1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
「ひぐらしのなく頃に」の二次創作を発表するスレです。
SSや自作絵を見て貰いたいけど、公式は苦手って人集まれ。
l _ - ´ `丶 、 !
| / _, -┬r - __ \ |
/ ∠二≧|ム::V ,>、___ ィ::::\ j
L /t「 /辷jリ ヽ! 辷j_` 「|::::|:i::::{
|:::::l L___ノ! ヽ---- ' |:i::l::|:l::| ただし極端なエロは禁止だよ!
|l:::ハ 、 |从ハV 18禁要素を含む物はBBSPINKでやってほしいな
ヘ l ____ ″ ノ
,....、 ____ ヽ! ∨ У ,ィ7/
/ ヽ..._/二二二ト、 r‐ュ\ ` 二 ´ _ - |イ'
/ r┴┴‐┼──‐弋三三マヽヽ ___ / , l
j  ̄>──┴─ 、:.:.:.|─‐9|<7|l / ヽ、
f' 7´ ´¨`ヽ`ヽヽ:::::::__ヽ|}}─ j|^:|Yl / ィ::::| `ヽ、___
j 、l::;′ Y:::::l:::l::::{ ヾ!|!ュ:.:.:l|:::V ′ /:|:::::l: : :/
l l:::| ||:::::|:::|::ハ \_:.:.:ト、::ト、____ ィ´. : : |:::::l: /
l `ヽヽ __ノ/.::/::/:::::/ヽ  ̄ヽヽ: : : : : : /: : : : : |::::l:/
' / マ=∠∠∠∠ -'" ∨__/. : : : : : : j::::l:′
' ハ::::「 -r 、 ∨}} }: : : : : : : : :|::::l !
} ハ::::∨ ヽ ヽV: : : : : : : : : |::::l |
/ ヽ:::ヽ ヽ \: : : : : : : : :|::::l:ハ
最速の2ゲターが余裕の2ゲット
3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 20:06:47 ID:EuN8/Nj8
こういうスレをみるとこの板に集う連中のタイプが透けて見える
安心しる
このスレの今後の展開は君の読みが誤りだったと教えてくれるよ
需要の有無って言葉でね
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 17:27:23 ID:8blGN4Gr
( ・3・) ……。
(*・3・) 誰もいない……。
(*・3・*) 圭ちゃんとおじさんの同人誌を書くなら今だヌェー。
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 18:40:56 ID:s6aG9/NY
『前原圭一の最期 〜「ひぐらしのなく頃に」をヤフー動画で一話分(無料)だけ見て、後は適当にウィキで調べて〜』
@
前原圭一が園崎家御用達の食堂の扉を開けると…そこは地獄絵図だった。
「いらっしゃい圭一くん、なんにします?」
メイド服を着込み、店員になりすました竜崎レナが圭一に声を掛けた。
どういうことだろうか、その手には何故か巨大なナタが握られている。
ナタの鋭く砥がれた切っ先からは鮮血が滴り落ち、床を真っ赤に染めていた。
「レナ…一体おまえ、こんなところで何をやってんだ?」
「…ぎゃあーっ!」
圭一が言い終わらないうちに、店の奥からは人間のものとは思えない絶叫が発せられた。
それと同時にドガッドガッと重いものを叩きつける音が響く。
怒鳴りつける声、悲鳴、それらが交互に圭一の耳を貫いた。
「レナ…今のは一体何だ?向こうで何が行われているんだ?」
圭一は怯えながらレナに尋ねる。
だがレナは一度、圭一を睨みつけただけで質問を無視した。そしてすぐに嘘くさい笑顔を作る。
「お騒がせして申し訳ございませんニダ…あっ、申し訳ございません。今、仕込みを行ってスミダ…行っておりますので」
そういいながらレナは圭一を奥のテーブルへと誘う。
圭一は躊躇した。床には何のものとも区別のつかない血や肉片、それに臓物が散らばっている。
それらの間を這うように丸々と太ったゴキブリが蠢き、大量の蝿がブンブン唸りを上げて飛び交う。
「足元にご注意くださいニダ…あっ、ご注意くださいね、ケイちゃん。散らかっててゴメンねスミダ」
レナは丁寧な口調で言った。しかしその言葉の裏には圭一を脅迫するような強い意志が感じられた。
(絶対にヤバイ、レナといい、最近の雛見沢村まともじゃないよ…どうしよう、逃げようか?)
圭一は思った。このままではマズイ、先ほど聞こえた悲鳴だって間違いなく人間のものだ。
ふと視線を感じ、圭一は恐る恐る入り口の方を振り返った。
するとそこには、いつの間にか魅音と詩音が立ちはだかり、圭一の方を見ながらニヤニヤと笑っていた。
「…圭一くん、どうしたの?」
と、突然背後からレナが圭一に声を掛けた。
ハッとして向き直る圭一。するとレナは手にした巨大なナタを掲げて圭一の目の前でギラ突かせた。
研ぎ澄まされた刃に鮮やかな赤い血が伝い、圭一のすぐ目の前でゆっくりと刀身を流れる。
「ひいっ!」
圭一は思わず叫び、後ずさる。
A
「…どうぞ圭一くん、こちらの席へ」
おびえる圭一を嘲るような笑顔を浮かべ、レナは椅子の一つを引いて圭一に座るように促した。
圭一は真っ青な顔でレナの言うとおりにその席に座る。
(ただ事じゃない、明らかにレナの目は異世界にブッ飛んでいる。)
圭一の足は震える。逃げるタイミングを喪失した今、圭一はもはやなすがままだった。
再び顔を上げると、入り口前に立ちはだかる魅音と詩音と目が合った。
彼女らは一様に目をキラキラと輝かせ、圭一を睨みつけながら嘲笑していた。
(殺される!)
圭一はとっさに思った。まるで猛獣の群れの中に放り込まれた子羊のような、そんな気分だった。
テーブルの上にも細かな肉片が散らばり、気味が悪いほど腹が膨れたゴキブリがモサモサと這い回っている。
「バンッ!」
突然、何者かの手がそのゴキブリを叩き潰した。とっさのことに驚き、圭一は思わず身体がビクつかせる。
いつの間にか傍に来ていたレナがしゃがみこみ、圭一の顔を覗きこんだ。
「…なんにする、圭一くん?」
そういうとレナは、狂人のように歪んだ表情を浮かべ、笑った。
開かれたレナの口から黄色く尖った乱杭歯が覗き、キムチ臭い息と共に吐き気のするような腐敗臭が圭一の顔にかかる。
「…あ、あのレナ、A定食で」
「A定食ですね!」
レナは大声で復唱し、厨房に向かって圭一には理解不能のハングルで大声で怒鳴りつけた。
すると厨房から猛獣の遠吠えのような声が響き、それと同時に入り口に立ちはだかる魅音と詩音が、
「ウリナラマンセー!」と声を揃えて叫ぶ。
圭一はもはや生きた心地がしなかった。
…悪夢のような数分間、圭一はテーブルの上を這い回るゴキブリを眺めて過ごした。
時折圭一の頬に蝿が止まる。圭一それを払おうとせずに黙って椅子の上で佇んでいた。
そんな圭一の様子を見ながら、入り口を塞ぐ店員たちはゲタゲタと笑い声を上げてはしゃいでいた。
「…お待たせしました圭一くん。A定食だよ」
そういうとレナはトレーを圭一の目の前に叩きつけるように置いた。
その料理を見た瞬間、圭一は意識を失った。
トレーに並ぶ皿には、火で炙られた北条沙都子の生首と手足が、煮込まれた臓物と共に盛り付けられていた…。
B
…意識を取り戻した圭一は、大きな台の上に寝かされていた。
「ここは、ここはどこ?」
圭一はボーッとする頭を軽く振りながら思った。
天井には裸電球がゆっくりと揺れている。その周りを丸々と太った銀バエが飛び交っている。
(…の、喉が渇いた。水)
圭一は起き上がろうとした。が、
(?!)
起き上がろうとしても起き上がれない。
なんと両手両脚がテーブルの四隅に鎖で括りつけられていた。
「ようやく起きたニダね…」
背後から声を掛けられた。タケルはギクッとしてそちらに顔を向ける。
そこにはレナと魅音と詩音がならび、タケルことを見下ろしていた。みな一様にニヤニヤと笑っている。
「…こ、コレは一体、どういうことなんだ魅音、それに詩音もっ?」
圭一はオズオズと尋ねた。すると彼女らは突然ゲラゲラと笑い出した。
(な、なんなんだよ一体…)
圭一は何のことか理解できず、ただ黙って彼らのことを見るしかなかった。
「チョッパリ、いやケイちゃん。お前はこれからウリたちの晩飯だ…美味しく召し上がってやるから感謝するニダ!」
魅音の一人がそういうと、一同がドッと笑い出した。
あるものはテーブルをバンバン平手で叩き別のあるものは脚で床をドンドンと踏み鳴らしながら。
床の上を這い回るゴキブリが数匹、その彼らの足で踏み殺された。
圭一は唖然とした。今聞いたことが信じられなかった。
C
「…ジャリッ、ジャリッ」
厨房の奥のほうから物音が近づいてくる。するとレナは騒ぎをやめて立ち上がり、
「ウリナラマンセー!」
と声を揃えて叫んだ。その声に応えるように、厨房の奥からなにかの唸り声が響いた。
圭一は足音の方を見る。まるで獰猛な獣のような気配が、確かに向こうから近づいてくる。
恐怖のあまり、圭一はもはや体の震えを抑えることなどできなくなっていた。
気づいたら失禁しており、寝かせられている調理台の上に糞便の生暖かい感触が流れるのを感じた。
「あらあらケイちゃん…こんなおいたしちゃってダメねえ!」
魅音が圭一を見下ろし、ゲラゲラと笑う。
「ケイちゃん、罰として麻酔なしで解体するんで、よろしくね!」
詩音は圭一の剥き出しのペニスを指先で弾きながら、魅音と共に大笑いする。
…厨房と部屋を隔てる暖簾が捲くれた。
遂にその者が現れた。
身長2メートル以上ある…それはかつて古手梨花であったバケモノだった。
手には巨大な黒い刃が填められた巨大な鍬…古手神社の御神体、が握られている。
「…アニョハセオー」
盛り上がった筋肉、なめしたような質感の素肌には気味が悪いほどに血管が浮き出ている。
おそらくは入江研究所で打たれたドーピングの影響なのだろう、アゴにはビッシリと髭が生えている。
可憐で清純な少女の面影などどこにもなく、血走った目は完全に狂気の域に達していた。
「り、梨花ちゃん…?」
圭一は梨花に向かって呟いた。しかし梨花は口元からヨダレを垂れ流し、うれしそうに圭一の肉体を睨みつけている。
唯一梨花ちゃんらしさを残す真っ直ぐな黒髪だけが、吊るされた裸電球の輝きを反射し、つややかに輝いた。
「梨花ちゃん、ほら、このブタが今年の生贄だよ!」
「オヤシロ様に捧げるにはちょっと物足りないけどね。警視庁公安部に目をつけられてたんでゴメンね!」
魅音と詩音は少し申し訳なさそうに、薬物で巨大化した梨花に謝って見せた。
しかしその表情は、これから行われる儀式への喜びで満ち溢れている。
D
「ゴメンね圭一くん。私達、喰屍鬼だって教えるの忘れてたね。」
レナはそういうと、圭一のペニスを握りしめた。
完全に萎縮し、ペニスを、レナはか細い指で強引に引っ張りだす。
そのまま口にくわえ込むと、圭一が勃起する間も無く、それを牙で食いちぎった。
「ぎゃああっ!」
股間から大量に血を垂れ流し、調理台の上で大暴れする圭一。
「ダメだよレナ、いきなり食べ始めちゃ…ちゃんと美味しく料理してあげないと、生贄になるケイちゃんに失礼だよ」
魅音がレナを諌めると、レナは口に咥えたペニスの破片をペッと床に吐き出し、
「ゴメンみぃちゃん、私、もう我慢できなくて。えへっ!」
と、可愛らしい笑顔を作ってみせた。
股間に走る激痛で意識が飛びそうな圭一は、涙で滲む目でそのレナの表情を見つめる。
雛見沢村に来て間もなく知り合ったあのころのレナ…そのときの表情と何ら変わらないその笑顔。
その笑顔のまま、彼女は今圭一を殺して食おうとしているのだ。
「そうよね、そろそろ私達もお腹が空いてきたよ、ね、おネエ」
詩音がそういうと、魅音はうなずく。
「じゃあ、梨花ちゃんお願い…一気に殺っちゃって」
「やめろ、やめてくれっ!俺、死にたくないよっ!」
圭一は叫んだ。喉が引き千切れるほどの大声で叫んだ。
ふと見ると周りには雛見沢村の村民たちが勢ぞろいしている。
皆一様に血走った目をしておりで圭一を睨みつけて興奮していた。
その中には、圭一の父と母もいる。
二人とも凶暴な目付きで、口元からヨダレを垂れ流して自分の息子を眺めていた。
「みんな可笑しいよっ、どうしちゃったんだよっ!なあ、正気に戻ってくれよ…父さん、母さん…それにレナもっ!」
「ウリイイッ!」
空を劈くような奇声を上げ、古手梨花は鍬を振り上げた。
「やめろーっ!」
大声で叫ぶ圭一。
そんな圭一のどてっ腹に向かって、梨花ちゃんは迷うことなく一気に鍬を食い込ませた…。
E
…30分後、圭一の肉体は完全に解体された。
内蔵は綺麗に抜き取られて壁のフックに吊るされた。
後でこれでソーセージを作るのだ。
両手両脚はそれぞれ胴体から切り離され、さらに肘と膝で切り分けられた。
特に肝はオヤシロ様と古手梨花の大好物であり、丁寧に処理され大なべで塩茹でにされた。
胴体から切り離された頭は、頭蓋骨に円状に穴を開けられ、露わになった脳髄にシオとコショウが振られた。
これは生のままマッコリの付け合せにされるのだ。
そして数時間後、雛見沢村の村人たちは圭一の肉体を綺麗に平らげた。
残った骨は大鍋で煮込まれ、スープの材料になった。(了)
これ…ありなのかなぁ?
表現方法もぎりぎりな感じ
ありかなしかで言えば、ありだと思う。
ただ、面白いとは思わないけどね。ひぐらし二次としては勿論の事、ホラーとしても、差別ネタと
してすらも。
朝鮮人ネタも安易で、嫌韓ブームに便乗しての悪意垂れ流しに終始してるし、ここでひぐらしの
世界やキャラを使う意味も不明だし、グロ・ホラー要素の要となる「村人達が急に狂って人肉喰い
始めた事」も他の要素で際立つどころか足を引っ張られて、全く生きて来ないし。
ひぐらしキャラとか本当はどうでもいい、朝鮮人を貶めてさえいれば何でも面白いって人以外には
受け難いんじゃないかな?
それでも、明確な基準もないのに「読者を不快にしうるから」なんて理由で存在を消したり不可視化
する……「なし」って事にしていくべきではないと思う。不快なものやつまらないもの、気分が悪い
ものも、不快なまま、つまらないまま、気分が悪いままにそこにある事を認める必要もあるというか。
……この人ひぐらしが嫌いなんじゃない?
>「ひぐらしのなく頃に」をヤフー動画で一話分(無料)だけ見て、後は適当にウィキで調べて
(;・∀・)
鬼隠し編だけでもやったらいいのにね
無料なんだから
鬼曝し系の二次創作でオススメってないですか?
一応、創作発表板なんだし、自分で書いてみよう! と言ってみる。
なるほど
最初から全部読んだけど、
>>14って何様の積もり?というのが感想かな
>>14のことを知らないやつがいるとはね
>>14は天才との誉れ高い才能あふれる作家・評論家だ
彼の紡ぎ出す作品は全世界が震撼するほどの名作だ
まだ発表されてないけどね、そういう予定なんだよ
乞うご期待
わくわく
まあ確かに自分じゃ何も書けないくせに偉そうな批評するやついるよな
文句あるなら自作を晒してから言えと
元の作品がそれなりに悪趣味なんだから別に問題ないんじゃね?
26 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/07(金) 14:37:30 ID:5K90V9EO
age
新作まだ?
梨花主観、オリキャラ含む、祭と澪の都合いいとこどり、昭和59年の6月のおはなし
需要ある?
オヤシロ様がちょいと服役中ですので、もうしばらくは無理の模様です。
自分で書けば?
他人に頼るな
書き込んだら偉そうに批判
批判するくせに自分じゃ書かない
そういう愚か者が廃れさせたスレの典型
それはこのスレ全体の問題だよ
34 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 11:00:19 ID:vCYYj4q9
軽く流し読みしたけど
廃れる程賑わってなかった
35 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 18:22:21 ID:gkfk22Mp
殆ど見てないってんだから、単なる間違いだろ
ksks
>>14に秘められた暗号を俺様が大胆に解読
あ
た
し
朝鮮人
や
た
ら
受 難
する
の
北の国からのメッセージと見た
すげえええええええ
確かにそうだよ
まさかこんなに時間が空いて解明されるとは
>>14も思わなかっただろう
41 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 08:46:38 ID:hyoj8Hv+
wwwwwww
www
43 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 08:34:07 ID:DWy/O/Ub
あげ
44 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 03:26:55 ID:dcTYdSBQ
スレ1〜43は皆黄金郷へ招かれました。
1スレ目の40番台にして早くも43スレ目までの運命が決まってしまったな
46 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/17(木) 18:16:23 ID:7NR9nwnG
1年近くたって
作品はたった一つ
レスは45
それが現実
2ちゃんでSSはいらんだろ。エロパロで充分。書きたい人は自分で公開してるし。
>>47 公開できる環境が無い人に酷な言い方はいかがなものか?
俺載せよっかなw
エロなし圭一×沙都子メインの奴。
途中までだけど。
49 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/18(金) 18:44:10 ID:798DCKkH
どうぞ
スレを捨てておくのもなんだし
ちょwよく見たらレス1〜50までで一年くらいたってんのなw
落ちないんだなこの板は。
ひぐらしのなく頃にAnother
こころむすび編「幸せにしてくれてありがとう」
序章<あなたに出会えて>
ガチャッ!「沙都子ぉ!!俺だ!圭一だ! 無事かっ!!」
平成6年6月、初夏の日差しが淡く照りつける鹿骨大学附属病院・産婦人科第二病棟・興ノ宮分院212号室のドアを、
もの凄い勢いで開ける音と共に、二十代半ば程の黒髪の青年が飛び込んできた。
「前原先生ぇ、ゼェゼェ……病院では静かにして下さいとあれほど……」
後ろから胸に主任と書かれたネームプレートを付けた女性が、怒気を混じえた声で息を切らせながら青年を非難している。
「す、すいません連絡を受けて居ても起ってもいられず駆けつけたもので」青年は僅かに後ろを向き、
主任さんにペコペコ頭を下げながらすぐに前に居住まいを正し、病室を見渡した。
病室内では双子なのだろうか?翡翠色の髪の毛の女性が二人と黒髪の小柄な女性が皆唖然とした表情で青年を見やっていた。
そして蜂蜜色の髪の毛の女性がベッドにおり、青年の黒髪に近い茶髪の赤ん坊を胸に抱いてこれまた怪訝な表情で青年を見ていた。
どうやら皆、凡そ同世代のようである。
「け、圭ちゃん……ハ、ハハ……病院じゃあ」
「圭ちゃん!!病院じゃあ静かにしないと駄目じゃないですかっっ!」
「みぃ、圭一は相変わらず喧しいのです☆」
翡翠色の髪の毛をショートポニーテールにした女性が青年を諌めようとした所、セミロングをライオンの鬣のように逆立たせながら青年を睨みつける同じく翡
翠色の髪の毛の女性、そして生暖かい視線を、青年に向けながらも何故か嬉しそうに微笑む黒髪の女性。
「け、圭一さん病室では静かにして下さいましっ!この子が驚いてしまいますわっ!」
柔らかそうな蜂蜜色の長髪を、一本の緩い三つ編みに編込み、右肩から前に流すように整えた女性が非難ではなく抗議するように青年に話しかけた。
圭一と呼ばれた青年は失言で某女性団体から一斉砲火を浴びる政治家のように「ぐはぁ」と大袈裟な仕草を取るが、直ぐに復活し、蜂蜜色の髪の毛の女性と、
その女性が抱いている赤ん坊を見つめた。
「沙都子でかした!女の子だってな、よしよし俺に似て凛凛しいぜ」
「どうして女の子なのに凛凛しいんですの?…………まったく圭一さんはもう少し日本語を勉強した方がいいですわ
……それにこの子は私似ですわ、ほらこの髪を見てくださいまし」
沙都子と呼ばれた女性は、夫であろう圭一に向かって溜息をつきつつ、その大きな紅い瞳を潤ませて愛する娘と夫を交互に見比べた。
確かに良く見てみると、うっすらと生えている髪の毛は金色がかっていた。
「ちぇっ……でも口元なんかは俺に似て……」
「圭ちゃ〜ん、二人の子供なんだからどっちにも似てるにきまってるじゃん、一々気にしちゃ駄目だよ」
ショートポニーテールの翡翠色の髪の毛の女性が呆れながら圭一に向かって突っ込む、さっき発言の途中で邪魔されたのを根に持っていたのか、
やけにうれしそうだ。
「魅音!そこはこだわるべきだ!!昼夜勤続きの缶詰生活で娘が生まれた連絡を受けたのに二日も会えず、そんで義兄さんから授乳の為に今から娘が病室に来るって
連絡を受けて速攻で駆けつけたんだ……それにさっき詩音や梨花ちゃんから向けられた恫喝や視線の挽回の為にも……そして俺も……俺も幸せの実感が欲しくて……」
最初は勢いよく言い出した圭一だが、最後の方は恥ずかしいのか小声になりながら魅音と呼んだ女性に一生懸命説明?をしていた。
「まったく、圭ちゃんは相変わらず子供ですね……」
「圭一……幸せの実感なら、とうに感じているのではないですか?」
ともう片方……詩音らしき女性と梨花と呼ばれた黒髪の女性が圭一に向かって話しかける。
『……ってお前<詩音>に言われたくねぇよ』と言いかけ、言った後の惨劇を予想した圭一は詩音に向かず
「感じているって?」と梨花に話しかけた。
「勿論ボクの沙都子と結婚した時点のことなのです!」と、得意げに話す梨花嬢。
「……ボクのっていうのは差し置いて確かにそうだな」圭一は笑って返答する。
その言葉に沙都子は、頬を赤くして、照れ臭さからなのだろうか、視線を圭一から赤ん坊に向ける、その時。
「むぅ……圭一君、主任さんの顔色が赤から紫色になっているよ、これ以上騒ぐと君だけが追い出されるような気がするんだけど
……それとその格好のまま来たのかい?」
入り口に居る主任さんの横から沙都子と同じ色の髪の青年が顔を出した……年からいえば圭一と同世代らしいおっとりとした感じの中性的な顔立ちの青年である。
「悟史義兄さん!!電話有難う御座います………ってああ!やべぇそのまま来たからjそvそjヴぉsじょv☆」確かに悟史の言う通り、圭一は白衣や聴診器それに
研修医カードの入ったバッジ他……見舞いに来るような格好ではなかった。
「いきなり電話を途中で切ったんでもしもと思ったら、案の定その格好だもんね、ははは……ちょっとマズイかな」
悟史は圭一を見て遠慮がちに笑った。
「あなたぁー圭ちゃんに連絡するって言って随分繋りましたね、早く来て頂けないから私さびしかったんですよぉ」
気持ち悪いぐらいに猫撫で声で詩音が悟史に抱きついた。
「ちょっと売店に………って! あ、あなたって、僕は別に……ああ、まいったなぁ。……そうだ、それよりも圭一君はもう赤ちゃんを抱っこしたの?」
悟史は詩音に抱きつかれ、その発言に戸惑いながらも、話しを逸らそうと圭一に尋ねた。
「いやまだです、色々ありまして………沙都子、俺にも抱かせてくれないか?」色々な事は置いといて沙都子に近づき赤ん坊に優しく触れる。
「あぅあぅあぅ〜」まだ目は閉じているのだが、鼻先に不意に触れる沙都子の髪の毛に対し、
赤ん坊は擽ったそうな素振りを見せる。その後、髪の毛に興味を示し、猫じゃらしにつられた子猫のようにじゃれ付いて遊んでいる。
沙都子は「はい圭一さん」と優しく赤ん坊を圭一にあずけた……次の瞬間圭一の顔が
驚きと共に、はちきれんばかりの笑顔になり、その後感極まってしまったのだろうか、泣き顔になった。
「こんなにも小さくても、柔らかくて暖かい……しっかりと生きているんだ……」
圭一にはなんともいえない感情が自分に噴出している事に気が付いたが、その激情は止む事は無く寧ろダムの落水のようにとめどなく溢れて止められない。
「沙都子……本当にありがとう、こんな俺の子を育んでくれて……本当にありがとう」
圭一は人目も憚らず涙を浮かべて愛妻である沙都子に向けて感謝を述べた。
「私の方こそ圭一さんには……いえ、みなさんには感謝しても仕切れない程、沢山助けて頂きましたし護って頂きましたわ。
本当に感謝しても仕切れない程に」
そのやりとりを見ていた周りの全ての人も貰い泣き、いや二人の過去の紆余曲折を経てやっと達成された、
本当の幸せの意味を知っているからこそ涙を流していた。
「感動の場面の所、申し訳ありませんが前原先生、本院(附属病院)の竜宮さんから御電話が入っておりますが……その、かなり怒っておりますので……」
後ろを振り向くと、主任とは別の看護師の女性が居り、遠慮がちに圭一に話し掛けた。
それを聞いた圭一は名残惜しそうに病室を離れナースステーションにある外線電話に手を伸ばした。
しかし圭一は電話口から「圭一先生」と言う声が聞こえると、受話器から5cm程耳を離した、次の瞬間
「なぜ興ノ宮分院にいらっしゃるのですか???勤務時間という物の概念が貴方には無いのですか!?ええ?ええ?すみませんじゃないんですよ!
先生が居ない所為で何人の人に迷惑が懸かると思ってるんですか???はぁ!?確か奥様が入院なされていますよね?????沙都子さんでしたっけ?生まれた??
だからどうしたんですか????先生が居らっしゃらないと回診に回る際に患者さんが困るんですよ・・・そもそも先生が#ЯШdshだからこそkj可否chjん、
だからsHふぃckそうでjwけwkにぱぁ☆jwrgヴwsg」
電話口から離れているとはいえ、その声は十分彼の耳に届くほどの怒声である。
しかし彼はそれを別段気にするでもなく、電話先の罵詈雑言を馬の耳になんとやらで聞き流していた……それにそもそも圭一は一言も発言していないのだ。
すると電話先から「れ、礼奈君……そ、そこまで言わんでも……た、確かに無断外出は重大な就業服務違反だが、奥さんの出産と聞いて居てもたってもいられなかった
彼の気持ちも判らんでもない。この件は私の所で留めて置こう。前原君に急がずに帰ってくるように伝えてくれ………い、いや替わらないでよろしい。
礼奈君にあれほど怒られたのだし彼も反省しているだろう。………ははは」
彼の直属の上司である鮫島内科医長と担当看護師である竜宮礼奈嬢のやり取りが聞こえてきた。
厳密にいうと、赤ん坊が産まれたのは約一日半前である、しかし圭一に直接聞いたのならともかく、
礼奈との電話のやり取りを又聞きしている以上勘違い位はするだろう。
暫くすると「圭一君、鮫島先生が今回の件は不問にするってさ…………それにもう少し沙都子ちゃんと一緒にいてあげて、旦那さんが一緒にいてあげなきゃ沙都子ちゃんが、
かわいそうだよ…………だよ!」と竜宮礼奈嬢は圭一に対して、友人に話す様な声で優しく話しだした。
「レナ…………一芝居打たせちゃって悪かったな……始めからみんな近くに居たんだろ? レナが俺と話す時、名前で呼ぶ時は大抵意味があるからな」
圭一はレナ(礼奈)に対して謝罪と感謝の言葉を述べる。
「うん…………でも、鮫島先生は始めから自分で確かめないで私に確かめさせていたから多分許してたんじゃないかな?
一応他の人の手前叱る立場の人だから………それにあれだけ私が怒鳴れば他の人達も鮫島先生が言わなくても、みたいな空気になるし」
レナはそう言うと電話口で笑って見せた、電話先の圭一にもイメージできるくらい彼女の声は弾んでいた。
現在、前原圭一は鹿骨大学付属病院の内科病棟の研修医として勤務している。
研修医とはいっても地方の貧乏大学病院の弱みというか人員不足の煽り、大学側の無理なコスト削減の結果、流石に薬剤選定は無いが、
研修医であっても簡単な診断及び入院患者の回診等の仕事は研修医の圭一がこなす事が多々あった。(数年後に近隣の農村である、
雛見沢村の診療所の所長が過労によって倒れ、診療所自体が閉鎖する騒ぎのときに、その診療所にて、復帰した所長と共に、
二人三脚で診療にあたる事になる圭一にとっては、このときの経験は大いに役に立ったと言えなくも無い)
そのような事もあり、大学側もあまり無碍に圭一を咎めることが出来ないという事実もしっかり存在していた。
そんな圭一にとって鮫島銀八内科医長は両親・雛見沢の仲間の次に大切な尊敬できる人物であり信頼できる大先生でもあった。
そして圭一の回診助手もとい相棒としての竜宮礼奈(レナ)の存在も大きかった。
実は圭一とレナは鹿骨市・興ノ宮地区・雛見沢村の分校以来の幼馴染、それに先ほどの病室に居た魅音・詩音・梨花、悟史そして妻の
前原(旧姓北条)沙都子も同じく雛見沢村の分校出身の幼馴染…………それ以上のかけがえのない仲間だった。
圭一は沙都子の病室まで戻っていった……幸い?いい意味でうるさい連中は面会時間終了と共に先ほどの主任さんに追い出され
……もとい退出を促され渋々ながら岐路についていた、悟史は詩音の「悟史きゅ〜〜ん、今日は私のマンションに泊まっていって下さい」
という悪魔???天使の誘惑により泣く泣く??詩音と共に帰っていった。
「沙都子、色々あって今日は疲れただろ?ゆっくり休んだほうがいいぞ」圭一は沙都子に対して優しく、気遣うように頭を撫でた。
「圭一さんこそ病院を抜け出して大丈夫ですの? もしクビにでもなったら私とあの子が路頭に迷いますわ」
沙都子は圭一の気遣いは無用とばかりに話の輿に冗談を加えて笑顔で圭一に話しかける。
「大丈夫だよ、レナと鮫島先生が上手く、うやむやにしてくれたから」そういって圭一も笑ってみせた。
「………レナさんも看護婦さんになって圭一さんを支えて下さっているのですわね、私も何か圭一さんの役に立てればいいのに」
そういって沙都子は少し悲しげに溜息をつく。
「そんな事はないぞ、沙都子が俺の傍に居てくれるだけで嬉しいし仕事も頑張ろうって気持ちにもなる……沙都子の幸せの為って思えたから俺はあの時
………あの昭和58年の6月を頑張れたんだからな。……沙都子の存在が俺の全てだ、それに大切な存在が増えた事だし……うん。」
今は保育器の中でスヤスヤと眠っているであろう愛するわが子を見据えるように圭一は呟いた。
「圭一さん………」沙都子は瞳を潤ませて圭一を見つめる。
「また明日来るから、沙都子はゆっくり休んで早く退院できるようにならなくちゃ」
圭一はそう言うとまた沙都子の頭を優しく撫でて病室をでる……とその時。
「あ、あの、圭一さん……」沙都子がおずおずと遠慮がちな声色で圭一を呼び止める。
圭一が振り返ると、沙都子は目に涙を浮かべながら「幸せにして頂いてありがとうございますわ。
私、今ある現実を………今でもまるで夢のように感じてしまって。………圭一さんに出会えて本当に………幸せです………!」
ベッドの上で正座になり、さらに三つ指付いて圭一に深々と頭を下げた。
それを見た圭一は慌てて「何言ってんだ!!まだまだこれからどんどん幸せになるんだから今際の際にとっとけ………そんな事を言ってるとまた<頬っぺたムニムニ>の刑にすんぞ………!」
「ふふっ………懐かしいですわね………。」
「と、とにかくまた来るから、絶対安静だからな!」
照れ臭く答えて病室から出たが、なんとも言えない感情が自分の中に溢れ出している事に圭一は気が付いていた。
沙都子は圭一の出て行ったドアを見つめながら考える
『私の人生にもしも……もしも圭一さんが居なければどうなっていたのだろう? あの昭和58年の六月の時点で私は幸せになれたのだろうか?
……いや、きっと私はどうにもならない運命に絶望して自暴自棄に………自分の誇り・生命さえも全てみずからの命を以って全ての絶望を清算しようと。
……最低な現状・最低な人・最低な生活・強さの意味を穿き違えた自分・逃げ道としての兄を待ち続けた自分・大切な仲間の救い手を放棄しようとした自分・そして
……大好きな人にさえ反発し、傷つけた自分。そんな救われる資格の無い、全てに抗わなかった弱い私を圭一さんは救ってくれた。
……それどころか兄である悟史さえも……圭一さんは知らないけれど、私はありのままを梨花から聞いて知っている……自らが傷つく事など厭わずに、そ
れこそ百難、いや千難にも勝る程の辛く陰湿で破滅的な私の運命に立ち向かって………そして難無く打ち破ってくれたあの人の行った全ての軌跡と、奇跡を………』
「圭一さん……うぅ、グス、ひぐっ、うぇっうぇ」沙都子は自分の意思とは関係なく目尻に溜まった大量の涙を、堪え切れずに泣きだしてしまった。
唯々………溢れる感謝の涙が止められない。
今は保育器にスヤスヤと眠っているだろう、愛する娘……彼と自分との間にできた幸せな未来の象徴たる、
愛しい我が子、そしてふっと頭に浮かんだとある女性……よくは思い出せないが彼女を優しく導いてくれた優しい存在。
「きっと一生掛けてもご恩返しをさせて頂きますわ……圭一さん……そして……」
圭一はナースステーションに待機している看護婦に頭を下げ、既に帰宅していた主任さんにお礼の言葉をお願いして、
自分の車の中まで戻り、そこでタバコを咥え一息ついた。
そして「……幸せにしてくれてありがとうか、それはこっちのセリフだよ、沙都子……………………羽入さん。」
一人きりの世界で圭一は愛する妻と、他に別の誰かの名前をふいに呟く……。
そして思い出す……昭和58年の6月頃……初夏の日差しが照り付ける、一所忘れがたいあの季節の事を……。
そう……。
ひぐらしのなく頃に
BGM:Thanks
昔々ある所に、自らの不死を嘆く一匹の鬼がいた。
その鬼は妙齢の美少女といっていいほど整った容姿をしており、やや遠くから見れば彼女は人間にしか見えない程だった。
彼女を鬼と至らしめたもの、それは彼女の紫色のロングヘアーの両端、こめかみの少し上の部分から紫色の角の様な物が
下向きに生えていたからである。
鬼には何か辛い過去でもあったのだろうか? その瞳は何も映さず、表情も虚ろで、只ひたすらに呪詛の言葉を繰り返すだけの日々を送っていた。
ところがある日、その鬼の耳に何処からか風に乗って小さな声が聞こえてきた。
『こんな山奥に人間の声?……桜花』鬼は当初、その声を訝しげに感じていたが、次第にその端整な顔を歪め、
呪詛の言葉を紡いでいた口を閉ざした。
『薄汚い人間ども……尚も私の心を掻き乱すかっ!』鬼は憤慨した表情で叫んだ。
そして声の持ち主を探す為、二度と関わりを持つ事を拒んだ筈の人里近くまで、声の方角を頼りに下りて行った。
『にー…………にー』その声が沼地の方から聞こえてきた。
そして鬼は自らの爪を更に鋭くして、声の主が居るのであろう沼地に近づいていった。
しかしそこで鬼が見たものは『ぐすっ ぐすっ、えぐ……にーにー』沼地の畔に蹲って泣きじゃくる、蜂蜜色の髪色をした小柄な少女の姿だった。
こころむすび編「幸せにしてくれてありがとう」
第一章<ですわチビ>
昭和58年6月9日………深夜
「今回の惨劇の世界はここからなの? 羽入……」
古手梨花は眼前に迫る古手神社の高台にある、柵に向かって苦々しく呟く……まるで獲物を捕らえ損ねた狐のように嫌悪感に顔を歪ませながら。
すると、何も存在しなかったと思われた柵に腰掛けるように、妙齢15歳程の不思議な巫女装束姿?の少女が現れた。
……現れたと表現する事は正しいのか判らない???少女は柵から突然、半紙に落とされた墨汁のように、
柵だけの何も無い筈の景色からまさに蜃気楼のように、浮かび出したからである。
しかも少女には普通の人間には有り得ない特徴……紫色のロングヘアーの両端、こめかみの少し上の部分から紫色の角の様な物が下向きに生えていた。
「り、梨花……いきなり惨劇と決め付けるのは良くない事なのですよ、今度こそ幸せな結末を迎えられるかも知れないのですから!」
羽入と呼ばれた少女?は梨花に向かって困ったように答えた。
「そんな事言われたって説得力なんてまったくないわよ。 この前だって沙都子を鉄平から助け出してやっと幸せになれる
……私が必ず殺される無限地獄から抜け出せる、希望を持てると思ったら、最後の最後にあの女から、あんな事をされれば、
もう絶対に希望なんて持てないと思わない?」
梨花は羽入に向かって呆れた様に笑いながら呟く。
「あぅあぅあぅ……今回こそ絶対に惨劇を回避してみせるって梨花に決意して貰わないとボクも頑張りがいがないのです。
きっと超えられる、超えなければならないのです!頑張りましょう、梨花!(………相変わらず、この娘は………)」
羽入は両手に握り拳をつくりガッツポーズで、梨花を励ますように答えた。
「アンタはそういつも簡単に言ってくれるわね……まぁいいわ、この前の世界では希望を持てた間はとても素晴しかったし嬉しかった。
何度でも経験したい程満ち足りていた……それだけでも百万の富に足るかけがえのない記憶……例え同じ結末になろうとも、
最後まで抗うことを厭わせない世界……やり遂げよう最後まで」
最後の方は小声で聞き取りづらかったが梨花の暗い心の内に、勇気の光が眩く輝いた事だけは、羽入にも理解できたようだ。
「そうと決まったらもう眠る事にするわ、もしも沙都子が目が覚めて私が居なかったら心配するだろうし……」
そう言って踵を返し、沙都子が眠り待つ住居に向かって歩き出した……その後ろ姿を見ながら羽入は小さく呟く。
「梨花……ごめんなさいなのです、幸せな世界にやっと辿り着いた筈の貴女を
……いえ、昭和58年6月の運命に打ち勝った筈の貴方達にまた昭和58年6月を迎えさせてしまって。
……でも、ボクにはどうしてもしなければいけない事があるのです。そしてボ、私のおこなった最大の罪の償いの為に
……沙都子、やっとこの世界であなたとの約束を果せそうなのです……」
そう羽入は呟くと、また蜃気楼が消えるように姿を闇に纏わせた。
辺りには深とした静寂のみがあるだけである。
昭和58年6月10日・雛見沢分校AM8:05分
「け、圭一君……な、何を調べているのかな……かなぁ?」
分校の玄関前の靴箱で竜宮礼奈は園崎魅音と共に三人で登校してきた前原圭一の奇行に首を傾げた
……圭一は自分の靴箱の周辺・そして靴箱の中まで念入りに調べ始めたのである。
「ん?ああ、あの胡散臭いお嬢様言葉の<ですわチビ>が俺の靴箱に悪戯を仕掛けていないか調べてんだよ。
この前も上履きの中に松脂をたっぷり擦りこみやがって痒くて仕方なかったし、その前なんか俺の歩幅第一歩の位置を予想して、
ワックスで磨いといて俺を滑らせやがった……ったくギャグマンガ宜しくって位のこけ方をするところだったぜ」
そう言って圭一は場面を思い出したのかフガーーと怒り心頭のリアクションで礼奈や魅音におどけて見せた。
「くっくっく……あの慌てた圭ちゃんはそりゃもう直ぐにでも赤塚○二夫(御冥福をお祈りします)が絶対デッサンに来るって位の姿だったからね、
う、うひゃひゃ……おじさん今思い出しても……わ、笑いが止……」
そう言って魅音はお腹をすくめ、おどけた仕草で圭一に向かい合った。
「魅音、笑いすぎだ……それと自分の事をおじさんって……」とため息をつきながら圭一は上履きを手に取る
『ふぅ、今回は特に何も仕込まれてもいないし、仕掛けられてもなさそうだな……やれやれ毎日毎日心が休まる暇がねぇよな実際。』
しかし彼はまだ安心など出来ない、東京からこの雛見沢に転校してきて二週間、心休まる日が一日たりとて……そう、転入初日でさえ……。
「いやぁ〜圭ちゃんがこんなにも早く雛見沢の空気に溶け込む事ができるとはねぇ、案外沙都子のトラップのおかげじゃないの?……ん?」
魅音は一瞬不思議そうな顔をしたがすぐにニヤニヤと先程の表情になった。
「こら魅音……」圭一はジト目でロングポニーテールの少女を見やる。
「そうだよ!沙都子ちゃんのトラップのおかげだよ!……はぅ〜トラップに引っ掛る圭一君かぁいかったよぉ〜!」
そう言って礼奈も目をキラキラさせて圭一の肩をポンポンと叩いた。
「礼奈……お前まで」圭一はガックリと項垂れてブツブツと呟き出した。
「もう〜そろそろ礼奈じゃなくてレナって呼んで欲しいなぁ、圭一君だけだよ、礼奈って呼ぶの」
礼奈はぷぅ〜と可愛く頬を膨らませて抗議した。
「判った判った、レナ……これでいいんだろ?」
圭一は疲れたように、だがしっかりとレナと呼んで見せた。
「う、うん……」レナは顔を赤くして嬉しそうに微笑んだ。
「いやぁお二人さん、熱いねぇ〜おじさん妬けちゃうねぇ〜」魅音はいやらしい笑みで圭一とレナを交互に見やった……ただし目は笑っていないようだが。
すると瞬く間にレナの顔が真っ赤なトマトよりさらに赤い究極の完熟トマトのように真っ赤に染まった。
「え?何が?……??まぁいいや、先に行くぞ」圭一は鈍感なのか? 意味が判っていないのか?
さして気に留める様子も無くテクテクと2人の少女の先を歩き出す。
「け、圭一君」
「ま、待ってよ、圭ちゃん」
固まって妄想モード全開だったレナと、切れのいいツッコミが決まってやけに嬉しそうな魅音も、
はっとして現実に戻ってきたようで、急いで圭一の後を追っていった。
その頃教室では……圭一の言っていたですわチビこと北条沙都子が親友の古手梨花と一緒にこれから起る惨状を思い浮かべて、
クスクスと談笑していた。
「魅音さんはあのメモに気付いて下さいましたかしら?……お〜ほっほ〜今日こそあの男に私の偉大さを判らせて
『沙都子様、参りました……自分はこれから沙都子様の家来になりますです。いや、ならせて下さい!……ではご主人様!
卑しい私に、何でもお申し付け下さい!』ってきっと言わせてごらんにいれますわ!」
沙都子はそう胸を張って梨花に答える。
「み〜〜☆……今日も圭一は沙都子のトラップコンボを受けるのです……きっとガクガクブルブルにゃーにゃーなのですよ
……後でボクが、<かわいそ、かわいそ>してあげるのです……………にぱ〜〜☆」
梨花はニコニコしながらこれから登校してくる哀れなターゲットに対して、胡散臭い憐憫の情を向けるのであった。
AM8:12分……教室前……圭一は二つある入り口・出口のドアの前で立ち止まって考え込んでいた。
後ろでは魅音がニヤニヤとにやけ、レナが心配そうに圭一の顔色を伺っていた。
『入り口と出口どっちだ?……昨日は出口から入ってひでぇ目にあったし一昨日は入り口……ドアに画鋲は?
……くそっ!どっちにも付いてねぇ……付いていた出口が画鋲のみのダミー、何も付いてない入り口が本当の悪夢
……そう思って昨日はやられたんだよな……じゃあ順番からいって入り口か???
……い、いやあのチビがそんな単純な奴じゃ無いって事は、この二週間で嫌と言う程味わったじゃねぇかっ!
……よく見て、よく考えろ、KOOLになれ前原圭一……冷静に、冷静に……よし!出口が正解だ、いやっ正解であって下さい!』
圭一は祈るように考えを行動し移そうとした。
だが「ガラッッ」ドアの開く音と共に「圭ちゃん早く教室に入らないと遅刻になっちゃうよ?」
魅音は圭一を横目にレナとさっさと教室に入っていった。
それを唖然とした態度で見ていた圭一だったが
「は、ははは、正解は出口か……思ったとおり…………勝った!!俺は始めて読みきったんだ!あの糞生意気なチビに
……この一週間どれだけ屈辱に苛まれたことかっっ……お、俺は今まで生きてきて最高に嬉しかった事を述べよと言われたら
真っ先に誇れる偉業を達成したんだ嗚呼嗚呼ああああああああああああああああぁーーーーーーーーー」
そう高らかに宣言した圭一は、はぅ〜〜っと嬉しそうに出口から教室に駆け込んだ。
その瞬間;ピン;パカーン「へ?」「ぬがぁーーー!!」
圭一は足元に違和感を感じると共に後頭部に衝撃を覚えた、
さらに;ズルゥーーー:「げぇーー!」
ボフッ:「ぐぇっ」
……教室に入った瞬間、足元に仕掛けられていたワイヤーが切れ、勢いよく入って来た圭一の斜め45度に傾いた後頭部にド○フで使うようなタライがHIT、
倒れかけて膝を突いた先にワックスが塗ってあり、伸ばされた手と膝の間の隙間
……みぞおち付近に予め置いてあったゴムボールが、HITして悶絶したのだ。
悶絶する圭一に向かって大爆笑の渦と共に
「お〜ほっほ〜〜ほ〜〜〜どうしましたの?圭一さんそんな所で? 教室は眠る所じゃありませんわよ!
……それと生意気なチビって誰の事ですの? レディに向かってそんな事を言う方は殿方としては下賤な部類に入りますわよ!
……まぁ圭一さんも、もう少しレディに対する礼儀というものを勉強した方がいいですわね!」
綺麗な蜂蜜色の髪をカチューシャ?ヘアバンド?で纏めた幼さを残しつつも整った顔立ちの、
美少女と言っても遜色のない少女が、口元に手を当て、高笑いを浮かべながら圭一を見下ろしていた。
暫く動けなかった圭一だったが、ナインカウントで立ち上がるボクサーのように、
「へ……へへへ」と言いながらヨロヨロと立ち上がると、ゆっくり呼吸を整え、そして眉をへの字に曲げて、沙都子に向かって歩きだした。
それを見た沙都子は「ひぃっ!」と驚き、後ろに後ずさりをした。
しかしすぐに壁にぶつかって後が無くなってしまった。
「ごるあぁぁぁぁクソチビっ! よくもやってくれたな! 一瞬見覚えのない婆さんが川の向こうの花畑で手招きしてたぞ!
危うくつられて行きそうになって……ってそうじゃねぇ! あんな悶絶必死のトラップなんて仕掛けんじゃねぇよ……学校は勉強をしに来る所って事を理解してんのか、てめぇは!」
圭一は鬼の形相で沙都子を睨み付ける……しかし沙都子も負けじと言い返す。
「べ、勉強をしに来る所と言うならトラップ術も立派な勉強ですわ!!!!私、自分のトラップ技術が人間にどれ程通用するか実戦勉強中ですの、
オホホ〜………それに私には沙都子という立派な名前があるのですからチビって言い方はやめてくださいまし!」
沙都子は頬を膨らませて明後日の方向を向きながら必死に視線を逸らして答えた。
「うるせぇ!だからその実戦を毎日毎日俺に試すんじゃねぇっ!!お前のイタズラは一々手が込みすぎてんだよっ!
……まぁ他の奴に試すのはもっとよくねぇけど、……とにかく!!俺以外の誰かが引っ掛ったらどうすんだよっ」
圭一は興奮しながらも沙都子の目線まで姿勢を下げて、彼女のイタズラ(トラップ)がどれだけ危険な物か諭そうとした。
「べ、別に圭一さんだけを集中的に狙って居た訳じゃありませんわよ!
……たまたまいつも圭一さんが引っ掛るだけですわ……それに今日は、ほんの少しだけやり過ぎただけですわ!」
沙都子はムスッとした態度だが、圭一の顔がすぐ前にあるので、頬を紅くさせて、尚も明後日の方向を向きながら必死に悪態を付いていた。
「圭ちゃんそれは大丈夫だよ、私らは沙都子のトラップには絶対引っ掛らないから…」
魅音が圭一の肩に手を置いて、あっけらかんと答えた。
圭一が魅音の言葉の意味が判らずに首を捻っていると、魅音が一枚のメモを差し出した。
「み、魅音さん」沙都子の顔がみるみる青くなる。
そのメモには……<出口から入る時は足もととその先のゆかに注意して下さい。それをレナさんにも伝えて下さい。……沙都子>
と漢字とひらがなが混じった読み辛い文章が書かれていた。
「魅音っ!お前これを何処でっ!」圭一は驚きながら魅音に詰め寄った。
「さっき玄関で私の靴箱の中に入ってたんだよ、圭ちゃんが自分の靴箱調べている時に……それでさっき圭ちゃんが先に行った時にレナに伝えてさ……」
魅音はニヤニヤしながら圭一に説明する。
「ご、ごめんねぇ圭一君」レナが申し訳なさそうに圭一に謝ってきた。
「な、何で言ってくれなかったんだよっ!」
圭一は二人に対して濡鼠のような、いや、それよりも餌を御預けにされた子犬のような表情で、
二人に対し抗議めいた非難を過量な声で怒鳴りつけるように発した。
「何となく沙都子の意図が分かって面白くなっちゃて」
魅音は舌を出しながら<テヘッ>とはにかみながら答えた。
「ど、どういう事だ???」
圭一は訳が分からないといった表情で魅音を問い詰める。
「沙都子が遠回しに私達にトラップになってくれって意味だって私は思ったんだ
……わざわざ<出口から入る時は足元に気を付けろ>って書いてあるから
『教室前で圭一さんが考え込み出す筈ですので、敢てはずれの出口から入って圭一さんをかく乱して下さいまし』
って意味だと解釈したんだよ」
中途半端に似ていない声真似、口調真似で魅音が答えると圭一は<がーん>と不合格のショックにふける浪人生のようにがっくりと項垂れた。
「圭一、<かわいそかわいそ>なのです♪」
梨花が圭一の頭を優しく撫でる…しかしその顔はどう見ても同情顔ではなく太陽のような笑顔であった。
「り、梨花ちゃん」圭一は梨花に対して涙を流しながらその暖かい手の平の感触にふけっていたが、すぐにはっとして立ち上がり、沙都子を睨み付けた。
「ひぃっ!」沙都子は怯えた顔で圭一の顔を伺っている。
「チ…おい沙都子……お前さっき俺だけがターゲットじゃない……たまたまだって言ったよな??? めちゃくちゃ俺狙いじゃねえかっ!
……よくも手の込んだ小細工しやがって……お前には俺のでこぴんが、どれ程の威力か教えてやる必要があるようだな
……それが嫌だったら今すぐ謝れよ!」
圭一は沙都子に向かって、指を引き絞る<通称でこぴんポーズ>で沙都子の愛らしい おでこに標準を絞った。
「ふぇぇ、レナさん、圭一さんがいじめますのぉ、助けて下さいまし」
沙都子は半泣きの表情でレナに対して救いを求めた。
しかし彼女は心底申し訳なさそうに
「ご、ごめんねぇ沙都子ちゃん、今回のトラップは流石に私もちょっとやり過ぎかなぁなんて思ってたり……」
恐らく彼女の為とレナも涙を呑んでの選択だったにちがいない、その証拠に泣き顔の健気オーラ全開の沙都子に対して普段なら
「はぅ〜泣き顔の沙都子ちゃんかぁいいよぉ〜!……お、お持ち返ぇりぃ〜(=∀=)〜(´・ω・`)」と音速のスピードで沙都子をさらい、
自宅に持って帰ろうとするのだから……。
「たまには沙都子もお灸を据えられなきゃねぇ〜……うひゃひゃ」
魅音は明らかに面白半分で彼女に笑いかけた。
「沙都子……覚悟するのですよ・・・にぱ〜☆」親友であるはずの梨花も同意権のようである。
「チビ……覚悟しろーーー」圭一は悪魔の面持ちで彼女に笑いかけた。
「いやぁぁぁ……けだものぉぉ(やっと)」沙都子は泣き叫ぶ・・・
しかし圭一は<ポン>と沙都子の頭に手を乗せ、実際荒っぽく見えるが、それでいて少女の色素の薄いサラサラの髪の毛を、
クシャクシャにしないような優しい手振りで頭を撫で始めた。
「ふぇ!・・・え???」
沙都子は何が何だか判らずされるがままに圭一の頭を撫でる行動を甘受していた。
圭一はニヤニヤと、ドッキリに成功した悪戯小僧のような笑顔で、沙都子を見下ろしながら「な〜〜んちゃってなっ♪☆」
と笑いながら尚も沙都子の頭を撫でている。
沙都子は怯えながら圭一を見上げて「圭一さん?怒ってませんの?」と恐る恐る尋ねた。
「…………別に最初から怒ってねーよ……ははは!」圭一は沙都子の頭から手を離し、<全然!>と
右手を左右に振って平然をアピールしている。
「まぁあえて言うなら、怒ったフリを最後まで演じきるってトラップかな?お前の怯えた表情……ふっふっふ……最高だったぜ!」圭一はあっけらかんと答える。
「やっぱりねぇ〜……そんな事だろうと思ったよ……」
「うんうん!……レナも圭一君は怒ってないと思ったよ……」
「そうなのですよ!……にぱ〜☆」
魅音もレナも梨花も皆三者一様に圭一の怒りがブラフであった事を確信していた。
それは何故か、その根拠は圭一が転入して来てからこの一週間、毎日沙都子のトラップコンボを食らい続け、
辛酸を舐め続けた圭一だったが、今日よりもっと過酷なトラップがあった時も、今日のように沙都子に向かって行く事はせず、
怒鳴りはするものの、暴力を振るった事は一度も無く、言い争いの後は、沙都子の頭にデコピン一発で、大抵圭一が引く事で決着していたからだ。
……その代わり圭一の沙都子に対する普段の呼名は、本名よりも<ですわチビ>等の宜しくない仇名で呼ばれる事が多かったが。
沙都子は顔を真っ赤にして圭一を睨み付けながら。
「むがーー!……圭一さん!酷いですわ!!……全く本当に怒ったのかと思いましたわ、本っ当にレディーに対する礼儀が欠けている男ですわ!!
……最低の殿方ですわ!(なんで………)」そう言って捲し立てた。
「ぶぁーか……お前みたいなチビ猿如きにこの<雛見沢一のクールガイ(自称)>……前原圭一様が怒る訳がねぇーだろ
……小さい、小さい……まぁ毎日俺様に立ち向かってくる度胸に免じてちゃんと名前で呼んでやるよ、沙♪都♪子♪」圭一も負けじと言い返す。
そんな二人の言い争いを近くで眺めていた三人だったが、魅音が時計を見ながら圭一に慌てたように話しかけた。
「圭ちゃん! そろそろ知恵先生が来る時間だよ……お開きにしなきゃ」と言ったと同時に<ガラッ>と入り口のドアが開き、
担任の知恵(しえい)留美子が教室に入って来た。
知恵は教室を見渡し小さくため息を尽くと。
「……何です? この騒ぎは? ……みなさん早く着席して下さい……ん? な、何ですかそこの紐やタライは???またですか???
沙都子ちゃんと前原君、早く片付けなさい!それと床のワックスも拭き取ってください」
知恵先生は驚きと共に現状を把握してなぜか圭一にも掃除を命じた。
「し、知恵先生これは私が勝手に仕掛けた物で、圭一さんは引っ掛っただけですわ!」
普段はトラップを仕掛けた沙都子自身が残骸の後始末をしていたのだが、今回は圭一にも掃除が命じられた為、
沙都子は慌てて先生に向かって事の顛末を説明した。
「……確かに仕掛けた沙都子さんの方が悪いですが、警戒不足の前原君にも問題はあります。
転入して二週間、毎日のように沙都子さんのいたずらを受けたのに警戒もせずに
引っ掛るなんて、わざと引っ掛っているとしか思えません。」
知恵先生は漠然と二人に言い放った……彼女はメモの事や魅音の行動など知らないので仕方ないといえば仕方ないが、
少々理不尽な気がしないでもない。
『先生なんだから止めればいいのに……』魅音を始め分校の生徒は知恵の発言後みんな同じ事を考えていた。
さるwwwwメンドクセェwwwVIPに帰れってかwwwww
沙都子が尚も食い付こうとしていたが圭一が「確かに引っ掛らなければ教室も汚れないし怒られることもないですね……」
と叱責に対して肯定してしまったので、何も言えなくなってしまった。
「け、圭一さん……」沙都子は圭一に対して申し訳なさそうに視線を合わせたが、圭一の方は「気にするな」
と沙都子の頭を軽く撫でてさっさと後ろの後片付け始めた。
後ろ向きに「知恵先生……これは引っ掛った俺の責任です、俺だけで片付けるので沙都子はそのまま授業を受けさせて下さい」
沙都子は驚いて何か言おうとしたが「この程度に二人もいらねぇよ」圭一はそう言ってワックスをふき取る為のモップを取りに廊下出て行った。
教室から少し離れた資材庫の隣にある水飲み場に向かった圭一を尻目に教室では
「知恵!……ちょっとトイレに行きたいのです」梨花が知恵先生に向かって申し入れた。
「古手さん!……HRでもトイレは授業が始まる前に行っておきなさいとあれほど
言っていますのに……それと先生を付けなさい、分かりました……行って来ていいです……」
そう言って、ため息を付きながらも渋々許可を出した。
そのころ水飲み場では……。
「イテテ、沙都子の奴、もうちょっと加減ってやつを考えろよな……」
圭一は擦りむいた肘を水で冷やしていた。
「あれでもうすぐ11歳ってんだから末恐ろしいよな……考えれば考えるほどあいつの将来が心配になる
……将来……なんだろう?……あいつの将来を考えたら妙に悲しく……いや、無性に悔しくなったな???……」
圭一は良く分からない何かが胸の中に疼いた事に気が付いた………とても不愉快な気分になる何かが……。
「圭一!」後ろか声がして振り向くと古手梨花嬢が走って来たのだろうか、息を切らして嬉しそうに微笑みながら圭一を見上げていた。
「梨花ちゃん?……どうしたんだ?こんな所に……そうか知恵先生に……」
圭一はこの場所に梨花が来た事がよく分からなかったが、すぐに何か知恵先生に伝言を頼まれたのだろうかと判断して梨花に話しかけた。
「みぃ?……そうではないのですよ、ボクはトイレに行っている事になっているのです……にぱ〜☆」
そう言ってこっちまで笑顔になってしまうような、満開の笑顔で梨花ちゃんは圭一に笑いかける。
「へ?……ならトイレに行けば……あ!……俺に何か話でもあったの?」性格的に少々ニブチンな圭一だったが、梨花の意図する行動は理解できたようだ。
「ボクは圭一に一言お礼が言いたかったのです、それもすぐにでも!」
「俺に?……梨花ちゃんに感謝されるような事したっけ???」圭一は良く分からないような仕草で梨花に問いかけた。
「沙都子の事なのですよ!……トラップの事、いつも本気で怒らないでくれてありがとうなのです……」
「なんで梨花ちゃんが?……まぁいいや、別に大した事ないよ……性格の悪い妹からいたずらされるようなもんで、本気で怒ったりしないよ
……それどころか毎朝結構期待してるんだよ、今日はどんなトラップでどう回避しようとか……あいつのトラップのおかげで退屈しないって言うか」
照れ臭さそうに圭一は答える。
『そう………圭一はいつも………いつの世界でもそう言って、沙都子の事情も知らない時からトラップに関しては寛容
……いや、優しすぎるくらい暖かく沙都子に対して接していた。
……いつも本気で怒ったふりだけで沙都子に対して暴力を振るった事は無い
……他の事でも沙都子をからかうだけからかっていつも最後にはフォローしていた
……いつの世界でも圭一にとって沙都子はかけがえのない存在なのだろうか?
それについては沙都子も同じだろうが。
……けれど、いかんせん沙都子はまだ幼く自分の気持ちがよく分からないようで、それをトラップという形で圭一にしてしまう事は間違いないと私は思ってる。
気になる子には<つい>いたずらをしてしまうと言うやつだ。
……沙都子は自分の気持ちがなんなのか気付く年齢まで達したことはない。
……人間は年を取る、当たり前の事だがそれが当たり前に出来ない世界に私を含め
……いや、私の所為で圭一・レナ・魅音・もうすぐ教室に通い出す詩音
……それに親友の沙都子を巻き込んで繰り返される輪廻
……くだらない繰り返しの世界の住人にしてしまっているのだから』
「梨花ちゃん???」
圭一は何か考え込んでいるような梨花を怪訝そうな表情で伺っている。
「みぃ?……なんでもないのです、女は時として思い煩うものなのですよ……」
「ははは……まぁとにかく、俺自身は沙都子のトラップに関して全く気にしてないんだから梨花ちゃんも感謝とかそんなに気にしないでくれよ!!
……俺自身も救われているんだよ実際…………あ!!」
「何が救われているのですか???」今度は梨花の方が怪訝な表情で圭一に話しかけた。
「い、いや何でもないよ!!!……ほ、ほら梨花ちゃんはトイレに行ってる事になってるんだろ?……俺よりも早く教室にもどらなきゃ知恵先生にしかられちゃうぞ!!……」
慌てて圭一は誤魔化す為か、梨花に本来の目的を指摘して教室に戻るように促した。
「みぃ?(東京での事件の事かしら?)……分かりましたのです、圭一も早く戻って来るのですよ……にぱ〜☆」
梨花はそう言って教室に戻っていった。
『あ、あぶねぇ……梨花ちゃんに対して何を言おうとしたんだよ俺は!!……あれは過去の事なんだ!!!……そう……けして取り戻せない過去なんだ』
圭一は自分の心に丹念に………暗示をかけるように話しかけた。
圭一が教室に戻ってくると既に授業が十五分程始まっていた。
すぐに床を拭き、モップは次の休み時間に返しておけばいいかと思い、後ろの所に置いて自分の席に着いた。
「前原君やっと戻ってきましたね、今日の数学は教科書の47ページから始まっていますので開いてください……それと申し訳ないのですが、
今日も副担任をやってもらってもいいですか?……」
知恵は席に着いた圭一に対し授業内容の説明と共に下級生に対しての先生代わりをしてもらえないかと頼んできた。
「別に構わないですよ……俺も教える立場から勉強をすれば気付ける事もあるし……毎回頼まなくても別段やりますから気にしないで下さい。」
あっさりと承諾した圭一は席から立ち下級生の周辺を廻り出した。
「そう言って貰えると助かります……では、宜しくおねがいします」
知恵先生は申し訳なさそうに笑って直に生徒の質問に対して向き直った。
「前原さん……ここが良く判らないんですけど?……」
「この問題はこれで合ってますか?前原さん……」
次々と生徒からの質問や数式の答え合わせが圭一に向かって弾丸のように飛んできた。
「そこは……そう分母と分子を掛けて……七掛ける七は59じゃなくて七が七個あるのは分かる?……そうそう正解!……」
次々と問い掛けられる質問を即座に理解してその解になるように数式を相手が理解できているか確認しながら導いていく、
そしてそれをしているのは中学二年生だという事実が教師が一人しかいない分校の実態をつぶさに語っていた。
「……圭ちゃ〜ん……ここは?」
「因数分解か……これは手順さえ覚えればそう難しくは…………あれ?……何で小学生の問題に因数分解が?……ん?……み、魅音!なんでお前が俺に聞いてんだよ!……」
時間短縮の為相手の顔を見ずに机しか見ていないで教えていた圭一だったが、小学生の年齢に反比例する問題に違和感を感じ見上げてみると分校唯一の中学三年生である園崎魅音嬢の、
ばつの悪そうな顔があったので少々……いやかなり驚いた。
「いや〜!何遍やっても全く訳分かんなくてさぁ〜……しかもおじさん何が分からないのかも分かんなくなっちゃって……圭ちゃんなら解けるかな〜なんて……エヘヘ」
魅音は照れ臭そうに頭を掻きながら圭一に甘えるように猫なで声で答えた。
「エヘヘじゃねぇよ!……まぁ俺は解けるけど……はぁ〜、魅音は今年受験だよな?これ位解けなくてどうすんだよ、もう一回、中三やり直す羽目になるぞ……」
圭一はため息をつきながらもその問題を解いてみせた、すると魅音だけでなくレナからも賞賛の声が上がった。
「圭一君、三年生の問題も解けるんだ!……すごいねぇ〜、勉強要らずだね……だね!」
「やっぱり圭ちゃんは解けるんだ……私は別に浪人してもいいかなぁ〜……そうすれば圭ちゃんやレナと同学年になるしねぇ〜」
レナは素直に驚くが魅音は極楽トンボの言葉通りのような返事を返した。
「ん?……たまたま前の学校で済ませた範囲だったんだよ、あと勉強要らずでいられるほど俺は頭よくねぇよ
……それと魅音、そういう訳にもいかないだろ……全くもう少し頑張れよな……」
レナの賞賛にぶっきらぼうに答えた圭一だったが、魅音に対しては疲れたように答えた、この呑気な少女の将来が少し心配になった圭一であった。
「圭一はすごいのです!……沙都子も圭一を見習わなくてはならないのですよ……」
「梨花ぁ〜!どう言う意味ですの???……別にちょっと頭が良いからって、いい気になってもらっては困りますわ!
……私のトラップに間抜けに引っ掛るようではまだまだですわ〜……おぉ〜ほっほっ〜」
三人の話を聞いていたのか、梨花が圭一をほめて沙都子が圭一を扱下ろすまさにアメとムチの会話が圭一の耳に聞こえてきた。
「さ、沙都子!!!てめぇまだ反省して……ん?……ふっふっふ、沙都子君」圭一はニヤニヤしながら並んでいる梨花と沙都子の机に近づいてきた。
「なんですの?圭一さん、気持ちの悪い顔をして……ついに頭がおかしくなったんじゃありませんの?……早く病院に行ったほうがいいのではなくて?」
怪訝そうに圭一を見やる沙都子だったが、自分の机の前に圭一が来て、ノートと自分の顔とをニヤニヤしながら見比べているのを見て、
すぐに圭一のにやけ顔の意味を理解した。
「(え???もしかして何処か間違っているんですの?…でも何処が???……うーー…分かりませんわ!!!……でも圭一さんに、
何処が間違っているのか指摘されるのもしゃくですし……ふぇぇ背に腹は代えられませんわ……)
私の完璧なノートに何か文句でもあるんですの?……言いたい事があるのならはっきり言って下さいまし!」
沙都子は圭一に動揺を気付かれないようにきちんと言葉を発しゆっくりとした口調で圭一に話し掛けた。
「お?……随分強気な態度だなぁ……ぷっ!さすが分数の掛け算を分母・分子同士で掛けてものすげぇ答えを出しているレディだけあるな
……立派!立派!……ぷぷぷ!」
圭一は小刻みに震えながら笑いを堪えて答えているようだった。
それを聞いた沙都子は顔を真っ赤にさせて圭一の顔と自分のノートを見比べた。
しかし「なっ?……そんな筈ありませんわ!!!分数の掛け算は分母・分子同士で掛けるものに決まっていますわ!
……そう……、習いましたもの」
最後の方は小さな声だったが明らかに意地をはって無茶苦茶言っている事は明白である。
「そういう答えもあるかもしれないけど(ねぇよwww)明らかに小学生の問題じゃ出ねぇよ
……その答えの問いはどこだ??……おい沙都子、よく見てみろ<分解しなさい>ってあるじゃねぇか、
つまり答えの段階で分数のままでは明らかに間違ってんだよ……たくっ!数式を間違えて覚えられたら面倒だ、
教えてやるからしっかり覚えろよ」圭一は彼女の無茶苦茶な言い分を完全に論破した状態で沙都子に正式な数式を教えようとした。
「うっっ!……私はまだ小学生ですわ!……失敗を繰り返して大人になっていく卵の状態……つまり正解が間違っていてもそれを糧に次はきっと間違えない
……その悔しさをバネに……そうやって成長していくものですわ……そんな事も分からない圭一さんは駄目ですわねぇ……ま、まぁ
……どうしてもって言うなら教えさせてあげなくもないですわ……」
沙都子は素直になれないのか、またもや圭一を挑発するような事を言ってしまう。
「沙都子、素直に教えて下さいって言わないと駄目なのですよ? ……そんな事では今度こそ圭一に嫌われてしまうのですよ……」
いつもは満面ヒマワリ笑顔の梨花も少々呆れたように小声で沙都子を嗜めた。
「り、梨花!……べ、別に私は圭一さんに嫌われたって気にしませんわ……それに私は圭一さんの事なんて別に何とも思って
……もおっ!一体何を言わせるんですの!!」
沙都子は真っ赤になって、梨花に慌てて否定した。
「お前ら何こそこそ話してんだ?……おい沙都子、別に何でもいいから俺の説明を素直に聞くのか聞かないのかはっきりしろよな」
圭一は二人の会話がよく聞こえていないのか、
口をへの字に曲げて問い返した。
「沙都子?」梨花が真面目な顔で問いかけると
「り、梨花……わ、分りましたわよ……圭一さん、真面目に聞きますのでこの問題を教えて頂けませんこと?」
梨花の無言の圧力に沙都子は少し恐縮しながら素直に圭一に答えた。
「そうやって最初から素直に頼めばいいんだよ、この問題は……」
圭一は自分で求めたが、素直に頼んできた沙都子の態度に苦笑いを浮べながら明確な数式を沙都子に教えるのであった。
その後は平穏無事に授業も進み、気が付けばPM12:00を知らせる校長の聞き慣れたハンドベルの音が鳴り響いた。
「さぁみなさんお昼にしましょう…魅音さん号令を御願いします」
知恵先生の小気味の良い声と魅音の「起立!注目…礼!!」の掛け声にて昼食の時間と相成った。
本来通常の小学校等では給食制度が確立しているのだが、元営林所を改築した校舎の設備では満足な衛生条件を満たす事が出来ず、
生徒に弁当の持参を御願いしていた………尤も学校が存在しているだけ万々歳な生徒や保護者からは文句など皆無であったが。
そして普段は皆各々の自由なように、そのままの席で食べたり気の合う人同士で食べたりしていた。
そして当の圭一はというと、魅音・レナ・梨花・そして沙都子と共にレナの席の周りに集まり食事を始めた。
「圭ちゃん! その春巻き貰った!」
「なにぃ!く、くそっじゃぁ俺はレナのから揚げ頂きぃ!」
(キラーン)「させませんわ、秘儀タライ落とし……」(パチンっ)。
(ドゴンっ)「ぐぇ……」ひゅーガタン(椅子ごと後ろに倒れる)ピクピクピク
「あ、あはは沙都子ちゃんやりすぎかな…………かなwww」
「………………にぱー☆」
「さ、今のうちに圭一さんのお弁当を日の丸弁当にして差し上げますわwww」
「う〜ん…………げっ!お、俺の弁当がぁ(チラ……ボソッ)………やっぱり同じだな」
「……!……」
「お〜ほっほっほほ、何時なんどきも注意一秒怪我一生ですわ!」
「沙都子ちゃん……使い方を間違ってるよ」
そんなこんなで昼食も無事(?)に終え、雑談をしていると、急に何かを思い出したように魅音が圭一に話し掛けた。
「そういえば圭ちゃんが雛見沢に来て一週間位経ったけど、まだこの村の事をあんまり詳しくないよね?
この間は断られちゃったけど今日の放課後にみんなで圭ちゃんにこの雛見沢を案内しようと思うんだ
……レナたちの予定は大丈夫かい?」
「レナは大丈夫だよ!」
「ボクは今日の朝に公由から電話があって、今日の放課後に綿流しの打合せを公由たちとしなければならないのです、
その際沙都子にお留守番をしていて貰おうと思っているのです……という事なので沙都子、お留守番を……」
「わ、分かりましたわ………私も放課後になってまで圭一さんのお守をしなければならないなんて、考えただけでも耐えられませんわwww」
「沙都子てめぇ!」
黙って皆の話を聞いていた圭一だったが、流石に沙都子の言葉にカチンときたらしく、沙都子に食って掛かった。身構える二人………しかし。
「まぁまぁ圭ちゃん、あんまり怒ると将来禿げるよ?」
魅音の言葉に自分の将来の姿を重ね合わせて圭一は押し黙る。
「沙都子も余り言い過ぎると,いつまで経っても圭一に子供扱いされるのですよ、………淑女喧嘩せずなのです…………」
レディを自認する沙都子も梨花の言葉に押し黙った。
「って訳で圭ちゃんは放課後大丈夫?」
魅音の言葉に一瞬躊躇した圭一だったが、実際自分の今現在に於ける行動範囲が、自宅→分校→スーパー(カップラーメン)→自宅という
幾分味気ないコースを巡っていることや、転校初日に魅音から案内の提案を受けたのだが、色々と事情があり断っていた事などを思い出し、
魅音の提案を快く受けることにした。
「ああ、よろしく頼むよ!」圭一は二人に向かって快声で答える。
午後の授業もいつも通りに沙都子と圭一の口喧嘩の他には特にたいした事件もなく、六時限目の授業が終わり、帰りの会を終えて下校となった。
そして圭一は魅音やレナを伴って教室を出て行った。
「では沙都子、ボクたちも帰りましょうなのです」
「ええ、梨花」
梨花が沙都子に帰宅を促すと、沙都子も頷いて二人で教室を後にした。
取り敢えず一章は長いから終わり――誰も見てないだろうし。
「続きを書けよチンカス」レスが付いてたら、続き載せるよ。
ああ一応48のレスは俺ね。
いや見てたよ。乙です!
乙です!圭沙ってそういえば少ないな。
個人サイトでは余り見ないし。本家が多いせいかな。時間を開けてまた続き待ってます。
>>84>>85d
ちょwww見てる人いたんだw
俺的には鏖編でもし、グッドエンドだったら沙都子は一生圭一に頭が上がんないだろう的な
感じに思ってコレ書いてる。
あ、あと二、三。
この先ちょっと厨臭い「お、俺の右腕が疼きやがるwww」的な描写が出てきますw。
この話は各編に非常に被る場面が多々あるますが、その殆どがご都合主義な卑怯な解釈で構成されますw。
沙都子のツン度は多めに設定しております。
以上を御理解して頂いた上で御拝読下さいw。
もう少したったら投下する。
了解。夜になってから見ます。
てす
おお出た出たwこのトリでいきます。
2時間後…………辺りが茜色に染まり始め、ひぐらしの鳴き声がさざめき始めた頃、圭一を含む三人は、田んぼのあぜ道を歩いていた。
「ふぅ………雛見沢観光ツアーは大体こんなもんかな、圭ちゃん……大体この村の見所を案内したつもりだけど、どうかなぁ?
大分この村のことを分かって貰えたと思うんだけど」
ほこりだらけの洋服をはたきつつ、魅音は笑顔で隣の圭一に話しかけた。
「お、おう!大分この辺の地理にも明るくなったよ!魅音、ありがとな………けどなぁ…」(チラッ)「はぁ………」
同じように圭一も服をはたきながら魅音に笑顔で返答を返すが、少し後ろを歩くレナ嬢を見て、なぜか大きくため息を吐いた。
(=∀=)「はぅ〜〜!ケンタくん人形かぁいいよ〜!」
レナは2m近く在りそうな強化プラスチック製(FRP)人形を背中に背負い、嬉々とした表情で圭一達の後ろを着いて来ていた。
本来ならば魅音の観光ツアーは集落内の主要部を回る程度なので、ものの一時間程度で終わる筈だった。
しかし最後に、都会から不法投棄されるゴミ郡に圭一を案内した事が非常に不味かった。
魅音としては圭一にこの現状を見てもらい、愚痴の一つでも聞いてもらおうとしただけなのだが、
そこに着いた途端、レナが「はう〜かぁいい物♪かぁいい物♪」と呪文の用にその言葉を繰り替えしながら辺りを散策し始めたのである。
頭を抱える魅音とその様子に唖然とする圭一だったが、レナの「こ、これは!」と言う歓声と共に今背負っている人形を見つけ、
二人に手伝ってもらってゴミに半分以上埋もれていた人形を掘り起こし、今に至っている。
始めは魅音や圭一も目の前の埋もれた人形を掘り返すのを面倒くさがって、あまり良い返事をしなかったのだが、
レナが何処からか持ってきたナタで人形に覆いかぶさっているゴミを薙ぎ払いだし、
尚且つ満面の笑顔で「圭一君も魅ぃちゃんも御願いだよぉ♪私一人じゃ今日中に持って帰れないと思うし、もしも明日になってこのケンタ君人形の上から、
また新しいかぁいい物が積み重なっていて、救出不可能なまでに取り出せなくなっていたら
……レナは手伝ってくれなかった二人を恨んじゃうかもしれないかな…………かなぁ♪」と言われ、
圭一は背筋に冷たいものが走る感覚が芽生え、魅音に至っては何故か真先に額を抑えて足がガクガク震えだした。
その後、全く同時に二人は快諾の旨を伝えていた…………二人は各々に感じた嫌な予感を気のせいだったと結論付け、
お互い無かった事にしたようだ。
そんな事もあり三人の洋服は埃だらけになっていたのだ。
そして帰り道………しばらく歩いてレナの様子が普通に戻りかけた頃、圭一が魅音に話しかけた。
「魅音………ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
「ん?なーに?」魅音が気の抜けた返事をする。
一瞬、圭一は躊躇するような素振りを見せつつ。
「チ、沙都子の事なんだけどな、あいつは今まで……そう、俺がこの雛見沢に引っ越してくるまでは、あんなイタズラや口げんか等をした事は無かったのか?」
「いやぁそんな事はないよ、圭ちゃんが転校して来る前からトラップなんかは仕掛けていたよ……尤も圭ちゃんがされているような度を越したイタズラはしてなかったけどねw」
魅音の言葉にレナも頷く。
「…………誰も沙都子の行為に対する苦情や文句を言った奴はいなかったのか?」
「えっ?」圭一の言葉に魅音は驚いたように声をあげる。
「け、圭一君………………どういう意味かな………………かなぁ?」レナが困ったように、しかし何かを探っているような表情で圭一に問い掛ける。
「聞いたままの意味だよ、基本的に学校って勉強をしに行くところだろ? 真面目に勉強をしたい奴からすれば沙都子の行為は授業妨害以外の何者でもない筈だ
……なのにその事について誰からも文句が出ない事が不思議だなぁと思ってさ。そうだな…………何処と無く沙都子の行動を咎めにくい、
そんな空気が……あっ!もしかして………」
真面目な顔をしていた圭一だったが急に表情を和らげた。
「…………ははっwww絶対有り得ないよなぁ、あいつの家が………!」
「も、もぉー圭ちゃんいきなり何を言ってんの………そんな人間がちっちゃい子なんて分校にはいないよぉ、
それに分校の生徒は大らかな子が多いから……まぁその大らかさがウチの分校のウリみたいなもんだからね!……ははは」
発言の途中で魅音が不意に圭一の話を遮った。
「……………………(もしかして?)」レナは俯き何かを考えている様だった。
二人の態度に若干疑問を抱いた圭一だったが、何となく嫌な気がしたので聞き返す気にはならなかった。
それでもこの重苦しい空気を招いてしまったのは自分なので何か言わなければと思い。
「おいおい!どうしたんだよ二人とも……俺は別に分校の事を悪く言っている訳じゃぁ無いんだぜ………
(えーと……!)……そうだよ!俺はこの分校の生徒は大らかで、前に通っていた東京の学校よりも仲間意識が強いなぁ!
なんて素晴らしい学校なんだろうって意味で聞いたんだよ!」
「………………へ、へぇ」
「………………(クスッ………仲間意識か……)」
二人はおとなしく圭一の話を聞いていた。
「だって前の学校なんてさ、<成績で能力や人格を評価する>ってクソつまんねぇ学校でさぁ、みんな勉強位にしか必死に取り組むものがないんだぜ、
しかもその上に特進クラスみたいなモンまであってだな、そしてそのクラスに入っちまったらもう地獄、一に勉強・二に勉強・三,四も勉強・五も勉強ってくらい、
勉強漬けの毎日を送らなけりゃあならないんだ。まぁそんな中にはその環境に適応できない奴ってのがいてさ…………実際俺なんだけどw
だから父さんと母さんに泣きついて『もっと自然が一杯あって、自由な環境の学校に行きたい!つうか行かせてくれなきゃグレるぞ!!』って猛烈に頼み込んで、
やっとこさっとこ、この雛見沢に引越して来たんだ! この村の環境は最高だぜ! そしてこんな環境で育つ子供達に捻くれた奴なんているはずがねぇよ、
それを伝えたくて、あんな事を聞いただけなんだよ…………ぜぇぜぇ、俺のこの熱い気持ちを判ってくれたか?」
息継ぎも忘れるくらい猛烈に喋り続けた圭一は、息も絶え絶え二人を見た。
「…………け、圭ちゃんも大変だったんだねぇ、でもそんなにこの村の事を気に入って貰えていたんだ
……それなら私も案内した甲斐があるってもんだよ!!」
「なるほどね………圭一君があんなに勉強が出来るのはその特進クラスにいたからなんだねぇ……
うーん確かに私も勉強漬けの毎日なんていやかなぁwww」魅音もレナも圭一の説明に納得したようで先ほどの怪訝な表情とは
うって変わり、親しみを込めた笑みで、圭一に話しかけた。
二人の表情に安堵した圭一だったが、その後腕時計を見て。
「げっ!!もうこんな時間かよ…………二人とも悪いけど、今日はお開きにしようぜ」
丁度分かれ道に着いたので圭一は二人に帰宅を申し入れた。
「うん!……また明日ね圭ちゃん」
「………………」
「おう!またな」
圭一は手を振って帰ろうとした。
「まって圭一君………………さっきの圭一君の話の途中に<もしかして>って言ったまま話が終わっちゃっていたでしょ?
魅ぃちゃんが途中から話を遮ったあの時、続けて何を言おうとしたのかな?」
「レナっ……もういいよぉ蒸し返さなくって、ほら圭ちゃんも深い意味があって聞いたんじゃぁ無いって言ってんだし
……ほらっ、もう帰ろうよ」
「でもぉ………中途半端に話が途切れたままって後々に気になっちゃうし……」
「レナっ!いい加減にしてっ」
魅音にはレナが何故さっきの話を蒸し返したがるのかが理解できなかった、単純に気になるだけ? 本当にそうだろうか
……兎に角この話題からレナの気を逸らさないと………魅音は普段とは違うキツイ口調でレナを窘めた。
「………………ゴメン、魅ぃちゃん」レナは魅音に対して、棒読みに近いトーンで謝った。
そんな二人の様子を見ていた圭一だったが、面倒くさそうに。
「………別にたいした事を言おうとした訳じゃねぇよ、俺はただ
『もしかして、沙都子はこの雛見沢の中でも指折りの名家のお嬢様か何かで(なんか変なお嬢様言葉を喋っているし)
そんでアイツの行動に文句でも付けようもんなら、沙都子の家が圧力を掛けて、そしてその家はこの村内で爪弾き者にされちまう
……だから誰も文句が言えないのかな』なんて………なあ?」
「!?」
「!」
二人とも……特に魅音が驚き固まっているのだが、その様子に圭一は気付かず話を続ける。
「でもさぁwww、よく考えたらあんなにガキっぽくて、性格の悪い(性根はどうか知らねぇけど)ヤツがお嬢様のわけがないし、
使ってる文房具とかも普通の物だし、弁当とかも高級食材てんこ盛りって事もないし(ちょっと気になる事はあったけどな)
ははは、自分で考えた事だけど余りにも馬鹿馬鹿しくてなぁ、だから二人に馬鹿にされると思って言うのを止めたんだよwww」
圭一はあっけらかんとした表情で話しを終えた。
そして「おっと時間が…………ヨッシャーーーーーーーー夕飯が俺を呼んでるぜ、不足したたんぱく質を求めて体が悲鳴をあげている、
それが俺には顕著にわかる! ウェルカム満腹! グッドバイ空腹! いやSO LONGだなwwwってな訳で二人ともサラバイ!(死語)
また明日<ペタペタペタ>」圭一は二人に手を振りながら帰っていった。
その圭一の後姿が見えなくなると、難しい顔を浮かべたレナが魅音に話しかけた。
「………………魅ぃちゃん」
「………………うん」
17;45分…………前原宅
「ただいま〜」圭一は自宅に帰ってきた。
玄関に入ると同時にバタバタと急ぎ足で向かってくる二つの足音。
「圭一っ! いつもより帰りが遅いから心配していたのよ、あぁ無事に帰って来てくれて安心したわ……」
母親である前原藍子が圭一に注意するように、しかし直ぐにほっとしたように圭一の顔をじっくりと見て話しかけた。
「おいおい母さん、そこまで大げさに言う事もないだろう……しかしだ圭一、もしも帰りが遅くなるようなら次からは必ず連絡くらいはしなさい、心配するからな」
父の前原伊知朗(変換メンドクセェ(´;ω;`))も同様に圭一に話しかける。
「ゴメンゴメン、ちょっと友達たちに、この雛見沢村を案内して貰っていてさぁ、それで遅くなっちゃったんだよ」圭一は両親に遅かった事情を説明した。
圭一の説明に二人は納得し、藍子は夕食の準備に、伊知朗はアトリエに戻っていった。
そんな両親の後姿を見ながら圭一は心の中で二人に謝罪をして二階の自分の部屋に向かった。
「圭一ぃ、七時までには夕食なんだから降りて来なさいよ………勿論お父さんにも言っているんですからね」
下から話してくる母の言葉に返事をして自分の部屋に入る。
そして先程の魅音達との会話を思い出して圭一は何故か頭をガリガリと掻きつつ、薄ら笑いを浮かべた。
「ははは、特進クラスか………余計なことを言わなけりゃあ良かったな…………」
圭一は自嘲気味に呟いた。
「そういやまだメシまで時間があるな………まぁどうせ母さんが起こしに来るだろうし、すこし寝るか!」
圭一は夕食まで一時間程あるので仮眠をとる事にしたようだ。
<ペタペタ>「ん?………気のせいか」何処からか、足音ような音が聞こえた気がしたが、気のせいと思い、
ゆっくりと目を閉じた。
『なんでこんなことに』………顔の腫れ上がった少年は呆然とした表情で目の前の光景を眺めていた。
病室のベッドの上で目の辺りに包帯を巻いて寝ている女性、麻酔が効いているのか小さな寝息を立てている。
その女性の傍らには真っ赤な顔をして此方に向かって怒鳴っている中年男性と、
溢れる涙を何度もハンカチで拭いながら泣き叫ぶ中年女性………恐らくベッドの上の女性の御両親だろう。
そして………その二人の視線の先に目を向けると、頭を床に擦り付け、ひたすら謝罪を繰り返す少年の両親の姿があった。
がばっ!「はぁはぁ……くそっ、何故だ……何故あの光景が夢に出やがる……」数十分後、圭一は何か怖い夢でも見たのだろうか
……驚愕の表情と尋常ではない速さで飛び起きた。
「最近は…………そうだ雛見沢に引っ越してきてからは全く見てなかったのに…………くそっ、汗でべとつきやがる
……シャワーでも浴びてくるか」
圭一は気を紛らわそうと浴室に向かった…………しかし圭一は気付かなかった、風呂に向かう圭一の姿をじっと見詰める少女の存在を。
18:20分……梨花ちゃんハウス。
ガチャリ………「ただいまなのです沙都子………」古手梨花は渋い顔で、お祭りの打ち合わせを終え、沙都子の待つ家に帰ってきた。
ぱたぱた「お帰りなさいませ梨花! 夕食の下拵えは出来ていましてよ、それとも先にお風呂に入りますでしょうか?」
沙都子が可愛らしい笑顔で梨花の前まで出迎えた。
「…………っ! 先にご飯にするのです、もうすっかりお腹がペコペコなのです」梨花は沙都子の顔を見た瞬間、
慌てて表情を笑顔に変え、普段のように沙都子に答えた。
ところで梨花は何故渋い表情だったのか?………それには1つ理由があった。
梨花自身は公由村長宅にて夕食をお呼ばれされていたのだが、「沙都子が待っているのです」と言って断り、
直ぐ様帰り支度を整え帰ろうとした、しかし何故か、その時の村長の表情は、沙都子の話しを聞いた途端、
苦虫を擦り潰したような……いやそれよりも何処か戸惑っているような様子で、尚も引き留めようとした。
その為梨花は、半ば強引に村長に別れを告げ、送迎も断って、急ぎ足で帰ってきたのだ。
「判りましたわ!今日のメニューは沙都子特性オムライスですわ♪………なんと中に」
「みぃ?ミートボールでも入っているのですか?」
「ななな、なんで判るんですの? ひょっとして梨花は心が読めますの?」
「簡単なのです………今日の朝に冷蔵庫を見た所、日付が今日までの合挽き肉が少し残っていたのです………そして今日は沙都子の料理当番の日、
しかも興奮しながらオムライスの中になんて言われたら、きっと沙都子の大好物のミートボールを仕込んでいる
……見事に勘があたったのです………にぱー☆」
「ほぇ〜………梨花は名探偵さんですわねぇ………そう、正解ですわ! じゃあ卵だけ焼きますので梨花は着替えてきて下さいまし………」
沙都子は梨花の名推理に素直に驚きつつ、キッチンに戻っていった。
その様子を見ながら梨花は沙都子の愛らしさを改めて感じていた。
『私の大切な家族………もちろん羽入も大切な家族だけれど。やはり私達の関係は、傍からか見ればおままごとの延長にしか見えないかもしれない。
それでも私と沙都子の関係はもう絶対に切り離せない決して替えのきかない絆、もしも沙都子がいつも私の世界の心の均等条件
……ううん、絆でいてくれなければこの輪廻の檻の中で私は精神が朽ち果てて壊れていただろう、初めの世界からの大切な親友
……ありがとう沙都子。』
「梨花ぁ、用意ができましたわ!………って、もぉ〜まだ着替えてないんですの?早くして下さいましっ!」
料理を用意できた沙都子から催促の声が挙がった。
梨花は苦笑しつつ特売で買ったグ○ゼの下着の上からエメラルドグリーン色のワンピースを着て席に着いた。
「では頂きましょうなのです」
二人は席につき夕食をとり始めた。
食事中の会話はなんて事のない普段通り会話だったが、そんな普段どおりの会話こそが、とても大切な事なのだと梨花は思う。
『いつも通りの会話……けれどこの世界は受け継いだ世界……引き継いだ人生を迎えるこれからの私……こんな事が起こり得るのだから、
引き継ぐ際の、それまでこの世界を過した私の記憶まで、継承出来ないものかしら。……ふふっ、ちょっとムシが良過ぎるかw』
急に梨花は思い出し笑いをしたように微笑んだ。
沙都子はキョトンとした表情で会話を続ける。
その後冷蔵庫の中身が残り少ないという話になり、梨花が明日一緒にと、沙都子を買い物に誘おうとしたところ、
先に沙都子が口を開いた。
「梨花、申し訳ありませんけど、明日お買い物に行ってきて貰えませんか……何時も梨花に一人で行って来て貰っていて、
悪いとは思っているんですが」
「みぃ? (一人?)なにを言っているのです、沙都子も一緒に行きましょうなのです」
「梨花?…………だってほら私はこの村で、その…………だから梨花が『お買い物はボクが担当で沙都子はお料理担当なのです』
って決めてくれたんじゃありませんの……」
梨花は一瞬、自身の心中に妙な違和感を覚えた。
普段、梨花自身は沙都子の会話の一語一語を集中して聞いている、なぜならこの世界は以前に古手梨花がいたとしてもこの梨花にとっては、
昨日から始まったと言っても過言ではなく、その為その会話や行動からこの世界が過去の、どの世界に起こった物なのかを判断するのだ。
その為の情報の大部分は羽入から齎されている記憶の継承や、羽入自身の見聞に頼る部分が大きい………。
勿論、今日一日過ごした分校での生活も大切な情報収集になっている。
しかし梨花は時折不安になる事がある。
羽入が梨花自身に齎す情報が時折抜けている場合があるのだ。
そのことに触れると、羽入は梨花に対して「ボクは本当に必要だと思った記憶しか継承させません………他は必要ありませんから」そう言って羽入は話しをそこで切ってしまう。
その時の羽入の表情は、普段のボケボケっとした、間抜け面から急に別人のような表情に変化するので、梨花もあまり踏み込んで聞けず、そういうものなのだと納得することにしていた。
けれども実際のところ、時偶羽入から継承される記憶意外の世界が現れてしまう事があった。それは梨花が全く経験した事が無い世界、羽入から継承されていない記憶が蔓延する世界。何が起こるか判らない
……全く記憶にない登場人物が現れたり、記憶にない会話を聞いてしまう現実。
そんなときには、変に慌てたり騒いだりすると、梨花以外の登場人物に悪影響を及ぼし兼ねないので彼女は慎重に行動するように心がけている。
それは羽入の受け売りだったのだが、記憶継承が無い時点で羽入でさえ知らない記憶なのだろう。多分。
その事実を前提にすると、今回の沙都子の発言………この家での記憶………それも沙都子との共同生活上に、
自分一人で買い物に行っていた事なんて在ったのだろうか? そんな些細な違和感が梨花の頭を若干よぎった。
けれども沙都子が不安がるといけないと思い、彼女は平常を装うことにした。
「………そうだったのです、 じゃあ明日はボクが買い物に行って来るので、沙都子はボクに美味しい料理を提供する様に心がけていて下さいなのです………」。
「ええ、判りましたわ梨花………」
二人はその後、言葉も無く淡々と食事と続けた。
食事を続けながらも梨花は『この世界はどの話につながって行くのだろう』と考えていた。
そして彼女は後で羽入とこの世界の事で打ち合わせをすることに決めて、少々気まずくなってしまったこの場を立て直す為に、沙都子に圭一の話でも振る事にした
……沙都子の前で圭一の話をすると、全くといって良いほど、彼女は赤面して慌てふためく、梨花はその反応を期待していたのだ。
「……あっ! そういえば、今日も圭一は沙都子にコテンパンにやられていたのです…………けれど沙都子、
程程にしておかないと、本当の本当に、圭一に嫌われちゃうのですよ」
意地の悪そうな笑顔でジャブを繰り出す梨花。
「なっ! だからそれは圭一さんが私の事を<ですわチビ>なんて馬鹿にしたり、子ども扱いするからですわ!」
案の定、沙都子は梨花からの挑発的な物言いに対して、真っ赤になって反論し始めた。
「でも沙都子は圭一が転校してきた初日からトラップを仕掛けていたのです、<ですわチビ>なんて圭一は一言も言っていなかったのです」
負けずに梨花も言い返す。
「うぐっ!」沙都子は言葉に詰まってしまった。
「……ははぁもしかして、沙都子は本当に圭一の事が……一目惚れwww」
「だぁかぁらっ! 何度も申し上げたとおり、私は圭一さんの事なんて、す、す、好きじゃありませんわ!…………ぜぇぜぇ
……いい加減にしないと、いくら親友の梨花でも本当に怒りますわよ」
沙都子は予想通りに真っ赤な顔をして梨花に抗議を続けている、しかし梨花はその攻勢を緩めない。
「圭一が来てから仕掛け始めた沙都子のトラップはボクたちに仕掛けていたお遊び程度のトラップとの比じゃないのです、
ボクにはまるで沙都子が<好きな子に対して素直になれずに意地悪をしてしまう子供>にしかみえないのです」
「………(梨花は、何も分かっていない)」沙都子は梨花からの有無を言わせずの攻勢にすっかり黙り込んでしまった。
梨花は黙り込んでしまった沙都子を見て、やりすぎてしまったと思い、素直に謝る事にした
……沙都子の本心は沙都子にしか分からない、部外者が妄りに切り込んだり踏み込んでいい話ではないのだ。
「沙都子………ゴメンなさいなのです、つい沙都子の真っ赤になる顔が見たくてからかってしまったのです」
梨花からの謝罪の言葉に、沙都子は小さくため息をつきながら
「…………まぁいいですわ、次からは気を付けてくださいましね、それじゃあお風呂にでも入りましょうか」
そう言って小さく微笑んだ。
「にぱぁ☆」梨花は何とか沙都子の機嫌が直った事に安心して、いそいそと風呂の準備を始めた。
18:40分……竜宮宅。
「ふんふんふん♪」
竜宮レナは夕食の準備に追われていた。
20分程前に父親から電話が掛かってきて、久しぶりに夕食の準備をしていて欲しいと言われたのだ。
レナの父親は最近昼過ぎになると興宮の方まで「用がある」と言って出かけてしまう、しかも夜遅くまで。
その為レナはいつも1人で夕食を食べていた。
だから父親からの電話に嬉しく思い、一度準備しかけた夕食を次ぐ日に回す事にして、久々の団欒の為に豪勢な食事にしようと準備しているのだ。
「お父さん、最近元気になってきたな…………何か興宮で楽しい事でも見つけたのかな?」
レナは最近明るくなった父親の事を思い返して自然と笑みが零れてきた。
「あの頃は………………」
レナは一年前に父親と二人きりで雛見沢に帰ってきた。
帰ってきたという言葉が示すようにレナは元雛見沢の村民だったのだがレナが幼い頃に両親と共に茨城県に引っ越していった。
向こうで色々とあったのだろう………戻ってきた時には母親は居らず、生気の抜けたような父親と共に二人三脚で支え合うように生活を営んできた。
そんな父親が雛見沢に帰って来て以来始めて笑顔をみせるようになった。
レナは素直に嬉しかった、少し前の死んだような父親とは似ても似つかない今の父親を見ると、あの楽しかった過去の団欒を取り戻せるかもしれない
……そう思うと父親が元気になった原因が何であろうと、レナにとってはどうでも良かった。
「えへへ〜お父さん、この料理を見たら喜んでくれるかなぁ」レナは自然に緩む表情に気が付かず包丁を動かしている………………しかし。
(ピタッ)……急にレナは包丁を動かすのを止め、思いつめたような表情で何かを考え始めた。
――「…………レナは圭ちゃんの考えている事が判っていたの? だから聞き返したの?」
レナは首を横に振った。
「じゃあどうして?」
「…………今日のお昼に聞こえたの」
「………………何が?」
「圭一君が梨花ちゃんと沙都子ちゃんお弁当を見て『やっぱり同じ』って」
「えっ!……………それって」
「そしてさっきの沙都子ちゃんの話…………もしやと思って」
「………………」
「魅ぃちゃん…………やっぱり圭一君にはこの村の事情を話しておくべきなんだよ、何も知らない状況でこの先の生活を続けていけば、
いつかきっと知っちゃう事なんだし。……勿論もしもの話だけど、圭一君が沙都子ちゃんの事情を知ったとき
『なんで隠していたんだ……仲間ってのは、隠し事は無しだろ?だからお前等らは仲間じゃない!』なんて言われたら
……圭一君が来てからもう一週間も経っているんだよ」
「うん、そうだね…………けど」
「けど?」
「もしも、もしもだよ………もし圭ちゃんが沙都子の村八分の事や悟史の事を知ったら、園崎家の私のことを
………そんなことになったら私………」
「だ、大丈夫だよ! 魅ぃちゃんは昔から沙都子ちゃんの為に色々してきたじゃない、部活の事とか他にも
……それに村八分のことを圭一君が魅ぃちゃんから聞かされるのと、私や他の人から聞くのとじゃ、心象的にかなり差があると思う
……きっと圭一君は魅ぃちゃんの立場とかもわかってくれるよ(そっか……魅ぃちゃんも圭一君の事を……)」
「………………………そうかなぁ」
「………! だったら部活に圭一君も誘ってみたらどうかな!」
「圭ちゃんを部活に?」
「そうそう、去年に魅ぃちゃんが、悟史くんと沙都子ちゃんが折り合いの悪い叔母さんと顔を合わせる時間を減らす為に始めた実績
……その集いに圭一君も参加してもらって、その後で事情を伝えれば、きっと圭一君は魅ぃちゃんは沙都子ちゃんの為に
一生懸命行動してたって事を分かって貰えるよ!……部活の存在理由は私がそれとなく圭ちゃんに伝えるから(………沙都子ちゃんゴメンね)」
「そうすれば圭ちゃんに私の立場とかも分かって貰えるのかな?」
「きっと圭一君なら判ってくれるよ」
「………そっか」
「どうするの? 魅ぃちゃん」
「…………明日まで待って欲しい、ちょっと他にも相談したい人がいるから」
「相談したい人?」
「うん……レナは覚えてるかな…………妹の詩音の事…………」――
「どうするのかな魅ぃちゃん…………詩ぃちゃんか……久々に会いたいな………」
レナは魅音との帰り道での会話を思い返しながら、再び包丁を動かし始めた。
「良し! 出来たぁ…………きっとお父さん喜んでくれるなぁ…………えへへ、まだかなぁ、お父さん」料理が出来上がり、
後はレナ父が帰ってくるだけとなった…………すると。
がらっ「ただいま」玄関の扉が開く音と共にレナ父の声が聞こえてきた。
パタパタ……「お帰りなさい、お父さん」レナは急いで玄関に向かい笑顔で父親に話しかけた。
「礼奈……急に夕食を用意してくれなんて電話してすまなかったな」
「そんな事はないよ! 元々いつもお父さんの分も用意してたし…………それでねぇ、今日は久々に一緒にご飯が食べられるからお父さんに喜んでほしくて、
沢山ご馳走を作ったんだよ!」
「ははは、それは楽しみだな……」
「お父さん、早くリビングに来てよぉ、一緒に食べようよ!」」レナは一旦レナ父との会話を切り、リビングに戻ろうとした。
「ちょっと待ちなさい、礼奈…………」レナ父は真面目な声でレナを呼び止めた。
「ん? なーにお父さん……取り敢えずリビングで食べながら話を聞くよ……」そして二人はリビングに行き、
テーブルに向かい合うように座り、テーブルの上の料理を摘みながら、父親が話し始めた。
「礼奈…………お父さんは、今日礼奈にとても大切な話があって帰って来たんだ」
「…………何かな?」レナはその父親の態度に嫌な予感がして、返答が遅れてしまった。
「私はお前に感謝している…………雛見沢に戻ってきた頃の抜け殻だった自分を礼奈は一生懸命に支えてくれた…………感謝しても仕切れない程に」
「も、もう〜お父さん、そんな事は気にしないでよ、礼奈はお父さんが大好きだから一緒にこの村に帰ってきたんだよ!
ずっとこれからも二人で頑張って行こうよ!」
レナは自身の感じた予感は気のせいだったと思い、父親の感謝の言葉に素直に答えた。
「………あの時の私は、礼奈はきっと妻のところに行ったほうが幸せになれる、だから礼奈から『お母さんと一緒に暮らす』
と言われたとしても、説得する気なんて無かった、だから礼奈が私と一緒に暮らす事を選んでくれた時に、本当に嬉しかったんだ(ブチャ的な意味で)」
レナは突然な父親からの告白に驚きながらも、内心嬉しさがこみ上げていた。
「うん!」
「しかしあの時の私は、まだ妻を愛していた……そんな妻との離婚によって私はどうしようもなく気落ちしてしまって、
礼奈が私に着いてきてくれる…………雛見沢に戻ってきても、その嬉しさを表現出来なかった」
「…………(お父さん……まだあの女の事を)」
レナは過去の人物になってしまった母親に少しばかりの嫉妬を感じたが、それでも黙って父親の話を聞いている。
「それでもお前は、嫌な顔一つせずに私を支えてくれた、しかし私も男だ!!時間は掛かってしまったが、もう大丈夫だ!
新しく働く職場も決めてきた、もうお前に心配をかけるようなダメな父親から脱却するぞ!」レナ父は強い決意を堂々とレナに宣言した。
「うんっ! 礼奈も協力するよ!………グスッ、お父さん……礼奈は本当に嬉しいよ」レナは父親の言葉に思わず涙してしまった。
正直父親の現状にレナ自身も憤りを感じなかった訳ではない…………時には自分の境遇に感情が爆発しそうになったことだってあった。
しかしレナの中には『悪いのはあの女であってお父さんではない』という考えが爆発寸前の心根に浮び、
また、分校内での魅音達との平穏な日々のお陰で目に見える癇癪を起こさなかった。
それに今年になって転校して来た少年、前原圭一の存在も、思春期真っ盛りのレナの心に好転したようだ。
「そっかぁ………じゃあお父さんが興宮に出掛けていたのは仕事を探していたんだね」レナがそう言うとレナ父は
「い、いやぁ…………別に就活の為だけに興宮に行っていた訳じゃあ無いんだ」
そういって頬を赤らめた。
「え?…………他にも理由があったの?」
レナ父は姿勢を正し、レナの顔をまっすぐに見据えながら話し始めた。
「礼奈……………お前に是非会って貰いたい人がいるんだ…………」
19:15分……前原宅。
「頂きます(×3)」
母親からの呼びかけに、風呂場に居た圭一や、アトリエにて作業中だった伊知朗もリビングに集まり夕食が始まった。
前原家では引っ越してきた初日から<夕食は必ず家族全員集まってから食べる事>と言う家訓が作られ、
それは破られる事もなく続いている。
『よし! あれは疲れてたから見ちまった悪夢なんだ、これ以上父さん達に心配をかけないように……』
シャワーから上がった圭一は先ほどの悪夢を全て流し切ったかのような表情で、食卓に向った。
そして普段通りの雑談を家族に披露する。
最近の話題はほとんど<ですわチビ>のことばかりだった。
「今日もあのチビに一杯食わされちゃってさ、はぁ毎日毎日ヒヤヒヤだぜ。………たくっ、親の顔が見てみたいくらいだよ」
「ははは……随分と元気のいいお嬢さんなんだな」
「ふふっ本当ね……そうだ圭一! 今度そのお嬢さんを家に連れてきなさいよ。………どんな娘か話してみたいしね」
「ええっ! 勘弁してくれよ、あんなチビ助…………それにアイツならこの家が爆発しちまう位の事を仕出かさないって補償もねぇし。
まぁそれでも良いなら、機会があったら連れてくるよ」
「確かに爆発は勘弁してもらいたいが、私も会って見たいな、転校初日からうちの圭一を相手に一歩も引かずに戦いを挑んでくる少女
……うん面白いw」
「そうですよねぇ……お父さんwww」
「………………(面白くねぇよ)」
愚痴のつもりで話した沙都子に対して、両親がいたく興味を持ってしまった事に圭一は苦い顔をした。
「あっそうだ圭一、父さんたちは来週の土曜日に仕事の関係で東京に行かなくてはならなくなったんだが、圭一はどうする
……べ、別に強制はしないぞ……うん」
「東京……」圭一は東京という言葉に対して動揺しているようだ。
「も、勿論!圭一が留守番していてくれるならそれで構わないのよ…………行きたくないのなら仕方ないし
……どうする?」
「………………考えとくよ」圭一は両親の言葉に力なく答えた。
「…………そうだな、東京に行くまで、あと一週間以上もあるし…………じっくり考えておいてくれ」
その後は会話も余り無く、皆黙ったままで食事を続けていた。
やっと一章の2/3が載せられた。
けど疲れたのと、さるが酷いのでここまでにしますorz
多分夜に一章の残りを投下しますです。飲み会が無かったらね。
じゃあのw
乙です!長いなあ。このストーリーだと祭囃しの引きなおしだね。
圭沙での長編はなかなかないから。プロット的に4章はあるのかな?
エロパロしか書いたことないから。長編は大変だなと素直に感動。
スレ復活しとる?
>>109 祭囃し編の引き直しにしちゃうと三四さんの立場とか山犬とか出さなきゃいかんからキツイなw
プロットも無いしw一応、綿・祟・罪・皆・祭・澪の何作かを非常に卑怯でご都合的に
改変した話になるのかな……この一章で結構方向性が決まると思う………適当過ぎワロタwww
この圭一は原作ほど熱い奴でもないし、展開も気分次第な感じw(あれこいつ味方なの的なw)
じゃあ一章の最後投下します。
21:30分……興宮の某マンション。
プルルル〜プルルル〜「…………るさいなぁ…………だれよ、こんな時間に?」
寝ていたのを起こされたのだろうか? 少女は目の前にある電話機を強く睨み付けた。
そして面倒くさいので、少女は居留守を使おうかと思ったが、コールが20回を過ぎても切れる気配がないので
渋々ながら出ることにする。
「…………はぁいもしもし園崎ですけどぉ、こんな迷惑な時間にどちら様ですかぁ?」
園崎と名乗った少女は、言葉の端々にたっぷりと毒を含ませて答えた。
「詩音…………私」
「はぁ………やっぱりお姉ですか……で、なんです? 私もう寝ていたんですけど」電話の相手は魅音のようだ。
そしてその魅音を姉と呼んだ園崎詩音はやはり面倒くさそうに応対している。
「あっ、ご、ゴメン……今日中に詩音に話したい事があって、夜分遅くに悪いとは思ったんだけど、電話しちゃった…………本当にゴメンね」
「私に話し?(このヘタレ当主代行のバカ姉は最近何か問題があると、事ある毎に私に相談を持ちかけてくるようになった………正直鬱陶しい)」
「う、うん………ちょっと言いづらい事なんだけど」
「言いづらい事?………………!………あぁ! もしかしてあの糞ガキが村八分に耐えかねて、
遂に首でも括ったとか? あ?それとも鬼ヶ淵に身を投げたとか? 」
「なっ!! 詩音っ、あんたまだ沙都子の事を…………いい加減にしなよ! そんなことある訳無いでしょ!」
魅音は、詩音の余りにも非常識な発言を無視できず、強く非難した。
しかし詩音は悪びれることもなく。
「お姉ったらぁ………冗ぉ談ですよぉ♪…………ところで私に話って何ですか?」
「………この前に話した圭ちゃんの事なんだけど」
「圭ちゃんって………ああ、この間分校に転校してきた一学年下の男の子ですよね」
「そうそう、その圭ちゃん」
「その圭ちゃんが何かマズイ事でもしたんですか?」
「いや、何もしてないよ………けどその、今日一緒に帰ったんだけど………その時に」
「お姉ったら男の子と二人で帰ったんですかぁ〜! いやぁ羨ましいなぁ、お姉も成長してたんですねぇwww」
“(///з///)”「ち、違うよぉ! レナも一緒に帰ってたんだよ!! わ、私は別に圭ちゃんの事なんて、す、好きとかそういうんじゃ………」
「…………お姉………ところで早く本題を言って欲しいんですけど(惚気話でも私に自慢するつもりなんだろうか? 悟史君を失った私に?
……はぁ、コイツは本当に馬鹿なんだな………うん、救いようの無い馬鹿だ)」
「なっ!……詩音から聞いて来たくせに」
「(チッ)………………早く用件を御願いします」
「わ、判ったよ、それでその帰り道で圭ちゃんが私達に沙都子の事を聞いてきたんだよ」
「(あの糞ガキの事?)………………どんな事を聞いてきたんですか?」
「普段の沙都子の事とか、それについて私たちがどう思っているのかとか」
「………じゃあ村八分の事を知って?」
「………たぶん知らないと思う、けどその後レナが圭ちゃんに何を思っているのかって聞いたんだ………そしたら」
魅音は詩音に対して、今日の帰り道の事を細かく説明した、詩音としては大嫌いな姉との話など、
早く切り上げたかったのだがその話の中心人物である転校生の圭一が描いた絵空事に対して、少なからず興味をもった。
「はははwwその圭ちゃんって人、結構鋭いんですねwww仮にその苗字が北条じゃなくて園崎だったならある意味大正解だったのにwww」
詩音は受話器を抱え込むように大笑いした。
「………その言い方は止めてくれないかな、まるで私まで進んで北条家(沙都子)の村八分に協力しているみたいに聞こえるから………」
「ああwお姉は加担していないんでしたっけ、そっかぁ、村八分は大人たちの事情(勝手)ってことですよねwww」
「………………………」
魅音は詩音の慇懃無礼な態度に、酷く不快さを感じてはいたが、言葉には出さず、更にその事については何も答えないことにしたようだ。
「ああそうでした、思い出しました! お姉ってば、あの糞ガキの為にお遊びサークルを作ったんでしたっけ?
うん、大丈夫ですよ! 私が保証します、お姉はあの糞ガキの為に頑張りましたよw(あの糞ガキの為にはね)」
「だから何度も言っているけど、沙都子の事をそんな言い方で呼ぶのは止めてよっ! あの後大変だったんだからね!
……何度も何度も謝ってやっと………やっと許して貰えたんだから!」
「(はぁ?謝っただぁ?)……だから冗談ですってばぁwwwお姉ったらあんまり目くじら立てないでくださいよ、
分かりましたよちゃんと沙都子って言えば良いんですね、次からは気をつけますよ」
「…………本当に気をつけてよ」
「……話が進まないのでまぁ冗談はコレくらいにして、結局どうしたいんですかお姉?」
「(自分から振った癖に)………それでレナが部活に圭ちゃんを誘って、その過程で沙都子の状況を説明したらって言うんだよ、それで一応詩音の意見も聞きたいなって思って、それで電話を………」
魅音は話しを散々かき回した本人である詩音に、急に窘められて些か頭にきていたが、どうにかソレを我慢し、そして元々の本題を切り出した。
「んーそうですねぇ………そうだ!」電話越しに何か考えている風だった詩音だったが不意に何かを閃いた様に声を上げた。
「ん?………如何したの詩音?」その声色に魅音は一瞬戸惑ったが、何かいい案でも浮んだのだろうか?
期待を込めて魅音は詩音に話し掛けた。
「ねぇお姉、私もその圭ちゃんって人に会ってみたいんですけど」
「はぁ?………な、なんで詩音が圭ちゃんに………」魅音はイキナリ検討違いの事を言われて思わず狼狽してしまった………。
「だってそんな面白そうな人にお姉だけが会っているなんて不公平です! それに会ったことも無い人の事を相談されても曖昧に答えるしか無いじゃないですか」
詩音の声は『自分の意見は正論!』そんな自身に溢れている様に魅音の耳に届いた。
「そ、そんな……きゅ、急にそんなこと言われても……」魅音は急な妹の御願いに戸惑った……それは急な意見だったから?………それとも。
「お姉……もしかして私が圭ちゃんを取っちゃうとか思ってないですか? 」
「…………そんなこと」
「じゃあいいじゃないですか、コッチだって明日明後日って言っている訳じゃないんですよ…………そうですね来週とか」
「わ、分かったよ……来週の何処かでね」
「わぁ有難う御座います!お姉♪…………あ、あとく、沙都子の事は私としてもレナさんの言うとおりワンクッション、
間に何かを入れて説明したほうがいいと思いますよ、そうですね………まぁ部活でいいんじゃないでしょうか」
「うん……そうするよ」
「じゃあもう切りますよ」
「…………色々有難うね」
「はぁいwww…………あぁそれとさっき私への返答に、悟史君を引き合いに出さなかった事は大正解でぇ〜すよぉ〜、
珍しく空気読みましたね、お姉♪ じゃあお休みなさ(ガチャン)」
「ははは、切られちゃったw …………まぁいいや♪ 来週が楽しみだな」
詩音はいきなり電話を切った魅音のことよりも、まだ見ぬ圭一という少年に対しての興味が勝っているようで、
あからさまな怒りは見せていない………しかし。
「それにあの糞ガキがこの一年でどう変わっているかも見てみたいしね……まぁどうせ何にも出来ない泣き虫のままなんだろうけどw」
詩音はその端正な顔を歪めながらカレンダーの前まで向かい、そして六月○日周辺の部分に赤いマジックでデカデカと
<義妹の参観日♪>と書き入れた。
22:30分……園崎邸。
ガチャンッ『ああああああああああああああああああああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああ嗚呼ああああああああああああああ
嗚呼嗚呼ああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼
嗚呼嗚呼ああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああ嗚呼
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああムカツクムカツクムカツクムカツクムカツクムカツクムカツク……畜生、』
「ちくしょう!」
「んぁ?」
園崎魅音は叩きつけた受話器を未だ離さず、物凄い表情で先ほどの電話相手である少女の名前を是でもかという程心の中で罵倒する
……尤も最後のセリフはつい口から出てしまい、あまりの大声に一つ離れた部屋に既に就寝していた、
魅音と詩音の祖母である園崎お魎が魅音に話しかけてきた。
「…………何ね? 魅音……こんな時間にそんな大声で叫びよってからに、何処ぞに電話でもしてたんか?」
お魎は驚きや心配を全く含んでいないような淡白……寧ろ煩わしそうな声色で魅音に問いかけた。
魅音は慌てて「んーん!電話なんてしてないよっ!」と誤魔化した。
「ならなんで、あないに大声で……」足腰の悪いお魎は、魅音の部屋にまで来るつもりは無いらしく、
話だけで片付けるつもりらしいのだが、魅音の返答が、お魎にとって満足いくモノでは無かったようで、
尚も訝しげな様子で聞いてくる。
「てへへ、今宿題してたんだけど、あんまり難しい問題で、その解き方が解んなくてイライラしてつい…………驚かせちゃってゴメンね婆っちゃ」
「………あんまり根詰めないで、はよう寝なぃ……」納得のいく返答だったのか、それ以上お魎からの声はなく、再び寝入ってしまったようだ。
「ふぅ…………詩音の奴、まだあの時の事を…………」魅音はお魎を誤魔化せた事に安心しつつも、詩音への怒りが消え去ったわけも無く、
心の中では怒りが未だに沸々と渦巻いていた。
ここは飛ばして貰っても構いません。
魅音と詩音、今現在の二人の関係は必ずしも良好とはいえない、
それは何故か……その理由は二年前の雛見沢村に措ける、一人の少年にある。
その少年に対して園崎魅音は仄かな恋心を抱いていた。
過疎化の進む小村の学級に措いて、魅音の同級生はその少年だけであり、
思春期真只中の魅音がその少年に惹かれたのは、ある意味必然だったのかもしれない。
しかし魅音はその仄かな恋心を、意中の少年に打ち明ける事が出来なかった。
それは、魅音とその少年の家庭とが非常に仲が悪く、
というより村全体とその少年の一家はとある事情から敵対関係にまで発展しており、
魅音個人の気持ちなど到底伝える事など出来ない程泥沼化していたからだ。
しかも彼女の家は、枝の組織に暴力団を有しており、暴力的で血の気の多い事でも有名な御三家の一つと称されていた園崎家だったのだ。
しかしその一年後事態は更に悪化する。
少年の両親が家族四人で行った旅行先で事故死したのだ。
少年ともう一人の生き残りである少年の妹は無事だったのだが、それでも尚、そんな兄弟の境遇に同情を向けるものは略皆無だった。
その後、色々な事情が重なって少年の心理状態は最悪………正に坂を下り落ちる様に悪化していることは、
周囲から案外鈍いとの、随分と有難くない評価を得ていた魅音にも気が付いていた。
少年の名は北条悟史、北条沙都子の兄にあたる存在である。
そして、魅音が悟史の異常に対して相談を持ちかけたのが、妹の詩音だった。
園崎詩音………魅音の双子の妹である彼女は少し前に、とある宗教団体が母体となっている私立中学校から、
半ば脱走してきたと言って良いほど強引な方法で雛見沢に戻って来ていた。
その後、魅音と園崎家に縁のある葛西という人物の手引きで、興宮にて、園崎家が所有していたマンションに
潜伏もとい引篭もっていたのだった。
何故詩音はそんな強引な方法で雛見沢に戻ってきたのか………それは園崎家に伝わる古くからの掟が関係してくる。
園崎家には双子は不吉………もしも子供が生まれたときに双子なら片方を間引く………そんな恐ろしい掟があった。
しかし魅音と詩音は双子として生まれてきてしまった。
すると妹であるはずの詩音は間引かれるはずだったのであるが、それを現園崎家当主の園崎お魎が掟を曲げて詩音の出生を認めたので
(当然であるがお魎にとって魅音と詩音は、大切な初孫である)詩音は出生を許されたのだった。
しかし長年受け継がれてきた筈の掟を曲げた事は、長年掟を守り続けてきた先祖に対する冒涜行為として若干問題視された、
その為、お魎はケジメとして本家に代々伝わる爪剥ぎの拷問器具にて爪×枚を剥ぎ取り、其れをもって詩音の存在を認めさせたのだった。
但し………存在自体は認めさせたものの、元々の掟を全て覆す事は出来ず、
親戚一同が将来的には詩音は尼寺に出家させるという思惑で一致した為、雛見沢周辺に住まわせる事はせずに、
他県の小学校高学年〜中高全寮制一貫教育の女子校の聖ル○ーア学園に通わせることになった。
その結果、詩音は幼年期にして帰るべき故郷を失ったといっても過言ではない。
その妹が………久しく会っていなかった詩音が帰ってきた。
その後、魅音は頻繁に彼女の元に通い出だしたのだった。
そんな諸々の事情があった姉の訪問に対し、詩音も最初は戸惑いを見せていた様だったが、
段々と笑顔を見せるようになってきた。
お魎も魅音の行動に対して気が付いていたのだろうが、何故かお魎は何も言わなかった。
そして魅音が詩音の元に通いだしてから、丁度2ヶ月程経った頃、詩音に一つの変化が起きた。
それは一週間くらい前、丁度魅音が始めてレナを連れて詩音の元に訪れて事に関係する。
詩音は久々に姉以外の人間と話した……話せた事にある種の新鮮さと喜びを感じていた。
さらにレナから分校での授業の事や放課後の部活動の事、さらに雛見沢での生活を聞いて、
彼女のように普通の家庭に生まれたならば、普通に生活しているはずの雛見沢に対して、
大きな憧れと羨ましさを詩音は彼女に抱いた。
その感情と同時に、自分と同じ家庭に生まれ、双子の姉と妹……生まれた……取り上げた順序が違うだけなのに、
レナと同じように雛見沢で面白おかしく生活している姉、其れに比べて生まれからケチをつけられて、
その後も厄介もの扱いされて追放された自分……その事実を重ね合わせた結果、彼女は魅音に対して決して小さくない妬みや、
やっかみの感情が、心の中に芽生えていた事に、彼女は漠然とだが気が付いた。
けれども一度決まってしまった姉妹の順序は残酷なようだが絶対に覆る筈はないだろう。
その常識は彼女も分かっている筈なのだが、『お姉に責任は無い……でも本当なら私が…………私が』
どこか彼女の言葉には、水と油が入った容器に、石鹸水を入れたのに全く混ざり合わなかった
……そんな些か感得できない非常識的な何かがあるような、そんな様子だった。
その後、魅音とレナが帰った後も、詩音は自分の中に渦巻く負の感情と強い不快感に打ち負かされそうになった、
しかし彼女は『……やーめたww、私が詩音、園崎詩音なんだ……それ以上でもそれ以下でもそれ以外でもない』そ
う呟いた彼女の表情は、引き攣って若干ぎこちないが、それでも何かに耐え切ったような、達観した表情を浮かべていた。
そんな彼女の一度きりの我侭。
ある日、詩音はやって来た魅音に対して一つのお願いをした。
『一度きりでいいから雛見沢を自由に散歩したり、商店街を見て回りたい』マンションに来訪して直ぐに切り出された詩音の御願いに、
魅音は若干困ったような表情をしたが、思いつめた詩音の表情に何かを感じ、お魎の手前、魅音を演じた上で、放課後位ならと渋々了承した。
そして魅音が詩音、詩音が魅音になるという双子の特性を利用した非常識的な入れ替わりを行なうことになったのだ。
……その後、何があったのかは、当事者達にしか分からないが、魅音と詩音の兄弟仲は、
非常に悪いものとなってまった事は間違いない。しかも北条悟史は行方不明になってしまい、詩音が糞ガキと蔑む、
唯一人残された妹である沙都子は、古手梨花嬢と同居生活を送る事になり、現在に至っている。
「……もしも、詩音に相談していなかったら……あの時から、完全におかしくなったんだ、私達の関係が
……私達が私達でいる意味が」魅音は自嘲気味にポツリと呟いた。
「でも……あの時から、私達は本当の姉妹になれたのかもしれないけど。ははは……」
尚も魅音は自嘲う、それはもう決して取り戻せない過去を、姉妹で笑い合えた頃の思い出を思い浮かべた故の、
乾ききった彼女の本音だったのかもしれない……。
深夜……古手神社境内。
「…………この世界の事なのだけど……」
梨花は、目の前に<浮かび上がってきた>羽入に向かって、今日一日の様子を細かに説明し始める。
その説明に羽入は時折『あうあうあう』と相槌を打つのだが、殆ど口を挟まずに訊いているようだ。
「取り敢えず大きな変化らしい変化は無さそうなんだけど。けれど些細な……ううん、多分些細じゃないわね、
あれは……私としては見過ごせない変化なのかも……」
「へ? 最後の方が聞こえなかったのですが、何か気になった点でもあったのですか?」
羽入は、梨花の声が小さすぎたのだろうか? もう一度聞き返した。
「羽入………貴女と私は出会ってから、全く同じ時間を過ごしてきたはずよね。」
「え? は、はいなのです……」
梨花の突然の話に首を傾げながらも、羽入は肯定した。
「雛見沢症候群に罹って、圭一が発症したときも、レナが発症したときも、他にも誰かが発症したときも、
いつでもどんなときでも、私の傍に居てくれたのよね?」
「当り前じゃあないですか、ボクは梨花と一心同体なのですから(…………)」羽入は賺さず梨花に答える。
「今日はいつも通り、いいえ、ちょっと違っていたのだけれど、それでも普段通り沙都子と夕食を食べたのよ。」
「…………」
「何て事のない会話ばかりで、そう、今までの世界でも繰り返し話したような話題とかね、楽しく食事をしているつもりだった
……あの話が出るまでは」梨花は表情を歪め、辛そうに言葉を吐き出しているようにみえた。
「り、梨花……」羽入は梨花の意図する事が見えてこず、返答に困っているようだ。
「…………この世界では、私と沙都子は完全には一緒に行動していないみたいなのよ、晩御飯の買い物とかね。今までの世界なら……、
ううんお買い物だけじゃなくても、私と沙都子はどんな事でも二人で一緒に乗り越えてきた筈、それなのに……」
「ま、まぁ梨花………それ位の事で心配しても(なんだ………)」
羽入は何かを我慢しているかのような、不自然な笑顔で相槌をうった………うったのだが。
「其れ位??? 羽入………貴女この状況がどういう意味なのか、分かっていないの?」
梨花は羽入の言葉に反応して、語尾を強めた口調で問いかける。
「………なんだ……其れ位で」
しかし羽入は先程まで熱心に聞いていた梨花の話が聞こえていないのか、下を向いて、ボソボソと独り言を言っている。
『またこの表情だ』………けれども今回に限って梨花は引かなかった。
「あるわよっ!? たいしたこと大有りよ! 貴女(アンタ)私に言った事、忘れた訳?」
「!?っ……あぅあぅあぅあぅ!?……ボクが言った事ですか?」
余りの梨花の剣幕に、やっと気付き、顔を上げた羽入は、暫く混乱していたが、漸く落ち着きを取り戻して発言の意味を問いかけた。
「貴方が『この世界は以前に梨花がいたとしてもこの梨花にとっては、昨日から始まったと言っても過言ではなく、
その為、その会話や行動からこの世界が過去の、どの世界に起こった物なのかを判断するしかないのです……あぅあぅあぅ』
って言ったからじゃない! そんな大事な事を本当に忘れたの?」
梨花は羽入を苦々しく、蔑むように睨み付けながら答えた。
その態度に羽入は萎縮してしまっている。
「た、確かにボクは言いました……そうですね、確かに今までの世界では……あの北条鉄平が帰ってくる世界以外では梨花は、
いつでも沙都子と一緒でしたね………私も一緒……」
羽入はまるで何かを思い出すように、しみじみと呟いた………しかしその態度は更に梨花の神経を逆撫でしたようだ。
「なに呑気に語っているのよ! 私の言っている意味が分かる?良く聞いて?
この世界での登場人物の行動は今まで私が経験していない行動の可能性もあるの。今日の学校での圭一やレナ、魅音に至るまで、
私が既視感に捕らわれているだけで、全く違う世界を迎えている可能性がだってことよ。 ああもう!? どうしたらいいの?」
梨花は頭を抱え、蹲る様に喚いている。その様子を羽入は冷めた眼で見下ろして……見下している。
握り拳を作り、奥歯をかみ締め、何かを我慢しているような素振だ。ようやく羽入は口を開いた。
「……………其れ位、何故ボクがそんな言い方をしたか、梨花は分からないのですか?」
「………意味?………何よ!どんな意味なのよ!」
梨花は羽入の言葉の真意が判らずに、唯、怒りに任せて羽入を睨みつける。
しかし羽入は梨花の視線など何処吹く風な様で、意味を説明し始めた。
「どんな世界でも、どんな状況でも、どんな結末でも、決して打ち負けず、抗い続けると言ったのは、梨花……あなたの筈です。
それは大きな……とても高潔で純粋な決意の顕れだとボクは思っていました。それなのにいきなりの挫折
……たしかに梨花にとって、大切な沙都子との状況の変容は大きな衝撃だったかもしれないです。
だとしても、一度の変容でそこまで取り乱すなんて………梨花の決意はその程度、本当にたいした事なかったのですね」
余りにも淡々と話す羽入の態度に、梨花の怒りも削げてしまったのだろうか………呆然とした表情で羽入を見上げている。
「経験した事のない世界を迎えたかもしれない? 其れならばその世界で死に物狂いで抗えばいいのではないですか?
今までの貴女だったなら、冷静に状況を判断して、解に向かって行動していたのです。
さらに必要に迫れば仲間達と助け合い、状況を打破してきた筈なのに、何故そこまで取り乱しているのか
……ボクには判りかねますのです」
「………………だって………だって……みんな死んじゃったのよ! あの女にみんな……レナや魅音、詩音に圭一
……それに沙都子も、もう嫌なのよ!………私が死ぬだけならともかく、他の仲間や、
特にもう沙都子が死んでしまう光景なんて見たくない。 もしもこの世界が、あんなにも薄ら汚く、
優しくない世界と同じだったなら、私はもう狂ってしまう、諦めてしまう、死にたくなってしまう……だから!…………だから……」
俯いた梨花の大きな瞳から、大粒の涙が一粒、また一粒と流れ出てきた。それを見て羽入は自身の話す素振り………
立つ瀬のカケラもなく、冷淡で全く建設的でない口調を恥じた。そして。
「………………ごめんなさい、ごめんなさいなのです梨花! 貴女の前世を全く省みないで、
貴女に偉ぶって講釈を言ったボクを許して欲しいのです。 でも、分かってください。 輪廻を打破する資格があるのは、
結果に対し、前向きに努力をした人間や、運命に対し、直向きに抵抗し、立ち向かった人間にしか有り得ないのです。
そしてそれに見合う人間は……前向きに努力ができ、直向きに立ち向かえる人間は、貴女以外に有り得ない。」
羽入の言葉に、梨花は僅かに顔を上げ、羽入を見詰める。
「立ち向かいましょう梨花! この世界が新たな世界だろうと、どんな風に進もうと、諦めず、立ち向かい、
切り開きましょう! みんなで笑い合える未来を!」
「羽入…………」
梨花は、立ち上がる、少々膝小僧に泥が付いていたのを振り払って、真正面から羽入を見詰めた。
「その為に必要なのは、何よりも最も大切な事は、梨花が冷静になり、その曇りなき眼で事態に取り組む事なのです!
………ウジウジしていると、沙都子に愛想を尽かされちゃいますよ……あぅっ♪」
そう言って羽入は久しぶりに笑顔を見せた。
「………そうね、少しらしくなかったわね………ごめんなさい」
梨花は笑顔こそ見せないが、口調は普段通りになっていたので、羽入は安心した。
「もう少し様子を見ることにするわ、この世界が惨劇に満ちているなんて、決まった訳じゃあないしね」
そう言って梨花は羽入に微笑んだ。
その後他愛も無い話を二,三した後
「もう少し、この世界の事を調べて見ることにするわ、あの女が犯人って事は、もう分かっているしね。 じゃあ戻るわね」
そう言って梨花は自宅に戻ろうとした。
「梨花!」羽入が帰ろうとする梨花を呼び止めた。
「どうしたの?」梨花が振り返って問いかける。
「申し訳ないのですが、ボク自身も色々と調べたい事があるので、これから余り貴女の前に現れる事が出来ないかもしれないのです。
それなので、会えるときはボクの方から梨花に会いに行くのです」
「………うん、わかったわ。貴女のほうも良い情報が手に入るといいわね……」
そう言って梨花は帰っていった。
梨花の帰った方向を見つめながら、羽入は心の中で謝罪する。
『ごめんなさいなのです梨花………私は知っているのに。1984年の七月を迎えた貴方達の赫々たる絆を
……レナの勇気、魅音の決意、詩音の信念、圭一の自信、沙都子の意気、其々の気持ちが一つになって、
鷹野三四の暴走を打ち破った事を………あぁそう言えば、私はあの大高とかいう者にピストルで撃たれたっけ………』
「本当なら………あのまま………っ!」
不意に掌に痛みを感じ、羽入は視線を下げ、自分の掌を見た。
「こんなに……こんなに深く握り締めていたなんて」掌には赤く、食い込んだ爪跡があり、そしてそこから血が滲んでいた。
そしてそれは只の爪あとには見えなかった、完全な怒りや憎しみを感じた時のみ、刻まれるような深い爪跡に思えた。
その痕に気付いた途端、羽入は再び悲しそうな表情で「もう、赦していると思っていたのに、身体が
……心が反応してしまっているのですか………くっ!」梨花が帰った方向を見ていたが、
不意に苦しそうにしゃがんで震えだした。
「………ち、違うのです! この古手梨花と、貴女が知っている古手梨花とは全く別人物なのです、関係ないのです。」
突発的な発作を起こしたように、羽入は息も絶え絶えの様に、言葉を吐き出している。
「………貴女には感謝しています。貴女のお陰で私は梨花の贖罪を………間違った道を………真っ直ぐな人間に
……きっと貴女との約束は守るのです………だからもう少しだけ………ふぅ」
やっと発作が治まったのか、羽入は立ち上がり、どこか辛い記憶を思い出しているかのような表情で呟く。
「もう一人の私が終幕を求めている、早く約束を果たさせようとしている
……やはり当分梨花には会わないほうが良いみたいですね。先程のように取り乱す梨花を見ると、
無意識に彼女の記憶が流れ込んできて、混同………思い出してしまう………彼女が目覚めてしまう
………私は………私達は悪い神様なのです」
悲しそうに羽入は呟くと、蜃気楼が消えるように姿を闇に纏わせた。
辺りの薄暗さが更に増したような気がした。
第一章<ですわチビ> 終わり。
ふぅ……さるの壁がこんなに厚いとはw
取り敢えず一章はこれでおしまいです。
最後の方、厨臭くてすみませんwww
二章は今書いてる最中なので、何時いつ投下等の予定は未定にしておきます。
見ている人が居るのかは分かりませんが、ご拝読有難う御座いました。
こんなとこにSSを投下してくれて本当に乙なんだぜ
後でじっくり見るね
乙です。なるほど、結構伏線引いてますね。皆殺しの時の梨花を分離したのかな?
長編だから大変でしょうけど頑張ってください!
136 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/24(木) 16:05:44 ID:UbEVvjyy
乙。このスレが放置状態だったから嬉しいな。
このまま書き続けてほしい。
チョwwwリーッスwww
読んでくれてる人がいるなんて……べ、別に泣いてなんかry。
仕事の話だけど、M党政権になって予算編成が不安定な略ゼロからのスタートwww
公共入札のやり直しとかが始まって死ぬほど忙しい(一応公務員じゃないよw)
合間にちょこちょこ書いてます。
エタる事だけは絶対にしないように心掛けるので宜しかったら是からも見てやってくだせえw
今日の午後辺りに2章の1/3を投下します。
それとssと関係ない事(仕事の愚痴w)はこれからは書かない様にします。
これから二章の前半を投下します。
今回はギャグ要素が強い内容となっております。
『何故この少女はこんな所で泣いているのだろう………』鬼は目の前で酷く悲しそうに………とても弱々しく泣き崩れる脆弱な少女に対して、
不思議な興味を抱いた。
「えぐっ……ぐすっ……ひぐっ………ひんっ」その少女の容姿は、幼いながらも、切長の目筋、長い睫毛やすっと通った鼻筋をみるに
将来は美しい女性になるように思えた。
そしてそれ以上に鬼が見惚れていたのは、少女の流した涙が光の反射によってキラキラと輝いていて、ある意味神秘的な魅力
………艶やかな雰囲気を醸し出していたからだ。
鬼は暫くその少女に魅了されていたのだが、ふと我に返り自分が里に下りてきた理由………<大嫌いな人間を追い返す>
目的を思い出し、少女の元へ向かおうと思った。
しかし………少女の着ている桃色の上着の襟元が大きく滲んでいたのに気付き、思わず躊躇してしまった。
それは如何に長時間、歯を食いしばって歪んだ頬を、次々と涙が伝い、襟元を濡らしていったかを具さに語っていた。
『卑怯で薄ら汚い人間など、いっそのこと殺してしまおうか………そんなつもりで降りてきたのに、あんなに泣き続けて、
辛そうな………尚に子供なんて………もういい……帰るのです。』鬼は踵を返し、山に帰ろうとした。しかし。
<バキッ>「ひっ! だ、誰?」『………!(しまった)』足元の枯れ枝を踏み抜いた際、
大きな音が鳴ってしまった。
その音に少女も第三者の存在に気付いて、驚いたように鬼の居る方向を叫んだ。
「………………」
「誰? 誰なの?」(ざっざっざ)
鬼は声を殺して只じっとしていたのだが、少女は鬼の方に近づいてきた。もう直ぐ目の前まで少女は近づいて来ている。
<ガサガサ>「確かこの辺、か………ら………ひぃぃっ!」
少女が茂みを掻き分けて、縮こまっている鬼を見つけて、悲鳴を上げて尻餅をついた。
「こ、こんにちは、なのですお嬢さん………どうしてこんな寂しい所で泣いているのですか?」
尻餅を付いて固まっている少女に近づいて、驚かせないように、鬼はしゃがみ込み、同じ目線で問い掛けた。
「………………ば、ば、」少女は驚いて上手く言葉が出ないのか、口をモゴモゴさせて、鬼から眼を逸らさず
………とくに紫色の角を凝視して、固まっていた。
「私の住んでいる所まで、貴女の声が届いてきました。………それで気になって来てしまったのです。
………ほらっ! 尻餅を付いたままではお洋服が汚れてしまうのですよ、立ち上がらないと………」
そう言って鬼は少女に対して手を差し伸べ、立たせようとした。 しかし。
「ば、バケモノ!? 来るなっ! 来るなっ! うわーん助けてぇっ! にーにー! にーにーィィっ!」
そんな気さくな鬼の態度に対して、少女が擁いた感情………それは鬼に対する純粋な畏怖と絶対的な拒絶だった。
「幸せにしてくれてありがとう」第二章<普段通り?の仲間達>
昭和58年6月11日・通学路 AM 7:50分
「ぜぇぜぇ………家族全員目覚ましを掛け忘れて寝坊って………はぁはぁ………どんな偶然だよっ!?」
そんな不満をぼやきつつ、圭一は通いなれ始めた通学路を走っていた。
そして普段レナと落ち合っていたバス停のあるT字路に差し掛かって、そこにある、古ぼけた○×建設贈答と書かれた時計を見た。
時計は時間帯にギリギリ間に合った事を証明していたのだが、しかし。
「あれ?…………レナが居ないな?」普段、圭一よりも先に来ていて、おっとりとした穏やかな表情で圭一を向かえて居る筈のレナの姿が、
今日は見当たらなかった。
<キョロキョロ>「レナぁ! 居ないのか?」圭一は辺りを見回したのだが、レナの姿を見つけることが出来なかった。
「先に行ったのかな………(チラ)ちょwwwヤヴェwww急がないとwww」圭一はレナの事が心配になり、暫く呆然としていたが、
何の気なしに見た時計に写った絶望的な数字を見て、思わず我に返り、再び分校に向かって走り始めた。
「け、圭ちゃん! おーはよー、(ビュンッ)………!」
「おはよう魅音! それじゃあ先に!」(ダダダッ)
その途中………というより魅音はいつも通りに圭一とレナを待っていた。しかし何時もより二人が遅いような
………それに感覚的に気付いた魅音は先に行ってしまおうか。そう思った矢先、やっと圭一の姿が見えてきて、
しかもその傍らにレナが居ない『こ、コレは二人で登校フラグ! (じゅる)フヒヒヒ♪』魅音の脳内にバラ色の夢想
………妄想ともいうが………そんなドッキュンぷるりんな恋の予感に揺れる乙女心を圭一に向かって振り撒こうとした。
………まぁ結局、恥かしかったので結局普段通りに声をかけたのだが、一瞬の内に圭一は魅音をdeスルーして通過して走り去っていった。
「へっ?………ど、如何したのさ?」(ダダダ)
一瞬、呆気にとられた魅音だったが、直ぐに復活し、圭一を追いかけながら問い掛けた。
「(たったった)理由は後だ! 魅音! お前も走らないと遅刻するぞ……」
「(たったった)へっ? だってまだ時間は……」
「(たったった)今、凡そ7時5○分だ………」
「(たったった)………了解、後で話は聞くよ お先っ!(ダッ)」
「(たったった)あっ! ちょ! 待てよ魅音(ダッ)」
隣に並んで圭一から、走っている理由を聞くや刹那、魅音は先程の感情が全て消えうせてしまったかのように
………というより全く無かったかのように、それは軽やかに圭一を置き去って、先に行ってしまった。
彼女は精神の切換が非常に優れているようだ。
けれども圭一は、魅音の葛藤というか妄想なんて知りもしなかったので、只、首を傾げて十メートル程前を行く
揺れるポニーテールを、悔しそうな表情で見つめる事しか出来なかった。
昭和58年6月11日・分校教室内 AM 8:09分
<ベチャッ………ポタポタ>
『くっ! またはずれか! 次は………ん?………あれ?………こう、ドカーッっと………ズガーッと………え?え?
………な、なんだ、今日はコレだけなのか!?』
圭一は昨日と同じように教室前で沙都子のトラップ攻略に考えを巡らせてはみたが、結局は引っ掛かってしまった。
『おかしいな?………この程度じゃ俺を怒らせる事も、屈服させる事も出来できないぞ………沙都子の奴、何かあったのか?』
けれども今日のトラップは、昨日のような単純な破壊力を秘めた、心身共に影響の出るイタズラではなく、
身体だけに影響の出るような軽いイタズラだけだった。
『んー? もしかして昨日の…………フヒwww なんだ、このチビにも少しは可愛いとこあんじゃねぇかwww』
普段の勢いから考えれば、ある意味小休止………なんというか、猫の甘噛みのような攻撃だった。
………そう、それはまるで昨日の悪戯を気に病んで、昨日の贖罪のような
………手加減されているかのような威力のイタズラであると、圭一は感じた。
「お〜〜〜ほほほっほ………今日も圭一さんは、私の華麗なトラップ技術にキリキリ舞いですわ
………まぁ昨日は遣り過ぎでしたのでwww今日は甘々の雑巾爆弾だけですわ!」
「(ニヤニヤ)フヒヒwww」
そして普段のように高嗤う沙都子の表情が、そんな感覚を前にしてみて見ると、アラ不思議!
何処となく自分の顔色を伺っているような………そんな妙な可愛げを感じてしまって、
圭一は思わずニヘラと笑ってしまった。
圭一には精神疾患でも患っているのだろうか?
「け、圭一さん………如何しましたの? 遂に黄色い救急車が必要になる程に、頭が沸いてしまったのですの? 正直気持ち悪いですわ……」
ドアを開けた圭一の顔面に、牛乳雑巾が直撃して、沙都子は直ぐに圭一が怒鳴り散らしてくると思っていた。
そして壮絶な舌戦になると………なのに圭一はニヤニヤと笑っているばかりで一向に罵ってこない、ソレは沙都子にとって非常に想定外だった。
「フヒwwwまぁこれからはもう少し御淑やかにしろよ………んあ?………黄色い救急車? あれって実際本当にあんのかな?」
圭一は薄ら笑いながら、さり気なく沙都子の頭を撫でている。
沙都子はそんな圭一の手を擽ったそうにしながらも嫌がる素振りは見せていない。
「私に言われても………っていうか、本来の流れでは、此処は私に怒鳴り散らすべきじゃぁありませんの?
折角………怒鳴られる準備もしてあったのに(なんで………)」
「まぁ気にするなよ、フヒw………あれっ!」
沙都子との舌戦と言えるのかも疑問な程度の低い口喧嘩を終えて、不穏な空気に気が付いた圭一は辺りを見渡した。
呆れたような顔をして二人を見ているクラスメイト複数、生暖かい表情で二人を見ている園崎魅音、
二人を柔らかな表情で見守っている古手梨花、既に教室内に来ていたのだろう、今にも爆発しそうな真っ赤な表情で、
二人を見ている知恵留美子。
『前原さん………今日も北条とあんなに………ちくしょう』大好きなおもちゃを取り上げられ、
グズる子供のようなしみったれた顔で二人を………どちらかと言えば圭一を忌々しいというか、
悔しそうな表情で睨みつけている者も若干居るようだが。
「そういえばレナは………魅音、レナは?」圭一は、レナがその集団の中に居ない事に気が付き、
その理由を近場に居た魅音に質問した。
「先ずその事!? じゃなくて圭ちゃん! もう知恵先生が来て………」魅音は圭一の問いかけには答えなかった、
というよりも答えられなかった。
なぜならその前に知恵の怒号が教室中になり響いたからだ。
「前原君! 沙都子ちゃん! 貴方達は何度言ったら! ああ! もうっ! 昨日も言いましたけれども、
二人とも、もう少し分校での在り方を考えてください!」
「も、もう知恵先生が来てたのかよ!?」圭一はいきなりの怒声と共に、知恵の存在に気付いて大変驚いたようだ。
沙都子も喋りこそしないものの、びっくりして固まっている。
「す、スイマセン知恵先生、先生が既に来ていたなんて、実際正直全く気付きませんでした………テヘッ☆」圭一は反省しているようで、
実際あまり反省しているように見えないような態度で謝った。
「ご、ゴメンなさいですわ………知恵先生(´・ω・`)」沙都子も知恵の余りの剣幕に、圭一につられた訳ではないが、
素直に謝った。けれども。
「いいえ、もう今日と言う今日は許しません! 二人とも先生が処分を決めるまで廊下に立っていなさい!」
知恵は廊下に向かう扉と指差しながら、二人に向かって命令すると評したほうが正しいような態度で答えた。
「………はい」「………はい、ですわ」圭一と沙都子は項垂れながら廊下に向かった。
「はーい、みなさん席に着いてください。 ああそれと、竜宮さんは、今日は体調が優れないと親御さんから連絡が来たのでお休みです」
「…………レナは今日学校を休んだのか」
「そのようですわね………」
知恵は二人が出て行ったのを、見計らって朝礼を始めた。
その途中でレナが学校を休んだ事を皆に伝えた………それは廊下に居た圭一と沙都子にも聞こえたようだ。
その後少し経って教室から、男子一同が廊下に出てきた。
『そういえば、今日の一時間目は体育だったな』と圭一は思い出した。
そして最後の辺りで知恵が出てきたのだが、知恵は現在も未だ機嫌が直っていないようで、
そんな雰囲気が垣間見えるような態度で圭一達に話しかけた。
「前原君と沙都子ちゃんは、一、二時間目の体育と図工の授業は罰として、鬼ヶ淵周辺の清掃作業をしてもらいます。
勿論三時間目迄には帰ってきてもらうので、往き帰りの時間を考えても一時間程の活動ですね。 前原君受け取ってください」
そう言って知恵は自分が今まで付けていた腕時計を外して圭一に渡した。
「鬼ヶ淵っていうと………ああ、昨日魅音に案内して貰った沼のことか………マンドクセェな」
圭一は面倒そうに腕時計を受け取った………序にボソリと何かをぼやいていたが。
「前原君………何か言いました」知恵が殺す笑みで圭一に問いかけてきたので
「いいえ、何も……ほらっ、沙都子っ! 行こうぜ」圭一は沙都子の手をとって鬼ヶ淵に向かおうとした。
「け、圭一さん! れ、れ、レディの手を、そ、そ、そんなに軽々しく握ってい、い、良いと思ってるんですの?
わ、私、そんなに安っぽい女じゃありませんことよよよ………」沙都子は顔を真っ赤にして、圭一に抗議しているが、
その左手を包み込む確かな暖かさは、決して嫌なものでは無い………『圭一さんの手………にーにーみたい』態度では出せないが、
自分は本心から嫌がっていない事を、心の中では無意識に気が付き始めていた。
圭一は動かない沙都子を引きずって玄関の方に向かっていった。知恵は二人の後姿を見ながら、
『過疎化対策の誘致事業でやっと誘致した前原家の御子息がついていれば、村人達もそう簡単には
………沙都子ちゃんも、もう少し前原君を身近に感じて、素直に触れ合えれば、毎日こんな回りくどい甘え方をしなくても、
純粋に甘えられるでしょうに。………それに前原君も………やっぱりあの手紙は見せる必要はありませんね』
と心の中で二人の関係向上を切に願っていた。
「知恵先生……今日は何をすればいいんですか?」知恵は自分の名前を呼ばれ、後ろを振り向くと、
クラスの生徒一同が知恵を見上げていた、自分を呼んだのは先頭の魅音のようだった。
「えっ! あ、そうですね……今日はドッジボールでもしましょうか。 園崎さん、チーム分けを御願いします」
知恵の言葉に、魅音の後ろに控えていた生徒……特に下級生達が歓声をあげた。
「判りました(圭ちゃん…………)」魅音は知恵に対して返事をしたが、同時に心の中では別の事を考えているようだが。
<ポンポン>「魅ぃ〜、急ぐのです。グズグズしていると、ボクたちまでゴミ拾いをさせられちゃうのです。知恵はおっかないのです☆」
肩を叩かれて魅音が振り向くと、やや斜め下に梨花のとびきりの笑顔があった。
魅音は苦笑して「そうだね梨花ちゃん。………さぁみんな! ゴミ拾いがイヤなら急ぐ、急ぐ! グズグズしてると知恵先生の気が変わっちゃうよぉ!」
そう言って外に向かって生徒を誘導し始めた。
「ちょっ、ちょっと待ってください、私はそこまで………あぁもうっ! とにかく魅音さん、後は頼みましたよ」
知恵は一瞬自身に対する、余りにもな評価に、思わず口を出しかけたが、それではいつまで経っても、話が進まないので、
魅音に支持を伝え、ジャージに着替える為に職員室に戻っていった。
圭一と沙都子は、校門を抜けて鬼ヶ淵に向かって、手を繋いだまま歩いていた。
圭一は先程の知恵の無慈悲な罰則を不服に思っているのか、未だにブツブツと独り言を呟いており、
沙都子は唯黙って圭一の横を歩いている。
「たくっ、散々な目にあったな。………ゴミ拾いなんて昨日レナに付き合わされて、たっぷりしたっつーの………あぁ沙都子、
もう手を離してもいいんだぞ? 俺の掌はいつでも燃え滾る血潮が流れ続けているから温度が高いんだ、
既にちょっと汗ばんでいるだろ?」
そう言って圭一は沙都子の表情を伺った。………しかし。
「…………………『温かい手……そう………にーにーの手はいつも暖かくて………ほっとして』」
沙都子には圭一の声が全く届いていないようで、それどころか、思い出し笑いをしているように、
時折ニコニコと微笑む様子に、圭一は口を噤んでそれ以上何も言わず、手も握ったまま、
舗装されていない田舎道を、小さな沙都子の歩調に合わせるように、ゆっくりと進んでいった。
その道中、圭一の眼前に、二本の木が見えてきた。
「………おっ! あれは昨日魅音に教えてもらった柘榴の木じゃねーか! そうかこの道からでもアレにぶつかるのか
………あれ? あそこに誰か………若い女の人?」
この撓(たわわ)に果実が実っている柘榴の木は、昨日魅音達に連れられて、この田舎道を通った際、
見つけた………というより、魅音に教えてもらった分校生徒なら誰でも知っている、有名な果樹だった。
この柘榴の木は、九月の下旬に食べ頃を迎えると、甘酸っぱい真っ赤な実を、
毎年大量に分校の生徒に何年も振舞い続けており、雛見沢分校生徒達は、
九月を迎えることが何よりも楽しみになっていた。
実際魅音自身も、既に卒業してしまった先輩達から、この木の存在を教えられ、何度もこの果実の御世話になっていた。
この木の存在は、代々上級生から下級生に、受け継がれている伝統のようなモノのようだ。
そして魅音に柘榴の木の事を聞いて圭一は嬉しかった、別に柘榴の実が彼にとって我を無くす程の好物だった訳ではない。
その事実、新参者の自分にも、その<伝統の木>の存在を教えて貰ったことが純粋に嬉しかったのだ。
自分は完全に、この雛見沢で受け入れられている! そんな大きな自信が、圭一の身体の中を一抹の風となって駆け抜けた気がした。
そんな事もあり、案内された雛見沢の中でも、この場所………柘榴の木は、圭一にとって一番印象に残っていた場所だった。
その木の下に誰かが居るような気がして、圭一は目を細めて伺うように見た。
すると確かに木の根元に女性が座っているように見えた。
「(ぴた)『なんでこんな所に?』 (ずいっ)おっと! あぶねぇ!」
圭一はその状況を不審に思い、立ち止まって思案しようとした。しかしそんな圭一の行動など関係なく進もうとしていた沙都子と繋がれていた左手が、
即席の楔のようになってしまい、つんのめりそうになったので、思わず沙都子の右肩を、空いている右手で掴んだ。
その結果、沙都子の体は右足を軸にくるりと半回転して、圭一の胸元にすっぽりと納まった。
「ふぇっ!………あ、あれもう沼に着いたんですの?………いつの間に………んんっ?……………此処は?」
圭一の胸に鼻頭が当たっておどろいたのか、雛見沢原産のトリップガールこと、
北条沙都子の意識も現実に引き戻されたようで、必死に今現在の状況を把握しようと辺りをキョロキョロさせていた。
「おっ! やっと気付いたか!」
「け、圭一さん」
「沙都子、一体どうしたんだ? 話しかけても全然答えねぇし。ところで、もう手を離してもいいか? それともまだ繋いどくかww?
それにしても、お前の身体って結構華奢なんだな………ww」
「へっ? 手? 華奢? あ、あ、あ、な、何でまだ圭一さんが私の手を握っているんですの???
ま、まさか分校からずっと??? ってそれよりも、わた、私なんで圭一さんのむな、胸元に
………な、馴れ馴れしいにも程ってモノが……あーもうっ、不潔ですわ圭一さん、は、早く離して下さいまし!」
圭一は、やっと現実世界に戻ってきた少女に苦笑いを浮かべつつ、直ぐにそれをニヤニヤとした薄ら笑いに変えて、
沙都子に向かって未だ握られている手の処遇をどうするか聞いた。
すると沙都子は繋がれている左手を見て、一気に記憶が覚醒したようで、さらに今現在自分が圭一の胸の中に居るという現状が、
よく理解できていないのか、分校の時よりも更に真っ赤になった顔をわなわなと震わせて、圭一に抗議した。
「なにおう!」(グニっ。)
「(フニュフニュフヨヨ)ふぇ、ふぇふぃふぃししゃん! い、いっちゃい、にゃにを、にゃしゃりゅんでしゅにょ?」
圭一はそんな沙都子の理不尽な抗議に対して怒るでも無く、それよりも、そんな沙都子のプリプリと膨らんだり、
萎んだりする林檎色の頬っぺたの動きの愛らしさに、怒りよりも悪戯心が先に湧いてきてしまい、
思わず沙都子のムニムニ頬っぺたの両端を、握って左右に引っ張ってしまった。
悪戯小僧のように自分の頬っぺたを引っ張り続ける圭一の行為に、沙都子は不思議な感情を抱いて、思わず戸惑ってしまった。
それは急に引っ張られた頬っぺたに伝わる熱さでもなく、見上げた圭一の微笑くそ笑んだ意地悪な表情に対する怒りでもなく、
もっと異質な………この圭一の行動にたいして沙都子自身がそれ程、嫌悪感を抱いておらず、それよりも嬉しそうな圭一の表情を見て
『圭一さんがあんなに喜んでくれている………頬っぺたに圭一さんの体温が………な、なんかポカポカして………心が温まるような………っ!』
「ほれほれwwwwwどうしたいつもの暴れっぷりはよぉwwwそれにしてもスベスベで饅頭みたいにムニムニだなぁwww」
尚も圭一はされるが侭の、沙都子の頬っぺたをムニムニと弄り、その感触の良さに、さらに悪乗りしているようだ。
「ひゃっ………ひゃめちぇひゅだしゃいまひぇええええええええ」
『何を考えているんですの、私は! こんなことされて、嬉しいわけ………嬉しいわけ………昨日の………』
沙都子は昨日の夜に、梨花と話していた事を思い出していた。
――それまでは他愛も無い世間話だったのに。 そんな他愛も無い筈の話が、急に私の今現在の立場を思い出させられてしまう
辛い時間に変わった時だった。
もっとも梨花に悪気は無かったのだろうけど。
ええと、あれは買い物の話だったはず。いいや、確かその後だっけ。そうだ、何故私は圭一さんに………圭一さんだけに対して、
手の込んだイタズラをしてしまうのかを梨花にからかわれた時だ。
『……ははぁもしかして、沙都子は本当に圭一の事が……一目惚れwww』
あの言葉を聞いた時は、思わず口に含んだミートボールを吐き出しそうになった………私が何時も圭一さんに行なっている、
数々のイタズラを見知った上で言っているのかと問い詰めたくなった程だ。
確かに私は圭一さんに対して、過剰な悪戯を敢行している事は事実、けれど私が圭一さんに恋愛感情なんて
………勿論私は圭一さんのことが嫌いじゃないし、異性に対してああいう行為をしていればそう勘繰られても仕方ないとは思う。
でも梨花は知らないのだ。何故私が圭一さんにあんなマネをしているのかの本来の理由を。
その理由を聞けば梨花はどんな顔をするのだろう。
私の愚鈍な思考を哀れむかも知れない。
内省的な欺瞞を蔑むかもしれない。
内罰的な滑稽さをなんら興味もなく受け流すかもしれない。
けれど私をその全ての感情を梨花が抱いたとしても受け入れるつもりでいる。
それだけ梨花には返しきれないくらいの大恩を、私自身が自覚しているから。あの状況で私が此処に
……この雛見沢にいられるのは、紛れもなく彼女のお陰なのだから――。
沙都子は自身の中で渦巻く感情の差異に只々戸惑うしか無かった。
圭一はそんな沙都子の態度に首を傾げていた。
いつも圭一をイタズラの目標に掲げ、毎日練りに練ったトンでもないトラップを仕掛けてくる、核弾頭娘の沙都子だったなら、
自分の頬っぺたを冗談だったとしても圭一に弄られているならば、それはもう火山の噴火及び、
火山ガスで中毒死レヴェルの癇癪を覚悟していた。
それなのに、当の沙都子は、唯々困った表情でされるが侭でいる。
そんな沙都子の態度に圭一は青い顔をして只々唖然としていた。
――ど、どうしたんだ沙都子は………それにしても柔らかいなコイツのホッペは。こうモッチリ指が吸い付くような、そ
れでいて滑らかで………そうだこれは赤ん坊の頬っぺの手触り。 やっぱり沙都子はガキンチョだなwwwってそうじゃねぇよ!
これじゃあ俺が頬っぺたフェチの変態みたいじゃねぇか。
あっ! それともあれか? 沙都子は、あの某菓子パンヒーローの『か、顔が濡れて力が………』みたいな感じで
『頬っぺを摘まれて力が………ですわwww』って、そんな訳ねーだろ! 何を考えてんだ俺は! それとも泣くのか!? 泣くのか沙都子。
もしこんな所で泣かれた処を誰かに見られたら………。
『「はぅー♪かぁいいモ………! け、圭一君、どうして此処に………も、もしやレナが、かぁいい物探索の為に学校をサボったことを感知してっ!
そ、そうじゃないんだよ………だよ! レナはこれから入江診療所に………って隣で泣いてるのは沙都子ちゃん! ど、どうしたの??? 何処か痛いの???」
「ぐすっ………レナさぁん、圭一さんが私の大理石に勝るほど滑らかで、マスカルポーネよりもリコッタと評した方が適切なフワフワの頬っぺたを抓るんですのっ!
私、痛くて、痛くて」
「いやっ! 違うんだレナ!! また沙都子が俺にトラップを…… …だからその制裁に、ほらっ! デコピンよりもよっぽど優しいだろwww………な? な? な?」
「デコピンよりも優しい?…………圭一くん………けどそれって圭一君の主観だよね? どう考えてもさ、自分の感覚で、勝手な憶測で語っていないかな………かな?」
「え、いや………俺は別に」
「アハハ、滑稽だよ? 沙都子ちゃんを泣かした言い訳にしてはね。」
「ヒック、ヒック………痛いですわぁ」
「だって沙都子ちゃんがそう言ったの? 頬っぺたを引っ張られるほうがマシだって………違うでしょ? なんで決め付けるのかな? 嫌じゃない?
勝手に自分の意見みたいに語られるたりするとさぁ。」
「そ、それはそうだけど」
「………私、まだデコピンの方がまだマシですわぁ………うっ、持病の過呼吸で心臓が
……もう目も眩んで良く見えませんわ。 守り通してきた可憐な乙女の柔肌を汚したこの男を、
私は絶対に許しませんですわ………(パタリ)。」
「さ、沙都子! お前大袈裟にも程があんぞ! あと過呼吸で心臓とか有り得ねぇだろ常識的に考えて、
ビニール袋でも頭から被っとけ!」
「アハハッハハッハッハッハ! ほーらやっぱり。圭一君の勝手な思い上がりで、沙都子ちゃんは
トンでもない苦痛を味合わされたんだね………ほんとヒドイ男」
「わ、判ったよ。 悪かったよ沙都子………こ、この通り謝るからさっ! ごめんな………(ブンッ)……!」
「ひぃっ! ちょ、おいレナ! ナタなんて振り回したら危ないだろ???」
「あれぇ? 外しちゃったw んー? 危ない? 気にしなくて良いんだよ圭一君。偶然でも、事故でもなく、
狙って振り回してるんだからw………コレは圭一君に、沙都子ちゃんの事を反省してもらうのに、
必要な儀式もとい必然的行為なんだよ………だよw」
(ブンッ)「くぁwせdrftgyふじこ!」
「なんて可哀相な沙都子ちゃん、沙都子ちゃん、あぁ沙都子ちゃん、大丈夫………レナがちゃんと
………うんそうだよね………全部交換したいよね、あっはは、ちょっとまって今、剥がすから
………大丈夫だよ心配しなくても、宇宙人は死なない。再生するんだよきっと………だからね………圭一君バイバイ………」
「\(^o^)/」』
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、
マズイ、マズイぞ、ナタは冗談だとしても、つーかこんなレナはありえんだろう、なんでこんなキティなレナを想像したんだ俺っ! 昨日のナタか?
やけに使い慣れた印象があったからか? ってそんな事より、普段の<雛見沢一のじぇんとる>な俺のイメージが<アニメ版ジャイアンのような小賢しい狡いチンピラ>
になっちまう。そんな事になったら、これからの分校生活にどんだけ障害が………よし!泣かれる前に取り敢えず謝ろう。
あれだ! 普段あれだけ食い意地の張った沙都子なら、駄菓子か何かのエサで――。
圭一は十秒程何かを考えていたようだが、結果的に、冗談半分で沙都子の頬を摘んだ事を謝ることにしたようだ。
圭一は摘んでいた両手を離し、
「あー………沙都子………その………悪かったな………そ、そうだ! 確か近くに駄菓子屋があったよな!
好きなもん奢ってやるぞ! だからいい加減機嫌直せって………」
そう言って沙都子の頭を撫でた。
摘まれていた頬っぺたを摩りながら、自分に対して、必死に謝っている圭一を見上げ、
沙都子はやっぱり先程自分が感じた、感情は気のせいだったのだと、考え直し、
未だバツが悪そうに佇む圭一に対して、口を開いた。
「………別に怒ってなんていませんわ。 頬っぺたを摘まれるなんて、初めての経験でしたので、つい取り乱してしまっただけですわ。
それも普段のデコピンに比べたら、あれ位の事なんて………あぁそれと、私お菓子………特に駄菓子屋のお菓子は大嫌いですので、
お詫びなんて結構でございましてよ。 あの駄菓子屋になんて………絶対に行きたくありませんわ。」
圭一は何とか沙都子の機嫌を直そうと、必死に機嫌取りに奔走していたのだが、当の沙都子自身に断られてしまったので、
場の空気を和まそうと沙都子に話しかけた。
「駄菓子が嫌い? ふ〜ん、変わってんな沙都子は、俺は好きだけどな。そういやキナコ棒ってあるだろ?
それを粗目糖とバターで炒めると、キナコ棒にカラメルが混ざってすっげぇ美味いんだぜ! まぁ俺が作る訳じゃぁ無いんだけどな」
「ふふっ、そうなので御座いますの? 今度試してみますわ」
「それはそうと、早く行かねえともうこの場所で十五分も無駄しちまったよ、ほら沙都子!急ぐぞ」
やっと笑顔を見せた沙都子にホッとしつつ、圭一は鬼ヶ淵に急ごうと歩き出した。
その時、「あれぇ〜アンタは………」柘榴の木の横を通り抜けようとした圭一達に向かって、
警戒心を全く感じさせないような、ボヘボヘーっとした声で話しかけてきた者がいた。
圭一は声の方向を見ると、やはりその柘榴の木の根元に、一人の女性が、
根元から数メートルほど離れた二人をやや見上げるような目線で、座っていた。
女性はスクッと立ち上がり、圭一達の直ぐ目の前までやってきて、圭一の顔をみて、
何かを考えているような訝しげな表情のまま考え込み始めた。
「………うーん(ジー)」
「あ、あの俺に何か?………」
「………うんっ! 間違いない!」
「確か………そう! 前原君だっけ? いや〜随分と男前だったんだね! お姉さんびっくりしちゃったよwww」
「えっ! は、はい………確かに前原ですけど、あの、何処かで?(このお姉さんどっかで会ったっけな?)」
「圭一さん………この女の人はどなたですの?」
目の前の女性は、年齢は二十代後半に見え、美人ではあるが、やや派手な服装と、
丹念に化粧を施している様子から、こののどかな雛見沢の風景には、何処と無く当て嵌まり辛い印象を、圭一は感じた。
「ああ、そっか。 お姉さんの事覚えてないか。 そっかそうだよね、手続きも殆どお父さんがやってたもんね。ハハハ」
女性は圭一の言葉に怒るわけでもなく、さも当然のような態度で圭一に話しかける。
「えっと……え?手続き?あ、あのもしかして……」
「そう!………『以上で転居の手続き及び、住民票の書換えは終了です……前原様、鹿骨市にようこそ!』
ってな具合にねw」
「そっか、鹿骨市役所の住民課でウチの手続きをしてくれた担当さんですか?」
「そうそうそう! その担当の人!」
「担当さん? 随分と変わった苗字ですわね(ペシっ)って痛いですわ! 何をするんですの圭一さん!」
「ぶあーかそんな訳ないだろ、あの、失礼ですが御名前は?」
沙都子がキョトンとした表情で女性に質問したところ、突然頭上に軽い痛みが走った。頭上から圭一のチョップが降ってきたのだ。
そんな突然の痛みに沙都子は涙目で圭一に抗議したが、当の圭一はそんな沙都子の必死の抗議に対して、
軽くいなし(あしらうの意)て尚も女性に話し掛けた。
「ああ、うん、自己紹介が未だだったわね。姓は間宮、名は律子……そうね
……りっちゃんでもりんちゃんでもみっちゃんでもいいわよ……ん?……あ、ゴメンやっぱり律子さんで宜しく」
律子は当初子供のようにはしゃいで圭一に話しかけていたが、ふっと我に返り、はにかんだ表情で圭一に話し返す。
「律子さんですか、どうも始めまして前原圭一です。宜しく……」
「は〜い、宜しくね……ところでアンタ学校は?それにこの可愛らしいお嬢さんは?」
「あの野外学習というかその………ああ、このちんまいのは……」
「ちょっと! ちんまいって誰の事ですの? 私には北条沙都子って立派な………」
圭一は律子に自己紹介を行なった。若干余計な口を洩らしたが、その若干に激しく食い付いた沙都子が圭一に激しく噛み付く。
「うっせーなあ、コイツは北条沙都子って言います……まぁ<でっチビ>とでも読んでくださいwww」
「ふじこ!ふじこ!……ですわ!」
「あ、ああそうなの。 宜しくね沙都子ちゃん」
二人の兼ね合いに若干引き気味の律子だったが、何とか気を取り直し、沙都子に向かって笑顔で話しかけた。
「宜しくですわ! 律子お姉さん♪」
沙都子は律子の発した<可愛らしいお嬢さん>という言葉に気をよくしたのか、人見知りの気を全く見せず、
元気いっぱい、愛嬌たっぷりに返答した。
「ところで、よく俺の苗字覚えてましたね。 役所の住民課って毎日沢山人が来るでしょうに」
「え? ああ、まあそうね。 でもあの時はちょっと特別だったのよ……それでね」
「特別?」
「次の日には私は別の部署に異動する事になっててね。 それで私の担当した最後の人が前原さん家だったのよ」
圭一の質問に対して、律子は詳しく理由を答えた。
「いどう?圭一さん、異動ってなんですの?」
沙都子が眉をへの字にして圭一に問い掛けた。
「こらっ! ちょっと静かにしてろって……えっと、あれだよ、席替えで席が変わるみたいな奴だよ」
圭一は余りにも子供騙しで適当すぎる例えを沙都子に言った。
「アハハ、ちょっと違うけどまぁそんなもんかなw」律子も圭一の与太話を否定するつもりは無い様だ。
「たびたび話の腰を折ってスイマセン。 そうでしたか。 それで今は何処の部署に?」
「ん〜、今はね、職安」
「職安?職安って職業安定所の事ですか?」
「そっ。 職業安定所興宮支所の相談員をやってるのよ」
「圭一さん、しょくあんって?」
「……そうなんですか。 いやーそれにしてもウチが住民課の職員としての律子さんの最後の仕事だったなんて、
随分と不思議な縁を感じますねw」
圭一は沙都子の質問は無視しつつ、律子と話を続ける。
「まぁそれだけじゃ無いんだけどね」
「へっ?」
「沙都子ちゃん、ゴメンなさいね。 ちょっとお姉ちゃん前原君と二人っきりで話しがしたいから、
ちょっとだけ離れててもらえるかな?」
「お話? 分かりましたわ」
律子は沙都子に対して離れていてほしいと御願いする。勿論沙都子も同意して、二人から10m程離れて、
周りに咲いている花を摘み始めた。
「話って………(も、もしかして俺の事を………ちょwww)」
禄でも無い事を圭一は想像したようだが律子の表情は真剣そのもので、
圭一は不埒な考えを、即かき消した。
「………私、個人的に、前原家……っていうよりアンタの事は気になってたのよ」
「………へ?………俺の事ですか?(ちぇ、違うのかよ)」
「……あの時のアンタの顔って、なんか全てに絶望しているって感じで。そうね……まるで通夜と葬式が一緒に来たみたいな酷い顔でね。
親御さんと住民課に来た時も、親御さんの後を、風船みたいに焦点の定まっていない表情でフラフラくっ付いて歩いてるだけのような
……私自身、アンタのお父さんが手続きをしてる最中も、幽霊でも見ているんじゃないかって錯覚したほどよ」
「………(あ、あの時の事か………!)」
律子は圭一に対して少々口を憚る様な素振を見せながら話し続ける。
圭一の顔も、先程の呑気な様子など微塵も感じさせない真剣な態度で律子の話を聞いている。
「あ、あの律子さん」
圭一が真剣な表情で何かを話そうとした。しかし。
「でも安心したわ!」
「え?」
「今でもあんな表情してたら、あの人のように色んなトコに連れ回して、
その腐った性根を叩き直そうと思ってたんだけどさwww 大丈夫そうだねアンタはw」
「………はい!俺はもう大丈夫です」
律子は先程の真剣な顔とはうって変わったフランキーな表情で圭一に笑いかける、圭一は少々面食らっていたが、すぐに律子に対して笑い返す。
そして目の前の女性に向けて心の中で様々な事を感謝した。『教えてくれてありがとう。聞かないでくれてありがとう。気にしていてくれてありがとう』と。
「さあてそろそろ……あら!沙都子ちゃん、可愛い花飾りがついてるじゃないの!」
律子が沙都子の方を向いて感嘆の声を挙げた。 圭一もその方向をみると、
沙都子が花で作った髪飾りを付けて満面の笑みで歩いてきていた。
「お〜ほっほっほっほ〜。レディたるもの、身だしなみと御洒落にはいつでも気を遣うものですわ」
「とっても似合ってるわ」
「ありがとう御座いますわ……あ、あと、その………これ……お姉さんに」
沙都子は後ろ手に持っていた、花を撚り合わせて作った花の王冠を律子に差し出した。
「あらっ! きれいな花冠ね。 コレを私に?」
「私に繋ればこんな王冠の一つや二つ、ちょちょいのちょいですわ!」
「ふふっ、ありがとう。 大事にするわ……沙都子ちゃんはとっても優しい娘ね(なでなで)」沙
都子から王冠を受け取った律子は、それを大事そうに肩に背負っていたトートバッグに入れた。そして沙都子の頭を優しくなでた。
「(ボンッ)そ、そんな事ありませんわ……ほ、ほら圭一さん。 何をボケッとしているんですの? そろそろ鬼ヶ淵に向かわないと」
律子の行動に沙都子は顔を真っ赤にさせて、モジモジとしていたが、ふっと圭一に向かって話し掛けた。
「ん?………げっもうこんな時間かよ!!スイマセン律子さん、俺たちこれからこの先の鬼ヶ淵沼の掃除をしなくちゃいけないんです。
もうちょっと話していたかったけど、失礼します」
圭一は沙都子の言葉を聞いて、律子に居直って申し訳なさそうに話した。
「私の方こそ、引き留めちゃってごめんねw ああ、あと私は興宮の職安に居るから、いつでも遊びにおいでよ。 歓迎するからね」
「はい、今度寄らせてもらいます。 それじゃあこれで」
「さよならですわ〜」
「またね〜」
律子に別れを告げてまた圭一と沙都子は鬼ヶ淵に向かったのだった。
遠巻きに消えていく二人の姿を見ながら、律子はつぶやく。
「……ふふっ、随分と良いコンビじゃないかあの二人。 ……けどあの沙都子って子、あんな幼いのに随分と深い眼の輝きをしていたね。
よっぽどの事が無けりゃあんな色は……」律子には沙都子の様子が、唯の年相応の無邪気な少女としては映らなかったようだ。
「今度職場に遊びに来たら、それとなく聞いてみようかな……力になれれば良いけど……」
「間宮さーん、はぁっはぁ」
律子が沙都子の事を考えていたところ、圭一達が向かった方向とは、別の方向から律子に向って声を掛ける存在がいた。
「へっ?あ、竜宮さん」
驚いて振り返ると、四十代前半程の男性が、息を切らして律子の元に向ってきていた。
「ぜぇぜぇ、いやー律子さん、お待たせしてすみません」
「竜宮さん………別にそんなには待ってないですよ。ついさっき来たところだから」
いきなり目の前で平謝りし出した男性に、律子は苦笑いで答える。
そして目の前の中年男性とは顔見知りのようで、竜宮さんと呼び、親しい人に対するような凝り固まらない態度で話した。
「今朝、娘が急に体調を崩しまして、それで診療所とかに連れて行ってまして……これでも急いで来たのですが」
「……竜宮さん、そんなに急いで来なくったって、私は怒ったりしませんよ……それにちょっとした再開とかもあって楽しかったですよ
……それよりも礼奈さんの具合は平気ですか?」
そしてその男性と、なにか約束があったようで、その理由を聞いて、体調を崩したその男性の娘さんの事が気になり、男性に容態を聞いた。
「ええ、診療所の入江先生の診断では、特に何ともないと……しかし、先生から『多感な年頃の娘さんですし、
ちょっとした事で直ぐにショックを受けやすい時期なんです』と云われましたので、大事を取って休ませました
……本来なら間宮さんに会って貰うために休んで貰うつもりでしたが」
「そうですか、それは何よりです……では今日の御約束は無かったことにしましょうか?
娘さんの事も心配でしょうし………」
その言葉に安心した律子は、竜宮に向かって、話し掛けた。
「ははは、それが「一人になりたいから」と追い出されてしまいましてね。
せっかくウチに間宮さんをお迎えしようとしていたのに……」
「………もしかして、礼奈さんは私が来ると知って、それでショックを………」
「………実は娘にソレを告げたのは、昨日の事なんです。 確かに急な話でショックを受けたのかもしれません。
あんなに尽くしてくれた娘に対して、私自身、配慮が足りませんでしたね」
そう言って竜宮はやや自嘲気味に嗤った。
「あの………私の所為で……すいません。 私が礼奈さんに会いたいと言ったばかりに」
「いえいえ! 気に為さらないで下さい。 私が悪いんですから。
礼奈には散々苦労を掛けっ放しで父親らしい事なんて何一つしてこなかった。
それなのに急にまた自分の理を押付けようとしてしまった。 是からは娘の為になんて言いながら……あっすいませんまた………」
「……まぁ今日はパーッと呑んじゃいますかw 礼奈さんの事は取り敢えず今だけは忘れるつもりでwww」
「律子さん………」
「ほらほらっ! シャンとしなさいってw 私も久々の有給休暇なんですから、死ぬほど呑むわよ! 大丈夫!
昼間っからお酒を呑んだってバチは当たりませんよ――さっ行きましょ」
「………そうですね。 はい!行きましょう」
目の前で気落ちしている竜宮に向けて律子は呆気羅漢とした表情で笑いかけた
………竜宮も律子に対して幾分顔を綻ばせて答えた。
「っとその前に……私興宮にいい店知ってるんですよ、マスターは無愛想で大分店は汚いんですが、
デラックスジャンボパフェが名物の喫茶店が……」
「お酒を呑むのというに、いきなりパフェなんか食べるんですか?」
「結構合うんですよビールとアイスってwwwさぁ!早く」
そう言って律子は竜宮の手を取って、興宮に向かう道を歩き出した。
「あっ/// ちょ、ちょっと律子さん」
竜宮は恥かしいのか顔を真っ赤にさせて、手を引かれるまま律子について行く。
「ふふっwようやく名前を呼んでくれましたね」
「あ、いや……その」
九時と十時の間にある太陽が二人を呑気に照らしていた。
以上で2章の前編を終了します。
後編投下の折は、前日に連絡いたします。
投下乙!惨劇製造マシーン間宮さん!
圭一沙都子がいい仲になりつつも不穏な動き
いい作品じゃあないか
乙だっ!続きを期待してます
170 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 17:28:47 ID:VJKIG9mg
おお。乙だな。次も待ってますぜ
ひぐらしも二次創作が減ったからなあ
こんな作品が投下されると嬉しいぜ
所々原作のネタが入ってるな。
リナがいい人っぽいssも悪くないね。
ところで一章、二章の冒頭の話はなんなのかな?
梨花が居ない世界?
ちゃんとしたプロットを作り直してます。
今週の土日どっちかに2章の後編を投下します。
>>172 リナがいい人っぽいssも悪くないね。
いい人か悪い人かは今考えてるw
ところで一章、二章の冒頭の話はなんなのかな?
まだ内緒w
他にも何か気付いた点や質問ががある方はどんどんレスして下さい。
物語の相互反故の予防や異語相違にも繋がるし、何かネタが思いつくかもしれないのでwww
プロット引いたら10章くらい必要なことが判明wwwヤヴェwどうすっぺw
このssに使う、今の所思いついた絶対使いたいネタ。
前原圭一の贖罪+α。
梨花?の始めての○人?。
羽入?の始めての殺○。
沙都子?の初めての自○。
北条家村八分の真相。
トミーの存在がなぁwww
もうちょっと如何にか考えよw
邪魔しないからこのスレを使い潰しちゃっていいよ
足りなきゃ次スレ立てればいいだけの話
がんばってね
まあこれだけの長編書いてる人も少ないし。
ひぐらしSSは読んでて楽しいし頑張って
177 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/12(月) 08:01:43 ID:qHv/JMM+
最近書き手も減ったもんなあ
自分で書けよ
保守
>>179 保守とかwww ◆VAXWADRuHc も書かざる負えないな、期日守らなかったけど。
昭和58年6月11日・某所 ??時??分
雛見沢村のとある一角にある回りの合掌造りの家屋と比べ、若干現代風に建てられた
二階建ての家屋の二階の一室に一人の少女が居た。
その部屋は、可愛いクマのヌイグルミやファンシーな小物類、流行のアイドルのポスター類、
まるでその部屋の持ち主がその少女ある事を随所に固く主張しているかのように感じられた。
………ケンタ君人形等の異質な物体も多々見受けられるが、その少女の部屋で間違いないのだろう。
その少女は布団に包まって、いるので全容は掴めないが、何か思いつめた表情を浮かべている。
少女は何を思うのか?
――世界一不幸な人間に降り懸かる災難に比べれば、今の私に降り懸かっている災難、
苦難なんて、缶ジュースのプルタブを引っぺがすよりも薄っぺらく、
世界一の難題を解いている人に比べれば、今の私が抱えている悩みなんて、缶ジュース一本分の値打ちもないくらい、
単純な問題に違いない。
でも私にとっては缶ジュースを飲み終わる時間内に済んでしまう程、薄っぺらい災難でも、
単純な問題でもないのだ。
テレビからはくだらない電波がネチネチと私の脳内に入り込んできて、
私をどうしょうもないほどイラつかせている、イラつく理由は只一つ。
さっきまでテレビに映っていた、くだらないホームドラマの再放送が原因だ。
絵に描いたような幸せな家庭で、絵に描いたような幸せな夫婦が、絵に描いたような幸せな子供達と共に、
絵に描いたような幸せな生活を送っている。
父親は家族の為に仕事に出掛け、母親は家族の為に家事をして、子供達は家族の調和の為に学校に出掛ける。
夜には家族の団欒だ、子供は両親に学校での楽しいことや、悔しかったことを、
舌足らずな口調で身体全体を使って一生懸命に伝える。父親はそれに相槌を打ちながらビールを飲んで上機嫌。
母親はその様子を目を細めて笑って見守っている。
ああ、なんて幸せそうな家族だろう。
コレを見ている人は、十中八九『こんな家庭を築きたい』と思うに違いない。
そしてこの世界には幸福な家庭に幸福な夫婦が居て、尚且つ幸福な子供達、それが目標であり、
その幸せが、当たり前の『普通』になるようにそれを基準点にしたがるんだ。
それできっとその人達はソレが成就したときに始めて自分は幸福になれたんだって実感するのだろう。
でもそんなに上手く世界は周っていない。
それが出来ないまま、最低基準を下回る生活をしている人間だって沢山いるのだから。
父母子供、そのパーツが一片でも掛けていたら、普通の生活なんてほとんど得られない。
勿論極論だって事は分かっている。
しかし普通ってそういう事で決まってしまうものじゃないの?
だって私の家は如何考えたって普通じゃなかった。
お母さんが働きに出て、お父さんが家事をする、私は学校に行く。
………順番が違うだけならいいけどそうじゃなかった。
お母さんはお父さんよりも好きな人を作って、お父さんは家事をする。私は学校に行く。
………歪みって気が付くまでに時間がかかる。
お母さんはお父さんと別れる算段をお父さんじゃない人と考えていて、お父さんは家事をする。私は学校に行く。
………気が付かない振りをするのにも神経をつかうことを知った。
お母さんは私をお父さんじゃない人と会わせて、私を懐かせようとするし、お父さんは家事をする。私は学校に行く
………もう限界に近づいていた私の理性。
もういやだ。思い出すだけでも何か吐き出しそうだ。気持ち悪い。
なんて馬鹿馬鹿しい考えだろう。
私は十中八九の八,九にあぶれた例外の一,二だからこそドラマの幸福感やドラマを見た人達の希望なんて、
全く思いはしない。甚だ馬鹿馬鹿しく甚だ苦々しいのだ。
そんな事は有り得ないんだ、絶対に、私は絶対って言葉を使ってやるんだ。
人には自我がある。その自我をある程度封印して家族を形成しているのだろうけど、
その自我の錠前が壊れてしまった時に人は如何なるのだろう?
発狂するのかもしれない、日々を不平不満を延々と愚痴り続ける純粋な弱者になるのかもしれない
……ただ新たに新品の錠前を取り付けて我慢し続けるのかもしれない。
私はドウナルノダロウ? 考えるだけでもドス黒く憂鬱な思考が脳内に蔓延っていって
それこそ発狂してしまいそうだ。
ああそうか………私は発狂してしまうタイプの人間なのか。あはは。
お父さんは今頃その女の所に行っているのかな?
昨日の夕食なにを食べたっけ? 思い出せないや。
今日だって入江先生の所に連れて行ってくれたけど、やけに時間を気にしていたな、きっと会うんだ
………そして「遅くなってスミマセン、娘の体調が悪くてお医者さんにつれて行っていまして、遅くなりました」
なんて言い訳をして、その女に謝るんだ。
その女も苦笑いを浮かべながら許して……もしこの後、お父さんがその女を………いや、きっと来ないな。
私は一人になりたいって言ったのだから。
入江先生だって私の体調不良の理由を思春期特有のショックって言っていたし、昨日の話を聞いてショックを受けているって事は、
いくら自分の妻が他人に寝取られて居る事に全く気付かなかった鈍感を通り越して愚鈍な父でも気が付くだろう。
勿論愚鈍な父でも私にとっては大切で大好きなお父さんだけど。
………お父さんの事を思うと自然に落ち着いてきた。
お父さんは自分に必死なのだろう、勿論私の事についても。
その必死さが良いか悪いかは別として、その行動の先はきっと私に繋がると信じていたい。
でもそれにはその女が何を企んでお父さんに近づいたのか、その思惑を見破るる必要がある。
どうせ思考する必要も無いことなのだろうけど。
お金………お金に決まっているじゃないか。どう考えたって。
お父さんは、お母、あの女たちから沢山のお金を貰ったのだ。
私達が豪勢な外食をしたとしてもは易く何度でも同じ食事を食べる事の出来るくらいの沢山のお金は。
どう考えてもそれしか考え付かない。
きっとその女の気を引く為にお父さんは言っちゃったんだ、お金の事を。
だから………だから。
許せない許せない許せない絶対に許さない。
何故お父さんや私をそっとしておいてくれないの?何故?
お父さんは一杯辛かったのに、私だって一杯辛かったのに。
私達は決して幸せじゃないけど、それでも平穏な日々を送りたいだけなのに。
私やお父さんは今現在まで私達なりの不幸と私達なりの最悪と共に三竦みの状態で過ごしてきのに。
なんでなんでなんでなんで? なんでそっとしておいてくれないの? なんで!
………きっとお父さんは騙されているんだ。そのマミヤリツコって女狐に………!。
確か興宮の職業相談所に勤めてるって言っていたな。
調べてやるマミヤリツコの惨めな素性を。
段々とじっくりと追い詰めて追い詰めて追い詰め抜いてやる。
根掘り葉掘り暴いてやるマミヤリツコのゴミったらしい本性と虫ケラのような悪巧みを。
お父さんにはアイツはいらない。私にもアイツはいらない。
そうだ………魅ぃちゃんには謝ろう。用事で当分部活は出来ないって。
お父さんには私だけでいいんだ。ずっとずっとずっと――。
「あっーーーーーはっはっはっはっはっはっはっはっはーー」
少女はずっと何かを考えていたようだが、不意に大声で笑い始めた。
その表情は、百歩譲って仮に百人が普通だと答えたとしても、
千人が普通じゃないと答えるような表情だった。
周りの雑貨達全てが、悲しそうな表情を少女に向けていた。
西部警察と絡めたら面白そうね
書き込めるかな?
おお書けたwww
昭和58年6月11日・鬼ヶ淵 9時25分
「………こりゃ沼というよりもきれいな池だな……流れがあるところをみると………ああやっぱりそこに小さな小川が流れているな。」
圭一は目の前に広がる鬼ヶ淵沼を見渡しながらポツリと呟いた。
「……そんな当たり前の事………初めて此処に来たような口ぶりですわね……圭一さんは昨日此処には来ませんでしたの?」
隣に居る沙都子は然程興味が無いのか、圭一の呟きに反応らしい反応はしなかったが、昨日、魅音達が圭一に雛見沢を案内していた事を思い出して、
首を傾げた。
「ん? ああ、昨日帰りがけに通ったんだよ……そんで魅音に此処が鬼ヶ淵だって簡単に説明された程度で、
まぁあんまり注意して見てなかったのかもな」
「はぁ〜………圭一さんには情緒の欠片もありませんの? ああ、だからレディに対するデリカシーが
全く垣間見えないのでございますわね。 おーほっほっほ、納得しましたわw」
沙都子が嫌らしい笑みで圭一を見やる。
「うるせえ! あんまり囀るとまた頬っぺたムニムニすんぞ」圭一はそんな沙都子を、横目で苦々しく睨みつけた。
「ま、また乙女の柔肌を蹂躙するつもりですの? 全く圭一さんは………」
沙都子は圭一の言葉を訊いて、先ほどの様に林檎色の頬っぺたを両手で包み込むような仕草をして圭一に抗議した。
「分かった、分かった………今昨日のことを思い出しているんだから、ちょっと静かにしろって」
圭一は沙都子の抗議を気にも留めてないようで、昨日の事を思い出しているようだ。
「………そうかあの時は」圭一は昨日、鬼ヶ淵に来た時の状況を思い出したようだ。
あの時すでに空は朱色に近づいており、この辺一帯がセピア色に染まりかけていた。
更にその前に行ったゴミの不法投棄現場にて予定に無かった重労働をしてしまい、体には疲労が蓄積していた。
その為、魅音にこの場所を案内された時には、疲労のため精神的に、正常な状態で景色を観覧したのか?
異常な状態だったのか? その判断が付かないという答えにたどりついたのだ。
「はぁ……ありゃあ重労働だったなぁ……」
「へ? 重労働って?」
圭一は思い出すと同時に大きな溜息を吐いた、沙都子は何の事か分からずに頭を傾けている。
「んあ? ああ、昨日な、此処に来る前にゴミが不法投棄されている場所を通ったんだ……そしたらレナが」
「………もう結構ですわ。 かぁいい物の収集お疲れさまでしたわね」
圭一が話し始めたところ、すぐに沙都子が話を遮って、何処か同情しているような表情で圭一に話した。
「いや、まだ話の途中なんだけど……って何でお前が収集の事を知ってるんだ!?」圭一は急に話を遮られて同情される意味がよく分らず、
その理由を沙都子に問いかけようとした。……しかし沙都子の言葉の中に聞き捨てならないセリフがあったので、
思わず声を大にして叫んでしまった。
「そんなに大きな声を出さなくても聞こえますわ、全く。………レナさんの雑貨収集好きは分校では有名なのですわ。
私も何度か拉致されか……手伝ったことがあったので、直ぐにピンときましたわ!」
沙都子は胸を張って答えた。……若干顔が引き攣っていたことは圭一には気づかれなかったようだ。
ふーん……まぁいいか。 それにしてもレナは何であんなモン集めてるのかな? もっとヌイグルミとか人形とか……ああ、あれも一応人形だな
………まぁ中学生にもなって必死に人形を集めてるってのもちょっと考える部分があるとは思うけどなw」
「それは男の方の偏見……っていうより圭一さんの無粋で不誠実な主観ですわ。……好きな物は幾つになっても好きなまま
……素敵な事じゃありませんの!」
沙都子の説明に一応?の納得の態度を示した圭一だったが、あらたにレナの行為自体を少々理解不能というか馬鹿にしている口調で哂い出した。
……そんな圭一の態度や詞尻を沙都子が厳しく切り捨てた。
「ちょ、そ、そうは言うけどな、買うんじゃなくて拾うって行為は流石に……お前どうしたんだ?」
圭一は年下の沙都子に窘められたのが納得出来なかったのか、少し語気を荒げて尚も言い返そうとしたが、
当の沙都子が悲しそうな表情を浮かべており、言葉に詰まってしまった。
そんな圭一に向かって言うでもなく、下辺を向きながらポツリと口を開いた。
「………レナさんは別にお金が無くてそういう事をしているわけでも、ケチなわけでも無いと思いますわ。
……もしかしたらその行為自体でさえ、本来の意味を成していないのかも………」喋り終えると沙都子は圭一の方に向き直し、真剣な顔で圭一を見つめた。
「圭一さん……圭一さんはこの雛見沢村に来てまだそんなに経っていないでしょうから、分校にいる皆さんの事を全ての意味で理解なんて出来ないでしょう。
ですから手短に言いますわ。 分校の人達の事を必要以上に詮索や御節介をやく事は止めたほうがいいですわ……そうですわね、
全員という訳では無いので、一部の人達とでも言っておきましょうか」
「詮索や御節介?………そりゃあどういう意味だよ?」
突然の沙都子の理不尽な言葉に圭一は渋い顔で聞き返す。
「そのままの意味ですわ。 分校には自分の私生活や過去の話を深くまで掘り下げて聞かれることを嫌がる人だっていますの。
だから薄っぺらい関係とまでは言いませんが、ある程度距離を置いた付き合い方をした方が相手も好ましい……そういう事を言っているんですの」
「………………」
沙都子は圭一の顔を真っ直ぐ見ているのだが、それと同時に何か別のナニカを見据えているかのような様子で話しを続ける。
圭一も黙って沙都子の話しを聴いている。
「さっき圭一さんが話していたレナさんの趣味の事だって、今現在は私に対して世間話程度の考えで話しているのでしょうけど、
私がその話しに大きな興味を抱いてその話しの詳細を深く訊きたがった場合、圭一さんはその話題にある程度の価値があるという事に気付いて、
私以外の誰かに言った場合でも私と同じような反応をして貰う為に、更に価値を高めようといらぬ詮索をレナさんになさるんじゃありませんの?」
「さっきから何をいってるんだか訳わかんねえよ……レナがなんだってんだ、ちょっとした軽口じゃねえかよっ! 俺は別にそこまで………」
圭一はイライラしてきたのか、乱暴な口調で沙都子に文句をいうが、沙都子は話を止めない。
「もしもそれがレナさんにとって耐え難い苦痛を伴う質問だったなら、尚且つそれを、事情も知らない圭一さんに呑気で全く屈託の無い様子で質問されたなら、
レナさんはどう思うでしょう? 圭一さんの事をその後、レナさんは如何捉えるのでしょう? どう付き合って行けばいいのでしょう?」
『………なんだよ、どうしたんだコイツ? あんな適当な話にこんなに必死になって。別に俺は非難されるようなこと言ってないじゃないか、
一般的な中学生の一般常識の範囲内の世間話だろこんなもん。 そりゃあ少しは蔭口みたいに伝わるかもしれないけど、
だからって沙都子がレナの事を俺に避難する筋合いだってないじゃないか……そうかコイツ……』
沙都子は必至な様子で圭一に話し続ける。そして、そんな必至な沙都子の様子に圭一は怒りよりも、
動揺が前にきてしまい、逆に冷静に沙都子の言っている内容を分析していた。
そして自身にもある程度不躾な内容があったことや沙都子がこんなにも怒っている理由も理解したようだ。
「そうならない為にも前もって不安の種になりそうな事柄は心に思っただけで口に出さないことですわ!
その基準が分らないのならもう少し距離をとって平面的にその人の人となりをじっくり見定めてから、発言するべきですわ。
だからこそ(ムニ)ひぇいいしひゃんは……みゅ? ふぇ、ふぇひひしひゃ!」
「分ーったよ。分ーった。ったく、さっきからガキンチョの分際で生意気なんだよ……もっとなんつうか小学生らしい話とかあんだろが」
沙都子の説教もヒートアップしてきて、これ以上続けるといよいよオーバーヒートという寸前で、
圭一が先程と同じように沙都子のムニムニ頬っぺたを摘みあげた。
「ふみゃー! ひょっひょ、ひょひょみょあしゅひゃいしにゃひでひゅひゃしゃひみゃひぇ(訳―こ、こ、子ども扱いしないでくださいまし!)
ひゃちゃふふぃふぁみゃひみぇにゃはにゃひほふぃふぇふにょふぇふふぁふぁ(訳―私は真面目なお話をしてるんですから)」
「何言ってるか、わかんねえよww………そうか、これが宇宙からやって来た沙都子人の話すふぁふぃふふぇ語か?www
それ、ふぁっふぃふふぇフォォォォォォォwww」
頬っぺたを摘まれた状態でも沙都子は必死に圭一の行いに対する文句を言っているのだが、いかんせん何を言ってるのか圭一には理解出来ず
………理解するつもりが無いような様子で、沙都子の表情を心底からかっている様子だ。
『まったく酷いですわっ! 私が圭一さんの為にこの雛見沢での過し方をレクチャーして差し上げていたのに、それを真面目に聞いているならまだしも、
こんな仕打ちで………圭一さんの頭の中は如何なっているんですの? ぐすっ………悔しいですわ。
如何にかこの不埒な男に仕返しを………………………!』
(ガシッ)(グニ)「ひょ! ひょ、ひょひゃ、ふぁほほ!(ちょw こ、こら沙都子)」
なんと沙都子も同じように背伸びをして圭一の頬っぺたを引っ張っり始めた。
「ふぉーふぉっふぉっふぉ、ふぇふぃふぁふぇふぉふぇふは!(おーほっほっほ、目には目をですわ!)
ふふふぃふぇふぉふぃふぇふぇふぁ、ふぁふぉふぉふぁふぁふふぃふぁふぇふふぇふぇふぁ、ふぉうふぉフェ
ふぁふぁふぁふぁふぉふぉふぁふぁふぃふぁふぁふぁふぁふぃふぁフェんふぉフェふぉフェふぉふぉふぁふぁ
ふぃふふぁふぁふぃふぉふぃふぃふぁふぁい。ふぉふぃフェふぁふふふぃふぇふぁふぃふぁふぇふぁふぃふぉ
ふぉふぉふぁふぃふぁふぇふふぁ。(許してほしければ、沙都子様スミマセンでした、これからは沙都子様には逆らいませんので、
お手をおはなし下さい。って言えば許して差し上げないこともありませんわ!)」
「ふっふぇふぇふふぉふぃふぃ!ふぁっふぃふぁふぁ、ふぁふぃふぃっふぇふふぁふぁふぁふふぇえふふぁふぉ
(うっせえクソチビ! さっきから、何言ってるか、分かんねえんだよ)ふぃふぃふぁふぁふぁふぁふぇ(いいから早く離せよ)」
拮抗状態に陥った二人、お互いがお互いとも一歩も引かず、闘争し続けていたが、その闘争を終焉に向かわせたのは、何処からともなく聞こえた不思議な声だった。
『いい加減にするのです! 此処を何処だと思っているのです? これ以上騒ぐのならハラワタの一丁や二丁覚悟するのです!あうーーーーーーーーーーーーーー』
「ふぃっ!(さっ)」
「ふぇっ!(すっ)」
お互い突然辺りに響き渡った声に驚いて思わず手を離してしまった。そしてお互いがお互い共怪訝な表情に成っているのを確認し合うと、その後辺りを見渡した。しかしソコには平穏な動景のみが広がるばかりで声の主はどこにも見当たらなかった。
掲載分まで読んだけど、だんだん意味分んなくなってきたな。なんでいきなりレナの
語りが始まるんだ?
そもそも同じ作者の話なのかな?酉ないけど。
ここってクロス系もおk?
SILENT HILLっぽいのを構想してるんだが。
201 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/04(月) 22:02:09 ID:SbC8ocpq
ひぐらしならなんでもおkw
羽入と梨花でSS書くと何故か、やまとなでしこのいつものレズプレイになっちまう
203 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/09(土) 01:10:45 ID:lR4ugyvE
カプSSはいまだに書いてる人多いなあ
>>199 そもそも同じ作者の話なのかな?酉ないけど。
仕事が忙しくて、投下日をすっぽかして、自分が許せなくて酉消したけど、>181と>193
は自分です。群像劇的な内容にしたいので所々急に話が飛ぶんです………ゴメンねw。
やっと残業過多に陥り易い、現場の代理人業から関東圏の支社の内勤になって、自分の時間が取れるようになったので
チマチマ書いていきます。
このまま<◆VAXWADRuHc >の文章を別人として乗っ取り宣言をして、名無しで書いていこうかと
思いましたが、自分以外にも書こうとしている方がいらっしゃるようなので、もしも混同して見辛いスレになって
その方にも迷惑が掛かってしまうと申し訳ないと思い、酉を復活させました。
じゃあ書かなきゃいいじゃんと言われればソレまでなのですが、自分としては圭沙カプssは書ききりたい
話なので、恐縮ですが、これからも書かせて頂きたいと思います。
長文失礼致しました。
205 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/13(水) 08:44:35 ID:DRM6hb9s
待ってますぜ
これから、少々投下させていただきます。
>>198の続きです。
「け、圭一さん、今誰かに怒鳴られたような………お、お化け?」沙都子が怯えた様な声色で、圭一に話しかける。
「あ、ああ。確かに声が聞こた気が………。 で、でも大丈夫だぞ沙都子………俺は全然びびって無いぞ!
ほらっ、何処にもお化けなんて見えないじゃないか」
そう言って圭一は悪びれたような顔を浮かべながらも、沙都子の頭を一撫でした。
本当ならば、圭一も悲鳴を上げて怯えてしまいたかったに違いない。しかし圭一は恐怖を態度では示さなかった。
それは不意に自分のシャツの裾を引っ張られるような感触があり、チラリとその部分を見てみると、
沙都子が不安そうな表情を浮かべながら、小さな指先で裾を握り締めていたからだ。
それは無意識にとった行動だろう、しかしそんな沙都子………年下の少女を目の前に、怯え、慌てふためく行為自体を圭一の心、
プライドが許さなかった。
「も、もしかして………私この鬼ヶ淵には鬼が住んでいるって訊いたことがあるんですの。
そ、その鬼がこの場所で………私達が騒いでいたから、その………怒って………」
圭一に頭を撫でられて幾分落ち着いたのか、沙都子が言葉につまりながらも口を開いた。
「そ、そんな訳ないだろ? 鬼なんて昔話でしか存在しない筈だろ………あの中州の茂みの中から聞えたような気がするな。
沙都子、ちょっとここで待ってろ」
圭一は沙都子をその場に留め、近くに落ちていた、大きめの枝樹を拾い上げ、単身茂みに近づいて行った。
『なにも居ません様に、なにも出ませんように………』近づくにつれ圭一の心拍数はバクバクと上昇の一途を辿っていた。
いよいよ茂みが目の前になって、圭一は足に力を込め、棒を強く握り、いつでも茂みの先に棒による一撃を打ち込めるように準備して、
「だ、誰だ!」茂みの向こうに叫んだ。
「………………(ザーザー)」しかし茂みの向こうからは、人の声はせず、小川のせせらぎだけが、圭一の鼓膜に語り掛けてくるだけだった。
「く………よ、よし『せーの!』………(ガサっ)ゴラァ!」
圭一は意を決して茂みに飛び込んだ。
しかし目の前には先程から圭一の耳に心地よい音を提供し続けている小川の喧騒風景が只々広がっているだけだった。
「は、はははヤッパリ何も居ないじゃないかw。ふいー脅かしやがって」
圭一は安どの表情を浮かべて、額に流れる汗を拭った。
「で、でも確かに声が聞こえたんだけどな(ザァァァァー!)ひっ!?………(サッ)ごめんなさいごめんなさい、
………俺にはどうしょうもないほど心配性な両親が居るんです。俺が居なくなったらと思うと………
直ぐに立ち去りますから命だけは(ガタガタブルブル)」
急にどこからか、銅鑼を打ち鳴らしたような大きな音が鳴り響き、先程の緊張が完全に解けていた圭一は思わずしゃがみ込んだ
………そして圭一は目を瞑って一心不乱にその音に向かって命乞いとも取れるように懇願を繰り返した。
「………(ガーピー)」しかしそれっきり音は鳴らず、恐る恐る圭一が目を開けると、丁度視線の先に古ぼけたラジオがあった。
「ラジオ?………もしかしてさっきの音は………」圭一はラジオを拾い上げた。
そのラジオは普通のポケットラジオや家庭ようのラジカセのような部類ではなく、防災目的で商品化されたような全体が黄色の着色が施され、
柄の部分には工事現場の防護フェンスに着色されてるような黒と黄色の縞柄のテープがグルグル巻きに巻きつけてあった。
ラジオ自体は完全防水のようだ。
圭一はそのラジオのスピーカー部分を少し耳に近づけてみた。するとそれほど大きな音ではないのだが、ラジオ特有の雑音が鳴っている。
「このラジオから声は聞こえたのか………ぎゃっ!」
沙都子は突然圭一の叫び声が聞こえてその場に固まってしまった。
『ひぅ! ど、どうしたんですの………い、一体何が圭一さんに………』
沙都子は握り締めている己の礫に、自らの爪が深く食い込んでいる事に、自身がどれ程の恐怖と驚嘆を感じてしまっているかを認識した。
けれどもそれで如何するかといえば、ただガタガタと震えることしか出来ていない自分を認識すれど、行動は出来ずに、
只その一方を見詰めることしか出来なかった。
(ガサ)「!」先程の圭一の悲鳴から、二、三分程経っただろうか………不意に目の前の茂みから圭一が何かを抱えて出てきた。
「け、圭一さん」
沙都子は圭一が視界に入った瞬間、今まで自身の身体を地面に打ち込んでいた緊張の楔が嘘のように消え、
全速力で圭一の下に走り込み、圭一の胸元に飛び込んだ。
「わっと………おいおい如何したんだ沙都子ぉ? いきなりソコまで愛情表現されたら、流石の俺でも大分引くぞwww
んもうwこのオマセさんがwww………随分震えてるな、ほら顔上げろ(ワシャワシャ)」いきなり自分の下に飛び込んできた彼女の行為に圭一は、
一瞬驚いたが、取り敢えず沙都子を落ち着かせようと、軽口を吐いて、彼女の頭を強めに撫で繰り返した。
「きゅ、急にあんな悲鳴を上げれば、誰だって驚くし、心配しますわ!………グスッ」
沙都子は圭一が自分の頭を撫でて居る事など気付いていないようで、只々その紅い瞳を潤ませて、圭一を上目遣いで見上げていた。
「ああ悪い悪い、コレを拾い上げようとしたら、足元がぬかっていて、転びはしなかったけど滑って素っ頓狂な声だしちまった。」
そう言って沙都子に先程のラジオを見せた。
「ラジオ……まさかさっきの声は………」
「おう………ちょっと待ってろ(ガー、ガガピー)」
そのラジオを見て沙都子は一瞬で先程の状況を理解したのか、怪訝な表情で圭一に話しかけ、
圭一もソレを肯定しているような返事でラジオを弄り始めた。
するとスピーカー付近から「あうーーっ! ラジオドラマ――魔女っ娘山姥クケケちゃん。
第二十一回<ショック! 気になるあの人に正体がバレちゃった>の放送を終了するのです。
次回も聞いてくれないと、ハラワタぶちまけちゃうのです!」と、先程聞こえた声と全く同じような声が聞こえてきた。
「さ、先程の声の人は、このラジオの声の人だったんですの?」
沙都子は先程とはうって変わって、半ば呆れたような表情で圭一に話しかけた。
「うん、そうみたいだなwww」
圭一もニヤリと笑って答えた。
(ペタン)………沙都子は呆然自失といった様子で、地面に尻餅を付いた。
圭一はその様子に思わず笑い出しそうになったが、大人しく沙都子の様子を伺っている。
『なんて事ですの………またこの目の前の男に失態を………。手を握られて自分の世界に浸ってしまったり、
頭を撫でられて本心から照れてしまったり、ホッペを引っ張られて喜んでしまったり………これじゃあ私ただの変態じゃないですのぉぉおおおぉぉおおおおおおおおおお』
沙都子は言葉にならない嘆きが体中に駆け巡っていくのを文字通り実感していた。
「ふぇえええええあああああああんん」
そんな不条理な現実を受け止めきれずに沙都子は急に泣き出してしまった。
「お、おい沙都子! なんでイキナリ泣き出してんだ! こ、今回、俺は何もしてないぞ………」沙都子の突飛な行動を目の前で直視している圭一は、
彼女の意味不明な大泣きの意味が全く判らず、『う、狼狽えるな、ドイツ軍人は』の某ナチス大佐のように大変に狼狽えた。
「ふえええええん」沙都子は堰を切ったように泣き続けている。
「じゃ、じゃあ沙都子、俺は周りのゴミ拾いをしているから、気が済んだら、お前も拾い始めろよ………じゃあな」
そういって圭一はそそくさと沙都子の元を逃げると形容した方が適切なような態度で離れていった。
『こ、この沙都子は随分とまあ泣き虫さんなのです………この場所と重なって、まるであの沙都子のような………
ふふっ随分と懐かしい気がするのです。………あっといけない』ふっと彼女の目の前に、
梨花と行動を共にしている少女?である羽入が浮かび上がってきた。
彼女は沙都子を見下ろしながら、ブツブツと何か呟き、時に思い出し笑いをして、どこか既視感を感じている風だったが、
ふと何かを思い出したように圭一が居る方向に歩き出した。
「ふぅー沙都子の奴イキナリ泣き出しやがって………たくっ、俺がなにをしたっていうんだよ………」
沙都子から幾分離れた場所で圭一は沙都子の突発的な落涙の意味が判らず、尚且つ先程茂みに入る前の自分の行いを忘れているかのような、
幾分身勝手な言い回しでブツクサと文句を言っていた。
「で、でもさっきのありゃあ………なんで見えなく………それにあの声は一体なんだったんだ」
不意に圭一は表情を歪め――どちらかといえば、怪訝な表情に変え、先程の事を思い出していた。
先程の長閑な景色は、小川のせせらぎと沙都子の鳴き声と辺りの時間が溶け合い、
ゆったりと混ざり合って一種の不可思議な情景に変わっていた。
この圭一の性格って原作とかけ離れ過ぎだろw今の時点でクズすぎる。
どのカプ書いても圭一を変えざるを得ないじゃないか?
ある意味やむを得ないかも知れんが
まあ嫌なら読まないでしょ
>>216 うんちょっとクズに書きすぎたかもしれんねwww
でも>111に書いたようにこの圭一は原作ほど、主人公の鑑的な性格と立派な信条をもっていないので
想定の範囲内(キリッ)って事で勘弁して下さい。
近いうちにまた少量ですが投稿できるといいのですが、律子さん想像以上に使い勝手の悪いキャラ過ぎてワロタwww
汚文失礼致しました。
220 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/20(木) 10:21:15 ID:RyyiuH10
こちらのスレはオリスクやオリスクの感想を書き込むのはOKでしょうか?
同人ゲーム板のオリスクスレがDAT落ちしたついでにこちらへ引っ越そうかとの話題が出ていたのですが、
こちらの住民的にはどうなのでしょう?
ご迷惑でしたらこちらへの引越しは止めます。
>>220 オリスクも二次創作だし、別に構わないと思うけど。
こっちもほとんどレスが無いしね。
本当にSSも更新減ったなあ…
あの神楽舞でさえ更新してない
公式の掲示板もほんのちょっとだしね。
まだ書いてる人がいるだけありがたいけど。
オリスクもほとんどいないみたいだね。
>>220 あのスレってうみねこが入ってたと思うけど、そこはどうするの?
>>222 うみねことひぐらしで分離してうみねこは別スレを立てるって案が出てました。
それに対して分離して他のスレに移動するくらいならそのまま次スレ立てれば良いとの意見や、
DAT落ちする位過疎ってるなら次スレ立てても同じだからそれそれの本スレに合流した方が良いとの意見もありました。
自分は本スレに合流でも良いかなと思ってます。
或いは次スレを立てるだけ立てて「DAT落ちする位過疎ったら本スレへ合流」みたいな但し書きでも書いて
本スレの住民にも周知。ってのも考えております。
俺は両方のスレに書いてたし、別に異論は無いな。
オリスクスレで出てた澪IF終了って本当かも知れんね。
ブログでは最終編を出すかどうか悩み中らしいし
了解です
テスト