【コッソリ】多ジャンルバトルロワイアル【影に】 Part.3
ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www3.atwiki.jp/fullgenre/?page=%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB 〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
これは、書いてるのをかぶるのを防ぐためです。分岐制があるため、別パターンの話が2つあっても問題ありませんが、
わざわざ他人の作品にかぶせるつもりもないのに書いているキャラがかぶってしまうのを防ぐためです。
したらばに予約するのは、この「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は3日(72時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/ wiki(まとめサイトです)
http://www3.atwiki.jp/fullgenre/
★キャラクター能力制限★
・シャナ(@灼眼のシャナ)、C.C.(@コードギアス)は再生能力を落とす&急所(頭)ぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ(@コードギアス)のギアス能力は、「死ね」「殺せ」など、
直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。 (「死ぬ気で頑張れ」とかならあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給。(ただし、支給品枠2つ分としてカウント)
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一(@寄生獣)はミギー付き。
・COMP(@真女神転生)は禁止。
・シャナ(@灼眼のシャナ)の「封絶」は禁止。
★支給品としてのアイテム制限★
・KMF(@コードギアス)などのロボ系は禁止。
・カードデッキ(@仮面ライダー龍騎)は、龍騎キャラには支給品として自分のものを支給。
(龍騎キャラに支給される際は、支給品枠2つ分としてカウント。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い)
・デスノート(@DEATH NOTE)は禁止。
・サタンサーベル(@仮面ライダーBLACK)はシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
★その他★
・ひぐらしのなく頃にの雛見沢症候群は、まあ、空気読む方向で。
・新女神転生ifの男主人公の名前は、最初に書いた人におまかせ。
6/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
○ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
6/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条沙都子/○園崎詩音/○北条悟史
5/5【スクライド@アニメ】
○カズマ/○劉鳳/○由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/○橘あすか
5/5【らき☆すた@漫画】
○泉こなた/○柊つかさ/○柊かがみ/○高良みゆき/○岩崎みなみ
5/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
○緋村剣心/○斎藤一/○志々雄真実/○瀬田宗次郎/○雪代縁
4/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/○浅倉威/○東條悟
4/4【ルパン三世@アニメ】
○ルパン三世/○次元大介/○石川五ェ門/○銭形警部
4/4【ローゼンメイデン@アニメ】
○真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
3/3【ガンソード@アニメ】
○ヴァン/○レイ・ラングレン/○ミハエル・ギャレット
3/3【寄生獣@漫画】
○泉新一/○田宮良子(田村玲子)/○後藤
3/3【ゼロの使い魔@小説】
○ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/○平賀才人/○タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
3/3【バトルロワイアル@小説】
○稲田瑞穂/○千草貴子/○三村信史
2/2【相棒@実写】
○杉下右京/○亀山薫
2/2【仮面ライダーBLACK@実写】
○南光太郎/○シャドームーン
2/2【真女神転生if@ゲーム】
○男主人公/○狭間偉出夫
2/2【DEATH NOTE@漫画】
○夜神月/○L
2/2【TRICK@実写】
○山田奈緒子/○上田次郎
2/2【バトルロワイアル@漫画】
○織田敏憲/○桐山和雄
1/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
○アイゼル・ワイマール
1/1【灼眼のシャナ@小説】
○シャナ
65/65
5 :
地図作者:2008/10/13(月) 19:17:49 ID:UjTDX9+I
>>1 乙です。どんどん進むといいなあ。
前スレ901
地図自体は好きに使ってくれていいけど、
他ロワでも同じマップってのはどうなのかな
例え作者からOKが出たとしても、遠慮するべき場面では?
まだ始まったばかりのここと被らせることも無いと思うけどね。
>>5 実は今後自分でキャラを決める個人ロワを一度やりたいと思ってるのですが絵心皆無で困ってまして……
了承して下さってありがとうございます。
8 :
6:2008/10/13(月) 19:40:35 ID:pJCRxqFD
個人ロワならいいや。
がんばって。
前スレは容量が500KBまで行ってたのか
なんで作者でもない
>>8がいいや、とか言ってんだか理解に苦しむわ
トリック勢の面白いな
>>11 奈緒子が推理披露してるシーンでは、脳内でBGMが再生されてた
そういやアイゼルと雪代緑の期限が迫ってたような
今遂行中です、しばしお待ちを!
遅れましたが、投下します。
アイゼル・ワイマール、雪代縁です。
H-04、地図上に小病院と記された場所の二階にその男はいた。
何を考えているのか分からない男だ。
丸い黒メガネの奥にある碧い瞳は、ゆらゆらと揺れるだけで何も語らない。
V.V.が渡した荷物に、一通り目を通したかと思えば、その中の参加者名簿を無表情な顔で取り出す。
そして、呆けているとも集中しているともとれない表情で、暫く名簿を見つめたのち、ポツりと呟く。
「そう言うことなら、殺し合いも悪くない」
言うが早いか、彼は病院の下にいる一人に標的めがけて窓の外へと跳躍した。
〜・〜・〜・〜
「な、何よアレ……」
舞散る肉片は、明らかに人のものだった。
「う……そでしょ……」
およそ人道に外れた行いではあるが、アイゼルにはそれがどうやって行われたものなのか薄々気づいていた。
そしてだからこそ、彼女の体の奥から何とも言えない妙な震えが襲ってきたのだ。
「…………」
つつと、自らの首に手をやる。
そこには冷たい感触の無機物が、確かに存在していた。
やはり、自分は殺し合いに巻き込まれたのだ。しかも突然に、何の前触れもなく。
そのことが全く理解不可能ならまだいい。どうせ夢だと思って、どこぞで布団でも引っ被っていれば済まされたことだろう。
そして、自分は眠ったまま苦しみを感じることなく死んでしまうだけだ。その方が、今の感情より大分マシといえた。
そう、アイゼルは今回自分が巻き込まれた事件と同様の話を聞いたことがあるのだから。
理解できるのだからなおさら、恐怖心が倍増していた。
かつて、師のヘルミーナから聞かされた時空間移動錬金術。一人の少女が200年前の世界から突如として現代世界に放り込まれた異聞伝。
その少女は、結局自力で元の時代に帰ったらしいが、それはともかく今回の事態はそれによく似ている。
一瞬のうちに、訳も分からないうちに、突然見知らぬ世界に放り込まれる。
首輪付きというおまけや、殺し合えなどという不穏極まりないイベントを除けば、時空間転移そのものと言えた。
ヘルミーナに聞かされた時は、所詮ただのおとぎ話だろうぐらいにしか思っていなかったが、自分がこうして巻き込まれると真実味が増す。
地面にしゃがみ込むと、そこにはレンガではない何か別のものが敷き詰められている。
月明かりの下では、色も碌に分からないが、その質感から石を一度溶かして固めなおしたものだと推測される。
ハイレベルな溶鉱炉がなければ、作れそうもない地面。それがアイゼルの眼前にずっと続いている。
いくら地面をなぞってみても、そこに継ぎ目などない。
もしもこれが、アイゼルの知る工房などで作られたものなら、当然そのサイズに限りがあり、見渡す限りの地面を覆い尽くすことなど不可能だ。
そう考えると、この煉瓦モドキは、この場所で作られたと考えられる。そのまま地面に作ってしまうような方法で、埋め込まれたものだ。
「未来の技術ね……」
師から話を聞かされていたからこそ、アイゼルはそうすぐに結論付けた。
非科学的な、錬金術師としてあるまじき考察であることは重々承知している。
けれど、突然巻き込まれた事態も含めて考えれば間違いなくそうだと思えて仕方がない。
「……ははっ、本当に巻き込まれちゃったんだ。殺し合い…………」
一介の錬金術師にどうしろというのだ。
剣と魔法の世界に住んでいるとはいえ、アイゼルはただの女であり、錬金術師だ。
杖を持って怪物退治に行くこともあるが、それはあくまで調合に必要なアイテムを探すためであったり、同じ目的の錬金術師たちを護衛するためである。
殺し合いは専門じゃない。
いや、仮に専門だったとしてどうだというのだ。罪もない人々を、殺せとか、殺されろとか。
自分出来るわけないじゃないか。
「で、でも……殺さなきゃ…………」
再びアイゼルは首にある金属を触ってみる。
そこには確かに、一環の輪があり、彼女の首をぐるりと覆っていた。
冷たいその感触は、温かいはずの首の体温を奪い取り、嫌でもそこに自分以外の何かが付いていることを強調する。
逆らえばどうなるか。この冷たい物体が一瞬にして熱を帯び、自分を灰塵と変化せしめるのだ。
いくらアイゼルが耐火性能に自信を持っていても、首そのものを爆破されては生きていられる筈がない。
「……やるしかないの?」
無茶なことだと思う。自分に殺し合いなんか出来るわけがない。相手は人間なんだもの……人間?
ここまで考えてアイゼルは盲点に気づく。
相手が人間だから殺せない、本当にそうか?
本当に、人間だからと言って殺せないのか?
錬金術師として、冒険者として今までの遍歴を思い返してみるに、必ずしもそうではなかった。
自分はエアフォルクの塔最上階で友人と同じ姿をした生物と戦ったし、襲いかかるテュルキス洞窟の盗賊たちとも闘ってきた。
「闘ってきたじゃない、今まで何度も……、私は闘ってきた」
生きるために、錬金術の道を極めるのに。
理由は様々なれど、対人戦闘経験はゼロじゃない。
「それに……今は…………」
さらに加えるなら、アイゼルが巻き込まれたこの非常事態は、普段の常識や倫理を当てはめるのが無謀なほど、現実とかい離している。
いや、しすぎている。
この状態で、人と戦えません、私はまっとうな人間なので人を殺すことなんて出来やしません。
などという当たり前の論理が通じるわけない。
たとえ何人殺そうと、アルテナの女神だって見逃してくれる。巻き込まれた時点でアイゼルも被害者なんだから。
「そうよ、やれる……きっとやれる…………」
ふるふると体が震えてくるのを感じる。
殺すのか? 自分が人を?
悪党でもない、盗賊でもないただの人間を、自分とおなじ罪なき被害者たちを殺す?
「で、出来るわけないじゃない……無理よそんなの……」
しかし、理屈では分かっている。たとえ、どれだけ拒絶しようとアイゼルに選択肢はない。
相手はおそらく、未来の技術を持つ高度な錬金術師。
ならばこの首輪は生半なことでは外れない。というより、アイゼルでさえ、絶対に外れない首輪を作ろうと思えばいくつかアイデアが出てくるほどだ。
自分より上の技術を持つものが、どうして自分以下のものを作ろうか。
この首輪には、おそらくアイゼルの知らない技術が使われていて、アイゼルの知る錬金術だけでは外せない。
眼下に広がる溶解石の廊下が、技術者アイゼルにはとてつもなく恐ろしいものに思えてくる。
そうだ。相手は、こんなにも高い技術力の持ち主なのだ。
「やるしかないの? やるしかないの? わ、私だって死にたくなんか……」
刹那。アイゼルの目の前にある中程度の建物から、一筋の光が舞い降りた。
光はアイゼルのすぐ横をかすめ、溶解石の地面を爆音とともにまき散らす。
「な、……」
一体何だと思っていると、光は一人の青年だった。
土煙りの中、青年はゆらりと立ち上がる。一瞬何か戸惑う表情を見せるが、アイゼルが身構えるとすぐさま動いた。
左手一本で木刀を上段に構え、一足飛びに振り下ろす。
(は、速い!!)
頭上を狙うその一撃を、アイゼルは手に持っていたデイパックで防ぐ。
たまたま背負っていなくて良かった。そう思うと同時に、そう言えばまだ中身を確認していなかったとも悔やむ。
ズシリと重いその一撃は、一瞬アイゼルの肩が外れるかと思うほどの衝撃を与え、その後もじりじりと重圧をかけてくる。
見れば、男は相変わらず左手一本で木刀を持っている。
(な、何のつもりなの?)
疑問に思った直後、不意に重圧が軽くなり、反動でアイゼルの体が前のめりに倒れこむ。
男はその様を見るとすぐさま、左足を振り上げ回し蹴りを放つ。
咄嗟に、倒れこむ姿勢のままアイゼルは寝ころんでその回し蹴りをよけた。
しかしその直後、上を見上げると木刀を振り上げる男がいる。
危険を感じ、ゴロリと転がりながら、アイゼルは男の一撃をよけた。
振り下ろされた斬撃は、アイゼルがいた場所のすぐ隣を穿っていた。
(な、何なの……何なのよ、突然どうして??)
頑張れ
恐怖を感じつつ、身を起こすアイゼル。
端正なその顔には溶解石の欠片が付き、見る影もない。
上品な貴族の服も、汚れが目立ち所々ほつれている。
しかし、彼女はそんな事を気にする余裕すらなかった。
立ち上がってきたところに、男の追い打ちが来たからだ。
デイパックを使い、かろうじて防ぐも、二撃、三撃と追い打ちが来る。
男の動きは一定のリズムを持ち、ゆっくり力をためてから一気に解放するといった形。
ゆらり脇に構える、炎のように振り上げる。
ゆらり上段に構える、稲妻のように振り下ろす。
事前の構えと視線から、狙いが分かるため、何とか防げるもののアイゼルにはギリギリの攻防だ。
(やるしかないの? やっぱり、これは殺し合いなの?)
闇の中、表情すらも読めない男が無慈悲に攻め立ててくる。
いやでも、ここが殺し合いの舞台だと気づかされる。
(わ、私も闘わなきゃ駄目なの?)
盗賊たちと戦うように、モンスターたちと戦うように。
自身の錬金スキルをフル活用して、戦うほかないのか?
(で、でも……)
頭の中に浮かぶ疑問符の大洪水。通常の倫理に照らし合わせて正しいのはどちらだ。
そんなこと、考える余裕もないほど男の攻撃は続いていく。
(や、やるしか……やるしかないの?)
アイゼルの戸惑いを感じてか、男の動きが止まる。
木刀を肩に乗せ、サングラスをクイと持ち上げる。
今しか、チャンスはなかった。
男の攻撃が始まれば、自分は嬲り殺し。たとえ見ず知らずの他人でも、自分の命が優先される。
アイゼルは祈るような気持ちで、デイパックをまさぐった。その間、男は不思議と動きを見せなかった。
支援
デイパックから出てきたのは、一本の鋸のような刀。
見た目はただの金属なのに、むせ返るような匂いがアイゼルを包み込む。
知っている。これは血の匂いだ。
よりにもよって、何という武器を引いてしまったのだろう。
これで斬れば、相手は治療もままならず、傷口から壊死していくだけ。
これで斬ればタダでは済まない。けれど、自分は自分の命が大事だ。
闘う。
そう決意して、アイゼルが構えた時、青年もまた構えていた。
「覇亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜ッッッッ!!!」
それまでとは比べ物にならない速度で、突っ込んでくる男。
迎え撃つべく、アイゼルは慣れない剣を突き出し、迎え突きの体勢。
特攻してくる相手の勢いを、そのまま自身の剣で吸収し、敵を付き殺す剣術の初歩「迎い突き」。
その切先が、敵を捕らえると思った瞬間。
青年は横にブレ、突如アイゼルの視界から消えた。
「う、嘘…………ぶぉほっ…………」
そして、横から掴み上げられ、細い腕のどこにあるのかと言う怪力で放り投げられる。
「な……なに……」
目まぐるしくまわる景色の中、アイゼルは青年が力をためて、自身を斬り倒そうとする姿を目撃した。
〜・〜・〜・〜
青年の咆哮。
襲い掛かる斬撃。
そして、直後に来た激痛。
何かに叩きつけられる感触を受け、アイゼルが目にしたものは信じられない姿だった。
「おぉ…………げ、げぇ……」
自分を攻めていた青年が、突然訳も分からず苦しみだしているのだ。
「な、何なのよ一体……」
理解不能の文字が頭の中を駆け巡る。
自分の体を見れば、地面に打ち付けられた衝撃や、土汚れこそあるものの五体は全くの無事。
対する男も、全く攻撃を受けていないので無事は無事なのだが、苦しみ、顔をかきむしり、嘔吐している。
「なんなのよ……」
「ど、どうして……どうして駄目なんダ!!!」
叫びながら男は、地面に拳を打ち付けていく。
そのスピード、重さたるや、先ほどの比ではない。
男はずっと実力を隠したまま、アイゼルと戦っていたのだ。
しかしなぜだ。男が最後に見せたあのスピードをそのまま使っていれば、アイゼルは一瞬で殺されていたはず。
助かったという思いと、疑問符が同時に頭を掠めていく。
喚き散らす男の目に、アイゼルの姿は入っていない。
今ならやれる。この鋸刀で、男を斬れば確実に殺せる。
「なんでそんな顔をする、何故いつもの様に微笑ってくれないんだ!?」
瞳孔が開き、何やら叫んでいる男。
今しかない、今しかコイツを殺すチャンスはない。
「ぅぁあああ亜亜亜亜亜亜亜亜亜ァ!!」
しかし、錯乱した男は神速をもってアイゼルをつかみ取り、その首を締めあげる。
「どうして、……どうして、俺は女が殺せない!! 姉さん、頼む微笑ってくれ!!!」
叫びとともに、男の力は抜け。アイゼルの目の前でばたりと倒れてしまった。
「ね、姉さん……」
夢遊病のように呟くその声に、アイゼルは全てを察した。
(こ、この人……女が殺せないんだ…………)
そう考えれば、全てに説明がつく。
異常なほどのスピードを誇る攻撃を、なぜアイゼルがデイパックで防げたのか。
あれは単に、男がデイパックの上から叩いていたに過ぎなかったのだ。
そも男の腕力とスピードをもってすれば、デイパックごとアイゼルを吹き飛ばしていても不思議はない。
それに最初から彼が本気で動いていれば、アイゼルは動きを捉えることすら叶わず死んでいただろう。
しかし、そんなことは心配する必要なかったのだ。この男は、女が殺せないのだから。
自分の体をもう一度触ると、どこにも大きな傷はない。
彼ははじめから、女の自分から見て、無力な存在だったのだ。
(わ、悪いけど、殺さしてもらうわ。私だって死にたくないんだもん。こんな殺し合いで死ぬのなんて嫌なんだもん)
千載一遇のチャンス。
自分より圧倒的強者を殺すタイミングなど、この後どれほどあるというのだ。
(殺す、殺さなきゃダメ。生きるために必要なのよ!!)
アイゼルは鋸刀をふりかぶり、のた打ち回る男へと振り下ろそうとした。
〜・〜・〜・〜
よっ
こういう作品好きだ
殺し合い開始直後。
雪代縁は病院にいた。
むせ返るような薬品のにおいが、妙にうっとうしい。
神谷道場襲撃前日に、どうしてこんな目に合わなければならない。
姉さんは、自分の人誅を待っているのに。少しでも遅れてはいけない。
しかし、そんな縁の前に飛び込んできたのは有り得ないほど白く染め上げられた病室のベッドだった。
(なんだここは?)
先ほどまで自分がいたアジトとは明らかに別種の空間。見たこともない部屋。
(姉さん、どうして俺をこんな所に?)
突然巻き込まれた事態も、殺し合いも縁にとってはどうでもいいこと。
自分が突如として、意味の分からない場所に瞬間移動したのなら、それは天国に住む姉のなせる技に他ならない。
縁の頭の中には、ぶいつーだとか、殺された少女だとかは微塵もなく、ただただ姉と抜刀斎の事ばかり。
そして、現世に住む抜刀斎に自分をこんな空間に移動せしめる能力がないのは明らかなので、自分がここに来たのは即ち姉の仕業なのだ。
他人から見れば、寸毫も筋が通らない屁理屈なれど、雪代縁にとっては完全な正解だった。
(俺に何をさせる気だ姉さん)
姉がここに自分を放り込んだとなれば、それには必ず意味があるはず。
しかし考えても、とんと浮かばない。
大体、雪代縁にとって殺し合いなぞ至極どうでもいいことだった。
殺しの標的はあくまで抜刀斎とその一味。抜刀斎本人は直接殺さず、神谷薫を殺して生き地獄に叩きこむ。しかる後に野垂れ死ぬのを楽しむ。
それが縁の生き甲斐であって目標だ。他には何も考えていない。
姉さんが殺せと言うなら、全員即刻殺してやるが、心の中の姉は黙して語らず。縁の混乱は増すばかり。
(まったく……こんな事をしている暇は無いと言うのに)
デイパックを弄りながら、縁は何の気なしに名簿を読む。
見知った名前がいくつかあるが、姉とどう関係するのかはサッパリ分からない。無論、抜刀斎以外。
斎藤一、元新撰組で今は警官をやっている男。で? だからどうした? コレをどうしろと?
志々雄真実、以前煉獄を納品した顧客。で? コイツがどうしたって言うんだ?
瀬田宗次郎、志々雄の部下。こいつに至っては全くもって興味の範囲外。生きようと死のうと勝手にしてろ。
いったい何をしろと、殺せって言うのか、姉さんらしくもない。
大体、肝心要の神谷薫がいなければ人誅が出来ないじゃないか。
殺すにしても、抜刀斎だけ殺したって仕方がない。
(姉さんは、俺に何をさせたいんだ)
姉が自分を巻き込んだ、その考えを微塵も疑わない縁はサッパリ行動方針をつかみかねていた。
それに彼は、ここをある種天国のような場所だと思っている。
自分が気づかぬうちに、どこかに飛ばされることなど有り得るわけがないからだ。
そんな天国のような場所で、知人が四人だけ。ほとほと悩んでいるところに、一つの赤い姿が視界に入ってきた。
(あ、あれは……?)
異国人間が着るの赤い外套。
赤味がかった茶色の髪を肩まで下げて、一人の女が何やら思案している。
それを見て、咄嗟にひらめいた。
(そ、そうか。そう言うことなのかい姉さん!!)
縁の頭に、自分がなぜ殺し合いに巻き込まれたのかの答えが浮かんでくる。
(そうだ、姉さんは女を殺せと言ってるんだ!!)
自分が持つ唯一の弱点。それは女が殺せないこと。それが故に、外印を雇って神谷薫の死人形を作らせている。
しかし、考えてもみろ。そんなこと姉さんが望むか?
愛する者を奪われ、自分自身も無残に切り殺された姉さんが、偽の死体で満足するというのか?
馬鹿な、あり得ない。
姉さんだって、本音では神谷薫を殺せと願っているはずだ。
それなのに、自分が女を殺せないから、そんな理由だけで人形でごまかそうなどと……
「そうか、そうなんだね。俺に弱点を克服しろと。女を殺せるようになれと、姉さんはそう言うんだネ」
そうだ。それでこそ人誅が完成する。
自分の甘えた考えは、天国にいる姉の元にまで届いていたのだ。
そして、彼女は少しだけ怒り、自分を殺し合いへと誘った。
「ごめんヨ姉さん、でも、そう言うことなら、殺し合いも悪くない」
完全に誤解したまま、縁は木刀を持ち異国女の元へと降り立った。
そして戦闘。
木刀をふるう体が妙に重い。
中々、攻めこめないでいる。
実力では一枚も二枚もこちらが上手なのに、攻め入れない。
理由は分かっていた。
全く姉さんの面影を感じさせない姿でも、年のころは同じぐらいの女性。
くるりとした大きな瞳は、細く冴える姉の瞳と正反対だけれども、それでも相手はやはり女だったのだ。
数分後、縁は残念ながら敗れた。
女にではない、自分の中に眠る姉の幻想に。
どういう訳かとどめを刺さずに去って行った女はどうでもいいとして、思った以上に重症だ。
(姉さん。これは、弱点を治すための試練なんだネ?)
倒れこみ、口から胃液を吐きながら縁は決意する。
(心配させてゴメンヨ。でも、絶対殺せるようになってみせる、だから待ってテ……)
冷たいアスファルトの上で縁は、女性殺しを目指していた。
【一日目深夜/H-4 小病院前道路】
【雪代縁@るろうに剣心】
[装備]:木刀@現実
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0〜2個
[状態]:健康
[思考・行動]
1、誰でもいいから女を殺す。
[備考]
※殺し合いを姉が仕掛けた夢だと思っています。故に女殺しの弱点を克服できれば、それで終了すると思っています。
※ぶっちゃけ、姉と抜刀斎以外のことはあまり考えていません。抜刀斎も人誅まで殺すつもりはありません。
アイゼルは結局、男を殺すことができなかった。
刀を振り下ろせば、確実に相手を仕留めることができたはずなのに殺せなかった。
自分の中に、どうしようもない人間の心が宿っていることを再確認する。
(どうしたらいいのよ……)
殺し合いに巻き込まれ、実質的な選択肢は二つ。殺すか、殺されるか。
しかし、自分にはそのどちらも選択することができなかった。
はたして自分はどうなるのか。
(決まってる、殺すしかないじゃない……殺すしか……)
理性と心が渦巻く葛藤の中、アイゼルは一人夜道を歩いていた。
【一日目深夜/H-5 道路】
【アイゼル・ワイマール@ヴィオラートのアトリエ】
[装備]:無限刃@るろうに剣心
[所持品]:支給品一式、未確認支給品0〜2個
[状態]:軽傷
[思考・行動]
1.どうしたらいいの?
[備考]
※自分たちが連れてこられた技術にヘルミーナから聞かされた竜の砂時計と同種のものが使われていると考えています。
投下終わりです。
大変、遅れて申し訳ありませんでした。
以上で投下終了となります。ご意見がありましたら、どうかよろしくお願いいたします。
投下乙!
どっちも知らないキャラだけど楽しく読めたし、キャラ付けもしっかり出来てて良かったです
乙!!
縁まったくの見当違いワロタw
新一と瀬田はまだかな
投下乙!
どっちも知らないキャラだったけどいいキャラだな
ヴィオラートのアトリエ読みたくなった
あ、いやこれゲームだっけ?
大半の人が展開が読めちゃうだけにどっちかがここで相手を殺してたら意外性ついてて好きになれたかも。
引き込むの上手いだけに残念
あ、一応キャラは把握してます。乙でした。
どっちもキャラが生き生きしてるなー
投下乙でした!
一応、こなただけ入れときました
新一、宗次郎の予約は音沙汰がないが、結局予約逃げなのか
楽しみにしてたから待てと言われたら待つのだが
44 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 16:24:59 ID:h89dB2vC
あ
ら
し
だ
っ
た
の
か
残念
45 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 16:26:08 ID:h89dB2vC
あ
ら
し
だ
っ
た
の
か
無念
46 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 16:27:41 ID:h89dB2vC
あ
ら
し
だ
っ
た
の
か
残念
あ
ら
し
だ
っ
た
の
か
残念
ガンソードだけ未だ誰ひとり書かれて無いのが寂しいな……自分で書ければ一番だけど文章力皆無だし…
盛り上げ役と言う手もあるぞ。
廃れてる感じだと書き手も近寄りがたい。
書き手が一人だけになっちゃったね
それでも俺は諦めん!!皆さん今必死で作品把握中、なだけですよね!?どんと来ーい!!!
何処に行っても女神転生が手に入らないよ(泣)あれってPS2じゃなくてワンなんですよね?
ところで初代スレ1はどうしちゃったのかな
あれだけこまめにいろいろやってたのに最近見ないし
したらばの広告スレも削除されないし
俺もこのロワは作品もキャラも好きなやつが多いし
最近空気がよくなりつつあるから期待してる
なんか今日の昼から乱立してる多くのパロロワスレを必死でageてる馬鹿がいるけど、こんなことするから書き手さん達も敬遠するし、創作板の住人からも嫌われるから辞めて欲しいな。何故かここだけは無視されてるから安心したけど……… スレ違いスミマセン
多分ageてる奴は全角の「ロワ」でスレ検索かけたんだろう
こことネギま以外は全部ageられてるし
でも別にロワだけageているわけではないという不思議
一つ質問なんですが、自分が書いた作品の加筆修正をしても問題ないでしょうか?
それとも、違いがある場合は別ルートにしたほうが良いですか?
あとの作品に違いが生じなかったらいいんじゃない?
了解しました。
これで心置きなく次の予約にも移れそうです。
修正したら読みたいから報告頼むな
またも遅れてしまったので報告です。
延長をお願いします。今日中には投下できるものと思われます。
待ってるよ〜
じっくり頑張ってくれ
>>40の地図を編集してみたいんだけど、どっかに使い方とか載ってない?
自分で使ってみた限りだと、
1.キャラ追加
「新しいキャラを追加します。」と書かれた妖精のアイコンをクリックする。
必要項目を入力する。(画像はどうも縦横比2:1のが良いらしい。なきゃ、適当にWebで拾ってくるといいと思う)
2.キャラ削除
「こなた」とか「沙都子」とか、書かれたところをダブルクリックすると、キャラ紹介の画面が出てくるので、
左下の×印をクリック。するとキャラが削除できる。
一応、この2つだけ分かれば大丈夫だと思う。というか、スマンが、ほかはオイラも氏らね。
追加しても、削除できるから、テスト的に色々追加してみて使い方覚えてみたらどうよ?
一応、すでにUPられてるこなたと沙都子の画像も保存してるから、消したって最悪俺が戻せるし、使ってみたら?
真の主催者はコルベールなのか
>>64 やってみたら出来た
それで今、更新してる最中なんだけどるろ剣キャラの画像でいいのを誰か持ってない?
地図追加してる人、神過ぎる!
>>68 持ってるぜ! るろ剣は全部俺がやっとく
投下します。
タイトルは「ルイズに届けこの想い! 才人ザオリクを唱える。の巻」です。
地獄ぐらい、嫌と言うほど見てきた。
殺し合えと言われずとも、殺し合いに放り込まれたこともあった。
というより、殺し合いだと知って、自ら進んで京都に入ったのだ。
20歳になる前のことだった。世が世なら、まだ子供と言われる年齢である。
一応、田舎士族とは言え元服を済ませた身、上京ぐらい勝手にしろということだったのだろう。
毎朝どこかで誰かが狙われていた。毎晩どこかで誰かが死んでいた。
警邏のために組織されたはずの隊は、瞬く間に『人斬り集団』と化し、斎藤は修羅渦巻く京都の中、先陣を切って刀を振るった。
京都の治安を乱す尊王攘夷論者たち、体内の規律を乱す謀反者たち。全てが粛清の対象だった。
昨日、蕎麦屋で隣に座っていた男が今日は斬り合いの相手。
昨日、ともに笑い合った仲間が今日は粛清の対象。
そんな地獄の中、新撰組副長助勤、最年少の剣士として斎藤は誰よりも人を多く斬っていった。
だから彼にとって、こんな作り物の殺し合いなど微温湯のようなものだった。
「ふんっ」
念のため、支給された手甲を装備する。
煙草を吹かそうと考えて、ポケットから取り出してみるも、火がなかった。
ちっと、舌打ちし、吸えもしない煙草ならいらんな、と放り投げた。
「ま、人斬りは俺の仕事だからな。言われんでも、殺してやるさ……ただし」
放り投げた煙草を踏みつけ、すり潰す。
「殺すのは小僧、ぶいつぅとか言ったな。お前だ」
静かに決意する悪・即・斬。
武器が手甲では、斬り合いが出来んなと、狼は自嘲ぎみに笑うのだった。
「で、小娘? お前はどうするつもりだ」
斎藤は振り向きもせず、背後にいる女の気配を感じ取る。
そこには確かに一人の娘。斎藤から見れば、親子ほども離れた女の子がいた。
「ん、私はね、ぶいつう君を殺さないよ」
「ほう?」
「だってさ、リセットしてもらえないじゃん」
「……」
「リセットしてもらえなかったら、ゆーちゃん生き返らないじゃん」
リセット?
「ゆーちゃんはね、とーってもちっちゃいんだよ。でも、とっても可愛いんだよ!! 萌え要素満載なんだよ!!!」
訳が分からん。
「だからオジちゃん……」
だがしかし、少女の意味不明さには懐かしさも覚える。
彼女の匂いは、かつて幕末で味わったことがある。
「オジちゃんはモンスターなんだよ、んで、私は勇者!」
「阿呆が」
「モンスターはね、勇者に殺されるんだ!!」
叫び声とともに、突進する少女。それは風。
何事かと思う頃には、蒼い風は斎藤の眼前に迫りくる。反射的に西洋刀を受け止め、逆の手で殴り飛ばした。
手甲を嵌めてなければ、腕を斬られていたかも知れない。斎藤をして、そう思わしめるほどのスピード。
殴られた少女は、思いのほか軽く、一気に電柱まで弾き飛ばされたが、ヒラリと身を翻して電柱に『着地』。そのまま地面に舞い降りた。
(コイツ……)
童子のようにしか見えない顔だが、その身体能力は予想以上。むろん、童女にしては、だが。
「どうして……」
「?」
「どうして斬られないんだ!! アンタ雑魚キャラじゃないの!!!」
「ふぅ……雑魚とは言ってくれるな」
「わ、分かった。中ボスだ、ゆーちゃんを殺した奴の仲間だ!!!」
支援して寝る
意味が分からない。正悪すらも決めかねるほどの支離滅裂ぶり。
事情を問いただしてからでないと、警官が子供を攻撃することは出来ないと考えているが、その説明など望むべくもなさそうだ。
「今度は本気出していくからね」
「ふざけろ」
青い髪の少女が駆ける。一瞬で眼前に迫り来る勢い、はやての如し。
速い。抜刀斎よりも遥かに小さい体ながら、そのスピードは幼年の頃の彼を思わせる実力。
もっとも、斎藤は幼年の抜刀斎など露ほども知らないので、単なる想像だが。
怒涛の攻撃とはまさにこのこと。
武器の差があるとはいえ、少女は斎藤相手に少しも遅れをとっていない。
両の手から放たれる斎藤の攻撃を、ある時は防ぎある時はかわす。そして、それ以上の攻撃を繰り出してくる。
防御のイロハを知らぬ鳥頭なら、とうの昔に切り刻まれている。
素早いその動きはまさに戦場の基本。
速く力強いが、技術は欠片も備わっていない。
戦場では上手くて遅い剣術よりも、下手でも拙くても、速さだけが求められる。
町道場で身に着けた段位や技術など微塵も役立たない。
少女の両腕は肘が伸びきり、柄尻の締めは甘い。履く袴は短く、その足運びを隠さない。
これでは達人の斎藤に動きを読んでくださいと言ってる様なものだ。
けれども速い。純粋にそれだけ。だからこそ誰よりも剣術から離れ、だからこそ誰よりも戦場に近い女。
子供の振るうチャンバラが、大人を倒すことがあるとすれば、まさにこの動きを突き詰めていった時だろう。
(だが、相手が悪かったな)
跳ね回る少女の髪を掴み取り、一瞬のうちに持ち上げる。
髪を毟られそうな痛みに動きを止めた少女を、斎藤は地面にたたきつける。
そして、地面からバウンドした瞬間を狙おうとしたとき……彼は信じられないものを見た。
地面までの距離、わずか1メートルほど。
そんなほんの少しの隙間で少女は、回転し華麗に着地を決めたのである。
これには流石の斎藤も呆気にとられるばかり。そして、その隙を彼女は見逃さなかった。
持ち前の素早さと、体の小ささを武器に地面すれすれの足払いを仕掛ける。
瞬間、バランスを崩しながらも斎藤は宙に逃げる。しかし、それだけでは少女から逃げられない。
「うぉぉおおおおおおおおお!」
西洋刀を両手だけでなく、体ごと大きく振りきった一撃。
何とか手甲で防ぐも、初回とは逆に斎藤が大きく吹き飛ばされた。
硬く冷たいアスファルトの上に転がり、斎藤は人生最大の屈辱を味わう。
相手は12、3歳程度の子供。しかも女。
これを新撰組の隊規に照らせばどうなるか? 打ち首に決まっている。童女に及ばぬ志士など、志士にあらず。
許さん。絶対に許さん。
(もう、殺す!!)
ゆらり立ち上がる。
元新撰組三番隊組長・斎藤一、童女に舐められて引き下がるほど朽ちていない。
もう、相手が子供だとか女だとか、言ってられん。やられっぱなしで引き下がっては、自分の名誉に傷がつく。
斎藤が構えた時、あたりの空気が変わった。
〜・〜・〜・〜・〜
泉こなたは、戦いの最初からおかしいと感じていた。
(むうぅう……わ、私……どうなっちゃったんだろう?)
無骨な鉄塊で、両腕を守る男は、その鉄塊をもって攻撃してくる。
メリケンサック? いや、そんな生温いものじゃない。両腕の肘から先をしっかり覆い隠すそれは、喧嘩用の武器じゃなくて戦闘用の兵器。
一撃でもまともに食らえば、唯じゃすまない。それが一目にして分かる代物だ。だが、問題はそんな事じゃなかった。
その鉄塊は怖いけど、襲い掛かってくる男は怖いけど、それ以上に怖いものがあった。
自分自身だ。
いくらこなたが、運動神経抜群で格闘技経験もあるからと言ったって、限度がある。
彼女は所詮、ただの女子高生。戦場に慣れた男にかかれば、一瞬にして屍と化す自覚があった。
けれどならない。男の攻撃は決して緩くないのに、どういうわけか攻撃を避ける事ができる、防ぐ事ができる。
(ほ、本当にどうしちゃったんだよ?)
体育祭で一番になった。アミノ式の体操が全部できる。もともと運動神経には自信がある。
しかし、それだけでは説明できない現象だ。
攻撃を防ぐ腕が、剣を振る体が、いつもより圧倒的なスピードで動く。
剣の使い方なんて全く知らないけど、ただひたすらに振り続ければいずれは勝てる気さえしてきた。
(で、でも……あたしはこんなことなんて、出来やしないよ…………)
動きとともに研ぎ澄まされていく体に反比例するように、こなたの心は恐怖に満ちていく。
勝てる、勝ててしまう。明らかに強いと思えるこの男相手に、自分が。
(本当に、ほんとに、どうしちゃったんだよ……)
全く合点がいかない。勝てることに安心が出来ない。
不安を振り切るように、こなたは全身のバネを利かせて剣を振り切った。
「うぉぉおおおおおおおおお!」
互いの均衡を崩す初めての一撃。
アスファルトに転がる男のダメージは恐らく甚大。
(お、起きないで……もう死んでよ!!!)
心の中で、それだけを願う。ゆーちゃんの事もあるが、それ以上に強くなった自分が怖くて、もう戦いたくない。
こなたのそんな願いをよそに、男は何事もなかったかのように立ち上がる。
(う、嘘……)
アスファルトなんて、どうということはない。そんな感じの顔をしている。呆れたタフさだ。自然、剣を握る腕にも力が入る。
そんな時だ。あたりの空気が変わった。突然、男が構えたその瞬間に。
(な、何……)
右手をライフルの照準のように前に構え、左手の肘を大きく引き、左拳は顔の前で強く握りこむ。
下半身は右足を半身だけ前に出す剣術の構え。上半身は気持ち前に傾きかけている。先ほどまでと明らかに違う。
素人のこなたにも分かった。来る、っと。
爆音のような踏み込みとともに、男が駆る。
それでも人間かと言いたくなるような突進力に、こなたは恐怖しながら、対応できてしまうであろう自分にもっと恐怖した。
ガッァアアーン!
手甲と西洋刀がぶつかり合う金属音が、あたり一面に響き渡る。
両者の正面衝突で、吹き飛んだのは体重の軽いこなただった。
器械体操の時間で味わったような、くるり宙に舞う感覚をここでも味わう。
どうということはない。体を反転させて着地するだけ。
そう思い、クルリと体を入れ替えるとそこには、吹き飛んだ自分に付いてくる男の姿。
ありえないことに、男は飛ばされた自分に追いつき、そのままつかみ上げる。
そして、髪を掴んだままぐるぐる回して上空へと放り投げた。
髪を引きちぎられるような痛みと、回転する酔いに一瞬気を失ってしまうこなた。
目を覚ますと、目の前には男の拳。
(だ、ダメ。かわせない!!)
こなたが覚悟を決めた瞬間。
男とこなたの間に、一本のバズーカーが投げ込まれた。
「いい年したおっさんが、女の子を苛めてんじゃねーよ」
あらわれたのは一人の少年。バズーカーを投げ込んだあとは走りこみ、男とこなたの間に割り込んでくる。
気を失っていた時に手放したこなたの剣を拾い上げ、男と対峙する。
「っふ、安心しろ。別に殺す気はない。殺し合いの狂気にあてられ、正気をなくした餓鬼など悪・即・斬に遠く及ばん小物だからな」
嘘つけ、どう見ても本気だったろうが!!
「殺す気がない? アンタ何様のつもりだ? 殺さなきゃ何したっていいってのかよ?」
少年も負けじと言い返す。
自分の味方。明らかなお助けキャラだ。ドラクエで喩えれば、ルイーダの店に登録されている戦士と言ったところだろうか。
「ぶいつぅとやらを捕らえるのに、糞餓鬼に暴れられては厄介なのでな。大人しくさせる必要があったまで」
「だ、だからって……お前みたいな奴がいるから、お前みたいな奴がいるから……アイツは、アイツはなああああ!!!」
速い。
先ほどまでのこなたをも上回るスピードで、少年は男に斬りかかる。
だが男は動じない。冷静に手甲で受け止め、攻撃をやり返す。
男が殴る、少年が防ぐ。少年が斬り返す、男が受け流す。
手数が増すにつれ、2人の速度は上がり、いつしか路上に一陣の風が舞い起きる。
(す、すごい……)
何とか闘っている少年も凄いが、それ以上に男が強い。
間違いなく劣性の武器を与えられ、それでもなおノーダメージ。
剣撃はすべて受け流し、必要となれば殴り返してくる。
疾風のような攻撃の中、明らかに優勢なのは男の方だった。
(わ、私……あんなのと戦ってたんだ……)
今なら分かる。男は本気を出していなかった。恐らく、自分が子供に見えるから。
そしてもう一つ分かる。自分を助けてくれた少年は負けるということが。
襲い掛かる少年の刀は、全て男の両腕に防がれている。
対して、男の拳は僅かではあっても、少年にヒットし続けている。
2人が巻き起こす風は既に一陣の疾風となり辺りに立ち込める。
こなたは、先ほどまで目で捉えられていた動きが微かにしか見えないことに気づく。
そして、彼らの動きがまた1ランクアップしたかに見えた瞬間、少年が吹き飛ばされた。
(や、やっぱり……アイツ強い……)
ドラクエで言えば少なくともバラモスクラス。
対する自分はダーマ神殿についたばかりの勇者といったところか。
まともに遣り合えば、とても勝ち目などない。それは、自分だけでなく少年も同じこと。
むくりと起き上がる少年。強かに打ち付けて、あまり無事とはいえないようだ。
「な、なあアンタ。俺たちを殺す気あんのか?」
「無い。今のところは、な」
「そうかい……なら、サイナラ!!」
少年はそういうと、男に背を向け脱兎のごとく逃げ出した。
途中でヒョイとこなたを抱え、そのままお姫様抱っこの形で走り抜けてしまった。
〜・〜・〜・〜・〜
「ふぅ……阿呆どもが」
走り去った少年たちを追いかけようとは思わなかった。
正気をなくした童女と少年が一緒になったところで、別段困ることも無い。
というより、斎藤はあくまで自身の正義『悪・即・斬』のみに生きているわけで、彼らはその粛清対象ではなかったのだ。
少女は最初から、意味不明だった。何を言っているのかサッパリ斎藤には理解できなかった。
しかし、彼女の発する匂いは幕末の混乱の最中、京で嗅いだ匂いによく似ていた。
(親しいもの……親族か何か。『とっても可愛い』という言葉から、恐らく妹か。ぶいつうに殺されたのだろう)
正気をなくし、襲い掛かってくるだけの女など悪・即・斬に遠く及ばぬ。己の正義は、ただ悪を斬る為にある。
そう思い、斉藤はポケットの中の煙草をまさぐる。しかし、煙草は地面に落ちたばかりだった。
そういえば、さっき捨てたっけか。
一服するのはぶいつうを倒した後の楽しみに残しておくか。
壬生の狼が目指すものは、許せない悪一つ。彼は即座にそれを斬ると心にきめ、闇の中へと消えて行った。
【一日目黎明/F-9 西部】
【斎藤一@るろうに剣心】
[装備]:無敵鉄甲@るろうに剣心
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0〜2個
[状態]:健康
[思考・行動]
1.悪・即・斬を貫きぶいつうを殺す。
(な、何、何なのさ?)
颯爽と助けたかと思えば、一瞬にして逃げる。
男が追いかけてこなかったから良かったものの、格好悪いったらありゃしない。
しばらくお姫様抱っこで走った後、すぐに少年は息を切らしこなたを地面に下ろした。
(んむむむむ……)
こいつは命の恩人と見るべきか。ゲームの中に突然現れたお助けキャラ。
いやしかしそれにしては、登場シーンこそロマンシング・サガ、アイシャ編のカヤキスみたいに格好よかったものの、その後が良くない。
大体、お姫様抱っこって何事じゃ。
こなたも、オタク少女とはいえ人並みに女の子である。
お姫様抱っこをする男には、それなりのステータスを要求したい。なにせ自分は希少価値あふれる貧乳であるからして……
「な、なあ。どこも怪我は無いか?」
「ふぉ!!」
男が体をパタパタとはたきながら、こなたに確認する。その表情はやさしく、そして、どこか……
「大きな怪我は……無い…………と思うよ」
髪の毛が、僅かに乱れている。先ほど男に掴み上げられたからだ。
しかし、それ以外には全く無事といってよかった。RPGで言えばホイミで回復する程度のダメージだろうか。
「無事か? 本当に無事なんだな?」
「い、一応……」
真剣な顔で、こなたの体を心配する少年。初対面の癖して、自分の体を心配しすぎるこの男、何者だ。
「よかったぁ……、お前無事だったのかよ」
「ふぉ!!!」
抱きつかれた。お父さんみたいに。いや、お父さん以上に力強く。
「お前に何かあったら、どうしようかと思ってた……」
(な、何……いったい何?)
わ、わたしこの人となんかあったの? いや、いくら考えてもそんなロマンとは無縁の人間ですよ私は?
どこかの誰かさんと勘違いしてるんじゃありませんか? こなたの頭は大パニックだ。
さっきの細目の男がバラモスなら、コイツはルイーダの店にいる仲間の戦士だろうか?
自分が勇者だから、コイツはこんなに馴れ馴れしいのだろうか。
「もう二度と俺はお前を離さない」
(な、なんですとーーー!!)
「今だから言えるよ、恥ずかしいけど聞いてくれ」
(な、なな、何を言うつもりですか?)
こなたの頭は既にゾーマの存在を知ったアリアハン王のように混乱している。
密着している状態なのだから、剣を奪い取って殺せばいいのだろうが、そんな冷静さも彼女の頭には無い。
「一目お前を見たときから惹かれていた」
「ふ、うぉぅ!!」
「お前の小さな体、それでも強い意思を持ったところ、意地っ張りなところ、全部好きだ」
「は、はいいいい!!」
「一目惚れだった……本気の気持ちだよ」
「いやいやいや、お兄さん、人違い、人違いですよ」
何事ぞ、この少年は何を言っているんだ?
これならまだ、バラモスに襲われた方が幾分マシというものだ。
「ハハハハッ、人違い? いや、違うね。人違いじゃない。アンタ、ルイズだよ?」
「ルイズ?」
「そうだよ、ルイズだよ。ルイズに決まってんじゃん。反応したんだからさ、俺のガンダールヴが。
アンタを守る時、いつもみたいに力をくれたんだよ。だからアンタがルイズなんだよ、アイツが死ぬわけねーじゃん!!」
突然目を血走らせて、ルイズルイズと絶叫する少年にこなたは圧倒されると同時に気づいた。
この少年は自分をルイズだと思いたがっている。確証はない、というか、あるわけがない。なんせ自分はルイズじゃないんだから。
だけど、それでもルイズだと信じたがってる。恐らく、そのルイズって子がもう……
「俺の小っちゃなご主人様を守るために、俺のルイズを守るためにガンダールヴが発動したんだよ……
そりゃ、光らなかったぜ? でもさ、体が軽くなって剣が使えるようになるって、どう考えたって俺たちの絆だろう? な、そうだろ、ルイズ?
お前は死んでないよな、生きてるよな?」
哀れなほど混乱する男は、目の前にいる少女をルイズと言って憚らない。人違いだと言っても聞かない。
「俺はお前の哀れな下僕さ、もう二度と俺を離さないでくれよ、後生だ、お願いだよ」
これは一体何だと言うのだ。強制的に流れるイベントの荒らし。
バラモスクラスの敵に襲われたかと思えば、今度はある意味もっと強敵なメダパニ野郎。
だが、こなたの頭に一つの考えが浮かんでくる。
(も、もしかしてコレって、こんなゲーム? ゆーちゃんを助けるために必要なの?)
「何があっても、お前から離れないよルイズ。俺はもうお前しか見えない……」
ここがゲームの世界なら、自分が囚われの姫を助ける勇者なら、仲間が必要じゃないか。
途中で踏み台にして捨てるヨッシーのような、商人の街に捨ててくるだけの商人のような、アイスソードを奪うためだけに殺すガラハドのような、そんな仲間が必要じゃないか。
「わかったよ、私がルイズだよ」
こなたはたった一言、そう答えた。
自分一人じゃゆーちゃんは生き返らない。バラモスに勝つためには、仲間の力がいる。
少年の狂った愛を、それ以上に狂った少女は少しためらった後に受け止めた。
【一日目黎明/F-10 東部】
【泉こなた@らき☆すた】
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0〜2個
[状態]:健康
[思考・行動]
1.優勝して、白髪の男の子にリセットボタンをもらう。
2.目の前の少年が言うルイズになりきり、ともに戦う。最後は少年も殺す。
平賀才人が初めて見た人間は、もう人間の姿をしていなかった。
それは人間と言うより肉塊、肉塊というより肉片、いや肉片すら満足に残っていない残滓。
所々に散らばっている血液らしき黒点と、初めて嗅いでもそれと分かる人肉の匂い。
そして、生前その人間が着ていたと思しき服の切れはし。
それらだけが、そこに人間がいたことを物語っていた。それが無ければ、そこに人間がいたことなど分からなかった。
「ひでーことしやがる……」
ハルケギニアでは戦争が絶え間なく起こり、人が死ぬことも珍しくない。
しかし、この死体(死体と呼んでいいのかどうかすら定かではない破片たち)は、そんなものが可愛らしく見えるほどに残酷だった。
一つ、骨が転がっている。
理科室で見た模型を記憶の中に呼び戻し、それと照合してみると背骨の一つだろうと分かる。
遺体と呼べるものの中で、安定した大きさを持つものはその一つだけ。
才人はそれをポケットの中にいれ、立ち上がる。
「満足に弔うことも出来ないけど、終わったら供養ぐらいしてやるよ」
今は戦場、優先すべきは小さなご主人さまを探して守ること。
見ず知らずの赤の他人は、可哀想だが無視するよりほかはない。
遺骨を持っていくのは、せめてこれだけでも家族に手渡せたらという思いからだった。
「んじゃ、俺はルイズを探しに行くからな」
土にでも埋めたいところだが、ここは遊園地近くの住宅街。
その土さえ満足にない状況だったので、諦めて行くしかなかった。
ふと、立ち上がった才人は懐かしい一本の鉄柱を見つける。
「これは……破壊の杖じゃねぇか」
別名を携帯式対戦車ロケットランチャー。
才人がハルケギニアに立ち入ったとき、一番最初に使った自分の世界の武器だ。
(懐かしいな、これを手に入れる任務がルイズと一緒に体験した初めての冒険だったんだ。
手に取るとさ、ガンダールヴのルーンが光って体が軽くなるんだよ。そんでもって、武器の使い方がわかってさ。
あんときゃ、何も知らなかったからびっくりしたもんだ。ま、知らないのは今も同じだけどね)
手にとってロケットランチャーを見てみる。
単装型ながら、その威力は計り知れず、持っていると心強い。
目の前に転がる仏さんに、手を合わせ、才人はランチャーを失敬することにした。
もちろん、いくら人殺しに巻き込まれたとはいえ、そう簡単に使いたい武器じゃないから、持ってるだけになると思うけど。
(さ、いくぜ……ルイズ、待ってろよ)
心に強く、ご主人さまを守ると決意する。
ガンダールヴの力が、サイトの身を軽くする……はずだった。
「あれ? っかしーな、何にも起こらねぇ」
ガンダールヴの力ってなぁな、使い手の心に反応するんだよ。
とは、伝説の剣の言い分だ。今の自分は全く心が震えてないとでもいうんだろうか。
それとも、破壊の杖が武器じゃないとでも言うのだろうか?
何となく不安になり、才人は支給された武器を一本取り出す。
これが『武器』なら、自分のガンダールヴが反応するはずだ。
「な、お、おい、どうしたんだよ? チカっとぐらい反応しろよ!!」
しかし無反応。
「何が起こったってんだよ。おかしいだろ、いつもと違うじゃん」
ハルケギニアに召喚されて以来、ガンダールヴが才人を裏切ったことなど一度もなかった。
それに加え、隣に転がる死体と、殺し合いという環境が、才人の頭を混乱させる。
ま、まさか、どうして?
そう言えば一度だけ、ガンダールヴの力を失ったこともあったが、あれは……
いやいや、違う。あのときとは明らかに事情が違うだろ。
「だ、大丈夫だよな……ルイズ……」
家を買うつもりだった。
聖戦が終われば、ルイズと二人ですむための城を買うつもりだった。
───なによそれ、あんた、こっちの世界に根を生やすつもりなの?
───いや、まあ、なんつうの? 変える方法はあるんだから、ちゃんと挨拶しに帰ったりはするよ。
でももう、こっちの世界もひとつの故郷。そんな気持ちがするんだよ。
本心だった。実家にいる母のことは心配だが、それ以上に小っちゃなルイズが愛おしくてたまらなかった。
家を買おう。二人で暮らそう。
家具は綺麗なのがいい。とびきりいい店がトリスタニアにあるんだ。
庭には池がほしいな、そこには上品な魚が泳いでて毎日餌をあげるんだ。
馬小屋には何頭か馬がいて、どれも質のいい駿馬ばかり。
でもさ、どれだけ手間のかかりそうな家でも、メイドも執事も要らない。だって、二人きりで住む家なんだもん。
結婚しようと言ったわけじゃない。結婚できるとも思ってない。
だって、自分とルイズは所詮ご主人と使い魔なのだから。だけどさ、2人の間には間違いなく愛があったさ。いやさ、愛があるさ。
出会い系サイトに登録して、全くモテないまま人生を送り異世界にまで飛ばされた自分だけど、
それでも守りたいと思う女の子がいて、その子がとっても可愛くて。愛おしくて、抱き締めたくて……
「大丈夫だよな? ルイズ……」
訳もなく不安に駆られる。理由はない、だから大丈夫なはずだ。昔から『便りが無いのは無事の知らせ』って言うじゃないか。
妙に不安がる必要はない、理屈がないなら信じろよ。アイツだって伝説の担い手なんだぜ……
そう思った才人の目に、月闇に目が慣れてきた才人の目に、地面に散らばった遺留品の一つが飛び込んでくる。
それは桃色がかったブロンドの長髪。ご主人さまのトレードマーク。
「嘘だ……なんだよこれ、ありえねーって……」
そう考えると合点が行く。ガンダールヴの力を失ったことも……
いや、違う。ガンダールヴの力をなくしたのは初めてじゃないだろ。前だって一度あったはずじゃないか。
同じ髪の色の女の子ぐらい山ほどいるさ、これはその子のだよ。別人だって、絶対別人だって。
震えるような手で、髪をつまみ上げる。柔らかい手触りと、懐かしい香りが漂ってくる。
「嘘だろ? 嘘だろ? 嘘だろ? 嘘だって言ってくれよ!」
あたりに散らばる破片たちをかき集め、才人は無心に考える。これは違う。これはルイズじゃない。絶対に違う。
「あ、あ、あ……あはははっはあああ」
しかし、そう思った才人の目に飛び込んできたのは無慈悲な一枚。
紺色をした、一枚のマント。ルイズが学院にいる時、いつも付けていたマント。
闇夜に紛れて、アスファルトと同じ色のマントには先ほどまで気づかなかった。
そして、その下に…………ルイズの鳶色の瞳が一個………眼球一個分だけ転がっていた。
「うぁああああああああああああああああー、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!!」
ありえない。
どうして、こんなことが起こるんだよ。
アイツが何したってんだ? 可愛い俺のご主人さまが何をしたってんだよ。
ただの女の子だぜ。そりゃ、伝説の虚無だけどさ、それでも女の子だぜ。
小さくてさ、それでも大きな貴族の誇りを持ってさ。誰よりも強くあろうとして、それでもよわっちくて……女の子だったんだぜ……
手に取った瞳は冷たく、予想以上に乾いている。
「なぁ、ルイズ約束したよな? 二人で暮らそうって」
「戦いが終わったらさ、俺はお前と一緒に幸せになろうって思ってたんだぜ?」
「っていうか、誓ったじゃねーかよ。覚えてるか? アルビオンに行ったときよ、俺達結婚式挙げたよな?
もちろん、作りものの偽物の結婚式だけどさ、俺の気持ちは本物だったんだぜ? 分かってただろう」
乾いた眼球は、何の返事も返さない。
「誓いの言葉は結局言えなかったけどさ、それでも……それでも俺は……」
握りしめた眼球は、全く動かない。
「嘘だろ、お前死んでねえよな? 生きてるよな生きてるに決まってるよ、絶対そうだって。っていうか、死ぬわけねーだろ?」
サイトはもう何も考えられなくなっていた。
ただルイズが愛おしい。ルイズだけが欲しい。そう思ったことさえあったというのに、突然すぎる別れ。
自分はこんな結末を望んでいた訳じゃない。いくら戦場に身を置くことが多いオンディーヌ副隊長とはいえ、ルイズの死なんか望んじゃいない。
「ありえねー、お前は生きてるよ。生きてるって、絶対に……」
動かなくなったガンダールヴは絶対の証拠。けれど、信じない。
「いや、待てよ? ありえねーって、何がありえないんだよ?」
唐突に、何かがひらめきそうだ。
才人の、決して優秀とはいえない頭脳に、一筋の光明が差し始める。
そうだ。
ありえないなんて言うけど、そもそも自分がハルケギニアに召喚されたこと自体有り得ない事態じゃないか。
それが有り得たんだから、何だってあり得るだろう。大体、一度ガンダールヴの力を失っても結局元通りになったじゃねーか。
「そうだよ、何だってあり得るだろ? 今さら、あり得ないなんてねーよ。元々剣と魔法の世界じゃねーか」
そうだとも、ルイズは自分と違いファンタジー世界の住人だ。
考えろ。ファンタジー世界の住人なら、絶対にあるはずだ、何かの抜け道が。
才人の頭に、剣と魔法の世界代表ドラゴンクエストのイメージが湧いてくる。
『おぉ、ルイズよ死んでしまうとは情けない』そんな言葉がリアルな音声付で、頭の中に再生される。
「そうだよ、死んだら生き返らせりゃ良いじゃん、ザオリクぐらいどっかにあるよ……なきゃ教会に連れてけばいいんだよ」
才人の思考は、あらゆる意味で正常さを失っていた。
「うぉぉおおおおおおおおお!」
そんな時だった。女の子の叫び声とともに、激しい金属音が辺りに木霊する。
才人は反射的に、音の方へと駆け走った。
たどりつくとそこでは、目付きの悪い男が一人、少女を襲っている。
青い髪、日本では見慣れたセーラー服。どちらもルイズの面影を感じさせない。
けれど、小さな体と、年頃の娘には似つかわしくないペッタンコ胸が、何となくルイズを連想させた。
(ルイズ、ルイズ、俺のルイズ。ああぁ、可愛いなぁ、チクショウ……)
気がつけばサイトは、2人の戦いに割って入っていた。
「いい年したおっさんが、女の子を苛めてんじゃねーよ」
だってソレ、ルイズかも知れないんだぜ?
そう思って、才人は少女の持つ剣を手に取り、彼女を守る盾となる事を決意した。
力は失っても役割は失ってない。自分は虚無の使い魔、ガンダールヴだ。
戦いが始まって、才人は違和感に気づく。
男が異常なまでに強いのだ。そして、その強い男に自分が渡り合えている。
互角とまではいかない、相手は劣る武器をもって自分を押している。実力でいえば敵が上であることは火を見るより明らかだった。
しかし。
剣をふるう体が軽い。横薙ぎに払う腕が速い。
疾走する自分の体は、普段のそれではなく、ガンダールヴの力を得た時のそれ。
男の拳を剣で受け止める、思わず後ろに飛ばされそうになるが何とか踏ん張れる。剣を握ると、力が湧いてくる。
なぜ湧いてくる? ガンダールヴの力は失ったんじゃないのか?
(ハハハハハハッ、そうだよ。ルイズがいなきゃこんなこと出来る訳ねーじゃん)
生きてる生きてる、ルイズは生きてる。
今も不安そうな顔で自分を見つめている。あの子がルイズだ。見た目は違うけど、絶対そうだよ。
アイツが死ぬわけねーじゃん。
一緒に暮らすって約束したんだ。家を買おうって約束したんだ。
同棲だぜ? 愛がなきゃ出来ないよ? それなのに、自分を残して死ぬわけないだろ?
(アハッハハハッ、ルイズがルイズがルイズがルイズがルイズがルイズがルイズがルイズが、生きてたよ。
ちくしょう、やっぱ可愛いな。顔が変わってもルイズは可愛いな、俺のルイズ、ちっちゃなルイズ。俺の愛しいご主人さま。
あぁ、今すぐ抱きしめたい。こんな闘いどうだっていいじゃねーか。今はアイツが大事なんだよ)
男の攻撃を受け、アスファルトに強く叩きつけられた才人は痛みも忘れて、ただルイズのことばかり考えている。
「な、なあアンタ。俺たちを殺す気あんのか?」
「無い。今のところは、な」
「そうかい……なら、サイナラ!!」
戦いなんて、今はどうだっていい。
ただただ、ルイズを抱きしめたい。そう思って、才人は新しい『ルイズ』を抱えながら、男の元を走り去る。
男は不思議なことに追いかけてはこなかった。
「な、なあ。どこも怪我は無いか?」
才人には目の前の少女がルイズに見えなくても、ルイズに見える。
だって、アイツが死ぬわけないだろ?
「無事か? 本当に無事なんだな?」
「い、一応……」
だって、ガンダールヴの力が働いたんだぜ。この娘がルイズに決まってんじゃん。
「よかったぁ……、お前無事だったのかよ」
「ふぉ!!!」
抱きつく。香りは少しルイズじゃない。
「お前に何かあったら、どうしようかと思ってた……」
死んだかと思った。あの死体がルイズかと思った。
でも違った。姿かたちは違うけど、きっとここにいるのがルイズだ。
もう二度と離さない。
見た目が違うって? そんなの些細な問題だろ……主人と使い魔の絆は、見た目だけじゃ断ち切れないんだよ。
「もう二度と俺はお前を離さない」
この想い。本気だ。
姿かたちが変わっても、ルイズには変わりないだろ? だってそうだろ? アイツが死んだなんて悲しすぎるじゃねーか。
耐えられねーよ俺。嘘だって言ってくれよ、ルイズは生きてるんだよ、なぁ、お前、ルイズだよな? ルイズだって言えよ。
「一目お前を見たときから惹かれていた」
嘘じゃない。二度目の告白だ。いや、最初から惹かれてたって言うのは無理があるかもしれない。
犬だのなんだの言うルイズに辟易したことがあるのも事実だ。でも好きだ、お前が好きなんだよ、マジでさ。
「いやいやいや、お兄さん、人違い、人違いですよ」
「ハハハハッ、人違い? いや、違うね。人違いじゃない。アンタ、ルイズだよ?」
そうだよ。
違うなんて悲しすぎるじゃねーか。アンタがルイズじゃなかったら、誰がルイズになるんだよ。
っていうかもう、ルイズでいいよ。死んだなんて信じられないんだよ俺は。
「そうだよ、ルイズだよ。ルイズに決まってんじゃん。反応したんだからさ、俺のガンダールヴが。
アンタを守る時、いつもみたいに力をくれたんだよ。だからアンタがルイズなんだよ、アイツが死ぬわけねーじゃん!!」
死んでねぇ、死んでねぇ、死んでねぇ、死んでねぇ、死んでねぇ。
絶対生きてる。目の前にいるアンタがルイズだ。そうだって言え、言わないと殺す。
「俺はお前の哀れな下僕さ、もう二度と俺を離さないでくれよ、後生だ、お願いだよ。
何があっても、お前から離れないよルイズ。俺はもうお前しか見えない……」
新しい『ルイズ』を抱きしめて才人は思う。
才人だって、この女がルイズとは似ても似つかない別人だって事ぐらい、心のどこかで気づいていた。
でも、それが本当だなんて思いたくない。信じたくない。だからいい、これがルイズだっていい。あいつは今ここに生きてるんだって思いたい。
「わかったよ、私がルイズだよ」
そうして、才人の思いは受け入れられた。
少女は才人の新しいルイズになったんだ。新しいご主人さま、ガンダールヴを使役できる新しい虚無の担い手……
【一日目黎明/F-10 東部】
【平賀才人@ゼロの使い魔】
[装備]:女神の剣@ヴィオラートのアトリエ
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品1〜3個(このうち少なくとも一個は武器です)、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ)
[状態]:健康
[思考・行動]
1.新しい『ルイズ』と一緒に行動する。
[備考]
1.女神の剣@ヴィオラートのアトリエは元々こなたの支給品でした。
こうして、愛する人を失った二人の少年少女が巡り合う。
妹同然にかわいがっていた子が、目の前で死んだ。首だけ弾け飛んで。その瞬間少女の理性も吹き飛んだ。
殺し合いをゲームと思い、遊園地を飛び出した少女はもういつもの彼女ではなかった。
恋人のように愛し合った女の子が死んでいた。それは死体とすら言えないほどの残骸。
乾いた眼球を握りしめ、語り合った日々を思い出す。そして、想い出を一枚一枚めくるほど、少年の心は壊れていった。
壊れた少年の心を支えたのは、ルイズという一人の少女。そして、ガンダールヴの絆。
けれど、それは偽りの少女と絆だった。ガンダールヴは偽物で、もう彼になんの力も与えない。
彼に力を与えたのは全く別のものだったのだ。しかし、少年はそれに気づかず、少女がくれた使い魔の力だと勘違いした。
少年に力を与えた本当の物。その正体。それは、少年が使った武器である。
人呼んで女神の剣。
人跡及ばぬ遺跡の最奥。神に最も近い場所と呼ばれた地に、その剣は眠っていた。屈強なデーモンたちに守られて。
本来、人目につくはずも無い魔物たちが守る神殿に祭られた神具である。その切れ味、まさに闘神の如し。
女人でも握れるほど軽く、使い勝手のいいその刀は、神殿に辿り着いた錬金術師たちの用いる最高峰の武器のひとつだった。
使い手に、女神の祝福を与え、ありえぬほどの身体力強化という恵みを施す。それが、この武器の特性だ。
そう。そして、それ以外、何の問題も持っていないのも、この武器の特徴のはずだった。
人跡未踏の地に捧げられた宝刀とはいえ、ただの剣。呪いなどかけられるはずもない、聖剣の一種なのだ。
しかし、それを使った状況が悪かった。
少年は剣にかけられた祝福をガンダールヴの力と勘違いしてしまったのだ。
誰にも等しく力を与えてくれる剣であるにもかかわらず……
女神の剣は黙して語らない。
冠された女神の名は、幸運の女神などではない。
ただただ、力を与えるためだけの戦女神。
力を与えよう、欲しいなら。だがしかし、我はそれ以上のことをしない。
我は戦女神、ただひたすらに力だけを望め。
[備考]
2.女神の剣@ヴィオラートの従属効果は『攻撃回数増加+3、攻撃力+3、防御力+3、素早さ+3』です。
投下終了です。
ヴィオラートネタ三連発。流石に次は自重しようと思う今日この頃
うおおGJ!
こなたの描写が本当にこなたらしかった。
とうとうサイトがヤンデレ化w
ところでどのルートに?
ルート厨うざい
面白かったけど全員の視点から作る必要はなかった気がする。
戦闘と展開のテンポいいなあ、と。こなたと斉藤の。
ルイズを死なせたのは、この展開の布石にするためか……。
>>95 そんなこと言われたらwikiに保存できないし下手に予約できない。
こういうのが目障りなら分岐を無くすしかないじゃん。
分岐制廃止でいいじゃん。
だいたい分岐制自体、今は亡きまとめ人が一存で勝手に導入しただけだしな。
今の書き手が必要としてなけりゃ、邪魔なだけだろ。
>>98 俺も分岐はいらない派だけど、そうしたら今分岐されてる作品について議論しなきゃいけない。
誰かがいらんと言ってはいそうだねじゃあ止めようかと簡単に話がまとまるわけじゃない。
ここで言ってないでしたらばの議論スレに案を出そうよ。
特に指定がなければ全ルート共通、但しメインルート以外は
新しくルート指定明記された作品が投下されるまでは凍結し
wikiのルート別ページも更新しない、ってことでいいじゃない。
これなら書き手氏にもまとめ氏にも負担はかからないし
いざ賛否の割れる作品が来ても対応できるでしょ。
遅ればせながら乙!
サイトもヤンデレ化かぁ
どんな最期を迎えるか楽しみだ
ちょ…既に死ぬの確定ですか
まあ俺も生還するとは思えないけど
>>103 死ぬなんて言ったつもりは無いけど、文章見たらそう見えちゃうな
実際死にそうだけど(笑)
感想ありがとうございます。
一晩たってみて、あいや経ってないか。思い返してみたのですが、演出とはいえ過剰な表現があったので、念のため補足しておきます。
>>92のことなんです。実は結構無茶苦茶な事書いてます。
女神の剣の、『女神』というフレーズに拘りたく、こういう文章を書いてみたのですが、そのフレーズに拘りすぎて表現がおかしくなっているんです。
まず、前提としてヴィオラートのアトリエに登場する女神の剣はただの剣です。
ドラクエの王者の剣が、別にどっかの王様の剣じゃないのと同じように、女神の剣もただの剣なんです。
次にステータス増加ですが、女神の剣は必ずしもステータスが増加するものとは限りません。しないものもあります。
ヴィオラートのアトリエでは全てのアイテムに従属効果が付けられて、その従属効果の内容如何で、ステータスUPするかどうかが変わります。
女神の剣は作中最強クラスの剣なので、結構いい従属が付いてきますが、それでも、というかそれだからこそ、ステータスUPの従属ばかりがつくとは限りません。
レベルの高い従属効果でも、HP打撃やMP打撃などの属性もあり、これらは主人公たちのステータスを変化させないものです。
また、大半のアイテムの場合、熟練ヴィオプレーヤーは狙った従属をつけてくることもあるんですが、女神の剣は狙って従属効果を付けることが出来ない武器なので、
どんな効果が付いてくるかは運任せという事になります。
そして、
> 人呼んで女神の剣。
> 人跡及ばぬ遺跡の最奥。神に最も近い場所と呼ばれた地に、その剣は眠っていた。屈強なデーモンたちに守られて。
の部分にも若干誇張がしてあります。
確かに、人跡及ばぬ遺跡(=ヴェストリッヒ・ナーベル)の奥にもあるっちゃあるんですが、ランダムです。無い場合もあります。
そして何より他の場所にもあります。どっちもランダムなんですけど。
誤解を招きそうな表現ですが、女神の剣なら神に一番近い場所にあってしかるべきだろうと思って、こんな文章になりました。
ちなみに、『神の最も近い場所』と『デーモンたちに守られて』は本当です。ヴィオ1stプレイで、ここまで行けたら神認定できると思います。
んで、最後に
> 冠された女神の名は、幸運の女神などではない。
> ただただ、力を与えるためだけの戦女神。
> 力を与えよう、欲しいなら。だがしかし、我はそれ以上のことをしない。
> 我は戦女神、ただひたすらに力だけを望め。
の部分です。
上でも書きましたが、女神の剣はただの剣です。これは単なる文章上の演出です。幸運の女神だとか、戦女神だとかは出てきません。ただの剣ですから。
どっかの伝説みたいにおでれーたとか喋ったりもしません。
そんな感じです。書くときは、単に切れ味鋭い運動能力UPのアイテムだと思っておけばいいと思います。
というか、何度もいいますけど、ただの剣なんでそれ以上のものは何も無いです。
ではまた
つまり、逆刃刀・真打や贄殿遮那のような業物に比べたら、
明らかに劣っているということなのかな。
でも一般人が持てばいつもの自分より強くなってる感がある程度には
強化してくれる剣だと、そういうことかな
要するに、単純に強い剣ということでひとつ……
ルパン組こねー
今のところ全ルート共通作品ってどれ?
OP
また予約はいった
あの書き手って戦闘ばっかりだからなぁ…
そろそろ違う展開も見せてほしい所
取りあえずここの読み手が著しく上から目線なのはわかった・・・
そういう物言いは書き手をさらに減らず事になるぜ。
だいたい何でお前の好みに合わせにゃならんのだと
上から目線だろうが、下から目線だろうが、あの書き手が次もバトルで来るのはまちがいない
その時は、「俺の言った通りだろ?」…って言うつもりだから良くおぼえといてね
うわなにこのひときもちわるい(^^;
しかも、るろ剣とゼロ魔とアトリエの組み合わせばっかりだし
もうちょっと引き出し増やしなよ
戦闘でもいいじゃん。
ただルイズ以外の戦闘は展開読めすぎて微妙
これが・・・読み手様か・・・
釣りっぽいからNGすればいいよ
でもまた剣心勢が技を見せつつ決着はつけずってパターンだったらもういいけどね。
とはいえタバサと宗次郎は主人公が一話退場だから殺しづらい。
こうなると組合わせ的に結構展開が読めるんだよねぇ・・・。
実は三人でカレー食べるとかだったら恐れ入るけど。
どうでもいいが誰かガンソード予約したらどうだ
>>124 だよなあ・・・釣りか荒らしか。
潰れて欲しいのかね?
人任せな時点でただの無自覚読み手様だろ
もうほっとけ
破棄します
俺も破棄します
ポケモン板の荒らしを思い出すレベルだ
バトロワは漫画版と小説版で別れてるけど、キャラの性格とかに違いはあるの?
俺は漫画版しか読んだことないからわからないけど
結構違いがあるらしいよ
>>132 あるよ。他に映画もあるけど映画、漫画、小説、どれも結構性格が違うから見比べると楽しい。
予約破棄します
>>132 全然違う
特に参加キャラは別人28号
具体的書くとこんな感じかな
[三村]
原作→豊以外には非常にドライで秋也も「合流できたらいーね」程度、死の際も死んだ叔父・親友の豊・残して逝くことになった妹の三人を想っただけ
漫画→豊どころか秋也や杉村、果てはノブさんとまで仲良し。死ぬ際は面白ポーズで秋也秋也ひたすら連呼
[千草]
プッツンなのは変わらないけど、漫画版は戦闘中ひたすら弘樹弘樹と叫んでる
[稲田]
原作→電波なお笑い担当。誰にも見つからずラスト5人まで生き延び、ナイフ一本で桐山に特攻かける。一応正義感で動いているっぽい
漫画→意味もなく脱ぎ嬉しくない下着姿を披露する電波。トリップすると周りが見えなくなるっぽい。説得をする七原を問答無用で撃った
[織田様]
漫画版は原作より演技力が上がってる。性格は両方あんな感じ
[桐山]
原作→淡々と人を殺すところは一緒だが、頑丈さは大爆発で吹き飛んだトラックに乗ってて無傷な程度
漫画→一目見て相手の技をトレースし、素手で相手を吹き飛ばして木をへし折ったり、顔面打たれても死ななかったりの超絶チート
>>136 しかも桐山がトレースしたのは杉村が長年の鍛錬+覚醒状態になってやっと覚えた技だもんなw
全然違うな
桐山に至ってはもはや人間じゃないww
>>135 そうですか……あまり気に病まないでください
何もお役に立てなくてすいません
したらばID違うよ
書き手さ〜んカムバック!!いきっとる読み手のゆうことなんか気にせんで下さ〜い
まあ…中傷気にするなら2ちゃんねるで物書きやるなって話だよね
×2ch
○このスレ
いや、にちゃんで書き手やってりゃ中傷されるくらい当然だよ
読み手が何を偉そうに・・・
乞食みたいに書け書けって言ってる癖にこの言いぐさだもんなあ・・・
何にせよ、この空気じゃ書きたくはならないと思うけど。
誰だって書きたくない。いてもいなくても変わらないのに害になる奴ばっかだもん。
2chが叩かれやすい環境なのは否定しないが、それは叩く理由にはならない
いや、誰も叩いていい理由になんかしてないだろう
2ちゃんでやってりゃ中傷されるのは当然だけど、2ちゃんでこういう企画が長続きしないのも当然だからなあ・・・
書き手さんのカムバックをまたないで自分が書くとかしないと厳しいと思うよ
わざわざID変えてまで毎日ご苦労様です
戦犯は誰か
戦犯は誰か
◆xmy4xBA4UIが戦犯である
理由
長文ワンパターンルイズ殺し
某所で永住決めたとほざいた奴等もだな
そう言うことによって宣伝するのは構わないが、有言実行しない時点で口だけ
自分の立場を明らかにして、それを宣伝に使ったなら責任がある
もう二度と同じようなことをしないでほしい
少しでも状況が悪くなると去るのなら最初から適当なことを言うべきではない
ああいうのを見てると、ゼロ魔とかリレーSS企画に参加させてもメリット無いなあ、としみじみ思ってしまう。
しかも自分で殺すし
ゼロ魔が出るとホントろくな事にならないな。
いっそ才人も食われた方がスッキリしていいかも。
現在位置地図が完成したので報告します
手伝ってくださった方はありがとうございました
荒れたのはゼロ魔のせいです
ひでー、書き手叩いてるのにだれもフォローしねーwwww
みんな同じこと思ってたってことだな。
書き手フォローしてやれよ
書き手さんはすごいよ
新たなる生贄
また荒れてきましたね。でも予約来たし焦らずじっくりと。
こんなとこでかきたくねー
166 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:35:19 ID:qPZTxVUd
下がり過ぎです。
料理人求む
いつまでバトロワなんてやってるんだか
馬鹿と無能が多くていい板だな
期限守れないなら予約するな
169 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 09:28:35 ID:RMwos5PB
逃亡
予約延長 & キャラ追加次元大介
また最近荒れてきましたけど、気にせず執筆頑張って下さ〜い
楽しみにしてますよ
て言うか、予約延長しても最長期限の5日はすでに過ぎてるんだけどね。
謝罪くらいしなよ
遅れていることに気付きませんでした
予約は期します
>>174 今なら再予約しても問題ないよ、せっかく書いたなら見てみたい
新一、宗次郎、投下します。
――――雨の中泣いている子供が居た。
――――子供は泣いているのかと尋ねられる。
――――でもその子供は笑いながらいいえと答えるんだ。
――――そうだ……この子供は僕だったんだ。
まだ深夜の冷たい潮風に晒されながら、海岸線で白い着物姿の青年は何をするともなく水平線を見つめている。
青年、瀬田宗次郎は自分に起きた現象が良く飲み込めずに居た。
明治政府転覆を計画する志々雄真実の腹心で、多くの人間を殺害してきた宗次郎は
つい先刻まで志々雄に敵対する、緋村剣心と戦っていた筈が
気が付けば別の場所に居て殺し合いをしろと命じられて、また次の瞬間には別の場所に移動していた。
それだけでも理解を超えた現象だが、宗次郎が拘泥している『不可解』はそれに留まらない。
(訳が分からないなァ…………せっかく、後少しで緋村さんを殺せる所だったのに
これじゃあ、余計いらいらする……………………)
宗次郎は元来、喜怒哀楽の内楽以外の感情が欠落している。
しかし剣心との戦いの中で、その無い筈の感情が顔を出した。
抑えようの無い程強い苛立ち。
(不殺とか弱い者を守るだとか、緋村さんは言ってる事もやってる事も間違ってるんですよ。
だってもしあの人が間違っていないなら、あの時僕を守ってくれたはずなんだから…………)
――――思い出されるのは、過去の記憶
――――雨の中佇む、幼い自分
(『所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ』
あの時僕を守ってくれたのは、志々雄さんが教えてくれたこの真実とただ一振りの脇差……だから正しいのは志々雄さんの方なんだ!!
宗次郎には珍しく眼光を鋭くし、剣呑な気配を表に出す。
(…………そう言えば、今の僕は『殺し合い』に参加してるんだったっけ。
首輪が有る以上逃げられないみたいだし、憂さ晴らしにはちょうどいいかな)
哀の感情も知らず、強さ以外の価値も教えられず生きてきた宗次郎の中には
多くの人がそうと自覚しない程自然に身につける、殺人への禁忌すら存在しない。
決意。
そう呼ぶには余りに軽い調子で、宗次郎は殺し合いに乗ると決める。
足下に有ったデイパックを探り、名簿を確認する。
名簿に有る名前を信用するなら、憶えのある名前は3人。
「何だ、緋村さんも参加してるんだ。じゃあ、こっちで決着を付ければ良いや。後は斎藤さんと…………志々雄さんか」
宗次郎にとって剣心と斎藤は敵であるから、殺す方針で問題は無い。
しかし志々雄は、自分の主に当たる人物。
しかも恩人とあっては、宗次郎とて単純に殺せば済むと割り切れるものでも無い。
「……ま、志々雄さんの事は後で考えればいいか。どーせ志々雄さんなら、放って置いても死ぬ訳無いし」
そしてどうしても考えが進まない事に、何時までも拘る宗次郎では無かった。
他にデイパック内の荷物は地図、コンパス、筆記用具、水、食料、時計、ランタン。
鉛筆やら水を容れるペットボトルやらに、一通り驚いて見せた後
宗次郎は遂にお目当ての武器に至った。
説明書にはイングラムM10と名前が記された、黒い金属製の箱の様な銃器サブマシンガン。
もっとも明治に生きる宗次郎は、サブマシンガンがどういう物かは知らない。
説明書き通りに銃口を向け、照準を定め、引き金を引き、近くの石を狙い撃ってみる。
思いの他の反動で銃身がぶれ、目標周りの砂利を盛大に跳ね上げた。
「凄いなこれ、携行用の回転式機関砲(ガトリングガン)って所か。
アハハ、でも僕にこんな強力な武器を支給しちゃったら殺し合いにならないや」
新しい玩具を手に入れた子供の様な、邪気の無い様子で荷物を纏めた宗次郎は
遠方に見える巨大な建物へ向けて、出発し始めた。
「それにしても何の建物か知らないけど大きいなァ、窓の数で見ても10階建て以上有りそうだ……」
◇ ◇ ◇
自動ドアを潜ってホテルに入った泉新一は、ロビーの照明も消えフロントの中まで誰も居ないのを確認すると
フロントに設置してある電話で、自宅の番号に掛けてみるが呼び出し音さえならない。
後藤との戦いが終わった夜に父から教えてもらった宿の番号にも掛けてみるが、やはり反応は無い。
(電話回線は繋がっていないのか……まあ、考えてみればこんなでかい殺し合いの会場を用意する様な奴だし
そう簡単に、外と連絡を取れるようにはしとかないよな…………)
新一は受話器を置き、当初の予定通り休みを取る事とした。
今居る面がガラス張りのロビーでは無く、何処かの部屋を黙って借りようかとも考えたが
少し悩んで、結局ロビーの如何にも高級そうな大型ソファーに座り込む。
新一の右腕に寄生している寄生生物(パラサイト)、ミギーは現在眠っている為他の寄生生物を探知する能力が使えない。
故にホテルの部屋の様な、狭く逃げ道の少ない場所に居ては
一方的にこちらを探知出来る、後藤や田村令子等寄生生物の急襲を受ける危険が有る。
それならば外から見付かる危険は有っても、こちらからも外を見張れるロビーの方を選んだ。
それにガラス張りで外から見えると言っても、夜の照明が落ちたロビー内は闇に覆われほとんど見通しは効かない。
ソファーに深く身を沈め、左手で胸のシャツの胸部分を握り締め深呼吸。
新一にはほとんど習慣となった、精神安定の方法。
それを2、3回続けると新一は普段の落ち着きを取り戻す。
(爆弾入りの首輪嵌められて殺し合いをしろって言われてる状況でも、気持ちだけはすぐ落ち着く
……俺の心はそういうふうになってんだよな)
しかし幾ら気持ちが落ち着いた所で、実際は状況が好転した訳ではない。
「おいミギー! 何時まで寝てんだ、起きろよ!!」
右腕を叩いて反応を見るが、変化は無い。
ミギーは以前に起こした体質変化に拠って、1日の内4時間は外へのアンテナが無い完全な睡眠を余儀無くさせられていた。
どうやらミギーは、その完全な睡眠に入っているらしい。
「ちぇっ、こんな時でも呑気に寝てられるんだからな。ミギーは」
睡眠がミギーの意思によるものでは無いと理解していても
殺し合いの中で一方的に眠りにつかれ1人にされた新一には、ミギーに見放された様な憤りを覚える。
(これから4時間は、俺1人で凌ぐしかないか…………。
でもその4時間を乗り切ったら、ミギーと見張りを交代する形で俺が眠る事も出来るな)
新一はとにかくミギー無しの4時間を凌ぐべく、気持ちを切り替える。
身体を休め気持ちを落ち着かせ、それでも眠れないという時間が数分ほど過ぎると
殺し合いの緊迫も何処か虚ろになり、手持ち無沙汰になる。
そして支給武器を確認していなかった事に気付いた新一は、デイパックを探り始めた。
まずメガホン型の拡声器が見付かった。
(武器じゃ無いだろ、これは!! しかもご丁寧に、使い方の説明書付きって! もしかして馬鹿にされてんのか?)
新一なりに使い道を考えてみても、ほとんど闇雲に仲間を募るか停戦を呼び掛ける位しか思い付かない。
余り効果が期待出来ないメリットに比べ、危険を呼び込むリスクが大き過ぎる代物だ。
他に支給武器と考えられそうな物は、カセットテープが備え付けられたCDの再生も出来るラジオカセットレコーダー。
これも武器として使うとすれば、せいぜいその重量で殴打する位しか思い浮かばない。
残るは頭部をすっぽりと覆う、奇妙な形状の黒い仮面。そしてこれも全身を覆える大きさをした、黒いマント。
説明書に拠れば、これを着れば『ゼロ』になれるとの事。
(そのゼロってのが何かを説明しろって! ……かあ、支給武器はどれも外れかよ…………)
支給武器がどれも期待外れであった為、新一は落胆のままソファーの背もたれに沈み込み大きく息を吐き出した。
その視界遠くに、白い着物を着た新一と同年代位の青年が映る。
「……!!」
草むらに立っている青年は、身体をホテルに向けたまま動きが無い。
その右手には機関銃と思しき、銃火器が握られている。
(見付かった!? でもここからは100m近く有るから、この暗さじゃ寄生生物でも見えないんじゃ……
いや、どっちにしろホテルには来るだろうから…………!!)
爆発の如くに地面を穿つ踏み込みで、凄まじい速さで青年が真っ直ぐ新一へ向け駆け出す。
新一ですら反応出来ない速度で、青年との距離は半分近くまで縮められた。
それだけの運動をしながら張り付いた様な笑顔のままの青年に、新一に寒気にも似た恐怖を覚えた。
(こいつ寄生生物か!? それにしたって速過ぎるって!!)
速度を落とさないまま、青年は軽々と機関銃を上げ銃口を新一に向ける。
連続した高い銃声と共に、ガラス壁に穴と皹が入る刹那
新一は咄嗟にソファーから立ち上がり、テーブルの陰へ横っ飛びに移動した。
右脛に切り裂かれた様な痛みが走り、新一の座っていたソファーの羽毛が舞い散る。
青年が銃痕で脆くなったガラス壁を、蹴破って飛び込んできた。
ロビーから走って逃げ出そうとした新一だが、右脛に激痛が走り前のめりに倒れる。
(弾丸は体内に残ってないみたいだけど、これじゃほとんどまともに走れない!)
「へえ……中まで変わってるんだ、この建物」
何故か青年はロビーを見渡して、しきりに感心している。
(何だこいつ? 俺を見失ったのか?)
青年は新一を放置して、まるで幼児の如くホテルの内装を見渡し続けた。
「それともここは西欧で、西欧ではこれが普通なのかな? あなたは何か知ってますか?」
およそ邪気の読みとれない張り付いた笑顔のまま、感情の無い冷たい視線だけを新一に送って来た。
次の瞬間には機関銃の照準が、新一に合う。
全体重を乗せた左脚のばねだけで、柱の陰に飛び移る。
笑みを絶やさないまま躊躇も、狂気も、高揚すら一切感じさせず機械の様な平静さで襲い来る青年に
新一はかつて自分が戦った寄生生物、豊かな表情で自分を殺しに掛かってきた三木を思い出す。
そして確信する。青年が寄生生物である事を。
明らかに人間を超えた脚力に、何より殺し合いに全く動揺が見れない事からも間違い無い。
(くそっ! よりによってミギーの寝てる時に、マシンガンを持った寄生生物(パラサイト)に襲われるなんて!!)
右脚の負傷した状態で、平時でも自分より速いであろう寄生生物に狙われている。
自身の不可避の死が、新一の脳裏から離れない。
状況を思い返すだけで、窒息しそうな程に息苦しくなり
思わず右手で、自分の着るシャツ胸部分を握り締める。
癖と言ってもいい行動の筈が、奇妙な違和感を覚えた。
(……そうか、何時もは左手でやっていたから…………)
無意識に右手を動かした事を自覚し、新一はミギーの存在を思い出した。
(…………厳しくても、ここは俺1人で切り抜けるしかない…………!
俺は自分1人の命じゃなく、こいつの命も預かってるんだからな)
1度深く呼吸。先程までの息苦しさは、もう無い。
何時までも追撃をして来ない青年の様子を、新一は覗き見る。
足下の銃撃を受け羽毛が飛び出したソファーに、感心が行っている様だ。
機動力、戦闘力共に青年が新一を大きく上回り余裕が有るとはいえ
戦闘中とは思えない程、弛緩した態度だ。
右脚に力を込める。
相変わらず痛みは強いが、多少遅くなるとはいえ走れないと言う訳ではない様だ。
(あいつにはAみたいな油断が有る。Aの時も戦力的な劣勢を覆して勝てたんだ。
戦える! ヤケにならずちゃんと作戦を立てりゃ戦えるぞ!!)
一通りロビーの内装を見回していた宗次郎は、動きの無い新一に意識を戻す。
(じっとしている所を見ると、鬼ごっこもかくれんぼも無駄だと悟ったかな?)
新一は脚の負傷で、素早い動きが出来ない。
それでも単純な運動能力だけで、並の武人よりは遥かに速いが
例え負傷していないとしても、縮地を使える宗次郎からは逃げられないであろう。
これまで向こうから何も仕掛けてこない事からも、警戒すべき武器も持ってはいない様だ。
イングラムの銃口を向け、新一が隠れる柱に悠々と近付いていく。
突如宗次郎の視界の暗がりに、柱の陰から更に濃い黒が広がった。
宗次郎の高い視力が黒い仮面と、その首元に巻き付けられた黒いマントが翻り迫り来るのを確認する。
慌てて黒マントの胸部を銃撃。中から水が、弾ける様に零れ出した。
宗次郎が訝しがる内に、イングラムがカチャッと言う音をたて弾丸の発射を止める。
弾丸切れ。
重火器を扱い慣れていない為、直ぐにそうだと気付かなかった宗次郎の視線が沈黙したイングラムに落ちたその刹那
黒いマントを払い除け、新一が飛び出した。
新一は銃火器に精通している訳ではないが、それでも明治に生きる宗次郎よりはサブマシンガンに馴染みが有る。
宗次郎の様にフルオートで撃ち続ければ、弾丸切れは早いと予想出来た。
そして弾丸切れの瞬間はよほど銃撃戦に熟練してでもなくば、どうしても意識は銃に奪われる。
その隙を突いて一気に間合いを詰め、イングラムを持ちこちらに伸ばす手を掴み
力任せに、宗次郎を床へ投げ飛ばす。
(頭が変形しない!?)
何故か寄生部分で有る筈の頭部を武器に変え攻撃して来ないが、今の新一にそれを気にする余裕は無い。
(今から頭部を変形させても、俺の方が早く奴の心臓を攻撃出来る!!)
仰向けに叩きつけられた体勢から、即座に宗次郎が立ち上がろうとするも
新一が未だ掴んでいる腕を捻り、阻止する。
その痛みで宗次郎の表情が、始めて歪みを見せた。
(――――痛みを感じている!!?)
空いている手で宗次郎の心臓、寄生生物最大の弱点部分に直接攻撃しようとしていた新一に違和感が走る。
寄生生物に痛覚が有るか否かを新一は知らないが、それに対する反応は無い事を知っていた。
だが宗次郎が見せた表情は、とても演技とは思えない。
痛みに呻き、接近戦でも頭部を変形させない――――
(――――こいつは寄生生物じゃない!!)
思考に拘泥し動きの止まった新一の身体が、突如腹部に衝撃を受け吹き飛ばされた。
剣心の神速を超える高速移動術、縮地を可能にする宗次郎の脚力は格闘戦では強力な武器にもなれる。
仰向けの体勢からでも、新一を蹴り飛ばす事が出来た。
新一は空中で身を翻し、両手と左脚を使って着地。
やはり純粋な運動能力が、尋常ではない事が窺える。
「お前、人間だったのかよ!!?」
先程まで居た柱の陰に隠れながら、新一が半ば叫ぶ様に問い掛けて来る。
その質問が余りに頓狂な為、イングラムのマガジンを装填しながら聞いていた宗次郎は笑いを堪える事が出来ない。
「あっはっは! 僕が服を着た猿にでも見えたんですか?」
「同じ人間を、何で殺そうとするんだ!?」
瞬間宗次郎の笑いが途絶え、先刻まで存在しなかった剣呑な気配が初めて表れる。
(いやだなァ、またイライラしてきた……)
「殺し合いなんだから当然でしょう。それとも、あなたも不殺(ころさず)とか言うつもりですか?」
「当たりめぇだろ! 人の命ってのは尊いんだよ!」
宗次郎は思う。こいつも剣心と一緒だ。
弱肉強食と言う真理から眼を背け、間違った理念に生きる愚者。
「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ。あなたの言ってる事は、間違ってるんですよ」
声に冷たさと鋭さが混じっている事に、自分でも気付く。
「どっちが間違いだ! 人間なら弱肉強食で、命のやり取りを片付けるな!!」
苛立ちが強まる。
何故どいつもこいつも、明々白々な真理を否定しようとするのか?
「あの時、誰も僕を守ってくれなかった」
この世を支配する理は1つ、それは絶対のもの。
でなければ僕は――――
「あなたが間違っていないなら、あの時僕を守ってくれた筈じゃないですか」
「…………ちぇ、いきなり出てきて何かと思えば……てめぇなんか何処にでも居る只の人間じゃねぇか」
「……何です?」
新一には、今の自分が窮地だと言う自覚が有る。
それでも何故か、宗次郎の話を聞いている内に突然
先程までの切迫した心持が、馬鹿馬鹿しく思え出した。
宗次郎が話している内容は、新一には全く理解が出来ていないが
冷徹な殺戮機械に思えていた宗次郎が、有り触れた只の青年にしか見えなくなった。
もっとも、それで戦力的な劣勢が覆った訳でも無い。
宗次郎が人間であっても、脅威である事には何ら変わりは無い上
奇襲を失敗した事によって、もう先刻の様な油断は期待出来ないであろう。
つまり勝利条件は、より厳しくなったのだ。
微かに右手を見つめる。
(もう1度……いや、勝てるまで何度でも綱渡りをしてやるぜ。なあミギー)
返事は無くとも確かに戦友がそこに居ると確認しただけで、新一には心強かった。
「てめぇなんか、寄生生物に比べりゃ紙細工だって言ってんだよ」
「やっぱり意味が分からないなァ、あなたの話は。……聞いていると、イライラする」
「良く言うぜ。さっきまで、訳の分からない事言ってたのはどっちだ」
宗次郎は自分の声よりも新一のそれの方が落ち着いている事に気付き、更に苛立ちを増す。
そして動揺する宗次郎を尻目に、新一が柱からロビーの出口へ走り去っていく。
(逃げた!? もうそんなに回復したのか……だけどそっちは、建物の奥の方ですよ)
追いかけっこなら望む所だ。
そう思いながら、新一の足音を追う。
ロビーの出口から廊下に出て、左右に視線を走らせる。
廊下の先にある部屋へ駆け込む新一を視認出来た。
それから数秒と間を置かず、宗次郎は新一が逃げ込んだ部屋の入り口に移動していた。
部屋をぐるりと見渡す。
そこは部屋の1辺が50m以上は有りそうな空間に、白いテーブルクロスが床の近くまで覆っている丸テーブルを幾つも置いている
パーティー会場と思しき部屋だと分かった。宗次郎はパーティー会場と言う言葉は知らないが。
新一の姿は視界には無い。
他の出入り口が部屋の隅に有るが、新一の足ではそこまで逃げる時間は無かった筈だ。
つまり新一は、何れかの丸テーブルの下に居るという事になる。
「偉そうな事言っておいて、結局かくれんぼしか出来ないんですか?」
床に伏せテーブルの下を1度に見渡そうとするが、部屋が暗過ぎてそれは適わなかった。
照明を付けようにも、宗次郎には方法が分からない。
面倒だと思いつつ、1つずつテーブルを捜して行くしかないかと観念する。
「それでは時間稼ぎにしかなりませんよ。僕にはこれが有りますから」
イングラムで1番近くのテーブルを銃撃。
幾つもの銃弾を受けテーブルクロスの布が、そしてテーブルの木材が舞い散る。
銃弾のシャワーを浴びたテーブルには、人が無事に隠れていられる空間は残されていない。
そして弾切れになったイングラムのマガジンを、手早く装填する。
サブマシンガンを使う要領は掴めた。もう隙は見せない。
これだけ分かり易く威嚇されれば、自分が助からないのが理解出来る筈だ。
そう。かつて自分が雨の中で米蔵の下に追い詰められたときの様に――――
支援
さるさんに引っ掛かったらしい、したらばにきてる
「俺は本当に『弱肉強食』を生きている、人食いの化け物を知ってるんだ」
なのに何故まだ減らず口を叩ける?
何故声色に動揺が見えない?
新一の声は、何処までも宗次郎を苛立たせる。
(けどあなたはやはり、どうしょうもない馬鹿だ! 声を上げたおかげで、おおよその位置が掴めましたよ)
「そいつらはお前みたいに弱肉強食だのなんだの、言い訳をしなかったぜ!」
「言い訳? 僕が何で言い訳をしなければならないんですか?」
思わず聞き返す。
聞き返す必要なんて何処にも無いのに。
あいつは弱肉強食の真理に従って、もうすぐ死ぬのだから。
テーブルクロスの1つが翻るのを視界の端で捉えた。
間髪入れずイングラムで銃撃。
「自分に嘘をついて言い訳する。これは人間にしか出来ないもんな」
まだ死んでいない。何処までイライラさせるんだ。
「自分を騙して、他人を傷付ける。それで弱肉強食? 笑わせんなよ」
それが僕の事だっていうのか?
僕の事を何も知らない癖に、知った風な口を聞く。
あの時……僕を守ってくれなかった癖に!!
またテーブルクロスの翻りを捉えた。
しかも影がテーブルの下に潜り込むのも同時に。
「お前は弱肉強食に、本当には納得してないって事だろ?」
声はそのテーブルからのものだと、はっきり確認出来た。
そのテーブルは、宗次郎から見て壁を背にしている為
宗次郎の眼を盗んで、他のテーブルに移るのは不可能である。
つまり何処にも逃げ場が無い事になる。
宗次郎が笑みを浮かべる。何時に無く獰猛な眼光で。
「かくれんぼの最中に調子に乗って無駄話するから、鬼の僕に居場所を悟られましたよ」
笑いながらイングラムの銃弾を撃ち込む。
フルオートの為直ぐに弾切れになったが、即座にマガジンを再装填して撃ち続けた。
テーブルは原型を留めない程に破壊され
テーブルクロスは穴だらけ
背後の壁にも無数の銃痕がついた。
次の弾切れが来た時には、破壊されつくしたテーブルの残骸が残された。
これでは隠れていた人間も生きては居まい。
生き残れる筈が無いのだ。
どう足掻こうと、力の無い者は死ぬしかない。
何者も弱肉強食の真理には抗えない。
(一応死体の確認をした方がいいかな……)
残骸に近付き、ぼろぼろのテーブルクロスを乱暴に取り去る。
中には無残な残骸と化した、丸テーブルと奇妙な機械が有った。
(……………………何これ?)
宗次郎は知らないが機械の方は俗にラジカセとも呼ばれる、音声を記録及び再生出来る装置だ。
しかし宗次郎にはそんな事より、疑問にするべき事が有った。
有るべき筈の物が無いのである。
(…………死体が無い)
背後から衝撃。
完全に不意を打たれて、宗次郎は壁に叩き付けられる。
身体を捻り後ろを見る。
今しがた殺した筈の男の姿が有った。
感情が無い筈の宗次郎の心が、驚愕に染まる。
男はまるで野球の投手の様に、半身で右腕を大きく振りかぶり
溜めた力で以って、右拳を宗次郎の胴へ向け振る。
崩れた体勢に、壁に叩きつけられたダメージが抜けない状態では回避は不可能。
腹を殴られ宗次郎の意識は、電源が切れた如くにブラックアウトした。
◇ ◇ ◇
明らかに動揺が見て取れる宗次郎を挑発して、隙を窺いつつ
ラジカセに声を録音してテーブルの下に投げ込み、大音量で再生して宗次郎の銃撃を誘い
弾切れした所を奇襲する。
新一の立てた作戦は単純と言えば単純。
偶然見付けたパーティー会場という地理的条件や、宗次郎の動揺等の
多くの条件が揃わなければ成立しなかった、ほとんど賭けに近い作戦だった。
それに新一は決して頭が悪い訳では無いが、弁が立つ訳でも無い。
宗次郎を引き付ける為に必死で言葉を紡いで、慣れない挑発等と言う真似をしたが
同じ真似を違う人間相手にやれと言われても、とても無理だろう。
そういう意味でもこの作戦は、博打だった訳である。
「さてと、こいつだけど…………」
宗次郎が人間である以上、新一には殺す事は出来ない。
だからと言って放置すればいずれまた、今度は自分でなく人を襲うかも知れない。
そうなると、とりあえず自分が監視しなければならない様だ。
宗次郎を肩に担いでロビーに戻る。
ゼロのマント――支給された水の入ったペットボトルに巻き付けた為水浸しになった――を回収し、デイパックに戻す。
無事だったソファーに腰を下ろして、宗次郎を隣に寝かせた。
デイパックとイングラムは取り上げる。
宗次郎の寝顔を見ると、まるで童子の様にあどけない。
自分と同年代に見えるこの青年が、何故ああも冷徹に人を殺そうと出来たのか。
そして宗次郎が言っていた、『あの時』や『助けてくれなかった』とはどういう意味なのか。
まるで自分には無関係としか思えない事が、新一にはどうしても気に掛かる。
「…………やっぱり、ほっとけ無いよなあ……。でもミギーにはこいつの事、何て説明しよう…………」
疲れた身体をソファーに沈めながらも、新一の気はしばらく休まりそうに無い。
【一日目深夜/B−2 ホテルのロビー】
【泉新一@寄生獣(漫画)】
[装備]イングラムM10(残弾0)@バトルロワイアル(漫画)
[支給品][支給品]支給品一式×2(水のみ1人分)、未確認(0〜2)、拡声器(現実)、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)
イングラムM10の弾装×1@バトルロワイアル(漫画)
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1.とりあえず休みたい。
2.宗次郎を監視。起きれば事情を聞く。
3.生き残る。
※ミギーは後数時間は完全な睡眠状態にあります。
【瀬田宗次郎@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]なし
[支給品]なし
[状態]気絶、全身打撲
[思考・行動]
1.気絶中に付き思考停止。
2.新一にイライラ。
3.弱肉強食に乗っ取り参加者を殺す。志々雄に関しては保留。
代理投下完了!
投下乙!
支給品を全て使っての戦い、見事でした
投下乙!
ミギーが眠っている間に新一はどう戦うのか、wktkしていたが心理戦は予想できなかった。
宗次郎はこの時期参戦なら改心も有りだが・・・どうなるやら。
投下乙!
どうみてもマーダーになりそうな宗次朗に改心フラグが!
この二人のこれからの展開が楽しみだ!
×乗っ取り
○のっとり (則りでも可)
シャナ、魅音投下します。
「圭ちゃん、詩音、レナ、沙都子。それから――」
最初はただの幻像だと思った。
だって彼は『あの日』から一度も私の目の前に姿を現さなかった。
『あの日』からあの笑顔もあの声もあの温もりも、見て、聞いて、感じることなどもう、できないものだと思っていた。
雛見沢から姿を消した、彼。
消したはずの―――彼。
なのに。それなのに、あの空間の中に、彼は居た。
現実味の無い事態への驚愕により声を掛けることは出来なかったが、あそこに立っていたのは、確かに彼。
嘘だ嘘だと否定の言葉が頭の中を飛び交う。
けれど、名簿に書いてある名の持ち主は、確かに彼。
「悟史くん」
そう、北条悟史。沙都子の兄。
ずっと逢いたかった。
ずっとずぅっと、待っていた。
これからも信じて待ち続けるつもりだった。
その思いが、漸く報われるのだ。
「待ってて悟史くん、絶対に私……!」
――――草木が身体を擦り合わせる音がした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
しえん
「面倒な事になったわね」
強制された殺し合い。
多くの人間たち。
己を束縛する首輪。
一番厄介なのは首輪だ。禁を犯せば爆発してしまう。
この小さな輪っかに爆弾が仕組まれているというのが単なる脅しではないことは既に視認済みである。
「しかも」
アラストールとのコンタクト。
それができなくなっているということは、この身体に備わった能力が何らかの形で制限されている。
やはりこれも首輪による働きか。ならば首輪を調べる必要があるか?
「なるほどね。まぁ一人くらい足手まといが居ても良い」
主催者の言いなりになるのは気が引ける。更に『紅世の徒』以外に刀を振るわねばならないのだ。
だが、首輪さえ解除することができたら、殺し合う理由が無くなる。
万が一無理だった場合も、幸い『紅世の徒』を誘き寄せる餌、坂井悠二は此処には居ない。
ならば主催者の言うように最後の一人を目指し、元の世界に生還しよう。
「だったら――」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
どうしようどうしようどうしよう。
この赤い髪の女は危険だ。脳がそう言っている。
物音を聞き取った魅音は、草陰から女の行動を見守っていた。
こちらに向かってくる気配は無い、だがこの至近距離ではいつ気付かれるかわからない。
それに、此処には他の仲間も連れて来られている。
もしこの女と逢ってしまったら、きっとみんな―――。
考えたくないけれど、実際に一人の少女が目の前で殺されるのを目撃している。
有り得ない、なんてことは無い。おかしくはないのだ、何が起きたって。
どうするべきだ?
ここでこの女を殺す?
駄目だ、きっとこの女には勝てない。
ならばどうすればいい?
逃げてみんなに危険を知らせる?
無理だ、きっとそうしている内に見つかってしまう。
だったら、だったら一体どうすれば――――!?
「だったら――」
赤い髪の女が此方を見た。
視線が、交差する。
「早速だけどこれ、もらってくわよ」
「……………え?」
瞬間、何故か、自分の胴体が遠くに見えた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
赤い髪の女――シャナは、首と胴の繋ぎ目から血を流す亡骸へと近付き、手を伸ばす。
緑髪の少女――園崎魅音の遺体は未だ殺したばかりだからだろうか、体温を保っていた。
彼女には申し訳ないが、今はこうするしかないのだ。
「まぁ、人間のお前でも良い道具になったとは思うわ。感謝くらいしてやっても良いくらい」
血塗れの首輪を摘み上げ、デイバックの中へとしまった。
あとは頭がキレそうな人間を探し、分析させるだけだ。
「じゃああとは役に立ちそうな人間を見つけるだけね。…ついでにアラストールも」
右手に握った元は黄金だった紅の剣に、灼眼を映す。
その中に宿った炎は、消え去る様子は無い。
【一日目深夜/B−2 森】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[装備]:黄金の剣@ゼロの使い魔
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品1〜2個
[状態]:健康
[思考・行動]
3:首輪解除が無理なら殺し合いに乗る
2:首輪の解除ができそうな人間を探す
1:主催者打倒
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に 死亡】
※ 魅音の死体とデイバックは放置されています。
※ 首輪はありません。
投下終了。
ちなみにこの文章からもわかるとおり、シャナはまだ悠二に好意を抱いていません。
投下乙!
魅音ご愁傷様……
これは凶悪マーダーが誕生したかもしれないな
この書き手はコキュートスの役割を知らない所を見ると、それほどシャナに詳しくはないようだね。
投下乙!
シャナは危険人物か・・・。
意外だがマーダー不足よりいい。
>>204 それはアイテムだから支給品扱いでいいんじゃね?
アラストールとコンタクト出来ないのは制限のせいとか、
ついでにアラストールも探すとか書いてあったから、
この書き手はコキュートスのことを知らないんだなぁって思っただけ。
どうせ原作も読まずに書いた単なるやっつけ作業だったんだろ
ろくに把握もしないヤツがキャラの死亡話書くとはな
いい感じに面白い。お疲れ!
蜩厨ざまあww
作者GJ!
シャナマーダーっていいねぇ
>>202 シャナの参戦時期が何巻からか書き忘れてるよ。
どこまで読んでおけばいいかわかんないから書いといておくれ。
一巻だろ、ゆうじを好きになる前なんだから。
申し訳ありません。
シャナは以前図書館でまとめて借りただけなので曖昧です。
ですが矛盾が起きるほど知識が薄いわけではないので大丈夫かな、と。
>>210 一巻で、「平井ゆかり」として悠二のクラスメイトになる辺りです。
どうでもいいけどシャナ置いてある図書館ってあるんだな
うちの近所の図書館には置いてないんだぜ
シャナマーダーはいいな
あと他のロワだと全体的に蜩勢優遇の傾向あったし
ゼロ魔の時も思ったけど特定のジャンルを叩く馬鹿は何なんだろう。
ひぐらしも叩かれてるし。
死んでも別に普通じゃん、バトロワなんだから。
けど死んだり生きたりしたジャンルを叩くのは頭悪そうで失笑しちゃう。
ズガンお疲れ様でした
寄生獣とか地味に嬉しいな
どう考えても死亡話なのに描写が薄すぎだろ。
ほぼズガンじゃねーか。
描写のボーダーを著しく下げた◆D2n.chRBO6はもう二度とこのロワに来るな。
一人騒いでるやつが居るけど
ルイズ死亡SSの作者をたたいてるのと同一だろうね。
ルイズ死亡とはレベルが違う
どっちかといえば田宮良子の方の剣心に近い
文句があるなら分岐しろ
文句は無いだろ。
物語上のルイズの死とみおんの死の役割が違うのは明白だもん。
グダグダ言ってんのは進行を止めたいアンチか国語力の無いゆとり
224 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/05(水) 09:39:20 ID:jvYbjTfQ
国語力wwwwwww
ズガンばっかでやる気なくした
このスレ見てから薔薇乙女読み始めた
トリックのが見たい
書きたいじゃなくて見たい
変身するの好きだったな。
自分も読みたい。
シャナとアイゼルかける人いる?
相棒の一番最初のをTSUTAYAで借りたんだが、それと今やってるシリーズ見れば書けるだろうか?
余裕だと思う
あんまり性格変わらないし
シリーズを重ねるごとに『犯罪に走る友人が増える』と言う金田一現象は起こってるが、まあその辺は問題ないかと
あれよりさらに増えるのか、最初から上司や友人が犯人だったのに
突然出てきた昔の友達は高確率で犯罪に絡んでるから困る
まあ金田一とかみたくミスリードキャラが少ないせいってのもあるんだろうけどね
相棒のは亀山の面白いな
亀山のは一話目にしては少し長いかなーと思ったけど内容が濃密で面白かった。光の戦士とかw
そして……予約きた!期待ー!
これで三投下目になるのか
最多投下に並ぶね
>>237 そうなるなー。
自分も予定が開いたらあのキャラ動かしたい……!
メガテンキャラが気になる
俺も時間が出来たら書きたいなー
マーダー化したシャナを動かしてみたいけど、よく知らないんだよな……
知らないなら書くべきじゃないな
原作との矛盾さえ生じなけりゃいいよ
ただし一人称や二人称には注意
貴方の書けるキャラは?
寄生ローゼンゼロ魔らきすたるろ剣バトルロワイアル
デスノは知っているが書けない
三村信史を投下します。
舗装された陸上競技用のグラウンドを、万を超える人数は収容出来る観客席で囲まれた形の運動競技場。
しかしその巨大施設に今は競技する選手も、観客も、施設を管理する人間さえ存在しない。
居るのは只1人。
襟の立った黒い学生服を着込んだ、10代半ばと思しき人物。
香川県城岩町立城岩中学校バスケットボール部で、天才ガードとまで言われる
第三の男(ザ・サード・マン)の異名も持つ男、三村信史がグラウンドの中央に仰向けの状態のままで眼を覚ました。
広く開かれた夜天の景色は非現実的に感じるほど雄大で、遠慮無く吹き抜ける風も心地良い。
しばらくその心地良さに浸り動かない。
どうにも現実感が沸かず、頭が上手く働かないのだ。
それは風景の非現実感に助長されてはいるが、そもそもの原因は別に有る。
(……オーケイ叔父さん、分かってる。今はクールになるべき時だ)
今は亡き三村にバスケやコンピューターの扱いやあらゆる事を教えた尊敬する叔父に話しかけ、思考を取り戻し始める。
三村は現状の把握が覚束無い為、そこに到るまでの経緯を脳内で辿り始めた。
それはV.V.が殺し合いの開始を宣告される以前。
今とは別の殺し合いに参加していた時の事。
大東亜共和国戦闘実験第六十八番プログラム。
参加者が最後の1名になるまで終わらない殺し合い。
三村の所属する三年B組は、それに参加させられていた。
その中で三村は殺し合いに勝ち残るのではなく、それを管理運営する人間を打倒して
殺し合いそのものを壊し、脱出する事を目的に動く。
小学校時代からの親友である瀬戸豊の協力もあって、それは成功寸前まで漕ぎ着けていた。
しかし桐山和雄の急襲を受け、瀬戸豊は死亡し
そして三村自身も、桐山によるイングラムM10の銃撃を全身に受け――――死んだ筈だった。
(そうさ、俺はあの時確かに死んだ。あれでまだ生きていられたら、この世は死に損ないだらけになっちまう。
……………………ならここに居る俺は誰だ?)
これは人が死ぬ時に見ると言う、白昼夢か?
それともここは地獄だとでも言うのか?
(死んでからも『殺し合い』とは、神様の計らいだとしたら洒落がきつ過ぎやしませんかね…………待てよ)
回想を進める。
銃撃を受け意識が途切れた次の記憶は、例のV.V.に拠る殺し合いの説明だ。
そして次に気付いた時には、1人この競技場に居る。
傍らにはデイパックも置いてあった。
これはつまり――既に殺し合いが、始まっていると言う事。
それに気付いてからの、三村の動きは早かった。
胴体のばねを使って、素早く起き上がる。
そして起き上がり様にデイパックを掴み取り、観客席下の屋内廊下に駆け込む。
一先ず周囲からの射線が通らない屋内に逃げ込めた。
ここが夢か幻か冥土かはともかく、三村におとなしく殺されてやるつもりは無い。
廊下に座り込みデイパックの中の荷物を改めながら、思考を巡らせる。
殺し合いに乗るか否か以前に、自分の身に何が起こっているのか?
まずこれが夢想や仮想現実等の、とにかく実際に起こっている現象ではないと言う可能性が思い浮かぶ。
そして直ぐに思考の埒外へ追いやる。
可能性を否定するのではなく、その検討を放棄したのだ。
そんな可能性に関しては、究極的には確証を以って肯定も否定も出来ないし
そもそも現実であろうと無かろうと、自分の行動には何の変化も要さ無いからだ。
『どうしようもないことを気にするな。できることをやるんだ、信史』
それが叔父の教えでも有る。
では現実だとして、何故死んだ筈の自分がこうして生きて動いているのか?
何故全身に9mパラベラム弾を受けたというのに、傷1つ残ってはいないのか?
医学的な手術で蘇生? 記憶や人格や身体的な特徴を完璧にコピーした? それとも全く別の手段で蘇ったのか?
どれも――少なくとも三村が知る限り――大東亜共和国、いや世界の何処にも存在しない技術である。
ならば考え得るのは、人間を蘇生するという三村の常識を遥かに逸脱した超常的な手段を
V.V.――あるいは彼は傀儡かも知れないがそのバックに居る存在――が持っていて、それで三村を蘇らせた。
状況から推しても、蘇生は主催者の手によるものと考えるべきだ。
三村の背筋に冷たい官職が走る。
もしそうなら主催者は魔法か、それに比肩し得る科学力を持っている事になる。
全く得体の知れない、超常的な存在。
そんな奴に、爆弾入りの首輪を嵌められ自分の命は握られているのだ。
この首輪にもどんな技術が、あるいは三村の知る様な科学技術以外の方法で造られているかも知れない。
三村はかつて他にどうしょうもない状況にまで追い詰められていたとは言え、大東亜共和国への反抗を決意した。
それは所詮相手も同じ人間であり、自分の知る技術水準を持っていると知っていたから出来た決意だ。
例え強大な政府が相手でも、しかし――どんなに少なくとも――勝算は皆無ではない。
しかし今度の場合は話が違う。
そもそも反抗そのものが可能かどうかも分からない。
(……………………そう言えば最初に集められた会場で、V.V.を知っている奴が居たな。ルルーシュとか言った……)
ルルーシュと名乗っていた黒髪に痩身の少年、そして彼をルルーシュと呼び掛けた緑色の髪の女。
あの場での態度や言動から見て、その2人はV.V.の情報を持っているのは間違い無い。
(あの2人も首輪をしていた。つまりこのクソゲームの参加者って訳だ。
なら、上手くすれば接触して情報を聞き出す事も出来るな)
主催者が全くの未知ならば、対抗する手段は無いかもしれない。
しかし主催者が如何なる存在で、如何なる技術を持ち、如何程の戦力を有しているか
それらの情報さえ有れば、対抗手段を得る可能性も出て来る。
何れにせよ主催者に関する概要を把握するまで、最終的な行動目的の決定は保留である。
三村自身は爆弾入りの首輪で縛られるのも、人に言われるがままに殺し合いを演じるのも素直に受け入れられる様な人間ではない。
だからこそ前回のプログラムにも反抗したのだ。
だからと言って闇雲に勝算の無い戦いを始める程、無謀にもなれなかった。
何れにしろ判断材料が、余りにも少な過ぎるのが現状だ。
(……まあしばらくは慎重に、かつ迅速に行ってみますか)
少しずつでも冷静に着実に思考を、準備を進めていく。
困難な物事を成し遂げるには、三村はそれが1番の近道であると知っている。
ともすれば人からは、飄々としてつかみ所が無いと思われる三村だが
彼の真骨頂はその計画性と、堅実さにこそ有った。
荷物を粗方確認し終え、最後になった名簿に眼を通す。
名簿に有る知り合いの名前は稲田瑞穂、織田敏憲、桐山和雄、千草貴子の4人。
全て三村のクラスメイトである。
主催者はどれだけ途方も無い存在なんだと、改めて戦慄する。
全員が最後の1人以外は抜ける事の出来ない、プログラムに参加していた筈だ。
その参加者が4人も、言わば引き抜かれている。
三村がここに居る時点で分かっていた事だが、改めて今回の主催者が
強大な大東亜共和国を出し抜くほどの、『力』の持ち主だと痛感した。
この内、千草貴子は前のプログラムで死亡者として名前が放送されていたが
死人である筈の自分が生きているのだ。彼女も生きて参加している考えるべきだろう。
――――そして桐山和雄。
かつて瀬戸豊と三村を殺した男。
思い出しただけで心中に黒い物がよぎるが、直ぐにクールになれと自分を戒める。
(……ま、クールを信条とする俺としては、敵討ちだなんて非生産的な行為をするつもりは無いけど
とても桐山を信用して、仲良くやろうなんて気にはなれないね…………)
今回のプログラムにも乗るかまでは定かでないが、警戒してもし過ぎるという事は無い人物だ。
(そうは言っても他のクラスメイトも、手放しに信用出来そうな奴ってのは居ないな……
稲田瑞穂は電波入ってると言うか何と言うか……正直、余り話が合いそうに無い。
織田敏憲はおとなしい奴だが、どうも裏が有りそうな感じだ。余り親しくないから、確かな事は言えないが。
千草貴子は個人的に好みなんで、これを機会に仲良くなるってのも悪い話じゃ無いが
……しかし俺、うちのクラスの女の子にはウケがよくないらしいからな…………)
結局クラスメイトは、ほとんど当てに出来ないと判断した。
せめて瀬戸豊か、七原秋也か、杉村弘樹が居ればと思う。
(そう言えばシューヤや杉村は、今どうしてるんだ? まだプログラムをやってるのか?
…………って、人の心配してる場合じゃないな。どうかしてるぜ)
そして他にもう1つ、気になる名前が有る。
(『ルルーシュ・ランペルージ』か。最初の会場で名乗った名前は、確か『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』だったが無関係って事は無さそうだな。
恐らくは同一人物。……ま、実際の所は会って確かめてみないと分からないが、今の所V.V.に繋がる数少ない手掛かり。会ってみる価値は有るかな)
最初の会場に居た『ルルーシュ』か緑色の髪の女に接触し、V.V.の情報を聞き出す。
当座の物だが、行動指針は定まった。
荷物を纏めて出発する。
とりあえずは三村から積極的に、他の参加者に接触していき情報を集めていく事になる。
それで首尾良く脱出の糸口を掴めたら良い。
しかし、と三村は考える。
ここからは些か悲観的に過ぎる発想かも知れない、だがとても無視出来ない考え。
もしこの殺し合いが、絶対に脱出不可能だと結論が出たら?
もし首輪が、絶対に外れない物だと結論が出たら?
もし全く勝算の無い主催者ならば、生き残る為には否が応でも殺し合いに乗るしかなくなる。
『何か願いも叶えてあげるよ』
不意にV.V.の声が、三村の中で再生された。
自分なら何を願う? と、今度は三村自身の声。
主催者は三村を生き返らせた。つまり死者の蘇生も叶えられる。
ならばあの今の三村信史を育て上げたと言っても良い、敬愛する叔父さんを生き返らせる事が可能なのではないか?
あるいは目前で無念の死を遂げた親友の、瀬戸豊を生き返らせる事も可能なのではないか?
(豊、お前は俺のミスの所為で死んじまったんだったな……………………)
瀬戸豊を死なせてしまった。
幾ら悔やんでも悔やみきれない、この先三村がどれ程生き長らえようと忘れられ無いに違いない。
その悔いを無くす力すら、主催者は持っている。
馬鹿な考えだと、首を振る。
そもそも主催者の情報を得なくては、最終的な身の振り方は決められない。
それに主催者が未知の能力を持っているのならば、参加者にも未知の能力を持つ者が居ておかしく無い。
そんな連中から身を守りつつ、主催者の眼を盗んで情報集め。
恐らく前回のプログラム脱出計画以上の綱渡りになるだろう。
とてもそんな先の事に、思い巡らしている余裕は無いのだ。
生き残る。
唯それだけの事がプログラムにおいてどれ程難しいかを、三村は正に身を持って知っている。
そして今回のプログラムにおいて、恐らくそれは――――前回以上の至難となるであろう。
第三の男(ザ・サード・マン)と呼ばれた男が、再び殺戮ゲームに挑む。
【一日目深夜/I-8 競技場】
【三村信史@バトルロワイアル(小説)】
[装備]: 無し
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品1〜3個、
[状態]:健康
[思考・行動]
1.『ルルーシュ』か緑色の髪の女に接触し、V.V.の情報を聞き出す。
2.今回のプログラムに関する情報を集め、最終的に殺し合いに乗るか乗らないかを決める。
投下完了しました。
全ルートに寄せます。
何か問題点が有ったら、指摘お願いします。
投下GJ!
おぉー三村の参戦時期は死亡後ですか!
自分が何故生きているのかに対する疑問から、主催者達の規模の大きさを考察する三村はとても彼らしいかと!
V.Vのご褒美発言に若干興味を持っているのが今後に期待をさせますね。
投下乙!
三村、冷静でカッケェw
けどまだどちらにも転ぶから楽観はできないな
投下乙!
ちょうど三村が死亡したところを読んだ後だったから感情移入出来た
前回みたいに脱出を目指すのか、それとも今度はマーダーと化すのか凄い気になる
また誰もいなくなっちゃった……
呼んだ?
いまさらだけど、〇ロワと被っとるメンツ結構いるよね。目新しいのは実写勢くらい。そりゃ過疎っちゃうな……
多ジャンルロワ最終話予約します
最新話!?マジで!?
勝手に最終とか死ね
あ、俺誤字してる
最終話、な
263 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 02:15:33 ID:Nuco69Sq
理解できん。
そんなことして楽しいですか?
実際問題として、ある程度面白い最終話が投下されて、
その後にSSが投下されなかったor当たり障りのない短SSしか来なかったなら、
それは事実上の最終話足り得るなあ……
最終話来ても普通に続けていいのが分岐制度
まあ現状だと、未完のまま放置よりも、強引にでも締めるのは一つの手段だと思うけど。
それに分岐制を適用すればその後も続けられるし。
避難所に書き込みましたが、念のためこちらでも一応。
雛苺と桜で予約、させていただきます。
うわ、すみません。誤爆しました。
270 :
◆cFakIFhI9I :2008/11/23(日) 15:16:18 ID:6G980a3i
テスト
久々の予約ktkr!
楽しみだ
wikiの南光太郎の欄がRXのデータになっているんだけど。
予約破棄します
274 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 19:47:06 ID:BDpNEoPd
破棄の理由ぐらい書いてくれないと、荒らしと思われても仕方無いですよ?
同じ日なのにIDが違うって事は、鳥ばれしたんじゃないか?
向こうで失敗してた酉のテスト
これはどうみても酉バレしてるから、悟史を予約した書き手さんは早めにしたらばの予約スレに酉変えて書き込み直したほうがいいと思う
278 :
◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 09:47:07 ID:+8+sPvpS
こんな感じでいいですか?
279 :
◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 09:54:58 ID:+8+sPvpS
なんかIDが違くなっているような……
281 :
◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:43:34 ID:+8+sPvpS
やる前から、色々問題が起こして申し訳ありませんでした。
そんな中ですが、北条悟史を投下します。
282 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:46:10 ID:+8+sPvpS
「沙都子! どこに行ったんだ……沙都子っ!!」
北条悟史はまるで錯乱したように自分の妹――北条沙都子を呼んだ。
この殺し合いの場において、大声で叫ぶといった行為をしたらどんな参加者でも……それこそ、殺し合いに乗った参加者を呼び寄せてしまうことになる。
そんなことは悟史にも分かっていた。
それでも叫ばなければならなかった。
沙都子を見つけるために。
ようやく、ようやくだ。
沙都子をいじめていた叔母さんをこの手で殺し、自由になったんだ。
これで、自分と沙都子を傷つける人はいない。
警察やご近所のことで、少しゴタゴタするかもしれないが――それが終われば自分達は自由なんだ。
そう、思っていたのに……
叔母さんを殺した日の次の日に、おもちゃ屋のクマのむいぐるみを見に行った。
沙都子へのプレゼントにしようと思ったけど、この時バイトの給料がまだなかった。
給料を受け取る前に誰かに買われないか心配になり、そのおもちゃ屋の前まで来た。
そして、どうしようかと考えている時だった。
この殺し合いの場に呼ばれたのは……。
はじめ、悟史は呆然としているだけだった。
なんでこんな所に呼ばれているのだろう。
なんで目の前で人が殺されているのだろう。
なんで……遠くに沙都子の後ろ姿が見えるのだろう、と。
それからしばらく経ち、ようやく理不尽な殺し合いの場に自分と、そして沙都子が呼ばれているのだと気づいた時には、もうすでに目の前に沙都子の姿はなかった。
◇ ◇ ◇
283 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:47:14 ID:+8+sPvpS
(くそ! ここにはいないのか……それとも、もう殺されて――)
そこまで考えて、しかし、その考えを捨てた。
(何馬鹿なことを考えてるんだ。沙都子は生きている。絶対にっ!!)
こんな考えが出てしまった自分を恥つつ、悟史は考えを改めた。
きっと、こんな考えが出てくるのは自分が冷静でないからだと思った。
(……落ち着け、北条悟史、クールになるんだ。沙都子ならきっと大丈夫だ。何も全員殺し合いに乗っている訳ではないはずだ。乗っていない人もきっと――)
と、そこまで思ったところでふと、他に自分の知っている人がいないのかということを確認していないことに気づいた。
考えてみたら、自分はこの場に来てから沙都子を探してばかりで全然デイバックを見ていなかった。
「……確認してみよう」
気持ちを落ち着けるためと、もしかしたら知人がいて沙都子を助けてくれるかもしれないという思いと、ひょっとしたら沙都子を探すのに役に立つものがあるかもしれないという思いから、悟史はその場でデイバックの中を漁った。
デイバックからは食料や水、筆記用具のような日用品ばかりが出てきた。
だが、その中で一際目立ったもの……いや、得物を見つけた。
「これは……刀、だよね」
そう言って取り出したものは、まさしく刀だった。
部類は大太刀だろうか。
とにかく、一目で凶器だと分かるものだった。
「……身を守るために、持っていた方がいいかもね」
今のところ殺し合いに乗るつもりはないとは言え、さすがに丸腰という訳にもいかない。
持っていて損はない。
284 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:48:21 ID:+8+sPvpS
「他には何か……」
そう言ってデイバックの中を探していると、目当ての名簿を見つけた。
早速、確認してみることにした。
◇ ◇ ◇
「レナに魅音まで……」
それが名簿を見終わった時の悟史の感想だった。
名簿を見たところ、自分や沙都子の他に、同級生の竜宮レナ、園崎魅音までがこの殺し合いの場にいることが分かった。
だが、それを確認していて、少し気になることがあった。
それは名簿に書かれている自分と沙都子の間にある名前のことだ。
「園崎……しおん、かな?」
たぶん、魅音の家族の誰か(おそらく母親?)なのだろう。よくは分からない。
ただ、その詩音という人物もこの場に呼ばれているのかということだけは読み取れた。
「……この人も一応探そう、かな」
何故かそうしなければいけないような気がした。
なんでだろう。
会ったこともない人なのに……。
「……考えるのは後にしよう。まず、これの中身を確認しなきゃ」
そう思って、悟史は再びデイバックを漁り始めたのだった。
◇ ◇ ◇
285 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:49:06 ID:+8+sPvpS
「これは……ハズレかな」
そう言って取り出したのは、お笑いとかで使われるハリセンだった。
正直に言って、こんなものを殺し合いの場に出して一体何がしたいのかが分からなかった。
捨てようとも思ったが、ひょっとしたら(かなり低確率だが)何かに使えるかもしれなかったので、そのままデイバックに戻すことにした。
「後は、この拡声器ぐらいかな……」
と、先に取り出されていた拡声器を手に取った。
実のところ、悟史はこの支給品を使うことを躊躇っていた。
たしかにこれを使えば、より早く他の参加者との連絡が取れるはずだ。
もしかしたら、沙都子や他の知人たちに会えるかもしれない。
しかし、仮に拡声器を使った場合、殺し合いに乗った参加者も引き寄せる可能性がある。
そうなれば、危ないのは自分だ。
それだけじゃない。
もしも、自分の知人――特に沙都子が自分の声を聞いてここに来たとしよう。
そして、その後に、凶悪な殺人鬼が目の前に現れたとき……
自分は沙都子を守れるのだろうか……。
「でも……」
自分は沙都子を、自分の妹を守らなきゃいけない。
それが例えどんな化け物が目の前に現れてたとしても……
「僕は、沙都子を、妹を守らなきゃいけないんだ」
それが、兄の……にーにーの義務なのだ。
他者との接触がなんだ、狂った参加者の相手がなんだ。
北条悟史は兄として、妹の北条沙都子を守らなきゃいけないことに変わりはない。
そして悟史は覚悟を決めて、拡声器のスイッチを押した。
286 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:50:15 ID:+8+sPvpS
『――この声が聞こえますか。僕の声が聞こえますか。
僕は……北条、悟史と言います。この声が聞こえている人は聞いてください。
僕は今、妹を探しています。北条沙都子と言います。
沙都子は……妹はこんなところに呼ばれて、酷く怯えていると思うんです。
この声が聞こえた人は、どうか妹を、沙都子を探してください!!
すごく自分勝手なことを言っているのかもしれない……
でも、僕にとっては、大事な、本当に大事な妹なんです……っ!!
どうか、妹を探すのを、手伝ってくださいっ!!
それから、これを聞いているのがレナ、魅音、詩音……さんだったら、
あるいは、沙都子自身が聞いているなら、僕のところに来てくれ!!
僕は今、地図でいうとC-7にいるんだ。
頼む!!必ず来てくれっ!!
……僕は絶対――』
放送の中でこれだけは言っておきたかった。
なので、今、ここで、言う。
『僕は絶対――戻るんだ、あの笑顔がある世界に!!』
僕はそう、宣言した。
287 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:51:02 ID:+8+sPvpS
【一日目黎明/C−7 森】
【北条悟史@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]贄殿遮那@灼眼のシャナ 拡声器@現実
[所持品]支給品一式 ハリセン@現実
[状態]健康、やや混乱、雛見沢症候群L3
[思考・行動]
1、どんなことがあっても沙都子を守る
2、この場で放送を聞いた人を待つ
3、2で来る人が沙都子なら、その場で保護する
4、詩音って誰?
[備考]
※参戦時期は目明し編、叔母殺害後の翌日、おもちゃ屋のぬいぐるみを見ている時からです。
※園崎詩音のことを知りません。
※悟史の声はC−7を中心に辺りに響きました。
288 :
悲劇、決意、そして覚悟 ◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 17:53:29 ID:+8+sPvpS
投下完了しました。
全ルートに寄せます。
問題点などがありましたら、指摘してください。
投下乙!
うわぁ拡声器つかっちゃったよ悟史
えっと近くには誰がいたっけ
投下乙です
近くにいるのはB6にルル、つかさ、浅倉
C8に蒼星石、あすか、B8に織田
D7に月とルパン、D8にみゆきとスザク……めっちゃ多いじゃないかw
下手したらルルとスザクが再会したりと修羅場だな
>>288 投下乙!
ただ拡声器を使用したなら、効果範囲を明確にして置いた方がいいかと思います。
例えば他の参加者が、拡声器の声に反応する話が投下された後
もっと近い参加者が無反応な話が投下されると言った問題も考えられるので
「C−7を中心に周囲8エリアまで響きました」とでも限定すれば、そういう問題も防げるのではないでしょうか。
292 :
◆SVPuExFbKQ :2008/11/24(月) 19:17:13 ID:+8+sPvpS
指摘ありがとうございます。
では、このように変更します。
※悟史の声はC-7を中心に辺りに響きました。
↓
※悟史の声はC-7を中心に周囲8エリアまで響きました。
投下乙!
近くにたいしたマーダーがいないのが不幸中って感じだなぁ
遅ればせながら投下乙!
ロワ初参戦の悟志、やってくれますね〜。
この思い切ったアプローチから生まれる今後の展開にワクワクせざるを得ない!!
桐山を書いてみたいんだけど、小説版の知識だけで書けるかな?
漫画版は身体能力が向上してるけど性格は大差ないからいけると思うぜ
297 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 10:40:12 ID:Ta3JDN2U
相棒、亀山さん今期で最後か……ここに参加出来たのは、なんらかの運命的な力が、働いたのかも
待て、退場が決まってるだけで死ぬとは決まってないぞ!
今日の予告で死亡フラグ立ったけど……
勢い 5.42
相棒に殺人ウイルスネタが…
勢い 4.89
勢い 4.61
亀山さん追悼記念
304 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 00:22:32 ID:iCS3OKzR
勢い 4.31
マルチの方は持ち直したと言うのに……
一体何が違うんだろうか…
面子?
向こうは厄介なものを排除しようと分岐性を導入し対処した
こっちは事前に入れたらそのシステム自体が厄介扱いされた
wikiも分岐部分が既存のパロロワになれた人間には見づらいんだと思うよ(追跡表とか)
パロロワ初心者にも優しいとは言いがたいし
とはいえ今更変えられるもんじゃないんだから、再起したいならそのデメリットを打ち消すぐらいの長所を作らないと
久々の予約キタ━━(゚∀゚)━━!!!!
とりあえず作品にwktkするところから始めようぜ
よくぞ
よし!!これで何とか持ちこたえる!!〇ロワの勢いには叶わないけど、こちらは気長に続けて行きたいね。
贅沢いうならタイムリーな相棒の作品もみたいな……
共通ルート作品ありじゃないと分岐制の意味が薄い気がする
分岐制は厨をそのルートに隔離する為のものでもあるんだし
共通ルート作品とはいえ、繋げられれば厨も満たされるんだよ
共通ルートを作った→だが放置→こんなロワ潰してやるの厨逆恨みコンボを防げる
多ロワは○がつぶれる前提でのロワだから
○が立ち直った以上もう無理なんだよ
作品もキャラもかぶりすぎだろ
まあまあせっかく書き手さん来てくれたんだからネガティブ発言やめようや
多ジャンルバトルロワイアル死亡確認
また ◆KKid85tGwYか……orz
ネガキャン乙
最終投下から一か月以上が経過
319 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 10:31:35 ID:B1lr/aBv
新予約来ましたよ−
2件予約だと!?
・・・最高だ。
二人も書き手さんが戻って来てくれるとは…
>>318 なにこれ?
●ロワの奴が荒らしてたんだ
あーあまともな●ロワ住人もかわいそうだねレベルが低い人間が同じスレ住人だなんて
多ジャンルバトルロワイアル死亡確認ww
志々雄とタバサ今日だよね?時間過ぎてるような…
志々雄真実、タバサ代理投下します
タバサは驚愕に見開かれた眼で、月を見上げていた。
当然、タバサにとって月が珍しい訳ではない。
夜の空に浮かんでいるのが、当たり前の物だ。
それが白い月でなければ。
そこがタバサの就学している魔法学院が有るトリステイン王国であろうが、タバサの故郷ガリア王国であろうが
始祖ブリミルの時代から、月は赤と青の2つと決まっている。
重なって1つに見えたりもするが、月が色を変える話など聞いた事も無い。
しかし現実に夜空に浮かぶ月は、白く輝いている。
幻覚か?
いや、例え魔法を使ってもタバサの眼を欺く様な幻影を、夜空に移す事など不可能である。
そもそも誰かが意図的にそんな事をして、一体何のメリットが有る?
タバサの視界に広がる、異様な景色。
それは何も月だけに留まらない。
自分の立つ足場を、タバサは叩き付ける様に踏みしめた。
硬い感触が返ってくる。
タバサが今立っているのは、紺色に塗り固められた道路と思しき直線に開かれた場所の上。
しかしこんなに硬く塗り固められ、整備された道等見た事も無い。
使われている素材も、皆目見当が付かない物だ。
道路上に白い線が走り、どうやら直線で仕切ったり文字を描いているらしいが
どれも意味は良く分からない。
道路の両側から挟む様に、家屋らしき物が建ち並んでいる。
どれもがハルケギニアの如何なる文化とも違う、建築様式の建物。
自分を取り囲む世界が、前触れも無く様変わりしてしまった。
いや、自分が先程まで居たのとは、全く違う世界に放り出されてしまった。
そうとしか考えられない状況だ。
混乱。
そして目前の風景が、まるで絵画か夢想の様に思える非現実感がタバサを包む。
タバサはガリア王国北花壇警護騎士団の団員。
ガリアの闇に潜み、汚い仕事を一手に引き受けてきた。
当然、相応の修羅場を潜って来ているので、少々の事では動揺もしない。
しかし、如何に沈着冷静なタバサと言えど
世界が根底から相貌を変え、見知った物が何も無くなってしまえば
自分が周囲の状況を理解する為の、基盤となる物が失われてしまえば
動揺するなと言う方が無理が有る。
タバサはいまだ、冷静に現状を把握する事が出来ていたた。
それ故に現状が如何に異常かが理解しえて
それ故に混乱するのだ。
しかしそれでもタバサは、幾度もの死線を潜ってきた戦士である。
戦場で何時までも棒立ちのままに居る程、迂闊ではない。
民家と思しき家屋の塀の中に入り、庭……と呼ぶには狭すぎる空間に身を潜める。
家屋の中に入るか迷ったが、勝手の分からない建物内に入るには、まだ警戒が勝ってしまう。
とりあえず目の前の情報から処理していく。
それが闇雲に動いて回るより、賢明な判断だ。
タバサは自分が何時の間にか手に持っていた、荷物が詰まった鞄を眺めてみた。
主催者が支給した物と推測されるが、何処にも口が無い。
僅かに光沢を持った、やはり見た事も無い質感。
撫でると滑らかさと規則的な細かいざらつきの同居が、心地良く伝わって来る。
どうやって開けたものかと思案しながら観察していると、小さな金属片を鞄の端に捉えた。
それを動かすと、横に大きく滑って行き
滑った後には、鞄が口を開いていた。
鞄の中を探り、荷物を手当たり次第に取り出して行く。
中身を水で満たされた透明な容器。やはり容器の材質は不明。
筆記用具も初めて見る物だ。試し書きをすれば、滲みも無く紙に線が引ける。
紙も凹凸や汚れが全く見当たらない。どんな技術を使ったのだろう?
パン、林檎、時計、ランタン、コンパス、地図は問題無く理解出来る。
しかし更に奥から出て来た物の前に、理解が止まる。
1つは片側だけ少し曲がった、金属製の細長い棒。
伸びている方には全体に薬品が付着しているのが見て取れ、不快な臭いがする。
1つは2枚の黒い板が合わさって蝶番で繋がり、左右に展開する様になっている機械。
良く見ると、その2つには紙片が添えられていた。何か書かれている。
どうやら各々の説明書きらしい。
棒の方は、そのまま鉄の棒。
付着しているのは、有機塩素化合物と言う生物に毒となる化学物質だそうだ。単純に毒の仕込んだ武器と言う事か。
折り畳まれた機械は、『ノートパソコン』。
説明書によると、機械的に情報を整理保存する為の物の様だ。
これに至ってはどういう原理で動かす機械かすら、見当も付かない。マジックアイテムでも無いみたいだ。
全く勝手の分からない物なので、下手に触ったら内部の情報を破損や消去しかねない。
何処かで使い方の分かる者に接触出来るかも知れない、とりあえずこのままにして持って行くことにする。
もう1枚、説明書と思しき紙が有った。
林檎の説明が書き連ねて有る。
どうやらさっきの林檎は、鉄の棒や『ノートパソコン』と一緒に武器として支給されたらしい。
武器と言っても、別に毒が仕込まれている訳では無い。後で食べよう。
そしてタバサは、幾ら鞄を探しても目当ての杖が無い事を知った。
杖が無くてはコモンマジック以外魔法を使えない為、メイジの戦力はほとんど無くなってしまう。
タバサには体術の心得もそれなりに有るが、やはりそれだけでは心許無い。
そう言えばV.V.が、『皆の武器は回収してバラバラに配った』と言っていた。
タバサの杖も、他の参加者に配られているかも知れない。
可能なら、それも探してみる事にする。
最後に残ったのは、説明書より大きな紙に書かれた名簿。
知った名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと平賀才人と、そしてタバサ。
タバサとは勿論自分の名前。…………そして偽りの名前。
タバサの方の名前が使われているが、主催者側には素性は知られていると考えた方がいい。
ルイズと平賀才人は、級友とその使い魔。
共に『土くれのフーケ』を捕らえに行ったりもしたが、成り行きでそうなっただけで、特に親しい訳でも無い。
つまり今の段階では、この2人を敵とも味方とも判別出来ないと言う事だ。
改めて名簿を見直しても、他に知った名前は無い。
……………………そこまでに至って、タバサはようやくある異常事態に気付いた。
説明書や名簿に書かれている文字は、タバサの知るハルケギニアの文字ではない。
その説明書や名簿に書かれている、『見た事も無い文字』がタバサに読めるのだ。
全く見覚えの無い文字列なのに、当然の様に意味が理解出来ていた。
一体自分の身に、何が起こっていると言うのか?
混乱なんて生易しいものじゃない。
全身の血の気が一斉に引いていく。
取り囲む世界が幾ら変わっても、それはあくまで自分と切り離された外の事だったが
今度は自分が得体の知れない存在になっていく恐怖。
意識がいよいよ現実から、決定的に遠ざかる……。
駄目だ!!
タバサは遠ざかる意識を、必死に繋ぎ止める。
まるで状況が掴めなくとも、今が命に関わる危機にあるのは間違い無い。
そんな時に現実逃避等していては、ただ死を待つだけだ。
ここは既に戦場。敵より1手2手遅れをとる事が、命運を左右する。
可能な限り迅速に行動しなければならない。
タバサはそう決め、鉄の棒以外の荷物を整理しながら鞄に直した。
当座の目的は、情報収集と杖の確保。その為の他者との接触。
その後の事には全く考えが及ばないが、座していても死に近付くだけだ。
今はとにかく、多少闇雲にでも動く。
そこから現状打破の、突破口を見つけて行けば良い。
武器となる鉄の棒を持ち、庭から歩き出す。
(………………!!)
出会い頭、と言うには少し距離が離れすぎた場所に居る男と眼が合う。
全身に包帯を巻きその上から着崩れた着物と言う、異様な姿の男。
だが、それ以上に男の放つ強烈な気に当てられた。
長く修羅場を潜ってきたタバサだが、これ程剣呑な気配を放つ者に会うのは初めてだ。
「ほう、青い髪に青い瞳たぁ……珍しいもんが見れた。ま、ここじゃ見渡す限り珍しいもんだらけだがな」
何の気負いも感じられない調子で男が話し掛けながら、悠々とした歩みで近付いて来る。
殺し合いの最中だと言うのに、この気安い態度。
それと裏腹に、全く隙が無い。
鉄の棒を握り締め、男に対し構えた。
そんなタバサを見て、男は冷笑する。
「随分と、警戒してくれたもんだな」
「用件は?」
警戒の色を隠さず、無愛想にタバサが問う。タバサは普段から無愛想では有るが。
男はますます冷たい笑みを濃くする。
「用件? 言う事まで頓狂だな、お前。今、俺達がやっているのはなんだ? 殺し合いだろ?」
刺す様な男の気がますます強まる。
タバサの本能が、最大級の警戒警報を鳴らす。
目の前の男は危険だ。…………いや、確実に殺し合いに乗っていると。
「だったらよ…………する事は1つだろうが!!!」
男が駆け出し、タバサとの間合いを詰める。
構えているにも関わらず、反応が遅れる速さ。
咄嗟に仰け反った鼻先を、男の拳が掠める。
無造作に振るわれた様に見える拳が、恐ろしく鋭い。
一撃でもまともに貰えば死か、少なくとも意識は奪われるに違いない。
男の脇腹に向け、鉄の棒を横薙ぎに振るう。
瞬時に男は間を広げ、それを避わした。
「自分の小柄な体格と軽量を利して、早さと手数で攻めるか」
攻撃を避けながら、男は値踏みでもする口調でタバサの戦法を分析する。
相変わらず笑みを浮かべたまま、余裕の態度を崩さない。
そもそも最初の一撃以来全く手を出して来ないと言うのが、タバサには解せない。
もっとも、それでこちらも攻撃の手を休めて安寧と出来る訳でも無いので
先程から幾度も鉄の棒を振るい続けるが、男には掠りもしないで居る。
「狙いは全て急所。若いにしては、実戦の技を身に付けていやがる。
ま、そこそこ腕前があるのは認めるがよ……相手が悪かったな」
戦った時間は僅かだが、それでも男が体術では格上だと理解出来た。
杖が無くては、男には絶対に勝てない。この場は逃げるしか無い。
刹那、男との間合いが開いた隙に背後の家屋に駆け込む。
玄関と思しきドアを、壊しかねない勢いで押し開ける。
幸い、鍵等は掛かっていなかった。今はアンロックを使う手間も惜しい。
そして、そのままの憩いで家の中に駆け上がって行く。
勝手が分からない家だが、窓にガラスが使われているのは見て取れた。
ならば一旦家の中に入って、男から死角となる窓から逃げる事が出来る筈だ。
それが出来なくとも、男が自分を追って家に入って来ればそれの入れ違いに玄関から出る作戦も取れる。
そう計算して、タバサは家に上がって行ったのだ。
家の中を闇雲に走り回る内に入った部屋で、全体がガラスで出来た外壁が見えた。
その向こうに塀が有るが、乗り越えられる高さだ。
(…………竜!?)
塀の上から見切れる高さの更に遠方、竜と思しき怪物が宙を踊っていた。
細長い体躯は竜を連想させるが、あんな黒く金属の如き質感を持った竜をタバサは知らない。
竜は大きく身体をうねり、やがてタバサの居る家に真っ直ぐ向かって来た。
そして竜の口から、炎の塊が発せられる。
刹那、タバサは廊下に飛び出し両手で頭を抱え倒れ伏す。
直後に背後の部屋が爆発。
両手で耳を塞いでも爆音が鼓膜を揺らし、爆風が叩き付けられ、家毎揺らされる。
火竜のブレスとにしても、これ程凄まじい威力の物は始めて見た。
タバサは自身のダメージに意識を向ける。
炎は直接被っていない。被害は爆風に拠る物のみ。それも軽微だ。
動きに支障は無いと判断し、その場から逃げ去ろうと身体を起こす。
そのタバサに影が覆いかぶさる。
見上げると、黒い甲冑で全身を被った影の主が見えた。
黒い甲冑からは、包帯の男の声がした。
「今の『すとらいくべんと』は、中々の威力だった。それじゃぁ今度は、どれ位膂力が上がるか試させて貰うぜ」
男はタバサの首を片手で無造作に掴み、軽々と持ち上げる。
そのまま無造作にタバサを放り投げた。
竜のブレスで焼き尽くされた部屋と塀を通り抜け、件の硬く舗装された道路上を転がった。
全身が痛むが、それ以上に驚きが勝った。
如何にタバサの身体が軽いとは言え、腕力だけで人形の様に軽々と投げ飛ばせる物では無い。
それが出来るとしたら人の大きさで、『土くれのフーケ』のゴーレムか並の腕力を持っていると言う事だ。
――SWORD VENT――
奇妙な声が聞こえた。
歩み寄って来る黒甲冑の男の声ではない。何とも形容し難い、まるで人工的に作られた様な声。
天から剣が降り落ち、男はそれを掴む。
男はそれを無造作に振るう。
横に有る石材程の硬さを見て取れる塀が、紙の如く容易く切断された。
「炎を吐く竜を使役出来て、剣も呼べるとはよ。ククク……こいつは俺に御誂え向きだな。気に入ったぜ」
逃げなければ殺される。
頭ではそう分かっていても、投げ飛ばされたダメージの抜けない身体が、言う事を聞かない。
立ち上がりあぐねているタバサの背を、男が踏み付ける。
尋常ならざる脚の力に押し潰され、タバサはうつ伏せの状態から動く事も適わない。
タバサの首元に、剣が突きつけられた。
「さてと……ちったあ楽しめたがよ、ここらでお前の命運もお終いだな」
タバサには為すべき事、己に課した使命が有る。
父を殺し母の心を狂わした、現ガリア王家への復讐。
その為にこんな所で、死ぬ訳には行かない。
だが今のタバサに何が出来る?
杖も無い。敵に力も遥か及ばない。
ここに至っても、タバサは的確に現状を把握出来ていた。
そして、それ故に……絶望するしかないのだ。
「……………………とでも言うべき場面なんだろうが、お前に選択肢を与えてやる」
強張っていたタバサの身体が、ピクリと反応した。
「お前、俺の飼犬になれ」
「…………飼犬?」
男の言葉の意味がよく飲み込めなかったタバサは、鸚鵡返しに質問を返す。
「飼犬は飼犬だ。俺が走れと言えば走り、鳴けと言えば鳴き……殺せと言えば殺す」
つまりは軍門に下れと言う事か。タバサは、そう理解した。
確かに男は強大な戦力を持っているが、1人で易々と殺し合いに勝ち残れるかとなると話は別だ。
1人では碌に睡眠も取れない。
誰かと共同戦線を張れれば、それだけ有利に殺し合いを進められる。
しかしタバサには、殺し合いに乗る意思は無い。少なくとも今の所は。
もっとも、そう言って断る事は出来ないだろうが。
「断れば、私を殺す?」
「フッ……お利口じゃねぇか。腕も頭もそこそこ有る。最初の飼犬にするにゃ、上出来だ」
「…………最初の?」
「それ以上の質問は、返事を聞いてからだ」
踏み付ける力が強まる。
与えてやると言ったが、選択肢等無いのだ。
何しろタバサには、ここを生き延びて為すべき使命が有る。
生き延びる為なら、屈辱にも耐えよう。
タバサは、ゆっくり首を縦に振った。
背中から抑えていた男の脚が、離れていく。
「お前、名前は?」
「タバサ」
「俺は志々雄真実だ。ま、せいぜい仲良くしようや」
先に名前を聞いて来たのは、主従関係をはっきりさせる狙いだろう。
それに気を悪くした訳ではないが、簡潔に名簿に有る名前を答えるタバサに
志々雄は相変わらずの、悠々とした態度で名乗り返した。
ksk
「とりあえずは、荷物を貸せ。持ってる武器はいらねぇよ」
タバサは志々雄に鞄を投げ渡す。
志々雄は胡坐を掻き、無遠慮に鞄を開け中を漁る。
タバサは志々雄の真向かいに、硬い地面へ座り込んだ。
そうしている内に、志々雄の纏っている黒甲冑が突如消え去った。
マジックアイテムだろうか?
僅かに目を見開いたタバサに、志々雄は鞄を漁りながら話し掛けた。
「こいつは時間制限付きの鎧でな、反射物を使えばあの姿に変身出来るって代物だ。
お前も見た通り纏う者に力を与え、剣や竜も呼び寄せられる。俺も実際使ってみるまでは、半信半疑だったがな」
志々雄は片手で黒い金属片をタバサにかざした。
「お前に仕掛けたのは、こいつの性能を確かめたかったってのが有る。
後はお前みたいな奴には、最初にこっちの力を示した方が従え易いと踏んでな」
「私を知ってる?」
「全然。だがそいつを飼い馴らすにはどうすれば良いかは、見りゃ大体分かるさ」
本気とも冗談とも取れぬ口調で、志々雄は話す。
会話の内に、タバサは先程の疑問を思い出した。
「私が最初の飼犬とは?」
「言った通りの意味だよ。人を捜して従えそうな奴は端から俺の傘下に加えていくってのが、とりあえずの俺の行動方針だ。
お前はたまたま最初の1人だったって事だ」
タバサに違う疑問が浮かんだ。
そんなに何人も仲間に引き入れて、どうすると言うのか?
確かに大集団を作れば戦力も増えるがその分、御するのは容易ではなくなる。
志々雄の様に力で人を従えさせるのなら、尚更反発を受けるだろう。
増してや今は殺し合いの渦中。何れは、お互いが敵になるのだ。
そんな中大集団を纏める等、果たして可能だろうか?
そこまで思考して、タバサは自分が有る根拠の無い思い込みをしていたのに気付いた。
「……あなたは殺し合いに乗っていない?」
「殺し合いに乗る? …………ククク、やっぱり頓狂だなお前は」
志々雄は何処か愉快げに、低く笑う。
「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ。それがこの世の摂理だ。殺し合いに乗るも、乗らないもねぇよ。
誰がどう取り繕うと、この世は最初から血で血を洗う修羅共が蠢く殺し合いの場じゃねぇか。
……誰もそこから、逃げる事なんて出来やしねぇんだよ」
志々雄の放つ威圧感に圧されて、タバサは刹那空気が凍ったと錯覚する。
「…………何故、集団を作るの?」
「だから言ったろ。殺し合い、要するに戦なんだから自分の軍団を作って敵を倒す。
何かおかしい事が有るか?」
「……そうまでして、倒す敵って?」
「察しが悪ぃな。そこそこ頭が回ると見込んだが、期待外れか?」
志々雄は自分の首元を指す。
「俺にこんな無粋なもん嵌めて飼い馴らした気になってる、ぶいつぅとか言う餓鬼だよ。
あいつの所に辿り着くにゃ、情報と戦力とこいつを外せる奴が居るだろ」
タバサは志々雄の剣呑な雰囲気にのまれ、見くびっていた事を思い知った。
こいつはそこらの、暴力に溺れるチンピラの様な人種とは全く違う
多分、もっと危険な存在だ。
そして同時に力で自分を抑え付けているが、それを外して考えれば同行者としては頼もしい存在だとも思えた。
志々雄の言葉を借りれば、志々雄自身が腕も頭も相当有る。
「あなたに相談したい事が有る」
タバサは意を決し、志々雄に話して見る事にした。
自分がこの場に呼ばれて体験した全てを。
自分が異世界から召喚されたらしい事を。
「成る程ね。海の向こうなんてもんじゃねぇ。お前はそこまでの距離も測れない、理も違う世界から来たらしいって訳か
ついでにお前は、杖が有れば魔法が使えると」
「杖が無くても、簡単な魔法は使える」
話を聞いた、志々雄の飲み込みは驚くほど早かった。
タバサがレビテーションで、鉄の棒を浮かせたり等のデモンストレーションを行ったりしたのも有るが
どうやら志々雄自身もこの世界に、様々な違和感が有ったらしい。
例えば名簿や説明書等に、使われている文章。
使われている文字は、志々雄の世界と同一だが
志々雄の世界では右横書きが普通らしい。
「左横書きだから読み難くてしょうがねぇ」等とぼやいていた。
黒甲冑に変身できる道具も、志々雄の世界に無い物だそうだ。
家も道路も、見慣れない物らしい。
粗方相談し終えたタバサは少し落胆した。
異なる複数の世界から集められたらしいと言う事以外
結局は、ほとんど理解の参考にはならなかったのだから。
「そうか、異世界ね。…………フフフ、そいつぁ面白くなってきやがった。
ハハハ……………………ハハハッ、ハッーハハハハハハッ!!!!」
そんなタバサと裏腹に、志々雄は突然高笑いを始めた。
「ハハハッ!! 何がそんなに面白いんだって、面だな!」
こっちの疑問を酌んでくれて助かると、タバサは思った。
とても、疑問を正直に聞ける空気に無かったのだから。
「これが笑わずに居られるか!? 見た事も聞いた事も無い世界が有って、しかもあのぶいつぅとか言う野郎が
俺達を呼び寄せたからには、奴はそこを行き来出来る手段を持ってるって事だろうが!!! つまりその手段を俺が頂いちまえば……」
志々雄は右拳を強く握り締める。
「俺がその数多の異世界を、征服出来るって事じゃねぇか!!!!」
タバサは理解した。
頭の回転が速いとか、そう言う問題じゃない。
志々雄は完全に狂っている。
異世界の住人なのだから、常識も違うのだろうが
それでも異世界の存在を知ってすぐに征服しようと発想するのは、どう考えても異常だ。
志々雄はタバサから預かっていた鞄を投げ返す。
「さてと、ここでのんびりしててもしょうがねぇ。そろそろ出るぜ。遅れずに付いて来るんだな。
とりあえず、お前に支給されたもんはお前が持ってろ」
志々雄は立ち上がり、タバサの返事も待たず背を向け歩き出す。
タバサとしては正直付いて行きたくない。
こいつに付いて行けば、必ずその狂気に巻き込まれ危険を伴うであろう。
しかしここで拒否をすれば、恐らく躊躇う事無く殺すに違いない。
やはり隙を見て殺すか?
志々雄が危険な人物である事は間違い無い。
同行して隙を見て殺す。それが最も良い選択ではないか。
そうタバサが思案していると――
「どうした、ぐずぐずすんな」
――志々雄が振り返り、ニィと笑った。
「俺を利用するにしても、寝首を掻くにしてもよ――近くに居た方が良いだろ?」
この時タバサは生涯で最も戦慄した。
志々雄はタバサの反意を知りつつ、あえて従えていると悟った。
志々雄は強い。
それは単純に、戦力を持っていると言うだけではない。
豪放さと怜悧さを兼ね備えてぶれない器。
タバサは面従腹背するしかない状況だが、それも恐らくは容易ではないだろう。
それでも、タバサにもまたぶれない物が有る。
為さねばならぬ使命。それを果たす為なら、薄氷の上を歩く様な道でも潜り抜けてみせる。
自分の決意を再確認し、タバサは志々雄の背を追い始めた。
◇ ◇ ◇
天を仰いで志々雄は考える。
自分に首輪を嵌め殺し合いの舞台に放った、ぶいつぅとやらは
きっと安全な高みから、殺し合いを眺めているつもりだろうと。
今にそれが、大間違いだと思い知らせてやる。
弱肉強食の摂理から逃れられる高み等、この世に存在しないと言う事を。
最後に笑うのは自分だと言う事を。
そしてぶいつぅから権力を、技術を、全てを奪い取り
必ずや、数多の異世界へ攻め出して見せると。
「さあ、国盗りの戦と洒落込むか」
誰に言うでもなく、志々雄は呟いた。
【一日目深夜/H-07】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0〜1個
[状態]:健康
[思考・行動]
1.自分の束ねる軍団を作り、ぶいつぅを倒す。
2.首輪を外せる者や戦力になる者等を捜し、自分の支配下に置く。
【タバサ@ゼロの使い魔(小説)】
[装備]:鉄の棒@寄生獣
[所持品]:支給品一式、林檎×10@DEATH NOTE、ノートパソコン(現実)
[状態]:健康
[思考・行動]
1.何としても生き残る。
2.とりあえず志々雄に従う。
※1巻終了直後からの参加です。
※支給品の鉄の棒は寄生獣10巻で新一が後藤を刺した物です。
68 : ◆KKid85tGwY:2008/12/29(月) 21:59:17 ID:09lWOnYg0
投下完了しました。
全ルートに寄せます。
お手数ですが、どなたか本スレへ代理投下をお願いします。
代理投下終了
>>329-330は、仮投下スレでは一つのレスでしたが、
改行制限を超えていたため勝手ながらレスを分割しました
ご容赦ください
投下乙!
ヤバい。志々雄が恰好良すぎる……!
この状況になっても国盗りをしようとする気構えが素敵すぎる!
リュウガのデッキとも相性がいいだろうし、
同行者になったタバサの事も考えれば、かなり強力なコンビ
この二人は色んな意味で目が離せない!
投下&代理投下乙!
既に代理投下されてたとは…気付かなかった、申し訳ない
それにしても志々雄って随分ぶっ飛んだ性格してるんだなー
一応対主催なんだろうけど、どうなるやら…
良い意味で期待を裏切られたわ
これはgj
したらばを今から変えるって出来ないかな?
管理がされてないってのがマイナスになってる気がするんだ
投下乙、飼い犬であっちを想像した俺は死んだ方が(ry
>>345 それは俺も思った、あとwikiも
管理人さんが残ってくれてるのか分からないけど、いるなら地図を表示してほしい
グッチならともかく、シャネルだと予約しにくいオーラがあるよね
あとちょっと質問なんだけど、何ルートに寄せるとかはどこを見ればわかるかな?
>>347 質問の意味がよく分からんが……wikiのことなら投下順の右端に載ってるよ
>>349 確かにそれもあるけど初めて読む人にはネタバレになるし、なによりwikiに普通の地図が掲載されてた方が便利じゃないか?
>>350 普通の地図が見たければ、チェックをはずせばいいよ。
ネタバレは確かに言うとおりだね
>>352 おお、掲載されてる
言い出しっぺなのに何も出来なくてごめん
本当にありがとう
橘あすか、蒼星石、桐山和雄、水銀燈代理投下します。
地図で言うD−9の北端。
付近にあるのは牧場と、深い森のへ入り口。
何も無いと言っても差し支えの無いような場所に、一人の少女は降り立った。
彼女の名は水銀燈、容姿は一言で言えば美麗。
豪華な装飾の施された黒いドレスに身を包んでおり、その長い銀色の髪は夜空から射す月光を反射するほど。
何も無いこの場所に降り立つには勿体無い美貌だろう。
しかし彼女は不機嫌ではなく、むしろ上機嫌。
今の機嫌を表すかのように妖艶な笑みを浮かべていた。
彼女の機嫌がここまで良い理由はただ一つ。
このバトル・ロワイアルというゲームに、彼女の宿敵と呼べる人物が三人も参加していたからだ。
それは真紅、翠星石、蒼星石の計三人。
この三人は彼女の妹であるにも関わらず、宿敵として立ちはだかっているのである。
何故、実の妹が宿敵なのだろうか。
それを説明するには、彼女達の生い立ちから説明しなければならない。
――――――――――――――――――――――――
彼女達は水銀燈自身も含め人間ではなく、数百年前に天才人形師ローゼンによって作成された生きる人形であった。
名称はローゼンメイデン、彼女達はローザミスティカと名付けられた命を与えられ、
人形でありながら人間と同じように活動することがが出来るのだ。
そして彼女達は、今もどこかにいるローゼン――――お父様に会うことを夢見続けている。
これだけ聞けば、彼女達は随分と華やかな存在に見えるだろう。
しかし彼女達は決してそんな存在ではない。
彼女達には逃れることの出来ない、重すぎる宿命が課せられているのだ。
アリスゲームという名の、ローザミスティカの奪い合い。
ローザミスティカを全て集めれば、彼女達はアリスと呼ばれる完璧な少女に昇華することが出来る。
そしてローゼンは、アリス以外の前に姿を見せることはない。
つまり彼女達がローゼンに会うには、他の姉妹の命を全て我が物にしなければならないのだ。
故に、姉妹達は戦いあう。
それぞれが自らに宿る力を駆使し、他の姉妹を攻撃する。
真正面から攻撃を仕掛けたり、謀略を張り巡らせたり、必死の思いで逃げ回ったり。
彼女達の命であるローザミスティカが奪われれば、人間と同じように彼女達はその生命を終える。
だから敗北するわけにはいかず、戦う意思が無くとも力を行使しなければならない。
これが彼女達が背負わされた宿命の正体だった。
ドール達の中にはアリスゲームに消極的な者もいるが、水銀燈は積極的に行動しており、
他の姉妹達に何度も攻撃を仕掛けている。
それゆえ彼女は迷うことなく、行動方針を決定することが出来た。
(みんなジャンクにしてあげるわぁ……)
全ての参加者を殺害し、お父様に会いに行く。
これが彼女の行動方針だった。
(でもこのゲーム……一筋縄ではいかなそうね)
水銀燈は好戦的な性格だが、決して無計画というわけではない。
今回も闇雲に襲い掛かる真似はせず、綿密な策略を立てることにした。
理由は彼女達以外の参戦者、未知数の実力を持つ者が多数存在する。
そんな実力者達に下手に立ち向かい、返り討ちにあってしまえば笑い話にならない。
幸い彼女の能力は武器に依存するものではなく、背中の黒羽を駆使するもの。
その点では他の姉妹に比べて、一歩有利である。
だが、まだ足りない。
敵は姉妹だけではないのだ、この殺し合いを勝ち抜くのは生半可な努力では到底不可能だろう。
しかし決して無理と言うわけではない。
このゲームの鍵となる支給品を収拾し、使いこなせば二歩も三歩も有利になれる。
残念なことに彼女の支給品は、何の変哲の無い農作業用の鎌に杖とメロンパンと言う残念な組み合わせだったが、
他の参加者から支給品を巻き上げれば、全く問題は無い。
彼女はその翼で空中から奇襲を仕掛けることも出来るため、この方針は適していると言えた。
(当分の間は誰かから道具を奪い取って、殺せそうなら殺すって感じがいいかしらぁ。真紅や翠星石達は絶対に殺すけどぉ)
真紅達は彼女にとって憎むべき仇敵であると同時に、自身の能力を向上させる道具でもある。
他の姉妹ローザミスティカを自身に取り込めば、身体能力は上昇するうえに、その姉妹の特殊能力まで習得出来るのだ。
自分の悪評を広められると行動し難くなることもあり、危険を犯してでも抹殺する必要のある存在だった。
「待ってなさい、真紅、翠星石、蒼星石。必ずジャンクにしてあげるからぁ」
支給された鎌を握り締め、ゆっくりと宣言する水銀燈。
その表情は堕天使の微笑で彩られていた。
――――――――――――――――――――――――
彼女が殺し合いに乗るのを決意してからおよそ一時間。
森の中に潜む弱者を狩るため、彼女はD−9から西へ移動していた。
そして薄暗い森の中で、学生服を着た少年を見つける。
背丈はおよそ180センチ、男子学生の平均からするとやや高い程度だが、
人形であり身長が100センチにも満たない彼女にとっては、随分と巨大な存在に見て取れた。
しかし彼女が圧倒されることなど無い。
満面の笑みを浮かべながら月夜に舞い降り、少年の背後に舞い降りた。
「止まりなさい」
背後から言葉を受けて、体を反転させる少年。
この時彼女は初めて少年の顔を見たのだが、思わずぞっとしてしまった。
少年の顔自体は、誰もが口を揃えて美形と評価できるものだ。
知的で端正でどこか女性的な顔立ちだが、髪型は見るものに威圧感を与えるオールバック。
一見似合いそうにない組み合わせだが、それすらも様になっている。
だが彼女の目には、少年の容姿など入っていなかった。
彼女の目に映っているのは、少年の瞳。
磨かれた鏡のように彼女を映すその瞳は、まるで感情が通っていないかのように冷たく感じられた。
「…………」
少年は言葉を吐き出さず、表情に変化は無い。
けれども自分に対し即座に攻撃を加えない様子から、とりあえず安堵することが出来た。
「あなた……名はなんていうの?」
十数秒の沈黙を破り、あくまで自然に名前を聞き出す水銀燈。
「桐山……桐山和雄」
それに対し少年―――桐山和雄は低くは無いが威圧感のある声で答えた。
名前を聞き出してから十数秒、また静寂が訪れる。
その間も桐山は表情も姿勢も変えることなく、ただ暗闇に佇んでいた。
彼女の持つ鎌に視線を注ぎながら。
「これが気になるの? ごめんなさぁい
でもこの場で何の武器も持たずに行動するのはお馬鹿さんじゃなくって?」
そう言いながらも、鎌をデイパックに仕舞う水銀燈。
その姿を見届けた桐山は、興味を失ったのか視線を彼女の顔へと戻した。
彼女の目的を達成するには、自身を桐山に信用させなければならないのだ。
彼女の目的は、彼から様々な情報を引き出すこと。
このゲームの参加者の中に彼女の知り合いがいるように、桐山にもいるかもしれない。
さらに自分に会う前の情報等を得ておけば、何かと役に立つ可能性があるのだ。
「それで……いくつか質問があるのだけれど構わないかしら?」
彼女の質問に対し、桐山は表情を変えず頷いた。
「私に会う前に何があったか教えなさい」
「……オレはずっとこの辺を歩いてただけで、誰かに会ったのもお前が初めてだ」
質問に対する桐山の返答は、彼女の期待を大きく下回るもの。
この回答で得られた情報は、皆無と言っても正しいだろう。
「つまらないわねぇ……じゃあこのゲームに貴方の知り合いは参加しているのかしら?
もし居るならば、名前と簡単な情報を教えなさい」
質問を受けた桐山は、デイパックから名簿を取り出し説明を始める。
「オレの知っている人間はここからここまでの三人と織田敏憲の四人だ」
彼の指差した範囲にいる人間の名前は稲田瑞穂、千草貴子、三村信史。
どれも平凡な、日本人の名前であった。
「……他に知っていることはないの?」
「無い」
「……そう、残念ねぇ、質問はこれで終わりよ」
予想以上に収穫が少なかったことに彼女は肩を落とし、つまらなそうに溜め息を吐く。
強襲を警戒しながら出てきたにしては、割りに合わない結果であった。
(つまんない男ねぇ……)
桐山の背中を見ながら、心中で呟く水銀燈。
彼女が『質問はこれで終わりよ』と言った直後、彼は『そうか』と一言だけ残し去っていってしまったのだ。
彼がもし何かに長けた人間で利用価値があったならば、彼女は同行するつもりであった。
しかし彼に面白味など存在せず、所持していた情報も殆ど意味が無い。
となれば、彼をどうするかなど彼女の中で決定していた。
――――殺す。
飾りのように伸びていた翼を伸ばし、空中へ浮き上がる。
そして桐山へ向けて翼を構え、こう告げた。
「ジャンクになりなさぁい!!」
彼女の怒声と共に桐山へと飛来する大量の黒い羽。
それは鋭利な刃物のように変化しており、まさに矢の雨と言わんばかりの攻撃である。
普通の人間がこの丸腰の状態でこの攻撃を受ければ、平気ではいられないだろう。
普通の、人間ならば。
「――――ッ!?」
桐山はふわりと背後を振り返って彼女を一瞥する。
その間に一枚の羽が彼の右上腕に突き立てられるが、
残りの弾丸は、全て回避してみせたのだ。
まるで最初から予知していたかのように、鮮やかに宙を舞いながら。
思いがけない事態に、彼女は唖然とする。
だがそれだけでは終わらない。
彼女に発生した一瞬の隙を突いて、桐山は一気に眼前へと迫ってきたのだ。
(いけない……!)
危機を直感して、腹の前で腕を交差させる水銀燈。
刹那、物凄い衝撃が体全体を襲い、彼女は数メートル後ろに吹っ飛ばされた。
「くっ……このぉ!」
空中で旋回し体勢を立て直した後、翼を広げてさらに上昇する。
吹っ飛ばされた事が幸いし、彼女が苦手とする接近戦からは脱出することが出来た。
(あんな力をただの人間が出せるなんて……)
ズキリと痛む右腕を左手で押さえながら歯軋りする水銀燈。
防いだにも関わらず桐山の一撃は、左腕、そして身体にまで均等に及んでいた。
彼女が知る桐山と同年代の少年は、思わず嘲笑したくなるほど貧弱であり、
一般人と比較しても身体能力が上であるローゼンメイデンには、とても敵いそうに無かった。
しかし桐山和雄は何かが違う。一般人とは何かが。
その証拠に初見であるはずの彼女の攻撃をほぼ完璧に回避し、そのうえ迎撃まで成功させている。
普通の人間で無いのは、もはや明確だろう。
続いて発せられる一撃、浮遊する彼女にその強靭な脚力を披露するかのように飛び上がる。
ただのジャンプにも関わらず飛距離は彼女の元まで届いている、やはり只者ではない。
「人間のくせに……」
四本の揃えた指先を彼女に向けている。貫手と言う技だ。
切っ先は彼女の急所を的確に捉えており、今まさに貫こうとしている。
「舐めるんじゃ……ないわよぉ!!」
向けられた手の甲を蹴飛ばし、貫手の軌道を逸らす水銀燈。
桐山の貫手はその正確過ぎる狙い故、直線的になっていたのだ。
さらに彼女は空中を自由自在に動けるのに対して、彼は脚力で飛んだだけ。
彼女に強大なアドバンテージが存在する以上、彼の手が届かないのは最初から決まっていたのだ。
(この私を愚弄するなんて……絶対に許さないわぁ!)
目を見開いた彼女は、鋭い視線を桐山に叩きつける。
無理も無い、彼の放った先ほどの貫手。
あれが本気で命中すると思っていたのならば、翼を持つ彼女を確実に見縊っている。
それはプライドの高い彼女にとって許せないことであったし、自身の製作者であるローゼンを侮辱されたも同然。
彼女はそれを許容できるほど、温情のある人物ではないのだ。
「死になさいッ!!」
彼女は語気を強め怒りを露わにしながら、勢いを失い落下していく桐山に翼を向ける。
そのまま激情に任せ、再び黒羽の弾丸を放とうとした――――その瞬間。
体中の怒りが霧散し、頭に上っていた血が急速に冷めていくのを感じた。
空中を落下する桐山が彼女を睨みつけているのだ、黒光りする銃口と一緒に。
(う、うそ……!?)
彼女の頬を一滴の冷や汗が通り過ぎる。
いつの間に用意したのか、という疑問を彼女が抱く前に、
パン、と乾いた音と共に銃口から一発の鉛球が迸った――――
――――少年が一人、虚空を眺めている。
いや、正確には虚空に揺らめく白煙の流れを目で追っているのだ。
銃口から漏れ出るその煙は、白いせいか暗闇の中でも存在を主張していた。
だが、それよりも目立つ者が一人。
白銀の髪は夜という世界に光を生み出し、漆黒の服は闇によく馴染んでいる。
姿だけを見れば、彼女はやはり優雅だ。
しかし今の彼女の瞳孔は大きく見開き、吐息は乱れている。
容姿とは対照的に、今の彼女は優雅と言う言葉からは程遠い存在だった。
「全く……やってくれたわねぇ……」
彼女――――水銀燈は肩で息をしながら言葉を吐き出す。
宙に浮いているその身体に傷は見当たらないが、彼女はまるで致命傷を負ったかのように顔面を歪めていた。
桐山の拳銃が銃弾を吐き出した瞬間、彼女は攻撃体勢を解除し翼を強引に羽ばたかせた。
その結果彼女の身体は左に1メートル程逸れ、銃弾を避けることに成功したのだ。
銃弾は数秒前まで彼女の額があった部分を通り抜け、そのまま闇夜に消えていく。
それを見届けた後に、先ほどの桐山の貫手が拳銃を所持しているのを気づかせないための囮だということに気づいた。
(これからどうしようかしらぁ)
彼女は思考を展開しようとして、すぐに現実に引き戻される。
桐山は彼女に考える時間を与えるほど、甘い性格ではないのだ。
「くっ……」
再び翼を広げ、銃口から逃げようとする水銀燈。
引き下がることが出来ない以上、彼女は戦うしかないのだ。
しかし銃口はどこまでも彼女を捉えて離さない。
数秒間の逃亡撃が繰り広げられた後、二発目の銃弾が放たれた。
破裂音が周囲に響き渡り、銃口から弾丸が発射される。
弾丸は回転しながら、一瞬、一瞬のうちにどんどん彼女へと接近して――――
突然、緑色の輝きを放つ宝玉へと変化した。
「どうなってるの一体……」
彼女は何が起きたのか理解できず、思わず混乱してしまう。
桐山もそれは同じなようで、虚を衝かれたように口を大きく開けていた。
そのまま二人の時間が停止し、十数秒ほど過ぎた後。
「そこの二人、お止めなさい!!」
声を張り上げて二人を制止しながら、一人の男が戦場に乱入してきた。
(な、なんなの、この男……)
息を切らしながらこの場に訪れた男を、空中から見下ろす水銀燈。
見たところ桐山より若干身長は低めで童顔、優男と言った風貌だ。
しかしこの男の目は顔に似合わず、幾戦もの修羅場を掻い潜ったかのような目をしている。
「そこの貴方、銃を降ろしなさい、さもないと……」
優男は宙に浮く八つの宝玉を桐山の周囲に浮遊させ、行動を制限する。
桐山も周囲を見渡し脱出不可能と悟ったのか、素直に銃を降ろした。
(運が回ってきたようねぇ、この男……利用しないわけにはいかないわぁ)
おそらく優男は勘違いをしていて、彼の中では桐山が危険人物で自分が襲撃を受けた被害者。
彼を利用して桐山を殺害してしまえば、一気にこの場を掻い潜りぬけられるだろう。
一瞬でここまで頭を回転させ、救援を要請しようとした直後。
予想外の形で、彼女の作戦は失敗を告げることになる。
「貴女は……す、水銀燈!?」
こちらを見上げた優男が急に狼狽し、彼女の名前を読み上げる。
その様子を見て、彼女の中に一つの予想が生まれた。
この男は自分のことを知ってるのではないか、と。
そして、最悪の形で予想は的中してしまう。
「あすか君!!」
素早い動きで、この場に現れる小さな影。
シルクハットを被った赤と緑のオッドアイ、青を模した服装。
聞き間違えるはずも無い、声。
水銀燈と同じローゼンメイデンの第四ドール、蒼星石だ。
情勢は水銀燈にとって最悪と言っていいだろう。
利用しようと思っていた優男―――あすかは桐山の拘束を解き、八つの宝玉を空中に待機させている。
さらに先ほどまで自分を追い詰めていた桐山、そして仇敵である蒼星石。
一人一人なら撃破することが出来たかもしれない。しかし今は三対一。
どう考えても、彼女の不利は否めなかった。
(……この私が追い詰められるなんて……)
目の前にいるのは、多少の危険を犯してでも抹殺しておきたかった相手。
だが今は、多少と呼べる状態ではないのだ。
ただでさえ化け物染みた運動能力を持つ桐山に、
未知の特殊能力を持つあすかに、同じローゼンメイデンである蒼星石が加わったのだ。
「…………」
幸い今の彼女は空を飛んでおり、撤退するには最適の状態。
「あすか君、早く!!」
「ええ、分かってます」
蒼星石の掛け声と共に、八つの宝玉が彼女へと迫り来る。
逡巡している時間は、無い。
「覚えてなさいッ!」
黒羽の弾丸を飛ばし、宝玉の動きを鈍らせる水銀燈。
さらに弾丸を発射した勢いを利用し、高度を上げ、
戦場から、飛び去っていった。
――――――――――――――――――――――――
「まさか私が無様に逃げ去ることになるなんて……」
苦々しげに、そして自嘲的に笑む水銀燈。
彼女は西の方に逃亡し、D−7エリアの木に腰を掛け身を休めていた。
彼女の中で逃亡したという事実がぐるぐると駆け巡っていく。
高貴な性格である彼女は、無様に逃げ出した自分を許すことが出来ないのだ。
「くっ……」
ズキッと両腕、とくに右腕が痛みを訴える。
身体に受けた痛みは既に回復したものの、直接触れられた両腕はまだ衝撃が残っていた。
「この落とし前は必ず付けさせてもらうわよ」
そうは言ったものの、どうすればよいのだろうか。
おそらく桐山は、あの二人と手を組み同行することになるだろう。
三人もの参加者を一網打尽にするには、それなりの支給品、あるいは協力者が必要になる。
蒼星石のローザミスティカは確実に奪取しておきたい代物であるし、どうすれば――――
『――この声が聞こえますか。僕の声が聞こえますか。』
「……!?」
突然流れ始める声、拡声器でも使用しているのか辺り一帯に響いている。
『僕は……北条、悟史と言います。この声が聞こえている人は聞いてください。
僕は今、妹を探しています。北条沙都子と言います。
沙都子は……妹はこんなところに呼ばれて、酷く怯えていると思うんです。
この声が聞こえた人は、どうか妹を、沙都子を探してください!!
すごく自分勝手なことを言っているのかもしれない……
でも、僕にとっては、大事な、本当に大事な妹なんです……っ!!
どうか、妹を探すのを、手伝ってくださいっ!!
それから、これを聞いているのがレナ、魅音、詩音……さんだったら、
あるいは、沙都子自身が聞いているなら、僕のところに来てくれ!!
僕は今、地図でいうとC-7にいるんだ。
頼む!!必ず来てくれっ!!
……僕は絶対――』
『僕は絶対――戻るんだ、あの笑顔がある世界に!!』
北条悟史という人間の、仲間を集う声。
それは確かに、ここにいる水銀燈の耳に届いた。
【一日目黎明/D−7 木の枝の上】
【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]農作業用の鎌@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式 メロンパン×5@灼眼のシャナ、ルイズの杖@ゼロの使い魔
[状態]両腕に軽症、疲労(小)
[思考・行動]
1、出会った人間から情報を収集した後、利用出来そうなら利用する。
2、利用出来そうに無い場合は殺害(ローゼン勢は多少の無理はする)、最低でも支給品は奪いたい。
3、桐山和雄、橘あすか、蒼星石には必ず復讐する。
4、悟史の呼び掛けに対してどうするか……
[備考]
※参戦時期は蒼星石のローザミスティカを取り込む前です。
「申し訳ありません、事情も知らずいきなり拘束してしまって……」
時間は僅かに遡り、D−8エリア。
先ほどの戦いにおいて、銃を所持していたという理由で否応なしに拘束してしまったことに対して、
橘あすかは謝罪を述べていた。
彼は先刻、蒼星石を襲撃した拳銃使いを取り逃がしている、
故に、拳銃使いには最善の注意を払っていたのだ。
最も蒼星石に確認し、彼女を襲ったのが桐山ではないと判明したのだが。
「……オレは別に気にしていない……」
桐山も言葉の通り別気にしてはいないが、それでもあすかは頭を垂れ落ち込んでいる様子。
彼は先ほどから自分の行動が空回りしてばかりなのだ。
「和雄君も気にしてないって言ってるんだし、もういいんじゃないかな?
水銀燈を取り逃がしたのは心残りだけど……あれ? 和雄君、右肩に羽が刺さってるよ」
あすかを宥めていた蒼星石は、桐山の右上腕に刺さった羽に気づき指摘する。
指摘され右腕に目をやった桐山は、無表情のまま刺さった羽を抜き取り地面に叩き落した。
「「な……」」
いきなりの桐山の行動に、蒼星石とあすかは揃えて言葉を詰まらせる
「だ、大丈夫!? いきなりそんなことしたら……」
溢れ出る鮮血を見て、思わずうろたえる蒼星石。
傷口からは血が噴出し、制服に染みを作っていっている。
だが当人である桐山は、まるで他人事のように平然としていた。
「そうだ、僕に治療をさせてください!」
そう言うと同時に周囲の地面や木が消滅し、再びあすかの周囲に八つの宝玉が発生する。
「大丈夫です……すぐ終わりますから」
桐山の額に宝玉のうちの一つを宛がい、力を送り始める。
宛がわれた宝玉は呼応するかのように輝きを増し、そして数十秒後に離れていった。
「僕のエタニティエイトで貴方の治癒力を促進させました、すぐに効果は現れないと思いますが……」
「エタニティエイト……?」
無表情だった桐山がこの宝玉に興味を抱いたのか、感心したような目付きで問いてくる。
「あ、すいません、アルター能力の説明が遅れました、アルターと言うのは――――」
『――この声が聞こえますか。僕の声が聞こえますか。』
彼がアルター能力を説明しようとしたその瞬間、先ほど水銀燈が聞いていた声が彼等の耳にも届き始める。
それを聞いた三人の顔は、三者三様に染まっていた。
あすかは呆然と、蒼星石は心配し、桐山は無表情。
しかし彼等にもまた、しっかりと悟史の声は届いていた。
桐山和雄には、幼い頃の事故のせいで感情というものが欠落していた。
だからか、彼が大東亜共和国いた頃にこれと同じような催し物に参加した時も、
人を殺してはならないという価値観も存在しないためか、彼はかつてクラスメイトであった人間を十五人も殺害してみせた。
しかし真に恐ろしいのは、彼が殺し合いに乗る経緯。
彼はコイントスの裏表で行動方針を決定し、そのまま実行に移したのだ。
ここからも彼の適当さ加減が伺える。
そして、これが本題。
彼は今回、どのようにして行動方針を決定したのだろうか。
――――答えは『最初に会った参加者を真似ること』
最初に会った参加者、つまり水銀燈。
彼女の行動方針は遭遇した参加者から情報を聞き出した後、利用出来るなら利用、出来ないなら殺害。
実際は違うのかもしれないが、彼はそう解釈していた。
つまり今の彼は、再び殺し合いに乗っている。
それには、同行者である橘あすかも蒼星石も全く気づいていない。
今ここに、最低最悪の殺戮マシーン桐山和雄が再臨した。
冷たい仮面の下に、堕天使の微笑を浮かべながら。
【一日目黎明/C−8 西側】
【桐山和雄@バトルロワイアル】
[装備]コルトパイソン(4/6)@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式、コルトパイソンの弾薬(24/24)、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[状態]右上腕に刺し傷、治癒力向上(どの程度かは不明)
[思考・行動]
1、遭遇した参加者から情報を聞き出した後、利用出来るなら利用、出来ないなら殺害する。
2、とりあえずは蒼星石、あすかに同行する。
3、悟史の呼び掛けはどっちでもいい。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※蒼星石、あすかとは名前以外の情報は交換していません。
【蒼星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]防弾チョッキ@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式、シザースのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(確認済み)0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1、南の市街地にある図書館へと向かう
2、自分と蒼星石の仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する
3、襲ってくる相手は容赦しない
4、悟史の呼び掛けに対してどうするか……
※無印本編終了後〜トロイメント開始前からの参戦です
※nのフィールドにいけない事に気づいていません
【橘あすか@スクライド(アニメ)】
[装備]エタニティエイト
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1、南の市街地にある図書館へと向かう
2、自分と蒼星石の仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する(出来ればかなみ優先)
3、襲ってくる相手でも、出来れば戦わずに和解したい
4、悟史の呼びかけに対してどうするか……
82 : ◆ew5bR2RQj.:2008/12/31(水) 00:37:09 ID:7pAum15Y0
以上です。
毎回毎回お手数おかけしてすいません、どなたか本スレへの代理投下お願いします。
代理投下終了しました。
投下乙!
桐山、まさかのステルス! これは予想外でした。
水銀燈も不穏な動きを見せているし、各キャラの今後が気になる作品でした。GJ!
投下&代理投下乙!
まさか水銀燈vs桐山が見れるとはGJ!
そして悟史君の未来にwktk
投下乙です
桐山が乗ったか・・・一番最初によりによって最悪な相手と出会っちまったな
参加者の強さ的に原作みたいな無双はできそうに無いが、頭がいいから知略でそれを看破できそう
期待できるマーダーが出来たな
水銀燈は乗ったはいいが支給品がまたずいぶんと微妙な・・
ルイズの杖は持ち主死んでるし、鎌なんかも水銀燈には使いにくそうだ
だが水銀燈の実力や知略ならこれでも十分に戦えそう
アニロワみたいにステルスで活躍するのも面白いし、今後に期待大だな
投下乙
ようやくガンソードキャラにも予約が入ったね
ヴァンはまだ書きやすい方だね
どちらかというとC.C.に予約入ったのが助かるよ
コイツが色々と面倒なキャラなんだよなぁ
偶然にも、俺が妄想してた組み合わせと一緒wwこれは期待wksk
おお、また予約が増えてる
wikiの管理人さんまだ見てる?
見てるならwikiの更新時のパス要求を外して欲しいんだが……
誰か前スレのdatくれないか
桐山って学習能力が異常に高いから、るろ剣キャラとかの技をコピーできそうだな
>>377 剣心の技は俺も傘でコピーしてたし桐山ならできるかもしれん
>>375 諦めるか、直接メール送って管理権譲渡してもらうなりしてもらった方がいいんじゃないか?
>>378 お前は何をしているんだwww
>>379 諦めるかはともかく、管理人さんにメール送っとくのはありだと思う
ヴァン、C.C.投下します。
それは、宇宙の底にあるおとぎの国。
荒野に夢、街に暴力があふれる、ボンクラ達の理想郷《パラダイス》
人呼んで、惑星・エンドレス・イリュージョン。
流浪の男がいた。
黒いタキシードに全身を包み、気だるげな雰囲気を漲らせながら。
花婿の衣装と純潔の精神を持ち合わせ、復讐に全てを捧げた男だ。
ヨロイ≠ニ呼ばれる巨大兵器が闊歩する荒廃した大地にて男は一人の少女と出会った。
その小さな出会いは時を経て大きな物語へと姿を変える。
それは「ウェンディ」がピーターパンと出会ったことで始まる夢の世界の話のように、小さな鼓動を伴いながら。
そして、そんな荒くれ者達のお伽話のような世界と、幾つものおとぎ話が――交わった。
これは全てが夢のおわりへと至る、少し前の物語。
荒野の果てに一人は絶望、そして――もう一人も絶望を胸に抱き、始まるはぐれ者達の物語。
†
光に透かしたペリドットのような緑色の髪をC.C.は鬱陶しげに掻き上げた。
顕になった額から覗くのは紅色の奇怪な刻印《コード》である。
これこそが彼女が不老不死である証拠、殺し合いの舞台に最もそぐわない存在であることを決定付ける烙印だった。
キラキラと輝く天はいったいどこの田舎から持って来たのかと不思議に思うほど光に満ちていた。
小さく指を握り返してみても返って来る感触は普段とまるで変わりはない。
身体の調子は万全と言ってしまっても構わないだろう。
あえて言えば、少しだけ小腹が空いている程度か。それにしても行動に支障を来たす程ではない。
「V.V.……何を考えている?」
艶かしい唇の動作と呟き。C.C.は物憂げな眼差しのまま煌く夜空を見上げた。
息が薄っすらとした靄になって空気に溶けて行く。
少しだけ、肌寒いかもしれない。
「だが、今は……」
彼女は胸の部分に銀字でギアスの紋章が刻まれた黒い独特な形の衣服を身に纏っていた。
肉付きのいい身体のラインを浮き彫りにさせるピッタリとしたラインを保ったノースリーブのドレス。
手の甲までを覆ったフィンガーレスのロンググローブが、スラッと伸びた指先をより艶かしく見せていた。
(しかし……あいつも、少しは成長したと思っていたのだが)
膝上以上の長さのある白いロングブーツでカッカッと地面を踏み締めながら、C.C.は注意深く歩を進める。
だが、気付けば意識せずに唇から漏れるのは湿ったため息ばかり。
そしてソレは感情的な意味で言えば怯え≠竍焦燥≠ナはなく憂鬱≠ニいう二文字の単語にて集約される。
そう。彼女の目下の悩みの種は、すなわち彼女の「共犯者」であるルルーシュ・ランペルージが犯した致命的なミスについてだった。
この空間に集められた全ての人間の前で彼がギアスを使用してしまったこと、である。
(ルルーシュ。この失態は……大きいぞ)
ルルーシュが持つ「絶対遵守」のギアスは一種の催眠術のようなものだ。
だがその効力は極めて圧倒的だ。
――数十人の人間へと同時に自害を強制する。
――人の限界を超えるほどの力を生きる≠スめに引き出させる。
――心優しき王女に血塗れ≠ニ呼ばれるほどの虐殺を行わせる。
――忠実な騎士が敬愛して止まない主従≠他の人間に書き換える。
――父親の死に絶望した少女から一人の人間に関する記憶を完全に抹消する。
まさに身震いするほどの魔性を帯びた王の力と言えよう。
どんな人間であれ、どんな生物であろうと、その悪魔の力からは逃れられない。
しかし、ギアスには当然のように多くの弱点がある。
射程距離や効果時間、加えて『同じ人間に一度しか使えない』という制約も致命的だ。
そして最も憂慮すべき問題は『ギアスは視線を合わせることによって発動する』という能力のトリガーキーに該当する部分だろう。
(確実に、何人かの人間はアレでお前の能力に当たりを付ける。
言葉……動作……追求の手が眼≠ノ伸びたとしたら、お前はどうする……?)
ルルーシュのギアスは視線を合わせなければ発動しない。
眼鏡程度の遮蔽物では効果は無いが、能力を知っているならサングラス程度の対策で無力化出来てしまう。
能力を知られている相手と一対一になった場合、彼はチェックが掛けられたも同然と言えるのだ。
単純な身体能力勝負で彼に勝機を見出せというのはあまりに酷な期待なのだから。
「まったく。本当に……手が焼ける奴だ」
子供の世話に苦心する親のような台詞を呟いたC.C.の口元に浮かんだのは、言葉とは対称的な艶っぽい微笑だ。
既に彼女の思考は動き出していたのだ。
完全な劣勢に追い込まれたチェスのゲームを挽回するための一手の模索。
ソレこそが「生きて」この空間から脱出するためには、必ず必要となる考えの一つなのだから。
そう――生きて、だ。
C.C.は外見こそ、華麗な少女にしか見えないがその正体は数百の刻を生きて来た不老不死の魔女である。
彼女は「殺し合い」という趣旨の催しに自身が放り込まれた、という事実に驚愕していた。
C.C.は喉を掻き切ろうが、火刑に処せられようとも命を落とすことはない。
彼女が死亡するのは「自身が認定したギアスユーザーに不死の運命を引き継がせた場合」だけだ。
V.V.が何を考えてこんなことを始めたのか、C.C.にはまるで想像がつかなかった。
彼も同様に死ぬことも老いることもない不老不死のコードの持ち主だ。
ギアス教団の現嚮主である彼が何を考えているのか、教団のトップの地位をとうに退いたC.C.には知る由もない。
だが、C.C.の「不死の運命」だけを取り除くことがV.V.に出来るとは彼女は到底思えなかった。
(そんな簡単に死ねるのなら、苦労はないな)
夜の闇を踏み締める魔女の手には奇妙な形の杖が握られていた。
これは彼女の支給品であるブリッツスタッフという道具だ。
振るうことによって杖の先端から様々な属性の魔法攻撃を行うことが出来る。
錬金術によって生み出されたこの道具を扱える人間は限られているが、どうやらC.C.はその視覚を満たしたようだ。
込められた力は炎。
使用することで中程度の大きさの火球を発射することが出来る。
使用時には若干の負担が掛かり、加えて使い過ぎると杖自体が壊れてしまうらしい。
「魔女」の烙印を押された自分にとって中々皮肉な道具と言えるだろう。
(V.V.の後ろにはおそらく……シャルルがいると見て間違いはない。
奴らの本願であるラグナレクへの接続を果たすためには私とV.V.、二人のコードが必要の筈だが……さて、)
しかし、腑に落ちない点が多過ぎる。
この催しの代表を務める人物がV.V.である点。
ルルーシュの使用したギアスが効果を発揮しなかった点。
計画に必要不可欠な駒である筈のC.C.までもが殺し合いに参加させられている点。
もしも、本当に死ねるというのなら――――それは喜ばしいことではあるのだが。信憑性は極めて薄い。
(探ってみる価値はあるな。あとは……ルルーシュか)
大衆の前で大きな失態を犯したルルーシュとの合流は最優先事項だろう。
特にV.V.に軽くあしらわれたことで彼が変な気を起こさないとも限らない。
生来のもやしっ子である彼を一人にしておく訳にもいかないだろう。
自分でなくとも、咲世子やロロと早い段階で接触出来ていれば望ましいのだが……。
「……ん?」
そこまで考えて、C.C.は自身の進行方向に一軒の小さな家屋が立っていることに気付いた。
強い風が吹けば倒壊してしまいそうなオンボロ具合だ。
が、特筆すべき点は――その家に明かりが付いているということ。
(誰か、いる? 無用心な奴だな)
C.C.はブリッツスタッフを握り締め、ゆっくりと小屋に近づいて行った。
目的が人探しである以上、ひとまず出会える人間とは接触しておきたい。
それが、V.V.の甘言に乗せられた殺人者である可能性もあるが、背に腹は変えられないといった所か。
とはいえ、少なくともここまで無用心な真似をするのは、戦闘経験の薄い一般人か余程のバカしか考えられないだろう。
C.C.にとっては組し易い相手と言える。
それに出来れば生身でも戦闘能力のある危険ではない人間とコンタクトを取って置きたい気持ちもあった。
今のC.C.にはナイトメアフレームも圧倒的破壊力を持つ武装もない。
不死故、死ぬことはないとしても、同行者が居た方が事は上手く運ぶ筈なのだ。
(さて。鬼が出るか蛇が出るか……どっちだろうな?)
ドアのノブに手を掛け、C.C.はゆっくりと扉を開けた。
その時、リン――という鈴が鳴るような音が聞こえたような気がした。
†
「…………な」
C.C.は言葉を失った。
いや、正確に言えば『かける言葉が見つからなかった』とでも表現するべきなのだろうか。
いざというと時はすぐに応戦出来るよう、杖を構えてオンボロ小屋へと足を踏み入れた彼女の視界に飛び込んで来たのは、
極めて不思議な格好をした男の背中だった。
思わず見上げてしまうような長身に適度に付いた筋肉。
が、その着ている服と言うのが何故か「タキシード」を着ているのだから。
そんな怪しい格好をしたいい年頃の男が入り口に背中を向け、ゴソゴソと戸棚を漁っていれば普通は意表を突かれるというものだ。
「お?」
しかし、流石に掘っ立て小屋に近い家屋で人が入ってくれば誰でも気付く。
テンガロンハットの鍔に取り付けられたリングを風鈴のような音で鳴いた。
男が振り向きざまにC.C.の姿を捉え、間の抜けた声を漏らした。
――が、C.C.の姿を確認するや否や男は小さくため息をつくと、また棚を物色する作業に戻った。
そしてこのような露骨な態度を取られてC.C.が腹の虫を悪くさせるのも道理。
C.C.は普段よりも僅かに声調を低くして男に声を掛ける。
「おい、そこのお前」
「なんだ」
「何をしている」
「……見りゃあ分かるだろうが。食い物探してんだよ、食い物」
「こんなちっぽけな家で、か?」
「ああ」
ひとまず会話は成立しているが、背中と言葉を行き来させるのはあまり気分の良いモノではなかった。
C.C.は額に手を当て、何とも微妙な相手と遭遇してしまったと、己の不幸を呪った。
「まあいい。お前に尋ねたいことがある」
「なんだ」
「――ルルーシュという男と会ったことはないか?」
「ああ、まぁ……会ったな」
「何?」
C.C.が僅かに反応する。
しかし、
「最初の、ホールで妙なポーズを取ってた奴だろ?」
「…………ああ。そうだ、会ってるよ」
C.C.の心の中で少しだけ芽生えた期待の泡がパチンと弾けた。
そう。ルルーシュの姿自体はあの場にいた人間全てが目撃している。
しかもご丁寧に「名前付き」で、だ。
しっかり記憶されている辺り、ルルーシュの前途はおそらく多難だろうとC.C.は思った。
「そういや……アンタもアイツの側にいたな」
「……そんなこともあったかもしれんな」
そして、当然のようにC.C.も認識されている。
不用意な行動を取ったルルーシュを庇うためには、あの場はああするしかなかったのだ。
またも不安材料が一つ、増えた。
「まあいいさ。ところで…………アンタ、何か食い物持ってないか」
クルッとC.C.の方へと向き直りながら男が言った。
乾いた首の骨が鳴る音がちっぽけな部屋の中に響いた。
「は? 荷物の中に食料なら入っていただろう」
「俺のには何も入ってなかったから言ってるのさ」
改めて、C.C.は男と視線を交わらせる。
一言で言ってしまえば、いまいち捉え所のない風貌だ。
黒髪、細い眼、突き出た顎。典型的な東洋人のような顔付きだが瞳はガーネット色だ。
少なくとも、歳は二十代半ば以上。正面から向き合うとその痩躯と長身が異様に印象的だった。
「人に頼み事をしたいのならまずは名乗れ」
「俺はヴァンだ。今は夜明けのヴァン≠ナ通ってる」
「私はC.C.だ。まぁ好きなように呼べ」
「ああ、分かった」
しかし、先程は眼に入らなかったが、その腰には日本刀らしき武器がぶら下げてあった。
長さは若干、短め。脇差だろうか。
刀は扱うのが非常に難しい。剣の心得のない人間にとっては鉄パイプにすら劣った武器にまで成り下がる。
そう考えると目の前のヴァンと名乗った男は、それなりに戦いの経験はあるのだろう。
実際に、彼からは常人とは明らかに違う雰囲気を感じる。
明確な判断基準がある訳ではなく、勘≠ニいう極めて原始的な感覚に頼ってこそいるものの……。
理性で考えればただのバカにしか見えないが、直感的な部分では彼には特別な力があるのではないか、という気はするのだ。
「じゃあ、何か食い物を――」
「おいおい。まさか私が、簡単に『はい』とでも言うと思っったんじゃないだろうな」
「……へ」
が、無遠慮な男の質問にC.C.のイライラはピークに達していた。
目の前の不躾な人間がバカで間抜けであることは一瞬で理解出来たが、それでも全ての話が片付く訳ではない。
危険人物には到底見えないが、使えない人間に用はない。
自分は「愛」や「慈悲」を売り歩く宣教師ではないのだから。
C.C.は部屋の中央に置かれた木製の椅子に腰掛けると、テーブルに肩肘を付く。
「いいか、確認するぞ。私とお前はこうして出会った訳だ」
「はぁ」
「ところで、お前剣の腕に自信は?」
「それなりに」
「そうか。言わなくても分かると思うが、私はあのルルーシュという男を捜している。そして見ての通り、私は女の身だ」
「はぁ」
「…………お前、真面目に人の話を聞いているのか?」
C.C.はこの目の前の腕は立ちそうだがバカっぽい男を利用出来ないだろうか、と考えていた。
寝首を掻かれる――という場合を除けば、同行者を作るのはそれなりに有効な手段だ。
出会ったばかりの相手を信頼出来るのかどうか、という問題は残るが、当然こちらも情報は小出しにする。
こちらがV.V.と知り合いであることが知られている以上、C.C.自身には情報源としての利用価値があるはずだった。
「すいません」
ヴァンはとても素直に謝った。
大の大人が背を丸めて項垂れる姿はなんとも情けない光景だった。
「……まあいい、心して食え」
そう言うとC.C.はデイパックの中から「PIZZA HAT」というロゴの描かれたケースに入ったピザを二つ取り出してテーブルの上に置いた。
大量のピザと「エアドロップ」という水中で息が出来るようになる飴玉が彼女の残りの支給品だった。
C.C.は大のピザ好きであるが、まぁコレだけあるのならば一枚ぐらいやってもいいだろう、と考えた訳である。
それにこれほど沢山用意されたピザを消費しないのは勿体ないことだ。
脱出するまでに完食するくらいの勢いで食べるのもいいだろう。
「悪いな」
「礼はいらん。お前にはその分、働いてもらうからな」
「……なんだそりゃ」
小さく毒づいたヴァンは、自身もピザを口に運ぼうとしているC.C.を尻目にとある行動に出た。
彼にとっては極めて当然、だが他人から見れば極めて異様なアレ≠ナある。
ヴァンはテーブルの下に置いてあったデイパックへと両手を突っ込むと、淡々とその中から色鮮やかなボトルを取り出した。
赤――ケチャップ。
黄――マスタード。
白――タルタル。
緑――サルサ。
朱――チリ。
飴――ハチミツ。
薄緑――ビネガー。
紅――タバスコ。
黒――ソイソース。
そして、右手の指に四本、左手の指に四本と器用に挟み込んだソレらを――思いっきりピザの上にぶっかけた。
「な――っ!?」
それは、思わず椅子から立ち上がり、声を荒げてしまうような衝撃だった。
豪快な音と共に八色の粘性を帯びた各種調味料がヴァンの目の前に広げられたピザを毒々しい色に染めて行く。
「ピ、ピザが……っ!」
ケチャップとマスタードが赤と黄色の山を作り、タルタルソースがドロリとピザのクラストを侵食。
サルサの緑色とチリの朱色が混ざり合って、チーズを覆い隠し、ハチミツが飴色のヴェールでオニオンをコーティングする。
強烈な酸の臭いを撒き散らしながら、ビネガーがこんもりと山を作っていた他のソースと混ざり泥水のような色合いを示し、
タバスコも負けじと殺人現場の血痕のような足跡をピザ生地に残す。
そして、トドメのソイソースがピザを水浸しにする。
「……おい、ヴァン!」
「なんだ、くれるんじゃなかったのか」
「確かにやるとは言ったが……しかし、これはあまりにも! これでは……ピザが可哀想だ」
「何言ってんだ。お前の分はそっちにあるだろう。問題ないはずだ」
持っていた調味料をテーブルの上に全て置いたヴァンは、更にデイパックからペッパーのミルを取り出しキリキリと。
黒胡椒と白胡椒が砂漠の粒のようにピザに香ばしい薫りを付け加える。
「……とんだ味オンチだな」
大好物のピザがありったけの調味料に凌辱される光景を見て、C.C.は憎々しげに呟いた。
百歩譲ってタバスコを掛けまくるのはアリ≠ゥもしれないが、他のスパイスは普通は在り得ないだろう。
彼女が気になっていたのは味ではなく、単純に見た目の悪さだった。
「お前も使うか」
その時、ふと顔を上げたヴァンが調味料のボトルを顎で示しながら言った。
胡椒を使い終わった彼は、デイパックから他の瓶やチューブを取り出しテーブルの上に並べる。
まだまだ、味付けは終わらないらしい。
「その調味料をか?」
「ああ」
「……美味いのか?」
「まだ、完成してないが――絶品だ」
「……お前ほど、舌がおかしい人間は私も初めて会ったよ」
その時、ヴァンの言葉を聞いて、数秒彷徨ったC.C.の視線が机上のとある調味料へと注がれた。
ムスッとした表情を浮かべたC.C.は無言でボトルを掴む。
ソレは彼女と馴染みの深いソースだった。とある料理を食べる際、彼女はこのソースを掛けて食べるのだ。
「使いたいのか、それ」
「……! 誰が使うかこんなもの!」
「そうかい」
ドンッと持っていた「マンゴーソース」の瓶をC.C.は荒々しく机に置いた。
C.C.は不老不死であるため、生きるためではなく完全に趣味嗜好で食事を行う。
普段からピザを食べて寝てばかりいるイメージのある彼女だが、目玉焼きにはマンゴーソースを使うのがお気に入りだった。
自分のことを棚にあげてヴァンに文句を言っているが、彼女も中々の味覚オンチであることは間違いない。
そんなC.C.からしても、目の前の男が行うピザへの暴行は背筋が凍るような戦慄を覚えずにはいられなかった。
「よし、出来た」
「うっ……」
ハチミツの甘ったるさを完全に押し流すような異臭がテーブルの向かいからツン、と鼻腔を刺激する。
ピザの生地の部分はもはや一切見えない。
全てが調味料によって覆われ、押し流され、もはやコレをピザという物体であると認識する術も「PIZZA HAT」のロゴが入ったケースだけである。
そして、既に準備してあったナイフとフォークを高らかに掲げ、ヴァンは変わり果てた物体(ピザだったもの)にナイフを入れる。
これだけ色々なモノが掛かっていると、手掴みで食べるのは難しいためだろうか。
そして丁寧に切り分け、フォークを突き刺しパクリとヴァンは何の躊躇いもなくソレを口に含んだ。
ポタポタと黄土色の液体がピザの先端の切っ先から滴り落ちる。
飛び散った調味料がテーブルを汚した。
「……か――」
そして、特製ピザの一口目を飲み込んだヴァンがカッと瞳を見開きながら叫んだ。
「からぁあああああああああああぁぁああああああいっっっ!!!」
と。
(…………バカだ)
そして、ヴァンは凄まじい勢いでナイフとフォークを動かし食事を始める。
そりゃあ、辛いだろう。あれだけ色々掛かっているのだ。
だが、それでもヴァンの手は止まらない。どれだけ極端な味付けが好きなのだろう。
結局、C.C.はそんなヴァンを半笑いのまま見つめつつ、何も調味料の掛かっていないピザを口に運ぶのだった。
(私の勘も衰えたのだろうか……。この男にはルルーシュに似た「拾い物」の感覚を覚えたのだが)
C.C.は、やっぱりこの男を頼るのは止めようかと本気で考え始めていた。
いや、実際に行動に起こすとなると色々面倒なので、ピザを食べてから考えるとするのだが。
ルルーシュも色々と問題は多かったが、基本的には聡明な男だった。
少しばかり肉体労働が苦手で、うっかりすることが多いくらいで、あれはあれで相当に優秀だ。
彼が本当に心底の愚か者ならば、C.C.はいくら腕が立っても捨て置くつもりでいた。
が――とにかく、現時点での一つの真実として。
C.C.の予想を超える範囲で、このヴァンという男は――かなりのバカである。
それだけは紛れもない事実だった。
【一日目 深夜/F−1 小屋】
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]ブリッツスタッフ(アイテム効果:炎・中ダメージ、MP消費小 品質:最高魔力)@ヴィオラートのアトリエ
[所持品]支給品一式、エアドロップ(アイテム効果:水中呼吸が出来る)x3@ヴィオラートのアトリエ
ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2
[状態]健康
[思考・行動]
0.ピザを食べる
1.生還し、不老不死のコードをルルーシュに譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる
2.ルルーシュと合流する
3.利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
[備考]
※TURN11「想いの力」終了後、日本に戻る前から参戦
※不死でなくなっていることに気付いていません。
【ブリッツスタッフ@ヴィオラートのアトリエ】
振るうことで火球を杖の先端から発射する錬金術のアイテム。
数回使用することで壊れる。他に雷と氷を発するパターンもある。
従属効果、範囲指定はなし。
【エアドロップ@ヴィオラートのアトリエ】
口に含むことで水の中でも息が出来るようになる。
原作の描写では目も見える。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、菊一文字則宗@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
[所持品]支給品一式、調味料一式@ガン×ソード
[状態]健康、空腹
[思考・行動]
0.ピザを食べる
1.カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する
2.レイが気にならない事もない。ミハエルは出会ったら倒す。
[備考]
※23話「みんなのうた」のミハエル戦終了後より参戦。
※ヴァンはまだC.C.の名前を覚えていません。
【薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-】
志々雄一派、十本刀の一人。「刀狩≠フ張」こと沢下条張の愛刀。
新井赤空作後期型殺人奇剣。刃の強度を保ったまま可能な限り薄く鍛えた、数メートル程の細い帯状の刀。
剣先が僅かに重くなっていて、鞭の如く手首の微妙な返しを使って刃を自在に操ることができる。
張はこの刀を腹に巻いて持ち歩いていた(防具も兼ねており、剣心の攻撃を食らっても大したダメージにならなかったのはこのため)
【菊一文字則宗@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-】
志々雄一派、十本刀の一人。「天剣≠フ宗次郎」こと瀬田宗次郎の愛刀。
【調味料一式@ガン×ソード】
ヴァンが料理を食べる際に必ず使用する調味料のセット。
これにはエンドレス・イリュージョンに存在しない類の調味料も入っている様子。
美味いピザが食いたくなってきたわ
投下終了です。
C.C.の持っているピザが一枚だけっぽく見えますが、枚数は適当で。
投下乙!
最近ピザ食ってないから、俺も食いたいなぁ
ところで
>>383の視覚は資格の間違いでは?
投下乙!
ヴァンが相変わらずのバカだーw
C.C.の今後の動向も気になるな。
終わったロワ
投下乙、むしろ俺はC.C.を食いたい
投下乙
流石はヴァン。期待通りのぶっかけをやってくれたな。
投下乙です。
両方知らないキャラでしたが二人ともなかなか面白いキャラでした。
右京さんとLのを書き上げたのですが、今回は不安な点があるので、
先に仮投下スレのほうに投下させていただきました。
恐縮ですが意見をお願いします。
あと最近規制が解除されたようなので、これからは普通に投下できます。
今まで代理投下をしてくださった方、ありがとうございました。
仮投下乙です。
別に問題無いと思われますよ−。
仮投下乙です。
自分も特に問題は無いと思います。
ついでに自分も仮投下したので意見・指摘などをおねがいします。
>>398 仮投下乙
Lが月を殺そうとするのにちょっと違和感を感じたけど、まあ十分許容範囲だと思います
>>400 知らないキャラなので内容には触れられないけど、こちらも乙です
>>401氏の指摘部分を少し修正したので、今から杉下右京、Lを投下します。
「これで私の支給品は全部です」
「はい、ありがとうございます」
寂れた廃洋館の一室、薄暗い照明に照らされたテーブル。
その上には水や食料などの日用品から、拳銃など普段はお世話にならない品まで見受けられる。
そしてLと右京は一部が破損したテーブルを挟んで薄汚い椅子に座り、言葉を交し合っていた。
「武器になりそうなのは、私に支給された拳銃くらいでしょうか」
「はい、後はこの指輪……どうやらこの指輪を持っていると火から守ってくれるそうです」
「にわかに信じ難い話です」
テーブルの上の指輪を摘むように取り、右京に掲げるL。
右京はその指輪の効能に疑問を示した後、テーブルに置かれた別の品に着目した。
「これが先ほど仰った参加者のプロフィールが記されたものですか? 想像とは違った形をしてますね、拝見してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、構いませんよ」
右京が着目したのは、銀一色に彩られた二つ折りの機械。
Lの許可を得た右京は、機械に手を伸ばす。
それを開けるとまず上下に一つずつある液晶画面が目に入り、下の画面の横には機械を操作するためのボタンが並んでいる。
右京は左側にあるスイッチを押し、機械を起動させた。
「どうやらこれはゲーム機のようですね」
「ええ、下のカーソルを詳細を見たい人物の名前まで動かして、ここのボタンを押せば見ることが出来ます」
画面には全員に支給された紙の名簿と同じものが表示されている。
だがこれにはその先があり、Lの指示通りに動かすことでその人物の詳細情報を閲覧することが出来た。
右京はとりあえず自分自身の名前を選択し、情報を開示する。
すると画面には右京の名前、年齢、性別、職業、そして好きなものが表示された。
「思ったより情報の量が少ないですねぇ……」
「ですが、貴方を信用するには十分でした」
右京はLの自信から、この機械には参加者の情報が事細かに記されていると考えていた。
しかし実際の情報量は微量であり、Lの自信はブラフに過ぎなかったのだ。
(このLという青年……やはり侮れませんね……)
右京は、改めてLの実力に感服の意を示した。
「それにまだこれには続きがあるみたいですよ」
「というのは、ここのことですか?」
Lに促され、右京は機械の下部分に視線を移す。
そこには合計二つ、何かの差込口のようなものがあった。
「はい、おそらくここに何かを差し込むことで、さらに情報を得ることが出来ると思います」
「私も同感です、そうなると当面の目標はここに差し込める何かを探すこと、になりますか」
とんとん拍子に会話は進んでいく。
これも二人の天才が集まったからこそ、為せる業の一つだ。
「そうなります、それで右京さん、一つ――――」
Lが言葉を発そうとした瞬間。
外の森林から、耳を劈くような轟音が響き渡ってきた。
「…………」
Lは椅子に座りながら、微動だにせず、
右京は素早い動きで窓際まで移動し、外から見えない位置で窓の外の景色を見渡す。
そうして数分が経過し、大気を震わせ廃洋館に地響きを奏でさせた轟音は終焉を告げた。
「……収まりましたか」
「はい、どうやら外で何者かが木を薙ぎ倒していたようですね」
先ほどまで洋館を崩壊するかと言うほどの轟音が襲撃していたにも関わらず、二人に動揺の色は見られない。
右京は窓際から緩慢な歩調でテーブルまで戻り、再び古びた椅子に腰を掛けた。
「見えましたか?」
「いえ、木が倒れるのが見えただけです」
右京の返答を聞き、Lは残念そうに『そうですか』と口にした。
「ところでLさん、先ほど私に何か尋ねたいことがおありのようでしたが、どういったご用件でしょうか?」
「ああ、よろしければこの場にいる右京さんの知り合いを教えていただきたいのですが……
やはりなるべく多くの情報は収集してきたいので」
「ええ、構いませんよ、この私の名前の下にある亀山薫が私の知り合いです」
右京は再びゲーム機を起動させ、今度は亀山薫の名前を開く。
Lは興味深そうに画面を眺めた後、『同僚の方ですか?』と質問した。
「はい、同じ特命係に勤めてます。ここには警察官としか書いてありませんがね」
「ぜひ一度お会いしてみたいです」
「私も彼とは再会したいですねぇ、この場においての唯一の知り合いですから
それについて私から提案があるのですが、よろしいでしょうか?」
右京は僅かに顔を強張らせた後、緊張した面目で自身の提案をLに持ちかけた。
――――右京の提案は、端的に言ってしまえば亀山に会いたいという内容だ。
ただし皆目見当がついていないわけではなく、亀山が向かいそうな場所は目星がついている。
そこはH−9にある警察署、警察官である亀山は高確率でここを訪れると右京は睨んでいた。
「どうでしょうか? 亀山君の人格は私が保証します
仲間を集めてV.V.を逮捕するのが双方の目的ですし、悪い相談ではないと思うのですが」
「確かに悪い相談ではないと思います
……が、今は駄目です、まだ早すぎます」
先ほどの『お会いしてみたい』と言う言葉とは矛盾した発言。
しかし右京が面食らうことは無い、何故ならこの返事も予想出来ていたからだ。
「というのは……やはり先ほどの轟音でしょうか?」
「ええ、音は既に止んだとは言え、このC−4エリアに危険人物が潜んでいる可能性は十分高い
もしそいつに大した戦力の無い我々が出会ってしまったら、元も子もないですから」
確かにLの言うとおり、まだこの近辺には木を薙ぎ倒した人物が潜んでいる可能性は高い。
右京もそれは理解できていたし、今すぐに廃洋館を出発する気は毛頭無かった。
だが腑に落ちない、払拭できない違和感が一つだけ存在するのだ。
「Lさん、先ほどから貴方の口ぶりを聞いているとどうも引っ掛かる
まるで……まだ知らない何かにに怯えているような」
右京が抱いた違和感は点は二つ。
まず一つ目は、最初に支給品を公開し合った時のアズュールという指輪に対する反応。
右京にはあれが風水などで使用される曖昧な代物に見えたし、ましてや本当に炎から身を守ってくれるとは思えない。
しかしLは、本当に信じているかのような素振りを見せたのだ。
二つ目は、先ほど近辺で発生した木を薙ぎ倒す轟音。
発生したすぐに窓際に向かった右京も、犯人の姿を見れるとは思っていなかった。
外はほぼ全てが木に包まれてるといっても過言では無いし、ましてやここは二階。
空を飛べる人間でも無い限り、暗闇に隠れて姿を見ることなど出来ないのだ。
Lもそれは理解していたと思っていたのだが、予想を裏切り心底残念そうに俯いている。
この二つの点が、右京の頭に引っ掛かって離れなかった。
「ええ、右京さんの言うとおり、私は未知の力……いわゆる超能力に怯えています」
予想外のLの告白。
確かにLが超能力に怯えていたのなら、木を薙ぎ倒した人物に対し強い警戒心を抱くだろうし指輪を信じるのにも説明がつく。
だがそれでも、右京には超能力の存在を信じることは出来なかった。
「私の推測ですが、この場には私達の想像もつかないような特殊能力を持った人間がいると思います」
「指輪と同じで……やはりにわかには信じ難いです
ですが……全く心当たりが無いわけでもありません」
確かに、存在を信じることは出来ない。
だがそれらしき存在を証明する証拠なら、いくつか散見していた。
洋館に降り立つ前、参加者と思わしき人間が集められた場を思い出す。
そこで惨劇が起こる前に、ルルーシュと名乗る少年がV.V.に食い掛かった時、
まるで『死ね』と言えば、本当に死亡するかのような振る舞いを披露したのだ。
最も実際に発動することは無かったのだが。
他にも自分や亀山をあの場に集めたり、会場内のどこかに飛ばしたり、
右京の常識では推し量ることの出来ない現象が、あの場では起きている。
「おそらく貴方の心当たりと言うのは、最初の会場のことですよね?
確かにルルーシュと名乗るあの少年は、不可解な行動を取りました
それに加え、私はまだ二つ想像する材料を持っています」
Lはそう言うと自信あり気に、自分の意見を語りだす。
「まず一つ目ですが……その前に一つお尋ねします
今までに貴方は、キラ、またはL……つまり私の話は聞いたことありませんか?」
「存じませんねぇ……申し訳ありません」
「……私がいた世界では、キラ、Lと言えば誰でも知っています
ですが貴方は知らない、それはおかしいんですよ」
「それは妙な話ですね、私も警察官である以上情報収集は欠かさないようにしてますから」
お互いの常識の食い違い。
右京にはLが嘘を言っているようには見えず、何よりここで虚言を吐く意味が無い。
となれば、導き出される結論は一つしかない。
「今のでハッキリしました、おそらくここには――――」
「色々な世界から人間が集められている、ですか?」
「……ええ、理解が早くて助かります」
「先ほど貴方は『私がいた世界』と仰りましたからね、どうも引っ掛かるフレーズでした」
「成る程、流石です。どうやら貴方は日本人のようですが、私がいた日本とは別世界のようですね
同じ国でも多少の差異がある……一般的に言うパラレルワールドと呼ばれるものでしょうか」
「今は情報が少なすぎますが、そう判断して問題ないと思います
それではLさん、続きを」
右京に続きを促され、Lは一つ目の材料についての話を再開する。
「まず私は元々いた世界で、自分の今までの常識を覆す存在に出会いました
死神と名乗る異形の化物、そして……名前を書かれたらその人物は死ぬというノートです」
「随分と恐ろしいノートですねぇ、そんなノートが出回ったら世界は崩壊してしまう」
「はい、右京さんの言うように、このノートを悪用する者が現れました
それが先ほど話したキラです、そして私はキラを逮捕しようと目論見ました」
ここで会話は止まり、刹那の沈黙が訪れる。
「……それで、最終的にどうなったのですか?」
恐る恐ると言った口調でLに尋ねる右京。
Lも仮面で顔色は伺えないが、どこか言うのが憚られるような様子だ。
「それが二つ目の材料の正体です、これだけは自分でも信じ難い話なんですけどね」
「…………私はノートに名前を書かれ、死んだはずなんですよ」
右京は今までもこの会場に降り立ってからは、数々の異常な出来事を体験していた。
だがLのこの発言は、それを遥かに上回る衝撃を右京に齎した。
「それは……驚きです」
この世に存在する限りどんな生物にも、必ず死は訪れる。
死とは絶対に避けえぬ事象であり、一度訪れてしまえば二度と覆すことは出来ない。
これは、万物における絶対法則である。
しかしこの殺し合いの主催者V.V.は、覆るはずのない絶対法則をいとも容易く覆してみせたのだ。
「実は死んでいなかったということは……?」
「ありえません、そのノートに名前を書かれたら死から免れることは出来ませんから、私は確かに心臓麻痺で死亡しました
流石にこれを信じろとは言いません、ですが、これは事実です」
今までとは違い、言葉にL自身の感情が籠められている。
顔は仮面に隠れているが、表情にもそれは現れていると右京は感じ取れた。
「……分かりました、貴方がそこまで言うなら信じざるをえない。警察署に行くのは後回しにします」
Lがこの言葉に籠めた感情が、どんなものから来るのかは分からない。
それでも初めて見せるLの感情的な言葉を、信用しないにはいかなかった。
「ご理解ありがとうございます、貴方がそこまで私を信用してくれた以上
私も貴方を信用しない訳にはいきません、素顔をお見せします」
そう言って右京の言葉を待たず、仮面を上に持ち上げ外すL。
数秒後、そこにはLの素顔があった。
「これはこれは……こちらも信頼していただいて嬉しいです」
右京は柔和な笑みを浮かべながら、Lの瞳に視線を注ぐ。
Lの素顔は想像していたよりも若く、動作も相まって余計に幼くも見える。
だが目の下にある隈や、顔が露わになったことで放たれる独特の雰囲気は、
やはりLを只者ではないと、右京に実感させた。、
「はい、V.V.はキラに匹敵するほどの大犯罪者、必ず我々で逮捕します
それに私もずっとここで燻っているつもりはありません、そうですね……夜明けを迎えたらすぐに出発しましょう」
言葉と共に伸ばされる手。
右京も右手を差し出し、Lの手を握り締める。
今ここに、世界最高の名探偵と警視庁切っての切れ者が手を組み合った。
――――――――――――――――――――――――
「……右京さん、こんな時に申し訳ありませんが、これだけは一つ、絶対に言っておきたいことがあります」
伸ばした腕を引き下げたLは、改まった口調で言葉を紡ぐ。
右京はそれに対し、『なんでしょうか?』と返した。
「名簿の私の上にある名前、夜神月には気をつけてください
この男こそがキラであり、私を殺した張本人です」
――――――――――――――――――――――――
夜神月。
東応大学に主席で合格できる頭脳を持ち、社交的で女性の扱いにも長ける。
自他共に認める優等生であり、極めて周囲の評判もいい人間だ。
しかしその実は歪曲した正義感と、独善的で冷酷非道な性格を持ち合わせ、
最低最悪の殺人兵器デスノートを使用して、次々と犯罪者に裁きを下した。
その行為は留まることを知らず、自らに刃向かう者にも容赦なく粛清し、
やがてLでさえも、その牙に掛けた。
(夜神月……この場に来て、お前が何をするかなど私には分かっている)
V.V.の言葉が真実であるなら、夜神月はおそらく現在デスノートを所持していない。
これはキラを逮捕する絶対的なチャンスであり、二度と巡り合うことの無い機会だろう。
だがお前が、その程度で諦めるはずがない。
お前はこの場に呼び寄せられた人間を巧みに利用し、必ずこの殺し合いからの脱出を狙う。
お前ならばすぐにこの場には複数の世界から、参加者が集められていることに気付くはずだ。
この場に集められた人間など、お前にとってはどうでもいい存在。
都合のいい時に利用できる駒にしか過ぎないだろう。
可能であるならば私も、生きたまま確保したい。
しかしお前が生きていれば、この場にいる罪の無い人間の多くに不幸が訪れる。
私とお前はいずれ確実に相まみえる時が来る。
そして、いざという時が訪れたならば。
私には、お前を殺す覚悟は出来ている。
【一日目深夜/D−5 廃洋館】
【杉下右京@相棒(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、S&W M10(6/6)@バトル・ロワイアル、S&W M10の弾薬(24/24)、おはぎ×5@ひぐらしのなく頃に
[状態]健康
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する 。
2:早朝になるまで廃洋館で待機。
3:早朝になったらLと共に廃洋館を出て、警察署に向かう。
4:詳細名簿の追加データを探す。
5:超能力を信じる確証が欲しい。
※劇場版終了後からの参戦です。
※夜神月を危険人物と断定しました。
【L@デスノート(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、ゼロの仮面@コードギアス
[状態]健康
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する 。
2:早朝になるまで廃洋館で待機。
3:早朝になったら右京と共に廃洋館を出て、警察署に向かう。
4:詳細名簿の追加データを探す。
5:夜神月を最大限に警戒、どうしようもない状況になったら殺害も考慮する。
※本編死亡後からの参戦です。
※右京、L共に外で木を倒した人物(カズマ、容姿は全く知らない)を警戒しています。
【おはぎ×5@ひぐらしのなく頃に】
鬼隠し編においてレナと魅音が圭一に見舞いとして差し出した品。
新聞紙に包まれていて、おはぎにそれぞれA〜Eまでの貼り紙がある。
なおEのおはぎだけ他のより小さく、どれか一つだけタバスコが混入されている。
【アズュール@灼眼のシャナ】
“狩人”フリアグネが所持していた、指輪型の宝具。
熱量を伴った物理的な意味での炎を消去する「火除けの結界」を球状に展開し、所持者を炎から守る。
結界は“存在の力”を込めることで発動するようだが、所持者の拒絶する意思に反応して緊急発動もするようだ。
「火除けの結界」はアラストールの炎の吐息さえ防ぎきるが、“存在の力”の見た目上の炎には一切効果がなく、
防ぎ消すのはあくまで「本物の炎」及び「本物の炎の性質を持たせた“存在の力”」だけである。
【ニンテンドーDS型詳細名簿】
名前通り見た目はニンテンドーDS型だが、その中身は参加者の詳細名簿。
現在の情報量は少なく、名前(名簿と一緒)、年齢、性別、職業(表向きの)だけ。
しかしカセットやカードを差し込めば、情報量は増えると思われる。
以上で投下終了です。
意見をくださった方、ありがとうございました。
投下乙です。
Lは死亡後から参戦ですか。
月の誤解フラグがこれからどのように作用するか期待したいですね。
それでは自分も城戸真司を投下します。
満天に広がる綺羅星と、月光に照らされた漆黒の海。
その海辺に座り込み、仮面ライダー龍騎――城戸真司は名簿を確認していた。
「蓮は、いないのか」
真司が最初に探したのは仮面ライダーナイト――秋山蓮の名前だった。
自分は彼と戦っている最中だった筈だ。それが気が付いたら殺し合いなんかに参加させられていた。
それならば蓮もこの場所に居るのではないかと、名簿を取り出し名前を探したのだが、生憎にも蓮の名前は無い。
その代わりというべきか、知り合いの名前を一つと、あまり見たくない名前を二つ、合わせて三つ見つけた。
それは北岡秀一、浅倉威、東條悟の三人だ。
(北岡さんは判らないけど、浅倉と東條は間違いなく殺し合いに乗ってるだろうなぁ)
殺人犯である浅倉と、英雄になるためなどという理解しがたい理由で仲間まで殺害した東條。
二人の人柄を思い浮かべ、思わずため息を付く。
この場に居る唯一の知り合いと呼べる北岡も、外面は良いが利己的なところが多々あり、その策略には何度か騙されたこともある。
浅倉と東條は言うに及ばず、北岡も客観的に見れば碌な人間ではない。
それ以上は三人のことを考えても仕方がないと判断し、名簿をデイパックに戻す。
代わりに黒いカードケースを取り出す。それを見つめながら、改めて自分が此処に来るまで何をしていたのかを思い返していく。
(俺は、蓮と戦ってたんだよな)
まず思い出すのは、ミラーワールドでの仮面ライダーナイトとの戦い。
その戦いで優勢となり、止めを刺そうとカードデッキから『FINAL VENT』のカードを引き出したのが、真司が最後に覚えている記憶だった。
結果的にナイトを倒すチャンスを逃した訳だが、真司はどこかでホッとしている自分に気付く。
そんな自分に苦笑するが、今はそれ以上に迷っていた。それは殺し合いに乗るかどうかの迷い。
(……何を迷ってるんだよ。決めただろ。迷っていても誰一人救えないなら、きっと戦うほうがいいって。戦いの辛さとか重さとか、
そんなのは自分が背負えばいいんだ。自分の手を汚さないで、誰かを守ろうなんて甘いんだ)
今一度、決意を心中で述べるが、真司の決意はあくまで他のライダーに対してのもの。それ以外の人々を傷付ける積もりなど毛頭ない。
だが、真司の脳裏からは一つの可能性がどうしても離れなかった。
それは『神崎士郎がこの殺し合いに関わっており、殺し合いはライダーバトルの延長である可能性』
『ライダーバトル』――鏡の中の世界『ミラーワールド』において、神崎士郎が作り出したカードデッキを手にした十三人の仮面ライダーが、
そこに生息する『ミラーモンスター』と契約し、最後の一人になるまで続けられる戦い。
そして最後の一人となったものは望みを叶えてもらえる。規模は小さいかもしれないが、概要はこの殺し合いと同じものだ。
(最後の一人になるまで戦って、何でも願いが叶うところといい、どう考えてもライダーの戦いと無関係だとは思えないんだよな。
だとしたら、あのV.V.とかいう子供は神崎の仲間? それとも神崎のほうが協力者なのか?)
これがライダーバトルの延長であるのならば、真司は戦わなければならない。何故なら、真司には目的があるから。
(俺は決めたんだ。優衣ちゃんを救うために、戦うことを。でも、その為にライダー以外の人たちまで犠牲にしないといけないのか?)
真司は元々望んでライダーとなった訳ではない。偶然にもカードデッキを拾ってしまったことで戦いに巻き込まれてしまったのだ。
それでも持ち前の正義感故に、当初から人々を襲うミラーモンスターを倒し、ライダーの戦いを止めるために奔走してきた。
だが、この殺し合いに参加させられる直前に、真司はライダーバトルで最後の一人になるまで戦うことを選んだ。
全ては一人の少女、神崎優衣を救うために。
神崎優衣。ライダーバトルを主催した神崎士郎の妹であり、真司にとっては大切な友人である。
そんな彼女は二十歳の誕生日を迎えると消滅してしまう運命にある。
彼女の消滅を防ぐために、神崎士郎はカードデッキを開発し、ライダーバトルを始めた。
倒されたライダーやモンスターの命を集め、それを新しい命として優衣に与えるために。
真司は戦いを止めたら優衣が消滅してしまうことを知ると迷い始めた。
そして悩み脱いだ末に決断したのだ。優衣を救うために戦うことを。
だが、今その決意が揺らぐ。他のライダーを倒すことにさえ散々迷ったのだ。
普通の人間を傷付けるなど、それこそミラーモンスターと何の変わりもない。
(優衣ちゃんは助けたい。でも、人を傷付けることはできない。俺は、結局どうすればいいんだよ……)
深いジレンマに悩まされ、真司は頭を抱える。元々単細胞な性格故に、一度悩むとなかなか抜け出せない。
それでも考える。普段は殆ど使わない頭を使って必死に。
数分が経ち、考えが纏まったのか、真司は勢いよく立ち上がる。
(考えるからダメなんだ。どれだけ考えても迷ってるぐらいなら、何も考えなければいい。)
真司の結論は思考の停止。考えること自体を止める投げ遣りな選択。
それでも、一つの決断は下していた。
「取り敢えず、他のライダーを倒そう。その後のことは、それから考えればいい」
敢えて決断を口にする。そうしないとそれすら出来なくなりそうだから。
手にしたカードデッキをポケットに入れ、デイパックからは地図を取り出す。
「まずは何処にいるか把握しないとな。っしゃあ! 頑張ってみますか」
無理矢理に気合を入れ、笑みを作る。それは、普段の彼を知るものが見れば痛々しいと感じる笑みだった。
城戸真司はその単純な性格から周囲に良くも悪くも『バカ』と評価される。
そんな彼だからこそ、ただ愚直に優衣を救うためにしか行動できない。
例え、優衣自身がそんな救いを求めていないとしても。
【一日目深夜/A−2 海辺】
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0〜1
[状態]健康、迷い
[思考・行動]
0:何処にいるか把握する。
1:他のライダー(北岡、浅倉、東條)を倒す。
2:1の達成後の行動はそれから考える。
[備考]
※参戦時期は47話、ナイトサバイブとの戦闘中です。
※殺し合いはライダーバトルの延長だと考えています。
※殺し合いに神崎士郎が関わっていると考えています。
※V.V.は神崎士郎の仲間、もしくは協力者だと考えています。
投下終了しました。
誤字・脱字、矛盾などありましたら指摘してください。
お二方投下乙です!!右京さん、いい相棒に巡り会えたなー。新シリーズは是非この二人でwww……おや、誰か来ry
龍奇は未把握ですが、作品自体がバトロワっぽいんですね。すごく興味を引かれました。
両氏乙でした。
>もりのようかん ◆ew5bR2RQj.
Lが死亡後から参戦てのはやっぱり斬新だなあ。
月の正体を知ってることがどう作用してくるのか楽しみだ。
>バカは考えずにただ行動するだけ ◆U1w5FvVRgk
どのロワでも相変わらずな感じだけど、これは参戦時期が微妙すぎるw
本気で戦う気になったら龍騎はけっこう強いからなあ
二人共投下乙!
だんだん息を吹き返してきたなー
三人共知らないキャラなのが悔しい
投下乙!
頭脳チームは知的で会話のテンポが良くてイイ!
龍騎は未把握だったけど主人公の城戸がマーダーフラグ持ちとはw
2/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子/
0/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
1/5【スクライド@アニメ】
○ストレイト・クーガー/
0/5【らき☆すた@漫画】
0/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
1/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○北岡秀一
2/4【ルパン三世@アニメ】
○次元大介/○石川五ェ門/
0/4【ローゼンメイデン@アニメ】
2/3【ガンソード@アニメ】
○レイ・ラングレン/○ミハエル・ギャレット
0/3【寄生獣@漫画】
0/3【ゼロの使い魔@小説】
0/3【バトルロワイアル@小説】
0/2【相棒@実写】
0/2【仮面ライダーBLACK@実写】
0/2【真女神転生if@ゲーム】
0/2【DEATH NOTE@漫画】
0/2【TRICK@実写】
0/2【バトルロワイアル@漫画】
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
0/1【灼眼のシャナ@小説】
まだ出てきて無いのはこいつらか
大体出揃ったね
今の対主催とマーダーはどのくらいの割合なんだろ
対主催
ルルーシュ、C.C.、ジェレミア、レナ、沙都子、詩音、悟史
カズマ、劉鳳、かなみ、あすか、かがみ、みゆき、みなみ、斉藤、ルパン
真紅、翠星石、蒼星石、ヴァン、新一、タバサ、貴子、三村、右京、亀山
光太郎、男主人公、月、L、奈緒子、上田、アイゼル
危険人物
スザク、つかさ、志々雄、後藤、玲子、浅倉、東條、瑞穂、イデオ、シャナ
マーダー
圭一、こなた、宗次朗、雪代、城戸、水銀燈、才人、シャドームーン、織田、桐山
未登場
ロロ、咲世子、クーガー、北岡、次元、五ェ門、レイ、ミハエル、
まとめてみた
後藤は危険人物だけど思考がもっと食べたいだし、実質マーダーじゃないかな
城戸は、とりあえずライダー限定っぽいしな
じゃあ城戸を危険人物にして後藤をマーダーに変えとくか
マーダーは少ないかもしれないけど、対主催同士で溝がある組み合わせがあるのがいい
令子のSSはあれ除外じゃいの?
前に、令子のキャラが矛盾してるからって話つかなかったっけ
それは分岐制の残りカス
しかしラインナップ的には危険人物の方がマーダーより強そうだな・・・w
対主催に一般人が多いから何とかなりそうだけど
とりあえず作品が投下されるだけでもありがたい状況だしな
あんまり贅沢は言えない
そういえば現在地付きじゃない方のマップがリンク切れしてるね
直し方分からないけど
>>431 スクライド勢「…………」
やっぱり無強化の状態じゃスクライド勢が最強か?
>>433 http://www4.atpages.jp/fullgenre/image/map.png ■以下の状況が考えられます
* 指定されたページへのアクセス権が無い。
* 指定されたページへのアクセスが混み合っている。
* トップページ(index.htmlなど)の無いディレクトリへアクセスしている。
----
状況から考えて
「トップページ(index.htmlなど)の無いディレクトリへアクセスしている」
が正解っぽい。治し方はindex.htmlを管理人に作ってもらうこと。
安価と同じ人が管理しているはずだから、その人にお願いするしかないと思われる。
突然表示されなくなった理由は、atpagesの仕様変更。昔はこんな条件なかったので表示されていた。
仮面ライダーBLACKの二人じゃね
RXじゃなくても、こいつらアホほど強かったような
>>436 仮面ライダーはよく知らなかった
ここのロワは一般人多いよね
基本的に仮面ライダーはとんでもない設定がデフォだからな
100m3秒とか垂直跳び20mとか
>>435 地図の画像、普通に見れるけど直ったのか?
>>437 信彦さんには期待してます
この時代はてつをより強いっぽいし
>>430 じゃあ今メインはどうなってんのかしら
ロロと検診 &水銀と令子がメイン?
それはどうかな
それによってプロットが変わってくるんだがどうなんだろうか。
自分の書きたいように書けばOK
>>443 あくまで一意見だけど、A−1ルートのほうが更新され続けてるしこっちがメインじゃないかな
でも
>>444の言うとおりお好きなようにどうぞ
うお、予約きた
相棒把握する場合、何を見ればいい?映画だけじゃ不十分?
>>447 映画+今やってるの……と思ったが、亀山君が退職してたな
あと仮投下来てるね
あんまり問題ないと思う
もっとこじんまりした事件が多いけど、だいたいあんなノリかもうちょいコメディっぽい空気で事件解決してるし
あと後半になるにつれ忘れられつつあったけど、右京さんは言い回しとかやり方とかのせいで周りの人望が薄かったはずなのでその辺は注意
詩音ってですます口調だったっけ?
いまいち思い出せん
Before
詩音「そうですよ、お姉」
After
詩音「くけけけけー」
即効で脳内再生されたわw
サンクスサンクス
453 :
◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 17:55:13 ID:BLP+IYOW
園崎詩音、次元大介、ロロ・ランペルージを投下します。
454 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 17:57:27 ID:BLP+IYOW
「さてと、じゃあ何があるか確認しますか」
一通り感動に浸っていた詩音だったが、さすがにずっとそうやっていたわけではない。
正直、詩音としてはずっとそうしていたかったのだが、今は状況が状況なので自身で自粛したのだ。
そんな彼女が一番最初にやったこと。
それは、自分に支給された道具の確認だった。
これから生き残るためにも、そして悟史を含めた部活メンバーを見つけるためにも支給品は必要である。
少なくとも身を守るものくらいあるだろうと思い、調べることにしたのだ。
水や食料などが入っている中、一際目立っているものが3つあった。
まず、最初に出てきたのはアサルトライフルだった。
それも詩音が知っているものであった。
AK−47。
俗に、カラシニコフ銃と呼ばれるものだ。
それは、詩音がこれから体験するはずだった未来で使用していた銃であった。
だがこれを出した時の詩音の顔は、なんとも微妙なものだった。
たしかにこれがあれば自身の安全は当分大丈夫だろう。
弾数も先程確認したら、マガジンが9つあった。
なので弾切れの心配も当分ない。
だが……
「これでは少し、強すぎますね……」
自衛のために銃は欲しいと思ったが、ここまで協力な銃を欲しかったわけではない。
これで自分が殺し合いに乗っていたのなら喜んだかもしれない。
だが今のところ自分は乗るつもりはない。
つまり宝の持ち腐れという奴なのである。
「……まぁ、損したわけじゃないからいいんですけどね」
それがこの支給品に対しての詩音の感想だった。
次に出てきたのが、カードだった。
だが、まるで用途がわからない。
455 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 17:58:17 ID:BLP+IYOW
とりあえずカード名が「SEAL」というのはわかった。
でもそれだけだ。
本当に使い方がわからない。
「……とりあえず保留ですね」
それがカードに関する感想だった。
そして、最後に出てきたのは……
「これってまさか……!!」
それは、クマのぬいぐるみだった。
しかもそれは、詩音も見覚えのあるものだった。
「これ、悟史君が買おうとしてたぬいぐるみだ……」
間違いない。
これは悟史君が買おうとしていたものだ。
何故自分に支給されたのかはわからないが、自分の決意を固めるのには十分だった。
これを沙都子、そして悟史君に届けるためにも……
「私が、頑張らなきゃいけないですね……」
私は仲間を探し出してやる。
沙都子を探し出してやる。
そして、悟史君を探し出してやる。
そう決意をして、彼女は立ち上がった。
「さてと、じゃあ行きますか」
そう言って、詩音は警察署の玄関扉に向かった。
◇
456 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 17:59:20 ID:BLP+IYOW
「たく、一体何考えてんだあいつは……」
自身の支給品を確認していた次元大介は落胆していた。
彼は殺し合いを積極的にするつもりはない。
自分に襲い掛かってくる奴ならともかく、無力な奴を撃ち殺す趣味は彼には無い。
なので、彼がするべきことは自然と決まった。
ルパン達を探して、そしてあのヴイツーという小僧を殺す。
そうすればこの馬鹿げた殺し合いも止まるはずだ。
ただ、そのためには奴の情報が必要になってくる。
なので何か手がかりになるものが無いものか、そして自身の安全確保のためにデイバックの中身を確認していたのだ。
そして、今次元は落胆していた。
何故か。
まず、最初に支給されたのがなんと水鉄砲だったのだ。
これには次元も驚いた。
殺し合いと言っていたので、普通に人を殺すための道具が入っているものと思っていたからだ。
これでどう殺し合えと言うのだろうか。
「……わけがわかんねぇな」
と、思わず彼が言ってしまったものわかる。
しかも、その後に出てきた支給品もろくな物がなかった。
豪華な如雨露と、レイピアだ。
まず如雨露だが、まるで用途がわからない。
豪華なだけで、別にどこにでもあるような如雨露だ。
少し小さい気もするが、そうゆうものもあるのだろう。
とりあえず、まったく使えないということには変わりない。
そしてレイピアだが、正直なんで自分に支給されたのだろうと考えてしまった。
五ェ門とかに支給すればよかったのにと思いつつ、次元はそれを手に取った。
なんだかんだ言っても、これしか武器がないので仕方がない。
使い慣れない武器だったが、水鉄砲を相手に向けるよりはマシだ。
そして、今後について考えた。
457 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 17:59:56 ID:BLP+IYOW
支給品の中には奴に関する情報はなかった。
だったら、知っている奴を探せばいい。
あのルルーシュ・ヴィ・ブリタニア(何故か名簿ではランペルージになっていたが)と名乗った男と緑の髪の女。
あいつらが何か知っているのは間違いない。
ルパン達を探す一方で、彼らを探した方がいいと考えた。
正直、あのルルーシュって奴の奇行が気になりはしたが今はどうでもいい。
とにかく行動しよう。
そう思って、目の前にある建物――警察署に向けて歩き出した。
◇
「……兄さんを守ろう」
それが、ロロ・ランペルージの思ったことだった。
彼は警察署の前に居た。
ロロが望んだのは、ルルーシュの生存。
そのためだったら、どんなことでもしよう。
例え……
「殺し合い乗ってでも……」
ルルーシュだけは守ろう。
そうロロは思った。
そしてそれと同時に支給品の確認をした。
守るとは言ったものの、ルルーシュがどこにいるのかわからなければ話にならない。
なので、何か利用できるものがないか。
そう思って中身を確認したのだ。
目当てのものはすぐ見つかった。
「ナイフ、か」
それは一般的なサバイバルナイフだった。
458 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 18:00:28 ID:BLP+IYOW
自分にちょうどいい支給品がきたなと思った。
自分のギアスは、他者の体感時間を止めてしまうもの。
ようするに暗殺向きのギアスなのだ。
それとこのナイフを使えば兄さんを助けることも容易に……
「……ちょっと待てよ」
そういえば、兄さんはV.V.の周りに居る兵士に向かってギアスを使ったはずだ。
なのに何の効果もなかった。
ギアスキャンセラーの可能性もあるが、まだハッキリと何かがわかったわけじゃない。
もし仮に兄さんに何か細工が施されていて、そのせいで発動しなかったのだとしたら……
「僕のギアスにも何かされている可能性があるかもね……」
もちろん、これはただの仮説だ。
本当だという証拠など何もない。
だが本当だとして、それがギアスの副作用を増加するものとかだとしたら。
そのせいで自身が倒れて、兄さんを守れなくなったら。
「……考えたくもない」
とにかく、安全がわかるまで極力ギアスは使わない方がいいだろう。
無論、本当に危機が迫った時は使わざるを得ないが。
「となると、武器がこれだと少し危ないね」
何か別の支給品はないかと思い探していると、ふと変な紙を発見した。
元はB5のノートの1ページだったのだろう。
内容を見て、ロロは驚いた。
内容もそうだったが、ロロは自身がイレブンの言葉である日本語を違和感なく読めていることに驚いていた。
おそらく、V.V.が何かしたのだろう。
そうでなければいきなりイレブンの言葉を読めたりはしないはずだ。
そして内容も驚きを隠せないものだった。
紙にはこんなことが書かれていた。
459 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 18:01:07 ID:BLP+IYOW
◇
私、前原圭一は命を狙われています。
なぜ、誰に、命を狙われているのかはわかりません。
ただひとつ判る事は、
オヤシロさまの祟りと関係があると言う事です。
レナと魅音は犯人の一味。
他にも大人が4〜5人以上。
白いワゴン車を所有。
バラバラ殺人の被害者をもう一度よく調べてください。
生きています。
富竹さんの死は未知の薬物によるもの。
証拠の注射器はこれです。
どうしてこんなことになったのか、私にはわかりません。
これをあなたが読んだなら、
その時、私は死んでいるでしょう。
…死体があるか、ないかの違いはあるでしょうが。
これを読んだあなた。
どうか真相を暴いてください。
それだけが私の望みです。
前原圭一
◇
460 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 18:01:34 ID:BLP+IYOW
「……何これ?」
それが内容を知った時のロロの感想だった。
多少訳が分からない部分(オヤシロさまの祟りとかバラバラ殺人など)があるが、それでも書いてある内容はわかった。
まずこの手紙を書いたのが、参加者の一人である前原圭一だということ。
そして……どうやら彼はこの手紙を見ている時はもう死んでいるということ。
まぁこの殺し合いに参加しているのだから、ただの杞憂の可能性もあるが。
そして、レナと魅音というのが危険人物だということ。
おそらくこれは、名簿に載っている竜宮レナ・園崎魅音のことを言っているのだろ。
どうゆう犯人なのかは知らないが、前原圭一が死ぬとか書いているからおそらく殺人かなんかだろう。
兄さんに危害が及ぶかもしれないので優先的に狙った方がいい。
また、同じ園崎と名をした奴が居たので、そいつも警戒した方がいいだろう。
それと、そいつの名前の間に北条と名の参加者が居た。
おそらく知り合いの可能性があるので警戒して損はないだろう。
(もちろん、このメモが嘘を言っている可能性もあるけど、あんまり僕には関係ないかな……)
とロロは思いながら、最後の支給品を取り出そうとして……
ふと、自分の前と後ろから人の気配がした。
◇
こうして、3人の参加者は集まっていく。
それぞれの目的を胸に秘めて。
はたして3人はどうなるのか。
それは誰にもわからない。
例え、オヤシロさまでも。
461 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 18:02:07 ID:BLP+IYOW
【一日目黎明/H−9 警察署玄関扉前】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]AK−47(カラシニコフ銃)@現実
[支給品]支給品一式、AK−47のマガジン×9つ@現実、SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎、クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に
[状態]健康、若干興奮気味
[思考・行動]
1.悟史に会う
2.仲間との合流、沙都子を優先
3.とりあえず、警察署から出る
[備考]
※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です
【一日目黎明/H−9 南部】
【次元大介@ルパン三世(アニメ)】
[装備]レイピア@現実
[支給品]支給品一式、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[状態]健康
[思考・行動]
1.ヴイツーを殺して、殺し合いを止める
2.ルパン達を探す
3.ルルーシュと緑の髪の女(C.C.)を探して、ヴイツーの情報を手に入れる
4.とりあえず、警察署に向かう
5.銃が欲しいな……
[備考]
※庭師の如雨露をただの如雨露だと思っています
【一日目黎明/H−9 警察署前】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]サバイバルナイフ@現実
[支給品]支給品一式、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、ランダム支給品(0〜1)
[状態]健康
[思考・行動]
1.ルルーシュを守る
2.他の参加者を抹殺する
3.竜宮レナ、園崎魅音を優先して探し、殺す
4.前原圭一、園崎詩音、北条悟史、北条沙都子を警戒する
5.ギアスの使用はできるだけ控える(緊急時は使う)
6.人の気配に対処する
[備考]
※19話ルルーシュ粛清前からの参戦です
※自身のギアスに制限がかけられている可能性に気づきました
※竜宮レナ・園崎魅音を危険人物と認識しています
※圭一のメモをある程度信じていますが、嘘の可能性も考えています
462 :
三人寄れば……一体どうなる? ◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 18:02:33 ID:BLP+IYOW
【SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎】
モンスターの封印のカード。
持っていれば例えライダーでない人間でもモンスターの標的になることはない。
ただモンスターは襲うことが出来ないというだけで、執拗につけまわしはする。
【庭師の如雨露@ローゼンメイデン】
翠星石の武器。
人の夢の中に存在する「心の樹」の手入れをする事が出来る他 夢の樹の葉や幹を自由に召喚し、そして使役出来る能力を持っている。
だが一般人は恐らくその能力を使う事が出来ないと思われる。
【前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に】
鬼隠し編で前原圭一が書いたメモ。
内容は本文にもあるもの。
原作では一部分が切り取られていた。
463 :
◆SVPuExFbKQ :2009/01/12(月) 18:05:47 ID:BLP+IYOW
投下終了です。
とりあえず、A−1ルートの方に寄せます。
問題点などがあれば、指摘してください。
投下乙!
詩音は姉に続いて死人になってしまうんだろうか
それにしてもひぐらしキャラは不幸過ぎる
まともな状態なのはレナくらいじゃないか
あとメール欄にsageって入れると、スレが上がらなくなるよ
おっ、来たか
投下お疲れー
おお、投下乙です!
知らないキャラばかりだけど、こいつらはこの先どうなるんだか……
投下乙、ひぐらしキャラがどうなってるのか並べてみると
圭一、マーダー
魅音、死体
沙都子、情緒不安定な奴と一緒
悟史、拡声器使用
詩音、マーダーがすぐ傍に
レナ、おもちかえりモード
って感じだ
いずれ一波乱起きそうだな
地図cgi管理人です。
遅ればせながら
>>435の問題に対応いたしました。
互いの企画の発展を祈りつつ。
>>468 乙です、対応ありがとうございました
これからもよろしくお願いします
大人数予約キタ━━(゚∀゚)━━!!!!
これは期待できる
終わりそうで終わらない露和
終わらせられるかよww こんな美味そうな材料を前にしてwwwどんな料理(作品)が出来上がるのか楽しみだぜ
また地図が見れないんだが俺だけか?
>>473 俺は普通に見れるが
確かドコモの携帯だとpngの画像は読み込めなかった気がする
ここは一般人が多いな
らきすた、バトロワ、ひぐらし、デスノ、相棒、トリック
中には腕伸ばせたり、神と交信できる奴いるけど
俺はむしろ少ないと思っていたが、本家バトロワやひぐらしは普通に考えて一般人だな。
光の戦士はサバイバル技術なら凄いんだぞ多分
桐山やL辺りは一般人と言っていいのか微妙じゃね?
そろそろ時間だな
申し訳ありませんorz
延長させてもらいます。
やっぱり人数多いから、時間も掛かるんだなぁ
頑張ってください
一応もうすぐ時間だな
すみません。間に合いませんでした。予約を破棄します。
一応現在も書き続けているので、書きあがったときに予約が無かったら投下させてもらっても構わないでしょうか?
いいんじゃないかな?
いいと思う、頑張って
いつでも投下してってよ!!
ふと気づいたが、ルルーシュとスザクって合い方が同じ作品のキャラなんだな
これがどう作用するやら……
ゆっくり待ってるよ!
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||
`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i |
>>488 つかさはギアスが変に作用してるし、みゆきさんも疑心暗鬼だしやばいかもな〜
今まで投下された作品の中で一番好きなのってなに?
俺は上田とかなみの話
>>492 俺は劉鳳と翠星石ついでに光太郎の話。
「お前、何しに出てきたんだよ」的な意味でw
織田様最高
>>492 少し遅くなったけど俺はルイズと後藤の話かな
序盤から熱い戦闘だった
織田様は2ちゃんの非公式ランキングだと総合評価は七原より上
漫画版だと尚更
>>496 七原は凡人だからな
前々から疑問だったが、なんでヅキってあんなに評価高いんだろ
決して弱くないのは分かるけど
>>497 ・桐山をぴったり尾行する身体能力、持久力
・順序よく行動方針を決められる計画能力
・プログラム中でも自然体を保てる精神力
・クラスメイトは大事だが、生還のためにあっさり切り捨てる割り切りの良さ
・裏切りを警戒する用事を深さと桐山、川田、三村の実力を的確に把握する洞察力
・不良かつガタイもいいし、当然腕っぷしも強い
こんな所じゃ?
>>498 こう並べるとかなりの強キャラに見えるなぁ、実際強キャラだけど
彼女の失敗は桐山の実力を侮りすぎたって感じか
桐山強すぎる
まとめwiki
作品把握用資料として、ああいうサイトのリンクはるのは大丈夫なの?
直リンクはマズイ
一応は直してみたけどあれならいいかな?
>>499 侮ったと言うか、桐山に可愛らしさを感じてしまったことだと思う
禁止エリアに向かった時点で作戦中止も考えてたしね
504 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 00:57:17 ID:WcyGNJqr
っていうか
頭撃たれても戦闘続行出来る奴を一般人と言って良いものか
>>506 大爆発に巻き込まれてもほぼ無傷
手刀で指切断
数年間武道をやってた奴が極限状態で編み出した技を一回受けただけでコピー
防弾チョッキ越しとはいえ、数百発の弾を受けても傷一つ無し
顔面に弾受けても動く
こいつを一般人と判断したらバランスが崩壊するなww
ルールを読んでて気づいたけど、ここの名簿ってアイウエオ順だったんだ
今まで全く気づかなかった
前に6人予約した人は完成まだかな
ゲリラ投下に結構期待してる
寄生獣って面白いの?
2chで評価されてるらしいけど
聞く前に読めks
>>510 とりあえず読んでみろ。おもしろいから。
予約こねー
つーわけで小野忠明、斎藤弥九郎予約します
予約来たと思ったらなんかの宣伝だった
このwktk感どうしてくれる……
すまん誤爆しましたorz
したらばの宣伝が増えてきたな……
やっぱり管理人さんはもういないのかな
管理人より書き手
やっぱりこの時期は忙しいんだろうな、それだけじゃないのは分かってるが
したらばがかなり悲惨のことになってるな
管理人に連絡出来ないだろうか
まだここ見てる人いる?
一応見ている。
書き手になるかと聞かれたら、いろんな意味で今は無理としか言えないが。
けど、待ってるだけじゃダメなんだろうなぁ…
二人か、何もしないでいるのはやっぱり駄目なんだよな……
見てはいるがネタが無い
短編のネタも出尽くした感があるんだよなあ
変化球で長編やるのは引き出し多くないと出来ない芸当だし
だめもとでどっかに宣伝。
どうせダメでも失うものはない。そのぐらいの気持ちで行動!!
俺も見てはいるけどな……
書き手だった人は残っているのか
>>116-160あたりを見て思ったんだが、このロワで書きたいと思う人はみんな他所にいったんだろうねぇ……
俺も読み手…
>>520だけどまだ少し人がいることが分かっただけでも嬉しいや
少し執筆意欲湧いた、ありがとう
一人じゃどうにもならん……
一人なら諦めるべきだ。リレー小説は一人で書くものではない。
だから、俺も参戦するぜ!!!!
アイゼル・ワイマール予約だ。
>>529 ( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
_, ._
(;゚ Д゚)
なにこのトリップ……
----
投下は多分月曜日あたり
>>530 予約キター!!
しかしどうなればこんな酉になるのか気になる
偶然の産物なんだが……確率ひくそうやね
偶然でこの酉って凄いww
アイゼルは知らないから個人的にはありがたい
プロットまではいったが文章化できぬ
せっかくの予約に水を差すようなこと言ってあれだが、
予約はしたらばでしないとダメなんじゃ?
まあ、偶然であんなトリ出せる時点で神だということはわかるw
今日アイゼルが来るかもしれないのか
wktkせざるを得ない
出来る限り急ぎますが、今日中は無理っぽいので報告
そりゃ残念、でも焦らず頑張ってください
現在位置見てふと思ったけど、ここはマーダーの配置が極端だね
今日は来てくれるかな〜
投下します
(殺すしか……殺すしかないじゃない。でも、殺せない)
アイゼル・ワイマールは何度もそう思いながら、それでもなお一度として青年のほうを振り向くことなく走り続けた。
少しでも振り返れば、自分は青年を殺すしかない。根拠もなく、そんな考えが浮かんでいたから怖くて一度も振り返れなかった。
うつぶせに倒れた青年から逃げるように、息を切らしながら彼女は走った。
そして、気がつけば彼女は、H-6橋の下。テトラポットが積み上げられた海岸に隠れるようにして蹲っていた。
(どうしたらいいのよ……)
師匠に倣い、ザールブルグを出たのは決して殺し合いのためではない。
恋心を抱いたノルディスと別れ、グラムナートを目指したのは殺人のためじゃない。
ただひとえに、錬金術の道を究めるためだった……そのはずじゃないか。
(ねぇみんな、……私はどうしたらいいの?)
殺したらいい。きっと師匠のヘルミーナなら迷わずそう答えるだろう。
心の奥に、絶対のやさしさを隠しながら、それでいて誰よりも冷徹になれる女ヘルミーナ。もしも彼女がこの場に呼ばれていたら、今頃あの青年は焼死体になっていただろう。
しかし結局自分は彼女のようにはなれなかった。錬金術の腕前なら、すでに肩を並べたといっていい。
マイスターランクに入らず、グラムナートに旅立ったのは決して腕に自信がないからじゃない。逆に、マイスターランクに入らずとも錬金の道を究めていけるという絶対の自負からだ。
こんな事件に巻き込まれていなければ、今頃は旅路の途中であった人参娘とともに錬金術を語り合っていてもおかしくなかったかもしれないと言うのに。
(ヴィオラート……あなたなら……)
のどかな村で過ごす能天気娘ヴィオなら、こういう時どうしただろう? きっと慌てふためいて自分に助けを求めるだろうか?
───あ、アイゼルさん。どうしよう? 私殺しあえって言われても何もできないよ。
そして自分はあの娘の前で、ちょっとお姉さんぶってこう答えるんだ。
───あらヴィオラート。あわてちゃダメよ。こういうときはね、深呼吸して落ち着くのが一番。じっくり考えればきっと解決策が浮かぶわ。
(ふふっ、解決策なんてありもしないのにね……)
ヴィオラートの性格はかつて共に学びあった友人エルフィールを思い出させる。
錬金術をするにも、必死さなんてかけらもない。彼女の周りは、いつも和やかで笑いが絶えない。
───お兄ちゃん、錬金術ってすっごいんだよ。お洗濯のシミが一発で取れちゃうんだから!!
───あ! 今ちょっと手が離せない。お兄ちゃん、お鍋ぐるこんしといて!!
あの娘ったら、とても錬金術を学んでるようには見えなかったわねぇ。
はじめてあった時から、何を調合するにしても、必死さや焦りなど見せず、マイペースと明るさを忘れない彼女。
アカデミーではエルフィール以外に見ることのなかったその姿は、どこか懐かしくて、どこもかしこも危なっかしい。
(だから、私はお姉さんになれたのかしら?)
もちろん、一回り年が離れていたからというのもあるだろう。
いい加減、自分もいい年だ。気がつけば、かつてエルフィールと共に見たドナスターク家の花嫁と同じぐらいの年になっている。
(エルフィールはもう結婚したかしらね……意外とあの娘、モテてたしねぇ……)
自分が好いていた男だけでなく、他にもエルフィールに惹かれている男がいるというのはチラホラ聞いた話だ。
(あの娘が結婚してたのなら、私もしていいかもね……もっとも、私に相手はいないけどね。ヴィオラートの冴えないおにいちゃんでも口説いてみるかな?)
アイゼルがくすりと笑った瞬間、不意に大きく寄せた波が、その体に飛沫をかけた。
あぁそうだ。ここは海岸線だった。とり止めもない思考に耽ってしまったことをアイゼルは少し後悔し、そして少し笑った。
結婚など、束の間の現実逃避だということは分かっている。ざわざわと寄せては返す小波の群れが、いやでもここが殺し合いの舞台だということを思い出させ、アイゼルを現実へと引き戻す。
(妄想は少しの間終わりね)
現世の夢ならば、現世に帰ってから見ればよい。そう思ったアイゼルの目に、突然ありえないものが飛び込んできた。
(何かしら……アレ? どうして、アレが海に……)
アイゼルの常識から言えば、森にあるはずの物体が引き返す波の下に一瞬だけ姿をあらわした。
どうして、ソレがそこにあるのだろう?
塩水にぬれることも厭わず、錬金術師の興味赴くまま、アイゼルはソレをひょいと拾い上げた。
「これは……うに?」
どこからどう見ても間違いない。森で採れるはずの『うに』が、何故か海に落ちている。
しかも、テトラポットの濡れ具合からして、満潮なら胸までつかるほどの深さに『うに』がいる。
「どうして? ここは森なのかしら?」
馬鹿な……どう見ても海じゃないか。ありえない考えにアイゼルは首を振り。
それでも確かにそこにある『うに』を見て考え始める。
「錬金術の考察の基本は、現実をありのままに捉えること……
今分かる現実は二つ。ここが海であることとこれが『うに』であること」
はじめに正解を言えば、普段アイゼルが目にしている『うに』は実際には毬栗(いがぐり)と呼ばれるもので、
正式な『うに』ではない。したがって、彼女が普段常識的に『毬栗=うに』と捉えていることこそが誤りなのだが、
20年以上、その常識に浸り続けた女にそれに気づけというのも無理なものだ。
彼女の頭には、『うには森で木に生っているもの。茶色くなったら、木から落ちてくるもの』という常識が支配している。
「っひぁ!!」
突然、『うに』が動いた。仕掛けを知っていれば当たり前な話。
だが彼女は『毬栗=うに』の常識に生きる生粋のシグザール娘。海なんてエリーと一緒にカスターニェに行くまで見たことありませんでしたが何か?
「ま、まさか……このうに生きてるの?」
ちなみに、毬栗だって植物から落とされたものなので、生き物っちゃ生き物ですよ?
「どうして? 生きてるウニなんて聞いたこともないわ……」
ぶっちゃけ、聞いたことないのアンタらだけです。多分弟子のヴィオラートなら普通に知ってます。
しげしげと観察し、ウニだけにウニウニ動く足を見てアイゼルはふとひらめいた。
「そっか、これは生きてる縄とか、生きてる箒と同じ種類のものね……私も昔作ったことがあったっけ」
学生時代、ヘルミーナに教わって作ったホムンクルス(人工生命)と同じものだ。そう考えれば合点がいく。
「きっと誰かが作って、使わないから海に捨てたのね……可哀想に、森の物なのに……」
いいえ、海の物です。
「こんな殺し合いの中、あなたも大変でしょう……」
いいえ、殺し合い関係ありません。海には普通にいます。
「きっと息ができなくなって、必死で陸まで歩いてきたのね」
いいえ、海でも陸地近くの岩場の浅いところに結構います。
ぶっちゃけ筆者は小学生のころよくとって食べてました。
「私が森に返してあげようかな?」
可哀想です。やめて下さい。普通に死にます。
「そうだよね? そうしよう。あなたもその方が嬉しいでしょう? それとも創造主のところがいいかな?」
どっちも迷惑です。っていうか、創造主って何ですかソレ?
「決めたわ。私と一緒にここから脱出しましょう? 私が、あなたの創造主を探してあげるわ」
創造主なんていません。
「私が学生だったころ、あなたみたいなホムンクルスを作ったことがあるんだけど、先生に言われたのよ?
作られた命でも、命であることに変わりはない。本当の母親になった気持ちで、精一杯の愛情を注ぎなさいってね。
あなたの創造主にも同じことを言ってあげるわ。大丈夫、私怒ると結構怖いのよ? 絶対に言うこと聞かせてあげるから」
いえ、だから創造主なんていませんってば。
「頑張ろうね、私絶対に約束は守るわよ」
いえ……だからね。そのね…………
あーーーー、これだから異文化コミュニケーションって嫌なんだよ!!!!
━━━━
こうしてアイゼルは、ひょんな所から立ち寄った海岸で、一匹の友達を得た。
うにうに足を動かすだけで、話しかけても返事はないけれど少し心が休まる感じがした。
目的定まらぬ殺し合いの中、とりあえず一緒に脱出しようと思える友がいるだけで全く気分が違ってくる。
相手はホムンクルスだし、喋れないのも珍しくない。
っていうか、グラムナートに来てから喋れない生き物なんていくらでも見てきた。
そう言えば、この間は「やる気マンマン」のテラフラム(超絶威力の爆弾)でパーティー全滅(自分以外)したっけかな……
何かとホムンクルス(人工生命)に縁のある人生だ。
「ま、これも悪くないかな?」
そんな風に思い彼女は、うにをデイパックの中にいれ壊れないように大切に保管した。
だって、うには友達なんだもん。
あ、そうそうアイゼルさん。
その友達のうにちゃん。食べるとおいしいですよ?
生でいけます。ガリっと割って黄色いところをズルッとやっちゃってください。
マジにうまいっす。お勧めっすから。
【一日目深夜/H-6 端の近く海岸線】
【アイゼル・ワイマール@ヴィオラートのアトリエ】
[装備]:無限刃@るろうに剣心
[所持品]:支給品一式、未確認支給品0〜2個、うに(現地調達)
[状態]:軽傷
[思考・行動]
1.うにと一緒に脱出!
[備考]
※自分たちが連れてこられた技術にヘルミーナから聞かされた竜の砂時計と同種のものが使われていると考えています。
※うにのことをホムンクルスだと思っていますが、もちろん唯のウニです。
投下終了っス!
ご意見・ご感想よろしくっス
乙!
ウニがこの先どうなるかが分からないなぁ
飛び道具として使用されないことを祈ってるww
投下乙っす!
アイゼルと地の文の掛け合いに吹きましたwww
投下乙
確かに異文化交流はやっかいだなw
アイゼルはこのままだと志々雄と遭遇するな
縁といいるろ剣キャラに縁がある人だ
志々雄と遭遇したら殺されそうだなぁ
ウニを投擲することを期待ww
Lv.7うには作れるんだろうか?
改めてみると非常識な世界だなwww
レベル7うにってなに?
アトリエ知らないんだ……
>>556 本当に投げてるのかwww
南西エリアってマーダー縁だけなんだなぁ
ちょっと書きづらそうだ
558 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 11:36:03 ID:51xEuIP7
縁はやっぱり女と遭遇するのかなww
まとめ読み返しててふと疑問に思ったんだがOPでルルーシュがV.V.に反応してたがこいつら面識あったっけ?
たしかこの二人が顔合わせたのってギアス嚮団殲滅の時ぐらいだった気がするんだが
>>559 なんかそれ指摘されてたけど、結局そのまんまになってたな
ギアスはよく知らんのだけどこれって結構まずいの?
ルルーシュの参戦時期からするとV.V.のことは顔は知らずに名前ぐらいしか知らないってだけ。
情報もC.C.から聞いただけなんで他の参加者に主催者の情報を求められてもあんまり答えられないんじゃないかってことかな。
>>561 じゃあルルーシュはあまり情報役としては役立たないわけだ
ルルーシュ探してる参加者は災難だなぁ
圭一の登場話のタイトルってジェバンニが一晩でやってくれましたとかけてあるんだろうか
そうみえなくもないけど、微妙だな
予約ktkr
クーガーはやっぱり女性の組むのかww
566 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 23:11:01 ID:b8EpmeHs
キター
延長か……でも頑張ってください
お久しぶりです
二ヶ月前に6人予約を破棄したものです
まずは破棄した後も書き続けるなどといい、予約を入れにくくして申し訳ありませんでした
6人で予約したものは、35KBを超えた時点で長すぎると完全に破棄しました
そのことを書き込まなかったのもすいませんでした
代わりと言っては何ですが北岡秀一、石川五ェ門、レイ・ラングレンで一本書きました
ですがそれも30KBあります
それでもいいなら投下したいのですが、構わないでしょうか?
無理なら諦めます
ダメな理由がない。OKすぎる
>>568 戻って来てくれてありがとう〜
ぜひ投下してください
前の六人予約のもしたらばの没作品投下スレに投下してみたらどうですか?
ありがとうございます
では仮投下スレの方に投下しておきます
何分拙い文章なので指摘、展開の無理などが多々あるかと思いますがよろしくお願いします
573 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 12:41:36 ID:kUL1gV0d
乙!
俺はキャラを知らんから何とも言えんが
文章にゃまったく問題ないと思います。
あとできれば六人のほうも投下してくれたら…。
そろそろ◆KKid85tGwY氏の期限が切れるけど……大丈夫だろうか
>>572 投下乙!
読ませていただきました、それぞれのキャラの行動に表裏があって深みがありました
個人的に妄想してた五ェ門とデルフの組み合わせが嬉しいですww
文章に関しては一点だけ
向こうの
>>133の「以外だ。怒らないんだな」は意外かと
それ以外はとくに問題ないと思います
575 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 23:08:37 ID:nXRrRVov
◆KKid85tGwY氏の代理投下します
柊かがみは海岸線の波打ち際から島の景色を眺めながら、地図と見比べていた。
とりあえずの行動方針をつかさ達を捜すと定めたのはいいが、自分の居る位置も分からないのが現状だ。
目前には木々に囲まれた空間に、暗闇の中に薄っすらと大型の公園遊具が幾つか見受けられる所から
そこは地図中央部の島にある、公園だと推測された。
現在位置を割り出した、かがみの次の思考は……。
(…………寒い!!)
海から上がってまだ幾許も過ぎていないかがみは、当然全身が濡れた状態のままだ。
濡れ鼠の身体が夜の冷気に晒され、全身が震える。
こんな状態のまま動いては、とても体力が持ちそうに無い。
せめて何か身体を拭く物か着替えになる物はないかと、その場でデイパックを漁った。
(そう都合良くタオルや着替えが入ってるとは思えないけど、空飛ぶサーフィンボードが入ってた位だから
意外と何か役に立つ物でも…………あった?)
デイパックの中に差し入れた手が、布地の感触を探り当てる。
期待感を高まらせながら、それを勢い良く取り出す。
確かにそれは服だった。
しかしそれがどういった用途の服なのかは、かがみには分からなかった。
胸元から上が無いレオタードに、ひらひらと布が幾つも付いている。
困惑するかがみは服を抜き取る際に落ちた、1枚の紙片を拾い上げる。
服の説明書みたいだ。
そこには
『ファミリーレストラン・エンジェルモートでウェイトレスが着用している制服』
とあった。
(こんなもん着るファミレスが在るか!!!)
今日もかがみのツッコミのキレは良好だ。
流石に殺し合いの場なので、声に出すのは控えているが。
何れにしろ、誰も聞く者が居ないツッコミ程空しい物は無い。
一呼吸入れた後、かがみはこの服を着てみるか真面目に思案する。
かがみにとってこの服を着るのは、はっきり言って場違いなコスプレでもする様で恥ずかしい。
しかしデイパックの中を探って見ても、他に着る服も無いようだ。
見た所、サイズもかがみが着るにちょうど良い物である。
逡巡している間にも、濡れた服は少しずつでも確実に体力を奪っていく。
(……やっぱり、これ着るしかないようね)
着替えの為、公園を囲む様に在る茂みに入る。
周囲に人が居ないとは確認したが、やはり視界が開けている所での着替えは落ち着かない。
濡れた服を靴と靴下以外は下着まで全て脱いで、エンジェルモートの制服を着込む。
やはり恥ずかしい事この上ないが、先程までの濡れた服による不快感と寒さは大分軽減された。
茂みに隠れたついでに、そこでまだ見ていない支給品を確認する。
食料や水、地図にコンパス、筆記用具やランタンなどサバイバルに必要とされそうな物と
そして説明されていた、武器と思しき物も見付かった。
それは野球に使われる、金属製のバット。
金属の硬さと重みを持ったこの鈍器なら、殴打して人を殺傷する事も可能だろう。
(本当に殺し合いをさせるつもりみたい…………って、私がこんな物を支給されたからって人を殺して回れる訳無いじゃない!!)
かがみは運動が苦手ではないが、野球部員でも無い平均を大きく逸脱する事も無い普通の女子高生だ。
そんなかがみにこのバットは、武器として使いこなすには些か重過ぎる。
最もどんな使い勝手の良い、例えば拳銃やナイフの様な武器を支給されたとしても殺し合いに乗るつもり等無かったが。
(……全く何考えてんのよ。…………まあ、護身用には使えるかもしれないわよね)
身を守る為には、唯一の武器を遊ばせる訳にはいかない。
金属バットを手に握りしめ、脱いだ服を含めた他の荷物をデイパックに仕舞う。
(そうだ、携帯使えるかな?)
かがみは学生服のポケットに入っていた携帯電話の存在を思い出し、それを取り出す。
もし携帯電話が使えれば、警察や家族に助けを呼ぶ事も可能だ。
携帯電話を開き、液晶から漏れる光を慌てて手で被いながら画面を確認した。
そこには『圏外』の文字。
(はあ…………駄目か。まあ、あんまり期待はしてなかったけど)
これだけ大規模な殺し合いを仕組んだ主催者だ。
携帯電話で外と連絡が取れるようにして置く筈が無いと、予想はしていた為
かがみは取り立てて落胆した様子も無く、再び携帯電話を仕舞い込んだ。
(……………………泣き声?)
殺し合いの緊張ゆえ、かがみは物音に敏感になっていたのだろう。
常ならば聞こえない様なか細い声。
しかし誰かの嗚咽の声を、かがみの耳は確かに捉えた。
かがみの脳裏に、泣いている妹や級友の姿が浮かび
危険も省みず、嗚咽の声を追う事にした。
公園は遊具や砂場が設置された空間を、樹木や植え込みで覆う形になっている。
樹木や植え込みが上手く視界の通らない茂みを作り、先程の着替えもそこで行った。
その茂みを隠れながら、かがみは公園を散策する。
明かりも無いのでかなり暗いが、目が慣れれば障害物の有無位は問題無く把握出来る。
だから見付かってしまう危険を憂慮し、ランタンは使わないでおく。
声の主は、公園のベンチ近くで見付かった。
かがみと同年代か少し下位の少年が、ベンチに座りもせず地に膝を着いている。
茂みに身を隠しながら様子を窺うかがみは、知人では無かった事に僅かに落胆を覚えるが気を取り直し少年を観察する。
少年は手の部分が大きなカギ爪となった義手の様な物を握り締めたまま、俯いて泣いていた。
殺し合いの渦中で見知らぬ人間に出会ったのに、何故か不思議と警戒心は感じない。
少年の持つ、まるで親に縋り付く子供の様な雰囲気がそうさせているのだろうか?
(あの人、外国人かな? 殺し合いには乗っていないみたいだけど……)
危険が無い様だから、接触すれば何か情報を得るなりメリットがあるかも知れない。
それに泣いている人間を放置していくのも気が引ける。
何より、かがみ自身が1人で居る事に心細さを感じていた。
話によっては、自分の人捜しに同行して貰えるかも知れない。
かがみは少年への接触を決意する。
ゴクンと、音が鳴りそうなほど大きく唾を飲み込む。
安全だと踏んではいても、緊張は拭えない。
意を決して、茂みから姿を現そうとした瞬間。
「…………誰か居るんですか?」
少年から声を掛けられ、かがみは思わずビクッと身体を震わせた。
少年はゆっくりと、かがみの居る茂みに顔を向ける。
涙で目を腫らしてはいてもなお、端正な顔立ちだと窺える。
「私は、殺し合いには乗っていません。どうですか、良ければ私とお話しませんか?」
少年は先程まで泣きはらしていたとは思えない程、澄んだ声でかがみに語り掛ける。
(この人……泣いていた割に、変に落ち着いてるよね……)
かがみは少年の様子に、僅かな違和感を覚える。
(でも、どう見ても悪い人じゃないみたいだし……とにかくここは話をしてみた方が早いか)
しかしそれ以上に、最初に会った人間が殺し合いに乗っていない事に安心を感じた。
やがて、おずおずと茂みから姿を現す。
「えーっと、……初めまして…………」
「初めまして。私はミハエル・ギャレットと言います。……貴方は?」
「あ、私は……柊かがみ」
◇ ◇ ◇
かがみとミハエルは並んでベンチに座り、互いの情報を交換した。
ミハエルはかがみの思っていた以上に落ち着いていた為、2人の情報交換は滞り無く進んだ。
2人とも殺し合いに乗っていない事。
2人とも殺し合いが始まってから誰にも会ってない事。
2人とも知人が殺し合いに参加している事。
お互いがそれらを確認し終える頃には、2人の雰囲気も幾分打ち解けたものになっていた。
「そうですか。最初の会場で殺されたのが貴方の友人で、他に友人や妹さんまでこんな殺し合いに巻き込まれるなんて……」
「……………………」
「……私も妹が居るんだ。今では唯一の肉親で、とても大切にしている。
だから貴方の気持ちが分かるとは言えないけど、貴方が妹を心配しているのは分かるよ」
ミハエルと話す内に、かがみは意識の奥に封印していた小早川ゆたかが殺された記憶を思い出す。
殺し合いが始まった直後は、高空からの落下でそれ所ではなく
それからもつかさ達を捜す事ばかり考え、あえて目を逸らしていた過去。
思い出しただけで、胃の中の物が込み上げそうになる。
自分でさえこうなのだ。こなたやみなみは、どんな気持ちで居るのだろうか?
止そう、これ以上気持ちが沈む事を考えるのは。
今はそんな事をしている場合じゃない。
幾らそう考えても、かがみにこれまで何処か曖昧だった殺し合いの実感が増していく。
かがみは何時の間にか自分の肩が、寒さとは違う理由で震えていた事に気づいた。
その肩に、ミハエルは自分へ抱き寄せる様に手が被せる。
「ちょ、ちょっと何すんのよ!?」
突然の事にかがみは取り乱すが、ミハエルは落ち着いた様子のまま話し続けた。
「動揺してるんだね、無理も無い。こんな狂った殺し合いに巻き込まれて、平静で居られる方がおかしい位だ。
でも大丈夫。私が貴方を……いや、貴方だけじゃない。貴方の家族も友人も、殺し合いに巻き込まれた全ての人を救ってみせる!」
かがみはすぐには、ミハエルの言っている意味が飲み込めない。
「す、救うって……?」
ミハエルはかがみの目を、まっすぐ射抜く様に見つめる。
「ああ、私はこんな愚かな殺し合いは絶対に認めない。そして殺し合いを望まない人が犠牲になる様な悲劇を防ぎ、殺し合いそのものを止めてみせる!」
ミハエルはそう言いながら、今度は思いを馳せる様に遠くへ視線を移す
殺し合いそのものを止めると言う話に、かがみは少なからず衝撃を受けた。
かがみとて殺し合いを肯定するつもりは無かったが、それを打破しようと言う発想は無かった。
何しろ普通の高校生なのだ。具体的な策は勿論、漠然としたアイデアすら浮かばない。
そもそも今の今までつかさ達の事を考えるのに精一杯で、そこまでの展望は無かった。
しかし少しでも考えてみれば、自分がつかさ達と共に生還する為には
殺し合いの打破か、少なくともその枠外への脱出が不可欠だと理解出来る。
そして自分と同年代か年少にしか見えないミハエルが、始まって間もない時間に殺し合い全体を視野に入れ解決しようとしている。
かがみはミハエルに対し、素直に感心した。
もっとも、その事と具体的な策が有るかどうかは当然別問題だが。
「…………そうね、落ち込んでないでここからどうやって帰るかを考えないとね」
ミハエルは慈しむ様な表情で、再びかがみを見つめた。
「落ち込んだり立ち止まったりする事は悪い事じゃない。人は1人では弱い生き物だ。
私も……同志が居なければ、こんなに落ち着いて貴方と話は出来なかったでしょう」
「どうし?」
「私に、世界で自分の果たすべき役割を教えて下さった方だ。あの人のおかげで、今の私がある
……そう。人は自らの為すべき使命を為せば、それだけで世界は良くなると教えてくれた。
…………そして今この場での私の使命は、あなた達の様な人を救う事だ。同志なら、きっとそう仰ったに違いない」
同志と言う人物の事を話すミハエルは、先程までの落ち着き振りと打って変わりまるで自慢をする子供の様に高揚していた。
その様子に見とれていた自分に気付き、かがみは慌てて顔を背け口を挟む。
「と、とにかく励ましてくれてありがとう。貴方の言う通り、早くこんな殺し合いから抜け出す方法を見付けないとね」
「大丈夫、方法ならもう見当が付いてるよ。後は実行するだけだ」
かがみは信じられないと言った表情で、目を見開いた。
「本当なの、それ!!? 」
「ハハハ。こんな嘘を付いたって、しょうがないじゃないか?」
具体的な方法が有る。
余りの話の展開に、かがみは喜ぶよりも先に混乱を覚える。
いきなり殺し合いに巻き込まれた事もそうだが、今度はそれがもう解決すると言うのだ。
まるで夢想に浸っている様な心地だった。
かがみを見つめるミハエルの眼の輝きから、迷いや誤魔化しは見られない。
ミハエルの話には何か根拠が有ると思える。
(帰れるの!? 皆で? 本当に!!?)
まだ詳しい話も聞いていないのに、かがみは気の高揚を抑えられない。
まさか、こんなに早くこの悪夢から抜け出す糸口を掴めたなんて!
かがみは逸る気持ちも抑え切れず、ミハエルに問い質す。
「そ、それはどんな方法なのよ!?」
ミハエルは少し考え込む様な素振りを見せた後
「……そうだね。こうしている間にも貴方の知人をはじめ、多くの人が危険に晒されている事になる。
もう、今からでも動き出すべきだ」
ベンチから立ち上がった。
動き出すって、どういう意味?
かがみがそう聞こうとした矢先、ミハエルがかがみに話し掛ける。
「かがみさん。貴方にも協力して欲しい」
「きょ、協力?」
思わず間の抜けた声を上げるかがみ。
「駄目かな?」
「え、いや…………私に出来る事が有るならいいんだけど。……でも、どうすればの?」
まさか自分が協力を請われるとは思わなかった為、少なからず狼狽するが
かがみに断る理由も無いので、それを了承した。
ミハエルはそんなかがみの様子を見ながら、穏やかに笑みを浮かべる。
「では、まず私が貴方を殺します」
(…………?)
思考が空白で埋まる。
ミハエルが何を言ったのか、上手く理解出来ない。
「私は一応強力な武器を持っているけど、1撃で貴方を殺し損ねたら貴方を苦しめる結果になってしまう。
それに、出来れば貴方を傷つけたくない。だからここは首を絞めて殺す事にしよう」
近付くミハエルの両手を、かがみは他人事の様に目で追っていた。
「大丈夫。最初は苦しいかもしれないけど、すぐに楽になるから……」
ミハエルの指が、ゆっくりとかがみの首に絡まる。
そこで思考が追い付いた。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ミハエルの手を振り払い、 かがみはベンチから飛び退いた。
その拍子に足がもつれて転ぶが、それに構わずミハエルと距離を取ろうと後ずさる。
「どうしたんだ? 何かあったのか!?」
かがみの取り乱し様に、ミハエルは心配し声を掛ける。
しかし殺そうとした当人にそんな事を言われても、かがみは素直には聞けなかった。
「ど、ど、どうしたんだじゃ無いわよー!! あんた、殺し合いに乗っていたなかったんじゃなかったの!!?」
ミハエルの表情に浮かぶのは、純粋な疑問の色のみ。
かがみが狼狽する理由に、全く思い至らない様子だ。
「乗っていないけど?」
そして再び慈しむ表情に戻り、教え諭す様に語り掛ける。
「そうか、怖いんだね……。大丈夫。怖いのも苦しいのもすぐに終わらせるから、私に任せて」
「任せられるか!!」
「……もしかして、自殺をしたいのか? 確かに、それなら手間が省けるけど……」
「何でそうなる!!?」
分からない。
ミハエルの言い分が、まるで理解出来ない。
さっきまで仲良く話していた相手が、何時の間にか得体の知れない怪物に変わっていた。
今まで経験した事も無い恐怖が、かがみを襲う。
ミハエルはかがみの混乱に構わず、その首に手を伸ばす。
かがみは手に持っていたバットの存在をやっと思い出し
それを横薙ぎに振るって、ミハエルの手を退けた。
「かがみさん。抵抗されると、貴方を上手く殺せなくなる」
「だ、だから乗ってない奴が、何で殺そうとするんだ!!」
「だから、貴方を殺し合いから救い出す為だ」
「ふざけんな!! あ、あんたが殺そうとしといて、何が殺し合いから救い出すよ!!」
「ああ、私の言い方が悪かったんだね。貴方はここで息絶えるけど、それは決して死ぬ訳ではない」
思わずかがみの手が止まった。
「私は貴方を、決して忘れない。貴方は私の胸の中で、生き続ける。
つまり私が殺し合いに優勝する事で、貴方は私と共に殺し合いから生還する事が出来るんだ。これで納得してくれた?」
「納得するかー!」
やはりまともに聞くべきではなかったと、後悔する。
ミハエルの雰囲気から、かがみを騙そうとか弄ぼうとかいう悪意は一切感じ取れない。
それどころか、心からかがみを案じてくれているのが見て取れる。
それがかがみには、どうしょうも無く恐ろしい。
善意を持って、自分を殺そうとしてくる者。
まるで出来の悪い冗談みたいだが、目前に実在するとこれほどおぞましい存在になるとは。
ミハエルが近付こうとすると、かがみはバットを振るい牽制する。
しかしやはりかがみには、金属バットは少し荷が重い。
かがみはバットを振る度に、その重量に僅かだが身体毎振られる。
「では聞こう。貴方は、何か他に殺し合いからの脱出法に心当たりが有るのか?」
「え!? な、無いわよ。そんなの……」
「代案も出さずに、非難だけされても困るよ。かがみさん……今大事なのは一刻も早く、皆を救い出す為に動く事だ」
振り終わりで身体が泳いだ所で、ミハエルにバットの持ち手を捕まれた。
「かがみさん。貴方には分からないだろうけど、私は世界を救う重大な使命を帯びているんだ」
そして反対の手がかがみの首を捕らえ、地面に押し倒す。
「それは『生誕祭』を行い『幸せの時』を迎えるとても重要な、意義深い使命だ」
かがみの首に体重が乗り、呼吸が困難な状態になる。
「かがみさん。ここで死ぬ事で、貴方は私が使命を果たす為の礎になるんだ。
つまり貴方の命は、多くの人を救う為に使われるんだ。これは素晴らしい事なんだよ」
そんなもん、知るか!! バカ!!!
そう叫びたくても、もう声も出ない。
酸欠で、かがみの顔色は青く変わっていく。
バットを持つ左腕も抑え付けられ、ビクともしない。
苦しみの余り、残った右手が砂利を強く掴む。
視界のミハエルの慈しむ様な顔が、見る見るぼやけていく。
そのミハエルの顔に、砂利を思い切り投げ付けた。
「……っ!」
ミハエルが一瞬怯む。
その左腕を力任せに振って自由にし、ミハエルの脇腹をバットで叩く。
当たったのはバットの真ん中辺りだったが、ダメージは充分に有った様で
ミハエルは後ろに転がりながら、かがみから離れていった。
それを最後まで見届けず、かがみはミハエルに背を向け駆け出した。
◇ ◇ ◇
ミハエルは目を擦りながら、ベンチ近くで存在を確認していた水道の蛇口を探し当てた。
水で目を洗いながら、ミハエルはデイパックから青いカードデッキを取り出す。
(本当は武器に頼りたくなかったけど…………もう、手段を選んではいられない)
目を洗い終えたミハエルは、締めた金属製の蛇口に
『ナイト』のカードデッキを映した。
◇ ◇ ◇
呼吸を整えながら恐怖に駆られ、遊歩道を必死に走る。
今のかがみに、後ろを振り返る余裕すらない。
今にも自分に追い縋ろうとするミハエルの幻影に追い立てられ、無我夢中で走る。
しかし目前に海が広がり、流石に足が止めざるを得なかった。
(ど、どっちに逃げれば良いのよ!? ……………………ひっ!!)
かがみの前を巨大な蝙蝠の様な怪物が、風をまいて横切った。
そのまま怪物はかがみの周りを、旋回し続けている。
(何? 何なのこいつ!?)
「かがみさん。どうやら貴方には、私の夢が理解して貰えない様だ」
かがみは自分が息を飲むのが分かった。
最も聞きたくない声が、背後から聞こえて来る。
「……本当に哀しい事だ。でも私は決して、貴方を救うのを諦めはしない。
人が夢に向かって諦めずに努力する事がどれほど大事かを、私は同志に学んだから…………」
振り返ると、銀色を基調にした西洋風の鎧が立っていた。声はそこから聞こえる。
逃げられない。
ならばと、バットを両手で構える。
かがみとしては、戦う覚悟を決めた。と言うより、ほとんど破れかぶれの心境だ。
袋小路に追い詰められれば、鼠でも猫に立ち向かう他無い。
ゆっくりと歩み寄って来るミハエルの肩口に、バットを振り下ろした。
まるで巨大な岩でも叩いた様な堅い手応えの後、衝撃で両腕が痺れた。
しかしそれ以上にかがみを驚かせたのは、バットで思い切り殴られたにも拘らずミハエルが小揺るぎもしていない事だ。
「…………かがみさん。これ以上貴方の個人的な我が侭で時間を浪費するのは、もう止めにしないか?」
今度は横からミハエルの頭を殴る。
やはりミハエルは、微動だにしない。
「大丈夫。貴方は私の中で生きるんだ。そうすれば私達は、永遠に『幸せの時』を生きられるのだから…………」
上段から振り下ろそうとしたバットを、ミハエルは片手で苦も無く受け止めた。
そして先刻と同じく、もう片方の手でかがみの首を絞める。
但しその力は、先刻の比では無い。
急激に意識が遠のいていく。
「さよならは言わないよ、かがみさん。これからは私と同じ夢の為に、共に生きていこう…………」
◇ ◇ ◇
「衝撃のぉ――――」
仮面ライダーに変身したミハエルは、以前よりも遥かに鋭敏な聴覚を発揮出来る。
その聴覚が捉えた。遠方から近付く声を。
それは足音を伴って、凄まじい速さで近付いて来る。
まさか人間か?
いや、有り得ない。
人間の脚で出せる速度ではない筈だ。
ではこの足音は何だ?
足音は、轟音へと変化していく。
ミハエルは思わずかがみを放し、振り向いた。
「――――ファーストブリットォォォ!!!」
次の瞬間ミハエルは重力を見失い、視界の天地が逆転していた。
◇ ◇ ◇
支援
586 :
584:2009/03/18(水) 23:25:45 ID:CYg7sRz/
携帯からすんません。さるさんにひっかかたのでどなか続き代理投下お願いします
ミハエルが男に蹴り飛ばされた。
そう認識出来たのは、ミハエルが空中を舞い落ちたのを確認してからだった。
赤い髪を後ろにたなびかせた奇妙な白い外套の男は、金属の様な物で覆われた蹴り足を降ろしながら呟く。
「ああ……2分20秒……また2秒、世界を縮めた……」
そして余りの急展開に、呆気に取られるかがみに向き直る。
「お嬢さん、無事ですか? 大丈夫ですか? 何処かお怪我は有りませんか!?」
男は尻餅を付くかがみに、手を差し伸べる。
かがみはすぐにそれを受け取れない。
「おぉぉぉーっと、申し遅れました。俺は決して怪しい者ではありません。世界最速のアルター使い、ストレイト・クーガーと申します!!
俺以外の参加者を捜して市街に向かっていた所を通りすがりに偶然貴女をお見掛けして、その可憐な姿に見惚れてこうしてお声がけした訳です。
こうして出会ったのも何かの縁。何かの運命。俺は常々こう思うんですよ。人との縁、人との出会いを大事にしたいと。古人も言っています。
一期一会、袖振り合うも多少の縁。そう考えると俺の世界を縮めるアルター能力『ラディカル・グッドスピード』は実に出会いのチャンスを与えてくれます。
この能力で世界を誰よりも速く東西奔走すれば、必然様々な出会いにも恵まれると言うもの! そして今日もこんな素敵な女性と巡り合えた!
どうですかぁ、貴女もこの出会いを祝して、俺と一緒に市街までナイスなドライブと行きませんか!?」
おぉぉぉーっと、から行きませんか!? までその間実に30秒!!!
これが21歳の青年ストレイト・クーガー、ベストコンディションの姿である。
しばし固まっていたかがみも、クーガーが自分を助けてくれた事実を思い出し
恐々ながら差し出す手を取り立ち上がった。
「……た、助けてくれてありがとう」
「なあに、危機に有る女性を助けるのは、連経済特別区域通称ロストグラウンド治安維持武装警察組織『Hold』内の
対アルター能力者用特殊部隊『Holy』に所属する者、いやいや違う。それは違うぞ! それ以前に1人の男として当然の事です!」
「当然では無い。それ以前に貴方は彼女を助ける所か、助かる邪魔をしてしまったんだ」
優に10mは蹴り飛ばされたミハエルだったが、特にダメージのある様子は見られない。
「…………クーガーさん、ですか? 貴方は……どうやら、私の夢をお話しするだけ無駄の様だ」
「愚問だなァ。俺の進む道は俺が決める! 他人に運命を左右されるとは意志を譲ったという事だ、
意志無きものは文化無し。文化無くして俺は無し。俺無くして俺じゃ無いのは当たり前!!」
「有無を言わさず人を蹴るなんて……貴方には常識とか良識とか、そう言うものが無いのか!?」
「お前が言うな!!」
「全くだ。こっちはデート中だってのに邪魔しやがって」
「誰がデート中だ!?」
「そこで、ツッコまないで…!」
「そこを指摘しないでどうするんだ。彼女は貴方とデート中では無く、私と同じ夢を見ていたんだ」
「違うわ!!」
「ハッハッハッハッハ!! 未練がましいなァ、しつこい男は嫌われるぜ?」
ミハエルは呆れたと言わんばかりに首を横に振って、腰に有った剣を取り出し
ベルトのバックルから抜いたカードを装填した。
――SWORD VENT――
天からミハエルに大剣、と言うより突撃槍(ランス)と言うべき巨大な武器が降りて来た。
「大丈夫。クーガーさん、貴方を相手にするとなると多少は手荒い真似も必要みたいだけど。
貴方もこれからは、私の胸の中でちゃんと生き続けるのだから……」
「言っただろう、俺の進む道は俺が決める。男の胸の中で生きるなんざ、絶対にノウ!!」
ミハエルの踏み込みは一瞬でクーガーとの間合いを無にし、即座にランスを振り下ろす。
ランスは地面を文字通りに切り裂く程の威力を示した事から、重量も相応の物だと見受けられる。
それだけの質量を振るいながら、ミハエルの動きは人の物とは思えない程に速い。
しかしそれ以上に驚くのは、攻撃を受けた筈のクーガーが消えた事である。
「遅いなァ」
クーガーの声が、ミハエルの真横から聞こえる。
ランスを横に払うも、もうそこにはクーガーの姿は無い。
「遅いと言っている! スロウリィだと言っている ! !」
今度は斜め前からの声。
斬り付けるも、やはり手応えは無い。
(…………何これ? 目で追う事も出来ないんだけど…………)
ミハエルは神速とも言うべき動きで、クーガーに襲い掛かる。
それをより以上の速度で、クーガーが回避し続けていた。
かがみはこの時になって初めて、この場が単なる殺し合いの舞台と言うだけでなく
自身の想像を絶する存在が跋扈する世界だと認識し得た。
――TRICK VENT――
突如、ミハエルの姿が2つに別れた。
2人のミハエルに挟まれ、流石のクーガーも意表を衝かれた様子で動きが止まる。
「残像? 俺より速く動いて見せた!? 馬鹿な! 有り得ない!! インポッシブル!! 俺より速く動ける者等この世に存在しない!!!」
その背後から3人目のミハエルがランスによる突き。
クーガーは身を捻って、それを避わす。
そこからランスが横薙ぎに振るわれ、クーガーの身体は吹き飛ばされた。
5mは地面と平行に飛んだ後、地面を転がる。
ミハエルの、決して太いとは言えない腕からは考えられない膂力。
更に、計6人にも姿を増やしたミハエルがクーガーを囲む。
「こうなっては、クーガーさん……貴方に勝ち目は無い。もう、無駄な抵抗は止めにして欲しい」
「大した自信だ。速さに頼らず分身するとは驚いたが、たった6人程度じゃあ俺を止めるのには、足りない!」
敵に囲まれながら、起き上がるクーガーは不敵に笑みを浮かべている。
そして陸上競技の予備動作の如く、身を低く構えた。
「全然足りない! 足ァりないぞォ! お前に足りない物は、それは―――――――――」
刹那、砂塵を上げクーガーの姿が消えた。
「情熱―――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
ただ速く、ミハエルの1人が蹴られ掻き消える。
「――思想―――――――――――――――――――――――――――――――――――」
何よりも速く、2人目のミハエルが蹴られ掻き消える。
「――――理念頭脳―――――――――――――――――――――――――――――――」
更に速さを増し、3人目のミハエルを消し去る。
「――――――――気品優雅さ勤勉さ!!―――――――――――――――――――――」
更なる加速、4人目と5人目のミハエルも消し去る。
「――――――――――――――――――そしてェ何よりもォォォ、速さが足りない!!」
止まる事を知らない加速の果て、6人目のミハエルが蹴り倒された。
「纏めて蹴り倒してやろうと思ったら、他は全部幻影だったとはなァ。速さの無い力は所詮虚仮。
速さはあらゆる能力に優れて勝る、唯一無二絶対無敵最強最大の戦力なのだァ!!」
ミハエルはランスを杖に、何とか立ち上がる。
「くっ、動きさえ止められれば…………これは!?」
全身を被う装甲が、粒子となって宙に溶けて行く。
「時間切れ……………………これ以上の戦闘続行は不可能か。…………仕方ない。
憶えて置いて欲しい。私は決して夢を諦めはしない。……だから…………何れ、また逢いましょう」
――NASTY VENT――
蝙蝠の怪物が羽ばたきを始め、突風の如き衝撃波が発せられる。
激流と化した衝撃波は、一直線にかがみへ向かって行く。
それを受けたかがみは、堪らず吹き飛ばされる。
――――筈だった。
気付いた時には、クーガーの両腕に抱えられていた。
かがみの居た地点はすでに遥か遠方で、衝撃波に拠り砂塵を舞っている。
自分が気付かぬうちに抱きかかえられていた事に――今日でもう何度目にもなるが――驚嘆し、かがみはクーガーの顔を見上げる。
当のクーガーは険しい顔でミハエルの居た、公園の方を見つめていた。
ミハエルの姿が見えない。
それでかがみにも衝撃波による攻撃が、クーガーを自分に引き付け
その隙にミハエルが逃げる為の物だと理解出来た。
「…………逃げられたんだ……」
「なぁに、俺の速さを持ってすれば何時でも何年何ヶ月何日何時間何分何秒のタイムロスを開けられようとすぐさまに追い付いてみせます」
「そう……そ、それよりも私はもう降りても、だ、大丈夫だから!!」
かがみは自分がクーガーの腕の中に、俗にお姫様抱っこと言われる状態で居た事を思い出し
恥ずかしさにしどろもどろになりながら、慌ててクーガーの腕から降りる。
「ハッハッハッハッハッハ!! 俺はさっきのままでも、構わないんですがねぇ。
先程も言いましたが、俺は市街へ向かおうと考えていたんですよ。何故市街を目的地とするのか!? その理由は単純至極簡単明快。
市街こそ近代施設娯楽空間学術資料等の集まる、言わば文化の集積地! ロストグラウンドでも荒野より市街が文化的!!
文化的ならそこに人が集まるのは当たり前! そう判断した為ですよ!! ……これもさっき言ったか?
まあいいや。さっき言ったついでにもう1度お誘いしましょう。貴女も市街までご一緒しませんかァ!?
勿論世界最速たる俺の速さに付いて来るなんて真似は、貴女には到底適わないでしょう。
しかぁし心配御無用万事私にお任せ下さい。オォォルザァッツオォォォォォケイ!!
私が貴女を抱えて走ればノープロブレム。後は私が、地球上の如何なる移動手段よりも安全快適何より最速で市街までエスコートします!!
どうですかぁ? きっと素敵なドライブになると思いますよぉ?」
かがみが引き気味になっているのを気にも留めず、クーガーは捲し立てる。
かがみとしては、クーガーは命の恩人。決して信用出来ない人ではないだろう。
先程は信用出来ると判断したミハエルに裏切られたのが、未だに胸中のしこりとして残ってはいるが
クーガーの限っては、今度こそ滅多無いと思えた。
しかしどうしてもかがみは、クーガーの誘いに二の足を踏んでしまう。
クーガーは間違い無く、悪い人間ではない。
しかしかがみがクーガーを1言で言い表すなら、それは変態と呼ぶだろう。
(…………私って、変わり者によっぽど縁があるのか?)
かがみは今は遠いアホ毛の友人を思い浮かべながら、手を差し伸べるクーガーに冷たい目を送り続けていた
【一日目深夜/F-5 岸辺】
【柊かがみ@らき☆すた】
[装備]:エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に
[所持品]:支給品一式
[状態]:健康、全身が軽く濡れている
[思考・行動]
1.つかさ達を捜す。
2.クーガーの誘いに乗る?
【一日目深夜/F-5 岸辺】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、ランダム支給品(1〜3)未確認
[状態]:健康、ラディカル・グッドスピード(脚部限定)発動中
[思考・行動]
1.かがみと共に市街へ行く。
既に『仮面ライダーナイト』からの変身が、解けていたミハエルは
公園の在る小島から、西へ向かい橋を渡っていた。
金属の基礎構造をコンクリートで固めた如何にも堅牢そうなその橋には、照明の類は一切無い。
その為、障害物が無いにも拘らず深い夜の闇に覆われている。
ミハエルは闇の中を1人、確かな足取りで進んでいた。
クーガーに蹴られた箇所に痛みは有るが、後遺症やこれからの行動に支障が出る類の怪我ではないらしい。
「…………同志。私の力が及ばず、かがみさんとクーガーさんをこの場から助け出す事が出来ませんでした。けれども……」
ミハエルは『同志』に話し掛ける。
周囲には誰も居ない。
しかしミハエルにとっては、確かに存在する。
ミハエルの中に。
あの誰よりも強く正しく賢く、尊敬して止まないミハエルの『同志』が。
◇ ◇ ◇
時を、1時間程遡る。
この殺し合いの場に、着いて直ぐの時間。
気付けば、まるで見た事の無い景色が広がっていた。
設置してある遊具や砂場から公園であると理解は出来たが、見覚えは全く無い。
さっきまで別の場所に居て、そこで少女が殺された記憶も生々しい。
(……何だこれは? 一体、何が起こったんだ!?)
ミハエルは、ただただ困惑していた。
状況を把握する為、更に記憶を遡る。
自分はオリジナル7のヨロイ、サウダーデ・オブ・サンデーに乗っていて
プリズン・プラネット・デストロイヤーにアクセスする為、月に打ち上げられる筈だった。
しかし気付いた時には、V.V.が殺し合いの開始を告げた場所に居た。
(何なんだ一体!? 私は、殺し合い等している場合じゃ無いと言うのに!!)
不可解な現象だが、今のミハエルにとってはそれ所ではない。
何しろ自分がこれから行う任務は同志の夢を叶える為の、最も重要な部分と言って過言ではない。
それを放り出して、こんな訳の分からない場所に来ている事になる。
サウダーデを起動出来るのは自分だけ。
つまり他の人間に任務を任せればいい、と言う訳にはいかない。
一刻も早く、ここからサウダーデに戻らなければ!!
気ばかりが焦るのを抑え、帰還方法を思案する。
とにかくここが何処か? どういった方法でここに来たか? 等の情報を集めなければ。
手持ちの支給されたデイパックを探る。
地図を見付け、慌ててそれを広げた。
そして殺し合いの会場全体を、俯瞰する情報を手に入れた。
(島か……くそっ、これでは現在位置の見当も付けられない!)
途方に暮れる。
そして自分が現在位置を把握しても、直ぐに帰れない事情が有るのを思い出した。
首下を触れば、ひんやりとした金属の感触。
V.V.が説明していた首輪が、自分にも確かに付いていた。
これが有る限り、殺し合いから逃げる事は出来ない。
ミハエルの顔が一気に青くなり、奥歯がカタカタとなる。
自分の死は怖くない。
同志の夢の為、命を投げ出す覚悟は出来ていたのだから。
しかしその彼の夢が果たせなくなるのが怖い。
彼の夢の為に、自分の命を使えなくなるのが怖い。
彼の力になれなくて、見捨てられるのが怖い。
自分の死などまるで比べ物にならない恐怖。
このままでは、それが現実の物となる。
(…………どうすればいい? こんな非道な殺し合いに勝ち残るしか、道はないのか!?)
答えの出ないまま、とりあえず自分に支給された武器の確認に移る。
長方形の金属片を確認する。
添えてある説明書きによると、『仮面ライダーナイト』なる者に変身出来るカードデッキだそうだ。
変身すれば、身体能力や知覚能力が大幅に上がるのみならず
アドベントカードを使う事により、様々な超常能力も操れるらしい。
半信半疑でデイパックに有った水の入ったペットボトルに、デッキをかざす。
突如、それまで存在しなかったベルトが腰に巻かれた。
(本当に変身出来るのか! こ、こんな物が存在するなんて!)
説明書きが本当だとしたら、これは恐ろしく強力な武器だろう。
例え50人、60人と言う人間でも殺害する事が可能な武器。
急激に殺し合いに参加している事実が、実感を帯びてくる。
(こ、これなら他の参加者を皆殺しにして勝ち残る事も…………馬鹿な! 私は一体何を考えているんだ!!)
ミハエルは元来、正義感の強い人間だ。
意に沿わず殺し合いに巻き込まれた人を、殺せる筈も無い。
ムッターカ達を殺した事はあったが、それとこれとは全く別問題である。
では、どうすればいいのか?
先送りしてきた問題が返って来る。
同志の下に帰りたい。人は殺したくない。
ジレンマに追い詰められ、そこから先に進めない。
(……これでは、エヴァーグリーンに居た頃と何も変わらないじゃないか。自分が何を為すべきかも知らず、何も決められない子供の頃と…………。
私は同志に出会い、生きる意味を見付け変わったんじゃ無かったのか!? ……同志…………私は、一体どうすればいいのですか?)
微動だに出来ず、沈んだ面持ちで開け放してあるデイパックの中に視線を落とす。
そこに見付けた。
(…………な、何でこれがこんな所に!!?)
金属製の指先が異様に尖った義手。
手にとって見る。紛れも無く同志のカギ爪。
(同志の…………こんな所で見るなんて!)
それは大して有用な武器とも言えない、只のカギ爪。
しかしそれを見た瞬間、ミハエルはそれまでの悩みが嘘の様にキレイに吹き飛んだ。
自分と同志との、宿命的とも言える深い絆を感じずには居られない。
カギ爪と握手をする様に握るだけで、同志の存在を実感し心が休まった。
(同志、教えて下さい。私はどうすれば良いんですか?)
(ミハエルくん、人は……命自体には余り意味が無いのですよ)
その場に居ない同志の声が確かに聞こえる。
ミハエルがそれに驚く様子は無い。
(意味が有るのは、その命が生み出す物。つまり、夢だ)
同志が、自分の進む道を教えてくれる。
もう何も迷う事は無い。
(君がその人を忘れなければ、その人は何があろうと死ぬ事は無いんです。君の胸でずっと生き続ける)
(同志…………貴方も私の中にずっと居たんですね。それを忘れるなんて、私は馬鹿だ)
何時の間にか、涙を流していた。
これ程素直に喜びの涙を流したのは、初めてだった。
同志が胸の中で生きている。
同志と同じ夢を見ている。
ミハエルは今この時になってようやく、同志を完全に理解出来たと確信する。
(同志、私はこの殺し合いに巻き込まれた人達を救いに行きます。私達と同じ夢を見る事によって)
(素晴らしい。君は実に素晴らしい。それが夢です、夢に殉ずる幸せです。何と崇高で、何と力強い……)
頭の中がクリアーになっていくのが分かる。
自分に課せられている問題の解決法が、楽に浮かんで来た。
自分は今まで何に迷っていたのか?
そんな必要は何処にも無かったのだ。
同志と同じ夢さえ見れば、全ての人が幸せになれるのだから。
◇ ◇ ◇
「……けれども、きっとかがみさんとクーガーさんも共にして同志の下に帰ります
少しばかり時間が掛かるかもしれませんが、必ず果たします。だから待っていて下さい、同志」
ミハエルは考える。
1人でも多くの人を、自分が手に掛けよう。
そうすれば、それだけの人が自分の胸の中で生き続けるのだから。
先程は、下手にかがみに気を使い過ぎて失敗してしまった。
この場にはクーガーの様な、能力を持つ者が他にも居るかも知れない。
次からは遠慮無く、確実に殺していく方法を取るべきだ。
例え顔も名前も知らずとも、きっと同じ夢を見る事は出来る。
だから確実に仕留める事を考えるべきだ。
自分が生きて帰還する事が、より多くの人の幸せに繋がるのだ。
あれ以来、同志の声は聞こえない。
しかしもう、充分だ。
充分同志が共に居ると、実感出来る。
それだけで、何も恐れずに戦う事が出来る。
今も殺し合いで苦しんでいる人が、居るかも知れない。
でも少しだけ待って居て欲しい。必ず救いに行って上げるから。
皆で私の胸の中で生きよう。
そして幸せの時に、また逢いましょう。
【一日目深夜/F-4 橋の上】
【ミハエル・ギャレット@ガンソード】
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、カギ爪@ガンソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(0〜1)未確認
[状態]:疲労(中)
[思考・行動]
1.同志の下に帰る。
2.1人でも多くの人を『救う』
157 : ◆KKid85tGwY:2009/03/18(水) 22:35:22 ID:WOKwHrjY0
投下完了しました。
遅くなって申し訳ありません。
問題点が有れば、指摘をよろしくお願いします。
-----------------------------------------------------
代理投下終了しました。
投下乙&代理投下乙です
クーガーの速さとマシンガントーク、ミハエルの狂気、かがみのツッコミ
それぞれが持ち味を発揮しており、見ていてニヤリとしてしまいました
ミハエルにナイトのデッキですか
近くには東條と沙都子が居るが、ライダー同士の対決となるのかどうか
投下乙&代理投下乙!
かがみもクーガーも生き生きしてて、本人達の声で再生されます
ミハエルは知らないけど、知らないからこそこの話は楽しめたww
いきなり殺しますとか言われたら怖いだろうなぁ
問題が無いようなので安心しました
>>573 すみません
まだ再利用できる部分もありますので、没ネタに投下するとしてもネタを使い切ってからになるかと
>>574 ご指摘ありがとうございます
修正しておきます
本投下は今日中に頃合いを見てします
トリ付け忘れてた
笑わせてもらった乙!
かがみのツッコミは殺し合いの場でも冴えまくりw
>>598 没ネタにではなく本格的に、というのは無理なのかな、と。
いやまぁ決めるのは書き手様なんでわがままは言いませんが
長文すぎたって特に問題は無い気がするので…。
うーん、ちょっと無理ですね
破棄した面子の内、北岡とクーガーは場所的にもうルルーシュたちとは絡めませんから
それに長すぎるというのは、要するに登場話として長いと判断したんです
今回の話も30KBあるので十分長いのですが
破棄した方は完成していたら40KB近くになっていた上に、ごちゃごちゃしすぎてしまったので
投下します
周りに木々が生い茂っている山林において、スーツを着た長身の男がストレッチをしていた。
これから人を殺すために体を解しているのだろうか?
あるいは殺し合いという異常事態に戸惑い、それでも落ち着こうと体を動かしているのか?
答えはどちらでも無い。男――北岡秀一は体に起こった異常を確かめていたのだ。
■ ■ ■
俺に殺し合いに対する焦りや戸惑いは無かった。
むしろ平然としていたと言ってもいい。
最後の一人になるまで戦い、優勝した者は望みを叶えてもらえる。
これはライダーバトルとほぼ同じものだ。
似たような事を経験しているから、少なくとも他の参加者よりは耐性ができていると思う。
それよりも、今は体を自由に動かせる方がよっぽど重要だ。
最後に屈伸運動をして、ストレッチは終了する。
やっぱり問題なく動く。
続いて夜空を見上げてみる。
住んでいる都心では余り見えない、煌びやかな星々が確認できた。
うん、問題なく見えるな。本当どうなってるんだ?
内心に体調への疑問と戸惑いが湧く。
自由に体を動かす。人間として当たり前のことだ。
その当たり前が、俺には違っていた。
最後に覚えている自分の体調は酷いものだ。
患っていた病はとうとう全身を蝕み、目はまともに見えず、体は歩くのがやっとの状態。
誰が見ても死は間近であり、その命は正しく風前の灯火だった。
それが今は体が自由に動き、目が見えて、歩くどころか走ることさえできそうだ。
死を待つだけだった筈が、気付いたら健康体同然になっていた。驚くなと言う方が無理だよね。
体調が良好なのは、主催者が何らかの応急処置を施したのだろう。
まさか完治したなどと思うほど、自分の病を楽観視してはいない。
まあ、ここまで回復させただけでも驚嘆に値するけどな。
一応感謝はしてやるけど、余計なことをしてくれたとも思う。
本来は病が回復したならば、程度の差はあれ喜ぶべきだ。
だが俺にとって病の回復は、別の問題を発生させる。
(回復したなんて神崎に知れたら、俺をライダーバトルに復帰させるだろうな)
先日、俺はライダーバトルから脱落したと宣告された。
しかも、告げられたのは入院している病院のベッドの上だ。
病人に対する気遣いはまるで無いらしい。
死ぬか勝ち残ることでしか抜けられない戦いを、生きたまま脱落という異常な扱い。
大方の理由は察しが付く。
放っておいても、病で勝手に死ぬと判断されたからだ。
普通は呆然とするか憤るだろうが、戦うのが虚しくなっていた俺は、脱落をあっさりと受け入れられた。
後はライダーを引退して、精々余命を楽しく過ごすつもりだった。
それが今度は殺し合いに放り込まれた。しかも健康体同然で。
脱落の原因である病が回復したなら、神崎が俺を放っておく理由は無い。
この殺し合いを生き延びても、ライダーバトルという殺し合いに復帰させられる。
果たして体調が良くなったのは喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか悩んだところで、足元のデイパックに気付いた。
今まで体のことに気を取られて確認を怠っていたようだ。
こういう物の確認は真っ先にするべきだろうに。
気を取り直し、デイパックを開く。
カードデッキが無いんだから、何か代わりの武器が入ってればいいんだけど。
スーツのポケットなんかを漁ったが、カードデッキは無かった。
俺たちの武器はバラバラに配ったと言っていたから、多分他の参加者に支給されたんだろ。
中を手探りしていると、最初に出てきたのは二つに折られた紙。
開いて月明かりを頼りに見てみると、人の名前が羅列されていた。
これは名簿か。
上から順番に見ていく。
アイゼル・ワイマール、蒼嶋駿朔、浅倉威……浅倉だと。
俺にとって因縁深い名前が記載されていた。
続けて残りの名前も見ていくと、城戸と東條の名前もある。
正直この二人はどうでもいい。
東條は元々何を考えてるか分からない奴だ。
城戸は殺し合いを止めようとでもしてるんだろ。
問題は浅倉だ。
この場所に来る前、俺は浅倉との決着を付けに向かう筈だった。
警察から射殺命令が下された浅倉と。
気が付いたらこんな場所に居たわけだが。
死ぬ前に因縁の相手と決着を付ける。俺らしくない考えだよな。
それでも、それがあいつを野放しにし続けた、俺の責任の取り方だ。
当面の目的は決まった。
ここに浅倉が居るなら決着を付けよう。
その為にまずはカードデッキを探す。
それまではカードデッキの代わりになる武器が必要だ。
再度デイパックを漁りだすと、何か硬い物に当たる。
それを掴み、引き抜いていく。
出てきたのは長剣だ。
明らかにデイパックより長い。
どうやって入っているのか疑問だが、とにかく武器は手に入った。
できれば銃が良かったんだけどな。それでも無いよりはマシか。
長剣は磨かれてはいるが、見た目は骨董品だと分かるぐらい古ぼけている。
長さに反して、重さは力に自信が無い俺が両手で持てる程度。
これなら振ることぐらいはできそうだ。
長身でカッコいい俺が持てば見栄えも良いだろうが、接近戦は得意じゃないからやりたくないな。
裏を見ると、鞘に紙が貼ってある。
『魔剣デルフリンガー 能力は剣から教えてもらってください』
馬鹿にしてるのか。
剣が喋るわけでもないのに、何が教えてもらってくださいだ。
紙を破り捨て、鞘から剣を引き抜いていく。
現れたのは――錆びた刃だった。
おいおい、何が魔剣だよ。ただの鈍らじゃないか。
少しとはいえぬか喜びまでさせて。
これは使えないな。
他に使える物が入ってることに期待しよう。
こんな物を支給した主催者に怒りを感じながら、剣を鞘に戻そうとする。
その途中で、長剣の金具がカチカチと鳴り出した。
「おい、兄ちゃん。後方に誰か居るぜ」
思わず動きを止めてしまう。
まず、今の声が何であるのかという疑問が浮かぶ。
いや、実際は分かっていた。
確かに見てしまったのだから。
剣の金具が鳴り、声が発せられるところを。
それでも自身の常識が、見た光景を否定しようとしていた。
だってありえないだろ。剣が喋るなんて。
病が頭にまで感染したのかと本気で考えてしまう。
どちらにしろ確かめないわけにもいかず、できれば幻覚であってほしいと思いながら、長剣に話しかけてみた。
「今喋ったのは……お前か?」
「おう、このデルフリンガー様だ。ところで兄ちゃん誰だ? ここはどこだ? あと相棒を知らねえか?」
残念ながら幻覚では無かった。
支援
その上デルフリンガーと名乗る長剣は、軽快に質問まで投げかけてくる。
でも、俺は質問に答えることが出来ない。
人は自分が理解できないものを見てしまえば、動けなくなってしまうものだと聞いたことがある。
まさか自分で体験するとは思わなかったが。
少なくとも、俺の知識に喋る剣など存在しない。
これもミラーモンスターの一種かと思ったが、ここが現実世界であることが否定している。
何よりもデルフリンガーの言葉には聞き逃せない部分があった。
『後方に誰か居る』らしい。
背後を振り返る。見た限りでは、暗闇が広がっているだけだ。
戸惑いながらも、再びデルフリンガーに小声で話しかける。
「デルフリンガー、だっけ? 本当に誰か居るのか?」
「ああ、ちょっとだけ見えたんだ。それよりも質問に答えてくれねえかな」
そんな暇は無いんだよ。
デルフリンガーの要求を無視し、身近な木の陰に身を隠す。
相手が殺し合いに乗っていれば無防備に身を晒すのは危険だ。
変身していればともかく、生身では暗闇に潜んでいる人物は探し難い。
どれほど前からかは分からないが、こちらを発見して接触を図らないのは警戒しているか、
襲撃するタイミングを見計らっているかのどちらかだろう。
乗っていないという可能性もあるが、警戒するに越したことはない。
(持っている武器は多分銃じゃない。持っているなら見付け次第撃ってくるはずだ。
仮に持っていても使わないのは腕に自信が無いか、使えない状態なのか)
「おーい、兄ちゃん。俺っちの声は聞こえてるよな? こっちは名乗ったんだから兄ちゃんも誰か教えてくれよ」
自分が遠距離攻撃を主体としている経験から武器を予想したが、相変わらずデルフリンガーが煩かった。
今は答えてる場合ではなかったが、隠れている奴がどこに居るのかも教えてもらいたい。
さすがに質問を無視し続けて、こちらばかり質問をしていれば剣とはいえ不機嫌になるだろう。
視線をデルフリンガーに移し、小声で質問に答えることにする。
「よく聞けよ。俺の名前は北岡秀一。此処は殺し合いの会場で、お前の相棒については何も知らない。
それとお前が見たのは、多分俺の命を狙ってる奴だ。説明終わり」
「殺し合い? おでれーた、一体どうなってんだよ」
「もう少し静かにしてくれないか。あと、お前が見た奴はどこらへんに居るんだ」
「とりあえず今はやばい状況なんだな。んーと……大体、さっき兄ちゃんが居た場所から後方に四十メイルぐらいだな。
見えたのは一瞬だから顔は分からねえぞ」
メイルって何だ? メートルと解釈していいのか?
約四十メートルと仮定して、対策を考える。
瞬時に考え付く選択肢は三つ。
一:イケメンの北岡秀一は華麗に襲撃者を撃退する。
二:頼りになる吾郎ちゃんが助けに来るまで待つ。
三:土下座。現実は非情だ。でもこれが大人の処世術。
いつもなら、迷わず二か三を選ぶ場面だ。
出来れば二を希望したいけど、根本的な問題として吾郎ちゃんは殺し合いに参加していない。
来るとしたら城戸だが、来たとしても役に立ちそうにない。
三も成功確立は低いと即座に切り捨てる。
土下座で見逃してもらえるほど甘くもない。
「兄ちゃん。ちょっと言いたい事があんだけど」
デルフリンガーが何か言ってくるが、相手をする暇は無いので無視。
残る一も、自分の身体能力ではとても無理だ。
そもそも華麗に撃退する自分が想像できない。
あんまり泥臭いこともやりたくないしね。
「おーい、兄ちゃーん」
まだデルフリンガーが話しかけてくるが無視。
なら得意の口先で交渉に持ち込むか?
駄目だ、これも相手が話を聞かない奴だったら意味が無い。
「……聞いてないなら勝手に言わせてもらうけどよ」
後はデイパックの中にある、残りの支給品に賭けるという手もある。
武器でなくても、この場を切り抜けられるなら何でもよかった。
しえん
というかそれしかないだろ。
傍らにある筈のデイパックに手を伸ばそうとして、
「あれ、置いてきてよかったのか?」
デイパックが傍に無いことに気付く。
同時にデルフリンガーの声と、隠れてる奴が居るだろう辺りから、物音を聞く。
慌てて木の陰から僅かに身を出し、先程まで居た場所に目を向ける。
見えるのは放置された自分のデイパックと、途中の木に隠れながら慎重にデイパックに迫る人影。
暗闇の中、木々の間から漏れる月明かりを反射する金髪が見えた。
こちらを見ていない。俺の居場所には気付いていないようだ。
喋りだした剣、潜む参加者とその対策。
それらに気を取られ、デイパックを置き忘れてしまったらしい。
今デイパックを奪われれば、状況が絶対絶命になる。
この時点で、俺が取るべき選択は決まった。
逃げの一手だ。
デルフリンガーを鞘に納め、音を立てないよう慎重に逃走を開始した。
何と言われようと、軽々しく命を捨てるほど捨て鉢にはなれないんだよ。
今から走ればデイパックを回収できるかもしれない。
だがそこまでだ。
回収した後は男との戦闘が待っている。
カードデッキがあるならともかく、生身では戦っても勝算は低い。
それならデイパックを犠牲にしても、その間に逃げる方が良いと判断した。
(まったく、こういうドジは城戸の方が似合うだろうに)
そういえば、あいつと始めて会ったときもヤクザから一緒に逃げたな。
いやいや、くだらないことを思い出してる場合じゃない。
今は山を降りることに集中しよう。
でも、逃げ切るまで俺の体力が持つのかも心配だな。
頼むから追ってこないでくれよ。
■ ■ ■
支援
(あの男、何を考えている……)
デイパックに近づきながら、男を発見してからの行動を思い返す。
最初に発見したのがあの男だ。
月明かりはあったが、それでも暗い為によくは見えなかった。
辛うじて見える姿から男だと判断できた。
直ぐにでも襲撃を仕掛けたかったが、武装の心許なさが躊躇させてしまう。
銃は没収されて、靴も普通の物に取り替えられていた。
代わりに支給された武器は鉈。
接近戦が出来ない訳ではなかったが、不慣れな武器で戦うのはそれだけで不利だ。
対する相手の武器はまだ分からなかった。
もしも銃を持っていれば、不用意な行動は危険だ。
故に男の武器を確かめる必要があった。
結局男が取り出した武器は剣だ。鉈では不利だな。
いや、武器が劣っていようと、使い手が素人ならば問題無い。
だが、男の佇まいは素人かどうかの判断が付きかねた。
余りにも冷静すぎる。
普通は素人が殺し合いなどに参加させられれば、少なからず動揺を見せる筈だ。
遠めに見た男からは、その様子がまったく見えなかった。
逆に自分のような、荒事に慣れている人間にも見えない。
もう少し監視する必要が出てきた。
そして、奴は俺に気付いた。
監視を続けていると、奴は突然こちらに振り向いた。
瞬時に身を引いたが、既に気付かれていたのだろう。
再び身を乗り出した時にはもう姿は無く、デイパックだけが置かれていた。
明らかに俺の存在を確信している挙動だ。
何故気付かれたのかは分からない。
監視をする以上、俺も最新の注意は払っていた。
奴がこちらを振り向いたのは、先程の一度切り。
しかも俺は一瞬で姿を隠したうえに、この暗さだ。
余程夜目が利くのか。
もしくは気配で俺の存在を察知したならば、奴は相当の手練れだ。
残されたデイパックは罠だろう。
迂闊にデイパックを取りに飛び出した俺を仕留めるつもりなのか?
だとしたら侮りすぎだ。そんな罠に掛かるわけがない。
それでも、このままにしてはおけない。
最初からこれほど手間取っていては、優勝などとても無理だ。
どちらにしろ、鉈では近づかないとどうしようもない。
意を決して途中の木の陰に隠れながら、デイパックまで迫っていく。
約三十メートル、二十メートル、十メートル、まだ相手の反応は無い。
(どういうことだ? まさか)
一気にデイパックまで近づく。
やはり何も起こらない。そして周囲に人の気配も無い。
やられた。怒りが湧き上がってくる。
あの男は最初からデイパックを捨て、逃げるつもりだったのだ。
そして、見事に自分は罠に嵌められた。
こんな陳腐な策に引っかかるなど、普段なら考えられない。
臆したというのか。
銃もヴォルケインも無いことが、俺を臆させたのか?
もはやカギ爪の男を殺せずに死ぬこと以外に、恐れるものなど無い俺が。
奴を思い出すだけで、自分の顔が憎悪に歪むのが分かる。
こんなところで手間取ってはいられない。
早急に銃を手に入れ、他の参加者を殺す。
効率を考えるのならば、女子供を殺して奪うのがいいだろう。
(カギ爪の男を殺し、復讐を成し遂げる為には人の心など捨てよう。そして、俺の前に立ちはだかるなら誰であれ排除する。
例え女子供であろうとも迷わず殺す。その為に外道と罵られようと、人でなしと呼ばれようが構わない!……俺は何を興奮しているんだ?)
どうやら、罠に嵌められた怒りは想像以上だったようだ。
一先ずは落ち着こう。
そういえばブイツーとかいう子供は、優勝した者の望みを叶えるとも言っていたな。
しえん
支援
規制に引っ掛かった?
すみません規制されました
代理投下お願いします
弱ったなぁ……
PC規制されてるから、携帯でしか書き込めないし
死者の蘇生すらできると。
くだらない。どうせ参加者を惑わすための戯言だ。
だが死者蘇生は無理だとしても願いが叶うなら。
カギ爪の男を連れて来させるか。
これだけの人間を攫ってきたんだ。
もう一人ぐらい探し出し、攫うぐらいは容易い筈だ。
そう思えば、少しはやる気が出てくる。
先程の男は追う必要は無い。
仮に奴を追って、他の参加者に遭遇してもやっかいだ。
逃げる男と、鉈を持ち追いかける男。
もしも正義感を持つ者が見れば、どちらに加勢するかは明らかだ。
ただでさえ使い慣れない武器で、二人以上は相手にしたくない。
考えてみれば、今回のことも決して無益ではない。
もう一つデイパックを入手できたのだから。
男のデイパックを開く。
銃があれば良かったが、そう都合良くはいかないようだ。
食料などの基本品以外は、ガラクタが一つ入っているだけだった。
四角形のケースには緑色に、牛を模したと思われる金のレリーフがあしらわれている。
何故か説明書は無い。
使い道は無さそうだが、このような場では何が役に立つか分からない。
一応は持っていこう。
後は行き先だが、参加者が集まるとすれば地図に乗っている施設だろう。
しかし現在位置が分からない。
周囲には木々しか見えない。
地図はあるが、場所が分からなければ意味が無い。
とりあえずは山頂まで登るか、山を降りるか。
まずはどちらにすべき決めよう。
【一日目深夜/C−5 北部 山中】
【レイ・ラングレン@ガン×ソード】
[装備]鉈@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式×2、ゾルダのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]健康
[思考・行動]
0:山を登るか降りるか決める。
1:優勝を目指す。
2:銃が手に入るまで無理はしない。
3:願いを叶える権利が本当なら、カギ爪の男を連れて来させる。
[備考]
※参戦時期は5話終了時。
※デルフリンガーが喋ることに気付いていません。
■ ■ ■
俺は山道をできる限り早足で下り続けていた。
辺りは暗く、道らしい道も無かったが迷わずに進む。
先程の男に追いつかれたら、ほぼ間違いなく自分は死ぬ。
立ち止まるわけにはいかない。
それでも進み続けると、いい加減息が切れてくる。
元々体力はあまり無いが、慣れない山道が余計に消耗させていた。
背中に携えたデルフリンガーも、今では余計な荷物にしかならない。
だからといって、捨てるわけにもいかないのが難儀だった。
不本意だけど、これが唯一身を守る武器だから。
(でも、そろそろ限界なんだよね)
月明かりが照らすのはどこまでも木、木、木、そして道路。
(こんな代わり映えしない景色じゃ精神的にもきつ……道路?)
立ち止まり、前方を見てみる。
視線の先では木々が途切れ、舗装された道路が見えた。
確認するとゆっくりと山道を下り、路上まで歩いていく。
山林に比べて、月明かりを遮る物の無い道路は明るい。
背後を振り返るが、誰も追ってくる様子は無い。
それを確認すると、漸く一息付けた。
邪魔なデルフリンガーを道路に置き、崩れ落ちるように座り込む。
呼吸を整える為に深く息を吸い込み、吐き出す。
汗を吸って、肌に張り付くシャツが気持ち悪い。
顔に当たる夜風が気持ちいいが、喉が渇いた。
今は喉を潤す水すら無い。
ここまでの自分の行動は、どこまでも無様だ。
致命的となってもおかしくないミスを繰り返した結果、残されたのは喋る長剣が一本。しかも錆びている。
鈍器代わりには使えるかもしれないが、これで殺し合いを生き抜くなどとても無理だろう。
話し相手ぐらいは勤まるが、今抜けば騒ぎ立てるのは目に見えている。
相手をするのは面倒だ。
それにいつまでも休んでるわけにもいかない。
疲れの余り座ってしまったが、こんな遮蔽物のない道路で座り込むなど危険だ。
せめて反対側の山林に移動しよう。
立ち上がり、もう一度だけ降りてきた山林を見る。
相変わらず静かだ。誰も追って来る様子はない。
さて、これからどこに――
「お主、大丈夫か」
背後から男の声が聞こえた。
今日は運が悪いな。
逃げ切れたと思ったら、また別の奴が現れた。
いや、声を掛けてきたのなら敵意は無いのかも。
そんな希望を持たないと、振り向くのすら億劫になる。
それでも振り向いて、我が目を疑った。
そこに立っていたのは……侍だ。
ねずみ色の着物に袴、腹には晒しを巻いている。
履物は草履、俺には劣るが顔は二枚目だ。
背負っているデイパックが、ある意味シュールかもしれない。
正に絵に描いたかのような侍だが、何か足りないような違和感もある。
さすがにこれは予想外だ。
いつもなら変な格好をした奴で片付けている。
今は喋る剣があるなら、侍が居てもおかしくはないような気がしてきた。
「警戒しなくてもいい。拙者は殺し合いなんぞに乗っておらん」
黙っているのを警戒していると思ったらしい。
路上まで歩きながら、侍はこちらに背負っていたデイパックを放った。
おいおい、無防備すぎないか。
俺が銃でも隠し持ってたらどうするのよ。
それでも対処できる自信でもあるのか、あるいは城戸のようなお人好しの馬鹿か。
分からない、目の前の存在は得体が知れない。
まるで浅倉と対峙してるようだ。
とにかく話しかけてみるか。
「お前、何なんだよ」
「申し遅れた。拙者、石川五ェ門と申す」
石川五ェ門。確か名簿には浅倉の下に名前があったな。
偽名の可能性もあるが、態々偽名に使う名前じゃない。
ほぼ間違いなく本名だろう。
そもそも聞いたのは名前ではないのだが、名乗られたからには名乗り返すべきだよね。
「弁護士の北岡秀一だ」
「北岡殿か。それでどうしたのだ? 余程の事がなければ、そのような形にはなるまい」
確かに俺の格好は酷いものだ。
顔は汗だく、スーツはよれよれ、靴は泥だらけ。
何かあったと言ってるようなものだ。
どうしよう。こいつに話すべきかな。
一応は友好的だけど、何を考えてるか分からない。
まずは質問でもしてみるか。
「聞きたいことがある。お前は殺し合いに乗っていないらしいけど、どうして俺に乗っているかは聞かないんだ?」
「では改めて聞こう。北岡殿は乗っているのか?」
そういうことは最初に聞くべきだろ。
しかし殺し合いに乗るのか、乗らないのか。
俺も即答はできない。
思えばそれすら決めていなかった。
今日の俺はどこまでも抜けているらしい。
さて、どうするかな。
主催者が俺を治療したのは、積極的に参加者を殺すと判断したからだろう。
俺の性格や、ライダーバトルでの戦いを知っていれば十分に納得できる。
城戸を刑務所送りにしようとしたり、他のライダーが戦ってるところに砲撃したりと色々やったからな。
治療してくれたのは感謝してやってもいい。
でも、俺は――
「俺は、戦わないよ。優勝すれば願いを叶えるとも言っていたが、叶える保障も興味も無いしな」
それに戦いが虚しくなったからライダーを引退したのに、もう一度戦うなんて冗談じゃないからね。
できれば浅倉との戦いが最後にしたいな。
俺の答えに満足したのか、五ェ門は大きく頷く。
「そうか。もし乗っているようならば、ここで北岡殿を打ち倒さねばならなかった」
「倒すって、素手でできるのか」
俺は疑わしげに五ェ門を見る。
五ェ門は一瞬だけムッとした表情になるが、続いて不敵な笑みを浮かべる。
「できる。例えばこのようにな」
五ェ門が一歩進んだと思ったら、俺の首筋に目掛けて手刀を放っていた。
所謂寸止めだろう。手刀は俺の首筋に宛がわれていた。
遅れて血の気が引いていく。
当たっていたら首の骨が折れていたかもしれない。
「こう見えて示刀流空手免許皆伝なのでな。素手でもなんとかする自信はある」
「驚かすにも限度があるだろ。肝が冷えたよ」
「いやあ、すまん。調子に乗りすぎた」
五ェ門は素直に頭を下げる。
だが、目線が僅かに横を向いているのを俺は見逃さなかった。
視線の先にはデルフリンガーが置かれている。
何で剣なんかを物欲しそうに見てるんだ?
ああ、そうか。最初に感じた違和感。
こいつに足りない物は刀だ。
侍が刀を持っていないなんて様にならないからな。
デルフリンガーは剣だが、刀も剣も似たような物なんだろう。
だけどあれは錆びた剣なんだよね。
俺としては代わりの武器となら交換したい。
でも、錆びた剣では交換すら成立しないな。
もし黙って交換したとしても、直ぐにバレてしまう。
折角出会えた友好的な参加者だ。
実力もある。できるだけ争いは避けたい。
ならどうする。
考えろ。要らない剣を材料に代わりの武器を手に入れ、五ェ門と仲違いしない方法を。
■ ■ ■
五ェ門は一刻も早く刀、もしくは剣が欲しかった。
できれば斬鉄剣を使いたいが、見つかるまでずっと素手という訳にはいかない。
北岡に言ったように素手でも戦う自信はあるが、銃が相手では不利だ。
流石の五ェ門でも素手で銃弾は捌けないのだから。
「五ェ門。提案があるんだけど」
話しかけられ、五ェ門は目線を北岡に移す。
先程出合ったばかりの青年の風体を見て、五ェ門は北岡が何者かに襲われたと思っていた。
逆に襲いかかり、返り討ちに遭っただけかもしれない。
故に事情を聞き、場合によっては助けるために北岡に話しかけたのだ。
もちろん、乗っているなら容赦なく叩きのめすつもりで。
「何だ」
「あれなんだけどね」
道路に置かれている長剣を指し示す。
途端に五ェ門の目が鋭くなる。
それを北岡は見逃さない。
「欲しいの? あれ」
「い、いや、そのようなことは無い」
どもり、咳払いまでしている。
分かりやすい五ェ門の反応に、北岡は苦笑する。
弁護士として様々な人間を見てきた北岡だが、こうもあからさまな者は居なかった。
これでは欲しいですと言っているようなものだ。
「なんなら条件次第で渡してもいいんだけど」
「誠か!」
「ああ。俺には必要ないしね」
願ってもない申し出だ。
五ェ門の声に喜びが混ざる。
対する北岡は薄ら笑いを浮かべ、言葉を紡いでいく。
支援
「でも、条件を全て呑んでくれないと交換できない。それでもいいか」
「構わん。言ってくれ」
五ェ門の了承を得て、北岡は条件を述べていく。
「条件は二つ。一つ目はこの剣を、そっちの支給品一つと交換してくれ」
一つ目は比較的真っ当な要求だ。
不必要な支給品同士を交換するのは理に叶っている。
剣や刀で無いなら、五ェ門にはデイパックに入っている支給品は必要無い。
五ェ門は頷き、承諾する。
「二つ目は?」
「俺としてはこっちが本題だ。お前に俺と契約してほしい」
五ェ門が怪訝な表情となる。
いきなり契約してほしいなどと言われれば当然だ。
それを予想通りと言いたげに、北岡は言葉を続けていく。
「はっきりと言わせてもらえれば、俺はまだお前を信用していない」
侮辱とも取れる発言を聞いても、五ェ門は僅かに顔を顰めるだけで済ませた。
北岡の言い分はもっともだからだ。
このような場で、初対面の人間を簡単に信用できないのは当たり前だ。
自分の言葉に冷静な反応をする五ェ門に、北岡は感心した様子を見せる。
「以外だ。怒らないんだな」
「初対面の相手を易々とは信用できまい。それで契約とはどういう意味だ」
「言葉通りさ。お前には俺の護衛になってほしい。その代わりに俺は交渉人として、お前の役に立つ。これが契約内容だ」
「……お主、弁護士ではなかったか?」
五ェ門の疑問に、北岡は頷いて肯定する。
言うまでもなく北岡は弁護士だ。
交渉人の経験など皆無である。
だからこそ五ェ門には理解できない。
「ならば交渉人として役に立つとはどういうことだ。そっちの方は素人であろう」
「確かにね。でも弁護であれ交渉であれ、俺は弁舌での勝負なら負けないよ」
自信満々に宣言された。
自分が負けるとは、微塵も思っていないのが見て取れる。
思い上がった態度だが、どこか説得力があった。
だが今度は五ェ門も簡単に承諾しない。
北岡の真意が見抜けないからだ。
「お主と契約して、拙者に何の得がある」
「その前に確認しておく。五ェ門、お前は弱い奴を見つけたらどうする?
例えば最初に首を吹き飛ばされた女の子のような、子供を見つけたら」
「当然保護する」
即答で断言された。
あのような蛮行は断じて許さず、何も出来なかった自分に怒りすら感じるのが五ェ門という男だ。
対して北岡は淡々と応じる。
五ェ門の答えは予想通りという様子だ。
「だろうね。でも、お前が言ったように初対面の相手を信用するか? 怯えてたりしたら尚更に」
「む」
思わず五ェ門は押し黙る。
確かにこの場には殺し合いという状況に戸惑い、怯える者も数多く居るだろう。
お世辞にも饒舌とは言えない五ェ門では、そのような者に上手く対処できるかは怪しい。
「ひょっとしたら騙そうとする奴も居るかもよ。
特にか弱い女性とかね」
「ぐっ」
またもや五ェ門は押し黙る。
五ェ門が女性に騙されたことは、それこそ数え切れないほどにあった。
仲間に呆れられ、何度経験しても騙されてしまうのだから、もはやお家芸とも言えた。
「だからさ。そういう類の相手を俺が引き受けようと言ってんの。怯える相手を説き伏せて、騙そうとする奴は見抜く。
その代わり、お前は俺を護衛する。どうかな」
五ェ門は考える。
これは簡単に決めていいことではない。
確かに自分は口下手で、女性には滅法弱い。
北岡を護衛するのも、剣が手に入る代わりなら安いものだ。
だが、契約など簡単にしていいものなのかという迷いがあった。
そんな五ェ門に、北岡は情に訴える言葉を掛ける。
「俺だって、こんなこと言いたくないんだ。でも俺は臆病だから、お前を信じる為にはこう言うしかないんだ」
北岡を知っている者が見れば、呆れてしまうようなセリフだ。
それでも俯き口元に手を当て、微かな嗚咽を混ぜながら弱音を吐く様子は真に迫っていた。
以前に浅倉を騙す為に、土下座して情けなく命声までした演技力を遺憾無く発揮している。
そんな北岡を見て、五ェ門は申し訳無さそうな顔になる。
これでは迷っている自分が悪いのではないかと考えてしまう。
北岡は捻くれているだけで、心根は善人ではないかとも考える。
情に弱いのも、女性と並ぶ五ェ門の弱点だった。
「お主が捻くれているのは分かった。その条件を呑もう」
「言い方が気に入らないけど、ありがとう」
五ェ門の承諾を確認して、北岡は手を差し出す。
契約成立を確かめる握手だ。
五ェ門も北岡の手を力強く握る。
こうして侍と弁護士は、護衛と交渉人としての契約を結んだ。
「念の為に聞くけど、後で契約を反故になんてしないよな。いきなり殴りかかったりとか」
「そんなことはしない」
「本当に? 約束できるか」
「くどい。武士に二言は無い」
その答えで北岡も笑顔を浮かべると、手を離してデイパックを手にする。
「それじゃあ交換する支給品を選ばせてもらうよ」
「構わん。だが、あまり良い物は入っておらんぞ」
五ェ門に構わず、北岡はデイパックを開いて中を探る。
支給品を確かめていき、付属の説明書を読んでいく。
数分が経ち、北岡に選ばれたのは白い靴だ。
説明書には『レイの靴』と書かれていた。
一見するとただの靴だが、両踵部に銃が仕込まれた隠し武器らしい。
泥だらけの靴を脱ぎ、北岡は白い靴に履き替えていく。
それを確かめると、五ェ門も路上に置かれたデルフリンガーを手に取る。
そして鞘から引き抜き、
「北岡殿……これはどういうことだ?」
錆びついた刃を確認した瞬間に、北岡を睨みつけた。
声は冷たく、目は細まり、瞳には怒りと疑念が宿っている。
そんな顔を見ても、靴を履き替えた北岡はしたり顔を崩さない。
「だから言ったろ。騙そうとする奴も居るかもって」
「貴様、謀ったな!」
全く反省が見えない北岡の態度に、五ェ門の怒りが爆発しようとしていた。
元々が短期な性分なので、怒るとかなり怖い。
だが、今すぐ襲ってきそうな五ェ門に北岡は冷静に対処する。
「落ち着けよ。さっき殴りかかったりしないと言ったよな。武士に二言は無いんだろ」
「ぐ、ぬぬぬ」
悔しそうに五ェ門は唸り声を上げる。
北岡との契約など破棄したいが、破棄すれば武士として交わした約定を破ることになる。
それは五ェ門の誇りが許さなかった。
「そう怒るな。協力したいのは本当だし、物を確認しなかったお前にも問題はあるぞ」
「納得できるか!」
怒りが治まらない様子の五ェ門を見て、北岡は溜め息を吐く。
こうなることは予想できていた。
いくら考えても錆びた剣を材料に武器を手に入れて、尚且つ五ェ門と仲違いしない方法は重い浮かばなかったのだ。
だからこうなった時の対策も考えてある。
怒っている者が居るなら、感情の矛先を別の物に向けさせればいいのだ。
「言い忘れてたけど……その剣は喋るぞ」
「おでれーた! この兄ちゃん、そこのでかい兄ちゃんや相棒とは比べもんになんねえぐらいの達人じゃねえか!」
「なっ!?」
五ェ門の目が見開かれる。
北岡と同様、ルパン一味として世界中を見てきた五ェ門でも、喋る剣は見たことが無いのだ。
人は自分が理解できないものを見てしまえば、動けなくなってしまう。
そのおかげで、北岡は五ェ門の怒りを一時的に逃れられた。
あくまで一時的だが。
しえん
【一日目深夜/C−5 道路】
【石川五ェ門@ルパン三世(アニメ)】
[装備]デルフリンガー(錆び)@ゼロの使い魔
[支給品]支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み、剣・刀では無い)
[状態]健康、北岡に僅かな怒り、デルフリンガーに戸惑い
[思考・行動]
0:何だこれは!?
1:早急に斬鉄剣、もしくは代わりの刀か剣を探す。
2:ルパン、次元、銭形を探す。
3:不本意だが戦闘は自分、交渉は北岡に任せる。
[備考]
※デルフリンガーは原作一巻終了時から参戦。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]レイの靴@ガンソード
[所持品]無し
[状態]健康? 、疲労(小)
[思考・行動]
0:そいつは頼んだ。
1:ゾルダのカードデッキを探す。
2:1を達成後は浅倉を探して決着を付ける。
3:戦闘は五ェ門、交渉は自分が担当する。
4:浅倉、東條、金髪の男(レイ)を警戒。
5:城戸は一応探す。
[備考]
※参戦時期は死亡直前。
※北岡の病がどうなっているかは不明です。
※カードデッキが最初から支給されていることに気付いていません。
支援
三者三様の幸運と不運があった。
レイ・ラングレンはまだ訪れた幸運に気付かない。
自らが望む以上の銃が、既に手元にあることに。
彼が手にしたのはゾルダのカードデッキ。
遠距離攻撃に優れた仮面ライダーに変身できる道具だ。
不運は、カードデッキに説明書が付属していないことか。
何故支給品に付き物の説明書が無いのか?
説明書とは、使用法の分からない者の為にある物だ。
ならばカードデッキの本来の持ち主である、四人のライダーには説明書など不要と判断されたのだ。
そして、慎重になり過ぎて北岡を逃がしてしまったのも不運と言えた。
石川五ェ門の幸運は、認めたくないだろうが同行者を得れたことだ。
もしも最初に出合ったのが女性であり、殺し合いに乗っていたなら、彼はあっさりと騙され死んでいた可能性があった。
不運は、最初に出会ったのが北岡秀一だったことだろう。
彼が始めに居た場所はC−5の南部。
もし北上せずに西に向かえば、カズマと岩崎みなみと真っ当な人間に出会えたのに。
北岡秀一の幸運は、レイから逃れ、五ェ門と出会えたことだ。
五ェ門と同じく、北岡も一人ではあっさりと死んでいた可能性が高かった。
カードデッキが無ければ、北岡はただの弁護士なのだから。
そして不運というより過ちは、人を信じ切れなかったことだ。
五ェ門ならば、契約などという回りくどい方法を取らずに、素直に協力を申し出れば受け入れてくれただろう。
北岡も城戸真司のような真正のお人好しが居るのは知っている。
だが打算的に生きてきた北岡には、殺し合いの場でもそのような者が居るとは信じ切れなかった。
それが最大の不運かもしれない。
これらの幸運あるいは不運が、三者にどのような影響をもたらすかはまだ誰にも分からない。
【支給品紹介】
【デルフリンガー】
150cmほどの長剣。
主な能力に魔法の吸収、触れた者の力量を測るなどがある。
本来は錆びを自由に落とせるのだが、一巻終了時にはまだ思い出していない。
【レイの靴】
レイ・ラングレンが履いている靴。
右踵部に小型の銃、左踵部にはヴォルケインを呼び出す為の弾丸が仕込まれている。
このロワでは使用してもヴォルケインは呼び出せない。
139 : ◆U1w5FvVRgk:2009/03/18(水) 08:22:01 ID:HXTmPuFg0
投下終了です。
誤字脱字、指摘などは遠慮なくお願いします。
代理投下終了。
代理投下ありがとうございました
投下&代理投下乙
比較すると一番ごえもんが損してるような
使わないとはいえ武器取られて錆びた剣渡されて
同行者って言っても騙すような奴に出会うのは運が悪いに部類されるだろうし
ミハエルが一番得かな
他のデッキ持ちに出会えば、一気に頭角を表しそうだ
594 :また逢いましょう ◇KKid85tGwY氏
タイトルがいい!
「皆で私の胸の中で生きよう。
そして幸せの時に、また逢いましょう。 」
に痺れましたw
かがみの突っ込みもこれまたよし!GJ!でした。
638 :未知との遭遇◇U1w5FvVRgk氏
五ェ門と北岡がらしくて吹いたw
個人的にはこのメンバー好きだ!
デルフリンガーが良い潤滑油になっていますね。
次作も楽しみにしています。
◆KKid85tGwY氏
また逢いましょうをwiki収録しようとしたら容量を超えてしまいました
どこで区切ればいいのか教えてください
アニマックスでギアスやってるから見ようと思うんだけど、R2から見ても楽しめるかな?
正直キッツいと思うw
>>644 人間関係や設定を考えたら一期から見た方がいいと思う
やっぱり一期から見たほうがいいよね、うん
でも二期から見てもそれなりに楽しめたから、同時進行にするよ
おお、wikiが更新されてる、更新してくれた人GJ!
一通り見たけど共通の作品のパートナーを持つキャラが多いね
ルルーシュ×つかさ
スザク×みゆきさん、とか
龍騎のカードデッキは、現実世界では時間制限は無かったんじゃなかったっけ?
ロワではそういう制限をされているって事か?
そこらへんは空気読んでだろう
さすがに無制限だと強力過ぎる
代理投下しますね。
159 : ◆KKid85tGwY:2009/04/02(木) 00:06:00 ID:WOKwHrjY0
規制の為、こちらに投下します。
そのメイド服を着た女は、忍の者としての訓練を修めている。
だから月明かりを通さぬ鬱蒼とした森の中でも、周囲の様子ははっきりと視えていた。
だから人の気配の無い鬱蒼とした森の中でも、草木の擦れる音まで聞こえていた。
だから森の中の匂いに、文明の気配が混じっていないと嗅ぎ分けていた。
そう、ここがまるで見知らぬ森の中だとはっきり認識出来ていたのだ。
(……ここは一体? 私は何故、この様な所に?)
篠崎流37代目を継ぐ彼女――篠崎咲世子は、全くの未知の世界に1人置き去りにされていた。
とりあえず頬を抓ってみる。
痛い。やはり夢では無いらしい。
そして現実ならば、今の状況はそのまま解決すべき問題となる。
まずは現在の状況を整理してみる。
何時の間にか得体の知れない空間に居て、突然殺し合いをしろと命じられ
そして次の瞬間にはこの場に居た。
つまりここは殺し合いをする為に招待された会場、と言った所か。
では身の振り方はどうするか?
当然目的となるのは、一刻も早い帰還だ。
自分は反ブリタニア組織『黒の騎士団』の構成員である。
それがこんな所に居ては、自分の任務も遂行出来ない。
殺し合いに勝ち残るなり首輪を外すなり、とにかく最も迅速かつ確実な方法で帰還に臨めば良い。有る意味簡単な話だ。
自分1人の問題だったなら。
この殺し合いには黒の騎士団のリーダーにして咲世子の主であるゼロ、ルルーシュまで参加していた。
ルルーシュが参加しているとなると、まるで話が違って来る。
最優先にすべきはルルーシュの生還だ。それは自分も含めた、あらゆる命にも優先する。
ではルルーシュを除く全員を殺害し、最後に自殺すれば良いのだろうか?
確かにその方法が最も迅速かつ確実に思える。
しかし殺し合いを主催する者が、何処まで信用出来るかと言う問題がある。
何よりそのやり方は強者が弱者を蹂躙する事を良しとしない黒の騎士団、即ちゼロの掲げる理念に反するのではないか?
今はそんな建前を気に掛けている場合では、無いのかも知れないが。
しかしそもそも他の参加者を殺して回っている内に、肝心のルルーシュが殺されていたら目も当てられない。
思案の末に咲世子が出した結論は、見。
先ずはルルーシュと合流して、可能な限りの安全を確保。
その後状況や入手出来た情報を見て、ルルーシュの帰還方法を検討。
大まかな行動方針を決めた所で、先ずは手元から情報収集を始める。
配られたと言う武器とやらも、確かめておきたい。
何しろ今の咲世子は苦内や煙幕弾等の、常から携帯している武器は全て無くなっているのだ。
ルルーシュを捜して動く為にも、支給武器に頼る必要が有る。
支給されたデイパックを開け、中を改める。
折り畳まれた紙片が添えられた、双眼鏡の様な物が見付かった。
どうやら紙は説明書であるらしく、物はそのまま只の双眼鏡。説明書の必要性を疑う。
これも支給武器と言う事なのだろうか?
試しに覗いて見る。
それは本当に偶然だった。
双眼鏡の性能を試す為、深い意味も無く覗いて見たその先。
そこに2人の少女が居た。
1人は10代後半と思しき、緑の長い髪を後ろで結んだ少女。
少女は草葉に潜み、もう1人の少女を観察している。
まだティーンエイジにも満たないと思しき、長い赤髪の少女。
片手に軽々と剣を握り、殺し合いに怖気付く様子は無い。
何気無い、しかし武術の熟練をすら匂わせる自然体の立ち方。
放つ気配は沈着にして、この上なく獰猛。
とても年端もいかない子供の物とは思えない、距離を置いたこの場にさえ届かせる危険な気配。
緑髪の少女の方は、完全に赤髪の少女に呑まれていた。
不意に赤髪の少女の身体が揺らいだ。
次の瞬間には、緑髪の少女の首から上はまるで玩具のそれの如く
呆気無く零れ落ちていた。
赤髪の少女が首を刎ねた。
咲世子だからこそ、ようやくそう認識出来た早業。
否、そんな表現では足りない人間の速さを超えた業。斬られた当の少女と同じく、常人には知覚すら及ばないであろう。
咲世子とて篠崎流を修めた、一流の武人。
同じ人間と言う枠組みの中なら、トップレベルの戦力を持っている。
そんな咲世子だからこそ、赤髪の少女のたった一閃で見抜いた。
あの赤髪の少女は、明らかに人類を逸脱した存在だと。
衝撃と、それに付随する恐怖を覚える。
確かに先程までも、ここに来るまでの瞬間移動等の超常現象を体験して来た。
しかし赤髪の少女は、無抵抗な他者をあっさり殺害した事からも完全に殺し合いに乗っている。
つまりは咲世子にとって、そしてルルーシュにとっても極めて危険な存在。
赤髪の少女が、首を刎ねられた少女の下に屈み込み
血塗れた首輪を回収する。
そして体を起こした瞬間に――咲世子と視線が交差した。
見付かった!?
どうすればいい?
敵は完全に身体を隠していた、緑髪の少女を見付け出せる程の策敵能力を持つ。
身体能力は敵が上、逃げる事すら容易ではない。
そして戦いになれば、絶対に敵わない!
全てを考え終えるか終えないかの刹那、咲世子は赤髪の少女に背を向け走り出していた。
足跡、足音、呼吸、木の枝葉に擦れる音等を極力殺して咲世子は森の中を駆け抜けていた。
どれ程慌てても、身に付いた忍の走りは意識せずにこなせる。
しばらく走っている内に追ってくる気配が無い事に気付き、足を止めた。
どうやら、少なくとも敵が追跡して来る事は無い様だ。
最も油断は出来ないので、周囲への警戒は怠らないが。
一息入れる内に、少しは冷静に先程の出来事を振り返れる様になる。
思い返せば、敵がこちらの存在を察知していたか否かも確認していなかった。
何しろこちらからは、双眼鏡が無ければ視覚が届かない距離だ。
敵が如何な怪物とは言え、こちらに気付いていない可能性の方が高い。
それを確認せずに逃げたのは、些か早計だった様に思われる。
結論を言えば赤髪の少女――シャナは、咲世子の存在に気付いていない。
咲世子にその事実を確かめる術は無いのだが。
何れにしろ今のは慎重を期すのでは無く、怯えから来る短慮な行動。
殺し合いと言う状況と得体の知れない怪物を敵に回す事実は、これ程平静を欠くとは。
最早ここが一刻の猶予も持てない環境だと分かった。
早急にルルーシュと合流し、安全を確保しなければならない。
そして如何なる手段を持ってしても、ルルーシュを守らなければならない。
無駄な殺生は避けたいが、ルルーシュの為と有れば話は別だ。
それは決して『無駄な殺生』では無いのだから。
手に持っていた双眼鏡を仕舞い、咲世子は再び闇を駆け抜けていく。
全ては主、ルルーシュの為に。
【一日目深夜/C-3 北東部】
【篠崎咲世子@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 双眼鏡@現実、未確認(0〜2)
[状態]健康
[思考・行動]
1:ルルーシュと合流する。
2:ルルーシュが殺し合いから脱出する方法を探す。
3:赤い髪の少女(シャナ)を警戒。
[備考]
※参戦時期は未定。
※赤い髪の少女(シャナ)が殺し合いに乗っていると思っています。
163 : ◆KKid85tGwY:2009/04/02(木) 00:12:37 ID:WOKwHrjY0
投下完了しました。
全ルートに寄せます。
問題点が有れば、指摘をよろしくお願いします。
お手数ですが、何方か本スレに投下をお願いします
代理投下完了。
投下乙!
シャナは殺害現場見られたか……
情報広められたら一気に行動しづらくなるだろうなぁ
投下乙
一応は対主催のシャナに誤解フラグが立ったか
そして近くに居るのは、同じく劉鳳への誤解フラグを持ったてつを
果たしてどうなるのか
◆KKid85tGwY氏は把握作品の幅が広いよね
どのくらい知ってるんだろう
遅ればせながら投下乙です。
いつもながら丁寧な描写につい詠みいってしまいました。
殺害現場を目撃した咲世子が今後どうでるかたのしみです。
やはり奉仕マーダーになってしまうんだろうか……
GJ!
今のところ、一番強力な武器を持ってるのは千草かな
ブラフマーストラは女神転生if最強の銃だし
サタンサーベルもさすがライダー登場武器だけあって、マジでチート性能だぜ
……使いこなせればw
俺はライダーデッキを推すぜ!
純粋にライダー勢以外に支給されたのは
リュウガを除くとシザースとインペラーの
二大ネタデッキだけどなw
シザースは最近、ベルデを倒す快挙を成し遂げたけどさ。
タイムベントで無かったことにされたけどなw
>>665 ネタkwsk
ライダーデッキは一般人手軽に強化できるのがいい
仮面ライダーディケイド6話の話
勝ったんだけど、時間が巻き戻って戦い事態が無かったことにされた
>>668 ありがとう、少し調べてきたけどディケイドって歴代ライダーが入り混じってるんだな
話変わるけど、東條って面白いね
ああいう感じのキャラ好きだ
銀様とスザクグループに予約入ったか
不安定なスザクが銀様に出会ったら悪影響受けそうだなぁ
今回は間に合わなかったみたいだけど、完成したら前みたいにゲリラ投下してください
予約来た!
でもルルーシュとつかさ抜きで書けるのか?
>>672 何とかなるんじゃない?
いざとなったら追加予約出来るし
ルルーシュとつかさは、少なくとも浅倉とは別の部屋にいるし、
時間帯にもよるけど山小屋を出てどこかに移動しててもおかしくはないんじゃないか?
……失礼しました、予約に柊つかさとルルーシュ・ランペルージを書き忘れておりましたorz
お騒がせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……
>>675 ミスなんて誰にでもある
気にせず作品に集中すればいい
浅倉威、柊つかさ、ルルーシュ・ランペルージ、レイ・ラングレン投下します
見ている方居ましたら支援よろしくお願いします
静かな夜の中、空には月が輝いている。
そんな夜を二つの影がゆっくりと動いていた。
その影とは詰襟の制服を着た少年、ルルーシュ・ランペルージとセーラー服の少女、柊つかさである。
二人はそんな暗闇の中を手探りで歩いていた。
最初は山小屋に残るつもりでは在った。
しかし、ルルーシュが廊下を見回りに行ったときに一つの影が外から迫っており、移動することになったのだ。
その影は、月の光を反射をする30pほどの何かを持ったスラリとした体躯の男。
その反射する何かとは間違いなくあの男がV.V.から支給された刃物だろう。
殺し合いに乗っているか否かはそれだけでは判断できないが、何の策もなく接触するのが危険。
それに、殺し合いに乗っているのなら食堂に居る浅倉を殺害する可能性が高い。
ギアスを使うのはそれからでも遅くはない。
だから、ルルーシュは山小屋を出た。
体力は有り余っているし、つかさから引き出しておきたい情報は引き出せた。
そのつかさも山小屋を出るということについてはあっさりと了承した。
やはり本音を言えば、早く知り合いと合流しておきたいところなのだろう。
今のルルーシュにとっての最大の問題はギアスについてだ。
絶対命令権であるギアスはルルーシュにとってのアキレス線。
ルルーシュの最大の武器はギアスではなく、天才と呼ぶにふさわしいその頭脳にある。
ただギアスを持っただけでは一つの国の転覆など出来はしない。
素晴らしい頭脳を持っているからこそ、ブリタニアを追い詰めることを可能としているのだ。
故に、ルルーシュはその頭脳を最大に生かすことが出来る策を得意としている。
だからこそ、ギアスが多くに知られればその姦計を生かすことが出来なくなってしまう。
言いなりにさせることが出来る能力を持っているという聞けば、誰だって警戒する。
ルルーシュの周りで妙なことが起きれば、ギアスを持っているルルーシュが疑われるのは当然だ。
他の人間が犯人だと分かっても『ひょっとしてギアスで操ったのでは……』と疑う人間も出てくるだろう。
ギアスとは知られてないからこそ価値がある。
しかも、今のギアスには最初の場で兵士がギアスを全く効かなかったと言う不安な部分が残っている。
何度かテストをしておきたいが、ギアスが有効なのは一人につき一度だけ。
ギアスに問題があるのか、それともあそこに居た兵士にギアス対策を施されていたのか。
つかさや蛇柄の服の男には問題なくかかったことを考えると、恐らく後者だろう。
恐らくルルーシュと同じコンセプトのコンタクトを使用していたと考えるのが妥当。
もちろん、必ずしもそうとは限らない。
ギアスの研究に関してはブリタニアはルルーシュの一歩も二歩も先を行っている筈。
ギアスを無効化、もしくは弱体化が出来る可能性も高い。
ルルーシュにギアスを託した女、C.C.ならば兵士に効かなかった原因を知っているかもしれない。
不死身の女を殺し合いに巻き込んだのは甚だ疑問だが、ギアスについて詳しいのが彼女だけだ。
その彼女がここに居るのは、喜んでおくべきだろう。
(……やはり、現状はギアスは多用すべきではないな。
だが、あの場ではギアスを使う以外に方法は無かったのも事実。
余計な荷を背負ってしまったが、全く使い道がないわけではないからな)
ルルーシュは隣を呑気に歩いているつかさを醒めた目で見つめる。
戦闘に使えるとも首輪を外す技能があるようにも見えない。
足手まといになることは必須。なるべく早く始末するのが利口と言うものだろう。
問題は何時始末するかだ。
何処に人の目があるか分からないことを考えるとルルーシュが手を出すのは避けるべきだろう。
ベストはつかさの知り合いと出会う前に殺し合いに乗った人間が殺すことだ。
そんなことを考えながら獣道を歩いていく。
獣道と言っても、月の光が綺麗に差し込んでくるため歩くだけならそれほど危険ではない。
もちろん、それでも昼の道と比べると格段に危険ではあるためスピードはゆったりとしたものだが。
(細かな修正と情報収集は必要だが、全ては順調。
待っていろよV.V.……! ナナリーを攫ったその諸行、忘れたわけではないぞ!)
◆ ◆ ◆
静かな、静かな夜の中。
蛇柄の派手な服を着た肉食獣のような獰猛な目をした男、浅倉 威はただ食堂の扉をにらみつけていた。
正確に言うならば、何も出来ない状態で扉をじっと睨みつけていた。
その頭はたった一つの思考で塗りつぶされている。
(殺す……殺す……殺す……殺す、殺す、殺す殺す!)
殺意という浅倉に最も似合う言葉は、今はただ一人の男へと向けられていた。
それは北岡秀一でも、神崎士郎でも、他のライダーでもない。
今はどんな人間相手への殺意よりも、ルルーシュ・ランペルージへの殺意が勝っていた。
学生服を着た顔立ちの整った長身痩躯の男。
人を見下した目と嘲笑、どこまでも余裕ぶった悠々とした態度。
どうやら浅倉はあの手のタイプと相性が最悪らしい。
北岡も神崎も、浅倉が何よりも殺したいと思った相手と身体的特徴も性格もルルーシュはそっくりだ。
ルルーシュへの殺意に塗れた思考だけで支配されている。
一刻も早く殺してやりたい、そう思いつつも行動できない。
何故か? それはルルーシュの『跪け!』という言葉に従ってしまっているから。
何かをされたのは間違いない。間違いないが、浅倉にとってそんなものはどうでもいい話だ。
戦うときには耳を塞いで、喉を潰してから甚振れば良い。
今、重要なのはルルーシュを追いかけること。
つい先ほど扉が開く音と閉まる音、その少し後に同じく扉が開く音と閉まる音。
そして、食堂の前を通った気配はない。
恐らく食堂の前を通らないルートで外へと出たのだろう。
ルルーシュを追いかける方法は直ぐに思いついた。
体全体を動かせは出来ないが手と頭と腰を動かせることは確認済み。
つまり、下半身を落とした跪いた状態を維持していれば何でも出来るということだ。
ならば簡単に移動できる。
と言っても、あるものがあれば、という前提がついてしまうが。
結局、それがなければ今の状態は変わらない。
浅倉は何度目になるかもわからないほどに拳を床に叩きつける。
その音と同時に、遠くから扉が開く音がする。
耳を澄まして辺りを伺う。
……ゆっくりとだが、こちらへと向かってきている。
(チッ……!)
舌打ちをしながら、どうするかを考える。
まず前提条件として浅倉は動けない。腕を動かすことは出来るが、下半身が使えない。
これでは威力のある攻撃は出来ないし、何より避けることが出来ない。
せめて、鏡。目の届く範囲に鏡があれば―――。
だが、現実には目に映るのは壁とテーブルと椅子だけ。
動ければ窓を覗けるかもしれないが、テーブルが見事に塞がるように聳え立っている。
「……」
そう考えていると、食堂の扉が開き一人の男と目が合う。
妙な服装をして手に鉈を持った、冷たい底冷えのするような目をした男だ。
目を合わせた人間を恐怖で凍りつかせるという意味では浅倉とよく似ている。
だが、種類は全く違う。
浅倉がギラギラと輝いた肉食獣の瞳ならば、男は機械のような無機質的な冷たさを持っている瞳。
その奥にあるものが何かは分からないし、浅倉には興味もない。
強いて言うならば、黒い騎士を思わせるライダーや神崎士郎辺りの瞳と良く似ている。
この手のタイプは目的を達成するためなら手段を選ばない。
そう思った瞬間、動物のような素早い動きで距離を詰めてくる。
単純に足が速いのではなく初動が早いのだ。
「チッ!」
手に届く範囲にある椅子を投げつけるが、下半身を使えないためゆったりとしたスピードで飛んでいく。
だが、効果はあった。
男はそれを防ぐために鉈で払いのけ、前進のスピードに乗った状態で前蹴りを放ってくる。
まるでライダーの蹴りかと見間違うほどの威力。
浅倉は椅子とテーブルを巻き込んで後方へと吹き飛ばされる。
だが、その痛みなどどうでも良かった。
ようやく目当てのものを見つけた喜びに全身に走る痛みすら心地よいものへと変わっていく。。
「ク……ククク……ハハハハ!!」
その目当てのものとは壁に架けられた振り子時計。
浅倉は笑い声と共にゆったりと手に収めた王蛇のカードデッキを振り子時計を覆っているガラスへ向ける。
そして一言、たった一言―――。
「変身!」
短く、しかしはっきりと強い意志を持った言葉を口に出す。
その言葉と共に素早くデッキを胸元へと持っていき、ゆったりとデッキを突如現れたベルトへと差し込む。
それと同時に男は素早い動きで懐へと迫り、今度は蹴りではなく鉈を使い首元へと襲い掛かる。
スピードも首への攻撃位置も完璧な、人を殺すための一撃。
浅倉も人間である以上、普通ならば完全に死んでしまう一撃だが。
「!?」
「ふん……」
いつの間にか手に持っていたコブラを模した杖によって、浅倉は鉈の一撃を防いでいた。
さらに、ぴっちりとしたスーツの上に紫の装甲を身に纏い、同色の仮面をつけた姿へと変貌している。
それは仮面ライダー王蛇――仮面ライダーBLACKとは大きく違う思想を持った、人の形をした怪物。
男も姿と威圧感を変えた浅倉に警戒してか、素早くバックステップで距離を取ろうとして。
――ADVENT――
どこからか響いた機械音と同時に、バックステップの途中で無理やり体を左へと転がるように動かす。
形振りを構わない無様の極みとも言える動き、だが、同時に生物として優れた素晴らしく勘の良い動きだ。
何故なら、猛スピードで化け物が後ろから襲ってきたのだから。
その化け物は桃色をした巨大な空中を泳ぐエイ――エビルダイバー。
浅倉は迫ってくるエビルダイバーを掴み、エビルダイバーも意思を汲み取ったように浅倉を背へと乗せる。
……跪いた状態のまま。
「急げ……」
低い声でエビルダイバーへと脅すように短く話しかける。
それが通じたのか通じないのか、エビルダイバーは襲撃者に見向きもせずに猛スピードで食堂を出て行く。
速い、すいすいと廊下を出て瞬時に暗闇に包まれた山の中へと飛び出していく。
そのスピードに満足したのか、仮面の奥の唇をニヤリと歪ませる。
唇の片方だけを持ち上げる、醜悪で邪悪な見るものの恐怖を煽る笑い。
ライダーの状態で動ける時間は限られている、あまりにも短すぎる制限時間。
しかし、この暗さと山道だ。そう遠くへと行っていない可能性が高い。
賭けるには十分な可能性だし、あそこに何時までも留まっていても本丸のルルーシュを殺せるわけがない。
逆に身動きできない状態の自分は簡単に殺されるだろう。
それは駄目だ、それだけは駄目だ。
自分はまだ殺していない。
北岡秀一も神崎士郎も他のライダーもルルーシュ・ランペルージもこの先出会う人間も、誰も殺していない。
それで死ぬなんてあり得ない。
「ルルーシュ・ランペルージ……!」
小さく、噛み締めるように、今最も殺したい相手の名前を呟く。
それが終われば他のライダー、北岡秀一、そして神崎士郎。
その後はまた殺したい人間を殺す、浅倉威に重要なのはそれだけ。
問答無用の殺し合いなんて、彼の日常となんの変わりもないのだから。
浅倉の物騒な考えと同時にエビルダイバーは山小屋を中心に円を描く様に動いていく。
エビルダイバーは木々の間を縫うように動いていき、徐々にその円を大きくしていく。
それが何分ほど続けた後だろうか。
浅倉はライダーになり強化された視力で、二つの影を見つけた。
仮面の奥で唇の端を持ち上げて邪悪に笑う。
僅かに体から霧のようなものが吹き上がっている、制限時間が迫っている証拠だ。
だがそんなことに何の関心も持たずに、エビルダイバーのスピードの勢いに任せて突進していく。
支援
◆ ◆ ◆
「ガッ――――!?」
突然、突然だった。
ルルーシュの隣を歩いていたつかさに僅かな衝撃と凄まじい風圧が襲ってくる。
それが何かも分からずに、非力な女子高生に過ぎないつかさはペタリと尻餅をついてしまう。
「ランペルゥジィ!!」
そこに居たのは化け物としか言えない何かに乗るゴツゴツした何か。
まるで仲の良い友達である泉こなたが良く見ているアニメから飛び出してきたかのような何か。
現実のものとは思えない、芝居がかった何か。
だけど、不気味な恐ろしさを放つ何か。
「ガッ……グゥ……」
その不気味な何かに目を奪われているところを、途切れ途切れの苦しげな声を放つルルーシュに意識を移す。
胸を押さえ、蹲りながら息を大きく吐いている。
どう見ても危険な状態だ、恐らく目の前の何かの攻撃をまともに喰らったのだろう。
「ルルーシュくん!」
急いでルルーシュへと駆け寄っていく。
ルルーシュはあまりの痛みに目を大きく見開いて、前に這いずる様に手足を動かすが、上手く動かせない。
恐らく肋骨か何処かが折れたのだろう、ひょっとするとその骨が内臓に突き刺さっているのかも知れない。
つかさは何も出来ない自分に歯噛みしながら、これから何をすべきか必死に頭を働かせる。
ルルーシュを置いて逃げるべきか、ルルーシュを助けるべきか。
「! ……チッ」
そんな二人を眺めながら恐ろしい何かは舌打ちをする。
そして、手に持った杖のようなものを思いっきりルルーシュへと投げつけ、同時に化け物は消えていった。
変わりに現れたのは、金色の髪とギラギラとした目を持った一人の男。
食堂に現れ、ルルーシュの『魔法』で身動きが取れなくなった男だ。
「ぐぅ!」
その杖を思いっきり脚へと打ち付けられ、蛙を踏み潰したような嫌な音がルルーシュの口から飛び出す。
恐らく脚の脛が折れたか、ひびが入ったのだろう。
それがつかさでも想像できるほど速く、威力のありそうなスピードだった。
だが、幸いなことに襲った男は身動きが取れなくなっている。
ルルーシュの『魔法』がまだ効いているのだろう。
「ルルーシュくん、こっ……!?」
傷を負いすぎたのか、あまりにも強烈な痛みを続けて味わったのが原因か。
ルルーシュは気を失っていた。
無理もない、むしろ最初の突進を喰らったと言うのに気を飛ばさなかったことを褒めたいぐらいだ。
つかさは何とかルルーシュを引っ張るように、この場から立ち去っていく。
放っておく選択肢もあったが、ルルーシュが悪い人間には見えない。
山小屋にもルルーシュは危険な影が近づいてきていると言った。
(なんとか助けないと……!)
ルルーシュはつかさを落ち着かせてくれた。
そして、何よりルルーシュの能力はつかさやその姉のかがみや友達を助けるのに役に立つ。
さらに頭も良くて落ち着いて物事を考えれる、今はまだはっきりとは言えないが、悪い人には見えない
パニックにならずに、冷静に状況を把握して山小屋と反対方向にルルーシュの体を引っ張っていく。
「え?」
だが、痩せているとは言え背は高い男子高校生であるルルーシュを運ぶのは簡単ではない。
集中していて前方不注意になっていたつかさは簡単に軽い崖状になった高い段差を転げ落ちた。
「きゃああああ!」
転がる転がる、斜面と言うことも交じり合ってどんどんと落ちていく。
ルルーシュは気絶していたのが幸いしただろう、意識があれば間違いなく痛みでショック死していた。
「いたたたた……ルルーシュくんは、大丈夫かな……?」
強く打ったお尻をさすりながら、そばにいる筈のルルーシュへと視線を移す。
そこには体を撃った際の衝撃で目を覚ましたのか、声にならない声を出しながら胸を押さえてもがいている。
あの化け物の突進をまともに受けたのだろうか?
(ルルーシュ君……死んじゃうのかな?)
苦しみ、声も満足に出せないようなルルーシュをつかさは心配そうに見ながらも頭はひどく醒めていた。
ルルーシュを心配していないわけではない、逆に心の底から心配している。
だが、不思議なほど落ち着いてルルーシュの様子を観察できている。
(声が出せないほど痛い……ってことはただの骨折じゃないよね?
やっぱり、テレビの特番で見た事故にあった人たちみたいに折れた骨が内臓に突き刺さってるのかな?)
テレビで見た、車の事故であばらの骨が折れて肺に突き刺さった人のことを思い出す。
その人は助手席に居た人がいち早く救急車を呼んだため、一命を取り留めた。
インタビューではとても辛くて声を出すことはもちろん息を吸うのも満足に出来なかったと言っていた。
(でも、私今携帯電話持ってないし……お医者さんも来るわけないよね、こんなところに)
救急車も恐らく来ないだろう、何せ殺し合いなのだから。
「ぁ……かぁ……!」
その間にもルルーシュは声にならない声を上げながら悶えている。
手は何かを求めるように動き、その動きが傷に触ったのか再び声も出さずに苦しみだす。
(このままじゃルルーシュくんは辛いだろうな……でも、私に出来ることなんて何も……)
何も出来ない、その現実が何度もつかさを襲い掛かる。
だが、特に絶望も恐怖もなく自然とその事実を受け止めて思考をさらに次へと動かしていく。
まるで、自分は絶対に冷静でないといけないかのように。
(……多分、簡単には死ねないと思う。痛みでショック死するならもうしてるだろうし……)
ルルーシュは出血多量で死ぬか、再び誰かに殺されるか。恐らくその二択だけだろう、現実とは非常なものだと思い知る。
(そっか……! それなら……!)
つかさは冷静な思考でようやく回答に至り、ルルーシュのデイパックをひっくり返すような勢いで漁る。
その間にもルルーシュはもはや身じろぎもせずに苦しんでいる。
最も不幸なのは、なまじ意思が強いだけに気を失うこともショック死もしないということだろう。
「……ルルーシュ君」
「……ぁ……なぁ!」
もう動くことも疲れたと言わんばかりに身じろぎもしなかったルルーシュが再び焦り始める。
そんなルルーシュの様子を見て、つかさは心の底から可哀想だと同情の眼差しを向ける。
普段ならば、その高い知能と同じく高いプライドがその哀れみの目をルルーシュは許さない。
だが、ルルーシュは真剣につかさを呼びかけようとして、それが不可能と悟って直ぐに逃げようとする。
それが冗談でないことはルルーシュは最も知っているから。
――何故なら、つかさの眼球の外周は真っ赤に染まっていたのだから。
――つかさの手にはFNブローニング・ハイパワーが、拳銃が握られていたから。
「ルルーシュ君、辛いよね。安心して、私が楽にしてあげるから」
迷子の子供に話しかけるように優しげな口調とにこやかな表情でルルーシュへと言葉を出すつかさ。
本で読んだのか、友達の高良みゆきから教えてもらったことかは忘れたが、つかさは聞いたことがある。
難病に体を犯され、もはや麻酔も効かないほどに手術を繰り返してきた人のことを。
モルヒネ漬けになるしかなく、もう安楽死を選ばざるを得ないほどの重病患者。
安楽死をさせたとき、当初はそれなりに話題になったらしい。
安楽死させるべきか僅かな可能性に賭けるべきかのどちらが正しいのか分からなかったため、覚えていた。
だが、今は答えを出せた。
その場合、死なせてあげるべきだ。
だって、こんなに苦しそうじゃないか。
僅かな可能性なんて見えもしないもののために、この苦しみを続けるなんてあまりにも可哀想だ。
「ああ、動かないでルルーシュ君。外したらもっと苦しくなるだけだよ?」
「……! ……や…め……!」
やめろ、と言いたいのだろう。
だが、それすら満足に言えないのだ。
生きれるわけがない、そのうち死んでしまうに違いない。
だからこそ、その間にも辛い思いを与えたくなかった。
(頭を狙えば……直ぐに死ぬよね)
つかさはルルーシュの額へと限界まで近づけ狙いをつける。
確かルルーシュは拳銃を撃つとき、引き金を引いた後に上へと持ち上げていた。
恐らく衝撃を逃すためなのだろう、つまり衝撃に逆らってはいけないのだ。
少し躊躇いが入り、目を閉じて引き金を引いた。
パン、という音ともに銃弾は明後日の方向へと飛んでいった。
「……いたぁい」
「や……ガァ……!」
拳銃の反動は思ったよりも大きかった。
よくこんなものを警察官やルルーシュは撃てる物だと感心する。
腕がびりびりと痺れるが、ルルーシュの痛みに比べれば微々たる物だと自分を叱咤し拳銃を構えなおす。
今度こそルルーシュの額へと照準を合わせる。
そして、今度は何の迷いもなく――――
「ナ……ナ…」
―――ルルーシュの声をかき消すように、引き金にかけた指に力を込めた。
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】
ルルーシュの頭を銃弾が貫いたその瞬間、つかさの目を染めていた赤が引いていった。
痺れを覚えた腕を押さえて、ルルーシュが確かに楽になったことを確認する。
ピクリもせずに、目線は虚空をさまよっている。
(……え?)
そこで、つかさは冷静になった。
正確に言えば、冷静な状態から追い詰められた状態へと戻った。
(……え? ルルーシュくん、え?)
状況が把握できない。
いや、脳が把握しようとしてくれない。
拳銃とルルーシュを何度も見直して、実行した時とは何倍もパニックなった頭で遅れて初めて認識する。
自分が、拳銃を使って、ルルーシュの頭を、撃ったのだと。
それを認識した瞬間、吐き気が込みあがってくる。
「ぅ……!」
いや、実際に胃の中のものを吐き出してしまう。
その中には、ルルーシュと一緒に山小屋で食べたパンのようなものが見えて―――。
「あ……あぁ……!」
ペタリと尻もちをついて、じりじりとルルーシュの遺体から遠ざかっていく。
この凶行は自分が自分の意志で行った。
だが、そこに行くまでの理論が自分にも分らなかった。
確かにルルーシュは苦しそうだった、動くことも満足にできないほどに苦しんでいた。
そこまで苦しんでいるのなら、楽になってしまった方が幸せなのではないかと思わないこともない。
だが、実際はそんなこと出来ないだろう。
人を殺す――それは何よりも避けるべきであるはずだ。
だというのに、まるでテレビを介して見ているかのように落ち着き払っていた。
「る、ルルーシュく……!?」
ルルーシュに近づこうとするが、遠くから足音が聞こえる。
「ひっ!」
怖い。
殺されるのも、殺したところを見られるのも、それについて責められるのも怖い。
それに、方向からして向かってきているのはあの見るからに危なそうな浅倉という男だろう。
つかさはわき目も振らずに逃げ出す。
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……)
ただただ、ルルーシュへの謝罪だけを思い浮かべて、涙を流しながら山道を下り続けた。
【一日目/黎明/C−6】
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]FNブローニング・ハイパワー(11発)
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)(1〜3)
[状態]強いパニック状態、腕に痺れ、お尻に痛み
[思考・行動]
1.ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
◆ ◆ ◆
レイ・ラングレンは身構えたまま、化け物が出て行った方向を眺めていた。
初めに見つけた男に逃げられた後、下るでもなく上るでもなく一先ず東へと向かうことにした。
東ならば廃洋館、展望台、山小屋、動物園、舗装された道路のどれかへと行き着くだろうと踏んだからだ。
まずは現在地の把握としておきたいと思ったがゆえの行動だ。
そして思惑通りに山小屋を見つけた時、こうなるとは思いもしなかった。
何かがあれば良い。そう思い入った先でこんな不可思議な物を見てしまったのだ。
うずくまった状態でこちらを鋭い視線で睨んでいたあの男。
風貌を見る限り、危ないだけの普通の男に見えた。
服の膨らみに不自然な膨らみはないため、確実に殺せると判断した。
あの男は危険だ。銃のない自分が勝てる相手とは思えない。
(あのケース……まさか……)
廊下を覗くと、西の壁が壊されている。
恐らくあの方向へと立ち去ったのだろう。
そして、何時戻ってくるか分からない男に警戒を解かずに、先ほどの出来事を思い出す。
蹴られて吹き飛ばされた後、男が急に笑い出して何かのケースを時計へと見せ付けた。
重要なのはそこからだ。
『変身』という言葉と共に、いつの間にか男は重々しい印象を与える『ベルト』を巻いていた。
そこにケースを差込み、急に姿を変えた。
(まるで鎧を人間の大きさにしたかのような物々しいスーツ。
そして、突然現れた化け物としか形容の出来ない空中を動く生き物。
……理解出来ないことだらけだ。それに、あれはデイパックの中にあったあれと同じものなのか?)
謎が多すぎるこの状況。
だが、仮定をするなら化け物をあの男が呼んだのだとすれば、それはこのケースの力による可能性が高い。
少なくとも、このケースを使うことで何か出来る様になるのは確かだ。
ひょっとすると、それは自分でも使えるのではないか。
変身……その言葉を唱えることによってあの力を得ることが出来るのだろうか。
そうだとするならば、カギ爪を殺すのに十分役立つ力を手に入れるのではないか。
「……だが、今は使うべきではない」
推測できる成功した場合の効果は魅力的だが、どんな人間にも使用が可能な物とは限らない。
使った際に何が起こるのか、それが分からない限りこれはガラクタと同じだ。
それでも使う時があるのならば、この『何か』の情報を集めた後か、どう転んでも死んでしまうという時。
この二つのケースくらいだろう、使う場合など。
「やはり、銃が居るな」
ここには頭が切れる人間と凄まじい力の持ち主が居ることが分かった。
そのためには、慣れない上に殺傷力の低い鉈よりも、銃が必要だ。
それを再確認させるほどの相手だった。
四角いケースの『何か』を調べるのはその後でも良い。
そして、ここが山小屋だと分かったら行動は早い、山道よりも舗装された道を下るべきだ。
レイは警戒しつつも、デイパックからコンパスを取り出して山小屋への出口へと向かった。
――ここで死ぬわけにはいかない。あの男を、カギ爪の男を殺すまでは自分は絶対に死ねない。
目を閉じて浮かんでくるのは、幸せそうに笑っている一人の女性。
その笑顔は徐々に赤く血に染まっていき、そしてどんどんと土気色へと変化していく。
その顔が思い浮かべるだけでレイは戦える。
妻を殺したカギ爪の男に復讐を果たすという意識がある限り、レイは止まらない。
なんだって出来る、どんな人間も殺してやる。
心は怒りに染まっていながらも、表情には臆面も出さない。
冷静に、慎重に、確実に。ただただ、カギ爪の男に復讐をする。
「シホ……!」
この世で最も愛しい、愛した女の名前を呟く。
レイにとって重要なのは、妻の復讐の一点だけである。
【一日目/黎明/B−6 山小屋】
【レイ・ラングレン@ガン×ソード】
[装備]鉈@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式×2、ゾルダのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]健康
[思考・行動]
0:カードデッキは、はっきりとした情報を掴めるまでは使わない。
1:優勝を目指す。
2:銃が手に入るまで無理はしない。
3:願いを叶える権利が本当なら、カギ爪の男を連れて来させる。
[備考]
※参戦時期は5話終了時。
※デルフリンガーが喋ることに気付いていません。
◆ ◆ ◆
銃声が聞こえる。
何処かで自分以外の誰かが殺し合いをしているのかと思うと歯軋りをしたくなる。
ここには鏡はもちろん、木と草を除けば何もない。
どこかの誰かがご丁寧に鏡を持ち出してこない限り、自分は動くことが出来ない。
これを歯軋りしなくてどうしろというのか。
もう一度銃声。
それが限界だった。
歯を食いしばり、欲求を満たせぬ怒りに拳を地面に叩きつける。
「……?」
だが、拳を叩きつけた瞬間。脚が動くことに気づく。
ゆっくりと確かめるように立ち上がる。
そして前へと歩き、思いっきり誰も居ない空中へと蹴りを放つ。
「フ……」
思わず笑みがこぼれる。
これで自由に殺せる。
首をゴキゴキと鳴らすように軽く回して、早速ルルーシュと女が逃げた方向へと向かう。
鏡がないためライダーにならないのは同じだが、あの程度の痩せた男なら素手で一発で十分殺せる。
笑みをさらに深くして崖を降りていく。
確かこの辺りに逃げ込んだはず。
だが、中々に見当たらない。
時間だけならもっと遠くへ行っていても不思議ではないが、大の男を運ぶとなると話は別だ。
まず、この辺りに居るはずなのだが。
そう思っていると、月の光に照らされた何かを見つける。
大きさからして、恐らくルルーシュの着ていた上等そうな学生服のボタンだろう。
浅倉はゆっくりとスピードを上げていき、三日月のように口を歪ませる。
「ランペルゥ……ジ……?」
だが、そこで目にしたのは浅倉が全く想像しなかった光景。
「……ああん?」
辺りを支配するのは夜の静けさと鼻につく吐瀉物の臭いと闇に映える鮮血の赤。
その中心で転がっている額に穴をあけたルルーシュを、ただ浅倉は見続けていた。
「……」
――――ルルーシュ・ランペルージが死んだ。
そのことを認識すると、浅倉は傍にある木へと頭をぶつけていく。
何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も……
額が割れるのではないか、なんて考えはまるでないかのように強く打ち付ける。
「……あぁ!」
声にならない、怒りに任せただけの叫び声を上げてルルーシュの遺体を思いっきり蹴り飛ばす。
死者を慈しむなんて思いは全くない、ただ殺せなかったことだけに怒りが頭に占めている。
浅倉は怒りを隠そうともせずにルルーシュのデイパックを強引に奪い取り、中からパンを取り出す。
かさかさとしたとても美味しいとは言えない乾パン。
だが、浅倉にとって美味い不味いは関係ない。腹を満たせれば十分だ。
欲を言うなら肉がよかった、という程度だ。
「……」
苛立ちながらパンを食べながら、中を見た際に一緒に落ちた紙に目を通す。
それは島の全域を描いた地図。
興味もないため、放り投げるようにデイパックへと仕舞い直す。
その際、もう一枚の紙に目をついた。
興味は惹かれなかったが、食事中で手持無沙汰ということもありチラリと目を通す。
「……! 北岡ぁ……!」
浅倉の思惑とは逆に、その行動は正解だった。
ちらりと見た際に見つけた一つの名前、北岡秀一。
浅倉にとって因縁深い、人生でも一、二を争う気に食わない相手。
ルルーシュが自分でない誰かに殺された不快感を十分すぎるほど拭う朗報。
見れば、城戸真司とかいうライダーも居る。
「ククク……ハ、ハハハッハ!」
笑い声が森に響く。
蛇のように体にまとわりつき、肉食獣のように今にも噛み殺してくるかのような邪悪な笑いが響く。
【一日目/黎明/C−6】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[装備]なし
[所持品]支給品一式×2(浅倉とルルーシュ)、王蛇のデッキ@仮面ライダー龍騎、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×1(13発)、ランダム支給品(未確認)(2〜3)
[状態]全身打撲
[思考・行動]
1.北岡秀一を殺す。
2.全員を殺す。
投下終了です
展開の矛盾誤字脱字ありましたら指摘お願いします
そして、支援感謝、ありがとうございました
投下乙!
ルルーシュ序盤敗退は意外過ぎるwww
これはギアスキャラへの影響でかそうだなぁ、南無
つかさもつかさで人殺しちゃうし、本当にどうなっちゃうんだろ
投下乙です!
つかさも浅倉もレイ兄さんも、みんな別の意味で怖すぎるよ!
そしてルルーシュ……まあ、ルルーシュだからな。お疲れ様でした。
ところで、レイ兄さんの奥さんの名前はシホじゃなくてシノだった気が
>>697 ……何故かずっとシホだと思ってたorz
wikiに収録する際に訂正させていただきます
それと、ルルーシュが死んでもギアスが解けたのは制限だからだ、という文を最後に入れようと思っていましたが抜けていました
今から投下したほうが良いんでしょうか、それともwiki収録の際に付け加えたのでも良いんでしょうか?
投下乙です!
ルルーシュw自業自得とはいえ哀れだw
つかさも被害者みたいなものだから責められないよな
レイもまだカードデッキは使わないか
性能面ではヴォルケインと似てるから、使いこなせば脅威だな
そして浅倉、目的の北岡は隣のエリアに居るぞw
それぞれが持ち味を出していて楽しめました
>>697 どちらでもお好きな方にして構わないと思います
とりあえず他に見つけた誤字は
>>691の「まるで鎧を人間の大きさにしたかのような」の鎧はカタカナのヨロイが正しいはずです
最後に指摘ですが、時間が黎明なので悟史の放送に対する反応を付け足した方が良いかと
>>699 悟史の声はこの時点じゃまだ出てなかったってことにすればよくね?
それもそうだな
Wiki収録の際に悟史の話より前にすれば問題ないか
えーっと、つかさがパニック状態で悟史の放送をどうするかについては続きの方に任せようかと思って……って先にフォローしてくださってた
一応、悟史の話の前、ということでお願いします。連絡が遅れて申し訳ありません
>>702 順番入れ換えるのも面倒だし、注意書きに悟史の声はまだ聞こえてませんって書いとくのはどう?
作品以外のWiki編集しておいた
とりあえずは悟史の前にしたけど、直したほうがいいなら直しとく
>>704 おお、お疲れ
順番は作者さんが言わない限りあのままでいいと思う
作品のほうは今は無理だけど、後で俺がやっとくよ
と思ったら他の人がやってくれてた
なにもかもすいません
反応遅れて申し訳ありません&ウィキ収録に多大な感謝を
色々とお騒がせしました
◆EboujAWlRA氏
作品を収録しましたが
>>698で仰っている継ぎ足し分があるなら
こちらか仮投下スレに投下してください
投下され次第、編集しておきます
仮投下に投下しました
矛盾脱字誤字等があればよろしくお願いします
拝見しました
見たところ、誤字脱字は3箇所ほどありました
カズマや劉邦→劉鳳
そんな優勝するかも分らない→分からない
V.V.の膝を屈する→V.V.に膝を屈する
細かいですが、指摘しておきます
ご指摘ありがとうございます
ひとまず自分で収録しておきました
>>711 仮投下&収録乙です
悟史の周りマーダー多すぎだろwww
拡声器使った当初は織田しかマーダーが居なかったのに、今や5人だもんなwww
無限刃持って志々雄と遭遇しそうなアイゼルと並んでピンチだ
大乱戦確定だろうな、ありゃ
流石拡声器、死亡フラグの定番
しかも悲しいことにひぐらしキャラは一人もいないし
ルルのギアスが死後解除されたのは制限のせいだからってなってるけど、アニメでも死後に継続したケースなんてあったっけ?
>>715 最終回で、空港でナナリーの車いす押してたゼロ(スザク)の横にいた
シュナイゼルの目が赤かった気がする。断言はできないが。
>>716 そういやシュナイゼルがいたなぁ
ルルのことだからその辺は抜かりないだろうし、多分死後も継続すると思う
同系統のシャルルのギアスは死後もアーニャに効果及ぼしてたしそもそもマリアンヌのギアスに至っては発動条件が死ぬことだからルルーシュのギアスだけが死後に解除されるってことはないと思う
そういえば、スザクにかかってたギアスってどうなってるんだろうか。
ロワ開始前にかけられてるからルルーシュの死後も継続?
>>719 そっちのほうが面白いし、継続でいい気もするが……
次の書き手さんに任せるっていうのが妥当じゃね?
>>720 たしかに、議論して決めるようなことでもないし
どっちでも理由の説明は可能だろうから、書き手さん任せでいいな。
ちょうど再放送やってたから確認したけど、多分シュナイゼルの眼赤かったよ
それにあのシュナイゼルがギアス無しで大人しくしてるとは思えないから、死後も継続で間違いない
それにしてもあの終わり方は中々堪えるぜ……
死後も効果あると分かってたから、ゼロに従えなんてギアス使ったんだろうな
そして予約入ったな
対照的なコンビ同士だけど
あの組み合わせに嫌な予感しか感じないのは俺だけだろうか
よりによって今のこなたかよ
今のこなたは危険過ぎるよなぁ、本当にどうなっちゃうんだろ
キター
代理投下始めます
「夜の遊園地っていいところですねー、貴女もそう思うでしょう、さがみさん?」
「…………か、かがみよ」
「あっ、すいません。人の名前を覚えるのはどうも苦手でしてねぇ」
両手を広げながら上機嫌で話すクーガーと、口元をハンカチで押さえ言葉を吐き出すかがみ。
対照的な状態の二人は今、遊園地にいた。
遊園地と言えば常に人々で賑わっているイメージがあるが、それはお日様が顔を見せている昼間の話。
昼間は長蛇の列を作る人気アトラクションも夜が更ければ動くことはなく、むしろ機械的で無機質な感覚が不気味さを与えた。
最もこの遊園地には、端からアトラクション目当てで訪れる者などいないのだが。
柊かがみがミハエル・ギャレットに救われかけ、それをストレイト・クーガーが妨害してからおよそ一時間。
彼らは今、G−10にいる。
これだけ聞けば全く問題はないようだが、おかしな要素が一つあるのだ。
元々彼らがいたのは会場の中心に位置するF−5なのだが、今は端にあるG−10のエリア。
これだけの距離を僅か一時間で移動するのは、常人には不可能なのである。
しかし現実彼らはF−10にいる。ではどうやってここまで移動したのだろうか。
答えはクーガーのアルター、ラディカル・グッドスピード。
ミハエルと戦闘時には自らの脚部に使用していたが、本来の用途は別である。
このアルターの真の能力は、あらゆる乗り物のを自分専用のアルターに改造し速度を劇的に上昇させるものなのだ。
かがみと情報交換を済ませたクーガーが自らの支給品を確認した結果、出てきたのが軽トラック。
一般的な大きさのデイパックから軽トラが現れた光景を見て、かがみが思わずツッコミを入れたが、
彼は何の問題もないかのように受け流し、高らかと自らに与えられた能力の名を叫び上げる。
するとトラックは奇妙な光に包まれ、独りでに解体されていく。
全ての部品が解体された後、今度は新しい車体を形成していき――――。
数秒もしないうちに、濃厚なピンク色の塗装が施されたスポーツカーへと変形した。
かがみは目前の車を見て彼の趣味の悪さを疑ったが、命の恩人にそれを告げるのはさすがに憚られる。
そんなことを思案しているうちに、彼に市街に行くかどうかの結論を迫られ、
結局ある程度のリスクを背負うことになるが、妹や友人がいる可能性の高い市街地に赴くことを選んだ。
かがみの選択、それ自体は間違いではなかった。
彼女の友人の大半は山間部にいたのだが、公園から東側に位置する小島には一人も居ない。
それに対して市街地には一人だけではあるが、友人はいるのである。
ならば彼女は何を間違えたのか、答えは市街地に行くための手段である。
確かにクーガーのアルターは、移動手段としては間違いなく最速だろう。
だがこのアルターには致命的な欠点が一つ存在する。
それは乗り心地の悪さ、それは彼の運転技術と相まって最悪と呼べる段階にあった。
カーブを曲がることで全身が大きく揺れ。
車体が跳ねることで喉元に嫌な物が込上げ。
直線を全速力で走るだけで意識が遥か彼方に吹き飛ぶ。
市街の中の目的地を特に指定していなかったことが災いし、彼女は会場の端にある遊園地に辿りつくまでこの責め苦に苛まれる羽目になった。
これがこの一時間における彼らの経緯である。
車から降りてしばらく経過するも眩暈や吐き気との戦いは未だ終わらず、休憩を余儀なくされた。
「遊園地とは素晴らしいところです、デートコースとしては王道を通り越してもはや常識
恋愛初級者から上級者、誰もが安心して女性を誘うことの出来る施設です
しかしその際にどうしても付きまとってくるのがものがあります、それが何か分かりますか?
そぉう! 待ち時間です。アトラクションに乗るときは長蛇の列に並んで長い時間を過ごさなければなりません
誰もがこの時間を退屈な時間だと思うでしょう、し・か・し、私はある時、気付いたのです!
この時間があるからこそ、アトラクション達はより面白く、よりスピーディーに感じられるのです!
長い長い待ち時間から解放された後に、乗るジェットコースター!
係員のお姉さんに案内されながら座る椅子の感触! 自動でレバーが降りてくる時の緊張感!
そして機械の音と共にだんだんと上がっていく車体!! そしてそしてぇ――――――――」
かがみは休憩したいのにも関わらず、クーガーは早口でひたすら話しかけてくる。。
彼の男性にしては高めの声が脳を刺激し、彼女の頭痛をさらに促進させているのだ。
最初は黙って聞き流していたが、数分経っても終わらず文句の一つでも言ってやろうかと思っていた、その時。
「やぁ、かがみん」
クーガーの早口に紛れて、聞き覚えのある声がかがみの耳朶に届いた。
「あ……あ……」
昨日も聞いたはずなのに、懐かしく聞こえる声。
「なに泣いてんの、かがみ? ひょっとして私に会えて嬉しかった?」
「な、泣いてなんかないわよ、泣いてなんか……」
小柄な身体に青く長い髪、そして頭の天辺に生えたアホ毛。
泉こなた、捜し求めていた学友の一人がかがみの目の前にいるのだ。
思わずかがみはこなたへと駆け、そして彼女の身体を抱きしめてしまう。
こんなに簡単に出会ってしまってもいいのか、そう思いつつも彼女はこなたを抱きしめ続けた。
「怪我とかしてない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。それよりかがみ、そっちのサングラスのお兄さんは?」
抱きしめてくるかがみの背に手を伸ばしつつ、こなたは彼女を見守るように佇む男に首を向ける。
「初めまして小さなお嬢ちゃん、俺の名前はストレイト・クーガー、常に最速を求める男です
どうです? さがみさんのお友達なら俺と一緒に世界最速のドライブにでも行きませんか?」
「かがみよ! っていうか絶対にやめときなさい、こなた。乗ったら絶対に後悔するわよ」
「はは、クーガーって面白いね。私は泉こなただよ、よろしく。でも今は席を外してもらえないかな?
ちょっとかがみと二人で話がしたいんだ、ごめんね」
「えぇーっと……いい?」
かがみは首をクーガーの方に向けて尋ねる。
二人だけで話すということは、命の恩人であるクーガーを一時的とはいえ省くことになってしまう。
その程度で彼が気を悪くするは考えづらいが、それでも何となく悪いと考えてしまうのが人の常だろう。
「大丈夫ですよ、俺はこの程度で拗ねたりなんかしませんから
今はご友人との時間を大切にしてください」
クーガーはそう答えた後、車に寄りかかりながら空を仰ぎ始める。
その姿を確認した二人は、こなたの判断で最寄のベンチへと向かっていった。
こなたの、判断で。
「……今まで誰かに襲われたりとかしなかった?」
「目付きの鋭いおじさんに襲われたけどなんとか逃げてきたよ、あの時は流石に死を覚悟したねぇ」
「はぁ……心配かけないでよ、もう。そういう私もミハエルって奴に殺されかけたけどね、あんたも――――」
会ったら注意しなさいよ、と付け加える。
ベンチに腰を掛けたものの双方共に話題を提供することが出来ず、数十秒が経過した所で先ほどの質問をかがみがしたのだ。
こなたはその質問に対し世間話でもするかのように答え、それが彼女の不安を煽った。
「ねぇ、かがみは遊園地のアトラクションで何が一番好き?」
「ちょ、今はそんな話をしてる場合じゃないでしょ……うーん、やっぱりジェットコースターかな」
こんな状況に不謹慎だと思いつつも、彼女の上に敷かれたレールを見ながら言う。
「なんだかんだで答えてくれるツンデレかがみ萌え〜」
「な、あんたって奴はこんな時までも……」
「それにしてもすごいかっこうだねぇ、かがみん、それメイド服?」
「う、うるさいわね! 仕方ないでしょ、制服が濡れちゃったんだから……」
普段の調子とまるで変わらないこなたに呆れ、思わず溜め息を吐くかがみ。
しかしこの状況下でも変わらないこなたに対して、確かな安堵感も覚えていた。
「やっぱり男女二人で観覧車に乗るのは、もう立派なフラグだよ〜」
「そう? 私はその程度じゃ甘いと思うけど」
その後も遊園地の話題に二人は花を咲かせている。
二人とも笑顔を浮かべており、談笑と呼ぶに相応しい状態であった。
が、かがみは今が殺し合いに参加しているということを忘れられずにいる。
単純に彼女がこなたほど能天気な性格ではないというのもあるのだが、それ以前に一つ大きな違和感が渦巻いていた。
こなたがあまりにも、能天気すぎるのだ。
確かに彼女は楽観的な性格であり、テスト期間中も直前まで遊び呆けている。
他にも三年生になっても未だ進路が決まっていなかったりと、彼女の性格を説明する事例は他にいくらでもあった。
だがこなたは、従姉妹が見せしめとして処刑されても笑っていられる人間なのだろうか。
答えは否だ。こなたと共有してきた三年間の思い出が、かがみにそう告げている。
小早川ゆたかが殺された時に、彼女が感じた絶望感は生半可ではなかった。
時間が経ってしまった今でさえ、咽び泣きたい衝動に駆られる。
ゆたかとの付き合いが薄い部類にいた彼女でさえ、こうなのだ。
家族同然だったこなたが感じる絶望は、彼女の想像にも及ばない域に達しているだろう。
では何故、こなたはいつもの調子と変わらないのか。
「こなた……あんたこれからどうするの?」
遊園地の話題を強引に終了させ、こなたに問いかけるかがみ。。
この話題ならば真面目な雰囲気にならざるを得ないだろう、そういう目論みが彼女にはある。
が、それ以上に今のこなたの真意を知りたいという気持ちが、彼女を強く支配していた。
「これからって?」
「な……あ、あんた……」
車から降りた直後の吐き気と眩暈が蘇るような回答、正確には悪化するだが。
友人に会えた喜びで一時的には緩和できたものの、やはりクーガーの車は強烈で会話しているうちにぶり返していたのだ。
「だからこの……バトルロワイアルのことよ」
会場に飛ばされる直前、白い空間で最後に聞いた単語を口にする。
「あぁ、なんだ、そんなの簡単じゃん」
思わず自分の耳を疑うかがみ。
彼女が数時間悩み続けている疑問の解答を、こなたは簡単に導き出したというのか。
こなたの次の言葉に一抹の不安を覚えながらも、彼女は耳を傾ける。
「――――だって、これはゲームなんだよ?」
「……は?」
こなたの発言が理解できず、かがみは間抜けな声を出してしまう。
「だからさ、こんなことが現実ににあるわけないじゃん
いきなり変な世界に飛ばされてさ、殺し合いをしろだなんておかしいよね? 常識的に考えて」
確かにこなたの言っていることは至極真っ当である。
しかしかがみがミハエルに首を絞められた時に感じた感触は、現実の死を直面させる生々しさを帯びており、
その事実が嫌でもかがみに現実だと認識させていた。
この異常な世界において、至極真っ当などという言葉はもはや通用しないのである。
「多分私たちはなにかのゲームの世界に入っちゃったんだよ、これって凄いことだとだよね?
私たちは今、ゲームの世界の住人なんだよ、あんなに憧れ――――」
「あ、あんた……どうしちゃったのよ?」
こなたの発言に寒気を覚えたかがみは、こなたの肩を掴み揺さぶり始める。
「どうしちゃったって……これがいつもの私だよ?」
「いつもの私って……あんた、ゆたかちゃんが!」
かがみは最初にこなたに会った時の態度から判断して、ゆたかの死を乗り越えたと思っていた。
それをわざわざ言及する必要は無いと考え、決してゆたかのことは言うまいと思っていた。
思っていたが、今のこなたに対し抱いた恐怖心が思わずその単語を告げさせていた。
「ゆーちゃんは死んじゃったよ、でもさ、ゲームの世界なんだから生き返らせる方法があるに決まってるじゃん
言ってたでしょ? 最後まで生き残ったら願いを一つ叶えてくれるって」
揺さぶり続けていた手が硬直し、全身が凍りついたかのような感覚に襲われるかがみ。
殺し合いに生き残ること、即ちそれは他の参加者全員を抹殺することを意味する。
つまりこなたは殺し合いに乗ることを決意していると、彼女は気付かされた。
「だから私はあの子にリセットボタンを貰うことにしたんだ、そうすれば全部元通り
私達は全員で元の世界に帰れるよ。そこでさ、かがみ。お願いがあるんだけどいい?」
「な、なによ……?」
一刻も早くこなたの元から離れなければならないにも関わらず、一ミリもその場から動くことが出来ないかがみ。
こなたに対する恐怖心、そして変貌してしまった友人を説得しなければならないという意志が彼女の体を磔にしていた。
「リセットボタンを手に入れるの手伝ってくれないかな? 多分私一人じゃ無理だと思う
でも私たち全員で頑張れば、必ず――――」
「し、死んじゃった人を生き返らせるなんて……む、無理に決まってるじゃない!」
「駄目かな? かがみ」
「駄目も何も……」
こなたの誘いは確かに魅惑的であり、甘美な誘惑だ。
しかしそれはあくまで実現可能ならばの話であり、少なくともかがみの常識の中には死者を蘇生させる方法など存在しない。
そうかがみは考えてしまい、二の句を告げられずにいた。
「もういいよ」
こなたは落胆したように吐き捨てる。
「もういいって……」
「だからもういい、かがみにはもう頼らないよ。ごめんね」
「あ、あんたねぇ!」
こなたの発言に苛立ちを、それ以上の悲しみを乗せてかがみは怒鳴る。
「もう……ゆたかちゃんは死んじゃったのよ! もうそれは変えられないの!
それにゆたかちゃんが……ゆたかちゃんが自分のために他の人を殺すあんたを見て喜ぶと思う!?」
「喜ばない、それくらい分かってるよ、ゆーちゃんはとっても優しい子だもんね
でも、それでも生き返らせなきゃ駄目なんだよ。だから――――」
こなたの瞳に視線を合わせ言葉を叩きつけるも、こなたの心には届かない。
そして、初めて気が付いた。
今のこなたの瞳に光は存在せず、暗闇に彩られた虚無が広がっていることに。
そして、ようやく確信した。
こなたはゆたかの死を受け入れられず、狂ってしまったのだと。
「――――サイト、お願い」
「分かった、ルイズ」
こなたの合図で、背後の茂みから現れる少年。
その少年は長剣を両手で握っており、瞳にもこなたと同じように光が無い。
「こな……た?」
「大丈夫だよ、かがみ。すぐに生き返らせてあげる
だから今は……ごめんね」
かがみはこなたの異変に気付くのが、あまりにも遅すぎた。
故に女神の剣の恩恵を受け、身体能力が上昇した少年から逃げる時間など無く。
彼女が少年の姿をその瞳に宿した時には、既に長剣が振り下ろされていた。
私怨
支援
――――振り下ろした長剣を持ち上げる才人、その際に付着した土が零れ落ちる。
女神の剣はその切れ味に従い、目の前の物を一刀両断していた。
頭の先から、脚まで真っ二つに。
彼女達が、座っていたベンチを。
「ふぅ、危なかったですね」
死を覚悟して閉じた眼を、かがみは開く。
その瞳に映るのは、遠い位置から呆然と自分を見つめるこなたと才人。
現状が理解できず混乱するかがみ、自分の体が誰かに支えられていると気付くとさらに加速していく。
その後一通り周囲を見渡し、最後に顔を上げる。
「怪我は無いですか? さがみさん?」
そこには不敵な笑みを浮かべる男、ストレイト・クーガーがいた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時間は数十分前に遡る。
平賀才人が泉こなたをルイズと呼び抱きしめた直後に、彼らは車の走行音を耳に捉えた。
隠すつもりがないのか、走行音は深夜の闇に騒音として響き渡っており、
音の聞こえる方向と配布された地図から、車の目的地を遊園地と断定。
少し悩んだ結果、彼らは遊園地に先回りすることにした。無論、殺害するために。
彼らが遊園地に到着して身を潜めていると、車が遊園地の広場に到着した。
それを隠れたまま監視する二人、程なくして車のドアが開く。
中からは顔色の悪いツインテールの少女と、サングラスをかけた怪しい男が現れる。
少女の方は脆弱な一般人に見えるが、サングラスの男の実力は未知数。
ここはやはり奇襲を仕掛け、実力を発揮される前に殺すか、などと考えていた時。
不意にこなた、いや『ルイズ』が声を上げた。
「かがみ……」
懐かしげに、ぽつりと呟く『ルイズ』
話を聞くと、少女の方が彼女の学友、柊かがみであると教えられ、
『ルイズ』の判断から、才人の企てた奇襲作戦はより安全で確実な方法に変化した。
まず『ルイズ』が二人に近づき、かがみをベンチに誘い出す。
そこで彼女にこのゲームをクリアして、V.V.にリセットボタンをもらう手伝いを申請する。
承諾されればそれでよし、拒否された場合は才人が背後から切り裂く。
これが『ルイズ』の思いついた作戦の全貌だ。
障害はやはりサングラスの男であったが、都合のいいことに誘い出すのに不自然ではなく、
彼から離れた距離の場所に、ベンチが設置されていたのだ。
この作戦ならば、最低一人はノルマを稼げると思っていた。
しかし現実は完全な失敗、かがみは救出されサングラスの男には敵意を感づかれてしまっている。
『ルイズ』の誤算はサングラスの男――――クーガーにとってベンチまでの距離は、一瞬もあれば詰められる程度のものだったということだ。
抱きかかえたかがみを自らの車の傍に避難させ、再び戦地に赴くクーガー。
その歩調は戦闘に対する緊張など一片も無く、彼が手足れであることを才人に実感させる。
思わず唾を飲む才人。
程なくしてクーガーは、才人から十メートル程離れた位置で前進を停止した。
「何故、かがみさんを襲った?」
無風の空間で放たれる言葉、それは何物にも邪魔されること無く才人の耳に届く。
「俺のご主人様に頼まれたからだ」
才人の声もまた、騒音に邪魔されることなくクーガーの耳に届いた。
「……そこまで大事か、ご主人様の言葉ってのはよ?」
「ああ、大事だ」
もう二度と失わない、もう二度と離さない。
言葉では現さないが、才人は自らの心でそう繰り返す。
「くだらねぇなぁ、自分の意思の介していない行動に何の価値がある?」
「くだらねぇ……だと? お前は知らないんだ! 自分の大切な人の傍で仕える喜びを」
「ならば何故止めない!? お前の大切な人が自分の大切な人を殺そうとするのを!!」
感情を爆発させたかのような問い、遠めに見ているだけだった才人は知る由も無かった。
かがみがこなたを見かけた時、心の底から嬉しそうのはにかんだ事を。
そしてその顔を見た時のクーガーが、心の底から安堵したことを。
「うるさい……うるさい、うるさい、うるさい!」
左手で額を押さえ悶える才人、もうクーガーの問いに答える気など無い。
右手で握り締めた女神の剣を前方に突きつけ、クーガーを威嚇する。
「俺は……俺はあいつと一緒にいられればいいんだ!」
才人は剣を片手に握り締め、クーガーに切り掛からんと突撃する。
「ああ、そうかい、ラディカル・グッドスピード脚部限定!」
クーガーの周辺の地面が抉り取られ、消滅した破片が彼の脚に装甲を形成していく。
その間約数秒、装甲が完成した時点で既にクーガーは飛び出していた。
「ヒール・アンド・トゥー!」
長距離を一瞬で無にする速さから、飛び蹴りが放たれた。
sien
私怨
「ぐうっ!」
食いしばった歯から声が漏れる。
先に才人が仕掛けたはずなのに、先攻を取ったのはクーガー。
高速の領域から放たれる飛び蹴りは、女神の剣の加護で敏捷性が上昇していた才人でも受け止めるだけで精一杯だった。
「うぉおおおおっ!」
全身に力を込め、強引にクーガーを振り払う。
そして今度こそクーガーの身体を、鋼鉄の刃で切り裂こうとしたが――――
「――――ッ!?」
才人の視界から、クーガーが消えていた。
周囲を見渡す才人、しかし何処にも彼の姿は見えない。
「遅い!」
何かの落下音、それが才人の耳に届く。
その正体に気付き彼が上を見上げたのと同時に、彼の両肩を鈍い衝撃が襲い掛かった。
「ぐあぁっ……!」
剣で防御し、辛うじて直撃は免れる。
しかし上空からの急降下で重力を纏った一撃は、才人の想像以上の威力を伴っていた。
そう、クーガーは剣を踏み台にして上空に飛来。
そして踵落しの要領で、才人に攻撃を加えたのだ。
「くそぉッ!」
剣に圧し掛かるクーガーを、再度強引に薙ぎ払う。
クーガーは華麗な動きで地面に着地するが、体勢は磐石とは呼べない。
その僅かな隙を突こうと、才人はコンクリートの地面を駆けた。
「足りないなぁ……全然足りない」
再度、才人の視界から消滅するクーガー。
またしても才人は逡巡し、僅かに動きが止まる。
その隙を掻い潜り、クーガーはまた現れた。
才人の背中を、蹴り飛ばしながら。
「ぐああぁっ!」
悲鳴を上げながら、地面を転がる才人。
背中に受けた一撃は肺の中に空気を与えず、彼は息苦しさに顔を歪めている。
が、その苦痛に浸っている暇は無く、彼が顔を上げた先には既にクーガーが迫ってきていた。
「俺を倒すには、圧倒的に速さが足りないッ!」
「うるさい!」
辛うじて立ち上がった才人は、死力を振り絞り何とかクーガーを遠ざけることに成功。
剣の柄を握る力を強め、才人はクーガーの攻撃に備えた。
その後も一進一退の攻防が続き、やがて数分が経過する。
「ハァ……ハァ……くっ!」
一般的に考慮すれば、数分というのは非常に短い時間であろう。
だが戦闘においては、一瞬の隙でさえ致命傷を招く。
とくに自らの俊敏性を用いて戦うクーガーとの戦闘であれば尚更であった。
「くらえッ!」
正面から迫り来る回し蹴り。
アルター能力により強化されたそれは、もはや剣や刀に匹敵する切れ味を持っている。
「ッ!」
迫る斬撃を剣で受け止める、すると金属音が鳴り響き火花が散った。
(本当に足に刃物でもついてんじゃないのか、こいつ……)
あくまでクーガーのアルターは脚部の装甲であり、才人が想像したような刃物はついていない。
にも関わらず、攻撃に鋭さが現れるのは何故だろうか。
答えは彼の速さが人智を超えているから、ただそれだけの理由である。
それだけの理由が、才人を圧倒し、苦しめているのだ。
「鈍い、鈍すぎる。そんなんじゃ俺の速さの足元にも及ばないぞぉ!」
受け止められた脚を早々に切り上げ、上空へ舞い上がる。
そして再び踵落しの要領で、落下し始めた。
さしずめこれは、悪人の首を断頭するためのギロチンと言った所だろうか。
「何度も……何度も同じ手はくらわねーんだよ!」
素早い動きで背後に後退する才人、その一秒後には彼が元々踏み締めた地面にギロチンが落下している。
最初の一撃は受け止めるだけしか出来なかったが、一度見てしまえば回避を可能にする実力が彼には備わっていた。
「うぉぉぉおおおおおッ!!」
剣を構えながら、才人は突進する。
踵落しの不発で発生した隙は大きく、この隙を逃す手は無い――――はずだった。
「ぐおぉっ!」
剣越しにも伝わる衝撃、身体を槍で穿たれたようなな衝撃。
しゃがみ込んでいたはずのクーガーは伸び切っていた脚の先端、爪先を突き出し、
もう片方の足をバネにして、強引な姿勢のまま迎撃したのだ。
支援
「ハァ、ハァ……」
剣を杖代わりにして、才人は立ち上がる。
先の一撃によるダメージは剣越しだったためか、そこまで大きくは無い。
しかしクーガーの攻撃を受け止め、速さに対応するために消耗した体力は彼の身体を蝕んでいた。
「ようやく倒れたか……これで終わりだ! ラディカル・グッドスピード!」
クーガーは自らに宿った力の名を、高らかに宣言する。
それを聞いた才人は、疲労の蓄積された体に鞭を入れ、奮い立たせる。
そして一瞬でさえ見逃すまいとクーガーを視界の中に拘束し、剣を眼前に構えた。
が、いつまで経っても攻撃は来ないどころか、クーガーは不動の状態を保っている。
(誘ってるのか? それとも……?)
見たところクーガーの能力は、脚部を装甲で覆うこと。
彼の人智を超えた速さは、この装甲が原因であるのは間違いないだろう。
(ならば、さっきのは何なんだ)
単純な攻撃の不発というのは、絶対に有り得ない。
となれば自分をおびき出すための罠か、あるいは装甲を強化するのが目的か――――
「なっ!?」
才人は、気付いてしまった。
クーガーの脚部から装甲が消滅し、黒いブーツが姿を見せていること。
それと同時に、側面から一台の車が迫っていることに。
「くそッ!」
踵を翻し、才人は車からの逃走を図る。
だが迫る車は猛スピードで爆走しながら、彼を正確に追跡していた。
「何で付いてくるんだよ畜生!」
「何で付いて来るかって、そんなの単純だ
それが俺のアルターだからだ、自由自在に操縦することが出来るのさ」
クーガーが自らの能力を解説しだすが、才人にそれを聞いている余裕など無い。
ここで才人を追跡する車について解説をしよう
外装こそクーガー達が乗ってきた物と大差は無いが、実は一般的な小型車よりもさらに小さい形をしている。
何故ならばクーガーがアルター能力を使用したのは、遊園地によくあるアトラクションの車。
一般的にゴーカートと呼ばれる代物だからである。
「ゼェ、ゼェ……くそぉ!」
走り続け体力の限界が訪れた才人は、体を反転させ剣を構える。
車体を一刀両断しようと、両足に体重をかけたが――――
「うわああぁぁぁぁぁっ!」
暴走する車に抗うほどの力は無く、一瞬の拮抗の末に跳ね飛ばされてしまった。
「くあっ……あぁ……」
コンクリートの地面にうつ伏せに倒れ、苦しげに才人は呻く。
女神の剣の影響で防御力が上昇していたからか、致命に達するほどの傷は負っていない。
しかし身体は既に満身創痍、もはや剣を支えにしなければ直立できないほど。
これ以上の戦闘が不可能であるのは、既に明白だった。
「どうやら……俺の勝ちのようだな」
一歩、また一歩と最初に対峙した時のような歩調で、クーガーが前進してくる。
そこからはもはや余裕すら伺えていて、自らの勝利を確信した様子。
だがあくまでそれは余裕であり、油断ではない。
片時たりとも才人を視界から逃すことは無く、訝しげな動きをすれば一瞬で才人は仕留められてしまうだろう。
実力により裏付けされたその余裕は、絶対の自信となり彼の風格を形成していた。
(俺は……こんなところで……)
才人の頭の中に、様々な念が溢れ返る。
一度は死んでしまったかのように見えたルイズ、でもまた才人の前に姿を見せてくれた。
容姿は違うかもしれないけれど、確かに彼女は自分のことをルイズだと言った。
だから彼女は、ルイズなのだ。
そんな彼女が、才人に一つの願いを言った。
死んでしまった従姉妹を生き返らせたいから、主催者からリセットボタンを貰いたい、と。
それを聞いて才人は思った、あぁ、やっぱりルイズは優しいんだなぁ、と。
ルイズに対して誇りを抱いた才人は、ルイズの役に立ちたいと心から願った。
(それなのに……それなのに……)
現実は、この様である。
彼女が計画した作戦は失敗に終わり、尻拭いのためにと応戦した戦闘では惨敗。
なんという醜態、無様という言葉がこれほど似合う状況は他に無いだろう。
一歩、また一歩とクーガーが近づいてくる。
悠に三十メートルはあった距離も、彼の早足の前に縮められていく。
あと十秒もすれば、彼は才人の元に辿り付くであろう。
(ルイズ……ルイズ……)
自らのご主人様の名前を復唱する。
才人がここで彼に倒されれば、次の矛先は確実にルイズに向かう。
そんなことは絶対に許してはいけない、許すわけにはいかない。
(ルイズ、ルイズ、ルイズ、ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズッ!!)
「ルイズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
だから彼は叫んだ、世界で一番大切なご主人様の名前を。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
sien
泉こなたと平賀才人、柊かがみとストレイト・クーガー。
偶然か、はたまた必然かは分からないが、この二人の出会いは全く同じであった。
経緯はどうあれ窮地に陥っていた少女を、男が颯爽と救い出す。
それぞれの行動理念は正反対と呼べるものであったが、出会いだけは全く同じであった。
さしずめ少女の方は姫、男の方は騎士とでも言ったところだろうか。
そんな二人組は比較的早い段階で遭遇し、そして剣を交えることになった。
これも偶然か必然かは分からない。
もし言葉で表すとしたら、この単語が一番相応しいのだろう。
この出会いは、運命だったのだと。
――――時は再び遡り、才人がクーガーの回し蹴りで吹き飛ばされた頃。
車の傍に避難していたかがみは、ぽかんと見つめていた。
自らを殺そうとした騎士と、自らを生かしてくれた騎士の戦いを。
(やっぱり……目で追えない)
才人呼ばれた少年の動き自体は、防戦に回っているからか彼女の目にもしっかりと映っている。
が、最速を自負するクーガーの動きに対応出来るところを見ると、やはり彼も超常の世界の人間なのだろう。
(なんで、私達がこんなところに連れて来られなきゃいけないのよ……)
彼女は極めて普通のどこにでもいる女子高生、魔法やアルター能力など存在しない世界の住人であり、
これからも平和な日常を謳歌することが約束されていたはずだったのだ。
にも関わらず、気が付いたらわけの分からぬ場所に連れ去られ、友人を殺害された。
そのうえ自分自身も、二度殺されそうになった。
しかも彼女が無二の親友だと思っていた、泉こなたによって。
(なんで、なんでよ、こなた……)
光を失い黒く淀んだ瞳を思い出し、彼女は項垂れる。
何で昨日まで一緒に笑い合っていた友達に、突然命を狙われなければいけないのか。
彼女は自らの境遇を呪い、呪詛の言葉を吐き出す。
これも当然だろう。彼女等は特殊な力もなければ特異な経験も無い。
常に死と背中合わせの世界で耐えることのできる精神力など、持ち合わせているはずがないのだ。
(もう、やだ……)
その場に腰を降ろし両膝を手で抱え、そこに頭を突っ伏す。
真っ暗な世界の中で、彼女は全てに絶望していた。
(……………………)
真っ暗な世界で思い出すのは、昨日までの日常。
こなたが話を振り、つかさが驚き、みゆきが解説を加え、かがみがツッコミを入れる。
そこにゆたかやみなみが入ってきて、いつの間にか大所帯になっている。
(……………………?)
そんな平和な日常を振り返って、彼女はふと気付いた。
みんな、笑っているのだ。
つかさやみゆきは微笑ましげに、ゆたかは純粋そうに、みなみは恥ずかしげに、こなたは含みのあるように嫌らしく。
その時の自分の顔など彼女自身が知るわけも無いが、きっと笑っていたのだろう。
私怨
しえん
支援
支援、さるさん?
すいません、さるさんです。
解け次第再開しますが、できるなら続きをお願いします
752 :
代理続投:2009/05/08(金) 01:26:01 ID:Ar+vuUOy
皆の笑顔を思い出すと、彼女の心が温かい感情に満たされていく。
(きっと、きっとまだあるはずよ、昨日を取り戻す方法が!)
こなたは確かに私を殺そうとしたけれど、未遂で終わっている。
つまりまだこなたは何も罪を犯していない、そうに違いない。
だからこなたを説得しよう、もうあんなことはやめるように、と。
そうした後で、皆でこの狂った世界から抜け出す方法を考えよう。
さっきはああ言ったけれど、ゆたかちゃんを生き返らせる方法もあるかもしれない。
だから――――
そこまで彼女が考えて、顔を上げた時。
「ルイズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
と、叫び声が彼女の耳を貫く。そして。
「分かったよ、サイト」
自分の正面から十メートル、さらに右へと四十五度ほどずれた位置。
そこに現れたこなたが、何かを彼女に向けて押した。
「さよなら、かがみ」
「え、こな……」
最後にそう呟いたこなたは、体を反転させ脱兎の如く駆け出した。
――――ここで偶然の産物ではあるが、一つの不幸を説明しよう。
クーガーは知らなかった、才人が泉こなたのことをルイズを呼んでいた事を。
クーガーは知っていた、あの少女の名前が泉こなたであることを。
そして名簿の中に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの名前があることを。
故に才人がルイズの名前を叫んだ時に、疑ってしまったのだ。
彼らに第三の仲間がいて、ずっと隠れていたことを。
だから初動が数秒遅れた、こなたが投げ出した台車の動きに対応するのに。
硬いコンクリートの地面を、台車の車輪が音を立てて進んで行く。
からからと乾いた音を立てて、進んで行く。
何か小さな機械を取り付けられた、一斗缶を載せて。
クーガーが叫ぶ、しかし声は届かない。
得体の知れない何かを載せて動く台車に、かがみの意識は裂かれていた。
からからと音を立てて進む台車、物凄い速度で駆け抜けるクーガー。
この二つが同時に、かがみの元へ辿り付いた時。
強大な爆発音が、周辺一帯に響き渡った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
支援
754 :
代理続投:2009/05/08(金) 01:27:20 ID:Ar+vuUOy
先ほどこなたが滑らせた台車に載せられていた物。
あれの正体は、共和国戦闘実験第六十八番プログラムにおいて、
三村信史が作成した大切な叔父の形見を用いて作成した爆弾である。
工場勤務の叔父によって調合された爆薬は、凄まじい破壊力を発揮した。、
プログラムにおいては、巨大な倉庫を丸々一つ壊滅させるという惨状を演出し、
今回も遊園地を半壊させるに至った。
メリーゴーランドの馬達の肢体は四散し、バラバラの不気味な物体と化し、
観覧車は殆どのゴンドラが地に落ち、骨組みだけが残った姿は枯れ果てた樹木の様。
一番人気であるはずのジェットコースターは、レールが崩れ落ち原型を留めていなかった。
他にも爆弾の被害は多数に及んでいたが、一番悲惨なのは中央の広場であろう。
爆心地である地面には巨大なクレーターが開き、さらに破壊されたアトラクションの残骸が無数に転がっている。
そしてそれらを全て包み込むかのように、煌々たる炎とどす黒い煙が巻き上がっていた。
轟々と音を立て、残骸を巻き込みながら火柱となり漆黒の闇を昇っていく。
まるで全てを逃がさんとする、牢獄を形成するかのように。
だがその牢獄から僅かに逸れた位置に、一台の車が転がっていた。
ピンク色の塗装が成された派手な装飾のスポーツカー。
この説明だけであれば豪勢な車を連想する者も多いだろうが、現実は違う。
窓ガラスは粉々に砕けており、車体もところどころが拉げている。
何より車体が反転し、タイヤが天を剥いているところが爆発の悲惨さを物語っていた。
通常これだけの被害を車が被っていれば、間違いなく内部の人間は生きてはいないだろう。
しかし幸運なことに、内部の人間はまだ生きていた。
「うっ……あぁ……」
狭い車内で黒ずんだ衣服の煤を払い、煙を吸い込んだのが咳き込む。
その人間に目立った外傷は存在せず、すぐにでも行動することは可能であろう。
これは奇跡とも呼べる出来事である。
さて、ここまで来て疑問を浮かべている人も多いのではないだろうか。
爆発が起こる直前まで、車内に人は居なかったはず、と。
これについても説明しなければならない。
台車に載せられた物が、こなたが必死に逃げる様子から爆弾だと気付いたクーガーは、
手負いの才人を放置し、かがみの元へと一目散に駆け抜けた。
そして彼女の元に辿り着く直前に、アルターと化した車のドアを開け、
彼女を抱えて、車内に飛び込んだ。
その刹那、爆弾は爆発する。
爆風で車は放物線を描きながら、広場に落下する。
その後何度も横転し、悠に十数メートルは転がった後に爆風と共に停止した。
クーガーは咄嗟の判断で、車内に避難し爆発が直撃することを防いだのだ。
支援
756 :
代理続投:2009/05/08(金) 01:28:32 ID:Ar+vuUOy
「ハァ……ハァ……」
クーガーが最速であるのは、何も物理的速度だけではない。
判断力や行動力、精神的な面においても彼は最速を貫いていた。
最速は、貫いていたはずだった。
「さがみさん、さがみさん!」
車内の中から這い出したクーガーは、目を瞑ったままのかがみに呼びかける。
――――しかし、彼女の返事は無い。
「さがみさん! 返事をしてください、さがみさん!」
ただ呼びかけるだけでは効果が薄いと判断したのか、かがみの身体を車の外に出す。
――――しかし、彼女の目は開かない。
「しっかりしてください、さがみさん! 貴女はこんなところで立ち止まってしまうような方じゃないでしょう!!」
もはや呼びかけるのが無意味と判断したのか、今度はかがみの体を揺すり始める。
――――しかし、彼女の体は動かない。
「かがみさん!! かがみさん!!」
普段の彼が絶対に見せることの無い、鬼気迫る顔で彼女の体を揺する。
――――それでも、彼女の体が動くことは無い。
何故なら、彼女は回転する車内の中で全身を強く打ち――――
「…………………………かがみ…………さん?」
――――死んでしまっていたからだ。
【柊かがみ@らき☆すた 死亡】
【一日目昏迷/G−10 遊園地内】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:なし
[状態]:軽症
[思考・行動]
1:……………………
※クーガーのデイパック(支給品一式&確認済み支給品《1〜2》)とかがみデイパック(支給品一式)は両方とも車内にあります
※支給された軽トラック@バトルロワイアルは、アルターで改造された末に破壊されました。
これ以上、運転するのは不可能です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私怨
758 :
代理続投:2009/05/08(金) 01:29:45 ID:Ar+vuUOy
「ゼェ、ゼェ……助かったよ、ルイズ」
爆心地である広場から数十メートル離れた場所で、こなたは才人と再会していた。
才人の身体はやはり満身創痍であり、クーガーとの戦闘がいかに凄惨であったかを物語っている。
「ううん、気にしないで。私もただ見てるってだけは嫌だったし」
才人にとってこなたはご主人様であり、守護すべきお姫様だったのかもしれない。
だが彼女自身にとっての姫は小早川ゆたかであり、自分自身は勇者のつもりであった。
「それよりもすげぇな、あの爆弾」
才人の言葉で、未だ昇り続ける巨大な火柱を眺める。
彼女に支給された爆弾、正確には三村信史特性爆弾セット。
それに配布された説明書には、爆弾を起爆させる詳細な方法が記されており、
爆弾など扱ったこともないこなたでも、起爆させることに成功した。
爆弾の知識など皆無のこなたには、この爆弾の威力がどれほどのものか分からなかったが、
一発限りの強力の隠し球に使おうと判断していて、出来れば温存しておきたい代物であった。
しかしクーガーは強敵であり、その上に謎の力を持っていた。
しかもその力は、あらゆる物の速度を上昇させるもの。
仮に才人を見捨てて逃走したとしても、あっという間に捕らえられてしまっただろう。
だからあそこで爆弾を使用したのは間違いではなかった。
爆弾の威力も知らないし、下手をすれば彼女自身や才人も巻き込まれてしまうかもしれない。
一か八かの賭けではあったが、結果的に勝利の女神が微笑んでくれた。
最も爆弾の威力は彼女の想像以上に凄まじく、全力で逃げても爆風で吹き飛ばされてしまったのだが。
「どうする? あいつらが死んだか確認しに行くか?」
「いや、いいよ。あんな爆発じゃ流石に生きてないだろうし、デイパックもボロボロだよ」
「そうだな、あれだけの爆発だと誰かやってくるかもしれないぜ、とっととズラかろう」
「そうだね、今の私達じゃやられちゃうかもしれないからね、一旦隠れよう」
可能な限り人数は減らしておきたいのが彼女の本音だが、決して無理はしない。
最低でも才人の体力が戻り、受けた傷も治療するくらいはやっておくべきであろう。
それにこの爆発によって誘き出された参加者が、勝手に殺しあってくれるかもしれない。
そこにわざわざ介入して、血反吐を吐き出し戦う必要性も無い。
最初はゆたかの死と異常現象で混乱していた頭も、数時間すれば不思議と冴えている。
これはやはりバトルロワイアルをゲームと判断したからだろうか。
あらゆるゲームに精通するこなたの知識と経験が、彼女に冷静で的確な判断を下させている。
「それじゃあ行こ、サイト」
こなたの呼びかけ体を翻すと、才人は短い返事をしてそれに追従する。
「少しの間待っててね、すぐにまた会えるから」
かつての親友を、自らの手で殺めてしまった少女。
この少女は、果たして何処まで堕ちていってしまうのだろうか。
支援
支援
761 :
代理続投:2009/05/08(金) 01:31:17 ID:Ar+vuUOy
【一日目黎明/G−10 東部】
【泉こなた@らき☆すた】
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
確認済み支給品0〜1個
[状態]:健康
[思考・行動]
1:優勝して、白髪の男の子にリセットボタンをもらう。
2:目の前の少年が言うルイズになりきり、ともに戦う。最後は少年も殺す。
3:とりあえず一旦休む。
【平賀才人@ゼロの使い魔】
[装備]:女神の剣@ヴィオラートのアトリエ
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品1〜3個(このうち少なくとも一個は武器です)、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ)
[状態]:中ダメージ
[思考・行動]
1:新しい『ルイズ』と一緒に行動する。
2:とりあえず一旦休む。
※爆弾による爆音はエリア全体に響き渡り、火柱と煙が立ち上っていく様子も全エリアから見えます。
漫画版を見る限り、火柱はすぐに消えますが煙はしばらくの間残っているようです。
※F−6、G−6の境目から、F−10、Gー10の境目までに車の爆走音が響き渡りました。
【三村信史特性爆弾セット】
名前通り三村信史が作中で使用した爆弾+α。
その他の道具は、信史がプログラムのある施設に爆弾を投下しよう集めた物です。
ちなみにボイスコンバーターとは、パーティーなどで使用される変声用のスプレーのことです。
支援
763 :
代理終了:2009/05/08(金) 01:32:21 ID:Ar+vuUOy
185 : ◆ew5bR2RQj.:2009/05/07(木) 19:38:49 ID:7pAum15Y0
投下終了です。
気が付いたらまた規制に巻き込まれてたので、どなたか本スレへの代理投下お願いします。
また誤字脱字等がありましたら、指摘をお願いします。
代理投下ありがとうございました。
投下乙です
そして代理投下の続きをしてくれて、ありがとうございます
まさか、かがみがこなたに殺されるとは思わなかった
このことをつかさやみゆきが知ったときどうなることやら
そしてサイトは良いとこないなあ。実力差はあるけど終始クーガーに圧倒されっぱなしだし
クーガーも精神が強いから大丈夫だろうけど、性格的に女性を護れなかったショックは大きいだろうな
ハラハラしながら読ませていただきました。もう一度投下乙です
指摘ですがクーガーの状態表に昏迷とあります
後はこなたの所持品に爆弾セットがあるままです
いい意味で予想通り。期待通りの展開。
こなたと才人が狂いまくってるwww
767 :
765:2009/05/08(金) 02:23:51 ID:cPdxdXUD
>>765 すみませんorz
こなたの方は爆弾だけ消費したということですね
読み込み不足でした
>>767 おっしゃる通り、爆弾セットの中から爆弾と台車の二つを消費した訳ですがまぎらわしい表記の方法でした、すいません。
昏迷はお手数おかけしますが、wiki収録の際に変更をお願いします。
あと自分で確認して気付いたのですが、
>>756の車内の中でというのは日本語的におかしいので車内でに直しておいてください。
複数も誤字を残してしまってすいません、次からは無いように心掛けます。
◆ew5bR2RQj.氏
幸せの星をwiki収録しようとしたら容量を超えてしまいました。
どこで区切ればいいのか教えてください。
短いですがシャドームーンを投下します。
カシャ、カシャ、カシャ、カシャ
一定のリズムの金属音を響かせながら、シャドームーンは夜のビル街を進んでいた。
街に明かりは無いが、暗視機能を備えている彼の視界は良好だ。
両足に装具されたレッグトリガーから奏でられる音は、己の存在を誇示しているようにも見える。
殺し合いの場ということを考えれば、余りにも無防備な姿を晒していた。
周囲を気にも留めない、というよりする必要が無いのだろう。
仮面ライダーBLACKを除く参加者は、彼にとって有象無象の類に過ぎない。
だから警戒などせずに歩いている。例え誰が現れても返り討ちにする自信があるからだ。
図書館を出た後、彼はまず地図の確認を行った。
地図に依ると街中には図書館を含めて七つの施設がある。
最初に立ち寄った図書館に銭形警部が居たことを考慮すれば、他の施設にも参加者が居るかもしれない。
他にも山中などに送られた参加者も、殆どが街を目指すだろう。
このような異常事態に巻き込まれれば、人はまず安心を求めるはずだ。
それなら態々暗い山に身を置くより、見慣れた市街地の方が安心できる。
それが明かりが無く、無機質な街だったとしても。
優勝への効率を考えるなら街を巡るか、山を下りてくる参加者を狙えばいいだろう。
だがシャドームーンはそれらの参加者を一先ず捨て置くことにした。
シャドームーンは知っているからだ。人間がどれほど弱い生き物なのか。
殺し合いに参加させられる前に、彼は一度仮面ライダーBLACKを倒した。
創世王の介入で出来た隙を付いた、到底納得できるものではなかったが。
それでもゴルゴムの邪魔をする者がいなくなったのは事実だ。
仮面ライダーが倒れた後の日本征服は簡単に進められた。
そして仮面ライダーが死んだことを知った人間たちは絶望し、我先にと日本脱出を初めた。
中には船のチケットを奪い合う者、あるいはゴルゴムに協力して何とか助けてもらおうとする者まで居た。
後に仮面ライダーBLACKが復活したことで、人間たちは希望を取り戻す。
だが人は絶望したとき容易く他人を蹴落とす。殺し合いなどという状況ならば尚更だ。
シャドームーンはそのように人間を見下していた。
そして街に人が集まるならば、その者たちに勝手に殺し合わせればいいと判断したのだ。
(殺し合いを行うからには、参加者の大半は人を殺すことに躊躇などしない者のはずだ。
それに私一人で参加者全員を殺す必要もない。
この殺し合いは殺した数を競うものではなく、最後の一人になればいいのだからな)
そもそもシャドームーンが優先すべきは参加者の抹殺ではなく、仮面ライダーBLACKとの決着だ。
優勝はその果ての結果でしかない。
できれば今すぐにでも戦いたいが、さすがに広い会場内で人一人を即座に探すのは酷だった。
ならば街を出て、彼はどこに向かうつもりなのか?
現在進んでいる方角は西だ。なぜ西なのか。
地図を見た限り、会場は三つの島で出来ている。
会場のほぼ半分を占める山岳部と、1/4を占める街が合わさった島。
北東にある研究所のある小島。残りの西南の島。
この三つを橋で繋げて会場はできている。
そして、この中では西南の島が一番重要度が低いと思われる。
なぜならば必要性が感じられないからだ。
西南の島に施設としてあるのは小病院、カジノ、ホテルの三つ。
まずカジノは殺し合いの最中に行く場所ではない。
もしものんきにギャンブルをしているようなら、余程に胆が太いか事態を把握していない愚者だ。
残りのホテルと小病院は代わりが利く。
ホテルは北西にもあり、病院は規模の大きい総合病院が街にある。
最初に近くに居た場合を除き、両方とも態々立ち寄る場所では無いだろう。
他にも座礁船、モール、恐竜の化石などもあるが、これらを施設というのは憚られる。
以上のことから、西南の島は重要ではないとシャドームーンは判断した。
だが歩んでいるのはその島の方向だ。
西南の島が重要では無いと判断したと同時に、彼は別の可能性も考えていた。
誰も訪れないならば、逆に潜むにはちょうどいいのではないかと。
殺し合いを生き延びるなら最初から殺し回らずとも、数が減るまでどこかに潜めばいい。
特に優勝を目指してはいるが、力の無い弱者はこのような方法を使うだろう。
そのような潜んでいる者たちを駆逐するために、シャドームーンは西へと歩を進めていた。
西に渡るための橋へと向かう途中でも参加者を発見できれば良かったのだが、今のところ人の姿は無い。
それでも構わずに進んでいると、近くから爆音が響いてきた。
思わず立ち止まり耳を澄ます。音は西から聞こえ始め、そのまま東へと通り抜けていく。
(今のは車か。音からしてかなりのパワーを持っているようだが、まさかブラックサンが?)
一瞬、車を運転しているのは仮面ライダーBLACKではと思ったが、即座に否定した。
仮面ライダーBLACK――南光太郎が車を運転できるという事実が、秋月信彦の記憶には無いからだ。
幼い頃から共に過ごしてきた信彦の記憶に無いなら、光太郎が車を運転できる可能性は低いだろう。
(もしくは自動で動く車という可能性もあるが……そんなことを言っていては切りが無いな。
まあいい。万が一そうだったとしても、ブラックサンが私以外に倒されることはない)
爆音が聞こえる前と変わらぬ足取りで、シャドームーンは再び歩き出す。
シャドームーンは知らない。
この場にはアルター能力者が、異世界の仮面ライダーが、寄生獣が、フレイムヘイズが。
自分や仮面ライダーBLACKに対抗できる可能性を持つ者たちが存在することを知らない。
闇の王子・シャドームーン。彼の内心には僅かな油断が芽生えていた。
だとしても仕方がないだろう。
仮面ライダーBLACK以外に、シャドームーンに対抗できる者はいない。逆もまた然り。
それが彼の、ひいては彼の世界での常識なのだから。
もう一つ、シャドームーンが知らない事実がある。
南光太郎が車を運転できないと断定したがそれは違う。
実際、光太郎は車を運転することができる。
もっともそれはクライシス帝国との戦いになってからの話なので、彼が知らないのも無理は無いのだが。
【一日目黎明/F−6 東部】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備] 無し
[支給品] 支給品一式、不明支給品1〜3(確認済み)
[状態] 健康、僅かな油断
[思考・行動]
1:西側に居る参加者を殺す。途中で出会う参加者も殺す。
2:ブラックサンを発見すればそちらを優先する。
3:サタンサーベルを探す。
4:元の世界に帰り、創世王を殺す。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
投下終了です。タイトルは西へ向かうです。
誤字脱字などがあれば指摘してください。
二人とも投下乙!
かがみが死んじゃったか、お疲れ様
クーガーはこれからどうなるのかとても気になる
シャドームーンは孤島方面に行ったか、あっちはマーダー少なかったからいい動きしてくれそうだな
あと1作ほどでこのスレも埋まるな
コツコツとでも投下してくれる書き手さんが居るのはありがたいね
長めの作品だと埋まっちゃいそうだな
ここは人気キャラでも比較的に呆気なく死ぬね
やっぱり集まったキャラに有名キャラが多いからかな
それもあると思う。正しく多種多様な面子だけど、かなりの豪華メンバーだし
ていうかカオスロワを除けば、ロワ界隈屈指の豪華メンバーだなここは
流石に多ジャンルから人気作品のキャラ集めただけはあるな
ルルーシュと月の共演とか見たかった
……え? もう死んだ?
結構やばそうなグループに予約来たな
結構長くなりそうだけど、このスレに収まるか?
20KBまでならなんとかなるだろ
それだけ長いのが投下されるかは分からないけど
長くなりそうな場合は書き手の人に言ってもらえばいいと思う
それより次スレのスレタイは検索に引っ掛かりやすいように全角するのはどう?
割とロワ常連作品が多いのも理由かもな。
毎回出ている作品が多いと、立ち位置やスタンスを変えて書きたくなるもんだ。
ここにはいないけど、ハルヒなんてそれの主たる例だな。出るロワごとにぜんぜん違う立ち位置になる。
常連作品中では劉鳳、クーガー、浅倉の3人はどこのロワに出ても大差無いな。
それが魅力ともいえるけど
スタンスが変化しないと言われると、変化させたくなる不思議
頭脳派対主催の浅倉ですね
スタンス変わりまくってるキャラもいるけどなw
無差別マーダーなクーガーと劉鳳
……普通に出来そうな不思議
こなたが死んだら、新しいルイズを探しそうな才人
それもまた狂気
今日は投下あるから楽しみだなぁ
なんだかんだで最近途切れないし
延長になったけど、すぐ投下出来るっぽいな
支援の準備はもう出来てるぜ!
お待たせしました。ただいまから投下します。
警察署前で遭遇しようとする者たちがいた。
世界一の泥棒一味に属し、世界有数のガンマンでもある男。
兄との偽りの絆を全てとする、絶対静止の力を有する少年。
愛する人との約束を糧に生きる、心に鬼が巣くう少女。
性別、性格、果ては世界まで違う三人だ。
しかし、仲間や愛する人を探しているという目的だけは共通していた。
この三人が同じエリアから殺し合いをスタートさせられたのは、故意か、偶然か、はたまた運命か。
どれだとしても、邂逅の時は訪れようとしていた。
■ ■ ■
初めて他の参加者と遭遇した、三者の反応はまちまちだった。
警察署の玄関扉を開けた途端に、人が居たことに詩音は驚きを露にした。
次元は眼前の両者を見比べて、自分の武装がもっとも貧弱だと判断するが、
佇まいが変わることはなかった。
前後を挟まれたロロは、どちらに対処すべきか一瞬躊躇してしまう。
その迷いが詩音に先手を取らせた。
「動かないで!」
詩音の持つAK−47が二人に向けられる。撃つためではなく、あくまで牽制を目的としてだが。
sien
詩音としてはこれで相手を萎縮させて、主導権を得るつもりだったが、当の二人は平然としている。
強がってるのかと詩音は訝るが、そんな風には見えなかった。
それなら本当に銃を向けられて平気だということになるが、どうにも考えにくい。
もしや何か逆転できるものがあるのかと二人を見回すが、それぞれに持っているのはナイフかレイピア。
レイピアはともかく、ナイフなら投げつけるという方法もあるが、失敗すればそれまでであり、
仮に成功しても丸腰になってしまい、背後から攻撃される恐れがあるのでしないだろう。
ならばどうして平気な様子なのか。詩音には分からない、状況だけ見れば詩音が圧倒的に有利な筈だ。
なのに実際は五分、あるいは詩音の方が呑まれつつあった。
詩音と次元たちとの差。まず年期の違いが挙げられる。
いくら銃の扱いを知っているとはいえ、詩音は一介の学生に過ぎない。
対して、傭兵として過ごしたこともある次元と、暗殺者として生きてきたロロ。
二人にすれば銃など見慣れたもので、今更目にしただけでビクつくものではない。
そうだとしても通常なら警戒するか、身構えはするだろう。だが二人はそれすら必要無いと判断した。
何故ならば、詩音からは殺気を一切感じないから。
次元もロロも、今までに幾多の人を殺してきた。それが生業と言えるほどに。
だからこそ次元はもちろん、主に暗殺を手段としているロロでも分かる。
相手が自分を殺そうとしているかどうかは。
これだけなら所詮はただの感とでも否定されそうだが、もう一つ判断できる根拠があった。
向けられているAK−47。その銃口が二人の足元に向けられていたから。
詩音にすれば、万が一にも殺人は避けたいことだ。
それが無意識にも頭や胴を避けさせ、足元を狙わせていた。
これらのことから示し合わせたわけでもないのに、次元とロロはは同じ考えをしていた。
『少なくとも、目の前の女に自分を殺すつもりはないと』
もっとも、現在の状況が銃を向けられて膠着状態なのは変わらないのだが。
しばらくは続くかと思われたそんな状態から口火を切ったのは、以外にも最も寡黙な次元だった。
「譲ちゃん、それは初対面の相手に向けるもんじゃねえぞ。そもそもガキが持っていい玩具じゃない」
諭すかのように話す次元。まるで火遊びをする子供を注意するかのようだ。
明らかに舐められている。少しだけムッとした詩音は、次元を睨みつけながら反論した。
「ご忠告ありがとうございます。ですけど安心してください、これの扱いは慣れてますから」
「……そのようだな」
銃の扱いに慣れているのは、堂に入った構えを見れば分かる。
素人が銃を持ったら、普通は少なからず怯えや緊張が見えるものだ。
次元には全くありがたい話ではないが、詩音にはそれが無い。
そんな二人の様子に注意を払いながらも、ロロはどうすべきか思考を巡らせていた。
本来のロロならば、迷わずギアスで動きを止めてからどうとでも対処しているだろう。
しかし、今はギアスにどのような細工がされているか分からない。
下手に使えば逆に危機を招く恐れがあった。
制限として考えられるものはいくつかあるが、特に負担の増加を科されていれば一番不味い。
ロロのギアスは発動中に心臓を止めなければならない。
ある程度までは耐えられるが、負担が増していれば使える時間は必然的に短くなる。
心臓が止まるので激しい動きもできない。
最悪、発動中に倒れる恐れがあり、ロロとしてもそれだけは避けたかった。
だが現時点でギアスを使わずに、前後の二人を殺す方法は無い。
(いや、まだ殺すと決める必要は無いのか)
兄を守るために他の参加者を抹殺する。先程ロロはそう決めた。
だが一つの懸念があった。兄であるルルーシュが、脱出を企てている場合だ。
私怨
ルルーシュの性格を考慮すれば、V.V.の思惑通りになることを良しとはしないだろう。
むしろ反逆する可能性が大いにありうる。その場合は脱出の役に立つ人材。
要するに手駒となりうる参加者を殺すのは、寧ろ邪魔をしていることになる。
だとしたら無闇に参加者を殺さず、使えるか使えないか判断してから殺しても遅くはないはずだ。
そして殺し合いには、ジェレミア・ゴットバルトと篠崎咲世子も参加している。
この二人はルルーシュも信頼している部下だ。いくらなんでも簡単に殺すわけにはいかない。
もちろん、ルルーシュが優勝を目指しているならば殺すだけだが。
(一先ずは抵抗の意思が無い振りをしよう。いきなり撃ってこないなら、今すぐ殺す気はないはずだ)
「あの、僕に殺し合いをするつもりはありません。
できれば話し合いたいので銃を降ろしてもらえませんか」
携えたナイフを置くと、ロロは手を上げた。
いかにも気弱な様子で話すロロを、詩音は値踏みするかのように見ていく。
一見した限りただの貧弱な少年だ。顔立ちからして日本人で無いことは詩音にも分かる。
これなら仮に襲い掛かってきても撃退できるだろうと当たりを付け、再び次元に視線を移す。
「そっちのおじ様はどうなんですか? 殺し合いに乗っていないなら同じようにしてください」
「そいつは構わねえんだがな、一つ頼みがある」
「頼める状況ですか? まあ、聞くだけ聞きますけど」
「別に無理難題を言おうってわけじゃない。
そこの坊主を俺の後ろに下がらせるか、俺が坊主の前まで歩くのを許可してくれればいい」
次元の頼みに詩音は目を見張る。ロロも思わず振り向いてしまう。
どちらも、どうしてそんなことをわざわざ頼むのかと問いたげだ。
私怨
二人の視線に気付いたのか、次元は何でもないことのように答えた。
「気にすんな。ただ、俺より坊主の方が銃に近いのが気に食わないだけだ」
気に食わない。そんな理由で銃口に近づくのかと、詩音とロロの表情に呆れが混ざる。
もっとも、彼女たちも思い人や兄と同じ状況になったなら、同じ行動を取るだろうが。
暫しの間、詩音は思案顔となり、どうすべきか考える。今の膠着状態は誰にとっても好ましくない。
警察署前は十分に見晴らしが利く。もしも新たに誰かが現れたら、この場面をどう見るだろうか。
『少女が銃を向けて、男二人を脅迫している』ようにしか見えないだろう。
詩音としても、そんなつまらない誤解は避けたいところだ。
(癪に障りますけど、ここは私が妥協しますか)
決断した詩音は銃を下げて、二人に妥協案を告げる。
「分かりました、話し合いには応じます。ですけど、それ以上は近づかないでください
それが条件です」
詩音の答えに次元は苦笑を返すが、同意を示した。
「俺はいいぜ。坊主もそれでいいだろ?」
次元の問いかけに、ロロは素直に頷く。
ロロとしては、自分を話に挿まずに進められたので、良いも悪いもないのだが。
一先ずは緊張した空気が弛緩したのを感じて、三人は一息付けた。
そして気を取り直して、まずは自己紹介でも始めようとしたときだった。
闇を照らす火柱が北東の空に上がったのは。
■ ■ ■
私怨
しえン
突如上がった火柱に、詩音は空を眺めながら唖然とする。
さしもの次元やロロも、それは変わらなかったのだが。
「花火にしては少し派手すぎねえか?」
それでも次元には、まだ軽口を言う余裕があった。
ロロが次元を睨んだ。そんなことを言ってる場合かと咎めているようだ。
詩音は周囲には目を向けず、未だに空を眺めている。
だが火柱が消えて、続けて煙が上がるぐらいになると、突然走り出した。
次元やロロも気付いたが、呼び止めるでもなく詩音が走り去るのを見ているだけだ。
そして姿が見えなくなるぐらいになって、漸く口を開いた。
「いいんですか。引き止めなくて」
「坊主。あの手の女は一度決めたら、どうやっても止まらねえもんさ」
一つ溜め息を吐いて、次元はそう述べた。
女性に関しては詳しくないロロも、そういうものかと一応は納得した。
結局、先程までの状態は何だったのかと思うところもあるが、今はそれよりも重要なことがあった。
二人は再度空を見上げる。北東の空では変わらずに、煙が立ち込めている。
あそこで何かが起こっているのは確実だ。
もしかしたら、二人の探し人が巻き込まれているかもしれない。
しかし、二人が煙を見て最初に思い浮かんだのは、爆発に巻き込まれる相棒や兄ではなく、
(ルパンがやったのか?)
(兄さんがやったのかな?)
爆発を起こす相棒や兄の姿だった。
しエん
【一日目黎明/H−9 警察署前】
【次元大介@ルパン三世(アニメ)】
[装備]レイピア@現実
[支給品]支給品一式、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[状態]健康
[思考・行動]
0.坊主(ロロ)と話す
1.話した後は爆心地に向かう?
2.ヴイツーを殺して、殺し合いを止める
3.ルパン達を探す
4.ルルーシュとC.C.を探して、ヴイツーの情報を手に入れる
5.銃が欲しいな……
[備考]
※庭師の如雨露をただの如雨露だと思っています
【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]サバイバルナイフ@現実
[支給品]支給品一式、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0〜1
[状態]健康
[思考・行動]
0.男(次元)と話す
1.話した後は爆心地に向かう?
2.ルルーシュを守る。ルルーシュが脱出を目指しているなら協力する
3.他の参加者を殺す。脱出するなら、ルルーシュの役に立ちそうな参加者は生かす
4.竜宮レナ、園崎魅音を優先して探し、殺す
5.前原圭一、園崎詩音、北条悟史、北条沙都子を警戒する
6.ギアスの使用はできるだけ控える(緊急時は使う)
[備考]
※19話ルルーシュ粛清前からの参戦です
※自身のギアスに制限がかけられている可能性に気づきました
※竜宮レナ・園崎魅音を危険人物と認識しています
※圭一のメモをある程度信じていますが、嘘の可能性も考えています
■ ■ ■
支援
しえーん
最後の最後に規制にひっかかりました。
仮投下スレに投下しておきます
詩音は一心不乱に街中を駆けていた。息が荒くなっているが気にも留めない。
あの火柱と煙はどう見ても、何かが爆発して起きたものだ。
もしかしたら、爆心地には悟史や沙都子が居るかもしれない。もちろん居ないのが一番だが。
自分が警察署で手間取ってた間に手遅れになっている恐れもある。
そうだとしたらゾッとしない話だ。だから一刻も早く、彼女は爆心地へと到着したかった。
(悟史君、沙都子……お願い、無事でいて)
詩音の中では、既に次元たちのことは眼中に無い。
彼女の最優先事項は悟史、沙都子の捜索。次いで仲間たちとの合流だ。
その他の参加者を気にする余裕は無かった。
ここまでの三人は、知り合いへの心配が余り無いようにも見えた。
詩音は悟史と沙都子の心配は大いにしていたが、他の仲間に対しての心配は薄い。
一見して薄情だと思うかもしれないが、一概にそうとは言えない。
ただ三人は『自分の知り合いは合流する前に死ぬような連中ではない』と思っていただけだ。
それだけ次元と詩音は仲間への、ロロは兄への信頼が厚かった。
だが数時間後に行われる放送は、その信頼を嘲笑うかのごとく告げるだろう。
次元たちルパン一味の宿敵の、ロロの何よりも大切な兄の、
そして詩音の半身ともいえる、姉であり妹でもある少女の死を。
【一日目黎明/H−9 北東】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]AK−47(カラシニコフ銃)@現実
[支給品]支給品一式、AK−47のマガジン×9@現実、SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎、
クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に
[状態]健康、若干興奮気味
[思考・行動]
1.爆心地に向かう
2.悟史に会う
3.仲間との合流、沙都子を優先
[備考]
※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です
すいません、すぐに解けました。
投下終了です。誤字脱字、指摘などありましたらお願いします。
投下乙!
一触即発な状況だったけど、交戦に陥ることは避けたか
ギアス使えるロロを二人が倒す姿が想像出来なかったから、二人にしては良かったのかな
にしても三人とも、もう大事な人を失ってるんだな
とくに詩音は悟史、沙都子もピンチになりかけてるし……
このままくけけけけにならないことを祈る
そろそろ次スレ建てても良いかな?いいなら建ててくるけど
スレタイの【コッソリ】【影に】を抜いて、検索引っ掛かりやすいよう全角にしてみたいんだけどどう?
いいんじゃないかな?
急ぎでもないだろうから、とりあえず今日の23:59ぐらいまで待って反応がなかったら立てちゃおうぜ。
別に反対もないだろうし、急ぎでもないしw
自分で立てたいのは山々なんだけど、PCは生憎規制中なんだよなぁ
そろそろ解除されないもんかね
自分も立てられなかった。
急ぎじゃないからいいか
スレ立て乙ですーあと約10KBかー