きながら笑顔で言った
「ハハハ、心配するな!俺たちなら良い所まで行けるって!」
うーん…不安だ
「それよりも練習しに来たんだろ?一緒にやらないか?」
「そうだな、練習しようぜ!」
俺とジノは練習を始めた

新伍とジノが練習している間にも各国の選手が次々にイタリア入りをしていく
ドイツ、フランス、イングランド、オランダ、スペイン、アルゼンチン、そしてブラジル
ここで各チームのインタビューを見てみよう
まずはドイツから
「シュナイダー選手!一言お願いします!」
「若林選手!何か一言!」
「どうする?シュナイダー」
「フッ、俺たちドイツがやることは一つだけだ。今大会の優勝、それだけだ!」
次にフランス
「ピエール選手、今大会で注目しているチームはどこですか?」
「無論ブラジルですね、Jrユースでは見かけませんでしたし」
「ミューラー選手!フランスチームとしての参戦ですがドイツではいけなかったのですか?」
「俺は強いライバルを求めているからフランスへ行っただけだ、それにドイツで出場するとシュナイダーと戦えないからな」
そしてアルゼンチン
「ディアス選手!今大会、ヨーロッパの活動を視野に入れているという話ですが本当なんですか?」
「え?俺は知らないけど…まあ、評価してくれてるっていうなら行っても良いぜ」
「肖選手!中国ユースからアジア予選への出場を懸念されてますけど…」
「ああ、それは問題ない!ハンネとバンクンがいりゃあ予選は必ず突破できるからな」
最後にブラジル
「サンターナ選手!今回がヨーロッパで初めての試合だと聞きましたが」
「ああ、だが俺は負けるつもりはない。ブラジルが世界一である事を証明するだけだ」
「大空選手!注目している選手はいますか?」
「誰か一人と言われても困りますね、でも全てのチームが手ごわく感じます!」
多くのライバルがここイタリアに集まった
クラブ選抜ユース大会、明日開催!
78創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 22:16:29 ID:Hkru5W0o
お、期待期待♪
79創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 22:24:10 ID:demhhcDE
>>9-11
の設定を借りて小説書きます。
こっちもサッカーモノです。
ちょっと長くなりそうなのと、スポーツモノというか、
もしかしたらオーナー視点か一人の選手視点になるかもしれないけどいい?
80 ◆smnN9MIlWU :2009/02/17(火) 23:20:16 ID:sqew0di0
自分の書いてるのも長くなりそうだな・・・まあのんびり行きましょう
81LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/02/22(日) 00:55:34 ID:jCHvMlwE
◆3
 初球。ストレート。インハイに外れてボール。打席の梶原はピクリとも動かず見送る。あの
コースはハッキリ見えないはずだ。だが、動揺を見せてはいけない。インハイの打てない
強打者など投手にとってはカモだ。無論そのような選手と契約する球団など無い。
 2球目。藤木はその日初めて変化球を投じる。アウトコースへ滑り落ちるカーブがストライク
ゾーンの内側に決まる。梶原は上体をわずかに動かすも手を出さず、今度はストライクになる。
藤木にとっても大事な投球だ。ただ抑えるだけではアピールにはならない。投球術も見せつけた
いといったところだろうか。

 3球目。今度はストレート。インコース低め。梶原、微動だにせず。これでカウントは2−1
と投手有利になった。ここまで一度もバットを振らない梶原。勝負球に狙いを絞っているのか。
それとも……
 4球目。ストライクゾーンに入れてくるか、もう1球外すか。藤木の頭の中は。そして梶原は
どう反応するか。腕を大きく振って渾身の一球がアウトコース低めへ。見送れば、微妙だ。振ら
なければストライクとコールされるかもしれない。だが。梶原は見送った。球はベースの手前で
変化し、ボールになった。これで2‐2の並行カウントになった。もし次も外れれば2‐3と
なってボール球はもう投げられなくなる。次こそ勝負球か。

 5球目。ここまでの投球は内→外→内→外。今度はインコースか、あるいは裏を書くか。さら
に裏の裏をかくか。左手から投じられる白球は、真っ直ぐにキャッチャーミットに向かって飛ん
でいく。インコース、やや高め。梶原は狙いすましたように振りぬく。ボールは一気にバック
スクリーンへとはね返される。失投か、あるいは……。マウンドに立ち尽くす藤木を横目に
ゆっくりとダイヤモンドを回る梶原。もちろん、この結果が即契約に結びつくわけではない。だが、
その顔は憑き物が落ちたような表情であった。梶原がホームベースを踏むと、一方の藤木は
がっくりと肩を落としマウンドを降りる。

 その晩、藤木の携帯電話が鳴る事は無かった。
82LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/02/22(日) 00:57:00 ID:jCHvMlwE
◆4
 自宅に帰る藤木。妻の真美子は「おかえりなさい」とだけ告げる。藤木は小さく頷き無言の
まま自分の部屋に戻る。真っ暗な部屋のソファに腰掛け、大きくため息をつく。ゆっくりと眼を
閉じる。最後に投じた一球が頭にちらつく。繰り返し蘇ってくる記憶。記憶の中で何度も投げて
は打ち返される。もう一度、今度こそ打ち取ってやる。今度? そんなものあるのか。延々と
続く自問自答の末、やがて深い眠りについた。

 翌朝。藤木はいつものコースをランニングした。可能性を信じているわけではないが、何だか
もやもやした気持ちを振りきりたかった。途中立ち寄ったコンビニに置いてあるスポーツ新聞の
見出しが眼に入る。『東京ギャングスターズ高倉監督誕生か!?』とのこと。思わず手にとった
のは大日本スポーツ。真偽不明な飛ばし記事で有名なスポーツ新聞だ。高倉茂道と言えば
藤木がプロ入りした時の監督であり、チームを5年連続の日本一に導いた球界を代表する
名将だ。東京エンペラーズ監督を勇退後は野球解説者をしながら全国で野球教室などを開い
ている。

 エンペラーズとギャングスターズ。同じく東京都をフランチャイズとするプロ野球チームだが
実績、資金力、観客動員数等々、あらゆる面で天と地ほどの差がある。通算40回の優勝回数を
誇り"球界の盟主"の名をほしいままにする東京エンペラーズ。それに対し、球団創設から50年
を数えながら親会社が何度も変わり、現在はインターネット関連企業が保有する東京ギャングス
ターズ。結果が出ないとすぐに監督を変え、チームを強化するビジョンと言う物がまるでない。
昨年も桜が散るのが早いかと言う時期に最下位を独走し、まず小野田監督を解任。続いて代行
監督に大友ヘッドコーチが昇格。ゴールデンウィークを挟んだ12連敗と供にチームを去った。

 その後、志垣2軍監督を代行の代行に据えたがチーム浮上のきっかけすら掴めず。結局5年
連続の最下位と10年連続のBクラスに沈んだ。もちろん人気も低迷。本拠地・神宮外苑スタジアム
は東京のど真ん中にあるという立地条件こそ最高なのだが、やはりチームに魅力が無いと客足は
年々遠のいていく。西原幸人や結城智樹といった人気選手はいるものの、見合った数字は残せて
おらず、仕方なく起用している現状である。

 普通に考えれば、こんな球団の監督要請など誰も受けようはずが無い。しかしシーズンが終了
してから一ヶ月も経って来期の監督が決まらず難航するとは球団関係者も予想外だっただろう。
ついにはチーム最年長の大谷清広をプレイングマネージャーとする案まで出たとか。大谷と言え
ば、名古屋デンジャラス時代に2番打者としてリーグ優勝に貢献した経験を買われ7年前に今の
チームに来た内野手だ。現在41歳で、選手としての力は衰えたものの、若手からの信頼は非常
に厚い。2年前から守備走塁コーチを兼任しているが、5年連続最下位のチームで未経験の監督
をやらせるのは流石に酷だ。

 球団OBでバラエティタレントとしても活躍する橋詰雄三氏の名も挙がったが、やはり采配の
能力等が疑問視され却下の運びとなった。たしかにテレビで見せる明るいキャラクターでベンチ
を盛り上げる事はできるかも知れないが、それだけで勝てるほどプロ野球の世界は甘くない。

 そんな折、もはやヤケクソとも思える名将への監督要請。これがいともアッサリと承諾される
のだから世の中わからないものだ。
83 ◆smnN9MIlWU :2009/02/22(日) 00:58:23 ID:jCHvMlwE
投下終了age
84 ◆smnN9MIlWU :2009/02/23(月) 20:37:48 ID:IBQm1lb+
うーん。なかなか盛り上がらんね。
85 ◆smnN9MIlWU :2009/02/24(火) 21:23:03 ID:m2vQjjrq
実況「空振り三振。橋詰さん、今の球は」
橋詰「う〜ん。いい球ですね」
実況「いい・・・球ですか」
橋詰「魂の乗ったいい球です」
実況「・・・はい。次は攻撃ですが、ポイントは」
橋詰「う〜ん。気迫ですね」
実況「・・・はい。打順は1番からの好打順です」
橋詰「きっとやってくれます!応援しましょう」

橋詰さんはこういう人です。
86LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/02/28(土) 00:44:56 ID:zEQiWCwF
◆5
 11月21日。高倉茂道氏の東京ギャングスターズ監督就任会見が都内の球団事務所
で行われた。流石に注目度の高い監督就任とあって例年以上の報道陣が集った。
「要請を受け入れた理由は?」という質問に対して「この年齢(65歳)で監督としてユニ
フォームを着る最後のチャンスかも知れない。野球人として、やはりユニフォームを着て
いたい。あと、球場が家から近いので」と答えた新監督だが、果たして10年連続Bクラスの
チームを立て直す事ができるのか。オーナーの内堀幸伸氏((株)ベンチャークリエイトCEO)も
「高倉監督には最大限のバックアップ体制をしていくつもりだ」と述べた。

 監督が決まれば続いてコーチを選ばねばならない。ところがここで一つ問題が生じた。
エンペラーズ時代、二人三脚で最強軍団を作り上げてきた藤森昌司ヘッドコーチ(当時)
は現在同球団の監督である。そこで高倉監督が指名したのは現在ギャングスターズで
スコアラーの職に就いていた牧尾忠勝であった。現役時代はエンペラーズに強肩の
キャッチャーとして期待され入団したものの、藤森捕手(当時)の控えに甘んじていた。
しかし、不貞腐れる事無くベンチで常に相手の選手を観察したり勉強を欠かさなかった。
一方でそのデータをチーム内で公開するなど他人を押しのけてまでという野心が無かった
のも事実だ。その後、持ち前の人当たりのよさで球界内外の仕事をこなした。ブルペン捕手や
2軍バッテリーコーチ、さらにスカウトやスコアラーなど。その豊富な経験を買っての登用と
いうわけだ。高倉監督は「まさか同じ球団にいるとは思わなかった。これも何かの縁だ」と語る。

 就任会見の後、高倉へ真っ先に連絡をしたのは藤木だった。この時、藤木は自分の力の
限界を感じていた。2人はそのあと高倉が行きつけの居酒屋へ。まず話を切り出したのは
藤木だった。
「監督就任おめでとうございます。俺も何か力になりますよ。打撃投手でもなんでもやります
から」と言った。それを聞いた高倉は「うーん」と困ったような表情を浮かべる。「打撃投手は
これ以上必要ないのだが」と言われ、がっくりと肩を落とす藤木。高倉はさらに「このチーム
に足りないのは現役の投手。それも左。そうだな、経験豊富で俺を良く知るヤツがいれば
言う事無いのだが……」と続けた。かつての恩師から力を貸してくれと言われた藤木はただ
頷くだけだった。

 11月25日。藤木の東京ギャングスターズ入団会見。背番号は「ゼロからの出発」という
意味を込めて0番に決定した。しかし、この会見がニュースとして大きく注目されることは
無かった。
87創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 02:47:41 ID:xJogKsL7
投下終了なら、投下終了といった方がいいと思うのぜ

いつも見てるから頑張ってくれ
88創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 17:20:05 ID:VFFcfyZe
週ベやNUMBERのドキュメンタリーを見るような楽しみがあるね
スポーツニュースやスポーツ新聞でごひいき選手の動向をうかがうように楽しませてもらってるよ
このままドキュメンタリータッチで行くのか、藤木の内面描写が多くなるのか
どっちにしろガンガレ


そして白瀧…
設定一覧にもないし、あれっきりなのか(´・ω・`)
(地味だけどしぶとい選手好きなのです)
89 ◆smnN9MIlWU :2009/02/28(土) 23:15:19 ID:zEQiWCwF
節操がない作者が通りますよ
>>87
失礼しました。気をつけます。
>>88
番記者が追ったドキュメントという裏設定が(嘘です。今考えました)

選手の名前を挙げられると活躍させたくなりますね。考えておきます。
90組体操:2009/03/01(日) 00:05:30 ID:zQzCkp7c
笛の音が運動場に響き渡る。
俺たちのグループだけが形を完成できないまま、次の笛の音がむなしく流れる。

「お前のせいだぞ!」
「まあまあ……」

“彼”を責める者とそれをなだめる者。
そして俺はそれを眺めるだけだった。

“彼”はその巨体によってクラスメイトから煙たがられている。
もうすぐ迎える体育祭。
その組体操の、出席番号によって機械的に選ばれたグループで、俺と“彼”は一緒になった。
小ピラミッドから扇につなぐ流れで場所を移動できないため“彼”は扇で端を担当しなければならなくなった。
このままでは俺たちのグループだけ出来ない。
そう思っていた。

ある日の放課後、俺が部活に励んでいると、学校の敷地外に“彼”がちらっと見えた。
“彼”は歩いていたが、その格好を見るに走るつもりで外に出たのだろう。
俺は気づかない振りをして練習に戻った。

本番、左手にかかる力がわずかに小さく感じた。
俺たちの扇は見事に三秒間開きつづけた。
その理由は俺だけの胸にしまっておこうと思う。

おわり
91創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:15:47 ID:ydU6Nnqu
なんといういい話
92LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/03/12(木) 23:46:26 ID:JCLdtx87
◆6
 藤木の入団に対してギャングスターズの選手達の反応はまちまちであった。歓迎する者、しない
者……特に不快感を表したのはエースの松村豊彦だ。松村は7年連続で開幕投手を務めており、
本来なら今年も開幕のマウンド、さらにローテーションの中心は自分だと確信していた。松村は
今シーズンでFA権を取得する予定であり、もしかすると今年限りでチームを去るかも知れない
と噂されている。ちなみに昨年の成績はチーム唯一の二桁勝利で13勝(14敗)。負け越しながら
防御率はリーグ1位の1.98であった。平均2点以内に抑えていて勝てない……そんなチームに
未練など、無いのかもしれない。新しい監督も過去の実績は凄いのかもしれないが、それもあの
東京エンペラーズだったからそれだけの数字が残せただけだ、と松村は内心思っている。さらに
前の球団で一緒にやってたとの理由で"終わった投手"を連れてくるのが気に入らない。かと言って
球団に楯突くほど愚かでは無い。自分は自分の仕事をやって数字(登板数および防御率)を残す。
それがプロだと思って今日までやってきた。「監督が変わっても自分は与えられた仕事をやるだけ
です」記者に対し松村はいつもこう答えてきた。

 年が明けて1月5日。藤木が自主トレを開始した。沖縄は年中暖かいのでトレーニングには最適
だ。例年この場所で始動する藤木も、一度は引退も覚悟した今年は感慨深げだ。エンペラーズの
若手を数名引き連れて行う自主トレは若手の間では"藤木塾"と呼ばれていた。藤木にとっても生き
の良い若手の動きはやはり刺激になるものだ。ユニフォームが変わる今年もまたエンペラーズの
若手を連れて自主トレを開始した。

 石田一道は高校時代"藤木2世"と呼ばれた左腕投手。ドラフト1位で桐竜学院高校(群馬)から
入団し将来を嘱望されたものの、いまいち伸び悩んでいる。同じく参加した川島翔太は昨シーズン
二軍で本塁打・打点の二冠王に輝いた若手のスラッガー。しかし一軍の壁は厚く、なかなか頭角を
現せずにいる。それというのもエンペラーズには一塁にはペドリックという強打者がいて川島は
ポジションが被る為にスタメンの機会が無い。昨年は結局監督の方針いより二軍で不動の4番として
出続けていた。今季は一軍ベンチ入りし数少ない代打で結果を出していかなければいけない。もち
ろんレギュラー獲得を諦めるつもりはない。出番が増えるように外野手用のグラブを新調した。

 藤木が若手を連れて自主トレをするのには理由が二つある。球界の将来を担う人材に自分の知識や
経験を教える為というのが一つ。そしてもう一つは若い選手と一緒に汗を流す事で自分の若い頃を
思い出す為である。
93LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/03/12(木) 23:47:17 ID:JCLdtx87
◆7
 2月1日。プロ野球全球団が一斉にキャンプインした。選手にとってはこの日が正月のような
ものである。今年からユニフォームの変わる藤木もまた決意を新たに始動した。
 名将高倉監督を迎え入れ、最下位からの浮上を狙う東京ギャングスターズは沖縄・石垣島で
キャンプインした。

 カツーン。カツーン。と快音が響くグラウンド。バッティングケージに入っているのは背番号44、
新外国人チャーリー・エドモンズ。年俸5億3千万円と大金を積んで獲得した右の大砲だ。大リーグ
で通算315本塁打、1436安打と実績は歴代の外国人選手の中でも指折りだ。早くも他球団の
スコアラーが眼を光らせた。しかし、初日はわずか10分ほどでフリーバッティングを切り上げた。
 続いてケージに入ったのは河田一樹。チームの生え抜きで貴重な左の長距離砲である。寡黙な性格
で誤解されやすいが、チームへの愛着は人一倍だと自負している。初日ということもあり、大きな
打球こそ上がらなかったが、鋭い打球を右方向へと打ち込んだ。ところが、河田もまた10分くらい
で練習を終えて室内練習場へと向かっていった。
 今年は新任の高倉監督が戦力を見極める為に例年より一軍キャンプの参加人数が多い。そのために
一人当たりの練習時間が限られている。しかし、これが高倉監督の狙いだった。ただただ長いだけの
練習よりも短い時間に集中する事で効率が上がるという発想である。

 一方ブルペンでは投手陣が初日から力強い投球をキャッチャーミットに投げ込む。昨シーズンは、
二桁勝利を挙げた投手がエースの松村(13勝)のみで、その松村も来シーズンにはいなくなる可能性
が高いと言われている。松村に次ぐ若手の台頭が望まれるところだ。
 だが、投手陣の中で一番活気があったのは39歳の"ルーキー"藤木だ。リハビリを終えようやく実戦
登板というところでの解雇。一度は現役を諦めかけたが、かつての恩師に拾われる形で今この場所に
居る。新人としてエンペラーズのキャンプに参加した18歳の頃を思い出す。あの頃は注目のルーキー
として常にフラッシュの中にあった。その頃と比べればこのキャンプは周囲が静かすぎるが、「むしろ
集中できていい」と藤木はポジティブに捉える。
 もちろん生え抜きの若手達もこの39歳のベテランの姿を黙って見ているわけではない。同じ左の
西村光洋は4年目の21歳。サウスポーということで期待され昨シーズンもチャンスを多く与えられ
た。だが、ピンチのたびにリリーフとして出て行ってはランナーを帰してベンチに戻ってくる繰り返し
で年間通して一軍には定着できなかった。「ブルペンでは織田(ギャングスターズの抑え投手)以上、
マウンドではリトルリーグ」とは岩口投手コーチの評。何かを変えないと生き残れない。そんな危機感
を持ってのキャンプインである。
94 ◆smnN9MIlWU :2009/03/12(木) 23:49:28 ID:JCLdtx87
投下終了です。
早く試合シーンが書きたいので駆け足です。
95創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 12:30:56 ID:AfwZbM4U
乙ですぜー
試合シーンまではもうちょっと駆け足でもいいかもねー
96創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 19:08:36 ID:c+TBgtvv
このスレって野球以外のスポーツでも良いのかな?
フィギュアスケート物を書きたいなって思っているんだけど
どうでっしゃろ?
97創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 19:46:56 ID:08ZwqyjZ
ぜんぜんおk
ついでにフィギュアは大好物ですので期待するますww
98LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/04/05(日) 13:43:43 ID:Mfjx3iMH
規制長かった・・・いよいよプロ野球も開幕しましたね!

◆8
 キャンプも第二クールに入り、今年は例年よりも早く紅白戦が始まった。オーダーは以下の通り。

先攻・赤組      後攻・白組
1(中)8山下大裕   1(左)31相原駿一
2(二)1大谷清広   2(二)61榊一幸
3(遊)23結城智樹   3(右)25城野哲哉
4(三)3YUKITO   4(一)44エドモンズ
5(左)5河田一樹   5(指)50沼田仁
6(指)42バルデス   6(三)33安田孝太郎
7(一)9田本健太   7(遊)10高木暁
8(捕)22柳沢健治   8(捕)27谷田部尚義
9(右)32上川隆広   9(中)67神岡一良
 (投)21楠木亮平    (投)0藤木真介

 そのオーダーは、昨年のレギュラーと控え+新加入選手にきっちりと分かれている。高倉監督と
牧尾ヘッドコーチは白(控え+新加入)組のベンチに座った。白組の先発はキャンプ初日からブルペン
で熱のこもった投球練習を披露した藤木だ。一方の赤組の先発は昨シーズン中盤から先発ローテ入り
し、6勝(5敗)を挙げた若手有望株の楠木亮平だ。
 一回表。赤(レギュラー)組は一番の山下大裕から。「藤木さんか。実績はスゲェのかも知れない
けど、正直ロートルっしょ」と山下が軽口を叩いて左の打席へ向かう。ところが藤木のインハイへの
直球を目の当たりにした山下は驚いた。「これが39歳の球かよ……」完全に腰の引けた山下はアウト
コースへのスライダーを引っ掛けてショートゴロに倒れた。

 二番はベテランの大谷清広だ。優勝請負人と期待されて名古屋デンジャラスから移籍してきたものの、
ここまでは結果を残せず悔しいシーズンが続いている。年齢的にも残された時間はそうない。チームの
将来を考えるといつまでも自分がスタメンを張っていて良いのだろうかという思いもある。二年前の
オフに守備走塁コーチ就任を打診されたときも現役にこだわりコーチ兼任という形で落ち着いた。表向き
には「二塁のレギュラーとして固定できる若手がまだ育っていないから」というのが理由だが、大谷自身
の考えは違った。あくまで現役としてユニフォームを着てチームを優勝させたい。という一心であった。
 大谷は三振に倒れ、三番の結城智樹が打席へ。高校時代は3年春の選抜大会で4番として、エースとして
八面六臂の活躍。自らのサヨナラホームランで優勝という離れ業をやってのけた。その年のドラフト会議
では5球団が一位に指名。それをよりによって弱小球団ギャングスターズが引き当ててしまったのだ。
「東京のチーム(おそらくエンペラーズのつもり)が希望」と言った手前、拒否できずそのまま入団。投手
としては通用しなかったが、4年目に内野手に転向。そして現在に至る。しかし、かつて甲子園で見せた
輝きは鳴りを潜めている。
「こいつ(結城)の穴は……このコースだ」普段は控えのベテラン捕手、谷田部尚義が結城が苦手とする
インコース低めにミットを構える。紅白戦でそこまでするかというほど徹底してウィークポイントを攻め
るバッテリー。結果、結城は窮屈なバッティングでピッチャーゴロに倒れた。
 復活を期す藤木はレギュラー組をまずは三者凡退に仕留め上々の立ち上がりを見せた。
99LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/04/05(日) 13:46:05 ID:Mfjx3iMH
◆9
 白組一番の相原に対し耳打ちをする高倉監督。何か策でも授けたのだろうか。ともかく打席には3年目の
相原。足の速さを買われプロ入りし、昨年途中に一軍に上がって主に代走で起用されていた選手だ。打席に
立つ機会はあまりなく、マウンドの楠木もリードする柳沢も塁に出せば厄介だとは思ったが、そのバット
には警戒の必要なしと高をくくっていた。相原は楠木の直球に必死に食らいつくが打球は前に飛ばない。
完全に力負けだ。それでもバットを短く持ち、とにかくカットし続けた。元々荒れ球に定評のある楠木だが
8球目が外れたところでカウントは2‐3に。キャッチャーの柳沢は「歩かせるくらいなら打たせろ」と
ばかりにストレートを要求する。相原はそれでもバットを短く持って楠木の投じた直球をカットする。結局、
11球目が大きく外れてフォアボールになった。一塁に向かう相原を見てベンチの高倉監督はニヤリと笑み
を浮かべた。「ボール球の多い楠木に対しストライクゾーンに来た球はカットして四球を狙え」という指示
だったのだ。

 俊足の相原を歩かせてしまった楠木は、次打者の榊一幸よりもランナーが気になってしょうがない様子だ。
こういう場面でさらに揺さぶるのが高倉監督のやり方だ。打席に向かう榊を呼びつけて、またも耳打ちを
した。その様子を見た柳沢は警戒を強める。
「この場面、相原の足を生かすなら盗塁かあるいはヒットエンドランか……」柳沢は考えた。榊が左の打席
に入る。セカンドを守る榊は大谷の後継者一番手として期待されている。大谷より若い分守備範囲や肩の
強さは上であるが、バントなどの細かいプレーを苦手とする為にレギュラーに定着できないでいる。
 ランナーを背負った場面で楠木と柳沢のバッテリーが選択するのは九割以上がストレート。これは昨年
までスコアラーをしていた牧尾コーチの持つデータによるものだ。さらに一塁には俊足の相原がいる。と
なればここでの打者への支持は当然「初球のストレートを狙え」だ。思い切り振りぬいた打球は右中間へ
クリーンヒット。ライトの上川がカバーに入る間に相原は一気に三塁まで到達し、チャンスを拡げる。
 三番の城野哲哉が右打席に入る。城野は今年6年目となる若手外野手だが、昨シーズンは86試合の出場
にとどまった。無死一、三塁。犠牲フライでも先制点が入る局面だ。しかし、気負ったのか城野は3球目を
打ち上げてファーストへのファールフライに終わった。

 そしていよいよ注目の打者が登場。球団史上最高の期待を持って迎えられた超大物助っ人エドモンズだ。
「見せてもらおうかな。大リーガーの打球を」と、ベンチの高倉は様子見の構えだ。楠木の初球は外角への
カーブだった。エドモンズはこれを全力でフルスイング。スタンドから大きなどよめきが起こった。打たれ
ることを恐れ初球から変化球を投じた事に少し不満気味な表情を見せるエドモンズ。だが、すぐにタイミング
を調節し、三球目の外に逃げるスライダーを踏み込んでとらえる。打球はレフト方向へ。レフトの河田は
打球の方向に一瞬だけ目を移したが、すぐに見送った。エドモンズにとってここ石垣島の野球場はあまりに
も小さすぎたようだ。
100LastPitch ◆smnN9MIlWU :2009/04/05(日) 13:49:27 ID:Mfjx3iMH
投下終了です。

スコアボード
紅0−− −−− −−−|0
白3−− −−− −−−|3
101創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 06:50:25 ID:hs/YKFF+
規制だったのか。待ってたよ…長かった
開幕間に合わなかったね(´・ω・`)
藤木まずは無難な立ち上がりか…
「東京のチーム希望(キリッ)」噴いたwww




【浅草観光】エドモンズ応援スレ96【神のお告げ】
某所の書きこみを見てこんなのが浮かんじゃったww
102 ◆smnN9MIlWU :2009/04/07(火) 00:07:07 ID:lfozhWK1
待っててくれる人がいるのは非常にありがたいです。
エドモンズは・・・まあご期待ください。

他の人の作品も待ってますよー
103創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 09:59:39 ID:ueEdEUdT
御言葉に甘えて投下させていただきます


 チームから契約非更新を通達されたのは11月下旬だった。
 昇格が懸かる大事な最終戦を控えていたこともあったが、今シーズンは全試合にスタメン起用されていた俺にとっては寝耳に水だった。
 確かにシーズン後半は途中交代が多かったものの、昇格のためにがむしゃらにやってきた挙げ句に、この仕打ちとはフロントに対しては怒りを通り越して、ただ呆れるしかなかった。
 監督からは最終戦もスタメンでいくと言われていたし、気持ちを切り替えて練習に没頭した。

 迎えた最終戦。
 リードを許していたこともあり、俺は前半で退きベンチから戦況を見守る。
 一進一退の攻防が続き、試合はアディショナルタイムに入っていた。
 ラストプレーとなるコーナーキックから劇的なゴールが生まれ、ホイッスルが鳴り響くとベンチ前では歓喜の輪が出来上がった。
 見事に勝ち点1差ながら、悲願の昇格を決めたのだ。
 ピッチ上で喜びに沸くチームメイトの中に加わっても、素直に喜べない自分がもどかしい。
 今シーズンのいろいろな出来事が、走馬灯のように駆け抜けていく。もうあいつらと一緒に戦うことはできないと思うと、堪えきれなくなった熱いものが頬を伝っていくのがわかった。
 これで終わりなんじゃない、これからが始まりなんだ。

 移籍先はすぐに見つかると高をくくっていた。トライアウトも受験し、幾つかのチームのセレクションにも参加したが一向に声はかからない。
 まだできるという自信は、次第にもう駄目かもしれないという大きな不安に変わっていった。
104創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 10:00:38 ID:ueEdEUdT
 そんなとき一通の手紙が届く。
 小学生の女の子からのファンレターだった。地味なポジションだったこともあって、御世辞にも人気選手とは言えないこんな俺に手紙を書こうなんて、初めは物好きな子だなとしか思わなかった。
 丁寧に書かれていた文章には、所々に力強い励ましの言葉が散りばめられいて、たった一人でもファンがいるというだけでも嬉しかったのに、読み終えたときには、この子のためにも諦めずに頑張ろうという前向きな気持ちが芽生え始めていた。
 すぐに返事を書き、お互いの近況などを綴って何度か手紙のやり取りが続いた。
 しばらくして俺は故郷に帰り、不動産会社に就職。体力だけが取り柄で、人一倍営業に駆け回ったこともあって、今では部下は三人だけだが、支店を任されるまでになっていた。
 奇しくもテレビでは、古巣がクラブワールドカップの決勝を闘っている。

「俺も、もう少しサッカーにしがみついていればよかったかなぁ……」

 すると、隣で息子をあやしながら妻が言う。

「何言ってるのよ。私はサッカー選手だったあなたを好きになったんじゃないわ。だって、あのとき私が手紙を送ったときにはすでにあなたは選手じゃなかったじゃない。いいのよ、今が幸せなら」
 試合はスコアレスのままアディショナルタイムに入っていた。



お粗末でした。
105創る名無しに見る名無し:2009/04/09(木) 01:07:10 ID:Xn4z75Fl
幼な妻となっ!(←目の付け所が色々な意味で違います

人生を諦めずに幸せを掴んだわけですな。
106創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 12:27:54 ID:FBinz8nt
マリンスポーツやスカイスポーツの作品も読んでみたい。
107創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 18:50:26 ID:bp/b1ssL
>>97

フィギュア物の小説を書いてるブログ

http://shousetu.i-yoblog.com/
108創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 19:56:25 ID:eePM9/Oy
プロレスとか総合とかは?
109創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 20:43:35 ID:tQ2t4TvP
ジャイアントキリンの小説版みたいなのもあり?
110創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 23:23:44 ID:aYW096DY
スカイスポーツからみの話を考えているけれど、難しい。
111創る名無しに見る名無し:2009/05/20(水) 18:25:59 ID:JIQdVul9
だれかスポーツチャンバラを扱った小説頼んます。
112創る名無しに見る名無し:2009/05/20(水) 18:56:35 ID:J3AchDfW
キャットファイトも希望
113創る名無しに見る名無し:2009/05/21(木) 00:23:38 ID:qhCXhbFc
リクエストに反してゴルフネタ

「ありゃ、川に落ちちゃったか」
「こういう時ってどうなるんだっけ」
「2ペナルティーとかじゃね」
「おk」

「ありゃ、木の傍すぎて打てないよ」
「こういう時ってどうなるんだっけ」
「2ペナでいんじゃね」
「おk」

「あらら。カートで人轢いちゃったよ」
「こういう時ってどうなるんだっけ」
「20ペナくらいつけとく?」
「そんくらいかなあ」

「飛んだなあ」
「飛んだねえ。ドライバーで当たるとは、僕と同時期に始めたとは思えないねえ」
「よせやい、お互いまだ一ヶ月も立ってないじゃないか」
「あはは」
「あはは」
「笑ってる場合じゃねえや。俺の打った球、先行してたプレイヤーに当たってら」
「うわ、脳漿とか初めて見た」
「こういう時ってどうなるんだっけ」
「50ペナくらいつけとく?」
「そうねえ」

「パター50打目だよ」
「入らないねえ」
「誰か殴りたくなってきた」
「未遂なら10ペナくらいで許してやるが」
「おk」

「お帰りなさいあなた。どうでした、スコア?」
「散々だったよ。みてよこれ」
「320。これ、ボーリングのスコアじゃなくて?」
「……俺、ゴルフって向いてないのかもしれないな」

 そう言いながら、彼は返り血まみれのクラブケースを撫で回した。
 妻は気付いていた。
 返り血のみならず、今なおケースから血が滴っている事を。

「それで、あなた。お風呂になさいます? それともお風呂?」
 夫は、頭を振って妻の言葉に応えた。
「自首、かな」
 妻は頷いてから、震えた指先で110番を押した。
114創る名無しに見る名無し:2009/05/21(木) 01:18:26 ID:VL/5FQvU
盛り上がらない格闘技漫画


貧弱な男の見本である、おわた君は格闘技を習いました。

「おい、おわた、俺の空手と勝負しようぜ……フヒヒ」
「うひゃぁ!」

おわた君はがっちりと空手君の首をフロントチョークで決め、
3秒ほど数えます。

「いーち、にーい、さーん」
「あふん!」

頚動脈を絞められ脳に血液が回らなくなった空手君は一瞬で気絶しました、
これでは自慢の筋肉も無用の長物。

「やっててよかったクラヴ・マガ!」
115LastPitch:2009/05/22(金) 03:19:20 ID:IJTizqUJ
規制されましたので代行スレから投下。

◆10
 レギュラー組の4番は西原幸人(登録名YUKITO)。昨年のオールスターゲームにも出場した人気選手
だ。昨シーズンの成績は.266 24本塁打 77打点と、レギュラーとしてはまずまずと言えるが4番と
しては物足りない数字だ。外国人打者の不振で空いた4番を任されるなど打順が固定できなかったという
チーム事情もあるが、やはり4番は荷が重いと言わざるを得ない。本来は6番か7番でのびのびと打たせた
ほうが良い選手だ。ちなみにギターが趣味でオフの間には学生時代に同じ野球部だったメンバーとバンドを
組んでライブを開催したりしている。
 西原に対しても実戦さながらの厳しい内角攻めを徹底する藤木。左腕から右打者の胸元にグッと食い込む
ストレート。打席の西原はこれに対してファールにするのが精一杯といった様子だ。結局、2ストライクと
追い込んでから最後はフォークで空振り三振に抑えた。

 続く5番打者は左の河田だ。昨シーズンの33本塁打 81打点は供にチームでは一番の成績だった。元々
は投手として入団しながら肩の故障で断念し野手に転向した苦労人である。この河田にはホームランを避ける
投球をする藤木。低めのカーブでサードゴロに打ち取る。
 藤木は6番のバルデスも打ち取り、この回もレギュラー組を三人で抑えた。

 白(控え+新加入)組の三点リードでむかえた二回裏は七番の高木暁から。高木はバッテリー以外どこでも
守れるいわゆるユーティリティプレイヤーである。普段はベンチをあたためている事が多く、打率はわずか
一割台。この打席も三振に倒れた。
 八番の谷田部尚義はベテランの控えキャッチャー。若い頃は強打を売りに広島レッドウォリアーズの
ホームベースを守っていたが、最近はあまり打席に立つ事は少ない。果敢に打って出たもののライトフライ
だった。
 二死無走者で左打席に立つのは高卒新人の神岡一良。埼玉県立鷺ノ淵高校からドラフト7位で入団した。
高校では投手兼外野手だったが、プロではシュアな打撃と身体能力を生かすため外野手一本で勝負する。
ちなみに、高校時代の成績は埼玉県予選の決勝まで進んだものの、甲子園で準決勝まで勝ち上がった浦江学園
に優勝を阻まれた。その浦江学園のエース・浜崎は同じリーグのさいたまレイダースに1位指名され入団した。
「プロの舞台で今度こそ浜崎を打ち崩してやる」神岡はそんな強い気持ちを持っていた。
 神岡は2球目のストレートをセンター前に弾き返す。そして、打順は早くも一回りして一番の相原に再び
回ってきた。
 相原は前の打席と同様にバットを短く持ち、楠木の投じる球をカットする。しかし、この打席は球数こそ
10球投げさせたもののファールフライに終わった。

スコアボード
紅00− −−− −−−|0
白30− −−− −−−|3


116創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 20:14:44 ID:rQ/7GSm1
剣道ネタのSSを希望します
117創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 16:46:46 ID:YHyiowdw
スキーなど冬スポーツもよろしく
118創る名無しに見る名無し:2009/05/30(土) 15:35:50 ID:XgVW0opR
新作投下希望
119創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 07:50:47 ID:TNHtICwz
新作投下祈念
120創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 19:09:17 ID:6I9FBf9L
ゲートボールの道具を流用。
ボールは11個用意して、一個は真っ白。
後は1〜10まで書く。長方形のコートの
四隅と、長辺の中間の計六か所にゲート設置。
名付けて「フィールドビリヤード」
121創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 05:27:30 ID:/4h2O0hs
あげ
122創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 23:17:45 ID:2en6v8Xf
スカイダイビングを題材とした短い物を書いたことあるこど
同題材の作品ってありますか?
123創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 05:57:14 ID:H70QsAcT
たぶんない。というかスカイスポーツ自体ないはず。
124創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 07:36:24 ID:d69rgRQb
やったね
125創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 19:26:52 ID:Va9ZfAHg
>>122
是非とも読んでみたい
昔、似たようなことを考えて挫折した
126創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 20:27:06 ID:+69Mj25S
>>110が新作を考えているみたい
127創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 22:46:15 ID:bquRNrnJ
>>122だけど、ここにあげていいの?
処女作だったから色々恥ずかしい出来だけど
128創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 00:31:34 ID:DY0goNnR
出来とか気にして創作発表ナッシング
晒してから後悔せよ
129創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 06:35:10 ID:oO7BJCWZ
期待しています。
130創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 20:36:17 ID:dLFL1pdw
>>122
ほかのスレッドでも大分前に書いたSSを投下した例もある
またパラシュート降下は最初の一歩が肝心と言う話をどこかで聞いたことがある

131122:2009/07/09(木) 21:36:22 ID:b/2e+Dd2
説明は最後にします。全部で3レスくらいになりそうです。



「空を見上げる君がいるから」(仮)


(落ちるっていうよりも、むしろ浮いているみたいだ――)

 現在の高度は二千メートル、ほとんど自由落下している状態で、速度は時速約二百キロメートルに達していた。ヒロは、それまで持っていたイメージとは違った感覚に驚き、感動していた。
 人生初のスカイダイビング。機内では緊張と、経験豊かな父が側に付くとはいえ、「もしも」の恐怖が強かったのに、いざ空へ飛び出せば素晴らしく気持ちが良い。

 良く晴れた今日の地上の気温は三十度。しかしこちらはそれよりも幾分低く、少し肌寒いほど。
 徐々に緊張も解けて、背後にくっついている父の了解を得て、ゆっくりと手足を動かしてみた。体を少し傾けてみればそちらへ流れ、首を回すとその方向へ旋回する。一緒に飛んだはずのカズを探して左右を見回したが、その姿は見つからない。
 ヒロの顔が一瞬翳った。それに気がついて苦労しながら上を見上げると、ほんの少し上空に、太陽を背に受けて真っ黒い影になっているカズの姿があった。
 上にいるカズが、ヒロの視線に気がついたのか、両手足をバタバタと振ってみせる。そして次の瞬間にはバランスを崩して彼方へと流されていった。
 それを見てヒロは一人大笑いした。そして、姿勢制御がおろそかになり、ヒロもカズのように流されてしまった。

 ――10年前の、遠く懐かしく、でも鮮やかで、決して消えることの無い思い出だった。


 理由なんてなしに始めたスカイダイビングは、いつの間にかヒロの一部となっていた。
 ヒロが住んでいるのは、加賀美ノ市という、それほど大きくもなく、特に目立った産業もない街だ。しかし、たまたまスカイダイビングが盛んな場所で、たまたま親がやっていて、たまたま毎日見上げた空には、降りてくるパラシュートが浮いていた。
 ヒロは、親に誘われるまま親友だったカズと二人でスカイダイビングに挑戦し、たった一度で魅了され、今では競技者として毎日のように空に飛び出している。

 意味の無いことと言われればそれまでだが、あの空を舞う感覚は、味わってしまえば二度と忘れられないだろう。
 何にも縛られず、ただ風を受け、風の音を聞き、風の上を滑る。それは何ものにも変えがたい一時の自由を与えてくれる。ただそれを求めて飛び続けた。

「ヒロ! もう飛行機出るよーーー!!」

 滑走路の脇に座り込んで思い出に浸っていたヒロは、呼ばれた声に振り向き、声の主を確認して立ち上がった。
 今年で二十歳を迎えたその顔はよく日に焼け、まだどこかあどけない少年らしさを残している。呼んだ声の主は、ヒロと同じく二十歳を迎えたノリ。
 ノリは、カズと二人で通い始めたスカイダイビング教室に、同時期に入った女の子だった。人と打ち解けるのが得意なカズのお陰で、同い年の三人はすぐに仲良くなり、それからはいつでも一緒だった。

 ヒロは他のジャンパーと共に飛行機に乗り込む。飛行機は高度を上げ、やがてポイントへ到達する。
 ヒロたちが挑戦している競技はフォーメーションを作る種目で、時間内に幾つの隊形を、いかに早く、いかに精確に作るかを競う。
 ヒロ、カズ、ノリの三人の息はピッタリで、それにベテランのジャンパーが一人と、撮影を担当するジャンパーが加わった「チームカガミノ」は、各大会で好成績を収めていた。
 しかし、今皆が乗り込んだ機内に、カズの姿は無かった。

 カズは二年前に、血液の病で帰らぬ人となっていたのだった――。
132122:2009/07/09(木) 21:37:39 ID:b/2e+Dd2

「なんで僕はこんな所で寝ているんだろう……」

 病室のベッドの上で、窓の向こうに広がる夕空を見つめながら、そう悔しそうに呟いたカズの体は、思わず目を背けたくなるほど弱り、また精神的にも衰弱していた。
 世界規模の大きな大会を前に、見舞いに来たヒロとノリは、以前よりも病状の悪化が明らかなカズの様子を見て、動揺するとともに、残された時間が僅かしかないことを感じとる。

「大丈夫よカズ、すぐにまた飛べるようになるわ」
「そうだよ、弱気になってたら治るのも遅くなるじゃないか」

 二人は努めて明るく振舞い、なんとか元気付けようとした。ぎこちない笑顔なのが自分でもわかる。

「そうだね、ありがと。大会、頑張ってね」

 カズはそんな二人に応えて、弱々しくではあるが笑ってみせる。

「必ずメダルを持ってくるからね、一番良い色のやつ」と、ノリ。
「だからお前も頑張れよ、そして今度は三人で表彰台に上がろう」ヒロはカズの手を取り、力強く握り合った。


 しかしそれから数日後。大会前日でホテルに滞在していたヒロたちのもとへ、カズの訃報が本人の書いた手紙と共に届いた。
 泣き崩れるノリと他のメンバー達。ヒロは手紙を握り締め、ただ震えた。悲しくて、悔しくて、ぶつけようのない憤りが涙になって溢れた。

「もう一度、三人で飛べなかったのは残念だけど
でも、これからは、いつだって空で待ってる」

 手紙にはそれだけが、力無くたどたどしい筆跡で綴られていた。
 大会当日、チームは見るも無残に惨敗し、カズとの約束は果たされなかった。


 繰り返す。何度も、練習を繰り返して、ひたすらチームの完成度を高めてきた。
 あの時果たせなかった約束を今度こそ果たす。その思いが、あの日から二年越しの大会の今日。今から演技に挑むヒロを燃やしていた。同様にノリも、他のメンバーも気合が入っている。

 ヒロは静まっている機内で、押し黙ったまま、飛ぶときには常に持っているカズの手紙を広げる。

「いよいよだね」

 隣にいたノリも、そこに書かれたカズの想いをじっと見つめる。
 ポイント到着の合図があり、チームはジャンプのスタンバイに入った。入念に再点検をして、皆が声を掛け合い、互いを励ましあう。
133122:2009/07/09(木) 21:40:24 ID:b/2e+Dd2

「みんな! 聞いてくれ!」

 今やリーダーを務めているヒロが、メンバー全員を一人づつ見回す。

「あの日の約束を、今日こそ果たす。これ以上待たせちゃったら、カズにどやされそうだからね。
……だから、最高の演技をしよう!」

 全員が力強くうなづいた。

「よし、行こう!」

 一人、また一人と、カズが待つ空へと飛び出していく。全員の気持ちが一つになって、筆で描いたような雲が浮かぶ、どこまでも澄み渡る空に、見事な模様を幾つも描いていった。

 やがて全ての競技が終わり、表彰式が始まる。各種目の上位が名前を呼ばれていき、いよいよヒロたちが参加した種目の表彰が始った。
 それぞれのチームの名前が呼ばれるたびに、巻き起こる歓声と悲鳴。ヒロの腕を掴むノリの手が、かすかに震えていた。ヒロはそっと手を重ねた。

 そしていよいよ最後の名前が呼ばれようとしていた。
 静まり返る会場、息を呑む人々。そして高らかに、スピーカーもひび割れんばかりに、「チームカガミノ」の名前が叫ばれた。
 観客から大きな拍手と歓声が沸きあがり、ヒロたちの前に並んでいた大勢の人が割れて、表彰台までの道が開ける。会場は、ヒロたちを讃えるコールに埋め尽くされた。


 やっと掴んだあの日の約束は、表彰台の一番空に近い場所で、光を受けて誇らしく金に輝いていた。
 喝采の中、ノリは号泣してヒロにすがりつく。ヒロはそんなノリやメンバーを労い、自らの頬を伝うものをぬぐった。

 ヒロは空の向こうを仰ぎ見て、そこにいるはずのカズを想う。

 そして「君によく見えるように」と、小さくつぶやいて、喜びと約束の色にきらめくメダルを、精一杯高く、空に掲げた。



 終了


小説バトンってのに挑戦して書いたものなんで、出だしに縛りがあって変なとこもあるけど投下。
ちなみに内容は↓の感じで、都合の悪かった項目もあったけどそこは省いた。

+ルール+
文に続く言葉を書いてって下さい

・落ちる

・理由なんて

・意味の無い、

・なんで僕は

・繰り返す

・やっと掴んだ

・そして君に


あと改行ってのに全く頓着してなかったから読みづらくてスマソ
134創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 22:27:20 ID:PUYs068k
なかなか臨場感があってGJ!
できればスカイダイビング競技の簡単なルール解説が欲しかったかな?

確か単独競技では地上の円のいちばん近い所に降りたら勝ち、とかいうのがあったとか
世界大会で航空自衛隊の人が優勝したってのを何かで見たような気が…
135創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 07:29:30 ID:YTxexc1h
投下乙、よく書けています。これからも来て下さい。
136創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 09:37:36 ID:Feqv0j2B
投下するのは不安だったけど、無事に着地出来たみたいで安心した…

wikiをざっと見た程度にしかスカイダイビングについて知らないから
競技について詳しく書くのはちょっち難しいですね

「空」は古くから様々な書かれ方をされていると思うのですが
自分の少ない語彙ではとても思い通りには表現しきれませんでした

あとダイバーなのかジャンパーなのかはっきりしないです
137創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 19:48:19 ID:KrbU98w1
>>136
ジャンパーという事が多いみたい
読んでいて涙が出てきました
138創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 22:39:07 ID:Feqv0j2B
>>137
ありがとうございます、その言葉に涙が出ます

やっぱジャンパーなんですね
139創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 16:05:18 ID:D3qaZg32
110だが122氏に先を越されてしまった

>>134
>>122氏の書いているSSに出てくるフォーメーション競技は
カメラマン数人と4・8・16人一組で(通常は4か8)
決められたフォーメーションを制限時間(35秒間)内にいかに正確に
作れるかを競います、カメラマンのカメラの映像で判定
飛び出し高度はだいたい12500フィート
あともう一つは高度3500フィートから飛び出し、パラシュートを開き
地上に置かれた直径3cmの円にいかに正確に着地するかを競う
アキュラシーの二つが有名
そのほかにもパラシュートを開いた後に複数の人間が繋がりフォーメーションを作る
キャノピーフォーメーション
自由降下中に規定演技を行うフリースタイルやサーフィンをつけて演技を行うスカイサーフィン
(いずれも審査はカメラマンの映像で判定)
さらには二人一組で自由な形を演技するフリーフライがある
とはいってもタンデムをオーストラリアでやっただけなのでwikiや
クラブのHPから引用しまくっている文ですみません


140創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 23:33:59 ID:KLeeF8un
122ですが、自分は競技について掘り下げた内容には出来なかったので
競技者視点の内容の作品とか読んでみたいですね^^
141創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 20:04:57 ID:K+F4hz1K
>>140
なかなかそういう視点で書くのは難しい
競技経験者がいれば別だが
142創る名無しに見る名無し:2009/07/24(金) 22:37:53 ID:q9Sfs7OG
サッカー物書いたんだけど、なんだかなぁって出来になっちまった
143創る名無しに見る名無し:2009/07/24(金) 23:23:38 ID:VDBihOxv
期待しています。
投稿するのは初めの一歩が大事です。
144創る名無しに見る名無し:2009/07/30(木) 20:47:32 ID:sSKkkjeG
新作期待上げ
145創る名無しに見る名無し:2009/07/30(木) 21:59:58 ID:+6CYG825
黒人の人逃げてー
146創る名無しに見る名無し:2009/08/16(日) 19:49:05 ID:1EumTMTx
>>131
つい最近知人を癌で亡くしたこともあり
こういう作品を読むと涙が出てきます
またここに投下してください
147創る名無しに見る名無し:2009/09/10(木) 05:44:06 ID:zC0WIDV5
新作期待
148 ◆91wbDksrrE :2009/09/10(木) 18:08:02 ID:t/eLaKeY
 結局のところ、プロレスとは何ぞやという問いに答えられる人は多くない。
いや、正確に言えば、皆を納得させられる答えが出せる人は多くない、と
言うべきか。
 スポーツであると考える人間もいれば、スポーツとは違うエンターテインメント
であると考える人間もいる。演劇の一形態だという人間もいれば、タフマン
コンテストでしかないという人間もいる。シリアスな魂のぶつかり合いだと
言う人間もいれば、茶番劇だと一笑に付す人間もいる。
 要するに、人の数だけプロレスについての見解はわかれる。それに
全て適合する答えを出せる人間など、多くいないどころではなく、存在
しないと言っても差し支えないだろう。
 だが、そんな机上の論理とは別に、今日もプロレスラー達はリングの上で
闘っている。そう、闘っているのだ。プロレスがどのように定義されるもの
であろうと、そのリングの上でレスラー達が闘っているという事、これだけは
変わらぬ事実であった。
 そして、その闘いの相手は、対戦相手とは限らない。
「ぁぁあっ!」
 咆哮と共に、腰の入ったチョップが相手の胸板を襲う。乾いた破裂音に、
客席からはどよめきが起こる。だが、プロレスにおいてチョップは何かの
決め手になる技ではない。痛め技と呼ばれる、序盤において繰り出す、
ヒットしやすいがダメージも少ない技だ。相手は当然態勢をさして崩す
わけでもなく、逆にチョップを繰り出してくる。
 チョップが交錯し、いわゆるラリーと呼ばれる状態になり、乾いた音が
連続して会場に響き渡り、その度に客はどよめく。
 やがて、ラリーは唐突に打ち切られ、最初にチョップを放った方が、相手の
腕をロックし、ロープに振る。ロープの反動を利用して加速するという、
プロレスでなければ見られないムーブは、最初にチョップを放った方が
ショルダータックルを喰らって倒される事で一旦止まる。リングマットに
倒れる音が、チョップの音と同じく会場に響き渡る。
 関節の取り合い、ブレーンバスターのかけあい、そしてバックの取り合い
――お互いに、相手に有利なポジションを意識し、相手に少しでもダメージを
与えられる技を放とうと苦心している。
 やがて、二人の身体に珠のような汗が吹き出し、呼吸も徐々に荒くなって
きはじめた頃、勝負は決した。
「ああぁあぁああっ!!!」
 バックを取ったのは、最初に攻めていた方だったが、それを切り返して
バックを取り返した方が、雄たけびをあげながら相手を持ち上げ、腰を
反らして投げつける。ジャーマンスープレックス。レスリングの反り投げを
より見栄えよく、破壊力が出るように改良した、プロレスにおける代表的
フィニッシュホールド――必殺技。
 1、2、3。レフェリーの腕がマットを三回叩く。3カウントだ。
 客席からは、僅かながらとは言え、どよめきと拍手が沸きあがる。
 勝者の顔に浮かぶのは、喜びだ。対戦相手との闘いに勝利した事、
そして何よりも、観衆との闘いにも大きなものではないにせよ結果を
残せた事が、その喜びをもたらしているのだろう。
 逆に、敗者の顔には悔しさが浮かんでいる。彼ら二人はキャリアも
同じで、互いに若手の中ではライバル視している関係であったのだから、
悔しがるのも当然の話だ。
 その表情に、嘘は無い。その闘いには嘘があると、そういう人間もいるだろう。
実際に、詳しくなればなる程、そういったしがらみは目の前にどんどん
現れてくる。
 だが、彼らの表情には――彼らの喜びと悔いには、何も嘘は無い。
 プロレスとはなんぞや。
 この質問に答えられる人は多くは無い。この質問に、誰もが納得できる
答えを出せる人間は多くはない。
 この答えに、皆が納得してくれるかどうかは私にはわからない。だが――
 プロレスとはなんぞや……そう問われた時、私はこう答える事にしている。
 プロレスとは、嘘の無いフィクションである、と。

                                     終わり
149 ◆91wbDksrrE :2009/09/10(木) 18:08:49 ID:t/eLaKeY
ここまで投下です。

面白いですよ?
150創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 19:40:53 ID:K+BQaVOp
保守
151創る名無しに見る名無し:2009/11/04(水) 06:12:11 ID:8Ug/ppkV
あげ
152創る名無しに見る名無し:2009/11/04(水) 17:03:08 ID:hcSq8Q7c
オートバイのレースを作ってます。
日本ではあまり人気はありませんが、ヨーロッパではサッカー並みに人気があります。
153創る名無しに見る名無し:2009/11/05(木) 22:18:34 ID:a/VapJZ4
創発民でバイク乗りが興味を示したようです
154創る名無しに見る名無し:2009/11/10(火) 19:05:09 ID:FUNHRlDm
小説じゃないけど、ジャンプSQで短期連載された
モトレースを題材にした「ダストトゥダスト」は面白かったな
155創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 22:35:12 ID:XxbnOYIC
アク禁食らってうpができません。舞台は全日本ロードレース選手権からスタートします。後にはロードレース世界選手権や鈴鹿8時間耐久レースも考えてます。
156創る名無しに見る名無し:2009/11/15(日) 22:41:53 ID:pPKpKXS1
SBKか
GP125とかもいいな

8耐は毎回がドラマ
157創る名無しに見る名無し:2009/12/19(土) 16:20:24 ID:hq3hmV/m
AGE
158創る名無しに見る名無し:2009/12/26(土) 15:12:06 ID:bchYUmf8
女子プロ野球で何か書きたいのだが
アイデアが浮かばない
159創る名無しに見る名無し:2009/12/26(土) 16:42:18 ID:Ds0/jJ0p
女子プロ野球・・・

「女に野球なんかできるかと社会からの批難(親・知人・社会)」
「女であるが故の肉体的苦悩(体の限界・野球が好きでも男になれない悔しさ)」
「女であるが故の精神的苦悩(妊娠・愛に揺らぎどうしようもなくなる心)」
「同志に会えない苦悩」
160創る名無しに見る名無し:2009/12/26(土) 22:40:18 ID:43ORgeDS
まずは一昔前にあった女子ソフトのアニメだかゲームを参考にすれば?
161創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:44:09 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
1/9
 慣れないスーツ姿に身を包み、指定された場所に向かう一人の男。
「ここか……」
 ごくり。思わず唾を飲み込む。
「しかしいきなり監督だなんてな」
 それを伝えられたのは3日前だった。
 前の監督が体調不良で辞任することになり、急にこの男に出番が回ってきたのだ。

 男の名は栗田永一。甲子園で優勝し、東京ガイアンツにドラフト1巡目で指名され
入団するも度重なる故障で一軍での登板の無いまま十年が過ぎ昨年の秋に現役を引退。
 小さいころから野球しかしてこなかった栗田に他の仕事をする当てもなく、プロに
入って以来貯めていた貯金を切り崩しながら生活していたところに元所属球団から
連絡が入った。
「監督をしてくれないか」
 一瞬耳を疑ったが、その後の説明でさらに驚いた。
「東京シャイニングヴィーナス……ですか」
 その名前に覚えがあった。10年前に華々しく開幕した女子プロ野球のチーム
だ。ちなみに東京ガイアンツと同じく読読新聞社が親会社である。
 指導者の経験など無かった上に女子プロ野球という未知の世界。
 だが、栗田に迷いは無かった。

 しかし、道に迷ってしまった。
162創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:45:06 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
2/9
「1時間の遅刻か……初日からこれじゃあ先が思いやられるな」
 宮城県えびの市総合運動公園。ここが東京シャイニングヴィーナスのキャンプ地だ。
 もちろん東京ガイアンツのキャンプに比べると寂しい雰囲気は否めないがそれなりに
客も来ているようだった。

「遅くなってすいません。栗田です」
「ああ、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
 栗田は球団スタッフの男に案内され、野球場の中へと向かった。

 掛け声と打球音とグラブの音が入り混じるグラウンドに栗田が足を踏み入れた。
「これが女子プロ野球のキャンプか……」
 すると、ガイアンツ時代の先輩である緒川孝太郎が栗田に近づいてきた。
「よお。栗田」
「お久しぶりです。緒川さん」
「いきなり呼ばれたんだって? 大変だな」
「緒川さんがコーチをしてたんですね」
「ああ。気軽に引き受けたものの、女の子相手は疲れるよ」
 久々に再会した緒川と栗田が談笑していると、一人の少女が寄ってきた。
「何やってるんですか。緒川コーチ」
 その少女はユニフォーム姿だったのでおそらく選手なのだろう。と栗田は察した。
「ああ、悪い悪い。今行くから」
「えと……そちらの方は……」
163創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:45:46 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
3/9
「俺の後輩の栗田だ」
「はじめまして。栗田永一です」
「で、こっちが大木姫子。このチームの選手だ」
「大木です。はじめまして。栗田さんって言うんですか。……取材か何かですか」
 大木姫子はほわんとした雰囲気で、とてもプロ野球選手には見えないがれっきとした
東京シャイニングヴィーナスのレギュラーである。
「いや、取材じゃなくて監督を……」
「はあ、そうなんですか。それじゃあ、がんばってくださいね」
 にこり。と微笑む姫子。いま一つ呑み込めていない様子だ。
「あ、ああ。がんばるよ(……あれ?)」

「まあ選手については改めて紹介するから、今日のところは練習の様子を見ていって
くれよ」と、緒川。
「あ、はい」
 栗田は緒川の後をついて行った。

「それじゃあ、今から打撃練習だな」
 緒川が選手を集めて言った。栗田は少し離れた位置から見ている。
 それから、打撃練習用のバッティングケージなどを選手たちが運ぶ。
 用具を並べ終わると、緒川や打撃コーチの山瀬達朗が打撃投手を務める。
「へえ。コーチ自ら打撃投手をやるんだ」
「もともと専属の打撃投手なんていませんからね」
164創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:46:39 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
4/9
 そう言って近づいてきたのは大咲さくら。東京シャイニングヴィーナスのエースで
ある。
「あ、俺は新監督の……」
「栗田さんですよね」
「あれ、知ってるの?」
「甲子園で優勝した瞬間見てました。それで私、野球始めたんです」
「え、そうなんだ」
 少し興奮気味で話すさくら。その言葉に偽りは無いようだ。
「大咲さくらです。ピッチャーなんで、手取り足取りよろしくお願いします」
 深くお辞儀をするさくら。栗田も悪い気分はしないようだ。
「うん。よろしくね」
 打撃練習を見ながら談笑していた栗田だったが、このまま見てるだけというのも我慢
できなくなってしまった。
「あの、俺も手伝いますよ」
 栗田はジャケットを脱いで、ネクタイを緩め、グラウンドに足を踏み入れた。

「なあー、さくら」
「何? あづさちゃん」
 栗田の姿を見ていたさくらに話しかけたのはシャイニングヴィーナスの4番打者、
御堂あづさ。昨シーズンは31本(全84試合)の女子プロ野球本塁打新記録を打ち
立てたスラッガーだ。さくらとは同い年で特に仲が良い。ちなみに大阪出身である。
「あの人さ、元ガイアンツの栗田投手やろ」
165創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:47:53 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
5/9
「そうよ。監督に就任するんだって」
「あー、そういやおじいちゃんの姿が見えへんなあっておもたら、そういう事か」
「おじいちゃんって……大河原監督は勇退されたのよ。もうご高齢でしたしね」
 なにせ大河原前監督はもう80歳である。昨年優勝の際の胴上げも冷や冷やもの
だった。
「新監督なんかぁ……ちょっとからかったろかな」
「その顔は何か企んでるわね……ほどほどにしときなさいよ」

「おーい。ちょお待ちぃ!」
 打席に入ろうとする小宮奈美をあづさが止める。
「なんなんスか、御堂センパイ。いててっ、髪を引っ張らないでくださいっ」
「ええから代われ」
「それが人に何かを頼む態度っスか……いたいいたいいたいっ、やめてくださいっ」
 結局、強制的にケージから引っ張り出される奈美。
「おいおい、一体なんなんだ」
 その光景を見た栗田が呟いた。だが、あづさはそれをスルーし、栗田に向かって
話しかけた。
「栗田さん。まだウチらはあんさんを監督と認めたワケやないで」
「な、何ぃ……!?」
 そんな話は聞いてない、と栗田は思った。
「ど、どういう事だ」
「(おっ。食いついてきたな)せやから、今からウチと勝負せえ!」
166創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:49:36 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
6/9
「いわゆる一打席勝負。負けたほうが勝ったほうの言う事を聞く条件でどうや!」
 どうや、と言われても困る栗田。あづさは人の話を聞かない。
「どうしたんや。逃げるつもりとちゃうやろな」
「……ったく。まあいいや。勝てば監督と認めてくれるんだな……ちょっと付き合って
やるか」
 栗田は軽く体をほぐし、投球動作に入る。
 全力投球とはいえないが、7〜8割の力をこめたストレートがキャッチャーのミット
にズバッと突き刺さる。打席のあづさは握ったバットをピクリとも動かさず見送る。
「どうした。速すぎて手も出ないかな」
「ふぅん。こんなもんかいな」
「へぇ、言ってくれるじゃん」
「本気で、頼んますわ」
 あづさは無言でバットをスッと持ち上げ、レフトスタンドにその先を向ける。これは
いわゆるひとつのホームラン予告である。
「な……馬鹿にしてんのか。いいだろう。腐っても元プロ野球選手って所を見せて
やろうじゃないか」
 栗田もまた単純な男であった。

 カキーン。
 あづさの放った打球は高く舞い上がり、左中間にポトリと落ちた。
167創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:50:19 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
7/9
 栗田は驚いた。
 一軍では通用しなかったとは言え元プロ野球選手である。
 ど真ん中のストレートでも空振り、万が一バットに当たったとして内野ゴロが関の山
だと思っていた。それを左中間まで飛ばされたのである。
「くそっ」
 そう漏らしたのはマウンドの栗田でなく打席に立つあづさだった。
「あかんわ。完全に打ち損じや。ウチの負け」
 あづさは悔しさを滲ませて言った。
「おい。どーいう意味だ」
 栗田は問い掛けた。
「ヒメ。今の打球はどうや」
「うーん。正直に言うと、あたしの守備範囲ですけど……」
 姫子が答える。
「せやろ。ほなウチの負けちゅう事で」
「ちょ、ちょっと待て。あんなに遠くまで飛ばされて俺の勝ちなんて納得できるかよ」
「いくら飛ばそうが今のはセンターフライ。せやからアンタの勝ち。文句あんの?」
「でも……」
「それでしたら、実際に捕ってみせたら良いんじゃないでしょうか」
 姫子が割ってはいる。
「そうだな。大木、センターの守備位置について」
 緒川がそう言うと、姫子はてとてととグラウンドへと歩いていく。
168創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:51:09 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
8/9
「どう見ても俊敏には見えないのだが」
「ま、見といて下さいよ」
 栗田の呟きにあづさが言い返した。

 緒川はノックバットを握り、外野に向かってボールを打ちあげた。
 その打球はさっきあづさが放ったのとほぼ寸分狂わず左中間に飛んでいった。

 タタタタ……タタッ……パシッ!

「うわっ。捕った」
 姫子は余裕のある足取りで落下点にたどり着き、さらっとキャッチした。
「どうですか。カントクさん」
 軽々とボールを捕った姫子がてとてとと歩いてきた。飛球を追う時の眼が嘘のように
おっとりとした表情に戻っている。
「何て言うか……今まで知らなかったけど、女子でもここまでやれるんだな」
「その発言は失礼だぞ、栗田。ま、俺も最初はそうだったけどな」
 緒川が栗田に注意した。
「この件はこれにて終了という事で」
「ちょお待って下さい。約束は約束です」
 あずさが言い寄る。
「そんなの別に良いよ。俺も大人げなかった」
「良いわけありませんて。女に二言はあり得へんのです」
 まいったな。と栗田は思った。そこであづさが最初に放った言葉を思い出した。
「それじゃあ、俺が監督だって認めてくれるかな」
169創る名無しに見る名無し:2010/01/17(日) 22:52:23 ID:N85MUvlD
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第一話
9/9
「そんなんやったら別にええけど……」
「何言ってるんですかカントクさん。あづささんの言うことを真に受けたらいけません
よぉ」
「こらヒメ。余計なことぬかすな!」
姫子が口を挟み、あづさがそれにツッコミを入れた。
「お、おい……」
「栗田監督! この借りはいつかリベンジさせてもらうで!」

 とにかく、うやむやのままキャンプ終了した……かに見えた。

 つづく。
170創る名無しに見る名無し:2010/01/18(月) 21:36:19 ID:BIy/dwra
おっ、女子野球か。
確か戦後(戦前?)一時期だけやってたんだっけ。
現代だと、それがどうなるか・・・。

どう転がっていくか楽しみにしてるよー。
1/8
 キャンプ初日の夜。シャイニングヴィーナスの選手たちによる歓迎会が行われる。
歓迎会といってもささやかなもので、おそらくお酒や食事を囲みながら新監督である
栗田と選手が自己紹介したり、歓談したりといった程度のものだろうと予想される。
「さてと、もう少し時間があるな……これを見るか」
 栗田はシャイニングヴィーナス球団の全選手、指導者およびスタッフが宿泊している
ホテルの一室でDVDを見ようとする。
 もちろんいかがわしい代物では無く、昨シーズンの女子プロ野球リーグの戦いを収録
したDVDを緒川から貸してもらっていたのだ。
「……あれ? なんじゃこりゃ」
 雲ひとつ無い青空、透き通るような青い海、照りつける太陽、色とりどりの水着を
身にまといはしゃぐ女の子……どうやら緒川さんがアイドルのイメージDVDと間違えて
渡したようだ……と、栗田は思った。
 せっかくなので堪能させてもらおう。と栗田はその映像を観賞することに。

 コンコン。
「おーい、栗田ー。開けるぞー」
 ガチャ。
「お、緒川さん! ノックくらいしてくださいよ」
「ノックならしたぞ。それより、DVDを間違えて渡していたようだ。すまんすまん」
 緒川の手には当初渡すつもりだった昨シーズンの試合映像を収めたDVDがあった。
「……これ、緒川さんの趣味なんですか?」
 しっかり見ておいて言うのもどうかと思うが、独身の栗田と違い、緒川には妻も娘も
いるのだ。とはいえ、もしそういう事に関して寛容な人ならばいらぬ心配ではある。
「お前、何か勘違いをしてないか? それは優勝旅行の映像だぞ」
「えっ?」
 栗田はプレイヤーからDVDを取り出した。
 その面をよく見ると“20XX年リーグ優勝記念ハワイ旅行”との文字があった。
「ああ、優勝旅行の映像ですか。なるほど……ん? ということは、あの海で戯れる
女の子達は……」
「これからお前が指導するシャイニングヴィーナスの選手達だ」

2/8
 と、ここで場面は歓迎会が行われる予定の食堂に切り替わる。
 御堂あづさ、大咲さくら、大木姫子、小宮奈美の4人が何やら相談している。
「あのー……私はコレを着るんですか?」
「ええから、ええから。騙されたと思て♪」
「やけにノリノリねぇ……あづさちゃん」
「てゆーかヒメちゃんセンパイ、完全に騙されてるっス」
「じゃかましわ! ほれ、奈美はこれ着ぃ!」
「これ……パン……中身が見えちゃうっスよ!」
「見せたったらええねん。減るもんやなし」
「あづさちゃん……完全にオヤジ化してるわよ」
「そーいう御堂センパイはどんなの着るんスか?」
「ウチ? 何も着ぃへんよ」
「!? なんという大胆な! そこまでするんスか!」
「大胆って言うか、破廉恥ね」
「ん? ……ちゃうちゃう! そういう意味とちゃうわ!」
「いいじゃないスか。減るものじゃ無いんスから」
「アホか。そんなもんタダで見せたるかい」
「いや、お金の問題じゃ無いでしょ……」
「あのぅ。似合うでしょうか」
「いつの間に着替えてるんスかヒメちゃんセンパイ(……あ、でもかわいい)」
「えっと、なんとなく流れ的に?」
「……って何の流れなのよ」

 結局、奈美も体育会系の掟に従い強制的に着替えさせられるのだった。
「これで2体のメイドが完成やね。元々飲み会の罰ゲーム用に持ってきたんやけど
ちょうど良かったわ」
「全然良くないっス……」
「んー? 何か言うたかな」
 あづさは奈美のほうを笑顔で睨んだ。
「いえ、何でも無いっス」
3/8
「あらあら。どうせならみんなでコスプレしたら良いんじゃないかしら」
 と、メイド姿の大木姫子が提案した。
「そうっスよね。私らだけってのは不公平っスよね」
 姫子よりさらにスカートの短いメイド服を着た奈美が同意する。
「だって、そのほうが楽しいわよ。カントクさんにもきっと喜んでもらえると思うし」
「ヒメちゃんセンパイ……ついていけないっス」
「でも着る衣装なんて無いわよ」
「大咲センパイ。そう言ってこっそり回避しようとしてないスか?」
「いや……そんなワケ、無いでしょ」
 さくらは明らかに嫌がる表情で後ずさる。
 と、その時。
「そんな事もあろうかと、衣装を用意してきた」
「あ、三上センパイ」
 輪の中に入ってきたのは三上英子だった。メガネが特徴の知性派投手だ。
 重度の変化球マニアで、常に新しい球種の開発に余念がない。
「せっかくの歓迎会だ。みんなで盛り上げてやろうとおもってな」
「さっすが三上センパイっス。さあみんなも着るっスよ」
「えー。マジでー。何でやねん」
 露骨に嫌な顔をするあづさ。
「これなんかどうっスか。あ、こっちも似合いそうっスね」
 奈美の反撃が開始された。
4/8
「おいおい。カンベンしてくれや。なぁさくら」
 自分は後輩に強要しておいて、これである。全くもって迷惑な先輩だ。
「あら。これ可愛いじゃない。ねぇ、英子さんは?」
 ウェイトレス風の衣装を手に取るさくら。ピンクを基調とした、フリルがフリフリ
した服だ。
「そうだな。私は久々に学生服を着てみようかと思う。」
 英子は高校生が着るようなブレザーとチェック柄のスカートを手に取る。
「ちょお待ちぃや。ウチだけ仲間ハズレやん……」
 あづさは、そう言いながらしぶしぶと衣装が並んだケースを見やる。
「ナース、スッチー、バニーガール……ってほとんどコスプレパブやないかい!」
 ついつい衣装にツッコむあづさ。これも関西人の性か。
「決められないんなら私が決めてあげるっスよ!」
 さらに反撃を続ける奈美。手に取ったのはチアリーダーの衣装だった。だが、
「あ。これは似合わないっスね」
 奈美はそう言って手にした衣装を戻そうとした。
「ちょお待ちいな。似合わんてどういう意味なん?」
「ふ、深い意味は無いっス」
 つまり、そのままの意味という事か。
「ええから貸してみいや」
5/8
 あづさは奈美の手から衣装を奪い取ると、いきなり着ていたジャージを脱ぎだした。
 その鍛え抜かれた肉体は、同性の奈美が見ても惚れ惚れする。
「なんや、ジロジロ見て」
「み、見てないっスよ」
 あわてて顔を背ける奈美。その間にあづさは着替え終わる。
「ゴー。ゴー。ヴィーナス!」
 東京シャイニングヴィーナス専属のチアリーディングチーム“東京シャイニング
シスターズ”のユニフォームを身にまとい、ポーズを決めるあづさ。やけにノリノリ
である。

 ピロリン♪ 突然、電子音が鳴った。
「おいっ。何すんねんな」
「いい画が撮れたっス。待ち受けにしようっと」
 奈美のケータイだった。
「おいこら待てぇぇぇぇぇ。削除せえ。さもなくばお前を削除したる」
「ひぃぃぃぃっ。やめてくださいっス」
 あづさが奈美に襲いかかる。一気に馬乗りの格好になった。
 周りは「またか」という表情で2人の“じゃれあい”を見ている。
「誰か助けてくださいっス〜」
「ええい。観念せえやー」

 ガチャッ。
「「!?」」
 栗田が食堂のドアを開けると、2人の女が重なり合ってお尻を向けていた。
6/8
 時計は歓迎会の始まる予定の8時をちょうど回ったところだった。

「これはまた随分な歓迎だな……」
 そう言って固まる栗田。
「な〜〜〜〜〜〜〜〜っ。何見てるんスかぁ!」
「オイコラァ、ジタバタすんな!」
 奈美は赤面し、逃げようてとする。が、あづさがガッシリと乗っかかって身動きが
取れない。

「俺は、どうしたらいいんだ」
「あらあら、カントクさん。とりあえずこちらに」
 栗田はメイド(姿の姫子)にエスコートされ、椅子に腰掛けた。
「あ、ありがとう。……大木さん?」
「はい? なんでしょうか」
「えーーっと。……どうしてそんな格好してるんですか」
 栗田は驚いた。そりゃあそうだろう。だってメイド服だもの。
「うふふっ。どうでしょう、似合ってます?」
 姫子はそう言いながらクルリと一回転した。スカートがふわりと舞う。
 話が噛み合っていないのはいつもの事である。気にしたら負けだ。
「うん。似合ってるよ」
「ありがとうございますっ」
 満面の笑みで喜ぶ姫子。これで「ご主人様♪」なんて言われたら、これはもう完全に
メイド喫茶の店員にしか見えない。おそらく、日本で一番メイド服の似合うプロ野球選手
である。……どういう意味だろうか。

7/8
「んもう。しょうがないわね……英子さんはそっちをよろしく」
「うむ。了解した」
 あづさの右腕をさくらが、左腕を英子が掴んで奈美から引き離す事に成功した。

「こほん。というわけで、選手を代表しましてわたくし大咲さくらが乾杯の音頭を……」
「「「かんぱーい」」」
「あ、ちょっとぉ。それ私が……」
 前口上を台無しきにされ、しょんぼりするさくらであった。
 それはともかく、まずは栗田の自己紹介から。
「えー。何の因果かこのチームの監督に就任することになりました栗田永一です。
一から勉強する事になるけど、まあよろしくな」
 ぱちぱちぱち。
 そして各々の選手による自己紹介へと流れていく。
 それにしても……さまざまな可愛い衣装に身を包んだ女の子たちを見ていると先ほど
までグラウンドで練習してたのが嘘のようである。

8/8
 ここからは自己紹介の一部を紹介しよう。
「三上英子、投手です。監督とは変化球について一晩でも語り合いたい」
 どんな自己紹介だ……。栗田は「お前が変化球だよ!」と言いたい衝動に駆られる。
「小宮奈美、ショートストップっス! スピードには自信ありっス!」
「……川原恵美(めぐみ)、二塁手。……チームの勝利の為に尽くします」
 対照的なキーストーンコンビ(=二遊間)。1、2番を任せる事になりそうだ。
 ちなみに川原恵美の衣装はいわゆるゴスロリだったのだが、実は私物らしい。
「キャプテンの小松田沙織です。わからない事があれば何でも聞いて下さいね」
 はい。今、この状況がわからないのですが。……ノリですか、そうですか。
「セッシャ、エイミー=マクスウェルでゴザル。以後、オ見知リオキヲ」
 クリーンナップを打つ助っ人外国人だが、その日本語は何処で覚えたのか。
「ピッチャーの城之内真緒です。ストッパーとして頑張ります」
 かつて東京の某大学の野球部に所属し、神宮球場で投げた事もある左腕投手だ。
「末永陽子、ピッチャーです。手取り足取り御指導願います」
 やはり栗田は投手の女の子が気になるようだ。別にいやらしい意味では無い。
 とりあえず全員の顔と名前は覚えとかないとな……寝る前にまたDVDを見ておくか。
と、栗田は思った。
 もちろん優勝旅行のほうだ。

 つづく。
180創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 02:48:27 ID:Ezn8oQD7
投下終了。

うーむ…いきなり野球と関係無くなってる気が…
何かアドバイスください
181創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 14:53:03 ID:5aWP+wX/
こういうのは嫌いじゃないぞw

ただ、まあ、野球ものだから仕方が無いっちゃ仕方が無いんだろうけど、
一気にキャラが多数出てくるから、把握に時間がかかるよね。
そこら辺意識して、覚えようとしなくても覚えられるような構成を、
今後考えていけば、すんなり読んでもらえるんじゃないかと思う。

投手陣が気になってるなら、まずは投手陣(って言っても二人かな?)を
じっくり書くようにして、話転がすのにそこに1〜2人野手陣から絡ませる、
みたいな感じで、しっかり焦点を絞った方がいいんじゃないかな。

その方が、野球にもしっかり絡めさせられると思うしねw
182書いた人:2010/01/31(日) 23:22:53 ID:Ezn8oQD7
レス感謝です。

確かにキャラクターが多くなるので
どうやって出すかってのは考えないといけないですね
もちろんライバル球団もあるわけで…

あと、こんな選手が欲しいみたいなリクエストも受け付けます
1/9
 栗田が監督としてキャンプインしてから一週間が過ぎた。
当初ピンク色のユニフォームに違和感があった栗田だったが、時間とともに自然と
慣れていった。

「あれ? なんだか今日は取材陣が多いっすね」
 その日グラウンドに出た栗田は、先に出ていたコーチの緒川に話しかけた。
 たしかに栗田の言うとおり、いつもより記者やテレビ局のカメラが多い。
 観客席に目を移すと、これもやっぱりいつもより人が多くて賑わっている。
「ああ。いよいよベールを脱ぐからな」
「何の事ですか?」
「おっと。言ってなかったか。あの三島みらいが今日からキャンプに合流するんだよ」
「三島みらい……って誰です?」
「知らないのか。三島監督の娘だよ。今シーズンからこのチームのユニフォームを着る
事になったんだ」
 三島監督とは東京ガイアンツの監督である三島晴夫の事だ。
 そして三島晴夫と言えば現役時代は東京ガイアンツの四番打者として一時代を築いた
スーパースターで、さらに監督としても日本一に輝いた。栗田がその輪の中に加わること
は結局無かったのだが、ドラフトで指名してくれたのは今でも感謝しているし、キャンプ
で一度だけ「キミが栗山君かい」と声をかけてもらった事は一生の思い出になるだろう。
 結局、その名前を引退までついぞ覚えてくれなかったのが心残りではある。
 それはともかく。三島監督に娘さんがいたのは記憶していたが、まさか父親と同じく
野球をしているとは知らなかった。しかも女子プロ野球選手とは。
2/9
 とはいえ、栗田が知らないだけで女子野球ファンの間ではすでに知られた存在であり、
高校卒業後の進路が注目されていた。
 もちろん人気だけでなく、女子高校野球選手権大会でチームの優勝に貢献した実績も
評価してのドラフト指名である。

 だが、栗田には一つ引っかかった所があった。
「なんでまた今日なんですか」
「大学受験があるから……というのが表向きの理由だ」
 表向きの理由……なるほど。実際は注目度の高い三島晴夫の娘をより注目を集めるため
に時期をこの日にズラしたというわけである。
 まあ、注目される選手がいるのは悪いことでは無いだろう。
「ところで、選手としての実力はどうなんですかね」
「さあ……それは実際に見てみないとわからないな」
 緒川の返答に、ちょっとそんな事で良いのか。と栗田は思った。

 練習の時間が近づき、徐々に選手たちもグラウンドに顔を出す。
「ちーっす。栗田監督、緒川コーチ」
「御堂。監督に向かってちーっすとは何だ」
「まあまあ、良いじゃないですか」
 チームの主砲、御堂あづさが緒川にたしなめられる。
 すっかり見慣れた光景に、栗田は苦笑いする。
3/9
「おっ。選手が出てきたな」
「三島みらいは何処だ」
「いたぞ。カメラを向けろ」
 待ち望んだアイドルの登場に、報道陣やファンの視線が一点に集まる。
 周囲のざわめきにも慣れているのか、三島みらいは平然とした表情だ。
「はじめまして。三島みらいです。よろしくお願いします」
「あ、はじめまして。監督の栗田永一だ」
 その少女は、野球選手というには少し華奢な身体であるが、あの三島監督の娘らしく
明るく元気そうだな。というのが栗田のみらいに対する第一印象だった。

 守備練習。みらいは父・三島晴夫の現役時代と同じ三塁の守備位置につく。
 みらいがノックを受けるたびに、観客席からどよめきが起こる。
「おおーっ。ナイスキャッチ!」
「みらいたーん。がんばれー」
「おぉ……あのやわらかいグラブさばきは、往年の三島晴夫の生き写しじゃあ……」
 中には感涙するオールドファンもいたようだ。

「なんやねん。正面に来たボールを捕ったくらいでギャアギャアと」
 その光景を苦々しく見ているのは御堂あづさだ。不動の四番でありレギュラー三塁手
でもある。
4/9
 守備面でも攻撃面でももちろんプロポーションでも何一つ負けていないはずの自分が
注目度で劣るなど認めたくない。
「せや。次は打撃練習やったな(ニヤリ)」
 あづさは、何かを企むような顔をした。

 そして、打撃練習。あづさはポンポンと打球をスタンドに運ぶ。
 このパワーは男子選手に混じっても遜色ないかもしれない。と栗田はいつも感心する。
 続いてみらいが打席に向かう。果たしてどのようなバッティングを見せるのか。
「あ、栗田監督。ちょっとええですか」
 打撃練習を終えたあづさが、打撃投手を務める栗田に近寄る。
「なんだ? いつぞやの一打席勝負のリベンジか?」
「いや、それはまた今度っちゅうことで……打撃投手をやらせてもらおう思いまして」
「え? まあ、それは別に構わないが」
 打者が打ちやすいようコントロールできるのか。と栗田が一応訊くと、高校時代には
投手も兼任していたとの事。それなら大丈夫か。納得した栗田はグラウンドの外へ。
 だが、その考えはすぐに覆される。
「くらえっ!」
「ひゃあっ」
 打席のみらいは、体に向かってくるボールに仰け反った。
「どないしたんや。腰がひけとるで」
5/9
「こ、こんなの、打てないですっ」
 涙目で訴えるみらいだった。
 と、その時。
「危険球きたー!」
「すないぽktkr」
「僕達のみらいたんに何をするだー!」
「当たったらあぶないじゃないか!」
「あやまれ! みらいたんにあやまれ!」
「ぶつけてリタイアさせようってつもりか!」
「ババアの嫉妬みっともねーぞ!」
 みらいのファンと思われる観客から野次が飛んだ。
 ぷちん。
「じゃかましわーっ! 鼻から指突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたろかっ!」
 あづさがキレた! どうやらババアという言葉に反応したらしい。
「お、おい……御堂」
 一旦グラウンドの外へ出ていた栗田が、あづさを止めにグラウンドに入ろうとした。
 ところが、
「お、おねがいします。御堂先輩っ!」
 バットを強く握り直し、なおも打席に立つみらいの姿があった。
 その真剣な眼差しに、栗田も野次を送っていたファン達も黙ってしまった。
「ええ根性してるやん。ほないくで」
 あづさは大きく振りかぶる。みらいはグッと身構える。
(ギリギリまで見極めて……)
 ボールはまたしてもみらいの体に向かって飛んでくる。
6/9
 あぶない。投げたあづさがそう思った瞬間、みらいはその体を僅かに捻って紙一重で
ボールをかわした。
「はぁ、はぁ……なんとか避けれました」
「へぇ……中々やるやん。もいっちょいくで」
 あづさの声にみらいはもう一度構える。
「くらえっ!」
(またインコース……でも今度はストライクゾーンだ)
 みらいは果敢にバットを振った。
 しかし、その球はバットに当たる寸前で曲がった。
 カーブだった。みらいは空振りした。
「変化球なのに思わず体が仰け反りそうになりました……」
「まあ、そういうこっちゃ」
 高校時代はインコースも難なく打ち返していたみらいだったが、やはりプロではこの
ままでは通用しないだろう、と悟った。
 その後もあづさの熱のこもったピッチングに対し、積極的に挑んでいくみらいの姿が
あった。そして時折、とんでもないインハイの球を大根切り打法で打ち返す。父親譲りの
悪球打ちである。
「なかなかやるやんけ。でもまだまだレギュラーの座は渡さへんよ」
「はいっ。簡単にレギュラーを貰えるならプロに入った意味がありません」
「ほー。言うてくれるやん。ほなビシビシいくで」
 ここに、師弟コンビが誕生した……?
7/9
「さて、どうしたものか」
 栗田は迷っていた。二日後の練習試合のオーダーについてである。
 ちなみに昨年の最終戦の打順は、以下のようであった。
 なお、1〜8番はシーズン通してほぼ不動のオーダーである。
 1番ショート、小宮奈美。
 2番セカンド、川原恵美。
 3番センター、大木姫子。
 4番サード、御堂あづさ。
 5番ライト、マクスウェル。
 6番ファースト、小松田沙織。
 7番レフト、中本寛子。
 8番キャッチャー、丸山みのり。
 9番ピッチャー、大咲さくら。

 このオーダーで日本一になっているのだから、普通に考えれば怪我や余程の不調にでも
ならなければ入れ替えるべきでは無いだろう。
 三島みらいはあくまで内野の控えと栗田は考えた。
 いくらプロ野球が興行とはいえ、そこは実力主義の世界である。
 それに、終盤に代打で登場させたほうが盛り上がるかも知れない。
 ……などと考えていたその時であった。

 コンコン。誰かが部屋をノックした。
「はい……?」
 こんな時間に誰だろう、と栗田は思った。
「おにぃちゃん……みぃ、ねむれないの」
 三島みらいが部屋にやってきた。寝ぼけているようだ。
8/9
「なんだ三島か。自分の部屋に戻るんだ」
「やだ。おにぃちゃんと一緒じゃなきゃねむれない」
 環境の変化と注目度の高さで不眠症になったのかも知れない。
 言うまでも無いが栗田はみらいの兄ではないので、これは寝ぼけているのだ。
 ちなみにみらいにはプロ野球選手の兄と、スポーツキャスターの姉がいる。
「昔みたいに一緒に寝ようよう」
 重ね重ねいうが、みらいは寝ぼけているに過ぎない。
 また、昔というのがいつくらいの昔の話なのかは定かではない。
「おいこら、何してんだ」
「おにぃたん……すぅ」
 みらいは栗田のベッドの上に倒れると、そのまま寝息を立てた。
「ったく。しょうがないな」
 おい。相手は高校を卒業したばかりの……しかもこれから指導する選手だぞ。
 栗田には弟はいるが、男二人の兄弟だったので、妹というものに憧れがあったのだとか
そういう事はここでは関係ない。関係ないはずだ。

 栗田はみらいの幼い体を動かし、布団をかけてやった。
 あくまで布団をかけただけだ。
9/9
 新しい朝が来た。希望の朝だ。
「んん……むにゃむにゃ……もう食べられな……ハッ」
 栗田は目が覚めた。
 その隣には三島みらいが寝ていた。すやすやと、天使のような寝顔で眠っている。
「何もしてない。俺は何もしていないんだ」
 栗田は誰かに言い訳をするように独り言をつぶやいた。
「うーん……」
 みらいが目を覚ました。これはヤバい。
「あれ? なんで監督がとなりに……」
 どうやら昨夜の事は覚えて無いらしい。
「ここは俺の部屋で、寝ぼけた君がおにぃたんねむれないあうあう……」
 弁明モード突入。かなり苦しいが、みらいが寝ぼけて部屋に来たのは事実である。
「な、何を言ってるんですか?」
 みらいは栗田に疑いの眼差しを向けた。
「とととにかく、このことはみんなに内緒で……」
 栗田は何故だか妙に焦っている。
「……は、はい。わ、わかりましたっ」
 みらいは少し考えた後、明るい声で答えた。
 そして、バレない様にそっと自分の部屋へと戻った。

「どうしてこうなった……」
 栗田は頭を抱えた。

 つづく。
192書いた人:2010/02/11(木) 00:15:30 ID:JsQ3VTsM
投下終了。

えーっと……次は練習試合になると思われます。
メインヒロイン候補が早くも空気な件。
どうしよっかなー。
193創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 16:29:26 ID:3dgv4xjD
いいぞー、もっとやれーw

健気な天才肌かつさりげに天然とか、狙いすぎですよw
でももっとやれw

野球的なツッコミは、縛りが増えてやりたい事が
できなくなっちゃうんじゃないか、と思うんで、よほど
でない限りは控えようと思ってるんだけど、いいかな?
それとも、そういう所もガンガンやった方がいい?
194書いた人:2010/02/11(木) 23:10:24 ID:JsQ3VTsM
あ、どんどんツッコミ入れて構わないですよ

まあ基本的には(白いボールの)ファンタジーって事で……
195創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 15:20:12 ID:qGvrvoDF
オリンピック見てて
ウィンタースポーツの話を書きたくなった!





みたいな人はいませんかねぇ…
1/8
「シャイニングヴィーナス、恐れるに足らず。私に先発させてください」
 園原香澄は自信満々に言い放った。
 宮崎県都城市でキャンプ中の女子プロ野球チーム・千葉スティンガーズは、今年初めて
の実戦となる練習試合を翌日に控え、監督以下、選手、コーチを集めてミーティングを
していた。
「相手は日本一の打線だぞ。本当に抑えられるのか?」
 千葉スティンガーズ監督の松芝清志郎は聞き返した。
 園原は昨年までは主に敗戦処理として投げていたサウスポー投手だ。
「大丈夫です。1点も……いや、ヒット1本すら打たせませんよ(キリッ」
 ちいさ……控えめな胸を張り、園原は即答した。
「ピッチャーのみんなはどうだ?」
 松芝監督は投手陣に話を振ってみた。
「私は、かまわんと思います」
 黒河ちひろは落ち着いて言った。マウンドに立てば闘志溢れるピッチングでチームを
牽引する“魂のエース”である。
「カスミならやってくれマスネー。期待シテマース」
 マリア=ドゥリトルは軽やかな調子で言った。球速の女子最高記録を持つリーグきって
の速球派投手だ。
「わたしは調整が遅れてるんで……園原さん、どうぞ」
 倉橋まゆかは控えめに答えた。アンダースローで、そのリリースポイントは地上わずか
数センチであるという。
「別にええけど、尻拭いだけは勘弁な」
 チーム不動のストッパー安本育美がかったるそうに言った。
 20代とは思えぬ貫禄ゆえか投手陣の中でも一目置かれている。
「ははっ。リリーフの皆さんには休養を差し上げますから」
 園原は語気を強めて返した。
 果たしてその自信はどこからやってくるのか。
 松芝監督は、先発オーダー表に名前を書き入れる。
「よし。先発投手は園原……と」
2/8
 そして試合が始まった。
 先攻は東京シャイニングヴィーナス。昨年の不動のオーダーで臨む事となった。
 対する千葉スティンガーズはシャイニングヴィーナスと同じ東地区だが、昨年は3位に
終わった。
 巻き返しを図りたい松芝監督は共に3年目の西浦はづき、早坂絵梨菜の2人を1、2番
に抜擢し、若い力でチーム力の底上げに期待する。

 1回表。マウンドには千葉先発の園原香澄が上がった。
「あっはっは。ギッタギタにしてやんよ」
 マウンド上の園原は威勢よく声をあげ、ちっちゃ……あまり主張しない胸を反らせる。
 シャイニングヴィーナスのトップバッター、小宮奈美が打席に入る。
 スイッチヒッターの奈美は左投手の園原がマウンドに居るので右打席に入った。
「先手必勝っス!」
 初球だった。簡単にストライクを取りにきた直球を躊躇いも無く振りぬく。
 鋭い打球が三遊間を抜けていく。
 サードの森口史恵もショートの西浦はづきも一歩も動けないほどのクリーンヒット
だった。
「あれ……?」
 マウンドの園原は小首をかしげる。
「何やってんだい! 先頭打者に簡単に打たれやがって」
 キャッチャーの河内玲子がホームベース上から園原に向かって怒鳴った。
 この日は正捕手の橋詰祐美ではなく、ベテランの河内が先発マスクを被っていた。
「そんなんだからいつまで経っても敗戦処理なんだよお前は!」
「うう……カワさん、怒らないで下さいよお……」
 園原はその気迫に押されて少しビビっている。
 さっきまでの威勢はどこへやらである。
「ほらっ、シャンとしなっ」
「シャン!」
「口で言うヤツがあるかい、ったく……」
3/8
 呆れた河内が座り、試合再開。
 2番バッターの川原恵美が右打席に入った。
「……ここは確実に送る」
 コツン。恵美は一塁線へバントで転がした。ファーストのモラレスが捕って、一塁の
カバーに入ったセカンドの堀田由紀奈にトスした。
 その間にランナーの奈美は二塁へ。
「……バント成功」
 淡々とベンチに戻る恵美。
「ナイスバントです〜(ぱちぱち」
 次打者の大木姫子が手を叩きながら恵美に声をかける。
「……これが私の仕事、だから」
「相変わらずクールですねぇ、川原さんは」
「くーるー。きっとくるー」
「え? なんですか?」
「……なんでもない、ベンチに帰る」
 頭の上に?マークを乗せながら、3番の姫子が左打席へ。
 だが、打席に立つと集中し、雰囲気まで変わるのが姫子の姫子たる所以である。
「ヒメー。ランナーはウチが返すさかい、残しときやー」
 ネクストバッターズサークルには4番の御堂あづさが入っている。
 姫子はあづさの言いつけを守ったのか、園原の球を流し打ちし、レフト前に運ぶ。
 これで1アウト1、3塁となった。
「どうぞー、あづささん。決めて下さいねー」
「っしゃーっ。任せたらんかい」
 気合いを入れ、右打席に入るあづさ。
 マウンドの園原は息を整える。
「ひさしぶりやね、園原。今年も打たれてもらうで」
「うう……、思い出させないで……」
4/8
 それは昨年のレギュラーシーズン最終戦だった。
 場所は千葉スティンガーズのホーム球場である千葉県千葉市、天台球場。
 すでに順位が確定し、後は御堂あづさのシーズン本塁打新記録なるかという所に注目が
集まっていた東京シャイニングヴィーナス対千葉スティンガーズの試合での事だ。
 試合は序盤から東京の打線がつながり大量リードを奪う。そして、7回(最終回)表の
マウンドには園原香澄が立っていた。だって敗戦処理だから。
 2アウトになって打席には4番の御堂あづさ。
 訓練された千葉ファンはこの時すでにホームランを覚悟していたという。
 しかし園原は無謀にも勝負を選択した。だって園原だから。
 迷い無く振り抜いたあづさの打球は美しい放物線を描いてバックスクリーンに飛び込む。
 あづさはシーズン31本の女子プロ野球本塁打新記録を達成し、一方の園原は新記録を
献上した投手としてファンの脳裏に刻まれた。

「新記録、ありがとさん」
「べ、別に私一人で31本打たれたわけじゃないんだからっ」
 回想が終わり、試合再開。
 園原は気を取り直して投球を続ける。慎重になっているのか、ストライクが入らない。
5/8
「へいへ〜い、ピッチャービビっとる〜♪」
 あづさは打席から園原を野次る。園原は少しムッとしている。
 だが、3球続けてボールになり、ストライクゾーンで勝負せざるを得なくなった。
 園原、万事休すである。
 でも投げるしか無い。園原は腹をくくった。
 4球目は直球が低めに決まり、なんとかストライクを一つ取った。
 ここを抑えて、開幕投手……は無理でもローテーション入りに一歩でも近づきたい。
 故郷でお腹を空かせて待つ家族の為にも、女子プロ野球の世界で活躍せねば……。
 いや、そんなお涙頂戴な展開になってもらっても困るのだが。
 カッキーン。
 野球場に快音が響き渡る。先制のスリーランホームランである。
「やっぱりホームランは気持ちええね。金にはならんけど」
 ダイヤモンドをゆっくりと回るあづさ。園原はそれを恨めしそうに睨む。
「ど、どうして私ばかりこんな目に遭わなくちゃいけないのよ……」
 当然である。格が違うのだ。

「長くなりそうやな。アタリメ買ってくるわ」
 千葉スティンガーズの安本は、そう言ってベンチから球場の奥へと消えていった。
 なんというフリーダム。
「や、安本。ちょっと待て」
 スティンガーズ投手コーチの小野山悟史が、呼び戻しに行こうと試みる。
「まあまあ小野山さん、やっさんのこつじゃひから、あげん言いながらも……」
 右腕で投げる仕草をしながら黒河が小野山を呼び止めた。
 時々生まれ故郷である宮崎の方言が混じってしまうので聞きづらい。
 あと、安本はやっさんと呼ばれているらしい。
「なるほど。ブルペンか」
 小野山はそう言って納得したが、安本は本当に売店でアタリメを買っている。
 ちなみに、アタリメというのはいわゆるスルメの事だが、「する」では縁起が悪いので
「あたり」と言い換えたのが語源だ。へぇー。
6/8
 さて、試合のほうはどうなったであろうか。
「いやぁぁっ。うっちゃらめぇぇぇっ」
 園原はその後も滅多打ちにされていた。
「もう限界ちゃうんか? 楽にしたるわ」
 打席にはふたたび御堂あづさが立っている。
 つまり、打順が一巡していたのだ。
 尚、園原がここまで取ったアウトは送りバントの二つだけだ。
「これじゃあ、どうしようも無いな……」
 千葉ベンチから松芝監督が出てきた。
 練習試合だし1イニングは任せようと思っていた松芝監督も、さすがにこれでは我慢の
限界のようだ。
「か、監督。私の実力はこんなものではありません! 全力でやれば必ずや……」
 だったら何故最初から全力を出さないのか。
「さあ、行こうか。園原」
 にこやかな表情でやさしく語りかける松芝監督。あたかも駄々をこねる子供を諭す親の
ようである。
「もう一度チャンスをくださいっ! あの打者だけは抑えないと気が済みませんっ!」
「はっきりと言う。お前には先発投手としての格が無い」
「そ、そんな……」
 がっくりと肩を落とす園原。
「河内、お前は教育係としてコイツをみっちり鍛えるんだ」
「はい。わかりました」
 河内は頷いた。
「それじゃあ園原、今から戻って練習だよっ。ビシバシいくから覚悟しなっ」
「いやあああああああっ。敗戦処理はいやあああああああっ。先発がいいのっ。マウンド
降ろさないでっ。やめてえええええええっ」
 園原は、文字通りマウンドから引きずり下ろされた。
7/8
「それでは参りましょうか、マリア」
「ソウですネ、ユミ」
 千葉のバッテリーはマリア=ドゥリトルと橋詰祐美に交代した。
 マリア=ドゥリトル――3年前、時速151km/hの女子野球史上最速記録をマーク
した(スピードガンの故障でなければ)右腕投手だ。その投球の90%がストレートと
いう真の速球派投手である。
 余談だが、千葉ファンからは親しみと尊敬を込めて“マリア様”と呼ばれている。
「マリア様が投げてる……ナンチテ」
 ……三塁ランナーの恵美がつぶやいた。
 結局、ドゥリトルが四番のあづさを速球で詰まらせてファーストへのファールフライに
打ち取り、長い長い1回表は終了した。
 東京シャイニングヴィーナスは初回に打者一巡の猛攻で7点を先制した。

「よーし。気合い入れていくかー」
 東京先発の末永陽子がマウンドに上がる。去年は大咲、三上に次ぐ先発3番手で起用
された、直球を主体に時折カーブを混ぜた小気味良いピッチングが持ち味の右投手だ。
 千葉の1番は西浦はづき。2番の早坂絵梨菜と共に俊足のスイッチヒッターを上位に
並べている。
「あの二人は去年までは代走や守備固めが主だったな」
 東京ベンチの緒川コーチが昨年の千葉スティンガーズとの対戦を思い出して言った。
「なるほど。俊足の選手で塁をかき回そうってつもりか」
 シャイニングヴィーナス監督の栗田は内野安打を警戒し、内野手に前進守備を指示。
 1番の西浦は速球に押されてサードゴロ。続く2番の早坂はセーフティバントを試みた
ものの、ピッチャー末永が素早く反応し処理してアウトにした。
8/8
「ツーアウト! 気を抜かないでいきましょうです!」
 キャッチャーの丸山みのりがナインに檄を飛ばす。

 千葉の3番はシュワルツ。ドイツ出身で、愛称はファーストネームのシャルロッテを
縮めて“ロッテ”と呼ばれている。たまに“ロッチ”と呼ぶ人もいるが、それは偽物なの
で注意されたし。
 大好物はビールとソーセージという余りにも典型的なドイツ人像を醸し出しているので
国籍詐称疑惑が持ち上がっているとかいないとか。
 ちなみに本名はシャルロッテ=ヴォルフガング=フリードリヒ=フォン=シュワルツと
いう長ったらしい名前なのだが、できれば忘れていただきたい。
 末永と丸山のバッテリーは左打席のシュワルツに対してインハイへの直球で押した。
 シュワルツの打球は高く上がったもののセンター大木姫子の守備範囲だった。
「いい感じじゃないですかね」
 栗田は末永のピッチングについてまずまずという評価を下した。
「初回はこんなもんだな。課題は中盤以降だ」
 シャイニングヴィーナス投手コーチの久山博が栗田に話しかける。

 2回裏。ドゥリトルはシーズン前とはいえ女子野球界では類まれなる剛速球で並み居る
打者を次々と打ち取っていく。
 一方の末永もそれに触発されたのか、ひたすらストレートを投げ込む。

 1回表の7点をノイズとして取り除くと、試合は投手戦の様相を呈してきた……いや、
無理があるな……。

 つづく。
204書いた人:2010/02/20(土) 19:53:07 ID:yc1yTmHQ
投下終了です。

園原投手の次回登板にご期待下さい!
205One Shot at glory:2010/02/21(日) 09:48:56 ID:xMwdyUc+
じゃあ俺も野球書く!


「矢田さん‥‥‥大丈夫なんですか?」
「当然だ。お前は安心して座ってな。リードは任せる。嫌なら首振る」

 矢田弘明はキャッチャーの宗田にそういって、マウンドから野手を追っ払う仕草を見せた。
 シーズン後半。しかも優勝がかかった試合にリリーフで登板した彼。これが約一年ぶりの実戦マウンドだった。
 去年メスを入れた肘は大分良くはなっていたが、彼の投球フォームに与えた影響は大きかった。結果として、ここへ戻るまでの調整に一年もかかる事になったのだ。

「解りました‥‥矢田さんの技術と経験信じますよ。でも‥‥フォークのサインは出しませんよ?」
「ああ。そのほうが肘に優しいな」

 本来の矢田の投球は、150km/hに迫る速球とフォークを武器に三振の山を築くタイプの投手だ。その代償として、肘にメスを入れる事になった。
 今の矢田にフォークは無理だ。もしまた肘に何かあったら、34歳になる矢田にとってはプロとしての終わりを告げるサインになるかもしれないのだ。
 今は真っすぐとスライダー、フォークの代用として練習した子供だましのチェンジアップしかない。
 しかし、現在のプロのレベルではたとえ150km/hであろうと飛び抜けて速い訳ではない。スライダー全盛の現在では矢田のスライダーも並のレベルだ。
 あくまで矢田は、真っすぐとフォークのコンビネーションで勝ち上がって来た。その重要な武器の一つが無い今、矢田は「並の投手」に過ぎない。

「とりあえず九番と1番はなんとかなりそうですけど、二番が面倒ですよね‥‥」
「そーだな‥‥」
「そこを抑えればあとは本職のリリーフ連中の仕事です。なんとか切り抜けましょう」
「そうしよう」

 相手打線の二番、堀田茂人。決して目立つ選手ではない。長打もないし、どんな球もヒットにする訳でもない。得意のバントもランナーの居ないこの場面では脅威とならない。
 しかし今の矢田にとっては最悪の相手だった。
206One Shot at glory:2010/02/21(日) 09:50:31 ID:xMwdyUc+
 堀田の最大の武器は、そのカット能力。
 ひたすらカットをして、相手投手の消耗を待つ。長く投げさせる事で、チームメイトに少しでも相手投手の情報を流す。
 それは堀田がプロの世界で生き抜くために培った武器だった。もちろん、甘い球を痛打する打撃力も備えている。
 彼もまた、このプロという世界で必死にもがいているのだ。

「さて、仕事だ。ホラ、行った行った!」

 矢田は宗田を座らせた。そして、一年ぶりの戦闘を開始する。
 最初の相手は九番に入った代打の新人。矢田はいつものように振りかぶり、復活の一球を投げた。ボールはブーンと音を立てミットに収まり、同時に爆音と共にバットが空を切る音がする。
 そして審判のストライクコールと共に歓声とどよめきが沸き起こった。

 その球速はーー153km/h。

 見ていたファンも、チームメイトも、そしてボールを受けた宗田でさえ驚いた。
「矢田はまだ、これほどの球を投げられるのか」とーーーー

 代打に送られたルーキーはあえなく三振する。変化球は必要無かった。ただ、その速球を見せ付ければよかったのだ。

「凄い‥‥!やっぱり矢田さんは凄い!」
 宗田はそう思わずにはいられなかった。続く1番打者は、速球とチェンジアップで簡単に打ち取れた。矢田の速球に恐れをなし、子供だましのチェンジアップに対応出来なかったのだ。
 そしてついに、堀田がバッターボックスへ立つ。その目は既に何かを確信しているようだった。

「矢田さん‥‥‥球速くなってるね。リリーフだから力加減考えなくていいもんね」
「ええ。でももともとこんなモンですよ」
「そうだっけかぁ?ははは」

 堀田は不敵な笑みを浮かべる。宗田は察知した。矢田にフォークが無い事がバレていると。 フォークが無いからこそ、力で捩伏せるべく矢田は速球に力を込めていた。
 堀田の能力であれば、たとえ150km/hを超える真っすぐでも、それだけでは簡単には打ち取れない。
207One Shot at glory:2010/02/21(日) 09:51:38 ID:xMwdyUc+
 堀田はバッターボックスの後ろに立つ。そしてバットを長く持った。
ーーー打つ気だ。

 宗田は高めの釣り球を要求する。唸る剛速球は真ん中高めへ飛び込み、ストライクを取る。
 歓声が沸く。しかし宗田の心境はその歓声とは逆だった。
 堀田は踏み込んで来ない。初球を見送る事は解っていたが、その脚の運びはフォークを意識していない。やはり、堀田はフォークが来ない事を確信している。
 スライダーやチェンジアップならば簡単にカットされるだろう。何より、バッターボックスの後ろに立ちグリップエンドまで指をかけた堀田の姿勢から感じられるのは、ストレート一本に狙いを絞っているという事だ。

(まずいなぁ宗田‥‥さて、どうするよ?)
(じゃあ、スライダーを外のボールで)
(はいよ‥‥っと!!)

 スライダーは外へ外れる。それでも堀田は微動だにしない。
 狙いはハッキリした。堀田はただ塁に出る事など考えていない。
 かつてのエースである矢田を、そして復活したその剛速球を打ち砕く事を望んでいるのだ。 それはチームの士気に多大な影響を与えるかも知れない。もしかすると、ペナントの順位を入れ換えるほどに。
 これがプロの世界だった。生き馬の目を抜く、厳然たる結果の世界。そこで生き抜くために、男達は凌ぎを削りあう。

 宗田はストレートのサインを出す。それしかないのだ。四球でもいい。今はまだ堀田とぶつかるべきでは無い。そう考えていた。
 しかし、矢田は首を振る。スライダーにもだ。

(まさか‥‥矢田さん!)
(奴さん、ガラにもなく打つ気マンマンじゃねぇか。全力でな。ならそれに応えるのもプロだ)
(でも‥‥)
(心配すんな。一球くらい平気さ。もしダメでもそれは俺がその程度だったって事さ)

 矢田の覚悟はすぐに堀田にも伝わる。すぐにバットを短く持ち、スタンスを狭めた。あらゆるボールに対応すべく。
 矢田はボールを指で挟み、大きく振りかぶる。

「行くぜ堀田。これが俺の‥‥栄光への一撃だ」

208創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 09:54:43 ID:xMwdyUc+
投下終了
209創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 21:46:22 ID:oQND8cxd
>>204
いや、期待するよw
何この面白い子w

>>208
カッコいいな。
投げられないはずの一球を投げるって所が渋カッコよすぎるw
210創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 23:02:26 ID:PSybNown
あげとくか
211創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:25:27 ID:4Un9Oq09
ついでに落書きを一枚
http://imepita.jp/20100226/795710
東京シャイニングヴィーナスの大木姫子です
212創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 23:34:46 ID:4Un9Oq09
http://imepita.jp/20100303/841280
大咲さくら

一応女子野球界のエースという設定なんですが、
どういうタイプのピッチャーなんでしょうね
213創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:49:44 ID:7IjAXApI
>>204
次回登板をお待ちしています。
>>212
速球を投げる本格派で良いと思う。
214創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 02:41:37 ID:zNBJ9y9K
http://imepita.jp/20100307/091190
不動の四番・御堂あづさ

末永が速球派、三上や城之内が技巧派で
大咲は速球と変化球のバランスがとれた感じになりそうですね
215What's New? ◆wHsYL8cZCc :2010/03/10(水) 20:33:24 ID:STceQh7m
投下


「矢田さ〜ん。まだやるんすかぁ〜」
「やりたくないさ。でも止まんない。」
「あ〜もう。コーチに叱られても知りませんよ〜」

 矢田はブルペンに居た。
 宗田相手に、フォークに変わる武器の開発に精力を注いでいたのだ。

「‥‥なぁ。俺のカーブってどう?」
「カーブぅ?あんなのションベン臭くて捕る気もしないっす」
「ひでぇ」
「自分でも解ってたから投げてなかったんでしょ。チェンジアップ磨いたらどうです?」
「あーダメダメ。性に合わないアレ。スライダーでいいや」
「全然球質違うじゃないですか‥‥‥。じゃあどうするんです?」
「うーん‥‥。アレ‥‥‥試してみようかな?」
「アレ?」
「まぁいいから座ってな」

 宗田はそう言われ渋々座り、ミットを構えた。矢田は不器用な男だ。持ち球は多くない。思いつきで投げられる投手では無いのだ。

「何投げるんですか?」
「大昔に流行った球さ」

 矢田は振りかぶり、ゆっくりと重心をホームベースへ移動させる。
 足が地面へ付き、腰が、胸が投球方向へと斬り返す。
 その胸の張りや腕の振りは、宗田にはストレートと同じに見えた。
 実際に投じられたボールもストレートとほぼ同じ起動だ。だが‥‥

「うわっと!」
「お?うまく行ったか?」

 矢田が投じたストレートのはずのボールは、ミット手前で鋭く下へ変化した。
 フォークのようなキレと変化量こそないが、真っ直ぐの球速で変化するボールに宗田は対応しそこねた。

「矢田さん!今のは!?」
「ああ、スピットボール」
「はぁあ!!?違反投球じゃないですか!!」
「ワセリン使えばな」
「!!?」
「なんだその顔?いいか要するにだ。もしストレートと全く同じ投球で、意図的に回転を殺せたら?もちろん指にゃ何も付けない。チェンジアップみたいに球速まで殺さずに、回転だけころすんだ」
216What's New? ◆wHsYL8cZCc :2010/03/10(水) 20:35:00 ID:STceQh7m
「出来るんですか。そんな真似?」
「今やったろ。二軍でチェンジアップ練習してる時閃いたんだよ。使えるかどうかわかんねぇから黙ってたけど」
「‥‥もし自在に操れるんならとんでもないボールですよ。メジャーじゃツーシームだけで打ち取る投手もいますが、これならツーシームも含め色んな変化が起こせる。それも意図的に」
「やっぱ使えそうか」
「操れるなら」
「そうか。じゃあ練習しようか。まだ完全には思い通りにゃならねぇからな」
「‥‥大丈夫なんですか?」
「何がだ?」
「ヒジですよ。投げすぎじゃないんですか?」
「ああ‥‥。まぁ大丈夫だろ。ダメならやめりゃいい」
「そんな‥‥」
「いいかぁ宗田。俺らはプロだぜ。泣き言言ってらんねぇのよ。ましてや俺はもう34だ。故障もそうだが、それ以上に結果を残さにゃ後が無いのさ」
「矢田さん‥‥」
「ホラ、さっさと座れ。もう少しヤダボールの練習したいんだよ」
「ダッセェ名前」
「やっぱお前酷いわ」
217What's New? ◆wHsYL8cZCc :2010/03/10(水) 20:36:21 ID:STceQh7m
終了。
218創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 12:33:50 ID:yavqBkav
秘密兵器キタコレw
やっぱいいよな、こういうの。
219創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:53:15 ID:TmvKhM/k
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第五話
1/9
 東京シャイニングヴィーナス対千葉スティンガーズの練習試合は序盤3回まで終わって
7―0とシャイニングヴィーナスが大量リードしていた。

 千葉スティンガーズは4回から竹本真美子、野々宮美優、戸田理利子のセットアッパー
三人組、通称“TNTトリオ”を順番に繰り出す予定だ。
 まずは4回表、竹本真美子がマウンドへ。マリア=ドゥリトルに続いてこれまた速球派
の右腕だ。球速こそドゥリトルには劣るものの、豪快なフォームから腕が千切れんばかり
に強引に投げ込む姿が印象的である。
 なお、千葉ファンの間では「もげるほど腕を振る」→「もげたん」と呼ばれている。
「……速い、無理」
 4回表、東京シャイニングヴィーナスの先頭打者、2番の川原恵美はかすりもせず三振
に倒れた。
「う〜ん。詰まらされてしまいました〜」
 続く3番の大木姫子はレフトフライに倒れた。
「何やってんねん。まかせんかい」
 ツーアウトから4番の御堂あづさがセンター前ヒットで出塁し、三者凡退は免れた。
「セッシャもスケダチいたしたくソウロウ」
 気合いを入れ初球を打った5番のエイミー=マクスウェルだが、速球に押されてショート
へ小フライを打ち上げてスリーアウト、チェンジとなった。
 竹本の好リリーフで初回の大量失点がもったいない展開に……えと、先発した投手は
誰だったか忘れてしまったが、まあいいか。
220創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:54:02 ID:TmvKhM/k
2/9
 そして5回裏、シャイニングヴィーナスのマウンドには依然として先発の末永陽子が
上がる。末永はここまで4イニングスでスティンガーズの打線をヒット2本、四球1コに
抑えている。
 スティンガーズの攻撃は、7番の大内澄子から始まった。
 かつては首位打者にもなった巧打者だが、近年は衰えを隠せずスタメンを外れることも
しばしばである。だが、「まだまだ若いモンには負けへんで」と気を吐く場面も。
 大内が末永の速球を打ち返し、センターの前に運んだ。ノーアウトの走者が出る。
 さらに8番の橋詰が送りバントを決め、ワンナウト二塁に。
「おハナ! 代打いくぞ、準備だっ」
「あ、はーい」
 千葉の松芝監督が、ベンチに座る新人選手に声をかける。
 おハナと呼ばれたその選手の名前は高島はな。
 弱冠15歳でプロ入りした“天才少女”だ。
「じゃあ、行ってきまーす」
 元気良くベンチを飛び出す高島。ヘルメットを被り、バットを持ち、左打席に立った。
 シャイニングヴィーナスのキャッチャー丸山みのりがマウンドに向かった。
「末永さん、警戒するです。この回から球のキレが悪くなってるです」
「あんな毛も生えてないようなガキには負けねーよ」
「生えてないかどうかは野球とは関係ありませんです」
「んな事はわかってるって」
 ぺちっ。末永は丸山の頭を軽く撫でる様に叩いた。
「アピールの為にもここは無失点で乗り切りましょうです」
「当然だろ。しっかり捕れよ」
「はいです」

 丸山は元気良く返事をし、ホームベースに戻った。そして、左打席に立つ高島に声を
かける。
221創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:55:23 ID:TmvKhM/k
3/9
「あの、毛は生えてるですか?」
「はい?」
「いえ、なんでも無いです」
「え?」
 いったい何のことだろうと思った高島だったがすぐに気持ちを切り替えて、ピッチャー
の投球に集中した。
 丸山は低めにミットを構えた。カーブのサインを送ると、末永はこくりと頷いた。
 末永の投じた球は、空中に弧をえがいてキャッチャー丸山のミットに吸い込まれた。
 高島はそのカーブを微動だにせず見送った。審判の右手が上がる。まずはストライク。
(見極めたですか。それならば……)

 末永さんの球種は基本的にストレートとカーブだけです。この二つを高低、内外と投げ
分けさせないといけないです。とは言え、投げたら後はボールに聞いてくれという大雑把
なコントロールですので、これは結構キャッチャー泣かせです。
 さくらさんや英子さんはその点、投球術に幅がありますからリードしがいのある投手
なのですけどね。
 ですが、末永さんはストレートに力のある投手ですのでそれを軸に組み立てることが
できるのは強みです。ま、たまに棒球(ぼうだま)になることがあるのですけど……。

(……つぎ、高めのボールになるストレートです)
(オッケー。揺さぶろうってことか……慎重すぎる気もするけど)
 末永は、2球目を投じた。高めに外れる威力のあるストレートだ。
 打席の高島は、思わずバットを出したが、あわてて止めた。
「おっと」
「スイングです!」
 丸山は三塁塁審にアピールした。三塁塁審の右手が上がる。カウントはツーストライク
になった。

「うーん、まいったなぁ〜」
 一旦打席を外し、軽く素振りをする高島はな。言葉ほど追い込まれてる様子は無い。
 そして高島は再び打席に戻った。
(ツーナッシングですから、ボール球で様子見です)
 末永はストレートをアウトローに外した。高島が見送って2ストライク1ボール。
(よしっ、勝負だ)
(はいです!)
 勝負球は高めのストレートを選択した。末永にとって最も威力のあるコースである。
 末永が4球目を投じ、高島も負けずにフルスイングで迎え撃つ。
 キーン。鋭いスイングで何とかバットに当てるもののボールは打者の後ろに飛んだ。
222創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:56:27 ID:TmvKhM/k
4/9
「うわっ、チョー速いね」
 驚いた表情で打球の行方を追う高島はな15歳。
「よく当てたです、高島さん」
 割と本気で関心するキャッチャーの丸山みのりだった。
「おハナでいいよ。なんかみんなそう呼んでるし」

 5球目、丸山は今度は低めのストレートを要求。
 追い込まれている高島はバットを合わせた。またもやファール。今度は三塁側にボール
が転がっていく。
「なんか疲れてきたんだけど」
「じゃあ三振して下さいです、おハナさん」
「えー、そんなのイヤに決まってんじゃん」
 だったら、これです。丸山は今度はカーブを要求した。
 末永は、要求通りに高めから低めに落ちるカーブを投じる。
「いただきっ☆」
 待ってましたとばかりに、高島がカーブを狙い打った。
 打球は三塁線へと飛ぶ。そして、フェアグラウンドに落ちた。
 レフトの中本が打球を追う。その間に二塁ランナーの大内が三塁を回って一気にホーム
へと還って来る。ようやくスティンガーズに1点が入った。
「いぇーい♪」
 二塁に達した高島は高々とピースサインを掲げた。
「さあ、おハナに続けよ!」
 千葉のベンチから松芝監督の声がグラウンドに響く。よく通る声だ。
 そして打順は1番に戻って西浦はづき。
 西浦は初球をセーフティバント。
 ボールは三塁線に転がった。サードの御堂あづさが右手で掴んでファーストへ。
 だが間に合わず、セーフ。これで一、三塁にチャンスが広がった。

 打席には2番の早坂絵梨菜。
 強く地面に叩き付けた打球はワンバウンドで前進守備をしていたショート小宮の頭の上
を越えた。高島が生還して2点目が入る。
「大丈夫です。まだ2点です」
223創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:57:31 ID:TmvKhM/k
5/9
 3番のシュワルツが左打席へ。
「ここでホームランが出たら3点ですの、そしたら2点差ですのっ」
 気合いが入るシュワルツ。本名はシャルロッテ=ヴォルフガング=フリー(以下略)。
「打たせるかよっ」マウンド上の末永が意気込む。
 だがしかし、ここで末永のコントロールが乱れる。
 シュワルツにフォアボールを与えてしまう。
「や〜の〜。打たせてくれませんの〜」
 バットを置いて一塁へ歩くシュワルツ。本名はシャルロッテ=ヴォルフガ(以下略)。
「というわけでモラちゃん、後はよろしくですの!(ビシッ」
 シュワルツはこれから打席に向かうモラレスに敬礼のポーズを見せた。

「ハイ。モラちゃんデス」
 一死満塁となって千葉の4番、ジュリア=モラレスが右打席へ。
 千葉スティンガーズの誇る強打者であり、ホームランを打った時のパフォーマンスでも
子供からお年寄りにまで人気のベネズエラ出身選手だ。
(うーん……ホームランだけは、避けるです)
 キャッチャーの丸山は低めにミットを構えた。
 モラレスにとって低めは得意なコースだが、それ故に空振りを取れるコースでもある。
 丸山はストライクゾーンから外れる、バットが届かない所へのカーブを要求した。
 マウンドの末永は頷き、セットポジションから投球を開始する。
 だが、その一球は少し高めに浮いてしまった。
「イタダキマース」
「だめです〜〜」
 丸山みのりの叫びもむなしく、モラレスのバットが振り抜かれる。
224創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:58:32 ID:TmvKhM/k
6/9
 鋭い打球がレフトスタンドに突き刺さった。満塁ホームランだ。
 主砲の一撃に、よっしゃー。一気に逆転するぞと盛り上がる千葉ファン。
 対する東京ファンは、まだ一点リードだ。慌てる事は無いと静観している。
「コントロールミスですか」
「だな。この回から明らかに乱れている」
 東京ベンチの栗田監督と久山コーチが相談している。

 対する千葉ベンチでは、打撃コーチの松塚勇造が声を荒げた。
「いけるいける、絶対いける。ガンガンいこうぜ!」
 その声に乗せられた5番の森口、6番の堀田が続けてヒットを打つ。
 追い詰められたマウンド上の末永、その額からは汗が零れ落ちていた。
 “5回の壁”。末永の頭にふとそんな言葉が浮かんだ。
 昨シーズンも5回付近で連打を浴び、結局最後まで投げきれずリリーフ陣に後を任せて
ばかりだった。
 かと言ってエースの大咲さくらのように序盤は力をセーブしたり、球数を計算した投球
は技術的にも性格的にもできないのだが……。
 東京のベンチは動かない。シーズン中ならば交代でもいいが、練習試合という事もある
のか、栗田監督は腕を組んで試合を見つめるだけだ。
 ボール。ボール。ボール。ボール。ボールが4つでフォアボールだ。
 これで再び満塁になり、打席には8番の橋詰祐美。
「末永さん……」
「だ、大丈夫……ふぅ」
 その時だった。今まで腕を組んで戦況を見守っていた栗田がベンチを出てグラウンドに
登場した。そして、主審に向かって歩いていく。
「えっ、ウソでしょ……交代!?」
 驚く末永を無視し、栗田は主審に交代を告げた……。
225創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 01:59:24 ID:TmvKhM/k
7/9
「選手の交代をお知らせいたします。サード御堂に代わりまして、三島。背番号33」
 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ。客席から歓声があがる。
「な、なんでウチなんですか!」
 意表をつかれた御堂あづさが栗田に駆け寄る。
「まあ練習試合だし。1本打ったからもういいだろ」
「それはええですけど、なんでこのタイミングなんですか……」
「スマン。忘れてた!」
 んなワケ無いやろ。と思ったが、まあええわ。とあづさはベンチに戻った。
「えっと、エラーだけはしないようにがんばりますっ」
「ん。でも、あんまりきばんなや」
「はいっ」
 あづさにポン、とお尻をたたかれ、グラウンドへと駆けていく三島みらい。ファン注目
のルーキーの初お披露目である。

(フォアボールの後の初球はストライクを取りにくるのがセオリーだ……もらった)
 右打席の橋詰は試合再開の初球を思い切って引っ張った。
 その打球はサード強襲の痛烈なヒット性の当たり。サードの三島はこれをバックハンド
で掴み、目の前の三塁ベースをしっかりと踏む。さらに、流れるようなスローイングで
一塁へ送球し、ダブルプレーが成立した。
 なんと、三島に交代した後わずか一球でピンチを脱した。

「やはりな。野球界には昔から代わった所に打球が飛ぶという格言がある」
 名采配だと言わんばかりに栗田が力説する。
「んなもん、たまたまやろ」
 ベンチに座り他にやることも無いあづさがとりあえずツッコんだ。
「ふぅ……助かったよ、三島」
「はいっ。いえっ、今のは打ち取った打球でしたからっ」
 末永の感謝の言葉に、みらいは笑顔で答えた。
226創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 02:00:41 ID:TmvKhM/k
8/9
 6回裏。東京のベンチは城之内真緒をマウンドに送った。左のアンダースロー投手だ。
 大学時代には東京六大学野球で登板し、男子選手相手に三振を奪った事もある。
 昨シーズンはチームの守護神として堂々たる成績を残した。
「よろしくお願いしまーす(ペコリ」
 左打席にはこの回の先頭打者、高島はなが立っていた。5回裏に代打で登場し、6回表
の守備では大内に代わってレフトに入っていた。
「左対左……セオリーなら投手有利だが……」
 栗田は前の打席でヒットを放った高島はなを警戒していた。
 彼だって元プロ野球選手だ。一目見れば打撃センスの良さくらいは解る。
(今のうちにプロの厳しさを教えてあげるです)
 キャッチャーの丸山はあらかじめ栗田から城之内登板の意図を聞いていた。
 球界でも珍しい左のアンダースロー投手である城之内真緒の武器はシンカーだ。独特の
変化をするため特に左打者にとっては非常に打ちづらい。
 城之内はゆったりしたフォームから、ストライクゾーンの端を使って攻めた。その投球
はさながらシーズン中のようだった。
 しかし高島は厳しい攻めに対してしつこくカットする。
「このバットコントロール、ただものでは無いな」
 栗田は高島の打撃センスに改めて目を見張った。いや、相手チームの選手を褒めている
場合ではない。こういうタイプの打者は球威の無い城之内にとって厄介な相手だ。
 8球目がワンバウンドし、カウントが2‐3になった。ここでバッテリーは次の一球に
決め球のシンカーを選択、空振り三振を狙っていく。
 城之内が9球目を投げた。左打者の膝元へと落ちていくシンカーだ。打席の高島は果敢
にバットを振る。
(よしっ。三振だ……)
 城之内は心の中でガッツポーズをした。
 ところが、高島のバットはシンカーを捉えた。その打球はファースト小松田の頭の上を
越え、ライト・マクスウェルの前にぽとりと落ちる。
「うわっ。当たっちゃったよっ」
 打った高島はとぼけているのか、一塁ベースへ駆けながら驚きの言葉を漏らす。
 プロの洗礼を浴びせる事には失敗したが、城之内は気持ちを切り替え後続を断った。
227代行でした。:2010/03/17(水) 02:01:33 ID:TmvKhM/k
9/9
 そして7回表、東京の先頭打者は前の回から守備に就いた三島みらいだ。
「4番サード、三島」のアナウンスに拍手が起こった。
 一方、千葉の投手はなんとエースの黒河ちひろがマウンドに上がった。
 シーズン前とは言え、そのボールは直球、変化球共に一級品だ。
 結局、注目された三島のプロ入り初打席は三球三振に終わった。

 最終回、7回裏のマウンドに満を持して東京のエース大咲さくらが立った。
「みのりちゃん。なんだか久々な気がするけど、気のせいよね?」
「はい、気のせいです。さくらさん」
「大丈夫よね? 私、忘れられてないわよね?」
「何を言ってるですか? さくらさん、落ち着いて下さいです」
「うん。わかってるわ、みのりちゃん。さあ、バリバリ投げるわよー」
「はいです!」

 大咲さくらは、千葉スティンガーズ打線を三人で抑えた。
「え、それだけ!?」
 はい、それだけです。
 試合は7‐6で東京シャイニングヴィーナスが千葉スティンガーズに勝利した。

 つづく。
228三人の一人:2010/03/17(水) 02:03:58 ID:DfYUFGj4
三人しか居ない住人の一人乙。
よく10レス近く書けるモンだ。
229三人の一人その2:2010/03/17(水) 22:37:20 ID:Iq8NGAJs
おいおい、あれだけ大活躍した先発投手を忘れるなんて、
酷い奴だな。まったく、先発投手も浮かばれないぞ。
先発投手の次回登板を楽しみに待ってる俺みたいなのもいるんだからな。
頑張れ先発投手! 俺は応援しているぞ!

・・・で、名前なんだったっけ?
                   
                        ヽ○ノ  まあいいか!
                         /
                        ノ)

後半、ちょっと息切れしちゃったかな? せっかく三島みらい出てきたと
思ったら、あっさり出番終了でちょっと悲しかったw
230代行:2010/03/19(金) 01:21:15 ID:5ReZODvU
応援ありがとうございます
というわけで調子に乗って三島みらい描いてみた
http://imepita.jp/20100319/035970

すいません、ブルマ好きなので…
231代行:2010/03/21(日) 01:16:23 ID:9HhFLoP5
いよいよ待ちに待ったプロ野球開幕!
今年も熱い戦いに期待しつつ、
小説(っぽい何か)を書いていきたいですね

懲りずにまた描いてみた
http://imepita.jp/20100321/019550
千葉スティンガーズ・高島はな
232創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 23:18:02 ID:NR3wYKK9
たまにはあげ
233創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 02:06:07 ID:UlXUqi0T
http://imepita.jp/20100409/068360
東京シャイニングヴィーナス・三上英子
234創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 01:22:09 ID:8hxjeel4
http://imepita.jp/20100410/045110
東京シャイニングヴィーナス・小宮奈美
235創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 05:38:08 ID:Oz/NiY1n
制服姿の女の子が、胸に両手を組んで祈るような姿で、僕を見ている。長い黒髪が揺れていて、肩も小刻みに震えているのがわかった。
僕は彼女の心配そうな視線を振り切り、持っていたボールに目をやった。

「大丈夫、落ち着け、とにかく落ち着いて、それで、蹴るんだ、それだけだ」

ボールにつぶやいた後、ふーっと大きな息を一つ吐いて、ボールをペナルティマークに置く、そのまま顔を上げ、ゴールを見ると、キーパーはこちらをじっと見つめていた。
ドッと心拍数が上がり、心臓の音がうるさく耳に響く、体を起こし、小さく助走を取ると、さっきまで気にならなかった、ゴールが急に小さく感じ始め、思わずまたつぶやいた。

「ダメだ、落ち着け、落ち着け」

もう一度、自分に言い聞かせた直後、審判の笛が吹かれ、僕は、まるで笛の音に押されるようにボールに向かっていった。

そして、

右足から蹴り出されたボールは、ゴールバーを遥かに越え、地面に力無く落ちた。
その瞬間、審判の今度は試合を終了する、という笛の音がグラウンドに鳴り響き、僕の中学生最後の試合に、終わりを告げた。



「明、起きなさい、明!!」

バッと目が覚めて、時計を見る。


ここまで。
236創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 23:33:53 ID:Oz/NiY1n
バッと目が覚めて、時計を見る。
いつも通りだと言わんばかりの、趣きを保ったまま、目覚まし時計の針は午前7時を回り、今にも短針に触れそうなほど長針は鋭く時刻を指していた。
「嘘だろ、何で鳴らないんだよ?」

目覚まし時計を掴み、時刻を睨めつけるが、相変わらず厳格にも秒針は回り続けている。
「まずい、早く着替えなきゃ」
今、自分がすべき最も大事なことは何かを思い出し、大急ぎで制服に着替える。まだ数えるほどしか着ていない、真新しい制服に少し違和感を感じつつ、しかし気にしている暇は無いので、机の上のカバンを乱暴に手に取って、階段を怒涛の勢いで、かけ降りた。
「あんたは全く騒々しいね」
母親の迷惑そうな言葉にカチンときて、文句を言い返した。
「何で、もっと早く起こしてくれないんだよ!」
「あら、起こしたわよ、あんたが起きないんじゃない」
やるべきことはやったわよと言うふうの母親に、こんな所で、時間を食っているわけにはいかないと、出かかった言葉を呑み込み、玄関へと向かう。
母親からの朝飯を伺うのんきな声を背中で聞きながら、さっさと靴を履き、ドアから出るか出ないかのタイミングで行ってきますの挨拶を済ませて、ドアが閉まる時には家の前を道に出ていた。
止めてある、ギアなんぞ付いちゃいない自転車に乗り、猛烈な勢いで駅に向かって、走り始めた。
237代理:2010/04/14(水) 23:42:34 ID:QnC7Bps4
投下乙です
新しい人かな?
続きをお待ちしております
238創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 01:00:14 ID:Yicb/Ctd
お言葉に甘えて。

猛烈な勢いで、駅に向かって走り始めた。
それにしても、今日は息子の高校の入学式だってのにあの関心の無さは、昨今の母親事情からは考えられない親だな、まぁ、テンション高めに来られても、恥ずかしいけど、だが入学式に寝過ごすって、この形原明、一生の不覚、何としても式には間に合わないと。
春の風をしこたま顔にうけて、駅に着くと、駐輪場にギアの付いてない自転車を放り込んで、改札を通り抜け、ホームに上がった。
ラッキーなことに電車はすぐにきて、息を弾ませて、車内に乗り込んだ。

「ここから乗り換えをはさんで……恐らく間に合わない」

深いため息をドアのガラス窓に吹き付け、同じテンポで流れていく景色を、何ともなく眺めていると、今朝見た夢のことを思い出して、さらに憂鬱に襲われた。

「高校では、サッカー部に入るのはやめよう」


239???:2010/04/16(金) 06:39:44 ID:Yicb/Ctd

別れる時に、妻から言われた最後の言葉が、頭から離れない。
妻とは大学で出会った。
僕の一目惚れで、何度もアタックをして、やっと取りつけた初めてのデートで、僕はプロポーズをした。
驚いたことに、彼女は頷いてくれた。
大学卒業と共に彼女と結婚をした。
僕は大手の銀行に就職が決まって、彼女もその事を喜んでくれた。休日も返上して、仕事を頑張った、おかげで同期の中でも一番に出世した。
だけど、もう彼女にはその頃、別の男が出来ていた。ある日、突然彼女から離婚届けを渡された僕は、理由を彼女にたずねた。
彼女は涙を流しながら、僕に言った。
「結婚するときに貴方は言ったわ、僕は一流の企業に入って、30歳までに管理職になって、35歳には独立して45歳になる頃には会社を人に譲って、海外に小さな家を買って、そこで小説を書くんだって、
確かに貴方は予定よりも早く出世したし、独立して、今は会社を2つも経営してるわ、でもそれだけ、私の事なんか、何も見ていないのよ」

僕には、わからなかった。
彼女の為に一生懸命働いてきたつもりだったし、浮気やなんかも、したことは無かった。

彼女が家を出る時、僕は精一杯陽気に振る舞った。
僕は彼女に、駅まで送っていこう、と申し出た、が、断られ、それならと僕は提案した。

「ほら、君が気に入っていた、あの車、あの車は君にあげるから、乗って行って構わない」

すると彼女は、彼が車で迎えに来るからと、足早に玄関へと向かった。
僕はそこで初めて妻に男がいたことを知ったが、陽気を崩さず、お互いの人生の再出発を讃えて、笑顔で彼女を送り出そうとした。
扉を背にした彼女は、僕に向かって、こう言った。

「そうやって、貴方はいつも冷静な振りをして、笑顔を作って、誤魔化して、結局、私のことなんてどうでもいいのよ」

そして彼女は家を出ていった。
240???:2010/04/17(土) 00:13:03 ID:xQbBwfWn
そして、彼女は家を出ていった。

4年も前の話だ。
なのに、あんな酷い事を言われたのに、それでも僕は心のどこかで、まだ、あの女に認められたがっている。
(……最低だ)

止めよう、考えるのは酸素を無駄にするだけだ。
もう、海面まで30mって所かな段々と周りが明るくなってきた。
まるで、光が降ってくるようだ。

(ああ、明るいな)

そうだ、このブルーだ、この青く美しい世界を見ていると、人生の汚い裏切りも、嘘も、全てを忘れて、生きていけそうな気がする。
離婚をしてまもなく、経営する2つの会社は世界的な金融危機の煽りを受けて倒産した。
何もかもを失って、生きる希望を無くした僕は、冷たい嵐の海へと身を投げた。
衝撃で遠のく意識の中で、その絶望の中で、僕は確かに見たんだ、あの美しい奇跡のような青の世界を、
『グラン・ブルー』を、
その瞬間、強烈に願ったんだ、生きていたいと、死にたくないって、その願いが通じたのか、運良く近くで漁をしていた村の人達に救い上げられ、僕は命だけは失わずに済んだ。
その後、僕はもう一度あの世界を見たくて、取りつかれたように、このフリーダイビングの世界に飛び込んだ。

海面まで、15m。


後、10m


5m


さぁ、もう、直ぐそこだ。

まだ名残惜しいけど、
もっと、この青の世界を見ていたいけど、

でも、

上には、僕を待ってくれている人達がいる。
僕の帰りを、待ってくれている家族がいる。




必ず、また帰ってくるよ、それまで、さようなら。




サッカー長くなりそうなので、こっちに変えました。
241創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 20:29:20 ID:ihVZm8pL
あげ
242代理:2010/05/15(土) 22:58:04 ID:UE5Jyidm
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第六話
1/8
「そうそう。明日のイベント、監督は出ないんですか?」
「イベント?」
「はい。オープニングファンフェスタの事ですけど」
「あー……聞いてないな。何のことだ」
「毎年この時期に開幕戦で戦う両チームの選手が球場前に集まるんですよ」

 女子プロ野球リーグのレギュラーシーズン開幕戦を一週間後に控えたこの日、東京都内
にある専用グラウンドでの練習が終わって帰るところだった東京シャイニングヴィーナス
監督の栗田永一は、同球団のエースである大咲さくらから開幕前イベントの話を聞いた。
「ふーん、そうなんだ」
「あ。興味無いんですか?」
「そういうわけでは無いんだが……」
 栗田は複雑な気分だった。
 新監督だと言うのに球団のイベントに呼ばれてないだなんて……。

「おーい。さくらー、何しとん? 帰ろうやー」
 栗田とさくらが歩いてるところに、チームの主砲である御堂あづさが近づいてくる。
「あ、あづさちゃ……ちょっと、どこさわってんのよっ」
「おっと、スマンスマン。手が勝手に動くねん」
 あづさはさくらに後ろから抱きついた。いやいや、手が勝手に動くとか病気だから。
しかし、さくらも満更ではない様子だ。
「おい、お前ら……何やってんだよ」
「あ、栗田監督。おったんですか」
「御堂……俺ってそんなに存在感無いのか?」
 栗田は、さっきの事がまだ引っかかっているようだ。
「じょ、冗談ですやん」
 あづさは苦笑いし、さくらから離れた。
「監督……? どうしたんですか?」
「ん? ああ、何でも無いよ。寮に帰ろうか」
 三人は練習場を後にし、シャイニングヴィーナス選手寮(栗田もここで生活している)
へと戻った。
243代理:2010/05/15(土) 22:58:49 ID:UE5Jyidm
2/8
 ここ東京都江東区有明に10年前完成したトーキョーベイスタジアム有明(有スタ)
は東京シャイニングヴィーナスのホーム球場であり、一週間後には横浜ブルーマーメイズ
とのレギュラーシーズン開幕戦が開かれる。
 球場前に設置された特設ステージには開始予定時刻30分前には既に人だかりが。
 とりあえずイベントが始まるまでしばし待つとしよう。

 それから30分後、司会者と思われる男性がステージの中央に姿を見せた。
「さぁー。皆さんお待ちかねッ! 東京シャイニングヴィーナスと横浜ブルーマーメイズ
の選手達の登場ですッ!!」
 わああああああああああっ。特設ステージの最前列に陣取った両球団のファンが歓声を
上げると、その後ろを歩いていた通行人の一部が「おっ、なんだなんだ」とその足を止め、
ステージの方へと顔を向ける。
「はいはい、皆さん落ち着いて。それではッ、順番に登場願いましょうッ!!!」
 わー。わー。少し自重しながらも声と拍手で囃し立てる両球団のファン達。
 と、その時だった。会場にメロディが流れる。
 そして、ステージの衝立の裏側からアイドルっぽい衣装を着た女の子が現れた。
 さらにそのアイドルが歌い始めると、一部の観客のテンションが上がっていく。
「あれ? 何で急にアイドルショーみたいになってんだ?」
 つぶやいたのは栗田だ。なんだかんだ言いながら見に来てるじゃないか。
 ここからおよそ5分間の熱唱とダンスが続く。しばらくお待ち下さい。
 ・
 ・
 ・
「みんなー、声援ありがと。ミウミウの新曲“恋は直球ストレート!”来週発売だよっ。
一人最低十枚は買ってねっ☆ 初回限定特典は――」
 いやいやいや、この期に及んで宣伝かよ。なんという図々しいアイドルだ。と、栗田は
思った。
244代理:2010/05/15(土) 22:59:09 ID:UE5Jyidm
3/8
「まずは横浜ブルーマーメイズのエースと言えばこの人しかおりますまいッ! みんなの
ミウミウこと、浅沼美羽だッ!!」

「どうもー、浅沼美羽でーす。開幕は完封するから、しっかり応援してね〜っ☆」
「おーッと! 早くも完封宣言が飛び出したーッ!」
 観衆の横浜ファン及び浅沼美羽のファンから声援が上がる。
 一部からはブーイングが飛び出すが、多分東京のファンだろう。

「ボケーっ。おんどれのワンマンショーとちゃうねんぞっ、無駄に尺取んなや!」
 ステージに大音量の関西弁が響き渡る。この声は……。御堂あづさがいてもたっても
いられない様子で衝立の向こうから飛び出して来た。
「おっと、つづいてはッ! シャイニングヴィーナスの誇る超・長距離砲、御堂あづさの
登場だーーッ!! ちょっと段取りとは違いますが、盛り上がれば良しッ!!!」
 それでいいのか司会者の男よ。
「良いんですッ! さあどんどん参りましょうッ!」

 東京シャイニングヴィーナスからは、お馴染みの大咲さくら、御堂あづさ、大木姫子、
小宮奈美、三上英子、丸山みのり、三島みらいの7人だ。
 対する横浜ブルーマーメイズからはエース浅沼美羽を筆頭に、関内史織、宇働美和子、
五十川亜樹、矢尾つかさのリリーバーカルテット、通称“SWAT”の4人、さらに主砲
として期待される栃原かなえ、スピードが自慢のリードオフマン屋城昴(すばる)が顔を
揃えた。

 それから、両球団の選手が左右に分かれてイスに座り、お互いに今シーズンの抱負など
を語り合った。
 小粋なジョークなども交え、会場がいい感じに暖まってきたところで、司会者の男が
トークを切り上げた。
「ここで、両球団の皆さんに前哨戦として対戦していただきたいのですがッ! 何か提案
はございますでしょうかッ!」
 アドリブにも程がある。そういうのは事前に決めておけ、と栗田は思った。
「おっと、早速手が上がりましたッ。浅沼美羽さんッ。どうぞッ!」
「この場で野球というわけにもいきませんから、野球拳で対決というのはどうです?」
 浅沼美羽はニヤリと笑って言った。や、野球拳だと!?
245代理:2010/05/15(土) 22:59:36 ID:UE5Jyidm
4/8
「な、な、なんとッ。浅沼美羽からの提案は、ドキッ! 女だらけの野球拳大会だッ!」
 司会者の男のセンスは、少し古かった。
 だが、最前列のファン達は、「おおっ」と湧きあがる。
「馬鹿馬鹿しい……やってられないわ。どうしてそんな事……」
 大咲さくらがその提案を即座に却下する。
「あれあれー? 敵前逃亡ですかぁー? 日本一の球団が聞いてあきれますぅ〜」
「なんやて? 誰が逃げる言うたんや」
 浅沼美羽の挑発にあっさり乗ってしまう御堂あづさ……。
「じゃあ、決まりですねっ☆」

「よっしゃ、ほんなら行くで! 準備はええな、奈美!」
「なーっ、なんで私なんスか!」
「ヴィーナスの切り込み隊長といえばお前しかおらんやろ」
「それもそうっスね……ってマジっスかぁー」
 奈美の叫び声が、春の空に虚しく響いた。

「それでは参りましょうッ! 青龍の方角ッ! 平成の蒼い稲妻ッ、小宮奈美ッ!」
 名前を読み上げられた奈美はしぶしぶとステージの中央に足を進める。
「白虎の方角ッ! 歌って踊れる速球派アイドルッ、浅沼美羽ッ!」
 とびっきりの営業用スマイル(¥0)で手を振りながら美羽も中央へ。
 ミウミウ! ミウミウ! ミウミウ!
 鳴り止まぬミウミウコール。会場は、完全に美羽寄りだ。対する奈美はいきなり劣勢を
強いられる事になった。
 そんな奈美に、三上英子がそっと近づいてアドバイスを送る。
「奈美っち、野球拳は強い者が勝つんじゃない、勝った者が強いんだ」
「み、三上センパイっ、テキトーな事言わないで下さいっス!」
「うふふっ。すでに勝負アリですねっ☆」
 美羽は白い歯を見せて余裕綽々といった表情だ。

「プレイボールッ!」
 わー。わー。ついに開幕の前哨戦となる(?)野球拳大会の火蓋が切られた。
 第一戦、東京・小宮奈美対横浜・浅沼美羽。
「野球するならッ、こういう具合にやらさんせッ。投げたらッ、こう打ってッ。打った
ならッ、こう受けてッ。ランナーになったらッ、えっさっさッ。アウトッ! セーフッ!
よよいのよいッ!」
 ……これ、長いな。つーか、歌ってるのか?
246代理:2010/05/15(土) 22:59:55 ID:UE5Jyidm
5/8
「ジャンッケンッホイッッ!!」
 奈美はパーを出した。
「残念でしたねー、小宮さん」
 美羽の繰り出した手はチョキだ。
 ハサミが紙を切り刻んだ。
「勝者ッ、浅沼美羽ッ!」
「イエーイ☆」
 美羽は指の形をVサインのまま頭上に掲げた。会場のボルテージが上がっていく。
「ふむ……流石は横浜のエースだ。奴のあのチョキの強さ、あなどれんな」
「英子さん、解説っぽく言ってますけど意味分からないですから」
 さくらはしたり顔で解説する英子にさらっとツッコんだ。

「うぅ。負けたっス……」
 へぼのけ、へぼのけ、おかわりこい。奈美に代わって、あづさが前に出た。
 なお、今回は本家野球拳のルールに基づき、脱衣はありませんのでご了承ください。
「しゃあないな。仇はとったるさかい見とき」
 奈美は「かたじけないっス」とあづさに告げ、後ろのイスに腰掛けた。
「がんばってくださいっ、御堂先輩っ」
「おう」
 あづさはみらいの応援に答えた。
「よろしいですねッ! 青龍の方角ッ! 球界の女番長ッ、御堂あづさッ!」
 誰が女番長やっ。清楚で可憐な美少女スラッガーやっちゅうねん。とか何とかたわごと
を吐くあづさをスルーして、司会者の男は進行に徹する。これがプロの仕事だ。
「白虎の方角ッ! 陸(マウンド)に上がったリアルマーメイドッ、浅沼美羽ッ!」
 第二戦、東京・御堂あづさ対横浜・浅沼美羽。
「野球するならッ(都合により割愛されました)ジャンッケンッホイッッ!!」
 あづさの繰り出した手はパーだった。
 そして、美羽もパーを出した。
「あいこ……だと!? ……なるほど、両者の実力が拮抗しているという事か」
「いや、同じ手を出しただけですから……」
 英子は解説を続けた。さくらはそろそろ付き合いきれないといった様子だ。
247代理:2010/05/15(土) 23:00:13 ID:UE5Jyidm
6/8
「あいこでぽんッ!」
 試合は続行された。あづさと美羽は双方共にチョキを出し、再びあいこになった。
「浅沼のチョキに対して一歩も引いてない……ふふっ、流石はあづさだ。その実績は伊達
じゃないな」
「良く見て下さいです。チョキの指の開き具合では浅沼さんにも負けてないです」
「ふむ。この勝負、長期戦もありうるな」
「あんたたち……」
 さくらに代わり英子をフォローする丸山みのり。チームの正捕手であり、投手陣の性格
はだいたい把握している。拾えないトークがあるものか、構えたミットで受け止める。
 そして、さくらはそんな2人のやりとりを見て呆れている。

 試合続行。あづさと美羽は共にグーを出した。
「しつこいですよー、御堂さんっ」
「それはおんどれやろっ、とっとと負けろやっ」
「さあ、ヒートアップしてまいりましたッ。ドンドンいきましょうッ」
 あいこでぽん。あづさはパーを出した。対する美羽の手はグーだった。
「よっしゃー! 仇は取ったで!」
「あぁ〜ん。負けましたぁ〜」

 へぼのけ、へぼのけ、おかわりこい。浅沼美羽は退場し、横浜の2番手、栃原かなえが
ステージ中央へ。
 例によって脱衣はありません。どうしてもミウミウの裸体を拝みたいお方は“浅沼美羽
1st写真集「ほわすと!」”をお買い求め下さい。勿論大事なところは隠しているが、
セミヌードを披露し話題になった一冊だ。――以上、宣伝乙でした。

「青龍の方角ッ! 清楚で可憐な球界の女番長ッ、御堂あづさッ!」
 称号が採用されたようです。でも女番長は相変わらずなんですね……。
「白虎の方角ッ! ハマのホームランプリンセス、栃原かなえッ!」
 栃原かなえ。高校時代から“御堂あづさ2世”と注目されていた右の強打者だ。守備も
あづさと同じくホットコーナー(三塁)を守っている。
「直接対決ですねっ。正々堂々とやりましょう、あづささん」
 かなえはニッコリと微笑んだ。彼女にとって御堂あづさは憧れの人である。
「よっしゃあ、負けへんよ」
 改めて気合いを入れるあづさ。同じポジションの先輩として、ここは負けられない。

「とっちぃー、勝たなきゃダメだよっ! わかってるよねっ?」
 かなえの後ろから声がした。浅沼美羽だった。
 美羽は人差し指をビシッとかなえに向け、笑みを浮かべている。
248代理:2010/05/15(土) 23:00:33 ID:UE5Jyidm
7/8
「み、美羽さんっ。が、がんばりますからっ」
 そう返事をしたかなえは何故か背筋を伸ばし、顔もどことなく引きつっている。
「外野はだまっとき。2人の勝負やで」
「えっ、わ、私ですかっ? あづささんっ」
 あづさの言葉にうろたえたのは大木姫子だった。普段はおっとりとした性格なのだが、
試合になれば打って変わって走攻守三拍子揃った外野手に一変するのだが……ん、外野?
「なんや? ヒメ」
「す、すいません。おとなしくしていたつもりだったんですか……」
 そう言うと、姫子は口をつぐんだ。何だったんだろう。

 第三戦、東京・御堂あづさ対横浜・栃原かなえ。
「――よよいのよいッ! ジャンッケンッホイッッ!」
 勝負は一瞬で決まった。あづさの拳が、かなえの二本指を砕いた。←比喩です。
「はぁ……。流石はあづささんですね。まだまだ私の力は及びません」
 かなえは素直に敗北を認め、座っていたイスへと戻った。
「んもう〜。とっちぃはしょうがないなぁー。後でおしおきだからねっ☆」
 後ろで見ていた美羽が、かなえに冗談を飛ばした。

「青龍の方角ッ! とどまるところを知らない球界の女番長ッ、御堂あづさッ!」
 ここまで立て続けに2人を倒したあづさが歓声に答える。
「白虎の方角ッ! ハマの爆走クローザーッ、矢尾つかさッ!」
 わああああっ。横浜の三人目として名前が呼ばれたのは、同球団の不動の守護神として
君臨する矢尾つかさ……だったのだが。
「ちっ。何であたいなんだよ。屋城、お前出ろよ」
「私は……子供の頃からジャンケンだけは勝てないのだ……」
 屋城昴は昔を思い出した。鬼ごっこの時はいつも自分が鬼だったな、とか。
「マジかよー。メンドくせーなー」
「まあまあ、そう言わずに。お客さんも待ってますし」
「そうだよー。最後はストッパーにビシッと締めてもらわないと」
「しゃーねえな、よっこいしょ」
 関内史織と五十川亜樹に促され、やおら立ち上がる矢尾つかさ。いかにも気だるそうに見える。
 ところが、勝負事となれば話は別だ。その目は勝負師の目へと変わった。
 第四戦、東京・御堂あづさ対横浜・矢尾つかさ。
「――ジャンッケンッホイッッ!」
 つかさは伝家の宝刀フォークボールを彷彿させるチョキを繰り出した。
「くっ……」
 勝負アリ。あづさの出した手は、パーだった。
249代理:2010/05/15(土) 23:00:50 ID:UE5Jyidm
8/8
 両チームの三人目が登場し、いよいよ最終戦が行われる。
「青龍の方角ッ! スーパースターのDNAッ、三島みらいッ!」
 一段と大きな声援に包まれて三島みらいが登場。
「白虎の方角ッ! 横浜の総大将ッ、矢尾つかさッ!」
 つかさは腕を組んで仁王立ちしている。威風堂々といった様子だ。
「え、えと……よろしくお願いしま……」
 みらいが恐る恐る握手を求める。それはスポーツマンシップにのっとった行動だった。
 だが、対するつかさはそれを「フッ」と鼻で笑う。
「悪いけど、あたいはそういう馴れ合いは嫌いなんだよ」
 すかさずみらいのファンによるブーイングが起こった。いいぞもっとやれ。
「試合前から熱くなってまいりましたッ! 参りましょうッ」
 百戦錬磨の守護神に、怖さを知らない黄金ルーキーが挑む。

 最終戦、東京・三島みらい対横浜・矢尾つかさ。
「野球するならッ――よよいのよいッ! ジャンッケンッホイッッ!」
 みらいの繰り出した手は、パー。だが、つかさの手はまたしてもチョキだった。
 やはり、パーではチョキにはかなわないのか……。
 圧倒的な力の差をまざまざと見せ付けられる格好となった。
「勝負アリッ! 勝者、矢尾つかさッ! 横浜ブルーマーメイズの優勝ですッ!」
 わああああああああっ。横浜ファンから歓声が上がる。
「ふっ。逃げ出さなかった事だけは褒めてやるぜ」
「ほ、本番では……リ、リベンジさせてもらいますっ」
「へっ。負けねえぜ」
 再戦を誓い合うつかさとみらいの二人だった。
 みらいは今度こそはと握手を求めたが、またも拒否されてしまった。

 イベント終了後……。
「あんな事言ってたけど、開幕戦でみらいちゃんの打席があるかわからないわよ」
「お、大咲先輩っ。それを言ったら台無しですよぉ……」
 つづく。
250代理:2010/05/15(土) 23:01:19 ID:UE5Jyidm
投下終了です。

ところで、野球拳はスポーツなんでしょうか・・・。
251創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 19:03:01 ID:lpTJCbQP
貴方がスポーツだと思ったらスポーツです。
ただし、他人の同意を得る事ができるとは限りません(素

さて、頭の悪いタイトルの写真集を買いに行かねば・・・。
252創る名無しに見る名無し:2010/06/04(金) 01:42:23 ID:Hkn0WSu+
歌手活動やグラビア撮影をしながら合間に先発投手として登板する浅沼美羽さん
ttp://imepita.jp/20100604/054130
253代理:2010/06/30(水) 23:56:48 ID:R0kXuwns
「GirlsBaseballClassic〜スタジアムの女神たち〜」第七話
1/6
 ついに女子プロ野球リーグの今シーズンの開幕戦の日が来た。
 試合開始2時間前。打撃練習を見ていた東京シャイニングヴィーナス監督・栗田永一に
本日の対戦相手、横浜ブルーマーメイズのユニフォームを着た男が近づいてくる。
 至近距離で見たその男は、185センチある栗田より大きい体格だった。
「ヘロー」
「ん?」
 どこかで見たようなその男……おそらくアメリカ人。そう、歴史の教科書で見た。
「ペリーだ。ペリー提督じゃないか」
「ミスタークリタ、ナイストゥーミートゥ」
 ペリー提督(仮名)は、栗田に握手を求めた。
「は、はじめまして、みーちゅう……ミスター、ペリー?」
 いや、ペリーじゃないと思うのだが。
「HAHAHA、Nicejoke。マイネームイズ、ウィル・アンダーソン」
 どうやらジョークだと受け取られたらしい。その男、名をウィル・アンダーソンという。
 そう。何を隠そう横浜ブルーマーメイズの監督である。

「か、監督っ。勝手にあちこち行っては困りますっ(←英語で)」
 アンダーソン提……監督の後ろから女の声がした。栗田がその方向を見ると、あわてて
走ってくる女の人の姿が現れた。
「はあ、はあ……」
「あの……大丈夫ですか?」
 栗田が心配して声をかけると、さっきまで息を切らしていたその女性は表情をキリリと
一変させた。
「失礼しました。栗田監督」
「いえいえ。えっと、そちらは……」
「通訳の宮永です。お気軽にミヤーンとお呼びください」
「は?」
「失礼しました」
「いえいえ……??」
 ともかく、栗田とアンダーソンはお互いの健闘を誓い合った。
254代理:2010/06/30(水) 23:57:08 ID:R0kXuwns
2/6
 栗田はブルペンに足を運んだ。そこでは今日先発する大咲さくらが肩を作っている。
 投球がミットに吸い込まれると、バシッと心地よい音が栗田の耳に届く。
「調子は良さそうだな」
「あ、監督。見ての通りです」
 さくらの表情からも、調子の良さが窺える。
「今日が監督の初采配ですね」
「いやあ、采配なんて言われても手探り状態だよ」
「そんなんじゃ困りますよ。せめてベンチでは堂々としていてもらわないと」
「ん。そうだなぁ」
 堂々と……か。栗田がしばし考えていると、さくらがボソリとつぶやいた。
「監督。今日勝ったら、私の……あげます」
「え?」
「もらってくれますよね、ね?」
「ん、ああ、そうだな」
 何やら重要な部分を聞き逃してしまった気がしたが、何となくさくらの勢いに押し切ら
れてしまった栗田であった……。

 時刻は18:00。セレモニーも終わって、いよいよレギュラーシーズン開幕戦の火蓋
が切って落とされた。
 マウンドには大咲さくら。3年連続の開幕投手だ。昨年は見事に完封勝利を挙げた上に
自らもタイムリーヒットを放ち、まさに“大咲さくらナイト”であった。
「今年もシーズンが始まるわね。みのりちゃん」
「はいです、さくらさん。落ち着いていきましょうです」
「もちろんよ。私はエースなんだから」

 プレイボール。キャッチャーの丸山みのりが定位置に戻って試合開始。
 一回表。先頭打者として左打席に立つのは屋城昴。高校時代は陸上部で100メートル
と200メートルの兵庫県記録を持つ短距離ランナーだった。将来のオリンピック出場も
期待されていたのだが、元高校球児の父親の勧めもあり、女子プロ野球のトライアウトを
受験し合格、そして現在に至る。
(塁に出すと厄介だからね。高めのストレートでフライに打ち取るわよ)
 屋城昴の足の速さは女子球界でも一、二を争うと言われている。って誰にだよ。
 マウンド上のさくらは打席の屋城に対し、高めのストレートで攻める。対する屋城は、
ファールで粘りながらも4球目をサードに打ち上げる。まずは先頭打者を打ち取った。
 女子野球界を代表するエースピッチャーと言えど、開幕の立ち上がりは緊張するもの。
 その最初の打者を打ち取った事でようやく落ち着いたピッチングができる。
 2番の賀藤春奈、3番のローラ・マスカーニを続けて打ち取り、初回は三者凡退という
上々の投球内容を見せた。
255代理:2010/06/30(水) 23:57:34 ID:R0kXuwns
3/6
 横浜ブルーマーメイズの開幕投手は宣言通りに浅沼美羽だ。今日はユニフォームを着て
の登場だ。三塁側の観客席から「ミウミウ!」とコールが起こる。マウンドの美羽はそれ
に手を振って応えた。
 一見すると、始球式に呼ばれた芸能人のようにも見える浅沼美羽だが、実際に投げる球
を見るとやはりプロの投手である。投球練習から東京のエース・大咲さくらに負けるとも
劣らない球を捕手のミットに投げ込む。
(……さてと。野球モードにチェンジ……っと)

 一回裏。東京シャイニングヴィーナスの攻撃は、不動のトップバッター小宮奈美から。
 昨シーズンは一年目ながらショートのレギュラーに定着し打率三割をマーク、ルーキー
オブザイヤー(いわゆる新人王)に輝いた。今シーズンは当然マークもきつくなるだろう
が、さらなる飛躍を期待されている。
 一番打者の仕事はとにかく出塁することだ。先発投手というのはどうしても立ち上がり
は不安なので、時には1球目からガツンとヒットを飛ばすとそれだけで崩れていくことも
ある。逆に、最初の打席では相手投手のその日のキレとかノビとかを見極めようと球数を
投げさせるタイプの一番打者もいるが、奈美は性格的にも若いカウントからガンガン打ち
にいくタイプのようだ。
 浅沼美羽の初球はインコース低めへのストレートだった。奈美は積極的にスイングした
ものの、空振りだった。
「なかなか伸びてるっスね」
 2球目もストレートを空振りし、わずか2球で追い込まれる。
 結局、奈美はボール球を一個はさんでからのゆるいカーブで三振に倒れた。

「……どんまい」
「ううう……頼んだっス」
「……了解」
 二番の川原恵美が打席に。現在、塁上に走者はいない。
「……打つしかない……鬱だ……ナンチテ」
 思い切りの良いスイングの奈美に対して、恵美はきわどいコースをひたすらカットして
ファールを重ね、失投を待ちながらあわよくば四球ででも塁に出ようという姿勢だ。
 ピッチャーの美羽はストライクゾーンへ力強いストレートを投げ、恵美をセカンドゴロ
に打ち取った。
 続く三番の大木姫子はショートフライに倒れ、一回裏の東京シャイニングヴィーナスの
攻撃は浅沼美羽の前に三者凡退に終わった。
256代理:2010/06/30(水) 23:57:56 ID:R0kXuwns
4/6
 二回表。打席には横浜ブルーマーメイズの主砲、栃原かなえが向かった。
 きっかけは、ニュース番組だった……と思う。たしか、女子野球界に怪物が現れたとか
言っていた。高校生(当時)の女の子に対して怪物だなんてあんまりだと思った。
 それはともかく、画面の中の少女が打ったホームランはたしかに衝撃だった。
「私も、あんなホームランを打ってみたいなぁ……」
 当時中学生だったかなえはソフトボール部で投手としてプレーしていたが、女子野球部
のある高校を探し、進学した。三塁手になったのはたまたまだったのだが、四番の座だけ
は絶対に譲らなかった。そして気がつけば、プロ野球選手になっていた。
「でも、まだまだあの人には届かないかな」
 かなえはちらりと三塁のほうを見た。サードを守る御堂あづさと目が合った。
「かかってこいや。絶対三塁線は抜かせへんでー」
 あづさはグラブをバシッバシッと叩き、挑発している。

 打席の栃原かなえは大咲さくらの変化球に的を絞った。そして2球目の甘めのカーブを
右中間へ打ち返したものの、センター大木姫子の守備範囲だった。結局、センターフライ
で1アウト。
 ヴィーナス先発・大咲さくらは5番ジェニファー・キングマン、6番沢本美紗も続けて
打ち取って、この回も三者凡退に抑える。対するマーメイズの打線は突破口すら見つけら
れないようだ。
「みなさんどんまーい。勝負はこれからですーっ。次こそがんばっていってねーっ☆」
 マーメイズ先発・浅沼美羽が、ナインに檄を飛ばす。そして、マウンドに向かった。
 打線の援護が無いのはいつものことだ。美羽は、相手打者を打ち取る事に集中した。

「ほな、先制弾といきますか!」
 二回裏。先頭打者としてシャイニングヴィーナスの主砲・御堂あづさが打席に入った。
 あづさはレフト方向に高く打ち上げた。だが、レフトを守るキングマンが打球をポトリ
と落っことしてしまう。
(はぁ……ジェニファーの守備は目を瞑るしか無いわね……)
 守備に足を引っ張られるのは慣れている。美羽は、次の打者を打ち取る事に専念した。
 続く5番のマクスウェルはカーブを引っ掛けショートゴロ。6‐4‐3のダブルプレー
で一気に二死無走者に。結局、この回も先制とはならなかった。
「メンボクナイ。アヅサドノ……」
「ええて、ええて」
 併殺打を打ったエイミーをあづさが慰めた。
257代理:2010/06/30(水) 23:58:15 ID:R0kXuwns
5/6
 三回はさくら、美羽共に相手の下位打線を三者凡退に抑え、序盤は投手戦となった。
 やはり開幕戦はこうでないと。だが、栗田監督の仕事は無さそうだ。
「監督っ。どうですか、私のピッチング」
 手持ち無沙汰な栗田に好投を続けるさくらが明るく声をかける。
「ん? ああ。良いんじゃないかな」
 たしかに、ここまでは非の打ち所のないピッチングと言える。
「もー。ちゃんと見てるんですか?」
「えっ? もちろん見てるけど……」
 さくら少し拗ねたような顔をした。
「じゃあ、行ってきますね!」
 すぐに笑顔に戻り、マウンドに向かうさくら。栗田はその後ろ姿を見ているだけだ。

 4回表の横浜ブルーマーメイズの攻撃はトップに戻って一番の屋城昴から。
 俊足の打者なのだが、塁に出さなければ怖くは無い。しかし、転がせば内野安打になる
可能性がある。さくらとみのりのバッテリーは高めの速球で攻める。
 打席の屋城はセーフティーバントを試みるものの、ポップフライを上げてしまう。これ
をキャッチャーの丸山みのりがファールゾーンでキャッチした。これで1アウト。
「無念なり……」
 がっくりと肩を落とし、屋城昴はベンチに帰った。

 2番の賀藤春奈をショートゴロに抑え、この回もあっさりと2アウトに。そして、3番
のローラ・マスカーニが右打席に入った。
 イタリア出身のローラだが、彼女がなぜ野球を始めたのか。そのきっかけとなったのが
日本の漫画作品「大宇宙野球軍」である。

 ある日、神様からのメッセージを受けた女子高生が野球部を結成して宇宙からの侵略者
や魑魅魍魎や伝説の英雄たちと地球の存亡をかけて野球で戦う、という自分でも何を言っ
てるのかわからない話だが、とにかくその漫画を読んでローラが“野球”というスポーツ
(スポーツだという事は最初は理解できなかったが)に興味を持った、とのこと。
 そんなことはさておいて、ローラの打席である。
 ローラ・マスカーニの持ち味は、右へも左へも打ち分ける広角打法だ。また、変化球に
対応する能力が高いのが特徴でもある。
 対するさくらは力のある直球で勝負した。打席のローラは右方向へと打ち返す。
「……守備の範囲内」
 だがしかし、打球は一二塁間を守る川原恵美のグラブの中へと吸い込まれる。
 結局、大咲さくらはこの回もマーメイズ打線を三者凡退に抑えた。
258代理:2010/06/30(水) 23:58:34 ID:R0kXuwns
6/6
 一方のヴィーナス打線も浅沼美羽の前に3回までノーヒットである。二回り目のトップ
から始まる4回に何とか先制したいところだ。
「さあ、緒川さん。どうしましょう」
「俺に聞くな。お前が監督だろ」
「はは。そうですね」

 1番打者の小宮奈美が打席に立つ。監督からの指示は特に無いようだ。
「とにかく塁に出るだけっス!」
 奈美は第一打席と同様に初球からガンガン打っていく。
 3球目のカーブを綺麗に打ち返し、センター前ヒット。両チーム通じて初めてのヒット
が出た。
「……一応確認」
 続いて打席に入る2番の川原恵美へのサインは当然ながら送りバントだった。内野陣も
警戒してバントシフトを敷くが、それでもキチンと決めるのは流石である。

 1アウト二塁と先制点のチャンス(横浜側から見ればピンチ)を迎え、打席に立つのは
3番の大木姫子だ。
「ヒメ、先制点は譲ったるわ。ガツンと打ったれや」
「うーん。浅沼さんは苦手なんです〜」
 姫子がこう言うのには理由がある。昨シーズンには3個のデッドボールを受けていて、
それでなくてもインコースの厳しいコースを突いてくるのだ。

(むっ。あの胸……イマイマしいっ)
 マウンド上の浅沼美羽は、左打席の姫子をキッと睨んだ。
(……っ! 視線からエースとしての気迫をかんじます……)
 美羽に睨まれた姫子は少し怯んだように見えた。
 結局、姫子は内角への球をなんとか一塁線に転がし、その間に奈美は三塁にへと進む。
 しかし、これで2アウト。打席には4番の御堂あづさが向かった。

「ああん。御堂さん、たのみます〜」
「よっしゃ、いくでー」
 大きな素振りを2回。それから打席に入るあづさ。気合いは十分だ。
「御堂さん、負けませんよっ!」
 マウンド上の浅沼美羽は、その威嚇にも似た行為に負けるまいとボールを握ったままの
右手をあづさに突き出した。
「おっしゃー、かかってこいやっ」
 あづさの眼は、ホームランしか狙っていないかのようだ。ここで4番打者として求めら
れる仕事は、三塁走者の小宮奈美をホームに返す事だ。
 だが、あづさはこう答えるだろう。4番の仕事は相手のエースを叩きのめす事、だと。
 一方マウンドという名のステージに立ち、スポットライトを浴びている浅沼美羽である
が、この場面で悲劇のヒロイン役を演じるつもりは更々無い。

 この日最初の山場が、やってきた。

 つづく。
259代理:2010/06/30(水) 23:59:02 ID:R0kXuwns
投下終了です。

浅沼美羽登板時に打線の援護が無いのは別に嫌われてるとか
そういう事では無いです、多分…
260創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 16:37:11 ID:gMPqr5kI
好投すればする程打線の援護が無いとか、普通にあるあるw
261創る名無しに見る名無し
あげ